■肛門嚢炎の190頭の犬の治療、結果、再発および併発疾患の回顧的研究
A retrospective study of treatment, outcome, recurrence and concurrent diseases in 190 dogs with anal sacculitis
Vet Dermatol. 2023 Sep 20.
doi: 10.1111/vde.13205. Online ahead of print.
Katinka Hvitman-Graflund , Tim Sparks , Katarina Varjonen

背景:肛門嚢炎(AS)の治療、再発率を報告する研究はほとんどない

目的:一次診療施設においてASの犬の管理、再発、併発疾患を報告する回顧的研究。

動物:スウェーデンの190頭の飼い犬

素材と方法:2018年から2021年までのASと診断された犬の臨床記録を再検討し、管理、臨床的解消までの期間、再発事象の数、併存疾患を記録した。

結果:190頭の犬がASの290事象を発症していた。最も一般的な管理(290事象中235事象(81.0%))は、肛門嚢の洗浄±抗菌製剤の注入±非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)の処方で、235事象のうち213事象(90.6%)が解消した。解消までの期間中央値は1週間(範囲1-16週間)で、290事象のうち205事象(70.7%)は1週間以内に解消が見られた。ASの1回の事象は、190頭中126頭(66.3%)で発症した。皮膚アレルギー疾患の併発した犬は、他の併存疾患の犬に比べて再発する確率が高かった(p<0.001)。皮膚アレルギー疾患は、診療集団よりもASの犬でより多く発生した(p<0.001)。

結論と臨床関連:肛門嚢の局所治療±全身性NSAIDは、最も一般的な治療で、大多数の犬の臨床的解消に導く。皮膚アレルギー疾患は、最も一般的な併発疾患で、他の疾患と比べてより高いASの再発率を持ち、診療集団よりもより高い有病率を示す。皮膚アレルギー疾患の管理がASのリスクを減らすかどうか調べる今後の研究が必要である。(Sato訳)
■犬の指間フルンケル症とノギ遊走による指間膿瘍の鑑別に超音波検査所見は有効かもしれない
Ultrasonographic findings may be useful for differentiating interdigital abscesses secondary to migrating grass awns and interdigital furunculosis in dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2023 Jul 12.
doi: 10.1111/vru.13273. Online ahead of print.
Marion Fenet , Catherine Layssol-Lamour , Charline Pressanti , Amaury Briand , Loic Desquilbet , Harriet Hahn

草のノギ遊走とフルンケル症は犬で一般的な疾患で、同じような臨床症状で時に同じような超音波像を示す指間の皮下病変を誘発する可能性があるが、異なる治療が必要である。

この回顧的多施設分析研究の目的は、指間フルンケル症とノギの遊走による膿瘍との鑑別に、疫学、臨床および超音波検査の特徴が使用できるかどうかを判定することだった。

指間超音波検査を行った59頭の犬を含めた(指間フルンケル症(IDF)、n=27;ノギ遊走による指間膿瘍(IAGA)、n=32)。超音波画像は、診断を知らされていない2人の観察者に、各犬に対し9つの質的および4つの量的パラメーターを用いてグレードを付けてもらうことで再検討した。

両群において、痒み/舐める(IDF74%、IAGA70%)、指間の傷の分泌物(各群63%)、前肢の関与(IDF88%、IAGA75%)は一般的な特徴だった。超音波検査で、皮下の複数線状の高エコーの主要なエレメントがほとんどの犬で確認された(IDF85%、IAGA100%)。一方向でこのエレメントを描出する能力(P<0.01)、異なる方向で追加の高エコー性線状エレメントの欠如(P<0.01)、取り巻く低エコー性のhalo(P<0.05)は、ノギ遊走による指間膿瘍の犬で有意により一般的だった。主要な複数の線状エレメントの長さに対する0.83cmのカットオフ値は、ノギ遊走の診断において感受性91%、特異性87%を提供した。

それらの超音波検査の特徴を持つ犬において、草のノギによる二次的な指間膿瘍の鑑別診断を優先させることを所見は支持した。(Sato訳)
■局所日光皮膚炎に対し局所イミキモドで治療した犬の1例
Topical imiquimod therapy for localized solar dermatitis in a dog
Top Companion Anim Med. 2022 May 27;100673.
doi: 10.1016/j.tcam.2022.100673. Online ahead of print.
Brittany McHale , Frane Banovic

犬において慢性の日光暴露は、日光あるいは紫外線皮膚炎として称される皮膚の臨床的変化を起こす可能性がある。

5歳、去勢済みオスのアメリカンブルドッグが、左側腹側体幹部分の色素のない部分に広がる局在性片側性紅斑、プラーク、脱毛、面疱、出血性水疱を呈した。組織検査でケラチン生成細胞形成異常を伴う過形成表皮、表層真皮弾力線維症、時折破裂を伴う複数の毛包嚢胞(フランクローシス)と共に、病歴と特徴的な皮膚病変は日光皮膚炎/紫外線角化症と一致した。

皮膚掻爬は陰性で、二次的な膿皮症に対し、経口クリンダマイシン8週間の治療を開始した。抗生物質療法から2か月後、出血性水疱は解消したが、硬結および面疱を伴う紅斑性日光/紫外線皮膚病変は持続した。イミキモド5%クリームを週に3回、8週間局所塗布し、紅斑は解消したが、非炎症性面皰のいくつかは残存した。エラスチンおよびKi67に対する染色で、毛包漏斗におけるケラチン生成細胞過形成と毛包周辺のエラスティック繊維の変化を認め、毛包嚢胞の閉鎖と形成を誘導しているかもしれない。

イミキモドは日光皮膚炎に対し治療オプションとして長く提案されているが、これは犬のその効果を詳細にしめる最初の既知の症例報告である。(Sato訳)
■犬の落葉状天疱瘡の治療において経口修正シクロスポリンのステロイド補助効果の回顧的評価
A Retrospective Evaluation of the Steroid-Sparing Effect of Oral Modified Ciclosporin for Treatment of Canine Pemphigus Foliaceus
Vet Sci. 2022 Mar 23;9(4):153.
doi: 10.3390/vetsci9040153.
Eric Chong , Michaela Austel , Frane Banovic

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犬の落葉状天疱瘡(PF)寛解の導入に対し、グルココルチコイド(GCs)と併用する補助的免疫抑制としてシクロスポリンの効果は不明である。

この研究は、2015年から2020年までの医療記録の回顧的レビューで、経口修正シクロスポリンとGCsで治療した11頭のPFの犬の治療結果を評価した。

全てのPFの犬にGCsと共にシクロスポリンを投与した。9頭(9/11)は完全寛解(CR)に達した;5頭はシクロスポリンを平均6.2mg/kg/日で投与していた;4頭はシクロスポリンとケトコナゾールをそれぞれ平均3mg/kg/日で投与されていた。2頭(2/11)は25%のみの反応、あるいは反応が悪く、治療中に新しいPF病変が発生した。

CRに達した9頭のシクロスポリン療法の平均治療期間は、65日(中央値57日、範囲24-119日)だった。CRの9頭において、シクロスポリンを同投与量と頻度で治療中に経口GCsの投与量を緩やかに減量中、4頭の犬のPF病変は再発し、5頭はPFの再燃なしに経口グルココルチコイドを中止した。

この研究でGCsと併用する経口修正シクロスポリンは、導入期中の11頭のPFの犬のうち9頭で完全寛解を達成した。(Sato訳)
■イギリスとアイルランドの民間診断検査所に提出された犬のニキビダニ症の症例の遡及的研究(2017-2018):パート1-シグナルメント、病変分布、治療、併発疾患
A retrospective study of cases of canine demodicosis submitted to a commercial diagnostic laboratory servicing the United Kingdom and Ireland (2017-2018): Part 1 - Signalment, lesion distribution, treatments, and concurrent diseases
Res Vet Sci. 2022 Oct 30;153:99-104.
doi: 10.1016/j.rvsc.2022.10.022. Online ahead of print.
Pamela A Kelly , Jennifer S McKay , David Maguire , Matthew Jones , Larry Roberts , Frank Powell , Rory Breathnach

ニキビダニ属の過剰増殖による犬ニキビダニ症は、小動物診療でよく遭遇する皮膚疾患の1つである。

2017年と2018年にイギリス(UK)およびアイルランドのUKAS認定民間検査所で、皮膚掻爬による組織学的解析あるいは、ニキビダニ属の所見によりニキビダニ症と診断された犬の大集団(n=508)から、提出された病歴および診断報告結果を調査することだった。

主な所見は、短毛種は若年発症型(JO)ニキビダニ症を発症する確率が高かったが、中-、長毛種は成犬発症型(AO)疾患を発症する確率が高かったことだった。足先のニキビダニ症は、成犬の長毛種により多く報告された。バイオプシーの陽性結果となったサンプルの83.3%のみが、皮膚掻爬で陽性だった;この所見は、皮膚掻爬の陰性結果にもかかわらず、臨床的にまだニキビダニ症が疑われる場合、追加の診断検査を実施する必要性を強調する。

免疫抑制に関係する可能性のある併発基礎疾患は、AOニキビダニ症の犬の42/221頭(19%)で報告された。血清アレルギーおよびヒゼンダニ属ELISA解析は、JOおよびAO群両方で個々の動物で陽性だった;それら後述の所見の臨床意義は、ニキビダニ症を確認した犬において注意深い解釈を必要とする。(Sato訳)
■犬と猫の皮膚パンチバイオプシー後の感染に対する評価:154症例(2013-2018)
Evaluation for Postoperative Infections Following Cutaneous Punch Biopsies in Dogs and Cats: 154 Cases (2013-2018)
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Sep 1;58(5):249-253.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7249.
Jason B Pieper , Shahla Doroud , William E Sander

抗菌薬適正使用支援は、最近体性や抗生物質に対する制限の増加している今日、ますます重要となっている。全ての処置に予防的抗生物質は必ずしも必要ではないと、過去に種々のヒトおよび動物の手術で示されている。

2013年から2018年の間に皮膚パンチバイオプシーを実施していた症例に対し、遡及的に医療記録から以下の情報を回顧的に評価した:種、シグナルメント、併発疾患、併用薬剤、バイオプシーの部位、病理組織学的診断、術後細菌感染。

全ての動物におけるパンチバイオプシーによる二次感染の有病率は1.9%で、さらに分けると犬は2.3%(3/128)、猫は0%(0/26)だった。皮膚疾患vs皮膚マスと診断する時、パンチバイオプシーから合併症が発生する相対危険度が0.06で、統計学的に有意と判定した。バイオプシー部位が体幹(頸、胸部、腹部を含む)だった場合、リスクは2.16(0.16-59.91)倍増加した。

それらの結果は、獣医療において、皮膚パンチバイオプシーの術後合併症はまれであることを示す。犬と猫において予防的抗生物質の投与は、バイオプシーを行うときに感染が存在しない場所のパンチバイオプシーには必要ない。(Sato訳)
■アトピー性皮膚炎の犬の抗生物質療法の効果:観察研究
Efficacy of Antimicrobial Treatment in Dogs with Atopic Dermatitis: An Observational Study
Vet Sci. 2022 Jul 27;9(8):385.
doi: 10.3390/vetsci9080385.
Evi I Sofou , Svetlina Aleksandrova , Elisa Badulescu , Manolis Chatzis , Manolis Saridomichelakis

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アトピー性皮膚炎(AD)と皮膚感染(SIs)がある犬の、抗生物質療法の効果を報告する研究は少ない。

この研究の目的は、ADと細菌増殖/感染±マラセチア性皮膚炎の犬において、抗生物質療法による皮膚病変および掻痒の程度の変化、全体の効果を評価することだった。

ADとSIsの犬計20頭を前向きに登録し(A群)、それらをSIsの解消となる全身性抗生物質投与前後に検査した。追加で、同じ組み込み基準を満たし、全身性±局所抗生物質で治療した19頭の犬を遡及的に含めた(B群)。群間で大きな違いがないため、それらの結果も組み合わせた。

皮膚病変の重症度は、犬アトピー性皮膚炎の広がりと重症度指数-4(CADESI-4)を基に30%、CADESI-4の紅斑領域と飼い主による皮膚病変の重症度の見た目の評価を基に28.1%、有意に減少した。掻痒は、掻痒ビジュアルアナログスケール(PVAS)を基に有意に34.7%減少した。

抗生物質療法の効果は、観察者および飼い主により、それぞれ55%、60%の犬が良から優と評価した。有意な改善にもかかわらず、犬の中では治療反応にかなりの変動がある。

ADとSIsの犬において、抗生物質療法の反応を判定する要因を見つける追加研究が必要である。(Sato訳)
■ペキニーズにおける全身性皮膚アポクリン嚢腫症の1症例
A case of generalised cutaneous apocrine cystomatosis in a Pekingese dog
Vet Med Sci. 2022 Feb 8.
doi: 10.1002/vms3.711. Online ahead of print.
Marica Stazi , Serenella Silvestri , Luca Mechelli , Chiara Brachelente

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13歳オスのペキニーズの臨床、組織、免疫化学検査で、皮膚アポクリン嚢腫症の珍しい症状を認めた。

これは珍しい非腫瘍性の原因が不確かな状況で、多発性嚢胞性の拡張したアポクリン汗腺を特徴とした。

著者らは、多病巣性良性嚢胞性アポクリン腫瘍との鑑別に役立つ、この犬の全身性皮膚アポクリン嚢腫症の珍しい症例の特徴を述べることを目的とした。(Sato訳)
■アレルギー性皮膚炎の犬におけるオクラシチニブの使用と抗菌療法の関連:回顧的症例-コントロール研究
The Association Between the Use of Oclacitinib and Antibacterial Therapy in Dogs With Allergic Dermatitis: A Retrospective Case-Control Study
Front Vet Sci. 2021 Feb 15;8:631443.
doi: 10.3389/fvets.2021.631443. eCollection 2021.
Hester Rynhoud , Justine S Gibson , Erika Meler , Ricardo J Soares Magalhães
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背景:アトピー性皮膚炎を含む犬のアレルギー性皮膚炎は、併発感染に対する抗菌両方を必要とすることも多い。オクラシチニブはアレルギー性皮膚炎に関連する痒みの治療と、12か月齢以上の犬のアトピー性皮膚炎の臨床症状に対して指示される。

仮説/目的:オクラシチニブvs.他の抗掻痒療法を投与されたアレルギー性皮膚炎の犬および、オクラシチニブ投与前後のアレルギー性皮膚炎の犬で、抗菌剤使用の量的違いがあるかどうかを調べる

動物:この回顧的症例コントロール研究において、オクラシチニブを投与されている12ヶ月齢以上のアレルギー性皮膚炎の犬を含む症例(n=58)に対して、他の抗掻痒療法で治療されているコントロール(n=205)

方法:アレルギー性皮膚炎の犬の臨床的病歴を、小動物大学病院から収集した。コントロールよりも症例は処方される抗菌剤が少ないかどうかを判定するため、基礎にある皮膚あるいは耳の状況で調節した多変量ロジスティック回帰モデルを開発した。

結果:症例vs.コントロールにおいて、全身性抗菌剤の使用のオッズは低かった(オッズ比(OR):0.29(95%CI:0.12-0.71);P=0.007)。症例vs.コントロールにおいて、アモキシシリンクラブラン酸使用(12.5-25mg/kg12時間毎の経口)の使用のオッズは低かった(OR:0.08(0.01-0.71);P=0.024)。局所抗菌剤の使用は全体的に低下したが、症例vs.コントロールにおいて、ネオマイシンの使用のオッズは低かった(OR:0.3(0.1-0.89);P=0.029)。アレルギー性皮膚炎カテゴリーvs.コントロールにおいて、症例は改善を経験するオッズがより高かった(OR:7.89(3.26-19.13);P<0.001)。

結論と臨床的重要性:著者らの結果は、犬のアレルギー性皮膚炎の治療に、他の抗掻痒療法よりもオクラシチニブを使用することは抗菌剤の使用を少なくすると示唆する。(Sato訳)
■若年性全身性ニキビダニ症の犬の治療前後の血中免疫刺激および免疫抑制サイトカイン
Pre- and post-therapy circulating immuno-stimulatory and immuno-suppressive cytokines in dogs with juvenile-onset generalized demodecosis.
Vet Parasitol. 2019 Oct 7;275:108954. doi: 10.1016/j.vetpar.2019.108954. [Epub ahead of print]
Singh A, Kumari P, Singh SK, Soman SP, Choudhury S, Srivastava A, Nigam R, Garg SK.

免疫不全の犬のニキビダニの過剰蔓延は、犬ニキビダニ症の発症に起因した。犬のニキビダニ症の臨床症状は、遺伝介在得意免疫不全により誘発されるのか、あるいは、ニキビダニが毛包の病変を誘発し、免疫不全を起こすのかは完全に研究されていない。

犬のニキビダニ症における免疫抑制の潜伏を解明するため、9頭の若年性全身性ニキビダニ症の犬において、治療前後の循環サイトカイン濃度を測定した。

推奨されるアミトラズ処置後60日目、治療開始(0日目)の濃度と比べ、循環IL-10濃度の有意な低下(P≦0.02)が観察された。しかし、0日目の濃度と比べ、60日目の犬のTNF-αおよびIFN-γの循環濃度に有意な変化は見られなかった。循環IL-10濃度とダニ集団の間に強い正の相関が、0日目(r2 = 0.656; p ≤ 0.005)と60日目(r2 = 0.575; p ≤ 0.018)両方で観察された。

ゆえに、我々の所見は、臨床疾患中の犬においてニキビダニは免疫抑制を誘発することを示唆し、全身性ニキビダニ症の発症に対してダニの量が原因になると思われる。(Sato訳)
■毛質の悪い犬の赤血球膜、毛幹、皮膚表面における臨床症状と脂肪酸濃度に対するn-3必須脂肪酸サプリメント(Agepi® ω3)の効果の前向き無作為化二重盲検プラセボ-対照評価
A Prospective, Randomized, Double Blind, Placebo-Controlled Evaluation of the Effects of an n-3 Essential Fatty Acids Supplement (Agepi® ω3) on Clinical Signs, and Fatty Acid Concentrations in the Erythrocyte Membrane, Hair Shafts and Skin Surface of Dogs With Poor Quality Coats
Prostaglandins Leukot Essent Fatty Acids. 2020 May 30;159:102140.
doi: 10.1016/j.plefa.2020.102140. Online ahead of print.
D Combarros , E Castilla-Castaño , L A Lecru , C Pressanti , N Amalric , M C Cadiergues

犬の毛質、犬の赤血球膜へのエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)の取り込みの時間経過、毛幹の総脂質含有および皮膚表面の中性脂質の変化を、n-3脂肪酸サプリメント投与後に調査した。

毛質の悪い24頭の犬にプラセボ、あるいはn-3オイルカプセル(110mgEPA/68mgDHA)を90日間毎日投与した。臨床的評価と組織サンプル採取を0日から180日、毎月実施した。

治療した犬の臨床スコアは、60日目から有意に低下し、その後一定に達し、180日目に基礎レベルに回帰した。治療した犬の赤血球膜のEPAとDHA含有は30日目から有意に上昇し、サプリメント中止後に急速に低下した。毛幹の総脂質はサプリメント群で次第に増加した。

犬の毛質に対し重要な血液や毛の脂肪酸にEPA/DHAサプリメントは影響を及ぼす。(Sato訳)
■3頭の家庭猫に見られた特発性無菌性肉芽腫
Idiopathic sterile pyogranuloma in three domestic cats.
J Small Anim Pract. May 2018;0(0):.
DOI: 10.1111/jsap.12853
A Giuliano , P Watson , L Owen 1, B Skelly , L Davison , J Dobson , F Costantino-Casas

猫の化膿性肉芽腫性炎症は特に猫伝染性腹膜炎の症例で、多く述べられており、マイコバクテリア、アクチノマイセス、ノカルディア、ロドコッカス、真菌感染にも関与する。特発性無菌性可能肉芽腫性皮膚炎も述べられている。

このケースシリーズにおいて、著者らは異なる症状と異なる病変部位だが、表層皮膚関与がなく、1つのマスがあるという共通の特徴がある3頭の猫の特発性無菌性ステロイド反応性化膿性肉芽腫の臨床症状、病理組織および予後を述べる。(Sato訳)
■犬のスタフィロコッカス性膿皮症の治療に対する次亜塩素酸ナトリウム/サリチル酸シャンプー
Sodium Hypochlorite/Salicylic Acid Shampoo for Treatment of Canine Staphylococcal Pyoderma.
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 May/Jun;55(3):117-123.
DOI: 10.5326/JAAHA-MS-6628
Valerie A Fadok , Katherine Irwin

メチシリン耐性スタフィロコッカス・シュードインターミディウスの出現により、犬の膿皮症の治療に対する局所療法への関心が増加している。クロルヘキシジンシャンプーと希釈漂白剤リンスはよく推奨されるが、家庭の漂白剤は皮膚を乾燥させる可能性があり、使用するのは嫌である。

次亜塩素酸ナトリウムとサリチル酸で作られたシャンプーを、メチシリン耐性株を含むS.シュードインターミディウスに関与する浅在性膿皮症の犬に対し、単独治療として評価した。

メチシリン耐性スタフィロコッカスに対する培養陽性あるいは、抗生物質に反応しない膿皮症を基に、飼育犬を募集した。この前向きオープンラベル予備研究は、週3回の4週間、そのシャンプーを使用した時の効果を評価した。

犬は使用前、2週目、4週目に細胞診、臨床検査、オーナーの評価で評価した。デジタル画像も利用した。

使用前の細菌数、臨床評価、オーナーのスコアは2及び4週目に有意に改善した。研究を終了したオーナーは、素晴らしい泡立ちと散布、においの減少、白および明るい皮毛の輝きが増すことを報告した。研究中に皮膚の乾燥あるいは他の有害事象を報告したオーナーはいなかった。

著者らは、この皮膚の乾燥を避ける溶媒の1つに次亜塩素酸ナトリウムを含むシャンプーは、犬の膿皮症に対する効果的な治療の1つであると結論付ける。(Sato訳)
■散在性皮膚ウイルス性乳頭腫症を多様式で治療した犬1例
Multimodal treatment of a dog with disseminated cutaneous viral papillomatosis.
Vet Dermatol. February 2018;29(1):78-e31.
Britt J Levy , Susannah J Sample , Hang Yuan

背景:犬のパピローマウイルス(CPVs)は様々な皮膚症状に関係する。一般に自然解消は1-12か月以内に起こる。この症例報告は、重度散在性乳頭腫症の1頭の犬の多様式治療を述べる。

臨床的概要:8ヶ月齢の避妊済みメスの雑種犬が、2か月にわたり急速に進行する乳頭腫症と経口アジスロマイシン療法への反応の欠如で来院した。その犬はひどく痒がり、悪臭があった;病変のウエイトと発育は、その犬の歩様や視覚に影響を及ぼすまで進行しており、QOLの低下が見られた。

その犬は相当な病変の除去で治療し、その後は毎日5%イミキモドクリームを切除できなかった病変に塗布し、実験的に10週間にわたり14日おきに組み替えCPV2 L1ワクチンを5回投与した。10週経過時に、2病変が残っており、切除した。追加治療は必要なく、10か月後に病変は無くなっていた。

結論:比較対照治療試験において、重度難治性犬皮膚乳頭腫症に対し、一つの様式での治療介入の効果を判定するため、新しい治療の開発と評価が必要である。
■犬のポストクリッピングアロペシアの治療でマイクロニードリングと多血小板血漿の効果を評価する小規模研究
A small scale study to evaluate the efficacy of microneedling in the presence or absence of platelet-rich plasma in the treatment of post-clipping alopecia in dogs.
Vet Dermatol. 2019 Dec 3. doi: 10.1111/vde.12821. [Epub ahead of print]
Diamond JC, Schick RO, Savage MY, Fadok VA.

背景:ポストクリッピングアロペシアは、治療に対する臨床的反応が悪いことが多く、長期脱毛を不安に思うオーナーもいる。ヒトと犬において、マイクロニードリング(MN)危機による表層の微小損傷は、毛包の機械的刺激を誘発し、結果として発毛する。ヒトの研究で、MNと多血小板血漿(PRP)の併用は、MN単独よりも急速で良質な発毛を誘発すると示唆する。

仮説:マイクロニードリングとPRPはより速い良質な発毛を誘発するだろう。

動物:ポストクリッピングアロペシアと診断された4頭の飼育犬

方法と材料:これは前向き研究である。利寒蕪茯を半分に分け、最初の半分はMN単独で治療し、2個目の半分はMN+PRPで治療した。発毛は、1、3、6、12か月目に発毛評価スケール(HGAS)を使用し、臨床医とオーナーで評価した。

結果:3か月目、全ての犬は改善し、3頭は、MN+PRP側でより大きな発毛が見られた。6か月目、同様の反応は3頭の両側で観察され、76-100%の改善を示し、12か月目で変化なしのままだった。1頭は6か月目で26%未満の改善だったが、12か月目で50%以上の再発毛が見られた。小サンプルで統計解析はできなかった。

結論と臨床重要性:ポストクリッピングアロペシアの犬において、MN+PRPはMNよりも急速な発毛を誘発すると思われたが、方法に関係なく6か月目の全体の結果は見た目で同等だった。MNおよびMN+PRP共にポストクリッピングアロペシアの治療で成功を収めた。(Sato訳)
■可逆的および悪液質関連の猫皮膚脆弱症候群の3症例
Reversible and cachexia-associated feline skin fragility syndrome in three cats.
Vet Dermatol. October 2017;28(5):508-e121.
Nicla Furiani , Ilaria Porcellato , Chiara Brachelente

背景:猫の皮膚脆弱症候群(feline skin fragility syandrome:FSFS)は、コラーゲン生成の変化で極度に薄く脆弱な皮膚となるのを特徴とする後天性疾患である。FSFSはコラーゲン合成を抑制する可能性がある過剰なステロイド性ホルモンを特徴とする疾患に関係する。また病因が主に不明な重度炎症、感染あるいは腫瘍性疾患の同時発生が述べられている。

目的:グルココルチコイドの関与がなく、異なる原因に続発した悪液質による猫のFSFSの3症例を述べる。脆弱皮膚と治癒後の皮膚の結合織の病理組織学的特徴を述べる。

結果:全ての猫は2か月以内に悪液質を発症していた(ボディコンディションスコア範囲1-1.5)。併発疾患は、症例1(巨大食道による吸引性肺炎)と症例2(猫免疫不全ウイルス(FIV))で診断された。症例3は主因として栄養失調が疑われた。脆弱皮膚の主な組織学的特徴は、マッソン染色で見られる多数の赤いcoreを伴う蒼白の好酸性、薄く、不規則なコラーゲン線維を伴う萎縮した真皮だった。弾性線維は正常だった。診断後、11ヶ月(症例1)と6か月(症例3)の回復後の病理組織所見は、コラーゲンの正常化とコントロールと比較した時の全皮膚の正常化が示された。

結論と臨床意義:確かに、これは猫の悪液質の急速な発症に関係する不可逆性の非ステロイド誘発性FSFSを述べる最初の報告である。(Sato訳)
■実験的にミクロスポーラム・キャニスを感染させた猫のイトラコナゾール内用液による隔週パルス療法の効果
Efficacy of itraconazole oral solution using an alternating-week pulse therapy regimen for treatment of cats with experimental Microsporum canis infection.
J Feline Med Surg. October 2017;0(0):1098612X17735967.
Christopher Puls , Aaron Johnson , Karrie Young , Jonathan Hare , Kelly Rosenkrans , Lisa Young , Karen Moriello

目的:この研究の目的は、管理された実験室において、イトラコナゾール10mg/kg内用液の隔週パルス療法を用いたミクロスポーラム・キャニスの治療を評価することだった。

方法:実験的に感染を誘発した8頭の猫を無作為に治療群(イトラコナゾール vs コントロール(滅菌水))に振り分け、5週間隔週で、1週間は1日1回5mg/kgの経口投与を行い、続く4週間は経過観察を行った。局所療法は行わなかった。猫はステンレスのケージに個別に飼育し、毎日清掃し、消毒した。研究した測定値は、毎週真菌培養、臨床病変スコア、ウッド灯検査、周期的検査モニタリングだった。菌学的治癒は、2回連続の培養陰性と定義した。

結果:イトラコナゾール投与猫は、無処置コントロールと比べ有意に優れた(P=0.0003)菌学的治癒をもたらし(24/40(60%) vs 1/40(2.5%))、それらすべては臨床的治癒に到達し、最終のウッド灯検査が陰性だった。さらに研究の最後には真菌培養が最低1つは陰性だったのがコントロール猫で3/40(7.5%)に対し、治療猫は36/40(90%)だった。両治療群に対し、臨床的治癒の割合は研究終了時(9週)にピークとなり、臨床的治癒に達したのはイトラコナゾール投与猫の39/40(97.5%)とコントロール猫6/40(15%)だった。ウッド灯検査陰性率はコントロールと比べ、イトラコナゾール投与猫で有意に大きく(39/40(97.5%) vs 6/40(15%))、主要臨床的病変の同じパターンの改善が見られた。

結論と関連:この対照試験で、無処置コントロールと比較して5mg/kgパルス量治療法を用いたイトラコナゾール経口投与は菌学的治癒までの時間を短縮し、菌学的および臨床的治癒率を増加させた。(Sato訳)
■猫のヘルペスウイルス潰瘍性皮膚炎:非定型症例?
Feline herpesvirus ulcerative dermatitis: an atypical case?
Vet Dermatol. 2018 Apr 6. doi: 10.1111/vde.12537. [Epub ahead of print]
Porcellato I, Luciani L, Marenzoni ML, Santagostino SF, Sforna M, Mechelli L, Brachelente C.

背景:猫のヘルペスウイルス潰瘍性皮膚炎は、珍しい皮膚疾患で、豊富な好酸球の浸潤と時折好中球の優勢を特徴として主に、顔面に分布する。

目的:猫ヘルペスウイルス皮膚炎の非定型と推定される症例の臨床および病理組織の特徴を述べる

動物:10か月のオスのヨーロッパ猫が左耳介に粘着性の痂皮を伴う慢性一片側性潰瘍性皮膚炎を呈した。病変は6か月見られ、コルチコステロイドの投与後に悪化した。

方法:臨床および病理組織検査、免疫組織化学検査、nested PCR、透過型電子顕微鏡(TEM)検査。

結果:皮膚バイオプシーの組織検査で、厚い出血性および血清細胞性痂皮に覆われた表層および深層真皮に関する多病巣性潰瘍および壊死病変を認めた。表層、中層、深層真皮には、より少ない数の好中球と好酸球を伴う肥満細胞とプラズマ細胞の重度浸潤があった。通常のヘマトキシリンエオジン染色で認識できない組織タイプの深層真皮におけるいくつかの細胞の核において、核内エオジン好性封入体が見つかった。nested PCRとTEMはFeHV-1誘発皮膚炎の仮診断を支持した。

結論と臨床意義:この症例は耳介というまれな部位にでき、肥満細胞とプラズマ細胞の優勢な浸潤を伴う非定型の病理組織学的特徴の病変が注目すべき特徴である。我々の所見は、部位および組織学的特徴が非定型な潰瘍性皮膚炎の症例の鑑別診断リストに、ヘルペスウイルス皮膚炎を加えるべきだと示唆する。(Sato訳)
■漂白剤による1頭の犬の顔面部分的肥厚性化学熱傷の治療
Management of a facial partial thickness chemical burn in a dog caused by bleach.
J Vet Emerg Crit Care. March 2017;27(2):224-231.
Lukas T Kawalilak , Boel A Fransson , Terri L Alessio

目的:1頭の犬の顔面と角膜の発見が遅れた部分的に肥厚した漂白剤による火傷の管理と成功例を述べる

症例概要:1歳のオスの去勢済みフォックステリアの雑種犬を、8.25%家庭用漂白洗剤に接触後5日目の顔面上皮の脱落について評価した。重度紅斑、浮腫、痂皮形成がマズル回り、両眼の縁にみられ、その部分の中程度から重度の脱毛を伴っていた。部分的に脱落し、部分的に肥厚した焼痂がマズルに存在し、堅くくっついた焼痂が両前頭洞領域に存在した。それらの傷害は限局、表層、部分的肥厚性の化学熱傷と一致した。多くは角膜潰瘍と考えられる複数の眼の異常も存在した。それらの傷は最初の暴露から11日目と22日目の上皮の限られた外科的デブリードメントで保存的に管理した。局所点眼療法、角膜デブリードメント、表層角膜切除も使用した。全ての病変は暴露から84日目に完全に回復し、QOLに対する後遺症はなかった。

新情報:漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)のようなアルカリ剤の接触により起こる化学熱傷は皮膚と基礎組織の広範囲の壊死を起こす。これは1頭の犬のアルカリ性の顔面火傷を管理した最初の報告である。暴露後、不適切あるいは水治療が遅れたとき表層の部分的肥厚性火傷となっており、従来の治療、特に包帯ができない場合、保存的管理が成功する。(Sato訳)
■インド象の慢性足皮膚炎のモーズペーストによる治療
Novel treatment for chronic pododermatitis in an Indian elephant (Elephas maximus indicus) with Mohs' paste.
J Vet Med Sci. December 2018;80(12):1834-1838.
DOI: 10.1292/jvms.18-0316
Nobuhide Kido , Sohei Tanaka , Tomoko Omiya , Yasuyuki Shoji , Masaru Senzaki , Sayuri Hanzawa , Masato Ando , Tomohiro Osaki , Hitoshi Hatai , Noriaki Miyoshi , Tatsuro Hifumi , Naomi Suzuki , Shigehisa Kawakami

アジアゾウやアフリカゾウは、積極的な治療でも管理が非常に難しいような足疾患にかかる頻度が多い。そのような状況は、間接的に命に係わる状況となるかもしれない。

金沢動物園で足疾患のある39歳の雌のインド象(Elephas maximus indicus)の治療にモーズペースト(塩化亜鉛をベースとした腐食剤)を使用した。

変性性の過形成組織が2と5の蹄の内側に観察された。モーズペーストを病変部に使用し、過形成組織を固め、増殖を抑制した。その後、過形成組織はほとんど痛みもなく整形可能で、その病変は管理可能となった。

モーズペーストは蹄の病変に対し効果的で、代替治療になると期待される。(Sato訳)
■犬の皮膚のヒスタミン誘発性の掻痒に対する局所カプサイシンの抗掻痒効果
Anti-pruritic effect of topical capsaicin against histamine-induced pruritus on canine skin.
Pol J Vet Sci. 2018 Dec;21(4):789-796. doi: 10.24425/pjvs.2018.125599.
Bae S, Yu J, Jeong H, Oh T.

いくつかのヒトの研究で、カプサイシンに抗掻痒効果があると報告されている。さらに、種々の濃度の局所カプサイシンが痒みの軽減に使用されている。

この研究の目的は、15頭の健康なビーグルにおいて、ヒスタミン誘発の掻痒に対し、局所ステロイドあるいは溶媒と比べたカプサイシンの抗掻痒効果を調査することだった。

15頭の犬を3群(各5頭)に振り分け、以下のうち1つを頸部左側に局所投与した:カプサイシン、陽性コントロール(ステロイド)、陰性コントロール(溶媒)。各処置は1日2回、8日間行った。掻痒を誘発するため、2、4、6、8日目の処置直前に、全頭にヒスタミンを注射した。掻痒、丘疹、紅斑の強度を各評価時に判定した;皮膚の温度も記録した。最終日に全頭で病理組織評価のために皮膚バイオプシーを実施した。

8日目の陰性コントロール群の掻痒と比較して、カプサイシン処置群の重症度は低かった(P<0.05)。カプサイシンとステロイド群において、丘疹の大きさ、紅斑指数、皮膚の温度も処置前と比べて低下した。病理組織的評価は、カプサイシン処置群は、溶媒コントロール群と比べ、真皮の炎症細胞の数が多いことを示した;しかし、ステロイド処置群は、溶媒コントロール群よりも重度炎症反応が少ないことを示した。

それらの結果は、犬においてカプサイシンは炎症を減らすことはできないが、痒みを減らすのに役立つかもしれない。(Sato訳)
■犬の皮膚形質細胞増加症:21症例(2005-2015)
Canine Cutaneous Plasmacytosis: 21 Cases (2005-2015).
J Vet Intern Med. July 2017;31(4):1074-1080.
B O Boostrom , A S Moore , C J DeRegis , C Robat , K Freeman , D H Thamm

背景:皮膚形質細胞増加症(cutaneous plasmacytosis:CP)は多発性骨髄腫がない状態で、多発性皮膚形質細胞腫の症候群である。ヒトや犬では珍しいが、推奨治療法は通常多発性骨髄腫プロトコールから推定される。現在まで、獣医学文献でCPのケースシリーズが述べられたことはない。

仮説/目的:CPの犬の臨床症状を述べ、治療奏功率と持続期間の判定し、総生存期間を報告すること

動物:CPの飼育犬21頭

方法:CPの犬21頭の医療記録を再調査した。診断は3病変以上ある犬において、代表的な皮膚あるいは皮下病変1つ以上の病理組織評価を基にした。多発性骨髄腫の疑いのある犬は除外した。

結果:多く見られた罹患犬種は、ゴールデン(5/21)とラブラドールレトリバー(3/21)だった。21頭中14頭は10病変より多く、100病変より多いものもいた。病変は一般に円形、隆起、ピンク-赤色、不定な脱毛あるいは潰瘍化と述べられた。最も一般的に使用された薬剤プロトコールは、メルファランとプレドニゾロンの組み合わせで、全奏効率(overall response rate:ORR)は73.7%(14/19頭)だった。ロムスチン単剤は同様のORRで71.4%(5/7頭)だった。全ての治療の組み合わせに対し、最初の治療後の無増悪期間中央値は153日だった。最初の治療からの生存期間中央値は542日だった。

結論と臨床意義:アルキル化剤はCPの寛解など、効果的だった;コルチコステロイド、メルファラン、ロムスチンは良く使用される薬剤だった。生存期間は、アルキル化剤を用いて治療した多発性骨髄腫の犬で報告されたものと同じだった。(Sato訳)
■Microsporum canis皮膚糸状菌培養に対する培養時間の評価
Evaluation of incubation time for Microsporum canis dermatophyte cultures.
J Feline Med Surg. October 2018;20(10):997-1000.
DOI: 10.1177/1098612X17729286
Rebecca Stuntebeck , Karen A Moriello , Maria Verbrugge

目的:この研究の目的は、治療していない猫と治療中の猫の皮膚糸状菌培地の培養後1、2、3週間目にどれほどの頻度でMicrosporum canisが分離されるのかを調査することだった。

方法:これは回顧的観察研究である。歯ブラシ真菌培養結果を2つのデータプールから調べた:皮膚病と思われる無処置の猫と皮膚糸状菌症に対する治療を行っている猫の毎週行っている培養。

結果:13772件の真菌培養の結果を再検討し、2876件(20.9%)がM canis陽性だった。そのうち2800件は培養から14日以内に陽性と確認し、76件(2.6%)だけがM canisの確認に>14日を必要とした。治療前の標本で、M canis分離菌の98.2%(1057/1076)は、以前に抗真菌治療を受けているかわからない猫の標本の培養から14日以内に回復した。治療を受けていた猫に対し、M canis分離菌の96.8%(1743/1800)は、培養から14日以内に回復した。確認に>14日かかった57培養のうち、21件は培養が顕著に異常なため、培養延長を必要とし、12件は顕微鏡的確認を遅らせるような汚染菌の同時発育があり、24件は最初の14日で発育しなかった。それら24件のうち、19件は1-2コロニー形成単位(cfu)/plateで、残りの5件は5->10cfu/plateで、全て異常な形態だった。

結論と関連:この研究の所見は、発育がないことに対し、培養を終了するまで21日間、治療前あるいは治療後の真菌培養を保持する必要はないことを示す。>14日必要な発育は、肉眼的に異常な形態を示す。(Sato訳)
■犬における希釈次亜塩素酸ナトリウム(漂白剤):皮膚バリア機能及び炎症に対するインビトロの影響、局所許容性、消毒効果
Diluted sodium hypochlorite (bleach) in dogs: antiseptic efficacy, local tolerability and in vitro effect on skin barrier function and inflammation.
Vet Dermatol. February 2018;29(1):6-e5.
Frane Banovic , Thierry Olivry , Wolfgang Baumer , Judy Paps , Jessica Stahl , Ana Rogers , Megan Jacob

背景:希釈次亜塩素酸ナトリウムは安価で広く利用される局所消毒剤であるが、動物の皮膚における許容性および有効性データはない。

目的:希釈漂白剤使用のインビボ抗菌効果と許容性を調べることと、皮膚バリア脂質に対するインビトロの影響およびケラチン生成細胞に対する抗炎症特性を評価する

方法:0.05%次亜塩素酸ナトリウムと水道水を、4頭の健康な犬の胸部の両サイドに局所投与した。犬のケラチン生成細胞に対する抗炎症効果は、real-time PCRで判定した;皮膚バリアの整合性は犬の層別化上皮構造において角質層脂質変化を評価することで判定した。

結果:水道水および0.005%および0.01%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムを投与した主要ケラチン生成細胞の細胞生存度は、生細胞の比率が10%に低下した。0.005%希釈次亜塩素酸ナトリウムの主要ケラチン生成細胞への暴露は、炎症遺伝子ケモカインリガンド-2(CCL2;P=0.015)および胸腺、活性化調節ケモカイン(TARC/CCL17、P=0.032)の誘導を有意に減らした。0.05%次亜塩素酸ナトリウムで17日間培養した層別化上皮構造における皮膚脂質セラミドと非セラミド分画に変化は見られなかった。0.05%次亜塩素酸ナトリウムと水道水の局所投与は、皮膚の刺激の症状もなく良く許容した。水道水コントロールと比較して希釈次亜塩素酸ナトリウム投与から20分以内に顕著な細菌数の減少が見られたが、これはほんのわずかな有意性だった(P=0.06)。

結論と臨床意義:この結果は、0.05%でも0.005%次亜塩素酸ナトリウム濃度での局所投与は良く許容する消毒剤で、抗炎症特性も併せ持つことを示す。(Sato訳)
■犬の背部熱性壊死:アメリカ南西部の16症例の回顧的分析
Dorsal thermal necrosis in dogs: a retrospective analysis of 16 cases in the southwestern USA (2009-2016).
Vet Dermatol. April 2018;29(2):139-e55.
Stephanne L Schwartz , Anthea E Schick , Thomas P Lewis , Diana Loeffler

背景:高い環境温度で長時間の日光暴露は、背部熱性壊死(dorsal thermal necrosis:DTN)と呼ばれる犬の背部皮膚の熱傷の原因として認識されている。

仮説/目的:DTNと診断される16頭の犬の臨床症状、病理組織および結果の特徴を述べることと、関係するリスク因子を確認すること

動物:DTNと診断された16頭の犬

方法:2009年から2016年の医療記録を回顧的に検討した。組み入れ基準は:(1)過去の日光暴露;(2)背部の火傷と(3)DTNと一致する病理組織学的所見。

結果:アメリカ南西部で、症例の多く(16頭中15頭)は暖かい月の間(5月から9月)に発生した。罹患犬は大部分がダークな色で短毛だったが、16頭中4頭は明るい毛色だった。5頭は自然の長毛だったが、2頭の皮毛は最近カットされていた。16頭中4頭で熱疲労あるいは熱射病に一致した症状が、皮膚病変発症前に報告されていた。最も一般的な皮膚病変は、脱毛、紅斑、潰瘍、焼痂/壊死および痂皮だった。多くの症例の組織学的所見は、部分および全層火傷の他のタイプと一致し、凝固壊死が含まれた。ほとんどの犬は鎮痛および抗菌療法で支持的に治療した。ほとんどのDTNの傷は二次癒合を経て治癒したが、2頭の犬で手術を行った。

結論と臨床意義:背部熱性壊死は、高い環境温度で日光暴露があった背部皮膚熱傷の犬の鑑別診断に入れるべきである。暗い色の短毛の犬はリスクが増すかもしれない。(Sato訳)
■7歳メスのゴールデンレトリバーにおけるブラストミセス症の治療成功例
Successful treatment of blastomycosis in a 7-year-old, female golden retriever dog on Manitoulin Island, Ontario.
Can Vet J. June 2017;58(6):617-619.
Rachael K Needles

7歳メスのゴールデンレトリバーが2週間にわたる咳と食欲不振を呈した。身体検査、エックス線検査、血液検査でブラストミセス症の伝統的なエビデンスを示し、EIA尿抗原検査で確認した。2か月にわたるイトラコナゾールと、ミルタザピン、メロキシカム、フロセミド、テトラサイクリンのコースで治療に成功した。(Sato訳)
■再発性膿皮症と原発性基礎疾患:157頭の犬の回顧的評価
Recurrent pyoderma and its underlying primary diseases: a retrospective evaluation of 157 dogs.
Language: English
Vet Rec. April 2018;182(15):434.
Florian Seckerdieck , Ralf S Mueller

細菌性膿皮症は小動物診療でよく見られる。通常それは基礎疾患と関連しているが、再発性膿皮症の犬において基礎疾患の有病率についてはあまり知られていない。

この研究の目的は、再発性膿皮症の犬において、異なる基礎疾患の頻度を調査することだった。

再発性膿皮上の犬、合計157頭で2008年から2013年の病院記録を確認し、そのデータで原発疾患を調査した。再発の期間、臨床症状のタイプ、膿皮症発現年齢も評価した。

少なくとも1つの原発疾患が107頭の犬に見つかった。63頭の主な原因はアレルギーで、環境アレルギーが最も頻度が高く(n=45)、他のアレルギーとの関連も多く、甲状腺機能低下症(n=12)、副腎皮質機能亢進症(n=6)が続いた。再発性膿皮症の16頭の犬は、毛包虫症を罹患していた。

再発性膿皮症の若い犬において、皮膚の深い掻爬と共にアレルギー検査はほとんどの症例で基礎疾患の診断を導いてくれるはずである。中年あるいは老年で始まった膿皮症の犬は、ホルモン検査とノミ寄生の可能性の排除を最初のステップとすべきである。(Sato訳)
■局所性錯角化角化症のボストンテリア16頭
Localized parakeratotic hyperkeratosis in sixteen Boston terrier dogs.
Language: English
Vet Dermatol. October 2016;27(5):384-e96.
Fiona F Lee , Charles W Bradley, 2nd , Christine L Cain , Stephen D White , Catherine A Outerbridge , Lisa A Murphy , Elizabeth A Mauldin

背景:亜鉛反応性皮膚炎は一般的に北極地方の犬種の疾患であるが、この研究は、ボストンテリアの顔面や圧迫部位において同様の皮膚病変を確認した。

仮説/目的:ボストンテリアの局所性錯角化角化症の臨床および組織学的特徴を述べることと、その病変が亜鉛補給に反応するか、罹患していない犬に比べ罹患した犬において組織の亜鉛濃度が低下しているかどうかを判定する。

素材と方法:同じ肉眼および組織学的所見のボストンテリア16頭を2施設から回顧的に確認した。1施設からの9頭の追跡調査情報はアンケートを用い、紹介獣医師から得られた。罹患した犬と罹患していない犬のホルマリン固定パラフィン包埋皮膚バイオプシーサンプルからICP質量分析法を用いて組織亜鉛濃度を測定した。

結果:毛包を関与する軽度から重度の錯角化角化症が16頭全てに見られた。追跡調査情報が得られた9頭のうち5頭は経口亜鉛補給を受け、4頭は臨床的改善、あるいは皮膚病変の解消が見られた。罹患した犬と罹患していない犬の皮膚亜鉛濃度中央値に有意差はなかった。

結論と臨床意義:著者らの知る限りでは、これはボストンテリアの局所性錯角化角化症の最初の報告で、それらのうち経口亜鉛補給で改善する犬もいた。潜在的亜鉛欠乏(血清および/あるいは組織濃度、治療前後)を証明するボストンテリアの前向き研究、亜鉛補給や他の治療への反応を客観的に評価することが求められる。(Sato訳)
■14頭の犬の免疫介在性皮膚疾患の治療に対するミコフェノール酸モフェチルの使用:回顧的評価
Use of mycophenolate mofetil to treat immune-mediated skin disease in 14 dogs - a retrospective evaluation.
Language: English
Vet Dermatol. April 2017;28(2):195-e44.
Amanda L Ackermann , Elizabeth R May , Linda A Frank

背景:ミコフェノール酸モフェチル(mycophenolate mofetil:MMF)は免疫介在性疾患の治療に対し、ヒトやコンパニオンアニマル医療で使用されるリンパ球毒性の免疫抑制剤である。ミコフェノール酸モフェチルは、アザチオプリンと比べた時に骨髄毒性や肝毒性が減少していると報告されている。

目的:グルココルチコイドの第二の薬剤としてMMFの治療は、免疫介在性皮膚疾患の治療に効果的だろうと仮説を立てた。また、薬剤に関係する副作用を報告する。

動物:免疫介在性皮膚疾患と診断された病院集団からの14頭の犬
方法:MMFで治療した免疫介在性皮膚疾患の犬を確認するため、2010年から2015年の間の医療記録の回顧的再調査を行った。

結果:全ての犬は、グルココルチコイドと共にMMF(平均投与量14.7mg/kg1日2回)で治療していた。14頭中10頭は良い結果を示し、8頭は完全寛解、2頭は部分寛解だった。寛解までの平均期間は5.7週間だった。1頭(肛門周囲瘻)は反応がないために治療を中止した。副作用は6頭で見られ、下痢(n=6)、血便(n=2)、嘔吐(n=3)、乳頭腫形成(n=1)だった。2頭は下痢で治療を中止した。1頭の追加症例は、腫瘍の診断によりMMFを中止した。他全ての有害事象は、自己限定的、あるいは容易に内科で管理できた。肝毒性あるいは骨髄抑制は見られなかった。

結論:この研究は、犬の免疫介在性皮膚疾患の第二選択免疫療法としてMMFの使用を支持する。(Sato訳)
■健康犬においてInnovator-Formulatedイトラコナゾールカプセルと内用液の経口投与の薬物動態と相対的生物学的利用能
Pharmacokinetics and Relative Bioavailability of Orally Administered Innovator-Formulated Itraconazole Capsules and Solution in Healthy Dogs.
Language: English
J Vet Intern Med. July 2017;31(4):1163-1169.
A E Hasbach , D K Langlois , E J Rosser, Jr , M G Papich

背景:イトラコナゾールは獣医療において全身および皮膚真菌症の治療に良く使用される。犬では1つの製剤(カプセルと内用液)が使用される。しかし、他の種では顕著な生物学的利用能の違いが報告されている。同様の調査は犬で行われていない。

目的:ヒトでの使用を目的とした市販のイトラコナゾールのカプセルと内用液を犬に経口投与した後、その薬物動態を測定し比較すること

動物:健康な研究用成犬8頭

方法:10日間のウォッシュアウト期間を設けた無作為交差研究において、約10mg/kgのinnovator-formulatedイトラコナゾール液およびカプセルを犬に経口投与した。最大吸収を確実にするため、溶液は絶食時に投与し、カプセルは食餌と一緒に投与した。事前に決めたタイムポイントで採血し、血漿薬物濃度は高速液体クロマトグラフィーで測定した。薬物動態パラメーターをコンパートメント解析で判定した。

結果:カプセルの平均双胎生物学的利用能は溶液の85%だったが、薬物吸収は不定で、全体の薬物濃度は製剤間で同様だった。両薬剤の平均消滅半減期はほぼ同じで約33時間だった。製剤に関係なく、初期量20mg/kg、続いて10mg/kg1日1回の用量は、ほとんどの犬で適切と考えられる血漿濃度となるだろうとシミュレーションは示唆する。

結論と臨床意義:他の種で報告されている所見に反し、犬でのカプセルと内用液投与後の全体の薬物暴露はあまり違いがない。イトラコナゾールカプセルと内用液の間でいくらかの薬物動態の違いがあるが、製剤による用量変更が必要とは思われない。(Sato訳)
■ジャーマンシェパードドッグの季節性白毛症の1例:症例報告
Seasonal leukotrichia in a German shepherd dog. A case report.
Saisonale Leukotrichie bei einem Deutschen Schaferhund. Ein Fallbericht.
Languages: English, German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. February 2017;45(1):46-51.
Janine Classen , Sonya V Bettenay, Ralf S Mueller

白毛症は種々の代謝および炎症性疾患により起こる可能性がある。犬の円形脱毛症は、珍しい多因子の良性の非瘢痕化脱毛である。

この症例報告は、1頭のジャーマンシェパードにおいて円形脱毛に関係する季節性再発性白毛症を述べる。

重要な鑑別診断は除外し、最終的に病死組織検査で円形脱毛症の診断を確認した。タクロリムスとアセポン酸ヒドロコルチゾンの局所投与は無効だった。この症例における季節性に対する原因は未確認のままだった。(Sato訳)
■ゴールデンレトリバーの広範囲色素性ウイルス性局面病変を二酸化炭素レーザー治療で治療した1例
Carbon dioxide laser treatment of extensive pigmented viral plaque lesions in a golden retriever dog.
Language: English
Vet Dermatol. October 2016;27(5):442-e117.
Evie C Knight , John S Munday , Brett M Stone , Michael A Shipstone

背景:犬の色素性ウイルス性局面(pigmented viral plaque:PVP)は珍しい皮膚疾患で、パピローマウイルス感染に関係する。通常病変は小さく(直径1cm未満)、腹側や内股に斑からプラークの色素が沈着する。

動物:腹部から両後肢の内側面に広がり多数の黒ずんだ凝集したプラークを形成した8歳オスの去勢済みゴールデンレトリバー。プラークは明らかな痒みと関係した。

結果:組織検査でPVPの診断を確認し、PCR法はホルマリン固定したプラークサンプルからCanis familiaris papillomavirus 4を増幅した。PVPはCO2レーザー治療の2回のコースで完全に解消した。術後ほんの少しの不快感があっただけで、12か月の経過観察期間内に再発あるいは新しい病変は見られなかった。

結論と臨床意義:広範囲のPVPは過去にゴールデンレトリバーで述べられておらず、犬で痒みを起こすという報告もない。広い範囲が侵されているため、この症例では外科切除は実行可能ではなかった。しかし、レーザーを使用した2回の治療コースで、局所の花柄およびプラーク様PVP病変に対し完全に治癒的だった。また、外科的切除と比較して、レーザー治療は術後不快感が少なく、手術時間の短縮、より少ない術後感染が予測できる。

これは、CO2レーザーを用いて犬のPVPの治療に成功した最初の報告である。この症例におけるこの治療の成功は、犬の広範囲PVPに対し、レーザーは素晴らしい治療オプションを提供することを示唆する。(Sato訳)
■猫のショウセンコウヒゼンダニの診断でアセテートテープ圧痕試験
Acetate tape impression test for diagnosis of notoedric mange in cats.
Language: English
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):702-705.
Keytyanne O Sampaio , Lorena M B de Oliveira , Priscylla M Burmann , Reginaldo P Sousa Filho , Janaina S A M Evangelista , Marina G M C M Cunha

目的:この研究の目的は、猫の穿孔するダニ( Notoedres cati)の診断で、皮膚を絞ってアセテートテープ圧痕法と表層皮膚掻爬法の感受性を比較することだった。

方法:ショウセンコウヒゼンダニの症状を示す50頭の猫からサンプルを集めた。最も影響を受ける領域は、皮膚をつまんでアセテートテープ圧痕法と表層皮膚掻爬を用いるサンプリング部位に選択した。

結果:ダニの発育ステージにかかわらず、両方法で見つかったダニの数に有意差はなかった。そのテストはダニの総数と高い相関を示した(r=0.928)。しかし、2頭において、アセテートテープ圧痕法の場合のみN catiの存在を確認できた。

結論と関連:猫のN catiの存在を確認するのに、アセテートテープ圧痕法は良い方法だと結論付けた。著者らの経験では、この方法は、寄生が少ない個体でも表層皮膚掻爬と同等の感受性がある。さらに、この方法は傷が少なく、眼瞼、口唇、パッドなどの感受性の強い場所で、臨床材料の収集を可能にする。(Sato訳)
■犬の粘膜類天疱瘡:新規16症例の回顧的研究
Mucous membrane pemphigoid in dogs: a retrospective study of 16 new cases.
Language: English
Vet Dermatol. October 2016;27(5):376-e94.
Heng L Tham , Thierry Olivry , Keith E Linder , Petra Bizikova

背景:粘膜類天疱瘡(mucous membrane pemphigoid:MMP)は、犬、猫、ヒトの慢性自己免疫性表皮下水泡形成疾患である。

目的:この研究の目的は、犬のMMPの臨床、組織学および免疫学的特徴、治療結果を述べることである。

動物:粘膜、あるいは粘膜皮膚に顕著な小疱形成および/あるいは潰瘍の存在、表皮下間隙形成の組織学的確認、初証年齢が6か月以上を基にMMPを診断した16頭の犬

結果:15頭中6頭(38%)はジャーマンシェパードやその雑種犬だった。発症年齢中央値は6歳(範囲:1-10歳)だった。来院時、口腔(11/16;69%)、鼻(9/16;56%)、眼周囲(8/16;50%)、生殖器(6/16;38%)領域にびらん、潰瘍が見られた。毛の生えた皮膚の病変の頻度は低く(6/16;38%)、ほとんどが耳介の凹面だった。治療結果に関する情報は11頭(69%)で得られた。病変の完全寛解(CR)は11頭中10頭(91%)で達成された。CRの中央期間は33週間(範囲:6-64週間)だった。治療法は多岐だが、完全寛解時点で10頭中6頭(60%)はテトラサイクリンとニコチンアミドの組み合わせのみ、あるいは他の薬剤を加えて投与していた。完全寛解した犬の40%は薬用量の減量で病変の再発を経験していた。

結論と臨床意義:犬のMMPは長期治療を必要とする慢性および再発性疾患である。CRに達するには併用療法が必要となることも多い。(Sato訳)
■口唇炎の有る犬と無い犬の臨床像、細胞診および細菌培養結果と3つのサンプリング法の比較
Clinical features, cytology and bacterial culture results in dogs with and without cheilitis and comparison of three sampling techniques.
Language: English
Vet Dermatol. June 2016;27(3):140-e37.
Maren Doelle , Anette Loeffler , Katharina Wolf , Veit Kostka , Monika Linek

背景:種々の皮膚疾患に関係する犬において、口唇炎は一般的な症状で、微生物感染による複雑化することも多い。

目的:口唇炎を呈する犬(健康なコントロールと比較)の下唇から臨床像、細胞の特徴、細菌培養結果を述べ、比較するとこと、グループ間を区別するそれらの能力に対し、3つの細胞サンプリング法を評価すること

動物:口唇炎のある56頭とコントロールの54頭

方法:下唇の解剖および臨床症状を記録した。テープストリップ、直接圧迫、スワブで採取した細胞サンプルで微生物、炎症細胞、ケラチン生成細胞に対し半定量的にスコアを付けた。細胞診スコアは半定量的細菌培養スコアと関連させた。

結果:口唇炎の犬はコントロール犬よりも純血種、ひだの数、ケラチン生成細胞を除く全ての細胞診スコアが高かったが、グループ間で全ての微生物においてかなりのオーバーラップが見られた。口唇炎の犬56頭中40頭で過敏性疾患が診断された。テープストリップ法はグループ間で一番違いを多く示した。最近の生育は口唇炎の犬で100%、コントロール犬の93%で報告された。スタフィロコッカス・pseudintermedius、E.coli、シュードモナス sppのような病原菌が口唇炎の犬で見つかる機会が多かった。細胞診と細菌培養の関連は乏しかった。

結論:口唇炎は主に過敏性疾患と関係があり、唇のひだの存在は素因だった。好気性培養の結果はシュードモナス spp分離菌の割合が高いことを除けば、他の体の部位の膿皮症に対する過去の研究と同様だった。(Sato訳)
■0.1%タクロリムス軟膏塗布によるグレイハウンドに見られる限局性中足骨フィステル症候群の治療成功1例
Focal metatarsal fistulae syndrome affecting a greyhound dog successfully treated with topical 0.1% tacrolimus ointment.
Vet Dermatol. December 2015;26(6):488-e116.
Fiona M Scholz; Russell Muse; Amanda K Burrows

中足骨瘻孔形成はジャーマンシェパードやその雑種犬で、ほぼ独占的に報告される珍しい皮膚の状態である。

著者の知識の限りでは、これは1頭のグレイハウンドにみられた限局性中足骨フィステル症候群の最初の症例報告である。

1日2回の0.1%タクロリムス塗布から6週間以内に寛解が得られ、治療中止前6か月間は週2回の塗布で安定状態を維持した。治療中止から1年後のこの報告の時点で寛解を維持した。(Sato訳)
■ミクロスポーラム・キャニス毛および胞子に暴露されたカーペットの除染
Decontamination of carpet exposed to Microsporum canis hairs and spores.
J Feline Med Surg. 2017 Apr;19(4):435-439. doi: 10.1177/1098612X16634390. Epub 2016 Jul 10.
Moriello KA.

目的:この研究の目的は、実験的にミクロスポーラム・キャニスに汚染させたカーペットから、胞子と毛を除去する吸引と3つのカーペットクリーニング方法の有効性を評価することだった。

方法:無菌のベルベルカーペットに、人為的に自然の感染性M canis毛および胞子を汚染させた。カーペットの生地を10秒、30秒、60秒吸引し、その後培養した。3つのカーペットのクリーニング方法は、感染性物質で実験的に汚染させたエリアラグで評価した:泡立てブラシ付シャンプー、消毒薬使用後の泡立てブラシ付シャンプー、熱水抽出。トリコフィートン種に対して効果があると示されているホームクリーニング製剤を1%ペルオキシ一硫酸カリウムに加えて使用した。カーペットはクリーニング後24h、48h、7日で培養した。良好な効果はクリーニング後の培養で胞子を検出できなかったことだった。

結果:全ての処置前のカーペットサンプルはM canis培養陽性だった(>300コロニー形成単位(cfu)/site)。吸引はカーペットを除染しなかったが、毛を除去した。直立した泡立てブラシカーペットシャンプーあるいは消毒薬で前処理したカーペットシャンプーで2回洗浄後の拭き取りサンプルで胞子は検出されなかった。1回の熱水抽出法で洗浄したカーペットは300cfu/siteから24、48時間後には平均5.5cfu/site、7日目には2cfu/siteに減少させた。消毒薬の使用は乾いたときでも匂いと持続性の変色に関係した。熱水抽出クリーニングは最も乾燥時間が早く、変色もなかった。

結論と関連: M canisに暴露されたカーペットは、カーペットシャンプーや熱水抽出クリーニングで殺菌できる。カーペットの吸引は感染した毛の除去に推奨される。家庭で暴露された敷物は、カーペットシャンプー(2回)や熱水抽出での定期的な洗浄で除染できる。カーペット地の敷物(例えば玄関カーペットマット)を必要とする動物施設において消毒薬での前処理は、全体の高レベルの除染が必要な際に推奨される。(Sato訳)
■円形性脱毛症の犬の1例
Alopecia areata universalis in a dog.
Vet Dermatol. October 2015;26(5):379-83, e87.
Pedro J Ginel; Beatriz Blanco; Maria Perez-Aranda; Rafael Zafra; Elena Mozos

背景:円形脱毛はヒトや他の種々の哺乳類で起こるT細胞介在性自己免疫疾患である。その病気が完全脱毛に発展するとき、円形脱毛症(AAU)と定義されるが、この結果はヒトでのみ述べられている。

仮説/目的:犬の円形脱毛症の1症例とその経過観察22か月後の臨床結果を述べる

動物:全身性および完全な非炎症性脱毛を12-14か月呈した9歳オスの雑種猟犬
方法:臨床検査;皮膚バイオプシーの病理組織および免疫組織化学検査

結果:まつげや感覚毛を含む全ての体の毛が喪失した。病理組織および免疫組織化学所見は、長期にわたる円形脱毛症の診断を支持した。経口シクロスポリンによる治療で再発毛したが、マズルの毛、ほとんどのまつ毛、ひげは治療から17か月経ってもなくなったままだった。

結論と臨床重要性:著者の知識では、これは犬のAAUの最初の証明された症例である。臨床および病理組織学的特徴は、ヒトで定義されたAAUの診断と一致した。経口シクロスポリンにより脱毛はほぼ完全に解消したが、治療中止から5か月後も脱毛は再発せず、自然解消は除外できない。(Sato訳)
■ミクロスポーラム・キャニス毛および胞子に暴露された洗濯物の除染
Decontamination of laundry exposed to Microsporum canis hairs and spores.
J Feline Med Surg. June 2016;18(6):457-61.
Karen A Moriello

目的:この研究の目的は、Microsporum canis毛および胞子に暴露された織物を、お湯あるいは水±次亜塩素酸ナトリウム添加の機械的洗濯による除染の効果を判定することと、感染した猫に直接接触させて暴露させたテリー織の布やデニムに対する洗濯プロトコールを野外試験することだった。

方法:コットン、テリークロス、デニム布の見本を分離感染性胞子および毛で汚染させ、その後30℃と60℃の水(次亜塩素酸ナトリウム添加あり、なし)、(機械的乾燥ある、なし)で洗濯した。テリークロスとデニムは感染子猫に直接接触させて汚染させ、培養陰性になるまで30℃で洗濯した。

結果:全ての洗濯前のサンプルは>300コロニー形成単位(cfu)/plateだった。実験的に汚染させた布は、布の種類、水の温度、次亜塩素酸ナトリウムの有無、1回洗った後のタンブラー乾燥に関係なく培養陰性だった。1回洗った後、テリークロスタオルの22/34(65%)とデニム見本の12/20(60%)は培養陽性だったが、感染性量は最小(1-5cfu/plate)だった。冷水で2回洗った後、布に検出できる汚染はなかった。すすぎ水は胞子で汚染されなかった。洗濯槽は消毒液の使用後機械的洗浄で簡単に除染できた。

結論と関連:M canisに暴露された選択可能な布は、漂白剤を加えなくても冷水で機械的選択により除染できる。胞子の除去を確実にするには2回の洗濯が推奨される。洗濯物は長い洗浄サイクル(14分以上)、冷水で2回洗うことで効果的に除染できる。最大限撹拌すること(すなわち機械は負荷をかけすぎない)は重要である。(Sato訳)
■プレドニゾロンとクロラムブシルで治療した指の犬好酸球性肉芽腫
Canine eosinophilic granuloma of the digits treated with prednisolone and chlorambucil.
Language: English
Vet Dermatol. October 2016;27(5):446-e119.
Evie C Knight , Michael A Shipstone

背景:犬の好酸球性肉芽腫(CEG)は珍しい疾患である。病変は口腔や他の皮膚部位に局在するが、まれに指での報告がある。多くの症例は単剤療法としてプレドニゾロンで治療する;代替治療オプションには、アザチオプリン、抗ヒスタミン剤、ブレオマイシンによる電気化学療法、外科切除と併用したコルチコステロイド投与がある。治療としてクロラムブシルやレーザーは過去に報告されていない。

目的:CEGの治療に対する代替療法を述べる;プレドニゾロン単独に反応しない症例に対し、クロラムブシルとプレドニゾロンを併用した。新しい治療は優良臨床試験基準と飼い主の同意のもとに選択した。

動物:2頭の飼育犬

方法:1症例は最初に二酸化炭素レーザーで病変の減容積を行った。2症例とも経口プレドニゾロンとクロラムブシルで治療した。

結果:2頭ともプレドニゾロンとクロラムブシルによる治療で病変が急速に消失した。症例1は薬剤中止から3か月、寛解を維持した。症例2は治療中止後10週間で再発したが、良好な耐容性の低用量のクロラムブシルとプレドニゾロンでうまくコントロール維持できた。

結論と臨床意義:CEGは珍しい疾患と思われるが、指の皮膚、結節病変の鑑別疾患に含めるべきである。クロラムブシルはCEGの治療において有効で良好な耐容性のプレドニゾロン減量剤と思われる。二酸化炭素レーザーアブレーションはCEG減容積の有効な方法だと思われる。(Sato訳)
■犬のMRSおよび非MRSの表在性膿皮症における併用(4%グルコン酸クロルヘキシジンシャンプーと液)プロトコールの効果:無作為化盲検抗菌剤対照試験
Effectiveness of a combined (4% chlorhexidine digluconate shampoo and solution) protocol in MRS and non-MRS canine superficial pyoderma: a randomized, blinded, antibiotic-controlled study.
Vet Dermatol. October 2015;26(5):339-44, e72.
Stefano Borio; Silvia Colombo; Giuseppe La Rosa; Michela De Lucia; Peter Damborg; Luca Guardabassi

背景:犬の表在性膿皮症の治療において局所殺菌剤と全身性抗生物質を比較した研究はない。

仮説/目的:犬の表在性膿皮症の治療に対し、局所クロルヘキシジンと全身性アモキシシリンクラブラン酸の効果を比較する

動物:表在性膿皮症の犬において無作為対照試験を実施した。T群(n=31)は4週間にわたり4%グルコン酸クロルヘキシジンシャンプー(週2回)と液(1日1回)で局所的に治療した。S群(n=20)は4週間にわたりアモキシシリンクラブラン酸(25mg/kg)1日2回経口投与で治療した。

方法:治療前に採取した臨床的標本に対し、細菌培養と感受性試験を実施した。各犬の総膿皮症スコアを算出するため、病変の程度と細胞内細菌数を4段階で評価した。痒みは、オーナーによりビジュアルアナログスケール(範囲0-10)で評価した。T群とS群の統計学的違いをスコアで解析した。

結果:48頭の犬からスタフィロコッカス・シュードインターミディウスが分離され、8つのメチシリン耐性株(MRSP)を含んでいた。犬の頭数は少ないが、T群よりS群の方の総スコアが有意に高かった1日目を除いて、研究期間中の群間に膿皮症と痒みスコアの有意差は見られなかった(P=0.03)。クロルヘキシジン製剤による治療は、MRSPに感染したものも含め、全ての犬の臨床症状を解消した。

結論と臨床的重要性:グルコン酸クロルヘキシジン製剤による局所療法は、アモキシシリンクラブラン酸による全身療法と同様の効果があると思われる。この所見は、表在性膿皮症の管理に対し、局所殺菌剤を単独で使用するという現在の推奨を支持する。(Sato訳)
■局所脂肪酸補給に反応した皮脂腺炎と毛包上皮炎の猫1例
Sebaceous adenitis and mural folliculitis in a cat responsive to topical fatty acid supplementation.
Vet Dermatol. February 2016;27(1):57-e18.
Katharina Glos; Wolf von Bomhard; Sonya Bettenay; Ralf S Mueller

目的:猫皮脂腺炎と毛包上皮炎で局所脂肪酸により治療に成功した1症例を述べる

動物:5歳去勢済みオスのノルウェージャンフォレストキャットが進行性の脂漏性皮膚炎を呈した

方法:臨床検査と皮膚バイオプシーの病理組織検査。

結果:病理組織検査において、重度、多病巣、リンパ球性毛包上皮炎と毛包周囲皮膚炎、中程度の角化症、皮脂腺炎が見られた。皮脂腺は高密度のリンパ球浸潤により欠如するか、ほぼ完全に消されていた。臨床症状は春に顔面や頚部で始まり、18か月間かけて肢まで進行した。当初、軽度の細菌増殖に対し局所および全身抗菌療法を行い、部分的臨床反応が得られた。経口オメガ6脂肪酸や表面の洗浄で改善は見られなかった。エッセンシャルオイル、平滑剤、ビタミンEを含むスポットオン製剤による単独治療で、不完全ではあるが良好な臨床反応が6か月間で見られ、再発毛、皮脂腺炎の顕著な減少が得られた。食欲不振、元気消失に関係する重度深在性膿皮症が発生した12か月後まではこの改善を維持した。これは対症的に治療し、猫はさらに18か月間臨床的安定を維持した。目と鼻の周りの脂漏症は持続的特徴だった。

結論と臨床意義:局所必須脂肪酸療法は、この猫の珍しい病気において治療の成功が報告されているシクロスポリンの実行可能な代替療法となるかもしれない。(Sato訳)
■猫のスポロトリクム症に対しイトラコナゾールと組み合わせた凍結外科による治療
Cryosurgery in association with itraconazole for the treatment of feline sporotrichosis.
J Feline Med Surg. February 2016;18(2):137-43.
Clarissa Pimentel de Souza; Ronaldo Lucas; Regina H R Ramadinha; Tifanny Bcp Pires

目的:猫のスポロトリクム症の治療に対し、イトラコナゾールと共同使用した凍結外科の効果を評価した。文献で他の報告の治療プロトコールの長さと比較した。

方法:Sporothrix schenckii複合体の真菌に自然感染した猫を評価した。診断は細胞診と真菌培養で確認した。凍結外科手術前に、全ての猫にイトラコナゾール10mg/kg/日を異なる期間で経口投与した。同じプロトコールを病変の完全な治癒後、4週まで維持した。

結果:13頭の猫のうち11頭は臨床的に治癒した。治療期間の範囲は16-64週間(中央値32週間)だった。

結論と関連:凍結外科とイトラコナゾールの組み合わせは、猫のスポロトリクム症の症例の治療に有効で、薬物療法のみを使用したプロトコールと比べ、治療期間は短くなった。(Sato訳)
■10%イミダクロプリド/1%モキシデクチンによるデモデックスgatoiの治療成功
Successful Treatment of Demodex gatoi with 10% Imidacloprid/1% Moxidectin.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jan-Feb;52(1):68-72.
Jeanmarie Short; Dunbar Gram

デモデックスgatoiは猫の角質層で見つかる伝播性の体が短いダニである。中程度から激しい痒みを引き起こし、自ら誘発する脱毛やひっかき傷を呈すこともよくある。10%イミダクロプリド/1%モキシデクチンはノミ、糸状虫、腸内寄生虫、耳ダニの治療および/あるいは予防に使用される月1回の局所使用液である。

家庭で飼育されている13頭のうち8頭で軽度から重度の掻痒を呈した。最も一般的な臨床症状は、粟粒-丘疹皮膚炎と脱毛と関係する局所紅斑だった。各猫の複数の皮膚掻爬では2頭の猫でしかデモデックスgatoiダニが見られなかった。週1回の10%イミダクロプリド/1%モキシデクチンの局所投与を計10回、その家庭の全ての猫に使用した。治療後の皮膚掻爬は陰性で、その家の全ての猫は改善した。

この少数の猫の治療成功例を基に、10%イミダクロプリド/1%モキシデクチンの週1回の投与は、デモデックスgatoiに侵された猫の臨床的解消に考慮すべきである。(Sato訳)
■次世代シーケンサーを使った健常とアレルギーの猫における皮膚のマイクロバイオームの特徴
Characterization of the cutaneous mycobiota in healthy and allergic cats using next generation sequencing.
Vet Dermatol. 2016 Aug 23. doi: 10.1111/vde.12373.
Meason-Smith C, Diesel A, Patterson AP, Older CE, Johnson TJ, Mansell JM, Suchodolski JS, Rodrigues Hoffmann A.

背景: 次世代シーケンサー(NGS)研究によって多様な皮膚関連微生物叢や微生物叢のdysbiosisと人と犬のアトピー性皮膚炎に関連があることが証明された。猫の皮膚はまだ次世代シーケンサー技術を使った観察はされていない。

仮説/目的: 健常猫の皮膚の真菌微生物叢は、環境の真菌が優勢でありアレルギーの猫の皮膚に真菌のdysbiosisが存在するなど犬と同様であろうということを我々は仮説をたてた。

動物: 11頭の健常猫とノミ咬傷、食物誘発性と非ノミ非食物誘発性過敏症など1つ以上の皮膚過敏症疾患と診断した9頭の猫

方法: 健常猫は12カ所からアレルギー猫は6カ所から採材した。DNAを分離し、イルミナ社のシーケンスは真菌の内部転写スペーサー領域をターゲットに実施された。シークエンスはバイオインフォマティクスソフトウエアQIIMEを使って処理した。

結果: 全ての猫の皮膚から採取した大部分の真菌シーケンスはクラドスポリウムとアルテリナリアに分類された。肛門周囲領域は多かったが、鼻孔、結膜そして生殖器など粘膜領域では真菌の数は少なかった。アレルギー猫の皮膚は有意に真正担子菌綱とフンタマカビ綱が多かったが健常猫の皮膚に比べエピコッカム菌が少なかった。

結論: 健常猫の皮膚は以前の研究に比べより多様な真菌微生物叢があり、真菌のdysbiosisはアレルギー猫の皮膚において顕著であった。猫の皮膚微生物叢の一時的な安定の評価したさらなる研究は、次世代シーケンサーを使ってシーケンスした微生物叢がコロニー化しているのかそれとも一時的な微生物なのかを決定するのに役立つだろう。(Dr.Kawano訳)
■健康な成猫におけるイトラコナゾールの隔日投与
Alternate-day dosing of itraconazole in healthy adult cats.
J Vet Pharmacol Ther. February 2016;39(1):27-31.
S M Middleton; A Kubier; L Dirikolu; M G Papich; M A Mitchell; S I Rubin

イトラコナゾールの現在利用できる製剤は、猫の投与に理想的ではない。カプセル製剤は正確な投与ができないことも多く、経口液は投与が難しくて許容性も低く、他の動物種で合成製剤の生物学的利用能は悪いことが示されている。

この研究は、健康な成猫において100mgのイトラコナゾールカプセルの隔日投与を評価した。

10頭の健康な成猫に4週の間、48時間ごとにイトラコナゾール100mgカプセルを投与した。イトラコナゾールの血清濃度のピークとトラフを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて毎週測定した。身体検査、CBC検査、生化学検査を毎週行った。

その投与法で3週間以内に平均治療トラフ濃度(>0.5 μg/mL)を達成した。10頭中8頭に副作用は見られず、副作用が見られた2頭は薬剤中止と支持療法で完全に回復した。8週目には平均ピーク濃度1.79±0.952μg/mL(95%CI:0.996-2.588)と平均トラフ濃度0.761±0.540μg/mL(95%CI:0.314-1.216)を達成した。

総じて、猫に対してイトラコナゾール100mgの隔日経口投与法は、最小限の変動の血清濃度が得られ、注意深いモニタリングで全身性真菌疾患の猫の治療に考慮できる。(Sato訳)
■マラセチア皮膚炎の治療に導くテルビナフィンの犬の皮膚濃度の決定
Determining canine skin concentrations of terbinafine to guide the treatment of Malassezia dermatitis.
Vet Dermatol. December 2015;26(6):411-e96.
Jacqueline R Gimmler; Amelia G White; Robert A Kennis; Crisanta Cruz-Espindola; Dawn M Boothe

背景:人の皮膚におけるテルビナフィン(TBF)の濃度と持続は分かっている。獣医療でその使用は増えているが、犬においてその組織濃度と効果に関するデータは限られている。

仮説/目的:(i)犬の皮膚におけるTBFの集積を述べる;(ii)マラセチア性皮膚炎の治療にたいし、TBFの現在使用されている用量を確認するため、マラセチアpachydermatisに対する従来の最小阻止濃度(MIC)結果とともに薬力学的データをまとめる

動物:10頭の健康な飼い犬

方法:犬にTBF(ジェネリック製品、250mg錠剤)30mg/kgを1日1回21日間経口投与(p.o.)した。血清、皮脂、角質層(SC)サンプルを1、5、7、11、14、21、28、35日目に採取した。サンプルの薬剤濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。

結果:血清、足のSC、胸部のSCと皮脂におけるTBFの関連(平均±標準偏差)パラメーターは、それぞれ:最大濃度(Cmax、μg/mL)23.59±10.41、0.31±0.26、0.30±0.32と0.48±0.25;半減期(t1/2、d)4.49±2.24、6.34±5.33、4.64±3.27と5.12±3.33;最大濃度までの時間(Tmax、d)10.40±6.98、13.20±5.16、11.90±8.62と10.60±3.69だった。

結論と臨床的重要性:それらの結果は、犬の血清に比べ角質層あるいは皮脂でテルビナフィンは高濃度に達することはないと示唆する。全ての皮膚組織(足のSC、胸部SCと皮脂)の平均Cmaxは報告されている0.25μg/mLのマラセチアMIC90をわずかに超えただけで、30mg/kg1日1回p.o.より高い用量が必要かもしれないと示している。(Sato訳)
■犬の後天性表皮水疱症:20症例の回顧的研究
Canine epidermolysis bullosa acquisita: a retrospective study of 20 cases.
Vet Dermatol. December 2015;26(6):441-e103.
Petra Bizikova; Keith E Linder; Jessica A Wofford; Lisa B Mamo; Stanley M Dunston; Thierry Olivry

背景:後天性表皮水疱症(EBA)は、犬とヒトで珍しい自己免疫性の表皮下水泡形成疾患である。

目的:犬のEBAの臨床的表現型、病理組織および治療結果を述べる。

動物:表皮下の水泡形成とコラーゲンVII自己反応性を基にEBAと診断された20頭の犬

結果:ほとんどの犬は若く(中央値1.2歳)、オスとメスの比率は2.3:1だった。20頭中9頭(45%)は1歳未満で病変を発症し、20頭中11頭(55%)はグレートデーンだった。緊張した小嚢胞および水泡(18/20;90%)と深い糜爛と潰瘍(20/20;100%)は最もよく見られる病変で、主に口腔(19/20;95%)、耳介(16/20;80%)、腋窩(15/20;75%)、肢のパッド(14/20;70%)に見られた。病理組織検査により好中球性血管周囲皮膚炎(17/17;100%)で好酸球を伴わない、あるいは伴うもの(12/17;71%)で伴うものは時折同等(4症例)あるいは好中球を上回った(2症例)。表皮下水泡は炎症を欠き、好酸球を伴うあるいは伴わない好中球、フィブリンおよび/あるいは出血を含んだ。皮膚病変の完全寛解は中央値58日で14頭の犬に見られた。グルココルチコイドは単剤療法(3/14;21%)、あるいは他の免疫調整剤と組み合わせ(11/14;79%)で使用された。プレドニゾンの用量中央値は3mg/kg/日だった。残りの6頭は安楽死された。

結論と臨床意義:犬のEBAは炎症性表現型を伴う表皮下水泡形成疾患で、若いグレートデーンとオス犬に偏りがあった。治療の結果は、過去に想定されたものよりも好ましいと思われた。(Sato訳)
■健常犬とアレルギー犬における皮膚のマイクロバイオーム
The skin microbiome in healthy and allergic dogs.
PLoS One. 2014 Jan 8;9(1):e83197. doi: 10.1371/journal.pone.0083197. eCollection 2014.
Rodrigues Hoffmann A, Patterson AP, Diesel A, Lawhon SD, Ly HJ, Elkins Stephenson C, Mansell J, Steiner JM, Dowd SE, Olivry T, Suchodolski JS.

背景: 従来の微生物学的技術を使って伝統的に動物の皮膚の微生物集団の変化を評価している。これまでに培養を元にした方法では証明できなかったが、細菌の16S rRNA 遺伝子のシークエンスで人間の皮膚には多様のある様々な微生物がいることが明らかになった。この研究のゴールは犬の皮膚における異なる部位に存在する微生物を記述し健常犬とアレルギー犬の皮膚の微生物を比較することだった。

方法/主な所見: 被毛の生えている皮膚と粘膜表面の異なる部位から健常犬(n?=?12)とアレルギー犬(n?=?6)の皮膚表面のスワブから抽出したDNAを16S rRNA 遺伝子の454-ピロシーケンスを使用した。主座標分析ですべての犬で異なる皮膚の部位でクラスタリングがあることが明らかになった。いくらかの粘膜部と肛門周囲のクラスタリングは被毛の生えている皮膚の部位とは異なった。Rarefaction解析で健常犬から採取したサンプルの間および異なる皮膚部位との間で高い個体差が明らかになった。
粘膜表面あるいは粘膜皮膚境界部と比較すると、被毛のある皮膚から採取したサンプルにおいて、より多くの細菌種と微生物の多様性が観察された。検査した全ての領域において、皮膚と粘膜表面の異なる部位から見いだされた最も豊富な門と科がプロテオバクテリアとオキサロバクター科であった。アレルギーの犬の皮膚は健常犬と比較して菌の種類がより少なかった。アレルギーの犬は健常犬と比較してベータプロテオバクテリア ラルストニアの割合が少なかった。

結論/重要性:培養を元にした従来の方法に比べてより多くの種類と多様性のある微生物が犬の皮膚には存在することが本研究で証明された。我々のシークエンスデータから異なる患者から採取したサンプル間においてより高い個体差があることが明らかになった。細菌種の豊富さの違いは健康な犬やアレルギーの犬の間で見られ、健常犬と比較した場合、アレルギーの犬はより種の豊富さが少なかった。(Dr.Kawano訳)
■犬の無菌性結節性脂肪織炎:39頭の犬の回顧的研究
Canine sterile nodular panniculitis: a retrospective study of 39 dogs.
Vet Dermatol. December 2015;26(6):451-e105.
Caitlin L Contreary; Catherine A Outerbridge; Verena K Affolter; Philip H Kass; Stephen D White

背景:犬の無菌性結節性脂肪織炎(SNP)は組織層の炎症性疾患で、一般的には免疫調節剤や免疫抑制剤で管理される。ある基礎全身性疾患の皮膚マーカーと報告されている。

仮説/目的:犬のSNPに関係する併発全身性疾患の有無を評価することと、犬種素因を実証すること

動物:1990年から2012年の間に獣医教育病院で基準に合った39頭の犬

方法:この回顧的研究に含めるには、病理組織検査によるSNPの診断、感染性微生物に対し特殊染色の陰性結果を必要とした。罹患犬の犬種分布は同時期同病院で検査した全ての他の犬と比較した。脂肪織炎の組織学的パターンと皮膚炎の組織学的存在、病変の臨床症状、犬種と治療結果との相関を評価した。

結果:オーストラリアンシェパード、ブリタニースパニエル、ダルメシアン、ポメラニアン、チワワが有意に多くみられたが、脂肪織炎の炎症性パターン、他の組織学的および臨床的ファクターとの相関は確認されなかった。カルテからの情報を基に、32頭(82.1%)に併発全身性疾患は確認されなかった。4頭の犬は、メカニズムは不明だがSNPと関連するかもしれない多発性関節炎を併発していた。

結論/臨床的意義:この研究はSNPの素因のある新しい犬種を確認した;多発性関節炎以外に関係する全身性疾患と明確な相関は確認できなかった。SNPの組織学的炎症性パターンは治療結果を予測しない。(Sato訳)
■Staphylococcus pseudintermediusのバイオフィルム形成から分離された犬の膿皮症の表現型と遺伝型の特徴
Phenotypic and genotypic characterization of canine pyoderma isolates of Staphylococcus pseudintermedius for biofilm formation.J Vet Med Sci. 2015 Aug;77(8):945-51. doi: 10.1292/jvms.15-0043. Epub 2015 May 18.
Casagrande Proietti P, Stefanetti V, Hyatt DR, Marenzoni ML, Capomaccio S, Coletti M, Bietta A, Franciosini MP, Passamonti F.

バイオフィルム形成能力はいくつかのStaphylococcus において重要な毒性要因としてますます認識されている。

この研究では、マイクロタイタープレート検査(MtP), コンゴーレッド培地法 (CRA) そしてチューブ付着検査そしてバイオフィリム関連遺伝子の存在と効果(icaA and icaD)の3つの表現方法を使って60頭の犬から臨床的に分離されたS. pseudintermediusのバイオフィルム形成能を評価した。

結果はicaA と icaD遺伝子が60中55 (91.7%)に付随して検出された。スクリーニング株の過半数(88.3パーセント)がチューブ付着試験、MTPおよびPCR分析によって一致する結果があった。PCRベースの分析とCRAの間でより良い同意(95%)が得られた。icaAとicaD遺伝子PCRの結果は、0.7のカッパーとともにCRAの結果と良い一致を示しました。表現型の方法を比較すると、カテゴリデータを使用した表現型のテストの間の同意が一般的に良好であることが統計的分析で示された。2つのクラス((biofilm producer と biofilm non-producer)を考えると、CRA法とチューブ付着検査の間、CRA法とMtPの間の結果が合う比率は93.3%であった。100%の一致はMtPとチューブ付着検査の間で明らかとなった。

結果から、分離されたS. pseudintermediusにica遺伝子の高い有病率があり、それらの存在はin vitroでのバイオフィルムの形成と関連する。表現型と遺伝型のテストの併用はS. pseudintermediusのバイオフィルム形成の観察に推奨される。(Dr.Kawano訳)
■2頭のポメラニアンの同腹子のアロペシアXに対するマイクロニードル穿刺の治療成功例
Microneedling as a successful treatment for alopecia X in two Pomeranian siblings.
Vet Dermatol. October 2015;26(5):387-e88.
Steve Stoll; Christian Dietlin; Claudia S Nett-Mettler

背景:アロペシアX(毛周期停止)は、ポメラニアンやいくつかの多の犬種において比較的発生頻度の高い発毛障害で、全身症状を伴わない対称性非炎症性脱毛が特徴である。病因と原因は不明である。過去に報告された種々の局所および全身薬による治療成果は不定である。

仮説:極微針穿刺装置を用いた皮膚表層の機械的傷害は、処置部位で長期の発毛を誘発するだろうという仮説を立てた。

動物:アロペシアXと組織学的に確認された2頭の避妊済みメスのポメラニアンの同腹子。デスロレリン、メラトニン、ミノキシジルによる過去の治療は、有意な発毛を引き起こさなかった。

方法:犬に麻酔をかけ、皮膚を極微針穿刺装置で穿刺した。犬は12か月の期間経過観察した。

結果:極微針穿刺後5週間で発毛が始まり、その後、皮膚の色素沈着過剰が減ってきた。12週後には、脱毛していた部分で被毛が90%改善した。処置後12か月目には、被毛状態は安定していた。副作用は見られなかった。

結論と臨床意義:これは、アロペシアXに侵された犬において極微針穿刺が発毛を誘発したという最初の報告である。アロペシアXの多数の犬において極微針穿刺を用いた長期研究を、それらの予備的結果を確認し、さらに皮毛が永続的かどうかを評価するために実施する必要がある。(Sato訳)
■犬の落葉状天疱瘡の治療導入における経口グルココルチコイドパルス療法-比較研究
Oral glucocorticoid pulse therapy for induction of treatment of canine pemphigus foliaceus - a comparative study.
Vet Dermatol. October 2015;26(5):354-e77.
Petra Bizikova; Thierry Olivry

背景:犬の落葉状天疱瘡(PF)の管理は、受け入れがたい副作用に関係することも多く見られる長期の免疫抑制療法を必要とすることもよくある。ヒトの天疱瘡での代替プロトコールである高用量グルココルチコイドパルス療法は、落葉状および尋常性天疱瘡の犬で急速な改善をもたらすことが示されている。

目的:犬のPFの管理でパルス療法の利点をさらに確認するため、疾患管理の最初の3か月の間で、経口グルココルチコイドパルス療法と従来の治療法の結果を比較した。

動物:PF管理の最初の12週間で、経口グルココルチコイド療法を基に、従来群(20頭)、あるいはパルス群(18頭)に振り分けた。

結果:治療の最初の12週間で完全寛解(CR)に達した犬の比率は、従来群(15%;P=0.0063)と比べ、パルス群(61%)で有意に高かった。従来群の犬に与えていた経口グルココルチコイドの最大投与量(中央値:3.2mg/kg)は、他の群のパルス間に与えていた最大量(中央値:1.1mg/kg;P<0.0001)よりも有意に高かった。群間でCR達成までの期間、補助免疫抑制療法を必要とする犬の比率、あるいは重度有害薬剤反応を経験した犬の比率に有意差はなかった。

結論と臨床意義:最初の3か月で完全寛解に達する犬の比率がより高い、パルス間に投与される経口グルココルチコイドの平均最大量がより低い、有害薬剤事象が最小など、経口グルココルチコイドパルス療法に関係するいくつかの利点が示唆される。(Sato訳)
■週1回のドラメクチン注射による犬全身性ニキビダニ症の治療:アメリカにおける232症例(2002-2012)
Treatment of canine generalized demodicosis using weekly injections of doramectin: 232 cases in the USA (2002-2012).
Vet Dermatol. October 2015;26(5):345-e73.
John H C Hutt; I Craig Prior; Michael A Shipstone

背景:全身性ニキビダニ症は犬の重度皮膚病の1つで、治療オプションに限りがある。

仮説/目的:犬の全身性ニキビダニ症の治療において、ドラメクチンを0.6mg/kgで投与した時の安全性と有効性を証明する

動物:1軒の小動物一般診療施設において、全身性ニキビダニ症と診断された飼育犬400頭。それらのうち232頭が治療を完遂し、研究に含めた。

方法:アメリカテネシー州において1軒の小動物一般診療施設で見られた犬の電子カルテを検索することで回顧的研究を行った。全身性ニキビダニ症と診断され、週1回のドラメクチン0.6mg/kgの注射で治療された各犬のカルテを解析した。

結果:ドラメクチン0.6mg/kgの週1回の皮下注射で治療した犬の94.8%が寛解に達した。副作用はまれで、疑われる2症例(0.5%)が記録されていた。治療期間の平均は7.1週間だった。

結論と臨床意義:犬の全身性ニキビダニ症に対し、ドラメクチン0.6mg/kgの週1回の皮下注射は有効で、良好な許容を示す治療である。(Sato訳)
■2歳の猫の特発性潰瘍性皮膚炎の管理におけるトピラマートの使用
Topiramate in the management of feline idiopathic ulcerative dermatitis in a two-year-old cat.
Vet Dermatol. June 2014;25(3):226-8, e59-60.
David Grant; Clare Rusbridge

背景:猫特発性潰瘍性皮膚炎は珍しく、自傷を特徴とするあまり分かってない状況である。その病変は、治らない、かさぶたのある潰瘍を呈し、首の背線や肩甲骨間に一般に見られる。

動物:2歳のメスの避妊済み短毛家猫が背側正中の潰瘍性皮膚炎を呈した。原因を確定する過去の調査は失敗しており、病変は治療に抵抗性だった。

方法と結果:診断は臨床所見を基に、表皮潰瘍と表皮下線維と共に軽度皮膚浸潤を伴う表皮壊死を示す組織検査により確定した。その猫は6か月間市販の低アレルギー食を与えられており、慢性下痢の管理には成功していた。深部皮膚掻爬、細胞診および真菌培養で病原菌は見つからなかった。

結論と臨床意義:人医で使用される抗てんかん薬のトピラマート(5mg/kg1日2回経口)により、寛解が4週間以内に得られ、30か月以上維持している。この治療を中止する試みは2回行ったが24時間以内に再燃した。著者の知る限りでは、これは猫の特発性潰瘍性皮膚炎にこの薬剤を使用した最初の症例報告である。(Sato訳)
■未去勢のオス犬における毛周期停止のデスロレリンによる治療
Deslorelin for the treatment of hair cycle arrest in intact male dogs.
Vet Dermatol. December 2014;25(6):519-e88.
Francesco Albanese; Eleonora Malerba; Francesca Abramo; Vincenzo Miragliotta; Federico Fracassi

背景:毛周期停止(アロペシアX)は病因不明、頭部と末梢四肢を除く左右対称、非掻痒性、非炎症性脱毛を特徴とする犬の脱毛状態をあらわす。

仮説/目的:この研究の目的は、毛周期停止の未去勢のオスと避妊済みのメス犬の治療で、4.7mgデスロレリンインプラントの効果を前向きに評価することだった。

動物:毛周期停止と確認された10頭のポメラニアン(8頭は未去勢オス、2頭は避妊済みメス)、4頭のイタリアンスピッツ(3頭は未去勢オス、1頭は避妊済みメス)、3頭のミニチュアプードル(2頭は未去勢オス、1頭は避妊済みメス)、2頭のシベリアンハスキー(未去勢オス)、1頭の未去勢オスのチャウチャウを研究した。

方法:各犬に4.7mgデスロレリンを含む皮下の無菌インプラントを設置した。反応があった犬には1年の薬理学的暴露と1年の経過観察を行うため、最初のインプラントから6か月目に再びインプラントした。

結果:16頭の未去勢のオスのうち12頭(75%)で3か月以内に目にわかる発毛があった;どの避妊したメス犬にも発毛は見られなかった。治療に対する全体の反応率は60%だった。副作用は見られなかった。

結論と臨床意義:特発性毛周期停止の未去勢のオス犬に対し、デスロレリンは治療オプションだと思われることが示唆される。デスロレリンは現行の治療および去勢に変わるものである。(Sato訳)
■吸入グルココルチコイドで治療した2頭の猫のマズルのDemodex catiによる局所ニキビダニ症
Localized demodicosis due to Demodex cati on the muzzle of two cats treated with inhalant glucocorticoids.
Vet Dermatol. June 2014;25(3):222-5, e57-8.
Petra Bizikova

背景:Demodex catiによる猫のニキビダニ症は珍しい皮膚疾患で、併発疾患や全身性免疫抑制に関係することも多い。ヒトや動物でグルココルチコイドおよびタクロリムスのような局所免疫調節剤の使用あるいは腫瘍細胞による局所免疫抑制は、局所ニキビダニ症発症の潜在的引き金と示唆されている。

目的:この目的は吸入マスクでグルココルチコイドを投与する喘息の長期療法の結果、マズルに局所ニキビダニ症を発症した2頭の猫について述べる。

結果:2頭はフルチカゾン調剤チャンバーにさらされたマズル部分にパッチ状脱毛、軽度紅斑、痂皮化および鱗状化が認められた。深部皮膚掻爬でDemodex catiを認めた。フルチカゾンの中止あるいは減量とミルベマイシンの投与で2頭とも2か月以内に臨床症状が解消した。1頭はミルベマイシン投与から7か月で皮膚掻爬陰性が得られた。

結論と臨床意義:吸入グルココルチコイドにさらされる顔面に主に脱毛あるいは他の皮膚病変が見られた猫で、ニキビダニ症を鑑別診断の1つに考えるべきである。吸入グルココルチコイドと皮膚の接触を最小限にすることは、顔面から残存パウダーをふき取ることで達成できる。周囲の部分に接触を避けるには皮膚にマスクをきつく密着させることで可能となる。(Sato訳)
■犬の全身性毛包虫症に対するフルララネル(ブラベクト)の経口投与とイミダクロプリド/モキシデクチン(アドボケート)の局所投与の効果
Efficacy of orally administered fluralaner (Bravecto?) or topically applied imidacloprid/moxidectin (AdvocateR) against generalized demodicosis in dogs.
Parasit Vectors. 2015 Mar 28;8:187. doi: 10.1186/s13071-015-0775-8.
Fourie JJ, Liebenberg JE, Horak IG, Taenzler J, Heckeroth AR, Frenais R.

背景:この基礎研究は犬の自然獲得性全身性毛包虫症に対し、チュワブルとして作られたブラベクト(フルララネル)の効果と、局所投与剤のアドボケート(イミダクロプリド/モキシデクチン)の効果を比較した。

方法:全身性毛包虫症と全て診断された16頭の犬を無作為に2つの等しいグループに振り分けた。1群は25mg/kgの最小投与量で1回ブラベクトチュアブルを経口投与し、2群はイミダクロプリド10mg/kgとモキシデクチン2.5mg/kgの最小投与量のアドボケートを28日間隔で3回局所に投与した。処置前と28日間隔で研究期間の12週まで各犬のダニを皮膚掻爬でカウントし、皮膚病変を評価した。各引き続きの検査で、各犬の同じ5部位から深部皮膚掻爬(4cm(2)まで)を行った。

結果:ブラベクトチュアブルの1回の経口投与後、皮膚掻爬のダニの数は28日目に99.8%減数し、56日と84日目には100%減数した。アドボケートを28日間隔で3回局所投与した犬のダニの数は、28日目で98%、56日で96.5%、84日目で94.7%減数した。アドボケートを投与した犬と比べ、ブラベクトを投与した犬の56日と84日目で統計学的に有意(P≦0.05)にダニの数が少ないことが分かった。 ブラベクトを投与した犬の紅斑性パッチ、痂皮、ふけ、鱗屑の発生、アドボケートを投与した犬の紅斑性パッチの発生に、顕著な減少が観察された。各処置群の1頭を除き、研究開始時の各犬の皮毛と比較し、研究終了時には全ての犬で90%以上の最発毛が見られた。

結論:ブラベクトチュアブルの1回の経口投与は、全身性毛包虫症に高い効果を発揮し、処置後56日および84日でダニは検出できなかった。それと比べ、アドボケートの28日間隔の3回投与も全身性毛包虫症に高い効果を示したが、全ての評価時においてほとんどの犬にダニが寄生していた。両治療共に皮膚病変の顕著な減少を起こし、最初の治療後12週で再発毛も増加した。(Sato訳)
■多発性毛芽細胞腫の犬の一例
Multiple trichoblastomas in a dog.
Vet Dermatol. February 2014;25(1):48-e19.
Andressa G Campos; Bruno Cogliati; Juliana M Guerra; Julia M Matera

背景:毛包の腫瘍は一般に良性の孤立性マスで、切除後の予後は良好である。

仮説と目的:この報告は複数発生した毛芽細胞腫の犬の一例を述べる。

動物:2歳雑種の犬が、直径2cmから9cmで、顔の右側の眼周囲、唇周囲、顎下、鼻部に複数の柔らかい皮膚結節を呈した。3週間後の2度目の診察で顔の同側に新たな結節が観察された。

方法:2回の処置で全ての結節を外科的に切除した。最初に切除した3つの結節を病理組織検査と免疫組織化学検査に提出した。3つ全て毛芽細胞腫と診断された。2度目の診察時、新しい結節と残りの結節をバイオプシーし、同じ診断を得た。新しい腫瘍の成長と今ある腫瘍の大きさを減ずる試みとして、2度目の外科的処置の前30日間、ドキソルビシンとピロキシカムで治療した。全ての結節を切除し、ローテーションフラップで欠損を閉じた。

結果:腫瘍の再発は、術後10か月以内に認められなかった。

結論と臨床的意義:毛芽細胞腫は一般に良性だが、外科切除が必要で化学療法に反応すると思われる多発性腫瘍が存在する可能性がある。著者の知るところでは、これは1頭の犬に見られた多発性毛芽細胞腫の最初の報告である。(Sato訳)
■犬全身性毛包虫症のドラメクチン週1回注射による治療:アメリカの232症例(2002-2012)
Treatment of canine generalized demodicosis using weekly injections of doramectin: 232 cases in the USA (2002-2012).
Vet Dermatol. 2015 Jul 20. doi: 10.1111/vde.12223. [Epub ahead of print]
Hutt JH, Prior IC, Shipstone MA.

背景:犬の全身性毛包虫症は重度皮膚疾患で、治療方法が限られている

仮説/目的:犬の全身性包包虫症に対し、ドラメクチン0.6mg/kgの投与は安全で有効な治療と証明すること

動物:1件の一般動物病院で全身性毛包虫症と診断された飼育犬400頭。そのうち232頭は治療が完全で、研究に含めた。
方法:アメリカのテネシー州で1件の一般動物病院で見られた犬の電子カルテを検索し、回顧的研究を行った。全身性毛包虫症と診断され、ドラメクチン0.6mg/kgで週1回の注射により治療した各犬の記録を分析した。

結果:ドラメクチン0.6mg/kgの週1回の皮下注射による治療で94.8%の犬が寛解した。有害事象はまれで、その疑いの2頭(0.5%)が記録されていた。平均治療期間は7.1週間だった。

結論と臨床意義:犬の全身性毛包虫症に対し、ドラメクチン0.6mg/kgの週1回の皮下注射は有効で良好に許容する治療である。(Sato訳)
■犬の皮膚におけるマラセチア母集団を減らすための0.3%クロルヘキシジン, 0.5%クリンバゾールとTris-EDTA配合のワイプの効果に関するパイロットスタディー
A pilot study of the efficacy of wipes containing chlorhexidine 0.3%, climbazole 0.5% and Tris-EDTA to reduce Malassezia pachydermatis populations on canine skin.
Vet Dermatol. 2015 Jun 16. doi: 10.1111/vde.12220.
Cavana P, Peano A, Petit JY, Tizzani P, Perrot S, Bensignor E, Guillot J.

背景: クロルヘキシジンとアゾール誘導体配合のワイプは獣医医療で推奨されている。マラセチアに対するそれらの活性についてはパブリッシュされた研究はない。

仮説/目的: マラセチアに対するクロルヘキシジン, クリンバゾールとTris-EDTA配合溶液を染み込ませたワイプの in vivoとin vitroでの活性を評価すること

動物:5頭のシャーペイ(research colony)

方法: ワイプは、左腋窩部、左鼡径部そして肛門周囲部に1日に1回(プロトコールA)、そして右腋窩、右鼡径部そして臍周囲部に1日に2回の3日間(プロトコールB)を塗布した。In vivoでの活性は、ワイプの塗布前後において、選択した部位に接触させたプレートを通じてマラセチアコロニーの定量によって評価した。ワイプが浸れた溶液の活性は、in vitroでEuropean Standard UNI EN 1275ガイドラインに基づく接触試験によって評価した。

結果: ワイプ塗布後に採取したサンプルはマラセチア菌のCFUの有意かつ急速な減少が見られた。プロトコールAとプロトコールBにおけるマラセチア減少に関する有意な違いは無かった。In vitro評価では、ワイプ溶液の接触時間15分後にマラセチア菌に対して100%の活性を認めた。

結論と臨床重要性: クロルヘキシジン, クリンバゾールとTris-EDTA配合のワイプは、犬の皮膚のマラセチア母集団を十分に減らした。これは少数の犬で実施された非対照研究ではあるが、結果がこれらのワイプが唇、足、肛門周囲そして皮膚の襞に影響するマラセチア性皮膚炎の局所療法に有効かもしれないことを示している。(Dr.Kawano訳)
■猫のスポロトリクム症:予防と管理のABCDガイドライン
Sporotrichosis in cats: ABCD guidelines on prevention and management.
J Feline Med Surg. July 2013;15(7):619-23.
Albert Lloret; Katrin Hartmann; Maria Grazia Pennisi; Lluis Ferrer; Diane Addie; Sandor Belak; Corine Boucraut-Baralon; Herman Egberink; Tadeusz Frymus; Tim Gruffydd-Jones; Margaret J Hosie; Hans Lutz; Fulvio Marsilio; Karin Mostl; Alan D Radford; Etienne Thiry; Uwe Truyen; Marian C Horzinek

概要:スポロトリクム症は、ある熱帯および亜熱帯地域においてヒトや動物の重要な皮下真菌感染の1つである。ペットの中で猫は最も感染の頻度が高い。

感染:伝播の主要様式は、植物や土壌から真菌分生子の外傷的播種である。感染した猫との接触は、特にここ10年で大流行しているブラジルのような地方病地域ではヒトへの伝播の主要様式である。

疾患症状:猫の症例の多くは皮膚に複数の潰瘍性結節と瘻管を呈する。リンパ節症、呼吸器症状、全身性播種も起こるかもしれない。

診断:細胞学的および/あるいは組織学的に真菌検出、培養による確認を基に診断する。

治療:治療は第一選択薬としてイトラコナゾールで最低2か月の「全身抗真菌療法」を行う。飼育者の良好なコンプライアンスがあれば予後は良好で、薬剤の副作用は起こらない。

予防:感染した猫との接触は人獣共通の高いリスクを有する。地方病地域への猫の飼育者の旅行は警告し、感染を防ぐために猫を室内に閉じ込めておくことを忠告すべきである。専門家は、皮膚の結節や潰瘍のある猫を触るとき、診断用サンプルを取り扱う時には手袋を着用すべきである。(Sato訳)
■犬の皮膚における犬のコアグラーゼ陽性スタフィロコッカスとその分布に対するバイオマーカーと蛋白パターン分析
Biochemical markers and protein pattern analysis for canine coagulase-positive staphylococci and their distribution on dog skin.
J Microbiol Methods. 2011 Aug;86(2):175-81. doi: 10.1016/j.mimet.2011.04.019. Epub 2011 May 6.
Chanchaithong P, Prapasarakul N.

S. pseudintermedius, S. schleiferi subsp. coagulans そしてS. aureusなどコアグラーゼ陽性スタフィロコッカス(CoPS)は、小動物領域において皮膚病の原因菌であり人畜共通の病原体である。今日、これらの菌種のルーティンな微生物学的同定のための同意が得られているバイオマーカーは確認されていない。

この研究の目的は、生物学的マーカーを評価することであり、承認された分子レベルの方法であるmultiplex-PCR (M-PCR)で得られた結果を比較し、SDS-PAGEを使った菌種特異的フェノタイプの特徴を確認することであった。CoPS菌種の分布と頻度も決定した。337頭の犬のCoPS分離菌は、66頭の健常犬の鼻粘膜、会陰部そして鼠径部から得られ、M-PCRによって S. aureus (n=5), S. pseudintermedius (n=263) そしてS. schleiferi subsp. coagulans (n=69)が同定された。フォーゲス・プロスカウエル・テスト、マンニトール培養発酵、培養培地を使ったマルトース、ガラクトース、トレハロースそしてラクトースによる吸収など選択的生物化学的検査は、犬のCoPSの3菌種と他の CoPS菌種と区別することに役立った。さらに、S. pseudintermediusやS. schleiferi subsp. Coagulansによる共コロニゼーションは観察されたので、菌種特異的蛋白パターンも、M-PCRの結果の良好な一致と頻繁に犬の皮膚で発生するバイオマーカーS. aureusの使用でフェノタイプの区別に役立つことが分かった。

我々は、従来の検査で使用される代替ツールとしてユニークな蛋白パターンと共に犬のCoPSの同意の得られた生物科学的マーカーの使用を提案する。(Dr.Kawano訳)
■網目状の過剰色素沈着を伴う両側対称性脱毛:全身紅斑性狼瘡の1頭の犬における皮膚紅斑性狼瘡の一症状
Bilaterally symmetrical alopecia with reticulated hyperpigmentation: a manifestation of cutaneous lupus erythematosus in a dog with systemic lupus erythematosus.
Vet Pathol. July 2013;50(4):682-5.
T Olivry; K E Linder

オスの去勢済みドーベルマンピンシャーの成犬が、6か月前からの網目の過剰色素沈着と腋窩、胸部、腹部、鼠径部、睾丸上の細かな辺縁の鱗屑を伴う境界明瞭な脱毛斑を呈した。その後、その犬は発熱、嗜眠、明らかな関節痛、末梢リンパ節腫脹、嘔吐、下痢を発症した。関連のある検査結果は、貧血、血小板減少、蛋白尿などと、抗核抗体血清価の上昇が見られた。組織学的に、皮膚バイオプシー標本はリンパ球が豊富な境界型皮膚炎と毛包破壊につながる境界型毛包上皮炎があった。

全体的に見て、それらの症状は慢性皮膚紅斑性狼瘡の独特な脱毛型と一致し、やがて全身性紅斑性狼瘡の発症に関係する。

この珍しい慢性皮膚狼瘡の型は、犬のリンパ球介在性自己免疫脱毛の大リストに加える必要がある。(Sato訳)
■グルカゴン産生原発性肝臓神経内分泌癌に関係した壊死融解性移動性紅斑の猫の1例
Necrolytic migratory erythema associated with a glucagon-producing primary hepatic neuroendocrine carcinoma in a cat.
Vet Dermatol. August 2013;24(4):466-e110.
Midori G Asakawa; John M Cullen; Keith E Linder

背景:ヒトでは壊死融解性移動性紅斑(NME)は膵臓のグルカゴン産生腫瘍に最もよく関係する特徴的な皮疹を伴う症候群で、グルカゴン産生腫瘍症候群の一部分と認識される。獣医療ではNME(表皮壊死融解性皮膚炎、肝臓皮膚症候群、代謝性表皮壊死症とも呼ばれる)は、慢性肝疾患あるいは頻度は少ないがグルカゴン産生腫瘍に関連して犬で述べられているが、猫においてグルカゴン産生腫瘍に関係したNMEは過去に報告されていない。

症例報告:6歳去勢済みオスの家猫短毛種が、グルカゴン産生原発性肝臓神経内分泌癌(肝臓カルチノイド)に関係するNMEと診断された。その猫は2週間にわたる嘔吐と食欲不振があり、直径5cmの肝臓のマスが腹部超音波検査で認められた。全身性の虚弱で、痂皮を伴う皮膚病変と四肢に疼痛があった。初診から11か月後に安楽死された。パッドの病理組織学的評価は典型的'red, white and blue'病変で、錯角化角質増殖症、表皮水症性変化と深皮の重度好塩基球増加から構成されることを示した。肝臓のマスは神経内分泌癌と診断された(肝臓カルチノイド)。腫瘍細胞はグルカゴンに対し強い免疫反応を示した。

結論と臨床的重要性:これは1頭の猫のグルカゴン産生原発性肝臓神経内分泌癌に関係するNMEの最初の症例報告である。(Sato訳)
■病原真菌マラセチアにおけるC型レクチン受容体MincleとDectin-2の独特なリガンドの同定
Identification of distinct ligands for the C-type lectin receptors Mincle and Dectin-2 in the pathogenic fungus Malassezia.
Cell Host Microbe. 2013 Apr 17;13(4):477-88. doi: 10.1016/j.chom.2013.03.008.
Ishikawa T, Itoh F, Yoshida S, Saijo S, Matsuzawa T, Gonoi T, Saito T, Okawa Y, Shibata N, Miyamoto T, Yamasaki S.

MincleやDectin-2など様々なC型レクチン受容体(CLRs)はパターン認識受容体として機能し、真菌病原体に対する免疫において中心的な役割を果たす。しかし、様々な病原真菌においてCLRリガンドの正確な構造はまだ完全には解明されていない。

ここで我々は、日和見的な皮膚の真菌病原体であるマラセチアは、独特なリガンドを通じてMincleとDectin-2によって協力的に認識されることを報告する。

ソルベントベースの分画でMincleとDectin-2がマラセチアの脂肪親和性、親水性の成分をそれぞれ認識することが明らかになった。質量分析法(MS)と核磁気共鳴法(NMR)で、グリセロ糖脂質と独特なマンノシル脂肪酸が2つのMincleリガンドとしマンニトールに結合することが明らかになった。O結合型マンノビオースが豊富な糖タンパク質は、Dectin -2のマラセチア性リガンドとして同定された。MincleリガンドとDectin-2リガンドに対する反応におけるサイトカイン産生はMincle(-/-)そしてDectin-2(-/-)樹状細胞でそれぞれ阻止される。

これらの結果は、MincleとDectin-2が宿主の免疫反応を誘発するマラセチアの特徴的なリガンドを認識することを証明する。(Dr.Kawano訳)
■台湾での猫の疥癬:5頭の猫のケースシリーズ
Feline sarcoptic mange in Taiwan: a case series of five cats.
Vet Dermatol. August 2013;24(4):457-e105.
Hui-Pi Huang; Yu-Hsin Lien

背景:猫でヒゼンダニ感染はまれである。

目的:ヒゼンダニに感染した猫の臨床症状と治療を報告する

動物:次回の凹面、凸面の進行性および非反応性痂皮病変を呈する5頭の猫をこのシリーズに加えた。記録された他の皮膚症状は鼻梁上の痂皮(5/5)、硬くなった足皮膚炎(3/5)、尻尾上の硬くなった病変(1/5)、飼い主の腕および/あるいは大腿の掻痒性紅斑性丘疹(5/5)だった。犬と生活している猫はいなかった。

方法:疥癬(ヒゼンダニ)は深部皮膚掻爬にヒゼンダニを認めることで診断した。1.0%モキシデクチンと10%イミダクロプリドのスポットオン(0.1ml/kg)を2週間ごとに3回投与した。全ての猫は投与時に再評価した。

結果:5頭の猫と飼い主は、最初の投与後に改善し、3回目の投与後臨床的寛解に達した。全ての猫の深部皮膚掻爬は、1回目の投与後ヒゼンダニ陰性となった。研究期間中に臨床的副作用あるいは定期血液検査で異常は見られなかった。治療後6か月にわたる追跡期間中に再感染は報告されなかった。

結論:猫で疥癬はまれであるが、耳介および鼻の痂皮を伴う病変や硬くなった足皮膚炎を呈する猫の鑑別診断に加えるべきである。モキシデクチンとイミダクロプリドのスポットオン製剤は、ヒゼンダニ感染の猫の治療にうまく使用できた。(Sato訳)
■犬の皮膚石灰沈着症:46症例の病理組織および臨床的分析
Calcinosis cutis in dogs: histopathological and clinical analysis of 46 cases.
Vet Dermatol. June 2013;24(3):355-e79.
Katherine A Doerr1; Catherine A Outerbridge; Stephen D White; Philip H Kass; Ryoji Shiraki; Andrea T Lam; Verena K Affolter

背景:皮膚石灰沈着症は内因性および医原性副腎皮質機能亢進症の犬でよく見られるが、病因は未だ不明である。

目的:この研究の目的は、皮膚バイオプシーにおける皮膚石灰化の病理組織パターンと犬の皮膚石灰沈着症の基礎疾患の間の関連の可能性を確認することと、病院集団内の犬で犬種素因と発症年齢を調査することだった。またミネラル分析を4つのバイオプシーサンプルで実施した。

動物:皮膚石灰沈着症を病理組織学的に確認した46頭の犬を評価した。

方法:21年間で病理組織により皮膚石灰沈着症と診断された犬のカルテと組織切片を再検討した。パラフィンブロックのミネラルを確認するため赤外線分光測定を使用した。完全なカイ二乗検定を犬種素因の確認に使用し、マンホイットニーU検定を年齢相関の確認に使用した。

結果:ラブラドールレトリバー、ロットワイラー、ボクサー、スタッフォードシャーテリアが、この研究で最も一般的に罹患した犬種だった。腎臓機能不全の5頭を除いて、ほとんどの犬はコルチコステロイドの外因あるいは内因性の源があった。症例のほとんどにおいて、石灰化は全真皮中に認められた。内因性副腎皮質機能亢進症の犬の皮膚石灰沈着症の発現年齢の平均は、医原性副腎皮質機能亢進症の犬よりも高かった。赤外線分光測定を用い、アパタイト結晶がミネラルの源になっていることが分かった。

結論と臨床意義:内因性と医原性副腎皮質機能亢進症の犬の皮膚石灰沈着症の病理組織パターンに明らかな差はなかった。グルココルチコイド療法は犬に皮膚石灰沈着症を起こしやすくするように見えるが、ミネラル沈着が起こる特定用量あるいは要因の組み合わせがあるかどうかは不明なままである。さらに、皮膚石灰沈着症の犬におけるミネラル沈着はアパタイトであることが分かった。(Sato訳)
■犬の壊疽性膿皮症:2頭の犬のケースシリーズ
Canine pyoderma gangrenosum: a case series of two dogs.
Vet Dermatol. October 2013;24(5):552-e132.
Deborah L Simpson; Gregory G Burton; Lydia E Hambrook

背景:壊疽性膿皮症(PG)は珍しい疾患で、著者の知るところでは、査読を経た獣医文献において1症例の報告しかない。

仮説/目的:犬PGの2症例における病歴、臨床症状、診断所見および治療結果を述べること

動物:2008年から2010年の間に獣医委託診療所に来院し、獣医皮膚科専門医によりPGと診断された飼育犬2頭

方法:カルテから関連する情報を回収して分析した。

結果:2頭はプレドニゾロンで治療した;症例1はシクロスポリンと、症例2はアザチオプリンと併用した。症例2は治療に対する病変の反応が非常によく、診断から症例1(81日)より長く生存した(763日)。

結論と臨床意義:壊疽性膿皮症は有痛、表皮壊死性、不規則で青紫色が徐々に広がる境界を持つ皮膚潰瘍の急速な進行で区別できる珍しい疾患である。アザチオプリンとグルココルチコイドは、シクロスポリンとグルココルチコイド(ヒトにおける現在の第一線治療で犬の治療で唯一報告されている)よりも結果が良くなるかもしれない。(Sato訳)
■猫のひっかき傷が誘発したパスツレラ・ムルトシダ壊死性蜂巣炎の犬の1例
Cat scratch-induced Pasteurella multocida necrotizing cellulitis in a dog.
Vet Dermatol. August 2013;24(4):463-e108.
Frane Banovic; Keith Linder; Alison Boone; Sam Jennings; K Marcia Murphy

背景:ヒトでは、猫にひっかかれ、あるいは咬まれたあとに急速に発症するパスツレラ・ムルトシダ蜂巣炎の実態はよく知られており、時に壊死性筋膜炎に進行し、死に至る場合もある。

症例報告:3歳メスの避妊済みホイペットが、胸部腹側を猫にひっかかれ、24時間以内に斑状出血、腫脹、疼痛を発症した。翌日にかけて、疼痛薬剤治療だけで治療している間、病変は出血性嚢胞、広範な皮膚壊死へと急速に進行した。細菌培養でパスツレラ・ムルトシダの大量の発育が見られ、組織学的検査で、顕著な表皮、真皮、皮下の壊死を伴う化膿性皮下脂肪組織炎を示した。特異組織染色で、炎症細胞を伴う中程度のグラム陰性球桿菌混合が強調された。

外科的壊死組織切除、皮膚移植、静脈内抗生物質投与により完全に改善した。パスツレラ・ムルトシダに対する陽性細菌培養と組み合わせ、病歴、臨床所見、組織検査結果、治療に対する急速な反応からパスツレラ・ムルトシダ壊死性蜂巣炎の診断が強く支持された。

結論と臨床意義:ヒトでの猫が咬むことによるパスツレラ・ムルトシダ感染の合併症はよく知られている。著者の知識では、これは猫のひっかき傷から1頭の犬に起こったパスツレラ・ムルトシダ壊死性蜂巣炎の最初の報告である。この症例は、認識できず早期に治療されなければ、パスツレラ・ムルトシダ蜂巣炎の速さとひどさを強調するものである。獣医師は猫にひっかかれた後の全ての局所傷感染の鑑別診断にパスツレラ・ムルトシダを含めるべきである。(Sato訳)
■コーネル大学における猫の皮膚病:1407症例(1988-2003)
Feline dermatology at Cornell University: 1407 cases (1988-2003).
J Feline Med Surg. April 2013;15(4):307-16.
Danny W Scott; William H Miller; Hollis N Erb

コーネル大学教育病院において1988年から2003年までに皮膚病の診断がなされた1407頭の猫の医療記録をまとめた。

我々はその診断を皮膚疾患の猫(1407)の比率、同時期大学病院に来た全ての猫(22135)の比率、数として表した。

1407頭において合計1887の診断がなされた。症例の年齢、性別、種類群と22135頭の猫のそれと、病院集団は標準(サンプルというより)と考え('1-by-c') χ(2)検定で比較した

10種の最も一般的な皮膚病(それらの数;皮膚病群の中での比率;総猫集団からの比率)は、アレルギー(298;15.8%;1.35%)、アトピー性皮膚炎(194;10.3%;0.88%)、細菌性毛包炎/フルンケル症(189;10.0%;0.85%)、耳疥癬(115;6.1%;0.52%)、ノミ寄生(99;5.2%;0.45%)、猫座瘡(74;3.9%;0.33%)、ノミアレルギー(70;3.7%;0.32%)、皮膚の薬剤副作用(56;3.0%;0.25%)、特発性好酸球性肉芽腫複合体(55;2.9%;0.25%)、膿瘍(51;2.7%;0.23%)だった。全てのタイプ、混合、アレルギーは全皮膚病の32.7%を占めた。全病院集団の標準と比較して、2歳未満の猫とメス猫(避妊済み、未避妊両方)は皮膚症例群において有意に少数だった(全てP≦0.001)。対照的にヒマラヤン(家猫短毛、長毛、ペルシャ、シャム、他の種と比べ)とオス猫(去勢済み、未去勢両方)は有意に大きな比率を占めた(全てP≦0.001)。
■犬と猫の潰瘍性および非潰瘍性非結核性皮膚抗酸菌性肉芽腫
Ulcerated and nonulcerated nontuberculous cutaneous mycobacterial granulomas in cats and dogs.
Vet Dermatol. February 2013;24(1):146-53.e32-3.
Richard Malik; Bronwyn Smits; George Reppas; Caroline Laprie; Carolyn O'Brien; Janet Fyfe

背景:皮膚および皮下の抗酸菌性肉芽腫は、いくつかの病原の中の1つにより引き起こされる。このレビューは、限局性肉芽腫、すなわちleproid肉芽腫(犬)、猫のハンセン病(猫)を特徴とする疾患をおこす培養不可能な種に集中する。
臨床的に識別できない病変は、結核性病原体(マイコバクテリウム・bovis、マイコバクテリウム・microti)、およびマイコバクテリウム複合体の構成菌により起こり得る。瘻管に関係する皮下層の感染の原因となる急速に発育する抗酸菌種は論じていない。マイコバクテリウム・ulceransによる疾患は、局所で潰瘍を作る皮膚結節の重要な新しい鑑別診断の1つである。

臨床病変:病変は皮膚/皮下組織における1つあるいは多結節である。それらは一般に硬く、非常に限局性で典型的に毛がなくなる。潰瘍ができるかもしれず、起因菌の病原性や宿主の免疫反応に依存する。

診断:最も費用が掛からず、非侵襲性の診断方法は、細胞学的スメア上のネガティブな染色あるいは抗酸菌の検出後、Mycobacterium Reference Laboratoryへのメタノール固定、ロマノウスキー染色したスメアを提出することである。通常、スライドからサンプルのスクレーピングは、特定の抗酸菌プライマーを使用したPCR後の単位複製配列の塩基配列分析を使用する原因となる病原菌の同定可能に十分な抗酸菌DNAを得ることができる。

治療:治療は容易にアプローチできる病変の辺縁切除と、リファンピシン、クラリスロマイシン、クロファジミン、プラドフロキサシン/モキシフロキサシンの中から選択したゆっくり成長する抗酸菌に対して有効な2、3種類の薬剤治療との組み合わせに頼る。(Sato訳)
■内部疾患の皮膚症状
Cutaneous manifestations of internal diseases.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2013;43(1):135-52.
Catherine A Outerbridge

内部疾患の最もよく知られている皮膚症状の一つに、内分泌疾患で見られる皮膚変化がある。内部疾患の皮膚症状は、ある腫瘍過程でも見られることがある。亜鉛の代謝障害、脂質代謝、アミノ酸異化亢進は、亜鉛反応性皮膚疾患、皮膚黄色腫、表層性壊死性皮膚炎をそれぞれ引き起こす可能性がある。ある感染性疾患は、見た目の手掛かりだけでなく、皮膚バイオプシーや培養を行った場合決定的な診断的情報を提供するかもしれない皮膚病変を起こす可能性がある。それら皮膚変化の認識は内部疾患の臨床マーカーで、診断を迅速にでき、重度全身疾患のタイムリーな管理が可能となる。(Sato訳)
■犬の全血および皮膚シクロスポリン濃度に対するケトコナゾールの効果
The effect of ketoconazole on whole blood and skin ciclosporin concentrations in dogs.
Vet Dermatol. February 2013;24(1):118-25.e27-8.
Laura L Gray; Andrew Hillier; Lynette K Cole; Paivi J Rajala-Schultz

背景:シクロスポリン(CSA)は犬のアトピー性皮膚炎の治療に対し承認される。シクロスポリンは肝臓のチトクロムP450酵素により代謝され、その過程はケトコナゾール(KTZ)により抑制される。

仮説/目的:この研究の目的は、CSA5.0mg/kgを単独で投与した時(処置1)、2.5mg/kgで単独投与した時(処置2)、CSA2.5mg/kgとKTZ5mg/kgを同時投与した時(処置3)、CSA2.5mg/kgとKTZ2.5mg/kgを同時投与した時(処置4)の皮膚および血中CSA濃度を測定した。
我々の仮説は、処置1の皮膚と血中CSA濃度が処置3あるいは処置4の時の濃度と異なるだろうということだった。

動物:無作為交差試験において、7日間1日1回各処置(1、2、3、4)を行った6頭の健康な研究犬。

方法:各処置の1回、4回、7回目の投与後、ピークとトラフの皮膚パンチバイオプシーサンプルと全血サンプルを集め、高速液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析で分析した。データはSASにおいてPROC MIXEDで反復測定アプローチを用いて分析した。対比較は最小2乗法と多重比較に対するTukey-Kramer修正で行った。

結果:処置1の平均血中CSA濃度は、処置2や4と違いはなかったが、処置3よりは低かった。処置1の平均皮膚CSA濃度は処置2よりも高く、処置4とは違いがなく、処置3よりは低かった。

結論と臨床意義:犬アトピー性皮膚炎の治療で、CSAとKTZの各2.5mg/kgの同時投与は、CSA5.0mg/kg単独投与と同様に有効かもしれない。(Sato訳)
■犬の足皮膚炎
Canine pododermatitis.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2013;43(1):57-87.
David Duclos

この文献レビューは、犬の足先の病変の原因となる最も一般的な皮膚疾患12個の鑑別に役立つものである。それらの多くは同じに見え、間違うことの多い重要な特徴を持つ。それら各々の状態を述べ、気が付く鍵となる特徴を挙げている。それらの鍵となる特徴は、病歴あるいはシグナルメント情報かもしれず、またはそれら疾患を明確に区別するのに重要な診断検査かもしれない。(Sato訳)
■猫の落葉状天疱瘡の修正シクロスポリンの使用による管理
Use of modified ciclosporin in the management of feline pemphigus foliaceus: a retrospective analysis.
Vet Dermatol. October 2012;23(5):403-e76.
Katherine E Irwin; Karin M Beale; Valerie A Fadok

背景:猫の落葉状天疱瘡(PF)に対する単独治療としてグルココルチコイドは常に奏功するわけではなく、その疾患の管理に追加の免疫調節剤が必要なこともよくある。

仮説/目的:この後ろ向き研究では、PFの猫における補助あるいは単独免疫調節剤として修正シクロスポリンの使用を評価し、クロラムブシルで管理した時の反応と比較した。

動物:PFと診断され、治療の一部としてシクロスポリンおよび/あるいはクロラムブシルの投与を受け、治療反応を評価するため十分な経過観察を行った15頭の飼い主所有猫を評価した。

方法:1999年から2009年の間に来院したPFの猫の記録を再検討した。猫は2つの治療群に振り分けた:シクロスポリンで治療した猫とクロラムブシルで治療した猫。両群のほとんどの猫は、同時に全身性にグルココルチコイドを投与されていた。各群6頭ずつだった。3頭は両方の薬剤を投与されており、別に論じる。疾患解消までの時間、解消を誘発するグルココルチコイドの量、維持あるいは最終グルココルチコイド量、疾患反応および副作用を評価した。

結果:両群の解消時間、疾患反応に有意差はなかった。シクロスポリンで維持した6頭は、全身性グルココルチコイドを切り離せたが、クロラムブシルの6頭では1頭しかグルココルチコイド療法を中止できなかった。

結論と臨床的重要性:修正シクロスポリンは猫の落葉状天疱瘡の管理に有効で、グルココルチコイドを控えることができる。(Sato訳)
■犬アトピー性皮膚炎、ノミアレルギー、ノミの寄生における掻痒の特徴づけと診断でのその役割
Characterization of pruritus in canine atopic dermatitis, flea bite hypersensitivity and flea infestation and its role in diagnosis.
Vet Dermatol. December 2012;23(6):487-e93.
Vincent Bruet; Patrick J Bourdeau; Anne Roussel; Latitia Imparato; Jean-Claude Desfontis

背景:犬において、ノミ寄生(FI)、ノミアレルギー(FBH)、犬アトピー性皮膚炎(CAD)はその病変により主に特徴付けられているが、掻痒によるものはない。臨床診療において、それらの犬の多くは、掻痒のみを示す。

仮説/目的:この研究の目的は、それら皮膚病の掻痒の特徴と診断での有用性を評価することである。

動物:Onirisクリニカルデータから犬を選別した。症例は3つの皮膚病のうち1つだけある犬を選んだ。CADの診断はPrelaud's基準と皮内試験がノミを除いて陽性をもとにした;FBHは適合する臨床症状とノミアレルゲンによる皮内試験の反応で診断し、FIはノミの存在により診断した。さらに各群で、他の主な掻痒性皮膚疾患を除外した。

方法:掻痒の部位、行動的症状、季節性、程度を評価した。統計学的分析にはP-値<0.05のカイ二乗検定を使用した。

結果:346頭の犬を分析し、91頭はCAD、110頭はFI、145頭はFBHだった。発現期間(季節)は各皮膚病あるいは3つの群の中で統計学的差がなかった。以下のようなある皮膚病に特異性の高い部位もあった:FIにおいて腹部/大腿部中央表面(噛む)および橈骨/手根/脛骨/足根(噛む);FBHにおいて背中/脊椎背側部(噛む)および尾(噛む);CADでは足(噛む/舐める)および顔/首(こする)。

結論と臨床意義:痒みのある犬における掻痒のいくつかの特徴は、潜在的診断価値を伴い原因となる疾患を示唆できた。(Sato訳)
■細菌と酵母の皮膚感染に対する局所療法の概説
A review of topical therapy for skin infections with bacteria and yeast.
Vet Dermatol. August 2012;23(4):330-e62.
Ralf S Mueller; Kerstin Bergvall; Emmanuel Bensignor; Ross Bond

背景:小動物診療で細菌と酵母の皮膚感染はよく見られる。全身性抗生物質あるいは抗真菌剤による治療は、多剤耐性病原体の増加やコスト、副作用の可能性のため、理想的ではないかもしれない。局所抗菌剤は全身性治療の補助療法あるいは全身性治療の代わりの単独療法として役立つと思われる。

目的:この文献レビューは皮膚感染の局所抗菌剤治療に対する研究を評価した。

方法:局所抗菌剤を評価するインビトロおよびインビボ研究を、いくつかのテキストおよび文献の電子およびマニュアル検索で確認した。研究を評価し、局所剤の使用のエビデンスあるいは反対意見を抽出した。

結果:犬の細菌性皮膚感染に対して、クロルヘキシジンの効果には良好なエビデンスがあり、それより少ない程度で過酸化ベンゾイルがある。犬の細菌性皮膚感染に対して銀スルファジアジンおよび医療用ハチミツの効果、馬に対して過酸化水素およびフッ化第一スズの効果には限られたエビデンスしかない。
犬の皮膚マラセチア感染に対してクロルヘキシジンとミコナゾールを組み合わせた使用に良好なエビデンスが支持する。皮膚感染での使用に対し、その他の局所療法を推奨するには不十分なエビデンスしかない。

結論と臨床意義:多くの抗菌性局所剤が獣医皮膚科で売られているが、その効果は少数の薬剤でしか報告されていない。ゆえに種々の局所治療を評価する無作為コントロール試験が早急に必要である。(Sato訳)
■猫に対するテルビナフィン単回投与の薬物動態
Single dose pharmacokinetics of terbinafine in cats.
J Feline Med Surg. August 2012;14(8):540-4.
Ang Wang; Huanzhong Ding; Yiming Liu; Yan Gao; Zhenling Zeng

2期クロスオーバーデザインに従い、絶食した6頭の健康な猫にテルビナフィンを10mg/kgで静脈内、あるいは30mg/kgで経口的に1回投与し、その後薬物動態を調査した。血漿テルビナフィン濃度は、逆相液体クロマトグラフィーで測定した。薬物動態パラメーターはWinNonlin5.2.1ソフトウェアのノンコンパートメント解析で算出した。

静脈投与後、終末半減期と0から無限の曲線下面積は10.40±4.56時間、15.20±3.61h・μg/mlだった。
経口投与後の平均最大濃度は3.22±0.60μg/mlで1.33±0.41時間に到達した。終末半減期、0から無限の曲線下面積、見かけの分布容積は、8.01±3.46時間、13.77±4.99h・μg/ml、25.63±6.29l/kgだった。塩酸テルビナフィン錠の経口投与後の絶対生物学的利用能は31.00±10.85%だった。

テルビナフィンの生物学的利用能は低いが、注射部位の良好な浸透および低い最小抑制濃度値は皮膚糸状菌感染に対し良好な効果をもたらせた。(Sato訳)
■25頭のキャバリアキングチャールズスパニエルにおける先天性乾性角結膜炎と魚鱗癬様皮膚炎。パート1:臨床症状、病理組織、遺伝
Congenital keratoconjunctivitis sicca and ichthyosiform dermatosis in 25 Cavalier King Charles spaniel dogs. Part I: clinical signs, histopathology, and inheritance.
Vet Ophthalmol. September 2012;15(5):315-26.
Claudia Hartley; David Donaldson; Ken C Smith; William Henley; Tom W Lewis; Sarah Blott; Cathryn Mellersh; Keith C Barnett

キャバリアキングチャールズスパニエルにおける先天性乾性角結膜炎および魚鱗癬様皮膚炎(CKCSID)の臨床症状と進行(9か月以上-13年)を、過去に発表した6症例と新しい6症例について述べる。

症例は先天性の異常(ラフ/カーリー)な被毛と眼瞼開裂からKCSの症状を呈した。背柱に沿った難治性鱗屑およびザラザラしたちぢれ毛の体幹、脱毛性の被毛が、生まれてから最初の数か月で明らかだった。成犬における腹側腹部皮膚は色素沈着過剰と角化増殖だった。パッドは若い成犬のときから爪の成長異常と間欠的な脱落を伴い、角化増殖していた。

長期経過観察症例を述べる(13/25)。

免疫調節剤/流涙刺激治療はシルマー涙試験結果に統計学的に有意な効果はなかったが、主観的にこの治療は角膜炎の進行を遅らせた。3頭の新しい症例のサンプル(皮膚/パッド/涙腺/唾液腺)の病理組織検査は魚鱗癬様皮膚炎に一致し、唾液あるいは涙腺の病態は組織学的に確認されなかった。系統図分析でその症候群は常染色体劣性様式の遺伝であることが示唆される。(Sato訳)
■猫の好酸球性肉芽腫症候群:いくつかの臨床的解明
Feline eosinophilic granuloma complex(ities): some clinical clarification.
J Feline Med Surg. July 2012;14(7):471-81.
Laura Buckley; Tim Nuttall

実際の関連:猫の好酸球性肉芽腫症候群(EGC)は、猫で一般的な臨床的によく認識されているが、あまり理解されていない皮膚疾患の1グループである。多くの症例で、病変は重度で様々な程度の(時には考慮すべき)掻痒および/あるいは疼痛が付随する。加えて病変は慢性で再発する可能性もある。ゆえに罹患猫に対し最適で、生涯にわたることも多い治療を提供するため、迅速で正確な診断を行うことが重要である。

患者群:猫でEGC病変を発症する年齢素因、あるいはよく認められるという品種素因はない。メスの素因を報告している研究もあるが、一貫して述べられているわけではない。

臨床的チャレンジ:臨床家にとってEGC病変の臨床診断は通常容易だが、潜在的基礎原因の調査は難題となりえる。種々の診断的検査に対する指標およびそれらの解釈に対する情報は欠如しており、確定診断に至る前に慢性的な医療行為で管理される症例の傾向は、どの診断的検査の解釈をもさらに複雑にする可能性がある。加えて、それら症例の上手な治療管理は困難となりえる。治療で解消する疾患の1回の事象しかない猫もいる一方、再発を繰り返す猫もいて、その中で治療に無反応となる猫もいる。疾患の臨床的特性と治療に対する反応両方の個別変化は疾患の重症度に関連する可能性があるが、基礎にある病因の違いによっても説明できた。

エビデンスベース:この文献はEGCの複雑な病因を述べるため発表された文献を要約し、異なる臨床的症状や診断の概要を示す。さらなるそして特別な目的は、この皮膚疾患のグループの管理に対しいくつかの裏付けある推奨法を提供することである。(Sato訳)
■猫の表在性膿皮症:52症例の後ろ向き研究(2001-2011)
Feline superficial pyoderma: a retrospective study of 52 cases (2001-2011).
Vet Dermatol. October 2012;23(5):448-e86.
Hui W Yu; Linda J Vogelnest

背景:従来、表在性膿皮症は猫で珍しいと考えられているが、過去に報告されたものよりも一般的なのかもしれない。

目的:猫の表在性膿皮症をより特徴付ける

動物:10年間の皮膚専門病院集団からの猫52頭

方法:これは後ろ向き研究である。皮膚病変の表層細胞診で好中球および細胞内細菌が報告された猫を症例に含めた。医療記録のシグナルメント、病歴および臨床データ、細胞学的結果、主要皮膚診断と治療詳細について検討した。

結果:疾患有病率は20%で、品種および性別に偏りはなかった。発現の推定年齢中央値は2歳、54%の猫は3歳まで、23%の猫は9歳以降だった。他の季節と比較して冬期(15%)の症例は少なかった。皮膚病変は典型的に多病巣で、顔面(62%)、頸部(37%)、四肢(33%)、腹部(29%)に一般に認められた。痂皮(83%)、脱毛(67%)、潰瘍/びらん(54%)、紅斑(46%)が一般的な病変タイプだった。92%の猫で掻痒が報告された。基礎にある過敏症(60%で確認、19%で疑い)、特異的なアトピー性皮膚炎(48%で確認)は最もよく見られた原発性皮膚疾患だった。猫は種々の全身性および/あるいは局所性抗生物質で治療されていた。全体の明白な反応は、61%で良好、27%で不良と考えられた。再発は42%の猫で確認あるいは疑われた。

結論と臨床意義:猫の表在性膿皮症は、過去の報告と比較してこの研究集団ではより一般的に見られた。過敏症のある若い猫および老猫はより罹患することが多く、さまざまな病変のタイプと分布が認められた。(Sato訳)
■2頭の犬に見られた皮膚トキソプラズマ症
Cutaneous toxoplasmosis in two dogs.
J Vet Diagn Invest. May 2012;24(3):636-40.
Aline Rodrigues Hoffmann; Jennifer Cadieu; Matti Kiupel; Ailam Lim; Steve R Bolin; Joanne Mansell

皮膚トキソプラズマ症は、ヒト、まれに猫で報告されており、犬では全身性トキソプラズマ症の1頭で報告がある。
この報告は、免疫抑制療法で治療中の2頭の犬の皮膚トキソプラズマ症例を報告する。

1頭は全身皮膚の膿疱および掻痒を発症し、もう1頭は単発の皮膚の結節のみだった。顕微鏡的に皮膚バイオプシーは中程度から重度の化膿性肉芽腫および壊死性皮膚炎と皮下脂肪織炎を呈し、多病巣の血管炎と血栓を伴っていた。原生動物タキゾイトの単一あるいは集合がほとんどの細胞質内、ときおり細胞外に存在した。2症例の原因は、免疫組織化学およびPCR法、続いて核酸塩基配列決定により確認した。2症例はクリンダマイシンで治療した。全身病変を伴う犬は、肺および神経症状を発症し、安楽死となった。単結節の犬は完全に回復し、皮膚病変の再発はなかった。(Sato訳)
■1頭の犬の足にみられた多発性エクリン汗孔腫
Multiple eccrine poromas in the paw of a dog.
Vet Dermatol. April 2012;23(2):167-e34.
Derick B Whitley; Joanne E K L Mansell

5歳避妊済みメスのボクサーが、1年にわたる右前肢第4指のパッドの腫脹、潰瘍、疼痛で来院した。そのパッドは組織学的に、覆いかぶさるケラチン性星細胞に浸潤および置換し真皮に伸び、下層表皮内に幅広い帯をなす小型多角細胞および柱からなるマスにより腫脹していた。深い真皮内のエクリン腺の小葉は、時々腫瘍細胞の1つから2つの層で並ぶ乳頭突起を形成する腫瘍性管状上皮細胞により列となる1つ以上のエクリン管があった。
第4指のパッド切除から約1か月後、いくつかのより小さな結節性マスが複数の指のバッドおよび同じ足の中手のパッドに発生した。
腫瘍の全ては組織学的にエクリン汗孔腫(juxta epidermal acrospiroma)と同一で、ヒトにおける一般的な良性腫瘍で表皮内汗管およびエクリン腺の上部真皮管が起源である。著者の知るところでは、これは1頭の犬に見られたエクリン汗孔腫を示す最初の報告である。(Sato訳)
■犬の非炎症性脱毛:一般および特徴的組織学特性の包括的評価
Canine noninflammatory alopecia: a comprehensive evaluation of common and distinguishing histological characteristics.
Vet Dermatol. June 2012;23(3):206-e44.
Tabitha Muntener; Gertraud Schuepbach-Regula; Linda Frank; Silvia Rufenacht; Monika M Welle

背景:非炎症性脱毛は犬でよく見られ、その病因はいまだ不明である。

目的:この研究の目的は、異なった脱毛疾患の犬と皮毛の種類、季節、疾患持続期間の合致したコントロール犬の皮膚バイオプシーの組織学的記述を比較する。

動物:フラシ天のような被毛の犬におけるアロペシアXの症例21頭、体幹の再発性脱毛の症例12頭、高エストロゲン症の症例3頭、副腎皮質機能亢進症の症例15頭、甲状腺機能低下症の症例12頭、原因不明の原発性脱毛疾患の症例12頭を評価した。異なる被毛タイプの犬38頭のバイオプシーをコントロールとした。

方法:各バイオプシーを組織学的および免疫組織学的に5枚連続切片で評価し、疾患群内およびコントロールと組織学的所見を比較した。

結果:毛周期障害の犬全ては毛のない毛包の数が有意に増えており、我々は退行期に分類した。またアロペシアXの犬は成長期毛包の比率が最も少なく、休止期の毛包の比率が最も多かった。

結論:退行期毛包の顕著な増加は、毛周期障害で新しい成長期の導入が損なわれていることを強く示す。アロペシアXの犬の所見は、早期の休止期もその病因に関与することを示唆する。幹細胞区画と異なる周期に対する要因を開始する可能性を調査する研究が、正確な病因を解明するのに必要である。(Sato訳)
■犬のマラセチア性皮膚炎の治療に対するテルビナフィン1日1回投与と週に2回投与の比較:予備研究
Comparison of once-daily versus twice-weekly terbinafine administration for the treatment of canine Malassezia dermatitis - a pilot study.
Vet Dermatol. October 2012;23(5):418-e79.
Darren J Berger; Thomas P Lewis; Anthea E Schick; Richard T Stone

背景:人医においてアリルアミン抗真菌剤のテルビナフィンは、表在性真菌症に対するパルス療法で使用される。

目的:犬のマラセチア性皮膚炎の治療において、予備的概念実証エビデンスがテルビナフィンのパルス投与に存在するかどうか判定するため、1日1回投与に対し週2回投与の臨床効果を比較することと、週2回投与で臨床的およびオーナーが認識する副作用が少なくなるかどうかを判定すること

動物:マラセチア性皮膚炎の飼育されている犬20頭

方法:この無作為単純盲検臨床試験において、テルビナフィン(30mg/kg)を1日1回21日間投与する群(n=10)と、1日1回2日連続/週を6回投与する群(n=10)に無作為に振り分けた。0日目と21日目に、接着テープストリップ細胞診により8か所の解剖学的部位の平均酵母数を計数し、同部位に臨床病変スコアをつけ、オーナーにはビジュアルアナログスケール(VAS)で掻痒を評価してもらった。

結果:平均酵母数(P=0.343)および臨床病変スコア(P=0.887)の減少に関して治療群の間の有意差はなかった。VASで測定した掻痒は1日1回投与群と比較して週2回投与群の方が有意に低下した(P=0.047)。20頭中7頭は消化管障害、過度のパンティング、肝酵素上昇などの臨床的に測定可能あるいはオーナーが報告した有害事象を投与中に認めたが、治療群の間に有意差は見られなかった。

結論と臨床意義:この予備研究は、週2回のテルビナフィン投与が犬のマラセチア性皮膚炎に対する有効な代替療法となること、そしてさらなる研究の価値を示す。(Sato訳)
■犬の緑膿菌感による膿皮症:20症例
Pyoderma caused by Pseudomonas aeruginosa infection in dogs: 20 cases.
Vet Dermatol. 2006 Dec;17(6):432-9.
Hillier A, Alcorn JR, Cole LK, Kowalski JJ.

この報告で我々は、病変のある皮膚から細菌培養によって緑膿菌が単独で分離された膿皮症に関して、治療と臨床結果と同じように病歴、臨床、組織病理学的そして微生物学的特徴を記述する。

20頭の犬がこの回顧的研究に参加した。全身性あるいは皮膚疾患の前病歴がない7頭の犬は、突然発症した体幹背側の痛みが特徴的な急性深部緑膿菌性膿皮症を呈した。これらの犬の皮膚病変は、背部に限定された紅斑性丘疹、出血性水疱、潰瘍そして出血性痂皮からなりました。経口フルオロキノロンによる3-4週間の治療で良化した。緑膿菌性膿皮症と関連した皮膚病変がさらにゆっくりと発症した13頭の犬は、以前に皮膚、耳あるいは全身疾患の病歴があり、以前にも抗生剤と/あるいは免疫調節剤で治療していた。これらの犬の皮膚病変は変わりやすく、表在性そして深部スタフィロコッカス膿皮症で記載された皮膚病変と似ていた。このグループでは、1頭の犬は治療開始前に安楽死させ、2頭の犬は追跡できず、9頭の犬は 局所のスルファジアジン銀(1頭)、フルオロキノロン(6頭)あるいはセファレキシン(2頭)による3~12週間の経口投与により病変は略治した。桿状の形をした細菌は細胞診で常に認められるわけではなかった。深部緑膿菌性膿皮症の犬の組織病理は重度な穿孔性膿性毛包炎とフルンケル症によって特徴づけられた。(Dr.Kawano訳)
■新しい犬の全身性に変異した円板状エリテマトーデスの経口ヒドロキシクロロキンによる治療
Successful treatment of a novel generalized variant of canine discoid lupus erythematosus with oral hydroxychloroquine.
Vet Dermatol. February 2012;23(1):65-70, e15-6.
Ursula Oberkirchner; Keith E Linder; Thierry Olivry

円板状エリテマトーデス(DLE)は、局所潰瘍および瘢痕化鼻部皮膚炎のように通常明確な症状を示す一般的な犬の自己免疫疾患である。

ここで著者らは抗マラリア性免疫調節剤のヒドロキシクロロキン(HCQ)で治療に成功した、全身性に変異している犬DLE症例を報告する。

9歳のヘアレスチャイニーズクレステッドドッグが、中心に糜爛がある輪状および多環色素沈着過剰、鱗状皮膚病変と体幹、頸部、四肢外側の色素低下および/あるいは瘢痕化を呈した。関連した全身症状は見られなかった。表皮萎縮を伴うリンパ球の豊富な中間面の皮膚炎と免疫グロブリンと、活性化した補体の真皮-表皮沈着により全身性DLEの臨床診断が支持された。ヒトのDLEのように、治療は2週間の0.1%タクロリムス軟膏と日光の暴露制限に加え、HCQ5mg/kg1日1回で開始した。数年の追跡調査中、3例の再発を除き、1日1回5kg/kgのHCQで完全寛解が維持された;2頭は治療導入中に再発し、もう1頭はHCQ投与を隔日に減らしたら再発した。疾患の紅斑は0.1%タクロリムス軟膏でコントロールでき、0.1%プレドニカルベートクリーム5-10日間1日1回塗布に変更した。この方法で薬剤の有害事象は全く見られなかった。

要するに、臨床的、組織学的および免疫学的に、この犬の疾患はヒトの慢性皮膚紅斑性狼瘡の全身性円板状変異を忠実に映し出すものだった。明らかなHCQの有効性、その安全性と低コストを考えると、犬の皮膚狼瘡変異の治療に対するその使用をさらに調査するべきである。(Sato訳)
■全身性ニキビダニ症の再発を防ぐための10%モキシデクチンおよび2.5%イミダクロプリドスポットオンの月1回投与:予備的研究
Monthly application of 10 per cent moxidectin and 2.5 per cent imidacloprid spot-on to prevent relapses in generalised demodicosis: a pilot study.
Vet Rec. September 2012;171(11):272.
S Colombo; F Leone; A Vercelli; L Cornegliani

犬の全身性ニキビダニ症(GD)は治すことが難しく、生涯治療が必要な犬もいる。

この予備的研究の目的は、再発性GDの犬で長期(12か月)臨床および寄生虫学的寛解を維持するにあたり、10%モキシデクチン/2.5%イミダクロプリドスポットオン月1回投与の有効性を評価することだった。

14頭の犬で研究した:若年発症(JOGD)の10頭と成犬発症(AOGD)の4頭。全ての犬は過去に治療し、再発(1-4回)していた。各犬は再度ミルベマイシンオキシム2mg/kgあるいはイベルメクチン400μg/kg1日1回経口投与で、1か月間隔の皮膚掻爬試験が連続2回陰性になるまで治療した(計4-7か月間治療)。治療中止後、10%モキシデクチン/2.5%イミダクロプリドスポットオンを月に1回12か月間塗布した。犬を1、2、3、6、12か月目に再チェックし、複数個所の皮膚掻爬試験を実施した。

12頭の犬は研究を全うし、各再チェックの時は臨床的に正常で寄生虫学的に陰性だった(AOGD4頭、JOGD8頭)。1頭は関連のない理由で突然死亡し、1頭は再発した。

この予備的研究の結果は、GDの再発性症例の維持療法として10%モキシデクチン/2.5%イミダクロプリドスポットオン製剤の月1回の投与がおそらく有効であろうと示唆する。(Sato訳)
■自発性胆嚢皮膚瘻の犬の1例
Spontaneous cholecystocutaneous fistula in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. January 2012;48(1):43-9.
Shelly A Marquardt; Mark C Rochat; Jennifer L Johnson-Neitman

この症例報告の目的は、1頭の犬の胆嚢皮膚瘻の外科的修正を紹介することだった。

6歳のビズラが2か月にわたる右側腹側胸部の慢性排液創で来院した。診断検査で、右側腹側胸壁の単一部位に開口する多数の瘻管を認め、それは尾背側に胸壁を通り横隔膜の肝臓の右側中葉領域に伸びていた。試験開腹で横隔膜外側に沿って右側胸壁に伸びる繊維組織の管を持つ横隔膜に、胆嚢の頂端が癒着しているのを認めた。胆嚢切除を実施した。瘻管は内腔が見えるように切開し、大網で処置した。術後28か月、瘻管は再発していなかった。

試験的開腹により腹腔内の瘻管の経路を良好に視認でき、源の切除も容易にできた。胆嚢切除は瘻管の切除の必要もなく、瘻管の急速で完全な解消をもたらせた。珍しいが、胆嚢疾患は慢性瘻管の鑑別診断リストに入れるべきである。(Sato訳)
■若年性角層下膿疱症:症例報告
Juvenile subcorneal pustular dermatosis: a case report.
Pediatr Dermatol. 2003 Jan-Feb;20(1):57-9.
Kocak M, Birol A, Erkek E, Bozdo?an O, Atasoy P.

角層下膿疱症は慢性、再発性で、通常は老齢の女性に見られる膿疱症である。まれに子供や青年に見られる。この疾患の特徴は、組織病理学的検査で検出される角層下の膿疱形成である。ここに我々、典型的な臨床所見および組織学的所見に基づいて角層下膿疱症と診断した13歳の少女を発表する。直接および間接免疫蛍光検査と血清蛋白電気泳動では陰性結果であった。患者は経口ダプソンと局所のステロイド軟膏による5週間の治療によって部分的に回復した。(Dr.Kawano訳)
■遺伝性皮膚ヒアルロン酸症(ムチン沈着症)のシャーペイにおける増加したHAS2によって運ばれるヒアルロン酸合成
Increased HAS2-driven hyaluronic acid synthesis in shar-pei dogs with hereditary cutaneous hyaluronosis (mucinosis).
Vet Dermatol. 2011 Dec;22(6):535-45. doi: 10.1111/j.1365-3164.2011.00986.x. Epub 2011 Jul 1.
Docampo MJ, Zanna G, Fondevila D, Cabrera J, Lopez-Iglesias C, Carvalho A, Cerrato S, Ferrer L, Bassols A.

チャイニーズシャーペイは、皺と肥厚した皮膚というその特徴が知られており、原発性あるいは遺伝性皮膚ムチン沈着症と定義されている。最近の報告において、我々は多糖類ヒアルロン酸(HA)がシャーペイの皮膚に沈着しているムチン物質と特定した。この論文において、このフェノタイプの根底にある分子メカニズムと細胞メカニズムは、シャーペイから分離した真皮繊維芽細胞で特定している。ヒアルロン酸の産生、それは主に細胞膜の突出と関連しており、かつ細胞内にもみられるが、コントロール細胞よりシャーペイの繊維芽細胞で高かった。
ヒアルロン酸蓄積は、ヒアルロン酸合成酵素ファミリーであるヒアルロン酸合成(HAS)のアイソフォームであるHAS2の高いmRNA発現と関連している。シャーペイの繊維芽細胞におけるHAS2の高い発現は、蛋白質レベルでも確認された。他のHASアイソザイムであるHAS1 と HAS3とヒアルロン酸-分解酵素であるHyal1とHyal2は、健常犬からの細胞と比較してシャーペイの繊維芽細胞において差動的に発現しなかった。シャーペイと健常犬からの繊維芽細胞とは、透過型電子顕微鏡で観察されるように形態学的に異なっている。走査型電子顕微鏡による観察で球状の沈着と関連した多数の細胞突出が明らかになった。ビオチン化標識したヒアルロン酸結合タンパクをラベリングした後の電子顕微鏡で、いくつかの細胞下構造において位置していたシャーペイの繊維芽細胞においてヒアルロン酸の増加を確認した。シャーペイの皮膚ムチン症をよりよく明示する理由で、著者は 罹患した犬の疾患名を遺伝性皮膚ヒアルロン酸症(HCH)とすることを提案する。(Dr.Kawano訳)
■犬の細菌異常増殖症候群に対する単一治療として2つのシャンプーの比較
Comparison of two shampoos as sole treatment for canine bacterial overgrowth syndrome.
Vet Rec. June 2012;170(26):675.
S Viaud; L Maynard; A Sanquer

犬の細菌異常増殖症候群(BOGS)の治療に対する2つの抗菌シャンプーを、前向き管理下臨床試験で比較した。

細菌異常増殖に一致する臨床症状(掻痒、膿疱のない紅斑と擦過、および/あるいは小環)と細胞学的所見を持つ40頭の犬を、3%クロルヘキシジンシャンプー(3%CHX)あるいは2.5%過酸化ベンゾイルシャンプー(2.5%BPO)で週に2回洗い、細胞学的治癒まで最大6週の間、2週毎に評価した。掻痒、紅斑、ベトベトの脂漏、臭い、擦過、二次的脱毛、苔癬化、色素過剰沈着、病変の拡がりに対し、各々0-3のスコアを付け、組み合わせて総スコアを計算した。 

治療に対し良好なコンプライアンスがあった34頭中、3%CHXを使用した18頭中11頭、2.5%BPOを使用した16頭中9頭は90%以上の球菌数の減少を記録し、2つのシャンプーに有意差はなかった(P=0.98)。治療終了時、両群の病変スコアは有意に低下し(3%CHXで63.48(34.45)%、2.5%BPOで54.45(33.61)%、P=0.36)、細胞学的治癒までの時間に有意差はなかった(P=0.13)。

この研究で、3%CHXと2.5%BPOは犬のBOGSの治療で同様に効果的だった。(Sato訳)
■顔に病変がない2頭の猫におけるヘルペスウイルス皮膚炎
Herpesvirus dermatitis in two cats without facial lesions.
Vet Dermatol. April 2012;23(2):171-e35.
Melissa D Sanchez; Michael H Goldschmidt; Elizabeth A Mauldin

背景:皮膚炎に関係する猫ヘルペスウイルス(FeHV-1)に感染した猫は、典型的に鼻梁や鼻鏡の潰瘍病変を呈する。この報告は顔面病変がなく、体側面のFeHV-1皮膚炎を紹介する。

仮説/目的:誤診の可能性を防ぐため、臨床医はFeHV-1皮膚炎の珍しい症状を認識しておくべきである。

動物:体側にプラークおよび潰瘍を呈する12歳オスの去勢済みベンガル猫と3歳オスの去勢済みシャム猫を述べる。

方法:病変皮膚からホルマリンで固定したバイオプシーサンプルを入手した。病理組織検査とFeHV-1免疫組織化学検査を実施した。

結果:各サンプルに高密度の好酸球皮膚浸潤を伴う表皮および毛包壊死が見られた。ケラチン生成細胞内にわずかから中程度の核内封入体が存在した。病変内のFeHV-1の存在を免疫組織化学検査で確認した。

結論と臨床的意義:適切な治療を行うのに正確な診断は必須であり、皮膚炎に関係する猫ヘルペスウイルスは、病変位置により除外すべきではない。この通常出ることはない部位に起こる病変の原因を追究する研究が求められる。(Sato訳)
■全身性毛包虫症の犬の治療における全身性抗生物質の影響
Influence of systemic antibiotics on the treatment of dogs with generalized demodicosis.
Vet Parasitol. 2012 Aug 13;188(1-2):148-55. Epub 2012 Mar 10.
Kuznetsova E, Bettenay S, Nikolaeva L, Majzoub M, Mueller R.

犬の全身性毛包虫症(CGD)は、明瞭な品種素因を伴う皮膚疾患である。二次的な細菌感染は一般的である。犬は典型的に抗生物質療法を併用した殺ダニ療法を受ける。抗生物質が殺ダニ療法の期間に影響を与えるかどうかは、今のところ知られていない。短い尾の毛包虫で毛包虫症が起こるかどうかについても議論がある。

この研究は、全身性毛包虫症の経過における全身性抗生剤の影響、毛包虫症の犬における短い尾の毛包虫の出現と治療結果に関するフルンクローシスの影響を評価した。

モスクワにおける全身性毛包虫症の品種素因が認識された。58頭の犬をランダムに2つのグループに分けた。両方のグループの犬はイベルメクチン600 mcg/kg 24時間毎の経口投与、毎週の過酸化ベンゾイルシャンプーで治療した。一つのグループ(AB)の犬は、さらに少なくとも1ヵ月間全身性の抗生剤による治療を追加し、他のグループ(NAB)では実施しなかった。月1回の検査で皮膚スクレーピングと皮膚捺印検査を実施した。

研究の前に、臨床的な重症度、膿皮症の存在そしてダニの数はグループ間において違いはなかった。皮膚スクレーピングの最初の陰性までの期間と細菌感染の解決までの期間に有意差はなかった。フルンクローシスを伴う犬におけるダニの数はフルンクローシスを伴わない犬より有意に多かったが、顕微鏡で寛解するまでの期間については長いとはいえ、有意差がなかった。
短い尾の毛包虫は症例の25%で見出された。パグとイングリッシュブルドックは素因があった。

これらの結果に基づいて、全身性の抗生剤は全身性毛包虫症の治療の実際の成功に関して以前考えられていたほど影響がないかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■名前のない種類による猫毛包虫症
Feline demodicosis caused by an unnamed species.
Res Vet Sci. April 2012;92(2):257-8.
Rui Kano; Ayako Hyuga; Jun Matsumoto; Sadao Nogami; Seiichi Nemoto; Atsuhiko Hasegawa; Hiroshi Kamata

猫毛包虫症の症例を報告する。13歳、体重4.5kgの避妊済みメスの家猫短毛種をセフォベシンとプレドニゾンとメチルプレドニゾロンの交互投与で治療されていた。さらなる身体検査で、鼻梁、眼の周囲、顎、胸部側面、腹部に軽度紅斑と脱毛を認めた。多数のニキビダニが病変部の深い皮膚掻爬で見つかった。それから猫は1日1回のイベルメクチン600μg/kg皮下投与で治療した。治療から4週間後、顔面あるいは胸部からの皮膚掻爬でダニは検出されず、臨床的に正常だった。そのダニは過去にも見られていると思われるが、いまだ名前のない新種である。
これは、今まで知られているニキビダニと異なる形態の特徴を持ち、過去にも見られている思われるが、いまだ名前のない種類による猫の毛包虫症の1症例を述べた3番目の報告である。(Sato訳)
■犬デスモコリン1のクローニングと犬落葉状天疱瘡の主要な自己抗原としての確立
Cloning and establishment of canine desmocollin-1 as a major autoantigen in canine pemphigus foliaceus.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Jul 23.
Bizikova P, Dean GA, Hashimoto T, Olivry T.

落葉状天疱瘡(PF)は、抗体介在性の犬の自己免疫性皮膚疾患で最も一般的である。デスモグレイン1 (DSG1)は、主要なヒトのPF抗原であるが、犬のPF (cPF)においては、マイナーな自己抗原である。最近の免疫マッピングの研究により、デスモコリン1(DSC1)がcPFの自己抗原に関連のある候補として挙げられている。

この仮説を検証するために、犬DSC1を遺伝子導入した293T細胞において間接蛍光抗体法(IIF)により、85のcPF血清中の抗DSG1 IgGの存在をスクリーニングした。

75の血清は、肉球の基質を用いたIIFにおいて抗ケラチノサイトIgGが検出でき(IIFpos cPF)、10ではできなかった(IIFneg cPF)。35頭の健常犬、8頭の剥脱性表在性膿皮症(ESP)の犬、21頭のPFではない自己免疫性水疱性皮膚疾患の犬からの血清をコントロールとして用いた。犬DSG1導入細胞と非導入細胞に対して同時に全ての血清を用いたIIFを実施した。

健常犬またはESPの血清ではどれも導入細胞および非導入細胞に反応したものはなかった。75のIIFpos cPFの57(86%)、IIFneg cPF血清の10のうち7(70%)においては、抗DSC1 IgGが検出可能であった。これらの血清は、どれも非導入細胞を認識することはなかった。5つのcPF血清(6%)は、DSC1に加えて、DSG1を認識した。また、PFではない自己免疫性水疱性疾患の犬からの21血清のうち5血清(24%)は、抗DSC1 IgG抗体価が低値を示した。治療中に複数回血清を採取可能であった10頭のうち7頭では(70%)、抗DSC1 IgG抗体価は、疾患の臨床重症度の低下に伴って低下した。まとめると、これらの結果は、DSC1がcPFの主要抗原であることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■猫の毛包虫症:痒みあるいは過剰グルーミングにおける考慮
Feline demodicosis: A consideration in the itchy or overgrooming cat.
J Feline Med Surg. March 2012;14(3):209-13.
Karin Beale

臨床的関連:猫において3種類のニキビダニが毛包虫症の原因として確認されており、掻痒、粟粒性皮膚炎および/あるいは自分で誘発した脱毛の症状を示すかもしれない。これは様々な国で認識されているが、好発地域があると思われる。

臨床的チャレンジ:皮膚掻爬の顕微鏡検査で常に簡単にダニが発見されるわけではないため、猫の毛包虫症の診断は難しくなる可能性がある。1つ以上のニキビダニの種類が関係しているかもしれない。さらにこの疾患は効果的に治療するのが難しい。

読者:このレビューはまれに毛包虫症に遭遇する臨床現場の獣医外科医に対する臨床的最新情報に重点を置く。(Sato訳)
■猫の好酸球性肉芽腫症候群(ITIES):いくつかの臨床的解明
Feline Eosinophilic Granuloma Complex(ITIES): Some clinical clarification.
J Feline Med Surg. 2012 Jul;14(7):471-81.
Buckley L, Nuttall T.

臨床関連: 猫の好酸球性肉芽腫症候群(EGC)は臨床的によく認識されたグループで構成されているが、あまりよく理解されていない猫の一般的な皮膚疾患である。多くの症例において、病変は重度で、様々な程度(時にかなり)の痒みと/や痛みを併発する。さらに、病変は慢性化となり、再発する。したがって、罹患した猫に最適で、しばしば生涯にわたる治療を提供するために素早く正確な診断に至ることが重要である。

患者群:猫の好酸球性肉芽腫症候群(EGC)の病変の発展に関して年齢の素因あるいはよく記述のある品種素因はない。いくつかの研究で雌猫に多い可能性が報告されているが、首尾一貫した記載はされていない。

臨床的検証: 猫の好酸球性肉芽腫症候群の病変の臨床診断は通常直接的だが、潜在的基礎原因の調査は臨床医にとって困難となる場合がある。様々な診断検査およびそれらの解釈のための表示に関する情報は欠如しており、確定診断する前に慢性の医学的介入で管理されるこれらの症例の傾向は、さらにいくつかの診断的調査の解釈を複雑にする。さらに、これらの症例の成功した治療的管理が挑戦することが出来る。何頭かの猫は治療で解決する疾患の単一のエピソードだけを受けるが、他の猫は再発する病変があり、これらの何頭かは治療に対しても反応が悪い。疾患の臨床的性質と治療に対する反応の両方における個々の変化は疾患の重症度と関連するが、根本的な疾病原因の違いによっても説明できた。

科学的根拠に基づく: この論文では、好酸球性肉芽腫症候群の複雑な疫学を議論するため発表された文献を概説し、異なる臨床症状と診断に関する概要を発表する。さらなるそして、特定の目的はこの珍しい皮膚疾患群の管理に関していくつかの科学的根拠に基づく推奨を提供している。(Dr.Kawano訳)
■犬の毛包虫症の治療:2011臨床的プラクティスガイドライン
Treatment of demodicosis in dogs: 2011 clinical practice guidelines.
Vet Dermatol. April 2012;23(2):86-e21.
Ralf S Mueller; Emmanuel Bensignor; Lluis Ferrer; Birgit Holm; Stephen Lemarie; Manon Paradis; Michael A Shipstone

背景と目的:それらのガイドラインは犬の毛包虫症の診断と治療に対する現行の推奨法を獣医師に提供する目的で、国際的専門家グループにより書かれたものである。

方法:さまざまな治療オプションの研究を再検討し要約した。発表された研究の形式におけるエビデンスは得られず、専門家のコンセンサスが推奨法の基を作成した。

結果:通常毛包虫症は深い皮膚掻爬あるいは抜毛検査で診断でき、まれに皮膚バイオプシーが必要な症例もいる。若齢犬の内部寄生あるいは栄養不良、老齢犬の内分泌疾患、腫瘍、化学療法による免疫抑制が素因として考えられ、良好な治療結果を生み出すのに診断および治療すべきである。殺寄生虫療法が必要な程度の疾患を持つ犬は交配すべきではない。二次性の皮膚の細菌感染は疾患を複雑にすることも多く、局所および/あるいは全身性抗菌療法が必要である。

犬の毛包虫症の治療に対する週1回のアミトラズリンスおよびミルベマイシンオキシム、イベルメクチン、モキシデクチンのようなマクロサイクリックラクトンの1日1回経口投与の効果については良好なエビデンスがある。週1回のモキシデクチン局所応用は、より軽度の疾患の犬に有効である。週1回あるいは週2回の皮下あるいは経口ドラメクチン投与の効果についてのエビデンスもある。全身性マクロサイクリックラクトンは感受性のある犬で神経学的副作用を起こすかもしれず、最終治療用量に漸次増加させていくことが賢明かもしれない(特に牧羊犬種)。

治療は毎月皮膚掻爬でモニターし、再発を最小限にするため、臨床および顕微鏡的治癒を認めてもしばらく続けるべきである。(Sato訳)
■全身的な抗生物質投与の全身性デモデックス症の犬の治療への影響
Influence of systemic antibiotics on the treatment of dogs with generalized demodicosis.
Vet Parasitol. 2012 Mar 10.
Kuznetsova E, Bettenay S, Nikolaeva L, Majzoub M, Mueller R.

犬の全身性デモデックス症(CGD)は、明らかな犬種特異性のある皮膚疾患である。二次性細菌感染が一般的である。通常は、殺ダニ剤とともに抗生物質投与が行なわれる。抗生物質が殺ダニ療法の期間に影響を与えるかどうかは今のところ不明である。デモデックス症の間にどの程度尾の短いデモデックスが一般的かについても議論した。
この研究は、CGDの経過において、全身性の抗生物質の影響、デモデックス症の犬において尾の短いデモデックスの出現、治療結果へのフルンケル症の影響を評価した。
モスクワにおけるCGDの犬種の偏りが明らかとなった。58頭の犬を、無作為に2つのグループに分けた。両群ともイベルメクチン 600マイクログラム/kg を24時間毎に経口で与え、過酸化ベンゾイルシャンプーで週に1回治療した。片方のグループ(AB)は、さらに全身性の抗生物質を最低1ヶ月投与し、もう一つのグループの犬には投与しなかった。毎月の検査では、皮膚掻爬、押捺スメアを実施した。

研究の実施前には、臨床的な重症度、膿皮症の存在、ダニの数について両群において差はなかった。最初に皮膚掻爬で陰性になるまでの期間および細菌感染の改善において有意差はなかった。フルンケル症の犬において、ダニの数は、フルンケル症がない犬と比較して有意に多かったが、顕微鏡での寛解までの期間については、長かったものの有意差は認められなかった。尾の短いデモデックスは、25%の症例において認められた。パグとイングリッシュ・ブルドッグが好発犬種であった。これらの結果から、全身性の抗生物質は、CGD治療が実際に成功するかということに対して以前思われていた程ではないと考えられる。(Dr.Taku訳)
■イングリッシュセッターの同腹子における犬パルボウイルス-2bと関連した多形紅斑 
Canine parvovirus-2b-associated erythema multiforme in a litter of English Setter dogs.
J Vet Diagn Invest. 2011 May;23(3):576-80.
Woldemeskel M, Liggett A, Ilha M, Saliki JT, Johnson LP.

イングリッシュセッターの仔犬の同腹子は多形紅斑(EM)と診断した。仔犬は2週齢で皮膚に紅斑ができた。顕微鏡的に上皮のすべての層においてリンパ球のエキソサイトーシスと関連した個々の角化細胞のアポトーシスがあった。核内ウイルス封入体が多くの組織や器官で見られた。舌、リンパ節、脾臓、皮膚そして小腸からの組織は蛍光抗体法で犬パルボウイルス-2 (CPV-2)が陽性で、犬ジステンパーウイルス (CDV) と犬ヘルペスウイルス1は陰性であった。ネガティブ染色した電子顕微鏡で腸管内にパルボウイルスの一部が検出された。皮膚と小腸はPCR法でCPV-2bが陽性でCDVが陰性であった。皮膚粘膜境界部と小腸は免疫化学染色でCPVが陽性に染色された。

この報告はイングリッシュセッターの同腹子におけるCPV-2bと関連した多形紅班に関して記述し、CPV-2を併発した多形紅班に関連したこれまでの短報を実証した。CPVは犬の多形紅班の起こりうる原因として考慮すべきであることが示唆される。(Dr.Kawano訳)
■病巣内アンホテリシンBと経口イトラコナゾールの併用による猫の難治性スポロトリクム症の治療
Treatment of refractory feline sporotrichosis with a combination of intralesional amphotericin B and oral itraconazole.
Aust Vet J. September 2011;89(9):346-51.
Idf Gremiao; Tmp Schubach; Sa Pereira; Am Rodrigues; Co Honse; Mbl Barros

目的:ブラジルのリオデジャネイロで経口イトラコナゾールに抵抗性を示すスポロトリクム症の猫26頭の治療で、局在する病変に対し病巣内アンホテリシンBの使用を述べる

構成:対照群非設定介入研究

方法:この研究で26頭の猫はSporothrix schenckiiの分離によりスポロトリクム症と診断され、残存局在皮膚病変は最低8週間経口イトラコナゾールの治療に抵抗性を示した。その猫には経口イトラコナゾールと組み合わせて病巣内アンホテリシンBの週1回の注射を行った。オーナーが不可能なときは、最長2週間間隔とした。

結果:26頭のうち22頭(84.6%)は臨床的寛解に達し、16頭(72.7%)は治癒し、残りの6頭(27.3%)は同じ部位で再発した。1頭は臨床反応がなく、3頭のオーナーは治療をあきらめた。

結論:ここに述べる治療法は、イトラコナゾールに抵抗する残存皮膚病変を呈するスポロトリクム症の猫の補助的治療オプションである。(Sato訳)
■犬に皮脂腺炎に対する補助療法として経口ビタミンA
Oral vitamin A as an adjunct treatment for canine sebaceous adenitis.
Vet Dermatol. August 2011;22(4):305-11.
Andrea T H Lam; Verena K Affolter; Catherine A Outerbridge; Barbara Gericota; Stephen D White

18年の間に組織病理学的に診断された皮脂腺炎の犬の医療記録を再検討した。合計40症例のうち24頭は経口ビタミンAで治療された。疾患発現時の年齢は9ヶ月から12歳の間だった。純血種と同様に雑種犬も罹患した。罹患集団の約1/3を秋田犬が占めた。性差は観察されなかった。ビタミンAは最低1ヶ月投与された。投与量は380-2667IU/kg/日で、平均1037IU/kg/日だった。2頭はもっぱら経口ビタミンAを投与された。併用治療は全身性抗生物質、全身性抗真菌療法、脂肪酸サプリメント、種々の局所治療だった。ビタミンAで治療した24頭のうち3頭の追跡調査ができなかった。
12頭のオーナーは、治療前の外見と比べ、痒みのレベル、鱗屑の量、脱毛、全体の皮毛の質など臨床症状が25%以上の改善と報告し、全体の外見に満足した。3頭のオーナーは、妥当な初期改善、治療開始から6ヶ月以内に治療前の状態に戻ったことを報告した。2頭のオーナーは経口ビタミンA添加中に臨床症状の25-50%の改善を報告したが、変化は併用局所治療によるものだった。6頭のオーナーは改善がないと報告し、7ヶ月以内にビタミンA経口投与を中止した。ビタミンA投与と治療反応に相関は見出せなかった;臨床および病理組織所見をもとに予後は述べられなかった。(Sato訳)
■犬のマラセチア性皮膚炎の治療で2種類のシャンプーの比較:無作為コントロール試験
Comparison of two shampoos for the treatment of canine Malassezia dermatitis: a randomised controlled trial.
J Small Anim Pract. November 2011;52(11):566-72.
L Maynard; C A Reme; S Viaud

目的:犬のマラセチア性皮膚炎(CMD)の治療に対し、2種類の抗菌性シャンプーを前向き無作為単純盲検フィールド臨床試験で比較した。

方法:マラセチアの過剰増殖(MO)による足あるいは全身性皮膚炎の犬67頭を、3%クロルヘキシジンシャンプー(3%CHX)あるいは2%ミコナゾール-2%クロルヘキシジンシャンプー(2%MIC/CHX)で治療し、細胞学的回復まで6週間で評価した。掻痒、紅斑、丘疹、脂漏、鱗屑、悪臭、擦過傷、二次的脱毛、苔癬化、色素過剰沈着、病変の範囲に程度により0-3の点数をつけ、総計を作成して併用した。

結果:良好な治療遵守であった54頭の犬の中で、最低88%の酵母数の減少が3%CHXの22頭中21頭、2%MIC/CHXの32頭中30頭で記録された。酵母数減少に対するシャンプー間での有意差は検出されなかった(P=0.592)。細胞学的回復までの期間にシャンプー間の有意差はなかった(P=0.960)。両シャンプー後、病変スコアは有意に低下した(72.5±25.7%;3%CHX v.s. 78.7±22.3%;2%MIC/CHX、P=0.309)。クロルヘキシジンシャンプーを使用した4頭はわずかな副作用を示した。

臨床意義:この研究で、犬マラセチア性皮膚炎の治療で3%CHXは2%MIC/CHXと臨床的に同等の効果を示した。(Sato訳)
■犬および猫の皮膚、皮下病変およびリンパ節の細胞診
Cytology of canine and feline cutaneous and subcutaneous lesions and lymph nodes.
Top Companion Anim Med. May 2011;26(2):62-76.
Amy L MacNeill

皮膚および皮下病変、リンパ節の細針吸引生検および圧スメアーは、動物から取られる最も一般的な細胞学的サンプルである。それら病変の診断細胞学的サンプルは麻酔あるいは鎮静がなくても簡単に採取される。細胞診は即座の結果を得ることができ、サンプル収集により侵襲的な方法を使用する追加検査の必要性を見極めることができる。
この文献は細胞サンプルの収集および提出方法を簡単に解説し、犬と猫でよく診断される細胞学的病変を述べる。適用可能なとき、犬と猫の疾患進行間の違いを述べる。(Sato訳)
■犬の痒みの重症度を測定するための飼い主が評価するスケールの開発
Development of an owner-assessed scale to measure the severity of pruritus in dogs.
Vet Dermatol. 2007 Oct;18(5):301-8.
Hill PB, Lau P, Rybnicek J.

痒みの評価は皮膚科問診、初期診断とモニタリング治療の両方にとって重要となる。犬の痒みを評価する様々な方法が記述されているがどれも検証されていない。この研究において、4つの異なる痒みスケールをまず評価した:0-5の数的スケール;痒みの行為を6つのカテゴリーに分類したスケール;6つの基本となる重症度の記述に関するスケール;そして、それぞれの最後の重症度の記述に関するビジュアルアナログスケール。
116人のオーナーにランダムにそれらの4つのスケールのそれぞれで犬の痒みのグレードを尋ね、どれが最も使いやすかったか、犬の痒みレベルを最も正確に評価する項目はどれか、そして組み合わせて最もよい2つのスケールはどれかを尋ねた。

異なるスケールによる痒みスコアはそれぞれ高い関連性があったが、行動学的なスケールと比較して重症度と数的スケールが有意に高いスコアだった。飼い主の反応に基づいて、行動学的兆候とビジュアルアナログスケールによる重症度に基づいたスケールを組み合わせた新しいスケールが開発された。166人の別の飼い主が検査したところ、98%の飼い主が彼らの犬の痒みレベルを評価することに関して使うのが容易で正確だったと感じた。44頭の犬において、2人の飼い主によって得られた独立したスコアは、高く(R=0.8;P<0.0001)関連し、スケールの同時再現性を確認した。新しいスケールは、犬の痒みの重症度を決定するため飼い主にとって容易であり再現性のある方法であることが証明された。(Dr.Kawano訳)
■皮膚食物有害反応の犬の皮膚におけるTリンパ球フェノタイプ、サイトカインそして転写因子の特徴
Characterisation of T cell phenotypes, cytokines and transcription factors in the skin of dogs with cutaneous adverse food reactions.
Vet J. 2011 Mar;187(3):320-4. Epub 2010 Mar 15.
Veenhof EZ, Knol EF, Schlotter YM, Vernooij JC, Rutten VP, Willemse T.

犬の皮膚食物有害反応(CAFRs)の免疫病原性は知られていない。皮膚の臨床症状は犬アトピー性皮膚炎で見られる臨床症状と似ているので、この研究は皮膚食物有害反応の犬におけるTリンパ球フェノタイプとサイトカインそして転写因子の遺伝子発現の類似性を観察した。さらに、これらのパラメーターに対する除去食の効果を検査した。
皮膚食物有害反応の犬の皮膚において、CD8(+) T リンパ球の優勢な割合とIL-4、IL-13、Foxp3そしてSOCS-3遺伝子の発現の増加が観察された。IFN-γ遺伝子発現は非病変部と比べて病変部で増加していた。CD8(+)Tリンパ球の優勢は、皮膚食物有害反応の免疫病原性は犬アトピー性皮膚炎の免疫病原性とは異なることを示す。除去食は臨床症状を軽減するが、皮膚食物有害反応の犬の皮膚におけるTリンパ球フェノタイプあるいはサイトカインや転写因子遺伝子の発現には影響しなかった。これは持続的にあらかじめ活性化された犬の免疫状態が食物成分に感作していることを示している。(Dr.Kawano訳)
■非定型的な好酸球性蜂窩織炎の犬の診断と治療
[Diagnosis and therapy of a dog with an atypical eosinophilic cellulitis].
Schweiz Arch Tierheilkd. 2010 Nov;152(11):528-32.
Glardon O, Pin D.

6歳、雌のバーニーズ・マウンテン・ドッグに、治療に抵抗する結節性、紅斑性-浮腫状皮膚症がみられた。組織病理学的検査で、ヒトのウェルズ症候群の特徴でもある炎状構造を伴う好酸球性蜂窩織炎が見られた。マルボフロキサシンとプレドニゾロンの併用療法は、当初病気の安定化をもたらせた。ところが、皮膚病変はステロイドの投与量を減量した後、抗生剤による治療の最後では悪化した。ダプソンの処方は臨床像を変化させず、犬を安楽死させるという飼い主の動機となった。この症例報告は、臨床家に稀ではあるが、特にチャレンジングな皮膚科学的問題であることを意識させる。(Dr.Kawano訳)
■1頭の猫に見られたコレトトリカム属の皮下感染
Subcutaneous infection of a cat by Colletotrichum species.
J Feline Med Surg. October 2010;12(10):828-30.
Randolph L Winter; Sara D Lawhon; Natalie D Halbert; Gwendolyn J Levine; Heather M Wilson; Meighan K Daly

13歳の家猫短毛種が右足根のマスの評価で来院した。身体検査で5cmx5cmx5cmの柔らかく波動感のある足根の皮下マスを認めた。胸部エックス線検査でいくつかの離散した肺実質病変を認めた。腹部超音波検査で両腎臓に異常な構造を認めた。皮下マスの真菌培養と感受性試験で、イトラコナゾールに感受性を示すコレトトリカム属の一様な発育を認めた。コレトトリカム属感染は皮下で確認され、散在性が疑われた。猫のコレトトリカム属真菌感染は過去に述べられていない。(Sato訳)
■アメリカにおける犬の若年性全身性毛包虫症に対するリスクファクターの症例-コントロール研究
A case-control study of the risk factors for canine juvenile-onset generalized demodicosis in the USA.
Vet Dermatol. February 2011;22(1):95-9.
Jon D Plant; Elizabeth M Lund; Mingyin Yang

犬の若年発症性全身性毛包虫症(JOGD)は、犬種素因を含む複数のリスクファクターに関係が疑われる一般的な皮膚疾患である。それらリスクファクターは大規模集団でしっかりと考証されていない。
アメリカのJOGDに関与するリスクファクターを評価するため、2006年中600ヶ所の病院で検査した1189906頭の犬の電子医療記録を検索することで回顧的症例-コントロール研究を実施した。犬毛包虫症のリスクに影響すると仮定した変動値に対するオッズ比を伴う関連リスクを評価するため、ロジスティック回帰を用い多変量解析を行った。JOGDの診断に最も関係があると分かった犬種(オッズ比)は、アメリカンスタッフォードシャーテリア(35.6)、スタッフォードシャーブルテリア(17.1)、チャイニーズシャーペイ(7.2)だった。JOGDの診断に有意に関係した非犬種性リスクファクター(オッズ比)は、膿皮症の診断(5.5)、コクシジウム症(2.7)、鈎虫症(1.5)、短毛(1.9)、予防ケアウェルネスプランの非登録犬(1.5)だった。これらリスクファクターを考証することは、鑑別診断で何を優先させるか獣医師の助けとなり、犬毛包虫症の病因解明の前向き研究に役立つだろう。(Sato訳)
■ヒトにおける犬疥癬:症例報告と文献レビュー
Canine Scabies in Humans: A Case Report and Review of the Literature.
Dermatology. 2011 Apr 29. [Epub ahead of print]
Aydingoz IE, Mansur AT.

背景:ヒゼンダニは多くの家畜や野生哺乳類において疥癬症を引き起こし、動物からヒトへ伝染した報告がある。犬疥癬はヒトに寄生することがよく知られている。

症例報告:体幹部および腕に重度の掻痒を伴う丘診を呈する 27歳の女性について報告する。この患者は、痒がっている仔犬を丁度買ったところだったと報告していた。直接鏡検でヒゼンダニが犬から検出された。患者は5%ペルメトリンで治療し、完治した。

議論:ダニが犬の皮膚スクレーピングで検出することが困難であり、疥癬の顕著な特徴である穴を掘ることに欠けているので、ヒトの犬疥癬は診断するためにやりがいのある病気です。私達の患者の病変における皮膚科学的検査では、疥癬によるいくつかのトンネルあるいは特異的なダーモスコピー画像はみられなかった。その代わりに、我々は大部分の丘診上に曲線の痂皮を観察した。

結論:我々の知識では、ヒトにおける犬疥癬のダーモスコピーの様相は、これまでに報告されていなかった。この特別な表皮剥離パターンは、カーブした直線的な痕跡を後に残しながら引き裂かれた表面的に掘られたトンネルの結果であり、これがentodermoscopyのスペクトルに貢献する犬疥癬の診断の良いサポートを提供するかもしれないと考える。(Dr.Kawano訳)
■犬特発性皮脂腺炎の治療における経口シクロスポリンAと従来の局所治療の効果の比較に対する多施設プラセボコントロール臨床試験
A multicentre placebo-controlled clinical trial on the efficacy of oral ciclosporin A in the treatment of canine idiopathic sebaceous adenitis in comparison with conventional topical treatment.
Vet Dermatol. December 2010;21(6):593-601.
Jutta Lortz; Claude Favrot; Lars Mecklenburg; Claudia Nett; Silvia Rufenacht; Wolfgang Seewald; Monika Linek

犬の特発性皮脂腺炎(ISA)は皮脂腺の炎症性反応で、それらの完全な喪失を起こす可能性がある。それはT-細胞介在性疾患と考えられるが、その正確な病因はいまだ不明である。オイル浸漬、浸潤剤、シャンプーによる局所治療は効果的であるが面倒である。免疫調節剤のシクロスポリンA(CsA)は近年ISAの臨床像の改善、炎症を大幅に軽減することが示されている。しかし、それは高価な治療オプションである。
この多施設部分的二重盲検無作為コントロール研究の目的は、一次終了点脱毛および鱗屑、複数の病理組織学的二次目的の評価により従来の局所治療単独と比較して、シクロスポリンA単独あるいは局所療法との併用の効果を評価することだった。
確定診断された34頭の犬を4-6ヶ月治療し、治療前、治療中、治療後と評価した。この研究で、CsAおよび局所療法、両方とも効果を示した。治療プロトコール間の違いはわずかだった。局所治療単独およびCsAとの併用、両方ともCsA単独より鱗屑を効果的に減少させていると思われた。両治療は脱毛を軽減した。もし治療オプションを併用するならば、鱗屑と脱毛両方に対する協力作用のエビデンスがある。皮脂腺の炎症もCsAと局所併用療法で一番よく軽減された。CsAの単独あるいは局所両方の併用で皮脂腺の再生が最も達成されたエビデンスがある。(Sato訳)
■犬の膿皮症の治療でプラドフロキサシンの臨床効果の評価
Evaluation of the clinical efficacy of pradofloxacin tablets for the treatment of canine pyoderma.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Sep-Oct;46(5):301-11.
Christina Restrepo; Peter J Ihrke; Stephen D White; Ian B Spiegel; Verena K Affolter

フルオロキノロンの第三世代プラドフロキサシン(PRA)は、現在犬の細菌感染の治療のために開発されている。この研究の目的は、浅在性および深在性膿皮症に罹患した20頭の犬でその臨床効果を評価することだった。
浅在性膿皮症の犬で、最初に好気性皮膚培養を実施した。深在性膿皮症の犬で好気性/嫌気性組織培養を実施した。全ての犬で皮膚細胞診およびバイオプシーを実施した。全ての犬にプラドフロキサシン(約3mg/kg、PO)を1日1回投与した。臨床効果は表在性膿皮症の犬で4週目に記録し、深在性膿皮症の犬で3週目と6週目に記録した。3.7mg/kg1日1回の平均投与量で、PRA治療は3-6週間以内に表在性および深在性膿皮症の犬20頭全てに対し優良-良の臨床反応をもたらせた。(Sato訳)
■犬の無菌性結節性脂肪織炎:14症例の回顧的研究
Canine sterile nodular panniculitis: a retrospective study of 14 cases.
J Vet Intern Med. 2010 Mar-Apr;24(2):278-84.
O'Kell AL, Inteeworn N, Diaz SF, Saunders GK, Panciera DL.

背景:無菌性結節性脂肪織炎(SNP)は特発性にみられる皮下脂肪の一般的ではない炎症状態であるが、膵臓疾患あるいは全身性紅斑性狼瘡(SLE)などの基礎疾患とも関連している。病因と臨床経過はよく理解されていない。

目的:全身性徴候、併発疾患あるいは両方と関連した無菌性脂肪織炎の症例を回顧的に概説し、臨床検査、血液検査、画像検査そして組織病理学的所見、治療、そして治療に対する反応を特徴付ける

動物:1996年から2008年までに組織学的に無菌性結節性脂肪織炎と確定診断した14頭の犬

方法:回顧的研究

結果:9頭の犬において、皮膚病変は潰瘍化、あるいは排液を伴う結節を認め、5頭では非潰瘍性皮下結節を認めた。ほとんどの犬は発熱、食欲不振、嗜眠そして多発性病変などの全身徴候があった。一般的な臨床病理所見は、左方移動を伴う、あるいは伴わない好中球増加症、ALP増加、軽度低血糖、低アルブミン血症そしてタンパク尿があった。併発疾患は膵臓疾患、全身性紅斑性狼瘡(SLE)、関節リウマチ、多発性関節炎、リンパ球プラズマ細胞性大腸炎、そして肝臓疾患が含まれた。犬は免疫抑制量のコルチコステロイドに反応した。回復する予後は基礎疾患のプロセスと関連した。

結論と臨床重要性:無菌性脂肪織炎(SNP)は単発性の疾患ではない。むしろ、多くの疾患の全身疾患の皮下マーカーである。併発疾患と感染性の原因を評価した後に、免疫抑制治療がしばしば効果的である。(Dr.Kawano訳)
■ドーベルマンピンシャー成犬の毛包異形成
Follicular dysplasia of the adult doberman pinscher.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Mar-Apr;46(2):143-7.
Enio Moura, Silvana M Cirio

この論文は、腰背部と体躯側面に限局した持続的乏毛を主徴とするレッドのドーベルマンピンシャー成犬メスの症例を述べる。乏毛症は約2歳時に始まり、皮膚の色素沈着過剰がないままゆっくりと進行した。臨床および病理組織学的特徴は、毛包異形成の珍しい形態である。(Sato訳)
■疥癬症の犬における血中オキシダント/アンチオキシダントバランスの評価
Evaluation of blood oxidant/antioxidant balance in dogs with sarcoptic mange.
Vet Parasitol. April 2009;161(1-2):106-9.
Ilker Camkerten, T Sahin, G Borazan, A Gokcen, O Erel, A Das

この研究の目的は、疥癬症の犬におけるオキシダント/アンチオキシダントバランスを調査することだった。合計30頭の雑種のオス犬を研究した;15頭は疥癬症(研究群)、15頭は健康犬でコントロールとした。コントロールと研究群から分析のため採血をした。
研究群において15頭の皮膚掻爬の顕微鏡検査でS. scabiesを認めた。疥癬症の犬における脂質ハイドロパーオキシド濃度、総オキシダント状態、酸化ストレス指数はコントロールよりも有意に高かった(それぞれP<0.01、P<0.01、P<0.05)。その他、疥癬症の犬のメルカプト基濃度はコントロールよりも低かった(P<0.05)。群間で総アンチオキシダントキャパシティに有意差は見られなかった。我々の結果は、犬において、オキシダント/アンチオキシダントバランス異常と疥癬の蔓延の間の正の相関を示唆する。(Sato訳)
■2頭の猫におけるディーゼルオイルに誘発された脱毛
Diesel oil-induced alopecia in two cats.
Vet Dermatol. April 2009;20(2):135-8.
Jan Declercq, Hendrik De Bosschere

2頭の猫が腹側および足の急速に進行する両側対称性脱毛の急性発現を呈した。 脱毛は皮膚にディーゼルオイルを偶然かぶった後の2週間以内に発生した。影響を受けた部位の残りの毛は簡単に抜くことができた。露出した皮膚は顕著に乾燥し、粘着性の鱗屑があった。1頭には影響を受けた皮膚と正常な皮膚の間に、液体ラインによる紅斑と境界が見られた。このラインの上の皮膚は取り除くことができなかった。頭部と足のパッドは関与しなかった。全身症状は見られなかった。
2頭の猫は治療なしで完全に回復した。1頭の組織検査で重度正角化角質増殖、軽度から中程度の表皮肥厚、毛包角化症、中程度の肥満細胞の皮膚浸潤、ほぼ完全な皮脂腺の欠如が見られた。猫の皮膚にディーゼルオイルが接触したならば、純粋な植物性オイルへの浸漬後、皮膚と毛の徹底的な洗浄が推奨される。(Sato訳)
■皮膚浸透性バリア回復に関する金属の効果
Effects of metals on skin permeability barrier recovery.
Exp Dermatol. 2010 Aug;19(8):e124-7.
Denda M, Kumazawa N.

我々はこれまでに皮膚表面の電気的な状態が上皮浸透性バリアの恒常性に影響を与えることを証明した。異なる金属の界面で、電子が不均一に局在し、電気的な電位を誘発する。
今回の研究において、我々はバリア回復に対する金属の効果を評価した。テープストリップの直後に皮膚に純粋な金プレートを置くと、バリア回復率はコントロールより早かった。プレートを(地上に)アースさせると、バリア回復の促進は阻止された。プラスチック膜をプレートと皮膚の間に挟むと、コントロールと比較して回復が遅れた。
そこで、我々は、プレートとアースの間の電気的な流れを調節するためゲルマニウムダイオードを使った。電流を阻止すると、バリア回復は促進するが、電流を阻止しないと回復は促進しなかった。
これらの結果は、電子の局在はバリア回復率に影響を与えるかもしれないことを示唆している。界面電位レベルは金属の電気化学的な性質により異なるだろう。従って、次に我々は他の金属の効果を評価した。サマリウム、ジルコニウム、イリジウム、銀を使うと、バリア回復率は金を使った症例より速かったが、白金プレートは金を使った症例よりゆるやかな回復を誘発した。それぞれの金属の仕事関数とバリア回復率には有意な関連性があった。外部からの電子供給は皮膚バリア回復を促進させることをこれらの結果は示唆する。(Dr.Kawano訳)
■皮膚食物過敏症の犬の十二指腸におけるT細胞活性の評価
Evaluation of T-cell activation in the duodenum of dogs with cutaneous food hypersensitivity.
Am J Vet Res. 2010 Apr;71(4):441-6.
Veenhof EZ, Rutten VP, van Noort R, Knol EF, Willemse T.

目的:皮膚食物過敏症(CFH)における皮膚関連性臨床症状は、犬の腸管における免疫反応と一致するかどうかを決定するため

動物:腸管の臨床症状がない皮膚食物過敏症の11頭の犬と8頭の健常犬

方法:誘発食と除去食を与えた後に、Th1-, Th2- そして Treg-関連性サイトカインと転写因子の十二指腸の遺伝子発現レベルを定量PCR法で観察した。十二指腸上皮と粘膜固有層にCD3(+), CD8(+), CD4(+), CD1c(+),γδT-細胞受容体(+), そして主要組織適合性複合体II(+) 細胞の有無を検出した。

結果:皮膚食物過敏症と健常犬の犬においてTh1-, Th2-, そして Treg-関連遺伝子の発現は似ていた。臨床症状が消失してもサイトカイン、転写因子あるいは細胞性表現型に関して除去食の影響はなかった。

結論と臨床関連:どんなT-細胞表現型あるいは 異なるTh1, Th2, あるいは Treg特性の変化も、食物アレルギーの皮膚にのみ臨床症状がある犬の十二指腸において検出されなかった。これは、腸粘膜は皮膚食物アレルギーを誘発するT-細胞活性の原発部位ではないことを示唆していた。(Dr.Kawano訳)
■犬の多形紅斑の原因としての角化細胞におけるパルボウイルス感染
Parvovirus infection of keratinocytes as a cause of canine erythema multiforme.
Vet Pathol. 2000 Nov;37(6):647-9.
Favrot C, Olivry T, Dunston SM, Degorce-Rubiales F, Guy JS.

重症型多形紅斑が壊死性パルボウイルス腸炎の犬で診断された。フットパッド、圧力がかかる場所、口そして陰部粘膜の潰瘍、口腔内の水泡そして、腹部や外陰部周囲の皮膚に紅斑性のパッチなどの皮膚病変が見られた。粘膜と被毛皮膚切片の鏡検で、表皮の様々なレベルにリンパ球関連性ケラチン生成細胞アポトーシスが明らかになった。基底そして基底上層のケラチン生成細胞に好塩基球性細胞質内封入体が見られた。犬パルボウイルス2型特異モノクローナル抗体を使った免疫組織化学的染色で、口腔内と皮膚上皮細胞の核と細胞質内封入体にパルボウイルス特性が確認された。これはケラチン生成細胞へのウイルス感染によって惹起されたと報告された犬の多形紅斑の最初の症例である。
薬物による原因が確認できない多形紅斑症例では、上皮親和性ウイルスに対する検索を試みるべきであるとこの症例研究が示している。(Dr.Kawano訳)
■犬の痒みに対する超純度軟水を用いたシャンプー療法の効果の試験的評価
Pilot evaluation of the efficacy of shampoo treatment with ultrapure soft water for canine pruritus
Vet Dermatol. 2010 May 12.

Keitaro Ohmori, Akane Tanaka, Yuka Makita , Masaki Takai , Yuji Yoshinari and Hiroshi Matsuda
超純度軟化水(UPSW)は、陽イオン交換樹脂でカルシウムイオンとマグネシウムイオンがナトリウムイオンに置換された水である。我々は最近、石鹸と超純度軟化水(UPSW)を使った洗浄で人のアトピー性皮膚炎のマウスモデルであるNC/Ngaマウスの皮膚炎の臨床重症度が減少し、皮膚バリア機能を改善したことを証明した。この試験的研究の目的は、痒みのある犬に対して超純度軟化水(UPSW)を使ったシャンプー療法の効果を評価することだった。
痒みのある11頭の犬を、高純度軟化水(UPSW)あるいは水道水で週1回4週間のシャンプー療法のどちらを行うかによってランダムに2つのグループに割り当てた。ウォッシュアウト期間後、プロトコールをスイッチし夫々の犬が両治療を受けるようにした。治療前と治療後の値(飼い主に評価してもらった痒みスコア;観察者に記録された皮膚炎スコア;そして経表皮水分喪失量;TEWL)を比較した。超純度軟化水(UPSW)を使ったシャンプー療法で、明らかに犬の痒みスコアと皮膚炎スコアが減少したが、水道水による治療では減少しなかった。さらに、超純度軟化水(UPSW)を使ったシャンプー療法では明らかに経表皮水分喪失量(TEWL)が減少したが水道水では減少しなかった。治療による副作用は観察されなかった。さらに、健常犬でテープストリップによりバリア機能が破綻した皮膚に対して超純度軟化水(UPSW)を局所塗布することによって、局所の水道水塗布より急激に経表皮水分喪失量(TEWL)が減少することがわかった。犬において超純度軟化水(UPSW)によるシャンプー療法は皮膚バリア回復を促進させ、痒みと皮膚炎の管理において可能な治療オプションと考えられることが示唆された。(Dr.Kawano訳)
■2頭のウエストハイランドホワイトテリア兄弟の表皮形成異常症とマラセチア感染:遺伝性皮膚疾患あるいは重度マラセチア感染による反応?
Epidermal dysplasia and Malassezia infection in two West Highland White Terrier siblings: an inherited skin disorder or reaction to severe Malassezia infection?
Vet Dermatol. 2001 Oct;12(5):285-90.
Nett CS, Reichler I, Grest P, Hauser B, Reusch CE.

2頭の9ヶ月のウエストハイランドホワイトテリア兄弟が痒み、脱毛、苔癬化を主訴に我々の動物病院を受診した。スコッチテープによるストリッピングの細胞検査でマラセチアと球菌が明らかになった。皮膚生検で表皮形成異常症を証明した。2%ミコナゾール/クロルヘキシジン配合シャンプーによる入浴、ケトコナゾール(5mg/kg 12時間毎)とクロキサシリン(25mg/kg 8時間毎) で治療した。
6週後、皮膚感染は解消し、発毛が認められた。しかし、まだ中等度の痒みが残った。皮内アレルギー検査でハウスダストマイト、貯蔵ダニとマラセチアに対して陽性反応が出た。免疫療法を開始し、ケコトナゾールとクロキサシリンは中止した。初診から4ヵ月後に両方の犬の皮膚生検で軽度表皮血管周囲皮膚炎が明らかになった。依然として残る軽度の顔面の痒みは局所療法で簡単にコントロールできた。表皮形成異常症は、先天的な角化疾患というよりは、炎症あるいはマラセチア感染に対する過剰反応あるいは過剰な自虐の結果であるかもしれないことをこれらの2症例が示している。(Dr.Kawano訳)
■腎臓腫瘍がない全身性結節性皮膚線維症のオールトラリアンキャトルドックの1例
Generalized nodular dermatofibrosis in the absence of renal neoplasia in an Australian Cattle Dog
Vet Pathol. November 2008;45(6):901-4.
D W Gardiner , T R Spraker

13歳避妊済みメスのオーストラリアンキャトルドックに、針吸引生検および細胞診で診断できない10年以上にわたる多数の皮下結節があった。剖検の3.5ヶ月前に行った腹部超音波検査で小さな左腎を検出したが、嚢胞あるいは腫瘍はなかった。
肉眼的剖検時、軸および体肢骨格の皮下組織、多数の筋肉の筋外膜、外側腹部体壁の一部腹膜、至る所に無数の硬い円形から卵円形の白色0.25-2cmのマスを認めた。左腎は右腎の約半分の大きさで、両側に重度腎髄質(乳頭)壊死があった。組織学的に皮下結節は、過去に報告された結節性皮膚線維症および腎嚢腺腫あるいは腎嚢胞腺癌に一致する境界明瞭の成熟した低細胞性コラーゲンだった。
また両腎臓の瀰漫性急性髄質壊死は、重度慢性リンパプラズマ細胞性間質性腎炎に侵されていた。これは、腎嚢胞、嚢腺腫あるいは嚢胞腺癌のない犬における結節性皮膚線維症の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の肛門周囲瘻の治療に対する0.1%タクロリムス軟膏局所投与の長期前向き評価
Long-term prospective evaluation of topically applied 0.1% tacrolimus ointment for treatment of perianal sinuses in dogs.
J Am Vet Med Assoc. August 2009;235(4):397-404.
Bryden J Stanley, Joe G Hauptman

目的:犬の肛門周囲瘻の治療に対する局所タクロリムス、プレドニゾン経口投与、新規蛋白食の組み合わせの有効性を評価することと、2年間のその疾病の臨床的進行およびオーナーの管理をモニターすること

構成:非管理下臨床試験

動物:肛門周囲瘻の犬19頭

方法:身体検査で肛門周囲瘻と診断し、16週間の0.1%タクロリムス軟膏局所塗布、プレドニゾロン経口投与(漸減投与)、新規淡白食の治療プロトコールを実施した。最初の2週間はメトロニダゾールを経口投与した。肛門嚢が関与しているときは肛門嚢切除を推奨した。最初の4ヶ月間は毎月評価し、その後2年間は6-12週ごとに評価した。

結果:16週間で19頭中15頭の肛門周囲瘻は完全に解消した。残りの4頭は、病変は顕著に改善したが、完全解消に至らなかった。それらのうち3頭は肛門嚢の関与があり、1頭のオーナーは治療の指示に難色を示した。治療から2年の間、全ての犬はタクロリムス軟膏の断続的投与、また4頭はプレドニゾンの隔日投与、11頭は新規淡白食を継続した。研究終了時、この時点で生存していた15頭中13頭は肛門周囲疾患がない状態だった。

結論と臨床関連:このプロトコールは、肛門周囲瘻の解消に有効で経済的だった。断続的投薬を継続した犬は、病変解消の見込みはなかった。肛門嚢が関与している場合、肛門嚢切除は明らかに良い結果をもたらした。(Sato訳)
■アーフェンピンシャーの季節性側腹脱毛
Seasonal flank alopecia in affenpinschers.
J Small Anim Pract. 1995 Jun;36(6):271-3.
Waldman L.

2頭の遠縁の未避妊メスでブリーダーが所有するアーフェンピンシャーのうち、1頭のメス犬は両側性左右対称性側腹脱毛、もう1頭は両側性左右対称性側腹、背側そして尾部の脱毛の調査のため1993年3月に紹介されてきた。;脱毛はそれぞれ11月から5月そして1月から5月に発生した。その期間、メス犬は暖房装置や照明を使わない温室で過ごした。1頭のメス犬の母親が温室にいた時、冬の間は両側性左右対称性側腹脱毛があったが、家で過ごした次の冬は正常だったと飼い主が報告した。3頭の他のメス犬と1頭のオス犬は冬の間、温室で過ごすと同じ臨床症状が出た。アーフェンピンシャーでこれまでに季節性側腹脱毛の報告はない。(Dr.Kawano訳)

■チベタンテリアの再発性側腹脱毛
Recurrent flank alopecia in a Tibetan Terrier.
Aust Vet J. 2005 May;83(5):276-9.
Bassett RJ, Burton GG, Robson DC.

アトピー性皮膚炎を併発した去勢済み2歳雄のチベタンテリアの再発性側腹脱毛を述べる。再発性側腹脱毛は、3年連続冬に発症する局所性脱毛の後で診断した。診断は病歴、適合する臨床兆候と補助的な組織病理学に基いて下した。掻痒性皮膚疾患の併発で診断が複雑化した。我々の知識では、チベタンテリアの再発性側腹脱毛に関する最初の報告である。(Dr.Kawano訳)
■ヨーロッパにおける多剤耐性メチシリン耐性遺伝子陽性Staphylococcus intermediusの最初の報告:ドイツにおける獣医皮膚科2次診療所の12症例
First report of multiresistant, mecA-positive Staphylococcus intermedius in Europe: 12 cases from a veterinary dermatology referral clinic in Germany
Vet Dermatol. December 2007;18(6):412-21.
Anette Loeffler, Monika Linek, Arshnee Moodley, Luca Guardabassi, Julia M L Sung, Margit Winkler, Reinhard Weiss, David H Lloyd

要約

ペットに全身療法として一般的に入手できる効果的な薬物に対し、ヨーロッパでのセファロスポリンおよび/あるいはフルオロキノロンに対する耐性は低水準にとどまっている。しかしながら、犬と猫から分離された多剤耐性メチシリン耐性遺伝子(mecA)陽性S.intermediusが、現在発生しつつあります。11頭の犬と1頭の猫の皮膚と耳の感染から、少なくとも5分類の殺菌性抗菌薬に強い耐性を示す、12のS. intermedius が分離されました。それらの分離菌は、18ヶ月の間に北ドイツのある獣医皮膚科2次診療所から獣医診断検査所へ提出された全S. intermedius の23%で、セファレキシン、メチシリンそしてエンロフロキサシンなどに耐性でした。
動物は全て全身性のβラクタム系抗生物質あるいはフルオロキノロンに対し反応しない、再発性の表在性膿皮症、深在性膿皮症、足皮膚炎あるいは慢性耳炎により、診療所に紹介されていました。基礎疾患の是正と抗菌薬療法の併用により、10頭の犬と1頭の猫で感染は消散しました。4頭の犬と1頭の猫は全身療法と局所療法が必要で、6頭の犬は局所的な抗菌療法だけで消散しました。S. intermedius 分離菌の表現型と遺伝子型の特徴を判定しました;種同定は、サーモヌクレアーゼ遺伝子(nuc)のポリメラーゼ連鎖検出により確認し、全てのβラクタム系抗生物質に耐性を寄与する遺伝子(mecA)の存在と発現を全てにおいて立証しました;パルスフィールドゲル電気泳動に基づき、6つは区別がつかず、他は厳密にあるいはおそらく関連がありました。ヨーロッパにおける多剤耐性MecA陽性S. intermedius の出現は警戒を要するものです。人獣共通伝染病の関連、獣医研究室の中での認識、小動物臨床における抗菌薬の使用法を熟考する必要があります。(Dr.K訳)
■ゴールデンレトリバーにおける魚鱗癬の臨床、組織病理、遺伝データ:前向き研究
Clinical, histopathological and genetic data of ichthyosis in the golden retriever: a prospective study.
J Small Anim Pract. May 2009;50(5):227-35.
E Guaguere, E Bensignor, S Kury, F Degorce-Rubiales, A Muller , L Herbin, J Fontaine, C Andre

目的:前向き研究においてゴールデンレトリバー種の魚鱗癬の疫学、臨床、組織病理および超微細構造的特徴を述べる。またこの疾患の遺伝様式も調査した。

素材と方法:150頭のゴールデンレトリバーを調査し、そのうち73頭(オス35頭、メス38頭)は魚鱗癬を患っていた。40頭の患犬で詳細な臨床および組織病理検査を行った。そのうち2頭は透過型電子顕微鏡検査を実施した。遺伝様式を判定するのにCyrillic softwareによる系統分析を用いた。

結果:皮膚科症状は、軽度から中程度あるいは重度の初期は小から大の白みがかった鱗屑、進行すると黒みがかった鱗屑を呈する全身の鱗屑化だった。腹側無毛皮膚は色素沈着過剰、粗雑でありサンドペーパーのようだった。組織病理学的特徴は、顆粒層の明らかな関与がない中程度から重度積層あるいは緻密な正角化上皮角質増殖だった。超微細構造所見は、角質内の多数の強固な角質デスモゾームと積層あるいは緻密なケラチン層が認められた。系統の分析から常染色体劣性遺伝が示唆された。

結論:組織病理および超微細構造特性は、ゴールデンレトリバーの魚鱗癬が停滞魚鱗癬で、角質デスモゾーム退化の欠如が原因で、常染色体劣勢様式で遺伝することを強く示唆する。(Sato訳)
■犬の色素失調性脱毛症
Color-dilution alopecia in dogs.
Kim JH, Kang KI, Sohn HJ, Woo GH, Jean YH, Hwang EK.

色素失調性脱毛症は“青い”そして他の色素淡色犬でみられる比較的まれな遺伝性皮膚疾患である。この症候群は色素淡色遺伝子に関連する。初期の臨床症状は徐々に始まる乾性で薄く、乏しい毛質である。毛幹と毛の再成長は乏しく、毛包性丘疹が発症し、体幹のコメドに進行するかもしれない。脱毛とコメド形成は通常体幹部で最も重度で、特に皮膚の色素淡色部位でもある。色素失調性脱毛の6症例では3ヶ月~10歳の犬で報告がある。犬の品種はブルードーベルマンピンシャー、ミニチュアピンシャー、ダックスフンドそしてシュナウザーである。肉眼的に広範囲の部分脱毛が皮膚で見られる。組織病理学的に、表皮は比較的正常であるが、過形成であるかもしれない。毛包は萎縮と拡張に特徴付けられる。大量に凝集したメラニンが表皮、真皮そして毛包に見られる。(Dr.Kawano訳)
■健康および炎症性皮膚の犬におけるメチシリン耐性コアグラーゼ陽性ブドウ球菌およびStaphylococcus schleiferiの皮膚保菌のスクリーニング
Screening for skin carriage of methicillin-resistant coagulase-positive staphylococci and Staphylococcus schleiferi in dogs with healthy and inflamed skin
Vet Dermatol. June 2008;19(3):142-9.
Gregory C Griffeth, Daniel O Morris, Jill L Abraham, Frances S Shofer, Shelley C Rankin

近年、犬のメチシリン耐性率はStaphylococcus aureusで41%、S. intermediusで16%、S. schleiferiで40%と報告されている。それらは偏りが少ない犬の集団で、メチシリン耐性ブドウ球菌保菌率が有意に少ないと暗示する委託及び臨床選択の偏りを反映していると思われる。この研究では、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌およびS. schleiferi ssp. Schleiferiの保菌率およびメチシリン耐性の相対度数を判定するため、健康な50頭の犬および炎症性皮膚疾患の犬59頭の皮膚5箇所から細菌培養のためのスワブを採取した。これらのグラム染色により形態、カタラーゼおよびコアグラーゼ試験、生化学的種分化を確認した。
罹患犬の88%(59頭中52頭)からコアグラーゼ陽性ブドウ球菌およびS. schleiferi ssp. Schleiferiが分離された。培養陽性犬において分離された種は、S. aureus(12%)、S. intermedius (92%) 、S. schleiferi ssp. schleiferi (10%)、S. schleiferi ssp. coagulans (10%)で、メチシリン耐性率はそれぞれ17%、8%、20%、20%だった。
健康犬の74%(50頭中37頭)からコアグラーゼ陽性ブドウ球菌が分離され、S. aureus (16%)、S. intermedius (92%)、S. schleiferi ssp. coagulans (5%)で、メチシリン耐性率はそれぞれ0%、3%、50%だった。
全てのメチシリン耐性分離菌のうち、13件中11件がラテックス凝集によるPBP2a陽性だった。メチシリン耐性S. intermedius、S. schleiferi ssp. schleiferi分離菌は、全てPCRによりmecA遺伝子陽性だった。研究群の間でブドウ球菌分離あるいはメチシリン耐性に有意差はなかった。今回、この研究の起動力となったこの施設からの臨床的分離菌の過去の報告よりも、偏りがより少ない集団ではメチシリン耐性コアグラーゼ陽性ブドウ球菌は有意に少ない。(Sato訳)
■避妊が誘発する外被変化:メス犬の毛周期に対する性腺刺激ホルモン、GnRHの役割およびGnRH療法
Spaying-induced coat changes: the role of gonadotropins, GnRH and GnRH treatment on the hair cycle of female dogs
Vet Dermatol. April 2008;19(2):77-87.
Iris Margaret Reichler, Monika Welle, Christine Eckrich, Ursula Sattler, Andrea Barth, Madeleine Hubler, Claudia S Nett-Mettler, Wolfgang Jochle, Susi Arnold

犬において避妊は質的皮毛変化をもたらす可能性があるが、発毛周期に対する避妊の影響の記述はない。この研究の目的は、犬の皮毛、毛包の周期ステージ、血漿性腺刺激ホルモン濃度、毛包における黄体ホルモン(LH)のmRNA転写反応および性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)レセプターに対する避妊およびGnRH治療の影響を研究することだった。
15頭のメス犬は避妊前と避妊から1年後に検査し、24頭の避妊済みの犬はGnRH投与前と投与後に検査した。避妊は、血漿性腺刺激ホルモン濃度の増加、毛包の成長期:休止期比を増加させたが、皮毛変化を起こした犬は20%にすぎなかった。LHのmRNA転写反応およびGnRHレセプターに違いは見られなかった。
GnRH投与により79%の犬に血漿性腺刺激ホルモン濃度の低下、外被変化の改善が見られた。これは、成長期:休止期比の変化がなく退行期毛包の増加に関係した。
この研究は避妊が毛包の発育期:休止期比に対して影響を持つことを示した。避妊誘発外被変化は発育期:休止期比に相関しなかった。GnRH投与はある程度の犬の性腺刺激ホルモン濃度を低下させ、外被変化を逆行させたが、退行期毛包の数を増加させたことを除いて発毛周期に対する作用を持たなかった。血漿LH濃度と成長期:休止期比の正の弱い相関は見られた:しかし我々のデータは、毛包に対する直接レセプター-介在ホルモン効果を示唆するものではなかった。この研究は避妊誘発外被変化の病理メカニズムを確認できなかった。(Sato訳)
■魚とポテトの制限食および外科的切除により治療した肛門周囲瘻の犬の長期的評価
Long-term evaluation of canine perianal fistula disease treated with exclusive fish and potato diet and surgical excision.
J Am Anim Hosp Assoc.2008 Nov-Dec;44(6):302-7
Lombardi RL, Marino DJ.

病変部及び両側肛門腺を外科的に摘出し、術後にホワイトフィッシュとポテトを用いた制限食を給餌した肛門周囲瘻の犬33頭の記録を用いて、その予後を評価した。術後1年では87.9%の犬が肉眼的に完全寛解あるいはほぼ寛解となり、また一方で20.7%の犬が軽度の断続的な臨床症状を認めただけだった。便失禁はどの犬にもみられず、合併症の罹患は重症度や発生頻度の点においては、従来の報告と比べて少ないようである。(Dr.Ka2訳)
■犬の結節性皮膚糸状菌症(禿瘡):23症例
Canine nodular dermatophytosis (kerion): 23 cases.
Vet Dermatol. April 2009;0(0):.
Luisa Cornegliani, Paola Persico, Silvia Colombo

要約:皮膚糸状菌症は一般的な人畜共通疾患で、犬における臨床症状の1つは、結節性皮膚糸状菌症(禿瘡)である。その感染は真皮内であるためウッズ灯検査、毛幹の真菌構成物に対する顕微鏡検査などの通常の診断検査は陰性結果となる可能性がある。そのようなケースでは、通常および特異染色(過ヨウ素酸シッフ染色、ゴモリメチナミン銀染色)による病理組織検査が確定診断に必要とされる。
異なる犬種、年齢、性別、単あるいは多結節の犬23頭の結節性皮膚糸状菌症を述べる。12頭の犬は単結節、11頭は多結節だった。全ての症例でウッズ灯検査は陰性だった。23頭中8頭の引き抜いた毛の顕微鏡検査で分節胞子を認めた。分節胞子および・あるいは菌糸を目的としたミネラルオイルでの皮膚掻爬は12症例で陽性だった。滲出物の圧スメアで23頭中21頭(91%)が診断でき、毛幹の破片あるいは遊離好中球およびマクロファージ(化膿性肉芽腫性炎症)内の分節胞子を示した。病理組織検査は2症例で行った。16頭の真菌培養はMicrosporum canis陽性で、1頭はMicrosporum gypseum陽性だった。6頭の真菌培養で原因病原体は確認できなかった。
全頭全身性抗真菌療法で治療し、8症例は抗生物質療法の併用も行った。前述の治療で4-8週間以内に全頭の結節性皮膚糸状菌症は解消した。家庭でのヒトあるいは他の犬への伝染は見られなかった。(Sato訳)
■2つの犬の鼻の皮膚疾患であるDLEとMCPにおいて、組織病理学的兆候と治療に対する反応を比較する回顧的研究
A retrospective study comparing the histopathological features and response to treatment in two canine nasal dermatoses, DLE and MCP.
Vet Dermatol. 2004 Dec;15(6):341-8.
Wiemelt SP, Goldschmidt MH, Greek JS, Jeffers JG, Wiemelt AP, Mauldin EA.

犬の円板状エリテマトーデス(DLE)と皮膚粘膜膿皮症(MCP)は臨床的にも、組織病理学変化も重複し、しばしば診断することが難しくなる。DLEとMCPを組織病理学的に鑑別できるかどうかを決定するために、27症例における鼻平面の生検の組織病理学的特徴をスコア化した。
15症例において長期的な追跡および臨床診断を可能にする検査が入手でき、15症例中11症例では免疫調節反応性(ImR)であり、15症例中4症例で抗生物質反応性(AbR)であった。27症例中15症例で治療に対する反応で決定した臨床診断は、組織病理学兆候のスコア化に基づいて予測できなかった。異なる組織病理学的パターンが観察された:免疫調節反応性であった11症例中2症例はリンパ球が豊富な接合部皮膚炎であった。他のすべての症例は同じ組織病理学的変化を示した:バンド状のび慢性表在性形質細胞性からリンパ球プラズマ細胞性皮膚炎+/-局所的基底細胞損傷が見られたが異なる臨床診断であった(抗生物質反応性4/4、免疫調節反応性9/11)。ジャーマンシェパード/その雑種は好発(症例の44.4%)し、より病変が多発する傾向がみられた(すべての品種の41.7% vs. 26.7% )。より病期が長いことは、プラズマ細胞性浸潤が優勢であることに関連した(P = 0.026)。(Dr.Kawano訳)
■クロモブラストミコーシス:臨床症状、診断、治療の概要
Chromoblastomycosis: an overview of clinical manifestations, diagnosis and treatment.
Med Mycol. February 2009;47(1):3-15.
Flavio Queiroz-Telles, Phillippe Esterre, Maigualida Perez-Blanco, Roxana G Vitale, Claudio Guedes Salgado, Alexandro Bonifaz

クロモブラストミコーシスは、メラニン化する真菌により頻繁に起こる感染の1つである。皮下真菌感染で、通常職業関連疾患で主に熱帯および温帯地域の個体が罹患する。いくつかの種が原因菌であるが、フォンセセアpedrosoiおよびCladophialophora carrioniiは風土病地域で優勢である。クロモブラストミコーシス病変は多形性で、多くの臨床疾患に関与するものと鑑別すべきである。診断は組織のmuriform cellsの観察により確認および培養における原因菌の分離、同定である。
クロモブラストミコーシスは、特に重度臨床型において、その疾患の不応性のため、臨床医の治療がいまだ困難を伴う。3つの治療様式がある。すなわち物理治療、化学療法、コンビネーション治療だが、成功はクロモブラストミコーシス病変の原因菌、臨床型、重症度に関係する。この軽視される真菌症に対する治療選択はないが、いくつかの治療オプションはある。多くの患者は、イトラコナゾール、テルビナフィンあるいはそれらの組み合わせで治療できる。患者個々の薬剤抵抗性および抗真菌療法は調気に維持されるはずなので抗真菌剤が無料で提供されるあるいは購入するのかどうかを評価することも重要である。一般に治療は臨床、菌類学および病理組織基準に従ってガイドされるべきである。(Sato訳)
■犬の瀰漫性ペシロミセス症に関係する全身性皮膚石灰沈着症
Generalized calcinosis cutis associated with disseminated paecilomycosis in a dog
Vet Dermatol. November 2008;0(0):.
Holahan , Loft , Swenson , Martinez-Ruzafa

ミシガン州立大学獣医教育病院(MSU-VTH)に2週間にわたる嘔吐、嗜眠、食欲不振を主訴とする4歳の避妊済みメス犬雑種犬が紹介されてきた。腹部エックス線検査および超音波検査は肝脾腫大を示した。肝臓および脾臓の超音波ガイドによる針吸引生検細胞診で真菌と化膿性肉芽腫性炎症を認め、真菌培養でペシロミセスvariotii感染が証明された。抗真菌療法と支持療法を行った。最初の来院後18日目に鼠蹊部を主体に多発性の硬いプラーク様皮膚病変が発症した。全身性皮膚石灰沈着症はブラストミセス症の犬3頭、レプトスピラ症の1頭で報告されているが、瀰漫性ペシロミセスspp感染に関係するものは新奇である。(Sato訳)
■皮下フェオフィホ真菌症の原因としてエクソフィアラspinifera:症例研究と文献レビュー
Exophiala spinifera as a cause of cutaneous phaeohyphomycosis: case study and review of the literature.
Med Mycol. February 2009;47(1):87-93.
John E Harris, Deanna A Sutton, Adam Rubin, Brian Wickes, G S De Hoog, Carrie Kovarik

エクソフィアラspiniferaは、文献において18回にわたり皮膚疾患の原因として報告されている。皮膚病変の臨床症状は非常に広く、紅斑性丘疹、いぼ状プラーク、深在性皮下膿瘍などである。臨床分布および疾患の経過も不定で、年齢や患者の免疫能に依存する。組織所見はフェオフィホ真菌症あるいはクロモブラスト真菌症の2パターンのうちどちらかである。E. spiniferaはインビトロで多くの抗真菌剤に感受性があると思われるが、治療様式の臨床経験は変わりやすい。塩基配列決定法の利用前に、種の同定は組織の病理組織所見と培養による真菌の形態学的特徴をもととした。おそらくE. spinifera皮膚感染は前者の方法による不正確な同定のため過少報告されている。われわれは初めて塩基配列決定により最終的に同定を行ったE. spiniferaフェオフィホ真菌症の追加症例を報告する。また、過去のE. spiniferaによる皮膚感染の報告で述べられた不定な臨床、病理組織、形態的特徴、治療反応を概説する。(Sato訳)
■非ホジキンリンパ腫の患者におけるエクソフィアラxenobioticaが原因の皮下フェオフィホ真菌症
Subcutaneous phaeohyphomycosis caused by Exophiala xenobiotica in a non-Hodgkin lymphoma patient.
Med Mycol. February 2009;47(1):95-9.
Yumi Aoyama, Masayo Nomura, Shinya Yamanaka, Yoko Ogawa, Yasuo Kitajima

フェオフィホ真菌症は珍しい真菌感染で、免疫不全状態の患者に一般的に関与する。非ホジキンリンパ腫の77歳の女性がエクソフィアラxenobioticaによる皮下フェオフィホ真菌症を発症したケースを述べる。E. xenobioticaはデマチウム科線菌綱で、最近E. jeanselmei複合体の分離固体として同定された。患者は病変の局所切除と術後の経口イトラコナゾールで治療に成功した。この免疫不全状態の患者において、後者は全身播種を防ぐ意味で投与した。(Sato訳)
■パッチテストを使用して原因物質の同定を行ったミニチュアシュナウザーの表在化膿性壊死性皮膚炎の1症例
A case of superficial suppurative necrolytic dermatitis of miniature schnauzers with identification of a causative agent using patch testing
Vet Dermatol. November 2008;0(0):.
Murayama , Midorikawa , Nagata

9歳去勢済みオスのミニチュアシュナウザーが、倦怠感、食欲不振、発熱および背、大腿、耳介の重度炎症性皮膚病変を呈した。病変は市販のシャンプーで洗った2日後に発症した。皮膚サンプルの病理組織検査で好中球性エキソサイトーシス、不全角化、表皮過形成、表在真皮への好中球浸潤が明らかとなった。皮膚病変はプレドニゾロンおよびオフロキサシンで14日間の治療後に完全に解消した。
その患者と臨床的に健康な犬に、元凶となったシャンプーで実施したパッチテストで、患者のみ48時間後に暴露部位の皮膚が紅斑した。紅斑反応の病理組織所見は、自然発生皮膚病変のそれと同様だった。
それら所見をもとに、その犬をミニチュアシュナウザーの表在化膿性壊死性皮膚炎と診断した。パッチテストの結果は、市販シャンプーへの接触性皮膚炎がこの疾患の病原としての役を演じていることを示唆した。(Sato訳)
■犬の趾端舐性皮膚炎の微生物および病理組織学的特徴
Microbiological and histopathological features of canine acral lick dermatitis
Vet Dermatol. October 2008;19(5):288-298.
A K Shumaker, J C Angus, K S Coyner, D G Loeffler, S C Rankin, T P Lewis

この研究の目的は、犬の趾端舐性皮膚炎(ALD)の微生物および病理組織学的特徴を調査することだった。ALDの微生物学的特徴は現在の文献であまり述べられていない。感染が認められるならば、通常抗菌剤は外観、細胞診あるいは深部組織培養よりも表面培養をもとに経験的に選択される。
深部組織から得られた培養は、表面培養や細胞診により予測されたものと異なる結果が得られ、ALDからの分離菌は犬の膿皮症に日常的に投与される抗生物質に抵抗を示す予測不可能な感受性パターンを持つと仮説を立てた。

31病変の生検で、好気性、嫌気性、真菌培養、病理組織検査を行った。比較のため、22頭の表面好気性培養および感受性、細胞診を行った。皮膚掻爬および皮膚糸状菌培養を実施した。31症例中30症例から細菌を分離した。深部培養の58%でStaphylococcus intermediusが分離された。深部分離菌の20%はメチシリン耐性Staphylococcus種だった。深部培養で多剤耐性と定義される有機体が48%の症例で得られた。組織培養から分離した細菌の57%および55%のみが、それぞれアモキシシリン-クラブラン酸およびセファゾリンに感受性を示しただけだった。細胞診および表面培養は深部培養と満足な相関を示さなかった。22症例中8例の表面培養は深部培養分離菌を予測した。1頭からMicrosporum gypseumが分離された。病理組織学的特徴は、表皮肥厚、毛包延長、リンパプラズマ細胞性皮膚炎症、毛包炎、フルンケル症、汗腺周囲炎、汗腺炎、vertical streaking線維症などだった。ALDに関係する病変は、大多数の症例で経験的に使用する薬剤に抵抗性を良く持ち、表面培養と異なる細菌の陽性発育が得られるため、組織細菌培養を正当化する。(Sato訳)
■ABCB1-1デルタ(MDR1-1 Δ)遺伝子型は全身性毛包虫症に対してミルベマイシンオキシムで治療した犬における副作用と関連する
ABCB1-1 Delta (MDR1-1 Delta) genotype is associated with adverse reactions in dogs treated with milbemycin oxime for generalized demodicosis.
Vet Dermatol. 2009 Apr;20(2):111-4. Epub 2008 Dec 18.
Barbet JL, Snook T, Gay JM, Mealey KL.

全身性毛包虫症と診断した22頭の犬は、これまでの治療に対する乏しい反応あるいはイベルメクチン中毒が起こりやすいと知られている犬種だったため、ミルベマイシンオキシム(MO)で治療した。22頭中15頭は牧畜犬だった。ミルベマイシンオキシムの経口投与量は1.0-2.2 mg/kg/ dayだった。それぞれの犬のABCB1遺伝子型を決定するために頬のスワブ検体を採取した。飼い主と/あるいは獣医師によって薬物による副作用を記録した。ABCB1-1Δ遺伝子型はミルベマイシンオキシムで治療した後に、副作用(神経学的毒性)の発生と有意に関連があった。野生型のABCB1対立遺伝子をもった19頭中1頭も副作用がなかった。しかしABCB1-1Δの変異のホモ接合型の2頭の犬は運動失調を発症した。ミルベマイシンオキシム投与に先立って、ABCB1-1Δ遺伝子型の評価は、これらの患者において神経学的毒性を防ぐかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■スウェーデンの犬の皮脂腺炎、104例の遡及研究
Sebaceous adenitis in Swedish dogs, a retrospective study of 104 cases
Acta Vet Scand. May 2008;50(1):11.
Elisabeth Hernblad Tevell, Kerstin Bergvall, Agneta Egenvall, Agneta Egenvall

背景:皮脂腺炎(SA)は犬でまれな、免疫介在製皮膚疾患である。この研究の目的は、スウェーデンにおける犬で犬種、性別、年齢分布に関して皮脂腺炎を遡及的に調査することだった。2つ目の目的は、全身性皮脂腺炎の犬の臨床症状を遡及的に比較し、イングリッシュスプリンガースパニエル、スタンダードプードル、秋田犬で診断後の生存性を評価することだった。

方法:合計34人のスウェーデンの獣医師が、臨床的および組織学的に検証した104頭の皮脂腺炎症例を挙げた。各症例の犬種、性別、診断時の年齢を記録した。標準質問表を使用し、スプリンガースパニエル、スタンダードプードル、秋田犬に対して診断時、追跡調査時の臨床症状の程度、治療、併発疾患、安楽死に関する情報を記録した。

結果:皮脂腺炎の奨励104頭を調査した。多数記録した症例は、スプリンガースパニエル(n=25)、スタンダードプードル(n=21)、秋田犬(n=10)だった。Swedish Board of AgricultureおよびSwedish Kennel Clubからの国内登録データを考慮した場合、それら3犬種と一緒にラサアプソおよびチャウチャウが一般的だった。診断時の平均年齢は4.8歳だった。オスの比率は61%だった。全身症状を示すスプリンガースパニエル、スタンダードプードル、秋田犬を比較したとき(n=51)、脱毛、脂漏症、膿皮症、臨床症状の全体的な重症度に関して、診断時スパニエルはプードルよりも有意に臨床症状が重度だった。追跡調査時、外耳炎および膿皮症の臨床症状の程度は、その犬種間で有意に違っていた。算出した生存期間中央値は42ヶ月だった。研究終了時に生存に関するデータを入手できた犬(n=44)で、14頭の安楽死の理由が皮脂腺炎と報告され、そのうち7頭は診断後24ヶ月以内だった。

結論:この研究の結果は、イングリッシュスプリンガースパニエルは皮脂腺炎の素因を持つ犬種で、スタンダードプードルよりも臨床症状が重いことを意味する。生存に関して調査した犬(スパニエル、プードル、秋田犬)は高い割合で、その疾患が大きく広がったことにより安楽死されていると報告された。(Sato訳)
■犬の浅在性膿皮症における1日1回のセファレキシンの効果と許容性:オープンコントロール研究
Efficacy and tolerability of once-daily cephalexin in canine superficial pyoderma: an open controlled study
J Small Anim Pract. July 2008;0(0):.
S Toma, S Colombo, L Cornegliani, P Persico, M Galzerano, M M Gianino, C Noli

目的:この研究の目的は、浅在性膿皮症の犬に1日1回30mg/kgのセファレキシンを経口投与し、その効果と許容性を評価し、1日2回15mg/kgのセファレキシン経口投与のものと比較することだった。

方法:浅在性膿皮症の犬12頭はセファレキシン30-60mg/kg1日1回経口投与で治療し(A群)、20頭の犬を15-30mg/kg1日2回経口投与で治療した(B群)。臨床的寛解後14日まで治療した。病変の種類と分布、掻痒、一般健康状態を、数的スケールを用い14日毎に治療中止後14日まで評価した。2群間で各評価日のトータルスコア、寛解までの時間、再発率を比較した。

結果:浅在性膿皮症は全ての犬で14-42日(両群の中央値28日)に解消し、群間に差はなかった。6頭に嘔吐あるいは下痢を認めたが、投与を中止する必要はなかった。1頭(A群)のみ治療中止後9日目に再発した。

臨床意義:犬の浅在性膿皮症の治療において1日1回のセファレキシン投与は、1日2回のセファレキシン投与と同様に効果的である。(Sato訳)
■組織学的に表在性壊死溶解性皮膚炎と確定診断した36頭の犬の血漿アミノ酸濃度
Plasma amino acid concentrations in 36 dogs with histologically confirmed superficial necrolytic dermatitis.
Vet Dermatol. 2002 Aug;13(4):177-86.
Outerbridge CA, Marks SL, Rogers QR.

皮膚生検で表在性壊死溶解性皮膚炎(SND)と確定診断した36頭の犬の血漿アミノ酸濃度を測定した。犬の中央年齢は10歳で、36頭中27頭(75%)が雄だった。36頭中22頭(61%)はウエストハイランドホワイトテリア(6頭)、シェットランドシープドック(5頭)、コッカースパニエル(4頭)、スコッチテリア(3頭)、ラサアプソ(2頭)そしてボーダーコリー(2頭)の6つの犬種により占められていた。それぞれの測定した血漿アミノ酸濃度から平均濃度(+/- 標準偏差)を計算し、急性そして慢性肝炎の犬でこれまでに測定した血漿アミノ酸濃度と比較した。犬の表在性壊死融解性皮膚炎における分岐鎖アミノ酸と芳香族アミノ酸の比率は2.6で、正常な犬に比べてわずかに低かった。表在性壊死融解性皮膚炎の犬における平均血漿アミノ酸濃度は、急性そして慢性肝炎の犬より有意に低かった。肝臓でのアミノ酸の異化が増加する代謝性肝障害が表在性壊死融解性皮膚炎で見られる低アミノ酸血症を説明する仮説である。(Dr.Kawano訳)
■皮膚無菌性肉芽腫/化膿性肉芽腫、リーシュマニア症そしてマイコバクテリア感染
Cutaneous sterile granulomas/pyogranulomas, leishmaniasis and mycobacterial infections.
J Small Anim Pract. 2008 Nov;49(11):552-61.
Santoro D, Prisco M, Ciaramella P.

皮膚“無菌性”肉芽腫は、原因病理が不明確な稀な皮膚疾患のグループを表す。多くの疾患がこのグループに含まれる(例えば無菌性肉芽腫/化膿性肉芽腫症候群や反応性組織球症など)。無菌性であることの定義は、他の可能性のある病原学的物質(例えば微生物や異物)の排除に基づく。細胞学、組織学、免疫組織化学そして培養など多くの技術が微生物病因の除外に使われている。しかし、いくつかの生物体が“偏好性”でルーチンな方法での培養や同定が困難であり、分子学的研究が必要である。これは特にマイコバクテリア(例えば、犬のleproid granuloma syndrome)とリーシュマニアにあてはまる。最近、人医領域および獣医学領域における研究で、無菌性であると以前に診断された切片において、ポリメラーゼ連鎖反応法を使って微生物(マイコバクテリアとリーシュマニア)の存在を証明している。従って、無菌性疾患であると断言する前に、新しい技術の発展と共にどの微生物も決定的に除外するための集学的診断アプローチを使うことはとても大切である。(Dr.Kawano訳)

■犬の無菌性化膿性肉芽腫/肉芽腫症候群の治療としてのテトラサイクリンとナイアシンアミド
Tetracycline and niacinamide for the treatment of sterile pyogranuloma/granuloma syndrome in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 1997 Nov-Dec;33(6):540-3.
Rothstein E, Scott DW, Riis RC.

犬の無菌性肉芽腫/肉芽腫症候群に関して記載する。診断は皮膚やリンパ節からの細胞学的検査と皮膚や瞬膜からの組織病理学的検査に基づいて下される。初期の状況は高用量のグルココルチコイドに反応したが、その後テトラサイクリンとナイアシンアミドで治療に成功した。この犬の良好な反応から、この薬の併用はグルココルチコイドが使用できない犬の実行可能な治療オプションとなるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬趾間手掌および足底面皰、毛包嚢胞の病因およびレーザー外科に対するそれらの反応
Pathogenesis of canine interdigital palmar and plantar comedones and follicular cysts, and their response to laser surgery
Vet Dermatol. June 2008;19(3):134-41.
David D Duclos, Ann M Hargis, Patrick W Hanley

この研究は、再発性皮膚炎の基礎原因として手掌および足底趾間皮膚の面皰および毛包嚢胞の存在を示し、病変のCO2レーザーを使用した外科的除去を述べる。
研究した28頭の犬は、(1)再発性跛行、背側趾間皮膚の疼痛、結節、排出性瘻、(2)抗生物質療法に反応しない、(3)ニキビダニおよび皮膚糸状菌陰性だった。
全頭レーザー外科手術を行った:病変再発により9頭は2回外科処置を行い、2頭は3回外科処置を行った。15頭の皮膚サンプルを病理組織検査のために採取した。腹側趾間皮膚の臨床特性は、脱毛、胼胝様肥厚、面皰だった。組織特性は、角化症、面皰および毛包嚢胞、フルンケル症、排出性瘻、瘢痕化だった。腹側趾間皮膚の表面の傷は、病変発症に寄与すると思われた。レーザー外科手術は、嚢胞および隣接毛包の複数層の切除、瘻の探査および切除が可能だった。
1頭はレーザー外科手術後1ヶ月で整形外科的跛行により安楽死されたが、残り27頭の術後追跡調査(1.0-8.0年-平均3年)で、罹患皮膚および隣接毛包のレーザー治療は、25頭の趾間病変を解消させたことが分かった。2頭は趾間嚢胞が持続していた。(Sato訳)
■ゴールデンレトリバーにおける非表皮溶解性魚鱗癬の臨床および形態学的特徴
The Clinical and Morphologic Features of Nonepidermolytic Ichthyosis in the Golden Retriever
Vet Pathol. March 2008;45(2):174-180.
E A Mauldin, K M Credille, R W Dunstan, M L Casal

ゴールデンレトリバーに特異的な鱗屑化疾患は、皮膚病学者や病理学者により認識されているが、現在まで十分特徴が述べられていない。University of Pennsylvania's Laboratory of Toxicology and Pathologyで、2004年1月から2007年1月までの間にゴールデンレトリバー46症例を組織学的に魚鱗癬と診断した。22頭の皮膚病変は1歳以下、3頭は1歳から2歳の間、13頭は2歳以上で発症し、8頭の発症時期は不明だった。25頭はメス、21頭はオスだった。全ての犬は非常によく似た病理組織変化があり、表皮過形成および皮膚の炎症を伴わない軽度から中程度の層状正常角化角質増殖からなっていた。
四酸化ルテニウム固定による超微細構造分析を5頭のパンチバイオプシーサンプルで実施し、2頭のコントロール(1頭は患犬と兄弟の臨床、組織学的に正常な犬、1頭はケルンテリア)と比較した。全ての患犬は、角質層に結晶性構造物を伴う保持された回旋状の膜を持っていた。顆粒状細胞層における散在性ケラチン生成細胞は、顕著に明瞭な膜結合性細胞質空胞があった。14頭の系統分析は、常染色体劣性遺伝に適合したが、不完全優性は除外できなかった。ゴールデンレトリバーに独特のこの角質増殖/鱗屑化疾患は、特有の臨床、組織、超微細構造特性を持ち、原発性角化欠損に一致する。(Sato訳)

■ゴールデンレトリバーの角化欠損:臨床、病理組織、超微細構造、遺伝の特徴
Cornification defect in the Golden retriever: clinical, histopathological, ultrastructural and genetic characterisation
Vet Dermatol. June 2008;19(3):120-9.
Marie-Christine Cadiergues, Anita Patel, David H Shearer, Ruth Fermor, Suhel Miah, Anke Hendricks

獣医師は、他のすべての点で健康であるが、過剰で大きな鱗屑化、さまざまな色素がついた薄片を特徴とするゴールデンレトリバー種における非掻痒性皮膚疾患を認識している。この前向き症例シリーズは、17頭の罹患犬におけるこの角化欠損の臨床、病理組織、超微細構造、遺伝特性を述べる。その状況は、左右対称、主に腹部外側に見られる鱗屑化、体幹の色素沈着過度を特徴とする両性別の若い犬に起こる。角質層の病理組織、超微細構造変化は、角質デスモソームの遅発退化を示唆する。遺伝的病因が提唱され、遺伝の単形質常染色体劣勢様式が言われている。(Sato訳)
■猫の爪郭でマラセチアspp.酵母菌の有病率
Prevalence of Malassezia spp. yeasts in feline nail folds: a cytological and mycological study
Vet Dermatol. August 2007;18(4):278-83.
Silvia Colombo, Simona Nardoni, Luisa Cornegliani, Francesca Mancianti

マラセチアspp.酵母菌は、哺乳類と鳥類の皮膚で片利共生生物であるが、健康な猫の皮膚におけるそれらの存在についてあまり知られていない。この研究の目的は、猫の爪郭におけるマラセチアspp.酵母の存在を評価し、その種類を鑑別することだった。
異なる種類の46頭の猫を細胞学的検査で評価し、マラセチアspp.酵母は61%に見られた。デボンレックスで100%見つかった[平均8.63個/油浸(高倍率野-HPF)]。逆に、他の種類の猫(家猫短毛種及びペルシャ)は42%しか陽性を示さなかった(平均0.59/HPF)。その後、異なる種類の21頭の猫は、真菌培養で評価した。Malassezia pachydermatisは52%、M. furfurは38%、M. sympodialisは9.5%の猫から分離された。1種類以上が観察されたのは21頭中8頭で、そのうち6頭はデボンレックスだった。マラセチアspp.酵母は、特にデボンレックスの爪郭に普通に生息し、細胞診で酵母が多数存在するのは、臨床観察において茶色で脂っぽい爪郭である。M. pachydermatisと2つの脂質依存種が、デボンレックスと他の種類両方から分離された。(Sato訳)
■テルビナフィン毎日投与14日目の正常な猫の毛の残留濃度を評価する
Evaluation of persistence of terbinafine in the hair of normal cats after 14 days of daily therapy
Vet Dermatol. August 2007;18(4):246-51.
Abby L Foust, Rosanna Marsella, Lisa H Akucewich, Gail Kunkle, Amy Stern, Syamak Moattari, Nancy J Szabo

この研究ではテルビナフィン14日間の経口投与後、猫の皮毛の残留濃度を測定した。臨床的に正常な10頭の猫に14日間、テルビナフィン34-45.7mg/kg1日1回投与した。胸部側面の15cm(2)の部分をテルビナフィン最終投与後0日目から毎週8週間剃毛した。毛サンプルはテルビナフィン残留を測定するため高圧液体クロマトグラフィーで分析した。投与14日目の毛の平均テルビナフィン濃度は2.30ng/mgだった。テルビナフィン最終投与後、半減期は1.84週間だった。99%信頼区間で、テルビナフィン濃度は猫の毛で5.3週間0.03ng/mg(最小阻止濃度(MIC)(90)=0.03μg/ml)以上を維持した。全血球数と血性化学値のわずかな偏差はテルビナフィンに起因しなかった。4頭の猫はテルビナフィン投与中に嘔吐を経験し、それらのうち2頭はテルビナフィン投与終了から7-14日に斑から丘疹皮膚反応に続き、強烈な顔面の痒みも経験した。
要は、テルビナフィン投与終了後、短期間療法(14日)でさえ、数週間毛にMIC以上の濃度を維持する。それらの結果は、テルビナフィンのパルス療法はさらに調査すべきで、効果が維持する間治療期間を短縮するようなアプローチ、猫皮膚糸状菌に対する治療様式として可能性を考慮すべきと示唆する。(Sato訳)
■猫の皮膚糸状菌症における併用連続/パルス治療としてのイトラコナゾールの効果:9症例の予備試験結果
Efficacy of itraconazole as a combined continuous/pulse therapy in feline dermatophytosis: preliminary results in nine cases.
Vet Dermatol. 2001 Dec;12(6):347-50.
Colombo S, Cornegliani L, Vercelli A.

この研究は、猫の皮膚糸状菌症における併用連続/パルス治療としてのイトラコナゾールの効果を評価することだった。犬小胞子菌(Microsporum canis)による皮膚糸状菌を伴う9頭の猫は、28日間1日1回10mg/kgのイトラコナゾールで治療し、その後、同じ投与量で隔週療法(1週間休薬して、1週間投薬する)とした。必要であれば 28日、42日、56 日そして70日に身体検査と真菌培養で再評価した。真菌培養で2回の連続陰性結果が得られたら治療を中止した。8頭の猫は28日と42日で2回の陰性結果が得られ、56日後に完治した。1症例では28日で陽性結果が得られたが、42日と56日で陰性結果に達した。これらの予試験結果はコントロール研究によって確かめるべきだが、このプロトコールは猫の皮膚糸状菌症の治療において効果的であるように思われる。(Dr.Kawano訳)
■犬の皮膚真菌症
Dermatomycosis in dogs.
Mycoses. 1989 Feb;32(2):104-5.
Jand SK, Gupta MP.

皮膚病変がある犬のルーチン検査で、205頭の犬において皮膚糸状菌以外の真菌に関してスクリーニングした。22頭の犬(10.8%)が皮膚病変の病原体を提示するのに非皮膚糸状菌の存在が疑わしげであることが明らかとなった。分離された真菌はアルテリナリア属(2.9%)、ペニシリウム属(2.4%)、アスペルギルスフミガーツフ(2.0%)、ムコール属(1.5%)、クラドスポリウム属(1.5%)そしてフサリウム属(0.5%)であった。皮膚糸状菌はこれらの真菌と関連して分離されなかった。これらの感染の発生率はより暖かく、湿気のある気候の地域においてより多く認められた。(Dr.Kawano訳)
■趾端舐性皮膚炎に似た器質性疾患:犬6例
Organic diseases mimicking acral lick dermatitis in six dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Jul-Aug;43(4):215-20.
Philippe Denerolle, Stephen D White, Tara S Taylor, Sophie I J Vandenabeele

犬の趾端舐性皮膚炎(“舐性肉芽腫”)は、行動学的原因を持つと良く考えられる。しかし、他の疾患も趾端舐性皮膚炎に似た遠位肢に病変を起こすかもしれない。この報告で、6頭の犬が異なる基礎疾患、すなわちリンパ腫、整形外科のピン、深部膿皮症、肥満細胞腫、リーシュマニア症、(仮)スポロトリクス症による肢端舐性皮膚炎様病変を呈した。(Sato訳)
■プラドフロキサシンによる犬深在性膿皮症の治療:多施設、盲検、無作為パラレル試験
Pradofloxacin in the treatment of canine deep pyoderma: a multicentred, blinded, randomized parallel trial
Vet Dermatol. June 2007;18(3):144-51.
Ralf S Mueller, Bernd Stephan

多施設無作為盲検で犬の深在性膿皮症の治療における、プラドフロキサシンとアモキシシリン/クラブラン酸併用の効果を比較した。深在性膿皮症の病変および細菌培養陽性の犬を研究した。各来院時に病変、痒み、全身状況スコアを評価した。犬にはプラドフロキサシン3mg/kg1日1回、またはアモキシシリン10mg/kgとクラブラン酸2.5mg/kg1日2回投与し、3週間毎週評価し、その後臨床寛解後2週間まで2週間ごとに評価した。最大投与期間は9週間で、最大評価期間は11週間だった。プラドフロキサシン投与犬56頭(1群)のうち、48頭(86%)は臨床寛解、4頭は改善、4頭は反応なしで、11週後に臨床症状の再発を認めた犬はいなかった。アモキシシリン/クラブラン酸投与犬51頭(2群)のうち、37頭(73%)は臨床寛解、3頭は改善を見せ、5頭は反応なしで、6頭は投与中止から2週間以内に臨床症状が再発した。それらの結果は、犬の深在性細菌性膿皮症にプラドフロキサシンがアモキシシリン/クラブラン酸に匹敵する効果を持つことを示す。(Sato訳)
■犬でポリミキシンBによる誘発が疑われる尋常性天疱瘡
Suspected polymyxin B-induced pemphigus vulgaris in a dog
Vet Dermatol. June 2007;18(3):165-70.
Jan Rybnicek, Peter B Hill

おそらくポリミキシンB点耳薬の投与により誘発したと思われる尋常性天疱瘡(PV)の一症例を紹介する。3歳メスの土佐犬が耳介、外鼻孔、口唇、口腔粘膜の急性腫脹、水疱形成、潰瘍痙性を呈した。犬は沈うつで発熱し食欲不振だった。急性潰瘍性疾患発症前7日からポリミキシンB点耳薬を、耳感染の治療に両耳に使用していた。皮膚と粘膜バイオプシーで、PVを示す基底上裂形成、棘融解が見られた。ポリミキシンB点耳薬を中止し、静脈輸液、全身および局所抗生剤療法、プレドニゾン、アザチオプリンの免疫抑制療法で治療した。2週間後に完全寛解となり、1ヵ月後に免疫抑制療法を中止した。1年間の追跡調査でPVの臨床症状は再発していなかった。PVは通常自然に改善しない、または長期間寛解しているため、その状況はポリミキシンBの耳への投与による薬剤誘発だろうと考えられた。(Sato訳)
■イトラコナゾールで治療したデボンレックスのマラセチアpachydermatis関連脂漏性皮膚炎-予備研究
Treatment of Malassezia pachydermatis-associated seborrhoeic dermatitis in Devon Rex cats with itraconazole--a pilot study
Vet Dermatol. June 2007;18(3):171-4.
S Ahman, N Perrins, R Bond

6頭のデボンレックス(DRC)で経口イトラコナゾールによるマラセチアpachydermatis関連脂漏性皮膚炎の治療を調査した。マラセチアの皮膚集団を、イトラコナゾールのパルス治療(5mg/kg、7日投与、7日休薬、7日投与)前と21日後に接触プレートおよびswab-wash法で判定した。
治療前、すべての猫は腋窩、鼠蹊、鉤爪ひだ、手掌、足底趾間皮膚に脂ぎった脂漏性皮膚炎を認め、2頭は頚部腹側に同様の病変があった。治療後、趾間皮膚を除き(P=0.068)、全体の臨床スコア、評価した個別部位のスコアの有意な低下を認めた(P<0.05)。左右腋窩、左右鼠蹊、手掌趾間皮膚のマラセチア集団数は有意に減少したが(P<0.05)、鉤爪ひだの減数は有意に達しなかった(P=0.068)。DRCのマラセチア関連脂漏性皮膚炎の管理で、酵母数の劇的な減少と関連する脂漏性皮膚炎の顕著な臨床改善は、経口イトラコナゾールの潜在的有用性に対する重要な試験的データを提供する。(Sato訳)
■ブラジルの熱帯地域での毛質が異なる犬の毛周期
Hair cycle in dogs with different hair types in a tropical region of Brazil.
Vet Dermatol. 2008 Feb;19(1):15-20.
Favarato ES, Conceicao LG.

毛周期活性は人、羊そして実験動物で幅広く研究されているが、犬では情報が限られる。種、品種、性および健康状態などによる変化以外に、毛の成長は主に気候変動によって影響を受ける。この研究の目的はブラジル、ミナス・ジェライス州(南緯20度、西経45度)ビソーザ市において異なる毛質の3犬種における毛包活性を評価することだった。ボクサー、ラブラドールそしてシュナウザーの21頭の雄犬は月に1回連続で毛を図で示して12ヶ月分析した。ボクサーとラブラドールにおける毛周期の違うステージでの休止期と成長期の毛の割合は明らかな違いはなかったが、2犬種はシュナウザーと違った。ボクサーとラブラドールで毛包周期と環境温度と光周期の間に明らかな相関関係が示された。これらの品種において多くの休止期の毛が1年のうち最も暑い月に観察され、最も寒い月に成長期の毛が増加した。休止期の毛の平均%はボクサー、ラブラドールそしてシュナウザーでそれぞれ93、90、55.3%だった。(Dr.Kawano訳)
■ハンティングハウンドに見られた全身性皮膚スポロトリクス症の細胞診
Cytologic diagnosis of generalized cutaneous sporotrichosis in a hunting hound
Vet Clin Pathol. March 2007;36(1):94-6.
Joseph A Bernstein, Heather E Cook, Amy F Gill, Kirk A Ryan, Jeffrey Sirninger

1歳オスのフォックスハウンド/ウォーカーハウンドの雑種が、ルイジアナ州立大学獣医学小動物内科サービスに6週間にわたる全身分布の進行性、多病巣性潰瘍と排液、はっきり限局した病変で来院した。紹介される前に、無菌化膿性肉芽腫性疾患の推測的診断がなされた。免疫抑制療法は開始されたが、臨床的悪化を招いた。
来院時、顕著な好中球減少(1100個/マイクロL)を示し、軽度中毒性左方移動(400バンド/マイクロL)があった。排泄皮膚病変からの滲出液の細胞所見は、かなりの変性性好中球(有核細胞の約95%)と少数のマクロファージ、小型成熟リンパ球、好酸球だった。スポロトリクスに一致する少数の細胞内(好中球およびマクロファージ内)、細胞外、多形性、葉巻-卵型病原体(約3x9ミクロン)が観察された。皮膚バイオプシーの組織病理検査は、顕著な慢性活動潰瘍性化膿性肉芽腫性皮膚炎および皮下脂肪織炎でスポロトリクスspに一致する病巣内酵母が見られた。
その病原体は、浸解組織真菌培養でSporothrix schenckiiと同定された。
イトラコナゾール、エンロフロキサシン、クリンダマイシンで治療し、3ヶ月かけて臨床的消散に向かった。この症例は、犬においてSporothrix schenckiiの細胞診断のまれな例である。罹患犬は典型的に病原体が不顕であるため、犬スポロトリクスの診断は、困難であることが多く、通常組織培養を必要とする。この犬の過去の免疫抑制療法が皮膚病変の浸出液により多くの病原体を出しやすくし、細胞診を容易にしたのだろう。(Sato訳)
■猫の膿瘍と感染性創傷の治療におけるセフォベシンの効果と安全性
The efficacy and safety of cefovecin in the treatment of feline abscesses and infected wounds.
J Small Anim Pract. 2007 Dec;48(12):683-9. Epub 2007 Aug 23.
Stegemann MR, Sherington J, Passmore C.

目的:ドイツ、フランス、スペインそしてイギリスの動物病院で、猫の細菌性膿瘍と創傷の治療におけるセフォベシンの効果と安全性を決定すること

方法:膿瘍あるいは創傷の猫を登録した。
セフォベシンの14日毎の皮下注射あるいはアモキシシリン/クラブラン酸を1日2回14日間経口投与のどちらかの治療を行うために猫(217頭)をランダム化した。必要だと見なした場合は、治療過程を14日で繰り返した。
病変を評価した臨床家には治療の割り当てを隠した。治療前に細菌性病原体が確認された動物だけに効果の分析を行った。治療の最後の過程の開始後28日で症例を評価した。

結果:セフォベシンはアモキシシリン/クラブラン酸と同じくらい効果的であり、効果は両方の治療において100%であった。

臨床意義: 必要ならば14日間隔で繰り返す1回の皮下注射として投与するセフォベシンは、猫の膿瘍/創傷の治療において経口のアモキシシリン/クラブラン酸と同じくらいの効果が見られた。(Dr.Kawano訳)
■表在性細菌性毛包炎の犬における膿疱および運搬部位から分離されたコアグラーゼ陽性ブドウ球菌に対するパルスフィールドゲル電気泳動パターンと抗菌剤感受性表現型
Pulsed-field gel electrophoresis patterns and antimicrobial susceptibility phenotypes for coagulase-positive staphylococcal isolates from pustules and carriage sites in dogs with superficial bacterial folliculitis
Am J Vet Res. May 2007;68(5):535-42.
Lauren R Pinchbeck, Lynette K Cole, Andrew Hillier, Joseph J Kowalski, Paivi J Rajala-Schultz, Tammy L Bannerman, Steven York

目的:表在性細菌性毛包炎の個々の犬の膿疱および運搬部位から得られた遺伝子型的に同じコアグラーゼ陽性ブドウ球菌分離菌が同じ抗菌剤感受性表現型を持つかどうか判定する

動物:表在性細菌性毛包炎の犬40頭

方法:細菌培養、形態学的同定、グラム染色、カタラーゼ及びコアグラーゼ試験、抗菌剤感受性試験、種分化、パルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)のため、3つの膿疱、3つの運搬部位(すなわち肛門、病変のない腋窩皮膚、鼻粘膜)からサンプルを入手した。

結果:膿疱と運搬部位から223の分離菌を得た。その中から17の感受性表現型が見つかった。膿疱から分離された128(100%)の菌と運搬部位からの95(100%)の分離菌はセファロチンに感受性があった。膿疱の128(100%)と運搬部位の94(98.9%)の分離菌はアモキシシリンクラブラン酸に感受性があった。膿疱の114(89.1%)と運搬部位の82(86.3%)の分離菌はエリスロマイシン及び塩酸リンコマイシンに感受性があり、膿疱の103(80.5%)と運搬部位の70(73.7%)の分離菌はトリメトプリム-スルファメトキサゾールに感受性を示した。39頭中37頭(94.9%)で複数の膿疱から同じPFGEパターンを持つ分離菌は同じ感受性表現型を持っていた。33頭中21頭(63.6%)で複数の運搬部位から同じPFGEパターンを持つ分離菌は同じ感受性表現型を持っていた。

結論と臨床関連:表在性細菌性毛包炎の犬で、遺伝子型的に同じ株である膿疱からのほとんどのコアグラーゼ陽性ブドウ球菌分離菌は同じ感受性表現型を持つと思われ、治療は経験的な抗菌剤選択または1病変分離菌の感受性試験を元になされるかもしれない。(Sato訳)
■猫の皮膚疾患治療における経口シクロスポリンの使用:23症例の回顧的分析
The use of oral cyclosporin to treat feline dermatoses: a retrospective analysis of 23 cases.
Vet Dermatol. 2006 Jun;17(3):201-6.
Vercelli A, Raviri G, Cornegliani L.

猫の皮膚疾患の治療におけるシクロスポリンA(CsA)の使用に関して限られた情報しかない。ゆえに、この回顧的研究の目的は、好酸球性肉芽腫(EG)、好酸球性プラーク、無痛性潰瘍、線状肉芽腫、特発性掻痒そして口内炎の治療におけるシクロスポリンの効果を記述することだった。1999年から2004年にシクロスポリンで治療した猫の皮膚疾患症例をコンピューターで検索した。病歴、臨床症状そして診断検査に基づいて、症例を可能な限り3つのグループに分類し、23症例を選択した。
7頭の猫が次の一つ以上に罹患していた。好酸球性肉芽腫(EG)、好酸球性プラーク、無痛性潰瘍そして/あるいは線状肉芽腫(グループA)、8頭の猫が特発性掻痒(グループB)そして、8頭の猫が形質細胞性口内炎(グループC)に罹患していた。経口シクロスポリンの投与量は5.8~13.3mg/kgだった。完全血清血液分析、身体検査を1か月に1度(最低6ヶ月間)検査し、すべての猫をモニターした。来院時(0日、30日、60日、 90日)にビジュアルアナログスケール(VAS)で0~10段階でスコア化(病変と掻痒の重症度)し、治療に対する反応を評価した。グループAとBのすべての猫が治癒し、隔日治療で維持できた。グループCでは4/8頭が寛解したが、残る猫はまずまず-良い改善しかしなかった。血液学的そして生化学的検査でシクロスポリン投与による明らかな異常を検出することは出来なかった。(Dr.Kawano訳)
■ヒゼンダニ(Sarcoptes scabiei)外部寄生により4頭の猫に見られたカキ殻状疥癬(ヒゼンダニ症)
Crusted scabies (sarcoptic mange) in four cats due to Sarcoptes scabiei infestation
J Feline Med Surg. October 2006;8(5):327-339.
Richard Malik, Keith McKellar Stewart, Candace A Sousa, Mark B Krockenberger, Sally Pope, Peter Ihrke, Julia Beatty, Vanessa R D Barrs, Shelley Walton

猫でヒゼンダニ症の4つの新しい症例を述べる。2頭はキツネがたびたび見られることが分かっている地域に住んでいた。1頭は最近ヒゼンダニ症と診断された犬と一緒に飼育されていた。最後の1頭は7ヶ月前からヒゼンダニ症の治療をしている雑種犬と飼育されていた。3例は頭部(2例)、頭部と後肢遠位(1例)など代表的な病変からの皮膚掻爬から、特徴的なダニの大きさと形態をもとに診断した。ダニは全ての例で移動性が高く豊富に見られ、2例で得られた皮膚バイオプシー標本にも容易に検出できた。
組織切片で好酸球性炎症、角化増殖、不全角化は優勢だった。残りの1例は、特徴的病変、ヒゼンダニ症の犬と一緒にいた、ヒゼンダニ症両方に反応したことをもとに推定で診断された。どの猫も痒みは優勢な臨床特徴でなく、4例中3例は痒みがないと考えられた。疾患が長期にわたる3例の病変は、人で見られるようなカキ殻状疥癬(別名:ノルウェー疥癬、不全角化疥癬)を思わせた。3例は接触したヒトキャリアーに掻痒性皮膚丘疹病変を発症させた。2例はアベルメクチン剤の全身投与で即座に反応し、1例はライムサルファの局所処置で反応し、残り1例はライムサルファリンスとイベルメクチンを投与した。特にキツネや犬との接触があるとき、オーナーに掻痒性丘疹病変があるとき、猫の非掻痒性痂皮痙性皮膚疾患の鑑別診断にヒゼンダニ症を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬ニキビダニ症の診断で皮毛引き抜きおよび滲出物顕微鏡検査の相対感度
Relative sensitivity of hair pluckings and exudate microscopy for the diagnosis of canine demodicosis
Vet Dermatol. April 2007;18(2):138-41.
Manolis N Saridomichelakis, Alexander F Koutinas, Rania Farmaki, Leonidas S Leontides, Dimitris Kasabalis

この研究で犬ニキビダニ症の診断に対する深部皮膚掻爬、皮毛引き抜き、滲出物顕微鏡検査の感受性を比較した。ニキビダニ症と診断された67頭の犬を研究に使用した。30頭は局所、37頭は全身性ニキビダニ症だった。67頭中27頭は併発疾患(二次的感染)で40頭は非併発型だった。各犬で、単一病変を無作為に選択し、深部皮膚掻爬、皮毛引き抜き、滲出物があれば(n=13)滲出物を入手した。皮膚掻爬と滲出物顕微鏡検査は、2.2x2.2mmのカバーガラス下を検査し、trichographyでは皮毛100本を評価した。
最低1つの寄生虫要素はtrichogramsで85.1%、滲出物標本で100%認められた。寄生虫要素の数は、他の2つの方法と比べ皮膚掻爬でより多かった。皮膚掻爬の診断鋭敏度は、サンプルの合計数に対し(P=0.002)、局所病変(P = 0.004)、非併発型(P = 0.002)の犬から入手したそれに対し(P=0.004)、疾患の皮毛引き抜きの診断鋭敏度よりも高かった。皮毛引き抜きの診断鋭敏度は、局所および非併発型と比較し、全身および併発型ニキビダニ症でより高かった。
それらの結果をもとに、滲出物顕微鏡検査は、深部皮膚掻爬と同等の感受性を持つと思われ、trichographyは全身性および併発型ニキビダニ症で価値があるかもしれないが、陰性結果でルールアウトは出来ない。
■犬の散在性フェオフィホ真菌症の治療成功例
Successful treatment of disseminated cutaneous phaeohyphomycosis in a dog
Aust Vet J. December 2006;84(12):431-5.
Im Swift, A Griffin, Ma Shipstone

7歳去勢済みオスのホイペットが、免疫介在性溶血性貧血の治療でプレドニゾロンとシクロスポリンに免疫抑制量を投与されているとき、深い潰瘍皮膚病変を発症した。病変はCurvularia lunataによるフェオフィホ真菌症と確認された。免疫抑制剤の離脱と全身性抗真菌役の投与で治療し、完全に回復した。著者の知るところでは、これは犬の散在性皮膚フェオフィホ真菌症の治療が成功した最初の症例報告である。(Sato訳)
■皮膚疾患における皮膚バリア機能の障害と加湿による修復
Impaired skin barrier function in dermatologic disease and repair with moisturization.
Cutis. 2005 Dec;76(6 Suppl):7-12.
Lebwohl M, Herrmann LG.

経皮水分蒸散量(TEWL)の増加、水分-結合特性そして皮膚表層脂質、特にセラミド濃度の減少に証明された皮膚バリア機能の障害と関連したアトピー性皮膚炎や様々な他の皮膚疾患を立証するかなりのデータがあります。臨床実験の結果は、皮膚の水和を改善し、刺激に対する感受性を低下させ、角質層の統合性を修復する適切な保湿剤の賢明な使用で、これらの欠乏に取り組むことが出来ることを示唆します。また易感染性の角質層に重要な脂質を提供し、バリアーの回復を促進させる皮膚軟化薬もあります。保湿剤は、アトピー性皮膚炎や他の慢性皮膚疾患の患者にとって、重要な第一選択治療オプション(first-line therapeutic option)として貢献し、これらの難解な皮膚コンディションの臨床症状と徴候の改善において非常に有効である場合があります。(Dr.Kawano訳)
■毛周期停止(アロペシアX)の犬におけるエストロゲンレセプター拮抗薬と再発毛
Oestrogen receptor antagonist and hair regrowth in dogs with hair cycle arrest (alopecia X)
Vet Dermatol. February 2007;18(1):63-6.
Linda A Frank

マウスで毛包の休止期-成長期移行を調節するエストロゲンレセプター経路が述べられている。この研究目的は、純粋なエストロゲンレセプター拮抗剤のフルベストラントで、毛周期停止(AlopeciaX)のポメラニアンに再発毛を起こすかどうかを調査することだった。毛周期停止のポメラニアン11頭を、10mg/kgフルベストラント(n=6)、または同量の生食(n=5)を1ヶ月ごとに2回筋肉注射投与する群に振り分けた。最初の注射前と2ヶ月間毎月全血検査、生化学パネル、尿検査をモニターした。各月の犬の再発毛の程度、罹患した体の比率、新しく発毛した毛の質を評価した。3頭のコントロール犬は、研究終了後にフルベストラントを投与した。また、1頭のコントロール犬と1頭の処置犬に、1ヶ月ごとに2回の20mg/kgフルベストラント皮下注射を行った。
10mg/kgフルベストラントを投与した犬で、再発毛の所見はなかった。20mg/kgフルベストラントを投与したコントロール犬は、最初の注射から1ヵ月後かなりの再発毛が見られた。処置による副作用は見られなかった。
10mg/kgフルベストラント筋肉注射で投与するとき、フルベストラントは毛周期停止(AlopeciaX)の犬に対して実行可能な治療ではなかった。高用量のフルベストラントのさらなる調査が必要であるが、コストがかなりかかるかもしれない。(Sato訳)
■モノポーラ電気メス、CO2レーザー、電波放射線、皮膚バイオプシーパンチ、メスで採取した犬の皮膚バイオプシー標本の組織学的比較
Histologic comparison of canine skin biopsies collected using monopolar electrosurgery, CO2 laser, radiowave radiosurgery, skin biopsy punch, and scalpel
Vet Surg. January 2007;36(1):50-6.
Edward B Silverman, Robert W Read, Carolyn R Boyle, Robert Cooper, William W Miller, Ron M McLaughlin

目的:メス、皮膚バイオプシーパンチ、モノポーラ電気メス、CO2レーザー、完全整流波形での電波放射線(RWRS)により採取した犬の皮膚バイオプシー標本の組織学的所見を比較する

研究構成:実験、無作為構成

動物:健康なグレイハウンドの成犬(n=4)

方法:皮膚バイオプシー標本を5つの方法で採取した。バイオプシー標本の切縁と隣接辺縁皮膚を、組織炭化(炭)による真皮の浸透を比較するため、光学顕微鏡で評価した。

結果:バイオプシーパンチとメスでは皮膚標本に炭化は起こらなかった。電気メス、CO2レーザー、RWRSによる標本には炭浸透が起こった。皮膚バイオプシー標本の平均炭浸透は、モノポーラ電気メス(0.223mm)、CO2レーザー(0.215mm)よりもRWRS(0.158mm)が有意に少なかった。RWRS(0.171mm)によるバイオプシー周囲の隣接辺縁皮膚の平均炭浸透は、モノポーラ電気メス(0.255mm)よりも有意に少なかったが、CO2レーザー(0.215mm、P<.07)とはあまり変わらなかった。

結論:RWRS(切開凝固モードで混合波)はモノポーラ電気メスおよびCO2レーザーよりも犬皮膚バイオプシーに対する側面熱ダメージがより少なく、モノポーラ電気メスより辺縁皮膚への側面熱損傷がより少なかった。

臨床関連:熱産生機器による犬皮膚バイオプシー標本の切除は、特に皮膚バイオプシー標本のマージンを評価する時に確実な組織学的解釈が出来ないかもしれない。RWRSは切開に使用するとき、モノポーラ電気メスおよびCO2レーザーよりも皮膚に対する傷害が少ないかもしれない。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルの先天性乾性角結膜炎と魚鱗癬様皮膚疾患
Congenital keratoconjunctivitis sicca and ichthyosiform dermatosis in the cavalier King Charles spaniel
J Small Anim Pract. September 2006;47(9):524-8.
K C Barnett

目的:キングチャールズスパニエルで、過去に報告された眼および皮膚を侵す先天性および遺伝性疾患を記録する

方法:特に眼および皮膚の臨床症状を持つ19例(13同腹子)を調査した。また1例の除き全症例の5つの世代家系図を入手し、研究した。

結果:乾性角結膜炎による眼の症状はよく見られた眼疾患であったが、先天的起源のものはまれであった。魚鱗癬様皮膚疾患の皮膚症状は、魚鱗癬はまれな皮膚疾患だった。ヒトで魚鱗癬は同様の疾患で多くは遺伝性で新生児に発現し、時々他の発育欠損を付随する。キャバリアキングチャールズスパニエルで、被毛異常は成犬になった時に皮膚症状が悪化する'カーリーコート'としてブリーダーに知られていた。

臨床意義:この犬種で発症するそれら二つの疾患は、あるブリーダーではよく知られているが、獣医専門職によればまれなものだった。良い治療方法はないが、いくらかの改善は特に乾性角結膜炎で見込める。その疾患の起こりそうな遺伝性質はコントロールに重要な因子である。(Sato訳)
■犬の緑膿菌感染で引き起こった膿皮症:20症例
Pyoderma caused by Pseudomonas aeruginosa infection in dogs: 20 cases.
Vet Dermatol. 2006 Dec;17(6):432-9.
Hillier A, Alcorn JR, Cole LK, Kowalski JJ.

この報告において、病変のある皮膚からの細菌培養において緑膿菌が単独で分離された膿皮症の治療と臨床結果と同様に、組織学的、臨床的、組織病理学的そして細菌学的兆候について記述します。20頭の犬でこの回顧的研究を行った。全身性あるいは局所性皮膚疾患の既往歴を伴わない7頭の犬は、背部体幹痛の突然の発現に特徴付けられた急性深部緑膿菌性膿皮症を呈した。これらの犬の皮膚病変は紅斑性丘疹、出血性水疱、背部に限られた潰瘍そして出血性落屑からなった。
経口フルオロキノロンによる3~4週間の治療で素晴らしい臨床応答が得られた。緑膿菌性膿皮症と関連したよりゆるやかに発現する皮膚病変を伴う13頭の犬は皮膚、耳あるいは全身性疾患の既往歴があり、以前に抗生物質そして/あるいは免役調節薬で治療したことがあった。これらの犬の皮膚病変は不定で、表層性そして深部スタフィロコッカス膿皮症で述べられている病変と似ていた。このグループにおいて、1頭の犬は治療開始前に安楽死させられ、2頭の犬は追跡に失敗したが、局所スルファジアジン銀(1頭)、3~12週間のフルオロキノロン(6頭)あるいはセファレキシン(2頭)の経口投与で9頭の犬は病変が消散した。桿菌は細胞学的にいつも検出されるというわけではなかった。深部緑膿菌膿皮症の犬の組織病理学は、激しく穿孔する化膿性毛嚢炎とフルンクローシスによって特徴付けられた。(Dr.Kawano訳)
■重度好酸球性皮膚炎の犬29頭の臨床履歴と皮膚所見の比較:遡及研究
Comparison of clinical history and dermatologic findings in 29 dogs with severe eosinophilic dermatitis: a retrospective analysis
Vet Dermatol. October 2006;17(5):338-47.
Elizabeth A Mauldin, Brian S Palmeiro, Michael H Goldschmidt, Daniel O Morris

要約:ウェルズ症候群に似ている独特の好酸球性皮膚炎と診断された29頭の犬の医療記録と組織病理切片を、この症候群の病原を解明するため再検討した。医療記録に関しては、皮膚病変所見、他器官の全身症状、臨床分析物異常、薬剤療法の情報を再検討した。毛包炎およびフルンケル症が見られない中程度-重度の好酸球性皮膚炎を持つ犬の組織切片を再調査し、コラーゲン炎状構造の有無を評価した。患者に3つのカテゴリーをみつけた。
カテゴリー1は17頭で、皮膚病変発現前(平均4.6日)に嘔吐および/または下痢の治療をした。そのうち14頭は腹部にほとんどが明白な紅斑病変(斑、丘疹またはプラーク)があった。17頭中16頭は複数クラスの薬剤投与を受け、59%は低アルブミン血症だった。
カテゴリー2は5頭で来院時に皮膚病変と胃腸症状があり、そのうち4頭は低アルブミン血症が見られた。
カテゴリー3は7頭で、腸疾患はなかった。
ポジティブな薬剤スコアーはカテゴリー1の犬で6頭、カテゴリー2と3の犬でそれぞれ1頭見つかった。18頭の好酸球性皮膚炎の犬に炎状構造はなく、7頭は早期炎状構造、4頭はよく発達した炎状構造があった。それら変化は、カテゴリーや臨床症状に相関しなかった。50%以上の犬は、重度胃腸疾患の治療後好酸球性皮膚炎を発症した。著者は、ここに示す独特の症候群が原因となる薬剤と関連するかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■猫アレルギー性皮膚疾患に対しシクロスポリンに関する前向きオープン予備研究
Prospective open pilot study on the use of ciclosporin for feline allergic skin disease
J Small Anim Pract. August 2006;47(8):434-8.
C Noli, F Scarampella

目的:アレルギー性皮膚疾患の猫に対するシクロスポリンの効果を評価する

方法:アレルギー性皮膚疾患の症状を持つ10頭の猫に、シクロスポリンを1日1回3.6-8.3mg/kgで1ヶ月間投与した。過去に低アレルギー性食試験で反応した猫はおらず、全ての猫は経皮殺寄生生物薬を投与しており、研究開始前2週間に改善したものはいなかった。0日目、30日目にオーナーがビジュアルアナログスケールで痒みを評価し、獣医師は皮膚病変を評価した。

結果:全ての猫は痒みと紅斑があり、5頭は脱毛、2頭は好酸球性の斑、1頭は粟粒性皮膚炎、2頭は脱毛と好酸球性の斑を有していた。良い、または顕著な改善が痒みに対し40%、脱毛に対し57%、紅斑に対し60%の猫で観察された。平均スコアーの有意な低下は痒みのみ認められたが、紅斑と脱毛も有意に近かった(P<0.052)。

臨床意義:シクロスポリンは、ネコアレルギー皮膚疾患症状の徴候的治療の助けとなると思われる。しかしシクロスポリンは猫への使用に認可されていないことを忘れてはいけない。(Sato訳)
■足指爪真菌症の治療にイトラコナゾールパルス療法と持続投与を比較する二重盲目無作為研究
A double-blind, randomized study comparing itraconazole pulse therapy with continuous dosing for the treatment of toe-nail onychomycosis
V. HAVU, H. BRANDT, H. HEIKKILA¨, A. HOLLMEN, R. OKSMAN, T. RANTANEN, S. SAARI, S. STUBB, K. TURJANMAA & T. PIEPPONEN

この多施設二重盲目パラレルグループ研究で、足指爪真菌症の治療としてイトラコナゾール200mg1日1回3ヶ月継続投与、比較として月に1週間400mg1日1回を3ヶ月間のパルス療法の効果と安全性を評価した。研究は顕微鏡検査および皮膚糸状菌培養陽性で確認した足指の遠位爪下真菌症を持つ129人で、65人は継続投与、64人にはパルス療法を行った。患者は治療後9ヶ月間追跡調査した。12ヵ月後、評価できる患者は継続群で62人、パルス群で59人いた。
臨床反応(すなわち、罹患エリアの大きさと感染の進行)、菌学的治癒(すなわち、顕微鏡と培養陰性結果)が主要結果測定値だった。臨床反応は治癒、または顕著な改善と定義した。12ヶ月時の継続群の臨床反応率は69%、パルス群は81%で、対応する菌培養率は66%と69%だった。徴候および症状でのより良い改善はパルス群で見られた。6人は全て薬剤関連とは考えにくいが、副作用のため治療を中止した。臨床的な関連検査異常はなかった。
我々は両方法とも有効、安全、よく許容できると結論する。どちらか一方が優れているという確証はなかったが、結果はパルス療法により好ましい傾向があった。パルス療法は継続投与と少なくとも同等であると確認した。(Sato訳)
■イヌ小胞子菌体部白癬と診断されたオーナーの飼育犬猫の被毛からMicrosporum canisの分離
Isolation of Microsporum canis from the hair coat of pet dogs and cats belonging to owners diagnosed with M. canis tinea corporis
Vet Dermatol. October 2006;17(5):327-31.
Claudia Cafarchia, Diana Romito, Gioia Capelli, Jacques Guillot, Domenico Otranto

抄録:Microsporum canisは頭部白癬、体部白癬のヒト症例からよく分離されている。その感染は皮膚病変をもつ感染動物から獲得されると思われるが、無症候性キャリアーまたは環境もそうである。ヒトで無症候性M.canisキャリアーは皮膚糸状菌症の疫学に重要な因子と考えられるため、この研究は皮膚病変がない犬猫の被毛における皮膚糸状菌の存在と、それぞれのオーナーの疾患発生の関連を調査した。1999年1月から2005年1月まで合計犬136頭と猫248頭のサンプルを採った。78頭(犬22頭、猫56頭)はM.canisが原因の体部白癬に罹患したオーナーが飼育し、306頭(犬114頭、猫192頭)は皮膚糸状菌症がないオーナーが飼育していた。
各動物の年齢、性別、犬種、住居、季節を記録し、潜在リスクファクターとして調査した。皮膚糸状菌は20.5%の犬と28.2%の猫から分離した。体部白癬と診断されたオーナーと同居する犬の36.4%からM.canisが分離されたが、病変のないオーナーの犬からは分離されなかった。対照的に、体部白癬と診断されたオーナーと同居している猫の53.6%からM.canisは分離され、症状がないオーナーの猫の14.6%からも分離された。それらの結果は、皮膚糸状菌症の臨床症状が存在しないときでも、ヒトに対する病原皮膚糸状菌の主要ソースとして犬猫を考慮すべきと明確に指摘する。(Sato訳)
■通常の避妊手術後に見られた腹部膿疱性カリシウイルス皮膚炎の猫2例
Pustular calicivirus dermatitis on the abdomen of two cats following routine ovariectomy
Vet Dermatol. December 2005;16(6):395-400.
J Declercq

2頭の猫に見られたカリシウイルス皮膚炎の珍しい型を紹介する。2頭の完全ワクチン接種済み猫が、通常の避妊手術後、食欲不振と元気がないということで再入院した。上部呼吸疾患の症状は存在しなかった。1頭はその後切開創の痛みを伴う壊死を認め、もう1頭は胸水を伴う呼吸困難と孤立性舌潰瘍を起こした。手術の準備をした腹部領域に膿疱性病変がそれぞれ11日目と9日目に出現した。組織病理学的診断は汎表皮膿疱症と壊死性皮膚炎だった。猫カリシウイルス抗原に一致する免疫組織化学染色の陽性所見が、膿疱性病変内の上皮細胞で検出された。治療は抗生物質とケトプロフェンで行った。1頭は呼吸困難の進行で安楽死を行った。もう1頭の臨床症状はグルココルチコイド療法により速やかに、完全に解消した。報告された症例は避妊手術後、特徴的なカリシウイルス誘発膿疱性皮膚炎を現したのかもしれないと仮定される。(Sato訳)
■犬の肛門周囲瘻病変の程度と関連臨床症状に対するシクロスポリンの2つの投与量の効果を評価する
Evaluation of the effect of two dose rates of cyclosporine on the severity of perianal fistulae lesions and associated clinical signs in dogs
Vet Surg. August 2006;35(6):543-9.
Arthur K House, Javier Guitian, Susan P Gregory, Robert J Hardie

目的:肛門周囲瘻(PAF)に対するシクロスポリン(2または5mg/kg24時間ごと)の効果を調査する

研究構成:盲目無作為前向き研究

動物:肛門周囲瘻の犬(n=20)

方法:犬を無作為に振り分け、24時間おきにシクロスポリン2mg/kg(n=10)または5mg/kg(n=10)を8週間投与した。2週間ごとに病変表面積を測定し、病変程度はビジュアルアナログスケールでグレードをつけ、臨床症状の有無と程度を記録した。

結果:8週後に両群の病変値は有意に低下し、オーナーも臨床症状程度の低下を報告した。2mg/kgに比べ5mg/kgの投与量は病変消散を有意に促進した。2mg/kg群で20%の犬の臨床症状は完全に解消し、10%の病変が消散した。5mg/kgの群で40%の犬の臨床症状は完全に解消し、60%の病変が消散した。

結論:24時間おきの5mg/kgの投与量は、2mg/kgよりもPAF病変の表面積、程度を減少させるのにより効果的であるが、12時間毎5mg/kg以上の投与を行った過去の研究よりもPAF病変を解消する効果は少なかった。

臨床関連:24時間おきのシクロスポリン5mg/kgの投与はPAF病変の緩和に有効と思われる。(Sato訳)
■3頭の犬における色素沈着性表皮斑
Pigmented epidermal plaques in three dogs.
J Am Anim Hosp Assoc 40[5]:411-7 2004 Sep-Oct
Stokking LB, Ehrhart EJ, Lichtensteiger CA, Campbell KL

3頭の犬の色素沈着性表皮斑(PEP)でパピローマウイルスを確認した。ミニチュアシュナウザーは副腎皮質機能亢進症と低グロブリン血症、アメリカンスタッフォードシャーテリアは低グロブリン血症、ポメラニアンは未確認の甲状腺機能低下症だった。ポメラニアンの別々の斑内に扁平上皮癌(SCC)が発生した。最初の2症例は、併発疾患の治療と低用量経口インターフェロン‐アルファーの投与で臨床症状の改善が見られた。これはアメリカンスタッフォードシャーテリアとポメラニアンにおけるPEPの最初の報告である。PEPからSCCへの悪性転換の可能性は、PEPの認識と臨床管理の必要性を強調するものである。(Sato訳)
■毛サイクル停止(alopeciaX)のポメラニアンへのメラトニン補完に対するエストロジェン受容体の評価
Oestrogen receptor evaluation in Pomeranian dogs with hair cycle arrest (alopecia X) on melatonin supplementation.
Vet Dermatol. 2006 Aug;17(4):252-8.
Frank LA, Donnell RL, Kania SA.

免疫組織化学によって毛包サイクル停止(alopeciaX)をもつ犬のエストロジェン受容体の役割を調査した。
この研究の目的は、メラトニンで治療した毛サイクル停止をもつ犬の育毛が、毛包のエストロジェン受容体の減少と関連があるかどうかを決定することだった。毛サイクル停止をもつ15頭のポメラニアン(避妊していないメス犬を除外)が登録された。メラトニン投与前と投与3ヵ月後に胴体の脱毛部位より2箇所の生検組織を採取してヘマトキシリン・エオジン染色で染色された組織を検査し、エストロジェン受容体αを免疫組織学的に示した。一般的な組織病理学的検査では角質増殖、毛胞の角化、過剰な毛根鞘の角質化(炎状毛包)、薄い表皮、少なくて小さい発育期相の毛根、上皮の色素沈着そして毛包角質内のメラニン凝集が観察された。基底細胞と毛の中のメラニン凝集が時々観察された。 3カ月後、40%の犬(6頭)犬で軽度から中等度に毛の成長が観察された。生検したところ、6頭の犬で発育期相の毛の増加、8頭の犬で上皮の色素沈着の減少という組織学的証拠が見られた。エストロジェン受容体-αの中等度から著しい染色強度がすべての皮脂腺基底細胞、すべての小さい毛根、および休止期の毛の毛包上皮で観察された。
上皮、アポクリン腺あるいは皮膚線維芽細胞において核のエストロジェン受容体-α染色は全くありませんでした。大きい発育期相の毛根にはエストロジェン受容体染色は最小限か、まったくありませんでした。毛の再成長はエストロジェン受容体-α染色における変化に関連づけられませんでした。(Dr.Kawano訳)
■実験的に誘発した大豆過敏症の犬における加水分解大豆蛋白に対する免疫反応
Immunologic responses against hydrolyzed soy protein in dogs with experimentally induced soy hypersensitivity
Am J Vet Res. March 2006;67(3):484-8.
Anna Puigdemont, Pilar Braz?s, Montserrat Serra, Alessandra Fondati

目的:実験的に誘発した大豆蛋白に対するI型過敏症の犬が加水分解の大豆に反応し、皮内および経口暴露後に皮膚または胃腸管反応を起こすかどうか調査する

動物:12頭の未処置ビーグルの子犬(9頭感作、3頭コントロール)

方法:9頭は90日間アレルゲンを投与することにより、大豆に対し感作した。感作期間後、大豆-特異IgE血清濃度を測定し、大豆蛋白に監査されていることを皮内試験で確認した。自然の大豆蛋白と加水分解大豆蛋白の皮内チャレンジ試験および経口チャレンジ試験を、6頭の感作犬と2頭のコントロール犬で実施した。

結果:感作過程終了後、大豆-特異IgE血清高濃度および皮内試験陽性が9頭の感作犬で観察された。感作犬に加水分解大豆蛋白を暴露したとき、自然の大豆蛋白で皮内および傾向暴露した反応と比べ、皮内注射後の炎症反応は低減し、経口暴露後の臨床反応は観察されなかった。

結論と臨床関連:大豆感作犬は加水分解大豆蛋白の経口投与に反応しなかった。このように加水分解大豆蛋白は食物有害反応を持つ犬の管理に作成された食餌として有効と思われる。(Sato訳)
■181頭の掻痒症の犬において食物有害反応の診断における家庭食と鶏肉加水分解食を使ったの一連の症例の回顧的分析
A retrospective analysis of case series using home-prepared and chicken hydrolysate diets in the diagnosis of adverse food reactions in 181 pruritic dogs.
Vet Dermatol. 2006 Aug;17(4):273-9.
Loeffler A, Soares-Magalhaes R, Bond R, Lloyd DH.

この回顧的研究の目的は犬の食物有害反応(ARF)の診断において家庭食と鶏肉加水分解食を比較することだった。72頭の犬に家庭食を与え、109頭の犬に加水分解食を与えた。飼い主は説明時に食事のタイプを選択し、家庭食の成分はそれぞれの犬の食事の履歴に依存して選択した。外部寄生虫感染と細菌感染は試験中に治療した。食事試験の前、6週間の試験中、もとの食事の暴露の後に皮膚と胃腸管症状と痒みのスコアを記録した。試験中に痒みが解消し食事暴露で再発した場合に食物有害反応と診断した。
統計学的に有意差はなかった(市販食18.1% ; 加水分解24.7%, P = 0.377)が、ドロップアウト率は家庭食の方が低かった。家庭食を使った10頭(17%)の犬と、加水分解食を与えた15頭(18.3%)が食物有害反応と診断された。胃腸管症状は食物有害反応がない犬より食物有害反応がある犬のほうがより多く認められた(P = 0.001)。家庭食グループの他の11頭(18.6%)と加水分解食グループの20頭(24.4%)は主にアトピーのような他の痒みを伴う疾患と共に食物有害反応を呈した。2つのグループ(食物有害反応 P = 0.837 続発性食物有害反応P = 0.416)における食物有害反応の同じような診断頻度は、鶏肉加水分解食が犬の食物有害反応の診断において家庭食よりも有益な代替手段であるかもしれないことを示した。前向き交差研究がこれらの調査結果を確認するために必要と思われる。(Dr.Kawano訳)
■メラトニンの経口投与による成犬の性ホルモン、プロラクチンそして甲状腺ホルモン濃度への影響
Effect of oral melatonin administration on sex hormone, prolactin, and thyroid hormone concentrations in adult dogs.
J Am Vet Med Assoc. 1999 Oct 15;215(8):1111-5.
Ashley PF, Frank LA, Schmeitzel LP, Bailey EM, Oliver JW.

目的:犬の性ホルモン、プロラクチンそしてチロキシン血清濃度に対するメラトニン(MT)経口投与による効果を決定する。

計画: 前向き研究

動物: 性的に無傷の成犬雄8頭と雌8頭

方法: 5頭の雄雌犬をMT(1.0~1.3mg/kg、経口投与、12時間毎に28日間) で治療した。他の6頭の犬はコントロールとして使用した。0、14、および28日目で血液を採取して、エストラジオール-17β、プロゲステロン、テストステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン(17HP)、硫酸ジヒドロエピアンドロステロン (DHEAS)、プロラクチン、およびチロキシンを測定した。4頭の治療犬において5日目に血清MT濃度を測定し、MT投与前と投与後定期的に8時間まで測定した。

結果: MTで治療した雌犬は0と28日目の間において血清エストラジオール、テストステロン、およびDHEAS濃度が明らかに低下した。
MTで治療した雄犬は0と28日目の間において血清エストラジオールと17-HP濃度が明らかに低下した。 血清MT濃度は、MT投与後にかなり増加して、少なくとも8時間高いままを維持した。プロラクチンとチロキシン濃度は治療に影響を受けなかった。

結論と臨床関連: メラトニンは、経口投与によってよく吸収され、血清性ホルモン濃度を変化させるかもしれません。(Dr.Kawano訳)
■脱毛している犬の性ホルモン濃度
Sex Hormone Concentrations in Dogs with Alopecia
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:37-38 Jul'04 Retrospective Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Frank LA, Hnilica KA, Rohrbach BW, et al.; Vet Dermatol 2003;14:91-97

イントロダクション:

背景:脱毛は種々内分泌疾患の犬の一般的な臨床所見である。副腎過形成様症候群、alopecia X、成長ホルモン反応性皮膚病、去勢反応性皮膚病や他の名前で知られているまれな症候群は、副腎ステロイドホルモン異常の結果と仮定されている。プラッシュ皮毛犬種やプードルでよく発生する。下毛の喪失後、完全脱毛が通常四肢を残して起こる。原因と最適な治療は依然不明である。

目的:この研究目的は、脱毛の原因がわからない犬の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験前後のいくつかのステロイドホルモン血清濃度を評価することだった。

サマリー:

方法:ACTH刺激試験中のプロゲステロン、17-OHプロゲステロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、アンドロステンジオン、エストラジオール、コルチソル血清濃度を回顧的研究で評価した。全頭脱毛があり、正常な血清T4、犬TSH濃度、または甲状腺ホルモン補填で反応がなく、ACTH後のコルチソル濃度が200ng/ml以下だった。追加の臨床情報は明白に提供されていなかった。

結果:7年間にわたる276頭の血清で研究した。多く見られた犬種は、ポメラニアン、プードル、チャウチャウ、キースホンド、サモエド、アラスカンマラミュート、アメリカンエスキモー、シベリアンハスキー、コッカスパニエルだった。最低1つの基礎、またはACTH刺激後ステロイドホルモンは、73%の犬で正常範囲以上だった。刺激後のプロゲステロン濃度が一般的に異常を呈し、サンプルの58%が上昇していた。エストラジオール、プロゲステロン、17-OHプロゲステロン、DHEASの基礎およびACTH刺激後の濃度は、犬種間および正常犬と比較していくらかの症例で有意差が認められた。プロゲステロン、17-OHプロゲステロンの基礎、ACTH後血清コルチソル濃度および基礎アンドロステンジオン濃度は、コルチソル濃度と有意に相関した。

結論:甲状腺機能低下症または過剰なコルチソル分泌が原因ではない脱毛に関与する一貫したステロイドホルモン異常はなかった。ホルモン不均衡は多くの症例の脱毛の原因ではないかもしれない。

臨床への影響

この研究は多くの症例を使用しているが、脱毛の原因の最終的な診断はここの犬で明確に確立されなかった。また、正常な特定犬種のホルモン濃度正常範囲も確立されず、犬種間で正常範囲が変化する可能性が高い。過剰なコルチソル分泌を起こす副腎皮質機能亢進症の犬が、頻繁にプロゲステロンや17-OHプロゲステロンなどの他のステロイドホルモンを過剰に分泌することが示されている。また、クッシング症候群に関与する全ての臨床異常は、正常血漿コルチゾールの犬で述べられているが、ACTH刺激試験でプロゲステロンまたは17-OHプロゲステロン濃度は上昇した。脱毛の非内分泌性の原因は、研究した全ての症例の脱毛で除外されなかった。この研究で脱毛の他の臨床所見に関する情報なしに、この研究で気付いたホルモン異常の重要性は不明である。(Sato訳)
■猫の座瘡の臨床的、細胞学的、感染性そして組織病理学的兆候の評価
An evaluation of the clinical, cytological, infectious and histopathological features of feline acne
Veterinary Dermatology Volume 17 Page 134 - April 2006
E. Jazic, K. S. Coyner, D. G. Loeffler and T. P. Lewis

アメリカ南西部の獣医皮膚科病院に委託された、あるいは有志による猫22頭の猫の座瘡における細胞学的、微生物学的そして組織病理理学的兆候を調査した。比較のために5頭の罹患していない飼い猫において、いくつかのパラメーターを評価した。さらにすべての猫で、座瘡病変における猫カリシウイルス(FCV)と猫ヘルペスウイルス(FHV-1)の存在を免疫組織化学検査(IHC)によって評価した。座瘡に罹患した猫の発症年齢は6ヵ月から14歳で、平均4歳でした。
最も一般的な皮膚病変は、コメド (73%)、脱毛(68%)、落屑(55%)、丘疹(45%)および紅斑(41%)でした。
掻痒は罹患した猫の35%で報告されました。Malassezia pachydermatitisの細胞学的エビデンスは罹患した猫の4/22(18%)に存在していました。 Microsporum canisは罹患した1頭の猫で観察された。 細菌は22頭の罹患した猫のうち10頭(45%)で分離された。 コアグラーゼ陽性ブドウ球菌とα溶血性連鎖球菌は最も一般的でした。 組織病理学的特徴はリンパ球プラズマ細胞性血管周囲炎(86%)、皮脂腺導管拡張(73%)、栓子あるいは拡張を伴う毛包角化症(59%)、外毛腺閉塞そして拡張(32%)、毛包炎(27%)、化膿性肉芽腫性皮脂腺炎(23%)そしてフルンケル症(23%)であった。
5頭の同居猫のうち1頭の猫には座瘡があり、IHCによる顎の生検でFCV抗原が検出された。5頭の健康な猫と同様に、すべての他の罹患した猫からの顎組織検体ではIHC によるFCVおよびFHV-1抗原は陰性であった。(Dr.Kawano訳)
■シェットランドシープドックとラフコリーの小胞皮膚紅斑性狼瘡の11症例:臨床管理と予後
Eleven Cases of Vesicular Cutaneous Lupus Erythematosus in Shetland Sheepdogs and Rough Collies: Clinical Management and Prognosis
Vet Dermatol 15[1]:37-41 Feb'04 Retrospective Study 8 Refs
H. A. Jackson

皮膚潰瘍疾患は、シェットランドシープドックとラフコリーの成犬に認められる。これは、皮膚紅斑性狼瘡の小胞変化(VCLE)に一致する明確な臨床、組織学所見を持つ。臨床結果と治療に対する反応の回顧的情報を、VOLEと組織学的に確認した11症例から収集した。11頭中8頭の疾患発現は夏だった。次の夏に3頭が再発した。8頭で、皮膚疾患は、最低9ヶ月の追跡調査後も治療により75-100%コントロールできていると判定された。それら症例の7頭で成功した治療方法は、経口グルココルチコイドの免疫抑制量単独(1頭)、アザチオプリンと併用(5頭)、ドキシサイクリンと併用(1頭)だった。1頭は局所フルオシノロンに反応した。3頭はその疾患に直接関連する理由で安楽死され、1頭は治療を開始する前に安楽死された。ラフコリーやシェットランドシープドックの小胞皮膚紅斑性狼瘡は、解消可能で積極的な免疫抑制量法による管理が一番良い。日光を避ける、または日焼け止めの使用が、追加の管理に推奨され、重要である。(Sato訳)
■犬のマラセチア性皮膚炎の治療で経口セファレキシン、テルビナフィンまたはケトコナゾールの組み合わせで臨床効果を比較した‐予備研究
Comparison of the Clinical Efficacy of Oral Terbinafine and Ketoconazole Combined with Cephalexin in the Treatment of Malassezia Dermatitis in Dogs - A Pilot Study
Vet Dermatol 16[3]:171-176 Jun'05 Clinical Trial 18 Refs
Millie S. Rosales, Rosanna Marsella *, Gail Kunkle, Bradley L. Harris, Constance F. Nicklin and Jennifer Lopez

この無作為単一盲目臨床試験の目的は、犬のマラセチア性皮膚炎の治療として経口セファレキシン単独およびそれとテルビナフィン、またはケトコナゾールとの組み合わせで細胞、および臨床的効果を評価することだった。
マラセチア性皮膚炎の22頭の飼育犬が3週間の研究を完遂した。全ての犬にセファレキシン(ジェネリック、250mgまたは500mg)を1日2回22-30mg/kgで投与した。8頭には1日1回テルビナフィン30mg/kgを投与し、7頭は1日2回ケトコナゾール(ジェネリック、200mg)5-10mg/kgを投与した。残り7頭はセファレキシン単独投与だった。
0週(来院1)と3週(来院2)時に、3箇所の罹患部でテープストリップ細胞診を用い平均酵母数を測定し、その罹患部に臨床指数スコア(CIS)を割り当て、オーナーにはビジュアルアナログスケールで痒みを評価してもらった。
全群で平均酵母数、CIS、および痒みの減少を認めた。来院1から来院2の間の平均酵母数の低下は、テルビナフィン、ケトコナゾール、セファレキシン単独でそれぞれ86.8%、80.2%、28.8%だった。しかし治療群比較で、平均酵母数の有意な減少はテルビナフィン(P<0.002)とケトコナゾール(P<0.01)に見られただけだった。痒みの低下はテルビナフィン群のみ有意であった。それらの予備的結果は、テルビナフィンの犬マラセチア性皮膚炎の治療に対してさらなる調査を示唆する。(Sato訳)
■犬のBlack hair follicular dysplasia: 透過型電子顕微鏡検査を使用した超構造的研究
Black hair follicular dysplasia in a dog: an ultrastructural study using transmission electron microscopy
A. Shimizu, A. Ishiko, N. Murayama and M. Nagata
Veterinary Dermatology
Volume 15 Issue s1 Page 53 - August 2004

Black hair follicular dysplasia (BHFD)は、2色あるいは3色の被毛がある犬が幼齢時に黒い領域だけ毛を喪失する稀な疾患である。 毛幹と毛庖の中の大きいメラニン顆粒沈着はこの疾患の顕著な特徴だが、病因は不確実なままである。 走査型電子顕微鏡検査を使った研究で、色素転移の異常が病因に役割を果たすかもしれないことが示された。ここに、私たちは透過型電子顕微鏡検査で病変を調べた犬のBHFDを紹介する。
白黒被毛を持つ3歳の雑種犬(雄)は黒色被毛領域での2年間の脱毛の経歴があった。身体検査で脱毛症以外の異常は全く認められなかった。皮膚掻爬検査、真菌培養、完全血球計算、生化学分析、そして内分泌検査に顕著な変化は認められなかった。 組織病理学的に、白色被毛領域に異常は全く観測されなかったが、黒色被毛領域には毛幹と毛包に多数の大きいメラニン顆粒が見られた。 これらの所見に基づいて、BHFDと診断した。
透過型電子顕微鏡検査で休止期毛包の下部で非定型的 (形とサイズ) なメラノソームから成る多数のメラニン色素塊が明らかにされた。 いくつかのメラニン塊が細胞膜様構造によって囲まれて、そこでは、変性した核が認められた。メラニン色素塊がメラニン遮断から発すると推測された。 さらなる調査がBHFDの病因のより良い理解に必要である。(Dr.Kawano訳)
■脱毛を伴う犬における性ホルモンとステロイドホルモン中間介在物の回顧的評価
Retrospective evaluation of sex hormones and steroid hormone intermediates in dogs with alopecia
Veterinary Dermatology
Volume 14 Issue 2 Page 91 - April 2003
Linda A. Frank, Keith A. Hnilica*, Barton W. Rohrbach and Jack W. Oliver

この研究の目的は、甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢症が除外された犬における、内分泌性が疑われる脱毛と関連した特定のステロイドホルモン異常があるかどうか判定することだった。7.5年の期間(783検体)、脱毛症を伴う犬からUTCVM内分泌学研究所に報告されたステロイドホルモンパネルを検討した。この期間、276頭の犬が評価基準を満たし、異なる54犬種から構成された。約73%の犬はプレあるいはポストACTH刺激ステロイドホルモン中間介在物が1つ以上正常範囲より高かった。上昇の頻度が最も多かったたホルモンはプロゲステロン(57.6%の検体)だった。
正常な犬と比較してエストラジオールはキースホンドで有意に高く、プロゲステロンはポメラニアンとシベリアンハスキーで有意に高かった。 すべての個々の犬には、ホルモン異常があったというわけではなかった。チャウチャウ、サモエド、およびマラミュートは、この研究において正常なステロイドホルモン中間介在物を持つ割合が最大であった。基礎のコルチゾール濃度はプロゲステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、およびアンドロステンジオンと有意に関連があった。この研究の結果は、少なくともいくつかの犬種において脱毛症の病理機構がステロイドホルモン中間介在物に関連しないかもしれなく、犬種特異性の正常値であることの必要性を強調することを示した。(Dr.Kawano訳)
■メラトニンとミトタンによる治療前と治療中において毛周期の停止(Alopecia X)した犬における副腎ステロイドホルモン濃度
Adrenal steroid hormone concentrations in dogs with hair cycle arrest (Alopecia X) before and during treatment with melatonin and mitotane.
Vet Dermatol. 2004 Oct;15(5):278-84.
Frank LA, Hnilica KA, Oliver JW.

研究の目的は、メラトニンで治療中の毛周期が停止(Alopecia X)した去勢犬の中間副腎ステロイドホルモン(ISH)を評価すること、および毛の再生が正常範囲内の性ホルモン濃度と関連があるかどうか評価することである。29頭の去勢した、甲状腺機能が正常で、正常なコルチゾール値の犬 (ポメラニアン23頭、キースホンド3頭、ミニチュアプードル2頭、およびシベリアンハスキー1頭) を研究した。
被毛検査とACTH刺激試験は処置前および治療後一年間、約4ヶ月ごとに実施した。メラトニンを初めは3-6mg、12時間毎で投与し、臨床症状の進行に基づいて各犬は、増量したメラトニンで維持するか、あるいはまたはミトタンに変更した。23頭中14頭のポメラニアンで部分的もしくは完全に再発毛し、3頭中3頭のキースホンドそして2頭中1頭のプードルで部分的に再発毛した。シベリアンハスキーは再発毛しなかった。15頭の犬は、最初の再評価の時点で部分的な再発毛があった。メラトニンの投与量は8頭の犬で増加したが、1頭だけ再発毛した。ミトタン処置において6頭中4頭で部分的もしくは完全に再発毛したが6頭中2頭で再発毛しなかった。メラトニンもしくはミトタン処置中に性ホルモン濃度の有意な減少は見られなかった。再発毛を伴う犬のISH濃度は処置前の値と有意差がなかった。
研究の終了時、アンドロステンジオン、プロジェステロン、17-ヒドロキシプロジェステロンが部分的もしくは完全に毛が再成長した犬のそれぞれ21%、64%、36%推奨範囲よりまだ高かった。
結論として、62%の犬は部分的もしくは完全に再発毛した。 しかし、再発毛した犬のすべてのISH濃度が正常範囲ということではなかった。(Dr.Kawano訳)
■皮脂腺炎の犬の臨床、組織学的異常に対するシクロスポリンAの効果
Effects of Cyclosporine A on Clinical and Histologic Abnormalities in Dogs with Sebaceous Adenitis
J Am Vet Med Assoc 226[1]:59-64 Jan 1'05 Clinical Trial 44 Refs
Monika Linek, Dr med vet; Christina Boss, DVM; Renate Haemmerling, Dr med vet; Marion Hewicker-Trautwein, Prof; Lars Mecklenburg, PhD *

目的:犬の皮脂腺炎の治療でシクロスポリンAの効果を評価する

構成:Open-label臨床試験

動物:皮脂腺炎の犬12頭

方法:12ヶ月間シクロスポリンA5mg/kg/日経口投与で治療し、4ヶ月毎に再評価した。各体の17箇所の部位で、脱毛の広がりと毛包円柱の程度を欠如、軽度、中程度、重度とグレードをつけ、臨床スコアーを算出した。バイオプシー標本を採取し、組織学的に免疫組織化学染色で検査した。

結果:治療4ヶ月後の平均臨床スコアーは最初の基準スコアーと比較し有意に低下し、8ヶ月、12ヶ月と低下し続けた。組織学的に、炎症の程度はマクロファージ、CD3+T細胞、腫瘍組織適合性複合体クラスII発現細胞など有意に低下した。皮脂腺を伴う毛包の比率は増加し、皮脂腺の再生を示唆した。臨床症状はシクロスポリンを中止すると再発した。

結論と臨床関連:結果から、皮脂腺の犬に5mg/kg/日でシクロスポリンAを投与すると炎症を低下させることが分かる。疾患の管理には長期治療が必要と思われる。(Sato訳)
■イヌネコの皮膚糸状菌症の治療:発表された研究の再検討
Treatment of Dermatophytosis in Dogs and Cats: Review of Published Studies
Vet Dermatol 15[2]:99-107 Apr'04 Review Article 49 Refs
Karen A. Moriello

イヌネコの皮膚糸状菌症に関する最近の文献を再検討した。感染した皮毛を分離して使用するインビトロ研究やコントロール、またはフィールドインビボ研究をもとに、続く局所治療薬は一致しており、抗真菌剤(すなわち抗皮膚糸状菌)、石灰硫黄(1:16)、0.2%エニルコナゾールリンス、2%ミコナゾール/クロルヘキシジン混合シャンプーなどである。動物、または皮毛は1週間に1回か2回入浴またはリンスをした。イトラコナゾール、グリセオフルビン、テルビナフィンをよく関与するネコでコントロール、またはフィールド研究で評価した。
グリセオフルビン(50mg/kg)は、41-70日で罹患動物を治癒させると報告された。イトラコナゾール(10mg/kg1日1回、または毎日/パルス療法の組み合わせ10mg/kg1日1回28日間と1週間投与/1週間休薬)は、56-70日で罹患動物が治癒すると報告された。低用量イトラコナゾール(1.5-3.0mg/kg)15日サイクルで、1-3サイクル(15-45日)必要だった。テルビナフィンの種々の投与量(5-40mg/kg)は伝えるところによれば、イヌ、またはネコの治療で使用された。高用量のテルビナフィン(>20mg/kg)は、菌学的治癒を達成するのに必要だった。治癒までの治療日数は、21日から>126日まで変動した。ルフェヌロンは裏づけが乏しく効果的に治癒すると報告されたが、コントロール研究で実証されていない。最後に、真菌ワクチンはチャレンジ試験に対し効果がなかったが、治療プロトコールで有効かもしれないという所見はあった。(Sato訳)
■猫の形質細胞性足皮膚炎:8症例の研究
Feline plasma cell pododermatitis: a study of 8 cases
Veterinary Dermatology
Volume 14 Issue 6 Page 333 - December 2003
Patr?cia Dias Pereira and Augusto M. R. Faustino

3年以上かけて集めた猫の形質細胞性足皮膚炎の8症例を、組織学的(ヘマトキシリンとエオジン)、組織化学的(メチレングリーン-ピロニン)そして免疫組織化学的(免疫グロブリンのλ(L)鎖に対する抗体)技術を使って研究した。性、品種もしくは年齢の素因はなく、罹患しやすい肢もないことが観察された。この病気は肉球の腫脹に始まり、続いて潰瘍を形成した。組織学的に、病変は主に血管周囲パターンにおける多数の形質細胞の存在に特徴付けられた。2核形質細胞と 有糸分裂像が観察された。1年以上の臨床経過で4症例の糖質コルチコイド療法そして2頭の全外科的切除の両方において完全寛解を認めた。1症例において追跡調査ができなかった。(Dr.Kawano訳)

■2頭の猫における慢性の肉球出血を伴う形質細胞性足皮膚炎
Plasma cell pododermatitis with chronic footpad hemorrhage in two cats.
J Am Vet Med Assoc. 1990 Aug 1;197(3):375-7.
Taylor JE, Schmeitzel LP.

掌部そして中足肉球の腫大、そして罹患した肉球のうち1つの潰瘍、そして潰瘍からの慢性出血の病歴を伴う2頭の猫で形質細胞性足皮膚炎を診断した。1頭の猫は貧血(PCV, 14.6%)であった。潰瘍は出血をコントロールするため辺縁切除、縫合し、コルチコステロイドの免疫抑制量で治療した。両方の猫は3~4週間の治療後、肉球の大きさにおいてかなりの減少が見られた。形質細胞足皮膚炎は免疫介在性、もしくはアレルギー性疾患かもしれないことを示唆する所見があるが原因は未だに分っていない。(Dr.Kawano訳)
■皮脂腺炎の犬における臨床的、組織学的異常に関するシクロスポリンAの効果
Effects of Cyclosporine A on Clinical and Histologic Abnormalities in Dogs with Sebaceous Adenitis
J Am Vet Med Assoc 226[1]:59-64 Jan 1'05 Clinical Trial 44 Refs
Monika Linek, Dr med vet; Christina Boss, DVM; Renate Haemmerling, Dr med vet; Marion Hewicker-Trautwein, Prof; Lars Mecklenburg, PhD *

目的:犬の皮脂腺炎の治療において、シクロスポリンAの効果を評価することです。

計画:オープンラベル臨床試験

動物:皮脂腺炎の犬12頭

手順:12ヵ月間、犬をシクロスポリンA、5mg/kg/day、POで治療し、4ヵ月ごとに再評価しました。臨床スコアは、体の17領域において、それぞれ、なし、軽度、中程度、重度と、脱毛の程度と毛包の重症度を階級付けすることにより算出しました。生検標本を採取し、免疫組織化学染色により組織学的に検査しました。

結果:平均臨床スコアは、治療の4ヵ月後、基準スコアと比較して有意に減少し、8ヵ月、12ヵ月後も、スコアは低いままでした。組織学的に炎症の重症度は、マクロファージの数、CD3+T細胞、そして主要組織適合複合体クラスⅡ発現細胞に関し、有意に減少しました。皮脂腺を持った毛包のパーセンテージは増大し、皮脂腺の再生を示唆しておりました。臨床徴候は、シクロスポリン投与を中止した時、再発しました。

結論と臨床関連:結果は、シクロスポリンA、5mg/kg/dayの投与が、犬における皮脂腺炎に関連した炎症を減少させるかもしれないということを示唆しております。疾患をコントロールするには、長期治療が必要であると思われます。(Dr.K訳)
■イヌ家族性皮膚筋炎のイヌで、ペントキシフィリンとその活性代謝産物の治療反応
Therapeutic Response to Pentoxifylline and Its Active Metabolites in Dogs with Familial Canine Dermatomyositis
Vet Ther 4[3]:234-241 Fall'03 Case Report 14 Refs
Christine A. Rees, DVM & Dawn M. Boothe, DVM, PhD

臨床所見と皮膚バイオプシーの結果をもとに家族性皮膚筋炎と診断した10頭のイヌを、3ヶ月間ペントキシフィリン(25mg/kg1日2回)の経口投与で治療した。全血数、血清生化学、尿検査のために、血液と尿サンプルを隔週で採取した。また、血清でペントキシフィリンとその2つの主な代謝産物(代謝産物1[M1]と5[M5])も分析した。身体検査を行った。そして皮膚病変を写真撮影し、隔週で主観的なスコアーをつけた。反応の中央値は、6週間(範囲4-10週間)だった。臨床化学検査、血液検査、尿検査結果は、最初のサンプル採取と最終評価(12週目)で違いはなかった。
一般にペントキシフィリンとその2つの代謝産物は、採取時間のピーク(3時間)でしか検出できなかった。M5濃度は各採取時間で3つの物質のうち最も高く、最も小さな変動を特徴とした。2週目と12週目の濃度の統計学的有意差は存在しなかった。10頭のイヌのうち4頭は、治療に対する完全な臨床反応を特徴とし、6頭は部分的反応を起こした。それら反応をもとに、12時間ごとの25mg/kg投与は、家族性イヌ皮膚筋炎のイヌのペントキシフィリン初期投与量として有効である事は明らかだった。代謝産物の組成など変わりやすい性質のため、ペントキシフィリン濃度のモニタリングで、治療の有効性を提示できないかもしれない。(Sato訳)
■フェノバルビタールの投与歴を持つ11頭のイヌの表皮壊死性皮膚炎(1995-2002)
Superficial Necrolytic Dermatitis in 11 Dogs with a History of Phenobarbital Administration (1995-2002)
J Vet Intern Med 18[1]:65-74 Jan-Feb'04 Retrospective Study 74 Refs
Philip A. March, Andrew Hillier, Steven E. Weisbrode, John S. Mattoon, Susan E. Johnson, Stephen P. DiBartola, and Peter J. Brofman

表皮壊死性皮膚炎と組織学的に確認され、過去にフェノバルビタール投与歴を持つイヌ11頭の臨床記録を回顧的に評価した(1995-2002)。病歴、臨床、臨床病理、超音波、病理所見を、過去にフェノバルビタール投与を受けていない表皮壊死性皮膚炎のイヌや、皮膚疾患がないフェノバルビタール関連肝毒性を持つイヌのものと比較した。フェノバルビタールの投与歴を持つ表皮壊死性皮膚炎のイヌは、1995年から2002年の間にオハイオ州立大学病院で評価し、表皮壊死性皮膚炎とすべて組織学的に確認された症例の44%を占めた。
フェノバルビタール投与歴を持つ表皮壊死性皮膚炎のイヌの年齢中央値は10歳で、フェノバルビタール投与期間の中央値は6年だった。平均ALT活性は239U/L、異常な高ALT活性持続期間の中央値は、表皮壊死性皮膚炎の診断前6.25ヶ月だった。1頭のイヌで測定した血漿アミノ酸濃度はかなり低下していた。高エコーの縁を持つ低エコーの結節の超音波所見は、空胞肝細胞を伴う崩壊した実質帯に囲まれた正常な肝組織の結節部分の病理所見と一致した。フェノバルビタール投与歴のある表皮壊死性皮膚炎と投与歴のないものの臨床、臨床病理、超音波、病理所見は同じだった。フェノバルビタール関連肝硬変、明白な肝不全は、フェノバルビタール投与歴を持つ表皮壊死性皮膚炎のイヌの特徴ではなかった。異なる病原メカニズムが、イヌの表皮壊死性皮膚炎を引き起こすと思われる。フェノバルビタールの慢性投与は、表皮壊死性皮膚炎発症のリスクファクターの可能性を持つものとして更なる検査が必要である。(Sato訳)
■トリロスタンによるAlopeciaXの治療
Treatment of canine Alopecia X with trilostane
Volume 15 Issue 5 Page 285 - October 2004
ROSARIO CERUNDOLO*, , DAVID H. LLOYD*, ANGELO PERSECHINO , HELEN EVANS and ANDRIA CAUVIN§

抄録
AlopeciaXの臨床症状、副腎皮質刺激ホルモン刺激後17-ヒドロキシプロゲステロンの血中濃度上昇、尿中コルチゾール/クレアチニン比増加を呈す16頭のポメラニアン、8頭のミニチュアプードルを3ベータ-ヒドロキシステロイドデヒドロゲナーゼ競合阻害剤トリロスタンで治療した。トリロスタンは1日1回か2回、平均投与量10.85mg/kg/dayで投与した。副腎機能をポメラニアンで28ヶ月、ミニチュアプードルで33ヶ月追跡評価した。4-8週間でポメラニアンの85%、ミニチュアプードル全頭が完全に再発毛した。トリロスタン投与に起因する副作用は認められなかった。皮毛の再発は、副腎ステロイドの下方制御および・または毛包レベルのエストロゲンレセプターの非競合的阻害の結果と思われる。(Sato訳)
■犬の限局性掻痒性皮膚炎における局所ティーツリーオイルの効果-獣医診療での複数施設無作為二十盲目対照臨床試験
Topical tea tree oil effective in canine localised pruritic dermatitis--a multi-centre randomised double-blind controlled clinical trial in the veterinary practice.
Dtsch Tierarztl Wochenschr 111[10]:408-14 2004 Oct
Reichling J, Fitzi J, Hellmann K, Wegener T, Bucher S, Saller R

揮発油ティーツリーオイルは、その広域抗細菌、抗真菌活性でよく知られている。犬の限局性急性、慢性皮膚炎の管理に対し、標準、安定化10%ティーツリーオイルクリームを、市販皮膚ケアクリーム(コントロールクリーム)と比較した。7人の臨床獣医師により、主に皮膚分離細菌、真菌陽性と確認された痒みを主徴とする皮膚病変、皮膚変調、皮膚ひだ膿皮症の臨床症状を持つ57頭を選択し、2つの研究群(28:29)に無作為に振り分け、1日2回盲目局所性剤を塗布した。10日後、ティーツリーオイルクリームの成功率は71%、コントロールは41%(獣医判定者により提出された総体評価)で有意差があり(p=0.04)、ティーツリーオイルクリームのほうが好ましかった。10日目、一般的な臨床皮膚症状の痒み(84%で発生)、脱毛に対し、ティーツリーオイルクリームはコントロールクリームよりも有意に早い軽減をもたらした(p=0.04)。有害事象がティーツリーオイル群の1頭に見られ(研究薬剤に関連した原因ではないと疑われる)、コントロールクリーム群には認められなかった。検査したハーブのクリームは、痒みを伴う犬の限局性皮膚炎の対症療法で、従来の治療に代わる速効性のある安全な薬剤である。(Sato訳)
■ネコでミクロスポーラム・キャニス抗原に対する即時、遅延型過敏反応の普及率
The Prevalence of Immediate and Delayed Type Hypersensitivity Reactions to Microsporum canis Antigens in Cats
J Feline Med Surg 5[3]:161-166 Jun'03 Prospective Study 5 Refs
* KA Moriello; DJ Deter; J Greek; K Kuhl; M Fintelman

ネコでミクロスポーラム・キャニスからの自発性回復は、有能な免疫反応の発現に依存していると思われる。この研究の目的は皮膚糸状菌症を持つ、または持たないネコで明確な遅延型過敏反応の普及率を判定することだった。ネコ4群にM・キャニス抽出物による皮内試験を行い、注射後0、24、48時間目の注射部位を主観的、客観的に評価した。皮膚糸状菌症に暴露されたことが無いネコ(n=20)で、遅延皮内試験反応は存在しなかった。感染-回復したネコ(n=38培養、病変陰性とn=43病変陰性、培養陽性)は、暴露されたことが無いネコや、今感染が活動的なネコ(n=18)よりも有意に大きな皮内反応を示した。この研究の結果をもとに、M・キャニス抽出物による皮内試験は皮膚糸状菌症のネコの細胞免疫反応の評価に使用できる。(Sato訳)
■足の石灰化を持つ5頭のネコの臨床病理学的所見
Clinicopathological Findings in Five Cats with Paw Calcification
J Feline Med Surg 5[1]:11-17 Feb'03 Retrospective Study 19 Refs
* W Bertazzolo; L Toscani; S Calcaterra; L, Crippa; M Caniatti; U Bonfanti

この回顧的研究は、趾間、パットの軟部組織石灰化を持つ5頭のネコの臨床病理学的所見を述べている。足の疾患は5頭の内3頭で獣医師に相談する理由となっていた。全てのネコは、腎不全と高い溶解度積(カルシウム×リン)を示唆する検査所見を示した。全頭で、足病変の細胞学的検査は石灰沈着症を示唆した。我々の研究結果は、過去に報告されたネコの足石灰化の2症例に一致するもので、転移性の病原や足の石灰化と腎不全の関連を示唆している。(Sato訳)
■類狼瘡爪ジストロフィーの治療に関する回顧的研究30頭のイヌと文献再検討
A Retrospective Study Regarding the Treatment of Lupoid Onychodystrophy in 30 Dogs and Literature Review
J Am Anim Hosp Assoc 39[2]:139-150 Mar-Apr'03 Retrospective Study 27 Refs
* Ralf S. Mueller, Dr.med.vet., DACVD; Rodney A.W. Rosychuk, DVM, DACVIM; Leonard D. Jonas, DVM, DACVIM

類狼瘡爪ジストロフィーは、特徴的な臨床そして組織病理学的所見を伴う比較的よく遭遇するイヌの爪の異常である。この症候群は複数の原因があると思われ、多数の治療様式が報告されている。この回顧的研究の目的は、組織、臨床検査、組織病理検査をもとに類狼瘡爪ジストロフィーと診断されたイヌ30頭の様々な治療オプションの効果を評価することだった。
それら30頭の中で、ミニチュアシュナウザー、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバーが良く見られた。全頭最初に提示された主訴は、四肢複数の爪に見られた爪脱落症、爪ジストロフィー、爪甲層状分裂だった。バイオプシーは、爪切除、または最近紹介されている爪切除しない爪バイオプシー法で行った。この研究で、30頭中12頭は、甲状腺機能低下症、アレルギー関連状態などの併発疾患を持っていたが、類狼瘡爪ジストロフィーとの関連は不明なままである。
脂肪酸添加(n=18)、ドキシサイクリンとニコチンアミド(n=12)、テトラサイクリンとニコチンアミド(n=10)、ペントキシフィリン(n=6)、プレドニゾロン(n=5)、アザチオプリン(n=1)、クロファジミン(n=1)、またはそれらの組み合わせで治療した。テトラ-またはドキシサイクリンとニコチンアミドの組み合わせの治療を行ったイヌのほぼ半数が、すばらしい反応を見せた。6頭のイヌは脂肪酸補給でうまく維持できた。治療終了後でも完全な寛解となるすばらしい反応をほぼ半数のイヌで見られた事は興味深い。
この研究結果をもとに、著者は類狼瘡爪ジストロフィーに、適切な抗生物質と病歴そして診断支持はあるならば食事制限試験での治療を推奨する。もし反応が悪ければ、それから8週間のテトラ-またはドキシサイクリンとニコチンアミドの投与が適切である。もし反応が不十分ならば、続いて8週間のペントキシフィリンまたは脂肪酸添加を行うべきである。無反応の疾患を持つイヌやオーナーが即座の結果を求めるようならば、グルココルチコイドのような免疫抑制剤の治療が選択されるだろう。(Sato訳)
■犬の非炎症性脱毛;何が新しくて、何が古い
Canine non-inflammatory alopecia: What's new and what's old
Jul 1, 2004
By: Dr.Carlo Vitale

犬における非炎症性脱毛は比較的一般的で、またとてもいらだたしい病態だと思う。自虐性と感染の原因と区別しなければならない。この文献が非炎症性脱毛を引き起こすいくつかの状況の詳細説明を手助けし、適切な診断とそして妥当な治療プロトコールに役立つことを望む。

我々は討議から甲状腺機能低下症と副腎皮質機能亢進症を除外する。なぜならこれら2つの内分泌症はかなり明白で、診断が難しくないからである。しかしクッシング病はかなり一般的な脱毛の原因(もしくは後で詳しく説明する毛刈り後脱毛)であるが、脱毛に関連した犬の甲状腺機能低下症はあまり一般的に見られないと述べておく。

虚血性皮膚症

これはいくつかのサブタイプを含む、かなりよく認識された皮膚病である。典型的で独創的に述べられる型は皮膚糸状菌症(DM)である。この疾患は遺伝学に基づき、免疫学的に仲介され、シェットランドシープドックとコリー種にほとんど独占的に見られる。伝播様式は様々な常染色体優勢で発現する。それは同腹子複数例において若齢で起こる。もしくは成犬発現タイプとして後に見られる。落屑、小疱(稀に見られる)、顔面、眼の周囲、耳介縁、骨の隆起、圧点部位、尾の先端のびらんそして潰瘍など、局所から全身脱毛が病変の一般的な部位である。多くの病変は深く、局所的な瘢痕は珍しくない。活動性疾患の部位における目に見える瘢痕も一般的である。筋肉関与は通常とても軽度で非臨床的である。しかし、特に仔犬では重症となる可能性があり、筋肉の萎縮、虚弱、巨大食道さえ伴うことがある。診断は皮膚病理学、筋電図と筋生検の結果に基づいてなされる。
治療はペントキシフィリン、ビタミンE、プレドニゾン、アザチオプリンもしくはシクロスポリンを含む。原因は不明であるが、ある研究者はワクチン接種が皮膚病変の発現に影響を与えていると考えている。

局所性狂犬病ワクチン誘発虚血性皮膚症は、ある小型犬種(テリア、ビションそしてプードル)で見られる。あまり一般的ではないが、私の診察ではいくつかの規則に従って発生する。ある程度色素過剰や落屑を伴う脱毛斑が、狂犬病ワクチン接種の1~6ヵ月後にワクチン注射の部位にみられる。
病変は瘢痕を残すもしくは残さないで消散するかもしれない、進行そして拡大するかもしれない、もしくは偽皮膚筋炎のように体全体に多病巣エリア(第3のサブタイプ)を包含して進行するかもしれない。診断は皮膚糸状菌症と下され、治療は皮膚糸状菌症として類似の薬物治療が含まれるかもしれない。もしくは(とても難しいかもしれないが)外科的除去がなされるかもしれず、 ワクチンの中止も包含することが出来る。

パターン脱毛

これは自然界で完全に美容を考慮した、かなり一般的な皮膚コンディションである。ウィペット、クレイハウンド、ダックスフンド、ボストンテリア、チャウチャウそして他の小型犬種で最もよく見られる。主に耳介前縁領域、頭部、頚腹部、胸部そして大腿尾部において早くも6ヶ月齢で被毛が薄くなり始める。特に老齢のダックスフンドですべての病変が融合するまで他の位置に広がり、見た目顕著に進行しうる。脱毛部位は色素過剰になるところもあり得る。診断は臨床症状そして/もしくは皮膚組織病理学の結果に基づく。推奨されている治療法はない。しかしメラトニンが多くの症例においていくらか効果を示している。(Dr.Kawano訳)
■イヌの落葉状天疱瘡の治療に関する結果と合併症:43症例(1994-2000)
Outcome and Complications Associated with Treatment of Pemphigus Foliaceus in Dogs: 43 Cases (1994-2000)
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1312-1316 Apr 15'04 Retrospective Study 30 Refs
Sheila M. Gomez, VMD; *Daniel O. Morris, DVM, DACVD; Michele R. Rosenbaum, VMD, DACVD; Michael H. Goldschmidt, BVMS, DACVP

目的:イヌの落葉状天疱瘡に関する予後、結果、合併症に影響する因子を確認する

構成:回顧的研究

動物:落葉状天疱瘡のイヌ43頭

方法:徴候、診断時の年齢、診断までの期間、罹患した体の部位、最初の免疫抑制方法と抗生物質、スクラルファート、H2ブロッカーとの併用、治療の副作用、治療の期間、継続治療の来院数、死亡原因、継続治療に対し信頼する獣医の信用

結果:致死率は60.5%だった。生存期間に有意に相関する因子は、免疫抑制剤投与開始中抗生物質の併用、治療の副作用の数が少ないことだった。治療期間は診断から10ヶ月以上持続し、生存に有意に関連した。

結論と臨床関連:
抗生物質の投与、または予防的使用は、最初の免疫抑制的治療中に根拠があると思われる。安楽死のオーナーの決断、そしてコルチコステロイド関連二次疾患に反映するため、生存期間と副作用の数に見られる負の相関が予測できないことはなかった。治療10ヶ月を超える生存は、長期生存と予測され、イヌは、治療の早い月の間に注意深い管理が必要であると示唆する。(Sato訳)
■ミクロスポーラム・キャニスの感染ネコに暴露後、M.キャニス感染の確立と経過に対するルフェヌロン治療の効果
Effects of Lufenuron Treatment in Cats on the Establishment and Course of Microsporum canis Infection Following Exposure to Infected Cats
J Am Vet Med Assoc 222[9]:1216-1220 May 1'03 Experimental Trial 14 Refs
Douglas J. DeBoer, DVM, DACVD; Karen A. Moriello, DVM, DACVD; Jenifer L. Blum, BS; Lynn M. Volk, BS

目的:ミクロスポーラム・キャニスの感染ネコに暴露後、M.キャニス感染の確立と経過に対するルフェヌロン治療の効果を判定すること

構成:実験研究

動物:24頭の健康な若い家ネコ短毛種
方法:8頭のネコにルフェヌロンPO(133mg/cat/月、研究の最初には100-130mg/kgで終わりには25-35mg/kgに相当)、8頭のネコにルフェヌロンSC(40mg、6ヶ月ごと)で投与した。残りの8頭は治療せずコントロールとした。4ヵ月後、実験的に軽度のM.キャニスに感染させたネコが住んでいるところにいっしょにさせることで暴露した。それらネコの感染の広がりを、身体検査と真菌培養で22週間モニターした。

結果:全てのルフェヌロン投与ネコとコントロールネコはM.キャニスに感染した。暴露後早い週で、ルフェヌロン治療ネコの感染スコアーは、コントロールと比較して有意に低く、感染の最初の進行期がより延長した。一度感染の強さがピークに達すると、ルフェヌロン投与ネコとコントロールネコ共に同じような期間をかけて改善した。

結論と臨床関連:結果は、この研究での使用投与量、状況下でネコへのルフェヌロン経口、または皮下投与が、感染ネコとの接触後皮膚糸状菌症の確立を防げなかったと示した。ルフェヌロン投与ネコの間では感染はより緩やかに確立されたが、一度確立すると、処置ネコとコントロールネコでおおよそ同じような時間をかけて感染が解消した。(Sato訳)
■犬の若年性フレグモーネに対するグリセオフルビンの効果
Efficacy of griseofulvin for juvenile cellulitis in dogs
Veterinary Dermatology;Volume 15 Issue s1 Page 26 - August 2004
K. Shibata and M. Nagata

若年性フレグモーネは通常子犬に見られ、下額リンパ節を巻き込む稀な特発性肉芽腫性そして膿庖性疾患である。通常、高用量のグルココルチコイドが治療の選択になる。グリセオフルビンは免疫調節機能も有する静真菌性抗生物質で、時折人の特発性炎症性皮膚疾患に用いられる。
この研究の目的は犬の若年性フレグモーネの治療においてグリセオフルビンの効果を観察することであった。若年性フレグモーネの6頭を観察した。診断は臨床兆候と標準的な診断手技の両方に基づいて下され、真菌疾患は慎重に除外した。これらの犬はいかなる他の治療を行わず、グリセオフルビン(14.2-34 mg/kg 経口投与, 1日2回)で治療した。臨床所見に基づき、グリセオフルビンの効果はexcellent (2週間以内で完全に消散), good (4週間以内で完全に消散), fair (4週間以上で完全に消散), そして poor (消散しない).として評価した。2症例はexcellentで、4症例はgoodであった。すべての症例は3週間以内に完全に消散した。いかなる犬において副作用は認めらなかった。この研究においてグリセオフルビンは犬の若年性フレグモーネの治療に効果的であると思われた。疫学は不明であるが、グリセオフルビンは病変において下行制御信号を誘発すると仮定される。さらなる観察がグリセオフルビンの臨床効果の理解に必要である。(Dr.Kawano訳)
■Alopecia Xの組織病理学
Histopathology of alopecia X
Veterinary Dermatology
Volume 15 Issue s1 Page 23 - August 2004
doi:10.1111/j.1365-3164.2004.411_11.x

内分泌症の犬は過剰な外毛根鞘性角化(炎状毛包:flame follocule)を伴う毛包があると報告されている。これらの毛包は臨床的に甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、低ソマトトロピン症、性ホルモン失調と診断された症例において記述がある。これらの毛包の発生率において品種による変差も記述がある。最近、内分泌性脱毛はより明確になり、これらの病気(以前は先天性副腎過形成、偽クッシング病、去勢反応性皮膚症、成犬の低ソマトトロピン症として知られていた)のいくつかは、現在Alopecia Xという名前で分類されている。この前向き研究において、24頭のスピッツ系の犬のグループ(15頭のポメラニアンを含む)において、広範囲にホルモンの精密検査を行った。それには甲状腺そして副腎皮質刺激ホルモン刺激試験、性ホルモン測定が含まれた。脱毛部および臨床的に正常な皮膚より採取した皮膚検体の組織病理は、毛包表面や漏斗部の角化そしてコメド形成などの多くの内分泌症で一般的な特徴を示していた。しかし炎状毛包形成を伴う退化は22頭からの皮膚検体の顕著な兆候であった。この兆候はこれらの検体の20頭で著しく、盲目方法で検体を評価すればそれはalopecia Xの診断と考えられた。他の2検体は副腎皮質機能亢進症と確実に区別することができなかった。組織病理学は犬のalopecia Xの診断を支持するのに有益な診断手順である。(Dr.Kawano訳)
■グラム陽性球菌と顕著な好酸球浸潤を伴うネコの膿瘍形成炎症性肉芽組織:メチシリン抵抗性スタフィロコッカスの起こりうる感染
Abscess-Forming Inflammatory Granulation Tissue with Gram-Positive Cocci and Prominent Eosinophil Infiltration in Cats: Possible Infection of Methicillin-resistant Staphylococcus.
Vet Pathol 40[3]:283-7 2003 May
Ozaki K, Yamagami T, Nomura K, Haritani M, Tsutsumi Y, Narama I

我々は時々、病理組織学的に膿瘍、または好酸球の浸潤を伴う炎症性肉が組織と診断された、ネコの頚部または腸間膜病変に遭遇する。その病変にはグラム陽性球菌を伴う。
この研究で、27頭のネコから入手したそのような病変を用い、組織病理学的特性と原因となりえる細菌の性質を評価するため検査した。平均年齢は7.3±3.5歳だった。性別の偏りはなかった。病変の良く見られた部位は、腸間膜リンパ節を含む/含まない腹腔(11/27、41%)、皮下組織、または頚部リンパ節(9/27、33%)だった。一般的な臨床徴候は局部のmassだった。
肉眼的に病変の中央は膿瘍となっており、繊維組織により取り囲まれている。顕微鏡的に壊死部は細菌コロニーを含有した。多数の好酸球とマクロファージが壊死組織の周囲に浸潤していた。周囲の結合組織の豊富な肉芽組織は、好酸球性膿瘍と境界がはっきりしていた。27頭中23頭の細菌はグラム陽性球菌で、そのうち19頭は抗スタフィロコッカス抗血清に陽性を示した。17病変のうち15で、そのコロニーはペニシリン結合タンパク2’に対する免疫反応が明らかで、そのタンパクはメチシリン耐性スタフィロコッカス(MRS)種の薬剤抵抗遺伝子産物である。それらの所見は、この種のMRSが感染病変の原因であると強く示唆する。(Sato訳)
■サイクロスポリンA:イヌの皮膚科学分野での新薬
Cyclosporin A: A New Drug in the Field of Canine Dermatology
Vet Dermatol 15[2]:61-74 Apr'04 Review Article 117 Refs
Eric Guaguere, Jean Steffan and Thierry Olivry

過去数年で、イヌの皮膚疾患の治療でサイクロスポリンの使用に対する関心が増えてきている。シクロスポリンは、活性化Tリンパ球のサイトカイン遺伝子転写をブロックする能力を反映した、有力な免疫調節特性を示す。また、肥満細胞、ランゲルハンス細胞、好酸球やケラチン生成細胞の活性化後に起こる多くの免疫アレルギー反応を抑制する。無作為コントロール試験で、サイクロスポリン5mg/kgは、イヌアトピー性皮膚炎の治療でグルココルチコイドと同等の効果を証明されている。またこの薬剤は、イヌの肛門周囲瘻の治療に対する効果も証明済みである。他考えられる応用は、種々の免疫介在性皮膚疾患に罹患したイヌを使用した小規模予備オープン試験で提唱される。サイクロスポリンの薬物動力学的特質は、イヌとヒトで非常に似ているが、イヌの安全マージンはかなり広い。ゆえに、規則的なサイクロスポリン血液濃度のモニタリングは必要ないと思われる。ヒトで腎臓障害と高血圧は、低用量でも見られるが、それらの副作用は犬では見られない。投与初日に、一時的な嘔吐や下痢からなる副作用が発生する。歯肉過形成やいぼ状病変、多毛症のような他の副反応は、用量依存的に現れ、まれに治療投与量で起こる。感染に対する感受性の増加は、この薬剤使用犬で報告されていない。(Sato訳)
■脱毛症のイヌの性ホルモンとステロイドホルモン中間物の回顧的評価
Retrospective Evaluation of Sex Hormones and Steroid Hormone Intermediates in Dogs with Alopecia
Vet Dermatol 14[2]:91-97 Apr'03 Retrospective Study 29 Refs
Linda A. Frank, Keith A. Hnilica, Barton W. Rohrbach and Jack W. Oliver

この研究の目的は、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症を除いて、イヌの内分泌脱毛症の疑いに関し、特定ステロイドホルモンが存在するかどうかを判定することである。脱毛症のイヌから7.5年以上にわたりUTCVM内分泌研究所に提出されたステロイドホルモンパネルを再検討した。この期間中、276頭のイヌが算入の基準を満たし、54の異なる犬種で比較した。約73%のイヌは、少なくとも1つの基準、またはACTH刺激後ステロイドホルモン中間物が正常範囲以上だった。
一番良くホルモンが上昇していたのは、プロゲステロンだった(サンプルの57.6%)。正常犬と比較したとき、キースホンド犬でエストラジオールが有意に上昇し、ポメラニアンやシベリアンハスキーで、プロゲステロンが有意に上昇していた。個々のイヌ全てがホルモン異常を呈していたわけではなかった。この研究のイヌの中で、チャウチャウ、サモエド、マラミュート犬は正常なステロイドホルモン中間物の最大比率を呈した。基準コルチゾール濃度は、プロゲステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン(17-OHP)、アルドステロンに有意に相関していた。この研究の結果は、少なくとも数犬種の脱毛に対する病因メカニズムが、ステロイドホルモン中間物に関連しないかも知れず、犬種特定正常犬の必要性を強調するものだと示唆する。(Sato訳)
■感染ネコに暴露後、ミクロスポーラム・キャニス感染の確立と経過に対するネコのルフェヌロン治療の効果
Effects of Lufenuron Treatment in Cats on the Establishment and Course of Microsporum canis Infection Following Exposure to Infected Cats
J Am Vet Med Assoc 222[9]:1216-1220 May 1'03 Experimental Trial 14 Refs
Douglas J. DeBoer, DVM, DACVD; Karen A. Moriello, DVM, DACVD; Jenifer L. Blum, BS; Lynn M. Volk, BS

目的:感染ネコからの暴露後、ネコのイヌ小胞子菌感染確立と経過に対するルフェヌロン治療の効果を判定すること

構成:実験研究

動物:24頭の健康で幼い家ネコ短毛種

手順:8頭のネコにはルフェヌロンPO投与(研究開始時100-130mg/kgに相当する133mg/cat/月、研究終了時は25-35mg/kg)、8頭のネコにはルフェヌロンSC投与(6ヵ月毎40mg)した。残りの8頭は治療せずコントロールとした。4ヵ月後、実験的に軽度M canis感染を起こしたネコの住む部屋に、導入することで暴露させた。それらのネコに起こった感染の程度を、身体検査と真菌培養で22週間モニターした。

結果:ルフェヌロン治療、コントロールネコ全頭M canis感染を起こした。ルフェヌロン治療ネコは、暴露後の早期の週にはコントロールネコと比べて有意に感染スコアーが低く、感染の最初の進行期がより延長した。一度感染がピークに達すると、ルフェヌロン治療、コントロールネコ共に同様の期間をかけて解消した。

結論と臨床関連:結果は、ネコへのルフェヌロン経口または皮下投与が、この研究の状況下で使用した投与量で、感染ネコとの接触後皮膚糸状菌症の感染確立を防げないと示唆した。感染はルフェヌロン投与ネコでより遅く成り立ったが、一旦確立するとコントロールネコとほぼ同じ様な時間経過でルフェヌロン治療ネコも解消した。(Sato訳)
■イヌ30頭のルポイド爪ジストロフィーの治療に関する回顧的研究と文献再検討
A Retrospective Study Regarding the Treatment of Lupoid Onychodystrophy in 30 Dogs and Literature Review
J Am Anim Hosp Assoc 39[2]:139-150 Mar-Apr'03 Retrospective Study 27 Refs
Ralf S. Mueller, Dr.med.vet., DACVD; Rodney A.W. Rosychuk, DVM, DACVIM; Leonard D. Jonas, DVM, DACVIM

ルポイド爪ジストロフィーは比較的よく遭遇する、独特な臨床、組織病理学的所見を伴うイヌの鉤爪の異常である。この症候群は複数の病因があると思われ、多くの治療様式が報告されている。この回顧的研究の目的は、病歴、臨床検査、組織病理学検査をもとにルポイド爪ジストロフィーと診断されたイヌ30頭で、様々な治療オプションの効果を評価することだった。
それら30頭の中で、ミニチュアシュナウザー、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバーが多く見られた。全てのイヌで最初の主訴は、四肢複数の爪に見られた爪真菌症、爪ジストロフィー、爪甲層状分裂症だった。爪切除、または最近述べられている爪切除以外の爪バイオプシー方法で、生検標本を採取した。この研究で30頭中12頭に、甲状腺機能低下症やアレルギー関連疾患などの併発疾患が認められたが、それらと本疾患の関連は依然不明である。
脂肪酸添加(n=18)、ドキシサイクリンとニコチンアミド(n=12)、テトラサイクリンとニコチンアミド(n=10)、ペントキシフィリン(n=6)、プレドニゾロン(n=5)、アザチオプリン(n=1)、クロファジミン(n=1)、またはそれらの組み合わせで治療した。テトラ-またはドキシサイクリンとニコチンアミドの組み合わせで治療した犬のほぼ半数は、良好な反応が見られた。6頭のイヌは脂肪酸の添加で良好に維持していた。興味深い事は、良好な反応を示したイヌのほぼ半数が、治療を中止した後でさえも完全寛解を維持した
この研究の結果に基づき、もし病歴そして診断的指標があるならば、食物除去トライアルおよび/または適切な抗菌剤でルポイド爪ジストロフィーのイヌを治療する事を薦める。反応が悪ければ、それから8週間のテトラ‐またはドキシサイクリンとニコチンアミドのトライアルが望まれる。不十分な反応しかなければ、8週間のペントキシフィリンまたは脂肪酸の添加を続けるべきである。反応がないイヌ、またはオーナーが即時の結果を求めるようならば、グルココルチコイドのような免疫抑制剤による治療が選択されるだろう。(Sato訳)
■グレイハウンドの大腿部脱毛症候群:肉眼的および顕微鏡的所見
Bald Thigh Syndrome of Greyhound Dogs: Gross and Microscopic Findings
Vet Dermatol 11[1]:49-51 Mar'00 Short Communication 6 Refs
Polly R. Schoning & Laine A. Cowan

大腿部脱毛症候群(BTS)は、グレイハウンドに限られた疾患です。臨床的、肉眼的に、
大腿部側面と尾側における、左右対称の被毛欠損が特徴です。BTSの原因は明らかでありませんが、甲状腺機能低下症や、副腎皮質機能亢進症と関連するかもしれません。BTSを持った43頭のグレイハウンドから、皮膚、甲状腺、副腎の標本を作製し、顕微鏡的に検査しました。顕微鏡的変化は、毛包漏斗管の拡張、休止期毛包と表皮過形成の存在を特徴としました。これらのグレイハウンドからの皮膚における変化は、原因に内分泌障害を示唆します。;しかし、我々は、確証することが出来ませんでした。(Dr.K訳)
■感染犬猫の家庭で、環境中ミクロスポーラム・キャニス分節胞子の検出
Environmental Detection of Microsporum canis Arthrospores in the Households of Infected Cats and Dogs
J Feline Med Surg 5[6]:323-328 Dec'03 Prospective Study 14 Refs
F Mancianti, S Nardoni, M Corazza, P D'Achille, C Ponticelli

ミクロスポーラム・キャニスは、イヌネコのリングワーム症例から頻繁に回収される皮膚糸状菌である。家庭環境は、症状を持つ動物や、M canisの無症候性キャリアーにより汚染される可能性があり、ヒトにリスクを及ぼす可能性を持つ。動物vs.環境の伝染性を評価するため、M canis分節胞子に量を感染ペットのいる家庭で判定した。M canisに感染した症状を持つ30頭の動物(21頭のネコと9頭のイヌ)の住む環境を、表面と屋内の空気をサンプリングすることで検査した。表面は接触プレートで検査し、空気は、Sas super-100 AIR SAMPLER(PBI, Italy)により行った。
猫全頭の家庭で、環境汚染が検出されたが、イヌでは、4頭の家庭しか陽性を示さなかった。各サンプリングで分離頻度、そして異なる家のプレートごとのコロニー形成に関する結果は、まったく同種のものだった。かなり感染がひどかったのは子猫のいる環境だった。8頭の家庭でオーナーの感染が認められ、少なくとも感染猫を1頭飼育していた。イヌを飼育している家庭で、ヒトの皮膚糸状菌症は聞かれなかった。この結果を基に、感染猫はかなりの環境汚染を起こすことが分かり、その環境には、生存浮遊真菌要素がかなり存在する。M canisを撒き散らすイヌの重要性は低いと思われる。それらは表面を汚染するが、空気を決して汚染しなかった。この研究の結果は、M canisを撒き散らすネコの役割の可能性を確認するものである。(Sato訳)
■犬における、円板状エリテマトーデスと紅斑性天疱瘡の治療に関する局所0.1%タクロリムス
Topical 0.1% tacrolimus for the treatment of discoid lupus erythematosus and pemphigus erythematosus in dogs.
J Am Anim Hosp Assoc 40[1]:29-41 2004 Jan-Feb
Griffies JD, Mendelsohn CL, Rosenkrantz WS, Muse R, Boord MJ, Griffin CE

円板状エリテマトーデス(DLE)の10症例と、紅斑性天疱瘡(PE)の2症例に関連した限局性病変の治療として、局所0.1%タクロリムスを、単独療法(n=2)、あるいは補助療法(n=10)のいずれかで使用しました。DLEの10頭中8頭とPEの2頭は、局所適用後8週で改善しました。8頭中6頭においては、他の薬物治療を中止しての改善でした。研究中、臨床的、あるいは検査的パラメータにおいて、いかなる副作用も認めませんでした。(Dr.K訳)
■猫の落葉状天疱瘡:57症例の回顧的解析
Feline Pemphigus Foliaceus: A Retrospective Analysis of 57 Cases
Vet Dermatol 14[6]:313-321 Dec'03 Retrospective Study 17 Refs
Diane E. Preziosi, Michael H. Goldschmidt, Jean S. Greek, Jim G. Jeffers, Kevin S. Shanley, Kenneth Drobatz and Elizabeth A. Mauldin

1991-2002年の間にペンシルベニア大学、獣医病理毒性学教室に獣医皮膚科専門医により提出されたバイオプシー標本から、57症例が猫落葉状天疱瘡と診断されました。発症年齢は、1歳未満から17歳(中央値5歳)までの範囲に及びました。猫の80%が掻痒徴候を持つと報告されていました。バイオプシーの時、病変分布はさまざまでしたが、顔面/頭部、足、背部あるいは腹部のいくつかに混在し、そして痂皮、糜爛、鱗屑および脱毛を呈していました。208のバイオプシー標本に関する組織学的所見を、追跡調査を含めて再調査しました。
棘融解細胞が、殆どの症例における、完全あるいは変性膿疱の両者に、大多数認められました。肥満細胞は、これまで報告された部位よりも、真皮の浸潤巣に、より頻繁に認められました。17症例はバイオプシー時点で、コルチコステロイドを投与されており、症例あたりの診断的バイオプシーの割合を減じておりました。44症例は、1-54ヵ月間(中央値9ヵ月間)、追跡調査を行いました。トリアムシノロンは、プレドニゾン、あるいはプレドニゾンとクロラムブシルの併用よりも、重要な副作用なく、寬解を導くことに成功しました。44頭中4頭だけが、疾患、または研究中の治療のために亡くなりました。(Dr.K訳)
■食物有害反応を示すネコで、2つの市販低アレルギー食の二重盲目試験
Double-Blind Evaluation of Two Commercial Hypoallergenic Diets in Cats with Adverse Food Reactions
J Feline Med Surg 4[4]:185-188 Dec'02 Double-Blind Study 15 Refs
M Leistra, T Willemse

この研究の目的は、食物有害反応の皮膚病変を持つネコで、維持食として2つの市販入手可能なタンパク源制限食を評価することである。食物有害反応を確認した20頭のネコを、二重盲目法で研究した。食物有害反応は、家庭調理制限食で回復後、以前の食事成分に戻したら症状がぶり返し、再び制限食を与えて症状が消失した時点で診断した。この後、ネコに2つの市販低アレルギー食を盲目、無作為に給餌した。ラム&ライス食を与えたとき、8頭(40%)のネコで症状の再発が見られ、チキン&ライス食を与えたとき13頭(65%)のネコにの再発が見られた(P>0.05)。
市販食の1つは、家庭調理制限食ほど皮膚病変の管理に効果的ではなかった。この研究は、市販低アレルギー食が維持に適切であるということを確認する。(Sato訳)
■3頭のワイマラナーに見られた無菌性結節性皮下脂肪組織炎と汎脂肪織炎
Sterile nodular panniculitis and pansteatitis in three weimaraners.
J Small Anim Pract 44[10]:449-55 2003 Oct
German AJ, Foster AP, Holden D, Hotston Moore A, Day MJ, Hall EJ

発熱、複数の皮下結節を伴う血縁のない3頭のワイマラナーの臨床、病理学的所見を報告する。2頭のイヌの追加特徴として腹部痛があり、臨床調査で、皮下、腸間膜、鎌状脂肪の炎症が明らかとなった。組織病理学的所見は、汎脂肪織炎と一致した。3番目のイヌで、見たところ病変は皮下組織に限られており、よって結節性皮下脂肪織炎の診断がなされた。組織の微生物学的検査は全ての犬で陰性で、膵臓疾患の所見もなかった。このようにこの報告は、ワイマラナーの、無菌と思われる、特発性皮下脂肪織炎/汎脂肪織炎複合を述べている。病因は不明だが、これは免疫介在疾患を表していると思われる。(Sato訳)
■長い体の毛包虫種による毛包虫症の8症例
Eight Cases of Demodicosis Caused by a Long-Bodied Demodex species (1997-2002)
Aust Vet Pract 33[2]:64-74 Jun'03 Clinical Study 15 Refs
* D.C. Robson, G.G. Burton, R. Bassett, M. Shipstone, R. Mueller

5年間で、動物皮膚アレルギーサービスに訪れたイヌの医療記録の回顧的再検討を、皮膚スクレーピング単独で無名の長い体の毛包虫種による毛包虫症の症例を確認するために行った。それらの犬種の偏り、疾患や薬物関連、臨床症状と治療反応について評価した。8頭のイヌが選択基準を満たした。それら症例の評価は、この毛包虫症がデモデックス・キャニス毛包虫症と臨床的に異なることを示唆した。たびたび深部皮膚掻爬で小数のダニが見られ、多くは成犬(診断時平均年齢6.1歳)のテリアで、その中でもウエストハイランドホワイトテリアが多く、他の皮膚疾患に関連して出現し、過去に免疫抑制、または免疫調整薬剤の使用があった。臨床症状で一致したものは、背側体幹が油っぽいことだった。全症例、毎週のアミトラズ薬浴、または毎日のイベルメクチン300-600μg/kg投与に反応し、治療が完了した。(Sato訳)
■イヌの全身性カンジダ症
Systemic Candidiasis in a Dog
J Am Vet Med Assoc 223[6]:821-824 Sep 15'03 Case Report 35 Refs
* Johanna C. Heseltine, DVM; David L. Panciera, DVM, MS, DACVIM; Geoffrey K. Saunders, DVM, MS, DACVP

カンジダ・アルビキャンスは、ヒトの院内感染の一般的な原因菌であるが、イヌの全身性カンジダ症の報告はほとんどない。この報告は、11歳避妊済みの全身性カンジダ症のスコティッシュテリアを述べる。死後に採取した組織の組織学的検査、尿、静脈カテーテルからの標本の微生物培養結果をもとに診断した。全身性カンジダ症のこの報告のイヌの素因は、真性糖尿病、コルチコステロイドと広域スペクトラム抗菌剤投与、静脈と尿カテーテル留置、非経口栄養剤の投与だった。カンジダ種感染の素因リスクがあるイヌで、発熱や白血球増加の発現は、それらに使用している尿や静脈カテーテルからの標本の微生物培養を行い評価する正当な理由となる。(Sato訳)
■四肢カルシウム沈着症を持つ5頭の猫における、臨床病理学的所見
Clinicopathological Findings in Five Cats with Paw Calcification J Feline Med Surg 5[1]:11-17 Feb'03 Retrospective Study 19 Refs
* W Bertazzolo; L Toscani; S Calcaterra; L, Crippa; M Caniatti; U Bonfanti

この回顧的研究は、趾間とパッドの軟部組織石灰化となった5頭の猫における、臨床病理的所見について述べております。5頭のうち3頭は、獣医師からの相談でした。全ての猫は、腎不全で、高い溶解積(カルシウムXリン)を示唆する検査所見でした。全ての症例において、足病変の細胞学的検査は、石灰沈着症を示唆しました。我々の研究結果は、以前報告された猫における足のカルシウム沈着に関する、2つの症例報告と一致し、転移性病因論と、腎不全と足の石灰化の相関を示唆しております。(Dr.K訳)
■痒みのあるイヌで、臨床症状、血漿脂肪酸、炎症介在物質に対する、n-3脂肪酸の割合や投与量の影響
Effect of n-3 Fatty Acid Ratio and Dose on Clinical Manifestations, Plasma Fatty Acids and Inflammatory Mediators in Dogs with Pruritus
Vet Dermatol 14[2]:67-74 Apr'03 Clinical Trial 32 Refs
Gene H. Nesbitt, Lisa M. Freeman and Steven S. Hannah

よく痒みの管理にn-3脂肪酸の使用が推奨される。この研究の目的は、痒みを呈すイヌの血漿脂肪酸、臨床反応、炎症性介在物質に対し、異なるn-6:n-3比で様々なn-3脂肪酸投与量が、どのように影響するのかを調査することだった。基準値測定後、イヌにランダムに総n-3、n-6脂肪酸量、n-6:n-3比を変えた食餌を給餌した。総体的な臨床スコアーは、8週間後4群全てで有意に低下し、群間の有意差は見られなかった。血漿脂肪酸は一般に試験食の脂肪酸含有量に反映して変化したが、その変化は、n-3脂肪酸の投与量とn-6:n-3比両方に依存し現れた。この脂肪酸の食餌摂取量を制限する臨床試験で、n-3脂肪酸の添加は、完全な臨床管理の臨床症状に対し付加的な効果を持つことはなかった。(Sato訳)
■マイクロエマルジョン シクロスポリンAで治療した、3頭の犬における乾癬-苔癬様皮膚疾患
Psoriasiform-Lichenoid-Like Dermatosis in Three Dogs Treated with Microemulsified Cyclosporine A
J Am Vet Med Assoc 223[7]:1013-1016 Oct 1'03 Case Report 12 Refs
Alexander H. Werner, VMD, DACVD

シクロスポリンは、犬における、さまざまな自己免疫性疾患の治療として、有効であると報告されております。副作用は一般に、消化管障害と皮疹に限られております。論文では、さまざまな皮膚科学的状態のために、マイクロエマルジョンシクロスポリンAで治療している、抗菌薬反応性皮膚反応の3頭の犬について、記述しております。これらの犬における、皮膚反応は、乾癬-苔癬皮膚疾患に似ており、非定型ブドウ球菌感染であると思われました。(Dr.K訳)
■インビトロでミコナゾールとクロルヘキシジンによるミクロスポーラム・キャニスの成長相乗抑制
Synergistic Inhibition of the Growth In Vitro of Microsporum canis by Miconazole and Chlorhexidine
Vet Dermatol 14[2]:99-102 Apr'03 Short Communication 17 Refs
N. Perrins and R. Bond *

寒天希釈法で、ミクロスポーラム・キャニスの10分離菌に対する、ミコナゾールとクロルヘキシジン1:1の薬剤組み合わせの最小阻止濃度(MIC)を評価した。分離菌10のうち9で、ミコナゾールとクロルヘキシジンの組み合わせはそれら単剤よりも効果的だった。分画抑制濃度指数は、5つで相乗効果、4つで相加効果を示した。それらの結果は、M.キャニスに対するミコナゾールとクロルヘキシジンの強い抗真菌作用を示し、M.キャニスにより起こるネコの皮膚糸状菌症の治療で、経口グリセオフルビンとミコナゾール、クロルヘキシジンシャンプーの有効性を示した過去の臨床研究と一致する。(Sato訳)
■イヌのアミトラズ中毒の治療でヨヒンビンとアチパメゾールの効果の比較
The comparative efficacy of yohimbine and atipamezole to treat amitraz intoxication in dogs.
Vet Hum Toxicol 45[3]:124-7 2003 Jun
Andrade SF, Sakate M

この研究は、犬アミトラズ中毒の治療でヨヒンビンと新しいアルファ2アドレナリン拮抗剤アチパメゾールの効果を比較した。30頭の犬を3群に均等に振り分けた(A,AY,AA)。A群は1mg/kgで2.5%アミトラズのiv投与を受け、AY群は同量のアミトラズ投与後30分に0.1mg/kg(2mg/ml)のヨヒンビンをiv投与し、AA群は同量のアミトラズ投与後30分に0.2mg/kg(5mg/ml)アチパメゾールiv投与した。体温、心拍数、呼吸頻度、平均動脈圧、鎮静程度、鎮静の平均時間、同行の直径を60分モニターした。鎮静、反射の喪失、低体温、徐脈、低血圧、徐呼吸、散瞳がA群で見られ、第3眼瞼の脱出、利尿の増加、嘔吐の見られた犬もいた。アミトラズによる全ての変化をヨヒンビンは解消したが、頻脈、頻呼吸のような重要な心臓呼吸への影響も引き起こした。アチパメゾールはアミトラズに有効な拮抗剤で、心臓呼吸への影響は少なく、イヌのアミトラズ中毒の代替治療として可能性を持つと思われる。(Sato訳)
■ラブラドールレトリバーの遺伝性鼻の不全角化
Hereditary Nasal Parakeratosis in Labrador Retrievers
Vet Dermatol 14[2]:103-110 Apr'03 Case Report 14 Refs
* Nadia Page, Manon Paradise, Jean-Martin LaPointe and Robert W. Dunstan

14頭のラブラドールレトリバーと4頭のラブラドールレトリバーの雑種で遺伝性の鼻部皮膚炎が報告された。これは新規に述べられる遺伝性疾患と思われ、遺伝の常染色体劣性形式を疑うものだった。その病変は最初6-12ヶ月齢で認められた。組織病理学的検査で、不全角化角質増殖が認められ、角質層と表層棘層内ケラチン生成細胞間のタンパク性液体の多病巣性蓄積がしばしば見られた。表層真皮内に下層リンパプラズマ細胞浸潤もあった。IgG(n=4)、ジステンパーとパピローマウイルス(n=4)の免疫組織化学染色、血清抗核抗体検査(n=4)、真菌培養(n=7)は陰性だった。電子顕微鏡で、角化過程の変化が認められ、それは核クロマチンの保持、層状体の欠如、顕著な細胞間の水腫だった。経口ジンクメチオニン(n=3)、セファレキシン(n=4)、ビタミンAアルコール(n=1)、局所トレチオニン(n=1)に反応しなかった。局所ビタミンE(n=2)、ワセリン(n=2)、プロピレングリコール(n=5)で病変は改善した。(Sato訳)
■慢性皮膚炎の犬の皮膚におけるマラセチア・pachydermatisで、2つのサンプル採取方法の比較
Comparison of Two Sampling Techniques for the Detection of Malassezia pachydermatis on the Skin of Dogs with Chronic Dermatitis.
Vet J 165[2]:119-24 2003 Mar
Omodo-Eluk AJ, Baker KP, Fuller H

セロテープ法とドライスワブ法を、慢性皮膚炎の犬の皮膚におけるマラセチアpachydermatis検出に関し比較した。各方法で104頭の犬のサンプルを採取した。培養法と染色法の2つの方法をサンプル方法の評価に使用した。
セロテープ法でのサンプルで、培養法では83頭(80%)、染色法では45頭(43%)の犬にM. pachydermatisが検出された。
ドライスワブ法でのサンプルで、培養法では55頭(53%)、染色法では33頭(32%)の犬にM. pachydermatis
が検出された。
この研究ではセロテープ法でサンプリングし、培養法を使用すると、同方法で染色法を用いた時やドライスワブ法で、培養、または染色法を用いた時よりも、有意に多くの犬の皮膚にマラセチアを検出できる(P<0.001)事を示した。セロテープ法は、染色のスライドを作るときの転移細胞やマラセチアの培養に使用する前の顕微鏡検査にも使用できることが分かった。(Sato訳)
■犬の全身性毛包虫症に対するルフェヌロンの使用
Use Of Lufenuron For Treatment Of Generalized Demodicosis In Dogs
Vet Dermatol 8[1]:11-17 Mar'97 Clinical Study 33 Refs
Marcia Schwassmann; Gail A. Kunkle; Douglas I. Hepler and Diane T. Lewis
犬の全身性毛包虫症の治療に対するルフェヌロンの効果を調査した。全身性毛包虫症の犬11頭に、低用量ルフェヌロン(毎月最初の5日間平均13.3mg/kg1日1回)または高用量ルフェヌロン(平均15.8mg/kg週3回)を経口的に2,3ヶ月投与した。毎月の深い皮膚掻爬検査で、ダニの数が減少した犬はいなかった。ルフェヌロンの経口投与による皮膚(表皮と真皮)の濃度を判定するため、3頭の成犬に5日間ルフェヌロン平均19.3mg/kg1日1回の経口投与を行った。薬剤投与後、0、1、6、16、30、44、60日目に皮膚と血液サンプルを採取しルフェヌロンを測定した。ルフェヌロンの平均皮膚濃度は、一致する血液濃度の10倍だった。ルフェヌロンは、皮膚の薬剤濃度が高く維持されているにもかかわらず、全身性毛包虫症の犬の治療としての効果はない。(Sato訳)
■犬猫の真菌感染の治療としてルフェヌロンの使用:297症例(1997-1999)
Use of Lufenuron for Treating Fungal Infection of Dogs and Cats: 297 Cases (1997-1999)
J Am Vet Med Assoc 217[10]:1510-1513 Nov 15'00 Retrospective Study 12 Refs
Yair Ben-Ziony, DVM & Boaz Arzi, BS

目的:犬猫の皮膚真菌感染の治療としてルフェヌロンの使用を評価する

構成:回顧的研究

動物:皮膚糸状菌症または表在性皮膚真菌症の犬156頭と猫201頭

方法:皮膚糸状菌症と他の真菌感染をルフェヌロン投与で治療している犬猫、そして治療せずコントロールとした18頭の犬と42頭の猫の医療記録を再検討した。

結果:犬は投与量の範囲54.2-68.3mg/kgで、ルフェヌロンの錠剤を経口的に1度投与して治療した。皮膚糸状菌症の14頭の犬から毎日皮膚、掻爬物、皮毛のサンプルを採取した。治療開始から真菌培養が陰性になるまでと肉眼的病変の改善するまでの平均期間はそれぞれ14.5日と20.75日だった。治療犬全頭、肉眼的病変の改善は約21日以内に見られた。
猫は投与量の範囲51.2-266mg/kgで、ルフェヌロン液を経口的に1度投与して治療した。23頭の猫から毎日サンプルを採取した。治療開始から真菌培養が陰性になり、肉眼的病変が改善するまでの平均期間は、それぞれ8.3日と12日だった。コントロールとして治療を行わなかったほとんどの犬の病変改善期間は約90日だった。治療の副作用は見られなかった。

結論と臨床関連:この研究の結果は、犬猫の真菌感染の治療としてルフェヌロンの投与は効果があり、便利で即効性があるといえる。(Sato訳)
■回顧的研究:ネコ皮膚バイオプシーにおけるMalassezia の存在.臨床病理学的研究
Mauldin EA, Morris DO, Goldschmidt MH.
Vet Dermatol 2002 Feb;13(1):7-13
Retrospective study: the presence of Malassezia in feline skin biopsies. A clinicopathological study.

Malassezia spp.皮膚炎はネコにおけるまれな疾患であり、以前からの免疫抑制と体内の悪性腫瘍に関係している。この研究は、組織病理学的試験のために行った、ネコのバイオプシー標本におけるMalassezia spp.の存在と重要性を評価する。1999年1月から2000年11月の間に、組織病理学的試験のため実施した550のヘマトキシリンエオジン染色皮膚バイオプシー標本を回顧した。15(2.7%)の表皮角質層、もしくは漏斗毛胞にMalassezia 菌体が含まれていた。多病巣性から全身性の皮膚障害の急性発症が、15のネコの11頭に存在した。11頭のネコ全ては臨床兆候発症の2ヶ月以内に安楽死または死亡した。7頭のネコは腫瘍随伴脱毛を支持する皮膚病理学的変化と臨床徴候を有し、3頭のネコは多形紅斑または胸腺腫関連皮膚炎を思わせる中間型の皮膚炎を認めた。重度なかゆみと脱毛発症後2週間で安楽死された1頭のネコでは、組織病理学的変化は非特異的であった。3頭のネコでは、局所(2頭は顎、1頭は足のパット)にMalassezia spp.がみられたが、それらは概して健康状態に重要でないようにみえた。1頭のネコでは皮膚ニキビダニ症に関連してMalassezia spp.がみられた。これらの結果は、多病巣性または全身性障害からの皮膚病理学的標本におけるMalassezia酵母は、内部腫瘍に対する臨床的精査をすぐに行うべきである、と示唆する。(Dr.Yoshi訳)
■犬猫の毛包虫症の治療としてドラメクチンの使用
Doramectin as a Treatment for Canine and Feline Demodicosis
Aust Vet Pract 32[3]:98-103 Sep'02 Clinical Study 22 Refs
I.P. Johnstone

全身性ニキビダニ症の犬23頭と猫3頭に、ドラメクチン600μg/kgの皮下注射を毎週行った。全頭寛解に向けた治療反応を示した。皮膚掻爬試験陰性になるまでの中央値は8週間(5-20週の範囲)だった。10頭は初期治療後寛解を維持したが、5頭は追跡調査できず、7頭は2度目の治療を必要とするか、毎月の注射で寛解を維持した。猫の場合、皮膚掻爬結果が陰性になるまで2,3週間かかり、1頭は4年後も寛解を維持している。他の2頭は、寛解に向けた4ヶ月と6ヶ月に基礎疾患のため安楽死された。毎週のドラメクチン皮下注射は、犬猫の全身性毛包虫症の治療に有効である。薬剤の全身性副作用は認めず、注射部位は痛みが少なく薬剤反応は見られなかった。(Sato訳)
■2頭のウエストハイランドホワイトテリアの兄弟犬における表皮形成異常とマラセチア感染:遺伝的な皮膚失調か、それとも深刻なマラセチア感染の反応か?
Nett CS, Reichler I, Grest P, Hauser B, Reusch CE.
Vet Dermatol 2001 Oct;12(5):285-90 Related Articles, Books, LinkOut
Epidermal dysplasia and Malassezia infection in two West Highland White Terrier siblings: an inherited skin disorder or reaction to severe Malassezia infection?

2頭の9ヶ月齢ウエストハイランドホワイトテリアの兄弟犬が、私たちの診療所に掻痒、脱毛、苔癬化を伴って来院した。スコッチテープによる細胞学的な検査により、マラセチアと球菌が明らかとなった。皮膚バイオプシー標本は、表皮形成異常を示した。治療は2%ミコナゾール/クロルヘキシジン含有シャンプーによる入浴、経口的ケトコナゾール(5mg/kg 12時間毎)、クロキサシリン(25mg/kg 8時間毎)で管理した。6週間後、皮膚感染は解決され、毛が再度育ってきた。しかし、イヌはまだ中程度に痒がっていた。皮内アレルギーテストではハウスダストマイト、storage mites 、マラセチアに対し陽性であった。免疫学的治療を開始し、ケトコナゾールとクロキサシリンによる治療は中止した。最初の来院後4ヶ月で皮膚バイオプシーを実施し、軽度の表面血管周囲皮膚炎が明らかとなった。残っている軽度の顔面掻痒は局所治療により容易にコントロールされた。これら2症例は、表皮形成異常は先天的な角化失調というよりはむしろ、マラセチア感染に対する過敏反応、炎症、自損傷のためであろうことを示す。(Dr.Yoshi訳)
■マラセチア pachydermatisの皮膚炎および外耳炎の犬の治療で、イトラコナゾールのパルス投与と1日1回投与の比較
Lauren R. Pinchbeck, BA et al; J Am Vet Med Assoc 220[12]:1807-1812 Jun 15'02 Controlled Trial 25 Refs; Comparison of Pulse Administration Versus Once Daily Administration of Itraconazole for the Treatment of Malassezia pachydermatis Dermatitis and Otitis in Dogs

目的:犬の耳と皮膚のマラセチア pachydermatis感染に対するイトラコナゾールのパルス投与と1日1回投与の臨床効果の比較

構成:無作為対照試験

動物:20頭の犬

方法:パルス投与法(5mg/kg、PO、24時間おき、1週間のうちに2日連続で3週間)または1日1回投与(5mg/kg、PO、24時間おきに21日間)のイトラコナゾールの経口投与を犬の施した。他の治療は行わなかった。0日と21日目に皮膚、耳の疾患の程度を調査し、細胞検査と酵母培養のためにサンプルを採取した。細胞学的スコアー(罹患部位の油浸鏡検で、酵母病原体平均数の合計)と培養スコアー(罹患部位のサンプルで酵母コロニーの大きさの平均スコアー)を算出した。

結果:両治療群で、皮膚と耳の疾患の臨床程度は21日目に有意に軽くなったが、両群に有意差は見られなかった。同様に、皮膚細胞検査、皮膚培養、耳の培養スコアーは、0日目に比べ21日目には両群有意に減少したが、両群に有意差は見られなかった。ただ、パルス投与群の耳培養スコアーは、毎日投与群に比べ有意に大きく減少した。しかし、両群で耳サンプルの細胞スコアー分析だけを見た時には、0日目と21日目の有意な減少は見られなかった。

結論と臨床関連:両投与方法がマラセチアpachydermatis皮膚感染の治療に効果的であると思われる。しかし、マラセチアpachydermatis外耳炎では、補助治療が必要になるだろう。(Sato訳)
■犬の尋常性天疱瘡症状のような鼻部皮膚病
Foster AP et al; Vet Rec 2001 Apr 7;148(14):450-1; Nasal dermatitis as a manifestation of canine pemphigus vulgaris.

4頭の若齢で白色被毛のジャーマンシェパードが、喘鳴音や咽頭麻痺の典型的な臨床徴候を呈しました。麻痺は3例で両側性、1例で片側性でした。1頭の犬では巨大食道症も合併していました。外科的処置は3例で成功しましたが、1例は、難治性の吐出、吸引性肺炎という理由から、安楽死をしました。この病気と犬の白色被毛の間での関連性がありうる事が議論されました。(Dr.Shingo訳)
■犬の肛門周囲瘻に対するサイクロスポリンとケトコナゾールによる治療
Cyclosporine and Ketoconazole for the Treatment of Perianal Fistulas in Dogs
J Am Vet Med Assoc 220[7]:1009-1016 Apr 1'02 Clinical Trial 38 Refs
l Alison J. Patricelli, DVM; Robert J. Hardie, DVM, DACVS; Jonathan F. McAnulty DVM, PhD

目的:犬の肛門周囲瘻に対する治療としてサイクロスポリンとケトコナゾールを使用したときの効果と費用の評価

構成:臨床試験

動物:肛門周囲瘻の犬12頭

方法:サイクロスポリンとケトコナゾールを経口投与しました。研究の終わりは、臨床症状の回復、寛解と疾患の再発でした。副作用と薬剤のコストも報告しました。ヒトと犬で、過去に報告されたサイクロスポリン単独治療の結果と比較しました。

結果:全ての犬の臨床症状は改善しました。8頭は寛解しましたが、そのうち5頭は再発しました。治療の副作用は最小またはよく許容しました。治療のコストは、伝統的な外科手術と同じようなもので、サイクロスポリン治療単独以下でした。

結論と臨床関連:犬の肛門周囲瘻でサイクロスポリンとケトコナゾールの治療は効果的で、費用の面でも同等です。(Sato訳)
■猫の重度多形性紅斑のヒト免疫グロブリンを用いた治療
Use of Human Immunoglobulin for Treatment of Severe Erythema Multiforme in a Cat
J Am Vet Med Assoc 220[2]:197-201 Jan 15'02 Case Report 22 Refs
Kevin P. Byrne, DVM, MS, DACVD & Urs Giger, PD, Dr med vet, DACVIM

5歳メスの家猫短毛種に、狂犬病ワクチン、駆虫剤、耳への通常投薬後、体の半分以上を覆うような潰瘍性皮膚病変と嗜眠を起こしました。臨床、組織学所見は、重度皮膚薬剤反応か多形性紅斑と一致しました。猫の状態は、薬物中止と支持療法にもかかわらず悪化を続けました。ヒト免疫グロブリンの静脈投与はネコにうまく許容し、急速な皮膚潰瘍病変の改善を認め、8日以内に猫のふるまいのかなりの改善も見られました。ヒト免疫グロブリンの静脈投与は、致命的な皮膚薬剤反応の新しい将来有望な治療法であります。(Sato訳)
■若いブリタニースパニエルドッグにおける特発性線状膿疱棘融解性皮膚炎
Karyn E. Beningo & Danny W. Scott ; Vet Dermatol 12[4]:209-213 Aug'01 Case Report 20 Refs; Idiopathic Linear Pustular Acantholytic Dermatosis in a Young Brittany Spaniel Dog

若いブリタニースパニエルドッグに片側性で線状、丘疹-膿疱の皮膚病が見られました。その皮膚病はBlaschko's lines に続発して現れ左側の鼠径部から中足骨領域内側面にかけて拡がっていました。 主な組織学所見は、漏斗状器官上皮の顕著な棘融解を伴う、好酸球性および好中球性の膿疱(性)の壁在毛包炎でした。それは急性であり、長期にわたる(15ヶ月以上)1.6mg/kgのメチルプレドニゾロ ンの経口投与により改善しました。(Dr.Shingo訳)
■犬における皮膚糸状菌性偽菌腫の2例:免疫組織化学的研究
Francesca Abramo et al; Vet Dermatol 12[4]:203-207 Aug'01 Case Report 22 Refs; Two Cases of Dermatophytic Pseudomycetoma in the Dog: An Immunohistochemical Study

 過去にペルシャ猫で報告された、皮下小結節の結果に類似している犬の皮膚糸状菌性偽菌腫について記述しました。Microsporum canisと同様の、ダークイエローのコロニーを産出するひとつの小結節で培養を実施しました。ウサギ抗M. canisを使用した免疫組織化学的検査で,パラフィン切片において真菌要素に対する特殊結合を実証しました。さらに、抗血清の特異性は、抗原として猫から分離された可溶性抽出液を使用し、寒天ゲル免疫解析によってテストされました。抗血清はAspergillus fumigatus抗原と交差反応しませんでした。これら2つの症例は、犬の皮膚糸状菌性偽菌腫で、免疫組織化学的染色が診断を支持した最初の報告です。(Dr.Shingo訳)
■ネコの皮膚糸状菌症にイトラコナゾールの連続/パルス療法を行った時の効果:9例の予備研究結果
S. Colombo et al; Vet Dermatol 12[6]:347-350 Dec'01 Prospective Study 16 Refs; Efficacy of Itraconazole as a Combined Continuous/Pulse Therapy in Feline Dermatophytosis: Preliminary Results in Nine Cases

この研究で、ネコの皮膚糸状菌症に対するイトラコナゾールの連続/パルス療法の組み合わせの効果を評価しました。Microsporum canisによる皮膚糸状菌症のネコ9頭を、イトラコナゾール10mg/kg1日1回経口投与を28日間実施し、それから同様の投与量で、隔週投与(1週休薬、1週投与)を行いました。28,42,56,70日目と必要に応じ、身体検査と真菌培養により再評価しました。2回連続して真菌培養が陰性になった時に治療を中止しました。8頭の猫は、2回の陰性結果を28日と42日に示し、治療から56日後に治癒しました。1頭は28日目に陽性でしたが、42日目と56日目には陰性結果をしましました。このプロトコールは、ネコ糸状菌症の治療で有効性をしましましたが、これら予備的な結果は、対照研究で確認するべきです。(Sato訳)
■メキシカンヘアレスドッグの無毛子孫における皮膚過剰色素沈着症の処置におけるヒドロキノンの効果
Kimura T et al; Lab Anim Sci 48[5]:469-75 1998 Oct; Efficacy of hydroquinone in the treatment of cutaneous hyperpigmentation in hairless descendants of Mexican hairless dogs (Xoloitzcuintli).

成犬のヘアレスドッグの皮膚は臨床的に、無色素であったり、軽い色素沈着であったり、あるいは逆に過剰な色素沈着(斑点色素)があったりします。臨床的に気付く色素は、表皮のメラニン顆粒に起因するものとして述べられています。成熟ヘアレスドッグの皮膚における斑点色素沈着に、脱色素製剤(3%ヒドロキノン:HQ)を1ヶ月間塗布して治療を行いました。脱色素の効果は以下の3つの方法により調べられました。
1)皮膚の色、2)ジヒドロキシフェニルアラニン(DOPA)陽性メラニン細胞数、3)組織学的評価。
処置を施したヘアレスドッグの皮膚は、HQを適用してから1週間で脱色素が始まりました。色素脱失は、1ヶ月後には体全体の4分の1以上にまで拡がりました。HQを処置した部位におけるDOPA陽性メラニン細胞は、処置前に比べておよそ5分の1以下に減少していました。組織学的には、Fontana-Masson's(FM)法による染色で、メラニン色素が完全に消失していることが示されました。これらの結果より、ヘアレスドッグは色素脱失剤の効果と皮膚毒性を研究するための、モデル動物として有用であると推察されました。(Dr.Shingo訳)

コメント:実験動物学的な文献ですが、色素沈着症の治療にも使えるのではないでしょうか?
ヒドロキノンはヒトのシミ取り剤として使用されています。3%という濃度が一般的のようですが、皮膚に対する刺激性も強いようですので、注意が必要と思われます。色素沈着症は、慢性の皮膚疾患などでも良く遭遇する変化です。気にかける飼い主さんも多いと思います。今後さらに研究が進んでいくことを期待します。
色素沈着症に関して、少し古いですが、次のような文献もありましたので参考にしてみてください。

■内分泌皮膚疾患あるいは卵胞形成異常の犬における皮脂腺メラニン沈着症;回顧研究
Mary S Bagladi et al; Vet Dermatol 7[2]:85-90 Jun'96 Retrospective Study 26 Refs; Sebaceous Gland Melanosis In Dogs With Endocrine Skin Disease Or Follicular Dysplasia: A Retrospective Study
内分泌皮膚疾患をもつ107頭の犬の皮膚生検標本について、皮脂腺または皮脂管内のメラニン顆粒の存在(皮脂腺メラニン沈着症)を検査しました。19頭(17.8%)の症例で皮脂腺メラニン沈着症がありました。同様に卵胞形成異常の71頭の犬からの皮膚生検標本を検査したところ、27頭(38.0%)が皮脂腺メラニン沈着症でした。皮脂腺メラニン色素沈着症だけでは、組織学的に卵胞形成異常と内分泌皮膚疾患を区別することはできません。(Dr.Shingo訳)

■犬の疥癬の血清学的診断に対する酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)の評価
Kimberly S. Lower et al; Vet Dermatol 12[6]:315-320 Dec'01 Prospective Study 30 Refs; Evaluation of an Enzyme-Linked Immunosorbant Assay (ELISA) for the Serological Diagnosis of Sarcoptic Mange in Dogs

犬疥癬は、虫体の皮膚掻爬試験での発見が困難なため、診断するのが難しい疾患です。この研究目的は、犬疥癬の診断の助けとしての、血清学的ELISAを評価することです。また、自然感染の改善後に循環疥癬抗体の持続期間と持続性を判定するため、治療後に血清サンプルを採取しました。疥癬と診断された犬19頭と、コントロール犬38頭で試験を行いました。疥癬感染犬の16頭(84.2%感受性)が、治療前のELISA検査結果が陽性を示しました。コントロール犬34頭(89.5%特異性)が、ELISA検査結果で陰性を示しました。11頭の疥癬犬から複数治療後の血清サンプルを入手したところ、4例の治療1ヵ月後には、検出可能な抗体が存在しませんでしたが、7頭には治療後1-4.5ヶ月の間は抗体が見られました。結果、疥癬ELISA試験は、犬疥癬の診断に有効です。(訳:Sato)

■秋田犬の皮脂腺炎:臨床所見、組織変化、遺伝性
Iris M. Reichler et al; Vet Dermatol 12[5]:243-253 Oct'01 Clinical Study 25 Refs;Sebaceous Adenitis in the Akita: Clinical Observations, Histopathology and Heredity

秋田犬97頭で、皮脂腺炎の臨床的、組織学的検査しました。組織学的に、皮脂腺を標的とする炎症反応や皮脂腺数の減少を示すことで、23頭を診断しました。秋田犬の皮脂腺炎の臨床過程は、他の犬種と同様です。皮膚傷害は、最初主に、背側中線や耳に発生しました。プードルと比較すると、最初疾患の発生年令は、より不定で、皮毛喪失は主に下毛に見られました。皮脂腺破壊の進行はさまざまで、全ての症例で観察されるわけではありません。発芽様皮脂腺増殖が明らかでないため、皮脂腺の再生が起こるかもしれないと思われます。常染色体劣性遺伝が出現する可能性があります。一般的な背景は別にして、免疫介在因子は、発生や皮脂腺炎の過程に影響を及ぼす可能性があります。(Dr.Sato訳)

■再発性の腹側部脱毛症を罹患している犬の甲状腺機能の評価
C.B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin Endocrinol 11[2]:8 May-Aug'01 Prospective Study 0 Refs ; Evaluation Of Thyroid Function in Dogs Suffering from Recurrent Flank Alopecia

背景:再発性腹側部脱毛症(または季節性腹側部脱毛と呼ばれている)が、エアデールテリア、ボクサー、シュナウザー、ブルドッグなどの、いくらかの犬種において比較的共通して見られます。その原因はよくわかっていません。腹側部に限局した両側対称性脱毛と過剰色素沈着が、典型的な臨床症状です。毛は通常3~8ヶ月で再生し、他の臨床徴候はありません。両側対称性脱毛は、甲状腺機能低下症の犬においてごく普通に見られる臨床所見という理由から、再発性腹側部脱毛症との鑑別をしなくてはなりません。

要約:20頭の正常犬と、臨床徴候が再発性腹側部脱毛症に一致した18頭の犬、そして21頭の甲状腺機能低下症の犬で、総サイロキシン(T4)と甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)の血清濃度を測定し、甲状腺の機能を評価しました。また、サイログロブリン自己抗体も測定しました。再発性腹側部脱毛症は、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症に一致した臨床徴候がなく、毛が自然に再生するという臨床所見により診断しました。病歴、臨床徴候、血清T4濃度の減少、基準範囲を越える血清c-TSH濃度(21頭中19頭)、および甲状腺ホルモンの投与により臨床徴候の完治が見られた事などをもとに、甲状腺機能低下症と診断された犬が選ばれました。
 再発性腹側部脱毛症の犬の年齢は2~12歳で、体重は20~51kgの間でした。症状のでた犬種は7頭のボクサー、5頭のエアデールテリア、2頭のジャイアントシュナウザーおよび他の犬種でした。性別分布は8頭の避妊手術済の雌犬、4頭の無処置の雌犬、2頭の無処置の雄犬、4頭の去勢済みの雄犬でした。甲状腺機能低下症の犬の血清T4平均濃度は、健康なコントロール群の犬、そして再発性腹側部脱毛症の犬と比べて明らかに低い値を示し、血清c-TSHの平均濃度はより高い値を示しました。健康なコントロール群の犬と甲状腺機能低下症の犬の間で、T4あるいはc-TSH 血清濃度に有意差はありませんでした。
 サイログロブリン自己抗体は2頭のコントロール群(正常犬)、2頭の再発性腹側部脱毛症の犬および13頭の甲状腺機能低下症の犬で見られました。3頭の再発性腹側部脱毛症の犬で、最初に評価した時、血清c-TSH濃度は上昇しており、T4濃度は低値もしくは低い正常値を示しました。サイログロブリン自己抗体は、これらの犬のうち2頭で陽性反応を示しました。皮膚生検を実施した2頭の犬では、その結果は再発性腹側部脱毛症に適合しました。3頭全ての犬で、脱毛は自然に回復し、そして再発しました。甲状腺機能低下症の治療をした犬はいませんでした。c-TSHの上昇が見られた3頭のうち2頭の犬で、繰り返し血清T4と c-TSHを測定しました。1頭の犬では血清T4と c-TSHは正常に戻りましたが、もう1頭の犬では、c-TSHは正常に戻りましたが、T4は減少したままでした。著者は、甲状腺機能低下症は、再発性腹側部脱毛症の原因ではないと推察しました。

臨床上の影響:甲状腺機能低下症は、全身機能に影響を及ぼす病気です。皮膚は目につきやすく、身体の中でも最も大きな組織であり、通常は高い代謝率をもっている事などから、たいていの場合、最初に皮膚に対する影響に気付きます。再発性腹側部脱毛症の犬では数ヶ月以内に、脱毛の回復が見られるという理由から、甲状腺ホルモンの投与によって見かけ上の反応があるために、甲状腺機能低下症と誤診されてしまうのです。
再発性の脱毛と血清c-TSH濃度の上昇の見られた3頭の犬において、2頭の犬では血清T4濃度が基準値以下であり、1頭は基準値でもより低値であったので、甲状腺機能低下症と診断されていました。これらの犬は軽度の甲状腺機能低下症と再発性腹側部脱毛症を合併していました。なぜなら、脱毛の投薬がなくても回復し、また再発が起こり、これは甲状腺機能低下症では考えられないからです。甲状腺機能低下症と再発性腹側部脱毛症は同時に起こる可能性があります。再発性腹側部脱毛症の原因は、おそらくメラトニンやプロラクチンのような光周期によって影響を受けるホルモンと関連があるのではないかと思われます。(Dr.Shingo訳)

■ビーグル犬の皮膚における甲状腺ホルモンの効果
K. M. Credille et al; J Vet Intern Med 15[6]:539-546 Nov-Dec'01 Prospective Study 22 Refs ; The Effects of Thyroid Hormones on the Skin of Beagle Dogs

犬の皮膚における甲状腺機能低下症の影響を、年齢と性別が同じビーグル犬を以下の3グループにわけ、皮膚生検でサンプルを入手し、形態学的、形態計測学的、そして皮毛周期の違いを比較することで判定を行いました。
【(1)甲状腺機能正常犬(2)ヨウ素131を投与することによって、実験的に甲状腺機能低下症になった犬(3)実験的に甲状腺機能低下症になった犬で、合成サイロキシンの処置により正常な甲状腺機能が維持できている犬】
観察は10ヶ月間行い、無処置の甲状腺機能低下症の犬では、毛刈りを実施してから2ヶ月で毛はゆっくりと再生し始めました。無処置群の犬では、コントロール群(正常犬)の犬よりも休止期毛包の数が多く、毛軸の数が少なかった(つまり無毛休止期毛包の数が多かった)のです。コントロール群の犬はより多くの休止期毛包がありましたが、甲状腺ホルモン投与をうけている群と同様の毛軸がありました。甲状腺ホルモン処置群の犬では、発毛周期の成長段階における毛包の数が最も多く見られました。この研究は、少なくともビーグル犬の誘発性甲状腺機能低下症では、自然に発症した甲状腺機能低下症で見られるような外皮への影響が無いと示唆しています。これは、普通のビーグル犬が長期間にわたり毛包内の毛軸を保持し続け、そして、甲状腺機能低下症の脱毛は、毛包休止期の延長のため、徐々に進行するからです。サイロキシンを処置した甲状腺機能低下症の群では、甲状腺機能低下症を誘発させたビーグル犬に、甲状腺ホルモンを補うことによって発毛の活性化があったと評価できました。(Dr.Shingo訳)

■イングリッシュスプリンガースパニエルにおける原発性脂漏:14症例の回顧的研究
Scott DW et al; Small Anim Pract 1996 Apr;37(4):173-8; Primary seborrhoea in English springer spaniels: a retrospective study of 14 cases.

17年間にわたり14頭のイングリッシュスプリンガースパニエルを、原発性脂漏と診断した。7頭のイヌは2歳までに臨床徴候を示した。その皮膚病は徐々に悪化する、全身の非掻痒性乾性鱗屑として始まった。この乾性ステージ(乾性脂漏)のままであるイヌもいるが、多くの症例において皮膚病は油性と炎症性になった(油性脂漏と脂漏性皮膚炎)。8頭のイヌは、再発性の浅在性または深在性の細菌性膿皮症に罹患した。皮膚のバイオプシー標本における組織学的所見では、上皮の顕著な過角化、漏斗状の上皮、乳頭腫症、乳頭を覆う錯角化、リンパ球と肥満細胞優勢の表在血管周囲皮膚炎がみられた。 乾性脂漏のイヌは、局所的な軟化-保湿剤での治療、または経口的オメガ3/6脂肪酸補給に満足な反応を示した。油性脂漏と脂漏性皮膚炎のイヌは、局所治療に満足な反応を示さなかった。しかし、1頭ではエトレチナートとオメガ3/6脂肪酸投与によく反応した。治癒したイヌはなかった。(Dr.Yoshi訳)

■家ネコにおけるネコヘルペスウイルス1に関連した顔面と鼻部の皮膚病と口内炎
Hargis AM et al; Vet Clin North Am Small Anim Pract 1999 Nov;29(6):1281-90; Feline herpesvirus 1-associated facial and nasal dermatitis and stomatitis in domestic cats.

ネコヘルペスウイルス関連の皮膚病は、ほとんど報告されていない。最近、我々はネコヘルペスウイルス1に関連した、珍しく潰瘍性でしばしば抵抗性の顔面皮膚病、または口内炎を立証した。我々は1996~1997年の間に診断した10件の症例シリーズをもって、この症候群は比較的一般的であると信じる。症候群は上皮細胞の壊死、好酸球性炎症、上皮細胞内 ヘルペスウイルス封入体と関係している。好酸球性炎症と少数の封入体の有病率は、アレルギー性皮膚炎または好酸球性肉芽腫群関連の病変との誤診を導くだろう。ネコヘルペスウイルス1は、損傷性組織のPCR法によって同定できる。我々の症例の多くは、潜伏中のヘルペスウイルスの再活性化、過去のグルココルチコイド治療、または過密からのストレスと示唆される状況下で発症した。潰瘍性皮膚病、特に顔面と鼻部にみられるネコ、口内炎を伴うネコは、ネコヘルペスウイルスの存在を評価すべきである。治療の選択肢は外科的切除、細菌2次感染防止のための局所的または全身的抗生物質治療、そして口内へのアルファインターフェロンである。(Dr.Yoshi訳)

■北方品種のイヌにおける亜鉛反応性皮膚病:17例(1990-1996)
Colombini S et al; J Am Vet Med Assoc 1997 Aug 15;211(4):451-3; Zinc-responsive dermatosis in northern-breed dogs: 17 cases (1990-1996).

目的:亜鉛反応性皮膚病の亜鉛補給に対する反応率、病変の回復に必要な亜鉛の最適な1回投与量、病変の再発率を決定することと、このタイプの亜鉛反応性皮膚病のイヌの管理に必要な、推奨される維持量を見出すこと
意図:回顧的症例群
動物:亜鉛反応性皮膚病と診断された北方品種のイヌ17頭
方法:皮膚バイオプシーの組織学的評価と医療記録の再調査。追加情報は獣医師と飼い主から電話質問により得た。
結果:17頭中12頭において、最初、病変は片側性であり、疾患が進行すると対称的となった。10頭は掻痒症であり、17頭中5頭において膿皮症が明らかであった。最初、多くの病変は9月から4月の間に進行し、17頭中12頭は2月、10月、11月に進行した。最初の亜鉛補充量の幅は0.8~4.6mg/kg/d (0.36 ~ 2.09 mg/lb/d)であった。効果量または維持量は0.5mg/kg(0.23 mg/lb)週2回から8.0mg/kg/d(3.6mg/lb/d) であった。亜鉛補充後、17頭中15頭は病変の完全な回復に至った。16頭中9頭において病変は再発した。再発した病変のおよそ半数は、亜鉛補充の投与量ミス、または投与量もしくは投与頻度の減少のためであった。
臨床との関係:最初の亜鉛補充投与量は亜鉛として1.0mg/kg(0.45 mg /lb) 24時間ごと経口投与が推奨される。治療に対する反応を見るために、治療は1ヶ月間継続すべきであり、最初の投与量が効果的でなかったら、1日投与量を50%ずつ増量すべきである。イヌは亜鉛投与量のミス、投与量または頻度の減少で病変が再発する傾向にある。(Dr.Yoshi訳)

■致死性肢端皮膚炎のブルテリアにおけるマラセチアとカンジダの感染
McEwan NA; J Small Anim Pract. 2001 Jun;42(6):291-7;Malassezia and Candida infections in bull terriers with lethal acrodermatitis.

 体の様々な部位におけるイースト菌の分布を研究するために、4種のサンプル採取法(ブラシ法、スワブ法、皮膚掻爬法、粘着テープ法)を使用し、12頭致死性肢端皮膚炎と5頭のアトピー性皮膚炎および10頭の正常な犬との比較が行われました。
マラセチアは、犬の致死性肢端皮膚炎あるいはアトピー性皮膚炎のどちらにおいても、損傷性、あるいは非損傷性皮膚、被毛、パッド、爪、粘膜などからよく分離されます。しかしながら、一般的にマラセチアは、致死性肢端皮膚炎でより多く分離されました。正常な犬では、耳道や肛門周囲の皮膚から発見されることがほとんどです。
致死性肢端皮膚炎の犬からは、カンジダがしばしば分離されましたが、他の2つのグループからはイースト菌だけが単独で分離されました。Candida albicansのものと思われる真菌の菌糸と仮性菌糸が、致死性肢端皮膚炎の犬の爪とパッドから集められたサンプルから検出されました。マラセチアとカンジダの両方は4つ全てのサンプル採取法で分離することができました。MacKenzie 法(歯ブラシ法)とセロテープ培養法は、イースト菌の半定量的な評価を行う簡単な方法であることが証明されました。
致死性肢端皮膚炎の犬からのマラセチアおよびカンジダの発見率は高いことは、これらの犬に免疫不全、特にあることが解っているT細胞の機能不全に関連していると思われます。爪やパッドの病変は致死性肢端皮膚炎の症例において普通に見られ、C albicansの感染が原因の1つであるかも知れません。(Dr.Shingo訳)

■ブルテリアの致死性肢端皮膚炎
Jezyk PF et al; J Am Vet Med Assoc 1986 Apr 15;188(8):833-9 Related Articles, Books; Lethal acrodermatitis in bull terriers.

臨床的に、成長遅延、進行性の肢端皮膚炎、慢性膿皮症、爪囲炎、下痢、肺炎、異常行動などの症状によって特徴付けられる致死的症候群が、17頭の血縁関係のあるブルテリアの子犬に見られました。
生存期間中央値は7ヶ月でした。実験室での評価では、変性していない好中球、血清アルカリフォスファターゼ(ALP)とアラニントランスアミラーゼ(ALT)の低活性が一貫して見られ、しばしば高コレステロール血症が見られました。
リンパ球の幼若化反応は減少していました。また免疫グロブリンの測定から子犬は異常γグロブリン血症であることがわかりました。同年代、同犬種のコントロール群に比べて、病気の子犬5頭の平均血漿亜鉛濃度が有意に低下していました。皮膚病理検査では不全角化症、角質増殖が発見され、表在性の細菌感染がありました。リンパ組織のTリンパ球分画におけるリンパ球の著しい減少がありました。気管支肺炎と脳質の拡張がほとんどの症例で見られました。家族調査によって、この症候群は劣性遺伝を受け継いできることを指摘されました。黒まだらデンマーク牛の致死(遺伝)形質A46と人のacrodermatitis enteropathicaに似ているにも関わらず、亜鉛の経口および非経口的投与は、この症候群の臨床兆候を改善するに至りませんでした。(Dr.Shingo訳)

■致死性肢端皮膚炎のブルテリア28頭の診断的特徴、確認、病気の進行
McEwan Na et al; J Small Anim Pract 41[11]:501-7 2000 Nov; Diagnostic features, confirmation and disease progression in 28 cases of lethal acrodermatitis of bull terriers

致死性肢端皮膚炎(LAD)はアメリカで1980年代に最初に発表されたブルテリアの代謝性遺伝疾患です。この研究は、これまで報告された中で最大で、イギリス生まれのブルテリア28頭が致死性肢端皮膚炎に冒されていると診断し、この病気の臨床的に解ったことや進行が経時的に述べています。致死性肢端皮膚炎の主な特徴は、発育阻害、指を外に広がっていること、採食困難、顔や脚の皮膚病、細菌感染の増加です。老犬で、爪囲炎、爪の病気、脚のパッドの角質増殖が起こり、6ヶ月齢を過ぎたあたりからひどくなります。致死性肢端皮膚炎の診断は、幼少の頃から前述の症状の組み合わせが見られたブルテリアは強く疑われます。不全角化増殖が皮膚病理組織学的検査で見られたときには致死性肢端皮膚炎の診断を強く支持します。そしてそれに合わせて特有な臨床徴候があれば診断を固めるに十分でしょう。この状態の臨床症状や病理は亜鉛欠乏を思わせますが、血液亜鉛レベル測定は診断の助けに至りません。(訳Dr.Sato)

■イヌにおけるStaphylococcus intermediusに対する4つの抗菌シャンプーの予防効果
Kwochka KW et al; Am J Vet Res 1991 Jan;52(1):115-8; Prophylactic efficacy of four antibacterial shampoos against Staphylococcus intermedius in dogs.

イヌにおけるStaphylococcus intermedius に対する4つの抗菌シャンプーの予防効果を、コントロール定量法を用いて判定した。研究には10頭の成ビーグルを用いた。シャンプー中の抗菌剤は3.0%過酸化ベンゾイル、0.5%酢酸クロルヘキシジン、合成ポリアルキレングリコール-ヨードとして手に入る1.0%ヨード、0.5%トリクロサン-2.0%イオウ-2.0%サリチル酸の混合液であった。処置部分とコントロール部分は、皮膚1cm2あたり5.30 +/- 0.10 (log10)のS intermediusのコロニー形成単位(CFU)に行い、5時間保存した。試験期間後、残存している細菌をカップスクラブ洗浄により取り除き、それぞれの処置部分とコントロール部分の皮膚S intermedius CFU/cm2総数を計算した。コントロール部分では5.62 +/- 0.65のS intermedius CFU/cm2 が得られた。過酸化ベンゾイル処置部分のS intermediusの再生(CFU/cm2)は0.94 +/- 0.76 、酢酸クロルヘキシジンでは1.96 +/-1.33 、有機ヨードでは3.11 +/- 0.48 、トリクロサン-イオウ-サリチル酸では4.69 +/- 0.23 であった。4つの処置部分からのそれぞれのS intermedius の再生値はコントロール部分よりも有意に低値であった(P<0.05)。細菌の回復には4つのシャンプー処置部分間でも有意差があった(P<0.05)。私たちは全てのシャンプーが、5時間にわたってS intermedius に対する有意な予防活性を持つと結論づける(P<0.05)。過酸化ベンゾイル含有のシャンプーが製品テスト間では最も強い効果を持っていると判定した。(Dr.Yoshi訳)

■犬の膿皮症におけるマルボフロキサシン(ゼニクイン)錠の臨床効果の評価(臨床試験の公開)
Manon Paradis et al; Vet Dermatol 12[3]:163-169 Jun'01 Prospective Study 38 Refs ;Evaluation of the Clinical Efficacy of Marbofloxacin (Zeniquin) Tablets for the Treatment of Canine Pyoderma: An Open Clinical Trial

浅在性および深在性膿皮症の治療に対する、マルボフロキサシン(ゼニクイン)の効果と安全領域を評価しました。72頭の犬に対して、21日あるいは28日間、2.75mg/kgのマルボフロキサシン1日1回の経口投与を行いました。62頭(86%)の犬が浅在性膿皮症で、10頭(14%)の犬が深在性膿皮症でした。72頭中32頭に膿皮症の前歴がありました。47症例において、投薬前に皮膚病変部の好気性細菌培養が行われ、主な病原体としてStaphylococcus intermediusが分離されました。治療は、72頭中62頭(86.1%)で成功し、6頭(8.3%)で明らかな改善が見られ、4頭(5.6%)は改善されませんでした。投薬に関連した副作用として、無気力、食欲不振、嘔吐、軟便、腹部膨満、多飲などがあります。そして、これらの副作用は81頭中6頭にしか見られませんでした。この研究で使用された薬用量で、マルボフロキサシンは浅在性および深在性膿皮症の治療に対して、安全で効果的であることがわかりました。 (Dr.Shingo訳)

■マルボフロキサシンの抗菌活性、犬と猫の微生物に対する獣医用の新しいフルオロキノロン
Spreng M et al; J Vet Pharmacol Ther 1995 Aug;18(4):284-9 Related Articles, Books; Antibacterial activity of marbofloxacin. A new fluoroquinolone for veterinary use against canine and feline isolates.

マルボフロキサシンは,獣医専用に開発された新しいフルオロキノロン系の薬です。犬と猫の病気に関係した816の新しい分離菌株について、マルボフロキサシンのMICが評価されました。マルボフロキサシンは、グラム陰性およびグラム陽性菌に対して広域スペクトラム活性を示します。試験管内の検査において、マルボフロキサシンとエンロフロキサシンのStaphylococcus intermediusと Pasteurella multocidaの菌株に対する殺菌率を比較したところ、この二つの抗生物質の間に、顕著な差は見られませんでした。マルボフロキサシンを処方した犬と猫の排泄尿を評価したところ、マルボフロキサシンを1回処置した後、殺菌活性は2~5日目持続し、用量に依存していました。Escherichia coli、Pasteurella multocida、Staphylococcus aureus、Staphylococcus intermediusに限定して見てみると、この抗生物質投与後の持続効果は、エンロフロキサシン、シプロフロキサシンのそれとほとんど同等の効果であることがわかりました。これらの結果、マルボフロキサシンは犬と猫における病気に対して広範囲に使用できるという、多大な将来性をもっているものと予想されます。(Dr.Shingo訳)

■犬の全身性ニキビダニ症(8症例)と疥癬(5症例)の治療における1.25%アミトラズ溶液の効力
Christophe Hugnet et al; Vet Dermatol 12[2]:89-92 Apr'01 Prospective Study 21 Refs; Efficacy of 1.25% Amitraz Solution in the Treatment of Generalized Demodicosis (Eight Cases) and Sarcoptic Mange (Five Cases) in Dogs

全身性ニキビダニ症の犬8頭と、疥癬の犬5頭を、週1回の1.25%アミトラズ溶液を用い、解毒剤(アチパメゾール,0.1mg/kg/day.IM.1回:そしてヨヒンビン0.1mg/kg/day1日1回3日間、経口)と合わせて、治療を行いました。皮膚掻爬の結果で、治療を継続するべきか否かを、決定しました。ニキビダニ症と疥癬の治療回数中央値は、それぞれ、3回(範囲2-5回)と2回(範囲1-3回)でした。いくつかの副作用が、観察されましたが、すべて解毒剤で抑えられました。治療後6-36ヵ月で、いかなる障害や、再発も起こりませんでした。(Dr.K訳)

■犬の浅在性膿皮症における1日1回の塩酸クリンダマイシンの効果
Paul B. Bloom, DVM, Dipl. ABVP et al; J Am Anim Hosp Assoc 37[6]:537-542 Nov-Dec'01 Original Article 40 Refs ; Efficacy of Once-Daily Clindamycin Hydrochloride in the Treatment of Superficial Bacterial Pyoderma in Dogs

 犬の皮膚病の原因で、最もよく見られる原因の1つが皮膚の細菌感染です。浅在性の毛包感染は、犬の細菌性皮膚病群の中でもよく見られ、Staphylococcus intermedius が病原体であることが最も一般的です。治療を成功させるには、最低でも21日、そして治癒してから7日間の、適切な抗生物質の全身投与が必要となります。毎日抗生物質を投与することをオーナーに守ってもらうことは、治療を成功させるための鍵となるので、1日1回の抗生物質投与は価値あるものです。この研究の目的は、犬の浅在性膿皮症(CSBP)の治療観察に、経験的に選択したクリンダマイシンを、1日1回投薬することによる臨床効果を、さらに評価することでした。浅在性膿皮症の犬21頭に対して、体重あたり約11mg/kgのクリンダマイシンを、反応に応じて、14日~42日間、24時間おきに経口投与しました。浅在性膿皮症は、壊れていない丘疹あるいは膿疱の細胞病理学検査と、菌の培養に基づいて診断されました。21頭中20頭でStaphylococcus spp陽性の結果が得られました。すべての犬において、14日、28日、必要に応じて42日に再検査を行い、優(完治)、良(一次病変は消失したが、二次病変が残る)、可(部分的には改善されたが、一次病変が残る)、不可(改善なし、もしくは病変の悪化)のように臨床上のスコアをつけました。14~28日間の投薬期間の犬では、71.4%(15/21)に優の結果が得られました。著者は、浅在性膿皮症の治療でクリンダマイシンを、24時間おきに体重あたり約11mg/kgの容量で経口投与を選択したとき、適度な効果があることが考えられると結論付けました。Staphylococcus spp. が分離された犬の中には、クリンダマイシンに対して、最初は反応しているが、次第に耐性をもつようになるものもいるので、治療開始後14~28日で臨床症状を再評価することが重要です。(Dr.Shingo訳)

■犬の象皮症
Kimberly Lower, DVM et al; Vet Med 95[5]:360-362 May'00 Case Report 6 Refs; A Dog with Elephant-Like Skin

9ヶ月の間、脱毛、肥厚および脂漏性の皮膚病変をもつウェストハイランドホワイトテリアのウェスリーが来院しました。酵母および細菌性の皮膚炎と外耳炎、2次的な甲状腺機能低下症と診断しました。酵母性皮膚炎に対して、過酸化ベンゾイルシャンプーを使用し、その後2%クロルヘキシジンコンディショナーをつける、局所的な処置を施しました。4週間、10mg/kg のケトコナゾールをSIDで経口投与しました。細菌性の膿皮症に対して、セファレキシン22 mg/kg TIDの経口投与が行われ、それは8週間続けられました。細菌性外耳炎に対しては、エンロフロキサシンとデキサメサゾンが混合されたイヤークリーナー(6mlエンロフロキサシンと12mgのデキサメサゾンと24mlのDermaPet Ear/Skin Cleanser)の局所療法が行われました。30日で、苔癬化は50%、掻痒症は最小限にまで改善され、足の毛は再び発毛しはじめました。ケトコナゾールの投薬量は、徐々に10 mg/kg 隔日に減少し2週間をかけて休止していきました。治療開始後、5ヶ月が経ちましたが、苔癬化、掻痒症、脱毛の再発は認められていません。(Dr.Shingo訳)

■放し飼いのフロリダピューマにおける皮膚糸状菌症
Rotstein DS et al; J Zoo Wildl Med 30[2]:281-4 1999 Jun; Dermatophyte infections in free-ranging Florida panthers (Felis concolor coryi).

3頭の放し飼いのフロリダピューマが臨床的に皮膚糸状菌症と診断されました。2頭はTrichophyton mentagrophytes 、1頭は Microsporum gypseumに感染していました。これらのうち2頭は若年の雄で、限局したものから、限局したものが融合したような皮膚糸状菌症と診断しまし、1頭はM. gypseum、もう1頭はT.mentagrophytesによるものでした。この若い雄達は、処置はされませんでしたが、臨床症状は6ヶ月以上かけて自然回復しました。3頭目のピューマは南フロリダから来た成熟雄で、T. mentagrophytesによる皮膚糸状菌症が全身に拡がっていました。そのピューマは最初、脱毛と擦過傷および潰瘍があり、頭部、両耳、頚部、後肢に多病巣性の膿皮症があり、腹部領域は苔癬化にまで進行し、二本の指の爪は失われていました。野外での45日間隔の局所療法では改善は認められませんでした。そのピューマは、皮膚糸状菌のさらなる進行と他の爪の喪失、他のピューマへの病気の蔓延を防ぐために、一カ所に捕獲して、集中的な経口療法を行う必要がありました。9.5mg/kgのイトラコナゾールを1日1回フードに混ぜて6週間与えました。処置後、爪の再生は認められましたが、脱毛の多病巣領域は残りました。2回の真菌培養で陰性結果が得られた後、野生に戻されました。皮膚糸状菌症の全身治療のために、絶滅の危機に瀕した放し飼いの動物を、その生息地から一時的に移動させることには、年齢や生殖能力、施設の保有、処置管理、将来的にうまく動物を再び群れに戻すことなどの要素を考慮する必要性があります。(Dr.Shingo訳)


■猫における、毛包虫症と皮膚糸状菌症を伴う皮膚黄色腫
Vogelnest LJ ; Aust Vet J 79[7]:470-5 2001 Jul; Cutaneous xanthomas with concurrent demodicosis and dermatophytosis in a cat.

絶食からの高脂肪血症に関連した、複合的な皮膚黄色腫を、9カ月齢の長毛猫で診断しました。頭部と頚部に、丘疹と痂皮形成を伴う、激しい掻痒が生じ、最初は、好酸球性肉芽腫関連の病変として診断しましたが、頭部と耳介で、進行性に、病変が展開していきました。掻痒は、プレドニゾロンと、クロラムブチルの投与で管理しました。繰り返す組織学検査で、皮膚黄色腫と、併発した軽度な毛包虫症を確定診断しました。顕著な絶食による、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、そして一過性の高血糖症を、その後確認しました。低脂肪食(Hill`s Feline r/d)を用いた、高脂肪血症と黄色腫対する治療と、これまで報告されていない、経口ミルベマイシン毎日投与の、猫毛包虫症に対する治療を開始しました。多様なピンク色の脱毛斑と丘疹が、漸進的に退行するものの、免疫抑制剤治療を減ずると、掻痒は、再発し、皮膚掻爬による、毛包虫陰性にもかかわらず、境界明瞭な脱毛が頭部、四肢、そして体幹に発現しました。被毛サンプルの真菌培養では、Microsporum canisが、培養されました。全ての皮膚病変が、グリセオフルビンの治療で消散しました。併発角膜潰瘍と、乾性角結膜炎は、結局、局所シクロスポリンの治療により、消散しました。真性糖尿病が、皮膚病変消散後、6ヵ月で発現しました。うっかりした脂肪食摂取後に、一過性の、丘疹と掻痒が起こるものの、低脂肪食と、インスリン治療で、6ヵ月後には、皮膚、および眼科の、いかなる異常も認められなくなりました。原発性高脂肪血症は、掻痒誘発性黄色腫の、原因であると疑われます。これは、猫における、皮膚黄色腫、毛包虫症、そして皮膚糸状菌症の併発に関する報告で、初めてのものであると思われます。(Dr.K訳)

■マラセチア関連性皮膚炎の形態学
Mittag H et al; Mycoses 39[Suppl 1]:13-9 1996; [Morphology of Malassezia-associated diseases]

多彩な粃糠疹、マラセチア性毛胞炎、脂漏性湿疹の塗抹と表面物質に関して、精巧な形態的研究を行いました。微生物Malassezia furfurの概要は、皮膚表面の分布、形態、そして炎症徴候と、角質層構造のような宿主皮膚組織内での変化で理解されます。マラセチア関連性皮膚炎の2つの主要な型は、明確です。一つは、多数の微生物が、角質層の規則正しい配列細胞への付着により、特徴付けられます(多彩な粃糠疹により典型的に示される)。もう一つは、認識可能な少数の真菌細胞と、炎症徴候により特徴づけられます(脂漏性湿疹により典型的に示される)。(Dr.K訳)

■ピチロスポルム酵母菌:あらたな発見?
Faergemann J; Mycoses 40 Suppl 1:29-32 1997); Pityrosporum yeasts--what's new?

脂肪親和性酵母菌のPityrosporum ovaleは、成人の皮膚の正常細菌叢でありますが、重篤な皮膚疾患とも関連があります。誘発因子下で、多彩な粃糠疹において、P.ovaleは丸い芽胞型から菌糸体型へと変化します。多彩な粃糠疹の大きな問題は、高い再発率と、これを防止する予防的治療が必須であるということです。ピチロスポルム毛包炎は、痒みを伴う毛包性丘疹と、主に上腕、首、上部体幹部の膿疱によって、特徴付けられる慢性疾患です。直接鏡検で、出芽しかけの丸い酵母細胞集団が見られます。この疾患は、抗真菌薬に、急速に反応します。現在、P.ovaleは、脂漏性皮膚炎における、重要な役割を担っていることを示す研究が多数あります。これらの多くが、微生物数の減少をもって、抗真菌薬の良い効果を表わす治験です。重度な脂漏性皮膚炎は、AIDSとの関連で治療が困難というものも多いです。脂漏性皮膚炎を持つ患者の末梢血液中で、我々は、ナチュラルキラー細胞の増加と、PHAとCon-A刺激の低下を発見しました。2つ目は、コントロールと比較して、患者における血清IgG抗体価の低下を見ました。別の研究では、脂漏性皮膚炎の患者のリンパ球を、P.ovale抽出物で刺激した時、リンパ球刺激反応が減少したことを明らかにしております。付加的に、P.ovale抽出物刺激後、患者のリンパ球によるIL-2とIFNガンマ生産は著しく抑圧され、IL-10合成が増大しました。アトピー性皮膚炎を持つ成人患者の大多数は、頭と首の局所的なもので、頭皮は、P.ovale抽出蛋白の刺激テストに陽性でした。ある研究で、P.ovale抽出物が、アトピー性皮膚炎を持つ患者におけるIL-4,IL-10、そしてIgE合成を増大させることを示しております。抗真菌薬治療が、これらの患者に有効であることを指示する治療研究もあります。(Dr.K訳)

■バセットハウンドにおけるMalassezia pachydermatis関連性脂漏性皮膚炎の治療に対する2つのシャンプーの比較
Bond R ; Rose JF et al; J Small Anim Pract 36[3]:99-104 1995 Mar; Comparison of two shampoos for treatment of Malassezia pachydermatis-associated seborrhoeic dermatitis in basset hounds.

33頭のバセットハウンドにおける、Malassezia pachydermatisに関連性脂漏性皮膚炎の治療において、硫化セレンシャンプーとミコナゾール-クロルヘキシジンシャンプーの、臨床的、抗菌的効果を、二重盲目的研究で比較しました。ミコナゾール-クロルヘキシジンシャンプーで治療した、16頭全てのバセットハウンドと、硫化セレンシャンプーで治療した、17頭中11頭は、3週間、3日間隔でシャンプーすることにより改善しました。ミコナゾール-クロルヘキシジンシャンプーは、硫化セレンシャンプー治療群と比較して、掻痒(P<0.01)、紅斑(P<0.001)、滲出(P<0.01)、総合的ひどさ(P<0.001)、Malassezia pachydermatisの数(P<0.001)、総菌数(P<0.001)、そしてコアグラーゼ陽性ブドウ球菌数(P<0.001)の、顕著な減少が、有意に現れました。鱗片と上皮の状態の改善で、2つのグループ間に有意差はありませんでした。これらの結果は、バセットハウンドにおける脂漏性湿疹は、しばしば、M.pachydermatisと細菌の皮膚出現が増すことに関連し、この疾患の治療では、硫化セレン製品よりも、ミコナゾール-クロルヘキシジンシャンプーが、より効果的であると言うことを示唆しています。(Dr.K訳)

■犬における Malassezia pachydermatisの罹患率と関連因子
Jon D. Plant, DVM et al; J Am Vet Med Assoc 201[6]:879-885 Sep 15'92 Reports of Original Studies 15 Refs; Factors associated with and prevalence of high Malassezia pachydermatis numbers on dog skin

動物皮膚科クリニックに来院した犬98頭の臨床研究。

実験計画:押圧塗抹スメア上の、酵母菌数の半定量的評価を98頭の犬で、294個所行いました。
皮膚の1cm2領域対し、スライドガラス1cm2領域をしっかりと、3回圧迫することにより、塗抹標本を作成しました。標本は、頚部腹側領域、腋下領域、そして前肢の第3、4趾間から採取しました。被毛は、接触に必要なだけ刈りました。スライドを加熱固定し、緩衝ライト染色液(Wright's Dip Stat; Medi-Chem Inc.)で染色しました。とっくり状の酵母菌の数を、25箇所、高倍率(x450)でカウントし、高倍率1視野あたりの、平均酵母菌数を測定しました。

結果:皮膚は、246/298個所(89.8%:正常皮膚領域の全て144/144と、異常な皮膚領域120/150)において、グレード1(<1酵母菌/視野)、4/294個所(1.4%)においてグレード2(1-3酵母菌/視野)、16/294個所(5.5%)で、グレード3(>3そして<10酵母菌/視野)、10/294(3.4%)で、グレード4(10以上の酵母菌/視野)の、成績でした。98頭中採材された294個所に関して、19/98(19.4%)の犬における30個所(10.2%)は、グレード2か、またはそれ以上でした(高倍率視野あたり1以上の酵母菌)。これら19頭の犬は、明らかに、正常な皮膚から検出されるより、たくさんのマラセチアを持つと、見なされました。バセット・ハウンド(2/19)と、ダックス・フンド(2/19)は、19頭の中で占める固体数を比較すると、有意に多く、これらの犬の主な診断は、脂漏症(9/19)、アトピー(5/19)、仮定アレルギー性皮膚炎(4/19)、そして一般的ニキビダニ症(1/19)でした。全ての犬で比較すると、グレード2か、またはそれ以上の犬は、脂漏性湿疹を持ち(9/19,47.4%)、エンロフロキサシン投与(3/19,15.8%)、および/または抗生剤+/-コルチコステロイドの治療をされておりました(9/19,47.4%)。(Dr.K訳)

■二次的マラセチア関連性皮膚炎を持つ猫の腫瘍にまつわる対称性脱毛症の症例
Godfrey DR; J Small Anim Pract 39[8]:394-6 1998 Aug; A case of feline paraneoplastic alopecia with secondary Malassezia-associated dermatitis.

13才、避妊済の短毛猫が、当初、甲状腺機能亢進症によるものとされた、腹部の進行性脱毛症になりました。一側性甲状腺摘出術による対症治療は、皮膚病を改善せず、脱毛は、下肢と頭、腹部体幹全体に広がりました。下肢の掻痒は顕著で、細胞学上、マラセチアの検出と関連があり、マラセチア関連性皮膚炎と診断しました。経口ケトコナゾールと、酵母除去シャンプーで治療後、掻痒の改善は認められましたが、激しい多食、小腸性下痢、多飲多渇がその後発生し、猫は安楽死となりました。後の検死で、肝臓転移を伴う、外分泌腺の膵臓腺癌が明らかになりました。膵臓、肝臓と皮膚病変は、猫の腫瘍関連脱毛症(FPA)に典型的であると、認識されました。マラセチア関連性皮膚炎は、FPAを伴う猫の掻痒症と、関連し得ます。(Dr.K訳)

■11頭の犬におけるMalassezia pachyderatis関連性皮膚炎
Kenneth V. Mason, MVSc, FACVSc et al; J Am Anim Hosp Assoc 27[1]:13-20 Jan/Feb'91 Reports of Original Studies 22 Refs; Dermatitis Associated Malassezia pachydermatis in 11 Dogs

皮膚表面に存在する、酵母マラセチアが関連した掻痒性皮膚炎の11症例を報告します。皮膚疾患は、顔、特に口周囲や足皮膚炎としてもっとも頻繁に認められましたが、腹部、前肢、そして大腿部尾側にも影響を及ぼすことが解りました。病変は、紅斑、色素沈着亢進、鱗片、脱毛、そして苔癬化でした。微生物は、細胞学的、組織学的に証明されたり、罹患皮膚の培養から分離されました。多くの治療が失敗に終わってますが、経口的ケトコナゾール、ポピドンヨード洗浄後の硫化セレンションプー、そしてミコナゾールクリームは、皮膚炎消散に大変効果的でした。(Dr.K訳)