■会陰ヘルニア修復前に去勢した犬あるいは術後便失禁を発症した犬は会陰ヘルニア再発のリスクが増す
Dogs neutered prior to perineal herniorrhaphy or that develop postoperative fecal incontinence are at an increased risk for perineal hernia recurrence
J Am Vet Med Assoc. 2025 Jan 8:1-6.
doi: 10.2460/javma.24.07.0487. Online ahead of print.
Abigail L Hatch, Mandy L Wallace, Kenneth A Carroll, Janet A Grimes, Brian J Sutherland, Chad W Schmiedt

目的:犬の会陰ヘルニア修復術後の再発や術部感染(SSI)に対するリスクファクターを確認する

方法:1施設で2008年から2023年の間に、会陰ヘルニア修復を行ったオス犬の医療記録を回顧的に再調査した。シグナルメント、外科的修復方法、SSIのリスクファクター、再発のリスクファクターに関係するデータを収集した。フォローアップは、紹介獣医師の記録および/あるいは飼い主への聞き取りで入手した。術後12か月フォローアップできなかった犬は除外した。統計学的解析は記述統計で実施し、一変量解析と組み合わせ群間で比較した。

結果:84頭を研究に含めた。再発は13症例(15%)で発生し、SSIsは6症例(7%)で発生した。会陰ヘルニアの外科的修復前に去勢した犬は、外科的修復時に去勢した犬と比べ、ヘルニアの再発する確率が4.4倍高く、術後便失禁を発症した犬は3.4倍高かった。会陰ヘルニア再発あるいはSSIsの発症と評価した関連リスクファクターとの間に他の有意な関連はなかった。

結論:SSIsの発症に対するリスクファクターは、このグループで確認できなかった。外科的修復時に去勢した犬と比べて、会陰ヘルニア修復前に去勢した犬と、術後便失禁を発症した犬は、外科的ヘルニア修復後の再発に対するリスクが上昇しているかもしれない。

臨床的関連:過去に去勢した後、会陰ヘルニア修復を行う犬の飼い主には、術後のヘルニア再発のリスクが上昇している可能性を説明するべきで、術後の便失禁の発症した犬の飼い主には、ヘルニア再発のリスクが高まる可能性を伝えるべきである。(Sato訳)
■選択的抗生物質投与の手術において手術部位感染に対する周術および術後抗生物質予防的使用の効果
The effect of peri- and postoperative antibiotic prophylaxis on surgical site infection in surgeries with elective antibiotic administration
Vet J. 2024 Nov 14:106267.
doi: 10.1016/j.tvjl.2024.106267. Online ahead of print.
Nico Paeckel , Yuri Zablotski , Andrea Meyer-Lindenberg

Free article

この研究の目的は、手術室に多くの人がいる大きな大学病院において、選択的抗生物質投与での手術において、手術部位感染(SSI)にたいする周術および術後抗生物質予防法(AMP)の効果を調査することだった。

この回顧的研究において、COVID流行期間を除きほぼ5年間、SSIの発生に対し、個人飼育の1060頭の猫と犬を解析した。

両患者ファイルを含め、患者のオーナーにはアンケートで連絡を取った。手術の種類、AMPの使用と種類、SSIの発生、時間、種類と治療を考証した。

全体のSSI率は7.8%(66/841)だった。AMPの使用は、分析したいずれの手術においてもリスクの有意な低減に導かなかった。抗生物質予防法の術後の継続は、周術予防法単独と比べて有意差を示さなかった。

結果を解釈する時、この研究の回顧的特性と同様に、結果の一部が患者の飼い主の調査を基にしている事実を考慮すべきである。(Sato訳)
■軟部組織手術中の小型犬の低体温の予防に対する末梢加温:無作為化対照試験
Peripheral warming for prevention of hypothermia in small dogs during soft tissue surgery: A randomized controlled trial
Vet Anaesth Analg. 2024 Sep 7:S1467-2987(24)00166-1.
doi: 10.1016/j.vaa.2024.08.011. Online ahead of print.
Ayano Kudo , Ren Oboso , Ryo Oshita , Akinori Yamauchi , Shintaro Kamo , Hiromitsu Yoshida , Eiichi Kanai , Satoshi Takagi

目的:麻酔中の低体温を防ぐため、テーブルレッグカバーを小型犬の四肢に装着する効果を評価する

研究計画:無作為化パラレル-グループ研究

動物:軟部組織手術に対して麻酔をかけた体重15kg未満の成犬60頭

方法:犬を無作為に2群のうち1群に振り分けた。コントロール群は、通常の術中補温サポートを行い、肢-装着群は、通常の補温サポートに加え、中手骨/中足骨部までテーブルレッグカバーで末梢肢を覆った。麻酔中の直腸温を記録し、2群で比較した。データ解析は、直腸温に対しスチューデントt検定を用い、低体温発生にはフィッシャーの正確検定、他の要因を考慮に入れて肢-装着の効果に対して共分散分析を行った。

結果:各群に30頭を含めた。挿管時の群間の直腸温に違いはなかったが、手術終了時にコントロール群(35.9±0.8℃)よりも肢-装着群(36.7±1.0℃)は有意に高かった(p=0.003)。平均差は0.81℃(95%CI、0.33-1.29℃)だった。低体温(<37.0℃)の発生は、コントロール群より肢-装着群で有意に低かった(それぞれ28/30と19/30;p=0.010)。

結論:体重15kg未満の犬に対し、テーブルレッグカバーの肢への装着は、術中の直腸温低下を緩やかにした。肢への装着は、安価で実施しやすく、軟部組織手術を行う小型犬において、麻酔中の低体温を最小にする実践的な方法である。

臨床関連:小型犬に対するテーブルレッグカバーでの末梢加温は、軟部組織手術肘の低体温を低減する可能性を持つ。(Sato訳)
■犬の円錐型ポリプロピレンメッシュによる会陰ヘルニア縫合の回顧的解析:方法記述と結果
Retrospective analysis of perineal herniorrhaphy with cone-shaped polypropylene mesh in dogs: technique description and outcome
Front Vet Sci. 2023 Oct 26:10:1279776.
doi: 10.3389/fvets.2023.1279776. eCollection 2023.
Tatsuya Heishima , Kumiko Ishigaki , Mamiko Seki , Kenji Teshima , Orie Yoshida , Kaito Iida , Ryo Takeuchi , Kazushi Asano

Free PMC article

イントロダクション:この研究の目的は、ポリプロピレンメッシュ(PM)を用いた犬の会陰ヘルニア(PH)の外科的修復に対する方法を述べることと、その結果を評価する。

方法:全ての犬は、トレンデレンブルグ体位を取らせた。去勢と尾側腹腔切開で、膀胱および結腸固定を必要ならば実施した。罹患したヘルニア側の同側の会陰切開を実施した。PMは縫合して円錐型を作り、ヘルニア孔に設置した。PHは、PHと仙結節靭帯、内閉鎖筋、外肛門括約筋を含む骨盤隔壁の間を縫合することで修復した。全ての犬の医療記録を再検討し、シグナルメント、術中所見、術後合併症、予後を評価した。

結果:22頭の犬のうち、15頭は未去勢、7頭は過去に去勢していた。年齢中央値は10歳で、体重中央値は6.8kgだった。円錐型PMによるPH再建は、全頭で実行可能だった。手術時間の中央値は、片側PHで60.5分、両側PHで109分だった。メジャーな術後合併症は7頭(32%)で発生し、3頭(14%)はPHを再発した。長期(>2週間)フォローアップ期間において、16頭(73%)は予後良好だった。

結論:犬のPHに対し、円錐型PMを用いたPH再建手術は、実行可能な治療法であると我々の研究は示唆する。ゆえに、円錐型PMは、犬のPH再建に対する代替治療オプションとして用いることが可能だった。(Sato訳)
■ペンローズドレーンを装着した犬の手術部位感染率に対する入院の効果
Effect of hospitalisation on the rate of surgical site infection in dogs with Penrose drains
J Small Anim Pract. 2023 Dec 15.
doi: 10.1111/jsap.13678. Online ahead of print.
T Charlesworth , E Sampaio

目的:この研究の目的は、大集団の犬においてペンローズドレーンの使用に関係する合併症および感染率を回顧的に報告することである;そして、ペンローズドレーンの維持に対し入院した犬と、退院して家でそのドレーンを適切な位置に維持する犬の合併症と感染率を比較することである。

素材と方法:我々は、1か所の施設で創傷にペンローズドレーンを設置した犬に対し、2014年から2022年までの医療記録の回顧的検索を実施した。その集団はドレーンを付けたまま退院した犬;ドレーンを除去後似て退院した犬;病院で一部、家で一部過ごして回復した犬(ドレーンはそのままで)に細分した。術後合併症はClavien-Dindoスケールを使用してグレード付した。

結果:208頭の犬を含めた。総合併症率は40.9%(85/208)で、ほとんどの合併症はマイナーと考えられた。総感染率は16.9%(35/207)だった。術後24時間未満にドレーンそのままで家に退院した犬(n=136)は、ドレーンをケアするために入院していた犬(n=50、42..9%、18.4%)、24時間以上入院してドレーンそのままで退院した犬(n=18、50.0%、22.2%)と同様の合併症(39.0%)及び感染率(16.2%)だった。

臨床意義:我々の研究結果は、ドレーンのケアのために入院した犬と、術後24時間以内にドレーンをそのままで家に退院した犬との間に合併症あるいは感染率に対する有意な影響はないことを示す。(Sato訳)
■クリーンな整形外科的な膝の手術後の手術部位感染の発症に対するオクラシチニブ(アポキル)投与の影響の回顧的評価
A retrospective evaluation of the effect of oclacitinib (Apoquel) administration on development of surgical site infection following clean orthopedic stifle surgery
PLoS One. 2023 Aug 9;18(8):e0289827.
doi: 10.1371/journal.pone.0289827. eCollection 2023.
Alyssa K Motz , Lindsay L St Germaine , Daniel E Hoffmann , Jed Sung

Free PMC article

この研究の目的は、清潔な整形外科的な膝の手術後の犬の手術部位感染の発症に対し、オクラシチニブ(アポキル)の影響を調べることだった。

片側の清潔な整形外科的な膝の処置を行った犬の医療記録から、術後の手術部位感染の発症に対し回顧的に調査した。

統計学的分析に対して収集したデータは、年齢、性別、体重、現在使用している薬剤、麻酔、手術時間、白血球数、好中球数を含めた。

手術部位感染は、膝の処置の8.7%(34/390)で確認された-オクラシチニブを使用していない犬の8.0%、オクラシチニブを使用している犬の19.2%(5/26)(p=0.053)。より長い麻酔時間(p=0.003)、より重い体重(p=0.037)の犬において、手術部位感染の発症の有意差があった。

清潔な整形外科的な膝の手術時にオクラシチニブを投与している犬は、手術部位感染の有意に高い発生率を示すということはなかった。しかし、感染のリスクに関する飼い主への説明、術後のモニタリングを増やすことが勧められ、特に体重が増加している犬やより長い麻酔時間ではそうである。(Sato訳)
■犬の胸部外科手術中の低酸素が結果に及ぼす影響の回顧的評価:94症例の多施設の解析
Retrospective evaluation of the impact of hypoxemia during thoracic surgery in dogs on outcome: A multicenter analysis of 94 cases
Vet Anaesth Analg. 2023 May 9;S1467-2987(23)00082-X.
doi: 10.1016/j.vaa.2023.05.001. Online ahead of print.
Lauren Duffee , Samuel Stewart , Tanisha Banerjee , Chand Khanna

目的:胸部外科手術で、重度術中低酸素と死亡率、術後入院期間、治療コストとの統計学的関係を調査する

研究計画:回顧的研究

動物:2018年10月1日から2020年10月1日までに3か所の動物病院において胸部外科手術を行った犬

方法:112頭の麻酔および入院記録を再調査し、94症例が組み込み基準に合致した。記録したデータは、シグナルメント、疾患病因、疾患の肺あるいは肺以外の特性、実施した術式、5分以上持続する90%未満のSpO2と定義した重度術中低酸素の事象、生存性、抜管から退院までの期間と治療に対する総コストだった。重度低酸素を経験した犬(A群)と、処置中にSpO2<90%を観察しなかった犬(B群)の2群に分類した。

結果:B群に比べ、A群は死亡率(オッズ比10.6、95%CI1.9-106.7;p=0.002)と入院延長(中央値62時間vs46時間;p=0.035)とより高額な治療費(中央値US$10287vs$8506;p=0.035)となるリスクが大きかった。外科的処置のタイプ、疾患の肺vs肺外特性に有意差は見られなかった。

結論と臨床関連:重度術中低酸素は、死亡リスクの増加とより長い術後入院期間に統計学的に関係した。統計学的に有意に達していないが、術中低酸素の犬に対して飼い主の費用が増加する傾向があった。(Sato訳)
■開腹の犬の卵巣摘出術において組織シーリングvs結紮:手術時間、術中侵害受容反応、合併症の頻度
Tissue sealing versus suture ligation in open canine ovariectomy: Surgical times, intraoperative nociceptive response and frequency of complications
Vet Med Sci. 2022 Dec 14.
doi: 10.1002/vms3.1012. Online ahead of print.
Vincenzo Cicirelli , Matteo Burgio , Alice Carbonari , Giovanni M Lacalandra , Giulio G Aiudi

Free article

背景:この研究では、犬の開腹卵巣摘出術で現在使用されている2つの異なる方法を比較した:吸収糸を使用した従来の方法と脈管シーリング機器(ENSEAL® Ethicon Endo-Surgery, Cincinnati, OH)。

目的:この研究の目的は、それら2つの方法を用いた犬の卵巣摘出術において、手術時間、術中侵害受容反応、術中合併症の頻度を比較することだった。

方法:40頭のメス犬を2群に無作為に振り分けた:コントロール群(C)は、吸収糸による結紮と、外科刃による切断を使用した従来の開腹手術アプローチを用いた。E群は、卵巣構成の切除をENSEAL組織シーラー機器を用いて実施した。2つの方法の有効性を比較するため、各犬の手術時間、術中侵害受容反応(心拍数、呼吸数、非侵襲性血圧の測定)、術中合併症を測定した。

結果:この研究の結果は、縫合糸を用いる従来の方法よりもENSEALを用いて行った方法の方が速いことを示した。そのほか、侵害受容や安全性に関する2つの処置の結果に違いはなかった。

結果:この研究は、ENSEALの使用は手術時間を有意に短縮することを示した。一方、安全性と術中侵害受容に関しての有効性は、縫合糸を用いた従来の方法と同様だということが分かった。ENSEAL機器を用いた犬の卵巣摘出術は、従来の方法よりも実践的で迅速である;犬の不妊手術に対し、この機器の日常的な使用は、有効な代替法と考えられる。(Sato訳)
■49頭の犬と48頭の猫の後天性横隔膜ヘルニアの11年の遡及的解析
Eleven-year retrospective analysis of acquired diaphragmatic hernia in 49 dogs and 48 cats
Can Vet J. 2023 Feb;64(2):149-152.
Geovane J Pereira , Sheila C Rahal , Alessandra Melchert , Rebeca B Abibe , Cláudia Valéria S Brandão , Juliany G Quitzan , Luciane R Mesquita , Maria J Mamprim

外傷性横隔膜ヘルニアに対して手術を行った犬と猫のデータを遡及的に収集、解析し、生存率に影響するファクターの確認を目的とした。

49頭の犬と48頭の猫を含めた。主な呼吸器系の臨床症状は呼吸困難で、外傷から臨床症状発現までの間隔は生存性に影響しなかった。

整形外科および/あるいは軟部組織傷害の併発は48.45%の症例で確認された。術中合併症は14頭の犬と5頭の猫に発生し、術後合併症は7頭の犬と6頭の猫に発生した。術中死は6.2%で発生し、術後1時間から10日までの術後死は8.3%で発生した。

診断後48時間以内に手術受けた動物は死亡のリスクが低かった。逆に、外傷の併発、術中および術後合併症は、より高い死亡リスクと関係する主なファクターだった。(Sato訳)
■敗血症性腹膜炎を外科的に治療した113頭の犬の病因、臨床パラメーター、結果(2004-2020)
Aetiology, clinical parameters and outcome in 113 dogs surgically treated for septic peritonitis (2004-2020)
Vet Rec. 2022 Sep 6;e2134.
doi: 10.1002/vetr.2134. Online ahead of print.
Anna Shipov , Itzik Lenchner , Josh Milgram , Rivka Libkind , Sigal Klainbart , Gilad Segev , Yaron Bruchim

背景:敗血症性腹膜炎(SP)は、一般に命を脅かす状況である。この研究の目的は、SPの犬の病因、臨床病理学的異常、合併症、治療、結果、予後を述べることだった。

方法:2004年から2020年までにSPと診断され、外科的に治療した113頭の犬の記録を再調査した。

結果:全体の生存率は74.3%だった。有意に死亡と関係した来院時のパラメーターは、横臥(p=0.001)、呼吸数増加(p=0.045)だった。術後の低血圧(p<0.001)、肝臓傷害(p<0.001)、急性腎傷害(p<0.001)も非生存でより一般的だった。消化管穿孔の症例において汚染の源、外科的処置の数あるいは穿孔の部位は死亡と関係しなかった。デルタ グルコース(血清vs腹部)は、113頭中36頭で入手でき、その差は36頭中22頭(61.1%)で20mg/dL以上だった。

結論:肝臓および腎臓傷害は死亡に関係し、早期診断および介入が多臓器不全や死亡を防ぐために推奨される。報告されたデルタ グルコースの高い感受性は、SPの診断において疑問である。(Sato訳)
■クランピング法とモノポーラ電気外科を組み合わせた犬の扁桃切除の合併症:39症例の回顧的研究
Complications of canine tonsillectomy by clamping technique combined with monopolar electrosurgery - a retrospective study of 39 cases
BMC Vet Res. 2022 Jun 24;18(1):242.
doi: 10.1186/s12917-022-03342-0.
Outi Marita Turkki , Caroline Elisabeth Bergman , Marcel H Lee , Odd Viking Höglund

Free PMC article

背景:犬の扁桃切除は、急性あるいは慢性扁桃炎、腫瘍、外傷、たまに短頭種閉塞性気道症候群に実施される。いくつかの扁桃切除法は使用されるが、外科的合併症についての情報は少ない。

この大学動物病院での犬の記録の回顧的研究の目的は、20分クランピングとモノポーラ電気外科を組み合わせて実施した犬の扁桃切除に関連する合併症を調査することだった。

組み入れ基準は、縫合あるいは結紮を行わず、20分クランピング法とモノポーラ電気外科を組み合わせて実施した両側扁桃切除だった。除外基準は、片側性扁桃切除、扁桃腫瘍、扁桃切除以外の追加の外科処置、縫合が最初に使用された症例、不特定あるいは他の方法を扁桃切除に使用した症例だった。大学動物病院の犬の記録の検索は10年間を含めた。追加麻酔を必要とする合併症はメジャーと定義した。外科的介入がなく術中あるいは術後の合併症はマイナーとして扱った。

結果:組み入れ基準を満たした39頭のうち、11頭は合併症があり、そのうち1頭は2つの合併症があった。また、12の合併症のうち、2つはメジャー、10はマイナーに分類された。最も多い合併症は手術部位からの出血で、合計11の発生があった;10頭は出血の発生があり、1頭は2度の出血が術中と術後にあった。出血があった10頭のうち、7つの出血の発生は術中に、4つの発生は術後に起きた。メジャーな合併症の2頭は、術後の出血により再麻酔をかけた。命にかかわるような合併症は起きず、全ての犬は生存して退院した。

結論:20分クランピング法とモノポーラ電気外科を組み合わせて使用した両側扁桃切除後の犬において、術中、術後の出血は、一般的な合併症だった。時折、緊急の修正処置が必要だった。他の方法と比較はなされていないが、この研究した方法は注意を持って使用すべきである。(Sato訳)
■犬と猫の開頭あるいは頭蓋骨切除の適応、後の合併症、死亡率
Indications, complications, and mortality rate following craniotomy or craniectomy in dogs and cats: 165 cases (1995-2016)
J Am Vet Med Assoc. 2022 Apr 13;1-9.
doi: 10.2460/javma.21.04.0189. Online ahead of print.
Bridget A Morton , Laura E Selmic , Samantha Vitale , Rebecca Packer , Lawrence Santistevan , Beth Boudrieau , Whitney Hinson , Marc Kent , Devon W Hague

目的:頭蓋外科に対する最も一般的な適応を判定し、頭蓋外科後の周術期における合併症及び死亡の発生に関係するリスクファクターを確認する

動物:150頭の犬と15頭の猫

方法:この多施設回顧的ケースシリーズでは、1995年から2016年までに、4か所の参加施設で頭蓋外科手術を行った犬と猫の医療記録を再検討した。種、性別、年齢、神経疾患部位、術前発作の履歴、外科的アプローチ、組織学的結果、周術合併症、転帰を含む変数を評価した。ロジスティック回帰解析を実施し、合併症に対するリスクファクターを評価した。

結果:最も一般的な神経疾患部位は、前脳(110/165(66.7%))で、94頭(57.0%)は術前に発作があった。吻側テント(116/165(70.3%))および尾側テント(32/165(19.4%))外科アプローチが最も一般的に報告された。一般的な適応は髄膜腫の治療だった(75/142(52.8%))。合併症は24時間以内に58/165頭(35.2%)で発生し、86頭(52.1%)は術後1-10日目に発生した。周術合併症は低血圧(38/165(23.0%))と貧血(27/165(16.4%))が含まれた。術後期間中、一般的な合併症は、神経学的欠損、発作、術後貧血、誤嚥性肺炎だった。術後あるいは術後10日以内の死亡あるいは安楽死を伴う死亡率は、14.5%(24/165)だった。長期合併症は65/165(39.4%)で発生し、発作および神経学的欠損が一般的だった。

臨床関連:犬と猫の頭蓋外科は一般的に腫瘍性病変の切除に対して行われ、多くの合併症は命を脅かすものではなかった。(Sato訳)
■2つの方法で角膜保護を行った犬において全身麻酔後の角膜傷害の発生率を比較する前向き、盲検、無作為化、対称優越性試験
A prospective, masked, randomized, controlled superiority study comparing the incidence of corneal injury following general anesthesia in dogs with two methods of corneal protection
Vet Ophthalmol. 2022 May 5.
doi: 10.1111/vop.12991. Online ahead of print.
Joy Ioannides , Josie Parker , Vim Kumaratunga , Juliette Preston , David Donaldson , Paul McFarlane , Claudia Hartley

目的:眼の潤滑剤点眼のみで保護した眼と、潤滑剤点眼後完全にテープで眼瞼を閉じた眼で、全身麻酔(GA)中と術後すぐの期間の角膜傷害の発生率を比較する

被験動物:MRIスキャンのためにGAを行った100頭の飼い犬(200眼)

方法:麻酔の導入までに犬の両眼に眼の潤滑材を使用した。片方の眼はStrappal® tape (BSN medical™;処置群)を用い、導入後すぐから麻酔中、眼をテープで閉じ、もう一方の眼はテープを用いなかった(コントロール群)。眼は無作為に処置群に振り分けた。麻酔前後で眼科検査を実施した;検査医には眼の処置群を伏せておいた。角膜傷害は、角膜潰瘍あるいは角膜糜爛と定義した。群間の角膜傷害の発生率をMcNemar's testで比較した。両群のシルマー-涙試験(STT-1)の読みの比較にペアサンプルt-検定を使用した。

結果:16眼(8%)が角膜糜爛を発症した。角膜潰瘍の発生はなかった。両群で角膜糜爛の発生率に有意差はなかった(p=.454)。両群のGA後のSTT-1の読みに有意な低下が見られた(p<.001)が、群間でのSTT-1に有意差はなかった(p=.687)。眼を閉じるテーピングの副作用は観察されなかった。

結論:この研究においてGA注に眼を閉じるテーピングによる、使用した潤滑剤プロトコールへの付加効果はなかった。(Sato訳)
■犬の断脚後の手術部位感染に対する発生率とリスクファクター
Incidence of and risk factors for surgical site infection following canine limb amputation
Vet Surg. 2022 Jan 10.
doi: 10.1111/vsu.13762. Online ahead of print.
Alison R Billas , Janet A Grimes , Danielle L Hollenbeck , Vanna M Dickerson , Mandy L Wallace , Chad W Schmiedt

目的:犬の前肢及び後肢断脚後の手術部位感染(SSI)に対する発生率とリスクファクターを調査する

研究計画:回顧的多施設研究

動物:犬(n=248)

方法:断脚の理由、断脚のタイプ、筋肉横断の方法、手術および麻酔時間、創の分類を含む術前、術中、術後の変数を医療記録から再検討した。フォローアップは≧30日あるいはSSIが発症するまでだった。ロジスティック回帰とフィッシャーの正確検定は、関心の変数に対するSSI発生率の比較に使用した。

結果:全ての処置に対するSSIの発生率は12.5%、清潔な処置では10.9%だった。SSIの確率を高める因子は、バイポーラ血管シーリング機器による筋肉横断(全ての処置に対しP=.023、清潔な処置に対しP=.025)、清潔以外と分類された処置(P=.003)、腫瘍と比較し細菌感染(P=.041)あるいは外傷性傷害(P=.003)による断脚だった。

結論:筋肉横断にバイポーラ血管シーリング機器を使用した場合、SSIの発生確率が上昇したが、電気外科あるいは鋭利な横断ではそうではなかった。清潔以外の手術部位、あるいは細菌感染および/あるいは外傷性傷害の犬もSSIの確率が上昇した。

臨床意義:筋肉横断に電気外科あるいは鋭利な横断の使用は、バイポーラ血管シーリング機器の使用よりも断脚を行う犬のSSIの確率を低下させると考えるべきである。獣医療において今後、様々な処置に対する研究が、それらの機器が人気を得るため、それらの所見を確認するために必要である。(Sato訳)
■腰下膿瘍の犬の臨床、CT、手術所見および結果
Clinical, computed tomographic, surgical findings and outcome in dogs with sublumbar abscessation: 16 cases (2013 to 2019)
J Small Anim Pract. 2021 Dec 11.
doi: 10.1111/jsap.13458. Online ahead of print.
D Jacques 1, F Meige 1, F Thierry 1

目的:腰下膿瘍の犬における臨床症状、CT画像所見、外科的治療および長期結果を述べる

素材と方法:2013年から2019年までに腰下膿瘍の治療を行った犬の医療記録を再調査した。組み入れ基準は、腰下膿瘍の診断、完全な病歴、術前CT画像検査、血液検査、細菌学的検査結果、外科的治療の記録、術後ケア、結果だった。

結果:フォローアップ期間36か月の16頭の犬をこの研究に含めた。臨床症状は、体幹あるいは腰の軟部組織の腫脹(12/16)、腰部痛(11/16)、発熱(8/16)、皮膚の瘻管(5/16)、元気消失(5/16)だった。CT所見は、腰筋に局在する様々な大きさの膿瘍(16/16)、脊椎炎(12/16)、脊椎骨髄炎、(6/16)、椎間板脊椎炎(2/16)、硬膜外炎症(8/16)だった。胸部病変は12頭中8頭に存在した。
診査手術は16頭で実施し、15頭は腹部正中切開で、1頭は側方アプローチで実施した。手術アプローチは、CT検査で検出した瘻管の位置を基に選択した。椎体掻爬はCTで確認した病変のある16頭中5頭で実施した。植物性の異物が16頭中7頭で見つかった。長期のフォローアップができた15頭のうち、13頭は再発の症状がなかった。

臨床的意義:腰下膿瘍の外科的治療は、CTを外科的アプローチのガイドとし、方法の計画を立てた時に良好な長期結果が得られた。我々の研究は、87.5%の有病率で、腰下膿瘍に関係する一般的な椎体および硬膜外病変を強調する。(Sato訳)
■犬の顎顔面腫瘍手術後の術後部位感染の発生率とリスクファクター
Incidence and Risk Factors for Surgical Site Infections Following Oromaxillofacial Oncologic Surgery in Dogs
Front Vet Sci. 2021 Oct 18;8:760628.
doi: 10.3389/fvets.2021.760628. eCollection 2021.
Brittney E Rigby , Kevin Malott , Scott J Hetzel , Jason W Soukup

Free PMC article

獣医療の抗菌薬適正使用支援は、抵抗性細菌感染の阻止に重要である。獣医の外科処置中の抗菌薬の予防的使用の利点に対する批評的評価は過少に報告され、追加の調査が正当化されている。

この文献の目的は、顎顔面腫瘍手術を行った犬において手術部位感染の発生率を調べることと、手術部位感染発生に対するリスクファクターを確認することだった。

この回顧的コホート研究において、1997年1月1日から2018年12月31日までに顎顔面腫瘍に対する外科的治療を行った226頭の犬を含め、手術部位感染の発生率は、7.5%と判定した。単変量ロジスティック回帰モデルを使用し、シグナルメント、腫瘍のタイプ、抗菌薬プロトコール、麻酔時間、外科処置の場所(歯科用vs.無菌手術室)、特定の共存症、得られた外科的マージンを含む手術部位感染の発生に対する潜在的リスクファクターを評価した。

麻酔が6時間以上の時は有意に感染発症と関係した。シグナルメント、併存症、抗炎症薬の投与および免疫抑制剤治療、腫瘍のタイプ、組織学的マージン評価、手術処置場所、抗菌薬プロトコールは、感染発症の有意な誘因ではなかった。

この集団で抗菌薬療法の使用は、感染の発症に対し防げず、一般的にその使用を推奨し、口腔の汚染特性にもかかわらず、全ての顎顔面腫瘍外科に対し日常的に指示されるものではないかもしれない。麻酔時間は感染発症に有意に寄与し、6時間以上の外科処置に対する周術抗菌薬の使用は日常的に正当化されるかもしれない。(Sato訳)
■犬の選択および緊急手術後の胸部造瘻チューブ抜去時の液体産生の回顧的評価(2010-2017):185症例
Retrospective evaluation of fluid production at the time of thoracostomy tube removal following elective and emergency surgery in dogs (2010-2017): 185 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2021 Sep 9.
doi: 10.1111/vec.13138. Online ahead of print.
Molly A Racette , Leslie C Sharkey , Aaron K Rendahl , Daniel A Heinrich , Rosalind S Chow

目的:術中に設置した胸部造瘻チューブ抜去時の液体産生率を報告し、特定の犬の要因、外科的要因あるいは臨床診断とこの率の関係を調べること。2つ目の目的は、胸部造瘻チューブ抜去から2週間以内の胸水の確認が、同じ変数と関係したのかを調べることだった。

計画:回顧的研究

場所:大学教育病院

動物:2010年1月から2017年3月までに、術中に胸部造瘻チューブを設置した185頭の飼育犬

介入:なし

測定値と主要結果:液体産生の中央値が0.09mL/kg/h(範囲、0-7.0mL/kg/h)で、胸部造瘻チューブが抜去されていた。胸部造瘻チューブの抜去時の液体産生の中央値は、術前に胸水がなかった犬に対し術前に胸水があった犬(0.05vs0.21mL/kg/h;P=0.0001)、側方開胸術を行った犬に対し胸骨正中切開を行った犬(0.09vs0.14mL/kg/h;P=0.04)で有意に高かった。フォローアップできた169頭のうち、12頭(7.1%)は胸部造瘻チューブの抜去から2週間以内に胸水を認めた。フォローアップ期間中の胸水の検出は、術前の胸水があること(P=0.0019)とその診断(P=0.01)に有意に関係した。他の診断と比べ、肺葉捻転(4/9、44.4%)および特発性乳糜胸(2/7、28.5%)の犬において、より大きな比率で2週間以内に胸水を認めた。再介入は4.7%の犬で実施した。

結論:胸部造瘻チューブは、現在の獣医ガイドラインを超える胸水産生率で多く抜去されていた。しかし、胸部造瘻チューブの抜去時の液体産生率は、胸部造瘻チューブの抜去の2週間以内の胸水の検出に関係せず、胸部造瘻チューブの抜去後の再介入に対する全体の必要性は低かった(4.7%)。
■猫の非腫瘍性肛門嚢疾患に対する肛門嚢切除の結果と合併症:8症例(2006-2019)
Outcomes and complications of anal sacculectomy for non-neoplastic anal sac disease in cats: 8 cases (2006-2019)
J Small Anim Pract. 2021 Aug 23.
doi: 10.1111/jsap.13414. Online ahead of print.
J C Jimeno Sandoval , T Charlesworth , D Anderson

目的:猫の非腫瘍性肛門嚢疾患の特徴、犬の肛門嚢切除に対し確立したデータと比較した術式、合併症、手術結果、予後を述べる。

素材と方法:2006年から2019年の間に、非腫瘍性疾患に対し肛門嚢切除を行った猫の医療記録の回顧的再検討。

結果:研究には8頭の猫を含め、8頭中4頭はマイナーな自己限定的合併症(3頭は排便の合併症、1頭は表層角膜潰瘍)を起こした。持続的な便失禁を起こした猫はいなかった。長期の術後合併症は記録されなかった。手術時間中央値は35分(範囲、20-42)だった。入院期間の中央値は1.5日(範囲、1-4)だった。短期のマイナーな合併症の発生率は、犬で過去に報告されたものより高かったが、15kg未満の犬で報告されたより高い発生率と一致するかもしれない。

臨床意義:猫の非腫瘍性肛門嚢疾患に対する肛門嚢切除は安全な処置で、短期合併症は比較的高率で起こるが、自己限定的、マイナーな術後合併症である。(Sato訳)
■犬47例の会陰ヘルニア縫合に仙結節靭帯を組み込む新しい方法
A novel technique to incorporate the sacrotuberous ligament in perineal herniorrhaphy in 47 dogs
Vet Surg. 2021 Jan 22.
doi: 10.1111/vsu.13574. Online ahead of print.
Filippo Cinti , Matteo Rossanese , Guido Pisani

目的:犬の会陰ヘルニア(PH)修復中の、仙結節靭帯周囲に縫合の設置方法と結果を述べる。

研究計画:回顧的1施設研究

動物:PHの犬(n=47)

方法:2002年から2020年の間にPHの治療をした犬の医療記録を再検討した。仙結節靭帯周囲に縫合がなされている犬を含めた。短期結果、術中および術後合併症を記録した。長期結果はオーナーにより記入済みの質問状で評価した。

結果:47頭中28頭は中型あるいは大型犬種だった。主な臨床症状は、43頭のしぶり、4頭の排尿障害-排尿困難だった。両側ヘルニアは17頭の犬に見られた。術中合併症は発生しなかった。手術時間の中央値は片側PHで50分、両側PHで120分だった。軽い合併症は、術創の腫脹(9)、創裂開(4)、一時的しぶり(2)が10頭の犬で起こった。重い合併症あるいは再発の報告はなかった。合併症のリスク増加に関係したファクターは、加齢(P=.019)と再発PHの外科的治療(P=.043)が含まれた。オーナーは一貫して良好な長期結果を報告した。

結論:この研究で述べられたPH修復法は、重い合併症もなく良好な長期結果が得られた。

臨床意義:仙結節靭帯周囲に縫合を設置する方法は、PH中の代替法であるが、坐骨神経や後殿脈管の解剖学的知識は必要である。(Sato訳)
■10頭の犬の正中胸骨切開閉鎖に対するクリンプしたモノフィラメントナイロンリーダー
Crimped monofilament nylon leader for median sternotomy closure in 10 dogs
Vet Surg. 2020 Dec 16.
doi: 10.1111/vsu.13556. Online ahead of print.
Matteo Rossanese , Andrew Tomlinson

目的:犬のクリンプしたモノフィラメントナイロンリーダー(MNL)による正中胸骨切開の閉鎖後の結果を報告する

研究デザイン:回顧的観察研究

動物:正中胸骨切開アプローチによる胸腔内外科を行った犬(n=10)

方法:正中胸骨切開は、クリンプしたMNLを用い胸骨周囲の8の字パターンで閉鎖した。臨床および病理組織所見および合併症に関して医療記録を再検討した。オーナーあるいは獣医師に長期フォローアップ情報を得るために連絡した。

結果:方法な単純で、術中合併症はなかった。術後の感染は1頭で認め、クリンプしたクランプに関係した1本のMNLの除去を必要とした。1頭の手術切開の治癒遅延は保存的に管理した。中央値488日(範囲、199-608日)の長期フォローアップを通し、他の合併症は示されなかった。

結論:正中胸骨切開のクリンプしたMNLによる閉鎖は首尾よく、合併症率も低かった。

臨床意義:クリンプしたMNLは、犬の正中胸骨切開を閉鎖する代替法である。(Sato訳)
■遊走性異物を検出するための画像検査法の比較。診断と外科的除去に対する術前と術中超音波検査の関連
Comparison of imaging techniques to detect migrating foreign bodies. Relevance of preoperative and intraoperative ultrasonography for diagnosis and surgical removal
Vet Surg. 2021 Mar 22.
doi: 10.1111/vsu.13607. Online ahead of print.
Margaux Blondel , Juliette Sonet , Thibaut Cachon , Emilie Ségard-Weisse , François-Xavier Ferrand , Claude Carozzo

目的:犬の皮下および基礎軟部組織構造における遊走性異物(FB)を検出するため、異なる診断的画像検査(DI)法の比較感受性を報告することと、術中超音波検査の価値を評価する

研究計画:回顧的研究

サンプル集団:41頭の犬

方法:慢性膿瘍あるいは瘻管に対し外科手術を行い、術前超音波検査、術前CT、あるいは術前MRI検査を行い、最低6か月のフォローアップ情報が得られる犬の医療記録(2007-2019)を使用した。集めたデータは使用したDI法、DI所見、手術所見を含めた。各術前DI法の比較感受性を算出した。犬は術前DI検査のみ行った犬(A群)と追加の術中超音波検査を行った犬(B群)の2群に分類した。FBの外科的除去に対する成功率を群間で比較した。

結果:術前超音波検査および術前CT/MRIの比較感受性は、それぞれ88%(95%CI、70%-95.8%)と57.1%(95%CI、32.6%-78.6%)だった。FB除去の成功率は、A群(59.1%)よりもB群(89.5%;P=.038)で高かった。フォローアップ期間中央値4.2年(6か月-9.3年)で、臨床的解消は90.2%の犬で見られた。

結論:皮下および基礎軟部組織構造における遊走性FBの検出に対して、術前超音波検査は、術前CT/MRIよりも適しているように思われる。術中超音波検査の使用は、外科的除去の成功率を上げる。

臨床的意義:術中超音波検査は、犬の遊走性FBの外科的除去の確率を上げるために、術前超音波検査と組み合わせて使用すべきである。(Sato訳)
■犬の清潔な外科処置に関係する手術部位感染に対するリスクファクター
Risk factors for surgical site infection associated with clean surgical procedures in dogs
Res Vet Sci. 2021 Apr 15;136:616-621.
doi: 10.1016/j.rvsc.2021.04.012. Online ahead of print.
J Stetter , G S Boge , U Grönlund , A Bergström

手術部位感染(SSI)は、人医で有病率、コストおよび死亡率の増加と関係し、獣医療では有病率とコストの上昇に関係する。
この研究の目的は、一次診療と二次診療病院で処置した犬の清潔な外科処置後のSSI発症に対するリスクファクターを評価することだった。

北および中央ヨーロッパにある103の病院で清潔な外科処置を行い、米国麻酔学学会(ASA)に従い1あるいは2のスコアを付けた1550頭の犬を研究に含めた。あらかじめ定義したプロトコルに従い、外科処置、手術時間、周術期の予防的抗菌剤(AMP)の使用、手術の種類、術中低体温、外科インプラントの使用に関するデータを記録した。アクティブ30-日SSI調査を実施した。ランダム効果ロジスティック回帰モデルを周術期変数とSSI発症の関連の評価に使用した。

SSIは85/1550頭(5.5%)で検出された;500頭の整形/神経外科処置で25頭(5.0%)、1050頭の軟部組織処置で60頭(5.7%)。合計1524頭が最終的な多変量モデルに含まれた。手術時間の増加が、SSIのリスクを増加させる唯一の変数だった。この研究で評価した他のリスクファクターとSSI発生に関連は見つからなかった。

ゆえに、できる限り手術時間を短くする努力を持続するべきである。インプラント設置を含む整形および神経外科処置は、周術期AMPから利益を得るハイリスク処置と無意識に考えるべきではない。(Sato訳)
■犬41頭の非外傷性鼠蹊ヘルニアの臨床的特徴と治療結果に対する回顧的研究
Retrospective Study on Clinical Features and Treatment Outcomes of Nontraumatic Inguinal Hernias in 41 Dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2020 Nov 1;56(6):301.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7106.
Teruo Itoh , Atsuko Kojimoto , Kentaro Kojima , Hiroki Shii

犬の非外傷性鼠蹊ヘルニア(NTIHs)の発症にいくつかのファクターの関連が示唆されているが、病因と治療結果に焦点を当てたケースシリーズ研究は限られている。

この研究の目的は、犬のNTIHsの臨床的特徴と治療結果を回顧的に評価することだった。

NTIHsを外科的に治療した42頭の犬の医療記録を再調査した。

41頭の犬を研究に含め、全頭体重10kg未満の小型犬で、中年から老令(>5歳;33症例)、メス(34症例)、ミニチュアダックスフンド(26症例)が多く見られた。左側の発生が一般的(左側30、右側9、両側2症例)で、臓器の脱出は22症例で見られた(子宮15、小腸9、大腸1症例)。子宮ヘルニア15症例中14症例(93%)は左側に位置した。27/30のメス症例は、ヘルニア縫合と共に避妊手術を実施し、そのうち2頭は小腸壊死部の切除と吻合も実施した。再発はオスの1症例のみに見られた。

それらの結果は、小型犬のメス犬にNTIHsの発生の確率がより高く、加齢は左側子宮脱出のリスクを増加させるかもしれないと示唆する;しかし、ヘルニア縫合と避妊手術後の長期結果は良好である。(Sato訳)
■犬の手術創の治癒に対するリドカインあるいはブピバカインの局所投与
Topical application of lidocaine or bupivacaine in the healing of surgical wounds in dogs
Acta Cir Bras. 2020;35(7):e202000701.
doi: 10.1590/s0102-865020200070000001. Epub 2020 Aug 14.
Bruno Watanabe Minto , Laura Zanato , Guilherme Galhardo Franco , Fernando Yoiti Kitamura Kawamoto , Camila Potério Borsaro , Josiane Morais Pazzini , Elizabeth Regina Carvalho , Andresa Matsui

目的:手術台で使用するとき創傷治癒と麻酔剤の干渉を分析する

方法:術中、血管収縮剤が入っていない局所麻酔の滴下後とコントロールとして0.9%生理食塩水の滴下後、術創の治癒の肉眼および顕微鏡像を評価した。30頭のオスとメスを2つの実験群に振り分けた。両群ともに腹部の2つの直径6mmの円形パンチ創で実施した。

1群は、1つの創にリドカインを滴下、もう一方に生理食塩水を滴下した。2群は、その処置をブピバカインで繰り返した。

創の肉眼的評価は、術後1,3、10日目に実施した。10日目に切除バイオプシーを実施し、そのサンプルで病理組織検査を実施した。

結果:肉眼的評価で群間に有意な違いがあった。顕微鏡的評価で群間に有意差はなかった。

術創におけるリドカインおよびブピバカインの局所投与は使用可能で、皮膚の治癒に影響しなかった。他の研究の主題となるそのような処置の恩恵は、リスクを上回ると思われる。(Sato訳)
■2つのサイズのバリカンの刃で毛を刈った後の犬の皮膚のコロニー形成単位数の評価
Evaluation of the number of colony forming units on the skin of dogs after clipping the hair with two sizes of clipper blades.
Am J Vet Res. September 2019;80(9):862-867.
DOI: 10.2460/ajvr.80.9.862
Yasmine Messiaen, Jeffrey D MacLellan, Davyd H Pelsue

目的:2つのサイズのバリカンの刃を使用して毛を買った犬の皮膚上のCFUsの数と紅斑を評価する

動物:硬膜外麻酔を受けた飼育犬67頭

処置:各硬膜外の部位の半分をNo.10刃(約毛の長さ、1.5mm)、もう半分をNo.40刃(0.25mm)で毛を刈った。皮膚は2%グルコン酸クロルヘキシジンと70%イソプロピルアルコールで外科的に洗浄した。毛を刈った後すぐ、皮膚の洗浄後、毛を刈ってから24時間目に再びサンプルを入手した。毛を刈った部分の両サイドのCFUs数、微生物のタイプ、マッコンキー培地上の発育を24時間毎に72時間まで評価した。細菌形態学とグラム染色での特徴に対しコロニーを評価した。紅斑の所見に対し、毛を刈ったあと24時間、部位を評価した。

結果:毛を刈ってから24時間、No.10で刈った側と比べ、No.40で刈った側は有意に紅斑の発生率が高く、ミクロコッカス細菌の数が多かった。刃のサイズでCFUsの数に有意差はなかった。

結論と臨床関連:No.10の刃での毛刈りの結果と比べ、No.40刃での毛刈りは、紅斑の発生率を有意に増加させ、ミクロコッカス細菌の数が多かった。それらの結果は、皮膚のマイクロバイオームにおける変化を減らし、紅斑を予防するためNo.10の刃の使用を支持した。(Sato訳)
■獣医学生の基本の腹腔鏡スキル獲得に対する短期-vs長期ビデオゲームプレイの影響
Effect of Short- Versus Long-Term Video Game Playing on Basic Laparoscopic Skills Acquisition of Veterinary Medicine Students.
J Vet Med Educ. 2019 Summer;46(2):184-194.
DOI: 10.3138/jvme.0617-077r2
Ohad Levi, Donna L Shettko, Mark Battles, Peggy L Schmidt, Maria A Fahie, Dominique J Griffon, Paul Gordon-Ross, Dean A Hendrickson

この研究の目的は、基本腹腔鏡スキルのパフォーマンスに対するビデオゲームプレイの影響を調査することだった。
この研究は、実験的pre-test-post-test比較群デザインだった。

獣医カリキュラムの1年あるいは2年を終了した52人(ウエスタン大学健康科学獣医学部の31人とコロラド大学獣医学部の21人)の学生を無作為に2つの実験群に振り分けた。

実験はニンテンドーWiiのビデオゲームMarble Maniaをプレイすることで、L(long)群は6週間かけて18時間プレイし、S(short)群は6週間の実験期間のうち最終週の3時間だけプレイした。実験の前後で、両群の基本腹腔鏡スキルを、腹腔鏡スキルのトレーニングと評価に対する修正McGill Inanimateシステム(MISTELS)機器で評価した。被験者は2つの腹腔鏡の課題を実施した。

SおよびL群共に、2つの腹腔鏡の課題に対する学生のパフォーマンスが向上した(p<0.05)ことを結果は示した。両群ともに実験後のスコアで統計学的有意な改善を示した(L群、N=25、z=-3.711、p<0.001、r=0.742;S群、N=27、z=-3.016、p<0.003、r=0.580)。S群とL群の改善の程度に有意差はなかった。

結果は、どんな期間でもWiiのMarble Maniaをプレイすることは、獣医学生の基本腹腔鏡スキルを改善するのに有効な方法である可能性が示唆され、追加研究の必要性が示される。(Sato訳)
■膀胱腫瘍の7頭の犬におけるバイポーラシール機器による部分的膀胱切除
Partial cystectomy with a bipolar sealing device in seven dogs with naturally occurring bladder tumors.
Vet Surg. 2020 Feb 10. doi: 10.1111/vsu.13395. [Epub ahead of print]
Milovancev M, Scharf VF, Townsend KL, Singh A, Tremolada G, Worley D, Schmiedt CW.

目的:膀胱腫瘍の切除を行う犬の部分的膀胱切除に対するバイポーラシール機器(BSD)の使用を述べる

研究計画:多施設前向き臨床予備研究

サンプル集団:膀胱三角ではない膀胱病変の飼育犬7頭

方法:切除に対し膀胱鏡ガイドを使用あるいは使用しないでBSDによりシールする部分的膀胱切除を行った。シールした膀胱切除部位はモノフィラメントの吸収糸でオーバーハンドステッチと共に単層単純連続パターンで縫合した。

結果:シールする部分的膀胱切除は全ての犬でうまく実行でき、手術時間中央値は69分(範囲、50-120)だった。6頭の病変は尖で1頭の病変は膀胱の中腹側にあった。3頭は縫合前にシールした膀胱腔からの尿の漏出は見られなかったが、4頭はシール部位から種々の量の尿の漏出があった。6頭の犬は肉眼的に正常な膀胱組織のシールを覆うように縫合し、1頭はシール周辺の熱の影響のあるゾーンで縫合した:後者の犬は尿腹のため、3日後に再度膀胱縫合が必要だった。残りの6頭は膀胱治癒合併症の臨床的エビデンスはなかった。

結論:ここで部分的膀胱切除をBSDで処置したことにより生じるシールの完全性は犬の間で変化し、予測不能だった。
臨床的意義:BSDでシールした部分的膀胱切除は、手術部位に対し膀胱腔の内容物の暴露を低下させるかもしれない。しかし、肉眼的に正常な膀胱組織を通し、シール部分を覆うように縫合することが術後の尿腹を防ぐのに推奨される。(Sato訳)
■犬の修正バルーンカテーテルアシストによる閉鎖式肛門嚢切除:術式詳述
Modified balloon-catheter-assisted closed anal sacculectomy in the dog: Description of surgical technique.
Can Vet J. June 2019;60(6):601-604.
Devon Diaz , Sarah Boston , Adam Ogilvie , Ameet Singh , Owen Skinner

この報告の目的は、肛門嚢切除に対する修正フォーリーカテーテル法を述べることである。

閉鎖式肛門嚢切除に対し使用する標準アプローチを実施した。その後、肛門嚢の導管を周りの組織から遊離させ、結紮した。導管は結紮から横断し、巾着縫合を施した。肛門嚢バルーンカテーテルを導管から肛門嚢内に挿入し、巾着糸をきつく締めた。

一度膨らませ、その後カテーテルは、周囲組織から肛門嚢の操作、分離を容易にするためのハンドルとして使用した。

この方法は、特に直腸に接する肛門嚢の内側部において、良好な視界、正確性、コントロールで肛門嚢の周囲の分離を可能にする。この方法は、慢性肛門嚢炎、小さな肛門腺癌の症例に応用できると考えられる。(Sato訳)
■軟部組織外科手術を受けた犬の手術部位感染の発生率:リスクファクターと経済的影響
Incidence of surgical site infection in dogs undergoing soft tissue surgery: risk factors and economic impact.
Vet Rec Open. 2019 Oct 5;6(1):e000233. doi: 10.1136/vetreco-2017-000233. eCollection 2019.
Espinel-Rupérez J, Martín-Ríos MD, Salazar V, Baquero-Artigao MR, Ortiz-Díez G.

目的:(1)獣医教育病院で軟部組織外科手術を行った犬の手術部位感染(SSI)の発生率を調べること、(2)SSIに関連する主なリスクファクターを述べることと、(3)SSIの経済的影響を評価する

デザイン:回顧的コホート研究

場所:獣医教育病院

参加者:12か月の間に軟部組織外科手術を行った184頭の犬(2013年10月から2014年9月)

主要な結果測定:手術部位感染

結果:解析した184頭のうち、SSIは16頭(8.7%)で診断され、そのうち13頭(81.3%)は表層切開部感染、2頭(12.5%)は深部切開創感染、1頭(6.3%)は臓器/腔の感染に分類された。ステロイド性抗炎症薬の投与(P=0.028)、術前高血糖(P=0.015)、60分以上の手術時間(P=0.013)、尿カテーテル処置(P=0.037)、エリザベスカラーの誤った使用(P=0.025)がリスクファクターとして認められた。総コストは74.4%増加し、術後コスト142.2%の増加が伴った。

結論:SSIの発生率は、他で発表された研究よりも高かったが、調査システムが実行された時、予想範囲内のものだった。この発生率は、コストの増加と関係した。その発生に対し、新しい重要なリスクファクターの追加が見つけられた。(Sato訳)
■皮下及び皮膚縫合におけるBarbed sutureと通常の縫合法の合併症率と手術時間の比較
Comparison of surgical time and complication rate of subcutaneous and skin closure using barbed suture or traditional knotted suture in dogs
Laura K. Nutt, Megan L. Wilson, Sherisse Sakals
Can Vet J 2017;58:1281–1286

この前向き試験は17頭の脛骨骨切り術を行った犬におけるbarbed knotless縫合の術中術後合併症を評価することである。皮下縫合について臨床特性、手術時間、合併症率を従来の縫合(コントロール)と比較した。シグナルメントに差はなく合併症に影響を与えていなかった。手術時間も差はなかった。barbed suture群では術中合併症率が高かったものの(17頭中4対0)術後合併症率に差はなかった(minor A: 2/16; B: 1/14;P = 0.626, major A: 2/16; B: 0/14; P = 0.171)。(Dr.Maru訳)
■犬の加温システムの評価:熱勾配の把握
Investigation of the HotDog patient warming system: detection of thermal gradients
D. McCarthy, B. Matz, J. Wright, and L. Moore
Journal of Small Animal Practice (2018) 59, 298-304

目的:患者を温める装置の有効性を評価する。

材料と方法:犬を温める装置(ホットドッグシステム)の温度を赤外線温度計を用いて計測した。研究は2つである。フェーズ1はブランケットの4つの異なるポイントで測定した。フェーズ2は模型を用いて異なる条件で測定した。

結果:フエーズ1:4つのうちの3点では有意差が認められた。フェーズ2:加温状態は低下した。(1)模型がない場合(−1·9°C, P=0·013);(2)センサーから離して模型を置いた場合(−2·0°C, P=0·009);(3)模型とブランケットの間に水があった場合(−2·2°C, P=0·004)。測定の大部分(95%)は43℃に設定したもののその温度に到達せず(幅29.8-42.9℃)、2.3%は高かった(幅43.1-45.8℃)。

臨床的意義:設定した温度は実際の温度を反映していなかった。このことから加熱による障害、加熱不十分、熱の不均衡の可能性がある。(Dr.Maru訳)
■犬の皮膚の細菌集団の即時減数に対するアルコールベースの消毒ハンドラブと2%グルコン酸クロルヘキシジンスクラブの適用効果
Efficacy of application of an alcohol-based antiseptic hand rub or a 2% chlorhexidine gluconate scrub for immediate reduction of the bacterial population on the skin of dogs.
Am J Vet Res. September 2018;79(9):1001-1007.
DOI: 10.2460/ajvr.79.9.1001
Elizabeth A Maxwell, R Avery Bennett, Mark A Mitchell

目的:犬の皮膚の細菌集団の即時減数に対し、アルコールベースの消毒用(80%エタノール)ハンド・ラブ(ABAHR)と、2%グルコン酸クロルヘキシジン・スクラブ(CGS2)の使用効果を比較する

動物:皮膚疾患のエビデンスの無い飼育犬50頭

方法:各犬の腹部と背部の2か所の毛をNo.40刃で毛刈りし、その面をきれいにした。ポリソルベート80とレシチンが入ったトリプトソイ寒天培地の直接接触プレートを各皮膚に2秒間優しく押し付けた(使用前サンプル)。CGS2とABAHRを各犬の1カ所の皮膚に無菌的に使用した。その後、直接接触プレートを使用前サンプルと同じ方法で各皮膚に使用した。全てのプレートを培養し、細菌を確認し、CFUsの数/プレートで定量した。

結果:使用前サンプルと比較し、CGS2とABAHRは皮膚の細菌コロニー数を有意に減少させた。CFUsの数/プレートあるいは、CFUs/プレートの使用後減数率に処置間の違いはなかった。各方法に関係する有害皮膚反応はなかった。

結論と臨床関連:ABAHRとCGS2の使用は、犬の皮膚の細菌集団の即時減数で同等の効果があり、2処置間でコロニー数の減数率に有意差はないことが示された。(Sato訳)
■動物患者において手術用スポンジ回収忘れに関する要因の評価:獣医臨床家の調査
Evaluation of factors associated with retained surgical sponges in veterinary patients: a survey of veterinary practitioners.
J Small Anim Pract. September 2018;59(9):570-577.
DOI: 10.1111/jsap.12873
F R Rodriguez , B M Kirby , J Ryan

目的:動物患者において手術用スポンジ回収忘れに関係する可能性のある要因を評価する

素材と方法:イギリスでナショナルベテリナリーカンファレンスを担当する獣医師332人に調査を配布した。その調査にはスタッフ、計画、外科処置の種類、手術用スポンジ、手術用スポンジを追跡する方法、手術用スポンジ回収忘れの臨床症例の詳細についての質問が含まれた。

結果:回答率は322人中64人(19%)だった。手術方法に対し予定時間を計画しないと30%は報告し、31%は変化すると報告した。半数以上(66%)は各手術に2人が関係した。回答者の多く(91%)は自身の手術用スポンジを滅菌し、非放射線不透過性の手術用スポンジを使用した(56%)。27%はスポンジ数をカウントせず、20%はたまにカウントしていなかった。70%はスポンジ数を記録していなかった。多く(66%)は手術チェックリストを使用しない、あるいは保有していなかった。11%はガーゼオーマの認識がないと報告した。27%の回答者は、少なくとも1症例の手術スポンジ回収忘れを認識していた。報告された17症例のうち、14症例は小動物だった。腹部が最も一般的な回収忘れの解剖学的部位で、続いて選択的不妊だった。

臨床意義:回答率の低さにもかかわらず、結果は監視方法が手術用スポンジ回収忘れを減らすかもしれないと示唆する。手術のための特別な計画時間の欠如、見ているスタッフが少なく、スポンジを数えて確かめないことが、報告された回収忘れの17症例の原因かもしれない。(Sato訳)
■9頭の犬の切開創治癒に対するレーザー療法
Laser Therapy for Incision Healing in 9 Dogs.
Front Vet Sci. 2019 Jan 29;5:349. doi: 10.3389/fvets.2018.00349. eCollection 2018.
Wardlaw JL, Gazzola KM, Wagoner A, Brinkman E, Burt J, Butler R, Gunter JM, Senter LH.

レーザー療法は獣医療で実用化しているが、効果や照射量のエビデンスはほとんどない。

この研究は犬の手術による傷の治癒を評価した。

12頭のダックスフンドの椎間板ヘルニア(IVDD)に対し、胸腰部片側椎弓切除を行った。手術から24時間以内と、術後1、3、5、7、21日目に切開部のデジタル写真を撮影した。

最初の3頭は、他の犬の切開創治癒にスコアを付けるため、標準化傷跡スケールを作成するために使用した。残りの9頭は1日1回7日間の8J/cm2レーザー療法を行う群と、レーザー治療をしないコントロール群に無作為に振り分けた。切開創治癒は、傷跡スケール0-5を基にスコアを付けた。

全ての傷跡スコアは、手術から時間経過と共に有意に改善した(<0.001)。検者間信頼性で良好な一致を達成した(P=0.9)。コントロール犬よりもレーザー療法は7日目には傷跡スケールスコアを増加させ、見た目の良い治癒の改善を示し、21日目にも有意な増加を継続した(P<0.001)。

8J/cm2のレーザー療法を毎日照射することは、IVDDに対する胸腰部片側椎弓切除術を受けたダックスフンドの傷の治癒を促進させた。また、美的外観も改善させた。(Sato訳)
■犬の開放性創傷治療において陰圧創傷閉鎖法と銀加工されたフォームドレッシング剤の回顧的比較:前向き比較臨床試験.
Comparison of Negative Pressure Wound Therapy and Silver-Coated Foam Dressings in Open Wound Treatment in Dogs: A Prospective Controlled Clinical Trial.
Vet Comp Orthop Traumatol. July 2018;31(4):229-238.
DOI: 10.1055/s-0038-1639579
Mirja C Nolff , Rebecca Albert , Sven Reese , Andrea Meyer-Lindenberg

目的:犬の汚染創の治療に対し、陰圧創傷閉鎖療法(negative pressure wound therapy:NPWT)を評価する

研究タイプ:前向き無作為化臨床試験

素材と方法:開放創の治療を行う犬(n=26)を無作為に2群に振り分けた:A群(n=13)NPWT;B群(n=13)銀加工されたフォームドレッシング。傷の形態、部位、基の原因と過去に治療を受けた期間に関する比較、傷の大きさの発展(傷の面積測定)、閉鎖の時間、最近のバイオバーデンと合併症を基に犬のペアを組んだ。傷の包帯交換は両群の治療開始から9日まで3日ごとに行った。統計学的解析を実施した。

結果:治療前のシグナルメントと細菌の状態は両群で同様だった。閉鎖までの合計時間は、B群(28.6日)よりもA群(14.2日)で有意に短く(P=0.018)、3日、6日、9日目の傷の面積測定は、全てのタイムポイントで有意にA群の傷の総面積の大きな縮小を示した(P<0.05)。さらに、A群の傷は、B群に比べ局所感染の進行がより少ないことを示した(P=0.01)。

結論:NPWTで治療した傷は、より速い閉鎖、肉眼的変形の改善、感染の局所症状が少ないことを示した。(Sato訳)
■犬の消化管異物除去後の切開性感染低下に対する手術チェックリストの効果
Effects of a surgical checklist on decreasing incisional infections following foreign body removal from the gastrointestinal tract in dogs.
Can Vet J. 2019 Jan;60(1):67-72.
Launcelott ZA, Lustgarten J, Sung J, Samuels S, Davis S, Davis GJ.

手術部位感染(surgical site infection:SSI)率に対する手術チェックリストの効果を調べるため、消化管異物手術後2週間前向きあるいは回顧的に2つの同じような犬の集団を評価した。

手術チェックリストを使用しない(SC-)消化管異物手術の場合と、連続101件の手術チェックリストを使用した(SC+)消化管異物手術の場合のSSI率を判定するため、消化管異物手術201件の医療記録を再調査した。

手術チェックリストを使用した場合、SSI率は19.9%から11.9%へと有意に低下した。コホートを合わせた場合、消化管異物除去後のSSIの発生に対する統計学的有意な指標は、胃切開と腸切開、腸切開と既知の自傷の組み合わせが含まれた。(Sato訳)
■1頭の犬の医原性切断と修復後の長期急性大静脈閉塞の予後
Outcome of prolonged acute vena cava occlusion after iatrogenic transection and repair in a dog.
Can Vet J. August 2017;58(8):845-850.
Marie-Chantal Halwagi , Evan Crawford , Katie Hoddinott , Michelle L Oblak

12歳去勢済みオスのエアデールテリアを、肝臓内側右葉の肝細胞癌と診断した。
腫瘍の切除中、後大静脈の不注意によるステープリングと横断を起こした。完全な静脈閉塞が18分間必要で、主要な吻合が完了した。犬は2回輸血を行い、術後後肢に軽度の浮腫が発生した。術後9か月後のCT評価で、副行循環と臨床的影響のない後大静脈の狭窄が疑われた。その犬は術後1年以上生存しており、無徴候だった。(Sato訳)
■犬の会陰ヘルニアの外科的管理のレビュー
A Review of the Surgical Management of Perineal Hernias in Dogs.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2018 Jul/Aug;54(4):179-187.
DOI: 10.5326/JAAHA-MS-6490
Sukhjit Singh Gill , Robert D. Barstad

会陰ヘルニアは、直腸壁を支持する筋肉性の骨盤隔膜の破損で、骨盤のヘルニア形成を起こし、腹腔臓器が会陰部皮下に入ることもある。骨盤隔膜が弱くなることに対し、提唱されている原因は、慢性の前立腺疾患や便秘に関係するしぶり、筋疾患、直腸異常、性腺ホルモンの均衡異常などである。

犬の会陰ヘルニアの一般的な像は、片側あるいは両側性の会陰の腫脹である。臨床症状は、常ではないが発生する。臨床症状には便秘、排便困難、しぶり、直腸脱、有痛排尿困難、無尿が含まれる。会陰ヘルニアの確定診断は、臨床症状と用指直腸検査中の骨盤隔膜の筋肉系の虚弱所見を基に下す。

犬の会陰ヘルニアはほぼ外科的に治療される。肛門挙筋や尾骨筋が委縮して使用するには不十分なことから、並置ヘルニア縫合が困難な場合がある。内閉鎖筋転位が一般的に使用される方法である。追加の方法には浅殿筋と半腱様筋の転移や、合成インプラントや生体材料の使用が含まれる。

固定法は、直腸脱や膀胱および前立腺偏位を防ぐために使用するかもしれない。

術後ケアは鎮痛剤、抗生剤、低残渣食、緩下剤などである。(Sato訳)
■犬の軟部組織および整形外科手術後のD-dimer濃度の変化
Changes in D-dimer concentration after soft tissue and orthopedic surgery in dogs.
Vet Surg. April 2018;47(3):406-411.
DOI: 10.1111/vsu.12779
Anna Shipov , Josh Milgram , Nitzan Shalev , Itamar Aroch , Gilad Segev

目的:D-dimerは、活動性凝固と線溶の特定マーカーである。この研究の目的は、D-dimer濃度に対する手術の影響を調べることと、変化の大きさと外科処置の侵襲性の間の関連を調べる。

研究計画:前向き臨床研究

動物:選択的不妊(n=15)、選択的整形外科(n=15)、外傷後整形外科(n=15)を行った45頭の飼育犬

方法:選択的不妊、選択的整形外科、外傷後整形外科手術を行う犬を登録した。D-dimer濃度を手術すぐ前(T0)、手術すぐ後(T1)、24時間後(T24)に測定し、研究群内、及び研究群間で比較した。

結果:D-dimer濃度>250ng/mLはT0で8頭(18%)、T1で9頭(20%)、T24で5頭(11%)だった。T1とT24の時に2頭だけがD-dimer>500ng/mLで、全ての犬は<750ng/mLだった。タイムポイント間でD-dimer濃度が上昇した(>250ng/mL)の集団で差はなかった(P=0.29)。不妊群を除き、群内のタイムポイント間でD-dimer濃度の中央値は変化せず、不妊群のT1濃度はT0濃度と比較して上昇する傾向が見られた(それぞれ161ng/mL、範囲71-727 vs 122ng/mL、範囲43-353;P=0.065)。

結論:この研究で調べた外科処置は、D-dimer濃度を直接上昇させる確率は低い。
臨床意義:選択的不妊、選択的整形外科、外傷後整形外科処置後のD-dimer濃度のいずれの上昇も臨床的に重要で、止血障害を検出する調査のきっかけと考えるべきである。(Sato訳)
■犬の敗血症性腹膜炎の治療で受動開放腹部ドレナージに対して陰圧吸引療法:無作為性前向き研究
Negative pressure therapy versus passive open abdominal drainage for the treatment of septic peritonitis in dogs: A randomized, prospective study.
Vet Surg. November 2017;46(8):1086-1097.
Anneleen L Spillebeen , Joris H Robben , Rachel Thomas , Jolle Kirpensteijn , Sebastiaan A Van Nimwegen

目的:敗血症性腹膜炎の治療において、受動開放腹部ドレナージ(POAD)とABThera? systemを用いた陰圧吸引腹部ドレナージ(NPAD)を比較する

研究計画:無作為化前向き臨床試験

動物:敗血症性腹膜炎の犬(n=16)

方法:敗血症性膜炎の犬を無作為に2つの治療法のうち1つに振り分けた:NPAD vs POAD。麻酔時間、手術時間、ドレナージの期間、コスト、生存性、合併症を治療法間で比較した。NPADおよびPOAD間で最初の手術時および閉鎖時の血液および腹水の血液学的および生化学的パラメーター、大網の病理組織学的所見、腹壁組織サンプルを比較した。

結果:全体の生存率は81%だった。治療コスト、麻酔および処置時間、ドレナージの期間、生存性および術後合併症は変わらなかった。全ての犬で、閉鎖時の腹水の総血漿タンパクの喪失、炎症関連因子の減少が認められた。NPAD後の腹壁サンプルにおいて好中球性炎症はより大きかった。POADの犬は、包帯交換中に不快感を示し、包帯の外側に腹水の漏れが多く生じた。

結論:コストと生存率を基にして、敗血症性腹膜炎の治療に対しNPADはPOADの有効な代替法である。NPADは腹水の漏れが少なく、腹部組織の組織学的評価において治癒が優れているエビデンスがあった。(Sato訳)
■腹部正中切開により腸腰筋筋炎を起こす遊走植物物質の除去を助ける術前および術中超音波検査:犬22症例
Preoperative and intraoperative ultrasound aids removal of migrating plant material causing iliopsoas myositis via ventral midline laparotomy: a study of 22 dogs.
Language: English
Acta Vet Scand. February 2017;59(1):12.
Francesco Birettoni , Domenico Caivano , Mark Rishniw , Giulia Moretti , Francesco Porciello , Maria Elena Giorgi , Alberto Crovace , Erika Bianchini , Antonello Bufalari

背景:遊走植物物質は犬の腸腰筋筋炎の基礎にある原因かもしれないと臨床的に疑われることが多いが、術前や術中に常に見つけられるわけではない。多くの症例は臨床症状の再発が植物物質の除去失敗に関連する。術前の超音波検査は遊走植物物質の視認、手術アプローチの計画において補助となる解剖学的ランドマークの判定に有効となり得る。この研究の目的は、腹部正中切開のアプローチにより、腸腰筋膿瘍から植物物質の視認、除去にたいし、術中(腹部内)超音波検査の役割を報告することだった。

結果:腸腰筋異常と植物物質が疑われた22頭の犬の回顧的ケースシリーズを報告した。1回の入院中に植物物質の術前の視認とその後の回収を実施した。全て22頭において、腹部正中切開を行い、術中超音波検査は異物に把持鉗子先端を向け、その除去をガイドするために用い、植物物質(完全な草ノギ、草ノギの破片、野ばらの小枝)の除去に成功した。22頭中11頭は、術前および術中超音波検査を用いなかった依頼獣医師により行った前の手術で植物物質は完全に除去されなかった。全ての犬の臨床症状は解消し、植物物質の外科的除去後に正常な活動に戻った。

結論:腹部正中切開で、腸腰筋膿瘍内の植物物質の外科的除去で、術中超音波検査は成功率を改善する安全で容易に利用できるツールである。さらに、異常な植物物質の超音波所見は、異物の大きさや形についての情報を提供することで外科的除去の計画及びガイドに有効となりえる。(Sato訳)
■パイオメトラの猫において卵巣子宮摘出術に対するバイポーラ血管シーリングデバイスの有効性
Effectiveness of a bipolar vessel sealant device for ovariohysterectomy in cats with pyometra.
Language: English
J Feline Med Surg. January 2018;0(0):1098612X17752581.
Jean-Francois Boursier , Jean Bassanino , Dimitri Leperlier

目的:猫の完全な卵巣子宮摘出術で、卵巣茎及び子宮体と血管に対するバイポーラ血管シーリングデバイスの使用を述べることと、パイオメトラの猫において卵巣子宮摘出術の実行可能性を報告すること。

方法:パイオメトラを確認し、外科的処置にオーナーの同意を得た猫を、この研究に前向きに組み込んだ。卵巣を可視化し、血管シーリングデバイスを提靭帯、卵巣茎および子宮体レベルまでの子宮広間膜の凝固と切断に使用した。子宮体を測定して、子宮頚の直径が0.9cm未満の時は、血管シーリングデバイスを使用し、そのすぐ近位をつまんで凝固および切断した。術後すぐと短期フォーローアップは臨床検査で評価した。

結果:2015年11月から2017年2月の間に、当初13症例を含めた。その後3症例は子宮体径が0.9cm以上だったために除外した。最終的な10症例に関し、全ての猫は未避妊で、年齢中央値2.7歳(範囲0.9-9歳)だった。体重中央値は3.7kg(範囲2.6-6.7kg)だった。手術時間の中央値は10.9分(範囲9.8-15.2分)だった。子宮径の中央値は0.51cm(範囲0.45-0.64cm)で、皮膚切開の中央値は4.1cm(範囲3.6-5.1cm)だった。どの猫にも処置中の合併症は発生しなかった。全ての猫は手術後1日で、異常なく退院した。術後期間中に合併症は見られなかった。

結論と関連:この研究で使用したバイポーラ血管シーリングデバイスは、猫のパイオメトラに対し、子宮体径が0.9cm未満の時、短期合併症もなく安全に卵巣子宮摘出術が実施できると、この所見は示唆する。(Sato訳)
■凍結療法で治療した難治性パピローマの犬3例
Persistent papilloma treated with cryotherapy in three dogs.
Language: English
Vet Dermatol. December 2017;28(6):625-e154.
Austin W Richman , Allison L Kirby , Wayne Rosenkrantz , Russell Muse

背景:犬パピローマウイルスは若齢、老齢、免疫不全の犬の粘膜や皮膚に影響を及ぼす可能性がある。多くの病変は4週から8週で自然に退縮する;しかし、いくらかの症例では病変が難治性あるいは進行性かもしれない。凍結療法は獣医療で病変を誘発するパピローマウイルスの治療として使用されるかもしれないが、その使用に関する公なエビデンスは限られている。

目的:凍結療法で治療した難治性ウイルス性パピローマの3頭の犬の病歴、病変、治療結果を述べる

動物:3頭の個人飼育犬

方法:犬ウイルス性パピローマ病変を、液体窒素凍結療法を使用し5回から6回の凍結-解凍サイクルで治療した。

結果:各症例の全ての病変は凍結療法で解消した。2症例は1回の治療コース、1症例は2回の治療コースを必要とした。

結論と臨床意義:それらのパピローマ病変の凍結療法による明らかな解消は、これが難治性犬パピローマ病変に対する有効な治療法かもしれないと示唆する。しかし自然解消は起こっているかもしれない;結果、この治療様式が他の治療様式のように、犬パピローマ症の治療で本当に有効かどうか、大規模臨床試験で明確に証明する必要がある。(Sato訳)
■犬の腹部正中切開のキルティング縫合による24時間後の漿液産生と疼痛の減少効果:無作為比較試験
A quilting subcutaneous suture pattern to reduce seroma formation and pain 24 hours after midline celiotomy in dogs: A randomized controlled trial
Blake M. Travis, Galina M. Hayes, K. Vissio, H. J. Harvey, James A. Flanders, Julia P. Sumner
Veterinary Surgery. 2018;47:204?211.

目的:犬の腹部正中切開において皮下組織を深部組織に縫い合わせるキルティング縫合の影響を検討する。

研究デザイン:単一施設の二重盲検無作為試験

動物:避妊手術(249頭)もしくは他の腹部切開(183頭)を行った犬432頭。

方法:(1)キルティング群:皮下組織を腹直筋筋膜とともに縫合、(2)非キルティング群:皮下組織のみ縫合し腹直筋を縫合に含めない、に無作為に割り付けた。無作為化は事務的に割り振られた。第1に術野の漿液貯留を第2に翌日の痛みと感染を確認した。術後30日間評価を実施した。

結果:キルティング群(183頭)、非キルティング群(175頭)で疾患の重症度、術者の経験、手術時間、術中合併症、この研究以外の縫合法の差異、については違いは認められなかった。意図的治療分析ではキルティング群で漿液貯留発生が少なかった(オッズ比 0.30, 95% CI: 0.13-0.67, P=0.004)。24時間後の痛みはキルティング群で低かった(p=0.03)。術後感染は両群で差がなかった。

結論:腹部正中切開において皮下縫合時に底部組織を拾うことにより漿液貯留を減らすことが示唆された。(Dr.Maru訳)
■猫の開放性創傷治療において陰圧創傷閉鎖法と銀加工されたフォームドレッシング剤の回顧的比較
Retrospective comparison of negative pressure wound therapy and silver-coated foam dressings in open-wound treatment in cats.
Language: English
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):624-630.
Mirja Christine Nolff , Michael Fehr , Sven Reese , Andrea E Meyer-Lindenberg

目的:この研究の目的は、猫の複雑な創傷の治療に対し、陰圧創傷閉鎖法(negativepressure wound therapy:NPWT)を評価することだった。

方法:2つの病院で開放性創傷治療を行う20頭の猫を治療法によりクラス分けした:NPWT(グループA、n=10)とポリウレタンフォームドレッシング剤(グループB、n=10)。各グループから患者のペアを創傷形態、部位と基礎となる原因を基に作った。両群の猫は過去の治療の経過時間、閉鎖までの時間、合併症に関して比較した。

結果:シグナルメント、過去の治療の経過時間、抗菌剤および消毒治療、細菌の状態はグループ間で同等だった。創傷閉鎖までの合計期間はグループA(25.8日,範囲 11.0-57.0 days)がグループB(39.5日,範囲 28.0-75.0 days)よりも有意に短かった( P = 0.046, strong effect size; Cohen d = 0.8)。NPWT処置創はフォームドレッシングで治療した掻傷よりも治療中の合併症がより少なく、感染症を起こす頻度もより少なかった。脂肪組織の壊死の進行は、特にNPWT処置下でよくコントロールされ、このグループのこの状況による死亡はよりわずかだった。しかし、感染の進行に対しNPWTはstrong effectがあるが、発熱と敗血症は検出され(Cramer-V 0.5)、これは有意差ではなかった。

結論と関連:この研究は、フォームドレッシング剤で治療した猫と比べ、NPETで治療した猫は治癒までの期間がかなり短縮し、合併症率もより低いことを証明した。特に、感染創になった猫の治療において、NPWTによる感染の効果的な管理は、NPWTの価値を強調する。(Sato訳)
■胸部穿孔性咬傷を陰圧創傷閉鎖法で治療した犬の1例
Treatment of a perforating thoracic bite wound in a dog with negative pressure wound therapy.
Language: English
J Am Vet Med Assoc. October 2016;249(7):794-800.
Mirja C Nolff, Korbinian Pieper, Andrea Meyer-Lindenberg

症例記述:4歳オスのダックスフンドを5日前に咬まれたということで検査した。抗生物質のIV投与と輸液療法にもかかわらず、その犬は急速に悪化した。

臨床所見:初回検査で、その犬は敗血性ショックと動揺胸郭の症状を呈し、横臥状態だった。左側胸壁に3カ所の悪臭の浸出液を伴う穿孔性創傷が見られた。動物の外傷トリアージスコアは18中8だった。胸部および腹部エックス線検査で、左第7、8,9肋骨の変位骨折と広範囲の皮下気腫が見られた。また顕著なびまん性気管支間質パターン、肺胞パターンの部分および気胸が両側に存在した。

治療と結果:開放性外科的デブリードメントと肺の外側左葉切除、左胸壁の部分的切除を実施した。広範な軟部組織喪失のため、一次再建ができなかった。欠損部はポリプロピレンメッシュで安定化させ、-100mmHgで陰圧創傷閉鎖法(negative pressure wound therapy (NPWT))を開始した。組織サンプルの細菌培養と感受性試験で、多剤耐性スタフィロコッカス・シュードインターミディウスの存在が示された。NPWTドレッシングは術後2、5、7日目に交換した。治療に良好に許容し、メッシュは術後10日目に肉芽組織に完全に覆われた。術後5、7、12、19か月後の経過観察で、犬は臨床的に正常で明らかな合併症はなかった。

臨床的関連:重度胸部外傷の小動物の治療で、NPWTは役立つ補助療法かもしれないと所見は示唆した。(Sato訳)
■42頭の猫において開創器を用いた最小侵襲性小腸検査および特定腹部臓器バイオプシー(2005-2015)
Minimally invasive small intestinal exploration and targeted abdominal organ biopsy with a wound retraction device in 42 cats (2005-2015).
Language: English
Vet Surg. October 2017;46(7):925-932.
Jessica Baron , Michelle Giuffrida , Philipp D Mayhew , Ameet Singh , J Brad Case , William T N Culp , David E Holt , Kelli N Mayhew , Jeffrey J Runge

目的:猫において開創器(wound retractor device:WRD)を用いた最小侵襲性小腸検査及び特定臓器バイオプシーの外科的方法を述べ、短期結果を評価する

研究計画:多施設回顧的研究

動物:42頭の猫

方法:臍の部分の2-4cmの正中切開に開創器を挿入した。続いてWRDを通し、腸管の小分節(6-10cm長)を体外に出し、探査した。WRDを通し、体外で全層小腸バイオプシーを行った。腹部の腹腔鏡探査のため、WRDを通し市販のシングルポートデバイスを挿入した。

結果:WRDを通し小腸の大部分は体外に出し、探査できた。全ての症例で診断できる質の小腸全層バイオプシーが得られた。最も一般的な組織学的所見は炎症性腸疾患(n=16)、腸管リンパ腫(n=14)、好酸球性腸炎(n=7)だった。WRDの設置後に診断した腹部病態により2頭は従来の開腹手術に切り替えた(腹部癒着と脾臓摘出の必要性)。術後合併症は39頭中4頭(10.3%)で起こり、退院後に2頭の死亡を引き起こした。

結論と臨床関連:WRD単独あるいは腹腔鏡と組み合わせた猫の最小侵襲性の小腸探査および特定腹部臓器バイオプシーは安全な方法である。完全な腹部探査および腹部臓器のバイオプシーは、WRDを通しシングルポート腹腔鏡で効果的に実施できる。(Sato訳)
■術中の画像ナビゲーション:滅菌容器に包んだ任天堂WIIリモートと標準ワイヤレスコンピューターマウスの実行可能性と外科医の好みの実験研究
INTRAOPERATIVE IMAGE NAVIGATION: EXPERIMENTAL STUDY OF THE FEASIBILITY AND SURGEON PREFERENCE BETWEEN A STERILE ENCASED NINTENDO WII(TM) REMOTE AND STANDARD WIRELESS COMPUTER MOUSE.
Language: English
Vet Radiol Ultrasound. May 2017;58(3):266-272.
Ryan Appleby , Alex Zur Linden , William Sears

診断的画像検査は手術室で重要な役割を担い、外科医に参照や手術プランを提供する。手術室で外科医の自律性は、コミュニケーションの間違いから起こるエラーを低下させるため推奨されている。

この前向き研究で、標準のコンピューターマウスを滅菌した職員による診断画像研究のナビゲーションに対し、コンピューターゲームコンソールに対するワイヤレスリモートコントロールスタイルのコントローラー(Wiimote)と比較した。

我々の施設で外科スーツを使用しているレジデントおよび教員の集団から参加者を募集した。マウスあるいはWiimoteを各使用後、研究参加者による調査データを基に結果を評価し、分散分析で比較した。

ハンドリング、正確性と効率、全体の満足度のカテゴリーでマウスが研究参加者に有意に好まれた(P<0.05)。画像ナビゲーションに対するランクオプションを参加者が尋ねた時、マウスはWiimoteとデバイス無しよりも好まれた。これは、手術室において外科医の自律性を増すために、術中の画像ナビゲーションデバイスの実行に対する必要性を示す。(Sato訳)
■3頭の猫の骨盤変形癒合に続発した便秘の片側内部骨盤切除による治療
Internal hemipelvectomy for treatment of obstipation secondary to pelvic malunion in 3 cats.
Can Vet J. 2016 Sep;57(9):955-60.
DeGroot W, Gibson TW, Reynolds D, Murphy KA.

骨盤骨折は猫の一般的な損傷で、外科手術と保存的管理、両方のアプローチが述べられている。保存的に管理した骨盤骨折の大きな合併症の1つは、骨盤腔の狭小化である。重度の骨盤の狭小化は便秘を起こし、続いて巨大結腸が起こる。

このケースシリーズの目的は、保存的管理後の骨盤腔狭小化に続発する巨大結腸のため、片側内部骨盤切除により治療した便秘の猫3頭に対する長期の結果を述べることである。

全ての猫の手術した方の肢は良好な機能的結果を示した。2頭の猫は便秘の再発に対する薬物治療の継続を必要とした。

全体的に片側内部骨盤切除による手術した方の肢の機能は良好であるが、便秘の臨床症状の緩和のその首尾に関して追加の研究が必要である。(Sato訳)
■犬の膿胸のビデオ-アシスト胸部外科による治療
Video-assisted thoracic surgery for the management of pyothorax in dogs: 14 cases.
Language: English
Vet Surg. July 2017;46(5):722-730.
Jacqueline Scott , Ameet Singh , Eric Monnet , Kristin A Coleman , Jeffrey J Runge , Joseph Brad Case , Philipp D Mayhew

目的:膿胸の管理でビデオ-アシスト胸部外科手術(video-assisted thoracic surgery :VATS)を行った犬の術中所見と結果を報告する

計画:多施設回顧的研究

動物:飼育犬(n=14)

方法:VATSを通して管理した膿胸の犬の医療記録からシグナルメント、病歴、臨床症状、臨床病理所見、診断画像検査結果、外科的変数、細菌培養および感受性試験結果、術後管理および転帰を再調査した。剣状近くの内視鏡ポータルと2-3肋間器具ポータルを設置後にVATSを行った。VATS探査後以下の1つ以上を行った:縦隔デブリードマン、組織サンプリング、胸膜洗浄、胸部造瘻チューブの設置。

結果:2頭(14%)は増殖性縦隔組織を完全に切除するため、VATSから開胸術への転換が必要だった。それらの犬は術前のエックス線写真で重度の胸膜浸出液を認め、1頭は術前CT検査で重度に肥厚し、コントラスト増強の縦隔を認めた。

膿胸の原因は、穿孔性胃内異物(n=2)、遊走性植物物質(n=2)、特発性(n=10)だった。経過観察期間中央値は143日(範囲、14-2402日)だった。全ての犬は病院から退院し、臨床症状は解消した。1頭の犬は術後17か月後に修正外科手術を必要とする膿胸の再発が起こった。

結論:VATSは犬の複雑ではない膿胸の最小侵襲性の治療を可能にする。術前の胸部CT検査は膿胸の犬の中でVATSの候補の確認に役立つと思われる。(Sato訳)
■オス犬の尾側腹部の腹側包皮正中アプローチ
Ventral Midline Preputial Approach to the Caudal Abdomen in Male Dogs.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):723-5.
Samson S Daniel , Juan C Sardinas , Pierre M Montavon

目的:オス犬の尾側腹腔への腹側包皮正中アプローチを述べる

研究計画:回顧的臨床研究

サンプル集団:飼育犬(n=12)

方法:尾側腹腔に腹側包皮正中アプローチを行った犬の医療記録を再調査した。手順、結果、合併症を記録した。

結果:種々の状況に対し尾側腹腔に包皮アプローチを行った。全ての犬は何事もなく術後回復し、術後10-14日の抜糸までに記録されたメジャーな合併症はなかった。2頭はマイナーな合併症を保存的に治療し、解消した。

結論:腹側の包皮正中アプローチの使用は、腹部後方へアクセスする1つのオプションである。そのアプローチは包皮伸筋の保存し、尾側表層腹壁血管枝の結紮の不要で、広範囲の皮下の切開の必要がない。(Sato訳)
■獣医診療におけるバリカンの刃の消毒に一般的に使用する製剤の評価
Evaluation of Commonly Used Products for Disinfecting Clipper Blades in Veterinary Practices: A Pilot Study.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Sep-Oct;52(5):277-80.
Benjamin Ley , Edward Silverman , Kara Peery , Delfina Dominguez

院内感染は獣医療で関心が高くなっている。バリカンの刃は様々な潜在的病原体の媒介物と確認されており、それ自体、傷や手術部位感染に関係するかもしれない。

この研究の目的は、いくつかの一般的に使用されるバリカンの刃のクリーニング製剤の消毒能力を評価することだった。

70個の滅菌したバリカンの刃にPseudomonas aeruginosa、Escherichia coli、Staphylococcus aureusの株を接種した。その後、刃を7つのうちの1つの消毒群に供した。残存細菌の定量的培養を行った。

コントロール群の全ての刃は大量の細菌の検出を示した。培養結果は、アルコール、クロルヘキシジンの浸漬あるいはエタノール/o-フェニルフェノール製剤によるスプレーで検出されず、その他の消毒では中程度検出された。

それらの結果は、いくつかの一般的に使用される消毒剤の使用で、刃の持続汚染が起こる可能性があることを示す。バリカンの刃のメンテナンスに対する殺真菌性能力と消毒の効果を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の正中開腹において冷たい器具に対し電気外科は血液喪失とすぐ後の術後炎症を減らす
Electrosurgery reduces blood loss and immediate postoperative inflammation compared to cold instruments for midline celiotomy in dogs: A randomized controlled trial.
Language: English
Vet Surg. May 2017;46(4):515-519.
Lee B Meakin , Jo C Murrell , Ivan C P Doran , Toby G Knowles , Michael S Tivers , Guillaume P A Chanoit

目的:正中開腹切開に対し、電気外科機器と従来の冷たい器具(外科用メスと剪刀)の使用を比較する

研究計画:前向き無作為対照臨床試験

サンプル集団:腹部外科を行った120頭の飼育犬

方法:犬を前向きに募集し、無作為に電気切開あるいは冷たい器具による切開を受けた。冷切開では、外科医は外科用メスや剪刀など基本的な外科器具を使用した。電気切開では、外科医は切開モードの電気外科機器のみを使用した。アプローチに対する時間、血液喪失、切開の長さを記録した。内容を隠した観察者が疼痛、切開の赤さ、腫れ、浸出液を術後24時間目と48時間目に評価した(グレード0-3)。切開の治癒のオーナーの評価は電話による質問で記録した。

結果:手術中の血液喪失は、冷切開(平均3.0、SD4.3mL)よりも電気切開(平均0.7、SD1.7mL、P<0.0001)で有意に少なく、切開の長さやアプローチの時間に有意差はなかった。術後24時間で、電気切開は有意に切開の赤みが少なく(冷 中央値1、範囲0-3;電気切開 中央値0、範囲0-2、P=0.02)、切開浸出液が少なかった(冷 中央値0.5範囲0-3;電気切開 中央値0、範囲0-1、P=0.006)。2つの方法を受けた犬で、疼痛スコアあるいは切開治癒に有意差はなかった。切開性ヘルニアは報告されなかった。手術部位感染は1頭の犬で起きた(冷切開)。

結論:犬の開腹アプローチに対する電気切開は術後すぐの期間において血液喪失、切開の赤みと浸出液を減らし、感染や裂開(白線を含む)のような創傷合併症の発生に影響することはなかった。(Sato訳)
■犬の扁桃摘出における標準法に対するリガシュア(LigaSure)使用比較
Comparison of the use of LigaSure versus a standard technique for tonsillectomy in dogs.
Language: English
Vet Rec. February 2017;180(8):196.
A Belch , M Matiasovic , R Rasotto , J Demetriou

この研究の主な目的は、犬の扁桃摘出鉗子を用いた標準法と比較して、血管シーリング機器を用いた扁桃摘出の有効性を実証することだった。2つ目の目的は、短頭種の閉塞性気道症候群の犬において切除した扁桃組織の病理組織学的変化を考証することだった。

20頭の犬を研究した。リガシュアを用いた扁桃の除去にかかる時間の平均は44.8秒(sd 15秒、95%CI 40-57秒)で、標準法は平均305.9秒(sd 67秒、95%CI 272-349秒)だった。標準法と比較してリガシュアでの出血は有意に少なかった。扁桃の病理組織の特徴は、リガシュアの扁桃の切除縁において多巣性好中球およびリンパ球性炎症と1-2mmの熱誘発性凝固壊死だった。

この研究は、リガシュアは標準法と比較して有意に速く、出血もより少ないことを示す。(Sato訳)
■外科用メスに対しモノポーラー電気メスで行った犬の皮膚切開の治癒
Healing of canine skin incisions made with monopolar electrosurgery versus scalpel blade.
Language: English
Vet Surg. May 2017;46(4):520-529.
Jacqueline E Scott , Elizabeth A Swanson , Jim Cooley , Robert W Wills , Emily C Pearce

目的:外科用メス切開と比較して、手術時間、止血、皮膚切開創の治癒に対し、10、20、30Wでセットした切開モードのモノポーラー電気メスの影響を調べる

研究計画:無作為化盲検対照試験

動物:犬(n=15)

方法:背側正中のどちらかのサイドに外科用メス、モノポーラー電気メス10W、20W、30Wで4つの皮膚切開を行った。手術時間と切開の出血を測定した。各切開について毎日浮腫、紅斑、浸出液、合併症を評価した。治癒は7日目に組織検査により評価した。結果は有意P≦0.05で解析した。

結果:手術時間と止血は全ての電気メス群で改善した。1-4日目では全ての電気メス切開で紅斑が減少したが、7日目には外科用メスで切開したものより電気メス20Wの切開創の方が紅斑は大きかった。浮腫の程度や創の浸出液の有無に違いはなかった。組織治癒の全ての組織学的変数は、外科用切開よりも電気メス切開の方が低かった。10件の切開性合併症が起き、全て電気メスに関係した。

結論:犬の皮膚を切開するとき、外科用メスと比較して10W、20W、30Wの切開モードでのモノポーラー電気メスの使用で止血および手術時間は改善するが、最初の7日で治癒は遅延し、合併症は増加した。(Sato訳)
■術中の一般的な心電図異常
Common ECG abnormalities in the perioperative period (Clinical Practice)
In Pract. May 2016;38(5):219-228.
Matthew Gurney , Carl Bradbrook

術中の心電図検査は心拍数、不整脈の有無、電導欠損を判定するため、全ての動物をモニタリングする有効なツールである。健康な動物の心電図(ECG)のルーチンなモニタリングは必要ないと言われるかもしれない;しかしながら心電図をモニターしない場合、予期しないより悪い不整脈(命に係わりあるものもある)は、存在するかもしれないし、診断未確定のままで未処置になる。

この文献は健康および病気の犬と猫における異常なECGリズムの解釈方法を述べ、術中のECGをモニターすることを助言する状況を考える。一般的なECG異常の理解は、術中の動物の治療を計画するときに助けてくれる。(Sato訳)
■頚骨プラトーレベリング骨切術において二重手袋法に対し整形外科用手袋の手袋穿孔率:無作為化試験
Glove perforation rate with orthopedic gloving versus double gloving technique in tibial plateau leveling osteotomy: A randomized trial.
Language: English
Can Vet J. November 2016;57(11):1156-1160.
Kimberly Egeler , Nicole Stephenson , Natasha Stanke

この無作為化前向き研究では、脛骨プラトーレベリング骨切術において整形外科用手袋(n=227)か標準ラテックス手術用手袋を2重(n=178)に装着し、穿孔率、手袋変更率、費用を比較した。

処置後に外科医、外科レジデントから手袋を集め、the American Society for Testing and Materials Internationalで述べられているように標準水漏れ試験で穿孔を検査した。整形外科用手袋と二重手袋法の穿孔率(P=0.629)あるいは手袋の変更率(P=0.146)に統計学的有意差はなかった。整形外科用手袋は二重手袋よりも2.1倍費用が掛かるが、器用さや快適性において外科医に好まれるかもしれない。(Sato訳)
■修正と洗練した犬の大網茎フラップ:死体研究
The Omental Pedicle Flap in Dogs Revised and Refined: A Cadaver Study.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):746-53.
Marjan Doom , Pieter Cornillie , Paul Simoens , Stephanie Huyghe , Hilde de Rooster

目的:犬の大網の脈管構造の現在の知識を広げ、犬の大網の現存の延長法を洗練すること

研究計画:生体外研究

動物:犬の死体(n=20)

方法:10体の犬の死体において、大網の動脈走行にラテックス脈管内注射により印をつけ、それらの結果を10体の追加死体で、脾動脈を基にした大網茎フラップの作成に使用した。フラップの手術のための範囲は、犬の大網転位への関心がある主な領域(腋窩および鼠径領域)に特に注意して記録した。

結果:浅部および深部大網葉は、浅部および深部大網弓に隣接する尾側大網近くに合流する左および右辺縁性大網動脈により大部分供給されていた。10頭中8頭に見られた1吻合を除いて、浅部および深部大網葉の動脈の合流は弱く不定だった。無傷の大網の位置の置き換えにより、3頭で右腋窩まで到達でき、1頭は左右腋窩まで、全ての症例で良鼠径まで到達できた。全ての症例において、大網茎は腋窩および鼠径領域以上に到達した。茎葉を展開することで、茎の先の幅は2倍にできた。

結論:腹腔外の構造物へ到達させるため、大網の延長が必要な時、脾動脈を基にした大網茎フラップは大網脈管供給を保存すると思われる。生体においてこの大網フラップ法を評価するため、それら知見の追加臨床試験が求められる。(Sato訳)
■外科的安全チェックリストの使用による犬と猫の外科的合併症の減少
Reduction of Surgical Complications in Dogs and Cats by the Use of a Surgical Safety Checklist.
Vet Surg. July 2016;45(5):571-6.
Annika Bergstrom , Maria Dimopoulou , Mikaela Eldh

目的:外科手術安全チェックリスト(surgical safety checklist:SSC)の使用は小動物の外科手術後、合併症の発生を減少させることができるかどうか試験する

研究計画:前向き臨床研究

動物:飼育犬と猫(n=520)

方法:連続症例を研究に登録し、最初の300症例は手術チェックリスト使用せず(SSC-)、続く220症例はチェックリストを使用した(SSC+)。チェックリストはWHO手術チェックリストを適合させ、3つの異なるチェックポイントからできていた:(1)麻酔導入前(sign in)、(2)外科的切開前(time out)、(3)覚醒前(sign out)。院内の結果は前向きに記録し、6週間以内の合併症は医療記録の再調査、オーナーへの電話での聞き取りにより回顧的に記録した。記録された各合併症の重症度は、軽微、中程度、重度に分類した。SSC-とSSC+の結果を比較した。

結果:SSC+の動物に比べ、SSC-の動物に有意に多くの合併症が見られた(SSC+ 15/220 v.s. SSC- 52/300、P=0.0003)。SSC+の動物に比べ、SSC-の動物は有意に高い頻度のSSIを示し(P=0.045)、創傷治癒の合併症が見られた(P=0.0006)。

結論:術後合併症の頻度と重症度は、手術チェックリストの導入後、有意に抑えられた。全ての動物病院は、手術チェックリストの使用を考えるべきである。チェックリストの実行の順守は成功にとって重要である。(Sato訳)
■選択的整形外科手術を行う犬における術中細菌汚染の調査
Survey of Intraoperative Bacterial Contamination in Dogs Undergoing Elective Orthopedic Surgery.
Vet Surg. February 2016;45(2):214-22.
Natalia Andrade; Chad W Schmiedt; Karen Cornell; MaryAnn G Radlinsky; Lauren Heidingsfelder; Kevin Clarke; David J Hurley; Whitney D Hinson

目的:犬の清潔な整形外科手術の術中(IO)の外科医および患者の細菌汚染の頻度、源、リスクファクターを調査することと、術中汚染と手術部位感染(SSI)との関連を調査する。

研究計画:前向き臨床試験

サンプル集団:膝の手術を行う飼い犬(n=100)

方法:各症例の肢のラップ、切開周囲の皮膚、手術グローブ、手術チームの手から術中培養を行った。環境(手術室(OR)ライト、コンピューター、スクラブシンクの栓、麻酔車台、エックス線撮影台)は5ヶ月ごとにサンプリングを行った。分離した細菌と各症例の汚染を分類した。手術チームの全てのグローブを集め、水注入試験で穿孔を調べた。SSIの有無を調べるために症例は8週間以上経過観察した。術中汚染とSSIの関連で術中変数を評価した。

結果:81%の処置で1つ以上の源から分離細菌が得られた;58%は手の培養、46%はグローブの培養、23%は犬の皮膚の培養、12%は肢のラップの培養で陽性だった。スタフィロコッカスspp.が最も一般に回収された細菌だった。術中汚染とSSIに明白な関連は見られなかった。環境汚染の最も高いレベルはスクラブシンクの栓で、続いてエックス線撮影台、麻酔車台、手術室コンピューターだった。術中のグローブ穿孔率は18%だった。

結論:清潔な整形外科処置は、一般的に臨床上あまり重要とはならない細菌汚染がある。我々の研究で、手術室においてSSIの原因となる細菌が、犬にコロニーを作るとは思われなかった。(Sato訳)
■1頭のイングリッシュブルドックの胸骨外傷性脱臼の外科的管理
Surgical management of a traumatic dislocation of the sternum in an English bulldog.
J Small Anim Pract. June 2015;56(6):407-10.
C I Serra; C Soler; V Moratalla; V Sifre; J I Redondo

9歳のイングリッシュブルドックが、その朝階段から落ちた後から急性の呼吸困難、頻脈、胸部腹側の不快感で来院した。

犬を安定化させた後、胸部エックス線写真で第3、4胸骨の脱臼で、尾側分節の背側偏移が明らかになった。胸骨を整復し、胸骨腹側面に形を合わせた12穴3.5mmDCPを使用して安定させた。

犬の初期回復は急速で、心臓呼吸器パラメーターは最初の24時間で正常に戻った。術後2週間は腹臥位から起き上がるのが困難だった。この時期を過ぎると完全に回復した。術後8か月の臨床検査はいかなる異常も見られなかった。18か月目に電話で聞き取りを実施し、合併症や心臓呼吸器の障害は報告されなかった。

著者によれば、これは胸骨の外傷性脱臼とその管理の最初の症例報告である。(Sato訳)
■腹側会陰ヘルニアの修復に対する半腱様筋転位変法を行った14症例
Modified semitendinosus muscle transposition to repair ventral perineal hernia in 14 dogs.
J Small Anim Pract. June 2015;56(6):370-6.
E Morello; M Martano; S Zabarino; L A Piras; S Nicoli; R Bussadori; P Buracco

目的:腹側会陰ヘルニアの修復に対し、半腱様筋転位の修正法を述べる

材料と方法:片方の肢の半腱様筋の長軸裂の内側半分を転位することで治療した腹側会陰ヘルニアの犬の症例記録を回顧的に再検討した。腹側会陰ヘルニアに加え、片側あるいは両側の直腸嚢胞形成があるときは、内閉鎖筋の転位を使用した;結腸固定と精管固定も実施した。

結果:14頭を調べた。内側会陰ヘルニアに加え、片側会陰ヘルニアは5頭、両側会陰ヘルニアは6頭に存在した。平均経過観察期間は890日だった。研究した全ての犬の腹側会陰ヘルニアにおいて、最小限の合併症で半腱様筋転位変法により管理に成功した。

臨床意義:少数症例にもかかわらず、半腱様筋長軸裂の内側半分の片側転位はめだった有害作用もなく会陰ヘルニアの腹側直腸拡張を一貫して支持した。(Sato訳)
■胸骨正中切開閉鎖に対するモノフィラメントナイロンリーダーと整形外科用ワイヤーの機械的比較
Mechanical comparison of monofilament nylon leader and orthopaedic wire for median sternotomy closure.
J Small Anim Pract. August 2015;56(8):510-5.
D J McCready; J C Bell; M G Ness; J F Tarlton

目的:犬の胸骨正中切開の閉鎖に対し、モノフィラメントナイロンリーダーと整形外科用ワイヤーの機械的特性を比較する。

素材と方法:胸骨柄が無傷の14頭の犬の屍体の胸骨において胸骨正中切開を実施した。胸骨切開を胸骨周囲の8の字縫合で、80lbモノフィラメントナイロンリーダーか、20G整形外科用ステンレススチールワイヤーにより閉鎖した。構成はservohydraulic素材テストマシーンで負荷をかけた。降伏荷重、最大負荷、堅さ、移動、破損様式を、破損する単一サイクル負荷を条件に構成間で比較した。

結果:モノフィラメントナイロンリーダーとステンレススチールワイヤーの構成で、降伏荷重、最大負荷、堅さあるいは移動に有意差はなかった。ステンレススチールワイヤー構成においてインプラント破損の所見はなかった。モノフィラメントナイロンリーダー構成の4つは、crimpを通るナイロンを引っ張ることで破損した。

臨床的意義:モノフィラメントナイロンリーダーはステンレススチールワイヤーに機械的に匹敵し、もしかすると犬の胸骨正中切開の閉鎖に適切な代替法かもしれない。(Sato訳)
■13頭の犬の外尾側有軸皮弁
Lateral caudal axial pattern flap in 13 dogs.
Vet Surg. July 2015;44(5):642-7. 6 Refs
Vincenzo Montinaro; Federico Massari; Luca Vezzoni; Julius M Liptak; Rod C Straw; Larie Allen; Ryan P Cavanaugh; John Berg; Ronan S Doyle; Paolo Buracco; Giorgio Romanelli

目的:13頭の犬において背部、臀部、会陰部の大きな外傷あるいは切除による皮膚欠損をカバーするための外尾側有軸皮弁に関係する合併症の頻度と程度を述べる

研究計画:ケースシリーズ

動物:13頭の飼い犬

方法:8施設のカルテから他の再建方法と組み合わせて処置した症例も含め、外尾側有軸皮弁で治療した犬を調査した。尾の長さと相対したフラップ長、尾の皮膚切開の部位、欠損の大きさと原因、短期および長期合併症を記録した。

結果:13頭の犬が含まれ、11頭は腫瘍で2頭は外傷性の皮膚喪失だった。尾の長さに相対したフラップの算出した平均長は51%(範囲33-70%)だった。4頭の犬は創傷合併症があった。これには、外科的修正を必要としないマイナーな術後の創傷合併症(軽度の遠位の裂開)で、2頭は外科的修正を必要なメジャーな合併症だった。それら4頭中2頭は、遠位のフラップの壊死で、1頭は外科的修正を行い、1頭は保存的に管理した。それら2頭のフラップの長さは尾の長さの80%と65%だった。30日目には全ての犬のフラップは完全に治癒した。長期合併症はどの犬にも見られなかった。数頭で、再建は目立たず、毛の方向や色に顕著な変化も少なかった。

結論:犬の臀部、背部、会陰部皮膚欠損に対し、外尾側有軸皮弁は再建のオプションである。遠位のフラップの壊死、創傷感染による裂開が4頭の犬で発生し、追加の創傷ケアが必要だったが外科的修正が常に必要というわけではない。(Sato訳)
■犬の開放創の治癒に対する低出力レーザー治療の効果
The Effect of Low-Level Laser Therapy on the Healing of Open Wounds in Dogs.
Vet Surg. November 2015;44(8):988-96.
Lindsey M Kurach; Bryden J Stanley; Krista M Gazzola; Michele C Fritz; Barbara A Steficek; Joe G Hauptman; Kristen J Seymour

目的:犬の急性の全層創傷治癒に対する低出力レーザー治療(LLLT)の効果を評価する

研究計画:乱塊法(犬);歴史的対照群

動物:オスのビーグル成犬(n=10)

方法:各犬の両側の体幹に2x2cm(2)の創傷を2つ外科的に作成した。各側面の創傷に無作為にLLLT(レーザー、LAS)、あるいは標準治療(コントロール、CON)を週3回32日間行った。LLLTは635nmのデュアルダイオードレーザー(7.5mW/ダイオード)で、総エネルギー密度1.125J/cm(2)だった。創傷の面積測定は尾側創で実施し、収縮率と上皮化率を算出した。組織学的特性は、頭側創のバイオプシーで7度評価した。また、実験データは過去のメスのコントロール集団(過去のコントロール、HCON)の創傷とも比較した。

結果:組織検査を含め、全てのパラメーターでLASとCONの間に違いはなかった。LASとCONの創傷に比べ、HCONの創傷は収縮と上皮化が有意に大きかった。創傷治癒の初期にはHCONの創傷よりも、LASおよびCONの創傷の炎症が有意に少なかったが、21日目のLASおよびCONの創傷の炎症は有意に多くなった。HCONの創傷と比べてLASおよびCONの創傷の線維芽細胞浸潤およびコラーゲン沈着は有意に少なかった。

結論:このLLLTプロトコールを使用した健康な犬の急性の創傷の治癒において、LLLTの明らかな有効性はない。不妊していない犬において、性別が創傷治癒に影響するかもしれない。(Sato訳)
■猫の外傷性歯槽および顎顔面傷害:診断と管理の概要
Traumatic Dentoalveolar and Maxillofacial Injuries in Cats: Overview of diagnosis and management.
J Feline Med Surg. November 2014;16(11):915-27.
Jason W Soukup; Christopher J Snyder

臨床関連:顎顔面および外傷性歯槽傷害は疼痛、炎症、口の機能減少を引き起こす可能性があり、猫のQOLに影響を及ぼす。多くは外傷性の猫の骨折を誘発し、下顎あるいは頭蓋骨に関与すると報告されており、顎顔面傷害の猫において、外傷性の歯槽傷害は特に一般的である。外傷性の歯槽傷害はまた他の健康な猫でもたびたび見つかる可能性がある。

臨床的チャレンジ:外傷性歯槽傷害は緊急治療を必要とする時もある;ゆえに、タイムリーな認識と管理は最善の結果を得るのに重要である。顎顔面外傷性傷害の管理と修復には複数のアプローチが存在する。しかし、外傷性歯槽傷害のものはより制限がるかもしれない。

読者:このレビューは、歯科専門の獣医師同様に猫および一般臨床医に向けたものである。

エビデンスベース:著者は、基礎となるガイドラインの概要を作成するため、自身の臨床経験および文献からのエビデンスを示す。外傷性歯槽および顎顔面傷害の猫に対し、これがより深い考慮を刺激し、「最優良事項」原則となることを望む。(Sato訳)
■家猫短毛種の1頭の猫の壊死性筋膜炎-デブリードメントと再建を補助する陰圧閉鎖療法
Necrotising fasciitis in a domestic shorthair cat--negative pressure wound therapy assisted debridement and reconstruction.
J Small Anim Pract. April 2015;56(4):281-4.
M C Nolff; A Meyer-Lindenberg

10歳の家猫短毛種の猫が重度疼痛、腫脹、皮膚壊死、悪臭を放つ浸出液、発熱を伴う左前肢の急性跛行を呈した。壊死性筋膜炎の仮診断の後、前肢の罹患軟部組織の積極的外科的デブリードメントと開放欠損部の陰圧閉鎖療法を実施した。

外科的所見は壊死性筋膜炎の仮診断を支持し、傷からStreptococcus canisが分離された。入院から29日目に遊離皮膚グラフトを実施し、グラフトの組み込みを促進するために陰圧閉鎖療法を3日増やした。合併症もなく治癒し、機能的あるいは美観的異常は残らなかった。(Sato訳)
■嵌頓包茎の修正方法として包皮進展と陰茎固定の組み合わせで治療した犬の一例
Combined preputial advancement and phallopexy as a revision technique for treating paraphimosis in a dog.
Aust Vet J. November 2014;92(11):433-6.
S M Wasik; A M Wallace

7歳の去勢済みオスのジャックラッセルテリアの雑種が、包皮径の外科的拡張を過去に行ったにもかかわらず、たびたび嵌頓包茎の症状を呈した。

包皮進展と陰茎固定を組み合わせて修正外科手術を実施し、包皮により陰茎亀頭は完全で持続的に被覆され、1年後も嵌頓包茎の再発は観察されなかった。

正常な陰茎の解剖学の維持を可能にするこの組み合わせの方法は、実施が比較的簡単で、美的結果もよい。著者らはこの方法を、特に他の方法が失敗した犬の嵌頓包茎の治療に推奨する。(Sato訳)
■眼窩膿瘍の1頭の犬の側方眼窩切開による治療
Lateral orbitotomy for treatment of an orbital abscess in a dog.
J Small Anim Pract. October 2014;55(10):531-4.
R Vallefuoco; C Molas; P Moissonnier; S Chahory

2歳のジャックラッセルテリアを眼球後膿瘍と眼窩蜂巣炎と診断した。診断は超音波検査、MRI検査、超音波ガイドの細針吸引検査で確認した。経口腔腹側ドレナージを試みたが成功しなかった。膿瘍は側方眼窩切開による開放ドレナージで治療に成功した。眼窩構造をさらしたにもかかわらず、眼窩軟部組織は合併症が増えることもなく二次癒合で治癒した。開放ドレナージは良好な許容を見せ、炎症や疼痛がすぐに軽減し、早く回復できた。

この報告は側方眼窩切開を通し、開放ドレナージにより治療に成功した広範性眼窩周囲蜂巣炎に関係する眼窩膿瘍の珍しい症例の診断、外科管理、長期経過観察(3年)を述べている。(Sato訳)
■陰圧閉鎖療法で増強した猫の皮膚の全層フリー移植:6頭の猫に行った10枚のグラフト移植の結果
Negative pressure wound therapy augmented full-thickness free skin grafting in the cat: outcome in 10 grafts transferred to six cats.
J Feline Med Surg. 2015;0(0):.
Mirja C Nolff; Andrea Meyer-Lindenberg

目的:この臨床評価の目的は、陰圧閉鎖療法(NPWT)で増強した猫の皮膚移植の方法と結果を述べる

方法:軟部組織及び皮膚欠損の猫(n=6)に開放創管理を行った。当初創傷はNPWTシステムでカバーし、感染がコントロールされ肉芽形成が始まるとポリウレタンフォームドレッシング剤に変更した。健康で完全な肉芽創床が出来上がった後、腹部外側から遊離した全層の皮膚の移植で最終的な閉鎖を行った。その後、新鮮な移植皮膚は3日間-125mmHgの圧でNPWTドレッシング処置を行い、包帯は毎日交換した。移植生着率、合併症、創傷汚染微生物数、美的結果を記録した。

結果:開放創傷管理の平均期間は21.4日(範囲3.0-45.0日)で、NPWTの平均期間は8.0日(範囲3.0-14.0日)だった。5頭の猫は1枚の移植片だったが、1頭の猫は右後肢に5枚の移植を行った。10枚の移植片のうち7枚は移植生着が100%、2枚の移植は95%、1枚は80%(平均生着率97%)だった。全ての猫において治療の許容性は良かった。移植した部位には4頭の猫で正常な発毛が見られ、1頭はまばらな発毛、1頭は全く生えなかった。全ての移植した猫において皮膚の感覚は正常だった。

結論と関連:猫においてNPWTを使用した皮膚移植の増強は、解剖学的に要求の厳しい部位においても移植片定着が見込まれる実行可能なオプションである。ここで報告した移植生着率は過去に発表された報告よりもわずかに高い。(Sato訳)
■犬の種々の外科処置に対して必要となる術中の赤血球輸血:207症例(2004-2013)
Perioperative red blood cell transfusion requirement for various surgical procedures in dogs: 207 cases (2004-2013).
J Am Vet Med Assoc. July 1, 2015;247(1):85-91.
Adrienne L Haley; F A Mann; John Middleton; Courtney A Nelson

目的:肝葉切除、脾摘、部分的胃切除、鼻切開、甲状腺切除、会陰ヘルニア縫合、胸腔内外科を行う犬の中で術中RBC輸血を比較する

計画:回顧的ケースシリーズ

方法:肝葉切除、脾摘、部分的胃切除、鼻切開、腫瘍性甲状腺切除、会陰ヘルニア縫合、胸腔内外科を行った犬のカルテを検討した。輸血必要量(赤血球濃厚液、全血、牛ヘモグロビンベースの酸素担体)と術後2週間目の生存率を種々の手術を行った犬で比較した。

結果:脾摘および肝葉切除を行った犬は、その他の手術を行った犬と比較して有意にRBC輸血を受ける確率が高かった。体重と術中RBC輸血の間に有意な関係があり、体重が増加すると輸血の確率も高くなった。術中RBC輸血を受けた犬は、術後2週間目に生存している確率が有意に低かった。

結論と臨床関連:脾摘と肝葉切除を行った犬は、術中にRBC輸血を必要とするかもしれないと示された。それらの手術を行う獣医師は、適宜計画し、赤血球濃厚液あるいは全血ドナーをすぐに利用できるようにすべきである。(Sato訳)
■犬の肘の水滑液嚢腫の閉鎖式吸引ドレーン管理
Successful closed suction drain management of a canine elbow hygroma.
J Small Anim Pract. July 2015;56(7):476-9.
M M Pavletic; D E Brum

エンジェルアニマルメディカルセンターに1歳の去勢済みオスのセントバーナードが、数週間前から存在する両側の肘の水滑液嚢腫を主訴に来院した。左肘の最も大きな水滑液嚢腫は閉鎖式吸引(能動)ドレーンシステムで、3週間かけて水滑液嚢腫のポケットを持続的にしぼむように管理した。さらなる外傷から肘頭部分まで肘を保護するため柔らかいベッドを使用した。ドレーン除去後、18か月以上周期的な検査で水滑液嚢腫の再発所見はなかった。この期間に処置をしていないより小さな右の水滑液嚢腫はわずかに拡大した。

水滑液嚢腫の閉鎖式吸引ドレーン管理は、左の肘の水滑液嚢腫をしぼませる簡単で経済的な方法だった。この閉鎖式ドレナージシステムは、肘の水滑液嚢腫を管理するペンローズ(受動)ドレーン法で求められる術後包帯の必要性をなくした。外部のドレーンチューブは不注意なズレのリスクを最小限にするため適切に確保するべきである。(Sato訳)
■陰圧閉鎖療法の現在のコンセプト
Current Concepts in Negative Pressure Wound Therapy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2015;45(3):565-584.
Lisa M Howe

陰圧閉鎖療法(NPWT)は複雑な創傷の管理に対し、実行可能なオプションとして獣医療で認識されるようになっている。NPWTは従来の創傷ケア以上の多くの利点があり、多くの場合でより速く、良好な創傷治癒をもたらす。

この文献は小動物獣医療におけるNPETの芸術と科学、多くの現行の適応、合併症、利点および欠点を論じる。この療法は、ここ数年で獣医診療の複雑な創傷管理、他の使用での役割が向上する可能性がある。(Sato訳)
■消化管起源が確認されている敗血症性腹膜炎の治療に対する閉鎖式吸引ドレナージ
Closed suction drainage for treatment of septic peritonitis of confirmed gastrointestinal origin in 20 dogs.
Vet Surg. October 2014;43(7):843-51.
Robert J Adams; Ronan S Doyle; Jonathan P Bray; Carolyn A Burton

目的:消化管が原因と確認された敗血症性腹膜炎を閉鎖式吸引ドレナージで治療した犬の生存率を判定する

研究計画:回顧的ケースシリーズ

動物:敗血症性腹膜炎の犬(n=20)

方法:消化管が原因と確認された敗血症性腹膜を閉鎖式吸引ドレナージで治療した犬のカルテ(2007-2010)を再調査した。シグナルメント、臨床病理異常、基礎原因、実施した術式、術後管理、合併症、結果に関する情報を入手した。

結果:過去の吻合の裂開が最も多い汚染源だった(80%)。腹腔内に算出される液体を収集するドレーンは中央値6日間(範囲、2-11日)維持した。18頭の犬は栄養サポートを受け、14頭は血漿輸液を受けた。17頭(85%)は生存して退院した。

結論:腹膜炎の元となる原因の解消とともに閉鎖式吸引ドレナージと、適切な術後管理は、消化管が原因の犬の敗血症性腹膜炎の治療で有効な方法である。(Sato訳)
■犬猫の能動的吸引創傷ドレーンの使用に対する回顧的研究
A retrospective study of the use of active suction wound drains in dogs and cats.
J Small Anim Pract. May 2015;56(5):325-30.
P C Bristow; Z J Halfacree; S J Baines

目的:大規模の臨床症例において、一般的に使用される閉鎖式能動吸引創傷ドレーンの使用に対する指標と関連する合併症を報告する

方法:創傷内に閉鎖式能動吸引ドレーンを設置した犬猫に対し症例記録(2004年から2010年)の回顧的再検討。4つの最も一般的なドレーンタイプを含めた:Mini RedovacR, RedovacR, Jackson PrattR, Wound EvacR。

結果:33頭の猫と195頭の犬に253のドレーンが設置されていた。猫(76.5%)ではMini Redovacドレーンが、犬(54.3%)ではRedovacドレーンが最も使用頻度が高かった。清潔な外科手術に対する犬の感染率は15.6%だった(猫では未達成)。メジャーな合併症は4頭の犬で起こった;マイナーな合併症は猫の12のドレーン(35.3%)、犬の74のドレーン(33.8%)で発生した。両動物種に対するドレーンのタイプと合併症率に統計学的有意な関連はなかった。

臨床意義:閉鎖式能動吸引ドレーンはメジャーな合併症のリスクは低く使用できるが、犬において清潔な外科手術での高い感染率を誘発する。そのようなドレーンはできる限り設置時間を短くし、設置中および管理中に厳密な無菌状態の遵守を推奨する。(Sato訳)
■一部尾切除の合併症とオーナーの満足度:22症例(2008-2013)
Post-operative complications and owner satisfaction following partial caudectomies: 22 cases (2008 to 2013).
J Small Anim Pract. 2014 Oct;55(10):509-14. doi: 10.1111/jsap.12257. Epub 2014 Sep 5.
Simons MC, Ben-Amotz R, Popovitch C.

目的:犬猫の部分的尾切除の合併症とオーナーの満足度を報告する

方法:2008年から2013年の間に部分的尾切除を行った犬と猫(n=22)のカルテを回顧的に調査した。シグナルメント、切断の理由、切断のレベル、合併症を記録した。オーナーにはその後のデータを得るために電話で連絡を取った。

結果:部分的尾切除の最も多い理由は、尾の創傷だった(16/22;72.7%)。典型的なマイナーな合併症は切開部の痂皮形成(4/20;20%)だった。メジャーな合併症(3/20;15%)は部分的切開部裂開による治癒延長、何回か手術を必要とする持続性自傷、修正手術を必要とする潰瘍を伴う重度炎症だった。調査したオーナーの多く(10/12;83.3%)は術後結果に満足しており、もし妥当ならばこの方法を勧めるだろうということだった。

臨床意義:部分的尾切除は犬と猫共に機能の喪失もなく容認できるものである。オーナーによると手術後の何かしらの行動的変化も見られなかった。しかし、持続性の自傷および/あるいは裂開の症例では修正処置を必要とするかもしれない。(Sato訳)
■二頭筋腱起始部の両側内側変位:ポリプロピレンメッシュとステープルによる修復
Bilateral medial displacement of the biceps tendon of origin: repair using polypropylene mesh and staples.
J Small Anim Pract. September 2013;54(9):499-501.
D M Barnes

3歳オスのグレイハウンドが二頭筋腱の起始部の内側変位による急性の右前肢跛行で来院した。超音波検査で診断を確認し、関節鏡検査中に内側肩甲上腕靭帯の部分断裂を同時に見つけた。二頭筋腱を安定させるため、上腕支帯の横断裂を置換するように結節間溝を横切ってポリプロピレンメッシュを固定した。回復は順調で跛行は解消した。15か月後、その犬は左肩の二頭筋腱の起始部の内側変位を呈し、同じ方法で治療に成功した。(Sato訳)
■犬において術後制限を容易にするトラゾドンの使用
Use of trazodone to facilitate postsurgical confinement in dogs.
J Am Vet Med Assoc. August 1, 2014;245(3):296-301.
Margaret E Gruen; Simon C Roe; Emily Griffith; Alexandra Hamilton; Barbara L Sherman

目的:犬の整形外科後の運動制限を容易にし、落ち着かせるためのセロトニン拮抗および再取り込阻害の塩酸トラゾドンの経口投与に関する安全性と効果を調査すること

計画:前向き非盲検臨床試験

動物:整形外科手術を行った36頭の飼育犬

方法:術後その日に開始し、トラゾドン(約3.5mg/kg、PO、12時間毎)と疼痛管理にトラマドール(4-6mg/kg、PO、8から12時間毎)を投与した。3日後、トラマドールの投与は中止し、トラゾドンを増量(約7mg/kg、PO、12時間毎)し、最低4週間維持した。必要ならばトラゾドンを増量した(7-10mg/kg、PO、8時間毎)。オーナーには、術前、術後1、2、3、4週目と術後評価時(8週から12週目)、犬の制限に対する許容性、落着きあるいは活動亢進レベル、特定の刺激的状況に対する反応を評価する調査にメールで答えてもらった。

結果:ほとんどのオーナー(32/36[89%])は、整形外科手術後8-12週間、トラゾドンを与えると制限に対する許容あるいは落着きに関して中程度あるいはかなり改善したと報告した。トラゾドンはNSAIDs、抗生物質、他の薬剤と一緒にしても良好な耐容性を示した;この研究では副作用を理由に投与を中止した犬はいなかった。オーナーが報告したトラゾドンの作用発現の中央値は31分から45分で、作用持続時間の中央値は4時間以上だった。

結論と臨床関連:トラゾドンの経口投与は、安全、有効で、整形外科後の重要な回復期間中の犬の制限を容易にし、行動の落ち着きを高めるのに役立つかもしれないと示唆された。(Sato訳)
■犬の清潔な手術創において閉鎖式吸引ドレーン設置後の液体産生と漿液腫形成の評価:77症例(2005-2012)
Evaluation of fluid production and seroma formation after placement of closed suction drains in clean subcutaneous surgical wounds of dogs: 77 cases (2005-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Jul 15;245(2):211-5. doi: 10.2460/javma.245.2.211.
Shaver SL, Hunt GB, Kidd SW.

目的:犬の清潔な手術創において、閉鎖式吸引ドレーン設置後の液体産生と漿液腫形成に関係する要因を評価する

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:清潔な手術後、皮下に閉鎖式吸引ドレーンを設置した飼育犬77頭

方法:医療記録(2005年1月-2012年6月)を再調査し、シグナルメント、手術部位と基礎疾患過程、組織学的検査結果、総排液量、12時間間隔の液体産生率(ml/kg/h)、排液の細胞学的評価、裂開、感染、漿液腫の発生を記録した。それらの関連を評価した。

結果:最も一般的な合併症は裂開(n=18)で、続いて漿液腫(14)、感染(4)だった。漿液腫を起こした犬は、体重に対し総排液量が有意に多く、24時間、72時間とドレーン抜去前に測定した最終時点で液体産生率が大きかった。液体産生率が0.2ml/kg/h以上の時にドレーンを抜去した犬は、有意に漿液腫を起こしやすかった。

結論と臨床的関連性:体重に対し、液体産生の割合がより高い犬は漿液形成が一般的に見られたが、その部位に閉鎖式吸引ドレーンを維持する日数に関係しなかった。0.2ml/kg/hの率でまだ排液している最中にドレーンを抜くと漿液腫の形成リスクが大きくなると思われる。(Sato訳)
■犬の腹腔鏡による卵巣摘出のポート切開部の閉鎖に対するn-ブチル-シアノアクリレート組織接着剤の有効性
The efficacy of n-butyl-cyanoacrylate tissue adhesive for closure of canine laparoscopic ovariectomy port site incisions.
J Small Anim Pract. April 2013;54(4):190-4.
J F A Pope; T Knowles

目的:犬の腹腔鏡下卵巣摘出後のポート皮膚切開部の閉鎖に使用したn-ブチル-シアノアクリレートの有効性を評価し、外科的接着剤に対する飼い主の考えを評価した。

方法:42か月の間、1つの施設で腹腔鏡下卵巣摘出を行った犬の症例記録を調査した。切開をn-ブチル-シアノアクリレートで閉鎖した犬を含めた。追跡調査が8週間未満の症例は除外した。術後裂開、腫脹、紅斑、浸出液あるいは過敏症に関するデータを記録し、再検討した。アンケートを犬の飼い主に送付した。

結果:合計289頭が基準を満たした。695か所の切開のうち602か所(86.6%)に合併症は見られなかった。93か所(13.4%)に合併症が見られ、そのうち33か所(4.7%)は裂開、38か所(5.5%)は術後腫脹、59か所(8.5%)は紅斑、29か所(4.2%)は浸出液が見られた。5mm切開よりも10mm切開で合併症の確率が有意に高かった(P<0.001)。n-ブチル-シアノアクリレートの使用に関係する過敏症の報告はなく、何らかの長期有害反応もなかった。飼い主が切開の瘢痕に対しビジュアルアナログスケールでスコア(0:優良、10不良)を付けたところ、平均0.7、中央値0だった。

臨床的意義:この研究は、犬の腹腔鏡ポート閉鎖にn-ブチル-シアノアクリレートが使用可能だと示唆する。(Sato訳)
■犬の両側閉鎖式肛門嚢摘出後の術後合併症に対するリスク因子
Risk factors for postoperative complications following bilateral closed anal sacculectomy in the dog.
J Small Anim Pract. 2014 Jul;55(7):350-4. doi: 10.1111/jsap.12217. Epub 2014 Apr 7.
Charlesworth TM.

目的:犬で両側閉鎖式肛門嚢摘出における合併症率を報告することと、術後合併症発症に対する潜在的リスク因子を評価すること。肛門嚢摘出が必要となるリスクを持つ犬種と確定すること。

方法:2003年から2013年に両側閉鎖式肛門嚢摘出を行った犬の医療記録の回顧的再検討。

結果:62頭の犬を調査し、そのうち32.3%は軽度および自身で制御できる合併症を発症し、14.5%の犬は術後排便に関する合併症を経験した。持続的な便失禁を発症した犬はいなかった。体重15kg以下の犬は銃後の合併症を発症する可能性が高かった。肛門嚢を膨張させるジェルを使用した犬は、使用しなかった犬よりも術後合併症を起こしやすかった。過去の膿瘍形成、再発性疾患、抗生物質による前処置は術後合併症率に有意な影響を及ぼさなかった。キャバリアキングチャールズスパニエルとラブラドールタイプはこの研究集団で代表する犬種だった。

臨床意義:肛門嚢摘出は、短期だが自身で制御できるマイナーな術後合併症の比較的高い発生率を持つ安全な方法である。より小型犬(<15kg)は術後合併症を経験しやすいが、永続的な便失禁のリスクは低い。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた経動脈偽動脈瘤
Carotid artery pseudoaneurysm in a cat.
J Feline Med Surg. November 2012;14(11):819-21.
Marlene Y Townsell; David S Biller; Gregory F Grauer

臨床的サマリー:4ヶ月齢メスの短毛種家猫が、カンザス州立大学獣医教育病院に紹介元病院で実施した瀉血後にできた左の頸部中央の大きな硬く固着したマスの検査で来院した。

超音波検査で左頸動脈と交通のある嚢胞構造で、2方向の血流があることが分かった。頚静脈穿刺中に、頸動脈の偶発的針穿通に続発する偽動脈瘤と診断された。

転帰:厳格なケージレストと疼痛管理で、この猫の臨床および超音波症状の完全な解消が得られた。(Sato訳)
■胸部外科を行った232頭の犬における術後膿胸の予防と結果およびリスクファクター
Prevalence, outcome and risk factors for postoperative pyothorax in 232 dogs undergoing thoracic surgery.
J Small Anim Pract. June 2013;54(6):313-7.
L B Meakin; L K Salonen; S J Baines; D J Brockman; S P Gregory; Z J Halfacree; V J Lipscomb; K C Lee

目的:胸部外科を行った犬の術後膿胸に対する有病率、結果、リスクファクターを調査する

方法:膿胸を胸水の細胞診を基に胸腔内の敗血性好中球性炎症および/あるいは細菌培養結果陽性と定義し、胸部外科後に膿胸となった犬を確認するため症例記録を回顧的に調査した。生物学的妥当性と過去の発表されたデータを基に、術後膿胸に対する潜在的リスクファクターに対して確認された犬を調査した。それらの潜在的リスクファクターを多変量ロジスティック回帰で解析した。

結果:胸部外科を行った232頭の犬のうち、15頭(6.5%)は膿胸を発症した。培養された細菌には、メチシリン耐性スタフィロコッカス・オーレウスや多剤耐性大腸菌も含まれた。それらの犬のうち、6頭は死亡、4頭は安楽死され、5頭は治療に成功した。特発性乳糜胸の診断(オッズ比=12.5、95%信頼区間2.7-58.5、P=0.001)、術前の胸腔バイオプシー(オッズ比=14.3、95%信頼区間1.7-118.7、P=0.014)、術前の胸腔穿刺(オッズ比=11.2、95%信頼区間1.6-78.2、P=0.015)が術後膿胸発症の独立したリスクファクターとして確認された。

臨床意義:特発性乳糜胸、術前のバイオプシー、術前の胸腔穿刺は、67%の死亡率に関係する術後膿胸に対する独立したリスクファクターである。(Sato訳)
■皮膚フラップの生存力を維持するために陰圧補助閉鎖を使用した犬の一例
Use of vacuum-assisted closure to maintain viability of a skin flap in a dog.
J Am Vet Med Assoc. September 15, 2013;243(6):863-8.
Poppy C Bristow; Karen L Perry; Zoe J Halfacree; Vicky J Lipscomb

症例:4歳オスのラブラドールレトリバー-プードルの雑種が、左胸部の創傷の治療で入院した。創傷は4日前に紹介獣医師により新鮮創にされ、初期閉鎖が行われていた。

臨床所見:その犬には、皮膚を肩甲骨から尾側に伸ばした大きなフラップで覆った長さ20cmの創傷が左胸郭上にあった。創傷の頭腹側面に明らかな3cmの欠損があり、腐敗したものが流れ出ていた。皮膚フラップは壊死しており、フラップの周りの皮膚は傷ついていた。痛みの症状は創傷や周りの部分を触った時に認められた。

治療と結果:創傷を新鮮創にして陰圧補助閉鎖(VAC)を開始し、健康な肉芽組織の床ができるまで3日間行った。VACドレッシングを除去後3日で、再建処置を回転させたフラップで行った。皮膚フラップの生存性の明らかな低下のため、再建後2日にVACプロセスを再度実施した。VACの5日後、フラップの色と整合性が著しく改善し、VACを中止した。デブリードメントや追加の措置を必要とせずフラップはうまく治癒した。

臨床関連:VACの使用はその犬で総体的に良好な結果を導き、完全な治癒に達した。今日まで獣医療動物においてフラップを救う信頼できる方法がないことを特に考慮して、犬の皮膚フラップの失敗を助けるこの方法のさらに評価することが求められる。(Sato訳)
■総鞘膜を使用して会陰ヘルニアを修復したオス犬9例
Perineal hernia repair using an autologous tunica vaginalis communis in nine intact male dogs.
J Vet Med Sci. April 2013;75(3):337-41.
Kittiya Pratummintra; Suwicha Chuthatep; Wijit Banlunara; Marissak Kalpravidh

犬の会陰ヘルニアは非常に問題となり、大部分は弱化した骨盤隔膜の外科的再建を必要とする。通常のヘルニア縫合の失敗後、組織や合成グラフトがその補正に使用されている。

この臨床試験の目的は、未去勢のオス犬における会陰ヘルニア修復のためのフリーグラフトとして、自家総鞘膜の使用の可能性を評価する。

精巣および陰嚢腫瘍がない未去勢のオス7頭の片側性、2頭の両側性会陰ヘルニアで研究した。

片側性ヘルニア縫合の手術中央時間は75分だった。経過観察の中央値は13ヶ月だった。再発がないことや犬の排尿および排便中の快適性をもとに、自家移植の成功は11のヘルニアのうち10で見られ、成功率は90.91%だった。1つ(9.09%)は術後10日目に再発した。20日目の再発症例の修復中に採取したグラフトと隣接組織の間の領域の病理組織検査は、新血管新生と結合組織成長を示した。

結論として、未去勢の犬において総鞘膜は会陰ヘルニア縫合に使用できる。(Sato訳)
■腹直筋有茎弁を使用して横隔膜ヘルニアを修復した犬の3例
Diaphragmatic hernia repair using a rectus abdominis muscle pedicle flap in three dogs.
Vet Comp Orthop Traumatol. 2012;26(2):.
P Chantawong; K Komin; W Banlunara; M Kalpravidh

目的:横隔膜ヘルニアの犬の広範囲な裂け目の修復に、腹直筋からの有茎弁の臨床的使用を報告する

材料と方法:放射状および円周状の横隔膜裂のある3頭の犬で研究した。円周状の裂は傷の縁と腹壁の縁を縫合することで修復した。腹直筋の有茎弁は放射状の裂の修復に使用した。術後10日、1、2、4か月目に肺および横隔膜像、再ヘルニアの所見に対しエックス線撮影装置で、1、4か月目に横隔膜の奇異性運動に対し透視装置で検査した。

結果:腹直筋有茎弁は全頭において使用に成功した。犬は何事もなく回復し、その後4か月再発の所見もなかった。透視検査で横隔膜の奇異性運動は認められなかった。

臨床的意義:腹直筋の有茎弁は犬の大きな横隔膜欠損の修復に使用できる。(Sato訳)
■6頭の犬における敗血症性腹膜炎の管理における陰圧閉鎖療法の使用
The use of vacuum-assisted closure in the management of septic peritonitis in six dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 May-Jun;48(3):164-71.
Nicole J Buote; Marc E Havig

この研究の目的は、敗血症性腹膜炎と確認された6頭の犬における陰圧閉鎖療法(VAC)の適切な術式、術後モニタリング、合併症を述べることだった。
敗血症性腹膜炎の初期診断は、血液腹水乳酸比およびグルコース濃度差の測定あるいは細胞内細菌の細胞学的検証により実施した。腹膜敗血症の腫瘍原因のための適切な外科処置を実施後、VACを実施した。血清および腹水蛋白濃度を測定し、術後期間の全ての合併症を記録した。6頭中3頭(50%)が二次創閉鎖に生存し、その後退院し、腹部の主に閉鎖あるいはオープン腹部ドレナージで治療した過去の研究と同様だった。入院中のバンデージ管理に大きな合併症は起こらなかった。この研究結果は、敗血症性腹膜炎で使用できる方法としてVACを支持する。(Sato訳)
■獣医外科における止血性ゼラチンスポンジの使用
The use of haemostatic gelatin sponges in veterinary surgery.
J Small Anim Pract. January 2012;53(1):51-6.
T M Charlesworth; P Agthe; A Moores; D M Anderson

目的:臨床的獣医外科症例において止血インプラントとして吸収性ゼラチンスポンジの使用を詳述し、関連するすべての術後合併症を考証すること

方法:製品名"Gelfoam"と"Spongostan"を用い、診療データベースから検索した。患者の記録を回収し、患者シグナルメント、外科的方法、National Resource Council (NRC)創傷分類、出血源、術前術後の体温、術後合併症、入院期間、全ての術後画像検査の詳細を記録し、検討した。経過観察の情報は、再度の臨床検査あるいは飼い主か委託獣医外科医への電話による聞き取りで入手した。不完全な手術記録の症例、あるいは麻酔から覚醒しなかった症例は分析から除外した。

結果:50症例(犬44頭、猫6頭)は研究基準を満たした。49例と2度目のゼラチンスポンジの使用するための再手術を必要とする1例は良好な止血ができた。過敏反応あるいは経過観察(中央値13ヶ月)中のゼラチンスポンジの使用に関係する術後合併症は確認されなかった。

臨床意義:これは臨床的獣医外科におけるゼラチンスポンジの使用の最初のレビューで、ゼラチンスポンジは犬と猫で安全に使用できることを示唆する。(Sato訳)
■犬の軟口蓋切除に対するharmonic scalpelの使用:3例
Use of the harmonic scalpel for soft palate resection in dogs: a series of three cases.
Aust Vet J. December 2011;89(12):511-4.
J Michelsen

軟口蓋切除は、短頭種性気道閉塞症候群(BAOS)に関係する過長あるいは病的軟口蓋に実施される。切除は発咳、出血、咽頭浮腫、呼吸閉塞あるいは死亡を含む多くの合併症に関係している。従来、手術は鋭利な切開と縫合により行われているが、他に報告されている方法には電熱シーリング機器あるいはレーザーの使用などが含まれる。鋭利な切開での手術時間は約12分だが、切開後のかがり縫いを必要としない止血特性を持つようなレーザーを使用するときは約5分に短縮される。

3頭の犬の過長軟口蓋切除でうまくいったharmonic scalpeの使用を述べる。軟口蓋の切除部位はかがり縫いを行わず、手術時間はレーザー術に匹敵した。1頭目は術後6時間目にわずかな出血があり、harmonic scalpeカッティングjawsの最適以下の設置に関係すると思われた。続く2頭には術後合併症はなかった。harmonic scalpe腹腔鏡ハンドピースは、術野の素晴らしい視認性と迅速な処置を可能にした。3頭とも術後呼吸機能が顕著に改善した。洗浄および再滅菌はハンドピースの複数回の再利用を可能にし、他の手術方法とコスト的にも競争できる。(Sato訳)
■慢性的な足の疾患の管理において融合足形成術を行った7頭の犬と1頭の猫
Fusion podoplasty for the management of chronic pedal conditions in seven dogs and one cat.
J Am Anim Hosp Assoc. November 2011;47(6):e199-205.
Lysimachos G Papazoglou; Gary W Ellison; James P Farese; Jamie R Bellah; Alastair R Coomer; Daniel D Lewis

慢性趾間フルンケル症(n=3)、欠指症(n=1)、靭帯切除に関係する指異常(n=1)、余剰趾間皮膚(n=1)、形態的奇形(n=1)、足の壊死性筋膜炎(n=1)の8頭に対する治療でfusion podoplastiesを行った。包帯を巻いている期間の中央値は14日で、入院期間の中央値は5日だった。4頭の犬は裂開し、術後11日という平均期間で発生した。足形成術を必要とする臨床的異常は6頭で解消し、2頭で改善した。追跡調査期間中央値29か月後、6頭は正常な歩行で、2頭はわずかに負重する跛行だった。融合足形成術は、犬と猫にみられる様々な足の慢性疾患に対する治療の救済処置として推奨できる。(Sato訳)
■馬の潜在睾丸摘出の外科手術を改良して犬と猫に使用した鼠径アプローチ:26症例(1999-2010)
Use of an inguinal approach adapted from equine surgery for cryptorchidectomy in dogs and cats: 26 cases (1999-2010).
J Am Vet Med Assoc. October 2011;239(8):1098-103.
Robert R Steckel

目的:潜在睾丸の馬に使用する外科的方法を、犬と猫の鼠径部あるいは腹腔に停溜する睾丸摘出に使用できるかどうかを判定する。

構成:回顧的症例シリーズ

動物:潜在睾丸の犬22頭と猫4頭

方法:1999年から2010年の間に、26頭の潜在睾丸症例に、鼠径輪上に切開を入れ、鞘状突起および胚導帯を確認することで停溜睾丸の位置を突き止める手術を行った。去勢はかつて睾丸が鼠径部に位置する、あるいは鼠径管を通して腹腔内に位置する睾丸の摘出を経て実施した。

結果:4頭の犬と1頭の猫は両側性潜在睾丸だった。18頭の犬の睾丸は腹腔内、4頭の犬は鼠径部に停溜していた。4頭の猫全ての潜在睾丸は鼠径部に位置していた。21頭の犬と4頭の猫は腹腔に穴をあけることなく去勢した。そのうち1例は腫瘍性の睾丸の引き抜きを行うため鼠径輪を大きくした。1頭の犬は導帯が断裂していたため、鼠径輪を傍正中切開に拡張させ、腹腔内に位置する睾丸を取り出す操作を行った。大きな術中あるいは長期合併症は起こらなかった。

結論と臨床的関連:馬のように鞘状突起や導帯の遺残を確認、摘出のため潜在睾丸の位置を突き止めるのに役立つ鼠径輪上の外科的アプローチは、犬と猫でも使用できることを示唆する。(Sato訳)
■獣医療での外科の手指消毒:石鹸スクラブとアルコールベースの消毒法の評価
Surgical hand antisepsis in veterinary practice: evaluation of soap scrubs and alcohol based rub techniques.
Vet J. December 2011;190(3):372-7.
Denis R Verwilghen; Jacques Mainil; Emilie Mastrocicco; Annick Hamaide; Johann Detilleux; Gaby van Galen; Didier Serteyn; Sigrid Grulke

最近の研究は、ヒトの外科医の術前手指消毒において従来の薬用石鹸よりも水-アルコール液の方がより有効だと示されているが、その件についての獣医の文献はほとんどない。
この研究目的は、獣医療で用いられている試験方法により、術前の薬用石鹸および水-アルコール液の効果を比較することである。
ポピドンヨード(PVP)とグルコン酸クロルヘキシジン(CHX)の異なる石鹸を用いた5-分ハンドスクラブセッションと1.5-分の水-アルコール擦り込み(rub)で、細菌コロニー形成単位(CFU)の平均log(10)数と減数因子(RF)を比較する予備実験を行った。
それから、手術室で水-アルコールrubとCHXを比較するための臨床的に行われている試験を使用した。サンプリングは寒天培地にフィンガープリント法で実施した。
水-アルコールrubとCHXは同様の速効性があったが、持続効果は有意に水-アルコールrubの方がよかった。その点PVPは速効性も持続効果も有意に低かった。
水-アルコールrubは臨床試験で良好な効果を示し、獣医療の手術における手指消毒において有効な代替方法と考えられる。(Sato訳)
■尾側縦隔膿瘍に大網留置を行った犬の1例
Omentalisation of a caudal mediastinal abscess in a dog.
Aust Vet J. June 2011;89(6):217-20.
Ad Franklin; SM Fearnside; Ph Brain

急性の嗜眠、発熱、頻呼吸を呈した2歳のジャーマンショートヘアードポインターを尾側縦隔膿瘍と診断した。その膿瘍は胸骨正中切開により外科的に管理し、膿瘍内容物吸引、横隔膜から膿瘍腔への大網留置を行った。縦隔膿瘍の外科的管理は過去に報告されているが、これは1頭の犬でその状況を大網留置によりうまく管理できた最初の報告である。(Sato訳)
■腹部大動脈瘤における開放あるいは血管内修復の長期結果
Long-term outcome of open or endovascular repair of abdominal aortic aneurysm.
N Engl J Med. May 2010;362(20):1881-9.
Jorg L de Bruin, Annette F Baas, Jaap Buth, Monique Prinssen, Eric L G Verhoeven, Philippe W M Cuypers, Marc R H M van Sambeek, Ron Balm, Diederick E Grobbee, Jan D Blankensteijn, DREAM Study Group

背景:大きな腹部大動脈瘤の患者に対し、従来の開放修復以上に選択的血管内修復に対する初期総生存の有利性が無作為試験で示されている。しかし、この生存性の差は処置後2年目の年に有意差でなくなっていた。術後2年以上経過した比較結果に関する情報は臨床的決断を下すのに重要である。

方法:我々は、両方法に適していると考えられる最低5cm以上の直径の腹部大動脈瘤を持つ351人の患者において、開放修復と血管内修復を比較する長期多施設無作為コントロール試験を行った。主要評価項目はいかなる原因および再介入での死亡率だった。生存性は全例ベースに対するカプラン-マイヤー法を使用して算出した。

結果:我々は開放修復を行う178人と血管内修復を行う173人に無作為に振り分けた。無作為化後6年で、蓄積生存率は開放修復で69.9%、血管内修復で68.9%だった(差、1%;95%信頼区間(CI)、-8.8から10.8;P=0.97)。二次的介入を免れる蓄積率は開放修復で81.9%、血管内修復で70.4%(差、11.5%;95%CI、2.0-21.0;P=0.03)だった

結論:無作為化後6年で、腹部大動脈瘤の血管内および開放修復は同様の生存率だった。二次的介入の比率は血管内修復のほうが有意に高かった。(Sato訳)
■猫の手根関節固定
Carpal arthrodesis in cats.
Vet Comp Orthop Traumatol. 2009;22(6):.
I Calvo, M Farrell, D Chase, J Aisa, R Rayward, S Carmichael

全手根および部分手根関節固定を、種々の術式で22の手根(20頭)に実施した。カルテおよびオーナーへのアンケートの回顧的再調査により短期および長期結果を評価した。手根関節固定は機能的結果に影響する合併症はなく、多くの症例で大きな手術のやり直しは必要としなかった。関節固定後、猫は高く飛べず、ジャンプするおよびよじ登る意志の減少を示した。我々の結果をもとに、猫における重度手根傷害の治療するため、手根関節固定は適したサルベージ外科手術である。(Sato訳)
■体重10kg以下の犬における術中反射ブランケット(Sirius rescue sheet)使用による温度管理
Intraoperative use of a reflective blanket (Sirius rescue sheet) for temperature management in dogs less than 10 kg.
J Small Anim Pract. July 2009;50(7):350-5.
J Tunsmeyer, I Bojarski, I Nolte, S Kramer

目的:体重10kg以下の犬の術中体温に対するシリウスレスキューシートとゲルパッド、またはゲルパッド単独の効果を比較する

方法:選択的外科処置を行う40頭の小型犬を無作為に2群に振り分けた。1群は術中に加温したゲルパッドに横たえ、2群はそれに加えてシリウスレスキューシートでくるんだ。10分毎に食道の体温を測定し、群間で比較した。群間のゲルパッドの熱喪失を比較するため、ゲルパッドの温度を術前と術後に測定した。

結果:シリウスレスキューシートでくるんだ犬の体温は、術中上昇した。加温ゲルパッドを使用しただけの犬では、平均体温の低下が明らかで、40分後の群間で平均体温に違いが見られた。ゲルパッドからの熱喪失の程度は、群間で差がなかった。

臨床意義:加温ゲルパッドに加えて使用したシリウスレスキューシートにより、四肢や頭部に対する外科処置を行う小型犬において術中体温をより高くすることができた。扱いが容易なことと対費用効果は臨床において有効である。(Sato訳)
■外傷性総胆管破裂、横隔膜裂傷、脾臓破裂による二次的な出血性胆汁性胸膜炎および腹膜炎の犬の1例
Hemorrhagic bile pleuritis and peritonitis secondary to traumatic common bile duct rupture, diaphragmatic tear, and rupture of the spleen in a dog
J Vet Emerg Crit Care. December 2008;18(6):631-638. 24 Refs
Gordon D. Peddle, VMD, Carol A. Carberry, DVM, DACVS, Justin M. Goggin, DVM, DACVR

目的:若い犬における外傷性総胆管破裂および横隔膜裂傷による二次的な胆汁性胸膜炎および腹膜炎の診断と成功した治療を紹介する

症例概要:車と衝突してから4日目に、嘔吐と黄疸の評価で1歳のジャーマンシェパードが来院した。胸部エックス線、胸部および腹部超音波検査、胸腔穿刺および腹膜穿刺、腹腔陽性造影検査により、出血性胸膜炎および腹膜炎、左背側横隔膜裂傷、脾臓の破裂および梗塞が認められた。腹部の外科的探査でそれらの所見に加え、総胆管の円周裂傷を認め、出血性胆汁性胸膜炎および腹膜炎の診断が導き出された。腹水の好気性、嫌気性細菌培養で発育はなかった。総胆管吻合、胆嚢空腸吻合、横隔膜の修復、脾臓摘出により外傷の外科的修正がなされた。術後に吸引性肺炎に一致する症状を示したが、治療は成功し、退院した。退院後8ヶ月の時点で臨床症状、検査異常は解消し、犬は生存していた。
提供された新規または独特の情報:胆汁性胸膜炎は犬および猫で珍しく、通常は穿孔性、非鈍性、腹部外傷に関与する。外傷性胆寒破裂の症例における多臓器傷害は一般的ではない。この犬で、総胆管の裂傷は、横隔膜および脾臓の破裂を伴っていた。(Sato訳)
■脈管内異物の経皮的血管内回収を行った5頭の犬、1頭のヤギ、1頭の馬
Percutaneous endovascular retrieval of an intravascular foreign body in five dogs, a goat, and a horse
J Am Vet Med Assoc. June 2008;232(12):1850-6.
William T N Culp, Chick Weisse, Allyson C Berent, Liberty M Getman, Thomas P Schaer, Jeffrey A Solomon

症例記述:2002年から2007年の間に、犬5頭、ヤギ1頭、馬1頭の脈管内異物に対し経皮的血管内回収を行った。

臨床所見:異物は4頭の犬、馬、ヤギでIVカテーテル、1頭の犬でバルーン弁形成カテーテルの一部だった。異物の位置は、主肺動脈(犬1頭)、肺動脈枝(犬4頭)、右心室(ヤギ)、頚静脈(馬)だった。

治療と結果:異物の経皮的血管内回収の手技は、全症例で容易に実施できた。回収後41日目に1頭の犬は他の疾患の悪化で安楽死され、1頭の犬は脳のマスによる二次的な神経異常症状を起こした。他の全ての動物は追跡調査期間中、臨床的に正常だった(追跡調査機関、3-57ヶ月)。異物回収処置による二次的な長期合併症を起こした動物はいなかった。

臨床関連:最小限の侵襲技術でカテーテルあるいは器具を使用するときに起こる脈管内異物はまれであるが、実質的な病的状態を起こすかもしれない。脈管内異物の経皮的血管内回収はここに挙げた7症例において、簡単で安全に実施された。経皮的血管内回収法の使用は、病的状態がかなり改善できるため、脈管内異物の動物の治療に考慮すべきであるが、処置に対する患者の適切な選別が必要である。(Sato訳)
■猫における敗血症性腹膜炎の外科的治療の遡及的研究(2000-2007)
A retrospective study of surgically treated cases of septic peritonitis in the cat (2000-2007).
J Small Anim Pract. 2009 Oct;50(10):518-24.
Parsons KJ, Owen LJ, Lee K, Tivers MS, Gregory SP.

目的
2000年から2007年の間で、敗血症性腹膜炎に対し外科的治療を行った猫の病因、臨床症状および転帰について総説する。
方法
遡及的研究。対象は細胞内細菌と変性好中球が同定されたもの、に加えて/あるいは、腹水あるいは試験開腹での培養が陽性となったものとした。病因、臨床症状、血液学/生化学検査、外科的治療および転帰を記録し、分析した。
結果
26頭の猫を対象とした。腹部痛は10頭(38%)の猫でみられ、嘔吐は11頭(42%)の猫でみられた。もっとも多い原因は外傷であった(31%)。主な汚染源は消化管であった。高乳酸血症、低タンパク血症、高血糖がそれぞれ26頭中、9頭、13頭、14頭でみられた。死亡例では、生存例に比べて明らかに血中の乳酸値が高値(p=0.02)を示した。19頭の猫に対して、第1に腹膜閉鎖、2番目に閉鎖的吸引ドレナージ、3番目に開放性腹膜ドレナージを用いて管理した。24頭(42%)の猫が退院するまでに回復した。
臨床的重要性
猫では嗜眠、抑うつ、食欲不振といった症状が腹部痛よりも一般的だった。診断時の乳酸値が猫では予後の指標に役立つかもしれない。生存率は従来の報告に比べて低く、飼い主には予後を慎重に伝えるべきである。(Dr.Ka2訳)
■献体犬を用いた4種類の胸腔チューブ設置術における胸腔への空気流入量の比較
Comparison of the amounts of air leakage into the thoracic cavity associated with four thoracostomy tube placement techniques in canine cadavers.
Am J Vet Res.2009 Sep;70(9):1161-7.
Yoon HY, Mann FA, Lee S, Branson KR.

目的
献体犬を用いて、4種類の胸腔チューブ設置術における胸腔への空気流入量を比較すること。
供試犬
28頭の献体犬
方法
胸腔チューブ設置術はそれぞれ(7頭/各手技)、カーマルト鉗子を用いてシリコンチューブを皮下組織にトンネルを作成して設置する方法、同様の手技で外套針を用いて塩化ポリビニルチューブを設置する方法(それぞれSC-CARM、SC-TRO群)と、それらと同様の器具、チューブを用いて広背筋にトンネルを作成する方法(それぞれLD-CARM、LD-TRO群)を用いた。胸腔内圧(IPPs)の差は胸腔チューブ設置の前後と、チューブ抜去の前後に測定し、チューブ周囲の空気流入は3チャンバー式の胸腔ドレナージシステムを用いて評価した。
結果
胸腔チューブ設置前後のIPPの差において、トンネル作成方法と深さに相互作用は認められなかった。一方、鉗子を用いた2群のIPPの差は、外套針を用いた2群よりも有意に大きかった。胸腔チューブ抜去前後のIPPの差において、トンネル作成方法と深さは相互作用があり、またSC-TROおよびLD-CARM群と比較して、SC-CARM群のIPPの差は有意に大きかったが、LD-TRO群の差は同程度であった。また間欠的な空気流入は外套針を用いた2群よりも鉗子を用いた2群の方が多かった。
結論と臨床関連性
献体犬において外套針を用いた胸腔チューブ設置術の方が鉗子を用いて設置するよりも空気流入量が少なかった。チューブ抜去時の空気流入量はLD-CARM法の方がSC-CARM法よりも少なかった。犬においては医原性の気胸を防ぐために、LD-TRO法を用いた胸腔チューブ設置術が薦められる。(Dr.Ka2訳)
■犬の皮膚へのグルクロン酸クロルヘキシジンの効果-治療調査と臨床試験
The efficacy of chlorhexidine gluconate in canine skin preparation - practice survey and clinical trials.
J Small Anim Pract. 2009 Sep;50(9):458-65.
Evans LK, Knowles TG, Werrett G, Holt PE.

目的:犬の術前の皮膚洗浄に対してグルコン酸クロルヘキシジンの異なる濃度での臨床での使用および効果について決定すること。

方法:不妊手術をする際にどの消毒剤や手技が使われているかを確立するためにアンケートを実施した。臨床研究において、5つのグルコン酸クロルヘキシジン濃度-0%(コントロールとした上水道),1,2,3,4%-を使い卵巣子宮摘出術と精巣摘除術を行う50頭の犬において試験した。

結果:様々な術前消毒が実施されていた。しかし、調査した獣医看護師のたった21%しか消毒剤の濃度と動物への接触時間を知らなかった。臨床研究で、異なる濃度で使うと有意な違いが出ることが明らかにされた(P<0.001)。全てのクロルヘキシジン濃度は上水道より明らかに効果的であった。濃度が1から4%に増加すると、効果が増加する傾向があったが、統計的には有意ではなかった。

臨床重要性:グルコン酸クロルヘキシジンの異なる濃度で明らかな効果の違いがないということは、現在の臨床では適切かもしれないということを意味するが、もし使用しているグルコン酸クロルヘキシジン濃度と接触時間がわからず、特に接触時間が短かったらそれらはここで検査されたものより効果がより低く、もしかすると効果がないかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬の大きな皮膚病変に対する自己の多血小板血漿の治癒的効果
Curative effect of autologous platelet-rich plasma on a large cutaneous lesion in a dog.
Vet Dermatol. 2009 Apr;20(2):123-6. Epub 2009 Jan 21.
Kim JH, Park C, Park HM.

10歳の去勢雄であるシーズー犬で背側尾部のマス(1 x 1.2 cm)が観察された。マスの生検を実施し、組織病理学的に毛包嚢胞と診断した。採材後1週間で生検部位が壊死病変(2.5 x 3 cm)へ発展し、通常の生理食塩水による洗浄と全身性抗生物質投与を2週間行ったが反応しなかった。自己の多血小板血漿を適用すると、おそらく組織の再生を促進させる成長ホルモンの分泌に役立つことにより、4週間で徐々に病変が改善した。この症例報告は、自己の多血小板血漿は大きな皮膚欠損あるいは創傷治癒遅延の管理に対して効果的かもしれないことを示している。(Dr.Kawano訳)
■猫の治癒しない皮下創傷および提唱される外科管理方法
Nonhealing subcutaneous wounds in the cat and proposed surgical management techniques.
Clin Tech Small Anim Pract 17[4]:162-7 2002 Nov 21 Refs
Calfee T, Manning TO

猫の治癒しない傷は、獣医師やオーナー共にフラストレーションの源である。それらの傷は標準の外科的閉鎖後、潜行性発現や再発傾向が知られている。適切な治療にもかかわらず治癒しない猫の傷は、病因に対する幅広い診断的評価を開始すべきである。最初に免疫抑制あるいは全身性疾患の原因を精査すべきである。それから局所創傷環境は異物、腫瘍、あるいは他のまれなそれらの傷の原因に対し、傷の探査、細胞、病理組織検査、組織培養を通して評価すべきである。まれな原因病原因子の多くは顕微鏡的同定および培養を成功させるため特別な組織取り扱いを必要とする。
ゆえに、検査除に特別な診断的技術を必要とすると警告できるように、猫の治癒しない傷の様々な原因に精通することは獣医師に必須である。
最近の外科および内科の進歩は、それらの傷の治療を成功に導きやすくする可能性を持つ。猫における治癒しない傷の潜在的病因に対する獣医師の意識の改善、内科および外科管理技術の改善により、多くの傷の治療がさらに成功する可能性がある。(Sato訳)
■全層性熱傷に対する局所マイトマイシンCの効果
The effect of topical mitomycin C on full-thickness burns
Plast Reconstr Surg. September 2007;120(4):879-86.
Heath Tennyson, Eric R Helling, Joseph Wiseman, Edward Dick, Robert C Lyons

背景:熱傷は、線維芽細胞過形成と拘縮のため、かなりの病的状態を起こす。マイトマイシンCは、線維芽細胞過形成を抑制するのが分かっている化学療法剤である。眼科疾患や上部気導消化管外科の瘢痕の抑制に使用される。皮膚熱傷に対するマイトマイシンCの効果の研究はなされていない。
この研究は、ブタモデルで創傷出現、れん縮、組織の評価による局所マイトマイシンCの存在下の熱傷治癒を研究した。

方法:3頭のブタの体幹に標準的全層性熱傷を作り出した。1頭は治療を行わず外部コントロールとした。2頭には5分間選択した熱傷部位に対し、局所マイトマイシンC0.4mg/mlの処置を行った。この処置を受傷後2、4週目に繰り返した。臨床評価スケールおよびビジュアルアナログスケールを用いて2ヶ月、6ヶ月目に評価した。瘢痕の長さおよび組織学的分析も評価した。

結果:臨床評価スケールとビジュアルアナログスケールで、無処置外部コントロールv.s.無処置内部コントロールおよび処置創傷において改善所見を示した(p<0.001)。群間で創傷れん縮に有意差はなかった。群間の組織学的特徴は、表皮過形成を除き同様で、その過形成は無処置外部コントロール(p<0.05)において処置後2ヶ月で減少した。

結論:全層性熱傷に対し3クールにわたる0.4mg/ccの局所マイトマイシンC療法は、早期治癒段階の臨床所見および瘢痕化を改善せず、むしろ悪化させるかもしれない。長期治癒過程中の組織にも差はない。瘢痕れん縮は変化しなかった。(Sato訳)
■犬における胃チューブ、空腸チューブ、胸腔ドレーンの固定に対し、異なるチューブの素材、Chinese finger trap、four friction縫合法の使用での比較
Comparison of different tube materials and use of Chinese finger trap or four friction suture technique for securing gastrostomy, jejunostomy, and thoracostomy tubes in dogs
Vet Surg. April 2008;37(3):212-21.
Eddie Kugju Song, F A Tony Mann, Colette C Wagner-Mann

目的:異なる素材の胃造瘻(GT)、空腸造瘻(JT)、胸部造瘻(TT)チューブの固定で、Chinese finger trap(CFT)と4 friction suture (FFS)法を比較した

研究構成:前向き実験研究

動物:犬の死体(n=20)

方法:無作為に、GT(n=20)、JT(20)、TT(20)を2つの異なる縫合法(各チューブタイプ10本)で、シリコンまたは他の素材(各タイプ10本)を用いて設置した。各チューブが外れるまで軸伸延を行った。外れるまでの力、移動、その破損様式を記録し、GT、JT、TTに対する方法と素材を比較した。

結果:CFTは一般に縫合の破損により外れ、FFSは主にチューブのすべりにより外れた(P=.003)。GTではチューブのすべりにより外れることが多く(n=15;P<.001)、JTではチューブの破損(n=10;P<0.01)、TTでは縫合の破損(n=14;P=.022)が多く見られた。シリコンは、GTでラテックスよりも外れるまでの力が強く、JTでレッドラバーよりも外れるまでの力が弱く、TTでポリ塩化ビニールよりも外れるまでの移動が少なかった。

結論:異なる外れ方が、CFT(縫合破損)およびFFS(チューブのすべり)、異なるチューブタイプ(GTでチューブのすべり、JTでチューブの破損、TTで縫合の破損)間で発生した。研究結果をもとに、シリコンのGTおよびTTの固定にはFFSよりもCFTが勧められる。シリコンのGT、レッドラバーのJT、ポリ塩化ビニールのTTは、それぞれラテックスのGT、シリコンのJT、シリコンのTTよりも固定がより強かった。

臨床関連:外れるまでの力、移動をもとに、FFSよりもCFTを優先すべきだが、チューブタイプ、組織反応が固定の強さに影響する可能性がある。(Sato訳)
■特発性喉頭麻痺の治療で両側甲状披裂軟骨側方化と粘膜形成を伴う声帯ひだ切除:67頭の犬(1998-2005)
Bilateral thyroarytenoid cartilage lateralization and vocal fold excision with mucosoplasty for treatment of idiopathic laryngeal paralysis: 67 dogs (1998-2005)
Vet Surg. August 2007;36(6):519-25.
Dina M Schofield, Jana Norris, Kenneth K Sadanaga

目的:犬の喉頭麻痺の腹側正中喉頭切開による両側甲状披裂軟骨側方化、声帯ひだ切除、粘膜形成術(BTAL)の組み合わせによる治療の評価

構成:遡及研究

動物:喉頭麻痺の犬(n=67)

方法:1998年1月から2005年3月の間にBTALを行った特発性喉頭麻痺の犬を再調査した。徴候、病歴、身体検査、喉頭鏡検査所見、臨床病理学的検査、再チェック検査所見結果のデータを検索した。

結果:一人の外科医によりBTALを行った。短期(<6ヶ月)追跡調査結果は67頭の犬で、長期(>12ヶ月)は40頭の犬で入手できた。主要術後合併症は、外科的失敗(13;短期7、長期6)と吸引性肺炎(1)だった。臨床症状再発の平均は、19週間だった(範囲2-30週)。マイナーな合併症は22頭の犬で起こり、えずき、運動中の喘鳴様呼吸、パンティング、騒々しいまたは荒い呼吸、入院の必要がない吸引性肺炎(3頭)だった。全てのオーナーは生活の質の改善を報告し、外科的結果を残念に思う人はいなかった。

結論:BTALは見たところ喉頭麻痺の治療で有効な方法である。

臨床関連:BTALは吸引性肺炎の低発生率を持つが、声門の狭小化に関与する臨床症状再発のかなりのリスクがある。結果的に現在の片側披裂軟骨片側化は、喉頭麻痺の治療で容認されたアプローチである。(Sato訳)
■犬の腹腔内出血の臨床評価および管理
Clinical evaluation and management of hemoperitoneum in dogs
J Vet Emerg Crit Care. January 2008;18(1):40-53. 81 Refs
Lee V. Herold, DVM, DACVECC, Jennifer J. Devey, DVM, DACVECC, Rebecca Kirby, DVM, DACVIM, DACVECC, Elke Rudloff, DVM, DACVECC

目的:腹腔内出血の犬の臨床症状、評価、蘇生、内科および外科管理を概説する

病因:腹腔内出血は遊離した腹腔内の出血と定義される。腹腔内出血は外傷、非外傷の原因で発生する。一般的な原因は、腹腔内マスの非外傷性破裂、凝固傷害、腹部の鈍性および穿孔性外傷などである。

診断:腹腔内出血の確定診断は、穿刺あるいは診断的腹膜灌流による腹腔内の遊離出血の証明が必要である。画像および凝固検査などの他の診断検査は、腹腔内出血の基礎原因あるいは併発臓器機能不全の判定に役立つかもしれない。

治療:腹腔内出血の患者の治療のゴールは、有効な循環血液量の維持および修正、酸素運搬能の維持および修正、止血などである。それらのゴールは、輸液蘇生、血液製剤あるいはヘモグロビンベース酸素キャリアの投与、腹部逆圧の適応、外科介入により達成できる。外科手術は通常腹腔内腫瘍の出血に必要である。緊急の外科手術は穿孔性外傷、胃拡張-捻転、出血性嚢胞、肝陽捻転、脾臓捻転、その他臓器虚血を起こす状況に推奨される。

予後:腹腔内出血の患者の予後は、基礎にある原因と併発傷害に依存すると思われる。(Sato訳)
■ハイブリッド外固定を用いたダックスフントの内反足の矯正
Pes varus correction in Dachshunds using a hybrid external fixator
Vet Surg. January 2008;37(1):71-81.
Robert M Radasch, Daniel F Lewis, Darryl E McDonald, Earl F Calfee, Robert D Barstad

目的:ハイブリッド外骨格固定(HESF)で安定化を施した脛骨遠位面の内側開放楔形骨切術により、ダックスフントの内反足変形の外科的矯正法を述べ、臨床およびエックス線検査結果を報告する

研究構成:複数施設遡及臨床研究

動物:内反足変形の未成熟ダックスフント(n=13)

方法:手術前後に患肢機能および跛行スコアを査定し、矯正は手術時に見た目で判定した。脛足根関節方向性(TTJO)および内側および外側脛骨皮質長、変形および正常(可能なとき)の肢のエックス線写真上での測定を矯正前と固定器除去後で比較した。

結果:内反足変形(n=14)を矯正し、93%は良-優良の臨床結果が得られた。正常な術前歩様の犬はいなかった。術前の異常および正常な脛骨の平均TTJOは、29度内反(中央値、28度)、12度外反(中央値、12度)だった。角度矯正の範囲は、20度から51度(平均、36±8度;中央値、36度)だった。固定器除去後の平均TTJOは7度外反(中央値、7度)だった。2頭は軽微な一時的術後合併症が認められ、3頭は主要な合併症があり、そのうち1頭のみ解消した。

結論:ダックスフントの内反足変形は、ハイブリッド外骨格固定による安定化を施した脛骨遠位面の内側開放楔形骨切術により矯正できる。矯正精度の改善に方法の修正が必要である。

臨床関連:手術中の患肢アライメントの視診は、良-優良な臨床結果をもたらしたが、脛骨の91%は不十分-または過矯正(平均6度;中央値、5度)だった。患肢アライメントは、術中の見た目の評価単独だけでなく、術後即座のTTJO測定値の評価をもとにすべきである。(Sato訳)
■肩甲下筋腱の付着鱗状重層による内側肩不安定性の安定化
Stabilisation of medial shoulder instability by imbrication of the subscapularis muscle tendon of insertion
J Small Anim Pract. June 2007;0(0):.
R A Pettitt, D N Clements, M J Guilliard

目的:内側肩不安定性の治療として肩甲下筋腱付着鱗状重層の効果を評価する

方法:内側肩不安定性を5頭の犬で診断した。4頭は医療、または関節鏡治療の初期治療で完全に跛行を改善することができなかった。各症例を肩甲下筋腱付着鱗状重層で治療した。内側肩不安定性の解剖学的モデルを、肩の外転角に対する肩甲下筋腱付着鱗状重層の影響を評価するのに使用した。

結果:臨床研究で、5例に肩甲下筋腱付着鱗状重層を実施した。3例は完全に、2例は部分的に跛行が解消した。死体の研究で、肩甲下筋腱付着または肩甲下筋腱付着および内側上腕関節窩靭帯の横断は外転角を有意に増加させた。肩甲下筋腱付着の鱗状重層は外転角を有意に減少させた。正常な肩と肩甲下筋腱付着鱗状重層で治療した内側肩不安定性の肩の外転角に有意差は見られなかった。

臨床意義:肩甲下筋腱の付着鱗状重層は、医療および、または関節鏡処置に反応がない内側肩不安定性の管理にある程度効果的な方法である。肩甲下筋腱付着後、内側肩不安定性モデルで肩の外転角は正常に戻った。肩甲下筋腱付着鱗状重層は、犬の内側肩不安定性の治療で比較的簡単な方法である。(Sato訳)
■裏付けある創傷管理:肉芽形成と上皮形成を促進する治療剤の系統的概説
Evidence-based wound management: a systematic review of therapeutic agents to enhance granulation and epithelialization
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2007;37(3):559-77. 49 Refs
Maria A Fahie1, Donna Shettko

犬における開放創の管理の成功には、創傷治癒の生理学の知識および適切な治療処置を選択する知識の応用が必要である。著者の目的は、犬における開放創の肉芽形成または上皮化を高める利用可能な治療剤があるかどうかを調査することだった。著者の再調査で確認した文献をもとに、局所創傷剤に対する推奨または研究した処置の推奨は十分なエビデンスがない。(Sato訳)
■ヘルニア修復に対する部分的吸収性メッシュは非吸収性メッシュ以上の利点がある
Partially absorbable meshes for hernia repair offer advantages over nonabsorbable meshes
Am J Surg. July 2007;194(1):68-74.
Juan M Bellon, Marta Rodriguez, Natalio Garcia-Honduvilla, Gemma Pascual, Julia Bujan

背景:この研究の目的は、腹壁修復で異質の材料の量を減らした吸収性の新しい補綴剤が従来のポリプロピレンメッシュを超える利点があるかどうかを確証することだった。

方法:ニュージーランドホワイトラビットに7x5cmの前側腹壁欠損を作成し非吸収性ポリプロピレンプロテーゼ(Surgipro; Tyco, Barcelona, Spain)または2つの市販で入手可能な部分的吸収プロテーゼ(Vypro II and Ultrapro; Johnson & Johnson, St. Stevens-Woluwe, Belgium)のうち1つで修復した。術後14日と90日目に組織/プロテーゼ標本は、組織検査、生体力学強度試験、収縮評価に供した。

結果:90日目、Vypro IIの吸収性フィラメントは完全に再吸収されていたが、Ultraproは数部分で生分解像を示しただけだった。3つの網状メッシュのホスト組織浸潤とコラーゲンI沈着は最適だった。マクロファージ数、メッシュ収縮、生体力学抵抗値は同じだった。

結論:部分的吸収プロテーゼは標準的ポリプロピレンメッシュと同様に行い、機械的抵抗を損なわずレシピエントに異質材の残存が少ない利点を持つ。(Sato訳)
■犬の再建に対する腹直筋フリー筋フラップ
Rectus abdominis free muscle flap for reconstruction in nine dogs
Vet Surg. April 2007;36(3):259-65.
Jonathan M Miller, Otto I Lanz, Daniel A Degner

目的:犬の創傷閉鎖に対する腹直筋微小血管フリーフラップの臨床使用と結果を評価する

研究構成:遡及症例シリーズ

動物:複合末端または口腔創傷を持つ犬(n=9)

方法:末端または口腔創の閉鎖に腹直筋フリー組織を移行した犬の医療記録(2002-2006)を再調査した。

結果:9頭を確認した。5頭は遠位端創傷、3頭は口腔口蓋欠損、1頭は大きなヒグローマを切除していた。尾側上胃血管茎を伴う腹直筋フリー組織移行はそれら創傷の管理にうまく使用できた。ドナー部位に大きな合併症はなく、良い外観と機能結果を全頭でもたらせた。

結論:腹直筋は、皮膚や口腔欠損の再建で繰り返し成功を収めて使用できる多用途の筋肉である。
臨床関連:腹直筋のフリー組織移行は、種々の難しい軟部組織層の閉鎖に臨床的に有効な方法である。(Sato訳)
■遠位四肢創傷の持続陰圧吸引療法の使用による治療
The use of vacuum-assisted closure therapy for the treatment of distal extremity wounds in 15 dogs
Vet Surg. October 2007;36(7):684-90.
Ron Ben-Amotz, Otto I Lanz, Jonathan M Miller, Dean E Filipowicz, Michael D King

目的:遠位四肢に位置する外傷性創傷のある犬で、持続陰圧吸引(VAC)療法後の臨床結果を評価すること、および我々のVACの初期の経験を報告する

研究構成:遡及研究

動物:遠位四肢外傷性創傷を持つ犬(n=15)

方法:遠位四肢の外傷性傷害の管理をVACで行った犬の医療記録(1999-2003)を評価した。評価したデータは徴候、傷の位置、外科的介入までの時間、創傷再建方法、整形外科方法、結果、VACに関する合併症、入院期間だった。

結果:再建術までの平均日数は4.6日(範囲、2-7日)だった。再建手術は全症例で成功した。平均入院期間は9.7日(範囲、6-16日)だった。合併症は創傷縁の皮膚炎、創傷乾燥による陰圧の喪失だった。

結論:VAC療法は遠位四肢外傷性創傷の適切な管理に使用できる。VACは創傷床にかぶせる皮膚グラフトを確実にする効果的な方法である。

関連:VAC療法は外科修復前の犬の遠位四肢創傷の補助治療および創傷床に皮膚グラフトを確実にする方法として使用できる。(Sato訳)
■リン酸緩衝生食液、乳、Streptococcus agalactiaeに汚染された乳でインキュベートした合成吸収縫合糸の破壊強さと弾性
Breaking strength and elasticity of synthetic absorbable suture materials incubated in phosphate-buffered saline solution, milk, and milk contaminated with Streptococcus agalactiae
Am J Vet Res. April 2007;68(4):441-5.
Sylvain Nichols, David E Anderson

目的:3つの合成吸収糸の特性に対するPBSS、乳、細菌汚染の乳(BCM;Streptococcus agalactiaeによる汚染)のインビトロな影響を判定する

サンプル:3種類の合成吸収縫合素材(poliglecaprone 25, polyglycolic acid, and polydioxanone)

方法:縫合糸の破壊強さと弾性をインキュベート前、3つの液(PBSS、乳、BCM)でインキュベート後7、14、21日目に検査した。縫合糸の輪を破壊ポイントに達するまで60mm/分の割合で伸張した。張力特性を液およびインキュベート時間で統計学的に分析した。

結果:乳およびBCMでのインキュベートは、PBSSに比べ有意にpoliglecaprone 25の破壊強さと弾性を低下させた。BCMでのインキュベートは、PBSSおよび乳に比べ有意にpolyglycolic acid縫合糸の張力特性を低下させた。インキュベート21日後、polydioxanoneの張力特性は液間で有意差がなかったが、0日目の値からは有意に低下した。

結論と臨床関連:この研究をもとに、poliglecaprone 25は乳房外科で不適当な縫合素材である。Polyglycolic acid縫合糸は乳房炎のウシの乳房で避けるべきである。検査した縫合素材のうち、polydioxanoneが乳および細菌汚染された乳でもインキュベート後素材検査をもとに判定すると、乳房外科に一番良い縫合素材だった。(Sato訳)
■獣医療における外科的ステープル装置:概説
Surgical stapling devices in veterinary medicine: a review
Vet Surg. June 2007;36(4):341-9. 80 Refs
Karen M Tobias

目的:動物の外科的ステープルの適応、利点、合併症を検討する。

研究構成:文献再検討

結果:外科的ステープルの利点と合併症は行う手技に依存する。外科的ステープラーの使用は創傷を改善しないが、手術時間を短縮させるかもしれない。

臨床関連:麻酔時間の延長による術中汚染や合併症発生に有意なリスクのある患者で、ステープル装置の使用を考慮すべきである。(Sato訳)
■口蓋裂および後天性口蓋欠損の修復に伸延骨形成を使用したニューアプローチ
A new approach to repairing cleft palate and acquired palatal defects with distraction osteogenesis
Int J Oral Maxillofac Surg. August 2006;35(8):718-26.
D-Z Wang, G Chen, Y-M Liao, S-G Liu, Z-W Gao, J Hu, J-H Li, C-H Liao

口蓋裂(CP)はよく見られるヒトの先天性奇形のひとつで、外傷または腫瘍切除後の後天性口蓋欠損も一般的である。この研究で、CPおよび他の口蓋骨欠損に対する伸延骨形成術(DO)を評価した。20頭の猫を無作為に1群(15)、2群(3)、3群(2)に振り分けた。1群と2群は、CP欠損モデルを作成するため、口蓋骨棚を矢状軸で長方形に骨切除した。同時に、純チタン性口内ディストラクターのブラケットを臼歯に、口蓋骨棚の欠損をまたぎ両側にチタン性ミニスクリューで固定した。
4週間後、二次トランスポートディスク(TD)骨切術を実施し、漸次DO処置を6日後1日2回0.4mmで開始した。DOはTDが5-6日でギャップを超えて対側の縁に到達するまで実施した。1群はDO完了後、3頭ずつ2、4、6、8、12週目に安楽死した。2群は6週後の安楽死まで骨および軟部組織欠損を治療しなかった。3群の猫(コントロール)は6週後安楽死した。TDで対側の口蓋骨断端への結合が成功し、覆った粘膜骨膜の釣り合った伸延をもたらせた。膜内骨形成が見て取れた。対応するコラーゲン束は漸次新しい骨小柱に沈着し、増殖性骨芽細胞は骨基質を産生した。骨欠損は最終的に新しい骨形成で再建された。コントロール群に自発修復は観察されなかった。それら結果は、CP欠損は本来の位置に骨形成で再建し、軟部組織は機能補正をもたらすべく同時に伸張したことを示唆する。口内ディストラクターは骨に有効な伸延と安定をもたらす。(Sato訳)
■犬猫の術後術部感染の前向き研究
A prospective study of postoperative surgical site infections in dogs and cats.
Vet Surg 33[5]:542-50 2004 Sep-Oct
Eugster S, Schawalder P, Gaschen F, Boerlin P

目的:術後術部感染(SSI)率を調査し、予測因子を調べること

研究構成:前向き臨床研究

動物:1999年4月から2000年6月の58週間に手術(1010処置)を行った犬猫

方法:臨床医によりデータシートをまとめてもらった。抜糸時に臨床所見で患畜を管理した。SSIの2つの定義("感染"と"感染/炎症")をこの研究のために作成し、統計分析を使用した。SSIに対する有意な予測因子を確認するため、ロジスティック解析を組み立てた。

結果:傷の"感染/炎症"は5.8%、"感染"は3%の患畜に認められた。"感染"の結果は3つの主要なリスクファクター(手術時間、手術室の増員、汚染した術部)と1つの保護因子(抗菌剤予防)に関与した。"感染/炎症"の結果は、6つの有意な因子(麻酔時間、術後ICU滞在時間、創傷ドレナージ、患畜の体重増加、汚染術部、抗菌剤予防)に関与した。

結論:コンパニオンアニマルのSSI頻度は、ヒトの手術患者に見られる頻度に匹敵する。小動物手術のSSIに対する重要な予測因子を認めた。

臨床関連:我々の病院でのSSI同時調査、他の研究と比較のための基準情報を定義した。認められた因子は、手術患者の感染を予測し、リスクのある患者に対する適切な予防処置をとる手助けとなると思われる。(Sato訳)
■犬猫の皮膚創傷治癒における皮下組織の役割の比較
Comparison of the role of the subcutaneous tissues in cutaneous wound healing in the dog and cat
Vet Surg. 2006 Jan-Feb;35(1):3-14.
Mark W Bohling, Ralph A Henderson, Steven F Swaim, Steven A Kincaid, James C Wright

目的:犬猫の一次および二次皮膚創傷治癒に対する皮下組織の役割を述べ比較する

研究構成:実験研究

動物:6頭の家猫短毛種と6頭のビーグル犬

方法:背部正中の両側に対になるように創傷を作成した。一方は皮下組織を除去し、反対側はそのままにしておいた。胸郭背面の四角の開放創で、肉芽組織形成、創傷収縮、上皮形成、総合治癒(収縮+上皮形成)に関し21日間観察した。縫合した直線創の破壊強さを、傷を作成した7日後に測定した。皮膚の灌流測定にレーザードップラー灌流画像(LDPI)検査を使用した。

結果:一次創傷治癒:皮下組織除去は7日目の犬猫の縫合した創傷強度に一貫した影響を及ぼさなかった。
二次創傷治癒:皮下組織の除去は、創傷灌流、肉芽、収縮、上皮形成、総合治癒が低下した。肉芽組織形成と創傷収縮は、犬より猫でその程度が有意に大きく遅延した(P<.05)。2頭(33%)の犬はわずかな創傷感染を起こした。

結論:皮下組織は二次皮膚創傷治癒に重要な役割を持つ。犬の猫の傷は、皮下組織を除去したとき二次創傷治癒が遅延した。猫ではそうではないが犬の創傷の遅延はたいてい21日間で回復した。
臨床関連:特に猫の皮下組織の広範囲デブリードメントは、創傷治癒を遅らせると思われる。犬で創傷感染のリスクが高いのは、皮下組織広範囲除去に付随するのかもしれない。(Sato訳)
■イヌネコの鈍性外傷誘発腹腔内出血
Managing Blunt Trauma-Induced Hemoperitoneum in Dogs and Cats
Compend Contin Educ Pract Vet 26[4]:276- Apr'04 Review Article 34 Refs
Arathi Vinayak, DVM and D.J. Krahwinkel, DVM, MS, DACVS, DACVA, DACVECC

鈍性腹部外傷後、腹腔内出血は一般的な続発症である。治療は内科、外科オプションが含まれる。身体検査のみでは、外科の代わりに内科管理で進めるという決断を下せない。内科管理のオプションは、呼吸、心血管系の初期安定化、診断画像検査、診断的穿刺または腹膜洗浄、止血、相同血液または血液代替剤の輸血または自己輸血である。手術は積極的な内科介入にもかかわらず安定しない場合にとっておくべきである。(Sato訳)
■イヌ3症例の難治性鼻出血に行った経皮的動脈塞栓術を使用した治療
Use of Percutaneous Arterial Embolization for Treatment of Intractable Epistaxis in three dogs
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1307-1311 Apr 15'04 Case Report 14 Refs
Chick Weisse, VMD, DACVS; Matthew E. Nicholson, DVM; Chris Rollings, DVM; Kimberly Hammer, VMD; Robert Hurst, MD; Jeffery A. Solomon, MD

難治性鼻出血は命を脅かす病態である。外科的選択は、頚動脈の結紮に現在限られている。頚動脈の閉塞後、広範な側枝化が起こるので、その有益性は一時的なものになりやすく、繰り返し処置できない。
ヒトで、血管内処置は、外科に関与する多くの合併症を避け、内上顎動脈の結紮に関与するものより再発率が低い。難治性鼻出血の3頭で、上顎動脈の終末部塞栓化をポリビニルアルコール分子とコントラストスラリーで行った。1頭は術後8ヶ月で、マイナーな自己制御可能な出血が再発した。2頭は最低10ヶ月の追跡期間内に重要な合併症や再発を起こさなかった。
結果は、手術を必要としないイヌで、鼻腔切開前の有効な補助処置として鼻出血をコントロールする上顎動脈の終末枝の塞栓化の可能性を示す。(Sato訳)
■外傷性横隔膜ヘルニア:病態生理学と管理
Traumatic Diaphragmatic Herniation: Pathophysiology and Management
Compend Contin Educ Pract Vet 27[3]:178-191 Mar'05 Review Article 40 Refs
Andrew J. Worth, BVSc, MACVSc, PGDVCS & Roslyn G. Machon, BVSc(Hons), MVSc, MS, MACVSc, DACVA

コンパニオンアニマルで、後天性横隔膜ヘルニアは、圧迫性外傷を伴う車轢により良く起こる。発表された報告では、外傷性横隔膜ヘルニアは予後注意が必要とされている。呼吸困難、同時に起こる傷害、循環血流量減少性ショックを起こす内出血は外傷性横隔膜ヘルニアの一般的な、そして起こりえる生命を危うくする合併症である。横隔膜の完全性を修復することでのみ正常な換気機能が達成される。しかし、外科手術のタイミングは重要である。臨床医は、外傷性横隔膜ヘルニアに付随および持ち合わせているかもしれない合併症(例えば血胸、胃鼓腸、内蔵の絞扼)を認識すべきである。(Sato訳)
■犬と猫における術後術部感染における前向き研究
A prospective study of postoperative surgical site infections in dogs and cats.
Vet Surg 33[5]:542-50 2004 Sep-Oct
Eugster S, Schawalder P, Gaschen F, Boerlin P

目的:術後術部感染(SSI)率を評価し、関連する予測因子を明らかにすることです。
研究デザイン:前向き臨床研究

動物:1999年4月から2000年6月までの58週間に手術した犬と猫(1010頭)

方法:データシートを、臨床医によって書き込んでもらいました。抜糸の時、SSIの臨床証拠に関し、患者をチェックしました。この研究の為にSSIの2つの一定の定義(感染、そして感染/炎症)を設け、統計学的解析を行いました。SSIの有意な予測因子を明らかにする為、ロジスティック回帰モデルを組み込みました。

結果:感染/炎症となった創は、5.8%で、感染創は、患者の3%に発生しました。"感染"は、3つの主なリスク因子(手術時間、手術室にいた人数、術部の汚染)、そして1つの予防因子(抗生剤予防)と関連しておりました。"感染/炎症"は、6つの有意な因子(麻酔時間、術後集中治療室の滞在時間、創部ドレナージ、患者の過体重、術部汚染、そして抗生剤予防)と関連がありました。

結論:コンパニオンアニマルにおけるSSI頻度は、ヒトの外科患者で観察される頻度に匹敵します。小動物におけるSSIのいくつかの有意な予測因子は、明らかにされました。

臨床関連:我々の病院におけるSSI監査と他の研究との比較により、基準情報が定義されました。明らかにされた因子は、外科患者における感染を予測し、リスクのある患者に対し、十分な予防処置を施すのに役立つと思われます。(Dr.K訳)
■イヌの胸骨正中切開の閉鎖:縫合糸vsワイヤー
Closure of Median Sternotomy in Dogs: Suture Versus Wire
J Am Anim Hosp Assoc 38[6]:569-576 Nov-Dec'02 Original Article 27 Refs
Davyd H. Pelsue, DVM, MS, DACVS; Eric Monnet, DVM, PhD, DACVS, DECVS; Jamie S. Gaynor, DVM, DACVA; Barbara E. Powers, DVM, PhD, DACVP; Krista Halling, DVM; Denise Parker, CVT; Anne Golden, CVT

胸骨正中切開は、イヌで全ての胸腔構造に到達できる有用な外科手技である。胸骨切開の閉鎖は、組織上の胸骨の半分を再度合わせて安定化させることである。伝統的にイヌの胸骨閉鎖は、ワイヤーを用いて行われている。しかし、縫合糸の使用も文献で報告されている。ヒトで、縫合糸素材の使用はより簡単に閉鎖する方法とされ、外科ワイヤーと比較しても同じような術後の合併症発生率である。この研究の目的は、胸骨正中切開の閉鎖に縫合糸、またはワイヤーを使用したイヌで、合併症発生率や術後の痛みの程度に差があるかどうかを判定することだった。
20頭の健康な大型犬(2-4歳;平均体重29±3kg)に胸骨正中切開を行った。胸骨正中切開は、矢状鋸を用い、第2胸骨から剣状突起まで行った。全頭胸骨柄は手をつけずに残した。重複8の字パターンを用い、10頭の胸骨切開は20ゲージの整形外科用ワイヤーで、10頭はno.2ポリバスターで、胸骨につき合計6つのワイヤー、または縫合糸を設置し、必要ならば追加の単純結紮を剣状突起の周りに施した。胸骨正中切開の閉鎖は全頭無事に終了した。
縫合糸による閉鎖は、ワイヤーよりも速く出来た(6.7±1.8分vs9.1±1.9分)。全頭同様の臨床経過を取り、胸骨切開チューブと痛み管理のために術後2日間救急室に置かれた。術後の痛みや傷の合併症発生率の程度で有意差は見られなかった。全ての傷の合併症は軽度で、保存的管理で治療された。ワイヤーで閉鎖された胸骨切開は、より安定する傾向が見られ、28日目のエックス線検査で、ズレは有意に少なかった。またインプラントの破損は縫合糸閉鎖群のほうが有意に多かった。病理組織学的に検査したワイヤーで閉鎖した全ての胸骨は、軟骨、または骨軟骨性のブリッジを示し、縫合糸のほうは線維性の癒合しか示さなかった。
この研究の所見は、ワイヤー閉鎖は縫合糸よりもより良い胸骨正中切開の治癒を見せるという結論を支持し、さらに大型犬でワイヤーは縫合糸よりも優れていると締めくくる。(Sato訳)
■大転子から大腿直筋起始部にかける関節包外縫合による外傷性股関節脱臼の安定化
Stabilization of Traumatic Coxofemoral Luxation with an Extra-Capsular Suture from the Greater Trochanter to the Origin of the Rectus Femoris
Vet Comp Ortho Trauma 17[1]:12-16 Apr'04 Original Study 38 Refs
J. Shani; D.E. Johnston; R. Shahar *

股関節を安定させる広く多様な手術方法が文献で発表されている。この研究で、20頭の小動物(イヌ19頭、ネコ1頭)に、観血的整復と大腿骨大転子と大腿直筋起始部を結ぶ関節包外縫合を行い、治療に成功した。他の方法に関係する合併症の可能性の多くを避け、簡単で素早く安全な方法である。(Sato訳)
■獣医の手術手袋の術後完全性
Postoperative Integrity of Veterinary Surgical Gloves
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:311-320 May-Jun'03 Original Report 18 Refs
Ben J. Character, DVM; Ron M. McLaughlin, DVM, DVSc; Cheryl S. Hedlund, DVM, MS; Carolyn R. Boyle, PhD; Steven H. Elder, PhD

近年、サージカルグローブは、感染性病原体の伝播から医師、獣医師、患者の保護、治療手技で化学療法剤やメタクリレートのような腐食性重合体などの薬剤による外科医への汚染を防ぐため重要となっている。グローブの保護的質に対する新たな関心は、人医野で使用されるグローブの品質と有効性の更なる調査を起こさせている。しかし獣医外科医の同様のデータはいまだ入手できていない。この研究の目的は、獣医外科医の術後のグローブの欠損の発生率を述べることと、多様な要因(外科処置の種類と手術時間、使用したグローブの種類、利き腕とそうでない腕の発生率、外科医の経験、欠損の存在を予測する外科医の能力など)と欠損を関連つけることだった。
合計382双のグローブ(764グローブ)を2つの獣医教育病院から回収し、内訳は、臨床前の学生(n=59双)、臨床学生(n=116双)、レジデント/インターン(n=144双)、学部外科医(n=63双)だった。グローブはイヌネコの軟部組織、整形外科、神経学的処置のものだった。全て学生の手術は、自然の軟部組織だった。3つの異なるブランドのグローブがこの研究で使用され(1つは整形外科医の使用のために特別に売られているもの)、全ての外科医に両グローブの欠損に気付いたかどうかをたずねた(視覚、または触覚を通し)。グローブは電気抵抗試験を使用して欠損を評価した。グローブ欠損の全体の発生率は23.3%で、軟部組織処置の18.8%、整形外科処置の32.3%、神経学的処置の23.3%だった。総体的に、軟部組織手術に対し、非軟部組織外科手術のグローブ欠損率は有意に高かった。手術時間が増加するとグローブ欠損率も増加し、全てのグローブ欠損の84%が60分以上続く手技中に発生した。有意に多くの欠損が、外科医の利き腕でないほうに装着しているグローブで起こった。重要なことに手術を行っている個人は、グローブの欠損があるかないかを正確に予測することはできず(欠損したグローブの92.6%は外科医が気付いていない)、経験レベルの差がある外科医の中で欠損率の差は見られなかった。
著者は、外科医はグローブ欠損の可能性を常に警戒しておくべきで、術中のグローブ欠損の発生の可能性を最小限にするため、60分毎のグローブの交換、または二重にグローブを装着するなどの方法を考慮するべきである。(Sato訳)
■汚染消毒創での術後創傷感染の疫学調査:239頭の犬猫の回顧的研究
Epidemiologic evaluation of postoperative wound infection in clean-contaminated wounds: A retrospective study of 239 dogs and cats.
Vet Surg 31[6]:577-81 2002 Nov-Dec
Nicholson M, Beal M, Shofer F, Brown DC

目的:汚染消毒創で術後創傷感染発現のリスクファクターを評価した。

研究構成:回顧的臨床研究

サンプル集団:汚染消毒を行い手術した犬猫239頭

方法:汚染消毒術式で手術を行い、予見的に術後創傷感染の発現をモニターした動物の記録を再検討した。予見的データは、徴候、栄養状態、体重、手術時間、術式、傷の分類、手術前の術野の毛を刈った時間、術中の低血圧、活動性の離れた場所の感染の存在、内分泌障害、免疫抑制剤の投与、抗生物質の投与、使用した抗生物質の種類であった。追加データには麻酔時間、体温変化、血液喪失量、使用した縫合糸の素材が含まれた。

結果:未去勢オス(P=.008)と併発内分泌障害の動物(P=.008)は、術後創傷感染の発現はリスクが高かった。術後創傷感染を起こした動物で、総手術時間(P=.02)と総麻酔時間(P=.04)はより長かった。他の要因には有意なものはなかった。

結論:未去勢オスと内分泌疾患の併発した動物は、汚染消毒術式で手術した後の術後の創傷感染のリスクが高かった。

結論と臨床関連:麻酔下の時間と手術時間は、汚染消毒を行った手術で創傷感染のリスクを減らすために最小限にするべきである。(Sato訳)
■猫の抜爪術へのCO2レーザーの使用
Use of Carbon Dioxide Laser for Onychectomy in Cats
J Am Vet Med Assoc 221[5]:651-653 Sep 1'02 Prospective Trial 12 Refs
Michael B. Mison, DVM; George H. Bohart, DVM; Richard Walshaw, BVMS, DACVS; Cathy A. Winters; Joe G. Hauptman, DVM, MS, DACVS

目的:猫の抜爪術に対してCO2レーザーとメスを使用した場合に関連する、術後の不快感と合併症を比較すること

計画:前向き、無作為、(ガス)マスクによる臨床試験

動物:20頭のクライアントが所有する猫

手順:前肢(左右)がランダムにレーザーとメス処置グループに割り当てられた。不快感(跛行と疼痛の徴候)と合併症(出血、腫脹、分泌物)の症状を0日目、1日目、7日目に評価した。手術は経験豊富な一人の外科医によって行われた。 評価は処置グループを知らされていない2人の個人によって行われた。 不快感と合併症の徴候に、それぞれ0から8および0から9の範囲で得点をつけた。

結果: 術後1日目、不快感と合併症の徴候に関するスコアは、術式に関係なく、とくに高いスコアではなかったけれど、CO2レーザーで処置したグループの方が明らかに低かった。術後7日目では、グループ間で、不快感、合併症徴候の大きな相違は認められなかった。

結論と臨床的関連: CO2 レーザーは猫の抜爪術において、すばらしい止血効果と術後の不快感と合併症を最小限にとどめることができる優秀な機材であると考えられる。 CO2 レーザーと、メスによって処置されたグループの間で、不快感と合併症における相違には臨床的関連性はなく、唯一、術後1日目に観察されただけであった。
■犬における、鈍性胸部外傷の2次的心筋傷害:診断と治療
Myocardial Injury Secondary to Blunt Thoracic Trauma in Dogs: Diagnosis and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 24[12]:944-951 Dec'02 Review Article 41 Refs
Adam J. Reiss, DVM, DACVECC *, Brendan C. McKiernan, DVM, DACVIM, Wayne E. Wingfield, MS, DVM, DACVECC, DACVS

人と犬における鈍性胸部外傷は、心筋傷害を生じるかもしれません。心筋傷害は、通常、外傷後48時間以内の不整脈として明らかになります。これらの傷害は、潜在性、あるいは、臨床徴候が後発で、しばしば、見落とされるかもしれません。この論文は、心筋傷害検出に用いる、伝統的診断法と、新しい診断法について論じ、犬における、心筋傷害の治療に関するガイドラインを提供します。(Dr.K訳)
■矯正器具作成のための熱可塑性樹脂
Thermoplastic materials for orthotic design
Retta P.Johnson, Janet E.Steiss, Donald C.Sorjonen
Compend Contin Educ Pract Vet 25(1):20-28,2003

低温可塑性樹脂(LTT)は、ヒト医学では矯正装置の加工に用いられている。LTTの可変性は、獣医療で使える可能性がある。150~175°Fの温湯で加熱後、LTTを直接患畜の皮膚や被毛の上から形をとることができ、さまざまな創傷や整形外科的損傷の治癒に役立つ。それらの変化に富む特性は、個々の動物に用いる副子の適当な素材を選択する際には、考慮に入れるべきである。(Dr.Boo訳)
■犬の火傷に対する親水コロイドドレッシングでの管理
Burn Wounds Management with Hydrocolloid Dressing in Dogs
Aust Vet Pract 32[4]:171-172 Dec'02 Clinical Report 4 Refs
Zbigniew Adamiak, Wojciech Brzeski, Marek Nowicki

犬の火傷を親水コロイドドレッシングで治療した。皮膚欠損の範囲は3×3cmから15×20cmで、8週間から12週間治療した。治療中に次のファクターを調査した。再上皮化のスピード、ドレッシングの取替え頻度、ドレッシング適応中の痛みの出現。全症例で親水コロイドドレッシングの湿性療法は効果的で、皮膚移植手術は必要なかった。(Sato訳)
■36頭の犬猫の外傷性体壁ヘルニア
Traumatic body wall herniation in 36 dogs and cats.
Shaw SR, Rozanski EA, Rush JE.
J Am Anim Hosp Assoc 2003 Jan-Feb;39(1):35-46

外傷性体壁ヘルニア(TBWH)は、イヌネコが外傷を受けた時の重度の続発症である。研究期間中26頭のイヌと10頭のネコの外傷性体壁ヘルニアを外科的に管理した。5症例(イヌ4頭、ネコ1頭)については、入院して24時間の間にヘルニアを確認していなかった。外傷性体壁ヘルニアを良く起こす原因は咬傷で、犬の54%と猫の40%がそれであった。12症例(イヌ9頭、ネコ3頭)は外傷性体壁ヘルニアに加えて深刻な腹腔内傷害を診断されていた。73%のイヌと80%のネコは生存し退院した。また著者は自己貫通性ヘルニアと呼ばれる、珍しいヘルニア症例の発生も報告する。(Sato訳)
■ハチミツを用いた傷の治療
Karol A. Mathews, DVM, DVSc & Allen G. Binnington, DVM, MSc
Compend Contin Educ Pract Vet 24[1]:53-60 Jan'02 Review Article 30 Refs
Wound Management: Using Honey

大きな感染性の傷は治療が難しく費用もかかる。ハチミツは多くの栄養素やミネラルを含み、過酸化水素および植物化学物質による殺菌作用がある。傷にハチミツを使用することで、治癒を促進し、全身的な抗生物質を使用することなく感染を最小限にする。このため、ハチミツの使用は効果的であり、大きな傷を治すために経済的でもある。(Dr.Tako訳)
■砂糖を用いた傷の治療
Karol A. Mathews, DVM, DVSc & Allen G. Binnington, DVM, MSc
Compend Contin Educ Pract Vet 24[1]:41-50 Jan'02 Review Article 12 Refs
Wound Management Using Sugar

大きな感染性の傷は治療が難しく費用もかかる。砂糖はその浸透圧のために殺菌作用を持ち、マクロファージを集め、傷をきれいにすると共に炎症性の浮腫を軽減させる。砂糖は壊死組織の除去を促進する。傷に砂糖を使用することで、治癒を促進し、全身的な抗生物質を使用することなく感染を最小限にする。このため、砂糖の使用は効果的であり、大きな傷を治すために経済的でもある。(Dr.Tako訳)
■耳血腫の治療でCO2レーザーの使用方法の評価
Teresa L. Dye, DVM et al; J Am Anim Hosp Assoc 38[4]:385-390 Jul-Aug'02 Original Report 14 Refs; Evaluation of a Technique Using the Carbon Dioxide Laser for the Treatment of Aural Hematomas

耳血腫は、耳介の軟骨層に血液が集まったもので、臨床的に耳介の液体による腫れに見える。処置せずに置けば、耳介の繊維性拘縮が起こる。耳血腫の複数の治療方法が述べられており、治療の目標は、血腫の除去、再発予防、耳の正常な外見の維持である。
CO2レーザーは、高電圧をCO2が通過することにより生み出されるパルスのエネルギービームで、組織のカットや除去、蒸散に使用される。皮膚をCO2レーザーでカットする時、小血管やリンパは止血もでき、術後の出血や腫れを抑える。神経末端も覆い、痛みを抑える事となる。この研究目的は、耳血腫の治療にCO2レーザーを用いる方法を評価し、紹介するものである。

8頭10個(2頭は両側)の耳血腫をCO2レーザーで治療した。中の血液が流出するまで、レーザーで血腫に切開をいれ、また組織層に癒着促進のために血腫の表面に複数の小切開を行った。
このCO2レーザーを使用した治療にかかる平均時間は約20分だった。追跡期間は1-23ヶ月だった。10例全ての血腫は改善したが、2例は漿液貯留を起こし1例は経皮ドレーンを必要とし、もう1頭は2度目のレーザー治療を行った。
外観に関する飼育者の評価は、3例がすばらしい、5例は良い、2例は普通であった。

犬の耳血腫の治療方法で、CO2レーザーは効果的だと思われる。(Sato訳)
■犬と猫の敗血症性腹膜炎治療に関する、開放性腹膜排液法と初期縫合閉鎖の比較:42症例(1993-1999)
Staatz AJ et al; Vet Surg 31[2]:174-80 2002 Mar-Apr; Open peritoneal drainage versus primary closure for the treatment of septic peritonitis in dogs and cats: 42 cases (1993-1999).

目的:敗血症性腹膜炎を持つ犬と猫に対し、開腹術後、開放性腹膜排液法(OPD)を用いた場合と、初期縫合閉鎖(PC)を用いた場合で、それぞれの生存率を調査することです。

研究計画:コロラド州獣医科大学病院の1993年から1999年までの医療記録を遡及的に解析しました。

検体個体群:腹水の細胞学的検査、または微生物学的培養により実証された、敗血症性腹膜炎を持つ、犬36頭と猫6頭です。

方法:開放性腹膜排液法、または初期縫合閉鎖により治療した、敗血症性腹膜炎の犬と猫の医療記録を再調査しました。年齢、体重、品種、白血球(WBC)数、杆状好中球数、血小板数、血糖値、心拍数、体温、入院期間、そして予後をそれぞれの動物で記録しました。敗血症性腹膜炎の原因に加え、開放性腹膜排液法治療群と初期縫合閉鎖治療群における違いを判定しました。

結果:全生存率71%中、開放性腹膜排液法治療群と、初期縫合閉鎖治療群(P=26)の間で、生存率に有意差はありませんでした。白血球数、杆状好中球数、血小板数、血糖値、そして総ビリルビン濃度、心拍数、年齢、体重においても、グループ間で有意差はありませんでした(P>.05)。開放性腹膜排液法治療群では、初期縫合閉鎖治療群より有意に多くの症例が、血漿輸液(P=.009)、輸血(P=.037)、そして空腸フィステル形成チューブ(P=.02)の治療を受けました。救命救急室で過ごした日数において、開放性腹膜排液法治療群で平均6+/-4.1日、そして初期縫合閉鎖治療群3.5+/-2.3日(P=.02)で有意差がありました。

結論:犬と猫における、敗血症性腹膜炎の治療に関し、開放性腹膜排液法は、初期縫合閉鎖の代替法として使用できます。(Dr.K訳)

コメント:開放創による効果は、①排液が促され、②空気に触れやすくなるため、酸素圧が上昇しマクロファージの機能が増強され、条件的微好気性菌(例えば、E.coli)と偏性嫌気性菌(例えば、Clostridium spp.)の増殖が抑えられ、外毒素の産生が低下するとの事です。また、腹腔が空気にさらされると、漿膜面の毛細血管と線維素性の増生が刺激され、この組織は創傷治癒の初期肉芽組織と同じように働き、細菌感染への抵抗性が増強されるそうです。この要約で、個人的に感じた事は、開放性腹膜排液法は、効果的に排液されるぶん、血漿輸液や輸血には、気を配る必要があるのかな?ということです。どうなんでしょうか?
■剪断傷の露出骨がある犬の創傷治癒を高めるために行う骨穿孔処理
Bone Perforation to Enhance Wound Healing Over Exposed Bone in Dogs With Shearing Injuries
J Am Anim Hosp Assoc 37[3]:215-217 May-Jun'01 Pearls of Veterinary Practice 1 Refs
Geoffrey N. Clark, DVM

犬の四肢末端の剪断傷は、車にぶつかり、舗装道路を引きずられた時良く起こります。そのような傷は、軟部組織の喪失、関節不安定、骨の露出を伴う特徴があります。最初の治療は、関節の安定化や傷の管理に向けられます。骨の穿孔処理は、露出骨の皮質から骨髄腔にドリルで複数穴をあけ、結果的に肉芽組織の源となる血餅を露出骨表面に作ります。それにより、治癒過程のスピードアップが起こり、必要であれば、移植部分の下準備となります。Pearl of Veterinary Practiceで、Dr. Geoffrey Clarkは、外科プロトコール、追跡管理、結果の予想、起こりえる合併症などの、この技術の特性を述べています。著者は、骨の穿孔処理は、高価な、または専門的整形外科器具を必要とせず行える簡単な方法であると結論付けます。(Dr.Sato訳)