■犬の行動やコルチゾールレベルに対するカンナビジオール添加の有効性の評価
Assessing the effectiveness of cannabidiol additive supplementation on canine behavior and cortisol levels
Heliyon. 2024 May 15;10(10):e31345.
doi: 10.1016/j.heliyon.2024.e31345. eCollection 2024 May 30.
Giovanna Marliani , Lucrezia Vaccari , Damiano Cavallini , Carmen Silvia Montesano , Giovanni Buonaiuto , Pier Attilio Accorsi
獣医療において、カンナビスは疼痛の状況、炎症、発作の治療に使用されている。しかし、犬の行動に対するその効果についてはあまり知られていない。
この予備的研究の目的は、犬の行動療法においてカンナビジオール(CBD)の有効性を評価することで、この知識の狭間を扱うことだった。
行動障害と診断され、地方自治体のシェルターに保護されている20頭の犬を二重盲検に参加させた。10頭はCBDオイルを投与し、他の10頭はCBDの入っていないコントロールのオイルを投与した。投与前(T0)と後(T1)、全ての犬に異なる4つの刺激の存在下で、行動を評価するため気質テストを行った:見知らぬ人、新規の物体、子供に似せた人形、同種(他の犬)。各刺激は個別に提示し、その犬の行動をビデオで撮影し、解析した。また、放射免疫検定を通してコルチゾールを評価するため、毛のサンプルをshave-reshave techniqueを用いて採取した。
T0とT1両方で2群間の行動学的違いは見られなかった。T0とT1の比較で、両群の行動学的反応に有意差はなかった。しかし、CBDオイル投与に対する個々の反応は、被験者の中で変化していると思われた。CBDオイルを投与した群において、毛のコルチゾールレベルの有意な増加が観察された(T0=1.60(1.44-1.93)pg/mg、T1=4.81(2.57-6.01)pg/mg)。
それらの所見は、カンナビスを使用した時、個別的投与の重要性を強調し、動物の行動療法におけるCBDオイルの使用に対する今後の研究を奨励する。(Sato訳)
■犬の行動障害の治療に対するガバペンチンの効果:回顧的評価
Effects of Gabapentin on the Treatment of Behavioral Disorders in Dogs: A Retrospective Evaluation
Animals (Basel). 2024 May 14;14(10):1462.
doi: 10.3390/ani14101462.
Taylor Kirby-Madden , Caitlin T Waring , Meghan Herron
行動障害の犬の治療におけるガバペンチンの使用はあまり述べられていない。
ガバペンチンの行動学的効果を特徴づけるため、この研究は獣医行動にフォーカスした診療所で5年間、ガバペンチンを処方した犬の飼い主50人を調査した。
ほとんどの飼い主(72%)は、犬の行動改善においてガバペンチンは中程度あるいは非常に効果的だったと報告した。大多数の飼い主は、少なくとも1つの副作用を報告し(70%)、鎮静が最も一般的だった。鎮静は、用量が30mg/kg以上の時に見られる確率が高かった。特定の用量範囲(mg/kg)は、副作用や有効性のいずれの他の報告と関連しなかった。
対立関連の攻撃性と診断された犬は、他の行動学的診断を受けた犬と比べて、飼い主により行動の改善で有効だったと報告される確率が高かった(p=0.04)が、高喚起による二次的な攻撃性と診断された犬は、飼い主によりガバペンチンが有効だと報告されることは少なかった(p=0.01)。
全体的に鎮静を除いて、影響の報告は広く異なり、特定のmg/kg用量範囲に関連しなかった。
結果は、他のものより有害及び/あるいは治療的効果に感受性がある、あるいは抵抗性があるかもしれない犬もいて、ベストフィットを見つける前に複数の用量トライアルが必要かもしれない。(Sato訳)
■車の旅行の反復暴露中の犬においてストレスの測定値に対しカンナビジオール(CBD)の毎日の投与はポジティブな効果を示す
Daily dosing of cannabidiol (CBD) demonstrates a positive effect on measures of stress in dogs during repeated exposure to car travel
J Anim Sci. 2024 Jan 20:skad414.
doi: 10.1093/jas/skad414. Online ahead of print.
Hannah E Flint , Alysia B G Hunt , Darren W Logan , Tammie King
犬はストレスを誘発するかもしれないイベントに定期的に晒され、結果として犬の福祉に影響する可能性があるネガティブな精神状態となる。人々と生活する多くの犬のあるイベントとして車の旅行があり、多くの犬は対応する生理反応と共に、ストレスや不安を示す行動をとる。行動修正、薬物療法、サプリメントなどの管理や治療オプションの範囲があり、結果は変化することが多い。
この研究の目的は、テトラヒドロカンナビノール(THC)が入っていないカンナビジオール(CBD)蒸留物の6か月にわたる複数投与が、犬のストレスの測定値にポジティブに影響する可能性があるのかどうかを評価することだった。
盲検、パラレルデザイン研究において、犬を一連の短距離の車の旅に連れ出し(テスト)、ある範囲の生理学的及び行動学的測定値をテスト前、テスト中、テスト後に収集した。
この犬の集団において、テスト前から繰り返しの車の旅の間に持続して観察される、いくつかのストレス関連測定値(血清コルチゾール、心拍数、心拍変動性、クンクン鳴く、唇をなめる、あくび、質的行動学的評点)における有意な変化(p<0.05)で示されるように車の旅はストレスを誘発した。
CBD投与の緩和効果は測定値で変化し、最低1つのタイムポイントでプラセボ群とくらべ、犬のストレスのコルチゾール、クンクン鳴く、唇をなめる、質的行動学的評点は有意な減少を示した(p<0.05)。
犬の感情的福祉に対しCBDの複雑な効果を完全に理解するため、犬の集団とストレッサーの範囲を調査する追加研究が必要である。(Sato訳)
■1頭のフレンチブルドッグのグルテンフリー食に反応したハエ取り症候群
Fly-catching syndrome responsive to a gluten-free diet in a French Bulldog
J Am Vet Med Assoc. 2023 Dec 15:1-3.
doi: 10.2460/javma.23.09.0515. Online ahead of print.
Greta Galli , Stefania Uccheddu , Marika Menchetti
目的:ハエ取り症候群(FCS)は珍しい状況で、一般に罹患犬は明らかな理由もなく空中を咬んだり、舐めたり、ジャンプする特徴を示す。獣医文献の中で、強迫性障害、焦点性てんかん発作、基礎の消化管疾患が引き金となる原因の確率が高いと考えられた。最近、グルテン感受性のジスキネジアが犬で述べられているが、FCSとの関係は報告されていない。
動物:6歳オスのフレンチブルドッグ
臨床症状、進行、処置:その犬は、2か月にわたり、意識障害や自律神経症状がなく、突然、空中の何かをキャッチしようとするジャンプを特徴とする症状を呈した。その行動は飼い主により中断でき、数分続いた。その犬は慢性の消化管症状を患っていた。神経学的検査は、相談中のFCSを示唆される行動を除き、正常限界内だった。抗グリアジン免疫グロブリンG(AG IgG)および抗トランスグルタミナーゼ-2免疫グロブリンA(ATG-2 IgA)抗体に対する血清学的検査は参照範囲以上だった(それぞれ3.092と0.929;正常範囲<0.6)。
治療と結果:排他的グルテンフリー食を開始した。その行動の完全解消は、フォローアップの3か月中に報告された。
臨床関連:著者の知るところでは、これはグルテンフリー食反応性のAG IgGおよびATG-2 IgA抗体陽性に関係するFCSの最初の報告である。そのエピソードの典型的な症状と食餌に対する反応は、FCSは消化器障害に関係するかもしれないという仮説を支持する。しかし、この仮説を確認するための今後の研究が必要である。(Sato訳)
■犬の騒音恐怖症の治療と予防-臨床科に対する現行のエビデンスのレビュー
Therapy and Prevention of Noise Fears in Dogs-A Review of the Current Evidence for Practitioners
Animals (Basel). 2023 Nov 27;13(23):3664.
doi: 10.3390/ani13233664.
Stefanie Riemer
Free PMC article
犬の騒音恐怖症は、最も一般的な問題行動である。
この原稿は、犬の騒音の恐怖を軽減するため、種々のアプローチの概要を提供し、エビデンスを支持する。
騒音恐怖症の治療において、トラウマあるいは避け難い騒音の発生中の恐怖の悪化を予防する短期解決法と長期トレーニングを考慮する必要がある。環境管理、騒音暴露中の刺激(フード/遊び)の提供、指示された時は抗不安薬が、騒音発生中の犬のwelfareを守ることができる。ほとんどの“代替的”な製品(機能性食品、ハーブ療法、フェロモン、ホメオパシー、バッチフラワー、エッセンシャルオイルなど)は、騒音恐怖症に対する単剤療法として十分となる確率は低いが、いくつかの抗不安薬物両方の効果に対しては良好なエビデンスがある。
より長期に、現実の騒音に対する反対条件づけ、リラックスするトレーニング、騒音の録音を用いた脱感作/反対条件づけは、犬の騒音に対する恐怖を改善することを示している。予防的トレーニングは、子犬や成犬で騒音恐怖症発症の予防にかなり効果的だと思われる。(Sato訳)
■犬の問題行動の治療におけるミルタザピンの使用:32症例のレビュー
Use of mirtazapine in the treatment of canine behaviour problems: A review of 32 cases
Vet Rec. 2023 Dec 11:e3670.
doi: 10.1002/vetr.3670. Online ahead of print.
Juan Argüelles , Blanca Duque , Marina Miralles , Jonathan Bowen , Jaume Fatjo
背景:専門行動医療サービスで見られる犬の問題行動は、その個別の環境の不適応を起こしている慢性不安障害に関与することが多い。一般的なストレッサーは、他人の存在(他の犬や人々)、騒音、留守番が含まれる。通常、それらの問題行動の治療は、行動修正、環境修正、生物学的治療の組み合わせが含まれる。後者の中で、クロミプラミンあるいはフルオキセチンのような抗不安薬が有効と証明されている。
方法:ここでは、人医で広く使用されているが、犬の問題行動の治療に過去の報告がない(しかし、猫の食欲刺激剤として販売されている)抗不安薬ミルタザピンにより治療した32症例の回顧的な分析シリーズを提示する。症例は、不安関連の問題行動の範疇の犬を含めた。
結果:問題行動を呈する犬の81%が改善を示し、推定的な副作用は軽度で、許容可能だった。
限界:他の治療方法とこの結果の分離および、他の薬剤の効果との比較を行う今後の研究が必要である。
結論:ミルタザピンは、犬の不安関連の問題行動の治療に対し、適した安全なオプションであると思われる。(Sato訳)
■前向き臨床試験において攻撃的な不安な犬のストレススコアを受診前のガバペンチン、メラトニン、アセプロマジン併用投与は低下させた
Gabapentin, melatonin, and acepromazine combination prior to hospital visits decreased stress scores in aggressive and anxious dogs in a prospective clinical trial
J Am Vet Med Assoc. 2023 Jul 26;1-6.
doi: 10.2460/javma.23.02.0067. Online ahead of print.
Renata S Costa, Teela Jones , Sandra Robbins , Amy Stein , Stephanie Borns-Weil
目的:ガバペンチン、メラトニン、口-経粘膜アセプロマジンのPOによる、飼い主が投与する受診前プロトコール(GMAプロトコール)の鎮静および行動への効果を評価する
動物:2021年2月から8月の間に標準的検査を行う1-12歳の飼い犬45頭
方法:この臨床試験では、病院受診中に不安、恐怖、および/あるいは攻撃性の履歴がある犬を評価し、GMAプロトコールの投与前(基礎)、投与後の動画撮影を行った。2回目の受診に対し、前日の夜にガバペンチン(20-25mg/kg)PO投与し、当日の90-120分前にPOガバペンチン(20-25mg/kg)、POメラトニン(3-5mg/頭)、口-経粘膜アセプロマジン(0.05mg/kg)を投与してもらった。検査を実施し、行動ストレスおよび鎮静レベルを半定量評点スケールで評価した。無作為にビデオを分析し、ペアt検定で基礎とGMAのストレスおよび鎮静スコアを比較した。ピアソン相関係数でスコアに対する年齢の影響を評価した。
結果:基礎値と比較した時、GMAプロトコール後のストレススコアは有意に低く、鎮静スコアは有意に高かった(それぞれ27.11vs21.84と0.68vs1.39)。加齢とGMA後のより低いストレススコア、GMA後のより高い鎮静スコアとの有意な関連が観察された。
臨床的関連:この犬の集団において受診前のGMAプロトコールの投与は、受診中のストレス、恐怖、恐怖からの攻撃性の症状を減らし、鎮静をもたらせた。このプロトコールは、治療の質の向上、動物関連の傷害を減らすため、獣医師に対して補助的ツールとなり得る。(Sato訳)
■病院を訪れる犬にガバペンチンの1回経口投与の効果:二重盲検プラセボ-対照試験
Effects of a single dose of orally administered gabapentin in dogs during a veterinary visit: a double-blinded, placebo-controlled study
J Am Vet Med Assoc. 2022 Mar 30;1-10.
doi: 10.2460/javma.21.03.0167. Online ahead of print.
Ori O Stollar , George E Moore , Abhijit Mukhopadhyay , Wilson Gwin , Niwako Ogata
目的:個人的に飼育している犬で病院を訪れる際のストレス軽減において、ガバペンチンの1回の経口投与の効果を評価する
動物:22頭の飼い犬(1.5-8.5歳)を研究に登録した
方法:病院を訪れる準備を開始する2時間前に、各犬にガバペンチン50mg/kgあるいはプラセボを投与した。犬の行動学的反応は5分間の標準化した身体検査中、身体検査の前後に記録したビデオクリップからコード化した。動物看護士は、各受診時の各グリーティング行動を別々に評価した。獣医師が訪れた間の生理学的変数(すなわち、眼の表面の温度、唾液中コルチゾール濃度)も、身体検査前後で比較した。オーナーは、有害事象の発生率を判定するため、受診の24時間後に聞き取り調査した。
結果:グリーティングテストスコア、眼の表面の温度、コルチゾール濃度に、ガバペンチンおよびプラセボ投与群の大幅な違いはなかった。身体検査中の唇をなめる頻度は、プラセボ群に比べ、ガバペンチン群で有意に低かった(P=0.001)。身体検査前後の唇をなめる頻度もガバペンチン群で有意に低かった(P=0.004)。ガバペンチン投与後のオーナーから深刻な有害事象は報告されなかった。
臨床関連:ガバペンチン50mg/kgの投与は、健康犬で深刻な副作用もなく良好に許容したことを結果は示した。動物病院受診に対するストレスを証明された犬の追加研究が勧められる。(Sato訳)
■1頭の犬のトラゾドン療法による二次的な肝毒性の疑い
Suspected hepatotoxicity secondary to trazodone therapy in a dog
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Dec 30.
doi: 10.1111/vec.13028. Online ahead of print.
Alexandria Arnold , Ashley Davis , Tina Wismer , Justine A Lee
目的:トラゾドンの投与により二次的な肝毒性を疑われた1症例を述べる
症例概要:6歳の不妊済み雑種犬の6週間にわたる進行性の肝酵素活性上昇に対して評価した。当初その犬はブドウ中毒に対して来院し、そのため連続した血液検査のモニタリングを実施していた。その時に、トラゾドンを入院中の重度分離不安のために開始した(週5日連続。6週間継続)。肝酵素活性の持続的上昇のため、腹部超音波検査、レプトスピラ力価、胆汁酸、肝臓バイオプシーを含む広範な検査を実施した。病理組織学的所見は急性肝毒性に一致した。他の毒物と筋節の薬剤投与がなく、トラゾドンによる二次的な薬物誘発性肝障害と推定した。トラゾドン療法中止後、肝障害は完全に解消し、その犬は完全に回復した。
提供された新規あるいは独特な情報:ヒトでトラゾドンの投与による二次的な急性肝毒性が報告されているが、これはトラゾドンによる二次的な肝毒性を疑い最初の報告症例である。獣医師はトラゾドン療法による二次的な副作用の可能性がまれに起こるかもしれないと知っておくべきである。適切な臨床病理モニタリングを、長期トラゾドン療法の犬に行うべきである。(Sato訳)
■日本の不安障害の素因がある犬と関連因子
Dogs predisposed to anxiety disorders and related factors in Japan
Appl Anim Behav Sci. November 2017;196(0):69-75. 19 Refs
Takuma Kurachi , Mami Irimajiri, Yuko Mizuta, Toshiyuki Satoh
犬の問題行動は、ヒトと動物の絆を壊し、飼育放棄につながるため深刻となる可能性がある。
この研究の目的は、どれくらいの飼育者は犬が示す不安関連行動をかかえているのか、どれくらいの飼育者が犬の不安行動により困っているのか、問題行動を専門とする獣医師についてどれくらいの飼育者が知っているのかを調査することと、不安障害の発症に影響する因子を知ることである。
著者らは日本の北から南の3つの大都市において、ペットショップでアンケート調査を行い、262頭のデータを入手した。
この研究で、半数以上の飼育者が、彼らの犬が不安に関連する行動を示すと考えており、20%の飼育者は、そのような行動で困っていた。それらの結果は、全国の犬の飼育者が犬の不安行動により困っていることを示唆する。著者らは犬が不安行動を示すシチュエーションに対しペアとなる反応の単回帰分析を用いオッズ比を算出し、シチュエーション間で有意な関係を見つけた。多重比較法も犬が不安行動を示すシチュエーションと不安行動に影響する因子に有意な関係を示した。
この研究は、著者の知るところでは初めて日本において飼育者は犬の不安関連行動に困っていることと、不安関連行動に影響する因子に注目したものである。著者らはこの研究が犬の問題行動と不安障害で困っている飼育者を教育する最初のステップとなることを期待する。(Sato訳)
■獣医診療におけるクラシックミュージックの役割:クラシックミュージックを聞かせることは入院犬のストレスを軽減するか?
A role for classical music in veterinary practice: does exposure to classical music reduce stress in hospitalised dogs?
Aust Vet J. 2020 Jan 14. doi: 10.1111/avj.12905. [Epub ahead of print]
McDonald CI, Zaki S.
臨床シナリオ:クラシックミュージックは人医における患者のストレスを軽減、結果の改善能力について広く研究され、一般に認められている。また、動物界の中で多くの飼育下の野生動物の気質に影響することが示されている。いくつかの研究では、クラシックミュージックは犬にも効果がある可能性があり、よく知らない、ストレスを感じる環境におかれた患犬の結果や犬の福祉を改善する単純で費用対効果の良い方法を提供する可能性があると仮説を立てている。この慎重な解析的評価に基づく評価は、入院犬のストレス軽減を目的としたクラシックミュージックの使用で得られる現在のエビデンスを調べる。
臨床的要点:6つの実験的研究に基づき、処置を行う入院犬において、クラシックミュージックを聞かせることはストレスを軽減すると示す弱いエビデンスだけが存在する。しかし、クラシックミュージックは心拍数変動、発声のレベル、休んで過ごす時間のような犬のストレス反応に関係している特定の行動や生理学的パラメーターに有意に影響する能力を持つことが示された。(Sato訳)
■訓練した捜索犬による癌の嗅覚感知:文献の系統的レビュー
Olfactory detection of cancer by trained sniffer dogs: A systematic review of the literature
J Vet Behav. May-Jun 2017;19(0):105–117. 110 Refs
Federica Pirrone , Mariangela Albertini
効果的なスクリーニング法を用いた癌の早期診断は、治療の成功に非常に重要である。近年、診断バイオマーカーとして揮発性有機化合物の形で放射される臭気の使用に多くの注目が集まっている。種々の臭気サンプル(呼気、尿、癌組織)を使用した異なる癌を感知するため、犬の特別な訓練に対する研究で有望な結果を示している。
この系統的レビューは、癌の原発部位に従いそれらを分類する癌を感知するため、犬の嗅覚をテストする科学的報告にハイライトをあてる。
エビデンスのいくつかの系統は、癌リサーチと診断において犬は重要な役割を演じ、結果的に確実な癌に対する死亡率の低下に貢献するものとなっていることが示唆される。このリサーチの分野が受けなければならない将来の方向性は、異なる研究にわたって見つかったいくつかの方法論的の弱点やパフォーマンスの特定の不均質を克服する努力を含む。待ち受けているチャレンジに対する適切な反応を見つけることは、犬はどのような化学物質及びその量に反応するのかに関する明らかな発表も必要とする。最後にそれらの実行に関与する犬の福祉は考慮すべきである。(Sato訳)
■譲渡されたシェルターの子猫の行動に対する早期性腺摘出の影響
Effect of early-age gonadectomy on behavior in adopted shelter kittens?The sequel
J Vet Behav. Jul-Aug 2018;26(0):43-47. 22 Refs
DOI: 10.1016/j.jveb.2018.04.001
Christel P H Moons , Annelies Valcke, Katrien Verschueren, Nathalie Porters, Ingeborgh Polis, Hilde de Rooster
獣医臨床医は、子猫の思春期前の性腺摘出中の安全と、健康および行動面に対するこの手技の潜在的影響について考えることが多い。
無作為化処置(シェルターの8-12週齢の猫の思春期前の性腺摘出)とコントロール群(シェルターの6-8ヶ月齢の猫の性腺摘出)の前向き研究であるストレイキャットプロジェクトのような過去の研究では、譲渡されたシェルター猫に発現する潜在的な望まれない、あるいは望まれない行動の発生に違いはなかったと結論付けられた。
この研究の目的は、ストレイキャットプロジェクトの骨組み内でデータ収集を拡張することだった。
行動データは譲渡から5-7年の間に、オンライン調査でオーナーから収集した。162頭の我々のデータ(110頭は思春期前、52頭は従来の年齢で性腺摘出)は、潜在的に望まれない、あるいは望まれに行動の総数/猫に性腺摘出時の年齢の影響はなく、猫が表現することが一般に分かっている個々の行動の発生、オーナーにとって問題となる確率が高い行動の発生にも影響はなかった。
思春期前の性腺摘出が、従来の年齢の性腺摘出よりも潜在的に望まれない、あるいは望まれない行動の異なる発生を誘発するという指標はない。その結果、シェルターの猫の思春期前の性腺摘出の実施に対する行動学の異論はない。(Sato訳)
■犬の騒音に関する急性不安および恐怖に対するデキサメデトミジン口腔粘膜ジェル-無作為化二重盲検プラセボ対照臨床研究
Dexmedetomidine oromucosal gel for noise-associated acute anxiety and fear in dogs-a randomised, double-blind, placebo-controlled clinical study.
Vet Rec. April 2017;180(14):356.
M Korpivaara , K Laapas , M Huhtinen , B Schoning , K Overall
この無作為化二重盲検プラセボ対照臨床フィールド研究の目的は、犬の騒音に関係する急性不安および恐怖の軽減において、サブ鎮静用量でのデキサメデトミジン口腔粘膜ジェルの効果を評価することだった。
大晦日の日、花火に関して急性不安および恐怖の病歴を持つ犬182頭に必要ならば5回まで処置を行った:89頭はデキサメデトミジンを投与し、93頭はプラセボを投与した。主な効果の変数に対し、オーナーが総体的治療効果、不安や恐怖の症状や程度を評価した。
総体的治療効果は統計学的に有意だった(P<0.0001)。デキサメデトミジンを投与した犬(64/89、72%)はプラセボを投与した犬(34/93、37%)よりも多い比率で、優良あるいは良好な治療効果だと報告した。また、デキサメデトミジンを投与した犬は、花火の騒音にもかかわらず恐怖や不安の症状が有意に少ないことが示された(P<0.0314)。局所耐性あるいは臨床安全性の懸念は研究中に起こらなかった。
この研究は、サブ鎮静量でデキサメデトミジン口腔粘膜投与は、犬の騒音に関する急性不安や恐怖を軽減すると証明した。(Sato訳)
■輸送および検査に関連する不安の症状を減らすため来院前に猫に塩酸トラゾドンを1回投与した時の効果
Efficacy of a single dose of trazodone hydrochloride given to cats prior to veterinary visits to reduce signs of transport- and examination-related anxiety.
J Am Vet Med Assoc. 2016 Jul 15;249(2):202-7. doi: 10.2460/javma.249.2.202.
Stevens BJ, Frantz EM, Orlando JM, Griffith E, Harden LB, Gruen ME, Sherman BL.
目的:動物病院まで輸送中の猫の不安の低減、および検査中の取り扱い易さに対するトラゾドン1回投与の効果を評価する
計画:二重盲検プラセボ対照無作為交差試験
動物:過去に病院に輸送中あるいは検査中に不安の見られた10頭の健康な飼育猫(2-12歳)
方法:各猫を最初に塩酸トラゾドン(50mg)あるいはプラセボのPOに無作為に振り分けた。振り分けた処置を行い、各猫をキャリアーに入れ、計画した検査を受ける病院に車で輸送した。オーナーは輸送と検査の前、途中、その後の猫の不安症状にスコアを付けた。獣医師も検査中に不安の症状を強化した。ウォッシュアウト期間1-3週後、各猫に逆の処置を行い、そのプロトコールを繰り返した。
結果:プラセボと比較し、トラゾドンにより輸送中の猫の不安症状は有意に改善した。検査中の取り扱いやすさの獣医およびオーナーのスコアもトラゾドンで改善した。心拍数あるいは他の生理学的変数において処置間で有意差は確認されなかった。トラゾドン投与に関係する最も多い有害事象は、眠気症状だった。
結論と臨床関連:来院する前の猫に対し、トラゾドンの1回経口投与は、プラセボよりも輸送および検査に関係する不安の症状をより少なくし、ほとんどの猫でトラゾドンの許容性は良好だった。この方法によるトラゾドンの使用は、動物病院来院を促進させ、結果的に猫の幸福度を高めるかもしれない。(Sato訳)
■犬の不安障害の治療における補助剤としてトラゾドンの使用
Use of trazodone as an adjunctive agent in the treatment of canine anxiety disorders: 56 cases (1995-2007).
J Am Vet Med Assoc. 2008 Dec 15;233(12):1902-7. doi: 10.2460/javma.233.12.1902.
Gruen ME, Sherman BL.
目的:不安障害の補助治療として塩酸トラゾドンの効果と、他の薬剤に未反応の犬における治療プロトコール、用量範囲、併用薬剤使用、有害事象、治療反応を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:紹介獣医行動クリニックで治療した不安障害の犬56頭
方法:トラゾドンで補助的に治療した不安障害の犬の医療記録を、シグナルメント、主要および二次的行動診断、身体検査結果、血液検査データ(CBCと血清生化学パネル)、薬理学的管理、結果に関して回顧的に評価した。
結果:総体的に、他の行動薬剤と併用補助剤として使用したトラゾドンは、広い用量範囲で許容性がよく、1日1回、あるいは必要に応じて投与した時は行動的落ち着きが増した。
結論と臨床関連:用量範囲、効果、安全性の追加対照研究が必要だが、トラゾドンは渋滞の治療に反応がない犬に使用する追加の治療オプションを提供する。(Sato訳)
■不安と衝撃性:若い犬の早発白髪に関係する因子
Anxiety and impulsivity: Factors associated with premature graying in young dogs
Appl Anim Behav Sci. December 2016;185(0):78?85. 48 Refs
Camille King , Thomas J Smith, Temple Grandin, Peter Borchelt
この研究は不安、衝撃性と若い犬のマズルの早発白髪との関連を研究した。年齢1-4歳の400頭の犬のサンプルをドッグパーク、ショー、動物病院、その他の会場から入手した。各犬の写真を撮り、マズルの白髪の程度を「白髪なし」から「完全白髪」の範囲のオリジナルスケールで段階分けした。白や蒼白の毛色の犬は白髪の程度の判定が不可能なので除外した。オーナーには不安と衝撃性や他の行動および特徴の構成を評価するアンケートに答えてもらった。回答の偏りを防ぐため、研究の目的を犬のライフスタイルに関するものと説明した。オーナーが調査の目的を推測しないように調査に注意をそらす項目を加えた。
不安を示す調査項目の例は:一人になった時の破壊;動物病院の検査あるいは初めての場所での脱毛;人の集団への反応で萎縮/すくむなどだった。
衝撃性を示す調査項目の例は:人にジャンプする、落ち着かない、集中力がない、運動後の活動更新などだった。
若い犬の我々の集団において、潜在変数回帰でマズルの白髪の拡がりは有意に、そしてポジティブに不安(P=0.005)と衝撃性(P<0.001)を予測するものだと示した。犬のサイズ、避妊/去勢状態、医療問題はマズルの白髪の広がりを予測しなかった。
見知らぬ動物や人々、騒音に対する恐怖反応は白髪が増えることと関係した。順序回帰解析は、マズルの白髪は有意に騒音(P=0.001)、見知らぬ動物(P=0.031)、見知らぬ人々(P<0.001)への恐怖を予測することを示した。
4歳までの犬において、若い犬の早発白髪は不安、恐怖あるいは衝撃性問題の可能性のある指標かもしれない。(Sato訳)
■行動障害の犬のストレスや神経内分泌パラメーターに対する市販の機能性ダイエットの効果
Effects in dogs with behavioural disorders of a commercial nutraceutical diet on stress and neuroendocrine parameters.
Language: English
Vet Rec. January 2017;180(1):18.
S Sechi , A Di Cerbo , S Canello , G Guidetti , F Chiavolelli , F Fiore , R Cocco
犬の幸福は人のライフスタイルの変化、食習慣、恐怖、活動亢進、不安を含む行動障害を誘発するストレッサーの増加の後に起こるネガティブな感情的気分、悪い福祉により影響を受ける可能性がある。
この無作為比較臨床評価に、不安や慢性ストレスに関する行動障害のある異なる犬種の69頭の犬(オス38頭、メス31頭)を組み入れた。
45日間、コントロール食あるいは機能性ダイエット(ND群)を与えた。行動障害に関連する神経内分泌(セロトニン、ドパミン、β-エンドルフィン、ノルアドレナリン、コルチゾール)とストレス(derivatives of reactive oxygen metabolites (dROMs)と抗酸化力値(biological antioxidant potential (BAP)))パラメーターを研究期間の開始時と終了時に評価した。
結果はND群のセロトニン、ドパミン、β-エンドルフィン血漿濃度の有意な上昇(それぞれP<0.05 、P<0.05、P<0.01)およびノルアドレナリン、コルチゾール血漿濃度の有意な低下(P<0.05)を示した。ND群でdROMsは有意に低下したが、BAPに影響はなかった。
この研究は特別食が神経内分泌パラメーターやdROMsに有意に良い影響を与えることを最初に証明した。それらの結果は、行動障害の治療において食餌や機能性食品の使用に関する重要な展望を持たせるものである。(Sato訳)
■室内飼いの家猫の大きいグループの行動に対するスペースの影響
The effect of space on behaviour in large groups of domestic cats kept indoors
Appl Anim Behav Sci. September 2016;182(0):23?29. 37 Refs
Jenny M Loberg , Frida Lundmark
イエネコ(Felis silvestris catus)は孤独に生活するリビアヤマネコ(Felis silvestris lybica)を源に発する。しかし、家畜化を通し、例えばある国の猫シェルターのように、イエネコは同種および猫の住んでいるグループに向けてより社会的になっている。スウェーデンにおいて、動物福祉の法律は、同じ部屋において15匹の成猫までの飼育が許される。しかし、小さいエリアで多数の猫の飼育は猫と社会的ストレスの間の葛藤のレベルを上げるかもしれない。
この研究において、猫の大きなグループにおける社会的および空間的行動と一緒に、体の構え方に関するストレス、異なる面積のフロア(1m2、2m2、4m2/猫)で安定した15頭のグループを飼育し、その中でいかなる変化があるかどうかを研究した。この研究の猫は2つのシェルターからと1つの研究施設からのグループとして収集した。異なるシェルターからの猫とグループは決して混ぜなかった。
最も大きなフロアにおいて、より一人遊びを行い(P=0.0016)、異なる供給源の間をより移動した(P=0.03)。
結果を基に、結論としてグループで飼われている猫に対し、エリアの増加はより遊びと一般的な活動を促進する。遊びは猫に対し、ポジティブな福祉の指標となり得る。(Sato訳)
■犬の嫌悪訓練法の効果-レビュー
The effects of using aversive training methods in dogs-A review
J Vet Behav. May-Jun 2017;19(0):50?60. 35 Refs
Gal Ziv
この研究の目的は、犬を訓練するときの種々の方法を使用した効果に関する一連の研究(N=17)を再調査することだった。再調査した研究は、犬の生理、福祉、ヒトや他の犬に対する行動に対し、訓練方法(例えば、正の強化、正の罰、逃避/忌避を基にした方法、その他)による違いを調べた。再調査した研究は調査、観察研究、介入研究を含めた。
結果は、嫌悪訓練法(例えば正の罰と負の強化)の使用は、犬の生理的および精神的健康を危うくする可能性があると示す。また、正の罰は効果的でありえるが、正の強化を基にした訓練よりも効果的というエビデンスはない。実際、その反対は本当だというエビデンスがいくつかある。
少数の方法論的な関心事は再調査した研究から上がる。その中身は、少数サンプルサイズ、効果量に対するデータがない、観察研究において行動をコードするときのバイアスの可能性、嫌悪訓練法が原因の身体的ダメージの症例報告の発表の必要性である。
結論として、犬の訓練やハンドリングは正の強化法を信頼するべきで、最大限、正の罰や負の強化の使用は避けるべきである。(Sato訳)
■同居動物がいなくなったことに対する動物の行動的反応のオーナーの認識
Owners' Perceptions of Their Animal's Behavioural Response to the Loss of an Animal Companion.
Language: English
Animals (Basel). November 2016;6(11):.
Jessica K Walker , Natalie K Waran , Clive J C Phillips
同居動物がいなくなったことは、オーナーに悲しみの経験と関係すると認識されているが、同居動物がどのようにそのようなロスに影響を受けるかは不明である。
著者らの目的は、オーナーの報告を通し、同居動物のロスに対するコンパニオンアニマルの行動的反応を調査することだった。
ニュージーランド内の動物病院の選抜を通し、オーストラリアとニュージーランドにわたるRoyal Society for the Prevention of Cruelty to Animals (RSPCA)の出版物に広告としてアンケートを配布した。
犬159頭、猫152頭に関する合計279の有効な回答があった。犬と猫両方で報告された2つの最も多かった行動変化の分類は愛情深い行動(犬の74%、猫の78%)とテリトリーの行動(犬の60%、猫の63%)だった。犬と猫両方とも、オーナーの注意をより要求するおよび/あるいは親和行動を示す、亡くなった動物の好んだ場所を探して過ごすと報告があった。
犬は食餌量が減り(35%)、食べるスピードが遅くなり(31%)、寝て過ごす時間が増えた(34%)と報告があった。
猫は同居動物が亡くなった後、鳴く頻度が増え(43%)、声が大きくなった(32%)と報告があった。犬と猫の報告された行動変化の持続期間中央値は6か月以下だった。
同居動物のロスに対して、残された動物の行動は変化したというコンセンサスがあった。それらの行動変化はロスが残された動物に影響を与えると示唆する。(Sato訳)
■9か月のラブラドールレトリバーに見られた5-ヒドロキシトリプトファンサプリメントによるセロトニン症候群
Serotonin Syndrome from 5-Hydroxytryptophan Supplement Ingestion in a 9-Month-Old Labrador Retriever.
Language: English
J Med Toxicol. June 2017;13(2):183-186.
Hopkins Jennifer , Pardo Mariana , Bischoff Karyn
イントロダクション:5-ヒドロキシトリプトファン(5-Hydroxytryptophan:5-HTP)のサプリメントは店頭で入手でき、ヒトの使用で睡眠補助および不安緩解剤と表示されている。5-HTPはセロトニン前駆物質で、過量服用でセロトニン症候群を誘発する可能性がある。
症例報告:9か月のメスのラブラドールレトリバーを5-HTPサプリメント摂食後に評価した。興奮の症状が摂食から1時間以内に認められ、オーナーは経口3%過酸化水素水(H2O2)で嘔吐を試みた。来院時、その犬は鈍麻、両側散瞳、流涎を呈していた。身体検査で頻呼吸、頻脈、高体温、高血圧を示した。来院から8時間で下血、吐血、色素尿を起こした。血液像で酸化赤血球ダメージの所見(エクセントロサイト、ハインツ小体、坦鉄赤血球)がある軽度の貧血が見られた。化学パネルでクレアチニンキナーゼの顕著な上昇と高ビリルビン血症が見られ、溶血性貧血を支持した。尿検査で色素尿が認められた。溶血性貧血は、消化管潰瘍とH2O2の循環塞栓に続発する酸化ダメージによると考えられた。治療は輸液療法、マンニトールの定速注入、制吐剤、胃保護剤、セロトニン拮抗薬としてシプロヘプタジンを投与した。その犬は治療に良く反応し、48時間以内に退院した。
議論:セロトニン症候群は、セロトニン代謝を変化させる店頭販売薬の利用で獣医療において次第に増えている中毒性の症候群である。H2O2による催吐に関する適切な飼育者への指導の重要性が強調される。(Sato訳)
■猫のフードパズル:身体および情緒の福祉に対する給餌法
Food puzzles for cats: Feeding for physical and emotional wellbeing.
Language: English
J Feline Med Surg. September 2016;18(9):723-32.
Leticia Ms Dantas , Mikel M Delgado , Ingrid Johnson , Ca Tony Buffington
実際の有用性:ペット猫の多くは、おそらく彼らにとってあまり自然ではない環境で、種々の理由(例えば、安全性、健康、野生の捕食者から回避)により屋内で飼育されている。室内飼育は、慢性の下部尿路の症状、問題行動の発症のような健康問題に関与しており、そのことがヒューマン-アニマルボンドを弱め、また猫を安楽死に向かわせる原因になり得る。環境の充実は、それら問題への影響を緩和するかもしれず、あるアプローチは、餌に対し狩りをする猫の自然な本能を利用するものである。
目的:この文献において、我々は、猫の身体的健康と情緒的福祉をサポートする方法として、フードパズルの使用をオーナーにアシストするツールを獣医師に授ける。我々は異なるタイプのフードパズルの概要を述べ、猫への導入方法およびそれらを使用する試みの問題解決法を説明する。
エビデンスベース:猫に対するフードパズルの効果は、比較的新しい研究分野で、同様に既存の経験的エビデンスを再検討し、我々はそれらの使用から得られた健康および行動学的恩恵を示す獣医および行動診療からの症例研究を提供する。(Sato訳)
■犬に顔を咬まれる人の行動
Human behavior preceding dog bites to the face.
Vet J. December 2015;206(3):284-8.
P Rezac; K Rezac; P Slama
犬に咬まれたことによる顔の傷害は、重大な問題を引き起こす。
この研究の目的は、犬に顔を咬まれる直前の人の行動を調査し、顔の咬まれた位置、治療の必要性に対し、被害者の年齢、性別、犬の性別、大きさの影響を調査することだった。
顔を咬んだ132の事象の完全なデータを分析した。犬に前かがみで覆いかぶさる、犬の顔に自分の顔をのせる、被害者が犬を凝視するが犬に顔を咬まれる前の行動で、それぞれ症例の76%、19%、5%を占めた。半分以上が被害者の顔の中心めがけて咬んでいた(鼻、唇)。2/3以上の被害者が子供で、被害者に成犬の飼い主は一人もなく、成犬のみが顔を咬んでいた。被害者の年齢、性別および犬の性別、大きさは咬んだ顔の位置に影響しなかった。大型犬に咬まれた人は小型犬に咬まれた人よりも薬剤治療を必要とすることが多かった(P<0.01)。
犬に前かがみで覆いかぶさる、犬の顔に密接に顔をのせる、人と犬が凝視するなどのリスクファクターは避けるべきで、犬がいるときには子供を注意深く、コンスタントに監視しておくべきである。(Sato訳)
■新しい犬舎で犬の行動に対するオーディオブックの効果
The effects of audiobooks on the behaviour of dogs at a rehoming kennels
Appl Anim Behav Sci. January 2016;174(0):111?115. 43 Refs
Clarissa Brayley; V Tamara Montrose
家庭の犬は犬舎の環境に預けることも多い。それらは空間、社会的相互作用、騒音の予期せぬ変化により、ストレスが多く、福祉にネガティブな影響を及ぼすかもしれない。音楽のような聴覚の刺激は、様々な動物で福祉を高めることが証明されているが、ヒトで利点が示唆されているにもかかわらず、動物に対し聴覚の質を高めるようなオーディオブックの可能性は調査されていない。
この研究の目的は、レスキューシェルターで飼われている31頭の犬の行動に対し、オーディオブックの効果を調査することだった。
5つの聴覚の状況(オーディオブック、クラシック音楽、ポップ音楽、犬用にデザインした音響心理学の音楽、音楽なしのコントロール)を、状況の間隔を2日あけて2時間犬に暴露した。即効性スキャンサンプリングを使用して犬の行動を2時間の聴覚状況を通し5分ごとに記録した。
この研究の所見は、犬舎の犬の行動にオーディオブックの暴露は有意に影響することを示す。犬においてオーディオブックは、他のどの聴覚の状況の暴露よりも休息で過ごす時間が長かった(コントロール:Z=-4.807、P<0.001;Pop:Z=-4.791、P<0.001;クラシック:Z=-4.732、P<0.001:犬用音響心理音楽:Z=-3.911、P<0.001)。また、オーディオブックをかけているときは、他の全ての状況よりも座って、あるいは立って警戒する行動を示す時間が少なかった(コントロール:Z=-4.579、P<0.001;Pop:Z=-4.504、P<0.001;クラシック:Z=-3.450、P=0.001;犬用音響心理音楽:Z=-3.514、P<0.001)。
オーディオブックの暴露は、犬の行動に対しその心を穏やかにする作用により、犬舎の犬の福祉を高めることができると、この研究は示唆する。オーディオブックの使用は、犬を新しい場所でうまく生活する確率を増し、犬の福祉を高めるため、多くのケンネル環境で容易に使用でき、単純だが実用的なツールである。(Sato訳)
■嵐感受性の飼育犬にL-テアニン(アンキシタン)を使用した非盲検前向き研究
An open-label prospective study of the use of L-theanine (Anxitane) in storm-sensitive client-owned dogs
J Vet Behav. July/August 2015;10(4):324?331. 34 Refs
Amy L Pike; Debra F Horwitz; Heidi Lobprise
獣医療において機能性食品を含む代替治療の使用に対する関心が増している。
この非盲検試験で、嵐を怖がる飼育犬に対し、機能性食品のL-テアニン(アンキシタン, Virbac Animal Health, Fort Worth, TX)(N-エチル-Lグルタミン)の使用を評価した。
犬の年齢は1-8歳で、研究エリアの一般動物病院から募集した。全ての参加犬は身体検査、血液検査において健康で、現在は慢性病あるいは行動障害の治療を一切していなかった。飼い主には最初の嵐のときにアンケートに答えてもらった。それから試験物開始後、5回連続、各嵐のときに同じアンケートに答えてもらった。アンケートで0-5リッカート尺度を用い、嵐感受性の11の個別の行動的症状を評価した。嵐感受性も0-5リッカート尺度でスコアを付けた。各嵐が終わった時、飼い主は犬の正常な基準となる行動状態に戻るまでの時間を測定した。飼い主には環境および行動管理の標準化されたプロトコールを提供したが、他の行動療法は提供しなかった。
試験を完了した18頭の犬で統計解析を利用した。基準から評価終了までの全体的不安スコアに統計学的に有意な低下が見られた(P<0.0001)。さらに、基準の嵐から評価した最後の嵐まで、基準の正常なスコアに戻るまでの時間が有意に短縮した(P=0.0063)。
流涎(83.33%)、人の後を追う(75%)、パンティング(76.4%)、ペーシング(78.57%)、隠れる(78.57%)などの行動の治療に成功した。治療に満足した飼い主は94%(17/18)だった。
この研究は、L-テアニンは嵐感受性に対し有効な治療で、犬の全体的な反応の程度の減少、嵐が終わって元に戻るまでの時間の短縮、流涎、人の後ろにつく、ペーシング、パンティング、隠れるなどの行動を少なくする可能性があると示唆する。(Sato訳)
■聴覚あるいは視覚障害の犬(Canis lupis familiaris)と正常な聴覚と視覚の犬の行動:同じではないが、そう違っているわけでもない
Behavior of hearing or vision impaired and normal hearing and vision dogs (Canis lupis familiaris): Not the same, but not that different
J Vet Behav. November/December 2014;9(6):316?323.
Valeri Farmer-Dougan; Amanda Quick; Kelsey Harper; Kirsten Schmidt; Daniel Campbell
この文献は飼い主により聴覚および/あるいは視覚障害と分類された犬(Canis lupis familiaris)と、飼い主により正常な聴覚と視覚(NHV)があると分類された犬の集団の行動学的特徴を比較した。
HsuとSerpellにより開発された(2003)、The Canine Behavioral Assessment and Research Questionnaireを飼い主の調査に使用した。461頭の犬の飼い主がオンライン調査を完了し、それらのうち聴覚および/あるいは視覚障害(HVI)の犬の飼い主は183人だった。
データ解析により、正常な聴覚と視覚(NHV)集団よりもHVI犬は攻撃性が少ない、興奮することが少ないと報告され、ウサギを追うことや糞を転がすなどの行動をとる可能性は低いことが明らかになった。
しかし、HVI犬は不適切なものを咬む、食糞、過剰にほえる、過剰に舐める行動で注意を引く可能性が高いと報告された。使用するトレーニング方法の種類について聞いたとき、HVI犬の飼い主は、ハンドサインの使用、物理的な促し、あるいはそれらの組み合わせを使用する確率が高いことが分かった。NHV犬の飼い主はHVI犬の飼い主よりもジェスチャーを使用する、あるいは決まったトレーニングの型はないと報告する可能性が高かった。
そのデータはHVI犬はNHV肩と同様にトレーニング可能で、素晴らしいペットにでき、NHV犬の行動のパラメーター内でうまく行動を示すエビデンスを提供する。彼らの感覚の制限のため、引き続き特別なトレーニング方法と適応をそれらの犬で実施すべきである。やる気を与えられ、感覚低下を理解し、修正したトレーニングを行う気がある飼い主に対して、これはHVI犬を制限するかもしれない。(Sato訳)
■飼い主の好みを取ってくる?犬はヒトの振る舞いで嫌悪や幸福を認識する
Fetching what the owner prefers? Dogs recognize disgust and happiness in human behaviour.
Anim Cogn. January 2015;18(1):83-94.
Borbala Turcsan; Flora Szantho; Adam Miklosi; Eniko Kubinyi
2つの対象選択パラダイムを用いた研究で、犬はヒトの幸福な感情に関係するものを好むことが示された。しかしそれらは負の感情に関するあいまいな結果ももたらした。
我々はこれに対応するかもしれない犬および飼い主の”負”のものに対する興味の違いを想定した。我々の実験で、2つの均一なプラスチックボトルに向けて飼い主が異なる感情を表現するのを犬が観察した。5群の犬で受けた状況を基にテストした:(1)幸福v.s.ナチュラル、(2)幸福v.s.嫌悪、(3)ナチュラルv.s.嫌悪、(4-5)ナチュラルv.s.ナチュラル(コントロール群)。自由選択パラダイムを用いた過去の研究に反し、task-driven approachを使用した。デモンストレーションの後、犬は飼い主に一つのものを持ってくることとした。
2つのナチュラル-ナチュラル群において犬のパフォーマンスはチャンスレベルと違いがなかった。対照的に犬は飼い主の幸福とナチュラルの表現を区別できた:犬は”幸福”のものに近づき、取ってきた。幸福-嫌悪およびナチュラル-嫌悪群において、犬は無作為にボトルに近づいたことで、”嫌悪”と”ナチュラル”のものは同等の誘因性だと示唆された。にもかかわらず、両条件において犬は比較的より正の感情(幸福あるいはナチュラル)が顕著なものを優先して飼い主に持ってきた。
我々の結果は、犬は2つ感情でより正なものを認識でき、取ってこいの命令下で”嫌悪”なものにおける自身の興味を無視し、飼い主の好みのものを取ってくることが証明された。(Sato訳)
■カルシウム緩衝蛋白を使用した老齢犬の認知向上に対する新しいメカニズム
A novel mechanism for cognitive enhancement in aged dogs with the use of a calcium-buffering protein
J Vet Behav. May/June 2015;10(3):217?222. 34 Refs
Norton W Milgram; Gary Landsberg; David Merrick; Mark Y Underwood
細胞内カルシウムの調節不全は加齢に関係し、犬の認知障害症候群に関係するかもしれない。
この研究は、2つ別々の研究で老齢ビーグル犬の認知低下の修正において、カルシウム緩衝蛋白のアポエクオリンの有効性を研究した。
最初の研究では、23頭の老齢ビーグル犬をプラセボ、2.5mg、5mg投与群に振り分け、識別学習、注意、視空間的メモリータスクに対し評価した。アポエクオリン投与犬は識別学習と注意タスク両方のパフォーマンス改善を示したが、空間メモリータスクではコントロールと違いがなかった。
2つ目の研究では、5mgあるいは10mgのアポエクオリンと、認知障害の治療で承認された1mg/kgのセレギリン(Anipryl)を投与した24頭の犬で比較した。10mgのアポエクオリンを投与した群は、両タスクにおいてセレギリンを投与した犬よりも優れたパフォーマンスを示した。
それらの結果は、老齢ビーグル犬の認知障害の治療で、カルシウム結合蛋白のアポエクオリンに有益な効果があると思われ、アポエクオリンは少なくともセレギリンと同様の効果があると示唆する。(Sato訳)
■シェルターの猫のストレス軽減に隠れることのできる箱
Will a hiding box provide stress reduction for shelter cats?
Appl Anim Behav Sci. November 2014;160(0):86?93. 23 Refs
C M Vinke; L M Godijn; W J R van der Leij
イエネコ(Felis sylvestris catus)はシェルターで様々なストレスを経験する可能性がある。ストレスフルな経験は猫の福祉に多大な影響を与えるかもしれず、免疫不全を起こすコルチゾール濃度上昇により、シェルターで感染性疾患の高い発生率につながるかもしれない。
いくつかの研究は隠れる場所の選択や合同研究で猫に対する隠れる箱のストレス軽減効果を示しているが、それらの研究で猫隔離飼育所において適切な隠れる環境が有効になるかどうか判定したものはない。それらのストレス軽減効果は、新規ストレスが最大となる最初の数週間が非常に重要である。
この研究の目的は、オランダのアニマルシェルターで新しく入ってきた猫のストレスレベルに対し、隠れることのできる箱の効果を判定することだった。
新しく入ってきた猫19頭を無作為に隠れる箱があるグループ(n=10)と無いグループ(n=9)に振り分けた。ストレスレベルを判定するため、行動学的観察をKessler and Turner Cat-Stress-Score (CSS)に従い14日間行った。
この研究の主要結果は
(1) 観察日3、4日目に平均CSSにグループ間で有意差がみられ、隠れる箱のグループは平均CSSがより低かった(p<0.01)。
(2) 隠れる箱のグループの平均CSSの変動は最小で、隠れる箱が多くの実験猫に対しその効果があることを意味し、箱はないグループでは高い変動を見ることができた。
(3) 両グループの平均CSSは14日目には同等だったが、隠れる箱のグループでこの回復レベルには約3日目にはすでに到達していた。
それらの所見は、CSSによる測定で、隠れる箱を提供された猫は、箱がない猫に比べ新しい環境でより早く立ち直ることができることを示唆する。
つまり、新しいシェルター環境に入って最初の数週において、ストレス因子を効果的に処理するために、猫に対して隠れることができる箱は重要な環境を充実させるものと思える。家庭猫のグループに対する隠れることができる箱の効果、その長期効果、感染疾患の流行頻度との相関に関する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の減量中の客観的に測定した身体活動における変化の6か月観察研究
A 6-month observational study of changes in objectively measured physical activity during weight loss in dogs.
J Small Anim Pract. November 2014;55(11):566-70.
R Morrison; J J Reilly; V Penpraze; E Pendlebury; P S Yam
目的:犬の減量中の身体活動と座る行動における長期変化を評価する
方法:6か月のカロリーコントロール減量プログラムを行う16頭の過体重および肥満犬に対し、プログラム期間中の各月で3日連続、活動記録装置GT3X加速度計(Actigraph, FL)を装着した。身体活動の総量、座って過ごす時間、軽-中程度の強度の身体活動、激しい強度の身体活動を加速度計のデータから抽出し、基準から6か月まで比較した。
結果:16頭中14頭から妥当な加速度計のデータが返ってきた。6か月までの減量の平均比率は最初の体重の15%だった。全ての身体活動結果で顕著な増加あるいは座る行動の減少はなかった。
臨床意義:かなりの体重減少でも自発的な身体活動の増加あるいは座る行動の減少に関係しなかった。この研究の犬で、かなり減量したのに測定した身体活動の増加はなかったが、体重減少のほかに身体検査に関係する広範囲な利益のため、オーナーは彼らの犬に身体活動増加を促すよう今まで通り奨励するべきである。(Sato訳)
■1日1回あるいは2回給餌している様々な年齢の成犬においてアクティグラフィーを用いた行動学的睡眠の特徴を述べる
Characterizing behavioral sleep using actigraphy in adult dogs of various ages fed once or twice daily
J Vet Behav. July/August 2013;8(4):195-203. 50 Refs
Brian M Zanghi ; Wendell Kerr ; John Gierer ; Christina de Rivera ; Joseph A Araujo ; Norton W Milgram
成犬は強く昼間の運動活動/休息リズムを有し、睡眠/覚醒パターンは特徴付けられている。しかし、加齢および日々の給餌パターンに関する行動学的睡眠/覚醒データは欠如している。
3群(若年(Y)、1.5-4.5歳;中年(M)、7-9歳;シニア。11-14歳)のビーグル(n=48)に、12時間の明暗スケジュールで1日1回あるいは2回給餌を行う室内飼育で3日間Actiwatch活動モニタリングシステム(Respironics Co., Inc., Bend, OR)を装着した。Actiware-Rhythmソフトウェア(version 5.52; Respironics Co., Inc., Bend, OR)を使用して運動活動データから行動学的睡眠あるいは覚醒を評価した。
全ての犬は昼間の睡眠パターンを示した。明るい時間の総覚醒分数は年齢(P<0.05)で減少し、若年と比べて中年とシニアでそれぞれ7.7%と10.2%異なった。さらなる分析で、居眠りの持続時間の増加ではなく、明るい時間の短い時間の居眠りの増加がこの現象を引き起こしたと分かった。夜間の合計睡眠分数は年齢で増加し、若年よりも38分以上(P=0.01)、中年およびシニアは寝た。夜間の睡眠時間の増加は、より長い睡眠間隔持続時間(P=0.05)、遅延した朝の活動発現時間(P=0.02)、わずかに少ない短い覚醒時間(P=0.07)により起きた。
年齢とは別に、1日2回の給餌は昼間の睡眠パターンに有意に影響を及ぼしたが、その日の睡眠時間として記録された総分数に影響しなかった。面白いことに1日2回給餌した時、短い時間の居眠りは有意に減少し(P=0.01)、居眠りの持続時間は増加した(P=0.0001)。また、1日2回の給餌は夜のより早い睡眠発現時間と朝の活動の発現、同様に睡眠間隔の短縮にも関係した。
年齢および日々の給餌スケジュールで、行動学的睡眠パターンに明確な変化が観察された。(Sato訳)
■室内飼育猫におけるおもちゃ、活動、問題行動の飼い主に対する調査
An owner survey of toys, activities, and behavior problems in indoor cats
J Vet Behav. September/October 2014;9(5):207?214. 46 Refs
Beth L Strickler; Elizabeth A. Shull
この研究で、飼い主による室内飼育猫への毎日の相互作用の頻度と時間、おもちゃの支給、活動と6つ選んだ問題行動(飼い主への攻撃性、訪問者への攻撃性、いろいろな所への排尿、不適切な排便、同居猫間の攻撃性、外の猫との間の攻撃性)の発生率について調査した。
サンプル集団は問題行動以外で5件の動物病院に来院した277人の飼い主だった。
飼い主によると猫に対してのおもちゃと活動の平均数は7で、この調査で飼い主に使用された最も一般的なおもちゃ/活動は、毛が付いたネズミ(64%)、イヌハッカのおもちゃ(62%)、ベルの付いたボール(62%)だった。78%の飼い主は猫がいつでも遊べるおもちゃを放置していると報告した。全ての飼い主は猫と遊ぶと報告し、多くは(64%)1日2回以上遊び、5分(33%)あるいは10分(25%)の短時間と報告した。1回に5分以上遊ぶと報告した飼い主は、1分の短時間遊ぶと答えた飼い主よりも問題行動を報告することが少なかった(P<0.05)。6つの問題行動のうち、1つ以上あると報告した飼い主は61%だったが、そのうち54%の飼い主しかその問題について獣医師と話していなかった。問題行動の上位2つは、飼い主への攻撃性(36%)といろいろなところへの排尿(24%)だった。調査集団は同等の性分布であったが、1つ以上の問題行動の報告はオスよりもメスで50%起きる確率が低かった(P<0.05)。
個々の問題行動とおもちゃおよび活動との関係は、段階的ロジスティック回帰で評価した。それら所見は、室内飼育猫の行動学的必要性の理解と、家庭環境での充実の潜在的役割が関係すると考察された。(Sato訳)
■シェルターにおける群化プロトコール
Grouping protocol in shelters
J Vet Behav. January/February 2013;8(1):3-8. 26 Refs
Oswaldo Santos; Gina Polo; Rita Garcia; Eduardo Oliveira; Adriana Vieira; Nestor Calderon; Rudy De Meester
シェルターにおける犬の個体群動態は、個々の群化を必要とすることが多く、それら群の構成に変わる。著者らは群れを作る犬に関係するポジティブな効果を最大にし、ネガティブな効果を減らすプロトコールを開発した。
この研究で群を作る23頭の不妊した犬を使用した。15頭は成犬メス、7頭は成犬オス、1頭は若年メスだった。プロトコールは環境の質を高める(職業的、社会的、栄養的、感覚的)、行動修正(系統的脱感作および反対条件付け)を使用できるフェーズに分けた。
群の形成中に咬傷をふくむ闘争はなかった。
ペアを形成したうちの5組(18.5%)において、身体的接触を含まない攻撃性の一方向性の発現を観察した。3組のペア(10%)は、咬みはしないが身体的接触を含む双方向の攻撃性の出現を見たため、形成できなかった。
提案したプロトコールは、シェルターの環境における犬の群化を改善するための実行可能な代替方法である。またそのプロトコールは健康の促進、望まれる行動をとるのを促し、問題行動を少なくする可能性も持つ。(Sato訳)
■ニュージーランドにおける郊外の家に一匹にされた犬の吠え方
Barking in home alone suburban dogs (Canis familiaris) in New Zealand
J Vet Behav. July/August 2013;8(4):302-305. 13 Refs
Elsa L Flint ; Edward O Minot ; Mark Stevenson ; Paul E Perry ; Kevin J Stafford
この研究目的は、ニュージーランドの普通の郊外の家において、屋内と屋外のアクセスが可能で1日1回散歩し、日中8時間家に1匹で残された犬(過去に問題や無駄吠えのない犬と定義)の吠え方に対して予想される平均パラメーターを確立することだった。
8時間かけて評価したパラメーターは、吠える平均回数、吠えている時間の平均、吠える平均総量(秒)だった。それらのパラメーターに対する年齢と性別の影響を評価した。2か所のオークランドの動物病院に通う飼い主さんに研究に参加する機会を提供した(n=60)。参加者にはvoice-operatedテープレコーダー(Sony M-200MC Microcassette Recorder)と説明書を提供し、毎日8時間を5日間記録してもらった。その後、研究者によりスプレッドシートにデータを記録し、平均をWindows XLS systemで評価した。追加の分析はPASW 18 statistical analysis systemで行った。犬の中での変動を評価するのに箱ひげ図を作成した。
8時間のうち平均で犬は4,5回吠えた。吠えている時間の平均は30秒で、8時間のうち吠えている時間の総平均は129秒だった。5歳以下の若い犬は、老犬よりも吠える頻度が多い傾向があった。吠え声に対する苦情を吟味する場合、それらのパラメーターは基準を提供する。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた異常な食行動の治療成功例
Successful treatment of abnormal feeding behavior in a cat
J Vet Behav. November/December 2012;7(6):390-393. 15 Refs
Paolo Mongillo; Serena Adamelli; Marco Bernardini ; Elena Fraccaroli ; Lieta Marinelli
8ヶ月齢のオス猫が異常な食行動のために来院した。身体検査で鈍い皮毛、わずかに痩せた体格を認めた。詳細な病歴と行動学的検査で、状況が特異な過剰食欲、異食、食物関連の攻撃性、種間相互作用の過剰な懇願を認めた。通常の血液および尿検査結果は高血糖を除き正常だった。
心因性の異常な食行動の仮診断がなされた。
治療はストレス要因の暴露を少なくする、食物の脱感作および摂食の反対条件づけを通し猫の行動修正を目的とした。心因性の問題の診断は、その進行と提案した治療の成功により支持された。科学的文献で、心因性の異常な食行動の徹底的な記述がないとすれば、この症例は、その臨床的側面の最初の特徴描写を提供し、治療の効果を示している。(Sato訳)
■1頭のジャーマンシェパードの捕食性攻撃行動
Predatory aggression in a German shepherd dog
J Vet Behav. November/December 2012;7(6):386-389. 20 Refs
Gonzalo A Chavez; Alvaro J Opazo
この文献は公衆衛生に問題となるような捕食性攻撃行動の臨床例を紹介する。その犬は2歳のオスのジャーマンシェパードで、ヒトや他の犬に向けた攻撃行動のため獣医学校の行動クリニックに紹介されてきた。その犬はその家の他の犬と群れを作る傾向があり、近所の犬、猫、雌鶏、ウサギを殺した。仮診断は”テリトリーおよび防御攻撃行動”に関係する”捕食性攻撃行動”だった。リスク分析はその犬は安楽死すべきだと判定した。しかしオーナーは拒絶し、ゆえに行動修正と薬物療法が勧められた。1年後、その犬は再び他の犬を殺し、薬物および行動的治療にもかかわらず、その捕食性攻撃行動は解消されないだろうという可能性が示された。(Sato訳)
■犬に対しゾルピデムを1回量で経口投与した時の薬物動態と薬力
Pharmacokinetics and pharmacodynamics of zolpidem after oral administration of a single dose in dogs.
Am J Vet Res. October 2012;73(10):1650-6.
Mario Giorgi; Diego Angel Portela; Gloria Breghi; Angela Briganti
目的:犬で1回量(0.15あるいは0.50mg/kg)のゾルピデムを経口投与後の薬物動態と薬力を調べ、抗不安および鎮静効果に関する評価を行う
動物:いろいろな種類の臨床的に正常なオス犬8頭
方法:交差試験で犬を2群(4頭ずつ)に分け、ゾルピデムを1回量0.15あるいは0.50mg/kgで1回経口投与した;各犬は1週間の間隔をあけた後にもう一方の処置を受けた。投与前と投与後24時間定期的に血液を採取した。各タイムポイントで蛍光検出と高速液体クロマトグラフィーを合わせた検証法により血漿ゾルピデム濃度を測定し、薬力は鎮静および興奮のレベル、選択した臨床的変数の主観的査定で評価した。
結果:犬のゾルピデムの薬物動態プロフィールは用量依存で、到達した血漿薬物濃度はヒトで同等の量を投与した時の濃度より低かった。低い方の量ではいかなる臨床効果あるいは副作用を起こさなかったが、高い方の量で約1時間持続する奇異中枢神経刺激とその後短相の中程度鎮静を引き起こした。この鎮静相は臨床的に適切と思われなかった。望む臨床的効果は血漿ゾルピデム濃度30ng/mL以下で明らかではなく、副作用を誘発する最低血漿濃度は60ng/mLだった。
結論と臨床的関連:ゾルピデムは犬の鎮静を誘発するのに適した薬剤ではないと示された。(Sato訳)
■攻撃性のあるイングリッシュコッカースパニエルと攻撃性のある他の犬種の犬の血清セロトニン濃度の違い
Differences in serotonin serum concentration between aggressive English cocker spaniels and aggressive dogs of other breeds
J Vet Behav. January/February 2013;8(1):19-25. 100 Refs
Marta Amat; Susana Le Brech; Tomas Camps; Carlos Torrente; Valentina M Mariotti; Jose L Ruiz; Xavier Manteca
攻撃性は犬の最も一般的な行動学的問題で、公衆衛生、ヒューマンアニマルボンド、動物福祉に対して重大でネガティブな影響を持つかもしれない。家犬を含む様々な種における攻撃性行動と血清セロトニン濃度の間に負の相関を示している十分なエビデンスがある。この負の相関は特に衝動的攻撃性を示す犬において顕著である。過去のいくつかの研究から得られたデータは、イングリッシュコッカースパニエル(ECS)は他の犬種よりも衝動的攻撃性を示す可能性が高いと示唆している。
従って、この研究の目的は、攻撃性のあるECSと他の犬種の攻撃性のある犬の血清セロトニン濃度の違いを分析するとこだった。
Animal Behavior Service(獣医科学学校、バルセロナ、スペイン)に攻撃性のために受診した19頭のECSsを評価し、同センターに通院する他の犬種の攻撃性のある犬20頭と比較した。血清セロトニン濃度の測定は、ELISA法を使用した。統計分析はSPSS 15.0 for Windowsを使用した。
攻撃性のあるECSsの血清セロトニン濃度は、他の犬種の犬よりも有意に低かった(それぞれ318.6±67.1と852.77±100.58ng/ml)(P<0.01)。ECSsと他の犬種の分散は有意な差ではなかった(標準偏差=449.84ng/ml v.s. 292.47ng/ml、P>0.05)。
この所見は、なぜECSsが他の犬種よりも衝動的攻撃性を示す可能性が高いのかを説明すると思われ、根底にある衝動的攻撃性の神経生理学的メカニズムを研究する良いモデルとなる可能性を示唆する。(Sato訳)
■攻撃性のある犬の血清、血漿、血小板内のセロトニンの評価
Assessment of serotonin in serum, plasma, and platelets of aggressive dogs
J Vet Behav. November/December 2012;7(6):348-352. 39 Refs
Marta Leon; Belen Rosado; Sylvia Garcia-Belenguer ; Gema Chacon; Ainara Villegas; Jorge Palacio
犬の攻撃性は、行動診療に犬を紹介される最も一般的な理由である。また、犬が咬むことは公衆衛生、動物福祉に対して重要な問題である。セロトニン作動系は攻撃性を修正するのに重要な役割を演じると信じられている。
本研究の目的は、(1)犬の臨床研究において循環セロトニンの測定に対し異なるタイプの血液サンプルの適合性を評価すること、(2)セロトニン作動系と犬の攻撃性の関連を調査することだった。
酵素免疫測定法を用い、攻撃性のある犬28頭と攻撃性のない犬10頭の血清、血漿、血小板におけるセロトニンの評価を同時に実施した。
全ての分析したサンプルにおいて、攻撃性のある犬の平均セロトニン濃度は、攻撃性のない犬よりも有意に低かった。
それらの所見は、セロトニン作動系の活性と犬の攻撃性の間の逆の相関を示唆する。方法論の単純性を考慮すると、犬の循環セロトニンの測定に対し、最も安定した方法として血清のサンプリングを提案する。(Sato訳)
■ケンネルの犬に対する聴覚刺激の行動的効果
Behavioral effects of auditory stimulation on kenneled dogs
J Vet Behav. September/October 2012;7(5):268-275. 51 Refs
Lori R Kogan; Regina Schoenfeld-Tacher; Allen A Simon
犬は様々な理由により専門施設で飼育されている;しかしそのケンネルの環境は、短期間としても多くの犬にとって潜在的心因性ストレス要因となる。持続的ストレスとその結果引き起こされる不安は、倫理的および生理学的理由で望ましくない。ケンネルの犬の快適な生活に関係する研究のある成長分野は、聴覚刺激を含む環境の強化である。
この研究ではケンネルの犬117頭の活動レベル、発声、身震いに対し、音楽(クラシック、ヘビーメタル、特別に構成/変化させたクラシック)の影響を調査した。
結果はケンネルの犬にクラシックミュージックを聞かせることは、他の種類の音楽あるいは音楽なしのときよりも寝ている時間がより多く(F8,354 = 12.24, P > 0.0001)、鳴いている時間がより少なく(F8,354 = 3.61, P > 0.0005)過ごすように誘導すると示唆する。ヘビーメタルミュージックは他の種類の音楽と比較して神経質の行動示唆である身震いを増加させた(F8,354 = 96.97, P > 0.0001)。
シェルター環境でクラシックミュージックを流すことは、多くのケンネルの犬に固有のある種のストレスの緩和に役立つかもしれないと思われた。(Sato訳)
■表面を過剰に舐める犬の胃腸障害
Gastrointestinal disorders in dogs with excessive licking of surfaces
J Vet Behav. July/August 2012;7(4):194-204. 35 Refs
Veronique Becuwe-Bonnet; Marie-Claude Belanger; Diane Frank; Joane Parent; Pierre Helie
Excessive licking of surfaces(ELS)は、探索で必要とするものと比べて過度の持続時間、頻度、強度で物や表面を舐めることを呼ぶ。この行動は非特異的サインで、いくつかの状況の結果で起こるかもしれない。
この前向き臨床研究の目的は、犬のELS行動の特徴を述べ、主に行動的関連と対照的に基礎にある胃腸(GI)病態のサインかもしれないという考えを検討する。
ELSを呈する19頭の犬を研究群とし、健康な10頭の犬をコントロール群とした。
GI系の完全な評価の前に、行動、身体、神経学的検査を実施した。診断所見を基にして治療を推奨した。治療の初期化後、犬を90日間モニターし、舐める行動を記録した。
研究群の19頭中14頭にGI異常が認められた。それらの異常は、GI管の好酸球および/あるいはリンパプラズマ細胞性浸潤、胃内容排出遅延、過敏性腸症候群、慢性膵炎、胃内異物、ジアルジア症だった。もとのELS行動の頻度と持続時間の有意な改善が17頭中10頭(59%)に認められた。17頭中9頭(53%)でELSが解消した。ビデオ分析を基に、獣医学的状況でELS犬はコントロール犬よりも有意に不安ということではないことが分かった。
結論として、GI障害は犬のELSの鑑別診断に考慮すべきである。(Sato訳)
■異なる2つの年齢で同腹子から離された犬のオーナーが報告する行動の普及率
Prevalence of owner-reported behaviours in dogs separated from the litter at two different ages.
Vet Rec. October 2011;169(18):468.
L Pierantoni; M Albertini; F Pirrone
この研究は、異なる年齢で譲渡のために同腹子から離された犬における行動の普及率を研究した。30日から40日齢の間で譲渡され母親や同腹子から離された70頭の成犬を、2か月齢で譲渡のために同腹子から離されている70頭の成犬と比較した。オーナーに、通常の環境にいるとき潜在的な問題となる行動を犬がしているかどうかに対する情報を引き出すためにアンケートで質問した。同腹子から引き離された犬の年齢が望まれない行動を起こす素因を与えるかどうか調査するために二項ロジスティック回帰分析を実施した。
破壊、過剰に鳴く、散歩の時のこわがり、音に対する反応、おもちゃの独占欲、餌の独占欲、注意を引こうとする行動を示すオッズが、社会化期の早期に同腹子から離された犬で有意に高かった。また、30日から40日齢にペットショップから買われた犬は、2ヶ月齢でペットショップから買われた犬よりも有意に高い頻度で、リストに挙げた項目のいくつかを示すと報告された。他の種類のソースから得られた犬で有意差は観察されなかった。最も若い年齢群(18-36ヶ月)の犬は、破壊および尾追い行動の確率がより高かった。
それらの所見は、60日間社会群に残っていた犬と比較して、より早期に同腹子から離された犬は、特にペットショップから買われた場合、潜在的に問題となる行動を示す見込みが高いことを示す。(Sato訳)
■シニアペットの不安、不眠、認知機能障害の臨床症状と管理
Clinical signs and management of anxiety, sleeplessness, and cognitive dysfunction in the senior pet.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2011;41(3):565-90.
Gary M Landsberg; Theresa Deporter; Joseph A Araujo
加齢の身体的徴候は明確かもしれないが、精神および認知変化はより注意深い観察が必要である。行動の変化は医療問題の最も早期の指標、あるいは中枢神経系の障害、および両方向の存在を示すかもしれない。認知機能障害症候群は過小診断され、加齢コンパニオンアニマルのかなりの部分に影響を及ぼす。
この文献は年齢関連行動問題に向けた実施可能な治療法と、検討する鑑別診断の枠組みを述べる。行動変化の早期確認は、医療および行動問題の適切な治療および管理、予後のモニタリングで非常に重要である。(Sato訳)
■臨床的に正常な犬と肛門嚢疾患の犬における肛門嚢細胞所見と行動の比較
Comparison of anal sac cytological findings and behaviour in clinically normal dogs and those affected with anal sac disease.
Vet Dermatol. February 2011;22(1):80-7.
Danielle J James; Craig E Griffin; Nayak L Polissar; Moni B Neradilek
過去の研究で肛門嚢疾患(ASD)に関係する行動の頻度と細胞の関連を探求しているものはない。
この研究の目的は:(1)ASDの病歴がない正常犬と非腫瘍性ASDの犬の肛門嚢分泌物の細胞所見を比較する;(2)肛門嚢の細胞所見が正常犬とASDの犬の鑑別に使用できるかどうか判定する;(3)正常犬とASDの犬の肛門嚢細胞と行動の関連を探求する;(4)オーナーにより報告されたASDの典型的な行動を述べることだった。
オーナーへのアンケートにより詳しく述べられた行動学的病歴をもとに30頭の犬を選別した。30頭うち過去にASDの臨床症状がないという範囲において10頭を正常と考えた。残りの20頭は、他の部位にはないが肛門周囲の痒みの慢性病歴があるASDを持つと特徴付けた。全ての犬の肛門嚢を用手で圧出し、その分泌物を盲目的に顕微鏡的検査した。正常犬は合計171の油浸野(OIFs)、ASDの犬は333のOIFsを検査した。
ASDの犬の行動学的結果は、肛門嚢圧出後3週間の頻度(中央値)でお尻をこすりつける行動が再発することを示した。正常犬とASDの犬で臨床的統計的に有意な細胞学的差異はなく、それにより細胞診はASDの診断で無効な手段という結論が導かれた。(Sato訳)
■レム睡眠行動障害が疑われる14頭の犬の臨床特性、管理、長期結果
Clinical characteristics, management and long-term outcome of suspected rapid eye movement sleep behaviour disorder in 14 dogs.
J Small Anim Pract. February 2011;52(2):93-100.
T A Schubert; R M Chidester; C L Chrisman
目的:レム睡眠行動障害が疑われる犬において臨床特性、管理、長期結果を述べる
方法:レム睡眠行動障害の疑いのある犬14頭の医療記録およびビデオ撮影録画を再検討し、更なる情報を得るためにオーナーから電話あるいはemailで連絡を取った。
結果:臨床症状は激しい四肢の動き、遠吠えする、ほえる、うなる、咀嚼する、あるいは睡眠中に噛み付くなどのエピソードだった。エピソードは夜および日中の昼寝中に発生した。発現時の年齢は8週齢から7.5歳の範囲で、中央値は6歳だったが64%の犬は1歳未満だった。明らかな性別あるいは犬種の傾向はなかった。経口臭化カリウム40mg/kg/dayの投与で、78%の犬のレム睡眠行動障害事象の重度および頻度が減少した。1頭の犬は重症だったため、症状発現から3ヶ月以内に安楽死された。13頭の生存している犬の障害の持続期間は1.5年から9年だった。自然に回復した犬はいなかった。
臨床意義:レム睡眠行動障害はヒトと同じように犬でも発生が疑われる。それはオーナーにとって心配事となり、家庭環境を混乱させる。ヒトとは異なり、犬のレム睡眠行動障害は若年で発現することが多い。(Sato訳)
■犬の安心感に対して家に単独でいる時間の影響
The effect of time left alone at home on dog welfare
Appl Anim Behav Sci. January 2011;129(2-4):129-135.
Therese Rehn; Linda K Keeling
この研究の目的は、犬の行動と心臓活動性に対して、家で単独で残された時間の影響を調査することだった。分離関連の問題行動の病歴がない12頭の個人飼育犬を、それらの家庭に3つの異なる方法で単独で留守番させてビデオ撮影した。留守番時間は、0.5時間(T0.5)、2時間(T2)、4時間(T4)だった。犬とオーナー、および分離中の行動の相互作用が研究できるように、ビデオ撮影はオーナーが外出する10分前から帰宅後10分まで行った。心拍数(HR)および心拍変動性(HRV)のデータを各処置の同じ時間周期で収集した。別々の行動の分析に加え、行動を共にグループ化し、新しい変数として定義した;身体活動、親愛を示す行動、声、オーナーにより惹起される相互作用、犬により惹起される相互作用。
オーナーが帰宅するまで同じ時間間隔で処置間の行動に違いは見られなかったが、オーナーとの再会時にいくつかの違いが観察された。犬は身体活動性(P<0.05)、T2(0.37±0.07;0.52±0.08、発生の平均頻度/15秒±SE)およびT4(0.48±0.08;0.48±0.07)の親愛を示す行動はT0.5(0.20±0.07;0.21±0.05)と比較して頻度がより高かった(P<0.01)。また、T0.5(0.09±0.04;0.14±0.03)と比較してT2(0.27±0.08;0.47±0.09)およびT4(0.26±0.04;0.42±0.09)でより尻尾を振り(P<0.01)、オーナーとより相互作用を示した(P<0.01)。長時間分離した後、オーナー帰宅時に舌で舐める(P<0.05)、体を振る(P<0.05)行動も示した(それぞれT0.5=0.09±0.05;T2=0.24±0.08;T4=0.27±0.06およびT0.5=0.03±0.01;T2=0.08±0.03;T4=0.07±0.01)。再開後1分および2分の心拍数はT0.5(106.2±1.06、平均bpm±SE;87.5±1.02)と比べT2(127.6±1.25;111.3±1.24)でより高い傾向が見られた(P<0.1)。
この研究の結果から、単独にされる時間の影響は、早くも2時間でオーナー帰宅時のオーナーに対する犬の挨拶行動の増強、また身体活動および親愛を示す行動の頻度が増すことで示された。この研究は犬が単独になった時間に気づいたがどうか(それを合図しなかったが)、オーナーが帰宅することでそれを思い出すまで無意識だったかどうか区別できないが、犬が家で単独でいる時間の長さに影響されることを確認するものである。(Sato訳)
■犬の行動、神経内分泌、免疫および急性期周術ストレス反応に対する合成鎮静フェロモンの効果
Effect of a synthetic appeasing pheromone on behavioral, neuroendocrine, immune, and acute-phase perioperative stress responses in dogs.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(6):673-81.
Carlo Siracusa; Xavier Manteca; Rafaela Cuenca; Maria del Mar Alcala; Aurora Alba; Santiago Lavin; Josep Pastor
目的:選択的去勢あるいは避妊手術を行う犬における行動、神経内分泌、免疫および急性期周術ストレス反応に対する合成犬沈静フェロモン(sDAP)の効果を研究する
構成:無作為コントロール臨床試験
動物:選択的去勢あるいは避妊手術を行うアニマルシェルターの犬46頭
方法:使用20分前にICUケージにはsDAP溶液をスプレーし、対するキャリアーには偽のスプレーを処置した。犬(sDAP群24頭、偽処置群22頭)を処置ケージに術前30分と術後に収容した。ストレスの指標(すなわち、行動の変化、神経内分泌、免疫および急性期反応)を周術期に評価した。行動応答変数、唾液中コルチゾール濃度、WBC数、血清グルコース、プロラクチン、ハプトグロビン、C-反応蛋白濃度を分析した。
結果:行動応答変数および血清プロラクチン濃度にsDAP暴露は影響した。sDAP群の犬は、偽処置群の犬よりも術後機敏および視覚探査行動をとる犬が多かった。周術ストレスに対する反応で血清プロラクチン濃度の低下は、偽処置群よりもsDAP群で有意に少数だった。視床下部-下垂体-副腎軸、免疫システム、急性期反応を評価するために検査した変動値は処置に影響されなかった。
結論と臨床関連:sDAPは乳腺刺激性軸活性の修正により、行動および神経分泌周術ストレス反応に影響を及ぼしたと思われる。臨床現場でのsDAPの使用は、手術を行う犬の回復および快適性を改善するかもしれない。(Sato訳)
■犬の強迫性障害のメマンチンによる治療
Use of memantine in treatment of canine compulsive disorders
J Vet Behav. May 2009;4(3):118-126.
Barbara M. Schneider, Dr. Med. Vet, Nicholas H. Dodman, BVMS, Louise Maranda, DMZ MSc PhD
犬の強迫性障害(CCD)の治療で投薬は重要な役割を持つ。現行の投薬で全ての症例が管理できるわけではなく、新しい薬理学的選択枝が必要である。この症例シリーズは、CCDの新しい治療オプションの可能性としてNMDAレセプターブロッカーメマンチンの効果を評価する。CCDの異なる症状を持つ13頭の犬で研究し、11頭のデータを分析のため入手した。各犬の行動および臨床的病歴を入手した。必要と思われたときは、追加医療検査を実施した。研究症例の主な主訴は、光/影を追いかける、スピンする/くるくる回る、尾追いだった。全ての犬はメマンチン単独あるいは現行のフルオキセチン治療へのメマンチン追加で治療した。研究した犬の全てのオーナーには、薬物治療に加え、特定行動修正プランを提供した。
メマンチンは開始用量0.3-0.5mg/kgで1日2回経口投与した。必要ならば副作用が許容できる限り、次第に用量を増加させたが1mg/kg以上にはしなかった。オーナーには犬の強迫性行動の程度を評価するため、毎日臨床的グローバルインプレッションスケール(CGI)の使用を要請した。このスコアは4週間毎日記録し、1週間の平均スコアを算出した。
研究した犬の7頭(64%)はCCDの程度が低下し、CGIスコアは治療から2週目で低下した。11頭中1頭だけに治療に関連すると思われる副作用(排尿頻度の増加)が見られた。結果はメマンチンが単独あるいはフルオキセチンに加えてCCDの治療に対し有効で、よく許容する選択枝であると思われることを示唆する。CCDの治療においてメマンチンの効果を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■クロミプラミンとセレギリン:それらは衝動制御に影響を与えるか?
Clomipramine and selegiline: do they influence impulse control?
J Vet Pharmacol Ther. 2006 Feb;29(1):41-7.
Bert B, Harms S, Langen B, Fink H.
犬の分離不安はしばしば衝動制御の喪失に併発し、破壊性、過剰な吠えや攻撃などの不適切な行動となる可能性がある。これらの好ましくない行動の修正は、行動療法に焦点が当てられている。クロミプラミンとセレギリンは犬の分離不安の治療に承認されているが、相反する治療効果を生むという逸話的報告もある。
従って、この研究の目的は、報酬手順の遅延に基づくラットモデルを使うことによって衝動制御の調節を目的としたクロミプラミンとセレギリンの効果を検証することであった。
原則は、動物が通常、衝動的な動物によって好まれる即座に与えられるわずかな褒美の餌と遅れて与えられる大きい褒美の餌に決められなければならない。この研究では、異なる分離不安関連性行動が認められる2つの育種系統ラットに対してクロミプラミン (0.3-10.0 mg/kg)、セレギニン (0.3-3.0 mg/kg)そしてジアゼパム (1.0-3.0 mg/kg)の急性の効果を観察した。クロミプラミン、セレギニンでも、どちらの育種系統でも衝動制御に対する効果がなかった。しかし運動活動はクロミプラミンによって減少し、セレギニンによって増加した。ジアゼパムは運動活性の増加に伴う1つのラット系統の衝動行動を増加させた。衝動行動研究のためのこのラットモデルの結果から、セレギニンとクロミプラミンの単独投与では衝動行動に影響を与えないことがわかった。(Dr.Kawano訳)
■犬-アシストグループトレーニング(MTI)中の薬物犯罪者の情動能力の変化
Changes in emotional competences of drug offenders during dog-assisted group training (MTI)
J Vet Behav. March 2009;4(2):99-100.
Birgit U. Stetina, Barbara Kuchta, Barbara Gindl, Tamara Lederman Maman, Ursula Handlos, Wolfgang Werdenich, Ilse Kryspin-Exner
刑罰施設あるいは強制収容所における動物-アシスト業務の結果は、いまだ比較的新しい研究分野である。わずかな経験的研究で、データの科学的評価を実行するにはプログラムが少なすぎる。動物を含むプログラムは社会スキルを改善させ、感情移入の発達、犯罪者の中で過激な行動の減少を示している。さらに動物ベースのプログラムは自尊心を高め、抑うつを減少させるように思える。(Sato訳)
■イングリッシュコッカースパニエルにおける攻撃行動
Aggressive behavior in the English cocker spaniel
J Vet Behav. May 2009;4(3):111-117.
Marta Amat, DVM, Dip. ECVBM-CA, Xavier Manteca, DVM, MSc, PhD, Dip. ECVBM-CA, Valentina M. Mariotti, DVM, MSc, Jose Luis Ruiz de la Torre, DVM, PhD, Jaume Fatjo, DVM, PhD, Dip. ECVBM-CA
イングリッシュコッカースパニエル(ECS)における高率な攻撃性の問題と非抑制的攻撃性を示す傾向は多くの著者により示唆されている。Barcelona School of Veterinary Medicineの獣医教育病院で動物行動サービスに攻撃性の問題を相談した145頭のイングリッシュコッカースパニエルの問題を分析するため、回顧的研究を実施した。攻撃性のあるイングリッシュコッカースパニエルを、攻撃性以外の問題行動を呈する同犬種の集団および攻撃行動を示す他の犬種集団と比較した。イングリッシュコッカースパニエルの攻撃性の一般的な形態は、オーナーに向けられた攻撃性(67.6%)、家族以外の人に向けられた攻撃性(18.4%)、家族以外の犬に向けられた攻撃性(10.1%)、家族の犬に向けられた攻撃性(3.3%)だった。オーナーに向けられた攻撃性は他の犬種よりもイングリッシュコッカースパニエルで一般的だったが、同様の状況下ではなかった。攻撃性を示さないイングリッシュコッカースパニエルよりも攻撃性を示すイングリッシュコッカースパニエルは、ゴールデンの毛色の犬が多く見られた。他の犬種の攻撃性よりもイングリッシュコッカースパニエルの攻撃性は、衝動的なものの頻度が高かった。研究の目的は紹介診療施設で見られる攻撃性を持つイングリッシュコッカースパニエルの症例を分析することだった。(Sato訳)
■訓練した探知犬は人の癌を検出できる?
Can trained sniffer dogs detect cancer in humans?
J Vet Behav. March 2009;4(2):89.
Tadeusz Jezierski, Marta Walczak, Aleksandra Gorecka
1989年に訓練されていない犬の独特の行動(オーナーの足のほくろを嗅ぐ、舐める、噛み切ろうとする)により、人のメラノーマを自然に検出したという最初の報告が、世界を先導する医学雑誌に発表された。我々の研究所で、2004年に研究プロジェクトを立ち上げ、口臭をもとに肺、乳がん、メラノーマをルーチンに検出するための犬のトレーニングを目的とした。(Sato訳)
■命令に反応する介助犬の質に影響するパラメーター:71頭の遡及研究
Parameters influencing service dogs' quality of response to commands: Retrospective study of 71 dogs
J Vet Behav. January 2009;4(1):19-24.
Geraldine Heillaut Dalibard, DVM
介助犬によって提供されるサービスの質に影響するパラメーターを判定、および犬のトレーニングおよび選別を修正するため71頭の遡及研究を行った。障害者に犬を配置し、3年後アンケートを郵送した。医療および獣医両方を合わせて研究実施した。アンケートは犬およびオーナーのクオリティオブライフおよびサービス評価に関するものだった。回答率は76%だった。命令の実行能力に従い犬を2つのクラスに分け、それからいかなる相関も判定するため、犬とオーナーの特性を組み合わせた。
犬の特性は命令に対する反応の質に相関しなかった。人の集団は非常に不均一で、移動を非常に制限されていたオーナーもいた。しかし、サービスの質はオーナーの声の大きさにのみ相関するだけで、オーナーの身体的能力に相関しなかった。この研究は犬とコミュニケーションをとるとき、非言語的コミュニケーションと音声強度の重要性を強調し、プログラムを成功させるために候補者の選択過程の重要性を力説する。(Sato訳)
■望まれない行動を示す飼育犬における対決および非対決的訓練法の使用および結果の調査
Survey of the use and outcome of confrontational and non-confrontational training methods in client-owned dogs showing undesired behaviors
Appl Anim Behav Sci. Feb 1 2009;117(1-2):47-54.
Meghan E. Herron, Frances S. Shofer, Ilana R. Reisner
獣医行動学者のカウンセリングを求める前に、多くの犬のオーナーは種々のソースから提案される行動修正方法を試している。提案は恐怖あるいは防衛攻撃行動を誘発するかもしれない嫌悪訓練法を含むことも多い。
この研究の目的は、問題行動を持つ犬のオーナーにより昔から使用される方法の行動学的効果と安全性リスクを評価することだった。
1年の間に委託行動サービスで面会した全ての犬のオーナーに、行動学的アンケートを行うことで過去の介入の30項目を調査した。適用した各介入に対し、犬の行動に陽性、陰性あるいは効果がなかったかどうか、使用した方法に関係する攻撃行動が見られたかどうかについてオーナーに質問した。また各提案のソースについても質問した。
140の調査が完全なものだった。提案のソースに挙げられたもので多かったのは「自己」および「訓練士」だった。
「望まない行動をしたときに犬を叩くあるいは蹴る」(43%)、「犬にがみがみ言う」(41%)、「物理的力で犬の口からアイテムを取る」(39%)、「アルファーロール」(31%)、「犬を凝視あるいは凝視して犬の目をそらさせる」(30%)、「ドミナンスダウン」(29%)、「マズルを掴むおよび揺さぶる」(26%)のようないくつかの対決的方法は、彼らが試した犬の1/4以上に攻撃応答を誘発させた。家族に攻撃性を呈する犬は、他の主訴の犬と比較して対決的方法「アルファーロール」および「だめ」と叫ぶことに攻撃的に反応しやすかった(P<0.001)。
結論として、行動コンサルタントに犬を見せる前にオーナーにより使用される対決的方法は、多くの例で攻撃的反応に関係した。このように獣医師がそのような訓練方法に関与するリスクについてアドバイスし、問題行動の安全な管理に対するガイダンスおよびリソースを提供することはプライマリケアとして重要である。(Sato訳)
■シェルターの犬の譲渡成功に対するトレーニングおよび環境変化の影響
The effects of training and environmental alterations on adoption success of shelter dogs
Appl Anim Behav Sci. Feb 1 2009;117(1-2):63-68.
Andrew Urs Luescher, Robert Tyson Medlock
約3-4百万頭の犬が1年にUSAシェルターに収容される。この研究はシェルターの犬の譲渡率に対する基礎服従訓練および環境変化の影響を評価することだった。
87頭のメスと93頭のオス犬、180頭が実験の8週間の内にあるシェルターから譲渡された。年齢の範囲は10週から7歳だった(平均1.6歳、S.D.1.5歳)。70%は譲渡する前に不妊処置がなされた。ほぼ80%が雑種犬と考えられた。犬を無作為に訓練する群とコントロール群に振り分けた。訓練群の犬は1日1回トレーニングを行い、その時にヘッドホルター装着の除感作、近づいたときにケージの前に来ること、リードを付けて歩く、おすわり、人に飛びつかないことを教えた。実験の全ての週を無作為に、環境を変更する週とコントロールの週とした。環境の変更は、犬小屋に毛布やおもちゃを入れる、犬小屋のドアの白黒の識別カードの替わりに色をつける、人工植物を置いた。統計分析は、記述統計、譲渡に対する種々の犬の特性とトレーニングの影響を評価する二値変動値に対する変数増減ロジスティック回帰分析、環境変更の影響を評価するカイ二条検定を用いた。
180頭中、116頭は譲渡されそのうち1頭は再び放棄され、57頭は安楽死、4頭はレスキュー組織に行き、2頭はオーナーの元に戻り、1頭は死亡した。訓練した犬は、していない犬よりも1.4倍譲渡されやすかった(P=0.007)。個別因子の中で、他の犬と仲がよいことのみ有意に譲渡率を増加させた(P=0.035)。子供と仲がよい(P=0.043)ことは、ロジスティック回帰モデル(P=0.519)で統計学的有意を維持しなかった。環境変更の週の間に42頭の犬が譲渡され、コントロールの週の間は33頭だった(P=0.299)。この研究は、訓練したシェルターの犬は譲渡されることが多くなることを示した。(Sato訳)
■シェルターの犬における人に向けられた攻撃性:結果をよりよく予測する検査方法
Human-directed aggression in shelter dogs: how to test for better prediction of outcomes
J Vet Behav. March 2009;4(2):78.
Barbara Klausz, Anna Kis, Eszter Persa, Marta Gacsi
ここ数十年で、シェルターの犬において里子として適していないと思われる攻撃傾向を持つ個体を確認するため、多くの検査系が開発され、行動を評価するのに使用された。しかし、それらの検査手順の有効性を評価した研究は比較的少ない。アンケートデータをもとにした調査によると、気質検査をパスしていた犬の40.9%が、譲渡1年以内に新しい家庭で攻撃行動を示した。この研究の目的は、その手順の潜在的欠点を見つけることにより、この高いエラー率を説明することだった。我々の仮説によれば、犬の行動はシェルターにいるときは多くの面で抑制され、ゆえに最初の数日で行った検査は、予測する価値がより少ないのかもしれない。(Sato訳)
■シェルターの犬の社会化学習
Social learning in shelter dogs
J Vet Behav. March 2009;4(2):78-79.
Jennifer Templeton, J. Thorn
シェルターの犬の社会化と訓練でよりもらわれやすくなる可能性がある。しかし時間的束縛により、シェルターのスタッフが動物の身体的福祉に対して世話する以上に課題を全うするのは難しい。シェルター環境での訓練の可能性を検討するため、最初に一連の実験を実行し、(1)犬は10回の試技で座るの形が出来る;(2)言語的二次強化因子(“Good Dog!”)は訓練していない職員により使用されるときクリッカーよりも効果的だった;(3)犬は新しい人の前および場所で新しいスキルを維持、発揮できたことを示した。現在我々は、社会化学習がシェルターの犬の訓練のスピードを増強するかどうか、もしそうならばどのようにかを検討する一連の実験を始めている。(Sato訳)
■ペットとして行動性および適合性に対するレスキューセンターでの子猫の追加社会化の効果
The effects of additional socialisation for kittens in a rescue centre on their behaviour and suitability as a pet
Appl Anim Behav Sci. November 2008;114(1-2):196-205.
Rachel Alison Casey, John William Stephen Bradshaw
レスキューセンターからもらわれた子猫において、その後の問題行動発生に対する社会化期間中の取り扱いの影響と猫-オーナーボンドを調査している。3つの施設の37頭の子猫に標準あるいは強化社会化を2-9週齢の間に行った。その後全ての猫はもらわれ、子猫が約1歳のときにオーナーに聞き取り調査を行った。
標準の社会化を行った子猫と比較し、強化社会化を行った子猫のオーナーにより有意に高い情動サポートを子猫から受け、ヒトを怖がる行動を示した猫はほとんどいなかったことが報告された。(Sato訳)
■(18)F-FDG PETによる犬の脳代謝の評価:犬の問題行動における生理学的変化を調べるための予備的研究
Cerebral Metabolism in Dogs Assessed by (18)F-FDG PET: A Pilot Study to Understand Physiological Changes in Behavioral Disorders in Dogs.
J Vet Med Sci. 2009 Oct 28.
Irimajiri M, Miller MA, Green MA, Jaeger CB, Luescher AU, Hutchins GD.
ヒトの行動および精神疾患の研究で利用されている陽電子放射形断層撮影法Positron Emission Tomography (PET)画像診断を、臨床的に脳に異常のない雑種犬に用いた:3頭のハウンドタイプ(長耳)の雑種犬と3頭の非ハウンドのレトリバータイプの雑種犬を用いた。グルコース代謝はF-18フルオロデオキシグルコース(FDG)を用いて測定し、定量はstandardized uptake value (SUV)を用いた。それぞれの犬でMRI検査を実施し、その画像をPET画像に重ね合わせ、PET画像の解剖学的位置関係を同定した。各関心領域ROIにおいてのグルコース代謝をハウンドタイプと非ハウンドタイプで比較した。解剖学的に異なる2つのタイプの犬について、品種特異的な行動学上の傾向(ハウンドタイプでは嗅ぐ動作、ラブラドールでは凝視や回収動作など)が、脳代謝活性の基礎において示されるかどうかを比較、評価した。脳のSUV値において、ハンウドタイプと非ハウンドタイプには有意差が認められなかった。本データを犬のFDG-PET研究における正常データとして利用できる可能性があり、また強迫性障害、不安障害や認知障害といった犬の行動学的疾患研究の基礎として利用できるかもしれない。(Dr.Ka2訳)
Dr.Ka2注)SUV:FDG-PET検査において、FDGの病巣への集積度を示す指標。
■アメリカで犬に襲われたことによるヒトの致死率、1979-2005
Human fatalities resulting from dog attacks in the United States, 1979-2005.
Wilderness Environ Med. Spring 2009;20(1):19-25.
Ricky L Langley
イントロダクション:犬の攻撃は世界中で関係する主要な公衆衛生の問題である。アメリカでは毎年400万人以上が犬に咬まれ、6000-13000人が入院している。襲われた後の死亡事件もまれに見られる。
方法:この研究は、1979-2005年の27年間で、犬の攻撃による死亡例を評価するため、米国疾病管理センターWONDERの圧縮死亡率ファイルを利用した。
結果:この期間で犬の攻撃により毎年平均約19例の死亡が報告された。犬の攻撃による死亡率が最も高かったのは男性と10歳以下の子供だった。49の州で死亡が報告されており、最も高い死亡率を報告したのはアラスカ州だった。犬の攻撃による死亡数および死亡率は増加していると思われる。
結論:ヒト及び犬の集団がこの期間に両方増加しているため、犬の攻撃による死亡例も増加しているように思える。子供は最も高い死亡リスクがある。攻撃にまつわるリスクファクターを見極め、致死率の程度を完全に把握するため、犬の咬傷に対する国の報告システムが必要である。予防の効果的な実践の開発が、それらリスクファクターの研究にかかっている。(Sato訳)
■犬種による攻撃性の違い
Breed differences in canine aggression
Appl Anim Behav Sci. December 2008;114(3-4):441-460.
Deborah L. Duffy, Yuying Hsu, James A. Serpell
犬の攻撃性は重大な公衆衛生および動物福祉の懸念を引き起こす。犬種による攻撃性の違いについて理解されていることの多くは、咬傷統計、行動クリニックの取り扱い件数、専門家の見解をもとにした報告から来ている。そのような源から引き出された種特異攻撃性の情報は、多数および/またはより多い身体的にパワフルな犬種および犬種固定概念の存在に関係する傷害の不相応なリスクに起因する偏りのために誤って理解されているかもしれない。
この研究は、種々の刺激や状況に対する犬の典型的および最近の反応を査定する認可され信頼できる器具、Canine Behavioral Assessment and Research Questionnaire (C-BARQ)を使用して30犬種以上の犬のオーナーに調査を行った。2つの独立したデータサンプル(犬種クラブメンバーの無作為サンプルおよびオンラインサンプル)で、見知らぬ人、オーナー、犬に向けられた攻撃性において犬種間の有意差が得られた(Kruskal?Wallis tests, P < 0.0001)。両データベースで一般的だった8犬種(ダックスフント、イングリッシュスプリンガースパニエル、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、プードル、ロットワイラー、シェットランドシープドック、シベリアンハスキー)は見知らぬ人、犬およびオーナーに向けられた攻撃性に対し、それぞれrs = 0.723、P < 0.05;rs = 0.929、P < 0.001;rs = 0.592、P = 0.123と同様のランクだった。いくつかの犬種は人と犬両方に向けての攻撃性が平均よりもスコアが高く(例えばチワワとダックスフント)、他の犬種は特定ターゲットにのみスコアが高かった(例えば秋田犬やピットブルテリアの中で犬に向けられる攻撃性)。一般に攻撃性が他の犬に向けられたときが最も重度で、そして家族でない人、家族と続いた。人に向けて重度の攻撃性(咬むあるいは咬もうとする)を示した犬の比率が最も高かった犬種は、ダックスフント、チワワ、ジャックラッセルテリア(見知らぬ人とオーナーに向けて);オーストラリアンキャトルドック(見知らぬ人に向けて);アメリカンコッカスパニエル、ビーグル(オーナーに向けて)が含まれた。秋田犬、ジャックラッセルテリア、ピットブルテリアの20%以上は、家族でない犬への重度攻撃性を示したと報告された。ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、バーニーズマウンテンドック、ブリタニースパニエル、グレイハウンド、ホイペットは人および犬両方への攻撃性が最小だった。
イングリッシュスプリンガースパニエルの中で、conformation-bredの犬はfield-bredの犬に比べて人及び犬に対する攻撃性がより多く(見知らぬ人への攻撃性:マンホイットニーU検定、z = 3.880、P < 0.0001;オーナーへの攻撃性:z = 2.110、P < 0.05;犬に向けての攻撃性:z = 1.93、P = 0.054)、行動に対する遺伝の影響が示唆される。ラブラドールレトリバーの中でオーナーに向けられた攻撃性に逆のパターンが観察され(z = 2.18、P < 0.05)、より高いレベルの攻撃性は、本質的にショーに対する交配に起因しないことを示す。(Sato訳)
■強迫性障害の動物モデルにおけるメマンチンとフルオキセチンの併用効果
The combined effects of memantine and fluoxetine on an animal model of obsessive compulsive disorder.
Exp Clin Psychopharmacol. 2009 Jun;17(3):191-7.
Wald R, Dodman N, Shuster L.
強迫性障害(OCD)は、現在では行動学的対処と向精神薬で治療されており、成功率は様々である。強迫性障害の治療において最も一般的な薬物は選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)である。他の薬として、最近N-メチル-D-アスパラギン酸拮抗剤であるメマンチンが強迫性障害の治療で臨床試験されている。現在の研究で、強迫行動のマウスモデルにおいてフルオキセチンとメマンチン単独での効果、併用での効果を観察している。このモデルでは、強迫性引っ掻き行動は、首の後ろに、セロトニンあるいはセロトニン放出性物質(合成物48-80)の皮下注射で誘発される。メマンチンとフルオキセチンの併用の効果は相乗的であることがわかり、特にアイソボログラムで定義された。現在の研究結果から強迫性障害の兆候のより効果的な管理の可能性が示唆される。(Dr.Kawano訳)
■犬の強迫性障害の治療においてフルオキセチンの効果に関するランダム化コントロール臨床試験
Randomized, controlled clinical trial of the efficacy of fluoxetine for treatment of compulsive disorders in dogs
Journal of the American Veterinary Medical Association
September 15, 2009, Vol. 235, No. 6, Pages 705-709
Mami Irimajiri, BVSc, PhD; Andrew U. Luescher, DVM, PhD, DACVB; Genefer Douglass, MS; Carol Robertson-Plouch, DVM; Alan Zimmermann, PhD; Rebecca Hozak, PhD
目的:犬の強迫性障害の治療における塩酸フルオキセチンの効果を評価するため
設計:ランダム化コントロール試験
動物:強迫性障害の犬63頭
方法:3人の獣医行動学専門医によって犬の行動を撮影したビデオを分析し、身体検査と臨床病理検査そして必要であれば飼い主への電話による聞き取りなどに基づいて確定診断した。フルオキセチン(1~2 mg/kg,経口投与, 24時間毎)あるいはプラセボを無作為に投与した。飼い主に行動修正あるいは環境変更に関してどんなアドバイスも与えなかった。症状の重症度は2週ごとに電話で確認し、各飼い主には毎日日記をつけてもらって観測した。
結果:治療開始後42日で飼い主からの報告により強迫性障害の重症度が減少した犬の比率は、コントロール犬よりフルオキセチンで治療した犬のほうが有意に高く、フルオキセチンで治療した犬は強迫性障害の重症度が減少しやすかった(オッズ比8.7)。しかし毎日記載した日記から判断すると強迫性障害の平均数や持続期間は両グループ間において有意な違いはなかった。最も一般的な副作用は食欲の減退と軽度嗜眠だった。
結論と臨床関連:結果は多義的であったが、フルオキセチンは犬の強迫性障害の治療において効果であるかもしれないという結果が示唆された。この研究では、フルオキセチンは行動修正そして環境変更より効果的、あるいは行動修正そして環境変更と共に相乗効果があるかどうかを決定することはできなかった。(Dr.Kawano訳)
■犬における不安あるいは攻撃性と痒みの関連性
Association of pruritus with anxiety or aggression in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Oct 1;233(7):1105-11.
Klinck MP, Shofer FS, Reisner IR.
目的:犬における痒みと不安関連性そして攻撃性行動の間の関連性を評価すること。
設計:横断的調査
動物:1歳~8歳までの238頭の犬
方法:一般的な痒みスコア(0~10段階のVAS)や不安関連性そして攻撃性行動の頻度などの情報を3つの個人病院で選ばれた飼い主への調査から集積した。
結果:痒みの中央スコアは2.4だった。痒みスコアに基づいて2つのグループ(非そう痒群[0 - 2.4]とそう痒群[2.5 - 10])に分けた。攻撃性、孤独なことへの反応、雷雨、あるいは騒音、あるいは家族ではない人、動物または物に関して、非そう痒群とそう痒群の犬の間に有意な違いはなかった。グルココルチコイドで治療しなかった犬(57/197 [29%]).に比べ、グルココルチコイド(18/37 [49%])で治療した犬において、雷雨あるいは騒音に対して有意により反応していることが事後検出力分析で明らかになった。
結論と臨床関連:犬において痒みと攻撃性、不安あるいは恐怖行動の間に関連性は見出されなかった。グルココルチコイドで治療している犬において、雷雨あるいは騒音に対してより大きな反応が見られた。これらの所見はある皮膚病あるいは痒みのコンディションと行動の間に関連性の可能性は排除できない。しかし、併発する行動異常は皮膚疾患に起因するとは想定できず、皮膚疾患だけの治療で解決すると予想することも出来ない。行動疾患とそう痒疾患に罹患する犬は両方のコンディションの主要な治療が必要である。犬の行動において疾患とグルココルチコイドの影響を検査する更なる研究がさらなる研究が期待される。(Dr.Kawano訳)
■尾追いする犬の血清脂質濃度
Serum lipid concentrations in dogs with tail chasing.
J Small Anim Pract. 2009 Mar;50(3):133-5.
Yalcin E, Ilcol YO, Batmaz H.
目的:尾追いする犬の血清脂質プロファイルを特徴付ける。
方法:尾追いする15頭の犬を研究した。犬の行動歴、臨床症状そして他の医学的評価の結果を基に、それぞれの犬において行動性の診断を下した。強迫的な尾追いを説明する併発した医学疾患に罹患した犬はいなかった。総コレステロール、中性脂肪、高比重リポ蛋白コレステロール、低比重リポ蛋白コレステロールそして超低比重リポ蛋白コレステロールの濃度を測定するために12~16時間絶食した後にそれぞれの犬から採血した。正常な身体検査結果、完全血球計算そして血清生化学プロファイルに基づいて15頭のコントロール犬も登録した。
結果:尾追いする犬はコントロール犬に比べて、総コレステロール(P<0.01)、高比重リポ蛋白コレステロール(P<0.05)そして低比重リポ蛋白コレステロール(P<0.001)が有意に高かった。超低比重リポ蛋白コレステロールと中性脂肪はグループ間で有意差はなかった。
臨床意義:尾追い行動は犬において血清コレステロール上昇と関連があるかもしれない。高血清コレステロール、高比重リポ蛋白コレステロールそして低比重リポ蛋白コレステロールの濃度は、臨床において強迫的な尾追い行動の生化学的なパラメーターとして使えるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■人を咬んだ事のある犬の管理および行動履歴
The management and behavioural history of 100 dogs reported for biting a person
Appl Anim Behav Sci. November 2008;114(1-2):149-158.
Edmond N. O'Sullivan, Boyd R. Jones, Kathleen O'Sullivan, Alison J. Hanlon
この文献は、人を咬んだ事のある犬のオーナー100人に提供してもらった行動および管理履歴データを分析する。データはボランティアの犬のオーナーの電話聞き取り調査で入手した。2つのサブセットのデータを、咬傷事件の報告前に攻撃行動が認知されていなかった犬21頭と攻撃行動の記録があった79頭で作成した。
統計学的に有意に攻撃行動を予測変数は、犬への物理的および言葉によるオーナーの叱責、犬が遊びの口火を切ることおよび綱引きで犬が勝つことを許すことだった。
次第に咬傷事件に至るまでの2ヶ月の管理で予測変数は、家の家具の上にあがる、家族のテーブルから直接食べ物を上げることを許すことだった。
行動学的予測因子は、子供を信用していない、基本命令に反応しない、異なる人々への不定な服従、場所によって様々な服従などだった。
追加の行動学的予測因子は、家族の誰かがいるときだけ破壊行動を示したり吼えるような問題行動を示す、特定の環境で恐怖反応を示す、特定の行動を過剰に示すなどだった。
多変量分析でそれら予測因子の多くと攻撃行動に有意な関連が示された。
その他所見は、かなりの程度の攻撃行動に対するオーナーの許容、不十分または無効な服従トレーニング、成人の家族への咬みつき、犬のその行動に対する自由採食の潜在的影響などだった。(Sato訳)
■犬の血清セロトニン及び脂質濃度と攻撃性の関連性
Relationship between the serum concentrations of serotonin and lipids and aggression in dogs
Vet Rec. July 2007;161(2):59-61.
D Cakiro?lu, Y Meral, A A Sancak, G Cifti
セロトニン及び脂質(トリグリセリド、総コレステロール、低密度リポ蛋白、高密度リポ蛋白、超低密度リポ蛋白)を、18頭の正常犬とオーナーの聞き取り調査、犬オバート攻撃性チャートを参照に行動を評価することをもとに攻撃性と診断された23頭の犬で測定した。攻撃性を持つ犬の血清セロトニン濃度は、正常犬よりも有意に低値だった(P<0.01)が、血清脂質に2群の有意差は見られなかった。(Sato訳)
■同じ家で暮らしている犬(Canis familiaris)と猫(Felis catus L.) の相互関係
Interrelationships of dogs (Canis familiaris) and cats (Felis catus L.) living under the same roof
Appl Anim Behav Sci. September 2008;113(1-3):150-165.
N. Feuerstein, Joseph Terkel
馴化のプロセスで、犬(Canis familiaris)および猫(Felis catus)は、ヒトの環境に適応している何千年にも渡る遺伝的変化が起こっている。両種は世界中に分布するようになり、一緒に飼育する家庭も普通に見られるようになっている。それにもかかわらず、犬の猫の種間コミュニケーションに、それら別々の進化上の発達や異なる社会構造による問題があると広く信じられている。結果的に、両種の受け入れの可能性を考慮する多くの人は、犬猫の一緒に生活する能力について考える。ここで犬と猫が一緒に生活するときの相互関係を、両種間の発達で起こりそうな相関のタイプに影響する多くの因子を判定するために研究した。
2つのアプローチを使用した。(1)動物の"行動"の幅広いデータベースを提供している犬と猫両方のオーナーへのアンケート;(2)それら犬-猫相互作用に対する参加者の家で観察の実行。犬猫に対する2つ別々のエソグラムを、それらのボディランゲージの分析に使用した。
その所見を以下に述べる:両種は他の種に比較的友好な相関を確立する同様の能力を示した;動物の性別は、それらの相互関係の本質にほとんど影響しなかった;若い年齢時(猫は6ヶ月まで、犬は1年まで)に最初にあわせる時、犬より先に猫のもらい受けは、友好な相関の確立に導くことが明らかである。
ある動物により示される他の種に対して反対の意味を持つ特定のボディランゲージを、それら犬猫の大多数は理解したことも示唆された。また両種の最初に会う年齢がより若いほどこの理解は良好だった。
両種を若い年齢で他の存在に会わせることが、各々のボディランゲージの学習を容易にし、結果として友好な関係を確立すると結論付けることが出来る。種間の相関を判定しやすくするさまざまな要因をより理解することは、より人に犬および猫両方の譲渡の不安をなくし、奨励するだけでなく、それらペットのクオリティーオブライフを改善するはずである。(Sato訳)
■人においてγアミノ酪酸(GABA)投与におけるリラクゼーションと免疫増強効果
Relaxation and immunity enhancement effects of gamma-aminobutyric acid (GABA) administration in humans.
Biofactors. 2006;26(3):201-8.
Abdou AM, Higashiguchi S, Horie K, Kim M, Hatta H, Yokogoshi H.
人でストレス状況下におけるリラクゼーションと免疫に関して、経口投与したγアミノ酪酸(GABA)の効果を観察した。2つの研究が行われた。最初の研究では、脳波で13人の患者を評価することによってGABA摂取の効果を評価した。各ボランティアに対する以下の3つのテストの後に脳波(EEG)を検査した:水のみ、GABAあるいはL-テアニン摂取。投与60分後、GABAは水あるいはL-テアニンと比較して、明らかにα波が増加し、β波が減少した。GABAはリラクゼーションを誘発するだけではなく不安を軽減することがこれらの所見から示される。
2番目の研究ではストレスを受けたボランティアの免疫状態において、GABA摂取のリラックスの役割と抗不安効果を確かめるために行われた。8人の高所恐怖症患者を2つのグループ(プラセボ群とGABA群)に分けた。全ての患者にストレスフルな刺激として吊橋を渡ってもらった。患者の唾液に含まれる免疫グロブリンA(IgA)濃度を、橋を渡っている間モニターした。プラセボグループはIgA濃度が著しく減少したが、GABAグループは明らかにより高い濃度であった。結論として、GABAは自然な筋弛緩薬として効果的に働き、リラクゼーションを誘発し、不安を減少させるために投与すると1時間以内で効果が見られる。さらにGABA投与はストレス状況下において免疫を増強することができる。(Dr.Kawano訳)
■毎日の生活で犬に対する電気首輪の使用により起こる臨床症状
Clinical signs caused by the use of electric training collars on dogs in everyday life situations
Appl Anim Behav Sci. Jul 2007;105(4):369-380.
E. Schalke, J. Stichnoth, S. Ott, R. Jones-Baade
犬の訓練に電気ショック首輪の使用は、無視できない論争の対象である。支持者は、それ自体を報酬とする行動をなくす確かな方法で、チョークチェーンのような機械的装置よりもストレス、傷害のリスクが少なく遠く離れて使用できると主張する。反対者は、間違った、または虐待的使用のリスク、痛みや恐怖にそれらの使用が関係するかもしれない事実にもかかわらず、他に変わる訓練方法を使用するという考え、または機会もなく電気首輪の使用の誘惑を引き合いに出す。
この研究の目的は、電気首輪により起こるストレスがあるかどうか調査し、動物福祉に関するそれらの評価に寄与するためだった。14頭の実験ビーグルを標準の繁殖、育成、訓練を確実にするため使用した。心拍数、唾液コルチゾールをストレスパラメーターとして使用した。研究プロジェクトは7ヶ月間行い、各犬は1日1.5時間訓練した。唾液コルチゾールの日周期変異を除外するため、各個体厳密なタイムスロットに振り分けた。訓練と実験自体、外部ストレス因子の影響を除外するため、隔離した建物で行った。
3つの実験群を使用した。A群は獲物である固定された動くウサギのダミーに犬が触れたとき電気ショックを与えた。H群は過去に訓練したハンティング中呼び戻す命令に従わなかったとき電気ショックを与えた。R群は、任意に電気ショックを与えた。すなわち予測できず、脈絡もなくショックを与えた。主要実験は17日間継続した。全ての犬は、最初の5日間自由にハンティングを許した。次の5日間は犬をつないでハンティングをさせないようにした。毎日ストレスパラメーターを判定した。それらの値は、電気首輪使用中に得られた値と比較した。首輪は、前に述べたように7日間使用した。4週間後、電気パルスを受けるとことがない研究エリアに戻された。
A群は唾液コルチゾール濃度に有意な上昇を示さず、R群とH群は有意な上昇を示した。4週間後犬を研究エリアに再導入したとき、同様の結果を維持した。これは、犬がその行動、すなわち獲物に触れることと電気刺激を明らかに関連付けることができ、その結果ストレス因子を予測及び管理でき、かなりの、または持続ストレス指標を示さなかったと結論を導く。(Sato訳)
■犬の訓練における優位v.s.リーダーシップ
Dominance Versus Leadership in Dog Training
Compend Contin Educ Pract Vet. July 2007;29(7):414-417;432. 8 Refs
Sophia Yin, DVM, MS
犬における分離不安、恐怖による攻撃または一般的に手に負えない行動を治療するかどうか、実質的に全ての獣医行動主義者、応用動物行動主義者、ドッグトレーナーは、より良い行動への解決は、オーナーに予測可能及び本質的に信頼される、良いリーダーになるよう教育することに賛成する。しかし、リーダーになることを学ぶことは、オーナーが犬より優位に立つべきということか?2、30年前、野生の狼の習性に関する社会的優位性理論と考えに犬訓練法が誘導され、野生の狼は力を通し高いランクに位置づけられるため、チョークチェーン、ピンチカラー、電気首輪の使用で悪い行動にひどい目を合わせることに焦点が当てられた。それから、ウルフの行動に関連する犬の行動の理解がより明らかになり、学習の科学はなぜ動物がそのように行動するのか、どのように行動が修正できるのかということの我々の理解を改善している。
この文献は、優位性理論と誤った考えに関する所、優位性の定義をもとに伝統的な訓練法を論じ、なぜ犬の行動は狼の習性または動物の優位性モデルをもとにすべきかという説明、リーダーシップと優位性の違いを明らかにし、非対面法を使用しどのようにリーダーシップを発揮するか(攻撃性のある犬でさえ)を示す。(Sato訳)
■犬における花火恐怖症の治療で2つのself-help CDベースの脱感作と犬鎮静フェロモンを使用した反対条件付けプログラムの前向き研究
A prospective study of two self-help CD based desensitization and counter-conditioning programmes with the use of Dog Appeasing Pheromone for the treatment of firework fears in dogs (Canis familiaris)
Appl Anim Behav Sci. Jul 2007;105(4):311-329.
Emily D. Levine, Daniela Ramos, Daniel S. Mills
この研究の目的は、犬における花火恐怖症の治療で2つのself-help CDベースの脱感作と犬鎮静フェロモン(DAP)を使用した反対条件付けプログラムの効果を評価し、また訓練の経過とオーナーのコンプライアンスを評価することだった。2004年8月から10月の間の8週間で44頭の個体を研究した。犬は異なるCDベースプログラムを使用する2つの治療群に振り分けた。
いかなる個人的な指導もせず8週間のCDプログラム実行後、花火が一般的に使用される時期(11月と1月)のあとに2回の電話による追跡調査を行った。42頭は最初の4週間の訓練を完遂し、38頭は8週間の訓練を完遂した。36頭は最初の追跡調査を満たし、29頭は2回目の追跡調査も満たした。効果の評価は、治療前と治療後のその自然な反応(すなわち家庭での犬の行動)のオーナーの報告、問題の音の新規録音に対する行動(すなわち行動クリニックでの犬の行動)のビデオ撮影で判定した。CDに対する犬の反応に関する変化の大半は、2ヶ月目の訓練で有意な変化はなく、最初の1ヶ月の訓練で起こった。
本当の暴露に関し、総重症度スコアと全体の恐怖スコア両方において、2回の追跡調査期間で有意な改善報告があった。「覚性」行動を除外し、最初の追跡調査ですべての個々の行動の平均重症度スコアで有意な改善があった。不適切な排泄は、2回目の追跡調査で完全に解消した唯一の行動だった。新しいCD録音に対する反応で起きた恐怖行動のビデオ録画で治療前と治療後に差は見られなかった。付随する指導パンフレットによる方法や詳細に関しCDプログラムはもう一つのものとかなり異なっていたが、治療群の2回の追跡調査時に総重症度スコア、全体スコアに有意差は見られなかった。
オーナーの83%はそれぞれのCDに対する付随指導パンフレットを90%以上呼んだと主張したが、指導のほとんどを理解したと言ったのは48%のみだった。約90%が、もしかれらが花火を怖がるほかの犬を飼ったとしたら、CDベース脱感作と反対条件付けプログラムの使用を再び考慮するだろうと報告した。それらの結果は、DAPと組み合わせたself-help CDベースの音脱感作プログラムの使用は、花火恐怖症の犬のいくらかのオーナーに満足のいく結果をもたらすが、コンプライアンスがかなりの割合のオーナーに問題となるかもしれないことを示唆する。(Sato訳)
■気質テストに合格した譲渡犬の攻撃行動
Aggressive behavior in adopted dogs that passed a temperament test
Appl Anim Behav Sci. Aug 2007;106(1-3):85-95.
E'Lise Christensen, Janet Scarlett, Michael Campagna, Katherine Albro Houpt
アニマルシェルターから攻撃傾向のある犬の譲渡を防ぐための標準的気質試験の効果を評価している研究は比較的少ない。この研究目的は、以下の仮説を評価することだった。(1)アニマルシェルターで標準気質試験に合格した犬(すなわち攻撃傾向がない)が譲渡後攻撃行動を起こす割合、(2)それらの攻撃行動は、防御または恐怖関連行動より、テリトリー性攻撃、捕食性攻撃、種間攻撃、オーナーに向けた攻撃のような気質テスト中に効果的に刺激されないかもしれない行動に対し重きをおくだろう。それら仮説を研究するため、あるシェルターから気質試験をし、その後譲渡された67頭の犬のオーナーに13ヶ月以内に電話で聞き取り調査した。調査はジャンプする、家の中で排泄、分離関連行動、吼える、攻撃行動に関して質問した。それら調査をもとに、種々の攻撃頻度、攻撃の度合いをそれらの犬で推定した。このシェルターで使用されている気質テストに合格した犬の評価で、譲渡後に40.9%の犬が突進、うなる、咬む、及び/または咬み付くなどを行っていることがわかった。吼えるまでを含めるとこの比率は71.2%まであがった。
われわれの結果は、この特定の評価プロセスを使用する気質試験の間に確かに起こらない攻撃傾向(テリトリー、捕食性、種間攻撃性)の種類が確実にあることを示した。それら所見は、この気質試験が攻撃の確かな種類を確定できないと示唆する。気質テストを通し公衆衛生を保護するため、気質テスト結果とシェルター及び/または育成行動評価、オーナーへの譲渡前及び譲渡後行動カウンセリングの提供、他の教育の場への奨励を組み合わせて考慮すべきである。(Sato訳)
■最近譲渡された子犬(イエイヌ)で夜中の粗相及び障害の報告に対する犬鎮静フェロモン、他の環境および管理因子の影響を調査するプラセボ-コントロール研究
A placebo-controlled study to investigate the effect of Dog Appeasing Pheromone and other environmental and management factors on the reports of disturbance and house soiling during the night in recently adopted puppies (Canis familiaris)
Appl Anim Behav Sci. Jul 2007;105(4):358-368.
Katy Taylor, Daniel S. Mills
夜中の障害及び粗相は、新しい犬のオーナーが直面する一般的な問題である。それらは、典型的社会性動物における子犬の発育状況とその新しい環境及び/または分離不安のミスマッチの結果として起こるかもしれない。
この研究の目的は、このプロセスに影響するかもしれない犬鎮静フェロモン(DAP, Ceva Sante Animale)同様、ある程度の管理、環境因子の影響を検査することだった。DAPは、精神鎮静フェロモンの持続的提供により、新しい家に子犬を落ち着かせる手助けになるかもしれないと提唱されている。
これを検査するため、新しい家に迎えられる6-10週齢の60家系の子犬で、DAPの二重盲検プラセボ-コントロール試験を実施した。子犬の到着の2,3日前に、4週間フェロモン類似物質の徐放を行うよう作られたverumまたはプラセボのプラグイン散布装置をボランティアオーナーに提供した。オーナーには新しい家庭で最初の夜から8週間、前夜の障害と粗相を毎日報告してもらった。治療の効果と共に子犬の性別、その母親の環境、パピークレートの使用、他の犬と共に寝る、オーナーの体験を、夜の障害及び粗相の総数を説明する一般線形モデルに含めた。
他の犬と寝ることは、夜の子犬の不安傾向をほぼ0に減らした。単独で寝る子犬の70%以上は、最初の夜の間不安を感じていた。2ヶ月間の夜の障害平均総数は、その家庭でほとんど最初の週の5-6回の夜だった。狩猟犬腫のみの症例で有意なDAP処置の効果が見られ(p=0.003)、プラセボを処置した狩猟犬は中央値9回の夜に鳴き、verumを投与した犬は中央値3回の夜に鳴いた。粗相をする子犬の夜の総数にDAP投与の効果は観察されなかった(p>0.05)。しかし、夜の間クレートを設置した子犬(p=0.04)または母犬がいる環境から来た子犬(p=0.006)は、新しい家庭で最初の2ヶ月間、粗相の報告が有意に少なかった。(Sato訳)
■シェルターからの犬のハウストレーニングがうまくいくようにするオーナーへの譲渡前のカウンセリングの効果
Effects of preadoption counseling for owners on house-training success among dogs acquired from shelters
J Am Vet Med Assoc. August 2007;231(4):558-62.
Meghan E Herron, Linda K Lord, Lawrence N Hill, Ilana R Reisner
目的:シェルターからもらい受ける犬のハウストレーニングはうまくいくようにするため、オーナーへの譲渡前のカウンセリングの効果を確かめる
構成:前向き研究
サンプル集団:11頭の犬のオーナー
方法:参加者は無作為に処置群(n=54)とコントロール群(59)に振り分けた。処置群のオーナーには、ハウストレーニングに関するカウンセリングを行った(5分間)。コントロール群のオーナーにカウンセリングは行わなかったが、そのほかの譲渡手順は全て処置群と同一のものを行った。全ての参加者に1ヵ月後電話による調査を行い、標準調査方法を使用しハウストレーニング状態及び関連問題に対する評価を行った。データは群間比較した。
結果:ほとんどの譲渡された犬は、1ヵ月後オーナーによるハウストレーニングが成功したと考えられた。さらに、コントロール群のオーナーよりも譲渡前のカウンセリングを行ったオーナーによりハウストレーニングが成功した犬のほうが多いと考えられた(86.4%vs98.1%)。コントロール群のオーナーよりも、カウンセリングを受けたオーナーは、犬に対しハウストレーニング中に言葉でしかる頻度が少なく、尿-、糞-で汚れたところに酵素クリーナーを使用する頻度が多かった。
結論と臨床関連:結果は、短時間の譲渡前のカウンセリングが、オーナーによるシェルターから譲渡された犬のハウストレーニングの成功率をより高めることを示唆している。このようにペットを飼うときのオーナーへのカウンセリングは、不適切な排泄行動を防ぐのに有効かもしれない。獣医師とアニマルケアスタッフは、ハウストレーニング同様他の健康管理及び行動学的ニーズに対し、新しいペットオーナーにカウンセリングする時間を割くようにすべきである。(Sato訳)
■犬認知機能障害の犬の症例における栄養サプリメント-臨床試験
Nutritional supplementation in cases of canine cognitive dysfunction-A clinical trial
Appl Anim Behav Sci. Jul 2007;105(4):284-296.
Sarah Elizabeth Heath, Stephen Barabas, Paul Graham Craze
犬認知機能障害(CCD)は、老齢犬やオーナーの生活にかなり影響する臨床的状態である。栄養サプリメントがその状態の管理に使用できると仮説を立て、プラセボと比較し特定サプリメントの治療効果を調査する試験を行った。この研究はUKの広範囲地域の20の動物病院と臨床環境で行った。基準期間の7日間、研究期間後7日間を含む56日間研究した。治療21日、28日、42日目の治療群とプラセボ群で、見当識障害スコアーの改善、相互作用や粗相の行動の変化に有意差があった。それら結果は、犬認知機能障害の症例における治療の価値ある要素として栄養サプリメントの臨床的医療を支持する。(Sato訳)
■犬の認知機能障害症候群:罹病率、臨床症状、神経保護機能食品による治療
Canine cognitive dysfunction syndrome: Prevalence, clinical signs and treatment with a neuroprotective nutraceutical
Appl Anim Behav Sci. Jul 2007;105(4):297-310.
Maria Cristina Osella1, Giovanni Re2, Rosangela Odore, Carlo Girardi, Paola Badino, Raffaella Barbero, Luciana Bergamasco
認知機能障害症候群(CDS)は、老犬における進行性の神経変性疾患である。年齢が関係する行動変化は、早期診断治療に有効な指標かもしれないので、この研究の第一の目的は、老令犬の一般集団におけるCDSの臨床症状の有病率を調査することだった。2つ目の目的は、オープンラベル臨床予備試験を用いた神経保護機能食品(Senilife(r), Innovet Italia srl, Rubano, Italy)の使用を評価することだった。
犬は、行動学的診察を紹介されなかった老齢集団から選出した。行動チェックリストのアンケートを以下のカテゴリーでまとめた行動学的項目を評価するため答えてもらった。項目は見当識障害(D)、社会-環境相互作用(I)、睡眠-起床サイクル(S)、粗相(H)、一般活動性(A)-(DISHA)だった。各オーナーに行動学的症状の頻度を尋ねた:ない、まれ、しばしば、常に。
最初の調査で124頭の犬を研究した。調査で検査した124頭中22頭は、除外基準(臨床的および・または感覚重度欠陥)をもとに除外し、42頭は1つのカテゴリーで変化があり、33頭は2つ以上のカテゴリーで症状があった。その結果、75頭はCDSに一致した症状があった。この集団の中でCDSに罹患した8頭で、2つ目の計画である神経保護機能食品Senilife(r)のオープンラベル臨床予備試験を行った。Senilife(r)は1カプセル中25mgホスファチジジルセリン、50mg標準イチョウエキス、33.5mg/dアルファトコフェロール、20.5mgピリドキシンを含み、体重5kgあたり1カプセルを投与する。4ポイント頻度スケール(ない、まれ、しばしば、常に)を用い、DISHAによる行動の頻度の割合をオーナーに尋ねた。
投与後、各カテゴリーの全ての症状を評価するため、5点スケール(すごく良い、わずかに良い、同じ、わずかに悪い、すごく悪い)でオーナーに尋ねた。初回来院時(V0)、オーナーに方法について手短に説明した。研究中を通し、行動学的アドバイスは何も与えず、Senilife(r)で適切な治療中は、コントロール的来院(開始V0、V1(28±3日)、V2(56±3日)、V3(84±3日)を実施し、オーナーと対談した。Senilife(r)を投与した犬は、V0とV3でかなりの有意差を示した(p<0.001)。Senilife(r)における予備的結果は、症状の寛解を示さない犬でさえ、CDS関連症状の著しい改善を示した。(Sato訳)
■猫のトイレ行動に対する消臭剤の影響
Effect of an odor eliminator on feline litter box behavior
J Feline Med Surg. October 2006;0(0):.
Nicole Cottam, Nicholas H Dodman
トイレの臭いをなくすことは、猫の不適切な排泄に対する重要な治療要素になるかもしれない。Zero Odorトイレスプレーを使用すると、おそらくその消臭能力により猫がそのトイレを優先して利用するのが増えるかどうかを判定するため、3相研究を行った。第1相でスプレーをしたトイレと、しなかったトイレのトイレ優先度試験を行った。第2相で、スプレーを使用する前と、その後でトイレに対し猫の不満を示す行動(箱の縁、床、壁をひっかく、トイレに入るのを躊躇する、箱の縁の上でバランスを取る、箱の外で排泄する)の発生数を比較した。第3相は基準相と家の全てのトイレにスプレーした試験相の時のトイレの外に排泄した頻度を測定した。第2相で猫のトイレの不満に関する行動は有意に少なく、第3相で不適切な排泄は有意に少なかった。それら所見は、Zero Odorトイレスプレーの使用が明らかにトイレの臭いを少なくし、猫のトイレに対する誘因性を増加させたことを示唆する。(Sato訳)
■ブルテリアの尾追い
Tail chasing in a bull terrier.
J Am Vet Med Assoc. 1993 Mar 1;202(5):758-60.
Dodman NH, Bronson R, Gliatto J.
持続的に尾を追うブルテリアを臨床的、脳波検査的に、そして頭部CTで検査した。 その犬には抗けいれん薬(ジアゼパム)と純粋なオピオイド拮抗薬(ナロキソン)も投与した。 犬は病的に興奮した状態に見え、環境から解離された。脳波検査で側頭葉での最も顕著な発作パターンが明らかになり、CT検査で軽度水頭症が明らかになった。ナロキソンは尾追いに対して効果的ではなかったが、ジアゼパムは尾追いを効果的にコントロールした。抗けいれん薬療法中止すると攻撃性が見られて安楽死せざるをえなかった。
検査と治療の結果から、もしかしたら亜鉛吸収障害が関連しているかもしれない尾追いの遺伝性メカニズムを暗示した。(Dr.Kawano訳)
■強迫性障害の徴候としての食糞症:症例報告
J Behav Ther Exp Psychiatry. 1995 Mar;26(1):57-63.
Coprophagia as a manifestation of obsessive-compulsive disorder: a case report.
Zeitlin SB, Polivy J.
食糞症は一般的ではないが、精神病院の広汎性の脳病に罹患した成人の患者そして、標準以下の知性をもつ個人の間で見られる。我々は正常な認識機能を持った成人における食糞症の症例をここで解説する。完全な評価で、この食糞症が強迫神経障害の徴候であることが分かった。問題行動は、暴露と反応防止を含んでいる行動学的治療プログラムに反応した。(Dr.Kawano訳)
■強迫性障害におけるドパミンの役割:前臨床および臨床所見
The role of dopamine in obsessive-compulsive disorder: preclinical and clinical evidence.
J Clin Psychiatry. 2004;65 Suppl 14:11-7.
Denys D, Zohar J, Westenberg HG.
強迫神経症 (OCD)は選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)の抗脅迫効果により、セロトニン系と密接に関連した頻繁で慢性的な精神医学障害である。
強迫神経症のセロトニン仮説に限界は、セロトニン再取り込み阻害剤で十分試験した後、明らかな改善がない強迫神経症患者が相当数あることである。これらの患者が継続中のセロトニン再取り込み阻害剤の治療に抗精神病薬に追加することによる効果があるかもしれないという相当の証拠がある。そしてドーパミンも強迫神経症の病態生理学に役割を果たしているかもしれないことを示している。この再調査において強迫神経症におけるドーパミンの役割に関する前臨床そして臨床証拠が要約されている。(Dr.Kawano訳)
■フルオキセチンまたはクロミプラミンの長期投与による猫尿マーキングの管理
Control of Urine Marking By Use of Long-Term Treatment with Fluoxetine or Clomipramine in Cats
J Am Vet Med Assoc 226[3]:378-382 Feb 1'05 Clinical Trial 15 Refs
Benjamin L. Hart, DVM, PhD, DACVB; Kelly D. Cliff, DVM; Valarie V. Tynes, DVM; Laurie Bergman, VMD
目的:猫尿マーキングを減らすことに対し、フルオキセチンとクロミプラミンに違いがあるかどうか、8週間以上投与した猫でマーキングの減少が持続するかどうか、8週間以上投与した猫で突然の薬剤投与中止後マーキングの再発が少ないかどうか、治療が成功したが、薬剤中止後再発した猫で再度同じ薬剤治療により管理できるかどうかを調査する
構成:陽性対照二重盲検臨床試験
動物:不快な尿マーキングを行い1歳以上の不妊済み猫22頭(メス2頭、オス20頭)
方法:週に3回以上マーキングを行う猫に、フルオキセチン(1mg/kg1日1回経口)またはクロミプラミン(0.5mg/kg1日1回経口)を16週間投与し、その効果を比較した。突然フルオキセチン投与を中止した後、16週目、32週目にマーキングの再発を判定した。薬剤投与を中止し、マーキングの再開した猫で8週間のフルオキセチン投与を行い、マーキングの減少を最初の治療が成功した8週間のものと比較した。
結果:フルオキセチンとクロミプラミンの効果は同等だった。8週以上の投与でマーキング減少効果が増加した。フルオキセチン投与終了後、マーキングの再開はほとんどの猫で起こった。フルオキセチンで当初治療に成功した猫は、投与の繰り返しで同様の反応を示した。
結論と臨床関連:尿マーキングの治療でクロミプラミンとフルオキセチンは同等だった。より長い投与で効果は増加した。ほとんどの猫は投与中止後マーキングを再開した。2度目の治療も最初と同様の効果が期待できる。(Sato訳)
■尿のマーキングを呈する猫におけるクロミプラミンの効果
Effects of Clomipramine on Cats Presented for Urine Marking
Gary M. Landsberg, BSc, DVM, Diplomate ACVB and Andrea L. Wilson, BSc, DVM
少なくとも週に4回の直立した尿のマーキングを示す25頭の猫が評価された。医学精査後、4週間のクロミプラミン試験を0.54mg/kg(経口投与、24時間毎)の平均投与量を使って始めた。同時に行動もしくは環境上の修正は適用しなかった。 クロミプラミンを使用し、4週間以内で75%以上スプレーの減少した25頭中20頭で、尿スプレーにおいて統計学的に有意(p<0.0001)な減少があった。副作用は軽度であった。20頭の猫を更に5ヶ月間経過観察した。15頭の猫はスプレーをコントロールするために、減量した薬物治療が必要であった。(Dr.Kawano訳)
■人の加齢と痴呆に関する動物モデルとしての犬
The canine as an animal model of human aging and dementia.
Neurobiol Aging. 1996 Mar-Apr;17(2):259-68.
老齢犬は脳の老化における病理学の進歩を研究し、学習、記憶、そして他の認知能にこれらの所見をリンクさせるような優れたモデルとなる多くの特徴を示す。犬科動物はニューロン及びそのシナプス野に老人斑を引き起こすと思われる広範囲なβ-アミロイド沈着を発現する。これらの斑は早期に拡散した亜型の第一段階である。老齢犬はリポフスチンの蓄積、大脳の血管変化、心室の拡張そして細胞骨格の変化をも示す。神経原繊維変化 (NFTs) は老齢犬では見られない。
従って老齢犬の脳は通常アルツハイマー病の前段階と考えられている早期の変性を研究する適切なモデルを提供する。この仮説は行動のデータによってもサポートされる。我々はβ-アミロイドの沈着範囲が認知機能の選択測定の低下と関連があることを見出した。これらのデータは神経原繊維変化 (NFTs)が存在しない時のβ-アミロイド沈着と認知能低下と相関に関する最初の証拠を提供する。我々が人の老化モデルとして老齢犬を使うという4つの証拠を要約する。
(a) 老齢犬は老人で観察されるのと同様な神経病理学の一面を発展させる。
(b) 獣医師が多くの犬が年齢と関連する認知能障害の臨床的な症候群を示すことに気付いている。
(c) 老齢犬は認知能の様々な神経心理学的検査に関して欠けている。
(d) β-アミロイドの蓄積程度は犬における認知機能と関連がある。
これらのデータは老齢犬が年齢と関連した認知能低下(ARCD)、加齢と関連した早期の神経変化そして老人斑形成の初期の研究において特に役に立つモデルであることを示している。(Dr.Kawano訳)
■愛護協会から譲渡後最初の1年間の子猫の粗相と攻撃性の普及率
Prevalence of House Soiling and Aggression in Kittens During the First Year After Adoption From a Humane Society
J Am Vet Med Assoc 224[11]:1790-1795 Jun 1'04 Survey 18 Refs
John C. Wright, PhD, and Richard T. Amoss, BA
目的:アニマルシェルターから譲渡された子猫の粗相、そしてヒトへの攻撃性、他のネコへの攻撃性の頻度を判定する。また、それらの行動頻度が、不妊した年齢に関係するかどうか。
構成:調査
動物:6-13週齢に愛護協会から譲渡された126頭の子猫
方法:子猫を譲渡してから約4、18、52週目にオーナーに電話調査を行い、行動調査アンケートを送付した。オーナーにはその前30日間の特定行動を子猫が示したかどうかを指摘してもらった。63頭は、譲渡前に不妊していた。残りの63頭は、2回目の行動調査後5-7ヶ月齢で不妊した。
結果:譲渡したその月に、64頭(50.8%)は、最低1-3の行動を示したと報告をうけた。3つの行動が関連したという所見はなかった。トイレの外に排尿、排便したと報告されたネコの比率は、1回目から2回目の調査で低下し、3回目は低値を維持した。ヒトに攻撃性を示す、そして他のネコに攻撃性を示すと報告されたネコの比率は、1回目から2回目の調査で低下したが、3回目の調査で再び増加した。その3つの行動と不妊時の年齢に有意な関連は認められなかった。
結論と臨床関連:結果は、愛護協会から譲渡された子猫の行動に関する問題は一般的で、特に最初の1ヶ月はそうである。(Sato訳)
■攻撃性と甲状腺機能低下症
Aggression and Hypothyroidism
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:13 Jul'04 Case Report 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Fatjo J, Stub C, Manteca X.; Vet Rec 2002;151:547-548
イントロダクション:
背景:犬の攻撃行動は、少数の症例で甲状腺機能低下症によるものとされている。多くの症例で甲状腺機能低下症の臨床症状は見られないといわれている。攻撃性は有効なしつけが困難な問題行動なので、全ての基礎にある原因の確認がより治療の成功をもたらすかもしれない。
目的:この報告の目的は、攻撃性のある4頭の犬で、甲状腺機能検査結果と治療に対する反応を述べることである。
サマリー:
手順:家族に対する優勢関連攻撃性の所見に一致する3頭と、他人に対する恐怖による攻撃性を持つ1頭を、行動履歴、身体、神経学検査、全血数、生化学、T4血清濃度、犬甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)を用いて評価した。全頭レボチロキシン0.02mg/kg1日2回投与し、オーナーへの攻撃行動を起こすきっかけとなるような状況を避けるよう指示した。
結果:2頭の犬にわずかな体重増加が認められた以外には、身体、神経学的検査、ヘモグラム、血清生化学に異常は見つからなかった。攻撃行動は全頭「長期」存在していた。2頭は2、18ヶ月の間に攻撃の頻度と強さが増していた。他の2頭は、最近来院の理由となった1回の激しい攻撃性を見せていた。全頭血清T4濃度は正常以下、血清c-TSH濃度は正常以上だった。レボチロキシン投与から8ヵ月後、完全には解消しなかったが全頭攻撃性は低下した。そのうち1頭は、「治療の反応が悪く」他の犬より改善が少なかった。
結論:甲状腺機能低下症は攻撃行動の閾値を下げる可能性がある。
臨床への影響:
それらの症例の甲状腺機能検査は、甲状腺機能低下症を支持する一方、攻撃行動の悪化以外の臨床症状の欠如でその診断を疑わせるがありえないことではない。治療への反応は十分述べられてなく、攻撃性低下へのレボチロキシン投与効果は、オーナーに同時に攻撃性のきっかけとなる状況を避けるよう支持したので判定が難しいかもしれない。攻撃性の少数の他の症例は甲状腺機能低下症により誘発、または悪化していると思われるが、それはその疾患の珍しい症状と思われる。(Sato訳)
■年齢と行動継続期間に関連した、オス犬の問題行動に対する去勢の効果
Effects of Castration on Problem Behaviors in Male Dogs with Reference to Age and Duration of Behavior
J Am Vet Med Assoc 211[2]:180-182 Jul 15'97 Cohort Study 7 Refs
Jacqueline C. Neilson. DVM; Robert A. Eckstein, DVM, PhD; Benjamin L. Hart, DVM, PhD
Behavior Service, Veterinary Medical Teaching Hospital, School of Veterinary Medicine, University of California, Davis, CA 95616
目的:オスの成犬における、9つの問題行動が、去勢により影響を受けるかどうかを明らかにし、去勢の行動学的効果について、問題行動の持続期間と年齢の影響を調査することです。
計画:同時発生集団研究。
動物:ターゲットとなる問題行動のうち1つ以上を持ち、去勢した時点が2歳以上になる57頭のオス犬。
手順:去勢前から、1つ以上の問題行動を持った犬であることを確認し、去勢後、不快な行動に関する、改善(減少)を評価するため、オーナーへの電話連絡によりデータを集めました。問題行動は、家庭内でのマーキング、マウンティング、徘徊、無生物刺激に対する恐怖、家族に対する攻撃、家族以外の人に対する攻撃、同居犬に対する攻撃、同居犬以外の犬に対する攻撃、家庭内に侵入した人への攻撃を対象としました。
結果:無生物刺激への恐怖、あるいは家族以外の人への攻撃に関する去勢の効果は、著しいものではありませんでした。マーキング、マウンティング、そして徘徊に関して、去勢は、犬の60%以上における50%の改善と、犬の25から40%における90%以上の改善を導きました。残った行動に関しては、去勢で、犬の35%以下における50%以上の改善を認めました。去勢時点での問題行動期間や、犬の年齢と改善率の間に、有意な相互関係は認めませんでした。
臨床関連:マーキング、マウンティング、そして徘徊を改善するのに、去勢は最も有効でした。家族に対する攻撃行動を含めたさまざまな攻撃行動に関して、去勢は、攻撃を減少させるのに有効だった犬もいますが、1/3以下しか著しい改善を期待するには至りません。犬の年齢と問題行動期間は、去勢が有効となるかどうかを予測するものになりませんでした。(Dr.K訳)
■食糞する犬の予防に対する、2つの治療法の比較
Comparison of two treatments for preventing dogs eating their own faeces.
Vet Rec 153[2]:51-3 2003 Jul 12
Wells DL
自分の糞を食べる問題行動を持った、28頭の犬を、2つの方法で治療しました。半数は、シトロネル・スプレー首輪で、もう半数は、音による治療を行いました。治療の相対的効果を評価するため、犬の糞を食べる程度を、治療を開始する1週間前、治療中のそれぞれ3週間、治療を終了した4週目に、オーナーに評価してもらいました。オーナーによる評価では、両治療に関して、第1週目に問題行動が有意に減少しましたが、音療法で治療した犬において、その後発生が増加しました。問題行動は、スプレー首輪で、治療した犬において、もっとも効果的に減少し、治療期間中減少し続けました。(Dr.K訳)
■イヌの嵐恐怖症の治療としてのクロミプラミン、アルプラゾラム、行動修正
Use of Clomipramine, Alprazolam, and Behavior Modification for Treatment of Storm Phobia in Dogs
J Am Vet Med Assoc 222[6]:744-748 Mar 15'03 Prospective Study 4 Refs
Sharon L. Crowell-Davis, DVM, PhD, DACVB; Lynne M. Seibert, DVM, PhD, DACVB; Wailani Sung, PhD; Valli Parthasarathy, PhD; Terry M. Curtis, DVM
目的:犬の暴風恐怖症の治療としてクロミプラミン、アルプラゾラム、行動修正の使用を評価すること
構成:前向き公開臨床試験
動物:暴風恐怖症の犬40頭
方法:犬にクロミプラミンを、2mg/kg、PO、12時間毎3ヶ月、それから1mg/kg、PO、12時間毎2週間、そして0.5mg/kg、PO、12時間毎2週間投与した。アルプラゾラムは、予想できる嵐の1時間前に必要ならば0.02mg/kg、POで投与し、必要ならば4時間ごとに投与した。減感作と反対条件づけを、オーナーにより家で、評価期間中に恐怖の反応を引き起こすレベルの嵐の音刺激を与えることで実施した。
結果:研究を完遂した32頭中30頭は、care-givers' global評価により測定し、ある程度の改善を示した。2人のオーナーは、暴風恐怖症が改善したと考えた。パンティング、落ち着きなく歩く、震え、オーナーのそばに擦り寄る、隠れる、過剰な流涎、破壊行動、過剰な鳴き声、自虐、不適切な排泄すべて治療中有意に減少した。改善は雨だけ降っているときよりも、本当の嵐の時(雨、雷、稲妻)のほうが良く見られた。音刺激に対する反応は治療中変化しなかった。研究後4ヶ月でも改善を維持した。
結論と臨床関連:クロミプラミン、アルプラゾラム、行動修正の組み合わせは、効果的に嵐恐怖症を減少させる、またはなくす事が出来る。嵐の音刺激の使用により改善は評価できなかった。(Sato訳)
■屋外猫から、屋内猫への変更
Transforming an Outdoor Cat Into an Indoor Cat
Vet Med 95[11]:830 Nov'00 Behavior Q&A 0 Refs
Katherine A. Houpt, DVM, DACVB
質問:私の患者の一人に、猫を室内外で飼育している方がおります。彼は、猫を室内だけにしたいと考えております。容易に変更する良い方法はあるでしょうか?
解答:室内排泄に順応させるよう、トイレと一緒に1~2週間小さな部屋に猫を入れ、行動を制限してもらうのが良いでしょう。それから、家全体を猫が移動できることを許します。一つの部屋と家全体との違いは、猫を満足させるのに十分と思われます。十分な運動をしていないでしょうから、カロリーを消費するよう、狩猟活動を刺激するように釣り竿、あるいは羽付きオモチャで、遊ぶよう促したら良いでしょう。そして、ビデオテープや、窓際の高い場所を提供すると、猫にとっての、室内環境を充実させることが出来ます。
オーナーは、猫1頭あたり2つのトイレを準備するべきです(多頭飼育では、全体の猫の数プラス1)、そして、猫が屋外で何箇所か排泄することが出来た時と同じように、毎日トイレをきれいにしておくべきです。もし、猫がトイレを使わないとか、トイレで排泄をしないならば、屋外排泄の場所をまねて、トイレ床表面に土を加え、猫がトイレに馴染むにつれ徐々に土の量を少なくしていくことも出来ます。オーナーは、猫が絨毯よりも好きな麻の爪磨ぎ柱を、提供するべきです。あるいは、もし猫が好むなら、平面の爪磨ぎを使用することも出来ます。これは大抵、イヌハッカを染み込ませたボール紙で出来ております。
猫が新しい狭い環境に順応すれば、必ず、飼い主は遊びと運動のための特別な時間を猫に提供するようにします。(Dr.K訳)
■強迫神経障害を持った犬猫の臨床的特徴と結果:126症例(1989-2000)
Clinical Features and Outcome in Dogs and Cats with Obsessive-Compulsive Disorder: 126 Cases (1989-2000)
J Am Vet Med Assoc 221[10]:1445-1452 Nov 15'02 Retrospective Study 53 Refs
Karen L. Overall, VMD, PhD, DACVB, and Arthur E. Dunham, PhD
目的:強迫神経障害(OCD)を持った犬と猫における、臨床的特徴とその結果を調査することです。
計画:回顧的研究
動物:103頭の犬と、23頭の猫
手順:OCD患者の記録を、臨床的特徴、使用した薬物、行動修正の程度、そして結果に関して解析しました。
結果:OCDに罹患した犬の大部分は、繁殖家から入手されたものでした。オス犬は、メス犬を有意に上回る数でした(2:1)。猫では少例数が少ないですが、メスがオスの数を、2:1と上回りました。罹患した殆どの犬が、2人上の人間と他の犬、または猫と家庭内で生活しており、形式的ないくつかの訓練をされていました。オーナーは、高い割合で行動修正に応じました。行動修正と薬物治療の併用は、大部分の動物で、OCDの程度と頻度を大幅に減少させました。クロミプラミンは、犬における治療に関し、アミトリプチリンよりも有意に有効でした。犬1頭と猫1頭のみ、研究期間中OCDのために安楽死となりました。
結論と臨床関連:犬のOCDは、訓練不足、家族刺激の不足、あるいは社交制限と関連を示しません。猫のOCDは、環境と社交ストレスに関連しているかもしれません。強迫神経障害は、社会化成熟期に現れ、散発的、遺伝的様式を持つかもしれません。適切な治療(一貫性のある行動修正と、クロミプラミンを用いた治療)を用いて、大部分の犬と猫における、臨床徴候の頻度と程度は、50%以上減少するものと考えられます。成功は、オーナーの理解とコンプライアンス(応諾)、そして、OCDは、治癒できないがうまくコントロールできるのだという、道理をわきまえた期待によると思われます。(Dr.K訳)
■社会的・空間的制限下にあるイヌにおける慢性ストレスⅠ:行動反応
Beerda B, Schilder MB, van Hooff JA, de Vries HW, Mol JA.
Physiol Behav 1999 Apr;66(2):233-42
Chronic stress in dogs subjected to social and spatial restriction. I. Behavioral responses.
ビーグルで6週間の社会的・空間的制限を、慢性ストレスを引き起こすモデルとして使用した。行動学的・生理学的測定を広い屋外飼育(GH)の期間中と、引き続いて狭く孤立した屋内の犬舎飼育(IH)の期間で実施した。イヌの慢性ストレスを示す行動学的特性は報告されている。IH期間中、イヌはGH期間中よりも有意に低い姿勢を示した(<0.05)。IHは自身を舐める行為、前足での引っかき、咆哮の永続的な回数増加を引き起こし、食糞や反復行動の発生と関連していた。
ここで、私たちは慢性ストレスのサインとして行動学的な変化を解釈する。相対的な低姿勢での歩行、掘る行為、歩行運動のある状態から他の状態への変化に対する意向、回転運動の増加は、IHの特定の徴候への明らかな適応として考えられる。屋外の犬舎にイヌを飼育してみることで、私たちはイヌの適応能力がIHにより影響されるかどうかテストした。テストされたイヌは新しい環境にさらされ、それらの犬舎から逃げる機会を与えられ、束縛され、慣れていない廊下を歩かされ、新しい物を置かれ、騒音にさらされ、食事を与えられ、もしくは犬と直面させられた。IH期間中、GH期間中に比較して、イヌはより高い姿勢で、尾を振り、嗅ぎ、回り、放尿し、排便し、歩行運動(もしくは姿勢)状態の変化を示した。
これらの行動学的な変化は、騒音適用テストは例外として、異なる種類の試験でも観察された。同種との直面時、社会的・空間的に制限されたオスイヌは、グループにいたときよりもより支配的、攻撃的にふるまった。そのような行動は毛を逆立てたり、うなったり、前足で引っかいたり、飛びあがったりする行為の増加として現れた。両性ともに、廊下テストでは歩いて降りない事を除いて前足での引っかき、体の震え、両価性の姿勢、運動状態変化、どの試験でも震えなどの増加を示した。一言でいうと、様々なチャレンジ期間中、社会的・空間的に制限されたイヌは攻撃、興奮、不安定な状態の増加を示した。
イヌの行動の変化はGH期間中の良いまたは悪い天候状態に関係し、結果として「良い天候の個体」はコントロール期間中に早くストレスを経験し、その後のIH期間中は違う反応を示した。 住居の状態に関係なく、試験されたメスイヌはオスイヌに比べて急性ストレスのより強い徴候を示した。性は社会的・空間的制限への慢性ストレスに影響しなかった。低い姿勢と自身で舐める行為、前足での引っかき、咆哮、繰り返し行動、食糞の増加はイヌにおける慢性ストレスを示しているであろうし、そのようなことは、悪い飼育状況の識別を補助することができる。試験時、慢性的なストレスのイヌは興奮、攻撃、不安定の増加を示すであろうが、そのような非特異性感情行動は、ストレスの評価に関して実用的な使用を複雑にするだろう。
コメント:低い姿勢、自身で舐める行為、前足での引っかき、咆哮、繰り返し行動、食糞の増加はイヌにおける慢性ストレスを示しているようです。また、社会的・空間的に行動を制限されたイヌはより攻撃的で、興奮し、不安定な状態になりやすいようです。
■猫の分離不安症候群:136症例(1991-2000)
Stefanie Schwartz, DVM, MSc, DACVB; J Am Vet Med Assoc 220[7]:1028-1033 Apr 1'02 Retrospective Study 28 Refs; Separation Anxiety Syndrome in Cats: 136 Cases (1991-2000)
目的:ネコに典型的な分離不安症候群(SAS)の臨床症状が起こるかどうか、またそのネコで当てはまるような臨床症状の頻度と種類を判定することです。
構成:回顧的研究
動物:犬の分離不安症候群の典型的な臨床症状を持つ136頭のネコ。自宅訪問中に評価
方法:10年間に問題行動が認められた飼い猫の医療記録を再検討しました。典型的な犬の分離不安症候群の行動(例えば、不適当な排泄、過度な鳴き声、破壊行動、自虐行動)を示した猫の医療記録をより広範囲に調査し、単に明らかに愛着がある人物から離れたときに示す行動も研究に盛り込みました。
結果:分離不安による問題行動は、不適切な排尿(96頭)、不適切な排便(48頭)、過度な鳴き声(16頭)、破壊行動(12頭)、心因性のグルーミング(8頭)でした。この研究で不適切な排便は、去勢済みオスより避妊済みのメスの方が、かなり高い比率を示しました。不適切な排尿をした猫の75%は、大体オーナーのベットにしていました。心因性のグルーミングは、避妊済みメス40頭のうち8頭に認めましたが、去勢済みオスには見られませんでした。それに対し、破壊行動は、去勢済みオス92頭のうち12頭に観察されましたが、避妊済みメスには見られませんでした。
結論と臨床関連:結果から、ネコでも分離不安症候群を起こしえると思われます。ネコの性別や種差で、分離不安症候群に関する特別な症状の出現率が変わるかもしれません。猫の分離不安症候群は、不安関連問題行動の鑑別診断に加えるべきです。(Sato訳)
■尿マーキングの原因とその頻度に対する環境管理の効果
Patricia A. Pryor, DVM, DACVB et al; J Am Vet Med Assoc 219[12]:1709-1713 Dec 15'01 Single-Intervention Study 16 Refs ;Causes of Urine Marking in Cats and Effects of Environmental Management on Frequency of Marking
目的:尿マーキングを行う猫で、その頻度に対して環境を変えるだけの処置が、効果があるか評価することと、尿マーキングを行う猫の個体群統計データと、オーナーが尿マーキング行動に思い当たる要因のデータを得る事です。
構成:単一介入研究
動物:去勢済み猫40頭と避妊済み猫7頭
方法:2週間の基準期間に、オーナーに毎日、尿マーキングの回数を記録してもらいました。その後、2週間の環境管理期間中、オーナーに毎日、尿マーキングを清掃し、トイレから排泄物を除去し、そして毎週砂を変えて、トイレを掃除してもらいながら尿マーキングの回数を記録してもらいました。
結果:カリフォルニアで、オス猫と多頭飼育の猫は、一般飼い猫集団と比べると、有意に平均以上の回数を示しました。よく話に出た尿マーキングの原因については、家の外または中の他の猫との相互作用でした。環境管理方法は、尿マーキング頻度全体の減少をもたらしました。基準期間に>6回マーキングする猫の中で、メス猫はオス猫より、その処置に対して有意に反応(マーキング頻度>50%減少)するようでした。
結論と臨床関連:結果から、オス猫や多頭飼育の猫は、メス猫や単頭飼育の猫に比べて尿マーキング行動を行う傾向があります。また環境や、トイレの衛生に対する配慮は、飼育状態や性別に関係なく猫のマーキングを減らすことができ、ほとんど解決できる猫もいるかもしれないと示唆しています。(Dr.Sato訳)
■犬の分離不安に関する危険因子と行動
Gerrard Flannigan, DVM, MSc; J Am Vet Med Assoc 219[4]:460-466 Aug 15'01 Case-Control Study 27 Refs ; Risk Factors and Behaviors Associated with Separation Anxiety in Dogs
目的:分離不安症に関する危険因子と行動を見極め、診断の助けとなる診療指針を作り出す事です。
構成:症例-コントロール研究
動物:分離不安症の犬200頭と他の問題行動を持つ犬200頭(コントロール)
方法:特徴、問題行動の履歴、家庭環境、管理、行動に結びつく可能性を秘めたもの、同時発生問題などの
医療記録を再検討しました。
結果:成人1人に飼育されている犬は、複数の家族がいる飼育犬よりも約2.5倍、分離不安症になりやすかったです。分離不安症をもつ未中性化の犬は、中性化した犬の1/3でした。オーナーの過接触に関する要因が、分離不安症に関わっているものもありました。破壊行動、犬の性別、家庭での他のペットの存在は、分離不安と関係がありませんでした。
結論と臨床関連:結果は、母犬からの早期分離がゆくゆく分離不安に発展するという理論を支持するものではありませんでした。オーナーによる過接触は分離不安症と有意に関係していました。極端にオーナーの後について回る、お出かけのそぶりに不安、過度の挨拶を交わすなどは、分離不安症と他の分離に関係した問題を区別する助けとなるかもしれません。(Dr.Sato訳)
★犬における分離不安、カミナリ恐怖症、騒音恐怖症の単独あるいは併発症に関する非特異的臨床徴候の出現率
Overall KL et al; J Am Vet Med Assoc 2001 Aug 15;219(4):467-73 Related Articles, Books ; Frequency of nonspecific clinical signs in dogs with separation anxiety, thunderstorm phobia, and noise phobia, alone or in combination.
目的:犬における分離不安、カミナリ恐怖症、騒音恐怖症、あるいはこれらの合併症に関して非特異的臨床徴候の出現率を確定すること、および、これらの状態と犬の関連性を確定すること。
計画:症例集
動物:141頭の犬
手順:特定の基準を用い確定診断をしました。留守中、犬がどのような破壊行動、排尿、排便、むだ吠え、流涎をするか、またカミナリや花火、その他の音に対する反応の頻度とタイプを飼い主にアンケート調査しました。
結果: 3疾患(分離不安、カミナリ恐怖症、騒音恐怖症)の関連と多角的な非特異的臨床徴候との関連に関して診断を作為的に行いました。騒音恐怖症である犬は分離不安である確率が高く(0.88)カミナリ恐怖症である犬の確率も同様に高いものでした(0.86)。ところが、分離不安である犬がカミナリ恐怖症である確率(0.52)より騒音恐怖症である確率(0.63)の方が高いという結果が得られました。カミナリ恐怖症である犬が騒音恐怖である確率(0.90)は逆の場合(0.76)と異なりました。
結論と臨床関連:結果はこれらの状態のいずれかを持った犬は他の問題行動が潜在することを示唆しました。これらの状態の相互作用は、これらの一つ以上の状態を持った犬の治療や評価において重要であると考えられます。音に対する反応とカミナリに対する反応は異なるもので、これはカミナリが予測できなく変わりやすいものであるためかもしれません。(Dr.K訳)
★犬における分離不安と関連した行動と危険因子
Flannigan G et al; J Am Vet Med Assoc 2001 Aug 15;219(4):460-6 Related Articles, Books ; Risk factors and behaviors associated with separation anxiety in dogs.
目的:犬の分離不安に関連した行動と潜在的危険因子を確立し、診断の手助けとなる実践的な指標に発展させること。
計画:症例-対照研究
動物:分離不安症の犬200頭と他の問題行動を持った対照犬200頭
手順:徴候、問題行動の履歴、家庭環境、管理状況、行動と結びつく可能性のあるもの、同時発生した問題に関して、医療履歴を再検討しました。
結果:一人の人が、家庭で飼育している犬は、複数の家族構成で飼育されているものより、2.5倍近く分離不安でありやすく、不妊を受けていない犬は、不妊した犬より3倍分離不安になる傾向がありました。飼い主に対する過剰愛情に関連したいくつかの因子は、分離不安と意義深く関連しました。破壊行動、犬の性別、飼育環境における他のペットの存在は、分離不安と関連がありませんでした。
結論と臨床関連:結果は母親からの早期離別が、将来の分離不安進展を導くという学説を、支持するものではありませんでした。飼い主に対する過剰愛情は分離不安と意義深く関連性があり、飼い主への極端な後追い、お出かけが不安のきっかけである、過剰な挨拶は、犬の分離不安と他の分離関連問題を臨床上識別する助けとなるかもしれません。(Dr.K訳)
★犬の攻撃行動の管理における行動修正薬物治療としてのアミトリプチリンの効果
Virga V et al; J Am Anim Hosp Assoc 2001 Jul-Aug;37(4):325-30 Related Articles, Books ;Efficacy of amitriptyline as a pharmacological adjunct to behavioral modification in the management of aggressive behaviors in dogs.
犬の攻撃行動の臨床管理における行動修正補助薬物としてのアミトリプチリンの効果を2段階評価しました。攻撃行動を呈している12頭の犬にアミトリプチリン(2mg/kg.PO.bid)とプラセボを4週間投与し、予見無作為的2重盲検試験を行いました。行動修正に対する標準プロトコールを治検期間中、実施しました。飼い主がそれぞれ4週間の終了時点で、犬の総合的改善点に加え、攻撃付随事故の統計を記録し報告しました。第2段階では、治療に対する犬の反応を記録するため飼い主と連絡をとり、攻撃行動を呈し、アミトリプチリンで処置された犬の27症例を再検討しました。この記録と行動修正のみを受けている犬とを比較しました(すなわち、予見のプラセボ相)。補助的アミトリプチリンと行動修正のみの患者の反応にいかなる有意差も認められませんでした。(Dr.K訳)