■急性外耳炎のゴールデンレトリバー4頭における低温大気圧プラズマの治療効果
Therapeutic efficacy of cold atmospheric plasma in four golden retrievers with acute otitis externa
Vet Dermatol. 2024 Aug 14.
doi: 10.1111/vde.13287. Online ahead of print.
Alanur Bakır , Claudia Susanne Nett-Mettler , Bulent Ulutas
背景:低温大気圧プラズマ(CAP)は、ヒトや動物の種々の皮膚疾患の治療に使用される新しい治療ツールである。
目的:犬の急性外耳炎(AOE)の治療においてCAPの効果を評価する
動物:両側AOEのゴールデンレトリバーの飼い犬4頭
方法と素材:市販の耳洗浄液でクリーニング後、右耳(標準群)は抗生物質/抗真菌薬/コルチコステロイド合剤で治療し、左耳(CAP群)は3日毎、計4回のCAPで治療した。細胞学的スコアと耳炎インデックススコア(OTIS)3を0日目(D0)、D10、D15に各耳で記録した。飼い主と研究者は全体の評価を記録した。
結果:両群において、OTIS3と細胞学的スコアは研究期間にわたって減少した。全体の評価スケールは両群において中程度から優良の範囲だった。
結論と臨床的関連:低温大気圧プラズマ治療は、市販の局所抗炎症および抗菌耳治療と比べて同等の治療効果を示した。(Sato訳)
■7頭の犬と3頭の猫の耳血腫にポリカプロラクトンのスプリントを応用した外科的治療の成功例
Successful surgical management of aural hematoma with the application of polycaprolactone splint in 7 dogs and 3 cats
J Am Vet Med Assoc. 2025 Jan 31:1-6.
doi: 10.2460/javma.24.09.0571. Online ahead of print.
Yixing Xie , Yintong Deng , Xiaying Teng , Heyu Li , Linghao Li , Dongxin Xv , Yizhou Chen
目的:ポリカプロラクトン(PCL)スプリントの応用で治療した7頭の犬と3頭の猫における耳血腫(AH)の症例を報告する
動物:7頭の犬と3頭の猫
臨床症状:4頭の犬と2頭の猫は全体的なAHを呈し、3頭の犬と1頭の猫は局所的AHを呈した。全ての症例は、2022年12月から2024年6月の間に調査した。血腫領域は、PCLスプリント素材の適切なサイズにするために測定した。手術は血腫を吸引し、耳介にPCLスプリントを適用して縫合した。
結果:全ての動物でPCLスプリント応用の平均期間は、16.3±4.6日だった。臨床症状は、5頭の犬と3頭の猫で解消した(8/10(80%))。合併症は3症例で発生した。2頭の犬(2/10(20%))で7日と10日目に再発を経験し、PCLスプリントの早期除去との関係が疑われた;それらの犬に新しいPCLスプリントを応用し、21日と23日の除去時にSHの再発は観察されなかった。1頭の犬は耳介の局所的しわが残った。他の症例で>6か月の長期フォローアップ期間中にAHの再発はなかった。
臨床的関連:PCLスプリントの犬や猫のAHへの応用は、局所や全体、初回や再発でも安全で効果的である。この単純な外科的処置は、医原的な皮膚の傷が最小で、他の利用可能な処置の有効な代替処置となるかもしれない。(Sato訳)
■犬の外耳炎に対する治療結果に対する耳洗浄の影響
Effect of ear cleaning on treatment outcome for canine otitis externa
Vet Dermatol. 2024 Aug 30.
doi: 10.1111/vde.13292. Online ahead of print.
Erin Corb , Craig E Griffin , Willie Bidot , Melissa Hall , Allison Kirby , Wayne Rosenkrantz
背景:犬の外耳炎(OE)の管理に対し、耳洗浄が推奨されることが多い。どのように耳洗浄が治療結果に影響するのか評価したin vivo研究は少ない。
仮説/目的:犬のOEに対する耳洗浄の効果を判定するため、洗浄した耳と洗浄しなかった耳の治療結果を比較する
動物:耳垢のある、あるいは化膿性OEの飼い犬23頭
素材と方法:40の耳を無作為に2群に振り分けた:20の耳は乾燥した、あるいは生食で湿らせたガーゼでふき取り(grp1)、20の外耳道は市販の製剤を用手で洗浄した(grp2)。アセポン酸ヒドロコルチゾン、硝酸ミコナゾール、硫酸ゲンタマイシンを含有する市販の耳用懸濁液1mLを24時間毎に5日間耳に使用した。細胞学的スコア、修正耳炎指数スコア(OTIS3)、掻痒ビジュアルアナログスケール(PVAS)、修正PVASと飼い主のアンケートを0日目(D0)とD7で比較した。
結果:D7の群間の細胞学的スコア、修正OTIS3、PVAS、修正PVAS、飼い主の評価に統計学的差はなかった。D0からD7で両群ともに全ての治療パラメーターが有意に低下していたが、例外として細胞学的桿菌スコアは洗浄した耳で唯一有意に低下した。D0の洗浄前後でOTIS3に有意差が見られた。
結論と臨床関連:両群ともに洗浄に関係なく治療成功に達した。耳洗浄は、桿状型細菌が存在する時により重要かもしれない。(Sato訳)
■フレンチブルドッグの亜全耳道アブレーションと外側鼓室胞骨切術の短期及び長期結果
Short- and long-term outcomes of subtotal ear canal ablation and lateral bulla osteotomy in French bulldogs
Can J Vet Res. 2023 Oct;87(4):277-281.
Francisco Aranda-Jiménez , Carlos Martin-Bernal , Daniel Hernández-León , Jose Luis Fontalba-Navas , Ignacio Calvo
この回顧的研究の目的は、中耳炎のフレンチブルドッグにおいて、亜全耳道アブレーションと外側鼓室胞骨切術の全体の周術期合併症と、短期から長期結果を報告することだった。
2021年から2018年の医療記録から、術前神経症状、術式、術後合併症、長期結果に関し再検討した。斜頸、眼球振盪、運動失調、顔面神経機能障害、皮膚あるいは創傷感染などの術後合併症を記録した。
18頭の飼い犬(20耳)を研究に含めた。術後合併症は5/18頭(6/20耳)で観察され、そのうち2頭はメジャーな合併症と考えられた。紹介元獣医師および飼い主への電話によるフォローアップ(平均:33か月、範囲:17-56か月)は全ての犬で入手できた。
8週間以内の前庭症状と顔面神経麻痺の術後改善を伴う9/18頭(11/20耳)で完全な回復が報告された。全ての犬は耳介の「自然」な直立形態と動きを維持した。(Sato訳)
■慢性外耳炎の犬に対する耳洗浄液として次亜塩素酸の評価
Evaluation of hypochlorous acid as an ear flush in dogs with chronic otitis externa
Vet Dermatol. 2022 Dec 14.
doi: 10.1111/vde.13142. Online ahead of print.
Ralf S Mueller , Katja N Baumann , Teresa Boehm , Stefanie Dörfelt , Bettina Kasper , Laura Udraite-Vovk
背景:犬の慢性外耳炎(OE)は、麻酔下の耳洗浄を必要とすることも多い。
目的:慢性OEの犬の耳洗浄と抗菌剤として次亜塩素酸の評価
動物:両側とも同じ微生物が原因の慢性OEの犬20頭
素材と方法:一方の耳は麻酔下で次亜塩素酸により洗浄し、もう片方は生理食塩水で洗浄した。その後、次亜塩素酸で洗浄した耳は、2週間同じ液で1日2回洗浄し、もう一方は市販の耳クリーナーで洗浄した。ミコナゾール、ポリミキシンB、プレドニゾロンを含有した耳薬剤を両耳に1日1回使用した。洗浄前に、臨床スコアを判定した。耳の洗浄前後に細胞診結果を入手し、聴覚検査を行い、洗浄後の直接培養を行った。耳は治療2週間後に評価した。
結果:11頭の耳に酵母菌が存在し、1頭は球菌、8頭は混合感染だった。次亜塩素酸で洗浄後の5つの耳、生理食塩水で洗浄後の1つの耳は培養陰性だった。治療2週間後の臨床および細胞診スコアは両液で有意に低下した。治療間のいずれのポイントで、いずれのスコア、洗浄処置前後の聴覚検査結果にも治療間の差は見られなかった。副作用は見られなかった。
結論と臨床関連:次亜塩素酸は犬のOEに適した洗浄液である。(Sato訳)
■フレンチブルドッグやパグの短頭蓋は狭い耳道と関係している
Brachycephaly in French bulldogs and pugs is associated with narrow ear canals
Vet Dermatol. 2022 Mar 16.
doi: 10.1111/vde.13067. Online ahead of print.
Tanja Töpfer , Claudia Köhler , Sarah Rösch , Gerhard Oechtering
背景:短頭犬種は複数の頭蓋骨の奇形があり、外耳道の解剖学的変化を誘発しているかもしれない。それらの犬種の外耳道の耳鏡検査において、近位耳道が極端に狭いため、鼓膜を描写できないことが頻繁に見られる。また、短頭種の犬は外耳炎(OE)や中耳炎の素因を持つといわれている。
目的:CTを用い、軟骨性外耳道から骨性外耳道への移行の特徴を述べ、短頭種の犬のOEに関係する可能性を調査する
素材と方法:75頭の飼い犬(パグ(n=20)、フレンチブルドッグ(n=55))を含め、飼い主への質問、耳鏡検査、細胞学的検査を用いOEを評価した。背面CTスキャンにおいて、外耳孔の直径を新しい方法で測定した。結果を既存の耳の疾患がない正常な頭蓋のコントロール群と比較した。
結果:短頭種の犬(2.6mm)は、正常な頭蓋の犬(5.0mm)と比べて、有意に外耳孔の直径が小さかった。短頭種の犬において、32%のOEがあったが、統計学的に有意な外耳孔の直径との関連はなかった。中耳の浸出液(44%)、外耳道の狭小化(82.6%)は有意に短頭種の犬で多かった。150の鼓膜のうち5つのみが耳鏡で見ることができた。
結論と臨床関連:外耳孔の形成異常は、短頭種の犬の近位外耳道の重度狭窄を引き起こす。外耳道の狭窄とOEの関連は確認できなかった。(Sato訳)
■20頭の犬の炎症性ポリープとして提出された耳道マスの評価(2000-2020)
Evaluation of aural masses submitted as inflammatory polyps in 20 dogs (2000-2020)
Vet Dermatol. 2022 Sep 26.
doi: 10.1111/vde.13123. Online ahead of print.
Marvin D Schuldenfrei , Andrea T H Lam , Catherine A Outerbridge , Stephen D White , Verena K Affolter
背景:犬の非腫瘍性耳道ポリープ状マス(APMs)は珍しく、発表された研究はほとんどない。
目的:この遡及研究の目的は、耳道炎症性ポリープ(AIPs)として提出されたAPMsに対する臨床症状、診断画像検査、病理組織検査結果の特徴を述べることだった。
動物:獣医教育病院で評価されたAPMsの犬20頭
素材と方法:2000年から2020年の間に、キーワード犬、耳道/耳ポリープ、耳道/耳の炎症性マスで電子カルテを検索して症例を選択した。組織学的サンプルと医療記録を再検討した。
結果:20頭中14頭において、外耳道マスは、角化扁平上皮±付属器を特徴とした。20頭中4頭で立方体様から繊毛性円柱上皮±扁平上皮の存在により鼓室胞由来が確認された。2頭の犬で由来部位は判定できなかった。20頭中14頭で診断画像検査(MRIあるいはCT)によりAPMが確認された。4つの鼓室胞APMsのうち4つ、13の耳道APMsのうち7つで中耳炎が診断された。20頭中18頭において、できる限りの切除(debulking)、牽引摘出、総耳道切除と鼓室胞骨切術で、それぞれ2/8、4/6、4/4頭のAPMが解消した。
結論と臨床的重要性: APM起源の判定において、上皮のタイプは鍵となる特徴で、ビデオオトスコープ検査と診断画像検査の組み合わせによる解釈が非常に重要だった。犬のAPMsは耳道からより多く発生していた。鼓室胞APMsと由来が分からないAPMsは、猫のAIPsに相当した。APM由来部位にかかわらず、できる限りの切除は再発の確率がより大きかった。(Sato訳)
■個人飼育の犬の単独治療として耳血腫の経口プレドニゾロンによる非盲検治療
Non-blinded treatment of aural -hematoma with oral prednisolone as a monotherapy in privately-owned dogs
Schweiz Arch Tierheilkd. 2022 Jun;164(6):447-455.
doi: 10.17236/sat00358.
S Rüfenacht , S Schellenberg , S Borio , A Summerfield , M E Ricklin
Free article
耳血腫は犬の耳介の一般的な傷害である。治療オプションはさまざまである。近年は外科的オプションよりも内科治療がより一般的に行われている。
ゆえに、耳血腫の診断を受けた犬の治療に、1か月間の経口プレドニゾロンによる単独治療で十分うまくいくと仮説を立てた。
コントロール群を置かないこのオープン前向き実験研究において、耳血腫の個人飼育犬24頭を、経口プレドニゾロン1mg/kg/日で14日間、その後0.5mg/kg/日で14日間治療した。副作用が強く出た症例において、治療から7日目に減薬を開始した。結果は14日後、オーナーにより、28日後は臨床医あるいは専門医により主観的に評価した。また、治療前後に腫れの厚みを測定した。
24頭中21頭において、28日間の経口プレドニゾロンにより、最低80%の主観的臨床的改善を導き出した。耳の厚みは最低50%減少した。
この研究は、耳血腫の犬に単独治療として経口プレドニゾロンを4週間投与することで有望な結果を導き、犬の耳血腫に対し経済的、非侵襲性、安全な代替治療として考えることができたと示した。(Sato訳)
■エノコログサ(ねこじゃらし)の異物病変を確認した犬と猫の臨床および臨床病理特性、治療、結果:791症例(2009-2018)
Clinical and clinicopathological characteristics, treatment, and outcome for dogs and cats with confirmed foxtail foreign body lesions: 791 cases (2009-2018)
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 May 6.
doi: 10.1111/vec.13209. Online ahead of print.
Helen S Philp , Steven E Epstein , Kate Hopper
目的:エノコログサを確認した犬と猫の臨床および臨床病理特性、治療、結果を述べる
計画:2009年1月1日から2018年12月31日までの10年間で医療記録データベースを用いた回顧的研究
場所:大学教育病院
動物:エノコログサ異物の診断を受けた754頭の犬と37頭の猫。臨床医あるいは病理組織検査で直接視ることができた症例を含めた。各症例に対し抽出した情報は、シグナルメント;解剖学的エノコログサの位置;臨床病理および画像検査所見;治療および
提供した介入;結果を含めた。
測定値と主要結果:この期間でエノコログサの関係する疾患の有病率は犬で0.25%、猫で0.07%だった。多くの動物は若齢から中年齢で、夏季に呈した。犬の最も一般的な部位は、耳道、皮膚/皮下腔、鼻腔だった。猫は、眼のエノコログサが一番一般的だった(30/37)。血液検査の変化は非特異的だった。認定放射線医による超音波検査は114症例で、主に皮下、腰下、腔内のエノコログサに対し行われ、検査した症例の72.8%でエノコログサの位置が特定できた。腔内のエノコログサの遊走が疑われた78頭の犬でCT検査を実施し、全ての症例でエノコログサの存在に関係する構造的変化が見つかった。培養に提出した時、一般的に分離されたのは嫌気性菌で、アクチノマイセス属はまれに分離された。120の嫌気性分離菌の最も一般的なものは、バクテロイデス/プレボテラ属(n=38)、フロバクテリウム属(n=32)、ペプトストレプトコッカスanaerobius(n=30)だった。
結論:エノコログサの関連病変に対する短期結果は良好で、多くの症例は外来で管理できる。少数の症例は命を脅かす疾患を発症し、多様式の画像検査、内視鏡あるいは外科手術の集学的アプローチが必要かもしれない。(Sato訳)
■外耳炎の犬から分離したスタフィロコッカス・シュードインターミディウスの形成するバイオフィルムに対する銀ナノ粒子の抗バイオフィルム活性
Antibiofilm activity of silver nanoparticles against biofilm forming Staphylococcus pseudintermedius isolated from dogs with otitis externa
Vet Med Sci. 2021 Jun 22.
doi: 10.1002/vms3.554. Online ahead of print.
Mimi Seo , Taeho Oh , Seulgi Bae
Free article
背景:銀ナノ粒子(AgNPs)は、抗菌特性を所有することが知られている。ヒトでAgNPsの抗バイオフィルム活性が証明されているが、この活性はまだ獣医療で解明されていない。
目的:この研究の目的は、スタフィロコッカス・シュードインターミディウスに対する銀ナノ粒子の抗バイオフィルム活性を評価することだった。
方法:外耳炎の犬から得た10のS.シュードインターミディウスの分離菌にAgNPsで処理し、抗バイオフィルム活性を修正ミクロタイタープレート、コンゴレッド培地(CRA)法、走査型電子顕微鏡で測定した。
結果:AgNPsは有意な用量依存性抗バイオフィルム活性を表し、濃度が20および10μg/mlでバイオフィルムの形成を減少させた(P<0.05)。CRAプレートにおいて、コントロールと比べ、20μg/mlのAgNPsに暴露したS.シュードインターミディウスはより少ない細菌粘質を形成した。走査型電子顕微鏡写真では、濃度が20および10μg/mlのAgNPで処理した時、そのバイオフィルムはその表面に沿ってほとんど個別に細胞を散在させなかったことを示した。処置しなかった表面は、凝集状のバイオフィルムを示した。
結論:我々の結果は、犬の外耳炎に対しAgNPが有用な代替抗バイオフィルム剤かもしれないと示唆した。(Sato訳)
■重度疼痛の評価に来院した1頭の犬の耳介軟骨炎の診断と臨床管理
Diagnosis and clinical management of auricular chondritis in a dog presenting for evaluation of severe pain
Vet Dermatol. 2020 Oct 30.
doi: 10.1111/vde.12910. Online ahead of print.
James O Noxon , Darren J Berger , Mark A Ackermann , Jennifer R Petersen , Jodi D Smith
背景:犬の耳介軟骨炎に対する病因と適切な治療は明らかになっていない。この報告は、耳介軟骨炎の1頭の犬の独特な症状とうまくいった治療を述べる
臨床的概要:12歳、避妊済みメスのラブラドールレトリバーが、神経学的起源と思われる重度疼痛を呈した。疼痛は右の耳介に限局し、2か所のパンチバイオプシーを実施して評価し、感染性病原のない耳介軟骨を巻き込むリンパプラズマ細胞性化膿性肉芽腫性炎症を確認した。全身性経口プレドニゾンで治療し、治療開始から4週以内に臨床症状が解消した。その犬は関係ない理由で安楽死される前、治療中止から6か月、臨床症状がない状態を維持した。
結論:犬の耳介軟骨炎の今後の評価が必要であるが、疼痛は顕著な所見かもしれない;全身性プレドニゾンの単独療法は、臨床徴候の迅速で完全な解消をもたらすと思われる。(Sato訳)
■自然に感染した耳ヒゼンダニの猫のアフォキソラネルによる治療効果
Efficacy of afoxolaner in the treatment of otodectic mange in naturally infested cats.
Vet Parasitol. May 2018;256(0):29-31.
DOI: 10.1016/j.vetpar.2018.04.013
Marília Alves Machado , Diefrey Ribeiro Campos , Natália Lôres Lopes , Isabela Pessôa Barbieri Bastos , Cristiane Bazaga Botelho , Thaís Ribeiro Correia , Fabio Barbour Scott , Julio Israel Fernandes
アフォキソラネルはイソキサゾリン科に属する薬剤で、犬の外部寄生虫の治療に勧められている。
この研究の目的は、ミミヒゼンダニが自然感染した猫の治療において、アフォキソラネルの効果を評価することである。
16頭の猫を2群(治療とコントロール)に振り分けた。治療群(n=8)には2.5mg/kgのアフォキソラネルを1回経口投与した。コントロール群(n=8)には駆虫薬を投与しなかった。ダニの検出は、投与前、投与から48時間後、投与後35日まで毎週(+7、+14、+21、+28、+35)、ビデオオトスコープで実施した。
治療群の猫は、48時間後にはダニが陰性で、評価期間を通して見られなかった。コントロール群は実験中に陽性を維持し、Otodectes cynotisが自然感染した猫に対し、1回の投与で35日間以上、100%の効果(P<0.05)を証明した。その猫は自然居住地に再導入し、他の猫との接触が再開でき、その後再感染の可能性のために再評価した。
アフォキソラネルはミミヒゼンダニの治療に効果的だった。猫はアフォキソラネルの使用に対する副作用を呈さなかった。(Sato訳)
■局所治療前後の中耳炎の犬37頭の聴性脳幹反応
Brainstem auditory evoked responses in 37 dogs with otitis media before
and after topical therapy.
J Small Anim Pract. July 2017;0(0):.
S Paterson
目的:この研究の目的は、マルボフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、チカルシリン(off-licenceで使用)の水溶液の耳内投与が聴性脳幹反応により測定した聴力の変化に関係するかどうかを判定すること
素材と方法:犬に聴性脳幹反応検査を行い中耳炎と診断し(n=37)、その後耳の疾患を治療した。はじめに、外耳道と中耳を滅菌生理食塩水でフラッシュし、続いてEDTA
trisと0.15%クロルヘキシジンで洗浄した。そして、水性抗菌剤を混ぜたEDTA tris混合水溶液を中耳に注入した。各犬で追跡検査を行い、治療を感染性病原体あるいは炎症浸潤が検出されなくなるまで継続した。感染の解消および治療の中止後、聴性脳幹反応検査を再度行った。
結果:マルボフロキサシンあるいはゲンタマイシンの水溶液で治療した犬の聴性脳幹反応は、中耳炎の治療後、変化なし、あるいは改善を維持したが、チカルシリンあるいはトブラマイシンで治療した犬は悪くなった。
臨床意義:もし、中耳炎の症例で局所抗菌剤のoff-licence使用が必要と思われた場合、マルボフロキサシンとゲンタマイシンの水溶液が、チカルシリンやトブラマイシンの水溶液よりも聴器毒性がより少ないと思われる。(Sato訳)
■ミミヒゼンダニによる犬耳ダニ感染に対するサロラネルの効果と安全性:非劣性試験
Efficacy and safety of sarolaner in the treatment of canine ear mite infestation caused by Otodectes cynotis: a non-inferiority study.
Vet Dermatol. April 2018;29(2):100-e39.
DOI: 10.1111/vde.12521
Csilla Becskei , Otto Cuppens , Sean P Mahabir
背景:犬の耳ダニ感染に対しては様々な治療が利用できる
目的:犬の耳ヒゼンダニによる耳ダニ感染に対しサロラネルの効果を評価し、単盲多施設野外研究において局所モキシデクチン/イミダクロプリドと比較した。
動物:ミミヒゼンダニ感染の飼育犬を月1回のサロラネル(n=163)あるいは局所モキシデクチン/イミダクロプリド(n=78)で治療した。
方法:耳道の耳ダニの存在、耳ダニ症に関係する臨床症状(頭を振る、掻痒/耳を掻く、耳介の外傷あるいは脱毛、耳道の紅斑、潰瘍、壊死組織片)を0、14、30、もし可能ならば60日目に評価した。月1回の治療を1回(0日目)あるいは2回(0と30日目)行った後、両耳に生きたダニが見つからなければダニ感染の治癒と考えた。非劣性は14日目と30日目に評価した。
結果:14、30、60日目の寄生虫学的治癒は、サロラネル投与犬でそれぞれ76.4%、90.5%、93.3%で、モキシデクチン/イミダクロプリド投与犬では53.9%、63.5%、66.7%だった。研究完了時、最も遅くて60日目、全体の寄生虫学的治癒はサロラネル投与犬で99.4%、モキシデクチン/イミダクロプリド投与犬で87.8%だった。14、30日目のサロラネルの寄生虫学的治癒率は、モキシデクチン/イミダクロプリドに非劣性だった。耳ダニ症の臨床症状は、両群共に研究を通し改善した。治療関連の有害事象は見られなかった。
結論:サロラネルの1回の経口投与は、犬の耳ヒゼンダニ感染の治療において安全で非常に効果的だった。(Sato訳)
■フィンランドのアメリカンコッカースパニエルの外耳炎の調査
Survey of otitis externa in American Cocker Spaniels in Finland.
Language: English
Acta Vet Scand. February 2017;59(1):14.
Mirja Kaimio , Leena Saijonmaa-Koulumies , Outi Laitinen-Vapaavuori
背景:アメリカンコッカースパニエルは、末期外耳炎の治療として手術を必要とする犬種の中で代表犬種である。しかし、この犬種の外耳炎(otitis externa:OE)の有病率は分からないままである。著者らはフィンランドにおいて、55の個人動物病院の2010年の医療記録を調査し、アメリカンコッカースパニエルのOEの有病率を判定し、イングリッシュコッカー、イングリッシュおよびウェルシュスプリンガースパニエルと比較した。アメリカンコッカースパニエルのオーナーにアンケートを作成し、末期OEの潜在的リスクファクターを確認した。
結果:98736頭の医療記録から、OEの有病率はウェルシュスプリンガースパニエル(468頭中149頭、31.8%、(95%信頼区間27.6-36.0))で最も高く、続いてアメリカンコッカー(329頭中89頭、27%、(22.2-31.7))、イングリッシュスプリンガー(491頭中96頭、19.6%、(16.1-23.1))、イングリッシュコッカースパニエル(1467頭中231頭、15.7%、(13.8-17.6))だった。耳に疾患のある犬において、OE症状発現の平均数と、耳の手術の回数はアメリカンコッカースパニエルで最も多かった。アメリカンコッカースパニエル151頭に対するオーナーのアンケートのうち、85頭(56%)はOEに悩まされていた。それらのうち47%(40/85)において皮膚病変は見られずOEを発症し、46%(33/72)は1歳未満でOEの最初の症状を示していた。24%(20/85)において、OEの症状は1か月以内に再発あるいは治療しているのにかかわらず持続し、16%(14/85)は手術が必要(11頭)あるいは重度OEのため安楽死された(5頭;手術した犬のうち2頭および他3頭)。1歳未満のOEの発現は末期OEのリスク(OR3.8、95%CI1.1-13.6)が有意に増した。
結論:フィンランドにおけるアメリカンコッカースパニエルのOEの有病率は、過去にコッカースパニエルで報告されたものより高かったが、最も高かったのはウェルシュスプリンガースパニエルということが分かった。他のスパニエルの比較で、アメリカンコッカースパニエルはOEの再発がより多く、外科的に管理する頻度も高かった。アンケートを基に、OEの早期発現(1歳未満)は末期OEのリスクを上昇させた。アメリカンコッカースパニエルにおいて、OEは最初の治療から強力なアプローチを必要とし、再発予防に重点を置くべきである。この犬種のOEの原因と治療に関する追加研究が求められる。(Sato訳)
■増殖性壊死性外耳炎の子猫の1例:病巣内および局所コルチコステロイド療法による治療成功
Proliferative and necrotizing otitis externa in a kitten: successful treatment with intralesional and topical corticosteroid therapy.
Language: English
J Vet Med Sci. January 2017;78(12):1883-1885.
Yutaka Momota , Junya Yasuda, Mitsutaka Ikezawa, Jun Sasaki, Masaaki Katayama, Kenji Tani, Masahiro Miyabe, Eri Onozawa, Daigo Azakami, Katsumi Ishioka, Toshinori Sako
増殖性壊死性外耳炎(proliferative and necrotizing otitis externa:PNOE)は、子猫の耳道や耳介凹面を侵す非常にまれな疾患である。
この報告はPNOEの5ヶ月齢の猫について述べる。
病理組織検査でその診断を確認した。治療はその病変内に酢酸メチルプレドニゾロンの局所注射で開始した。その後、強力なグルココルチコイド軟膏のプロピオン酸クロベタゾールクリームで治療した。その猫は顕著に改善した。我々の知識では、免疫抑制剤のタクロリムスでの局所治療が効果的だと報告されている一方で、これは局所コルチコステロイド療法でPNOEを治療した最初の報告である。(Sato訳)
■犬の末期の炎症性耳疾患に対する両側v.s.片側全耳道アブレーションと外側鼓室骨切術後の合併症率
Complication Rates After Bilateral versus Unilateral Total Ear Canal Ablation with Lateral Bulla Osteotomy for End-Stage Inflammatory Ear Disease in Dogs: 79 Ears.
Language: English
Vet Surg. July 2016;45(5):659-63.
Kristin A Coleman , Daniel D Smeak
目的:片側(ULS)に対し、1回の両側(BLSS)全耳道アブレーション-外側鼓室骨切術(total ear canal ablation-lateral bulla osteotomy:TECA-LBO)で周術期合併症率に違いがあるのかどうか調べる
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:14年間、1施設においてTECA-LBOを行った57頭(79耳)の犬
方法:コロラド州立大学獣医教育病院において1999年3月から2013年9月までに末期炎症性非腫瘍性耳疾患に対し、TECA-LBOを行った犬の医療記録から、その処置にかかわる術中および早期術後合併症に関して評価した。組み込み基準は、慢性外耳炎の臨床および/あるいは病理組織診断、TECA-LBOによる外科的治療、最低2週間の経過観察データだった。
結果:20頭の犬(40耳)はBLSSを行い、37頭(39耳)はULSを行っていた。BLSS群の40耳のうち29耳(72.5%)(40.0%顔面神経、15.0%眼、32.5%マイナーな切開性合併症)、ULS群の39耳のうち25耳(64.1%)(33.3%顔面神経、12.8%眼、23.1%マイナーな切開性合併症)で合併症が記録されていた。ULS処置に比べ、BLSSを行った犬は有意に高い総合併症率、あるいは高い神経、眼、あるいは切開性合併症率を示すわけではなかった。結果に影響するメジャーな麻酔の合併症は両群共に記録されなかった。
結論:ULSおよびBLSS後の麻酔および早期外科的合併症率は、この研究で有意差がなかった。末期の炎症性外耳炎があり、それ以外は健康な犬に対し、1回の両側性TECA-LBOの実施は、合併症に対し追加リスクがない実行可能な治療オプションである。(Sato訳)
■全耳道アブレーションと外側鼓室胞骨切術後の難治性深部感染の治療
Treatment of Persistent Deep Infection After Total Ear Canal Ablation and Lateral Bulla Osteotomy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):609-21.
Daniel D Smeak
全耳道アブレーションと外側鼓室胞骨切術後の耳道の不完全切除の残存物、骨性耳道や鼓室に残った上皮や壊死組織を起源とする難治性深部感染が衰弱させる可能性がある。
罹患した鼓室胞の深い触診、口を開けた時から起こる疼痛、排液性洞などの臨床症状が数か月から数年持続するかもしれない。CT検査による病巣の確認は、手術計画で重要である。
抗生物質療法は深部感染の臨床症状を軽減あるいは消失させるが、再発することが多い。
手術はより一貫して完全に解消する。(Sato訳)
■犬のコレステリン腫の診断と管理
Diagnosis and Management of Cholesteatomas in Dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):623-34.
Marije Risselada
犬の耳のコレステリン腫の外科的介入は根治的である。画像所見は中耳の軟部組織密度、活動的病変の特徴を持つ鼓室胞の骨の破壊などである。疾患初期の犬は、慢性疾患、側頭骨関与および神経症状のある犬よりも結果が良い。再発を繰り返す犬は、再手術あるいは内科管理で、長期解消あるいは臨床症状の軽減が得られる。(Sato訳)
■耳血腫の現行の治療オプション
Current Treatment Options for Auricular Hematomas.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):635-41.
Catriona MacPhail
外耳炎のような耳の疾患により激しく頭を振ったり、耳を掻いたりすることが、犬と猫の耳血腫発症の最も一般的な原因である。
基礎にある免疫学的な原因も軟骨や血管の脆弱性の説明に挙げられている。コルチコステロイドのみの薬物療法から単純な血腫穿刺、外科処置まで耳血腫の管理にいろいろなオプションが存在する。
この状況は通常他の疾患プロセスの二次的なもののため、治療の様式にかかわらず再発の可能性は基礎疾患の適切に管理されれば低い。(Sato訳)
■一般的な犬の外耳炎分離菌に対するN-アセチルシステインの抗菌効果
Antibacterial effect of N-acetylcysteine on common canine otitis externa isolates.
Language: English
Vet Dermatol. June 2016;27(3):188-e47.
Elizabeth R May , Katherine A Conklin , David A Bemis
背景:N-アセチルシステイン(NAC)は、その細菌バイオフィルム破壊と同じくその抗菌および粘液溶解特性により外耳炎の治療で有効な薬剤の可能性を持つ。
仮説/目的:犬の外耳炎で分離される一般的な細菌に対し、NAC剤の抗菌活性を調べる
動物:5つのStaphylococcus pseudintermedius、6つのPseudomonas aeruginosa、5つのCorynebacterium
spp.、6つのβ-haemolytic Streptococcus spp.分離菌を含む外耳炎の犬の臨床症例から22の分離菌を同定し、検査した。
方法:各分離菌は24時間血液培地で培養し、ミューラーヒルトンブロス(MHB)に移植し、最終濃度5x10(5)CFU/mLに調整した。NACは開始濃度160mg/mLにMHBで希釈し、連続2倍微量液体希釈法を全ての検査した分離菌に対し陰性コントロールと3検体で実施した。検査したNACの濃度は0.125-80mg/mLの範囲だった。各ウェルに接種するのに50μL量の菌液を使用した。
結果:検査した全ての分離菌に対するNACの最小発育阻止濃度(MIC)は5-20mg/mLの範囲だった。
結論と臨床関連:N-アセチルシステインは、外耳炎に関連する細菌や薬剤抵抗性の細菌をインビトロで抑制し、新しい治療薬剤として使用する可能性を持つ。(Sato訳)
■イギリスの獣医師による犬耳血腫の治療
Treatment of canine aural haematoma by UK veterinarians.
Language: English
J Small Anim Pract. July 2016;57(7):360-4.
J Hall , S Weir , J Ladlow
目的:犬の耳血腫の現在の治療法を調査することと、治療成功に関する獣医師の意見を調査する
方法:オンライン調査を完了するため、勧誘した獣医外科医と診療所に合計2386のEmailを送付した。犬の耳血腫の初回および再発症状に対する治療選択と、再発予防及び見た目の良さに対し、治療が成功するための彼らの意見を調査した。
結果:合計312のメールアドレスは無効で、259のアンケートに回答があり(反応率12.5%)、251を分析した。初診での治療は、針による排液と局所コルチコステロイド注入(43%)、外科手術(29%)、コルチコステロイドを使用しない針による排液(16%)などだった。外科処置は線状切開と縫合のみ(35%)あるいは縫合とステント(24%)、S字切開と縫合(23%)だった。特定の治療を選択した一般的な理由は過去に成功した(76%)からだった。再発した血腫は、初回よりも外科手術で治療することが多かった(67%)。内科治療での美容的結果は優良で、外科治療では良好だった。
臨床意義:この研究は犬の耳血腫に対して使用される治療の相対的流行と成功の認知を述べる。その状況の最終的な治療に、良好な美容結果が得られる外科手術が考慮されやすい。(Sato訳)
■小動物のアスペルギルス耳炎:17症例の回顧的研究
Aspergillus otitis in small animals - a retrospective study of 17 cases.
Vet Dermatol. February 2016;27(1):3-e2.
Elizabeth C Goodale; Catherine A Outerbridge; Stephen D White
背景:アスペルギルスsppは腐生日和見真菌で、ヒトの耳真菌症の一般的な原因である。犬のアスペルギルス外耳炎の症例は報告されているが、著者の知るところではこれは犬と猫のアスペルギルス耳炎を述べる最初の回顧的ケースシリーズである。
目的:アスペルギルス耳炎の犬と猫のケースシリーズのシグナルメント、推定されるリスクファクター、治療、結果の特徴を述べる
動物:アスペルギルス耳炎と診断された8頭の犬と9頭の猫
方法:培養を基にアスペルギルス耳炎と診断された動物を、1989-2014年のカルテの回顧的調査で確認した。
結果:全ての犬の体重は23kg以上だった。この研究で確認された最もよく見られた推定されるリスクファクターは併発疾患、免疫抑制を起こす治療、あるいは耳の異物の病歴だった。全ての犬およびほとんどの猫で、アスペルギルス耳炎は片側性だった。併発する中耳炎は、3頭の犬と1頭の猫で確認され、その他2頭の猫で疑われた。アスペルギルスフミガーツスは全体で最も一般的な分離菌で、猫では優勢な分離菌だった。アスペルギルスニガーとテレウスは犬でより一般的に分離された。
動物は種々の局所および全身性抗真菌薬剤を投与されていた;しかし、麻酔科の耳の洗浄および/あるいは外科的介入が真菌感染の解消の可能性を高めた。
結論:アスペルギルス耳炎は珍しく、一般的に免疫抑制および耳の異物を含む潜在的リスクファクターのある猫や大型犬において、片側性外耳炎として見られる;過去の抗生物質使用は一般的だった。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルの原発性分泌性中耳炎の診断
Diagnosis of primary secretory otitis media in the cavalier King Charles
spaniel.
Vet Dermatol. December 2015;26(6):459-e107.
Lynette K Cole; Valerie F Samii; Susan O Wagner; Paivi J Rajala-Schultz
背景:原発性分泌性中耳炎(PSOM)はキャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)で報告される疾患である。その診断は、隆起した鼓膜と鼓膜切開後の中耳内の粘液の視認のみを基になされている。PSOMの診断のために評価されている追加検査はなく、早期疾患のCKCSsは見逃されているかもしれない。
仮説と目的:この研究の目的は、CKCSsのPSOMの診断に対するゴールドスタンダードとして、耳鏡検査、ティンパノメトリー検査、ニューモトスコピーと鼓室胞超音波検査、CT検査を比較した。
動物:臨床症状からPSOMを示唆する60頭のCKCSs
方法:耳鏡検査、CTスキャン、鼓室胞超音波検査、ティンパノメトリー検査、ニューモトスコピー検査を実施した;CTで中耳に軟部組織デンシティーを確認したCKCSsは鼓膜切開を行い、中耳を洗浄した。
結果:43頭(72%)のCKCSsはPSOM(30頭は両側、13頭は片側)だった。弛緩部の大きな隆起はPSOMのCKCSでのみ確認された(特異性100%)が、PSOMの73の耳のうち21の耳でしか弛緩部の大きな隆起はなかった(感受性29%)。その他の検査の感受性と特異性は、ティンパノメトリー検査で84%と47%、ニューモトスコピー検査で75%と79%、鼓室胞超音波検査で67%と47%だった。
結論と臨床意義:それらの結果を基に、弛緩部の大きな隆起はPSOMの存在を示す一方で、平らな弛緩部はPSOMではない犬と同様に、PSOMのCKCSでも認められるかもしれない。上記診断検査の中で、PSOMの診断に対し、平らな弛緩部のCKCSsにおいてCTスキャンの代わりに推奨できるものはない。(Sato訳)
■手持ち鼓膜測定値による意識のある犬の中耳や耳管の評価
Handheld tympanometer measurements in conscious dogs for the evaluation
of the middle ear and auditory tube.
Vet Dermatol. June 2015;26(3):193-7, e39-40.
George M Strain; Asia J Fernandes
背景:外耳炎は中耳炎によることも多いが、高度エックス線画像検査の使用なしに鼓膜、中耳、耳管を評価するのは難しい。
仮説/目的:意識のある犬において鼓膜測定検査に対する技術の開発および鼓膜、中耳、耳管の評価が可能なように、この機器の臨床使用に対する規範データの提示を目的とした。
動物:学校教育コロニーから16頭のハウンド(メス14頭)
方法:犬を立位で優しく保定した。耳道を洗浄後、ティンパノメーター プローブ
チップ エクステンションを垂直耳道に設置し、手持ち機器を用いて自動検査を実施した。全ての犬は両耳を検査した。
結果:13頭の両耳、2頭の片耳から満足な記録が得られ、1頭は得られず、結果として32の耳のうち28(88%)のデータを得た。不適合の犬に対し、炎症の存在あるいは他の明確な事象を確認するため耳鏡検査を行った。どの測定でも耳の間に有意差は見られなかった。ピークコンプライアンス、ピークコンプライアンス圧、勾配、耳道容積に対する規範データが報告される。
結論と臨床意義:鼓室測定は中耳構造の評価の補助として意識のある犬で記録できる。(Sato訳)
■猫の耳の炎症性ポリープの管理における内視鏡による経鼓膜牽引による治療:37症例のレビュー
Per-endoscopic trans-tympanic traction for the management of feline aural
inflammatory polyps: a case review of 37 cats.
J Feline Med Surg. August 2014;16(8):645-50.
Valentina Greci; Erika Vernia; Carlo M Mortellaro
猫の耳の炎症性ポリープは鼓室あるいは耳管から発生する良性の増殖である。それらは若い猫で起こることが多く、ポリープの成長方向により外耳炎や中耳炎の症状、あるいは呼吸器症状を呈す。神経学的症状も報告されている。この状況の猫の治療に単純な牽引および腹側鼓室胞骨切術(VBO)が一般的に使用されている方法である;疾患の炎症性特性による再発のりクスを減らすためにコルチコステロイドが推奨されている。最も一般的な処置後の合併症はホーナー症候群、ポリープの再発、顔面神経麻痺である。
この報告の目的は、猫の耳の炎症性ポリープの治療で内視鏡による経鼓膜牽引(PTT)の方法を述べることと、この処置の短期および長期経過観察を報告することである。
PTTにより19か月の平均長期結果の間、94%の猫の耳の炎症性ポリープを解消できた。3頭(8%)はPTT処置後すぐにホーナー症候群を発症したが数週間以内に解消し、5頭はポリープが再発した(13.5%)。2頭だけ経過は悪く、それぞれ22か月目に慢性中耳炎と診断され、46か月目に慢性中耳炎とポリープが再発した。PTTは耳の炎症性ポリープの治療に対し有効な方法で、VBO(57-81%)あるいは単純な牽引(43%)と比べて神経学的合併症が少なく(8%)、再発率(13.5%)はVBO(0-33%)と同様で、牽引単独(57%)よりはかなり低かった。(Sato訳)
■慢性外耳炎あるいは中耳炎の犬において聴力喪失を評価する聴力喪失グレード付システムとオーナーベースの聴力アンケートの使用
Use of a hearing loss grading system and an owner-based hearing questionnaire
to assess hearing loss in pet dogs with chronic otitis externa or otitis
media.
Vet Dermatol. October 2013;24(5):512-e121.
Carly L Mason; Susan Paterson; Peter J Cripps
背景:聴力消失は内科あるいは外科療法に対し、外耳炎/中耳炎の犬の適合性を評価するときに重要である。
仮説/目的:犬の慢性耳炎において聴力喪失の指標として犬の聴力喪失グレード付けシステムとオーナーに書いてもらったアンケートを評価すること
動物:犬の慢性耳炎で紹介された100頭の病院集団
方法:一般的な家庭の騒音への犬の反応を評価するためオーナーにアンケートに答えてもらった。各犬で外耳炎あるいは中耳炎の有無を判定し、聴性脳幹反応測定を実施した。デシベル正常聴力レベル(dB
NHL)における最小聴力域値(MHT)を記録し、ヒトWHOグレード付けシステムに従い、カットオフ値≦25dB
NHL、26-40dB NHL、41-60dB NHL、60-80dB NHL、≧81dB NHLの0-4の5グレードに分けた。
結果:アンケートでグレード0症例の正常な聴力を正確に判定したが、片側あるいはグレード1の両側聴力喪失を確実には検出できなかった。グレード2以上の両側聴力喪失の犬に対し、アンケートの感受性は83%(24/29、95%信頼区間、(CI)64-94%)、特異性は94%(67/71、95%CI86-98%)だった。より高いグレードの聴力喪失は中耳炎と有意に関係した(P<0.01)。
結論と臨床意義:アンケートは中程度から重度の両側聴力欠損の慢性耳炎の犬(MHT41以上dB
NHL)において有効な診療スクリーニングツールになると思われる。聴力喪失グレード付けシステムは治療を決断するのに役立つかもしれない。慢性中耳炎はハイグレードの聴力喪失に関係する。(Sato訳)
■5頭の犬の耳血腫の管理において側面に設置する陰圧ドレーンの使用
Use of laterally placed vacuum drains for management of aural hematomas in five dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2015 Jan 1;246(1):112-7. doi: 10.2460/javma.246.1.112.
Pavletic MM.
症例:片側の耳血腫ができて1週間以内に評価と治療で紹介されてきた5頭の犬(ニューファンドランド、ゴールデンレトリバー、柴犬、スタッフォードシャーテリア、ビズラ)
臨床所見:左耳(3)と右耳(2)に耳血腫があった。
治療と結果:麻酔下の犬で、凸面あるいは側面、耳介表面から耳血腫に外科的にアプローチした。切開した耳血腫内腔に陰圧ドレーンを設置するため2か所の小切開を施した。ドレーンは耳介根元近くの頸部皮膚から出した。ドレーンの自由端は陰圧リザーバーに18-21日間つないだ。この時、エリザベスカラーと一緒にドレーンと皮膚の縫合を除去した。
全ての血腫は解消し、6か月の経過観察中に手術部位は治癒した。美容面では、5頭中4頭が良好だと思われた。1頭の犬の耳介のわずかなしわは、陰圧の使用で余分な外側の軟骨壁がわずかに折れ、血腫の軟骨壁の非対称な拡大から起きた。
臨床関連:ここで述べた治療は、有効で、経済的で最小限の侵襲で、包帯や創傷管理は必要としなかった。凸面(側面)へのチューブの取り回しは、適切なエリザベスカラーの設置でずれないように保護できた。相対的な美容は良好だった;耳介のわずかな折れを伴う血腫の軟骨壁の非対称な拡大が1頭に見られた。
■耳介の関与がない1頭の猫に見られた増殖性壊死性外耳炎:ビデオオトスコープによる特徴
Proliferative and necrotising otitis externa in a cat without pinnal involvement:
video-otoscopic features.
J Feline Med Surg. April 2013;15(4):353-6.
Stefano Borio; Federico Massari; Francesca Abramo; Silvia Colombo
子猫の増殖性および壊死性外耳炎は珍しく、最近耳道と耳介の凹面を侵す疾患が述べられている。
この文献は、1頭の若い成猫における増殖性および壊死性外耳炎の症例を述べる。
この症例において、病変は耳介に関与しなかったが、両耳介は重度だった。ビデオ-耳鏡で、中耳には関係しない、耳道全長にわたり360度で成長した指状増殖病変を認めた。病理組織検査で診断を確認し、耳道にミネラルオイルで希釈した0.1%タクロリムス軟膏の1日1回の投与に完全に反応した。過去に述べられていないビデオ-耳鏡所見は非常に独特で、この珍しい疾患を診断する上で臨床医の役に立つと思われる。(Sato訳)
■犬の聴覚に対するケンネルの騒音の影響
Effect of kennel noise on hearing in dogs.
Am J Vet Res. April 2012;73(4):482-9.
Peter Scheifele; Doug Martin; John Greer Clark; Debra Kemper; Jennifer Wells
目的:2か所の典型的なケンネルにおいて飼育犬がさらされる騒音の程度を評価することと、聴覚の測定可能な変化がこの騒音にさらされた結果として起こるかどうかを判定すること
動物:2つのケンネル環境で一時的に預かった14頭の犬
方法:1か所目(獣医教育大学ケンネル)で6か月間、2か所目(アニマルシェルター)で3か月間騒音レベルを測定した。聴性脳幹反応試験を獣医ケンネルに到着後48時間、3か月、6か月目に犬に実施した。V波に対する最低検出反応レベルの一時的変化を分析した。
結果:ケンネル環境の音響解析で、2か所のケンネルの音レベル値は100-108dBの範囲の音圧レベルに相当することが分かった。6か月の終了時、聴覚試験を実施した14頭全てで聴覚に測定された変化があった。
結論と臨床的関連:騒音調査の結果は、ヒトの聴覚系にダメージを与えるレベルを示した。同様にそのようなレベルは飼育されている犬にも危険であると考えられ、特に、長期間獣医ケンネルで飼育されている犬において聴覚喪失を認めている。そのようなケンネルが犬の長期飼育を意図するとき、騒音防御対策がケンネルの構成、運営に標準化されるべきである。(Sato訳)
■通常の家庭で使用した耳洗浄液の細菌汚染
Bacterial contamination of commercial ear cleaners following routine home
use.
Vet Dermatol. December 2011;22(6):546-53.
Sarah J Bartlett; Wayne S Rosenkrantz; Susan Sanchez
耳洗浄液は繰り返し使用するように作られており、再発性あるいは持続性感染性耳炎を誘発する細菌汚染の可能性があるかもしれない。
この研究の目的は、犬において過程で通常使用したあとの市販耳洗浄液の細菌汚染率を調査することと、汚染に関係する特徴を述べることだった。
使用した耳洗浄液ボトルとそれらの使用に関する情報を、獣医皮膚科に訪れた犬のオーナーから入手した。ボトルの先端と内容液を好気性培養した。
細菌汚染はボトル先端の10%、内容液の2%に存在した。分離された細菌はスタフィロコッカスシュードインターミディウス、バシルス種、コアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種、ミクロコッカス種、Burkholderia
cepaciaだった。先端の汚染率は内容液よりも有意に高かった(P=0.0076)。先端の汚染率は、期限内のサンプル(4%)よりも期限切れのサンプル(17%;P=0.0277)で有意に高かった。先端が汚染された容器の大きさは、先端が汚染されていないものよりも有意に大きかった(P=0.0455)。汚染率はTris-EDTAが成分の時に有意に高かった。ボトルの清潔性、耳道への接触、培養時の耳の感染状態は汚染率と関係なかった。
要約すると、市販の耳洗浄液で日常に家庭で使用するとき、病原性細菌汚染は些細な心配である。この心配は、期限切れの製品、大きな容器の耳洗浄液を使用するとき、Tris-EDTAが成分の時は大きくなると思われる。(Sato訳)
■ビデオ耳鏡を用いた犬の外耳炎の治療
Treatment of canine otitis externa using video otoscopy.
J Vet Med Sci. September 2011;73(9):1249-52.
Reiko Usui; Ryoichi Usui; Minako Fukuda; Emiko Fukui; Atsuhiko Hasegawa
27頭のトイプードルと40頭のミニチュアダックスフンドの外耳炎を、ビデオ耳鏡を用いて治療した。毛と組織片のかなりの量が付着した外耳道と鼓膜の外面の腹側部の接合部に明瞭な凹部(外鼓膜凹部)を観察した。鼓膜外面に付着する全ての毛と組織片を除去し、全身性抗生物質と抗菌剤を投与し、その後全ての犬は回復した。外鼓膜凹部に観察された発毛パターンは犬の種類により特徴付けることができた。全てのトイプードルはカーリーヘアーで、ミニチュアダックスフンドは直あるいは平らになったヘアーだった。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルにおける咽頭の形態と滲出物を伴う中耳炎の関係
Relationship between pharyngeal conformation and otitis media with effusion in Cavalier King Charles spaniels.
Vet Rec. July 2010;167(2):55-8.
G M Hayes, E J Friend, N D Jeffery
滲出物を伴う中耳炎(OME)は他が正常なキャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)において一般的な偶発的所見である。この研究では、OMEと短頭立体配座の間に関係があるのかどうかMRIでの測定を使用して判定した。
結果は関連を確認し、またCKCSにおいて軟口蓋のより大きな肥厚、鼻咽頭口の縮小が有意にOMEと関連することを示した。それらの結果は、耳管機能障害とOMEが犬における短頭立体配座の因果関係を以前に見過ごしていることを意味すると思われる。(Sato訳)
■正常および疾患の犬の耳における真菌叢の評価
Evaluation of fungal flora in normal and diseased canine ears.
Vet Dermatol. December 2010;21(6):619-25.
Jacquelyn J Campbell; Kimberly S Coyner; Shelley C Rankin; Thomas P Lewis; Anthea E Schick; Amy K Shumaker
この研究は、正常犬、臨床症状のないアトピー犬、耳炎の細胞学的所見のあるアトピー犬、外耳炎の犬における耳の真菌叢の特徴を述べるために実施した。42頭の正常犬、23頭のアトピー犬、32頭の耳炎犬で研究した。耳真菌培養および細胞診のためのサンプルを、全ての犬の合計194の耳から採取した。
67の耳のサンプル(34%)は以下の腐生真菌生物に対する培養が陽性だった。43(64%)がペニシリン属、13(19%)がアスペルギルス属、残りの17%は種々の他の腐生真菌生物だった。腐生真菌コロニー形成あるいは感染の細胞学的所見はどの動物にも見られなかった。腐生真菌培養陽性とどの研究グループとの間にも相関はなかった。
33の耳のサンプル(17%)は、マラセチアpachydermatisが陽性だった。マラセチアの細胞学的所見は、マラセチアに対する培養陽性と有意に関連した(左耳P=0.006;右耳P=0.019)。さらにマラセチア数の増加は培養陽性となるより高い機会を導いた(左耳P=0.003;右耳P=0.008;McNemar's test)。マラセチアpachydermatisは、耳垢が増加した耳で培養されやすかった。耳の形(直立あるいは下垂)はマラセチアあるいは腐生真菌生物の培養陽性に有意に関係することはなかった。マラセチア培養陽性とどの研究グループとの間にも相関はなかったが、マラセチアはアレルギー性皮膚炎および/あるいは膿皮症に一致する他の皮膚症状もあるアトピー性あるいは耳炎グループの個々の犬で培養されやすかった(左耳P=0.031;右耳P=0.005)。(Sato訳)
■犬の細菌性外耳炎の識別と抗生物質感受性パターン
Identification and antimicrobial susceptibility patterns of bacteria causing otitis externa in dogs.
Vet Res Commun. June 2010;34(5):435-44.
Hamed Zamankhan Malayeri, Shahram Jamshidi , Taghi Zahraei Salehi
細菌性病原因子は、犬の外耳炎の原因となる重要な病原体と考えられる。特に慢性あるいは再発性の外耳炎の症例で、細菌培養および抗生物質感受性試験の実施は重要である。
細胞診、細菌培養、抗生物質感受性試験を行うために外耳炎の犬74頭のの垂直耳道の終末部から無菌スワブサンプルを採取した。細胞学的スメアはグラムおよびギムザ染色を行った。血液寒天およびマッコンキー寒天培地で好気性細菌培養を行った。合計92の分離細菌のうち、68はスタフィロコッカスintermediusだった。他の分離細菌は、シュードモナスaeruginosa、プロテウスmirabilis、大腸菌、パスツレラcanis、他の6つのコアグラーゼ陰性スタフィロコッカス種だった。
14種の抗生物質を使用し、全ての分離細菌で抗生物質感受性試験を実施した。この試験結果をもとに、全ての分離したスタフィロコッカス種はアミカシン、エンロフロキサシン、リファンピンに感受性があり、ゲンタマイシン、セファロチン、セフトリアキソンに弱い耐性があった。グラム陽性分離菌の半数以上はペニシリン、アンピシリンに耐性があった。一般に全てのグラム陰性分離菌はアミカシンとエンロフロキサシンに感受性があり、セフトリアキソンとゲンタマイシンに弱い耐性があり、ペニシリン、エリスロマイシン、セファロチンに強い耐性があった。
この研究結果に関して、無併発症外耳炎の症例で、単に細胞診をもとに抗生物質を選択可能であるが、細菌培養および抗生物質感受性試験の実施が推奨される。しかし、併発症がある、あるいは難治性症例では、抗生物質選択は細菌培養および抗生物質感受性試験をもとにすべきである。(Sato訳)
■剖検時に非腫瘍性中耳疾患を認めた猫の臨床的異常の罹患率:59症例(1991?2007)
Prevalence of clinical abnormalities in cats found to have nonneoplastic middle ear disease at necropsy: 59 cases (1991-2007).
J Am Vet Med Assoc. 2009 Oct 1;235(7):841-3.
Schlicksup MD, Van Winkle TJ, Holt DE
目的
剖検を実施した猫における非腫瘍性中耳疾患の罹患率を明らかにし、さらにその中で臨床的な異常を認めた割合を明らかにすること。
デザイン
遡及的臨床研究
動物
1991年1月から2007年8月までに剖検を実施した59頭の猫
手法
医療記録から剖検時に非腫瘍性中耳疾患を認めた猫を選んだ。選定された猫については、以下のデータを記録した。臨床症状、最初の主訴、中耳あるいは外耳に関連した症状を持っていたかどうか、上部呼吸器疾患に罹患していたかどうか、剖検時の診断、肉眼的な鼓室胞の所見、安楽死の理由。中耳疾患の症状として、顔面神経麻痺、ホルネル症候群、運動障害を除く片側性の末梢性前庭疾患を考慮した。
結果
3442頭の猫で剖検を実施し、そのうち59頭(1.7%)に非腫瘍性の中耳疾患を認めた。59頭中1頭の両側性を含む6頭(10%)の猫は、臨床的に中耳疾患の臨床症状を呈していた。これらのうち5頭は片側性の末梢性前庭疾患で、1頭はホルネル症候群だった。
結論および臨床的重要性
本研究結果により、猫の非腫瘍性中耳疾患の多くは臨床症状を示さないものと考えられた。本知見から、他の疾患でCTやMRIを実施した猫で、偶発的に中耳疾患が見つかるかもしれない。(Dr.Ka2訳)
■増殖性および壊死性外耳炎の猫4例
Proliferative and necrotizing otitis externa in four cats
Vet Dermatol. October 2007;18(5):370-7.
Elizabeth A Mauldin1, Timothy A Ness, Michael H Goldschmidt
増殖性および壊死性外耳炎は、原因が良く分からないまれな疾患である。この状態は、3頭の成猫家猫短毛種(3-5歳)と1頭の子猫(6ヶ月齢)において皮膚バイオプシーにより診断された。罹患猫は、耳介および外耳道表面を覆うように、大きな黄褐色からこげ茶-黒の混ざったプラークを持っていた。プラークからの脆い物質および厚い滲出物が耳道を塞いでいた。猫は二次的細菌および/または酵母性耳炎だった。組織病理診断の前に、全ての猫は多数の耳用製剤および経口抗生剤およびコルチコステロイドを使用していたが解消しなかった。組織学的に全ての症例は顕著な同様の変化があり、明白な毛包外毛根鞘過形成および好中球性管腔毛包炎を伴う表皮肥厚、毛包角化症、毛包外毛根鞘におけるここの壊死性ケラチノサイトが見られた。1例は皮膚バイオプシーにより4年持続していることが示された。成猫は0.1%タクロリムス局所投与で治療し、追跡調査できなかった1頭を除き全頭著しい改善を見せた。1頭の猫は局所タクロリムスのみで、他の猫は局所タクロリムスと経口プレドニゾロンにより完全に解消した。(Sato訳)
■犬外耳炎の病因:100例の遡及研究
Aetiology of canine otitis externa: a retrospective study of 100 cases
Vet Dermatol. October 2007;18(5):341-7.
Manolis N Saridomichelakis, Rania Farmaki, Leonidas S Leontides, Alexander F Koutinas
この遡及研究の目的は、外耳炎(OE)の犬100頭において徴候、病歴、臨床および検査所見と、外耳道の炎症の種々の原発、二次的、永続的原因因子の潜在的関連を調査することだった。犬の年齢は3ヶ月から14歳(中央値:4.75歳)で、オス45頭、メス55頭だった。コッカスパニエル、Jura des Alpes、ブリタニースパニエルは、病院の犬集団と比較したとき、OEの犬の中で有意に多く見られた。多くの症例で、OEは慢性-再発性(63%)、両側(93%)だった。アレルギー性皮膚炎(43/100)、草のノギ(12/100)、ミミダニ症(7/100)が最も一般的な原発性原因因子だった。32症例で原因となるような原発性因子はなく、3頭は1つ以上見られた。マラセチア種(66/100)、球菌(38/100)、桿菌(22/100)は二次的原因因子だった一方、外耳道狭窄(38/100)と鼓膜穿孔中耳炎(25/100)は最も重要な永続的因子だった。アトピー性皮膚炎や食物有害反応に関係するOEは、メス犬や掻痒性皮膚疾患の犬でよく見られ、草のノギ誘発OEはコッカスパニエルや急性症例で見られた。鼓膜穿孔は、アトピー性皮膚炎、食物有害反応関連OEの犬であまり見られなかったが、耳鏡検査および耳道細胞診でそれぞれ草のノギおよび桿菌が見つかったときはより一般的だった。最後に、球菌の過剰増殖は、耳道狭窄に断然関与していた。(Sato訳)
■犬の耳から分離された緑膿菌に対する選択的フルルオロキオノロンの抗生物質検査
Antimicrobial testing of selected fluoroquinolones against Pseudomonas aeruginosa isolated from canine otitis.
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Nov-Dec;43(6):307-12.
McKay L, Rose CD, Matousek JL, Schmeitzel LS, Gibson NM, Gaskin JM.
1.5年間で外耳炎症例から合計100の緑膿菌(P. aeruginosa)を収集した。最小発育阻止濃度検査(MICT)によってエンロフロキサシン、マルボフロキサシンそしてオルビフロキサシンの感受性を決定した。分離菌はディスク拡散法(DDST)を使ってエンロフロキサシンとマルボフロキサシンに対する感受性も検査した。分離菌はエンロフロキサシン(z = -4.57; P<0.05)やオルビフロキサシン(z = -5.02; P<0.05)より有意にマルボフロキサシンにより感受性があった。マルボフロキサシンにおけるMICTとDDSTの間には87%の一致があり、過大評価と過小評価誤差はほぼ等しい数であった。エンロフロキサシンにおけるMICTとDDSTの間には74%の一致があったが、DDSTはエンロフロキサシンに感受性がある菌株の数を過大評価する傾向があった。これらの結果から、マルボフロキサシンはエンロフロキサシンやオルビフロキサシンに比べより緑膿菌に対して効果的で、DDSTに基づくと、効果の乏しいエンロフロキサシンによる治療を導くかもしれないことを示唆している。(Dr.Kawano訳)
■外耳炎の犬のマラセチア病原体に対するトロメタミン、EDTA、ベンジルアルコールおよび0.1%ケトコナゾールを含有する耳洗浄液のインビトロ活性
In vitro activity of an ear rinse containing tromethamine, EDTA, benzyl alcohol and 0.1% ketoconazole on Malassezia organisms from dogs with otitis externa
Vet Dermatol. April 2007;18(2):115-9.
Lynette K Cole, Dao H Luu, Paivi J Rajala-Schultz, Cheyney Meadows, Audrey H Torres
この研究目的は、外耳炎の犬のマラセチアに対し、トロメタミン、EDTA、ベンジルアルコール、および純水による0.1%ケトコナゾール溶液を含む耳洗浄液のインビトロ活性を評価することだった。マラセチアは外耳炎の犬19頭の外耳道スワブサンプルから採集し、Malassezia
pachydermatisのコントロール株を1つ用意した。3種の試験溶液を評価した。ER(EDTA、トロメタミン、ベンジルアルコール)、ER+ケト(EDTA、トロメタミン、ベンジルアルコール、ケトコナゾール)、H(2)O(純水)。各試験液10mlを20の試験管に移し、分離菌の1つを接種した(1本に1分離菌:19の臨床株と1のコントロール株)。
5つのタイムポイント(0、15、30、45、60分)で各試験管からサンプルを採り、ペトリ皿に移してサブローデキストロース培地を混ぜ0.5%Tween80を添加し培養した。培養後、1mlあたりのコロニー形成ユニット数として発育とコロニーを検査した。溶液-時間組み合わせの対比較と反復測定分析を使用してデータを分析した。0時と比較し、全てのポイントでER+ケトのマラセチア成長は有意に低下した(P
< 0.0001)。ERとH(2)O共にマラセチア発育にまったく影響なかった。ER+ケトはERおよびH(2)Oと比較して、全てのポイントでマラセチア発育の低下に有意により効果的だった(P<0.0001)。ER+ケトはマラセチア外耳炎の治療で有効と思われる。マラセチアによる耳道感染の治療として、生体内のER+ケトの評価を今後実施すべきである。(Sato訳)
■耳垢性外耳炎の臨床所見を持つ耳道の細胞評価に対し、4つの固定と染色方法の比較
Comparison of 4 fixation and staining methods for the cytologic evaluation of ear canals with clinical evidence of ceruminous otitis externa
Vet Clin Pathol. June 2006;35(2):194-8.
Stefano Toma, Luisa Cornegliani, Paola Persico, Chiara Noli
背景:耳道のスワブ細胞診は、外耳道感染の有無を評価する最も有効で迅速な方法の1つである。スワブは一般に熱固定をし、またはしないで急速ロマノフスキータイプの染色で染められる。
目的:この研究では、犬の耳スワブ細胞サンプルを4つの異なる固定および染色方法で比較した。
方法:皮膚委託集団から外耳炎の犬8頭を選出した。綿棒を使用し、12の耳道から耳垢を採取した。各スワブの4つのスメアをガラススライド(ランダムにA、B、C、Dと確認)に用意し、細胞検査のために風乾した。Aのしるしをしたサンプルは熱固定後にディップクイック(Jorgensen
Laboratories Inc, Loveland, CO, USA)で染色した。Bのサンプルは熱固定なしで染色、Cは熱固定し、ディップクイックの後染色(青試薬)のみに漬け、Dは熱固定なしで後染色のみに漬けた。各スライドで10箇所の高視野(x100油浸対物)、2人の観察者により評価し、ケラチノサイト、酵母、細菌、好中球の総数をカウントした。データの正常分布の確認後ANOVAモデル、ノンパラメトリック符号検定、ウィルコクソンsigned
rank testsを使用し統計比較を行った。
結果:4方法でケラチノサイト、酵母、細菌、好中球数に統計学的有意差は認めなかったが(P>。05)、有意な観察者間の差は認められた。
結論:我々は熱固定が耳垢スワブサンプルの細胞評価の質を改善しないと結論付け、犬耳道の染色サンプルの急速方法として青試薬単独の1-ステップディップを提唱する。(Sato訳)
■3頭の猫における炎症性ポリープの非定型性発現
Atypical manifestations of feline inflammatory polyps in three cats
J Feline Med Surg. January 2007;0(0):.
Catriona M Macphail, Christi M Innocenti, Simon T Kudnig, Julia K Veir, Michael R Lappin
要約
猫の中耳および鼻咽頭の炎症性ポリープは、鼓室胞あるいはエウスタキオ管の上皮内張りから発生すると仮定されている非腫瘍性病変です。正確な起源と原因は不明ですが、長期炎症過程の結果として、炎症性ポリープが発生すると考えられます。この炎症が炎症性ポリープの増殖と進行の口火を切るのか、相乗的に増強しているのかは不明です。炎症性ポリープを持つ猫は、一般的には、外耳炎および中耳炎徴候と上部気道閉塞の症状を呈します。伝統的な診断法には、頭蓋レントゲン、あるいはコンピュータ断層撮影法(CT)のいずれかによる、鼓室胞の画像化が必要です。治療は、鼓室胞の上皮内張りを取り除くための、腹側鼓室胞切除術(VBO)を用いる、あるいは用いない、ポリープの牽引剥離によります。ここに、猫の炎症性ポリープに関する、1)耳と鼻咽頭ポリープの同時発生、2)慢性ウイルス性感染との潜在的な関連性、3)対側中耳におけるポリープ発生、4)VBO後の頭蓋CT所見、5)二次的肺高血圧症の発生など、珍しい発現や紹介を3症例記述しました。(Dr.K訳)
■11頭の猫と4頭の犬における耳原性頭蓋内感染に関する、臨床徴候、磁気共鳴影像所見、そして外科および内科治療後の予後
J Vet Intern Med. 2006 May-Jun;20(3):648-56.
Beverly K Sturges, Peter J Dickinson, Gregg D Kortz, Wayne L Berry, Karen M Vernau, Erik R Wisner, Richard A LeCouteur
要約
感染の中枢拡大により生じた脳幹機能障害は、まれに、犬と猫で報告されている中耳/内耳炎(OMI)の命にかかわるような合併症であります。
我々は、犬と猫における耳原性頭蓋内感染による脳幹疾患の臨床徴候、診断所見、そして外科的、内科的治療の結果を再調査しました。中枢前庭徴候、精神機能の変化、異常な姿勢/歩様、脳神経欠損、そして発作を含む急性、亜急性、または慢性の脳疾患徴候のために、11頭の猫と4頭の犬に対し検査を行いました。最小限データベース (CBC、血清生化学パネル、尿検査、胸部レントゲン、腹部超音波検査またはレントゲン) の結果は、全ての動物で基準範囲内でした。全ての動物に対し、頭部の磁気共鳴画像(MRI)を行い、11頭中9頭の猫と4頭中3頭の犬の大槽脳脊髄液(CSF)を検査しました。15頭中12頭で、外科的探査および腹側鼓室胞切開術を行い、引き続き、1-3ヵ月の抗生物質療法を行いました;残りの動物(3頭)は治療前に安楽死されました。全ての動物において、MRIは中耳/内耳構造内と同様、頭蓋内の病理学的変化の位置と範囲を特徴付けるのに有効でした。CSF解析の結果は、急性、亜急性疾患の動物の殆どで、細菌感染の特徴を示しました。治療を受けた全ての動物における長期予後は優良から優秀なので、中耳/内耳炎の拡大による二次的頭蓋内疾患をもつ犬と猫の予後は、その状況を診断し、外科的探査と適切な抗生物質療法による治療により、良から優良であると結論付けられた。(Dr.K訳)
■健康な猫、耳炎の猫からマラセチア種の分離
Isolation of Malassezia species from Healthy Cats and Cats with Otitis
J Feline Med Surg 7[3]:141-145 Jun'05 Original Article 19 Refs
Simona Nardoni DVM, Francesca Mancianti DVM, Antonello Rum DVM, Michele Corazza DVM
近年、脂質依存マラセチア種が動物から培養されている。動物から分離されたマラセチア種の同定は、それら脂肪親和酵母の疫学を明らかにするのに重要である。マラセチア種は、耳炎の猫99頭のうち63頭、健康なコントロール猫52頭のうち12頭(23%)の外耳道から培養された。罹患動物とコントロールの分離率には高い有意性があった(P<0.01)。Malassezia pachydermatisは純粋培養で33頭(45.2%)から分離され、Malassezia globosaは20頭(50%)、Malassezia furfurは17頭(42.5%)から分離された。3頭の猫で3種の異なる種類が同時に分離された(2頭はM pachydermatis、M globosa、M furfur;1頭はM pachydermatis、M furfur、M sympodialis)。2頭から単一種としてM globosaが分離された。この研究で、健康猫と耳炎の猫両方でいくつかのマラセチアの脂肪親和種を確認する。(Sato訳)
■犬外耳炎の治療における2種類の抗菌剤/抗炎症製剤の比較研究
A Comparative Study of Two Antimicrobial / Anti-Inflammatory Formulations in the Treatment of Canine Otitis Externa
Vet Dermatol 16[5]:299-307 Oct'05 Comparative Study 40 Refs
Sandrine Rougier, Daniela Borell, Sandrine Pheulpin, Frederique Woehrle and Bernard Boisrame
第三相臨床試験プロトコールにより、マルボフロキサシン-クロトリマゾール-デキサメサゾン耳用懸濁液(MCD)の効果と耐容性を標準的局所治療のものと比較した。急性または亜急性外耳炎の臨床症状を持つ合計140頭の犬で、研究開始時に原因菌を確認するため採取したサンプルからスタフィロコッカス、シュードモナス、腸内細菌、マラセチアを分離した。追加サンプルは、治療失敗または再発したとき、および最初にシュードモナス種が分離された犬(14日目)から採取した。1群は1日1回MCD(罹患耳に10滴)を投与し、2群はSurolan(ポリミキシンB、ミコナゾール、プレドニゾロン)(罹患耳に5滴)を1日2回投与した。各群は、7日目の臨床結果により7または14日間投与した。効果と耐容性は7、14日目必要であれば14日間治療した犬の28日目に評価した。研究でMCDは58.3%、Surolanは41.2%の治癒率と、両処置とも同様の効果を示した。両薬剤とも犬に同じようによく許容されたが、痛みの軽減、膿の量の減少、臭い、14日目の反応率と試験官の評価に関してMCDの方が優れていた。(Sato訳)
■全耳道切除を行った犬の垂直耳道における耳滲出液と耳組織の細菌病原体とそれらの感受性パターンの比較
Comparison of Bacterial Organisms and Their Susceptibility Patterns from Otic Exudate and Ear Tissue from the Vertical Ear Canal of Dogs Undergoing Total Ear Canal Ablation
Vet Ther 6[3]:252-259 Fall'05 Prospective Study 9 Refs
Lynette K. Cole, DVM, MS, DACVD; Kenneth W. Kwochka, DVM, DACVD; Andrew Hillier, BVSc, DACVD; Joseph J. Kowalski, DVM, PhD, DACVM; Daniel D. Smeak, DVM, DACVS
この前向き研究の目的は、全耳道切除を行った末期耳炎の犬6頭の垂直耳道における耳滲出物と耳組織の細菌病原体とそれらの感受性を比較することだった。滲出液から13、組織から13の26病原体は形態学的、生化学的に類似し、それら感受性パターンを比較した。それらは、3頭の4病原体に対する5種の抗生物質だけ食い違った。慢性末期外耳炎の犬の垂直耳道からの滲出物の培養は、感染で存在する細菌種と抗菌剤感受性パターンを正確に反映する。(Sato訳)
■ネコ炎症性ポリープと鼓室胞切開
Feline Inflammatory Polyps and Ventral Bulla Osteotomy
Compend Contin Educ Pract Vet 26[6]:446-454 Jun'04 Review Article 15 Refs
Kristyn E. Donnelly, DVM and D. Michael Tillson, DVM, MS, DACVS
ネコの炎症性ポリープは、中耳や耳管に良く起こる良性増殖物である。中耳や耳管に存在するとき、経路にあるポリープに依存し、耳炎や鼻咽頭症状、その両方が見られるかもしれない。患者の状態は急性のときもあるし、慢性のときもある。鼓室胞切開を使用し、ポリープとその炎症内容物をうまく除去すれば、再発率は最小となる。鼓室胞切開は第1の外科的アプローチである。ホーナー症候群と内耳炎がこの方法で一般的な合併症である。しかし、注意深い手術技術で、それらを最小限にすべきである。(Sato訳)
■耳洗浄:英国と米国の観点
Ear Cleaning: the UK and US Perspective
Vet Dermatol 15[2]:127-136 Apr'04 Review Article 24 Refs
Tim Nuttall and Lynette K. Cole
耳洗浄は正常な耳の環境を維持する助けとなり、耳炎の治療において重要であります。しかしながら、過剰な洗浄は表皮内層の浸軟により耳炎を誘発するかもしれません。単純な手で行う洗浄は日常的な浄化に有効ですが、しっかりと付着した耳垢を除去しません。バルブ洗浄器はより強力ですが、不慣れだと耳を損傷するかもしれません。水圧を利用する装置や、歯科用機械類も利用できます。耳道と中耳腔の完全な洗浄は麻酔下で、特別に改造したカテーテル、フィーディングチューブ、あるいはビデオ・オトスコープを用いた逆行性洗浄によってのみ達成できます。
もし鼓膜が異常を呈するなら、鼓膜切開により、中耳の視診と洗浄を行うべきであります。利用可能な洗浄液が多数あります。耳垢溶解剤は、耳垢を軟化、溶解させ、洗浄を促進します。界面活性剤は、残骸を乳化し、それを溶解液にとじこめ消散させます。収斂剤は耳道表面を乾燥させ、浸軟を防ぎます。低PHの維持と抗菌剤は細菌増殖を抑制し、グルココルチコイドは炎症を低減するために使用できます。耳洗浄の副作用と禁忌には、浸軟、接触反応、中耳炎、耳道剥離、前庭症候群、ホーナー症候群、顔面神経麻痺、そして難聴などがあります。もし鼓膜が破裂しているなら、洗浄液を選択するのに注意すべきです。(Dr.K訳)
■犬の酵母性外耳炎に対するホウ酸混合亜鉛と酢酸混合亜鉛耳洗浄剤の効果
Efficacy of boric-complexed zinc and acetic-complexed zinc otic preparations for canine yeast otitis externa.
J Am Anim Hosp Assoc 41[1]:12-21 2005 Jan-Feb
Mendelsohn CL, Griffin CE, Rosenkrantz WS, Brown LD, Boord MJ
犬の酵母性外耳炎の治療で局所プラセボ治療に対し、ホウ酸入り(ZGB)、または酢酸入り(ZGA)アミノ酸混合グルコン酸亜鉛製剤の効果を評価するため、2週間にわたる二重盲目対照臨床試験を実施した。外耳炎の犬で、罹患耳の酵母病原体の細胞病理所見を評価した。耳をプラセボ、ZGA、ZGBで治療した。耳の臨床所見と酵母数をモニターした。結果は外耳炎症例で、ZGBが酵母病原体数を有意に低下させたことを示した。(Sato訳)
■マラセチアsp外耳炎の治療と予防で、アセチル酸/ホウ酸耳洗浄液の効果
Efficacy of an Acetic Acid/Boric Acid Ear Cleaning Solution for Treatment and Prophylaxis of Malassezia sp. Otitis Externa
Aust Vet Pract 34[2]:79-82 Jun'04 Clinical Pilot Study 12 Refs
R.J. Bassett, G.G. Burton, D.C. Robson and G. Hepworth *
2%アセチル酸と2%ホウ酸耳洗浄液によるイヌマラセチア性外耳炎に対する治療効果と予防効果を評価するため予備研究を実施した。18頭は治療群で8頭は再発性マラセチア性外耳炎の病歴があり予防群(マラセチア性外耳炎の再発を防止できるかどうか評価するため)とした。外耳炎は88%(18頭中16頭)で解消した。予防として洗浄液を使用した75%(8頭中6頭)で再発が見られた。この群で、2%アセチル酸と2%ホウ酸耳洗浄液は、マラセチア性耳炎に効果的な治療であるが、マラセチア性耳炎の再発を一様に防ぐことができなかった。(Sato訳)
■5頭のイヌに見られた中耳の炎症性ポリープ
Inflammatory polyps of the middle ear in 5 dogs.
Vet Surg 32[3]:292-6 2003 May-Jun
Pratschke KM
目的:5頭のイヌで中耳にできた炎症性ポリープを述べること
研究構成:症例シリーズ
動物:耳疾患を持つ5頭のイヌ
方法:医療記録(1995-2001)を、中耳の炎症性ポリープのイヌを確認するために再検討した。徴候、臨床症状、補助診断方法、治療、術後合併症、結果を記録した。オーナーと紹介獣医師に結果を考証するため連絡を取った。
結果:中耳に炎症性ポリープを持つイヌは、オスイヌで年齢が4-13歳だった。2頭は両側性ポリープ、3頭は片側性だった。一般的な臨床症状は、中耳炎のエックス線所見がある外耳炎と中耳炎だった。1頭は腹側包骨切術(VBO)によりポリープを治療し、4頭は全耳道切除と変側包骨切術(TECA-LBO)で治療した。ポリープは、好中球、マクロファージ、リンパ球、プラズマ細胞の浸潤を伴う血管結合組織基質に一致した。覆いかぶさっている上皮はたびたび潰瘍を起こしていた。術後すぐの合併症は、VBO(1頭)後の漿液腫と、両側TECA-LBO(1頭)後の一時的な片側顔面神経麻痺だった。9-69ヶ月以内に再発は見られなかった。
結論:片側、または両側炎症性ポリープは、外耳炎や中耳炎に関係するイヌの中耳に起こりえる。ポリープの外科的切除後、再発は起こらなかった。
臨床関連:イヌの中耳の炎症性ポリープは外耳炎、中耳炎が原因となりえる。耳のポリープの外科的切除の予後は良い。(Sato訳)
■健常、疾患時の耳の細胞診断
Otic cytology in health and disease.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 34[2]:411-24 2004 Mar 35 Refs
Angus JC
主な原因と永続因子の特徴を正確に理解することは、イヌネコの耳疾患の管理を成功させるのに重要である。細胞診断は、外耳炎の臨床症状で来院するどんな、そして全ての患者にルーチンに実施すべき簡単、迅速、そして実用的な診断検査である。臨床症状、耳鏡検査、原発疾患の診断検査、連続的な細胞検査の組み合わせが、二次的感染の診断、疾患の進行のモニター、治療に対する反応の評価、適切な管理を決定する獣医師の能力を高める。
細胞診標本は、3つの鍵となる特徴、酵母、細菌、白血球の存在、数、特性を評価すべきである。高倍視野中、酵母病原体5個以上、細菌25個以上で、治療の介入が必要と思われる有意な微生物活性が示唆される。特に細菌を貪食している白血球の存在は、異常増殖よりも「真の感染」を指し示す。化膿性排出物が存在するならば、全身療法が必要である。培養や感受性試験と細胞診の組み合わせは、細菌過剰増殖と感染の区別に最適な方法である。しかし、1つの検査のみ行うことができるならば、常に細胞診を選択する。培養結果は、最適な抗菌療法の選択をアシストするが、細胞診は、全身性抗生物質が必要か、どの病原菌が最も優勢か、いつ治療が中止できるかを判定する。(Sato訳)
■ネコの耳ヒゼンダニ症の治療としてセラメクチン局所投与の効果
Efficacy of selamectin administered topically in the treatment of feline otoacariosis.
Vet Parasitol 112[3]:241-7 2003 Mar 10
Blot C, Kodjo A, Reynaud MC, Bourdoiseau G
新しいアベルメクチンであるセラメクチン(Stronghold, Pfizer)の自然に獲得した耳ヒゼンダニの耳感染に対する効果を評価した。セラメクチンを各動物の背中、肩甲骨の前の首の根元に最少投与量6mg/kgで1回局所的にスポットした。地方病的に蔓延している120頭を飼育する猫舎の中で、30頭のネコに0日目と30日目に投与した。無治療コントロール猫を含める事は、動物の福祉を考慮したため不可能だった。臨床検査、外耳道の耳鏡検査によるダニの視認、耳の垢/滲出物の顕微鏡検査を0-30日の間に毎週2回行った。
0日目(そして耳道に紅斑があるならば28日目)、各耳道を綿棒で拭き取り、細菌(主にスタフィロコッカス)や酵母(Malassezia pachydermatisのみ)の検出と鑑定のために細菌、真菌ユニットに送付した。セラメクチンは安全で、3日目までに寄生虫は殺され、17日目までに除去された。ダニの検査が陰性になった後、紅斑(ネコの16-33%)や引っ掻き反射(ネコの23-40%)は2週間持続するかもしれないが、セラメクチンは自然発生の耳の感染に対し100%効果的だった。(Sato訳)
■外耳炎のイヌの外耳道から分離された細菌と感受性パターンの比較
Comparison of microbial isolates and susceptibility patterns from the external ear canal of dogs with otitis externa.
J Am Anim Hosp Assoc 40[2]:102-8 2004 Mar-Apr
Graham-Mize CA, Rosser EJ Jr
外耳炎のイヌ33頭から耳道滲出液を採取し、細胞病理と培養検査を行った。合計100サンプルになるように、外耳道の同じ場所から2つのサンプルを採取した。36(36%)のサンプルは1つの病原体しか分離されず、そのうち21(21%)はマラセチア種だった。23(23%)のサンプルには2つの病原体が存在した。50対のうち40対(80%)で、2つのサンプルの培養が一致した。細胞病理検査は、その時のたった68%の培養結果としか一致しなかった。外耳道内の微生物集団の明らかな変動により、細胞病理検査と培養検査は、過去に想定されていたほど決定的ではないと思われる。(Sato訳)
■イヌの鼓室胞内の液体確認に対する超音波検査、エックス線検査、単一CT断面像の比較
Comparison of ultrasonography, radiography and a single computed tomography slice for the identification of fluid within the canine tympanic bulla.
Res Vet Sci 75[3]:209-16 2003 Dec
Dickie AM, Doust R, Cromarty L, Johnson VS, Sullivan M, Boyd JS
鼓室胞(TB)内の液体貯留は、イヌの中耳炎の臨床症例で重要な診断指標であるが、その確認は、現在利用可能な画像技術を駆使しやりがいのあるものである。この研究の目的は、イヌの死体の鼓室胞内の液体確認について、エックス線写真を併用した超音波検査、そして単一CT断面像で比較することだった。66の死体の鼓室胞に無作為に超音波ジェルを満たした。吻側尾側開口(RCdoM)エックス線写真とCT画像を、2人の何も知らされていない放射線学者により読影してもらい、超音波検査は、何も知らされていない超音波技師により行われた。その後頭部を冷凍し、各鼓室胞の内容を確認するため切開した。CTは最も正確な手段を維持したが、超音波技師の1人による結果はそれに匹敵し、経験がない超音波技師の結果もエックス線写真の結果よりは優れていた。超音波検査は他の画像検査以上にいくつかの利点を持ち、この研究で、イヌの中耳炎の検査にそれが応用できると思われるが、これを確認する生体での更なる研究が必要だろう。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルの原発分泌性中耳炎:61症例の回顧
Primary secretory otitis media in the Cavalier King Charles spaniel: a review of 61 cases.
J Small Anim Pract 44[6]:253-6 2003 Jun
Stern-Bertholtz W, Sjostrom L, Hakanson NW
10年間で、原発分泌性中耳炎(PSOM)の61病変を43頭のキャバリアキングチャールズスパニエルで診断した。主要所見は、頭部または頚部に局在する中程度-重度の痛みの症状および・または神経症状だった。全身麻酔下で、手術顕微鏡による鼓膜と中耳の検査により診断した。無傷の隆起した鼓膜がほとんどの症例に見られた。鼓膜切開後、高粘張性粘液栓が中耳に充満しているのが分かった。粘膜栓の除去、中耳の洗浄、局所と全身薬物療法による治療を1-5回繰り返した。全症例予後は良かった。キャバリアキングチャールズスパニエルで頭部や頚部の痛みの症状および・または神経症状を呈している時、原発分泌性中耳炎が重要な鑑別診断の1つとなる。(Sato訳)
■イヌ鼓室胞の超音波画像
Ultrasound imaging of the canine tympanic bulla.
Res Vet Sci 75[2]:121-6 2003 Oct
Dickie AM, Doust R, Cromarty L, Johnson VS, Sullivan M, Boyd JS
現在入手できる超音波機器を使用し、イヌの鼓室胞、外耳道とその隣接構造を画像化する方法を確立した。側面と腹側のトランスデューサー位置をこのために確認し、6.5MHzのカーブリニアトランスデューサーが最適と考えた。耳疾患に罹患していない生きているイヌとイヌの死体で、それらの構造の超音波所見を示す。死体の鼓室胞に産生される液体とその存在は、鼓室胞骨壁を通し確認できた。鼓室胞のガスと液体の鑑別する超音波検査能力は、中耳疾患のイヌのよくある所見として臨床的に重要な影響を持つ。超音波検査は他の画像様式以上に利点を持ち、沈静させていないイヌでもこの検査は使用できた。(Sato訳)
■イヌの鼓室胞で液体の検出における超音波検査vsエックス線検査
Ultrasonography versus radiography for detection of fluid in the canine tympanic bulla.
Vet Radiol Ultrasound 44[2]:210-3 2003 Mar-Apr
Griffiths LG, Sullivan M, O'Neill T, Reid SW
20頭の過去健康であった動物の死体の鼓室胞を、無作為に滅菌生理食塩水、または空気で満たした。頭部を粘着テープで固定し、対軸方向開口エックス線写真を撮影した。エックス線所見は、研究を知らされていないECVDI専門医により評価され、各鼓室胞に満たされているものが空気、または液体か記録した。研究を知らされていない評価担当者により鼓室胞の超音波検査を行い、3mHzで作動するB-モード5mHzセクタープローブ(Sonotron-VingMed Sound A/S, PO Box 141, N3191, Horten, Norway)を使用した。そして各鼓室胞に満たされているものが空気か液体か記録した。エックス線検査と超音波検査結果を、実際の鼓室胞の状態とカイ二条検定で比較した。エックス線検査の感受性は80%、特異性は65%だった。超音波検査の感受性は100%、特異性も100%だった。超音波検査は将来、臨床症例において安価で非侵襲性、そして迅速で広範囲の中耳炎を診断する方法となるだろう。(Sato訳)
■犬の慢性重度外耳炎の組織病理学的特徴における犬種による変化
Breed Variations in Histopathologic Features
of Chronic Severe Otitis Externa in Dogs:
80 Cases (1995-2001)
J Am Vet Med Assoc 221[7]:1000-1006 Oct 1'02
Retrospective Study 17 Refs
John C. Angus, DVM; Carol Lichtensteiger,
DVM, PhD, DACVP; Karen L. Campbell, DVM,
MS, DACVD, DACVIM; David J. Schaeffer, PhD
目的:コッカスパニエルとその他の犬種で、慢性重度外耳炎に関する水平耳道の病理変化を比較した
構成:回顧的研究
動物:外側鼓室胞骨きり術を併用した全耳道切除術を必要とする重度外耳炎のイヌ80頭
方法:犬種、性別、手術時の年齢を医療記録から再検討した。水平耳道の組織学的標本の、全体的組織反応パターンと皮脂腺過形成の評点、耳道腺過形成、耳道腺拡張、繊維症、色素荷マクロファージ、骨異形成について一人の検査官で評価した。
結果:80頭中48頭(60%)はコッカスパニエルだった。コッカスパニエル48頭中35頭は、優勢な耳垢組織反応パターンを有していた。他の犬種の32頭中9頭(28.1%)しか、同様のパターンを有していなかった。他の犬種の多くは、繊維症が優位を占めるパターンを示した(n=13[40.6%])。コッカスパニエルでは、48頭中4頭(8.3%)しか繊維症優勢パターンを示さなかった。4つの組織病理学的基準の判別分析とクラスター形成K-法は、他の全犬種に対し、コッカスパニエル75%と正確に分類した。
結論と臨床関連:コッカスパニエルは、外側鼓室胞骨きり術を併用した全耳道切除術を必要とする重度慢性外耳炎を起こすリスクが高く、この犬種では当たり前の原発外耳炎や二次的炎症のより積極的な治療を指示する。重度慢性外耳炎を持つコッカスパニエルは、他の犬種に比べ、水平耳道の病理学的特徴で明らかな違いがある。(Sato訳)
■イヌ耳血腫の免疫病原
Joyce JA, Day MJ.
J Small Anim Pract 1997 Apr;38(4):152-8
Immunopathogenesis of canine aural haematoma.
データは耳血腫のイヌ15頭からのものである。それはラブラドールレトリーバー6頭、ゴールデンレトリーバー4頭、平均年齢は8.0±3.02歳であった。5頭のイヌは掻痒性皮膚病、5頭以上の症例は他の併発疾患があった。血液学、血清生化学はそれぞれ15頭中12と13頭で正常であった。全てのイヌはクームステスト陰性であり、検査した全11頭において血清抗核抗体は陰性もしくは低濃度であった。冒された耳からのバイオプシーの組織病理学的検査は、軟骨欠損を満たす繊維血管性肉芽組織を伴う、様々な程度の耳介軟骨の侵食が明らかとなった。僅かな軟骨膜の炎症があった。バイオプシーは免疫組織化学によって免疫グロブリンG(IgG)、免疫グロブリンM(IgM)、補体C3の沈着が検査された。1頭のイヌにおいて、IgGの基底膜域の沈着があり、一方IgGとIgM
両方の限局性上皮内の沈着があった。この発見はイヌ耳血腫の自己免疫病原性を支持しないが、観察された軟骨の侵食に、初期の免疫学的現象が関わっているであろうことを示唆する。(Dr.Yoshi訳)
■Microsporum canis によるネコ外耳炎の1症例
Guedeja-Marron J, Blanco JL, Garcia ME.
Med Mycol 2001 Apr;39(2):229-32
A case of feline otitis externa due to Microsporum
canis.
私たちは両外耳道におけるしつこいワックス状、耳垢性の耳排出物を伴う3ヶ月齢のオスペルシャネコのケースを記述する。微生物培養後、他の真菌、または細菌叢を伴わずに、Microsporum
canisのみが分離された。皮膚糸状菌による真菌性耳炎と診断され、グリセオフルビンを用いた特異的処置がなされた。処置の4週間後、Microsporum
canisのコロニーは分離されず、臨床的回復が得られた。この症例を考えるに、ネコの耳の状態鑑別診断において、特に耳炎が慢性化、または難治性の時には皮膚糸状菌症を含めるべきである。(Dr.Yoshi訳)
■イヌネコの外耳道からの正常と病的サンプルの半定量的な細胞学的評価
Ginel PJ et al; Vet Dermatol 2002 Jun;13(3):151-6
; A semiquantitative cytological evaluation
of normal and pathological samples from the
external ear canal of dogs and cats.
落屑を呈する上皮細胞、酵母細胞、細菌の数を、外耳道の正常なイヌ37頭、ネコ24頭、外耳炎を伴うイヌ24頭、ネコ22頭から採取したサンプルにおいてカウントした。
この研究の目的は、量的基準値の設定、イヌネコの臨床状態をこれらのデータに関連付けることであった。酵母細胞と細菌の数は、外耳炎を伴うイヌとネコにおいて有意に増加しており(イヌP
= 0.05; P = 0.0001、ネコP = 0.0001; P= 0.0001)、たいていの場合臨床徴候と関連していた。平均マラセチア数が強拡大1視野あたりイヌで5以上、ネコで12以上は異常であると考えられた。平均細菌数が強拡大1視野あたりあたりイヌで25以上、ネコで15以上は異常であると考えられた。炎症を起こした外耳道を正常なものと判別するために使用するとき、これらの数字は低い感受性であるが95%以上の特異性を提供した。(Dr.Yoshi訳)
■外耳炎を伴う、または伴わないイヌネコの外耳道におけるMalassezia
spp. の発生
Crespo MJ et al; Med Mycol 2002 Apr;40(2):115-21;
Occurrence of Malassezia spp. in the external
ear canals of dogs and cats with and without
otitis externa.
私たちは332頭の動物(イヌ264頭、ネコ68頭)の外耳炎を伴う、伴わない外耳道の脂肪親和性微生物叢を、1988年から1999年の11年間に渡り研究した。Malassezia
pachydermatis は外耳炎を伴うイヌの62.2%、伴わないイヌの50%、外耳炎を伴うネコの41.2%、伴わないネコの17.6%からそれぞれ分離された。脂肪依存性種研究のための動物グループにおいて、これらの酵母は外耳炎を伴うイヌの4.5%から、外耳炎を伴うネコの23.1%、伴わないネコの8.9%からそれぞれ分離された。ネコからM.
sympodialis とM. furfur が分離され、イヌからM.
furfur とM. obtusa が分離された。私たちの発見は、イヌネコにおいて脂肪依存性Malassezia種は外耳炎の原因に関与しているであろうことを示す。
コメント:肥満で血漿中性脂肪が高く、何度かマラセチア外耳炎を繰り返していたイヌがいました。ダイエットに成功して以来、外耳炎が治まっています、と飼い主さんが嬉しそうに話してくれました。マラセチアの脂肪依存性と関係しているのでしょうか。
■イヌネコの耳ダニ治療における殺ダニ剤を含まない耳製品の効果
Engelen MA et al; Vet Rec 2000 Nov 11;147(20):567-9;
Efficacy of non-acaricidal containing otic
preparations in the treatment of otoacariasis
in dogs and cats.
耳ダニOtodectes cynotisに自然感染した89頭のネコと38頭のイヌを、ランダムに2つの治療グループに割り当てた。1つのグループは硝酸ミコナゾール、硫酸ポリミキシンB、酢酸プレドニゾロンを含む製品、もう一つはフシジン酸ジエタノールアミン、硫酸フラマイセチン、ナイスタチン、プレドニゾロンの合剤で治療した。治療(それぞれの耳に5滴)は1日2回14日間行われ、その効果を外耳道の耳鏡検査、耳ダニの有無を調べるための耳垢屑の顕微鏡検査、掻痒、疼痛、紅斑、滲出物の臨床徴候をもとに7、14、21日目に評価した。両方の治療は効果的であり、2つの製品間に有意差は認められず、両方に効果または臨床上の改善が観察された。2つめの製品で治療した1頭のネコにおいてみられたアレルギー反応を除いて、副反応は観察されなかった。
コメント:耳ダニ外耳炎の治療に、殺ダニ剤を使用しなくても効果がある、という文献です。耳ダニは外耳道の他にも寄生するため、殺ダニ剤の全身投与が必要とされています。例えば、イベルメクチンの全身投与に危険が伴いそうな幼犬・幼猫には、投与しないで治療するのもいいかもしれません。
■外耳炎
Patrick J. McKeever, DVM, MS; Compend Contin
Educ Pract Vet 18[7]:759-773 Jul'96 Review
Article 32 Refs; Otitis Externa
外耳炎は、外部聴覚器官上皮の炎症であり、多数の作用因子が、病状の原因となり得るので、診断が困難なこともよくあります。本来、外耳炎は、微生物と寄生虫により、引き起こされるのが、本来の状態であると考えられておりました。現在、外耳炎は、誘発因子と、他の疾患の二次的発現であるとされております。この論文は、外耳の解剖学に加え、病態生理学、誘因となる状態、診断、そして外耳炎の管理について、検討しました。バクテリアと酵母菌の区分は、シュードモナス、プロテウス、ブドウ球菌、連鎖球菌、そしてマラセチアの病巣環境と関連があります。外耳炎は、他の疾患からというよりは、アトピー性皮膚炎の結果として起こりそうです。この疾患はまた、甲状腺機能低下症のような、種々の内分泌疾患の結果として起こるかもしれません。全身性紅斑性狼瘡や天疱瘡のような免疫介在性疾患も、原因であるかも知れません。草のぎのような、異物も耳炎を起こし得ます。腫瘍は、特異的疾患に含めるべきです。この論文は、簡単な工夫を加えた、耳洗浄手技と器具を検討しました。成功へと導くオーナーの応諾は重要です。(Dr.K訳)
■猫の耳ヒゼンダニによる外耳道および顔面への発症に影響する因子
Sotiraki ST et al; Factors affecting the
frequency of ear canal and face infestation
by Otodectes cynotis in the cat.
世界的に、猫の慢性外耳炎の少なくとも50%が、耳ヒゼンダニと診断されています。猫の外耳炎とアクネの原因で、猫毛包虫が主因となることは未だにはっきり解明されていません。この研究の目的は、ギリシャの北部地方の、臨床上健康な猫で、耳ヒゼンダニと猫毛包虫感染の罹患率を評価する事と、猫のアクネの原因が、これらのダニの感染であるという重要性を調査し、そして、その可能性とひどさを関連づける要素を決定づけることです。161頭の猫の外耳道からの採取液と、顎と口唇部分のスクレーピングのサンプルで検査が行われました。危険率分析を行うために、結果にさまざまな要因(性、年齢、生活環境、毛質、かゆみ、耳の排出液、アクネ様病変の存在)を併用しました。
2つの群に分類し、回帰解析法で評価しました。
1)耳ヒゼンダニの感染があるもの/もしくは感染の可能性がないもの
2)耳ヒゼンダニの感染の程度が軽度~中程度(ダニの数が1視野5以下)の場合と重度(1視野5以上)の場合
猫毛包虫は161頭全てにおいて発見されませんでした。耳ヒゼンダニの罹患率は25.5%でした(95%信頼区間
(CI) 19-32)。耳の採取液(オッズ比 9, 95% CI
3.3-24.5)、耳のかゆみ(オッズ比 3.6, 95% CI
1.8-8)、アクネ様病変(オッズ比 3.3, 95% CI
1.2-9)を伴うものでのダニの発見率が、より高かったです。寄生が軽度~中程度の猫は、重度の群よりも、耳の採取液からダニが発見される機会が、18倍も高かったのです。回帰解析法で、軽度~中程度の群でのダニの寄生率は年齢に比例していました。(Dr.Shingo訳)
■チカルシリンを使用した犬の外耳炎の治療管理
Nuttall TJ; J Small Anim Pract 39[4]:165-8
1998 Apr; Use of ticarcillin in the management
of canine otitis externa
フルオロキノロン、グルココルチコイドなどを含む点耳薬を、7日から5ヶ月の間処置していた、化膿増殖性外耳炎の犬12頭に注目しました。すべての症例において、垂直および水平耳道は炎症・肥厚しており、4症例においては鼓膜が破裂していました。レントゲン上では鼓室胞に異常は認められなかったです。細胞学的には多くの棒状桿菌と変性好中球が見られました。全症例において、フルオロキノロンおよびゲンタマイシン耐性の緑膿菌が培養されました。
1~2mg/kgのプレドニゾロンをSID経口投与と、QIDでの洗浄・乾燥イヤークリーナーでの洗浄を行い、局所的にチカルシリン注射液を処置しました。鼓膜の破裂した症例においては、鼓膜組織が治癒するまで、15~25mg/kgのチカルシリンをTIDで静脈内投与しました。すべての症例で、明らかな浸出物がなくなり、細胞検査で桿菌が見られなくなるまで、生理食塩水で洗浄を繰り返し行いました。局所的なチカルシリン処置と耳の洗浄は、臨床的改善後14日間1日2回行いました。
処置の期間は14~36日間でした。1症例で副作用が認められたため、処置を中断しましたが、その他の症例では副作用なく良い反応を得ました。(Dr.Shingo訳)
■鼓膜組織が破壊された外耳炎におけるチカルシリンとエンロフロキサシンの使い方
Patrick McKeever, DVM, MS, Dip ACVD; Purina
Vet Prev, 3:1, 1996; Use of Ticarcillin and
Enrofloxacin in Otitis Externa With Tympanic
Membrane Rupture
鼓膜が破壊された外耳炎の場合、内耳神経毒が少ない理由で、チカルシリンとエンロフロキサシンが選択薬となる。チカルシリンの場合では、滅菌水12mlに6gのチカルシリンを入れ、よく混ぜ合わせる。そのチカルシリン懸濁液8ml(4g)を取り、4Ozのオティクレンズに加え、冷蔵保存で有効期限は4日間。使用前にはよく攪拌する。エンロフロキサシンの場合は、注射製剤を直接耳道内に投与する。(Dr.Shingo訳)
■犬の外耳炎療法での新しい組み合わせ(Ⅰ)外耳炎の微生物学
Kiss G et al; J Small Anim Pract 38[2]:51-6
1997 Feb ; New combination for the therapy
of canine otitis externa. I. Microbiology
of otitis externa.
犬の外耳炎に対する新しい薬の組み合わせを創作する目的で、外耳炎のある515頭の犬について身体検査、および耳の滲出物について微生物学的分析を行いました。患畜の害耳炎のうち83%で紅斑・耳垢分泌があり、17%で化膿していました。紅斑・耳垢分泌を伴う炎症の特徴は、激しいかゆみと耳道内の茶色がかった脂っぽい耳垢の蓄積があることでした。マラセチアは76%の犬から分離され、Staphylococcus
intermedius が混在も良く見られました。マラセチアはケトコナゾール、エコナゾール、クロトリマゾール、ミコナゾール、ナイスタチンの効力で減少することが知られている。分離されたS.
intermedius はアモキシリン-クラブラン酸、エンロフロキサシン、セファレキシン、ゲンタマイシンに対して感受性があります。化膿性外耳炎を伴った犬からは、よく分離された微生物は、緑膿菌で、いくつかのケースでは、プロテウス、ストレプトコッカス、パスツレラも分離されました。分離された緑膿菌に、ゲンタマイシン、ポリミキシンB、トブラマイシンが高い感受性を示しました。(Dr.Shingo訳)
コメント:化膿性外耳炎に対して菌の培養をしていますが、稀に、オフロキサシンやバイトリル、ゲンタマイシンに対して効果のない菌が培養されたことが数例ありました。これはもしかしたら今回の文献のようにチカルシリンが効果あるのかも知れませんね。チカルシリン(TIPC)はペニシリン系の抗生物質で、モナペン(藤沢)、チカルペニン(ビーチャム)などの商品名で日本でも発売されているようです。(注射液しかないような感じですが・・・)
今後、耳垢の培養をする時に、この薬も選択枝に入れてみようと思います。