■脾臓マスに対し脾摘を行う犬のクロピドグレル、凝固能亢進、血小板数の評価
Evaluation of clopidogrel, hypercoagulability, and platelet count in dogs undergoing splenectomy for splenic masses
Vet Q. 2024 Dec;44(1):1-8.
doi: 10.1080/01652176.2024.2347926. Epub 2024 Jun 1.
Guk-Il Joung , Jeong-Yeol Bae , Jung-Il Kim , Jin-Young Kim , Joong-Hyun Song
脾摘をした犬は、致命的な血栓症の状況となりやすく、血小板増多症は脾摘後の凝固能亢進に対するリスク因子である。しかし、獣医療において、この凝固能亢進の管理に対する特定の治療アプローチはない。
この研究の目的は、脾臓にマスがある犬において、脾摘後から2週間の間で術後凝固能亢進に対するクロピドグレルの予防的効果を判定することだった。
この研究は脾摘を行った12頭の犬を含めた。7頭は処置なし(A群)、5頭はクロピドグレルを投与した(B群)。クロピドグレルは2日目に10mg/kgを投与し、14日まで2mg/kgで継続した。両群の血液サンプルを手術日、術後2、7、14日目に採取した。B群は、同日にトロンボエラストグラフィー(TEG)を実施した。
A群において、0日目と比較して7日目(p=0.007)、14日目(p=0.001)の血小板数が有意に上昇していた。B群において、0日目と比較して7日目の血小板数は有意に上昇した(p=0.032)が、14日目には有意差は見られなかった。14日目の血小板数はB群よりもA群で有意に高かった(p=0.03)。より低い血小板数はTEGパラメーターの変化と相関し、0日目と比較して全ての術後評価ポイントでKおよびαアングル値に有意差は見られなかった。
我々の研究は、脾臓のマスに対し脾摘を行った犬において、クロピドグレルは術後の血小板増多症および凝固能亢進を減ずるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■脾臓血管肉腫の犬の予後因子として血小板減少と腫瘍ステージの回顧的評価
Retrospective evaluation of thrombocytopenia and tumor stage as prognostic indicators in dogs with splenic hemangiosarcoma
J Am Vet Med Assoc. 2021 Mar 15;258(6):630-637.
doi: 10.2460/javma.258.6.630.
Alison R Masyr, Aaron K Rendahl, Amber L Winter, Antonella Borgatti, Jaime F Modiano
目的:無進行期間(PFI)と総生存期間(OST)の予測に役立つ脾臓血管肉腫(HSA)の犬の周術CBC変数と身体検査を確認する
動物:2004年9月から2016年10月までに脾摘と化学療法で治療した脾臓HSAの飼育犬70頭
方法:脾臓HSAを脾摘と化学療法で治療しようとした医療記録に証拠がある犬を確認するため、ミネソタ大学獣医療センター医療記録の回顧的検索を実施した。犬のシグナルメントと体表面積、脾摘前6日以内と2日後に実施したCBCsの結果、血腹あるいは輸血を受けたかどうか、腫瘍ステージのデータを集めた。ヘマトクリット、WBC数、血小板数は、使用した種々の分析器で参照範囲に変動があるため、カテゴリー化した変数(tercilesに分類:参照範囲以上、参照範囲内、参照範囲以下)として扱った。変数とPFIあるいはOSTとの関連をCox回帰解析で調査し、より短いPFIあるいはOSTに対するハザード比(HRs)を報告した。母集団ピアソン相関係数(ρ)解析を重要変数間の潜在的関係を確認するため実施した。
結果:ステージ3HSAをPFI(HR、6.6)およびOST(HR、4.5)の負の予後指標として確認した。同じように、周術期の血小板減少はより短いPFI(HR、2.2)およびOST(HR、2.0)と関係した。Hctの結果は、血小板数の結果と相関した(ρ=0.58)が、著者らの所見は、顕著な貧血とより短いPFIとの関係を示さず、除外できなかった。
結論と臨床関連:血小板減少の予後価値は、原因と機械的関連を理解するため更なる実証を正当化し、最終的に血小板減少の存在は、脾臓HSAの犬に対する推奨治療を導く際に役立つと証明されるかもしれない。(Sato訳)
■脾摘を行った犬の悪性疾患および生存性に対する胸骨リンパ腫脹の予後的価値
Prognostic value of sternal lymphadenopathy on malignancy and survival in dogs undergoing splenectomy
Vet Comp Oncol. 2021 Apr 20.
doi: 10.1111/vco.12700. Online ahead of print.
Jennifer Kelsey , Raviv Balfour , David Szabo , Philip H Kass
この回顧的コホート研究の目的は、脾摘を行った犬の1集団において胸骨リンパ腫脹の有病率を調べ、その有病率が脾臓の悪性疾患に関係するかどうかを評価することだった。また、血管肉腫(HSA)と診断された犬の生存性に、手術時に胸骨リンパ腫脹がある犬とない犬で違いがあるかどうかも調査した。
2013年から2016年の間に脾摘を行った犬の、デジタルエックス線写真と医療記録を回顧的に再検討した。
研究期間中に195頭の犬が脾摘を行っていた。胸骨リンパ腫脹の全体の有病率は12.8%だった。血管肉腫の犬の胸骨リンパ腫脹の有病率は16.2%(12/74)で、他の悪性疾患は15.8%(3/19)、良性過程は9.8%(10/102)だった。
胸骨リンパ腫脹と腹腔内出血(P=0.20)あるいは、胸骨リンパ腫脹と腫瘍の存在(P=0.37)の間に有意な関係はなかった。胸骨リンパ腫脹のある犬とない犬の生存確率に有意差はなかった(P=0.073)。しかし、HSAの74頭の犬(P=0.036)および他の脾臓悪性疾患の犬19頭(P=0.039)において、胸骨リンパ腫脹はより低い生存性と関係した。
胸骨リンパ腫脹の存在は、腹腔内出血がある犬で認めた場合、ネガティブな予後指標と考えるべきではない。初診時の胸骨リンパ腫脹の存在は、脾臓疾患の全ての犬の生存期間に有意に関係することはなかったが、脾臓の悪性疾患の犬の生存性に関連する予測的価値があるかもしれない。(Sato訳)
■脾臓腫瘍と胃の関与がある2頭の犬の脾摘時の部分的胃切除
Partial gastrectomy at the time of splenectomy in two dogs with splenic neoplasia and gastric involvement
Top Companion Anim Med. 2020 Oct 25;100487.
doi: 10.1016/j.tcam.2020.100487. Online ahead of print.
V Montinaro , L E Chiti , N Rossi , F Massari , G Romanelli
脾臓悪性腫瘍は、脾臓にマスがある犬の30-76%で報告されており、その管理において脾摘が基本である。しかし、血管肉腫や非血管原性非リンパ腫性肉腫ともに、高率に遠隔転移を起こすと報告されているため、長期予後は警戒される。脾臓腫瘍からの転移は、通常領域リンパ節、肝臓、大網、肺で発生する。
このケースシリーズの目的は、胃の関与がある脾臓腫瘍の2症例を述べ、その状況に関係した術式と結果を報告することである。
2頭の雑種犬が脾臓のマスと試験的回復のために紹介された。2頭とも脾臓のマスは胃壁にがっちりと固着しており、そのため、脾摘と同時に部分的胃切除を実施した。
症例1において、肝臓マスのため肝葉切除も実施した。症例2では、リンパ節腫大のため領域リンパ節も切除した。
2頭は術後何事もなく回復し、72時間、96時間後に退院した。1頭の病理組織検査は、脾臓未分化肉腫と肝臓腺癌で、もう1頭はリンパ節転移を伴う悪性繊維性組織球腫と診断された。2頭の胃への腫瘍浸潤は組織学的に確認された。
2頭の補助的化学療法は拒否され、71日目、58日目に腫瘍の進行のために安楽死された。
我々の結果によれば、脾摘と同時に胃切除は、胃壁を巻き込む脾臓腫瘍の犬で実行可能である。しかし、転移性脾臓肉腫で過去に報告されているように長期予後は悪い。(Sato訳)
■370頭の小型犬(<15kg)における結節性脾臓病変の評価
Evaluation of Nodular Splenic Lesions in 370 Small-Breed Dogs (<15 kg).
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 Jul/Aug;55(4):201-209.
DOI: 10.5326/JAAHA-MS-6934
Steven Fernandez , Jennifer M Lang , Karl C Maritato
結節性脾臓病変の存在に対し脾臓摘出を行った370頭の小型犬種の犬(<15kg)を回顧的研究で、過去の研究と比較し、犬種、悪性度、血腹、生存期間中央値に関して評価した。分析したデータは、シグナルメント、病理組織診断、血腹の有無、犬種関連、生存期間だった。
この研究では、44%(163/370)が非腫瘍性脾臓病変で、56%(207/370)が腫瘍性病変だった。血管肉腫は27%(100/370)の脾臓病変に見られた。血腹は31%(115/370)に見られ、この集団のうち、66%(76/115)は悪性脾臓病変だった。もっとも一般的な犬種はミニチュアシュナウザー、ダックスフンド、ビーグルで、ビーグルは悪性と正の関連を示した。血腹の存在は悪性と関連があった。
結節性脾臓病変の分配、血腹と悪性の相関、生存期間中央値は、過去に報告された大型犬種のものと同様だった。血腹が存在する小型犬は、悪性脾臓病変と診断される確率が2.6倍高かった。結節性脾臓病変のあるもっとも一般的な小型犬種は、ミニチュアシュナウザー、ダックスフンド、ビーグルだった。ビーグルと小型犬種のテリアは、悪性脾臓病変である確率がより高く、小型犬種のテリアは血腹が存在する確率がより高かった。(Sato訳)
■犬の破裂していない脾臓病変の偶然の発見に対する部分的脾臓切除:18症例
Partial splenectomy for incidentally detected non-ruptured splenic lesions in dogs: 18 cases (2004-2018).
Can Vet J. 2019 Nov;60(11):1194-1198.
Dongaonkar KR, Linden D, Davidson JR, Boothe HW, Tillson DM, Matz BM.
この回顧的研究の目的は、偶然に破裂していない脾臓病変が見つかった犬で、部分的脾臓切除を行った18頭の犬の結果と脾臓悪性腫瘍の発生率を述べることだった。
この研究で脾臓悪性腫瘍の発生率は5.6%(95%CI、0.14%-27.65%)だった。脾臓結節の直径中央値は2cm(範囲:1.5-4cm)だった。脾臓血管肉腫が1頭で診断されたが、残りの17頭は良性脾臓病変だった。この研究集団では、脾臓悪性腫瘍(5.6%)よりも非脾臓悪性腫瘍(50%)の方が高い発生率だった。手術後の総生存期間中央値は300日(範囲:4-1332日)だった。悪性疾患(脾臓および非脾臓)の犬の生存期間中央値は67日(範囲:4-425日)で、非悪性疾患のそれは727日(範囲:8-1332日)だった。
結論として、犬の部分的脾臓切除は、小さな破裂していない脾臓病変に対して適切かもしれない。(Sato訳)
■脾臓切除後の短期術後死亡率に対するバイポーラ血管シール機器の使用の影響:203頭(2005-2018)
Influence of use of a bipolar vessel sealing device on short-term postoperative mortality after splenectomy: 203 dogs (2005-2018).
Vet Surg. 2019 Dec 14. doi: 10.1111/vsu.13367. [Epub ahead of print]
Sirochman AL, Milovancev M, Townsend K, Grimes JA.
目的:バイポーラ血管シール機器(BVSD)を使用した場合としなかった場合の脾臓摘出後の犬の短期術後死亡率を比較することと、死亡率に関する変数を確認すること
研究デザイン:後ろ向き研究
サンプル集団:飼育犬(n=203)
方法:2005-2018年の間に脾臓摘出術を行った犬の医療記録を調査した。BVSDを使用した場合としなかった場合の脾臓摘出術を行った犬の死亡率を比較した。死亡原因、短期死亡率に関係する変数を調査した。
結果:203頭中15頭(7.4%)が退院前に死亡し、7頭(3.4%)は抜糸前に死亡し、総短期死亡率は203頭中22頭(10.8%)だった。BVSD群と非BVSD群の間の退院前の死亡の比率の算出差は-0.01(95%CI=-0.08から0.06)だった。脾臓摘出にBVSDを使用しなかった時の麻酔時間はより長かった(中央値168vs152分;P=0.03)。多変量解析で、退院前の死亡に有意に関係するものとして、術中(オッズ比(OR)5.7)あるいは術後(OR13.6)輸血、麻酔時間の延長(16分延長ごとにOR1.15)、術中心室性不整脈(OR6.8)が確認された。術中(OR3.2)あるいは術後(OR7.7)の輸血は、抜糸前の死亡に関係した。
結論:BVSDの使用は、脾臓摘出後の短期死亡率を増加させるとは思えなかった。
臨床意義:術中あるいは術後の輸血を必要とする犬、術中に心室性不整脈を経験、麻酔時間の延長が必要な脾臓摘出術を行った犬は、短期術後期間で死亡のリスクを負うかもしれない。(Sato訳)
■小型犬種の脾腫:45症例(2005-2011)
Splenomegaly in small-breed dogs: 45 cases(2005-2011).
Language: English
J Am Vet Med Assoc. May 2017;250(10):1148-1154.
Erin E Corbin, Ryan P Cavanaugh, Pamela Schwartz, Katherine I Zawadzki, Taryn Donovan
目的:脾摘を行った小型犬(すなわち16kg未満)の脾腫の原因および術後結果を調べることと、それらの症例の中で悪性疾患、腹腔内出血、生存期間に関して評価する。
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:45頭の飼育犬
方法:脾摘を行い組織診断が記録されている小型犬を確認するため、2か所の動物病院の医療記録を再調査した。シグナルメント、診断、腹腔内出血の有無、生存期間のデータを解析した。
結果:21頭は悪性腫瘍で、24頭は良性脾臓疾患だった。血管肉腫は最もよく見られた(14/21(67%)頭)悪性腫瘍で、リンパ結節性過形成、血腫、あるいは骨髄外造血(単独あるいは混合)が良性疾患の犬(17/24(71%))で多く診断された。ウエリントンテリアは他の犬種よりも悪性脾臓疾患となる確率が有意に高かった。悪性脾臓疾患と腹腔内出血の存在は、生存期間と有意に負の関連があった。悪性疾患は腹腔内出血の存在と有意な関連はなかった。
結論と臨床的関連:脾腫の原因と生存期間は、主に大型犬種を含めた過去に報告された集団の其れと同様だった。この集団で脾腫に対しては、良性と悪性の原因が約同数存在した。脾腫のウエリントンテリアは他の犬種よりも悪性腫瘍の確率が高く、腹腔内出血は小型犬で悪性腫瘍の有意な指標とはならないかもしれないと示唆された。しかし、それらの所見を確認するため、大規模集団での追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の脾臓摘出において血管シーリング機器とサージカルステープラーによる手術時間の短縮
Decreased surgical time with a vessel sealing device versus a surgical
stapler in performance of canine splenectomy.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Jan-Feb;50(1):42-5.
Christopher J Monarski; Michael H Jaffe; Phillip H Kass
脾臓摘出に際し、血管シーリング機器とサージカルステープラーを比較するため、72頭の犬で回顧的研究を行った。
研究の結果で、従来のステープラー(平均時間、66.9分±2.4分;中央値、66分;範囲40-100分)と比較して血管シーリング機器(平均時間:58.4分±3.3分;中央値、60分;範囲、22-131分)を使用した脾臓摘出の方が、結果に有害な出来事もなく統計学的に有意に手術時間の短縮を認めた。2群でその他の有意差は認められなかった。(Sato訳)
■腹腔鏡下脾臓摘出:3頭の猫における操作方法と結果
Laparoscopic splenectomy: operative technique and outcome in three cats.
J Feline Med Surg. January 2013;15(1):48-52.
Erica O'Donnell; Philipp Mayhew; William Culp; Kelli Mayhew
臨床的概要:びまん性脾臓疾患の切除に、バイポーラ血管シーリング装置を用いて腹腔鏡下脾臓摘出を行った3頭の猫の臨床所見、治療、結果を述べる。各症例において、3門腹腔鏡法を使用した。脾臓を操作し、その腸間膜および関連血管は順番に焼灼、結紮して細小出血の門切開を通して摘出した。3頭の猫は、何事もなく麻酔から覚醒し、次の日には退院した。
臨床的意義:脾臓摘出が必要な猫の選択群において、腹腔鏡下脾臓摘出は開腹に代わる安全で有効な方法だと思われる。(Sato訳)
■腹腔内出血の犬の周術結果:83症例(2005-2010)
Perioperative outcome in dogs with hemoperitoneum: 83 cases (2005-2010).
J Am Vet Med Assoc. May 15, 2013;242(10):1385-91.
Cassie N Lux; William T N Culp; Philipp D Mayhew; Kim Tong; Robert B Rebhun; Philip H Kass
目的:腹腔内出血の犬の周術における臨床的経過の特徴を示すことと、短期結果に影響すると思われるリスクファクターを判定する
デザイン:回顧的症例シリーズ。
動物:飼い主の所有する83頭の犬
方法:2005年から2010年の間に、手術を行った腹腔内出血の犬のカルテを再調査した。周術結果と関係するリスクファクターを判定するためにデータを解析した。周術期は腹腔内出血の治療のために入院した時から退院あるいは安楽死までとした(同機会内)。
結果:周術期に83頭中13頭(16%)が死亡、あるいは安楽死された。生存した犬の平均入院期間は2日(範囲1-5日)だった。大量の血液製剤の投与の必要性は、退院に対する負の予後指標だった。83頭中75頭(90%)の犬において、出血源は脾臓だった;出血が脾臓ということは、生きて退院することに対する正の指標と判定された。
結論と臨床的関連:この研究で、死亡及び病院から退院できないことに関係するファクターには、頻脈、血液製剤の大量投与の必要性、おそらく肺血栓塞栓あるいは急性呼吸窮迫症候群による二次的な呼吸疾患の発症などが含まれた。脾臓内の疾患の存在は、退院することに正に関係した。このシリーズでは、病因にかかわらず腹腔内出血のための外科的介入により、83頭中70頭(84%)の犬が退院できた。(Sato訳)
■犬と猫の腹腔鏡による脾臓バイオプシー:15症例(2006-2008)
Laparoscopic splenic biopsy in dogs and cats: 15 cases (2006-2008).
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Jan-Feb;49(1):41-5.
Anant Radhakrishnan; Philipp D Mayhew
この後ろ向き研究で、犬と猫の腹腔鏡による脾臓バイオプシーのテクニックと評価した結果を述べる。
全身性疾患のための診断的評価の一部として、腹腔鏡による脾臓バイオプシーを行った犬(n=10)と猫(n=5)の医療記録を評価した。
脾臓アプローチは2門アプローチを用いて仰臥位で実施した。同時に他の臓器バイオプシーを実施した症例もあった。5mmカップのバイオプシー鉗子を採取に用い、止血のため吸収性ゼラチン止血スポンジをバイオプシー部位に設置した。 全頭大きな合併症は見られず回復した。開腹アプローチへの変更を必要としなかった。
生存中央期間は180日で、この原稿を書いているときは9頭生存していた。4頭は腫瘍と診断されたが、脾臓を巻き込んだ腫瘍があったのは1頭のみだった。非腫瘍群(n=11)の生存中央期間は300日だった。そのうち8頭は、この原稿を書いているときに生存していた。臨床患者のこの集団で低罹病率が観察された。細胞診よりも病理組織検査が優先される臨床的状況もあり、腹腔鏡による脾臓バイオプシーは最小限の侵襲的診断オプションを提供する。(Sato訳)
■脾臓疾患の犬におけるバルトネラ、バベシア、血液向性マイコプラズマsp.の分子的有病率
Molecular Prevalence of Bartonella, Babesia, and Hemotropic Mycoplasma
sp. in Dogs with Splenic Disease.
J Vet Intern Med. November 2011;25(6):1284-91.
M Varanat; R G Maggi; K E Linder; E B Breitschwerdt
背景:犬において脾腫を起こす疾患の中で、リンパ結節過形成(LNH)、脾臓血管肉腫(HSA)、繊維組織球結節(FHN)が一般に診断される。脾臓は、バルトネラsp.、バベシアsp.、血液向性マイコプラズマsp.などの媒介動物伝播の血液由来病原体の免疫学的コントロールあるいは排除において重要な役割を演じる。
目的:LNH、HSA、FHNの犬の脾臓において、バルトネラsp.、バベシアsp.、血液向性マイコプラズマsp.DNAの有病率を比較する。
材料と方法:LNH(N=50)、HSA(N=50)、FHN(N=37)から外科的に採取してパラフィン包埋した生検組織を、解剖病理学的アーカイブから収集した。特定病原フリー(SPF)犬(N=8)からの脾臓をコントロールとした。バルトネラsp.、バベシアsp.、血液向性マイコプラズマsp.DNAはPCRで増幅し、DNA塩基配列決定を行った。
結果:バルトネラsp.DNAはLNH(10%)やコントロール(0.0%)と比較して、FHN(29.7%)、HSA(26%)で多く見られた(それぞれP=0.019、P=0.0373)。バベシアsp.、血液向性マイコプラズマsp.DNAはHSA(それぞれP=0.0005、P=0.006)およびFHN(それぞれP=0.003、P=0.0004)においてバルトネラsp.よりも有意に低かった。LNH群において3属のDNAの有病率に統計学的有意差はなかった。
結論:FHNやHSAにおけるバルトネラsp.の有病率の高いことは、この細菌がそれら脾臓疾患の発症に何か役割があるのか判定する追加調査を必要とする理由となる。(Sato訳)
■悪性と良性限局性脾臓病変の識別として栄養血管の超音波造影検査
CONTRAST ENHANCED SONOGRAPHIC ASSESSMENT OF FEEDING VESSELS AS A DISCRIMINATOR BETWEEN MALIGNANT VS. BENIGN FOCAL SPLENIC LESIONS
Veterinary Radiology & Ultrasound
Article first published online: 6 APR 2011
Olivier Taeymans, Dominique Penninck
超音波造影検査を局所脾臓病変が確認されている17例(悪性5、良性12)で行った。相対的エコー輝度変化は病変灌流の主観的解釈に使用した。病変の相対的エコー輝度の増加を起こす造影剤の急速な流入後、造影剤の急速なクリアランスをearly
washin/early washoutとした。良性6/12、悪性3/5病変はearly washin/early washoutの特徴があった。ゆえに悪性と良性病変の鑑別におけるこのパラメーターの感受性、特異性、正確性は60%、50%、53%だった。
良性2/12、悪性2/5病変は全ての段階を通して持続的低灌流があった。ゆえにこの診断基準を使用した悪性に対する感受性、特異性、正確性は40%、83%、71%だった。
しかし良性にはなく、全て悪性病変の特徴は蛇行性および持続性可視栄養血管だった。このことは、脾臓病変の解釈はエコー輝度あるいは持続的低灌流をもとに正確に実施できるわけではないが、血管の蛇行性の評価は悪性と良性局所脾臓病変の鑑別に役立つかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の脾臓疾患の病理細胞および病理組織診断
Cytopathological and histopathological diagnosis of canine splenic disorders.
Aust Vet J. May 2009;87(5):175-81.
Ni Christensen, Pj Canfield, Pa Martin, MB Krockenberger, Ds Spielman, Kl Bosward
目的:(1)オーストラリアのシドニーで病理細胞および病理組織検査により診断された犬の脾臓疾患の一般的な種類と罹患した犬種、(2)犬の脾臓疾患の診断で病理組織検査と比較したときの病理細胞検査の正確性を判定すること
構成:2006-2007年の間にシドニー大学獣医病理診断サービスに提出された犬の脾臓疾患の69件の病理細胞および51件の病理組織診断結果を表に示し、分析した;また2001-2007年の間に病理細胞および病理組織両方検査した17件も分析した。
結果:一般的な病理細胞診断結果は、増殖良性疾患、血管障害および壊死(29%)、続いて検出可能な異常なし(28%)、悪性腫瘍(20%)、あいまいな診断(20%)、炎症性疾患(3%)だった。よく見られた犬種はケルピー交雑および雑種だった。
一般的な病理組織診断結果は、増殖良性疾患、血管障害および壊死(49%)、続いて悪性腫瘍(43%)、炎症性疾患(8%)だった。よく見られた犬種はジャーマンシェパード、ボクサー、マルチーズだった。
病理細胞および組織病理診断結果は、59%の症例が完全一致、29%が部分一致、12%が不一致だった。
結論:病理細胞および病理組織検査両方で、増殖良性疾患、血管障害および壊死が犬の脾臓疾患で多く診断された。病理細胞検査を最も頻繁に受けていた犬種はケルピー交雑種だった。病理組織学的に血管肉腫と診断された最も一般的な犬種はジャーマンシェパードだった。病理細胞および病理組織脾臓検査は診断に相補的であるが、この研究で2つの方法は完全および部分一致の高い相関を示している。(Sato訳)
■急性脾捻転の症状として門の静脈周囲高エコートライアングル
The hilar perivenous hyperechoic triangle as a sign of acute splenic torsion in dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2006 Sep-Oct;47(5):487-91.
Wilfried Mai
急性原発性脾捻転の診断はむずかしい。この状態の超音波所見は述べられているが、血栓症による広範性梗塞のような他の脾臓疾患は非常に似通って見える。我々は急性脾捻転の超音波像を追加紹介する。静脈と高エコー腸間膜に続く脾臓実質の間の門で三角形の高エコー部である。急性脾捻転が超音波鑑別診断の一つとしてあげられる動物群で、捻転の犬と他の脾臓疾患の犬の所見を比較した。門の高エコー静脈周囲トライアングルの存在は、脾捻転に有意に関係した(P=0.005)。我々は、この像が二次的重度広範性脾臓拡大のため捻転に関与すると推測する。特有症候ではないが、この像はこの状況に一致する他の所見と照らし合わせ、脾捻転のより正確な診断に使用できる。(Sato訳)
■101頭の猫における脾臓疾患の超音波検査所見
Ultrasonographic appearance of splenic disease in 101 cats.
Vet Radiol Ultrasound. 2001 Sep-Oct;42(5):441-5.
Hanson JA, Papageorges M, Girard E, Menard M, Hebert P.
脾臓の異常がある101頭の猫の断層撮影所見を述べる。 超音波ガイド下でのFNAあるいはFNB(n=91)、超音波ガイド下でのコア生検(n=1)、外科的コア生検(n=1)、または剖検(n=10)で診断した。 2頭の猫には、1つ以上の診断手順(FNAと剖検あるいはコア生検と剖検)を実施した。 脾臓の異常はリンパ肉腫(n=30)、肥満細胞腫(n=27)、髄外造血、そして/またはリンパ様過形成(n=27)、上皮性腫瘍(n=6)、間葉系腫瘍(n=4)、悪性組織球症(n=2)、骨髄増殖性疾患(n=2)、化膿性肉芽腫性炎症(n=2)、赤白血病(n=1)、好酸球性症候群(n=1)、血腫(n=1)、肉芽腫性脾炎(n=1)を含んでいた。 3頭の猫には、1つ以上の脾臓の異常 (肥満細胞腫と転移性癌、化膿性肉芽腫性炎症とリンパ性過形成、組織球性リンパ肉腫とリンパ様過形成) があった。疾病特徴的変化は病気のいずれに関しても見られなかった。(Dr.Kawano訳)
■脾腫の診断の補助としての脾臓の針吸引
Fine-needle aspiration of the spleen as an aid in the diagnosis of splenomegaly.
J Vet Intern Med. 1987 Jul-Sep;1(3):102-9.
O'Keefe DA, Couto CG.
28頭の犬と5頭の猫の脾臓の経腹針吸引の結果を報告する。脾腫はこれらの患者の79%で存在し、そして、脾臓マスは15%で存在した。 最も一般的な細胞学的診断であった髄外造血は、患者の24%で見られ、免疫介在性溶血性貧血、血管肉腫、および骨髄低形成など様々な病気に関連していた。 リンパ肉腫、形質細胞腫、骨髄性白血病、および全身性肥満細胞症を含む造血性腫瘍が24%で診断された。 他の診断には非明確な細胞種の悪性腫瘍とリンパ性細網内皮過形成を含んでいた。脾臓の吸引は動物の18%で正常であると考えられた。 吸引した2頭(6%)が脾臓よりむしろ肝組織が含まれていた。 脾臓組織の組織学的評価は患者の42.5%で実施された。 すべての細胞診断が最終的な組織学的診断とよく関連した。血小板減少患者でさえ吸引実施による合併症は観察されなかった。(Dr.Kawano訳)