■犬の会陰ヘルニアは前立腺疾患に関係する:去勢は本当に有益か?回顧的研究
Canine Perineal Hernia Associated with Prostatic Disorders: Is Castration Really Beneficial? A Retrospective Study
Animals (Basel). 2025 Apr 23;15(9):1206. doi: 10.3390/ani15091206.
Putinee Sangmanee , Attawit Kovitvadhi , Wijit Sutthiprapa , Piyathip Choochalermporn , Chunsumon Limmanont
前立腺疾患は、歳を取った未去勢のオス犬に一般的に観察され、会陰ヘルニア(PH)の発症において主要な病因である。前立腺疾患に罹患した犬の管理と長期臨床的結果を含むPHと去勢の訂正に関する文献は限られている。
この回顧的研究の目的は、前立腺疾患の管理を述べ、会陰ヘルニア縫合術と去勢手術後の結果と再発を評価することだった。
前立腺疾患と関係する会陰ヘルニア縫合術を行った未去勢のオス犬315頭を2つの群に分類した:去勢群(PHC;n=184)と非去勢群(PHNC;n=131)。
PHC群の臨床症状は術後、短期および長期フォローアップ期において有意な改善を示した(p<0.001)。前立腺の拡大、不均質な実質、実質内嚢胞病変は、他群と比較してPHC群の少ない有病率が認められた(p<0.001)。PH再発の発生率は、有意差を示さなかった(p=0.5)。
結論として、会陰ヘルニア縫合術と組み合わせた去勢手術は、術後の結果の改善、前立腺の病因に関係するPHの再発を最小限にする有意な利点を提供する。特にこれは、ドレナージに対するFNA、嚢胞あるいは膿瘍切除、あるいは術中の部分的前立腺切除と大網被覆など前立腺嚢胞を管理するときに重要である。(Sato訳)
■開腹の犬の卵巣摘出術において組織シーリングvs結紮:手術時間、術中侵害受容反応、合併症の頻度
Tissue sealing versus suture ligation in open canine ovariectomy: Surgical times, intraoperative nociceptive response and frequency of complications
Vet Med Sci. 2022 Dec 14.
doi: 10.1002/vms3.1012. Online ahead of print.
Vincenzo Cicirelli , Matteo Burgio , Alice Carbonari , Giovanni M Lacalandra , Giulio G Aiudi
Free article
背景:この研究では、犬の開腹卵巣摘出術で現在使用されている2つの異なる方法を比較した:吸収糸を使用した従来の方法と脈管シーリング機器(ENSEAL® Ethicon Endo-Surgery, Cincinnati, OH)。
目的:この研究の目的は、それら2つの方法を用いた犬の卵巣摘出術において、手術時間、術中侵害受容反応、術中合併症の頻度を比較することだった。
方法:40頭のメス犬を2群に無作為に振り分けた:コントロール群(C)は、吸収糸による結紮と、外科刃による切断を使用した従来の開腹手術アプローチを用いた。E群は、卵巣構成の切除をENSEAL組織シーラー機器を用いて実施した。2つの方法の有効性を比較するため、各犬の手術時間、術中侵害受容反応(心拍数、呼吸数、非侵襲性血圧の測定)、術中合併症を測定した。
結果:この研究の結果は、縫合糸を用いる従来の方法よりもENSEALを用いて行った方法の方が速いことを示した。そのほか、侵害受容や安全性に関する2つの処置の結果に違いはなかった。
結果:この研究は、ENSEALの使用は手術時間を有意に短縮することを示した。一方、安全性と術中侵害受容に関しての有効性は、縫合糸を用いた従来の方法と同様だということが分かった。ENSEAL機器を用いた犬の卵巣摘出術は、従来の方法よりも実践的で迅速である;犬の不妊手術に対し、この機器の日常的な使用は、有効な代替法と考えられる。(Sato訳)
■1頭のメス犬の腫瘍に似た卵巣結紮糸肉芽腫
Ovarian suture granuloma resembling a tumor in a bitch
Top Companion Anim Med. 2022 May 26;100675.
doi: 10.1016/j.tcam.2022.100675. Online ahead of print.
Doroteja Huber , Branimir Škrlin , Marija Mamić , Ana Smajlović , Andrija Musulin
卵巣子宮摘出術は、世界中でメス犬に対して実施される一般的な外科処置である。まれな合併症の1つに、糸への反応として肉芽腫の発生がある。肉芽腫は大きく、画像診断で偽腫瘍のようになり、診断的に困難を呈する可能性がある。
我々は、診断画像検査で腫瘍に似ている卵巣の結紮糸肉芽腫の珍しい1症例を提示する。
5歳の避妊済みMIX犬が、1週間前から持続する食欲不振と無関心を呈した。臨床検査で、発熱、脱水、拡大したリンパ節、腹部の張りを認めた。エックス線と超音波検査で、左卵巣部位に9cm x 7cmのマスを認め、何らかの腫瘍と推定した。マスは開腹して切除し、病理組織検査で異物に反応した肉芽腫性炎症と診断された(糸反応に最も一致した)。
この症例は、糸肉芽腫の形で、卵巣子宮摘出術の珍しい晩発合併症を呈する。この症例は、腫瘍の炎症を診断画像検査は鑑別できないため、特に病理組織学検査のような腹部で遭遇するマスの病因的診断に対し追加の診断処置が必要だと強調する。(Sato訳)
■子馬の早期去勢:身体および行動発達に対する結果
Early castration in foals: consequences on physical and behavioural development
Equine Vet J. 2022 Apr 28.
doi: 10.1111/evj.13580. Online ahead of print.
J Cognie , S Freret , L Lansade , C Parias , P Barriere , A Gesbert , F Reigner , S Deleuze
背景:犬や猫で多くのポジティブな効果が観察されているにもかかわらず、子馬の超早期去勢の影響はいまだ研究されていない。
目的:3日および18か月での去勢を比較し、その後の形態及び行動学的発達を評価する
研究計画:無作為化盲検臨床研究
方法:22頭のウェルシュポニーを早期(3日齢、EC群、n=11)あるいは従来の時期(18か月齢、TC群、n=11)に去勢した。3歳までポニーをフォローした。全てのポニーは全身麻酔下において基本的閉鎖法で去勢した。両群の体重、形態計測値を生れてから8ヶ月齢まで毎月モニターした。その後、測定は2歳まで3か月ごと、3歳まで6か月ごとに行った。全てのポニーで1歳と3歳時に気質検査を実施した。
結果:生まれてから40ヶ月齢まで身体発達に関し、あるいは1歳、3歳時の気質や行動に関してEC群とTC群の間に違いは観察されなかった。
主な限界:この研究は1種類(ウェルシュポニー)だけで、2歳前に去勢した22頭しか含まれず、より高い年齢で実施した去勢との比較は排除されている。
結論:生まれて3日での早期去勢は、形態あるいは行動学的発達を妨げないことを証明する。(Sato訳)
■犬の卵巣子宮摘出術により誘発される酸化ストレスに対するメラトニン投与の効果
The effects of melatonin treatment on oxidative stress induced by ovariohysterectomy in dogs
BMC Vet Res. 2021 May 1;17(1):181.
doi: 10.1186/s12917-021-02882-1.
Sina Salavati , Asghar Mogheiseh , Saeed Nazifi , Atefeh Amiri , Behrooz Nikahval
Free PMC article
背景:獣医療で最も一般的に行われる外科手術の1つである犬の卵巣子宮摘出術は、酸化ストレスを誘発する可能性がある。メラトニンの抗酸化特性は、種々の研究で確認されている。
この研究の目的は、OHE前後の犬の酸化ストレスに対し、メラトニン投与の効果を調査することだった。
この研究において、25頭の成熟したメス犬を選択し、無作為に5つのグループに振り分けた:メラトニン(メラトニン、手術なし)、OHE(メラトニンなし、手術)、OHE+メラトニン(メラトニン、手術)、麻酔+メラトニン(メラトニン、偽手術)、コントロール(メラトニンなし、手術なし)。メラトニン、OHE+メラトニン、麻酔+メラトニン群には、-1、0、1、2、3日目(0日目=OHE)にメラトニン(0.3mg/kg/日、p.o.)を投与した。研究の-1、1、3、5日目に採血を実施した。血液サンプルはすぐに検査所に輸送し、血清を分離し、-20℃で保管した。スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、グルタチオンペルオキシダーゼ(GPX)、カタラーゼ(CAT)、マロンジアルデヒド(MDA)濃度を、市販キットで測定した。
結果:3及び5日目、コントロール群と比べてメラトニン群、麻酔+メラトニン群のSOD、GPX、CAT濃度は有意に高かった。3及び5日目、OHE群の抗酸化酵素の濃度は、他の群と比べて有意に低下した。OHE群の犬において、メラトニンの投与は抗酸化酵素の濃度を上昇させた。3日目、OHEは他の群と比べMDA濃度を有意に上昇させた。3日目、メラトニンの投与は、メラトニン群、麻酔をかけた犬、OHEを行った犬のMDA濃度を有意に減少させた。
結論:-1、0、1、2、3日目のメラトニンの投与は、抗酸化酵素濃度を増やし、MDA濃度を減少させることで犬のOHEにより誘発される酸化ストレスを調整する。(Sato訳)
■メス犬の尿中セロトニン、コルチゾール、テストステロン、プロゲステロンに対する卵巣子宮摘出術の短期影響
Short-term effect of ovariohysterectomy on urine serotonin, cortisol, testosterone and progesterone in bitches
BMC Res Notes. 2021 Jul 10;14(1):265.
doi: 10.1186/s13104-021-05680-y.
Eva Hydbring-Sandberg , Elin Larsson , Andrzej Madej , Odd Viking Höglund
目的:この研究の目的は、メス犬におけるセロトニンの尿中濃度に対する短期影響と、それとコルチゾール、テストステロン、プロゲステロンとの関連を調査することだった。外科的卵巣子宮摘出術前に7頭のメス犬を調査し、手術後、1週間に1回で4週間調査した。自然排尿のサンプルを収集し、尿のホルモン/クレアチニン濃度比を解析した。
結果:卵巣子宮摘出術前と比べ、術後1週間のコルチゾール、テストステロン、プロゲステロンの濃度は有意に低く、この研究期間中は低値を示した(P≦0.05)。興味深いことに、セロトニン濃度は術後4週間、増加傾向があった(P=0.08)。手術前後、コルチゾールとプロゲステロンに正の相関がみられた。術後、セロトニンはコルチゾールおよびプロゲステロンと正の相関を示した(P≦0.05)。
■犬の行動に対する性腺摘出の影響
Influence of Gonadectomy on Canine Behavior
Animals (Basel). 2021 Feb 20;11(2):553.
doi: 10.3390/ani11020553.
Clara Palestrini , Silvia Michela Mazzola , Bianca Caione , Debora Groppetti , Alessandro M Pecile , Michela Minero , Simona Cannas
Free article
明確な科学的エビデンスがないため、犬の行動に対する性腺摘出の影響はいまだ議論されている。獣医師もそれらの意見が異なるので、オーナーが受けるアドバイスもかなり多様性のものとなるかもしれない。
この研究の目的は、時間経過とともに犬の行動に対する性腺摘出の影響を評価することだった。
96頭の犬のオーナー(コントロール犬48頭、実験犬48頭)に、彼らの犬の行動についての情報を得るために2度(T0とT1、9か月後)話を聞いた。
両群ともに犬の食べる行動あるいは体重に変化は見つからなかった。実験犬のT0と比較したT1 時にマウンティング行動、リードを引っ張る、ローミング行動は少ないことが報告された。両群の犬でマーキング行動は時間の経過で変化しなかった。実験犬のオス犬のT1時、オーナーに向けた攻撃性の減少傾向が観察されたが、コントロールのオスに変化は見られなかった。
この文献は行動に対する性腺摘出の影響について矛盾する情報を報告し、このトピックについて追加研究がおこなわれるべきだと提案する。(Sato訳)
■避妊手術をした犬のエストロゲン欠乏は脂質プロフィール障害を誘発するが心機能不全を起こすことはない
Estrogen deprivation induces lipid profile impairment but not cardiac dysfunction in ovariohysterectomized dogs
Pol J Vet Sci. 2020 Dec;23(4):521-528.
doi: 10.24425/pjvs.2020.134701.
C Boonyapakorn , V Punyapornwithaya , G Sawatphakdee , N Poolsawat , W Pongkan
ヒトにおける研究は、ホルモン・エストロゲンは生殖器系に影響を及ぼすことに加え、心臓の保護効果も持つ。
この研究で卵巣子宮摘出術(OVH)を受けた犬は、避妊手術をしていない犬に比べ、心臓機能不全と脂質プロフィールの障害の発生率がより高いだろうと仮説を立てた。
30頭の健康なメス犬を、15頭の手術をしていない犬と15頭のOVHの犬の2群に振り分けた。
全ての犬は、身体パラメーターの調査、脂質プロフィール測定のための採血、胸部エックス線検査、心電図検査、心エコー検査を含む身体検査を行った。
OVHの犬の身体検査パラメーター、心電図パラメーター、心臓の大きさ、心臓機能は、手術をしていない犬と比べた時に違いがなかった。しかし、OVHの犬において、トリグリセリド、超低密度リポ蛋白濃度は上昇したが、高密度リポ蛋白は有意に減少した(P<0.05)。総コレステロール、低密度リポ蛋白の群間の違いは統計学的有意に達しなかった。
著者らは、避妊後1年の犬で、エストロゲン欠乏は、脂質プロフィール障害を誘発する可能性があるが、心臓パフォーマンス障害を起こさなかったと結論付けた。(Sato訳)
■大網内の卵巣組織による卵巣遺残症候群の1頭の猫
Ovarian remnant syndrome in a cat with ovarian tissue in the omentum
J Am Vet Med Assoc. 2020 Sep 15;257(6):631-634.
doi: 10.2460/javma.257.6.631.
Gabrielle S Fontes, Robert J McCarthy
症例説明:2歳の避妊済みメスの短毛家猫を、卵巣子宮摘出とその後2回の試験切開後でも繰り返す発情行動のために評価した。
臨床所見:身体検査で異常は認めなかった。ミュラー管ホルモンに対する血清の検査は陽性で、卵巣遺残に一致するプロゲステロン濃度だった。腹部超音波検査の結果は、左腎尾側でわずかに高エコーのマスの存在を示唆した。
治療と結果:その猫が発情行動を示した時、試験的回復を実施した。左右の卵巣茎、子宮断端の組織は肉眼的に正常だったが、切除して組織検査に提出した。大網に関連する2つの小結節を摘出し、それらの結節の1つの組織学的検査結果は、二次およびグラーフ卵胞を伴う卵巣組織が示された。発情の臨床症状は手術後解消し、ホルモン分析結果は、避妊した猫と思われる範囲内だった。
臨床的関連:著者の知るところでは、これは卵巣茎に遺残卵巣組織が見つからない猫あるいは犬の卵巣遺残症候群の最初の臨床報告である。この所見は、卵巣遺残組織の可能性に対して評価し、組織評価により卵巣遺残組織の切除の確認を行うとき、腹腔全体の探査の重要性を強調した。(Sato訳)
■ゴールデンレトリバーの1集団における性腺摘出の年齢と過体重/肥満と整形外科的傷害のリスク
Age at gonadectomy and risk of overweight/obesity and orthopedic injury in a cohort of Golden Retrievers.
PLoS One. 2019 Jul 17;14(7):e0209131. doi: 10.1371/journal.pone.0209131. eCollection 2019.
Simpson M, Albright S, Wolfe B, Searfoss E, Street K, Diehl K, Page R.
イントロダクション:アメリカでは、性腺摘出は一般的で、ペットのオーナーの責任のコンポーネントとして広く奨励されている。コンパニオンアニマルにおいて、その後の健康に対する性腺摘出の影響を調べた最近のいくつかの研究は、性腺摘出に対する長期に保たれた仮定と推奨を困難にしている。この研究の目的は、ゴールデンレトリバーの大規模前向き研究において、性腺摘出と過体重/肥満、整形外科的傷害の2つの結果とのかかわりの特徴を述べることだった。
方法:性腺摘出時の年齢で4つのカテゴリーに振り分けた:無処置(参照)、6か月以下、6か月から12か月以下、12か月以降。ピュリナ・ボディコンディションスコア7以上の犬を過体重あるいは肥満と分類した。想定した整形外科的傷害は、獣医師が報告した前十字靱帯傷害の最初の事実と臨床的な変形性関節症のエビデンスだった。著者らは比例ハザードを用い、そのことへの関連を算出するため、ゴールデンレトリバーの1集団に対する生存解析を実施した。著者らは研究参加時の年齢、オーナーが報告する活動レベル、犬の性別に対する調整を行った。
結果:未不妊の犬と比べ、全ての性腺摘出年齢カテゴリーは過体重/肥満の発症のリスクの増加を示した(≦6か月、HR:1.81、95%CI:1.36-2.40、p値:<0.0001;6か月-≦12か月、HR:2.21、95%CI:1.77-2.73、p値:<0.0001;>12か月、HR:1.56、95%CI:1.24-1.96、p値:0.0001)。未不妊の犬と比べ、性腺摘出時が≦6か月の犬は、整形外科的傷害のリスクが増していた(HR:4.06、95%CI:2.15-7.67、p値:<0.00001)。
ディスカッション:この研究は、ゴールデンレトリバーの前向き集団において、性腺摘出が過体重/肥満および慢性非外傷性整形外科的傷害のリスク因子であることを示す前向き獲得データを提示する。我々のデータは全ての年齢の性腺摘出は過体重あるいは肥満のリスク因子であるが、少なくとも6-12ヶ月齢まで性腺摘出を遅らせることが整形外科的傷害のリスクを減らすことになるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の卵巣子宮摘出術中の提靭帯の指でつまんで切る方法の代替として鋭性横断
Sharp transection of the suspensory ligament as an alternative to digital strumming during canine ovariohysterectomy.
Vet Surg. February 2019;48(2):216-221.
DOI: 10.1111/vsu.13121
Jacob M Shivley , Jodi M Richardson , Kimberly A Woodruff , Wilson C Brookshire , Robert E Meyer , David R Smith
目的:卵巣子宮摘出術(OVH)肘の提靭帯を指でつまんで切る(DS)方法と鋭性横断(ST)の時間効果と侵害受容入力を比較する
研究デザイン:無作為化比較研究
動物:30頭のメスの成犬
方法:犬を無作為にSTあるいはDS処置に振り分けた。侵害受容の測定は、術前心拍数と提靭帯の操作中の術中心拍数の測定を通して評価した。疼痛の測定は、short form Glasgow Composite Pain Scaleを用いて術前と術後ペインスコアを通して評価した。時間効果は総手術時間と各提靭帯のリリースまでの時間を通して測定した。
結果:体重を考慮したのち、総手術時間はDSよりSTの方が1.1分(P=0.06)速く、体重が各々1kg増加すると総手術時間は0.1分増加した(P=0.02)。DSはSTと比較して1分以上時間を要する確率が30.6倍大きかった(P=0.001)。DS群よりもST群で基礎からピークまでの心拍数は、7.4回/分低かった(P=0.06)。合併症は観察されず、処置間の術後ペインスコアに差はなかった。
結論:DSと比べて鋭性横断はより速く、心拍数の術中促進の発生も少なかったが、術後の結果に違いはなかった。
臨床意義:犬のOVH中、提靭帯の破壊で鋭性横断はDSの実行可能な代替法である。鋭性横断は特に多数の避妊/去勢を実施するときに外科的能率を改善し、獣医学生の練習に影響を及ぼす可能性がある。(Sato訳)
■譲渡されたシェルターの子猫の行動に対する早期性腺摘出の影響
Effect of early-age gonadectomy on behavior in adopted shelter kittens?The sequel
J Vet Behav. Jul-Aug 2018;26(0):43-47. 22 Refs
DOI: 10.1016/j.jveb.2018.04.001
Christel P H Moons , Annelies Valcke, Katrien Verschueren, Nathalie Porters, Ingeborgh Polis, Hilde de Rooster
獣医臨床医は、子猫の思春期前の性腺摘出中の安全と、健康および行動面に対するこの手技の潜在的影響について考えることが多い。
無作為化処置(シェルターの8-12週齢の猫の思春期前の性腺摘出)とコントロール群(シェルターの6-8ヶ月齢の猫の性腺摘出)の前向き研究であるストレイキャットプロジェクトのような過去の研究では、譲渡されたシェルター猫に発現する潜在的な望まれない、あるいは望まれない行動の発生に違いはなかったと結論付けられた。
この研究の目的は、ストレイキャットプロジェクトの骨組み内でデータ収集を拡張することだった。
行動データは譲渡から5-7年の間に、オンライン調査でオーナーから収集した。162頭の我々のデータ(110頭は思春期前、52頭は従来の年齢で性腺摘出)は、潜在的に望まれない、あるいは望まれに行動の総数/猫に性腺摘出時の年齢の影響はなく、猫が表現することが一般に分かっている個々の行動の発生、オーナーにとって問題となる確率が高い行動の発生にも影響はなかった。
思春期前の性腺摘出が、従来の年齢の性腺摘出よりも潜在的に望まれない、あるいは望まれない行動の異なる発生を誘発するという指標はない。その結果、シェルターの猫の思春期前の性腺摘出の実施に対する行動学の異論はない。(Sato訳)
■不妊した飼育犬において寿命とボディコンディションの関係
Association between life span and body condition in neutered client-owned dogs.
J Vet Intern Med. 2018 Dec 11. doi: 10.1111/jvim.15367. [Epub ahead of print]
Salt C, Morris PJ, Wilson D, Lund EM, German AJ.
背景:ケンネルの犬で過体重と寿命の関連はあるが、ペットの犬で同様の関連は報告されていない。
目的:不妊した飼育犬の寿命に対する中年の過体重であることの影響を調べる
動物:北アメリカの約900の動物病院のネットワークに登録された5787頭の中年の不妊してある飼育犬
方法:回顧的症例-コントロール研究。12犬種の各々に対し、6.5-8.5歳の犬のグループで“過体重”か“正常”ボディコンディションかを確認した。その後、2群の各犬種と性別内で、正常なボディコンディションと過体重のボディコンディションの犬の寿命の差をCox比例ハザードモデルで解析した。
結果:全ての犬種で、過体重のボディコンディションの犬に対する死亡の瞬間リスクは、研究した年齢の範囲で正常なボディコンディションの犬よりも大きく、危険率は、ジャーマンシェパードの1.35(99.79%信頼区間(CI)1.05-1.73)からヨークシャーテリアの2.86(99.79%CI 2.14-3.83)の範囲だった。全ての犬種で正常な体重の犬よりも過体重の犬の寿命の中央値は短く、その差が最大な犬種はヨークシャーテリア(過体重:13.7歳、99.79%CI 13.3-14.2;正常:16.2歳、99.79%CI 15.7-16.5)で、最小はジャーマンシェパード(過体重:12.1歳、99.79%CI 11.8-12.4;正常:12.5歳、99.79%CI 12.2-12.9)だった。
結論と臨床意義:獣医専門家は特に中年以降、犬を健康なボディコンディションに即すよう考えるべきである。(Sato訳)
■一晩絶食した後に性腺摘出を行った猫の術中血糖値
Perioperative blood glucose concentrations in kittens following overnight fasting and gonadectomy.
Language: English
J Feline Med Surg. April 2018;20(4):344-348.
DOI: 10.1177/1098612X17710590
Danielle N Semick , Stephanie L Shaver , Heather N Cornell , Nancy C Bradley , Rachael E Kreisler
目的:この研究の目的は、子猫の低血糖が一晩の絶食と性腺摘出の1つの影響かどうか、また基礎および術後血糖値の指標を判定することである。
方法:これは前向き観察研究である。アニマルシェルターで通常の去勢あるいは避妊手術を行う8週から16週齢の子猫75頭を含めた。一晩絶食の後、子猫は2回の血糖値を測定した:術前検査前の基礎値と術後すぐの値。基礎値および術後血糖値の指標は、multi-level mixed-effects linear regressionで判定した。
結果:一晩絶食した時、子猫は低血糖(<60mg/dl)ではなかった。低血糖の臨床症状を示した子猫はいなかった。術後に血糖値が<70mg/dlを示した子猫はいなかった。術後に高血糖(>150mg/dl)は44%で観察された。絶食後の血糖値の指標はボディコンディションスコアだけだった。術後血糖値の指標は、絶食後の血糖値だけだった。
結論と関連:8-16週齢の子猫の選択的不妊前の一晩の絶食は低血糖を起こさなかった。健康な動物での短時間の処置で、子猫の長時間絶食後の低血糖に関する懸念は必要ないかもしれない。(Sato訳)
■犬と猫で卵巣子宮摘出術は睾丸摘出よりも術後鎮痛を必要とする
Ovariohysterectomy requires more post-operative analgesia than orchiectomy in dogs and cats.
Language: English
Can Vet J. November 2017;58(11):1191-1194.
Carolina Quarterone , Stelio Pacca Loureiro Luna , Nadia Crosignani , Flavia Augusta de Oliveira , Carlize Lopes , Alfredo Feio da Maia Lima , Antonio Jose de Araujo Aguiar
犬と猫において、睾丸摘出に対し、卵巣子宮摘出(ovariohysterectomy:OH)後の術後鎮痛処置の必要性を比較した。
12頭のオスと12頭のメス猫、12頭のオスと12頭のメス犬に対し、手術2時間前にメロキシカム0.1mg/kgを経口投与した。11頭のメス猫と3頭のメス犬にレスキューの鎮痛処置を施した(P=0.002)。犬と猫のオスでレスキューの鎮痛処置を必要としたものはいなかった。レスキューの鎮痛処置を受けた猫の数は、オスよりもメスで多かった(P<0.0001)。
犬と猫でOH後の術後疼痛をコントロールするため、術前短時間作用オピオイドとNSAIDsの先制使用を単に信用すべきではない。OH後の術後疼痛は、適切にその診断と管理を行うため、種に合った特別な手段を用いて猫で最低2時間、犬で4時間評価すべきである。
OHを受けたメス犬とメス猫に比べ、睾丸摘出を受けたオス犬とオス猫は、術後鎮痛処置をあまり必要としない。(Sato訳)
■猫の避妊手術でPedicle tiesは迅速で安全な方法である
Pedicle ties provide a rapid and safe method for feline ovariohysterectomy.
J Feline Med Surg. February 2016;18(2):160-4.
Kirk P Miller; Wendy Rekers; Kristi Ellis; Kris Ellingsen; Milan Milovancev
目的:この研究の目的は、多数の猫のpedicle tie(PT)処置を通し、出血関連の合併症発生率を評価することと、従来の卵巣茎二重結紮(PDL)とPT処置で手術時間の差を評価した。
方法:研究の初期段階で、2136頭のメス猫にPT法を用いて卵巣子宮摘出術を行った。術中に検出されなかった出血性の合併症は、試験開腹あるいは検死で確認した。研究の第二段階で4群の手術時間を記録した:PTsを行った子猫(n=50)、PDLを行った子猫(n=49)、PTsを行った成猫(n=50)、PDLを行った成猫(n=54)。子猫は4ヶ月齢以下とした。PTとPDL群の年齢、体重、手術時間の統計学的比較は子猫と成猫カテゴリーの間ではなく内で実施した。
結果:2136頭中6頭(0.281%)の猫は卵巣茎に関係する出血性合併症を経験した。6頭中5頭の卵巣茎の出血関連の合併症は術中に認められ対処し、残りの出血性事象は術後発見した。PT子猫はPDL子猫と比べ(4.7±0.1分 vs 6.7±0.1分)、PT成猫はPDL成猫(5.0±0.2分 vs 7.0±0.2分)と比べて有意に短縮した。
結論と関連:この研究はPT法が関連する出血関連の合併症リスクは非常に少ないことと、子猫と成猫共に卵巣茎の二重結紮よりも有意に速いことを証明した。PT法の使用は卵巣子宮摘出術を多く行う施設において重要な経済的利点を持つ可能性がある。(Sato訳)
■メス犬の卵巣遺残症候群の診断ツールとして抗ミュラー管ホルモン
Anti-Mullerian hormone as a diagnostic tool for ovarian remnant syndrome in bitches.
Vet Res Commun. September 2015;39(3):159-62.
Ozge Turna Yilmaz; Tu?ba Seval Fatma Toydemir; ?smail Kir?an; Zeynep Gunay Ucmak; Esra Caliskan Karacam
卵巣子宮切除は不妊化に対して実施される外科的処置である。卵巣の一部、または全てが手術後に取り残された場合、卵巣遺残症候群(ORS)が発生する。残された卵巣組織の血行再建が起こった後、メス犬やメス猫の性周期が継続する。
この研究の目的は、メス犬のORSの診断に対し、血清抗ミュラー管ホルモン(AMH)測定の有用性を調査することだった。
46頭のメス犬を4群に振り分けた:思春期前、避妊手術なし、避妊手術済、ORS群。全ての群のメス犬の血清AMH、プロゲステロン、エストラジオール濃度をELISAで測定した。各メス犬の性周期のステージは、腟細胞所見と血清エストラジオールおよびプロゲステロン濃度を基に判定した。
避妊手術をしていないメス犬の平均血清AMH濃度(4.26±0.82ng/ml)は、ORSのメス犬(4.40±1.09ng/ml)と同様だった。しかし、ORSのメス犬と避妊手術済のメス犬(0.28±0.09ng/ml)の平均血清AMH濃度には有意差があった。
結論として、この研究は避妊手術をしていないメス犬やORSのメス犬よりも、避妊手術をしたメス犬の血清AMH濃度はかなり低いことを証明している。この結果に従えば、血清AMH濃度の測定は、メス犬のORSの有効な診断ツールである。(Sato訳)
■陰嚢前で精巣摘出を行った後の持続的鼠径部出血を腹腔鏡で処置した犬の一例
Laparoscopic treatment of persistent inguinal haemorrhage after prescrotal orchiectomy in a dog.
J Small Anim Pract. August 2014;55(8):427-30.
A Koenraadt; L Stegen; T Bosmans; B Van Goethem
1歳のジャックラッセルテリアが選択的精巣摘出を行った後、陰嚢前出血を起こした。
外科的探査で責任血管の位置が分からず、保存療法(圧迫包帯の使用)でも安定化に成功せず、腹腔鏡検査を実施した。
出血は、両側の鼠径管内の精索から起こっていた。腹腔に精索を引っ張り込んで、血管シール機器で止血を施した。陰嚢前の血腫を取り除き、何事もなく回復した。(Sato訳)
■早期あるいは従来の年齢で性腺摘出を実施した後に譲渡されたシェルターの子猫の行動の発達
Development of behavior in adopted shelter kittens after gonadectomy performed at an early age or at a traditional age
J Vet Behav. September/October 2014;9(5):196?206. 72 Refs
Nathalie Porters; Hilde de Rooster; Katrien Verschueren; Ingeborgh Polis; Christel P H Moons
思春期前の性腺摘出(PPG)は猫の集団コントロールを促進させているが、健康と行動に関する懸念は依然存在する。
行動学的観点から、PPGが従来の年齢の性腺摘出(TAG)に容認できる代替法であるためには、望まれない行動の発生が性腺摘出時の年齢に影響を受けてはいけない。
この研究の目的は、(1)シェルターの子猫の譲渡から24か月の間で(潜在的)望まれない行動の平均数が性腺摘出時の年齢に関係するのかどうか、(2)社会あるいは環境因子が一般に報告される望まれない行動(不適切な排泄、恐怖、攻撃、破壊)の発生に関係するのかどうかを調査することだった。
8週から12週(0.7と1.4kg)と思われる800頭の健康な子猫を、ベルギーのフランダースのアニマルシェルターから採用した。譲渡前、子猫を無作為にPPG群(譲渡時に性腺摘出)とTAG群(6-8ヶ月齢に性腺摘出)に振り分けた。オンラインの短期および長期追跡調査を譲渡後すぐから30日間1日1回、譲渡後2、6、12、18、24か月の調査を行った。
譲渡後の最初の1か月で1日当たりの潜在的な望まれない行動の平均数はPPG(1.48±0.957)とTAG(1.39±0.899)の猫の間で有意差はなく(P=0.32)、潜在的な望まれない行動の平均数の進展、長期追跡調査中の望まれない行動共に見られなかった(P=0.0946とP=0.10)。
不適切な排泄、恐怖行動、遊びと関係ない攻撃、破壊行動は他の社会および環境の問題(例えば、オーナーによる罰の使用、見知らぬ人に向けた好意など)と関係した。
結論として、シェルターの猫でのこの研究により、譲渡後24か月の間で(潜在的)望まれない行動の平均数に対し、性腺摘出時の年齢の影響は示されなかった。そのような行動が起きることに他の因子がより重要な役割を演じると思われる。(Sato訳)
■シェルターから譲渡された子猫における性腺摘出年齢と健康問題の関連
Relationship between age at gonadectomy and health problems in kittens adopted from shelters.
Vet Rec. May 2015;176(22):572.
N Porters; I Polis; C P H Moons; I Van de Maele; R Ducatelle; K Goethals; L Duchateau; H de Rooster
思春期前の性腺摘出(PPG)は猫の頭数過剰の管理方法として促進されているが、PPGと潜在的健康問題についての懸念はいまだ存在する。
この研究の目的は、従来の年齢で性腺摘出(TAG)した猫と比べ、PPGの猫の短期および長期健康問題を評価することだった。
前向き臨床試験において、約8週から12週齢の間のシェルターの子猫800頭を譲渡前に募り、無作為にPPG群(即時性腺摘出)とTAG群(6か月から8か月齢まで遅らせて性腺摘出)に振り分けた。短期の健康問題は子猫が病院に到着からシェルターに戻った後の7日までの死亡率、同様に譲渡後最初の1か月に起きた様々な他の健康問題の発生を含めた。
子猫は24ヶ月齢まで特に猫下部尿路疾患、尿道閉塞(オス猫)、跛行、骨折、皮膚症状を伴う過敏症疾患に関して追跡調査した。
短期では、PPGおよびTAGの子猫の間で有意差はなかった。同様に長期に関しても健康問題の種類あるいは発生数に群間の有意差は見られなかった。
結論としてシェルターの猫において提唱されるPPG方針に健康が関係する禁忌はない。理想的には、譲渡が決まる前に優秀な感染疾患コントロールと術後の臨床的観察ができるようにシェルター施設内でPPGを実施すべきである。(Sato訳)
■開放および閉鎖式で精巣摘出を行った健康犬における術後合併症の比較
Comparison of postoperative complications in healthy dogs undergoing open and closed orchidectomy.
J Small Anim Pract. 2014 Oct;55(10):521-6. doi: 10.1111/jsap.12266. Epub 2014 Sep 12.
Hamilton KH, Henderson ER, Toscano M, Chanoit GP.
目的:犬の精巣摘出で閉鎖式および開放式の比較と関連する合併症
方法:73症例の無作為化対照盲検前向き臨床研究で、標準化した参加基準を満たした犬の精巣摘出後10日間で全ての合併症の記録を行った。有効な変数は術式が開放か閉鎖式かということだった。
結果:開放式で行った犬は、閉鎖式で行った犬よりも有意に多く合併症を経験した(24/34[70%]v.s.18/39[46%]、P=0.04) 。開放式で行った犬は閉鎖式で行った犬と比べて有意に陰嚢の合併症を起こす確率が高かった(21/34[61%]v.s.13/39[33%];P=0.02)。
臨床意義:開放式精巣摘出は閉鎖式よりも術後10日間で高い総合併症率と関係した。開放式精巣摘出は閉鎖式と比べ、腫脹、紫斑、疼痛を含む陰嚢の合併症増加にも関係した。(Sato訳)
■オスとメスの家庭猫の大腿骨および脛骨骨端軟骨閉鎖時期に対する不妊手術と品種の影響
Effect of neutering and breed on femoral and tibial physeal closure times in male and female domestic cats.
J Feline Med Surg. February 2014;16(2):149-56.
Karen L Perry; Alice Fordham; Gareth I Arthurs
骨端軟骨閉鎖時期は、性腺ステロイドを含む多くの要因に依存し、過去の研究では早期不妊手術は骨端軟骨閉鎖を遅らせると示している。
808頭の猫の骨盤および大腿骨のエックス線写真を分析し、大転子、近位大腿骨、遠位大腿骨、近位脛骨の骨端軟骨を開放あるいは閉鎖として記録した。症例の生年月日、性別、不妊状況、品種を記録した。特定の年齢で各骨端軟骨を個々に分析した。それら年齢の各々で、オス(ME)、去勢済みオス(MN)、メス(FE)、避妊済みメス(FN)の頭数、純血種および非純血種を記録した。各定めた年齢での開放あるいは閉鎖した症例頭数を、不妊手術した猫としてない猫、メスとオス、純血種と非純血種のグループでFischer's exact検定を用いて比較し、P<0.05を有意と考えた。
783頭のエックス線写真を調べた:MN359頭、ME95頭、FN237頭、FE92頭。96頭の猫は純血種で、687頭は非純血種だった。大転子(P=0.0037)、遠位大腿骨(P=0.0205)、脛骨粗面(P=0.0003)に対し、ME猫よりもMN猫において骨端軟骨閉鎖の遅れが有意な影響として見られた。FE猫とFN猫の比較で、近位脛骨あるいは近位大腿骨骨端軟骨だけでなく全ての骨端軟骨に対して影響は見られなかった。品種や性別の統計学的に有意な影響はなかった。
オスにくらべ、去勢手術をしたオス猫において大転子、遠位大腿骨、脛骨粗面の骨端軟骨閉鎖は遅れて起こるだろう。このことにより起こりうる臨床的結果をさらに評価すべきである。(Sato訳)
■避妊または去勢した犬の長期的な健康への影響:ラブラドールレトリバーとゴールデンレトリバーの比較
Long-term health effects of neutering dogs: comparison of labrador retrievers with golden retrievers.
PLoS One. 2014 Jul 14;9(7):e102241. doi: 10.1371/journal.pone.0102241. eCollection 2014.
Hart BL, Hart LA, Thigpen AP, Willits NH.
ゴールデンレトリバーで中性化(避妊も含む)したことにより2つの関節疾患と3つの腫瘍の発生率が顕著に増加するという著者らの最近の研究から、この研究は計画され、ゴールデンレトリバーとラブラドールレトリバーを比較するということになった。
13年間の動物病院のカルテを、特定の年齢範囲、すなわち6ヶ月未満、6-11ヶ月、1または2歳から8歳の間に中性化した影響について調査した。調査した関節疾患は、股関節形成不全、前十字靭帯断裂、肘関節形成不全であった。調査した腫瘍性疾患は、リンパ肉腫、血管肉腫、肥満細胞腫、乳腺腫瘍であった。
ゴールデンレトリバーの結果は、以前の研究と同様であったが、犬種によって顕著な違いがあった。
ラブラドールレトリバーでは、未去勢雄と未避妊雌の約5%が1つ以上の関節疾患をもっており、6ヶ月未満で中性化した場合、性別に関わらず1つ以上関節疾患の発生率が2倍になった。雄と雌のゴールデンレトリバーでは、未去勢および未避妊の場合同じく5%であったが、6ヶ月未満で中性化した場合、しない場合と比較して関節疾患の頻度が4-5倍に増加した。
雌のラブラドールレトリバーにおいて1つ以上の腫瘍が認められる頻度は、中性化によって、していない雌の3%を少し超える程度に上昇した。それに対して、雌のゴールデンレトリバーでは、未避妊雌における1つ以上の腫瘍が認められたのは同様に3%の程度であったが、8歳までのいつ中性化を行なったとしても、少なくとも1つの腫瘍の発生頻度が3-4倍に増加した。
雄のゴールデンとラブラドールレトリバーにおいては、中性化は腫瘍の発生を増加させることに比較的影響がないようであった。
2つの犬種における腫瘍の比較から、雌のゴールデンレトリバーにおける腫瘍の発生は、生殖腺ホルモンを除去されることに対する特定の脆弱性を反映していることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■シュミレーションモデルの使用により野良猫集団管理の3つの方法の有効性の判断
Estimation of effectiveness of three methods of feral cat population control by use of a simulation model.
J Am Vet Med Assoc. August 15, 2013;243(4):502-11.
Robert J McCarthy; Stephen H Levine; J Michael Reed
目的:野良猫コロニーに対する個体群コントロールの2つの介入方法の有効性を予測する
デザイン:個体群モデル
サンプル:野良猫に関する生命データの推定値
方法:野良猫の個体群統計学および交配行動に関する文献からデータを集めた。個体ベースの推計学的シュミレーションモデルを開発し、捕獲-中性化-放猫(TNR)、致死コントロール、捕獲-精管切除-子宮摘出-放猫(TVHR)による野良猫集団の大きさの縮小に関する有効性を評価した。
結果:TVHRは10%と90%の間で全ての年間捕獲率においてTNRと致死コントロールを上回った。TNRあるいは致死コントロールによる排除で年間57%以上の猫を捕獲および中性化しない限り、集団の大きさに最小限の効果しかなかった。対照的に、35%以上の年間捕獲率でTVHRは集団の大きさを小さくした。TVHRを使用すると、年間捕獲率57%、4000日でモデルとした集団は消えてしまう一方で、TNRと致死コントロールは82%以上の捕獲率を必要とした。子猫や若い猫の生存率に対し、中性化した成猫の区分の影響を分析に含めた時、TNRは全く介入しないときと比べ、集団が大きくなるような進行性の悪化を起こし、逆効果となる可能性があった。
結論と臨床関連:野良猫集団の大きさの縮小を目的とするならば、TNR以上にTVHRを実施すべきである。このモデルは捕獲プログラムと猫の関連する多くの因子を変えることが可能で、野良猫手段に望まれる効果に必要な予算と労力の判定に役立つはずである。(Sato訳)
■多睾丸の犬の1例
A polyorchid dog.
Reprod Domest Anim. April 2012;47(2):e26-8.
T M Tamminen; M R Leinonen; H Kack; M Andersson
1頭の多睾丸のアイリッシュセッターをここで報告する。去勢と腹腔内睾丸切除術を1歳時に実施し、1つは陰嚢、1つは右鼠径管近くにある潜在睾丸を切除した。その後、まだテストステロンが産生されていることが判明した。3つ目の睾丸は腹腔内に潜在し、右側頭側膀胱の右に見つかった。3つ目の睾丸は強い頭側提靭帯を持ち、精巣上体尾部は延びていた。精管は前立腺に入ってなかったが、右睾丸尾側の過去の手術の断端に近い鼠径管への導帯に続いた。これは2つの右の潜在睾丸が共通の精管を持っていたことを示唆する。(Sato訳)
■犬の卵巣切除および卵巣子宮切除による外科的避妊に対する止血反応
Hemostatic response to surgical neutering via ovariectomy and ovariohysterectomy in dogs.
Am J Vet Res. September 2012;73(9):1469-76.
Elena R Moldal; Annemarie T Kristensen; Marijke E Peeters; Ane Nodtvedt; Jolle Kirpensteijn
目的:手術に対する止血反応を調査し、卵巣子宮切除と卵巣切除による反応を比較することと、血漿サンプルに対するトロンボエラストグラフィーの有効性を評価すること
動物:42頭のメス犬
方法:犬を卵巣子宮切除あるいは卵巣切除を行う群に振り分けた。血液サンプルを手術直前と術後1、6、24時間目に採取し、その後の分析のため-80度で保存した。解凍後、血漿サンプルをトロンボエラストグラフィーに供した。また、von Willebrand因子抗原、フィブリノーゲン、抗トロンビン、プロテインC濃度;第VIII因子活性;活性化部分トロンボプラスチン時間;プロトロンビン時間;トロンビン時間など凝固変数を測定した。線溶反応はD-dimer、プラスミノーゲン、α-2-抗プラスミン(プラスミン抑制物質)濃度で評価した。
結果:術後4時間目の顕著なvon Willebrand因子抗原と第VIII因子濃度の低下、プロトロンビンおよびトロンビン時間の短縮に加え、全体的な凝固の強さの増加と凝固性亢進状態を特徴とした両群の術後の明らかな止血および線溶活性を認めた。また典型的に術後のD-dimer、プラスミノーゲン、プラスミン抑制物質濃度の増加を証拠とする線溶系の活性化があった。2群の違いはどの変数でも検出できなかった。
結論と臨床的関連:限られた組織傷害の選択的外科手術は、術後の凝固性亢進をもたらす止血活性を誘発した。卵巣子宮切除と卵巣切除群の違いは見られなかった。トロンボエラストグラフィーは血漿サンプルで使用でき、時間とともにパターンを評価するのに有効と思われる。(Sato訳)
■原因不明の不妊あるいは妊娠損失のメス犬から開腹で得られた子宮サンプルの所見:観察研究
Findings in uterine biopsies obtained by laparotomy from bitches with unexplained infertility or pregnancy loss: An observational study.
Theriogenology. January 2013;79(2):312-22.
Fernando Mir; Emmanuel Fontaine; Olivier Albaric; Marty Greer; Florence Vannier; Donald H Schlafer; Alain Fontbonne
妊娠が確認されない原因不明の不妊のメス犬14頭(NCP群)と、原因不明の妊娠損失(PL)を経験したメス犬7頭(PL群)から開腹して外科的子宮生検(SUBs)サンプルを採取した。21頭中16頭において周期が黄体期にサンプルを採取した。全体で、21頭中17頭の子宮組織は明らかな変化を呈していた。
NCP群において、14頭中11頭に様々な程度の子宮病変があった。この群で、肉眼的に正常な子宮の9頭中6頭は子宮内膜に病理組織学的変化があった。肉眼的に変化があった全ての犬(5/14)は子宮内膜の変化があった。子宮液の細胞学的検査で、好酸性の無構造の物質、赤血球、少数の変性した白血球を認めた。
病理組織検査において、最も一般的な病変は、子宮内膜腺の変性を伴う線維症(FDEGs 6/11)、続いて子宮内膜炎(4/11)、嚢胞性子宮内膜過形成(CEH)(2/11)、偽胎盤形成性子宮内膜過形成(PEH)(2/11)だった。その他の病変は、腺筋症、子宮粘液症、子宮内膜ポリープ(各1頭)だった。11頭中4頭に複数病変が存在した。
PL群において、肉眼的変化は腔内子宮拡張(7/7)と卵巣嚢胞(3/7)の存在だった。子宮内容物の細胞学的検査で高い白血球数を認めた。7頭中6頭に病理組織学的子宮内膜変化が見られ、子宮内膜炎(3/7)、PEH(2/6)、子宮蓄膿症(1/6)、子宮粘液症とCEH(1/6)だった。
21頭中20頭で感染性病原体の調査を行った。驚いたことにどの症例の子宮内腔からも細菌やウイルスは分離されなかった。発情休止期に外科的採材を実施した時、術後誘発性子宮蓄膿症のリスクを避けるためアグレプリストンあるいはプロスタグランジンの薬物治療を設けた。バイオプシー実施後、卵巣子宮摘出を行わなかったメス犬(17/21)で観察された唯一の予期せぬ結果は、1頭にみられた完全な子宮狭窄だった。
結論として、我々のバイオプシー標本で最も一般的な所見は、FDEGs、子宮内膜炎、子宮内膜の過形成性再構築(CEHとPEH)だった。SUBsは不妊あるいはPLの原因に関する有効な情報を得られると思われる。この方法は、バイオプシーの正確な部位を選択する前に、子宮および卵巣全体の視診および触診が可能である。採取する組織サンプルの大きさは、正確な診断を下すために十分大きくでき、感染性病原体を調査するサンプルもコンタミネーションのリスクもなく得ることができる。アグレプリストンあるいはプロスタグランジンの術後投与を含むこの方法に従ってSUBsを実施すると、予期せぬ結果のリスクは低いと思われる。(Sato訳)
■犬の卵巣子宮摘出のための右けん部細小開腹アプローチの記述と評価
Description and evaluation of a right flank, mini-laparotomy approach to canine ovariohysterectomy.
Vet Rec. September 2012;171(10):248.
J F Reece; M K Nimesh; R E Wyllie; A K Jones; A W Dennison
右けん部アプローチによる外科的卵巣子宮摘出術(OVH)を、インドのジャイプール、Animal Birth Control (ABC) Programmeの一環として114頭のメス犬で実施した。
各犬の切開長、手術時間、術後疼痛スコアを記録した。メス犬の平均体重は13.7kg、平均ボディーコンディションスコアは1-9スケールで4.5だった。切開長と手術時間の平均は、22mmと11分4秒だった。86.1%のメス犬は追加の術後鎮痛処置が必要ないと思われた。それらの所見は腹腔鏡手術を含む他のOVHの方法と比較して遜色ない。この外科的方法は特にシェルターの犬のOVHの代替法となるだろう。(Sato訳)
■猫の睾丸に対する細針吸引生検(FNA)と穿刺回数の影響:臨床、肉眼的解剖および組織学的評価
Impact of fine needle aspiration (FNA) and of the number of punctures on the feline testis: Clinical, gross anatomy and histological assessment.
Theriogenology. July 2012;78(1):172-81.
Pagona G Gouletsou; Apostolos D Galatos; Aikaterini I Sideri; Polychronis Kostoulas
睾丸の細針吸引生検(FNA)の安全性は犬で証明されているが、ヒトで完全に確立されておらず、ラットでの研究では矛盾した結果が出ている。さらに複数回の穿刺により負わされる損傷の程度は不明である。
この研究の目的は、臨床、肉眼的解剖および組織検査を行うことで猫の睾丸に対するFNAおよび穿刺回数の影響を調べることだった。
性的に成熟した健康な研究室の家猫短毛種27頭を無作為に2群に振り分けた:FNAを行わない5頭(コントロール群)、22頭の猫は左睾丸を26G針で3方向、右睾丸を26G針で8方向穿刺した(実験群)。生検後、5、30分、1、2、4、7、14日、1、2、3、4か月目に2頭ずつ睾丸を摘出した。コントロール群の猫も睾丸摘出を行った。生検後の最初の週の臨床検査で鞘腔血腫(8/44睾丸)を認め、組織所見では限局性の出血部位(20/24睾丸)、精細管腔内の赤血球(9/24)、精細管の1.94%未満に胚細胞変性(15/24)が見られた。最初の一週間から後の組織所見に、精細管の2.14%未満に胚細胞変性(19/20睾丸)、精細管の5.16%未満に管腔の拡張(7/20)が見られた。胚上皮と間質は全体的にみて正常所見だった。左と右の睾丸に有意差は認められなかった。
この研究の結果は、猫で睾丸のFNAは8回の穿刺まで安全な方法と考えるべきだと示す。(Sato訳)
■メス犬の筋肉チロシンキナーゼ活性に対して発情周期が影響する
Estrus cycle effect on muscle tyrosine kinase activity in bitches.
Vet Res Commun. March 2012;36(1):81-4.
Alan Gomes Poppl; Sandra Costa Valle; Felix Hilario Diaz Gonzalez; Carlos Afonso de Castro Beck; Luiz Carlos Kucharski; Roselis Silveira Martins Da Silva
メ
ス犬の発情周期はインスリン抵抗性のよく知られている原因である。インスリンレセプター(IR)と同様にインスリン様成長因子-Iレセプターは、チロシンキナーゼ(TK)レセプターと同じサブファミリーに属する。
この研究の目的は、発情周期中のメス犬の筋肉組織の基準TK活性を評価することである。24頭のメス犬を研究で使用した(無発情期7頭、発情期7頭、発情休止期10頭)。TK活性を測定するため避妊手術後に採取した筋肉サンプルを即座に液体窒素で凍結し、その後膜を均質化した後シーケンシャル遠心分離で準備するまで-80度で保存した。TK活性はポリ(Glu4:Tyr1)リン酸化で判定し、cpm/μg蛋白質量で表した。TK活性は無発情期のメス犬(183.2±39.2cpm/μg蛋白質量)と比較して、発情期(104.5±11.9 cpm/μg蛋白質量)と発情休止期(94.5±16.9 cpm/μg蛋白質量)のメス犬は有意に低かった(P<0.001)。
それらの結果は初めて、発情期および発情休止期のメス犬の筋肉組織における、より低値の基準TK活性はより低いインスリン情報伝達能力を示すかもしれないと示し、犬のインスリンの分子メカニズムに新分野の調査を開始させるものである。(Sato訳)
■犬の精巣にグルコン酸亜鉛ベースの薬液を注射することによる恒久的避妊
Permanent contraception of dogs induced with intratesticular injection of a Zinc Gluconate-based solution.
Theriogenology. April 2012;77(6):1056-1063.
Erika C S Oliveira; Maria Raquel P Moura; Marcelo J C de Sa; Valdemiro A Silva, Junior; John P Kastelic; Robert H Douglas; Antonio P Marques, Junior
オス犬の不妊のため、グルコン酸亜鉛ベースの薬液の精巣内注射1回による効果を評価した。
15頭の思春期の雑種犬(8か月-4歳)を2つのグループに振り分けた;生理食塩液を各精巣に1回注射したコントロール犬(n=5)と、グルコン酸亜鉛(13.1mg亜鉛/ml)溶液のTestblockを投与した処置群(n=10)。
生食あるいはTestblockの注射量は0.2-1.0ml/精巣(幅をもとに)の範囲だった。身体検査、精巣幅、血液、臨床的化学(肝臓および腎機能)、血漿テストステロン濃度、精液特性、性欲を去勢手術(治療後150日)まで評価した。
処置犬の精巣の幅はコントロール犬と比較して約20%増加したが、その後はコントロールと有意差はなかった(群x時間相互作用、P<0.0001)。全ての犬の血液および臨床化学検査値は参照範囲内を維持した。血漿テストステロン濃度はずっと減少したが(P<0.006)、群の影響は傾向のみ(P<0.09)で、性欲に有意な影響はなかった。Testblock投与から63日目、8頭の処置犬は無精子になったが、残り2頭は精子減少(<10x10(6)精子/ml)となった。
グルコン酸亜鉛ベースの化学的不妊薬Testblockの精巣内注射は、持続性不妊を誘発する可能性が高いと結論付けた。(Sato訳)
■デスロレリンインプラントによるオス猫の性的活動の可逆的抑制
Reversible suppression of sexual activity in tomcats with deslorelin implant.
Theriogenology. September 2012;78(4):848-57.
R Novotny; P Cizek; R Vitasek; A Bartoskova; P Prinosilova; M Janosovska
本研究の目的は、オス猫の性的活動をコントロールすることと、設置後4ヶ月でインプラントを除去した後の性的機能の回復についてGn-RH作用薬インプラント(デスロレリン、4.7mg、Suprelorin)を使用した時の効果を評価することだった。コントロール群(グループ1、n=5)を用い、22頭の家庭のオス猫の右肩甲骨部分の皮下にインプラントを設置し、その後2つの処置群に振り分けた。グループ2の猫(n=14)はインプラント施術した日から観察し、4か月間継続した。グループ3(n=8)の全ての猫はインプラント施術の日からモニターした。その後、4か月目に全てのインプラントを除去し、さらに4か月間観察した。
全頭で最初の来院中とその後1か月間隔で、テストステロン濃度の変化を、ヒト絨毛性性腺刺激ホルモン(HCG)投与前(T0)および投与から4時間後(T4)に評価し、精巣の大きさを測定した。全ての猫で最初の来院時に電気射精器を用いて精液採取を実施し、その後2か月間隔、あるいは観察の最後に行った。各精液サンプルで総精子数を測定した。2-4頭の猫を4、8、12、16、20、24、28、32週目に去勢し、精巣の組織学的評価を行った。精細管の200の断面の評価により、精子形成抑制の程度を評価し、グループ2と3の猫は、観察されたもので、最も多く発達した生殖細胞(G1、精母細胞;G2、円形精子細胞;G3、伸長している精子細胞;G4、伸長した精子細胞)を伴う最も多い精細管に従いグループ分けした。ライディッヒ細胞核の平均面積を算出した。
グループ2の猫において、インプラント挿入後の抑制をモニターした。インプラント挿入後4か月以内にT4濃度、精巣の大きさ、総精子数は漸減した(それぞれP<0.01;P<0.01;P<0.05)。組織学的評価は、精子形成の抑制の程度において高い個体変異を示した。
グループ3の猫において、4か月目にインプラントを除去し、性的活動の回復をモニターした。4か月以内にT4濃度と総精子数は、無処置のオス猫の生理学的値に増加した。精巣の大きさも漸増し、インプラント除去から4か月以内にほとんどが処置前の大きさに達した。精細管の組織学的評価に従い、インプラント除去から1か月という早い段階で、全ての猫はほとんどの発達した生殖細胞が伸長した精子細胞を含む精細管が多いG4に分類された。
長期のGn-RH作用薬インプラントの皮下設置に猫はよく許容し、害となる処置に関連した作用は見られなかった。
以上の結果は、オス猫において効果発現の高い変動性を持つ4.7mgデスロレリンインプラント(Suprelorin)の有効性を証明した。さらに、動物の不妊を解明するため、精巣の大きさの測定、ホルモン変化のモニタリング、精液学的分析および組織学的評価など複雑な検査の強い必要性を示した。インプラントを除去した後、全ての観察していたパラメーターで、その方法の可逆性と性的活動性の漸次回復を確認した。(Sato訳)
■原発性及び二次性の発情休止期のメス犬の治療でカベルゴリンとゴナドトロピンの比較
Comparison of the use of cabergoline and gonadotrophin to treat primary and secondary anoestrus in bitches.
Aust Vet J. May 2012;90(5):194-6.
D Nak; Y Nak; G Simsek
目的:原発性あるいは二次性発情休止期のメス犬における発情誘起のためのカベルゴリンと妊馬血清性性腺刺激ホルモン(PMSG)の有効性と確実性を判定する
方法:原発あるいは二次性発情休止期の2-6歳、多様な犬種の健康なメス犬39頭で研究した。20頭の犬は発情前期発現後2日まで、あるいは最大42日間カベルゴリン5μg/kg/日を経口投与し、19頭は5日連続20IU/kg/日PMSGを筋肉内注射し、そして5日目にヒト絨毛性性腺刺激ホルモン25IU/kgを1回注射した。
結果:カベルゴリンおよびPMSGで治療した原発性および二次性発情休止期のメス犬の発情誘起率は同様だと分かった。カベルゴリン群の妊娠および出産率は、PMSG群の率と統計学的に違いがあった(P<0.001)。
結論:カベルゴリンは原発あるいは二次性発情休止期のメス犬において、受精可能な発情の誘発により有効で確実な薬剤である。(Sato訳)
■メスの家猫の繁殖に対するGnRH類似物質デスロレリンインプラントの効果
Effects of the GnRH analogue deslorelin implants on reproduction in female domestic cats.
Theriogenology. February 2012;77(3):662-74.
T S F Toydemir; M R K?l?carslan; V Olgac
この研究の目的は、オス猫の存在するメス猫の管理された周囲環境において、発情行動と交配を抑制するため、GnRH作用薬のデスロレリンインプラントの安全性と効果を調査することである。デスロレリンインプラントの局所および子宮卵巣副作用も調査した。
メス猫はグループで飼育され、3つの処置のうち1つに振り分けた:1群は9.5mgデスロレリンインプラント投与(n=14)、2群は5mg酢酸メゲストロール錠と9.5mgデスロレリンインプラント投与(n=7)、3群はプラセボインプラント投与(n=7)。全てのインプラントは、塩酸キシラジン鎮静下で肩甲骨間頭側皮下に設置した。卵巣の活動性は、糞便中エストラジオール(E(2))分析でモニターした。猫は毎日観察し、発情の行動徴候に対しては3日間隔でチェックした。18.5ヶ月の試験後、メス猫の卵巣と子宮を摘出し、重量を測定し、組織学的に評価した。
E(2)濃度は処置の最初の週を除き、3群に比べ、1群、2群で有意に低く、その平均はそれぞれ283.26±39.21ng/g、128.48±19.97ng/g、90.44±7.16ng/gだった。2群の1頭を除き、全ての処置群でインプラント挿入後、糞便中E(2)濃度の初期発情様上昇が起きた。卵巣と子宮の重量は群間に有意差があり(P<0.01)、1群と2群で最も軽かった。原始濾胞および一次濾胞数は3群に比べ1群および2群で有意に多かった(P<0.001)。子宮内膜腺、胞状濾胞、黄体(CL)数は1、2群と比べ3群で最も多かった(P<0.001、0.001、0.01)。
デスロレリンインプラントは18.5ヶ月の研究期間中、メス猫の発情行動およびE(2)分泌を抑制できた。卵巣の間質組織に対するGnRH作用薬の影響を示す追加研究が必要である。(Sato訳)
■避妊去勢した犬:ゴールデンレトリバーにおける関節疾患と腫瘍への影響
Neutering dogs: effects on joint disorders and cancers in golden retrievers.
PLoS One. 2013;8(2):e55937. doi: 10.1371/journal.pone.0055937. Epub 2013 Feb 13.
Torres de la Riva G, Hart BL, Farver TB, Oberbauer AM, Messam LL, Willits N, Hart LA.
欧州の国と異なり、アメリカ合衆国の圧倒的多数の犬は避妊去勢されており、通常1歳より前に行なわれる。生殖ホルモンは発育と成長において重要であるため、この文化的な違いから、避妊去勢によって逆に影響を受けてしまうかもしれない様々な臓器の分析がなされている。
単一の品種特異的なデータを利用して、統計学的な処理を行なうのに十分な頻度で生じた全ての疾患について、性別と避妊去勢した年齢と性腺をそのままにした犬を調べる事を目的とした。
人気があり様々な悪性腫瘍と関節疾患に罹患しやすいため、ゴールデンレトリバーを選択した。759頭の飼育されている、避妊去勢をしていない雌と雄、避妊去勢をしている雌と雄、1-8歳齢についての動物病院のカルテを、股関節形成不全(HD)、前十次靭帯断裂 (CCL)、リンパ肉腫 (LSA)、血管肉腫(HSA)、肥満細胞腫(MCT)という診断について検索した。それぞれの犬を、避妊去勢していない、早期(12ヶ月未満)に避妊去勢した、12ヶ月を過ぎてから避妊去勢した、に分類した。統計学的な解析は、生存解析、発生率の比較を行なった。5%の有意差の結果を報告している。
早期に去勢した雄のうちで、10%がHDと診断され、去勢していない雄の2倍の発生率であった。避妊去勢していない犬においてCCLと診断された症例はいなかったが、早期に去勢した雄と避妊した雌においては、発生率はそれぞれ5%および8%であった。早期に去勢した雄のおよそ10%がLSAと診断され、これは去勢していない雄の3倍の発生率であった。12ヶ月を過ぎてから避妊した雌におけるHASの発生率(約8%)は、避妊していない雌および早期に避妊した雌より4倍多かった。避妊していない雌においてMCTの症例はいなかったが、発生率は12ヶ月を過ぎてから避妊した雌においてほぼ6%であった。結果はペットおよび奉仕犬としてのゴールデンレトリバーおよび犬を人において生じる腫瘍のモデルとして用いる腫瘍学者に対して、健康に及ぼす影響を示している。(Dr.Taku訳)
■GnRH作用薬Deslorelinを使用によるメス犬の繁殖能力のある発情誘発
Induction of fertile oestrus in the bitch using Deslorelin, a GnRH agonist.
Theriogenology. November 2011;76(8):1561-6.
E Fontaine; F Mir; F Vannier; A Gerardin; M Albouy; C Navarro; A Fontbonne
種々の犬種の32頭のメス犬で発情誘発を試みた。8頭のメス犬は過去の発情から80-160日の間に処置し(G1)、24頭は過去の発情から200-590日で処置した(G2)。各メス犬への処置は、1つのDeslorelinインプラント(Suprelorin4.7mg、ビルバック、フランス)を臍の後ろの皮下に設置した。排卵、妊娠率および産子数を記録した。
全てのメス犬はインプラント後4.3±1.4日目に発情が来た(2-7日)。G1の62.5%、G2の87.5%で排卵が報告された。1頭のメス犬は交配を拒み、人工授精は実施されなかったので、その後の分析はできなかった。G1の25%、G2の78.3%が妊娠した。平均産子数は6.7±3.5頭(1-14頭)だった。3頭で黄体機能不全が疑われ、そのうち2頭は妊娠しないままで、1頭は飼い主がプロゲステロンの補給を拒否したため、排卵から58日目に流産した。
ゆえに、Deslorelinインプラントは、発情休止期のメス犬に繁殖能力のある発情を誘発する代替法として考慮できる。数頭のメス犬が黄体機能不全を起こしたかもしれないので、黄体期のフォローアップが推奨される。(Sato訳)
■都会の社会グループで生活する避妊および未避妊のメスの自由徘徊猫におけるコルチゾールレベルと攻撃性
Cortisol levels and aggression in neutered and intact free-roaming female cats living in urban social groups.
Physiol Behav. March 2010;99(3):343-347.
H Finkler, J Terkel
都市部において自由に徘徊する家庭猫は、社会グループと定義されるところで生活するものも多く、それらのグループ内で繁殖するメス猫は母系の性質の構成を形作る傾向にある。近年、世界中の多くの都市で自由に徘徊する猫の集団が成長することから、それらの猫はTrap-Neuter-Return (TNR)法を用いて管理されている。
この研究の目的は、(a)そのような社会グループで生活するメスで避妊は攻撃性を低下させる。(b)もしそのような低下が起こるならば、それはコルチゾール濃度の低下を伴っているかもしれない。という仮説を探究することだった。イスラエルのテルアビブで、住宅街の住人により給餌されているグループの8頭の猫で研究した。都市の獣医課が必要に応じてTNRサービスを提供する。給餌グループから猫を集め、不妊後にもとのグループに返した。避妊したメス猫は未避妊猫と比べて攻撃性が低下し、同様にコルチゾール濃度も低下することが分かった。またより攻撃性を示す未避妊のメス猫は、攻撃性の少ない未避妊のメス猫と比較してコルチゾール濃度がより高かった。
これらの結果をもとに、自由徘徊メスの家猫においてコルチゾール濃度と攻撃性の潜在的関連を初めて示唆することができる。この研究は個々の猫の幸福に対するTrap-Neuter-Return (TNR)の長期影響を評価する最初のステップである。社会および繁殖プレッシャーの低下の部分的結果として(避妊済みメス猫のより低い攻撃性で示されるように)、もしメス猫のコルチゾール濃度が避妊後に低下するならば、TNRは集団の大きさをコントロールすることに加え、猫の幸福における有益な役割をもたらすことができる。(Sato訳)
■オス猫とメス猫の性腺摘出前とその後
[Pros and cons of gonadectomy in female and male cats]
Vor- und Nachteile der Kastration von Katzinnen und Katern.
Schweiz Arch Tierheilkd. June 2010;152(6):273-8. German
I Reichler, I M Reichler
性腺摘出は、不可逆的に生殖細胞と同様に性腺ホルモンを取り除くことで繁殖を防ぐ。さらに性腺摘出の結果に疾患発生率、表現型および行動に影響する代謝性変化も含まれる。異なる臓器系および性腺摘出のタイミングとの関連に対する摘出の望まれる、あるいは望まれない効果を論じる。疾患予防と同様に管理の容易さ、ペット過剰に対するコントロールの理由で、非繁殖猫の思春期前の性腺摘出が薦められる。性腺摘出のときには、肥満発生のリスク、関与する疾患、食餌法をオーナーと話し合うべきである。(Sato訳)
■線維腺腫症の猫14頭のアグレプリストンによる治療-血液パラメーターと予後の変化
Treatment of fibroadenomatosis in 14 cats with aglepristone - changes in blood parameters and follow-up.
Vet Rec. November 2009;165(22):657-60.
P Jurka, A Max
線維腺腫症のメス猫14頭をアグレプリストンで治療し、治療の効果および血液学、血液化学パラメーターに対するその影響を研究した。猫は治療終了後12ヶ月間モニターした。臨床症状の完全寛解は治療開始から平均3.9週でもたらされた。治療の成功は線維腺腫症の臨床診断で確認した。治療の経過中に猫の血液学的パラメーターは正常に回帰した。
過去に長期作用型酢酸メドロキシプロゲステロンで治療していた猫において、5週間のアグレプリストンの治療が推奨された。数ヵ月後に再発する線維腺腫症の症例は、再発というより新規疾患とみなすべきである。6頭の猫はその後交配し、4頭は1頭以上の子猫を出産した。全ての妊娠は線維腺腫症の臨床所見もなく正常に進行した。他の8頭はアグレプリストンの治療完了後すぐに卵巣子宮摘出術を行った。(Sato訳)
■選択的卵巣子宮摘出術を行った犬と猫に見られた発生上子宮異常
Developmental uterine anomalies in cats and dogs undergoing elective ovariohysterectomy.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(5):542-6.
Robin L McIntyre; Julie K Levy; John F Roberts; Roger L Reep
目的:選択的卵巣子宮摘出術を行った犬と猫で、肉眼的子宮異常の特徴と頻度を述べる
構成:前向きおよび回顧的症例シリーズ
動物:2007年の間にアメリカとカナダの26病院で選択的卵巣子宮摘出術を行った猫53258頭および犬32660頭
手順:病院で手術中の肉眼的異常を前向きに報告し、異常な生殖道からの組織を提出した。野生猫避妊-去勢病院からの記録は回顧的に評価した。
結果:先天的異常の疑いを持つ子宮はメス猫の0.09%(49/53258)、メス犬の0.05%(15/32660)で認められた。認められた子宮異常は単角子宮(猫33頭、犬11頭)、1子宮角の部分無形成(猫15頭、犬3頭)、子宮角発育不全(猫1頭、犬1頭)だった。同側腎欠損は、腎臓を評価した子宮異常を持つ猫の29.4%(10/34)、犬の50%(6/12)に存在した。子宮異常の4頭の猫にミイラ化した異所性胎児が確認された。両卵巣および両卵管は子宮異常の多くの動物で存在した。
結論と臨床関連:泌尿生殖器異常は犬より猫で2倍多く見られた。犬と猫の子宮の発生上の異常の確認は、両腎臓および両卵巣の評価のきっかけにすべきである。それは同側性腎欠損がよくみられるが、両卵巣は存在していることが多く、その卵巣は卵巣子宮摘出術中に切除すべきである。(Sato訳)
■2門腹腔鏡卵巣摘出術の実施方法
How to perform a two-portal laparoscopic ovariectomy
Vet Med. Apr 2009;104(4):192-206. 13 Refs
Tom McCabe, DVM
2門腹腔鏡卵巣摘出術は従来の卵巣子宮摘出術に変わるもので、リジッド内視鏡をすでに実施しているほとんどの臨床医により実施可能である。メス犬やメス猫の不妊だけでなく、侵襲製が非常に少なく、術後の疼痛を最少にするのに役立つ。不利な点は初期設備費と、必要なスキル獲得に必要な時間とトレーニングである。一度トレーニングを積むと、この方法は30分から60分で実施でき、それは症例および外科医のスキルに依存する。機材のセットアップおよび患者の術前準備は、従来の卵巣子宮摘出術よりも時間がかかる。(Sato訳)
■18ヶ月齢のトイプードルの子宮破裂
Uterine rupture in an 18-month-old toy poodle
Vet Med. Jun 2009;104(6):276-282. 8 Refs
Amy Long, DVM, C. Tyler Long, DVM, Richard Luong, BVSc, DACVP
子宮破裂は正常な分娩中でも自然に起こりえる。一般に子宮破裂は猫よりも犬が多く、異常分娩あるいは外因性オキシトシン、プロスタグランジン投与の二次的な合併症として一般的に見られる。妊娠犬における子宮破裂は子宮捻転、医原性外傷または子宮蓄膿症の後にも起こる可能性もあり、あるいは瘢痕または穿孔のような既存外傷の結果として発症する可能性もある。
この症例では、多くの潜在的原因が子宮破裂を誘発しているかもしれない。
1頭目は、その犬の子宮蓄膿症および細菌感染が子宮壁の脆弱および完全な子宮破裂と二次的腹膜炎を誘発しえた。2頭目は、12ヶ月で3回出産していたため、不完全子宮破裂が過去に発生して、子宮壁内に脆弱部分を誘発していた可能性がある。部分-から全層性穿孔性潰瘍はその犬の子宮の組織検査で認められた。3回目の出産のストレス下で、不完全破裂が子宮漿膜を穿孔する肝前破裂に至っていると思われた。3頭目は、オーナーは出産中の窮迫あるいは疼痛の症状を示していないと報告したが、最後の出産中に異常分娩が起こった可能性は除外できない。(Sato訳)
■ドーパミン作動薬であるブロモクリプチンによって誘発された雌犬の発情期
Fertile estrus induced in bitches by bromocryptine, a dopamine agonist: a clinical trial.
Theriogenology. 2001 May 1;55(8):1657-66.
Zoldag L, Fekete S, Csaky I, Bersenyi A.
ドーパミン作動薬であるブロモクリプチンは、おそらく性腺刺激ホルモン (主に卵胞刺激ホルモン)分泌増幅させ、機能的周期と/あるいは卵巣活性がない発情休止期の雌犬の繁殖性発情期を誘発するのに適していることが分かった。
我々は、半合成の麦角アルカロイドであるブロモクリプチンで処置した48頭の雌犬の発情の誘導を研究した。習慣的に、夫々の反応あるいは体重に基づき、選択投与量として高用量である0.6~2.5 mg/雌犬の投与後に0.3mg/雌犬の分割量を3日間投与した。長期間にわたる毎日のブロモクリプチン投与量は、小型犬で0.6 mg/雌犬、大型犬で2.5 mg/雌犬を越えなかった。段階的習慣とそれぞれの投与量では、嘔吐の副作用はほとんど見られなかった。治療から発情の開始期間は様々だったが平均19日だった。発情開始後にブロモクリプチン投与はさらに3-6日継続した。発情、排卵そして妊娠の発生は、それぞれ膣上皮、急速ELISAによる血清プロゲステロン測定そして超音波検査で評価した。プロゲステロンの検体は7, 9, 12 そして 15日で採取し、卵胞と胎児の超音波画像は0, 22 そして35日に検査した。
研究に参加した雌犬は、通常の性周期あるいは不規則な性周期であった。通常発情内で排卵した40 / 48 (83%)頭と発情したが排卵がなかった6/48 (12.5%)頭の雌犬の全頭において、ブロモクリプチン治療で発情を誘発できた。2日の間隔を置いて、繁殖期間での2度の自然交配あるいは人工授精により、83%の妊娠率(40症例)とそれらの39頭(97.5%)は子犬を出産した。しかし、子犬の平均数は4.8 +/- 1.6頭と少なかった。(Dr.Kawano訳)
■犬猫の卵巣遺残症候群:21症例(2000-2007)
Ovarian remnant syndrome in dogs and cats: 21 cases (2000-2007).
J Am Vet Med Assoc. March 2010;236(5):548-53.
Rebecca L Ball, Stephen J Birchard, Lauren R May, Walter R Threlfall, Gregory S Young
目的:卵巣遺残症候群(ORS)の犬と猫の徴候、臨床所見、診断検査、治療結果を述べる
構成:回顧的症例シリーズ
動物:ORSの19頭の犬および2頭の猫
方法:2000年6月から2007年10月までの間に検査した動物の医療記録から徴候、臨床症状、卵巣子宮摘出時(OHE)の年齢、OHE中の手術所見、外科医の経験(獣医学生vs獣医師)、OHEからORSの診断までの間隔、診断検査結果、手術所見、切除組織の組織検査結果を調査した。
結果:21頭(犬19頭、猫2頭)にORSが認められた。最も一般的な臨床症状は、発情前期および発情期に関するものだった。猫よりも犬が多く罹患し、全ての遺残卵巣組織は卵巣茎の領域に見つかった。犬では右の卵巣が左の卵巣よりも有意に多く遺残していた。7頭の動物は生殖器系の腫瘍があった。それらの動物は腫瘍のない14頭に比べ、OHEとORSの診断までの期間が有意に長かった。18頭の長期追跡調査において試験的回復後の臨床症状の解消が明らかだった。
結論と臨床関連:卵巣遺残は卵巣の一般的な位置で見つけることができ、異所性組織と考えられなかった。ゆえに、OHE中の外科的ミスがORSの原因として疑われた。解剖学的違いは種間の違いで説明できると思われ、臨床症状はOHE後数年まで認識されないかもしれない。遺残卵巣組織の外科的除去は臨床症状の解消をもたらす。(Sato訳)
■犬の卵巣子宮摘出の簡単、最小侵襲方法
Simple, minimally invasive technique for ovariohysterectomy in the dog.
Vet Rec. December 2009;165(23):688-90.
M Pukacz, B Kienzle, J Braun
腹腔鏡器材を使用しない最小侵襲で簡単な犬の卵巣子宮摘出術を試行した。選択的卵巣子宮摘出のために入院した様々な犬種の59頭の犬で研究した。
左子宮角の先端と卵巣は頭側正中門からスペイフックで引っ張り出した。卵巣茎と子宮角の先端を結紮し、卵巣を切除した。
恥骨のすぐ頭側の2つ目の正中門からその子宮角を子宮頚が見えるまで後方に牽引した。子宮頚の結紮および離断後、頭側の門から右の卵巣が見えるまで右子宮角を牽引し、卵巣を離断した。全59頭をこの方法で行った(平均時間59分、範囲30-88分)。術中出血の発生はなく、術後期間の重篤な合併症の報告もなかった。(Sato訳)
■犬におけるフィトエストロゲン投与による精巣変性誘発。集団コントロールのポテンシャル
Phytoestrogen treatment induces testis alterations in dogs. Potential use in population control
Vet Res Commun. August 2008;0(0):.
Juan-Jose Perez-Rivero, Jose-Juan Martinez-Maya, Mario Perez-Martinez, Alvaro Aguilar-Setien, Maria-Dolores Garcia-Suarez, Hector Serrano
犬の頭数過剰はヒトの健康リスクが考えられ、犬は狂犬病の陸生媒介動物で、他のヒトの疾患の貯蔵庫である。外科的去勢および精巣ない注射がオス犬で使用されている。フィトエストロゲンにより生理学的および形態学的変化が生殖臓器に誘発できる。
我々の目的は犬の精液および精巣組織に対し、経口クメストロールの影響を評価することだった。5頭の健康な成犬の2群を使用した。実験群に4週間、週に1回クメストロール含有ビスケットを投与した。精液を採取し評価した。また処置後、精巣を摘出し組織検査を行った。コントロールと比較すると、精細管(462 +/- 1.4 vs 336 +/- 2 mu(2))、精子形成上皮(49.1 +/- 0.01 vs 13.3 +/- 0.01 mu(2))、腔開口(891 +/- 1.4 vs 530 +/- 26.9 mu)を減少させていた。処置犬の精液は、異常精子数を増加させ、精子濃度を低下させていた。(Sato訳)
■家猫の精巣機能における中程度の季節性
Moderate seasonality in testis function of domestic cat
Reprod Domest Anim. October 2007;42(5):536-40.
S Blottner, K Jewgenow
家猫オスの成猫は、一年を通し精子を産生することが知られているが、性的活動は地理的場所により影響を受ける。北半球において野性の家猫は、1月から6月に通常繁殖する。このように精巣の活動に季節性があるのかもしれない。この研究の目的は、一年を通し猫の精巣の配偶子形成および内分泌活性を調査することだった。去勢後、精巣と精巣上体を採集した(n=10-12/月)。精子形成は、精巣の評価により異なるDNA含有の細胞のフローサイトメトリー分析を用い、精巣あたりの精子を定量した。精巣上体尾からの精子は、運動性と形態学的完全性により評価した。精巣テストステロン濃度は、酵素イムノアッセイにより測定した。
精巣重量と精子産生は、一年を通し中程度変化した。有意な季節性変化は、細胞周期のG2/M期(p=0.004)、および減数分裂変換期(一倍体:四倍体細胞の比率;p=0.021)における細胞の比率に観察された。精巣テストステロン濃度の変化はより明白で、テストステロン濃度が高い(春)、および有意に減少(秋)を示した。3月における顕著な季節性変化(p<0.001)のピークは、進行性の運動能力のある精子の比率で評価した。形態学的に無傷の精子の比率も冬季に比べ春で有意に高かった(p<0.001)。
結論として、この研究は、家猫における精子の量の中程度の季節性変化、ホルモン産生のより顕著な一年の変化、機能的精子パラメーターに対する明白な季節的影響を示唆する。(Sato訳)
■ゲニステインではなくエストラジオールは猫における性腺摘出後の摂食増加を抑制するが、ゲニステインは除脂肪体重増加に関与する
Oestradiol, but not genistein, inhibits the rise in food intake following gonadectomy in cats, but genistein is associated with an increase in lean body mass
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl). October 2007;91(9-10):400-10.
N J Cave, R C Backus, S L Marks, K C Klasing
家庭猫の肥満の有病率は世界的に増加し、性腺摘出に強く関与する。我々は、過去にオスおよびメスの不妊済み猫におけるエストラジオールの摂食減少効果を述べている。エストラジオールまたはゲニステインがオスおよびメス猫の性腺摘出後摂食の増加を防ぎ、体脂肪量の増加を防ぐだろうという仮説を研究する実験を行った。
8頭ずつの3群に外科的不妊処置を行い、0.5μgエストラジオール皮下投与、100mg/kgゲニステイン経口投与、溶媒のみ投与を毎日行った。摂食、腟細胞診、体重に対する処置の効果を記録し、身体組成をD(2)アイソトープ希釈法で分析した。
不妊後、コントロール群で摂食、体重、体脂肪の増加が見られたが、それらはエストラジオールの投与によりほぼ完全に防ぐことができた(P<0.001)。ゲニステイン投与は摂食、体重増加に効果はなかったが、コントロール群に比べ除脂肪体重が有意に増加し(p=0.018)、体脂肪蓄積が有意に少なかった(p=0.01)。性別による治療の反応に有意差はなかった。
それら所見は、オスおよびメス猫の摂食コントロールに対する性腺エストロゲンの重要性を示し、エストロゲン化合物の提供が不妊処置後の肥満を予防する手助けになることを示唆する。また、この研究の知見は、げっ歯類におけるゲニステインの脂肪形成抑制および除脂肪体組織発育促進効果の知見に一致する。(Sato訳)
■犬の腹腔鏡下卵巣摘出術におけるNd:YAG外科レーザーとRemorgidaバイポーラ電気外科鉗子の比較
Comparison of Nd:YAG surgical laser and Remorgida bipolar electrosurgery forceps for canine laparoscopic ovariectomy
Vet Surg. August 2007;36(6):533-40.
Sebastiaan A Van Nimwegen, Jolle Kirpensteijn
目的:Nd:YAG外科レーザー及びRemorgidaバイポーラ電気外科鉗子を使用し、犬の腹腔鏡下卵巣摘出の方法、手術時間、合併症を調査、比較した
研究構成:無作為前向き臨床試験
動物:選択的卵巣摘出を行う雌犬(n=40)
方法:無作為に片方の卵巣は600mumオプティカルファイバーのNd:YAG外科レーザーコンタクトモードを使用し、もう片方の卵巣はRemorgida鉗子(バイポーラ電気凝固と同時に鋭利な切開を特徴とする)で両側卵巣切除を行った。各方法の予定した外科的間隔の時間、合併症を比較した。また手術時間に対するいくつかの術中変化の影響を評価した。
結果:Remorgida鉗子を使用した卵巣切除は、レーザーを使用したときよりも有意に時間が短かったが、術中出血は軽減しなかった。手術時間は卵巣靭帯の脂肪の量に依存し、肥満犬で有意に長かった。術中出血は手術時間に有意に影響することはなかった。
結論:両卵巣切除法法は有効だったが、Remorgida 鉗子はNd;YAGレーザー卵巣切除に比べ、手術時間を短縮させる比較的安価、独立型機器として使用できる。
臨床関連:レーザーやバイポーラ電気外科及び切開鉗子のような新しい技術は、腹腔鏡下外科の手術時間短縮、合併症発生率の低下、回復時間の短縮を目的とする。(Sato訳)
■腹腔鏡下卵巣子宮切除中の卵巣茎止血に対する3つの方法の比較
Comparison of three techniques for ovarian pedicle hemostasis during laparoscopic-assisted ovariohysterectomy
Vet Surg. August 2007;36(6):541-7.
Philipp D Mayhew, Dorothy Cimino Brown
目的:腹腔鏡下卵巣子宮摘出術(LAOVH)中の止血に対する3つの方法の安全性、手術時間、合併症を述べる
研究構成:前向き無作為臨床試験
動物:雌犬(n=30)
方法:LAOVH中に卵巣茎止血を施す3つの方法のうち1つに犬を無作為に振り分けた。:対外Roederノット変法適応(縫合群)、マルチファイヤー10mm腹腔鏡クリップ装着機を使用したクリップ適応(クリップ群)、新しい5mmバイポーラ脈管シール装置(脈管シール群)
全ての犬は3つの正中ポート法を使用した。
結果:犬の体重を修正し、手術時間と使用した止血方法の間に有意な関連があった。各方法を使用した最初の5処置と2度目の5処置を比較するとこの関連は違っていた。20kgの犬で、最初の5処置の手術時間(95%CI)は、縫合群80(69-91)分、クリップ群68(57-79)分、脈管シール群33(21-45)分だった。2度目の5処置の手術時間はそれぞれ71(60-81)分、50(39-60)分、40(29-51)分だった。茎出血はクリップ群の全頭、縫合群の3頭、脈管シール群で0頭発生したが、すべて血行動態的に取るに足らないものだった。全ての犬は何事もなく回復した。
結論:全ての止血法は、茎切開に安全だった。学習曲線はクリップおよび縫合方法に存在する。
臨床関連:LAOVH時の脈管シール機器の使用は、有意に時間を短縮し、すばらしい止血を提供する。(Sato訳)
■望まれない交配をした犬で安息香酸エストラジオールにより妊娠を防ぐ
Estradiol benzoate for preventing pregnancy in mismated dogs
Theriogenology. October 2006;66(6-7):1568-72.
Toshihiko Tsutsui, Wataru Mizutani, Tatsuya Hori, Keiko Oishi, Yumiko Sugi, Eiichi Kawakami
望まれない交配をした犬で妊娠を防ぐのに安息香酸エストラジオール(E2B)の単回投与を行い、その投与量の効果、副作用、作用機序を調査した。1-10歳の74頭のメスのビーグルを使用した。交配後2日目(排卵後5日目)にE2Bを単回投与(0.025、0.05、0.10、0.20mg/kg;10頭/投与量)し、その結果妊娠率はそれぞれ70、50、10、0%で、5頭の未処置群(コントロール)の妊娠率は100%だった。投与量に関係なくE2Bを投与した犬の副作用はなかった。妊娠を防ぐメカニズムを明らかにするため、E2Bを0.025、0.20mg/kg投与後、卵管への胚下行および胚の退化を調査した。投与は卵管への胚下行を遅らせ、胚退化の発生を増加させた。結論として交配後2日目のE2B 0.20mg/kgの単回投与は、犬の妊娠を防ぐのに効果的で安全である。(Sato訳)
■アメリカで長期にトラップ-不妊-放猫を受けた野良猫の集団特性
Population characteristics of feral cats admitted to seven trap-neuter-return programs in the United States
J Feline Med Surg. April 2006;0(0):.
Jennifer L Wallace, Julie K Levy
国際的に、野良猫の増加、動物福祉、公衆衛生、環境によるもの、および野良猫の増加をコントロールする一番良い方法についての不一致に関し、重要で議論される問題が起こっている。トラップ-不妊-放猫(TNR)プログラムは、集団安楽死に代わってポピュラーとなりつつある。
この研究の目的は、アメリカの地理的にさまざまな地域で行われた大規模なTNRプログラムによる野良猫の集団特性を判定することだった。
1993年から2004年の間にTNRプログラムを受けた野良猫103643頭のデータを評価した。報告では未不妊オス猫(44.3%)よりメス猫(53.4%)の方が多かった。2.3%の猫だけ過去に不妊手術されていることが分かった。全体の15.9%のメス猫は手術時に妊娠していた。妊娠は季節性が高く、3月から4月がピークだった。1頭あたりの平均胎児数は4.1±0.1頭だった。不妊したオス猫の1.3%に停留睾丸があった。0.4%の猫は消耗性疾患が存在したため安楽死、0.4%の猫はTNRクリニックの中で死亡した。各プログラムで広い範囲の地理的相違があるにもかかわらず、季節的変動性に当てはまった顕著な同様の集団が見られた。
それらの結果は、多数の野良の不妊を安全に実行でき、既存プログラムの経験が新しいTNRプログラムを形作る情報の一貫した源になることを示唆する。(Sato訳)
■経口カベルゴリンと倍クロプロステノール注射の組み合わせによるメス犬の第3四半期妊娠中絶
A combination of oral cabergoline and double cloprostenol injections to produce third-quarter gestation termination in the bitch
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Sep-Oct;42(5):366-70.
Yanina Corrada, Ra?l Rodr?guez, Mariana Tortora, Daniel Arias, Cristina Gobello
第3四半期の妊娠を終わらせるために行った、カベルゴリンとクロプロステノールプロトコールの組み合わせの効果と安全性を評価するため、交配から35-45日の妊娠犬22頭を、無作為に処置群(n=13)と未処置コントロール群(n=9)に振り分けた。犬を12日間モニターし、超音波検査で妊娠終了を確認した。処置した13頭中12頭は、治療開始から9日以内(平均4.6日)に流産した。軽度副作用のみ見られた。コントロール犬、処置に反応しなかった犬は正常な妊娠経過をたどった。この薬剤の組み合わせは、第3四半期の犬に実用、安全、効果的に流産誘起させると思われる。(Sato訳)
■猫にアグレプリストンを投与したときの妊娠中期終結に対する臨床、生物学、ホルモンの研究
Clinical, biological and hormonal study of mid-pregnancy termination in cats with aglepristone
Theriogenology. March 2006;0(0):.
Francis Fieni, Jacques Martal, Pierre Guy Marnet, Brigitte Siliart, Franck Guittot
61頭の妊娠猫(33.3+4.2日)にアグレプリストンを0.15mg/kgの皮下注射を行い、24時間後にもう一度繰り返し、妊娠中期の中絶を誘発後、その効果、安全性、エストロジェン、プロゲステロン、PGFM、オキシトシン、コルチゾール、プロラクチンの血漿濃度変化を評価した。5頭はコントロールとし、プラセボを投与した。アグレプリストンの効果は88.5%で、妊娠の終結は3日以内にメス猫の50%で認められた。短期間の抑欝と食欲不振が胎児娩出前のメス猫9.3%に見られた(それらの症状は胎児娩出の徴候に起因するものだった)。流産しなかったメス猫の1頭は子宮疾患を発症した。アグレプリストン投与後、エストロジェン、プロスタグランジン、プロラクチン、オキシトシン血漿濃度に変化は見られなかったが、60時間後にプロジェステロン、30時間後にコルチゾールの有意な血漿濃度増加があった。妊娠の終結は高濃度血漿プロゲステロンで起こった。胎児娩出はエストロジェン、PGFM、オキシトシン濃度の増加による特性を示し、プロラクチン、コルチゾール濃度は基準値のままであった。(Sato訳)
■オス猫の性腺摘出後の自然ホルモン変動
Spontaneous hormonal variations in male cats following gonadectomy
J Feline Med Surg. May 2006;0(0):.
Lucile J M Martin, Brigitte Siliart, Henri J W Dumon, Patrick Nguyen
猫で不妊後の肥満となる率の増加は獣医療で問題である。多くの因子が関与していると思われるが、プロラクチン(PRL)とインシュリン様成長因子-I(IGF-I)の役割は、脂肪組織発育とグルコース不耐に関係し、考慮すべきである。
7頭のオス猫を11ヶ月齢で去勢した。それから体重を56週間記録し、44週間PRL、IGF-I、レプチンを測定した。体重は着実に増加し、36週目には有意となった。44週後に安定し、それからもとの体重の約20%増加した。IGF-Iは急速に増加し、3週目に有意に最大となった。PRLとレプチンはそれぞれ8週と11週目に最初のピークを迎えた。この研究で、去勢手術は部分的に体重増加を説明するホルモンバランスを急速に変え、ホルモン変化は、この体重増加に先立って起こることを確認する。高レプチン血症は、明らかに過体重の結果である。(Sato訳)
■犬における卵巣摘出術と卵巣子宮摘出術の合理的な選択:それぞれの手技における利点の議論
Making a rational choice between ovariectomy and ovariohysterectomy in the dog: a discussion of the benefits of either technique.
Vet Surg. 2006 Feb;35(2):136-43.
van Goethem B, Schaefers-Okkens A, Kirpensteijn J.
目的: 性腺摘除術にとって卵巣摘出術(OVE)は犬の卵巣子宮摘出術(OVH)に変わる安全な代替手法であるかどうか確かめる。
研究デザイン: 文献レビュー
方法: 2004年12月に、1969年から2004年までの論文に関して、MEDLINEとPubMedによるオンライン文献検索を行った。関連する研究を比較し、研究デザイン、外科手技そして短期および長期の経過観察に関して評価した。
結論: 卵巣子宮摘出術は卵巣摘出術に比べて手技的により複雑で、時間がかかり、おそらくより大きな浸襲性(切傷がより大きく, 術中の損傷が多く, 不快感も増加する)と関連する。
子宮内膜炎/子宮蓄膿症や尿失禁などの長期的な泌尿生殖器問題の発生率に関して術式における明らかな違いは観察されなかったので、OVEは健康な雌犬における性腺摘除術の望ましい方法かもしれない。
結論と臨床関連:犬の卵巣摘出術は健康な雌犬のルーチンな中性化の術式の選択として卵巣子宮摘出術に置き換えることができる。(Dr.Kawano訳)
■小動物の側腹アプローチによる卵巣子宮摘出術
Lateral Flank Approach for Ovariohysterectomy in Small Animals
Compend Contin Educ Pract Vet 26[12]:922-931 Dec'04 Review Article 14 Refs
Holly McGrath, DVM; Robert J. Hardie, DVM, DACVS, DACVS; Eric Davis, DVM, DACVS, DACVIM *
犬猫の卵巣子宮摘出術で、側腹アプローチは従来の正中アプローチに変わるものである。その使用にたいする指標は、過剰な乳腺の発育、または術後検査が制限を受ける状況などである。利点は、切開創の裂開が起きた場合内蔵が出る可能性が低い、術後遠くから傷をモニターできる、一度外科医がそのアプローチに慣れれば、効率がよいなどである。側腹アプローチの主な欠点は、挙げるならば反対側の暴露が難しいことである。(Sato訳)
■猫の性腺摘出後、体重と体組成に対する食餌中脂肪とエネルギーの影響
Effects of dietary fat and energy on body weight and composition after gonadectomy in cats.
Am J Vet Res 65[12]:1708-13 2004 Dec
Nguyen PG, Dumon HJ, Siliart BS, Martin LJ, Sergheraert R, Biourge VC
目的:不妊済み、未不妊猫における体重増加、体組成、総エネルギー消費量(TEE)に対する食餌中脂肪とエネルギー密度の影響を評価する
動物:12頭のオスと12頭のメス猫
方法:オスネコは去勢するか(去勢オス(CM))、または何も処置しなかった(未不妊オス(IM))。メス猫は卵巣摘出(避妊メス(SF))、または開腹し卵巣摘出せずに卵管を結紮(未不妊メス(IF))した。猫は最終的に8群に振り分け、26週間低脂肪(LF)または高脂肪(HF)食を給餌した:IF-LF、IF-HE、SF-LF、SF-HF、IM-LF、IM-HF、CM-LF、CM-HF。研究期間中各群の平均食物摂取を毎日記録し、体重は毎週モニターした。体組成とTEEをアイソトープ希釈(二重標識水)を用いて0週目の術前、研究終了時(26週)に測定した。
結果:研究中、未不妊猫(27.11±5.79%)よりも不妊猫の体脂肪と体重(53.80±5.79%)が有意に増加した。HF食を与えていた不妊猫の体重増加は、LF食を与えていた猫より大きかった。体組成補正後、全群TEEは同様で、食物摂取が増加するようなパターンはなかった。
結論と臨床関連:不妊猫の体重増加は、LF、低エネルギー密度食を与えることにより低下した。不妊後、猫の体重増加を防ぐため、適切なLF食を自由採食より、注意深く監視して規則正しく与えるべきである。(Sato訳)
■イヌの切除不可能な子宮切除端膿瘍の大網処理
Omentalization Of A Nonresectable Uterine Stump Abscess In A Dog
J Am Vet Med Assoc 224[11]:1799-1803 Jun 1'04 Case Report 41 Refs
Bonnie G. Campbell, DVM, DACVS, PhD
卵巣避妊摘出術後、2歳の避妊済みゴールデンレトリバーが、大きな子宮断端膿瘍のため来院した。臨床症状は、間歇的嘔吐、沈うつ症状、嗜眠、頻尿だった。そのイヌは腹部手術を行った。顕著に拡大した至急断端は、膀胱の背側面にしっかりと癒着しており、尿管や膀胱の神経血管供給の遠位部を取り巻いていた。子宮断端の一括切除は、術後の膀胱または尿管の失活、尿失禁、または尿路閉塞をおこすダメージリスクのため、実施可能な治療選択に考慮しなかった。ゆえに、膀胱の頭側に伸びた罹患子宮組織を切除し、そして残りの膿瘍腔を洗浄して大網を詰めた。その方法でイヌは完全に回復した。大網は効果的な生理学的ドレーンである。その広範な脈管、リンパ網状組織は液体を吸収し、感染の除去を活動的に促進する。大網化は、イヌの切除不可能な子宮断端膿瘍の外科処置選択と思われる。(Sato訳)
■メスのビーグルで卵巣切除後の無制限給餌:維持エネルギー必要量と血液代謝産物に対する影響
Ad libitum feeding following ovariectomy in female Beagle dogs: effect on maintenance energy requirement and on blood metabolites.
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl) 88[3-4]:117-21 2004 Apr
Jeusette I, Detilleux J, Cuvelier C, Istasse L, Diez M
要約:この研究目的は(1)ビーグルで1日エネルギー必要量に対する卵巣切除の影響を評価し、(2)それら避妊犬で、エネルギー消費、体重増加、血液代謝産物に対し、高エネルギー食無制限給餌の影響を評価することだった。4頭の若いメスのビーグル成犬を使用した。卵巣切除は、イヌの1日エネルギー要求量を有意に低下させた。避妊後最初の6ヶ月、無制限給餌は、避妊イヌの消費の有意な増加を引き起こした。この過剰な消費は、無制限給餌の最初1ヶ月で最大となったが、この研究の全体4ヶ月間継続した。無制限で与えたとき、短期間の血漿コレステロール、トリグリセリド、グルコース、インシュリンに有意な影響もなく過剰な体重に増加した。それらのデータは、避妊イヌで、過剰な体重増加を避けるため、エネルギー摂取を厳しく管理すべきだと示唆する。(Sato訳)
■ネコの早期性腺摘出の長期リスクと恩恵
Long-Term Risks and Benefits of Early-Age Gonadectomy in Cats
J Am Vet Med Assoc 224[3]:372-379 Feb 1'04 Retrospective Study 48 Refs
C. Victor Spain, DVM, PhD; Janet M. Scarlett, DVM, PhD; Katherine LIB. Houpt, VMD, PhD, DACVB
目的:大規模なアニマルシェルターから譲渡されたネコで、早期性腺摘出の長期リスクと恩恵を評価し、従来の年齢で行ったものと比較する。
構成:回顧的集団研究
動物:1,660頭のネコ
手順:ネコに性腺摘出を行い、1歳までにアニマルシェルターから譲渡した。術後最長11年間の追跡調査が得られた(追跡調査中央値、3.9年)。受け入れたオーナーに、ネコの行動や病歴についてアンケートをとった。可能ならば、ネコの獣医学的記録を再検討した。手術時の年齢と、47項目の医療、行動状況との関係を確認するために統計分析を行った。
結果:早期性腺摘出(<5.5ヶ月齢)を行ったオスネコで、より年齢の高いときに行ったネコと比較して膿瘍、獣医師に対する攻撃、性的行動、尿スプレーの発生は低下し、隠れることが増えた。早期性腺摘出を行ったオスとメスネコで、喘息、歯肉炎、活動亢進は減少し、用心深さは増した。
結論と臨床関連:5.5ヶ月より前の性腺摘出は、死亡、飼育放棄、重篤な医療、または行動問題の発生の増加に関与せず、特にオスネコでかなり重要な長期恩恵をもたらすかもしれない。アニマルシェルターで早期に安全に不妊手術が行え、獣医師は従来の6-8ヶ月より以前に、飼育ネコに対しルーチンな性腺摘出の推奨を考慮すべきである。(Sato訳)
■イヌの早期性腺摘出の長期のリスクと利点
Long-Term Risks and Benefits of Early-Age Gonadectomy in Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[3]:380-387 Feb 1'04 Retrospective Study 38 Refs
C. Victor Spain, DVM, PhD; Janet M. Scarlett, DVM, PhD; Katherine LIB. Houpt, VMD, PhD, DACVB
目的:大規模なアニマルシェルターから譲渡されたイヌの中で、伝統的な年齢で行った性腺摘出と比較した、早期性腺摘出の長期リスクと利点を評価する
構成:回顧的集団研究
動物:1842頭のイヌ
方法:イヌに性腺摘出を行ない、1歳になるまでにアニマルシェルターから譲渡した。追跡調査期間は術後11年間入手できた。譲渡されたオーナーに、イヌの行動や病歴についてアンケートを行った。可能ならば、イヌの医療記録を再検討した。56の医療、行動状況の発生と、イヌの性腺摘出時の年齢との関係を評価した。
結果:メスイヌで、早期性腺摘出は、膀胱炎になる率を増加させ、手術時の年齢低下は、尿失禁になる率の増加に関係していた。早期性腺摘出を行ったオスとメスイヌで、股関節形成異常、騒音恐怖症、性的行動は増加し、一方肥満、分離不安、逃避行動、怖がったときの不適切な排泄、いろいろな理由からの飼育放棄が減少した。
結論と臨床関連:オスイヌの早期性腺摘出は、リスクよりも多くの利点があると思われるため、アニマルシェルターは、安全にオスイヌの性腺摘出が可能で、獣医臨床家は、6-8ヶ月の伝統的な年齢より前に通常の性腺摘出の推奨を考慮すべきである。しかし、メスイヌについては、尿失禁の増加により、最低3ヶ月まで性腺摘出延期を示唆することが有益と思われる。(Sato訳)
■イヌの卵巣切除後の尿失禁に対する性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)類似物質の効果
The effect of GnRH analogs on urinary incontinence after ablation of the ovaries in dogs.
Theriogenology 60[7]:1207-16 2003 Oct 15
Reichler IM, Hubler M, Jochle W, Trigg TE, Piche CA, Arnold S
卵巣切除後、約20%のイヌが尿失禁を発症する。性腺の除去で、エストロジェン欠乏と卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の産生と分泌が慢性的に高められる。性腺刺激ホルモンは直接、または間接的に、尿道の括約筋機能に反作用すると思われる。エストロジェン代償療法とエフェドリン、フェニルプロパノラミン(PPA)のような交感神経興奮剤の投与は、いくらかの罹患犬しか効果的でなく、それらの多くは、その後非反応性となる。性腺刺激ホルモンが高くなる役割は解明されていないため、アルファ-アドレナリン作用薬に反応しない(n=11)、またはアルファ-アドレナリン作用薬が禁忌(n=2)の卵巣を切除して尿失禁を起こしているイヌ13頭に、性腺刺激ホルモンを下方制御させるため、GnRH類似物質の徐放製剤を1回、または2回使用した。
イヌをleuprolide、deslorelin、ブセレリン、triptorelinで治療した。GnRH類似物質単独で治療した7頭で、50-738日(平均247日)自制した。GnRH投与で失禁が完全に解消しなかった1頭を除き全ての犬で、フェニルプロパノラミンの追加投与が成功した。フェニルプロパノラミンの追加投与で、完全な自制が21-367日(平均159日)回復した。全ての治療は、非常に低くまたは検出不可能な濃度に循環FSHやLH濃度を長期低下させた。治療の副作用は認められなかった。(Sato訳)
■不妊済み雌雄ネコで脂質プロフィールに対する肥満の影響
Effects of obesity on lipid profiles in neutered male and female cats.
Am J Vet Res 64[3]:299-303 2003 Mar
Hoenig M, Wilkins C, Holson JC, Ferguson DC
目的:痩せたネコと比較して肥満ネコは、血糖代謝やインシュリン分泌の低下を誘発するかもしれないリポタンパク代謝を変化させるかどうかを研究すること
動物:10頭の痩せた成猫と10頭の肥満の成猫(各5頭は不妊済みオス、5頭は不妊済みメス)
方法:血清グルコース、インシュリン、遊離脂肪酸(NEFA)濃度の測定値で静脈内糖耐性試験を行った。血清中リポタンパク分画を等密度勾配超遠心分離で検査した。
結果:肥満ネコにはインシュリン抵抗性があった。血症中性脂肪、コレステロール濃度は肥満ネコの方が有意に増加していた。超低密度リポタンパク(VLDL)濃度も肥満ネコのほうで増加が見られたが、様々な分画の構成は肥満ネコ、痩せたネコ共に変化しないままで、このことは肥満ネコでのより多くの超低密度リポ蛋白の合成と異化を示した。
血清高密度リポ蛋白(HDL)コレステロール濃度は肥満ネコで増加していた。血清遊離脂肪酸は性別で分けたときのみ有意差が見られ、痩せた雄ネコと比較して、肥満したオス猫の方が、血清遊離脂肪酸濃度の基準が高くインシュリンに対する反応でより大きな遊離脂肪酸抑制が見られた。
結論と臨床関連:痩せたネコに比べ、肥満ネコの脂質代謝は変化する。肥満ネコでの超低密度リポ蛋白代謝回転の増加は、グルコース代謝のインシュリン抵抗性に寄与するかもしれない。一方血清高密度リポ蛋白の増加は、肥満ネコのアテローム性動脈硬化に対する保護的影響をもたらすかもしれない。(Sato訳)
■自由放浪猫集団に対する、長期捕獲中性化返還、および里親計画の効果査定
Evaluation of the Effect of a Long-Term Trap-Neuter-Return and Adoption Program on a Free-Roaming Cat Population
J Am Vet Med Assoc 222[1]:42-46 Jan 1'03 Epidemiologic Study 41 Refs
Julie K. Levy, DVM, PhD, DACVIM; David W Gale; Leslie A. Gale, BS
目的:自由放浪猫集団の変遷に関し、長期捕獲中性化返還計画と、可能な場合は里親譲渡を行うことの効果を評価することです。
計画:観測的疫学調査。
動物:飼主のいない、自由放浪猫155頭。
手順:大学構内に住み着いている自由放浪猫を、捕獲、中性化し、環境への返還、または里親譲渡を11年間以上行いました。
結果:観察期間中(1991年1月から2002年4月)、猫の75%は野生で、25%は社会化してました。子猫は、当初集団の56%を占めました。オス猫は、メスよりもわずかに多く55%でした。観察期間終盤では、猫の47%が里親譲渡でいなくなり、15%が敷地に残り、15%は姿を消し、11%は安楽死、6%は死亡し、6%は周囲の森林へ移動しました。1991年に捕獲を始めましたが、1996年までは、猫の頭数調査は完全ではなく、その時で、68頭の猫が敷地に住み着いておりました。2002年の完全な集団頭数は、68頭から23頭まで(22頭は野生)の、66%減少しました。1995年以降、敷地内に子猫は観察されませんでしたが、さらに迷い込んだ猫や、捨てられた猫が、居住猫となり続けました。新たな猫は、彼らが繁殖する前に、中性化、または里親譲渡を行いました。
結論と臨床関連:居住集団に対する、中性化後の譲渡、返還の包括的長期計画は、都心領域における、自由放浪猫集団の減少を導くことが可能です。(Dr.K訳)
■フェンプロスタレン-メス犬の流産誘起
Fenprostalene-induced abortion in bitches.
J Vet Med Sci 64[11]:993-8 2002 Nov
Hori T, Akikawa T, Kawakami E, Tsutsui T
長期作用性プロスタグランジンF(2α)類似物質であるフェンプロスタレンを、妊娠中のメス犬の排卵後25日目に5、10、25、50、100、150μg(各投与量n=4)の投与量で単回皮下注射し、妊娠の維持、血漿プロジェステロン濃度変化、処置とその後の発情までの間隔、発情時の受胎率を研究した。流産は血漿プロジェステロン濃度が約2ng/ml以下までの減少に関連し、堕胎効果は用量に依存していた。50μg以上のフェンプロスタレンの投与は、投与後3-13日目に全頭流産を誘起した。投与から次の発情までの期間は、流産しなかったものに比べ流産したメス犬の方が顕著に短くなった(P<0.01)。流産した犬の発情時の受胎率は50%で、流産していないメス犬は全て妊娠した。結果は、フェンプロスタレンの単回投与はメス犬の中期妊娠期間に流産を誘起する事ができ、次の発情は早期に起こり、受胎率は低くなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の卵巣切除と卵巣子宮切除の長期影響の比較
Comparison of long-term effects of ovariectomy versus ovariohysterectomy in bitches.
J Reprod Fertil Suppl 51:227-31 1997
Okkens AC ; Kooistra HS ; Nickel RF
卵巣切除術は、卵巣子宮切除術よりも侵襲性が少なく、手術時間も短いが、ほとんどの外科のテキストは、メス犬の通常の不妊に卵巣子宮摘出術を推奨している。これは、卵巣切除後に子宮疾患の発生を考慮して推奨されていると思われる。しかし、プロゲストゲンが投与されない限り、卵巣を除去したメス犬に嚢胞性子宮内膜過形成-子宮内膜炎のような状態がおこる証拠はない。よって、この研究の目的は、尿失禁の発生率を含め、卵巣切除と卵巣子宮摘出術の長期影響を比較する事とした。
卵巣切除術(126)と卵巣子宮切除術(138)を通常の不妊処置として、8-11歳以前に行っているメス犬のオーナー264人にアンケートを送付した。完全な回答は、卵巣切除群の69頭、卵巣子宮切除群の66頭から得られた。卵巣切除群のメス犬に子宮内膜炎が発生したという事はなかった。不妊後、オス犬を性的に引き寄せる雌犬はいなかった。各群の2頭に透明-白色の膣からの滲出物が報告されたが、その滲出物が出ている間に病気が明らかになった犬はいなかった。さらに、尿失禁を除いて、外科的不妊に関する問題は報告されていなかった。
最終的には、卵巣切除の6頭と卵巣子宮切除の9頭に尿失禁が起こった。それら15頭(11%)のうち12頭の体重は20kg以上だった。ブーヴィエ・デ・フランドルのメス犬は、他の犬種よりも尿失禁を起こすリスクが高かった。8頭は尿失禁が発生する前は9歳以上で、7頭は多尿または多飲多尿も伴っていた事から、尿失禁は他の病気の一部によるという可能性が考えられた。卵巣切除群と卵巣子宮切除群のリストに上げられた泌尿生殖器の問題の発生率に有意差はなかった。プロゲストゲンが投与されない限り、完全な卵巣切除後に嚢胞性子宮内膜過形成-子宮内膜炎のような子宮疾患は起こりえないと仮説を立てた。この研究の結果は、卵巣切除術は卵巣子宮切除術と比較して、嚢胞性子宮内膜過形成-子宮内膜炎や他の合併症のリスクを高める事はないと示している。健康なメス犬で、通常の不妊に子宮の除去をしなければいけないという指標はなく、逆に卵巣切除術を選択可能な処置と考慮するべきだと締めくくる。(Sato訳)
■潜在睾丸の合併症として、4頭のイヌに見られた不注意による前立腺切除
Schulz KS, Waldron DR, Smith MM, Henderson RA, Howe LM.
J Am Anim Hosp Assoc 1996 May-Jun;32(3):211-4
Comment in:J Am Anim Hosp Assoc. 1996 Sep-Oct;32(5):376-7.
Inadvertent prostatectomy as a complication of cryptorchidectomy in four dogs.
潜在睾丸の合併症として、4頭のイヌに不注意による前立腺切除が判明した。おのおのの症例において、尿道外傷に対する外科的矯正が試みられた。1つの症例は回復に対する予後が悪く安楽死された。3症例は尿失禁の臨床徴候なく生存した。潜在睾丸切除中の不注意による前立腺切除は、充分な外科的露出、適切な腹部睾丸の確認によって避けられるだろう。(Dr.Yoshi訳)
■犬猫の不妊時期:ニューヨーク州の獣医師の実際と信念の調査
When to Neuter Dogs and Cats: A Survey of New York State Veterinarians' Practices and Beliefs
J Am Anim Hosp Assoc 38[5]:482-488 Sep-Oct'02 Prospective Study 28 Refs
C. Victor Spain, DVM; Janet M. Scarlett, DVM, PhD; Siobhan M. Cully;; Dept of Population Medicine and Diagnostic Science, Section of Epidemiology, Cornell University, Ithaca, NY 14853
アニマルシェルター団体の多くの人は、シェルターに捨てられる犬猫の数を減らす重要なステップとして、子供のうちの不妊(すなわち、オス、メスの性腺摘出)を認めている。しかし、その処置の安全性は獣医師の間でいまだ議論されているけれど、最近の研究で安全問題については評価され、リスクの増加は認められていない。この研究の目的は、ニューヨーク州の開業獣医師の「犬猫の不妊を行うべき時期」に関する信念と実際、それらの信念や慣習が獣医師の性別や他の要因、例えば大学の卒業した年や早期不妊の経験などで変化するかどうか調査する事である。全ての質問に対し、早期不妊は<4ヶ月齢と定義した。
616通のアンケートをランダムに郵送し、412人(66.9%)の獣医師から部分的または完全回答を得た。獣医師の大多数(70.6%)は全ての飼育動物に不妊を普段から勧めており、アニマルシェルターの譲渡前の不妊を支持していた(90.3%)。シェルターの動物は譲渡前に不妊するべきであると信じていない回答者は26人(6.5%)で、有意に男性(88.0%)にその傾向があり、シェルター動物の不妊に賛同している人よりも早く(中央値、1974年)に大学を卒業していた。その理由は実利的な競合、ケアーの質などが挙げられた。この研究で多くの獣医師は、認知している早期不妊の少なくとも1つのリスクよりも(84.4%)、分かっている利点(91.3%)を報告した。少なくとも1つの利点があると報告した獣医師は、そう報告しなかった獣医師よりも後で大学を卒業していた(中央値の差、9年)。
報告された利点とは、過剰ペット頭数、乳癌の発生率、問題行動を低下させると言うものだった。早期不妊に関して認知しているリスクファクターとして報告されたもので、共通して挙げられたのは麻酔リスクの増加、猫の下部尿路疾患など医療問題の素因となるなどだった。それらの多くは、この処置が安全と考えるのに情報が不十分と報告していた。しかし、リスクファクターは、早期不妊を経験した獣医師たちにとって関係がほとんどないと考えられていた。動物の年齢は一貫して、獣医師自身の診療でイヌネコに不妊を推奨すると決断する時の、一般的な基準(2回目のワクチン接種済み)となっていた。犬猫が通常不妊するべき最も早い時期についての質問で、飼育ペット(5ヶ月)よりもシェルターの動物(3ヶ月)の方が有意に若かった。約1/3の獣医師は、飼育動物の不妊の最低年齢は、実際に行っていた年齢よりも若くなったと報告した。
著者は、不妊の理想年齢とする6ヶ月を支持するデータはないとして、飼育ペットの不妊年齢は、ワクチン接種の完了に依存した4,5ヶ月以下で可能だと締めくくる。(Sato訳)
■リラキシン:犬の妊娠における重要指標
[Relaxin: an important indicator of canine pregnancy]
DTW Dtsch Tierarztl Wochenschr 109[1]:8-12 2002 Jan
Einspanier A, Bunck C, Salpigtidou P, Marten A, Fuhrmann K, Hoppen HO, Gunzel-Apel AR
この研究では、末梢血漿のリラキシン濃度を、妊娠指標としてその安定性を見るために、妊娠期間中に新開発のリラキシン酵素免疫分析を用いて調査しました。排卵後、妊娠24日目に有意なリラキシンの上昇が見られました。しかし、リラキシンの上昇は、子供の数にもメスイヌの体重にも相関はありませんでした。プロスタグランジンF2αによる流産誘起で、末梢リラキシン濃度は低下し、この薬剤の投与による胎盤の損傷を示唆しました。このように結果から、リラキシンは胎盤から産出され、メスの早期妊娠診断の有用なマーカーである事を確認しました。リラキシン測定は、単独、または超音波所見の補追としての妊娠検出法として推奨されます。(Sato訳)
■妊娠犬と非妊娠犬における循環リラキシン濃度:妊娠判定のための、新しい酵素免疫測定法
Buff S et al; J Reprod Fertil Suppl 57:187-91 2001; Circulating relaxin concentrations in pregnant and nonpregnant bitches: evaluation of a new enzymeimmunoassay for determination of pregnancy.
雌犬の新しい妊娠診断キット(ReproCHEK RELAXIN)が、現在、獣医療で入手可能です。この解析は血漿および全血サンプルにおけるリラキシン濃度を測定し、有意なリラキシン量があれば、妊娠していることを示します。テストの性能を評価するための臨床治験を行いました。連続的な血液サンプルを1日おきに採取し、LHサージ(プロゲステロン濃度により、評価)後15日から35日まで、リラキシン濃度を測定しました。妊娠は超音波検査を用いて確認しました。妊娠後期で、出産の日にちと、同腹子のサイズを記録しました。妊娠は61頭の雌犬で確定されました。リラキシン解析により、妊娠が検知された日は、LHサージ後19日から28日の範囲で、平均25.4+/-2.5日(+/-SD)でした。分娩日は、基準と同じく、分娩より、46日から38日前(平均40.2+/-2.4日前)に妊娠が検知されました。擬陽性は、偽妊娠犬(n=16)、あるいはコントロール群(30頭の無発情犬と10頭の無交配犬)において、観測されませんでした。これらの結果は、新しい解析キットが、妊娠判定に、安価で、使いやすく、信頼性があるという事を立証します。(Dr.K訳)
■卵巣子宮摘出後のネコで、体重、体組成や状態に対する食事管理の効果
Harper EJ et al; J Small Anim Pract 42[9]:433-8 2001 Sep; Effects of feeding regimens on bodyweight, composition and condition score in cats following ovariohysterectomy.
体重、体組成、コンディションスコアーに対する卵巣子宮摘出術の影響を、食餌制限なしのネコ49頭と、体重維持の目的で制限した食餌を支給したネコ11頭で評価しました。制限なしのネコでは、術前12ヶ月で平均3.1%の体重増加を示していたものが、術後12ヶ月では、平均31%の体重増加を示し、これは主として体脂肪量の増加によるものでした。ドライフードと缶詰で体重増加に差はありませんが、手術時の年齢と体重に反比例していました。
制限食を与えていたネコでは、術前12ヶ月で平均3.6%体重増加を示していたものが、術後は7.5%の増加となり、9頭は、体重を術前値の10%以内に維持しました。他の2頭は、40kcal/kg/dayの食餌しか与えていないのに、かなりの体重増加(+20%、+36%)を示しました。制限食を与えていたネコで、体組成に有意な変化はなく、コンディションスコアーも制限無しのネコよりは有意に低いものとなりました。
結果は、卵巣子宮摘出術が、自由採食のネコの肥満に繋がる事を確認するもので、体重増加を防ぐには、かなりエネルギー摂取を控える事が必要だと示しています。(Sato訳)
■外科的に不妊されたイヌネコの割合の評価
Mahlow JC.; J Am Vet Med Assoc 1999 Sep 1;215(5):640-3; Estimation of the proportions of dogs and cats that are surgically sterilized.
目的:テキサスにおける外科的に不妊されたイヌネコの割合の評価を決定することと、それらの割合が動物種、性別、飼い主の責任、もしくは地理学的な場所によって異なるのかどうかを決定すること
意図:クロス-セクショナル研究
動物:6ヶ月齢もしくはそれ以上の43831頭のイヌネコ
方法:不妊率の情報はテキサスの異なった地域の14の許可をうけた機関、16のアニマルシェルターから得た。一変量解析と多変量解析を、動物の部分母集団の不妊率比較に用いた(イヌとネコ、雄と雌、シェルターと許可機関、田舎と都会)。
結果:全体で、12893頭(29.4%)の動物(イヌ26.9%、ネコ32.6%)が不妊されていた。不妊されていた動物の割合は部分母集団間で有意に相違があった。
結論と臨床との関連:ペットの頭数過剰の原因は多面的であるが、避妊と去勢を飼い主が実施しない事が主要な要因である。イヌとネコの部分母集団間の不妊率における有意差は、避妊と去勢を奨励する組織が、目標とする特定のペットオーナーに対して、動機付けの手法を用いるべきであることを示唆している。(Dr.Yoshi訳)
■アメリカ合衆国でのイヌネコの若齢中性化(批評)
Olson PN et al; J Reprod Fertil Suppl 2001;57:223-32; Early-age neutering of dogs and cats in the United States (a review).
若齢中性化として引き合いに出される思春期前の性腺摘出は、アメリカ合衆国では普通のこととして増加してきている。しばしば動物ケアとコントロール施設にて処置がなされており、そこでは子犬と子猫が7週齢くらい、もしくは引き取られる前に中性化される。麻酔と外科手技は安全に見えるが、健康と行動における長期にわたる影響を評価するため、研究は継続されている。若齢での中性化は、ペット数の過剰、毎年望まれない数百万の健康なイヌネコの安楽死問題に対抗すべく、用いられる一つのテクニックである。中性化された動物はペット数の過剰のコントロールにおいて助けになるが、他の要因も考慮されなくてはならない。加えて、動物が不適当な行動を見せるとき、多くがシェルターへ放棄される。なぜなら飼い主と獣医師が動物の行動を修正することができないからである。この批評はアメリカ合衆国での若齢中性化を討論し、子犬と子猫で、この方法を評価する科学的な研究の批評である。若齢中性化はイヌとネコの成長を妨げはしない(かつて持たれている確信)が、ネコの代謝率を変化させるかもしれない。麻酔と外科的手技は若齢の子犬と子猫には明らかに安全であり、疾病率は低く、回復は成熟した動物よりも早い。現在のところ、副効果について通常の年齢での中性化(7ヶ月)と若齢での中性化(7週齢)において明白な差はみられない。(Dr.Yoshi訳)
■イヌの行動における去勢の影響
Influence of orchiectomy on canine behaviour.
Maarschalkerweerd RJ, Endenburg N, Kirpensteijn J, Knol BW.
Vet Rec 1997 Jun 14;140(24):617-9
イヌの行動、望ましくない副効果、テストステロン依存性の疾病の過程における去勢の影響についての情報を得るため、122頭の飼い主にインタビューした。去勢のための理由として、望ましくない性的行動が最も多く、放浪、攻撃性、異常な放尿行動を伴っていた。不快な性的行動、雄同士の攻撃性、放浪、異常な放尿は、去勢後おおよそ60%のイヌで減少した。去勢の副効果は、50%以下のイヌに体重と食欲の増加、活動性の低下がみられ、食欲と体重の増加には有意な相関があった。テストステロン依存性の疾病の臨床徴候は、去勢後多くのイヌおいて減少もしくは消失した。(Dr.Yoshi訳)
■後天性尿失禁のメス犬に対するエストリオールの使用
Treatment of bitches with acquired urinary incontinence with oestriol.
Vet Rec 149[25]:764-7 2001 Dec 22-29
Mandigers RJ, Nell T
天然に発現する短時間作用性発情ホルモンのエストリオールを、オランダ、ベルギー、フランス、ドイツの48動物病院から選ばれた、後天性尿失禁のメス犬129頭の治療に使用しました。自己制御的研究として、エストリオール錠を42日間毎日投与しました。犬を検査し、研究期間の最初と終わりに採血しました。臨床家によれば、83%に失禁がなくなる、または改善が見られましたが、その他の犬は変化なし、または悪くなりました。オーナーによる報告も同様で、82%が治療に反応を見せ、その他の犬は反応しませんでした。投与量や投与計画は、各犬で臨床効果をもとに立てられました。陰部の腫脹やオス犬をひきつけるなどの軽度で一時的な発情ホルモンの影響が、高用量投与計画を行った12頭で治療開始後すぐに観察されました。114頭の犬で血液学的検査に異常は見られませんでした。(Sato訳)
■雌イヌにおける早期避妊と尿失禁の関係
The relationship of urinary incontinence to early spaying in bitches.
Stocklin-Gautschi NM, Hassig M, Reichler IM, Hubler M, Arnold S.
J Reprod Fertil Suppl 2001;57:233-6
雌イヌを初回発情の前か後のどちらで避妊すべきか、まだ議論を呼んでいる。中性化の副作用が最小限になると思われる年齢での避妊が望ましい。乳腺腫瘍の危険に関しては、腫瘍の発生率をかなり減少させるので、早期の避妊は推奨されるべきである。この研究の目的は、早期の避妊が尿失禁の危険をも減じるかどうかを決定することであった。初回発情前に避妊された206頭の雌イヌの飼い主に、少なくとも3年間、避妊の結果としての尿失禁の発生について質問した。質問時の雌イヌの平均年齢は6.5歳、手術時の平均年齢は7.1ヶ月であった。避妊後の尿失禁は雌イヌの9.7%に起こった。この発生率は、初回発情後に避妊したもののおおよそ半分である。尿失禁は大体重(20kg以上)の雌イヌの12.5%に発生し、小体重(20kg未満)の雌イヌの5.1%に発生した。外科的方法(卵巣切除と卵巣子宮切除)では発生率、もしくは避妊から尿失禁の発生までの期間に影響はみられなかった。尿失禁は手術後平均2年10ヶ月で発生し、動物が覚醒中、もしくは睡眠中の両方で発生した。しかし、尿失禁の臨床徴候は、遅い避妊と比較すると、早期避妊のほうがより明瞭であった。
★卵巣子宮摘出術の行動への影響
O'Farrell V et al ; J Small Anim Pract,31,595-598,1990 ;Behavioural effects of ovariohysterectomy on bitches
研究の目的
背景:外科的不妊はオスの問題行動をコントロールするため、よく行われますが、卵巣子宮摘出術(OHE)が行われる目的は、常に繁殖機能(例えば、発情周期と妊娠)をコントロールするためです。他の行動に対する卵巣子宮摘出術の影響は、広く調査されていません。
仮説:メス犬は、卵巣子宮摘出術後に攻撃性が増加するかもしれません。
研究結果
構成:2つのグループのオーナーにインタビューし、調査しました:避妊をする予定のメス犬のオーナーと予定していないメス犬のオーナー(すなわち、コントロール群)。コントロール群と避妊グループの犬種や年齢をあわせました。避妊グループのオーナーに、避妊時と6ヵ月後の犬の行動について質問表を渡しました。コントロールグループのオーナーにも、同じ時期に質問表を渡しました。避妊グループとコントロールグループの、行動の違いを調査しました。
結果:両グループの間で、優勢攻撃性や見境のない食欲に関し、有意差が現れました。避妊犬は、最初と2回目のインタビューをコントロール群と比較すると、家族に対する優勢攻撃性が明らかに増加し、コントロール群のこの種の攻撃性は、減少しました。避妊群は見境のない食欲(例えば、食餌をすばやく食べる、どんな市販のドックフードも食べる、ごみのような食餌に関係しているモノを食べる)が増し、コントロール群ではこの行動は、減少しました。
批評
構成評価:2度の質問形式(1つは手術時で、1つは6ヵ月後)はメリットがあります。それは、1回のインタビューでは、特に行動パターンに関してオーナーの長期の記憶は信頼に欠けるからです。コントロール群の設置も重要で、外科手術に関係がないところの行動変化(例えば、成熟に伴う行動変化)を見分ける手助けになるからです。コントロール群で、それらの変化を監視しようとする事は重要ですが、理想のコントロール群(すなわち偽OHE群)を立てることは出来ません。倫理上の理由から、飼育犬に偽外科手術を行えないでしょう。しかし、偽OHE群は、OHEと同じ様な麻酔、手術、回復の影響をより正確に表すでしょう。
この調査では、オーナーに正確な行動を質問し、その行動を分類しました。例えば、「家族に対する優勢攻撃」と思われる行動は、寝ているのを邪魔した、家族に向かって威嚇した、グルーミングする時に威嚇した、何かを取られたときに威嚇した犬を含めました。それら特定のきっかけは優勢攻撃の診断で良く見られますが、この診断に行き着くまでにはより多くの、過去の複雑なプロフィールが必要です。例えば、グルーミングする時に威嚇する犬は、痛みに対する動機付けの攻撃で、優勢攻撃ではありません。診断の分類は慎重に解釈するべきです。
最後に、発情のどのステージで、OHEを実施するのかの指示はこの研究ではありません。
結果評価
データから、予想外の攻撃性増加を見せたグループは、OHE時<11ヶ月のメス犬で、すでに外科手術前からある種の攻撃性を現していました。卵巣避妊摘出術は、メスに攻撃性を出現させませんが、若いメス犬の優勢攻撃性を悪化させるかもしれません。明らかな攻撃性の増加は、OHEに伴う突然のホルモン状態の変化によるものかもしれません。
著者は、コントロール群(すなわち未避妊犬)は避妊群より最初のインタビュー時、より多くのプロゲストゲン投与を受けていたとの認識はありません。この薬物の投与頻度は、両インタビュー間で報告されていません。外因性のホルモン投与は、未避妊犬の行動に影響するでしょうか?
臨床応用
優勢攻撃の症状を現す<11ヶ月のメス犬では、成熟するまで、手術を遅らせる事が賢明かもしれません。もちろん、攻撃性が増す可能性に対して妊娠の危険に重きをおくべきでしょう。体重管理は、オーナーに前もって話しておくべきです。(Dr.Sato訳)
★犬で、性腺摘出が、その後の年齢関連性認識障害に及ぼす影響
Benjamin L. Hart, DVM, PhD, DACVB; J Am Vet Med Assoc 219[1]:51-56 Jul 1'01 Cohort Study 52 Refs ;Effect of Gonadectomy on Subsequent Development of Age-Related Cognitive Impairment in Dogs
目的:性腺摘出が、年齢関連性の認識障害に関わる、行動変化の素因を作るかどうか評価する事です。
構成:集団研究
動物:11-14歳の未去勢の雄犬29頭、避妊済みメス犬63頭、去勢済み雄犬47頭
方法:電話でのインタビューを使用して、オーナーから認識障害に関する4つの行動カテゴリーの情報(家や庭の方向性、社会的相互作用、ハウストレーニング、睡眠覚醒循環)を入手しました。2回目のインタビューを12ヶ月から18ヵ月後に行い、反応の違いを評価しました。
結果:未去勢の雄犬は、最初から2度目のインタビューの間に、軽い障害(すなわち1カテゴリーの障害)からひどい障害(すなわち2つ以上の障害)に進行する犬が有意に少ないようでした。犬の年齢、追跡調査の期間、または、犬全体の健康に対するオーナーの認識の違いによる有意差ではありませんでした。
結論と臨床関連:結果は、未去勢の老齢犬でのテストステロン循環の存在は、認識障害の進行を緩やかにするかもしれません。少なくともすでに軽い症状を持っている犬ではそうでした。エストロジェンは、未避妊のメス犬で同じように保護する役目を持っていると予想されます。ただ残念な事に、この仮説を試す今回の研究では、未避妊のメス犬が少なすぎました。性腺摘出を行った犬で、性ホルモン喪失による影響を補う可能性がある方法を評価する必要があるかもしれません。(Dr.Sato訳)