■自然にバベシア・ギブソニに感染した犬の臨床的特徴:60頭の犬の研究
Clinical characteristics of naturally Babesia gibsoni infected dogs: A study of 60 dogs
Vet Parasitol Reg Stud Reports. 2022 Feb;28:100675.
doi: 10.1016/j.vprsr.2021.100675. Epub 2021 Dec 6.
Pin-Chen Liu , Chao-Nan Lin , Bi-Ling Su

バベシア・ギブソニは、犬のダニ媒介性貧血疾患の原因として世界的に次第に認識されているが、自然に感染した臨床報告は少数しか入手できない。

このバベシア・ギブソニ感染を呈した犬の系統的研究において、2014年1月から2015年12月までに国立台湾大学獣医教育病院(NTUVH)に入院したPCRでバベシア・ギブソニ感染と確認した犬に関し、臨床および検査データを集めた。

集めた60頭のうち、20頭(33.3%)は併発疾患があり、40頭(66.7%)はバベシア・ギブソニ感染のみだった。同時感染がある、あるいは同時感染がないバベシア・ギブソニに感染した犬において、貧血の重症度に有意差はなかった。最も一般的に観察された血液学的異常は、貧血(49/60、81.7%)、血小板減少(37/60、61.7%)だった。49頭のうち、24頭(49%)は重度から非常に重度の貧血(PCV<20%)だった。主な生化学検査の異常は、高グロブリン血症(28/53、52.8%)、高ビリルビン血症(10/28、35.7%)、肝酵素活性上昇(7/48、14.6%)だった。また、60頭の飼い犬のうち2頭、バベシア・ギブソニ陽性の野良犬33頭中5頭はSimpleProbeR assayを用いた自然アトバコン耐性株であると検出された。

この研究結果は、バベシア・ギブソニ感染の有用な臨床症状を提供し、台湾において現在存在する自然アトバコン耐性株の問題を提起する。(Sato訳)
■香港の犬のバベシアキブソニ(Asian genotype)に対するメトロニダゾール、クリンダマイシン、ドキシサイクリンの代替併用療法
An alternative combination therapy with metronidazole, clindamycin and doxycycline for Babesia gibsoni (Asian genotype) in dogs in Hong Kong
J Vet Med Sci. 2020 Aug 4.
doi: 10.1292/jvms.20-0209. Online ahead of print.
Angel Almendros , Richard Burchell , Janelle Wierenga

バベシア属は多くの哺乳類に病気を引き起こす、世界中に分布する血液寄生虫である。その種のバベシア・ギブソニ(Asian genotype)は、多くのアジアの国に普及し、地方病であるが、アジア以外の国で数が増えているとも報告されている。バベシア・ギブソニの治療において、標準的治療は一貫し、病原体の確実な排除をなしえないことも多い。

この研究は、アトバクオンとアジスロマイシンでPCR検査上の感染の排除に失敗した後、3つの抗生物質(メトロニダゾール、クリンダマイシン、ドキシサイクリン)の併用を評価した。この研究の目的は、3種の抗生物質の併用がバベシア・ギブソニの排除に対し最適な代替あるいは追加治療なのかどうかを判定することだった。

2012年12月から2015年7月までに治療した24頭の犬の医療記録を回顧的に分析した。バベシア・ギブソニの診断はPCR検査で確認し、また治療反応の評価にも使用した。

全ての犬は当初、アトバクオンとアジスロマイシンの標準療法で治療し、排除は25%の成功率だった。標準療法でPCR検査陽性だった犬は、その後、3種の抗生物質プロトコールで治療し、87%の成功率だった。

バベシア・ギブソニの治療に対し、代替および潜在的に有効なプロトコールの包含は、現行の治療オプションを増やし、病原体の排除に役立ち、オーナーに対しより手ごろなオプションを提供することができる。(Sato訳)
■バベシア・キャニスを実験的に感染させた犬の臨床生化学的反応
Clinico-biochemical responses of dogs to experimental infection with Babesia canis
Vet World. March 2014;7(3):113-118. 30 Refs
M Konto; A A Biu; M I Ahmed; A W Mbaya; J Luka

目的:バベシア・キャニスを実験的に感染させたナイジェリア犬の臨床および生化学的パラメーターに対する研究を実施した。

素材と方法:両性別で年齢6か月から1歳の合計10頭の犬を研究に使用した。各5頭ずつA(コントロール)とB(感染)に犬を振りわけた。Bの犬をバベシア・キャニス陽性の感染性接種原1mlで感染させ、Aの犬は非感染性コントロールとした。Bの犬の感染後の臨床および生物化学的反応を分析し、Aの犬と比較した。

結果:感染後2日目の感染犬で臨床症状が観察され、発熱(100%)、パルス増加(80%)、頻脈(60%)、食欲がない(100%);続いて3日目に食欲不振(49%)と元気消失(100%);4日目に口の眼の粘膜蒼白(100%)と憔悴(100%);5日目に筋肉振戦(20%)と呼吸促迫(20%);6日目に神経質(20%)、流涎(20%)、ヘモグロビン尿(80%);7日目に粘液様の眼ヤニ(40%);8日目に1頭が死亡した。

感染から1-14日目に見られたほかの臨床症状は、腹水、全身の水腫性腫脹と毛の逆立ちだった。生化学的変化として感染犬のALP値(58.50±1.4)はコントロール犬(51.67±1.6)と比べて有意に上昇していた(P<0.05)。また感染犬のALT値(15.70±1.8)はコントロール犬(8.25±2.0)と比較して有意に上昇していた(P<0.05)。逆に感染犬のクレアチニン平均値(78.10±1.2)はコントロール犬(91.73±1.3)よりも有意に低く(P<0.05)、感染犬のグルコース値(3.80±2.3)もコントロール犬(5.35±2.1)より有意に低かった(P<0.05)。

結論:結論としてこの疾患は、この研究エリアで慢性経過と同じように急性に進行し、化学療法後2週間以内で寄生虫血に対し、ジミナゼンアセチュレート0.3mg/kgの投与が効果的だった。(Sato訳)
■Babesia gibsoniに自然感染した犬に対するマラロンの効果
Efficacy of MalaroneR in Dogs Naturally Infected with Babesia gibsoni.
J Vet Med Sci. 2014 Jun 9. [Epub ahead of print]
Iguchi A, Shiranaga N, Matsuu A, Hikasa Y.

Babesia gibsoni感染に対するマラロン単独またはドキシサイクリンとの組み合わせの効果を8頭の犬において検討した。マラロンで治療した一頭の犬を除いて、全ての犬において、治療を開始してから原虫血症は減少し、貧血も改善した。しかし、マラロンで治療した4頭中3頭は再発し、マラロンとドキシサイクリンで治療した4頭のうち2頭において再発は阻害された。全ての再発した犬は、2回目の治療にもよく反応したが、1頭はもう一度再発し、3回目の治療には反応しなかった。マラロンはB. gibsoni感染の急性期においては有用であり、少なくとも2回目の治療までは効果が認められるようである。(Dr.Taku訳)
■Babesia gibsoniに対する2種類の抗バベシア療法の治療効果
The therapeutic efficacy of two antibabesial strategies against Babesia gibsoni.
Vet Parasitol. 2011 Dec 6. [Epub ahead of print]
Lin EC, Chueh LL, Lin CN, Hsieh LE, Su BL.

Babesia gibsoniの治療にはいくつかの併用療法が用いられている。しかし、抗バベシア薬を組み合わせて投与しても再発したり、薬剤耐性のB.gibsoniが存在することが問題である。クリンダマイシン、ヂミナゼン、イミドカルブの組み合わせ(CDI)とアトバコンとアジスロマイシンの組み合わせ(AA)によるB.gibsoniに対する治療効果を比較し、B. gibsoniの変異と薬剤の効果の関係を明らかにするために、B. gibsoniに自然感染し来院した30匹の犬を用いた。
17頭はAAで、13頭はCDIの組み合わせで治療した。犬が治療のために来院した際、および治療期間に血液学的なパラメーターを記録した。B.gibsoni 18s rRNA遺伝子を増幅することで寄生虫のDNAを検出し、cytochrome b (CYTb)遺伝子の塩基配列を調べる事で変異を解析した。
回復した全ての犬の治療期間は、AA群では23.3±7.8日であり、CDI群では41.7±12.4日であった。AA治療群の17頭中9頭で、CDI治療群13頭中11頭で完全に回復した。AA治療群の7頭およびCDI治療群2頭では、治療後に再発した。AA治療で再発した、またはAAで寛解しなかった犬の全てのサンプルにおいて、CYTb遺伝子のM121Iの変異が確認された。CDI治療群の犬は、回復率がより高く、B.gibsoniに対する治療期間の再発率がより少なかった。さらに、M121I変異とAA治療とは関連があった。CDIの組み合わせは、有望なB.gibsoniに対する治療法である。(Dr.Taku訳)
■犬バベシア症
Canine babesiosis.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2010;40(6):1141-56.
Peter J Irwin

バベシア症は貧血、血小板減少、多様性のある臨床症状、軽度から最急性虚脱および死亡に至る範囲の非特異的疾患を引き起こすため、世界的に犬の脅威であり続けている。臨床家は犬の旅行およびけんかの履歴を収集する重要性に注意すべきで、公表されている新しいピロプラズマ種を知っておくべきである。無症候性感染は、診断検査法を組み合わせて使用し、潜在的供血者の注意深いスクリーニングを必要とする。バベシア症の現行の治療戦略は、感染の臨床症状を多くの場合改善させるが、再発が完全になくなるということはめったになく、免疫無防備状態のときに再発するかもしれない。(Sato訳)
■バベシアに実験的に感染させた犬における全身炎症性反応:血液学的研究
Systemic inflammatory responses in dogs experimentally infected with Babesia canis; a haematological study.
Vet Parasitol. May 2009;162(1-2):7-15.
Th P M Schetters, J A G M Kleuskens, J van de Crommert, P W J De Leeuw, A-L Finizio, A Gorenflot

バベシアキャニス感染赤血球を少、中、多数感染させた犬の詳細な血液学的研究を、B. canis感染後早期の病原を解明するために実施した。結果は、感染で血漿中のC-反応性蛋白(CRP)濃度が、急性期反応を示す血液において寄生虫の検出前に増加することを示した。さらに反応は、発熱、フィブリノーゲン血症、血小板減少、白血球減少により特徴付けられた。血小板減少は凝固時間延長に関与した。また感染犬は生命を脅かすような低血圧を発症し、B. canis感染赤血球を多く投与して感染させた犬は、化学療法的に治療するべきである。低血圧は充填赤血球量(PCV)の減少に関与した。このPCVの低下は、赤血球および血漿中のクレアチニン濃度に影響し、血漿量増加を示唆する血漿クレアチニン濃度の低下に相関した。重要なことは、反応の動態ではないが反応の発現は、感染量に依存した。すなわち、異なる感染赤血球の量で得られる曲線は、いつかはシフトすると思われたが同様の形状だった。これは、感染があらかじめセットされた炎症反応の引き金となることを示す。(Sato訳)
■バベシア・ギブソニ:実験感染中およびアトバコン、アジスロマイシン併用療法後の検出
Babesia gibsoni: detection during experimental infections and after combined atovaquone and azithromycin therapy
Exp Parasitol. October 2007;117(2):115-23.
R Jefferies, U M Ryan, J Jardine, I D Robertson, P J Irwin

バベシア・ギブソニは世界的な原虫寄生生物で、効果的な治療方法およびこの分かりにくい新興感染による不顕性感染症例の信頼できる検出方法はまだない。アトバコンおよびアジスロマイシン薬剤療法の効果を調査、種々感染ステージ中のnested-PCR、IFAT、顕微鏡の検出限界を判定するため、インビボでバベシア・ギブソニの実験感染を確立した。アトバコンとアジスロマイシンは寄生虫血症の減数をもたらしたが、寄生虫を排除することはなく、薬剤耐性が1頭で出現した。PCR法は急性前、急性期において感染検出の最も有効であることがわかった、一方慢性感染に最も信頼できたのはIFATだった。顕微鏡は急性期感染の検出にのみ有効であることが示唆される。この研究でも初めて慢性感染中の組織サンプルにバベシア・ギブソニの検出を述べ、この寄生虫の組織内に隠れる可能性を示唆する。(Sato訳)
■イヌのバベシア・ギブソニ、バベシア・キャニスの臨床観察
Clinical observations on Babesia gibsoni and Babesia canis infections in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 1982 Mar 1;180(5):507-11.
Farwell GE, LeGrand EK, Cobb CC.

1979年4月から1980年2月の間に日本の沖縄嘉手納基地で、バベシア・ギブソニ感染のイヌ35症例とバベシア・キャニス感染のイヌ11症例を診断、治療した。血液スメアー中の病原体の出現と間接蛍光抗体検査で血清検査により診断した。血清所見は成熟犬の感染の発現によく関連したが、若いイヌ(1-3ヶ月零)では悪かった。それら2種類の赤血球内寄生虫は、容易にギムザ染色血液スメアーや間接蛍光抗体検査で区別可能だが、その臨床症候群は似ている。
ほとんどのイヌは食欲不振と沈うつを示し、再生性貧血であることがわかった。検査した37頭中31頭はクームス試験陽性で、それらほとんどは治療後クームス試験が陰性となり、臨床症状も消失する。特異的な治療で大部分はジミナゼンを使用した。イセチオン酸ペンタミジンも使用した。それら薬剤は疾患の臨床的進行を中止させたり、逆にするのに有効だったが、通常血中のバベシア・ギブソニを消失させるには無効で、よくぶり返した。両薬剤とも明らかにバベシア・キャニスに対してはより有効だった。毎年沖縄からアメリカに到着する数百頭のうちいくらかは、バベシア・ギブソニのキャリアーであると締めくくる。最近1つの寄生虫のみ北アメリカで発見された。(Sato訳)
■バベシア・キャニスを実験的に接種し、二プロピオン酸イミドカルブで治療し、または治療しないイヌの体液性免疫と再感染抵抗性
Humoral immunity and reinfection resistance in dogs experimentally inoculated with Babesia canis and either treated or untreated with imidocarb dipropionate.
Vet Parasitol 114[4]:253-65 2003 Jun 25
Brandao LP, Hagiwara MK, Myiashiro SI

バベシア・キャニス感染による慢性無症候性キャリアー状態は、その後の感染に対しより抵抗性を持つことができるといわれている。これは、病原体を取り除く二プロピオン酸イミドカルブの治療が、短期間の再感染により感受性を持つと示唆する。約4,5ヶ月のオスとメスイヌにバベシア・キャニスを接種した。それら半数に、感染後15と27日の時点で、二プロピオン酸イミドカルブ(7mg/kg)の治療を行い、他の半数は治療しなかった。
全ての犬を6ヶ月間臨床と検査所の方法(CBC、血小板数、間接免疫蛍光検査による血清検査)で検査した。無治療群の抗体は、接種後7日目に最初に検出され、期間中高レベル(1:2560)を維持した。この結果は治療群と有意に異なり(P<0.001)、抗体価は感染後34日目以降低下した。6ヵ月後、治療群のみ同種暴露感染で寄生血症、血小板減少、脾腫を示し、無治療群と有意差が見られた(P<0.05)。二プロピオン酸イミドカルブの無菌化治療は、感染除去に効果的だが、防御抗体の維持を抑制し、再感染により感受性を持つようにする。(Sato訳)
■実験的にバベシア・ギブソニに感染させ、クリンダマイシン治療、無治療犬のリンパ球サブセットと特異IgG抗体濃度
Lymphocyte subsets and specific IgG antibody levels in clindamycin-treated and untreated dogs experimentally infected with Babesia gibsoni.
J Vet Med Sci 65[5]:579-84 2003 May
Wulansari R, Wijaya A, Ano H, Horii Y, Makimura S

バベシア・ギブソニに感染したイヌで、クリンダマイシン治療に対するリンパ球亜集団とバベシア特異抗体の役割を明らかにするため、この研究を行った。ビーグル犬を2つのグループに振り分けた。それは無治療群(イヌ5頭)と、感染後7−21日の間にクリンダマイシン25mg/kg、PO、q12で投与したクリンダマイシン治療群(イヌ5頭)だった。感染急性期にクリンダマイシン治療で、貧血と他の臨床所見が改善した。寄生虫血濃度やバベシアIgG抗体濃度に、治療軍と無治療群の有意差は見られなかった。しかし、多くの寄生虫の変性を示す形態学的変化は観察された。CD4(+)数は特に治療後治療群で有意に増加した。
慢性期には、治療軍、無治療群のCD4(+)細胞は高い濃度を維持した。寄生虫血は低濃度を維持したが、治療犬で感染後49日目、無治療犬で42日目と63日目に再発した。急速な体液性抗体反応が治療犬で見られたが、再発後の無治療犬でより低い体液性抗体反応が観察された。治療犬の抗体濃度は、無治療犬のそれらよりも有意に高かった。それらの結果は、クリンダマイシンが急速に末梢血から寄生虫を除去しないかもしれないが、寄生虫にダメージを与え、バベシア感染に対する有効な体液性、細胞性免疫を刺激し、結果的に臨床状況を改善すると思われた。(Sato訳)
■イヌにおける急性Babesia canis 感染に関連する低血圧ショック症候群
Freeman MJ, Kirby BM, Panciera DL, Henik RA, Rosin E, Sullivan LJ.
J Am Vet Med Assoc 1994 Jan 1;204(1):94-6
Hypotensive shock syndrome associated with acute Babesia canis infection in a dog.

ドーベルマンピンシャーが、血液ドナーであるグレイハウンドからの鮮血輸血を受けた後、バベシア症に罹患した。少数の循環血液中Babesia canis 確認の数時間内に、明らかな溶血が欠如している発熱、虚脱、動脈低血圧に基づいて、低血圧ショック症候群が疑われた。イミドカルブジプロピオネートでの処置は、循環しているB canis と臨床症状の消失に効果的であったようにみえる。最近競技場からきた血液ドナーは、最初の検査では健康であり、何も異常はなかった。しかし、その血清B canis抗体濃度は1:5000以上であり、B canis は脾臓摘出と免疫抑制量でのコルチコステロイド処置の後に、血液塗抹上に識別された。この症例は、血液ドナーとして使用する傾向のある、レースをリタイアしたグレイハウンドの伝染病スクリーニングにおける潜在的な問題への注意を喚起している。(Dr.Yoshi訳)
■2頭のイヌにおけるバベシア症で起こりうる合併症としての小脳失調
Jacobson LS.
J S Afr Vet Assoc 1994 Sep;65(3):130-1
Cerebellar ataxia as a possible complication of babesiosis in two dogs.

6ヶ月齢のミニチュアドーベルマンピンシャーが食欲欠乏と小脳徴候で来院した。Babesia canis の虫体が毛細管血塗抹標本上に発見された。小脳徴候はジミナゼン・アセチュレートによる処置で速やかに改善した。7ヶ月齢のシベリアンハスキーが、合併症を伴わない典型的なイヌバベシア症の臨床徴候を示して9日後、小脳徴候、盲目と四肢麻痺を呈した。イヌはプレドニゾロンの処置に良好に反応した。急性と遅延性の両方の小脳徴候は、ヒトにおけるマラリアと関係している。これらのイヌの臨床徴候はヒトにおけるマラリアの報告と類似していた。小脳失調は、イヌバベシア症の起こりうる合併症であると考えられるべきである。(Dr.Yoshi訳)
■実験的感染ネコにおけるBabesia felisに対する5つの薬剤の効果選抜
Penzhorn BL, Lewis BD, Lopez-Rebollar LM, Swan GE.
J S Afr Vet Assoc 2000 Mar;71(1):53-7
Screening of five drugs for efficacy against Babesia felis in experimentally infected cats.

実験的Babesia felis 感染を行った家ネコに対する5つの薬剤の効果をテストした。リファンピシンとスルファジアジン−トリメトプリム混合の2つの薬剤は、抗寄生効果をもっていたが、プリマキンよりも劣っていた。他の3つの薬剤、buparvaquoneとエンロフロキサシンとdanofloxacinには、有意な抗バベシア効果はみられなかった。
■脾臓摘出イヌにおけるBabesia canis 感染
Camacho AT, Pallas E, Gestal JJ, Guitian FJ, Olmeda AS.
Bull Soc Pathol Exot 2002 Mar;95(1):17-9
Babesia canis infection in a splenectomized dog.

この報告は、3歳の脾臓を摘出したフォクステリアにおける、実験的でないバベシア症の致命的なケースを記している。バベシア16のクラスターまで及ぶ非常に激しい血液寄生と、顕著な血球貪食活性が最も関連のある所見であった。著しい白血球増加、血小板減少、再生性貧血が観察された。バベシア症の迅速な治療にもかかわらず、状態は急性腎不全へ進行し、徴候が現れてから48時間で動物は死亡した。(Dr.Yoshi訳)
■Babesia gibsoni 感染によって引き起こされた成熟赤血球に対する抗赤血球抗体の反応
Morita T, Saeki H, Imai S, Ishii T.
Vet Parasitol 1995 Jul;58(4):291-9
Reactivity of anti-erythrocyte antibody induced by Babesia gibsoni infection against aged erythrocytes.

Babesia gibsoni を人工的に感染させたイヌ血清で、抗赤血球抗体の結合活性への赤血球成熟処置の効果は、固定された細胞抗原を使用したELISA法によって試験された。2つの人工的な成熟処置により赤血球を成熟させたが、処置の1つは数日間37℃で媒体中に赤血球を貯蔵すること、もう一方はフェニルヒドラジンによる赤血球の酸化であった。処置をされた両方赤血球に対する、感染している血清中の抗赤血球抗体の反応は増加した。これらの結果から、そのような抗体がイヌバベシア症における貧血の原因の一つという役割を演じたことを示唆する。(Dr.Yoshi訳)

コメント:バベシア症の貧血には免疫学的な貧血が関係していることもあるようです。このような場合、免疫抑制剤の使用も考えなければならないのでしょう。
■Babesia canis 感染のイミドカルブ単独、またはジミナゼンとの組み合わせによる殺滅
Penzhorn BL et al; J S Afr Vet Assoc 1995 Sep;66(3):157-9; Sterilisation of Babesia canis infections by imidocarb alone or in combination with diminazene.

Babesia canis感染は、イミドカルブ7.5mg/kg 1回投与と、ジミナゼン3.5mg/kg 1回とそれに続くイミドカルブ6mg/kg 1回翌日投与と同様に明らかに殺滅された。これはこれらのイヌから脾臓摘出ドナーへの血液接種により確認された。感染の殺滅は特定の地域では推奨されず、より合理的な方法は、イヌにおける繰り返される感染の危険にさらし、感染免疫状態にさせることであろう。(Dr.Yoshi訳)

コメント:Babesia gibsoniにはどれほどの効果があるかわかりませんが、ジミナゼンとイミドカルブの併用もできるようです。
■Babesia canis の実験的感染に対するイミドカルブの予防的活性
Vercammen F, De Deken R, Maes L.
Vet Parasitol 1996 Jun;63(3-4):195-8
Prophylactic activity of imidocarb against experimental infection with Babesia canis.

ビーグル犬において、イミドカルブ6mg/kg 1回皮下注射により、Babesia canis のメロゾイト実験的感染に対する2週間の防御活性が得られた。予防的効果は毎日の血液寄生、直腸温、血液学的検査、特異的抗体を測定することにより評価した。(Dr.Yoshi訳)

コメント:私の勤務先(大阪府)でバベシア症の治療にイミドカルブを使用することがあるのですが、効果はジミナゼンに比べるとずいぶん劣るように感じます。Babesia canisには有効なのでしょうね。
■ドキシサイクリンを用いた実験的イヌバベシア症(Babesia canis)の予防的治療
Vercammen F et al; Vet Parasitol 1996 Nov 15;66(3-4):251-5; Prophylactic treatment of experimental canine babesiosis (Babesia canis) with doxycycline.

ドキシサイクリンはBabesia canisの高い病原性を示す系統を用いた実験的感染に対して、満足な予防をもたらした。その予防効果を評価するため、直腸温度、血液寄生、PCV、血清学をモニターした。ドキシサイクリン1日あたり5mg/kg では完全に臨床病変を防ぐことはなかったが、徴候は緩徐であり、完全な回復は1週間以内に得られた。1日あたり20mg/kg では臨床徴候はみられなかったが、無症候感染を除外することはできなかった。(Dr.Yoshi訳)