■ハイリスクの副腎腫瘍の犬の治療に対するリン酸トセラニブ:16症例(2019-2023)
Toceranib phosphate for the treatment of dogs with high-risk adrenal gland tumours: 16 cases (2019-2023)
J Small Anim Pract. 2025 Feb 20.
doi: 10.1111/jsap.13840. Online ahead of print.
C Chalfon , L Marconato , S Galac , A M Tardo , M Zandvliet , F Fracassi , F Del Baldo , G Ghisoni , L Pisoni , R Finotello
目的:この研究の目的は、肉眼および顕微鏡的設定でリン酸トセラニブで治療したハイリスクの副腎腫瘍(ATs)の犬の反応率、進行までの期間(TTP)、生存期間を評価することと、有害事象(AE)プロフィールを報告することだった。
素材と方法:ハイリスクの副腎皮質癌(ACC)あるいはクロム親和細胞腫(PCC)と診断され、トセラニブで治療した犬の医療記録を回顧的に再調査した。ハイリスクのATsは、手術不可能および/あるいは転移性ATsあるいは高いユトレヒトスコアの皮質腫瘍と定義した。指標は、反応率、TTP、総無増悪生存期間(PFST)だった。有害事象はVCOG-CTCAEに従い報告した。
結果:16頭の犬を含めた:10頭はPCC、6頭はACCと診断された。ACCの全ての犬は、高いユトレヒトスコアあるいは転移性疾患のため、補助的トセラニブを投与されたが、PCCの全ての犬は、肉眼的設定でトセラニブを投与した。臨床的利益は、PCCの犬の80%で検出された:4頭はTTP中央値176.5日の安定疾患に達し、2頭はそれぞれ182日および>100日間の部分奏功に達した。PCCの犬のPFST中央値は112日だった。ACCの犬の中で、3頭(50%)は進行し、237日、364日、273日後に安楽死された;残りの3頭(50%)は生存し、トセラニブ開始後、382日、508日、583日疾患フリーだった。全体的にトセラニブの許容性は良かった。
臨床的意義:トセラニブは、肉眼的および顕微鏡的疾患設定で、ハイリスクのATsの犬において、臨床的利益を提供し、結果を改善するかもしれない。(Sato訳)
■褐色細胞腫の犬の術中心血管変数に対するフェノキシベンザミン前投与の影響の回顧的評価
Retrospective evaluation of the influence of phenoxybenzamine pretreatment on intraoperative cardiovascular variables in dogs with pheochromocytoma
Can Vet J. 2024 Dec;65(12):1293-1301.
Craig Willette , Gianluca Bini , Marine Traverson , Julius M Liptak , Danielle Hollenbeck , Elizabeth A Maxwell , Carlos H de Mello Souza , Brandan Wustefeld-Janssens , Laura Selmic
目的:褐色細胞腫に対する副腎摘出を行う犬で、フェノキシベンザミンの前投与を行った犬と、行わなかった犬の心血管結果の比較
動物:5か所の動物病院の犬の合計65件の医療記録
方法:2004年1月から2021年12月までの記録で、収縮期、平均および拡張期動脈圧;高血圧および低血圧エピソードの回数;最も高いおよび最も低い収縮期動脈圧差;フェノキシベンザミンの用量と投与期間;術中不整脈の有無を評価した。フェノキシベンザミンを前投与した犬(PT群、n=33)と投与しなかった犬(N群、n=31)を比較した。The
Shapiro-Wilk testは正常性の検査、標準的分布データにはStudent's t-test、順序およびカテゴリーデータにはFisher's
exact testを使用した。交絡変数の調節を考慮に入れ、低血圧および高血圧の発生に対するフェノキシベンザミンの前投与の影響の評価には多変量ロジスティック回帰を使用した。
結果:フェノキシベンザミンの投与量中央値(範囲)は、0.46(0.08-2.0)mg/kg、PO、q12hだった。ピークの収縮期および平均動脈圧、最も低い収縮期および平均動脈圧、高血圧の持続期間、洞性頻脈の持続期間、低血圧エピソードの回数、低血圧の持続期間に群間の違いはなかった。より多い高血圧のエピソード(P=0.01)、高血圧に関与する麻酔事象(P=0.02)は、N群よりPT群で記録された。
結論:褐色細胞腫に対する副腎摘出を行う犬において、測定した変数に対し、フェノキシベンザミンの前投与はいずれの心血管の利益ももたらさず、より多い術中の高血圧事象と関係するかもしれない。
臨床的関連:副腎摘出を行う褐色細胞腫の犬において、術中の心血管変数の変化は一般的である。それら症例においてその役割を判定するため、フェノキシベンザミンの前投与の今後の評価が必要である。(Sato訳)
■副腎腫瘍に対し開腹下エタノールアブレーションが成功した犬の一例
Successful laparotomic ethanol ablation for an adrenal tumour in a dog
Vet Med Sci. 2024 Sep;10(5):e70020.
doi: 10.1002/vms3.70020.
Shimon Furusato , Eriko Kondo , Yu Tamura , Yu Tsuyama
Free article
犬の副腎腫瘍に対し副腎切除が第一選択であるが、年齢、基礎的状況、周術期死亡率により常に推奨されるわけではない。人医で状況の悪い外科患者に対し、エタノールアブレーションは1つの代替法である。
副腎皮質機能亢進症の13歳の不妊済みメスのトイプードルが、重度血尿を呈した。超音波検査で左副腎と右腎臓腫瘍が認められた。手術リスクが高いため、開腹下の右腎尿管切除と、左副腎腫瘍のエタノールアブレーションを同時に実施した。エタノール注射後の合併症は、一時的な高血圧と不整脈が含まれ、自発的に解消した。
副腎腫瘍のサイズは2.5か月以内に減少し、コルチゾール濃度は8日以内に正常化し、12か月間安定していた。腎機能不全で死亡するまで、トリロスタンを使用しなくても副腎皮質機能亢進症の症状は観察されなかった。剖検で、アブレーションを行った左副腎は副腎皮質腫瘍で、萎縮していることが示された。
エタノールアブレーションは、リスクが高い犬の患者の副腎切除に対し、実行可能な代替法かもしれない。(Sato訳)
■原発性副腎腫瘍の片側副腎摘出で治療した302頭の犬で退院前の死亡に影響するリスク因子
Risk factors influencing death prior to discharge in 302 dogs undergoing unilateral adrenalectomy for treatment of primary adrenal gland tumours
Vet Comp Oncol. 2023 Aug 31.
doi: 10.1111/vco.12931. Online ahead of print.
Hunter J Piegols , Brittany E Abrams , Janis M Lapsley , Megan T Cray , Josephine A Dornbusch , Christina Murphy , Brandan G Wustefeld-Janssens , Carlos H Souza , Marine Traverson , Pierre Amsellem , Elroy Williams , Owen T Skinner , Julius M Liptak , Julie A Stephens , Laura E Selmic
犬の副腎腫瘍に対する副腎摘出は、周術期の病的状態や死亡率に関係する。
この研究の目的は、原発性副腎腫瘍に対する副腎摘出を行った犬の周術期死亡率や総生存を予測する腫瘍-あるいは手術-関連変数の予後値を評価することと、特にクロム親和性細胞腫で退院までの生存に対しフェノキシベンザミンによる前治療の評価を含めた。
9か所の施設による多施設回顧的コホート研究を行った。電子カルテの検索で、組み入れ基準にあった302頭の犬を確認した。収集したデータは、犬-関連、腫瘍-関連、治療-関連、手術-関連、および結果変数を含めた。一変量および多変量ロジスティック回帰およびcox比例ハザードモデルを使用し、退院前の死亡および腫瘍-関連生存性に関係する変数を確認した。
全体で、87%の犬が生存して退院し、腫瘍-関連生存期間は3.96年だった。術後合併症は25%で報告された。手術時間の増加(p=0.002)、フェノキシベンザミン以外の術前薬物治療(p=0.024)は、有意に周術死亡率増加と関係し、一方尿管腎摘出(p=0.021)、術後膵炎(p=0.025)、術後誤嚥性肺炎(P<0.001)が総生存期間減少と有意に関係した。
フェノキシベンザミンの前治療は、周術期死亡率に影響はなかった。前治療しなかったクロム親和性細胞腫の犬45頭中37頭(82%)が生存して退院し、フェノキシベンザミンで前治療したクロム親和性細胞腫の犬59頭中50頭(85%)は生存して退院した(p=0.730)。
この研究は、臨床的管理と飼い主の期待の指導に役立つかもしれない、退院前の死亡および腫瘍関連生存期間に対するリスク因子の情報を提供する。加えて、この研究所見はクロム親和性細胞腫に対して副腎摘出を行った犬の前治療に対し、フェノキシベンザミンの過去に報告された利点に異議を唱えるものである。(Sato訳)
■副腎摘出と大静脈切開で治療した侵襲性副腎腫瘍の犬の術中有病率と死亡率
Perioperative morbidity and mortality in dogs with invasive adrenal neoplasms treated by adrenalectomy and cavotomy.
Vet Surg. July 2019;48(5):742-750.
DOI: 10.1111/vsu.13221
Philipp D Mayhew , Sarah E Boston , Allison L Zwingenberger , Michelle A Giuffrida , Jeffrey J Runge , David E Holt , Joseph S Raleigh , Ameet Singh , William T N Culp , J Brad Case , Michele A Steffey , Ingrid M Balsa
目的:犬の侵襲性副腎腫瘍の切除に対し、副腎摘出と大静脈切開に関係する有病率と死亡率を報告することと、術中の転帰に対するリスクファクターを評価する
研究計画:回顧的研究
動物:45頭の飼育犬
方法:大静脈に伸びた腫瘍血栓とともに、副腎のマスを切除するにあたり、開腹副腎摘出と大静脈切開を行った犬を含めた。臨床病理データは医療記録から集めた。選択した臨床、画像、手術の変数を、濃厚赤血球輸血、腎摘出、術中死、総生存率に対するリスクファクターとして統計学的に評価した。
結果:45個のマスのうち36個はクロム親和性細胞腫で、7個は副腎皮質癌、2個は不明なタイプだった。45頭中21頭の静脈血栓は肝臓前で終わり、15頭の犬は肝門部を超えていたが、横隔膜前(肝臓内横隔膜前部分)で終わり、5頭の犬は横隔膜の後ろまで血栓が伸びていた。34頭(76%)の犬は退院し、11頭(24%)は退院前に死亡あるいは安楽死された。全45頭の総生存期間中央値は547日(95%CI、146-710)。体重、腫瘍のタイプ、静脈血栓の大きさと伸びは生存に影響しなかったが、横隔膜の後ろ(横隔膜の前より)で血栓が終了していることは、より大きな死亡リスクと関係した。
結論:周術期に生存した犬の長期生存は一般的だった。横隔膜の後ろまで血栓が伸びていることは、総生存性に対する予後に影響した。
臨床意義:この研究の知見は副腎腫瘍と静脈侵入がある犬の、手術リスクを層別化するのに役立つ。(Sato訳)
■血管への浸潤がない小さな副腎腫瘍に対して副腎摘出を行った犬の結果
Outcome in dogs undergoing adrenalectomy for small adrenal gland tumors without vascular invasion.
Vet Comp Oncol. 2020 Mar 5. doi: 10.1111/vco.12587. [Epub ahead of print]
Cavalcanti JVJ, Skinner OT, Mayhew PD, Colee JC, Boston SE.
獣医学の研究では犬の副腎摘出の結果を報告しているが、それらの研究は一般的に血管への侵入がある、またはない症例を含む様々な大きさの副腎腫瘍が含まれている。
この研究の目的は、血管への侵入がない組織学的に小さな副腎腫瘍と確認され、副腎摘出で治療した小集団の犬の結果を報告することだった。
この回顧的研究は2010年から2017年の間にフロリダ大学とカリフォルニアデービス大学のデータベースからのデータを用いて行った。CTで評価した時にいずれの部位にも血管への侵入のエビデンスがなく、最大直径3cm以下の副腎腫瘍の切除を行った犬を含めた。
51頭の犬が組み込み基準に合致した。副腎切除を行った犬の短期間生存率は92.2%で、1年-疾患特異的生存率は83.3%だった。51頭中28頭(54.9%)は悪性と診断された。マイナーな合併症は術中および術後に一般的に観察された。メジャーな合併症は6頭の犬で認め、突然死、呼吸停止、急性腎障害、出血、低血圧、誤嚥性肺炎が含まれた。短期死亡は4頭の犬で発生した。突然死と出血は死亡を誘発するもっとも一般的なメジャーな合併症だった。
過去に報告された高い術中死亡率により、副腎摘出は時折議論となるが、この研究の結果は血管侵入のない副腎の小さな腫瘍は低リスクで実行できることを支持する。(Sato訳)
■犬の画像診断された下垂体腫瘍に対する定位放射線治療の長期生存性
Long-term survival with stereotactic radiotherapy for imaging-diagnosed pituitary tumors in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. March 2019;60(2):219-232.
DOI: 10.1111/vru.12708
Katherine S Hansen , Allison L Zwingenberger , Alain P Théon , Michael S Kent
下垂体腫瘍の犬に対する定位放射線治療の使用に関して発表された研究は限られている。
この回顧的観察研究は、画像診断された下垂体腫瘍の犬45頭に対する定位放射線治療の結果を述べる。
全ての犬は2009年12月から2015年の間に1病院で治療した。定位放射線治療は、15グレイ(Gy)分画1回あるいは8Gy分画3回で照射した。解析時、41頭は死亡していた。4頭は生存し、全ての生存解析から削除した;1頭は8Gyを隔日照射し、プロトコール解析から除外した。最初の治療から総生存期間中央値は311日(95%CI、226-410日(範囲1-2134日))だった。
32頭は15Gyの照射(総生存期間中央値311日;95%CI、(範囲221-427日))を受け、12頭は3日連続で24Gyの照射(総生存期間中央値245日、95%CI、(範囲2-626日))を受けた。32頭は副腎皮質機能亢進症(総生存期間中央値245日)だったが、16頭は非機能的マス(総生存期間中央値626日)だった。
45頭中37頭で臨床的改善が報告された。45頭中10頭に定位放射線治療の4か月以内に急性副作用の推定症状が見られ、ほとんどが自然にあるいはステロイドで改善した。腫瘍の進行に対し晩発効果は認識できなかったが、治療後の失明(2)、高ナトリウム血症(2)、進行性神経症状(31)が報告された。2つのプロトコールで総生存期間中央値に統計学的差はなかった。
非機能的マスの犬は、副腎皮質機能亢進症の犬よりも総生存期間中央値が長かった(P=0.0003)。定位放射線治療の生存性の結果は、根治的放射線療法で過去に報告されたものより、そして特に副腎皮質機能亢進症の犬で短かった。(Sato訳)
■副腎摘出と下大静脈切開で治療した侵襲性副腎腫瘍の犬の術中有病率と死亡率
Perioperative morbidity and mortality in dogs with invasive adrenal neoplasms treated by adrenalectomy and cavotomy.
Vet Surg. 2019 Apr 29. doi: 10.1111/vsu.13221. [Epub ahead of print]
Mayhew PD, Boston SE, Zwingenberger AL, Giuffrida MA, Runge JJ, Holt DE, Raleigh JS, Singh A, Culp WTN, Case JB, Steffey MA, Balsa IM.
目的:犬の侵襲性の副腎腫瘍の切除に対し、副腎摘出と下大静脈切開に関係する有病率と死亡率を報告することと、術中結果に対するリスクファクターを評価する
研究デザイン:回顧的研究
動物:45頭の飼育犬
方法:大静脈に伸びた腫瘍血栓を伴う副腎マスの切除に対し、開腹副腎摘出と大静脈切開を行った犬を含めた。臨床病理データを医療記録から抽出した。選択した臨床および画像、手術の変数を濃厚赤血球輸血、腎摘、術中死、総生存性に対するリスクファクターとして統計学的に評価した。
結果:45個のマスのうち36個はクロム親和性細胞腫で、7個は副腎皮質腺癌、2個は種類が不明だった。45頭中21頭の大静脈血栓は肝臓前で終点となり、15頭は肝門を超えて伸びるが横隔膜前で終了し(肝内の横隔膜前の位置)、5頭は横隔膜の後ろに伸びていた。34頭(76%)は退院し、11頭(24%)は死亡、あるいは退院前に安楽死となった。45頭の犬の全体の生存期間中央値は547日(95%CI
146-710日)だった。体重、腫瘍のタイプ、大きさ、大静脈血栓の広がりは退院時の生存性に影響しなかったが、横隔膜の後ろ(横隔膜の前よりも)での血栓終了は死亡のより大きなリスクとなった。
結論:長期生存は、周術期に生存した犬で一般的だった横隔膜の後ろまで血栓が伸びると、全体の生存性に対する予後に影響した。
臨床意義:この研究の所見は、副腎腫瘍と大静脈侵襲がある犬の手術リスクの階層化に役立つ。(Sato訳)
■副腎病変に対する超音波ガイドFNAの安全性
Clinical safety of percutaneous ultrasound-guided fine-needle aspiration of adrenal gland lesions in 19 dogs
J. A. Sumner, L. Lacorcia, A. M. Rose, A. P. Woodward and J. E. Carter
Journal of Small Animal Practice (2018) 59, 357–363
目的:犬の副腎病変に対する超音波ガイドFNAの安全性を評価しクロム親和性細胞腫と細胞診もしくは病理学的に診断された症例のリスクを明らかにすること。
材料と方法:2014年8月〜2016年12月に行ったものについて回顧調査した。19頭で実施しうち3頭は両側の吸引を、1頭は2回、合計23検体であった。シグナルメント、併発症、投薬、FNA前の血圧と心拍数、画像診断、手技関連の合併症を調査した。
結果:クロム親和性細胞腫は19頭中9頭で診断され、うち1頭は両側性腫大のものであった。1頭ではFNA後に心室性頻拍となった。
臨床的意義:この手技はクロム親和性細胞腫であっても比較的安全であったが、より体重の重いもののデータが必要である。副腎病変があり臨床意義が不明であれば本手技は診断アルゴリズムに加えるべきである。(Dr.Maru訳)
■19頭の犬の後大静脈切開と副腎切除に対する手術方法のバリエーション
Variations in surgical technique for adrenalectomy with caudal vena cava venotomy in 19 dogs.
Vet Surg. 2019 Jan 25. doi: 10.1111/vsu.13168. [Epub ahead of print]
Knight RC, Lamb CR, Brockman DJ, Lipscomb VJ.
目的:副腎切除と大静脈切開を行った犬の手術方法、大静脈閉鎖時間、短期結果を述べる
研究デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:2010年10月1日から2018年5月31日までに副腎切除と大静脈切開を行った犬
方法:副腎切除と大静脈切開を行った犬の医療記録から、シグナルメント、周術管理、手術詳細、周術合併症、死亡率、病理組織について検討した。CT画像は腫瘍形態と血栓の伸び具合を述べるために再検討した。
結果:19頭は副腎腫瘍血栓があり、肝前(14頭、74%)、肝(3頭、16%)、肝後(2頭、11%)後大静脈に伸びていた。腫瘍は左(11)および右(8)副腎で発生した。大静脈閉鎖時間の中央値は6.5分(範囲、2-25分)だった。2-6本の血管止血帯を使用した。静脈切開閉鎖は11頭で完全大静脈閉鎖の下で行い、8頭は部分的閉鎖クランプを使用の下で行った。左尿管腎切除は5頭で実施した。周術死亡率は21%(4頭)だった。
結論:肝門を超えての大静脈腫瘍血栓の進展は、良好な予後の妨げとならなかった。過去に報告より長い時間の大静脈閉鎖もいくつかの症例で許容していた。使用した止血帯の数は、大静脈への横隔膜腹静脈付着の位置と大静脈腫瘍血栓の長さを反映した。完全閉鎖下の静脈切開閉鎖は右副腎腫瘍で必要となることが多かった。尿管腎切除が必要な時は左側だった。
臨床意義:肝門を超えて伸びる副腎腫瘍の犬と、長時間の大静脈閉鎖を必要とする犬も、副腎切除で生存しえる。(Sato訳)
■副腎腫瘍の猫33頭の臨床所見、診断、結果
Clinical findings, diagnostics and outcome in 33 cats with adrenal neoplasia (2002-2013).
J Feline Med Surg. 2015 Feb 24. pii: 1098612X15572035. [Epub ahead of print]
Daniel G, Mahony OM, Markovich JE, Appleman E, Monaghan KN, Lawrence YA, Fiocchi EH, Weaver K, Johnston A, Barton B.
目的:この回顧的研究の目的は、病理組織学的に副腎腫瘍と確認された猫における臨床症状と診断的所見を述べることと、生存データとの関連を評価することである。
方法:2002年から2013年の間に7カ所の紹介施設で副腎腫瘍と診断された全ての猫のカルテを調査し、研究データを入手した。研究に含める基準は副腎腫瘍の病理組織診断(生前あるいは検死)を必要とした。
結果:33頭の猫が研究の基準に当てはまった。最も一般的な主訴は、虚弱(n=12)、呼吸症状(n=4)、消化管症状(n=3)だった。検査での異常は低カリウム血症(n=18)、アルカリ性血症(n=12)、クレアチニンキナーゼの上昇(>3000、n=5)、高窒素血症(n=4)だった。また高血圧も13頭で見られた。30頭の猫は皮質腫瘍(腺癌17頭、腺腫13頭)、3頭の猫は褐色細胞腫と診断された。25頭の猫は副腎腫瘍の機能を評価する検査を行った;25頭中19頭は機能性腫瘍(高アルドステロン症(n=16)、高コルチゾール血症(n=1)、高エストラジオール(n=1)、アルドステロンとエストラジオールとプロゲステロンの分泌過剰(n=1))。26頭の猫は副腎摘出を行い、1頭は内科管理し、6頭は治療せずに安楽死した。術後の長期生存性は4-540週で、20頭(77%)は周術期の2週間生存した。生存性の関係した負の変数は性別で、メスだけだった。周術期によく見られた合併症は出血と進行性の嗜眠および食欲不振だった。
結論と臨床関連:猫の副腎腫瘍の外科治療は(腫瘍のタイプにかかわらず)、長期生存性が良好だった。術前術後の低コルチゾール血症がこの研究で確認され、加えて1頭の猫で1つ以上の副腎ホルモンの分泌過剰が発生しているとすると、手術前の副腎パネルは術前精密検査の一部として有益かもしれない。(Sato訳)
■ペットにおいて褐色細胞腫と副腎皮質腫瘍の細胞診による鑑別精度
Accuracy of cytology in distinguishing adrenocortical tumors from pheochromocytoma
in companion animals.
Vet Clin Pathol. 2014 Sep;43(3):453-9. doi: 10.1111/vcp.12161. Epub 2014 Jun 13.
Bertazzolo W, Didier M, Gelain ME, Rossi S, Crippa L, Avallone G, Roccabianca P, Bonfanti U, Giori L, Fracassi F.
背景:副腎皮質腫瘍と褐色細胞腫の鑑別は、臨床所見、診断的画像検査、血液検査を用いても困難である。細胞診は正確な診断を下す簡便で最小侵襲の方法かもしれない。
目的:この研究の目的は、犬や猫において副腎の皮質と髄質腫瘍の鑑別で細胞診の精度を評価することだった。
方法:副腎皮質腫瘍と褐色細胞腫の細胞診でカギとなる特徴を、一人の基準となる著者により定義した。それまでの分類を知らせずに、過去に定義されたカギとなる特徴を基に、原発性副腎腫瘍の細胞診標本の分類を4人の細胞病理学者に依頼した。
結果:組織学的に確認された副腎腫瘍の20の標本(グループ1)と副腎依存のクッシング症候群を起こした副腎腫瘍の4標本(グループ2)を4人の細胞病理学者が評価した。皮質あるいは髄質由来の鑑別の精度は90%から100%で、細胞病理学者間の一致度のカッパ係数は0.95だった。
結論:副腎腫瘍の由来は多くの症例で細胞診のみで容易に判定できる。しかし、良性か悪性かの鑑別に細胞診は信頼できなかった。追加研究で犬と猫における副腎腫瘍の細針バイオプシーに関与するリスクと合併症の可能性を評価する必要がある。(Sato訳)
■コルチゾールを分泌しない副腎腫瘍の診断を受け、副腎摘出を行わない犬の臨床特性、転帰、予後因子:20症例(1994-2009)
Clinical features, outcome and prognostic factors in dogs diagnosed with non-cortisol-secreting adrenal tumours without adrenalectomy: 20 cases (1994-2009).
Vet Rec. 2013 Nov 23;173(20):501. doi: 10.1136/vr.101691. Epub 2013 Oct 21.
Arenas C, Perez-Alenza D, Melian C.
この研究の目的は、非-コルチゾール-分泌副腎マスのある犬で、副腎摘出を行わず、その臨床特徴と転帰および予後因子を述べることと、それらのタイプの腫瘍がある犬を管理するとき、決断に有用となるような臨床データを提供すること。
1994年から2009年のカルテを再検討し、20頭を研究した。非-コルチゾール-分泌副腎マスの犬に対する診断時の平均年齢は12歳で、性別に偏りはなかった。ほとんどの犬は無症候性だった。症状があるときの多かったものは、嗜眠、虚弱、高血圧だった。診断時の転移のエックス線所見はあまりなかった。副腎マスの最大背腹長の範囲は10.0-45.0mmだった。右副腎マスは左側よりも頻度が高かった。追跡調査中の腫瘍の成長に伴い高血圧が見られた。その腫瘍の犬の生存中央期間は17.8ヶ月だった。診断時の体重、腫瘍の大きさ、診断時の転移の有無が生存性に反比例していた。
結論として、非-コルチゾール-分泌副腎マスの犬で副腎摘出を行わない時の生存性は比較的高く、副腎摘出で治療した犬のそれに匹敵する。転移のある犬、大きな副腎腫瘍の犬は予後がより悪い。高血圧は腫瘍の成長に伴い、腫瘍の潜在的成長キャパシティを評価する追加ツールとして使用できるかもしれない。(Sato訳)
■猫の原発性高アルドステロン症
[Primary hyperaldosteronism in cats].
Primarer Hyperaldosteronismus bei Katzen.
Language: German
Schweiz Arch Tierheilkd. December 2012;154(12):529-37.
B Willi; P Kook; S Quante; F Boretti; N Sieber-Ruckstuhl; P Grest; O Scherrer; B Riond; R Hofmann-Lehmann; J Nussberger; C Reusch
原発性高アルドステロン症は、副腎のアルドステロン分泌が増加したことを特徴とする臨床的症候群である。
この症例シリーズは2002年から2011年の間に来院した原発性高アルドステロン症の猫7頭を紹介する。
一般的な臨床徴候は、虚弱、食欲不振、頸部腹側屈曲、失明だった。全ての猫は低カリウム血症を示した。6頭の猫で血圧を測定し、5頭は高血圧で、そのうち4頭は網膜剥離と失明を示した。超音波検査で、6頭は片側性の副腎肥大を呈したが、1頭は正常な副腎だった。4頭の猫で、血清アルドステロン濃度が参照範囲以上だった。
5頭の猫は片側副腎摘出を行い、無事終了して正常な電解質に回帰した。副腎の病理組織検査で2頭は腺癌、4頭は腺腫だった。1頭の猫の超音波検査が正常な副腎は両側結節性過形成を示した。(Sato訳)
■1頭の猫の機能的副腎腫瘍の腹腔鏡副腎摘出による管理
Laparoscopic adrenalectomy for management of a functional adrenal tumor in a cat.
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(3):368-72.
Rebecca R Smith; Philipp D Mayhew; Allyson C Berent
症例:去勢済みオスの家猫短毛種の9歳の猫が、その猫の甲状腺機能亢進症の解消後、持続する高血圧に関して検査した。両側高血圧網膜症、収縮期心雑音、左室肥大、頻脈を呈していた。
臨床所見:生化学検査で、軽度低カリウム血症、正常ナトリウム血症、高血清クレアチンキナーゼ活性、高血清アルドステロン濃度、高アルドステロン症に一致する低血漿レニン活性を認めた。高血清上皮小体ホルモン濃度に関係する高カルシウム血症、過度の低用量デキサメサゾン抑制試験結果は、それぞれ上皮小体機能亢進症と副腎皮質機能亢進症の併発に一致した。超音波検査では、顕著の大きくなった左副腎、異常に小さな右副腎と右甲状腺および上皮小体内の2結節を認めた。
治療と結果:腹腔鏡下左副腎摘出と同時に右甲状腺および上皮小体切除を実施した。組織学的に副腎皮質腺腫、甲状腺腫、上皮小体腺腫であることが分かった。その猫は問題なく手術から回復し、その後高カルシウム血症と高血圧は解消した。その後の心エコー検査では、左室肥大の改善を認めた。切除から26か月目に実施した超音波検査で副腎のマスの再発所見はなかった。手術から44か月たっても高アルドステロン症あるいは副腎皮質機能亢進症の再発症状もなく生存していた。
臨床関連:画像診断で血管内浸潤および転移を除外された猫の片側性機能的副腎腫瘍に対し、腹腔鏡下腹腎摘出は信頼できる方法と思われる。また、甲状腺機能亢進症と高血圧の猫において、他の内分泌腺を調査すべきである。(Sato訳)
■副腎腫瘍の選択的および緊急の外科的管理:60症例(1999-2006)
Elective and emergency surgical management of adrenal gland tumors: 60
cases (1999-2006).
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Nov-Dec;47(6):428-35.
Jennifer M Lang; Eric Schertel; Shawn Kennedy; Diane Wilson; Matthew Barnhart; Briana Danielson
60頭の犬から61個の副腎腫瘍を外科的に切除した。52頭の犬は選択的副腎摘出を行い、8頭の犬は急性副腎出血のため緊急副腎摘出を行った。副腎腫瘍の大きさは10mmから80mmだった。47頭の犬の副腎皮質腫瘍の診断は病理組織学的に確認し、そのうち26頭は悪性だった。11頭の犬はクロム親和細胞腫と診断された。6頭の犬の腫瘍は後大静脈に侵入していた。周術期に死亡した7頭のうち、4頭は緊急副腎摘出だった。後大静脈に腫瘍が侵入していない犬で周術期に死亡した犬はいなかった。周術期死亡率は選択的副腎摘出を行った犬で5.7%、急性副腎出血のため緊急副腎摘出を行った犬で50%だった。周術期を生存した53頭の犬の生存期間中央値は492日だった。分析した因子のうち、副腎腫瘍の大きさと急性副腎出血の有無のみが周術期死亡率の予測値だった。周術期を生存したそれらの犬は、生存期間を1590日まで延ばしていた。
犬の選択的副腎摘出に関する死亡率は、過去に報告されたものよりも低いかもしれない。非常に大きな腫瘍あるいは急性副腎出血の犬は、より警戒が必要な予後となるかもしれない。(Sato訳)
■副腎腫瘍の犬の副腎摘出:52症例(2002-2008)
Adrenalectomy in dogs with adrenal gland tumors: 52 cases (2002-2008).
J Am Vet Med Assoc. July 2011;239(2):216-21.
Federico Massari; Stefano Nicoli; Giorgio Romanelli; Paolo Buracco; Eric Zini
目的:副腎摘出を行う犬の生存期間の指標を評価し、副腎腫瘍転移および静脈血栓症に関与するリスクファクターを確認する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:原発性副腎腫瘍の犬52頭
方法:医療記録を再調査した。徴候、腫瘍特性、外科的処置からの情報を、手術から死亡までの期間として定義した総生存期間を予測する因子を確認するために評価した。転移あるいは静脈血栓症、腫瘍タイプ、大きさ、部位(右あるいは左副腎)の関連性を調査した。
結果:一変量分析の結果をもとに、腺癌、腫瘍長軸長≧5cm、転移、静脈血栓症および副腎摘出と一緒に腹部の外科的処置を行った犬の生存期間は有意に短かった。多変量分析において、副腎腫瘍長軸長≧5cm、転移あるいは静脈血栓症のある犬の生存期間は有意に短かった。有意な関連は転移と腺癌の間、静脈血栓症と腫瘍の長軸長≧5cmの間で見つかった。
結論と臨床関連:副腎腫瘍の長軸長≧5cm、転移あるいは静脈血栓症が示されている犬の予後は不良だった。腺癌および腫瘍の長軸長≧5cmの腫瘍で静脈血栓症を持つ犬において、転移の頻度はより高かった。(Sato訳)
■犬の副腎腫瘍の外科治療における予後因子の評価
Evaluation of prognostic factors in the surgical treatment of adrenal
gland tumors in dogs: 41 cases (1999-2005)
J Am Vet Med Assoc. January 2008;232(1):77-84.
Pamela Schwartz1, Janet R Kovak, Alexandra Koprowski, Lori L Ludwig,
Sebastien Monette, Philip J Bergman
1 Animal Medical Center, 510 E 62nd St, New York, NY 10021.
目的:副腎摘出を行った犬に対する術前の生存期間予測因子、術中・術後の合併症の評価、そして生存率を明らかにすること。
統計:回顧的症例検討。
動物:41頭の副腎摘出を行った犬。
方法:術前評価ならび術中と術後のさまざまな項目を収集した。収集項目は群わけし、生存期間に関してログランク検定ならびにコックスの危険比率を用いて評価した。中央生存期間はカプランメアーにより評価した。
結果:9頭の犬(22.0%)は退院できなかった。術中の死亡率は4.8%であった。全体を通してのカプランメアー中央生存期間は690日であった。様々な項目が生存期間の短縮と関連しており、それには、術前の衰弱、元気消失、血小板減少、BUNの増加、PTTの延長、ASTの増加、低カリウム血症、術中出血、そして同時に行った腎臓摘出などが生存期間の減少と有意に関連していた。術後には膵炎と腎不全が有意に関連していた。多変量解析において、術前の低カリウム血症、術前のBUNの増加、そして同時に実施された腎臓摘出が生存期間の減少と有意に関連していた。
結論と臨床関連:犬の副腎摘出は高い死亡率であったが、退院が可能であった症例は長期間生存した。生存期間の短縮と関連した術前の要因は衰弱、元気消失、血小板減少、BUNの増加、PTT時間の延長、ASTの増加、および低カリウム血症であった。今後の課題としてこれらの要因に対して治療を行うことで、副腎摘出を行った後に及ぼす影響と結果を変える事になるかもしれず、検討が必要なことがあげられる。犬の副腎腫瘍で同時に腎臓摘出を行わなければならないときと術中に大量出血を起こした場合には予後が良くない。(Dr.UGA訳)
■犬のコルチコステロンおよびアルドステロン分泌副腎皮質腫瘍
Corticosterone- and Aldosterone-Secreting Adrenocortical Tumor in a Dog
J Am Vet Med Assoc 226[10]:1662-1666 May 15'05 Case Report 26 Refs
Ellen N. Behrend, VMD, PhD, DACVIM; Claire M. Weigand, DVM, DACVIM; Elizabeth M. Whitley, DVM, PhD, DACVP; Kent R. Refsal, DVM, PhD; Diane W. Young, PhD; Robert J. Kemppainen, DVM, PhD
副腎皮質機能亢進症を思わせる臨床症状で評価した。血清生化学検査で高ナトリウム血症と低カリウム血症が明らかとなり、ACTH注射後の血清コルチゾール濃度は、基準下限よりも低かった。超音波検査とCTにより副腎腫瘍がみられ、組織検査でそのマスが副腎皮質癌と確認された。コルチコステロンの過剰な副腎分泌は、グルココルチコイド過剰症状の原因だと仮説を立てた。臨床上健常な犬や高コルチゾール血症、典型的な副腎皮質機能亢進症の犬と比較して血清コルチコステロン分泌はACTH注射前後で高かった。高アルドステロン血症が同様に検出された。ミトタンによる治療を開始し、内分泌疾患とほぼ関係ないような神経学的問題により安楽死されるまで4ヶ月の間治療に成功した。(Sato訳)
■副腎皮質腫瘍のトリロスタン治療
Trilostane Treatment for Adrenocortical Neoplasia
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:35-36 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Eastwood JM, Elwood CM, Hurley KJ; J Sm Anim Pract 2003;44:126-131
イントロダクション:
背景:トリロスタンは、犬の下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)の管理で成功している副腎ステロイド酵素拮抗薬である。ほとんど副作用はないが、トリロスタン投与中に副腎皮質機能低下症が起こる可能性がある。一定の効果と比較的重度副作用の発生が低いことから、PDHの治療でミトタンに代わる魅力的なものとしている。
目的:この報告の目的は、機能的副腎massにより起こる副腎皮質機能亢進症の犬のトリロスタン治療の結果を紹介する。
サマリー:
症例報告:13歳避妊済みメスの雑種犬を臨床所見の適合、基準およびACTH刺激血漿コルチゾール濃度の高値をもとに副腎皮質機能亢進症と診断した。腹部エックス線写真と超音波検査で、左副腎部分に石灰化のmassが明らかとなった。右副腎は描出されなかった。1日1回トリロスタン60mg(4.4mg/kg)投与した。トリロスタン投与開始から10日以内に食欲、力強さの改善、飲水量の低下、等張尿の解消からなる臨床反応が認められた。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反応試験の結果をもとに、ACTH後血漿コルチゾール濃度110nmol/l(4.0?g/dl)以下に維持するようにトリロスタンの投与量を漸次240mg1日1回に増量した。ALP、ALT値上昇などの生化学変化と臨床症状は治療によりかなり改善した。ACTH投与前後の血漿アルドステロン濃度はトリロスタンにより抑制されなかった。トリロスタンを原因とする副作用は、19ヶ月の経過観察中認められなかった。
結論:犬の副腎腫瘍による副腎皮質機能亢進症の治療にトリロスタンは有効である。
臨床への影響:
トリロスタンは副腎皮質機能亢進症の治療に使用する頻度がますます増えているが、北アメリカでは動物や人への使用が承認されていない。50%の副腎腫瘍は悪性なので、依然外科手術が多くの症例の治療に選択されているが、深刻な術中合併症が起こりがちである。ミトタンは、副腎腫瘍の寛解、そして周囲の脈管を侵襲するような局所合併症の予防など、機能的副腎腫瘍の治療でトリロスタンよりも利点を持つ。トリロスタンの効果は、副腎皮質機能亢進症の臨床症状を抑えるに限られ、腫瘍の成長や転移に効果はない。ゆえに、機能的副腎皮質腫瘍や副腎皮質機能亢進症の内科治療にはミトタンが優先される。(Sato訳)
■臨床的に正常な犬で尾側大静脈の漸進的閉塞をさせたときの評価
Evaluation of gradual occlusion of the caudal vena cava in clinically normal dogs.
Am J Vet Res 64[11]:1347-53 2003 Nov
Peacock JT, Fossum TW, Bahr AM, Miller MW, Edwards JF
目的:犬の尾側大静脈の漸進的閉塞に関する方法を考え出すことと、完全閉塞の影響を判定すること
動物:体重25-30kgの8頭の雑種ハウンド
方法:犬の基準値の評価に、血清生化学分析と動的腎臓シンチグラフィーと血漿クリアランス分析による糸球体ろ過率(GFR)の判定を含めた。腎静脈頭側領域の大静脈の周りに閉塞させるものを設置した。閉塞させるものには、脈管アクセスポートも取り付けた。大静脈は2週間かけて漸進的に閉塞させた。術後2週間ごとにGFRを測定し、3週間ごとに静脈造影を実施した。最初の1週間は48時間ごとに血液サンプルを採取し、その後毎週BUN、クレアチニン濃度、ALT、ALP、CK活性を測定した。術後6週間で犬を安楽死し、組織で組織学的検査を行った。GFRと生化学的データを基準値と比較した。
結果:尾側大静脈の漸次的閉塞は、この方法で簡単に首尾一貫して実施され、副作用的臨床症状は見られなかった。側副血管の形成で、左側腎機能の低下にもかかわらず、全体のGFRをコンスタントに維持した。測定した生化学値は、基準範囲を逸脱することはなかった。
結論と臨床関連:尾側大静脈の漸次的閉塞は、他の方法では切除が困難、または不可能な脈管を巻き込んだ副腎腫瘍の切除が可能となるかもしれない。(Sato訳)
■関連腫瘍血栓がある、またはない副腎腫瘍の外科管理:40症例(1994-2001)
Surgical Management of Adrenal Gland Tumors With and Without Associated Tumor Thrombi in Dogs: 40 Cases (1994-2001)
J Am Vet Med Assoc 223[5]:654-662 Sep 1'03 Retrospective Study 33 Refs
Andrew E. Kyles, BVMS, PhD, DACVS; Edward C. Feldman, DVM, DACVIM; Hilde E.V. De Cock, DVM, PhD, DACVP; Philip H. Kass, DVM, PhD; Kyle G. Mathews, DVM, MS, DACVS; Elizabeth M. Hardie, DVM, PhD, DACVS; Richard W. Nelson, DVM, DACVIM; Janet E. Ilkiw, BVSc, PhD; Clare R. Gregory, DVM, DACVS
目的:大静脈腫瘍血栓を伴う、または伴わないイヌの副腎腫瘍の副腎摘出で病理学所見と結果を比較すること
構成:回顧的研究
動物:副腎腫瘍を持つ40頭のイヌ
方法:医療記録を検査した。腫瘍タイプ、右側vs.左側腫瘍侵襲、大静脈腫瘍血栓の関連性と腫瘍血栓、腫瘍タイプ、右側vs.左側の位置、術中合併症、死亡率の関連性を正確なロジスティック回帰分析で評価した。生存率は、腫瘍血栓の有無で比較した。
結果:大静脈血栓を25%のイヌで検出し、そのうち副腎皮質腫瘍の28頭中3頭(11%)、クロム親和性細胞腫の11頭中6頭がそれだった。大静脈腫瘍血栓は右側17腫瘍中6腫瘍、左側20腫瘍中4腫瘍だった。大静脈血栓の検出で腹部超音波検査の感受性と特異性は、それぞれ80%と90%だった。術中、術後合併症はそれぞれ15%、51%のイヌに発生した。死亡率は22%だった。腫瘍血栓があるイヌとないイヌの術中罹病率や死亡率に有意差はなかった。
結論と臨床関連:副腎腫瘍に関係する大静脈血栓は、術者が適切な方法で経験をつんでいると仮定して、術中罹病率や死亡率を有意に増加させること無く、副腎摘出、血栓摘出を受けることができる。(Sato訳)
■イヌ副腎皮質機能亢進症の外科的治療
Surgical Treatment of Canine Hyperadrenocorticism
Compend Contin Educ Pract Vet 25[5]:334-346 May'03 Review Article 58 Refs
Todd W Axlund, DVM, DACVIM (Neurology); Ellen N. Behrend, VMD, PhD, DACVIM
(Internal Medicine) and James T. Winkler, DVM, MS, DACVS
副腎皮質機能亢進症は、機能的下垂体、または副腎皮質腫瘍から起こるイヌでよく見られる疾患である。副腎皮質機能亢進症のイヌの症例80-85%は、下垂体の前・中葉の腫瘍が原因である。鑑別試験(例えば、内分泌試験、先進画像検査)は、下垂体-と副腎-依存性副腎皮質機能亢進症の区別を目的とする。治療には、内科・外科的処置がある。しかし、腫瘍の外科的除去は、治癒の強い可能性と、腫瘍の悪性転換、腫瘍の転移、侵襲性の成長の脅威をなくす可能性がある。(Sato訳)
■副腎皮質腫瘍の外科治療:21症例(1990-1996)
C. B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin
Endocrinol 11[3]:13 Sep-Dec'01 Retrospective
Study 0 Refs;Surgical Treatment of Adrenocortical
Tumors: 21 Cases (1990-1996)
背景:副腎皮質機能亢進症の15-20%の症例は副腎の腫瘍です。外科処置は、副腎腫瘍の治療選択に考えられています。外科と周術管理については、約25%の周術死亡率と言われており、難しいものとなっています。また、腎臓脈管系や後大静脈のような重要組織への局所腫瘍浸潤や、遠隔転移で、完全切除が困難な症例や不可能な症例もあります。
要約:副腎摘出を行った副腎皮質腫瘍の21症例の記録を回顧的再検討しました。犬の年令中央値は11歳でした。メスは76%、オスは24%を占めました。体重の中央値は20kgで、17犬種いました。副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反応結果で、試験した12頭中4頭が診断でき、低用量デキサメサゾン抑制試験の異常は、試験した11頭全てに見られました。高用量デキサメサゾン抑制試験は、試験した8頭全てで、副腎依存性甲状腺機能亢進症の所見と一致しました。血漿ACTH濃度は、検査した5頭中4頭に正常範囲以下の値を認めました。
18頭に行った腹部超音波検査で、全頭に副腎のマスを認めました。手術時に来院した2頭の超音波検査で、後大静脈の巻き込みが分りました。片側副腎摘出を18頭に行いました。両側副腎腫瘍の3頭には両側副腎摘出を行いました。完全切除は19頭で達成できたと考えられました。後大静脈に絡んでいた2頭の腫瘍は不完全切除となりました。腎静脈に絡んでいた腫瘍の2頭は、片側腎摘出を行いました。1頭は術中、腎静脈を傷つけ、1頭は腎癌を併発していました。腫瘍の大きさの範囲は、2-6cm[3]でした。取り除いた24個の腫瘍で、20個は癌、4個は腺腫でした。1頭は手術時に転移を認め、摘出後、22ヶ月で見られた犬と33ヶ月で見られた犬がいました。転移した1頭で、甲状腺機能亢進症の臨床症状が再発しました。
術後治療は、15頭がプレドニゾン、2頭がデキサメサゾン、5頭がフルドロコルチゾンでした。術中死亡や安楽死した犬はいませんでした。4頭の犬は術後14日以内に死亡しました。原因は、空腸の虚血性壊死、アジソン病と拡張型心筋症の併発のために安楽死、多臓器不全と血栓塞栓症、高窒素血症でした。膵炎を術後起こした1頭は、内科治療で回復しました。術後すぐの期間に生存した17頭のうち、15頭は副腎皮質機能亢進症の臨床症状もなく長期間経過しています。不完全切除の2頭は、臨床症状の再発や転移が見られた時のみ、ミトタンで治療しました。癌の犬の中央生存期間は778日ですが、腺腫の犬は、腫瘍関連で死亡した犬がいなかったため、中央値は判定できませんでした。癌と腺腫の生存期間の差は、統計的に有意ではありませんでした。術後すぐの期間に死亡した犬を分析から除外すると、癌の犬の中央生存期間は992日でした。著者は、もし術後2週間を超えて生存するならば、副腎皮質腫瘍の犬の予後は良いと結論を出しました。
臨床への影響:副腎腫瘍の犬の術前スクリーニング検査は、切除に対して最も影響を受けやすい物を確認するために注意深く実施するべきです。この研究の長期生存期間は、転移巣や脈管の腫瘍侵襲に対して、術前に正確な診断を行った結果からかもしれません。腹部超音波検査、CT、あるいは、後大静脈造影を術前に行います。術前に副腎皮質機能亢進症の治療を行った記載はありませんでした。重度周術合併症の発生はこの研究や他の研究で見られ、それには膵炎、血栓塞栓症、敗血症で、術前ケトコナゾール、ミトタン、トリロスタンの投与で軽減するかもしれません。外科手術には専門的な技術が必要で、集中的な術中、術後管理は24時間術後ケアーの経験をつんだ外科医に委託するよう、開業医に奨励するべきです。(Sato訳)
■2頭の犬における副腎腫瘍産生の過剰な性ホルモンに関連した副腎皮質機能亢進症
Harriet M. Syme, BSc, BVetMed, DACVIM et
al; J Am Vet Med Assoc 219[12]:1725-1728
Dec 15'01 Case Report 17 Refs; Hyperadrenocorticism
Associated with Excessive Sex Hormone Production
by an Adrenocortical Tumor in Two Dogs
11歳の避妊済みラブラドールレトリバーと9歳の去勢済みミニチュアプードルが副腎皮質機能亢進症の臨床徴候で評価された。コルチゾール試験はどちらの犬でも診断を裏付けなかった。;しかしながら画像調査は両方の犬において片側性の副腎腫瘍を明らかにした。17-水酸基プロゲステロン、プロゲステロン、エストラジオールの血清濃度は両方の犬で高値であり、アンドロステンジオン濃度も一頭の犬では高値であった。これらの犬の副腎腫瘍による性ホルモン分泌が、副腎皮質機能亢進症の臨床徴候を結果として生じたと思われた。臨床徴候とホルモン異常は、腫瘍の外科摘出後の雄犬において改善した。雌犬でmitotaneによる治療後の臨床徴候に改善はなく、診断後2ヶ月で死亡した。2頭の犬の組織的評価から、副腎皮質癌の存在が確認された。(Dr.Massa訳)
■4頭の犬における腹腔内または後腹膜出血の原因となる副腎腫瘍の非外傷性破裂
Jacqueline C. Whittemore, DVM et al; J Am
Vet Med Assoc 219[3]:329-333 Aug 1'01 Case
Report 13 Refs; Nontraumatic Rupture Of An
Adrenal Gland Tumor Causing Intra-Abdominal
Or Retroperitoneal Hemorrhage In Four Dogs
副腎腫瘍の破裂を伴う4頭の犬の、腹腔内または後腹膜出血の診断と外科処置を判定しました。当初の検査で4頭の犬は、全て粘膜蒼白を伴い不活発で虚弱でした。3頭の犬は検査以前には、副腎皮質機能亢進症またはクロム親和性細胞腫の臨床徴候の病歴を持っていませんでした。3頭の犬において、手術前超音波検査で副腎領域の腫瘤が確認された。全ての犬は麻酔前または間中、心室性期外収縮が発現しました。3頭の犬は副腎摘出術をして助かりました。1頭の犬は適切な止血ができず、術中に安楽死されました。残った3頭は全て術後5ヶ月以上生存しました。1頭は肝腫瘤の破裂により術後9ヶ月で安楽死されました。
これらの結果を根拠として、我々は、血流動態安定化のあと副腎摘出手術の実施は、犬の副腎腫瘍非外傷性破裂と、結果的に生ずる重篤な出血の選択的治療法であることを示唆する。(Dr.Massa訳)
訳者コメント:副腎腫瘍が破裂しているときには摘出手術が必要になるという文献です。しかし、腹腔内あるいは後腹膜腔腫瘤の破裂は副腎に限らずとも生命の危険にさらされます。体内の出血部位の確定のための超音波画像診断は非常に有用ですね。