■自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬における臨床的呼吸およびエックス線像異常
Clinical respiratory and radiographic abnormalities in dogs with spontaneous hypercortisolism
Can J Vet Res. 2024 Oct;88(4):101-113.
Diana A Mendonça , Flávia Tavares , Cristiano C Pessoa da Veiga , Fabiana Knackfuss , Bruno Alberigi

この研究の目的は、副腎皮質機能亢進症の犬のパンティング及び呼吸困難以外の呼吸の臨床症状、胸部エックス線像異常を特徴づけることだった。副腎皮質機能亢進症の犬の症例報告や、肺のシンチグラフィーの結果を評価する研究はあったが、呼吸の臨床症状やエックス線写真の結果を再検討している研究はない。この研究はこのギャップに向けて行う。

ケースシリーズを評価し、犬の臨床的病歴を入手した(臨床症状および身体検査を含む)。デジタル胸部エックス線像を解析し、主気管支の径、肺パターン、肺動脈のサイズのようなパラメーターを検討した。

最も一般的な呼吸徴候は、いびき(61.9%)、発咳(57.1%)、疲労(52.4%)だった。身体検査では、肺聴診における高頻度の変化を認めた(95.2%)。95%の犬でボディコンディションスコア(BCS)が高く、いびきと肺聴診の変化(両方とも同様のリスク因子がある)の間に有意な相関が見られた。さらに、体重は呼吸数と中程度の相関を示した(RR=0.571)。エックス線写真の変化は47.5%の犬で見られ、気管支パターンが最も一般的だった(70%)。

これらの結果を基に、呼吸器およびエックス線像の異常は、自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬でよく見られ、高いボディコンディションスコアは、いびきや頻呼吸のような臨床的呼吸症状の悪化と関係することが観察された。(Sato訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬におけるACTH後のコルチゾールとトリロスタン用量の関係
Association between post-ACTH cortisol and trilostane dosage in dogs with pituitary-dependent hypercortisolism
Domest Anim Endocrinol. 2024 Jul 4:89:106871.
doi: 10.1016/j.domaniend.2024.106871. Online ahead of print.
Fernanda Nastri Gouvêa , Alessandra Martins Vargas , Ednaldo Carvalho Guimarães , Leandro Zuccolotto Crivellenti , Caio Santos Pennacchi , Hévila Dutra Barbosa de Cerqueira , Luana de Oliveira Branco , Natani Silva Reis , Sofia Borin-Crivellenti

トリロスタンは、犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の管理に対し、現在の治療選択である。より高い初期用量の処方は、医原性副腎皮質機能低下症のリスクを高めるかもしれないが、多くの犬は結局、用量増量を必要とすることから、より保守的なアプローチの選択は疾患コントロールを遅らせることになる可能性がある。副腎機能の評価に対し広く知られているホルモンテストである副腎皮質ホルモン刺激試験(ACTHst)は、診断目的にも使用でき、犬の高コルチゾール血症の薬理学的治療のモニタリングに対する必須のツールである。

この研究の目的は、ACTH後のコルチゾール(cpACTH)濃度がより高い犬は、疾患管理に対して、より高いトリロスタン用量を必要とするだろうという仮説を考慮して、PDH診断時のcpACTHと症状コントロールおよび内因性コルチゾール調節に必要なトリロスタン用量の関連を調査することだった。

診断時のcpACTHの記録があるPDHの犬43頭のデータは、臨床症状のコントロールおよび良好なコルチゾール濃度(理想的には2-7μg/dL)を達成するのに必要なトリロスタン用量と相関した。オッズ比(p=0.042)は、診断時のcpACTH≧27μg/dLの犬は、PDHの良好なコントロールを達成するのにより高いトリロスタン用量を96%必要とする可能性が高いと示唆する。

このように、cpACTHは、犬のPDHをコントロールする最終的なトリロスタン用量と関係することが分かった。(Sato訳)
■副腎依存性の副腎皮質機能亢進症の14頭の犬の集団でトリロスタン治療中あるいは副腎摘出から1年間の全身性高血圧の有病率と収縮期血圧の管理
Prevalence of Systemic Hypertension and Control of Systolic Blood Pressure in a Cohort of 14 Dogs with Adrenal-Dependent Hypercortisolism during the First Year of Trilostane Treatment or after Adrenalectomy
Animals (Basel). 2024 Feb 3;14(3):511.
doi: 10.3390/ani14030511.
Paula García San José , María Dolores Pérez-Alenza , Daniel Alonso-Miguel , Sandra González Sanz , Carolina Arenas Bermejo

犬の副腎皮質機能亢進症は、全身性高血圧(SH)と関係することが多い。しかし、副腎依存性副腎皮質機能亢進症(ADH)の犬で、トリロスタン治療中あるいは副腎摘出後の収縮期血圧(SBP)の変化、降圧治療への反応を評価した研究はない。

この理由で、この研究の目的は、ADHの犬でトリロスタン治療から、あるいは副腎摘出から最初の1年間のSBPの変化、副腎皮質機能亢進症の臨床的コントロールと確実な検査パラメーターとの関連、降圧剤への反応を評価することだった。

ADHと新しく診断された14頭の犬を前向きに含め、診断時(T0)、1、3、6、12か月後(それぞれT1、T3、T6、T12)に評価した。犬は高血圧(HT;SBP≧160mmHg)と非高血圧に分類した。

HTの犬において、ベナゼプリルが第一選択薬と考えられ、必要ならばアムロジピンを処方した。T0時のSHの有病率は79%で、T12時には25%に減少した。血圧(BP)はいずれのエンドポイントでも、疾患コントロール、あるいは選択した検査パラメーターと関係しなかった。22%の犬だけが、SBPを正常化するのに1つ以上の薬剤を必要とした。T0でHTだった外科的に治療した全ての犬は、T3時にBPは正常化した。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能亢進症に対するマーカーとして好中球-リンパ球および血小板-リンパ球比が使用できる?
Can neutrophil-to-lymphocyte and platelet-to-lymphocyte ratios be used as markers for hypercortisolism in dogs?
Top Companion Anim Med. 2024 Jul 2:61:100890.
doi: 10.1016/j.tcam.2024.100890. Online ahead of print.
Sumin Yun , Taesik Yun , Sijin Cha , Jimin Oh , Dohee Lee , Yoonhoi Koo , Yeon Chae , Mhan-Pyo Yang , Byeong-Teck Kang , Hakhyun Kim

副腎皮質機能亢進症(HC)の犬において、好中球-リンパ球比(NLR)および血小板-リンパ球比(PLR)の変化は確認されているが、HCの診断や管理に対し費用対効果が高く、利用可能なパラメーターとしてそれらの炎症性バイオマーカーの変化を調査している研究はない。

この研究で、HCの犬の診断および治療反応に対するバイオマーカーとして、NLRおよびPLRが使用できるのかどうかを評価した。

この回顧的研究に、HCの犬67頭と副腎の疾患ではない(NAI)犬58頭、健康な犬39頭を含めた。NLRおよびPLRを3つのグループ間で比較した。HCスクリーニングに対するNLRおよびPLRのカットオフ値と、治療反応を評価するバイオマーカーの比率変化を評価した。また、NLRおよびPLRをトリロスタン治療前後で比較した。

HC群のNLRおよびPLRは、NAIおよび健康群よりも有意に高かった。HCの犬とNAIの犬の鑑別において、NLRカットオフ値4.227は、感受性67.16%、特異性65.52%で、PLRカットオフ値285.0は、感受性56.72%、特異性70.69%だった。さらに、NLRの有意な低下は、良くコントロールされたHC群で治療後に観察された。HCが良くコントロールされているかの確認で、NLRの比率変化のカットオフ値は、-7.570%;感受性と特異性はそれぞれ100%と63.64%だった。

ゆえに、NLRとPLRはHC診断の支持的バイオマーカーとして注意して使用できるかもしれず、NLRは、犬のHCの治療反応の評価で見込みのあるモニタリングツールとなりえた。(Sato訳)
■犬の原発性副腎皮質機能低下症の高カルシウム血症の有病率:多施設、回顧的研究
Prevalence of hypercalcemia in primary hypoadrenocorticism in dogs: Multicenter, retrospective study
J Vet Intern Med. 2023 Jun 29.
doi: 10.1111/jvim.16786. Online ahead of print.
Harriet Hall , Daniel Thompson , Jessica Florey , Mireia Pascual Moreno , Victoria Black , Timothy Williams , Barbara Skelly

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背景:副腎皮質機能低下症は高カルシウム血症の重要な鑑別疾患である。犬の副腎皮質機能低下症の高カルシウム血症の病因は不明である。

目的:原発性副腎皮質機能低下症の犬において、高カルシウム血症に関係する臨床、個体群統計、生化学変数を確認するため、統計学的方法を使用し、高カルシウム血症の有病率を再検討する。

動物:原発性副腎皮質機能低下症の犬110頭;総カルシウム(TCa)の記録がある107頭、イオン化カルシウム(iCa)の記録のある43頭

方法:4か所のイギリスの紹介病院での多施設回顧的観察研究。一変量ロジスティック回帰解析で、シグナルメント、副腎皮質機能低下症のタイプ(グルココルチコイドのみ不足した副腎皮質機能低下症(GHoC)vsグルココルチコイドとミネラルコルチコイド不足の副腎皮質機能低下症(GMHoC))、臨床病理変数と高カルシウム血症の関連を評価した。高カルシウム血症は、TCa上昇、iCa上昇、あるいはTCaとiCa上昇(モデル1)あるいはiCa上昇(モデル2)と定義した。

結果:高カルシウム血症の全体の有病率は34.5%(38/110)だった。高カルシウム血症(モデル1)のオッズは、GMHoCの犬((vsGHoC)、OR(オッズ比)=3.86、95%CI、1.105-13.463)、より高い血清クレアチニン(OR=1.512、95%CI、1.041-2.197)、より高い血清アルブミンの犬(OR=4.187、95%CI、1.744-10.048)で上昇した(P<.05)。イオン化高カルシウム血症のオッズは、血清カリウム濃度の低下(OR=0.401、95%CI、0.184-0.876)、より若い年齢(OR=0.737、95%CI、0.558-0.974)で上昇した(P<.05)。

結論と臨床的重要性:この研究は、原発性副腎皮質機能低下症の犬において、高カルシウム血症に関係するいくつかのカギとなる臨床および生化学変数を確認した。それらの所見は、原発性副腎皮質機能低下症の犬において、高カルシウム血症の病態生理学及び病因学の理解に役立つ。(Sato訳)
■猫の原発性高アルドステロン症の診断における抑制試験として経口テルミサルタン投与の評価
Evaluation of oral telmisartan administration as a suppression test for diagnosis of primary hyperaldosteronism in cats
J Vet Intern Med. 2023 Mar 29.
doi: 10.1111/jvim.16689. Online ahead of print.
Virginie Fabrès , Renaud Dumont , Mélanie Garcia , Dan Rosenberg , Benoit Rannou , Maxine Kurtz , Ghita Benchekroun

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背景:テルミサルタンをベースとした抑制試験の開発は、今日、依然として難しい猫の原発性高アルドステロン症(PHA)の診断を容易にするかもしれない

目的:安全で、健康な猫のアルドステロン分泌は抑制でき、PHAの猫では抑制しないテルミサルタン抑制試験(TST)を開発すること

動物:10頭の健康な猫と6頭のPHAの猫

方法:健康な猫におけるTSTを調査し、PHAの猫におけるTSTを評価するためのプラセボ-対照交差デザインを用いた前向き研究。血漿アルドステロン濃度、カリウム濃度、収縮期血圧(SBP)を、テルミサルタン1mg/kg、2mg/kg、プラセボの経口投与前(T0)、1時間後(T1)、1.5時間後(T1.5)に測定した。

結果:健康な猫の年齢中央値は3歳(範囲、1-7)だった。健康な猫において、用量2mg/kgのテルミサルタンは、T0と比較してT1およびT1.5で有意にアルドステロン濃度が減少した。プラセボによるアルドステロン濃度に有意な影響はなかった。PHAと診断された猫において、用量2mg/kgのテルミサルタンは、T0と比べてT1およびT1.5でのアルドステロン濃度にいかなる有意な変化も誘発しなかった。どの猫にもテルミサルタンの副作用(すなわち、高カリウム血症、全身性低血圧)は観察されなかった。

結論と臨床的重要性:経口TSTは、猫のPHAの診断に対して診断検査としての有望性を示す。(Sato訳)
■自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬37頭の筋硬直の臨床的特徴
Clinical features of muscle stiffness in 37 dogs with concurrent naturally occurring hypercortisolism
J Vet Intern Med. 2023 Feb 16.
doi: 10.1111/jvim.16620. Online ahead of print.
Stefania Golinelli , Federico Fracassi , Ezio Bianchi , Álan Gomes Pöppl , Diego Daniel Miceli , Leontine Benedicenti , Viviani De Marco , Audrey K Cook , Laura Espada Castro , Ian Ramsey , Kyoung Won Seo , Carlo Cantile , Gualtiero Gandini , Sean E Hulsebosch , Edward C Feldman

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背景:副腎皮質機能亢進症(HC)の犬の重度筋硬直(SMS)は珍しい

目的:HCとSMSを同時発生した犬のシグナルメント、症状、治療、長期結果を評価する

動物:37頭の犬

方法:10の施設からHCとSMSが同時発生した犬の医療記録を募集した。臨床的情報、検査結果、治療反応、生存期間を再検討した。

結果:HCとSMSの犬37頭は全部下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)だった;36/37頭は20kg未満だった。症状と検査結果は、SMSは別としてPDHの典型的なもので、最初は9頭が四肢、22頭が後肢、6頭が前肢で診断された。副腎皮質機能亢進症(HC)とSMSは3頭で同時に診断された;23頭はSMSの前1-36か月にHC、11頭はHCの前1-12か月にSMS。36/37頭はHCのコントロールにミトタンあるいはトリロスタンを投与し、28頭はHCの症状が改善あるいは解消した;31/36頭のSMSは改善せず、変化なしあるいは悪化し、追加の治療で5/19頭は軽度改善した。SMSは10頭で他の肢に、2頭は咀嚼筋に進行した。SMSの診断からの生存期間中央値は965日(範囲、8-1188)だった。

結論と臨床的重要性:SMSとHCの同時発生は珍しく、おそらくはPDHの犬のみが罹患する。SMSの発症はHCの診断前後に起こるかもしれない。SMSは別として、それらの犬の臨床像や生存期間は、一般にHCの犬のそれらと異なることはないと思われる。しかし、通常、筋の虚弱はHCの治療で解消するが、SMSは解消しない。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能亢進症のトリロスタンによる治療後の医原性症候性副腎皮質機能低下症:8症例(2008-2019)
Iatrogenic symptomatic hypoadrenocorticism after treatment with trilostane for hyperadrenocorticism in dogs: eight cases (2008-2019)
J Small Anim Pract. 2023 Mar 24.
doi: 10.1111/jsap.13594. Online ahead of print.
A Lamoureux , J L Cadoré , M Hugonnard , L Chabanne , E Krafft

目的:トリロスタンは、副腎皮質機能亢進症に対して選択される内科治療である。医原性副腎皮質機能低下症は珍しいと思われ、多くの症例は一時的なもので、持続的副腎皮質機能低下症の数症例は報告されている。この研究は、医原的副腎皮質機能低下症の8症例の所見を報告し、診断時の併発疾患の存在を調べる。

素材と方法:2008年からトリロスタンで治療している副腎皮質機能亢進症の犬の医療記録を再調査し、臨床的な医原性副腎皮質機能低下症の症例を抽出した。長期に補充治療が必要な場合、症例は持続的と考えた。

結果:8頭の犬が組み込み基準に合った。トリロスタン治療の開始から副腎皮質機能低下症の診断までの期間は、4日から13か月の範囲で、トリロスタン容量の範囲は1-8mg/kg/日だった。6頭の犬は副腎皮質機能低下症の診断時に併発疾患の疑いがあった。トリロスタン用量は2頭の犬で減量した;1頭はトリロスタンを中止し、副腎皮質機能亢進症の更なる再燃はなかった。;5頭はグルココルチコイド±ミネラルコルチコイド補給が処方された。その5頭中2頭はフォローアップできず、他3頭は、持続的副腎皮質機能低下症と診断された。それら3頭の副腎超音波検査で、不均一なエコー原性を伴い、副腎のサイズの進行性の縮小を示した。

臨床的意義:副腎皮質機能亢進症の犬において、トリロスタン治療の医原性副腎皮質機能低下症は珍しいが、潜在的に命路脅かす合併症である。併発疾患の発生は、過去の無症状な犬において副腎皮質機能低下症の臨床症状を発症する誘因となるかもしれない。(Sato訳)
■副腎皮質機能低下症と診断された犬の心室収縮機能障害
Ventricular systolic dysfunction in dogs diagnosed with hypoadrenocorticism
J Vet Cardiol. 2022 Apr 23;41:231-235.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.04.002. Online ahead of print.
T Gunasekaran , R A Sanders

副腎皮質機能低下症のヒトにおいて、二次的拡張型心筋症が分かっており、ステロイド補填療法で解消すると報告されている。副腎皮質機能低下症の犬において、同様の二次的拡張型心筋症は過去に述べられていない。

我々は、副腎皮質機能低下症と収縮機能障害を伴う心室拡張と同時に診断された3頭の犬を示す。

2頭の犬は、両室のうっ血性心不全に一致する臨床症状を呈し、3頭目はうっ血性心不全のない急性副腎皮質機能低下症の症状を呈した。全ての犬は治療により正常の心臓の大きさと機能に回復した。

心室拡張と収縮機能不全があり、臨床および血液検査で他の指標がある場合、鑑別診断として副腎皮質機能低下症を考慮すべきである。また、副腎皮質機能低下症と診断された時に心雑音が見つかった犬に対し、完全な心臓評価を推奨すべきである。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能亢進症の診断において尿コルチゾール:クレアチニン比の調査
Investigation of the urine cortisol to creatinine ratio for the diagnosis of hypoadrenocorticism in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2022 Apr 13;1-7.
doi: 10.2460/javma.21.12.0538. Online ahead of print.
Melissa V Moya , Kent R Refsal , Daniel K Langlois

目的:犬の副腎皮質機能低下症(HA)の診断に対する尿コルチゾール・クレアチニン比(UCCR)を評価することと、尿中コルチゾールの測定方法が結果に影響するかどうかを判定する

動物:自然に発生したHAの犬41頭と副腎に疾患のない107頭の犬

方法:HAに対する検査を行う犬から尿サンプルを前向きに収集した。尿中コルチゾール濃度は、ラジオイムノアッセイ(RIA)と化学ルミネセント免疫アッセイ(CLIA)を用いて動物診断検査所で測定した。受信者操作特性(ROC)曲線を作成し、HAの診断の両方法によるUCCRパフォーマンスを評価した。種々のカットポイントで感受性、特異性、精度、適中率を算出した。

結果:HAのUCCR診断に対するROC曲線下面積は、尿中コルチゾールをRIAで測定した時0.99(95%CI、0.98-1.00)、CLIAで測定した時1.00(95%CI、1.00-1.00)だった。HA診断に対し、RIA UCCR≦2は、感受性97.2%、特異性93.6%、精度94.7%で、CLIA UCCR≦10は感受性、特異性、精度100%だった。RIA UCCR>4およびCLIA UCCR>10は陰性適中率100%だった。

臨床関連:この研究集団でHAに対し、UCCRは正確な診断検査だったが、あいまいな結果が出る可能性はある。症例の特徴、コルチゾール測定方法、検査所特異のカットポイントは、結果の解釈で考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能低下症の診断における尿中電解質の評価
Evaluation of urine electrolytes for the diagnosis of hypoadrenocorticism in dogs
Vet Clin Pathol. 2021 Oct 26.
doi: 10.1111/vcp.13018. Online ahead of print.
Casey A Dropkin , John M Kruger , Daniel K Langlois

背景:原発性副腎皮質機能低下症(HA)の多くの犬は鉱質コルチコイド欠乏で、腎尿細管ナトリウムの再吸収とカリウムの排泄が低下する。HAの診断の補助となる尿中電解質測定の臨床的価値に関する情報は限られている。

目的:HAの犬において、尿中電解質測定値の診断的有用性を評価する

方法:尿中ナトリウムおよびカリウム濃度を89頭の犬(HAの犬39頭と副腎疾患のないコントロール犬50頭)で測定した。ナトリウム(FENa)とカリウム(FEK)の部分排泄率も算出した。尿中電解質と部分排泄率をグループ間で比較した。感受性と特異性は種々のカットポイントで判定した。

結果:コントロールと比較したHA犬の尿中ナトリウムとカリウム(Na:K)比の中央値は2倍高く(P<0.001)、FENa中央値は4倍高かった(P<0.001)。しかし、>90%感受性あるいは特異性を持つすべての変数に対するカットポイントで、対応する特異性あるいは感受性>50%を提供するものはなかった。異常な血清あるいは血漿電解質を持つ犬が解析に含まれた時のみ、絶対尿中電解質濃度およびFENaに研究集団間の違いはなかった(全ての比較でP>0.05)が、HAの犬と比べコントロールの犬においてFEKが上昇し(P=0.005)、尿中ナトリウム:クレアチニン比は低下した(P<0.001)。

結論:尿中電解質と部分排泄率は、HAの犬で変化する。しかし、副腎に疾患のないコントロール犬とかなりのオーバーラップが存在するので、それらの値は、HAの犬に対する診断的有用性は低い。(Sato訳)
■副腎皮質機能低下症の犬の尿中コルチゾール・クレアチニン比
Urinary cortisol-creatinine ratio in dogs with hypoadrenocorticism
J Vet Intern Med. 2022 Feb 11.
doi: 10.1111/jvim.16358. Online ahead of print.
Francesca Del Baldo , Magda Gerou Ferriani , Walter Bertazzolo , Matteo Luciani , Antonio Maria Tardo , Federico Fracassi

背景:副腎皮質機能低下症(HA)に対し、基礎血清コルチゾール(BSC)≦2μg/dLは、感受性は高いが、特異性が低い。

目的:尿中コルチコイド:クレアチニン比(UCCR)は、健康な犬やHAに似た疾患(DMHA)の犬と、HAの犬の鑑別に使用できるか調べる

動物:19頭の健康な犬、18頭のDMHAの犬、10頭のHAの犬

方法:回顧的研究。健康な犬、DMHAの犬、HAの犬から尿を採取し、UCCRを調べた。UCCRの診断パフォーマンスは、受信者操作特性(ROC)曲線の曲線下面積の算出を基に評価した。

結果:健康な犬(3.38 × 10-6 ; range, 1.11-17.32 × 10-6 )、DMHAの犬(10.28 × 10-6 ; range, 2.46-78.65 × 10-6 )に比べ、HAの犬(0.65 × 10-6 ; range, 0.33-1.22 × 10-6 )のUCCRは有意に低かった(P < .0001)。HAの犬とDMHAの犬の間にオーバーラップはなかった。対照的に1頭の健康犬のUCCR値は、HAの犬の範囲内にあった。ROC曲線下面積は0.99だった。HAの診断において、1.4未満のUCCRのカットオフ値は100%の感受性と97.3%の特異性だった。

結論と臨床的重要性:犬のHAに対し、UCCRは有益で信頼できるスクリーニング検査と思える。この検査の最大のアドバンテージは1回の尿サンプルだけで済むことである。(Sato訳)
■トリロスタンで治療中の副腎皮質機能亢進症の犬のモニター法の比較
Comparison of methods to monitor dogs with hypercortisolism treated with trilostane
J Vet Intern Med. 2021 Oct 21.
doi: 10.1111/jvim.16269. Online ahead of print.
Stefania Golinelli , Viviani de Marco , Rodolfo Oliveira Leal , Andrea Barbarossa , Camilla Aniballi , Elisa Maietti , Antonio Maria Tardo , Sara Galac , Federico Fracassi

方法:犬の副腎皮質機能亢進症(HC)のトリロスタンによる治療の効果をモニターする方法として、副腎皮質刺激ホルモン刺激試験の使用は、疑問視されている。

目的:HCの犬において、トリロスタンの治療効果をモニターする12の方法を評価し、比較する

動物:トリロスタンq12hで治療しているHCの飼い犬45頭

方法:前向き横断観察研究。飼い主へのアンケートから得た臨床スコアから、良好なコントロール、コントロール下、体調不良に犬を分類した。以下の変数でHCの犬のトリロスタン治療のコントロールを正しく確認する能力を評価した:トリロスタン投与前の血清コルチゾール(prepill)、ACTH前の血清コルチゾール、ACTH後の血清コルチゾール、血漿内因性ACTH濃度、prepill/内因性ACTH比、血清ハプトグロビン(Hp)濃度、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(γGT)、アルカリフォスファターゼ活性、尿比重、尿中コルチゾール:クレアチニン比。

結果:44頭の犬の44の再評価を含めた;体調不良の犬5頭の5の再評価は除外した。ハプトグロビンは臨床評価と有意に関係し(P<.001)、受信者操作特性解析において、Hpのカットオフ151mg/dLは、良好なコントロールの犬の90.0%(特異性)、コントロール下の犬の65.6%(感受性)を正確に確認した。ALT(P=.01)とγGT(P=.009)は、コントロール下の犬で有意に高かった。ALTとγGTのカットオフは、それぞれ86U/Lと5.8U/L以上で、トリロスタンによるHCのコントロール不良と有意に関係した。

結論と臨床的重要性:全ての12の変数のうち、Hpとより低いALTとγGTは、トリロスタンで治療し、よくコントロールされている犬とコントロール下にある犬を確認するための臨床像に追加されるツールと考えることができた。(Sato訳)
■トリロスタンで治療している副腎皮質機能亢進症の犬においてACTH刺激試験結果と臨床症状の関連
Association between ACTH stimulation test results and clinical signs in dogs with hyperadrenocorticism treated with trilostane
Vet J. 2021 Aug 17;276:105740.
doi: 10.1016/j.tvjl.2021.105740. Online ahead of print.
A Wehner 1, S Glöckner , B Weiss , D Ballhausen , C Stockhaus , Y Zablotski , K Hartmann

副腎皮質機能亢進症(HAC)の犬に対し、トリロスタンは推奨される薬剤治療である。

この研究の目的は、トリロスタンで治療している犬において、ACTH刺激試験(ACTHST)と関連する臨床症状の間の関係を調査することだった。

5-反応カテゴリー評点スケールを基に、多渇、多尿、多食、パンティングのオーナーの評価、治療への満足度を含む疾患特異のアンケートを開発した。

HACの犬49頭を前向きに登録した。犬は、再検査の予約に従いグループ分けした(最初の再検査、治療開始あるいはトリロスタン用量変更後710日目;2度目の再検査、最初の再検査から4週間後;3回目の再検査、犬が良くコントロールされた場合3-6か月間隔で実施した)。再検査の予約時、オーナーのアンケートの回答を記録し、ACTHSTを実施し、尿比重測定も行った。3回の再検査のタイムポイントでの違いを評価し、ACTHST結果と臨床症状の間の潜在的関連を調べるため、線形混合効果モデルを使用した。

再検査間の有意差は、刺激後のコルチゾール(1回目と3回目、P<0.001;2回目と3回目、P<0.01)、多渇(1回目と2回目、P=0.001)、多尿(1回目と2回目、P<0.001;1回目と3回目、P=0.001)、オーナーの満足度(1回目と2回目、P<0.001;1回目と3回目、P<0.001)で認められた。Backward stepwise variable elimination法で、ACTHST結果と臨床症状の間に有意な関連は全く確認されなかった。

ゆえに、HACの臨床症状は、ACTHST結果を基に予測されなかった。(Sato訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬48頭のトリロスタンによる治療後の医原性副腎皮質機能低下症の評価
Evaluation of Iatrogenic Hypocortisolemia Following Trilostane Therapy in 48 Dogs with Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
J Am Anim Hosp Assoc. 2021 Aug 9.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7076. Online ahead of print.
Elizabeth Appleman, Abigail Schrage, Kenneth E Lamb, Cathy Langston

この研究の目的は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症に対し、トリロスタンの投与を受けている犬48頭において、医原性副腎皮質機能低下症(iHC)の診断後、その臨床的進行を述べる。

コルチゾール濃度は、76.3%の犬(95%CI59.8-88.6%)でiHCの診断後、6か月以内に≧1.5μg/dLだった。研究完了時、25%の犬(95%CI13.6-39.6%)は、グルココルチコイドあるいはミネラルコルチコイドまたはその両方の投与を受けていた;42%の犬(95%CI27.6-56.8%)は副腎に関連する薬剤の投与はなし;残りの33%の犬(95%CI20.4-48.4%)はトリロスタンの投与を受けていた。

iHCの診断後、副腎の開腹に影響すると認められた患犬、臨床病理、あるいはトリロスタン関連因子はなく、この集団で臨床的進行を予測するのは困難なままである。(Sato訳)
■自然発生の副腎皮質機能亢進症と新規に診断された犬のカルシウムとリンの恒常性
Calcium and phosphate homeostasis in dogs with newly diagnosed naturally occurring hypercortisolism
J Vet Intern Med. 2021 May 15.
doi: 10.1111/jvim.16143. Online ahead of print.
Andrea Corsini , Francesco Dondi , Daria G Serio , Silvia Zamagni , Stefania Golinelli , Mercedes Fernandez , Federico Fracassi

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背景:犬の副腎皮質機能亢進症は、カルシウムとリンの代謝に影響を及ぼす;しかし、正確なメカニズムは完全に分かっていない。

目的:自然発生の副腎皮質機能亢進症(NOHC)の犬と健康な犬の全パラソルモン(wPTH)、25-ヒドロキシビタミンD(25-(OH)D)、カルシトリオール、線維芽細胞成長因子-23の血中濃度を評価し、カルシウムとリンの恒常性とそれらの関係を評価する

動物:NOHCの飼育犬23頭と健康な飼育犬あるいはスタッフが飼育している犬12頭

方法:前向き横断研究。総カルシウム、イオン化カルシウム(iCa)、リン、wPTH、25-(OH)D、カルシトリオールの循環血中濃度とFGF-23およびリン(FEP)およびカルシウム(FECa)の尿中分画排泄率を、治療前のNOHCの犬と健康犬で比較した。

結果:コントロールと比べ、NOHCの犬の平均血清リン濃度(4.81 mg/dL, SD ± 0.71 vs 3.86 mg/dL, SD ± 0.60; P < .001)、FECa中央値(0.43%, range, 0.03-2.44 vs 0.15%, range, 0.06-0.35; P = .005)、血清wPTH濃度中央値(54.6 pg/mL, range, 23.7-490 vs 24.6 pg/mL, range, 5.5-56.4; P = .003)は高かった。総カルシウム、iCa、カルシトリオール、FEPの循環濃度に群間の違いはなかったが、コントロールと比べNOHCの犬の血清25-(OH)D濃度は低かった(70.2 pg/mL, SD ± 42.3 vs 106.3 pg/mL, SD ± 35.3; P = .02)。コントロールと比べNOHCの犬の血漿FGF-23濃度は低かった(316.6 pg/mL, range, 120.8-575.6 vs 448.7 pg/mL, range, 244.8-753; P = .03)。

結論と臨床的重要性:カルシウムの尿中喪失と高燐血症は、副腎性二次的上皮小体機能亢進症による可能性があった。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能低下症の低用量ピバル酸デスオキシコルチコステロン療法:無作為対照臨床試験
Low-dose desoxycorticosterone pivalate treatment of hypoadrenocorticism in dogs: A randomized controlled clinical trial
J Vet Intern Med. 2021 Jun 10.
doi: 10.1111/jvim.16195. Online ahead of print.
Alysha M Vincent , Linda K Okonkowski , Jean M Brudvig , Kent R Refsal , Nora Berghoff , N Bari Olivier , Daniel K Langlois

Free article

背景:原発性副腎皮質機能低下症(HA)の犬に対し、ピバル酸デスオキシコルチコステロン(DOCP)は一般的に使用されるミネラルコルチコイド補充剤の1つだが、メーカーが推奨する投薬プロトコールは、コストが高い可能性がある。最近の報告もラベルに記載される投薬プロトコールは高額になる可能性があると懸念されている。

目的:原発性グルココルチコイドおよびミネラルコルチコイド欠乏HAの犬において、2つのDOCPの用量の相対的効果と副作用を調査する

動物:テスト集団19頭とコントロール18頭の37頭の犬

方法:無作為化対照二重盲検臨床試験。新規に診断された原発性HAの犬を、標準(2.2mg/kg q30日、コントロール集団)あるいは低用量(1.1mg/kg q30日、テスト集団)DOCP療法に振り分けた。臨床および検査変数は、90日間の各DOCP療法後10-14日および約30日で評価した。

結果:再評価時、平均血清ナトリウムカリウム比は、両集団で研究を通して≧32だった。治療を必要とする電解質異常を発症した犬はいなかったが、コントロール9頭、テスト集団の犬6頭において少なくとも1回は低カリウム血症が発生した。コントロール犬(1.022、1.016-1.029)の尿比重(中央値、四分位数間領域)は、テスト集団(1.033、1.023-1.039;P=.006)よりも低かった。血漿レニン活性はコントロール犬で104回の評価中84回(80.8%)が明らかに抑制されていたが、テスト集団の112回の評価中23回(20.5%)でレニン活性の上昇が起こった。

結論と臨床的重要性:低用量DOCPプロトコールは、ほとんどの犬のHAの治療に対し安全で効果的だと思われる。標準用量プロトコールは、生化学的な過剰治療のエビデンスを起こす可能性がより高い。(Sato訳)
■イギリスの一次動物病院の犬の副腎皮質機能低下症:頻度、臨床アプローチ、リスク因子
Hypoadrenocorticism in dogs under UK primary veterinary care: frequency, clinical approaches and risk factors
J Small Anim Pract. 2021 Feb 8.
doi: 10.1111/jsap.13285. Online ahead of print.
I Schofield , V Woolhead , A Johnson , D C Brodbelt , D B Church , D G O'Neill

目的:イギリスの一次動物病院における犬において、副腎皮質機能低下症の発生頻度、臨床アプローチ、リスク因子を評価する

素材と方法:イギリスの副腎皮質機能低下症と診断された犬を、UK VetCompass™ programmeから匿名の電子患者記録を検索することで確認した。既存の症例と2016年に新しく診断された症例を含めた。さらに症例を、電子患者記録に記録された情報を基に、副腎皮質機能低下症の検査所で確認された診断あるいは仮診断でサブカテゴリーに分類した。記述データは手動で抽出した。個体群統計リスク因子の確認に多変量ロジスティック回帰法を使用した。

結果:2016年に905543頭から177頭の副腎皮質機能低下症の症例を確認した;72頭は検査所で確認、105頭は仮診断。全ての犬において、副腎皮質機能低下症の1年間の有病率は0.06%(95%信頼区間:0.05-0.07%)だった。検査所確認犬において一般的に呈する臨床症状は、元気消失(51/66、77.3%)、食欲不振(48/66、66.7%)、嘔吐(48/66、66.7%)だった。高カリウム血症は47/53(88.7%)、低ナトリウム血症は53/46(86.8%)で報告された。ナトリウム:カリウム比の中央値は19.00(四分位数間領域16.20-20.60)だった。犬種、年齢、不妊状況、保険状況は、検査所で副腎皮質機能低下症の確認診断と関係した。多変量モデルにおいて性別と副腎皮質機能低下症の関連は見られなかった。雑種犬に比べ、スタンダードプードルは副腎皮質機能低下症のオッズが51.38倍(95%CI:14.49-182.18)だった。ラブラドゥードルおよびウエストハイランドホワイトテリアもオッズが上昇していた。

臨床意義:これはイギリスの一次動物病院集団内の犬における副腎皮質機能低下症を報告する最初の疫学的研究である。それらは一時診療において、副腎皮質機能低下症に関連する現行の獣医活動のベンチマークデータを提供する。(Sato訳)
■臨床的に健康な犬と副腎皮質機能亢進症の犬の副腎の大きさの超音波評価
Ultrasound evaluation of adrenal gland size in clinically healthy dogs and in dogs with hyperadrenocorticism
Vet Rec. 2021 Apr;188(8):e80.
doi: 10.1002/vetr.80. Epub 2021 Jan 28.
Carlos Melián , Laura Pérez-López , Pedro Saavedra , Antonio G Ravelo-García , Yaiza Santos , José Raduan Jaber

背景:副腎皮質機能亢進症(HAC)の犬の副腎腫大の検出に、副腎の厚さの正確な参照範囲が必要である

方法:86頭の臨床的に健康な犬を前向きに含め、91頭の無治療のHACの犬を回顧的に評価した。背-腹副腎厚を矢状面で超音波検査により測定した。犬を4つの体重カテゴリーに振り分け、また、HACの犬は、超音波検査で下垂体依存性HAC(PDH)、副腎依存性HAC(FAT)、あいまいな副腎非対称(EAA)、正常な副腎厚に分類した。

結果:臨床的に健康な犬の左副腎の上限は、5.1mm(≧2.5-5kg)、5.5mm(>5-10kg)、6.4mm(>10-20kg)、7.3mm(>20-40kg)で、右副腎の上限は5.3mm(≧2.5-5kg)、6.8mm(>5-10kg)、7.5mm(>10-20kg)、8.7mm(>20-40kg)だった。HACの犬の副腎腫大の検出に対する超音波検査の感受性は95.6%だった。HACの多くの犬(56.0%)は、PDHかFATに一致した超音波所見があったが、EAAは一般にHACの犬の39.6%にみられている。

結論:HACの犬の副腎腫大を検出する超音波検査の感受性は、4つの体重カテゴリーを用いた時に高い。EAAはHACの犬で一般的である。(Sato訳)
■下垂体依存性の副腎皮質機能亢進症をトリロスタンで治療中の最初の年の収縮期血圧の変化
Changes in systolic blood pressure in dogs with pituitary dependent hyperadrenocorticism during the first year of trilostane treatment
J Vet Intern Med. 2020 Dec 4.
doi: 10.1111/jvim.15978. Online ahead of print.
Paula García San José , Carolina Arenas Bermejo , Daniel Alonso-Miguel , Irene Clares Moral , Pedro Cuesta-Alvaro , María Dolores Pérez Alenza

背景:副腎皮質機能亢進症の犬やヒトで、全身性高血圧(SH)は一般的で、治療後も持続する可能性がある。

目的:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬において、トリロスタン治療の初年中、SHの有病率と収縮期血圧(SBP)の変化を評価することと、疾患コントロールと選択した検査変数および抗高血圧治療への反応の関連を評価する

動物:トリロスタンを12時間おきに投与しているPDHの犬51頭

方法:前向きケースシリーズ研究。診断時(T0)、1、3、6、12か月(T12)目に評価した。犬は非高血圧(SBP<160mmHg)、高血圧(SBP>160mmHg)に分類し、標的器官障害(TOD)リスクにより下位分類した。高血圧の犬はベナゼプリルで治療し、コントロールできない場合、アムロジピンを追加した。

結果:SHの有病率はT0(36/51) からT12(17/37;P=0.01)で減少した。研究中のSBPの変化は、T0時点のTODのリスクに影響を受けた。重度高血圧(SBP≧180mmHg)の犬において、SBPの低下はより顕著だったが、正常血圧(SBP<140mmHg)の犬のSBPはわずかに上昇した(P=0.00)。血圧は疾患のコントロールに関係しなかった。抗高血圧治療は31/51頭に必要で、13/31頭はSHのコントロールにアムロジピンの追加が必要だった。T0時に高血圧ではなかった犬の1/3はフォローアップ中に発生したSHのためにベナゼプリルの治療が必要だった。

結論と臨床的重要性:PDHの犬において、疾患のコントロールあるいは診断時のSBPに関係なく、SBPは来院ごとに測定すべきである。罹患犬でSHの管理に1つ以上の薬剤が必要になるかもしれない。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症の診断のための副腎機能検査の個々の構成の診断的貢献度
Diagnostic contribution of individual components of adrenal function tests to diagnose canine hyperadrenocorticism
Vet J. 2020 Sep;263:105520.
doi: 10.1016/j.tvjl.2020.105520. Epub 2020 Aug 2.
J A Jaffey , R S Hess , C R Webster , S L Blois , E T Hostnik , R M Heilmann , C Jacobs , J M Steiner , C E Reusch , E Rogers , A Royal , T Piech , C Musella , L Carvalho , M J Fink , G E Motta , S N Kilkucki , A Cigarro , F S Roedler , T Seidel , A E DeClue

ACTH刺激試験(ACTHST)と血清基礎コルチゾール(BC)、ACTH刺激後のコルチゾール(PC)とBCの差(ΔACTHC)、デキサメサゾン投与から4時間後のコルチゾール濃度(4HC)、4HCとBCの差(Δ4C)、デキサメサゾン投与から8時間後のコルチゾール濃度と4HCの差(Δ8C)を含む低用量デキサメサゾン抑制試験(LDDST)の重要なコンポーネントの価値に関する情報は限られている。

ゆえに、この研究の目的は、それらのコンポーネントが副腎皮質機能亢進症、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)、機能的副腎腫瘍(FAT)を予測できるかどうかを判定することだった。

コルチゾール濃度はPC参照範囲上限に倍率変化(FC)として正常化した。

合計1267頭を含め、副腎皮質機能亢進症と診断されたのは537頭(PDH、n=356;FAT、n=28;判定できず、n=153)、除外されたのは730頭だった。

副腎皮質機能亢進症を予測するBC、ΔACTHC、4HC、Δ4C、Δ8Cに対する受信者動作曲線下面積は、それぞれ0.76(95%CI、0.73-0.79)、0.91(95%CI、0.89-0.93)、0.83(95%CI、0.80-0.87)、0.55(95%CI、0.50-0.60)、0.67(95%CI、0.62-0.72)だった。

ACTHST陽性の犬において、FATを予測するのにΔACTHCに対する≧0.78FCの診断限界は優れた感受性(1.00;95%CI、0.74-1.00)だが、特異性は低かった(0.67;95%CI、0.64-0.71)。

LDDST陽性の犬において、FATを予測するのにΔ4Cに対する≧-0.26FCの診断限界は優れた感受性(1.00;95%CI、0.79-1.00)だが、特異性は低かった(0.21;95%CI、0.18-0.26)。

ACTHSTあるいはLDDSTの結果が陽性の副腎皮質機能亢進症の犬において、ΔACTHあるいはΔ4CはそれぞれFATの除外に使用できた。(Sato訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬におけるトリロスタン治療の検査所評価
Laboratory Assessment of Trilostane Treatment in Dogs With Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
J Vet Intern Med. 2020 Jun 13. doi: 10.1111/jvim.15830. Online ahead of print.
Carolina Arenas Bermejo , Dolores Pérez Alenza , Paula García San José , Lidia Llauet , Laura Pérez-López , Carlos Melián , Edward C Feldman

背景:ACTH刺激試験(ACTHst)、トリロスタン投与前後の血清コルチゾール濃度(SCCs)、尿濃度(尿比重(USG))、尿中コルチゾール:クレアチニン比(UCCRs)の結果は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬のトリロスタン治療のモニターに一般的に使用される変数である。しかし、適切投与量(A)を投与されている犬と、過剰投与(O)、過少投与(U)の犬を一貫して判別するものはない。

目的:トリロスタンで治療しているPDHの犬の1集団において、連続SCCsを含む推奨されるモニタリング変数を評価および比較する

動物:個人的に飼育されているPDHの犬(n=22)と3頭の健康な犬(コントロール)

方法:前向き多施設2-日研究。”a”日目(無作為化):ACTHstを完了した。”b”日目(>2から<7日後):SCCsをトリロスタン投与前0.5時間、直前そして投与から1、2、2.5、3、3.5、4、6、8、12時間目に評価した。最初の研究日、家で採取した尿でUSG、UCCRを評価し、PDHに関するオーナーの意見をA(臨床症状解消)、U(依然徴候あり)、あるいは体調悪い(Oの可能性)として分類した。

結果:評価の27ペアで、7頭はA、19頭はU、1頭はOの可能性(研究から除外)として分類された。いずれのタイムポイントでも、AとUのSCC結果にオーバーラップがあった。USG、UCCR、ACTHstの結果で、AとUの犬を判別できなかった。トリロスタンは投与から1時間以内にSCCを抑制し、その作用持続時間はほとんどの犬で8時間未満だった。

結論と臨床的重要性:PDHに対し、トリロスタンで治療中、単一の変数あるいは変数のグループで確実にAの犬とUの犬を判別するものはなかった。(Sato訳)
■クッシング症候群-21281頭の犬の集団を基にした一疫学研究
Cushing's syndrome-an epidemiological study based on a canine population of 21,281 dogs.
Open Vet J. April 2019;9(1):27-32.
DOI: 10.4314/ovj.v9i1.5
Gaia Carotenuto , Eleonora Malerba , Costanza Dolfini , Francesca Brugnoli , Pasquale Giannuzzi , Giovanni Semprini , Paolo Tosolini , Federico Fracassi

自発副腎皮質機能亢進症(HC)の疫学特性を、4件の個人動物病院と1件の内分泌に対する大学依頼センターから選出した21281頭の飼育犬から導いた。

HC発生リスクと犬種、性別、性的状態との関連を調査するため、オッズ比(OR)法を使用した。

4か所の個人動物病院のHCの推定有病率は0.20%(95%CI、0.13-0.27)で、大学依頼センターとは有意差があった(1.46%;95%CI、1.12-1.80)。性別、犬種、年齢はHCに対するリスクファクターだった。HCの犬に対する平均年齢(±SD)は9.8歳(±2.5)歳だった。メスはオスよりもHCに対するリスクが高かった(OR1.85;95%CI、1.24-2.75);全ての不妊済みの犬(オスとメス両方)は、未処置の犬よりもリスクが高かった(OR2.54;95%CI、1.72-3.73);不妊済みのメスは未処置のメスよりもリスクが高かった(OR2.61;95%CI、1.54-4.42)。コントロール集団として雑種犬(OR=1)を用いた時、HC発生のリスクは、スタンダードシュナウザー(OR58.1;P<0.0001)とフォックステリア(OR20.33;P<0.0001)で有意に高かった。

HCに関してこの研究は、全体の有病率が0.20%と確認した。このデータは性素因と不妊済みのメス犬に対し最も高いリスクが存在することを支持する。
■自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬の尿路感染:頻度、症状、関与病原
Urinary Tract Infections in Dogs With Spontaneous Hypercortisolism - Frequency, Symptoms and Involved Pathogens
Schweiz Arch Tierheilkd. 2020 Jul;162(7):439-450.
doi: 10.17236/sat00265.
P Dupont , W Burkhardt , F Boretti , B Riond , C Reusch , B Willi , N Sieber-Ruckstuhl

副腎皮質機能亢進症の犬は、膀胱炎の臨床症状を伴う、あるいは伴わない(潜在性細菌尿)細菌尿を発症する傾向がある。

現行のガイドラインを基に、治療が結果を改善するというエビデンスがなく、不必要な治療は避けるべきという理由で、潜在的細菌尿の犬は治療すべきではない。それらのガイドラインが2019年に発表される以前、副腎皮質機能亢進症と細菌尿の犬は、臨床症状にかかわらず抗生物質で一般的に治療した。副腎皮質機能亢進症の犬の細菌性膀胱炎、潜在的細菌尿の頻度、抗生物質療法の結果に対する包括的データは乏しい。

この研究の目的は、細菌性膀胱炎および潜在的細菌尿の存在に対して副腎皮質機能亢進症の犬を調査することと、関与する病原を調べること、抗生物質療法の結果を評価することだった。

2005年から2015年の間に、尿の細菌培養が入手でき、副腎皮質機能亢進症と新規に診断された犬を含めた。統計解析は、ノンパラメトリックテストで実施した。

含めた161頭の飼育犬のうち、29頭(18%)は細菌尿を示し、そのうち24頭(83%)は潜在性だった。一番多く分離された病原はE.coliだった(58%)。細菌尿は性別や不妊状況に関係しなかった。14頭でフォローアップのデータが得られ、13頭(93%)が抗生物質で14から28日間治療された。フォローアップの細菌培養(治療中止後1-118日)は、10頭(77%)の治療した犬で陰性だった;陰性のフォローアップの培養は、性別、年齢、治療期間に関係しなかった。細菌尿は、3頭の治療した犬および1頭の無治療の犬で持続した。

副腎皮質機能亢進症の犬の細菌性尿培養陽性の有病率は、過去に報告されたものより低かった。ほとんどの犬で、細菌尿は潜在性だった。多くの犬は抗生物質療法後に細菌培養結果は陰性だった;しかし、持続的陽性尿でより多くの耐性細菌が検出された。(Sato訳)
■自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬において全身性高血圧の有病率と関係するリスク因子
Prevalence and Risk Factors Associated With Systemic Hypertension in Dogs With Spontaneous Hyperadrenocorticism
J Vet Intern Med. 2020 Jul 2.
doi: 10.1111/jvim.15841. Online ahead of print.
Paula García San José , Carolina Arenas Bermejo , Irene Clares Moral , Pedro Cuesta Alvaro , María Dolores Pérez Alenza

背景:全身性高血圧(SH)は副腎皮質機能亢進症(HAC)の犬でよく見られるが、その有病率はリスク因子を評価す誰研究は多くない。

目的:HACの犬においてSHの有病率と重症度を調べ、潜在的リスク因子を確認するため臨床および検査所見とその関係を判定する

動物:自然発生のHACの66頭の飼育犬

方法:回顧的横断研究。HACの犬の医療記録を再検討した。収縮期血圧(SBP)をドップラー超音波検査で測定した。臨床症状、身体検査所見、臨床病理データ(CBC、血性生化学および電解質、尿検査および尿培養、副腎機能検査)を解析するために再調査した。

結果:SH(≧150mmHg)の有病率は82%(54/66)で、重度SH(≧180mmHg)の有病率は46%(30/66)だった。血小板増多症の全ての犬は、SHで(P=0.002)、血小板数≧43万8千/μLは、SHの予測にあたり特異性100%、感受性61.1%だった(AUC=0.802、P=0.001)。カリウム濃度中央値は、正常血圧犬(4.5 mEq/L, range 4.0-5.0 mEq/L)よりも高血圧犬(4.1 mEq/L, range 3.1-5.4 mEq/L)でより低かった(P=0.007)。UPC≧0.5の犬は、タンパク尿がない犬よりもSBP中央値がより高かった(P=0.03)。糖尿病を併発した犬は、SHのリスクが低下しているように見えた(OR=0.118、95%CI=0.022-0.626、P=0.02)。

結論と臨床的重要性:全身性高血圧はHACの犬でよく見られ、重度の犬も多い。それらの犬、特に血小板増多症、タンパク尿あるいは低カリウム濃度が見られる場合、定期的に血圧を評価すべきである。(Sato訳)
■犬のトリロスタン使用のアップデート
Update on the use of trilostane in dogs.
Can Vet J. April 2018;59(4):397-407.
Julie Lemetayer , Shauna Blois

ここ数年に発表された多くの文献は、犬のトリロスタン脂溶のより良い理解に寄与している。トリロスタンは3β-ヒドロキシステロイド デヒドロゲナーゼ競合的阻害剤で、その酵素はコルチゾールと全ての他のステロイドの合成に必須である。

トリロスタンは下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(HAC)、副腎依存性HAC、アロペシアXの治療に安全で有効だと報告されている。トリロスタンはHACに関する臨床症状の多くをコントロールする一方で、高血圧、凝固亢進、蛋白尿のような異常が治療にかかわらず持続するかもしれない。

トリロスタン投与後のコルチゾール抑制の持続時間は12時間以下のことが多いため、HACの多くの犬は、12時間毎の低用量トリロスタン投与が良い。トリロスタンに関する多くの議論がまだ存在する。

この概説はトリロスタンの適応、作用様式、用量、モニタリング、効果と副作用に対する包括的論評を提供する。(Sato訳)
■犬の非定型クッシング症候群の診断に対する延長低用量デキサメサゾン抑制試験
Extended low-dose dexamethasone suppression test for diagnosis of atypical Cushing's syndrome in dogs.
Domest Anim Endocrinol. July 2017;60(0):25-30.
K M Fowler , L A Frank , F Morandi , J C Whittemore

この研究の目的は、非定型副腎皮質機能亢進症(atypical hyperadrenocorticism:AHAC)に関係して起こり得る高コルチゾール血症を検出するため、8時間から12時間へ延長した低用量デキサメサゾン抑制(low-dose dexamethasone suppression:LDDS)試験を評価することだった。

12頭の飼育犬を研究に登録した:健康犬6頭(グループ1)とAHACが疑われる犬6頭(グループ2)。免疫放射定量分析を用い、内因性ACTH測定のための基礎EDTA血漿サンプルを採取した。化学発光法でのコルチゾール濃度測定に対し、0.01mg/kgデキサメサゾンIV投与前と、投与後4、8、10、12時間目に血清サンプルを採取した。

内因性ACTH平均濃度はグループ間で違いがなかった(グループ1:22.4pg/mL、グループ2:20.0pg/mL;P>0.2)。基礎コルチゾール平均濃度もグループ間で有意差はなく(グループ1:3.03μg/dL、グループ2:4.95μg/dL;P>0.2)、他の全てのタイムポイントでもグループ間のコルチゾール平均濃度に有意差はなかった(P>0.2)。グループ2の1頭のコルチゾール濃度はデキサメサゾン後8時間目に0.7μg/dLに抑制されたが、10時間目に1.5μg/dL、12時間目に3.7μg/dLに上昇した。

この研究の結果を基に、延長したLDDS検査の使用で健康犬とAHACの犬の鑑別はできなかった。AHACの診断は、新しい検査方法が確認されるまで、従来の確立された基準を基に続けるべきである。(Sato訳)
■犬の画像検査で診断した下垂体腫瘍に対する定位放射線療法の長期生存性
Long-term survival with stereotactic radiotherapy for imaging-diagnosed pituitary tumors in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2018 Dec 21. doi: 10.1111/vru.12708. [Epub ahead of print]
Hansen KS, Zwingenberger AL, Theon AP, Kent MS.

下垂体腫瘍の犬に対する定位放射線療法の使用に対して発表された研究は限られている。

この回顧的観察研究で、画像診断された下垂体腫瘍の犬45頭に対し、定位放射線療法の結果を述べる。
全ての犬は2009年12月から2015年12月の期間に1病院で治療された。定位放射線療法は、1回の15グレイ(Gy)あるいは3回の8Gy 照射で行われた。

分析時、41頭の犬は死亡していた。4頭は生存しており、全ての生存分析から外した;1頭は8Gyを隔日で照射され、プロトコール分析から除外した。

最初の治療から総生存期間中央値は311日(95%信頼区間226-410日(範囲1-2134日))だった。32頭の犬は15Gyを照射され(総生存期間中央値311日、95%信頼区間(範囲221-427日))、12頭は3日連続で合計24Gy照射された(総生存期間中央値245日、95%信頼区間(範囲2-626日))。29頭の犬は副腎皮質機能亢進症(総生存期間中央値245日)だったが、16頭は非機能性マス(総生存期間中央値626日)だった。

臨床的改善は45頭中37頭で報告された。定位放射線療法の4か月以内の急性障害と思われる症状は、45頭中10頭で認められ、多くは自然に、またはステロイドで改善した。腫瘍進行に対し晩期障害は認められなかったが、治療後の失明(2)、高ナトリウム血症(2)、進行性の神経症状(31)が報告された。異なるプロトコールでの総生存期間中央値において統計学的な差はなかった。非機能性マスの犬は、副腎皮質機能亢進症の犬よりも総生存期間中央値が長かった(P=0.0003)。

定位放射線療法の生存性の結果は、特に副腎皮質機能亢進症の犬に対する根治的放射線療法において過去に報告されたものより短かった。(Sato訳)
■トリロスタンで治療した犬の副腎皮質機能低下症の発生率とリスクファクター
Incidence and risk factors for hypoadrenocorticism in dogs treated with trilostane.
Language: English
Vet J. December 2017;230(0):24-29.
J B King , J M Morton

この研究の目的は、トリロスタンによる治療に関係する副腎皮質機能低下症の発生と永続性を述べることと、副腎皮質機能低下症に対して可能性のあるリスクファクターを評価することだった。

副腎皮質機能亢進症と診断後、トリロスタンで治療した156頭の犬に対する症例記録を用いて、回顧的コホート研究を行った。

副腎皮質機能低下症の発生は、一時的、あるいは永続的と分類した。トリロスタンの治療開始後、副腎皮質機能低下症の推定累積発生率は2年で15%、4.3年で26%だった。影響を受けた研究犬19頭中14頭(74%)の副腎皮質機能低下症の発生は一時的だった。副腎皮質機能低下症のリスクはトリロスタン用量と有意な関連はなく、他の評価した潜在的リスクファクターは、副腎皮質機能低下症のサブハザードと有意な関連はなかったが、ほとんどの効果推定は不正確だった。

結論として、トリロスタンで治療している約15%の犬は、治療から最初の2年以内に副腎皮質機能低下症を発症し、4年で約四分の一の犬が影響を受けるようになった。しかし、副腎皮質機能低下症の最初の発生は、大部分が一時的だった。研究した用量の範囲で、トリロスタンの用量が各1mg/kg/day増加で最大でも副腎皮質機能低下症発症リスクはわずかに増加しただけだった。(Sato訳)
■臨床的に正常な犬の基礎コルチゾール濃度に対する聴覚刺激の影響
Impact of an auditory stimulus on baseline cortisol concentrations in clinically normal dogs.
Domest Anim Endocrinol. 2018 Mar 19;64:66-69. doi: 10.1016/j.domaniend.2018.03.002. [Epub ahead of print]
Gin TE, Puchot ML, Cook AK.

基礎コルチゾール濃度は、副腎皮質機能低下症(hypoadrenocorticism:HOC)の犬のスクリーニングでルーチンに使用される;そのあとにこの診断はACTH刺激試験で確認するべきである。基礎コルチゾール濃度が55nmol/l(2μg/dl)以下の時は、HOCに高い感受性を示すが特異性はなく、偽陽性率は>20%である。ゆえに、非副腎疾患の多くの犬は不必要な追加検査を強いられる。

サンプル採取前に不愉快な聴覚刺激を与えることがコルチゾール産生の引き金となることで、非副腎疾患の犬の基礎コルチゾール測定値の特異性が改善するだろうという仮説を立てた。

年齢中央値4歳(範囲2-9歳)、体重中央値20kg(範囲10-27kg)の28頭の健康な飼育犬を研究した。短期作用、あるいは長期作用のグルココルチコイドをそれぞれ30日、90日以内に投与されている犬は不適格とした。犬は無作為にグループ1(コントロール;ノイズなし;n=7)、グループ2(短時間のノイズ;n=10)、グループ3(長時間のノイズ;n=11)に振り分けた。各犬とオーナーには約15分間隔離エリアに入ってもらった。グループ1は動物病院のバックグラウンドの音のみ暴露され、比較的静かに座っていた。グループ2は最初の3分間、隣接する玄関のwet-dry掃除機の音を聞かせた。グループ3はこの時間中、無作為の突発的なwet-dry掃除機のノイズを聞かせた。試験終了時、各犬を隣の検査ルームに誘導し、採血した。サンプルは15分以内に処理した;血清はコルチゾール濃度測定前に-80℃で冷凍した。

血清コルチゾール濃度の中央値と結果が<55nmol/lの犬の比率は3グループで同様だった。
以上から、明らかに正常な副腎機能の犬において、wet-dry掃除機の騒音が一貫して基礎血清コルチゾール濃度を55nmol/l以上に押し上げるというこの仮説は却下された。(Sato訳)
■紹介集団におけるグレートピレニーズの副腎皮質機能低下症の有病率と臨床特性:11症例
Prevalence and clinical features of hypoadrenocorticism in Great Pyrenees dogs in a referred population: 11 cases.
Language: English
Can Vet J. October 2017;58(10):1093-1099.
Magali Decome , Marie-Claude Blais

犬の集団において自然発生の副腎皮質機能低下症(アジソン病)は珍しく、有病率は0.06%から0.28%の間と算出される。
この回顧的研究は、2005年3月から2014年10月の間にモントリオール大学のCentre Hospitalier Universitaire Veterinaireを受診したグレートピレニーズ(GP)における副腎皮質機能低下症の有病率と臨床特性を評価した。

この期間中、100頭の犬が副腎皮質機能低下症と診断され、研究した犬集団の0.38%(95%信頼区間(CI):0.26%-0.5%)に相当した。最も高い有病率はGP(9.73%、95%CI:9.12%-10.35%、P<0.0001)で、続いてウエストハイランドホワイトテリア(4.66%、95%CI:4.24%-5.09%、P<0.0001)、グレートデーン(1.87%、95%CI:1.6%-2.14%、P<0.0001)、スタンダードプードル(1.76%、95%CI:1.5%-2.02%、P=0.0001)、セントバーナード(1.72%、95%CI:1.47%-1.98%、P=0.018)、ジャックラッセルテリア(1.48%、95%CI:1.24%-1.72%、P=0.003)だった。

ほとんどの臨床特性は非特異性のものだったが、グレートピレニーズは他の犬種と比べて貧血、高窒素血症、好酸球増加、あるいは、加えて低血圧、悪液質を呈する頻度が高かった。(Sato訳)
■猫の副腎皮質機能亢進症の特性:診断と治療のアップデート
Peculiarities of feline hyperadrenocorticism: Update on diagnosis and treatment.
Language: English
J Feline Med Surg. September 2017;19(9):933-947.
Lara A Boland , Vanessa R Barrs

実際的関連:老齢猫における副腎皮質機能亢進症(hyperadrenocorticism:HAC)は比較的まれな内分泌障害で、診断時の平均年齢は10歳である。下垂体依存および副腎依存副腎皮質機能亢進症に加え、HACの臨床症状は性ステロイド産生性副腎腫瘍からも起こり得る。

臨床的挑戦:猫のHACは犬のHACに多くの類似点があるが、症状、診断、治療に対する反応に重要な違いがある。全てではないがほとんどのHACの猫は、糖尿病を併発しており、インスリン抵抗性のことも多い。HACの1/3の猫は極度に皮膚が脆弱で、診断や治療処置中に医原的に弱くなった皮膚が裂けるリスクが高い。コルチゾール誘発性免疫抑制に続発する皮膚、爪床、尿路、気道、消化管の感染も一般的である。

猫は副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験やデキサメサゾン抑制試験を含む副腎機能検査で犬と異なる反応を示す;猫のHACのスクリーニングではデキサメサゾンの10倍量が推奨される。

根治的治療オプションは副腎切除、あるいは経蝶形骨性下垂体切除である。放射線あるいは薬物治療は臨床症状を改善するかもしれない。ミトタン投与への反応は悪い。回顧的研究を基にトリロスタンは選択される薬物治療であるが、猫でこの薬剤の薬物動態の調査は欠如している。

世界的重要性:猫のHACは世界中で起こり、どの品種の猫の素因も関係しない。あまりないが、性ステロイド産生副腎腫瘍は、犬よりも猫で高い有病率を示す。

EVIDENCE BASE:この概要の情報は、猫HACの180以上の報告症例から作成している。臨床症状、臨床病理所見、治療結果を調査する報告は、観察、回顧的マルチプルケースシリーズ(EBMグレードIII)あるいは単体症例報告(EBMグレードIV)である。診断に対するほとんどの内分泌検査研究は、コホート管理下解析研究(EBMグレードIII)であるが、前向き無作為化プラセボ対照研究は実施されている(EBMグレードI)。(Sato訳)
■2009年から2014年にイギリスの一次診療動物病院に通院した210824頭の犬の中で副腎皮質機能亢進症の疫学
Epidemiology of hyperadrenocorticism among 210,824 dogs attending primary-care veterinary practices in the UK from 2009 to 2014.
J Small Anim Pract. July 2016;57(7):365-73.
D G O'Neill , C Scudder , J M Faire , D B Church , P D McGreevy , P C Thomson , D C Brodbelt

目的:イギリスで2009年から2014年の間に、一次診療の動物病院を訪れた犬の中で副腎皮質機能亢進症の診断に対し、有病率とリスクファクターを求めた。

方法:イギリスの一次診療動物病院が参加するVetCompassプログラムから非特定化された動物の電子記録を検索して症例を確認した。

結果:犬で副腎皮質機能亢進症の診断に対し算出された有病率は0.28%(95%信頼区間:0.25-0.31)だった。多変量ロジスティック回帰解析で4つの関連リスクファクターが見つかった:犬種、犬種関連の体重、年齢、保険状況だった。雑種と比べ、ビションフリーゼは副腎皮質機能亢進症のオッズが6.5倍だった(95%CI:3.5-12.1、P<0.001)。体重が犬種平均以上の犬は、犬種平均以下の犬より副腎皮質機能亢進症のオッズが1.7倍だった(95%CI:1.3-2.3、P<0.001)。12歳以上の犬は6.0-8.9歳の犬と比べて副腎皮質機能亢進症のオッズが5.7倍だった(95%CI:3.7-8.7、P<0.001)。保険に入っている犬は、入っていない犬と比べて副腎皮質機能亢進症のオッズが4.0倍だった(95%CI:2.8-5.6、P<0.001)。

臨床意義:これはイギリスで副腎皮質機能亢進症と診断された犬の、二次診療ではない病院集団の最初の疫学的報告で、この疾患に関係する重要な犬種、年齢、体重を述べ、診断を改善し基礎病態生理の理解を向上させるかもしれない。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能亢進症のスクリーニング検査として尿中コルチゾール:クレアチニン比の評価
Evaluation of a urine cortisol:creatinine ratio as a screening test for hyperadrenocorticism in dogs.
J Vet Intern Med. 1993 May-Jun;7(3):163-8.
Smiley LE, Peterson ME.

著者らは正常な犬31頭、副腎皮質機能亢進症の犬25頭、副腎皮質機能亢進症が疑われるが、そうではない犬21頭、種々の重度非副腎疾患の犬28頭のサンプル尿を集めた。抜き取ったわけではない尿のコルチゾールとクレアチニンを、ラジオイムノアッセイと分光測定で測定し、各サンプルでコルチゾール:クレアチニン比を算出した。

副腎皮質機能亢進症の犬(103.1±100.7)の平均±尿コルチゾール:クレアチニン比は、正常犬(13.1±7.0)よりも有意に高かった(P<0.001)。当初副腎皮質機能亢進症があると疑われた犬(16.3±7.0)の平均尿コルチゾール:クレアチニン比は副腎皮質機能亢進症の犬よりも有意に低かった(P<0.001)が、正常犬と有意差はなかった。非副腎疾患の犬(82.8±97.7)の平均尿コルチゾール:クレアチニン比は、正常犬や当初副腎皮質機能亢進症が疑われた犬よりも有意に高かった(P<0.001)が、副腎皮質機能亢進症の犬の比率と違いはなかった。

副腎皮質機能亢進症に対する診断検査として、尿コルチゾール:クレアチニン比の感受性は0.92だった。特異性は正常犬(0.97)と当初副腎皮質機能亢進症が疑われた犬(0.95)で高く、偽陽性結果は5%以下だった。しかし、中程度から重度の非副腎疾患の犬(0.21)で特異性は非常に低く、偽陽性結果は79%だった。同様に、正常な犬と副腎皮質機能亢進症が疑われた犬で、陽性および陰性適中率、診断効果は高いが、非副腎疾患の犬は低かった。(Sato訳)
■犬の副腎皮質機能低下症の診断に対する基礎血清あるいは血漿コルチゾール濃度の評価
Evaluation of Basal Serum or Plasma Cortisol Concentrations for the Diagnosis of Hypoadrenocorticism in Dogs.
Language: English
J Vet Intern Med. November 2016;30(6):1798-1805.
A J Gold , D K Langlois , K R Refsal

背景:罹患犬の限られた頭数の過去の研究は、基礎コルチゾール濃度≦55nmol/L(2μg/dL)は、副腎皮質機能低下症の診断に対し感受性があるが非特異的であると示唆されている。基礎コルチゾール濃度の診断的有用性の詳細な評価が求められる。

仮説と目的:血清電解質異常のある犬と無い犬を含めた多頭の犬において、副腎皮質機能低下症の診断に対する基礎コルチゾール濃度の有用性を評価する

動物:副腎皮質機能低下症の犬163頭と、非副腎疾患の犬351頭およびあいまいな結果の犬8頭を含む522頭の犬

方法:回顧的研究。基礎およびACTH後コルチゾール濃度とナトリウム、カリウム濃度を医療記録から集めた。受信者操作特性(ROC)曲線を標準方法論で基礎コルチゾール濃度に対し作成した。感受性、特異性、適中率を種々のカットポイントで判定した。

結果:ROC曲線下面積は0.988で、血清電解質濃度にかかわらず同様に優秀だった。最も差別的なカットポイント22nmol/L(0.8μg/dL)で、感受性と特異性は96.9%と95.7%だった。基礎コルチゾール濃度≦55nmol/L(2μg/dL)の感受性は99.4%だった。逆に基礎コルチゾール濃度≦5.5nmol/L(0.19μg/dL)の特異性は99.1%だった。

結論と臨床意義:過去の研究所見と同じく、基礎コルチゾール濃度>55nmol/L(2μg/dL)は副腎皮質機能低下症の診断の除外に有効である。興味深いことに、優れた特異性と陽性適中率はより低いカットポイントのコルチゾール濃度で観察された。(Sato訳)
■犬の急性アジソン病の管理におけるヒドロコルチゾン
Hydrocortisone in the management of acute hypoadrenocorticism in dogs: a retrospective series of 30 cases.
J Small Anim Pract. May 2016;57(5):227-33.
E Gunn , R E Shiel , C T Mooney

目的:この研究の目的は、犬の急性副腎皮質機能低下症の管理に対し、ヒドロコルチゾンの静脈注射と輸液療法の効果、結果、副作用を述べることだった。

方法:ヒドロコルチゾンの静脈注射と輸液療法を受けた原発性副腎皮質機能低下症の犬の回顧的再検討を行った。

結果:新規に診断された30頭の犬を含めた。中央値2日以内に全ての犬は素晴らしい臨床反応を示し、退院した。完全なデータのある23症例において、24時間以上のナトリウムの平均変化率は0.48(±0.28)mmol/L/時で、カリウムの平均変化率は-0.12(±0.06)mmol/L/ 時だった。12時間後の血中カリウム濃度が正常化した症例は68.4%で、24時間後には100%だった。高カリウム血症に対する追加治療の必要性はなかった。血漿ナトリウム濃度は23症例中7例(30.4%)で>12mmol/L/24時間、増加した。1頭の犬は関係する一時的な神経症状を示した。

臨床意義:静脈内のヒドロコルチゾン注射と輸液療法は、急性副腎皮質機能低下症の管理において高カリウム血症が急速に解消させ、副作用もほとんどなく許容性もよかった。ナトリウム濃度の急速な増加を確実に避けるため、規則的な電解質のモニタリングが必要である。(Sato訳)
■自然発生の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬における血清コレシストキニン濃度
Serum cholecystokinin concentrations in dogs with naturally acquired pituitary-dependent hyperadrenocorticism.
Am J Vet Res. 2016 Oct;77(10):1101-7. doi: 10.2460/ajvr.77.10.1101.
Noh S, Kim HS, Chang J, Kang JH, Chang D, Yang MP.

目的 下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬における血清コレシストキニン (CCK)の濃度を明らかにし、CCK濃度、PDH、胆嚢粘液嚢腫(GBM)の関連を評価する

動物 14頭のPDHの犬と14頭の健常犬

方法 4グループに分類した:胆泥がない健常犬(グループA, 7頭)、胆泥がある健常犬(グループB, 7頭)、胆泥があるPDHの犬(グループC, 8頭)、GBMがあるPDHの犬(グループC, 6頭)。血清CCK濃度は、高脂肪食を食べる前、食後1, 2, 4時間後に測定した。PDHの犬における濃度は、トリロスタン治療の前後において測定した。それぞれのグループおよび評価点の間で結果を比較した。

結果 グループCの食前の血清CCK濃度は、グループA, B, Dより有意に低いが、食後1, 2, 4時間の時点でグループ間において、食後のCCK濃度の有意差は検出されなかった。PDHの犬のトリロスタン治療に関して、グループCとDにおいて、トリロスタンの前と後の血清CCK濃度に有意差はなかった。トリロスタン治療後のCCK濃度の中央値はグループCよりもグループDにおいて高く、この差は有意ではなかった。

結論と臨床的意義 本研究の結果は、循環しているCCK濃度が低いことが、PDHの犬におけるGBMの発生に影響を与えるという仮説を支持するものではなかった。(Dr.Taku訳)
■正常犬の副腎の大きさの体重別エコー評価
Ultrasonographic evaluation of adrenal gland size compared to body weight in normal dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):317-26.
Stacy N Soulsby; Merrilee Holland; Judith A Hudson; Ellen N Behrend

体重に関係なく副腎拡大を区別するための副腎最大径0.74cmという一般的なカットオフ値は、小型や中型犬に不適切かもしれない。

この回顧的研究の目的は、小型、中型、大型犬種をそれぞれ代表する3つの体重カテゴリー(<10kg、10-30kg、>30kg)において健康犬の体重との相関として副腎の大きさを研究することと、副腎の大きさが異常かどうかの判定でより強い信頼を証明することだった。

各カテゴリーの犬15頭の臨床的に健康な犬(n=45)の超音波検査で、両副腎の長さ(矢状面)、頭極および尾極の厚さ(矢状及び横断面)、尾極の幅(横断面)を測定した。

所見は正常犬で副腎の大きさは体重と関連するという我々の仮説を支持し、小型、中型、大型犬種のようなカテゴリーで副腎の大きさに対するより正確な参照範囲を作成するべきである。矢状面における各副腎の尾極の厚さは、測定値の低変動、容易さ、信頼度を基に副腎の大きさを評価する一番良い寸法だった。(Sato訳)
■自然発生の副腎皮質機能亢進症の猫30症例における臨床所見、診断検査結果、治療転帰
Clinical findings, diagnostic test results, and treatment outcome in cats with spontaneous hyperadrenocorticism: 30 cases.
J Vet Intern Med. 2014 Mar-Apr;28(2):481-7. doi: 10.1111/jvim.12298. Epub 2014 Jan 16.
Valentin SY, Cortright CC, Nelson RW, Pressler BM, Rosenberg D, Moore GE, Scott-Moncrieff JC.

背景 自然発生性の副腎皮質機能亢進症 (HAC)は、猫においては稀である。臨床所見、診断検査結果、様々な治療オプションに対する反応などをより明らかにする必要がある。

目的 HACの猫の臨床所見、臨床病理学的所見、画像診断所見、治療に対する反応性を明らかにすること。

動物 自然発生性のHACの猫

方法 記述的ケースシリーズの回顧的研究

結果 10の獣医紹介病院において30頭の猫(15頭の去勢雄、15頭の避妊雌、年齢は4.0-17.6歳齢(中央値、13歳齢))が同定された。紹介されたもっとも多い理由は、コントロールできない糖尿病であり、皮膚科学的な異常が身体検査で見つかったもっとも多い異常であった。低用量デキサメタゾン抑制試験は28頭の猫のうち27頭(93%)においてHACと一致し、ACTH刺激試験は、16頭のうち9頭(56%)においてのみHACを示唆していた。副腎の超音波所見は、30頭中28頭 (93%)においてPDHまたはADHの最終的な臨床診断と一致した。HACと最初に診断してから少なくとも1ヶ月後に追跡調査が可能であった17頭の猫のうち、トリロスタンで治療したPDHの猫において生活の質の改善がもっともよく認められた。

結論と臨床的意義 HACの猫が最初に紹介来院する理由は、皮膚科学的な異常やコントロールできない糖尿病がもっとも多いようであった。デキサメタゾン抑制試験は、HACを疑う猫の初期のスクリーニングとしてはACTH刺激試験よりも推奨される。副腎の画像診断は、この疾患の猫においてADHとPDHを迅速かつ正確に鑑別できるが、さらなる前向き研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■超音波検査で偶然見つかった副腎病変の犬の臨床所見:151症例(2007-2010)
Clinical findings in dogs with incidental adrenal gland lesions determined by ultrasonography: 151 cases (2007-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2014 May 15;244(10):1181-5. doi: 10.2460/javma.244.10.1181.
Cook AK, Spaulding KA, Edwards JF.

目的:犬の腹部超音波検査中に発見した偶発的副腎病変(IAGLs)の有病率と関係する臨床特性を調べる

計画:回顧的ケースシリーズ

動物:151頭のIAGLの犬と400頭のコントロール犬

方法:3.5年の間に腹部超音波検査を実施した犬の報告を調べた。副腎に結節やマスが存在する、あるいは両副腎の幅が10mm以上あるようならばIAGLに分類した。IAGLの犬に対し、カルテからシグナルメント、併発疾患、結果に関する情報を得た。同期間中に検査した犬400頭のコントロール集団と所見を比較した。

結果:3748頭中151頭(4%)でIAGLが検出された。IAGLの犬はコントロール集団(年齢中央値、9.5歳;体重中央値、14kg)よりも有意に年齢が高く(年齢中央値、11.25歳)、体重が重かった(体重中央値、21kg)。副腎摘出あるいは検死を行った犬20頭中6頭(30%)は悪性腫瘍で、最大のIAGLの幅は20mmから46mmだった。全ての良性病変は最大幅が20mmより小さかった。43頭(28.5%)の犬において非副腎悪性腫瘍を含むIAGLの犬に種々の同時発生的状況が報告された。

結論と臨床関連性:IAGLsは9歳以上の犬に見られる可能性が高かった。この小データセットを基に、最大幅20mm以上のIAGLsに対しては悪性疾患を疑うべきである。(Sato訳)
■犬の右副腎切除に対する肋間アプローチ
Intercostal Approach for Right Adrenalectomy in Dogs.
Vet Surg. 2014 Jan 6. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12105.x.
Andrade N, Rivas LR, Milovancev M, Radlinsky MA, Cornell K, Schmiedt C.

目的:犬の右の副腎(RA)に対する肋間(IC)アプローチを述べる

研究デザイン:屍体研究とケースシリーズ

動物:右副腎腫瘍のある犬(11頭)と正常な犬の屍体(6頭)

方法:屍体の右副腎に肋間(n=3)あるいは傍肋骨アプローチを行った。切開に対する右副腎の相対的空間的位置を評価した。右副腎に肋間アプローチをした犬の医療記録(2007.6-2012.12)を再検討した。周術データを記録し、述べた。

結果:屍体では、傍肋骨アプローチと比較して肋間アプローチ後の外科切開の頭側面に右副腎は近かった。右副腎切除に対する肋間アプローチは11頭の犬(6頭は副腎皮質癌、4頭はクロム親和性細胞腫、1頭は骨肉腫)で成功し、平均麻酔時間は252分、平均手術時間は144分だった。横隔膜腹静脈(n=11)と後大静脈(6)への血管侵入があった。有意な術中および術後合併症はなかった。1頭は術中に安楽死した。全ての犬の生存期間中央値は786日だった。

結論:右副腎切除における傍肋骨アプローチと比べ、肋間アプローチは右副腎の露出がより良い。(Sato訳)
■健康な猫と疾患のある猫の副腎の超音波像
Ultrasonographic appearance of adrenal glands in healthy and sick cats.
J Feline Med Surg. June 2013;15(6):445-57.
Anais Combes; Pascaline Pey; Dominique Paepe; Dan Rosenberg; Sylvie Daminet; Ingrid Putcuyps; Anne-Sophie Bedu; Luc Duchateau; Pauline de Fornel-Thibaud; Ghita Benchekroun; Jimmy H Saunders

この研究の第一の目的は、94頭の健康な猫と51頭の慢性疾患の猫の副腎の超音波像の特徴を前向きに述べることである。

健康な猫と慢性疾患の猫における副腎の超音波検査の実行できることを確認し、統計学的違いはなかった。典型的な高エコーの脂肪に取り囲まれた腺の低エコー像で認識可能だった。大動脈と列をなさない腺の矢状面は、副腎測定値の最大長を得るのに必要かもしれない。

副腎測定値の参照範囲は、健康な猫と慢性疾患の猫で得られた値から推測した(平均±0.96SD):副腎長は8.9-12.5mm;頭側の高さは3.0-4.8mm;尾側の高さは3.0-4.5mmだった。
この研究の第二部は、副腎疾患の猫(6頭は高アルドステロン症、4頭は下垂体依存性副腎皮質機能亢進症)の副腎の超音波検査の回顧的解析と、前向き研究のコントロール群で得た参照特性との比較を述べることである。

高アルドステロン症の猫は、片側性の副腎の重度増大を呈していた。しかし、良性あるいは悪性副腎腫瘍において正常な対側の副腎は、対側の浸潤を防げなかった。副腎の超音波像で良性か悪性病変かの鑑別はできなかった。

下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の超音波像は、主に対称性の副腎拡大だったが、症例の大多数の副腎は参照範囲内だった。(Sato訳)
■原発性副腎皮質機能低下症の犬に対するミネラルコルチコイド治療(デスオキシコルチコステロンとフルドロコルチゾン)をモニターするための血漿レニン活性の使用について
Use of plasma Renin activity to monitor mineralocorticoid treatment in dogs with primary hypoadrenocorticism: desoxycorticosterone versus fludrocortisone.
J Vet Intern Med. 2014 Sep;28(5):1471-8. doi: 10.1111/jvim.12426.
Baumstark ME, Nussberger J, Boretti FS, Baumstark MW, Riond B, Reusch CE, Sieber-Ruckstuhl NS.

背景 血漿レニン活性 (PRA)の測定は、原発性副腎皮質機能低下症 (PH)の人でミネラルコルチコイドによる治療をモニターするゴールドスタンダードな方法である。

目的 新たにPHと診断された犬、PHに類似した症状を示す疾患の犬、健常犬においてPRAを比較し、異なるミネラルコルチコイド製剤で治療したPHの犬において治療効果をモニターするためにPRAの濃度を評価すること。

動物 11頭のPHと新たに診断した犬(グループ1)、10頭のPHに類似した症状を示す疾患の犬(グループ2)、21頭の健常犬(グループ3)、17頭の治療したPHの犬(グループ4)

方法 グループ1では、治療前、初期治療後のそれぞれの時期にPRAを測定した。グループ2および3では、PRAは初診時にのみ測定した。グループ4では、PRAのもともとの濃度は測定できなかったが、治療中に1回だけか、1-6ヶ月ごとに測定した。ミネラルコルチコイド治療は、酢酸フルドロコルチゾン (FC)またはピバル酸デスオキシコルチコステロン (DOCP)で行なった。

結果 治療前の血漿レニン活性はPHの犬では、健常犬やPHに類似した症状を示す疾患の犬と比較して増加しており、それぞれ中央値は27、 0.8、 1.0ng/ml/hであった。PHの犬では、DOCP治療によってPRAは低下し正常になったが、FCではならなかった。PRAは、DOCP治療の犬においてはFCで治療した犬よりも低かった。FC治療と比較してDOCP治療では、血漿ナトリウム濃度はより高く、カリウム濃度はより低かった。

結論と臨床的意義 血漿レニン活性は、ミネラルコルチコイド治療をモニターする信頼できる方法である。DOCP治療は、PHの犬においてFCと比較してPRAをより効果的に抑制する。(Dr.Taku訳)
■超音波検査において副腎病変が偶発的に見つかったイヌの臨床所見: 2007年-2010年の151症例
Clinical findings in dogs with incidental adrenal gland lesions determined by ultrasonography: 151 cases (2007-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2014 May 15;244(10):1181-5. doi: 10.2460/javma.244.10.1181.
Cook AK, Spaulding KA, Edwards JF.

目的 イヌにおいて腹部超音波検査で偶発的にみつかった副腎病変 (IAGLs)に関連する臨床所見の発生率を明らかにすること

動物 IAGLの151頭のイヌと400頭のコントロールのイヌ。

方法 3.5年間に実施されたイヌの腹部の超音波検査の結果を調査した。結節や腫瘤が認められるか、どちらかの副腎の幅が10mm以上であったときに、副腎はIAGLであると分類した。IAGLのイヌについて、シグナルメント、併発疾患、転帰に関する情報をカルテから得た。同じ時期に検査した400頭のコントロール群と所見を比較した。

結果 IAGLは、3748頭中151頭 (4%)に認められた。IAGLのイヌでは、コントロール(年齢の中央値 9.5歳齢、体重の中央値 14kg)と比較して、有意に高齢で、体重が重かった(年齢の中央値 11.25歳齢、体重の中央値 21 kg)。副腎摘出または剖検した20頭中6頭(30%)において悪性腫瘍が確認され、IAGLの最大径は20-46mmであった。良性の病変は、最大径が全て20mm以下であった。IAGLのイヌにおいては、様々な併発疾患が認められたが、43頭(28.5%)において副腎以外の悪性の腫瘍が認められた。

結論と臨床的意義 IAGLは、9歳齢以上のイヌにおいてより多い。今回の研究では症例数が少ないが、最大径が20mm以上のIAGLでは悪性疾患を疑うべきである。(Dr.Taku訳)
■原発性副腎皮質機能低下症の1頭の猫における重度低血糖
Severe hypoglycaemia in a cat with primary hypoadrenocorticism.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):755-8.
Dimitris Kasabalis; Efi Bodina; Manolis N Saridomichelakis

この症例報告は原発性副腎皮質機能低下症にあてはまる病歴、臨床所見、検査所見があり、副腎皮質刺激ホルモン刺激試験で確認した3歳の去勢済み雑種猫を述べる。

重度だが、無症候性の低血糖が予期しなかった生化学所見で、酢酸フルドロコルチゾンとプレドニゾロン治療後解消した。
猫の重度低血糖の鑑別リストに副腎皮質機能低下症を含めるべきだとこの症例は示している。(Sato訳)
■犬の毛のコルチゾール測定:副腎皮質機能亢進症の診断に対する非侵襲性のツール
Measurement of cortisol in dog hair: a noninvasive tool for the diagnosis of hypercortisolism.
Vet Dermatol. August 2013;24(4):428-e94.
Claudia Ouschan; Alexandra Kuchar; Erich Mostl

背景:犬の副腎皮質機能亢進症の臨床症状は、グルココルチコイドの慢性的過剰によるものと知られている。血清、唾液、尿のコルチゾールの定量はサンプル採取時のコルチゾール濃度を反映しているが、副腎皮質機能亢進症が疑われるものに対し、コルチゾール産生の長期パラメーターを検査するのが望ましいと思われる。

仮説と目的:犬のコルチゾールの長期産生をモニターする非侵襲性の方法が必要である。毛のコルチゾール濃度の測定が、その方法となる可能性がある。

動物:副腎皮質機能亢進症の犬12頭と健康なコントロール犬10頭から毛を採取した。

方法:酵素免疫測定で免疫反応性コルチゾール、コルチゾン、コルチコステロン濃度を測定した。そのコルチゾール分析の妥当性を検査するため、高速液体クロマトグラフィーを実施した。

結果:免疫反応性コルチゾール、コルチゾン、コルチコステロン濃度はコントロール犬よりも副腎皮質機能亢進症の犬で有意に高かった。コルチゾール濃度において違いは最も明白だった。

結論と臨床意義:毛のコルチゾールの定量は、血液、尿、糞便、唾液採取よりサンプリングが容易で侵襲性が低いという利点を持つ。毛のコルチゾール測定は、犬の副腎皮質機能亢進症の診断で有用なツールとなるかもしれない。(Sato訳)
■副腎皮質機能低下症の犬におけるアルドステロン濃度の評価
Evaluation of aldosterone concentrations in dogs with hypoadrenocorticism.
J Vet Intern Med. 2014 Jan;28(1):154-9. doi: 10.1111/jvim.12243. Epub 2013 Nov 15.
Baumstark ME, Sieber-Ruckstuhl NS, Muller C, Wenger M, Boretti FS, Reusch CE.

背景 原発性副腎皮質機能低下症 (HA)の犬において、非定型アジソン病とよばれる現象で、ナトリウムとカリウム濃度が正常な場合がある。これらの犬においては、球状体とアルドステロン分泌は正常ということが広く受け入れられているが、多くの文献においてアルドステロン値は測定されていない。

目的 HAであり、電解質異常がない犬におけるアルドステロンの測定をし、ACTH刺激試験の際のアルドステロンのピーク濃度とその時間を決定すること

動物 70頭のHAの犬、22頭はHAに類似した疾患、19頭の健常犬

方法 前向き研究。全ての犬において250μg ACTH投与前と60分後に血液を採取した。それに追加して、HAの7頭、HAに類似した疾患の22頭では、ACTH投与15, 30, 45分にも血液を採取した。

結果 アルドステロンの基礎値とACTH刺激後のアルドステロン値は、他の群に比べてHA群では有意に低かった。アルドステロンは、血清ナトリウムとカリウム濃度に関係なくHAの70頭のうち67頭において低いかまたは検出出来なかった。3頭においては、ナトリウム/カリウム濃度は正常であった。1頭においては、ナトリウムは正常であり、カリウムは低下していた。4頭すべておいて、ACTH刺激後のアルドステロン濃度は検出限界以下であった。アルドステロン濃度は、ACTH投与30,45,60分後において変化はなかった。

結論と臨床的意義 コルチゾルとアルドステロン分泌は、電解質異常がある場合もない場合もHAの犬では障害されている。原発性のHAの犬で正常な電解質を示す用語である非定型アジソン病は、考え直された方がいいかもしれない。アルドステロンなしで正常な電解質バランスを保つ他のメカニズムをこうした犬においては評価するべきである。(Dr.Taku訳)
■犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療に対する2つのトリロスタン療法(1日2回か1回か)の評価
Evaluation of 2 Trilostane Protocols for the Treatment of Canine Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism: Twice Daily versus Once Daily.
J Vet Intern Med. 2013 Sep 30. doi: 10.1111/jvim.12207.
Arenas C, Melian C, Perez-Alenza MD.

背景 トリロスタンは、犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症 (PDH)の治療に対して選択される薬剤であるが、臨床症状と副腎機能検査の結果をコントロールするのにどの方法が最もよいかということについては未だ議論がある。

目的 トリロスタン1日1回か2回投与の効果を比較し、PDHの犬の治療において両方のプロトコールの安全性を比較する事

動物 2008年-2010年にPDHと診断された32頭の飼い犬で、トリロスタンを1日2回か1回で治療されたもの

方法 この前向き無作為化研究では、2つのトリロスタン治療法を、臨床症状について飼い主の感じ方、検査結果、ACTH刺激試験の結果に基づいて評価した。1年にわたって追跡した。

結果 この試験の間、1回投与と比較して2回投与の方が、臨床的な回復が完全に認められた犬が多かった。しかし、ACTH刺激後のコルチゾル濃度の平均値において両者で有意差はなかった。6ヶ月の時点での基礎コルチゾル濃度は、2回投与と比較して1回投与の犬においてより高かった。試験期間に認められた副作用だけではなく、PDHをコントロールするために使用したトリロスタンの毎日の平均の総用量は、両者において統計学的に差がなかった。

結論と臨床的意義 副作用はどちらの治療法を用いても軽度であった。トリロスタン1日2回は、1日1回と比較して、臨床的な反応がよい犬の数が増すかもしれない。(Dr.Taku訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の内科管理:ミトタンvsトリロスタン
Medical Management of Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism: Mitotane versus Trilostane.
Top Companion Anim Med. 2012 Feb;27(1):25-30.
Reine NJ.
アメリカで下垂体依存性副腎皮質機能亢進症は、犬の一般的な内分泌疾患の1つである。一度診断されたら、処置するかどうか、するならばどの薬剤を使用するか決定しなければならない。
昔からミトタンが内科管理で最も一般的に使用されている。その使用は複雑で多くの副作用を起こす可能性があり、多くの臨床家はその使用に慎重になる。
近年、トリロスタンが下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の効果的な治療と証明されており、タンクにでは使用を認可されている。トリロスタンの治療はいくぶん簡単で、副作用の発生はミトタンに比べ少ないと思われる。両治療とも臨床家とオーナーがその使用をよく勉強し、適切なモニタリングプロトコールを使用すれば、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の安全で効果的な治療方法となるだろう。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症の犬におけるトロンボエラストグラフィの経時的な特徴
Characterization of thrombelastography over time in dogs with hyperadrenocorticism.
Vet J. 2013 Jul 6. pii: S1090-0233(13)00263-3. doi: 10.1016/j.tvjl.2013.05.047. [Epub ahead of print]
Kol A, Nelson RW, Gosselin RC, Borjesson DL.

犬の副腎皮質機能亢進症(HAC)は、凝固亢進、血栓症、血栓塞栓症と関連していることが多い内分泌疾患であり、罹患率も致死率も高い。その病態は、糖質コルチコイド(GCs)が制御できずに分泌増加することである。凝固亢進を予測同定する事は難しいが、トロンボエラストグラフィ (TEG)は臨床現場において凝固亢進を検出することができる診断ツールである。
この前向きコホート研究の目的は、HACの犬はTEG最大振幅 (MA)が増加しており、臨床的なコントロールが得られた後はMAが正常になるという仮説を証明するために、TEGを用いてHACの犬における凝固状態を経時的に評価する事である。

自然発生のHACの23例の犬を組み入れ、止血能(TEG、血小板機能、トロンビンアンチトロンビン複合体、凝固パネル)および血液学的なパラメーターを来院時に測定した。TEGは、HACの臨床症状が改善するまで連続的に測定した。

来院した際、HACの多くの犬は、MA値、トロンビンアンチトロンビン複合体が増加しており、多くは高フィブリノーゲン血症だった。血小板機能分析器-100 (PFA-100)閉止時間は有意に延長していた。TEG波形は、内科的または外科的に管理した犬において正常になることはなかったが、フィブリノーゲン濃度は低下した。HACの犬は、複雑な凝固障害を持っており、凝固亢進と血小板反応低下または機能不全が同時に起こっているように思われる。

TEG波形は、うまくコントロールできている犬においても正常化する事はないため、増加した血液中のGCsがHACの犬において認められるTEGの変化に対する単一の要因であるとは考えにくい。(Dr.Taku訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬においてトリロスタン治療のモニターにコルチゾール基礎値、内因性ACTH、コルチゾール/ACTH比を用いる事の評価
Evaluation of Baseline Cortisol, Endogenous ACTH, and Cortisol/ACTH Ratio to Monitor Trilostane Treatment in Dogs with Pituitary-Dependent Hypercortisolism.
J Vet Intern Med. 2013 May 23. doi: 10.1111/jvim.12111.
Burkhardt WA, Boretti FS, Reusch CE, Sieber-Ruckstuhl NS.

背景 トリロスタン治療がうまくいっているかは、現在のところ定期的なACTH刺激試験によってモニターされており、それらは時間と費用がかかる。そのため、刺激試験なしで飼い主の負担が少ないようなモニターの方法があるとよい。

仮説および目的 この研究の目的は、コルチゾル基礎値、内因性ACTH濃度またはコルチゾル基礎値/ACTH比が、ACTH刺激試験にかわるかどうかを評価することである。

動物 40頭のトリロスタンで治療している下垂体依存性副腎皮質機能亢進症 (PDH)の犬を前向きに検討した。

方法 全部で148回のACTH刺激試験と77回のACTH濃度の測定およびコルチゾル/ACTH比を解析した。コルチゾル放出が制御できているかは、ACTH投与後のコルチゾル濃度にしたがって、過剰(<1.5μg/dl、グループ1)、適切(1.5-5.4μg/dl、グループ2)、不適切(>5.4μg/dl、グループ3)に分類した。

結果 コルチゾル基礎値は、全グループでかなりオーバーラップしていた。コルチゾル基礎値が4.4 μg/dlより高い(試験の12%)ときのみが、不適切なコントロールと確実に診断できた。内因性ACTH濃度はグループ間において差はなかった。グループ間におけるコルチゾル/ACTH比の重なりは大きかった。コルチゾル/ACTH比が15より大きかった場合、正しい分類が可能であり、それは試験の4%だけであった。

結論と臨床的意義 トリロスタン治療のモニターをするのに、コルチゾル基礎値、ACTH濃度、コルチゾル/ACTH比はACTH刺激試験の代わりにはなりえない。(Dr.Taku訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬(<5kg)に低用量と高用量トリロスタンで治療した効果
Efficacy of Low- and High-Dose Trilostane Treatment in Dogs (< 5 kg) with Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism.
J Vet Intern Med. 2013 Jan;27(1):91-8. doi: 10.1111/jvim.12007. Epub 2012 Nov 20.
Cho KD, Kang JH, Chang D, Na KJ, Yang MP.

背景: トリロスタンは犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療として一般的に使われる。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬で、トリロスタンの投与量と投与回数に関して異なる意見が存在する。

目的: 下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬の治療において2つのトリロスタンプロトコールの効果を比較することだった。

動物: 下垂体依存性副腎皮質機能亢進症で体重が5kg以下である16頭の飼い主所有の犬

方法: 前向き観察研究。グループA(n=9,低用量治療グループ)はトリロスタン0.78 ± 0.26 mg/kg PO 12時間毎そしてグループB (n = 7; 高用量治療グループ)はトリロスタン30 mg/dog PO 24 時間毎を投与した。すべての犬は、初期治療後 2, 4, 8, 12, 16, そして24週で再評価した。

結果: ACTHで刺激した血清コルチゾール濃度と臨床症状の両方の改善はグループBよりグループAでよりゆっくり起こった。しかし、治療20週後、グループBの2/7頭は副腎皮質機能低下症と関連した臨床症状と異常な血液検査所見が見られた。24週において、両方のグループにおいて犬のすべての臨床所見の改善が見られた。

結論と臨床重要性: 下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬において、低用量トリロスタンの1日2回の投与は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症を管理するための効果的なアプローチである。さらに我々の結果から、トリロスタンをより少ない投与量で1日2回投与したらより副作用が少なくなる可能性があることが示唆された。(Dr.Kawano訳)
■犬の副腎皮質機能亢進症の凝固検査への影響
Effect of Canine Hyperadrenocorticism on Coagulation Parameters.
JJ Vet Intern Med. 2012 Dec 28. doi: 10.1111/jvim.12005.
Rose L, Dunn ME, Bedard C.

背景 副腎皮質機能亢進症(HAC)は、犬において血栓症と関連しているといわれている。

仮説 この研究の目的は、トロンボエラストグラフィ(TEG)およびトロンビン産生試験(TG)を用いる事によって、HACの犬における凝固亢進状態を明らかにする事である。HACの犬は、TEG波形で凝固亢進プロファイルを示し、内在性トロンビン産生能 (ETP)によって測定したトロンビン産生の増加が認められるという仮説をたてた。

動物 HACの16頭の犬。これらの犬を、基準範囲を求めるために用いた健常犬群と比較した。
方法 クエン酸加全血を用いてTEG波形を15頭の犬において実施し、凍結融解した血小板欠乏血漿(PPP)を用いてTGの測定を15頭の犬において実施した。

結果 TEG解析については、個々の犬の結果を基準範囲と比較することで、15頭中12頭が、凝固亢進と関連したパラメータの異常を最低1つは示していた。HACの犬群を健常犬群と比較すると、HACの犬は、RとKが低下し、αとMA値が増加していた。HAC群を健常犬群と比較すると、ETPは増加していた。しかし、基準範囲以上のETPを示したのは、15頭中3頭のみであり、15頭中1頭は、lag timeが短縮していた。

結果と臨床的意義 全16頭のHACの犬の中で、15頭中12頭は、TEGで評価すると凝固亢進を示しており、TGで評価すると15頭中4頭、ETPとMAにおいては2頭が増加を示していた。(Dr.Taku訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の(5kgより軽い)犬における低用量と高用量のトリロスタン治療の効果
Efficacy of Low- and High-Dose Trilostane Treatment in Dogs (< 5 kg) with Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism.
J J Vet Intern Med. 2012 Nov 20. doi: 10.1111/jvim.12007. [Epub ahead of print]
Cho KD, Kang JH, Chang D, Na KJ, Yang MP.

背景 トリロスタンは犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療によく使用される。PDHの犬におけるトリロスタン投与の用量と頻度については異なる意見がある。

目的 PDHの犬の治療において2つのトリロスタンのプロトコールの効果を比較する

動物 体重が5kgより少ない16頭のPDHの犬

方法 前向き観察的研究。A群(9頭、低用量治療群)には0.78±0.26mg/kgのトリロスタンを12時間毎に毎日、B群(7頭、高用量治療群)には30mg/頭のトリロスタンを24時間毎に与えた。治療開始2, 4, 8, 12, 16, 24週間後に全ての犬を評価した。

結果 B群に比較して、A群ではよりゆっくりとACTH刺激によるコルチゾル濃度と臨床症状の改善が認められた。しかし、治療開始20週後には、B群では7頭中2頭に副腎皮質機能低下症の症状とそれに一致する異常な検査所見が認められた。24週の時点で、両群の全ての犬において臨床症状の改善が認められた。

結論と臨床的意義 PDHの犬において、低用量トリロスタンの1日2回投与は、PDHを管理するのに効果的な方法である。それに加えて、我々の結果は、トリロスタンをより低用量で1日2回投与すると、副作用の可能性が少なくなる事を示唆している。(Dr.Taku訳)
■インビトロの研究において犬の副腎および黄体でのステロイドホルモン代謝に対するトリロスタンの影響
The influence of trilostane on steroid hormone metabolism in canine adrenal glands and corpora lutea-an in vitro study.
Vet Res Commun. March 2012;36(1):35-40.
C Ouschan; M Lepschy; F Zeugswetter; E Mostl

トリロスタンは犬の副腎皮質機能亢進症の治療で広く使用されている。トリロスタンはペングネノロン(P5)をプロゲステロン(P4)に、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)をアンドロステンジオン(A4)に変換する酵素3-βヒドロキシステロイド脱水酵素(3β-HSD)を抑制する。トリロスタンは頻繁に犬に使用されるが、犬のステロイドホルモン生合成に対するその効果の基礎にある分子的メカニズムはいまだ謎である。3β-HSDの複数の酵素はヒト、ラット、マウスで発見されており、それらの存在がトリロスタンの有効性に対する研究の矛盾した結果を明白にするかもしれない。

ゆえに著者らは、1つのインビトロモデルを用いて犬のステロイドホルモン代謝に対するトリロスタンの影響を調査した。安楽死した犬から副腎と黄体(CL)を、段階的に増やした濃度のトリロスタンで培養した。トリチウム化P5あるいはDHEAを培養基として使用した。できた放射性代謝産物を取り出し、薄層クロマトグラフィーで分離してオートラジオグラフィーにより描出した。

副腎およびCLで多様な放射性代謝産物を形成し、両組織における高い代謝活性が示された。副腎皮質において、トリロスタンは用量-および時間-依存性の様式でP5代謝に影響する一方、CLにおいて両ホルモンの代謝およびDHEA代謝に影響を与えなかった。

その結果は犬に3β-HSDの1つ以上の酵素が存在し、トリロスタンは副腎のP5からP4変換のみを選択的に抑制すると示している。(Sato訳)
■自然発生の副腎皮質機能亢進症の犬における1日2回の低用量トリロスタン経口投与の評価
Evaluation of twice-daily lower-dose trilostane treatment administered orally in dogs with naturally occurring hyperadrenocorticism.
J Am Vet Med Assoc. June 2011;238(11):1441-51.
Edward C Feldman

目的:自然発生の副腎皮質機能亢進症(NOH)の犬の治療として、トリロスタンの1日2回低用量経口投与の有効性と副作用の発生率を評価すること

構成:臨床試験

動物:NOHの犬47頭

方法:47頭の犬をトリロスタン経口投与(0.21-1.1mg/kg、q12h)で治療した。全ての犬は治療開始から2週間後と2か月後に再評価し、38頭の犬は6か月後、28頭の犬は1年後に再評価した。

結果:47頭中9頭のNOHの原因は副腎皮質腫瘍で、2か月後に全頭は良好な反応を示した(平均トリロスタン投与量、0.89mg/kg、q12h)。全ての犬は外科的副腎腫瘍摘出を行い成功した。
38頭の犬は下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)だった。15頭の犬は研究中に用量の増加を必要とせず、各4回の再評価時、15頭中10頭、15頭中13頭、15頭中14頭、11頭中11頭が良好な反応を示した。PDHの23頭の犬は研究中にトリロスタンの投与量あるいは投与回数を増やした。良好な反応を示した犬の1年時の平均トリロスタン投与量は、1.7mg/kg、1日2回、あるいは1.1mg/kg、1日3回だった。各4回の再評価時、PDHの23頭中17頭、23頭中14頭、23頭中17頭、17頭中13頭が良好な反応を示した。5頭の犬はトリロスタン誘発性副作用のため病気となったが、1頭だけが入院を必要とした。

結論と臨床的関連:NOHの犬へのより低い初期投与量のトリロスタン投与は有効である。(Sato訳)
■犬の自然発生下垂体依存性副腎皮質機能亢進症におけるトリロスタンの用量と体重の関係
Trilostane Dose versus Body Weight in the Treatment of Naturally Occurring Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism in Dogs.
J Vet Intern Med. 2012 Jun 18. doi: 10.1111/j.1939-1676.2012.00956.x. [Epub ahead of print]
Feldman EC, Kass PH.

背景:自然発生下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬の治療に対して、トリロスタンは一般的に使用される。推奨用量は、メーカーや文献によって異なる。

仮説:体重が増加すると、臨床症状をコントロールするために必要なkgあたりの1回投与量または1日あたりのトリロスタンの用量は低下する。

動物:70頭の自然発生下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬

方法:後向き研究。それぞれの犬は、最低6ヶ月は治療し、飼い主によってトリロスタンに対する反応がよいと思われたものであった。1回用量と投与量の統計学的な比較は、犬を15kg以下と15kg以上に分ける、または10kg以下、10.1-20kg、20.1-30kg, 30kg以上に分ける、さらに体表面積に基づいて分け、臨床症状をコントロールするのに必要なトリロスタンのkg当たりの1回用量および全用量と解析した。

結果:体重が30kg以上の犬の1回量とそれ以外の犬を比較したときを除くと、体重kgあたりのmg用量、または全用量に有意差はなかった。しかし、グループを比較したときに有意差がなかったにもかかわらず、多項式回帰分析を用いると有意である傾向が認められたため、体重が増加すると、臨床症状をコントロールするのに必要なトリロスタンの量(1日のmg/kgだけではなく、1回あたりのmg/kgも)は低下することを示唆している。

結論と臨床的意義:体重が30kg以上、そしておそらく15kg以上の犬は、体重がより軽い犬より、PDHに関連した臨床症状をコントロールするのに1回あたりまたは1日あたりのトリロスタンの用量は少なくて済むと思われる。(Dr.Taku訳)
■ACTH依存性の副腎機能亢進症の治療後の犬における腎機能の長期的な調査
Long-Term Follow-Up of Renal Function in Dogs after Treatment for ACTH-Dependent Hyperadrenocorticism.
J Vet Intern Med. 2012 Mar 30.
Smets PM, Lefebvre HP, Meij BP, Croubels S, Meyer E, Van de Maele I, Daminet S.

背景:全身性高血圧と蛋白尿は、クッシング症候群の犬において頻度の高い併発症であり、必ずしも高コルチゾル血症の治療後に解決しない。そのため、クッシング症候群の犬は治療前後に腎機能不全のリスクがある。

仮説と目的:ACTH依存性の副腎皮質機能亢進症(ADHAC)の犬の治療前後において、腎機能を評価すること。

動物:19頭のADHACの犬と12頭のコントロール犬

方法:治療前と治療1、3、 6、12ヶ月後に腎機能を評価した。12頭の犬はトリロスタンで治療し、7頭は経頭蓋‐経蝶形骨洞下垂体切除術で治療した。通常の腎臓のマーカーを測定し、尿中アルブミン(uALB)、尿中免疫グロブリンG(uIgG)、尿中レチノール結合蛋白(uRBP)をELISAによって評価した。尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(uNAG)は、比色法により測定した。全ての尿のマーカーは、尿クレアチニン濃度で割り、比率を出した。クレアチニン(Cl (creat))、エキソ-イオヘキソール (Cl (exo))、エンド-イオヘキソール (Cl (endo))の血漿クリアランスは、糸球体濾過率(GFR)を測定するのに用いた。データは一般線形モデルを用いて解析した。

結果:血清クレアチニンと尿素濃度は、治療後に増加したが、基準範囲内であった。血漿Cl (creat)およびCl (endo)は、治療後に有意に低下したが、Cl (exo)は変化がなかった。尿蛋白クレアチニン比(UPC)、uALB/c、uIgG/c、uRBP/cは治療後に減少したが、12ヶ月の時点で13頭中5頭が蛋白尿のままであった。尿中NAG/cは有意に変化しなかった。

結論と臨床的意義:臨床医は、GFRの減少と治療後の持続性の蛋白尿に注意を払うべきである。腎臓の結果をより評価するためには、持続性の蛋白尿またはGFRの低下を示す犬の腎臓の病理組織検査を含めた今後の研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■バーマンの非定型副腎皮質機能低下症
Atypical hypoadrenocorticism in a Birman cat.
Can Vet J. 2011 Aug;52(8):893-6.
Hock CE.
1歳、避妊メスのバーマンが不適切な排尿と排便、嗜眠、食欲不振そして体重減少の病歴を呈して来院しました。非特異的に治療に対する間欠的な反応後、その猫はACTH刺激試験の結果から非定型副腎皮質機能低下症と診断した。(Dr.Kawano訳)
■犬のクッシング症候群に対する検査の解釈
Interpretation of Laboratory Tests for Canine Cushing's Syndrome.
Top Companion Anim Med. May 2011;26(2):98-108.
Chen Gilor; Thomas K Graves

コルチゾン過剰症(HC)は犬でよく見られる疾患である。この文献はHCの診断で利用可能な検査、HCの原因の鑑別に対する検査を検討する。
それらの検査を実施しようと決断するまでの臨床プロセス、それらを実施するときに持ち上がる一般的な誤解や問題に重点をおく。

副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激検査か低用量デキサメサゾン抑制試験(LDDST)を選択するときは、両検査の利点や不利な点を臨床症状と同様に考慮すべきである。HCの疑いの指標が強く、他の疾患が適切に除外されていれば、高い陽性適中率を期待してACTH刺激試験の特異性は適度に高い。感受性が低いため、ACTH刺激試験の陰性結果は、HCの診断の除外に使用すべきではない。LDDSTはより感受性があるが特異性は低く、ストレスにより影響を受ける。尿コルチゾール:クレアチニン比に対する陽性結果は、他の疾患とHCの鑑別の手助けとならない。尿コルチゾール:クレアチニン比に対する陰性結果はHCの診断の見込みが高いことを示す。LDDSTはHCの全ての犬の約三分の二の症例で、下垂体依存性HCと副腎腫瘍の鑑別に有効である。真性糖尿病、肝疾患、甲状腺機能低下症からのHCの鑑別は、内分泌検査単独ではできない。臨床症状、画像検査、病理組織、治療に対する反応を全て考慮すべきである。(Sato訳)
■ビーグル犬の副腎の大きさ及び超音波所見に対するグルココルチコイド投与の影響
EFFECT OF GLUCOCORTICOID ADMINISTRATION ON ADRENAL GLAND SIZE AND SONOGRAPHIC APPEARANCE IN BEAGLE DOGS
Veterinary Radiology & Ultrasound
Article first published online: 23 SEP 2011
Pascaline Pey, Sylvie Daminet, Pascale MY Smets, Luc Duchateau, Olga Travetti, Jimmy H. Saunders

我々の目的は超音波検査を用いて副腎に対するグルココルチコイドの影響を評価することだった。

11頭の健康なビーグルを前向きプラセボ-コントロール研究に使用した。

全ての犬に、ヒドロコルチゾン10mg/kg1日2回4ヶ月間経口投与、あるいはプラセボとしてゼラチンカプセルを1日2回経口投与した。犬の臨床および内分泌学的検査、副腎のエコー輝度、形、頭側及び尾側極の長さと高さの超音波評価を基準(T0)、投与開始から1ヶ月目(T1)、4ヶ月目(T4)、漸減投与の1ヶ月と投与中止後1ヶ月を含む投与終了後2ヶ月目(T6)に実施した。

犬を無作為にグルココルチコイド群(n=6)およびプラセボ群(n=5)に振り分けた。T1時、頭側及び尾側極の高さに対する2群の違いは統計学的に有意差(P=0.0165およびP=0.0206)があるにもかかわらず、超音波検査的に顕著ではなかった。腺全体の高さと長さの低下はT4時に観察された(それぞれP<0.0001、P=0.0015、P=0.0035)。萎縮の比率は犬ごとに不定だった。両副腎はグルココルチコイド投与中止後1ヶ月で、正常な大きさ及び形に回復した。全ての犬が顕著な副腎萎縮を起こすわけではなく、個々の萎縮の程度も幅広いので、超音波検査は医原性副腎皮質機能亢進症を検出する方法として選択できない。超音波変化はグルココルチコイド投与終了後1ヶ月以内に可逆性である。(Sato訳)
■原発性副腎皮質機能低下症あるいは模倣疾患における犬の副腎の超音波検査による評価
Ultrasonographic evaluation of adrenal glands in dogs with primary hypoadrenocorticism or mimicking diseases.
Vet Rec. 2010 Aug 7;167(6):207-10.
Wenger M, Mueller C, Kook PH, Reusch CE.

原発性副腎不全(副腎皮質機能低下症)の犬30頭の副腎を超音波検査で測定し、14頭の健常犬と副腎皮質機能低下症が疑わしい疾患の犬10頭の副腎と比較した。腹部超音波検査で副腎の厚さと長さを測定し、それぞれのグループの結果を比較した。原発性副腎皮質機能低下症の犬は、他の2つのグループと比べて有意に副腎は細く、左側の副腎は健常犬の副腎より有意に短かった。左側の副腎が3.2mmより細い場合は強く副腎皮質機能低下症が示唆され、臨床兆候から原発性副腎皮質機能低下症が疑われる犬において、副腎の超音波検査は診断価値があるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■ミトタンあるいはトリロスタンで治療した副腎依存副腎皮質機能亢進症の犬の生存性に影響する因子の比較
A Comparison of Factors that Influence Survival in Dogs with Adrenal-Dependent Hyperadrenocorticism Treated with Mitotane or Trilostane.
J Vet Intern Med. March 2011;25(2):251-60.
J R Helm; G McLauchlan; L A Boden; P E Frowde; A J Collings; A J Tebb; C M Elwood; M E Herrtage; T D H Parkin; I K Ramsey

背景:トリロスタンは、犬の下垂体依存副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療薬と認識されている。しかし副腎依存副腎皮質機能亢進症(ADH)の犬での効果は不明である。

目的:特に治療法選択を強調するようなADHの内科管理において生存性に影響すると思われる因子を研究する

動物:12年以上の間でADHの診断を受けて4施設に紹介され、トリロスタン(22/37)、ミトタン(13/37)、両方(2/37)で治療した37頭の犬

方法:臨床記録の回顧的分析

結果:ミトタンのみで治療した13頭の犬の生存期間を、トリロスタンのみで治療した22頭の犬のそれと比較したときに統計学的有意差はなかった。トリロスタンで治療した犬の生存期間中央値は353日(95%信頼区間(CI)95-528日)だったが、ミトタンのそれは102日(95%CI43-277日)だった。転移性疾患は37頭中8頭に認められた。転移性疾患を持つ犬は、持たない犬に比べて有意に低い生存確率だった(P<.001)。

結論と臨床意義:ADHに対する内科治療の選択は、生存期間に大きく影響しないと思われる。しかし、転移性疾患の存在は内科治療の選択にかかわらず、生存期間がかなり短くなる。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症の8頭の糖尿病犬のインスリン必要量およびフルクトサミン濃度に対するトリロスタンの影響に対する回顧的評価
Retrospective evaluation of the effect of trilostane on insulin requirement and fructosamine concentration in eight diabetic dogs with hyperadrenocorticism.
J Small Anim Pract. December 2010;51(12):642-8.
G McLauchlan; C Knottenbelt; M Augusto; J Helm; Y McGrotty; I Ramsey

目的:副腎皮質機能亢進症(HAC)と真性糖尿病(DM)に罹患した犬のインスリン必要量と血清フルクトサミンに対するトリロスタンの影響を述べる

方法:8頭の犬の観察による回顧的研究

結果:来院時のフルクトサミン濃度中央値は401μmol/l(範囲244-554μmol/l)だった。来院時のインスリン投与量中央値は1.1IU/kg/dose(0.4-2.1IU/kg/dose)で、5頭は1日2回、3頭は1日1回だった。トリロスタン療法開始時に、4頭の犬は前もってインスリン投与量を減量した。7頭の犬のHACは28日以内にコントロールした。残りの1頭は17週でコントロールした。2頭の犬はトリロスタン開始から40日以内に死亡した。HAC安定化後のフルクトサミン濃度の中央値は438μmol/l(範囲325-600μmol/l)だった。1症例は最初の4ヶ月かけて血清フルクトサミン濃度が一貫して低下した。HAC安定後のインスリン投与量中央値は1.5IU/kg/dose(範囲0.25-3.0IU/kg/dose)だった。トリロスタン投与後、2症例のインスリン必要量は減少した。4頭はインシュリン投与量の増量を必要とした。

臨床意義:HACに対するトリロスタン治療中、インスリン必要量とフルクトサミン濃度は一貫して減少するわけではない。トリロスタン治療に伴うインスリン投与量の減少に関する推奨を提供するのに前向き研究が必要である。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症をトリロスタンで治療している犬に対するモニタリングとして基準コルチゾール濃度の使用の評価
Evaluation of the use of baseline cortisol concentration as a monitoring tool for dogs receiving trilostane as a treatment for hyperadrenocorticism.
J Am Vet Med Assoc. October 2010;237(7):801-5.
Audrey K Cook; Karen G Bond

目的:副腎皮質機能亢進症をトリロスタンで治療している犬のモニターに、コルチゾールの1回測定が使用できるかどうかを判定する

構成:コントロール下薬剤効果試験

動物:103頭の飼育犬

結果:トリロスタン投与前と投与中のACTH刺激試験の結果を評価した。ACTH刺激後の各コルチゾール濃度を、トリロスタンメーカーによるアウトラインとして副腎機能のコントロールが過剰、適切、不十分に分類した。トリロスタン投与前および投与中の基準コルチゾール濃度を評価した。目標とする値の範囲を限定し、感受性、特異性、予測値を判定した。

結果:投与前103件、投与中342件のACTH刺激試験結果を評価した。この集団で、1.3μg/dl以上の基準コルチゾール濃度は、正確に259頭中254頭(98%)において過剰抑制(ACTH刺激試験後コルチゾール濃度<1.5μg/dlと定義)を除外した。また2.9μg/dl以下の基準コルチゾール濃度は、211頭中200頭(95%)において不十分なコントロール(ACTH刺激試験後コルチゾール濃度>9.1μ/dlと定義)を除外した。トリロスタン投与中、基準コルチゾール濃度1.3μg/dlから2.9μg/dlあるいは投与前の基準コルチゾール濃度の半分以下の値は、168頭中147頭(88%)で副腎機能の適切なコントロールが行えていると正確に予測した。

結論と臨床関連:副腎皮質機能亢進症の犬においてトリロスタン投与後4-6時間で測定した基準コルチゾール濃度の評価は、副腎機能のコントロールについての臨床的に有効な情報を提供する。トリロスタン投与中の多くの犬は、高価で不便なACTH刺激試験を行うことなく適切にモニターできると思われる。(Sato訳)
■臨床的に健常な犬における血清アルドステロン濃度に対するグルココルチコイド投与の影響
Effect of glucocorticoid administration on serum aldosterone concentration in clinically normal dogs.
Am J Vet Res. June 2010;71(6):649-54.
Anne M Corrigan, Ellen N Behrend, Linda G Martin, Robert J Kemppainen

目的:臨床的に正常な犬の血清アルドステロン、コルチゾール、電解質濃度に対し、抗炎症量でプレドニゾンを28日間経口投与したときの影響を評価する

動物:10頭の犬

方法:1日目から28日目まで、5頭の犬にプレドニゾン(0.55mg/kg、PO、12時間毎)、5頭の犬にプラセボ(空のカプセル)を投与した。ACTH刺激試験前後の血清コルチゾールおよびアルドステロン濃度と血清電解質濃度を投与前(0日目基準)、投与中(7、14、21、28日目)、投与後(35、42日目)に測定した。

結果:基準で、2群で変動は見られなかった。ACTH刺激試験前後の血清コルチゾール濃度はプラセボ投与犬において基準値と変化はなかった。プレドニゾン投与犬で、血清塩素イオンおよび補正塩素イオン濃度は、基準の値に比べ7、14、21、28日目に有意に低く、血清重炭酸イオン濃度は14、21、28日目に有意に高かった。プレドニゾン投与中、ACTH刺激試験前後の血清コルチゾール濃度は基準値よりも有意に低かった。プレドニゾン投与犬で、ACTH刺激試験後の血清アルドステロン濃度は、35日目(すなわち、プレドニゾン投与中止から1週間後)に基準値よりも有意に低かったが、42日目には基準に戻った。

結論と臨床関連:臨床的に健常な犬において、抗炎症量のプレドニゾン投与は、血清塩素イオン、重炭酸イオン、コルチゾール濃度に有意な変化を引き起こす。ACTH刺激後のアルドステロン濃度はグルココルチコイド投与中に基準から変化することはなかったが、投与中止後の値は低下し、その後迅速に基準値に戻った。(Sato訳)
■犬の非定型クッシング症候群
Atypical Cushing's Syndrome in Dogs: Arguments For and Against.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2010;40(2):285-296.
Ellen N Behrend, Robert Kennis

ここ5年から10年で、オカルトの副腎皮質機能亢進症の症候群が注目されている。うわさによると副腎皮質機能亢進症のオカルト患者は多くの臨床症状を示し、定型的な副腎皮質機能亢進症、あるいはクッシング症候群(すなわち下垂体あるいは副腎腫瘍による高コルチゾール血症)の存在を示唆するルーチンの検査異常を示す。しかし、標準的な診断検査-副腎皮質刺激ホルモン刺激試験や低用量デキサメサゾン抑制試験は正常である。
オカルト副腎皮質機能亢進症の臨床症状は、コルチゾールよりもむしろ性ホルモンの過剰な副腎分泌によるという説が上がっている。著者は性ホルモンの役割は判明していないと思う。この論文はオカルト副腎皮質機能亢進症が作り出されるのにおいて性ホルモンの重要性、あるいはそれに対抗するエビデンスを概説する。(Sato訳)
■炎症性腸疾患の犬における視床下部-下垂体-副腎軸に対する短期経口ブデソニドの臨床効果
Clinical effects of short-term oral budesonide on the hypothalamic-pituitary-adrenal axis in dogs with inflammatory bowel disease.
J Am Anim Hosp Assoc. 2004 Mar-Apr;40(2):120-3.
Tumulty JW, Broussard JD, Steiner JM, Peterson ME, Williams DA.

活動性炎症性腸疾患の治療管理中の視床下部-下垂体-副腎軸(HPA)に対するブデソニドの経口投与の効果評価するために、30日間の前向き非ランダム化、非コントロール臨床試験を6頭の犬で実施した。経口ブデソニドは3 mg/m(2)の投与量で1日1回投与した。試験中と試験完了時に血清基礎コルチゾール、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激後のコルチゾール、内因性ACTH濃度、血清アルカリフォスファターゼ(SAP)活性、そして尿比重を評価し、グルココルチコイド関連性副作用の飼い主による評価も行った。視床下部-下垂体-副腎軸の明らかな抑制が起こった。血清アルカリフォスファターゼ活性、尿比重あるいは飼い主による主観評価において明らかな違いは検出されなかった。HPA軸の重要な抑圧が起こった。血清アルカリフォスファターゼ(SAP)活性、尿比重、または飼い主による主観評価の有意差は全く検出されなかった。(Dr.Kawano訳)
■副腎皮質機能低下症の犬8例のカルシウム代謝
Calcium metabolism in eight dogs with hypoadrenocorticism.
J Small Anim Pract. August 2009;50(8):426-30.
A G Gow, D J Gow, R Bell , J W Simpson, M L Chandler, H Evans, J L Berry, M E Herrtage, R J Mellanby

副腎皮質機能低下症は犬でよく見られる内分泌疾患で、糖質コルチコイドおよび/あるいは鉱質コルチコイドの産生および分泌不全を起こす。高カリウム血症、低ナトリウム血症、低塩素血症は一般的な電解質障害であるが、高カルシウム血症も症例の約30%に発生する。副腎皮質機能低下症の犬における高カルシウム血症の病因は分かっていない。
この症例シリーズは、高カルシウム血症と副腎皮質機能低下症を併発した8頭の犬で測定したカルシウムイオン、上皮小体ホルモン、上皮小体ホルモン関連蛋白、ビタミンD代謝産物濃度を報告する。副腎皮質機能低下症に関連した高カルシウム血症の犬7頭中5頭にカルシウムイオンの上昇が見られた。上皮小体ホルモン、上皮小体ホルモン関連蛋白、1.25ジヒドロキシビタミンD濃度は、それぞれ8頭中7頭、7頭中6頭、7頭中6頭が基準範囲内におさまっていた。
この症例シリーズは、副腎皮質機能低下症に関連する高カルシウム血症は、血漿上皮小体ホルモン、上皮小体ホルモン関連蛋白、あるいは1.25ジヒドロキシビタミンD濃度の上昇にあまり関連することはないことを強調する。(Sato訳)
■犬におけるトリロスタン
Trilostane in Dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2010;40(2):269-283.
Ian K Ramsey

ここ10年で、ステロイド合成拮抗的阻害剤のトリロスタンが、犬の副腎皮質機能亢進症の治療で広く使用されている。トリロスタンは有意に、そして可逆的にコルチゾール産生を低下させ、この疾患のほとんどの犬の臨床症状が随伴的に改善する。副作用はまれにしか見られないが深刻となる可能性があるので、この薬剤で治療した犬は規則的なモニタリングが必要である。この概説は、特にその効果、安全性、副作用、内分泌パラメーターに対する影響に焦点を当て、この薬剤の使用の現在の認識を要約する。犬や他の種におけるその他の使用法についても簡単に述べる。(Sato訳)
■犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の診断に対するコルチゾール前駆物質の評価
Evaluation of cortisol precursors for the diagnosis of pituitary-dependent hypercortisolism in dogs
Vet Rec. May 2008;162(21):673-8.
N S Sieber-Ruckstuhl, F S Boretti, M Wenger, C Maser-Gluth, C E Reusch

健康犬19頭、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(pdh)の犬15頭、他の疾患の犬8頭に合成副腎皮質刺激ホルモン(acth)を注射し、注射前と注射から1時間後のコルチゾール、17アルファ-ヒドロキシプログネノロン、17アルファ-ヒドロキシプロゲステロン、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチゾールの血清濃度を測定した。健康犬と比べ、pdhの犬は両方の測定時間でコルチゾール、17アルファ-ヒドロキシプログネノロン、17アルファ-ヒドロキシプロゲステロン、21-デオキシコルチゾールの濃度が有意に高く、さらに基礎11-デオキシコルチゾール濃度も有意に高かった。他の疾患の犬と比較したとき、pdhの犬の基礎およびacth投与後コルチゾール、基礎21-デオキシコルチゾール濃度が有意に高く、acth投与後11-デオキシコルチゾール濃度が有意に低かった。
他の疾患の犬は、健康犬と比べacth投与後コルチゾール、17アルファ-ヒドロキシプロゲステロン、11-デオキシコルチゾール濃度が有意に高かった。全体的に、17アルファ-ヒドロキシプログネノロン、17アルファ-ヒドロキシプロゲステロン、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチゾールのacth投与後濃度は、コルチゾールのacth投与後濃度よりもばらつきがあり、3群間のそれらホルモンの濃度に大きなオーバーラップが生じる。副腎皮質機能亢進症の診断に対する各ホルモンの感受性および特異性を最大にするため2-グラフ受信者動作特性(roc)分析を使用した。感受性および特異性の最も高かったのは、acth投与後コルチゾール濃度だった。健康犬、pdhの犬、他の疾患の犬の間のオーバーラップは、個々の前駆物質のホルモンは、副腎皮質機能亢進症のスクリーニングとして有効ではないだろうと示唆した。(Sato訳)
■危機的病状における変化した副腎軸とグルココルチコイド治療
The altered adrenal axis and treatment with glucocorticoids during critical illness.
Nat Clin Pract Endocrinol Metab. 2008 Sep;4(9):496-505.
Mesotten D, Vanhorebeek I, Van den Berghe G.

危機的病状は一般的に視床下部-下垂体-副腎軸の活性化に特徴付けられる。かなり高濃度のコルチゾールの発生は、重篤な病状や死の危険性が高まることに関連している。同様に、ストレスの程度に対する不適切な反応は、相対的副腎不全(危機的病状関連性コルチコステロイド不全としても知られている)と呼ばれ、死亡率の増加に関連している。診断を妨害する危機的病状に対する適切な副腎反応の定義と生化学検査に関して多くの議論がある。高容量のグルココルチコイドはこのような状況では効果がないことが証明されており、有害かもしれない。
しかしながら、急性呼吸窮迫症候群や敗血症性ショック症候群のような炎症を伴う危機的疾病患者においては、中程度の用量のグルココルチコイドが提唱されている。POC試験の初期結果からは有望だったが、これまで大規模多施設試験では再現されていない。後者は明確な結論をもたらすには力不足だった。従って、集中治療におけるグルココルチコイド療法の役割は不確実のままである。議論が解決するまで我々は、危機的疾病患者におけるグルココルチコイド療法の使用は臨床家の判断に基づき継続すべきで、ルーチンな補助的使用は避けるべきである。(Dr.Kawano訳)
■下垂体依存副腎皮質機能亢進症のミトタンによる非選択的副腎皮質融解あるいはトリロスタンの治療比較
Comparison of non-selective adrenocorticolysis with mitotane or trilostane for the treatment of dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism
Vet Rec. December 2007;161(24):805-9.
M Clemente1, P J De Andres, C Arenas, C Melian, M Morales, M D Perez-Alenza

下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の46頭の犬を、非選択性副腎皮質融解プロトコールによるミトタンで治療、40頭をトリロスタン1日2回で治療した。治療群はカイ2乗検定で比較し、生存日数はKaplan-Meier survival plots法およびCox proportional hazard法で分析した。非選択性副腎皮質プロトコールは非常に効果的で(89%)、その毒性は中程度(24%)で、再発は伝統的な選択性副腎皮質融解プロトコールで報告されたもの(58%)より少なかった(29%)。多変量モデルで、診断時の年齢および体重は、生存期間に有意に負の相関があった。1日2回のトリロスタンで治療した犬(900日)の生存期間中央値は、ミトタンで治療した犬(720日)より長期だった(P=0.05)。(Sato訳)
■犬の自然発症性副腎皮質機能亢進症における1日2回経口投与による低用量トリロスタン療法の評価
Evaluation of twice-daily, low-dose trilostane treatment administered orally in dogs with naturally occurring hyperadrenocorticism.
J Am Vet Med Assoc. 2008 May 1;232(9):1321-8.
Vaughan MA, Feldman EC, Hoar BR, Nelson RW.

目的: 自然発症性副腎皮質機能亢進症(NOH)の犬において、低用量トリロスタン療法の1日2回の経口投与の効果を評価し、1日1回のトリロスタン投与後の効果の持続時間を評価した。

計画: 前向き研究

動物: 自然発症性副腎皮質機能亢進症の犬28頭

方法: 22頭の犬に最初は12時間毎に0.5~2.5 mg/kgのトリロスタンを経口的に投与した。間隔をおいて犬を再評価した:治療の反応に対する飼い主の判定を記録した。薬の効果持続時間を評価するため、22頭中16頭とさらなる6頭の犬はトリロスタンの1日1回投与後の3-4時間と8-9時間で2回のACTH刺激試験を行った。

結果:1~2週間後、平均トリロスタン投与量は1.4 mg/kg 12時間毎(22 頭の犬; よい反応[臨床症状の消失], 8頭; 乏しい反応, 14頭)だった。4~8週間後、平均投与量は 1.8 mg/kg 12あるいは8時間毎(それぞれn = 21 と1 頭; 15頭がよい反応、5頭は乏しい反応;2頭は不調)だった。2回目の再評価から8~16週間後、残っている犬はよい反応だった(平均投与量, 1.9 mg/kg,12時間毎 [13頭の犬]そして1.3 mg/kg,8時間毎 [3頭])。1日1回投与後の3-4時間と8-9時間で、平均ポストACTH刺激血清コルチゾール濃度はそれぞれ 2.60 と 8.09 Pg/dLだった。

結論と臨床関連:自然発症性副腎皮質機能亢進症の犬において、2頭は治療中に不調になったが、低用量12時間毎でトリロスタンを投与すると効果的であった。薬剤効果は8-9時間で減少する。起こりうる副作用の可能性のため、低用量が評価されるべきである。(Dr.Kawano訳)
■下垂体性副腎皮質機能亢進症の犬における経蝶形骨性下垂体切除後の経過の予後因子
Prognostic factors for outcome after transsphenoidal hypophysectomy in dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism.
J Neurosurg. 2007 Oct;107(4):830-40.
Hanson JM, Teske E, Voorhout G, Galac S, Kooistra HS, Meij BP.

目的:この研究の目的は下垂体性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬における経蝶形骨性下垂体切除後の経過の予後因子を決定することだった。

方法:一人の獣医脳神経外科医が12年間以上でPDHの犬181頭の経蝶形骨性下垂体切除を実施した。カプラン・マイヤー法で生存分析を実施した。ステップワイズ多変量解析に続いて一変量コックス比例ハザード解析で予後因子を分析した。術後早期の尿コルチコイド/クレアチニン(C/C)比に従って区分した3つのグループにおいて無病期間を評価するためにログランク検定を使った。

結果:老齢、大きな下垂体、そして術前の高い血漿副腎皮質刺激ホルモン濃度は、PDH関連死のリスクの増加と関連があることが多変量解析で明らかになった。さらに、大きな下垂体、厚い蝶形骨、術前の高いC/C比そして高い血漿αメラノサイト刺激ホルモン(alpha-MSH)濃度は、下垂体切除後に寛解した犬において病気が再発するリスクと関連があった。術後のC/C比が正常上限(5-10 x 10(-6))である犬より、術後のC/C比が正常下限(< 5 x 10(-6))である犬の方が、無病期間が明らかに長かった。

結論:下垂体の大きさ、蝶形骨の厚さ、血漿αメラノサイト刺激ホルモン濃度そして術前の尿中コルチゾール排泄は、犬のPDHにおいて経蝶形骨性下垂体切除後の長期寛解の指標となることがこの研究結果から示唆される。術後~10週での尿C/C比の測定は腫瘍再発のリスクを予測するためのガイドとして使用できる。(Dr.Kawano訳)
■犬のクッシング病:カベルゴリン治療
Cushing's disease in dogs: Cabergoline treatment.
Res Vet Sci. 2007 Sep 30 [Epub ahead of print]
Castillo VA, Gomez NV, Lalia JC, Cabrera Blatter MF, Garcia JD.
犬の下垂体性皮副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療は原発性の原因であるコルチコトロフィノーマは治療することなく、長い間o-p'-DDD、ケトコナゾールそしてトリロスタンなどの薬で副腎を抑制することに焦点が絞られていた。副腎皮質刺激ホルモン産生細胞はドーパミン受容体D2受容体を発現します;従ってカベルゴリン(Cbg)は治療として効果的かもしれない。
0.07mg/kg/week のカベルゴリンで治療したPDHの40頭の犬を4年間経過観察した。40頭の犬のうち、17頭(42.5%)はカベルゴリンに反応した。治療1年後、ACTH(p<0.0001)、α-MSH (p<0.01)、尿コルチゾール/クレアチニン比 (p<0.001)は明らかに減少し、そして核磁気共鳴検査で腫瘍の大きさ(p<0.0001)も明らかに減少した。カベルゴリンに反応した犬はコントロールグループの犬に比べて明らかに(p<0.001)長く生存した。結論として、カベルゴリンはPDHの犬の42.5%に効果的で治療としての使用が認められる。(Dr.Kawano訳)
■12頭の猫における医原性副腎皮質機能亢進症
Iatrogenic hyperadrenocorticism in 12 cats
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Nov-Dec;42(6):414-23.
Yu-Hsin Lien, Hui-Pi Huang, Pen-Heng Chang

要約
猫における医原性副腎皮質機能亢進症は極めて稀です。進行性皮膚病変とコルチコステロイドによる長期治療の病歴をもつ12頭の猫に関し、回顧的研究を行いました。猫における皮膚以外の徴候は多様で、食欲不振、嗜眠、多飲、多尿、大腿部筋肉の退行などが認められました。検査異常には、白血球増加症、アラニンアミノトランスフェラーゼ値の上昇、そして高血糖がありました。4頭の猫で、一過性の糖尿病が二次的合併症として発現し、4頭の猫で一過性の甲状腺機能低下症が疑われました。徴候の回復平均時間は、コルチコステロイド離脱後、4.9ヶ月でした。(Dr.K訳)
■臨床上正常な犬で下垂体コルチコトロフ(ACTHを産生する細胞)に対するミトタンの影響
Effect of mitotane on pituitary corticotrophs in clinically normal dogs
Am J Vet Res. August 2006;67(8):1385-94.
Takahiro Taoda, Yasushi Hara, Susumu Takekoshi, Johbu Itoh, Akira Teramoto, Robert Y Osamura, Masahiro Tagawa

目的:臨床上正常な犬で、下垂体コルチコトロフの機能と形態に対し、ミトタン投与の影響を評価する

動物:12頭の臨床上正常な成犬のビーグル

方法:犬を無作為にコントロール群またはミトタン投与群に振り分けた。ミトタン投与群では、ミトタンを1ヶ月投与した。両群で、ACTH刺激試験とコルチコトロピン放出ホルモン(CRH)刺激試験を実施した。ミトタン投与群の下垂体と脳のMRIをミトタン投与前後に実施した。CRH刺激試験とMRI後、犬を安楽死し、肉眼および組織検査のため下垂体、副腎を切除した。

結果:CRH刺激後、ミトタン投与群のACTH濃度は、コントロール群よりも有意に高かった。ミトタン投与群の下垂体は、投与前よりも投与後のほうが有意に大きいとMRIで示された。肉眼および組織検査で、副腎皮質は著しく萎縮していた。免疫組織化学検査によりミトタン投与群の下垂体でコルチコトロフの肥大が明らかだった。

結論と臨床関連:それら所見は、臨床上正常な犬でミトタンの長期投与による副腎皮質の抑制は、コルチコトロフの機能的増幅および形態的増大を誘発することを示す。コルチコトロフ腺腫の場合、ミトタンにより誘発された個々コルチコトロフの肥大は、下垂体の拡大を非常に容易にするかも知れずACTH分泌も増加する。(Sato訳)
■犬のクッシング症候群に対する新しい治療のレチノイン酸
Retinoic acid as a novel medical therapy for Cushing's disease in dogs
Endocrinology. September 2006;147(9):4438-44.
Victor Castillo, Damiana Giacomini, Marcelo P?ez-Pereda, Johanna Stalla, Marta Labeur, Marily Theodoropoulou, Florian Holsboer, Ashley B Grossman, G?nter K Stalla, Eduardo Arzt

クッシング症候群は、ほとんどがACTH-分泌下垂体腫瘍で起こるが、効果的な内科療法は現在限られている。レチノイン酸は、げっ歯類モデルでコルチコトロフ分泌および増殖を低下させるのに有効な可能性を示されているため、犬のクッシング症候群でその作用を研究している。クッシング症候群の犬を無作為に振り分け、180日間レチノイン酸(n=22)vs.ケトコナゾール(n=20)で治療した。臨床症状、血漿ACTHおよびアルファ-MSH、尿中コルチゾール/クレアチニン比、下垂体MRI画像を評価し、異なるタイムポイントで比較した。レチノイン酸を投与した犬における血漿ACTHおよびアルファ-MSH、また尿中コルチゾール/クレアチニン比の有意な減少を認めた。
レチノイン酸投与の終了時、下垂体腺腫の大きさも有意に縮小した。生存期間と評価した全ての臨床症状は、レチノイン酸投与犬で改善を見せた。副作用または肝毒性は見られず、効果的かつ安全性も示唆された。ACTH分泌腫瘍の犬に対し、レチノイン酸療法はACTHおよびコルチゾール機能亢進、腫瘍の大きさをコントロールし、臨床的表現型の解消を導く。この研究はクッシング症候群のヒトのACTH分泌腫瘍の治療で、新しい治療法としてレチノイン酸使用の可能性を強調するものである。(Sato訳)
■犬のACTH刺激試験で低用量ACTHの筋肉内投与
Intramuscular administration of a low dose of ACTH for ACTH stimulation testing in dogs
J Am Vet Med Assoc. August 2006;229(4):528-30.
Ellen N Behrend, Robert J Kemppainen, David S Bruyette, Katherine A Busch, Hollie P Lee

目的:健康犬および副腎皮質機能亢進症の犬で、コシントロピン(5?g・kg)IM v.s. IV投与後に達成する副腎刺激の比較

構成:臨床試験

動物:9頭の健康犬と9頭の副腎皮質機能亢進症の犬

方法:両群でACTH刺激試験を2度行った。健康犬は最初コシントロピンIMまたはIV投与に無作為に振り分け、副腎皮質機能亢進症の犬全頭は最初にコシントロピンIV投与を行った。健康犬の血清コルチゾール濃度をコシントロピン投与前(基準)、投与後30、60、90、120分目に測定した。副腎皮質機能亢進症の犬の血清コルチゾール濃度は、コシントロピン投与前と60分後に測定した。

結果:健康犬の血清コルチゾール濃度は、投与経路に関係なくコシントロピン投与後有意に上昇し、IM投与後の血清コルチゾール濃度とIV投与後の濃度に有意差は見られなかった。2つの投与経路で、コシントロピン投与後の血清コルチゾール濃度ピークは60または90分だった。副腎皮質機能亢進症の犬の血清コルチゾール濃度は、コシントロピン投与後基準値に比べ60分で有意に上昇し、IM投与とIV投与後の濃度に有意差はなかった。

結論と臨床関連:結果から、健康犬と副腎皮質機能亢進症の犬に対しコシントロピン5?g/kg IVまたはIM投与により同等の副腎刺激を得られると示唆される。(Sato訳)
■犬に対するミトタン投与に関する急性肝障害
Acute hepatopathy associated with mitotane administration in a dog
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Jul-Aug;42(4):298-301.
Craig B Webb, David C Twedt

アルカリフォスファターゼ酵素活性の持続的高値を伴う成犬を、副腎皮質機能亢進症の疑いでミトタン投与を開始した。1ヵ月後、その犬は間欠的な食欲不振と急性黄疸で来院した。その犬の肝酵素活性と総ビリルビンは著しく高値で、プロトロンビン時間延長、血中尿素窒素とグルコースは低値だった。組織病理検査で、顕著な小葉中心の肝細胞性喪失を示した。ミトタン投与中止後支持療法で回復し、3ヵ月後には正常で、これはミトタン関連肝不全に一致した。(Sato訳)
■猫の原発性高アルドステロン症:13症例
Primary Hyperaldosteronism in the Cat: A Series of 13 Cases
J Feline Med Surg 7[3]:173-182 Jun'05 Original Article 20 Refs
Roderick Andrew Ash, BVetMed, CertSAM, MBA, MRCVS, Andrea M. Harvey, BVSc, CertSAM, MRCVS, Severine Tasker, BSc, BVSc, PhD, DSAM, DipECVIM-CA, MRCVS *

猫原発性高アルドステロン症13症例を、臨床症状、血清生化学、血漿アルドステロン濃度、副腎画像検査、副腎組織の組織病理検査をもとに診断した。2例は全身性高血圧による失明で来院し、残りの11症例は、低カリウム性多発性筋障害から起こる虚弱を示した。血漿アルドステロン濃度上昇と副腎皮質腫瘍を全症例で認めた。7頭は副腎腺腫(5頭片側、2頭両側)で、6頭は片側副腎癌だった。3頭はアムロジピン、スピロノラクトン、グルコン酸カリウムのみの内科療法を行った。
2頭は慢性腎不全による安楽死が行われるまで304日と984日生存し、3番目の症例はオーナーの薬物投与失敗により50日目に安楽死した。10症例は内科療法で安定化を図ったあと外科的副腎摘出を行った。5頭は240-1803日の追跡調査を行ったこの時点で生存している。3頭は、手術中または手術後すぐに出血により安楽死した。1頭は術後14日目に全身性敗血症により安楽死し、残りの1頭は食欲不振や頭側腹部マスの発症により術後1045日に安楽死した。原発性高アルドステロン症は、低カリウム性多発性筋障害及び/または全身性高血圧をもつ中年、老齢猫の鑑別診断として考慮し、まれな病態と考えるべきではないと思われる。(Sato訳)
■下垂体性副腎皮質機能亢進症の犬におけるトリロスタン治療
Trilostane treatment in dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism.
Aust Vet J. 2003 Oct;81(10):600-7.
Braddock JA, Church DB, Robertson ID, Watson AD.

目的:下垂体性副腎皮質機能亢進症で治療している犬におけるトリロスタンの効果を評価すること
構成:1999年9月から2001年7月までシドニーの獣医大学病院において下垂体性副腎皮質機能亢進症で飼い主が飼育している犬における前向き臨床試験
方法:3β-HSDを拮抗的に抑制するトリロスタンで治療した下垂体性副腎皮質機能亢進症の犬30頭を臨床検査、テトラコサクトリン刺激検査、尿中コルチコイド:クレアチニン比測定そして飼い主へのアンケートによって10、30、そして90日それから3ヶ月毎にモニターした。
結果:30頭中29頭はトリロスタン(平均投与量16.7 mg/kg :範囲5.3 ~ 50 mg/kg 、1日1回投与)でうまく治療できた。1頭の反応もよかったが、完全なコントロールに達する前にそれ以外の疾患で死亡した。
結論:トリロスタン投与でこれらの犬は下垂体性副腎皮質機能亢進症をコントロールできた。トリロスタンは安全で効果的そして使用した投与量では副作用は認められなかった。
ほとんどの犬は10~30日間の初期は薬にかなり敏感であり、それから長期間必要投与量が安定するまでより高い投与量を必要としました。尿中コルチコイド:クレアチニン比は薬の効果を評価している間は有効であった。2年以上治療した何頭かは医原性副腎皮質機能低下症のため薬を減らすか一時的に休止する必要があった。(Dr.Kawano訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬に対する経蝶形骨下垂体切除の効果
Efficacy of Transsphenoidal Hypophysectomy in Treatment of Dogs with Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
J Vet Intern Med 19[5]:687-694 Sep-Oct'05 Retrospective Study 38 Refs
Jeanette M. Hanson, Martine M. van 't Hoofd, George Voorhout, Erik Teske, Hans S. Kooistra, and Bjorn P. Meij

下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬150頭の長期生存性、疾患フリー期間、下垂体切除の合併症を前向き研究した。下垂体の大きさに関する長期生存性と疾患フリー期間はカプラン-メイヤー評価法により分析した。1-、2-、3-、4-年生存率はそれぞれ84%(95%信頼区間[CI]、76-89%)、76%(67-83%)、72%(62-79%)、68%(55-57%)だった。治療失敗には、手技に関する死亡(12頭)と不完全な下垂体切除(9頭)があった。1-、2-、3-、4-年無再発率は、それぞれ88%(CI:80-93%)、75%(64-83%)、66%(54-76%)、58%(45-70%)だった。涙産生の術後低下(47頭の58の眼)は多くの場合可逆性だったが、10頭の11の眼は死亡するまで低いままだった。中枢性尿崩症(CDI)は下垂体拡大がない犬(44%)より、下垂体が拡大した犬(62%)でより多く発生した。下垂体切除後の生存と疾患フリー期間は下垂体拡大が見られない犬で著しく長かった。
経蝶形骨下垂体切除はPDHの犬の治療に効果的である。下垂体の大きさが増すと、下垂体切除後の生存および疾患フリー期間は短くなり、CDIの発生は増加する。ゆえに、PDHの早期診断は重要で、非拡大および中程度の拡大を見せる下垂体の犬に第一選択処置として使用すると最善の結果が得られると思われる。(Sato訳)
■上皮小体機能亢進症を併発した犬の副腎皮質機能亢進症
Hyperparathyroidism in dogs with hyperadrenocorticism.
J Small Anim Pract. 2005 Nov;46(11):531-6
Ramsey IK, Tebb A, Harris E, Evans H, Herrtage ME.

目的:犬の副腎皮質機能亢進症(HAC)での副甲状腺ホルモン(PTH)、リン及びカルシウム濃度への影響を評価する。

方法:HACの犬68頭においてPTH濃度とルーチンな生化学パラメーターを測定した。これらの犬の28頭でイオン化カルシウムを測定した。HACの症状を呈さなかった年齢そして体重が合致する20頭の入院患畜から得られた結果と比較した。

結果:2つのグループの間でPTH 、リン、ALP、クレアチニン濃度とアルブミン濃度の間に明らかな違いがあった。総カルシウム濃度とイオン化カルシウム濃度はほとんど変わらなかった。HACの犬のほとんど(92%)のPTH濃度は基準値(10-60pg/ml)以上で、23頭は180 pg/ml 以上であった。PTH と基礎コルチゾール濃度、ポスト副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)コルチゾールとALP濃度、そしてリンとポストACTHコルチゾール濃度には有意な正の相関があった。

臨床関連:副腎からの二次性上皮小体機能亢進症はPTH濃度が増加する原因で、HACの犬におけるカルシウムとリンの代謝異常と関連があるかもしれない。この研究結果から、なぜ犬のHACがカルシウム代謝変化と関連した皮膚石灰症などの臨床症状を惹起するか説明できる。(Dr.Kawano訳)
■ACTH刺激前後のステロイドホルモン濃度
Steroid Hormone Concentrations Before and After ACTH-Stimulation
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:33-34 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Frank LA, Rohrbach BW, Bailey EM, et al.; Dom Anim Endocrinol 2003;24:43-57

イントロダクション:

背景:コルチゾール以上に血清のステロイドホルモンは、犬の診断目的であまり測定されることはない。避妊したかどうか分からない犬、または避妊手術実施後卵巣組織が残っているかもしれない場合、エストラジオールやプロゲステロンが卵巣組織の有無を診断する助けとなるかもしれない。血清テストステロン濃度は、停留睾丸の可能性を調査するのに使用されている。非典型的な副腎皮質機能亢進症の犬で、血清17-ヒドロキシプロゲステロン測定は、コルチゾール濃度が正常範囲内のとき、副腎皮質の機能亢進を確認する補助となるかもしれない。

目的:この研究の目的は、健康な未不妊、不妊オス、メス犬の副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激前後の血清ステロイドホルモン濃度を判定することだった。

サマリー:

方法:17頭の未避妊メス、20頭の未去勢オス、30頭の避妊済みメス、30頭の去勢済みオスから、ACTH刺激前、1時間後の血清ステロイドホルモン測定のため採血した。分析したステロイドホルモンは、コルチゾール、プロゲステロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、硫酸ジヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)、アンドロステンジオン、テストステロン、エストラジオールだった。

結果:血清DHEAS、アンドロステンジオン、テストステロン濃度は未去勢オスでより高値を示した。未避妊メスのプロゲステロン濃度はより高かった。未去勢オスでACTH刺激に対する血漿テストステロンおよびDHEASの反応はなく、血漿コルチゾールの反応はより低かった。他の群で、ACTH刺激後のテストステロン、DHEAS濃度はわずかにより高い増加を示した。血清エストラジオール濃度は全群同様、ACTH刺激に対する反応で増加を示さなかった。不妊犬に比べ、未不妊犬のACTH刺激前後の17-ヒドロキシプロゲステロンは有意に大きかった。全群、ACTH刺激後の血清プロゲステロン濃度は有意に高かった。
結論:血清エストラジオール濃度は、未避妊、避妊済み犬の鑑別に使用すべきではない。ACTH刺激後の血清コルチゾール濃度は去勢オスでより低値を示す。

臨床への影響:

健康な未不妊および不妊犬、同じく副腎皮質や性腺障害の犬の血清エストラジオール濃度を予測するより多くの報告が必要とされる。この報告をもとに、血清エストラジオール濃度は、犬の性別または不妊状態を鑑別する助けにならない。
この研究の他の主な所見は、ACTH後の血清コルチゾール濃度はメスや未去勢オスよりも去勢済みオス犬でより低い。よって副腎皮質機能亢進症の去勢済みオスイヌは、ACTH刺激で顕著な反応を起こす可能性があるが、その反応を標準参照範囲で評価するとき、正常範囲内に落ち込む可能性がある。しかし、これは起こりそうもなく、副腎皮質機能亢進症の早期や中期でのみ起こるだろう。(Sato訳)
■猫の副腎皮質機能低下症
Feline Hypoadrenocorticism
Compend Contin Educ Pract Vet 27[9]:697-706 Sep'05 Review Article 14 Refs
Bronya Redden, DVM

猫の副腎皮質機能低下症はまれな疾患ではあるが、疑わしい臨床症状、電解質不均衡の患者では考慮すべきである。今回、猫の副腎皮質機能低下症の原因、臨床症状、典型的な血液検査異常、診断、治療を再検討する。副腎皮質機能低下症と診断された2歳の去勢済み家猫短毛種の症例も紹介する。初回副腎低下発症の管理は、入院して静脈輸液、デキサメサゾン、持続性デオキシコルチコステロンピバレートの筋肉内投与であった。それからの管理は、25-30日ごとに持続性デオキシコルチコステロンピバレートの筋肉内投与によるミネラルコルチコイドと経口プレドニゾロンによる定期的なグルココルチコイドで行った。血清電解質は、定期的にモニターした。診断後3年、その猫はうまく管理されており、持続処置ですばらしい長期予後を示している。(Sato訳)
■ミトタンまたはトリロスタンで治療した下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬の生存期間の比較
A Comparison of the Survival Times of Dogs Treated with Mitotane or Trilostane for Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
J Vet Intern Med 19[6]:810-815 Nov-Dec'05 Retrospective Study 20 Refs
E.N. Barker, S. Campbell, A.J. Tebb, R. Neiger, M.E. Herrtage, S.W.J. Reid, and I.K. Ramsey *

下垂体依存性副腎皮質機能亢進症を治療した148頭の犬の生存期間を、1998から2003年のイギリス獣医センター3箇所の臨床記録を使用して調査した。それらの犬のうち、123頭(83.1%)はトリロスタン、25頭(16.9%)はミトタンで治療していた。t-検定、分散分析(またはそれらノンパラメトリック当量)、カイ二乗検定で治療群を比較した。生存データは、カプラン-メイヤー生存プロットとCox proportional hazard methodsで分析した。
各センター、治療群間による集団間の有意差は認められなかった。トリロスタンで治療した犬の生存期間中央値は662日(範囲8-1971日)で、ミトタンは708日(範囲33-1399日)だった。両治療間の生存期間に有意差はなかった。多変量モデル(薬剤、センター、犬種、体重、診断群、診断時の年齢)で、診断時の年齢と体重のみ有意に生存に対しネガティブに関連していた。重要なことは、生存に対し薬剤選択の有意な影響はなかった。(Sato訳)
■血漿17-ヒドロキシプロゲステロン濃度と副腎皮質機能亢進症の診断
Plasma 17-Hydroxyprogesterone Concentration and the Diagnosis of Hyperadrenocorticism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:34-35 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Ristic JME, Ramsey IK, Heath FM, et al. The use of 17-hydroxyprogesterone in the diagnosis of canine hyperadrenocorticism. J Vet Intern Med 2002; 16: 433-439

イントロダクション

背景:コルチゾールは、コレステロールをコルチゾールの産生前の種々の中間、活性合成物に変換する酵素活性の合成カスケードにより副腎皮質で産生される。プロゲステロンや17-ヒドロキシプロゲステロンなどの、この経路に沿った副腎ステロイドのいくつかはグルココルチコイド様効果を持つ。副腎腫瘍によるイヌネコの副腎皮質機能亢進症のいくらかの症例は、正常、または正常以下のコルチゾールであるが、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)投与に応じて17-ヒドロキシプロゲステロンまたはプロゲステロン上昇すると述べられている。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症も非皮質副腎ステロイドが上昇していると述べられている。

目的:この研究の目的は、血漿17-ヒドロキシプロゲステロン濃度が、非典型的副腎皮質機能亢進症の診断の一助となるかどうかを判定することである。

サマリー

方法:副腎皮質機能亢進症の24頭のイヌを、完全病歴、身体検査、CBC、血清生化学、ACTH投与に対する血漿コルチゾールと17-ヒドロキシプロゲステロンを入手することで評価した。ほとんどの症例に低用量デキサメサゾン抑制試験(LDDST)を行った。腹部超音波検査、内因性血漿ACTH濃度など下垂体依存性副腎皮質機能亢進症と副腎腫瘍を鑑別する検査も実施した。
ACTHに対するそれらのコルチゾールをもとにイヌを2群に振り分けた。11頭は1群で、ACTH投与後血漿コルチゾール濃度が上昇し、副腎皮質機能亢進症の診断がなされた。2群は13頭で、6頭はACTH刺激試験陰性、異常LDDSTを示し2A群、4頭はACTH刺激試験とLDDST陰性を示し2B群、3頭はACTH刺激試験陰性とLDDST中血漿低コルチゾール濃度を示し2C群とさらに再分化した。1群のイヌは、副腎皮質機能亢進症の典型的な臨床症状、CBC、血清生化学異常を呈した。

結果:1群すべてACTH刺激後、血漿17-ヒドロキシプロゲステロン濃度が上昇していた。1群で、7頭は下垂体依存性副腎皮質機能亢進症、2頭は副腎腫瘍が分かり、2頭は鑑別試験を行わなかった。1群で下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の6頭と副腎腫瘍2頭中1頭はミトタンで治療し、コルチゾールと17-ヒドロキシプロゲステロン濃度をかなり低下させ、反応が良かった。2ヶ月間トリロスタンで治療した1頭は、血漿コルチゾールが低下したが、ACTHの反応で17-ヒドロキシプロゲステロンは低下しなかった。
2群の13頭は、副腎皮質機能亢進症の典型的な臨床症状、CBC、血清生化学異常を呈した。2群全頭ACTHの反応で、血漿17-ヒドロキシプロゲステロン濃度が上昇していた。ACTHに対する反応で、1群の血漿17-ヒドロキシプロゲステロン濃度は2群よりも有意に高かった。
下垂体依存性副腎皮質機能亢進症は、2A群の6頭、2B群の3頭で診断された。2C群の全3頭、2B群の1頭で副腎腫瘍が見つかった。ミトタンで治療した2群の10頭中、2A群の3頭はコルチゾールと17-ヒドロキシプロゲステロンが顕著に低下していた。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の2A群のほかの1頭と2B群の2頭は、ミトタン治療で臨床改善が見られたが、内分泌検査結果は言及しなかった。トリロスタンで治療した2B群の1頭は、ACTH後コルチゾールが低下したが、17-ヒドロキシプロゲステロンは上昇した。2B群の副腎腫瘍のイヌは、副腎摘出を行い、その後ACTHの反応で血漿コルチゾールと17-ヒドロキシプロゲステロンが低下した。2C群のミトタンで治療した副腎腫瘍の2頭は、当初臨床反応があり、最終的に組織病理学的に副腎腫瘍を確認した。

結論:ACTHに対する反応で17-ヒドロキシプロゲステロンの測定は、適当な臨床異常を持つイヌの副腎皮質機能亢進症の診断を確認するのに有効であるが、標準ACTH刺激試験やLDDSTの結果が正常なイヌはそうではない。

臨床への影響

17-ヒドロキシプロゲステロンの測定は、副腎皮質機能亢進症の臨床症状をもつイヌで考慮すべきだが、副腎機能検査が正常なイヌはそうではない。正常コルチゾールとACTHに対する異常な17-ヒドロキシプロゲステロンを認める副腎皮質機能亢進症の頻度は不明である。しかし、17-ヒドロキシプロゲステロンの測定は、ACTHに対する正常なコルチゾール反応を持つイヌで、2番目の段階のLDDSTの代替と考慮できた。副腎皮質機能亢進症の診断で、17-ヒドロキシプロゲステロンの感受性と特異性は判定が必要である。(Sato訳)
■ボーダーコリーの家族性副腎皮質機能低下症
Familial Hypoadrenocorticism in Bearded Collies
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:36 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Oberbauer AM, Benemann KS, Belanger JM, et al. Inheritance of hypoadrenocorticism in bearded collies. Am J Vet Res 2002;63:643-647

イントロダクション

背景:イヌの原発性副腎皮質機能低下症は、通常リンパ球性副腎炎の結果起こる。若年から中年のメスで発生率が最も高い。臨床症状は、食欲不振、嘔吐、虚脱である。血清電解質測定で、通常定ナトリウム血症と高カリウム血症が現れる。リンパ球性副腎炎とその後の原発性副腎皮質機能低下症に対する家族性傾向がありえる。

目的:この報告目的は、ボーダーコリーの副腎皮質機能低下症の遺伝を報告することだった。

サマリー

方法と結果:1249頭のボーダーコリーのうち、635頭は、副腎皮質機能低下症の表現型を持つことが分かった。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験に対する不十分な反応をもとに、副腎皮質機能低下症の診断を60頭に下した。

結論:罹患犬の血統の評価で、遺伝のタイプは現れなかったが、副腎皮質機能低下症の遺伝性は高いと考えられた。

臨床への影響

この報告のイヌの診断の確実性は不明である。6人の著者のうち獣医師は1人もいない。診断の詳細は、イヌのオーナーにより提供されているようで、イヌにかかわった獣医師によるものではなかった。全頭非特異的な嗜眠、嘔吐、虚脱などの症状を呈した後、ACTH刺激試験を行っていた。ACTH刺激試験の性質(IM、IV、タイミング)は提供されなかった。
従来の方法で行うならば、ACTH刺激試験後適切に刺激が起こらなかったことは、原発性、または二次性副腎皮質機能低下症の特徴である。二次性副腎皮質機能低下症は、来院前の数週間の持続性グルココルチコイド注射、または眼病、眼科、皮膚薬剤として局所グルココルチコイドの毎日の使用により起こりえる。血清電解質濃度は提供されず、治療の反応は報告されなかった。罹患メスの予期される優勢は起こらなかった。副腎皮質機能低下症の種類、または原因を明らかにする検死は行われなかった。ボーダーコリーは、家族性原発性副腎皮質機能低下症のリスクがあるかもしれないが、それを確かめる他の研究が必要だろう。(Sato訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のアルドステロン効果
Aldosterone Effects in Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:34-35 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Goy-Thollot I, Pechereau D, Keroack S, et al. J Sm Anim Pract 2002;43:489-492

背景:自発性副腎皮質機能亢進症の85%に至るイヌに高血圧が認められる。多くの症例で、副腎皮質機能亢進症の治療後も高血圧が持続する。副腎皮質機能亢進症のイヌのアルドステロン分泌を評価した研究は、相反する結果をもたらし、ある状態のイヌは異常なしで、他のイヌは、アルドステロンの増加が認められた。ヒトでコルチコステロイド過剰による高血圧は、アルドステロンに依存することが明白である。

目的:この研究目的は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のある症例で、アルドステロン分泌の増加により起こっている、または永続しているのかどうかを判定することだった。

サマリー

方法:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)のイヌ13頭と、健康な実験ビーグル11頭で研究した。PDHのイヌはミトタンの10日間の導入治療(50mg/kg/day)の前後と治療後3ヶ月目に検査を実施した。コントロール犬は1回だけ検査した。血圧は、全頭ドップラー超音波を用い評価した。血漿アルドステロンとコルチゾール濃度を、合成副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)投与前と投与後1時間目に測定した。血漿ナトリウムとカリウム濃度を各評価期間に測定した。

結果:副腎皮質機能亢進症のイヌの安静時、そしてACTH後の血漿コルチゾール濃度は、コントロールよりも有意に高かった。治療後、ACTH後コルチゾール濃度は、治療前の値よりも2回の検査時に有意に低下していた。ミトタン治療3ヵ月後の平均ACTH後コルチゾール濃度は、174mmol/lだった。
PDHのイヌのACTH前後の血漿アルドステロン濃度は、両方ともコントロールよりも有意に低かった。ミトタン投与は、PDHのイヌの安静時アルドステロン濃度に有意な変化をもたらさなかったが、平均ACTH後アルドステロンに有意でかなりの低下を引き起こした。
PDHのイヌの血漿ナトリウム濃度は、ミトタン治療前後いかなるときの測定値でコントロールよりも有意に高かった。PDHのイヌで、治療前の値と比べ、ミトタン治療3ヵ月後血漿ナトリウムのわずかだが有意な減少を認めた。研究中どの時期でも、血漿カリウム濃度に違いは見られなかった。
PDHのイヌの9頭は、収縮期動脈圧が200mmHgを超えており、コントロールに比べPDHの全頭は、どの時でも有意に高かった。治療前、治療から10日後、3ヵ月後のPDHのイヌの平均収縮期血圧は、それぞれ202、193、183mmHgだった。血圧に対する治療の有意な効果は認められなかった。
結論:副腎皮質機能亢進症のイヌで高血圧は一般的であるが、血漿アルドステロン濃度の上昇は、PDH誘発高血圧の原因としての役割を演じない。
臨床への影響
高血圧は、高血圧網膜症、神経症状、腎疾患などの深刻な合併症を起こす可能性がある。副腎皮質機能亢進症のイヌでよく認められる蛋白尿は、長期高血圧の結果かもしれない。ヒト副腎皮質機能亢進症の高血圧の病因は、過剰なアルドステロン分泌ではなく、内因性昇圧物質に対する感受性増加の結果が少なくとも存在すると思われる。ミトタン治療後、ACTH後血漿アルドステロン濃度の有意な低下は、その薬剤は「選択性」副腎皮質溶解薬と述べられるが、刺激に対する反応でアルドステロン分泌低下は、一般にその投与に関係すると思わせるものである。(Sato訳)
■下垂体依存性副腎皮質機能亢進症を持つ犬におけるアルドステロン、コルチゾール、カリウム血清濃度に対するトリロスタンの影響
Effect of trilostane on serum concentrations of aldosterone, cortisol, and potassium in dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism.
Am J Vet Res 65[9]:1245-50 2004 Sep
Wenger M, Sieber-Ruckstuhl NS, Muller C, Reusch CE

目的:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の犬でアルドステロン、コルチゾール、カリウム血清濃度に対するトリロスタンの影響を評価し、アルドステロンとコルチゾールの低下程度の比較、健康犬のアルドステロン濃度とPDHの犬のそれとの比較を行った。

動物:PDHの犬17頭と健康犬12頭

方法:PDHの犬に対し、トリロスタンの初回投与量を体重に従い選択した。CBC数、血清生化学分析、ACTH刺激試験を各犬で実施した。治療開始後1、3-4、6-8、10-12週目に犬を評価した。健康犬の評価は1回のみとした。

結果:トリロスタンによる治療開始後、ACTH刺激前の血清アルドステロン濃度は有意に変化しなかった。治療開始後各評価時、ACTH刺激後の血清アルドステロン濃度は、治療開始前に対応する濃度よりも有意に低かった。血清アルドステロン濃度に対するトリロスタンの総合的影響は、血清コルチゾール濃度に対する影響よりも明確でなかった。カリウム濃度中央値はトリロスタン治療開始後わずかに上昇した。PDHのイヌは健康犬と比べ、ACTH刺激前後の血清アルドステロン濃度が有意に高かった。

結論と臨床関連:トリロスタンによる治療は、PDHの犬の血清コルチゾールおよびアルドステロン濃度の低下を起こさせたが、血清アルドステロン濃度の低下は血清コルチゾール濃度の低下よりも小さかった。治療中の血清アルドステロン濃度とカリウム濃度に相関はなかった。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症を併発した犬のマイコバクテリウム・ゴンヂ感染
Mycobacterium goodii infection in a dog with concurrent hyperadrenocorticism
Volume 15 Issue 5 Page 331 - October 2004
Case report
SHARON L. BRYDEN, AMANDA K. BURROWS and AMANDA J. O'HARA

9歳のボストンテリアが、組織学評価と細菌同定からマイコバクテリウムsmegmatis群に属す病原体による多病巣性結節性皮下脂肪織炎と診断された。直接遺伝子配列分析によりマイコバクテリア種と同定し、マイコバクテリウムgoodiiと確認した。9ヶ月間、マイコバクテリア性皮下脂肪織炎に対し、ドキシサイクリンとシプロフロキサシンを使用した治療でうまくいった。通常の診断法で併発下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(クッシング)も確認され、ミトタン投与を実施した。
抗菌剤投与中止後14ヶ月の経過で、マイコバクテリア感染の再発はなかった。犬下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の合併症として皮膚感染は良く認められるが、全ての急速に増殖するマイコバクテリウムが原因の、併発マイコバクテリア性皮下脂肪織炎は過去に報告されていない。本稿は犬のマイコバクテリウムgoodiiによるマイコバクテリア性皮下脂肪織炎を始めて確認した症例報告で、併発内因性クッシング病の犬における急速に増殖するマイコバクテリア性感染の最初の報告でもある。(Sato訳)
■副腎皮質機能低下症と筋けいれん
Hypoadrenocorticism and Muscle Cramps
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:36-37 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Saito M, Olby NJ, Obledo L, et al. J Am Anim Hosp Assoc 2002;38:437-443

背景:筋けいれんは、運動ニューロン活動亢進の結果起こる。けいれんは限局性、有痛性で筋肉線維束攣縮に関与する。分かっている原因は、運動ニューロン疾患、電解質や体液異常、運動、薬剤誘発、甲状腺機能低下症や甲状腺機能亢進症、真性糖尿病である。特発性の症例も見られる。犬で筋けいれんが、症状として出ることはまれである。

目的:この報告の目的は、副腎皮質機能低下症のスタンダードプードルで筋けいれんの臨床像を述べることだった。

サマリー

症例報告:副腎皮質機能低下症の病歴を持ち、フルドロコルチゾンとプレドニゾンの経口投与による補充療法を行っている2頭のスタンダードプードルが、前肢、後肢に間歇的に起こる有痛性筋けいれんを呈した。筋けいれんは、副腎皮質機能低下症の診断そして治療前約1ヶ月から始まった。検査所見で、高アルブミン血症、高窒素血症、低ナトリウム血症、低塩素血症、高カリウム血症が見られた。検査所見で最も異常だったのは、低ナトリウム血症だった。最初の症例のフルドロコルチゾンの投与前、投与中の血清ナトリウム濃度は、127-132mmol/lの範囲だった。治療をデオキシコルチコステロン・ピバレート注射に変更することで、血清化学異常や筋けいれんが解消した。

結論:副腎皮質機能低下症が、スタンダードプードルの有痛性筋けいれんに関与する可能性がある。

臨床への影響

この報告のスタンダードプードルの肢けいれんの臨床症状は印象的である。その症状は副腎皮質機能低下症のイヌの他のオーナー、またはそのイヌの治療を行っている臨床医でも見逃すことのない症状だろう。また、この報告の2頭のイヌは、副腎皮質機能低下症に関与する筋けいれんの最初の報告例である。
そのイヌは、副腎皮質機能低下症を治療しない、そして治療が不適切な間、筋けいれんに悩まされていた。症例報告から、副腎皮質機能低下症が筋けいれんを誘発刺激したことは明確だが、基礎にある原因は不明である。運動ニューロンの遺伝による潜在性の異常が原因のようである。スタンダードプードルは比較的珍しく、報告にある2頭は、同じ地域で生まれている(ノースキャロライナ)。しかし、2頭の血縁関係の可能性は報告されなかった。副腎皮質機能低下症を持つ、または持たない筋けいれんのスタンダードプードルの家族系列の病歴を今後調査すべきである。(Sato訳)
■副腎皮質機能亢進症の下垂体の大きさと相関するACTH前駆物質の血漿濃度
Plasma Concentrations of ACTH Precursors Correlation to Pituitary Size in Hyperadrenocorticism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:6-7 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Bosje JT, Rijnberk A, Mol JA, et al. Dom Anim Endocrinol 2002; 22:210-210

イントロダクション

背景:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)は、下垂体からの過剰な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)産生が原因である。プロオピオメラノコルチンは、ACTHおよびアルファメラニン細胞刺激ホルモン(アルファMSH)、エンドルフィン、ベータリポトロピンなどの他のペプチドから由来する前駆物質分子である。それらペプチドは、ACTHと共同分泌される。

目的:この研究目的は、PDHの犬が下垂体の大きさ、ACTH分泌のデキサメサゾン抑制に対する抵抗性の程度に関連する血漿ACTH前駆物質濃度を持つかどうかを調査することだった。

サマリー

方法:PDHの72頭のイヌを研究した。副腎皮質機能亢進症は、コルチゾール:クレアチニン比の評価をもとに診断した。副腎皮質機能亢進症の下垂体起源を経口デキサメサゾン抑制後の尿中コルチゾール/クレアチニン比の抑制、または血漿ACTH濃度上昇所見により判定した。診断後、血漿ACTH、血漿ACTH前駆物質濃度測定のために全頭採血した。
血漿ACTH前駆物質は、ACTH分子のアミノ酸塩基配列5-18に対する抗体を用いたラジオイムノアッセイで測定した。ACTH前駆物質分析で得られた結果を、ACTH前駆物質濃度を出すため、特定ツーサイトイムノメトリックACTH分析を使用して得られた結果から差し引いた。血漿アルファMSH濃度も測定した。下垂体窩のCT検査を実施し、下垂体の高さと下垂体レベルの脳の部分を判定した。それら測定値をもとに、下垂体高さ/脳エリア比(P/B)を算出した。

結果:デキサメサゾンの投与は、53頭の尿コルチゾール/クレアチニン比を基準比の50%以下に抑制したが、19頭はデキサメサゾン抑制に抵抗性だと思われた。P/B比は、下垂体が拡大している38頭の犬で増加した。血漿ACTHではなくACTH前駆物質濃度は、拡大した下垂体のイヌで有意に高かった。P/B比は、デキサメサゾン抵抗性の程度に有意に相関していた。
デキサメサゾンに感受性のイヌと比べ、デキサメサゾン抵抗性のイヌの血漿ACTHではなくACTH前駆物質濃度が有意に高かった。血漿アルファMSH濃度の上昇は、14頭の犬に認められた。アルファMSH上昇のイヌのACTH前駆物質とACTH濃度は、正常アルファMSHのイヌのそれらより有意に高かった。アルファMSHの上昇したイヌのP/B比は、正常アルファMSHの犬より有意に高かった。おそらく下垂体の中葉に位置する腫瘍が見られた犬もいた。

結論:下垂体拡大、デキサメサゾン抵抗性、血漿ACTH前駆物質濃度の上昇の関連は、グルココルチコイドに対する感受性の低下が、下垂体腫瘍成長の役割を演じることを示すのかもしれない。

臨床への影響

この研究で得られた所見は、大きな下垂体腫瘍は比較的デキサメサゾン抑制に抵抗することを示す。下垂体巨大腺腫の局所影響による可能性のある臨床症状に関した懸念が起こった場合、デキサメサゾンに反応する抑制の欠如は、巨大腺腫を支持するだろう。下垂体の画像検査を行うかどうか決断する手助けにこれが使用できる可能性がある。(Sato訳)
■獣医専門医による副腎皮質機能亢進症の診断
Diagnosis of Hyperadrenocorticism by Veterinary Specialists
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:30-31 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Behrend EN, Kemppainen RJ, Clark TP, et al. Diagnosis of hyperadrenocorticism in dogs: a survey of internists and dermatologists. J Am Vet Med Assoc 2002;220:1643-1649

イントロダクション

背景:イヌの副腎皮質機能亢進症の診断検査を評価した報告が多数あるにもかかわらず、最も確かな診断検査の一致する見解はいまだない。スクリーニング試験には、低用量デキサメサゾン、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激、尿コルチゾール:クレアチニン比がある。鑑別検査に、内因性ACTH濃度、高用量デキサメサゾン抑制試験がある。
目的:この研究目的は、イヌの副腎皮質機能亢進症の獣医内科医、皮膚科医により使用される診断プロトコールを比較した。

サマリー

方法:43人の獣医皮膚科医、または161人の内科医から、副腎皮質機能亢進症の診断方法に対する206の質問の答えを評価した。
結果:回答の26%は、副腎皮質機能亢進症の臨床症状がなく、検査所見の疑いもないイヌに対し、副腎皮質機能亢進症のスクリーニング検査を行うだろうと述べた。残りの74%は、そのようなイヌのスクリーニング検査をまれに、または実施しないだろうと述べた。86%は、血清アルカリフォスファターゼが正常範囲内ならば、副腎皮質機能亢進症を除外するだろうと述べた。専門医の55%は、低用量抑制試験をスクリーニング検査として好んで使用した。
副腎皮質機能亢進症に一致する臨床、検査所見がほとんどなければ、68%の回答者が最初の検査が陽性ならば2回目のスクリーニング検査を実施するだろうと述べた。副腎皮質機能亢進症の診断が確立された後、多くの専門医は鑑別試験を望んでいた。内因性ACTH測定または高用量デキサメサゾン試験の好みは明確ではなかった。腹部超音波検査はよく使用されるが、CTまたはMRIはあまり使用されないとはいえ、専門医の半数以上がどちらか、または両方を利用していた。

結論:低用量デキサメサゾン抑制試験は、副腎皮質機能亢進症の最も一般的に使用されるスクリーニング検査である。

臨床への影響

正常な血清アルカリフォスファターゼ活性のとき、副腎皮質機能亢進症の診断を多くの専門医に思いとどまらせることはないが、イヌへの2週間以上のグルココルチコイドの生理学的以上の投与は、イヌの存在するステロイド誘発アイソザイムのため、一貫して血清アルカリフォスファターゼの顕著な上昇を起こす。臨床症状が認められるとき、血清アルカリフォスファターゼ活性は、正常範囲上限のほぼ4倍以上は常に認められる。
臨床症状に沿ったこの内因性生物活性(血清アルカリフォスファターゼ活性)は、利用可能などんな単一スクリーニング検査よりも信頼がある。その特異性は低いが、感受性は、医原性副腎皮質機能亢進症と同様、自発性副腎皮質機能亢進症のイヌで非常に高くなるはずである。血清アルカリフォスファターゼ活性の上昇が高率に見られないと報告する過去の回顧的研究の診断基準は、今日厳密ではない。過去の研究の多くは、副腎皮質機能亢進症の臨床症状が見られないものも含み、特に特異性の低い単回静脈投与低用量デキサメサゾンなど1回のスクリーニング試験をもとにした。
正常な血清アルカリフォスファターゼ活性の副腎皮質機能亢進症を疑うイヌは、副腎皮質機能亢進症の診断に行き着く前の症例に疑われる他のものより、より完全に調査すべきである。自発性と医原性副腎皮質機能亢進症の検査所見で不同性の理由は、いまだ確立されていない。(Sato訳)
■トリロスタンによる下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療
Trilostane Treatment of Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:32-33 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Neiger R, Ramsey I, O'Connor J, et al. Trilostane treatment of 78 dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism. Vet Rec 2002;150:799-804

イントロダクション

背景:イヌの副腎皮質機能亢進症のほとんどの効果的な治療は、副腎皮質の束状帯と細網の選択的溶解を起こすため、ミトタンが投与されている。効果的であるのだが、ミトタン投与の副作用は、一般的で時には深刻である。ケトコナゾールやトリロスタンのような副腎ステロイド合成阻害剤は、深刻で不可逆的なミトタンの多くの副作用もなく効果的かもしれない。

目的:この研究目的は、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療で、イヌのトリロスタンの効果と安全性を評価することである。

サマリー

方法:78頭のイヌで、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)刺激試験と低用量デキサメサゾン抑制試験、内因性ACTH濃度、副腎の超音波検査などの検査を組み合わせ、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の診断を下した。9頭の内分泌検査結果は、決定的ではなかったが、臨床症状、臨床病理学所見、他に考えられる疾患の除去、超音波での副腎所見をもとに副腎皮質機能亢進症の診断を下した。
体重をもとに以下の投与量のトリロスタンを1日1回イヌに投与した。5kg以下は30mg、5-20kgは60mg、20kg以上は120mgとした。平均開始投与量は5.9mg/kgで範囲は1.8-20mg/kgだった。
投与後、10日目、4、12、24週目、その後3-6ヶ月ごとにイヌを再評価した。評価は、経過、身体検査、ACTH反応試験、必要なときは生化学検査を行った。副腎皮質機能亢進症の臨床症状の持続、特にACTH後血漿コルチゾール濃度が250nmol/l以上ならば、1日1回を2回投与することでトリロスタンを増量した。副腎皮質機能低下症の症状があり、ACTH後コルチゾール濃度が20nmol/l以下ならば、トリロスタン投与を2日間中止し、それから次のより低い投与量に減量した。

結果:23頭の投与量は、開始投与量から125%-400%増加した。9頭の投与量は、25-83%低下した。6ヵ月後の最終のトリロスタン平均投与量は11.4mg/kgで、範囲は3-27.3mg/kgだった。2頭でトリロスタン投与は2ヶ月、3ヶ月目に中止し、その理由は、基礎、そしてACTH後コルチゾール濃度が2頭で低く、また1頭は高カリウム、低ナトリウム血症のためである。それら2頭は、追加の治療もなく副腎皮質機能亢進症の臨床症状がなく、1.8年と2.7年維持した。
多飲多尿、多食は、通常投与中1回目、2回目の評価でそれら症状を呈するイヌの70%が解消した。皮膚異常は、62%が3ヶ月以内に顕著に改善、または解消した。2ヶ月以上投与した8頭だけが臨床症状をうまくコントロールできなかった。
平均基礎、ACTH後コルチゾール濃度の有意な低下は、投与中の各評価で認められた。ACTH後コルチゾール濃度は、投与中最初の評価時81%のイヌで250nmol/l以下に低下し、他15%のイヌは約4週間後に低下した。投与中1回の評価しかしなかった3頭と複数回評価した3頭は、ACTH後コルチゾール濃度が250nmol/l以上だった。
軽度高カリウム血症が6頭、軽度高窒素血症が2頭、軽度高ビリルビン血症が3頭、軽度高カルシウム血症が2頭見られた。臨床上副腎皮質機能低下症が2頭で発症した。1頭は1ヶ月15mg/kgで投与し、もう1頭はトリロスタン投与量をモニターしなかった。高カリウム血症、低ナトリウム血症、低コルチゾール血症、ACTHに対する最小反応が両症例で認められた。
1頭はトリロスタンの中止や支持療法によく反応し、もう1頭はトリロスタンの中止とプレドニゾンの投与後死亡した。別の2頭は、トリロスタン投与中に死亡し、そのうち1頭は、治療開始後2日目に原因不明で、もう1頭はトリロスタン投与開始後2日目に起こった病気の経過2日目に死亡した。後者のイヌの検死時、心内膜炎、肺水腫、胃潰瘍が認められた。研究終了時、78頭中51頭が生存していた。死亡した17頭で、生存期間中央値は549日だった。

結論:トリロスタンは、イヌの下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の効果的で安全な治療である。

臨床への影響

ミトタン治療を評価したものとこの研究の比較を下に、トリロスタンは下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のより安全な治療であることが分かる。治療の反応が完全に述べられていないので、トリロスタンの治療効果は不明である。血漿コルチゾール濃度抑制の持続期間はほんの数時間のため、1日2回の投与でより良いコントロールが得られるかもしれない。トリロスタンはグルココルチコイド同様ミネラルコルチコイドも抑制し、少数のイヌで、副腎皮質機能低下症の臨床症状や、低ナトリウム血症と高カリウム血症を示す。副腎皮質機能低下症は、この研究の少なくとも1頭で認められたように、トリロスタンの中止で可逆的と予想される。トリロスタンは北アメリカで使用認可はなく、入手もできない。(Sato訳)
■トリロスタンで治療した下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の犬の副腎の超音波像変化
Changes in ultrasonographic appearance of adrenal glands in dogs with pituitary-dependent hyperadrenocorticism treated with trilostane.
Vet Radiol Ultrasound 44[6]:682-5 2003 Nov-Dec
Mantis P, Lamb CR, Witt AL, Neiger R

3ベータ-ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害剤のトリロスタンは、イヌの下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の治療で、ここ数年うまく使用されている。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のイヌ19頭の前向き研究で、トリロスタン療法開始前と開始後6ヶ月以上経過してから副腎を測定した。右の副腎の長さ、尾側柱の厚さそして左副腎尾側柱の厚さが有意に増していた(p<または=0.05)。左副腎の長さは優位な変化が見られなかった。トリロスタン療法中の副腎の拡大は、コルチゾール産生に影響する負のフィードバックメカニズムの抑制を結果として起こすのかもしれない。(Sato訳)

1錠中 トリロスタン 60mg(デソパン錠)
■犬の副腎皮質機能亢進症の外科的治療
Surgical Treatment of Canine Hyperadrenocorticism
Compend Contin Educ Pract Vet 25[5]:334-346 May'03 Review Article 58 Refs
Todd W Axlund, DVM, DACVIM (Neurology); Ellen N. Behrend, VMD, PhD, DACVIM (Internal Medicine) and James T. Winkler, DVM, MS, DACVS *

副腎皮質機能亢進症は機能的脳下垂体または副腎皮質の腫瘍から起こる犬の病気としては一般的である。副腎皮質機能亢進症の犬の症例の80~85%が脳下垂体の前葉または中葉どちらかの腫瘍が原因である。鑑別検査(たとえば内分泌検査、進んだ画像調査)が脳下垂体依存性副腎皮質機能亢進症か副腎依存性副腎皮質機能亢進症かを鑑別するために考えられている。治療で内科または外科が選択される。しかしながら腫瘍切除手術は治癒、癌化の恐れ、腫瘍の転移の恐れ、侵襲性増殖の恐れの排除へ最も強い可能性をもつ。(Dr.Massa訳)
■クッシング症候群に見られる凝固性亢進状態に対する生化学的基準
Biochemical Basis for the Hypercoagulable State Seen in Cushing Syndrome
Sm Anim Clin Endocrinol 12[2]:11 May-Aug'02 Clinical Study 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM
Jacoby RC, Owings JT, Ortega T, et al. Arch Surg 2001;136:1003-1007

背景:副腎皮質機能亢進症に比較的よく見られる合併症は血栓塞栓症で、特に副腎摘出後に良く起こる。血栓症の原因は、ウィルヒョウ三徴候により簡単に図解され、その要因は血流、凝固、血栓の形成を促進させる相互作用である。副腎皮質機能亢進症に関連する血栓症の原因は今のところ分かっていないが、凝固因子産生増加、抗凝固因子の欠乏、高血圧性血管壁損傷、血小板機能不全が可能性のある原因として挙げられる。

要約:56頭のイヌで、病歴、身体検査、通常検査所検査、尿中コルチゾール:クレアチニン比、ACTH刺激試験をもとに副腎皮質機能亢進症と確認した。詳細な診断は成されず、下垂体依存性疾患、または副腎腫瘍により副腎皮質機能亢進症が起こっているのか明らかにされなかった。凝固因子II、V、VII、VIII、IX、X、XI、XII、ヴォンウィルブランド因子、トロンビン-抗トロンビン複合、抗トロンビン、フィブリノーゲン、プラスミノゲン、プラスミノゲン活性化因子抑制因子-1の身体検査をもとに健康と判定した30頭のイヌをコントロールとした。
副腎皮質機能亢進症のイヌの凝固因子II、V、VII、IX、X、XIIそしてヴォンウィルブランド因子の平均活性は有意にコントロール犬よりも大きかった。第IX因子を除いてその変化は軽度だった。副腎皮質機能亢進症のイヌで抗トロンビンは有意に減少したが、正常範囲の確立に使用した貯蔵血漿の値100%よりもわずかに大きいだけだった。トロンビン産生とその凝固活性化の指標であるトロンビン-抗トロンビン複合体は、副腎皮質機能亢進症のイヌで有意に顕著に高いものだった。フィブリノーゲンも有意に増加したが、プラスミノゲンとプラスミノゲン活性化因子抑制因子に2群間の差はなかった。著者は、潜在的な血栓症は副腎皮質機能亢進症のイヌで良く起こり、凝血促進性因子の増加と抗トロンビンの減少によるものと締めくくる。

臨床への影響:いくつか凝固因子の増加は、副腎皮質機能亢進症のイヌで以前から知られている。この所見のみからは血栓症と説明されやすく、抗トロンビンのわずかな減少があるにもかかわらず、繊維素溶解の減少は明確に示されなかった。フィブリノーゲンの上昇はかなり見られ、凝固性亢進の重要な要因となりえるものである。高血圧による血流、内皮、血小板機能、繊維素溶解などの他の要因の変化は、凝固性亢進状態を起こしやすくする。特定の原因が見つかるまで、臨床家はクッシング症候群の患者に対し血栓症の徴候を入念にモニターし、ハイリスクな患者の抗凝固治療を考慮すべきである。(Sato訳)
■イヌでミトタンの投与に反応する下垂体依存性副腎皮質機能亢進症の評価
Evaluation of Pituitary-Dependent Hyperadrenocorticism Response to Mitotane Treatment in Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 12[2]:12 May-Aug'02 Clinical Study 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM
Kolevska J, Svoboda M. Acta Vet Brno 2001;70:313-320

背景:イヌ下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の治療は、抗副腎ホルモン剤のミトタンを使用することでほぼ効果的に達成する。最初の導入治療の期間は、個々のイヌで広く変化する。ミトタンの過量投与は副腎皮質機能低下症などの重度副作用をもたらすので、副腎皮質機能亢進症のコントロールに必要な治療期間を正確に予測する方法は有益となるだろう。

要約:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症のイヌ14頭は、適切な組織学、血液学、血清生化学変化の存在、そして尿コルチゾール:クレアチニン比の上昇により診断された。下垂体依存性副腎皮質機能亢進症と副腎腫瘍との鑑別は、デキサメサゾン0.1mg/kg8時間毎の3回経口投与で、基本サンプルの50%以下になる尿コルチゾール:クレアチニン比の低下を基に成された。
全てのイヌは25mg/kg1日1回経口投与で治療された。尿コルチゾール:クレアチニン比を治療中2-5日ごとに評価した。尿コルチゾール:クレアチニン比が正常(10×10[6]以下)になった時投与を中止した。ミトタンの維持療法は、25-100mg/kg/週の投与量で達成し、その間尿コルチゾール:クレアチニン比は4ヶ月ごとに調査した。最初の処置前の尿コルチゾール:クレアチニン比と最初のミトタン治療の期間を相関させようと試みた。
13頭で最初の治療期間の中央値は14.5日、範囲は10から20日、1頭はその期間が64日必要とした。治療前の尿コルチゾール:クレアチニン比と最初の治療期間の間に相関はなかった。治療1年以内に21%の犬に副腎皮質機能亢進症の再発が起こった。著者は高コルチゾール血症の管理に必要なミトタン治療の期間は、尿コルチゾール:クレアチニン比で予測できないと締めくくる。
臨床への影響:ミトタン治療をモニターするため、尿コルチゾールとクレアチニン比の評価を行った過去の研究では、副腎皮質機能低下症を誘発する過剰投与は検出しないが、高コルチゾール血症の管理に十分な治療を継続しているか、判定するのに有効であるということが解った。その研究で副腎皮質機能低下症に一致した症状を呈したイヌはいなかった。尿コルチゾール:クレアチニン比と、ACTH刺激に反応した血症コルチゾール濃度の結果の比較はなかった。また、臨床症状の改善は上記研究で治療後評価していなかった。副腎皮質機能亢進症の治療をモニターする効果的な方法は、臨床症状の評価とACTH刺激試験の実施である。(Sato訳)
■酢酸メチルプレドニゾロンの短期治療コースを行った後に起こった猫の医原性副腎皮質機能亢進症

latrogenic Hyperadrenocorticism in a Cat Following a Short Therapeutic Course of Methylprednisolone Acetate
Sm Anim Clin Endocrinol 12[1]:14 Jan-Apr'02 Review Article 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM (Editor) & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM (Assoc. Editor) Sm An Clin Endo
Ferasin L.; J Feline Med Surg 2001; 3:87-93

背景:猫は医原性副腎皮質機能亢進症や医原性の二次性副腎皮質機能低下症をあまり起こさないと信じられている。ゆえに持続性コルチコステロイドを無頓着に使用する獣医師もいる。しかし、猫に対する持続性コルチコステロイドの内分泌、組織学的影響に関する十分な対照試験は報告されていない。医原性副腎皮質機能亢進症や医原性の二次性副腎皮質機能低下症に対する猫の罹患率を過小評価しているのかもしれない。

要約:10歳避妊済み雑種猫の口内炎の治療で、4週間毎の酢酸メチルプレドニゾロン20mgの皮下注射を行い、その1ヵ月後に食欲不振、嗜眠、血便の症状が現れた。身体検査では、ポットベリーを伴う肥満、全身筋萎縮、皮毛状態の悪化、過度の挫傷、動くのを嫌がるなどが認められた。検査所見では、白血球増加、軽度血小板減少、低カリウム血症、低カルシウム血症、肝酵素活性の上昇、ポリクローナルガンモパシー、高ビリルビン血症、正常血清フルクトサミン濃度を伴う高血糖、高脂血症を示した。尿検査では、血糖、タンパク、赤血球、白血球を認めた。細菌培養は陰性だった。バリウムX線検査後に血便は解消した。メチルプレドニゾロンの使用履歴に加え、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)投与に対する反応が起こらなかった事は医原性副腎皮質機能低下症の診断と一致した。コルチコステロイドの投薬を止めて4ヵ月後、猫は臨床改善を示し、検査所見は正常に、または改善しACTH刺激試験は副腎皮質の反応を示した。著者は、これは医原性副腎皮質機能亢進症の猫の症例でコルチコステロイド投与中止により回復が起こったと結論付けた。
臨床への影響:犬へ毎週、酢酸メチルプレドニゾロン約4mg/kgを投与すると、外因性コルチコステロイドの糖質コルチコステロイド効果から医原性副腎皮質機能亢進症を起こし、副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモンと副腎皮質刺激ホルモン産生に対する持続性の負のフィードバックから医原性の二次性副腎皮質機能低下症を起こすでしょう。ポットベリーや多飲多尿、両側性脱毛など基本的な身体の所見と、血清アルカリフォスファターゼの上昇という検査所見は、同じ酢酸メチルプレドニゾロン/kgの投与を受けた猫で起こらなかったり、明白でなかったりする。これは、猫でコルチコステロイドの高用量を長期投与されたときの副作用に抵抗すると同じように考えられているが、それが真実でないかもしれない。例えば、猫は犬のアルカリフォスファターゼのコルチコステロイドアイソザイムを持たないため、犬のような血清アルカリフォスファターゼの上昇を示さない。猫の腹部筋組織は犬よりもさらに薄く、脂肪は鼠蹊部に良くつき、ポットベリーの出現を隠してしまう。猫のコルチコステロイド療法の副作用に関する可能性をより評価するために、長期間高用量のコルチコステロイド投与に対する猫のより詳細な評価が必要である。(Sato訳)