■秋田犬の血清25-ヒドロキシビタミンD濃度
Serum 25-hydroxyvitamin D concentration in Japanese Akita dogs: A survey
Vet Anim Sci. 2020 Aug 17;10:100139.
doi: 10.1016/j.vas.2020.100139. eCollection 2020 Dec.
L Casini , D Zago , E Cavicchioli , C Tomiazzo

ビタミンDの血清低濃度は、多数の疾患に関連している。秋田犬はぶどう膜皮膚(UVD)症候群や皮脂腺炎(SA)のような免疫介在性疾患の発生率が高い。さらに、健康な秋田犬において、皮膚色素脱失は他の徴候がなく、生後異なる年齢で出現する。ヒトにおいて、白毛は低ビタミンD濃度に関係する。

この研究の目的は、秋田犬において血清25-ヒドロキシビタミンD(25(OH)D)濃度を評価することだった。

103頭の液体布血液サンプルを25(OH)D評価のために収集した。年齢、性別、併発疾患、皮膚色素脱失の有無とその部位、食餌を医療記録に報告した。病歴、臨床検査を基に、犬の健康状態に従い、健康(HE)あるいは病的(PA)と分類した。

全体の平均25(OH)D濃度は、82.42±26.14ng/mLだったが、疾患を持つ犬(72.13±4.09ng/mL)と比べ、健康犬(84.90±3.36ng/mL)の濃度は有意に高かった(P<0.01)。この研究において、色素脱失の健康犬は、25(OH)Dの濃度が低く、病的群と非常に似ていた。

ビタミンDの低濃度に関係する色素脱失部分の所見は、ヒトと同様に秋田犬の警戒する症状として考慮できた。しかし、ビタミンD補給が、秋田犬の免疫介在性疾患の発現を制限するための効果的な予防処置となり得るかどうか確証するため、臨床試験も実施すべきである。(Sato訳)
■現代のペルシャ猫における短頭特性と頭蓋骨の異常形態および内水頭症の関連
The Relationship between Brachycephalic Head Features in Modern Persian Cats and Dysmorphologies of the Skull and Internal Hydrocephalus.
Language: English
J Vet Intern Med. 2017 Sep-Oct;31(5):1487-1501.
M J Schmidt , M Kampschulte , S Enderlein , D Gorgas , J Lang , E Ludewig , A Fischer , A Meyer-Lindenberg , A R Schaubmar , K Failing , N Ondreka

背景:極端な短頭形態のペルシャ猫において、猫のブリーダーはたびたび内水頭症の発生を認めた。

目的:ペルシャ猫の短頭のグレードと脳室拡張、頭蓋骨異常形態の潜在的関連を調査する

動物:ペルシャ猫92頭とイエネコ短毛猫10頭

方法:短頭のグレードはCTデータを基にした頭蓋モデルで判定した。頭蓋測定値は、脳室容積、頭蓋容量の潜在的関連に関して検査した。高い(peke-faceペルシャ)およびより低い(doll-faceペルシャ)グレードの短頭のペルシャ猫は頭蓋異常形態の有無について調査した。

結果:peke-faceペルシャの平均頭蓋指数(0.97±0.14)は、doll-faceペルシャ(0.66±0.04;P<0.001)より有意に高かった。peke-faceペルシャの相対的鼻骨長(0.15±0.04)はdoll-face(0.29±0.08;P<0.001)よりもひくかった。doll-faceの頭蓋内容積はpeke-faceペルシャよりも有意に低かった(89.6±1.27% vs 91.76±2.07%;P<0.001)。頭蓋指数はこの変数と有意に相関した(Spearman’s r:0.7;P<0.0001)。peke-face群の平均脳室:脳比(0.159±0.14)は、doll-faceペルシャ(0.015±0.01;P<0.001)と比べて有意に高かった。

結論と臨床関連:ハイグレードの短頭は、頭頂骨や顔面骨の形成異常と共に歯の奇形とも関連する。それらの異常形態が動物福祉に影響しえるなら、ペルシャ猫の極端な短頭形態の選別を再考すべきである。(Sato訳)
■2つの標準化した激しい運動プロトコールに対する反応を含むボーダーコリー虚脱の犬の評価
Evaluation of Dogs with Border Collie Collapse, Including Response to Two Standardized Strenuous Exercise Protocols.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Sep-Oct;52(5):281-90.
Susan Taylor , Cindy Shmon , Lillian Su , Tasha Epp , Katie Minor , James Mickelson , Edward Patterson , G Diane Shelton

ボーダーコリー虚脱(border collie collapse:BCC)の犬13頭において、標準化した激しい運動プロトコールの前、途中、その後の臨床および代謝の変数を評価した。

6頭の犬はボール回収プロトコールに参加し、7頭の犬は羊の群れを集めるプロトコールに参加した。同じ運動プロトコールに参加した16頭の正常なボーダーコリーと所見を比較した(11頭は回収、5頭は羊集め)。

BCCの12頭は評価中に異常な精神状態および/あるいは異常な歩様を発症した。全ての犬は、激しい運動で予測されるような直腸温、心拍数、動脈血pH、PaO2、乳酸の上昇と、PaCO2と重炭酸塩の低下が見られたが、BBCの犬と正常犬に有意差はなかった。心電図検査は運動後の全ての犬で、洞性頻脈を示した。それらの検査をしたBCCの10頭の犬において、針筋電図検査は正常で、組織学的染色標準パネルと反応を用いた筋バイオプシー凍結切片の評価で虚脱の理由は明らかにならなかった。

遺伝子検査は、BCCの原因として運動誘発性虚脱ミューテーションとV547A悪性高熱ミューテーションに関連するdynamin-1を除外した。運動不耐性の一般的な理由は除かれた。遺伝的根拠は疑われるが、BCCの虚脱の原因は判定されなかった。(Sato訳)
■雑種および純血種の犬の遺伝性疾患の有病率:27254症例(1995-2010)
Prevalence of inherited disorders among mixed-breed and purebred dogs: 27,254 cases (1995-2010).
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2013;242(11):1549-55.
Thomas P Bellumori; Thomas R Famula; Danika L Bannasch; Janelle M Belanger; Anita M Oberbauer

目的:一般的な遺伝性疾患の雑種および純血種の犬の比率を判定する

構成:症例-コントロール研究

動物:遺伝性疾患を持つ27254頭の犬

方法:血管肉腫、リンパ腫、肥満細胞腫、骨肉腫、大動脈弁狭窄、拡張型心筋症、肥大型心筋症、僧帽弁形成異常、動脈管開存症、心室中隔欠損、副腎皮質機能亢進症、副腎皮質機能低下症、甲状腺機能低下症、肘形成異常、股関節形成異常、椎間板疾患、膝蓋骨脱臼、前十字靱帯断裂、アトピーあるいはアレルギー性皮膚炎、鼓腸、白内障、てんかん、水晶体脱臼、門脈体循環シャントの24の遺伝性疾患を電子カルテから再調査した。各疾患に対し、各罹患犬と年齢、体重、性別がマッチした健康なコントロール犬を確認した。

結果:遺伝性疾患は発現で異なった。13の疾患で純血犬と雑種犬の間に発現の違いは検出されなかった(すなわち、股関節形成異常、副腎脾実機能低下症、副腎皮質機能亢進症、癌、水晶体脱臼、膝蓋骨脱臼)。純血犬は拡張型心筋症、肘形成異常、白内障、甲状腺機能低下症を含む10の遺伝性疾患を持つ可能性が高かった。雑種犬は前十字靱帯断裂の可能性がより大きかった。

結論と臨床関連:両集団における遺伝性疾患の有病率は、特定の疾患と関連があった。近頃派生した犬種あるいは同様の血統からの犬は、全ての密接に関連する純血犬に影響する確かな疾患により感受性を持つ一方、2集団で同様の有病率を持つ疾患は、広く犬の集団に広がったより古来の突然変異を表していると示唆された。結果はどのように繁殖が疾患の有病率を低下させるのかに対する洞察を提供した。(Sato訳)
■1頭のメス犬に見られた腟中隔の内視鏡的切除と2頭の血縁のメス犬の中隔の観察
Endoscopic resection of a vaginal septum in a bitch and observation of septa in two related bitches.
N Z Vet J. July 2012;60(4):258-60.
S P Arlt; J Rohne; A D Ebert; W Heuwieser

症例病歴:2008年、3歳のメスのラブラドールレトリバーが、通常の交配のための健全性の評価のために来院した。

臨床所見:腟の内視鏡検査で8cm長、1cm厚の腟中隔を認めた。中隔の外科的切除は全身麻酔下でバイポーラ高周波切除用内視鏡により行った。3か月後、メス犬は自然交配し、その後問題なく5頭のオスと2頭のメスの子犬を出産した。2頭のメスの子犬を12か月と15か月齢に検査し、それぞれ直径0.3と0.5cmの腟中隔を認めた。

診断:3頭の関連したメス犬に見られた腟中隔

臨床的関連:これは、犬の腟中隔に対しバイポーラ高周波切除用内視鏡の使用を述べた最初の報告である。その中隔は周囲組織を保ったまま迅速に切除できた。
さらに、メス犬の腟中隔の家族性について情報を集めた最初の報告で、この症例を基に、著者らはメス犬の腟中隔の外科的切除および交配を考える前に、遺伝の潜在的リスクを考慮すべきだと示唆する。(Sato訳)
■ニューファンドランド犬における大動脈弁下部狭窄の遺伝所見
Genetic evidence of subaortic stenosis in the Newfoundland dog.
Vet Rec. June 2012;170(23):597.
S B Reist-Marti; G Dolf; T Leeb; S Kottmann; S Kietzmann; K Butenhoff; S Rieder

大動脈弁下部狭窄(SAS)は心臓の左室流出路よりあと下行大動脈の狭窄を伴う心疾患である。いろいろな動物腫および品種で発生する。ニューファンドランドは通常若い成犬時に死亡することの多い犬種の1つである。SASはどの程度遺伝的背景を持つのか、遺伝のその様式は何なのかいまだ議論中である。

SASと診断された6023頭の犬を含む、ヨーロッパおよび北アメリカ集団で19世紀までさかのぼる230000頭以上のニューファンドランド犬の大規模な血統データからSAS疾患に影響する遺伝因子を分析した。

今回分析したニューファンドランド集団サンプルにおけるSASの発生率と有病率は、過去のより小規模な集団サンプルでの研究で報告されたものよりかなり高かった。いくらかのSAS罹患犬が発見されないまま、あるいは報告されないままと仮定すれば、それらの数字はさらに過小評価されるかもしれない。SASのニューファンドランド犬は、侵されていない犬よりも近親交配、より血縁の近い交配によるものが多く、SASの遺伝的背景の1つの指標である。性別はSAS有病に有意な影響をもたず、常染色体遺伝を指し示す。

唯一そのデータにうまくあてはまる遺伝の単純な様式は、致死的ホモ接合性とヘテロ接合性の1/3の浸透度を伴う常染色体共優性だった。(Sato訳)
■ゴールデンレトリバーの家族性大動脈弁下狭窄:遺伝および心エコー所見
Familial subvalvular aortic stenosis in golden retrievers: inheritance and echocardiographic findings.
J Small Anim Pract. April 2012;53(4):213-6.
J A Stern; K M Meurs; O L Nelson; S M Lahmers; L B Lehmkuhl

目的:大動脈弁下狭窄のゴールデンレトリバーの心エコー所見と系統分析を述べる

方法:73頭のゴールデンレトリバーを聴診と心エコー検査で評価した。肋骨下連続波ドップラー大動脈速度e2?5 m/sと左心基底部収縮期駆出性雑音が大動脈弁下狭窄の診断に必要だった。3つの心エコー特性を記録した:大動脈弁閉鎖不全、弁下隆起あるいは左室肥大所見。疾患状態スコアは、1頭当たりの心エコー特性の数の合計で算出した。

結果:73頭のうち32頭が罹患しており、それらの大動脈速度は、2.5-6.8m/s、中央値3.4m/s、標準偏差1.2m/sだった。その32頭の心エコー特性は、32頭中12頭は左室肥大、20頭が大動脈弁閉鎖不全、20頭が弁下隆起だった。疾患状態スコアは0-3の範囲で中央値は2だった。大動脈速度と疾患状態スコアの間に統計学的に有意な相関があった(r=0.644、P<0.0001)。大動脈弁下狭窄はいくつかの家系の複数の世代で観察され、家族性と思われた。

臨床的意義:ゴールデンレトリバーの大動脈弁下狭窄は家族性である。狭窄の重症度は心エコー特性(左室肥大、弁下隆起、大動脈弁狭窄)の累積数によく相関する。(Sato訳)
■アラスカンマラミュートの遺伝的多発性ニューロパシー
Hereditary polyneuropathy in the Alaskan Malamute.
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. February 2012;40(1):26-34.
K Rentmeister; T Bilzer; S Petri; G Schanen; M Fehr; O Distl; A Tipold

目的:アラスカンマラミュートの多発性ニューロパシーは遺伝的な背景があるという仮説を証明すること

材料と方法:131頭の関係あるアラスカンマラミュートの家系図をこの研究に含めた。神経学的検査、電気診断と筋および神経バイオプシーを10頭で実施できた。他の121頭の疾患状況についての情報は、委託獣医師、ブリーダー、オーナーから提供してもらった。異なる4つのモデル(単一遺伝子、多遺伝子、単一-多遺伝子混合、表現型モデル)を使用した分離比分析を、遺伝子伝達の異なるメカニズムを検査するため71頭で実施した。

結果:臨床的に影響を受けた7頭で、異常な筋電図所見と神経伝導速度の低下が検出された。多発性ニューロパシーを疑う診断は、軸索変性および低髄鞘形成を特徴とする神経バイオプシー結果により確認された。筋肉標本では神経原性ミオパシーの徴候が明らかだった。臨床的に正常なアラスカンマラミュートの3頭も、病理組織検査で中程度の神経筋肉変化を示した。分離比分析において、多遺伝子モデルが他の検査した全てのモデルの中で観察された分離パターンを説明するのに最も適していると判明した。

結論:アラスカンマラミュートの多発性ニューロパシーは遺伝的疾患で、重度から無症状の型まで不定の表現型発現をもつことがこの研究で証明でき、今後、遺伝子分析研究を考慮すべきである。(Sato訳)
■イングリッシュスプリンガースパニエルの慢性肝炎:臨床症状、組織学的記述および転帰
Chronic hepatitis in the English springer spaniel: clinical presentation, histological description and outcome.
Vet Rec. October 2011;169(16):415.
N H Bexfield; C Andres-Abdo; T J Scase; F Constantino-Casas; P J Watson

慢性肝炎(CH)の組織学的診断を受けた68頭のイングリッシュスプリンガースパニエル(ESS)の医療記録および肝臓組織検査結果を回顧的に検討した。肝臓組織で犬アデノウイルス-1(CAV-1)、犬パルボウイルス、犬ヘルペスウイルスおよび病原性レプトスピラ種のPCRを実施した。生存期間を算出するために追跡調査情報を入手した。来院時の年齢中央値は3年7ヶ月齢(範囲、7か月-8年5ヶ月)で、48頭のメスと20頭のオスだった。臨床症状は非特異的で、5頭は無症候性だった。全ての犬は、1つ以上の肝胆汁性酵素の血清活性が上昇していた。病理組織検査では、さまざまな程度の線維症を伴う肝細胞壊死およびアポトーシスを認めた。全68頭の肝実質のいたるところに主にリンパプラズマ細胞性浸潤が見られたが、それらのうち45頭には炎症性浸潤をなす好中球性成分も見られた。有意な銅蓄積もなく、PCRによる原因病原体も認めなかった。生存期間中央値は189日(範囲、1-1211日)、38頭は診断後3か月以内に死亡し、12頭は1年以上生存した。(Sato訳)
■ボーダーコリーの先天性感音性難聴と色素沈着表現型の有病率、遺伝率、遺伝的相関
Prevalence, heritability and genetic correlations of congenital sensorineural deafness and pigmentation phenotypes in the Border Collie.
Vet J. June 2011;188(3):286-90.
Luisa De Risio; Tom Lewis; Julia Freeman; Alberta de Stefani; Lara Matiasek; Sarah Blott

この研究の目的は、ボーダーコリーの先天性感音性難聴(CSD)と色素沈着表現型の有病率、遺伝率、遺伝的相関を評価することだった。4-10週齢で脳幹聴覚誘発反応(BAER)により聴力の評価のため、Animal Health Trust (1994-2008)に来たボーダーコリーの全ての同腹子を研究した。遺伝率と遺伝的相関は、残差最尤法(REML)で評価した。
含有基準に合った4143頭の子犬で、97.6%は正常な聴力、2.0%は片側性難聴、0.4%は両側性難聴だった。三叉特性(正常/片側性難聴/両側性難聴)として難聴の遺伝率は多変量分析を使用して0.42と推定された。虹彩色およびマール毛色と難聴の遺伝的相関はそれぞれ0.58および0.26だった。
それらの結果はボーダーコリーの先天性感音性難聴に対する有意な遺伝的影響があり、難聴を決定する遺伝子のいくつかも色素沈着表現型に影響することを示す。(Sato訳)