■重症熱性血小板減少症候群の猫の尿:感染伝播の可能性のある源
Urine of Cats with Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome: A Potential Source of Infection Transmission
Pathogens. 2025 Mar 5;14(3):254.
doi: 10.3390/pathogens14030254.
Hirohisa Mekata , Mari Yamamoto , Yasuyuki Kaneko , Kentaro Yamada , Tamaki Okabayashi , Akatsuki Saito
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)(SFTSウイルスの感染による)は、東アジアで流行する新しい致死性のダニ媒介による人畜共通伝染病である。SFTSはダニ媒介性疾患であるが、そのウイルスはダニに咬まれることなくSFTSの動物から伝播することができる。動物からヒトへのSFTSウイルスの直接伝播が報告されている;しかし、伝播ルートは不明なケースもある。
ゆえに、この研究は尿を通してのSFTSウイルス伝播の可能性の注目し、SFTSの動物の尿から感染性ウイルスの分離を試みた。SFTSウイルスが存在するかどうかを判定するため、より効果的な細胞分離が必要なため、最初にウイルスの主要レセプターである樹状細胞特異ICAM-3キャッチング非インテグリン(DC-SIGN)を、レトロウイルスベクターを用いたVero細胞(Vero-DC-SIGN細胞)に発現させた。
SFTSウイルス株とSFTSウイルス感染動物の血清を同量接種した時、親のVero細胞と比べ、Vero-DC-SIGN細胞はそれぞれ、42-136%と20-85%多くフォーカスを示した。
Vero-DC-SIGN細胞がSFTSウイルスの分離に対しより安定していたことを確認後、SFTSの猫8頭と犬2頭の尿から分離できたかどうかを調査した。SFTSの2頭からの25μLの尿からウイルスが分離された。
猫が1日に50-100mLの尿を排泄すると考えると、SFTSの猫の尿を通してSFTSウイルスの伝播は除外することができない。SFTSを持っているかもしれない猫に対して検査あるいは看護をする人は、尿を通してのウイルス伝播の可能性を知っておくべきである。(Sato訳)
■701頭の犬において血液培養プロトコールと検査陽性を調査する多施設の回顧的研究
Multi-institutional retrospective study investigating blood culture protocols and test positivity in 701 dogs
Front Vet Sci. 2023 Dec 11:10:1301018.
doi: 10.3389/fvets.2023.1301018. eCollection 2023.
Andrzej J Ogrodny , Rinosh Mani , Sarah M Schmid , Emily N Gould , Claire L Fellman , Ian DeStefano , Sarah Shropshire , Jillian M Haines , Timothy A Bolton , Sara A Jablonski , Nicole Jess , Harry Cridge
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目的:(1)血液培養(BC)陽性に対する標本採取プロトコール(タイミングと標本の質)、原発疾患過程、既存の抗菌剤、あるいは免疫抑制治療の影響を判定すること、(2)尿培養とBC結果の一致性を判定する。
動物:701頭の飼い犬
方法:複数施設の回顧的研究(2019-2022)。混合-効果ロジスティック回帰を使用し、原発疾患の経過、BCsの数、標本収集のタイミングがBC陽性に関係するかどうかを調べた。予測プロットを作成した。尿培養とBC結果の関係は、ロジスティック回帰を使用して行った。
結果:尿培養陽性の犬は、陽性のBCである確率が高かった(OR:4.36、95%CI:2.12-8.97、p=0.003)。3つのBC標本のある犬は、陽性のBC結果を得る確率が最大(補正適中率:0.44、95%CI:0.21-0.70)だったが、有意ではなかった。陽性のBCだった犬の38%からの分離菌は、3つ以上の抗菌剤クラスに対して抵抗性があった。標本収集間のタイミングとBC陽性に有意な関係はなかった。既存の抗菌剤あるいは免疫抑制治療はBC陽性に有意な関係はなかった。
臨床的関連:尿培養陽性の犬は陽性のBC結果となる確率が高かった。(Sato訳)
■台湾の犬と猫の重症熱性血小板減少症候群の疫学
Epidemiology of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome in Dogs and Cats in Taiwan
Viruses. 2023 Nov 28;15(12):2338.
doi: 10.3390/v15122338.
Chih-Ying Kuan , Shan-Chia Ou , Chao-Chin Chang , Pei-Ling Kao , Ruei-Sheng Tsai , Porjai Rattanapanadda , Tsai-Lu Lin , Ken Maeda , Tsun-Li Cheng , Ya-Jane Lee , Shih-Te Chuang , Shiun-Long Lin , Hsien-Yueh Liu , Fong-Yuan Lin , Jen-Wei Lin , Wei-Li Hsu , Chi-Chung Chou
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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)により引き起こされ、世界的な健康の脅威である。台湾におけるSFTSVは、反芻動物と野生動物のみで報告されている。
ゆえに、我々は、ヒトと密接に関係する動物である犬と猫の感染状況の調査を目的とした。
全体のSFTSV RNA有病率は23%(170/735)で、犬では25.9%(111/429)、猫では19.3%(59/306)の有病率を示した。顕著に、飼われている動物(17.2%、93/542)よりも、さまよっている動物(39.8%、77/193)の有病率の方が有意に高かった。
解析した4つのカテゴリーの中で、野良犬のSFTSVの有病率は53.9%(120/193)と最も高いことが分かり、野良猫で見られた24.2%よりも有意に高かった。対照的に、買われている動物は同じような有病率で、犬で17.1%と猫で17.2%だった。
飼われている動物群において、有意に上昇している有病率(45%、9/20)は、血小板数が参照範囲内の猫(4.8%、1/21)と比べ、血小板減少を呈している猫で観察されたことが注目すべきところである。
さまよっている動物の高い感染率(特に野良犬)は、種々の屋外環境の暴露が、感染の有病率に影響することを示した。
ヒトと犬や猫との高い相互作用があるとすれば、動物とヒトの両方でSFTSVの感染に関係するリスクを減らすための率先した処置を必要とする。(Sato訳)
■タイの犬の集団中の重症熱性血小板減少症候群ウイルスの高い血清有病率
High Seroprevalence of Severe Fever with Thrombocytopenia Syndrome Virus Infection among the Dog Population in Thailand
Viruses. 2023 Dec 11;15(12):2403.
doi: 10.3390/v15122403.
Keita Ishijima , Thanmaporn Phichitraslip , Nattakarn Naimon , Preeyaporn Ploypichai , Benyapa Kriebkajon , Torntun Chinarak , Jirasin Sridaphan , Anamika Kritiyakan , Noppadol Prasertsincharoen , Sathaporn Jittapalapong , Kanate Tangcham , Worawut Rerkamnuaychoke , Yudai Kuroda , Masakatsu Taira , Kango Tatemoto , Eunsil Park , Milagros Virhuez-Mendoza , Yusuke Inoue , Michiko Harada , Tsukasa Yamamoto , Ayano Nishino , Aya Matsuu , Ken Maeda
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重症熱性血小板減少症候群(SFTS)は、SFTSウイルス(SFTSV)が原因の新興のダニ媒介人畜共通疾患である。タイでは2019年と2020年にSFTSのヒトの3症例が報告されているが、動物でのSFTSV感染の報告はない。
我々の研究は、タイで少なくとも16.6%の犬がSFTSV感染に対し血清反応陽性で、SFTSV陽性犬は、タイのいくつかの地区で見つかっていることを明らかにした。また、1か所のシェルターで集めた血清サンプルの70%以上がSFTSVに対するウイルス中和抗体を有し、ほぼ完全なSFTSVのゲノム配列がシェルターの1頭の犬から判定された。その犬のSFTSVは、タイと中国の患者のそれと遺伝的に近く、遺伝子型J3に属した。
それらの結果は、タイでSFTSVはすでに動物の中で広がっていることを示した。(Sato訳)
■15頭の犬の頸部リンパ節膿瘍に対する回顧的特徴と外科的治療の結果
Retrospective characterisation and outcome of surgical treatment for cervical lymph node abscessation in 15 dogs
N Z Vet J. 2023 Feb 3;1-14.
doi: 10.1080/00480169.2023.2176938. Online ahead of print.
T C Tang , B Ringwood , W Degroot
症例履歴:個人紹介病院(Veterinary Emergency Clinic、トロント、カナダ)と大学教育病院(ルイジアナ州立大学、バートンルージュ、LA、USA)の医療記録から、リンパ節切除、リンパ節摘出、頸部リンパ節炎、リンパ節膿瘍の言葉で検索し再調査した。2015年1月から2022年5月までに病理組織学検査で頸部リンパ節膿瘍と確認され、治療で手術を行った犬(n=15)を研究に含めた。各飼主に直接あるいは電話による聞き取りで長期フォローアップデータを入手した。
組み込み基準に合った犬は、種々の犬種、年齢中央値6歳(最低0.5、最高12歳)だった。全ての症例は頸部の腫脹、元気消失、5/15頭で食欲不振、発熱を伴っていた。治療までの臨床症状の持続期間の範囲は1-3週間だった。紹介される前に7頭の犬は短期間の抗生物質(±プレドニゾン)で治療され、解消しなかった。
臨床所見:CTあるいは頸部超音波検査を使用した診断画像検査で、4頭は領域蜂巣炎および浮腫を伴う片側下顎あるいは咽頭後リンパ節の拡大、8頭は領域蜂巣炎を伴う片側咽頭後リンパ節の拡大、1頭は浮腫を伴う右内側咽頭後リンパ節に浸潤する右腹側頚部膿瘍が明らかとなった。片側あるいは両側頸部リンパ節膿瘍は、リンパ節切除および罹患リンパ節の病理組織検査で診断された。切除したリンパ節のサンプルの細菌培養は6頭で陽性だった。
治療と結果:頸部探索及びリンパ節切除は全ての症例で行われた。13頭の犬は外科的治療に加え、抗生物質を投与された。長期フォローアップ時(中央値300日(最低240、最高1072日))、解消は頚部の腫脹した、あるいは拡大したリンパ節がないことと定義した。ほとんどの犬は罹患リンパ節の外科的切除後に臨床症状が解消した。2頭の犬は術後の臨床症状の再発および開放創を含む合併症があった。抗生物質の追加投与後、それらの臨床症状は解消した。
結論と臨床関連:このシリーズの全ての犬は、膿瘍を形成したリンパ節を切除し、良好な結果で臨床症状の解消を示した。外科的治療と共に、抗生物質も13/15頭で投与されたため、抗生物質の適切な使用もこの疾患プロセスの治療において役割を果たしているかもしれない。(Sato訳)
■犬対犬の咬傷に対する抗菌剤:咬まれた犬1526頭の遡及的研究
Antimicrobials in dog-to-dog bite wounds: A retrospective study of 1526 dog bite events (1999-2019)
J Vet Intern Med. 2022 Nov 18.
doi: 10.1111/jvim.16574. Online ahead of print.
Nicole J Kalnins , Justine S Gibson , Allison J Stewart , Catriona Croton , Sarah L Purcell , Bandula Rajapaksha , Mark Haworth
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背景:犬と犬の咬傷(DBW)は一般的にあるが、抗菌剤の使用パターンあるいは適正な使用を評価している研究は世界的に少ない。
目的:抗生物質感受性パターンを含むDBW培養の頻度と結果を報告する。DBWの治療に対し一般的に処方される抗菌材とその適正さ、抗菌剤の重要性が傷の重症度、病院のタイプ、年と関係するのかどうかを調べる
動物:1999年から2019年までに3か所のオーストラリアの大学病院から、DBWを呈した1436頭の犬が関与する1526か所の咬傷
方法:遡及的研究。現症状、培養と感受性試験、抗菌剤治療、結果に対し、医療記録を再調査した。部分比例オッズモデルで、より重要性の高い抗菌剤が傷の重症度、病院あるいは年に関係するかどうかを判定した。
結果:抗菌剤はDBWの88.1%(1344/1526)に処方された。アモキシシリン-クラブラン酸は73.4%(1121/1526)の犬に処方され、続いて第一世代セファロスポリンが18.1%(277/1526)だった。合計1647の抗菌剤処方のうち、過少量投与はAMCの13.4%(220/1647)、第一世代セファロスポリンを処方した犬の26.1%(81/310)で発生した。高い重要性の抗菌剤の使用と、傷の重症度(P<.001)、抗菌剤他剤療法(P<.001)、年(P<.001)との間に関係があった。DBWに対し、中程度の重要性抗菌剤を処方する専門医のいる病院に比べ、高い重要性の抗菌剤を処方する専門医のいる病院の比率は、公害の混合及び一般診療のそれより82%少なかった。培養と感受性(C&S)試験は、1.8%の犬に実施されていた。
結論と臨床的重要性:アモキシシリン-クラブラン酸の経験的な使用はDBWに対し一般的だった。創の重症度が増すことは、高い重要性の抗菌剤の使用増加と関係した。C&S試験が実施されることは珍しいが、規則的な感受性プロフィールが最適な抗菌剤の管理に推奨される。(Sato訳)
■犬の破傷風における生存性-42症例の遡及的解析(2006-2020)
Survival in canine tetanus - retrospective analysis of 42 cases (2006-2020)
Front Vet Sci. 2022 Dec 15;9:1015569.
doi: 10.3389/fvets.2022.1015569. eCollection 2022.
Johannes Zitzl , Jens Dyckers , Arne Güssow , Hendrik Lehmann , Katarina Hazuchova
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目的:破傷風の犬の生存性の関与する因子を明らかにし、確立された重症度分類シェーマの予後的意義を評価する
方法:破傷風の臨床診断を受けた犬の医療記録から、シグナルメント、臨床症状、入院時の臨床病理所見、創の特徴、合併症、治療法、退院時生存性に関して遡及的に再調査した。抽出データを基に、犬を過去に発表された4クラス重症度シェーマに従いグレードを付けた。生存カテゴリー間の比較に、非パラメトリックテストを使用した。
結果:42頭が組み込み基準を満たし、そのうち32頭は生存した。生存しなかった10頭のうち、4頭は死亡し、6頭は安楽死された。生存しなかった犬は2歳よりも若い犬が多く(6/10
vs 7/32頭、p=0.023)、破傷風の特定症状の持続期間が短く(典型的症状の発現から受診までの日数)(2 vs 4日、p=0.016)、受診前の抗生物質の処方が少なく(p=0.006)、破傷風重症度のグレードがより高く(クラスIIIあるいはIV
死亡が10/12頭、p<0.001)、アセプロマジン(p=0.009)及びアトロピン(p=0.012)の投与がより多く、高熱(p=0.005)および呼吸器合併症(肺炎、喉頭けいれん;p=0.008)を出すことが多かった。創の特徴、チューブフィーディングの使用、メトロニダゾール、メトカルバモール、マグネシウム、抗毒素は、非生存と生存間で有意差がなかった。
臨床意義と結論:重度全身性破傷風の経過が早い若い犬は、予後に注意が必要である。過去に述べられている重症度分類シェーマは、生存性の予測に役立つ。年齢、鎮静剤の使用、呼吸器合併症の有無を含めた確立された分類シェーマの修正バージョンを明らかにするため、前向き多施設研究が必要である。(Sato訳)
■RT-PCRと免疫クロマトグラフィーを用いたジステンパーの犬の脳脊髄液、全血および粘膜標本内の犬ジステンパーウイルスの検出
Detection of canine distemper virus in cerebrospinal fluid, whole blood and mucosal specimens of dogs with distemper using RT-PCR and immunochromatographic assays
Vet Med Sci. 2022 Apr 1.
doi: 10.1002/vms3.790. Online ahead of print.
Ali Asghar Sarchahi , Mohammad Arbabi , Hadi Mohebalian
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背景:高伝染性および急性ウイルス疾患の犬ジステンパー(CD)の正確な診断は、臨床診断や血液学的所見を基に下すことはできないが、臨床症状と一致する血清学的および分子学的方法も必要である。サンプルのタイプ、組織のサンプリング方法も非常に重要である。慢性症例において、時折犬ジステンパーウイルス(CDV)が血液や結膜標本で検出されないときもあるが、脳脊髄液(CSF)において検出できる。
目的:この研究の目的は、CDVの検出においてCSFサンプルと全血および結膜サンプルの感受性を評価、比較することだった。
方法:RT-PCRと急速免疫クロマトグラフィー(IC)抗原検査キットにより、明らかな神経症状±CDに一致する全身症状のある20頭の犬のCSF、全血および粘膜標本においてCDVを検出した。
結果:急速キットの結果は、10症例(50%)の粘膜スワブ、17症例(85%)のCSFで陽性で、RT-PCRの全血の結果は、11症例(55%)、CSFは16症例(80%)で陽性だった。
結論:我々の結果は、同時あるいは最近の全身徴候を示している神経症状のある犬で、RT-PCRおよび急速IC抗原検査キットによるCDVの診断に対し、全血、CSF、粘膜スワブは安定しているが、組織的に無症候性あるいは聴器の全身症状がなかった神経学的症状のある犬は、全血および粘膜スワブは良くなく、CSFが良い。(Sato訳)
■日本の犬レプトスピラ症流行
Canine Leptospirosis Outbreak in Japan
Front Vet Sci. 2021 Dec 9;8:763859.
doi: 10.3389/fvets.2021.763859. eCollection 2021.
Jun Saeki , Aki Tanaka
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2017年、10月12日から11月10日までに、日本の大阪府で11頭の犬に犬レプトスピラ症が疑われ、9頭が1か月以内に死亡した。そのうち8頭は、同じ川沿いを散歩しており、4頭は同じ町に住んでいた。
その症例群と匹敵群との間のロジスティック回帰分析で、川沿いに沿って散歩していた犬は、川沿いを散歩していなかった犬よりもレプトスピラ症感染の確率が11.3倍高い(p=0.044)ことを示した。それらの散歩はリスクファクターであったと示唆される。2頭の犬の顕微鏡的凝集試験で、Leptospira
interrogans serovar Australisに対する抗体価は1:2560と1:10240を示した。ゆえに、日本では犬のワクチンが入手不可能なL.
interrogans serovar Australisが原因病原体と疑われた。
それらの結果、L. interrogans serovar Australisが局地的なアウトブレークを引き起こす可能性があることが示唆された。種々の血清型に対する犬ワクチンの開発が局地的感染を減らすのに役立つかもしれない。レプトスピラ症は犬の重要な感染疾患であり、また人獣共通疾患でもある。(Sato訳)
■犬と猫の腹部クリプトコッカス症:38症例(2000-2018)
Abdominal cryptococcosis in dogs and cats: 38 cases (2000-2018)
J Small Anim Pract. 2020 Oct 26.
doi: 10.1111/jsap.13232. Online ahead of print.
L Johnston , B Mackay , T King , M B Krockenberger , R Malik , A Tebb
イントロダクション:オーストラリアの犬と猫の腹部クリプトコッカス症の臨床症状、血液および画像検査所見、治療、転帰を報告する
素材と方法:腹部臓器/組織の細胞診(針吸引)あるいは病理組織(バイオプシーあるいは検死)検査で腹部クリプトコッカス症と診断されたオーストラリアの犬と猫を、研究所あるいは二次センターの検索で確認した(2000-2018)。シグナルメント、主訴、臨床症状、検査所見、医療画像検査、ラテックス クリプトコッカス抗原凝集試験(LCAT)力価、治療、結果のデータを集めた。
結果:38症例(犬35頭、猫3頭)をこの研究に含めた。発現の平均年齢は、犬で2歳、猫で6歳だった。良く見られた主訴は、嘔吐(12/38)、嗜眠(19/38)、食欲不振/食欲根絶(15/38)が含まれた。多くの症例の腹部超音波検査(25/38症例)で、腸間膜および腸病変を示した。外科的探査で、7症例は1か所の腸重積に関係する腸病変があった。19症例は治療前のLCATを実施し、初期力価の中央値は1:2048(範囲1:2から65536)だった。24症例(犬23頭、猫1頭)は内科、外科、あるいは両方の治療を受けた。内科と外科の治療を受けた症例の生存期間中央値は730日、外科治療のみは140日、内科治療のみは561日だった。11頭はフォローアップの時に生存していた。
臨床意義:腹部クリプトコッカス症は珍しいが、特に胃腸症状を呈す若い犬で、診断的可能性として考慮すべきである。老健もこの状況を呈し、腫瘍と似ているため、画像診断のみを基に安楽死すべきではない。適切な治療とモニタリングで、多くの犬は生存期間を延長でき、治癒する者もいると思われる。(Sato訳)
■エンロフロキサシン塩酸-二水和物で治療したレプトスピラ症の犬の外来臨床試験
Outpatient Clinical Trial in Dogs With Leptospirosis Treated With Enrofloxacin Hydrochloride-Dihydrate (ENRO-C).
Front Vet Sci. 2019 Oct 15;6:360. doi: 10.3389/fvets.2019.00360. eCollection 2019.
Gutierrez L1, Mendoza J1, Rangel AB1, Tapia G2, Bernad MJ3, Sumano H1.
Author information
犬のエンロフロキサシンHCl-2H2O(enro-C)の薬物動態とレプトスピラ種に対するモンテカルロシュミレーションで、この疾患の臨床的に明らかな段階を治療する臨床研究を行った。
レプトスピラ症は血液のreal-time PCR、マイクロ凝集価(MAT)、臨床症状および肝臓および腎臓の血液パラメーターで診断した。最初の検査でレプトスピラ症を診断するため犬の臨床能力を判定、過剰な臓器ダメージを避けるため早期治療を確立するため、犬を臨床的にハイリスクあるいはミディアムリスクと分類した。
45頭をこの試験に含めた(2017年から2019年初頭)。治療は10日間の5%水性enro-C懸濁液(10mg/kg/day)を筋肉内注射し、その後enro-Cをゼラチンカプセルで7日間経口投与した。ハイリスク犬34頭とミディアムリスク犬11頭を治療し、その中には6頭の子犬(6-10ヶ月齢のハイリスク犬4頭、平均年齢6、7ヶ月齢のミディアムリスク犬2頭)も含まれた。他の犬の年齢は1-5歳だった。全ての子犬を含む15頭は、治療前に他の抗生物質の投与を受けていた。
臨床的診断の誤りは13.5%(7/52症例)で、1頭のみが誤診でハイリスク犬と分類していた。enro-Cで治療を終えたのち3-5日目、82.2%の犬は尿サンプルのreal-time
PCRが陰性となり、治療から30日目、抗体価が1:100-1:200に低下し、100%陰性が観察された。臨床症状の欠如、real-time PCR、MATを基に全ての犬は治療が成功と考えられた。臨床的経過観察6-24か月以内に、再発は記録されなかった。副作用は取るに足らないものだった。
この研究は、犬のレプトスピラ症のフルオロキノロンによる治療成功の最初の報告で、その効果によりenro-Cがこの疾患の治療に対する実行可能なオプションと考えられることを示唆する。(Sato訳)
■日本の家庭猫におけるアストロウイルスとパルボウイルスの有病率
Prevalence of astrovirus and parvovirus in Japanese domestic cats
J Vet Med Sci. 2020 Aug 5.
doi: 10.1292/jvms.20-0205. Online ahead of print.
Takehisa Soma , Maiko Ogata , Kaisaku Ohta , Runa Yamashita , Kazumi Sasai
消化管症状のある204頭の家庭猫から便を入手し、猫の消化管ウイルスと分かっている猫アストロウイルス(FeAstV)と猫パルボウイルス(FPV)に対する遺伝的検査を行った。
FeAstV検出率は、他の季節よりも冬季(44.4%)に有意に高く、1歳以上(12.4%)よりも1歳未満(27.8%)の猫で高かった(P<0.05)。対照的にFPV検出率において、有意な季節および年齢での違いは見られなかった。FeAstV
ORF2塩基配列解析で、23の分離ウイルスは、他の国の18の参照株と同じようなクレード(Mamastrovirus 2)に分類された。
FeAstVはすでに日本で循環しており、FPVとは違い、冬の若齢猫でより一般的だと我々の所見は示唆する。(Sato訳)
■病気の犬と猫の臨床的標本から分離した嫌気性菌の抗菌剤感受性パターン
Antimicrobial susceptibility patterns of anaerobic bacteria identified from clinical specimens of diseased dogs and cats
J Vet Med Sci. 2020 Jul 27.
doi: 10.1292/jvms.20-0294. Online ahead of print.
Yuzo Tsuyuki , Sayaka Nakazawa , Setsuko Kubo , Mieko Goto , Takashi Takahashi
著者らの目的は、病気のコンパニオンアニマルの嫌気性菌の抗菌剤感受性パターンを明らかにすることだった。細菌の同定は、好気性菌の検査に対するJapanese2012ガイドラインを基にした。ASTは微量液体希釈法を用いて実施した。
2014年から2018年までに集めた嫌気性菌を含むサンプルは、血液(嫌気性菌回収率、5.0%)、胆汁(9.4%)、関節液(0.6%)、胸水(42.6%)、腹水(64.1%)、脳脊髄液(3.0%)、穿刺(75.0%)だった。分離された嫌気性菌は、Bacteroides
spp. (33.2%)、Peptostreptococcus spp. (19.6%)、Prevotella spp. (13.6%)、Propionibacterium
spp. (10.3%)、Clostridium spp. (9.3%)、Fusobacterium spp. (7.5%)だった。Bacteroides
fragilis群分離菌はペニシリンG(100%)、アンピシリン(100%)、セフメタゾール(63.6%)、セフチゾキシム(90.0%)、クリンダマイシン(40.0%)に耐性を持っていた。
我々の知見は、日本のコンパニオンアニマルから分離した嫌気性菌における抗菌剤感受性を示した。
■ SARS-CoV-2宿主多様性自然感染と実験的エビデンスのアップデート
SARS-CoV-2 Host Diversity: An Update of Natural Infections and Experimental Evidence
J Microbiol Immunol Infect. 2020 Jun 25;S1684-1182(20)30147-X.
doi: 10.1016/j.jmii.2020.06.006. Online ahead of print.
Md Golzar Hossain , Aneela Javed , Sharmin Akter , Sukumar Saha
コロナウイルス疾患-19(COVID-19)は重症呼吸器症候群コロナウイルス-2(SARS-CoV-2)で引き起こされ、現在、全世界の脅威である。このウイルスは人から人への感染で広がることになっている。
細胞アンギオテンシン変換酵素2(ACE2)は、SARS-CoV-2のレセプターで、豚、フェレット、猫、オラウータン、サル、ヒトに様な異なる動物種で同一、または似通っている。さらに最近の研究では、コウモリからヒトへのSARS-CoV-2の進化中、犬が第2宿主かもしれないと予測した。
ゆえに、家庭のペットを通し、SARS-CoV-2を広げる可能性がある。現在、犬、猫、トラ、ライオン、ミンクにおいて多くのSARS-CoV-2の陽性症例の報告がある。
ウイルス接種により感染させたとき、フェレットと猫がSARS-CoV-2に高い感受性を持ち、飛沫あるいは空気感染で直接あるいは間接的にウイルスを伝播できると実験データは示した。
自然感染報告と実験データを基に、ペットがヒトにSARS-CoV-2を広げる原因となるかどうか;深く調査する必要がある。
呼吸器感染の臨床症状を示すヒトは、COVID-19診断検査を受けているが、多くの感染したヒトと少数のペットは、無症候のままSARS-CoV-2が確認された。
このレビューにおいて、この分野で行われた細辛の動物の研究においてSARS-CoV-2の自然症例を要約する。このレビューは特にコンパニオンアニマルにおいてのSARS-CoV-2の伝播、広がりに対する洞察、血清疫学に対する需要を考えるのに役立つだろう。(Sato訳)
■無生物表面上のコロナウイルスの存続と殺生物剤による不活化
Persistence of coronaviruses on inanimate surfaces and their inactivation with biocidal agents.
J Hosp Infect. March 2020;104(3):246-251.
DOI: 10.1016/j.jhin.2020.01.022
G Kampf , D Todt , S Pfaender , E Steinmann
現在、新規ヒトコロナウイルスSARS-CoV-2の発生は、ヒトの重症気道感染を起こすと世界的な健康懸念となっている。ヒトからヒトへの感染は、2-10日の潜伏期間と示され、飛沫、汚染した手や表面を通しその広がりを容易にしている。
ゆえに、我々は無生物の表面上のヒトおよび動物のコロナウイルスの存続について入手できるすべての情報および、たとえば健康管理施設で化学的消毒に使用する殺生物剤による不活化法について文献を再調査した。
22の研究の分析において、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウイルス、中東呼吸器症候群(MERS)コロナウイルス、エンデミックヒトコロナウイルス(HCoV)のようなヒトコロナウイルスは、金属、ガラス、プラスチックのような無生物表面で9日まで存続可能であるが、62-71%エタノール、0.5%過酸化水素、0.1%次亜塩素酸ナトリウムで1分以内に表面消毒処置により効果的に不活化できる。0.05%-0.2%塩化ベンザルコニウムあるいは0.02%グルコン酸クロルヘキシジンのような他の殺生物剤は効果が薄い。
SARS-CoV-2に対する特定の治療が利用できないため、早期封じ込めと更なる広がりを防ぐことが、大流行の継続を止め、新規感染の道筋をコントロールするため非常に重要となるだろう。(Sato訳)
■フェレット、ネコ、イヌと他の家畜動物におけるSARS-コロナウイルス2への感受性
Susceptibility of ferrets, cats, dogs, and other domesticated animals to SARS–coronavirus 2
Science. 2020 Apr 8. pii: eabb7015. doi: 10.1126/science.abb7015.
Shi J, Wen Z, Zhong G, Yang H, Wang C, Huang B, Liu R, He X, Shuai L, Sun Z, Zhao Y, Liu P, Liang L, Cui P, Wang J, Zhang X, Guan Y, Tan W, Wu G, Chen H, Bu Z.
重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)は、2019年12月に中国の武漢で最初に報告され、感染性疾患のCOVID-19を引き起こす。その病気を抑える相当の努力にもかかわらず、COVID-19はいまや100以上の国で広がり、世界的なパンデミックを引き起こしている。 SARS-CoV-2はコウモリを起源とすると考えられているが、ウイルスの中間の動物の起源は完全に不明である。
ここでは、人間と密接に接触しているフェレットと動物のSARS-CoV-2の感受性を調査した。
SARS-CoV-2は、イヌ、ブタ、ニワトリ、アヒルでは複製が不十分であることがわかったが、フェレットと猫は感染を許容した。 猫は空気感染の影響を受けやすいことが実験的に判明した。
我々の研究はSARS-CoV-2の動物モデルとCOVID-19制御に対する動物管理に関連した重要な考察を実験的に証明した。(Dr.Masa訳)
ネコでは感受性がイヌに比べてありそうです。ただし、SARS-CoV-2 neutralizing serum antibodies in cats:
a serological investigationで、ネコの感染を一般的な採取方法とRT-PCRで証明することは難しい可能性があると報告されています。
■感染創がある52頭の犬の細菌培養結果と抗生物質選択に対するサンプリング法の影響の前向き評価
Prospective evaluation of the influence of sampling method on bacterial culture results and antimicrobial selection in 52 dogs with infected wounds.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Feb 14. doi: 10.1111/vec.12926. [Epub ahead of print]
Concannon TM, Kidd L, Osmond C, Dong F, Griffon D.
目的:犬の感染創の治療で培養結果と抗生物質の選択に対するサンプリング方法の影響を判定する
デザイン:2016年1月から7月までの前向き研究
場所:3か所の個人多科二次診療施設
動物:感染創のある52頭の飼育犬
介入:各創を3方法で培養のためにサンプリングした:処置前のスワブ(汚スワブ)、デブリードメントと無菌洗浄後のスワブ(清スワブ)、バイオプシー。細菌種と表現型を比較した。症例、創、サンプリングの情報が分からない3人の臨床医が培養と感受性の報告を基に抗生物質を選択した。抗生物質は確立したガイドラインに従いクラスI、II、IIIに振り分けた。選択された抗生物質の数、最も高いクラス、調査人間の一致性を調べた。
測定値と主要結果:全3つのサンプリング方法で同一の細菌集団は31%の創からしか分離されなかった。清スワブサンプル(創あたり2.29細菌種±1.18;P=0.009)や汚スワブサンプル(2.29±1.29;P=0.06)よりもバイオプシーサンプル(1.87±1.14)から分離された細菌種の方が有意に少なかった。グラム陽性菌の回収頻度は、両スワブ法(両比較でP=0.001)よりもバイオプシーで少なかった。全ての検査したパラメーターに対し、清と汚のスワブで違いは観察されなかった。サンプリング法は好気性、グラム陰性あるいは多剤耐性細菌の創の比率に影響しなかった。創あたりに選択された抗生物質の数(P=0.28)および最も高いクラス(P=0.9)で3サンプリング法の間に違いはなかった(P=0.28)。臨床医の一致性は、サンプリング法次第で83-90%だった。
結論:感染創からのスワブサンプルに比べ、バイオプシーサンプルから分離された細菌にいくらかの差はあったが、方法は臨床医により選択された抗生物質の数や最も高いクラスに影響を及ぼさなかった。スワブによるサンプリング前の傷のデブリードメントは分離した細菌の数や種類、また臨床医が選択した抗生物質の数や最も高いクラスを変化させなかった。(Sato訳)
■自然発生の猫伝染性腹膜炎の猫のヌクレオシド類似体GS-441524による治療の効果と安全性
Efficacy and safety of the nucleoside analog GS-441524 for treatment of cats with naturally occurring feline infectious peritonitis.
J Feline Med Surg. 2019 Apr;21(4):271-281. doi: 10.1177/1098612X19825701. Epub 2019 Feb 13.
Pedersen NC, Perron M, Bannasch M, Montgomery E, Murakami E, Liepnieks M, Liu H.
目的:自然獲得性猫伝染性腹膜炎(FIP)の種々の型に罹患した猫に対し、ヌクレオシド類似体GS-441524の安全性と効果を判定する
方法:猫の年齢は3.4-73ヶ月齢(平均13.6か月)だった;26頭は滲出型あるいは非滲出型-滲出型FIPで、5頭は非滲出型疾患だった。重度神経および眼FIPの猫は募集されなかった。このグループは最低12週間、GS-441524を2.0mg/kgSC24時間毎で開始し、指示されれば4.0mg/kgSC24時間毎まで増量した。
結果:重度疾患を呈した31頭中4頭は2-5日以内に死亡あるいは安楽死され、5頭目は26日後に死亡した。残りの26頭は計画した12週以上の治療を完了した。26頭中18頭は、1クールの治療後、この発表時に健康を維持していたが、他8頭は3-84日以内に再発した。再発した6頭は非神経学的で、2頭は神経学的だった。再発した8頭中3頭は同用量で再び治療したが、5頭は2.0から4.0mg/kg24時間毎に増量した。神経学的疾患の1頭を含む高用量で2度目の治療をした5頭は良い反応を示し、また、この発表時に健康を維持した。しかし、元の低用量で再治療した3頭中1頭は神経学的疾患を再発して安楽死され、一方、残りの2頭は好ましい反応を示したが2回目の再発を起こした。その2頭は3度目の高用量の治療に成功し、25頭の長期生存猫となった。治療が成功した25頭のうち1頭は、おそらく関係のない心疾患でその後安楽死されたが、24頭は健康を維持している。
結論と関連性:GS-441524はFIPに対し安全で有効性を示した。最適な容量は最低12週間の4.0mg/kgSC24時間毎だと分かった。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎の診断で眼房水を用いた免疫細胞化学分析の有用性
Utility of an immunocytochemical assay using aqueous humor in the diagnosis of feline infectious peritonitis.
Vet Ophthalmol. May 2017;0(0):.
Sandra Felten , Kaspar Matiasek , Stefanie Gruendl , Laura Sangl , Katrin Hartmann
目的:浸出液がない猫伝染性腹膜炎(feline infectious peritonitis:FIP)に罹患した猫は、生前診断が難しい。それらの猫でぶどう膜炎は一般的である。この研究の目的はFIPが疑われる猫の眼房水において免疫細胞化学分析(immunocytochemical
assay:ICC)の感受性と特異性を評価することだった。
研究した動物:免疫組織化学的にFIPと確認した26頭の猫と、同様の臨床あるいは検査結果の変化によりFIPが疑われるが、病理組織検査で確認した他の疾患に罹患している12頭のコントロール猫を研究に含めた。
方法:全ての眼房水のサンプルを穿刺により検死時に採取した。アビジン-ビオチン複合法としてICCを実行した。95%信頼区間(95%CI)を含む感受性、特異性、全体の精度を算出した。
結果:免疫細胞化学検査はFIPの猫の25頭中16頭、コントロール猫の11頭中2頭(1頭はリンパ腫、1頭は肺腺癌)で陽性だった。FIPの1頭とコントロールの1頭の眼房水サンプルは統計分析から除外した。感受性は64.0%(95%CI:42.5-82.0);特異性81.8%(95%CI:48.2-97.7);全体の精度69.4%(95%CI:51.9-83.7)だった。
結論:FIPの診断において偽陽性結果の発生と特異性が最も重要なため、眼房水のICCの診断的有用性は限界がある。偽陽性ICC結果の起源を明らかにする追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の急性レプトスピラ症の診断に対する迅速IgM検出テストの評価
Evaluation of a rapid IgM detection test for diagnosis of acute leptospirosis in dogs.
Vet Rec. May 2017;180(21):517.
J Lizer , M Grahlmann , H Hapke , S Velineni , D Lin , B Kohn
近頃ヨーロッパでは犬の血清のレプトスピラ特異IgMの検出に対し、ラテラルフローイムノアッセイ(lateral
flow assay:LFA)が市販で入手可能になっている。
この研究の目的は、診断が達成されたものからサンプリングした犬の血清を用い、このアッセイの診断パフォーマンスを評価することである。
レプトスピラ症と確定診断した犬から、37の急性期血清と9の対応する回復期血清を検査することで、診断的感受性を評価した。非レプトスピラ感染の病犬(n=15)とワクチン接種が不完全な健康犬(n=45)の血清を検査することで特異性を判定した。
疾患急性期において、陽性を示したLFAは37血清中28血清で感受性は75.7%だったが、顕微鏡凝集試験で陽性は37血清中9血清(24.3%)だけだった。LFAの特異性は98.3%(59/60)だった。この検査は急性期および回復期血清に対する臨床診断とそれぞれ89.7%と100%の総一致性を示した。LFAに対するワクチンの影響も判定し、ワクチン刺激IgM反応は、ワクチン接種12週後の25頭中19頭(76%)で陰性だった。
結論として、LFAは急性期の犬のレプトスピラ症でレプトスピラ特異IgMの早期検出において迅速で信頼できる検査である。しかし、陽性結果の解釈は、ワクチン履歴や臨床症状の状況を見てなされるべきである。(Sato訳)
■無症候性レプトスピラ感染は犬の慢性腎疾患に関係する
Asymptomatic leptospiral infection is associated with canine chronic kidney disease.
Comp Immunol Microbiol Infect Dis. 2019 Feb;62:64-67. doi: 10.1016/j.cimid.2018.11.009. Epub 2018 Nov 24.
Sant'Anna R, Vieira AS, Oliveira J, Lilenbaum W.
犬のレプトスピラ症は、急性あるいは慢性疾患を特徴とする。無症候性キャリアーとしてその細菌を尿細管に保有し、長い期間尿に排泄する犬もいるかもしれない。慢性腎臓病(CKD)は多因子性で、病態生理は広く議論されている。
この研究の目的は、CKDの発生が、流行地域の犬の無症候性レプトスピラ感染と関係しているかどうかを調査することだった。
血清学的および尿PCRを、流行地域のCKDの犬16頭と健康な犬48頭で実施した。
細菌排出犬の頻度は非CKDの犬(20.8%)よりもCKDの犬(75%)で多かった。
ゆえに、著者らの結果は、無症候性レプトスピラ感染は慢性腎臓病と関係し、流行地域でCKDの犬に対し、鑑別診断が重要であると証明するものである。公衆衛生に対する明白な影響以外に細菌排泄犬の早期検出は動物の健康の改善およびCKDの発生を避けることにも役立つと思われる。(Sato訳)
■実験的に猫白血病ウイルスを感染させた猫の血清において猫白血病ウイルス抗原の検出に対する2つの迅速検査の診断パフォーマンス
Diagnostic performances of two rapid tests for detection of feline leukemia virus antigen in sera of experimentally feline leukemia virus-infected cats.
Language: English
JFMS Open Rep. 2018 Jan-Jun;4(1):2055116917748117.
Matthew R Krecic , Sridhar Velineni , Patrick Meeus , Huihao Fan , Michael Loenser
目的:この研究の目的は、実験的に猫白血病ウイルス(feline leukemia virus:FeLV)を感染させた猫の血清のFeLV
p27抗原の検出に対し、WITNESS FeLV-FIV(Zoetis)とSNAP FIV/FeLV Combo Test(IDEXX)の診断感受性と特異性を比較することである
方法:発病性の高いFeLV Rickard株に実験的に感染させてから56日目の猫から採取した47の血清サンプルの検査を通し、WITNESSとSNAPの診断感受性を測定した。実験的感染の成功は、免疫蛍光抗体(IFA)法とPCRにより抗凝固(EDTA)全血サンプルのFeLV抗原とproviral DNAを観察することで確認した。両検査の診断特異性は、研究所に飼われている非FeLV暴露の特異病原フリー(SPF)猫92頭の血清の検査で判定した。
結果:47の血液サンプルのうち41はIFA陽性だったが、47サンプル全てのPCRは陽性だった。非FeLV感染SPF猫92頭全てIFAおよびPCR陰性だった。参照方法としてIFAと比較して、WITNESSとSNAPテストは同等の感受性100%と特異性97.8%が得られた。参照方法としてPCRと比較して、WITNESSおよびSNAPテストは感受性91.5%、特異性100%の同様のパフォーマンスがあった。
結論と関連:WITNESS FeLV-FIVの感受性と特異性は、実験的にFeLVを感染させた猫と、非FeLV暴露のSPF猫の血清におけるFeLV
p27抗原の確認で、SNAP FIV/FeLV Comboと同等だった。しかし、使用するpoint-of-careテストにかかわらず、全ての陽性結果を他の猫との隔離、あるいは安楽死のような臨床的決断をする前に確認するべきである。(Sato訳)
■パルボウイルス性腸炎に対する外来治療を受けた犬の死亡率と結果の指標の評価
Evaluation of mortality rate and predictors of outcome in dogs receiving outpatient treatment for parvoviral enteritis.
Language: English
J Am Vet Med Assoc. November 2017;251(9):1035-1041.
Kathryn J Sarpong, Jennifer M Lukowski, Cassandra G Knapp
目的:外来治療のパルボウイルス性腸炎の犬に対する死亡率と予後因子を判定する
計画:回顧的ケースシリーズと症例-コントロール研究
動物:2012年8月1日から2015年1月31日の間にパルボウイルス性腸炎と診断され、外来ケアで治療された飼育犬130頭
方法:医療記録を調査し、犬の年齢、体重、犬種、ワクチン履歴;施された治療;短期(3日以上)結果(オーナーとの電話により判定)に関するデータを抽出した。治療は臨床科の好みにより投与された。死亡率を全体、種々のシグナルメント、治療によるグループ化に対して算出し比較した。
結果:97頭(75%)は生存し、33頭(25%)は最初のパルボウイルス性腸炎の診断後3日以上生存できなかった。一般病院集団で分布を比較すると、チワワ、ジャーマンシェパード、ピットブルタイプおよびオス犬が大きな比率を占めた。生存した犬と死亡した犬で年齢、体重、性別に有意差は見られなかった。2-4時間毎にカロリー補給を受けた犬は死亡率が19%(16/85)だった。またそれらの犬の多くは、皮下輸液、制吐剤、抗菌剤を投与されていた。
結論と臨床関連:金銭的に入院治療ができない罹患犬のオーナーと治療オプションを話し合う時、この研究現場で、外来治療を受けたパルボウイルス性腸炎の犬の死亡率が25%であると臨床医は知っておくべきである。(Sato訳)
■ヨウ素カデキソマードレッシング剤を用いて難治性鼻アスペルギルス症の外科的管理を行った犬3例
Surgical management of refractory nasal aspergillosis using iodine cadexomer dressings in three dogs.
Language: English
Aust Vet J. November 2016;94(11):405-410.
T J Preston , G L Hosgood , Aeh Paul
背景:この症例シリーズは、3頭の犬において従来の内科管理に難治性、あるいは篩板の骨溶解を起こしている鼻アスペルギルス症の外科的管理を述べる。
方法:全ての犬に、背側洞切開/鼻切開により粘膜、鼻甲介、壊死デブリの外科的デブリードメントを行った。鼻腔にヨウ素カデキソマーを染み込ませたバンデージを数週間詰め、tie-overバンデージで覆った。3頭中2頭のバンデージ交換は鎮静化で行った。全ての露出した骨を完全に肉芽組織が覆ったら、tie-overバンデージを除去し、その洞切開/鼻切開を皮膚の縁を並置して閉鎖した。
結論:全ての犬において、この方法の許容性は良く、効果的で、治癒に導くものだった。従来の内科管理に臨床的反応がない症例や、篩板が溶けている症例において考慮すべきである。(Sato訳)
■犬ジステンパーの子犬の治療における異種性抗犬ジステンパーウイルス抗体の適用
Application of xenogeneic anti-canine distemper virus antibodies in treatment of canine distemper puppies.
Language: English
J Small Anim Pract. November 2016;57(11):626-630.
P C Liu , C A Chen , C M Chen , C H Yen , M H Lee , C-K Chuang , C F Tu , B L Su
目的:犬ジステンパーに自然感染した犬において、受動免疫療法の臨床的実行可能性は証明されていない。この研究では、豚の抗犬ジステンパーウイルスIgGおよびF(ab’)2抗体フラグメントを感染子犬の治療に使用した。
方法:重度の呼吸症状があるが神経症状のない自然感染の子犬(年齢6か月)41頭で試験した。25頭にはIgGあるいはF(ab’)2抗体フラグメントと支持療法の組み合わせで治療し(1群)、16頭は通常の支持療法のみを行った(2群)。
結果:1群(19/25;76%)の生存率は、2群(5/16;31.3%)よりも有意に高かった(P<0.05)。治療中、1群の25頭中8頭(32%)が神経症状を発症したのに対し、2群の16頭中12頭(75%)が発症した(P<0.05)。副作用はIgG抗体の投与を受けた犬において体温が上昇するという限られたものだった。
臨床意義:豚の抗犬ジステンパーウイルス抗体は、犬ジステンパーに罹った子犬の生存性を改善し、副作用も最小だった。ゆえに、この治療は犬ジステンパーウイルスに感染した絶滅危惧の動物種の治療に考慮できる。(Sato訳)
■猫の発熱:106頭の紹介症例におけるシグナルメント、臨床調査、診断、治療前の影響の回顧的分析
Pyrexia in cats: Retrospective analysis of signalment, clinical investigations, diagnosis and influence of prior treatment in 106 referred cases.
Language: English
J Feline Med Surg. November 2017;19(11):1123-1130.
Sarah E Spencer , Toby Knowles , Ian K Ramsey , Severine Tasker
目的:この研究の主な目的は、発熱で紹介された猫の集団の特徴と診断を述べる。別の目的は、実施した臨床的調査の有用性を報告及び評価すること、来院時の体温に対する紹介前の治療の全ての影響と診断能力を述べること。
方法:少なくとも2回発熱(39.2度以上)と証明された猫の臨床記録を回顧的に再検討した。症例は診断を基に疾患カテゴリー(感染性、炎症、免疫介在性、腫瘍性、種々、診断無(原因不明の発熱、pyrexia
of unknown origin、PUO))に振り分けた。臨床的調査の全体の価値は、各診断の達成で「可能」、「補助」あるいは「補助ではない」という分類の言葉で評価した。紹介前の治療の影響は、その時の体温に関係するか、診断できるか(PUO
vs 他の疾患カテゴリー)に対し評価した。
結果:106症例を確認した。発熱の最も一般的な原因は、猫伝染性腹膜炎(22頭、20.8%)で、最も大きな疾患カテゴリーでは感染性(41/106、38.7%)だった。炎症の状況は19頭(17.9%)、腫瘍は13頭(12.3%)、種々の原因は11頭(10.4%)、免疫介在性疾患は6頭(5.7%)で認められた。診断できなかったのは16頭(15.0%)で、広範囲にわたる診断的検査でもできないことが多かった。診断を得るに当たり、細胞および病理組織検査は「可能」あるいは「補助的」であることが多かった。ほとんどの猫(91頭、85.8%)は紹介前に治療を受けており、87頭(82.1%)は抗生物質を投与されていた。紹介前の治療は、来院時の体温や診断の成功に関係することはなかった。
結論と関連:これは猫の発熱の原因を調査する最初の研究である。感染性疾患は最も一般的で、免疫介在性疾患は比較的まれだった。(Sato訳)
■急性出血性下痢の犬の犬サーコウイルスの役割
Role of canine circovirus in dogs with acute haemorrhagic diarrhoea.
Language: English
Vet Rec. June 2017;180(22):542.
A Anderson , K Hartmann , C M Leutenegger , A L Proksch , R S Mueller , S Unterer
重度出血性下痢で犬のサーコウイルス(Canine circovirus:CanineCV)が、検出されている犬もいるが、その病原的役割は不明である。
この研究は犬のCanineCVの存在と急性出血性下痢症候群(acute haemorrhagic
diarrhea syndrome:AHDS)の間に疑われる関連を評価した。
AHDSの犬のCanineCVの有病率は、健康犬と犬パルボウイルス(CPV)に感染した犬の其れと比較した。また、回復までの時間と死亡率をCanineCV陽性犬と陰性犬の間で比較した。
AHDSの犬(n=55)、健康な犬(n=66)、CPVに感染した犬(n=54)の糞便サンプルを、CanineCVのレプリカーゼおよびカプシド遺伝子をターゲットにしたtwo real-time TaqMan PCR assaysで検査した。CanineCVはAHDSの2頭、健康なコントロール犬の3頭、CPVに感染した7頭で検出された。3群の中で、CanineCVの有病率に有意差はなかった。CanineCVと重感染したCPV感染犬は、CanineCV陰性の犬と比べて有意に高い死亡率だった。
CanineCVは犬のAHDSの主要な原因となる病原体と思われないが、CPV感染の犬において疾患の転帰に負の補助因子として役割を持つかもしれない。(Sato訳)
■健康および下痢の犬における犬サーコウイルスの有病率
[Prevalence of Dog circovirus in healthy and diarrhoeic dogs].
Nachweishaufigkeit von Dog circovirus bei gesunden und an Durchfall erkrankten Hunden.
Language: German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. April 2017;45(2):89-94.
Michaela Gentil , Achim D Gruber, Elisabeth Muller
目的:2012年、アメリカで犬サーコウイルス(Dog circovirus:DogCV)が発見され、アメリカ、イタリア、ドイツでそのウイルスがさあに述べられた。この研究はドイツおよび他のヨーロッパの国の犬の糞においてDogCVの有病率を初めて検査する。
素材と方法:下痢の犬184頭、臨床的に健常な犬82頭(コントロール群)からの糞サンプルのDogCVの存在をPCRにより分析した。さらに全てのサンプルでパルボウイルス、コロナウイルス、ジアルジア、クリプトスポリジウムの検出も行った。
結果:下痢の犬の群において、DogCVの有病率は20.1%(37/184)で、健康なコントロール群においては、7.3%(6/82)だった。ゆえに、そのウイルスは下痢の犬で有意に多い頻度で検出できた。DogCVの検出頻度は、他に検査した病原体のそれらに匹敵する。DogCVの陽性犬の約50%において、他の腸管病原体の感染が診断された。
結論と臨床関連:その疾患の病因の重感染の役割は依然不明であるが、重感染と疾患の重症度の間に関係があると思われる。臨床的に健康な犬におけるDogCVのエビデンスは疫学に対し重要と思われ、その病原性について疑問が上がる。病因、原因となる関連、他の下痢の病原による干渉の可能性に関する疑問を明らかにする追加研究が必要である。それにもかかわらず、この研究の結果はDogCVが下痢の犬の鑑別診断に入れるべきだという重要な指標である。(Sato訳)
■犬のパルボウイルス性腸炎の治療において外来患者プロトコールの評価
Evaluation of an outpatient protocol in the treatment of canine parvoviral enteritis.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. January 2017;27(1):52-65.
Emilee C Venn , Karolina Preisner , Pedro L Boscan , David C Twedt , Lauren A Sullivan
目的:パルボウイルス性腸炎の犬の治療期間と生存に影響する2つの治療プロトコール(標準院内に対し修正外来患者)を比較する
計画:前向き、無作為化研究
場所:大学教育病院
動物:パルボウイルスに自然に感染した飼育犬を無作為に入院患者(n=20)あるいは外来患者(n=20)治療プロトコールに振り分けた。
介入:来院時、両群に救急静脈輸液(IV)と低血糖の補正を行った。安定化後、基本入院患者への介入は、IV輸液、セフォキシチン(22mg/kg IV 8時間毎)、マロピタント(1mg/kg IV24時間毎)の投与だった。基本外来患者への介入(院内で提供)は、皮下(SC)輸液(30mL/kg 6時間毎)、マロピタントの投与(1mg/kg SC24時間毎)、セフォベシン(8mg/kgSC1回)だった。毎日電解質と血糖値評価を行い、指示された場合、ブドウ糖とカリウム補給を静脈(入院患者)あるいは経口(外来患者)で提供した。レスキューの基準は、鎮痛および悪心に対し両群で使用した。全ての犬に、随意の食欲が戻るまで、市販の犬の回復食(1mL/kg PO 6時間毎)をシリンジで与えた。
測定値と主要結果:生存して退院と定義したプロトコールの成功は入院患者群で90%(18/20)、外来患者群で80%(16/20)だった(P=0.66)。入院犬(4.6±2日)に対し、外来犬(3.8±1.8日、P=0.20)の入院期間に違いは見られなかった。代謝障害は外来患者群で多く見られ、50%の犬はブドウ糖補給を必要とし、60%の犬はカリウム補給を必要とした。
結論:パルボウイルス性腸炎に対し、標準の院内治療が受けられない犬に対し、外来患者プロトコールは実行可能な代替法と思われる。外来患者の設定で、積極的な支持療法とモニタリングは、パルボウイルス性腸炎の最適な治療に今まで通り必要である。(Sato訳)
■日本のサラブレッド競走馬と獣医師におけるメチシリン耐性スタフィロコッカスオーレウスコロニー形成と感染
Meticillin-resistant Staphylococcus aureus colonisation and infection in
Thoroughbred racehorses and veterinarians in Japan.
Vet Rec. May 2016;178(19):473.
T Kuroda, Y Kinoshita , H Niwa , Y Shinzaki , N Tamura , S Hobo , A Kuwano
日本でメチシリン耐性スタフィロコッカスオーレウス(MRSA)感染が、2009年から2つのトレーニングセンターの診療所に入院中のサラブレッド競走馬で確認されている。
感染源を調査するため、著者らは2つのトレーニングセンターの競走馬診療所で、600頭の健康なサラブレッド競走馬、53人の獣医師、16人のオフィススタッフにおいて鼻のMESAコロニー形成の割合を調査した。
健康なサラブレッド競走馬あるいは診療所オフィススタッフからMRSAは分離されなかった。しかし、16人の獣医師(30.1%)からMRSAが分離され、同診療所のオフィススタッフよりも獣医師においてコロニー化の割合は有意に高かった。また獣医師から分離された16のMRSA株のうち10株(62.5%)はstaphylococcal
cassette chromosome mec (SCCmec) typingによりタイプII、multilocus sequence
typingによりST5と分類された。パルスフィールドゲル電気泳動法によりそれらSCCmecタイプIIおよびST5の10のMRSA株は、2009年から2013年の間にそれらの診療所で入院した感染馬から分離された9つのMRSA株と遺伝的に同一あるいは非常に似ていた。
それらの結果はSCCmecタイプIIおよびST5MRSA株はおそらく獣医師と感染馬の間で伝染したことを示す。(Sato訳)
■日本の家庭猫のボルナ病ウイルス感染に対する研究
A study on Borna disease virus infection in domestic cats in Japan.
J Vet Med Sci. September 2014;76(8):1157-60.
Azusa Someya; Ryoko Fukushima; Michiko Yoshida; Yasuyuki Tanahashi; Tangmunkhong Prapeuk; Reiko Iizuka; Hiroshi Hirami; Atsushi Matsuda; Shunichi Takahashi; Goro Kurita; Takashi Kimura; Misuzu Seo; Masayuki Funaba; Yoshii Nishino
ボルナ病ウイルス(BDV)感染は猫の神経学的疾患を引き起こす。ここで東京地区の199頭の入院した家庭猫におけるBDV感染を報告する。
BDV寒仙はBDV-p24あるいは-p40に対する血漿抗体の検出により評価した。
BDV-特異抗体は54頭の猫(27.1%)で検出された。面白いことに3つの臨床群の間で血清陽性猫の比率の有意差はなかった、すなわち健康群(29.8%)、神経学的に無症状疾患群(22.2%)、神経学的疾患群(33.3%)。1歳以下の猫でも特異抗体は存在した。血清陽性比率は年齢およびサンプリングの季節にかかわらず一定だった。
この研究は、自然感染猫においてボルナ病発現に追加の要因が必要であることと、猫でBVDは垂直感染するということを示唆する。(Sato訳)
■レプトスピラ症による急性腎傷害の犬の重度低カリウム血症の治療成功例
Successful treatment of severe hypokalemia in a dog with acute kidney injury caused by leptospirosis.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2015 Dec 4. doi: 10.1111/vec.12416.
Allen AE, Buckley GJ, Schaer M.
目的:レプトスピラ症の感染による心肺停止を起こした重度低カリウム血症の1頭の犬の症例治療を報告する
症例概要:3歳メスのダックスフンドが多尿、多渇、難治性低カリウム血症を呈し、弛緩麻痺に進行し、心肺停止を起こした。蘇生に成功後、犬は無呼吸で、機械的ベンチレーションで管理し、体液の状態と電解質を補正した。当日に犬は急速に改善し、ベンチレーターをはずすことができた。その犬はレプトスピラ症で重度カリウム利尿(カリウムの分画排泄31%)があると確認した。退院後ドキシサイクリンと経口カリウム補給およびスピロノラクトンで管理し、臨床的に完全に回復した。
提供された新しいあるいは独特な情報
一般にレプトスピラ症が考えられない地域からの犬で、通常無い重度症状を確認し、初診で心肺停止にもかかわらず治療に成功した報告である。(Sato訳)
■犬の全身性破傷風の診断と治療
Diagnosis and treatment of generalised tetanus in dogs
In Pract. November 2014;36(10):482-493.
Anne Fawcett; Peter Irwin
犬の全身性破傷風は多くの症例報告でよく述べられている致死的疾患である。
原因菌はクロストリジウム・テタニで強力な神経毒を産生し、けいれん性麻痺などの劇的な臨床症状を引き起こす。
治療を受けた犬の予後は良いが、回復は時間がかかるため、多くの犬は入院コストのために安楽死される。この文献は、犬の全身性破傷風の診断と治療、合併症の可能性について述べる。(Sato訳)
■急性致死性犬レプトスピラ症の自然発生10症例の診断的特徴
Diagnostic features in 10 naturally occurring cases of acute fatal canine
leptospirosis.
J Vet Diagn Invest. November 2014;26(6):799-804.
Daniel R Rissi; Cathy A Brown
この報告は、病理学者にとっては診断的に困難かもしれない最小限の腎臓および肝臓変化を伴う急性致死性犬レプトスピラ症の10症例において診断的特徴を述べる。
ほとんどの症例は6ヶ月齢未満で、肝腎機能不全に相当する生化学プロフィールを示した。臨床症状は嘔吐、元気消失、黄疸、脱水、下痢、食欲不振だった。全ての犬は死亡あるいは臨床症状発現から3-7日以内に人道的に安楽死された。検死所見は、出血を伴う肺浮腫、黄疸、腎臓および肝臓蒼白および腫脹、出血を伴う胃浮腫だった。
重度高窒素血症にもかかわらず、全ての症例で腎臓の組織学的変化はわずかなもので、ごく少ない間質性リンパプラズマ細胞性炎症、浮腫、出血と伴に単一細胞壊死と減衰を伴う軽度腎尿細管単純化が見られた。肝臓病変は、播種性幹細胞性単一細胞壊死と肝細胞性解離が見られた。多臓器の脈管類線維素壊死、時おり線維素化膿性浸出液を伴う肺の石灰化、胃の石灰化などを含む典型的に尿毒症と関係する顕著な腎外病変も見られた。
剖検による診断確定は、新鮮な腎臓サンプルの蛍光抗体検査によるレプトスピラ抗原の検出および腎臓切片の免疫組織化学染色を用いた完全なスピロヘータの証明を基にした。
急性致死性の犬のレプトスピラ症は主に若い犬に見られる激症肝臓腎臓疾患として発症し、診断はわずかな腎臓変化の認識と蛍光抗体検査、あるいは免疫組織化学染色による確認に依存した。(Sato訳)
■FIPの猫の臨床および検査の特徴-231例の確定できた症例の回顧的研究 (2000-2010年)
Clinical and laboratory features of cats with feline infectious peritonitis - a retrospective study of 231 confirmed cases (2000-2010).
J Feline Med Surg. 2015 Jul 16. pii: 1098612X15586209.
Riemer F, Kuehner KA, Ritz S, Sauter-Louis C, Hartmann K.
目的 本研究の目的は、多くのFIPの自然発生症例におけるシグナルメント、臨床症状、検査の特徴を明らかにし、FIPの診断基準が変わる可能性について評価し、滲出液ある場合とない場合の所見を比較することである。
方法 ドイツミュンヘンのLudwig-Maximilian大学の小動物病院に来院したなかでFIPと確定診断できた231頭の猫のカルテについて、シグナルメント、病歴、臨床的なパラメーターと検査のパラメーターについて明らかにした。猫の年齢、性別、品種の分布を比較した。
結果 雄であること若い猫であることがFIPと有意に関連していた。不妊手術をしていることはFIPとは関連していなかった。好発品種はなく、来院した猫の大部分は短毛種で雑種であった。末梢の赤血球の小球症が35.1%の猫に認められ、そのうちの42.4%は貧血を併発していなかった。左方移動を伴う好中球増加症が44.3%
(183頭中81頭)に認められ、そのうちの35.8%は成熟好中球増加症を認めなかった。リンパ球減少症は、滲出液がある場合に有意により多く認められ、滲出液のない猫では26.8%においてのみ認められた。滲出液がない場合と比較して滲出液がある場合においてより有意に高ビリルビン血症が認められた。血清の総蛋白は17.5%においてのみ増加しており、89.1%において高ガンマグロブリン血症が認められた。85.0%近くの猫がA/G比が0.8より小さく、A/G比が0.6より小さい猫は67.8%であった。
結論と臨床的意義 小球症はよく認められ、他の典型的な臨床症状や検査結果の異常が認められた場合、FIPの疑いが増加する。滲出液をともなわない猫においてリンパ球減少症が多くないことから、これはdry typeのFIPの有用なパラメーターではないことが示唆された。成熟好中球増加症がなく左方移動が頻繁に認められることから、滲出型のFIPと細菌性腹膜炎を鑑別することを難しくするであろう。グロブリンとA/G比は、高蛋白血症よりもより高い診断価値がある。(Dr.Taku訳)
■猫ウイルス疾患の眼症状
Ocular manifestations of feline viral diseases.
Vet J. August 2014;201(2):166-73.
Jean Stiles
猫のウイルス疾患は一般的で、さまざまな臨床症状を呈する。ウイルスに関係する眼疾患は珍しくなく、猫ヘルペスウイルス1型や猫カリシウイルスのような上部気道疾患の原因となるウイルスに特にみられる。
それら病原体は主に目の表面の疾患を引き起こす。猫免疫不全ウイルスや猫コロナウイルスのような他のウイルスはぶどう膜炎、猫白血病ウイルスは眼のリンパ肉腫を引き起こす可能性がある。
このレビューは眼の症状を引き起こす最も一般的な猫のウイルス病原体、それらのウイルスによる眼疾患の具体的な特徴、推奨される治療を取り上げる。(Sato訳)
■神経症状があるもしくはない猫において、脳脊髄液中の猫コロナウイルス検出を用いた猫伝染性腹膜炎の診断
Detection of feline coronavirus in cerebrospinal fluid for diagnosis of feline infectious peritonitis in cats with and without neurological signs.
J Feline Med Surg. 2015 Mar 3. pii: 1098612X15574757.
Doenges SJ, Weber K, Dorsch R, Fux R, Fischer A, Matiasek LA, Matiasek K, Hartmann K.
目的 本研究の目的は、猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断するのに際して、神経症状や眼の症状があるまたはない猫の脳脊髄液(CSF)において猫コロナウイルス(FCoV) RNAを検出するrealtime RT-PCRの感度と特異性を評価することである。
方法 この前向き症例対照研究は34頭の猫を用いた。19頭の猫(これらのうちの7頭は神経症状や眼の症状があった)は、病理組織学的にFIPと確定診断でき、15頭(これらのうちの3頭は神経症状や眼の症状があった)は、類似の症状を示していたが別の病気であった。全ての猫のCSFにおいて、Realtime
RT?PCRを実施し、感度、特異性および陽性的中率(PPV)と陰性的中率(NPV)を計算した。
結果 CSFのreal-time RT-PCRは、FIPの診断には100%の特異性があり、感度は42.1%、100%の陽性的中率、57.7%の陰性的中率であった。神経症状や眼の症状のある猫におけるCSFのrealtime RT-PCRの感度は、85.7%であった。
結果と意義 RT-PCRは、とくに血清や血漿を用いた場合、偽陽性をもたらすことが知られているが、CSF中にFCoVRNAを検出するrealtime
RT-PCRはFIPの診断に信頼できる特異的な方法であると考えられる。神経学的な病変のある猫だけを評価するのであれば、CSF中のrealtime
RT-PCRの感度は高い。(Dr.Taku訳)
■適切な経験的抗生剤療法の細菌性腹膜炎の犬の転帰への効果
Impact of appropriate empirical antimicrobial therapy on outcome of dogs with septic peritonitis.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2014 Dec 26. doi: 10.1111/vec.12273.
Dickinson AE, Summers JF, Wignal J, Boag AK, Keir I.
目的 適切な経験的抗生剤療法が細菌性腹膜炎の犬の生存に影響を与えるかどうかを決定すること
研究デザイン 大学の教育病院で実施された回顧的症例シリーズ(2003-2011年)
動物 腹腔の敗血症が細胞診で確認された、または細菌培養で陽性を示し、外科的介入を行った86頭の犬
治療介入 なし
測定と主な結果 86頭の犬のうち49頭(57%)は、生きたまま退院できた。86頭のうち37頭は、「腹腔の感染」があるとされ、86頭中31頭は「重度の敗血症」でり、86頭中18頭は「敗血性ショック」であると分類された。致死率は、「敗血性ショック」のグループが最も高かった(94%)。78頭中41頭(52.6%)は経験的な抗生剤の治療が適切であった。治療が適切であることは、全体としてまたは敗血症の重症度のグループの間で比較しても、治療の結果とは関連していなかった。86頭中63頭(73.3%)の犬において来院30日前に抗生剤が与えられていた。抗生剤による事前の治療は結果とは関連していなかったが(P=0.512)、続く不適切な経験的な抗生剤の選択と関連していた(P=0.031)。最近腹部の手術をしたことと続く不適切な経験的な抗生剤の選択とが関連していた(P=0.021)。
結論 この集団においては、経験的な抗生剤の選択の適切性は、生きて退院できるかどうかとは関係がなかった。前もって抗生剤が投与されていることや腹部の手術は、続く不適切な抗生剤の選択と関連していた。(Dr.Taku訳)
■犬から分離したStaphylococcus pseudintermediusのバイオフィルム形成能力の特徴
Characterization of the biofilm forming ability of Staphylococcus pseudintermedius from dogs.
BMC Vet Res. 2013 May 3;9:93. doi: 10.1186/1746-6148-9-93.
Singh A, Walker M, Rousseau J, Weese JS.
背景: Staphylococcus pseudintermediusは、犬の日和見病原体であり、世界的に皮膚、外傷そして手術部位感染症の主要な原因として浮上している。メチシリン耐性は一般的であり、臨床課題を提起しているのはメチシリン耐性S. pseudintermedius(MRSP)の結果としての臨床的な感染である。他のブドウ球菌では、バイオフィルム形成は、感染病原性因子であることが示されている。しかし、S. pseudintermediusに関する注目は少ない。この研究の目的は表現型そして遺伝子型技術を使って犬から採取したS. pseudintermediusの臨床分離株のバイオフィルム形成能力を評価することであった。
結果:分離したS. pseudintermediusの96% (136/140)は、バイオフィルムを製造することができる大部分の分離株は、強い、あるいは中等度のバイオフィルム産生に分類された。MRSPとMSSP(P=0.8)、コロニー犬から得られた分離株と比べて臨床感染からの分離株(P=0.08)、そして列型(ST)71と列型(ST)68との間(P=0.09)にバイオフィルム形成の違いはなかった。icaAは分離した77.9%
(109/140)において検出され、icaDは分離した75.7% (106/140)で検出された。S.
pseudintermediusのバイオフィルム産生の走査型電子顕微鏡評価で球菌の集団と不規則に産生された細胞外高分子マトリックスが明らかになった。
結論:本研究で評価するために分離したS. pseudintermedius の大部分は、バイオフィルムを産生する能力があり、世界的に動物病院においてこの細菌の急速な出現で重要な病原性要因となりうる。S. pseudintermediusによるバイオフィルム形成のメカニズムに関するさらなる研究が期待される。(Dr.Kawano訳)
■犬の自然感染したレプトスピラ症の臨床病理学的および非定型特徴:51症例(2000-2010)
Clinicopathologic and atypical features of naturally occurring leptospirosis in dogs: 51 cases (2000-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Nov 1;243(9):1316-22. doi: 10.2460/javma.243.9.1316.
Tangeman LE, Littman MP.
目的:レプトスピラに罹った犬において、臨床病理的特徴、非定型異常の比率、レプトスピラ血清グループに対する抗体価、回復期力価の重要性を調べる
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:レプトスピラ症の犬51頭
方法:研究の基準は、少なくとも1つの顕微鏡凝集試験(MAT)結果陽性(ワクチンを打っている犬で力価が1:1600以上、ワクチンを打っていない犬で力価が1:800以上、回復期力価が4倍以上増加)、完全な医療記録(レプトスピラワクチン接種日時、初期評価の理由、CBC、血清生化学分析、尿検査結果)、レプトスピラ症に合致する臨床症状あるいは検査所見だった。
結果:初期臨床症状、時間的分布、シグナルメントは過去の報告と同じだった。回復期のMAT価は45%のケースの診断に必要だった。非定型的異常は23頭中10頭に見られた肺疾患のエックス線所見、51頭中7頭は肝臓の関与のみだった。他の異常は51頭中34頭の蛋白尿、51頭中26頭の血小板減少、24頭中7頭の凝固障害、51頭中14頭の低アルブミン血症、51頭中9頭の糖尿だった。血清型Grippotyphosaに対する抗体と腎臓関与、血清型Icterohaemorrhagiaeと肝臓関与に有意な関係があった。
結論と臨床関連: 非定型的異常を多く認識しておくことは、犬のレプトスピラ症の誤診を少なくするだろう。併発感染性疾患の検査結果は注意して解釈すべきで、レプトスピラ症の誤診は公衆衛生リスクを引き起こす可能性がある。回復期力価は急性試験結果が陰性の時に、感染を確認するのに必要だった。確認した血清型に対する抗体と臨床特性の本当の関係を判定するのに追加調査が必要である。(Sato訳)
■猫の自然発生したウイルス性角結膜炎に対しヒト遺伝子組み替えインターフェロンα-2bと猫遺伝子組み換えインターフェロンオメガの高用量点眼の効果
Effects of topical ocular administration of high doses of human recombinant
interferon alpha-2b and feline recombinant interferon omega on naturally
occurring viral keratoconjunctivitis in cats.
Am J Vet Res. February 2013;74(2):281-9.
Jessica M Slack; Jean Stiles; Christian M Leutenegger ; George E Moore; Roman M Pogranichniy
目的:自然発生のウイルス性角結膜炎の猫に対し、猫遺伝子組み換えインターフェロンオメガ(FeIFN)あるいはヒト遺伝子組み換えインターフェロンα-2b(HuIFN)液の高用量点眼を14日行い、臨床疾患の改善、ウイルス排出の減少が見られるかどうかを判定した。
動物:上部気道疾患と眼の症状がある36頭の猫
方法:14日間(開始日は1日)、1日2回、各眼にFeIFN液(1x10(6)U/mL)、HuINF液(1x10(6)U/mL)、あるいは生理食塩液(0.9%NaCl)(各群12頭ずつ)を1滴点眼した。治療前(0日)と14日目に各猫から口咽頭と結膜スワブを採取し、猫ヘルペスウイルス-1および猫カリシウイルスを検出するためウイルス分離(VI)およびリアルタイム定量PCR法で検査した。主観的臨床スコアは0、3、7、10、14日目に記録した。
結果:0日目の所見と比べて、14日目のVIあるいはRT-qPCRで猫ヘルペスウイルス-1が検出された猫の数は一般的(しかし常に有意ではない)に少なかった;しかし、0日目と14日目の所見はグループ間で違いはなかった。VIあるいはRT-qPCRで猫カリシウイルスを検出した猫の数は、どの群でも0日目と14日目に有意な違いはなかった。14日間で臨床スコアは有意に低下したが、グループ間で違いはなかった。
結論と臨床関連:自然に発生したウイルス性角結膜炎の猫において、14日間、1日2回、両眼への高用量FeIFNあるいはHuIFNの点眼は、生理食塩液の投与と比較して臨床疾患あるいはウイルス排出を改善しなかった。(Sato訳)
■猫にファムシクロビルを投与した後の涙中のファムシクロビルとペンシクロビルの薬物動態
Pharmacokinetics of famciclovir and penciclovir in tears following oral administration of famciclovir to cats: a pilot study.
Vet Ophthalmol. September 2012;15(5):299-306.
Sara M Thomasy; Jill C Covert; Scott D Stanley; David J Maggs
目的:猫の涙収集方法の検証、涙中のファムシクロビルおよびペンシクロビルの定量に対する測定法の開発、ヘルペス疾患を疑ってファムシクロビルで経口的に治療した猫の涙中のファムシクロビルとペンシクロビル濃度と薬物動態の解析
動物:7頭の飼育されている猫
方法:最低24時間に1日3回、40(39-72)mg/kgの投与量中央値(範囲)でファムシクロビルを経口投与した。ファムシクロビル投与後、種々のタイムポイントで涙サンプルをシルマー涙試験紙で採取した。涙中のファムシクロビルとペンシクロビル濃度を液体クロマトグラフィー-質量分析で測定し、濃度-時間プロフィールをノンコンパートメントで分析した。ファムシクロビル投与とほぼ最大の涙ペンシクロビル濃度の関連を、最小二乗線形回帰で評価した。
結果:涙中最大ファムシクロビル濃度0.305μg/mLは2.64時間目に発生した;排泄半減期は2.28時間だった。涙中最大ペンシクロビル濃度(0.981μg/mL)はファムシクロビルの経口投与後2.25時間で発生した;排泄半減期は2.77時間だった。薬剤投与後、0.5-3.75時間の様々なタイムポイントで、ファムシクロビル投与と涙中ペンシクロビル濃度の間に有意な正の相関を認めた(P=0.025)。採取したサンプルの約半数で、涙中のペンシクロビル濃度は猫ヘルペスウイルス(FHV-1)に対しインビトロで効果が示されている濃度(0.304μg/mL)を超えていた。
結論:猫への40mg/kgでのファムシクロビル経口投与は、血漿ペンシクロビル濃度-時間プロフィールに近づく涙中ペンシクロビル濃度-時間プロフィールをもたらし、眼球表面でFHV-1に効果があると思われるペンシクロビル濃度を達成することも多かった。(Sato訳)
■自然に発生した猫免疫不全ウイルス感染に関係するアミロイドーシス
Amyloidosis in association with spontaneous feline immunodeficiency virus
infection.
J Feline Med Surg. April 2013;15(4):300-6.
Pietro Asproni; Francesca Abramo; Francesca Millanta; Davide Lorenzi; Alessandro Poli
13頭の無症候性の猫と21頭の猫後天性免疫不全症候群(F-AIDS)からなる34頭の自然に猫免疫不全ウイルス(FIV)に感染した猫と、35頭のFIV血清反応陰性猫からの組織を検査し、アミロイド沈着の有無を判定した。さらに20頭の実験的にFIVに感染させた猫と5頭の特定病原体除去(SPF)のコントロール猫も研究に含めた。
腎臓と他の臓器のパラフィン包埋切片を組織学的および組織化学的に分析した。アミロイド沈着は修正コンゴレッド染色で見分け、アミロイド陽性糸球体におけるアミロイド原繊維の存在を証明するため電子顕微鏡により確認した。
全ての陽性症例において、二次的アミロイドーシスが過マンガン酸カリウムの前処置で見分けられ、さらにアミロイドタイプは、ヒトAAおよび猫ALアミロイドに対する一次抗体を使用した免疫組織化学検査で特徴付けられた。
自然に感染した猫34頭中12頭(35%)(F-AIDSの7頭と無症候期の5頭)とFIV血清反応陰性猫30頭中1頭において異なる組織にもアミロイド沈着が見られた。実験的に感染させた猫とSPFの猫にはアミロイド沈着が見られなかった。
アミロイドーシスはヒトレンチウイルス感染において報告されており、ここで報告されたデータはFIVの自然感染猫において、その疾患の予後をよりよく評価するために肝臓および腎臓障害の鑑別診断にアミロイドーシスの存在を考慮する必要を証明する。(Sato訳)
■化膿性肉芽腫性心筋炎と横隔膜筋炎の猫2頭におけるバルトネラ・ヘンセラの同定
Identification of Bartonella henselae in 2 Cats With Pyogranulomatous Myocarditis and Diaphragmatic Myositis.
Vet Pathol. July 2012;49(4):608-11.
M Varanat; J Broadhurst; K E Linder; R G Maggi; E B Breitschwerdt
バルトネラ・ヘンセラに感染した猫の多くが数年間は見かけ上健康なキャリアーを維持する;しかし、自己制御ができる発熱、一時的な貧血、神経学的機能障害、リンパ節腫脹、繁殖障害、大動脈弁膜心内膜炎、好中球性心筋炎が実験的あるいは自然感染猫で述べられている。
ノースキャロライナのあるシェルターで2頭の猫が化膿性肉芽腫性心筋炎と横隔膜筋炎で死亡した。Warthin-Starry鍍銀染色とB.ヘンセラ免疫組織化学染色により、病変内の微生物を認めた。1頭の心臓と、2頭目の心臓、横隔膜など複数の組織サンプルからB.ヘンセラDNAが増幅、塩基配列を読み取った。
この研究は、猫における未確認の原因による「伝染性の心筋炎と横隔膜炎」として過去に述べられているものと、B.ヘンセラの潜在的関係を支持する。(Sato訳)
■犬のリーシュマニア症に対してマルボフロキサシンで治療した犬の1年間の臨床および寄生虫学的追跡
One-year clinical and parasitological follow-up of dogs treated with marbofloxacin for canine leishmaniosis.
Vet Parasitol. May 2012;186(3-4):245-53.
Sandrine Rougier; Lilia Hasseine; Pascal Delaunay; Gregory Michel; Pierre Marty
この国際的多施設非比較野外試験の目的は、犬のリーシュマニア症に対しマルボフロキサシンで治療した犬の長期臨床および寄生虫学的追跡調査の補足データを得ることだった。
重度腎不全がなく犬のリーシュマニア症の臨床症状がある74頭の犬をフランス、スペイン、イタリアから採用し、そのうち61頭は分析の一部だった。各犬は味の良いマルボフロキサシンのタブレット2mg/kg1日1回28日間で治療した。臨床および寄生虫学的追跡調査を12か月まで定期的に実施した。
42頭(68.9%)の犬は51日(平均値)以内に効果を認め、そのうち10頭(23.8%)は3か月後に臨床的に治癒した。臨床スコアの合計で61%の低下が3か月後に観察された。血液、生化学パラメーターは全般で改善し、観察された臨床効果を支持した。再発は治療完了から約5.5ヶ月後に38頭中20頭(52.6%)で観察された。たとえ例外が珍しくないとしても血中寄生虫荷は通常臨床結果と一致して発症した。良好な臨床反応が観察された犬でさえもリンパ節において培養、あるいはPCRで長期間陽性だった。他の抗リーシュマニア薬の症例もそうであるように、寄生虫駆除は不完全だが、それでもそれらの結果は犬リーシュマニア症治療としてマルボフロキサシンの妥当性を確認するものである。(Sato訳)
■猫のスポロトリクム症のヨウ化カリウムカプセル治療
Potassium iodide capsule treatment of feline sporotrichosis.
J Feline Med Surg. June 2012;14(6):399-404.
Erica G Reis; Isabella D F Gremiao; Amanda A B Kitada; Raphael F D B Rocha; Veronica S P Castro; Monica B L Barros; Rodrigo C Menezes; Sandro A Pereira; Tania M P Schubach; Tania M P Schubach
スポロトリクム症はSporothrix schenckiiによる真菌症である。もっとも影響のある動物は猫であり、特にブラジルのリオデジャネイロで1998年からこの疾患の人畜共通伝播の重要な役割を演じている。 Instituto
de Pesquisa Clinica Evandro Chagas、Fiocruzで、ヨウ化カリウムによる猫スポロトリクム症の治療を評価するために、スポロトリクム症の猫48頭における観察的コホートを実施した。
全ての猫にヨウ化カリウムカプセル2.5mg/kg-20mg/kg毎24時間を投与した。治癒率は47.9%、治療失敗は37.5%、治療放棄は10.4%、死亡は4.2%だった。臨床的副作用は52.1%の症例で観察された。
治療中、13頭の猫の肝臓トランスアミナーゼ濃度は軽度増加し、そのうち6頭は臨床症状を示し、肝臓毒性が示唆された。イトラコナゾールやヨウ素飽和溶液の過去の研究と比較して、ヨウ化カリウムカプセルは猫スポロトリクム症治療の代替療法である。(Sato訳)
■フロリダアニマルシェルターに保護されている猫で猫汎白血球減少ウイルス、猫ヘルペスウイルス1、猫カリシウイルスに対する血清抗体価の出現率
Prevalence of serum antibody titers against feline panleukopenia virus,
feline herpesvirus 1, and feline calicivirus in cats entering a Florida
animal shelter.
J Am Vet Med Assoc. November 2012;241(10):1320-5.
Brian A Digangi; Julie K Levy; Brenda Griffin; Susan P Mcgorray; Edward J Dubovi; Patricia A Dingman; Sylvia J Tucker
目的:フロリダアニマルシェルターの猫で猫汎白血球減少ウイルス(FPV)、猫ヘルペスウイルス1(FHV1)、猫カリシウイルス(FCV)に対する血清抗体価を持つ割合を判定することと、血清反応陽性に関係する因子を同定すること
動物:フロリダアニマルシェルターに収容されている347頭の猫
方法:アニマルシェルターに収容後24時間以内に、8週齢以上の全ての猫から採血した。FPVに対する血清抗体価は、赤血球凝集抑制試験で測定し、FHV1およびFCVに対する抗体価はウイルス中和試験で判定した。年齢、性別、環境(都会あるいは田舎)、出所(野良あるいは過去に飼育)、過去に世話されていたかの証拠、健康状態(健康あるいは不健康)、結果(譲渡、移動、飼い主に戻される、安楽死)を血清抗体陽性に関係する可能性のある因子として評価した。
結果:347頭で、FPV、FHV1、FCVに対し抗体価≧40、≧8、≧32(すなわち血清反応陽性)だった猫は、それぞれ138頭(39.8%)、38頭(11.0%)、127頭(36.6%)だった。血清反応陽性に関係した因子は、不妊済み、年齢≧6か月、飼い主に捨てられた猫などだった。多変量解析において、シェルター収容時の健康状態、環境、シェルター収容時のワクチン接種、結果は血清反応陽性に関係しなかった。
結論と臨床関連:アニマルシェルターに収容時、FPV、FHV1、FCVに対する抗体に対し多くの猫は陰性だった。それらの所見は、出所あるいは身体状況にかかわらずアニマルシェルターに収容された直後に全ての猫にワクチンを推奨する現行のガイドラインを支持した。(Sato訳)
■犬におけるレプトスピラ症の診断アルゴリズム:疾患とワクチンが血清検査結果に及ぼす影響
Diagnosis algorithm for leptospirosis in dogs: disease and vaccination effects on the serological results.
Vet Rec. 2013 Mar 23. [Epub ahead of print]
Andre-Fontaine G.
レプトスピラ症は、ワクチンをしているかどうかにかかわらず、犬においてよくある疾患である。獣医師は、症状観察を確定するために血清検査を使用する。ゴールドスタンダードは、顕微鏡下凝集試験(MAT)である。感染後、犬は感染株がもつリポ多糖からなる抗原に対する凝集抗体を産生するが、またワクチン後は、細菌ワクチンに使用された血清型(多くの国では血清型IcterohaemorrhagiaeおよびCanicola)がもつリポ多糖に対する凝集抗体を産生する。
102頭の健常犬と6頭のCanicolaを投与した犬においてMATを実施した。診断アルゴリズムは、年齢、ワクチン接種歴、感染またはワクチン後の凝集抗体の動態および病気が発症の遅れに基づいた。272頭のレプトスピラ症を疑う病気の犬から得た169の血清(臨床的なデータとワクチンのデータがきちんとあるもの)に対してこのアルゴリズムを用いた。
全体として、102頭の犬は、通常のワクチンスケジュールに従ってワクチンされており、30頭はワクチンされていなかった。レプトスピラ症は、MATによってワクチンを接種した102頭中37頭(36.2%)において確定でき、他の14頭(13.7%)においては、疑いのままであった。従ってこのことは犬が常に曝露されていること、病原性レプトスピラに対する現在のワクチンによって得られる防御が弱い事を示唆している。(Dr.TAKU訳)
■日本の犬におけるレプトスピラとレプトスピラ症の分子および血清学的解析
Molecular and serological investigation of Leptospira and leptospirosis in dogs in Japan.
J Med Microbiol. 2012 Dec 21.
Koizumi N, Muto MM, Akachi S, Okano S, Yamamoto S, Horikawa K, Harada S, Funatsumaru S, Ohnishi M.
犬のレプトスピラ症は、病原性レプトスピラ種の感染によって生じ、世界中で発生しているが、原因となるレプトスピラの血清型と遺伝型および犬における病原性への影響についての情報は限られている。歩哨動物として犬における急性のレプトスピラ症をモニターすることは、とくに今の日本のように人のレプトスピラ症が稀であるときは、そのリスクを見積もるのに役に立つといえる。
2007年8月から2011年3月に日本においてレプトスピラ症と臨床的に疑われた283症例のうちで、83症例は、血液培養、MAT法を用いたペア血清による抗体価の上昇、flaBのnested PCRを用いたDNAの検出によって、検査室でレプトスピラ症と診断された。感染犬は、狩猟犬(31頭)とペット(50頭)であり、63.4%が雄であった。致死率は53.2%であった。ペア血清サンプルが得られた30頭の犬においては、少なくともMAT抗体価は4倍上昇しており、主要な反応血清型は、Hbdomadis (53.3%)、Australis (16.7%)、Autamnalis (16.7%)の順であった。L.interrogansは、45頭の犬から分離され、血清型は、Australis (16), Autumnalis (6), Canicola (1), Hebdomadis (21), Icterohaemorrhagiae (1)であった。
全てのこれらの血清型は、致死的な感染を引き起こした(57.1-100%)。遺伝学的な不均一性は、PFGEにもとづいたmultilocus sequence typing (MLST)および/またはRFLP解析により、血清型Australis, Autumnalis, Hebdomadisにおいて認められた。血清型Hebdomadisでは、MLSTによって決められた各遺伝型は、感染犬において特徴的な致死率を示していた。
古典的な犬のレプトスピラ症は、血清型CanicolaとIcterohaemorrhagiaeに関連しており、血清型Hebdomadisは、日本において高い致死率を起こす主要な血清型となっている。このことは、犬において血清型Hebdomadisの病原性が、この血清型における遺伝型と関連している可能性があることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■ウイルス量の多いサンプルは、猫コロナウイルス抗体検査において反応性を低下させる傾向にある
Samples with high virus load cause a trend toward lower signal in feline coronavirus antibody tests.
J Feline Med Surg. 2012 Dec 6. [Epub ahead of print]
Meli ML, Burr P, Decaro N, Graham E, Jarrett O, Lutz H, McDonald M, Addie DD.
猫コロナウイルス(FCoV)の抗体価の測定は、主に猫伝染性腹膜炎(FIP)の診断や検疫目的に使用される。しかし、時には、FCoVの抗体検査で抗体価が偽って低かったり偽陰性を示すことがある。
こうしたことは、サンプル中のウイルスが抗体に結合することにより、検査の際に抗原に対して結合する抗体がなくなってしまうことから生じるという仮説を検証した。
FCoV抗体価が予想外に低下していたFIPの猫からの13の滲出液、1つの血漿、3つの由来不明サンプルについて、リアルタイム逆転写酵素ポリメラーゼ鎖反応(RT-PCR)により検査した。
ウイルス量が増加することと、間接蛍光抗体法、ELISAおよび迅速免疫泳動法によりシグナルがより低い事と相関していた。用いたサンプルの71%において説明可能であったが、5つのサンプルは、RT-PCRで陰性であったため、ウイルスが存在する事のみが、FCoV抗体検査で偽陰性を示す全症例を説明できるわけではなかった。
ウイルス量が多いサンプルにおいてはFCoV抗体価が偽って低くなってしまったり、偽陰性となる可能性があると結論づけた。(Dr.Taku訳)
■免疫抑制のある1頭の犬のPhialosimplex caninusによる真菌性骨髄炎
Fungal myelitis caused by Phialosimplex caninus in an immunosuppressed
dog.
Med Mycol. July 2012;50(5):509-12.
Pedro F Armstrong; Lynne Sigler; Deanna A Sutton; Amy M Grooters; Mark
Hitt
免疫溶血性貧血に対してプレドニゾンを投与している7歳のメス犬避妊済みのコッカスパニエルで、Phialosimplex caninusによる骨髄感染を診断した。骨髄コア生検の病理組織学検査で、さまざまな形の卵形から円形の酵母様細胞のクラスターと時折不規則な菌糸が見られた。骨髄吸引サンプルの培養で、当初Paecilomyces inflatusあるいはSagenomella speciesを示唆するカビが得られたが、のちにP. caninusと判明した。その犬はイトラコナゾールとアンホテリシンBで治療し、プレドニゾンは溶血性貧血のコントロールに必要な最低量を持続した。治療から18か月後にその犬は死亡した。
これは犬の播種性疾患に関係する真菌と最近述べられているP. caninusを原因とする感染の最初の詳細な臨床報告である。(Sato訳)
■壊死性筋膜炎に関与する犬の連鎖球菌性毒性ショック症候群:概要
Canine Streptococcal Toxic Shock Syndrome associated with Necrotizing Fasciitis:
An Overview
Vet World. May 2012;5(5):311-319. 58 Refs
Barkha Sharma; Mukesh K Srivastava; Ashish Srivastava; Rashmi Singh
犬の毒性ショック症候群(CSTSS)は、連鎖球菌属のグラム陽性球菌による感染の結果として、犬に見られる深刻で死に至ることも多い疾患症候群である。犬の連鎖球菌性毒性ショック症候群の原因に関与する主な細菌は、1986年にDeverieseにより発見されたストレプトコッカス・キャニスで、MillerとPrescottにより1996年にこの疾患症候群の原因として関係を証明された。
この症候群の臨床所見は、ヒト、特に女性における連鎖球菌性毒素が原因の忌まわしい「毒素ショック」で見られるものと酷似している。ヒトと同様に、犬の連鎖球菌性毒性ショック症候群(CSTSS)の出現/再出現の理由は不明で、その伝染と予防については少しだけ分かっている。その疾患は、傷害後の見かけ上健康な犬における全身の多臓器不全とショック様の状態を特徴とする。適切で迅速な診断と続く抗生物質の注射および積極的なショック療法をなされなければ、数時間以内にその疾患で死亡することが多い。犬は硬直、筋痙攣あるいは痙攣、メレナを伴う鼻および口からの出血に続く深い乾性発咳を認めるものもある。
剖検時、それらの犬は消化管の重度浮腫、多臓器のうっ血、重度肺うっ血、血栓塞栓所見を示す。
壊死性筋膜炎は連鎖球菌性感染の局在型で、筋膜面に沿った広範囲の軟部組織脱落および壊死として見られる。利用できるワクチンはなく、主に地域社会の事象、発情、環境の変化、輸送などの可能性のある原因因子の忌避が唯一この疾患から犬を守る方法である。(Sato訳)
■8頭の骨髄におけるパルボウイルスの同定
Identification of parvovirus in the bone marrow of eight cats.
Aust Vet J. April 2012;90(4):136-9.
S M Haynes; S A Holloway
目的:犬パルボウイルス(CPV)あるいは猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)ゲノム配列が、成猫の骨髄サンプルに存在するのかどうかを判定すること
構成:骨髄サンプルは、アニマルシェルターで安楽死された32頭の半野良猫から採取した。DNAを抽出し、従来のPCR法でCPVあるいはFPVのDNAの有無を判定した。CPVおよびFPVを鑑別するため、PCR陽性物を精製し、クローンし、塩基配列を調査した。
結果:8頭の骨髄サンプルはパルボウイルスDNAを含んでいた(7CPV、1FPV)。
結論:健康な成猫の骨髄においてCPVおよびFPVのDNAを見つけることができる。(Sato訳)
■犬のパルボウイルス感染の免疫血漿の単回投与による治療の臨床的評価
Clinical evaluation of a single dose of immune plasma for treatment of
canine parvovirus infection.
J Am Vet Med Assoc. March 2012;240(6):700-4.
Ryan F Bragg; Amanda L Duffy; Frank A Dececco; Donald K Chung; Maura T Green; Julia K Veir; Steven W Dow
目的:犬のパルボウイルス性腸炎の治療で、犬パルボウイルス(CPV)-免疫血漿を12mlの投与量で1回投与した時の効果を評価する
構成:前向き、無作為、二重盲検プラセボ-対照臨床試験
動物:CPV腸炎が自然発生した犬14頭
方法:無作為化表を基に犬を治療グループに振り分け、入院後18時間以内にCPV免疫血漿の1回IV投与(治療グループ)、あるいは同量の生理食塩水(0.9%NaCl)投与(プラセボグループ)を行った。治療と結果の変数は、好中球、単球、CPV数;入院日数;体重変化;治療コストなどを評価した。
結果:治療グループをプラセボグループと比較した時、好中球、単球数、ウイルス血症の程度、体重変化、入院日数、治療コストに有意差は見られなかった。
結論と臨床的関連:CPV腸炎発現後すぐの免疫血漿12mlの1回投与で、臨床的症状改善、ウイルス血症減少、血液学的回復促進の効果を示すことはなかった。(Sato訳)
■猫のクラミドフィラ・フェリス-野良猫は危険な感染源?
Chlamydophila felis in Cats - Are the Stray Cats Dangerous Source of Infection?
Zoonoses Public Health. November 2011;58(7):519-22.
M Halanova; Z Sulinova; L Cislakova; A Trbolova; L Palenik; T Weissova; M Halan; Z Kalinova; M Holi?kova
クラミドフィラ・フェリスは猫の急性あるいは慢性結膜炎の原因菌である。自然伝搬のほとんどは、感染猫、それらのエアロゾル、媒介物との密接な接触の結果起こる。スロヴァキアのコシツェ地方で2年間に急性あるいは慢性結膜炎の徴候のある93頭の猫を研究している。55頭の家庭猫(59.14%)と38頭の野良猫(40.86%)の結膜サンプルを採取した。検査した合計93頭の猫のうち、42頭は陽性で総陽性率45.16%にあたる。42頭の陽性猫のうち、25頭は野良猫、17頭は家庭猫で、38頭の野良猫のうち25頭は陽性(65.78%の陽性率)、55頭の家庭猫のうち17頭は陽性(陽性率30.90%)を意味する。我々の結果は、猫、特に野良猫はヒトに対するクラミジア症の危険な感染源となる可能性を示した。(Sato訳)
■2010年韓国において家猫に対する犬インフルエンザH3N2ウイルスの種間伝搬
Interspecies transmission of the canine influenza H3N2 virus to domestic
cats in South Korea, 2010.
J Gen Virol. October 2011;92(Pt 10):2350-5.
D S Song; D J An; H J Moon; M J Yeom; H Y Jeong; W S Jeong; S J Park; H K Kim; S Y Han; J S Oh; B K Park; B K Park; J K Kim; H Poo; R G Webster; K Jung; B K Kang
過去4年において、アジアの犬で犬インフルエンザH3N2ウイルスに関係する地方病性あるいは流行性呼吸器疾患の発生が韓国および中国のような国で報告されている。犬はこのウイルスの新しい自然のホストと考えられた。
しかし、2010年の初め、呼吸困難のようなインフルエンザ様呼吸器症状が韓国ソウルのアニマルシェルターで犬と同じように猫でも観察された。影響を受けた猫は100%の罹病率と40%の死亡率を示した。我々は呼吸器疾患を有し死亡した猫の肺標本から、発育鶏卵を用いてあるウイルスを分離できた。分離された8つのウイルス遺伝子は、犬インフルエンザH3N2ウイルスのそれらとほぼ同一で、猫への犬インフルエンザH3N2ウイルスの種間伝搬が示唆された。
さらにcanine/Korea/GCVP01/07 (H3N2)を鼻腔内に感染させた3頭の家猫は、全て直腸温の上昇、鼻のウイルス排泄、化膿性気管支肺炎のような重度肺病変を示した。
我々の研究は初めて猫が犬インフルエンザH3N2感染に感受性があることを示し、そのことで猫と犬の間でH3N2ウイルスを伝搬する中間宿主の役割を猫が持ち、コンパニオンアニマルにおいてそのウイルスの地方病的確立を導く可能性があると示唆される。
公衆衛生面でも1つのシナリオが持ち上がり、人獣共通感染として潜在的に作用するコンパニオンアニマルにおける新しい組み替え猫あるいは犬インフルエンザウイルスの出現の可能性を否定できない。(Sato訳)
■1頭の犬におけるホメオパシー薬剤療法で治療した鼻のアスペルギルス症の臨床的解消
Clinical resolution of nasal aspergillosis following therapy with a homeopathic
remedy in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. November 2011;47(6):e110-5.
Shelley Epstein1; Robert Hardy
6歳オスの去勢済みワイマラナーが、局所(鼻腔内)クロトリマゾールおよび経口アモキシシリントリヒドレート/クラブラン酸カリウムの2つの治療に反応しない鼻アスペルギルス症をホメオパシーで治療した。
あらかじめCT、鼻鏡検査、真菌培養、細胞診で診断を確認した。ホメオパシー治療に対する症状で、その犬は侵略的な鼻甲介の破壊を伴う左側副鼻腔炎と鼻炎と重度の発作的鼻出血があった。鼻鏡の糜爛と色素脱失が明らかだった。ホメオパシーのオーレム メタリカムで治療後、臨床症状の解消が見られ、アスペルギルス症病原体の除去はCTスキャン、鼻鏡検査、病理組織検査で証明された。ホメオパシーのオーレム メタリカムは犬の鼻アスペルギルス症の治療に有効と思われる。(Sato訳)
■マイコバクテリウム感染した猫のエックス線所見
Radiographic findings in cats with mycobacterial infections.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):718-24.
Alexander D Bennett; Stephanie Lalor; Tobias Schwarz; Danielle A Gunn-Moore
この研究は培養あるいはインターフェロンガンマ検査で確認された33頭の家庭猫のマイコバクテリウム感染に関係するエックス線所見の変化を述べる。感染のほとんどは成猫(平均年齢5.7歳;範囲1.5-12歳)で、非血縁(87%;27/31)、去勢したオス猫(69%;22/32)だった。多かった感染はMycobacterium
microti (60%; 18/30)とMycobacterium bovis (37%; 11/30)だった。Mycobacterium
aviumとMycobacterium malmoenseはまれに培養された(各3%;1/30)。胸部(24頭)、腹部(8)、四肢骨格(11)、頭部(3)のエックス線所見が入手できた。
エックス線変化では胸部が最も一般的に影響を受け、気管支(46%;11/24)、肺胞(38%;9/24)、結節性の組織化されていない間質(38%;9/24)あるいは組織化されていない間質(25%;6/24)肺パターンが時に混ざって出現する。肺門周囲あるいは胸骨リンパ節症は一般的(42%;10/24)で、特に肺門リンパ節症(25%;6/24)だった。骨格変化は、前腕遠位(3)、足(2)、上顎(1)、肩甲骨(1)、脊椎(1)、手(1)、大腿(1)、足根骨(1)に見られた。変化は典型的に溶骨性(73%;8/11)で、透過溶骨性(64%;7/11)が多かった。骨増殖性変化は3頭、軟部組織の腫脹は5頭で見られ、4頭は骨異常に隣接していた。他の異常には、顎下軟部組織腫脹、顕著な大動脈、大動脈弓および腕頭動脈石灰沈着、骨を巻き込まない前腕遠位の石灰化を伴う軟部組織腫脹などがあった。腹部変化は珍しく(2/8)、肝腫大および肝脾腫大だった。
つまり、エックス線変化はさまざまで、マイコバクテリウム感染に対する病徴的な病変はなく、病理は胸部で最も多く見られた。(Sato訳)
■多頭飼育環境での猫のコロナウイルス
Feline coronavirus in multicat environments.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2011 Nov;41(6):1133-69.
Drechsler Y, Alcaraz A, Bossong FJ, Collisson EW, Diniz PP.
世界中の猫における致死的な疾患である猫伝染性腹膜炎(FIP)は、猫コロナウイルスによって発生し、一般的に多頭飼育環境で起こる。猫腸管コロナウイルス(FECV)として言及されている腸内の猫コロナウイルス(FcoV)は、ほとんどが良性の生物型で腸管に感染するが、猫伝染性腹膜炎ウイルスの生物型は、FIPの高い病原性のある起因病原体であると考えられている。
現在の検査では猫コロナウイルスの生物型を区別することはできない。猫腸管コロナウイルス(FECV)は多頭飼育環境においては伝染性が高く、容易に拡散する:したがって動物シェルターへの暴露は恐ろしい。この概説は、多頭飼育環境下におけるウイルス学、免疫学、病理学、診断そして治療オプションについて学際的な現在の知識を要約する。(Dr.Kawano訳)
■小動物診療の抗真菌治療
Antifungal treatment of small animal veterinary patients.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2010;40(6):1171-88.
Daniel S Foy; Lauren A Trepanier
抗真菌治療は、真菌の細胞代謝における種々の過程に直接作用する新薬の開発で非常に進歩している。獣医療で、全身真菌症の治療オプションはアンホテリシンB、ケトコナゾール、フルコナゾール、イトラコナゾールに限られた状態である。しかし、より新しいトリアゾール、エキノキャンディン、アンホテリシンBの脂質ベース製剤は現在ヒトでの使用で承認されている。
この文献は小動物診療で利用できる抗真菌薬物療法を包括的に概説し、ヒトの全身性真菌症に使用される、新しい現在コストが高い抗真菌療法の短時間討論も述べる。(Sato訳)
■イトラコナゾール、テルビナフィン、メフェノキサムを使用して消化管ピシウム感染症の治療が成功した犬の1例
Successful management of gastrointestinal pythiosis in a dog using itraconazole, terbinafine, and mefenoxam.
Med Mycol. July 2011;49(5):539-42.
James Hummel; Amy Grooters; Gigi Davidson; Samuel Jennings; Jodi Nicklas; Adam Birkenheuer
ピシウム感染症に対する薬剤治療は、効果的な薬剤の欠如により難しくなっている。この報告は、イトラコナゾール、テルビナフィン、農業用殺真菌薬メフェノキサムの投与を通して解消した犬消化管ピシウム症の1症例を述べる。最後の化合物の投与に関する実質的な副作用は発生しなかった。
メフェノキサムの薬物動態を評価し、犬のピシウム症の治療に対するメフェノキサムの許容性、潜在的効果をさらに評価するため追加研究が必要である。(Sato訳)
■ブルセラ症:過去、現在、未来
Brucellosis: past, present and future.
Prilozi. July 2010;31(1):21-32.
P Nicoletti
目的:世界的ズーノーシスとしてブルセラ症の概要、生物学および疫学、病因と診断、公衆衛生面、ワクチネーションおよび管理の特異性を示す
方法:動物のブルセラ症を管理するワクチネーション、衛生、検査、感染動物の屠殺のような種々の方法のうち、広範囲なワクチネーションが最も速く、能率的で効果的な方法である。
結果:多くの国で牛のブルセラ症の管理、時には教育の大きな進歩にもかかわらず、小型反芻動物におけるこの疾患の状況はより難しいことが判明している。政治的および社会経済的な問題は成功の妨げである。ヒトの疾患をコントロールするであろう動物ブルセラ症をコントロールする挑戦を引き受ける責任があるのは獣医学である。コントロール効果の成功は、ヒトの症例の減少により主に測られるだろう。
結論:ブルセラ症の効果的なコントロールは多くの政府機関から長期の委任を必要とする。国際的な動物およびヒトの衛生機構から財源および専門的技術の補助が多くの発展途上国に必要である。簡単に解決できるものではない。ワクチンおよびそれらの利用、診断検査、治療において代替戦略の研究を奨励すべきである。(Sato訳)
■猫のバルトネラ症
Feline bartonellosis.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2010;40(6):1073-90.
Lynn Guptill
バルトネラ感染は家庭猫の間では一般的であるが、猫の病原体としてバルトネラ種の役割はさらに研究を必要とする。猫に感染するほとんどのバルトネラ種は人畜共通感染性である。猫は哺乳類の病原体保有種で、重要な人畜共通病原体のバルトネラ・ヘンセラの媒介動物である。猫ノミは猫の間でバルトネラを伝播し、ノミのいる猫はヒトバルトネラ感染の重要な源である。猫の病原体としてバルトネラに関する新しい情報が最近発表されており、この文献はその情報の多くを要約している。猫バルトネラ感染の診断と治療を取り巻く問題を述べ、人畜共通性のバルトネラ伝染の予防を論じる。(Sato訳)
■猫ヘルペスウイルス感染に対する抗ウイルス療法
Antiviral therapy for feline herpesvirus infections.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2010;40(6):1055-62.
David J Maggs
猫ヘルペスウイルスI型に感染した猫の経口あるいは局所治療には多くの抗ウイルス剤がある。一般的な原理の知識は、抗ウイルス薬理をよく理解するのに役立ち、それによりヘルペス疾患の猫の治療ガイドとなる。この文献はそれら化合物の抗ウイルス効果を比較し、感染猫に対するリジンおよび抗ウイルス薬の一般的な投与プロトコールを奨める。(Sato訳)
■マレーシアプトラ大学獣医大学病院で犬と猫から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の表現型と遺伝子型の特徴
Phenotypic and genotypic characterization of methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) isolated from dogs and cats at University Veterinary Hospital, Universiti Putra Malaysia.
Trop Biomed. 2010 Dec;27(3):483-92.
Aklilu E, Zunita Z, Hassan L, Chen HC.
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)は、院内感染の原因として知られており、獣医医療においても現在、新たに出現している問題である。この研究の目的は、マレーシアプトラ大学獣医大学病院で2007年11月から2008年4月までの間に100頭の猫と犬から分離されたメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の割合を決定することだった。
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌は採取したペットの8%で検出された。分離された10%(5/50)と6%(3/50)がそれぞれ犬と猫からだった。分離されたすべてのメチシリン耐性黄色ブドウ球菌はmecA 遺伝子を所有しており、8 μg/mLのオキサシリンの最小発育阻止濃度の少なくとも3つの抗菌薬に耐性が認められた。1つの分離菌(CT04)は256 μg/mL以上という極端に高い最小発育阻止濃度だった。
この研究において見つかったMLSTタイプST59は、動物からの菌株とコミュニティーに関連したメチシリン耐性黄色ブドウ球菌としてそれぞれシンガポールや他の国でより早期に報告されている。パルスフィールドゲル電気泳動で5つのpulsotypeが明らかになった。猫から分離された2つの菌(CT27とCT33)と犬から分離された3つの菌(DG16とDG20とDG49)はそれぞれpulsotypes B とDに分類された。 この研究から、マレーシアの猫と犬はメチシリン耐性黄色ブドウ球菌の潜在的な病原体保有動物である。(Dr.Kawano訳)
■6ヶ月まで様々な状況下で貯蔵した0.5%シドフォビルの安定性
Stability of 0.5% cidofovir stored under various conditions for up to 6 months.
Vet Ophthalmol. July 2010;13(4):275-7.
Jean Stiles, Wilson Gwin, Roman Pogranichniy
目的:0.5%シドフォビル溶液の抗ウイルス活性に対する時間、温度、貯蔵バイアル素材の影響を評価する
手順:市販の注射用7.5%シドフォビル溶液を0.5%まで通常の生理食塩水で希釈した。それをプラスチックおよびガラスバイアルで4、-20、-80度で30、60、120、180日間保存した。猫ヘルペスウイルスに対する抗ウイルス活性を、基準0時(基線)および各その後のタイムポイントでウイルス滴定力価検定により評価した。
結果:シドフォビルにより各貯蔵状況に対する基線および各タイムポイントでウイルス力価における4倍log低下をもたらした(P<0.001)。
結論:6ヶ月までガラスあるいはプラスチックバイアルで4、-20、-80度で貯蔵しても0.5%シドフォビルは安定した抗ウイルス活性を示した。(Sato訳)
■下痢の犬の新規ノロウイルス
Novel norovirus in dogs with diarrhea.
Emerg Infect Dis. June 2010;16(6):980-2.
Joao Rodrigo Mesquita, Leslie Barclay, Maria Sao Jose Nascimento, Jan Vinje
犬のノロウイルスの有病率および遺伝変異を確認するため、逆転写-PCRにより糞便サンプルを検査した。下痢の犬40%と下痢でない犬9%で犬ノロウイルスを認めた。そのウイルスは、他のノロウイルスと遺伝的に無関係で、暫定的に新しい遺伝グループになる。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎の臨床病理所見と病期ステージング:2003年-2009年台湾でみられた51症例
Clinicopathological findings and disease staging of feline infectious peritonitis: 51 cases from 2003 to 2009 in Taiwan.
J Feline Med Surg. 2011 Feb;13(2):74-80. Epub 2011 Jan 8.
Tsai HY, Chueh LL, Lin CN, Su BL.
猫伝染性腹膜炎(FIP)に自然感染し組織病理学的に確定診断した51頭の猫を、臨床的そして検査所見を分析し、病期ステージングを特徴付けるために集めた。滲出型FIPは33頭、非滲出型FIPは12頭、混合型が6頭だった。初診時および死の直前でヘマトクリット値とアルブミン濃度の極端な低下、総ビリルビン濃度の増加は滲出型FIPと非滲出型FIPの両方で観察された。滲出型の連続血液検査において、貧血およびビリルビンとASTの増加が死ぬ前の2週間から0-3日前で観察された。PCV、ビリルビン、AST、カリウムそしてナトリウム濃度は病期と生存期間を予期するために確立された。0-4、5-11そして12以上の累積ポイントはそれぞれ、猫は少なくとも2週間、2週間以内、そして3日以内生存できることを意味する。(Dr.Kawano訳)
■3頭の猫に見られた片側性眼窩アスペルギルス症とボリコナゾールによる治療
A case series of unilateral orbital aspergillosis in three cats and treatment with voriconazole.
Vet Ophthalmol. May 2010;13(3):190-203.
Lynsey N Smith, Stacey B Hoffman
猫の眼窩アスペルギルス症は公表される報告が多くなっており、新興疾患と思える。眼球突出、顕著な背側頭眼球偏位、後方に押し戻すことに対する明らかな抵抗を示す3頭の猫で、眼窩の真菌感染を診断した。3頭の猫に高度画像検査を実施して疾患の広がりを評価し、2頭はそのガイドで眼窩バイオプシーを実施した。最初の症例は外側眼窩切開の外科処置により探査し、他の2症例は眼摘あるいは内科管理単独で治療した。副鼻腔-眼窩アスペルギルス症に関する利用可能な報告を概説する。2症例で新しいトリアゾール、ボリコナゾールの経口療法を開始した。ボリコナゾールは真菌に対し明らかに効果があったが、副作用も見られた。(Sato訳)
■レプトスピラ症のホファヴァルトの子犬1頭に見られた全身転移性腸管および皮膚石灰沈着症
[Generalized metastatic intestinal and cutaneous calcinosis in a Hovawart-puppy with leptospirosis.]
Generalisierte metastatische intestinale und kutane Kalzinosis bei einem Hovawart-Welpen mit Leptospirose.
Language: German
Schweiz Arch Tierheilkd. January 2011;153(1):27-31.
E Michel; P Kook; K Voss; F Boretti; I Reichler
10週齢オスのホファヴァルトが急性腎不全を呈した。臨床徴候、血液検査結果、血清学的検査をもとに、レプトスピラ症の診断がなされた。高窒素血症のほかに、当初重度高カルシウム血症も見られた。犬の治療は成功したが、広範囲の皮膚および臓器にカルシウム沈着が起こった。重度幽門部カルシウム沈着で機能的幽門閉塞を起こし、幽門筋層切開により治療に成功した。全ての皮膚病変は数週以内に局所療法で治癒した。
著者の知るところでは、これはレプトスピラ症による急性腎不全に関係する全身性腸管および皮膚石灰沈着の最初の報告である。(Sato訳)
■猫ヘルペスウイルス1型に実験的に感染させた猫におけるファムシクロビル経口投与の評価
Evaluation of orally administered famciclovir in cats experimentally infected with feline herpesvirus type-1.
Am J Vet Res. January 2011;72(1):85-95.
Sara M Thomasy; Christine C Lim; Christopher M Reilly; Philip H Kass; Michael R Lappin; David J Maggs
目的:猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)に起因する疾患を実験的に誘発した猫の治療で、ファムシクロビル経口投与の評価を行う
動物:ワクチン未接種の特定病原フリー猫16頭
方法:猫に21日間ファムシクロビル(90mg/kg;n=10)あるいは同量のラクトース(400mg;n=6)を1日3回経口投与した。0日目、猫にFHV-1を接種し、最初の投薬を行った。疾患スコア;体重;尿検査、血清性化学検査、CBCの結果;組織学的結膜炎スコア;ヘルペスのDNA排出;杯細胞密度;抗FHV-1抗体濃度;血漿ペンシクロビル濃度を測定した。
結果:接種後4-18日目、ファムシクロビル投与猫の疾患スコアはラクトース投与猫よりも低かった。接種後最初の7日間はラクトース投与猫の体重が減少したが、ファムシクロビル投与猫の体重は研究期間終始増加した。体重の比率変化は、7-14日目でラクトース投与猫よりもファムシクロビル投与猫のほうが大きかった。ラクトース投与猫と比較して、ファムシクロビル投与猫の血清グロブリン濃度は3日目から9日目まで低く、結膜炎組織学的スコアは14日目で低く、ヘルペスのDNA排出は研究期間中頻度がより少なく、杯細胞密度は21日目により大きく、研究終了時の循環抗FHV-1抗体濃度はより低かった。おおよそピーク時の血漿ペンシクロビル濃度は2.0μg/mlだった。
結論と臨床関連:実験的にFHV-1に感染させた猫におけるファムシクロビル投与は、全身、眼、臨床病理、ウイルス、組織学的変動値の結果を改善した。補助的な局所ムチン模倣薬および抗菌剤投与も必要と思われる。(Sato訳)
■レプトスピラ症に対する2010 ACVIM Small Animal Consensus Statement:診断、疫学、治療、予防
2010 ACVIM Small Animal Consensus Statement on Leptospirosis: Diagnosis, Epidemiology, Treatment, and Prevention.
J Vet Intern Med. 2011 Jan-Feb;25(1):1-13.
J E Sykes; K Hartmann; K F Lunn; G E Moore; R A Stoddard; R E Goldstein
この報告は、重要なズーノーシスの1つである犬のレプトスピラ症の診断、疫学、治療、予防に対する一致見解を提供する。犬のレプトスピラ症の臨床症状は、腎疾患、肝疾患、ぶどう膜炎、肺出血の発症に関連する。降雨量が多い期間の後に疾患は起こりやすいと思われ、水源に近い放浪犬、家畜、野生動物、あるいは郊外の環境に住む犬において発生する可能性がある。
診断は、PCR法を用い、あるいは用いないで顕微鏡凝集試験(MAT)による急性期および回復期抗体価をもとになされる。MATの結果において考慮すべき検査所間の変動があり、MATは感染血清グループを正確に予測しない。
尿細管から病原体の最適な排除に対して推奨される治療は、12時間毎のドキシサイクリン5mg/kgPO14日間投与である。年1回のワクチン接種はワクチンに含まれる血清型のレプトスピラ症を防ぐことができ、感染のリスクがある犬に推奨される。(Sato訳)
■犬と猫の原発性免疫欠損
Primary immunodeficiencies of dogs and cats.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2010;40(3):425-38.
Mary C DeBey
原発性免疫不全は、免疫システムの形成あるいは機能に影響する先天性欠損である。
先天性免疫欠損は、若い動物で感染を繰り返すときの鑑別診断に加えるべきである。免疫システムの欠損は、免疫の完全あるいは部分的喪失を引き起こすと思われる。軽度免疫欠損の動物は、長期抗生物質療法で管理できるものもいる。(Sato訳)
■人畜共通E型肝炎:動物リザーバーと発生リスク
Zoonotic hepatitis E: animal reservoirs and emerging risks.
Vet Res. Nov - Dec 2010;41(6):46.
Nicole Pavio; Xiang-Jin Meng; Christophe Renou
E型肝炎ウイルス(HEV)は、2つの異なる疫学パターンを持つヒトの腸内伝染性急性肝炎の原因である。風土病となっている地域で、何千人ものヒトが飲料水媒介の流行で感染が観察されており、対照的に風土病となっていない地域では散発的に症例が述べられている。風土病の地域での感染源として汚染水がよく述べられているが、風土病となっていない地域の伝染様式はあまりよくわかっていない。
HEVは短鎖、センス鎖RNAウイルスで、少なくとも4つの主要遺伝子型(1-4)の哺乳類HEVと1つの鳥類HEVを持つHepeviridae科に分類される。分かっている肝炎ウイルスの中でもHEVは独特で、動物リザーバーを持つ。
ヒトと対照的に、HEVに感染した豚および他の哺乳類動物種は一般的に無症候を保つが、鳥HEVに感染した鶏は肝炎-脾腫症候群として知られる疾患を発症するかもしれない。HEV遺伝子型1と2はもっぱらヒトで発見されるが、遺伝子型3と4はヒトや他の哺乳類でも認められる。エビデンスのいくつかの線は、HEV遺伝子型3と4を含む数症例で動物からヒトへの伝播が起こることを示す。さらに、動物と直接接触した個体はHEV感染のリスクがより高い。HEV遺伝子型3と4の種交叉感染は実験的に示されている。しかし、これまで全てのヒトの感染源が確認されているわけではなく、多くの症例でヒトのHEV感染の起源は不明のままである。(Sato訳)
■犬および猫におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染に対するリスクファクター:症例コントロール研究
Risk factors for methicillin-resistant Staphylococcus aureus (MRSA) infection in dogs and cats: a case-control study.
Vet Res. June 2010;41(5):55.
Ricardo Jorge Soares Magalhaes, Anette Loeffler, Jodi Lindsay, Mick Rich, Larry Roberts, Heather Smith, David Hugh Lloyd, Dirk Udo Pfeiffer
犬と猫におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)感染に対するリスクファクターを、アンマッチ症例-コントロール研究で調査した。イギリスの150の動物病院から105頭のMRSA症例と、92頭のメチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)感染のコントロール症例、合計197頭の動物で研究した。オーナーおよび獣医スタッフとヒトヘルスケアーセクター(HCS)および徴候、抗生物質および免疫抑制療法、外科手術などの動物関連特性の関連を、ロジスティック回帰を使用して推定上リスクファクターとして評価した。
我々は、MRSA感染の有意なリスクファクターが抗生物質投与クール数(p=0.005)、動物病院の入院日数(p=0.003)、外科的インプラントを設置している(p=0.001)であることを発見した。また、病気にかかっている、および病院に入院しているヒトとの接触のオッズ(p=0.062)は、MSSAコントロールよりもMRSAに感染したペットの方が高かった。
この研究で認められたリスクファクターは、リスクのある愛玩動物群を確認する意識の向上、小動物診療における抗生物質の責任ある、思慮深い使用を提唱する必要性を強調する。(Sato訳)
■犬のインフルエンザ
Canine influenza.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2010;40(6):1063-71.
Edward J Dubovi
イヌにおいて臨床的存在として認められている犬インフルエンザは、比較的歴史が短い。犬から犬に伝染する能力のあるインフルエンザウイルスの特定のサブタイプの存在は、現在地理的にアメリカと韓国に限られている。流行性インフルエンザウイルスに対するヒト集団の懸念で調査を強めため、犬のインフルエンザウイルスのより多くの症例が確実に検出されている。各感染は、種交叉病原体としてインフルエンザウイルスの進化の出現および継続する独特の変種に対する機会を提供する。(Sato訳)
■ムピロシンとノボビオシンに対する試験管内でのメチシリン耐性そしてメチシリン感受性ブドウ球菌の感受性検査
In vitro susceptibility testing of meticillin-resistant and meticillin-susceptible staphylococci to mupirocin and novobiocin.
Vet Dermatol. 2010 Oct 12. doi: 10.1111/j.1365-3164.2010.00921.x.
Fulham KS, Lemarie SL, Hosgood G, Dick HL.
メチシリン耐性ブドウ球菌に対する抗菌効果は限られている。ムピロシンは細菌性皮膚感染症の治療に使われる局所的な抗菌剤である。ノボビオシンは犬のブドウ球菌性上部呼吸器感染症の治療に承認された経口抗菌薬である。
この研究は健常犬と表在性膿皮症の犬から得られたメチシリン感受性ブドウ球菌(MSS)とメチシリン耐性ブドウ球菌(MRS)に対する ムピロシンとノボビオシンの試験管内活性を報告する。
健常犬の4箇所と表在性膿皮症の犬の病変部の皮膚スワブからブドウ球菌を分離した。ブドウ球菌は形態、カタラーゼテストとコアグラーゼテストで同定した。Dade Microscan (W. Sacramento, CA, USA)を使って種分化検査と感受性検査を実施した。メチシリン耐性はオキサシリンスクリーンプレートで確定した。ノボビオシンとムピロシン感受性はディスク拡散法で検査した。ブドウ球菌は61頭の健常犬(MRS17頭とMSS44頭)と30頭の膿皮症の犬(MRS15頭とMSS15頭)から培養され、MRS分離がカイ2乗検定で0.038と高い比率であった。ムピロシンは健常犬から分離されたMSSの79.5%(44頭中35頭)とMRSの82.3%(17頭中14頭)、そして膿皮症の犬から分離されたMSSの100%(15頭中15頭)とMRSの86.6%(15頭中13頭)で感受性があった(MSS,P=0.094;MRS,P=1.0;フィッシャーの直接確率検定)。ノボビオシンは健常犬から分離されたMSSの95.4%(44頭中42頭)とMRSの52.9%(17頭中9頭)、そして膿皮症の犬から分離されたMSSの93.3%(15頭14頭)とMRSの80%(15頭中12頭)で感受性があった(MSS,P=1.0;MRS,P=0.148;フィッシャーの直接確率検定)。(Dr.Kawano訳)
■ブルセラキャニス眼内炎の犬3頭:臨床特性、診断、治療
Brucella canis endophthalmitis in 3 dogs: clinical features, diagnosis, and treatment.
Vet Ophthalmol. 2009 May-Jun;12(3):183-91.
Eric C Ledbetter, Matthew P Landry, Tracy Stokol, Thomas J Kern, Joanne B Messick
目的:ブルセラキャニス眼内炎の犬の病歴、臨床および診断的特徴と治療に対する反応を述べる
研究動物:ブルセラキャニス眼内炎を自然に発症した3頭の犬
方法:抗炎症性点眼およびドキシサイクリン、エンロフロキサシン、リファンピンおよびストレプトマイシンなどの新しい抗菌剤プロトコールで対症療法を行った。
結果:3頭とも顕性の全身性疾患がなく、慢性あるいは再発性ぶどう膜炎を呈した。臨床的眼科異常は各犬の片側性で、軽度から中程度の前ぶどう膜炎、虹彩色素沈着過剰、顕著な硝子体浸潤、多病巣性脈絡網膜炎だった。血清学的および血液培養(n=2)あるいは眼房水および血液のPCR法(n=1)により犬ブルセラ症を診断した。活動性眼炎症は治療中に全ての犬で改善し、2頭は視力を維持した。治療に伴い3頭のブルセラキャニスは血液の培養で検出できなくなり、血清学的値は低下し、中央値96週間(範囲:36-112週間)の治療後、血清陰性に達した。
結論:ブルセラキャニス感染は、過去の病歴あるいは不妊状態にかかわりなく、眼内炎症を持つ犬の鑑別診断に含めるべきである。これは眼が関与する犬のブルセラ症の治療が明らかに成功した最初の報告である。(Sato訳)
■瀰漫性クロレラ症の犬の1例
Disseminated chlorellosis in a dog.
Vet Pathol. May 2009;46(3):439-43.
R R Quigley, K E Knowles, G C Johnson
以前にプロトテコーシスと診断された運動失調と舌マスを持つ1頭の成犬を安楽死した。剖検で、舌マス、肺および肺門リンパ節領域、肝臓、腸間膜および腰下リンパ節、脊髄髄膜に明白な緑色の変色を認めた。組織学的に舌、脊髄髄膜、肺門および腸間膜リンパ節、肝臓、肺において化膿性肉芽腫性炎症と藻類生物を認めた。その藻類はPAS染色および細胞質顆粒陽性の細胞壁を有した。超微細構造的にその藻類は、明白な細胞壁、グラナとチラコイド膜の積み重ね、濃染顆粒、典型的なでんぷん顆粒を有した。その生物は組織化学および電子顕微鏡検査結果をもとに緑藻類のクロレラと同定した。著者の知るところでは、これは瀰漫性クロレラ感染の最初の報告で、コンパニオンアニマルで最初の報告である。(Sato訳)
■真菌および細菌性腹膜炎による二次的な瀰漫性カンジダ症を示した若い犬の1例
Disseminated candidiasis secondary to fungal and bacterial peritonitis in a young dog
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):193-198. 22 Refs
Catherine L. Rogers, DVM, DACVECC, Christopher Gibson, VMD, Susan L. Mitchell, DVM, DACVS, John H. Keating, DVM, DACVP, Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVIM, DACVECC
目的:それまでは健康な1頭の犬における細菌性敗血症および瀰漫性カンジダ症の重症例を述べる
症例概要:2歳の犬において腹部外科後4日目に腸裂開に続き真菌性敗血症を認めた。入院時に敗血症性腹膜炎を認め、試験開腹中に過去に行った腸切開部位の裂開所見が見つかった。グラム陽性球菌とカンジダアルビキャンスが腹腔から培養された。続いて中心静脈カテーテルからもカンジダ属が培養された。治療に対する反応が悪いため安楽死が行われた。カンジダ属に一致する真菌病原体が、死後の病理組織検査において肺と肝臓で見つかり、瀰漫性カンジダ症が示された。
提供された新奇情報:カンジダ腹膜炎はヒトでよく認識されており、重症患者の罹病率および死亡率に寄与する。腹部外科、腸穿孔、中心静脈カテーテルの存在、広域スペクトラム抗生物質の投与は、すべて疑われるリスクファクターと考えられる。この報告は、重症犬におけるカンジダ腹膜炎および細菌性敗血症による二次的な全身性カンジダ症の最初の症例を述べるものである。(Sato訳)
■健常人においてIFN-γと/あるいはTNF-αを産生するCD4(+) と CD8(+)Tリンパ球の出現率に対するAHCCの効果
Effects of active hexose correlated compound on frequency of CD4(+) and CD8(+) T-cells producing interferon-gamma and/or tumor necrosis factor-alpha in healthy adults.
Hum Immunol. 2010 Aug 21.
Yin Z, Fujii H, Walshe T.
活性化六炭糖関連化合物(AHCC)は、免疫系が易感染状態の症例における免疫賦活薬として使われる可能性がある自然化合物である。この研究の目的は、健常な50歳以上の大人の免疫機能に対するこの化合物の効果を評価することであった。
CD4(+)とCD8(+)Tリンパ球によるIFN-γとTNF-αの産生を、AHCC摂取後異なる時点で患者から採取した末梢血のフローサイトメトリーで測定した。IFN-γ単独、TNF-α単独あるいは両方を産生するCD4(+) と CD8(+)Tリンパ球の出現率は、基線と比較してAHCC摂取中に増加した。さらにAHCCを中止した後30日でさえ、そのような細胞の出現率は高い状態を維持した。全体的に、これらの所見からAHCCは、そのような効果を得るのに少なくとも30日摂取した健常の高齢者においてCD4(+) と CD8(+)Tリンパ球の免疫応答を増強し、この化合物による治療を中止した後30日までその効果が維持されることが示唆される。(Dr.Kawano訳)
■細菌培養および抗生物質感受性試験
Bacterial Culture and Antibiotic Susceptibility Testing
July 2010 Compendium
By Stephanie A. Pierce-Hendry, DVM,Jeffrey Dennis, DVM, DACVIM
要約:複雑な細菌感染は、臨床家に明確な診断を追究することを促す。(1)ディスク拡散法(2)培養液希釈法の2つの方法の細菌培養や抗生物質感受性試験が、獣医臨床において一般に使用されている。どちらの方法も感染病原体やその成長を阻止しそうな抗生物質を同定する。さらに培養液希釈法は、ベストな抗生物質の選択をするのに役立つ最小阻止濃度を提供する。(Dr.Boo訳)
■イヌインフルエンザ
Canine Influenza
June 2010 Compendium: Continuing Education For Veterinarians
Karen Hilling, DVM,Rita Hanel, DVM, DACVIM, DACVECC
要約:イヌの高い伝染性を有する呼吸器の病原体であるイヌインフルエンザウイルス(CIV)が、新たに同定された。臨床疾患は、高い罹患率と低い死亡率を示す。イヌインフルエンザの診断は、急性期と回復期の血清サンプルと、ヒストリーそして臨床兆候に基づいておこなわれる。系統発生学的分析は、病因となる病原体が、ウマインフルエンザA(H3N8)ウイルスと密接な関係にあるインフルエンザAウイルスであることを示している。これまで集められたデータは、イヌの集団におけるウマからイヌへの水平拡散による伝播を支持している。この種間の飛び越え、そしてイヌとヒトとの密接な交わりを考えると、ヒトへの伝播の可能性に対して、CIVを徹底的に監視することは当然のことである。(Dr.Boo訳)
■中国東部における家庭動物のE型肝炎ウイルス感染
Hepatitis E Virus Infection among Domestic Animals in Eastern China
Zoonoses Public Health. August 2008;55(6):291-8.
W Zhang, Q Shen, J Mou, G Gong, Z Yang, L Cui, J Zhu, G Ju, X Hua
E型肝炎ウイルス(HEV)はいくつかの動物種がリザーバーとして報告されている人畜共通病原体である。HEVの抗体およびHEVRNAは、ある中国人集団および豚群で検出されているが、他の家庭動物ではほとんどない。
この研究で、HEV罹患率の調査を行うため、中国東部における豚788頭、牛100頭、羊50頭、馬49頭、飼育犬101頭、鶏105羽、鴨47羽、鳩45羽の血清で抗HEV免疫グロブリンG(IgG)に対する検査を行った。我々は、逆転写酵素-PCR法でHEVRNAに対する抗HEV免疫グロブリンM(IgM)が陽性の豚の血清の50%、他の家庭動物の全ての血清、上海の13人の人の血清も検査した。
結果は4-6ヶ月齢の豚のうち雌豚の82.5%(222/269)、オス豚の53.9%(104/193)、1-3歳の豚の63.4%(168/265)、屠殺場の豚の55.7%(34/61)、羊の24%(12/50)、馬の16.3%(8.49)、飼育犬の17.8%(21/101)、雌牛の6%(6/100)、鴨の12.8%(6/47)、鳩の4.4%(2/45)、鶏の1.9%(2/105)が抗HEVIgG陽性だった。阻止試験で鳩と鶏を除く家庭動物でHEVあるいはHEV様ウイルスの感染が確認された。血清から18の豚HEV株、1つの馬HEV株、2つの人HEV株を分離した。シーケンス分析で馬HEV分離ウイルスと1つの豚分離ウイルスは遺伝子型3に属することを示した。他の分離ウイルスは遺伝子型4に属した。2つの人分離ウイルスは、系統学的に8つの豚分離ウイルスに密接に関連していた。
要するに、抗HEV抗体の存在は、中国東部における家庭動物の数種で確認されており、HEVRNAは豚、人、馬で確認されている。これは中国東部において当局がHEVの罹患率により注意を払うべきだと示唆された。(Sato訳)
■全身性炎症反応症候群あるいは敗血症の犬におけるC-反応性蛋白による予後の予測
Use of C-reactive protein to predict outcome in dogs with systemic inflammatory response syndrome or sepsis
J Vet Emerg Crit Care. Oct 2009;19(5):450-458. 37 Refs
Constance Gebhardt, Dr med vet, Johannes Hirschberger, Dr med vet, DECVIM, DECVCP, Stefanie Rau, Dr med vet, Gisela Arndt, Dr rer pol, Karen Krainer, Florian J. Schweigert, Dr med vet, Leo Brunnberg, Dr med vet, Bernd Kaspers, Dr med vet, Barbara Kohn, Dr med vet, DECVIM
背景:全身性炎症反応症候群(SIRS)あるいは敗血症の患者の死亡率は高い。ゆえに、早期診断および予後評価は最適な治療を施すのに重要である。この研究の目的は、血清C-反応性蛋白(CRP)の基準値および変化がSIRSおよび敗血症の犬の生存性を予測するかどうか評価することだった。
構成:前向き研究;2004年7月から2005年7月
場所:ベルリン、ミュンヘンの小動物診療所
動物:61頭の犬
測定値および主要結果:CRP分析に対し、0、1、2日目に採血;CRPを市販ELISA試験キットで測定した。13頭の犬は非敗血症性SIRS、48頭の犬は敗血症だった。14日目の生存率は61%(69%非敗血症性SIRS、58%敗血症)だった。病気の犬の血清CRPはコントロールよりも高かった(P<0.001)。3日目以上生存した犬(n=31)は、非生存犬(n=10)よりも有意に大きなCRPの低下を示した(P=0.001)。最初のCRP濃度と生存率の間に相関は認められなかった。CRPの変化が生存率に対応した(P=0.01)。
結論:非敗血症性SIRSあるいは敗血症の犬の生存率および最初の血清CRP濃度の間に有意な相関はなかった。CRP濃度の低下と疾病からの回復の間に相関があった。しかし、3日目以上の期間のCRP濃度の変化は、94%の犬の生存、30%の犬の死亡を正確に予測した(偽陽性率22%)。(Sato訳)
■敗血症を呈した犬の予後と臓器機能障害との関連性:114症例(2003?2007)
Association between outcome and organ system dysfunction in dogs with sepsis: 114 cases (2003-2007).
J Am Vet Med Assoc. 2010 Jan 1;236(1):83-7.
Kenney EM, Rozanski EA, Rush JE, deLaforcade-Buress AM, Berg JR, Silverstein DC, Montealegre CD, Jutkowitz LA, Adamantos S, Ovbey DH, Boysen SR, Shaw SP.
目的
消化管からの漏出により二次的に生じた敗血症の犬で、多臓器機能障害(MODS)を確認することができるかどうか、また障害を呈した臓器数が死亡率と相関するかどうかを調べるため。
研究デザイン
多施設におけるRetrospective case series
動物
114頭の犬
方法
2003年から2007年の間に消化管からの漏出性の敗血症で外科療法を行った犬の医療記録を用いた。敗血症は腹水の細菌培養結果や外科的に消化管からの漏出を確認することにより診断した。腎機能障害は術後、血清クレアチニンが0.5mg/dl以上上昇した場合とした。心血管系障害は昇圧剤が必要な低血圧とした。呼吸器系障害は酸素吸入あるいは機械的換気が必要な場合とした。肝機能障害は血清ビリルビンが0.5mg/dlよりも上昇した場合とした。凝固障害はプロトロンビン時間の延長、部分トロンボプラスチン時間の延長、あるいは血小板数が100000/microL以下のときとした。
結果
89(78%)頭の犬が1つ以上の臓器機能障害を呈し、57(50%)頭がMODSであった。死亡率は障害臓器数の増加に伴い上昇した。死亡率はMODSの犬で70%(40/57)、MODSがない犬で25%(14/57)だった。
結論と臨床的関連性
本結果は2臓器以上の障害と定義されるMODSが敗血症の犬で確認でき、また臓器機能障害により死亡率が上昇することを示唆している。(Dr.Ka2訳)
■アニマルシェルター内の猫における上部気道および眼疾患、感染病原体の検出に対するリジン食餌補充の効果
Effects of dietary lysine supplementation on upper respiratory and ocular disease and detection of infectious organisms in cats within an animal shelter.
Am J Vet Res. November 2009;70(11):1391-400.
Tracy L Drazenovich, Andrea J Fascetti, Hans D Westermeyer, Jane E Sykes, Mike J Bannasch, Philip H Kass, Kate F Hurley, David J Maggs
目的:猫シェルター内で鼻および眼疾患、Chlamydophila felis、猫カリシウイルス(FCV)、猫ヘルペスウイルス(FHV-1)の核酸検出に対するリジンの食餌添加の影響を判定する
動物:261頭の成猫
方法:4週間、1.7%(基準食;コントロール猫)あるいは5.7%(添加食;処置猫)リジンを含んだ食餌を猫に与えた。リジンとアルギニンの血漿濃度を研究の最初(基準)と終わりに測定した。鼻および眼疾患の所見をもとに、1週間に3回臨床スコアを付けた。1週間に1回、結膜および口腔咽頭スワブでFHV-1、FCV、C
felis核酸を検査した。
結果:研究の1、2、3、4週目にそれぞれ123、74、59、47頭の猫からデータを収集した。研究終了時、コントロール猫よりも処置猫の血漿リジン濃度は高く、基準より増加していた。軽度疾患を発症した猫の集団でグループ間に差はなかった。しかし、コントロール猫よりも処置猫は、4週間の間に軽度から重度疾患をより多く発症した。2週目の間、コントロール猫に対し処置猫のスワブ標本においてより多くFHV-1DNAを検出した。
結論と臨床関連:我々の研究で使用した量のリジン食餌添加は、猫シェルター内の感染性上部気道疾患をコントロールする手段として好結果をもたらさなかった。むしろ重症例の増加、およびあるタイムポイントでは口腔咽頭あるいは結膜粘膜スワブ標本においてFHV-1DNAの検出増加を導いた。(Sato訳)
■2008 American Association of Feline Practitionersの猫レトロウイルス管理ガイドライン
2008 American Association of Feline Practitioners' feline retrovirus management guidelines
J Feline Med Surg. April 2008;0(0):.
Julie Levy, Cynda Crawford, Katrin Hartmann, Regina Hofmann-Lehmann, Susan Little, Eliza Sundahl, Vicki Thayer
猫白血病ウイルス(FeLV)および猫免疫不全ウイルス(FIV)は猫の一般的な感染疾患である。両ウイルス共にワクチンが利用可能であるが、感染した猫の同定および隔離が、新規感染を防ぐ基礎を作り上げる。この報告のガイドラインは、FeLVおよびFIV感染の診断、予防、治療、管理を展開している。
全ての猫は、個々のリスク査定をもとに適切な間隔でFeLVおよびFIV感染の検査をすべきである。これには、拾ったとき、感染した猫あるいは感染状況が不明な猫との暴露があった後、FeLVあるいはFIVに対するワクチン接種の前、多頭飼育に招き入れる前、猫が病気になった時が含まれる。全ての状況下のどの時でも100%正確な検査はなく、結果は猫の健康状態およびリスクファクターに沿って解釈すべきである。レトロウイルス検査は臨床疾患ではなく感染のみを診断でき、FeLVあるいはFIVに感染した猫は何年も生存すると思われる。
安楽死の決断は、単に猫が感染しているかどうか、あるいは感染しているということだけで成されるべきではない。FeLVに対するワクチンは子猫に強く推奨される。成猫で抗レトロウイルスワクチンはノンコアと考えられ、妥当と示されるリスク査定があるときのみ投与すべきである。自然感染猫の治療に対する抗ウイルス剤あるいは免疫調整剤を使用して行われている大規模コントロール研究は少ない。猫のレトロウイルス感染後の長期結果を改善する最良の診療を確立するための更なる調査が必要である。(Sato訳)
■1頭のジャーマンシェパードに見られた広範性Geosmithia argillacea感染
Disseminated Geosmithia argillacea infection in a German Shepherd dog.
Med Mycol. March 2009;47(2):221-6.
David C Grant, Deanna A Sutton, Christina A Sandberg, Ronald D Tyler Jr, Elizabeth H Thompson, Anna M Romanelli, Brian L Wickes
我々はGeosmithia argillaceaにより引き起こされた1頭のジャーマンシェパードの全身性真菌症を報告する。この病原菌は顕微鏡的にペニシリウム種に似ているが、病理組織的にアスペルギルス属の一員と適合し、形態学的特長および分子特性は明らかにそれらの属とは別のものである。これはヒトあるいは動物においてこの種による広範性疾患の最初の報告と思われる。インビトロでの抗真菌感受性試験で、アンホテリシンBおよびボリコナゾールへの抵抗性、キャスポファンギン、イトラコナゾール、ポサコナゾールへの感受性を示す。(Sato訳)
■ストレプトコッカス・キャニスに関与する猫の致死性壊死性筋膜炎および筋肉炎
Fatal necrotising fasciitis and myositis in a cat associated with Streptococcus canis
Vet Rec. April 2008;162(14):450-3.
R Sura, L S Hinckley, G R Risatti, J A Smyth
壊死性筋膜炎および壊死性筋肉炎はあまり見られないが、主にヒトや犬で重篤な命にかかわる状況が報告されている。今日、ほとんどの症例は、ランスフィールド群A、B、C、Gのベータ-溶血性連鎖球菌により起こっている。壊死性筋膜炎は猫で2回しか報告されておらず、今まで壊死性筋肉炎の記述はない。この報告は、9歳の猫における肺炎、敗血症を伴う壊死性筋膜炎および筋肉炎の致死的ケースを述べる。その猫は前十字靱帯断裂を疑い治療を行っていたが、治療7日目に急に悪化し死亡した。
剖検で、左後肢に脱毛部があり、その下の筋膜および大腿二頭筋の変色が見られた。多数の病巣内グラム陽性球菌様細菌を伴う重度壊死性筋膜炎および筋肉炎と組織学的に診断した。その他の所見には、壊死性肺炎、胸膜炎、限局性脳炎、心筋炎、腎炎が認められた。罹患組織の培養で、Streptococcus canisの純粋な多量の増殖が得られた。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎に関する去勢済み猫の持続勃起
Priapism in a castrated cat associated with feline infectious peritonitis
J Feline Med Surg. October 2007;0(0):.
Ada Rota, Saverio Paltrinieri, Selina Jussich, Giuseppe Ubertalli, Simonetta Appino
この報告は、初診で持続勃起の珍しい症状で来院した去勢済み猫における猫伝染性腹膜炎(FIP)の症例を述べる。検査所における検査で、血清タンパク量の増加、アルブミン/グロブリン比の低下を示した。血清電気泳動でアルファ(2)-、ガンマグロブリン含有の増加を示した。初回検査から1ヶ月目に猫は死亡した。検死で、臓器の病理組織評価により乾性FIPに匹敵する炎症性肉芽腫病変を認め、コロナウイルス特異PCRで診断を確認した。FIP抗原は陰茎組織で免疫組織化学的に認められた。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎および肝リピドーシスの猫における皮膚脆弱症候群
Skin fragility syndrome in a cat with feline infectious peritonitis and hepatic lipidosis
Vet Dermatol. October 2007;18(5):365-9.
Tara K Trotman, Elizabeth Mauldin, Vickie Hoffmann, Fabio Del Piero, Rebecka S Hess
3週間前から食欲不振、体重減少、隠れるなどの症状を呈す6歳避妊済みメスの家猫短毛種を検査した。触知可能な腹部の液体波、脱水、左わき腹の小裂傷が初回検査時に認められた。採血のために猫をやさしく抑えたとき、15cmx7cmの皮膚のフラップを残し、頚部背側の皮膚が裂けた。臨床病理学的異常は、非再生性貧血、低アルブミン血症、グロブリン濃度上昇、ASTおよびALP活性の軽度上昇が見られた。腹水は粘稠性、総蛋白5.3g/dl、316cells/マイクロLで、変性漏出液と一致した。腹水の細胞診は、86%の非変性好中球、13%のマクロファージ、1%の小リンパ球だった。組織病理評価と間接免疫組織化学により、猫伝染性腹膜炎、肝リピドーシス、猫皮膚脆弱症候群と確定診断した。猫皮膚脆弱症候群は、過去に猫伝染性腹膜炎との関与を報告されていない。FIPに関与する臨床症状としてそれを含めることは、診断を容易にするかもしれない。(Sato訳)
■活性化糖類関連化合物(AHCC)の補充はマウスにおける感染の誘発後の生存性を増加させる。
Supplementation with active hexose correlated compound increases survival following infectious challenge in mice.
Nutr Rev. 2008 Sep;66(9):526-31.
Ritz BW.
活性化糖類関連化合物(AHCC)は免疫サポートを促進する発酵性キノコ抽出物である。この概説はインフルエンザウイルス、鳥インフルエンザウイルス、Klebsiella pneumoniae、Candida albicans、Pseudomonas aeruginosaそして methicillin-resistant Staphylococcus aureusなど様々な病原体に対する免疫反応および生存性に対するAHCCサプリメントの効果を評価するin vivoの研究結果に焦点を合わせている。AHCCの補完は免疫を調節し、急性感染症に対して反応し生存増加させるように思われ、さらなる調査が期待される。(Dr.Kawano訳)
■健康なボランティアにおける活性化糖類関連化合物(AHCC)の免疫学的効果:二重盲検プラセボコントロール試験
Immunological effect of active hexose correlated compound (AHCC) in healthy volunteers: a double-blind, placebo-controlled trial.
Nutr Cancer. 2008;60(5):643-51.
Terakawa N, Matsui Y, Satoi S, Yanagimoto H, Takahashi K, Yamamoto T, Yamao J, Takai S, Kwon AH, Kamiyama Y.
この研究の目的は、健康なボランティアの循環樹状細胞(DCs)の数と機能を評価することにより、活性化糖類関連化合物(AHCC)摂取の免疫反応に対する効果を評価することだった。4週間にわたりAHCC
3.0 g/dayとプラセボを、ランダムに21人のボランティアに投与した。循環している分化抗原群(CD)11c陽性樹状細胞(DC1)とCD11c陰性樹状細胞(DC2)の数を測定した。同種間の混合白血球反応(MLR)を行った。ナチュラルキラー(NK)細胞活性と分裂促進因子(植物性血球凝集素[PHA])に向かうTリンパ球の増殖性反応を測定した。またリポ多糖類に刺激されたサイトカイン[インターロイキン
(IL)-2, IL-4, IL-6, IL-10, IFN-γ, TNF-α]産生も測定した。
AHCCを摂取した後のAHCCグループ(n = 10)は、コントロール被検者(n = 11)の基線と値を比較すると総樹状細胞数が明らかに高かった。摂取後のAHCCグループにおけるDC1sの数は基線より明らかに高かった。AHCCグループにおけるDC2sはコントロールと比較して明らかに増加した。AHCCグループにおけるDC2sはコントロール被検者と比較して明らかに高かった。AHCCグループにおける混合白血球反応(MLR)は、コントロール被験者と比較して明らかに増加した。植物性血球凝集素[PHA]、ナチュラルキラー(NK)細胞活性、そしてサイトカイン産生はグループ間において有意差は認められなかった。AHCC摂取は特異的な免疫に役割を果たすDCsの数とDC1sの機能を増加させる結果となった。(Dr.Kawano訳)
■猫ヘルペスウイルスⅠ型に対するガンシクロビル、 シドフォビル、ペンシクロビル、ホスカネット、イドクスウリジンそしてアシクロビルの生体外での効果
In vitro efficacy of ganciclovir, cidofovir, penciclovir, foscarnet, idoxuridine, and acyclovir against feline herpesvirus type-1.
Am J Vet Res. 2004 Apr;65(4):399-403.
Maggs DJ, Clarke HE.
目的:猫ヘルペスウイルスⅠ型に対する4つの新規薬剤(ガンシクロビル、 シドフォビル、ペンシクロビルそしてホスカネット)の猫ヘルペスウイルス1型(FHV-1)に対する生体外での効果を確立し、それらの抗ウイルス効果をアシクロビルとイドクスウリジンの効果を比較すること。
標本母集団:培養したクランデルリース猫腎培養細胞 (CRFK)と猫ヘルペスウイルス1型727株
方法:それぞれの薬剤に対し、従来のプラーク減少評価法を使って抗ウイルス効果を評価し、50%阻止濃度(IC50;プラーク数が無治療のコントロールウェルのプラーク数と比較して50%減少した薬物濃度)を算出した。観察された抗ウイルス効果が、クランデルリース猫腎培養細胞
(CRFK)の数や生存率などの変化と関連があるか決定するために、それぞれの抗ウイルス剤でIC50中央値の1、2そして10倍の濃度で細胞毒性評価を行った。
結果:それぞれの薬剤のIC50中央値は以下の通りだった:ガンシクロビル、5.2 microM;シドフォビル、11.0 microM;ペンシクロビル、13.9 microM;ホスカネット、232.9 microM;イドクスウリジン、4.3 microM;アシクロビル、57.9 microM。猫腎培養細胞の形態学的な特徴、コンフルエンスあるいは生存率における明らかな変化は、それぞれの薬剤のIC50の2倍までの濃度で観察されなかった。
結論と臨床関連:猫ヘルペスウイルス1型に対するイドクスウリジンとガンシクロビルの試験管内での効果はおおよそ同等で、シドフォビルとペンシクロビルの約2倍であった。ホスカネットは比較的に効果がなかったように思われた。猫ヘルペスウイルス1型に感染した猫において、イドクスウリジンの合理的な臨床効果から考えて、ガンシクロビル、シドフォビルそしてペンシクロビルあるいはそれらのプロドラッグ型の臨床試験が保障されるように思われる。(Dr.Kawano訳)
■猫のシェルター集団におけるL-リジンの経口補給は上部気道感染を防がなかった
Oral supplementation with l-lysine did not prevent upper respiratory infection in a shelter population of cats
J Feline Med Surg. June 2008;0(0):.
Tina M Rees, Janet L Lubinski
アニマルシェルターの猫は、それらのストレスおよび他の猫と近接であるため、猫ヘルペスウイルス(FHV)による感染の感受性が高い。アニマルシェルターは、FHVの複製を防ぎ、ヘルペスウイルスの症状発現を予防すると信じ、全ての猫に対するL-リジンの経験的投与など、FHV関連上部気道感染(URIs)の予防に対するいくつかの異なる対策を取っている。
この研究で、我々はURIsの予防手段としてL-リジンの経口補給を研究した。1日1回少量の缶詰にL-リジンを混ぜて144頭の猫に投与した。147頭の猫は無治療群として研究中リジンを投与しなかった。結膜炎またはURIの発症を2群間で調査した。我々のシェルターの状況では、すべての測定値において2群間に影響はなく、リジンはURIまたは結膜炎を予防できなかったことを示唆した。
シェルターに入れられた猫は、HFV再活性化、または感染により感受性が強くなるようなストレス因子に遭遇する。感染コントロールおよび媒介物伝達コントロールも、群で飼育する状況で猫を健康に維持する鍵となる。この動物シェルターでリジンがURIを予防しなかった所見は、シェルターがそれら猫集団中のストレスを低下する方法を見つける、適切な感染コントロール手段に焦点を当てる、疾患の媒介物伝達を制限するなどに資源を使用するほうが良いかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬猫のパルボウイルス感染の診断における補足サンプルとして舌の評価
Evaluation of tongue as a complementary sample for the diagnosis of parvoviral infection in dogs and cats
J Vet Diagn Invest. July 2007;19(4):409-13.
Christy A McKnight, Roger K Maes, Annabel G Wise, Matti Kiupel
犬猫の犬パルボウイルス2型及び猫白血球減少ウイルス感染の診断は、重度腸病変、二次的な細菌異常増殖、急速な自己融解の発現により妨害されるかもしれない。小腸と対照的に、舌上皮は死後変化に感受性が低い。
犬及び猫パルボウイルス感染に適合する臨床病歴、肉眼及び顕微鏡的病変を持つ11頭の犬と11頭の猫の舌と小腸の切片で、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、免疫組織化学(IHC)、直接蛍光抗体法(FA)によりパルボウイルス感染の検査を行った。パルボウイルスDNAは1頭を除き全ての小腸及び舌からPCRで検出された。小腸でFA染色による疑い、または陽性だった22頭中19頭(86%)は、舌でFA及びIHC染色でも陽性を示した。凍結し、検死前に解凍した死体の犬3頭中3頭(100%)は、FA及びIHCにより小腸よりも舌でより一貫した陽性染色を示した。それらのデータは、舌が犬猫のパルボ検査で、特に死後自己融解が起こった症例の優秀な補足サンプルとして確認する。(Sato訳)
■猫におけるマイコバクテリウムfortuitum肺炎と非定型マイコバクテリア感染の病原で脂質の役割
Mycobacterium fortuitum pneumonia in a cat and the role of lipid in the pathogenesis of atypical mycobacterial infections
Vet Pathol. July 2007;44(4):543-6.
S S Couto, C A Artacho
マイコバクテリウムfortuitumは、動物やヒトに感染する可能性がある腐生性、急速成長、非結核性、非らい腫性マイコバクテリウムである。犬猫で、非定型マイコバクテリアで起こる潰瘍性皮膚炎及び皮下脂肪織炎の一般的な病原菌のひとつである。ヒトでは、脂肪肺炎、または汚染手術部位でよく見つかる。
我々は、ヒトの脂肪肺炎に似たM fortuitumによる肉芽腫性肺炎の猫を報告する。犬猫で、この病原体による肺と皮膚病変の組織病理学的類似点を強調する。我々はマイコバクテリア症の病原で脂質の役割を論じ、非定型マイコバクテリアと脂質が豊富な環境の関連を示唆する。通常の抗生物質に反応がない脂質が豊富な肺炎の例の鑑別にM fortuitumを含めるべきだと結論付ける(Sato訳)
■破傷風菌感染の合併症として1頭のボーダーコリーに見られた寛骨大腿脱臼
Coxofemoral luxation in a border collie as a complication of a Clostridium tetani infection
J Small Anim Pract. November 2007;0(0):.
M A Goldhammer, P S Chapman, J M Grierson
4ヶ月齢未去勢オスのボーダーコリーが、2日前からの筋肉痙攣および”痙笑”でQueen Mother動物病院に来院した。破傷風を診断し、破傷風抗毒素、抗生物質および支持療法で治療した。破傷風の合併症で股関節脱臼が起こり、大腿骨頭頸切除を行い管理に成功した。これは犬における破傷風菌感染に関与した関節脱臼の最初の報告である。(Sato訳)
■自発犬単球性エールリヒア症(Ehrlichia canis)の眼症状:90例の遡及研究
Ocular manifestations of natural canine monocytic ehrlichiosis (Ehrlichia canis): a retrospective study of 90 cases
Vet Ophthalmol. 2007 May-Jun;10(3):137-42.
Anastasia A Komnenou, Mathios E Mylonakis, Vassiliki Kouti, Lina Tendoma, Leonidas Leontides, Eugenia Skountzou, Angelos Dessiris, Alex F Koutinas, Ron Ofri
目的:Ehrlichia canisによる自発犬単球性エールリヒア症(CME)に関与する眼症状のスペクトラム、有病率、治療反応を調査する
方法:E. canis血清抗体に対する陽性反応と主に眼の問題を持つことで紹介されてきた犬90頭の医療記録を再調査した。すべての犬は経口ドキシサイクリンで治療した。79頭で、全身性コルチコステロイド及び/または抗炎症剤点眼、散瞳剤/毛様体筋麻痺薬、抗菌剤を組み合わせて投与した。
結果:犬の年齢範囲は0.5-15歳で55頭はオス、35頭はメスだった。合計19犬種が存在した。ほとんどの犬で、眼の異常は他のCME誘発臨床症状と組み合わせて見られた。90頭中30頭で目の症状が唯一の主訴だった。片側性(22/90、24.5%)と両側性(68/90、75.5%)ぶどう膜炎が一般的な眼症状で、前、後、汎ぶどう膜炎はそれぞれ58(64.5%)、8(8.9%)、24(26.6%)の犬に見られた。両側性は有意に片側性ぶどう膜炎よりも一般的で(P<0.0001)、前部は有意に後ぶどう膜炎(P<0.0001)または汎ぶどう膜炎(P<0.0001)よりも多く見られた。また、角膜潰瘍(12/90、13.3%)、壊死性強膜炎(10/90、11.1%)、涙産生低下(8/90、8.9%)、眼窩蜂巣炎(3/90、3.3%)が見られた。十分な追跡調査ができた45頭(50%)のうち、25(55.5%)、11(24.5%)、9(20%)頭は、それぞれ治療に完全、部分、不十分な反応を示した。眼症状の完全な解消を示した頭数は、部分(P<0.0001)または不十分(P<0.0001)な反応の頭数よりも有意に多かった。
結論:CMEはその疾患の蔓延地域に住む犬に起きた広範囲の眼症状の主要鑑別に考慮すべきである。両側性前ぶどう膜炎は最もよく見られる眼病変で、全身性及び局所治療に対し良好な結果が多くの罹患犬で期待されると思われる。(Sato訳)
■破傷風の犬13症例
Thirteen cases of tetanus in dogs
Vet Rec. September 2007;161(9):298-302.
S Adamantos, A Boag
破傷風の犬13頭の記録を再調査した。そのうち12頭は生存して退院したが、高熱の急性発現の結果1頭は死亡した。生存した10頭で長期追跡調査ができ、9頭は正常ということだった。1頭は退院後4ヶ月目に頚椎骨折後安楽死された。管理中に見られた合併症は、3頭で吸引性肺炎、2頭で尿路感染、各1頭ずつ上部気道閉塞、裂孔ヘルニア、寛骨大腿脱臼、発作と呼吸停止だった。ベンチレート補助を必要とした犬はおらず、合併症はうまく管理できた。犬は集中的に管理され、注意深くモニターされた。(Sato訳)
■物理及び化学因子による犬コロナウイルス不活化
Canine coronavirus inactivation with physical and chemical agents
Vet J. May 2007;0(0):.
Annamaria Pratelli
犬コロナウイルス(CCoV)は、子犬に軽度から中程度の腸炎を起こす。このウイルスは感染性が高く、感染犬とその排泄物との接触を避けることが唯一疾患を防ぐ確実な方法である。化学的殺生物剤に対するCCoVの感受性に注目した研究がないため、この調査はウイルス不活化の物理及び化学的方法の効果を研究した。CCoVの感染性は、+56℃30分間まで安定したが、+65℃と+75℃で急速に低下する傾向があった。殺菌性紫外線(UV-C)光暴露は、3日間までウイルス不活化に有意な影響を示さなかった。CCoVはpH6.0-6.5でより安定したが、極度な酸性の状況でウイルスは不活化された。2種の検査したアルデヒドはウイルスを不活化させたが、それらの作用は温度-及び時間-依存的だった。CCoV不活化の方法は、通常の検査処置中に病原体に研究者が偶然暴露されるリスクを減らす、ヒトコロナウイルス感染を研究する動物モデルとして利用できた。(Sato訳)
■mRNA RT-PCRによる猫の血液サンプル中の猫コロナウイルスの検出
The detection of feline coronaviruses in blood samples from cats by mRNA RT-PCR
J Feline Med Surg. May 2007;0(0):.
Kezban Can-S Ahna et al,
この研究で、猫伝染性腹膜炎(FIP)を示唆する臨床症状、すなわち発熱、体重減少、腹囲膨満、腹水を呈す猫1頭と健康な猫25頭から26の血液サンプルを採取した。その血液サンプルを、過去に臨床的FIPの診断に高い特異性を持つと述べられている逆転写酵素-ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)法により[Simons AF, Vennema H, Rofina JE, Pol JM, Horzinek MC, Rottier PJM, Egberink HF (2005) A mRNA PCR for the diagnosis of feline infectious peritonitis. Journal of Virological Methods124, 111-116]、猫コロナウイルス(FCoV)メッセンジャーRNA(mRNA)について検査した。
全体で臨床疾患を持つ猫を含む14頭(54%)の猫がFCoV陽性だったが、健康猫の中で陽性率が高いことはそれらねこのFIPの臨床診断に対し特異性が低いことを示唆した。6ヶ月-1歳の間の猫の陽性率が最も高いことを認めた。
われわれの所見は、健康な猫と同様臨床的FIPの猫の血液サンプル中にFCoVsが存在するかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■2005年ガルフコーストハリケーン被災地から搬入された犬と猫におけるDirofilaria
immitis感染症、猫白血病ウイルス感染症そして猫免疫不全ウイルス感染症の血清有病率
Seroprevalence of Dirofilaria immitis, feline leukemia virus, and feline immunodeficiency virus infection among dogs and cats exported from the 2005 Gulf Coast hurricane disaster area.
J Am Vet Med Assoc. 2007 Jul 15;231(2):218-25.
Levy JK, Edinboro CH, Glotfelty CS, Dingman PA, West AL, Kirkland-Cady KD.
目的:2005年のハリケーン後にガルフコースト被災地から搬入された犬の糸状虫症の血清有病率と、猫における犬糸状虫症、猫白血病ウイルス感染症そして猫免疫不全ウイルス感染症の血清有病率を決定すること。
計画:血清疫学的研究
動物:2005年8月20日から12月31日までにルイジアナ州、ミシシッピ州そしてテキサス州から搬入された1958頭の犬と1289頭の猫
方法:37州、アルバータ州、カナダにおける141の動物福祉グループが血清学検査の結果を報告した。
一変量および多変量ロジスティック回帰分析で年齢、性別、中性の状態、品種そしてレスキューの状態などの感染のリスクファクターを検査した。
結果:犬における犬糸状虫症の血清有病率は48.8%だった。不妊していない犬は不妊した犬に比べて犬糸状虫症に1.6倍感染し易く、古来の品種グループは2.2倍感染しやすく、保護された品種グループの犬では群れで生活する品種グループの犬に比べて1.7倍感染しやすく、ミシシッピ州からの犬はテキサス州からの犬より犬糸状虫症に感染していなかった。猫における犬糸状虫症、猫白血病ウイルス感染症そして猫免疫不全ウイルス感染症の血清有病率は4.0%,
2.6%, そして 3.6%だった。
猫免疫不全ウイルス感染症の血清有病率は、若年齢に比べ成猫の方が明らかに高く、雌に比べて雄の方が高かった。
結論と臨床関連:2005年のガルフコーストハリケーン被災地から搬入した犬と猫はハリケーン前の動物と同じ罹患率であったことを結果が示した。(Dr.Kawano訳)
■獣医教育病院に来院した犬のメチシリン耐性ブドウ球菌細菌叢
Methicillin-resistant staphylococcal colonization in dogs entering a veterinary teaching hospital.
Vet Microbiol. 2008 Jan 1;126(1-3):277-81. Epub 2007 Jun 22.
Hanselman BA, Kruth S, Weese JS.
オンタリオ獣医大学教育病院に受診した193頭の犬の鼻、腋窩と直腸からスワブを採材した。特殊添加培養を実施し、コアグラーゼ陽性ブドウ球菌が標準的な方法で検出された。メチシリン耐性Staphylococcus pseudintermediusが193頭中4頭(2.1%)の犬で分離され、メチシリン耐性Staphylococcus aureuとメチシリン耐性Staphylococcus schleiferi subsp. Coagulansは193頭中1頭(0.5%)で分離された。メチシリン耐性Staphylococcus intermediusは分離されなかった。すべての分離されたStaphylococcus pseudintermediusはパルスフィールドゲル電気泳動法では無関係だった。これらの菌株の明らかな発現を理解し、適切な治療戦略を開発するために、メチシリン耐性ブドウ球菌細菌叢の疫学調査が必要である。(Dr.Kawano訳)
■自発犬単核細胞性エールリヒア症(Ehrlichia canis)の眼症状:90例の遡及研究
Ocular manifestations of natural canine monocytic ehrlichiosis (Ehrlichia canis): a retrospective study of 90 cases
Vet Ophthalmol. 2007 May-Jun;10(3):137-42.
Anastasia A Komnenou, Mathios E Mylonakis, Vassiliki Kouti, Lina Tendoma, Leonidas Leontides, Eugenia Skountzou, Angelos Dessiris, Alex F Koutinas, Ron Ofri
目的:Ehrlichia canisによる自発犬単核細胞性エールリヒア症(CME)に関する眼症状のスペクトラム、罹患率、治療反応率を調査すること
方法:原発性眼疾患とE. canis血清抗体陽性反応で入院した90頭の犬の医療記録を再調査した。全ての犬は経口ドキシサイクリンで治療した。79頭で全身性コルチコステロイドおよび/または抗炎症剤、散瞳/毛様体筋麻痺薬点眼、抗菌剤の併用で治療した。
結果:犬の年齢は0.5-15歳でオス55頭、メス35頭だった。合計19犬種がいた。多くの犬は、眼の異常と共に他のCME誘発臨床症状が併発していた。90頭中30頭は眼症状が唯一の主訴だった。片側(22/90、24.5%)および両側(68/90、75.5%)ぶどう膜炎が最もよく診断され、58頭(64.5%)が前、8頭(8.9%)が後、24頭(26.6%)が汎ぶどう膜炎に分類された。両側ぶどう膜炎は片側よりも有意に一般的(P<0.0001)で、前ぶどう膜炎は後ぶどう膜炎(P<0.0001)または汎ぶどう膜炎(P<0.0001)より有意によく見られた。また、角膜潰瘍(12/90、13.3%)、壊死性強膜炎(10/90、11.1%)、涙産生低下(8/90、8.9%)、眼窩蜂巣炎(3/90、3.3%)も見られた。十分追跡調査できた45頭(50%)中、25頭(55.5%)は完全に治療に反応し、11頭(24.5%)は部分的、9頭(20%)は治療の反応は悪かった。眼症状の完全解消を見せた犬の頭数は、部分的(P<0.0001)、反応が悪い(P<0.0001)の頭数より有意に多かった。
結論:疾患が流行っている地域に住んでいる犬で、広範囲の眼症状を呈した場合、CMEを主要鑑別に加えるべきである。両側前ぶどう膜炎は、最も見られる眼病変で、全身および局所治療に対する良好な結果が罹患犬の多くで期待できると思われる。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎の猫の生存期間とQOLにおいての猫インターフェロンomegaの効果
Effect of Feline Interferon-Omega on the Survival Time and Quality of Life
of Cats with Feline Infectious Peritonitis
J Vet Intern Med. 2007 Sep-Oct;21(6):1193-7.
Susanne Ritz, Herman Egberink, and Katrin Hartmann
背景:猫伝染性腹膜炎(FIP)の猫に対して有効であると証明された治療法はない。
仮説:猫インターフェロン-omega(FeIFN-omega)はFIPの猫の生存期間を延長するとともにQOLを改善する。
動物:37頭の飼い猫がこの研究の対象になった。
方法:研究は二重盲検プラセボ対照試験を行った。FIPの診断は浸出液又は組織マクロファージあるいは両方において猫コロナウィルス(FCoV)が組織学的に又は免疫組織化学染色によって確認した。感染猫はFeIFN-omega又はプラセボのどちらを実施するかは無作為に当てはめられた。全ての猫はグルココルチコイドと抗生物質とFeliserinを用いた受動免疫療法による補助治療が行われた。
結果:どの評価においても(リンパ球数を除き)、FeIFN-omegaで治療された猫とプラセボ群の猫の生存期間において有意差はなかった。猫の生存期間は3日-200日(中央値:9日)であった。1頭だけ長期生存(3ヶ月以上)したものがいたが、それはFeIFN-omegaを投与したものであった。
結論と臨床的重要性:この研究では生存期間またはQOLにおいてFeIFN-omegaの効果を証明することはできなかった。(Dr.HAGI訳)
■犬のレプトスピラ症の診断に対する組み替え抗原ベースのELISA試験紙
Recombinant antigen-based dipstick ELISA for the diagnosis of leptospirosis in dogs
Vet Rec. February 2007;160(6):186-8.
S Dey, C Madhan Mohan, P Ramadass, K Nachimuthu
組み替えLipL32抗原ベースELISA試験紙を、犬の血清レプトスピラ抗体検出のスクリーニング試験として開発した。組み替え抗原コート試験紙を基質液の中に漬け、その色の変化により抗体を検出した。その試験の相対感度、特異性、正確性は、標準顕微鏡凝集試験と比較して、それぞれ95.9%、93.8%、94.8%だった。(Sato訳)
■猫免疫不全ウイルス陽性猫の深部および表層皮膚掻爬
Deep and superficial skin scrapings from a feline immunodeficiency virus-positive cat
Vet Clin Pathol. March 2007;36(1):101-4.
Jennifer A Neel, Jaime Tarigo, Kathy C Tater, Carol B Grindem
コロニー調査の一部として、ノースキャロライナ州立獣医大学動物リサーチ実験施設に住む8歳の家猫短毛種を、多病巣皮膚病変のため検査した。耳介周辺部、頚部、背部の軽度痂皮、耳介周囲の擦過創、顕著な腹部脂漏と鱗屑、全身性紅斑性丘疹を伴うムラのある脱毛が認められた。両耳道には中程度の耳垢滲出物を認めた。猫免疫不全ウイルス(FIV)の検査結果は陽性だった。入手した耳スワブ標本と表層および深部皮膚掻爬はオイルと共にガラススライドに乗せ、顕微鏡検査のためにカバーガラスをかぶせた。
ダニの2集団が観察された。大きいほうの集団は、細長く(約200?m)、成ダニは長く、腹部にかけて細くなり、腹部は全長の三分の二を占めた。小集団はより半透明で、幅広でより短く(約100?m)、腹部は鈍く顕著な横稜が見られた。解釈としてDemodex catiとD gatoiの重感染のニキビダニ症だった。
頚部、背部、耳周囲の皮膚病変バイオプシーの組織切片は、主に組織球、リンパ球、プラズマ細胞からなる軽度血管周囲および毛包周囲炎症性浸潤を含んだ。散在性に毛包腔内、ときおり表層ケラチン内に、無数の毛包虫体が観察された。毛包内ダニはD catiの外観に匹敵し、角膜層のそれらはD gatoiを示唆した。ニキビダニ症は猫にまれな疾患で、FIV感染猫で時折、重感染例が述べられている。重感染は表層および深部皮膚掻爬両方を行う重要性と異なるニキビダニの特有な顕微鏡的特性を認識することを強調する。(Sato訳)
■猫伝染性腹膜炎の猫の末梢血リンパ球におけるアポトーシス誘発に対するTNF-アルファ関与の"可能性"
A "possible" involvement of TNF-alpha in apoptosis induction in peripheral blood lymphocytes of cats with feline infectious peritonitis
Vet Microbiol. September 2006;0(0):.
Tomomi Takano, Tsutomu Hohdatsu, Yoshikiyo Hashida, Yasuhiro Kaneko, Maki Tanabe, Hiroyuki Koyama
猫伝染性腹膜炎(FIP)の猫は、特にCD4(+)とCD8(+)を含むT細胞の著しい減少を見せる末梢血リンパ球数の減少を示す。この研究で、我々はFIP猫に見られるリンパ球減少症はアポトーシスによるもので、FIP猫からの腹水、血漿、腹水浸出液中細胞(マクロファージ形態の付着細胞またはPEC)の培養上澄み液は、特定病原フリー猫で末梢血単核細胞、特にCD8(+)細胞のアポトーシスを容易に誘発したことを示した。
また、リンパ球のTNF-レセプター(TNFR)1とTNFR2mRNA発現およびマクロファージから放出されたTNF-アルファは、このアポトーシス誘発に密接に関与していた。特に、PEC培養上澄みの存在下で培養したCD8(+)でTNFR1およびTNFR2mRNA発現レベルは増加し、このことはCD8(+)細胞が他のリンパ球サブセット、特にB細胞(CD21(+)細胞)よりもTNF-アルファがアポトーシス誘発により影響を及ぼすことを示す。この研究結果は、ウイルス感染マクロファージにより産生されるTNF-アルファが非感染T細胞、特にCD8(+)T細胞でアポトーシス誘発を起こすことを示唆する。(Sato訳)
■動物地方病性上部呼吸器疾患の猫における食餌中リジン添加の効果
Effects of dietary lysine supplementation in cats with enzootic upper respiratory disease
J Feline Med Surg. October 2006;0(0):.
David J Maggs, Jane E Sykes, Heather E Clarke, Seung H Yoo, Philip H Kass, Michael R Lappin, Quinton R Rogers, Mark K Waldron, Andrea J Fascetti
地方病性上部呼吸器疾患(URD)の猫に対する食餌中リジン添加の効果を判定するために、52日間一定量11または51g(リジン)/kg(食餌)を含有する食餌を50頭に与えた。食物摂取量、体重、臨床症状、血漿アミノ酸濃度、結膜円蓋中のChlamydophila
felisまたはヘルペスウイルス(FHV)-1DNAの存在を評価した。両食餌群の食物およびリジン摂取量は17日から22日の間に減少し、疾患およびウイルスの存在のピークと一致した。一定量を添加した食餌を与えた猫の平均疾患スコア(0.94)は、基本食を与えた猫(0.21)よりも高かったが、これはケージ内でストレスを惹起するような攻撃行動を示すオス猫の小母集団により起こりえる。
FHV-1DNAは添加食を与えた6頭で12回検出され、基本食の1頭で1回検出された。C
felis DNAは検出されなかった。添加食群の猫で平均血漿アルギニン濃度はより低く、血漿リジン濃度はより高かった。両食餌群で、研究を通し平均血漿アルギニン濃度は低下した。この研究のデータは重要な疑問が持ち上がったが、動物地方病性URDの猫における食餌中リジン添加の効果に関する確定的な結論を認可しない。(Sato訳)
■猫免疫不全ウイルス感染症に対する低容量インターフェロン-α療法
Low-dose interferon-alpha treatment for feline immunodeficiency virus infection.
Pedretti E, Passeri B, Amadori M, Isola P, Di Pede P, Telera A, Vescovini R, Quintavalla F, Pistello M.
猫免疫不全ウイルスは人間のエイズ関連モデルであると考えられており、猫においてエイズ様症候群を持続させます。正確な登録要件のもとで、明白な病気を示した30頭の自然感染猫に、低容量経口ヒトインターフェロン-α療法を行った。24頭には獣医師の監督の下1日1回、ヒトインターフェロン-α10 IU/kgおよび6頭はプラセボ単独を投与した。低容量ヒトインターフェロン-α治療は明らかにウイルス感染猫の生存を延長(p<0.01)させ、感染した宿主において病気のコンディションの急速な改善をもたらした。
臨床症状の改善は血漿ウイルス血症および白血球におけるプロウイルス付加共に関連しなかった。また、ヒトインターフェロン-αで治療した猫で、CD4陽性T細胞の良い生存とCD8陽性T細胞のゆっくりした増加が観測されました。おもしろいことに、全白血球数の改善は重大な日和見感染からの回復にかなり強い相関関係を示した。低容量インターフェロン-αの他のモデルで示されるように、ウイルス感染した猫において明白な免疫病理学的状態の急速な回復があった。これがウイルスやウイルス感染細胞の変わらない持続にも関わらず、改善された臨床スコアと生存性のまさにその基礎となるかもしれない炎症性サイトカインの制御回路において、インターフェロン-αの主要な役割のヒントとなります。(Dr.Kawano訳)
■猫伝染性腹膜炎と免疫不全ウイルス感染を持つ猫に見られたコロナウイルス誘発脈管炎に関する皮膚病変
Cutaneous Lesions Associated with Coronavirus-Induced Vasculitis in a Cat with Feline Infectious Peritonitis and Concurrent Feline Immunodeficiency Virus Infection
J Feline Med Surg 7[4]:233-236 Aug'05 Case Report 16 Refs
Martha J. Cannon BA, VetMB DSAM (Fel) MRCVS, Malcolm A. Silkstone BVSc DipAVP MRCVS, Anja M. Kipar DrVetMed Dipl ECVP MRCVS
猫コロナウイルスと免疫不全ウイルスの同時感染を伴い、多発結節性皮膚病変を含む複数全身関与の猫伝染性腹膜炎(FIP)の臨床症例を報告する。皮膚病変の原因は、可能肉芽腫性壊死性皮膚静脈炎と静脈周囲炎だった。免疫組織学的にそれら病変内のマクロファージにコロナウイルス抗原の存在が明らかとなった。FIPの病原は、多くの部位で起こりえる播種性静脈炎と静脈周囲炎に関与するウイルスである。ターゲットとなる臓器で頻度が高いのは、眼、腹腔臓器、胸膜および腹膜、中枢神経組織であるが、皮膚病変は過去に報告されていない。(Sato訳)
■猫角膜上皮細胞の初代培養でネコヘルペスウイルスー1に対する細胞障害変化と力価に対するインターフェロン-アルファの効果
Effects of interferon-alpha on cytopathic changes and titers for feline herpesvirus-1 in primary cultures of feline corneal epithelial cells.
Am J Vet Res 66[2]:210-6 2005 Feb
Sandmeyer LS, Keller CB, Bienzle D
目的:猫角膜上皮細胞の生存度、ネコヘルペスウイルス(FHV)-1の複製、ウイルス誘発細胞障害変化に対するインターフェロン(IFN)-アルファの効果を評価する
サンプル集団:最近安楽死された10頭の猫の健康な眼
方法:猫角膜上皮細胞の4複製初代培養にINF-アルファ10(2)-10(6)IU/mlの添加後育てた。細胞障害変化を見るため24時間ごとに培養を検査した。生存している細胞数と生存細胞の比率を培養開始から48時間後に判定した。
別の実験で、角膜細胞にFHV-1を接種し、±インターフェロン‐アルファ10(5)IU/mlで72時間培養した。FHV-1-感染培養で、ウイルス誘発細胞障害効果を評価し、培養上澄みサンプルのウイルス力価を判定した。
結果:IFN-アルファ/mlの10(2)から10(6)の濃度範囲で、インターフェロン‐アルファは角膜上皮細胞に細胞毒性を持たなかった。10(5)IU/mlのインターフェロン‐アルファ濃度で、細胞障害変化やFHV-1力価を有意に低下させた。
結論と臨床関連:猫角膜細胞の初代培養で、インビトロにおける細胞毒性の欠如とFHV-1感染に対する効果は、INF-アルファのインビボ治療効果を対照臨床試験で評価すべきだと示唆する。(Sato訳)
■獣医教育病院で治療したパルボウイルス腸炎の犬における制吐剤使用の特性
Characterization of the Use of Antiemetic Agents in Dogs with Parvoviral Enteritis Treated at a Veterinary Teaching Hospital: 77 Cases (1997-2000)
J Am Vet Med Assoc 227[11]:1787-1793 Dec 1'05 Retrospective Study 25 Refs
Nina L. Mantione, VMD, and Cynthia M. Otto, DVM, PhD, DACVECC *
目的:獣医教育病院において犬パルボウイルス(CPV)関連腸炎の犬における制吐剤使用の特性を述べる
構成:回顧的症例シリーズ
動物:CPV関連腸炎の犬77頭
方法:獣医教育病院に入院したCPV関連腸炎を確認されている560頭の医療記録を再調査した。過去2週間以内にCPV感染のワクチン接種を行った犬、<24時間の入院または勧告に対し病院からつれて帰った犬、不完全な記録のイヌは除外した。徴候、入院期間、日々の制吐剤投与を調査した。WBC数と臨床所見は、全身性炎症反応症候群(SIRS)を持つ犬の分類に使用した。
結果:77頭の犬を研究した。55頭(71%)は制吐剤を投与されていた(53頭は最低1回のメトクロプラミドを投与)。71頭の犬は生存し、6頭は死亡した(6頭とも制吐剤投与)。制吐剤を投与されていない犬と比較して、制吐剤投与犬の入院期間は有意に長かった。日々の直腸温、心拍、呼吸数は制吐剤の投与、入院期間を予測しなかった。しかし、生存性で比較すると非生存犬のSIRS発症頻度がより高かった。催吐事象の評価は17頭で1時間毎に行い、制吐処置は嘔吐をコントロールしないことを示した。
結論と臨床関連:CPV関連腸炎の多くの犬は、制吐剤を投与しても持続的に嘔吐した。制吐剤を投与した犬と他の犬との入院期間の明らかな違いは、グループ間の疾患の程度差を反映しているかもしれないが、制吐剤関連有害事象(例えば、沈うつの症状、低血圧、免疫変調)が入院を延長させているかもしれない。(Sato訳)
■猫免疫不全ウイルス感染の異なるステージにおける末梢血リンパ球の変異ミトーゲン反応
Altered mitogen response of peripheral blood lymphocytes in different stages of feline immunodeficiency virus infection.
Nippon Juigaku Zasshi. 1990 Jun;52(3):513-8.
Taniguchi A, Ishida T, Konno A, Washizu T, Tomoda I.
ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染における病気の進行と免疫変化の関係を解明するために、我々はヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の臨床ステージを実用的に修正した基準を使って自然に感染した猫を分類しました。
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染で記された5つの異なるステージの中で、無症候性キャリアー期(AC期)、エイズ関連複合体期(ARC期)、そして後天性免疫不全症候群(AIDS期)の3期について、ブドウ糖消費分析を使用しコンカナバリンA(con A)誘発リンパ球幼弱化活性で評価しました。AC期ではリンパ球反応の有意な減少がありました。ARC期とAIDS期に病気が進行すると反応の低下が著しくなり、AIDS期ではミトーゲン反応がほとんど完全に喪失しました。ネコ免疫不全ウイルス(FIV)感染におけるAIDS期では著しいリンパ球機能の喪失に加え著しい削痩、貧血あるいは汎血球減少、そして日和見感染の死後所見とリンパ球の枯渇が特徴付けられた。(Dr.Kawano訳)
■猫白血病ウイルス(FeLV)感染とFeLV/猫免疫不全ウイルス(FIV)に共感染した症候性の猫における遺伝子組み換えインターフェロン-オメガの治療効果
Therapeutic effects of recombinant feline interferon-omega on feline leukemia virus (FeLV)-infected and FeLV/feline immunodeficiency virus (FIV)-coinfected symptomatic cats.
J Vet Intern Med. 2004 Jul-Aug;18(4):477-82.
de Mari K, Maynard L, Sanquer A, Lebreux B, Eun HM.
遺伝子組み換え猫インターフェロン(rFeIFN-オメガ)の治療効果を、野外において猫白血病ウイルス(FeLV)感染及びFeLV/猫免疫不全ウイルス(FIV)共感染に関連した臨床症状を呈した猫を治療することで評価した。この多中心性、二重盲目、プラセボ-コントロール試験において、基準を満たした81頭の猫をランダムに2つのグループに分け、rFelFN-オメガ(100万U/kg/day)またはプラセボの皮下投与を1日1回5日連続3回(0、14、60日)繰り返した。猫は臨床的徴候と死亡率を評価するための1年間モニターした。初期の4カ月の期間、インターフェロン(IFN)で治療した猫(n=39)はプラセボ(n=42)と比べて有意に臨床スコアが減少し、すべての猫が連続的に支持療法を受けていた。コントロール群と比べて、IFNで治療したグループは死亡率が有意に低下した:9カ月の時点で39%vs59%(コントロール群の死亡リスクは1.7倍高い)、そして12カ月の時点で47%vs59%(コントロール群の死亡リスクは1.4倍高い)であった。
IFNによる治療は、明らかに臨床パラメーターにおいてIFNの正の効果の基となっている異常な血液学的パラメ-タ(赤血球数、ヘマトクリット値、および白血球数)の、わずかだが一貫した改善に関連していた。 これらのデータは、rFeIFN-オメガが初めは臨床兆候において、そして後にFeLV感染あるいはFeLV/FIV 共感染に関連した臨床症状を呈した猫の生存に統計的に有意な治療効果をもたらすことを示す。(Dr.Kawano訳)
■ネココロナウイルス抗体に対する院内試験の評価
Evaluation of an In-Practice Test for Feline Coronavirus Antibodies
J Feline Med Surg 6[2]:63-67 Apr'04 Original Article 7 Refs
Diane D. Addie; Shona A. McLachlan; Matthew Golder; Ian Ramsey; Oswald Jarrett
市販入手可能なネココロナウイルス(FCoV)抗体に対する院内検査(FCoV Immunocomb, Biogal Gated Laboratories)を、ゴールドスタンダードのFCoV免疫蛍光(IFA)検査と比較評価した。103の血清、または血漿サンプルを選別し試験した。70は両試験陽性、24は両試験陰性だった。院内試験で5つの偽陽性と4つの偽陰性を判定した。院内検査の感受性は95%、特異性は83%だった。院内検査結果で分かった力価を比較したとき、IFAの結果と有意に相関していたが、相関の程度は、臨床的有効性がありそうではなかった。4つの偽陰性サンプルのIFA力価は、低い(40以下)ことがわかり、偽陰性結果のネコでもFCoV排泄は起こりそうにないことを示唆した。
院内試験の陰性結果は、FCoVフリーの猫舎や繁殖舎に入れる前のネコのスクリーニング検査として信頼できるもののようだ。FIPのほとんどのネコが高IFA抗体価を持つため、FIPを疑った検査にも有効だろう。強陽性結果はFIP(他の生化学、細胞学検査と組み合わせ)の診断に有効かもしれないが、抗体価はIFAのものと比較し信頼性が落ちるので、健康ネコのFCoV感染のモニタリングに陽性結果はある程度の限られた価値しか持たないだろう。院内キットを使用して得た全ての陽性結果は、IFAにより確認し、滴定すべきである。そのキットは、腹水サンプル(n=6)にも効果的な検査と分かったが、サンプルが少なすぎると安定した結論を導けなかった。(Sato訳)
■慢性歯肉口内炎に罹患した猫において猫カリシウイルス及び猫ヘルペスウイルス1型の口腔内の同時分布
Concurrent oral shedding of feline calicivirus and feline herpesvirus 1 in cats with chronic gingivostomatitis.
Oral Microbiol Immunol. 2003 Apr;18(2):131-4
Lommer MJ, Verstraete FJ.
慢性歯肉口内炎に罹患した25頭の猫及び歯周病に罹患した24頭の猫から口腔粘膜の唾液検体を採取した。猫カリシウイルスと猫ヘルペスウイルス1型のウイルス培養及び分離を行った。慢性の口腔内炎症疾患を伴わない猫の21%と比べて、慢性歯肉口内炎に罹患した猫の88%において両方のウイルスが影響していた。
慢性歯肉口内炎に罹患した猫は典型的な歯周病に罹患した猫より、猫カリシウイルス及び猫ヘルペスウイルス1型の両方による影響を有意に同時に受けやすいように思われる。(Dr.Kawano訳)
■自然発症したエンドトキシンショックの犬におけるポリミキシン-E(コリスチン)の抗エンドトキシン効果の評価
Evaluation of the anti-endotoxic effects of polymyxin-E (colistin) in dogs with naturally occurred endotoxic shock.
J Vet Pharmacol Ther 28[1]:57-63 2005 Feb
Senturk S
エンドトキシンは炎症反応の潜在的刺激物でグラム陰性敗血症の病態を起こすと思われている。エンドトキシンの影響を結合、中和、ブロックする物質が研究されている。この研究目的は、エンドトキシン血症の犬におけるポリミキシン-E(コリスチン)の抗エンドトキシン効果を研究することである。この研究は、計30頭のエンドトキシン血症の両性別、異なる犬種と年齢の犬を使用し、それぞれ2つのグループ(コントロール=15、研究=15)に振り分けた。ヘスターチコロイド液(10mL/kg、i.v.)とラクトリンゲル液(20mL/kg、i.v.)を全頭に投与した。コントロール群には抗菌剤としてアンピシリン(10mg/kg、i.m.、12時間毎)を投与し、研究群にはコリスチン(12500IU/kg、i.m.、12時間毎)とアンピシリンを投与した。臨床検査(体温、脈拍、呼吸数、毛細血管充填時間、末梢の脈質、脱水程度)、血液、生化学検査(WBC、RBC、HGB、HCT、血小板、血清尿素、クレアチニン、TNF-アルファ)を治療前、そして治療後2、4、12、24時間目に実施した。
コントロールと比較して、24時間目の研究群の毛細血管充填時間はより短かった(P<0.001)。さらに、研究群の脱水程度は、24時間目に有意に改善していた(P<0.01)。コントロール群で0時間と2時間後の末梢脈質の違いは有意に異なっていた、一方研究群の0時間と比較し、2、4、24時間後は有意に増加していた。研究群の0時間と他の時間帯で血清TNF-アルファ濃度は統計学的に低下した(P<0.01)。コントロールと比較したとき、研究群の血清TNF-アルファ濃度は2、4、12、24時間目により低かった(P<0.05)。この研究で示された結果は、この研究で使用した投与量でポリミキシン-E(コリスチン)はエンドトキシン血症の犬に安全で、抗エンドトキシン効果があることを示した。(Sato訳)
■ネコ伝染性腹膜炎の診断で異なる検査の比較
Comparison of Different Tests to Diagnose Feline Infectious Peritonitis
J Vet Intern Med 17[6]:781-790 Nov-Dec'03 Case Control Study 54 Refs
Katrin Hartmann, Christina Binder, Johannes Hirschberger, Dana Cole, Manfred Reinacher, Simone Schroo, Jens Frost, Herman Egberink, Hans Lutz, and Walter Hermanns
FIPが疑われるネコの診断で使用頻度が高いいくつかの診断検査の有効性を判定するため、ネコ伝染性腹膜炎(FIP)と組織病理学的に確認できた488頭のネコ(1979-2000)とコントロールとして620頭のネコの臨床データを、回顧的に評価した。FIPの診断で血清アルブミン、グロブリン比の診断有効性は、血清総タンパク、ガンマグロブリン濃度の有効性よりも大きかった。滲出液におけるそれら変動値の診断有効性はより高かった。滲出液で、滲出液と漏出液を区別するリバルタ反応値(0.86と0.97)、抗コロナウイルス抗体検出(0.90と0.79)、マクロファージ中のコロナウイルス抗原の免疫蛍光抗体染色(1.00と0.57)の(陽性、陰性)適中率を調査した。
抗コロナウイルス抗体の存在に対する陽性、陰性適中率はそれぞれ0.44と0.90、抗体濃度(1:1600)は0.94と0.88、競合ELISAによる免疫複合体の存在は0.67と0.84、血清逆転写酵素PCR(RT-PCR)によるウイルスRNAの検出は0.90と0.47だった。6頭のネコで、滲出液RT-PCR法を行った。FIPの5頭すべて陽性で、他の疾患のネコは陰性だった。滲出液のあるネコで、その滲出液に対する診断分析は良好な適中率を示した。血清で様々な変動値測定を基にしたFIPの確定診断は不可能だった。血清検査は、より侵襲的な診断検査の決断を容易にすることだけに使用できる。
■腹膜を巻き込んだイヌのブラストミセス症を確認するための診断的腹膜潅流
Diagnostic Peritoneal Lavage for Identification of Blastomycosis in a Dog with Peritoneal Involvement
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1623-1627 Dec 1'03 Case Report 34 Refs
* Cheri Nielson, MS, DVM; Christine S. Olver, DVM, PhD, DACVP; Melissa M. Schutten, DVM; David C. Twedt, DVM, DACVIM
6歳去勢済みダルメシアンを吐血のために検査した。その犬は生涯をサウスダコタとワイオミングで過ごし、それらの州から外に出たことはなかった。検査所の検査結果から、医原性急性腎不全と過去に使用した非ステロイド性抗炎症剤とコルチコステロイドによる二次的な胃腸潰瘍が疑われた。それらの治療前に存在した臨床症状と検査結果の異常に対する鑑別診断には、複数の全身感染、または炎症性疾患、腫瘍が含まれた。1/4区腹部穿刺で、液体の産生は見られなかったが、腹腔内疾患がまだ疑われたため、診断的腹膜潅流を実施した。
採取した液体は、明らかに細胞を含んでおり、円形から卵円形、1μm厚、透明に染まった莢膜、好塩基性の内部、広い基盤を持つ発芽の多数の細胞外構造物があった。そのものはブラストミセス種に一致し、真菌培養でブラストミセスdermatitidisが発育した。リポソーマルアンホテリシンBとイトラコナゾールの治療が推奨されたが、オーナーの金銭的制約のため、開始できなかった。検死時、胃、小腸、膀胱、大網、小腸間膜、腹壁に播種するブラストミセス症が見られた。我々の知識では、腹膜関与のイヌのブラストミセス症は報告されておらず、胃腸管関与は非常にまれに報告されているだけである。このイヌの所見は、診断的腹膜潅流が、腹水が少なく腹腔穿刺で検出が制限されるとき、感染性腹膜炎の原因を判定するのに有効な方法であると思われる。(Sato訳)
■ネコのジドブジンの薬物動態
Pharmacokinetics of zidovudine in cats.
Am J Vet Res 65[6]:835-40 2004 Jun
Zhang W, Mauldin JK, Schmiedt CW, Brockus CW, Boudinot FD, McCrackin Stevenson MA
目的:ネコでジドブジン(AZT)の薬物動態の特徴を述べる
動物:6頭の未不妊9ヶ月齢の防壁飼育家ネコ短毛種
方法:ネコを無作為に3群、ジドブジン(25mg/kg)i.v.、胃内投与(i.g.)、p.o.に振り分け、実験間隔に2週間のウォッシュアウト期間を設けた三方クロスオーバー研究構成で行った。薬剤投与後12時間血漿サンプルを採取し、ジドブジン濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxへの到達時間(Tmax)、生物学的利用能をi.g.、p.o.経路間で比較した。3経路間の曲線下面積(AUC)と末端血漿半減期(t(1/2))も比較した。
結果:ジドブジンの血漿濃度は、i.v.、i.g.、p.o.投与後それぞれ半減期1.4±0.19時間、1.4±0.16時間、1.5±0.28時間で急速に低下した。全身クリアランスと分布の定常状態容積は、それぞれ0.41±0.10L/h/kgと0.82±0.15L/kgだった。i.g.投与の平均Tmax(0.22時間)は、p.o.投与のTmax(0.67時間)よりも有意に短かった。i.v.、p.o.投与後のAUCはそれぞれ64.7±16.6mg×h/L、60.5±17.0mg×h/Lだったが、i.g.経路は有意に少なく42.5±9.41mg×h/Lだった。ジドブジンはi.g.、p.o.投与後生物学的利用値それぞれ70±24%、95±23%でよく吸収した。
結論と臨床関連:ネコのジドブジンのクリアランスは他の種と比較してより緩やかだった。ジドブジンの血漿濃度は、i.v.、i.g.、p.o.投与後最低12時間で、FIV複製50%(臨床野外分離タイプFIVに対する0.07μM(0.019μg/mL))抑制の最小有効濃度以上を維持した。(Sato訳)
■ネコのラミブジンの薬物動態
Pharmacokinetics of lamivudine in cats.
Am J Vet Res 65[6]:841-6 2004 Jun
Zhang W, Mauldin JK, Schmiedt CW, Brockus CW, Boudinot FD, McCrackin SM
目的:ネコでラミブジン(3TC)の薬物動態の特徴を述べる
動物:6頭の未不妊9ヶ月齢の防壁飼育家ネコ短毛種
方法:ネコを無作為に3群、ラミブジン(25mg/kg)i.v.、胃内投与(i.g.)、p.o.に振り分け、実験間隔に2週間のウォッシュアウト期間を設けた三方クロスオーバー研究構成で行った。薬剤投与後12時間血漿サンプルを採取し、ラミブジン濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定した。最大血漿濃度(Cmax)、Cmaxへの到達時間(Tmax)、生物学的利用能をi.g.、p.o.経路間で比較した。3経路間の曲線下面積(AUC)と末端血漿半減期(t(1/2))も比較した。
結果:ラミブジンの血漿濃度は、i.v.、i.g.、p.o.投与後それぞれ半減期1.9±0.21時間、2.6±0.66時間、2.7±1.50時間で急速に低下した。全身クリアランスと分布の定常状態容積は、それぞれ0.22±0.09L/h/kgと0.60±0.22L/kgだった。i.g.投与の平均Tmax(0.5時間)は、p.o.投与のTmax(1.1時間)よりも有意に短かった。i.v.、i.g.、p.o.投与後のAUCはそれぞれ130±55.2mg×h/L、115±97.5mg×h/L、106±94.9mg×h/L。ラミブジンはi.g.、p.o.投与後生物学的利用値それぞれ88±45%、80±52%でよく吸収した。
結論と臨床関連:ネコのラミブジンのヒトと比較して半減期はより短かったが、全身クリアランスはより緩やかだった。ラミブジンの血漿濃度は、i.v.、i.g.、p.o.投与後最低12時間で、FIV複製50%(臨床野外分離タイプFIVに対する0.14μM(0.032μg/mL))抑制の最小有効濃度以上を維持した。(Sato訳)
■ネコの炎症性ポリープ:28症例のネコカリシウイルスとネコヘルペスウイルス-1に対する組織、臨床、PCR所見
Feline Inflammatory Polyps: Historical, Clinical, and PCR Findings for Feline Calici Virus and Feline Herpes Virus-1 in 28 Cases
J Feline Med Surg 4[4]:195-199 Dec'02 Retrospective Study 12 Refs
JK Veir, MR Lappin, JE Foley, DM Getzy
炎症性ポリープは、ネコの耳や鼻咽腔疾患にかなり関与する。慢性ウイルス感染は、massを誘発するかもしれないと提唱されている。腹側鼓室胞切開(VBO)が、最終的な治療に通常推奨されるが、牽引/剥離で鼻咽腔や外耳道からのmassの除去も行われる。炎症性ポリープのネコ28頭の回顧的研究を、治療様式との再発の関係を導くために行った。41個のポリープからの組織で、ネコカリシウイルス、ネコヘルペスウイルス-1に対する検査を、それぞれRT-PCR、PCR法で行った。
牽引/剥離により最初に治療したネコ14頭で、鼓室疾患のエックス線所見がある9頭のうち5頭は再発したが、正常な鼓室のネコでの再発はなかった。牽引/剥離は、鼓室がエックス線検査で正常ならば、炎症性ポリープの治療として有効である。ネコカリシウイルスやネコヘルペスウイルス-1を検出できなかったことは、それらウイルスの組織残留性が、炎症性ポリープの発症に関与していないと示唆する。(Sato訳)
■日本でイヌのボルナ病
Borna disease in a dog in Japan.
J Comp Pathol 2002 May;126(4):312-7
Okamoto M, Kagawa Y, Kamitani W, Hagiwara K, Kirisawa R, Iwai H, Ikuta K, Taniyama H.
中枢神経系の重度急性進行性障害で3歳オスのウェルッシュ・コーギーをボルナ病(BD)と診断した。組織学的に神経病変は、大量のリンパ球、マクロファージ、プラズマ細胞からなる血管周囲カフ状集積優勢の非化膿性脳脊髄炎を特徴とし、また神経実質の炎症細胞浸潤、神経細胞侵食、限局性の神経膠症も見られた。ボルナ病ウイルス(BDV)p40抗体の強い免疫標識は、炎症性変化を伴う、または伴わない脳、そして背髄部も少量、多量ニューロン細胞質に散在的に分布していた。BDVp40センスそしてアンチセンスリボプローブを伴う明確なハイブリッド化シグナルが、全脳と背髄いたるところの神経細胞質や核に見られた。ホルマリン固定の脳組織のBDVp24RNAが、逆転写酵素(RT)-組み込みポリメラーゼ・チェーン・リアクション(PCR)で検出された。BDVp24RNA陽性シグナルが側頭葉で検出された。これは日本で自然発生したイヌBDの初めての報告である。 (Sato訳)
■シェルターに入る前と入った後のネコの一般的なウイルス感染とネコ腸コロナウイルスの強さ
Common Virus Infections in Cats, Before and After Being Placed in Shelters, With Emphasis on Feline Enteric Coronavirus
J Feline Med Surg 6[2]:83-88 Apr'04 Original Article 21 Refs
* N.C. Pedersen; R. Sato; J.E. Foley; A.M. Poland
この研究目的は、シェルターに捨てられたネコで、ネコカリシウイルス(FCV)、ネコヘルペスウイルス(FHV)、ネコ腸コロナウイルス(FECV)の起源とその後の広がりを判定することだった。入館時、健康ネコの11%の口峡からFCVが分離され、子猫で分離率が最大だった(33%)。入館時FHVの排泄は非常に低く(4%)、幼いネコで主に発生した。FECVの排泄も新しく捨てられたネコで一般によく見られ(33%)、とくに老齢ネコや幼いネコに見られた(90%)。その3種のウイルスのその後の広がりは、シェルターの環境の中で急速、そして効率的だった。1週間後、15%のネコはFCV、52%のネコがFHV、60%のネコがFECVを排泄した。
FECV排泄に関し、より詳細な研究を行い、正確に定量化できた。感染ネコによるFECV排泄量は、102-10’6粒子/糞塗抹中の範囲だった。FECV排泄は、成猫の初回感染より子猫の初回感染のほうがいくつかのlogでより高かった。成猫の中でFECV排泄の平均レベルは、初回と慢性感染で同じだった。多くの捨てられたネコに対し、それらウイルスの主な源はシェルターではないが、シェルター環境の本質的な要因が、排泄を拡大し、感受性のある固体に広がることについて危機的である。
外因子は、FHV、FECVの広がりに特に重要だった。FHV排泄率は、1週間で4%から50%に拡大した。FHV排泄増加のスピードと大きさは、潜伏感染の再燃と同様に新しい感染の獲得が存在することを示唆した。入館時、すでに感染していたネコで、1週間にFECV排泄は10-1000000倍に増加し、当初陰性ネコの半数以上が、1週間後にFECVを排泄した。ネコカリシウイルス感染は、シェルター内での広がりが最小のようだった。感染率は1週間でほんの11%から15%の増加に過ぎなかった。(Sato訳)
■猫ヘルペスタイプ1のインビトロでの複製にL-リジンとL-アルギニンがどう影響するか
Effects of L-lysine and L-arginine on in vitro replication of feline herpesvirus type-1.
Am J Vet Res 61[12]:1474-8 2000 Dec
Maggs DJ, Collins BK, Thorne JG, Nasisse MP
目的:ネコヘルペスウイルスタイプ1(FHV-1)の試験管内の複製にL-リジンとL-アルギニンのさまざまな濃度でどう影響するか判定すること
サンプル集団:Crandell-Reeseネコ腎培養細胞(CRFK)とFHV-1 727株
手順:非感染CRFK細胞、またはFHV-1感染CRFK細胞をダルベッコ修正イーグル培地、またはリジンとアルギニンをさまざまな濃度含む7つの試験培地のうち1つで培養した。ウイルス価とCRFK成長率を各培地で評価した。
結果:アルギニンが枯渇した培地では、ほぼ完全にウイルスの複製を抑制し、アルギニン2.5、または5.0μg/mlを含む培地では有意にFHV-1複製が増加した。アルギニン2.5μg/mlを含む培地に、リジン200または300μg/mlを添加すると、それぞれ34.2%、53.9%ウイルス複製を低下させた。アルギニン5.0μg/mlを含む培地では効果は見られなかった。アミノ酸のそれらの濃度を含む培地でCRFK培地の成長率も抑制を受けたが、互いに有意な差は見られなかった。
結論と臨床関連:アルギニンは、FHV-1に対してかなりの成長促進効果を持つ。ウイルスの培地にリジンを添加すると、アルギニン低濃度を含む培地の成長促進効果を弱める。この研究データの分析で、高濃度リジンは試験管内のFHV-1複製を減少させたが、低濃度アルギニンを含む培地でしか減少させないことを示している。アルギニンの制限がある、またはないときのリジン添加投与が、ネコのFHV-1感染の管理に有効かどうか判定するための臨床試験が必要だろう。(Sato訳)
■プラセボコントロール野外試験における犬パルボウイルス腸炎のインターフェロン-ωによる治療
Treatment of canine parvoviral enteritis with interferon-omega in a placebo-controlled field trial.
Vet Rec 152[4]:105-8 2003 Jan 25
de Mari K, Maynard L, Eun HM, Lebreux B
組換え型猫インターフェロン(IFN)(タイプω)の臨床効果を、パルボウイルス腸炎の犬の治療で野外において評価した。この複数施設二重盲目プラセボ-コントロール試験で、1-28ヶ月の94頭の犬を3日間連続の1日1回IFN(250万単位/kg)、またはプラセボの静脈内投与を行う2群に無作為に振り分け、臨床症状と死亡率を10日間モニターした。各犬は個別の支持療法を受けた。92の判断可能な症例データ(43頭はIFN群、49頭はプラセボ群)から、コントロール群と比較してIFN投与群の臨床症状は有意に改善し、IFN群は3頭しか死亡しなかったのに対し、プラセボ群は14頭死亡し(P = 0.0096)、これは4.4倍の低下となった。犬パルボウイルスに対する犬の過去のワクチン接種状態を考慮したデータの選択分析は、IFN療法がワクチン未接種集団で死亡率を6.4倍低下させ、ワクチン接種集団と比較すると有意な低下(P = 0.044)を示す事を示唆した。(Sato訳)
■浸出性ネコ伝染性腹膜炎のネコの腹水で、ネココロナウイルス抗体、ネコ免疫不全ウイルス抗体、ネコ白血病ウイルス抗原の検出
Detection of feline coronavirus antibody, feline immunodeficiency virus antibody, and feline leukemia virus antigen in ascites from cats with effusive feline infectious peritonitis.
J Vet Med Sci 66[1]:89-90 2004 Jan
Soma T, Ishii H
浸出性ネコ伝染性腹膜炎(FIP)のネコのウイルス検査の材料として腹水の有用性を調査するため、臨床的浸出性FIPが疑われる88頭のネコの腹水で、抗ネココロナウイルス抗体、抗ネコ免疫不全ウイルス抗体、ネコ白血病ウイルス抗原の検出を試みた。各それら3つのウイルス検査で、血清抗体/抗原に対し陽性の全てのネコは、腹水抗体/抗原も陽性で、血清抗体/抗原が陰性だったネコは、腹水の抗体/抗原も陰性だった。この所見は、それらウイルス検査に腹水が有効である事を示す。(Sato訳)
■イヌジステンパーウイルス感染:イヌのパッドのケラチン生成細胞の増殖
Canine distemper virus infection: proliferation of canine footpad keratinocytes.
Vet Pathol 40[5]:574-8 2003 Sep
Grone A, Engelhardt P, Zurbriggen A
イヌジステンパーウイルス(CDV)感染犬のパッドのケラチン生成細胞の増殖を調査した。実験的に有毒ジステンパー株(A75/17)を接種した19頭のイヌと、接種しなかったコントロールのイヌ2頭のパッドを検死時に採取した。剖検の結果に従い、犬を4つのグループに分類した。重度ジステンパーのイヌ(グループ1)、軽度ジステンパーのイヌ(グループ2)、接種したがジステンパーでないイヌ(グループ3)、未接種犬(グループ4)。4つのグループの中で、表皮の厚みに明らかな差は見られなかった。CDVのパッド表皮の感染を、ウイルス核蛋白質に対する免疫組織化学検査、核蛋白質メッセンジャーリボ核酸(mRNA)に対する切片上ハイブリッド形成法により証明した。グループ1の犬のみパッド表皮に同じような分布でウイルス抗体とmRNAが存在した。グループ1のパッド表皮は、基底層に多くの有糸分裂像が見られ、かなり多くの基底ケラチン生成細胞が、増殖マーカーKi-67と増殖細胞核抗原陽性を示した。Ki-67とウイルス核蛋白の二重染色で、二重標識基底ケラチン生成細胞がまれに認められた。それら所見は、パッド表皮のCDV粒子の存在が、ケラチン生成細胞増殖に関与すると思われる。(Sato訳)
■重度パルボウイルス腸炎の犬で、腸の透過性、腸のタンパク喪失、転帰に対する早期経腸栄養の効果
Effect of Early Enteral Nutrition on Intestinal Permeability, Intestinal Protein Loss, and Outcome in Dogs with Severe Parvoviral Enteritis
J Vet Intern Med 17[6]:791-798 Nov-Dec'03 Clinical Study 52 Refs
Albert J. Mohr, Andrew L. Leisewitz, Linda S. Jacobson, Jorg M. Steiner, Craig G. Ruaux, and David A. Williams
パルボウイルス腸炎の腸管透過性、腸管タンパク喪失、転帰に対する早期経腸栄養(EN)の効果を、無作為コントロール臨床試験で調査した。犬を2つのグループに振り分けた。15頭には嘔吐がおさまって12時間経過するまで食餌を与えない(入院後平均50時間;NPO群)。別の15頭は、入院後12時間目から鼻食道チューブで早期ENを行った(EEN群)。他の治療はすべて同じものだった。腸管透過性は、6時間目の尿中ラクツロース(L)、ラムノース(R)回収率(%L、%R)、そしてL/R回収率比で評価した。腸管タンパク喪失は、糞中a,-プロテイナーゼ抑制物質濃度(アルファ1-PI)により定量した。
様子、食欲、嘔吐、下痢が正常になるまでの時間中央値は、各変動値、EEN群で1日早かった。入院からの体重増加は、NPO群でわずか(3日目:2.5±2.8%;6日目:4.3±2.3%;平均±SE)なのに対し、EEN群で有意な体重増加を示した(3日目:8.1±2.7%;6日目:9.7%±2.1%)。両群研究中、標準値と比較して平均尿中%Lは増加し、%Rは低下、L/R比は増加した。EEN群で、%Lは低下(入院日:22.6±8%;6日目:17.9±2.3%)し、NPO群では増加(入院日:11.0±2.6%;6日目:22.5±4.6%、P=.035)した。両群の糞中アルファ1-PIは基準値以上で、漸進性に低下した。グループ間の%R、L/R比、アルファ1-PIに有意差は発生しなかった。13頭のNPO犬とEENの全頭が生存した(P=.48)。EEN群は早期臨床症状の改善と有意な体重増加を示した。NPO群に対し、EEN群の%Lの有意な低下は、腸のバリアー機能の改善を反映しているかもしれず、細菌、またはエンドトキシンの移行を制限しえる。(Sato訳)
■ネコ伝染性腹膜炎(FIP)のネコで循環リンパ球部分集団のシフト:病原的役割と診断的関連性
Shifts in circulating lymphocyte subsets in cats with feline infectious peritonitis (FIP): pathogenic role and diagnostic relevance.
Vet Immunol Immunopathol 96[3-4]:141-8 2003 Dec 15
Paltrinieri S, Ponti W, Comazzi S, Giordano A, Poli G
ネコ伝染性腹膜炎(FIP)のネコは通常リンパ球が減少し、脾臓やリンパ節のリンパ枯渇所見が見られる。特に組織のCD4(+)リンパ球数が、FIP病変の進行中に減少する。この減少は、リンパ球アポトーシス率増加によることが多い。対照的に、ネココロナウイルス(FCoV)に感染したネコは、末梢リンパ節の濾胞性増殖を起こす。この研究は、FIPの循環リンパ球部分集団のシフトの病原的役割の可能性を評価するため考案された。FIPのネコの末梢血を評価し、FCoVフリーそしてFCoVが蔓延した猫舎で過ごした臨床的に健康な猫の末梢血と比較した。FIP以外の疾患を持つ猫の血液も、その変化の診断的関連性を明確にするために調査した。
全血間接免疫蛍光法とネコCD5、CD4、CD8、CD21に特異的なモノクローナル抗体を用い、フローサイトメトリーでリンパ球部分集団を分析した。
この研究の結果は、最近FCoVに感染したネコは、一時的なT細胞の増加を起こさない;FIPの普及が高いグループのネコは中程度だが、T細胞集団の持続的減少がある;FIPのネコはリンパ球全ての部分集団の非常に重度な減少があることを示唆する。
さらに、FIP経過中の多くのリンパ球はどの膜抗原にも発現せず、早期アポトーシスのためと思われる。FIP以外の疾患のネコもリンパ球数は減少していた。結果として、それら所見の診断的関連性は非常に低い。それにもかかわらず、フローサイトメトリックの変化の欠如は、高い陰性適中率(NPV)を持ち、よって正常な細胞所見のネコで、鑑別診断リストからFIPが除外可能となる。
■ネコヘルペスウイルスのインビトロの複製に対するウシラクトフェリンの影響
Effects of Bovine Lactoferrin On In Vitro Replication of Feline Herpesvirus
Vet Ophthalmol 6[3]:245-250 Sep'03 Experimental Study 59 Refs
Stephanie L. Beaumont, * David J. Maggs, Heather E. Clarke
目的:ネコヘルペスウイルス(FHV1)のインビトロでの複製に対し、ウシラクトフェリンがどう影響するのかを調査し、ウイルス複製のどのポイントでそれらの影響が出るのかを判定すること
サンプル集団:培養Crandell-Reeseネコ腎臓(CRFK)細胞とFHV1株727
方法:ウシラクトフェリン5つの濃度(0.5、1、2、5、10mg/ml)を、従来のplaque
reduction assays中3つ以上のポイントのうち1つの時点で添加した。(a)ウイルス吸着前の30分間、ラクトフェリン含有培地で、非感染CRFK細胞を培養した。(b)吸着前と吸着中ラクトフェリン含有培地にウイルスを浮遊させた。(c)ウイルス吸着後CRFK細胞をラクトフェリン含有培地で48時間培養した。プラークをカウントし、抗ウイルス効果をラクトフェリンを含んでいないコントロール培地で、抑制率として明示した。
結果:ウイルス吸着前、または吸着中CRFKへのラクトフェリンの暴露は、FHV1複製を87-96%(平均:91%)抑制した。ウイルス吸着後のラクトフェリンの適応は、FHV1にはっきりとした効果を示さなかった。ラクトフェリンを複数の段階で添加した時の相加、相乗効果は認めなかった。それらの効果は、検査した全ての濃度で同じだった。CRFK細胞に対するラクトフェリンの細胞毒性効果は、全ての濃度で観察されなかった。
結論と臨床関連:ウシラクトフェリンは、ウイルス吸着前、吸着中にFHV1のインビトロでの複製を抑制する効果があるが、ウイルス吸着後はそうでなかった。それらの所見は、ラクトフェリンがFHV1の細胞表面への吸着、および・または細胞内へのウイルスの侵入を抑制すると強く示唆する。急性、または再発性のネコのヘルペスウイルスによる疾患で局所ラクトフェリンの臨床効果を調査する確証がある。(Sato訳)
■ニューイングランドの病院施設で、病原性の高いネコカリシウイルス疾患の動物流行性
An Epizootic of Highly Virulent Feline Calicivirus Disease in a Hospital Setting in New England
J Feline Med Surg 5[4]:217-226 Aug'03 Original Report 16 Refs
* EM Schorr-Evans; A. Poland; WE Johnson; NC Pedersen
この文献は小動物病院で普通見られない病原性の高いカリシウイルス(FCV)感染の24症例の集団発生を報告する。状況と疾患徴候は、カルフォルニア北部でFCV出血性疾患の集団発生で最近述べられたものと非常に似ていた(Vet. Microbiol. 73 (2000) 281)。このウイルスは容易にシェルターのネコに侵入し上部気道症状を示す。罹患ネコは、高熱、食欲不振、呼吸困難、口腔潰瘍、顔面と四肢の浮腫、黄疸、膵炎の症状を出した。動物管理者や病院器材の接触汚染で感染は急速に広がった。従業員から飼いネコへの媒介物による伝染も1症例見られた。ワクチン接種前、生カリシウイルスベースのFCV-F9ワクチン複数接種でも防げなかった。罹患ネコは徹底的な支持療法を7-10日間必要とするものも多く、死亡や安楽死などの全体の死亡率は32%だった。この集団発生の原因となるFCV株は、同様の動物流行性の原因となるFCV株やほとんどのワクチンに含まれるFCV-F9株と遺伝子的、血清学的に異なっていた。
この種の集団発生は頻度が増加していると報告されており、個人診療の病気収容ネコの処置の実施によく関係する。既存の動物流行性疾患同様、FCV出血性疾患の集団発生は、自己制御できるものであるが、徹底的な検疫、隔離、個人の衛生、消毒処置の即時適用が必要である。(Sato訳)
■近年野外で分離されたヘルペスウイルスタイプ1の実験感染
Experimental infection of recent field isolates of feline herpesvirus type 1.
J Vet Med Sci 65[8]:939-43 2003 Aug
Hamano M, Maeda K, Mizukoshi F, Une Y, Mochizuki M, Tohya Y, Akashi H, Kai K
00-015、00-035と名づけられたネコヘルペスウイルスタイプ1(FHV-1)の2種類の野外分離株が、日本のネコウイルス性鼻気管炎(FVR)と診断されたネコから採取された。近年のFHV-1の特徴を調べるため、それら2種の分離菌と我々の研究所株C7301 を実験的に特定病原フリーのネコに接種した。全てのネコは典型的なFVR症状を示したが、C7301感染ネコよりも分離00-015、00-035に感染したネコのほうがより重度の臨床症状を示した。分離菌に感染したネコで見られた結膜炎を含む重度眼病変は、近年のFHV-1が眼病変を含む重度FVR症状を引き起こす可能性があることを示している。(Sato訳)
■ネコの伝染性腹膜炎に対するトロンボキサン合成酵素阻害剤の効果
Effect of thromboxane synthetase inhibitor on feline infectious peritonitis in cats.
J Vet Med Sci 60[5]:657-9 1998 May
Watari T ; Kaneshima T ; Tsujimoto H ; Ono K ; Hasegawa A
腹部滲出液と食欲不振を呈した2頭の猫を、猫伝染性腹膜炎(FIP)と診断しました。我々は、FIPに特徴的な徴候と臨床病理学的データの展開に関し、トロンボキサン(Tx)合成酵素阻害薬の塩酸オザクレルの効果を評価することを試みました。Tx合成酵素阻害薬の投与後、食欲と活動性の改善、腹部滲出液の減少、正常レベルまでの白血球数低下、そして高γ-グロブリン血症の改善が、FIPの2頭の猫で認められました。これらの所見は、FIPにおける脈管炎が、血小板凝集を抑制するTx合成酵素阻害薬で、うまく治療できるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■イヌの尿中レプトスピラ排泄の罹患率の評価でPCR、微生物培養、血清検査の比較
Comparison of Polymerase Chain Reaction Assay, Bacteriologic Culture, and Serologic Testing in Assessment of Prevalence of Urinary Shedding of Leptospires in Dogs
J Am Vet Med Assoc 222[9]:1230-1233 May 1'03 Serial Case Study 23 Refs
* Kenneth R. Harkin, DVM, DACVIM; Yvette M. Roshto, DVM; Jennifer T. Sullivan, DVM; Tanya J. Purvis; M. M. Chengappa, DVM, PhD, DACVM
* Department of Clinical Sciences, College of Veterinary Medicine, Kansas State University, Manhattan, KS 66506-5701
目的:イヌの尿中レプトスピラ排泄の罹患率を判定するためのPCR検査、血清検査、微生物培養の結果を比較すること
構成:一連症例研究
動物:健康状態に関係なく連続的に評価した500頭のイヌ
方法:尿サンプルのレプトスピラをPCR法、微生物培養で検査した。血液サンプルは、血清型canicola, bratislava, pomona, icterohemorrhagiae, grippotyphosa, hardjoの抗体を分析した。
結果:最低1血清型に対する力価>1:100が104頭(20.8%)から検出され、力価>1:400は41頭(8.2%)の犬から検出された。高力価が見られた一般的な血清型は、grippotyphosaで、続いてicterohemorrhagiae, canicola, pomona, bratislava, hardjoだった。1つの血清型以上で高力価が見られたのは14頭だった。
PCR陽性結果は41頭(8.2%)のイヌで得られ、力価>1:100だったのはたった9頭だった。レプトスピラはどのイヌの尿でも培養されなかった。4頭のみ臨床的にレプトスピラ症だった。6ヶ月の評価期間で全体の疾患罹患率は0.8%だった。PCR法と比較して、排泄の予測として血清検査は、感受性22%、特異性79%、陽性的中率9%、陰性的中率92%だった。
結論と臨床関連:健康状態に関係なく8.2%のイヌが病原性レプトスピラを排泄していた。血清検査は尿排泄の予想としては悪いものだった。レプトスピラを排泄していた臨床的に正常なイヌは、そのオーナーに人畜共通感染症のリスクを与えるかもしれない。(Sato訳)
■イヌのレプトスピラ症の診断でPCR法の臨床適用
Clinical Application of a Polymerase Chain Reaction Assay for Diagnosis of Leptospirosis in Dogs
J Am Vet Med Assoc 222[9]:1224-1229 May 1'03 Prospective Study 32 Refs
* Kenneth R. Harkin, DVM, DACVIM; Yvette M. Roshto, DVM; Jennifer T. Sullivan, DVM
目的:イヌのレプトスピラ症の診断のため尿サンプルに使用したPCR法の評価
構成:前向き臨床研究
動物:レプトスピラ症を思わせる臨床症状のイヌ132頭と健康犬13頭
方法:レプトスピラDNA検出のため、尿サンプルにPCR法を行った。その結果をレプトスピラ診断の伝統的な基準と比較した。
結果:確立した基準で8頭の犬をレプトスピラ症と診断した。それらのイヌ全頭PCR法陽性結果を示し、1頭は抗体出現前に陽性結果を示していた。レプトスピラ症の確定診断がされていない16頭のイヌでもPCR法陽性結果を示した。レプトスピラ症の確定診断がなされた8頭の血清型は、serovars
pomona ( 3), grippotyphosa (2), canicola (2), bratislava (1)と血清学的に確認された。残りの121頭は、レプトスピラ症以外の診断がなされたか、または健康だった。尿のPCR法で、感受性は100%、特異性は88.3%、陽性適中率は33%、陰性適中率は100%だった。
結論と臨床関連:抗体出現前のPCR法陽性結果は、早期診断の価値があるかもしれない。レプトスピラ症の確立された基準に合わないにもかかわらず、レプトスピラ症に一致する症状を持つイヌの陽性結果は、レプトスピラ症の診断で血清学的検査の感受性に関して疑問視される。pomona, grippotyphosa, canicolaの血清型が良く見られた。(Sato訳)
■犬の肛門フルンケル症に対するサイクロスポリン1日1回投与の評価
Evaluation of once daily treatment with cyclosporine for anal furunculosis in dogs.
Vet Rec 152[8]:225-9 2003 Feb 22
Doust R, Griffiths LG, Sullivan M
肛門フルンケル症の犬24頭を1.5、3.0、5.0、7.5mg/kgの投与量でサイクロスポリンを1日1回13週間投与し、6ヶ月、12ヵ月後に再検査した。13週後6頭は寛解し、11頭はコントロールでき、または改善し、7頭は反応しなかった。最高用量を投与した犬の反応は、他の群全体と比べても有意によい反応で(P<0.014)、1.5mg/kg、5mg/kg群よりも反応は良かった(P<0.05)。治療中に臨床的に改善し、早いものは最初の5週間だった。13週後に寛解した6頭の犬のうち3頭は、1、2、6ヵ月後に再燃した。13週後にコントロール、または改善した11頭は、無処置で放置するか、1.5-7.5mg/kgの投与量で1-3ヶ月サイクロスポリン療法を継続した。4頭で寛解に達し、残りの7頭はコントロールを維持したが、11頭中4頭は治療後12ヶ月以内に再燃した。観察された副作用には、皮毛代謝回転の増加と間歇的嘔吐があった。(Sato訳)
■猫ヘルペスウイルスの潜在的に感染している猫に対しL-リジンの経口補助の効果
Efficacy of oral supplementation with L-lysine
in cats latently infected with feline herpesvirus.
Am J Vet Res 64[1]:37-42 2003 Jan
Maggs DJ, Nasisse MP, Kass PH
目的:ネコヘルペスウイルスタイプ1(FHV-1)感染の臨床症状や、潜在感染の猫に見られる眼からのFHV-1の排泄に対し、L-リジンの経口投与の効果を判定すること
動物:14頭のFHV-1無処置の成猫
方法:最初にFHV-1の結膜接種を行い5ヵ月後、ネコを新しい場所に移して、L-リジン400mgを30日間1日1回食餌に混ぜる群と食餌のみの群に振り分けた。15日目に全ての猫にウイルスの再活性化を誘発するメチルプレドニゾロンの投与を行った。感染の臨床症状で段階をつけ、ウイルス排泄は、我々の研究ではPCR法で評価した。ピーク、または谷の血漿アミノ酸濃度を30日目に評価した。
結果:コントロール群と比較して、L-リジンを投与されていたネコは、結膜炎の影響を受けたネコはより少なく、感染の臨床症状の発現も平均7日間遅延したが、群間の有意差は示されなかった。また治療群の方が、コルチコステロイド誘発性ウイルス再活性化の後ではなく、新しい場所に移した後にウイルス排泄を起こすことは有意に少なかった。平均血漿L-リジン濃度は、投与後3時間で有意に増加したが、24時間では増加しなかった。血漿アルギニン濃度は有意な変化を示さなかった。
結論と臨床関連:FHV-1の潜在感染している猫にL-リジン400mg1日1回の経口投与は、飼育場所や管理の変化後、ウイルス排泄を減少させたが、コルチコステロイド投与後とは関連を示さなかった。この投与量は意義があるが、血漿アルギニン濃度の変化を伴わない、または臨床的副作用のない短期間の血漿L-リジン濃度を上昇させるものであった。(Sato訳)
■日本におけるネコ上部呼吸器感染症の最近の疫学
Mochizuki M, Kawakami K, Hashimoto M, Ishida
T.
J Vet Med Sci 2000 Jul;62(7):801-3 Related
Articles, Links
Recent epidemiological status of feline upper
respiratory infections in Japan.
ネコの上部呼吸器感染症の疫学を研究した。過去2.5年間の動物病院における111頭のネコから採取した鼻、眼、口のぬぐい液を試験した。24頭(21.6%)と4頭(3.6%)のネコが、それぞれネコカリシウイルス(FCV)とネコウイルス性鼻気管炎と診断され、FCVがネコヘルペスウイルス1よりも優勢であった。それは1970年代に得られたデータからはかなりの変化であることが明らかとなった。
分離されたFCVのそれぞれ42.9%と66.7%が、FCV F9もしくは255株を含んだワクチンによって免疫化したネコ血清により中和された。PCR法で増幅されたompA遺伝子による試験で、Chlamydia
psittaciは局所的に結膜炎と鼻炎を示す26頭の病的なネコのうち、26.9%に発見された。(Dr.Yoshi訳)
■猫白血病ウイルス関連の脊髄障害
Feline leukemia virus-associated myelopathy
in cats.
Vet Pathol 39[5]:536-45 2002 Sep
Carmichael KP, Bienzle D, McDonnell JJ
猫白血病ウイルス(FeLV)感染は、明確な腫瘍性疾患、血液疾患、免疫抑制疾患に関連する。ここで2年以上FeLVに感染した猫16頭の新しい神経学的症候群を報告する。臨床症状は一致して異常な鳴き声、知覚過敏、不全麻痺から進行する全麻痺だった。罹患猫の臨床経過は、漸進的一定の神経機能不全で安楽死となった。顕微鏡的に、ミエリン鞘の拡張と軸索の腫脹を伴う白質変性が脊髄と脳幹で認められた。
FeLV感染に良く見られる腫瘍や血液疾患はなかった。1頭に見られた真菌や原虫感染は、免疫機能減退を示唆した。組織の免疫組織化学染色で、神経、内皮細胞、グリア細胞に一致してFeLVp27抗原の発現が明らかとなった。さらに、プロウイルスDNAは、腸、脾臓、リンパ節と同様に脊髄の多くの部分で増幅された。それら所見は、長期にわたるFeLV感染猫で、ウイルスが中枢神経系の細胞に細胞変性を起こす可能性があると示唆する。(Sato訳)
■ヘルペスウイルス感染に起因する眼病を伴うネコの治療:17症例(1983-1993)
Stiles J.
J Am Vet Med Assoc 1995 Sep 1;207(5):599-603
Treatment of cats with ocular disease attributable
to herpesvirus infection: 17 cases (1983-1993).
ヘルペスウイルス感染に起因する眼病を伴うネコ17頭の内科記録を回顧した。ヘルペスウイルス感染は免疫蛍光抗体検査の陽性、または樹枝状角膜潰瘍の発見により確認された。ネコたちは3ヶ月齢から23歳齢であった(平均4.8歳)。性別または系統の偏りは明白でなかった。ワクチン履歴は13頭のネコで手に入り、そのうち9頭はネコウイルス性鼻気管炎、カリシ、汎白血球減少症ウイルスに対するワクチンを適切に受けていた。6頭のネコは呼吸器病の履歴があった。12頭のネコがネコ白血病ウイルスの検査をされ、3頭が陽性であり、7頭がネコ免疫不全ウイルスの検査をされ、1頭が陽性であった。
よく見られる眼異常は結膜炎であり(13/17)、次いで樹枝状角膜潰瘍であった(10/17)。
角膜炎は17頭中6頭で、樹枝状でない角膜潰瘍は17頭中3頭で発見された。角膜壊死は17頭中4頭のネコにおいて、最初の検査で明らかか、追跡検査期間中に発生した。乾性角結膜炎は17頭中2頭で診断され、前部ブドウ膜炎は17頭中1頭で明らかとなった。全てのネコは2つ以上の、ヘルペスウイルス感染に関係した臨床的眼異常を持っていた。抗ウイルス薬点眼治療が14頭のネコに実施され、それはイドクスウリジン7頭、ビダラビン4頭、trifluridine
3頭であった。抗生物質点眼が10頭のネコに使用され、アトロピンが3頭のネコに使用された。コルチコステロイド点眼が2頭のネコで使用された。3頭のネコに組換え型ヒトアルファインターフェロンが、抗ウイルス点眼剤と共に経口的に与えられた。内科的治療に加えて、4頭のネコで外科的治療がなされた。(Dr.Yoshi訳)
■日本の東海地方で、犬の微小ウイルス(MVC;イヌパルボウイルス1型)の血清学的調査
A serological survey of minute virus of canines
(MVC; canine parvovirus type-1) in dogs in
the Tokai area of Japan.
Jpn J Vet Res 49[3]:249-53 2001 Nov
Hashimoto A, Takiguchi M, Hirai K, Kida H,
Carmichael LE
血液凝集阻止(HI)試験で、イヌの微小ウイルス抗体の血清学的調査を、日本の東海地方のイヌから集めた血清で行いました。266頭中41頭(15.4%)の血清は、1:40の陽性抗体力価またはイヌ微小ウイルスに対するより高いものでした。イヌ微小ウイルスが、少なくとも1990年から日本の犬に存在しているかもしれません。この血清調査から、日本のイヌの集団での定着を見せています。イヌ微小ウイルスは日本のイヌの病原ウイルスに対する新しい認識を持たせるものかもしれません。(Sato訳)
という文献があったのでMVCに関する文献が他にないか探してみました。
■イヌ微小ウイルス(MVC)の特徴と子犬に対する病原性
Title: Characterization of minute virus of
canines [MVC] and its pathogenicity for pups
Source: JOURNALS ABSTRACT (Cornell Vet 78[2]:131-145
Apr'88 12 Refs)
Author(s): Lawson Macartney; Colin R. Parrish;
Leonard N. Binn; 1Leland E. Carmichael; 1Baker
Inst for Anim Health, NYS College of Vet
Med, Ithaca, NY
-実験研究。分離したイヌ微小ウイルス(イヌパルボウイルス1型)の特徴と子犬に対する病原性を研究しました。
DNA複製制限酵素消化を、イヌ微小ウイルスゲノムとイヌパルボウイルス2型('イヌパルボウイルス')ゲノムの比較に用い、またウイルス抗原を寒天ゲル沈降試験(AGPT)、血液凝固阻止試験(HI)、ウイルス中和試験、免疫蛍光顕微鏡試験で比較しました。
ビーグルの子犬で病原性試験を行いました。8週零の子犬4頭と4日零の子犬5頭に、イヌ微小ウイルスを口鼻接種しました。4日零の接種を行わない1頭をコントロールとしました。8週零の子犬2頭を接種後5日目に安楽死し、後の2頭は安楽死しませんでした。接種した4日零の子犬は、接種後それぞれ2,4,6,8,15日目に安楽死し、コントロールの子犬は研究の開始時に安楽死しました。分離したウイルスは接種前に細胞培養で13回継代して用いました。
結果:イヌ微小ウイルスとイヌパルボウイルス2型は、抗原、ゲノム的に異なるものでした。
8週零の子犬:接種した子犬で臨床的に病気になったイヌはいませんでした。剖検時に見られた唯一の変化は、リンパ組織に関連した軽度から中程度の消化管胚中心欠乏でした。ウイルスは、4頭の糞、安楽死した2頭のリンパ組織から分離され、他の器官からFAにより検出されたものもありました。血清抗体は7日目にHIで、14日目にAGPTで検出しました。
4日零の子犬:子犬は健康を維持しました。4、6日目に安楽死した子犬の剖検で、胸腺やリンパ節に変化が見られ、十二指腸陰窩にわずかな変化が見られましたが、8日目のイヌでは胸腺の修復性変化が見られ、15日目には変化は正常に戻りました。接種後2,4,6日目のリンパ節や胸腺にウイルスが見られました。接種後8日目と15日目はウイルス分離を行っていません。HI力価が接種後8,15日目の子犬から見つかっています。(Sato訳)
■イヌの胎児に対するイヌ微小ウイルス(MCV)の病原性
Pathogenicity of minute virus of canines
(MVC) for the canine fetus
Cornell Vet 81[2]:151-171 Apr'91 19 Refs
Leland E. Carmichael; Donald H. Schlafer;
Akira Hashimoto
-特定病原体未感染(SPF)のビーグル妊娠犬19頭に、さまざまな妊娠期間、さまざまな経路でイヌ微小ウイルス(MCV)を接種した実験研究
実験構成:腸炎で死亡した子犬から分離した微小ウイルスを、19頭のビーグルメス犬に接種しました。
・ 口鼻経路 19頭中8頭(妊娠期間15-35日に7頭、妊娠期間40-44日に1頭)
・ 静脈経路 19頭中5頭(妊娠期間15-35日に3頭、妊娠期間40-44日に2頭)
・ 子宮内注射19頭中6頭(妊娠期間15-35日に1頭、妊娠期間40-44日に2頭、妊娠期間50-53日に3頭)で、6頭中4頭の2-3頭の胎児には羊膜嚢内に、6頭中2頭の1-2胎児には直接接種
超音波検査と血清リラキシンレベルで妊娠を確定しました。接種後1週間は毎日検査し、それからは間隔不定で検査しました。母犬は、胎児の死亡が疑われた、または観察された、または妊娠が正常ならば、分娩日1-2日以内に安楽死しました。母犬は剖検を行い、子宮、胎盤、胎児の組織を採取し、病理組織検査、ウイルス分離、関節または直接免疫蛍光検査染色、ウイルス抗原に対するPAP塗抹標本に使用しました。可能ならば、胎児の血液サンプルも採取しました。接種前と安楽死時に全ての犬から血清を採取し、イヌ微小ウイルスとイヌパルボウイルス2型の血液凝集阻止(HI)抗体価を判定しました。
結果
胎児
口鼻ウイルス接種:妊娠期間25-44日目にイヌ微小ウイルスを口鼻接種した母犬の胎児、8頭中3頭に死亡、再吸収が起こりました。
静脈ウイルス接種:イヌ微小ウイルスを静脈接種した母犬の胎児5頭中3頭に死亡、再吸収が起こりました。妊娠25-35日目に接種した時の胎児全頭(3/3)死亡しました。一方、妊娠40-44日目に接種したときの胎児(0/2)は死亡しませんでした。
羊膜または胎児へのウイルス接種:羊膜嚢または直接胎児にイヌ微小ウイルスを接種した胎児6頭中4頭は死亡しました。妊娠期間25-44日目に接種した胎児全頭(3/3)死亡し、妊娠期間50-53日目に接種した胎児3頭中1頭は死亡しました。
ウイルス学:胚/胎児死亡の評価時期後2週間以上経過して検査した、胎児または子宮組織中にウイルスは認めることができませんでした。イヌ微小ウイルスが認められた感染胎児における肺組織に、最大イヌ微小ウイルス力価が見られましたが、ウイルスは、胎盤、小腸、心筋にも認められました。
病理組織学:感染胎児の腫瘍組織学所見は、肺炎、小腸絨毛壊死で、心筋炎が見られるものもありました。
胎児死亡は接種後2週間以内に起こっていると判断しました。
母犬
口鼻ウイルス接種:接種後、臨床上の疾病は見られませんでした。接種後ウイルス血症は1-3日間持続し、イヌ微小ウイルスの便への排泄は、摂取後4-8日間8頭中5頭に見られました。イヌ微小ウイルスの陽性HI抗体価は、全頭1-2週間で発現しました。胎児の再吸収の形跡は8頭中3頭で見られました。流産した犬はいませんでした。
静脈ウイルス接種:接種後、臨床症状が5頭中1頭に見られました。胎児の再吸収は5頭中2頭、流産は5頭中1頭に見られました。妊娠期間30日以降に接種した2頭の子犬は正常でした。
羊膜または胎児へのウイルス接種:臨床症状として、軟便、抑鬱、一部食欲不振が6頭中2頭で見られました。細菌感染による発熱が6頭中1頭に見られました。流産は6頭中1頭に起こりました。母犬6頭中4頭で、胎児/子犬の25-50%が死亡しました。6頭中2頭の子犬は正常で、ウイルス接種した胎児には陽性HI力価が存在しました。
イヌ微小ウイルスのHI抗体価は、胎児に接種していない母犬より、接種した母犬の方が一般的に高くなりました。
解説:イヌ微小ウイルスは、イヌパルボウイルス2型とは抗原性、ゲノム的に異なるパルボウイルスです。正常犬、軽度の下痢を伴う子犬、最近では、重度腸炎および/または呼吸器感染の子犬に認められております。著者はHI力価(1:40以上=陽性)をもとに異なるイヌの集団で、30%以下から70%以上のイヌ微小ウイルス血清罹患率を発見しています(未発表の研究)。(Sato訳)
■猫の上気道部の病原体:ヘルペスウイルス1型およびカリシウイルス
Jane E. Sykes, BVSc (Hons), PhD; Compend
Contin Educ Pract Vet 23[2]:166-175 Feb'01
Review Article 44 Refs; Feline Upper Respiratory
Tract Pathogens: Herpesvirus-1 and Calicivirus
抄録:猫ヘルペスウイルス1型および猫カリシウイルスは猫上気道部疾患の原因としてごく普通にみられ、臨床的に識別不能な症候群となり得ることがあります。しかしながら、それらの物理学的特性、疫学、臨床症状の範囲には違いがあります。そして、その違いはこれらのウイルスの診断、予後、管理に影響してきます。
診断上の検査の有効性や感応性もまたそれぞれのウイルスによって違いがあります。両ウイルス感染の診断は難しく、病歴の組み合わせや身体検査、微生物学的解析の結果によって最も良く診断することができます。
処置としては主に対症的に行います。ワクチネーションは感染の防御とはなりませんが、臨床症状の重症化とウイルス蔓延の持続期間を最小限にとどめることができます。(Dr.Shingo訳)
■猫ヘルペスウイルスの眼球症状
S.E. Andrew; J Feline Med Surg 3[1]:9-16
Mar'01 Review Article 33 Refs; Ocular Manifestations
of Feline Herpesvirus
猫ヘルペス1型(FHV-1)感染症は、飼い猫集団において世界的に広く分布しています。
FHV-1感染において最もよく見られる眼科症状は結膜炎と角膜炎です。この論文では、FHV-1の病原性を再考し、様々な臨床的眼科症状、診断テクニック、FHV-1
関連性疾患の治療法について議論しています。
眼科症状として結膜炎、角膜炎、間質性角膜炎、新生児眼炎、乾性角結膜炎、眼瞼癒着、角膜壊死、好酸球性角膜炎、前ブドウ膜炎などがあります。
診断テクニックとしてウイルス分離、蛍光抗体検査、血清中和抗体、ELIZA法、PCR(ポリメラーゼ連鎖反応法があります。その他様々な治療法も議論しています。(Dr.Shingo訳)