■犬の環軸接合部への修正腹側アプローチ
A modified ventral approach to the atlantoaxial junction in the dog
Vet Surg. December 2007;36(8):765-70.
Andy Shores, Laura C Tepper
目的:環軸(AA)亜脱臼の犬におけるAA接合部の安定化を行うための修正腹側アプローチを使用した外科手技を述べ、評価する
研究構成:遡及研究
動物:AA亜脱臼の犬(n=5)
方法:右傍矢状アプローチからの安定化により治療したAAを持つ5頭の医療記録(2000-2006)を再検討し、臨床検査およびオーナーへの電話での聞き取りにより結果を評価した。
結果:全頭AA接合部は明確に視認可能で、固定器具を設置した。右傍矢状アプローチによるAA接合部へのアクセスはすばらしく、甲状腺、気管、反回神経の周りを解剖しないですんだ。オーナーによると回復は良いから優良と考えられ、犬は良好な機能に回復した。
結論:AA接合部への右傍矢状アプローチは、視認性を改善し、最小限の合併症で外科的安定化が可能である。
臨床関連:AA接合部の外科的安定化が必要な犬において、右傍矢状アプローチを考慮すべきである。このアプローチは標準的な腹側正中アプローチよりも、視認性の改善、解剖が少ない、腹側AA安定化に使用する固定器具の挿入中に重要な生命構造を防護できるなどの利点がある。(Sato訳)
■犬の環軸亜脱臼の非外科的治療の評価:79症例(1992-2001)
Evaluation of Nonsurgical Treatment of Atlantoaxial Subluxation in Dogs: 79 Cases (1992-2001)
J Am Vet Med Assoc 227[2]:257-262 Jul 15'05 Retrospective Study 18 Refs
Marc E. Havig, DVM; Karen K. Cornell, DVM, PhD, DACVS; Julia C. Hawthorne, DVM, DACVS; John J. McDonnell, DVM, DACVIM; Barbara A. Selcer, DVM, DACVR
目的:頚部スプリントで非外科的に治療した環軸亜脱臼(AAS)の犬の長期神経学的結果を評価する
構成:回顧的研究
動物:頚部スプリントで管理したAASの犬19頭
方法:2箇所の大学病院の医療記録を再検討した。外傷に関する情報、入院前の臨床症状持続期間、入院前の薬物治療、入院時の神経学的および神経学的検査結果、血液検査結果、画像診断結果、退院時の神経学的状況、治療で頚部スプリントの使用期間、スプリント除去および最終再検査時の神経学的状況を医療記録から収集した。長期結果はスプリント除去後1年以上経過した時の神経学的状態とした。良いまたは悪い長期結果に関与する因子を判定した。
結果:16頭中10頭で最終的に良好な結果が報告された。病院に委託される前の臨床症状持続期間の中央値は30日だった。罹患して30日以内の犬は、30日以上の犬と比較して良好な結果を有意にもたらしやすかった。入院時の神経学的グレード、歯突起のX線所見、臨床症状の発現年齢、病歴は結果に関与しなかった。
結論と臨床関連:頚部スプリントの使用によるAASの非外科的管理は、入院時の神経学的欠損の程度に関係なく、初めて臨床症状の急性発現を起こした若い犬に対して見込みのある治療である。(Sato訳)
★犬の環軸亜脱臼
Robert J. McCarthy, DVM, MS et al; Compend
Contin Educ Pract Vet 17[2]:215-226 Feb'95
Review Article 40 Refs; Atlantoaxial Subluxation
in Dogs
環軸亜脱臼は、小型犬にもっとも一般的に見られ、歯状突起や環軸靭帯のさまざまな障害で発現すると考えられております。それぞれのケースで軸椎背側変位により、頚椎脊髄の圧迫を引き起こします。外科的整復がほとんどの犬で推奨されますが、たとえ脊髄の圧迫を解除でき、関節が整復、安定化できたとしても重症例での回復は五分五分です。背側と腹側の安定処置が述べられておりますが、合併症がよく見られます。ラグスクリューを使った腹側固定法は、一般的に報告されている外科手技で合併症が少なく、最も良好な手術成果を残すかも知れません。(Dr.K訳)
★犬の環軸亜脱臼に対する外科手術の危険因子:46症例(1978−1998)
Daniel R Beaver, DVM, DACVS et al; Am Vet
Med Assoc 216[7]:1104-1109 Apr 1'00 Retrospective
Study 20 Refs; Risk Factors Affecting the
Outcome of Surgery for Atlantoaxial Subluxation
in Dogs: 46 Cases (1978-1998)
目的:環軸亜脱臼(AAS)を持つ犬に対する外科治療の危険因子を明らかにすること。
計画:回顧的研究
動物:AAS外科治療を受けた46頭の犬
手順:臨床的異常の発生年齢、術前の臨床的異常の持続期間、歯状突起のレントゲン所見、術式(背側または腹側)、手術回数(1または2回)、環軸関節整復の程度、術前の神経学的状態、犬の術後退院時および追跡調査時の医療記録を入手しました。手術成功の危険因子と神経改善の程度を、予知的可能性に関して分析し、明らかにしました。
結果:臨床的異常の初発年齢が24ヵ月齢以下であることは、最初の手術成功率、最終結果の向上、そして術後神経学的グレードの低下と有意に関連がありました。臨床的異常の持続期間:10ヵ月は、予後良好と最終的な神経学的グレードの低下と有意に関連しました。1または2の術前神経学的グレードは、最終的な神経学的グレードの低下と有意に関連しました。術式、環軸関節整復の程度、歯状突起のレントゲン所見、2度目の手術の必要性は、予後に影響する潜在的危険因子となりませんでした。
結論と臨床関連:臨床異常の初発年齢、術前の臨床異常発現期間、術前の神経学的状態は、犬におけるAASの手術成功に関する危険因子であると結論づけます。(Dr.K訳)