■大静脈症候群ではない糸状虫疾患の犬におけるアメリカ糸状虫学会治療プロトコールの有効性と許容性
Efficacy and tolerability of the American Heartworm Society therapeutic protocol in dogs affected by heartworm disease without caval syndrome
J Small Anim Pract. 2023 Oct 27.
doi: 10.1111/jsap.13677. Online ahead of print.
G Romito , E Pane , C Guglielmini , H Poser , C Valente , P Paradies , P Castagna , C Mazzoldi , M Cipone

目的:アメリカ糸状虫学会薬剤プロトコールは、大静脈症候群を起こしていない犬糸状虫疾患の現在の標準治療である。しかし、このプロトコールの許容性に対するデータは限られている。この研究の目的は、アメリカ糸状虫学会プロトコールを用いて治療した糸状虫疾患の犬の有効性と、潜在的治療関連副作用の有病率を述べることだった。

素材と方法:この回顧的多施設コホート研究に対し、アメリカ糸状虫学会薬剤プロトコールを完遂したクラス1-3の糸状虫疾患と診断された犬を、4つの医療データベースで検索した。個体群統計、臨床、診断的、治療的、結果データ(潜在的治療関連副作用の数とタイプを含む)を回収した。

結果:35頭の犬を含めた。年齢および体重の中央値は、6歳(1-13歳)、17.3kg(4.9-50kg)だった。糸状虫疾患はクラス1が20頭、2が11頭、3が4頭だった。アメリカ糸状虫学会の治療推奨に加え、35頭中8頭はfevorメラルソミン投与に対する鎮静を行い、35頭中30頭は注射部位に氷を使用した。成虫駆除療法後、全ての犬は入院しケージレストとした(時間中央値12時間(6-48時間))。全ての犬はその治療で生存した。長期フォローアップした全ての犬(32/35)は陰転した。さらに、治療関連副作用は珍しく、軽度で、すぐに支持療法の必要もなく回復した;それらには落ち込み/元気消失(4/35頭)、発咳(2/35頭)、跛行、疼痛、消化管症状(各1/35頭)が含まれた。

臨床意義:アメリカ糸状虫学会薬剤プロトコールはクラス1-3の糸状虫疾患の犬において効果的で安全である。(Sato訳)
■大静脈症候群の犬の改良型経静脈糸状虫吊り出しブラシの評価
Evaluation of improved transvenous heartworm extraction brush in dogs with caval syndrome
J Vet Sci. 2023 Jul;24(4):e46.
doi: 10.4142/jvs.23003.
Jihyun Kim , Junemoe Jeong , Kanghyo Park , Kyoungin Shin , In Sung Jang , Hakyoung Yoon

Free PMC article

背景:犬の糸状虫感染は、Dirofilaria immitisが原因で、シェルターの犬や屋外の犬でよく見られる。大静脈症候群は重度の感染で発症する可能性があり、物理的糸状虫の除去は、糸状虫の負荷量に重要である。この研究において、我々は改良型経静脈糸状虫吊り出しブラシを使用し、心血管損傷が少なく、より簡単な操作が可能と予想した。

目的:この研究の目的は、この改良型経静脈糸状虫吊り出しブラシの有効性を評価することである。

方法:このブラシは、過去のブラシタイプの装置の制限を改善するように設計した。このブラシは、塩化ポリビニルチューブとポリアミドあるいはポリグリコネートのスレッドで出来ていた。金属素材は透視下での視認を容易にするため先端に埋め込んでいた。

多数の糸状虫による大静脈症候群と肺高血圧と診断された8頭の犬を研究で使用した。除去処置は右頚静脈周囲の皮下組織の切開で開始し、デバイスを経静脈に挿入した。挿入後、糸状虫を捕えるためチューブを回転させ、スレッドに糸状虫を絡ませて吊り出した。この操作を数回繰り返した。最後に頚静脈と皮膚縫合を行った。殺成虫療法を糸状虫の除去後に行った。

結果:除去した糸状虫の平均数は、10.5±4.24双で、残りの糸状虫の平均数は0.63±1.06双だった。総処置時間は、72.63±51.36分だった。3症例を除き、処置後の超音波検査で糸状虫は検出されなかった。処置が関係する副作用は1-、2-か月以内に観察されなかった。

結論:改良型経静脈糸状虫吊り出しブラシは、大静脈症候群の犬の糸状虫除去に対し効率的である。(Sato訳)
■27頭の飼い犬の心糸状虫疾患に対する治療中の腎臓数値の評価
Evaluation of renal values during treatment for heartworm disease in 27 client-owned dogs
Parasit Vectors. 2023 Jun 9;16(1):191.
doi: 10.1186/s13071-023-05779-0.
C Autumn M Vetter , Alison G Meindl , Bianca N Lourenço , Michael Coyne , Corie Drake , Rachel Murphy , Ira G Roth , Andrew R Moorhead

Free PMC article

背景:犬のフィラリア症(CHD)は、Dirofilaria immitisで引き起こされ、一般的な予防可能な疾患で、アメリカのある地方で発生が増えている。American Heartworm Society (AHS)の治療ガイドラインは、月1回の大環状ラクトン投与、28日間のドキシサイクリン12時間毎の経口投与、3回のメラルソミン・ジヒドロクロライドの注射を推奨した(治療2日目に1回目、その後30日目に24時間毎の2回の注射)。ドキシサイクリンが入手できないときは、ミノサイクリンが使用されている。CHDの全身的影響(特に心臓と腎機能への影響)はが述べられており、感染犬は、腎臓バイオマーカーの血清濃度上昇を特徴とする腎臓ダメージを経験することが多い。CHDに対するAHS治療プロトコールは多くの症例で安全性と有効性が示されているが、合併症に対する可能性は残ったままである。今までのところ、CHDの治療中の対称性ジメチルアルギニン(SDMA)(腎機能の感受性のあるマーカー)の変化を評価した研究はない。この研究の目的は、血清クレアチニンとSDMA濃度を測定することにより、成虫駆除期間中の犬の腎機能を評価することだった。

方法:CHDに侵された飼い犬27頭において、以下のタイムポイントで血清クレアチニンとSDMAを測定した:ドキシサイクリンあるいはミノサイクリン投与開始前(基礎)、ドキシサイクリンあるいはミノサイクリン投与中(暫定)、メラルソミンの1回目注射時(1回目)、メラルソミンの2回目注射時(2回目)、治療完了後1-6か月の間の治療後の犬のフォローアップ受診時(治療後)。混合効果線形モデルを用いて、タイムポイント間のクレアチニンとSDMA濃度を比較した。

結果:メラルソミンの2回の投与後の平均SDMA濃度は、基礎濃度よりも有意に低かった(-1.80μg/dL、t-test、df=99.067、t=-2.694、P-Value=0.00829)。治療を行ったCHDの犬の基礎と他のタイムポイント間でいずれのバイオマーカーの濃度に、他の統計学的有意差はなかった。

結論:現行のAHSプロトコールは、腎臓機能に対し重大な影響を持つことはないかもしれないと結果は示唆する。(Sato訳)
■Slow kill法で治療したフィラリア感染の犬における心肺および炎症マーカーの評価
Evaluation of cardiopulmonary and inflammatory markers in dogs with heartworm infection treated using the slow kill method.
Language: English
Vet Parasitol. September 2017;244(0):35-38.
W K Yoon , Y W Kim , S I Suh , C Hyun

この研究は、6-10μg/kgのイベルメクチンと10mg/kgのドキシサイクリンで治療するスローキルプロトコールを用いて治療した異なる重症度のフィラリア感染の犬12頭において、心臓、うっ血、炎症バイオマーカーの濃度の変化を評価した。

心臓トロポニン-I、D-ダイマー、C-反応性蛋白、インターロイキン-6の血清濃度を、診断日(D0)、ドキシサイクリン投与終了後(D30)、スローキル治療終了後(D180)および、治療開始から10か月目(D300)に測定した。

治療終了時(D180)、クラスI犬4/4、クラスII犬3/4、クラスIII犬1/4、研究終了時(D300)、クラスI犬4/4、クラスII犬4/4、クラスIII犬1/4はフィラリア抗原血がクリアだった。診断日(D0)のクラスI犬のマーカーの血清濃度は参照範囲内だったが、クラスIIおよびIII犬の濃度は、参照範囲以上だった。さらに、研究終了時(D300)に全ての犬のマーカーの血清濃度は有意に低下したが、クラスIII犬のいくつかのマーカーは、病的レベルを維持した。

この研究は、軽度フィラリア感染(クラスIおよびII)の犬に対してのみ、slow kill法を代替治療プロトコールとして使用すべきだと示した。重度フィラリア感染および重度臨床症状(クラスIII)の犬で、スローキル法単独では全ての病的変化を効果的に減少させるわけではないので、合併症のリスクを最小にするためにステロイドや抗血栓塞栓を含む補助治療を使用すべきである。(Sato訳)
■実験的にフィラリアに感染させてイベルメクチン/ドキシサイクリンの組み合わせで治療した犬の血清中ドキシサイクリン濃度と抗ボルバキア抗体
Doxycycline levels and anti-Wolbachia antibodies in sera from dogs experimentally infected with Dirofilaria immitis and treated with a combination of ivermectin/doxycycline.
Vet Parasitol. April 2015;209(3-4):281-4.
A Menozzi; S Bertini; L Turin; P Serventi; L Kramer; C Bazzocchi

実験的にフィラリアに感染させイベルメクチン/ドキシサイクリンで治療した犬の血清で、HPLCによりドキシサイクリン濃度、ELISAにより抗ボルバキア表面蛋白質(rWSP)抗体を分析し、ドキシサイクリン単独で治療した犬の血清と比較した。

結果は2群間でドキシサイクリン濃度に統計学的な差がないことを示した。循環抗-WSP抗体価はコントロールのフィラリア感染犬と比較して両治療群の方が顕著に低く、ドキシサイクリンはボルバキアを減らすことができ、そのバクテリアに対する免疫反応を防ぐことを示した。

その組み合わせの治療プロトコールは高い成虫駆除を示しており、フィラリア感染犬においてドキシサイクリンとイベルメクチンの相互作用をより理解するのに追加研究が求められる。(Sato訳)
■フィラリアに実験的に感染させた犬のイベルメクチン/ドキシサイクリン併用による治療で血清中のドキシサイクリン濃度と抗ボルバキア抗体
Doxycycline levels and anti-Wolbachia antibodies in sera from dogs experimentally infected with Dirofilaria immitis and treated with a combination of ivermectin/doxycycline.
Vet Parasitol. April 2015;209(3-4):281-4.
A Menozzi; S Bertini; L Turin; P Serventi; L Kramer; C Bazzocchi

イベルメクチン/ドキシサイクリンの組み合わせで治療している犬フィラリアを実験的に感染させた犬の血清で、HPLCによるドキシサイクリン濃度、ELISAによる抗ボルバキア表面蛋白(rWSP)抗体を分析し、ドキシサイクリン単独で治療している犬の血清と比較した。

結果は、2群のドキシサイクリン濃度に統計学的有意差はないと示した。循環抗-WSP抗体価はコントロールのフィラリア感染犬と比較して両群で顕著に低く、このことはドキシサイクリンがボルバキアを減らす効果があり、バクテリアに対する免疫反応を防ぐことを示す。

この併用治療プロトコールは、フィラリア感染犬において高い成虫駆除を示しており、ドキシサイクリンとイベルメクチンの相互作用をより理解する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬のサンプルで処置前の加熱は糸状虫の抗原の検出を促進する
Pre-treatment with heat facilitates detection of antigen of Dirofilaria immitis in canine samples.
Vet Parasitol. June 2014;203(1-2):250-2.
Susan E Little; Candace Munzing; Steph R Heise; Kelly E Allen; Lindsay A Starkey; Eileen M Johnson; James Meinkoth; Mason V Reichard

犬において糸状虫感染の診断は、犬の血清、血漿あるいは全血の抗原検出に大きく依存しているが、抗原が免疫複合体に結合している場合検出されない。

抗原阻止に対するモデル開発のため、著者らはミクロフィラリア血の血清と、現在犬糸状虫に感染していない高ガンマグロブリン血症の抗原陽性犬の血清を混ぜ合わせ、陽性サンプルを抗原陰性に変換した;混ぜたサンプルを熱処理した時に抗原の検出は回復し、抗原/抗体複合体の破壊によるものと思われた。ミクロフィラリア血の1頭の犬の血液サンプルも形態学検査により犬糸状虫とミクロフィラリアを確認するため評価した。加熱前のこのサンプルで犬糸状虫の抗原は検出されなかったが、全血の熱処理後には強陽性を示した。

つまり、この結果は、犬糸状虫の抗原の検出を抑制する因子を含む血液サンプルの犬もいて、検査する前にそれらのサンプルに熱処理をすると、それらの検査の感度が改善することもある。(Sato訳)
■1頭の不全対麻痺の猫における硬膜外フィラリア症:犬糸状虫感染の症例報告
Epidural dirofilariosis in a paraparetic cat: case report of Dirofilaria immitis infection.
J Feline Med Surg. December 2013;15(12):1160-4.
Paolo Favole; Alberto Cauduro; Mauro Opreni; Sergio Zanzani; Francesca Albonico; Maria Manfredi; Carlo Cantile; Valentina Lorenzo

6歳の避妊済みメス猫の1か月かけて歩行不可能な不全対麻痺に進行した、長期にわたる進行性の後肢運動失調を検査した。血液および血清検査は大部分が正常範囲内だった。胸部および腹部エックス線検査で形態学的異常は認められなかった。胸-腰部脊椎のMRI検査で明確な硬膜外のマスがL2からL3の椎体の硬膜外腔に伸び、L2とL3の左椎間孔に広がっていることがわかった。

手術中、長く細く白い寄生虫が炎症性の硬膜外脂肪組織に弱く癒着しており、脊柱管から優しく除去した。病理組織の組織検査でメスの犬糸状虫の成虫を取り巻く硬膜外脂肪組織炎の診断が支持された。

これは1頭の猫の脊椎に局在した自然の犬糸状虫感染の新症例で、MRI、細胞および組織検査でよく証明され、猫の硬膜外脊椎マスに対して新しく鑑別診断に加えられる。(Sato訳)
■犬糸状虫の犬における急性相反応
Acute phase response in dogs with Dirofilaria immitis.
Vet Parasitol. 2014 May 17. pii: S0304-4017(14)00295-7. doi: 10.1016/j.vetpar.2014.05.016.
Mendez JC, Carreton E, Martinez S, Tvarijonaviciute A, Ceron JJ, Montoya-Alonso JA.

この研究の目的は、犬糸状虫に自然感染した犬において、診断時に様々な陽性および陰性を示す急性相蛋白(C反応性蛋白、ハプトグロビン、アルブミン、パラオキソナーゼ1)の濃度を決定することである。194頭の犬を用いた。全ての犬について、犬糸状虫の循環抗原が存在するかしないか、ミクロフィラリアがいるかいないかを評価し、臨床的な検査を実施した。

犬糸状虫の循環抗原については38頭の犬は陰性で、156頭が陽性であった。C反応性蛋白の有意な上昇とアルブミンとパラオキソナーゼ1の有意な減少が陽性犬で確認された。こうした変化は、ミクロフィラリアや臨床症状が存在するかどうかとは関係ないようにみえた。C反応性蛋白は、無症状と症状のある犬の間で有意な変化を示す唯一の急性相蛋白であった。おもしろいことに、C反応性蛋白値の上昇は、ハプトグロビンの上昇を伴わなく、ハプトグロビンはミクロフィラリアの犬においてはむしろ減少していた。これは、フィラリア症で生じる溶血性貧血のためであろう。

結論は、犬糸状虫の犬においては、急性相反応(C反応性蛋白の上昇とアルブミンとパラオキソナーゼ1の減少)が認められ、C反応性蛋白とハプトグロビンの挙動には相違が認められた。(Dr.Taku訳)
■猫の実験的および自然フィラリア感染による腎臓への影響
Renal effects of Dirofilaria immitis in experimentally and naturally infected cats.
Vet Parasitol. March 2011;176(4):317-23.
C E Atkins; S L Vaden; R G Arther; D K Ciszewski; W L Davis; S M Ensley; N H Chopade

犬糸状虫感染は糸球体疾患と蛋白尿に関係している。我々は実験的および自然にフィラリアに感染した猫においても、糸球体損傷による蛋白尿が見つかるだろうと仮説を立てた。薬剤安全試験の一部として60匹の感染性子虫を実験的に各々感染させた80頭と、自然にフィラリアが感染した31頭の猫の2集団を評価した。各集団で比較するコントロール集団を設けた。実験的感染群において、64頭の猫の尿を評価した。それらの猫のうち10頭は感染後8ヶ月で、微量アルブミン尿が出ていることが分かった。子虫の感染に抵抗性の猫はおらず、コントロール群の猫で微量アルブミン尿を示した猫はいなかった。10頭全ての微量アルブミン尿の猫は、尿蛋白:クレアチニン比で測定したとき明らかに蛋白尿があることを示した。虫の寄生と蛋白尿の間にわずかだが有意な関係があり、フィラリア成虫の存在が蛋白尿の発症に必要だが、ミクロフィラリア血症およびamicrofilaremic状態の猫は影響を受けた。血中フィラリア抗体および抗原の存在も、抗原尿の存在も蛋白尿の発症を予期しなかった。重度感染猫(5-25フィラリア成虫)も、自然感染(1-4フィラリア成虫)に匹敵する数に寄生された猫も蛋白尿を発症し、影響を受けた猫の相対数も重度とより軽度の感染猫で同様だった。蛋白尿試験紙でのみ定量が可能な自然感染猫は、年齢や性別がマッチしたコントロール集団の猫よりも蛋白尿の発生率が有意に大きいことを示した(90% vs 35%)。また重症度でフィラリア感染猫の蛋白尿は3-5倍だった。
我々は、成熟フィラリア成虫が感染した猫は蛋白尿発症のリスクがあり、これは感染後比較的すぐに認識されると結論付ける。重度感染は猫に蛋白尿発症の素因を与えるかもしれない一方で、この合併症は自然感染猫および同じような数が寄生した実験感染猫(すなわち、臨床的に妥当な寄生虫負荷)で見られる。フィラリアによる蛋白尿の臨床での関連はまだ判定されていない。(Sato訳)
■メラルソミン・ジヒドロクロライドの投与前にドキシサイクリンあるいはドキシサイクリンとイベルメクチンの併用で治療した犬糸状虫を実験的に感染させた犬における肺病理の評価
Evaluation of lung pathology in Dirofilaria immitis-experimentally infected dogs treated with doxycycline or a combination of doxycycline and ivermectin before administration of melarsomine dihydrochloride.
Vet Parasitol. March 2011;176(4):357-60.
L Kramer; G Grandi; B Passeri; P Gianelli; M Genchi; M T Dzimianski; P Supakorndej; A M MANSOUR; N Supakorndej; S D McCall; J W McCall

犬糸状虫(Dirofilaria immitis)感染犬における殺成虫療法は、血栓塞栓症を引き起こす可能性があり、処置後の健康状態をひどく損なうことがある。殺成虫後の肺病理を実験的に感染させた犬の3群で評価した。
1群は感染後30日間1日1回20mg/kgのドキシサイクリンを経口投与し、続いて12週目にメラルソミン・ジヒドロクロライド(2.5mg/kg)を筋肉内注射し、その1ヶ月後に24時間おきに2回注射した。
2群は1群で述べたような処置を行い、追加で感染後24週間、月に1回イベルメクチン6mcg/kgを経口投与した。
3群は上記のようにメラルソミン単独を投与した。
全ての犬は24週目に剖検し、肺病理を評価した。病変の基準に血管周囲の炎症、内皮過形成を含めた。処置を知らされていない無関係の2人の病理学者により病変にスコアをつけた。
結果はメラルソミン単独投与の犬の肺よりも、ドキシサイクリン投与単独あるいはイベルメクチン併用の犬の肺の病変スコアがより低いことを示した。ドキシサイクリン/イベルメクチンプロトコールと殺成虫剤の投与を受けた犬は、動脈病変の重症度が低く、血栓は事実上ないことを示した。(Sato訳)
■犬のフィラリア早期感染に対するドキシサイクリンの効果
Effects of doxycycline on early infections of Dirofilaria immitis in dogs.
Vet Parasitol. March 2011;176(4):361-7.
J W McCall; L Kramer; C Genchi; J Guerrero; M T Dzimianski; P Supakorndej; A Mansour; S D McCall; N Supakorndej; G Grandi; B Carson

テトラサイクリン薬の抗フィラリア効果は、最初にげっ歯類モデルのBrugia pahangiおよびLitomosoides sigmodontisのL(3)およびL(4)に対し高い効果が発見されたときに示された。またテトラサイクリンは、犬糸状虫のミクロフィラリアおよび成虫に対しても活性を持つことが分かっているが、幼虫および若年糸状虫に対する活性の評価は過去に報告されていない。
この研究は犬糸状虫およびB. pahangiの二重感染の犬において、犬糸状虫のライフサイクルの早期部分の期間を選択し、30日間ドキシサイクリン10mg/kg1日2回の経口投与の効果を評価した。
20頭のビーグルを体重により無作為に5頭ずつ4群に振り分けた。
0日目、各犬に50匹の犬糸状虫L(3)および200匹のB. pahangi L(3)を皮下注射で接種した。0-29日目(1群)、40-69日目(2群)、65-94日目(3群)にドキシサイクリンを投与した。4群の犬は無処置群とした。ミクロフィラリアの計数および抗原検査のために採血した。218-222日目に糸状虫成虫の収集および組織選別のために剖検を実施した。回収した糸状虫は、免疫組織、従来の顕微鏡/透過型電子顕微鏡、分子生物学的方法で検査した。
1群の犬で生きた糸状虫は回収されなかった。2群の犬で0-2匹(98.4%効果)、3群で0-36匹(69.6%効果)の生きた虫がいた。全てのコントロール犬には生きた糸状虫成虫(25-41匹)がいた。2群と3群の犬から回収した生きた虫は、コントロール犬の虫よりも発育が遅く、より小さかった。剖検時に1群および2群の犬からミクロフィラリアは検出されず、3群の1頭から1ミクロフィラリア/mlが検出された。全てのコントロール犬には剖検時にミクロフィラリアがいた。1群の1頭は1回のサンプリング時(166日目)に抗原陽性だった。2群の1頭は196日目および218-222日目で抗原陽性、3群の3頭は1回以上のサンプリング時で抗原陽性だった。コントロールの全5頭は、3回全てのサンプリング時で抗原陽性だった。
以上の所見は、30日間1日2回のドキシサイクリン10mg/kgの経口投与は、組織遊走期の幼虫および若虫に対し効果があり、ミクロフィラリア産出を遅延あるいは制限するだろうと示唆する。(Sato訳)
■犬糸状虫感染の病理および免疫に対するボルバキアとその影響
Wolbachia and its influence on the pathology and immunology of Dirofilaria immitis infection
Vet Parasitol. December 2008;158(3):191-5.
L Kramer, G Grandi, M Leoni, B Passeri, J McCall, C Genchi, M Mortarino, C Bazzocchi

フィラリアの虫である犬糸状虫の異なる組織に住む細菌性内部共生体ボルバキアの1995年の最終的な同定から、糸状虫感染の病因および免疫反応において何か役割があるのかを解明することに注目が集まっている。
犬糸状虫を実験的に感染させた20頭のビーグル犬において肺病理に対する治療効果をこの研究で評価した。1群の犬は、0-6、10-12、16-18、22-26、28-34週にドキシサイクリン(10mg/kg/day)を経口投与した。2群の犬は感染した非治療コントロールとした。3群の犬は、1群で述べたドキシサイクリンに加え、34週間毎週イベルメクチン(6μg/kg)の経口投与と24週目にメラルソミン(2.5mg)筋肉内注射(IM)、その1ヵ月後24時間おきに2回追加のメラルソミン注射を行った。4群の犬は3群で述べたようにメラルソミンのみ投与した。
無関係な2人の知らされていない病理学者によりスコアをつけた肺病変判定基準は、血管周囲の炎症および内皮過形成だった。ドキシサイクリン単独投与は病変スコアに対する影響はなかったが、ドキシサイクリンとイベルメクチンの組み合わせは、血管周囲の炎症の重症度が低かった。全ての肺は、ボルバキア表面蛋白(WSP)に対する陽性免疫染色で評価した。コントロール犬は多数の血栓、激しい血管周囲および間質性炎症、時折WSPの染色陽性だった。興味深いことに、ドキシサイクリン/イベルメクチン/メラルソミンを投与した犬は、動脈病変の重症度が有意に低く、血栓の事実上欠如が認められた。(Sato訳)
■アイデックスラボラトリーズでのフィラリア抗体陽性と抗原検査陽性率:猫フィラリアの認識と予防における傾向と可能性のある影響
Incidence of positive heartworm antibody and antigen tests at IDEXX Laboratories: trends and potential impact on feline heartworm awareness and prevention.
Vet Parasitol. 2008 Dec 10;158(3):183-90. Epub 2008 Sep 7.
Lorentzen L, Caola AE.

アイデックスラボラトリーズのReference Laboratory Networkでのデータで、遡及的に2000年から2006年までの猫のフィラリア検査の頻度、地理的偏り、そして有病率に対する傾向を調査した。データの調査によって、一般的に獣医師は、犬に行うほど猫のフィラリア検査あるいは予防をすすんで行わないということがわかった。犬におけるフィラリア検査や予防の明らかな認識と採択にも関わらず、我々は猫のフィラリア感染が明らかに普及しているが、犬より猫の方がフィラリア検査率が低いという仮説を打ち立てた。これは認知された猫の低いフィラリア感染率が、検査や予防が行われていないためかもしれないので重要である。
実際に、全体的な猫フィラリア抗原陽性率は重要で、調査した期間では平均0.9%、いくつかの地方では高くて4.6%と概算された。猫白血病ウイルス感染発生率1.9%と猫免疫不全ウイルス感染症発生率1.0%は、平均犬フィラリア発生率1.2%と比較される。低い検査率とこれらの有病率に基づいて、臨床家は成猫のフィラリア感染の症例と最近定義された糸状虫随伴呼吸器疾患(H.A.R.D)を日常的に見落としている。抗原検査の普及に伴い、陽性症例が明らかに検出されるようになるだろう。さらにこの感染猫の集団は“氷山の一角”と表現され、初期感染あるいは感染のリスクがある猫のより多い数と関連するだろう。(Dr.Kawano訳)
■実験的に犬糸状虫を感染させた猫の心エコー検査による定量
Echocardiographic quantification of Dirofilaria immitis in experimentally infected cats
Vet Parasitol. December 2008;158(3):164-70.
C E Atkins, R G Arther, D K Ciszewski, W L Davis, S M Ensley, P S Guity , H Chopade , H Hoss , T L Settje

犬糸状虫陽性猫における犬糸状虫予防の安全性は、従来、犬糸状虫に感染した犬から除去した成虫を外科的に猫に移植して評価している。それに変わる研究モデルは、猫の成虫感染を確立するため感染子虫を使用する。残念ながら後者の方法による成虫の数は、0双から30双以上とひどくばらつき、自然な犬糸状虫感染の研究および犬糸状虫感染猫における製剤の安全性を評価する研究両方に使用できない。
我々は、非感染および重度感染猫を研究に使用する機会を減らすため、心エコー検査で実験感染における感染の程度を判定しようと考えた。
80頭の各成猫に60双の感染性犬糸状虫子虫を接種し、成虫に成長する8ヶ月間維持した。抗原および抗体検査、心エコー検査を実施し、成虫負荷量を確認、概算した。感染から約8-12ヵ月後、心血管系における犬糸状虫成虫集団を確認、計数するため心エコー検査を実施した。成虫負荷量は、0、1-3、4-11、>11と層別化し、0は非感染と考え、11以上は駆虫薬研究には感染が重度すぎると考えた。その後、臨床的に適切な感染(1-10成虫)の猫は、治験薬で複数の治療を受け、最終治療から30日後、剖検により負荷量を確認した。
心エコー検査で算出した成虫負荷量は、剖検での数とよく相関したが、正確ではなかった(p<0.001、r(2)=0.67)。心エコー検査で過少、過大、正確に評価した糸状虫負荷量はそれぞれ53%、27%、22%だった。正確なカテゴリー(0-4)に心エコー検査で判定されたのは54%の猫のみだったが、陽性猫と陰性猫は88%区別でき、重度感染(>11)は95%が正確に分類できた。偽陰性と偽陽性結果、共に観察された。
心エコー検査は、実験的犬糸状虫感染の成虫の検出、成虫感染を拒絶している猫の同定、非常に重度な糸状虫負荷量の検出で有効であるが、より少ない負荷量の分類に関しては中程度の正確性しかないと結論する。実験的感染猫において正確な糸状虫負荷量を一貫して判定するには信頼できないが、駆虫薬安全性研究で糸状虫負荷量を層別化するのには有効である。(Sato訳)
■猫心糸状虫(Dirofilaria immitis)感染:無症候性猫における感染期間と寿命の統計学的詳細
Feline heartworm (Dirofilaria immitis) infection: A statistical elaboration of the duration of the infection and life expectancy in asymptomatic cats
Vet Parasitol. December 2008;158(3):177-82.
Claudio Genchi, Luigi Venco, Nicola Ferrari, Michele Mortarino, Marco Genchi

猫心糸状虫感染の持続期間と転帰(自家治癒あるいは死亡)、感染猫の寿命を評価する研究を行った。糸状虫抗体(Ab)および糸状虫抗原(Ag)陽性、心エコー検査で虫体の存在を示している猫を研究した。自家治癒は(1)糸状虫Ag陰性、(2)心エコー検査で虫体が視認できないこととした。1962頭の適格猫のうち、364頭(18.5%)が糸状虫Ag陽性で、131頭は糸状虫Agおよび心エコー診断陽性だった(罹患率6.7%)。ミクロフィラリア血症の猫はいなかった。
43頭の無症候性の猫をオーナーの同意を得て追跡調査を行い、34頭(79%)は自家治癒、9頭(21%)は死亡した。追跡調査から11頭(26%)は無症候を維持しながら21-48ヶ月以内に自家治癒し、23頭(53%)は徴候を見せるも18-49ヶ月以内に自家治癒、糸状虫感染に関連して6頭(14%)は8-41ヶ月以内に死亡し、3頭(7%)は38-40ヵ月後に突然死した。死亡あるいは突然死の確率は、診断時の年齢で有意に増加したが、性別、診断後の生存期間、あるいは徴候の有無で違いは認められなかった。徴候の有無は、診断時の年齢と有意な相互作用を示した(すなわち、無症候猫と比べ、症候猫は診断時の年齢と一緒に糸状虫感染の持続期間の増加も示した)。肥大型心筋症、慢性腎不全、腫瘍疾患に罹患した糸状虫陰性猫よりも糸状虫感染猫は有意に長期に生存した。(Sato訳)

■無症候性猫における猫心糸状虫感染の臨床症状とエックス線検査所見
Clinical evolution and radiographic findings of feline heartworm infection in asymptomatic cats
Vet Parasitol. December 2008;158(3):232-7.
L Venco, C Genchi, M Genchi, G Grandi, L H Kramer

猫の心糸状虫疾患の臨床症状は多様である;多くの猫は長期間感染によく許容すると思われる。心糸状虫感染猫は、徴候をまったく示さず虫体の自然死により自然に自家治癒が起こるかもしれない、あるいは突然劇的で急性の徴候を示すかもしれない。明らかに健康な猫における突然死は、まれな事象ではない。胸部エックス線検査は心肺疾患の重要な診断ツールである。しかし心糸状虫感染猫において胸部異常はしばしば欠如あるいは一過性で非常に不定である。様々な程度の肺実質疾患および過膨脹を伴う肺動脈末端枝の拡張のような所見は、感染に一致する最も典型的な特徴である。
1998年1月から2001年12月までにパヴィアの動物病院Citta diに、通常の健康検査および猫心糸状虫感染のエックス線所見および臨床症状の評価で紹介された猫で現地調査を行った。
心エコー検査による虫体の視認と共に抗体および抗原検査により、猫心糸状虫感染と診断した34頭の無症候の猫を追跡調査に組み込んだ。猫は心糸状虫診断時から転帰(自家治癒あるいは死亡)まで3ヶ月ごとに定期的に検査した。心糸状虫抗原が血清学的に陽性でなく、心エコー検査で虫体が見えないことを自家治癒とした。抗体の最終検査は自家治癒の最終確認として12ヵ月後に行った。28頭(82.4%)は自家治癒した;研究を通し感染の臨床症状を示さなかった21頭を含む。6頭の猫は死亡した。最も一般的に観察される臨床特徴は、急性の呼吸器徴候と突然死だった。研究した猫の大多数で感染は3年以上持続した。胸部エックス線検査所見は不定で、最も一般的に見られた所見は、限局性および瀰漫性肺実質異常だった。(Sato訳)
■糸状虫とボルバキア:治療関連
Heartworm and Wolbachia: Therapeutic implications
Vet Parasitol. December 2008;158(3):204-14.
J W McCall, C Genchi, L Kramer, J Guerrero, M T Dzimianski, P Supakorndej, A M MANSOUR, S D McCall , N Supakorndej , G Grandi, B Carson

治療初期に安全でより効果的な成虫駆除治療、ミクロフィラリア血症を減量し糸状虫疾患の伝播を断ち切る安全な方法が必要である。この研究で、糸状虫成虫感染を誘発した犬においてイベルメクチン(IVM)およびドキシサイクリン(DOXY)単独あるいは一緒に使用したとき(メラルソミン(MEL)と共に、あるいはなしで)の効果を評価し、DOXYを投与した犬のミクロフィラリアにおいて、ネッタイシマカ内でL(3)に成長し、その後犬で繁殖可能な成虫になる能力について評価した。
30頭のビーグルに16匹の犬糸状虫の成虫を静脈内移植により各々感染させた。6週間後、ミクロフィラリア数によりランク付けし、5頭ずつ6群に割り当てた。
最初0日目、1群に36週間毎週IVM(6μg/kg)を投与した。2群は1-6、10-11、16-17、22-25、28-33週目にDOXY(10μg/kg/day)を経口投与した。3および5群は1および2群で使用した投与量とスケジュールに従いIVMおよびDOXYを投与した。24週目、3および4群にMEL(2.5mg/kg)の筋肉内注射(24時間あけて2回)を行い、その1ヵ月後に再注射した。6群は治療しなかった。
定期的にミクロフィラリア数および抗原(Ag)検査(後の免疫評価および分子生物学的処置)を行うために採血した。感染前、0日目前、治療期間中周期的に、エックス線および身体検査、血液/臨床化学検査、尿検査を行った。36週目、犬は虫体回収のために安楽死、剖検を行い、免疫組織化学および従来の組織検査を行うため、肺、肝臓、腎臓、脾臓サンプルを採集した。IVM+DOXY(MELと共に、あるいはなしで)で治療した全ての犬は、9週後持続ミクロフィラリア血症だった。IVMあるいはDOXYで治療した犬のミクロフィラリア数は次第に減少したが、剖検時ほとんどに少数のミクロフィラリアが見られた。MELでのみ治療した犬のミクロフィラリア数は、コントロールのそれと同様だった。IVM+DOXY(MELと共に、あるいはなしで)およびMEL後に抗原検査スコアは次第に減少した。IVMあるいはDOXY単独の抗原スコアは研究期間を通してコントロールと同様だった。成虫の減数率はIVMで20.3%、DOXYで8.7%、IVM+DOXY+MELで92.8%、MELで100%、IVM+DOXYで78.3%だった。DOXYを投与した犬の血液を吸った蚊は、見かけ上正常なL(3)を持っていたが、犬に感染性を持たなかった。予備的知見はMEL投与(あるいはなし)前数ヶ月の間のDOXY+IVMの投与は、MEL単独よりも重篤な血栓塞栓症を起こす可能性を少なくして成虫を除去するだろうと示唆される。(Sato訳)
■重度犬糸状虫(Dirofilaria immitis)感染の犬からの経皮的犬糸状虫除去
Percutaneous heartworm removal from dogs with severe heart worm (Dirofilaria immitis) infestation
J Vet Sci. June 2008;9(2):197-202.
Seung Gon Lee, Hyeong Sun Moon, Changbaig Hyun

犬糸状虫症は右心不全、大静脈症候群、肺好酸球性肉芽腫症など、そのさまざまな合併症のため、命を脅かすことも良くある。いくつかの予防薬やメラルソミンが開発されており、それらは糸状虫感染のコントロールに非常に有効である。しかし、重度感染例では、メラルソミン療法は急速な成虫の殺滅により起こる重度免疫反応のため、しばしば好ましくない結果をもたらすことがある。外科的除去やフレキシブルアリゲーター鉗子を使用する介入方法は、文献でよく述べられている。フレキシブルアリゲーター鉗子を使用する機械的除去の有用性にもかかわらず、重度感染の犬の治療に対する適用性を増加させる方法論のアップグレードがいまだ必要である。我々は、ここに新しく考案した経皮的糸状虫除去方法を述べ、重度犬糸状虫感染の犬4例に使用し成功した。追跡調査研究も合併症なく良好な結果が得られたことを示した。(Sato訳)
■フィラリアが蔓延する地域で生活する非家庭猫のフィラリア自然感染率
Prevalence of Naturally Occurring Dirofilaria immitis Infection Among Nondomestic Cats Housed in an Area in Which Heartworms are Endemic
J Am Vet Med Assoc 227[1]:139-143 Jul 1'05 Prevalence Study 42 Refs
Clarke Atkins, DVM, DACVIM; Anneke Moresco, MS, DVM; Annette Litster, BVSc, PhD

目的:フィラリアがいると分かっているノースキャロライナの田舎、フィラリア症低罹患率の地域、フィラリアがいないと考えられる地域の非家庭猫におけるフィラリア暴露(すなわちフィラリア抗体検査結果陽性)、フィラリア感染(すなわち、フィラリア抗原検査結果陽性、または検死で成熟フィラリア虫体の確認)の罹患率を判定する

構成:横断罹患率調査

動物:ノースキャロライナの非家庭猫97頭(研究集団)とコロラド、オーストラリアのクィーンズランド、ニュージーランドのオークランドの非家庭猫29頭(対照集団)

方法:血清検査結果と剖検結果を再検討した。

結果:研究猫の75頭中57頭(76%)と対照猫の29頭中1頭(3%)が、フィラリア抗体検査陽性だった。オスの研究猫はメスよりもフィラリア暴露リスクが有意に高かった(相対危険度、1.3)。検査した47頭の研究猫と16頭の対照猫すべてフィラリア抗原検査は陰性だった。21頭の研究猫で剖検を実施し、1頭(5%)にフィラリアの感染が見つかった。

結論と臨床関連:アメリカ南東部の屋外で生活する非家庭猫はフィラリア暴露および感染の危険があり、オス猫はメス猫よりも暴露のリスクが高いことを示唆する。(Sato訳)
■イベルメクチン感受性コリーに10.0%イミダクロプリド-0.08%イベルメクチンを皮膚適用したときの影響
Effects of dermal application of 10.0% imidacloprid-0.08% ivermectin in ivermectin-sensitive Collies.
Am J Vet Res 65[3]:277-8 2004 Mar
Paul AJ, Hutchens DE, Firkins LD, Keehan CM

目的:提唱されている最大治療量を3-5回の投与割合で、10.0%イミダクロプリド-0.08%イベルメクチンをイベルメクチン感受性コリーの皮膚に投与したときの安全性を評価した

動物:イベルメクチン感受性犬と確認した15頭のコリー(5頭オス、10頭メス)

方法:任意配列ブロック法で、予備的精査中に得られた最大イベルメクチン感受性スコアーを基にして、イヌを3つの治療群(コントロール、3×、5×)に振り分けた。3×、5×群のイヌにそれぞれ3回、5回、最大ラベル投与量を投与した。コントロール犬には、等量の非医療溶液を投与した。特に嗜眠、失調、異常な散瞳、異常な流涎などのイベルメクチン中毒の典型的な神経症状に対し、終日観察とスコアリングを行った。

結果:研究中に臨床異常を呈したイヌはいなかった。

結論と臨床関連:この研究結果の分析により、10.0%イミダクロプリド-0.08%イベルメクチンの皮膚応用は、提唱最大治療量の3-5回、イベルメクチン感受性コリーに使用しても安全であることを示す。(Sato訳)
■フロリダ北部の猫のフィラリア感染に対する罹患率と危険因子
Prevalence and risk factors for heartworm infection in cats from northern Florida.
J Am Anim Hosp Assoc 39[6]:533-7 2003 Nov-Dec
Levy JK, Snyder PS, Taveres LM, Hooks JL, Pegelow MJ, Slater MR, Hughes KL, Salute ME

フロリダ北部で、ネコのフィラリア感染と危険要因を判定するため、630頭の成猫を検死した。フィラリアは4.9%の猫に認められ、フィラリア暴露の血清学的所見は、17%の猫に存在した。フィラリアから回復した全ての猫が、フィラリア抗原、または抗体血清陽性とは限らなかった。フィラリア感染と猫白血病ウイルス(FeLV)または猫免疫不全ウイルス(FIV)の重感染に関係はなかった。オス猫はメス猫よりもフィラリア、FeLV、FIV感染のリスクが高かった。1匹のフィラリアで、臨床疾患が出たり、または死亡したりするので、著者はこの地域のネコが、感染予防のためのフィラリア予防法を行うべきだと締めくくる。(Sato訳)
■糸状虫成虫駆除療法を行うより良い方法?
Is There a Better Way to Administer Heartworm Adulticidal Therapy?
Vet Med 98[4]:310-317 Apr'03 Review Article 8 Refs
Clarke Atkins, DVM, MS, DACVIM (internal medicine, cardiology) & Matthew W. Miller, DVM, MS, DACVIM (cardiology)

事実上全ての糸状虫感染の治療にメラルソミン投与の3回注射アプローチ法が、コストは増えるが2回注射法よりもより安全で、おそらくより効果的であると考える。たとえオーナーが、全身状態や糸状虫疾患の重症度の血液検査やエックス線検査費用を出すことができないとしても、3回投与法を行うことで費用的に助かるかもしれない。そういう例で、担当獣医師は胸部エックス線検査なしで、副反応を予測することがより難しくなるのだが、彼、または彼女はここで述べるようなアプローチで、副反応や付随費用を削減できる。またもっとも保守的なプロトコールのため、3回注射アプローチ法を受けたクラス1、2、3のイヌで疾患重症度の分類の必要性は少なくなる。(Sato訳)
■少数のフィラリアが寄生しているイヌで、3つの市販の糸状虫抗原検査キットの結果を比較した
Comparison of Results of Three Commercial Heartworm Antigen Test Kits in Dogs with Low Heartworm Burdens
J Am Vet Med Assoc 222[9]:1221-1223 May 1'03 Laboratory Evaluation 4 Refs
Clarke E. Atkins, DVM, DACVIM

目的:少数のフィラリアメスの成虫が感染しているイヌの血清で、3つの市販フィラリア抗原検査キットを行い、その結果を比較すること

構成:盲検検査評価

サンプル集団:検死時に1-4匹のフィラリアメス成虫の感染が確認されたイヌ(n=208)とフィラリアがいないイヌ(n=32)の血清サンプル

方法:個人診療所のイヌの感染状況が知らされていない免許がある獣医テクニシャンにより、メーカーの指示に従いサンプルを各検査キットで連続して検査した。検査キットの評価の順番は無作為に選択した。各検査キットの感受性、特異性、正確性、陽性的中率、陰性的中率を評価した。

結果:全ての検査は偽陰性結果となり、少数フィラリア寄生の検出能力で有意差は出なかった。検査キットの感受性は78-84%だった。全ての検査キットで、メスのフィラリアが増加すると感受性も増加した。3つの検査キットの特異性は高かった(97%)。

結論と臨床関連:結果は、少数フィラリア寄生のイヌの血清を試験するとき、3つの市販フィラリア抗原検査キットの感受性の範囲は78-84%で、試験キットの中でも感受性は変化することを示した。3つの検査キットの特異性は97%だった。3つの検査キットは、少数寄生のイヌで偽陽性や偽陰性結果を示すこともあった。(Sato訳)
■経食道的超音波心臓ガイドとX線透視下でフレキシブルアリゲーター鉗子によるイヌ糸状虫除去率の比較
Comparison of canine heartworm removal rates using flexible alligator forceps guided by transesophageal echocardiography and fluoroscopy.
J Vet Med Sci 65[2]:259-61 2003 Feb
Arita N, Yamane I, Takemura N

エックス線透視(FS)、または経食道心エコー(TEE)ガイドによる、糸状虫除去をフレキシブルアリゲーター鉗子を用いて行い、虫の除去率を比較した。虫除去率は2つの方法で同様な結果だった。しかし、TEEガイド方法は放射線曝露を避ける事ができ、心臓腔や肺動脈の虫を観察するのが容易だった。ゆえにTEEガイド方法は臨床の場においてFSガイド方法よりも有益だと考えられる。(Sato訳)
■イヌ・ネコの犬糸状虫検査の最新情報
Update on canine and feline heartworm test
Craig Datz,DVM, DABVP
Compend contin Educ Pract Vet 25(1):30-41,2003

イヌ・ネコの犬糸状虫の状態を確認する為に、手間の要らない便利な方法である、数種類の院内検査が利用できる。これらの検査の精度を評価する為に、検査する個体群における犬糸状虫症の罹患率と共に、あらゆる方法の感度や特異性を知る必要がある。一般に、犬糸状虫の成虫の検査に、抗原検査キットが用いられるが、ミクロフィラリアや抗体の検査も有用である。イヌ・ネコの犬糸状虫検査で、偽陽性や偽陰性の結果が生じる可能性があり、それは不必要な治療や不適当な勧告へ導く可能性があるかもしれない。
■Dirofilaria immitisの感染予防のため、雑種犬に予防的投与した、モキシデクチンの徐放注射薬の活性
Lok JB et al; Am J Vet Res 62[11]:1721-6 2001 Nov; Activity of an injectable, sustained-release formulation of moxidectin administered prophylactically to mixed-breed dogs to prevent infection with Dirofilaria immitis.

目的:犬フィラリア症感染を予防するため、モキシデクチン徐放注射薬(moxidectin SR)を1回接種し、Dirofilaria immitis3期感染幼虫(L3)の接種後、180日間予防できるかどうかを調査することです。

動物:雑種の成犬32頭

手順:体重と性別を基準に、犬を4グループに割り当てました。犬に、生理食塩水(0.9%NaCl)、またはモキシデクチンSRを、0.06、0.17、または0.5mg/kg(0日)の割合で皮下注射しました。180日後、それぞれの犬に、50匹のD immitis L3を接種しました。330日と、331日に、犬を安楽死しました。心臓、肺、そして胸腔を検査し、フィラリアの雌雄と、数を調査しました。

結果:平均35.9匹のフィラリアが、無処置のコントロール犬から回収されました。最低用量で、モキシデクチンSRを投与した犬、8頭のうち1頭から、14匹のフィラリアが回収されましたが、他の高用量モキシデクチン投与群においては、すべて感染しておりませんでした。わずかに触知できる、小さな肉芽腫が、モキシデクチン投与犬の注射部位で、認められました。肉芽腫の出現頻度と、サイズは、明きらかにモキシデクチン投与量と相関性がありました。

結論と臨床関連:0.17mg/kgのモキシデクチンSRの1回投与は、安全、かつ確実に、D.immitis L3暴露後の感染を完全防除し、その予防効果は、少なくとも180日間は持続します。この犬フィラリア症感染に対する予防方法は、月1回投与法による予防の失敗を、効果的に無くします。(Dr.K訳)

■Dirofilaria immitis感染後、さまざまな間隔で開始した、イベルメクチンまたはミルベマイシンの治療に対する犬の反応
Clarence A. Rawlings, DVM, PhD, DACVS et al; Vet Ther 2[3]:193-207 Summer'01 Clinical Study 24 Refs; Response of Dogs Treated with Ivermectin or Milbemycin Starting at Various Intervals after Dirofilaria immitis Infection

フィラリア感染犬に対し、予防プログラムを実施し、その反応を、56頭の犬で調査しました。犬にDirofilaria immitisの3期幼虫を感染させ、イベルメクチン/パモ酸ピランテル(IVM/PP)、またはミルベマイシン・オキシム(MO)による、予防プログラム(毎月1回)を、感染後、3.5、4.5、5.5、または6.5ヵ月で開始しました。IVM/PPと、MOで治療した犬を、それぞれの開始期間で、6頭からなるグループにしました。感染前と、予防開始時、そして予防開始1年後の剖検まで、定期的な間隔で、胸部レントゲン写真を撮影しました。レントゲン所見は、全ての犬で、フィラリア症の病態変化を現し、剖検では、フィラリア症に関連した、動脈変化が認められました。
210日から330日まで、感染後3.5ヵ月で開始したグループでは、IVM/PP投与群より、MO投与群の方が、間質性肺炎の重度な犬は、少ない結果となりました。感染後4.5ヵ月で開始したグループで、IVM/PP投与群より、MO投与群の方が、動脈面の剖検所見は、より重度となりました。尾側葉動脈と、間質性の病態が、MO投与群と比較して、IVM/PP投与群で増大しました。これは、尾側肺動脈内での、若い虫の死亡によるものであるとされました。感染後、5.5ヵ月と6.5ヵ月で、予防を開始した犬は、無処置コントロール群と、同様のレントゲン変化、および剖検所見を呈しました。この研究は、毎月の予防を開始する前に、感染評価される成熟犬と、フィラリア抗原検査により、陽性となったどんな犬に対しても、予防プログラムを開始する前に、成虫駆虫に対する治療をするべきという、American Heartworm Societyの推奨を、強化するものとなりました。(Dr.K訳)