■犬の前頭洞の扁平上皮癌の臨床症状と8頭の犬の放射線治療に対する反応
Clinical Presentation of Frontal Sinus Squamous Cell Carcinoma in the Dog and Response to Treatment With Radiation Therapy in Eight Dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2025 Jan;66(1):e70000.
doi: 10.1111/vru.70000.
Pietro Loddo , Luca Schiavo , Jane Dobson , Ola Marcinowska
原発性前頭洞扁平上皮癌(PFSSCC)は犬で珍しく、その症状や放射線治療の反応に関する現在の獣医の文献における情報は、一般に少ない。
この回顧的観察研究の目的は、PFSSCCと診断された一連の犬を紹介し、それらの放射線治療に対する反応を報告することだった。
PFSSCCと診断された犬の医療記録を再調査した。集めたデータは、シグナルメント、主訴、臨床病理および診断的画像検査所見、治療、治療反応、死亡日時あるいは最終フォローアップだった。
PFSSCCの8症例は著者の施設で放射線治療を行った。それらのうち3症例は、寡分割放射線治療を行った。1症例は放射線治療を完了後36か月で関係ない原因のため安楽死された。2番目と3番目の犬はそれぞれ18か月と3か月生存した(治療の終了からPFSSCCによる死亡まで)。追加の5頭はより多い分割プロトコールで治療した(月-水-金スケジュール)。
全ての症例に対する生存期間中央値は7.5か月(範囲2-36か月)だった。少数症例および使用した放射線プロトコールの差異にもかかわらず、この8症例の治療結果は、放射線治療はPFSSCCの犬に対する実行可能な治療オプションの可能性を秘め、寡分割はより多い緻密な分割プロトコールが不可能な場合、適当なアプローチかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の鼻鏡扁平上皮癌の局所治療の結果:89症例(2003-2020)
■Outcomes associated with local treatment of nasal planum squamous cell
carcinoma in dogs: 89 cases (2003-2020)
J Am Vet Med Assoc. 2025 Jan 10:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.10.0642. Online ahead of print.
Joseph S Raleigh , William T N Culp , Michelle A Giuffrida , Chris Thomson , Tiffany Martin , Kyle G Mathews , Owen Skinner , Abby Leonardi , Judith Bertran , Laura E Selmic , Josephine Dornbusch , Jordan Wilson , Michelle Oblak , Boel Fransson , Cassie N Lux , Brandan Wustefeld-Janssens , Danielle Hollenbeck , Julius M Liptak , Heidi Phillips , Kim A Selting , Ji Eun Park , Mandy Wallace , Michele A Steffey , Ingrid M Balsa , Philipp D Mayhew , Robert B Rebhun , Michael S Kent
目的:鼻平面の扁平上皮癌(SCC)の局所治療を行った犬の臨床的特徴、治療、合併症および結果を述べる
方法:回顧的複数施設研究を実施した。医療記録から検索し、鼻平面のSCCと診断された犬を確認した。医療記録から変数を記録し、統計学的に分析した。
結果:89頭の犬を含めた。最も一般的な主訴は、鼻平面の目に見えるマスだった(89%)。局所治療時に転移は12%の犬で検出された。局所治療は外科的切除単独が63/89頭(71%)、放射線治療単独が20/89頭(22%);6頭は複数の局所治療だった。腫瘍の大きさは、放射線治療単独を行った12頭(60%)で縮小した。局所再発は19/89頭(21%)で報告され、手術単独で治療した16/63頭(25%)が含まれた。
全頭の生存期間中央値は452日(95%CI、285-576)だった。疾患の進行が見られた33頭の生存期間中央値は336日(95%CI、189-458)に対し、疾患の進行がなかった56頭は685日(95%CI、334-1042)で、統計学的な違いがあった(P=.038)。疾患進行が認められることは、死亡のハザードと有意に関係した(ハザード比、1.93;95%CI、1.03-3.63;P=.041)。
結論:鼻平面のSCCの局所治療を行った犬は、好ましい予後だった。治療時の転移は珍しかった。長期生存は可能で、特に疾患の進行がない症例はそうだった。
臨床的関連:積極的な局所治療(特に外科的切除)は、鼻平面のSCCの犬において考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の口腔扁平上皮癌に対する環境リスク因子を評価した多施設疫学研究
A multi-institutional epidemiologic study evaluating environmental risk factors for feline oral squamous cell carcinoma
Vet Comp Oncol. 2023 Sep;21(3):509-519.
doi: 10.1111/vco.12914. Epub 2023 May 27.
Lucie Noall , Suhwon Lee , Jenna H Burton , Taya M Marquardt , Justin Cermak , Lori A Thombs , Anita M Rogic , Jeffrey N Bryan , Shirley Chu
猫の口腔扁平上皮癌(FOSCC)は、家庭猫の攻撃的な癌の1つで、進行すると効果的な治療選択枝はない。ゆえに、予防的あるいは早期診断処置は非常に重要である。また、FOSCCはヒトの頭部および頸部SCC(HNSCC)のモデルでもある;HNSCCにおけるstrongリスク因子は、アルコール、タバコ、檳榔子の暴露やハイリスクヒトパピローマウイルスが含まれる。
過去の研究で、FOSCCに対するリスク因子として、ノミ取り首輪とタバコの煙の暴露、ツナ缶の給餌、化学添加物を含む缶詰のキャットフードとキャットフード、田舎の環境での生活、屋外へのアクセスがあることが確認されているが、研究間のリスク因子に重複はなかった。
我々の研究において、FOSCCの猫67頭とコントロール猫129頭において、FOSCCに対するリスクをオンラインの疫学的調査で評価した。
固まるclay cat litter(猫砂)とノミ取り首輪の使用は、多重ロジスティック回帰でオッズ比がそれぞれ1.66(95%CI:1.20-2.30)と4.48(95%CI:1.46-13.75)の有意なリスク因子だった。我々の研究では、結晶質シリカは全てのclay
cat litterに存在するかもしれない発癌性物質の1つで、テトラクロルビンホスは最も一般的に使用されるノミ取り首輪に存在する発癌性物質の1つである。
我々はFOSCCとclayベースの猫砂および/あるいはテトラクロルビンホスを含むノミ取り首輪の関係に対する今後の調査を推奨する。(Sato訳)
■外科手術のみで治療した口腔扁平上皮癌のある若犬の生存期間
Survival time of juvenile dogs with oral squamous cell carcinoma treated with surgery alone: A Veterinary Society of Surgical Oncology retrospective study
Vet Surg. 2021 Mar 27.
doi: 10.1111/vsu.13625. Online ahead of print.
Surabhi Sharma , Sarah E Boston , Owen T Skinner , James A Perry , Frank J M Verstraete , Da B Lee , Lucinda L L Van Stee , Chris Thompson , Matthew Boylan , Talon McKee , Philip J Bergman
目的:口腔扁平上皮癌(OSCC)を外科的に治療した若犬のシグナルメント、ステージング、外科的治療、生存期間を報告する
研究計画:回顧的研究
動物あるいはサンプル集団:外科的に治療したOSCCの2歳未満の25頭
方法:症例はVeterinary Society of Surgical Oncologyから求められた。性別、犬種、年齢、体重、臨床症状、腫瘍の位置、術前診断およびステージング、マージン評価を伴う病理組織診断、無病期間、死亡日時と原因を含むデータを回収した。最低3か月のフォローアップ期間を組み込みに必要とした。
結果:18頭の犬は12ヶ月齢未満で、7頭は24ヶ月齢未満だった。種々の犬種が存在し、平均体重は22.3±14.4kgだった。術前に転移のエビデンスがある犬はいなかった。全ての犬は上顎切除あるいは下顎切除を行った。24頭の犬の組織学的マージンは完全で、1頭は不完全だった。転移疾患あるいは腫瘍の再発のエビデンスを示した犬はいなかった。フォローアップ期間中央値は1556日(92-4234日)だった。拡張型心筋症による死亡が証明された1頭を除き、全ての犬は最終フォローアップ時に生存していた。疾患特異生存期間の中央値は到達しなかった。
結論:若犬においてOSCCの広範囲の外科的切除後の予後は優良である。
臨床的意義:若犬のOSCCは、外科手術単独で効果的に治療できる。(Sato訳)
■犬の皮膚扁平上皮癌において電気化学療法は腫瘍退行と増殖指数の低下を誘発する
Electrochemotherapy induces tumor regression and decreases the proliferative index in canine cutaneous squamous cell carcinoma.
Sci Rep. 2019 Nov 1;9(1):15819. doi: 10.1038/s41598-019-52461-6.
Dos Anjos DS, Bueno C, Magalhães LF, Magalhães GM, Mattos-Junior E, Pinto MMR, De Nardi AB, Brunner CHM, Leis-Filho AF, Calazans SG, Fonseca-Alves CE.
犬の皮膚扁平上皮癌(cSCC)は、犬の一般的な皮膚癌で、その転移率が低いことから電気化学療法(ECT)のような局所治療が疾患コントロールあるいは完全寛解(CR)までも促進する。
この研究の目的は、ECTを行ったcSCCの犬において、Bcl-2およびBcl-2関連X蛋白(BAX)の遺伝子および蛋白発現と増殖指数、臨床パラメーターを評価することだった。
ECTで治療した自然発生のcSCCのある犬を用い、回顧的非無作為化臨床研究を実施した。11頭の犬の18の病変を選択した。
0日目の腫瘍の大きさは、生存性や予後に影響しなかった(P>0.05)。ETC前より、ETC後(21日目)の腫瘍サンプルの増殖指数は低かった(P=0.031)。Ki67中央値よりも低い、および高いKi67値の犬の生存性に有意差はなかった(P>0.05)。アポトーシスのマーカーに関し、0日目と21日目のBAXあるいはBcl-2の遺伝子および蛋白発現レベル(P>0.05)、あるいはアポトーシスのマーカーの異なるレベルの犬の全体の生存性に有意差はなかった。
結論として、cSCCで評価したタイムポイントのETCの反応で、BAXあるいはBcl-2遺伝子および蛋白発現に変化はないが、ETCは腫瘍の容積および細胞増殖を低減できた。(Sato訳)
■犬の口腔非扁桃扁平上皮癌の電気化学療法による治療、症例ケースリポート
Electrochemotherapy in treatment of canine oral non-tonsillar squamous cell carcinoma. a case series report.
Vet Comp Oncol. 2019 Aug 16. doi: 10.1111/vco.12530. [Epub ahead of print]
Simčič P, Lowe R, Granziera V, Pierini A, Torrigiani F, Lubas G.
犬の非扁桃扁平上皮癌(ntSCC)は、一般的な局所侵襲口腔腫瘍である。現在の治療の選択は、外科手術と放射線療法である。電気化学療法(ECT)は、細胞障害性薬剤の細胞内拡散を高めるため、電気パルスを用いた局所切除性抗腫瘍法である。
目的は、ntSCCをECTで治療した犬の結果を回顧的に評価することだった。
ntSCCの12頭の犬を回顧的に登録した。11症例でECTはIVブレオマイシン(15000UI/m2)のみと組み合わせ、1症例は術後行った。考慮したパラメーターは:腫瘍の部位と大きさ、電気穿孔パラメーター、奏効率(完全寛解(CR)、部分奏功(PR))、生存期間中央値(MST)、再発率(RR)、無病期間中央値(DFI)、治療毒性(6ポイントスケール)だった。
腫瘍の大きさの中央値は1.65cm(範囲0.3-8.0cm)で、奏効率は90.9%(10/11;8CRと2PR)だった。2頭は2回目のECTを行った。腫瘍で死亡した犬(n=2)のMSTは110日で、腫瘍以外で死亡した犬(n=3)のMSTは831日だった。生存した犬5頭中1頭は腫瘍が再発し、4頭はCRだった。2頭の結果は別に解析した。
総RRは27.3%だった。再発した犬のDFIとMSTは50日と115日だった。治療毒性は非常に低かった。
著者らは、1-2cm以下の腫瘍の全ての犬は、再発なくCRを達成し、ECTを使用した時に良好な予後を示唆することを認めた。犬のntSCCに対するECTは、特により小さい腫瘍の有効な治療オプションと考えられたが、これを確認するためより大規模な症例数が必要だろう。(Sato訳)
■口腔扁平上皮癌あるいは線維肉腫の犬における外科切除あるいは外科切除と補助的少分割放射線照射による治療後の結果
Outcomes following surgical excision or surgical excision combined with
adjunctive, hypofractionated radiotherapy in dogs with oral squamous cell
carcinoma or fibrosarcoma.
J Am Vet Med Assoc. July 2018;253(1):73-83.
DOI: 10.2460/javma.253.1.73
Julia Riggs, Vicki J Adams, Joanna V Hermer, Jane M Dobson, Suzanne Murphy, Jane F Ladlow
目的:口腔非扁桃扁平上皮癌(SCCs)と線維肉腫(FSAs)を外科的に治療した犬の結果と、外科的および術後放射線療法で治療した犬の結果を比較すること;術後、少分割放射線照射は不完全切除の犬の結果を改善したのか調べること;結果に関係する予後因子を確認すること
デザイン:回顧的コホート研究
動物:2000年から2009年の間にSCCあるいはFSAの治療で上顎骨切除あるいは下顎骨切除を行った87頭の飼育犬
方法:医療記録を回顧的に再調査した。生存分析はカプラン-メイヤーとCox回帰解析を実施し、結果に関係する潜在的予後因子を評価した。
結果:全87頭の生存期間中央値(MST)は2049日だったが、SCCの犬は到達せず、FSAの犬はわずか557日だった;腫瘍の種類は生存期間の重要な指標だった。口腔SCCsの不完全切除後に術後放射線療法を行った犬(2051日)は、不完全切除で放射線療法を行わなかった犬(181日)よりもMSTが有意に長かった。FSAsの不完全切除後に放射線療法を行った犬は保護的価値をもたらせたとは思えなかった(MST、放射線療法の犬299日、放射線療法をしなかった犬694日)。
結論と臨床関連:口腔SCCあるいはFSAの犬には広いマージンの外科的切除をゴールドスタンダードな治療と考えるべきである。クリーンな外科マージンのない口腔SCCsの犬に対し、術後少分割放射線照射は生存期間を改善すると思われる。
■皮膚扁平上皮癌の犬193頭の臨床特性と結果(1987-2017)
Clinical Features and Outcome of Dermal Squamous Cell Carcinoma in 193 Dogs (1987 - 2017).
Vet Comp Oncol. 2019 Jan 25. doi: 10.1111/vco.12461. [Epub ahead of print]
Willcox JL, Marks SL, Ueda Y, Skorupski KA.
扁平上皮癌(SCC)は、犬で良く見られる皮膚の腫瘍で、日光の紫外線暴露が一般的な病理として述べられている。犬のこの腫瘍の臨床特性や予後に関しての発表は少ない。
1つの施設で皮膚のSCCと病理組織的に診断された193頭の犬で回顧的に研究した。
全ての犬の38%は病理組織学的に日光性変化が証明された。全生存期間中央値は1004日で、日光性変化が証明された集団(中央値1359日、範囲16-3530日)は、日光性変化がない犬(中央値680日、範囲16-3066日)と比べて有意に長い生存期間で、これは多変量分析で有意だった(危険率0.42、95%CI、0.193-0.930、P=0.032)。それらのデータは、非日光性SCCs以上に、日光性変化が証明されたSCCの犬の生存性増加を示し、それらの犬の長期生存性を意味する。
回顧的研究では種々の治療アプローチを受けており、今後は、放射線療法や化学療法のような補助化学療法が犬の皮膚SCCに対する生存性を改善するかどうかを調査するための前向き研究が必要だろう。(Sato訳)
■注射可能な化学療法により切除不可能な口腔扁平上皮癌から切除可能にステージを落としたレスキュー犬の1例:診断、治療、予後
Injectable Chemotherapy Downstaged Oral Squamous Cell Carcinoma from Nonresectable to Resectable in a Rescue Dog: Diagnosis, Treatment, and Outcome.
Case Rep Vet Med. 2018 Oct 8;2018:9078537. doi: 10.1155/2018/9078537. eCollection 2018.
Cai S, Zhang T, Groer C, Forrest M, Aires D, Otte V, Barchman S, Faerber A, Forrest ML.
この症例報告は、当初予後不良と思われた1頭の犬の切除不可能な口腔扁平上皮癌の診断、治療、予後を述べる。
約4歳のメスのスタッフォードシャーブルテリアの下顎前部に大きいマスがあり、病理組織検査で乳頭状扁平上皮癌と診断された。CT検査で舌小帯へ癌の侵入が見られた。そのマスは部位、拡がり、リンパ節転移により手術不能だった。その犬には3週間隔で病巣内ヒアルロン酸プラチナコンジュゲート(HylaPlat?,
HylaPharm LLC, Lawrence, Kansas)を4回投与した。生化学およびCBC検査を投与後1週間で実施し、結果は正常限界内だった。
合併症は腫瘍組織の腐肉による出血と、原因不明の1回の発作があった。化学療法完了時、CT検査ではマスは退行し、舌帯への侵入はなく、複数のリンパ節の転移もなくなっていた。これにより、マスは切除可能となったので、首尾よく吻側両側下顎切除が行われた。
化学療法と手術から1年経過しても、癌は完全寛解を維持している。(Sato訳)
■猫口腔扁平上皮癌の治療標的としての脂肪酸合成の可能性
Fatty acid synthase as a potential therapeutic target in feline oral squamous cell carcinoma
Vet Comp Oncol. 2018;16:E99?E108.
J. Z. Walz, J. Saha, A. Arora, A. Khammanivong, M. G. O’Sullivan, E. B. Dickerson
猫と人の口腔扁平上皮癌の挙動は悪く治療抵抗性である。最近の研究では人の口腔扁平上皮癌と他の腫瘍における脂肪酸合成の異常発現と脂肪合成能力増加が示されている。人では脂肪酸合成阻害はin
vitroにおける細胞生存率と増殖を低下させ、齧歯類のモデルで腫瘍の増殖と転移を減少させた。
この研究の目的は猫口腔扁平上皮癌の治療対象として脂肪酸合成の特徴を明らかにすることである。
免疫組織科学では原発腫瘍の脂肪酸合成発現亢進が明らかとなり、イムノブロットと定量的qRT-PCRによって口腔扁平上皮癌細胞株(猫3、人3)で脂肪酸合成発現が検出された。脂肪酸合成阻害のオリスタットは猫と人の口腔扁平上皮癌細胞株で細胞生存率を実質的に低下させたが、猫細胞株ではこの薬剤に高い感受性を示した。より高い脂肪酸合成が高いレベルを示す猫細胞株において細胞株間での脂肪酸合成mRNA発現はオリスタットの感受性を反映した。この所見に一致して、オリスタット感受性の消失と脂肪酸合成mRNA表現低下は猫細胞株の低酸素状態の培養で観察された。オリスタットの治療は調べた細胞株においてはカルボプラチン感受性を高めることはなかった。しかしながら相加作用は認められた。
これらの結果から脂肪酸合成阻害は猫口腔扁平上皮癌の治療標的となる可能性が示唆された。さらに猫は人口腔扁平上皮癌の自然発症モデル動物となる可能性がある。しかしながらこれらの種での脂肪酸合成調節の違いについて研究する必要がある。(Dr.Maru訳)
■犬10例の吻側鼻中隔扁平上皮癌に対する二酸化炭素レーザーと凍結手術切除の併用
Combined carbon dioxide laser and cryosurgical ablation of rostral nasal septum squamous cell carcinoma in 10 dogs.
Vet Dermatol. 2018 Aug 21. doi: 10.1111/vde.12683. [Epub ahead of print]
Ierace MK, Canfield MS, Peters-Kennedy J, Kane CW.
背景:扁平上皮癌(SCC)は一般に報告される鼻平面の腫瘍で、治療は局在疾患に焦点があてられる。吻側上顎切除および/あるいは鼻平面切除は、鼻平面SCCの切除に対する標準治療と考えられている;しかし、それら処置の見た目は、多くのオーナーに受け入れられないこととなる可能性がある。
目的:この研究の目的は、鼻のSCCsがある犬における姑息的治療様式として、二酸化炭素(CO2)レーザー外科と凍結アブレーションの併用の効果を評価することだった。
動物:鼻のSCCのある10頭の飼育犬が組み込まれた:7頭は去勢済みオス、2頭は避妊済みメス、1頭のオスで年齢中央値は12.5歳(範囲9-15歳)。
方法と素材:腫瘍のCO2レーザー切除に続き、目に見える腫瘍、隣接および下部組織の凍結アブレーションを行った。急速凍結-ゆっくり解凍サイクルを3回実施した。
結果:10頭中8頭はラブラドールレトリバーだった。年齢は9-14歳の範囲だった。全体の生存期間中央値は260日で、2頭はこの文献作成中も生存している。
結論:鼻平面に限られたSCCsの犬においてCO2レーザーと凍結アブレーションの併用は実用的で、費用対効果が高く、見た目が良い結果が得られ、局所疾患の満足な緩和が提供できる。(Sato訳)
■猫口腔扁平上皮癌に対する放射性ホルミウムの腫瘍内投与
Intratumoral injection of radioactive holmium (166Ho) microspheres for treatment of oral squamous cell carcinoma in cats
S. A. van Nimwegen, R. C. Bakker, J. Kirpensteijn, R. J. J. van Es, R. Koole, M. G. E. H. Lam, J. W. Hesselink, J. F. W. Nijsen
Vet Comp Oncol. 2018;16:114?124.
背景と目的:「微小近接療法」はホルミウム-166のマイクロスフェアを腫瘍内に注入することで開発された。166-Hoはβ線を放出し腫瘍組織に対しては高線量のアブレーションを可能にし周囲組織を温存する。
材料と方法:166Ho微小近接療法の安全性と有効性について遠隔転移のない切除不能猫口腔扁平上皮癌13頭に前向き評価を行った。
結果:反応率は55%でその後の完全切除もしくは部分切除を可能にした。生存期間中央値は113日で反応が得られたものでは296日であった。副作用は最小限であった。腫瘍容積が予後因子であった。
考察:腫瘍内注入を改善することで反応率が良くなる可能性がある。
結論:166Ho微小近接療法は併発症の少ない切除不能な腫瘍に対する侵襲性の少ない単一の放射性アブレーションとして可能性を秘めている。(Dr.Maru訳)
■単独療法として1%5-フルオロウラシル点眼を用いた角膜扁平上皮癌の治療
Treatment of corneal squamous cell carcinoma using topical 1% 5-fluorouracil as monotherapy.
Vet Ophthalmol. May 2016;19(3):256-261.
Daniel M Dorbandt , Elizabeth A Driskell , Ralph E Hamor
この報告の目的は、犬の角膜扁平上皮癌(SCC)に対する単一療法として1%5-フルオロウラシルの局所使用を述べる。
12歳の去勢済みオスのパグの境界明瞭、中心、直径3mm、薄いピンク、盛り上がった右の角膜マスを評価した。鎮静せずに点眼麻酔後、#64ビーバーブレードを用いて切開性バイオプシーを採取した。バイオプシーの病理組織検査で角膜SCCの確定診断を得た。2週間1日4回の右眼への1%5-フルオロウラシル軟膏塗布に続き、2週間休薬、その後2週間1日2回で再び塗布した。治療中止後、角膜は10か月再発なしを維持した。
角膜SCCの犬において、1%5-フルオロウラシルの局所単独療法は、副作用も最小で費用対効果が高い実行可能な治療かもしれない。この化学療法剤は角膜色素沈着にも効果がある。長期のシクロスポリン療法は、ここで述べた症例の角膜SCCの病原に関係していなかった。(Sato訳)
■外科治療後の犬の口腔(歯肉)扁平上皮癌の予後:40症例の回顧的分析
[Prognosis of canine oral (gingival) squamous cell carcinoma after surgical therapy. A retrospective analysis in 40 patients].
Tierarztl Prax Ausg K Kleintiere Heimtiere. 2014;42(6):359-66. doi: 10.15654/TPK-140069. Epub 2014 Nov 24.
Kuhnel S, Kessler M.
目的:顎切除により外科的に治療した歯肉扁平上皮癌(SCC)の犬の回顧的分析。
素材と方法:合計40症例を研究した。不完全な腫瘍切除あるいは転移のある犬はカルボプラチンを使用した補助的化学療法を行った。犬種、年齢、腫瘍の位置、術後合併症、生存期間、予後的因子を評価した。
結果:犬種に偏りはなかった。年齢中央値は9.5歳(平均8.6歳;範囲0.5-15.5歳)。来院時に2頭(5%)はリンパ節転移があった(N1)。全ての犬の生存期間中央値(MST)は44.8ヶ月だった。15頭の腫瘍は上顎にあり、25頭の腫瘍は下顎にあった。上顎にある犬のMSTは39か月(95%信頼区間(CI)、24か月)で、下顎にある犬のMSTは43か月(95%CI、33-70ヶ月)だった。上顎と下顎腫瘍の犬の生存期間に有意差はなかった(p=0.985)。
多変量解析において、腫瘍ステージのみが生存に有意に関係していることが分かった(p=0.0047)。ステージN0の犬は中央値44か月生存した(95%CI、36-80ヶ月)。リンパ節転移(N1)の2頭は、顎切除とカルボプラチン化学療法後18か月と70か月生存した。組織学的所見によると5頭の犬は腫瘍切除が不完全だった。それらの犬は補助的カルボプラチン化学療法を受け、生存期間は6か月から146ヶ月の間だった。
結論と臨床関連:予後は腫瘍のステージに依存し、腫瘍のある顎部分の完全な局所切除は予後良好で、犬の多くは治癒する可能性がある。推定上、口腔尾側に位置する歯肉SCCsのより悪い挙動は確認できなかった。局所リンパ節に転移のある犬はある程度の生存期間を達成できる。顎切除の合併症発生率は低く、良好な機能が得られる。(Sato訳)
■犬の扁桃扁平上皮癌において長期生存の一因となるファクターの評価
Evaluation of the factors contributing to long-term survival in canine tonsillar squamous cell carcinoma.
Aust Vet J. 2016 Jun;94(6):197-202. doi: 10.1111/avj.12444.
Grant J, North S.
目的:扁桃扁平上皮癌(TSCC)と診断された犬の長期生存に関係するかもしれない予後ファクターを確認する
方法:TSCCの治療を行った15頭の犬のカルテを回顧的に再調査した。シグナルメント、臨床症状、臨床ステージ、治療および結果を記録した。
結果:この研究の犬の全体の生存期間中央値(MST)は243日だった。1年生存率は40%、2年生存率は20%だった。最初のステージ判定の結果が生存性に有意に影響し、1つの扁桃が侵されており、転移の所見がないときのMST(637.5日)は、局所(MST:134日)あるいは遠隔(MST:75日)転移疾患のある犬、あるいは両側の扁桃が初診時に侵されている犬よりも長かった。TSCCの治療で外科手術と補助化学療法を行った犬で(MST:464.5日)、生存期間の延長が報告された。
臨床意義:これはTSCCの犬の予後と来院時のステージの関連、早期ステージで外科手術と化学療法を含む初期治療プロトコールで長期生存期間が証明された最初の獣医研究である。進行した疾患に対する長期生存性と追加の外科手術に明らかな関連はなかったが、更なる研究が求められる。(Sato訳)
■原発性肺腺扁平上皮癌に関係する胸水の特徴
Characterization of primary pulmonary adenosquamous carcinoma-associated pleural effusion.
Vet Clin Pathol. 2016 Mar;45(1):179-183. doi: 10.1111/vcp.12316. Epub 2016 Jan 21.
Stewart J, Holloway A, Rasotto R, Bowlt K.
10歳避妊済みメスのシーズーが体重減少、努力呼吸と嗜眠の増加により来院し、胃と脾臓の部分的ヘルニアを伴う先天性傍食道横隔膜欠損の二次的なものと判定した。移動した腹部臓器の整復手術後4日目に胸水が発生した。
胸水の評価では細胞豊富、蛋白質が乏しく好中球、反応性中皮細胞、腫瘍性の剥離と一致する角質化で時折みられる異型類上皮細胞を伴う変性浸出液だった。胸水は2日で溜まり、最初のサンプルと同じ特徴があった。
CTで右肺の中葉と副葉に硬結と偏位が認められた。試験的開胸で肥厚充血した右肺の中葉、肥厚した心横隔膜靭帯を確認した。
それらの組織学的評価は脈管内および胚浸潤を伴う原発性肺腺扁平上皮癌だった。
それら細胞、組織および臨床所見を基に、原発性肺癌は胸水への胸腔組織表面および剥離に関与するかもしれないと結論付ける。(Sato訳)
■口腔内扁平上皮癌の35頭の猫に対して他の治療法と組み合わせてトセラニブリン酸塩(パラディア)を使用した場合の耐用性について:2009-2013年
Tolerability of toceranib phosphate (Palladia) when used in conjunction with other therapies in 35 cats with feline oral squamous cell carcinoma: 2009-2013.
J Feline Med Surg. 2016 Mar 7. pii: 1098612X16638118.
Olmsted GA, Farrelly J, Post GS, Smith J.
目的 扁平上皮癌 (SCC)は、猫において最も多い口腔腫瘍であり、現在の治療法では予後が悪いことが一般的である。本研究の目的は、口腔のSCCの猫に対してトセラニブリン酸塩(パラディア)を他の治療法と組み合わせて使用した場合の毒性について評価することである。
方法 本研究では、トセラニブと他の治療法を組み合わせて使用した場合の毒性を明らかにするために35頭の猫を回顧的に評価した。トセラニブは1週間に3日、中央値2.75mg/kg (範囲 1.9-4.17mg/kg)で用いた。それぞれ外科的切除、放射線療法、化学療法、非ステロイド系抗炎症薬などの他の治療法も実施した。
結果 毒性は6頭の猫に認められ、そのうち5頭はグレード1または2の消化器症状、1頭はグレード4の代謝毒性が認められた。トセラニブは1頭では中止し、2頭では減量した。毒性のために、治療を遅らせたり入院させたりする必要がある猫はいなかった。トセラニブ治療期間の中央値は、77日であった(範囲
7-741日)。
結論と関連 本研究では、トセラニブが大部分の猫において耐用性があることが確認され、5頭の猫では軽度の消化器毒性、1頭では代謝毒性が認められた。良好な毒性の状況を示したので、口腔SCCの猫に対するトセラニブの安全性と効果をさらに評価する研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■リン酸トセラニブ(パラディア)の口腔扁平上皮癌の猫に対する回顧的評価
Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) in cats with oral squamous cell carcinoma.
J Feline Med Surg. 2016 Jan 11. pii: 1098612X15622237.
Wiles V, Hohenhaus A, Lamb K, Zaidi B, Camps-Palau M, Leibman N.
目的 本研究の目的は、猫の口腔扁平上皮癌 (FOSCC)の治療においてリン酸トセラニブの臨床的な有用性と副作用について検討することである。
方法 猫においてトセラニブの治療に対する反応性、トセラニブの副作用について明らかにするために、2010年から2014年の間に口腔扁平上皮癌と診断しリン酸トセラニブで治療した猫のカルテから得た情報を、トセラニブ、細胞傷害性の化学療法や放射線照射を使用していない猫の情報と比較した。非ステロイド系抗炎症薬 (NSAIDs)の併用は行ってよいものとした。
結果 46頭のFOSCCの猫が組み入れられ、23頭はトセラニブ治療を受け(グループ1)、23頭はトセラニブ治療を受けなかった(グループ2)。グループ1における全生物学的反応率は56.5%であった。トセラニブで治療した猫の生存期間の中央値は123日であり、トセラニブで治療しなかった猫の45日と比較して有意に長かった(P=0.01)。トセラニブ療法で進行しなかった、またはよい反応性を示した猫は、トセラニブで進行した猫と比較して、有意に長い無病生存率(P<0.0001)と生存期間の中央値(P=0.0042)を示した。NSAIDsの投与は、全部の猫において生存期間の改善と有意に関連していた(P=0.0038)。食欲低下は多く、これらの猫における元の疾患によるものかもしれない。トセラニブは猫において耐容性があり、最も多く認められる副作用は軽度の消化管毒性であった。
結論と臨床的意義 トセラニブは口腔扁平上皮癌の猫に耐容性があり、とくにNSAIDsと組み合わせた場合に生存期間の改善につながるようである。NSAID投与自体が、生存期間の改善とも関連があるため、この回顧的研究からトセラニブとNSAIDsに相対的な効果があるかについて言及するのは難しい。生存期間が改善したにもかかわらず、これらの猫において長期的な生存はいまだ難しい。トセラニブに耐容性があり生存期間が改善するようであるので、トセラニブ単剤の前向きの評価によって単剤としての反応性を評価したり、FOSCCにおいてより持続的な反応が認められるようにするために多様式治療の一部として反応性を評価する必要がある。(Dr.Taku訳)
■吻側鼻中隔扁平上皮癌の複合吻側外側鼻切開による切除:10頭の犬の長期結果
Combined Rostrolateral Rhinotomy for Removal of Rostral Nasal Septum Squamous Cell Carcinoma: Long-Term Outcome in 10 Dogs.
Vet Surg. 2015 Jul 24. doi: 10.1111/vsu.12359.
Ter Haar G, Hampel R.
目的:犬の吻側鼻中隔の扁平上皮癌(SCC)に治療に対し、複合吻側外側鼻切開(鼻前切開)の手術方法と長期結果を報告する
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:鼻鏡表面に侵襲していない吻側鼻中隔にSCCのある年齢7歳から12.5歳の中型雑種犬(n=10)
方法:疾患の拡がりはCTで評価し、鼻鏡中央の持ち上げと外側鼻切開単独で腫瘍切除した。結果と生存期間を判定するため、術後60日から2555日(中央値、548日)にオーナーに聞き取り調査を行った。
結果:鼻前切開で10頭の鼻中隔と腫瘍の全層切除と4頭は鼻孔底切除が容易だった。術中の大きな合併症はなく、全頭の美的外観は優良だった。腫瘍除去は8頭で完全、2頭で不完全だった。6頭に再発はなかった。再発した4頭のうち、3頭は最初の手術で鼻孔底切除を必要とした犬だった。
結論:複合吻側外側鼻切開術は鼻中隔に限られたSCCの完全切除に有用で、美的外観の結果も許容できるものと思われる。この方法は、鼻孔底に広がった腫瘍には適していないかもしれない。(Sato訳)
■猫の口腔扁平上皮癌の臨床的結果の予測:癌幹細胞、テロメア、テロメラーゼ
Predicting clinical outcome in feline oral squamous cell carcinoma: tumour initiating cells, telomeres and telomerase.
Vet Comp Oncol. 2014 Sep 11. doi: 10.1111/vco.12117.
Yoshikawa H, Maranon DG, Battaglia CL, Ehrhart EJ, Charles JB, Bailey SM, LaRue SM.
猫の口腔扁平上皮癌(SCC)は予後が非常に悪い。
ここで定位放射線療法(SRT)を行った口腔にSCCのある猫20頭で回顧的予備的研究を行い、(1)ヒトの頭部および頸部SCCの推定癌幹細胞(TIC)マーカー(CD44、Bmi-1);(2)特に推定TICsのテロメア長(TL);(3)腫瘍関連テロメラーゼ活性(TA)を評価した。
治療結果と負の予後指標としてBmi-1の予測値を支持するBmi-1発現の間には有意な逆相関があった。TLは特に非常に短いフラクションで変動の幅が大きいのに対し、Bmi-1、Ki67、EGFRの高レベルに関連する高レベルのTAを多くの腫瘍は所有した。
まとめとして、我々の結果は猫の口腔SCCにおいてBmi-1とテロメラーゼは新しい治療標的を意味するかもしれず、ゆえにそれらの阻害は定位放射線療法と組み合わせて有益な治療結果を期待できると示唆する。(Sato訳)
■口腔扁平上皮癌の猫に対する姑息的放射線療法の結果(1999-2005)
Palliative radiation therapy outcomes for cats with oral squamous cell carcinoma (1999-2005).
Vet Radiol Ultrasound. 2014 Sep;55(5):565-70. doi: 10.1111/vru.12157. Epub 2014 Apr 25.
Sabhlok A, Ayl R.
扁平上皮癌(SCC)は猫の全ての腫瘍のうち約10%を占める。
この回顧的研究の目的は、姑息的放射線療法で治療した口腔SCCの猫の結果を述べることだった。
44頭の猫が切除不可能な口腔SCCをざっくりとした分割メガボルテージ(MeV)放射線療法で治療した基準に合致した。全ての猫に対する放射線療法は、6MeV直線加速装置で照射した。24-40グレイの総放射線照射量を3-4分割で、週に1回4-5週かけて照射した。併用化学療法プロトコールは様々で、臨床医や飼育者の裁量で実施した。
49頭の猫が計画された治療プロトコールを完遂した。その治療プロトコールを全うした猫の総生存期間の平均および中央値は127日と92日(n=49)だった。姑息的放射線単独で治療した猫の生存期間の平均および中央値は157日と113日(n=12)だった。放射線療法と化学療法で治療した猫の生存期間平均と中央値は116日と80日(n=37)だった。舌下に腫瘍がある猫の生存期間中央値は135日(n=15)で、それに比べて下顎に腫瘍がある猫の生存期間中央値は80日(n=26)だった。計画された治療プロトコールを完遂した猫の大多数(65%)に対し、飼育者はQOLの主観的改善を報告した。
この非対照研究の所見は、切除不可能な後腔扁平上皮癌の猫において、姑息的放射線療法の実施を支持した。(Sato訳)
■扁桃ではない口腔内扁平上皮癌の31例の犬の生存に関する危険因子(1990-2010年)
Risk factors associated with survival in dogs with nontonsillar oral squamous cell carcinoma 31 cases (1990-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Sep 1;243(5):696-702. doi: 10.2460/javma.243.5.696.
Fulton AJ, Nemec A, Murphy BG, Kass PH, Verstraete FJ.
目的 扁桃ではない口腔内扁平上皮癌(OSCC)の犬における予後に関連する危険因子を同定することであり、治癒を目指した外科治療をしたもしくはしなかったものを含む。
研究デザイン 後向き症例群
動物 OSCCの31頭の犬
方法 1990年1月から2010年12月の間に治癒を目指した治療をしたもしくはしなかったOSCCの犬のカルテを検討した。それぞれの犬について、シグナルメント、臨床ステージ、治療、腫瘍の再発、生存期間についてのデータをカルテから得た、そして保存された生検組織について、腫瘍の病理組織学的サブタイプおよび腫瘍関連の炎症(TAI)、神経周囲への浸潤
(PNI)、リンパ管浸潤 (LVI)それぞれの程度を評価した。
結果 外科的に治療した21頭のOSCCの犬の死の危険因子は、治療しなかった10頭のOSCCの犬と比較して、91.4%低下した(ハザード比 0086, 95%信頼区間 0.002-0.150)。1年生存率は、外科的に治療した犬およびしなかった犬では、それぞれ93.5%および0%であった。死の危険は、TAIの増加および危険スコア(TAI, PNI, LVIの組み合わせ)の増加とともに有意に増加した。腫瘍の部位、臨床ステージ、組織学的サブタイプは、生存期間と関連がなかった。
結論と臨床的意義 結果が示唆しているものは、OSCCの犬の予後は、腫瘍を外科的に切除した場合非常に良いことである。死の危険は、TAIの増加に伴って増加し、TAI,PNI,
LVIの組み合わせを一つの危険スコアに用いた場合は、OSCCの犬の予後指標として有用であるようである。(Dr.Taku訳)
■ピロキシカムとカルボプラチンあるいはトセラニブで治療した原発性前頭洞扁平上皮癌の犬3頭
Primary frontal sinus squamous cell carcinoma in three dogs treated with
piroxicam combined with carboplatin or toceranib.
Vet Comp Oncol. September 2012;10(3):206-13.
J de Vos; S Ramos Vega; E Noorman; P De Vos
ヒトの医療において、原発性前頭洞扁平上皮癌(pFS-SCC)の報告はあまりない。獣医療において前頭洞SCCはもっぱら鼻腔SCCの拡大として述べられている。
著者らの知るところでは、これは組織学あるいは細胞学および医学的画像検査を使用して診断した3頭の犬のpFS-SCCに関する最初の発表である。
それらの腫瘍は鼻腔に関与することなく眼窩あるいは脳室に拡大していた。治療はピロキシカム-カルボプラチンで開始した。好ましい初期反応を示した犬には、低用量強度のカルボプラチン送達の延長を実施した。
犬1は完全寛解(CR)に達したが、治療開始から344日目に安楽死された。
犬2は14回のカルボプラチン送達を受け、治療開始から3年、CR状態でいまだ生存している。
犬3は治療プロトコールをピロキシカム-トセラニブに変更した後、かなりの腫瘍縮小が起こったが再燃のため195日後に安楽死された。(Sato訳)
■術前補助化学放射線療法と外科手術により治療した口腔上顎扁平上皮癌の犬の1例
Neoadjuvant chemoradiotherapy and surgery as treatment for oral maxillary
squamous cell carcinoma in a dog.
Aust Vet J. July 2012;90(7):264-8.
L A Mestrinho; E Bernardo; M M R E Niza; A Lloret; P Buracco
上顎歯肉の扁平上皮癌を12歳オスのヨークシャーテリアで診断した。CTスキャンなど完全な診断的検査後、腫瘍のステージはT3bN1aM0とし、その時点で切除不可能と考えた。
術前補助メガボルテージ放射線療法と、カルボプラチンとドキソルビシンによる術前補助および補助的化学療法の組み合わせで腫瘍の大きさは減少し、手術が可能となった。その後、オーナーの希望により安楽死されるまでの421日間局所再発はなかった。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた推定上眼瞼乳頭腫の扁平上皮癌への悪性転換
Malignant transformation of a putative eyelid papilloma to squamous cell
carcinoma in a dog.
Vet Ophthalmol. 2012 Aug 9. doi: 10.1111/j.1463-5224.2012.01062.x.
Tomo Wiggans K, Hoover CE, Ehrhart EJ, Wobeser BK, Cohen LB, Gionfriddo JR.
6歳メスの避妊済みチワワが、全身性色素性皮膚マスの評価で来院し、そのうち1つは右下眼瞼にあった。免疫抑制療法は受けておらず、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症などの基礎内分泌疾患の病歴及び検査によるエビデンスはなかった。
代表的病変を含む左前腕の皮膚バイオプシーの病理組織、免疫組織化学、PCR検査の結果、ウイルス性乳頭腫症が確認された。また、前腕マスの病理組織検査で、悪性への早期転換の可能性を示唆する上皮異形成の領域を認めた。5ヶ月の経過で右下眼瞼のマスが、眼瞼縁のほとんどを取り囲み覆うように進行した。また眼瞼腫瘍は卵形、茶色の色素性マスから不規則な肌色のマスへと変化していた。
最終検査時に腫瘍の不規則な背側縁の下に角膜潰瘍ができていた。眼瞼マスの病理組織検査結果は扁平上皮癌(SCC)に一致し、PCRによりパピローマウイルスの存在が認められた。
この報告は1頭の成犬に見られた推定上ウイルス性眼瞼乳頭腫から悪性SCCへの転換を述べるものである。(Sato訳)
■6頭の猫における切除不可能な頭および首の扁平上皮癌の治療に対する多様式治療アプローチと多分野にまたがるチャレンジ
Multimodal therapeutic approach and interdisciplinary challenge for the treatment of unresectable head and neck squamous cell carcinoma in six cats: a pilot study.
Vet Comp Oncol. 2012 Mar 23.
Marconato L, Buchholz J, Keller M, Bettini G, Valenti P, Kaser-Hotz B.
猫の頭および頸の扁平上皮癌(SCC)は、予後不良が予測される局所領域疾患である。複雑な解剖学的位置は、積極的な外科的切除を不可能にし、数週から数か月以内に腫瘍が再発する。化学療法に対する反応および放射線療法後の局所コントロールは失敗に終わっている。
この研究で、内科療法(サリドマイド、ピロキシカム、ブレオマイシン)、放射線療法(加速、低分画プロトコール)、外科手術などの多様式アプローチを6頭の猫で試みた。猫は治療によく耐えた。舌下SCCの3頭の猫は生存し、759、458、362日後データ分析終了時、完全寛解だった。喉頭SCCの1頭は51日後に腎臓リンパ腫で死亡し、もう1頭は上顎SCCで診断後82日目に原発性肺腫瘍で死亡した。その2頭のSCCは完全寛解状態だった。1頭のみ、144日後に転移を起こした。それらの有望な予備的結果は、これからの研究においてさらに評価を得るだろう。(Sato訳)
■非扁桃扁平上皮癌から肋骨への転移を認めた犬の1例
Rib metastases from a non-tonsillar squamous cell carcinoma in a dog.
J Small Anim Pract. March 2011;52(3):163-7.
B S Clarke; P A Mannion; R A S White
15歳オスの去勢済みアイリッシュセッターの口腔扁平上皮癌(SCC)により二次的に発生した転移性の肋骨への拡がりを報告する。右上切歯領域に組織学的に確認された急速に成長するSCCが存在した。胸部エックス線検査で第三肋骨体、第五、第七肋軟骨部に関係する骨病変を認めた。口腔マスに対する対症療法として、吻側部分上顎切除を実施し、第三肋骨の病変のコアバイオプシーを実施した。肋骨病変は転移性SCCとして病理組織学的に確認された。
口咽頭SCCの文献および非扁桃SCCの潜在的転移性のレビューが、特に転移性骨疾患に存在する。この症例報告は、非扁桃扁平上皮癌の行く末の例に対する治療および予後に、転移性の骨疾患の関わりの可能性を示唆する。(Sato訳)
■犬の扁桃扁平上皮癌-臨床症例44頭の多施設回顧的レビュー
Canine tonsillar squamous cell carcinoma -- a multi-centre retrospective review of 44 clinical cases.
J Small Anim Pract. July 2011;52(7):359-64.
A Mas; L Blackwood; P Cripps; S Murphy; J de Vos; N Dervisis; M Martano; G A Polton
目的:扁桃扁平上皮癌の犬の呈する臨床症状、治療、生存性を調査し、可能であれば有効な予後指標を確認する。
方法:44頭の犬の医療記録を回顧的に再調査した。臨床症状、臨床ステージ、診断時期、治療、結果を記録した。適切にカプラン-マイアー、ログランク、スチューデントt検定、クラスカル-ウォリス、カイ二乗/フィッシャーの正確検定を使用してデータを分析した。
結果:多く見られた臨床症状は発咳(12頭、27%)、リンパ節増大(11頭、25%)、嚥下障害(11頭、25%)だった。食欲不振と嗜眠は一般的ではないが、有意に予後不良と関係した。どの治療様式を使用しても生存期間は短く、この研究の全ての犬の生存期間中央値は179日だった。しかし、長期に生存した犬も少数いた。
臨床意義:食欲不振や嗜眠を呈した扁桃扁平上皮癌の犬は、それらの臨床症状がない犬よりも生存期間が短かった。外科手術、化学療法、放射線療法は扁桃扁平上皮癌を診断された犬の生存期間中央値を延ばすと思われるが、その癌に対する非常に効果的な治療はない。(Sato訳)
■角膜扁平上皮癌の犬2例
Corneal squamous cell carcinoma in two dogs.
Vet Ophthalmol. July 2010;13(4):266-9.
Naoaki Takiyama, Eri Terasaki, Masami Uechi
目的:犬の角膜扁平上皮癌(SCC)の2症例を報告する
手順:2症例の角膜腫瘍は表層角膜切除法により切除した。角膜組織の免疫組織化学検査を抗-p53抗体を使用して行った。
結果:症例の顕著な特徴は、色素性角膜炎および慢性角膜炎の臨床病歴があった。2頭とも角膜のマスは表層角膜切除法で外科的に除去し、組織学的に角膜SCCと診断した。両マスともp53に陰性だった。慢性角膜刺激を減少させるため、0.1%ヒアルロンさんナトリウム点眼液を使用した。15ヶ月以上の術後追跡調査後も2症例の腫瘍の再発はない。
結論と考察:角膜SCCの主要病因として慢性角膜刺激が疑われる。マスの適切な外科的除去、その後の角膜炎の保存療法は、それら2症例で効果的な治療だった。(Sato訳)
■口腔扁平上皮癌の猫のCTの特徴:18症例(2002-2008)
Computed tomographic features of oral squamous cell carcinoma in cats: 18 cases (2002-2008).
J Am Vet Med Assoc. February 2010;236(3):319-25.
Andrew Gendler, John R Lewis, Jennifer A Reetz, Tobias Schwarz
目的:猫の口腔扁平上皮癌(SCC)のCT所見の特徴を述べ、生存期間に関係する画像特性を確認する
向性:回顧的症例シリーズ
動物:口腔SCCを診断された18頭の猫
方法:口腔SCCを持つ18頭の猫の医療記録から、病歴;臨床、検査、診断的画像所見;治療;生存期間に関する情報を入手した。口腔SCCに関する特徴を確認するため、CT画像を検討した。CT特性と生存期間の関係を評価した。
結果:CT画像において以下の部位の中心にSCCが位置した:舌下あるいは舌領域(n=7)、上顎骨(5)、頬側粘膜(4)、下顎骨(4)、咽頭粘膜(2)、軟口蓋粘膜(1)、口唇(1)。それらの結果は軟口蓋を除く全ての部位の口腔検査の結果と一致した(CT、1頭;口腔検査、4頭)。CT画像において上顎骨マスの広がりは、多くの場合眼窩まで到達していることが観察された(5頭)。不均一なコントラスト増強が一番多く認められた(8/18)。骨融解性マス病変は9頭の猫のCT画像で認められた。マスの大きさ、減衰、リンパ節の幅など、認められた定量的CT特性のいずれも生存期間に相関しなかった。
結論と臨床関連:猫の口腔扁平上皮癌の一般的なCT特性は、舌下および上顎部、顕著な不均一コントラスト増強、骨融解だった。CTはマスの広がり、リンパ節の拡大の測定に使用されると思うが、結果は生存期間と相関しなかった。(Sato訳)
■猫の皮膚扁平上皮癌内の2種類のパピローマウイルスの検出
Detection of two different papillomaviruses within a feline cutaneous squamous cell carcinoma: case report and review of the literature.
N Z Vet J. August 2009;57(4):248-51.
J S Munday, M Dunowska, S De Grey
症例病歴:15歳の茶白猫が鼻鏡にできた直径1cmの赤い潰瘍病変で来院した。
臨床所見と診断:バイオプシーサンプルの組織検査で、病変は扁平上皮癌(SCC)と判明した。PCRにより2つの異なるパピローマウイルスからのDNAシーケンスを増幅した。1つのシーケンスはFdPV-2からのもので、過去に猫の皮膚SCCから増幅されていた。しかしもう1方は過去に報告されておらず、新規猫パピローマウイルスが示唆される。
臨床関連:ヒトで日光が暴露される皮膚において、パピローマウイルスがSCC発症を促すエビデンスがある。これはFdPV-2以外のパピローマウイルスと、猫の単一の腫瘍内で複数のパピローマウイルスが検出された最初の報告である。そのパピローマウイルスがこのSCCの発症および振る舞いに影響を及ぼしたかどうかは現在不明であるが、この症例はパピローマウイルスと猫皮膚SCCの間の関係のさらなる所見を提供する。もしSCC発症にパピローマウイルスの影響が見つかれば、猫のそれらの一般的によく見られる腫瘍を防ぐ新しい方法が可能になるかもしれない。(Sato訳)
■口腔扁平上皮癌が存在する猫と存在しない猫における血漿葉酸塩およびホモシステイン濃度の評価
Evaluation of plasma folate and homocysteine concentrations in cats with and without oral squamous cell carcinoma
Vet Comp Oncol. December 2008;6(4):248-256. 26 Refs
A. K. Fulmer, G. E. Mauldin, G. N. Mauldin
猫口腔扁平上皮癌(SCC)は、積極的な治療でさえ長期予後は非常に悪い、痛烈な疾患である。葉酸塩およびホモシステイン異常は、頭部および頚部SCCと診断されたヒトで認められる。
この研究の目的は、口腔SCCと診断された猫(n=13)における血漿葉酸塩およびホモシステイン濃度を測定し、他の腫瘍と診断された猫(n=25)、口腔非腫瘍性疾患(n=6)、健康な猫(n=24)の濃度と比較することだった。口腔SCCの猫における血漿葉酸塩濃度の中央値は14.7ng/mlで、血漿ホモシステイン濃度の中央値は2.61μg/mlだった。それらの濃度は他の群のものと有意差がなかった。
これは、ヒトと比較して猫のこの腫瘍の病因に異なる因子が関与するかもしれないが、猫の大規模頭数の評価で群間の相違を確認する必要があるかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■新しく開発されたリポソーム光増感剤を用いた猫の皮膚扁平上皮癌の光線力学療法:薬剤安全性と効果を考慮した予備研究結果
Photodynamic therapy of feline cutaneous squamous cell carcinoma using a newly developed liposomal photosensitizer: preliminary results concerning drug safety and efficacy
J Vet Intern Med. 2007 Jul-Aug;21(4):770-5.
Julia Buchholz, Melanie Wergin, Heinrich Walt, Susanna Grafe, Carla Rohrer Bley, Barbara Kaser-Hotz
背景:猫における扁平上皮癌は一般的な皮膚腫瘍である。我々は、最低限の侵襲、簡単に実施でき良好な美観結果を達成できるものとして新しいリポソーム光増感剤を用いた光線力学療法を調査した。
目的:この研究の目的は、光増感剤メタ-(テトラヒドロキシフェニル)クロリン(m-THPC)のリポソーム形態を用いる毒性の可能性を評価、述べることと、好ましい薬物動態が良好な腫瘍反応およびコントロールに至るかを調査することだった。
動物:20件の自発皮膚扁平上皮癌がある18頭の飼育猫を研究した。
方法:新しい光増感剤のリポソーム形態を用いた光線力学療法を実施した。毒性、腫瘍反応、腫瘍コントロールをそれぞれ評価した。
結果:新しいリポソーム形態により治療した猫で全身的な副作用は観察されなかった。軽度の紅斑および浮腫のような局所毒性が猫の15%に見られた。全ての猫は治療に反応し、完全寛解率は100%だった。全体の1年コントロール率は75%だった。腫瘍再発率は20%で再発時期の中央値は172.25±87.1日だった。
結論と臨床重要性:新しいリポソーム光増感剤は、猫の扁平上皮癌に対する使用で成功し、よく許容した。リポソーム形態で全身性副作用は観察されなかった。リポソーム薬剤の好ましい薬物動態が、良好な腫瘍反応をもたらせた。(Sato訳)
■猫の鼻鏡表在扁平上皮癌の光ダイナミック療法:55例
Photodynamic therapy of superficial nasal planum squamous cell carcinomas in cats: 55 cases
J Vet Intern Med. 2008 Nov-Dec;22(6):1385-9.
N H Bexfield, A J Stell, R N Gear , J M Dobson
背景:扁平上皮癌(SCCs)は一般的な猫の皮膚腫瘍である。光感作性剤5-アミノレブリン酸(5-ALA)局所投与と高輝度赤色光源を用いた光力学療法(PDT)を調査した。
仮説:猫のSCCsにPDTは安全で効果的な治療法である。
動物:鼻鏡表在扁平上皮癌の飼育猫55頭
方法:前向き非コントロール臨床試験。局所5-ALAとピーク波長635nmの光でPDTを実施した。副作用、反応、腫瘍コントロール性を評価した。
結果:53/55(96%)頭の猫は治療に反応し、完全寛解は47/55(85%)頭だった。6頭(11%)の猫は部分反応を示した。1回の治療で完全寛解を示した47頭のうち、24頭(51%)は再燃し、再発までの期間の中央値は157日(95%信頼区間、109-205日)だった。22頭は繰り返しPDTを実施し、追跡調査期間中央値1146日の間、23頭(45%)は生存し無腫瘍、17頭(33%)は腫瘍の再発のため安楽死、11頭(22%)は他の理由で安楽死された。治療後、一時的な軽度局所副作用のみ観察された。
結論と臨床意義:5-ALAおよび赤色光源を用いたPDTは、猫の鼻鏡表在扁平上皮癌の治療に安全で、よく許容し効果的で、従来の治療の代替療法となる。初回反応率は高いが、この治療は全ての例で永続的寛解あるいは治癒をもたらさなかった。(Sato訳)
■多中心性上皮内扁平上皮癌の猫におけるイミキモッド5%クリーム(Aldara)の使用:12例(2002-2005)
Use of imiquimod 5% cream (Aldara) in cats with multicentric squamous cell carcinoma in situ: 12 cases (2002-2005)
Vet Comp Oncol. March 2008;6(1):55-64. 28 Refs
V. L. Gill, P. J. Bergman, K. E. Baer, D. Craft, C. Leung
多中心性上皮内扁平上皮癌(MSCCIS)は、猫の扁平上皮癌の異型であり、ボーエン様疾患と一般に呼ばれる。イミキモッド5%クリーム(Aldara)は新しい免疫反応修正剤(IRM)で、人におけるボーエン病の治療で効果があると報告されている。
この研究の目的は、イミキモッド5%クリームで治療したMSCCISの猫における臨床所見、治療プロトコール、生存性を述べ、イミキモッド5%クリームの効果を研究することだった。研究集団におけるパピローマウイルス群得意抗原の発現も判定した。医療記録の再調査から、12頭の猫はMSCCISの組織診断およびイミキモッド5%クリームによる治療を確認した。全ての猫で初期病変はイミキモッド5%クリームに反応した。ほとんどの猫(75%)は新しい病変が発生した。
治療した全ての猫で新規病変もイミキモッド5%クリームに反応した。5頭の猫(41%)は、局所紅斑(25%)、肝酵素上昇および好中球減少(8%)、一部食欲不振および嘔吐(8%)などイミキモッド5%クリーム使用に関係すると疑われる副作用があった。この研究の猫で、カプラン-メイヤー治療期間中央値および生存期間確率中央値はそれぞれ1189日だった。time
to failure modelは多くの猫が上記で見積もられた中央値以前に分析から検閲されたことにより生じた。このモデルは243日とより生存期間中央値が短い結果となった。患畜関連、腫瘍関連または治療関連予後変動値は認められなかった。パピローマ群得意抗原の発現は見られなかった。イミキモッド5%クリームは大多数の猫でよく許容すると思われ、この疾患の猫へのその有効性をさらに調査するための研究が必要である。(Sato訳)
■猫の扁平上皮癌の電気化学療法による治療:予備報告
Electrochemotherapy for the treatment of squamous cell carcinoma in cats: A preliminary report
Vet J. September 2007;0(0):.
Enrico P Spugnini, Bruno Vincenzi, Gennaro Citro, Giuseppe Tonini, Ivan Dotsinsky, Nikolay Mudrov, Alfonso Baldi
皮膚の扁平上皮癌(SCC)は猫でよく述べられる。報告される治療は、外科、放射線療法、光力学療法などである。この予備研究は、それら病変のブレオマイシン(+より一様な分布のためのヒアルロニダーゼ)の局所投与と透過二相性電気パルスを組み合わせた管理を報告する。SCCグレードT(2)-T(4)の猫9頭を5年以上治療し、各猫は1週間隔電気化学療法(ECT)の2回セッションを受けた。この治療の副作用は最小限で、鼻部に自己制御できるものから軽度の紅斑が見られた。7頭の猫(77.7%)は完全な反応が3年間続いた。ECTは猫の日光誘発性扁平上皮癌の安全で効果的な治療オプションと思われ、更なる調査を正当化するものである。(Sato訳)
■猫扁平上皮癌の9日加速照射法
A nine-day accelerated radiation protocol for feline squamous cell carcinoma
Vet Radiol Ultrasound. 2007 Sep-Oct;48(5):482-5.
Janean L Fidel, Rance K Sellon, Robert K Houston, Betsy A Wheeler
口腔扁平上皮癌の猫9頭に加速照射法(9日で3.5Gy14分割)を行った。照射間隔6時間で1日2回放射線照射した。全体の生存期間中央値は、86±110日だった。部分反応を示した猫(n=6)の生存期間中央値は60±7日、完全寛解にいたった猫(n=3)のそれは298±187日だった(P=0.0639)。全ての猫で加速プロトコールはよく許容し、早発及び晩発毒性は管理可能だった。プロトコールの更なる修正が生存率を延長するために望まれる。(Sato訳)
■鼻鏡の猫扁平上皮癌に対する(90)ストロンチウムプレシオセラピーの回顧的研究
A retrospective study of (90)Strontium plesiotherapy for feline squamous cell carcinoma of the nasal planum
J Feline Med Surg. June 2006;8(3):169-76.
Mark Goodfellow, Alison Hayes, Sue Murphy, Malcolm Brearley
組織学的(n=14)、細胞学的(n=1)に確認した鼻部扁平上皮癌を、(90)ストロンチウムプレシオセラピーで治療し、その反応を回顧的に調査した。治療は、50Gyの総照射量で2mmの深度で、10日間隔の5分画で照射した。それらの猫のうち、11頭はステージT(2)、3頭はT(is)、1頭は細胞診のためステージングできなかった。11頭の猫は、治療の最初のサイクルで完全寛解(6-8週後肉眼病変なし)に達し、部分寛解を示した2頭は2度目の治療サイクルで完全寛解に達した。残りの2頭は治療後部分寛解に達したが、さらなる処置を望まなかった。それら2頭は疾患の進行により81日目と142日目に安楽死された。完全寛解に達した85%の猫は、134-2043日(中央値652日)の追跡調査期間中、再発しなかった。長期疾患フリー生存期間に加え、(90)ストロンチウム療法はオーナーの望む美容面でも満足のいくものだった。それらの結果は、猫鼻鏡の表層扁平上皮癌が(90)ストロンチウムプレシオセラピーにすばらしい反応を示し、他の現在利用できる治療よりも多くの利点を持つことを示す。(Sato訳)
■プレドニゾンとシクロスポリンの長期投与を行った犬における複数パピローマウイルス関与表皮過誤腫と扁平上皮内癌
Multiple Papillomavirus-Associated Epidermal Hamartomas and Squamous Cell Carcinomas In Situ in a Dog Following Chronic Treatment with Prednisone and Cyclosporine
Vet Dermatol 16[5]:338-345 Oct'05 Case Report 38 Refs
Mary Beth Callan, Diane Preziosi and Elizabeth Mauldin
免疫介在非再生性貧血の管理でプレドニゾンとシクロスポリンの長期免疫抑制療法を行っていた4歳避妊済みトイフォックステリアに複数の表皮過誤腫および扁平上皮内癌が発症した。免疫組織化学染色で、3年間の観察中発症した良性(n=19)および悪性(n=8)皮膚病変内のパピローマウイルス抗原が陽性で、顆粒細胞層内のケラチノサイトが陽性に染色されることが最も多かった。インターフェロン-アルファによるパピローマウイルス感染の治療は、下痢および肝酵素の上昇から2週間で中止した。シクロスポリンおよびプレドニゾンを中止しても、この犬の病変は持続し、新たな病変も発生した。これは、長期シクロスポリンおよびプレドニゾン投与後の犬に起きた、パピローマウイルス関与扁平上皮内癌の最初の症例報告である。(Sato訳)
■犬の粘膜、皮膚とその位置の扁平上皮癌における新規パピローマウイルスの検出
Detection of Novel Papillomaviruses in Canine Mucosal, Cutaneous and in situ Squamous Cell Carcinomas
Vet Dermatol 16[5]:290-298 Oct'05 Clinical Study 35 Refs
N. Zaugg, G. Nespeca, B. Hauser, M. Ackermann and C. Favrot *
パピローマウイルス(PV)がヒト皮膚扁平上皮癌(SCC)のサンプルでよく検出される。しかし、犬でそのような癌の発症に於けるそれらウイルスの役割は、議論され続けている。約100のヒトPVsが知られている一方、犬の口腔PV(COPV)1つのみが認められ、広く研究されているだけである。ゆえに我々は、3つの異なる型の犬SCCsを呈す42個のパラフィン包埋サンプルを分析するため、古典的犬および猫PVsの検出に適している狭範囲ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、同様にヒトで種々の新規PVsの検出に使用している広範囲PCRを利用した。種々の非腫瘍状態の10個の皮膚組織サンプルをコントロールとした。陰性コントロールで陽性と反応したものがなかった一方、検査したSCCサンプルの21%でPVDNAが発見された。興味深いことに古典的COPVは1つのサンプルからしか増幅されず、他の陽性サンプルは、これまで知られていない種々のPVsに関与していた。この研究で一部犬SCCはPVsに感染し、現存する犬PVsの遺伝変化を示唆する。ゆえにそれら結果は、犬皮膚癌の発症に於けるPvsの役割をさらに研究する理由となるだろう。(Sato訳)
■犬の口腔非扁桃扁平上皮癌におけるピロキシカムとカルボプラチンの併用療法:ヒト頭部および頚部扁平上皮癌の犬モデルの予備研究と文献回顧
Piroxicam and Carboplatin as a Combination Treatment of Canine Oral Non-Tonsillar Squamous Cell Carcinoma: A Pilot Study and a Literature Review of a Canine Model of Human Head and Neck Squamous Cell Carcinoma
Vet Comp Oncol 3[1]:16-24 Mar'05 Original Article 52 Refs
J.P. de Vos, A.G.D. Burm, A.P. Focker, H. Boschloo, M. Karsijns and I.
van der Waal
進行した非扁桃口腔扁平上皮癌(SCC)の犬7頭における、カルボプラチンおよびピロキシカムの組み合わせによる治療結果を回顧的に分析した。この多剤プロトコールに全頭よく許容し、7頭中4頭が追加の外科切除もせずに完全寛解を起こした。追加外科切除は、1頭で転移リンパ節の切除、1頭で内科療法後部分反応に達した残存腫瘍の切除に必要だった。全頭の追跡期間中央値は534日だったが、この症例群の再発までの期間、進行までの期間、総生存性はわかっていない。我々の研究で、動物の頭数は限られているが、この多剤アプローチは、犬の口腔非扁桃扁平上皮癌の有効な治療オプションで、広く応用できるものである。(Sato訳)
■正常および腫瘍性犬ケラチン生成細胞におけるシクロオキシゲナーゼ-2の発現と制御
Expression and Regulation of Cyclooxygenase-2 in Normal and Neoplastic Canine Keratinocytes
Vet Comp Oncol 2[4]:222-233 Dec'04 Original Article 46 Refs
N. Pronovost, M. M. Suter, E. Mueller, J. Sirois and M. Dore *
犬で扁平上皮癌(SCC)は良く見られる癌の一つであるが、比較的その発生に関与する分子的事象はほとんど知られていない。人や動物の種々の癌の病因で、増大所見にシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)が関与する。COX-2の過剰発現は近年犬のSCCsで示されている。我々の研究目的は、犬のSCC腫瘍形成でCOX-2の関連を調査するためのインビトロ系を提供する正常および腫瘍性犬ケラチン生成細胞(CKs)におけるCOX-2の発現と制御を特徴付けることだった。正常なCKsと腫瘍性CKs(SCCs)から得た細胞系を、作用薬を入れ、または入れずに培養し、免疫ブロット法、免疫細胞化学、ラジオイムノアッセイ、細胞増殖アッセイをCOX-2発現と作用の特徴を示すのに使用した。
結果は、腫瘍性ケラチン生成細胞は正常な細胞よりも基礎COX-2発現が高いことを示した。両細胞系で、腫瘍プロモーターホルボール12-ミリスチン酸13-アセテートによる刺激は、時間依存性のCOX-2蛋白増加を誘発し、COX-2誘発は正常CK細胞よりもSCCの方がより強かった。さらに基礎および刺激状況下でSCC細胞はCK細胞よりも有意にPGE2を産生した(P<0.05)。選択的COX-2阻害剤のNS-398はPGE2合成を抑制し、CKやSCC細胞の増殖を低下させた(P<0.05)。一まとめに我々の結果は、犬腫瘍性ケラチン生成細胞SCC細胞系は、正常ケラチン生成細胞CK細胞系よりCOX-2を発現させ、PGE2を産生することを示し、このように、犬のSCCsのCOX-2発現を高める分子基準を調査するインビトロ系を提供する。(Sato訳)
■病巣内カルボプラチン注入と表面放射線療法を組み合わせたネコの鼻平面のステージが進んだ扁平上皮癌の治療結果:予備研究
Results From the Treatment of Advanced Stage Squamous Cell Carcinoma of the Nasal Planum in Cats, Using a Combination of Intralesional Carboplatin and Superficial Radiotherapy: A Pilot Study
Vet Comp Oncol 2[2]:75-81 Jun'04 Original Article 32 Refs
J. P. de Vos, A. G. O. Burm and B. P. Focker
鼻平面に進行したステージの扁平上皮癌(SCC)を持つネコ6頭を、表層放射線照射と病巣内カルボプラチン投与を組み合わせて治療した。この多様式プロトコールは、ほとんどのネコが良く許容し、全てのネコで完全寛解をもたらした(100%)。全てのネコの追跡期間中央値は268日で、再発、進行までの中央値、全体の生存率はまだ出ていない。この疾患の他の研究に比べ、頭数が限られ、追跡期間中央値は比較的短いが、我々の研究で、放射線療法と病巣内カルボプラチン投与の組み合わせが、ネコの鼻平面の進行したSCCの有効な治療オプションであり、ここに示した多様式アプローチの更なる応用を正当化するものと思われる。(Sato訳)
■イヌの口腔扁平上皮癌の治療で、シスプラチン、ピロキシカムの併用
Evaluation of Cisplatin Combined with Piroxicam for the Treatment of Oral Malignant Melanoma and Oral Squamous Cell Carcinoma in Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[3]:388-394 Feb 1'04 Prospective Trial 25 Refs
Pedro A. Boria, DVM; Daryl J. Murry, PharmD; Peter F. Bennett, BVSc, DACVIM; Nita W. Glickman, MPH, PhD; Paul W. Snyder, DVM, PhD, DACVP; Brenna L. Merkel, PharmD; Deborah L. Schlittler, DMV; Anthony J. Mutsaers, DVM; Rose M. Thomas; Deborah W. Knapp, DVM, DACVIM
目的:ピロキシカムと共にシスプラチン投与時の最大耐量(MTD)、口腔悪性メラノーマ(OMN)、口腔扁平上皮癌(SCC)のイヌでピロキシカムにシスプラチンを併用したときの毒性、腫瘍を持つイヌでシスプラチンの薬物動態に対するピロキシカムの影響を判定する
構成:前向き無作為臨床試験
動物:25頭のイヌ
方法:イヌをシスプラチン(生食で6時間利尿をかけ段階的増量)とピロキシカム(0.3mg/kg、PO、毎24時間)の組み合わせで治療した。最初のシスプラチン投与量(50mg/㎡)を、MTDに達するまで5mg/㎡ずつ増量させた。腫瘍ステージと大きさを治療中6週間隔で判定した。臨床試験中シスプラチンとピロキシカムの併用投与されているイヌと、シスプラチン単独で治療されているイヌのシスプラチン薬物動態を判定した。
結果:臨床試験は、OMMのイヌ11頭とSCCのイヌ9頭で行った。ピロキシカムを組み合わせて投与したときのシスプラチンのMTDは50mg/㎡だった。SCCの9頭中5頭、OMMの11頭中2頭に腫瘍寛解が見られた。よく見られた異常は、腎中毒だった。シスプラチン単独投与のイヌのシスプラチンクリアランスは、ピロキシカムと併用したイヌのものと有意差を示さなかった。
結論と臨床関連:シスプラチンとピロキシカムの併用投与は、OMMそしてSCCに対し抗腫瘍効果を持つ。毒性のレベルは許容可能だが、腎機能は注意深くモニターすべきである。(Sato訳)
■切除不可能なネコ口腔扁平上皮癌に対する放射線感受性増強物質としてのゲムシタビン
Gemcitabine as a Radiosensitizer for Nonresectable Feline Oral Squamous Cell Carcinoma
J Am Anim Hosp Assoc 39[5]:463-467 Sep-Oct'03 Original Report 32 Refs
Pamela D. Jones, DVM; Louis-Philippe de Lorimier, DVM; Barbara E. Kitchell, DVM, PhD, DACVIM; John M. Losonsky, DVM, MS, DACVR
扁平上皮癌(SCC)はネコの一般的な悪性口腔腫瘍で、舌下部が好発部位である。遠隔転移での死亡はまれで、患者の多くは、進行した局所病変や局所治療が不首尾に終わり死亡する。外科的切除は最も信頼できる治療オプションである。しかし、その疾患経過で扁平上皮癌は遅れて診断されるため、完全な外科切除は不可能なことが多い。悪いことに、切除不可能なネコ口腔扁平上皮癌は、化学療法や軽減治療プロトコールとして主に使用される放射線療法のような、通常の治療に反応が悪い。ゲムシタビンは、腫瘍組織を放射線の効果に敏感にさせるように働く放射線感受性増強物質である。この研究の目的は、手術ができないネコの口腔扁平上皮癌の治療として、緩和放射線療法と併用した低用量ゲムシタビンの効果を評価することである。
局所に進行した口腔扁平上皮癌を持つ8頭のネコに、週2回緩和放射線療法(6Gy分画、総最小腫瘍投与線量36Gy)に、週2回の低用量(25mg/㎡)のゲムシタビンを組み合わせて投与した。局所放射線反応を示した患者はいなかった。合計39回ゲムシタビンを投与し、1頭だけグレードIの好中球減少(好中球数<1500/μl)を示した。反応として、2頭は完全寛解、4頭は部分寛解、2頭は治療に反応しなかった。生活の質評価スコアーは記録しなかったが、オーナーは主観的な改善を報告した。寛解期間中央値は42.5日(範囲、11-85日)だった。生存期間中央値は111.5日(範囲、11-234日)だった。
著者は、過去に報告された生存期間以上の改善を示さなかったが、このプロトコールはよく許容され、主観的にゲムシタビンは一時的な生物学的効果を提供する事は明らかだと締めくくる。次の研究は、放射線療法と組み合わせた放射線感受性増強物質として、ゲムシタビンの使用をさらに探求することが指示される。(Sato訳)
■家庭猫の口腔内扁平上皮癌における環境とライススタイルの危険因子
Environmental and Lifestyle Risk Factors for Oral Squamous Cell Carcinoma in Domestic Cats
J Vet Intern Med 17[4]:557-562 Jul-Aug'03 Retrospective Study 38 Refs
Elizabeth R. Bertone, Laura A. Snyder, Antony S. Moore
口腔内扁平上皮癌(SCC)は猫の悪性腫瘍としては一般的であるが、その病因については現在の所あまり知られていない。我々は1994年から2000年の間に獣医科病院に紹介された、組織学的に口腔内SCCと確認された36頭の猫と、コントロールとなる腎疾患の112頭の猫において、口腔内SCCの危険性と、環境中のたばこの煙、ノミ予防製品、食餌のような要因との関係を調査した。統計学的特性、ライフスタイル要因、病気前2年間の化学物質の暴露レベルの評価のため、アンケートはすべての調査群とコントロール群猫の飼い主に送られた。多変量相対リスク(RR)が様々な要因と口腔内SCCの危険因子との関係を評価するために用いられた。
ノミ予防製品の使用と食餌は、口腔内SCCの危険性と明らかに関係していた。ノミとり首輪をしている猫は他の因子を調整した後に、非使用者の5倍のリスクであった。(RR = 5.3; P = .002) 対照的に、ノミ取りシャンプーは実質上リスクを軽減した。大部分ドライフードを食べている猫と比較すると、高率で缶フードを食べている猫はリスクが3倍に増加した(RR = 3.6; P = .014)。マグロの缶詰は独立的にリスクに関連していた(RR = 4.7; P = .004)。家庭環境のタバコの煙は有意ではなかったが、2倍のリスクであった(P = .11)。この研究の結果はノミ予防製品、食餌、おそらくは環境のタバコの煙が口腔内SCCのリスクに関連していることを示唆しており、これらの関係へのさらなる調査が正当化されることを示唆した。(Dr.Massa訳)
■ ネコの口腔扁平上皮癌の、緩和放射線治療への反応。
Bregazzi VS et al; Vet Radiol Ultrasound
42[1]:77-9 2001 Jan-Feb; Response of feline
oral squamous cell carcinoma to palliative
radiation therapy.
進行した口腔内扁平上皮癌を持つ7匹の猫は、緩和放射線療法によって治療されました。8グレイ(Gy)フラクションのメガボルテージ放射を0、7、21日目に放射し、総量は24Gyでした。治療領域は、あご、口腔咽頭、逆咽頭のリンパ絞輪部、および扁桃でした。化学療法の補助療法は不定でした。年齢は、中央年齢が15歳で13歳から18歳まででした。7匹の猫のうち3匹(43%)は、治療を完了しませんでした。
腫瘍成長および/または放射線副作用のため、6匹の猫が60日の中間生存期間(42から97日の範囲、平均=
63 +/ -8.4日 )で安楽死させられました。放射線療法合併症または病気の進行は、7頭中6頭(85.7%)の猫に発現し、粘膜炎、漿液血液状の口腔分泌物、疼痛、嚥下困難などの、不都合な臨床症状を見せました。
これらのデータは、粗い分割放射線療法が、手術不可能な口腔扁平上皮癌の猫での緩和をもたらさなかったことを示唆します。(Dr.Massa訳)
コメント:「口腔内腫瘍には放射線治療」と単純に思いがちですが、必ずしもそうではないようです。
しかし放射線治療も日々進歩しているようなので、これからますます治療成績が良くなるでしょう。日本でも多くの施設で放射線治療が受けられるようになるといいですよね。