■犬の白内障除去に対する超音波水晶体乳化吸引後の術後高眼圧の発症
Development of Postoperative Ocular Hypertension After Phacoemulsification for Removal of Cataracts in Dogs
Animals (Basel). 2025 Jan 22;15(3):301.
doi: 10.3390/ani15030301.
Myeong-Gon Kang , Chung-Hui Kim , Shin-Ho Lee , Jae-Hyeon Cho
白内障は目の水晶体が曇り、部分的あるいは完全な視力喪失を引き起こす疾患である。超音波水晶体乳化吸引(PHACO)は、白内障手術において使用される現代の外科的方法である。
研究所見:この研究は、動物病院を訪れた白内障の31頭の犬(48眼)の術後の眼内圧(IOP)の変化を観察した。その方法は、PHACOによる水晶体摘出と眼内レンズ(IOL)のインプラントだった。術後眼内圧亢進(POH)は、術後のIOPが25mmHg以上と定義した。
IOPの変化を評価するため、IOP測定を術後1、2、3、20時間と、1、2、3、4、8週目に実施した。IOPは術前と比べ、術後1(p<0.05)、2(p<0.01)、3(p<0.01)時間で有意に高いことが分かった。IOP測定値は観察期間に従い3群に振り分けることで比較した。IOP値は3群に対して測定した:白内障手術前(A群:13.10±8.29mmHg)、白内障手術後1-3時間(B群:17.84±5.33mmHg)、手術後20時間から8週間(C群:13.71±4.78mmHg)。術後1-3時間目(B群)のIOPは、A群(p<0.01)およびC群(p<0.001)よりも有意に高かった。
結論:白内障手術後の0-3時間以内に発生するPOHは、二次性緑内障と診断されるべきで、それに応じて治療を実施すべきであると示唆される。(Sato訳)
■表層角膜切除術を行った犬の角膜扁平上皮癌の再発率
Recurrence rate of corneal squamous cell carcinoma in dogs undergoing superficial keratectomy surgery
Open Vet J. 2024 Nov;14(11):3063-3073.
doi: 10.5455/OVJ.2024.v14.i11.35. Epub 2024 Nov 30.
Helen Mather , Robin G Stanley
背景:角膜扁平上皮癌(cSCC)は犬の珍しい腫瘍で、種々の様式で治療できる(主に表層角膜切除(SK)術)。複数の補助的治療でcSCCを治療するのが一般的であるが、これは常に臨床医、飼い主、犬にとって実際的でないかもしれない。
目的:この回顧的研究は、SK単独あるいは補助療法との組み合わせで、罹患犬のシグナルメント、併用内科治療、cSCCの外科的治療の成功率を述べる
方法:cSCCと組織学的に確認され、SK術を行った適格犬を、メルボルンのAnimal Eye Careの医療記録(2009-2024)から選択した。フォローアップ時のcSCC再発に対して記録を調べた。
結果:2009年1月から2024年8月の間、14頭の16の眼(オス5頭;35.7%(眼37.5%)、メス9頭;64.3%(眼62.5%))は、cSCCの病理組織診断を確認しており、続いてSK術を行った。全ての症例はこの9年以内に診断された。短頭種(犬の85.7%;眼81.3%)に顕著な偏りがあり、パグは最も多かった(犬の42.9%;眼37.5%)。診断時の平均年齢は8.7歳(範囲2.1-13.8)だった。腫瘍の再発は不完全切除の2症例で発生し、2度目のSK手術後に腫瘍の再発は報告されなかった。4症例は補助的治療を使用し、凍結治療とインターフェロンα-2aが含まれた。診断時、16のうち12眼は過去に局所免疫調整療法で治療していた。有病データは様々だが、2021年のピークで全患者の0.14%、全ての短頭種犬の0.82%がcSCCと診断された。
結論:SK手術による完全切除は、補助的治療がなくても犬のcSCCの再発防止に効果的である。慢性角膜炎証状態の犬(特に短頭種)は、cSCC発症に対するリスクがより高い。角膜SCCは、増殖性、盛り上がった、充血性の角膜病変を呈する中年の短頭種の犬で疑うべきである。(Sato訳)
■イギリスの犬の無菌性肉芽腫性汎ぶどう膜炎:33症例のレビュー
Sterile granulomatous panuveitis in dogs in the United Kingdom: A review of 33 cases
Vet Ophthalmol. 2024 Jan 26.
doi: 10.1111/vop.13178. Online ahead of print.
J Burgess , E Scurrell , E Collier , H Featherstone
目的:眼球摘出と眼の病理組織検査を行った33頭の犬の無菌性肉芽腫性汎ぶどう膜炎症候群の臨床および病理組織学的特徴を述べる
方法:33症例の医療記録と眼の病理組織学的報告の回顧的再調査。組み入れ基準は眼球摘出と独特な臨床および病理組織学的特徴を持つことだった。
結果:13の犬種が認められた(雑種を含む)。汎ぶどう膜炎は、急性で激症、二次的緑内障は一般的だった(n=27)。初診から眼球摘出までの期間は99日(中央値33日、範囲5-605日)だった。眼球摘出時の平均年齢は6.7歳だった。眼の症状は当初片側性(n=18)あるいは両側性(n=15)だった。最初は片側性の眼球摘出を行った25症例中18症例で、疾患は両側性になり、9/18頭で眼球摘出あるいは安楽死となった(平均間隔168日)。59眼のうち7眼は、局所抗炎症および全身性免疫抑制療法で良好な結果が得られた。発症からフォローアップ(平均619日、範囲16-3012日)まで、旅行の履歴や関連した全身症状があった犬はいなかった。病理組織検査で色素拡散を伴う組織球およびリンパプラズマ細胞性汎ぶどう膜炎を認め、光学顕微鏡で感染性の病原体は確認されなかった。
結論:著者の知識では、これはイギリスの犬の無菌性肉芽腫性汎ぶどう膜炎症候群の最初の報告である。罹患した犬の臨床症状は重度で、急速に進行し、両側性の眼球摘出あるいは安楽死となる可能性がある。年齢や犬種素因によるとは思えないが、このことに関して今後の研究が必要である。早期の積極的な介入(局所および全身性免疫抑制療法)が、失明、眼球摘出、安楽死のリスク低減のために推奨される。(Sato訳)
■犬の糖尿病性白内障における水晶体超音波吸引と局所薬剤治療単独の結果の比較:回顧的研究
Comparison of the outcomes of phacoemulsification versus topical medication alone in canine diabetic cataracts: a retrospective study
J Vet Sci. 2023 Nov;24(6):e86.
doi: 10.4142/jvs.23164.
Eunji Lee , Seonmi Kang , Dajeong Jeong , Kangmoon Seo
Free article
背景:犬の糖尿病性白内障における水晶体超音波吸引と局所薬剤治療の長期比較は限られている。
目的:犬の糖尿病性白内障に対する水晶体超音波吸引を行った眼の結果と、局所薬剤治療を行った眼の結果を比較する
方法:医療記録の再調査を通し、糖尿病性白内障の150眼(76頭の犬)を含めた。58眼(31頭)は、水晶体超音波吸引を行い(phaco群)、92眼(48頭)は点眼のみを投与していた(薬剤群)。薬剤群は、手術選択をしなかった人で飼い主-led、獣医師-ledに振り分けた。比較は、合併症までの時間、視覚、投与した点眼薬の数と種類を含めた。合併症と治療前の臨床所見の関係を調査した。
結果:phaco群と飼い主-led薬剤群の間で、合併症リスクに違いは見られなかった。対照的に、獣医師-led薬剤群は、他の群よりも高い合併症リスクがあった。最終フォローアップ時、94.8%のphaco群は視力があり、一方で薬剤群の7.6%はいくつかの視軸を回復した。薬剤群の血糖コントロール不良や、phaco群のより若い年齢の犬は合併症リスクが増加した。治療から1年後、投与した点眼の平均数はphaco群で1.7、薬剤群で2.6だった。薬剤群はフォローアップの間に抗炎症薬を使用したが、phaco群は、多くは術後1年まで抗炎症薬と術後1.5年時lacrimostimulantsを使用していた。
結論:犬の糖尿病性白内障に対し、視力の維持及び長期に必要な点眼液の数を減らすことに関して、局所管理単独よりも優れているため、超音波水晶体吸引が推奨される。(Sato訳)
■犬と猫の全身性炎症反応症候群の症例における前ぶどう膜炎の有病率
Prevalence of anterior uveitis in cases of systemic inflammatory response syndrome in dogs and cats
Vet Ophthalmol. 2024 May 3.
doi: 10.1111/vop.13225. Online ahead of print.
Marc Fortuny-Clanchet , Cristina Anaya , Martí Cairó , Elena Fenollosa-Romero , Alicia González , Daniel Costa
目的:全身性炎症反応症候群(SIRS)の診断を受け、入院した犬と猫における前ぶどう膜炎の有病率を判定する
被験動物:2020年5月から2021年1月までに入院した犬と猫を回顧的に含めた。
方法:症例を2つの異なる群に分類した:1つ目の群にはSIRSと診断された症例で、2つ目の群はコントロール群としてSIRSではない入院症例を含めた。入院中に毎日、身体検査と眼科検査を行った。前ぶどう膜炎の診断は、房水フレア、眼内圧低下、上強膜充血や縮瞳のような眼の症状に関係するその他を基にした。多項ロジスティック回帰解析でSIRSと前ぶどう膜炎発症に関する因子を調査した。
結果:この研究はSIRSの42症例とSIRSではない26症例で構成した。SIRSの症例の中で、38%が前ぶどう膜炎を発症したが、SIRSでない症例で発症したのは7.7%だけだった。ぶどう膜炎の有病率は、SIRSではない症例と比較して、SIRSの症例が有意に高かった。(p<.05)。
結論:前ぶどう膜炎はSIRSではない症例よりもSIRSの症例でより一般的である。ゆえに、この症候群を呈するすべての症例で、完全な眼科検査が推奨される。(Sato訳)
■17頭の犬の推定的石灰性角膜変性の13.8%エチレンジアミン四酢酸溶液による消散
Dissolution of presumed calcareous corneal degeneration with 13.8% ethylenediaminetetraacetic acid solution in 17 dogs
Vet Ophthalmol. 2024 Mar 11.
doi: 10.1111/vop.13207. Online ahead of print.
Richard A Pytak 3rd , Neal T Wasserman
目的:13.8%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液による17頭の犬のミネラルが関係する石灰性角膜変性(CCD)の解消に対する新しい治療を述べる
方法:2021-2023年の間に見られた症例を再検討した。角膜潰瘍に関係するCCDの17頭の犬を、13.8%EDTA溶液を用いたミネラル溶解処置で治療した。その後、残存の石灰化が存在する場合、ダイアモンドバー角膜切開(DBK)を数症例で実施した。
結果:19眼(17頭の犬)を研究に含め、そのうち10眼(8頭)はDBK処置を必要とした。1眼は最初の処置に続き26週間、繰り返し処置を必要とし、2眼(1頭)は左眼と右眼、それぞれ24週と37週間、繰り返し処置を必要とした。
2度目のキレート処置を必要としなくなる眼の最終チェックまでのフォローアップ期間の平均は、20.4週(範囲、10-47週間)だった。17頭すべての最終フォローアップ検査の時、CCDの解消は26.3%、改善は57.9%、再発は15.8%の眼だった。合併症は2眼(2頭)で起こり、2週間目のチェックで感染性基質潰瘍、デブリードメント後すぐの40%深基質欠損の創作が含まれた。両合併症は内科管理でうまく対処できた。
結論:13.8%EDTA溶液の利用は、CCDに関係する病変を治療する効果的で安全な方法と思われる。(Sato訳)
■犬の乾性角結膜炎の治療として結膜下リポソームシロリムスvs.シクロスポリンあるいはタクロリムス:二重盲検無作為化研究
Subconjunctival liposomal sirolimus vs. cyclosporine or tacrolimus as treatment of keratoconjunctivitis sicca in dogs: A double-blind, randomized study
Vet Ophthalmol. 2024 Feb 8.
doi: 10.1111/vop.13190. Online ahead of print.
Rodrigo García-Santisteban , Mónica Anayatzin Linares-Alba , Andrés Botello-Bárcenas , Paola Margay , Carlos Soto , Joice Fonzar-Furtado , Dennis Brooks , Diego García , Gustavo Adolfo García Sánchez
目的:犬の乾性角結膜炎(KCS)に治療で、シクロスポリン(CsA)あるいはタクロリムス(CsA/T)に対し、リポソーム被包性シロリムスの100マイクログラム、結膜下注射(SCJS)の安全性と効果を比較する
方法:KCSの症状および徴候のある犬を2処置群のうち1つにブロック無作為化した;2週間に1回のSCJSあるいは従来の処置(CsA/T)。2週間ごとに14週間、両群のシルマー涙試験1(STT-1)スコア、結膜充血(CH)スコア、角膜混濁(CO)スコア、潜在的副作用の臨床的評価を記録した。群間の違いは、mixed results ANOVAとU-Mann Whitney testsで解析した(p<.05を有意と考えた)。
結果:この研究に合計30眼を含め、そのうち20眼はフォローアップを完了した。治療群間に統計学的に有意な相互作用はなく、STT-1の時間スコア(p=.165)、CHおよびCOスコアの中央値に群間の統計学的有意差は示されなかった(それぞれp=.353、p=.393)。どの時間、どの犬にも臨床的に有意な副作用はなかった。
結論:この試験で、2週間ごとの1mg/ml(100マイクログラム)SCJSは、処置から14週後のKCSの犬で毎日のCsA/Tと同様の安全性と効果プロフィールを示した。KCSの代替治療としてSCJSをさらに評価するより大きな研究を実施すべきである。(Sato訳)
■犬の末期の緑内障に対する硝子体内シドフォビル注射の効果:153眼の回顧的研究
The effect of intravitreal cidofovir injection on end-stage glaucoma in dogs: a retrospective study of 153 eyes
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jun 7:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.03.0199. Online ahead of print.
Hyelin Kim, Seonmi Kang, Dajeong Jeong, Junyeong Ahn, Kangmoon Seo
目的:末期緑内障の犬における硝子体内シドフォビル注射の長期効果、予後因子、合併症を評価する
動物:130頭の飼い犬
方法:硝子内シドフォビル注射を行った犬の医療記録を再検討した。6か月の最小フォローアップ季刊を組み入れ基準に必要とした。シグナルメント、緑内障のタイプ、注射前の眼内圧(IOP)、使用した緑内障点眼の種類、共存する眼疾患、結果、合併症を記録した。成功は2週間後の再チェックでIOP≦25mmHgで6か月目の再チェックまで維持していると定義した。
結果:硝子体内シドフォビル注射の全体の成功率は91.5%(140/153)だった。1回注射の成功率は69.3%(106/153)、2回目の注射は59.5%(25/42)、3回目の注射は42.9%(6/14)、4回目は33.3%(2/6)、5回目は50.0%(1/2)だった。注射後6か月目の眼内圧は、注射を繰り返した時、注射前により少ない種類の緑内障点眼薬を使用、注射時に白内障のステージが進行した時に比較的より高かった(P<.05)。最も一般的な合併症は、眼球癆(42.5%)、白内障進行(30.1%)、眼内出血(16.3%)だった。6眼は眼球摘出し、3眼は角膜穿孔のために摘出した。
臨床的関連:末期緑内障の犬において、硝子体内シドフォビル注射はIOPを低下させることにおいて、高い長期の成功率を示した。(Sato訳)
■シーズ犬は十分な水性涙産生にもかかわらず眼球表面のホメオスタシスの変化を示す
Shih-Tzu dogs show alterations in ocular surface homeostasis despite adequate aqueous tear production
Acta Vet Scand. 2024 Jan 17;66(1):3.
doi: 10.1186/s13028-024-00724-2.
Rebeca Costa Vitor , Jamille Bispo de Carvalho Teixeira , Katharine Costa Dos Santos , Gabriela Mota Sena de Oliveira , Paula Elisa Brandão Guedes , Anaiá da Paixão Sevá , Deusdete Conceição Gomes Junior , Jéssica Fontes Veloso , Renata Santiago Alberto Carlos
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背景:シーズは、角膜潰瘍やドライアイ疾患(DED)のような眼球表面の疾患に侵されることが多い。
この研究の目的は、適切な水性産生のシーズにおいて、眼球表面のホメオスタシスを評価することだった。28頭の犬で眼瞼瞬きカウント、シルマー涙試験(STT-1)、眼科検査、涙膜破壊時間(TBUT)、フルオレセイン検査、Masmali tear ferning (TF) grading scaleを行った。
結果:評価した28頭のうち、不完全な眼瞼瞬き/分の中央値(中央値=15.0瞬き/分;四分位範囲-IQR=8.7-19.5瞬き/分)は、完全な瞬き/分(中央値=2.5瞬き/分;IQR=1.6-4.3瞬き/分)よりも有意に高く、統計学的有意差があった。シルマー涙試験の中央値は25.0mm/分(IQR=22.7-27.5mm/分)で、その犬種の正常範囲内と考えられた。眼科検査において、全ての犬は、涙丘の睫毛乱生と内側下眼瞼内反があった。兎眼は、観察された3番目に多い変化だった(71.4%;20/28)。TBUTの中央値は4.0秒(IQR=3.0-6.0秒)だった。全ての犬はフルオレセインとTFTが陰性で、多くの眼(51.8%;29/56眼)がMasmali tear ferning (TF) grading scaleに従い異常なグレード3及び4に分類されることを示した。
結論:シーズのSTT-1値はその種の正常範囲内だが、全ての犬の異常なTFTグレードと低いTBUTの高い有病率は、適切な水性産生にもかかわらず、それらの犬は角膜前涙液層の質が悪いことを示している。また、眼瞼瞬きが完全なものは少なく、眼科検査で変化も示し、涙膜拡散を悪化させている。全てそれらの所見(個別あるいは共に)はDEDを起こしえる。(Sato訳)
■シーズの眼:1000眼の眼科的所見
The Shih Tzu eye: Ophthalmic findings of 1000 eyes
Vet Ophthalmol. 2024 Jan 3.
doi: 10.1111/vop.13182. Online ahead of print.
Seyed Mehdi Rajaei , Houman Faghihi , Fatemeh Zahirinia
目的:シーズの眼科障害の頻度を評価する
動物:500頭のシーズ(1000眼)
方法:500頭のシーズの医療記録を再調査し、眼科検査データを集めて分析した。
結果:合計、1000眼中964眼(96.4%;OD(右眼)480眼、OS(左目):484眼)は1つ以上の眼科異常があり、36眼(3.6%;OD:20眼、OS:16眼)だけが正常と診断された。合計1375の個別の眼科異常が964の罹病眼で観察された。59の異なる独特の診断がこの研究集団でなされ、3つの状況(内眼角内反(10.4%の眼;両側10.2%の犬)、小丘睫毛乱生(21.1%の眼;両側20.2%の犬)、(涙膜崩壊時間短縮(17.6%の眼;両側17.4%の犬))のみが49.1%の眼に影響した。
結論と臨床的関連:所見は、シーズの最も一般的な疾患は、毛の生えた小丘、TBUT短縮、内眼角内反、乾性角結膜炎、色素沈着性角膜炎、兎眼、成熟白内障だったと示唆する。(Sato訳)
■眼科用コルチコステロイドで治療後の犬における結晶性角膜混濁(ステロイド角膜症)の発症
Development of Crystalline Corneal Opacities (Steroid Keratopathy) in Dogs After Treatment With Ophthalmic Corticosteroids
Cornea. 2024 Mar 13.
doi: 10.1097/ICO.0000000000003523. Online ahead of print.
Katelin R Quantz , Kamontip K Jongnarangsin , Christine D Harman , Kristin L Koehl , Amanda L Jacobson , Nambi Nallasamy , Gillian C Shaw , Christopher G Pirie , András M Komáromy
目的:研究用ビーグルおよびビーグル由来の犬の集団で、コルチコステロイド点眼の使用と結晶性角膜混濁(ステロイド角膜症)の発症との関連を回顧的に評価して述べる
方法:73頭の研究用ビーグルおよびビーグル由来の犬の医療記録を、2012年6月から2021年5月の間で再評価した。全ての犬は少なくとも21日間、眼科用コルチコステロイド点眼で処置していた。また通常の眼科検査に加え、全身性脂質プロフィールのある数頭(n=6)は、さらに検査し、血漿性角膜混濁を特徴づけた。3頭の眼球は病理組織学的に検査した。
結果:軸性の間質性結晶性角膜混濁は、処置開始後141日の中央値(35-395日)で、14頭の犬の25眼に認められた。複数のコルチコステロイドが使用され、ネオマイシン-ポリミキシンB-デキサメサゾン0.1%眼科軟膏、酢酸プレドニゾロン1%眼科懸濁液、ジフルプレドナート0.05%眼科乳剤(Durezol)が含まれた。35眼のうち4眼の角膜混濁の解消は、眼科用コルチコステロイド中止後、406.5日の中央値(271-416日)で認められた。病理組織検査で、無細胞性物質の密な帯、PAS染色であまり染まらない、角膜上皮に範囲を定める、紡錘細胞により囲まれていることが明らかになった。
結論:このケースシリーズは、ビーグルおよびビーグル由来の犬の眼科用コルチコステロイドで治療後のステロイド角膜症の発現を証明する。ステロイド角膜症病変の臨床的解消は、眼科用コルチコステロイドの中止後に可能となるかもしれない。(Sato訳)
■健康な成犬の涙産生、眼内圧、涙内濃度に対するカンナビジオール経口投与の長期影響
Long-term effect of oral cannabidiol administration to healthy adult dogs on tear production, intraocular pressure, and tear concentrations
Vet Ophthalmol. 2023 Nov 30.
doi: 10.1111/vop.13164. Online ahead of print.
Haley E Jost , Katya Spitznagel , Isabella Corsato Alvarenga , Jaqueline Peraza , Krista Banks , Stephanie McGrath , Michala de Linde Henriksen
目的:健康な犬において、涙産生、眼内圧(IOP)、涙のカンナビジオール(CBD)の濃度に対するカンナビジオール経口投与の長期影響を判定する。
被験動物:18頭の健康な研究犬
方法:これは盲検、プラセボ対照無作為化前向き研究だった。18頭の犬を無作為に3群(6頭ずつ)に振り分け、毎日経口MCTオイル(コントロール)、CBD5mg/kg、CBD10mg/kgを投与した。シルマー涙試験(STT-1)およびIOPを4週ごとに36週間、1日2回(7amと7pm)測定した。36週目の涙を採取し、液体クロマトグラフィー/マス分光測定によりCBD濃度(ng/mL)を解析した。混合直線モデルを統計に使用し、p値<.05を有意と考えた。
結果:STT-1あるいはIOP(AMとPM)に対し、プラセボと5mg/kgと10mg/kgの間に有意差は見られなかった。5mg/kgあるいは10mg/kgの用量を投与した、実行可能な涙サンプル11中10(91%)でCBDが検出された。5mg/kg群の1サンプルは、解析に涙量が不足していた。涙中のCBD濃度は、プラセボ群で定量の下限以下、5mg/kg群で4.12-11.2ng/mL、10mg/kg群で6.22-152ng/mLだった。
結論:健康な研究ビーグルへの経口CBDの長期投与は、眼の許容性に関して良好な安全プロフィールを示す。CBD経口投与は、36週の期間で涙産生あるいはIOPに影響するとは思えない。これは、経口投与後、涙のCBDの濃度を明確に確認した最初の犬の研究である。(Sato訳)
■犬の結晶性角膜ジストロフィーの1%シクロスポリン点眼による治療
Topical 1% cyclosporine eyedrops for the treatment of crystalline corneal dystrophy in dogs
Open Vet J. 2023 Sep;13(9):1167-1174.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i9.12. Epub 2023 Sep 30.
Manuela Crasta , Kevin Arteaga , Teresa Peña , Marta Leiva
背景:結晶性角膜ジストロフィー(CCD)は、犬の角膜脂質沈着の最も一般的なタイプである。CCDは、細胞外および細胞内脂質沈着の蓄積を特徴とする、角膜線維芽細胞の原発性代謝障害である。角膜脂質沈着は角膜混濁を作り出し、原繊維間コラーゲンの距離を改変し、光散乱を誘発する。角膜血管新生は、この疾患と関係することは少ないが、長期経過した症例において、細胞死は炎症を生じさせ、新しい角膜血管に発展するかもしれない。著者の知るところでは、これは獣医療において、CCD治療に対する内科アプローチの最初の報告である。
目的:犬のCCDの治療に対し、1%シクロスポリン点眼液(1%CsA)の効果を評価する
方法:CCDの犬の医療記録を回顧的に再調査した(2009-2020)。角膜混濁記述(COD)(サイズ(mm)、深さ、混濁の程度(0-3))を、初回診断後0、3、6、9、12、15か月で評価した。犬は3群に振り分けた:コントロール群(G0)、1日1回1%CsAの点眼群(G1)、1日2回1%CsA点眼群。
結果:異なる犬種、年齢、性別の92頭の飼い犬(163眼)が、組み込み基準を満たした。眼のCODが有意に増加したG0(p<0.001)と比較した時、G1およびG2のCODは有意に減少した(p<0.001)。実際、CODの減少確率は、G1よりもG2で約3倍高く、右眼(OR=2.94;95%CI,0.55-15.78)と左眼(OR=2.92;95%CI,0.49-17.26)ではほぼ同じだった。加えて、G2の治療の各追加月に対し、COD減少の確率は有意に増加した(右眼OR=1.12;95%CI,1.00-1.26、左眼OR=1.16;95%CI,1.02-1.32)。
結論:1%CsA点眼の長期治療は、犬のCCDを有意に改善させ、CODの減少確率は1日2回点眼した時により高かった。(Sato訳)
■眼科用非ステロイド性抗炎症薬で治療している犬の消化管出血の発生率の回顧的評価
Retrospective evaluation of the incidence of gastrointestinal bleeding in dogs receiving ophthalmic nonsteroidal anti-inflammatory drugs
Vet Ophthalmol. 2023 Sep 2.
doi: 10.1111/vop.13145. Online ahead of print.
Laura R Van Vertloo , Hannah M Terhaar , Austin K Viall , Rachel A Allbaugh
目的:眼科用非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を投与されている犬の集団において、消化管(GI)出血の発生率と関連するリスク因子を報告する
被験動物:眼科用NSAIDsを処方されている犬(症例)、全身性NSAIDs単独の投与を受けている犬と全身性プレドニゾン単独の投与を受けている犬(コントロール)
方法:2015年から2019年の間に紹介病院で、眼科用NSAIDs(ジクロフェナク、ケトロラク、フルルビプロフェン)を処方された犬204頭(同時に全身性NSAIDsあるいはグルココルチコイドの投与を受けているかどうかで細分した)、全身性NSAIDs(カルプロフェンあるいはメロキシカム)単独の投与を受けている136頭の犬、全身性グルココルチコイド(プレドニゾン)野津世を受けている151頭の医療記録から回顧的にデータを収集した。
結果:消化管出血は、NSAIDs点眼のみの症例8/79頭(10.1%)、全身性NSAIDsコントロール10/136(7.4%)、全身性グルココルチコイドコントロールの14/151(9.3%)で発症し、3群間で有意差はなかった(p=.6103)。ケトロラク、ジクロフェナク、フルルビプロフェンで治療した症例間でGI出血率に有意差はなかった(p=.160)が、重度のGI出血は、ケトロラク治療犬にのみ見られた。GI出血に対して既知の一致リスク因子の存在は、眼科用NSAIDs(に対する犬のGI出血の発症に有意に関係した(p=.032)。
結論:眼科用NSAIDsで治療している犬は、全身性NSAIDsあるいは全身性グルココルチコイド単独の投与を受けている犬に匹敵する頻度で、GI出血を発症し、眼科用NSAIDsを投与されている犬は、GI出血のリスクが上昇しているかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の原発性角膜内皮変性のリパスジル点眼による治療
Topical Ripasudil for the Treatment of Primary Corneal Endothelial Degeneration in Dogs
Transl Vis Sci Technol. 2022 Sep 1;11(9):2.
doi: 10.1167/tvst.11.9.2.
Sarah R Michalak , Soohyun Kim , Sangwan Park , M Isabel Casanova , Morgan A W Bowman , Michelle Ferneding , Brian C Leonard , Kathryn L Good , Jennifer Y Li , Sara M Thomasy
Free PMC article
目的:この研究の目的は、犬の原発性角膜内皮変性(PCED)の治療において、rhoキナーゼ阻害剤リパスジル点眼の許容性と効果を評価することだった。
方法:12頭のPCEDに罹患した飼い犬の21眼に1日4回リパスジルを点眼した。基礎時、1、3、6、12か月目に、眼科検査、超音波パキメトリー(USP)、フーリエ領域光コヒーレンストモグラフィー(FD-OCT)、インビボ共焦点顕微鏡を実施した。角膜厚、角膜浮腫の範囲、内皮細胞密度(ECD)に対する治療効果は、反復測定ANOVA、あるいはフリードマンテストで評価した。臨床反応基準を用い、個々の眼を改善、進行性、安定と分類した。リパスジルで治療した眼と、年齢、犬種/サイズ、疾患ステージがマッチした過去のコントロールの眼との比較にカプラン-マイヤー曲線及びログランクテストを使用した。
結果:治療中、12頭は結膜充血を発症し、4頭は網状水疱性上皮浮腫を示し、2頭は角膜間質出血を発症した。リパスジルの永続的中止を必要とする有害事象はなかった。USPによる測定した中心角膜厚は、基礎から12か月までに有意に進行した。FD-OCT、ECDによる角膜厚および浮腫の範囲は時間がたっても違いはなかった。個別に考えると、5眼は改善、8眼は安定、8眼は進行した。ログランクテストで、過去のコントロールと比較して、リパスジルで治療した眼の浮腫の進行が少なかったことが分かった。
結論:PCED罹患犬においてリパスジルの許容性は良かった。治療に対する反応は様々で、62%の眼は改善あるいは安定疾患を示したが、38%は進行した。リパスジルで治療した眼は、過去のコントロールよりも進行がより緩やかだった。
解釈関連:内皮変性の犬モデルを用いた犬の部分集団において、リパスジル点眼は治療的有益性を提供し、ヒトにおいて今後の試験の導きとなるかもしれない。(Sato訳)
■イギリスの犬の自発性慢性角膜上皮欠損の犬種分布
Breed distribution of spontaneous chronic corneal epithelial defects in UK dogs
Vet Rec. 2022 Aug 27;e2031.
doi: 10.1002/vetr.2031. Online ahead of print.
Claire Bradley , Philip G Sansom , Wallace J Carter
背景:この研究の目的は、自発性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)に罹患した犬の両側疾患のリスクを評価することと、罹患犬腫の分布における近年の変化を確認することだった。
方法:2007年から2020年までのSCCEDsの管理に対し、1か所の眼科センターで評価した犬の医療記録を再調査し、臨床データを抽出した。
結果:307頭が組み入れ基準に合致した。ボクサー(129頭)、スタッフォードシャー・ブル・テリア(37頭)、フレンチブルドッグ(20頭)が多く罹患した。全体で受診時の年齢中央値は8歳(範囲1-15歳)だったが、フレンチブルドッグは年齢中央値6歳とより若かった。ボクサー、フレンチブルドッグ、スタッフォードシャー・ブル・テリアは、研究集団全体と比較して両側性潰瘍のオッズが高いことを示した(それぞれオッズ比1.79、1.65、1.64)。両眼が罹患する時、その症状が出る間隔中央値は4か月(範囲0-42か月)だった。この状況に対して治療するフレンチブルドッグの統計学的有意な増加、ボクサーの減少、スタッフォードシャー・ブル・テリアの安定頭数が見られた。しかし、各個別犬種の有効なサンプルサイズは小さいため、それら所見を確認する追加研究が有益だろう。
結論:この研究の結果は、犬種分布のシフトを示唆する。ここで報告した3犬種の両側疾患のリスクはより高く、初回検査時に飼い主に適切に助言すべきである。(Sato訳)
■犬のトリミングに関係する眼球傷害:161症例(2004-2020)
Ocular Injuries Related to Grooming Visits in Dogs: 161 Cases (2004-2020)
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Nov 1;58(6):277-282.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7279.
Jessica Chmiel , Stephanie Pumphrey , Elizabeth Rozanski
眼の問題を持つ犬の飼い主は、最近のトリミングとその眼の問題が関係していると思うことが多い。
トリミング予約の24時間以内に最初に気付いた眼の病気を持つ犬を確認するため、医療記録の検索を行った。集めたデータは、シグナルメント、傷害のタイプ、治療、傷害に寄与する可能性がある行動問題に関係する記録を含めた。
159頭の犬に関係する161の事象を確認した。オス犬が事象の57%を占めた。受診時の年齢中央値は59か月だった。シーズは事象の34%に関与し、71%は小型犬の犬だった。攻撃性あるいは反応性の行動は33%の犬で報告された。
角膜潰瘍が最も一般的な傷害(事象の71%)で、続いて結膜炎(11%)、眼瞼裂傷(7%)、結膜下出血(6%)だった。外科的治療は14%の症例に必要で、眼球摘出を行った4頭の犬が含まれた。
トリミング中の眼球傷害は、外傷、グルーミング製品の暴露、不注意な絞扼を含むいくつかのメカニズムで起こる可能性がある。小型犬種、特にシーズはリスクが大きいと思われる。反応性あるいは攻撃的行動は、眼球傷害のリスクを増やす確率が高い。獣医師はトリミングに行く前に行動あるいは薬理学的介入を推奨することで、トリミングに関係する眼球傷害を抑える手助けができる。(Sato訳)
■マイボーム腺機能不全のある犬とない犬における眼の表面パラメーターの評価
Evaluation of ocular surface parameters in dogs with and without meibomian gland dysfunction
Vet Rec. 2022 Apr 29;e1682.
doi: 10.1002/vetr.1682. Online ahead of print.
Dajeong Jeong , Seonmi Kang , Jaeho Shim , Eunji Lee , Youngseok Jeong , Kangmoon Seo
背景:獣医療でマイボーム腺機能不全(MGD)に関する興味が高まっている。しかし、犬のMGDに対する調査は欠けている。この研究の目的は、MGDの犬とそうでない犬のインターフェロメトリーグレード、涙のメニスカスの高さ(TMH)、非侵襲性の涙崩壊時間(NIBUT)グレードを比較することだった。
方法:通常の眼検査、インターフェロメトリー、NIBUT評価、TMH測定、マイボグラフィーを実施した。スチューデントt-検定を用い、コントロールとMGD群の年齢とシルマー涙試験-1(STT-1)結果を比較した。マン-ホイットニーU-検定を用い、2群のインターフェロメトリーグレード、NIBUTグレード、TMHを比較した。
結果:2群の年齢に有意差はなかった(p=0.279)。コントロール群よりもMGD群のSTT-1(p=0.024)、インターフェロメトリー(p=0.004)、NIBUTグレード(p=0.012)は有意に低かった。2群間のTMH値に有意差は見られなかった(p=0.587)。コントロール群はマイボスコア0と1に18眼と7眼が含まれたが、MGD群のマイボスコア0、1、2、3にそれぞれ12眼、8眼、5眼、3眼が含まれた。
結論:低いインターフェロメトリーおよびNIBUTグレードは、MGDと関係し、低下したマイボームと崩壊した涙膜クオリティーを示唆している。TMHは2群で違いはなかった。マイボグラフィーは、いくつかの症例でMGDの診断を補助できたが、この研究の犬では早期MGDを検出できなかった。(Sato訳)
■犬の石灰沈着による角膜変性に対して角膜ダイアモンドバー角膜切除後のエチレンジアミン四酢酸(EDTA)点眼
Topical Ethylenediaminetetraacetic acid (EDTA) administration following corneal diamond burr keratotomy for calcareous corneal degeneration in canines
Vet Ophthalmol. 2022 Jan 10.
doi: 10.1111/vop.12969. Online ahead of print.
Zoe Anastassiadis , Robert A Read , Kellam D Bayley
目的:推定石灰沈着性角膜変性(CCD)に関係する角膜潰瘍と診断され、ダイアモンドバー角膜切除(DBK)と術後3%あるいは4%エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の継続点眼で治療した犬の結果を評価する
方法:獣医眼科委託病院で2011年から2020年までにDKB後、EDTA継続点眼で治療したCCD症例の回顧的評価。その研究集団の記述統計を評価し、生存解析をR統計学的ソフトで実施した。
結果:41頭の犬の51の眼を評価し、小型テリア犬種が多かった(27/41、65.9%)。診断時の犬の年齢中央値は14.3歳(範囲8-17.2歳)だった。DBK後のEDTA点眼の開始までの時間中央値は、11日(範囲0-28日)だった。症例は216日の中央値で追跡した(範囲42-1379日)。角膜潰瘍は中央値80日(範囲63-156日)で、7/51(13.7%)の眼に再発した。12か月目のCCDに関係する角膜潰瘍の再発率は、15.6%(95%CI、4.1-25.7%)だった。再発した4/7(57.1%)の眼で、2度目のDBK処置に続きEDTA継続点眼を実施した。再治療した眼でその後の再発は記録されず、フォローアップ期間中央値は401日(範囲120-858日)だった。
結論:発表されたDKB単独で治療した時の再発率と比べ、DKB後のEDTA継続点眼は、CCDが関係する角膜潰瘍の再発率を減らす効果的な補助治療法である。(Sato訳)
■健康犬において涙産生、眼内圧、涙および血清メラトニン濃度に対するメラトニンの長期経口投与の効果
Effects of long-term oral administration of melatonin on tear production, intraocular pressure, and tear and serum melatonin concentrations in healthy dogs
J Am Vet Med Assoc. 2022 Jan 4;1-6.
doi: 10.2460/javma.21.03.0114. Online ahead of print.
Claudia Giannetto , Seyed Mehdi Rajaei , Arman Abdous , Hesam Ostadhasan , Hannah Emami Alagha , Houman Faghihi , Giuseppe Piccione , Roghiyeh Omidi , Francesco Fazio
目的:健康な犬の涙産生、眼圧(IOP)、涙および血清中のメラトニン濃度に対するメラトニンの長期(30日)経口投与の効果を評価する
動物:オスの健康な成犬20頭
方法:10頭にはメラトニン(0.3mg/kg、PO、q24h、朝9時のフードに投与)を投与し、10頭はプラセボを投与した。涙と血清メラトニン濃度、IOP、涙産生(シルマー涙試験で判定)を、1日目のメラトニンあるいはプラセボ投与前(ベース)、投与後30分、3時間、5時間目、そして8日、15日、30日目のメラトニンあるいはプラセボ投与後30分に記録した。
結果:データ収集時間は、涙産生、IOP、涙メラトニン濃度に対して有意な影響があったが、血清メラトニン濃度に影響はなかった。処置(メラトニンvsプラセボ)は、涙メラトニン濃度に対して有意な影響があったが、涙産生、IOP、あるいは血清メラトニン濃度に影響はなかった;しかし、涙メラトニン濃度は1日目の投与30分のみに群間の有意差があったが、他の時間にはなかった。
臨床関連:健康犬において、メラトニン0.3mg/kg、PO、24時間毎の長期投与は、涙産生、IOP、血清あるいは涙メラトニン濃度に対し、いかなる臨床的に重要な効果を持たなかった。(Sato訳)
■犬の自然発生の免疫介在性乾性角結膜炎モデルにおいて同種幹細胞による全身的治療はシルマー涙試験スコアを改善する
Systemic Treatment of Immune-Mediated Keratoconjunctivitis Sicca with Allogeneic Stem Cells Improves the Schirmer Tear Test Score in a Canine Spontaneous Model of Disease
J Clin Med. 2021 Dec 20;10(24):5981.
doi: 10.3390/jcm10245981.
Manuel Hermida-Prieto , Javier García-Castro , Luis Mariñas-Pardo
要約:乾性角結膜炎(KCS)は、標準シルマー涙試験(STT)を用いて測定できる水性涙産生減少を原因とする眼の不快感、結膜充血および角膜瘢痕化を特徴とする。犬の脂肪組織由来MSCs(cATMSCs)は、サイトカインや免疫調節液性因子の放出による抗炎症効果により治療として提唱されている。
目的:この研究の目的は、免疫介在性KCSの犬の涙産生に対し、cATMSCsの全身投与の効果を評価することと、従来のシクロスポリンA(CsA)治療と比較することだった。
方法:自然発生のKCSの飼育犬28頭を、実験群(n=14、全身的cATMSCsで治療)とコントロール群(n=14、CsAで治療)に振り分けた。実験群において、SST値は15日(p=0.002)、45日(p=0.042)、180日目(p=0.005)に有意に増加し、副作用は見られなかった。当初、STT値が11-14mm/minの眼は、治療として人口涙液のみ必要として有意な改善を維持した。当初、STT値が<11mm/minの眼は、45日目にシクロスポリンの投与が必要で、フォローアップは中止した。CsAで治療したコントロール群は、180日目にSTTを改善しなかった。
結果と結論:全身的な同種cATMSCsの投与は、最初のSTT値が11-14mm/minの犬において、ポジティブな結果を伴う実行可能で有効な治療だと思われ、涙産生を有意に改善した。STT値増加は最低180日間維持され、追加の薬剤は必要なく、ゆえに従来の免疫抑制治療に代わる治療とみなすことができると示唆される。(Sato訳)
■34頭の犬の神経原性乾性角結膜炎:ケースシリーズ
Neurogenic keratoconjunctivitis sicca in 34 dogs: A case series
Vet Ophthalmol. 2021 Dec 6.
doi: 10.1111/vop.12949. Online ahead of print.
Amy P Galley , Elsa Beltran , Roser Tetas Pont
目的:神経原性乾性角結膜炎(NKCS)で2010年から2019年の間に来院した犬の臨床所見、画像特性、基礎疾患、治療、進行を述べる
方法:臨床データベースにおいて、NKCSと診断された犬を検索した。組み込み基準は、STT-1が<15mm/min、同側の鼻粘膜乾燥症を伴うKCSの臨床症状だった。
結果:24症例が含まれた。来院時の平均年齢は8.2歳、中央値8.9歳(0.3-14.7歳)だった。20頭はオス、14頭はメス犬だった。併発している神経学障害は顔面神経障害(n=13、38%)、末梢前庭症候群(n=10、29%)、ホーナー症候群(n=5、15%)だった。高度画像検査は53%(n=18)の症例で得られた。原因は、特発性(n=18、53%)、内分泌障害(n=6、18%)、内耳炎(n=4、12%)、頭部外傷(n=3、9%)、医原性(post-外耳道全摘出、n=1、3%)、脳幹のマス(n=1、3%)、翼口蓋窩の一部炎症(n=1、3%)だった。
NKCSの治療は、ほとんどの症例(n=30、88%)で開始され、経口ピロカルピン2%と涙腺刺激剤(n=19)、経口ピロカルピン2%のみ(n=3)、涙腺刺激剤のみ(n=8)が含まれた。平均フォローアップ3.7か月、中央値3か月(1-14か月)が23症例(68%)で得られた。フォローアップした11症例は反応性(48%)で、中央値4か月(1-10か月)で臨床症状が解消し、それらの犬全てが経口ピロカルピン(±涙腺刺激剤)で治療していた。
結論:多くの症例は特発性NKCSを呈した;その他、顔面神経障害の基礎原因が確認された。全ての反応した症例は経口ピロカルピン2%で治療していた。(Sato訳)
■犬の超音波検査による視神経鞘径に対する麻酔の影響
Study of the effect of anaesthesia on the canine ultrasonographic optic nerve sheath diameter
J Small Anim Pract. 2021 Jul 15.
doi: 10.1111/jsap.13403. Online ahead of print.
C Drolet , C Pinard , L Gaitero , G Monteith , S Bateman
目的:ポイントオブケアの超音波検査を用い、頭蓋内疾患のない犬の集団の視神経鞘径に対する麻酔中および一連の麻酔事象の影響を調査する
素材と方法:先進頭部画像検査を必要とする飼育犬を前向きに登録した。除外基準は、頭蓋内圧上昇の症状、緑内障、視神経疾患を含めた。経眼瞼法を用い、3つのタイムポイントで各眼の視神経鞘径測定値を記録した:前処置後、導入から7分以内、イソフルラン中止前。混合モデル解析を視神経鞘径の動きを特徴づけるために使用し、麻酔中、体重と麻酔プロトコール、年齢、性別の影響を調査した。
結果:14頭の種々の年齢、犬種、体重の犬14頭を登録した。体重と視神経鞘径に正の直線関係が検出された。14頭中12頭において、導入から7分以内の測定値と比較した時、前処置後の測定値から視神経鞘径が増加していた。一部の犬において、その後麻酔時間が120分を超えた時、測定値は低下した。年齢、左右、性別、最終体温、血圧、麻酔プロトコールは、視神経鞘径に有意な影響はなかった。導入後とイソフルラン中止前の視神経鞘径と終末呼気二酸化炭素の間に有意な関連は見られなかった。
臨床的意義:ポイントオブケアの超音波検査を使用した時、体重に関係なく一時的な視神経鞘径の増大が、前処置と導入から7分以内に発生する。これは、連続モニタリングを実施する時に考慮しておくべきである。(Sato訳)
■犬の眼内圧測定に対するTonoVet、TonoVet Plus、Tono-Pen Avia Vet、Kowa HA-2手持ち眼圧計の比較
Comparison among TonoVet, TonoVet Plus, Tono-Pen Avia Vet, and Kowa HA-2 portable tonometers for measuring intraocular pressure in dogs
Vet World. 2021 Sep;14(9):2444-2451.
doi: 10.14202/vetworld.2021.2444-2451. Epub 2021 Sep 21.
João Victor Goulart Consoni Passareli , Felipe Franco Nascimento , Giovana José Garcia Estanho , Claudia Lizandra Ricci , Glaucia Prada Kanashiro , Rogério Giuffrida , Silvia Franco Andrade
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背景と目的:緑内障あるいはぶどう膜炎の診断において、眼内圧(IOP)の測定に眼圧計は重要な器機である。この研究の目的は、犬の異なるIOPの測定方法論で主要なタイプの眼圧計を比較することだった:TonoVetとTonoVet Plus(リバウンド)、Tono-Pen Avia Vet(圧平)、Kowa HA-2(ゴールドマン圧平)。
素材と方法:76頭の犬の152眼のIOPを測定した。検圧計と眼圧計の値の比較、比較した眼圧計とインビボの実際のIOP(検圧計)の相関係数(r2)を算出する死後研究を実施し、外来研究は、健康な眼と緑内障およびぶどう膜炎の症状のある眼で行った。
結果:死後研究において、降順でr2の値は、Kowa(0.989)、TonoVet Plus(0.984)、TonoVet(0.981)、Tono-Pen Avia Vet(0.847)だった。インビボ研究においてIOP値mmHgは:アネロイド検圧計(16.8±2.5)、TonoVet(18.1±2.9)、TonoVet Plus(20.6±2.3)、Tono-Pen Avia Vet(17.1±2.5)、Kowa(16.1±1.7);外来診療において:TonoVet(16.8±3.8)、TonoVet Plus(19.2±2.9)、Tono-Pen Avia Vet(16.2±2.4)、Kowa(15.0±1.3);緑内障:TonoVet(30.2±3.5)、TonoVet Plus(35.0±6.1)、Tono-Pen Avia Vet(29.5±4.2)、Kowa(23.9±5.0);ぶどう膜炎:TonoVet(14.2±1.4)、TonoVet Plus(17.6±1.9)、Tono-Pen Avia Vet(13.7±2.1)、Kowa(12.6±1.7)。
結論:全ての眼圧計において、IOP値と検圧計の間に強い相関があった。最も高い値はTonoVet Plusで、最も低い値はKowa HA-2だった。全ての眼圧計は犬のIOPを正確に測定し、最新のTonoVet Plusは素晴らしい相関係数を示した。(Sato訳)
■異所性睫毛の犬112頭:多施設後ろ向き研究
Ectopic cilia in 112 dogs: A multicenter retrospective study
Vet Ophthalmol. 2021 Nov 25.
doi: 10.1111/vop.12947. Online ahead of print.
Thomas Dulaurent , Anne-Maïmiti Dulaurent , Iona Mathieson , Julien Michel , Sylvain Medan , Jean-Baptiste Barbry , Anne-Sophie Poinsard , Olivier Balland , Guillaume-Pierre Mias , Julien Charron , Charlotte Barbe , Frédéric Goulle , Guillaume Cazalot , Matthieu Crémoux , Charles Cassagnes, Pierre-François Isard , Jean-Yves Douet
目的:この回顧的研究の目的は、異所性睫毛(EC)の犬の臨床データおよび結果を再検討する
被験動物:フランスの複数の個人診療所からECの臨床診断を受けた112頭を含めた。
結果:罹患した犬の平均年齢は2.3歳だった。メス64頭とオス48頭だった。多く見られた犬種はシーズ、フレンチブルドッグ、イングリッシュブルドッグ、チワワだった。11頭の犬は両側罹患していた。93.5%の症例は上眼瞼が関係し、中央部分が最も多かった。右眼と左眼に有意差は観察されなかった。50%の症例でECは睫毛重生と関係していた。58%の症例でECが存在するポイントとして結膜の色素沈着があった。
75%の症例のECは短く、25%は長かった。角膜の合併症は短いECと統計学的に関係があった。ECに関係する角膜病変は、角膜炎(94%)、角膜肉芽腫(0.8%)、角膜線維症(2.7%)、角膜変性(0.8%)、表層角膜潰瘍(68.7%)、深部角膜潰瘍(8%)、穿孔性角膜潰瘍(0.8%)だった。毛包を切除する手術で、88.4%の症例が成功した。
結論:ECは珍しい状況で、毛包を除去することによりうまく治療できる。薬物治療の反応しない角膜病変の症例で疑いを持つべきである。(Sato訳)
■眼内シリコンボールインプラントに関係するシリコンアレルギーを示した犬の1例
Silicone allergy associated with intraocular silicone ball prosthesis in a dog
Can Vet J. 2021 Nov;62(11):1185-1189.
Yuichiro Muramatsu , Usio Fukushima , Soroku Kudo , Takumi Akatsuka , Kenichiro Ono , Hidehiro Hirao
13歳のオスのポメラニアンが、右目の眼内出血を伴う強膜破裂と網膜剥離を呈した。強膜内シリコンボールをインプラント後、140日間の腫脹と肉芽腫性眼瞼炎を繰り返し、最終的に融解性角膜炎を発症した。
眼窩内にシリコンボールをインプラント後、再発性、重度、糜爛性、潰瘍性眼瞼炎と血漿C-反応性蛋白高濃度を発症した。眼瞼炎をコントロールできなかったため、シリコンボールを除去し、眼窩を創面切除した。眼瞼炎はすぐに解消し、眼窩は通常通り治癒した。シリコンボールに対するアレルギー反応陽性を、パッチテストを通して発見した。
鍵となる臨床的メッセージ:著者の知るところでは、これはパッチテストでシリコンに対するアレルギー反応陽性の犬におけるシリコンアレルギーの最初の報告である。(Sato訳)
■臨床現場の犬においてフルオレセイン液による涙膜崩壊時間検査の信頼度の調査
Investigation of fluorescein stain-based tear film breakup time test reliability in dogs in a clinical setting
Am J Vet Res. 2021 Dec 1;1-7.
doi: 10.2460/ajvr.21.01.0002. Online ahead of print.
Lindsay D Seyer , Robert W Wills , Caroline M Betbeze
目的:局所麻酔を投与する、あるいは投与しない臨床的環境において実施されたフルオレセイン染色による涙膜崩壊時間(TFBUT)検査の観察者内および観察者間の信頼度を判定する
動物:21頭の個人飼育犬
方法:無作為化研究計画を使用した。臨床でTFBUT検査を一般的に実施している2人の別の観察者が、TFBUTの同じ描写を読んだ。観察者は、ピリオド間に1時間の間隔を置いた4回の試験ピリオドにおいて、0.5%プロパラカイン駅の点眼前後で、各犬に対しTFBUT検査を実施した。級内相関係数(ICC)解析を観察者内および観察者間信頼度の評価に使用した。線状混合モデルを、試験したピリオド、観察者、眼、眼科疾患の有無の主な影響とTFBUTに対するそれらの相互作用を評価するために使用した。
結果:モデルで他の影響に対し補正した時、観察者1と観察者2が実施したTFBUT平均値は、5.9秒と8.6秒だった。観察者内ICCは1人に対し悪く、もう一人で中程度だった。観察者間ICCは、局所麻酔を使用しない場合は悪く、麻酔を使用した時はわずかに低かった。観察者と検査ピリオドは各々TFBUTと有意に関係した;フルオレセイン染色及びプロパラカインの複数使用後、測定値は低下し、より不定となった。
結論と臨床関連:結果は、涙膜安定性は、0.5%プロパラカイン液の点眼及びフルオレセイン染色の繰り返し使用により負の影響を受けることを示唆された。この検査で実施したようなTFBUT検査の信頼性は悪いから中程度だった。(Sato訳)
■水晶体不安定の犬におけるリバウンド及び圧平眼圧計により測定した眼内圧の比較
Comparison of intraocular pressures estimated by rebound and applanation tonometry in dogs with lens instability: 66 cases (2012-2018)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Nov 1;259(9):1025-1031.
doi: 10.2460/javma.259.9.1025.
Brittany N Schlesener, Brian C Leonard, Paul E Miller, Philip H Kass, Steven R Hollingsworth, Ann E Cooper, David J Maggs
目的:水晶体不安定の犬に対するリバウンドおよび圧平眼圧計による測定した眼圧(IOPs)を比較する
動物:66頭の犬
方法:2012年9月から2018年7月の間に検査した犬の医療記録から、前方(ALL)あるいは後方(PLL)水晶体脱臼あるいは水晶体亜脱臼の診断に対し再調査した。
結果:リバウンドおよび圧平眼圧計から得られたIOPの推定値は、集合的に考慮される水晶体不安定の全てのタイプに対し(眼圧計の読みの間の平均±SE差、8.1±1.3mmHg)そして個別に考慮される水晶体不安定の特定タイプに対し(眼圧計の読みの間の平均±SE差:ALL、12.8±2.5mmHg;PLL、5.9±1.7mmHg;亜脱臼、2.8±0.8mmHg)、互いに有意に違っていた。ALLの犬のリバウンドおよび圧平眼圧計の読み間の差の中央値(範囲)は、5mmHg(-9から76mmHg)、PLLでは3mmHg(-1から19mmHg)、水晶体亜脱臼では3mmHg(-9から18mmHg)だった。ALLの眼において、60の機会中44(73%)でリバウンド眼圧計の読みが、圧平眼圧計の読みを超過していた。
結論と臨床関連:ALLおよび集合的に考えた水晶体脱臼の全てのタイプにおいて、リバウンド眼圧計は、圧平眼圧計よりもより高いIOPの数値が得られた。水晶体不安定の眼のIOPの推定値は、リバウンドおよび圧平眼圧計両方で理想的に得られるはずである。1種類の眼圧計しかない獣医師は、身体検査所見と同時に水晶体不安定の犬に対しては、結果を判断すべきである。(Sato訳)
■短頭種7種の犬の紹介された集団における眼科疾患:970症例(2008-2017)
Ophthalmic disorders in a referral population of seven breeds of brachycephalic dogs: 970 cases (2008-2017)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Dec 1;1-7.
doi: 10.2460/javma.20.07.0388. Online ahead of print.
Samantha V Palmer, Filipe Espinheira Gomes, Jessica A A McArt
目的:大学獣医眼科サービスに紹介された短頭種7犬種における眼科疾患の頻度を評価する
動物:2008年1月から2017年12月までに獣医教育病院の眼科サービスで評価された7つの短頭種の飼育犬970頭
方法:7つの短頭種(すなわち、ボストンテリア、イングリッシュブルドッグ、フレンチブルドッグ、ラサアプソ、ペキニーズ、パグ、シーズ)の医療記録から、シグナルメント、眼科診断、罹患した眼、受診数と日時に関するデータを集めるために再調査した。
結果:最初の検査の年齢中央値は7歳(範囲、23日-22歳)だった。最初の検査に対してみられる犬の頭数は年齢とともに増加した。角膜潰瘍、乾性角結膜炎、角膜色素沈着、未熟白内障、ぶどう膜炎は、各100頭以上で診断され、全ての診断の40.4%(1161/2873)を示した。解剖学的部位を基に、全ての疾患の66.3%(1905/2873)は、角膜(1014/2873(35.2%))あるいは付属器(891/2873(31%))に位置した。この研究集団の犬種の比率に有意差があった;研究した7犬種のうち、シーズ(34.3%(333/970))、パグ(20.8%(202/970))、ボストンテリア(16.6%(161/970))が、最も一般的な犬種だった。紹介された集団内でいくつかの疾患の頻度は犬種に関係した。
結論と臨床関連:この眼科に紹介された集団において、短頭種に対する最も一般的な疾患は、角膜潰瘍、乾性角結膜炎、角膜色素沈着、未熟白内障、ぶどう膜炎だと示唆された。全ての犬は短頭種の特徴を共有するが、特定の眼科疾患の頻度は、犬種間で変化した。(Sato訳)
■正常な犬へのフルオレセイン液の3つの投与方法による涙膜崩壊時間測定値の臨床的比較
Clinical comparison of tear film breakup time measurements in normal dogs using three different methods of fluorescein solution administration
Vet Ophthalmol. 2021 Sep 23.
doi: 10.1111/vop.12933. Online ahead of print.
Samantha Palmer , Renata V Ramos , Roxanne M Rodriguez Galarza
目的:正常な犬において、フルオレセイン投与方法が涙膜崩壊時間(TFBUT)測定の結果に影響を及ぼすかどうか評価する
被験動物:併発疾患あるいは全身的あるいは局所眼科薬剤の投与がない1歳以上のクライアントと病院スタッフ飼育犬37頭
方法:前向き無作為化3方向クロスオーバー研究を行った。全ての犬は眼球表面の疾患を除外するため簡略化した眼科検査を行った。30分のウォッシュアウト期間を用い、各犬の右目に:(a)フルオレセイン染色ストリップに滅菌洗眼液1滴を直接投与、(b)フルオレセイン染色ストリップに滅菌洗眼液2滴を直接投与、(c)事前に作成したフルオレセイン液(0.3mL滅菌洗眼液で1本のストリップを希釈)から1滴投与した。眼はスリットランプ生体顕微鏡のコバルトブルーフィルターで観察した。TFBUT測定値は平均±標準偏差でまとめた。その方法は分散分析混合モデルで比較した。全ての分析はsasバージョン9.4で実施した。
結果:37頭の犬が組み入れ基準に合致した。上記3つの方法に対する平均TFBUT±標準偏差(SD)は、(a)16.58秒±6.9、(b)15.98秒±7.1、(c)16.43±8.1だった。フルオレセイン染色投与方法に違いは見られなかった(P=.92)。
結論:フルオレセイン液投与方法は、健康犬のこの集団においてTFBUT測定値に影響を及ぼさなかった。(Sato訳)
■犬の角膜血管新生のベバシズマブ点眼による治療:ケースシリーズ
Topical bevacizumab for the treatment of corneal vascularization in dogs: A case series
Vet Ophthalmol. 2021 Sep 6.
doi: 10.1111/vop.12931. Online ahead of print.
Lisa-Marie Muellerleile , Michael Bernkopf , Michael Wambacher , Barbara Nell
目的:難治性角膜血管新生の犬に対する局所抗-ヒト血管内皮増殖因子ベバシズマブの効果と安全性を評価する
被験動物:15頭の成犬(20眼)の前向きケースシリーズ
方法:犬に0.25%ベバシズマブ点眼BIDを28日間投与した。フォローアップは治療開始後28日目と6-7か月目に計画した。結膜充血、結膜浮腫、眼の分泌物、角膜浮腫、血管新生、色素沈着に対しスコアを付けた。血管新生エリアは、画像ソフトウェアを使用し、写真分析による評価した。
結果:治療の反応は不定だった。血管新生エリアや浮腫の顕著な減少を示した犬もいれば、微妙な症状の改善があった眼もあった。28日後、血管新生スコアは1.5から1.1に低下し、血管新生エリアは48.8%減少した。血管の細化、良好な血管ネットワークへの部分出血の合併、遠位血管枝の減少、不明瞭な血管新生床から境界明瞭な細い血管への変化が観察された。1頭はベバシズマブ投与後6か月でSCCEDを発症した。2頭は最後のベバシズマブ投与後4か月と4.5か月目に死亡し、それぞれ16歳と12歳だった。全ての事象において、因果関係の可能性は低かったが確実に除外できない。
結論:この所見は、犬において0.25%ベバシズマブ点眼は、角膜血管新生に対する効果的な治療オプションかもしれないと示唆する。今後の大規模な長期プラセボ対照研究が、効果の化学的エビデンスを提供し、用量、安全性、単剤治療として使用の可否、投与経路を調査するために推奨される。(Sato訳)
■イギリスの一次動物病院の犬における乾性角結膜炎:疫学的研究
Keratoconjunctivitis sicca in dogs under primary veterinary care in the UK: an epidemiological study
J Small Anim Pract. 2021 Jun 16.
doi: 10.1111/jsap.13382. Online ahead of print.
D G O'Neill , D C Brodbelt , A Keddy , D B Church , R F Sanchez
目的:イギリスの一次動物病院のもとで、犬の乾性角結膜炎(KCS)に対する犬種関連性のリスクファクターとその頻度を算出する
方法:VetCompass Programmeを通し、電子カルテのデータのコホートの解析。リスクファクター解析は多変量ロジスティック回帰を用いた。
結果:2013年中、全体で363898頭の犬のうち1456のKCS症例があり(有病率0.4%、95%CI、0.38-0.42)、430は起こりやすい症例だった(1-年発生リスク0.12%、95%CI、0.11-0.13)。雑種犬と比べ、KCSに対するオッズ比(aOR)が高い犬種は、アメリカン・コッカー・スパニエル(aOR52.33:95%CI、30.65-89.37)、イングリッシュ・ブルドッグ(aOR37.95:95%CI、26.54-54.28)、パグ(aOR22.09:95%CI、15.15-32.2)、ラサ・アプソ(aOR21.58:95%CI、16.29-28.57)が含まれた。逆に、ラブラドール・レトリバー(aOR0.23:95%CI、0.1-0.52)、ボーダーコリー(aOR0.30:95%CI、0.11-0.82)はオッズが低下していた。短頭種の犬は、中頭種の犬と比べて3.63(95%CI、3.24-4.07)倍のオッズだった。スパニエルは、スパニエル以外の犬と比べ、3.03(95%CI、2.69-3.40)倍のオッズだった。犬種/性別に対し平均体重あるいはそれ以上の体重の犬は、それより低い体重の犬に比べ1.25(95%CI、1.12-1.39)倍のオッズだった。加齢はオッズ上昇と強く関係した。
臨床意義:KCSの素因が証明されている犬種に対し、年1回以上の健康診断で定量的涙試験が推奨され、素因犬種の繁殖に対しても、眼の検査の中で考慮できるかもしれない。KCSの素因がある犬種は、繁殖戦略が顔の形態の両極端を減らすことができたと示唆される。(Sato訳)
■異なる目薬を点眼する間隔に数分待つ必要があるか?健康犬へのトロピカミド点眼の予備研究
Is it necessary to wait several minutes between applications of different topical ophthalmic solutions? A preliminary study with tropicamide eye drops in healthy dogs
Vet Ophthalmol. 2021 Aug 17.
doi: 10.1111/vop.12905. Online ahead of print.
Dikla Arad , Reut Deckel , Oren Pe'er , Maya Ross , Lionel Sebbag , Ron Ofri
目的:生理食塩水の点眼前あるいは点眼後に、異なる時間間隔を置くとき、トロピカミド点眼の効果を評価する
被験動物:8頭の健康なラブラドール及びゴールデンレトリバー
方法:瞳孔径(PD)に対する1%トロピカミドの効果を、単独(コントロール)と、生理食塩水点眼前1、5分、その後240分まで測定し、1週間のウォッシュアウト期間を置き各5試験行った。反復測定ANOVAおよびTukey post hoc testでデータを解析した。
結果:5試験の中で、対となる比較110中6だけが統計学的有意(p≦.035)で、全ての試験の全体の平均間でpost-hoc analysisは有意差を示さなかった(p≧.14)。全5試験において、最大PDはトロピカミド点眼後30分で到達し、180分の間、210分まで維持した(P=.0005)。
結論:異なる点眼液の投与間は、1分待つことが最大薬剤効果に十分かもしれないと示唆する。他の種や異なる眼科製剤でそれらの結果を推定する時は注意するべきである。(Sato訳)
■原発性緑内障の犬の予防的抗緑内障治療
Prophylactic anti-glaucoma therapy in dogs with primary glaucoma: A practitioner survey of current medical protocols
Vet Ophthalmol. 2020 Sep 12.
doi: 10.1111/vop.12820. Online ahead of print.
Caryn E Plummer , Dineli Bras , Sinisa Grozdanic , András M Komáromy , Gillian McLellan , Paul Miller , John S Sapienza , Leandro Teixeira , Terah Webb
目的:獣医眼科医による片側性の明らかな原発性緑内障の犬において、正常圧の対側の眼に対する予防的抗緑内障治療薬の使用を調べる
方法:獣医眼科医の調査票を、主として眼科患者を診察している個人、獣医眼科医、訓練生が載っている2つの国際リストに送付した。調査は過去および現在入手可能な、眼圧および神経保護のコントロールに対する薬剤オプションの解析後に展開した。
結果:獣医眼科医199人の返答を評価した。多種多様な抗高圧点眼薬やプロトコールが使用されていたが、最も一般的に使用されている薬剤は、ドルゾラミド2.0%眼科用液、チモロール0.5%眼科用液、両薬剤が含まれる混合製剤のような、眼房水産生抑制剤だった。ラタノプロスト0.005%眼科用液は、比較的に予防として使用される頻度は少なかった。ほとんどの返答者は抗炎症薬の併用はしなかった(61.22%)が、かなり大きな少数派は、予防的治療として酢酸プレドニゾロン、デキサメサゾン、ケトロラクを使用していた。全身性眼球抗高圧剤はめったに使用されなかった。40%の返答者だけ神経保護剤を使用した;多かったのは、カルシウムチャンネルブロッカーアムロジピンと機能性食品Ocu-Gloだった。臨床医による再検査の推奨されている間隔は、1か月から1年で、再評価で多かったのは3-6か月ごとだった。返答者の大多数は、毎月および3か月に1回の間隔で、より頻度の高いIOPの評価を推奨した。
結論:原発性緑内障と過去に診断された犬の反対側の正常圧の眼に対する薬剤治療のデータ解析は、緑内障の遺伝的素因を持つ犬のまだ正常圧の眼において、明白な攻撃を遅らせる最大効果を持つプロトコールを判定するため、well-designed前向き、対称、複数施設研究の強い必要性があると示唆する。ドルゾラミド、ラタノプロストのようなプロスタグランジン類似物質など、炭酸脱水素酵素阻害剤を利用した前向き研究は、その2つの薬剤が明確な緑内障の治療に広く使われているために理に適ったもので、原発性緑内障の異常生理学に対するIOPを低下させる異なる作用メカニズムンも影響の探査を可能にするだろう。(Sato訳)
■原発性閉塞隅角緑内障の17頭の犬(20眼)におけるbaervedltインプラント外科手術の結果(2013-2019)
Outcomes of baervedlt implant surgery in 17 dogs (20 eyes) with primary closed-angle glaucoma (2013-2019)
Vet Ophthalmol. 2021 Feb 20.
doi: 10.1111/vop.12874. Online ahead of print.
Yvette C Crowe , Allyson D Groth , Joanna White , Kate E Hindley , Johana E Premont , Francis M Billson
目的:原発性閉塞隅角緑内障(PCAG)の犬におけるBaerveldtインプラント外科手術の結果とフォローアップを報告する
素材と方法:Baerveldtインプラント手術を行ったPCAGの飼育犬の6年間にわたる記録概要。固定したタイムポイント(3、12、24か月)時の術後眼圧(IOP)、視覚、1日の抗緑内障点眼の回数を術前の値と比較した;合併症を記録した。治療成功は、IOP<20mmHgと威嚇反応陽性、ナビゲーション/追跡能力と定義した。
結果:20眼(17頭)を含めた。平均フォローアップは、手術から最終検査まで575日(範囲30-1767日)だった。術後3か月目、15/20眼(75%)はIOP<20mmHgで、14/20眼(70%)は視力があった。術後12か月目、11/17眼(65%)はIOP<20mmHgで、12/19眼(63%)は視力があった。術後24か月目、8/14眼(57%)はIOP<20mmHgで、7/15眼(47%)は視力があった。
術後の期間が関連する術後タイムポイントに達する、あるいは早期に失敗が証明された時の眼が含まれるため、タイムポイント間の分母が異なった。
術後3か月以内に16/20眼(80%)に1つ以上の合併症があり、一時的なIOP>20mmHg(14/20眼;70%)、フィブリン(12/20眼;60%)、低圧(4/20眼;20%)が含まれた。術後3か月後、13/16眼(81%)に1つ以上の合併症があり、白内障(13/16眼;81%)、疱状線維症(3/16眼;19%)、結膜創傷崩壊(1/16眼;6%)が含まれた。1頭(1眼)は失明のため安楽死され、5/20眼(25%)は摘出された。
結論:この方法はIOPのコントロールに有効で、この研究において多くの犬が視力を維持した。(Sato訳)
■内皮機能不全に関係する犬の角膜浮腫に対する角膜削り術("letter-box")の修正法
A modified technique of keratoleptynsis for treatment of canine corneal edema associated with endothelial dysfunction
Vet Ophthalmol. 2020 Sep 6.
doi: 10.1111/vop.12823. Online ahead of print.
Stamatina Giannikaki , Natalia Escanilla , Kit Sturgess , Robert C Lowe
目的:中心角膜機能を保存する方法として修正角膜削り術を述べることと、内皮細胞機能不全の症例で上皮角膜潰瘍の治療、視覚、角膜粃糠の減少を評価する。
方法:44頭の犬(72眼)が進行性角膜浮腫±潰瘍性角膜炎に罹患した。全ての犬は背側、腹側表層角膜切除と結膜フラップで治療し、中心角膜をクリアに維持した。角膜厚測定値は超音波生体鏡検で入手した。
結果:全ての眼は術後、眼の不快感の解消を示し、解消までの期間中央値は35日だった。術後2年で、視力を失ったのは29眼中2眼(7%)だった。当初の集団から、23頭(39眼)は角膜厚のフォローアップ評価があった。術前の平均中心角膜厚は1359±251μmだった。中心角膜の肥厚は術後1週間で観察され1559±263μmだった。角膜厚の減少は術後1か月、4か月、10か月、2年で報告された(1285±267μm、1102±150μm、1121±288μm、1193±283μm)。全ての眼は同じような角膜厚の増加傾向とその後の減少傾向を示した。
結論:この手術方法は、中心角膜厚の統計学的に有意な減少と眼疼痛の持続した軽減を提供した。角膜厚の減少は術後2年は維持されると思われ、全ての犬は快適なままだった。表層角膜色素沈着及び線維症は2眼の視力喪失を起こした。(Sato訳)
■慢性緑内障の犬に対する薬理学的毛様体アブレーション:2013年から2018年の108眼の回顧的レビュー
Pharmacologic ciliary body ablation for chronic glaucoma in dogs: A retrospective review of 108 eyes from 2013 to 2018
Vet Ophthalmol. 2020 Aug 28.
doi: 10.1111/vop.12816. Online ahead of print.
Martha E Julien , Simone A Schechtmann , Tammy M Michau , Anja Welihozkiy , Terri L Baldwin , Jessica M Stine
目的:末期の緑内障の犬に対し、ゲンタマイシンとデキサメサゾンリン酸ナトリウム(あるいはトリアムシノロン)の硝子体内注射(IVGD)の効果と長期結果を評価し、成功するための処置前の予後因子と術後合併症を判定する
方法:2013年から2018年までにゲンタマイシン±デキサメサゾンリン酸ナトリウムあるいはトリアムシノロンの硝子体内注射で治療し、最低3か月のフォローアップのある108頭の犬(108眼)に対する医療記録を再調査した。シグナルメントと緑内障のタイプ、処置前の眼内圧(IOP)、経過、処置プロトコール、結果を含む臨床所見を記録した。最終検査時、あるいは注射後3か月以上降圧剤を使用しないで眼内圧が25mmHg以下を成功とした。
結果:薬理学的アブレーションに対する全体の成功率は95%だった。眼の降圧剤を投与されていなかった犬の成功率は86%だった。76眼(70.4%)は原発性緑内障で、32眼(29.6%)は二次性緑内障だった。注射時の年齢は初期成功に影響しなかったが、繰り返し注射を必要とした犬の最終的な成功に影響した(P=-.03)。コッカスパニエルは、2回目(3/12頭)、3回目(2/4頭)と繰り返し注射をすることが多かった。処置前の変数で成功率に有意に影響したものはなかった。最も一般的な合併症は、眼球癆(59.2%)、角膜浮腫(25.9%)、潰瘍性角膜炎(22.3%)、IOPのコントロール不能からの眼球摘出(2頭、1.8%)だった。
結論:薬理学的アブレーションは、失明した緑内障の犬の眼において、25mmHg以下にIOPを下げる成功率が高い。緑内障のタイプ、処置前IOP、経過、プロトコールは成功することに影響しなかった。(Sato訳)
■リバウンドトノメーターTONOVETを用いた眼圧測定:プローブと角膜の距離の影響
Intraocular pressure measurements using the TONOVET ® rebound tonometer: Influence of the probe-cornea distance
Vet Ophthalmol. 2020 Oct 17.
doi: 10.1111/vop.12832. Online ahead of print.
Blanche D Rodrigues , Fabiano Montiani-Ferreira , Mariza Bortolini , André T Somma , András M Komáromy , Peterson Triches Dornbusch
目的:犬とラットにおいて眼内圧(IOP)データ収集中の異なるプローブと角膜の距離の影響を調べる
研究した動物:24頭の起きている犬と15匹の麻酔をかけたウィスターラット
方法:3つの交換可能な3Dプリンターで作成したポリ乳酸プラスチックスペーサーカラーを、オリジナルのTonoVETカラーピースと置き換えて使用し、機器プローブと角膜表面に異なる距離(4、6、8mm)を取れるようにした。1人の測定者が角膜表面から4-、6-、8-mmのトノメーターのプローブで連続してIOP値を測定した。犬は優しく保定し、ラットはイソフルランで麻酔をかけた。
結果:犬とラット共に、プローブと角膜の距離が4、6、8mmで得たIOPには有意差があった(P<0.01)。IOP(mmHg)とプローブと角膜の距離(mm)には、小さな正の相関があった(犬でrs=0.39、ラットでrs=0.51)。犬において、異なる距離で得た平均IOP(±SDmmHg)は、16.2±3.0(4mm);17.6±3.4(6mm);19.8±3.8(8mm))だった。ラットのIOP値は8.2±1.5(4mm)、9.4±1.8(6mm)、10.5±1.5(8mm)mmHgだった。
結論:TonoVetのプローブと角膜の距離は、メーカー推奨の4-から8-mmの範囲内であってもIOP測定に有意に影響する。(Sato訳)
■自然発生慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)の臨床的特徴とダイヤモンドバーデブリードメントによる治療
Clinical Characteristics and Treatment of Spontaneous Chronic Corneal Epithelial Defects (SCCEDs) With Diamond Burr Debridement
Vet Ophthalmol. 2020 May 7.
doi: 10.1111/vop.12772. Online ahead of print.
Joyce H Hung , Kaila Leidreiter , James S White , Michael E Bernays
目的:ダイヤモンドバーデブリードメント(DBD)で治療した片側、両側SCCEDsおよび片側SCCEDとその後対側の眼で起きたSCCEDの特徴を述べる
方法:2010年から2018年の間にDBDを受けた犬のSCCEDsの医療記録を回顧的に再調査した。シグナルメント、罹患した眼、行った処置、治癒までの時間、合併症を統計学的に解析した。
結果:249頭の犬は片側SCCEDs(85.0%)で、13頭(4.4%)は両側SCCEDs、31頭(10.6%)は片側SCCEDでその後対側眼がSCCEDとなり、そのうち26頭は片側SCCED後24か月以内に発生した。1回のDBD後の治癒率はSCCEDsの異なる症状間で違いはなかった。ボクサーはその他の犬種と比べて対側の眼が、その後にSCCEDとなる確率が2.3倍高かった。合計研究集団の341SCCEDs(293頭)のうち、252眼(73.9%)は1回のDBD実施後治癒に達した。15症例はその後フォローアップできず、58眼(17.0%)はDBD後に追加の処置が必要だった。合併症は16眼(4.7%)で発生し、13症例は角膜軟化症で、3症例は前ぶどう膜炎だった。
結論:ダイヤモンドバーデブリードメントは異なるSCCEDsの症状に対しても安全で効果的な治療である。異なるSCCEDsの症状間でも1回のDBD後の治癒率に有意差はなかった。特にボクサーにおいては、片側SCCEDの症状後、一般的に24か月以内に反対側の眼に新しいSCCEDが発生するかもしれない。(Sato訳)
■健康な犬の眼に対する眼科用ではない2%リドカインゲルの局所使用に関する角膜麻酔
Corneal anesthesia associated with topical application of 2% lidocaine nonophthalmic gel to healthy canine eyes.
Vet Ophthalmol. 2020 Apr 8. doi: 10.1111/vop.12757. [Epub ahead of print]
Robin MC, Papin A, Regnier A, Douet JY.
目的:健康な犬の眼に対し、2%リドカインゲルの局所応用により誘発される角膜麻酔の程度と持続時間を評価する
動物:目に異常がない19頭のビーグル成犬
方法:基礎の角膜触覚域値(CTT)を両側の眼でコシェ-ボンネット触覚計により測定した。2%リドカインゲル(0.1ml)を無作為に片方の眼に使用し、反対の眼には同量の潤滑ゲルを使用した。薬剤使用後、CTT測定を両側の眼で1分以内に繰り返し、基礎の角膜感受性が回復するまで5分ごとに再測定した。局所副作用の可能性を評価した。
結果:完全な角膜の脱感作(CTT=0)はリドカインゲル使用後1分で得られ、25.3±12.5分維持した。全体で角膜感受性は、基礎レベルと比べて58.4±16.6分間、有意に低下した。角膜の最小および可逆的点状上皮糜爛が2つの処置群で観察され、麻酔効果と触覚測定処置によるものだった。
結論:この研究で、眼科的に正常な犬において2%リドカインゲルは持続性の深い、許容性の良い角膜麻酔をもたらした。(Sato訳)
■カナダ西部の突発性後天性網膜変性症候群:93症例
Sudden acquired retinal degeneration syndrome in western Canada: 93 cases.
Can Vet J. November 2017;58(11):1195-1199.
Marina L Leis , Danica Lucyshyn , Bianca S Bauer , Bruce H Grahn , Lynne S Sandmeyer
この研究は、カナダ西部の突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)と診断された犬の臨床データを再検討した。
2002年から2016年の間にWestern College of Veterinary Medicineの医療記録から、突然の失明と両側の網膜電位の消失を基に診断したSARDSの症例93頭が示された。
最も一般的な純血種は、ミニチュアシュナウザー、ダックスフンド、パグだった。診断時の平均年齢は8.1歳で、オス、メスともに同率で罹患していた。ほとんどの犬は、正常な非クロマティックを呈したが、異常なクロマティック瞳孔対光反射だった。検眼鏡検査で検出した網膜変性の発生は、SARDS診断後も次第に増加した。多尿、多渇、多食、体重増加、肝酵素値上昇、等張尿、蛋白尿は一般的な臨床および検査所見だった。
クロマティック瞳孔対光反射試験は、SARDsの犬の瞳孔反応異常検出に非クロマティック瞳孔対光試験よりも有用かもしれないが、依然網膜電位図が確定診断検査である。(Sato訳)
■4頭の猫における眼ヒストプラズマ症の診断に対する抗原検査の有用性:ケースシリーズと文献レビュー
Utility of antigen testing for the diagnosis of ocular histoplasmosis in four cats: a case series and literature review.
J Feline Med Surg. October 2017;19(10):1110-1118.
Kathryn M Smith , Ann R Strom , Margi A Gilmour , Elise LaDouceur , Christopher M Reilly , Barbara A Byrne , Verena K Affolter , Jane E Sykes , David J Maggs
ケースシリーズ概要:このケースシリーズは猫の眼ヒストプラズマ症の診断に対し抗原検査の臨床的有用性を述べる。
眼ヒストプラズマ症の疑いがある猫(n=2)と確定した猫(n=2)の4頭を述べる:3頭はオクラホマ、1頭はカリフォルニアの猫だった。1用例において、Histoplasma capsulatumに対する連続した尿抗原検査および血清抗原検査は陰性だった;しかし、光学顕微鏡検査で検死時の眼組織においてH capsulatumに一致する微生物を確認した。
長期全身性抗真菌療法を受けた再発性眼ヒストプラズマ症の猫2頭において、ヒストプラズマ種尿抗原濃度は陰性だったが、2頭共に全身性抗真菌療法後に臨床的に改善し、治療中止後に明白に臨床的寛解を維持した(9-16か月)。
4頭目の猫は、深刻な両側性眼内炎を示していた:しかし、左眼からの硝子体液および網膜下液のヒストプラズマ種抗原検査は陰性だった。両眼の病理組織検査において病巣内病原体が検出され、その後、片方の眼の組織からが分離され、配列が決定された。
関連と新規情報:それらの症例は、血清、尿、眼の液体でさえも抗原検査を行う時に、猫の眼ヒストプラズマ症の確定診断の潜在的困難を強調する。播種性猫ヒストプラズマ症の診断において、抗原検査は過去にその有効性を証明されているが、眼の症状のみの猫では不十分かもしれない。(Sato訳)
■ロシアンブルーの遺伝性白内障
Hereditary cataracts in Russian Blue cats.
J Feline Med Surg. January 2018;0(0):1098612X17752197.
Karin Nygren , Sari Jalomäki , Lena Karlstam , Kristina Narfstrom
目的:この研究の目的は、スウェーデンの猫のロシアンブルー種における白内障の有病率を調査することと、白内障の推定される遺伝性の臨床所見を述べることだった。
方法:スウェーデンで2014年3月から10月の間に標準的検査法で、計66頭のロシアンブルーを検査した。検査した猫は3か月から14歳齢だった。遺伝研究のために全ての検査した猫から血統書を集めた。
結果:検査した両性別のロシアンブルー66頭中22頭に軽度から重度の主に両側性白内障が観察された。2頭の罹患猫は1歳未満だった。最もよく観察された白内障の所見は、目につく視覚障害を起こさない、後核境界及び後部皮質の前部で小三角、Y型あるいは円形混濁が観察された。より拡張した型は22頭中6頭で見られ、核と全皮質あるいは後部および/あるいは前部皮質の一部に関与した。その6頭には視覚障害や盲目が観察された。血統分析で、その欠陥に対し遺伝の単純常染色体劣性が示されたが、不完全劣性の優性様式は除外できなかった。
結論と関連:この研究は、猫のロシアンブルーは遺伝性白内障の影響を受けていることを示す。この研究で若い猫の高い有病率と、よく観察された欠陥の特徴的部位は白内障の早期発現タイプを示唆する。繁殖家はこの欠陥を知っておくべきで、個々のロシアンブルーの繁殖前に獣医眼科医による検査を受けることを考えるべきである。(Sato訳)
■147頭の犬の結膜下出血
Subconjunctival haemorrhage in 147 dogs.
J Small Anim Pract. 2019 Nov 6. doi: 10.1111/jsap.13081. [Epub ahead of print]
Saastamoinen J, Rutter CR, Jeffery U.
目的:犬の結膜下出血の鑑別診断を確認する
素材と方法:回顧的ケースシリーズ
結果:結膜下出血の犬147頭のうち、119頭は外傷の履歴があった。傷害の一般的なタイプは、事故外傷(47/119)、犬の攻撃(32/119)だった。非事故性傷害が確認、あるいは疑われるものは5頭だった。外傷の履歴がない28頭のうち、13頭は出血障害で、それらのうち免疫介在性血小板減少症が多く診断された(9/13)。その他の原因には発作疾患(4/28)、脈管炎(3/28)、眼球あるいは眼球周囲疾患(3/28)が含まれた。
臨床意義:犬の結膜下出血は、幅広い外傷、全身疾患、出血素因、眼疾患により二次的に起こる可能性がある。(Sato訳)
■高血圧性脈絡網膜症の猫の視覚の結果
Visual outcome in cats with hypertensive chorioretinopathy.
Vet Ophthalmol. March 2019;22(2):161-167.
DOI: 10.1111/vop.12575
Whitney M Young , Chaowen Zheng , Michael G Davidson , Hans D Westermeyer
目的:高血圧性脈絡網膜症の猫において、長期視覚の結果に関係する因子を調査する
研究した動物:高血圧性脈絡網膜と診断された飼育猫88頭
方法:全身性高血圧と関係する網膜病変がある猫の医療記録を再調査した。
結果:多くの猫(61%)は初診時で両眼の視力がなかった。最後の経過観察時の評価で威嚇反応の有無は、初診時の威嚇反応の有無(P=0.0025)、完全な網膜再付着までの時間(P<0.0001)、性別(P=0.0137)と正の相関を示した。初診時に視力がなかった132眼のうち76眼(57.6%)は治療後いくらか視力が回復した。最終評価時、176眼のうち101眼(60%)は威嚇反応陽性だったが、6か月以上の追跡調査を行った46眼のうち34眼(74%)は威嚇反応陽性だった。初診時に威嚇反応があった眼は、視力を失って2週間以内の眼と視力を失って2週間以上たった眼と比較すると、最終検査時にそれぞれ17倍と37倍、威嚇反応がある確率が高かった。メス猫は多く見られ(62.5%の症例)、オス猫はメス猫と比べると最終検査時に4.2倍、視力がある確率が高かった。
結論:高血圧性脈絡網膜の猫において、治療により、完全な網膜剥離後でさえ、長期の視力に対する予後はよい。(Sato訳)
■犬のSARDSの治療においてミコフェノール酸モフェチルの臨床治療効果:前向き非盲検予備研究
Clinical therapeutic efficacy of mycophenolate mofetil in the treatment of SARDS in dogs-a prospective open-label pilot study.
Vet Ophthalmol. 2018 Jan 31. doi: 10.1111/vop.12545. [Epub ahead of print]
Young WM, Oh A, Williams JG, Foster ML, Miller WW, Lunn KF, Mowat FM.
目的:犬の突発性後天性網膜変性症候群(sudden acquired retinal degeneration syndrome:SARDS)は不可逆性の失明を引き起こし、客観的に効果を評価、あるいは証明された治療はまだない。意見の一致は、SARDSは免疫介在性であるが、コルチコステロイド療法は関連する全身症状を悪化させるかもしれない。著者らは関連する全身症状を悪化させる可能性が低い強力な免疫抑制療法であるミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil:MMF)の単剤治療の効果を調べた。
動物:失明から6週間以内に前向きに募集したSARDSの飼育犬10頭
方法:臨床的病歴、全身および眼科検査所見、血液パラメーター、視覚誘導能力、網膜電図、光干渉断層撮影(OCT)を基準で収集し、経口MMF10mg/kg12時間毎の投与、約6週間後に再チェックした。
結果:20%の犬(2/10)は副作用(下痢、嘔吐、元気消失)を経験し、8mg/kg12時間毎への減量で解消した。再チェックの検査で全身症状、身体検査所見、血液検査結果に有意な変化は見られなかった。基準と比較して、視認能力は再チェック時に有意に低下し、暗順応網膜電位で見られた遅発性陰性波形の振幅は減少した。外網膜層は再チェック時のOCTで測定し、有意に薄くなっていた。
結論:単剤としてミコフェノール酸モフェチルの6週間の試験期間後、体の健康、視力あるいは網膜構造に対し、測定可能な良い効果はない。SARDSに対する他の治療オプションを評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の眼科検査に関する変数に対するブトルファノールの鎮静による影響
Effect of sedation with butorphanol on variables pertaining to the ophthalmic examination in dogs.
Vet Ophthalmol. 2018 Jan 19. doi: 10.1111/vop.12530. [Epub ahead of print]
Douet JY, Regnier A, Dongay A, Jugant S, Jourdan G, Concordet D.
目的:犬の眼科検査の異なる変数にブトルファノール筋肉注射による鎮静が干渉するかどうかを評価する
動物:眼に異常がない22頭のビーグル
方法:基礎データ確立のため、各犬をブトルファノール投与前20分と直前に検査した。眼球と瞬膜の位置を評価し、威嚇反応、眩目反射、角膜瞬目反射、フェノールレッド綿糸涙液テスト(phenol red thread tear test:PRT)、シルマー涙試験-1(Schirmer tear test-1:STT-1)、瞳孔径(pupil size:PS)値、反跳式眼圧検査を記録した。その後、ブトルファノールを0.2mg/kgで筋肉内注射し、それらの処置を注射後10、20、30、45分目に繰り返した。鎮静スコアは0-3とし、それらのタイムポイントでスコアを付けた。統計学的解析はANOVAを用いて定量データを得た。
結果:鎮静効果は眼球および瞬膜の位置のいずれの変化にも関係しなかった;威嚇反応、眩目反射、角膜瞬目反射の結果に影響しなかった;PRT値に有意な影響はなかった。しかし、ブトルファノール投与は、STT-1、PS値の統計学的有意な低下(P<0.005)およびIOPの統計学的有意な上昇(P<0.005)に関係した。全てそれらの変数は、正常値の範囲内を維持した。
結論と臨床関連:ブトルファノール0.2mg/kgの筋注は、検査可能な程度の鎮静が得られるが、調べた診断検査の中でSTT-1、PS、IOPに干渉することが分かった。しかし、それらの値は正常制限内を維持した。(Sato訳)
■フランスの犬の白内障の疫学と臨床症状:404症例の回顧的研究
Epidemiology and clinical presentation of canine cataracts in France: a retrospective study of 404 cases.
Language: English
Vet Ophthalmol. March 2017;20(2):131-139.
Elise Donzel , Léa Arti , Sabine Chahory
目的:フランスの犬の一集団で白内障の疫学と臨床症状を調べる
方法:2009年から2012年の間にAlfort獣医学校の眼科部門に来院した白内障に罹っている犬の記録を再調査した。各犬の病因を判定した。罹患犬のシグナルメント、医療履歴、発現年齢、進行ステージ、混濁の位置、関連する眼病変を各病因に対し評価した。
結果:2009年から2012年の間に眼科部門を合計2739頭の犬が受診していた。404頭の犬(14.7%)(716眼)が白内障と診断された。その集団はオス218頭(54%)、メス185頭(46%)だった。1頭の性別は記録されていなかった。白内障の全ての犬の平均年齢(±SD)は9歳(±3.9歳)だった。44犬種が見られた。ヨークシャーテリアは唯一有意に多い犬種だった。観察された白内障の原因は、素因(28%)、加齢(22.8%)、進行性網膜萎縮(12.4%)、先天性白内障(5%)、真性糖尿病(4.7%)、外傷(3.7%)、ぶどう膜炎(3%)、低カルシウム血症(0.2%)だった。20.3%の症例で、病因を判定できなかった。報告された白内障に関係する眼病変は、水晶体脱臼あるいは亜脱臼(11.1%)、緑内障(3.7%)、網膜剥離(4.2%)だった。
結論:紹介されたフランスの犬の集団で、14.7%が白内障に罹患していた。確認できた主要原因は、犬種素因、加齢、進行性網膜萎縮だった。ヨークシャーテリアの犬種素因が記録された。(Sato訳)
■犬と猫の眼瞼内反に対するヒアルロン酸真皮下充填
The use of hyaluronic acid subdermal filler for entropion in canines and felines: 40 cases.
Vet Ophthalmol. March 2018;0(0):.
DOI: 10.1111/vop.12566
Jessica E McDonald , Amy M Knollinger
目的:犬と猫の眼瞼内反に対するヒアルロン酸(hyaluronic acid:HA)真皮下充填の使用を評価する
方法:専門眼科獣医師あるいはABVO-認定レジデントによる完全な眼科検査を実施した。各症例は原発性、続発性、けいれん性、瘢痕性眼瞼内反と特徴づけた。特にRestylaneRとRestylane SilkRによるHA真皮下充填を犬と猫に使用した。正常な眼瞼形態になるまで、反転部分の眼瞼縁から1-2mmの部分の真皮下に注入した。全ての動物に鎮静や全身麻酔は必要なかった。
結果:40頭の動物(犬28頭、猫12頭)を研究に含めた。全ての動物で、HA真皮下充填に対する局所反応、あるいは注射部位の微小出血以外の合併症は見られなかった。多くの症例で注射後、最初の1週間に内反の解消と角膜潰瘍、流涙、眼瞼痙攣などの続発性合併症が見られた。3頭の犬と1頭の猫は内反が解消せず、永久的外科処置が必要だった。2症例は病理組織検査に提出した。全ての動物の追跡調査期間中央値は152.5日(平均:194.6±142.7日;範囲9-419日)だった。研究中に5頭は関連の無い原因で死亡あるいは安楽死された。
結論:ヒアルロン酸真皮下充填は、全身麻酔を必要とせず、軽度から中程度の眼瞼内反に対し、安全、容易、信頼できる方法である。この処置は、特に眼瞼内反の老齢動物や麻酔リスクの高い動物に適切かもしれない。(Sato訳)
■猫の深部潰瘍性角膜炎の内科管理:13症例
Medical management of deep ulcerative keratitis in cats: 13 cases.
J Feline Med Surg. May 2018;0(0):1098612X18770514.
DOI: 10.1177/1098612X18770514
Michelle G Martin de Bustamante , Kathryn L Good , Brian C Leonard , Steven R Hollingsworth , Sydney G Edwards , Kelly E Knickelbein , Ann E Cooper , Sara M Thomasy , David J Maggs
ケースシリーズ概要:深部潰瘍性角膜炎と診断され、グラフト処置をしないで内科的に管理に成功した13頭の猫を紹介する。代表的な治療は血清と抗生物質(通常はフルオロキノロンとセファロスポリン)の頻回点眼だった。また7頭の猫は抗生物質の全身投与を受けていた。鎮痛は、アトロピンの点眼とブプレノルフィン、ロベナコキシブあるいはコルチコステロイドの全身投与の様々な組み合わせで果たした。6頭の猫は大体において頻回薬剤投与を理由に、中央値(範囲)2.5(1-8)日入院した。追跡調査期間中央値(範囲)は41.5(9-103)日だった。再チェックの回数の中央値(範囲)は、4(2-6)回だった。角膜臍上皮化までの時間の中央値(範囲)は21(9-103)日だった。抗生物質点眼のクールの中央値(範囲)は29.5(16-103)日だった。エリザベスカラー使用期間の中央値(範囲)は28(13-73)日だった。この執筆時点で、10頭の猫には追加の再チェックが勧められなかった;それらの猫の最初から最終検査の期間中央値(範囲)は35(20-103)日だった。全ての猫は罹患した眼球を保持し、最終チェックの時には明らかに快適そうで眼も見えていた。
関連と新規情報:それらの症例は、深部潰瘍性角膜炎の選択された猫で、積極的な内科管理による成功率は高く、外貌は容認でき、明らかに快適で見えている眼となることを示す。しかし、治療は複数の点眼の頻回投与、時には全身性薬剤投与と集中的で、数週間かけて複数回来院する必要がある。全ての症例がここで述べたような治療を受け入れられないかもしれないので、外科的安定化の考慮のため専門医への紹介を勧める。(Sato訳)
■フランスの猫の白内障の疫学と臨床症状:268例の回顧的研究
Epidemiology and clinical presentation of feline cataracts in France: A retrospective study of 268 cases.
Vet Ophthalmol. March 2018;0(0):.
DOI: 10.1111/vop.12567
Alexandre Guyonnet , Elise Donzel , Aurelie Bourguet , Sabine Chahory
目的:フランスの猫のある集団において、白内障の疫学と臨床症状を述べる
方法:2010年1月から2017年6月の期間でアルフォールのNational Veterinary Schoolの眼科を受診した猫の医療記録から、白内障に罹患した猫を確認した。罹患した猫のシグナルメント、病歴、白内障の原因、発現年齢、進行ステージ、混濁の位置、併発眼病変を評価した。
結果:期間中にアルフォールのNational Veterinary Schoolの眼科を受診した猫2054頭のうち、268頭(383眼)が白内障と診断された(13%;CI(11.3-14.7))。白内障に罹患した全ての猫の年齢中央値は9.5歳(範囲:0.1-18.6歳)だった。18猫種を認めた。白内障の記録された原因は、ぶどう膜炎(35.8%)、先天性(15.7%)、加齢(10.8%)、遺伝の疑い(8.2%)、外傷(7.8%)、水晶体脱臼(3.3%)、緑内障(1.5%)、糖尿病(0.4%)だった。症例の16.4%において、原因は特定できなかった。ぶどう膜炎の関連白内障の猫において、イエネコ短毛種が有意に多かった(P<0.001)。白内障に関連する最も一般的な眼病変は水晶体亜脱臼あるいは脱臼(17.8%)、緑内障(14.9%)、網膜剥離(4.4%)だった。水晶体亜脱臼/脱臼と緑内障もぶどう膜炎の関連白内障に有意に関連した(P<0.001)。
結論:紹介されてきたフランスの猫の集団で、13%は白内障に罹患していた。確認された主な原因は前部ぶどう膜炎、先天性、加齢だった。水晶体亜脱臼/脱臼と緑内障は、ぶどう膜炎の関連白内障に関与した。(Sato訳)
■犬3例の瞬膜の嚢胞の造袋術
Marsupialization of a cyst of the nictitating membrane in three dogs.
Language: English
Vet Ophthalmol. March 2017;20(2):181-188.
Charlotte Barbe , Isabelle Raymond-Letron , Guillaume-Pierre Mias , Julien Charron , Frederic Goulle
背景:結膜ポケット法による瞬膜腺脱出の外科的整復後、起こりうる合併症として嚢胞の発生が報告されている。著者によれば、それらの嚢胞の治療はまだ発表されていない。
目的:この短いケースシリーズは、それら嚢胞の治療オプションとして造袋の手術法を述べ、嚢胞形成の一病因を提案する
症例記述:3頭の犬は、各々瞬膜の眼球側にわたる片側性の結膜下マス様病変で紹介されてきた。完全な眼科検査で、3頭とも瞬膜の眼球表面から突き出ているピンク色、半透明、柔らかい、無痛性のマスを認めた。3頭の治療は、瞬膜の眼瞼表面上の嚢胞の造袋術で、短期合併症もなく治癒し、長期結果も良好だった。病理所見は涙嚢胞に一致した。
結論:造袋術は、犬の結膜ポケット法を用いた腺脱出の外科的矯正による二次的な瞬膜嚢胞に対して安全で簡単、効果的な治療と思われる。多数の症例での追加研究が、脱出した腺の結膜ポケット整復後、嚢胞形成の病態生理を調査するため、そして造袋術が選択される方法であるかどうかを判定するために必要である。(Sato訳)
■猫の角膜腐骨:97頭の角結膜転移術の結果(109眼)
Feline corneal sequestra: outcome of corneoconjunctival transposition in 97 cats (109 eyes).
Language: English
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):710-716.
Kathleen L Graham , Joanna D White , Francis M Billson
ケースシリーズ概要。表層および深部角膜腐骨のある猫において、角膜切除と角結膜転移術の結果を再検討するため、回顧的に研究した。
病歴、シグナルメント、眼科的所見および術後結果などの情報を医療記録から収集した。フォローアップは臨床検査、紹介獣医師との連絡、医療記録あるいはオーナーへの電話連絡により入手した。
2005-2015年の間に97頭(109眼)の猫が含まれた。よく見られた品種はペルシャ、バーミーズ、ヒマラヤンが含まれた。手術時の平均年齢は6.8歳(中央値6.5歳;範囲8.0ヶ月-18歳)だった。28頭(28.9%)において、反対側の眼に角膜腐骨が診断された。再発性の角膜腐骨が8頭(9眼)で診断され、術後平均703日(範囲29-1750日)に再発が起こった。再発した猫と再発しなかった猫で、年齢、性別、品種、腐骨の深さ、反対側の併発眼疾患を比較し、再発に対するリスクファクターは認められなかった。
関連および新しい情報。過去に、表層および中基質角膜腐骨の猫17頭のシリーズで、外科手術の優秀な結果が述べられている。この文献は、角膜層の全範囲に及ぶ角膜腐骨と、良好な長期術後結果伴う猫のより大きなシリーズを述べることで、追加情報を加えるものである。(Sato訳)
■ウェルシュスプリンガースパニエルの櫛状靭帯形成異常の有病率と進行
Prevalence and progression of pectinate ligament dysplasia in the Welsh springer spaniel.
Language: English
J Small Anim Pract. August 2016;57(8):416-21.
J A C Oliver , A Ekiri , C S Mellersh
目的:ウェルシュスプリンガースパニエルの大規模集団において櫛状靭帯形成異常の有病率を判定すること;櫛状靭帯形成異常と年齢、性別、眼圧の関係、そして眼圧と年齢、性別との関係を調査すること;個々の犬の櫛状靭帯形成異常の進行を調査すること
方法:前向き研究で、227頭のウェルシュスプリンガースパニエルの両眼で、隅角鏡検査を実施し、リバウンドトノメーターにより眼圧を測定した。眼を櫛状靭帯形成異常に虹彩角膜角が0%影響を受けている場合「無影響」(グレード0)、影響が20%未満の場合「軽度影響」(グレード1)、影響が20-90%の場合{中程度影響}(グレード2)、影響が90%より多い場合「重度影響」(グレード3)と分類した。回顧的研究において、65頭に対し時間経過にともなった櫛状靭帯形成異常の進行を調査した。
結果:227頭のうち139頭(61.2%)が櫛状靭帯形成異常(グレード1-3)に影響を受け、227頭中82頭(36.2%)は中程度あるいは重度影響だった。櫛状靭帯形成異常と年齢に有意な関係があった。櫛状靭帯形成異常と眼圧、あるいは櫛状靭帯形成異常と性別に関係はなかった。65頭中35頭(53.8%)は櫛状靭帯形成異常の進行が証明された。
臨床意義:櫛状靭帯形成異常の有病率は、この状況に対する幅広いスクリーニングや選別にもかかわらず高かった。我々のデータは櫛状靭帯形成異常の隅角鏡検査での特徴は、ウェルシュスプリンガースパニエルにおいて進歩できると示す。若い年齢で無影響と考えられる犬は、その後櫛状靭帯形成異常と診断されるかもしれない。(Sato訳)
■余剰前方皮膚による偽眼瞼下垂に治療に対する眼窩上懸垂変法:25症例の回顧的研究
Modified brow suspension technique for the treatment of pseudoptosis due to redundant frontal skin in the dog: a retrospective study of 25 cases.
Language: English
Vet Ophthalmol. April 2017;0(0):.
Marti Cairo , Marta Leiva , Daniel Costa , Maria Teresa Pena
目的:余剰な前方の皮膚の皺がある犬において、上眼瞼の偽眼瞼下垂の治療として修正眼窩上懸垂法の結果を述べる
方法:1999年から2015年の記録を回顧的に再調査した。両側偽眼瞼下垂の治療に対し修正眼窩上懸垂を行った犬のみを研究に組み入れた。記録したデータは犬種、年齢、性別、眼科の主訴、眼の所見、眼窩上懸垂に用いた縫合素材、設置したすリング数、術後の処置、合併症、追跡調査期間、予後だった。
結果:異なる性別と犬種の25頭の成犬が組み入れ基準を満たし、シャーペイが多くを占めた(19/25;76%)。初診時の主訴は、粘液膿眼脂(10/25;40%)、眼瞼痙攣(10/25;40%)だった。併発角膜疾患は47眼(47/50;94%)で診断された。モノフィラメントポリアミドが最も多く使用された縫合糸だった(46/50;92%)。設置したスリングの数は様々で、2眼(4%)は1か所、28眼(56%)は2か所、17眼(34%)は3か所、3眼(6%)は4か所だった。合併症は3眼(6%)に見られた:縫合裂(1眼;2%)、皮膚膿瘍(2眼;4%)。平均追跡調査期間は17.6ヶ月(1-84ヶ月)で、この期間内に皺皮膚炎の症例、あるいは皮膚疾患が観察された症例はいなかった。最初の手術で47眼(97%)、再手術後は全頭で良好な美容と機能的結果が得られた。
結論:ここで述べた眼窩上懸垂変法は、過剰な前方の皮膚皺による二次的な偽眼瞼下垂の犬の外科的代替法で、麻酔時間や顔面の変化を少なくする可能性がある。(Sato訳)
■犬のミクロフィラリアによる角膜炎:新しく認識された疾患
Keratitis due to microfilariae in dogs: a newly recognized disease.
Language: English
Vet Ophthalmol. May 2017;0(0):.
Adriana Morales , Eduardo Perlmann , Aline Nayara Vechiato Abelha , Carlos Emilio Levy , Ana Carolina Almeida de Goes , Angelica M V Safatle
寄生虫性病原体は角膜炎に関係しているが、家庭動物で寄生虫性角膜炎の診断は一般に下されていない。
この研究の目的は、ブラジルでミクロフィラリアによる慢性角膜炎と診断された7頭の犬において、臨床および病理所見を述べることである。
全ての犬は角膜炎周囲と角膜の中央部分に様々な程度の表層角膜混濁を呈し、他の不透明な部分は結晶状沈着と角膜血管新生に見えた。病変は両側性で、軽度から中程度の結膜充血があった。眼瞼痙攣や痒みの病歴はなく、上皮糜爛を呈する犬もいなかった。角膜バイオプシーで角膜支質に遊離ミクロフィラリアを認め、様々な程度の炎症、コラーゲン線維破壊が見られた。皮膚snip法による皮膚病変にもミクロフィラリアを発見した。それらの犬に成虫は見つからず、診断前にフィラリア予防をしている犬はいなかった。月1回のイベルメクチン経口投与で眼および皮膚病変は改善した。1頭の犬は治療で完全寛解した。ミクロフィラリアの種類は確認されなかった。(Sato訳)
■犬の輪部黒色腫の外科的減容積とダイオードレーザー光凝固の併用治療:21症例の回顧的研究
The combined use of surgical debulking and diode laser photocoagulation for limbal melanoma treatment: a retrospective study of 21 dogs.
Language: English
Vet Ophthalmol. March 2017;20(2):147-154.
Valentina Andreani , Adolfo Guandalini , Nunzio D'Anna , Chiara Giudice , Roberta Corvi , Nicola Di Girolamo , John S Sapienza
目的:輪部黒色腫(limbal melanoma:LM)に対し、減容積とダイオードレーザー光凝固(diode laser photocoagulation:DPC)の有効性と安全性を評価する
方法:回顧的多施設ケースシリーズ。1994年から2014年の間にCentro Veterinario Specialistico (CVS)とロングアイランド獣医専門医にLMと診断された動物の医療記録を検索した。シグナルメント、部位、腫瘍の大きさ、再発率、早期および後期合併症を記録した。追跡調査情報は、獣医眼科専門医、主治医、および適すればオーナーから入手した。
結果:21頭の犬(メス13、オス8)の21眼をこの研究に含めた。犬の平均年齢は6歳(範囲:7か月-11歳)だった。追跡調査期間は最終DPC処置後、1-108ヶ月(中央値48か月)だった。20頭中6頭の長期追跡調査は電話の聞き取りで行い、20頭中14頭は臨床的再評価で行った。
最も一般的な相記合併症は、中程度の前ぶどう膜炎と辺縁角膜浮腫(21/21眼)だった。後期合併症は、角膜線維症および/あるいは色素沈着(20/21)だった。1症例において、角膜線維症の拡がりに関係する重度水疱性角膜症が見られた(1/21)。1頭は突発性後天性網膜変性(Sudden Acquired Retinal Degeneration:SARD)の併発により視力を失った。しかし、術後において20眼中2眼は視力を失い、そのうち1眼は摘出した。
結論:このケースシリーズにおいて、減容積に加え、ダイオードレーザー光凝固は最小侵襲で、許容性もよく、高い成功率で技術的に容易に実施できた。(Sato訳)
■犬の突発性後天性網膜変性:495頭の犬種分布
Sudden acquired retinal degeneration in dogs: breed distribution of 495 canines.
Language: English
Vet Ophthalmol. March 2017;20(2):103-106.
Amanda R Heller , Alexandra van der Woerdt , James E Gaarder , John S Sapienza , Elena Hernandez-Merino , Kenneth Abrams , Melanie L Church , Noelle La Croix
目的:この研究の目的は、突発性後天性網膜変性症(sudden acquired retinal degeneration:SARD)に罹患した犬の犬種、年齢、性別、体重分布を述べることと、SARDが小型犬種の犬でより多いのかどうかを調査する。
方法:網膜電図検査で確認しSARDと診断された犬の医療記録を調査した。入手できるとき、犬種、年齢、性別、体重を記録した。獣医の文献で述べられているSARDの犬に対し、同じデータを入手した。
結果:眼科診療所から302頭、獣医文献から193頭を含めた。この研究では60犬種が存在した。雑種犬が108頭(21.8%)で最も多く、続いてダックスフンド(68、13.7%)、チャイニーズパグ(44、8.9%)、ミニチュアシュナウザー(39、7.9%)、マルチーズ(23、4.6%)、コッカースパニエル(22、4.4%)、ビションフリーゼ(18、3.6%)、ビーグル(16、3.2%)、ブリタニー(15、3.0%)、ポメラニアン(10、2.0%)だった。他の15犬種は各1-9頭だった。年齢中央値は9歳(範囲=10か月-16歳)だった。197頭で体重が分かった。約60.9%の犬は25ポンド(11.34kg)以下で、31.5%は25から50ポンド(22.68kg)の間、7.6%は50ポンド以上だった。性別は393頭で記録があり、217頭はメス犬、176頭はオス犬だった。
結論:過去の報告のように、SARDは中年齢から老齢で最も多い。25ポンド以下のより小さい犬が大きな比率を占め、50ポンド以上の大型/超大型犬種の犬はあまり診断されない。この研究で、メスとオス犬に統計学的差はなかった。(Sato訳)
■犬のシルマー涙試験I:結膜円蓋腹側と背側設置の結果比較
Schirmer tear test I in dogs: results comparing placement in the ventral vs. dorsal conjunctival fornix.
Language: English
Vet Ophthalmol. February 2017;0(0):.
Hannah E Visser , Kyle L Tofflemire , Kim R Love-Myers , Rachel A Allbaugh , N Matthew Ellinwood , D Dustin Dees , Gil Ben-Shlomo , R David Whitley
目的:犬の背側と腹側結膜円蓋でストリップを設置して測定したシルマー涙試験I(STT I)値を比較する
方法:交差研究で、シルマー涙試験Iを16頭の臨床的に正常な犬の各眼(32眼)で実施した。各眼に対し、最初のストリップ設置部位は無作為に行った。代わりの設置部位測定値は1週間後に得た。
結果:背側と腹側結膜円蓋に対し、平均(±標準偏差、SD)STT Iは、それぞれ20.44(±4.46)mm/minと23.56(±3.98)mm/minだった。腹側結膜円蓋で得られたSTT I値は、背側で得られたものよりも有意に大きかった(P=0.004)。
結論:シルマー涙試験I値は腹側結膜円蓋に設置したストリップで有意に大きかった。(Sato訳)
■犬と猫の角膜再建に対する豚の膀胱無細胞マトリックスの使用
Use of a porcine urinary bladder acellular matrix for corneal reconstruction in dogs and cats.
Language: English
Vet Ophthalmol. November 2016;19(6):454-463.
Olivier Balland , Anne-Sophie Poinsard , Frank Famose , Frederic Goulle , Pierre-Francois Isard , Iona Mathieson , Thomas Dulaurent
目的:犬と猫の深い角膜潰瘍や猫の角膜腐骨の症例において、角膜の外科的再建に対する豚の膀胱無細胞性基質の使用を述べる
素材と方法:深い角膜潰瘍の27頭の犬と3頭の猫および角膜腐骨の猫7頭、合計38眼を研究に組み入れた。各症例に対し、壊死性の物質(すなわち角膜腐骨あるいはコラーゲン溶解性組織)を、円状層状角膜切除で除去した。その後、コラーゲングラフトを基質欠損に合うように切って準備し、続いて吸収性ポリグラクチン9-0縫合糸で断続および連続性パターンを用い、層状角膜切除床に縫合した。術後の内科管理は抗生物質の全身および点眼投与、加えて硫酸アトロピンの点眼投与だった。症例は術後18、45、90日目に検査した。
結果:術後検査で、両種の潰瘍症例の93.5%、猫の角膜腐骨症例の100%で生体物質の完全な統合が見られた。潰瘍の2症例(犬1頭、猫1頭)で、グラフト周囲のコラーゲン溶解プロセスの進行により、初回手術から7日目に追加の結膜グラフトを必要とした。術後90日目、100%の眼が見えるようになった。
結論:深い角膜潰瘍および猫の角膜腐骨の外科的管理において、豚の膀胱無細胞基質の使用は有効と思われる。(Sato訳)
■犬の角膜創傷治癒に対するヒアルロン酸点眼の効果:予備研究
Effects of topical hyaluronic acid on corneal wound healing in dogs: a pilot study.
Language: English
Vet Ophthalmol. March 2017;20(2):123-130.
Kristina M Gronkiewicz , Elizabeth A Giuliano , Ajay Sharma , Rajiv R Mohan
目的:生体内で犬の角膜潰瘍における0.2%ヒアルロン酸点眼の効果を調査する
方法:6頭のパーパスブレッド(purpose-bred)ビーグルを2群に無作為に振り分けた(3頭/群):A群は実験の製剤(Optimend(?)、0.2%ヒアルロン酸を含む、KineticVet(?))を投与;B群はコントロール製剤(Optimend(?)0.2%ヒアルロン酸を含まずカルボキシメチルセルロースを補充)を投与。臨床的スコアラーには製剤の内容と犬の振り分けを隠した。鎮静、局所麻酔下で、6mm軸の角膜上皮デブリードメントを左眼に実施した。
傷をつけた角膜に標準的潰瘍治療と、局所製剤(A群)あるいはコントロール製剤(B群)を1日3回(TID)、潰瘍が治癒するまで投与した。スリットランプ生体鏡検査を傷をつけてから6時間後、その後12時間毎に実施した;所見は修正McDonald-Shadduckスコアリングシステムによりグレードを付けた;眼の外からの写真撮影を全ての検査ポイントのフルオレセイン染色後に実施した。角膜上皮化の割合を定量化するため、画像をNIH image j softwareで解析した。研究期間中にセットしたタイムポイントで採取した涙において、ゼラチンザイモグラフィーをマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)-2と-9の蛋白発現量の解析に使用した。
結果:全ての実施したタイムポイントで群間の臨床的眼科検査スコア、角膜上皮化率、あるいはMMP2あるいはMMP9蛋白発現に統計学的差は見られなかった。
結論:標準の潰瘍治療に対し0.2%ヒアルロン酸の適応の許容性は良好だった。この研究において、その粘弾性の局所追加は、同じような粘度を持つ局所コントロールと比較して角膜の創傷治癒を促進することはなかった。(Sato訳)
■走査型電子顕微鏡でダイヤモンドバーチップ解析を行った犬の自発性慢性角膜上皮欠損におけるダイヤモンドバーデブリードマンに対し格子状角膜切開
Diamond burr debridement vs. grid keratotomy in canine SCCED with scanning electron microscopy diamond burr tip analysis.
Language: English
Vet Ophthalmol. February 2017;0(0):.
Chloe B Spertus , Josef M Brown , Elizabeth A Giuliano
目的:(1)格子状角膜切開(grid keratotomy:GK)あるいはダイヤモンドバーデブリードマン(diamond burr debridement:DBD)で治療した犬の自発性慢性角膜上皮欠損(spntaneous chronic corneal epithelial defect:SCCED)の結果を比較する;(2)ダイヤモンドバーチップに対し形態および元素成分変化の連続評価。
研究対象動物:ミズーリ大学で治療したSCCEDの犬88頭の合計91の眼(2005-2015);75の新鮮な豚の死体の眼球
方法:(1)医療記録を回顧的に再調査した。年齢、性別、犬種、実施した処置、処置を実施した眼、1回の外科処置後の治癒までの時間、2回目の外科処置の実施状況、コンタクトレンズの設置、処置後の合併症に対してデータを解析した。(2)3本の新品の3.5mmミディアムグリットバーチップを走査型電子顕微(SEM)およびエネルギー分散型エックス線分析(EDS)で分析した。Algerbrush(R)を用い、8mmの豚の角膜支質に対し、120秒間DBDを実施した。その後製造元推奨の洗浄プロトコールを行った。SEMとEDS分析は、DBD、洗浄、滅菌サイクルを10、25、50回繰り返した後、3度実施した。
結果:DBDとGK群の間の治癒に統計学的有意差はなかった(P=0.50)。10、25、50回のDBDs後のダイヤモンド粒子のダメージは検出されなかった。繰り返し使用した後のSEM二次電子像および後方散乱電子像はバーチップ上の炭素、硫黄、カルシウムからなる汚染の蓄積を示した。
結論:DBDとGKは犬のSCCEDの有効な治療オプションである。DBD後の合併症はまれだが、汚染の蓄積は寄与因子になるかもしれない。追加の洗浄および滅菌プロトコールが調査される。(Sato訳)
■正常な犬の眼圧に対するカルプロフェン経口投与の影響
Effect of oral administration of carprofen on intraocular pressure in normal dogs.
Language: English
J Vet Pharmacol Ther. August 2016;39(4):344-9.
J M Meekins , T L Overton , A J Rankin , J K Roush
この研究の目的は、正常な犬の眼圧に対し、カルプロフェンの経口投与の影響を調べることだった。
12頭の若い成犬のビーグルを無作為に処置群(n=6)とコントロール群(n=6)に振り分けた。11日の順化期間後、処置群にはカルプロフェンを約2.2mg/kgで12時間毎に7日間経口投与し、コントロール群には薬剤を含まないプラセボジェルカプセルを12時間毎に7日間経口投与した。順化期間(1-11日目)、処置期間(12-18日目)、処置終了から48時間(19-20日目)に、1日3回(8am、2pm、8pm)、リバウンドトノメーターで眼圧(intraocular pressure:IOP)を測定した。
処置期間中(12-18日)、カルプロフェンを経口投与した犬の眼に対し、IOPの統計学的有意な変化はなかった。4日目後、コントロール群に日々の有意なIOP変化は見られなかった。
カルプロフェンの12時間毎の7日間の経口投与は、正常なビーグル犬のIOPに影響しなかった。少なくとも5日の順化期間の頻繁なIOP測定は、基準のIOP値の決定と、IOP測定に対し潜在的不安が関係する影響を最小限にするために必要である。(Sato訳)
■家庭猫のぶどう膜嚢胞:36症例の回顧的評価
Uveal cysts in domestic cats: a retrospective evaluation of thirty-six cases.
Vet Ophthalmol. July 2016;19 Suppl 1(0):56-60.
Benjamin T Blacklock , Rachael A Grundon , Melissa Meehan , Roser Tetas Pont , Claudia Hartley
目的:この回顧的研究の目的は、有病率、素因、場所、推定病因、続発症を確認することで、家庭猫のぶどう膜嚢胞を調査することだった。
研究した動物:2か所の委託病院(The Animal Health Trust in the UKとAnimal Eye Care in Australia)の臨床データベースから、ぶどう膜嚢胞と診断された猫と共に偶発所見、紹介理由を確認するために検索した。36頭の症例が見つかった。
方法:猫のシグナルメントと共に、関連ある全ての過去の臨床的病歴、治療、経過、続発症を記録した。10年間で2か所の病院において眼科医により検査したその病気ではない猫集団とデータを比較した。
結果:検査した集団の合計5017頭から、罹患していたのは36頭だった(有病率0.72%)。36頭中21頭はバーミーズだった。同期間において2カ所のセンターは516頭のバーミーズを検査し、バーミーズにおける発生率は4.1%だった。来院時の罹患した猫の平均年齢は10.25歳(SD=4.12歳)で、メス猫が36頭中23頭を占めた。36頭中2頭のみが眼内疾患を併発していた。
結論:家庭猫のぶどう膜嚢胞は、珍しい眼科所見で、多くの症例において、いかなる臨床的問題も引き起こさない。そのデータにはバーミーズ種が過半数以上を占め、ぶどう膜嚢胞の比較的高い有病率を示す。(Sato訳)
■房水誤誘導症候群の猫の外科的治療結果:ケースシリーズ
Surgical outcome of cats treated for aqueous humor misdirection syndrome: a case series.
Vet Ophthalmol. July 2016;19 Suppl 1(0):136-142.
Rosalie M Atkins , Micki D Armour , Jennifer A Hyman
目的:房水誤誘導症候群を外科的に治療した猫の臨床結果を評価する
方法:2006年1月1日から2013年1月1日の間に房水誤誘導症候群を外科的に治療した猫の回顧的解析を行った。シグナルメント、内科療法、罹患した眼、手術前の眼圧とその後の眼圧、実施した術式、術後合併症、視力状況を評価した。
結果:7頭の猫(9眼)が組み込み基準に合った。7頭中6頭はメスで、7頭中5頭は両側房水誤誘導症候群と診断された。以下の3つの外科的アプローチを評価した:(1)水晶体超音波吸引と後嚢切開、(2)水晶体超音波吸引、後嚢切開、前部硝子体切除、(3)水晶体超音波吸引、後嚢切開、前部硝子体切除、眼内網様体光凝固。
診断時の平均年齢は12.9歳だった。9眼のうち7眼は、術後最初の6か月間、眼圧がコントロールされた(≦25mmHg)。術後1年で全ての猫は眼内炎症がコントロールされ、視力があったが、1眼は眼圧が上がっていた。全ての猫は術後抗緑内障点眼と抗炎症剤を継続し、1日の点眼平均数は術前3.9滴/日から術後2.2滴/日に減少した。
結論:猫の房水誤誘導症候群に対する外科管理は、眼圧を内科療法でうまくコントロールできない猫において、視力と正常眼圧状態を維持する実行可能なオプションかもしれない。(Sato訳)
■猫の好酸球性角膜炎の治療に対する酢酸メゲストロールの眼科用製剤の使用
Use of an ophthalmic formulation of megestrol acetate for the treatment of eosinophilic keratitis in cats.
Vet Ophthalmol. July 2016;19 Suppl 1(0):86-90.
Jean Stiles , Martin Coster
目的:猫の好酸球性角膜炎を治療するための、0.5%酢酸メゲストロールの混合眼科用製剤を評価する。
研究計画:前向き研究
研究した動物:片方あるいは両方の眼が好酸球性角膜炎の猫17頭
方法:好酸球性角膜炎は細胞診で確認した。各来院時、フルオレセイン染色および写真撮影を実施した。当初、猫は水溶基剤の0.5%酢酸メゲストロールで8-12時間ごとに処置した。1回目あるいは2回目の再検査時に血清グルコースを測定した。
結果:17頭中15頭(88%)は治療に好ましい反応を示し、17頭中6頭(35%)は、1回目の再検査(2-4週)時に完全な解消を示した。17頭中2頭(12%)は治療に反応しなかった。多くの猫は疾患解消を維持するため、1日1回から週1回の頻度で処置を必要とした。眼球刺激あるいは全身性副作用はどの猫にも見られなかった。
結論と臨床関連:0.5%酢酸メゲストロールの眼科用製剤の使用は、猫の好酸球性角膜炎の治療で実行可能なオプションである。(Sato訳)
■アテノロール全身投与で治療した1頭の犬における乾性角結膜炎悪化
Keratoconjunctivitis sicca exacerbation in a dog treated with systemic atenolol.
Language: English
J Small Anim Pract. July 2016;57(7):379-81.
G Barsotti , T Vezzosi
6歳未去勢のオスのイングリッシュコッカースパニエルの慢性結膜炎と片側角膜炎の治療の依頼を受けた。
その犬は、両側性免疫介在性乾性角結膜炎と診断され、シクロスポリン0.2%眼軟膏とヒアルロン酸ナトリウム点眼の治療を受け、かなり改善された。2か月後、肺動脈弁狭窄が診断され、経口アテノロール投与で治療を開始した;数日で眼科疾患は劇的に悪化した。
アテノロール中止後、眼科症状は急速に改善し、3週間後には両側とも完全に寛解した。経口β-ブロッカーによる治療は再開せず、その後、乾性角結膜炎は局所療法でうまくコントロールされた。(Sato訳)
■猫の急性水疱性角膜症発症と全身性シクロスポリン投与の関連
An association between systemic cyclosporine administration and development of acute bullous keratopathy in cats.
Vet Ophthalmol. July 2016;19 Suppl 1(0):77-85.
Kenneth E. Pierce, Jr , David A Wilkie , Anne J Gemensky-Metzler , Paul G Curran , Wendy M Townsend , Simon M Petersen-Jones , Joshua T Bartoe
目的:猫の急性水疱性角膜症(acute bullous keratopathy:ABK)の発現と全身性コルチコステロイドあるいは免疫抑制療法投与とのいかなる関係も存在するかどうかを判定する
研究した動物:2000年から2008年の間にABKと診断された猫の医療記録を回顧的に検討した。組み入れ基準を満たした症例の品種、診断時の年齢、体重、全身の疾患状況、罹患した眼、眼科検査所見、開始した全身および局所療法、治療の投与量と期間、視覚結果、病理組織的分析を記録した。
結果:70167頭の調査した集団のうち合計12頭が組み入れ基準に合致し、24の眼のうち17の眼がABKに罹患していた。17の眼のうち13の眼はABKの管理に対し内科および/あるいは外科的療法を利用し、最終追跡調査時には目が見えていた。症例の部分集団において、角膜細胞診、好気性細菌培養、FHV-1 PCR、ウイルス分離、および/あるいは病理組織検査を実施した;感染性病原体は確認できなかった。角膜のデスメ膜の破裂は、2つの眼で組織学的に確認された。12頭中10頭の猫は現在も継続中の全身性疾患を診断されていた。12頭中10頭は全身性療法を受けており、コルチコステロイドおよび/あるいはシクロスポリンAの全身投与とABK発症の間に有意な関連が見つかった(P<0.001)。10頭中8頭は1-2mg/kgのプレドニゾロンを12から24時間ごとに経口投与されていた。プレドニゾロンの経口投与を受けていた8頭中5頭は、同時に1.5-7mg/kgのシクロスポリンを12から24時間ごとに経口投与されていた。全身性シクロスポリン療法はAKB発症に対する有意なリスクファクター(P<0.001)で、全身性プレドニゾロンは有意ではなかった(P=0.10)。
結論:研究した猫の集団において、全身性シクロスポリン投与は急性水疱性角膜症発症のリスクファクターと思われる。(Sato訳)
■健康な猫の目に対する4種類の軟膏基剤の臨床的影響
Clinical effect of four different ointment bases on healthy cat eyes.
Vet Ophthalmol. July 2016;19 Suppl 1(0):4-12.
Reka Eordogh , Ilse Schwendenwein , Alexander Tichy , Igor Loncaric , Barbara Nell
目的:猫において4種類の眼軟膏基剤(ointment bases:OBs)を長期使用した時の影響を述べる
研究した動物:10頭の健康な猫
方法:この研究は2期間実施した。4種類の異なるOBsを試験した。100gのOBには以下を含有した:OB-A:35.17g 流動パラフィン(lp)、64.83g 白色ワセリン(wp);OB-B:10.03g lp、84.95g wp、5.02g ラノリン;OB-C:18.34g lp、51.40g wp、25.00mg KH2PO4、57.00mg K2 HPO4、18.90g 無水ユーセリン、11.28g 注射用水;OB-D:70g unguentum lanalcoli、20g lp、10g 水性保護剤。1つの眼に処置し、片方の眼は陰性コントロールとした。猫にOBsを1日3回28日間使用した。2つ目の研究期間までに4か月のウォッシュアウト期間を設けた。結膜圧迫細胞診に対するサンプル、細菌および真菌検査に対するスワブ、FHV-1およびクラミドフィラ・フェリスPCR検出に対する細胞採取用ブラシサンプルを入手した。両眼とも毎日検査した。眼の症状の重症度はmodified Draize eye irritation testでスコアを付けた。合計5つの眼はOB-A、5つの眼はOB-B、4つの眼はOB-C、5つの眼はOB-Dを処置した。
結果:処置した眼は有意に高い臨床スコアを示した。OB-Aを処置した眼は、全体の臨床スコアが最も高かった。細菌および真菌検査結果は、過去に発表されたデータと一致した。検査した全てのサンプルは、FHV-1およびクラミドフィラ・フェリス陰性だった。細胞学的検査において処置した眼とコントロールの眼の間に有意差はなかった。
結論:OBsの適用は、処置した眼に臨床症状を起こした。猫での軟膏の長期使用は、耐容性が良くなく、眼球刺激を誘発するかもしれない。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた眼窩周囲嚢胞の恒久的開放ドレナージの作成による治療
Treatment of a periorbital cyst in a dog by creation of a permanent drainage opening.
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. 2015;43(6):421-6 .
S Kaiser; A Driesen; S Malberg; M Kramer; C Thiel
4歳のヨークシャーテリアに見られた、二次的圧力による上顎萎縮を伴う炎症性の眼窩周囲嚢胞を、外科的に鼻腔にドレナージを開放させることで治療した。
治療後、臨床症状は解消し、手術から5週間後のCT検査でドレナージの永続的開存を確認した。8か月後、その犬に臨床的異常はなかった。
ゆえに、この報告で述べた方法は、嚢胞の大きさあるいはその位置が完全切除を妨げているような症例に適した治療オプションを提供すると思われる。(Sato訳)
■犬の網膜復位術に関係する術前所見と視力結果:217症例(275眼)
Preoperative findings and visual outcome associated with retinal reattachment surgery in dogs: 217 cases (275 eyes).
Vet Ophthalmol. November 2015;18(6):485-96.
Ronald A Spatola; Brad Nadelstein; Andrea C Leber; Andrew Berdoulay
目的:巨大網膜裂孔に対し、網膜復位術を行った犬の術前所見と視力結果の関連を報告する
方法:1施設において経毛様体扁平部硝子体切除術(PPV)でシリコンオイル(SiO)タンポナーデとエンドレーザー網膜復位を行った犬の回顧的解析。記録したパラメーターはシグナルメント、病因、網膜剥離の持続期間、観察できる網膜組織の構造、視覚反射、レンズの状態、術前房水フレア、術後の視力状態、合併症だった。
結果:217頭(275眼)を含めた。剥離の一般的な病因は原発性の網膜硝子体疾患(50.5%)、水晶体外科手術(35.3%)、過熟白内障(6.2%)だった。手術した眼の98%で術後すぐの解剖学的な成功が見られた。視力の維持、あるいは回復は、わかっている最後の追跡調査から74.2%の症例(72%の眼)で認められ、視力の回復は術後平均18.5日だった。視力が回復した眼のうち、最終再チェック時で71.7%が視力を維持し、平均追跡調査期間は550日だった。術後の視力に関係する術前所見は、眩目反射の有無、威嚇反応の有無、網膜組織の構造だった。一般的に見られた合併症は、前房へのSiOの移動(49.4%)、角膜潰瘍(25.7%)、緑内障(25.7%)、白内障形成(24.5%)だった。
結論:犬の巨大網膜裂孔はPPVを通し、SiOタンポナーデとエンドレーザー網膜固定でうまく管理できる。多くの症例は長期にわたり視力を維持していた。手術の候補を判断するのに、犬の病歴と網膜組織構造に注目した完全な眼科検査が重要である。(Sato訳)
■犬6症例の緑内障に対する炭酸脱水酵素阻害薬点眼後の角膜炎
Keratitis in six dogs after topical treatment with carbonic anhydrase inhibitors for glaucoma.
J Am Vet Med Assoc. December 15, 2015;247(12):1419-26.
Billie Beckwith-Cohen; Ellison Bentley; David J Gasper; Gillian J McLellan; Richard R Dubielzig
症例記述:炭酸脱水酵素阻害薬(CAI)の長期点眼後に起きた角膜炎の犬6頭(10眼)を評価した。4頭(6眼)においてCIA処置を中止した。3頭(4眼)は末期角膜疾患のために眼球摘出を行った。1頭の犬は各眼で治療が異なり、よって上記2群に入っている。
臨床所見-CAI(例えば、ブリンゾラミドやドルゾラミド)の治療開始から重度眼症状の発生までの期間中央値は266日(範囲、133-679日)だった。臨床的に重度な眼の症状は、潰瘍性および非潰瘍性角膜縁周囲の角膜炎、あるいは顕著な血管新生を伴うびまん性角膜炎だった。その角膜炎は抗炎症薬による治療で難治性だった。摘出した眼球の組織学および免疫組織化学検査を罹患犬3頭と、角膜炎が回復した1頭で実施した。角膜病変は、ストロマ前部にプラズマ細胞が顕著なものと、上皮にT細胞と好中球が見られる2つの異なる炎症性浸潤があった。ストロマのプラズマ細胞と重なる上皮はIgGに対し強い免疫反応陽性を示した。
治療と結果-4頭のCAIの点眼治療は中央値209日(範囲、44-433日)後に中止し、3頭において臨床的改善が中止から2-4日以内に明らかに見られた。それら4頭で12-25日に角膜炎の症状が解消し、CAI中止後の追跡調査期間中央値は25.5ヶ月(範囲、6-42か月)で、その期間に角膜疾患の症状は再発しなかった。
臨床関連-この小規模症例集をもとに、当然のことと思われているCAI点眼に関連する犬の角膜炎は、コルチコステロイド投与に反応しない、まれな免疫介在性疾患と思われた。罹患犬はCAI投与中止後のみ急速に改善した。緑内障の犬において、臨床医はCAIs点眼を今まで何事もなく長期に使用していたとしても、それに関係する副作用の可能性として点状角膜症や重度びまん性角膜炎の発症を考えておくべきである。(Sato訳)
■ボクサーのSCCEDsの治療でLGK後の治癒時間と快適性に対する角膜コンタクトレンズの影響
Effect of corneal contact lens wear on healing time and comfort post LGK for treatment of SCCEDs in boxers.
Vet Ophthalmol. September 2015;18(5):364-70.
Penelope J Wooff; Joanna C Norman
目的:自発性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)の犬は、線状格子状切開(LGK)のみを行った犬と比較したとき、LGKと角膜コンタクトレンズ(Acrivet)装着でより早く治癒し、快適スコアが改善するかどうかを判定する
研究計画:前向き研究
方法:SCCEDsと診断した27頭のボクサー(27眼)を研究した。デキサメデトミジンとブトルファノールによる鎮静下で全ての犬にLGKを行った。14の眼を無作為に角膜コンタクトレンズ装着群に振り分けた。犬は一般に7日、10日、14日あるいは潰瘍が治癒するまで評価した。オーナーには快適レベルとコンタクトレンズ保持に関し主観的に評価してもらった。群間差を評価するため一般化線形モデル、生存解析、Wilcoxon-Gehan検定を用いて統計学的解析を実施した。
結果:LGK処置ののち、全ての潰瘍は治癒した。保護コンタクトレンズの犬の治癒時間中央値(7日、95%CI7.9)は、コンタクトレンズなしの犬(10日、95%CI7.12)と比較して統計学的有意に短かった(P=0.035)。治療群の間で主観的快適スコアに差はなかった。早期のコンタクト喪失が28.6%(95%CI8.4%、58.1%)の犬で発生した。全てのAcrivet定規角膜測定値は、水平角膜径のJameson caliper測定値の1mm(95%CI87.2%、100%)以内で一致した。
結論:角膜保護コンタクトレンズの使用は、治癒時間中央値を有意に短縮したが、主観的快適スコアに効果はなかった。Acrivet ruler測定値は角膜径の測定で正確ゆえ、コンタクトレンズのサイズも正確だった。(Sato訳)
■突発性後天性網膜変性症候群(SARDS):原因、早期診断、治療に向けた概要と提案される戦略
Sudden acquired retinal degeneration syndrome (SARDS) - a review and proposed strategies toward a better understanding of pathogenesis, early diagnosis, and therapy.
Vet Ophthalmol. July 2016;19(4):319-31.
Andras M Komaromy , Kenneth L. Abrams , John R Heckenlively , Steven K Lundy , David J Maggs , Caroline M Leeth , Puliyur S MohanKumar , Simon M Petersen-Jones , David V Serreze , Alexandra van der Woerdt
突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)は獣医眼科医により診断される現在治癒しない犬の視力喪失の原因の1つである。その疾患の特徴は光受容器機能喪失による盲目の急性発現、最初に正常に見える眼底での網膜電位図消失、明るい白色光にゆっくり反応、赤色に反応しないが青色刺激に反応する散瞳した瞳孔がみられる。盲目に加え、罹患犬の多くは、肥満を起こす多食、多尿、多渇、無症候の肝障害のような副腎皮質機能亢進症を示唆する全身性の異常も示す。
SARDSの病原は不明だが、神経内分泌および自己免疫メカニズムが示唆されている。SARDS罹患犬において、それら疾患経路に向けた治療は更なる視力喪失を逆転させる、あるいは予防するため提案されているが、それらの治療は議論の最中である。
SARDSの疾患メカニズムおよび治療について現在の知識及び最近提案されているアイデアをまとめるため、2014年11月にthe American College of Veterinary Ophthalmologists' Vision for Animals Foundationが組織され、Think Tankが作られた。それらのパネルディスカッションでこの病気に対する病原、早期診断、可能性のある治療をより理解することに向けた追加研究戦略に対する推奨が得られた。(Sato訳)
■核硬化症と白内障の鑑別
Differentiating Nuclear Sclerosis From Cataracts (Procedures Pro)
Clinician's Brief. February 2016;14(2):41-46. 3 Refs
Alison Clode1
Article Abstract
犬と猫において白内障発症は視覚障害や失明の重要な原因で、通常透明な水晶体を不透明にする水晶体蛋白質の変質から起こる。そのような変化は全ての年齢の犬あるいは猫に様々な理由(例えば、先天性、外傷性、炎症後、代謝性、栄養性、年齢関連)で発生し、様々な病態生理メカニズムにより、最後は視覚路の障害、その後視野欠損となる。(Sato訳)
■診断と対症療法を受け15か月間生存した脈絡膜層乳頭腫の犬の1例
Choroid plexus papilloma in a dog surviving for 15 months after diagnosis with symptomatic therapy.
J Vet Med Sci. February 2016;78(1):167-9.
Teruo Itoh; Kazuyuki Uchida; Atsuko Nishi; Hiroki Shii; Takako Nagayoshi; Hiroshi Sakamoto
4歳メスのフレンチブルドッグが6か月にわたる右側斜頸と急に発現する運動失調で来院した。MRI検査で小脳延髄橋角に大きなマス病変を認めた。犬はプレドニゾロン、アセタゾラミド、グリセリンによる治療を開始後、立ち上がり歩くことができた。最初の検査から10か月後のMRI検査で腫瘍のわずかな拡大が見られた。
その犬は死亡するまで15か月間、長期対症療法で歩行可能だったが、斜頸は持続した。剖検において、2回目のMRI検査の時よりも肉眼での腫瘍はわずかに大きく、病理検査で脈絡膜層乳頭腫と診断された。(Sato訳)
■水晶体超音波吸引後の高血糖と正常血糖値の犬における乾性角結膜炎の有病率に対する回顧的研究
Retrospective study of the prevalence of keratoconjunctivitis sicca in diabetic and nondiabetic dogs after phacoemulsification.
Vet Ophthalmol. November 2015;18(6):472-80.
Anne J Gemensky-Metzler; Jennifer E Sheahan; Paivi J Rajala-Schultz; David A Wilkie; Jay Harrington
目的:水晶体超音波吸引術後の高血糖および正常血糖の犬における乾性角結膜炎(KCS)の有病率を評価する
方法:医療記録から術前および全ての術後検査時のシグナルメント、体重、血糖状態およびシルマー涙試験(STT)を再調査した。KCSの臨床診断は、STT<15mm/minとそれに相当する臨床症状があるとした。シルマー涙試験値とSTT<15mm/minを基にしたKSCの有病率を術後2-4、5-8、9-14、15-20、41-52週目に評価した。犬の大きさ(大型、>10kg;小型、≦10kg)とSTT範囲(<15mm/min、15-22mm/min、>22mm/min)をKCSの有病率に対する体重とSTTの影響の分析のためにカテゴリー化した。
結果:117頭(198眼)の正常血糖値の犬と118頭(228眼)の高血糖の犬を評価した。術後2週間で高血糖の犬の方が正常血糖値の犬(27.4%v.s.15.4%)よりも約2倍多くKCSと診断された(P=0.0088)。全ての犬のKCSの眼の比率は時間とともに低下し、最初に術後来院した時と有意に違わなかった。高血糖の小型犬は正常血糖値の小型犬よりもKCSとなる確率が1.7倍高かった(P=0.0052)。術前のSTTは大型犬で術後KCSの可能性に有意に関係したが(P<0.0001)、小型犬ではそうではなかった(P=0.0781)。大型犬で、STT15-22mm/minの眼は、>22mm/minの眼と比べて術後KCSの診断を受ける確率が3倍高かった。
結論:全ての犬に対しKCSの最大のリスクは、術後最初の2週間である。術後KCSの最もリスクの高い集団は小型犬、小型の高血糖の犬、術前STT≦22の大型犬である。(Sato訳)
■犬の第三眼瞼の腺脱出の整復に対するポケット法とポケット法と眼窩縁アンカー変法併用:353頭
Pocket technique or pocket technique combined with modified orbital rim anchorage for the replacement of a prolapsed gland of the third eyelid in dogs: 353 dogs.
Vet Ophthalmol. May 2016;19(3):214-9.
Domenico Multari; Anna Perazzi; Barbara Contiero; Giada De Mattia; Ilaria Iacopetti
この回顧的研究の目的は、第三眼瞼の脱出した腺の整復で、2つの外科的方法を使用した353頭の犬(眼420)で得られた結果を評価することだった:Morgan'sポケット法とMorgan'sアプローチとStanley and Kaswanの少し修正した骨膜アンカー法の組み合わせ。
ポケット法は242の眼で使用され、併用法は186の眼で使用された。全ての症例の95%で整復は成功し、5%で再発した。イングリッシュブルドッグやボクサーのような大型犬種の再発率はポケット法よりも併用法で低かった。(Sato訳)
■原発性犬の緑内障の内科治療
Medical Treatment of Primary Canine Glaucoma.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2015;45(6):1235-59.
Anthony F Alario; Travis D Strong; Stefano Pizzirani
緑内障は有痛性で、治癒しない失明することの多い眼疾患群である。緑内障の定義は急速に進行するが、眼内圧(IOP)の上昇は、犬で緑内障の多くの一貫したリスクファクターを維持する。
治療は神経保護を目的とすべきである。治療の本幹はIOPを低下させることと、視覚、快適な眼の維持に集中する。
この文献は特発性犬の緑内障の治療において、最新の眼の降圧剤、それらの基本的な薬理学に焦点を当て、IOP低下の効果、推奨される使用を論じる。(Sato訳)
■健康な犬の新生児の眼内圧と涙産生の発育
Development of tear production and intraocular pressure in healthy canine neonates.
Vet Ophthalmol. November 2014;17(6):426-31.
Chantal A P M Verboven; Sylvia C Djajadiningrat-Laanen; Erik Teske; Michael H Boeve
目的:この研究の目的は、2週から12週齢の犬の健康な新生児において眼内圧と水性涙産生の発育を調査することだった。
動物:8頭の健康なビーグル犬からなる1同腹子(4頭メス、4頭オス)を使用した。
方法:2週齢から12週齢の間で、涙産生と眼圧を両眼で週1回測定した。涙産生はシルマー涙テストを使用し、点眼麻酔と結膜嚢の乾燥前(STT1)後(STT2)で測定した。眼圧(IOP)はリバウンドトノメーターで測定した。全てのタイムポイントで左右の眼の測定値(STT1、STT2、IOP)に有意な差がないとき、右眼測定値だけをさらに解析した。
結果:STT1は9週齢まで有意に増加し、STT2は10週齢まで有意に増加し、IOPは6週齢まで、そして再び10週齢と11週齢の間に有意に増加した。IOPは11週齢と12週齢の間で有意に減少した。オスとメスの間で10週齢と12週齢のIOPを除き、STT1、STT2、IOPに有意差はなかった。体重とSTT1あるいはSTT2の間に有意な相関は見られなかった。
結論:STT1、STT2、IOPは生後数週間で有意に増加した。この研究の結果は、犬の新生児に対する涙産生と眼内圧に対する別の参照値の確立の必要性を示す。(Sato訳)
■歯科処置中にブピバカインを不注意で硝子体内に注射した1頭の犬の一時的な片側性視覚喪失
Transient unilateral vision loss in a dog following inadvertent intravitreal injection of bupivacaine during a dental procedure.
J Am Vet Med Assoc. May 1, 2015;246(9):990-3.
Terri L Alessio; Emily M Krieger
症例記述:4歳の去勢済みオスのチワワが。歯科処置中に尾側上顎神経ブロックの口腔外投与後、片側性の視覚喪失により評価した。
臨床所見:左眼は威嚇反応が欠如していたが、瞳孔対光反射は存在した。左眼の検査で硝子体出血と混濁が存在した。超音波所見は臨床所見を支持した。水晶体後嚢と網膜は異常がないと思われた。
治療と結果:治療はカルプロフェンの投与とアモキシシリンクラブラン酸の予防的投与だった。1週間後、視覚は正常な威嚇反応で、臨床的に正常だった。
臨床への関連:犬の局所麻酔薬の硝子体内注射は、歯科処置前の神経ブロックを実施するときに起こりうる合併症と考えるべきだと所見は示した。(Sato訳)
■乾性角結膜炎の犬における上強膜シクロスポリンインプラントの使用:予備研究
Use of episcleral cyclosporine implants in dogs with keratoconjunctivitis sicca: pilot study.
Vet Ophthalmol. May 2015;18(3):234-41.
Laura Barachetti; Antonella Rampazzo; Carlo M Mortellaro; Stefania Scevola; Brian C Gilger
目的:乾性角結膜炎(KCS)の犬に対し、上強膜シリコン基質シクロスポリン(ESMC)インプラントの使用、許容性、有効性を述べる
方法:回顧的研究。ESMCインプラント(1.9cm長、シリコン中30%wt/wt CsA;その中に約12mgのCsA)を、CsA点眼に反応したKCSの犬(良反応群、GC)と反応しなかったKCSの犬(不良反応群、PC)に使用した。眼の表面の炎症スコア、シルマー涙試験(STT)値、眼脂の量を評価し、比較した。
結果:27個の眼(15頭)のKCSに対しESMCインプラントを設置した;15個はGCと、12個はPCと考えられた。GCの眼とPCの眼は共にESMCインプラント設置後(それぞれ平均追跡期間18±2と10.4±15か月)、有意にSTT値が増加した(それぞれ7.7と8.5mm/分の増加;P=0.023とP=0.003)。同追跡期間中に臨床症状は有意に両群で改善を示し、結膜の充血(P<0.001)、角膜新血管新生(P=0.004)、角膜の混濁(P=0.003)、眼脂(P=0.002)の減少が見られた。ESMCインプラントの許容性は全ての犬で良好だったが、2個の眼は12か月後と1週間後にインプラントを喪失していた。
結論:この研究の結果は、ESMCインプラントがCsA点眼に反応する犬と同様に反応が乏しい犬に対しても、良好な許容性と有効性があると示唆する。CsAの最適な量と効果の持続期間を判定する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の慢性緑内障の管理におけるシドフォビルの硝子体内注射
Intravitreal cidofovir injection for the management of chronic glaucoma in dogs.
Vet Ophthalmol. May 2014;17(3):201-6.
Martha C Low; Mary L Landis; Robert L Peiffer
目的:慢性の緑内障の視覚のない犬の眼においてシドフォビル562.5μgの硝子体内注射は眼内圧(IOP)を下げる効果があるのかどうかをこの回顧的研究で調査する。
患畜:2006年から2011年の間に慢性緑内障と診断された167頭の犬のカルテを再検討した。研究に含める基準は、内科管理に無反応の不可逆的な視覚の無い眼、組織、臨床、および/あるいは超音波検査で眼内炎あるいは眼内腫瘍の所見がない、シドフォビルの硝子体内注射で治療した犬とした。
手順:ほとんどの犬に対して局所麻酔のみを使用し、水溶液穿刺後シドフォビル562.5μgの硝子体内注射とトリアムシノロン1mgの結膜下投与を行った。注射から14日後に最初の再チェックを行った。
結果:注射直前の平均IOPは46±13mmHgで中央値は47mmHgだった。最初の再チェック時の平均IOPは10±11mmHgで中央値は6mmHgだった。一般的な注射後の所見は、軽度の眼内炎症でネオポリデックス点眼液により全症例コントロールした。注射後の合併症は、角膜潰瘍(2.4%)、眼内炎(2.4%)だった。眼球癆が一般的後遺症だった(70%)。85%の症例は1回のシドフォビルの注射でIOPを下げることに成功した(P<0.0001);複数回の注射で成功率は97%に上昇した。
結論:シドフォビルの硝子体内注射は、眼内圧を20mmHg未満に下げる有効な方法ということが分かった。慢性の視覚の無い犬の緑内障の眼の管理において、一般的な副作用は良い美的結果とは言えない眼球癆だが、このアプローチの使用を正当化するだけの快適性を高める主観的利点がある。(Sato訳)
■犬の自然発生した慢性角膜上皮欠損の治療に対する保護コンタクトレンズの使用
Use of bandage contact lenses for treatment of spontaneous chronic corneal epithelial defects in dogs.
J Small Anim Pract. July 2015;56(7):446-9.
P Grinninger; A M J Verbruggen; I M G Kraijer-Huver; S C Djajadiningrat-Laanen; E Teske; M H Boeve
目的:犬の自然発生の慢性角膜上皮欠損の管理においてpolyxylon保護コンタクトレンズが治癒時間、眼の快適さに影響するかどうかを判定する
方法:自然発生した慢性角膜上皮欠損の犬20頭で研究した。全ての犬は初診で局所麻酔下においてデブリードメントにより治療した。10頭の犬は研究群(polyxylon保護コンタクトレンズ使用)に振り分け、残りの10頭はコントロール群とした。臨床所見やオーナーへのアンケートを基に、治癒時間や眼の快適さ(不快)を評価した。全ての犬は同じ点眼および全身性薬剤を使用した。
結果:研究集団の犬(平均14±0日)の治癒時間はコントロール群(平均30±17日;P=0.005)よりも有意に短かった。Polyxylon保護コンタクトレンズを使用した全ての犬は、最初のチェック時に完全に治癒していた。研究集団(平均4±4日)のデブリードメント後の眼瞼痙攣の持続期間はコントロール群(平均30±20日;P=0.001)よりも有意に短かった。
臨床意義:自然発生の慢性角膜上皮欠損の管理において、polyxylon保護コンタクトレンズの使用は有効である。(Sato訳)
■犬における2%リドカイン、0.5%ブピバカイン、1%ロピバカイン点眼後の角膜麻酔の評価
Evaluation of corneal anaesthesia after the application of topical 2 per cent lidocaine, 0.5 per cent bupivacaine and 1 per cent ropivacaine in dogs.
Vet Rec. May 2014;174(19):478.
D Costa; M T Pena; J Rios; M Leiva
この研究の目的は、眼科検査で正常な24頭の臨床的に健康なビーグルを用い、2%リドカイン(L)、0.5%ブピバカイン(B)、1%ロピバカイン(R)により誘発された局所麻酔の効果と持続時間を述べ、それぞれ比較することである。
犬を無作為に3群に振り分けた:2%リドカイン(n=8)、0.5%ブピバカイン(n=8)、1%ロピバカイン(n=8)。基本となる角膜触覚域値(CTT)をCochet-Bonnet触覚計で測定した。基本CTT測定に続き、各眼にあてがわれた麻酔を1滴点眼し、投与から1分以内に両眼のCTTを測定し、基本のCTT値に回復するまで5分ごとに測定した。データは事後解析に対してDunnet's検定とノンパラメトリック分散分析モデルで解析した。
1%ロピバカインが最も有効な薬剤(リドカインCTTmax=3cm、ブピバカインCTTmax=2cm,ロピバカインCTTmax=0cm;P<0.001) で、潜伏時間は最も短く(リドカイン5分、ブピバカイン5分、ロピバカイン1分;P<0.001)、最も小さいAUCだった(リドカイン80cmx分、ブピバカイン68.25cmx分、ロピバカイン36.88cmx分;P<0.001)。
群間の角膜麻酔の持続時間に統計学的差はなく(P=0.09)、調査した全ての局所麻酔は角膜の感受性を低下させたが、1%ロピバカインの麻酔効果が最大で最も速かった。即効、短時間、効果的な角膜麻酔が必要な特別診断的処置にこの薬剤は使用できた。(Sato訳)
■犬の涙結石症:1症例の記述とミネラル分析
Canine dacryolithiasis: a case description and mineral analysis.
Vet Ophthalmol. July 2013;16(4):289-96.
Pedro Malho; Jane Sansom; Phillipa Johnson; Jennifer Stewart
4歳メスの避妊済みのラブラドールレトリバーが、3か月にわたり左腹内側眼瞼の有痛性腫脹と流涙を呈した。涙鼻管系の両側の開通性は、両鼻孔のフルオレセイン染料の出現により確認された。超音波検査で、鼻涙管系の近接部位にエコー原性の不明瞭なマテリアルを含む、境界明瞭な液体に満たされた構造物を認めた。経結膜外科アプローチでシストの解剖学的に近位部分と下部小管の連絡がないことを確認した。シストは複数の腔内に結石(涙結石)を含んでいた。シストの外科切除に続き、流涙は解消し12か月以上の経過観察で再発は認めなかった。
病理組織検査で、シスト構造は層状扁平上皮で裏打ちされ涙小管上皮と一致した。腔内涙結石の形成を伴うシストへの小管憩室の進行が疑われた。涙結石のミネラル分析で炭酸カルシウム構成だと分かった。(Sato訳)
■水晶体不安定の犬における水晶体前方脱臼の経角膜整復法:19頭の犬の回顧的研究(2010-2013)
Trans-corneal reduction of anterior lens luxation in dogs with lens instability: a retrospective study of 19 dogs (2010-2013).
Vet Ophthalmol. July 2014;17(4):275-9.
Keith W Montgomery; Amber L Labelle; Anne J Gemensky-Metzler
目的:水晶体不安定の犬における水晶体前方脱臼の経角膜整復(TR-ALL)の成功率と結果を評価する
研究した動物:水晶体前方脱臼の犬19頭
方法:水晶体前方脱臼(ALL)の犬の医療記録を再検討した:0.005%ラタノプロスト点眼液で処置した後にTR-ALLを実施した犬を含めた。ALLの経過時間、視力の状態、眼科検査異常、TR-ALLを実施する理由、TR-ALLの詳細を記録した。TR-ALLの成功率と処置後の合併症も評価した。
結果:19頭の犬の20の眼が基準に合った。年齢中央値は6.5歳(0.3-15歳)で、19頭中9頭(47%)はテリアだった。20のうち17の眼(85%)でTR-ALLは成功した;失敗は後癒着あるいは硝子体膨張に起因していた。短期合併症は角膜潰瘍(2/20)、前ぶどう膜炎(3/20)だった;前方脱臼の再発は1頭のみに見られた。TR-ALL成功後の視覚のある眼(11)に対する追跡調査中央値は、353日(範囲1-1182日)だった。眼の54.5%(6/11)は視力を保持し、緑内障あるいはおそらく網膜剥離による視力喪失までの期間の中央値は12か月だった。
結論:犬の水晶体前方脱臼の経角膜整復は、水晶体嚢内摘出(視力のある眼)あるいは眼球摘出(視力の無い眼)の非外科的代替法である。この方法の長期的視覚に関する結果は水晶体嚢内摘出に匹敵する。(Sato訳)
■犬の色素性角膜炎に対する補助的凍結療法:16の角膜の研究
Adjunctive cryotherapy for pigmentary keratitis in dogs: a study of 16 corneas.
Vet Ophthalmol. July 2014;17(4):241-9.
Thierry Azoulay
目的:ソフト凍結療法(ジメチルエーテル、イソブタン、プロパン)が、異なる状況下で蓄積し、従来の治療では治らない角膜の色素沈着を除去できるかどうかを評価する
研究した動物:長期の病因治療に反応しない進行性の角膜色素沈着を基本に、片側あるいは両側角膜沈着(16眼)の犬9頭で研究した。その犬は乾性角結膜炎あるいは慢性表層角膜炎だった。
方法:95%ジメチルエーテル、3%イソブタン、2%プロパンの凍結剤を麻酔下の各角膜の色素沈着部分に使用した。グレード分けシェーマと臨床的写真を使用し、研究期間を通して初期角膜色素沈着と変化を調べた。
結果:色素沈着のほとんどは凍結外科後の5-15日でなくなった。術後、いくらかの角膜浮腫と角膜-結膜炎症が見られ、3頭の犬は表層角膜潰瘍になり、それらの徴候は1か月後には解消していた。90日以上の経過観察が5頭で得られ(9眼)、基礎疾患がコントロールできない場合、完全あるいは部分的再色素沈着を認めた。新しい凍結療法の方法をそれらのうち2頭に実施し成功した。
結論:メラニン細胞の寒冷への感受性があれば、凍結療法は難治性重度角膜色素沈着の補助的治療として実行可能である。色素沈着の急速再発を防ぐには原因療法を必要とすることは変わらない。90日以上経過観察した犬は数頭だけだったため、ソフト凍結療法の長期安全性と有効性を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■午前8時から午後8時までの犬の角膜中心厚と眼内圧の日内変動
Diurnal variations of central corneal thickness and intraocular pressure in dogs from 8:00 am to 8:00 pm.
Can Vet J. 2014 Apr;55(4):361-5.
Martin-Suarez E, Molleda C, Tardon R, Galan A, Gallardo J, Molleda J.
角膜中心厚(CCT)と眼内圧(IOP)の日内変動とそれらの関係を健康な犬で調べた。
ビーグル16頭で角膜中心厚は超音波厚度計、IOPは圧平トノメーターで測定した。12時間(午前8時から午後8時)、90分ごとに測定した。サンプリング期間中に得た平均CCTとIOP値は、それぞれ545.6±21.7μm(範囲:471-595μm)と15±2.2mmHg(範囲:10-19mmHg)だった。CCTとIOPはそれぞれ午後6時30分と午後5時に統計学的有意な低下を示した(P<0.001)。
角膜中心厚とIOP値は朝よりも午後/夕方の方が低く、正の相関があった。両所見は犬のIOP値の診断的解釈に重要である。(Sato訳)
■犬と猫の眼球内および眼周囲リンパ腫:21症例の回顧的レビュー(2001-2012)
Intraocular and periocular lymphoma in dogs and cats: a retrospective review of 21 cases (2001-2012).
Vet Ophthalmol. 2013 Oct 14. doi: 10.1111/vop.12106.
Ota-Kuroki J, Ragsdale JM, Bawa B, Wakamatsu N, Kuroki K.
目的:犬と猫の眼球内および眼周囲リンパ腫の免疫学的表現型と組織学的分類
方法:4つの動物医療診断検査所のデータベースで、2001年から2012年の間の犬と猫の眼球内あるいは眼周囲のリンパ腫症例を検索した。ヘマトキシリン-エオジン(H&E)染色のスライドをリンパ腫の確認と分類のために再検討し、CD3(T細胞マーカー)、CD79aおよび/あるいはCD20(B細胞マーカー)に対する免疫組織化学検査で腫瘍性リンパ球の系列を判定した。
結果:眼のリンパ腫犬6頭と猫15頭を確認した。犬の症例で、3つの眼球内と3つの眼周囲リンパ腫があり、2つの眼球内および1つの眼周囲リンパ腫はB細胞性で、眼球内および眼周囲リンパ腫の各1つずつはT細胞性、1つの眼周囲リンパ腫はCD3、CD79a、CD20に反応しなかった。猫の症例で、6つの眼球内リンパ腫と9つの眼周囲リンパ腫があり、5つの眼球内および6つの眼周囲リンパ腫はB細胞性で、1つの眼球内および3つの眼周囲リンパ腫はT細胞性だった。犬の1症例のみ全身性リンパ節腫脹を併発し、犬の結膜リンパ腫の1症例のみ皮膚リンパ腫が同時に発生し、猫の1症例のみ診断された時には両眼が侵されていた。
結論:犬と猫の眼球内および眼周囲リンパ腫はB細胞性であることが多い。一般に眼の中や周囲にできた時にリンパ腫は原発腫瘍と考えられないが、それらの腫瘍は最初、眼球内および/あるいは眼周囲部分で明らかになる頻度も高い。T細胞性リンパ腫よりもB細胞性リンパ腫の方が一般に化学療法によく反応するため、正確な早期診断アプローチはQOLに対して非常に重要である。(Sato訳)
■表層角膜異物の水圧出による治療:15症例(1999-2013)
Use of hydropulsion for the treatment of superficial corneal foreign bodies: 15 cases (1999-2013).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Feb 15;244(4):476-9. doi: 10.2460/javma.244.4.476.
Labelle AL, Psutka K, Collins SP, Hamor RE.
目的:動物の表層角膜異物の治療で、無菌等張緩衝眼科液による水圧出(例えば、洗眼)の使用を述べることと、シグナルメント、臨床所見、処置後の結果を評価する
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:11頭の犬と2頭の猫と2頭の馬
方法:眼科検査により確認した表層、非穿孔角膜異物に対して水圧出で治療した動物を見分けるのに医療記録を回顧的に再検討した。シグナルメント、評価に対する理由、眼の診断、治療に関するデータを記録した。洗眼液で満たした6mlシリンジと針先を除去した25G針で水圧出を実施した。再検査の記録がない飼育者と動物の依頼獣医師に経過を電話で聴取した。
結果:15頭中3頭の角膜異物は偶発的所見だった。最も一般的な臨床症状は、眼瞼痙攣、結膜充血、角膜血管新生だった。全て15症例で水圧出による異物除去に成功した。処置中、処置後の合併症は観察されなかった。その後検査した9頭において、フルオレセインの局所停溜による角膜検査は陰性だった(治療から平均6.3日)。最後の検査時、あるいは電話での調査時で、異物のあった部分の眼の不快感、あるいは角膜混濁の臨床症状を報告した動物はいなかった。
結論と臨床関連:それらの動物で、水圧出はすでに利用できる材料で簡単に実施でき、副作用なく表層角膜異物の除去ができる。(Sato訳)
■ニュージーランドのオークランドにおける老齢猫の高血圧に関係する眼病変の有病率
The prevalence of ocular lesions associated with hypertension in a population of geriatric cats in Auckland, New Zealand.
N Z Vet J. January 2014;62(1):21-9.
J M Carter; A C Irving; J P Bridges; B R Jones
目的:ニュージーランドのオークランドにおける老齢猫の高血圧に関係する眼病変の有病率を算出することと、8歳以上の猫の眼底検査の重要性を評価すること。
方法:8歳以上の猫105頭を検査し、臨床症状を記録した。血中尿素窒素(BUN)、グルコース、クレアチニンの血清濃度測定のため採血し、尿比重(USG)測定のため採尿し、高解像度オシロメトリーで血圧(BP)を測定した。収縮期血圧160mmHg以上、拡張期血圧100mmHg以上の全身性高血圧の猫を確認した。各猫の網膜症、脈絡膜症、眼神経障害を含む高血圧に関係する眼病変を診断するため、網膜カメラを用いて眼底検査を行った。
結果:73頭の血圧の記録に成功した。そのうち37頭(51%)は高血圧性の眼病変はなく、基礎疾患も診断されなかった。24頭(33%)は高血圧性の眼病変はなかったが、慢性腎疾患、甲状腺機能亢進症、糖尿病のような基礎疾患が診断され、12頭(16%)は高血圧性の眼病変の所見があった。
高血圧性の眼病変のある猫のうち10頭は、初診時に高血圧で、2度目は正常血圧だった。高血圧性の眼病変のある猫に1頭追加されたが、この猫で一貫したBP測定は不可能だった。高血圧性の眼病変のある猫で、併発疾患として慢性腎疾患が多く診断された(n=6)。高血圧性の眼病変のある猫の平均収縮期血圧(168.0(SE6.29)mmHg)は、眼病変のない猫(144.7(SE3.11)mmHg)、あるいは基礎疾患があるが病変のない猫(146.0(SE4.97)mmHg)よりも高かった(p=0.001)。
結論:8歳以上の猫の眼底検査は、視覚に問題があると飼育者や獣医師が気付く前に高血圧性の眼病変のある猫の見極めが可能である。このことは、早期治療や病変の解消ができる全身性高血圧の診断ができるかもしれない。
臨床関連:この研究は、高血圧から起こる眼病変がオークランドの猫である程度発生することを証明し、8歳以上の猫は通常の身体検査に眼底検査を加えることを支持するものである。(Sato訳)
■犬の自然発生した乾性角結膜炎に対する水性カルシニューリン阻害薬点眼による治療
A topical aqueous calcineurin inhibitor for the treatment of naturally occurring keratoconjunctivitis sicca in dogs.
Vet Ophthalmol. May 2013;16(3):192-7.
Brian C Gilger; David A Wilkie; Jacklyn H Salmon; Michael R Peel
目的:本研究の目的は、自然発生した犬の免疫介在性乾性角結膜炎(KCS)の治療において、水性カルシニューリン阻害薬、SCY-641の効果を評価する。
方法:56日間にわたる無作為二重盲検プラセボ-コントロール臨床試験を、自然に発生した免疫介在性KCSの犬において、研究者による水性カルシニューリン阻害薬液(SCY-641)、または人口涙液(プラセボ)を1日2回点眼する群に振り分けて実施した。治療前と治療開始から7、14、28、56日間に臨床検査とシルマー涙試験(STT)を実施した。
結果:片眼あるいは両眼にプラセボを投与する10頭と、CSY-641を投与する10頭で研究した。どの処置にも副作用は見られなかった。0日目(治療前)、あるいは治療7日目では群間の平均STT値に有意差はなかった。治療14、28、56日目では、SCY-641で治療した犬の平均STTおよび基準以上のSTTの増加がプラセボの犬よりも有意に高かった(P<0.04)。
結論:SCY-641は自然に発生したKCSの犬で良好な耐用性を示し、治療開始から14日目でSCY-641を処置した犬はプラセボ犬よりもSTTが有意に高かった。安定したクリアーな水性液のSCY-641点眼がKCSの自然発生モデルにおいて有効で、免疫介在性KCSの治療としてさらに評価するに値するとこの予備結果は示している。(Sato訳)
※タクロリムス シクロスポリン
■即座に連続で行う犬の両側白内障手術:128症例の回顧的分析(256眼)
[Immediately sequential bilateral cataract surgery in dogs: A retrospective analysis of 128 cases (256 eyes)].
Chirurgie de la cataracte bilaterale immediatement sequentielle chez le chien : une etude retrospective de 128 cas (256 yeux).
Language: French
J Fr Ophtalmol. October 2013;36(8):645-51.
T Azoulay; T Dulaurent; P-F Isard; N Poulain; F Goulle
目的:即座に連続して行う両側白内障手術(ISBCS)後の術後合併症と視覚結果を述べることと、最初の眼に続きすぐに次の眼を手術することで追加リスクが発生するかどうかを評価する
供試動物:2007年5月から2011年12月までに3つの動物眼科センターでISBCSを行った犬128頭(256眼)の回顧的再調査を実施した。
方法:最終評価の視覚状態を記録し、術中および術後の合併症を記録して分析した。最初の手術した眼(FE)およびその次の2つ目の眼(SE)に対するデータを統計学的に分析し、FE後すぐにSEの手術を行うことが、2つ目の眼のいずれかの負の結果をもたらすかどうかを評価した。
結果:手術時間延長による深刻な術中の麻酔の出来事は起きなかった。水晶体超音波吸引時間は、最初の眼よりも2つ目の眼で有意に短かった。最終検査で、256眼のうち239眼(93.36%)は機能的視覚(スコア2)を示し、3頭の犬は長期の両側の術後合併症により完全に視力を失った。最も一般的な術後合併症は、ぶどう膜炎(58眼、22.66%)、術後眼圧上昇(POH;9眼、3.5%)、緑内障(9眼、3.5%)、網膜全剥離(7眼、2.73%)だった。眼内炎の症例は報告されなかった。それらの結果は片側水晶体超音波吸引術で一般的に報告されたものより悪いということはなかった。また、視覚喪失や他の術後合併症のリスクは2つ目の眼で有意に増えるということはなかった。
結論:この研究の結果は、伝統的片側白内障手術と比べ、ISBCSが術中、術後合併症の発生率を増加させるということはなく、選ばれた犬に対する実行可能なオプションだと示唆される。視覚喪失あるいは術後合併症のリスクは、最初の眼よりも2つ目の眼で高いということはなかった。(Sato訳)
■眼科的に正常な犬における0.4%オキシブプロカイン塩酸塩点眼液投与後の角膜麻酔の程度と持続時間
Degree and duration of corneal anesthesia after topical application of 0.4% oxybuprocaine hydrochloride ophthalmic solution in ophthalmically normal dogs.
Am J Vet Res. 2013 Oct;74(10):1321-6. doi: 10.2460/ajvr.74.10.1321.
Douet JY, Michel J, Regnier A.
目的:犬に対する0.4%オキシブプロカイン眼科用液点眼の麻酔効果と局所耐性を評価することと、1%テトラカイン液と効果を比較する
動物:34頭の眼科的に正常なビーグル
方法:犬を2群に振り分け、Cochet-Bonnet知覚計で両側の基準角膜触覚閾(CTT)を測定した。1群の犬(n=22)には、1つの眼に0.4%オキシブプロカイン眼科用液を1滴点眼し、反対側には生理食塩液(0.9%NaCl)(コントロール)を点眼した。2群の犬(n=12)の犬には1つの眼に0.4%オキシブプロカイン眼科用液を1滴点眼し、反対側には1%テトラカイン眼科用液を点眼した。各眼のCTTを点眼後1分、5分と測定し、その後5分間隔で75分まで測定した。
結果:オキシブプロカインを処置した眼とコントロールの眼のCTTに次第に有意な違いが見られた。オキシブプロカイン点眼後、最大角膜麻酔(CTT=0)は1分以内に訪れ、基準値と比較して1分から45分でCTTは有意に低下した。オキシブプロカインとテトラカインを処置した眼に間で、角膜麻酔の発現、深さ、持続時間に有意差は見られなかった。テトラカインを点眼した眼で結膜充血、結膜水腫が見られる頻度が多かった。
結論と臨床関連:オキシブプロカインとテトラカインの点眼は同じように犬の角膜感受性を低下させたが、テトラカインよりもオキシブプロカインの方が結膜への刺激が少なかった。(Sato訳)
■アメリカ中西部3州のゴールデンレトリバーにおける虹彩のう胞と色素性ぶどう膜炎の有病率
Prevalence of uveal cysts and pigmentary uveitis in Golden Retrievers in three Midwestern states.
J Am Vet Med Assoc. November 1, 2013;243(9):1298-301.
Wendy M Townsend; Kara R Gornik
目的:中西部3州のゴールデンレトリバーにおける虹彩のう胞と色素性ぶどう膜炎(PU)の有病率を調べる
デザイン:前向き横断研究
動物:イリノイ州、インディアナ州、ミシガン州のアメリカケンネルクラブに登録されたゴールデンレトリバー164頭
方法:全ての犬に対し、瞳孔散大後の両眼で生体顕微鏡および双眼間接検眼鏡検査を実施した。PUの診断では、片眼あるいは両眼の水晶体前嚢面上の放射パターンあるいは帯状の色素沈着所見を必要とした。
結果:328の眼のうち80(24.4%)と164頭のうち57頭(34.8%)に、目に見える虹彩のう胞があった。のう胞のある80の眼のうち、41(51.3%)は1つののう胞で虹彩の鼻側後方に位置し、33(41.3%)は複数の虹彩のう胞があり、6(7.5%)は1つの自由に浮遊するのう胞だった。PUは9頭(5.5%)で診断された。
結論と臨床関連:研究したゴールデンレトリバーにおいて、虹彩のう胞(34.3%)とPU(5.5%)の有病率は、Canine Eye Registry Foundation's 2009 All-Breeds Reportで過去に発表されたもの(虹彩のう胞5.4%、PU1.5%)より両方とも高かった。研究所見からPUはまれな状況ではなく、眼疾患のあるゴールデンレトリバーの鑑別診断に挙げるべきだと示している。(Sato訳)
■犬と猫の敗血症性移植症候群:水晶体膿瘍を伴う眼内炎の特徴的パターン
Septic implantation syndrome in dogs and cats: a distinct pattern of endophthalmitis with lenticular abscess.
Vet Ophthalmol. May 2013;16(3):180-5.
Cynthia M Bell; Simon A Pot; Richard R Dubielzig
目的:化膿性眼内炎と水晶体被膜破裂と診断された進行性の臨床的眼疾患を持つ犬と猫の群で、臨床的および病理学的所見をまとめる
研究した動物:難治性ぶどう膜炎および/あるいは緑内障に対し、片側性核摘出あるいは眼球内容除去を行った20頭の猫と46頭の犬
方法:眼の外傷の病歴、眼疾患の持続期間、炎症のパターン、水晶体内微生物の有無など臨床的、組織学的特徴に関してバイオプシー提出依頼と顕微鏡的症例素材料を評価した。
結果:猫と犬の持続期間中央値は6週と5週間だった。外傷の病歴は4頭(20%)の猫と18頭(39%)の犬で報告された。外傷の症例で確認された全て(猫3頭と犬14頭)の原因は猫のひっかき傷だった。顕微鏡的に、全ての症例には、水晶体を中心とする化膿性眼内炎、水晶体被膜破裂、白内障、水晶体膿瘍があった。14頭(70%)の猫と30頭(65%)の犬の水晶体内で、グラム染色により感染性微生物が確認された。グラム陽性球菌が最も多く見られた。オス猫の方がメスより多く見られた。犬で性別、年齢、犬種に偏りはなかった。
結論:ゆっくり進行あるいは遅延性に発現する水晶体被膜破裂を伴う眼内炎、水晶体膿瘍、水晶体内微生物の頻度が高いという独特なパターンは、眼球および水晶体被膜の穿通に関係する。敗血症性移植症候群(SIS)という言葉は、水晶体融解ぶどう膜炎との混乱を避け、病原として水晶体内微生物の役割との関連を明確にするため、”phacoclastic uveitis(水晶体被膜の破裂によるぶどう膜炎)”の代わりに好まれて使用される。(Sato訳)
■犬の突発性後天性網膜変性症候群の長期結果
Long-term outcome of sudden acquired retinal degeneration syndrome in dogs.
J Am Vet Med Assoc. November 15, 2013;243(10):1425-31.
Jane A Stuckey; Jacqueline W Pearce; Elizabeth A Giuliano; Leah A Cohn; Ellison Bentley; Amy J Rankin; Margi A Gilmour; Christine C Lim; Rachel A Allbaugh; Cecil P Moore; Richard W Madsen
目的:犬の突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)の長期結果と飼い主が気付いたQOLを調べる
デザイン:調査研究
動物:2005年から2010年の間に5つの学術的獣医施設において検査したSARDSの犬100頭
方法:急性の視覚喪失の証明、眼科検査の正常な結果、喪失した白色閃光網膜電図の評価を基に診断した。罹患犬の飼い主には、視覚、全身症状、気が付いたQOLなどを含む結果測定値に関するアンケートに答えてもらった。
結果:診断時の年齢は、陽性の結果測定値と有意に相関した;若い年齢で診断されたSARDSの犬は、部分的視覚と飼い主の気が付いたQOLがより高いと主張していることが多かった。多食症は唯一時間とともに重症度が増した時に見つかる全身症状だった。22%の犬が薬剤治療を試された;どの犬にも視覚の改善は見られなかった。回答の37%は診断後、彼らの犬との改善した関連を報告し、95%はSARDSの犬の安楽死に反対するだろうと示した。
結論と臨床関連:盲目と併発したSARDSに関係する全身症状ははっきりしないままだが、多食症のみが重症度とともに増加した。ほとんどの飼い主は、彼らの犬が良好なQOLと信じ、SARDSの犬の安楽死に反対するだろう。(Sato訳)
■パグの角膜色素沈着(色素性角膜症)の特徴、有病率、リスクファクター
Characteristics of, prevalence of, and risk factors for corneal pigmentation (pigmentary keratopathy) in Pugs.
J Am Vet Med Assoc. September 1, 2013;243(5):667-74.
Amber L Labelle; Christine B Dresser; Ralph E Hamor; Matthew C Allender; Julia L Disney
目的:パグの角膜色素沈着(CP)の特性、有病率、リスクファクターを調べる
デザイン:前向き横断研究
動物:16週以上のパグ295頭
方法:各眼の前部の涙液層特性の判定(シルマー涙試験と涙液層破壊時間)、角膜感受性を含む眼検査を実施した。頭部と各眼のデジタル写真を撮影した。眼の角膜色素沈着に無、非常に軽度、軽度、中程度、重度とグレードをつけた。シグナルメント、治療歴情報、アメリカケンネルクラブ登録状況を記録した。
結果:角膜色素沈着(CP)はパグ295頭のうち243頭(82.4%)の少なくとも1つの眼に見られた;CPは一般に非常に軽度あるいは軽度だった。毛色、年齢、眼瞼形態、涙液層特性はCPが見られることと有意に関係しなかったが、性別には有意な関係があった。CPの重症度は、アメリカケンネルクラブ登録状況や年齢に有意な関係はなかったが、性別、涙液層特性、毛色に有意な関係があった。虹彩発育不全は72.1%のパグで検出された。虹彩-虹彩瞳孔膜遺残は85.3%のパグに見られた。
結論と臨床関連:この研究でパグの角膜色素沈着の有病率は高かった。虹彩発育不全や瞳孔膜遺残の意外に高い有病率も認められた。それらのパグで認められた状況は、色素性角膜炎や角膜黒色症というより色素性角膜症だった。この状況は遺伝性が基礎にあるかもしれず、病因追求の研究が求められる。(Sato訳)
■犬の毛様体焼灼と硝子体内ゲンタマイシン投与後の眼腫瘍
Canine ocular tumors following ciliary body ablation with intravitreal gentamicin.
Vet Ophthalmol. March 2013;16(2):159-62.
Felicia D Duke; Travis D Strong; Ellison Bentley; Richard R Dubielzig
虹彩毛様体腫瘍は、犬の2番目に多い原発性眼腫瘍で、通常良性である。2009年でのComparative Ocular Pathology Laboratory of Wisconsin (COPLOW)データベースの再調査で、悪性虹彩毛様体上皮腫瘍と緑内障の治療として硝子体内ゲンタマイシン注射による毛様体焼灼の間に潜在的な相互関係が示唆された。
この症例シリーズの目的は、COPLOWの収集物においてそのような相関のエビデンスがあるのかどうか判定することだった。
COPLOWデータベースの検索で、毛様体焼灼の過去がある犬の眼球の有意な数(39.5%)で、その後の眼球摘出時に原発性眼腫瘍、多くは虹彩毛様体上皮腫瘍とメラニン細胞腫瘍と診断されたことが分かった。
腫瘍は存在し、毛様体焼灼の時には認識されなかった可能性はある。それらの腫瘍は予想される悪性腫瘍の発生率よりも高かった。
それらの症例は、疾患が無い眼に対しゲンタマイシンによる毛様体焼灼を行う重要性を強調する。(Sato訳)
■正常および緑内障の猫におけるTonoVetリバウンド眼圧計の確証
Validation of the TonoVetR rebound tonometer in normal and glaucomatous cats.
Vet Ophthalmol. March 2013;16(2):111-8.
Gillian J McLellan; Jeremy P Kemmerling; Julie A Kiland
目的:猫でTonoVet眼圧計により得られた眼内圧(IOP)値を確認すること
研究した動物:1頭の正常な猫と2頭の緑内障の猫で、TonoVetで得られたIOP値を圧力計およびTono-Pen XLで得られたものと比較した。またさらに6頭の正常な猫と9頭の緑内障の猫でTonoVetとTono-pen XLの値を比較した。
方法:3頭の麻酔下の猫の両眼の前眼房にカニューレ処置を施し、圧力計を用いIOPを最初5から70mmHgに5mmHg間隔で漸増し、70から10mmHgに10mmHg間隔で漸減した。各ポイントで2人の観察者により各両眼を3回ずつTonoVetとTono-pen XLで測定した。鎮静をかけていない6頭の正常な猫および9頭の緑内障の猫で両眼圧計により毎週IOPを8週間測定した。線状回帰でデータを解析した。眼圧計と観察者の比較をペアスチューデントt検定で行った。
結果:TonoVetはTono-pen XLよりも有意に正確で、より強く圧力計によるIOPと相関した。臨床的環境で、TonoVetと比較した時、Tono-pen XLはIOPを過小評価した。
結論:猫においてTonoVetとTono-pen XLは再現性のあるIOP値を提供する。しかし、TonoVetはTono-pen XLよりも本当のIOPにより近い値を提供する。臨床的環境の猫において、眼の高圧および/あるいは緑内障の検出に対し、Tono-pen XLよりもTonoVetの精度の方が優れている。(Sato訳)
■124頭の猫の下眼瞼内反の外科的管理と結果
Surgical management and outcome of lower eyelid entropion in 124 cats.
Vet Ophthalmol. July 2012;15(4):231-5.
James S White; Rachael A Grundon; Chloe Hardman; Anu O'Reilly; Robin G Stanley
目的:猫の下眼瞼内反の治療で種々の外科的方法の成功率を評価する
構成:後ろ向き研究
研究した動物:13年の間に200眼の下眼瞼内反の外科的矯正を行った124頭の猫
方法:124頭の記録からシグナルメント、内反の種類、実施した術式、術後結果を検討した。
結果:セルサス・ホッツ法(HC)、外側眼角閉鎖と全層楔切除法の組み合わせを、両側下眼瞼内反の64症例と片側60症例に使用した。23頭は1歳以下、52頭は2-8歳、49頭は8歳以上だった。下眼瞼内反を矯正するための1回の外科的処置(複数の方法を含む)の総成功率は96%/眼だった。残りの4%は2回目の手術で内反が解消していた。HCと外側眼角閉鎖の組み合わせは99.21%の成功率だった。老齢猫は角膜腐骨が発生しやすい年齢群で;この群の37%は内反と角膜腐骨を同時に呈した。片側性内反を呈し、対側の眼の予防外科処置を行わなかった猫の17%は、その後対側の眼に内反を発症した。
結論:この研究ではHCと外側眼角閉鎖の組み合わせが、猫の下眼瞼内反の最も効果的な術式だった。反対側の眼の予防的外側眼角閉鎖が勧められる。(Sato訳)
■犬の神経性乾性角結膜炎:11症例(2006-2010)
Canine neurogenic Keratoconjunctivitis sicca: 11 cases (2006-2010).
Vet Ophthalmol. July 2012;15(4):288-90.
Franziska L Matheis; Ladina Walser-Reinhardt; Bernhard M Spiess
目的:他に神経学的欠損のない神経性乾性角結膜炎(KCS)と同側の乾燥鼻が見られる犬の臨床データを述べる
方法:2006年から2010年の間に神経性KCSと同側乾燥鼻と診断された11頭の犬で後ろ向き症例研究を行った。犬種、年齢、性別、病歴、神経性KCSの疑われる原因、臨床症状、治療様式について医療記録を検討した。その後の情報は紹介元の獣医師、あるいはオーナーに対する電話での聞き取り、あるいは犬の再検査で入手した。
結果:犬の平均年齢は6.6±4.5歳だった。神経性KCSは10犬種、3頭メス、5頭避妊済みメス、1頭オス、2頭去勢済みオスだった。同側乾燥鼻と組み合わさったKCS(平均シルマー涙試験(STT)値1.9±2.9mm/分)の眼症状は7頭が左眼、4頭が右眼で診断された。神経性KCSの原因として疑われたものは、9頭が特発性、2頭が外傷だった。全身療法はピロカルピン1-2%点眼液の経口投与で、症例によりシクロスポリン0.2%と涙代用液の点眼治療を行った。治癒までのピロカルピン全身投与の期間は5頭の犬で125日(範囲84-204日、中央値98日)だった。1頭の犬は追跡調査から外れ、残りの5頭はいまだピロカルピンの全身投与を行っている。
結論:同側性の乾燥鼻を伴う神経性KCSは、犬種傾向のない中年齢のメス犬の大部分は特発性疾患と思われ、自己制御する症例もいる。(Sato訳)
■犬の瞬膜腺突出の角膜縁周ポケット法による外科的整復
Perilimbal pocket technique for surgical repositioning of prolapsed nictitans gland in dogs.
Vet Rec. September 2012;171(10):247.
J E Premont; S Monclin; F Farnir; M Grauwels
この前向き研究の目的は、30頭(44眼)の瞬膜腺脱出の整復に新しい角膜縁周ポケット法を使用した時の成功率、実用性、合併症を調査することだった。
最初は眼球結膜に2-3mm、下方-尾側角膜炎に並行に切開し、2つ目の切開は瞬膜の眼球面に2-3mm、自由縁に並行に行った。4-6か所の断続性水平マットレス縫合により瞬膜の結膜下組織と上強膜組織を縫合することにより、腺をその正常なポジションに戻した。
イングリッシュブルドック、ナポリタンマスチフ、グレートデーン、アメリカンコッカースパニエルが一般にその病気を呈した。瞬膜腺脱出は83.3%の犬で1歳までに発症し、15頭は片側性だった。その方法は実施が容易で、90.9%の成功率、合併症は少なかった。
眼科検査あるいは電話による聞き取りで、経過観察中央期間は21.5ヶ月だった。最低6か月の経過観察の間、17眼で涙産生および眼の健常性に影響は出なかった。術前と術後のシルマー涙試験-1測定値に統計学的に有意な増加が見られた。(Sato訳)
■水晶体超音波吸引術を行う犬の1週間あるいは1日前からの1%酢酸プレドニゾロン点眼投与の効果
Effects of one-week versus one-day preoperative treatment with topical 1% prednisolone acetate in dogs undergoing phacoemulsification.
J Am Vet Med Assoc. March 2012;240(5):563-9.
Nancy J McLean; Daniel A Ward; Diane V H Hendrix; Rachel K Vaughn
目的:水晶体超音波吸引後の眼内炎症に対する2つの術前抗炎症法の効果を比較する
構成:無作為化比較試験
動物:未熟白内障の犬21頭
方法:全ての犬は水晶体超音波吸引による白内障手術を行い、ほとんどの犬は人工眼内レンズ装着した。犬は無作為に2群に振り分けた。グループAは手術の7日前から、グループBは手術の前夜から酢酸プレドニゾロン点眼を開始した。術後のケアは両群同一とした。前房へのフルオレセイン流入で前房蛍光光度分析の使用により定量化した血液房水関門破損は術後2および9日で測定し、術前に得た基準と比較した。術前および術後1日、9日、3週間、7週間、3か月、6か月目に眼窩検査を行った。主観的炎症スコアを各検査で確定した。眼内圧を術後4時間目と8時間目および各追加検査時に測定した。
結果:術後2あるいは9日目の血液房水関門破損の程度に関してグループ間に違いはなかった。主観的炎症スコアもほとんどのタイムポイントで同様だった。グループAの犬(60%)はグループBの犬(18%)と比べて術後眼圧上昇を起こす頻度が高かった。
結論と臨床的関連:水晶体超音波吸引による白内障手術を行う犬において、術前1週間の酢酸プレドニゾロン点眼投与は、術前前夜の点眼投与開始と比べて術後の炎症を減少させることはなく、術後眼圧上昇の発生率増加に関係した。(Sato訳)
■正常犬においてリバウンド眼圧計と圧平眼圧計による眼内圧に対する角膜中心の厚さの影響
Effect of central corneal thickness on intraocular pressure with the rebound tonometer and the applanation tonometer in normal dogs.
Vet Ophthalmol. 2011 May;14(3):169-73. doi: 10.1111/j.1463-5224.2010.00859.x.
Park YW, Jeong MB, Kim TH, Ahn JS, Ahn JT, Park SA, Kim SE, Seo K.
目的:ビーグル犬においてリバウンド(トノベット)と圧平(トノペン)眼圧計で測定した眼内圧(IOP)に対し、角膜中心の厚さ(CCT)の影響を評価する
動物:臨床的に正常な犬60頭の両眼を使用した
方法:半数の犬はトノベットでIOPを測定し、その後トノペンで測定した。残り半数は逆の順番で測定した。2つ目の眼圧計の使用から10分後に全てのCCTを測定した。
結果:トノベット(16.9±3.7mmHg)で測定した平均IOP値は、有意にトノペンXL(11.6±2.7mmHg;P<0.001)よりも高かった。両眼圧計で得られたIOP値は回帰分析で相関した(γ2=0.4393、P<0.001)。ブランドアルトマン解析によると2つの機械の一致度の下限と上限は-0.1と+10.8mmHgだった。
平均CCTは549.7±51.0μmだった。回帰分析で2つの眼圧計で測定したIOP値と、CCT値に相関があった(トノベット:P=0.002、トノペンXL:P=0.035)。回帰方程式でCCTが100μm増加する毎に、トノペンとトノベットで測定したIOPがそれぞれ1、2mmHg上昇したことを示した。
結論:トノベットおよびトノペンXLで測定したIOPは、CCTの変化に影響を受けるだろう。ゆえに犬で眼圧計により測定したIOPを解釈するときはCCTを考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の耳下腺管転移:1999年から2009年の92個の眼に関する回顧的検討
Parotid duct transposition in dogs: a retrospective review of 92 eyes from 1999 to 2009.
Vet Ophthalmol. July 2012;15(4):213-22.
Mike Rhodes; Christine Heinrich; Heidi Featherstone; Barbara Braus; Sue Manning; Peter J Cripps; Peter Renwick
目的:この研究の目的は、犬の耳下腺管転移(PDT)の回顧的検討を実施し、合併症の頻度と性質、成功および失敗率を判定し、オーナーの満足度も評価した。
方法:PDTを行い、その後獣医眼科医による経過観察を行った56頭の犬(92個の眼)のカルテを検討した。オーナー40人(40頭/66個の眼)に電話で連絡を取り、そのうち37人(37頭/60個の眼)にはビジュアルアナログスケールアンケートも答えてもらった。満足度評価は、Wilcoxon Signed Rank検定、一方向分散分析、Wilcoxonとカプラン-マイヤー生存分析、ログランク検定を含めた。
結果:平均経過観察期間は38.7ヶ月(範囲1-109ヶ月)だった。手術成功率は92%(85/92眼)だった。失敗(8%、7/92眼)は重度唾液不耐(n=5眼)とPDT失敗(n=2眼)によるものだった。合併症発生率は50%(46/92眼)で、そのうち61%(28/46眼)は内科で管理し、39%(18/46眼)は再度手術が必要だった。オーナーの90%(36/40)は再び手術をお願いするだろうと指摘した。眼の快適さ、毎日の点眼回数、眼球の湿り、術後視覚のオーナーの認識で統計学的に有意な改善を確認した。
結論:この研究は臨床所見とオーナーの認識面をもとにPDTは良好な処置であることを示す。またPDTは乾性角結膜炎の医学的屈折症例において眼の快適性と視覚を改善し、33%の症例で低レベルの継続管理が必要なことも証明した。(Sato訳)
■犬の瞬膜腺逸脱の155症例の回顧的研究
Retrospective study of 155 cases of prolapse of the nictitating membrane gland in dogs.
Vet Rec. April 2012;170(17):443.
S Mazzucchelli; M D Vaillant; F Weverberg; H Arnold-Tavernier; N Honegger; G Payen; M Vanore; L Liscoet; O Thomas; B Clerc; S Chahory
155症例(114頭の犬)の回顧的研究。最初の瞬膜腺逸脱時および逆側の発症時の犬種、性別、年齢を記録した。最低1年以上の長期追跡調査を電話での聞き取りで実施した。155件の瞬膜腺逸脱を呈した114頭の犬を研究した。最初の逸脱の75.4%は1歳未満に発生した。片側性の瞬膜腺逸脱は64%で観察された。両側性の場合、41.4%は同時に発生した。両側性の同時発生でない場合(24/41)、そのうち70.8%が3か月以内に逆の瞬膜腺逸脱を起こした。両側性の逸脱が起こる上位5犬種はフレンチブルドッグ、シャーペイ、グレートデン、イングリッシュブルドッグ、カネコルソだった。(Sato訳)
■犬の白内障に対するN-アセチルカルノシンを含む抗酸化点眼薬の効果:予備研究
The effect of a topical antioxidant formulation including N-acetyl carnosine on canine cataract: a preliminary study
Vet Ophthalmol. 2006 Sep-Oct;9(5):311-6.
David L Williams; Patricia Munday
目的:犬の白内障の治療でN-アセチルカルノシンを含む抗酸化点眼薬の効果を、予備的非プラセボ対照非盲検で判定する
動物:核硬化から全体成熟白内障の範囲の水晶体混濁を持つ種々の犬種および年齢の犬30頭
方法:抗酸化グルタチオン、アスコルビン酸システイン、L-タウリン、リボフラビンを含む緩衝溶媒の2%N-アセチルカルノシン点眼液(Ocluvet, Practivet, Phoenix, AZ, USA)を1日3回犬に点眼した。治療前と治療継続中の2、4、8週目に、薬物による瞳孔拡張後、直接および間接検眼鏡検査およびスリットランプ生体鏡検査を行った。各検査の日に徹照法写真撮影で3枚写真を撮影し、水晶体混濁の写真考証を行った。画像を交差する各ピクセルのグレースケールレベルの統合により判定する水晶体透明度指数(LOI)をデジタル画像のコンピューター画像解析により評価した。最初のLOIを基準とする各動物の平均LOIの変化を判定した。
結果:30頭の犬の58の眼を評価し、22個は成熟白内障、13個は未熟白内障、9個はぶどう膜炎のような他の眼内疾患に関係する白内障、14個は核硬化のみだった。1頭は過去の眼球摘出により片方が無眼で1頭は過去のぶどう膜炎誘発緑内障により片方の眼球に異常があった。画像分析では全ての白内障群の平均LOIの低下(全ての白内障に対し平均2.3±0.33%の混濁解消)を示したが、統計学的に有意だったのは未熟白内障(平均4.5±0.33%の混濁解消)、あるいは核硬化の眼(平均5±0.37%の混濁解消)だけだった。水晶体混濁の減少は成熟白内障(0.5±0.4%)および眼内炎症に関係する種々の白内障(1.3±0.4%)の眼にも見られたが、それらの変化は統計学的に有意ではなかった。しかし、研究終了時の視覚能力のオーナーの評価は、80%の症例で視力の改善を示唆した。
結論:この研究はN-アセチルカルノシンを含む栄養性抗酸化点眼薬の使用により、犬の白内障のかなりの症例で水晶体の不透明化がある程度減少することを示す。水晶体の不透明化は、未熟白内障あるいは核硬化の眼で治療により改善したが、成熟白内障あるいは眼内炎症性病態に関係する白内障の眼で改善は少なかった。(Sato訳)
■正常な犬の水性涙産生に対する短期ジフェンヒドラミン投与の影響
Effect of short-term diphenhydramine administration on aqueous tear production in normal dogs.
Vet Ophthalmol. November 2011;14(6):395-9.
Keith W Montgomery1; Eric C Ledbetter; Hussni O Mohammed; Hussni O Mohammed
目的:正常な犬の水性涙産生に対するジフェンヒドラミン経口投与の影響を判定するため、クロスオーバー構成の無作為、プラセボ-コントロール、盲検臨床試験を実施した。
供試動物:正常な眼科検査結果を持つ17頭の犬
方法:各犬でシルマー涙試験I(STTI)を行うことにより、基準となる涙産生を決定した。10日間のウォッシュアウト期間を設け、20日コースの経口ジフェンヒドラミンとプラセボ溶液を投与した。研究開始時、各犬を無作為にジフェンヒドラミンあるいはプラセボ投与群に振り分けた。研究中はSTTI値を規則的な間隔で測定し、涙産生の日内変動をコントロールするために同時刻に行った。STTの結果で判定する水性涙産生の量に対するジフェンヒドラミン投与の影響の有意性は、適切な変換を持つ回帰分析で評価した。
結果:コントロールと処置群間の基準測定値を含む、各測定時間の統計学的比較に有意差は見られなかった。平均STTI値も、処置あるいはコントロール群の基準と比較して、どの測定時間においても有意な違いはなかった。
結論:ジフェンヒドラミン経口短期投与は、正常な犬の水性涙産生を有意に減少させることはなかった。(Sato訳)
■慢性局所シクロスポリン点眼治療におけるリンパ球機能に対する影響の欠如:前向き研究
Lack of effects on lymphocyte function from chronic topical ocular cyclosporine medication: a prospective study.
Vet Ophthalmol. 2010 Sep;13(5):315-20.
Williams DL.
目的:局所シクロスポリンは犬の乾性角結膜炎の治療に広く使われており、明らかに記載された臨床的な副作用はない。従って、2%濃度で治療した動物においてリンパ球の増殖が減少する所見が驚きであり懸念があった。この研究は以前の研究を繰り返すこととコーンオイルを使った2%シクロスポリンと0.2%局所シクロスポリン軟膏(Optimmune, Intervet-Schering Plough, Welwyn, UK)の全身的な影響を比較することが目的であった。
方法: Optimmune あるいは以前にOptimmuneを使った治療が失敗しコーンオイルを使った2%シクロスポリンで治療した12頭の犬がこの研究に参加した。生化学そして血液学的評価のために初回評価時、1、3、そして6ヵ月で採血し、それぞれの検査時にシクロスポリン濃度を測定し、phytohaemagglutinin-P (PHA)そしてconconavlin A (con-A)で治療に対するmitogen stimulation index (MSI)を決定するためにリンパ球数を測定した。シクロスポリン濃度は競合的酵素免疫分析法と質量分析(MS)というさらに敏感な定量技術でも測定した
結果:シクロスポリン濃度が15 ng/ml 以上、放射免疫測定あるいは競合的酵素免疫分析法を使った測定の下限を超える血液サンプルはなかった。肛門フルンクローシスの治療のため経口シクロスポリンで治療している犬から採取したポジティブコントロールサンプルは血液中に測定可能な濃度であり、その方法が機能していることを証明していた。治療の0, 1, 3 そして 6ヵ月における平均MSI値は0.2% シクロスポリンで治療した犬で10.2, 11.4, 11.6, そして10.5であり、2% シクロスポリンで治療した犬で10.4, 11.9, 11.7, そして12.9であった。MSI値は統計的に最初の検査と何度かの次の検査時において違いはなかった。
結論:研究結果から以前の研究結果と矛盾が生じた。リンパ球刺激インデックスは変化がなく、0.2% あるいは 2% シクロスポリンの局所投与後のシクロスポリン濃度の血中濃度にも明らかな違いがなかった。この研究で局所シクロスポリンは、初めて使われて20年以上この治療レジュメに記載されている薬の安全記録に従って犬の眼科で使用することが安全であることを示している。(Dr.Kawano訳)
■犬の慢性表層角膜炎の治療としてUVブロックコンタクトレンズの効果
The effect of UV-blocking contact lenses as a therapy for canine chronic superficial keratitis.
Vet Ophthalmol. May 2011;14(3):186-94.
Nora Denk; Jens Fritsche; Sven Reese
目的:慢性表層性角膜炎(CSK)の治療で、UVブロックソフトコンタクトレンズの効果を評価すること
方法:CSKの犬26頭を6ヶ月間UVブロックコンタクトレンズで持続的に治療した。コンタクトレンズは各犬の1つの眼に装着した。もう片方の眼はレンズをせずコントロールとした。この一次研究後、5頭の犬はさらに治療し、両方の眼にコンタクトレンズを装着した。持続的に全ての犬は同時にシクロスポリンの点眼を行った。コンタクトレンズは4週間ごとに交換し、眼科検査を実施した。評価基準は、色素沈着、浮腫、パンヌス、血管新生などの角膜変化だった。コンタクトレンズ装着前後の透過率特性を判定するため、32のコンタクトレンズをUV-vis-NIR分光光度計で測定した。
結果:6ヶ月の評価期間をかけてレンズを装着した眼およびコントロールの眼の色素沈着は増加した。角膜浮腫はレンズを装着した眼で増加したが、コントロールの眼は影響されないままだった。パンヌスの発生および角膜血管新生の広がりに有意差は評価できなかった。6症例で副作用が見られた(角膜浮腫および血管新生、結膜炎、眼瞼痙攣)。研究した全ての新しいレンズはUV照射を安全レベルに低下させたが、使用したレンズはそれらの透過率特性を維持しなかった。
結論:この使用した研究構成で、UVブロックコンタクトレンズのポジティブな効果は証明できなかった。(Sato訳)
■抗生物質含有点眼剤の点眼後4時間以内に見られたアナフィラキシー事象
Anaphylactic events observed within 4 h of ocular application of an antibiotic-containing ophthalmic preparation: 61 cats (1993-2010).
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):744-51.
Karen M Hume-Smith; Allyson D Groth; Mark Rishniw; Linda A Walter-Grimm; Signe J Plunkett; David J Maggs
この研究は、猫に抗生物質点眼後4時間以内に起こったアナフィラキシーのシグナルメント、病歴、投与した抗生物質、観察された臨床症状、治療、結果を述べる。調査アンケート(45頭)あるいはFDA報告(16頭)からデータを得た。
猫の年齢(7週-19歳)、種類、性別は幅広く分布していた。アナフィラキシーの前はほとんどの猫(87%)が健康だった。一般的に抗生物質点眼は結膜(65%)あるいは角膜(11%)疾患用、あるいは潤滑剤(7%)として投与され、バシトラシンとネオマイシンおよびポリミキシンB(44%)、あるいはオキシテトラサイクリンとポリミキシンB(21%)を含有した。ポリミキシンBは全ての症例に存在した。ワクチンあるいは他の薬剤も51%の猫に投与されていた。56%の症例において、アナフィラキシーは薬剤投与の10分以内に起こっていた。ほとんどの猫(82%)は生存した。原因となる関連は証明されていないが、全ての猫のアナフィラキシーの前に抗生物質点眼がなされていた。他の薬剤と同様に、抗生物質点眼は指示されたときのみ使用すべきである。(Sato訳)
■シェットランドシープドックの遅進行性網膜症
A slowly progressive retinopathy in the Shetland Sheepdog.
Vet Ophthalmol. July 2011;14(4):227-238.
Lena Karlstam; Eva Hertil; Caroline Zeiss; Ernst Otto Ropstad; Ellen Bjerkas; Richard R Dubielzig; Bjorn Ekesten
目的:シェットランドシープドックにおける遅進行性網膜症(SPR)を述べる
動物:SPRの検眼鏡による症状を持つ40頭のシェットランドシープドック成犬と6頭の正常なシェットランドシープドックを研究した
方法:スリットランプ生体顕微鏡および検眼鏡などの眼科検査を全ての犬で実施した。網膜電位図および障害コース検査を13頭の罹患犬と6頭の正常犬で実施した。SPR犬は暗順応B波振幅により2群に細分類した。SPR1犬はSPRの検眼鏡による症状を持つが、正常な暗順応B波振幅だった。SPR2犬はSPRの検眼鏡による症状と正常以下の暗順応B波振幅を持つ犬とした。2頭のSPR2犬の眼を顕微鏡検査のために摘出した。
結果:検眼鏡での変化は正常あるいはわずかに減衰した血管をもつタペタム底周辺の両側対称性の灰色がかった退色が含まれた。繰り返しの検査で、検眼鏡による変化はゆっくりとタペタム底の中心を横切るゆっくりとした広がりを示したが、タペタム過剰反射として現れる明白な神経網膜性菲薄化の進行はなかった。その犬は重大な視覚的障害を現さなかった。SPR2は暗順応の間はB波振幅の有意な減少を示した。顕微鏡検査は外顆粒層の菲薄化および杆状および円錐状外節の異常な出現を示した。SPRの犬3頭の進行性杆状-円錐状変性(prcd)-突然変異に対する検査は陰性だった。
結論:遅進行性網膜症は、進行性網膜萎縮の早期ステージによく似た検眼鏡検査所見を持つ広範性杆状-円錐状変性である。検眼鏡所見はタペタム過剰反射がなく、ゆっくりと進行する。視覚障害は明白ではなく、網膜電位図は進行性網膜萎縮よりも繊細に変化する。病因は不明なままである。SPRはprcd-突然変異が原因ではない。(Sato訳)
■原発性角膜中央血管肉腫の犬の1例
Primary central corneal hemangiosarcoma in a dog.
Vet Ophthalmol. March 2011;14(2):133-6.
David J Haeussler, Jr; Laura Munoz Rodriguez; David A Wilkie; Chris Premanandan
目的:犬の原発性角膜中央血管肉腫の1症例を報告する
方法:11歳避妊済みメスのジャーマンシェパードの雑種犬が、左目の角膜マスの増大の評価でHospital Veterinario Sierra de Madrid (スペイン)に紹介されてきた。紹介元の獣医師によると、その犬は主に屋外で飼育され、両眼の慢性表層角膜炎の病歴があった。その角膜のマスは通常の表層角膜切除術で切除され、病理組織と第VIII因子免疫組織化学染色を行った。
結果:そのマスは完全に切除された角膜血管肉腫と診断された。術後、角膜切除部位は合併症もなく治癒し、術後3.5ヶ月で再発の所見はなかった。腹部超音波検査、頭部および胸部のCTスキャンを含む完全な全身評価で、他に検出可能な腫瘍は示されなかった。
考察:屋外飼育と紫外線暴露、犬種、慢性表層性角膜炎は、原発性角膜血管肉腫の発症に関係する因子として疑われる。外科的切除と慢性表層性角膜炎に対する術後治療は効果的な治療法だった。(Sato訳)
■慢性角膜炎の犬に発生する表層角膜扁平上皮癌
Superficial corneal squamous cell carcinoma occurring in dogs with chronic keratitis
Veterinary Ophthalmology
Volume 14, Issue 3, pages 161-168, May 2011
Jennifer Dreyfus, Charles S. Schobert, Richard R. Dubielzig
目的:犬の角膜扁平上皮癌(SCC)は珍しい腫瘍で、文献では過去に8症例しか発表されていない。Comparative Ocular Pathology Lab of Wisconsin (COPLOW)では過去4年の間に23症例、合計26の自然発生症例が診断されている。この回顧的研究は、年齢および犬種罹病率、併用療法、生物学的挙動、腫瘍の大きさおよび特性、診断後の6ヶ月生存率を述べる。
結果:COPLOWのデータベースの検索で、1978-2008年の間に診断された26の角膜SCC症例を認めた。特に乾性角結膜炎の傾向のある短頭種に強い犬種の偏り(77%)があった。平均年齢は9.6歳(範囲6-14.5歳)だった。6ヶ月以上の経過の情報は26症例中15症例で入手できた。9症例は同じ眼で再発し、そのうち7症例は最初の角膜切除が不完全だった。対側の眼で腫瘍が成長した症例はなく、遠隔転移を起こした症例もなかった。薬剤投与履歴が分かっている症例で、21頭中16頭が診断時に局所免疫抑制療法(シクロスポリンあるいはタクロリムス)を受けていた。
結論:角膜の慢性炎症状態および局所免疫抑制療法は犬の原発性角膜SCC発症のリスクファクターかもしれない。SCCは角膜増殖性病変の鑑別診断に入れるべきである。完全切除の表層角膜切除が推奨され、転移の可能性は低いと思われる。(Sato訳)
■103頭の犬(179眼)の水晶体超音波吸引の術後合併症と視力結果:2006-2008
Postoperative complications and visual outcomes of phacoemulsification in 103 dogs (179 eyes): 2006-2008.
Vet Ophthalmol. March 2011;14(2):114-20.
Heidi E Klein; Sheryl G Krohne; George E Moore; Jean Stiles
目的:犬において水晶体超音波吸引後の術後合併症と視力結果を述べ、合併症のリスクファクターを確認する
研究した動物:パードゥー大学獣医教育病院で2006年3月から2008年3月までにfoldableアクリル眼内レンズ(IOL)を含む眼内レンズの設置を行う、または行わない水晶体超音波吸引を行った103頭(179眼)の犬
方法:医療記録を再検討し、術後合併症の発生と日付を表にした。研究期間中の最終チェック時の視力状態を記録した。徴候、真性糖尿病、手術合併症とファクター、レンズ前誘発ぶどう膜炎の存在、術前網膜復位術、白内障ステージなどの追加情報を収集した。
結果:ほとんどの眼(148眼、82.7%)は研究期間終了時に機能的視力があった。最終チェックで18の眼(10%)は失明、13の眼(7.3%)は視力低下と思われた。術後眼圧上昇(22.9%)、角膜脂質混濁(19.0%)、ぶどう膜炎(16.2%)、眼内出血(12.3%)、網膜剥離(8.4%)、緑内障(6.7%)が眼に見られた一般的な術後合併症だった。失明の確率は雑種犬および年齢増加(OR=2.00)と比較してボストンテリアの眼(OR=290.44)で有意に大きかった。
結論:injectable IOLを用いた水晶体超音波吸引後の視力の予後は良好である。ボストンテリアは相当な合併症の非常に高いリスクをもつ。(Sato訳)
■後角膜固定での人工角膜移植:角膜失明の犬における予備的結果
Keratoprosthesis with retrocorneal fixation: preliminary results in dogs with corneal blindness.
Vet Ophthalmol. September 2010;13(5):279-88.
Pierre-Francois Isard; Thomas Dulaurent; Alain Regnier
目的:犬の角膜不透明化の管理で、貫通性人工角膜移植の使用と合併症を評価する
方法:角膜起源による失明の犬19頭の20の眼において、この方法の使用する術式の指標およびその結果を回顧的臨床研究で述べる。外科手術結果の成功は、最低8ヶ月から最大7年の経過観察期間でクリアーな人工角膜移植の眼、機能的視力の改善または回復と定義した。
結果:角膜不透明化の眼は、慢性表層角膜炎(n=11)、乾性角結膜炎(n=5)、内皮ジストロフィー(n=3)、化学的熱傷(n=1)から起こっており、片側(n=18)あるいは両側(n=1)人工角膜移植材の全層移植で治療した。報告の日に視力を回復した15の眼(75%)で人工角膜は保持されていた。それらの眼のうち、6は何の合併症もなく術後を経過し、5は人工角膜後方膜を形成し、4は人工移植材の眼を覆う肉芽組織を形成した。9の眼でそれらの合併症の外科的除去に成功した。残りの5の眼(25%)は術後早期に重大な合併症を起こし、眼球摘出が行われた。
結論:標準的な内科あるいは外科的方法で治療できない角膜不透明化の角膜症において、人工角膜移植は慢性表層角膜炎および深部角膜ジストロフィーにおける視力の回復に有望と思われる。短頭種の乾性角結膜炎においては予後不良と思われる。人工角膜後方膜および肉芽腫過形成の術後合併症はうまく治療できた。(Sato訳)
■猫の眼瞼無形成の修復で口唇角の眼瞼への転位
Lip commissure to eyelid transposition for repair of feline eyelid agenesis.
Vet Ophthalmol. May 2010;13(3):173-8.
C J G Whittaker, David A Wilkie, D J Simpson, A Deykin, J S Smith, C L Robinson
5頭の猫の9つの眼に見られた眼瞼無形成の修復で、口唇角の眼瞼への転位を述べる。犬の下眼瞼の再建および上下眼瞼と外眼角の再建に対する皮膚、粘膜、粘膜皮膚移行部、筋肉の提供を行うPavleticにより述べられた方法を修正して実施した。その方法は全ての眼で成功し、角膜保護、美容的改善をもたらし、数頭は眼瞼反射が戻った。(Sato訳)
■原発性水晶体脱臼あるいは亜脱臼の犬における嚢内水晶体切除および溝眼内水晶体固定
Intracapsular lensectomy and sulcus intraocular lens fixation in dogs with primary lens luxation or subluxation
Charles M. Stuhr, Hillary K. Schilke and Christina Forte
目的:進行性水晶体亜脱臼あるいは早期脱臼の犬におけるab internoアプローチでの水晶体切除および溝眼内水晶体固定(SIOLF)の術後結果を評価する
研究構成:回顧的研究
対象動物:1999-2006年の間に水晶体脱臼あるいは亜脱臼で動物眼科医院を受診した19頭の犬の20眼
方法:術前の水晶体の位置、視力状態、眼内圧(IOP)、手術が緊急あるいは選択的に実施されたかどうかを評価するため医療記録を調査した。水晶体切除およびSIOLFを実施し、視力、緑内障、網膜剥離などの術後の状態を評価した。
結果:平均年齢は8.6歳(範囲4-14歳)で、55%(11/20)がテリアだった。患者は術後平均29.2ヶ月(範囲1-92ヶ月)追跡した。網膜剥離あるいは二次的緑内障はそれぞれ20眼中1眼(5%)、10眼中5眼(20%)で見られ、20眼中1眼(5%)は両方罹患した。術前の平均IOPは16mmHGで、術前のレンズの位置は脱臼、亜脱臼水晶体で半々だった。手術は緊急処置(2/20;10%)に対し、IOP正常化のため選択的方法(18/20;90%)がより頻繁に行われた。視力は70%(14/20)の眼で維持され、緑内障、網膜剥離、網膜変性による視力喪失までの平均期間は41ヶ月だった。
結論:この研究におけるSIOLF後の緑内障および網膜剥離の合併症は、過去の水晶体切除のみの文献で発表された発生率と比較するとより少なく、患者の選択の改善を反映しているのかもしれない。(Sato訳)
■突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)の犬における性ホルモンの上昇
Elevations in sex hormones in dogs with sudden acquired retinal degeneration syndrome (SARDS).
J Am Anim Hosp Assoc. 2009 Sep-Oct;45(5):207-14.
Renee T Carter, Jack W Oliver, Rebecca L Stepien, Ellison Bentley
突発性後天性網膜変性症候群(SARDS)と診断された犬は、一般に失明時に副腎皮質機能亢進症(HAC)に一致する臨床、身体および病歴所見を同時に呈する。完全な眼科検査および遮光閃光網膜電図検査をもとにSARDSと診断した13頭の犬のステロイドホルモン異常を評価した。
徴候、症例病歴、身体検査および臨床病理所見を記録した。血清コルチゾールおよび性ホルモン濃度を副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激前後に測定した。HACの臨床症状、全身性高血圧および蛋白尿がSARDSの犬に一般的に見られた。1つ以上の性ホルモンの上昇が13頭中11頭(85%)に見られた(95%信頼区間(CI)65%-100%)。;コルチゾールは13頭中9頭(69%)で上昇していた(95%CI44%-94%)。少数の犬(13頭中3頭(23%);95%CI0.2%-46%)のみに副腎性ホルモンの上昇が見られた。1頭のみが完全に正常なACTH刺激試験結果を示した。HACの徴候は異常なACTH刺激試験結果と関連した。それらの動物にはルーチンなコルチゾールおよび性ホルモンを評価するためのACTH刺激試験、血圧スクリーニング、尿検査が推奨される。(Sato訳)
■正常な幼犬における涙産生
Tear production in normal juvenile dogs.
Vet Ophthalmol. September 2010;13(5):321-5.
Joshua J Broadwater; Carmen Colitz; Susan Carastro; William Saville
目的:正常な幼犬における涙産生の基準範囲あるいは平均値を確立させ、幼犬のシルマー涙試験(STT)に対する年齢、体重、性別の影響を評価する
素材と手順:6ヶ月齢以内の様々な種類の健康な子犬。各犬の両眼でSTT1とSTT2を実施した。頻回測定の後進ステップワイズ回帰モデルを使用して統計分析を実施した。別々の従属変数としてSTT1およびSTT2の連続変数を使用するとき、独立変数は年齢(日)、眼(左あるいは右)、性別(オスあるいはメス)、眼疾患過程の有無、体重(kg)だった。
結果:27頭のオス、16頭のメスの合計86眼を研究した。年齢の範囲は25-133(平均±SEM:61.74±24.15)日で、体重の範囲は0.88-8.86(3.27±2.22)kgだった。STT1の結果は0-26(15.76±5.79)mm/分の範囲だった。STT2の結果は0-24(8.79±5.01)mm/分の範囲だった。年齢、体重、性別はSTT1の結果に有意な影響を及ぼした。体重と性別はSTT2の結果に有意な影響を及ぼした。STT1の値は年齢が1日増えるごとに0.15mm/分増加し、体重が1kg増加するごとに0.84mm/分増加した。STT2の値は体重が1kg増加するごとに0.57mm/分増加した。
結論:正常な幼犬の涙産生に年齢、体重、性別は有意な影響を及ぼす。約9-10週齢で成犬の値までSTT1が増加する。(Sato訳)
■臨床的に正常なネコの眼における反跳式眼圧計(Tonovet)の評価
Evaluation of rebound tonometer (Tonovet) in clinically normal cat eyes
Veterinary Ophthalmology (2010) 13, 1, 31-36
Rusanen E, Florin M, Hassig M, Spiess BM.
目的 正常なネコの眼球における反跳式眼圧計(Tonovet)の精度の決定と参考値の確立、圧平式眼圧計(Tonopen Vet)との比較、そして反跳式眼圧計においての局所麻酔の影響の評価。
手順 直接式圧力計と両方の眼圧計とを比較するために、6個の摘出眼を用いた。反跳式眼圧計の参考値を確立するために100頭のネコで眼内圧(IOP)の測定を行った。これらのうち、22頭のネコを反跳式眼圧計の局麻酔使用・未使用での比較のために用い、33頭のネコを反跳式眼圧計と圧平式眼圧計の比較に供した。すべての評価に使用した眼球は眼科疾患に罹患していなかった。
結果 両方の眼圧計とも直接式圧力計に良好に相関していた。反跳式眼圧計は、25-50mmHgの間で最もよい一致がみられた。圧平式眼圧計では0-30mmHgの圧力において正確であった。臨床的に正常なネコにおける平均IOPは、反跳式眼圧計では20.74mmHg、圧平式眼圧計では18.4mmHgであった。局所麻酔は反跳式眼圧計に対して、有意に影響しなかった。
結論 反跳式眼圧計は臨床的に重要な圧力の範囲において直接式圧力計と良好に相関し、そしてネコによって申し分なく許容されたため、緑内障の診断に適切であると思われる。
反跳式眼圧計で得られた平均IOPは、圧平式眼圧計で測定されたものよりも2-3mmHg高かった。この差は臨床的に容認できる範囲内であるが、ネコにおいてフォローアップの検査には同じタイプの眼圧計を使う必要があることを示す。(Dr.Boo訳)
■犬の水晶体レンズ細胞の酸化ストレスに対するブドウポリフェノールの効果
Effect of grape polyphenols on oxidative stress in canine lens epithelial cells.
Am J Vet Res. 2008; 69(1):94-100.
Barden, C. A. ; Chandler, H. L.; Lu, P.; Bomser, J. A., and Colitz, C. M.
目的:培養した犬水晶体上皮細胞(LECs)においてブドウ種子プロアントシアニジン抽出物(GSE) 、レスバラトロル(RES)、あるいはその両方を組み合わせ(GSE+RES)たのものとインキュベートして酸化ストレスの影響を減衰できるかどうかを評価した
サンプル集団:初代培養犬LECs
手順:GSE、RES、あるいはGSE+RESを添加あるいは添加しない100MM tertiaryブチルヒドロペルオキシド(TBHP)をLECsに暴露した。活性酸素種(ROS)の産生を検出するのにジクロロフルオレセイン検定を使用し、ストレス誘発細胞情報伝達マーカー(すなわち分裂促進因子活性化蛋白キナーゼ(MAPK)およびホスホイノシチド-3キナーゼ(PI3K)経路)の発現を評価するのに免疫ブロット法を使用した。
結果:GSEおよびGSE+RESはTBHPに暴露して30分後にROS産生を有意に低下させた。GSEのみがTBHP暴露から120分後のROS産生を有意に低下させた。GSEとのインキュベートはMAPKおよびPI3K経路のTBHP誘発活性を低下させた。
結論と臨床関連:GSEは白内障発生、ROS産生、ストレス誘発細胞情報伝達に関係するキーコンポーネントを抑制した。ここで報告されたデータをもとに、GSEは酸化ストレスの有害効果から水晶体上皮細胞を保護する可能性を持つという強いエビデンスが存在する。(Sato訳)
■ゴールデンレトリバーの色素性および嚢性緑内障の病理組織および免疫組織化学特性
The histopathological and immunohistochemical characteristics of pigmentary and cystic glaucoma in the Golden Retriever
Douglas Esson, Micki Armour, Patricia Mundy, Charles S. Schobert and Richard R. Dubielzig
後房内の薄壁嚢胞の形成、蛋白様滲出、色素散乱からなり、結果的に緑内障となる臨床症候群がゴールデンレトリバー種で認められている。珍しいものではないが、この症候群は文献で発表されることは比較的少なく、特に組織学的観点からのものはない。
2003年から2009年の間にEye Care for Animalsに来院したゴールデンレトリバーの15個の眼球を通常のHE染色および免疫組織化学染色で評価した。アルシアンブルー、PAS、マッソントリクローム、サイトケラチン、ビメンチン、神経特異エノラーゼ(NSE)、S-100、平滑筋アクチン染色を実施した。15個の眼球の薄壁膿疱はビメンチン、NSE、S-100で陽性に染まり、毛様体上皮細胞由来に一致した。全ての眼球は小柱網内に色素がなかった。全ての眼は炎症性浸潤がわずかあるいはなかった。それらの所見から、この症候群を記述するのに「ブドウ膜炎」という言葉は不適切かもしれない。(Sato訳)
■増殖性猫好酸性角膜炎の局所1.5%シクロスポリンによる治療:35症例
Treatment of proliferative feline eosinophilic keratitis with topical 1.5% cyclosporine: 35 cases.
Vet Ophthalmol. 2009 Mar-Apr;12(2):132-7.
Amelie K Spiess, John S Sapienza, Aloma Mayordomo
目的:増殖性猫好酸性角膜炎は、抗原刺激の不明な免疫介在性反応の疑いのある慢性角膜症である。この研究の目的は、増殖性猫好酸性角膜炎における1.5%シクロスポリン液点眼の効果を示すことである。
方法:1997-2007年の間に35頭の猫を1.5%シクロスポリンAで局所的に治療した。好酸性角膜炎は、臨床所見および角膜細胞診における好酸球および/あるいは肥満細胞の証拠により診断した。猫は1日2回(26頭、74.3%)および3回(9頭、25.7%)のシクロスポリン(1.5%)点眼で治療した。最低追跡調査期間は5ヶ月だった。
結果:猫の年齢の範囲は2-13歳で、平均年齢6.0歳だった。22頭はオス、13頭はメスだった。猫の種類はDSH30頭、DLH3頭、シャム1頭、メイクーン1頭だった。角膜スクレイプの細胞診検査で、35頭中34頭に好酸球が存在し、25頭に肥満細胞が存在した。治療した目の改善は31頭(88.6%)で認められた。4頭(11.4%)はシクロスポリン点眼治療に反応しなかった。7頭(22.6%)に再発が見られた。まれな副作用に眼瞼炎が見られた。
結論:我々の所見をもとに、シクロスポリン(1.5%)点眼は、非常に多くの症例で増殖性猫好酸性角膜炎の効果的な治療である。再発は主にオーナーのコンプライアンスの悪さに関与した。よって長期でしばしば生涯にわたる薬物治療が推奨される。(Sato訳)
■眼の屈折状態と屈折異常と犬種の関係
Refractive states of eyes and association between ametropia and breed in dogs
Am J Vet Res. July 2008;69(7):946-51.
Melissa A Kubai, Ellison Bentley, Paul E Miller, Donald O Mutti, Christopher J Murphy
目的:屈折異常が疑われる犬種を確認するため、さまざまな犬種の眼の屈折状態を評価する
動物:90犬種がいる1440頭
方法:各犬の各眼に1%シクロペントレートあるいは1%トロピカミドを1滴投与し、Canine Eye Registration Foundation検査を実施した。点眼の約30分後に各眼の屈折状態をstreak retinoscopyで評価した。平均屈折状態(視力無限大に相当する休息時の眼の静止焦点)が±0.5ジオプトリー(D)を超えたとき屈折異常(近視性、遠視性)と考えた。各眼の屈折エラーが>1D違うとき屈折異常と診断した。
結果:検査した全ての眼の平均±SD屈折状態は-0.05±1.36D(正常視)だった。平均屈折状態が近視性(-0.5D以下)の犬種は、ロットワイラー、コリー、ミニチュアシュナウザー、トイプードルだった。近視の程度は全ての犬種で加齢に伴い増加した。平均屈折状態が遠視性(+0.5D以上)の犬種は、オーストラリアンシェパード、アラスカンマラミュート、ブーヴィエだった。成犬(1歳以上)の1%(14/1440)に乱視が検出された。ジャーマンシェパードの乱視の罹病率は3.3%(3/90)だった。全ての犬の6%(87/1440)に屈折不同が検出され、ジャーマンシェパードは8.9%(8/90)だった。
結論と臨床関連:犬の眼の屈折状態は広く変化し、犬種および年齢に影響を受けた。高度な視覚機能を有すると期待される犬(例えばパフォーマンスドック)で、屈折状態の判定は集中トレーニング前に推奨される。(Sato訳)
■犬と猫の結膜下眼球摘出変法
A modified subconjunctival enucleation technique in dogs and cats
Vet Med. Jan 2009;104(1):20-22. 10 Refs
Robert L. Swinger, DVM, Karl A. Schmidt, Jr., DVM, DACVO, Susan M. Carastro, DVM, MS, DACVO
この文献は、眼球を切除する前に眼瞼および瞬膜の除去を含む通常の結膜下眼球摘出法の変法を述べる。
この方法は、良好な視認度、眼球および眼外筋へのより良いアクセスをもたらす。眼瞼と瞬膜の除去後、眼球は容易に視認でき、また処置すること出来る。眼外筋はそれらの付着部を容易に追跡でき、切除前に眼神経を見える位置に眼球を移動できる。結膜下眼球摘出変法は、犬と猫の眼球摘出に対する代替アプローチである。この方法は、角膜潰瘍あるいは眼感染の動物には指示されない。そのようなケースは、transpalpebral法がより適している。(Sato訳)
■犬特発性肉芽腫性強膜炎の免疫組織化学的調査
An immunohistochemical investigation of canine idiopathic granulomatous scleritis
Vet Ophthalmol. January 2008;11(1):11-7.
M J Day, J R B Mould, W J Carter
肉芽腫性強膜炎の犬3頭における臨床、病理組織、免疫組織化学所見を報告する。肉芽腫性強膜炎の病変は、脈管炎、膠原溶解、肉芽腫性炎症、血管周囲リンパプラズマ球性集積の特徴があった。脈管免疫複合体沈着、およびTリンパ球、IgGプラズマ細胞、主要組織適合性複合体(MHC)のクラスII分子発現マクロファージの所見があった。どの症例も感染性の原因所見はなく、そのうち1頭の犬はその後、全身性免疫介在性疾患に一致する皮膚脈管疾患を発症した。犬の肉芽腫性強膜炎は、おそらく基礎にIII型が関与する原発性IV型過敏症様免疫病因をもつ。(Sato訳)
■耳下腺管転移前に関係する眼球摘出後の眼窩唾液腺腫瘤を起こした犬1例
Postenucleation orbital sialocele in a dog associated with prior parotid duct transposition
Vet Ophthalmol. 2007 Nov-Dec;10(6):386-9.
Justin Guinan, A Michelle Willis, Cheryl L Cullen, Richard Walshaw
遅延性緑内障で眼球摘出を行った1頭の犬に、眼窩唾液腺腫瘤が発生した。この眼は約5年前に耳下腺管転移を行うことで乾性角結膜炎を治療しており、眼球摘出時にその管を遠位で結紮した。眼球摘出から1ヵ月後、眼窩腹外側に波動感のある円錐形の腫脹で来院した。外科的探査で、摘出眼窩内に過去に転移させた耳下腺管の拡張繊維化した遠位部分と唾液を認めた。眼窩内から管の遠位部および唾液含有組織を切除した。残った耳下腺管の近位正常部分は、口腔内に別ルートを作った。眼窩内容物と管の拡張部分の臨床病理、組織検査で、唾液の無菌サンプル、中程度の慢性管周囲線維症を認めた。6ヶ月時の再評価で、唾液腺腫瘤の所見はなく、耳下腺管も機能していた。(Sato訳)
■犬の乾性角結膜炎のピメクロリムス点眼投与の臨床評価
Clinical evaluation of pimecrolimus eye drops for treatment of canine keratoconjunctivitis sicca: A comparison with cyclosporine A
Vet J. October 2007;0(0):.
Ron Ofri, George N Lambrou, Ingrid Allgoewer, Uwe Graenitz, Teresa M Pena, Bernhard M Spiess, Elisabeth Latour
この研究の目的は、犬における乾性角結膜炎(KCS)の臨床症状軽減において、ピメクロリムスオイルベース点眼の効果を評価し、シクロスポリンA(CsA)軟膏の効果を比較することだった。CsAで過去に治療していない44頭の犬を使用した非盲検誰指節研究を実施した。犬を無作為に治療群に振り分け、8週間1日2回投与した。その後のシルマー涙試験の平均増加(±SEM)は、ピメクロリムス群で9.2±1.6mm/min、CsA群で5.8±1.1mm/minだった(P=0.085)。ピメクロリムスで治療した目の炎症の臨床症状における改善は、CsAで治療した目よりも有意に良好だった(P=0.02)。結果から犬におけるKCS管理で、CsA軟膏と比べて1%ピメクロリムス油性点眼は同等に安全でより効果的だと示される。(Sato訳)
■猫の原発性開放隅角緑内障
Feline primary open angle glaucoma
Vet Ophthalmol. 2008 May-Jun;11(3):162-5.
Susan Jacobi, Richard R Dubielzig
目的:猫の原発性開放隅角緑内障の病理組織特性を述べている
構成:1992年から2006年の間で提出された4000件、猫緑内障の1100件を含む病理サンプルから抽出した8頭の猫の8眼の遡及形態研究
方法:HEまたはアルシアンブルーで染色した罹患眼球の切片を光学顕微鏡で検査した。原発性開放隅角緑内障の基準を満たしていない眼は研究から除外した。
結果:平均年齢は9.1歳だった。5頭がメス、3頭がオスだった。猫の種類は5頭が家猫短毛種、2頭はバーミーズ、1頭が家猫長毛種だった。重要な病理組織所見は、全頭に見られた開放毛様体裂を伴う開放虹彩角膜角、8頭中8頭の神経節細胞欠如、視神経が適切にサンプリングされた4頭中4頭の視神経乳頭の杯形成および神経膠症、8頭中7頭の渦静脈周囲の基質の粘液腫様変化だった。
結論:猫の緑内障を検査するとき、開放隅角緑内障は考慮すべきまれな疾患である。それら症例の水性排出閉塞の原因は不明である。この研究は、原因が確認されていない猫の原発性開放隅角緑内障の追加8症例を述べる。(Sato訳)
■ジャックラッセルテリアにおける白内障および原発性水晶体脱臼の遺伝
Inheritance of cataracts and primary lens luxation in Jack Russell Terriers
J Am Vet Med Assoc. February 2008;232(4):546.
Anita M Oberbauer
目的:ジャックラッセルテリアの白内障および原発性水晶体脱臼の遺伝率および遺伝様式の特徴を述べる
サンプル集団:頬側上皮細胞を採取し、白内障および水晶体脱臼の表現型を判定したジャックラッセルテリア872頭、および追加で完全な血統関連を使用する表現型情報のないジャックラッセルテリア1898頭を分析に含めた。
方法:白内障および水晶体脱臼の狭義の遺伝率、遺伝的相関を域値分析の使用によりモデル化し、遺伝様式を特徴付けるために複合分離比分析を使用した。白内障または水晶体脱臼を持つと確認されない限り、<6歳の犬の分析で不明な表現型と分類した。白内障でHSF4突然変異の関与の可能性をDNAシーケンスによる判定した。
結果:白内障および原発性水晶体脱臼は、遺伝性が高く、遺伝的に相関し、単一遺伝子でコントロールされているものはなかった。白内障はHSF4突然変異に関係していなかった。
結論と臨床関連:繁殖動物を選択するとき、白内障および原発性水晶体脱臼に対する淘汰を計画する指摘されたデータの分析は、ジャックラッセルテリアの眼の健康を改善するのに使用できる。(Sato訳)
■ダックスフントおよびエンテルブッハーマウンテンドックにおける原発白内障の候補遺伝子として犬熱ショック転写遺伝子4(HSF4)の評価
Evaluation of canine heat shock transcription factor 4 (HSF4) as a candidate gene for primary cataracts in the Dachshund and the Entlebucher Mountain dog
Vet Ophthalmol. 2008 Jan-Feb;11(1):34-7.
Christina Muller, Anne Wohlke, Ottmar Distl
目的:ダックスフントおよびエンテルブッハーマウンテンドックにおける原発白内障(CAT)の連鎖および関連に対し犬HSF4遺伝子における白内障原因挿入/欠損突然変異を研究する
方法:犬HSF4遺伝子のフランキングイントロン領域を持つエクソン9を、24頭のダックスフントおよび20頭のエンテルブッハーマウンテンドックでシーケンスした。水晶体組織のHSF4cDNAシーケンスを、1頭のCATに罹患していない雑種犬、CATのワイヤーヘアードダックスフント、ダックスフントの雑種、ジャーマンシェパードの異なる犬種3頭で分析した。
結果:ここで調査した全ての犬において、過去に報告されたCATの原因突然変異は存在しなかった。2犬種におけるCAT表現型に関連も連鎖もしないイントロン9において、一塩基遺伝子多型(SNP)を発見した。
結論:ここで調査した2犬種におけるCAT表現型は、スタッフォードシャーブルテリアおよびボストンテリアの早期発現CATに関連することが分かっている同じ突然変異が原因ではなかった。更なる犬種においてイントロンSNPは、CATの連鎖に対するHSF4を検査するのに有効かもしれない。(Sato訳)
■眼疾患におけるドキシサイクリンの新作用
The Novel Actions of Doxycycline in Ocular Disease
Aust Vet Pract. March 2008;38(1):16-22. 23 Refs
VL Liddle, Michael Bernays
ドキシサイクリン(DOX)は臨床的に新しい作用が観察されている抗菌剤である。それらは眼の表面の疾患の治療に有効と思われる。DOXはリンバスから拡散することにより、角膜でかなりの濃度に達する。涙液膜内で到達するDOX濃度は不明である。炎症性サイトカインインターロイキン-1の生理活性を抑制することにより、DOXはその抗炎症特性を果たす。マトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)は、角膜コラーゲンの再構築および分解に関与する酵素の一種である。さらにDOXはいくつかのMMPs、特にMMP-9を抑制し、順次コラーゲナーゼ活性のコントロールされない増加を防ぎ、角膜治癒時間を短縮する。最近では、DOXは“slug”転写制御因子の発現を増加させることがわかっており、創傷再上皮化における角膜細胞移動を亢進する。この再検討は、それら各新しい作用に関する現在の文献を精密に分析し、獣医臨床診療へのその所見のかかわりを議論する。(Sato訳)
■充実性眼内黄色肉芽腫のミニチュアシュナウザー3頭
Solid intraocular xanthogranuloma in three Miniature Schnauzer dogs
Vet Ophthalmol. 2007 Sep-Oct;10(5):304-7.
Mitzi K Zarfoss, Richard R Dubielzig
目的:豊富な細胞質内脂質を含むマクロファージは'泡沫細胞'と呼ばれる。Comparative Ocular Pathology Laboratory of Wisconsin(COPLOW)に提出された4つの犬の眼球において泡沫細胞が充実性眼内マスを形成していた。この研究の目的は、それら症例における組織病理学的所見を述べることだった。
方法:COPLOW電子データベース(1993-2006)で’泡沫細胞腫瘍’の診断を受けたものを検索した。臨床病歴、肉眼的病理および組織病理(5-ミクロン切片、ヘマトキシリン、エオジン、アルシアンブルーPAS)を全症例で再調査した。眼球が肉眼的に充実性マスで満たされている場合、全ての眼内構造が、星状パターンを持つ複屈折アルシアンブルー陽性結晶と混ざった脂質を十分含む泡沫細胞マクロファージによりなくなっている場合、症例に含めた。
結果:選別基準を満たす全3頭(眼4つ)はミニチュアシュナウザーだった。全ての症例における臨床病歴は、真性糖尿病、高脂血症、水晶体誘発と考えられる慢性両側ぶどう膜炎だった。全ての眼球は緑内障により摘出した。
結論:充実性眼内黄色肉芽腫という言葉は、眼内容が泡沫細胞および複屈折結晶の固形マスによりなくなるため、それら症例を述べるのに使用された。この報告の症例は、高脂血症を伴う糖尿病ミニチュアシュナウザーは、緑内障を誘発し摘出に至るような充実性炎症性眼内マスを形成する症例もいる脂質およびマクロファージの豊富なぶどう膜炎のリスクがあると示唆される。(Sato訳)
■眼内圧急性上昇後の犬網膜および眼神経機能の回復:犬緑内障治療の意味
Recovery of canine retina and optic nerve function after acute elevation of intraocular pressure: implications for canine glaucoma treatment
Vet Ophthalmol. 2007 Nov-Dec;10 Suppl 1(0):101-7.
Sinisa D Grozdanic, Milan Matic, Daniel M Betts, Donald S Sakaguchi, Randy H Kardon
目的:眼内圧(IOP)の急激な上昇にみまわれた健康な犬の眼におけるタイミングと機能回復の程度を特徴付ける
方法:14頭の健康なビーグルにおいてIOPの急激な上昇は、60分間収縮期血圧のレベル以上にIOPを上昇させることで誘発した(平均上昇100-160mmHg)。上昇後1、7、14、28日目に威嚇、眩目、瞳孔対光反射(PLR)を検査した。光干渉断層画像診断で処置前の網膜の厚さと上昇後15、30日目の網膜の厚さを評価した。
結果:上昇後1日目、すべての犬の処置した眼は盲目(威嚇反射陽性はなし)で、5/14はPLR陽性、10/14は眩目反応陽性だった。7日目、4/14の犬は威嚇反応陽性、全頭(14/14)眩目、PLR反応陽性だった。14日および28日目、全頭威嚇、PLR、眩目反応陽性だった。光干渉断層画像検査で、下網膜の有意な壁厚減少が認められた(上昇前:156.3±4.8μm;上昇後15日目:125±10.4μm;30日目:123±11.9μm;P<0.01、分散分析)。しかし上網膜ではコントロールの眼と比較して検出可能な厚さの減少は見られなかった(上昇前:193.8±2.6μm;上昇後15日目:176.9±8.5μm;30日目:176.9±7μm;P=0.057、分散分析)。
結論:詳細な機能および形態分析で、急激なIOP上昇後の網膜ダメージについての正確な情報が明らかとなった。犬の網膜は、IOP上昇後14日目でさえ、少なくともいくらか視覚機能が回復する能力がある。犬の緑内障のより積極的な内科および外科治療が、急性緑内障障害の発生後早い日数で、視覚機能、PLR、眩目反応の完全な喪失にもかかわらず指示されるかもしれない。(Sato訳)
■重度片側非反応性乾性角結膜炎の若年ヨークシャーテリア16頭
Severe, unilateral, unresponsive keratoconjunctivitis sicca in 16 juvenile Yorkshire Terriers
Vet Ophthalmol. 2007 Sep-Oct;10(5):285-8.
Hector Daniel Herrera, Nathalie Weichsler, Jose Rodriguez Gomez, Jose Antonio Garcia de Jalon
目的:重度片側性乾性角結膜炎の16頭の若年ヨークシャーテリアにおける眼科所見、臨床データ、治療結果を述べる
結果:極度の片側眼乾燥を示す16頭の各犬は、眼瞼痙攣、粘液様滲出液、角膜血管新生が見られた。それらの犬の年齢は、来院時5ヶ月から4歳齢の範囲だった。罹患眼の平均シルマー涙試験(STT)結果は、1mm/minだった。0.2%シクロスポリン点眼でSTT値が改善した犬はいなかった。いくらかの犬で20%硫酸コンドロイチン眼科溶液の点眼で臨床症状は主観的改善を見せ、3頭の犬は耳下腺管移植を行った。1頭の組織病理検査は、眼窩涙腺組織の存在を示さなかった。臨床症状、来院時の年齢、疾患の重症度、治療の反応欠如は犬種関連片側性の涙腺の無形成または発育不全に一致する。
結論:涙腺無形成または形成不全は、特にメスのヨークシャーテリアで、重度片側性眼乾燥を持つ若い犬で考慮すべきである。(Sato訳)
■犬乾性角結膜炎:229例の再調査による疾病傾向
Canine keratoconjunctivitis sicca: disease trends in a review of 229 cases
J Small Anim Pract. April 2007;48(4):211-7.
R F Sanchez, G Innocent, J Mould, F M Billson
目的:グラスゴー大学小動物病院に紹介された乾性角結膜炎の犬で疾患パターンを調査すること
方法:229例の遡及研究を行った。
結果:研究で44犬種を認め、内イングリッシュコッカースパニエル、キャバリアキングチャールズスパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、シーズの4犬種が58%を占めた。それら4犬種のうち、2種は犬種依存性疾患パターン、1種は慢性、1種は急性を認めた。イングリッシュコッカースパニエルとウエストハイランドホワイトテリアの臨床症状発現平均年齢は、それぞれ5歳1ヶ月、5歳6ヶ月で、オスよりメスの方が多く罹患した。臨床症状の大部分は、結膜充血、粘液膿性分泌物、比較的発生が少ないが潰瘍性角膜炎を認めた。対照的にキャバリアキングチャールズスパニエルとシーズは、より急性疾患パターンで、0-2歳および、それぞれ4-6歳、6-8歳の2相性分布を示し、メスよりオスの方が多く罹患し、角膜穿孔を起こす症例もいるような潰瘍性角膜炎の発生が有意に高かった。
臨床意義:研究で、過去の委託集団で詳述されていない性別、年齢、潰瘍性角膜炎のリスクに関し犬種間の違いが明らかにされた。(Sato訳)
■犬の流涙をコントロールする新しい外科的方法:耳下腺管転位変法
A new surgical method for the control of the epiphora in dogs: modified parotid duct transposition
J Small Anim Pract. May 2007;48(5):279-82.
S Scotti1, A Klein, M Vanore, A Hidalgo, P Fayolle, P Moissonnier
涙液排泄系の機能不全の結果、7ヶ月の片側性流涙の病歴を持つ5歳メスの避妊済みビーグルが新しい耳下腺管転位の外科的方法による治療に成功した。術前の完全な眼科検査、術式、術後処置、造影エックス線検査、組織検査データを記録した。合併症がないこと、術後30日目の小孔の完全な開通性でこの新しい方法の有効性を確認した。
涙液排泄系の機能不全による犬の流涙症の治療で、結膜鼻造瘻術、結膜頬造瘻術、結膜上顎洞切開術の現行の方法と比較し、解剖学的管の使用は優っているかもしれない。(Sato訳)
■猫の眼内圧の日内変動
Circadian rhythm of intraocular pressure in cats
Vet Ophthalmol. 2007 May-Jun;10(3):155-61.
M. J Del Sole, Pablo H Sande, J. M Bernades, Marcelo A Aba, Ruth E Rosenstein
目的:眼疾患所見のない健康な家猫で眼内圧(IOP)のリズムを評価し、ネコIOPの昼行-夜行性変動に対する光周期、年齢、性別、眼疾患の影響を分析する
動物:全て家猫短毛種で全身性または眼疾患のない30頭。そのうち12頭はオスの成猫、5頭はメスの成猫、5頭は避妊した成猫、8頭はオス猫で1歳以下だった。追加でぶどう膜炎の成猫5頭、二次的緑内障の成猫3頭も含めた。
方法:12時間光/12時間暗闇の光周期で2週間維持した12頭の健康なオスの成猫において、24時間3時間間隔でTono-Pen XLによるIOPを評価した。それから同群の8頭を48時間暗闇のもとで飼育し、続く24時間3時間間隔でIOPを測定した。また5頭のメス猫、5頭の避妊メス猫、8頭の若猫、ぶどう膜炎の5頭の成猫、3頭の緑内障猫でIOPを3p.m.、9p.m.に測定した。
結果:一貫してIOPの日々の変動は光-暗闇サイクルの猫で認められ、夜間最大値だった。持続的暗闇で飼育した猫で、IOPの最大値は自覚的夜に観察された。3p.m.と9p.m.(昼行-夜行性変動)のIOP値の差は、メス、避妊メス、若猫、ぶどう膜炎、緑内障の眼で存続した。
結論:この結果は、持続闇で存続する猫IOPの日々のリズムを示し、内因性日周期コントロールのあるレベルを示唆する。また猫IOPの日々の変動は、性別、年齢、眼疾患(特にぶどう膜炎、緑内障)に依存しないと思われる。(Sato訳)
■犬におけるエトドラク投与に関する乾性角結膜炎
Keratoconjunctivitis sicca associated with administration of etodolac in dogs: 211 cases (1992-2002)
J Am Vet Med Assoc. February 2007;230(4):541-7.
Gia Klauss1, Elizabeth A Giuliano, Cecil P Moore, Charles M Stuhr, Stacy L Martin, Jeff W Tyler, Kelsie E Fitzgerald, Debra A Crawford
目的:犬に対するエトドラクの経口投与に関する乾性角結膜炎(KCS)の特徴と治療反応を述べる
構成:遡及症例シリーズ
サンプル集団:獣医眼科医の調査から得た65例(A群)とFort Dodge Animal Healthに報告された146例(B群)
方法:犬種、性別、年齢、体重、エトドラクの投与量と期間、診断時のシルマー涙試験結果、最終追跡、治療、治療への反応などのデータを分析した。A群、B群を別々に、異なる変動値の機能として完全寛解または臨床改善の確立を予測するのに作ったforward stepwiseロジスティック回帰モデルを使用し分析した。
結果:ほとんどの犬が重度KCS(50頭の犬の84個の眼(A群);62頭の犬の111個の眼(B群))を発症した。KCSの解消は65頭中7頭(A)および146頭中23頭(B)で見られた。治療の反応しない犬は、65頭中26頭(A)および146頭中27頭(B)で見られた。51頭(A)と52頭(B)はモデルで使用するに十分完全な記録があった。B群でKCS発現前に<6ヶ月のエトドラク治療期間があった犬は、6ヶ月以上治療期間があった犬より4.2倍寛解しやすかった。
結論と臨床関連:犬の1集団でエトドラク投与(<6ヶ月)のより短い期間は、結果の改善につながった。涙産生のモニタリングを、犬にエトドラクを投与する前と投与中に考慮すべきである。(Sato訳)
■白内障手術後の糖尿病および非糖尿病犬における後嚢混濁
Posterior capsular opacification in diabetic and nondiabetic canine patients following cataract surgery
Vet Ophthalmol. 2006 Sep-Oct;9(5):317-27.
I Dineli Bras, Carmen M H Colitz, William J A Saville, Anne J Gemensky-Metzler, David A Wilkie
後発白内障(PCO後嚢混濁)は現代の白内障手術の最もよく見られる術後合併症である。犬でPCO形成および発症に影響する因子に関し限られた情報しかない。265個の眼(糖尿病の犬から144個、種関連白内障の犬から121個)で術後12ヶ月までのPCO形成を前向き評価した。この研究における全ての犬の平均年齢は7.77歳で、糖尿病犬は種関連白内障の犬よりも有意に老齢だった。73頭(61頭去勢済み、12頭未不妊)のオスと74頭(70頭避妊済み、4頭未不妊)のメスがいた。年齢、犬種/サイズ、性別、手術時の白内障のステージ、各タイムポイントのPCOスコア、種関連対糖尿病性白内障、右眼対左眼、ぶどう膜炎の有無をもとに統計分析を実施した。
年齢と性別にPCO形成の有意な影響はなかった。術後2週および2-4ヶ月目に大型/超大型犬種に比べ、小型と中型犬種は有意によりPCOを発症しやすかったが、それ以降のタイムポイントで有意差はなかった。術後4ヶ月までに白内障の他のステージと比べ、早期未成熟白内障の眼で総体的にPCO形成の有意な増加が見られたが、それ以降は見られなかった。犬種関連および糖尿病性白内障の眼で、術後6ヶ月と1年目のPCOスコアに統計学的差はなかった。右眼と左眼のPCOスコアに違いはなかった。PCOスコアは種関連と糖尿病群、全体集団で全ての期間有意に増加した。術前術後の炎症がある眼と炎症がない眼のPCO形成程度に差はなかった。
要するに犬白内障で、年齢、性別、炎症の存在、白内障の原因(種関連対糖尿病性)は、PCO発症に影響しない。小型および中型犬種は、大型犬種より有意に早期にPCOを発症する。この研究で、全ての犬の眼が様式に従った時に発症することが分かったのは重要である。(Sato訳)
■日本の柴犬における緑内障と櫛状靭帯形成異常および虹彩角膜角の狭小化との関連の可能性
Possible association of glaucoma with pectinate ligament dysplasia and narrowing of the iridocorneal angle in Shiba Inu dogs in Japan
Vet Ophthalmol. 2006 Mar-Apr;9(2):71-5.
Kumiko Kato, Nobuo Sasaki, Satoru Matsunaga, Manabu Mochizuki, Ryohei Nishimura, Hiroyuki Ogawa
研究の目的は、日本の柴犬の緑内障、非緑内障眼における櫛状靭帯(PL)の形態を述べ、虹彩角膜角(ICA)の幅を測定することだった。1998年6月から2003年6月の間に柴犬114頭が東京大学の獣医センターに来院した。それらの中で46頭は緑内障、残り68頭は通常のワクチン、またはフィラリア検査で来院し、コントロール集団として使用した。完全な眼科検査および隅角鏡検査を全ての犬で実施し、PLおよびICAを隅角鏡検査および隅角写真撮影で評価した。
緑内障の46頭のうち、17頭(37%)は両側性、29頭(63%)は片側性だった。片側性緑内障29頭のうち、正常眼圧の眼のICAは2眼(7%)がわずかに狭い、12眼(41%)が狭い、15眼(52%)はクローズだった。正常圧コントロール群の中で、ICAは13頭(19%)がオープン、29頭(43%)がわずかに狭い、22頭(32%)は狭い、4頭(6%)はクローズだった。狭い、わずかに狭いICAの犬で、PLが肥厚し、しっかりしたシートを形成しているものもあった。緑内障のほとんどの犬は、ICAとPL両方変化していた。狭い、またはわずかに狭いICAは大多数の正常圧コントロール犬にも検出された。
この研究は、ICA狭小化およびPL肥厚化が日本の柴犬で一般的に見られる異常で、それらの犬が緑内障に罹患しやすいかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■オーストラリアン・ケルピードックにおける第三眼瞼の両側性結節性肉芽腫性結膜炎の治療に用いた経口ドキシサイクリン、ニコチン酸アミドおよびプレドニゾロン
Oral Doxycycline, Niacinamide and Prednisolone Used to Treat Bilateral Nodular Granulomatous Conjunctivitis of the Third Eyelid in an Australian Kelpie Dog
Vet Ophthalmol 8[5]:349-352 Sep-Oct'05 Case Report 18 Refs
Simon Hurn, Christina McCowan and Andrew Turner
5歳の避妊済メスのオーストラリアン・ケルピー・ドックが、2ヵ月にわたる顕著な第三眼瞼の両側性紅斑性肥厚の病歴で来院しました。眼の検査で、両側の第三眼瞼の表面全縁にわたる突出、ピンクから赤の不整な肥厚が明らかとなりました。その他の眼の異常所見はありませんでした。それぞれの第三眼瞼から外科的に生検材料を採取しました。組織病理学的検査で、第三眼瞼基質浸潤性のマクロファージ、プラズマ細胞、リンパ球、そして時に繊維芽細胞と好中球の存在する層が認められました。慢性肉芽腫性結膜炎と診断しました。肉眼的、組織病理学的に、この症例は以前報告された、コリー犬の第三眼瞼に見られる結節性肉芽腫性結膜炎と非常に似ております。この論文は、オーストラリアン・ケルピーにおける、第三眼瞼に発生した結節性肉芽腫性結膜炎の珍しい症例を報告しております。病態の消散は、経口ドキシサイクリン、ニコチン酸アミドとプレドニゾロンの併用で達成されました。(Dr.K訳)
■猫白内障の有病率:正常な猫2000頭、糖尿病の猫50頭、脱水状態後の猫100頭のクロスセクショナル研究結果
Prevalence of feline cataract: results of a cross-sectional study of 2000 normal animals, 50 cats with diabetes and one hundred cats following dehydrational crises
Vet Ophthalmol. 2006 Sep-Oct;9(5):341-9.
David L Williams, M Fred Heath
目的:健常な猫2000頭、糖尿病の猫50頭、脱水状態の病歴を持つ猫100頭を検眼鏡検査で評価し、白内障の有無を判定した。
素材と方法:大部分は動物病院集団で、譲渡施設、ブリーダーの猫も検査した。白内障の有病率は異なる年齢集団(年齢コホート)で判定した。白内障有病率50%(C(50))時の年齢は、過去述べられたように適合有病率曲線から間接的に判定した。C(50)は異なる性別、異なる猫種、糖尿病、慢性腎不全、慢性嘔吐、慢性下痢に関係する脱水の病歴を持つ猫で判定した。
結果:この研究の全ての健常猫に対するC(50)の平均±標準偏差は、12.7±3.4歳だった。17.5歳以上の全ての猫はある程度の水晶体不透明性が見られた。糖尿病猫のC(50)は5.6±1.9歳だった(健常猫と有意差P<0.0001)。脱水の病歴を持つ猫のC(50)は9.9±2.5歳だった(健常猫との差はほぼ統計学的有意P=0.06)。
結論:この研究で、白内障の有病率が増加する健常猫の年齢関連白内障、糖尿病猫、脱水の病歴を持つ猫に関する新しい所見を得る。(Sato訳)
■2頭の成犬の犬ヘルペスウイルス-1自然感染に関与する角膜潰瘍
Corneal ulceration associated with naturally occurring canine herpesvirus-1 infection in two adult dogs
J Am Vet Med Assoc. August 2006;229(3):376-84.
Eric C Ledbetter, Ronald C Riis, Thomas J Kern, Nicholas J Haley, Scott J Schatzberg
症例記述:3週間前に両側水晶体超音波吸引術を実施している、真性糖尿病の8歳のラブラドールレトリバーを眼瞼痙攣の急性発症で評価し、慢性免疫介在性血小板減少症の7歳ミニチュアシュナウザーを、4週間前に診断した乾性角膜炎の再評価をした。
臨床所見:樹状角膜潰瘍が2匹とも検出された。犬ヘルペスウイルス-1(CHV-1)が2頭の初回評価中に採取した角膜スワブ標本から分離され、潰瘍形成までに実施した再チェック検査中に治癒した。2頭で犬ヘルペスウイルス-1血清中和力価が検出された。口腔咽頭および生殖器スワブ標本からウイルス分離結果は2頭で陰性だった。分離されたウイルスは、免疫蛍光検査、透過型電子顕微鏡、PCR分析、遺伝子塩基配列決定によりCHV-1と確認された。PCR分析の陰性コントロールとウイルス分離には、それぞれ眼球外疾患のない50頭の結膜スワブ標本、角膜潰瘍を持つ50頭の角膜スワブ標本を含めた。
治療と結果:イドクスウリジンまたはトリフルリジンの点眼および免疫抑制剤の局所投与中止後病変は解消した。
臨床関連:著者の知るところでは、これはCHV-1自然感染に関与する角膜潰瘍の最初の報告で、CHV-1不顕性感染の局所眼科再発を示すのかもしれない。CHV-1と確認された分離ウイルス、その形態、抗原性、遺伝子型は、全身性CHV-1感染で死亡した子猫から分離されたCHV-1のそれと同様だった。(Sato訳)
■カレン前頭洞有弁緑内障バイパス:原発性緑内障の犬の予備所見
Cullen Frontal Sinus Valved Glaucoma Shunt: Preliminary Findings in Dogs with Primary Glaucoma
Vet Ophthalmol 7[5]:311-318 Sep-Oct'04 Prospective Study 36 Refs
Cheryl L. Cullen
目的:原発性緑内障の犬の正常な眼内圧(IOP)と視力の維持に関し、新しく専門的に製造された前頭洞有弁緑内障バイパスの効果を評価する
方法:原発性緑内障と診断された3頭の犬の3つの眼で前向き臨床研究を実施した。カレン前頭洞有弁緑内障バイパスを各緑内障の眼球に埋没した。術後にネオマイシン/ポリミキシンB/0.1%デキサメサゾンおよび0.03%フルルビプロフェン6時間ごとの点眼処置を8-12週かけて徐々に減らしていき、メロキシカム0.1mg/kg24時間ごとの経口投与を7-10日間処置した。術後にIOP、眼房内バイパス位置と明白な開存性、視力を4日まで (n=3眼)、10日(n=2眼)まで、それから36週の再検査期間まで(n=1眼)1日2回チェックした。術後合併症を記録し、写真撮影した。
結果:追加の抗緑内障療法もなく、全てのバイパス形成眼球(範囲10-29mmHg;24時間時平均=16.mmHg;36週時IOP=23mmHg)で正常なIOPを術後2日(3/3眼)、8週(2/2眼)、36週(1/1眼)で維持した。追跡期間中全てのバイパス形成眼球は明所視、バイパス位置、開存性を維持した。術後合併症は、軽度房水フレアとフィブリン(術後3-10日間n=3眼);眼房内バイパスのフィブリンによる閉塞(2日眼と4日目n=1眼);部分的前房チューブ突出(4日目n=1眼)、限局的角膜浮腫(18週目n=1)だった。前頭洞付近のシリコンチューブへ眼房内に組織プラスミノーゲン活性薬を注射するとフィブリンバイパス閉塞を効果的に解消した。
結論:犬原発性緑内障の管理にカレン前頭洞有弁緑内障バイパスは効果を約束できる。(Sato訳)
■シベリアンハスキーの眼瞼好酸性肉芽腫
Eyelid eosinophilic granuloma in a Siberian husky.
J Small Anim Pract 46[1]:31-3 2005 Jan
Vercelli A, Cornegliani L, Portigliotti L
犬の好酸性肉芽腫(CEG)はまれな皮膚の疾患で起源は不明である。シベリアンハスキー、キャバリアキングチャールズスパニエル、時おり他の犬種で報告されている。病変は大部分口腔に位置する結節またはプラークからなる。シベリアンハスキーの眼瞼にできたCEGの単一皮膚結節病変症例を紹介する。経口グルココルチコイド投与で完全寛解した。(Sato訳)
■犬の眼内圧における、首輪やハーネスによる頚部圧迫の影響
Effects of the application of neck pressure by a collar or harness on intraocular pressure in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 May-Jun;42(3):207-11.
Amy M Pauli, Ellison Bentley, Kathryn A Diehl, Paul E Miller
首輪やハーネスで牽引中の犬の眼内圧(IOP)に対する影響を、26頭の犬の51眼において評価しました。首輪やハーネスに対し、抵抗中生じた各犬の力を測定しました。首輪やハーネスによる相当圧を適用している間に、眼内圧測定値を得ました。首輪によって圧力を加えられている時、眼内圧は有意に基準値より増大しましたが、ハーネスによる影響はありませんでした。研究結果より、虚弱、あるいは薄い角膜や緑内障、または有害となりえるIOP増大となる病態を持つ犬は、特に運動や活動時には、首輪の代わりにハーネスを装着するべきであります。(Dr.K訳)
■犬における自発性慢性角膜上皮欠損および水疱性角膜症に関する潰瘍性角膜炎の治療で2種類の硫酸コンドロイチン点眼液の効果
Efficacy of two chondroitin sulfate ophthalmic solutions in the therapy of spontaneous chronic corneal epithelial defects and ulcerative keratitis associated with bullous keratopathy in dogs
Vet Ophthalmol. 2006 Mar-Apr;9(2):77-87.
Eric C Ledbetter, Robert J Munger, Rachel D Ring, Janet M Scarlett
目的:犬の自発性慢性角膜上皮欠損(SCCED)および水疱性角膜症に関する潰瘍性角膜炎の治療における2種類の抗菌-硫酸コンドロイチン点眼液の効果を評価する
動物: SCCEDの犬80頭と水疱性角膜症に関与する潰瘍性角膜炎の犬14頭
方法:非付着性上皮の手動デブリードメント後、トブラマイシンまたはシプロフロキサシンを含有する硫酸コンドロイチン点眼処置を行った。2週間隔で4週間まで再評価を行った。
結果:処置開始から2週間後、SCCEDの53.6%の眼と水疱性角膜症に関する潰瘍性角膜炎の17.6%の眼が治癒していた。4週間後、SCCEDの81%、水疱性角膜症に関する潰瘍性角膜炎の23.5%が治癒していた。トブラマイシン硫酸コンドロイチン点眼群とシプロフロキサシン群の治癒率に統計学的有意差は認められなかった。研究中にSCCEDの2頭(トブラマイシン硫酸コンドロイチン点眼1頭、シプロフロキサシン硫酸コンドロイチン点眼1頭)は、無菌性角膜基質膿瘍を形成した。
結論:非付着上皮の手動デブリードメントと合わせて抗菌剤-硫酸コンドロイチン点眼療法は、他で公表されているSCCEDの内科、外科治療に匹敵するが、それら化合物が手動デブリードメント単独療法よりも効果があるかどうかはあいまいである。それらの点眼液は、水疱性角膜症に関する潰瘍性角膜炎の治療に無効である。2症例の角膜基質膿瘍形成の意義はこの時点で不明で、さらなる調査が必要と思われる。(Sato訳)
■犬の眼内圧、流出能力、動脈圧、脈拍数に対するニプラジロール、マレイン酸チモロール点眼の影響
Effects of Topical Nipradilol and Timolol Maleate on Intraocular Pressure, Facility of Outflow, Arterial Blood Pressure and Pulse Rate in Dogs
Vet Ophthalmol 7[3]:147-150 May-Jun'04 Prospective Study 19 Refs
ニプラジロールはアルファ1ベータブロッカーで、人で使用される他のベータブロッカーよりも副作用が軽度である。この研究で犬に対するニプラジロールの効果を、マレイン酸チモロールのものと比較した。12頭の臨床上正常な犬(9頭雑種、2頭ビーグル、1頭秋田犬)を使用した。28日間0.25%ニプラジロール、または0.5%マレイン酸チモロールを点眼した。眼内圧(IOP)は投与前と、投与後2、4、7、14、21、28日目に測定した。血圧、脈拍数、水性涙液流出係数(C-値)も投与前、投与後7、14、21、28日目に測定した。
ニプラジロール、マレイン酸チモロール共に2日目から研究終了時までIOPを有意に低下させた。ニプラジロールによるIOPの低下は、マレイン酸チモロールと同等だった。ニプラジロール投与期間中、血圧、脈拍数に有意な変化を認めなかった。ニプラジロール投与14日目からC-値の有意な上昇を認めたが、マレイン酸チモロール投与期間にはC-値の有意な変化は認められなかった。ニプラジロールによるIOPの低下は、既存のベータアドレナリン拮抗剤マレイン酸チモロールと同様であったが、ニプラジロールは犬の全身性副作用にほとんど関与しなかった。ニプラジロールは犬の緑内障の有効な治療薬剤と思われる。(Sato訳)
■一般化した進行性網膜萎縮の原因を解明する研究のレビュー
A review of research to elucidate the causes of the generalized progressive retinal atrophies.
Vet J. 1998 Jan;155(1):5-18.
Petersen-Jones SM.
進行性網膜萎縮(PRA)は、人の網膜色素変性症(RP)のような血統犬における盲目の主な遺伝的原因である。PRAはいくつかの異なったフォームが既に認識されており、さらに調査すべきいくつかのフォームが残っているが、PRAはRPのように遺伝子異質性を示しています。分子遺伝学における進歩によって、杆状―錐体形成不全タイプ1に分類されるアイリッシュセッターのPRAの早期発現フォームの原因となる遺伝子突然変異の識別が可能となりました。かかわった遺伝子は視覚の形質導入カスケードのタンパク質をエンコードする環状グアノシン1リン酸ホスホジエステラーゼのベータサブユニットである。
PRAの他の犬種におけるこの遺伝子の調査で、同じ変異を伴うさらなる犬種は見つかっていない。調査された他の遺伝子は視覚の形質導入カスケードにおけるこれらのエンコードされた他の蛋白や光受容体得意構造蛋白を含む。調査された他の遺伝子は視覚形質導入カスケードと光受容器の特定の構造蛋白質のために他のタンパク質をコード化するものを含んでいます。変異を引き起こすさらなる疾患はまだ認識されていない。近年、犬のゲノムマッピングにおける進歩でPRA遺伝子の予備的なマッピングを容認するのに十分なマーカーが作成されている。既に、PRAの最も一般的なフォームへのリンケージである進行性杆状―錐体変性(prcd)は確立された。prcdはプードル、コッカースパニエル、ラブラドル・レトリーバーおよび他の犬種で起こる。prcdが繋がっているマーカーは、疾患の座のためのDNAベースの検査の発展を可能にし、遺伝子突然変異を引き起こす実際の病気の識別を容易にするはずである。
この数年間にわたって、いくつかのPRAを引き起こしている遺伝子突然変異の識別を期待することができます。この記事は原因となる遺伝子突然変異を同定し、病気の過程を解明するような犬のPRAを特徴付けようとする研究を再検討するでしょう。(Dr.Kawano訳)
■ビションフリーゼにおける白内障の遺伝
Inheritance of Cataract in the Bichon Frise
Vet Ophthalmol 8[3]:203-205 May-Jun'05 Short Communication 8 Refs
M. R. Wallace, E. O. MacKay, K. N. Gelatt and Stacy E. Andrew
目的:ビションフリーゼにおける白内障の遺伝様式を判定する
動物:10年以上スリットランプ生体顕微鏡および間接検眼鏡検査を用いて検査した61頭の家系図で36頭はビションフリーゼと密接な血のつながりがあった
結果:61頭の血縁犬のうち36頭は繰り返し検査した。12頭は白内障と診断された(3頭オス、9頭メス)。白内障犬は白内障でない両親、片親が白内障で片親が非罹患の交配で起こった。白内障発現時期は18-160ヶ月だった。利用可能な情報は常染色体劣性形質の遺伝であると示唆する。
結論:白内障はビションフリーゼで常染色体劣性形質により遺伝すると思われる。また、白内障X白内障の交配で常染色体劣性遺伝を確認する必要がある。(Sato訳)
■ブラストミセスdermatitidisによる眼内炎で、治療したイヌと無治療のイヌの組織病変の比較:36症例
Comparison of Histologic Lesions of Endophthalmitis Induced by Blastomyces dermatitidis in Untreated and Treated Dogs: 36 Cases (1986-2001)
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1317-1322 Apr 15'04 Retrospective Study 34 Refs
Diane V H. Hendrix, DVM, DACVO; Barton W Rohrbach, VMD, MPH, DACVPM; Philip N. Bochsler, DVM, PhD, DACVP; Robert V. English, DVM, PhD, DACVO
目的:無処置、またはイトラコナゾールで治療したブラストミセス症のイヌの眼で病原体の普及、組織学変化を比較する
構成:回顧的研究
動物:ブラストミセス症が関与する眼内炎のイヌ36頭
方法:医療記録から、徴候、眼科検査結果、イトラコナゾール投与期間を抜粋した。眼の組織切片で真菌の行き渡り、生存性(すなわち発芽)を検査した。炎症の程度を評価するのに、スコアリングシステムを考案した。
結果:臨床的に、全ての眼は盲目で、重度眼内炎の症状があった。組織学的に、炎症のタイプ、程度とブラストミセスdermatitidisの普及に、イトラコナゾール投与犬、無処置犬、異なる投与期間(4-14、15-28、29-72日)の犬で有意差は見られなかった。眼科組織同様、眼の無血管腔の病原体の複製についても、処置、無処置犬で同じだった。水晶体破裂は、29個中12個(41%)の眼に見られた。
結論と臨床関連:自然発生ブラストミセス症のイヌの眼の炎症持続は、イトラコナゾールの投与期間にかかわらず、B. dermatitidisの持続的存在によるようだ。一般に、過去に報告されなかった組織所見のレンズ包の破裂は、白内障形成と持続的炎症に寄与するかもしれない。(Sato訳)
■猫における緑内障の原因として、推定されている房水誤誘導症候群:32症例(1997-2003)
Putative Aqueous Humor Misdirection Syndrome As a Cause of Glaucoma in Cats: 32 Cases (1997-2003)
J Am Vet Med Assoc 227[9]:1434-1441 Nov 1'05 Retrospective Study 35 Refs
Jessica M. C. Czederpiltz, DVM; Noelle C. La Croix, DVM, DACVO; Alexandra van der Woerdt, DVM, DACVO; Ellison Bentley, DVM, DACVO; Richard R. Dubielzig, DVM, DACVP; Christopher J. Murphy, DVM, PhD, DACVO; Paul E. Miller, DVM, DACVO
目的:猫における房水誤誘導症候群(AHMS)の臨床的、形態学的様相を特徴づけ、罹患した猫の詳細な解析に基づいて、その病因に関する仮説を提供することです。
計画:回顧的研究
動物:32頭の猫(40眼)
手順:1997年7月から2003年8月に、AHMSが診断された猫の医療記録を再調査しました。確かな猫で、A-スキャン、B-スキャン、そして高解像超音波検査;光線検影法;ビデオ角膜測定;赤外線中和ビデオ検影法に加え、フラッシュ固定区画の解析結果、そして眼球摘出の組織学的検査などの、付加的な診断検査結果も入手しました。
結果:猫は一様に浅い前房、無傷のレンズ毛様小帯、開放虹彩角膜角の狭小を呈しておりました。罹患した猫の平均年齢は11.7才(範囲4才から16才)、メス猫よりオス猫の方が有意に罹患しやすい傾向でした。臨床徴候には、散瞳、対光反射低下、威嚇反射低下、そして盲目などがありました。視神経に対する緑内障変化、初発白内障、そして最後に盲目が認められました。眼内圧は、40眼中32眼で、>20mmHg(範囲、12から58mmHg)でした。超音波検査と組織学的検査から、不明瞭な硝子体前面がレンズと毛様体間に介入し、部分的毛様体裂溝虚脱、空洞化した硝子体領域があることを明らかでした。様々な治療法が用いられました。
結論と臨床関連:AHMSは高齢の、特にメス猫に罹患し、結果として、失明、眼痛など、緑内障となることが考えられます。炭酸脱水素酵素阻害剤の局所投与が眼内圧を低下させました。(Dr.K訳)
■白内障手術を行った犬における点眼後のシプロフロキサシンおよびオフロキサシン眼房水濃度
Ciprofloxacin and Ofloxacin Aqueous Humor Concentrations After Topical Administration in Dogs Undergoing Cataract Surgery
Vet Ophthalmol 8[3]:181-187 May-Jun'05 Retrospective Study 41 Refs
Audrey W. Yu-Speight, Thomas J. Kern and Hollis N. Erb
目的:白内障手術を行った犬において、シプロフロキサシンまたはオフロキサシン術前点眼投与で、一般的な眼感染のMIC90を眼房水薬剤濃度が超過するかどうかを調査する
方法:0.3%シプロフロキサシン点眼処置を12頭、0.3%オフロキサシン点眼処置を13頭に手術前夜1回行い、そして手術直前2時間、15分毎にシプロフロキサシンまたはオフロキサシンを1滴点眼した。
切開直前に各眼の眼房水サンプルを採取し、-70度で凍結した。最初の眼のサンプル(S1)は2回目の眼のサンプル(S2)よりも点眼処置時間近くで採取した。サンプルはノースカロライナ州立大学(NCSU)臨床薬理研究所で高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により分析した。
結果:シプロフロキサシン患者で、S1濃度は0.03-0.69(中央値0.17)μg/ml、S2濃度は0.09-0.95(中央値0.36)μg/mlだった。眼房水濃度はストレプトコッカスsp.のMIC90を超えなかった。スタフィロコッカスsp.またはコリネバクテリウムsp.に対するMIC90を超えた眼はほとんどなかった(1/12OU)。E.coliに対するMIC90については中程度の眼が超過した(5/12S1;8/12S2)。
オフロキサシン患者で、S1濃度は0.48-2.81(中央値1.05)μg/ml、S2濃度は0.45-3.63(中央値1.30)μg/mlだった。ストレプトコッカスsp.またはコリネバクテリウムsp.に対するMIC90を超えた眼はほとんどなかった(<2/13OU)が、スタフィロコッカスsp.に対するMIC90を超えた眼は中程度(7/13S1;9/13S2)で、バシラスsp.に対するMIC90はほとんどの眼が超過した(12/13OU)。全眼E.coliに対するMIC90を超過した。
結論:シプロフロキサシンに比べ、オフロキサシンは高い角膜浸透性と一般的な眼感染のMIC90を超過する能力を持ち、犬の白内障患者にたいするより適切な予防選択だと思われる。(Sato訳)
■イヌの眼内圧、流出能力、動脈血圧、脈拍数に対するニプラジロール、マレイン酸チモロール局所投与の影響
Effects of Topical Nipradilol and Timolol Maleate on Intraocular Pressure, Facility of Outflow, Arterial Blood Pressure and Pulse Rate in Dogs
Vet Ophthalmol 7[3]:147-150 May-Jun'04 Prospective Study 19 Refs
S. Maehara, K. Ono, N. Ito, K. Tsuzuki, T. Seno, T Yokoyama, K. Yamashita, Y. Izumisawa and T. Kotani
ヒニプラジロールは、ヒトで使用される他のベータブロッカーよりも副作用が軽度なアルファ1ベータブロッカーである。この研究で、イヌに対するニプラジロールの効果を、マレイン酸チモロールの効果と比較した。12頭の臨床上正常なイヌ(9頭雑種、2頭ビーグル、1頭秋田)を使用した。28日間0.25%ニプラジロール、または0.5%マレイン酸チモロールを点眼した。眼内圧を2、4、7、14、21、28日目の投与前後に測定した。血圧、脈拍数、水溶液流出係数(C-値)も、7、14、21、28日目の投与前後に測定した。2日目から研究期間終了までの眼内圧は、ニプラジロール、マレイン酸チモロール共有意に低かった。ニプラジロールは、マレイン酸チモロールと同等に眼内圧を低下させた。ニプラジロール投与研究期間を通し、血圧、脈拍数に有意な変化を及ぼさなかった。C-値は、ニプラジロール投与14日目から有意な上昇を見せたが、マレイン酸チモロール投与の研究期間中は有意な変化を示さなかった。ニプラジロールによるイヌの眼内圧の低下は、既存のベータ-アドレナリン作用拮抗剤マレイン酸チモロールによるものと同様だが、ニプラジロールは、わずかな全身性副作用に関与した。ニプラジロールは、イヌの緑内障の治療で有効な薬剤である。(Sato訳)
■乾性角結膜炎の犬の涙産生に対する0.02%タクロリムス水性懸濁液点眼の効果
Effect of Topical 0.02% Tacrolimus Aqueous Suspension on Tear Production in Dogs with Keratoconjunctivitis Sicca
Vet Ophthalmol 8[4]:225-232 Jul-Aug'05 Original Article 53 Refs
Andrew Berdoulay, Robert V. English and Brad Nadelstein
目的:乾性角結膜炎(KCS)の犬の涙産生に対し0.02%タクロリムス水性懸濁液の効果を調査する
動物:KCSと診断された犬105頭(ドライアイの臨床症状とシルマー涙試験(STT)10mm/min)。わずかにSTTが低下した目(11<15mm/min)およびドライアイの臨床症状も評価した。
方法:調査は2つの部分からなり、初回効果研究とその後の二十盲目対照研究だった。効果研究で原発性KCSの犬の涙産生に対するタクロリムス(以前はFK-506)点眼の効果を評価した。犬を4つのカテゴリーに入れた:1)涙刺激療法無処置の初回STT<10mm/minの59眼(38頭)、2) 涙刺激療法無処置の初回STT11<15mm/minの28眼(21頭)、3)CsA療法でうまく維持している30眼(15頭)、4)CsA療法に反応がない47眼(24頭)。STTと臨床症状を処置前と、1日2回のタクロリムス投与を開始6-8週目に評価した。カテゴリー3、4でCsAに代えてタクロリムスを使用した。対照研究では原発性KCS20頭の涙産生における、水性キャリア単独の投与vs.タクロリムス水性懸濁液点眼の効果を比較した。
結果:効果研究で、タクロリムス投与後カテゴリー1で84.7%、2で25.0%、3で26.7%、4で51.1%の眼がSTT>5mm/min増加した。初回STT(<2mm/min)が極端に低い眼の83%がタクロリムス投与後>5mm/min増加した。対照研究で、STTが>5mm/min増加したイヌは、タクロリムスを投与した場合7/10頭(14/20眼)で、水性キャリアのみ投与した10頭にはいなかった。水性キャリアのみ投与したイヌでその後タクロリムスを投与すると、9頭(18/20眼)のSTTが>5mm/min増加した。
結論:KCSの犬に0.02%タクロリムス水性懸濁液1日2回投与すると効果的に涙産生を増加させる。タクロリムスはKCS治療でCsA点眼の代替となるはずで、CsA点眼で十分反応が出ない犬に効果的かもしれない。(Sato訳)
■イヌの正常、白内障の水晶体のB-モード超音波検査による水晶体形態測定
Lens Morphometry Determined by B-mode Ultrasonography of the Normal and Cataractous Canine Lens
Vet Ophthalmol 7[2]:91-95 Mar-Apr'04 Original Article 15 Refs
David L. Williams
目的:正常な水晶体のイヌの眼と、未成熟、成熟、先天性、前部極性、糖尿病白内障のイヌの眼の軸方向レンズの厚み、前房の深さ、軸方向眼球長を測定すること
方法:正常なイヌ50頭と、白内障のイヌ100頭の水晶体超音波吸引前のスクリーニング方法として、B-モード超音波検査を実施した。水晶体の厚み、前房の深さ、眼球の直径を、軸方向B-モード超音波像で判定した。群ごとの統計学的比較を有意レベルP<0.05の分散分析と多変量分析で実施した。
結果:軸方向眼球長は、先天性白内障の若いイヌのより小さな眼球を除いて群間に統計学的有意差を示さなかった。糖尿病犬(8.4±0.9mm)の軸方向のレンズの厚みは、未成熟白内障(6.4±0.8mm)、成熟白内障(7.4±0.9mm)と統計学的有意差を示したが、それらの群で厚みの変動については各々有意差を示さなかった。前眼房の深さは、糖尿病性白内障の眼(2.9±0.1mm)が、正常な眼(3.8±0.1mm)、未成熟白内障(3.5±0.1mm)、成熟白内障(3.2±0.6mm)より有意に低下したが、それら群の前眼房の深さの変動は、各々有意差を示さなかった。
結論:糖尿病性白内障の水晶体は、他の眼と比べ、軸方向の厚みの有意な増加が認められたが、成熟白内障の水晶体は、軸方向の厚みの増加傾向を示し、未成熟白内障は厚みが減少する傾向を認めた。白内障病理生物学に対する過去の研究は、水晶体タンパク喪失のため、未成熟白内障の錐状体の厚みは減少し、膨張のため成熟白内障の厚みは増加すると示唆しているが、これはイヌの水晶体のそれらの変化を述べた最初の研究である。(Sato訳)
■犬の白内障超音波吸引と眼内レンズ装着時の前眼房微生物汚染
Microbial Contamination of the Anterior Chamber During Cataract Phacoemulsification and Intraocular Lens Implantation in Dogs
Vet Ophthalmol 7[5]:327-334 Sep-Oct'04 Prospective Study 40 Refs
Eric C. Ledbetter, Nicholas J. Millichamp and Joan Dziezyc
この研究目的は、白内障超音波吸引と眼内レンズ装着手術時に、前眼房への生存可能な微生物の術中汚染頻度を判定し、患者の眼球外、鼻腔微生物叢に対する汚染微生物の関連を評価する。また、術後前眼房培養陽性の発生に対する患者の病歴、超音波吸引法の種々の影響も調査した。
選択的白内障超音波吸引と眼内レンズ装着に来院した13頭の犬の22個の眼を調査した。術前に結膜、眼瞼縁、外鼻孔、吻側鼻腔の微生物サンプルを採取した。術後前眼房液を吸引した。サンプルを好気/嫌気性細菌培養と抗菌剤感受性試験、マイコプラズマ培養、真菌培養に供した。手術終了時に採取した22.7%の眼の前眼房吸引物で、最低1つの微生物が培養陽性だった。3種の好気性菌と3種の真菌が前眼房吸引物から分離された。前眼房から分離された2種の真菌と1種の細菌は同一の型で、薬剤耐性記録は患者の結膜や眼瞼縁から発見された微生物と同様だった。調査した患者や術的変動値に対する汚染頻度の統計学的有意差は認められなかった。
種々の細菌や真菌を伴う前眼房の術中汚染は、白内障超音波吸引、眼内レンズ装着を行った犬に一般的に起こり、眼球外細菌叢がそれら微生物汚染の源になっているものもいると結論付ける。この汚染は、調査した患者や手術変動値とは別のものである。(Sato訳)
■イヌの眼病用10%フェニレフリン点眼の心血管効果
Cardiovascular Effects of Topical Ophthalmic 10% Phenylephrine in Dogs
Vet Ophthalmol 7[1]:41-46 Jan-Feb'04 Prospective Study 39 Refs
P Herring, J. D. Jacobson and J. P Pickett
目的:イヌの収縮期動脈圧(SAP)、拡張期動脈圧(DAP)、平均動脈圧(MAP)、脈拍数(PR)、心電図(ECG)に対し、眼病用10%フェニレフリン点眼がどう影響するのかを評価する
動物研究:臨床上正常な9頭のイヌ
方法:起きているイヌの足背動脈に動脈カテーテルを設置し、ECGの導線を装着した。15分馴れさせ、基本PR、SAP、DAP、MAPを5分毎に20分間記録した。2つの治療群(8頭ずつ)で研究した。1群:各眼に1回フェニレフリンを1滴落とす。2群:各眼に5分間隔で3回フェニレフリンを1滴落とす。投与後、PR、SAP、DAP、MAPを5分毎に90分間記録した。統計プログラムを織り交ぜた方法で、時間に対する一次、二次傾向をはかる変化の再測定分析を行った。
結果:1群:PRは時間に対し、有意な二次曲線的低下を示した(P=0.0051)。SAP(P=0.0002)、MAP(P=0.0131)、DAP(P=0.0001)は時間に対し直線的に上昇した。2群:PRは時間に対し、有意な二次曲線的低下を示した(P=0.0023)。時間に対するSAP(P=0.0324)、MAP(P=0.0103)、DAP(P=0.0131)の有意な二次曲線的上昇を示した。
結論:正常犬への10%フェニレフリン点眼投与は、動脈血圧の上昇や反射性徐脈を起こす。(Sato訳)
■犬の乾性角結膜炎と慢性表在性角膜炎に対する局所ピメクロリムスの効果:予備的研究の結果
The Effect of Topical Pimecrolimus on Keratoconjunctivitis Sicca and Chronic Superficial Keratitis In Dogs: Results From An Exploratory Study
Vet Ophthalmol 8[1]:39-46 Jan-Feb'05 Exploratory Study 18 Refs
Barbara Nell, Ingo Walde, Andreas Billich, Peter Vit and Josef G. Meingassner
目的:ピメクロリムスは、T細胞と肥満細胞の活性に対し選択的に干渉し、炎症サイトカインの産生を抑制するアスコマイシン誘導体です。この研究は、犬における乾性角結膜炎(KCS)と慢性表在性角膜炎(CSK)の治療で、実験的なピメクロリムスの眼科製剤の効果を評価しました。
動物と手順:KCSの犬8頭とCSKの犬6頭。犬の品種は様々で、病態は慢性的、治療が不成功だったものです。患眼は、試験的に作製したコーンオイルを基剤とした1%ピメクロリムス製剤1滴を1日3回点眼しました。シルマー・ティアテスト(STT)、眼脂、結膜炎、角膜炎症細胞浸潤および瘢痕、そして満足度などのパラメーターを評価しました。
結果:1%ピメクロリムスの効果は、KCSの犬8頭中6頭において、明白(炎症所見なし、4mm/min以上のSTT値増加)、または中程度(軽度な角膜/結膜炎の所見、3-4mm/minのSTT値増加)でした。CSKの6頭中4頭において、効果は明白(角膜瘢痕なし、角膜に浸潤した血管結合組の退行)、あるいは中程度(軽度な角膜瘢痕、パンヌスの明瞭な退行)のいずれかでした。14頭中4頭で、治療に対する反応が不満足でした。
結論:この予備的研究の結果は、局所1%ピメクロリムスが、犬における乾性角結膜炎と慢性表在性角膜炎に対する、新しい効果的治療法と考えられると言うことを示唆しております。(Dr.K訳)
■高血圧網膜症の猫と健康なネコの血圧評価
Blood pressure assessment in healthy cats and cats with hypertensive retinopathy.
Am J Vet Res 65[2]:245-52 2004 Feb
Sansom J, Rogers K, Wood JL
目的:ネコの高血圧網膜症と高収縮期、拡張期、平均動脈圧との関連が存在するか判定する
動物:181頭のネコ
方法:非侵襲性オシロメーターにより収縮期、拡張期、平均動脈圧を測定した。様々な年齢群の健康なネコの血圧測定値範囲を判定した。収縮期、拡張期、平均動脈圧;高血圧網膜症;甲状腺機能亢進症;左室心肥大;慢性腎不全;血清生化学異常との関連を判定した。
結果:全ての血圧測定値は、健康なネコで年齢と共に増加した。高血圧網膜症の頻度は、年齢、血圧と共に増加し、特に、収縮期血圧168mmHg以上のネコで認められた。メスネコ、10歳以上、不妊した猫で高血圧網膜症のリスクが増加した。血圧、特に収縮期血圧が増加したとき、慢性腎不全のリスクも増加した。
結論と臨床関連:高血圧網膜症は、10歳以上のネコで一般的によくみられ、非侵襲性オシロメーターで測定した収縮期血圧168mmHg以上と関連した。(Sato訳)
■北アメリカの犬の原発性犬種関連白内障の罹患率
Prevalence of Primary Breed-Related Cataracts in the Dog in North America
Vet Ophthalmol 8[2]:101-111 Mar-Apr'05 Retrospective Study 36 Refs
Kirk N. Gelatt and Edward O. MacKay
研究目的は、1964-2003年の間に北アメリカの獣医教育病院に来院した犬の白内障罹患率を調査することだった。1964-2003年の間に獣医教育病院に白内障で来院した全ての犬に関し、白内障罹患率を判定するため回顧的に調査した。10年ごとに犬種、性別、白内障発現時期を比較した。
10年毎の白内障を呈した犬の罹患率は、0.95%(1964-73)、1.88%(1974-83)、2.42%(1994-2003)、3.5%(1984-93)だった。40年間で白内障を呈した犬の頭数は39299頭だった。この患者集団で1964-2003年の白内障形成罹患率増加は、約255%だった。雑種犬で見られた基準1.61%以上を示した白内障に罹患した犬種は59種だった。
白内障罹患率が高かった犬種は、スムースフォックステリア(11.70%)、ハバニーズ(11.57%)、ビションフリーゼ(11.45%)、ボストンテリア(11.11%)、ミニチュアプードル(10.79%)、シルキーテリア(10.29%)、トイプードル(10.21%)だった。40年で白内障の犬の頭数が多かった犬種は、ボストンテリア(11.11%)、ミニチュアプードル(10.79%)、アメリカンコッカスパニエル(8.77%)、スタンダードプードル(7.00%)、ミニチュアシュナウザー(4.98%)だった。白内障の性別による比率は限られた犬種で見られるように思われた。
白内障の診断を受けた年齢は、犬種ごとに変化した。雑種基準集団で、4-7歳に白内障形成の頻度が最も高かった。犬集団で白内障形成は最もよく見られる眼疾患で、約60犬種は雑種群の罹患率を上回っていた。白内障罹患率もほとんどの純血種で年齢による影響を受け、7-15歳の雑種犬集団の16.80%が侵される。犬の全体、および年齢関連白内障罹患率は人のそれと非常に似ていると思われる。(Sato訳)
■臨床上正常な犬における眼科用塩酸プロパラカイン0.5%点眼液の複数投与法の効果と効果の持続時間
Duration of effect and effect of multiple doses of topical ophthalmic 0.5% proparacaine hydrochloride in clinically normal dogs.
Am J Vet Res 66[1]:77-80 2005 Jan
Herring IP, Bobofchak MA, Landry MP, Ward DL
目的:臨床上正常な犬における角膜感受性に対する0.5%塩酸プロパラカインの眼科点眼の複数投与量の効果と効果持続時間を判定する
動物:8頭の臨床上正常な犬
方法:2×2(期間×処置)交叉研究で犬をランダムに振り分けた。処置は眼科用0.5%プロパラカイン局所点眼(1滴または1分間隔で2滴)とした。処置は両眼に行った。コシェ-ボネ触覚計で角膜触覚閾値(CTT)を角膜投与前、投与後1分、5分、5分間隔でその後90分まで測定した。
結果:1滴群の処置後から45分まで、2滴群の処置後55分までは、処置前のCTT値と有意な違いが見られた。コシェ-ボネ触覚計を使用して測定したとき、投与後30、35、40、45、50分目で1滴の効果と比較して2滴でより有意な麻酔効果が認められた。1滴の最大麻酔効果持続は15分、2滴で25分だった。
結論と臨床関連:この研究の犬で0.5%プロパラカインの点眼による角膜麻酔効果の持続時間は、他に報告されたものよりもかなり長かった。0.5%プロパラカインの連続投与は、角膜麻酔効果の持続時間と効力を増加させる。(Sato訳)
■白内障手術後の眼内圧の発生:50頭のイヌの前向き研究(1998-2000)
Intraocular Pressure Development after Cataract Surgery: A Prospective Study in 50 Dogs (1998-2000)
Vet Ophthalmol 6[2]:105-112 Jun'03 Prospective Study 24 Refs
* Sabine Chahory, Bernard Clerc, Julie Guez, Moez Sanaa
目的:50頭のイヌで、白内障手術後眼内圧(IOP)の経過を研究する
構成:前向き研究
動物:術前眼圧亢進のない50頭のイヌを白内障手術に選択した
方法:全頭の白内障手術を行った。25頭は用手カプセル外摘出、25頭は水晶体超音波吸引術。各イヌで、眼内圧を術前、術後1、3、5、18時間、1週間、1ヶ月目に測定した。
結果:2つの術式で平均眼内圧の有意差は各測定時間で有意差がなかった。9頭は術後5時間まで高圧(IOP>25mmHg)を示した。術後高圧の発生は、用手カプセル外摘出(16%)vs超音波吸引(20%)で有意差はなかった。平均IIOPの低下(8.49mmHgvs10.91mmHg)が術後1時間で観察され、それから術後3、5時間で増加した(それぞれ12.3と13.32mmHg)。術後18時間、1週間、1ヶ月で平均IOPは低下した。それぞれ平均IOPは10.38、10.38、8.84mmHgだった。
結論:この研究で術後高圧の発生は高くなかった。しかし、白内障手術後最初の数時間の追跡IOP調査で、網膜、眼神経の合併症を避けるため、必要ならば降圧治療も必要である。(Sato訳)
■猫の瞬膜腺脱出3例
Three cases of prolapse of the nictitans gland in cats
Veterinary Ophthalmology
Volume 7 Issue 6 Page 417 - November 2004
Sabine Chahory*, Manuela Crasta, Stefania Trio and Bernard Clerc*
抄録
瞬膜腺脱出を起こした成猫3症例を報告する。バーミーズ、ペルシャ、家猫短毛種の3種が罹患した。全症例、自発的に発症し、他の眼科症状は認められなかった。Morganポケット法を用い、腺の外科的環納を実施した。良い美容結果が得られ、再発はなかった。(Sato訳)
■緑内障でない犬で眼内圧に対するヒドロコルチゾン経口投与の影響
Effect of orally administered hydrocortisone on intraocular pressure in nonglaucomatous dogs
Veterinary Ophthalmology
Volume 7 Issue 6 Page 381 - November 2004
Ian P. Herring*, Erin S. Herring* and Daniel L. Ward
抄録
目的:正常眼内圧犬の眼内圧(IOP)に対する経口ヒドロコルチゾンの影響を判定する
動物:正常圧犬の17の眼
方法:治療(n=9)、コントロール(n=8)に犬をランダムに振り分けた。5週間にわたり治療群には、8時間毎にヒドロコルチゾン3.3mg/kg経口投与し、コントロール群には8時間毎にプラセボのゼラチンカプセルを経口投与した。圧平眼圧測定を全頭治療前に両眼で行い、その後ヒドロコルチゾン投与中5週間で1週間に1回行った。
結果:投与期間中右眼(P=0.1013)、左眼(P=0.1157)に治療の有意な影響は認めず、右眼(P=0.9456)または左眼(P=0.3577)に週ごとの有意な相互作用もなかった。両群、投与期間中IOPの有意な上昇は右眼、左眼ともに認められず、投与に無関係だった。
結論:ヒドロコルチゾンの経口投与は、5週間投与しても非緑内障犬でIOPの有意な上昇を起こさない。(Sato訳)
■正常な犬猫のシルマー涙液試験で測定した涙産生に対するトロピカミド点眼の影響
Effect of Topical Tropicamide On Tear Production as Measured by Schirmer's Tear Test in Normal Dogs and Cats
Vet Ophthalmol 6[4]:315-320 Dec'03 Original Study 28 Refs
D. L. Margadant, K. Kirkby, S. E. Andrew, K. N. Gelatt *
目的:正常な犬猫のシルマー涙液試験(STT)により測定した涙産生に対し、1%トロピカミド点眼の1回投与が、どう影響するのかを評価する
材料と方法:28頭のイヌと32頭のネコの片方の眼に、1%トロピカミド50?l:l投与し、もう一方の目はコントロールとした。シルマー涙液試験を滴下直前、そして滴下後1、4、8、24時間後に実施した。結果は、投与した眼とは異なる時間にコントロールと比較した。
結果:STT測定によるイヌの水性涙液産生は、有意に低下しなかった。イヌで基準とした時間のコントロールとトロピカミド投与の眼の平均±SEMシルマー涙液産生値は、それぞれ19.9±0.8mm/分と20.3±0.8mm/分だった。その後コントロールの平均±SEM STT値は、20.3±0.9(1h)、21.1±0.8(4h)、20.1±0.9(8h)、18.7±0.7(24h)だった。その後のトロピカミドを投与した眼の平均±SEM STT値は、19.4±0.9(1h)、19.3±0.9(4h)、20.0±0.9(8h)、18.4±0.8(24h)だった。1時間のときのネコの両眼の水性涙液産生は有意に低下したが、滴下4時間後には正常に回復した。ネコで基準とした時間のコントロールとトロピカミド投与の眼の平均±SEMシルマー涙液産生値は、それぞれ14.9±0.8mm/分と14.7±0.8mm/分だった。その後コントロールの平均±SEM STT値は、6.4±1.1(1h)、11.9±1.0(4h)、13.9±0.8(8h)、16.4±1.0(24h)だった。その後のトロピカミドを投与した眼の平均±SEM STT値は、5.3±0.8(1h)、10.2±0.8(4h)、14.7±1.0(8h)、16.6±1.0(24h)だった。
結論:正常犬で、単回1%トロピカミド点眼は、STTによる測定の涙液産生性を有意に低下させることはなかった。しかし正常なネコの1頭で、1時間経過したときの両眼の涙液産生の有意な低下を起こし、それは4時間目には正常値に回復した。(Sato訳)
■犬と猫の角膜疾患の管理における、ブチル-2-シアノアクリレート接着剤を用いた臨床試験
Clinical Experience with Butyl-2-Cyanoacrylate Adhesive in the Management of Canine and Feline Corneal Disease
Vet Ophthalmol 7[5]:319-326 Sep-Oct'04 Retrospective Study 47 Refs
Christine M. Watte, Rebecca Elks, Denise L. Moore and Gillian J. McLellan
目的:ブチル-2-シアノアクリレート接着剤の適用により処置した、角膜疾患の一連の小動物患者における、術後転帰と臨床適応を調査し、評価することです。
材料と方法:この回顧的研究において、全ての小動物患者は、2年間にロンドンの大学、ロイヤル獣医大に訪れ、ブチル-2-シアノアクリレートの適用により処置された角膜疾患であることが確認されたものです。適応例の指標、接着に先立つ複雑な要因、接着保持期間、術後快適性、そしてその後の角膜反応と瘢痕化の程度をそれぞれの症例で記録しました。視覚と美容的転帰に関する長期追跡資料を、オーナーおよび紹介獣医師から入手しました。
結果:39眼が治療され、37頭(犬28頭、猫9頭)が確認されました。この一連の症例における角膜接着に関する適応には、基質の潰瘍(26/39眼);デスメ膜瘤(4/39眼);角膜裂傷/異物(5/39眼);層状角膜切除(3/39眼)そして表在性潰瘍(1/39眼)などがありました。潰瘍の発生、残存または進行の原因となる少なくとも1つの因子が、角膜接着前の眼の66.7%で確定されました。
これらには、角膜軟化症;慢性の細菌性角膜炎;内皮疾患に関連した角膜浮腫そして乾性角結膜炎などがありました。シアノアクリレートは、8/34眼に、一過性の眼瞼痙攣と、術後の涙液増加が認められただけで、一般に、患者にうまく許容されました。シアノアクリレートの保持期間は、1週間未満からおよそ6ヵ月と幅広く様々でしたが、過半数(89%)で2ヵ月未満でした。過度の角膜血管新生は、まれな術後合併症で、犬の6眼にだけ認められ、原発角膜疾患、接着保持期間または犬種に関連性は存在しませんでした。
結論:ブチル-2-シアノアクリレートは使いやすく、結膜移植弁のような犬と猫における角膜欠損の管理において、経済的で、他の治療に代わる有効な治療法であると提案します。(Dr.K訳)
■北アメリカの純血種で犬種関連緑内障の普及率
Prevalence of the Breed-Related Glaucomas in Pure-Bred Dogs in North America
Vet Ophthalmol 7[2]:97-111 Mar-Apr'04 Original Article 48 Refs
Kirk N. Gelatt and Edward O. MacKay
目的:獣医療データベース(VMDB)に記録された北アメリカ獣医教育病院に来院した純血種のうち、犬種関連緑内障の普及率を判定する
素材と方法:この回顧的研究で、1964-2002年の間5-10年間隔に原発性緑内障(緑内障-NOS)の臨床診断を受けたイヌの、全犬種に対する初回診断時の年齢、犬種、性別データをVMDBから収集した。それら緑内障に対する各犬種の罹患率(各犬種全頭と比較した罹患犬)、38年間の変化、性別差を判定した。
結果:犬種関連原発性緑内障の罹患率は、0.29%(1964-1973)から0.46%(1974-1983)、0.76%(1984-1993)、0.89%(1994-2002)と次第に増加している。犬種で、アメリカンコッカースパニエル、バセットハウンド、ワイヤーフォックステリア、ボストンテリアの異なる4犬種が、1964年から2002年の間に最高10倍緑内障の罹患率が高くなるという一貫した特徴を示した。最終観察期間(1994-2002)の間で、22犬種は緑内障1%以上の罹患率を示した。1994年から2002年の間に緑内障の高罹患率を示した犬種は、アメリカンコッカースパニエル(5.52%)、バセットハウンド(5.44%)、チャウチャウ(4.70%)、シャーペイ(4.40%)、ボストンテリア(2.88%)、ワイヤーフォックステリア(2.28%)、ノルウェーエルクハウンド(1.98%)、シベリアンハスキー(1.88%)、ケアンテリア(1.82%)、ミニチュアプードル(1.68%)だった。
アメリカンコッカースパニエル、バセットハウンド、ケアンテリア、チャウチャウ、イングリッシュコッカースパニエル、サモエド、おそらくシベリアンハスキーに発症した緑内障はメスに多く、オーストラリアンキャトルドック、セントバーナードはオスが多かった。純血種で、年齢は緑内障の最初の発現時期に影響した。緑内障の多くの犬種は、4-10歳のときに最初の診断を受けていた。
結論:純血種の犬種関連緑内障は、北アメリカの獣医教育病院に来院する頻度が増えている。イヌの犬種関連緑内障の普及率は、ヒトと同様に現れ、ヒトを上回る犬種もある。緑内障の高い罹患率を持つ多くの犬種は、遺伝根拠を示唆する。(Sato訳)
■イヌの白内障評価と治療
Cataract Evaluation and Treatment in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 25[11]:812-824 Nov'03 Review Article 34 Refs
Elizabeth A. Adkins, DVM, MS and Diane V H. Hendrix, DVM, DACVO
白内障は、レンズの小部分、または全体を侵すと思われるレンズ内の混濁である。白内障はイヌの盲目の原因を導く。それらは、遺伝因子、代謝疾患、炎症、他の原因によると思われる。完全な眼科、身体検査、全血球検査、生化学評価、網膜電計、眼の超音波検査は、白内障手術(水晶体超音波吸引)の候補かどうかの判定に使用されるべきである。いくつかの薬物療法は、術前、術後期間に規定されている。水晶体超音波吸引術後に起こりえる合併症は、前ぶどう膜炎、眼圧上昇、緑内障、角膜潰瘍、網膜剥離である。(Sato訳)
■角膜疾患へのレーザー応用
Laser applications for corneal disease.
Clin Tech Small Anim Pract 18[3]:199-202 2003 Aug 26 Refs
Gilmour MA
獣医療での二酸化炭素(CO2)レーザーやダイオードレーザーの使用が増えている。眼科適用などの、それらの使用に関する新しい応用方法が研究されている。小動物角膜疾患へのレーザーの使用は、実際様々な要因で制限される。角膜使用に関する理想的なレーザーは、かなり正確な光切除能力を持つエキシマーレーザーである。しかし、エキシマーレーザーが獣医療で臨床に使用できるとは思えない。
組織切除を指示される小動物角膜疾患の頻度は比較的低い。また、それら疾患の多くで、通常の外科手術がレーザー切除と同等、またはよりよい働きを見せる。CO2レーザーは、角膜組織に使用できるが、深刻な瘢痕、または穿孔を起こすような、深く切除しすぎないよう、かなり慎重に使用すべきである。また、角膜神経、間質コラーゲン、角膜内皮に対する影響についても考慮すべきである。CO2レーザーは、角膜拡大を伴う辺縁腫瘍の切除に非常に効果的である。レーザーの使用は、侵襲性が低く、技術的に難しくなく、止血効果が高いため手術が速い。高いメラニン吸収のため、ダイオードレーザーは、角膜間質関与の眼球上メラノーマ切除に効果的に使用できる。(Sato訳)
■小動物の角膜真菌疾患
Corneal fungal disease in small animals.
Clin Tech Small Anim Pract 18[3]:186-92 2003 Aug 68 Refs
Andrew SE
真菌性角膜炎や間質膿瘍などの角膜真菌疾患は小動物では珍しく、全身性真菌症の二次的な眼感染がより多く報告されている。特にプラント材、その地域、抗生物質またはコルチコステロイド点眼の慢性的な使用を伴う基礎傷害の病歴、または適切な治療にもかかわらず、非常に長期経過をたどる疾患をもとに真菌性角膜潰瘍の疑いがなされる。真菌性角膜炎で観察される臨床症状は、眼瞼痙攣、流涙、縮瞳、角膜混濁、脈管化などと思われる。しかし、それら症状で真菌感染に特異的なものはない。真菌性角膜炎が疑われる、または確認されるならば、積極的な治療を始めるべきである。使用される薬物療法は、抗真菌剤、副交感神経抑制剤、抗コラゲナーゼ薬の点眼、そして全身性抗炎症薬などである。殺真菌薬剤が非常に少ないため、真菌性角膜疾患の薬物治療の経過は、頻繁な再検査と評価を伴う長期間を要す。時には眼、視力を助けるため外科治療が必要となる。手術は、デブリードマン、結膜移植片の設置、角膜移植などが考えられる。(Sato訳)
■イヌとウマの自発性慢性角膜上皮欠損の角膜熱焼灼による治療
Thermal Cautery of the Cornea for Treatment of Spontaneous Chronic Corneal Epithelial Defects in Dogs and Horses
J Am Vet Med Assoc 224[2]:250-253 Jan 15'04 Review Article 21 Refs
Ellison Bentley, DVM, DACVO and Christopher J. Murphy, DVM, PhD, DACVO
8頭のイヌの9個の眼、2頭のウマの2つの眼の自然発生慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)の治療に熱焼灼法を使用した。動物に鎮静をかけ、局所麻酔を行った。手持ち熱焼灼装置で、罹患部分全体に複数の小さな(直径<1mm)表面火傷を作成した。焼灼装置は、わずかな程度のコラーゲン繊維の収縮が観察されるまで使用した。欠損の間質床を治療した後、上皮の縁の周囲約1mmも、熱焼灼を用いて間質が露出するように広げた。術後、イヌにはコンタクトレンズを設置したが、ウマには行わなかった。そして眼には、広域スペクトラムの眼科抗生物質液を投与した。
全ての11個の眼の欠損は、最小限の瘢痕で治癒した。イヌの治癒の平均時間は2.1週間(範囲2-3週間)だった。1頭のウマは1週間で治癒し、もう1頭は2週間かかった。SCCEDsの治療には多くのオプションが選択できる。上皮デブリードマンや前間質穿刺などの方法は、高率で成功している。それらの侵襲性の少ない方法で失敗した症例で、我々の結果は、イヌやウマのSCCEDsの過去に紹介されている、より侵襲的な表面角膜切除のような方法を行う前に実施すべき代替療法かもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬猫の培養水晶体で、アルドース還元酵素活性とグルコース関連混濁
Aldose reductase activity and glucose-related opacities in incubated lenses from dogs and cats.
Am J Vet Res 63[11]:1591-7 2002 Nov
Richter M, Guscetti F, Spiess B
目的:高グルコース濃度の培地で培養した犬と猫の水晶体における反応を判定すること
サンプル集団:35頭の犬と26頭の猫の水晶体
方法:高グルコース(30mmol/L)またはコントロール(6mmol/L)の培地で14日間培養した後、25頭の犬と17頭の猫の対となる水晶体のグルコース濃度を測定した。アルドース還元酵素活性は、10頭の犬と9頭の猫の培養レンズと新鮮冷凍レンズで分光光度計により測定した。各群の2つのレンズを組織学的に検査した。
結果:高グルコース培地の犬と猫の水晶体は、様々な位置と広さのグルコース特異的混濁を起こした。犬の水晶体は水平方向に空胞変性を起こしたが、病変のひどさは犬の年齢に関係しなかった。若い猫(≦4歳)の水晶体は広範囲の後部皮質混濁を起こし、老齢猫(≧4歳)の水晶体は起こさなかった。高グルコース培地で培養した全ての水晶体の血糖濃度は似ていた。しかしアルドース還元酵素活性は、若い猫や犬の水晶体と比較して、老齢猫の水晶体の方が有意に低かった。
結論と臨床関連:高いアルドース還元酵素活性とグルコース関連混濁は、犬猫の糖尿病性白内障の原因でこの酵素に対する中心的役割を示唆する。>7歳の猫で通常真性糖尿病の発生が起こるため、老猫で見られる水晶体のアルドース還元酵素活性の低下が、高血糖にもかかわらず、なぜこの種に糖尿病性白内障がほとんどないかを説明するものかもしれない。(Sato訳)
■獣医眼科診断ツールとして、高解像度超音波装置の使用
Use of High-Resolution Ultrasound as a Diagnostic Tool in Veterinary Ophthalmology
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1617-1622 Dec 1'03 Prospective Study 23 Refs
Ellison Bentley, DVM, DACVO; Paul E. Miller, DVM, DACVO; Kathryn A. Diehl, DVM, MS
最近開発された20MHz高周波数超音波プローブは、低出力組織像と同等である20-80μmの解像度で組織の描写を可能とする。高度の解像度を有するが、組織の深度は、5-10mmと限界があり、眼の前部の検査には理想的である。高解像度超音波装置が提供する詳細な像は、前ぶどう膜腫瘍、虹彩毛様体のう胞、膨隆虹彩のような同じように見えて治療がまったく異なる前房にできたものの鑑別が容易となる。高周波超音波装置も、ネコの角膜腐骨や、角膜への腫瘍の侵襲など、角膜が混濁している眼疾患の治療として、外科的計画を立てる手助けとして有用である。この装置の他への応用は、獣医患者の緑内障の原因解明、直接検査が難しい水晶体領域の評価などである。(Sato訳)
■水晶体嚢内摘出後に発生した緑内障の治療に対する、半導体レーザーによる、経強膜毛様体光凝固術の使用:15頭の犬に関する回顧的研究(1995-2000)
The Use of Transscleral Cyclophotocoagulation with a Diode Laser for the Treatment of Glaucoma Occurring Post Intracapsular Extraction of Displaced Lenses: A Retrospective Study of 15 Dogs (1995-2000)
Vet Ophthalmol 6[2]:113-119 Jun'03 Retrospective Study 25 Refs
* A. O'Reilly, C. Hardman, R. G. Stanley
この回顧的研究の目的は、レンズを置換するために行った水晶体嚢内摘出(ICLE)後に発症した無水晶体患者の緑内障に対する治療として、半導体レーザーを用いた経強膜毛様体光凝固術(TSCP)を評価することです。15頭の犬(21眼)の記録を再調査しました。眼内圧(IOP)と視力の存在をICLEとTSCPの各時点、TSCP後1,3,6-9,12,そして24ヵ月で記録しました。緑内障は、IOPが25mmHg以下の時、調節されたとみなしました。
結果は、無水晶体患者の緑内障治療に対する半導体レーザーを用いたTSCPの有効性は、短期間(1-3ヵ月)で、うち3頭は、再度TSCPを必要としました。さらに、強膜補綴、眼内ゲンタマイシン、または眼摘を必要とした犬や、あるいは追跡できなかった犬の数は増大し、24ヵ月間にわたり、補助的抗緑内障薬物治療が、十分なIOPを維持するのに必要でした。(Dr.K訳)
■3頭の犬における、昼盲症:臨床所見と網膜電図検査所見
Day-Blindness in Three Dogs: Clinical and Electroretinographic Findings
Vet Ophthalmol 6[2]:127-130 Jun'03 Case Report 12 Refs
* Simon D. Hurn, Chloe Hardman, Robin G. Stanley
6ヵ月齢のローデシアン・リッジバック系雑種、6歳のチャウチャウ、そして12ヵ月齢のオーストラリアン・キャトルドックが、昼間、障害物に衝突するという徴候で、来院されました。眼科検査は正常で、全ての犬は、薄暗い場所での障害物検査で、うまく通り抜けできました。明るいところでは、犬たちは急に盲目となり、度々、障害物にぶつかりました。網膜電図検査(ERG)では、錐体機能障害を確認すべく、照射強度青色光網膜刺激の高周波(30Hz)に対しても、全ての犬で、全く網膜活性は認めませんでした。色盲は、アラスカン・マラミュートとミニチュア・プードルで、以前に記録されております。この臨床症例集は、特徴的な行動的徴候と、重度な昼盲症の網膜電図検査所見を説明し、この疾患が他の犬種に存在するかも知れないということを論証します。
■犬の原発性閉鎖性緑内障における、局所予防的抗緑内障治療の有効性:複数の医療機関にまたがった臨床試験
The Efficacy of Topical Prophylactic Antiglaucoma Therapy in Primary Closed Angle Glaucoma in Dogs: A Multicenter Clinical Trial
J Am Anim Hosp Assoc 36[5]:431-438 Sep/Oct'00 Original Report 48 Refs
* Paul E. Miller, DVM, DACVO; Gretchen M. Schmidt, DVM, DACVO; Samuel J. Vainisi, DVM, DACVO; James F. Swanson, DVM, MS, DACVO; M. Kohle Herrmann, DVM, DACVO
原発性緑内障は、臨床的に原発性開放性緑内障(POAG)と、原発性閉塞性緑内障(PCAG)に、分類されております。PCAGの犬は、通常、片側性疾患として、臨床医に連れてこられますが、もう片方の眼もまた、異常な虹彩角膜角を持ち、一般的に、数日から数年後には、明白な緑内障へとなります。このことは、獣医眼科医が、PCAGの犬において、正常眼圧であるもう片方の眼に対しても、予防的治療を推奨することを後押しします。この研究の目的は、特異的、局所的抗緑内障プロトコールが、明白な片側性PCAGを持つ犬の、最初は正常眼圧であるもう片方の眼における、緑内障発現を、遅延、または予防することが出来るかどうかを明らかにすることです。
初期片側性、特発性PCAGとなった、個人に飼育される犬、106頭を用いて、複数の機関にまたがった、予測的、コントロール、公開標識、非無作為臨床試験を行いました。該当犬を3群に割り当てました。:1群コントロール(n=20)、2群0.25%デメカリウム・ブロマイド(就寝時刻に局所に1滴、sid)とゲンタマイシン/ベタメタゾン(就寝時刻に局所に1滴、sid)(DB/GB;n=55)、3群0.5%ベタキソロール(局所に1滴、bid)(n=31)です。無処置のコントロール犬は、DB/GB(中央値31ヵ月)、あるいはベタキソロール(中央値30.7ヵ月)で、治療した犬よりも、有意に早く(中央値、8ヵ月)、緑内障へと展開しました。DB/GBとベタキソロール治療群の間には、いかなる有意差もありませんでした。
両治療薬とも、オーナーにうまく受け入れられましたが、6~8%のオーナーが、両薬物による眼の直接的な刺激を報告しました。この研究の意外な所見は、ベタキソロール治療群の犬において、乾性角結膜炎(KCS)が、相対的に、高い発生率であったことであります。この正確な意義は、緑内障とKCSの両方の素因を持つ犬種(例えば、コッカー・スパニエル)を含んでいるため不明瞭で、抗緑内障薬との関連性は偽りかもしれません。
DB/GBとベタキソロールは、同様に、片側性PCAGとなった犬のもう一方の眼における、緑内障発現を、遅延、または予防しましたが、犬におけるPCAG予防において、より少ない頻度の投薬スケジュールは、局所コルチコステロイドとの併用におけるDBが、ベタキソロールよりも好ましいかもしれないということを示唆していると、著者は結論付けます。
■家庭動物の第3眼瞼におけるIgAと分泌成分(SC):比較研究
IgA and Secretory Component (SC) in the Third Eyelid of Domestic Animals: A Comparative Study
Vet Ophthalmol 6[2]:157-161 Jun'03 Comparative Study 29 Refs
T. Schlegel, H. Brehm, W. M. Amselgruber *
目的:家庭動物の第3眼瞼は、球面の保護、および眼の壊死組織片の除去をするにあたっての、涙の産生と供給のために大切で、重要な免疫機能を持ちます。涙は、主に涙腺のプラズマ細胞により産生される、免疫グロブリンA(IgA)アイソタイプの抗体を含むことが知られておりますが、家庭動物の第3眼瞼における抗体量については、全く分かっておりません。IgAが局所合成由来かどうかを評価するため、我々は、比較研究において、家庭動物の第3眼瞼における分泌成分(SC)の細胞分布と、IgA産生細胞の所在を解析しました。
動物試験:犬、猫、豚、牛、羊、山羊、そして馬の総数83個の第3眼瞼を、この研究で調査しました。
手順:死亡後、直ちに第3眼瞼を採取して縦に切り、一晩固定し、ABC法によって、IgAとSCの免疫組織化学検査を行いました。
結果:結果は、種特異的な様子で、瞬膜腺に加えて、表面上皮の上皮下部において、IgA産生細胞が高密度に存在している事を示しました。対照的に、SCは、腺の腺房と導管の上皮細胞のみで認めることができ、表面上皮とは異なるタイプの細胞において、優先的に、瞬膜組織の球面側に存在しておりました。
結論:SCの大部分は、常在するプラズマ細胞により、局所的に産生され、その後、経細胞輸送により、表面上皮と腺導管細胞を通って移動するということを示唆しております。このことは、家庭動物にいて、第3眼瞼は、免疫分泌システムの重要な器官であるということを示しております。
■原発性開放性緑内障のビーグル犬における、目の血流速度の進行性変化
Progressive Changes in Ophthalmic Blood Velocities in Beagles with Primary Open Angle Glaucoma
Vet Ophthalmol 6[1]:77-84 Mar'03 Study Group 41 Refs
* K. N. Gelatt, T. Miyabayashi, K. J. Gelatt-Nicholson, E. O. MacKay
目的:早期から進行したステージまでの、原発性開放性緑内障を持つビーグル犬で、カラードップラー画像(CDI)により、眼球および眼窩血流速度の変化を測定することです。
方法:4年以上経過した未処置の軽度のものから、中程度、および進行したステージのPOAG(原発性開放性緑内障)のビーグル犬13頭に対し、定期的にCDI測定を行いました。CDIは、0.5%塩酸テトラカインで、局所麻酔を施した角膜上に直接CDトランスデューサーをあてている間、犬に軽い麻酔(ブトルファノール0.1mg/kgIV, マレイン酸アセプロマジン0.02mg/kgIV,そして硫酸アトロピン0.05mg/kg)をかけて行いました。
気体眼圧計またはトノペンXLによる眼内圧(IOP)、心拍数と平均動脈圧を、研究の開始、中間、終了時点で測定しました。検査した眼血管系は、外眼動静脈、長および短後毛様体動脈、前毛様体動静脈、網膜中心動脈、渦静脈です。最高収縮期速度(PSV)、最終拡張期速度(EDV)と時間平均速度(TAV)、そして可能ならば、抵抗指数(RI)と拍動指数(PI)を含める、それぞれの血管に関する記録を算出しました。
結果:CDI異常は、眼内圧が正常範囲を超える前から出現しました。年を経た動物、そしてIOPの高く進行した緑内障ほど、ほとんど全ての血管において有意な変化が起こり、通常、RI(P<0.001)における主な増大とPI(P<0.001)における増大を含みました。平均動脈圧(105±18mmHg)と心拍数(118±33/min)は、ほどよく一定のままでした。IOPは、疾患の進行(初期および正常血圧:19.4±3.9mmHg;中程度:29.7±2mmHg;そして進行:44.5±6mmHg)とともに、段階的に増大しました。
眼静脈は、疾患の早期の時点で、最も影響を受けると思われました。疾患の後期には、眼静脈血流は、一貫して表示することが出来ませんでした。眼静脈のPIにおける増大は、中程度、および重度に罹患した緑内障のビーグル犬に起こりました。IOPの増大同様、ほとんどの動脈における抵抗指数と拍動指数の増大傾向があり、重症症例において、渦静脈と外眼静脈の著しい速度減少期間がありました。
結論:4年間におよぶ、原発性開放性緑内障のビーグル犬におけるCDI測定は、その後の、段階的なIOPレベルの増大に先立ち、IOPの評価よりも前に、進行する血流異常を容易に測定でき、繰り返し行えるものであるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■イヌの角膜損傷と痛みの症状に対する1%硫酸モルヒネ溶液の局所投与の効果
Effect of topical administration of 1% morphine sulfate solution on signs of pain and corneal wound healing in dogs.
Am J Vet Res 64[7]:813-8 2003 Jul
Stiles J, Honda CN, Krohne SG, Kazacos EA
目的:角膜潰瘍のイヌの痛みの症状や損傷の治癒に対する、1%硫酸モルヒネ溶液(MSS)の局所投与の効果を評価することと、ミュー、デルタオピオイド受容体の存在を免疫組織化学的に正常な角膜で検査すること
動物:12頭のイヌ
処置:10頭のイヌの右眼に7mmの表層角膜潰瘍を作出し(OD)、その後ゲンタマイシン溶液と1%MSS(n=6)、生理食塩水(n=4)をODに1日3回局所投与した。眼瞼痙攣、引っ掻く、結膜充血、水性フレア、触覚計の読み、瞳孔サイズを、全頭治療前と治療後30分目に記録した。潰瘍の大きさと治癒達成日時を記録した。治療した4つの角膜とコントロールの3つの角膜を組織学的に評価した。この研究で使用しなかった2頭のイヌの正常な角膜を、ミュー、デルタオピオイド受容体の存在を知るため免疫組織化学的に評価した。
結果:MSSで治療したイヌは、コントロールと比較して有意に眼瞼痙攣が少なく、触覚計の読みが低かった。潰瘍治癒期間と角膜の組織学的評価所見に群間相違は無かった。正常角膜の角膜上皮と前方ストロマで多数のデルタ、少数のミューオピオイド受容体が認められた。
結論と臨床関連:角膜潰瘍のイヌへの1%MSSの局所使用は、鎮痛効果をもたらすが、正常な傷の治癒に干渉しなかった。ミューとデルタオピオイド受容体は、正常な角膜で認められたが、ミュー受容体は少数しか存在しなかった。(Sato訳)
■ビション・フリーゼにおける白内障
Cataracts in the Bichon Frise
Vet Ophthalmol 6[1]:3-9 Mar'03 Case Report 41 Refs
* Kirk N. Gelatt, Margaret R. Wallace, Stacy E. Andrew, Edward O. MacKay, Don A. Samuelson
目的:ビション・フリーゼにおける、遺伝的と考えられる白内障の、臨床的特徴を明らかにすることです。これらの特徴として、相対頻度、性差、白内障初発部位、発病年齢、白内障成熟度と年齢の関係、そしてその他の併発した術前、術後の眼科疾患があります。
方法:ビション・フリーゼの4つの異なる個体群を調査しました。4つの個体群は、(1)フロリダ大学に紹介された患者(VMTH;1990-2000);(2)その他の大学および大きな施設の患者(VMDB;1970-2000);(3)犬眼登録財団からの患者(CERF;1970-2000);(4)眼科クリニックとACVO専門施設からの特殊な患者(1995-2001)です。将来的なDNA解析のために、多くの患者から血液サンプルを得ました。グループ間の統計学的比較を、一般直線解析、および分散解析により行い、P<0.05を有意差とみなしました。
結果:4つの個体群に関する白内障と総ビション・フリーゼの割合は;(1)UF-VMTH:57頭の白内障犬;(2)VMDB:406頭(28%)の白内障犬;犬の総数1407頭;(3)CERF:505頭(6%)の白内障犬;犬の総数8222頭;(4)ACVO:223頭(57%)の白内障犬;犬の総数391頭でした。それぞれの個体群において、性差は白内障分布に影響しませんでした。2歳から8歳の犬が最も多く罹患し、白内障初発部位は、前部および後部皮質が、同じ割合で罹患しました。未熟白内障は、より若い犬で発生し、過熟白内障は、より高齢で多く診断されました。早期白内障は、CERF個体群で、より頻繁に遭遇しました。術前および術後の網膜剥離(RD)は、OF-VMTHとVMDB群において、時々診断されました。OF-VMTHとVMDB群におけるRDは、それぞれ、33%と13%で発生しました。
結論:白内障が、1975年と1979年のCERFとVMDBのデータで初めて認められており、この時から増加しています。予想通り、ビション・フリーゼの異なる4つの個体群の間で、類似点と相違点が出現しました。犬は雄雌とも同じように罹患します。水晶体の前部および後部皮質領域が最初に影響を受け、2~8才の犬が最も頻繁に罹患します。CERF群では、より若い犬が罹患し、他の個体群では、より高齢の犬が罹患しておりました。白内障形成は、ビション・フリーゼにおいて遺伝すると思われます。術前術後の網膜剥離は、この犬種における、白内障手術に関し、より高いリスクを持ちます。(Dr.K訳)
■アイリッシュ・セッターにおける網膜変性は、家族性non-rcd1であるとされた。
Familial non-rcd1 generalised retinal degeneration in Irish setters.
J Small Anim Pract 44[3]:113-6 2003 Mar
Djajadiningrat-Laanen SC, Boeve MH, Stades FC, van Oost BA
6才から11才までの4頭のアイリッシュ・セッターを、両側性網膜変性、および白内障と診断しました。これらの犬の3頭で、進行性夜盲が8-11才齢から認められました。4頭目の犬は、6才齢ですが、視覚障害のいかなる徴候も気づきませんでした。4頭の全ての犬において、杆体-錐体異形成1型(rcd1)突然変異は、対立遺伝子-特異的PCRを用いて、原因から除外されました。それらの3世代系図から、4頭中3頭の犬で血縁関係が見られ、遅発性進行性網膜変性を示唆する病歴と臨床徴候を持った、別のもう4頭のアイリッシュ・セッターとも関連がありました。これらの結果は、rcd1とは全く異なる、アイリッシュ・セッターにおける遺伝的、遅発性、進行性網膜萎縮の可能性が存在することを示唆しております。(Dr.K訳)
■深い角膜潰瘍の管理
Management of Deep Corneal Ulcers
Kristina R. Vygantas, R.David Whitley
Compend Contin Educ Pract Vet 25(1):196-204, 2003
深部まで達する角膜潰瘍は、ペットにおける最も一般的な視力を脅かす眼障害の1つである。内科的治療にもかかわらず進行し、そして角膜支質の1/2~2/3の深さに達するような、急速に進行している角膜潰瘍は、穿孔の危険性のために、外科的に修復するべきである。深い角膜潰瘍の治療に対する内科的、外科的アプローチは、再検討されている。外科的処置の選択は、望まれる視覚の結果だけでなく、角膜損傷の部位や深さにより決定される。(Dr.Boo訳)
■犬でのレンズ摘出後に引き起こされた瞳孔混濁に対するNd:YAGレーザー処置
Neodymium : YAG laser treatment of lens extraction-induced pupillary opacification in dogs
J Am Anim Hosp Assoc 26[3]:275-281 May/Jun'90 47Refs
Mark P. Nasisse, DVM, Dipl ACVO; Michael G. Davidson, DVM, Dipl ACVO; Robert V. English, DVM, Dipl ACVO; Steven M. Roberts, DVM, MS, Dipl ACVO; Hyman C. Newman, DVM
背景:嚢外レンズ摘出後に瞳孔が混濁した31頭の犬(眼の数34個、36処置)の臨床的研究
疾病素因:年齢3-14歳。メス(19/31頭)の方が多かった。良く見られた犬種は、多いほうからミニチュアあるいはトイ・プードル(10/31頭)、コッカースパニエル(3/31頭)、コッカーとプードルの雑種(3/31頭)、別のプードルの雑種(3/31頭)だった。
病歴/臨床徴候:嚢外レンズ摘出後の瞳孔混濁が(眼科診療による)36個、全てにおいて認められた。内訳としては、白内障形成後(33/36)、虹彩-水晶体嚢癒着(26/36)、水晶体嚢色素(14/36)、そして/または瞳孔遮断(12/36)後によるものであった。
治療:ネオジウム:イットリウム、アルミニウム、ガーネット[Nd:YAG]レーザー治療は、嚢外レンズ摘出後6週以上おこなった。
術前処置:たいていの場合、軽い鎮静でおこなった。非協力的な患者では全身麻酔を使用した。1%アトロピンと2.5%フェニレフリンを、処置前の2時間の間に15分間隔で局所点眼した。
装置:Q-スイッチの眼科用YAGレーザー[Lasertek]をZeiss30SLスリットランプの上に取り付け、冷却ヘリウムネオン放出電子に焦点を当て、8ナノセカンドのパルスで、1-10mJ、個別または多列の1-5パルス/1回で使用しスポットの大きさは50ミクロンだった。
いくつかの症例で、アブラハム YAG レーザー水晶体後嚢切開用レンズ[接眼器具]が使用された。それはレーザー光線の焦点を合わせ、力密度を増加させるのに役立った。1%プロパラカインおよび1%メチルセルロースがレンズ装着前に局所処置された。
手順:[両側性3/36、再処置2/36]には、嚢切開[33/36]そして/あるいは癒着剥離[5/36]が含まれた。嚢切開では、瞳孔中央での十字型パターンが最もよくおこなわれた。嚢切開、縮瞳、眼房水の色素分散が成功するか、眼房出血、あるいは術者が光線破壊にあまりにも乳白度の密度が高いと判断するまで、レーザーパルスを繰り返した。1回のバーストに対するエネルギーは、2.5-10mJ(平均9.8mJ)の範囲だった。使用したレーザーバーストの数は10-214[平均 = 75]の範囲で、総エネルギーの平均は3087mJであった。癒着剥離 [5/36]においては、レーザーは癒着部位に向けられた。エネルギーバーストは2.5-10mJ [平均 6.1mJ]の範囲であった。レーザーバースト数は9-22[平均15]で、総エネルギー平均は362 mJ であった。
副作用:「一般的に軽症」な房水フレア[36/36]は、数日間コルチコステロイドの点眼処置により回復した;可動性瞳孔を伴う眼に起こった縮瞳;膨隆虹彩[2/3]をおこすような虹彩出血[3/36]。そして、続発性の緑内障[3/3]をもたらした膨隆虹彩[3/36]では、たった1/3しか処置が成功しなかった。
結果:嚢切開術の成功(25/33)、癒着剥離の成功(5/5)を含む28/36の犬において、瞳孔の不透明化は十分阻止され、清澄な瞳孔となったことから、レーザー治療は「成功」と考えられた。
19の眼で、術後4時間までの間、眼内圧を1時間毎に測定し、2/19の眼しか眼圧は上昇しなかった。2つの眼で1および4mmHg の上昇が、術後1時間の時点で見られた。(Dr.Shingo訳)
■バーミーズの原発性緑内障
Primary glaucoma in Burmese cats.
Aust Vet J 80[11]:672-80 2002 Nov
Hampson EC, Smith RI, Bernays ME
目的:バーミーズの原発性緑内障の臨床症状と管理を述べること
構成:1996年から2001年の間の罹患バーミーズ6頭についての回顧的研究
方法:原発性緑内障と診断された6頭のバーミーズを、3ヶ月から4.5年と幅のある期間管理した。臨床詳細を診療記録から入手した。罹患猫の眼の排水、または虹彩角膜角の隅角鏡検査を行った。
結果:6王の避妊済みバーミーズ(年齢7.0-10.5歳)が、片側(n=4)または両側(n=2)レッドアイ、瞳孔散大、または拡大した眼球を主訴に来院した。そのうち1頭の片方の眼は、この研究が始まる前に摘出されており、そのため全部で11個の眼を研究した。臨床的に全ての罹患眼(n=8)は強膜血管に注射されており眼内圧は上昇していた。隅角鏡検査で、虹彩角膜角は9頭で狭く、2頭で閉じていることが分かった。2%ドルゾラミド(n=8)、0.5%マレイン酸チモロール(n=1)、0.005%ラタノプロスト(n=1)、0.5-1.0%酢酸プレドニゾロン(n=8)などの内科療法を行った。6個の眼はダイオードレーザー(n=5)そして/または凍結療法(n=2)で外科手術を行い、1個の眼は摘出して義眼を装着した。治療で、5個の罹患眼は視力と正常眼内圧を維持し、1個の眼は盲目で正常眼内圧となり、1個の眼は盲目で眼内圧の上昇を伴い、1個の眼は摘出した。
結論:バーミーズには原発性狭隅角緑内障の素因があるのかもしれない。早期診断と持続性抗緑内障療法が眼内圧と視力の維持の管理補助となりえる。(Sato訳)
■網膜色素上皮ジストロフィーを持つ犬におけるビタミンE欠乏症
Vitamin E deficiency in dogs with retinal pigment epithelial dystrophy.
Vet Rec 151[22]:663-7 2002 Nov 30
McLellan GJ, Elks R, Lybaert P, Watte C, Moore DL, Bedford PG
網膜色素上皮ジストロフィーの発生における、ビタミンE欠乏症の役割を、11頭のコッカー・スパニエルと4頭の他の犬種で調査しました。罹患した犬と、検眼鏡検査的に正常な28頭の健康なコントロール犬から得た血漿サンプルにおいて、α-トコフェロール濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定しました。正常犬における、平均(sd)血漿α-トコフェロール濃度は、罹患した11頭のコッカ-スパニエルの1.14(0.67)microg/mlに対して、20.2(7.1)microg/mlでした。2つのグループ間の違いは、α-トコフェロール濃度に、血漿コレステロールとトリグリセリド濃度との関連が抽出された時、非常に意義深くなりました。低α-トコフェロール濃度は、罹患した他犬種の4頭にも観察されましたが、所見にそのような一貫性はありませんでした。血漿脂質濃度は、罹患した犬で正常でした。潜在疾患の臨床的、生化学的、あるいは病理学的のいかなる証拠、あるいは、α-トコフェロールの低濃度に寄与していると考えられる欠乏食の給与はなかったので、罹患犬においてα-トコフェロール欠乏症が、原発性だと思われました。(Dr.K訳)
見慣れない病名で、苦戦しました。retinal pigment epithelial dystrophy(RPED)は、網膜色素上皮における、自己蛍光性リポフスチン様封入体の蓄積によって、特徴付けられるとのことです。網膜色素上皮(RPE)は、網膜直下にある、とても薄い色素性細胞層で、フォトレセプターに対する栄養と、さまざまな生存因子を供給し、老廃物を運び出します。RPEにおける突然変異疾患は、先天的夜盲の原因であるとのことです。また、手元にある、セミナー資料には、進行性網膜萎縮における、Slatterの分類、タイプ1~3のうち、タイプ2が、網膜色素上皮のジストロフィーによる、中心性の視力低下を特徴とするものとあるので、これに該当するのでしょうか。これがビタミンE欠乏との関連を示唆しているものとなると、興味深く感じます。
■ネコにおける難治性角膜潰瘍:29症例(1991-1999)
La Croix NC, van der Woerdt A, Olivero DK.
J Am Vet Med Assoc 2001 Mar 1;218(5):733-5
Nonhealing corneal ulcers in cats: 29 cases (1991-1999).
目的:難治性角膜潰瘍を伴うネコにおける創傷清拭(デブリードメント)、格子状角膜切開を伴う創傷清拭、表層角膜切除後の平均治癒時間を比較すること
意図:回顧的研究
動物:36の難治性角膜潰瘍を伴うネコ29頭
方法:難治性角膜潰瘍を伴うネコの医療記録を回顧した。所見、臨床徴候の持続期間、眼科的異常、様々な治療プロトコールに対する反応を記録した。
結果:冒されたネコの平均年齢は7歳8ヶ月であった。冒された血統はドメスティックショートヘア(17頭)、ペルシャ(9)、ヒマラヤン(2)、シャム(1)であった。臨床徴候は来院する前おおよそ2週間にわたり明白であった。両眼が4頭において冒された。表層創傷清拭の治療による潰瘍の平均治癒時間は30日であった。表層創傷清拭と格子状角膜切除の治療による潰瘍の平均治癒時間は42日であった。表層角膜切除が2眼に実施され、2週間の治癒時間という結果となった。角膜腐骨の形成は、表層創傷清拭で治療をされた21眼の2つにおいて明白であった。角膜腐骨の形成は、表層創傷清拭と格子状角膜切開で治療された13眼の4つで明白であった。
結論と臨床関連:短頭ネコは難治性角膜潰瘍に進行する傾向があるようにみえる。表層創傷清拭と格子状角膜切開のコンビネーションは、表層創傷清拭単独と比較して、難治性潰瘍の平均治癒時間を減じなかった。角膜潰瘍のネコで、格子状角膜切開は角膜腐骨に進行させる素因を持たせるだろう。(Dr.Yoshi訳)
■難治性角膜潰瘍の治療としてシアノアクリレート組織接着剤
Cyanoacrylate Tissue Adhesive for Treatment of Refractory Corneal Ulceration
Vet Ophthalmol 5[1]:55-60 Mar'02 Case Report 24 Refs
Nancy M. Bromberg
イソブチル・シアノアクリレート組織接着剤(BCTA)を、紹介される前2週から7ヶ月(平均6.8±6.1週)持続している難治性表在性角膜潰瘍の犬17頭、ネコ1頭、ウサギ1頭の治療に使用した。ほとんどの症例で、鎮静はわずか、または必要とせず、創面壊死組織除去とBCTA適応前に点眼麻酔を使用しただけだった。オーナーにより、組織接着剤があることで、数日間の軽度不快感を起こしたという報告を受けた。潰瘍は治癒し、組織接着剤は約3週間(±1週間)で脱落した。角膜の軽度新血管新生はコルチコステロイド点眼で解消した。BCTAの使用で、難治性角膜潰瘍の簡便、安全、非侵襲的な治療が可能である。(Sato訳)
■長毛家ネコにおける両側の増殖性角膜炎
Colitz CM, Davidson MG, Gilger BC.
Vet Ophthalmol 2002 Jun;5(2):137-40
Bilateral proliferative keratitis in a Domestic Long-haired cat.
9歳の避妊済み雌、長毛家ネコが両側性、進行性、ピンク-白色の角膜混濁を呈した。ネコヘルペスウイルス1(FHV-1)の診断検査は実施されていなかったが、診察した獣医師はFHV-1角膜炎と診断し、抗生物質と抗ウイルス薬での治療で状態は改善しなかった。 組織病理学では好中球、形質細胞、リンパ球がみられたが、好酸球あるいは肥満細胞はみられなかった。慣例の診断学は根底の原因を発見しなかったが、FHV-1のサザンブロット分析は陽性であった。局所的なコルチコステロイドとサイクロスポリンが一貫して使用されたとき、そのネコは治療に反応した。(Dr.Yoshi訳)
■抗炎症剤と防腐剤が、組織培養による犬角膜上皮細胞の形態特性と移動にどう影響するか
Effects of Anti-Inflammatory Drugs and Preservatives on Morphologic Characteristics and Migration of Canine Corneal Epithelial Cells in Tissue Culture
Vet Ophthalmol 5[2]:127-135 Jun'02 Clinical Study 31 Refs
Diane V. H. Hendrix, Daniel A. Ward, Mary Ann Barnhill
目的:一般に眼科領域で使用されるコルチコステロイド、スプロフェン、ポリスルフィドグリコサミノグリカンと防腐剤が、細胞培養による犬角膜上皮の形態特性と移動にどう影響するか判定する
供試動物:安楽死された犬の角膜から採取した角膜上皮細胞を細胞培養で増やした。
方法:犬角膜上皮は組織培養で育った。単層細胞層に欠損を作出した後、異なる濃度の異なるコルチコステロイド、ポリスルフィドグリコサミノグリカン、スプロフェン、防腐剤を処置した。細胞形態特性と欠損の閉鎖を、試験薬剤とコントロールで比較した。
結果:形態学的にデキサメサゾンを処置した細胞は、本質的にコントロールと同じだった。プレドニゾロンとヒドロコルチゾンは細胞を円形化し収縮させた。スプロフェンとポリスルフィドグリコサミノグリカンは、試験に使用した最も低い濃度で形態特性に変化を示さなかったが、より高濃度で濃度に依存する程度の円形化と収縮を示した。塩化ベンザルコニウムとチメロサールは、試験したすべての濃度ですべての細胞を円形化、収縮させた。デキサメサゾン、ヒドロコルチゾン、スプロフェンは、試験した最低濃度で欠損の上への上皮の移動を抑制しなかった。他の薬剤とその全ての濃度では、細胞移動を抑制した。
結論:デキサメサゾンは、ヒドロコルチゾンやプレドニゾロンよりも角膜上皮細胞の形態特性や移動に影響しなかった。それ故、コルチコステロイド処方や上皮欠損の時には、デキサメサゾンが選択薬剤かもしれない。スプロフェンやポリスルフィドグリコサミノグリカンは、形態特性や移動に濃度依存の影響を与える。防腐剤は全濃度で犬角膜上皮の重度変化や移動抑制を引き起こし、故に防腐剤含有薬剤で治療した潰瘍の上皮化不良を起こしやすいかもしれない。(Sato訳)
■あるネコにおける好酸球性結膜炎、ヘルペスウイルス、第3眼瞼の肥満細胞腫
Larocca RD.
Vet Ophthalmol 2000;3(4):221-225 Related Articles, Links
Eosinophilic conjunctivitis, herpes virus and mast cell tumor of the third eyelid in a cat.
3歳のヒマラヤンが同時に発生した好酸球性結膜炎、ヘルペスウイルス、結膜の肥満細胞腫と診断された。好酸球性結膜炎は結膜掻爬からの細胞検査で立証された。細胞学により50%の好酸球、50%の好中球が明らかにされた。ヘルペスウイルスはPCR陽性を経て立証された。結膜の掻爬のクラミジア免疫蛍光抗体(IFA)とヘルペスIFAは陰性であった。マイコプラズマは一般的なマイコプラズマPCRによって発見されたが、その細菌はマイコプラズマ培地上には育たなかった。マスは切除され、顕微鏡評価で組織球性肥満細胞腫が明らかとなった。肥満細胞腫は局所的切除後に再発しなかった(1年後の追跡調査)。
好酸球性結膜炎は局所的ステロイドと全身の酢酸メゲステロール(Ovaban )の両方で治療された。局所的ステロイドを使用したとき、ヘルペスウイルスが突発し、樹枝状、地図状角膜潰瘍となった。ゆえに、そのネコは酢酸メゲステロールで治療され、好酸球性結膜炎はよくコントロールされた。ネコにおける酢酸メゲステロールによる好酸球性結膜炎の治療は、潜在的なヘルペスウイルスのための選択治療法となるであろう。(Dr.Yoshi訳)
■正常猫の眼内圧における、局所0.5%トロピカミドの影響
Vet Ophthalmol 5[2]:107-112 Jun'02 Clinical Study 28 Refs
Katrin Stadtbaumer, Roberto G. Kostlin, Klaus J. Zahn
Effects of Topical 0.5 % Tropicamide on Intraocular Pressure in Normal Cats
研究の目的は、正常眼圧の猫の眼内圧(IOP)に対する、局所0.5%トロピカミドの効果を明らかにすることです。臨床的に健康な猫70頭で、双眼ともにIOPを測定し、隅角鏡検査(前房隅角写真術)を行いました。その後、50頭の猫の片目に、0.5%トロピカミドを1滴点眼処置しました。対側の左眼はコントロールとしました。20頭から成るプラセボ群には、右目に生理食塩水を1滴点眼処置しました。全ての猫で、局所投与後、30分、60分、90分に、両眼のIOPを測定しました。片眼にトロピカミドを使用した群は、左右の眼ともに有意なIOP上昇を認めました。最大平均IOP増大は、処置後90分にコントロール測定を行った時で、右眼3.8±4.2mmHg、左眼3.5±3.6mmHgに上昇しました。
処置後最大IOP増大は、処置した眼で18mmHg、左眼で17mmHgでした。散瞳適用後、30分と90分では、IOP上昇における左右の差は有意なものではなかったが(P30=0.123;P90=0.305)、処置後、60分で行ったIOP測定で、左眼に比べ、右眼のIOPが有意に、より高く上昇することが明らかになりました(P60<0.05)。トロピカミドで誘発した散瞳は、処置した眼で観察されましたが、対側の眼はいかなる時間でも、瞳孔機能にいかなる変化も認めませんでした。猫の年齢が増すと、IOP増大がより穏やかになりましたが、性別は、IOP変化に有意な影響を及ぼしませんでした。プラセボコントロール群、20頭の猫のいかなる有意な変化も観察されませんでした。我々は、0.5%トロピカミドが、正常な猫の処置した眼と処置していない眼に、IOPの有意な上昇を引き起こすことを結論付けます。(Dr.K訳)
■ヘルペスウイルス感染に起因する眼病を伴うネコの治療:17症例(1983-1993)
Stiles J.
J Am Vet Med Assoc 1995 Sep 1;207(5):599-603
Treatment of cats with ocular disease attributable to herpesvirus infection: 17 cases (1983-1993).
ヘルペスウイルス感染に起因する眼病を伴うネコ17頭の内科記録を回顧した。ヘルペスウイルス感染は免疫蛍光抗体検査の陽性、または樹枝状角膜潰瘍の発見により確認された。ネコたちは3ヶ月齢から23歳齢であった(平均4.8歳)。性別または系統の偏りは明白でなかった。ワクチン履歴は13頭のネコで手に入り、そのうち9頭はネコウイルス性鼻気管炎、カリシ、汎白血球減少症ウイルスに対するワクチンを適切に受けていた。6頭のネコは呼吸器病の履歴があった。12頭のネコがネコ白血病ウイルスの検査をされ、3頭が陽性であり、7頭がネコ免疫不全ウイルスの検査をされ、1頭が陽性であった。
よく見られる眼異常は結膜炎であり(13/17)、次いで樹枝状角膜潰瘍であった(10/17)。 角膜炎は17頭中6頭で、樹枝状でない角膜潰瘍は17頭中3頭で発見された。角膜壊死は17頭中4頭のネコにおいて、最初の検査で明らかか、追跡検査期間中に発生した。乾性角結膜炎は17頭中2頭で診断され、前部ブドウ膜炎は17頭中1頭で明らかとなった。全てのネコは2つ以上の、ヘルペスウイルス感染に関係した臨床的眼異常を持っていた。抗ウイルス薬点眼治療が14頭のネコに実施され、それはイドクスウリジン7頭、ビダラビン4頭、trifluridine 3頭であった。抗生物質点眼が10頭のネコに使用され、アトロピンが3頭のネコに使用された。コルチコステロイド点眼が2頭のネコで使用された。3頭のネコに組換え型ヒトアルファインターフェロンが、抗ウイルス点眼剤と共に経口的に与えられた。内科的治療に加えて、4頭のネコで外科的治療がなされた。(Dr.Yoshi訳)
■犬のブドウ膜炎の原因:102症例(1989-2000)
Vet Ophthalmol 5[2]:93-98 Jun'02 Retrospective Study 46 Refs
Kathleen L. Massa, Brian C. Gilger*, Tammy L. Miller, Michael G. Davidson
Causes of Uveitis in Dogs: 102 Cases (1989-2000)
ブドウ膜炎は、犬によく見られる眼科疾患の一つであり、最も一般的な盲目の原因の一つであります。この回顧的研究の目的は、基礎疾患に対し、ブドウ膜炎を持つ犬の、特徴、病歴、眼科所見を相関付けることです。我々は、ブドウ膜炎の臨床徴候で、1989年から2000年までに、NCSU-VTHへ紹介された、102頭の犬の回顧的研究を実施しました。
ブドウ膜炎を呈する犬の医療記録を再検討しました。犬は、完全な診断的精密検査データベースを集めたもの、十分な追跡調査が行われたもの、そして外傷、または過熟白内障による2次的なブドウ膜炎を省いたものだけを研究に含めました。この研究における全犬の平均年齢±SDは6.2±3.6才でした。内訳は、33頭の未去勢オスと16頭の去勢オス、そして14頭の未避妊メスと、27頭の避妊メスでした。14犬種が存在し、最も多く見られたのが、ゴールデン・レトリバー(n=14)でした。
59頭の犬(58%)が、特発性・免疫介在性ブドウ膜炎と診断され、腫瘍性と診断されたのは25頭(24.5%)で、感染性と診断されたものは18頭(17.6%)でした。房水フレアは一般的な臨床徴候で、88頭の犬(86%)に発生しました。この研究の犬における、ブドウ膜炎に関連した、一般的な感染体は、Ehrlichia canis (n=7)でした。リンパ肉腫(n=17)は最も多い腫瘍でした。ブドウ膜炎を呈した犬の約60%で、基礎疾患が分からず、免疫介在性、または特発性ブドウ膜炎と診断されました。しかしながら、そのうち、犬の25%が眼科、および/もしくは全身的腫瘍性疾患を持ち(リンパ肉腫を持つ症例の17%)、18%がブドウ膜炎の原因となる感染性を、基礎に保有していました。高い割合で、全身性疾患が犬におけるブドウ膜炎と関連しているため、抗炎症治療を開始する前に、広範囲な診断的検査を行うことを推奨します。(Dr.K訳)
コメント:後部ブドウ膜炎は、感染症と関連していることが多いと聞いたことがあります。ブドウ膜炎の治療には、やはりステロイドが中心になると思いますが、この要約によると、注意が必要ですね。
■緑内障の局所治療における進歩
Advances in Topical Glaucoma Therapy
Vet Ophthalmol 5[1]:9-17 Mar'02 Review Article 91 Refs
A. Michelle Willis, Kathryn A. Diehl, Terah E. Robbin
緑内障の局所内科療法において、最近、かなりの進歩が成し遂げられています。局所製剤の第一の利点は、全身投与薬剤のものと比較して、薬物に起因する全身的副作用の発生率が低いことです。強い眼のバリアーに対し、高濃度の局所眼科製剤が必要となる事もありますが、それらは特に小さい動物において、好ましくない全身的な作用を引き起こす可能性があります。経口炭酸脱水素酵素阻害薬は、一般的に、人と動物の両者において副作用と関連します。
最近開発された、2種類の局所炭酸脱水素酵素阻害薬であるドルゾラミドとブリンゾラミドは、動物における眼内圧低下をもたらし、それらの使用で全身的な副作用が明白に制限されます。一方、局所α-2作動薬のアプラクロニジンは、犬と猫で効果的に眼内圧を低下させますが、一般に入手できる製剤では、全身的副作用を起こしやすいでしょう。ラタノプロストは、犬と馬で眼内圧減少に効果的であると証明された局所プロスタグランジンF2α類似物質で、全身的副作用はまだ報告されておりませんが、この局所製剤は、既存または併発している眼科炎症疾患を悪化させるかもしれません。(Dr.K訳)
コメント:以前の過去ログに、ドルゾラミドについてありますが、0.5%と1%の製品が日本で入手可能です。犬、猫におけるラタノプロストは、副作用に関しての報告がないようですが、人における長期使用で、軽度のブドウ膜炎が起こるそうです。そのため、ブドウ膜炎を併発している緑内障の治療に使用する際には、注意が必要のようです。参考にして下さい。
■ネコの眼科薬物に対するアナフィラキシー
Signe J. Plunkett, DVM ; J Vet Emerg Crit Care 10[3]:169-171 Jul/Sep'00 Case Report 2 Refs; Anaphylaxis to Ophthalmic Medication in a Cat
眼科用バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシンの投与による、ネコでのアナフィラキシー反応の発生が増大している。報告された症例の殆どが致死的であった。これは、単に腎不全と心筋症の初期症状を呈して生きていたネコの報告です。これは、7日後に安楽死となりました。U.S.局方のDr.Kathyn Meyerと、フェニックスの救急動物病院のDr.Signe Plunkettは、研究を継続中で、彼らは追加症例の報告に関心を持っております。
論文で報告された症例は、バシトラシン、ネオマイシン、ポリミキシンの抗生物質眼科製剤を投与されたネコにおけるアナフィラキシーを起こした5症例です。追加された2症例は、この後に報告されました。ネコにおけるアナフィラキシーの徴候には、流涎、嘔吐、呼吸困難、協調不能、そして心血管破綻などがあります。(Dr.K訳)
■犬と猫のブドウ膜炎における臨床症候群
Brian C. Gilger, DVM, MS; WALTHAM/OSU 2001; Clinical Syndromes In Canine And Feline Uveitis
ブドウ膜皮膚病症候群は(人間における病態を基礎として推断された)Vogt-小柳-原田症候群(VKH)として言及されています。VHKは眼および皮膚両方の色素性領域における病気で、前方、後方部の異常、白斑そして髄膜炎によって特徴づけられます。この病気はメラニン細胞がキラーT細胞の標的となることによって起こる免疫介在性疾患であると考えられます。眼球症状はたいてい皮膚症状に先行して見られ、両側性の前ブドウ膜炎 あるいは汎ブドウ膜炎、ブドウ膜の色素脱失、網膜剥離、さらに進行例では失明によって特徴づけられます。
VKHは主に平均年齢2.8歳の若い犬に起こります。秋田犬、サモエド、シベリアンハスキー、シェルティで免疫学的素因があると思われます。ヒトでは神経症状が見られますが犬ではありません。(Dr.Shingo訳)
■全身性色素脱失を呈したダックスフントにおけるブドウ膜皮膚病症候群(Vogt-小柳-原田様症候群)
Hector David Herrera and Adriana Graciela Duchene; Vet Ophthalmol 1[1]:47-51 Mar'98 Case Report 25 Refs; Uveodermatological Syndrome (Vogt-Koyanagi-Harada-Like Syndrome) with Generalized Depigmentation in a Dachshund
3歳、メス、ブラックタンのダックスフントの視覚障害、両側性の前後部ブドウ膜炎、白毛症および全身性の皮膚色素脱失で来院しました。CBCとT3、T4を含む生化学的パラメータは正常でした。皮膚生検では、苔癬化した皮膚病変部には真皮に組織球とリンパ球の浸潤が見られ、ブドウ膜皮膚病症候群であることが示唆されました。処置として、プレドニゾロンとアザチオプリンの経口投与と局所的にプレドニゾロンとアトロピンの点眼処置を開始しました。視覚は維持され、皮膚は治療を開始して2ヶ月で色素の回復が見られました。(Dr.Shingo訳)
■ゴールデン・レトリバーのブドウ膜炎:75症例(1994-1999)
John S. Sapienza et al; Vet Ophthalmol 3[4]:241-246 Dec'00 Retrospective Study 14 Refs; Golden Retriever Uveitis: 75 Cases (1994-1999)
目的:虹彩毛様体嚢胞の組織学的所見としばしば関連した、進行性前ブドウ膜炎を持つゴールデン・レトリバーの臨床経過と眼科所見を考証することです。
研究動物:1994年と1999年の間に、眼科専門医へ紹介された75頭のゴールデン・レトリバー(142罹患眼)。
手順:スリットランプ生体顕微鏡、間接検眼鏡検査、圧平眼圧計、そして隅角鏡検査を用いた、完全な眼科評価を行いました。血液学、血清生化学評価、そして特定の感染性病原体に対する血清学的力価もまた、選択された症例で行いました。
結果:影響を受けた犬の年齢範囲は、4.5才から14.5才で、平均年齢8.6+/-2.1才でした。大多数の犬(n=66)が、初診時で両目が侵されておりました。性別分布は、未去勢オス4頭、去勢オス32頭、そして避妊メス39頭でした。血液学、血清生化学評価、そして特定の感染性病原体に対する血清学的力価では、根底にある基礎疾患を証明することは出来ませんでした。この症候群の眼科特徴は、しばしば放射状に出現する、水晶体カプセル前嚢の色素沈着でした。このカプセルの色素沈着は、ブドウ膜嚢胞と関連がある無しに関わらず認められました。単一から複数の多発性虹彩毛様体嚢胞を持つ犬は、症例の13.3%だけ臨床的に認められましたが、嚢胞は、進行した緑内障や盲目の組織変化でよく見られました。フィブリンは、症例の37%の前房に観察され、しばしば緑内障の前駆徴候でした。白内障形成(37%)と緑内障(46%)は、ブドウ膜炎に頻発する続発症でした。後方癒着症形成は症例の50%に起こりました。4つの摘出した眼と、14の緑内障の眼から摘出した標本の組織病理学的解析で、薄い壁で覆われた虹彩毛様体の上皮性嚢胞が、それぞれ、3/4で、そして12114症例で証明されました。顕微鏡的には、いかなるブドウ膜炎の炎症性浸潤も認められませんでした。
結論:ゴールデン・レトリバーにおける、この進行性ブドウ膜炎の全体的な予後は、46%が緑内障により盲目となるので警戒が必要です。ゴールデン・レトリバーにおける虹彩毛様体嚢胞は、この犬種において、緑内障の展開を導くかもしれません。(Dr.K訳)
■遺伝性眼疾患に関する、最新DNA塩基検査
Simon Petersen-Jones; Vet Ophthalmol 4[4]:233-236 Dec'01 Editorial 8 Refs; Current DNA-Based Tests for Hereditary Eye Disease
テキサスのベイラー医科大学でSuber, Pittlerらによる、アイリッシュ・セッターにおける、PRA(進行性網膜萎縮)の杆状錐体形成異常タイプ1(rcd1)を引き起こす遺伝子突然変異の同定が、原因となる突然変異のDNA検査の進歩で可能となりました。最初の検査は、Clementsらにより英国で開発され、これは、獣医眼科学(特異的遺伝性眼疾患のDNA塩基検査の時代)における新しい時代を予告しました。このような検査は、繁殖家が、特定の遺伝性疾患で苦しむ動物をつくり出し得る交配を避けることを可能にします。それらはまた、繁殖家に、問題となっている疾患を完全に撲滅する機会を与えてくれます。DNA検査は、いかなる年齢でも行うことが出来ます。Rcd1の症例で、彼らは、臨床徴候が展開するよりも前に、影響を受けた子犬を同定することが出来ますし、また、犬がrcd1遺伝子のキャリアー、または遺伝的に正常であるかを明白にすることができます。Rcd1遺伝子突然変異の同定と、DNA塩基検査が開発される前は、キャリアーと遺伝的に正常な犬は、交配試験、時間浪費、不経済で、望ましくない方法によってのみ区別することが可能でした。コンパニオンアニマルで、遺伝性疾患に対する最初の突然変異検知DNA検査のひとつが開発されてから、遺伝性網膜疾患に対する、付加的な検査の数を拡大することが有用になりました。確実に、利用可能な検査の数が、近い将来増え続けるでしょう。また、目以外の部位に発症する遺伝性疾患についての検査も含めて発展するでしょう。
突然変異検知検査は、現在、遺伝子突然変異が原因であると確認されている以下の遺伝性網膜疾患に利用可能です。
① サイクリックCMPホスホジエステラーゼ・ベータ・サブユニットの突然変異による、アイリッシュ・セッターにおけるrcd1。
② サイクリックGMPホスホジエステラーゼ・アルファ・サブユニットの突然変異によるウェルシュ・コーギー・カーディガンにおけるPRA。
③ サイクリックGMPホスホジエステラーゼ・ベータ・サブユニットの突然変異によるPRA I Sloughis。
④ RPE65遺伝子突然変異によるブリアールの先天性定常夜盲/網膜ジストロフィー。
⑤ ミニチュア・シュナウザーにおけるA型PRA。
⑥ シベリアン・ハスキーとサモエドにおけるX-linked(X染色体に位置する遺伝子)PRA。
⑦ オールド・イングリッシュとブル・マスチフにおける優性常染色体性PRA。
(Dr.K訳)
■グレート・デンにおける緑内障の隅角変性発生の程度と他の眼球測定値との関連性
Wood JL et al; Am J Vet Res 62[9]:1493-9 2001 Sep; Relationship of the degree of goniodysgenesis and other ocular measurements to glaucoma in Great Danes.
目的:グレート・デンにおける緑内障と、眼球測定値、隅角変性発生との関連を査定することです。
動物:180頭のグレート・デン
手順:目の検査および測定を、180頭のグレート・デンで行いました。これらの30頭に関しては、前房の深さ、硝子体の長さ、眼球全体の深さも測定しました。これらのデータを、グレート・デンを登録している43,371のケンネルクラブで、電子家系図情報と併合しました。隅角変性発生、眼球測定値、そして緑内障との関連と、隅角変性発生の遺伝率を評価しました。
結果:隅角変性発生の程度は、有意に、そして明確に、緑内障になる可能性と関連がありました。子孫における隅角変性発生の程度は、両親におけるものと有意な関連がありました。隅角変性発生程度の遺伝率の評価は0.52でした。前房の深さも、隅角変性発生のよい指標でした(すなわち、深さが3.7mm以下の場合、その犬は、ほぼ確実に緑内障でした)。両親が、70%以下の隅角変性発生であるとき、95%の信頼度で、その子孫における、緑内障の発生は、4/1000以下になると考えられます。この計略は、両親の前房の深さが、3.7mm以上であることを確保することへと導くものです。
結論と臨床関連:隅角変性発生、その他の眼球測定値、そして緑内障との有意な相関性と、隅角変性発生の有意な遺伝率は、緑内障がグレート・デンで遺伝性であるかもしれないということを示唆しております。もしそうならば、隅角変性発生の程度が最少である父と母だけの繁殖により、緑内障をコントロールできるかもしれません。(Dr.K訳)
■猫の好酸球性結膜炎および第3眼瞼におけるヘルペスウイルスと肥満細胞腫
Robert D. Larocca; Vet Ophthalmol 3[4]:221-225 Dec'00 Resident's Corner 45 Refs; Eosinophilic Conjunctivitis, Herpes Virus and Mast Cell Tumor of the Third Eyelid in a Cat
3歳齢のヒマラヤンが好酸球性結膜炎、ヘルペスウイルス、そして結膜の肥満細胞腫の併発と診断されました。好酸球性結膜炎は、結膜の掻爬試験により細胞学的に確認され、好酸球数と好中球はそれぞれ50%ずつであることが明らかとなりました。ヘルペスウイルスは確実なPCR法により確認されました。クラミジア免疫蛍光抗体(IFA)とヘルペスIFAは共に陰性でした。マイコプラズマは通常のマイコプラズマPCR法によって検出されましたが、マイコプラズマ培地上での菌の発育は認められませんでした。マスを切除し、顕微鏡評価によって組織学的に肥満細胞腫であることが明らかにされました。肥満細胞腫は局所切除後(1年間の追跡調査により)再発はありませんでした。好酸球性結膜炎は、ステロイドの点眼と全身的な酢酸メゲストロール(オババン)の内服処置を行いました。 局所的なステロイドが使用された時、ヘルペスウイルスが突発し、樹状で地理的な角膜潰瘍を作りました。結果として、酢酸メゲストロールの処置が行われ、好酸球性結膜炎はうまくコントロールできました。酢酸メゲストロールによる猫の好酸球性結膜炎の処置は、ヘルペスウイルスの可能性がある時に選択すべき処置かも知れません。(Dr.Shingo訳)
■猫の好酸球性結膜炎
Ingrid Allgoewer et al; Vet Ophthalmol 4[1]:69-74 Mar'01 Retrospective Study 15 Refs; Feline Eosinophilic Conjunctivitis
目的:組織学的に確認した猫の好酸球性結膜炎12例について、臨床学的、細胞学的、組織学的および電子顕微鏡学的所見、FeHV-1に対するPCR法の結果、処置そして結果を再調査すること。
動物研究:26ヶ月の期間呈した自然発症性の12頭。
手順:徹底した眼科学的検査、細胞採取用ブラシ法により実施された結膜掻爬試験;眼瞼結膜からの組織学的標本;STT(シルマーティアテスト)紙上のFeHV-1に対するPCR;唾液と鼻のぬぐい液、そして全ての結果の遡及的な評価。
結果:最もよく見られた種類は家猫短毛種の8頭でした。続いてペルシャ猫の2頭、ソマリ1頭、シャム猫1頭でした。平均年齢は7.2歳で、1~15歳の年齢で症状が見られました。9頭の猫は去勢済みの雄猫;雌猫は3頭でそれらのうち2頭は避妊済みでした。片側性(7頭)あるいは両側性(5頭)の色素脱失の併発と眼瞼縁の糜爛、眼瞼痙攣、結膜と第3眼瞼の腫脹および発赤は最も普通に見られた臨床所見でした。
組織標本中の好酸球出現率は各症例で10%以上見られました。シルマーティアテスト紙上の FeHV-1に対するPCRでは、全ての症例において陰性結果となりました。組織学的には、好酸球、リンパ球、形質細胞、肥満細胞およびマクロファージが関与していました。電子顕微鏡学的には、ウイルス粒子は検出されませんでした。10症例で長期にわたる抗炎症の処置が必要でした。
結論:調査した12例の結果から、猫の好酸球性結膜炎は成猫における、慢性の片側性あるいは両側性の炎症であると推察されます。典型的な眼瞼縁も関与しており、肥厚、色素脱失、糜爛がありました。
結膜掻爬による細胞診は、好酸球性結膜炎を確認するための価値のある手段でした。我々の症例では、組織学的所見は組織病理学的所見とよく相関していました。局所的あるいは全身的な抗炎症剤は、短期間のうちに臨床症状を回復することができました。今回の12症例では、電子顕微鏡学的およびPCRのどちらにおいても FHV-1の関与を示すことはできませんでした。FeHV-1の病原学的役割が未解決のままです。(Dr.Shingo訳)
■猫ブドウ膜炎の原因
Causes of Feline Uveitis
Cynthia C. Powell, DVM, MS & Michael R. Lappin, DVM, PhD; Colorado State University
Compend Contin Educ Pract Vet 23[2]:128-140 Feb'01 Review Article 56 Refs
抄録:ブドウ膜炎は眼球血管膜のどの部分にでも炎症を起こします。前ブドウ膜炎と脈絡網膜炎は、猫でよく見られますが、中部ブドウ膜炎も起こります。猫のブドウ膜炎には多くの原因が報告されており、Toxoplasma gondii(トキソプラズマ)感染症やFIP(猫伝染性腹膜炎)、リンパ腫、FIV(猫免疫不全症ウイルス)、FeLV(猫白血病)、Cryptococcus neoformans(クリプトコッカス)感染症のような全身性疾患と関連しています。加えて、最近ではバルトネラ属の菌体と猫ヘルペスウイルスもブドウ膜炎と関連づけられています。ブドウ膜炎の原因を決定することは難しく、傷害に対する眼の反応が限られていて、ブドウ膜炎とは異なる原因が、類似した臨床症状を作り出している可能性があるからです。全ての症例で、徹底した病歴の調査と身体検査が行われるべきです。もし、全身性疾患が疑われるならば、全血球計算、血清生化学的パネル、尿検査を行うべきです。この論文では、猫のブドウ膜炎に関する病気の診断の為の有益な検査と勧告を総説しています。(Dr.Shingo訳)
■猫の石灰化角膜壊死片
Mineralized Corneal Sequestrum in a Cat
Anne J. Gemensky, DVM, MS, DACVO & David A. Wilkie, DVM, MS, DACVO; Dept of Veterinary
J Am Vet Med Assoc 219[11]:1568-1572 Dec 1'01 Case Report 36 Refs
8ヶ月齢で3kgの未去勢の猫で、コルチコステロイド含有の点眼剤を使用した後にでてきた、慢性難治性角膜炎と角膜プラークに関する評価を行いました。眼の所見を適切に診断してみると、眼瞼痙攣、結膜炎、角膜の血管新生、そして高密度で砂粒状に生じた黄褐色の角膜プラークが認められました。プラークを除去するために層状角膜切除を行いました。角膜は軽度の瘢痕を残し、治癒しました。組織学的検査では、広範な血液凝固壊死、そして、炎症細胞の増殖を伴う角膜基質の石灰化、血管、線維化が明らかになり、それらの所見は石灰化角膜壊死片の診断に一致するものでした。根底にある原因として、慢性の猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)が引き起こす角結膜炎を思わせる病歴がありました。局所的なコルチコステロイドの処置が、既存の角膜壊死と潜在していた石灰化を増強したのかもしれません。
我々の知る限りでは、猫の角膜壊死片の石灰化は臨床症例として報告がありませんでした。しかし、実験的に、FHV-1を感染させた猫で起こることは報告されています。(Dr.Shingo訳)
■内科療法単独で治療した犬における緑内障の長期管理
Long-term management of a glaucomatous eye in a dog treated with medical therapy alone.
Hasegawa T, Doki K, Yanase J
J Vet Med Sci 63[12]:1323-5 2001 Dec
食欲不振、沈うつ、振戦を呈する8才のオスのヨークシャー・テリアで、右目の急性隅角開放性緑内障と診断しました。入院時の右目異常所見は、眼内圧上昇(IOP:40mmHg)、前房におけるフィブリンとフレアの存在、未熟白内障でした。虹彩角膜隅角の形態学的異常は認めず、隅角は開放性でした。入院後1年時にIOP上昇が認められましたが、ジクロルフェナミド(DCPA)とマレイン酸チモロールの併用、DCPA単独、時に無処置を用いた内科療法で、1973日間(約5年)にわたり低IOP(<or=24mmHg)を維持しました。この症例は、隅角開放性緑内障の患畜に対し、内科療法単独で長期管理できるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■犬における突発性慢性角膜上皮欠損(SCCED)の形態学と免疫組織化学
Bentley E et al; Invest Ophthalmol Vis Sci 42[10]:2262-9 2001 Sep; Morphology and immunohistochemistry of spontaneous chronic corneal epithelial defects (SCCED) in dogs.
目的:犬における、突発性慢性角膜上皮欠損(SCCED)の上皮と細胞外基質の形態学的特徴を調査することです。
方法:いかなる基礎疾患も持たない、3週間以上続いた浅在性角膜糜爛であると確認後の、48の表層角膜切除標本を入手しました。組織学的標本は、光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡、そして透過型電子顕微鏡により調査しました。ラミニン、コラーゲンⅣ、フィブロネクチン、そしてコラーゲンⅦの免疫局在性検査を行いました。
結果:欠損部に隣接した上皮細胞は、基底細胞外基質への結合が不完全でした。糜爛領域におけるコラーゲン原繊維を構成する、表層間質性硝子質の非細胞領域が、ほとんどの標本で、顕著に存在しました。標本は、さまざまな程度の、繊維増殖、血管新生、そして白血球浸潤を呈しました。ラミニン、コラーゲンⅣ、そしてコラーゲンⅦは、通常、いずれも存在しないか、またはあっても、糜爛表面に不連続かつ単独に存在するというものでした。フィブロネクチンは、通常、連続的、または不連続に糜爛表面を被覆しておりました。15検体の透過電子顕微鏡検査では、基底膜が、糜爛領域で欠損しているか、あっても不連続にしか存在しないということが明らかにされました。9検体のうち8検体の電子顕微鏡走査では、連続的な基底膜の欠損が確認されました。周囲角膜における、上皮と細胞外基質は、正常に思われました。
結論:突発性慢性角膜上皮欠損を持つ犬の大部分は、上皮欠損部において、正常な基底膜構造を持っておらず、慢性、再発性糜爛の根底にある病態生理学の役割を反映すると考えられる、細胞外基質における、他の異常を持つということです。(Dr.K訳)
■ドルゾラミドの眼球降圧効果に関する6週間用量反応調査と、1年間の継続投与調査。用量反応調査グループ
Strahlman E et al; Am J Ophthalmol 122[2]:183-94 1996 Aug; A six-week dose-response study of the ocular hypotensive effect of dorzolamide with a one-year extension. Dorzolamide Dose-Response Study Group.
目的:6週間、患者に対し、0.2%、0.7%、そして2.0%の塩酸ドルゾラミドを投与し、眼内圧(IOP)低下における、それぞれの濃度関連性反応と、その有効性を調査し、さらに1年間0.7%と2.0%ドルゾラミドを投与した時の有効性を評価することです。
方法:開放隅角緑内障、または眼球高血圧症を持つ333人の成人に対し、予期的二重盲目的無作為プラセボコントロール臨床試験の、多国籍調査を行いました。6週間の用量反応調査では、患者に対し、4つの処方(0.2%,0.7%,2.0%ドルゾラミド、またはプラセボ(ドルゾラミド溶媒))を、無作為に1日3回投与しました。1年間の延長投与調査では、患者に対し、0.7%、または2.0%ドルゾラミドを投与し、必要に応じて、0.5%チモロールを1日2回投与しました。
結果:用量反応調査では、眼内圧(最高点)の平均低下パーセントは、2.0%と0.7%ドルゾラミドで16%から18%、プラセボ群で4%から7%で、ドルゾラミドによる最終的な低下は11%から14%でした。0.2%ドルゾラミドは、有意な活性が認められませんでした。延長投与では、患者の55%(316人中174人)で、IOPの十分な低下が維持されました。調査期間中、2.0%、または0.7%ドルゾラミド処置の患者は、IOPの低下において、数値的にさらなる効果を示しました。ドルゾラミド投与12ヶ月後では、炭酸脱水素酵素活性が、全体の20%から28%に観察されました。
結論:0.7%、または2.0%のドルゾラミド1日3回点眼は、眼内圧の低下をもたらし、単独療法、または0.5%チモロールとの併用により、一般的に、よく許容されました。(Dr.K訳)
■緑内障の犬における、局所Dorzolamide(ドルゾラミド)と経口Methazolamide(メタゾラミド)に関する、眼内圧の変化
Kirk N. Gelatt & Edward O. MacKay; Vet Ophthalmol 4[1]:61-67 Mar'01 Prospective Study 23 Refs; Changes In Intraocular Pressure Associated with Topical Dorzolamide and Oral Methazolamide in Glaucomatous Dogs
目的:犬における、経口ミタゾラミド(5mg/kg)と、局所2%ドルゾラミドで、眼内圧(IOP)の低下を比較し、2つの薬を併用した場合、それぞれ単独で用いた時よりも、眼内圧が低下するかどうかを判定することです。
動物:緑内障のビーグル13頭
手順:眼圧計、瞳孔サイズ、そして心拍数に関する測定を、1、3、そして5日目の午前8時、正午、そして5時に行いました。薬物調査の5日間は、プラセボ(0.5%メチルセルロース);2%ドルゾラミドを1日2回(午前8時と午後5時)1眼に投与、そして、もう1眼に1日3回(午前8時、正午、そして午後5時)の頻回投与、メタゾラミド(5mg/kg,経口投与、午前8時、と午後5時)単独;2%ドルゾラミド1日2回点眼(5日間)に、最後の3日間、経口メタゾラミドを併用、そしてメタゾラミド(5日間)に、最後の3日間、2%ドルゾラミド1日2回点眼を併用、をそれぞれ行いました。それぞれのグループ間の統計的比較は、1,3,5日間のコントロール群(無処置)と、処置群(プラセボ・薬物)に関して行いました。
結果:局所2%ドルゾラミドの、1日2回と3回投与は、有意な眼内圧の減少(平均±SEM)が、初日(1日2回7.6±2.4mmHg、そして1日3回16.4±3.6mmHg)から認められ、5日目(1日2回10.4±2.0mmHg、1日3回13.9±2.7mmHg)までに、さらなる十分な効果を示しました。経口メタゾラミドも、両眼において、有意な眼内圧の低下が認められました。経口メタゾラミド(第1日から5日を通した投与)と、局所2%ドルゾラミド(3日目から5日を通した点眼)の併用もまた、全日、両眼の有意な眼内圧低下を認め、5日間の平均±SEM眼内圧は、7.9±1.7mmHg(メタゾラミドとドルゾラミド併用)と、7.5±2.6mmHg(メタゾラミド単独)に減少しました。局所ドルゾラミド(1から5日点眼)と、経口メタゾラミド(3日目から5日の投与)の併用は、第1日目(午後5時:9.6±1.9mmHg)、3日(午前11時と午後5時)、そして5日間全体の両眼(午後5時:コントロール眼9.5±1.8mmHg、投薬群9.2±1.9mmHg)に関し、有意にIOPが低下しました。局所ドルゾラミド(2%)の1日3回滴下は、経口メタゾラミドと2%ドルゾラミド1日2回投与の併用と、良く似た眼内圧低下をもたらしました。
結論:ドルゾラミド(2%)の1日2回、または3回点眼は、犬の緑内障において、眼内圧の有意な低下をもたらします。1日2回の点眼は、1日から5日までに眼内圧の連続的な低下をもたらします。ドルゾラミド(2%)と経口メタゾラミド(5mg/kg1日2回経口)の併用は、単独投与と似ているものの、相加的ではない眼内圧低下を引き起こします。(Dr.K訳)
■イヌの涙液産生におけるトリブリッセンの影響の量的研究
Berger SL et al; J Am Anim Hosp Assoc 1995 May-Jun;31(3):236-41; A quantitative study of the effects of Tribrissen on canine tear production.
シルマーティアテスト(STT)におけるトリメトプリム-スルファジアジン影響を、様々な内科、術後の状態に対して処方されたイヌの集団で研究した。この研究の目的はトリメトプリム-スルファジアジン治療による、二次的な乾性角結膜炎(KCS)の発生率の判定、そのような発生率が用量、期間、もしくは両方に関係するかの判定と、患者のリスクを高める他の要因を見出すことであった。トリブリッセンに添付文書は「イヌは推奨される治療用量には病的な影響を示すことなく10回まで耐えうる」と述べている。この研究の結果は、処置されたイヌにおいて15.2%(5/33)のKCSの発生率を示した。(Dr.Yoshi訳)
コメント:ST合剤によって涙液の産生が抑制されることが知られています。私が思っていたよりもKCSの発生率は高いようです。私にはトリブリッセンの10日以上の投与によるKCSの経験はありませんが、きっと涙量は減少しているのでしょう。今後、目にも気を配っていきたいです。国内のトリブリッセンの使用説明書を読んでみたところ、投与期間については「週余にわたる連続投与は行わないこと」となっていました。
■犬における、自然発生慢性角膜上皮欠損(SCCED):臨床的特徴、神経感応、そしてIGF-1併用、または単独物質Pの局所投与効果
Murphy CJ et al; Invest Ophthalmol Vis Sci 42[10]:2252-61 2001 Sep; Spontaneous chronic corneal epithelial defects (SCCED) in dogs: clinical features, innervation, and effect of topical SP, with or without IGF-1.
目的:犬の自然発生慢性角膜上皮欠損(SCCED)における、臨床的特徴と、神経感応の変化、そして物質P(SP)含有量を明確にし、この疾患の治療で、インスリン様成長因子(IGF)-1を併用、または単独での局所物質P投与の効力を評価する予備的研究を実施することです。
方法:Cochet-Bonnet触覚計測を含めた完全な眼科検査を、少なくとも3週間継続した原因不明の自然発生慢性角膜欠損を持つ、45頭の犬に実施しました。18症例は、表層角膜切除術行い、角膜神経を、蛋白遺伝子産物(PGP)-9.5、物質P、血管作用腸管ペプチド(VIP)、そしてチロシン水酸化酵素(TH)に対する抗体で、免疫組織化学的に標識しました。相対的繊維密度を、質的、量的に解析しました。角膜上皮細胞と、涙物質P含有量を、酵素免疫測定法により、罹患犬と正常犬で測定しました。IGF-1併用局所物質Pと、局所物質P単独投与の予備的公開治験を、21頭の犬で実施しました。
結果:研究開始前の糜爛継続期間は、平均9.22週間(範囲:3-52週)でした。患畜の平均年齢は、中年(9.25+/-1.85才[SD])で、この疾患の性別疾病素因は不明です。ボクサー、ゴールデン・レトリバー、そしてキース・ホンドは、一般病院集団と比較すると、平均以上の割合でした。角膜知覚は、正常でした。物質Pが異常に増加した罹患犬と、上皮欠損周囲を取り囲む様に同定された、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)-免疫反応性神経叢を持った罹患犬で、角膜神経感応の、著名な変化が認められました。欠損部周囲の上皮細胞の物質P含有量は増大したのに対し、涙の物質P含有量に変化はありませんでした。IGF-1併用、または併用しない物質Pでの治療では、70%から75%に、欠損部の完全修復を認めました。
結論:犬の特発性自然発生的角膜疾患は、人の慢性上皮欠損と臨床的特徴を共有します。ペプチド作動性神経感応における、著明な変性の存在と、物質Pの局所治療に対する陽性反応は、物質Pが角膜損傷修復過程において、重要な役割を担っているということを、示唆しております。(Dr.K訳)
■ダイオードレーザー光凝固術による犬の仮定虹彩メラノーマに対する治療:23症例
Cynthia S. Cook & David A. Wilkie; Vet Comp Ophthalmol 2[4]:217-225 Nov'99 Retrospective Study 35 Refs; Treatment of Presumed Iris Melanoma in Dogs by Diode Laser Photocoagulation: 23 Cases
23頭の犬における、散発性仮定虹彩メラノーマの寛解を導くために、半導体ダイオードレーザーを使用しました。全ての症例は、2x3mmから4x12mmまでのサイズで、片側性虹彩色素沈着増強を呈しました。症例は、20Dレンズのレーザー間接検眼鏡(LIO)か、オペレーティング・マイクロスコープ・アダプター(OMA)のいずれかを用いて、ダイオード・レーザー投射装置で治療しました。レーザー治療は、80から1000mWの範囲の出力で、累積持続時間14分31秒(14:31)までの使用で、「効果的に」投射しました。マスの即座の縮小が治療後、認められました。5頭の症例は、1回以上の投射を必要とし、3症例は2回投射、2症例は3回投射を受けました。レーザー治療後、6ヵ月から4.5年間の追跡調査で、いかなる病変の拡大も、認められませんでした。レーザー治療に関連した、軽度な合併症である、悪液質、虹彩色素沈着増強、そして副次的な高熱による角膜浮腫などが、認められました。緑内障と白内障形成は、観察されませんでした。非侵襲性ダイオードレーザー光凝固術は、犬における点在した、虹彩色素塊に対して、安全で効果的な、治療方法であると思われます。(Dr.K訳)
■正常な犬の眼におけるダイオード・レーザー経強膜毛様体光凝固術の臨床的、組織病理学的効果
Brad Nadelstein et al; Vet Comp Ophthalmol 7[3]:155-162 Nov'97 Reports of Original Studies 30 Refs; Clinical and Histopathologic Effects of Diode Laser Transscleral Cyclophotocoagulation in the Normal Canine Eye
ダイオード・レーザー毛様体光凝固術を、5頭の正常な成犬に行いました。術後1時間から28日まで、この処置の臨床的、組織病理学的効果を調査するため、眼科検査、眼圧測定、光学顕微鏡、そして走査電子顕微鏡検査を行いました。レーザー毛様体光凝固術により、24時間以内に15mmHg以下の眼圧低下と、軽度な急性眼科炎症が引き起こされ、これは28日間残存しました。光学顕微鏡所見では、時間と関連した内強膜から始まる、凝固壊死の拡大と毛様体突起、周囲網膜、毛様体柱網部、そして強膜外側部を含むまでの、外側面への影響拡大が、認められました。強膜静脈叢に対する損傷も、明らかでした。毛様体上皮に対する初期照射は、上皮修復が微細構造的に認められるまで、続けました。ダイオード・レーザー毛様体凝固術により、重篤な副作用なしに、効果的な毛様体壊死と、眼内圧低下が得られ、レーザー毛様体凝固術に関するこの方法は、Nd:YAGレーザー毛様体凝固術を、上回る有益性があるかもしれないということを示唆しております。(Dr.K訳)
■犬における緑内障の治療に関するダイオード・レーザー経強膜毛様体光凝固術:6・12ヵ月の追跡調査結果
Cynthia Cook et al; Vet Comp Ophthalmol 7[3]:148-154 Nov'97 Reports of Original Studies 29 Refs; Diode Laser Transscleral Cyclophotocoagulation for the Treatment of Glaucoma in Dogs: Results of Six and Twelve Month Follow-Up
原発性緑内障を持つ、144頭(32頭は両側性治療)の176検体の眼に、ダイオード・レーザー経強膜毛様体光凝固術を行いました。600ミクロンのスポットサイズプローブを、1つの眼に対し、平均85ジュールまでの、1500msec(ms)の持続期間と、1250から2000mWatts(mW)の出力で、角膜輪部、3から4mm後方、30から40ヵ所に適用しました。術後直後に、11.3=/-7.8mmHgの眼内圧上昇が認められ、前房穿刺術により、治療しました。術後、最初の1週間、眼圧の変動が認められました。炭酸脱水素酵素阻害剤を、正常な眼内圧(IOP)を維持するのに、必要なだけ投与しました。19検体は、繰り返し治療を行いました。6ヵ月、またはそれ以上の追跡調査で、106検体の情報が得られました。これらのうち、65%(69検体)に、最後の検査で、補助療法なしに、30mmHgか、それ以下のIOP(6ヶ月後の平均IOP=20.4+/-14.9mmHg)が認められました。12ヵ月以上の追跡調査期間で、58%に、意味あるIOP減少が達成されました。治療をした45検体は、視覚保存の可能性があるかの査定(臨床検査と、病歴により)を行いました。これらの症例のうち、53%(19検体中10検体)は、1年、またはそれ以上の、最終追跡検査まで、視覚機能を保持しておりました。視覚機能不全は、頑固な、または繰り返すIOPの上昇、白内障、眼内出血、そして網膜剥離により、起こりました。緑内障の治療に関する、ダイオード・レーザー毛様体光凝固術は、大部分の症例で、最小限の術後炎症、美観の保持、苦痛の無い眼を導く、非侵襲的な方法です。この方法の、際立った、有力性のある応用は、急性緑内障における、視力保持力にあります。(Dr.K訳)
★犬の乾性角結膜炎モデルの結膜ムチンに対するシクロスポリンの効果
Moore CP et al ; : Invest Ophthalmol Vis Sci 2001 Mar;42(3):653-9 Related Articles, Books, LinkOut ; Effect of cyclosporine on conjunctival mucin in a canine keratoconjunctivitis sicca model.
目的:シクロスポリンA(CsA;サンディミューン;Sandoz,Basel,Switzerland)の催涙効果以外に、CsAが結膜ゴブレット細胞のムチン産生に対して効果を持つことで、乾性角結膜炎(KCS)に対して有効であるという仮説を評価すること。
方法:眼窩と瞬膜の涙腺を除去し、6頭の両側性の乾性角結膜炎モデルを作りました。 KCS誘発2週間後から、2%CsAか賦形剤のどちらかを、1日2回KCS誘導後、6週目まで投与しました。外科処置をしていない3頭のコントロール犬には、賦形剤のみを1日2回投与しました。腹側円蓋結膜の切開バイオプシー標本を腺切除(基準値)前と切除後2,4,6週で作成し、それぞれの試料採取時期で、目の写真を撮影し、結膜炎の色観と目脂の程度でグレード分けしました。バイオプシー横断面でコンピューター形態計測機を用いて評価した結膜上皮の細胞内ムチン貯蔵、臨床所見、形態計測所見の相関性を示しました。
結果:涙腺切除の結果2週後までにKCSが誘発され、術前のシルマーテスト(STT)平均値22.5mm/minとコントロールの正常な眼のSTT平均値22.9mm/minと比較して、誘発群のSTT平均値は5mm/min以下でした。6週間の治検期間中、KCS誘発群のSTT値は、局所治療に関係なく低いままでした。基準値と2,4,6週に採取した結膜標本から、細胞内ムチンの貯蔵量を定量しました。4週と6週(局所治療開始後2週と4週後)で、上皮内ムチン量が前処置KCSの眼(7.4microm(2)/microm)、そして賦形剤処置KCSの眼(それぞれ、7.3と8.5microm(2)/microm)と比較して、CsA処置KCSの眼は(それぞれ、14.4と13.1microm(2)/microm)有意に増加しました(p<0.05)。CsAで処置したKCSの眼は賦形剤で処置したKCSの眼に比べ、結膜炎と目脂のスコアが低かったです。
結論:局所2%CsAは4週間以上で、生体内における結膜ムチン貯蔵を復活させることを、外科的誘発KCS眼の定期的結膜バイオプシー標本のコンピューター形態測定により確定しました。結膜炎と目脂の程度はKCSに対するCsA処置で減少しました。涙腺組織を除去した動物を用いた今回の研究で、結膜反応が涙腺遺伝子効果とは無関係に発現しました。これらの結果は結膜ゴブレット細胞のムチン産生を復活させることを示唆します。換言するとムチン糖タンパクの合成と分泌の均衡がKCS治療におけるCsAの有効性の重要な役割を演じているのかもしれません。(Dr.K訳)
訳者コメント:KCSは涙液の分泌量不足から水分層の欠乏を引き起こし、ムチン産生の異常によって慢性的に悪化すると考えられております。今回の研究では、これまで言われていた局所CsAの涙腺への細胞浸潤と角膜、結膜の炎症を減ずることにより涙腺の涙液産生再開を可能にするという効果以外に、直接ムチン産生を再開させるというCsAの効果を実証したものですね。ムチン産生細胞は結膜と角膜に存在します。このことにより、臨床所見も効果が得られたということは、1999年片野ら(犬の乾性角結膜炎に対する超低濃度シクロスポリン点眼液の臨床効果)の報告したシクロスポリンを調合する際に、角膜浸透性の良いα-シクロデキストリンを使うということはより効果的であるということにもなりますね。
★猫の難治性角膜潰瘍:29例(1991-1999)
Noelle C. La Croix, DVM et al; J Am Vet Med Assoc 218[5]:733-735 Mar 1'01 Retrospective Study 15 Refs
Nonhealing Corneal Ulcers in Cats: 29 Cases (1991-1999)
目的:難治性角膜潰瘍を患っている猫に、創面切除、格子状角膜切開と創面切除、そして浅薄角膜切除
を施した後の治癒平均時間の比較調査。
構成:過去調査
動物:29頭の猫(36個の難治性角膜潰瘍の眼)
方法:難治性角膜潰瘍の猫の医療記録を再調査し、徴候、臨床症状の持続期間、眼の異常、様々な治療プロトコールに対する反応を記録しました。
結果:罹患猫の平均年齢は7歳8ヶ月で、猫種は家猫ショートヘアータイプ(17頭)、ペルシャ猫(9頭)、ヒマラヤン(2頭)、シャムネコ(1頭)でした。臨床症状は、紹介される大体2週間前に明らかに現れていました。4頭の猫は両眼が冒されていました。創面切除での角膜治癒の平均日数は30日でした。創面切除と格子状角膜切開を施し、治癒までの平均日数は42日でした。2つの眼に浅薄角膜切除を行い、2週間で治癒しました。角膜の腐骨の形成は、創面切除と格子状角膜切開で治療された13個の眼のうち4件で確認されています。
結論と臨床関連:短頭猫に難知性の角膜潰瘍が発生する傾向があります。創面切除と格子状角膜切開の組み合わせは、創面切除だけの治療より難治性角膜の平均治癒期間が短縮するというわけではありません。格子状角膜切開は角膜潰瘍が角膜腐骨になる傾向があるのかもしれません。(Dr.Sato訳)