■健康な犬でロピニロール点眼はアポモルヒネ静脈内投与と同等の効果のある催吐剤である
Ophthalmic ropinirole is an equally effective emetic agent in healthy dogs compared to intravenous apomorphine
Front Vet Sci. 2025 Mar 17:12:1554107.
doi: 10.3389/fvets.2025.1554107. eCollection 2025.
Jack A Lee , Katie Como , Xiaojuan Zhu , Julie Schildt

イントロダクション:催吐は毒物あるいは異物摂取のために樹医療で一般的に使用される。ドパミン作動薬のアポモルヒネは、この適応で一般的に使用される。新しいドパミン-2特異作動薬のロピニロールは2020年にアメリカFDAで、この適応に認可された。それらの薬剤の効果と副作用の特性の比較したデータは臨床的治療決定に重要である。

方法:この盲検無作為化交差試験で、24頭の健康な犬においてアポモルヒネ静脈注射とロピニロール点眼の効果を比較した。評価したファクターは、20分以内の嘔吐誘発効果、催吐剤の再投与の必要性、嘔吐開始までの時間、副作用の発生率を含めた。

結果:アポモルヒネとロピニロール両剤ともに嘔吐誘発の効果は高く、成功率はそれぞれ95.8%と100%で、両群に違いはなかった。再投与は20分後に嘔吐誘発を成功させるため、アポモルヒネ群の25%、ロピニロール群の8.3%で必要だった。発現までの時間中央値は、ロピニロール(8.85分)よりもアポモルヒネ(1.18分)で有意に短かった。副作用の発生率は同様で、ロピニロール群において眼球発赤や長引く嘔吐の発生率が高かった。

結論:それらの結果は、ロピニロールとアポモルヒネは同様の効果で、同様の副作用率であることを示唆する。(Sato訳)
■消化管気腫の犬と猫の臨床的特徴と結果:30症例(2010-2021)
Clinical features and outcome of dogs and cats with gastrointestinal pneumatosis: 30 cases (2010-2021)
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2024 Aug 26.
doi: 10.1111/vec.13417. Online ahead of print.
Nadine Jones , Karen Humm , Helen Dirrig , Melissa Beth Glenn Espinoza , Igor Yankin , Rachael Birkbeck , Laura Cole

目的:消化管気腫(GP)と診断された犬と猫の症状、病因、結果を述べる

デザイン:回顧的研究

場所:3か所の二次診療施設

動物:26頭の犬と4頭の猫

介入:なし

測定値と主要結果:GPの最も一般的な部位は胃(n=19)で、続いて大腸(n=8)、小腸(n=2)だった。1症例は胃と大腸に気腫があった。GPは一般に犬(18/26[69%])と猫(3/4[75%])の消化管疾患と関係し、診断されたのは胃拡張および捻転(n=5)、急性出血性下痢症候群(n=4)、消化管潰瘍(n=4)だった。消化管潰瘍の4症例のうち、3症例はグルココルチコイドあるいは非ステロイド性抗炎症薬投与、嘔吐および下痢の病歴があった。30症例中6症例(20%)(全て犬)は、試験的開腹の外科的指示と判定されたが、GPの診断を基に単独ということではなかった。試験的開腹を行った5症例のうち1症例(20%)は生存して退院した。内科的に管理した症例のうち、24症例中13症例(54%)は生存して退院した。全体で、30症例中14症例(47%)は生存して退院した。

結論:GPは種々の疾患プロセスに関係する珍しい診断的画像検査所見である。その発生は原発性消化管疾患と関係することが多い。他の外科的疾患がなく、GPの診断単独で試験的開腹が指示される可能性は低い。(Sato訳)
■犬と猫の異物の除去に対し胃裂開後の裂開率と関連するリスク因子
Dehiscence rate and associated risk factors after gastrotomy for removal of foreign material in dogs and cats
J Am Vet Med Assoc. 2025 Jan 22:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.08.0531. Online ahead of print.
Betsey Daly , John C Chandler

目的:異物除去に対し、胃切開後の裂開に対する発生率と関連するリスク因子の確認

方法:2か所の個人救急診療と二次診療病院の医療記録を再調査し、271頭の犬と31頭の猫(n=302)の病歴、検査値、術中所見、結果を収集した。

結果:A病院は222処置、B病院は80処置を行っていた。3頭の猫(3/31(10%))と20頭の犬(20/271(7%))は、術中の小腸穿孔があった。2頭の猫(2/31(6%))と7頭の犬(7/271(2.6%))は、術前に敗血症性腹膜炎の診断を受けていた。猫で同時に行った外科処置は、腸切開(3/31(10%))、複数個所の腸切開(3/31(10%))、腸切除と吻合(IR&A;2/31(6%))、その他(1/31(3%))だった。

犬で同時に行った外科処置は、腸切開(55/271(20%))、複数個所の腸切開(11/271(4%))、IR&A(24/271(9%))、IR&Aと腸切開(1/271(0.4%))、脾摘(11/271(4%))、その他(50/271(18%))だった。明らかな胃切開の裂開はなかった。2症例は、フォローアップできず、あるいは術後敗血症性腹膜炎発症で安楽死前の検死ができず、胃切開の裂開は鑑別診断として除去できなかった。症例無、1症例あるいは2症例が胃切開の裂開があったと仮定するならば、胃切開の裂開率は0%から0.66%だった。しかし、それらの症例はIR&Aも行っていた。

結論:著者が望んで裂開率を過大評価するなら、2症例は胃切開の裂開があったと思われる。しかし、胃切開よりもIR&Aが裂開部位だった可能性が高い。

臨床的関連:犬と猫の胃切開の裂開率は低く、この研究で報告された裂開率は、過大評価しているかもしれない。(Sato訳)
■犬と猫の胃切開に対し口胃回収法による腸管異物の除去の比較
Comparison of removal of intestinal foreign bodies using orogastric retrieval techniques versus gastrotomies in dogs and cats
J Small Anim Pract. 2025 Jan 12.
doi: 10.1111/jsap.13827. Online ahead of print.
B Prettegiani , K Maritato

目的:この研究の目的は、内視鏡把持と指による操作で胃切開をせずに、腸管異物回収の外科的方法を述べ、胃切開により同様の閉塞性腸管異物除去を行った犬の短期結果と比較することである。
素材と方法:2021年11月から2023年6月までに、腸管異物を口胃回収法あるいは胃切開で治療した犬と猫の医療記録を抽出した。方法間の短期結果の比較を行った。

結果:50症例を登録し、全ての症例は、腸管の閉塞部位から操作した物質を胃切開により除去、あるいは物質を内視鏡把持器あるいは口胃チューブに指で導き口胃回収で除去した。術中あるいは術後合併症率、最初の食餌までの時間、退院までの時間に統計学的差は認められなかった。胃切開処置は、内視鏡回収群よりも11.98分長く要した。

臨床的意義:開腹補助の口胃回収法による異物の外科的除去は、内視鏡ユニットの補助無く可能で、合併症率あるいは外科的結果に違いはなかった。(Sato訳)
■裂孔ヘルニアの修復を行う犬で胃腹壁固定を使用した犬と使用しなかった犬の結果の比較:41症例(2012-2022)
Comparison of outcomes in dogs undergoing hiatal hernia repair with and without use of a gastropexy: 41 cases (2012-2022)
J Small Anim Pract. 2024 Oct 23.
doi: 10.1111/jsap.13797. Online ahead of print.
M Watkins , C Shales , G Thomas , M Rossanese , T Sparks , R White

目的:胃腹壁固定を行った犬、胃腹壁固定を行わなかった犬の裂孔ヘルニア修復後の合併症率、消化管グレード、内科および/あるいは外科的管理継続の必要性の違いを判定する

素材と方法:2012年4月から2022年3月までに2か所の獣医紹介センターで、外科的裂孔ヘルニア修復を行った犬に対し、回顧的に臨床記録を再検討した。消化管症状および短頭種閉塞性気道症候群の術前のグレード付けを実施した。全ての犬は、食道固定と横隔形成を行った。主治医と飼い主に連絡を取り、フォローアップの情報を入手した。Fisher's exact testsとMann Whitney testsを使用し、群間の術前と術中類似点を評価した。Wilcoxon signed rank testsを使用し、短期(<6か月)及び長期(>6か月)フォローアップで消化管グレードの変化を判定した。

結果:食道固定と横隔膜形成を行った41頭の犬を含めた。15頭は胃腹壁固定を行わず、26頭は左側胃腹壁固定を実施していた。胃固定を行った犬(n=8、29%、95%CI:13-51%)は、胃固定を行わなかった犬(n=0、0%、95%CI:0-18%)と比較し、初回手術あるいは消化管症状の持続に関係する追加手術を必要とする確率が有意に高かった。この違いは、短頭種閉塞性気道症候群に向けた追加手術を行った犬を除外する時、有意ではなかった。短期及び長期フォローアップ共に、両群の消化管グレードは有意に改善した。群間の総合併症率、消化管グレード、追加の内科治療の必要性に有意差はなかった。

臨床的意義:食道固定と横隔膜形成を実施した裂孔ヘルニアの犬の首尾よい外科的修復に、左側胃腹壁固定は必要ない。(Sato訳)
■胃拡張捻転の犬において24-時間リドカイン静脈投与を行った犬と行わなかった犬の炎症性バイオマーカー濃度
Inflammatory biomarker concentrations in dogs with gastric dilatation volvulus with and without 24-h intravenous lidocaine
Front Vet Sci. 2024 Jan 4:10:1287844.
doi: 10.3389/fvets.2023.1287844. eCollection 2023.
Anna Brunner , Anna Lehmann , Bianca Hettlich , Laureen M Peters , Camille Julie Doras , Katja-Nicole Adamik

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背景:犬の胃拡張捻転(GDV)は、組織虚血、再灌流、全身性炎症の特徴を示す。リドカインで抗炎症特性を発揮し、潜在的に結果を改善するというエビデンスがある。

デザインと設定:GDVの飼い犬の前向き無作為化観察コホート研究

目的:この研究の主な目的は、静脈性(IV)リドカイン療法を行った犬と行わなかった犬のプロ-および抗-炎症性バイオマーカー濃度の判定だった。2つ目の目的は、リドカインの副作用の評価だった。

方法:研究に35頭の犬を含めた。20頭はリドカインを投与(LIDO)(2mg/kgで開始、続いて24時間50μg/kg/minで持続点滴)し、15頭はリドカインを投与しなかった(NO-LIDO)。サイトカイン・インターロイキン(IL)-6、IL-7、IL-10、IL-15、IL-18、インターフェロンγ、ケラチノサイト走化性-様、単球走化性タンパク質、C-反応性タンパク(CRP)を、入院時(全ての治療介入前、T0)、術後すぐ(T1)、術後24時間目(T24)、48時間目(T48)に測定した。

結果:LUDO-、NO-LIDO群間に、いずれのサイトカイン濃度の有意差は見られなかった。NO-LIDO群に比べ、LIDO群の犬に有意に低いCRP濃度(中央値(範囲))がT24(97.5pg/mL(46.3-161.7) vs 127.9pg/mL(26.9-182.0);p=0.046)、T48(73.7pg/mL(18.4-169.4) vs 116.3pg/mL(71.4-176.8);p=0.002)で認められた。リドカインを投与された犬は、投与していない犬よりも有意な精神障害、食欲不振の期間延長、より長い入院期間を示した。

結論:48時間の研究期間中に、リドカインの投与はサイトカインの血漿濃度に影響を及ぼさなかったが、T24、T48で有意に低いCRP濃度を認めた。リドカインの潜在的な副作用は、その使用に関して注意深い意思決定が必要である。(Sato訳)
■4頭の犬の強磁性金属胃内異物のマグネットアシストによる内視鏡的除去
Magnet-assisted endoscopic removal of ferromagnetic metallic gastric foreign bodies in 4 dogs
J Vet Intern Med. 2024 May 18.
doi: 10.1111/jvim.17105. Online ahead of print.
Stephanie M Skinner , Chen Gilor , Alisa Saule Berg , Kristina M Pascutti , Kirsten L Cooke

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目的:犬の強磁性胃内異物(FBs)の呈する症状、診断的所見、マグネットアシストによる内視鏡除去方法を述べる

臨床症状:4頭の犬は鋭利な金属性FBsを摂取した。胃内FBsの存在は、腹部エックス線写真で確認した。

結果:3症例において、当初内視鏡による除去を試み、胃内の飲食物や液体のために不成功に終わった。Rothネット内に含めた磁石を内視鏡的に導入した。磁石と付着した目標物の除去に成功した。4番目の症例において、複数の金属製の物質が存在したため、磁石による除去が最も好都合な方法だと判断した。

臨床的関連:内視鏡技術は、視認化が難しい、あるいは複数の金属製FBsの除去に使用された。この方法の使用は、手術、あるいは鋭利な金属が消化管の通過に関係する合併症のリスクがなく、強磁性胃内FBsの除去を可能にする。(Sato訳)
■分離した消化管異物の内科治療を試みた犬の臨床的特徴と結果:68症例(2018-2023)
Clinical features and outcomes of dogs with attempted medical management for discrete gastrointestinal foreign material: 68 cases (2018-2023)
J Am Vet Med Assoc. 2024 May 31:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.01.0050. Online ahead of print.
Alyssa J Carrillo, Morgan A McCord, Vanna M Dickerson

目的:保存的管理に成功した、成功しなかった犬の消化管異物(GIFB)の臨床的特徴を回顧的に述べる

動物:2018年1月1日から2023年10月1日の間にTexas A&M Small Animal Teaching Hospitalを受診し、内科管理を試みたGIBFの飼い犬68頭

臨床症状:医療記録からシグナルメント、病歴、身体検査、血液検査、診断的画像検査、異物のタイプ、位置、治療および結果を再検討した。成功は結腸を通る異物の通過と定義し、失敗は手術、内視鏡あるいは安楽死を必要としたと定義した。

結果:内科管理は32症例で成功した(47%;95%CI、0.32-066)。胃拡張は全ての成功症例で解消した(n=5(100%);95%CI、0.32-2.3)が、いずれの失敗症例では解消しなかった(13(0%))。小腸拡張は全ての成功症例で解消した(n=13(100%);95%CI、0.53-1.7)が、ほとんどの失敗症例では進行した(9(75%);95%CI、0.34-1.4)。

成功群において、31のGIFBは非線状(96.9%;95%CI、0.66-1.4)で、1は線状(3.1%;95%CI、0.001-0.17)だった。

失敗群において、29のGIFBは非線状(80.6%;95%CI、0.54-1.16)で、7は線状(19.4%;95%CI、0.08-0.4)だった。

手術を選択した症例(n=29(42.7%);95%CI、0.29-0.61)のうち、3症例は切除と吻合を実施した(10.3%;95%CI、0.02-0.3)。切除と吻合を必要とした症例全て非線状GIFBだった。

臨床的関連:GIFBの保存的管理は、実行可能な治療オプションを提供し、症状、異物の位置、犬の血行動態の安定性、診断的画像検査、異物のタイプを基に考慮されるかもしれない。(Sato訳)
■766頭の犬の予防的切開性胃腹壁固定の結果と合併症(2009-2019)
Outcomes and complications of prophylactic incisional gastropexy in 766 dogs (2009-2019)
BMC Res Notes. 2023 Oct 31;16(1):300.
doi: 10.1186/s13104-023-06595-6.
Miranda de la Vega , S Christopher Ralphs

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目的:GDVのリスクのある犬種の犬において実施した予防的切開性胃腹壁固定に関係する結果と合併症を報告する

結果:766頭の犬が予防的切開性胃腹壁固定を行い、そのうち61頭は避妊あるいは去勢時に選択的に実施し、705頭は緊急腹部外科手術時に補助的に実施した。全ての犬の短期フォローアップはあり、446頭(58.2%)は長期フォローアップ期間中央値876日(範囲58-4450日)の追加のフォローアップが得られた。3頭(0.4%)のみが、血腹を起こす出血(2)および部分的裂開を伴う感染(1)を含む胃腹壁固定部位に関係する直接的な合併症があった。長期フォローアップで胃拡張(GD)、胃拡張捻転(GDV)、あるいは胃腹壁固定後の持続的GI症状を経験した犬はいなかった。

この研究の結果から、予防的切開性胃腹壁固定に直接関係する合併症は珍しく、血腹を起こす出血や部分的裂開を伴う感染に限られていることが分かった。一時的な術後のGI症状は起きるかもしれない。胃固定の位置の異常や腸の絞扼は遭遇しなかった。GDあるいはGDVの発症はなかった。(Sato訳)
■犬と猫の経鼻的食道vs経鼻的胃栄養チューブ設置に関する合併症率:無作為化対照試験
Complication rates associated with nasoesophageal versus nasogastric feeding tube placement in dogs and cats: a randomised controlled trial
J Small Anim Pract. 2024 May 1.
doi: 10.1111/jsap.13729. Online ahead of print.
F Camacho , K Humm

目的:気導への経鼻的腸管チューブの偶発的設置の割合を判定すること。正確なチューブ設置をチェックする方法の比較。経鼻的食道と経鼻的胃チューブの合併症率を比較すること。

素材と方法:経鼻的腸管栄養チューブを必要とする動物に、前向きに無作為に経鼻的食道あるいは経鼻的胃チューブを設置した。チューブの位置を評価するための多様な方法を、胸部エックス線像と比較した。設置や使用中の合併症を記録した。

結果:97頭の動物(犬82頭、猫15頭)を研究した。3症例(3.1%)において、チューブが気道に誤って設置された。エックス線写真と完全に一致した設置をチェックする方法はなかったが、経鼻的食道の86.2%の症例において、設置中の胸郭入口での陰圧の存在が、食道内のチューブの存在と一致した一方、カプノグラフィーが気管設置の確認に考慮できた。チューブ設置中の全体の合併症率は25.8%で、ほとんどが臨床的にマイナーな合併症と報告された。経鼻的食道および経鼻的胃群との間で、チューブがその場にある間の新たな逆流/嘔吐率あるいは合併症に有意差はなかった。

臨床的意義:経鼻的腸チューブの誤った設置は一般的ではないが、正確な経鼻的腸チューブ設置をチェックするエックス線写真に一致した代替検査は示されなかった。経鼻的食道あるいは経鼻的胃チューブの設置の選択は、臨床医の好みで左右されるべきで、飼い主に経鼻的腸チューブがその場にある間および設置中の可能性のある合併症について通告するべきである。(Sato訳)
■腹部を圧迫すると犬の催吐の成功率を改善する
Use of abdominal thrusts is associated with improved rates of successful emesis induction in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2024 Apr 12:1-4.
doi: 10.2460/javma.23.12.0681. Online ahead of print.
Trevor T Chan, Anthony L Gonzalez, Bridget M Lyons

目的:犬のアポモルヒネIV投与の相乗的方法として腹部をぐいっと押すことの、催吐の発生と発現速度に対する効果を評価する

動物:31頭の飼い犬

方法:担当医によりアポモルヒネのIV投与で嘔吐を誘発する犬を前向きに無作為に、アポモルヒネのIV投与後、動物看護師あるいは臨床医により腹部圧迫を行う犬と、身体的介入がない犬に振り分けた。収集したデータはシグナルメント、体重、催吐の理由、摂食疑いから受診までの時間、最終の食餌から受診までの時間、投与したアポモルヒネのmg数、アポモルヒネの投与から嘔吐までの時間が含まれた。

結果:催吐は腹部圧迫群で14/14頭(100%)が成功し、コントロール群では13/17頭(76.5%)の成功だった(P=.02)。催吐が成功した犬で、腹部圧迫群の嘔吐までの時間の中央値は90.5秒(範囲、36-348秒)で、コントロール群のそれは106秒(範囲、37-360秒)だった(P=.29)。

臨床的関連:腹部をぐいっと押すことで、アポモルヒネのIV投与後の犬の嘔吐の成功頻度は増加したが、嘔吐した犬の嘔吐の発現速度は短縮しなかった。催吐を指示された犬において、腹部を押すことは有益かもしれず、明らかな禁忌はない。(Sato訳)
■ロピニロールは犬の嘔吐の誘発および異物と毒性のある胃内容物の除去に対するアポモルヒネと同様の効果をもつ
Ropinirole has similar efficacy to apomorphine for induction of emesis and removal of foreign and toxic gastric material in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2023 Apr 18;1-7.
doi: 10.2460/javma.23.01.0027. Online ahead of print.
Natalie A Rosenstein, Justine A Johnson, Kevin S Kirchofer

目的:犬の催吐においてロピニロールとアポモルヒネの効果を評価する

動物:2021年8月から2022年2月までの異物(n=129)あるいは毒物(150)を食べたことが分からない、あるいは疑われる飼い犬279頭

方法:この非無作為化非対照臨床試験において、ロピニロール点眼液を、目標量3.75mg/m2で犬に点眼した。2回目は臨床医の判断を基に15分後に投与した。メトクロプラミドによる制吐は臨床医の判断を基に提供した。ロピニロールの効果の結果は、過去にアポモルヒネの効果を評価した文献と比較した。

結果:279頭中255頭(91.4%)はロピニロール投与後に嘔吐し、異物を食べた犬129頭中116頭(89.9%)と毒物を食べた150頭中139頭(92.7%)が含まれた。嘔吐の成功にグループ間の違いはなかった。ロピニロールの1回投与で、78.9%が嘔吐した。ロピニロールを2回投与した59頭で、79.7%が嘔吐した。全体で、74.2%の犬が、食べたことを予測される物質を全て嘔吐した。嘔吐までの時間の平均は11分で、50%の犬は7-18分以内に嘔吐した。副作用は17.0%の犬で観察され、自己制御できるものだった。

ロピニロールの嘔吐誘発はアポモルヒネよりも効果が少なく(ロピニロール91.4%、アポモルヒネ95.6%、P<.0001)、食べた物質を全て排出することは同等の効果だった(ロピニロール74.2%、アポモルヒネ75.6%、P=.245)。

臨床的関連:ロピニロール点眼液は、犬への使用について安全で効果的な催吐剤である。IVアポモルヒネと比べ、小さいが統計学的に有意な効果の減少が見られる。(Sato訳)
■内科救急サービスに来院した嘔吐している犬の診断検査の有用性
Utility of diagnostic tests in vomiting dogs presented to an internal medicine emergency service
Front Vet Sci. 2023 Feb 2;10:1063080.
doi: 10.3389/fvets.2023.1063080. eCollection 2023.
Bettina Holzmann , Melanie Werner , Stefan Unterer , René Dörfelt

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イントロダクション:嘔吐は救急サービスを受診する犬の一般的な症状の1つである。嘔吐は自己限定的、致命的な腸管外の症状、あるいは腸疾患の可能性がある。理にかなった診断は、基礎にある原因を調べるために実施すべきである。この研究の目的は、嘔吐している犬において診断検査、その犬の履歴との関連、身体検査結果の有用性を評価することだった。また、単純な嘔吐と複雑な嘔吐と鑑別するパラメーターを調査した。

方法:この前向き観察臨床研究において、嘔吐している99頭の飼育犬(ファーストオピニオンで受診)のデータを評価した。履歴、身体検査、臨床症状の持続期間、嘔吐の総回数、食欲、追加の臨床症状を記録した。全ての犬の標準化された診断的評価は、静脈血ガス解析、CBC、血清生化学プロフィール、犬膵リパーゼ、腹部エックス線、超音波、尿検査が含まれた。フォローアップは4-5日後に実施した。疾患と臨床経過の重症度を基に、“複雑ではない嘔吐”(UN)、あるいは“複雑な嘔吐”(COM)に分類した。嘔吐の原因を診断することに対する各検査の有用性を評価した。スピアマンの順位相関係数、カイ二乗、対応のないt、マン-ホイットニーU検定を使用した。統計学的有意はp≦0.05と定義した。

結果:99頭の犬のうち、34頭は複雑ではない疾患経過(UN)だった。60/99頭において診断が得られ、39/99頭において嘔吐の原因は不明なままだった。より長く臨床症状の経過を取る、食欲が低下していることは腹部超音波検査のより高い有用性に関係した。より悪い精神状態は、血液検査と腹部エックス線検査のより高い有用性と関係した。精神状態が損なわれている、あるいは下痢以外の臨床症状がある犬は、COM群となる可能性が高かった。

議論:この調査を基に、嘔吐のある犬に対する診断アプローチに関して一般的な推奨を提供できなかった。臨床症状として嘔吐のみで、良好な精神状態を呈する犬に対し、追加の検査は有益ではないかもしれず、それらの犬は対症療法のみで回復すると思われる。追加の診断検査は、下痢以外の追加の臨床症状がある犬で必要性を示すことができた。(Sato訳)
■上部消化管出血と重度貧血を起こした胃の過形成性ポリープの犬の1例
Gastric Hyperplastic Polyp Causing Upper Gastrointestinal Hemorrhage and Severe Anemia in a Dog
Vet Sci. 2022 Dec 7;9(12):680.
doi: 10.3390/vetsci9120680.
Kihoon Kim , Binwon Jun , Sangwoo Han , Daseul Kim , Hyungjun Kim , Hyosung Kim , Sunhee Do , Jaehwan Kim , Hwiyool Kim , Seunghwa Yang

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11歳の去勢済みオスのシーズが、元気消失とメレナで紹介されてきた。ヘマトクリット値は18.8%(正常範囲:36-56%)で重度の貧血を示した。腹部超音波検査により、胃の中に円形-卵円形のマスを認めた。CT検査で、幽門洞頭側の腔内マス(17x12x15mm)が明らかとなった。

飼い主からインフォームドコンセントが得られた後、試験的開腹に続き胃切除を行い、重度貧血に対する責任病変と思われる潰瘍化したマスを示した。マスの潰瘍化した表面に被毛の塊が固く付着していた。マスの完全切除後、貧血は自然に回復した。組織学的検査結果は、胃の過形成ポリープだった。6か月のフォローアップ時、犬は健康で正常なヘマトクリット値だった。

胃の過形成ポリープは、腫瘍様病変が粘膜表面から起こり、腔内に突き出している。それらは胃の全ての部分で出現する可能性があり、通常は胃の内視鏡検査あるいは剖検で偶然発見される。臨床症状には慢性の潜在失血、腹部痛、胃の通路閉塞が含まれる。

胃のポリープを原因とする急性の失血性貧血は、人医でまれに報告されている。著者らの知るところでは、これは1頭の犬の急性失血を原因とする重度貧血を引き起こした犬過形成性ポリープを述べた最初の報告である。(Sato訳)
■犬の消化管異物の内視鏡および外科的除去:72症例の分析
Endoscopic and Surgical Removal of Gastrointestinal Foreign Bodies in Dogs: An Analysis of 72 Cases
Animals (Basel). 2022 May 27;12(11):1376.
doi: 10.3390/ani12111376.
Cristina Di Palma , Maria Pia Pasolini , Luigi Navas , Andrea Campanile , Francesco Lamagna , Gerardo Fatone , Fabiana Micieli , Ciro Esposito , Daniela Donnarumma , Valeria Uccello , Barbara Lamagna

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救急獣医診療において、消化管異物(GFB)除去は、内視鏡や手術のように異なるテクニックで実施される一般的な処置である。

この回顧的多施設臨床研究の目的は、一般的な部位および回収した物体のタイプを報告するとともに、GFB除去に対する手術あるいは内視鏡処置後の犬において、臨床因子および結果を調査することだった。

2017年9月から2019年9月までに、獣医教育病院あるいは3つの異なる動物病院で治療されたGFBと診断された犬の記録を調査した。各症例から入手したデータには、犬種、年齢、受診時の臨床症状、臨床症状の持続時間、GFBのタイプと部位、処置、入院期間、結果を含めた。

72頭の犬を研究に登録した。オスが42頭(58%)、メスが30頭(42%)だった。年齢中央値は36か月(範囲:3か月から8歳)だった。内視鏡による回収は、GFBsの56%で実施され(胃あるいは十二指腸に存在)、44%の犬は手術を行った。

FBのタイプは多岐にわたっていた:子供のおもちゃ(14%)、金属物質/コイン(13%)、布(13%)、靴下(8%)、ボール(8%)、プラスチック材(8%)、桃の種(7%)、釣り針(6%)、縫い針(4%)、髪留め(4%)、おしゃぶり(3%)、植物物質(3%)、その他(9%)。さらに、FBsは、鋭利なもの(13%、n=9)、とんがったもの(33%、n=24)、鈍性のもの(26%、n=19)、糸状(28%、n=20)に分類された。この研究において、FBsの68%は胃の中にあり、25%は腸管(50%は十二指腸、28%は空腸、22%は回腸)、7%は胃と小腸の両方にあった。

GFBのタイプは、年齢、部位あるいは犬種と有意な関係はなかった。GFBのタイプと性別には有意な関係があった:その犬がオスならば、糸状GFBsを摂食の確率38%があった。胃の内視鏡あるいは外科的除去で治療した症例の生存率は100%、腸切開で治療した症例は94%、腸切除が必要だった症例で33%だった。腸切除および複数の手術部位は、悪い結果と関係した。24時間以上の嘔吐があるときは有意に死亡と関係した。(Sato訳)
■犬の食道及び胃の骨の異物の結果
Outcomes of esophageal and gastric bone foreign bodies in dogs
J Vet Intern Med. 2022 Feb 14.
doi: 10.1111/jvim.16383. Online ahead of print.
Nanelle R Barash , Erin Lashnits , Zachary T Kern , Mary Katherine Tolbert , Katharine F Lunn

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背景:骨性異物は小動物診療で一般的にみられる。食道骨性異物(E-bFBs)は除去する正当な理由があるが、胃内骨性異物はそうではないかもしれない。

目的:食道あるいは胃内骨性異物の犬に対する治療と結果を述べる

動物:食道(n=45)あるいは胃内(n=84)骨性異物のある犬129頭

方法:医療記録の回顧的再検討

結果:E-bFBsの犬は、胃内骨性異物の犬よりも若く(食道内の年齢中央値、4歳(IQR2-8);胃内の年齢中央値、6歳(IQR3-10);P=.03)、体重と比較した骨の横断面積がより大きかった(食道内の中央値、98.21mm2/kg(IQR48.25-142.6);胃内の中央値、28.6mm2/kg(IQR17.25-64.28);P<.001)。45頭のうち42頭の食道内異物は非外科的に解決し、3頭は食道切開で解決した。食道糜爛は、遠位の食道でのひっかかり(OR12.88、(95%CI、31.95-129.29)、P=.01)、およびより長い持続時間(OR18.82(95%CI、2.22-273.97)、P=.01)で起こる確率が高かった。84頭中62頭の胃内骨性異物はそのまま放置した。内視鏡による除去は22頭中20頭の試行で成功した(91%;95%CI、70-99)。

結論と臨床的重要性:全てのE-bFBsは胃の中に押し込む、内視鏡的除去、食道切開で除去されたが、ほとんどの胃内骨性異物は溶解のためそのまま放置し、合併症の報告はない。E-bFBsの胃内への押し込みは、口からの除去が実行できない場合考慮すべきで、より大きな骨でさえも溶解を考慮できる。(Sato訳)
■168頭の犬の胃十二指腸潰瘍あるいは糜爛に関係する医療状況:2008-2018
Medical conditions associated with gastroduodenal ulceration or erosion in 168 dogs: 2008-2018
J Vet Intern Med. 2021 Oct 1.
doi: 10.1111/jvim.16275. Online ahead of print.
Elena Pavlova , Randi M Gold , M Katherine Tolbert , Jonathan A Lidbury

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背景:多くの医療状況は、犬の胃十二指腸潰瘍あるいは糜爛(GUE)の原因と考えられる。しかし、犬のそれらの状況の多くとGUEの関連に対するエビデンスが欠けている。

目的:犬のGUEに関係する医療状況を確認する

動物:2008年1月から2018年9月までに検死で確認したGUEのエビデンスがない無作為に選別したコントロール犬168頭と、GUEの168頭

方法:犬のシグナルメント、血中尿素窒素(BUN)と血清クレアチニン濃度、直近に投与された潰瘍誘発薬、検死所見を記録した。それらの所見とGUEの存在との関連を、一変量および多変量解析で評価した。

結果:最終的な多変量モデルにおいて、以下のファクターがGUEと関連した:非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)投与(オッズ比(OR)、6.3;95%CI、2.3-17.4;P=.0004)、グルココルチコイド投与(OR、3.0;95%CI、1.5-5.9;P=.001)、消化管腫瘍(OR、13.5;95%CI、1.7-108.0;P=.01)、胃腸の機械的疾患(異物、胃拡張、および捻転;OR、4.8;95%CI、1.2-19.7;P=.03)。また、作業犬種の犬は雑種と比べGUEの傾向があった(OR、2.8;95%CI、1.1-7.4;P=.04)。評価した他の推定上のリスクファクターの役割を支持あるいは否定するには、入手した臨床データでは不十分だった。

結論と臨床的重要性:NSAIDあるいはグルココルチコイドの投与、消化管腫瘍あるいは機械的疾患が犬のGUEと関係した。GUEに対する作業犬種の犬の潜在的素因は今後の調査が必要である。(Sato訳)
■健康犬の胃内pHに対する10mgオメプラゾールカプセルの効果に対する前向き無作為化盲検プラセボ対照交差研究
A prospective, randomized, masked, placebo-controlled crossover study for the effect of 10 mg omeprazole capsules on gastric pH in healthy dogs
J Vet Intern Med. 2021 Feb 15.
doi: 10.1111/jvim.16061. Online ahead of print.
Ann Gaier , Josh Price , Louise Grubb , Stuart Fitzgerald , M Katherine Tolbert

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背景:腸溶性オメプラゾールカプセルは、犬の胃酸抑制に一般に使用される。しかし、この剤型の効果は犬の臨床的使用に対して評価されていない。

仮説/目的:犬の胃内pH上昇に対しFDA認可を受けている10mg PO オメプラゾールカプセル(TriviumVet)の効果を評価する。著者らは、カプセルのオメプラゾールはプラセボよりも有意に胃のpHを上昇させ、食道炎や十二指腸潰瘍の治療に対するヒトから推定される目標pHに到達するだろうと仮説を立てた。

動物:6頭の健康な研究犬

方法:無作為化盲検2方向交差研究。犬に1日2回5日間、オメプラゾール0.5-1.0mg/kgあるいはプラセボ(空のゼラチンカプセル)を経口投与した。2日目と5日目の胃内のpHを記録した。平均pHおよび胃内pH≧3あるいは≧4の平均比率時間(MPT)を治療群間および治療群内で比較した。

結果:オメプラゾール投与犬のMPT±SD胃内pH≧3(91.2%±11.0%)、≧4(86.9%±13.7%)および平均±SDpH(5.4±0.8)は、プラセボ投与犬(それぞれ、19.7%±15.5%、28.3%±20.7%、2.4±1.0)よりも有意に高かった(すべてP<.001)。

結論と臨床的重要性:この研究で評価した10mg腸溶性オメプラゾールカプセルの経口投与は、健康犬において効果的な胃酸抑制剤である。(Sato訳)
■犬の胃腸の透過性および炎症に対するカルプロフェンとオメプラゾール投与の影響
The effect of combined carprofen and omeprazole administration on gastrointestinal permeability and inflammation in dogs
J Vet Intern Med. 2020 Sep 7.
doi: 10.1111/jvim.15897. Online ahead of print.
Susan M Jones , Ann Gaier , Hiroko Enomoto , Patricia Ishii , Rachel Pilla , Josh Price , Jan Suchodolski , Joerg M Steiner , Mark G Papich , Kristen Messenger , M Katherine Tolbert

背景:消化管(GI)傷害のリスク低減する予防措置として、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs;例えばカルプロフェン)とプロトンポンプ阻害剤(例えばオメプラゾール)を併用することが多い。しかし、この診療を支持するエビデンスは弱く、dysbiosisや炎症を悪化させるかもしれない。

仮説/目的:犬に対し、カルプロフェン単独あるいはオメプラゾールと併用投与の効果を評価すること。著者らは無処置あるいはカルプロフェン単独と比較して、オメプラゾールとカルプロフェンの併用投与は有意にGI透過性およびdysbiosis指数(DI)を増加させるだろうと仮説を立てた。

動物:6頭の健康なビーグル成犬

方法:前向き3-期間構成で、血清リポ多糖類(LPS)濃度、血漿イオヘキソール濃度、糞便のDI、糞中カルプロテクチン濃度により、GI透過性および炎症を評価した。最初の7日間は、介入なし(基礎)の期間とした。2番目の期間は、犬にカルプロフェン4mg/kg24時間毎PO7日間投与した。3番目の期間は、カルプロフェン4mg/kg24時間毎とオメプラゾール1mg/kg12時間毎PO7日間投与した。消化管の透過性検査は、各期間の最後に実施した。反復測定混合モデル分散分析とTukey-Kramer事後テストでデータを解析した(P<0.05)。

結果:血清LPSおよび血漿イオヘキソール濃度に、処置間の違いはなかった。糞中カルプロテクチン濃度は、処置間で違いがあった(P=0.03)。受けた処置を基にDIは時間と共に変化した(P=0.03)。オメプラゾールとカルプロフェンの併用投与は、基礎およびカルプロフェン単独と比べ、糞中カルプロテクチン濃度とDIを増加させた。

結論と臨床的重要性:GI出血に対し他のリスクファクターがない健康犬に対し、予防的オメプラゾールをカルプロフェンとともに投与する場合、糞のdysbiosisを誘発し、腸管炎症マーカーを増加させる。
■犬の胃拡張捻転の即時減圧、時間をおいて外科的治療の段階法の評価
Evaluation of a staged technique of immediate decompressive and delayed surgical treatment for gastric dilatation-volvulus in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2021 Jan 1;258(1):72-79.
doi: 10.2460/javma.258.1.72.
Russell S White, Angela J Sartor, Philip J Bergman

目的:犬の胃拡張捻転(GDV)に対する即時の減圧、時間をおいて外科的治療という段階法を評価する

動物:2012年から2016年の間にGDVを確認した41頭の飼育犬

方法:犬のシグナルメント、診断テスト結果、胃の洗浄所見、外科的所見、短期生存状況に関する医療記録データを集めた。全ての犬に対し、胃の減圧は口-胃挿管により実施し、同じ麻酔処置で胃洗浄を行った。このステージが成功した場合、その後の矯正手術(開腹と胃固定)は遅らせ、2度目の麻酔処置で実施した。

結果:6頭は減圧と安定化に対する麻酔処置中に矯正手術を実施し、そのうち1頭は胃が壊死していた。35頭の犬は来院から平均22.3時間(範囲、5.25-69.75時間)後の2回目の麻酔処置で矯正手術を行い、その最中に2頭で胃の壊死を確認した。遅らせて手術をした犬の死亡率は9%(3/35頭)だった。来院から手術までの時間は、胃の健康状態の外科医の主観的評価、あるいは死亡率と関係しなかった。胃の壊死の術中確認は非生存と関係した。単回血漿乳酸濃度および連続乳酸濃度の比率変化は、術中の胃の健康状態および死亡率と関係した。

結論と臨床的関連:遅らせて手術した犬に観察された死亡率は、他のGDV治療法で報告された率と同等だった。矯正手術を遅らせることは、確信がある犬に対して可能であるが、注意深い症例選択が重要と思われ、信頼できる術前症例選択基準が確認されていないことを結果は示唆した。犬のGDVの即時外科的治療に対する段階法の潜在的リスクや利点をさらに調査する追加研究が必要である。(Sato訳)
■低アルブミン血症の犬の推定胃壁浮腫の超音波検査の特徴と有病率
Ultrasonographic Features and Prevalence of Presumed Gastric Wall Edema in Dogs With Hypoalbuminemia
J Vet Intern Med. 2020 Jul 1.
doi: 10.1111/jvim.15829. Online ahead of print.
Masahiro Murakami , Hock Gan Heng , Chee Kin Lim , Nolie K Parnell , Mario Sola

背景:胃壁浮腫の超音波検査の特徴は、低アルブミン血症の犬で報告されていない

目的:低アルブミン血症の犬において、胃壁の肥厚の有病率と超音波検査の特徴を述べることと、血清アルブミン濃度との相関性を分析すること

動物:低アルブミン血症(<2.3g/dL)の診断を受け、腹部超音波検査を行っている42頭の犬

方法:2018年から2019年にかけて医療記録の回顧的検索を実施した。超音波研究を再調査し、>5mmを胃壁肥厚と考えた。肥厚、層状所見、エコー源性、エコーテクスチャー、病変の分布のような胃壁変化と腹水の有無を記録した。連続超音波検査と病理組織所見が得られた場合は記録した。胃壁肥厚のある犬とない犬の平均血清アルブミン濃度を比較した。

結果:低アルブミン血症の犬の胃壁肥厚の有病率は21.4%(95%CI、7.4-35.4%)だった。平均胃壁肥厚は、10.0±2.0mmだった。保たれた粘膜層と粘膜下層の肥厚が全9頭で観察された。5頭の犬は、肥厚した粘膜下層に3層所見があった。散在性の壁肥厚が6頭の犬で認められた。全9頭に腹水があった。胃壁肥厚のその後の変化が3頭で観察された(範囲4-70日)。胃壁浮腫は、検死により2頭の犬で病理組織学的に確認された。その犬の血清アルブミン濃度と胃壁肥厚に相関はなかった。

結論と臨床的重要性:胃壁浮腫は低アルブミン血症の犬で一般的な所見であると示された。しかし、血清アルブミン濃度は胃壁肥厚と相関しなかった。(Sato訳)
■肥満の治療に胃内バルーンを使用した犬の一例
Use of an intragastric balloon for management of obesity in a dog
J Small Anim Pract. 2020 Oct 15.
doi: 10.1111/jsap.13247. Online ahead of print.
B Vedrine , D Fernandes , F Gérard , L-A Fribourg-Blanc

ヒトの肥満治療で種々の肥満手術は珍しくないが、獣医療でそれらの方法は一般的に使用されていない。ヒトで使用される1つの技術は、内視鏡による胃内バルーンの設置である。胃内バルーンは、胃の用量を取り、満腹感を与え、食物摂取を減らす。

長期甲状腺機能低下症の57.6kg、9歳の避妊済みラブラドール犬が、過体重管理のため来院した。レボチロキシン投与と肥満のための特別栄養の食餌管理の組み合わせで、過体重を管理できなかった。

胃の容量を減らすため、胃内バルーンを胃に内視鏡により設置し、効果的な減量を行えた。設置から198日目、胃内バルーン除去時の体重は40.9kgまで減少した。

大規模サンプル、長期フォローアップを含む追加調査が、この処置の安全性と効果を確かめるために必要である。(Sato訳)
■胃拡張捻転の犬45頭の血漿乳酸濃度の術前後評価
Pre- and post-surgical evaluation of plasma lactate concentration in 45 dogs with gastric dilatation-volvulus: A preliminary study.
Heliyon. 2020 Jan 28;6(1):e03307. doi: 10.1016/j.heliyon.2020.e03307. eCollection 2020 Jan.
Grassato L, Spinella G, Musella V, Giunti M, Vilar JM, Valentini S.

この予備研究は、胃拡張捻転(GDV)に罹患した犬の胃の壊死と臨床結果の予測および予後因子として血漿乳酸濃度(PLC)とそのクリアランスの信頼度の評価に貢献するために計画した。

この研究の主要目的は、(1)GDVの犬の来院時(T0)のPLCの予後的信頼度を評価すること、(2)獣医文献のデータと考察を入手して比較すること、(3)予測因子として術後24時間(T24)と48時間(T48)のPLC値の潜在的妥当性を紹介することだった。

GDVの犬を回顧的に評価した。T0、T24、T48のPLCを記録し、胃の顕微鏡的壊死の有無および結果と相関させた。

45頭の犬が組み込み基準に合った。胃壁に壊死がある、またはない犬において、最初のPLCの平均値に有意差は見られず、また生存と非生存犬の間に有意差はなかった;それらの値は胃の壊死あるいは死亡のより高いリスクと関係なかった。T24とT48で、壊死と非壊死、生存と非生存カテゴリーに有意差は記録されなかった。来院からT24までで、血漿乳酸濃度クリアランス中央値が50%以上の犬は、両群(壊死あり、なし)で確認され、このパラメーターは生存して退院する犬を確認できなかった。

結論として、ここで示された結果は、GDVの犬のこの集団においてT0のPLCおよびT24のそのクリアランスで予後因子として見いだせなかった。(Sato訳)
■超音波検査で評価した健康犬の胃腸の運動性に対する絶食の影響
The effect of fasting on gastrointestinal motility in healthy dogs as assessed by sonography.
J Vet Emerg Crit Care. November 2017;27(6):645-650.
Jillian J Sanderson , Søren R Boysen , Jantina M McMurray , Albert Lee , Jenefer R Stillion

目的:2D超音波により検出する健康犬の胃腸(gastrointestinal)運動に対する絶食の影響を評価する

計画:前向き観察研究

場所:大学分散型獣医療研修共同体

動物:10頭の健康な飼育犬

処置:犬を通常の給餌後24時間にわたり絶食した。この最初の給餌後と24時間の絶食期間中、T=30分、6時間、12時間、24時間で胃、十二指腸、空回腸の超音波によるGI収縮を検出する2D超音波検査を実施した。それから犬には絶食24時間後に2度目の食餌を与え、30分後(T=24.5h)に超音波検査を繰り返した。各部位は各タイムポイントで2回スキャンした。各スキャンは3分間行った。結果の平均を算出し、それを3で割ることで1分間の収縮回数を割り出した。検査した各部位に対し、各時間の統計学的差を検出するためOne-way repeated measures ANOVA with post hoc Tukey's comparison testを使用した。

測定値と主要結果:T12およびT24の胃、十二指腸、空回腸の平均収縮率は、T30、T3、T6、T24.5の収縮率よりも有意に低かった(P<0.05)。T30、T3、T6、T24.5の胃、十二指腸、空回腸の平均収縮率は、互いに統計学的違いはなかった。

結論:この研究の結果は、2D超音波検査が犬のGI運動の評価に使用でき、絶食から12-24時間後の胃、十二指腸、空回腸のGI収縮率は、有意に低下することを示す。(Sato訳)
■催吐剤として3%過酸化水素の投与による1頭の猫の壊死性潰瘍性出血性胃炎
Necroulcerative hemorrhagic gastritis in a cat secondary to the administration of 3% hydrogen peroxide as an emetic agent.
J Vet Emerg Crit Care. September 2017;27(5):605-608.
Teresa D Obr , Joanna K Fry , Justine A Lee , Heidi A Hottinger

目的:催吐剤として3%過酸化水素を投与したことにより起きた猫の壊死性潰瘍性胃炎の1症例を述べる

症例概要:10歳の去勢済みオスのイエネコ短毛種が、発泡材のかけらを食べて24時間以内の吐血を評価した。飼育者は家で催吐を試み、3%過酸化水素を0.5-1.0テーブルスプーン(7.5-15ml)で2回投与していた;催吐は成功し、異物を吐き出した。長引く嘔吐と吐血により、その後追加の診断検査と治療のため救急病院を受診した。来院時の最初の血液検査は正常で、腹部の高度画像検査を実施した。試験的開腹で消化管に異物は認められなかったが、胃粘膜の約60%に重度潰瘍が噴門の周りと、胃底から胃体にかけ、そこから小弯に広がっていた。重度潰瘍により予後不良だと考え、術中に安楽死を行った。

胃の病理組織は、重度融合性壊死潰瘍性および出血性pleocellular胃炎に一致し、この症例では第一催吐剤として使用した3%過酸化水素の投与による二次的なものと推察した。

新規あるいは独特の情報:猫への3%過酸化水素の経口投与は、起こりうる続発症として壊死性潰瘍性胃炎を起こす可能性がある。犬で過酸化水素は安全な催吐剤と考えられる一方で、猫への使用は推奨されない。結果として、猫への催吐剤の使用は、獣医療で制限し、αアドレナリン作用性アゴニストのようなより安全な催吐代替薬を使用するべきである。(Sato訳)
■猫ではファモチジンの経口投与の頻度は胃内pHへ長期的に影響する
The frequency of oral famotidine administration influences its effect on gastric pH in cats over time.
J Vet Intern Med. 2019 Mar;33(2):544-550. doi: 10.1111/jvim.15430.
Golly E, Odunayo A, Daves M, Vose J, Price J, Hecht S, Steiner JM, Hillsman Tolbert MK.

【背景】ファモチジンは一般的に猫に投与されている。 長期のファモチジン投与は、ヒト、イヌ、およびウシにおいて効力が減少することが知られているが、ネコにおける長期的な影響は知られていない。

【目的】ネコの胃内pHおよび血清ガストリン濃度に対する、1日2回(グループ1)および1日2回の投与を2日に1回(グループ2)行う、2つのファモチジン経口投与の方法における影響を比較すること。 本研究者らは、胃内pHに対する効果の減少は、グループ1では長期的に認められるが、グループ2では認められないと仮定した。

【動物】16例の健康な猫

【方法】無作為化、2因子、反復測定、クロスオーバーデザイン。ネコには14日間連続で0.5-1.24 mg/kg(中央値、0.87 mg/kg)のファモチジンを1日2回、または2日に1回、1日2回投与した。 胃内pHのモニタリングを行い、治療開始1-3日目および11-13日目に胃内pHを記録した。 平均pHおよび平均パーセンテージ時間(MPT)胃内pHが3以上および4以下であることを分散分析によって治療群間および治療群内で比較した。

【結果】時間相互作用による治療群の有意性が、平均胃内pH、MPT胃内pH≧3および4について認められた(それぞれP=0.009、P=0.02、P=0.005)。 相互作用事後検定により、グループ1では、胃内pHの平均値(P = .001)、MPT≧3(P = .001)、およびMPT≧4(P = .001)の有意な低下が確認されたのに対し、グループ2では認められなかった。

【結論と臨床的重要性】経口ファモチジン投与は、健康なネコにおいて毎日2回投与されたとき、胃内pHに対する効果の減少が認められる。(Dr.Masa訳)
■33頭の動物の食道及び胃内釣り針異物の内視鏡および外科的除去
Endoscopic and surgical removal of oesophageal and gastric fishhook foreign bodies in 33 animals.
Language: English
J Small Anim Pract. January 2018;59(1):45-49.
M Binvel , L Poujol , C Peyron , A Dunie-Merigot , F Bernardin

目的:釣り針異物に関する部位、回収、手術頻度および合併症を述べる

素材と方法:2010年から2016年の間に釣り針を飲んだ後に受診した猫と犬の医療記録の回顧的評価

結果:合計33症例(猫2頭、犬31頭)を組み入れた。一般的な部位は近位食道(12/33(36%))と胃(11/33(33%))だった。内視鏡による回収は33頭中27頭(82%)で成功した;食道穿孔は唯一記録された合併症で、33頭中6頭(18%)で発生した。手術は6頭(18%)で実施され、早期合併症の記録はなかった。生存率は100%だった。

臨床意義:飲んだ釣り針の内視鏡による除去の成功率は高い。この研究で、食道穿孔の症例あるいは外科手術を必要とした症例でも、生存して退院する割合は100%だった。(Sato訳)
■胃-食道逆流疾患の犬20例(2012-2014)
Gastro-oesophageal reflux disease in 20 dogs (2012 to 2014).
Language: English
J Small Anim Pract. May 2017;58(5):276-283.
M Muenster , A Hoerauf , M Vieth

目的:犬の胃食道逆流疾患の臨床的特徴を述べる

素材と方法:我々の医療記録の検索から食道疾患、他の食道障害はなく過剰再生性食道症による臨床症状が見られる20頭の犬。その犬の臨床、内視鏡、組織所見を解析した。

結果:胃食道逆流疾患の3年間の発生率は、我々の紹介されてきた犬の集団の0.9%だった。主な臨床症状は、逆流、不快感あるいは疼痛(各、20/20頭)、流涎(18/20頭)だった。食道鏡検査で粘膜病変は無い(5/20頭)、あるいは最小(13/20頭)だった。食道粘膜バイオプシー標本において、基底細胞層(13/20頭)、間質乳頭(14/20頭)、全体の上皮(9/20頭)の過形成変化があった。11頭の犬はオメプラゾールあるいはパントプラゾールの投与を受け、8頭の犬は逆流と流涎が改善し、3-6週以内にそれらの犬のうち6頭の疼痛が減少した。

臨床意義:我々の所見は、犬の胃食道逆流疾患は従来思われていたよりも一般的な臨床問題であると示唆される。(Sato訳)
■猫の慢性嘔吐:病因と診断検査
Chronic Vomiting in Cats: Etiology and Diagnostic Testing.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Sep-Oct;52(5):269-76.
Shannon Ryan Hauck , Kelly Gisselman , Amy Cordner , Angela Gasser Nicholson

猫の慢性嘔吐は動物診療でよく見られる問題である。嘔吐を呈する猫が来た時の最初のステップは、嘔吐と吐出、嚥下困難を鑑別することである。猫の慢性嘔吐には種々の原因があり、それゆえ詳細な包括的な病歴、系統だった診断アプローチが嘔吐の原因を判定し、最も最適な治療プランを行う重要なステップである。

猫の慢性嘔吐の一般的な原因は、炎症性腸疾患、食物アレルギー、胃腸運動障害、腫瘍や腎疾患、肝胆道疾患、甲状腺機能亢進症のような消化管外疾患が含まれると思われる。(Sato訳)
■複数の磁気性消化管異物の犬の1例
Multiple magnetic gastrointestinal foreign bodies in a dog.
J Am Vet Med Assoc. March 1, 2015;246(5):537-9.
Mark S Garneau; Robert J McCarthy

症例記述:3歳の去勢済みオスのヨークシャーテリアが、磁気性のdesk toyを飲み込んだ疑いの後、3日にわたる嘔吐、食欲不振、元気消失を理由に紹介されてきた。紹介元獣医師による24時間前に撮られたエックス線写真に、複数の金属製の胃内異物が認められた。

臨床所見:身体検査において、中程度の呼吸困難、腹部頭側の疼痛症状、低体温、頻脈の所見が得られた。再度エックス線検査において中程度の胸水、食道遠位と胃の噴門に線状リングを形成するいくつかの丸い金属の異物の存在を確認した。

治療と結果:犬が次第に呼吸困難、頻脈、低血圧となってきた時点で内視鏡検査を実施した。胸腔穿刺を実施し、大量の化膿性滲出液を左の半胸郭から除去した。胸腔、腹腔の探査的手術を実施し、磁気性異物を除去し、食道と胃の穿孔をデブリードし閉鎖した。その犬は術後48時間で急性心停止後死亡した。

臨床関連:複数の磁気性異物の摂取は消化管の穿孔、捻転、閉塞のリスクを高くする。そのような症例は迅速な外科的介入が推奨され、この報告の犬も結果が改善した可能性は高いだろう。(Sato訳)
■犬の催吐剤としてトラネキサム酸の効果と安全性
Efficacy and safety of tranexamic acid as an emetic in dogs.
Am J Vet Res. December 2014;75(12):1099-103.
Hitoshi Kakiuchi; Asako Kawarai-Shimamura; Yoko Fujii; Takuma Aoki; Masaki Yoshiike; Hayato Arai; Atsushi Nakamura; Kensuke Orito

目的:犬のトラネキサム酸誘発性嘔吐の用量依存性とトラネキサム酸の抗線維素溶解効果の時間経過を調べる。

動物:10頭のビーグル

方法:用量を段階的にあげていく実験において、嘔吐するまで5分間隔でトラネキサム酸の用量(10、20、30mg/kg、IV)を上げていき観察した。別の単一投与の実験で、嘔吐するまで1週間間隔で投与するトラネキサム酸の用量(20、30、40、50mg/kg、IV)を上げていき観察した。両実験で、嘔吐発現までの時間、嘔吐の回数を測定した。凝固実験で、トラネキサム酸50mg/kgをボーラス1回投与し、投与1時間前と投与後20分、3時間、24時間目に採血した。トラネキサム酸の抗線維素溶解効果を回転性トロンボエラストグラフィー変法で評価した。

結果:トラネキサム酸は用量依存で嘔吐を誘発した。嘔吐の頻度は2回以下で、嘔吐は投与から250秒以内に終わった。トラネキサム酸の抗線維素溶解効果は投与前の測定と比較して、投与後20分で有意に高かったが、24時間で違いはなかった。どの実験でも副作用は観察されなかった。

結論と臨床との関わり:トラネキサム酸のIV投与は用量依存的に嘔吐を誘発した。トラネキサム酸の抗線維素溶解効果は時間依存的に低下し、投与から24時間以内に解消した。種々の犬種と年齢の犬においてトラネキサム酸の嘔吐と他の副作用を調査する追加研究が求められる。(Sato訳)
■犬の巨大肥厚性胃炎を部分的胃切除で治療した成功例
Canine giant hypertrophic gastritis treated successfully with partial gastrectomy.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Jan-Feb;50(1):62-6.
Denty P Vaughn; Jason Syrcle; Jim Cooley

4歳去勢済みオスのジャックラッセルテリアが2か月にわたる嘔吐、食欲不振、体重減少を呈した。腹部エックス線検査と超音波検査で、胃の排出障害の診断が示された。回復と胃切開で、胃体背側の粘膜から起こった大きく細い底部のマスが胃腔を占拠し、幽門から十二指腸に突き出ているのを認めた。部分的胃切除を実施し、肉眼で正常な組織の1cmマージンを取ってマスを切除した。切除組織の病理組織検査で巨大肥厚性胃炎と診断された。

巨大肥厚性胃炎は犬であまり診断される疾患ではなく、巨大な胃のひだ、低アルブミン血症、粘膜肥厚を特徴とする。長期に治療の成功例は今まで報告がない。

ここで述べた症例において、胃の病変組織の外科的切除により臨床症状の完全な解消が得られた。手術から12か月後、嘔吐も体重減少の再発もなく、犬は臨床的に正常だった。(Sato訳)
■犬の胃拡張-捻転と過去の脾摘との関連:453症例(2004-2009)
Association between previous splenectomy and gastric dilatation-volvulus in dogs: 453 cases (2004-2009).
J Am Vet Med Assoc. May 15, 2013;242(10):1381-4.
Angela J Sartor; Adrienne M Bentley; Dorothy C Brown

目的:犬の過去に行った脾摘と胃拡張捻転(GDV)の関係を調べる

デザイン:多施設回顧的症例-コントロール研究

動物:外科的にGDVを治療した犬151頭と過去にGDVを起こしたことがないコントロール犬302頭

方法:試験的回復あるいは腹部超音波検査で評価した犬の電子カルテを検索し、GDVの犬とGDV以外の犬(コントロール犬)を確認した。GDVの各犬と年齢、体重、性別、不妊状況、犬種に合わせたコントロール犬を2頭用意した。GDVとコントロール犬に関し、脾臓の有無のデータを集めた。条件付きロジスティック回帰分析で過去の脾摘とGDVの関係を調査した。

結果:GDV群の6頭(4%)とコントロール群の3頭(1%)が過去に脾摘を行っていた。この犬の集団で、過去に脾摘を行った犬におけるGDVの確率は、過去に脾摘を行なっていない犬の5.3倍だった(95%信頼区間、1.1-26.8)。

結論と臨床関連:この研究の犬に対し、過去に脾摘を行った犬のGDVの確率増加が見られた。特に他のGDVに対するリスクファクターが存在するとき、脾摘を行う犬において予防的胃固定が考えられるかもしれない。(Sato訳)
■胃拡張-捻転に対するリスクファクターとして脾臓摘出の評価
Evaluation of splenectomy as a risk factor for gastric dilatation-volvulus.
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(4):461-6.
Andrew M Grange; William Clough; Sue A Casale

目的:腸切開を行った犬のコントロール群と比較して、脾摘を行っている犬は胃拡張-捻転(GDV)のリスクが増加したかどうかを評価した

構成:後ろ向き症例-コントロール研究

動物:脾捻転以外の理由で脾摘を行った犬219頭と、胃固定を行わず腸切開を行った犬47頭(コントロール)

方法:医療記録からシグナルメント、手術の日付、手術および麻酔時間、脾摘の理由、病理組織所見(可能ならば)、胃固定を行ったかどうか、追跡調査期間、死亡日時(可能ならば)に関する情報を検討した。GDVの発生を含む追跡調査の情報は、医療記録の調査およびオーナーへのアンケートで入手した。

結果:脾摘の理由は、脾臓腫瘍、非腫瘍性のマス、梗塞、外傷性損傷、異物肉芽腫への癒着などだった。手術に続くGDVの発生は、脾摘(14/172(8.1%))とコントロール群(3/47(6.4%))の間で有意差がなかった。17頭の罹患犬で術後からGDV発生までの期間中央値は352日(範囲、12-2368日)だった。脾摘を行った犬の中で、去勢をしていないオス(4/16)は、去勢しているオス、避妊をしていないあるいは避妊しているメス(10/156)よりも有意にGDVの発生率が高かった。去勢をしていないオスのGDVの発生率に関してグループ間で差がなかった。

結論と臨床関連:結果は、脾摘を行うと同時に、予防的な胃固定をルーチンに使用することの推奨を支持しなかった。他の患者特異リスクファクターをこの方法を推奨する前に調査すべきである。(Sato訳)
■オメプラゾール投与前、投与中、投与後の健康な犬における上部消化管内視鏡およびバイオプシー後の菌血症の発生率
Incidence of bacteremia following upper gastrointestinal endoscopy and biopsy in healthy dogs before, during, and after treatment with omeprazole.
Am J Vet Res. February 2013;74(2):239-42.
Katherine R Jones; Carol W Maddox; Marcella D Ridgway; Stuart C Clark-Price; Olivier Dossin

目的:健康な実験犬において胃と十二指腸の通常の内視鏡バイオプシー後、血液サンプルの通常の細菌培養方法により検出される菌血症の発生率を判定することと、オメプラゾールの投与で菌血症の発生率が変化するかどうかを判定すること

動物:8頭の健康な研究犬

方法:全ての犬に4回のバイオプシーを伴う胃十二指腸内視鏡検査を実施した:2回はオメプラゾール投与前、1回はオメプラゾール(20mg、PO、q12h)を15日投与後、1回は投与中止から14日後。犬の平均±SD体重は18.6±2.0kgだった。血液サンプルは各処置の3ポイント(内視鏡検査前、直後、24時間後)で無菌的に採取し、通常の好気性、嫌気性細菌培養を実施した。

結果:各培養法で96の培養を試み、別々のタイムポイントで2頭の好気性培養が陽性結果を示し、嫌気性培養の陽性結果はなかった。

結論と臨床的関連:健康な犬における通常の胃十二指腸内視鏡検査とバイオプシー検査では、ほとんどの犬で検出可能な菌血症を起こさなかった。胃酸抑制剤オメプラゾールの投与は、標準法により検出した菌血症の発生率に影響しなかった。(Sato訳)
■胃拡張捻転の初期管理に胃の減圧の2つの方法の評価
Assessment of two methods of gastric decompression for the initial management of gastric dilatation-volvulus.
J Small Anim Pract. 2013 Feb;54(2):75-9. doi: 10.1111/jsap.12019.
Goodrich ZJ, Powell LL, Hulting KJ.

目的 胃拡張捻転の初期の治療としての胃の減圧で、胃套管針術と経口胃チューブ法を評価すること

方法 2001年6月から2009年10月に来院した116例の胃拡張捻転の症例の後向き研究

結果 減圧は、31頭のイヌには経口胃チューブで、39頭のイヌには胃套管針術で、46頭のイヌでは両方を組み合わせて実施した。59頭(75.5%)のイヌでチューブ挿入はうまくいき、18頭(23.4%)においてはうまくいかなかった。胃套管針術は、73頭(86%)においてうまくいき、12頭(14%)においてうまくいかなかった。どちらの方法を用いたイヌにおいても、手術時に胃の穿孔は認められなかった。胃套管針術を実施した1頭のイヌは、手術時に脾臓の裂傷が認められたが治療を必要とはしなかった。入院中に食道穿孔や吸引性肺炎が認められたイヌはいなかった。胃の減圧の方法と、外科手術を必要とするような胃の障害や退院までの生存の間に有意差はなかった。

臨床的意義 経口胃チューブと胃の胃套管針術は、併発症が少なく成功率が高い。どちらの方法も、胃拡張捻転のイヌの胃の減圧方法として受け入れられるものである。(Dr.Taku訳)
■犬に14日間連続でクエン酸マロピタントを1日1回2mg/kg、8mg/kgで投与した時の薬物動態
The pharmacokinetics of maropitant citrate dosed orally to dogs at 2 mg/kg and 8 mg/kg once daily for 14 days consecutive days.
J Vet Pharmacol Ther. 2012 Nov 20. doi: 10.1111/jvp.12027.
Lesman SP, Boucher JF, Grover GS, Cox SR, Bidgood TL.

セレニア錠(Pfizer Animal Health)を2mg/kgあるいは8mg/kgの量で、1日1回14日間連続経口投与したビーグル犬においてマロピタントの薬物動態を評価した。AUC(0-24)(最初と最後の投与後)、C(t)(各投与後24時間測定した濃度のくぼみ)、C(max)(最初と最後の投与後)、t(max)(最初と最後の投与後)、λ(z)(末梢廃棄速度定数;最初と最後の投与後)、t(1/2)(最後の投与後)、CL/F(経口クリアランス;最後の投与後)を測定するため、血漿濃度データに対し非区画薬物動態分析を行った。

血漿へのマロピタントの蓄積は、AUC(0-24)蓄積率が8mg/kgで4.81、2mg/kgで2.46に反映するように、2mg/kg1日1回14日間投与後よりも8mg/kgの方がかなり大きかった。これはおそらく高用量(8mg/kg)が代謝クリアランスメカニズムを飽和させ、薬剤消失を遅らせるマロピタントの過去に確認されている非直線薬物動態によるものと思われる。定常状態のマロピタントの血漿濃度に達するまでの時間を判定するため、各投与群の平均マロピタントC(t)の最小二乗に非直線モデルを当てはめた。このモデルを基に、90%の定常状態は毎日の2mg/kgの経口投与の約4回目、毎日の8mg/kgの経口投与の約8回目に起こると判定された。
■猫の嘔吐および乗り物酔いの予防に対する新規NK-1レセプター拮抗薬マロピタント(セレニア)の使用と安全性、薬物動態
Safety, pharmacokinetics and use of the novel NK-1 receptor antagonist maropitant (Cerenia) for the prevention of emesis and motion sickness in cats
J Vet Pharmacol Ther. June 2008;31(3):220-9.
M A Hickman; S R Cox; S Mahabir; C Miskell; J Lin; A Bunger; R B McCall

猫の選択的NK-1レセプター拮抗薬のマロピタントの安全性、薬物動態、制吐効果の特徴を研究した。マロピタントの安全性は0.5-5mg/kgで15日の皮下(SC)投与後に判定した。少なくとも10倍の薬剤の有効な制吐投与量範囲を超える用量でも猫は許容し、臨床的副作用あるいは病理的安全性所見はどの用量でも見られなかった。猫におけるマロピタントの薬物動態を1回の経口(PO)、静脈内(IV)、SC投与後に判定した。POおよびSCで投与した時、マロピタントの終末半減期は13-17時間で、生物学的利用能はそれぞれ50および117%だった。効果はキシラジンあるいは乗り物により誘発する嘔吐に対して判定した。マロピタント1mg/kgのIV、SC、あるいはPO投与はキシラジンに誘発される嘔吐を予防した。この薬剤は良好な経口制吐作用と作用の長期(24h)持続を示した。マロピタント(1.0mg/kg)は猫の乗り物誘発の嘔吐に高い予防効果を示した。それらのことから、猫においてNK-1レセプター拮抗薬のマロピタントはよく許容し、安全ですばらしい制吐特性を持つ。(Sato訳)
■犬の胃拡張捻転のリスク因子についてのインターネットによる調査
An Internet-based survey of risk factors for surgical gastric dilatation-volvulus in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2012 Jun 15;240(12):1456-62.
Pipan M, Brown DC, Battaglia CL, Otto CM.

目的:広範囲な地域において、飼育されている非常に多くの犬における胃拡張捻転(GDV)のリスク因子を評価すること

動物:飼育されている2551頭の犬

方法:GDVに関連するリスク因子となりうる、犬特有の、飼育、環境、性格に関する質問に答える。犬の飼い主に対するウェブサイトで質問へのリンクを表示することによって回答者を集めた。その情報は他にも、犬の飼い主のミーティング、ニュースレーター、犬の飼い主とブリーダーに対するメーリングリスト、飼い主向けの印刷物、および参加者によって転送されたemailを通して広がった。記述統計とロジスティック回帰分析を実施した。

結果:GDVのリスクの増加に有意に関連する因子としては、ドライフードを与えている、不安、UKに住んでいる、1990年代に生まれた、家庭用ペットである、毎日少なくとも5時間はオーナーと過ごしている、であった。GDVのリスクの低下要因としては、他の犬と遊び、食後庭を走る、魚と卵を食餌に添加している、家の外と中を同じ程度の時間を過ごしている、であった。性別と避妊去勢の有無の有意な関係が認められ、未避妊雌はGDVのリスクが最も高かった。

結果と臨床的意義:GDVのリスクが高い犬においては、通常の適度な食後の活動が有用であるようにみえる。市販のドライタイプの食餌のみを与えることは、リスクのある犬にとって最良の選択ではないのかもしれない。しかし、魚や卵を添加することはリスクを減らす事につながるようである。GDVのリスクへの避妊去勢の影響はもう少し解析する必要がある。(Dr.Taku訳)
■犬の口腔におけるヘリコバクター科の評価
Evaluation of the Helicobacteraceae in the oral cavity of dogs.
Am J Vet Res. November 2011;72(11):1476-81.
Melanie Craven; Camilla Recordati; Valentina Gualdi; Graziano Pengo; Mario Luini; Eugenio Scanziani; Kenneth W Simpson

目的:犬の口腔に存在するヘリコバクター種および、犬からヒト、犬から犬への伝播の可能性をよりよく定義するためにそれら病原体と胃のヘリコバクター種との関連を判定すること

サンプル:28頭の唾液とデンタルプラークおよび8頭のサブセットの胃のバイオプシー標本

方法:ヘリコバクター種に対するPCRベースのスクリーニングを、28頭の犬の口腔から得たサンプルで実施した。ヘリコバクター種に対する陽性のPCR結果を持つ8頭の犬(5頭は嘔吐、3頭は健康)のサブセットの口腔と胃のサンプルにおけるヘリコバクター科16S rDNAクローンライブラリーに対する比較分析を行った。

結果:ヘリコバクター科のDNAは28頭中24頭の口腔に確認された。8頭のクローンされた16S rDNA単位複製配列の分析で、口腔内においてWolinella種は最も一般的で(8/8頭)、ヘリコバクター科の豊富な(52/57、91%クローン)メンバーということがわかった。8頭中2頭のみが口腔にヘリコバクター種を持っており、そのうち1頭は胃と唾液から得たサンプル中にヘリコバクターheilmanniiとfelisの同時感染を認めた。Wolinella特異PCRプライマーによる口腔DNAの評価は、他の20頭の犬のうち16頭に陽性結果をもたらせた(24/28サンプルがWolinella種に陽性)。

結論と臨床的関連:ヘリコバクター種よりもWolinella種が犬の口腔内における優勢なヘリコバクター科だった。おそらく犬の口腔はヘリコバクターピロリ菌ではないヘリコバクター種の人獣共通伝染病的に重要なリザーバーとなることはないと思われた。(Sato訳)
■犬のロルノキシカムによる二次的重度胃腸出血
[Severe gastrointestinal bleeding secondary to lornoxicam in the dog.]
Lornoxicam-assoziierte schwere gastrointestinale Blutungen beim Hund.
Language: German
Schweiz Arch Tierheilkd. May 2011;153(5):223-229.
P H Kook1; C E Reusch

ロルノキシカムで重度胃腸出血を引き起こした6頭の犬について述べる。摂取量の範囲は0.5-5.1mg/kg(中央値0.63mg/kg)だった。出血性貧血の程度は中程度から重度で、PCV値の範囲は12-27%(中央値16%)、血清アルブミン濃度の範囲は12-22g/l(中央値16g/l)だった。1頭の犬は13日以上慢性血小板減少の所見があり、胃腸出血の臨床病理所見は55日以上見られた。腎臓損傷を発症した犬はいなかった。6頭中5頭の臨床状況は血液製剤の投与を必要とした。穿孔性十二指腸潰瘍および敗血症性腹膜炎の1頭は退院まで生存していたが、臨床症状再燃(吐血、メレナ)のため、その後安楽死となった。入院期間の中央値は12日(5-14)だった。摂取量と臨床症状の程度の相関は見られなかった。ロルノキシカム摂取は犬に重度の持続する胃腸出血を引き起こし、即座の集中的治療を必要とする。(Sato訳)
■猫の急性嘔吐:合理的治療選択
Acute vomiting in cats: rational treatment selection.
J Feline Med Surg. March 2010;12(3):225-30.
Lauren Trepanier

臨床関連:猫の悪心、嘔吐の管理は、食餌嫌悪、食欲不振(それに関連する体重減少および脱水の合併症)、肝リピドーシスの発症を防ぐために重要である。

臨床チャレンジ:猫に効果的な制吐剤がいくつかある。利用できるオプションから合理的な選択をなすには、嘔吐の原因、各薬剤の作用機序、副作用の知識が必要である。例えば、鎮静を引き起こす可能性があるプロクロルペラジンのような薬剤は、取り扱いに軽度鎮静が必要な入院猫に有用な第一選択薬かもしれないが、重篤な猫には望ましくないだろう。
読者:コンパニオンアニマルおよび猫の臨床家に対し、嘔吐する猫はよく来院する。

エビデンスベース:この概説で提供するガイダンスは、人における臨床試験所見、猫における実験研究、猫におけるいくつかの臨床試験、臨床的経験をもとにして書かれている。(Sato訳)
■胃拡張捻転症候群の犬306頭において術後生存性に影響する要因の回顧的研究
A retrospective study of factors influencing survival following surgery for gastric dilatation-volvulus syndrome in 306 dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Mar-Apr;46(2):97-102.
George Mackenzie, Mathew Barnhart, Shawn Kennedy, William DeHoff, Eric Schertel

胃拡張-捻転(GDV)は、過去の研究で高い死亡率が示されている犬の命を脅かす病態である。2000年から2004年の間、GDVと確認された306症例における総および術後死亡率に対して影響した要因をこの研究で評価した。総死亡率は10%、術後死亡率は6.1%だった。総死亡率において有意な上昇に関与した要因は、術前心不整脈の存在だった。術後死亡率において有意な上昇に関与した要因は、術後心不整脈、脾摘あるいは部分的胃切除を伴う脾摘だった。総死亡率において有意な低下に関与した要因は、来院から手術までの時間だった。この研究は、確実な要因がGDVに関与する総および術後死亡率に影響し続けるが、それら死亡率は過去に報告されたものよりも低下していることを示す。(Sato訳)
■ヘリコバクターピロリに対する診断検査の正確性:再評価
Accuracy of diagnostic tests for Helicobacter pylori: a reappraisal.
Clin Infect Dis. May 2009;48(10):1385-91.
Xavier Calvet, Jordi Sanchez-Delgado, Antonia Montserrat, Sergio Lario, Maria Jose Ramirez-Lazaro, Mariela Quesada, Alex Casalots, David Suarez, Rafel Campo, Enric Brullet, Felix Junquera, Isabel Sanfeliu, Ferran Segura

背景:多くの変化にもかかわらず、ヘリコバクターピロリの異なる診断検査を比較する大規模研究は、過去10年間に実施されていない。このたび、モノクローナル糞便抗原イムノアッセイとインオフィス13C-尿素呼気検査(UBTs)が出現している。この研究の目的は、消化不良患者の大規模な集団で侵襲および非侵襲性検査の正確性を評価することだった。

方法:過去にヘリコバクターピロリの治療を受けていない消化不良の患者199人に前向きに登録してもらった。非侵襲性分析は商業的赤外線ベースのUBTおよび市販の糞便検査だった。バイオプシーベースの検査は、組織学的検査と急速ウレアーゼ検査だった。最低2つの検査結果が陽性のとき、患者は感染していると考えた。感受性、特異性、陽性および陰性適中率、95%信頼区間を算出した。検査結果はMcNemar法で比較した。

結果:陽性結果率は、急速ウレアーゼ検査、病理組織検査、糞便検査共に同様の54%だった。対照的に、UBT検査結果の75%は陽性で、UBTは非常に低い特異性(60%)を示した。この理由で、UBTのデルタカットオフ値は8.5%と再計算された。この新しいカットオフ値での感受性と特異性は、急速ウレアーゼ検査で95%と100%、病理組織検査で94%と99%、糞便検査で90%と93%、UBTで90%と90%だった。

結論:組織検査および急速ウレアーゼ検査による診断は、優良な信頼性がある。糞便検査は内視鏡ベースの検査に変わる非侵襲性の良好な方法と思える。対照的に、我々の研究で評価した赤外線ベースのUBTは思ったよりも悪く、検査のカットオフ値を再検査したとき部分的に補正された。(Sato訳)
■セロトニン作動薬による機能性消化不良の治療:ランダム化コントロール試験のメタアナリシス
Treatment of functional dyspepsia with serotonin agonists: a meta-analysis of randomized controlled trials.
J Gastroenterol Hepatol. 2007 Oct;22(10):1566-70.
Hiyama T, Yoshihara M, Matsuo K, Kusunoki H, Kamada T, Ito M, Tanaka S, Chayama K, Haruma K.

背景:機能性消化不良(FD)は、しばしばセロトニン作動薬で治療される:しかし、そのような薬物の効果は最近疑問視されている。この研究の目的は、無作為コントロール試験(RCTs)のメタアナリシスで機能性消化不良患者においてセロトニン作動薬と他の種類の消化管運動改善薬を比較することだった。

方法:RCTsでは、機能性消化不良患者において、メトクロプラミド、ドンペリドン、そしてオピエート作動薬、トリメブチンなどのドーパミン拮抗薬とシサプリドやモサプリドなどのセロトニン作動薬を比較した。メッドラインデータベース(1951年1月-2005年1月)とコクラン・ライブラリー(2004年4号)検索とマニュアル検索で研究を確認した。セロトニン作動薬とコントロール薬剤における患者の反応率の違いは、治療効果の要約統計量として用いた。不均一性の原因を検出するためにメタ回帰分析を使った。

結果:5つの研究を確認した。全体として、467人の患者はセロトニン作動薬、322人の患者はコントロール薬剤に割り当てられた。全分析において、要約統計量は0.019 (95%信頼区間[CI]: -0.055 - 0.093; P = 0.612)で、セロトニン作動薬に対する患者の反応はコントロール薬剤の反応と似ていたことを示す。しかし、シサプリドとモサプリドの層別メタアナリシスにおいて、モサプリドはコントロール薬剤に比べて反応を起こす確率が6.7%とより高かった (要約統計量: 0.067; 95%信頼区間: 0.010 - 0.124; P = 0.021)、一方シサプリドでは有意な効果は観察されなかった。

結論:データは、モサプリドが機能性消化不良の治療においてシサプリドより効果的であるかもしれないと示唆している。機能性消化不良は慢性疾患であるが、現在のメタアナリシスで使われた研究において効果は短期間で評価した。効果を確定するためには、長期の無作為コントロール試験が必要である。(Dr.Kawano訳)
■マロピタント:犬の急性嘔吐に対する新しい治療
Maropitant: A novel treatment for acute vomiting in dogs
Vet Med. Sep 2009;104(9):422-426. 17 Refs
Lotfi El Bahri DVM, MSc, PhD

全身性疾患(例えば胃腸炎、急性膵炎、胆管炎)あるいは感染(例えば子犬を除くパルボウイルス感染、レプトスピラ症)および種々の他の臨床疾患(例えば尿毒症、腎不全、子宮蓄膿症、糖尿病性ケトアシドーシス、高カルシウム血症、副腎不全、腸管閉塞、胃腸腫瘍、線状異物、中枢神経系疾患、頭蓋内圧増加、薬物あるいは毒物中毒)に関係する急性嘔吐の犬の治療でマロピタントが研究されている。また犬の乗り物酔いによる嘔吐に対しても効果的である。マロピタントの効果と安全性は、犬の乗り物酔いによる嘔吐の予防に対する無作為臨床試験で評価されている。プラセボと比較して、旅行の2時間、あるいは10時間前にマロピタントを投与すると、それぞれ86.1%、76.5%の嘔吐を減少させた。比較的に、オンダンセトロンは乗り物酔いによる嘔吐に対して効果はない。
また癌に対する化学療法(例えばシスプラチン)を行う患者の急性および遅延性嘔吐の予防、治療に効果がある。化学療法剤は中枢あるいは末梢的に嘔吐を誘発するP物質などの種々の神経伝達物質放出により化学受容器引金帯を活性化する。P物質の構造を模倣するマロピタントは、NK1受容体に結合してP物質を結合できなくして嘔吐中枢の刺激を減ずる。P物質結合を阻害することにより、嘔吐の中枢性および末梢性原因および犬におけるアポモルヒネ、キシラジン、トコンシロップ、シスプラチン、猫でキシラジンのような種々の催吐剤の影響を抑制する。(Sato訳)
■犬において中枢あるいは末梢作用性催吐薬により誘発した嘔吐を防ぐマロピタントおよび選択した薬剤の効果の比較
Comparative efficacy of maropitant and selected drugs in preventing emesis induced by centrally or peripherally acting emetogens in dogs
J Vet Pharmacol Ther. December 2008;31(6):533-7.
H S Sedlacek , D S Ramsey , J F Boucher, J S Eagleson, G A Conder, R G Clemence

2つの無作為、プラセボ-コントロール研究において、犬で中枢性(アポモルヒネ;研究1)あるいは末梢性(トコンシロップ;研究2)に作用する催吐薬により誘発した嘔吐を予防する効果に対し、マロピタント(Cerenia;新規、選択的ニューロキニン(1)レセプター拮抗薬)、クロルプロマジン、メトクロプラミド、オンダンセトロンを比較した。
各研究で5つの処置、5周期クロスオーバー構成で10頭オスおよび10頭メスのビーグルに投与した。5つの処置は、0.9%生理食塩水(0.1ml/kg)、マロピタント(1mg/kg)、メトクロプラミド(0.5mg/kg)、クロルプロマジン(0.5mg/kg)をすべて皮下投与、オンダンセトロン(0.5mg/kg)は静脈内投与だった。投与後1時間の犬にアポモルヒネ0.1mg/kg静脈内投与(研究1)、あるいはトコンシロップ0.5ml/kgを経口投与(研究2)した。催吐薬投与後、犬を30分間(研究1)あるいは1時間(研究2)嘔吐を観察した。嘔吐に関連するもの以外に臨床症状は観察されなかった。
アポモルヒネにより中枢性に誘発された嘔吐の予防におけるマロピタントの効果は、メトクロプラミドあるいはクロルプロマジンと差はなかった(P>0.05)が、オンダンセトロンよりは優れていた(P<0.0001)。トコンシロップにより誘発された嘔吐を予防するマロピタントの効果は、オンダンセトロンと差がなかった(P>0.05)が、メトクロプラミドあるいはクロルプロマジンより優れていた(P<=0.0102)。
マロピタントは中枢あるいは末梢性催吐経路の刺激により起こる嘔吐の予防で効果的だった(コントロールに対しP<0.0001)一方、研究した他の薬剤は中枢(メトクロプラミドおよびクロルプロマジン;P<0.0001)あるいは末梢(オンダンセトロン;P<0.0001)刺激により誘発された嘔吐を予防したが両方ではなかった。(Sato訳)
■胃拡張-捻転の犬の転帰に対する予後指標としてのミオグロビン
Myoglobin as a prognostic indicator for outcome in dogs with gastric dilatation-volvulus
J Vet Emerg Crit Care. Jun 2009;19(3):247-253. 41 Refs
Katja N. Adamik, DrMedVet, Iwan A. Burgener, DrMedVet, DACVIM, DECVIM, Alan Kovacevic, DrMedVet, DECVIM, Sebastian P. Schulze, MRCVS, Barbara Kohn, DrMedVet, DECVIM

目的:胃拡張-捻転(GDV)の犬において、ミオグロビン(Mb)は転帰に対する有効な予後指標かどうかを判定し、Mbと死亡率の関連性を調査すること

構成:前向き研究

場所:獣医教育病院

動物:GDVの犬72頭

処置:血液サンプリング

測定値および主要結果:GDVの症状を認めた診断時(Mbt0)、24時間目(Mbt1)、48時間目(Mbt2)にMb濃度を測定した。57頭の犬は生存し(1群)、15頭の犬は死亡した(2群)。群間でMbt0に有意差が見られた(P=0.04)。1群のMbt0は<30から>700ng/ml(n=57、中央値74ng/ml)、2群のMbt0は34から700ng/ml(n=15、中央値238ng/ml)だった。Mbt0の受信者動作特性曲線の分析は、最適単一カットポイントが168ng/ml(感受性60%、特異性84.2%)であろうと示唆した。Mbt0>168ng/mlの犬の50%が安楽死され、Mbt0<168ng/mlの犬の88.9%は生存した。
群間のMbt1とMbt2に有意差があった。1群のMbt1は32から>700ng/ml(n=55、中央値123ng/ml)の範囲で、2群のMbt1は131から643ng/ml(n=7、中央値343ng/ml)の範囲だった(P=0.006)。1群のMbt2は30から597ng/ml(n=54、中央値101ng/ml)の範囲で、2群のMbt2は141から>700ng/ml(n=8、中央値203ng/ml)の範囲だった(P=0.02)。

結論:この研究で、Mbt0は中程度の感受性と特異性を持つ予後指標である。カットポイント以下の犬のほぼ90%は生存して退院した一方、カットポイント以上のMbt0を持つ犬の50%は生存しなかった。(Sato訳)
■胃腸ピシウム感染症のカルフォルニアの犬10例
Gastrointestinal pythiosis in 10 dogs from california
J Vet Intern Med. 2008 Jul-Aug;22(4):1065-9.
N A Berryessa, S L Marks, P A Pesavento, T Krasnansky, S K Yoshimoto, E G Johnson, A M Grooters

背景:ピシウムinsidiosumは、犬の胃腸(GI)管の重度分節肥厚を起こし、結果として体重減少、嘔吐、下痢、死亡を起こす水生oomyceteである。過去に犬の感染はアメリカ南東部で主に観察されている。

目的:カルフォルニアの犬10頭におけるGIピシウム感染症の臨床病理および疫学所見を述べる

方法:支持的臨床所見およびルーチンな病歴聴取をもとに最初に犬を確認した。少なくとも以下の1つにより各犬のピシウム感染症を確認した:血清免疫ブロット法、血清ELISA、免疫組織化学、および培養後種特異PCR法、rRNA遺伝子塩基配列決定、またはその両方。

結果:2003年9月から2006年12月の間に、中央カルフォルニアの1頭、CAデービスの半径30マイル以内にいた9頭の犬でGIピシウム感染症を確認した。8頭中7頭は、水の張った田や他の水源を頻繁に行き来していたという環境データを入手した。10頭中2頭で食道病変が存在した。一般的な検査所見は、好酸球増加(7/9)、低アルブミン血症(9/9)、高グロブリン血症(8/9)だった。生存期間中央値は26.5日(範囲0-122日)で、その疾患は全10頭で最終的に致死だった。

結論と臨床重要性:ピシウム感染症の地理的分布は、アメリカ西部を含み近年広がってきている。この変化に寄与していると思われる要因は、米作農家や景観潅水の変化などである。カルフォルニアの獣医師は、早期診断および効果的な治療を行えるようGIピシウム感染症に関する臨床医病理特性に精通しておくべきである。(Sato訳)
■犬の嘔吐治療の無作為臨床試験における選択的ニューロキニン1受容体拮抗薬であるマロピタントの注射及び経口投与の安全性及び有効性
Safety and efficacy of injectable and oral maropitant, a selective neurokinin 1 receptor antagonist, in a randomized clinical trial for treatment of vomiting in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. 2008 Dec;31(6):538-43.
Ramsey DS, Kincaid K, Watkins JA, Boucher JF, Conder GA, Eagleson JS, Clemence RG.

様々な原因による急性嘔吐の認められる犬において、選択的ニューロキニン1受容体拮抗薬であるマロピタント(Cerenia)の嘔吐治療及び予防における安全性と有効性に関して無作為臨床試験により評価した。29の動物病院に来院した278頭の犬が研究に組み込まれた。252頭において効果を評価し、275頭において安全性を評価した。乱塊法(マロピタント治療の3頭、プラセボ治療の1頭/塊)を利用した。初回治療ではマロピタント1mg/kgあるいは同量の生理食塩水(プラセボ)の皮下注射を行なった。続く1~4日、マロピタントあるいはプラセボを必要に応じて約24時間間隔で、皮下注射あるいは経口投与した。マロピタント錠の投与個数を少なくとも最小用量である2mg/kgとなるように投与し、プラセボ錠剤も同じように同量の個数を投与した。嘔吐の有無を確認するため、毎日二回犬および飼育環境を観察した。
嘔吐はマロピタント治療群において有意に減少した(P <or= 0.0012)。プラセボ治療群では50%(32/64)の犬で嘔吐の持続が認められたが、マロピタント投与群ではたったの21%(41/188)で認められただけだった。治療後の臨床症状は臨床診断と一致しており、マロピタント治療とは関係がないと判断した。今回の臨床試験において、マロピタントは犬における様々な原因で起こる嘔吐を減らすことにおいて安全であり効果的であった。(Dr.Kawano訳)
■あぶり焼きしたソーセージを食べたことによる胃の熱傷
Gastric Thermal Injury in a Dog Secondary to Ingested Barbecued Sausages
Aust Vet Pract. March 2009;39(1):35-37. 11 Refs
P. M. Barron

5歳避妊済みのケルピーが、ホットバーベキュープレートから直接料理中のソーセージを食べた後、嘔吐の急性発現と吐血により来院した。胃潰瘍の初期治療は成功せず、内視鏡検査で胃の粘膜損傷と潰瘍を認め、病理組織検査で潰瘍性および化膿性胃炎の診断が得られた。さらに胃潰瘍の治療を行い、完全に回復した。著者の知識によれば、これは食物を食べたことによる二次的な胃の熱傷の最初の報告である。(Sato訳)
■フェレットにおけるHelicobacter mustelaeによる実験感染のための特徴付けと治療
Characterization and therapy for experimental infection by Helicobacter mustelae in ferrets.
Helicobacter. 1996 Mar;1(1):43-51.
Czinn SJ, Bierman JC, Diters RW, Blanchard TG, Leunk RD.

背景: Helicobacter pyloriに対する様々な抗菌性化合物の効果を評価する多数の臨床試験が人で実行されている。 Helicobacter感染のための便利な動物モデルは目新しい療法の評価を容易にするだろう。 これらの実験が、Helicobacter感染のモデルとしてフェレットの使用を評価するために行われた。

材料と方法:フェレットは、実験的にHelicobacter mustelaeに感染させ、次サリチル酸ビスマス(BSS)トリプル療法(BSS、メトロニダソール、およびアモキシシリン)で治療、または治療せずにおいた。感染と血清学的な状態は治療中と治療後8週間で評価した。トリプル療法で治療に成功した7頭のフェレットはH.mustelaeに暴露させ、感染をさらに5週間モニターした。

結果: H.mustelaeによるフェレットへの感染は胃炎と特異抗体反応を同時に起こした。 H. mustelaeに感染したフェレットへのBSSの治療は、9頭の動物のうち4頭において細菌増殖を抑制したが、感染を根絶できなかった。トリプル療法は胃炎を減少させ、すべての9頭のフェレットで感染を根絶した。 感染の再発は治療後8週間まで起こらなかった。トリプル療法で治療に成功したフェレットへのH.mustelaeの暴露で再感染率100%だった。

結論: H.mustelae感染はトリプル療法で排除できるが、これはH.mustelaeによる再感染に対する感染防御免疫という結果にはならない。 ホストに対してHelicobacter常在菌株を使用したこのモデルは、H. pyloriによる人の感染の治療にとって目新しい治療法の効果を評価することに役に立つかもしれません。(Dr.Kawano訳)
■犬の胃捻転-拡張のリスクに対するドライフード成分の影響
The effect of ingredients in dry dog foods on the risk of gastric dilatation-volvulus in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Jan-Feb;42(1):28-36.
Malathi Raghavan, Nita W Glickman, Lawrence T Glickman

ドライフードのラベル情報を使用し、最初の4成分のうち大豆、穀類成分数の増加、動物蛋白成分数の減少が胃拡張-捻転(GDV)のリスクを増加させるという仮説を検証した。単一ブランドおよび種々のドライフードを与えた85GDV犬と194コントロール犬で集団症例対照研究を実施した。最初の4成分のうち動物蛋白成分数の増加(P=0.79)、大豆と穀物成分数の増加(P=0.83)共にGDVリスクに有意な影響を示さなかった。予想しなかった所見で、最初の4成分のうち、オイルまたは脂肪成分を含むドライフードがGDV2.4倍のリスク増加に有意に関係した(P=0.01)。それら所見から、最初の4ラベル成分のなかにオイルまたは脂肪があるドライフードの給餌は犬のGDVリスクを高くする素因を持たせると思われる。(Sato訳)
■イヌ胃拡張―捻転症候群の気腫
Pneumatosis in canine gastric dilatation-volvulus syndrome.
Vet Radiol Ultrasound 45[3]:205-9 2004 May-Jun
Fischetti AJ, Saunders HM, Drobatz KJ

回顧的に胃拡張―捻転(GDV)のイヌ243頭のX線所見で、気腫(壁内ガス)、気腹症、脾腫、胃の膨張程度についてのX線像を研究した。胃壁壊死の予測、手術時、または検死時の視診による判定として、それら画像の感受性、特異性、予測値を判定した。胃気腫の感受性と特異性は、それぞれ14.1%と92.7%だった。胃壁壊死の罹患率は26.6%だった。胃の壊死を予測する胃気腫の陽性、陰性適中率は、それぞれ40.9%と74.9%だった。胃気腫と気腹症は4頭でいっしょに認められた。
気腹症単独、または気腫との組み合わせは、胃壊死の検査として同様の結果をもたらした。脾腫と胃拡張の程度は、胃壁壊死に対する感受性や特異性がなかった。脾腫は、手術時の脾摘の必要性を予測しなかった。気腫や気腹症は、胃壁壊死の比較的特異症状であるが、胃壊死を検査する試験としてそれら症状の有用性は臨床において限りがある。気腫の意義は、経皮的胃套管穿刺または口胃相関が偽陽性結果の数を増加させるため、胃の減圧に対する前処置を考慮に入れるべきである。(Sato訳)
■胃アトニーの問題
The problem of gastric atony.
Clin Tech Small Anim Pract 19[1]:43-8 2004 Feb 44 Refs
Woosley KP

正常な胃腸運動は、腸内細菌叢の適切なバランスを維持するのに重要である。この体系が混乱すると、細菌過剰増殖を起こし、細菌移行、誤嚥性肺炎、敗血症などの合併症に関与する。危機的疾病の動物は、胃腸機能に影響する原発性胃腸障害または重度代謝障害により起こる胃腸不全麻痺を発症するリスクが増える。集中治療処置で、胃が遅れて空になることは経腸栄養を複雑にし、重度疾患の異化作用は、さらに患者のカロリー貯蔵を消費し、傷の治癒を悪くし、免疫機能を低下させ、罹病率、死亡率を増加させる。危機的疾患の患者に消化管運動促進剤の使用は、胃アトニーの問題を回避し、患者の回復を改善する安全で効果的な手段である。利用可能な薬剤とそれら胃腸管内神経筋伝達に関与するレセプターとの相互作用を理解することは、最適な運動促進療法を臨床医が選択するのに役立つだろう。(Sato訳)
■ハイリスク犬の胃捻転-拡張に対する食餌関連リスクファクター
Diet-related risk factors for gastric dilatation-volvulus in dogs of high-risk breeds.
J Am Anim Hosp Assoc 40[3]:192-203 2004 May-Jun
Raghavan M, Glickman N, McCabe G, Lantz G, Glickman LT

完全に食餌情報が分かる1634頭のイヌを用い、胃拡張-捻転(GDV)に対する食餌関連リスクファクターを判定する5年前向き研究で、集団症例-コントロール研究を行った。症例には、GDVを発症した106頭のイヌも含まれていた。コントロールは、GDV発現年齢により症例と頻回合致したGDV以外の212頭を含んだ。主要食物タイプ、炭水化物から消費する比率エネルギーを判定した。食餌のカップ数中央値/kg/一食をもとに、低容量、高容量消費しているかで分類した。1回により量を多く与えていたイヌは、1日の食事の回数に関係なくGDV のリスクが有意に増加した(P<0.05)。大型犬、超大型犬では、GDVのリスクが1日1回大量の食餌を与えているイヌで最大となった。(Sato訳)
■犬における胃酸低減療法の効果
EFFICACY OF GASTRIC ACID-LOWERING THERAPY IN THE DOG
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care;Volume 14 Issue S1 Page S1 - September 2004

イントロダクション:胃酸の抑制は胃潰瘍において推奨される治療である。1日の75%で胃のpHが3より高い状態で、十二指腸潰瘍の最善の治癒が起こるということが人医領域における研究で示されている。この研究の目的は4つの胃酸抑制薬の推奨されている獣医領域における投与量での効果を評価することであった。薬剤効果は24時間の中央pH値と24時間において胃内pHが3以上であった時間の割合に基づいて評価した。

方法:この研究は12頭の健常ビーグルを供試し、プラセボ(生理食塩水、静脈内投与、12時間毎)、ラニチジン(2 mg/kg、静脈内投与、12時間毎)、ファモチジン(0.5 mg/kg、静脈内投与、12時間毎)、パントプラゾール(1mg/kg、静脈内投与、24時間毎)そしてオメプラゾール(~1mg/kg、経口投与、24時間毎)による二重盲目、無作為、多交差比較を行った。連続24時間胃内pH測定は、PEG チューブを用いて行った。薬物検査の前に絶食もしくは給餌した犬における24時間pH測定を記録した。その後、研究期間中、犬に標準化した食餌を給餌した。薬物は検査の間、1週間のウォッシュアウト期間を設けて1週間投与した。記録は0日(基準)、投与2日目、6日目にデータを得た。続く無作為検査において、6頭の犬においてファモチジン(0.5mg/kg、静脈内投与、8時間毎)及びオメプラゾール(~1mg/kg)+重炭酸塩(12時間毎、PEG チューブにて投与)をそれぞれ評価した。24時間の中央pH値と検査薬物が24時間を通して胃内pHが3以上を維持した時間の割合を計算するため統計学的分析を適用した。

結果:絶食した犬における24時間の中央pH値は4.44に対して、給餌した犬では1.30(p<0.0001)であった。胃内pHが3以上を維持した時間の割合は絶食した犬が66.0%であるのに対し、給餌した犬では13.3% (p<0.0001)であった。24時間の中央pH値は(生理食塩水と比較すると際立って有意差があったが、)生理食塩水のpHは1.81、ラニチジン2日目のpHは2.53、 6日目のpHは 2.05、 ファモチジン 2日目のpHは 2.83、6日目のpHは3.68、 パントプラゾール 2日目のpHは3.11、6日目のpHは3.49、 オメプラゾール2日目のpHは3.86、6日目のpH は4.09であった。胃内pHが3以上を維持した時間の割合は、生理食塩水が32.9%、ラニチチジン2 日目が 44.6%、6 日目が37.2%;ファモチジン2日目が 48.9%、6日目が60.1%; パントプラゾール2日目が54.2%、6日目が 59.1%; オメプラゾール2日目が66.9%、6日目が70.2%であった。オメプラゾール+重炭酸塩12時間毎の24時間の中央pH値は2日目で4.7、6日目で 4.9であった。胃内pHが3以上を維持した時間の割合は2日目で90.9%、6日目で78.4%であった。ファモチジン8時間毎と12時間毎と比べ、どのパラメーターにおいても有意差はなかった。

結論:絶食した犬は給餌した犬に比べに有意に高いpHであった。ヒト患者における基準で評価すると、検査した薬物でオメプラゾールは十二指腸潰瘍の治癒において治療効果の期待できる唯一のものあった。すべての検査した薬物において犬の間に変動が存在した。(Dr.Kawano訳)
■アラスカのレース用そりイヌで、運動誘発性の胃炎予防のためのオメプラゾールの効果
Efficacy of Omeprazole for the Prevention of Exercise-Induced Gastritis in Racing Alaskan Sled Dogs
J Vet Intern Med 17[2]:163-166 Mar-Apr'03 Review Article 35 Refs
M.S. Davis, M.D. Willard, S.L. Nelson, S.M. McCullough, R.E. Mandsager, J. Roberts, M.E. Payton

運動誘発性胃炎と胃の潰瘍はヒトや馬でよく見られ、近年はレース用そりイヌで紹介されている。運動誘発性の胃の疾患の原因は、どの種でも完全に解明されていないが、胃酸分泌の薬理学的抑制はヒトや馬で効果的な治療である。
従って、我々は、プロトンポンプを抑制がイヌの胃酸分泌を抑えることが分かっているオメプラゾールが、運動誘発性の胃の疾患の重症度を低下させるだろうという仮説を研究した。2002年に犬ぞりレースで競争していた各16頭のイヌ3群を研究に供した。各群内で、イヌを治療群(20mgオメプラゾールPO24時間ごと)、またはプラセボ群にランダムに振り分けた。投与は、レースの終了、または競技から個々のイヌが引退するまで投与した。終了、または引退後24時間目の全頭で胃内視鏡検査を実施し、主観的重症度スコアーにより胃粘膜に点数をつけた(0=正常、3=多数の出血性潰瘍)。
オメプラゾールの投与で、プラセボに比べると平均に重症度スコアーは有意に低下した(オメプラゾール:0.65±0.17、プラセボ:1.09±0.18;P=.028)が、レース中の下痢の発症率も増加した(オメプラゾール54%、プラセボ21%;P=.017)。
我々のデータの調査は、レース用そりイヌの運動誘発性胃疾患の治療にオメプラゾールは効果的かもしれないと示唆する。しかし、それら競技犬の通常の予防的処置に推奨できるようになる前に、オメプラゾール投与に関する下痢の原因や臨床的な関連に関しての更なる調査を行うべきである。(Sato訳)
■イヌの胃拡張-捻転
Gastric Dilatation-Volvulus in Dogs
N Z Vet J 51[6]:275-283 Dec'03 Review Article 81 Refs
C.J. Broome and V.P. Walsh

胃拡張-捻転(GDV)は、液体、またはガスによる胃の顕著な拡張と胃の変位である。複数臓器系の病状を引き起こし、急速に死に到る。通常は大型犬や超大型犬で見られる。この疾患は、家族的な素因を持つと思われる。食事の粒の大きさ、食餌回数、食べる速さ、空気嚥下や食器が高い位置にあることなど食餌要因と関連し、胸部の深さ/幅の比もイヌにGDVの素因を作ると思われる。怖がりやストレスのある出来事もGDVの素因を持たせる。考えられる臨床症状は、腹部膨大、からえづき、落ち着きがない、ショック症状、頻呼吸、呼吸困難である。初期治療は、ショックの治療と胃の減圧である。
外科的治療も迅速に行われるべきである。GDVの麻酔管理で、異なる麻酔薬の使用を比較した研究はない。オピオイド/ベンゾジアゼピンの併用前処置が推奨されている。オピオイド、神経刺激性ステロイド性薬剤、エトミデートのような心血管変化が最小限の導入剤が推奨される。麻酔は吸入薬剤で維持されるべきである。外科療法には、減圧、胃の変位の矯正、壊死組織のデブリードメント、胃腹壁固定が含まれる。胃腹壁固定のオプションには、切開性、チューブ、肋骨周囲、ベルトループ、組み込み、腹腔鏡胃腹膜固定などである。
外科療法の予想死亡率は、15-24%である。予後因子は、症状での精神状態、胃の壊死の存在、心不整脈の存在や血漿乳酸濃度である。予防的胃腹壁固定は、高リスクが認められるイヌで考慮すべきである。(Sato訳)
■自然発生イヌ胃拡張-捻転犬で菌血症と細菌移行
Bacteremia and Bacterial Translocation in the Naturally Occurring Canine Gastric Dilatation-Volvulus Patient
J Am Anim Hosp Assoc 39[4]:361-368 Jul-Aug'03 Original Report 32 Refs
* Kevin P. Winkler, DVM, DACVS; Cathy L. Greenfield, DVM, MS, DACVS; David J. Schaeffer, PhD

イヌ胃拡張-捻転(GDV)の死亡率は約15%で、死亡原因は敗血症、心不整脈、播種性血管内凝固、細菌移行と思われる。細菌移行は、解剖学的に無傷な胃腸バリアーを生育可能、または生育不可能な微生物が通過することと定義され、菌血症を起こすかもしれない。菌血症は血流中の細菌の存在と定義され、一次的、または持続的に臨床疾患に問題を起こすかもしれない。イヌで、胃拡張-捻転は細菌移行や菌血症の素因を持つ可能性がありと確認されている状態(例えば、虚血、再灌流傷害、門脈高血圧、胃の流出障害)である。この研究の目的は、外科的に治療したGDV犬の菌血症の罹患率と種類、それらが生存率に及ぼす影響を確認し、細菌移行の根源が胃からのものかどうかを判定することだった。
GDVのイヌ21頭と胃腸系が無傷のイヌで、1年間かけて前向き研究を行った。21頭中20頭は抗生物質の静脈投与(IV)を行った。他の薬剤は担当獣医師の判断で必要ならば投与した。全頭1本、または2本のIVカテーテルを、輸液と薬剤投与のために設置した。GDVの整復には標準的な術式を使用し、胃腹壁固定を行った。追加で行った術式には、部分的胃切除(n=1)、部分的胃嵌入(n=1)、脾摘出(n=3)があった。血液を無菌的に術前、中、後に採取し好気性、嫌気性培養を行った。
また腹腔閉鎖直前に肝臓と腸間膜リンパ節、胃から針生検でサンプルを採取し、好気性、嫌気性細菌培養を行った。GDV犬群の結果を、通常の卵巣子宮摘出術を行った正常な5頭のコントロール犬群から、同様の方法で採取したサンプルのものと比較した。全体で、GDV犬21頭のうち20等(95%)が生存し、病院を退院した。GDVの43%とコントロール犬の40%が血液培養陽性を示した。頻繁に分離された菌はグラム陰性桿菌だった。胃からの細菌移行所見はGDV犬で示すことができず、生存性は菌血症に左右されなかった。しかし、一時的な菌血症は、GDV犬、免疫抑制を誘発する併発疾患の関連で見られ、持続的菌血症の素因かもしれない。ゆえに著者は、GDV犬の周術抗生物質の使用を推奨する。(Sato訳)
■胃拡張-捻転の犬における、胃の壊死と生存の予測値としての血漿乳酸濃度:102症例(1995-1998)
J Am Vet Med Assoc 215[1]:49-52 Jul 1'99 Retrospective Study 28 Refs
Erika de Papp, DVM; Kenneth J. Drobatz, DVM, DACVIM, DACVECC; Dez Hughes, BVSC, DACVECC; Sections of Medicine and Critical Care, Dept. of Clinical Studies, School of Veterinary Medicine, University of Pennsylvania, Philadelphia, PA 19104-6010;
Plasma Lactate Concentration as a Predictor of Gastric Necrosis and Survival Among Dogs with Gastric Dilatation-Volvulus: 102 Cases (1995-1998)

目的:胃拡張-捻転の犬に関する、血漿乳酸濃度と胃壊死、そして血漿乳酸濃度と犬の予後との関連を明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:102頭の犬
手順:特徴、病歴、血漿乳酸濃度、内科、および外科治療、入院費用、そして予後の情報を、医療記録から検索しました。
結果:血漿乳酸濃度<6.0mmol/Lであった犬の70頭中69頭(99%)が生存したのに対し、血漿乳酸濃度>6.0mmol/Lであった犬は、31頭中18頭(58%)が生存した(経済的理由から、安楽死した1頭の犬は、含んでおりません)。胃壊死は、38頭の犬(37%)に認められました。胃壊死であった犬の血漿乳酸濃度中央値(6.6mmol/L)は、壊死していなかった犬の中央値(3.3mmol/L)より有意に高い値でした。胃壊死を呈した犬に対する、予測血漿乳酸濃度(6.0mmol/Lの境界)の特異性と感受性は、それぞれ88%と61%でした。胃壊死を呈さなかった犬の63頭中62頭(98%)は生存したのに対し、胃壊死を呈した犬では、38頭中25頭(66%)が生存しました。
結論と臨床関連:術前血漿乳酸値は、GDVの犬における胃壊死、予後に関する良い指標でした。術前の血漿乳酸値測定は、GDVの犬において、予後を決定する助けとなるでしょう。(Dr.K訳)
■肋骨周囲の胃固定に対し、胃結腸固定を行った後、捻転を伴う、または伴わない胃拡張の再発率の比較
Eggertsdottir AV et al; Vet Surg 30[6]:546-51 2001 Nov-Dec ;Comparison of the recurrence rate of gastric dilatation with or without volvulus in dogs after circumcostal gastropexy versus gastrocolopexy.

目的:犬に肋骨周囲への胃固定、または胃結腸固定後の、捻転を伴う、または伴わない急性胃拡張の再発率を比較することです
研究構成:複数機関における、予見的二重盲目な無作為コントロールの2グループ(AとB)を有する臨床試験
動物:胃拡張捻転で来院した54頭の飼育犬
方法:過去に胃固定を実施されていない、急性胃拡張捻転の犬を用いました。胃固定の前に、標準的な術前処置を行いました。グループAは肋骨への胃固定を行った犬で、グループBは胃結腸固定を行った犬としました。標準的な術後処置を行いましたが、一部の患者の特別な要望により、偏りが生じました。最低180日の追跡期間が、この研究から除外されないための基準としました。グループAの追跡期間の中央値は700日で、グループBは400日でした。術後の腹部の痛みや胃腸の問題の発生を、オーナーに記録してもらいました。
結果:2つのグループにおける、胃拡張捻転の再発率に有意差はありませんでした。この研究の終了時で、グループAの再発率は9%、グループBの再発率は20%でした。
結論:両外科手技は、胃拡張捻転の再発予防に対して効果的です。(Dr.Sato訳)