■猫の動脈管開存症の外科的管理と非外科的管理:28症例(1991-2012)
Surgical and nonsurgical management of patent ductus arteriosus in cats: 28 cases (1991-2012).
J Am Vet Med Assoc. August 1, 2015;247(3):278-85.
Jocelyn E Hutton; Michele A Steffey; Jeffrey J Runge; Janet K McClaran; Sarah J Silverman; Philip H Kass

目的:減衰術(血管外あるいは血管内)v.s.内科治療のみで治療した動脈管開存症(PDA)の猫の臨床特性と結果の特徴を述べる

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:先天的PDAの飼育猫28頭

方法:心エコー検査で診断した先天的PDAの猫のカルテを調査した。シグナルメント;病歴;臨床症状;身体検査、ECG、心エコー検査、胸部エックス線検査結果;試した場合の内科管理への反応;試した場合の減衰方法のタイプ(外科的あるいは血管内);手順詳細;術中および術後(2週間以内)合併症;長期(>2週間)合併症のデータを得た。追跡調査はカルテおよび電話で得た。

結果:全ての猫は心雑音の評価で紹介されていたが、初期臨床症状が得られた26頭中17頭(65%)は初診で明らかな症状を示していなかった。複数の先天的心欠陥は23頭中6頭(26%)で確認された。26頭中17頭(65%)は、1つ以上の血管減衰処置で治療されていた;血管減衰は11頭で行われず、ACEIあるいはループ利尿薬(n=2)で治療、あるいは無治療(n=9)だった。15頭中11頭で外科的結紮が成功し、2頭でコイル塞栓が成功した。処置の、あるいは術後合併症は死亡(n=2)、左側喉頭麻痺(2)、声の変化(1)、発熱(1)、出血(4)、乳糜胸(1)だった。28頭中16頭(57%)で長期の経過観察が得られた。外科的減衰を行わなかった4頭中3頭は心臓関連疾患で死亡していた。

結論と臨床関連:結果は猫のPDAはまれに発生し、臨床症状と診断的所見は犬でこれまで報告されたものと一致していることを示唆した。この小規模集団で、外科v.s.非外科的治療において寿命に有意差は起こらなかった。外科的結紮後の喉頭機能の評価が推奨される。大規模集団で種々の治療オプションに関する結果の追加研究が勧められる。(Sato訳)

■肺高血圧と右側うっ血性心不全を伴う1頭の成猫の動脈管開存症:動脈管閉鎖後の血行動態評価と臨床結果
Patent ductus arteriosus in an adult cat with pulmonary hypertension and right-sided congestive heart failure: hemodynamic evaluation and clinical outcome following ductal closure.
J Vet Cardiol. September 2014;16(3):197-203.
Jose Novo-Matos; Karin Hurter; Rima Bektas; Paula Grest; Tony Glaus

左-右短絡の動脈管開存症(PDA)を持つ8歳の猫において、重度肺高血圧(PH)に続発して右側うっ血性心不全(CHF)を発症した。酸素とシルデナフィルの処置により、短絡結紮前に血管反応性を検査した。心エコー検査で評価し、この処置により肺動脈圧が有意に低下した。その後、外科的結紮を計画した。

開胸中、PDAを指で10分間押さえ、同時に右心内圧をカテーテル測定し、内圧は上昇しなかった。恒久的な短絡の結紮で完全な臨床的回復を維持した。開胸中に採取した肺のバイオプシーサンプルで、典型的な肺高血圧の病理組織学的動脈変化を認めた。

年齢が進んでも、猫で左-右PDAに続発する臨床的に重度肺高血圧および右側うっ血性心不全を起こす可能性がある。肺の反応性のエビデンスがあることを想定して、PDAの閉鎖は良好な耐容性を示し、長期の臨床的恩恵が得られる可能性がある。(Sato訳)

■PDA結紮の心内膜法:外科的描写と臨床結果35症例
An intrapericardial technique for PDA ligation: surgical description and clinical outcome in 35 dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Jan-Feb;49(1):31-40.
Laura E Selmic; David A Nelson; Ashley B Saunders; H Phil Hobson; W Brian Saunders

犬の動脈管開存症(PDAs)の剥離と結紮に多くの術式が報告されている。

この研究の目的は、犬のPDAの剥離と結紮に対する心内膜法の詳細な描写を提供することと、その方法の臨床結果を報告することである。
35頭の犬のカルテからシグナルメント、臨床症状、心エコー検査所見、手術時間、術中および術後合併症、動脈管閉鎖の完全性について後ろ向きに検討した。

手術時間の中央値は60分(範囲、35-125分)だった。術中、術後合併症は発生しなかった。術後48時間以内に全ての犬の左心基底部連続雑音はなくなり、32頭中29頭で心エコー検査により完全な閉鎖を確認した。術後48時間以内に3頭の犬の残存血流が心エコー検査で確認された。1頭の残存血流は1か月で減少しており、33か月以内に消失した。1頭の犬は術後、軽度の血流が残っていたが、経過観察の間に回復しなかった。

PDA剥離および結紮に心内膜法の成績は良く、過去に報告されている方法よりも心エコー検査による残存血流の発生率が低かった(6%)。(Sato訳)

■ジャーマンピンシャーの右大動脈弓遺残と異所性左鎖骨下動脈に関係する珍しい血管輪奇形
Unusual vascular ring anomaly associated with a persistent right aortic arch and an aberrant left subclavian artery in German pinschers.
Vet J. March 2011;187(3):352-5.
Julia Menzel; Ottmar Distl

この研究の目的は3頭のジャーマンピンシャーにおける右大動脈弓遺残(PRAA)の特殊な型を述べ、その犬種における遺伝様式を分析することだった。
このタイプのPRAAは左後食道鎖骨下動脈と、異所性左鎖骨下動脈に始まる動脈管策の組み合わせを特徴とする(PRAA-SA-LA)。このまれな奇形の組み合わせは他の犬種で2頭別々に報告されているだけで、過去にPRAAのどの型の発生もジャーマンピンシャーで起こっていない。
この研究で、この先天的異常を持つ18症例が確認され、それらの高度血縁および近親交配が系図分析で示された。罹患犬の3頭は更なる臨床調査を行い、剖検(2症例)および手術時所見(1症例)でPRAA-SA-LAの診断を検証した。遺伝の単一遺伝子常染色体劣性様式ではなさそうだった。(Sato訳)

■動脈管開存症の外科的閉鎖後に残存シャントのコイル閉鎖
Coil occlusion of residual shunts after surgical closure of patent ductus arteriosus
Vet Surg. December 2006;35(8):781-5.
Yoko Fujii, Bruce W Keene, Kyle G Mathews, Clarke E Atkins, Teresa C DeFrancesco, Elizabeth M Hardie, Yoshito Wakao

目的:動脈管開存症(PDA)の外科的不完全結紮後、残存血流の閉鎖に対しコイル塞栓形成の使用を紹介する

研究構成:臨床研究

動物:PDAの外科的結紮後、持続的心雑音をもつ犬(n=4)

方法:PDA結紮後、PDAを通る残存動脈冠血流をカラーフロードップラー検査で認められ、左室拡張終末径が増加したままであった。動脈アプローチによるコイル塞栓形成をPDAの閉鎖を完全にするため実施した。

結果:塞栓形成コイルは、合併症なく運ぶことができ、血流動態的に閉塞に成功した。ドップラーで見ることの出来る血流は、塞栓形成後3ヶ月以内に2頭で改善が見られた。体重に対する左室拡張終末径は全頭で減少した。

結論:経カテーテルコイル塞栓形成は、不完全外科的結紮後の残存PDA血流の完全な閉鎖に安全で最小限の侵襲ですむ方法であることが明らかである。

臨床関連:経カテーテルコイル塞栓形成術は、開胸外科結紮後の不完全なPDA閉鎖がある犬で、血流動態的に重要な残存シャントの矯正に考慮すべきである。(Sato訳)

■204頭の犬におけるPDAの治療で外科的結紮と経動脈カテーテル閉塞の遡及的比較
Retrospective comparison of surgical ligation and transarterial catheter occlusion for treatment of patent ductus arteriosus in two hundred and four dogs (1993-2003)
Vet Surg. January 2007;36(1):43-9.
Kimberly R Goodrich, Andrew E Kyles, Phillip H Kass, Fiona Campbell

目的:外科的結紮(SL)または経動脈コイル閉塞(TCO)により処置した動脈管開存症(PDA)の犬の処置時間、合併症、死亡率、短期結果を比較する

研究構成:遡及研究

動物:PDAの犬(n=204)

方法:PDAを治療した犬の医療記録を再調査した。PDAの治療でSLが主要な方法だった時期(1993-1998)に治療した犬と、TCOが主要な方法の時期(1999-2003)にそれで治療した犬を比較した。方法の移り変わりの期間に治療した犬、1999-2003年にSLで治療した犬、1999年以前にTCOで治療した犬、肺高血圧、両方向または逆行(右―左)PDAの犬は除外した。

結果:両群の年齢、体重、性分布、処置時間(P=.43)は同様だった。大きな合併症はSL(12% versus 4.3%; P=.035)でよく見られ、小さな合併症はTCO(12% versus 26%; P=.015)に多かった。初回成功率はTCO(84%)よりSL(94%;P=.027)の方が高かった。SL(5.6%)とTCO(2.6%;P=.27)の死亡率に有意差はなかった。

結論:SLとTCOは同じような死亡率で良好なPDA治療法である。しかし、SLはメジャーな合併症を起こすリスクが高く、TCOは初回成功率が低い。(Sato訳)

■犬の左-右動脈管開存症の外科的治療に対する生存率と予後指標の評価:52例(1995-2003)

Evaluation of Survival Rate and Prognostic Indicators for Surgical Treatment of Left-To-Right Patent Ductus Arteriosus in Dogs: 52 Cases (1995-2003)
J Am Vet Med Assoc 227[11]:1794-1799 Dec 1'05 Retrospective Study 29 Refs
Stephane Bureau, DVM; Eric Monnet, DVM, PhD, DACVS *; E. Christopher Orton, DVM, PhD, DACVS

目的:動脈管開存症(PDA)に対する外科的治療を行った犬で、長期生存に関する因子を判定する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:左-右シャントPDAの外科的治療を行った犬52頭

方法:記録から年齢、犬種、性別、体重、臨床検査所見、内科治療の種類と期間、胸部エックス線写真と心エコー検査結果、手術時および術後合併症のデータを収集した。追加情報を医療記録またはオーナーか委託獣医師への電話調査から入手した。

結果:22頭は僧帽弁逆流があった。僧帽弁逆流の有無に平均体重と年齢は有意差を示さなかった。24頭(46.2%)は心不全に関連する臨床症状を示していた。左心房拡張はエックス線検査をした56.3%の犬に観察された。23頭の左房拡張および25頭の左室拡張の診断に超音波検査を使用した。1年-、2年-生存率はそれぞれ92%と87%だった。術前の僧帽弁逆流の診断は、生存率に関係しなかった。年齢、体重、嗜眠、ACE-Iによる術前治療、手術時のエックス線検査で右房拡張は、生存率に負に関連した。

結論と臨床関連:PDAの外科的治療は、心不全の臨床症状がない若い犬で治癒的だった。PDAの外科的矯正は診断後できるだけ早く推奨すべきで、僧帽弁逆流は外科禁忌ではない。(Sato訳)

■最小侵襲性動脈管開存閉鎖を行った犬5例
Minimally invasive patent ductus arteriosus occlusion in 5 dogs.
Vet Surg 33[4]:309-13 2004 Jul-Aug
Borenstein N, Behr L, Chetboul V, Tessier D, Nicole A, Jacquet J, Carlos C, Retortillo J, Fayolle P, Pouchelon JL, Daniel P, Laborde F

目的:犬5例で動脈管開存(PDA)の最小侵襲性閉鎖法とその結果を報告する

研究構成:臨床症例

動物:4-6ヶ月齢のPDAの犬5頭

材料と方法:全頭にPDAの閉鎖にチタン製結紮クリップを使用した。3頭はビデオ-増強小開胸を行った。あとの2頭は、カスタム製胸腔鏡クリップアプリケーターを使用した胸腔鏡下PDA閉鎖を行った。

結果:2頭の胸腔鏡下PDA閉鎖は成功した。4頭で完全なPDA閉鎖を成し遂げた。術後3ヶ月最も大きな犬は、血流学的にわずかな残余管流を認めた。

結論:専門的手技が要求されるが、最小侵襲PDA閉鎖は、安全で信頼できる方法である。PDAの直径を術前に測定することは、金属クリップで完全閉鎖を達成できるか判定するのに重要である。

臨床関連:最小侵襲性PDA閉鎖は、従来の開胸による閉鎖の代替療法として考慮すべきである。(Sato訳)

■イヌの動脈管開存結紮を容易にするためのニトロプルシドナトリウム誘発性の故意に起こした低血圧

Sodium nitroprusside-induced deliberate hypotension to facilitate patent ductus arteriosus ligation in dogs.
Vet Surg 32[4]:336-40 2003 Jul-Aug
Hunter SL, Culp LB, Muir WW 3rd, Lerche P, Birchard SJ, Smeak DD, McLoughlin MA

目的:イヌの複雑な動脈管開存症(PDA)の外科的結紮を容易にし、出血を抑えるため、故意の低血圧を誘発するニトロプルシドナトリウムの使用を報告すること

研究構成:回顧的研究

動物:6頭のイヌ

方法:5頭のPDAを外科的に結紮中に、出血が起こった。動脈管の破裂リスクが大きいと考慮した6頭目は、PDAの外科的精査と分離が非常に難しかった。血液喪失を抑え、PDAの外科的結紮を容易にするため、低血圧を誘発しようとそれら6頭にニトロプルシドナトリウム(5-25μg/kg/min静脈注射)を投与した。

結果:ニトロプルシドナトリウム輸液は、5-10分以内に血圧を低下(平均動脈圧、45-60mmHg)させ外科的結紮を容易にした。6頭とも手術、麻酔から難なく回復した。

結論:ニトロプルシドナトリウム輸液は、PDAの外科的結紮を容易にするため、イヌの血圧を故意に低下させるのに使用できる。

結論と臨床関連:ニトロプルシドナトリウム輸液は、5-10分以内に低血圧を起こさせ、コントロールが簡単で、すばやく効果を失い、PDAの外科的結紮を容易にする補助となるはずである。(Sato訳)

■動脈管開存症の犬に関する長期追跡調査

Long-term follow-up of dogs with patent ductus arteriosus.
J Small Anim Pract 44[11]:480-90 2003 Nov
Van Israel N, Dukes-McEwan J, French AT

左-右短絡動脈管開存症(PDA)の犬に関する、閉鎖後の生存情報を、1990年から2000年に診断された、80頭の犬で入手できました。これらのうち、37頭は、短絡血管閉鎖処置を受け、この研究の時点で、再評価しました;追跡検査の臨床データと、最初のデータとを比較しました。レントゲン検査では、右心室は拡大したままで、下行大動脈の拡張に関連した大動脈隆起は、閉鎖後消失しませんでした。Mモード心エコーで、拡張期と収縮期における、左心室腔直径と、収縮期における左室後壁が、有意に減少しました。僧帽弁心内膜症は、一般的な特徴でした。残留血流が、動物の46%で明らかにされました。犬の8%で閉塞遅延、19%で些細な再疎通が発生しました。閉鎖後最大生存期間は、168ヵ月(14年)、閉鎖しなかったものは、114ヵ月(9.5年)で、PDAの犬は、予測できない経過をたどるということを示唆しました。しかしながら、閉鎖群と非閉鎖群で、生存期間は有意に異なりました。

■イヌの動脈管開存症の原因
Etiology of Patent Ductus Arteriosus in Dogs
J Vet Intern Med 17[2]:167-171 Mar-Apr'03 Review Article 23 Refs
James W. Buchanan and Donald F. Patterson

動脈管開存症(PDA)はイヌで、一般的な先天性心疾患で、通常若年で矯正しないと心不全や死亡の原因となる。過去に行われた、遺伝的PDAを持つミニチュアプードルから生まれた一連のイヌの組織学的研究で、十分開存の原因となるような管特異的平滑筋の様々な形成不全と非対称、管壁の大動脈様弾性組織の存在が認められた。他のイヌにもPDAの原因となる同様の構造異常があるかどうか判定するため、脈管構造の連続切片、3次元組織検査を肉親にPDAの病歴がないプードル以外のPDA純血種8頭に行った。8頭中7頭に形態学的異常が見られ、本質的にPDAの遺伝形質を持つことが分かっているイヌのものに似ていた。それら所見は、どうやらそれらの犬種に散発するPDAが、プードルに似ている、またはまったく同じ動脈管構造の遺伝的欠損により起こっていることを示唆する。PDA件の血縁、特に両親、子孫、兄弟は、PDAの徴候を検診すべきである。PDAのイヌは犬種に関係なく繁殖に供すべきではない。(Sato訳)

■2頭のネコで、取り外し可能なコイルによる動脈管開存症の経静脈塞栓法
Transvenous Embolization of the Patent Ductus Arteriosus with Detachable Coils in 2 Cats
J Vet Intern Med 17[3]:349-353 May-Jun'03 Case Report 13 Refs
Matthias Schneider and Nicolai Hildebrandt
PDAはイヌでよく見られる先天的心欠陥の1つであるが、ネコではほとんど見られない。それは単発の心欠陥、または他の先天的奇形(ほとんどは心室中隔欠損)と併発する。イヌネコ両方で、「古典的」外科的閉鎖が治療で選択されている。1975年にネコで外科的閉鎖を成功したと初めて報告され、続いてかなり不定な結果の2、3症例の報告しかなく、結果が不定なのは症例数が少ないためと思われた(死亡率0-100%)。複数医療機関の研究で、外科的に治療した13頭で成功率は85%だった。最も多く報告されている合併症は、胸腔内出血である。
イヌのPDAの塞栓化は、大部分大腿動脈からのアクセスで実施されていた。経皮的な動脈アクセスを行った術後起こりえる合併症は、大腿動脈部分の出血である。代わりに、外科的脈管アプローチや経静脈法が使用できる。経静脈法の利点は、カテーテルアクセスに必要な大腿静脈の穿刺だけで済むことである。これは特にネコに重要で、ネコの大腿動脈は非常に小さく、大腿静脈での出血の危険はより低いためである。
 しかし、動脈アクセスなしに、PDAを閉塞後、下行大動脈の血管造影を行うことはできない。両ケースでPDAの血流がいまだ存在するかどうか判定するため、主肺動脈を造影剤の注入に使用した。この血管造影法を用いることでは、小さな残りのシャントを検出できないかもしれない。一方、イヌで2.5mm以下の小さなPDAは、単一コイルで閉鎖できる。同じことはそれらのネコ2頭でも分かった。ゆえに、小さなPDAの塞栓後の血管造影は必要なく、ドップラー心エコー検査で確認できる。経静脈法で制限される1つ目は、ネコで大腿静脈の大きさが小さいことと、このアプローチに関する難かしさと思われる。より大きな経静脈が代わりになるかもしれないが、大腿静脈よりもPDAまでのカテーテルの設置がより難しい。2つ目の問題は、2頭のネコで述べたように、PDAの大きさが小さく、PDAまでのガイドワイヤーに沿ってカテーテルを進める問題である。ゆえに、我々標準の5-Frカテーテルよりも特別な4-Frカテーテルを使用する必要がある。
結論として、経静脈コイル塞栓化はネコのPDA療法で外科的閉鎖の良い代替療法と思われる。(Sato訳)

■2頭の犬に使用した自己拡張管閉鎖器による大きな開存動脈管の閉鎖
Closure of large patent ductus arteriosus with a self-expanding duct occluder in two dogs.
J Small Anim Pract 43[12]:547-50 2002 Dec
Glaus TM, Berger F, Ammann FW, Klowski W, Ohlert S, Boller M, Kastner S, Reusch CE, Sisson D

動脈管開存症(PDA)の閉鎖で紹介されている別のカテーテル法のうち、コイル塞栓が犬で最も良く使用されている。しかし、直径4−5mm以上のPDAには、コイルの移植が困難である。それらの症例には、Amplatzer動脈管閉塞器(ADO)が、代替療法として提案される。この報告は、約6mm径の大きなPDAを持つ2頭の犬にADOを埋め込み成功したことを述べる。
移植ワイヤーに取り付けた自己拡張性装置を長い外筒を通し、大腿静脈から右心から肺動脈、そして動脈管まで進行させ、動脈管まで送り込ませた。その後伝達ケーブルからネジをはずすことで、その装置を離した。この方法で、2頭の大きなPDAは完全に、シャントが残ることなく閉塞した。このように、ADOは大きなPDAも閉鎖可能な調節放出インプラントである。現在ではそのコストが高いため、獣医療での一般的な使用は制限される。(Sato訳)

■犬98頭の左-右短絡動脈管開存症の再考と短期予後
Review of left-to-right shunting patent ductus arteriosus and short term outcome in 98 dogs.
J Small Anim Pract 43[9]:395-400 2002 Sep 34 Refs
Van Israel N, French AT, Dukes-McEwan J, Corcoran BM

左-右短絡動脈管開存症(PDA)の犬98頭の症例記録を再検討した。35犬種が存在し、メスとオスの比率は3:1だった。40%の犬が初診時1歳以上で、31%がPDAによる臨床症状を持っていた。IV/VI以上の左心基底部の連続性雑音は、90%の犬で聴取された。心電図検査で良く見られた異常は、高いR波(63%)と深いQII波(62%)だった。PDAで典型的な、主肺動脈部と左心房の拡大を伴う下行大動脈の拡張を示す、X線での三徴候は26%の症例に見られた。2次元そしてM-モード超音波検査で、左房の拡大(35%)と拡張期(82%)、収縮期(84%)の左室径の増大が良く見られた異常として検出された。ドップラー超音波検査で、66%に大動脈流出速度の増加が見られた。この研究で全体の短期の成功結果が95%で得られた。標準法、またはJackson-Henderson法を用いた外科的動脈管結紮で、生存期間、出血の発生率、シャントの残存性に有意差はなかった。この研究で使用した介入処置の数は、統計比較するには少なすぎるが、コイル閉鎖法を使用した時高いシャント残存率と低い死亡率になる傾向が見られた。(Sato訳)

★犬の動脈管開存結紮術中出血
Hunt GB et al; Vet Surg 30[1]:58-63 2001 Jan-Feb; Intraoperative hemorrhage during patent ductus arteriosus ligation in dogs.

目的:獣医教育病院で、動脈管開存症(PDA)結紮術を行った連続シリーズで、術中出血の発生率を調査し、血管の穿孔のリスクを減らす方法と出血に対する対処を述べる事です。

研究構成:回顧的臨床研究

動物:犬64頭

方法:1989年5月から1998年2月の間にシドニー、大学獣医センターで、PDA結紮術を行った全ての犬の記録を再検討し、罹患率と合併症の種類を調査しました。

結果:PDA結紮術中、ひどい出血は64頭中4頭(6.25%)で起こりました。全てのケースで、切開用鉗子の先端で剥離中、血管の頭側中央面の穿孔で出血しました。3頭の犬の出血は、主肺動脈の鉗圧、下行大動脈の指による圧迫によりコントロールし、約5分間の循環停止中に、血管結紮を行いました。残りの1頭は、位置を突き止め、鉗圧、出血点の結紮に戸惑っている間に放血しました。PDA結紮術の死亡率は、64頭中1頭(1.6%)でした。

結論:この報告で述べられている方法は、いろいろな犬種、体重、年齢の犬の、違った血管形態のものでも、単純な結紮が可能で、ひどい出血が起こったら、迅速に心室からの流出を閉鎖し、血管結紮、それに続く全血輸血で、ほとんどのケースは助かります。(Dr.Sato訳)

★動脈管開存症のヘモクリップによる閉鎖に対する回顧的評価:20例
Lisa B. Corti, DVM et al; J Am Anim Hosp Assoc 36[6]:548-555 Nov/Dec'00 Retrospective Study 22 Refs; Retrospective Evaluation of Occlusion of Patent Ductus Arteriosus With Hemoclips in 20 Dogs

動脈管開存症(PDA)は、犬の先天性心血管異常でよく見られます。心拍出の部分的喪失、肺の過循環、左心室容量負荷が結果として起こります。治療せずにおくと、検査から1年以内に左側うっ血性心不全と不整脈により、64%以上が死亡します。
 PDAの早期閉鎖は、それゆえに治療が推奨され、いろいろな外科的方法で行うことができます。その方法の1つは、大きな血管クリップをPDAの閉鎖に応用するものです。クリップは内側切開を必要としないため、脈管穿孔のリスクを減らすかもしれません。そして、標準的な結紮法より簡単ですばやく実施できると報告されています;しかし、クリップによる動脈管の閉鎖は、PDAの最疎通をもたらしえると警告されています。
 この研究の目的は、標準の結紮法と比較した止血用クリップの使用評価とPDA閉鎖後の心臓の組織、機能変化の評価、そして止血用クリップの応用に続く、最疎通の頻度を調査する事です。

 1988年から1998年にPDAの診断を受けた犬68頭の医療記録を調査しました。40例は1つ以上のヘモクリップで閉鎖され、20例の追跡調査が得られました。それらを、標準の切開法を用い、2重結紮を施した14例のPDAと比較しました。
 全ての犬に、最初の検査で連続的なまたは機械性の雑音を聴取しました;5例は、収縮期雑音を聴取されており、追跡調査時には、軽い三尖弁の逆流、僧帽弁の逆流、動脈管の流れによるもので、2例は、軽い肺動脈狭窄を持っていました。
 手術前に心電図検査を行った17例中3例で、不整脈が分っていました;追跡調査時には、全ての犬は正常な心臓律動であると考えられました。18頭の術前の胸部X線写真を入手し、手術時の、13頭の背腹像に、血管隆起が認められました;追跡調査時にはそれらのうち11頭に、依然血管隆起がありました。術前、術後平均で有意な減少が見られたのは、椎体の心臓の大きさ、心臓エコー検査での左房/動脈ルート比そして短縮率でした。

 良い臨床結果にもかかわらず、追跡調査時、20頭中6頭は、短縮率(28%以下)の減少を伴う負荷をかけられた心筋症が継続していました。1頭は術後5日目に動脈管の流れを確認しましたが、次の再検査までに漸次改善していました。残りの19頭は最疎通を起こしていませんでした。ヘモクリップを用いたものと、標準的な結紮法を行った時の手術時間に、有意差はなく、術中の出血の発生率は、ヘモクリップ応用で10%でしたが、ヘモクリップの設置に続き十分コントロールできました。(Dr.Sato訳)

★単一の分離可能なコイルを小規模の動脈管開存症に使用した経静脈塞栓
Matthias Schneider et al ; J Vet Intern Med 15[3]:222-228 May-Jun'01 Review Article 37 Refs ; Transvenous Embolization of Small Patent Ductus Arteriosus with Single Detachable Coils in Dogs

小規模の動脈管開存症(PDA;<4mm)に対する、単一の分離可能なコイルを用いた経静脈塞栓を、24頭の犬(年齢中央値5.7歳、範囲2.6−65.5ヶ月:体重中央値5.5kg、範囲1.5−30.0kg)に試みました。動脈管の血管造影像と血圧測定を、塞栓前後で行いました。最小の動脈管の直径は、2.7±0.7mmでした。全ての犬で、残存の短絡に関わらず単一のコイルを使用しました。10頭(PDAの最小径の範囲、2.9−3.6mm)に、8mmコイルを使用しました。

 コイル塞栓後、血管造影での短絡度合いは、有意に減少しました(n=20、P<.001)。残存性の短絡を、15分後の血管造影と1−3日後、それから3ヶ月後のドップラーエコー検査で評価しました。5mmのコイルを用いた犬で、残存性の短絡率は低く(血管造影で0%、ドップラーエコー検査で1−3日目は10%、3ヶ月目は0%)、対称的に8mmコイルを使用した犬では、(血管造影で91%、ドップラーエコー検査で1−3日目は79%、3ヶ月目で67%)高かったです。

 3ヵ月後、5mmコイルで治療した犬の残存性雑音はなく(0/7)、8mmコイルで治療した犬は12頭中5頭(42%)でした。それらの犬で、不完全な閉鎖にもかかわらず、全ての犬で左心室の容量負荷は減少しました。肺動脈または動脈塞栓症は起こりませんでした。単一分離可能コイル塞栓の、最初の結果分析は、小規模のPDA(<4mm)の犬全てに可能ですが、極小のPDA(<2.5mm)の犬にのみ効果的に治療でき、中規模のPDA(2.6−4.0mm)にはより長いコイルまたは複数のコイルが、完全な閉鎖には必要かもしれません。(Dr.Sato訳)