■高グレードあるいは転移性肥満細胞腫の犬においてビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法は血液毒性を誘発する
Vinblastine/prednisolone chemotherapy leads to hematological toxicity in dogs with high-grade or metastatic mast cell tumors
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jun 21:1-9.
doi: 10.2460/javma.24.03.0214. Online ahead of print.
Ryan W Soussa, Suzie Jaderberg, Tim L Williams, Jane M Dobson

目的:高グレードあるいは転移性皮膚/皮下肥満細胞腫(MCTs)の犬において、ビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法中にそれらが発生した時、骨髄抑制効果/血液毒性、他の一般的毒性を判定する

方法:2016年11月1日から2023年3月1日までの医療記録を回顧的に再調査した。皮膚高グレードMCTs/転移性皮下MCTsと病理組織学的に確認し、その後12週のビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法プロトコールを完了した飼い犬30頭を含めた。化学療法開始前、各ビンブラスチン投与前に血液学的評価を行った。血液値に対する各治療の影響を評価した。測定した結果は、血液および他のより一般的な毒性のタイプ、頻度、重症度を含めた。

結果:30頭中24頭は少なくとも1つの血液学的毒性を経験し、6頭は消化管毒性、4頭は嗜眠を経験した。最も一般的な毒性は貧血(15/30(50%))で、93.3%(14/15頭)はVeterinary Cooperative Oncology Group-Common Terminology Criteria for Adverse EventsのグレードI、6.6%(1/15)はグレードIIに分類された。2番目に多い毒性は好中球減少(14/30(46.6%))で、71.4%(10/14)はグレードI、28.6%(4/14)はグレードIIIに分類された。最も少ない血液毒性は、血小板減少(4/30(13%))で全てグレードIだった。好中球減少は主に2週目及び3週目肘に発生した;しかし、基礎値と比べ好中球数に有意な減少はなかった。基礎値と比べ、6週から12週の間に好中球数は増加し、Hctは減少した。血小板数に変化は観察されなかった。

臨床的関連:ビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法は、血液毒性を誘発する;しかし、これはほとんどが低グレードで、大きな介入を必要としなかった。ビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法は、高グレードあるいは転移性MCTsの犬でよく許容する。(Sato訳)
■肥満細胞腫の犬の白血球比に対する酸抑制剤の効果の回顧的評価
Retrospective evaluation of the effect of acid suppressant drugs on leukocyte ratios in dogs with mast cell tumors
J Vet Intern Med. 2024 Jun 18.
doi: 10.1111/jvim.17133. Online ahead of print.
Sydney Oberholtzer , Xiaojuan Zhu , Andrea Dedeaux , Olya Martin , Emily N Gould

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背景:酸抑制剤(ASDs)は一般に、胃酸産生を抑えるのに使用されるが、ASDsは免疫調節効果を発揮するといういくつかのエビデンスが存在する。ASDsを日常的に処方されている犬において、そのような効果は調査されていない。

仮説:無処置の犬と比べ、ASDsで治療されている犬は、治療後の白血球比に違いを示すだろう

動物:肥満細胞腫(MCTs)の犬51頭

素材と方法:この回顧的研究にAS無治療、あるいはASDs(すなわち、ヒスタミン-2-受容体阻害薬(H2RA)あるいはプロトンポンプ阻害薬(PPI))で治療しているMCTの犬を含めた。犬は3つの処置群に分類し、白血球比(好中球:好酸球、リンパ球:単球、好中球:リンパ球(NLR))を治療前後で算出した。mixed effects analysis of variance on ranksを使用し、治療間、治療前と治療後タイムポイント間、各治療に対する治療前と治療後タイムポイントの違いを評価した。抗ヒスタミン剤、コルチコステロイドおよび化学療法剤の併用は、交絡因子として評価した。

結果:ファモチジン(n=14/14)およびオメプラゾール(n=12/12)は、唯一使用されたH2RAとPPIだった。PPI治療あるいはAS無治療の犬と比べ、ファモチジンを投与された犬は、治療前から治療後にNLR中央値が有意に増加していた(3.429;範囲、1.417-15から5.631;範囲2.654-92;P<0.01)。グループ間で化学療法剤あるいはコルチコステロイド使用に違いはなかった。

結論:オメプラゾールあるいはAS無治療の犬と比べ、ファモチジンで治療した犬のNLRに有意差を確認した。(Sato訳)
■高グレード、ステージ2肥満細胞腫:局所および全身治療の犬の結果
High-Grade, Stage 2 Mast Cell Tumors: Outcome in Dogs With Local and Systemic Therapy
J Am Anim Hosp Assoc. 2023 Jul 1;59(4):167-176.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7319.
Rhonda Burge , Kevin D Woolard , Jennifer L Willcox , Robert B Rebhun , Jenna H Burton , Sami Al-Nadaf , Katherine A Skorupski

犬の肥満細胞腫(MCTs)はかなり不定な臨床的挙動を持ち、個々の犬の結果の予測は未だ難しい。多くの研究は、様々な腫瘍グレード、臨床ステージあるいは治療の犬を組み合わせて、それらの結果を混乱させている。

この回顧的研究の目的は、適切な局所の外科的治療±放射線療法と補助的細胞毒性性化学療法で治療した高グレード、ステージ2の皮膚MCTsの特定の犬の集団で、結果と予後因子を判定することだった。

17頭の犬が組み込み基準に合い、生存期間中央値は259日だった。局所再発、腫瘍の位置、潰瘍の存在は、全て生存期間短縮に関係した。腫瘍の大きさ、有糸分裂数、化学療法プロトコール、リンパ節分類、放射線療法は、結果と有意に関係しなかった。この研究において、積極的な局所および全身療法を受け、局所リンパ節転移のある高グレードMCTsを特徴とする犬の特定集団の生存期間中央値は約8.5か月だった。

潰瘍化した腫瘍、再発腫瘍、頭部に腫瘍がある犬は、積極的な治療にかかわらず結果がより悪かった。それらの結果は、この特定集団の犬において代替治療の組み合わせを探る今後の研究に対して比較の基礎として役立つかもしれない。(Sato訳)
■皮下肥満細胞腫:43頭の犬の前向き多施設臨床病理および予後研究
Subcutaneous mast cell tumours: A prospective multi-institutional clinicopathological and prognostic study of 43 dogs
Vet Rec. 2023 May 24;e2991.
doi: 10.1002/vetr.2991. Online ahead of print.
Laura Marconato , Damiano Stefanello , Fabrizio Solari Basano , Eugenio Faroni , Mauro Dacasto , Mery Giantin , Giuliano Bettini , Luca Aresu , Ugo Bonfanti , Walter Bertazzolo , Maurizio Annoni , Cristina Lecchi , Silvia Sabattini

背景:犬の皮下肥満細胞腫(ScMCTs)は予後が良いと思われている。しかし、結果の予測に使用できるバイオマーカーは現在限られている。

方法:多施設前向き研究を新しい予後マーカーを確認するために行った。ScMCTの初回発生の犬を原発腫瘍切除と領域リンパ節切除に登録した。転移がないことで、その犬をモニターし、明らかに転移リンパ節(組織学的リンパ節3、HN3)のある犬は補助的ビンブラスチンを投与した。

結果:43頭の犬を登録した:15頭(34.9%)は少なくとも1つのHN3リンパ節があり、ビンブラスチンの投与を受け、28頭(65.1%)はモニターした。3つの腫瘍はexon8および9c-kit変異があった。8頭(18.6%)は腫瘍の進行があり、5頭(11.6%)はMCT関連で死亡した。1-および2-年生存率はそれぞれ90%と77%だった。進行のリスク増大に有意に関係する変数は、高い細胞グレード、4/10高倍率視野(hpf)以上の有糸分裂数(MC)と23以上のKi-67-インデックスが含まれた。また、4/10hpf以上のMCは、腫瘍関連死のリスク増大にも関係した。

制限:センチネルよりも領域リンパ節切除をそれらの犬で実施した。犬の腫瘍紹介センターで登録し、過去の集団と比べ、異なった集団で構成された。

結論:ScMCTs の予後は良好である。しかし、この研究で入院時の転移率は過去の報告よりも高く、腫瘍のサブセットは多様式治療にもかかわらず致死的結果と関係した。増殖活性と細胞グレード判定は、ScMCTのより攻撃的な挙動を予測するかもしれない。(Sato訳)
■手術±補助的治療を行った皮下肥満細胞腫の犬の結果と予後因子の回顧的解析
Retrospective analysis of outcome and prognostic factors of subcutaneous mast cell tumours in dogs undergoing surgery with or without adjuvant treatment
Vet Comp Oncol. 2023 Apr 30.
doi: 10.1111/vco.12902. Online ahead of print.
E Treggiari , P Valenti , I Porcellato , G Maresca , G Romanelli

犬の皮下肥満細胞腫(SC MSTs)は、それらの皮膚の肥満細胞腫と比べた時、異なる生物学的挙動を示す可能性がある。手術および/あるいは補助的化学療法を受けたSC MCTsの犬の結果に関する情報は少ない。

この研究の目的は、手術でSC MCTsを切除し補助的治療を行った、あるいは行わなかった犬の結果を回顧的に再検討することだった。2つ目の目的は、同グループ内の予後因子を評価することだった。

52頭の犬を含めた。評価したリンパ節が早期あるいは明らかな転移と一致したものの再発率は、15%と63%だった。生存期間中央値(範囲83-1357日)と進行までの期間中央値(範囲14-1357日)は到達しなかった。

より短い生存期間を予測する因子は、年齢上昇(HR1.29、95%CI、1.06-1.55、p=.0092)、受診時の臨床症状の存在(HR10.44、95%CI、2.69-40.52、p=.0007)、有糸分裂数>4(HR8.69、95%CI、2.55-29.55、p=0.0005)、多核の存在(HR4.21、95%CI、1.35-13.18、p=.0135)、ネオアジュバントおよび補助的化学療法の使用(HR7.16、95%CI、1.26-40.73、p=.0266)が含まれた。腫瘍の増大を加えた同じ因子が、より短い無増悪期間(PFS)を予測し、年齢上昇(p=.0012)、受診時の臨床症状の存在(p=.0045)、腫瘍増大(p=.0004)、有糸分裂数>4(p=.0004)、多核の存在(p=.0282)、ネオアジュバントおよび補助的化学療法の使用(p=.0485)が含まれた。多変量解析で総生存期間に有意な変数はなかった。

化学療法を必要としない犬(HR0.14、95%CI、0.03-0.68、p=.0148)や、多変量解析でPFSに対しこの変数が有意なまま(HR0.13、95%CI、0.02-0.76、p=.02)の症例の生存期間はより長かった。

結論として、我々の研究は、SC MCTsの犬(負の予後因子がない)犬は、手術単独で治療した時に生存期間が延長するかもしれないと示唆する。犬の生物学的に侵略的なSC MCTsに対する補助的治療の役割を明らかにする追加研究が必要である。(Sato訳)
■耳介の犬肥満細胞腫の節転移、生物学的挙動、予後のパターン:多施設回顧的研究
Patterns of nodal metastases, biological behavior and prognosis of canine mast cell tumors of the pinna: a multi-institutional retrospective study
Vet Comp Oncol. 2023 Mar 12.
doi: 10.1111/vco.12893. Online ahead of print.
Carmit Chalfon , Finotello Riccardo , Silvia Sabattini , Irina Gramer , Joanna Morris , Marina Aralla , Emanuela Morello Maria , Erica Ferraris , Sofia Ramos , Gerry Polton , Schiavo Luca , Jane Dobson , Veronica Cola , Laura Marconato

耳介の犬皮膚肥満細胞腫(cMCTs)は、アグレッシブな生物学的挙動と関係しているが、データは不足している。組織学的グレード判定でこれまで得られた知識と、リンパ節(LN)ステージングの価値は、この解剖学的部位をよりよく特徴づける助けとなるかもしれない。

1つ目の目的は、耳介のcMCTにおいて、LN転移の頻度、場所、組織学的所見を述べることだった。2つ目の目的は、予後を評価することだった。

腫瘍およびセンチネル(SLN)あるいは領域LN(RLN)の切除を行った耳介のcMCTを持つ犬の医療記録を再検討した。進行までの期間(TTP)、腫瘍特異的生存期間(TSS)に影響する潜在的予後変数を調査した。

39頭の犬を含めた:19頭(48.7%)はKiupel高グレード(K-HG)、20頭(51.3%)は低グレード(K-LG)MCTsだった。18頭(46.1%)はSLNマッピングを行った:17症例(94.4%)で浅頚リンパ節は少なくともSLNの1つだった。22頭(56.4%)はLN転移があった;浅頚リンパ節は常に侵されていた。

多変量解析において、K-HGのみが進行のリスク増加(p=0.043)と腫瘍関連死(p=0.021)に関係した。TTPおよびTSSの中央値は、K-HG犬でそれぞれ270日と370日だった;K-LGの腫瘍の犬でそれらは到達しなかった(p<0.01)。

耳介のcMCTsは、K-HGのことも多く、またLN転移の頻度がより高い;しかし、我々は組織学的グレード判定の独立した予後価値を確認した。多様式治療は、好ましい長期結果に導くかもしれない。さらに、浅頚リンパ節は、最も多いSLNである。(Sato訳)
■犬の皮下肥満細胞腫の予後に影響する因子:45症例
Factors affecting prognosis in canine subcutaneous mast cell tumors: 45 cases
Vet Surg. 2023 Feb 14.
doi: 10.1111/vsu.13944. Online ahead of print.
Nathan L Cherzan , Katy Fryer , Blaise Burke , John Farrelly

目的:皮下肥満細胞腫(SQMCT)の臨床結果を評価することと、よりアグレッシブな疾患の臨床および組織学的特徴を確認すること

研究計画:回顧的研究

動物:48のSQMCTsのある45頭の犬

方法:犬の情報、臨床および病理組織学的データ(多核、壊死、局所筋肉への浸入、浸潤性増殖パターン、腫瘍のグレード(記載があれば)、有糸分裂指数、手術マージン)に対し、医療記録を再検討した(2011-2021)。局所再発の有無、リンパ節転移、生存期間、犬の結果を評価する他のパラメーターも記録した。

結果:局所再発は17.8%(8/45頭)で起こり、11.1%(5/45頭)は転移性の再発、26.7%(12/45頭)はリンパ節転移を起こした。リンパ節転移のある犬の無病期間(DFI)中央値は、194日(18-1864)だったが、リンパ節転移のない犬のDFI中央値は到達しなかった(p=.0012)。リンパ節転移のある犬の生存期間中央値は551日(110-2050)で、転移のない犬は1722日(10-1722)だった(p=.0432)。局所再発は、局所再発がない犬の生存期間中央値1722日(10-1722)に比べ、551日(80-2050)と有意に短かった(p=.0038)。浸潤性腫瘍の犬のDFI中央値は268日(3-1722)で、浸潤性パターンのない犬のDFIは1864日(10-1864)で中央値に到達しなかった(p=.011)。

結論:リンパ節転移は、無病期間と生存期間を減少させた。

臨床的意義:皮下肥満細胞腫は、過去の報告よりもアグレッシブな疾患かもしれない。
■不完全あるいはぎりぎりに切除された犬の皮膚肥満細胞腫の傷跡の修正
Scar revision for incompletely or narrowly excised cutaneous mast cell tumors in dogs
Can Vet J. 2023 Jan;64(1):63-69.
Janet A Grimes , Meenakshi Rajeev , Mandy L Wallace , Travis Laver , Milan Milovancev

目的:肉眼的には疾患のない不完全あるいはぎりぎりに切除された皮膚肥満細胞腫に対し、傷跡の修正を行った犬の臨床的特徴と結果を述べる

動物:54の傷跡の修正を行った52頭の犬

方法:シグナルメント、腫瘍のタイプ/部位、術前診断、最初の切除および傷跡の修正手術に対する手術および病理所見、フォローアップに対して集めた情報を伴う遡及的記録再検討。記述統計を作成した。

結果:初回切除前、細胞診は腫瘍の38.9%(21/54)で実施され、最初の手術報告に外科的切除マージンを記述することは珍しかった(14.6%(7/48)の手術)。残存腫瘍は29.6%(16/54)の傷跡で病理学的に確認された。傷跡の修正後の局所再発は、全ての傷跡の3.7%(2/54)で発生した(フォローアップ中央値881.5日(範囲0-3317日);2頭の傷跡は、残存肥満細胞腫の完全切除あるいは傷跡の修正における肥満細胞腫のエビデンスはなく、2頭とも放射線療法を受けていなかった。

結論:不完全/ぎりぎりに切除された皮膚肥満細胞腫に対し、残存疾患の確認は珍しく、過去に報告されたものより局所再発は少なかった。

臨床関連:計画されない初期切除の傷跡の修正は、高い確率で永続的な腫瘍の寛解が得られると思われる。原発腫瘍の細胞診で手術プランを説明することにより、必要ならば修正を容易にするかもしれない外科的マージンを詳細にすることで、主治医は計画しない切除を避けるように奨励される。(Sato訳)
■肥満細胞腫のステージングにおける脾臓と肝臓細胞診の有用性
Utility of Spleen and Liver Cytology in Staging of Canine Mast Cell Tumors
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Jul 1;58(4):168-175.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7006.
Megan Brown , Jessica Hokamp , Laura E Selmic , Rachel Kovac

腹部超音波検査と脾臓および肝臓の細胞診は、犬の肥満細胞腫(MCTs)に対する通常のステージングの一部である。しかし、そのような検査は病的状態とコスト増加に関係する。

ゆえに、この研究の目的は、犬MCTsにおいて、脾臓の細胞診が肝臓の細胞診を予測するのかどうか、どのような患者あるいは腫瘍の変数が、脾臓および/あるいは肝臓転移に関係するのかを判定することだった。

MCTsの犬で脾臓および肝臓の細胞診の記録を再検討した。

205頭を含めた。全体で、22頭(10.7%)に転移があり、21頭(10.2%)は脾臓、13頭(6.3%)は肝臓に転移があり、12頭(5.9%)は両方に転移があった。脾臓細胞診陽性(あるいは陰性)の犬に対し、肝臓細胞診陽性(あるいは陰性)であるオッズ比は233.49だった。しかし、脾臓細胞診陰性は、細胞診陽性(0.54)よりも高い適中率(0.99)だった。最後に、局所および全身症状の存在、腫瘍のサイズは、脾臓、肝臓、および/あるいは脾臓あるいは肝臓転移に関係した。

犬MCTsのステージングにおいて、脾臓細胞診は肝臓細胞診を予測し、腫瘍サイズの増大、局所あるいは全身症状は、内臓転移のリスク増加と関係することを、それらの結果は示唆する。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫の犬で短期コースの抗炎症プレドニゾン治療前後の腫瘍グレードおよび増殖指数の評価
Evaluation of Tumor Grade and Proliferation Indices before and after Short-Course Anti-Inflammatory Prednisone Therapy in Canine Cutaneous Mast Cell Tumors: A Pilot Study
Vet Sci. 2022 Jun 7;9(6):277.
doi: 10.3390/vetsci9060277.
Shawna Klahn , Nikolaos Dervisis , Kevin Lahmers , Marian Benitez

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犬肥満細胞腫(MCTs)の切除可能性の改善、および関連する炎症を抑えようとするために、グルココルチコイド投与は一般的な臨床的処置である。しかし、犬MCTsの組織学的特徴および増殖指数に対する腫瘍免疫賦活薬のグルココルチコイドの影響は不明である。

この研究の目的は、MCTsの犬において、短期コースの抗炎症腫瘍免疫賦活薬プレドニゾン投与後、腫瘍グレード、有糸分裂指数、Ki67、AgNOR、AgNORxKi67スコアの変化を評価することだった。

これは前向き単群予備研究だった。無治療の細胞学的にMCTsを確認した飼育犬を登録した。犬は最初に切開バイオプシーを実施し、続いて10-14日コースの抗炎症性プレドニゾロンと外科的切除を行った。全ての組織学的サンプルは、無作為に隠して一人の病理医により評価してもらった。無染色の処置前後のサンプルを商業的ラボに提出し、Ki67およびAgNOR免疫組織化学検査を行った。

11の腫瘍のある11頭の犬を登録した。処置前後の有糸分裂指数、Ki67、AgNOR、Ki67xAgNORの組織学的パラメーターに統計学的差はなかった。腫瘍グレードの割り当てに治療前後の臨床的重要な変化はなかった。

犬のMCTsにおいて、短期コースの抗炎症性プレドニゾンは、グレード判定に影響する組織学的パラメーターを変えることはなく、あるいは増殖指数を有意に変化させることはないと思われる。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫パートI:臨床および生存性の結果
Canine mast cell tumours part I: Clinical and survival outcomes
Vet Med Sci. 2022 May 3.
doi: 10.1002/vms3.812. Online ahead of print.
Vanessa S Tamlin , Cynthia D K Bottema , Lucy Woolford , Elizabeth C Dobson , Allan E Kessell , Anne E Peaston

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背景:犬は、肥満細胞腫(MCTs)発生に対する種特異性の罹病性を持つ。KIT原腫瘍形成遺伝子(KIT)の変異は、肥満細胞の腫瘍形成生物学に寄与することが分かっている。犬において、最も一般的なKIT変異は、従来の病理組織学的腫瘍グレーディングに対する有効な予後的補足と考えられているexon11において遺伝子内縦列重複(ITD)の1つである。

目的:このMCTと診断されたオーストラリアの犬の集団の回顧的研究の目的は、KIT exon 11 ITD変異状況と既知の予後を予測する臨床および病理学的指数の重要性を調べることだった。

方法:皮膚(n=189)あるいは皮下(n=31)MCTの犬220頭の臨床パラメーター、生存データ、KIT変異状況を集め、評価した。

結果:多変量モデルの少なくとも1つにおいて、腫瘍グレード(皮膚Kiupel低あるいは高グレード)、腫瘍皮下の部位、多発性MCTs、手術時の転移、高齢は、腫瘍切除後の6か月目、あるいは12か月目の結果の予測において統計学的に有意だった(MCT-関連死および/あるいは2度目のMCT診断)。KIT exon 11 ITD変異状況は、最終的な多変量モデルの何れにおいても有意な予測因子ではなく、組織学的高グレードと強く相関した(p<0.001)。

結論:この犬のサンプルにおいて、腫瘍の組織学的グレーディングは、依然、MCTの結果に対し単体の最もパワフルな予後指標だった。しかし、複数の予後的に重要なパラメーターの同時評価は、各犬に対する治療的管理をインフォームするための潜在的価値ある情報を提供する。(Sato訳)
■Kiupel高グレード皮膚肥満細胞腫と明らかな転移性所属リンパ節の犬においてリンパ節切除は結果を改善する
Lymphadenectomy improves outcome in dogs with resected Kiupel high-grade cutaneous mast cell tumours and overtly metastatic regional lymph nodes
J Small Anim Pract. 2022 Jun 22.
doi: 10.1111/jsap.13525. Online ahead of print.
C Chalfon , S Sabattini , R Finotello , E Faroni , D Guerra , L Pisoni , L Ciammaichella , M E Vasconi , M Annoni , L Marconato

イントロダクション:従来、ステージII Kiupel高グレード皮膚肥満細胞腫の犬の予後は悪いと考えられている。

目的:この研究の目的は、Kiupel高グレード皮膚肥満細胞腫と明らかな所属リンパ節転移のある犬において、その結果に対しリンパ節切除の影響を調査することだった。

素材と方法:完全にステージ分類されたKiupel高グレード皮膚肥満細胞腫と、明らかおよび/あるいは確実に所属リンパ節転移があり、原発腫瘍の切除と補助的内科治療を行った犬のデータを抽出した。細胞診で所属リンパ節転移があり、リンパ節切除を行わなかった犬と、リンパ節切除を行い、明らかなリンパ節転移の組織診断があった犬と比較した。

結果:49頭の犬を含め、18頭はリンパ節切除を行わず、31頭はリンパ節切除を行っていた。リンパ節切除を行わなかった犬の進行までの期間中央値(150日、95%CI、129-170)は、その他の犬(229日、95%CI、191-266)と比べて有意に短かった。
リンパ節切除を行わなかった犬の生存期間中央値(250日、95%CI、191-308)も、リンパ節切除を行った犬(371日、95%CI、311-430)と比べて短かった。多変量解析において、リンパ節切除をしない場合、全体の腫瘍進行(ハザード比:2.05、95%CI、1.02-4.13)、リンパ節の進行(ハザード比:3.4、95%CI、1.65-7.02)、腫瘍関連死(ハザード比:3.63、95%CI、1.72-7.66)のより高いリスクと関係し、腫瘍の大きさは、局所再発のより高いリスクと関係した(ハザード比:3.61、95%CI、1.06-13)。

臨床的意義:所属リンパ節切除は、生物学的に侵略性が強い皮膚肥満細胞腫の犬の結果を改善するかもしれない。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫のメシル酸イマチニブによる治療:従来のビンブラスチンとプレドニゾン療法と比較した反応と有害事象の評価
Imatinib Mesylate for the Treatment of Canine Mast Cell Tumors: Assessment of the Response and Adverse Events in Comparison with the Conventional Therapy with Vinblastine and Prednisone
Cells. 2022 Feb 7;11(3):571.
doi: 10.3390/cells11030571.
Thais Rodrigues Macedo Genilson Fernandes de Queiroz , Thaís Andrade Costa Casagrande , Pâmela Almeida Alexandre , Paulo Eduardo Brandão , Heidge Fukumasu , Samanta Rios Melo , Maria Lucia Zaidan Dagli , Ana Carolina B C Fonseca Pinto , Julia Maria Matera

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肥満細胞腫(MCTs)は犬の一般的な腫瘍で、その疾患の治療は、外科手術、多剤化学療法とチロシンキナーゼ阻害剤による標的療法が含まれる。

この研究の目的は、犬の皮膚MCTsにおいて、ビンブラスチンとプレドニゾロン(VP)を用いた従来の治療と比べ、メシル酸イマチニブ(IM)での治療の反応と有害事象を評価することだった。

24頭の犬を研究に含めた;13頭はIMで治療し、11頭はVPで治療した。腫瘍組織サンプルは組織診段に提出し、グレード判定とKIT免疫染色を行った。治療反応はVCOG基準に従い、CTにより評価した。有害事象はVCOG-CTCAE基準に従い分類した。

IMとVP群は、同じような犬種、性別、年齢、MCTの位置、WHOステージ、リンパ節転移プロフィールだった。ほとんどのMCTsはグレード2/lowで、KIT-パターン2と3だった。客観的反応率(ORR)はVP群(9.09%)よりもIM群(30.79%)で有意に高かった。IM群の有害事象(AE)は全てグレード1で、VPと有意差があった。

結果からIMはVPと比べより良いORRで、重度有害事象は少なく、低グレード犬MCTsの治療に対し適したオプションといえる。(Sato訳)
■高グレードおよび転移性の犬の肥満細胞腫に対するビンブラスチンとパラディアの併用
Combination vinblastine and palladia for high-grade and metastatic mast cell tumors in dogs
Can Vet J. 2021 Dec;62(12):1335-1340.
Johanna E Todd , Sandra M Nguyen , Joanna White , Veronika Langova , Penelope M Thomas , Sophia Tzannes

犬の高グレードおよび転移性の肥満細胞腫は、その予測できない生物学的挙動のため、予後が不明確である。理想的な化学療法計画はまだ確立されていない。

この研究の目的は、高グレードおよび転移性の肥満細胞腫に対するビンブラスチンとトセラニブを併用した時の効果と毒性をまとめることだった。

28頭の犬が、高グレード、リンパ節転移あるいはステージIV疾患と分類された。個体群統計、疾患、治療変数は、カテゴリー間で比較した(連続的データに対しKruskal-Wallisテスト、カテゴリー的データに対しFisher's Exactテスト)。生存期間と無増悪期間(PFI)を算出し、グループ間で比較した(log rankテスト)。

PFIは310日(95%CI、155-1425日)、総生存期間は373日(95%CI、226-1219日)だった。PFI(P=0.9)あるいは生存期間(P=0.5)に対し、疾患カテゴリー間の違いはなかった。

このプロトコールの許容性は良く、肝酵素活性の上昇と消化管毒性は最も多く観察された。高グレード、転移性およびステージIV疾患の犬において、無増悪期間と生存期間は同様だった。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫の治療に対する補助的放射線療法の結果:300頭の犬の多施設観察研究
Outcomes of adjunctive radiation therapy for the treatment of mast cell tumors in dogs and assessment of toxicity: A multicenter observational study of 300 dogs
J Vet Intern Med. 2021 Oct 21.
doi: 10.1111/jvim.16264. Online ahead of print.
Sarah L Mason , Charles Pittaway , Begona Pons Gil , Onne-Marju Russak , Katie Westlake , Davide Berlato , Jérôme Benoit , Joanna Morris , Jane Margaret Dobson

背景:肥満細胞腫(MCT)の犬の不完全な外科的切除に対する補助として放射線療法が一般的に使用されるが、最適な量および分割方法は調べられていない。

仮説:補助的放射線療法を行ったMCTの犬の大規模集団の結果(局所再発までの時間、犬の生存性と毒性)を評価した。

動物:補助的放射線療法で治療した302のMCTがある300頭の犬

方法:回顧的観察研究。4か所の獣医放射線センターの臨床記録を再調査した。

結果:局所再発率は放射線プロトコールに関係なく同様で、6.6%の犬は中央値526日で皮膚MCTの再発を起こした。局所再発率は、高および低リスクMCTで同様だった。死亡に関係するMCTは全ての犬の19%で報告され、それらの疾患で死亡したのは、低リスクMCTの犬の13%に対し、高リスクMCTの犬の29%だった。放射線療法後、再発したSC MCT(SCMCT)はなく、それらの疾患で死亡していると報告されたSCMCTの犬は7%のみだった。両プロトコールで軽度の晩発毒性が良く見られ、治療から複数年で1.9%の犬に重度晩発毒性が発生した。

結論と臨床的重要性:我々の研究は、犬の皮膚およびSCMCTの不完全あるいはマージンの狭い切除の長期コントロールに対し、補助的放射線の使用を支持する。より中程度の照射量と分割プロトコールは、犬の低リスクMCTの補助的治療に適しているかもしれない。異なるリスクカテゴリーのMCTに対し、最適な照射量と分割を確立するため、大規模多施設前向き研究が必要である。(Sato訳)
■細胞学的に犬高グレード肥満細胞腫と診断された犬18頭のチジラノールチグレートによる腫瘍内治療
Intratumoural Treatment of 18 Cytologically Diagnosed Canine High-Grade Mast Cell Tumours With Tigilanol Tiglate
Front Vet Sci. 2021 Aug 27;8:675804.
doi: 10.3389/fvets.2021.675804. eCollection 2021.
Graham K Brown , Justine E Campbell , Pamela D Jones , Thomas R De Ridder , Paul Reddell , Chad M Johannes

犬の高グレード肥満細胞腫(HGMCT)は予後が悪く、本質的により侵襲が強く、高率で局所再発が起こる。

この回顧的研究の主な目的は、局所治療オプションとしてチジラノールチグレート(TT)の腫瘍内投与の効果を評価することだった。

獣医病理学者により高グレードあるいは推定高グレードMCTと細胞学的に診断された肥満脂肪腫(MCT)のある18頭の犬をTTで治療した。TTの用量は腫瘍の容積(0.5mg TT/cm3 腫瘍容積)に基づき、腫瘍マス全体に分布するように、ルアーロックシリンジとfanning techniqueを用い腫瘍内に投与した。効果は、固形腫瘍の反応評価基準(RECIST)を用い、28日と84日目に治療に対する完全寛解(CR)の有/無で評価した。28日後にCRに達していない犬に対し、2回目の腫瘍内TT注射を行った。

この研究で18頭中10頭(56%)は、1回目あるいは2回目の治療後、少なくとも84日までにCRに達し、維持した。6頭の犬は2年時の評価で生存し、利用可能で、それらのうち3頭は再発がなく、さらに3頭は2度目の治療サイクル後、再発がなかった。

チジラノールチグレートは、HGMCTの局所治療で効果を示し、最初の治療後にCRに達しない場合、2回目の注射でより高い効果が認められた。治療部位再発(TSR)の事象において、その腫瘍は追加の治療サイクルでコントロールできるかもしれない。

チジラノールチグレートは、許容できない麻酔リスクがある、あるいは外科的切除が困難な部位に腫瘍があるようなHGMCTの犬に対する代替局所治療アプローチを提供する。(Sato訳)
■肥満細胞腫の直径に対するマージン比率で切除した23頭の犬の長期術後結果
Long-term postsurgical outcomes of mast cell tumors resected with a margin proportional to the tumor diameter in 23 dogs
J Vet Med Sci. 2020 Dec 21.
doi: 10.1292/jvms.20-0281. Online ahead of print.
Teruo Itoh , Atsuko Kojimoto , Kazuyuki Uchida , James Chambers , Hiroki Shii

Free article

少なくとも1つの顔面平面を含む腫瘍の最大幅直径に対する側面外科マージン比率で切除した23頭の皮膚あるいは皮下肥満細胞腫(MCTs、n=25)の術後結果を評価した。

腫瘍の直径範囲は0.3-2.6cm(中央値:0.9cm)で、全腫瘍はKiupel’s低グレードと組織学的に診断された。20頭は組織学的に完全、3頭は密接(深部マージン)、2頭は不完全(深部マージン)だった。

フォローアップ161-2219日(中央値:976日)の間に、初回手術部位で局所再発した犬はいなかった。

それらの結果は、外科マージン比率で低グレードの比較的小さいMCTsの切除は、高い成功率の実用的処置であると示唆する。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫の犬85頭の初回の不十分な切除後に行った術創再手術の評価(2000-2013)
Evaluation of scar revision after inadequate primary excision of cutaneous mast cell tumors in 85 dogs (2000-2013)
Vet Surg. 2021 Mar 5.
doi: 10.1111/vsu.13619. Online ahead of print.
Georga T Karbe , Elizabeth Davis , Jeffrey J Runge , Dorothy C Brown , David E Holt

目的:肥満細胞腫(MCT)の不完全切除に続き、術創の修正手術を行った犬の残存腫瘍の頻度、局所再発および疾患の進行に関係するファクターを判定する

研究計画:回顧的研究

動物:85頭の犬

方法:2000年1月から2013年4月までの医療記録を再調査した。初回の不十分なMCTの切除後、術創を修正する再手術を行った犬を含めた。シグナルメント;当初の腫瘍のサイズ;部位とグレード;初回手術から再手術までの期間;切除した術創内のMCTの有無;局所再発;リンパ節転移;全身転移;死亡原因を記録した。

結果:85頭の犬の86の腫瘍を研究した。残存のMCTは23(27%)の切除した術創で見つかった。7つ(8%)の残存MCTがあった術創は、マージン不完全あるいはnarrowだった。局所再発は3頭(4%)の犬の212日、555日、993日目に報告された。領域あるいは全身転移のある10頭(14.5%)は、中央値207日(64-1583)で疾患が進行した。切除した術創のマージンの状況およびMCTの存在は、局所再発あるいは疾患の進行に関係しなかった。リンパ節転移(p=.004)、局所領域再発(p=.013)、疾患の進行(p=.001)は、グレードIIIの腫瘍で有意に起こる確率が高かった。

結論:27%の再切除した術創は残存MCTを含んでいたが、再手術後の再発はあまり見られなかった。
臨床的意義:術創の再切除後の局所再発および疾患進行の確率を評価するとき、補助治療の必要性を判定するときに、臨床医は第一に腫瘍のグレードを考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫における組織および肉眼的特徴に対するプレドニゾンの影響
The effect of prednisone on histologic and gross characteristics in canine mast cell tumors
Can Vet J. 2021 Jan;62(1):45-50.
Ken J Linde , Stephen L Stockdale , Michael B Mison , James A Perry

この研究の目的は、皮膚および皮下肥満細胞腫の組織学的特徴に、ネオアジュバントプレドニゾン療法が影響するかどうかを判定することだった。

無処置の>1cm径の肥満細胞腫(MCT)の犬28頭を無作為に、盲検様式でプレドニゾンあるいはプラセボを投与する群に振り分けた。肥満細胞腫の容積を、切開及び切除生検前に算出した。切開生検に続き、犬にプレドニゾロン(1mg/kg)1日1回あるいはプラセボを切除生検までの7-14日間投与した。全ての腫瘍に対し、皮膚MCTの腫瘍グレード、有糸分裂数、異型性を記録した。

プレドニゾンの周術投与は、腫瘍グレード、異型性あるいは有糸分裂数に有意な影響を及ぼさなかった。腫瘍の容積は、プレドニゾン投与で有意に減少した。

一般的な低および中グレードMCTの集団において、腫瘍切除を容易にするため、MCTの減容積のためのネオアジュバントプレドニゾンの使用は、腫瘍の組織学的特徴を変化させるという重大な懸念なく考慮できる。(Sato訳)
■外科手術と単剤ロムスチンで治療した中悪性度低有糸分裂指数高Ki67肥満細胞腫の犬の結果
Outcome of dogs with intermediate grade low mitotic index high Ki67 mast cell tumours treated with surgery and single agent lomustine
Aust Vet J. 2021 Feb 9.
doi: 10.1111/avj.13059. Online ahead of print.
S Néčová , S L Mason , S M North

目的:この回顧的研究の目的は、低有糸分裂指数(MI)で高Ki67のグレードIIの肥満細胞腫(MCT)の犬を補助的ロムスチンで治療した時の結果を評価することだった。

動物:初診時に転移疾患のエビデンスがなく、低MI(≦5/10HPF)、高Ki67(>1.8%)の自然発生のグレードII肥満細胞腫を補助的化学療法で治療した飼育犬

方法:3回または4回の計画したサイクルで、ロムスチンを3週間ごとに投与した。治療への反応は、肝臓および脾臓の定期的な再ステージング超音波検査±細胞病理検査、あるいは紹介獣医師からの医療記録を通して評価した。無病期間(DFI)および生存期間中央値(MST)をカプラン-メイヤー法を用いて算出した。

結果:21頭の犬を含めた。全ての犬は外科的切除を行い、2頭は補助的放射線療法を行った。局所再発を起こした犬はいなかった。3頭の犬(14.3%)は転移を起こし、それらの犬のDFIは141、186、223日だった。研究集団全体のフォローアップ期間の中央値は1112日(358-2619)だった。転移疾患のある犬のMSTは417日だった。グループ全体のMSTは到達しなかった。1年-および2年-生存率はそれぞれ95.2%と90.5%だった。

結論と臨床関連:低MI/高Ki67の補助化学療法を行わなかったMCTの犬の同様の集団で、過去に発表されたデータと比較し、この研究集団は腫瘍の再発率が低く、生存性が改善していた。(Sato訳)
■不完全切除の肥満細胞腫の手術部位における細針吸引細胞診の予測能力
Predictive ability of fine-needle aspirate cytology for incompletely resected mast cell tumor surgical sites
Can Vet J. 2021 Feb;62(2):141-144.
Christopher E Lee , Stephanie S Lindley , Annette N Smith , Philippe Gaillard , Ralph A Henderson , Brad M Matz

この研究の目的は、以前の手術部位の細針吸引細胞診は、不完全切除の肥満細胞腫(MCTs)の再発を予測できるのかどうかを評価することだった。

MCTsと診断された犬を電子カルテで検索した;不完全切除のMCTsと組織学的に確認し、手術後60日以内に傷跡の吸引細胞診により評価した犬を分析に加えた。変数はフィッシャーの正確確率検定とロジスティック回帰を用い群間で比較した。

29頭の皮膚および7頭の皮下腫瘍を評価した。組織あるいは細胞診で確認した局所再発は13.8%の犬で発生した。手術部位の細胞状態以外の変数に有意差は確認されなかった。残存肥満細胞腫がない手術部位の吸引細胞診の陰性適中率は93.5%だった;全体の予測精度は88.9%だった。

この報告で評価した犬に対し、手術部位の吸引細胞診は、不完全切除のMCTsに対する局所疾患コントロールの予測的なものだった。(Sato訳)
■肥満細胞腫をチギラノールチグラートの腫瘍内投与で治療した犬の創形成、創の大きさ、創治癒の進行
Wound formation, wound size, and progression of wound healing after intratumoral treatment of mast cell tumors in dogs with tigilanol tiglate
J Vet Intern Med. 2021 Jan 12.
doi: 10.1111/jvim.16009. Online ahead of print.
Paul Reddell , Thomas R De Ridder , John M Morton , Pamela D Jones , Justine E Campbell , Graham Brown , Chad M Johannes , Peter F Schmidt , Victoria Gordon
Free article

背景:チギラノールチグラート(TT)は、犬の転移していない肥満細胞腫(MCTs)の腫瘍内投与に対する新しい小分子である。無作為化対照臨床研究において、TTの1回の投与で75%の犬が28日目までに完全寛解に達し、84日目には93%の犬に再発が見られなかった。TTの効果で重要なのは、処置前の腫瘍容積に関係する壊死腫瘍の脱落後の創の部分(組織欠損)だった。

目的:処置したMCTsの脱落後の創を述べ、創の領域の決定要因および創の治癒スピードを確認するため、過去の研究中に集めたデータを解析する

方法:腫瘍内TTの1回の投与後、84日以上たった117頭の犬の臨床記録から、創の存在、状況、領域を判定した。

結果:腫瘍の脱落は処置後3-14日で発生し、創床の肉芽組織が露出した。一般に、腫瘍脱落後の創領域は、処置前の腫瘍容積に関連し、記録された明白な創領域の最大は89%の犬が7日目だった。完全な腫瘍の消失を達成した犬において、全ての創は二次治癒により治癒に向かった。包帯および他の創傷管理が必要だったのは5頭だけだった。治癒までの時間(すなわち処置部位の再上皮化)は創領域と体の位置に依存し、ほとんどの創は治療後28日から42日の間に完全に治癒した。

結論:ほとんどの犬のTTを投与した腫瘍の脱落後の創領域および治癒は、一貫した臨床的パターンだった。(Sato訳)
■チギラノールチグラートの腫瘍内注射を用いた犬の肥満細胞腫の局所治療後の無再発期間12か月
Recurrence-free interval 12 months after local treatment of mast cell tumors in dogs using intratumoral injection of tigilanol tiglate
J Vet Intern Med. 2020 Dec 22.
doi: 10.1111/jvim.16018. Online ahead of print.
Pamela D Jones , Justine E Campbell , Graham Brown , Chad M Johannes , Paul Reddell
Free article

背景:チギラノールチグラート(TT)は、犬の肥満細胞腫(MCTs)の腫瘍内治療に対し、欧州医薬品庁に認可された新しい小分子である。アメリカの無作為化対照臨床効果及び安全性研究において、1回のTT注射を受けた116頭中85頭が、28日目に治療したMCTは完全寛解(CR)に達した。

目的:TT投与後6及び12か月の治療部位のMCTの再発を評価することで、アメリカでの研究の28日目に達したTT治療反応の耐久性を評価する。

動物:TTで過去に治療した85頭

方法:28日目にCRに達した犬において、病院の受診およびオーナーへの電話聞き取りからの記録を用い、治療部位のMCTの有無に対し回顧的に評価した。評価時に用いることができない犬は、最終解析に使用するそれらの犬の最終評価に対するデータおよびフォローアップが欠如していた時に考慮した。

結果:TT治療後12か月で、64頭が評価可能で、21頭は評価できなかった。評価できた犬のうち、57頭(89%)は治療部位に腫瘍がなく、7頭(11%)は再発した。全ての再発は、最初の6か月以内に起こり、12週以内が多かった(5/7、71%)。

結論と臨床的重要性:チギラノールチグラートは、犬のMCTの治療において耐久性のある長期局所反応をもたらせた。(Sato訳)
■犬と猫の皮膚肥満細胞腫:治療と結果の包括的レビュー
Canine and feline cutaneous mast cell tumour: a comprehensive review of treatments and outcomes
Top Companion Anim Med. 2020 Sep 3;100472.
doi: 10.1016/j.tcam.2020.100472. Online ahead of print.
M T Oliveira , M Campos , L Lamego , D Magalhães , R Menezes , R Oliveira , F Patanita , D A Ferreira

肥満細胞腫(MCT)あるいはmastcytomaは犬のもっとも頻度の高い悪性皮膚腫瘍の1つで、猫では2番目に多い。犬では年齢や犬種のようないくつかのファクターが、この腫瘍の発生と関連があると分かっているが、性別の傾向は確認されていない。猫では、シャムネコがこの疾患に対する特異的傾向が証明されている。イギリスでMCTの頻度の増加も他の猫種(バーミーズ、ロシアンブルー、ラグドール)で示唆される。性別の偏向はまだ確立されていない。犬と猫に対するいくつかの肥満細胞腫の治療アプローチは、ここ数年で提唱されており、非常に異なる結果を生んでいる。

このレビューはMCTと診断された犬と猫において、MCTの治療とその後の予後および生存期間との関連に関する現在の情報を示すつもりである。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫のマーカー発現と組織学的分類
Histological classification and expression of markers of canine mast cell tumors
Vet World. 2020 Aug;13(8):1627-1634.
doi: 10.14202/vetworld.2020.1627-1634. Epub 2020 Aug 18.
V S Cruz , J C A Borges , L L Nepomuceno , P A M Gonçalves , Y C L Prado , C Bianchi , M C S Fioravanti , E G Araújo

背景と目的:肥満細胞腫(MCTs)は犬で一般的な悪性腫瘍である。それらの生物学的挙動は不定で、予測できない。この研究の目的は、犬のMCTsのマーカー発現と組織学的分類を分析することだった。

素材と方法:犬のMCTsの30サンプルを、PatnaikとKiupelの組織学的分類法に従いグレード分けした。リン酸蛋白53(p53)とc-kitタンパクの発現を国立衛生研究所で開発した公有コンピュータープログラムの画像解析ソフトImageJを用い、免疫組織化学で定量した。

結果:サンプルの100%のグレードが判定可能だった。Patnaikの分類によると、グレード1が20%、グレードが243.30%、グレード3が36.70%だった。Kiupelの分類によると、高悪性度は56.67%、低悪性度は43.33%だった。グレード1の腫瘍はp53とc-kitの発現が最も高く、グレード2は発現が最も低かった。その結果は、両組織学的グレーディング法の実施が必要であることを示した。高悪性度と低悪性度への分類は、3段階グレーディングシステムよりも一貫した結果を提供するかもしれない。しかし、より少数のカテゴリーで、分類は容易であるが、予後に対しては不十分かもしれない。

結論:p-53とc-kit発現の定量評価は、分析の精度を上げ、治療法の選択を助ける有効なツールである。組織学的グレーディングは他の診断法と組み合わせるべきである。(Sato訳)
■12か月未満の犬の肥満細胞腫:多施設回顧的研究
Mast cell tumours in dogs less than 12 months of age: a multi-institutional retrospective study
J Small Anim Pract. 2020 Jul;61(7):449-457.
doi: 10.1111/jsap.13181.
K Rigas , D Biasoli , G Polton , R Finotello , S Murphy , S Di Palma , M Starkey , S Verganti

目的:12ヶ月齢未満の犬の肥満細胞腫の臨床病理および遺伝的特徴を述べる

素材と方法:イギリスの3か所の二次動物病院で、肥満細胞腫と12ヶ月齢未満で診断された犬の回顧的レビュー

結果:16頭の純血犬が含まれ、そのうち11頭はメスだった。初診時と診断時の年齢中央値は7.6か月と9か月だった。肥満細胞腫の13頭は皮膚で、3頭は皮下だった。4頭の皮膚肥満細胞腫は、高グレードとみなされ(PatnaikあるいはKiupel)、9頭はPatnaikグレードII;3頭の有糸分裂指数は高倍率10視野で>5だった。3頭の皮下腫瘍のうち、2頭は浸潤性の増殖パターンで、1頭は有糸分裂指数が高倍率10視野で10だった。10頭の検査した犬のうち、7頭はexon11でc-kit変異があり、9頭のKi-67スコアは、カットオフ値以上だった。12頭中4頭は、局所リンパ節転移のエビデンスを示した。種々の治療プロトコール後、全ての犬は生存し、診断後の無病期間中央値は1115日だった。

臨床意義:12歳未満の犬の肥満細胞腫の予後は、大規模な治療がなくても、成犬と比べて良いように思える。(Sato訳)
■犬のグレードIあるいはIIの皮膚肥満細胞腫の切除後の組織学的マージンクリーンを達成するための側方2cmマージンと3cmマージンの比較
Comparison of lateral surgical margins of up to two centimeters with margins of three centimeters for achieving tumor-free histologic margins following excision of grade I or II cutaneous mast cell tumors in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2020 Mar 1;256(5):567-572. doi: 10.2460/javma.256.5.567.
Chu ML, Hayes GM, Henry JG, Oblak ML.

目的:犬のグレードIおよびIIの皮膚肥満細胞腫(MCTs)の切除後に組織学的腫瘍フリーマージンを達成するため、保守的側方外科マージン(2cm未満の腫瘍に対しては腫瘍の直径と同じ、あるいはより大きい腫瘍に対しては2cm)は、ワイド側方外科マージン(3cm)に非劣性ではないかどうかを判定する

動物:2007年から2017年の間に68頭から深部筋膜マージンと必要とする側方マージンで切除した83のグレードIおよびIIのMCTs。瘢痕の修正外科あるいは局所再発を呈した腫瘍は除外した。

方法:病理学科データベースで基準を満たすMCTsを検索し、症例と腫瘍に関するデータを得るために相互参照した。結果(組織学的判定で完全切除vs不完全切除)は保守的およびワイドマージン群で比較した。非劣性マージン≧0.9をリスク比(保守的vsワイドマージン群に対し完全切除の見込み)に対し使用し、保守的マージンアプローチでの完全切除の実際のリスクが、ワイドマージンアプローチの最悪90%だったとデータが示した場合、非劣性が確定するだろうということを意味する。

結果:腫瘍フリーマージンだった切除MCTsの比率は、保守的(43/46(93%))およびワイド(34/37(92%))マージン群で同様だった。治療群で腫瘍の直径あるいは位置に違いはなかった。リスク比(1.02;95%CI、0.89-1.19)は非劣性の基準に合致した。

結論と臨床関連:この研究の犬で、組織学的腫瘍フリーマージン達成に関し、保守的マージンアプローチはワイドマージンアプローチに対して非劣性であると思われ、それの使用は術後合併症のリスクを潜在的に減ずる可能性がある。(Sato訳)
■ハイリスク肥満細胞腫の犬において超音波検査は早期あるいは明白な肝臓あるいは脾臓転移をうまく予想できない
Ultrasound is a poor predictor of early or overt liver or spleen metastasis in dogs with high-risk mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2019 Dec 20. doi: 10.1111/vco.12563. [Epub ahead of print]
Pecceu E, Serra Varela JC, Handel I, Piccinelli C, Milne E, Lawrence J.

犬の肥満細胞腫(MCT)のステージ決定中に、定期的な腹部超音波検査(US)と肝臓および脾臓の細針吸引(FNA)細胞診の重要性に関し、矛盾するエビデンスが存在する。

この研究の目的は、ハイリスクMCTsと厳密に定義された犬において、超音波と細胞診所見を関連付けることと、結果への影響を判定することだった。

著者らの仮説は、ハイリスクMCTsの内臓転移をUSはうまくできないことと、早期転移は明白な転移と比較して結果を改善するということだった。

肝臓や脾臓のUSは、転移なし、早期転移あるいは明白な転移と分類した細胞診結果と相関した。前向きに登録した82頭の犬のうち、細胞診で18%は早期内臓転移、7%は明白な転移だった;内臓転移の67%は領域リンパ節転移だった。USは転移の予測が良くなく、脾臓に対する感受性、特異性、陽性適中率、陰性適中率は、67%、68%、21%、94%で、肝臓に対しては29%、93%、56%、82%だった。転移なし、早期転移、明白な転移に対する無増悪期間(TTP)は、達せず、305日、69日だった(p<0.001)。その3群の生存期間中央値(MST)は、達せず、322日、81日だった(p<0.001)。PatnaikあるいはKiupelのハイグレード、早期転移、明白な転移、適切な局所コントロールは有意に結果と関係した。早期内臓転移は転移なしの犬と比べて予後不良だった。しかし、一部の犬は長期コントロールを経験した。(Sato訳)
■手術を行った低グレード肥満細胞腫と初期リンパ節転移の犬の補助的薬物治療の治療的利点はない
Adjuvant medical therapy provides no therapeutic benefit in the treatment of dogs with low-grade mast cell tumours and early nodal metastasis undergoing surgery.
Vet Comp Oncol. 2020 Jan 12. doi: 10.1111/vco.12566. [Epub ahead of print]
Marconato L, Stefanello D, Kiupel M, Finotello R, Polton G, Massari F, Ferrari R, Agnoli C, Capitani O, Giudice C, Aresu L, Vasconi ME, Rigillo A, Sabattini S.

皮膚肥満細胞腫(cMCTs)の犬において、リンパ節(LN)転移は負の予後因子である。転移性LNsの選択的リンパ節切除は結果を改善するが、初期の転移性(HN2)LNsの犬の補助的薬物治療の利点は議論されている。

この回顧的多施設研究の目的は、生存率および再発パターンを分析することで、原発性低グレードcMCT(Patnaikグレード1-2、Kiupel低グレード)の外科的切除およびHN2 LNsのリンパ節切除後の補助的薬物治療の治療的利点を評価することだった。

73頭の犬を含めた:42頭は補助的薬物治療(化学療法および/あるいはキナーゼ阻害剤)をなされ、31頭は投与されなかった。薬物治療された犬の追跡調査期間中央値は619日だった:2頭は局所再発、3頭はリンパ節再燃、4頭は遠位再燃。手術のみの犬の追跡調査期間中央値は545日だった。局所再発、リンパ節および遠位再燃を経験した犬はいなかった。無増悪期間は補助的薬物治療を受けた犬の方が有意に短かった(P=0.021)。同じような傾向は総生存期間でも観察された(P=0.056)。

この研究は、原発腫瘍の外科的切除とHN2領域LNの選択的リンパ節切除を行う低グレードcMCTsの犬の予後は良好であることを示す。それらの犬の補助的薬物治療の使用は、進行と生存に関して何らかの利点を提供するとは思えない。(Sato訳)
■完全切除した高グレード犬肥満細胞腫に対するロムスチン(CCNU)とプレドニゾロン化学療法
Lomustine (CCNU) and prednisone chemotherapy for high-grade completely excised canine mast cell tumors.
Can Vet J. 2019 Dec;60(12):1326-1330.
Hay JK, Larson VS.

完全に切除した高グレードの肥満細胞腫(MCTs)の治療に対し、ロムスチンとプレドニゾロンの効果と毒性を15頭の犬の回顧的研究で評価した。

犬はロムスチン(CCNU)70mg/m24週間ごと、プレドニゾロン0.5-1.0mg/kg PO毎日で治療した。

8頭の犬は治療が失敗した(最初の手術部位での再発(2/15)、新たな皮膚MCT(4/15)、転移疾患(2/15))。生存期間中央値は904日で、9頭は1年の時点で生存し、6頭は2年後も生きている。2頭以外全頭は治療プロトコール中に毒性があり、好中球減少(67%)とALT上昇(60%)が一般的だったが、入院を必要とした犬はいなかった。

このプロトコールは全体的によく許容し、ロムスチン/プレドニゾロンは高グレードMCTの補助治療に考慮すべきである。(Sato訳)
■1頭の犬の皮膚肥満細胞症の掻痒に対するロキベトマブ療法
Lokivetmab therapy for pruritus in a dog with cutaneous mastocytosis.
Vet Dermatol. 2019 Feb;30(1):73-e22. doi: 10.1111/vde.12702. Epub 2018 Nov 26.
Meichner K, Kiupel M, Kasantikul T, Rakich P, Banovic F.

背景:皮膚肥満細胞症(CM)は発疹、掻痒、皮膚の肥満細胞の増殖を特徴とする犬にまれな疾患である。経口H1抗ヒスタミン薬は掻痒のコントロールの治療として推奨される。

仮説/目的:1頭の犬のCMに関係する掻痒に対するロキベトマブの治療効果を述べる

動物:4歳、避妊済みメスの雑種犬が腹部、趾間皮膚、会陰部周囲、両耳介の重度の掻痒、紅斑から色素沈着斑と丘疹を呈した:その掻痒は抗ヒスタミン、プレドニゾロン、シクロスポリンによる治療に反応していなかった。

方法と素材:CBC、生化学検査、腹部超音波検査、血液スメア、皮膚細胞診検査、PCR、皮膚バイオプシーの病理組織および免疫組織化学検査。

結果:皮膚の細胞診で、多数の均一で高度に顆粒を持った肥満細胞を認めた:病理組織所見は、高分化の均一な肥満細胞の局所真皮の増殖を示し、低グレード肥満細胞腫(MCT)と一致した。臨床ステージングはその疾患は皮膚に限定していることを示した。c-kit exon 8と11の変異は検出されなかった。治療は、抗犬インターロイキン(IL)-31モノクローナル抗体ロキベトマブで開始した;抗ヒスタミン薬は継続した。犬の掻痒は、7日以内に解消し、月1回のロキベトマブの注射で15か月以上寛解を維持した;皮膚病扁は改善したが、解消はしなかった。

結論と臨床的重要性:ロキベトマブはこの広範囲の皮膚肥満細胞疾患の犬において、掻痒の解消と緩解の維持に効果的だった。犬のCMは低グレードのMCTと区別すべき別の存在かどうか、今後の調査が必要である。(Sato訳)
■ビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法±放射線療法で治療した肥満細胞腫の犬の血液毒性
Haematologic toxicity in dogs with mast cell tumours treated with vinblastine/prednisolone chemotherapy with/without radiotherapy.
J Small Anim Pract. 2019 Jun 27. doi: 10.1111/jsap.13047. [Epub ahead of print]
Stiborova K, Treggiari E, Amores-Fuster I, Del Busto I, Killick D, Maddox T, Marrington M, Mason SL, Blackwood L.

目的:肥満細胞腫を外科的に切除し、ビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法プロトコールと放射線療法の組み合わせで治療した犬は、化学療法プロトコール単独で治療した犬よりも骨髄抑制のリスクが大きいかどうかを調べた。

素材と方法:肥満細胞腫の犬で、その後外科的切除とビンブラスチン/プレドニゾロン化学療法を受けた犬の臨床記録の回顧的研究。犬を2群に振り分けた:補助的放射線療法とビンブラスチン/プレドニゾロンで治療した犬(RT群)と術後ビンブラスチン/プレドニゾロン単独で治療した犬(コントロール群)。血液学的結果は群間で比較した。

結果:同様の犬種、年齢、体重の43頭の症例と43頭のコントロールを含めた。放射線照射とビンブラスチン化学療法の併用は、好中球減少のリスクを増すとは思われず、好中球減少はRT群の18.6%、コントロール群の23.2%で観察された。

臨床意義:肥満細胞腫の犬の放射線照射とビンブラスチン化学療法は安全と思われ、臨床的に重要な骨髄抑制のリスクを増やすことはなかった。(Sato訳)
■2頭の犬に見られた推定原発性胸腔内肥満細胞腫
Presumptive primary intrathoracic mast cell tumours in two dogs.
BMC Vet Res. 2019 Jun 17;15(1):204. doi: 10.1186/s12917-019-1950-5.
Cartagena-Albertus JC, Moise A, Moya-García S, Cámara-Fernández N, Montoya-Alonso JA.

背景:肥満細胞腫は最も一般的な犬の皮膚の腫瘍である。他の原発部位は、消化管、肝臓、あるいは脾臓のような内蔵と口腔が含まれる。頻度の高い転移部位は局所リンパ節、皮膚、脾臓、肝臓、骨髄が含まれる。胸郭への転移疾患はまれで、そのような症例は犬で報告されていない。肥満細胞腫は、犬の肺や胸腔内胸壁マスの鑑別診断に通常入れられない。胸壁の腫瘍は、肋骨や胸骨の原発腫瘍、隣接腫瘍の胸壁への浸潤、遠隔腫瘍からの転移と思われる。

症例紹介:1頭のジャーマンシェパードドッグが、持続性の発咳、胸壁に関与する大きなマス、小さく丸い肺のマスを呈した。その犬は外科的に切除した乳腺腫瘍の病歴があった。胸腔鏡検査で肋間筋内部に関与する胸壁マスと左肺前葉の小さなマスを認めた。胸腔内マスの細胞診と病理検査で大きなマスは肥満細胞腫、小さなマスは癌腫と確認した。胸骨リンパ節の細胞診で関与がないことが示された。その犬は3か月間トセラニブで治療されたが、持続的発咳は緩和しなかった。エックス線検査は、大きなマスのトセラニブの部分奏功を示した。その犬は安楽死された。

1頭のマルチーズが慢性の吐出と発咳の病歴を呈し、1つの大きなマスが左後葉にあった。マスの細胞診と病理検査で肥満細胞腫を確認した。その犬はトセラニブを2か月投与された。エックス線検査で、その大きなマスはトセラニブで反応しないことを示した。その犬は安楽死された。剖検で肺の肥満細胞腫と、他に肥満細胞腫がないことを確認した。

結論:その議論された症例は、犬の皮膚肥満細胞腫がなく、胸腔内肥満細胞腫の2つの珍しい症例である。(Sato訳)
■犬の鼻腔内肥満細胞腫:ケースシリーズ
Intranasal mast cell tumor in the dog: A case series.
Language: English
Can Vet J. August 2017;58(8):851-854.
Alison Khoo , Amy Lane , Ken Wyatt

鼻腔内肥満細胞腫(MCTs)と組織学的に確認した犬4頭の医療記録を、それらの生物学的挙動を調べるため回顧的に評価した。シグナルメント、既存の臨床症状、腫瘍のグレード、治療、生存期間に関する情報を医療記録から入手した。

4頭全て高グレードの腫瘍で、化学療法を受けていた。生存期間の範囲は27日から134日だった。4頭全て局所あるいは遠隔への疾患の進行症状を示し、鼻腔内MCTsの侵略的な挙動を示唆する。(Sato訳)
■イタリア中西部の限定集団の犬の犬種関連肥満細胞腫の発生率の疫学と臨床特性の予後的意義
Epidemiology of Breed-Related Mast Cell Tumour Occurrence and Prognostic Significance of Clinical Features in a Defined Population of Dogs in West-Central Italy.
Vet Sci. 2019 Jun 6;6(2). pii: E53. doi: 10.3390/vetsci6020053.
Pierini A, Lubas G, Gori E, Binanti D, Millanta F, Marchetti V.

犬の肥満細胞腫(MCTs)は、予後の予測や最適な治療の選択に関し、多種多様の難解な臨床的動向を呈す。

この研究は、1か所の獣医教育病院(VTH)を受診した犬において、MCTsの頻度、リスクおよび予後因子を調査した。

2010年1月から2016年1月までのVTH臨床データベースから、MCTsの犬98頭(MCT群)の犬種、年齢、性別、不妊状況を13077頭のコントロール群(VTH群)と比較した。MCT群内で、シグナルメント、発生部位、大きさ、マスの数、潰瘍化、病理組織学的グレード、リンパ節の存在あるいは遠隔転移をお互いおよび結果で比較した。

ボクサー(OR7.2)、アメリカンピットブル(OR5.4)、フレンチブルドッグ(OR4.4)、ラブラドールレトリバー(OR2.6)が多く見られた。MCT群はVTH群よりも有意に年齢が高かった(P<0.0001)。VTH群と比較し、MCT群の不妊した犬(OR2.1)および避妊済みメス(OR2.3)は、未不妊の犬や未避妊のメスと比べて優勢だった。

潰瘍化(OR5.2)とリンパ節転移(OR7.1)は、より大きなMCTsで多く発生した。潰瘍化とMCTs>3cmはリンパ節転移と非常に関係した(OR24.8)。再発はMCT関連死と関係し(OR10.50、P=0.0040)、後者はより短い生存期間と関係した(P=0.0115)。MCTs>3cmの犬(P=0.0040)、リンパ節転移(P=0.0234)、高いWHOステージ(P=0.0158)は生存期間がより短くなった。MCTsの有意に多い発生は特定犬種、より老齢、不妊済み犬で見られた。

MCTs>3cm、リンパ節、遠隔転移はより短い生存期間と関係した。(Sato訳)
■肥満細胞腫や軟部組織肉腫の外科的切除を行った犬の長期結果
Long-term outcomes of dogs undergoing surgical resection of mast cell tumors and soft tissue sarcomas: A prospective 2-year-long study.
Vet Surg. 2019 May 2. doi: 10.1111/vsu.13225. [Epub ahead of print]
Milovancev M, Townsend KL, Tuohy JL, Gorman E, Bracha S, Curran KM, Russell DS.

目的:肥満細胞腫(MCT)や軟部組織肉腫(STS)を外科的に切除した犬の臨床的結果を報告する

研究計画:前向き臨床研究

サンプル集団:53頭の犬の52のMCT(50が低グレード、2が高グレード)と19のSTS(12がグレードI、6がグレードII、1がグレードIII)

方法:すべての犬は術後3、6、12、18、24か月目に検査し、再発が疑われた場合、細胞診あるいは病理組織学的に評価した。研究している腫瘍の関連で安楽死した犬は検死した。

結果:MCTとSTSの術中マージンの中央値はそれぞれ20㎜と30㎜で、1筋膜面を一括して切除した。もっとも狭い組織学的に腫瘍のないマージンは、MCT52のうち21(40%)で1㎜未満、STS19のうち7(37%)で1㎜未満だった。すべての犬は24か月追跡した。低グレードMCT50中2(4%)は、181日と265日に局所再発を診断した。低グレードMCT36中2(6%)は181日と730日に内蔵転移を発症した。高グレードMCTの2頭中1頭は術後115日に局所再発を発症した。STS19の切除後の局所再発あるいは転移は診断されなかった。

結論:主に低から中グレードのMCTとSTSの中で、組織学的に腫瘍のないマージンが1㎜未満の普及率が多かったにもかかわらず、局所再発率は低かった。高グレード腫瘍に対する外科的推奨は、この集団で推定できない。

臨床意義:外科医は、結果を予測する病理組織の限界を考慮し、患者の有病率を最小限にするのに、MCTとSTSの顕微鏡学的完全切除の達成を目指すべきである。(Sato訳)
■素因を持つ犬種の中で犬皮膚肥満細胞腫特性の発生と分布
Occurrence and Distribution of Canine Cutaneous Mast Cell Tumour Characteristics Among Predisposed Breeds.
J Vet Res. 2019 Mar 22;63(1):141-148. doi: 10.2478/jvetres-2019-0002. eCollection 2019 Mar.
Śmiech A, Łopuszyński W, Ślaska B, Bulak K, Jasik A.

イントロダクション:種々の皮膚腫瘍があるポーランドの犬の集団で、皮膚肥満細胞腫(MCT)の犬種素因を調べ、組織学的グレード、性別、年齢、蕪茯、素因のある犬種のようなMCT特性の分布を評価した。

素材と方法:皮膚MCTsに罹患した550頭の犬と他の皮膚腫瘍と診断された2557頭の紹介症例を含む回顧的疫学研究

結果:オッズ比(ORs)と95%信頼区間を判定するため、一変量ロジスティック回帰分析を実施した。ハイグレードMCTsのリスクは、シャー・ペイ(OR:26.394)とアメリカン・スタフォードシャー・テリア(OR:2.897)で最も高かった。ボクサー(OR:6.619)、ラブラドール・レトリバー(OR:2.630)、フレンチ・ブルドッグ(OR:2.050)、ゴールデン・レトリバー(OR:1.949)、アメリカン・スタフォードシャー・テリア(OR:2.592)は主にローグレードMCTsに罹患した。
MCTのハイリスクは、ラブラドール・レトリバー(OR:2.686)で4-6歳、ボクサー(OR:2.956)とフレンチ・ブルドッグ(OR:9.429)で7-10歳と算出した。フレンチ・ブルドッグ(OR:4.680)、アメリカン・スタフォードシャー・テリア(OR:2.520)、ラブラドール・レトリバー(OR:1.948)でMCTは体幹にできることが有意に多く見られた。この犬種でMCTの発生と性別の間に統計学的に有意な関連はなかった。(Sato訳)
■犬肥満細胞腫の細針吸引におけるメイグリュンワルドギムザ染色と迅速細胞染色の比較:診断と予後の影響
Comparison between May-Grunwald-Giemsa and rapid cytological stains in fine-needle aspirates of canine mast cell tumour: Diagnostic and prognostic implications.
Vet Comp Oncol. 2018 Jul 1. doi: 10.1111/vco.12409. [Epub ahead of print]
Sabattini S, Renzi A, Marconato L, Militerno G, Agnoli C, Barbiero L, Rigillo A, Capitani O, Tinto D, Bettini G.

肥満細胞腫(MCTs)は、細胞診でメイグリュンワルドギムザ(MGG)などのメタノール溶解性ロマノフスキー染色による紫の細胞質内顆粒の確認を基に診断されることが多い。臨床では、水性迅速染色(rapid stains:RS)が一般に使用されるが、肥満細胞顆粒は適切に染まらないかもしれない。
この前向き研究の目的は、RSによるMCT低顆粒性の頻度を調査することと、その腫瘍確認、細胞学的悪性度判定、リンパ節転移疾患の認知への潜在的影響を調査することだった。

病理組織学的に確認されている犬の原発性MCTsと転移リンパ節の細胞学的標本を含めた。各症例に対し、良質なスメアをMGGおよびRSで染色し、比較的に評価した。

原発性MCTs60件のうち11件(18.3%)はRSで低顆粒だった;それらのうち9件は組織学的に高悪性度腫瘍で、3件(5%)はMCTの確定診断ができなかった。細胞学的悪性度評価の精度(85%)はRSとMGGで違いがなかった。

転移性リンパ節28件のうち13件(46.4%)はRSで低顆粒だった。3人の別の観察者はRS染色スメアの7%-18%でリンパ節MCT転移を確認できなかった。

この研究は、限られたケースで、RSはMCT顆粒の染色(特に高悪性度腫瘍)に無効で、よって標本作成の質や経験により依存して診断がなされることを確認した。疑わしいケースにおいてはメタノール溶解性染色を使用すべきである。RSの使用は、孤立した肥満細胞の確認がより困難になるため、リンパ節転移の探索には落胆することとなる。(Sato訳)
■全身性肥満細胞症の特徴と治療:犬40頭の回顧的研究
Association of prognostic features and treatment on survival time of dogs with systemic mastocytosis: A retrospective analysis of 40 dogs
S. J. Moirano, S. F. Lima, K. R. Hume, E. M. Brodsky
Vet Comp Oncol. 2018;16:E194?E201.

全身性肥満細胞症は稀な現象で治療の予後情報は限られている。

この研究の目的は犬全身性肥満細胞症の特徴と治療効果を決めることである。

米国北東部4施設で全身性肥満細胞疾患40頭について回顧的に評価した。生存期間と予後因子に治療プロトコール、サブステージ、皮膚もしくは内臓、多発の有無、グレード、転移の有無を含めた。血液中に肥満細胞するより遠隔リンパ節に腫瘍が確認された方がより長く生き(P=0.001)、転移が2カ所以上あると1カ所より不良であった(P=0.005)。化学療法を行う方がプレドニゾロン単独より生存期間が延長し(P=0.008)、トセラニブ よりロムスチン、ビンブラスチン、プレドニゾロンの方が延長した(P=0.002)。血液への存在、2カ所以上の存在予後不良因子であった。ロムスチンとビンブラスチンの組み合わせを含む化学療法はトセラニブ より有効であるかもしれない。

結論として全身性肥満細胞症は予後不良であり有効な治療法が望まれる。(Dr.Maru訳)
■犬のステージII皮膚肥満細胞腫における所属リンパ節切除の治療効果
Therapeutic impact of regional lymphadenectomy in canine stage II cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2018 Jul 26. doi: 10.1111/vco.12425. [Epub ahead of print]
Marconato L, Polton G, Stefanello D, Morello E, Ferrari R, Henriques J, Tortorella G, Benali SL, Bergottini R, Vasconi ME, Annoni M, Sabattini S.

犬の皮膚肥満細胞腫(cMCTs)におけるリンパ節(LN)転移は、周知の負の予後因子である。ステージII疾患の治療におけるリンパ節切除の役割は、その不確定な治療効果のため、議論が続いている。

この回顧的研究の目的は、ステージII cMCTsの犬の腫瘍コントロールおよび生存性に対し、リンパ節切除の影響を調査することだった。

最初に発生し、cMCTとLN転移を組織学的に確認し、原発腫瘍の切除とその後の内科治療を行った犬を回顧的に登録した。犬は2群に分類した:LNサンプリング(LNS;細胞診による転移の診断)と所属LN廓清(LND;病理組織により得た診断)。リンパ節切除の治療価値を判定するため、再発(局所、リンパ節および遠隔)と生存性の特徴を群間で比較した。評価した結果変数は、シグナルメント、解剖学的位置、直径、潰瘍化、サブステージ、外科的マージン、Patnaikグレード、Kiupelグレードおよび内科治療が含まれた。

152頭の犬が含まれた:81頭は腫瘍手術の一環としてLNDを実施し、71頭はLNS。追跡期間中央値は、LND群が409日、LNS群は620日だった。一変量分析において、LNDと比較し、LNS群の局所発生、リンパ節あるいは遠隔の再燃リスクは有意に高かった(P<0.001)。多変量分析において、腫瘍進行および腫瘍関連死のリスクはLNS群でそれぞれ5.47倍および3.61倍高かった(P<0.001)。

原発腫瘍の外科的切除および内科治療をおこなうステージII cMCTsの犬において、所属リンパ節切除は治療的価値があり、進行を改善するかもしれない。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫のステージングに対する触知されない/正常な大きさの所属リンパ節の廓清の影響
The impact of extirpation of non-palpable/normal-sized regional lymph nodes on staging of canine cutaneous mast cell tumours: A multicentric retrospective study.
Vet Comp Oncol. 2018 Jun 12. doi: 10.1111/vco.12408. [Epub ahead of print]
Ferrari R, Marconato L, Buracco P, Boracchi P, Giudice C, Iussich S, Grieco V, Chiti LE, Favretto E, Stefanello D.

皮膚肥満細胞腫(cutaneous mast call tumor:cMCT)の犬において所属リンパ節(regional lymph nodes:PLNs)への転移は、生存期間の短縮と遠隔部位へ広がるリスクがより高いことと関連している。

この研究では、触知不可能あるいは正常な大きさのPLNsの切除を犬のcMCTの外科手術に含めた。組織学的リンパ節状態(HN0-3)と腫瘍変数の相関を調査した。

遠隔転移の無い単一のcMCTで、原発腫瘍の拡大切除と触知不可能なあるいは正常な大きさのRLNの摘出を行った93頭の犬を組み込んだ。HN(HN0 vs HN>0;HN0-1vs HN2-3)と腫瘍変数(部位、最大径、潰瘍化、3-tier及び2-tier組織学的グレード)の関連をgeneralized linear model with multinomial errorで分析した。

そして33頭(33.5%)のRLNsはHN0、14頭(15%)はHN1、26頭(28%)はHN2、20頭(21.5%)はHN3だった。陽性(HN>0)RLNがあることは大きさ3cm以上のcMCTと有意に関係した。他に統計学的有意な関連はなかった。

cMCTのある犬で触知不可能/正常な大きさのRNLには、ほぼ半数の症例で組織学的に検出できる転移病巣が隠れている可能性がある。RNLの摘出は転移の臨床的な疑いがないときでも、正確なステージングを得るために常に実施すべきである。今後の研究で、陽性RLNの摘出により得られる腫瘍量削減の潜在的治療効果を評価すべきである。(Sato訳)
■低悪性度皮膚肥満細胞腫の放射方向と接線方向のマージン比較
Comparison of histologic margin status in low-grade cutaneous and subcutaneous canine mast cell tumours examined by radial and tangential sections
C.B. Dores, M. Milovancev, D.S. Russell
Vet Comp Oncol. 2018;16:125?130.
背景:放射状切片は犬皮膚肥満細胞腫で切除が十分にできているか調べるために広く行われている。しかしながら全マージン周囲と比べて一部を検査しているに過ぎない。本研究では放射方向および接線方向の切片を作成しグレード2(低悪性度)肥満細胞腫のマージンを比較した。

材料と方法:21個の腫瘍から得られた43円周マージンを検査した。マージンは放射方向に、次いで接線方向に切り出した。組織検査は従来の方法で実施した。

結果:接線方向の検討では、最初に行った放射方向の結果と43検体中10検体(23.3%)で異なっていた。39検体のうち9つ(23.1%)では0mm以上の腫瘍フリーマージン(HTFM)と判断されていたが陽性と出た。接線方向では放射方向よりも有意にマージン陽性となる割合が高かった(両側p=0.0215)。HTFMは陽性接線マージンより陰性接線マージンよりも有意に長かった(平均10.1mm対3.2mm、p=0.0008)。A receiver operating characteristic curve comparing HTFM and tangentially negative margins found an area under the curve of 0.83 (95% confidence interval: 0.71?0.96). Although correct classification peaked at the sixth cut- point of HTFM ?1 mm, radial sections still incorrectly classified 50% of margins as lacking tumour cells. Radial sections had 100% specificity for predicting negative tangential margins at a cut-point of 10.9 mm.

結論:低悪性度の皮膚肥満細胞腫ではHTFMが0mm以上であっても完全切除ではなく、10.9mm以下では特にその傾向がある。HTFMと切除状態は多変量予測モデルを用いたさらなる検討が必要である。(Dr.Maru訳)
■トセラニブもしくはビンブラスチンとプレドニゾロンの併用治療をした肥満細胞腫の犬における反応性予測因子としてのc-Kit変異と局在性のステータス
c-Kit Mutation and Localization Status as Response Predictors in Mast Cell Tumors in Dogs Treated with Prednisone and Toceranib or Vinblastine
J Vet Intern Med. 2018 Jan;32(1):394-405. doi: 10.1111/jvim.14889.
Weishaar KM, Ehrhart EJ, Avery AC, Charles JB, Elmslie RE, Vail DM, London CA, Clifford CA, Eickhoff JC, Thamm DH

【背景】トセラニブ(Toceranib:TOC)のようなKIT阻害薬と、ビンブラスチン(VBL)は肉眼的病変の肥満細胞腫(mast cell tumors:MCTs)の治療で前向きに比較されたことがない。また同時にc-kit変異がないMCT治療において、VBLかTOCのどちらが優れているか分かっていない。

【仮説/目的】肉眼的なMCTの犬の治療決定におけるKIT遺伝子タイプと局在性の評価を確認する為。我々はc-kit変異があるMCTは、VBL治療群よりも、TOC治療群の方がより良い反応が起きると仮説した。

【動物】肉眼的病変の肥満細胞腫をもつ犬88例

【方法】前向き無作為化試験。犬はTOC(2.75mg/kg 隔日)もしくはVBL(2.5mg/㎡ 週に1回、4回実施後は1週おき)に適切な無作為化スキームを用いて、c-kit変異と局在性のステータスにより無作為化した。

【結果】60例の犬がTOC、28例の犬がVBLに組み入れられた。TOCの治療を受けている犬のうち、20%がc-kit変異が認められたのに対し、VBL投与を受けている犬では30%の変異が認められた(P=.074)。全反応率は46%(TOC)、30%(VBL)(オッズ比=1.56[0.62-3.92]; P=0.28)だった。無病進行期間中央値はVBL治療群で78日(7-1521日)、TOC群で95.5日(14-990日)だった; ハザード比(HR)=(1.34[0.72-2.50]; P=0.36)。全生存期間中央値はVBL群で241.5日(10-1521日)であり、TOC群で159日(20-990日)だった; HR=0.80([0.45-1.41]; P=0.44)。

【結論と臨床的重要性】PFSとOSどちらも両群で明らかな違いは認められなかった。この犬の集団で、c-kit変異の認められる犬の比率に治療群間の違いがなかったため、c-kit変異のステータスは治療反応を予期しなかった。 (Dr.Masa訳)
■肥満細胞腫の切除を行う麻酔下の犬に対する塩酸ジフェンヒドラミンの抗ヒスタミンおよび心肺効果
Antihistaminic and cardiorespiratory effects of diphenhydramine hydrochloride in anesthetized dogs undergoing excision of mast cell tumors.
J Am Vet Med Assoc. 2017 Oct 1;251(7):804-813. doi: 10.2460/javma.251.7.804.
Sanchez A, Valverde A, Sinclair M, Mosley C, Singh A, Mutsaers AJ, Hanna B, Johnson R, Gu Y, Beaudoin-Kimble M.

目的:肥満細胞腫(mast cell tumor:MCT)切除を行う麻酔下の犬において、心肺変数に対する塩酸ジフェンヒドラミンIV投与の影響を評価する

計画:無作為化盲検臨床試験

動物:肥満細胞腫の飼育犬16頭

方法:メカニカルベンチレーションを含む標準イソフルラン麻酔セッション下で、導入後10分で、犬に塩酸ジフェンヒドラミン(1mg/kg、IV;n=8)あるいは同量の生食液(0.9%NaCl)(IV;コントロール処置;n=8)を投与した。心肺変数は麻酔からMCT切除を通して記録し、血漿ジフェンヒドラミンおよびヒスタミン濃度測定のために血液サンプルを、前処置前(基礎値)、麻酔中、抜管後2時間目に採取した。

結果:両処置群の心肺値は、麻酔下の犬で容認できるものだった。コントロール群の腫瘍切除中(52 ± 10 mm Hg vs 62 ± 9 mm Hg)および外科的閉鎖時(51 ± 10 mm Hg vs 65 ± 9 mm Hg)に対し、ジフェンヒドラミンにおける平均±SD拡張期動脈圧は有意に低かった。より高い心指数値にかかわらず、外科的閉鎖中のコントロール群に対し、ジフェンヒドラミンの平均動脈圧(65 ± 12 mm Hg vs 78 ± 11 mm Hg)は有意に低かった。ジフェンヒドラミンの腫瘍の取り扱いが最大の時、外科的準備中およびコントロール群の外科的切除中、血漿ヒスタミン濃度が基礎値よりも有意に高いということはなかった。

結論と臨床関連:イソフルラン麻酔下の犬のMCT切除前のジフェンヒドラミンのIV投与で、プラセボ以上の明確な臨床的心肺への利点はなかった。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫の治療としてトリアムシノロンの病巣内投与の安全性と有効性:23症例(2005-2011)
Safety and efficacy of intralesional triamcinolone administration for treatment of mast cell tumors in dogs: 23 cases (2005-2011).
J Am Vet Med Assoc. 2018 Jan 1;252(1):84-91. doi: 10.2460/javma.252.1.84.
Case A, Burgess K.

目的:肥満細胞腫の犬に単独あるいは補助治療としてトリアムシノロン病巣内投与の安全性と有効性を評価する

計画:回顧的ケースシリーズ

動物:肥満細胞腫の犬23頭

方法:2005年から2011年の間に肥満細胞腫と確定診断されて治療された犬の医療記録を再調査した。診断が確認され、測定可能な腫瘍(最長径0.5cm以上)で、以前の併発あるいは補助治療に関係なくトリアムシノロンの病巣内投与を1回以上行った犬を組み入れた。犬の特徴、細胞診および組織検査結果、腫瘍のステージ、トリアムシノロンの用量、治療に対する反応、有害事象などのデータを集めた。

結果:23頭の犬の24個の腫瘍を含めた。腫瘍はトリアムシノロンの病巣内投与単独(n=5)、トリアムシノロンの病巣内投与とグルココルチコイドの経口投与の併用(n=6)、トリアムシノロンの病巣内投与と細胞毒性化学療法の併用±コルチコステロイドの経口投与と放射線療法(n=13)で治療されていた。トリアムシノロンの病巣内投与単独で治療した5頭のうち、1頭は完全反応、3頭は部分反応を示し、1頭は安定状態を維持した。24個の腫瘍(23頭)に対する反応率は、67%(16/24)で、4個の完全反応と12の部分反応が含まれた。進行までの時間中央値は63日(範囲、6-447日)だった。3頭の犬が有害事象を経験した(局所出血(n=1);消化管潰瘍の疑い(n=2))。

結論と臨床関連:犬の切除不可能な肥満細胞腫の治療で、トリアムシノロンの病巣内投与は許容性がよく、有効かもしれない。(Sato訳)
■猫の消化管肥満細胞腫の治療後の結果
Outcome following treatment of feline gastrointestinal mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2017 May 31. doi: 10.1111/vco.12326. [Epub ahead of print]
Barrett LE, Skorupski K, Brown DC, Weinstein N, Clifford C, Szivek A, Haney S, Kraiza S, Krick EL.

限られた文献を基にした猫消化管肥満細胞腫(feline gastrointestinal mast cell tumours:FGIMCT)の予後は、推奨治療や結果に影響するかもしれない慎重から不良と述べられている。

この研究の目的は、FGIMCTの臨床所見、治療反応、結果を述べることである。

FGIMCTの診断と治療を行った31頭の医療記録を回顧的に再検討した。収集したデータは、シグナルメント、診断方法、腫瘍部位(転移巣を含む)、治療の種類、死亡経過、生存期間だった。

平均年齢は12.9歳だった。診断は細胞診(n=15)、病理組織検査(n=13)、その両方(n=3)だった。転移部位は腹部リンパ節(n=10)、腹部内臓(n=4)、その両方(n=2)だった。治療アプローチは化学療法単独(n=15)、外科および化学療法(n=7)、グルココルチコイドのみ(n=6)、外科手術とグルココルチコイド(n=3)だった。ロムスチン(n=15)とクロラムブシル(n=12)が最も一般的に使用された化学療法薬だった。

全体の生存期間中央値は531日(95%信頼区間334-982)だった。消化管の部位、さらなる癌の診断、治療の種類は、生存期間に有意に影響しなかった。研究時に死亡していた20頭の死亡の原因は、腫瘍関連あるいは不明(n=12)、無関係(n=8)だった。

FGIMCTの猫の予後は、過去に報告されたものよりも良いかもしれず、26%の猫は無関係の原因で死亡していた。外科手術および内科治療(プレドニゾロン単独を含む)は、両方とも生存期間を延長させた。プレドニゾロン以外の治療は、必要のない猫もいるかもしれない。予後因子や最も効果的な治療計画に関する継続的な研究が必要とされる。(Sato訳)
■猫の脾臓の肥満細胞腫の治療結果と予後因子:64症例の多施設回顧的研究
Treatment outcomes and prognostic factors of feline splenic mast cell tumors: A multi-institutional retrospective study of 64 cases.
Vet Comp Oncol. 2017 Feb 7. doi: 10.1111/vco.12305. [Epub ahead of print]
Evans BJ, O'Brien D, Allstadt SD, Gregor TP, Sorenmo KU.

背景:猫において肥満細胞腫(mast cell tumor:MCT)は一般的な脾臓の腫瘍だが、この疾患の猫の治療結果には限られた情報しかない。

素材と方法: この回顧的研究で脾臓のMCTの猫64頭の治療結果を評価した。猫を後述群に分類した:脾摘(A、n=20);脾摘と化学療法(B、n=20);化学療法のみ(C、n=15);支持療法(D、n=9)。

結果:A、B、C、D群の腫瘍特異生存期間中央値(median tumor specific survival:MTSS)はそれぞれ856、853、244、365日だった。4群のMTSSに有意差はなかった。しかし、脾摘を行った猫(AとB)と、行わなかった猫(CとD)を比較すると、そのMTSSはそれぞれ856日と342日だった(p=0.008)。解析した予後因子で生存に有意に影響したものはなかった。

結論:肥満細胞腫の猫において脾摘(±化学療法)は生存期間を有意に延長させる。化学療法の役割は不明なままである。(Sato訳)
■猫肥満細胞腫に対するリン酸トセラニブ(パラディア)の回顧的評価
Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) use in cats with mast cell neoplasia.
Article first published online: March 1, 2017
Erika P Berger, Chad M Johannes, Gerald S Post, Gillian Rothchild, Kai-Biu Shiu, Sarah Wetzel, Leslie E Fox

【目的】この研究の目的は、猫肥満細胞腫に対しveterinary specialistsでのトセラニブの使用に関するデータを集め・編集し、副作用と臨床的有用性における最初の評価を提供することである。

【方法】The American College of Veterinary Internal Medicine and Oncologyのリストサーブから猫肥満細胞腫の治療としてトセラニブが使用された症例のデータを集め、使用した。以下のデータが集められる症例を組み入れた:シグナルメント(年齢・性別・品種)、細胞診・病理学的検査のいずれかで肥満細胞腫と診断されていること、解剖学的分類がされている(皮膚、脾臓/肝臓、胃腸管、その他)、過去もしくは併用治療。トセラニブの用量(mg/kg)とスケジュール、治療期間、最もよい反応と副作用の記述。

【結果】皮膚(22例)、脾臓/肝臓(内臓)(10例)、胃腸管(17例)とその他(1例)の肥満細胞腫の50例の症例データが集められた。臨床的有用性は80%(40/50)で認められ、皮膚では86%(19/22)、内臓では80%(8/10)と胃腸管では76%(13/17)だった。殆どの猫(35例)はトセラニブの投与中にグルココルチコイドの治療を受けていた。臨床的有用性が認められた猫での治療期間の中央値は、皮膚・内臓・胃腸管の症例でそれぞれ、36週(範囲:4-106週)・48週(範囲:12-199週)・23週(範囲:13-81週)だった。トセラニブ投与量の中央値は2.5mg/kg(範囲:1.6-3.5mg/kg)で、90%(45/50)の症例で週3回の投与だった。治療は一般的には忍容性が高く、60%(30/50)で副作用が認められた。殆どの副作用が低グレード(グレード1もしくは2)の胃腸障害や血液毒性であり、休薬や用量調節で改善した。

【結論と臨床的重要性】トセラニブは肥満細胞腫の猫での忍容性が高かった。研究対象の猫におけるこの薬剤の生物学的活性は明らかであった。しかし、この疾患の治療としての役割を完全に解明するための前向き研究が必要である。(Dr.Masa訳)
■初めからステージIV皮膚肥満細胞腫の犬45頭の遠隔転移の特徴と予後への影響
Features and prognostic impact of distant metastases in 45 dogs with de novo stage IV cutaneous mast cell tumours: A prospective study.
Vet Comp Oncol. 2017 Feb 23. doi: 10.1111/vco.12306. [Epub ahead of print]
Pizzoni S, Sabattini S, Stefanello D, Dentini A, Ferrari R, Dacasto M, Giantin M, Laganga P, Amati M, Tortorella G, Marconato L.

背景:皮膚肥満細胞腫(cMCT)の犬の遠隔転移は珍しく、不治である。この前向き研究の目的は、ステージIVのcMCTの臨床病理学的特徴を明らかにすることと、無憎悪期間(PFI)と生存期間(ST)に対する潜在的予後因子を確認することだった。

素材と方法:過去に治療されてなく、組織学的にcMCTと確認され、完全なステージ判定を行いステージIV疾患と証明された犬を研究した。犬は一律に追跡調査したが、治療は標準化せず、無治療、外科療法、放射線療法、化学療法、チロシンキナーゼ阻害あるいはそれらの組み合わせを含めた。

結果:ステージIVのcMCTの犬45頭を登録した。全ての犬は遠隔転移があり、41頭(91.1%)の犬には所属リンパ節転移もあった。組織学的グレードと変異状況は犬の中でかなり差があった。ST中央値は110日で、特にPFIとSTは解剖学的部位、組織学的グレード、変異状況などよく知られた予後因子に依存していた。逆に、腫瘍の直径>3cm、転移部位が2つ以上、骨髄浸潤、原発部位の腫瘍コントロール困難は、多変量解析で負の予後因子として確認された。

結論:現在、ステージIVcMCTに対する満足な治療法はない。骨髄浸潤がない腫瘍の直径<3cm、1つの大きくない腫瘍組織量の無症候の犬は、多様式の治療候補となるかもしれない。リンパ節転移のないステージIVの犬は、驚くほど長期に生存するかもしれない。ステージIVの皮膚肥満細胞腫の犬において、局所腫瘍コントロールの達成はより良い結果を予測できると思われる。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫の犬の結果を予測する治療前の白血球比と濃度
Pretreatment leukocyte ratios and concentrations as predictors of outcome in dogs with cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2016 Oct 9. doi: 10.1111/vco.12274. [Epub ahead of print]
Skor O, Fuchs-Baumgartinger A, Tichy A, Kleiter M, Schwendenwein I.

白血球比はいくつかのヒトの癌において結果と相関する。肥満細胞腫(MCT)におけるそれらの予後的意義についてはあまり分かっていない。

この研究の目的は、MCTの犬の生存性に対し治療前の白血球濃度とそれらの比率の予後的意義を評価することだった。

MCTの犬92頭の医療記録を回顧的に調査した。腫瘍の診断は、腫瘍のバイオプシーあるいは細針吸引生検でなされていた。まだ治療されていない犬のみを含めた。ADVIA 2120? (Siemens Healthcare, Vienna, Austria)により好酸球、リンパ球、単球、好中球濃度を入手した。好中球/好酸球比(NER)、リンパ球/単球比(LMR)、好中球/リンパ球比(NLR)を入手した白血球濃度から算出した。相対好酸球濃度(REC)、NER(P<0.001)、NLR(P=0.001)、LMR(P<0.001)は、一変量解析で結果に対し有意な予後因子だった。REC(P=0.008)とNER(P=0.001)は、多変量解析で生存性の独立した予測因子のままだった。

白血球濃度および比率、特にRECとNERはMCTの予後指標として役立つかもしれない。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫の病理組織学的グレードを予測するための好中球/リンパ球比の使用
Use of neutrophil to lymphocyte ratio for predicting histopathological grade of canine mast cell tumours.
Vet Rec. 2016 Sep 20. pii: vetrec-2015-103650. doi: 10.1136/vr.103650. [Epub ahead of print]
Macfarlane MJ, Macfarlane LL, Scase T, Parkin T, Morris JS.

犬の肥満細胞腫(MCTs)は生物学的挙動が定まっておらず、治療の判断は病理組織学的グレードにかなり依存している。好中球/リンパ球比(NLR)やアルブミン/グロブリン比のようなバイオマーカーは、ヒトの腫瘍の生物学的挙動を予測するのに使用されているが、犬では広く研究されていない。

明らかなMCTの犬62頭(高グレード14頭、低グレード48頭)を回顧的解析で確認した。高グレードと低グレードMCTおよび異なる部位の腫瘍の間でNLR中央値に有意差があった。多変量モデルで、NLR(OR2.0)と年齢(OR1.7)の増加は高グレードMCTのリスク増加に関係していると確認した。受信者動作特性曲線解析で、高グレードMCTの予測に対しNLR域値5.67(感受性85.7%;特異性54.2%)を確認した。

NLR域値5.67はMCTのグレード予測に、今までのツール(外見、部位、他)と並んで有効なものだった。さらなる確証で、このバイオマーカーは病理組織学的診断が得られるまでに臨床判断のガイドに使用できた。(Sato訳)
■犬の脊髄肥満細胞腫:4症例の画像特性と臨床結果
SPINAL MAST CELL TUMORS IN DOGS: IMAGING FEATURES AND CLINICAL OUTCOME OF FOUR CASES.
Vet Radiol Ultrasound. 2016 Oct 9. doi: 10.1111/vru.12429. [Epub ahead of print]
Moore TW, Bentley RT, Moore SA, Provencher M, Warry EE, Kohnken R, Heng HG.

犬の脊柱肥満細胞腫(MCTs)に関する発表された情報は限られている。この研究の目的は、脊髄MCTと確認された犬の一群で臨床および高度画像検査所見を報告することだった。

この回顧的ケースシリーズにはいる基準は、脊髄のMRIあるいはCT検査を行い、脊髄MCTの組織学的診断がある犬だった。臨床、画像、治療および転帰のデータを記録した。

基準に合ったのは4頭の犬だった。1頭の犬は原発性脊髄MCTで、3頭の犬は転移性脊髄MCTだった。4頭の犬は傍脊柱感覚過敏を呈し、亜急性の進行あるいは急性の脊髄障害を示した。全てのCTおよびMRI病変は硬膜外だった。2症例は硬膜外腔に明確なマスを示した。1症例は硬膜外腫瘍が傍脊椎筋肉組織から侵入していた。1症例はMRIで多発性骨髄腫と区別できない多骨性病変を示した。原発性硬膜外低グレードMCTの1頭は、術後、補助的ロムスチンにより臨床的に正常な状態を4年維持した。皮膚腫瘍から転移した硬膜外高グレードMCTは術後補助的ビンブラスチンの使用にもかかわらず2か月以内に再発した。内蔵の関与も併発している2頭の高グレード症例は、画像検査後すぐに安楽死された。

犬において、進行性有痛性骨髄障害および硬膜外脊髄病変(硬膜外、傍脊椎、多骨性)のCTやMRI所見に対し、MCTを鑑別診断に入れるべきである。犬のMCTは皮膚や播種した疾患に関係することも多いが、硬膜外腔の原発性腫瘍として発生することもある。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫の細胞学的グレード分類
Cytological grading of canine cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2016 Sep;14(3):245-51. doi: 10.1111/vco.12090. Epub 2014 Apr 9.
Scarpa F, Sabattini S, Bettini G.

肥満細胞腫(MCTs)に対する細胞学的グレード分類は、手術の前に最も適切な治療法を選択可能にするため、非常に望ましいと思われる。

この研究は、有糸分裂数、多核細胞、核異型性、巨核細胞の有無を基にした新しいカイペル(Kiupel)分類の細針吸引生検に対する適応性を評価する。

術前の細胞学的診断がある50の連続症例を含めた。細胞学的標本において、約1000個の細胞を評価し、組織学的グレードを対応した切除標本で評価した。

細胞学的に、上記パラメーターは、組織学的低グレードと高グレード腫瘍の間で有意に違いがあった(P<0.001)。細胞グレード分類は、47症例の組織学的グレードを正確に予測した(精度、94%;感受性、84.6%、特異性、97.3%)。2症例の高グレードMCTs(4%)は細胞学的に検出されなかった。

ほとんどの症例において、細胞グレード分類は臨床的決断をアシストするために有用な病識を提供できる。しかし、少数症例において過小評価のリスクは、その方法の全体的有用性の限界を表す。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫における犬種と病理組織学的グレードとの関係
Association of breed and histopathological grade in canine mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2016 May 19. doi: 10.1111/vco.12225. [Epub ahead of print]
Mochizuki H, Motsinger-Reif A, Bettini C, Moroff S, Breen M.

この研究の目的は、犬の肥満細胞腫(MCTs)の病理組織学的グレードと犬種の関連を評価することだった。アメリカで皮膚MCTsと病理組織学的に診断を確定した9375の病理学的データの回顧的調査で、200万頭以上登録された純血犬における犬種有病率の状況を評価した。病理組織学的グレードと犬種、年齢、性別、不妊状況をとの関連を調べた。

高グレード腫瘍の集団は加齢とともに増加する、オスと未不妊犬は高グレード腫瘍発生確率が増加していることがデータで示される。犬種の間で高グレード腫瘍の比率に有意差が検出された。

パグは高グレードではなく、低/中グレードの腫瘍の発生リスクが有意に増加し、この犬種では低侵襲性MCTsが優勢である。
この研究の結果は、高グレードMCTsの発生に対する遺伝的関連が示唆される。(Sato訳)
■外科的に切除あるいは切除していない犬の肥満細胞腫の電気化学療法による治療
The treatment of canine mast cell tumours with electrochemotherapy with or without surgical excision.
Vet Comp Oncol. 2016 Mar 22. doi: 10.1111/vco.12217.
Lowe R, Gavazza A, Impellizeri JA, Soden DM, Lubas G.

第一選択治療あるいは外科手術の補助的治療として肥満細胞腫(MCTs)の犬における電気化学療法(ECT)の結果を述べる。

治療は低用量化学療法薬と、腫瘍細胞膜の一時的透過化処理と多孔性を増加させるマイクロセカンド電気パルスの応用を併用する。この研究は回顧的ケースシリーズである。

合計51頭のMCTsの犬を調査し、ECT処置に従い4群に分類した(ECTのみ15頭、術中ECT11頭、手術の補助としてECT14頭、術後ECT11頭)。完全あるいは部分寛解、無病期間、総生存期間、局所毒性を評価するため、4群を評価した(グレード、大きさ、位置のステージ)。

このケースシリーズでは、ボクサー、雑種犬、ラブラドールレトリバー、オス犬、4歳から9歳の間の犬が多く見られた。MCTsは大部分がグレード2(Patnaik)およびTステージ0-1、I-1(WHO)だった。治療する病変は、根治手術で美容あるいは機能的に損なわれると思われる後枝や頭部に最も一般的に確認された。術中群の犬は、カプラン-マイヤー解析で最も良い無病期間を示した。ECTによる局所毒性の範囲は、ほとんどが5ポイント任意スケールで1-4、5が最も高い毒性で0から毒性無しだった。

この研究で、ECTがより小さなMCTsでは外科手術の代わりに、単独治療としてうまく応用できる。ECTは重大な毒性はなく、より大きな病変で術中、あるいは術後に併用できる。(Sato訳)
■肥満細胞腫の犬の節の肥満細胞と臨床結果の関連とリンパ節転移の評価に対して提唱される分類システム
Correlation of nodal mast cells with clinical outcome in dogs with mast cell tumour and a proposed classification system for the evaluation of node metastasis.
J Comp Pathol. 2014 Nov;151(4):329-38. doi: 10.1016/j.jcpa.2014.07.004. Epub 2014 Aug 27.
Weishaar KM, Thamm DH, Worley DR, Kamstock DA.

肥満細胞腫の犬のリンパ節転移は負の予後指標として報告されているが、転移性疾患を定義する標準化された組織学的基準は存在しない。

この研究の主な目的は、肥満細胞腫の犬において節が関連する肥満細胞の異なる組織学的パターンが臨床結果と関連するかどうかを調査することだった。

2つ目の目的は、リンパ節転移の組織学的評価に対する基準をしっかりとした分類システムを提唱することだった。
コロラド州立大学Diagnostic Medicine Centerデータベースでリンパ節転移あるいは節が関連する肥満細胞の所見がある犬肥満細胞腫の症例を検索した。肥満細胞腫瘍の犬においてセンチネルリンパ節マッピングと節摘出を含む臨床試験から症例を追加した。

41症例を確認した。個体群統計データ、治療、臨床結果を各症例から集めた。リンパ節は節の肥満細胞の数、分布、構造の破壊をもとにした新しい分類システム(HN0-HN3)に従い分類した。

この研究所見は、肥満細胞腫の犬に関連するこの新しい分類システムにより提唱される節の肥満細胞の特徴と予後指標、臨床結果を示す。(Sato訳)
■切除不能な肥満細胞腫の犬の治療に対するトセラニブとロムスチンのパルス療法について
Pulse-Administered Toceranib Phosphate Plus Lomustine for Treatment of Unresectable Mast Cell Tumors in Dogs.
J Vet Intern Med. 2015 Jun 25. doi: 10.1111/jvim.13573.
Burton JH, Venable RO, Vail DM, Williams LE, Clifford CA, Axiak-Bechtel SM, Avery AC, Thamm DH.

背景 犬の切除不能な肥満細胞腫 (MCT)は治療課題であり、新しい組み合わせ治療の研究が必要である。細胞傷害性のある化学療法にチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI)を組み合わせて間欠的に投与することは、それぞれの薬剤を単剤療法として用いる場合のコストと副作用を減らし、犬の肥満細胞腫に効果的に傷害を与える可能性がある。

仮説と目的 本研究の目的は、(1)最大耐用量 (MTD)を決定する、(2)客観的奏効率 (ORR)を決定する、(3)ロムスチンに加えてトセラニブ(TOC)をパルス投与したときの副作用を明らかにすることである。

動物 計測可能なMCTをもつ飼い犬47頭

方法 トセラニブは、21日のサイクルのうちの1, 3, 5日目に経口で2.75mg/kgで投与した。ロムスチンは、50mg/m2を開始量として各サイクルの3日目に経口投与した。全ての犬は、ジフェンヒドラミンとオメプラゾールとプレドニゾンを併用した。

結果 ロムスチンのMTDは、TOCのパルス療法に加えた場合50mg/m2であった。用量規定毒性は、好中球減少症であった。MTDで治療した41頭の犬は、結果の評価を行った。ORRは46%であり(完全寛解が4頭で15頭が部分寛解)、全体の無増悪生存期間 (PFS)の中央値は53日であった(1日から752日以上)。多変量解析では、PFSの改善に有意に関連した因子として、治療に対する反応性、転移がないこと、化学療法を事前に実施していないことなどが挙げられた。

結論と臨床的意義 ロムスチンにTOCのパルス投与を併用することは、一般的に忍容でき、切除不能または転移のあるMCTの犬に用いるのに合理的な治療オプションであろう。(Dr.Taku訳)
■犬の肥満細胞腫のステージングの有用性
The utility of staging in canine mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2014 Dec;12(4):287-98. doi: 10.1111/vco.12012. Epub 2012 Dec 13.
Warland J, Amores-Fuster I, Newbury W, Brearley M, Dobson J.

犬肥満細胞腫(MCTs)の現行のステージングは、最小限のリンパ節(LN)評価、腹部超音波および胸部エックス線検査など多くの獣医師により行われていた。従来、バフィーコートや骨髄評価を提唱している人もいる。

紹介病院で見られたMCTの犬220頭をLN触診/細胞診、胸部エックス線および腹部超音波検査でステージングした。拡がりと今後の挙動の有病率を考慮することで各方法の有用性を評価した。

来院時、30.9%の犬は局所LNに転移があり、全ての犬の6.8%に遠隔転移も認められた。LN転移が見られないときは、遠隔転移のある犬または遠隔転移の発症した犬はいなっかった。肺転移の確実な所見のある犬はいなかった。

このシリーズで、局所リンパ節は転移の標識で、局所リンパ節転移のない場合、追加ステージングの有用性は低かった。胸部エックス線検査は犬の肥満細胞腫のステージングで有用ではなかった。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫の犬の初診時において転移の存在を予測できるかについて、2段階および3段階の病理組織学的グレード分類法の比較:386症例(2009-2014年)
Comparison of 2- and 3-category histologic grading systems for predicting the presence of metastasis at the time of initial evaluation in dogs with cutaneous mast cell tumors: 386 cases (2009-2014).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Apr 1;246(7):765-9. doi: 10.2460/javma.246.7.765.
Stefanello D, Buracco P, Sabattini S, Finotello R, Giudice C, Grieco V, Iussich S, Tursi M, Scase T, Di Palma S, Bettini G, Ferrari R, Martano M, Gattino F, Marrington M, Mazzola M, Elisabetta Vasconi M, Annoni M, Marconato L.

目的 皮膚肥満細胞腫 (MCTs) の犬の初診時において転移の存在を予測できるかについて、Kiupel (2段階)およびPatnaik (3段階) の病理組織学的グレード分類法の比較

研究デザイン 回顧的症例研究。

動物 皮膚MCTがある386頭の飼い犬

方法 完全な臨床的ステージ決めを実施した皮膚MCTと新たに組織学的に確定診断された犬のカルテにおいて、臨床的な情報と病理組織学的な情報を検索した。

結果 すべてのPatnaikグレード1のMCT(52頭)はKiupelの低悪性度MCTと分類され、Patnaikグレード3のMCT(43頭)はKiupelの高悪性度MCTと分類された。291頭のPatnaikグレード2のMCTのうち、243頭(83.5%)は、Kiupelの低悪性度腫瘍と分類され、48頭 (16.5%) は、Kiupelの高悪性度腫瘍と分類された。Patnaikグレード3のMCTの犬は、グレード1や2のMCTと比較して、初診時に転移している可能性が有意に高く(オッズ比 5.46)、Kiupelで高悪性度のMCTの犬は、低悪性度のMCTの犬よりも有意に転移している可能性が高かった(オッズ比 2.54)。
しかし、Patnaikのグレード1の腫瘍の52頭の犬のうち3頭(5.8%)、グレード2の291頭のうちの48頭(16.5%)、Kiupelの低悪性度の295頭の犬のうち44頭(14.9%)は、転移巣が認められた。

結論と臨床的意義 皮膚MCTの犬において、予後予測は、用いるグレード分類法にかかわらず、組織学的グレードのみに基づくべきではなく、臨床ステージの結果を考慮するべきであるということを示唆している。(Dr.Taku訳)
■ホメオパシーを使用したグレードIII肥満細胞腫の犬の長期寛解の1例
Long-Term Remission of Grade III Mast Cell Tumors in a Dog Using Homeopathy
J Am Holistic Vet Med Assoc. 2014 Spring ;35(0):35-41. 21 Refs
Henry Stephenson

6.5歳の去勢済みオスのブルテリアの雑種犬が、左腋窩の領域に2cmの皮膚マスを呈した。病理組織検査で有糸分裂指数の高いグレードIII肥満細胞腫(MCT)であることがわかった。

ニオイヒバ(Thuja occidentalis)とCarcinosinによるホメオパシー療法を開始した。

初回手術から3か月後、同エリアと肋骨および陰嚢からも追加のマスを切除した。2度目の手術から2週間後、鼠径リンパ節が15cmになっていることに気付いた。Carcinosinとニオイヒバに変えて新しいレメディのラカシス(Lachesis)を使用したホメオパシー療法を継続した。全てのマスは10か月以内に解消し、経過観察18か月時点でも腫瘍がない状態を維持した。(Sato訳)
■耳介のMCTsを外科切除で治療した犬の臨床結果
Clinical outcome for MCTs of canine pinnae treated with surgical excision (2004-2008).
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 May-Jun;50(3):187-91. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6039. Epub 2014 Mar 21.
Schwab TM1, Popovitch C, DeBiasio J, Goldschmidt M.

犬の肥満細胞腫(MCTs)は、犬でよく見られる皮膚腫瘍である。ある場所にできたMCTは他の場所にできたMCTsよりも生物学的に攻撃的な挙動をとるかもしれないと示唆されているが、外科切除で治療した耳介のMCTsについて発表されたデータはない。

耳介のMCTsの外科的切除を行った28頭の犬の回顧的研究を、カルテの再検討、術者への追跡調査で行った。腫瘍のグレード、clean or dirty切除、軟骨への浸透、有糸分裂指数(MI)が再発や生存期間(ST)に及ぼす影響を評価した。

グレード2の犬1頭と、グレード3の犬8頭中7頭に局所再発が見られた。グレード1、2の犬の生存期間中央値は達成されなかったが、グレード3の犬では10か月だった。局所再発やSTに対して組織学的にclean or dirtyマージンは統計学的関係がなかった。

局所再発の無い無病期間の延長は、グレード1やグレード2の肥満細胞腫の局所切除で達せられると思われる。グレード3の犬は一様に結果が悪く、局所再発や死亡までの時間は短い。(Sato訳)
■ハイグレード、転移性、切除不可能な肥満細胞腫の犬のCCNUおよび高用量ビンブラスチン、プレドニゾン(CVP)治療で毒性と効果を評価する第II相研究
A phase II study to evaluate the toxicity and efficacy of alternating CCNU and high-dose vinblastine and prednisone (CVP) for treatment of dogs with high-grade, metastatic or nonresectable mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2010 Jun;8(2):138-52. doi: 10.1111/j.1476-5829.2010.00217.x.
Rassnick KM, Bailey DB, Russell DS, Flory AB, Kiselow MA, Intile JL, Malone EK, Balkman CE, Barnard SM.

交互に1-(2-シクロヘキシル)-3-クロロエチル-1-ニトロソウレア(CCNU;70mg/m2)とビンブラスチン(3.5mg/m2)、およびプレドニゾン(1-2mg/kg;CVP)を肥満細胞腫(MCT)の犬に使用するプロトコールの安全性と有効性を評価した。

17頭は切除不可能な肥満細胞腫があり、35頭は転移性MCTsあるいはグレードIII肥満細胞腫の局所領域コントロールの補助治療としてCVPを投与した。ビンブラスチン投与後の8%の犬、CCNU投与後の2%の犬に発熱を伴う好中球減少が見られた。肝毒性を示唆する血清ALTの持続的上昇が9%の犬に見られた。

切除不可能なMCTsの犬の反応率は65%だった;5頭は完全寛解(中央値141日)、6頭は部分反応(中央値66日)に達した。

補助的に治療した犬の総無増悪生存期間(PFS)中央値は489日だった。グレードIII肥満細胞腫の犬は、転移性グレードII肥満細胞腫の犬と比べPFSが短かった(190日vs954日)。このプロトコールの他と比較しての効果について信頼できる情報を得るために第III相研究が必要である。(Sato訳)
■犬のハイリスク肥満細胞腫の治療と反応に関する回顧的レビュー
A retrospective review of treatment and response of high-risk mast cell tumours in dogs.
Vet Comp Oncol. 2014 Sep 15. doi: 10.1111/vco.12116.
Miller RL, Van Lelyveld S, Warland J, Dobson JM, Foale RD.

この回顧的ケースシリーズは、高い転移リスクを持つ肥満細胞腫(MCT)の犬94頭の生存結果を評価する。

肉眼的病変の存在下、あるいは原発腫瘍の外科的切除後の補助として細胞毒性化学療法プロトコール、あるいはチロシンキナーゼ阻害薬のマスチニブで治療した。

転移巣のある犬において、原発腫瘍の外科的切除といずれかの化学療法の補助療法で治療した犬(生存期間中央値(MST):278日)は、原発腫瘍の外科的切除を行わずに化学療法を受けた犬(MST:91日、P<0.0001)と比較して有意に生存性のアドバンテージがあった。

転移巣がなくPatnaikグレードII腫瘍と高Ki-67の腫瘍を外科的に切除し、ビンブラスチンとプレドニゾロンで治療した犬(MST:1946日)は、マスチニブで治療した犬(MST:369日、P=0.0037)よりも有意に長く生存した。

ハイリスクMCTsの追加前向き対照臨床試験が、個々の犬に対し正確なエビデンスベースの治療決定を行うために必要である。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫の不完全あるいはぎりぎりの外科切除後、原発部の再切除あるいは放射線療法での追加局所療法は生存性と局所コントロールを改善させる
Additional local therapy with primary re-excision or radiation therapy improves survival and local control after incomplete or close surgical excision of mast cell tumors in dogs.
Vet Surg. 2014 Feb;43(2):182-9. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12099.x. Epub 2014 Jan 6.
Kry KL, Boston SE.

目的:不完全あるいはマージンぎりぎりで肥満細胞腫を切除した犬で、原発部の再切除、あるいは放射線療法を行った場合と、追加局所処置なしの場合の生存性および局所再発結果を比較する

研究構成:回顧的ケースシリーズ

動物:犬(n=64)

方法:オンタリオ獣医大学健康科学センター(2001-2010年)に来院し、不完全あるいはぎりぎりの外科切除を行った犬の肥満細胞腫の結果を、追加の局所療法(原発部再切除、あるいは放射線療法)を行った犬と行わなかった犬で評価した。主治医と飼育者に医療記録の評価および電話で追跡調査を実施した。

結果:64頭の犬の腫瘍(n=70)を調査した。原発部再切除(2930日)と放射線療法(2194日)群の生存期間中央値は、比較群(710日)よりも有意に長かった。局所再発は再切除群の13%、放射線療法群の8%、比較群の38%で発生した。局所再発率は再切除群に対して統計学的有意差はなかったが、再発までの期間は再切除と放射線群両方で統計学的により長かった。補助化学療法は生存性あるいは局所コントロールの改善に関係しなかった。

結論と臨床的関連:肥満細胞腫の不完全あるいはぎりぎりの切除後、追加の局所療法を実施するとき、生存性および局所コントロールの持続期間に有意な改善がある。肥満細胞腫の不完全あるいはぎりぎりの切除の場合、飼育者にそれら追加の治療を勧めるべきである。(Sato訳)
■ある程度の大きさの犬の肥満細胞腫に対する少分割放射線療法、トセラニブ、プレドニゾンの多施設前向き試験
Multicenter prospective trial of hypofractionated radiation treatment, toceranib, and prednisone for measurable canine mast cell tumors.
J Vet Intern Med. 2012 Jan-Feb;26(1):135-41. doi: 10.1111/j.1939-1676.2011.00851.x. Epub 2011 Dec 19.
Carlsten KS, London CA, Haney S, Burnett R, Avery AC, Thamm DH.

背景:肥満細胞腫(MCT)は犬で一般的な皮膚腫瘍で、外科的切除が不可能な場合、治療に努力が必要となる。切除不能なMCTに対する新しい治療プロトコールが必要である。

仮説:トセラニブ、プレドニゾン、少分割放射線療法(RT)の併用は、忍容性良好で有効だろう。

動物:RTを行えるある程度のMCTがある17頭の飼育されている犬

方法:前向き臨床試験。全ての犬にプレドニゾン、オメプラゾール、ジフェンヒドラミン、トセラニブを投与した。トセラニブはRT開始前1週間から投与し、24Gyを3から4回に分割照射した。

結果:intention-to-treat分析をもとに、全体の反応率は76.4%で、58.8%の犬は完全寛解、17.6%の犬は部分反応を示した。一番良い反応までの時間の中央値は32日で、無進行期間の中央値は316日だった。全体の生存期間中央値は到達せず、追跡調査の中央値は374日だった。最も一般的な毒性は消化管と肝臓だった。

結論と臨床意義:小分割RTとトセラニブ、プレドニゾンの組み合わせは、ほとんどの犬で許容し、効果的だった。反応率と持続期間は、MCTに対する単剤治療としてトセラニブを使用した時の報告よりも高かった。この併用療法は切除不可能なMCTに対して成功の見込みのある治療オプションである。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫の細胞学的グレード
Cytological grading of canine cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2014 Apr 9. doi: 10.1111/vco.12090.
Scarpa F1, Sabattini S, Bettini G.

肥満細胞腫 (MCT)の細胞学的なグレードによって、外科手術の前に最も適切な治療法を選択することができるため、それらは非常に期待されるところである。

この研究は、有糸分裂の数、多核の細胞、奇怪核および巨大核の存在に基づいて新しい Kiupelグレード分類のFNAが適用できるかを評価することである。

手術前の細胞診の50頭の症例を用いた。細胞診のサンプルにおいて、約1000個の細胞を評価し、それに相当する切除サンプルを用いて組織学的グレードを検討した。細胞診では、上記のパラメーターについて、組織学的に低グレードのものと高グレードのものは有意に差が認められた(P<0.001)。細胞診によるグレード分類は、47症例において組織学的グレードを正しく予測することができた(正確性 94%、感度 84.6%、特異性 97.3%)。高グレードのMCT 2症例は細胞診で検出できなかった(4%)。細胞診によるグレード分類によって、

大部分の症例において臨床的な決定の補助となる有用な予測が得られた。しかし、少数の症例において危険性を低く見積もってしまうことがあるので、この方法は全体として有用性が限られてしまう。(Dr.Taku訳)
■猫で肥満細胞血の意義
Significance of mastocytemia in cats.
Vet Clin Pathol. March 2013;42(1):4-10.
Martina Piviani; Raquel M Walton; Reema T Patel

背景:猫において肥満細胞血は肥満細胞腫(MCT)の猫に限られていると考えられるが、犬では多種多様な疾患と関係する。

目的:この回顧的研究の目的は、猫の肥満細胞血の診断的および予後的意義を調査する

方法:6年間で肥満細胞が確認された全ての血液スメア、バフィーコート(BC)を回顧的に調査し、肥満細胞を数えた。肥満細胞血の猫は、臨床診断をもとに分類した。

結果:肥満細胞血は33頭の猫の血液スメア40、BCスメア13で認められた。ルーチンなCBCsの間、猫で検出された肥満細胞血の発生率は0.33%だった(40/12116CBCs)。33頭の肥満細胞血の猫のうち22頭(67%)は内蔵(n=17)の、あるいは皮膚のMCT(n=7)を持っており、その中には内蔵と皮膚に併発した2頭も含まれた。3頭の追加症例(9%)において、内蔵MCTが臨床的に疑われたが、臓器の細胞学的あるいは病理組織学的評価は行われなかった。33頭の肥満細胞血の猫のうち、3頭(9%)はMCTが除外され、最終診断はリンパ系腫瘍(n=2)と多臓器血管肉腫(n=1)だった。5頭の追加症例(15%)はMCT以外の診断で、リンパ腫(n=2)と慢性腎不全(n=3)だったが、脾臓の細胞学的あるいは病理組織学的評価は行われなかった。MCTを確認した猫の血液スメアは、スメアあたり1-113個の肥満細胞で、MCTが除外された猫ではスメアあたり1-2個の肥満細胞があった。

結論:猫において肥満細胞血は珍しく、内蔵MCTが存在する猫で最も一般的に見られるとデータは確認したが、MCT以外の腫瘍でもまれに循環肥満細胞が見られるかもしれない。(Sato訳)
■犬の口腔粘膜肥満細胞腫
Canine oral mucosal mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2013 Nov 11. doi: 10.1111/vco.12071.
Elliott JW, Cripps P, Blackwood L, Berlato D, Murphy S, Grant IA.

肥満細胞腫(MCTs)は犬の最も一般的な皮膚腫瘍であるが、まれに口腔粘膜にもできる。

このMCTの部分集団を、毛が生えた皮膚にできるそれら腫瘍よりもより攻撃的な臨床経過を示すことを報告し、著者は口腔粘膜MCTは来院時に高い確率で局所転移があり、これはネガティブな予後因子だろうと仮説を立てた。その他に分裂指数(MI)も予後指標とだと仮説を立てた。

口腔粘膜にMCTsができた33頭の犬を回顧的に研究した。

結果は、犬の口腔粘膜MCTは診断時にリンパ節転移の高い発生率(55%)を持ち、予後は不良だったことを示唆した。MIとリンパ節転移はかなり予後指標となるものだった。

それらの腫瘍の局所領域での進行は一般的で、それら腫瘍の適切な局所コントロールを行った犬は結果が改善した。より攻撃的な臨床経過にもかかわらず、転移が存在した時でも治療で延命できる。(Sato訳)
■猫の肥満細胞腫:臨床的アップデートと有望な新治療法
Mast cell tumors in cats: clinical update and possible new treatment avenues.
J Feline Med Surg. January 2013;15(1):41-7.
Carolyn Henry; Chamisa Herrera

診療での関連:猫の肥満細胞腫(MCTs)は、一般診療で遭遇することが多い。猫において肥満細胞腫は最も一般的な脾臓の腫瘍で、2番目は皮膚、3番目は腸管腫瘍である。治療と予後は、その部位と組織学的分類により非常に劇的である。

臨床的チャレンジ:細胞あるいは組織学的診断は得るのが容易なことが多い一方、種々の組織学的分類、関連する類別シェーマの欠如、解剖学的部位次第の挙動の差異は猫の肥満細胞腫の症例の予後判定を混乱させる。臨床的な予後および容認された標準的ケアに関連する確立したグレード分類システムのある犬のMCTsとはずいぶん異なる。

読者:その有病率によれば一般診療医が定期的にMCTsに遭遇する。多くの場合、診断や治療に対する委託は必要ない。

エビデンスベース:歴史的に、猫のMCTsの最適な治療を判定するための臨床的エビデンスが限られている。ほとんどの推奨は、限られた症例報告あるいは後ろ向き研究を基になされている。獣医マーケットで受容体チロシンキナーゼ抑制薬の近年の導入により、猫にそれら薬剤の使用を新しく研究しており、新しい治療オプションは間近である。(Sato訳)
■転移し切除不能な犬皮膚肥満細胞腫に対するメシル酸マシチニブ治療
Masitinib mesylate for metastatic and non-resectable canine cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2013 Jul 12. doi: 10.1111/vco.12053. [Epub ahead of print]
Smrkovski OA, Essick L, Rohrbach BW, Legendre AM.

メシル酸マシチニブは、大きく切除不能なグレードIIまたはIIIの犬の肥満細胞腫の治療に対して認可されたチロシンキナーゼ阻害剤である。

この研究は、転移し、切除不能な犬の肥満細胞腫のフロントラインおよびレスキュー薬としてマシチニブの使用を評価することである。これらの犬における毒性と予後因子の同定は二次的な関心である。

この研究には26頭の犬を用いた。マシチニブに対する奏功率は50%であった。マシチニブに反応した犬の生存期間の中央値は630日であったのに対し、反応しなかった犬のそれは137日であった (P=0.0033)。毒性は、治療した犬の61.5%において認められ、ほとんどの副作用は軽度で自然に治癒した。

腫瘍のグレード、ステージ、部位ではなく、マシチニブに対する反応性が肥満細胞腫の犬の生存に関する最も有意な予後因子であった。(Dr.Taku訳)
■犬のグレードIIステージ2の肥満細胞腫において積極的な局所療法と全身性化学療法の併用は長期コントロールをもたらす:21症例(1999-2012)
Aggressive local therapy combined with systemic chemotherapy provides long-term control in grade II stage 2 canine mast cell tumour: 21 cases (1999-2012)*
Vet Comp Oncol. 2013 May 31. doi: 10.1111/vco.12042.
Lejeune A, Skorupski K, Frazier S, Vanhaezebrouck I, Rebhun RB, Reilly CM, Rodriguez CO Jr.

この後ろ向き症例シリーズは、十分な局所療法と補助的全身性化学療法(プレドニゾン、ビンブラスチン、CCNU)で治療したグレードIIステージ2の肥満細胞腫(MCT)の犬21頭の結果を評価する。

全ての犬の生存期間中央値は1359日(範囲、188-2340日)だった。無病期間中央値は2120日(149-2325日)だった。手術と化学療法で治療した犬(中央値、1103日;188-2010日)は、それらの治療の一部として手術、放射線療法、化学療法を行った犬(中央値、2056日、300-2340日)よりも生存期間が短かった。2頭は放射線野で局所再発し、4頭は新たにMCTが発生した。遠隔転移はどの犬にも認められなかった。

この研究結果は、グレードIIの肥満細胞腫で局所領域リンパ節転移の存在下、適切な局所領域療法後のプレドニゾン、ビンブラスチン、CCNUの使用は40か月を超える生存期間中央値を提供できる。(Sato訳)
■上皮親和性を持つ皮膚肥満細胞腫の犬の3例
Cutaneous mast cell tumor with epitheliotropism in 3 dogs.
Vet Pathol. March 2013;50(2):234-7.
F N Oliveira; J W Elliott; B C Lewis; G G Mathews; R M Brown; C M Treadway; I M Langohr

上皮親和性は、皮膚上皮向性リンパ腫および犬の皮膚組織球腫の重要な診断的特徴である;しかし猫のある肥満細胞性疾患では分かっているが、犬の皮膚肥満細胞腫の1つの特徴だと考えられていない。

この研究で、3頭の犬の皮膚肥満細胞腫は、腫瘍性肥満細胞が表皮や濾胞上皮に上皮向性に侵襲していた。この珍しい組織学的所見の特徴は、基底層および有棘層における腫瘍性肥満細胞の各個およびクラスターの浸潤だった。それら細胞の肥満細胞起源は、ギムザ染色の異染性およびKIT蛋白の免疫反応陽性の実証により証明された。

以上の所見を基に、表皮に浸潤する犬の皮膚円形細胞腫瘍の鑑別診断に肥満細胞腫を含めるべきである。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫の予後判定における分裂指数とKi67指数の比較
Comparison of mitotic index and Ki67 index in the prognostication of canine cutaneous mast cell tumours.
Vet Comp Oncol.2013 Mar 12 ; ():
Berlato D , Murphy S , Monti P , Stewart J , Newton JR , Flindall A , Maglennon GA

増殖マーカーは肥満細胞腫(MCT)の予後判定に一般に使用される。

この研究の目的は、皮膚MCTsの犬の同集団で、生存性を予測するためのKi67と分裂指数の相対的能力を比較することである。全てのサンプルで組織学的悪性度判定、分裂指数、Ki67指数を実施し、追跡調査のアンケートで臨床的情報を入手した。

95頭の犬を調査し、追跡期間中央値は1145日だった。生存期間は組織学的悪性度、分裂指数、Ki67指数のカテゴリーの中で有意に変動した。多変量分析は、MCTによる死亡リスクがKi67指数の増加した犬(危険率:3.0(95%信頼区間1.3-6.8))、あるいは分裂指数の増加した犬(危険率:2.7(95%信頼区間1.1-6.5))で同様だと示した。

結論として、分裂指数とKi67指数は、予後がより悪いMCTsを独立して区別できた。

この区別はより積極的な局所あるいは全身治療を必要とするMCTsの中間グレードを選別するのに特に意義がある。(Sato訳)
■完全切除した犬の肥満細胞腫における局所再発の予測因子としての病理組織学グレードと病理組織学的なサージカルマージンの評価
Evaluation of histological grade and histologically tumour-free margins as predictors of local recurrence in completely excised canine mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2013 Mar 4. doi: 10.1111/vco.12021.
Donnelly L, Mullin C, Balko J, Goldschmidt M, Krick E, Hume C, Brown DC, Sorenmo K.

肥満細胞腫が完全に切除できたかは、病理組織学的なサージカルマージン(HTFM)によって評価される。HTFMの幅は局所再発(LR)を防ぐために必要であり、人の腫瘍においては組織学的に腫瘍がないマージン(HSM)として知られているが、動物においては定義されていない。

HTFMの幅はLRのリスクと関連しており、高悪性度の腫瘍は、低悪性度の腫瘍よりより幅広いHTFMが必要であると仮説をたてた。

完全に切除できた肥満細胞腫の犬の記録を用いた。シグナルメント、二段の腫瘍グレード、腫瘍の大きさ、HTFMの幅、再発と治療データを収集した。高悪性度の腫瘍(39頭)は、低悪性度の腫瘍(51頭)より再発しやすかった(35.9%に対して3.9%、P <0.0001)が、HTFMの幅とLRに相関はなかった。低悪性度の腫瘍の29%は、3mm以下のHTFMであったが、再発はなかった。

低悪性度の腫瘍のLRを防ぐのには、狭い(3mm以下)組織学的なマージンでよいようである。高悪性度の腫瘍は、HTFMの幅に関わらず有意にLRのリスクがある。(Dr.Taku訳)
■肥満細胞腫および肉腫の犬の急性期蛋白濃度
Acute phase protein levels in dogs with mast cell tumours and sarcomas.
Vet Rec. June 2012;170(25):648.
D Chase; G McLauchlan; P D Eckersall; J Pratschke; T Parkin; K Pratschke

急性期蛋白(APP)は炎症に反応する非特異的ホストの一部を形成する。それらは感染、炎症、癌、外傷など様々な異なる原因で誘導されると思われる。それらはそのような損傷に対し、最も早い反応を示すため、疾患の早期発見の可能性を持つ。ヒトでは、APP濃度が疾患の程度、前立腺、食道、結腸直腸癌などのいくつかの腫瘍における予後と相関することが示されている。それゆえ予後およびモニタリングツールとして使用できる。

今日まで、動物における同様の研究は限られており、主に本質的に後ろ向き研究および多くは腫瘍の種類に対し非特異的である。

この研究の目的は、第一に個別のAPPs、あるいは確認可能なAPPsの組合わせの濃度上昇が疾患の存在にリンクするかどうか確認するため、自然発生の肥満細胞腫(MCTs)および肉腫の犬における4つのAPPsのパネルを評価することだった。

MCTsの犬で、C-反応性蛋白(CRP)およびα-1酸性糖蛋白濃度は上昇し、同時に血清アミロイドA濃度は落ち込んだ。
肉腫の犬で、CRP、α-1酸性糖蛋白、ハプトグロビンは上昇した。

それらの所見は、犬の特定の充実性腫瘍がAPPプロフィールの特別な変化に関係するかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■肥満細胞腫の犬の酸化還元状態
redox status evaluation in dogs affected by mast cell tumour.
Vet Comp Oncol. 2012 Jul 24. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00343.x.
Finotello R, Pasquini A, Meucci V, Lippi I, Rota A, Guidi G, Marchetti V.

人医療で酸化ストレスは深く広く評価されており、発癌におけるその役割は明確に確立されている。
この前向き研究の目的は、過去に治療を受けていない肥満細胞腫(MCTs)の犬において抗酸化物濃度と酸化ストレスを評価することと、健康なコントロールのそれと比較することだった。

肥満細胞腫の犬23頭と健康なコントロール犬10頭において、酸化状態は酸化ストレス値(d-ROMs)測定で評価し、抗酸化活性は還元力(BAP)測定で測定し、α-トコフェロール濃度は高速液体クロマトグラフィーとUV分析で測定した。
基準で、健康なコントロール犬と比べMCTの犬のd-ROMs(P<0.00001)は有意に高く、BAP(P<0.0002)は低かったが、α-トコフェロール(P=0.95)に有意差は認めなかった。

結果は酸化ストレスパターンと酸化防御バリアは、コントロール犬と比較して新しく診断されたMCTの犬で変化することを示唆する。酸化ストレスの予後的役割を調査し、異なる治療アプローチの影響を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬リンパ腫と肥満細胞腫のステージングに対し複数部位の骨髄吸引の評価
Evaluation of bone marrow aspirates from multiple sites for staging of canine lymphoma and mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. 2012 May 11. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00331.x. [Epub ahead of print]
Aubry OA, Spangler EA, Schleis SE, Smith AN.

この前向き研究で、犬のリンパ腫(LSA)と肥満細胞腫(MCTs)のステージングに対し複数部位から採取した骨髄吸引物(BMAs)の有用性を評価した。40頭の犬(LSA、n=24;MCTs、n=16)を研究したが、基準として2か所から採取した診断的骨髄(BM)吸引物があるのは33頭(82.5%)のみだった。

LSAの19頭の犬を研究し、6頭(31.6%)に骨髄関与を認めた。それらの全6頭の両方の骨髄に腫瘍性リンパ球が存在した。
MCTsの14頭の犬を研究し、3頭(21.4%)に骨髄関与があった。2頭の犬の両部位に腫瘍性肥満細胞が存在したが、3頭目は1部位のみだった。
それらの結果は、複数部位からの骨髄吸引物は犬のLSA患者の正確なステージングに必要ないかもしれないが、高グレードMCTsの犬の骨髄浸潤パターンを評価する研究を行うべきである。(Sato訳)
■同時多発の皮膚肥満細胞腫を持つ犬における予後指標の評価:63症例
Evaluation of prognostic indicators in dogs with multiple, simultaneously occurring cutaneous mast cell tumours: 63 cases
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 24 NOV 2011
K. O’Connell, M. Thomson

同時多発皮膚肥満細胞腫(MCTs)を持つ63頭の犬を確認した。
この研究の目的は、同時多発皮膚肥満細胞腫の独特の疾患症状を持つ犬の予後評価に対し、犬種、同時発生の皮膚疾患、皮膚肥満細胞腫の数、大きさ、場所、組織学的グレードと有糸分裂指数、切除の完全性(完全、ぎりぎり、不完全);局所再発、転移、補助療法の意義を判定することだった。
多変量生存分析をもとに、グレード3の肥満細胞腫と記録された犬の無進行生存(PFS)期間(18.7v.s.2.2ヶ月)と生存期間中央値(24v.s.3ヶ月)はより短かった。補助的ビンブラスチン/ロムスチンで治療した犬は、死亡のリスクが16倍増加していた。四肢にMCTがあった犬の生存期間中央値は有意に長いことが分かった。全ての犬に対し、無進行生存期間(範囲14-1835日)と生存期間中央値(28-1835日)は整わなかった。(Sato訳)
■犬の結膜肥満細胞種:回顧的研究
Canine conjunctival mast cell tumors: a retrospective study
Veterinary Ophthalmology
Volume 14, Issue 3, pages 153?160, May 2011
Matthew Fife, Tiffany Blocker, Tina Fife, Richard R. Dubielzig, Karen Dunn

目的:犬の結膜肥満細胞種(MCTs)のシグナルメント、臨床症状、治療、再発率、転帰を述べる

構成:回顧的研究

方法:ウィスコンシンのComparative Ocular Pathology Laboratory、イギリスのEye Path Lab、カリフォルニアEye Care for Animalsから犬症例を選択した。32頭の犬の症例に結膜が原発と思われるMCTがあると確認した。データは病理提出依頼フォームから収集した。追加情報は、獣医眼科医あるいは手術を行った獣医師に質問表を送る方法で収集した。収集したデータは年齢、性別、犬種、腫瘍の位置、腫瘍の大きさ、期間と成長率、追加の診断、外科的記述、補助治療、組織学的記述、特殊染色、再発数、最終結果だった。

結果:検索基準に合致した33の結膜MCTsを持つ32頭の犬が確認された。全ての犬は初期治療として外科的切除を行った。外科的マージンは30の腫瘍で評価され、不完全マージン25例、narrow4例、完全切除1例と報告された。組織学的グレードは33MCTsのうち33で提供され、10が低グレード(30%)、18が中間(55%)、5が高グレード腫瘍(15%)だった。
経過の情報は25頭で入手できた。4頭は無関係の原因で死亡、2頭は局所再発、15頭は現在疾患がなく(術後平均21.4ヶ月)、4頭は再チェックの時には疾患がないと報告されたが、長期経過観察ができなかった(術後平均13ヶ月)。この研究でMCT関連疾患による死亡が確認された犬はいなかった。(Sato訳)
■健常猫におけるメシル酸マシチニブの安全性
Safety of masitinib mesylate in healthy cats.
J Vet Intern Med. 2011 Mar;25(2):297-302. doi: 10.1111/j.1939-1676.2011.0687.x. Epub 2011 Feb 11.
Daly M, Sheppard S, Cohen N, Nabity M, Moussy A, Hermine O, Wilson H.

背景:メシル酸マシチニブは、c-kit 受容体と血小板由来増殖因子受容体αとβの変異型と野生型の両方に対して活性をもつ人と動物の両方の疾患に対応した経口投与型チロシンキナーゼ阻害剤で、現在、犬の肥満細胞腫の治療に関してヨーロッパで認可されている。

仮説/目的:この研究の目的は、健常猫は臨床的に明らかな副作用がなくマシチニブの投与に耐えることが出来るかどうかを決定することだった。

動物:20頭の健常研究群-SPF猫

方法:この研究は、前向き、ランダム化第I相臨床試験だった。マシチニブは20頭の健常猫に経口投与した。10頭の猫は4週間 50mgのマシチニブを隔日投与し、10頭の猫は4週間毎日50mgのマシチニブを投与した。

結果:臨床的に明らかなタンパク尿が2/20 (10%)の猫(2頭とも毎日投与)で見られ、好中球減少症が3/20 (15%)(両方のグループでみられた)で見られた。血清クレアチニン濃度の増加と消化管有害事象がいくつかの猫で見られた。

結論と臨床重要性:メシル酸マシチニブは大部分の猫で耐えることが出来た。猫におけるマシチニブ使用に関するさらなる評価のために、長期投与と薬物動態研究が必要である。(Dr.Kawano訳)
■猫の皮膚肥満細胞腫における組織および免疫組織化学的特徴の予後値
Prognostic value of histologic and immunohistochemical features in feline cutaneous mast cell tumors.
Vet Pathol. July 2010;47(4):643-53.
S Sabattini; G Bettini

猫の皮膚肥満細胞腫(MCTs)は、肥満細胞性(高分化あるいは多形性)および非定型/少顆粒に組織学的に分類されている。生物学的挙動は良性から悪性の範囲だが、予後因子はあまりよく定義されていない。組織学的分類、腫瘍の数、分裂指数、細胞質の顆粒状態、好酸球あるいはリンパ球の浸潤を、25頭の皮膚MCTsの猫で回顧的に評価した。
KIT(CD117)パターンおよび免疫反応スコア、テロメラーゼ発現(ヒトテロメラーゼ逆転写酵素)、増殖指数(MIB-1/Ki67指数)の評価に免疫組織化学検査を応用した。症例の予後は電話で調査した。
腫瘍は15例が肥満細胞性高分化、7例が肥満細胞性多形性、3例が非定型/少顆粒性MCTsだった。免疫組織化学的に、CD117は25例中13例(52%)で発現し、テロメラーゼ逆転写酵素は22例中15例(68%)で発現し、組織学的分類と相関はなかった。分裂指数、KIT免疫反応スコア、Ki67指数は他の2つのカテゴリーよりも肥満細胞性多形性MCTsのほうが有意に高かった。5頭(20%)の猫は腫瘍が関連する原因で死亡した。病変の多さ、多形性表現型、KIT免疫反応スコア、分裂およびKi67指数は予後不良に関連した。分裂指数は最も強い予後変数だった。
それらの結果から、組織学的分類、CD117/KIT免疫組織化学検査、および増殖指数が猫皮膚MCTの潜在的に攻撃性の強い症例を確認するのに役立つことが示唆される。異常KIT蛋白局在およびテロメラーゼ免疫反応は、潜在的予後マーカーとしてさらに探究する必要がある。(Sato訳)
■犬の口および口周囲肥満細胞腫の生物学的挙動:44症例(1996-2006)
Biological behavior of oral and perioral mast cell tumors in dogs: 44 cases (1996-2006).
J Am Vet Med Assoc. October 2010;237(8):936-42.
Lorin A Hillman; Laura D Garrett; Louis-Philippe de Lorimier; Sarah C Charney; Luke B Borst; Timothy M Fan

目的:口腔粘膜、口腔粘膜皮膚移行部、あるいはマズルの口周囲領域から発生した肥満細胞腫(MCTs)を持つ犬の臨床結果を述べ、それら腫瘍の生物学的挙動におけるケモカインレセプタータイプ7(CCR7)の潜在的役割を評価する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:口腔粘膜(n=14)、口腔粘膜皮膚移行部(19)、マズルの口周囲領域(11)にMCTsを持つ犬44頭

方法:徴候、領域転移、治療、死亡原因、生存期間に関する情報を医療記録から再調査した。44症例中20症例はCCR7に対する免疫組織化学染色で使用できる組織サンプルを保管してあった。

結果:全ての犬における生存期間中央値は52ヶ月だった。26頭(59%)の犬は、入院時に領域リンパ節転移が認められた。リンパ節転移のある犬の生存期間中央値は14ヶ月で、リンパ節転移のない犬の生存期間中央値は割り出せなかった。CCR7に対する染色の強度は、領域リンパ節転移の存在あるいは生存期間に有意に関係することはなかった。

結論と臨床関連:口腔粘膜、口腔粘膜皮膚移行部、マズルの口周囲領域に発生したMCTsを持つ犬において、診断時に領域リンパ節転移の存在は負の予後因子だと示唆された。しかし、治療により長期生存期間が達成できた。また原発腫瘍におけるCCR7発現は、領域リンパ節転移の存在、あるいは生存期間に有意に関係することはなかった。(Sato訳)
■カルシトリオール(1,25-ジヒドロキシコレカルシフェロール)はインビトロで肥満細胞腫化学療法とレセプター型チロシンキナーゼ抑制活性を高め、自然に発生している犬肥満細胞腫に対する単剤活性を持つ
Calcitriol (1,25-dihydroxycholecalciferol) enhances mast cell tumour chemotherapy and receptor tyrosine kinase inhibitor activity in vitro and has single-agent activity against spontaneously occurring canine mast cell tumours.
Vet Comp Oncol. September 2010;8(3):209-20.
E K Malone, K M Rassnick, J J Wakshlag, D S Russell, R al-Sarraf, D M Ruslander, C S Johnson, D L Trump

カルシトリオールは種々の腫瘍モデルにおいて多剤化学療法の効果を増強する。この研究で、我々はカルシトリオールが犬肥満細胞腫C2細胞のインビトロ細胞毒性における化学療法あるいはチロシンキナーゼ抑制を増大させるかどうかを検査する。また、肥満細胞腫の犬における単剤療法として、特に癌治療に対して構成した高濃度カルシトリオール経口製剤DN101のインビボ効果も評価する。
カルシトリオールはインビトロでCCNU、ビンブラスチン、イマチニブ、トセラニブと組み合わせて使用するとき相乗的に抗増殖活性を示す。50%成長抑制に必要な濃度は、個別で使用するときに比べて組み合わせて薬剤を使用すると一般的に2-6倍低かった。高用量経口カルシトリオールは10頭中4頭(1頭は完全寛解、3頭は部分寛解)で寛解を導いたが、多くは毒性を経験し、試験の中止を必要とした。肥満細胞腫の犬の治療の組み合わせにおいてカルシトリオールのさらなる評価を正当化する。(Sato訳)
■1頭の犬で失明を起こし蝶形骨に浸潤した瀰漫性肥満細胞腫
Disseminated mast cell tumor infiltrating the sphenoid bone and causing blindness in a dog.
Vet Ophthalmol. May 2010;13(3):184-9.
Elsa Beltran, Alberta De Stefani, Jennifer Stewart, Luisa De Risio, Victoria Johnson

犬において肥満細胞腫は多くの器官および組織で発見され、様々な生物学的挙動を示す。ここで蝶形骨に浸潤した瀰漫性肥満細胞腫の1頭の犬の臨床およびMRI所見を紹介する。
6歳オスの去勢済みグレイハウンドが3日前からの急な失明で来院した。一般身体検査は正常だった。神経学的検査で軽度見当識障害性精神状態、両眼の威嚇反射喪失、両側性の前庭-眼球頭位反射の低下、両眼の直接および共感性瞳孔光反射の欠如が見られた。網膜電位検査では両眼とも正常な網膜機能を示した。病変の中央および頭側頭蓋窩への関与が疑われた。血液および血清生化学検査は尿素の低下(1.2mmol/l)以外正常だった。頭部MRI検査では、T2-強調画像において蝶形骨の不均質信号強度およびそれらの正常な内部構造喪失を認めた。脳脊髄液検査は正常だった。腹部超音波検査で、肝脾腫大、腸間膜リンパ節腫脹が見られた。空腸リンパ節と脾臓の針吸引生検を行った。結果は瀰漫性肥満細胞腫と一致した。オーナーはいかなる治療も断り、安楽死した。剖検で蝶形骨を含む多くの器官を侵した瀰漫性肥満細胞腫を確認した。我々の知識では、これは1頭の犬で失明の急性発現を起こした蝶形骨を巻き込む瀰漫性肥満細胞腫のMRI特性を述べた最初の報告である。(Sato訳)
■猫の腸硬化性肥満細胞腫:50症例(1997-2008)
Feline intestinal sclerosing mast cell tumour: 50 cases (1997-2008).
Vet Comp Oncol. March 2010;8(1):72-9.
C H C Halsey, B E Powers, D A Kamstock

この症例シリーズは、CSV獣医診断検査所で認められた猫腸管肥満細胞腫のユニークで未報告の相違を述べる。有意な間質成分を持つと述べられた猫腸管肥満細胞腫の50症例を再調査した。腫瘍細胞は中程度から大量の高密度間質コラーゲン(硬化)と混ざって小柱パターンを形成していた。腫瘍細胞は、特殊な組織化学染色で異染性を示し肥満細胞顆粒に一致する識別可能な細胞質内顆粒が乏しかった。また症例の部分集団は、肥満細胞特異トリプターゼで染まり、c-kitは免疫活性陽性を示した。全ての症例で好酸球浸潤は中程度から顕著だった。リンパ節および肝臓転移は症例の66%に見られた。治療および臨床結果は、25/50症例で入手できた。それらの症例のうち23症例は、診断から2ヶ月以内に死亡、あるいは安楽死された。これは猫における腸管肥満細胞腫の硬化性変異を特徴付ける最初の症例シリーズで、高率な転移傾向、予後要慎重であると思われる。(Sato訳)
■犬肥満細胞腫に対するビンブラスチンとCCNUの併用化学療法:57症例
Combination CCNU and vinblastine chemotherapy for canine mast cell tumours: 57 cases
Vet Comp Oncol. September 2009;7(3):196-206. 21 Refs
Maureen Cooper, XinRu Tsai, Peter Bennett

この研究の目的は、犬肥満細胞腫に対するCCNUおよびビンブラスチン化学療法プロトコールの効果と毒性を評価することだった。56頭の犬の57個の腫瘍を評価し、37個は肉眼で見える疾患、20個は顕微鏡的疾患だった。肉眼で見える疾患の犬において57%の反応率で、持続期間中央値は52週間だった。肉眼で見える疾患の犬の無進行生存期間(PFST)中央値は30週間、総生存期間(OST)中央値は35週間だった。顕微鏡的疾患の犬のPFST中央値は35週間、OST中央値は48週間だった。
治療した犬の54%に毒性が見られ、そのほとんどは軽度だった。この化学療法プロトコールはうまく許容するものと思われ、犬肥満細胞腫に対してその使用を考慮すべきである。(Sato訳)
■肥満細胞腫の犬の細胞学的リンパ節評価:グレードと生存との関係
Cytological lymph node evaluation in dogs with mast cell tumours: association with grade and survival
Vet Comp Oncol. June 2009;7(2):130-138. 24 Refs
E. L. Krick, A. P. Billings, F. S. Shofer, S. Watanabe, K. U. Sorenmo

この遡及コホート研究の目的は、肥満細胞腫の犬におけるリンパ節転移の細胞学的評価と生存性の関係を述べることである。肥満細胞腫と診断した152頭の犬の所属リンパ節吸引生検を再検討し、ステージングの特定細胞学的基準に従いクラス分けした。97頭(63.8%)はステージI腫瘍、55頭(36.2%)はステージII腫瘍だった。ステージIIの犬の生存期間はステージIの犬よりも有意に短かった(それぞれ0.8年および6.2年;P<0.0001)。グレードIIIの肥満細胞腫の犬は、ステージIIになっていることが多かった(P=0.004)。
それらの結果は、肥満細胞腫の犬のリンパ節の細胞学的評価は有効で価値ある臨床情報を提供すると思われ、その結果は腫瘍グレードおよび転帰と相関し、ゆえに実用的、非侵襲性のステージング方法である。(Sato訳)
■犬の肥満細胞腫の治療で電気化学療法と外科手術の比較
Electrochemotherapy compared to surgery for treatment of canine mast cell tumours.
In Vivo. 2009 Jan-Feb;23(1):55-62.
Veronika Kodre, Maja Cemazar, Jani Pecar, Gregor Sersa, Andrej Cor, Natasa Tozon

この研究の目的は、犬の肥満細胞腫のシスプラチンと共に電気化学療法(ECT)の局所治療の有効性を評価し、外科手術で治療した有効性と比較することだった。
材料と方法:この遡及研究では、MCTの異なる犬種25頭を2つの治療群に振り分けた:外科手術群(16頭の腫瘍16個)と外科手術を拒否したオーナーの犬のETC群(9頭の腫瘍12個)。治療の反応率と反応期間を評価し、群間の比較を行った。
結果:腫瘍の臨床ステージは、ETC群で4頭(45%)がステージI、5頭(55%)はステージIIIで、外科手術群は12頭(75%)がステージI、4頭(25%)は臨床ステージIIIだった。腫瘍の大きさの中央値は、外科手術群で5.2cm3、ECT群で2.9cm3だった。ECTは外科療法に匹敵する抗腫瘍効果を起こした。しかし、完全外科切除で治療した犬の算出した反応持続期間中央値は31.5ヶ月であるのに対し、この文献を書いている時点でECT群はそれに達しなかった。
臨床意義:ECTは肥満細胞腫の簡単で効果的、安全な局所治療法である。外科治療に変わりえるもので、特に1回の治療だけで長期寛解期間が獲得できるようなより小さな結節、あるいは位置の理由で切除不可能な結節などに有効である。(Sato訳)
■犬の肥満細胞種-発生率と病理組織学的特徴
Mast cell tumor in dogs--incidence and histopathological characterization.
Coll Antropol. March 2009;33(1):253-8.
Zeljko Grabarevi?, Jadranka Bubi? Spoljar, Andrea Gudan Kurilj, Ivan-Conrado Sostari?-Zuckermann, Branka Artukovi? , Marko Hohsteter , Ana Beck , Petar Dzaja, Nadica Maltar Strmecki

クロアチアにおける肥満細胞種の発生率、性別、犬種、年齢、位置によるそれらの分布はまだ確立していない。また腫瘍グレードの診断学でPatnaik'sシェーマによる種々の病理組織学的パラメーターの統計的有意性も実施されていなかった。
ザクレブ獣医学部の一般病理および病理学的形態学部で、2002年1月1日から2006年12月31日の間に肥満細胞種の病理組織学的特徴を調査した。
各腫瘍の動物の性別、年齢、種類、位置、腫瘍グレードを記録し、統計的に評価した。各病理組織変数にスコアーをつけ、腫瘍グレードと比較した。
分析期間で、合計1630の腫瘍を記録し、肥満細胞種は106頭に見つかり、全症例の6.5%だった。統計学的有意差で、この腫瘍はオス犬で多く見られ、平均年齢は6.96歳だった。ボクサーとレトリバーが見られる頻度が多く、位置は多くが肢だった。グレードIは15.9%、グレードIIは44.34%、グレードIIIは28.3%だった。腫瘍グレード、犬種、性別、あるいは位置の間に有意な相関は認められなかった。グレードと比較した病変スコアーを考慮すると、統計学的有意差が細胞の形、核小体の数、細胞大小不同、核の大小不同、巨大核、有糸分裂、壊死、出血、細胞性、細胞境界、膠原溶解に見られた。(Sato訳)
■肥満細胞種グレード2の不完全切除の犬に対する補助的CCNU(ロムスチン)およびプレドニゾン化学療法
Adjuvant CCNU (lomustine) and prednisone chemotherapy for dogs with incompletely excised grade 2 mast cell tumors.
J Am Anim Hosp Assoc. 2009 Jan-Feb;45(1):14-8.
Kenji Hosoya, William C Kisseberth, Francisco J Alvarez, Ana Lara-Garcia, Gillian Beamer, Paul C Stromberg, C Guillermo Couto

犬の肥満細胞種(MCTs)の不完全切除を治療する補助的1-(2-クロロエチル)-3-シクロヘキシル-1-ニトロソウレア(CCNU;ロムスチン)の使用は評価されていない。グレード2MCTの不完全切除および補助的CCNU、プレドニゾン化学療法で治療した12頭の犬の医療記録を再検討し、局所再発率、転移率、生存期間を評価した。局所再発あるいは局所/遠隔転移を起こした犬はいなかった。2頭の犬は致死的肝不全を起こした。生存犬の1-および2年進行フリー率はそれぞれ100%と77%だった。不完全切除の犬の皮膚MCTsに対する術後補助的CCNUは放射線療法の有効な代替法と思われる。(Sato訳)
■犬肥満細胞腫における所属リンパ節微小転移負荷の形態計測学的アプローチ:予備結果
Morphometrical approach for predicting regional lymph node micrometastatic load in canine mast cell tumours: preliminary results
Vet Comp Oncol. September 2008;6(3):62-170. 33 Refs
L. Marconato, V. Marchetti, D. Francione, C. Masserdotti, M. Gregori, R. Leotta, F. Abramo

犬の皮膚肥満細胞腫(MCTs)は、さまざまな生物的挙動を示し、治療や予後を示すのに正確な病期分類が必要である。所属リンパ節関与は関連する予後因子である。明確なリンパ節(LN)転移は比較的診断が簡単であるが、微小転移疾患の認識は困難である。この研究の主な目的は、臨床的に健康な犬(n=4、1群)、炎症性疾患の犬(n=31、2群)、所属リンパ転移のないもの(3-1群)、時折所属リンパ節に肥満細胞(MCs)があるもの(3-2群)、明確な所属リンパ節転移があるもの(3-3群)を含む皮膚肥満細胞腫の犬(n=27、3群)のリンパ節の肥満細胞数を評価することだった。以下の核マラメーターに関する肥満細胞も形態計測学的に評価した:平均核領域(MNA)、平均核周長(MNP)、最大最小直径(LS比)、平均核形状因子および核領域の変動係数。
肥満細胞の平均%は1群で0.0、2群で0.01、3-1群で0.07、3-2群で2.4、3-3群で47.1だった。MNAおよびMNPは2群と比べ、3-3群で有意に高かった(P<0.05)。3-2群のMNAおよびMNPは腫瘍性肥満細胞の存在を示唆し、この微小転移負荷の予測は結果と相関した。予備結果の分析は、核の形態計測が皮膚肥満細胞腫を持つ犬の所属リンパ節における微小転移疾患の検出に有効であることを示す。(Sato訳)
■犬肥満細胞腫の用量漸増ビンブラスチンによる治療
Dose-escalating vinblastine for the treatment of canine mast cell tumour
Vet Comp Oncol. June 2008;6(2):111-119. 17 Refs
K. R. Vickery, H. Wilson, D. M. Vail, D. H. Thamm

この研究の目的は、プレドニゾンおよび用量漸増ビンブラスチン(VBL)を投与した肥満細胞腫(MCT)の犬の短期副作用(AEs)を評価することだった。24頭の犬をビンブラスチン2mg/m2静脈投与で治療開始し、毎週2.33、2.67、3mg/m2と増量させていった。副作用は標準スコアリングシステムでグレードをつけた。2あるいは2.33mg/m2を投与した犬で、グレード3あるいは4の副作用を起こした犬はいなかった。2.67および3mg/m2を投与したとき、それぞれ9.5、5.9%の犬がグレード3あるいは4の副作用を起こした。重篤な副作用には好中球減少(n=3)、嘔吐(n=1)があり、そのうち1頭は入院を必要とした。それらのデータは、MCTの犬にビンブラスチンを従来の投与量2mg/m2以上投与しても安全かもしれないと思われる。標準の2mg/m2と比較して用量増加が反応率の改善に結びつくのか確かめる無作為前向き研究が必要である。(Sato訳)
■犬肥満細胞腫におけるビンブラスチン療法の有効性
Efficacy of Vinblastine for Treatment of Canine Mast Cell Tumors
J Vet Intern Med 2008;22:1390?1396
K.M. Rassnick, D. B. Bailey, A. B. Flory, C. E. Balkman, M. A. Kiselow, J. L. Intile, and K. Autio

背景:犬の肥満細胞腫(MCT)におけるビンブラスチン(VBL)療法の最適な投与量と臨床的有効性は確率されていない。

仮説:VBL単独療法は犬MCTに対し、抗腫瘍活性がある。

動物:切除不能なグレードII又はIIIの皮膚MCTがある犬51例

方法:前向き臨床試験。犬はビンブラスチン2.0 mg/m2(最初の4回は毎週、その後4回は隔週)静脈内投与又は3.5 mg/m2(隔週5回)静脈内投与のどちらかに機械的に(カルテ番号によって)わりふられた。結果は腫瘍の大きさの減少を測定した。

結果:25例の犬が、VBL2.0群、26例がVBL3.5群に割りふられた。VBL2.0群では3例(12%)に中央値77日間(範囲:48~229日)部分反応(PR)がみられた。VBL3.5群の全体的な反応率は27%であった。1例(4%)は63日の完全反応、6例(23%)は中央値28日(範囲:28~78日)PRだった。毒性はVBL2.0群ではあまり認められなかった。VBL3.5群では12例(46%)が治療7日後に好中球が500/μL未満になり、うち好中球減少症の2例では発熱がみられた。

結論と臨床的重要性:VBLは単独療法として使われるとき、反応率はVLBを含む併用プロトコルで報告されている反応率より低いが、VBLは犬MCTに対し、活性がある。今回の結果から、用量3.5mg/m2のVBLについて、今後、第II/III相試験が検討されなければならないと示唆される。(Dr.HAGI訳)
■肥満細胞腫で骨髄浸潤がある犬の臨床病理学的特徴と転帰
Clinicopathological Features and Outcome for Dogs with Mast Cell Tumors and Bone Marrow Involvement
J Vet Intern Med 2008;22:1001?1007
L. Marconato, G. Bettini, C. Giacoboni, G. Romanelli, A. Cesari, A. Zatelli, and E. Zini

背景:骨髄浸潤(BM)のある肥満細胞腫(MCTs)は犬において十分に報告されておらず、予後不良である。これまで効果的な治療は報告されていない。

仮説:罹患犬の臨床病理学的所見は非特異的である。ロムスチン又はイマニチブの投与が有益だ。

動物:MCTで骨髄浸潤のある14例の犬

方法:臨床的評価と臨床検査は、初診時と継続時にそれぞれ実施した。すべての犬に、プレドニゾンを投与した。さらに、8例にロムスチンを、3例にイマチニブを投与した。腫瘍関連性のチロシンキナーゼであるKITが異常なら、イマチニブを投与した。

結果:初診時、11例の犬は皮膚に1つの小結節があり、3例は複数の小結節があった。所属リンパ節、肝臓や脾臓への浸潤は、各々の犬で観察された。肥満細胞の骨髄浸潤は、全例で観察された。CBCで、非再生性貧血、白血球減少症、血小板減少が、一般的に認められた。4例は、循環血液中に肥満細胞がみられた。ALP上昇は12例で、ALT上昇は10例で観察された。ロムスチンでは、8例中1例で、部分寛解に導いた。中央生存期間は、43日(範囲14~ 57日)だった。イマチニブを投与した犬は、完全寛解を経験した。2例は117日、159日生存し、3例目は75日を経て生存中である。対症療法が行われた例では改善がみられず、1日、14日および32日後に安楽死した。

結論と臨床的重要性:臨床的評価と臨床検査の組合せは、骨髄浸潤を伴うMCTの犬を確認する際、助けになる。ロムスチンの投与は、罹患した犬では有効ではない。イマチニブの有効性については、更なる調査が必要である。(Dr.HAGI訳)
■masitinibは犬の肥満細胞種の治療において安全で効果的である
Masitinib is Safe and Effective for the Treatment of Canine Mast Cell Tumors.

J Vet Intern Med. 2008 Sep 24.

Hahn KA, Oglivie G, Rusk T, Devauchelle P, Leblanc A, Legendre A, Powers B, Leventhal PS, Kinet JP, Palmerini F, Dubreuil P, Moussy A, Hermine O.

背景:KITレセプター型チロシンキナーゼの活性化は犬の肥満細胞腫(MCT)の進行と関連している。

仮説/目的:犬の肥満細胞腫に対する治療においてmasitinibの可能性およびKITを選択的に抑制する効果を調べることである。

動物:転移を起こしていない再発の肥満細胞腫もしくは切除不可能なグレードIIもしくはIIIの肥満細胞腫を患った202症例。

方法:二重盲検、無作為に選出された、プラセボコントロールによる三相臨床試験が行われた。症例はmasitinib(12.5 mg/kg/d PO)もしくは偽薬が投与された。無増大期間、全体での生存期間、6ヶ月時における客観的反応、そして副作用を評価した。

結果:masitinibは全体での無増大期間がプラセボ群の75日と比較すると118日間と延長した(P=.038)。masitinibが第一選択薬として用いられたときの効果がより顕著であり、平均無増大期間が75日と比べて253日と延長した(P=.001)のと同時に、腫瘍の変異(83症例に対し到達せず[P.009])もしくはKITの変異が強いタイプ(66症例対253症例[P=.008])が発現するかどうかに関係なかった。症例におけるmasitinibの許容性は良く、副作用としては下痢や嘔吐が軽度(グレードI)もしくは中程度(グレードII)であった。

結論と臨床重要点:masitinibは転移がみられない再発した症例、切除不可能なグレードII、IIIの肥満細胞腫の犬に対して腫瘍の進行を遅らせるためには安全で効果的である。(Dr.UGA訳)
■ビンブラスチンとプレドニゾロンを用い治療した犬の肥満細胞種に対する予後マーカーの評価
Evaluation of prognostic markers for canine mast cell tumors treated with vinblastine and prednisone.
Webster JD, Yuzbasiyan-Gurkan V, Thamm DH, Hamilton E, Kiupel M.
Vet Res. 4(1):32 (2008)

背景:犬の皮膚肥満細胞腫は様々な生物学的挙動をとる一般的な腫瘍である。犬の肥満細胞腫の初期治療は依然として外科手術とされているが、悪性度の高い肥満細胞腫に対しては放射線治療や化学療法もよく用いられている。この研究の目的は、切除後にビンブラスチンとプレドニゾロン(術後の放射線治療は問わず)により治療した犬の組織学的グレード、c-KITの変異、KITの染色パターン、そしてKi67標識とAgNORsの増殖率の予後有用性を評価するとともに、予後的にマッチした外科治療単独群と術後化学療法(術後の放射線治療は問わず)で治療した群の転帰を比較することである。予後因子と生存期間の関連性を評価した。治療前の予後指標が類似し、術後の補助的化学療法を行った犬と外科治療単独のグループの犬の無腫瘍期間と生存期間を比較した。

結果:組織学的グレード3、c-KITの変異、KITの細胞質の増加、そしてKi67とAgNOR値が増加していた肥満細胞腫の症例において、無腫瘍期間と生存期間の短縮と関連がみられた。組織学的グレード3の肥満細胞腫の症例においては、外科治療単独のグループに対して化学療法を術後に行ったグループの無腫瘍期間と生存期間が有意に延長した。例数が少ないために有意差は認められなかったが、c-KITの変異がみられた肥満細胞腫の症例においても、外科治療単独のグループに対して化学療法を術後に行ったグループは、無腫瘍期間と生存期間が延長した。

結論と臨床重要点:今回の研究により犬の肥満細胞腫の予後因子は組織学的グレード、c-KITの変異、KITの染色パターン、そして増殖解析法(Ki67やAgNOR)とされた。更には、今回の研究の結果より、組織学的グレード3の肥満細胞腫に対して、術後のビンブラスチンとプレドニゾロンの使用の有効性が明確となった。(Dr.UGA訳)
■犬肥満細胞腫の治療におけるビンブラスチンの用量段階的増量
Dose-escalating vinblastine for the treatment of canine mast cell tumour
Vet Comp Oncol. June 2008;6(2):111-119. 17 Refs
K. R. Vickery, H. Wilson, D. M. Vail, D. H. Thamm

この研究の目的は、プレドニゾンと段階的に容量を増すビンブラスチン(VBL)を投与した肥満細胞腫(MCT)の犬の短期副作用(AEs)を評価することだった。24頭の犬をVBL静脈内投与で、2mg/㎡から段階的に毎週2.33、2.67、3mg/㎡まで増量して投与した。AEsは標準スコアリングシステムでグレード付けした。2 mg/㎡あるいは2.33mg/㎡を投与した犬でグレード3または4のAEsを経験した犬はいなかった。2.67 mg/㎡のときに9.5%の犬、3mg/㎡のときに5.9%の犬がグレード3または4のAEsを示した。重篤なAEsには好中球減少(n=3)、嘔吐(n=1)で、1頭だけが入院を必要とした。それらのデータは、VBL化学療法がMCTの犬に対する従来の2mg/㎡の用量より多く投与しても安全かもしれないと示すものである。用量増大が標準の2mg/㎡との比較で、反応率の改善をもたらすかどうかを調べる無作為化前向き研究が必要である。(Sato訳)
■ロムスチンを用いた猫の肥満細胞腫の治療:38症例
Lomustine for treatment of mast cell tumors in cats: 38 cases (1999-2005)
J Am Vet Med Assoc. April 2008;232(8):1200-5.
Kenneth M Rassnick, Laurel E Williams, Orna Kristal, Renee Al-Sarraf, Jennifer L Baez, Courtney H Zwahlen, Gillian Dank

目的:肥満細胞腫の猫の治療時におけるロムスチンの臨床効果と副作用を決めること。

統計:回顧的症例検討。

動物:大きさが計測可能で、組織学的もしくは細胞学的に肥満細胞腫と確定し、ロムスチン(50 mg/m2以上)により治療を行った38頭の猫。

方法:治療反応と毒性について医療記録を調査した。カプランマイヤー法が寛解期間を推定するために用いられた。

結果:26頭が皮膚、7頭が腸管膜リンパ節、2頭が消化管、2頭が肝臓、そして1頭が多臓器をおかす肥満細胞腫であった。使用されたロムスチンの用量は22頭で50 mg/m2、16頭で60 mg/m2であった。ロムスチンの中央投与用量は56 mg/m2(範囲は48~65 mg/m2)であり、中央投与回数は2回(範囲は1~12回)であった。7頭で完全寛解、12頭で部分寛解がみられ全体の反応率は50%であった。中央反応期間は168日(範囲は25~727日)であった。最も一般的にみられた副作用は好中球減少と血小板減少であった。

結論と臨床関連:結果よりロムスチンは猫の肥満細胞腫に対して効果的であり、よく耐えることができた。また、肥満細胞腫を患った猫に対するロムスチンを用いた治療は、局所療法が選択肢としてないときに限り考慮すべきである。(Dr.UGA訳)
■ビンブラスチン、シクロフォスファミド、プレドニゾンによる犬肥満細胞腫の治療:35症例(1997-2004)
Treatment of canine mast cell tumours with vinblastine, cyclophosphamide and prednisone: 35 cases (1997-2004)
Vet Comp Oncol. September 2007;5(3):156-167. 41 Refs
M. A. Camps-Palau, N. F. Leibman, R. Elmslie, S. E. Lana, S. Plaza, J. A. McKnight, R. Risbon, P. J. Bergman

この遡及研究の目的は、肥満細胞腫(MCTs)の犬35頭で行ったビンブラスチン、シクロフォスファミド、プレドニゾン(VCP)の混合プロトコールの効果と毒性を判定することだった。11頭(1群)はある程度の大きさの疾患で、24頭(2群)はMCTの不完全切除または転移のハイリスク症例だった。
1群の5頭は完全寛解に到達し、2頭は部分反応、2頭は安定状態、2頭は進行状態だった。1群および2群の進行フリー生存期間(PFST)中央値は、それぞれ74日、865日だった。1群および2群の総生存期間(OST)中央値はそれぞれ145日、>2092日だった。有意な陰性多変量予後因子は、肉眼で見える疾患および進行フリー生存期間に対しビンブラスチン(VBL)投与の減少、骨髄検査中MCTの存在、PatnaikグレードIIIMCTおよび総生存期間に対しビンブラスチン投与の減少だった。毒性はまれで、自己制御可能だった。この研究は、犬のMCT治療の選択としてVCPプロトコールを考慮すべきだということを示唆する。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞種の術前プレドニゾン投与と外科切除の評価
Evaluation of neoadjuvant prednisone administration and surgical excision in treatment of cutaneous mast cell tumors in dogs
Rebecca M Stanclift1, Stephen D Gilson
1 Sonora Veterinary Specialists, 4015 E Cactus Rd, Phoenix, AZ 85032.
J Am Vet Med Assoc. January 2008;232(1):53-62.

目的:犬の皮膚肥満細胞種の治療において術前プレドニゾンを用いた時の反応率、腫瘍の減少率、有効投与量を評価すること。

統計:前向き症例検討と回顧的症例検討を組み合わせて実施した。

動物:49頭の肥満細胞種の犬。

方法:主要な治療が行われていない犬の皮膚肥満細胞に術前プレドニゾン投与と手術を行ったものを医療記録より回顧的に評価した。腫瘍の特性と治療への反応が記録された。補助的プレドニゾンの低容量治療群(1.0mg/kg [0.45 mg/lb], PO, q 24 h)、もしくは高容量治療群(2.2 mg/kg [1.0 mg/lb], PO,q 24 h)の2群に分けて、容量の評価が決められた。

結果:全体を通しての客観的な反応率は術前プレドニゾン治療を行った犬で70%であった。プレドニゾンの薬用量は反応率と有意に関係していなかった。前向き試験により、最大直径減少率中央値は45.2%、そして腫瘍容積の減少率中央値は80.6%であった。両群の治療とも、最大直径減少率、腫瘍容積減少率の双方で有意であった。低容量群と高容量群との間での反応率の違いは有意ではなかった。低容量群での平均最大直径減少率と腫瘍容積減少率がそれぞれ35.4%と52.5%であり、高容量群の平均最大直径減少率と腫瘍容積減少率が48.8%と78%であり、有意な差は認められなかった。

結論と臨床関連:術前プレドニゾンの治療は肥満細胞腫の縮小に有用であるということが明らかになり、腫瘍の位置やサイズの問題で十分なサージカルマージンが得られない場合の切除を容易にするかもしれない。(Dr.UGA訳)
■犬皮膚肥満細胞種の細胞増殖:予後判定でc-KITとその役割の関連
Cellular proliferation in canine cutaneous mast cell tumors: associations with c-KIT and its role in prognostication
Vet Pathol. May 2007;44(3):298-308.
J D Webster, V Yuzbasiyan-Gurkan, R A Miller, J B Kaneene, M Kiupel

犬で皮膚肥満細胞種(MCT)は一般的な腫瘍性疾患である。犬MCTsの有病率およびこの疾患の種々の生物学的行動のため、正確な予後判定とMCT生物学の完全な理解はこの疾患の治療で重大な意味を持つ。この研究の目的は、犬MCTsの個別の予後マーカーとして増殖マーカーKi67、増殖性細胞核抗原(PCNA)、好銀性核小体形成体領域(AgNOR)の有用性の評価と比較、細胞増殖の異なる面を書くマーカーが評価するとしてそれらマーカーを組み合わせて使用し、評価することだった。また追加の目的として、細胞増殖とc-KIT変異および細胞増殖と犬MCTsの異常KIT蛋白の位置の関連を評価することだった。外科切除のみで治療した56のMCTsを研究した。各MCTのKi67発現、PCNA発現、免疫組織化学によるKIT蛋白位置、組織化学染色によるAgNOR数、ポリメラーゼ連鎖反応増幅による縦列重複内c-KIT変異の有無を評価した。
この研究で、Ki67、AgNOR数の増加は有意な生存性の低下を示した。この結果をもとに、Ki67発現およびAgNORの評価を含む細胞増殖の評価を犬MCTsの予後判定にルーチンに使用すべきと推奨する。またこの研究の結果は、異常なKIT蛋白の位置、または縦列重複内c-KIT変異は細胞増殖を増加させることを示し、さらに犬MCTsの進行でc-KITの役割を示唆する。(Sato訳)
■犬皮膚肥満細胞腫における組織学的パラメーターと臨床症状の多変量生存率分析
Multivariate survival analysis of histological parameters and clinical presentation in canine cutaneous mast cell tumours
Vet Res Commun. April 2007;31(3):287-96.
R Preziosi, G Sarli, M Paltrinieri

Patnaik組織学的グレードは、長期肥満細胞腫の動向を予測するのに良い方法だが、観察者間の主観的変化、腫瘍内不均一性により影響される。この研究で予後に関し公式Patnaik'sグレードを使用した各組織病理学的パラメーターを評価し、腫瘍再発、患者の生存性の予測により有効と考慮できることを明らかにすることで、それらが異なる予後感受性を持つかどうか検査した。
臨床症状(単一、複数腫瘍)も予後因子の可能性があると考慮した。
結果は、複数の症状と共に個々の組織学的基準は、肥満細胞腫の結果を予測する価値があるかもしれないことを示した。それらの中で侵襲性(beta1.85;標準誤差1.15)と有糸分裂増の数(beta3.01;標準誤差1.18)は、高い予後重要性を示し(検閲データのコックス比例ハザード回帰;カイ2乗=15.52、自由度=6、p=0.016)で、細胞分化、核の形態、腫瘍パターンのようなより主観的パラメーターを避ける信頼できる予後指標として使用できた。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫の生存率を予測可能な有糸分裂指数
Mitotic index is predictive for survival for canine cutaneous mast cell tumors
Vet Pathol. May 2007;44(3):335-41.
E M Romansik, C M Reilly, P H Kass, P F Moore, C A London

有糸分裂指数(MI)は、いくつかのヒトおよび犬の癌の予後を強く予測するものといわれている細胞増殖の間接測定値である。この研究の目的は、肥満細胞腫(MCTs)の犬の生物学的行動と生存性を予測するものとして、MIの能力を評価することだった。組織学的にMCTsと確認された148頭の犬の医療記録を再検討した。腫瘍グレードに関する情報、局所再発、転移疾患、死亡日/最終追跡日、結果を入手した。
全体の有糸分裂活性が最も高い腫瘍の部分を評価のために選び、MI値を有糸分裂像/10の高倍率視野(400x、2.7mm(2))の数と定義した。コックス比例ハザード回帰モデルはMIと生存データの比較に使用した。マン-ホイットニー検定は、局所再発と転移疾患発症を基にしたMIの比較に使用した。MIは腫瘍グレードに直接相関した(P<.0001)。MI≦5の犬(70ヶ月)の生存期間中央値は、MI>5の犬(2ヶ月)より、グレードに関係なく有意に長かった(P<.001)。グレードIIの腫瘍で、MI>5の犬の生存期間中央値5ヶ月に比べ、MI≦5の犬は70ヶ月だった(P<.001)。グレードIIIの腫瘍で、MI≦5の生存期間中央値は達成されず、MI>5の犬は<2ヶ月だった(P<.001)。
結論として、MIは皮膚MCTsの犬の全体的な生存性を強く予測するもので、治療オプションを決定する時に予後指標として加えるべきである。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫の犬の骨髄吸引の臨床病理所見と結果:157例(1999-2002)
Clinicopathological Findings and Results of Bone Marrow Aspiration in Dogs with Cutaneous Mast Cell Tumours: 157 Cases (1999-2002)
Vet Comp Oncol. March 2007;5(1):31-37. 22 Refs
M. M. Endicott, S. C. Charney, J. A. McKnight, A. S. Loar, P. J. Bergman, A. M. Barger

犬皮膚肥満細胞腫の通常の病期分類に骨髄吸引は一貫して行われておらず、全体の骨髄浸潤の発生率、全血算(CBC)の適中率は不明である。この研究は、CBC、骨髄吸引を実施した皮膚肥満細胞腫を呈す犬157頭を評価した。初回病期分類時の骨髄浸潤の発生率は2.8%と低く、全体で4.5%だった。骨髄浸潤に有意に関連する因子は、加齢、白血球増加、貧血、好中球増加、単球増加、好酸球増加、血小板減少、純血種、再発時または進行疾患の病期だった。我々の研究は、骨髄サンプルは通常の病期分類に必要ないが、異常な末梢血液像(好中球増加、単球増加、好酸球増加、好塩基球増加、貧血、血小板減少)または腫瘍再発育、進行または新しく発生した肥満細胞腫を持つ犬で必要かもしれないと示唆する。(Sato訳)
■パグの肥満細胞腫のリスクと臨床結果の評価
Evaluation of risk and clinical outcome of mast cell tumours in pug dogs
Veterinary and Comparative Oncology
Volume 4 Page 2 - March 2006
E. A. McNiel1*, A. L. Prink1 and T. D. O'Brien2

犬で肥満細胞腫(MCT)は一般的で、多様な生物学的ふるまいを示す。我々の目的は、パグのMCTのリスクを評価し、この犬種のMCTの臨床的特性を述べることだった。獣医療データベースから入手したデータは、他の犬と比較しパグのMCTの頻度の有意な増加を示している(OR = 2.28, 95% CI = 1.81-2.86)。MCTの組織診断を受けた純粋な25頭のパグの医療記録を再検討した。そのうち14頭(56%)は多発性皮膚腫瘍だった。それらの犬の64個の腫瘍の組織学的審査でほとんどの腫瘍(94%)は低-中グレードだと確認した。それらの64%は生存しており、3頭(12%)が肥満細胞疾患により死亡している。生存期間中央値は達していない。追跡調査中央値は最初にMCTと診断されてから660日である。我々は、パグのMCTはほとんどの症例で多発性皮膚腫瘍であるにもかかわらず、比較的良性であると結論付ける。MCTの素因を持つ犬種の多発腫瘍は、進行したステージ疾患よりむしろ別の原発を示すかもしれない。(Sato訳)
■補助治療を併用した、またはしなかった外科手術で治療した多発性皮膚肥満細胞腫の犬における予後を左右する因子の評価
Evaluation of prognostic factors associated with outcome in dogs with multiple cutaneous mast cell tumors treated with surgery with and without adjuvant treatment: 54 cases (1998-2004)
J Am Vet Med Assoc. January 2006;228(1):91-5.
Marie N Mullins, William S Dernell, Stephen J Withrow, Eugene J Ehrhart, Douglas H Thamm, Susan E Lana

目的:補助治療を併用する、または併用せずに治療した多発性皮膚肥満細胞腫(MCTs)の犬の結果に関する予後因子を評価する

構成:遡及症例シリーズ

動物:同時に2つ以上発生し組織学的に皮膚MCTsと確認され、切除を行い、適切なステージング、追加調査のデータがある54頭の犬

方法:1998-2004年の医療記録を調査した。結果はKaplan-Meier法とlog-rank検定で分析した。予後因子は、徴候;数、組織学的グレード、部位、大きさ、局所再発およびMCTsの新規発生;外科的マージンのクオリティ;診断時の臨床症状;補助治療の使用などを評価した。

結果:153箇所の腫瘍、54頭の医療記録を調査した。追跡調査中央値は658日だった。疾患フリー期間中央値(1917日;範囲、11-1917日)と生存期間中央値(1917日;範囲、14-1917日)は最終結果に到達していなかった。1年-および2-5年生存率はそれぞれ87%と85%だった。全体の転移率は15%だった。一変量分析で生存期間に負の影響を与える因子は、不完全切除、局所再発、大きさが>3cm、診断時の臨床症状、補助治療の使用だった。多変量分析で認められた疾患フリー期間に対する負の予後因子は、診断時の臨床症状の存在だけだった。

結論と臨床関連:結果から、犬の多発性皮膚MCTsは低転移率、すべてのMCTsの適切な切除により長期生存に対するよい予後が得られると思われる。(Sato訳)
■肥満細胞と犬肥満細胞腫:概説
Mast cells and canine mast cell tumours. A review.
Vet Q 26[4]:156-69 2004 Dec 115 Refs
Misdorp W

この文献は犬の肥満細胞腫から派生する肥満細胞と腫瘍に対する文献を再検討する。肥満細胞は炎症と免疫反応の中心的役割を持つ。正常および腫瘍性の肥満細胞は、ヘパリン、ヒスタミン、好酸性走化因子、蛋白分解酵素など重要な生物活性成分を含有、放出する。肥満細胞腫は特にボクサー、その関連犬種などの犬の皮膚、まれに腸に発生する。細胞診で通常正確に診断できるが、組織学的検査で組織学的グレード、外科切除の完全性に関する情報をさらに得ることが出来る。皮膚肥満細胞腫は、悪性の可能性を考慮し、広範囲切除(3cmマージン)をすべきである。
局所再発、領域および遠隔転移とともに腫瘍随伴障害が死亡原因になるかもしれない。組織学的グレード(グレード2、または3)、臨床ステージおよび動力学パラメーター、犬種(ボクサーは相対的に良性腫瘍)は重要な予後指標である。予後基準をもとに、外科処置は補助放射線療法、コルチコステロイドを化学療法に組み合わせ完遂すべきである。新規の有望な治療は、レセプターキナーゼ阻害因子の応用である。肥満細胞腫の病因の研究に、C-kit癌遺伝子のエクソン11および12における変異、欠損、重複所見により新しい考えが浮上している。肥満細胞の生理学的、腫瘍学的側面のさらなる研究は、自然発生肥満細胞腫や培養細胞系から分離した肥満細胞の有効性により支持される。(Sato訳)
■犬の皮膚肥満細胞腫に対する予後ツールとしてKITとトリプターゼ発現パターンの使用
The Use of KIT and Tryptase Expression Patterns as Prognostic Tools for Canine Cutaneous Mast Cell Tumors.
Vet Pathol 41[4]:371-7 2004 Jul
Kiupel M, Webster JD, Kaneene JB, Miller R, Yuzbasiyan-Gurkan V

皮膚肥満細胞腫(MCTs)は、犬の一般的な腫瘍の1つである。現在、MCTsの治療判定と予後は主に腫瘍の組織学的グレードをもとにしているが、MCTのほとんどは中間のグレードで、予後の関連性には疑問がある。特にグレード2犬MCTSのより詳細な予後評価が非常に求められる。犬皮膚MCTsのKITとトリプターゼ発現パターンの予後の意義を評価するため、外科手術のみで治療している100頭の犬の皮膚MCTs100個で研究した。全頭の総生存、疾患フリー生存期間そしてMCTsの局所または遠位再発を記録した。免疫組織化学を用い、それらMCTsの98個を抗KITそして抗トリプターゼ抗体で染色した。3つのKITおよび3つのトリプターゼ染色パターンを確認した。KIT染色パターンは、1)膜関連染色、2)膜関連染色低下を伴う点状細胞質染色、3)散在性細胞質染色として認めた。トリプターゼ染色パターンは、1)散在性細胞質染色、2)点状細胞質染色、3)わずかから細胞質染色が見られないものとして認めた。一変量および多変量生存解析をもとに、細胞質KIT染色の増加は、局所再発率の増加と生存率の低下に有意に関与していた。トリプターゼ染色パターンは、その生存パラメーターとも有意に関与しなかった。それら結果をもとに、犬の皮膚MCTsの通常の予後評価に使用可能なKIT-染色パターンに従い、新しい予後分類を提唱する。(Sato訳)
■プレドニゾロンと放射線照射による犬肥満細胞腫の治療
Treatment of Canine Mast Cell Tumours with Prednisolone and Radiotherapy
Vet Comp Oncol 2[3]:132-141 Sep'04 Retrospective Study 18 Refs
J. Dobson, S. Cohen and S. Gould

10-14日間プレドニゾロン(40mg/㎡1日1回)投与した後、4MVリニアアクセルレータによる放射線療法(4×8cGY分画、7日間隔)をおこなった、頭部または肢に切除不可能なグレードI-III肥満細胞腫をもつ犬35頭の回顧的研究である。プレドニゾロンは放射線療法中も減量(20mg/㎡)して投与し続け、2ヶ月、またはそれ以上投与した。24頭中18頭(75%)はプレドニゾロン投与で縮小した。放射線照射後6-8週間で、12頭は完全寛解に達し、19頭は部分反応を示した。2頭は静的状態で、2頭は治療経過中も進行した。
全体の反応率は88.5%だった。長期追跡調査で、11頭は局所再発(n=4)、転移(n=5)、その両方(n=2)を起こした。進行が見られなかった期間の中央値は1031日(95%信頼区間277.44-1784.56、カプラン-メイヤー法)で、1-、2-年進行が見られなかった期間の率はそれぞれ60%、52%だった。腫瘍グレードは、この群の犬の予後を予測しなかったが、腫瘍位置は結果に影響した。足に腫瘍があるイヌは、頭にあるものよりも長く生存した。プレドニゾロンと放射線療法の組み合わせは、頭や遠位四肢に位置するある程度の肥満細胞腫の管理に有効だと思われる。(Sato訳)
■補助療法を行う、または行わない外科的に治療した鼠蹊、会陰肥満細胞腫のイヌの生存性に対する予後因子:68例(1994-2002)
Prognostic Factors for Survival of Dogs with Inguinal and Perineal Mast Cell Tumors Treated Surgically With or Without Adjunctive Treatment: 68 Cases (1994-2002)
J Am Vet Med Assoc 225[3]:401-408 Aug 1'04 Retrospective Study 20 Refs
Alane Kosanovich Cahalane, DVM, MA; Sarah Payne, DVM; Lisa G. Barber, DVM, DACVIM *;Lillian E. Duda, VMD, DACVR; Carolyn J. Henry, DVM, MS, DACVIM; Glenna E. Mauldin, DVM, MS, DACVIM; Angela E. Frimberger, VMD, DACVIM; Susan M. Cotter, DVM, DACVIM; Antony S. Moore, MVSc, DACVIM

目的:補助的放射線療法、化学療法、またはその両方を行う、または行わない外科的に治療した鼠蹊、会陰部の皮膚肥満細胞腫(MCTs)を持つイヌの生存性と腫瘍再発に対する予後因子を判定する

構成:回顧的研究

動物:イヌ68頭

方法:補助的放射線療法、化学療法、またはその両方を行う、または行わない外科的に治療した会陰部、鼠蹊部、または両方に肥満細胞腫を組織学的に確認したイヌの医療記録を見直した。

結果:平均腫瘍フリー期間は1635日(中央値は達せず)で、1-、2-年腫瘍フリー率はそれぞれ79%と71%だった。生存期間中央値は1111日(平均、1223日)で、1-、2-年生存率はそれぞれ79%と61%だった。生存期間に影響する負の因子は、診断時の年齢、腫瘍の再発、ロムスチンによる治療だった。

結論と臨床関連:結果は、適切な治療が行われているならば、鼠蹊、会陰部の肥満細胞腫を持つイヌは、他の部位に肥満細胞腫があるイヌと同様の生存期間、腫瘍フリー期間をもつかもしれないと示した。(Sato訳)
■イヌの軟部組織肉腫と肥満細胞腫;臨床的ふるまいと手術に対する反応
Soft tissue sarcomas and mast cell tumours in dogs; clinical behaviour and response to surgery.
Aust Vet J 81[12]:732-8 2003 Dec
Baker-Gabb M, Hunt GB, France MP

目的:シドニーの大学獣医センターで、外科的に治療したイヌ軟部組織肉腫と肥満細胞腫のタイプを特徴付け、それら腫瘍の外科的治療の成功率を評価し、局所再発や生存性を予測する値を確認すること。そして過去に国際的研究で導かれた結論が、シドニー大学獣医センターイヌ集団に当てはまるか、逆かを制定すること

構成:1989年から2001年の間にシドニー大学獣医センターで、イヌの体幹や四肢に現れた54個の軟部組織肉腫と70個の肥満細胞腫の臨床症状と外科切除の結果を回顧的に再検討した

結果:他の犬種よりも雑種とローデジアンリッジバックは、軟部組織肉腫発生リスクが有意に大きく、ボクサー、オーストラリアンキャトルドック、スタッフォードシャーブルテリアは、肥満細胞腫発生リスクが有意に大きかった。針吸引生検では、軟部組織肉腫の62.5%、肥満細胞腫の96%に正確な診断が出来た。外科切除後、軟部組織肉腫の7.4%、肥満細胞腫の7.3%局所再発がみられた。転移は軟部組織肉腫の6%、肥満細胞腫の12%に発生した。局所再発の最も重要なリスクファクターは、切除マージンの汚染(軟部組織肉腫)、組織学的グレード(肥満細胞腫)だった。転移を起こしたイヌが少数のため、有意なリスクファクターに関する結論は導けなかった。

結論:軟部組織肉腫と肥満細胞腫の積極的な外科処置は、局所再発の低い発生率をもたらす。シドニー大学獣医センターに来院したイヌ集団で、肥満細胞腫と軟部組織肉腫の種類、位置、ふるまいは、他で報告されたものと同様だった。(Sato訳)
■イヌの皮膚肥満細胞腫の補助療法としてビンブラスチンとプレドニゾロン
Vinblastine and prednisolone as adjunctive therapy for canine cutaneous mast cell tumors.
J Am Anim Hosp Assoc 40[2]:124-30 2004 Mar-Apr
Davies DR, Wyatt KM, Jardine JE, Robertson ID, Irwin PJ

皮膚肥満細胞腫の不十分な切除を行った27頭のイヌ(20頭は顕微鏡的に取り残し、7頭は辺縁切除)を、ビンブラスチンとプレドニゾロンの化学療法プロトコールで治療した。20頭は、12ヵ月後追加検査を行うことができた。1頭は腫瘍の局所再発が起こり、4頭は新規の皮膚腫瘍が発生し、1頭はその両方が起こった。14頭のイヌは肥満細胞腫フリーだった。腫瘍関連の死亡は確認されなかった。化学療法の毒性は一般に軽度だが、1頭は治療中の敗血症で死亡した。(Sato訳)
■イヌの皮膚肥満細胞腫の完全切除に必要な外科的マージンの評価
Evaluation of Surgical Margins Required for Complete Excision of Cutaneous Mast Cell Tumors in Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[2]:236-240 Jan 15'04 Prospective Study 17 Refs
Amelia M. Simpson, DVM; Lori L. Ludwig, VMD, MS, DACVS; Shelley J. Newman, DVM, DVSc, DACVP; Philip J. Bergman, DVM, PhD, DACVIM; Heidi A. Hottinger, DVM, DACVS; Amiya K. Patnaik, DVM, MS

目的:イヌの皮膚肥満細胞腫(MCTs)の可視縁から側面1、2、3cmまたは1筋膜面よりも深く腫瘍細胞が浸潤しているかどうかを判定する

構成:前向き研究

動物:>1の皮膚肥満細胞腫を持つ飼育犬21頭

手順:手術準備後、各犬の皮膚に腫瘍の縁から0度、90度、180度、270度で1、2、3cmのところに印をつけた。各3cmの印のところで、深筋膜を露出させ、皮膚と縫合した。腫瘍は通常の方法で切除し、ホルマリンで固定した。腫瘍はグレードわけし、マージンは、肥満細胞腫瘍細胞について組織学的に検査した。

結果:21頭のイヌの23個の皮膚肥満細胞腫を研究した。15個(65%)の腫瘍は体幹に位置し、5個(22%)は後肢、3個(13%)は頭部と頚部だった。グレードIは3個(13%)、グレードIIは20個(87%)だった。すべてのグレードIの腫瘍は、全てのマージンで完全に切除されていた。1cmマージンで、75%のグレードIIの腫瘍が完全に切除されており、2cmマージンでは100%完全切除されていた。イヌの後肢に存在した2個のグレードIIの肥満細胞腫は完全に切除されていたが、深さのマージンに接近(1mm以内)していた。

結論と臨床関連:2cmの側面のマージンと1枚の筋膜の深さのマージンが、イヌのグレードIそしてIIの肥満細胞腫完全切除に適切だと思われると結果は示唆する。(Sato訳)
■イヌの鼻口部にできた肥満細胞腫の生物学的習性と予後因子:24症例(1990-2001)
Biologic Behavior and Prognostic Factors for Mast Cell Tumors of the Canine Muzzle: 24 Cases (1990-2001)
J Vet Intern Med 17[5]:687-692 Sep-Oct'03 Retrospective Study 27 Refs
* Tracy L. Gieger, Alain P. Theon, Jonathan A. Werner, Margaret C. McEntee, Kenneth M. Rassnick, Hilde E.V. DeCock

組織学的に鼻口部の肥満細胞腫(MCT)と確認された24頭のイヌの医療記録を、それらの生物学的習性と予後因子を判定するため、回顧的に評価した。医療記録から徴候、腫瘍のグレードとステージ、治療方法、治療不首尾および死亡のパターンと時期の情報を入手した。23頭のイヌは放射線、外科、化学療法を組み合わせて治療した。1頭は治療しなかった。2頭がグレードI、15頭がグレードII、7頭はグレードIIIの腫瘍だった。腫瘍はステージ0(n=8)、ステージ1(5)、ステージ2(6)、ステージ3(4)、ステージ4(1)だった。治療したイヌの生存期間の平均と中央値は、それぞれ36ヶ月と30ヶ月だった。
生存期間に影響した予後因子は、診断時の腫瘍のグレードと転移の有無だった。グレードIとIIのイヌは、グレードIIIのイヌよりも長く生存した。性別、年齢、肉眼vs.顕微鏡的病状、治療の種類などの変動値の生存性への影響は見られなかった。局所コントロール率は1年で75%、3年で50%だった。局所コントロールに唯一影響が見られた変動値は腫瘍のグレードだった。グレードIのイヌはグレードIIのイヌよりも疾病フリー期間が長く、グレードIIのイヌはグレードIIIのイヌよりも長かった。MCTで死亡した9頭中8頭は、局所、または領域へ疾患が進行していた。鼻口部MCTは、他の部位にできたMCTの過去の報告よりも生物学的に侵略的で、高い領域転移率を有する。(Sato訳)
■肥満細胞腫治療の原則
Principles of treatment for mast cell tumors.
Clin Tech Small Anim Pract 18[2]:103-6 2003 May 13 Refs
Govier SM

肥満細胞腫(MCT)は犬で発生する悪性皮膚腫瘍の一般的なものである。それらは一般に体幹に見られ、全体の約50-60%を占める。四肢にできる肥満細胞腫は全体の約25%を占める。皮膚の肥満細胞腫は、臨床外観が変化に富む。犬で組織学的グレードが首尾一貫した予後因子である。’爪床’(爪下)、鼠蹊/包皮部、会陰や口腔のような全ての皮膚粘膜部分の肥満細胞腫は、予後警戒が必要で転移する傾向がある。肥満細胞腫は通常よく剥離し、細胞学的に明確である。針吸引細胞診後のステージング手順の範囲は、否定的な予後指標の存在、あるいは欠如をもとにする。
転移が無く孤立した肥満細胞腫の治療選択は外科手術である。化学療法の反応率(部分応答)は78%と高く報告されており、予備的裏づけは、多剤併用(プレドニゾンとビンブラスチン)プロトコールが、単剤療法よりも高い反応率をもたらすかもしれないと示している。
ネコの肥満細胞腫は皮膚に2番目に良く見られる。ネコの肥満細胞腫には2つの明確な型がある。一般的な型は肥満細胞型で、より少なく組織球型がある。イヌとは似ておらず、頭や頸が肥満細胞腫の好発部位で、次いで体幹と四肢となる。肥満細胞腫の播種性形式を取るネコでは、沈うつ、食欲不振、体重減少、嘔吐などの全身症状をよく呈する。ネコで肥満細胞腫の診断とステージングはイヌと同じである。皮膚肥満細胞腫のイヌと同様、治療の選択は外科手術である。皮膚肥満細胞腫の補助的化学療法選択の効果について分かっているものはほとんど無い。補助的化学療法は生存期間を延ばすことは無い。(Sato訳)
■肥満細胞腫のイヌ11頭で、病気の進行と血漿ヒスタミン濃度との関連
Relationship of Disease Progression and Plasma Histamine Concentrations in 11 Dogs with Mast Cell Tumors
J Vet Intern Med 17[2]:194-198 Mar-Apr'03 Review Article 28 Refs
* Taketo Ishiguro, Tsuyoshi Kadosawa, Satoshi Takagi, Gonhyung Kim, Tomohiro Ohsaki, Darko Bosnakovski, Masahiro Okumura, Toru Fujinaga

肥満細胞腫のイヌ11頭で、連続9ヶ月以上、またはそのイヌが死亡するまで血漿ヒスタミン濃度(PHCs)を測定した。8頭のイヌは肉眼的に腫瘍を見ることができ、他の3頭は顕微鏡的病変だった。肉眼可視病変のイヌの最初のPHCsは健康犬よりも有意に高く(それぞれ、中央値0.73ng/mlと0.19ng/ml;P<.009)、顕微鏡的病変のイヌの最初のPHCsはコントロールと違いは見られなかった。その後7頭のPHCは進行的に増加し、高ヒスタミン血症となった(中央値14.0ng/ml;範囲5.11-30.1ng/ml)。それら7頭は肥満細胞腫で死亡し、1頭は放射線照射後、大きな腫瘍負荷の急速な溶解を起こし全身虚弱となった。
別の4頭のPHCsは研究期間中1ng/ml以下だった。それら4頭は研究期間終了時も適切な腫瘍コントロールで生存していた。当初胃腸(GI)症状があった11頭中4頭は、ヒスタミン-2(H-2)ブロッカーの投与後速やかに解消した。胃腸症状があるイヌとないイヌのPHCsに有意差はなかった(それぞれ中央値0.86ng/mlと0.35ng/ml)。その後7頭はH-2ブロッカーが効かない重度胃腸合併症を起こした。それら7頭のPHCsは、きわめて高かった(中央値12.2ng/ml;範囲3.42-30.1ng/ml)。この研究結果は、肥満細胞腫のイヌで、PHCは病気の進行に関する1要因であり、顕著な高ヒスタミン血症はH-2ブロッカーに反応しない胃腸症状に関係することを示した。(Sato訳)
■病理組織学的に腫瘍フリーマージンがある時と、ない時の犬皮膚肥満細胞腫切除後の予後;31症例の回顧的研究
Prognosis Following Surgical Excision of Canine Cutaneous Mast Cell Tumors With Histopathologically Tumor-Free Versus Nontumor-Free Margins: A Retrospective Study of 31 Cases
J Am Anim Hosp Assoc 38[5]:458-466 Sep-Oct'02 Retrospective Study 9 Refs
Gina M. Michels, DVM, MS, DACVCP; Deborah W. Knapp, DVM, MS, DACVIM; Dennis B. DeNicola, DVM, PhD; Nita Glickman, PhD; Patty Bonney, RVT

肥満細胞腫は犬の皮膚に良く見られる腫瘍の1つで、全ての皮膚腫瘍の7-21%、悪性皮膚腫瘍の11-27%を占める。肥満細胞腫の生物学的行動は高度に変化しやすく、それゆえ、個々の犬で肥満細胞腫がどのように行動するか予測できる事が重要であるが、それは非常に難しい。予後の重要性を与える様々な要因が報告されているが、病理組織学的に腫瘍フリーマージンの意義という限られた情報しかない。病理組織学的に腫瘍フリーマージンがとれている、またはとれていない事が、再発頻度(局所または遠位)、再発回数、生存率に関連するかどうか判定するため、皮膚肥満細胞腫を外科的に切除した犬で回顧的研究を行った。
 リンパ節への転移や皮膚以外の部位に腫瘍がない、単一または複数の皮膚肥満細胞腫を、外科的に切除した31頭の犬の臨床情報を再検討した。それらのうち20頭(65%)は腫瘍フリーマージンがとれており、11頭(35%)はとれていなかった。同時期の病院来院集団と比較して、ボクサーとラブラドールレトリバーがかなり多かった。マージンがとれている群とそうでない群の間で、局所再発、または遠位再発頻度に対する有意差はなかった。
マージンがとれていない群の再発までの期間中央値は7.5ヶ月で、マージンがとれている群は13ヶ月だった。マージンがとれている群の術後生存期間(中央値、現在まで53.5ヵ月)は、とれていない群(中央値、15ヵ月)よりも有意に長かった。しかし、群間(マージンがとれている群1頭、とれていない群2頭)の腫瘍関連死亡数に差はなかった。全ての腫瘍関連死亡例は局所再発後に起こり、それは病理組織学的に腫瘍フリーマージンをとる事が、腫瘍関連の死亡を減少させるかもしれないと示唆する。組織学的な腫瘍のグレードは両群同じようなもので、再発頻度や腫瘍関連による死亡頻度に関係なかった。この研究で、唯一認められた予後指標は年齢で、若い犬よりも老犬の術後生存期間は短く、再発もより速く出現したが統計学的有意差ではなかった。
著者は、病理組織学的腫瘍フリーマージンが取れている、またはとれていない事と予後の相関に対する統計学的支持の欠如は、サンプル数が少なかったから起こったと認識している。(Sato訳)
■皮膚肥満細胞腫と所属リンパ節の転移を持つ犬19頭に行った放射線治療結果
Results of radiation therapy in 19 dogs with cutaneous mast cell tumor and regional lymph node metastasis.
Vet Radiol Ultrasound 43[4]:392-5 2002 Jul-Aug
Chaffin K, Thrall DE

皮膚肥満細胞腫と所属リンパ節転移を持つ(WHOステージ2)19頭の犬の記録を再検討し、この集団での放射線療法の効果を判定した。グレード1(n=1)、グレード2(n=16)、グレード3(n=2)の皮膚肥満細胞腫の犬を研究した。全頭照射前の原発腫瘍の外科的細胞減数、原発腫瘍と所属リンパ節の放射線照射、経口プレドニゾロンの組み合わせで治療した。原発腫瘍と所属リンパ節に対する総放射線量は48-57グレイ(Gy)の範囲となった。骨盤後肢に原発腫瘍があり、同側膝窩リンパ節に転移がある犬11頭には、予防的に内側腸骨と下腹部リンパ節に放射線照射を行った。それらリンパ節への総放射線量は、48-57Gyの範囲だった。全ての放射線野で、分画に対する照射量は3Gyで、月曜から金曜までの計画で治療を行った。この研究で見られた急性、遅延性副作用は許容範囲と思われた。腫瘍フリーの生存期間中央値は1240日(95%信頼区間256-2391日)だった。ステージ2の肥満細胞腫の犬で腫瘍フリー生存期間は、原発腫瘍の外科切除、放射線照射、プレドニゾロンの組み合わせと、転移リンパ節への放射線照射が効果的だということを示唆する。(Sato訳)
■犬の脊髄肥満細胞腫
Lisa E. Moore, DVM, DACVIM et al; J Am Anim Hosp Assoc 38[1]:67-70 Jan-Feb'02 Case Report 23 Refs; Spinal Mast Cell Tumor in a Dog

6歳避妊済み雌のロットワイラーが、1ヶ月間の左前肢跛行から四肢不全麻痺を伴うの病歴で評価のために来院した。神経学的検査で精神状態と脳神経機能は正常であったが、犬はhoppingとplacingと四肢の固有位置反応の有意な減少を伴う四肢不全麻痺であった。解剖学的損傷部位はC6-T1の範囲の脊髄で、原因として判断された以前からの跛行を伴ったが、筋骨格検査で異常を見つけることは出来なかった。その後に頚部レントゲン、脳脊髄液の採集分析、頚部脊髄造影が麻酔下で行われた。レントゲン検査と脳脊髄液検査の両検査とも目立った異常はなく、頚部脊髄造影の所見上C6~C7椎骨上の右側硬膜外病変と一致した。鑑別診断は椎間板ヘルニアと腫瘍であった;手術の選択を提示したが断られた。オーナーは安楽死を選択し、死後解剖を承諾した。検死で、3×1cmの卵円形緑色腫瘤がC6からT1の硬膜外に確認された。組織病理検査ではグレード3の肥満細胞腫でした。
犬の肥満細胞腫は様々な真皮外の部位に起こるかもしれない。著者の知る限りでは犬の脊髄に侵襲する脊椎管内肥満細胞腫の始めての報告である。また、人で肥満細胞腫が希であるとはいえ、人においても脊椎管内の肥満細胞腫の報告はない。脊髄腫瘍は転移病巣の可能性があるが、犬は過去に皮膚腫瘤がなく、検死でも何も見つかっていない。これは非常に希であり、肥満細胞腫は脊髄圧迫部位の特異な物と考えるべきだと著者は結論づけた。(Dr.Massa訳)
■犬におけるGradeⅡ皮膚肥満細胞腫の完全外科摘出後再燃率と再発部位
Chick Weisse, VMD et al; J Am Anim Hosp Assoc 38[1]:71-73 Jan-Feb'02 Retrospective Study 11 Refs;Recurrence Rates and Sites for Grade II Canine Cutaneous Mast Cell Tumors Following Complete Surgical Excision

肥満細胞腫は犬で最も一般的な皮膚腫瘍の一つである。皮膚肥満細胞腫の犬の予後は病理組織学的グレード、病期、完全な外科切除など様々な要因に依存している。これらの腫瘍に対する最適な治療に関しては相当論議され続けている。外科と放射線治療が局所の腫瘍管理に施されるのに対して、化学療法はハイリスク、遠隔転移の患者で施されている。この研究の目的はGradeⅡ、ステージⅠ、完全摘出の犬皮膚MCTの再発率を評価し、これらの犬が補助放射線療法から利益を得ているかどうかを決定することである。1994年1月から1998年12月までにペンシルバニア大学の獣医科病院で診断された皮膚型、GradeⅡ、ステージⅠ、完全切除(病理組織学を通じて決定)の肥満細胞腫が再検討された。
再発の割合と部位、無病期間、生存期間を判定した。再発部位は局所(もとの腫瘍のそば)、遠隔(局所リンパ節、他の新しい皮膚部分、または他の遠隔部位)に分類した。31頭の犬を検討して27頭が追跡できた。27頭中8頭(30%)が再発したが、27頭中6頭(22%)は遠隔腫瘍再発であるのに対して3頭(11%)は局所再発であった(一頭の犬は両方であった)。遠隔腫瘍再発のあった6頭の犬と、局所再発した3頭の犬の平均と中央無病期間はそれぞれ16.5と18.5ヶ月、15.6と21ヶ月であった。追跡調査出来た27頭の中央生存期間は791日と計算された。著者は、この回顧的研究で、症例数が少ないために統計学上有意な結論を導き出すことは困難であるが、示された結果はこの研究における89%の犬は外科単独で完全な局所管理ができている、と結論づけた。不完全切除の皮膚MCTに対する補助放射線治療の3年局所管理率は93%と以前の研究で報告されています。それ故に、完全切除できた犬の皮膚MCTに対して、補助放射線療法は望ましくないかも知れない。(Dr.Massa訳)

コメント:最近の文献では、グレードⅡ肥満細胞腫の治療は外科単独で良いのでは?という傾向にあるようです。この文献も同様の結論です。もっとも、完全切除できた場合の話ですから、切除不完全な場合は放射線療法、化学療法などの補助療法を考えなければなりません。
■外科単独で治療されたGradeⅡ肥満細胞腫の犬の臨床結果:55例(1996-1999)
Bernard Seguin, DVM, MS, DACVS et al; J Am Vet Med Assoc 218[7]:1120-1123 Apr 1'01 Retrospective Study 17 Refs ;Clinical Outcome of Dogs with Grade-II Mast Cell Tumors Treated with Surgery Alone: 55 Cases (1996-1999)

目的:外科単独で治療された犬のGradeⅡ肥満細胞腫の結果を決定するため

計画:回顧的研究

動物:55頭の犬

方法:医療記録が調査され、特徴、腫瘍の位置と大きさ、病期の状態、局所再発、転移、死亡、または最後の追跡調査の日付、外科のマージンの状態、以前の手術、術後合併症;そして、死因を記録しました。追跡調査の情報は、オーナーまたは紹介獣医師との再調査または電話での会話を経て得られました。Univariate分析を、予後因子を識別するために実行しました。

結果:55匹の犬の60の腫瘍が含まれました。中間調査期間は540日でした。3つ (5%)の肥満細胞腫瘍が局所再発しました;局所再発への中間期間は、62日でした。6匹 (11%)の犬で、違う皮膚位置に別の肥満細胞腫瘍が発生しました。
違う位置への中間期間は、240日でした。3匹 (5%)の犬が、転移しました;転移への中間期間は158日でした。14匹の犬が死亡しました。;3頭の死亡が肥満細胞腫と関連し、7頭は無関係でした。肥満細胞腫との関係は4頭で分かりませんでした。これらの3グループそれぞれの中間生存期間は、151、841、および827日でした。46匹 (84%)の犬には研究期間の間の肥満細胞腫瘍がありませんでした。信頼できる予後因子は識別できませんでした。

結論&臨床関連:結果は、グレードⅡ肥満細胞腫の完全な切除の後で、付加的な局所療法が必要ではないかもしれず、ほとんどの犬が全身療法を必要としないことを示唆します。(Dr.Massa訳)