■ペットのフェレットの難聴の有病率と毛色との関係
Prevalence of deafness and association with coat variations in client-owned
ferrets.
J Am Vet Med Assoc. May 1, 2014;244(9):1047-52.
Stephanie Piazza; Marie Abitbol; Kirsten Gnirs; Minh Huynh; Laurent Cauzinille
目的:ペットのフェレットの先天性感音性難聴(CSD)の有病率と、表現型マーカーとの関係を評価する
計画:疫学的研究
動物:152頭の健康なヨーロピアンペットフェレット
方法:全身麻酔中のフェレットで脳幹誘発聴覚反応検査を記録した。性別、毛色とパターン、毛の長さ(アンゴラか否か)、早期に白っぽくなるような体質などの表現型マーカーを評価した。
結果:152頭中44頭(29%)のフェレットがCSDに罹患しており、10頭(7%)は片側、34頭(22%)は両側性だった。CSDと性別、アンゴラ体質との間に関連はなかったが、白いパターンの毛色、あるいは早期に白くなる体質とCSDには強い関連を認めた。全てのパンダ、アメリカンパンダ、ブレイズフェレットは難聴だった。
結論と臨床関連:この研究でのフェレットはCSDの高い有病率を示し、厳密に毛色パターン、特に白い斑および早期に白っぽくなる特色に関連していた。白が顕著な毛色はポピュラーな新しい毛色なので、新しい先天的難聴と思われた。この動物種の総体的利益に対してその有病率を減らすようブリーダーはより大きな自覚を持って、この欠損症を理解すべきである。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症のフェレットの非外科的管理
Nonsurgical management of hyperadrenocorticism in ferrets.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. January 2014;17(1):35-49.
Sue Chen; Dennis Michels; Erin Culpepper
フェレットの副腎疾患の臨床症状の管理に、いくつかの内科的治療オプションが利用できる。それらの治療様式の多くは容認性が良いと思われ、特に外科的対象ではないフェレットに対して副腎切除の適切な代替法である。しかし、現在利用される薬剤は徴候を管理するだけで、病的副腎皮質を治癒させるものではなく、大きくなり続けるかもしれない。前立腺肥大で起こる尿路閉塞の内科管理、エストロゲン過剰で起こる非再生性貧血もこの文献で考察する。(Sato訳)
■インスリングラルギンで治療した糖尿病のフェレットの一例
Insulin glargine treatment of a ferret with diabetes mellitus.
J Am Vet Med Assoc. December 1, 2012;241(11):1490-4.
Laurie Hess
症例:7.5歳避妊済みメスのフェレットを、食欲があるのに体重が減ってきた理由で評価した。一度、他の病院で低い血糖値が検出されたことがあり、膵臓性インスリノーマが診断されていたが、その時血液インスリン濃度測定は行われていなかった。2年間毎日酢酸メチルプレドニゾロン(用量不明)を皮下注射で治療していた。血糖値に関する追加検査のデータは得られなかった。
臨床所見:身体検査において、そのフェレットは削痩(体重0.619kg)しており、簡単に傷ついた。血清生化学検査で高血糖を認めた(血糖値855mg/dL;参照値63-134mg/dL)。
治療と結果:グルココルチコイド注射を中止し、代わりにプレドニゾロン(1.13mg/kg12時間毎14日間、その後0.56kg/kg12時間毎7日間)を経口投与した。プレドニゾロン投与を中止しても高血糖と体重減少は継続した。
フェレットにインスリングラルギン(0.5U)を皮下投与した;血糖値を24時間2時間毎にモニターし、その時点で値はほぼ参照値内に低下していた。オーナーには12時間毎にインスリングラルギン投与を継続してもらった;治療から77日後、フェレットの体重は0.731kgで正常と考えられ、血糖値も参照値内だった。
臨床的関連:インスリングラルギンの規則的なSC投与は、この報告のフェレットの真性糖尿病の治療で成功し、他の糖尿病のフェレットに対しても有効とおおわれる。(Sato訳)
■発情抑制に対するメスのフェレットに対する徐放性GnRH作用薬インプラントの使用
The use of a slow release GnRH-agonist implant in female ferrets in season
for oestrus suppression.
Schweiz Arch Tierheilkd. November 2012;154(11):487-91.
S Goericke-Pesch; A Wehrend
メスのフェレットは、交配しないとコンスタントに発情する長日性の繁殖動物である。持続的エストロゲンの産生は、処置しなければ汎血球減少および死亡を含む高エストロゲン症の臨床症状を起こす。避妊手術は副腎皮質機能亢進症の発症に関連すると思われるため、メスのフェレットの発情抑制に非侵襲、安全で効果的な長期処置が必要である。
発情中のメスのフェレット7頭を4.7mgデスロレリンインプラントで処置した。エストラジオール-17β(E2)およびプロゲステロン(P4)測定のため、処置前と4および8週後に採血した。データは幾何平均(偏差因子、DF)とした。処置前の平均E2は280.2pmol/l(1.7)、4週後は36.4pmol/l(1.4)、8週後は21.6pmol/l(1.1)だった(P<0.0001)。処置前のP4は1.4nmol/l(2.6)、4週後は57.8nmol/l(1.9)、8週後は3.8nmol/l(2.6)(P<0.0001)で、インプラント挿入後排卵したことを示している。観察期間32か月の間は発情徴候は抑制されていた。(Sato訳)
■飼育されているフェレットの心エコーおよび心電図所見:95症例(1994-2009)
Echocardiographic and electrocardiographic findings in client-owned ferrets:
95 cases (1994-2009).
J Am Vet Med Assoc. December 1, 2012;241(11):1484-9.
Rebecca L Malakoff; Nancy J Laste; Connie J Orcutt
目的:臨床診療で評価したフェレットの心エコーおよび心電図所見の特徴を述べる
構成:後ろ向き症例シリーズ
動物:95頭の飼い主が所有するフェレット
方法:1994年1月から2009年11月の間に心臓の評価(ECGと一緒に心エコー検査、あるいは心エコー検査のみ)を行った全てのフェレットのカルテを調査した。シグナルメント;心臓評価を促すような主要臨床症状あるいは身体検査所見;心エコー診断;ECG診断;エックス線診断(心エコー検査前あるいは後1か月以内にエックス線像が入手できる場合);心臓がもとと決定した肺水腫、胸水、あるいは腹水で定義するうっ血性心不全(CHF)の有無;経過観察で入手できた心エコーあるいはECG診断を含むデータを分析した。
結果:弁逆流(VR)が最もよく見られた異常な心エコー所見で、95頭中49頭で診断され、そのうち44頭は大動脈弁逆流、24頭は僧帽弁逆流、23頭は1つ以上の弁が逆流していた。うっ血性心不全は、95頭中17頭で診断され、それには拡張型心筋症をもっている4頭のフェレット全てが含まれた。ECGの結果がある65頭のフェレットのうち、26頭は房室ブロックがあり、そのうち7頭は第3度房室ブロックで、うち6頭はCHF、失神、あるいは虚弱があった。
結論と臨床関連:フェレットの心エコー検査による異常で最も多く見られたのはVRで、一般的には大動脈弁と僧帽弁だった。拡張型心筋症はまれに診断されたが、一般にはCHFと関係した。
最も多く見られたECG異常は房室ブロックで、第3度房室ブロックはCHF、虚弱あるいは失神に関係することが多かった。(Sato訳)
■フェレット(Mustela putorius furo T)の健康な暮らし:ペットのフェレットの飼育環境と管理に対するレビュー
The welfare of ferrets (Mustela putorius furo T): A review on the housing
and management of pet ferrets
Appl Anim Behav Sci. July 2012;139(3-4):155-168. 162 Refs
Claudia M Vinke; Nico J Schoemaker
フェレットは非常に機敏で活発な動物で、彼らの行動的要求は我々のリビングルームのような飼育環境で容易に適合するわけではない。それでもフェレットはペットとしてポピュラーになりつつある。
この文献の目的は我々のペットフェレットに対して利用できる知識をまとめ、議論することである。トピックスはフェレットの行動的優先、一般的な飼育環境、管理状況などを議論する。ペットフェレットの健康な暮らしを最適にするのに重要と考えられる医療トピックスと同様、行動学的問題をはっきりさせる。トピックスはフェレットの行動学的優先、身体および生理学的要求および/あるいは能力を考慮して議論する。
健康な暮らしに関してペットのフェレットの行動における関心の主なポイントは、(1)探検および食べ物を探す彼らの高いモチベーション、(2)利用できる十分な休息機会の必要性、(3)遊ぶ機会、(4)種間攻撃性及び縄張り意識に関する彼らの社会組織であると結論付ける。ゆえに、ヒトの環境でその生活のために若いフェレットを訓練するには良好な社会化が最も重要である。毎日の活動プログラム、変数(食餌)の強化、居心地の良い隠れ場所および休息場所の提供は、フェレットの行動学的優先をより高い程度に満たす助けとなり、行動学的疾患およびオーナーに対する問題を防ぐかもしれない。フェレットの社会に適合させることは常に慎重に行うべきである。
医療的トピックスの焦点は、獣医師によるルーチンな年1回の検査、寄生虫の治療、ウイルスに対するワクチネーション、予防的(化学的)不妊を通して内分泌障害の予防など実行可能な潜在的予防処置に当てられる。医療問題に関し、ペットのフェレットの健康な暮らしに対する関心の主なポイントは、栄養、骨過成長、副腎皮質機能亢進症、インスリノーマ、ヘリコバクター感染と胃潰瘍である。後者の感染はフェレットの環境においてストレスの存在に関係することが多いと思われる。(Sato訳)
■北アメリカペットフェレットのエックス線像での腎臓測定値
Radiographic kidney measurements in North American pet ferrets (Mustela
furo).
J Small Anim Pract. January 2013;54(1):15-9.
D Eshar; J A Briscoe; W Mai
目的:この研究の目的は、ペットフェレットのエックス線像上の正常な腎臓計測値を決定することである。
方法:泌尿生殖器疾患の所見がない、さまざまな年齢と体重、性別の不妊手術済みフェレット53頭において、腹背エックス線写真から腎臓の長さ、幅と第2腰椎(L2)の長さを測定した。腎臓の寸法をL2の椎体長の比率として表した。
結果:この研究の全てのフェレットは6つの腰椎だった。L2の長さの中央値は13.3mmで、メスよりオスの方が長かった(P=0.0001)。腎臓長-L2比の95%信頼区間は、右腎で2.21-2.31、左腎で2.15-2.25だった。腎臓幅-L2比では右腎で1.09-1.14、左腎で1.07-1.12だった。腎臓の大きさと体重あるいは性別に有意な関係があったが、年齢にはなかった。
臨床意義:このエックス線研究の結果は、個々の体質を基にペットフェレットの腎臓の大きさのより客観的な臨床的エックス線評価を可能にするかもしれない。(Sato訳)
■フェレットのストラバイト尿石の疫学:272例(1981-2007)
Epidemiology of struvite uroliths in ferrets: 272 cases (1981-2007).
J Am Vet Med Assoc. November 2011;239(10):1319-24.
Eugene E Nwaokorie; Carl A Osborne; Jody P Lulich; Hasan Albasan; Charlempol Lekcharoensuk
目的:フェレットにおいて自然発生する尿石の優勢なミネラルタイプはストラバイトと確認すること;年齢、性別、種類、生殖状態、地理的所在、季節、解剖学的部位がフェレットの尿石形成に関係するリスクファクターかどうか判定すること;フェレットとネコのストラバイト尿石の特徴を比較すること;フェレットのストラバイト尿石の食餌-誘発性溶解の安全性と効果の臨床試験に対する論理的エビデンスベースの解釈があるか判定すること。
デザイン:回顧的症例コントロール研究
動物:ミネソタ尿石センターから尿石のある408頭のフェレットと獣医療データベースから6528頭のコントロールフェレット
手順:各フェレットについて病歴情報を入手した。挙げられたリスクファクターと結果(ストラバイト尿石形成)の関係を評価した。
結果:無菌ストラバイトはフェレットの尿石で優勢なミネラルだった。去勢したオスのフェレットで、無菌ストラバイト尿石の発症リスクが有意に増加した。加齢とストラバイト尿石の検出の間にも有意な関連が見られた。フェレットのストラバイト尿石は、上部尿路よりも下部尿路で回収されることが多かった。
結論と臨床的関連:尿石症の原因、個体群統計、環境リスク、予防因子に加え、尿石の優勢なミネラルタイプを知っておくことは、フェレットの尿石を早期に検出する検査方法の開発を容易にすると思われる。食餌性リスクファクターを含むリスクファクターの修正は、尿石形成を最小限に、存在する尿石の溶解、尿石再発を最小限に役立つだろう。(Sato訳)
■臨床的に健康な若いフェレットの尿比重
Urine specific gravity values in clinically healthy young pet ferrets (Mustela
furo).
J Small Anim Pract. February 2012;53(2):115-9.
D Eshar; N R Wyre; D C Brown
目的:臨床的に健康なペットのフェレットの尿比重値を判定し、性別、サンプリング方法、脱水状態および尿分析物との関係を探究した。
方法:1歳以下の両性別のフェレット69頭で研究した。身体検査、全血検査、生化学検査、尿の顕微鏡検査、尿試験紙および尿比重検査を全てのフェレットで実施した。尿比重は手持ち尿屈折率測定器で測定した。尿比重の値の間隔を判定し、性別、サンプル採取方法、PCV、血漿総蛋白濃度、尿分析物との関係を調べるため統計学的分析を行った。
結果:尿比重はフェレットの性別で異なり、メスはより低い尿比重だった(P<0.001)。尿比重、サンプリング方法、PCV/総蛋白、尿試験紙分析物との間に有意な相関はなかった。この研究で報告された平均尿比重は、オスで1.051(sd±9;範囲1.034-1.070)、メスで1.042(sd±8;範囲1.026-1.060)だった。
臨床的意義:この研究結果は、この臨床的に健康なフェレット集団から得られた尿比重結果と比較することで、臨床医はフェレットの尿の濃縮能力のより正確な評価ができると思われる。(Sato訳)
■1頭のフェレット(Mustela putorius furo)の後肢の歩行可能な不全対麻痺を呈する症例における腹腔脾症の診断
Diagnosis of an Abdominal Splenosis in a Case of Ambulatory Paraparesis of the Hind Limbs in a Ferret (Mustela putorius furo)
J Exotic Pet Med. July 2011;20(3):227-231.
Jaime Martorell; Daniela Vrabelova; Leire Reberte; Antonio Ramis
2歳避妊済みメスのフェレットが2日前から後肢の歩行可能な不全対麻痺を呈した。身体検査において腹部頭側で胃の尾側領域に1つのマスが触知された。全血球計測で正球性正色素性貧血と反応性リンパ球を認めた。腹部超音波検査で低エコーの腹部マスが観察された。試験開腹を勧め、実施中に脂肪肝組織の一葉に似た錐体マスと大網捻転部を切除した。外科的に切除したマスの病理組織診断は脾症だった。術後、腹部痛と歩行可能な不全対麻痺は解消し、その不全対麻痺は痛みのためと思われた。この報告の所見により、フェレットが腹部マスと急性腹部痛を呈するとき、脾症を鑑別診断に含めるべきだと示される。(Sato訳)
■フェレットのコロナウイルス関連疾患
Ferret coronavirus-associated diseases.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2010;13(3):543-60.
Jerry Murray, Matti Kiupel, Roger K Maes
1993年にフェレットの新しいコロナウイルスが初めて述べられた。このコロナウイルスは動物流行性語る性腸炎(ECE)と呼ばれる腸疾患を引き起こす。近年、フェレットの全身性コロナウイルス(FRSCV)関連疾患が発見された。この新しい全身性疾患は、猫の伝染性腹膜炎(FIP)のドライタイプに似ており、アメリカやヨーロッパで報告されている。この文献はこのフェレットFIP様疾患の臨床症状、病理学、病因、診断、治療、予防を取り上げる。(Sato訳)
■フェレットのびまん性特発性筋膜炎
Disseminated idiopathic myofasciitis in ferrets.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2010;13(3):561-75.
Katrina D Ramsell, Michael M Garner
2003年に最初に発表されたびまん性特発性筋膜炎(DIM)は、若いペットのフェレットの新しい疾患として現われている。DIMは主に筋肉や周囲結合組織を侵す重度の炎症状態である。この疾患は臨床症状の急速な発現、高熱、好中球増加、治療に対する反応が全般に欠如するといった特徴を持つ。最近までDIMは致死的と考えられていたが、わずかに生存したフェレットがいることは、ある治療プロトコールが有効かもしれないということを示している。DIMは免疫介在性疾患が疑われるが、原因病理は不明である。この文献はDIMのフェレットの臨床および病理学的所見を概説し、推奨される診断方法と臨床管理をカバーし、この新しく認識された疾患に対して可能性のある原因論を論じる。(Sato訳)
■フェレットの免疫介在性真性赤血球癆の1例
Immune-mediated pure red cell aplasia in a domestic ferret.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(6):695-700.
Shachar Malka; Michelle G Hawkins; Shanon M Zabolotzky; Elizabeth B Mitchell; Sean D Owens
症例記述:8ヶ月の避妊済みメスのフェレット(Mustela putorius furo)が嗜眠の重度貧血の原因を検査するために紹介されてきた。
臨床所見:初回検査で、そのフェレットは嗜眠状態だが、適切な精神状態であることがわかった。他の異常所見は粘膜、鼻鏡、皮膚の蒼白とPCV8%だけだった。真性赤血球癆(PRCA)を骨髄バイオプシー標本の細胞学的評価をもとに診断した。
治療と結果:輸血、鉄デキストランのIM投与、抗生物質と胃腸管保護剤の経口投与、エリスロポエチンのSC投与などの内科治療を行った。PRCAが診断されてからはプレドニゾン、シクロスポリン、アザチオプリンの経口投与を行った。治療開始から9ヵ月後、PRCAは寛解し、フェレットは経過良好である。治療開始から14ヶ月目に免疫抑制治療は中止し、初回検査から36ヶ月目もフェレットは健康である。
臨床関連:フェレットの重度貧血の鑑別診断でPRCAは重要である。長期免疫抑制治療はここで述べたフェレットで良好に作用した。(Sato訳)
■フェレットのインスリノーマと副腎皮質疾患の高度診断アプローチと現在の内科管理
Advanced diagnostic approaches and current medical management of insulinomas and adrenocortical disease in ferrets (Mustela putorius furo).
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2010;13(3):439-52.
Sue Chen
ペットのフェレットで内分泌腫瘍は良く見られる腫瘍タイプで、特に中高齢でよく見られる。島細胞腫瘍と副腎皮質腫瘍は主要内分泌腫瘍である。インスリノーマは過剰な量のインスリンを産生し、放出する腫瘍である。絶食時血糖値の評価はインスリノーマを検出する迅速な診断的検査である。グルココルチコイド、ジアゾキシド、食餌変更は、インシュリノーマの内科治療オプションである。
フェレットの副腎皮質腫瘍は、通常1つ以上の性ホルモンを過剰産生する。性ホルモンはメスで進行性脱毛や外陰部腫脹、オスで前立腺肥大を起こす可能性がある。腹部超音波検査および性ホルモン検査は副腎皮質腫瘍の診断に使用できる。酢酸ロイプロリド、酢酸デスロレリン、メラトニンのような薬剤は、外科手術が選択できないときにフェレットの副腎皮質腫瘍を治療できる。(Sato訳)
■1頭の腰部椎間板突出のフェレットにおける内科管理の成功例
Successful medical management of lumbar intervertebral disc prolapse in a ferret.
J Small Anim Pract. August 2010;51(8):447-50.
I Srugo , O Chai, D Yaakov, L Sharon, M H Shamir
2歳のフェレットで脊髄造影後CTスキャンにより椎間板ヘルニアを診断した。そのフェレットは排尿、排便困難の対麻痺だった。ケージレスト、3週間の受動可動域運動後広範囲の物理療法および水治療などの保存療法で、治療開始から2ヶ月で完全に回復した。過去に4例のフェレットの椎間板疾患が報告されているが、これは脊髄造影後CTを椎間板ヘルニアの実証に使用し、主要治療様式として物理療法を使用した最初の報告である。(Sato訳)
■フェレットにおける無症候性ミンクアリューシャン病パルボウイルス感染中の持続性ウイルス排泄
Persistent viral shedding during asymptomatic Aleutian mink disease parvoviral infection in a ferret.
J Vet Diagn Invest. 2005 Nov;17(6):594-7.
Pennick KE, Stevenson MA, Latimer KS, Ritchie BW, Gregory CR.
臨床的に健常と思われた2歳のフェレットは、2年の観察期間においてミンクアリューシャン病パルボウイルス(ADV)に対し繰り返し血清陽性を示した。対向免疫電気泳動で測定した抗体価は1024〜4096の範囲であった。ウイルスDNAはポリメラーゼ連鎖反応分析で、血清、尿、便そして血液細胞分画に認められた。最終的にDNA切片上ハイブリッド形成法により、様々な組織や器官の組織切片でADVのDNAが明らかとなった。これらのデータは無症候性フェレットが持続的にADVに感染していることを示す。(Dr.Kawano訳)
■日本におけるフェレットの腫瘍性疾患:2000-2005年の間のアンケート調査
Neoplasitic diseases in ferrets in Japan: a questionnaire study for 2000 to 2005.
J Vet Med Sci. April 2009;71(4):397-402.
Yasutsugu Miwa, Asuka Kurosawa, Hiroyuki Ogawa, Hiroyuki Nakayama, Hiroshi Sasai, Nobuo Sasaki
この調査の目的は、日本におけるペットのフェレットで腫瘍に対する疫学的データを収集することだった。情報を集めるためにエキゾチックペット研究会のウェブサイトで、日本の動物病院開業医に向けてアンケート調査を行った。29の病院から完全な回答を得られ、945件の腫瘍がこの研究の含有基準に合致した。
呼吸器系を除く全ての臓器系で腫瘍が見つかった;内分泌(418;44.2%)、外被(196;20.7%)、血液リンパ(184;19.5%)系が一般的に侵されていた。一般的な腫瘍の種類は、膵ランゲルハンス島細胞腫瘍(211;22.3%)、副腎腫瘍(207;21.9%)、リンパ腫(152;16.1%)だった。罹患フェレットの年齢は、3ヶ月以下から7歳以上の範囲だった。腫瘍発生は4-6歳で最も高かった。性別による偏りはなかった。
それらの結果は、最近北アメリカで発表されたものと同様だった。日本のペットフェレットの多くは北アメリカから輸入されており、食餌を含む暮らしも北アメリカに似ているので、この研究における腫瘍の発生率が北アメリカのものと似た傾向にあることが説明できるかもしれない。(Sato訳)
■メスフェレットの繁殖
Reproduction of the female ferret (Mustela putorius furo)
Reprod Domest Anim. July 2008;43 Suppl 2(0):150-6.
H Lindeberg
家庭フェレットは季節性多発情種である。メスは8-12ヶ月で思春期に達し、3月後半から8月前半の間に出産しなければ持続的に発情する。外陰部がピンク色に腫脹するのは前発情徴候である。発情は5ヶ月まで持続しえるが、一度排卵が誘発されると妊娠あるいは偽妊娠が起こる。卵胞の発育および閉鎖は、交尾が起こるときにいつでも排卵準備ができた卵胞集団があり、そのような方法でオーバーラップしている。交尾は15分-3時間持続することがあり、平均1時間である。
排卵は交尾による子宮頚への加圧により誘発される。十分なLH放出後、前卵胞が成熟し、交尾後30-40時間で卵巣嚢に、1頭当たり平均12個(5-13)の卵母細胞を排卵する。フェレットの卵母細胞は、排卵後12時間、すなわち交尾後42-52時間までに最大受精能をもつ。フェレットの卵母細胞は、3層の放線冠細胞を包埋した第2減数分裂(MII)中期に排卵する。
胚は数日かけて子宮に入り、交配後5日目に始まる。交配から12-13日の間に胚は子宮内膜に着床するようになる。フェレットにおける着床は、最終的に内皮絨毛膜胎盤の帯状となる広範囲を覆う栄養膜によって子宮上皮の急速な浸潤を伴う中央でなされる。妊娠期間は41日(39-42日)である。家庭フェレットは平均8匹(1-18匹)出産し、生まれたときの体重は6-12gである。(Sato訳)
■ペットフェレットにおけるリンパ腫の検査所見、病理組織、免疫表現型
Laboratory findings, histopathology, and immunophenotype of lymphoma in domestic ferrets
Vet Pathol. September 2008;45(5):663-73.
M Ammersbach, J DeLay, J L Caswell, D A Smith, W M Taylor, D Bienzle
リンパ腫はフェレットにおいて一般的であるが、解剖学的分布、組織形態学、免疫表現型、検査異常、化学療法に対する反応は完全に定義されていない。
この研究で0.8-8.5歳のオス12頭、メス17頭の合計29頭のフェレットにおいて、リンパ腫を腫瘍組織の病理組織検査により診断した。腫瘍は腹腔臓器(n=11)、胸腔臓器(n=1)、腹腔および胸腔臓器(n=7)、皮膚(n=2)、体腔臓器と他の部位(n=8)に存在した。顕微鏡的に全ての臓器は瀰漫性構造を呈した。組織形態および免疫表現型により、末梢T細胞リンパ腫(n=17)、未分化大T細胞リンパ腫(n=5)、未分化大B細胞リンパ腫(n=4)、瀰漫性大B細胞リンパ腫(n=1)、ホジキン様リンパ腫(n=2)に分類された。腫瘍組織の細胞診で13例中11例が診断できた。
27頭中22頭は貧血、2頭は白血病、5頭は好中球減少だった。一般的な共存症は副腎疾患(n=27)、インシュリノーマ(n=6)だった。腫瘍が頻繁に関与したのは腸間膜リンパ節で、末梢リンパ節の増大は一般的ではなかった(n=3)。ホジキン様リンパ腫のフェレットは、充実した大きな単一のリンパ節を有した。
即座に安楽死されなかったフェレットの平均生存期間は5.0ヶ月(T細胞リンパ腫)および8.4ヶ月(B細胞リンパ腫)だった。化学療法で治療したフェレットは、平均4.3ヶ月(T細胞リンパ腫、n=9)あるいは8.8ヶ月(B細胞リンパ腫、n=4)生存した。
結果から、フェレットのリンパ腫は一般的に腹部臓器を侵し、細胞診が利用可能で、貧血も多く見られ、また化学療法に感受性があり比較的長期生存期間が得られる症例もいることが示される。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症の外科的治療を行ったフェレットの長期結果:130例(1995-2004)
Long-term outcome of domestic ferrets treated surgically for hyperadrenocorticism: 130 cases (1995-2004)
J Am Vet Med Assoc. May 2008;232(9):1338-43.
Jennifer K Swiderski, Howard B Seim 3rd, Catriona M MacPhail, Terry W Campbell, Matthew S Johnston, Eric Monnet
目的:副腎皮質機能亢進症の外科的治療を行ったフェレットの長期生存率と生存期間に影響する因子を判定する
研究構成:遡及症例シリーズ
動物:外科的に治療した副腎皮質機能亢進症のフェレット130頭
方法:副腎皮質機能亢進症の外科的治療を行ったフェレットの医療記録を再調査した。記録されたデータは、徴候、入院前の臨床症状の持続期間、CBC値、血清生化学検査結果、麻酔時間、手術時間、併発疾患、罹患した副腎(右、左、両側)、組織病理学的診断、術式、後大静脈関与(yes
or no)、術後メレナ(yes or no)、術後入院日数、術後副腎皮質機能亢進症の臨床症状の有無だった。
結果:130頭のフェレットを研究した(130頭中11頭は2度手術を行った)。1-、2年生存率はそれぞれ98%、88%だった。50%生存率は算出できなかった。凍結外科手術と部分的副腎切除の組み合わせは、生存期間に有意な負の影響があった。その他リスクファクターは確認されなかった。生存期間に組織病理診断や罹患副腎(右、左、両側)が有意な影響を及ぼすことはなかった。
結論と臨床関連:副腎マスの外科的治療を行ったフェレットの予後は良かった。手術を行った副腎皮質機能亢進症のフェレットの生存期間は、腫瘍の組織特性、罹患副腎(右、左、両側)、完全v.s.部分副腎切除に影響されなかった。完全切除が不可能な時、Debulking(減量)手術が好ましい長期結果を得るのに十分な手術方法だった。(Sato訳)
■フェレット(Mustela putorius furo)における犬ジステンパーの流行
Outbreak of canine distemper in domestic ferrets (Mustela putorius furo)
Vet Rec. August 2008;163(8):246-50.
D Perpinan, A Ramis, A Tomas, E Carpintero, F Bargallo
2006年、スペインのバルセロナで犬ジステンパーの流行により14頭の若いフェレットが感染した。それらの臨床症状は、食欲減退、嗜眠、呼吸困難、発咳、くしゃみ、粘液膿性目やにおよび鼻汁、顔面および会陰皮膚炎、下痢、脾腫、発熱だった。疾病経過の後半には、全身性落屑および掻痒、口唇、眼、鼻、パッド、会陰部の過角化/痂皮性皮膚炎が認められた。神経症状が見られたフェレットはいなかった。血液検査で一般的に見られたのは、非再生性貧血およびアルファ-、ベータグロブリンの血清濃度上昇だった。ほとんどのフェレットは呼吸器系合併症で死亡あるいは安楽死された。剖検で肺虚脱の所見はなかった。結膜スワブの直接蛍光抗体法、複数臓器のPCR、複数臓器の組織検査で特徴的な細胞質内および核内犬ジステンパーウイルス封入体の存在によりジステンパーと診断した。6頭のフェレットで算出した最低潜伏期は、11-56日で、13頭の疾患の症状は14-34日持続した。ヘルペスウイルスによる感染に適合する封入体は、1頭の肺で認められた。(Sato訳)
■ペットフェレット(Mustela putorius)における全身性コロナウイルスが関与する猫伝染性腹膜炎に似た疾患の臨床病理特性
Clinicopathologic Features of a Systemic Coronavirus-Associated Disease Resembling Feline Infectious Peritonitis in the Domestic Ferret (Mustela putorius)
Vet Pathol. March 2008;45(2):236-246.
M M Garner1, K Ramsell, N Morera, C Juan-Salles, J Jimenez, M Ardiaca, A Montesinos, J P Teifke, C V Lohr, J F Evermann, T V Baszler, R W Nordhausen, A G Wise, R K Maes, M Kiupel
ヨーロッパとアメリカで2002年から2007年の間に23頭のフェレットを、猫伝染性腹膜炎(FIP)に似た全身性化膿肉芽腫性炎症と診断した。診断時の平均年齢は11ヶ月だった。全ての症例で、その疾患は進行性で、臨床疾患の平均持続期間は67日だった。一般的な臨床所見は、食欲不振、体重減少、下痢、大きく触知可能な腹腔内マスだった。頻度の少ない所見としては、後枝麻痺、中枢神経系症状、嘔吐、呼吸促迫だった。頻度の多い血液学的所見は、軽度貧血、血小板減少、高ガンマグロブリン血症だった。
肉眼的に、多くの組織に白っぽい結節を認め、最も多いのは腸間膜脂肪組織およびリンパ節、臓側腹膜、肝臓、腎臓、脾臓、肺だった。1頭は漿液性腹水があった。
顕微鏡的に、化膿肉芽腫性炎症は、特に臓側腹膜、腸間膜脂肪組織、肝臓、肺、腎臓、リンパ節、脾臓、膵臓、副腎、および/または血管で認められた。
免疫組織化学的に、すべての症例は、モノクローナル抗体FIPV3-70を用いたコロナウイルス抗原陽性だった。炎症病変の電子顕微鏡検査でマクロファージ細胞質にコロナウイルス形態を持つ粒子を確認した。凍結組織から得たコロナウイルススパイク遺伝子の部分塩基配列決定で、そのウイルスがフェレット腸コロナウイルスに関係することを示している。(Sato訳)
■フェレットの副腎疾患
Adrenal gland disease in ferrets
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. January 2008;11(1):125-37, vii. 31 Refs
Elisabeth Simone-Freilicher
フェレットの副腎疾患はこの種独特で、臨床症状や病態生理は犬で見られるものとは異なる。その罹患率は増加しており、アメリカで2003年にはペットフェレットの70%が冒された。疾患を導く副腎の変化の実際の原因は不明である。早期卵巣子宮摘出および中性化、ペットフェレットを室内で飼育することによる人工的に延長させた光周期、潜在的遺伝組成などの組み合わせが因子に関与しているかもしれない。副腎疾患の症状は、脱毛、掻痒、嗜眠、萎縮、メスのフェレットでは陰部腫脹などである。症状と生理学的変化の理解は、診断および治療に必要である。解剖、生理、現行の外科および内科オプションの概要を紹介する。(Sato訳)
■フェレットの臨床神経学
Clinical neurology of ferrets
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2007;10(3):759-73, v-vi. 54 Refs
Orlando Diaz-Figueroa, Mary O Smith
フェレットの臨床医学で神経学は重要な専門性を示す。獣医師はそれら症例の管理を改善するため、フェレット間の独特の解剖および生理学的違いに精通すべきである。また獣医師は神経学的疾患の存在の確認に、利用可能な診断試験を使用すべきである。フェレット医学と獣医神経学の最近の進歩は、フェレットの神経学的疾患の調査および治療する新しい可能性を提供する。(Sato訳)
■健常フェレットと副腎皮質機能亢進症のフェレットの副腎の超音波検査による視覚化
Ultrasonographic visualization of the adrenal glands of healthy ferrets and ferrets with hyperadrenocorticism.
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):78-84.
Kuijten AM, Schoemaker NJ, Voorhout G.
健常なフェレット21頭と副腎皮質機能亢進症のフェレット37頭の副腎の超音波検査による特徴を比較した。特異的なランドマークを使うことによって、副腎は97%の症例で描出できた。副腎皮質機能亢進症のフェレットの副腎は健常フェレットの副腎と比べて形、構造そしてエコー輝度が変化し、明らかに厚みが増していた。実験結果に基づいて、副腎が丸みを帯び、頭側/尾側ポール(厚さ>3.9 mm)の大きさが増加し、内部構造が不均一で、エコー輝度の増加そして/あるいは石灰化の徴候があれば異常と分類されるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■フェレットの副腎疾患の臨床経過におけるメラトニン投与の効果
Effects of melatonin administration on the clinical course of adrenocortical disease in domestic ferrets
Journal of the American Veterinary Medical Association
December 1, 2006, Vol. 229, No. 11, Pages 1743-1748
Jan C. Ramer, DVM; Keith G. Benson, DVM; James K. Morrisey, DVM, DABVP; Robert T. O'Brien, DVM, MS, DACVR; Joanne Paul-Murphy, DVM, DACZM
目的―副腎疾患に罹患したフェレットの臨床症状、腫瘍の大きさ、血清ステロイドホルモン濃度に対するメラトニンの経口投与の効果を評価する
計画-非対照臨床試験
動物-副腎疾患の臨床症状を伴う10頭のフェレット(血清ステロイドホルモン濃度測定により確定診断した)
方法-1年間1日1回フェレットにメラトニン(0.5mg)を経口投与した。4ヶ月間隔で完全な身体検査;腹部超音波検査(副腎の大きさも測定);完全血球計算;血清生化学検査;そして血清エストラジオール濃度、アンドロステンジオン濃度、17α-ヒドロキシプロジェステロン濃度の評価を行った。血清プロラクチン濃度とデヒドロエピアンドレステロン硫酸濃度は初回、2回目と最後の検査で測定し、血清コルチゾール濃度は初回と最後の検査で測定した。
結果-毎日のメラトニン経口投与は、副腎疾患のフェレットの臨床症状に強く影響を与えた;発毛、痒みの低下、活動レベルと食欲の増加そして陰部あるいは前立腺の大きさが縮小するという変化があった。異常に大きい副腎の平均幅は12ヶ月の治療期間後に明らかに増加した。8ヶ月目の評価において6頭のフェレットで臨床症状の再発が検出された。治療前の値と比較して血清17α-ヒドロキシプロジェステロンとプロラクチン濃度は12ヶ月後にそれぞれ増加、減少した。
結論と臨床関連-メラトニンは有効的で、簡単に投与でき、フェレットの副腎疾患と関連した臨床症状を改善するための緩和療法であり、毎日の治療の作用が少なくとも8ヶ月明白であったことが示された。メラトニンの経口投与で治療したフェレットにおいて、副腎腫瘍の大きさを減少させることはなかった。(Dr.Kawano訳)
■フェレットにおけるアリューシャン病:診断所見と調査結果
Aleutian disease in domestic ferrets: diagnostic findings and survey results.
Vet Rec. 1993 May 8;132(19):479-84.
Welchman Dde B, Oxenham M, Done SH.
フェレットの後肢の運動失調と不全麻痺の原因としてアリューシャン病を診断した。6頭の血清学的陽性症例(4頭が臨床的に影響し2頭が影響を受けなかった)を詳細に調査し、臨床的に影響を受けた他の7頭についても特定した。 診断所見として高γグロブリン血症、中枢神経系における病変および腸間膜リンパ節におけるパルボウイルス様粒子が見られた。 フェレットクラブのメンバーによって所有されている446頭の動物のより広い血清学的調査で血清学的陽性動物は8.5%という発生率が明らかになった。(Dr.Kawano訳)
■ネコノミ(Ctenocephalides felis)を実験感染させたフェレットに対するイミダクプリドの有効性
Efficacy of Imidacloprid on Ferrets Experimentally Infested with the Cat Flea, Ctenocephalides felis
Compend Contin Educ Pract Vet 23[4]:8-10 Apr'01 Symposium 7 Refs
M.A. Fisher, BVetMed, CBiol, MIBiol, MRCVS; D.E. Jacobs, BVMS, PhD, FRCVS, FRCPath; M.J. Hutchinson, BSc, HND(Agric); J.W. McCall, MS, PhD
10mg/kgの用量、もしくは0.4mlの10%ピペットをフェレットあたり1本での局所イミダクプリド(アドバンテージ)投与は、総計26用量を受けた合計20頭のフェレットによく許容されました。処置は定着したノミを除去するのに有効で、効果は次のノミチャレンジまでの、10mg/kgで投与後1週間と10%w/vイミダクプリドの0.4mlピペット1本投与後3週間まで、持続しました。
注解:これはコンペンディウム(Vol23,No4)の付録です。2001年北アメリカ獣医カンファレンスで、シンポジウムのプロシーディングに含まれました。(Dr.K訳)
■フェレットのリンパ腫:古いもの、新しいもの
Ferret Lymphoma: The Old and the New
Semin Avian Exotic Pet Med 14[3]:199-204 Jul'05 Review Article 34 Refs
Laurie Hess, DVM, Dipl ABVP
フェレットでリンパ腫は一般的な悪性腫瘍である。老齢フェレットは一般的に慢性、リンパ球型リンパ腫を発症する一方、若年フェレットは急性のリンパ芽球型をよく発症する。フェレットのリンパ腫はどの器官にも見られる可能性があるが、よく認められるのは脾臓、肝臓、リンパ節、胸腺/縦隔、腎臓である。フェレットのリンパ腫の決定的な原因はいまだ認められていない。しかし、一緒に生活するフェレットの中での集団発生は、感染性の原因(ウイルスの可能性)を示唆する。この文献は、フェレットのリンパ腫の可能性のある原因を再検討する。腫瘍部位に依存する典型的な臨床症状について述べる。一般的な診断所見は、X線、超音波、組織病理検査結果などで示される。フェレットのリンパ腫の治療オプションである化学療法と放射線の概要を述べる。(Sato訳)
■フェレットの副腎皮質機能亢進症の尿中グルココルチコイド排泄による診断
Urinary glucocorticoid excretion in the diagnosis of hyperadrenocorticism in ferrets.
Domest Anim Endocrinol 27[1]:13-24 2004 Jul
Schoemaker NJ, Wolfswinkel J, Mol JA, Voorhout G, Kik MJ, Lumeij JT, Rijnberk A
フェレットの副腎皮質機能亢進症は、血漿コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度が変化しないことが多いが、尿中コルチコイド/クレアチニン比(UCCR)は一般に上昇する。この研究で、異なる環境下の健康なフェレットと副腎比率機能亢進症のフェレットの尿中グルココルチコイド排泄を調査した。
健康なフェレットと副腎皮質機能亢進症の1頭は、血漿コルチゾールの約10%とその代謝産物を尿中に排泄した。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で尿中コルチコイドの1/3が非抱合型コルチゾールと分かった。他のピークは、コルチゾール複合体と代謝産物を示した。21頭の健康な未不妊フェレットで、UCCRは3月末に増加し始め、繁殖季節(6月)に最初の値の半分まで低下した。健康な不妊済みフェレットで、UCCRの有意な季節的影響は見られなかった。副腎皮質機能亢進症の不妊済みフェレット2頭で主に繁殖期切中にUCCRは増加した。
副腎皮質機能亢進症の個人が飼育する31頭中27頭で、UCCRは正常範囲上限(2.1×10(-6))よりも高かった。健康な不妊済みフェレット14頭中12頭で、デキサメサゾン投与は、50%以上UCCRを低下させ、副腎皮質機能亢進症の18頭中1頭だけが、それによりUCCRが50%以上低下した。我々はフェレットのUCCRが主にコルチゾール排泄に反映すると結論付けた。健康で未不妊のフェレットと副腎皮質機能亢進症のフェレットのUCCRは繁殖季節中に増加する。副腎皮質機能亢進症のフェレットのUCCRの増加は、デキサメサゾンにより一時的に抑制され、このことはACTH依存性コルチゾール産生を示している。(Sato訳)
■フェレットのインシュリノーマ:診断と治療
Ferret Insulinoma: Diagnosis and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 26[9]:722-729 Sep'04 Review Article 27 Refs
Anthony A. Pilny, DVM & Sue Chen, DVM
The Animal Medical Center New York, New York
フェレット(Mustela putorius furo)でよく診断される腫瘍の1つの膵臓の神経内分泌癌がある。典型的臨床症状は、高インシュリン血症誘発低血糖で、嗜眠、虚脱、後肢虚弱、重要例で発作が起こりえる。仮診断は、経緯、臨床症状、血糖値(<60mg/dl)によりなされ、確定診断は膵臓結節の組織病理学検査で下される。治療オプションは内科および/または外科処置で、外科手術が一般的になされる。フェレットのインシュリノーマの他の臓器への転移はまれであるが、再発は良く起こる。(Sato訳)
■フェレット574症例の腫瘍性疾患 (1968-1997).
Neoplastic diseases in ferrets: 574 cases (1968-1997).
J Am Vet Med Assoc. 1998 May 1;212(9):1402-6.
Li X, Fox JG, Padrid PA.
目的: フェレットの腫瘍性疾患の発生率を決定する。
計画: 回顧的研究
動物: 腫瘍性疾患に罹患した574頭のフェレット
方法: 1968年から1997年5月までのパデュー大学における獣医医療データベースから、腫瘍性疾患に罹患したフェレットを同定するため診療記録を再検討した。
腫瘍のタイプ、影響した器官もしくは器官系、性、年齢、罹患したフェレットの地理的場所、関連機関、診断した年に関するデータを再検討した。
結果: 様々なタイプの639の腫瘍がデータベースにおける4774頭のフェレットのうち574頭(12%)で診断された。61 頭のフェレットは多発性腫瘍型であった。主な腫瘍は全ての系で見られ、内分泌系(254頭、39.7%)、血液リンパ系(97頭、15.2%)、外皮系 (83頭、12.9%)そして消化器系(54頭、8.4%)が最も一般的に冒された。一般的な腫瘍タイプは膵島細胞腫瘍(139頭、21.7%)そして副腎皮質細胞腫瘍(107頭、16.7%)そしてリンパ腫(76頭、11.9%)であった。ほとんど(94.2%) の膵島細胞腫瘍は機能的であった。
罹患フェレットの年齢は1ヵ月以下から15歳齢以上の範囲であった。腫瘍の発生率は4〜7歳齢のフェレットで最も高かった。性差は見られなかったが、腫瘍はそれぞれ、避妊や去勢をしていないフェレットより避妊した雌や去勢した雄でより多く見られた。検査したフェレットの数が増加したので、診断した腫瘍数も増加した。腫瘍疾患は研究期間中フェレットで診断された病気のますます大きい割合を占めるようになった。
臨床関連: フェレットは他の哺乳類に類似した腫瘍性疾患の発生率とスペクトルを持っている。(Dr.Kawano訳)
■フェレットのインスリノーマ;66症例の臨床所見と治療比較
Insulinoma in the ferret: clinical findings and treatment comparison of 66 cases.
J Am Anim Hosp Assoc. 1998 Nov-Dec;34(6):471-5.
Weiss CA, Williams BH, Scott MV.
組織学的に確定したインスリノーマのフェレット66頭における臨床徴候と外科的所見が報告された。
すべてのフェレットは、寛解期間と生存時間が最も効果的な治療を決定するため、3つの様式のうち1つを使って治療した。3つの治療グループは内科的に治療した10頭のフェレット、膵結節摘出術で治療した27頭のフェレット、部分的膵摘出術と併用した膵結節摘出術で治療した29頭のフェレットが含まれた。それぞれのグループの平均寛解期間はそれぞれ22、234、365日であった。それぞれのグループの平均生存時間はそれぞれ186、456、668日だった。データに基づいて、フェレットのインスリノーマの治療が推奨される。(Dr.Kawano訳)
■偽性副甲状腺機能低下症を疑ったフェレット
Suspected Pseudohypoparathyroidism in a Domestic Ferret
J Am Vet Med Assoc 222[8]:1093-1096 Apr 15'03 Case Report 21 Refs
* G. Heather Wilson, DVM, DABVP; Craig E. Greene, DVM, MS, DACVIM; Cheryl B. Greenacre, DVM, DABVP
発作のために検査した1.5歳のフェレットで、低血清カルシウム、高血清リン、極度に高い血清上皮小体ホルモン濃度が見つかった。それらの異常でよくある原因の、栄養による二次性上皮小体機能亢進症、慢性腎による二次性上皮小体機能亢進症、腫瘍溶解症候群、低マグネシウム血症が除外され、偽性上皮小体機能低下症が仮診断された。
偽性上皮小体機能亢進症はヒトで遺伝性で、我々の知るところでは過去にフェレットに認められておらず、上皮小体ホルモンの欠乏よりも、高血清上皮小体ホルモン濃度に対する反応の欠如が原因である。ジヒドロタキステロール(ビタミンD類似物質)と炭酸カルシウムの投与で改善した。治療を継続し3.5年経っても状態は良い。(Sato訳)