■先天性門脈体循環シャントの犬における尿酸アンモニア結石の発生率と関連する臨床病理所見の回顧的分析:363症例(2010-2023)
Retrospective analysis of the incidence and clinicopathological findings associated with ammonium urate urolithiasis in dogs with congenital portosystemic shunts: 363 cases (2010-2023)
J Small Anim Pract. 2025 Jan 13.
doi: 10.1111/jsap.13821. Online ahead of print.
M Walton-Clark , V Travail , T Sparks , A Eiras-Diaz , A Davenport , A Holmes , A Kent , C Prior , C Stilwell Breakspear , C Dye , C Good , C Motta , F Valls Sanchez , F Pilati , G McLauchlan , G Ruiz , I Brás , J Scott , K Clarke , K Peak , L Goonan , M Ots , M Rossell Garcia , N Lau , N Mansbridge , P Garcia Dominguez , S Conway , S Keyte , T Chapman , T Conley , V Black , V Coates , A DiBella

目的:先天性門脈体循環シャントの犬において、尿酸アンモニウム尿石の発生率と、それに関係する臨床所見を調査する

素材と方法:2010年から2023年の間に15か所の二次診療施設において、肝外あるいは肝内門脈体循環シャントと診断された犬の回顧的再調査。診断時のシグナルメント、臨床症状、身体検査所見、臨床病理検査結果を含むデータを集め、尿酸アンモニウム結石の有無を記録した。

結果:合計363頭の犬を含めた。尿酸アンモニウム結石の全体の発生率は19.3%だった。肝外門脈体循環シャントの犬は、肝内門脈体循環シャントの犬よりも結石がある確率が高かった(32.2%vs.8.0%)。結石のある犬はより高齢(中央値40vs.8か月)で、去勢した犬の確率が高かった(51.4%vs.9.8%)。結石のある犬のアンモニアは有意に低かった。結石のある犬は、尿試験紙及び沈渣検査で血尿を示す確率が高かった。

臨床的意義:肝外門脈体循環シャントの犬は、肝内門脈体循環シャントの犬よりも結石がある確率が高かった。アンモニア濃度がより高い犬は、尿酸アンモニウム結石がある確率が低く、より高齢の犬、去勢したオス犬、血尿のエビデンスがある犬は、結石の高い発生率を示した。(Sato訳)
■23頭の犬のプレジェット付マットレス縫合は肝内シャントを部分的に閉鎖できる:長期生存の評価
A mattress suture with pledgets can partially occlude intrahepatic shunts in 23 dogs: evaluation of long-term survival
J Am Vet Med Assoc. 2024 Oct 4:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.04.0284. Online ahead of print.
Margaret Chu , Sarah Marvel , Eric Monnet

目的:プレジェット付マットレス縫合による部分的閉鎖あるいはセロファン絞扼で減衰させた肝内門脈体循環シャント(IHPSSs)の犬の結果の違いを調査する

方法:IHPSSsの犬74頭をこの回顧的研究に含めた。2000年1月から2020年2月までの医療記録で、IHPSSsの治療に対し、セロファン絞扼(C群)あるいはプレジェット付マットレス縫合(P群)の開腹手術を行った犬に対する情報(生存期間の特異的結果、臨床症状の継続性、内科管理継続の必要性)を評価した。主治医および飼い主に長期フォローアップのための連絡をした。

結果:C群には51頭、P群には23頭が登録された。C群の手術時間は154.6分(136.3-170分)で、P群は154.9分(128.9-180.9分)だった。短期死亡率はC群で2%、P群で4%だった。生存期間中央値は、C群の犬で3537日で、P群は2141日だった。長期では、C群よりもP群の犬はより薬剤治療を受けたが、QOLスコアの分布に違いはなかった。

結論:プレジェット付マットレス縫合は、セロファン絞扼の代替法として使用できる。

臨床的関連:セロファンテープの設置に対し、完全な解剖が不可能なIHPSSsの犬に対し、プレジェット付マットレス縫合によるシャントの部分的閉鎖は実行可能なオプションで、容認できる長期結果を伴う。(Sato訳)
■胆汁性腹膜炎に対する手術を行った33頭の犬の即座の生存性に対する臨床的所見と予後因子
Clinical findings and prognostic factors for immediate survival in 33 dogs undergoing surgery for biliary peritonitis
Vet Surg. 2024 Nov 6.
doi: 10.1111/vsu.14189. Online ahead of print.
Solène Renaud , Mila Freire , Elizabeth O'Toole , Louis Huneault , Marie Llido , Brendon Ringwood , Tristan Juette , Dominique Gagnon

目的:犬の胆汁性腹膜炎の手術後の個体群統計、臨床症状、身体検査、診断検査結果、手術所見、院内術後死亡率に対する予後因子を報告する。

研究計画:回顧的多施設コホート研究

動物:33頭の飼い犬

方法:2015年から2021年までに胆汁性腹膜炎の手術を行った犬の医療記録を再調査した。胆汁性腹膜炎の確定診断と手術報告がある犬を含めた。各犬の個体群統計、臨床症状と継続期間、身体検査所見、血液検査および診断画像検査結果、手術、周術期内科治療、合併症についての情報を入手した。統計学的分析は、生存に影響するリスク因子の確認のために行った。

結果:胆嚢切除はもっとも頻度の高い処置だった(31/33、94%)。全体の死亡率は36%(12/33)だった。高ビリルビン血症(p=.049)、昇圧剤の投与(p=.002)、腎臓機能障害(p=.008)、術後合併症の数(p=.005)は生存に負の影響を与えた。総ビリルビン濃度が60.5μmol/L以上の犬では、死亡率50%が認められた。敗血症性と非敗血症性胆汁滲出の間で死亡率に差はなかった。

結論:胆汁性腹膜炎を外科的に治療した犬において、院内術後死亡率に関係する新しい予後因子が確認されたが、過去に報告されていた他のものも確認された。50%の死亡率に関係する術前ビリルビン域値が確認された。

臨床的意義:胆汁性腹膜炎の犬の生存性の予測に役立つ追加情報が提供されている。しかし、今後の研究は求められる。(Sato訳)
■アラニンアミノトランスフェラーゼが上昇している健康な犬の長期臨床的結果
Long-term clinical outcomes of healthy dogs with increased alanine aminotransferase
J Small Anim Pract. 2024 Sep 8.
doi: 10.1111/jsap.13777. Online ahead of print.
J Adams

目的:診療検査に対するアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の参照範囲を明確にし、健康診断でALTが上昇している臨床的に健康な犬の集団で、臨床的健康とALT濃度の確認と長期フォローを行う

素材と方法:125頭の臨床的に健康な犬のALT濃度を使用し、診療検査に対する参照範囲を定義した。イギリスの一次動物病院で、2012年1月から2023年1月の間で、ALT濃度の評価を含む健康診断を行った315頭の臨床的に健康な犬の電子記録を再検討した。研究期間中に1回以上の検査で、診療に対して判定した参照範囲の上限に比べALT濃度が上昇している臨床的に健康な犬を確認した。最高11年にわたり、彼らの長期臨床結果を判定するため、電子医療記録を通して長期にフォローした。

結果:診療検査におけるALTの参照範囲を、10.6-181.8U/Lと算出した。ALT濃度が上昇している19頭の臨床的に健康な犬を確認した。ALT濃度が上昇しているグループの1頭は、慢性肝炎と診断され、肝不全で死亡したが、他の18頭は他の原因で死亡、あるいは研究終了時に生存しており、肝疾患に関係する臨床症状はなかった。一貫してALT濃度が正常なグループの1頭も、肝疾患による臨床症状から死亡した。

臨床的意義:健康診断で示されたALT濃度が上昇している臨床的に健康な少ない割合の犬でしか、長期フォローアップで臨床的に関係する肝不全を発症しなかった。(Sato訳)
■肉芽腫性肝炎の犬29頭の臨床症状、組織学的特徴、超音波所見、生存性の特徴を述べる
Characterization of clinical presentation, histological features, ultrasonographic findings, and survival in 29 dogs with granulomatous hepatitis
J Vet Intern Med. 2023 Nov 23.
doi: 10.1111/jvim.16937. Online ahead of print.
Kayla D Prentice , Julie E Callahan-Clark , Nicola M Parry , Leslie A Schwarz , Cynthia R L Webster

Free article

背景:肉芽腫性肝炎(GH)は、犬の慢性肝炎(CH)の1つの型で、発表されている情報は限られている。

仮説:GHの犬の臨床症状、臨床的病理、超音波、肝臓の病理組織所見を述べ、生存期間を報告する

動物:GHの29頭の飼い犬

方法:回顧的観察研究。病理記録を検索した。組み入れ基準は、GHの病理組織学的診断、確認された病因がない、あるいは肝外の肉芽腫性疾患のエビデンスがない、再検討のための入手可能な医療記録が含まれた。臨床症状、臨床病理所見、治療プロトコール、生存期間を記録した。入手可能な肝臓バイオプシーの材料は、グレードとスコアを付け、超音波評価を再検討した。

結果:年齢中央値は7歳(範囲、0.66-12歳)だった。19の犬種が存在した。食欲低下(19/29)、元気消失(16/29)、発熱(13/29)が多く見られた。全ての犬は血清ALT活性が上昇していた一方で、21/29は高ビリルビン血症、12/24は好中球増多だった。超音波所見には、肝腫(12/22)、結節性実質性病変(9/22)、高エコーの実質性バンド(8/22)が含まれた。16/19頭の病理組織学的壊死炎症スコアは中から重度で、14/19頭の線維症スコアは軽度だった。治療は様々で、抗生物質、免疫抑制剤、肝庇護薬が含まれた。全体の生存期間中央値は635日(範囲、1-2482日)だった。

結論と臨床的重要性:犬の肉芽腫性肝炎は、高い病理組織学的グレード、発熱、好中球増多、高い発生率の肝腫、超音波検査で限局性の実質病変と関係する。受診時の疾患重症度にかかわらず、GHの犬は長期生存を示す良好な結果となりえる。(Sato訳)
■犬の肝膿瘍:56症例の多施設研究(2010-2019)
Hepatic abscessation in dogs: A multicenter study of 56 cases (2010-2019)
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Nov 9.
doi: 10.1111/vec.13340. Online ahead of print.
Jasper E Burke , Rebecka S Hess , Elisa P McEntee , Maureen A Griffin , Selimah M Harmon , Deborah C Silverstein

目的:肝膿瘍を確認した犬の臨床所見、治療戦略および結果を調査する

デザイン:2010年から2019年までの回顧的コホート研究

場所:多施設研究

動物:培養、細胞診、あるいは病理組織学的に確認した肝膿瘍形成のある飼い犬56頭

測定値と主要結果:犬は元気消失(39/56)、食欲不振(31/56)、嘔吐(26/56)を呈した。異常な身体検査所見は、体温上昇(41/56)、腹部痛(22/54)だった。CBCでは好中球増多(31/49)、中毒性変化(25/49)、貧血(28/49)、血小板減少(23/49)が見られた。生化学検査ではALP上昇(45/50)、ALT上昇(40/50)、低アルブミン血症(25/48)、高ビリルビン血症(19/49)が見られた。低血糖は49頭中13頭で認められた。

直径0.5-15cmの範囲の肝膿瘍が48頭中37頭で超音波検査により確認された;37頭中19頭は孤立性の膿瘍で、37頭中18頭は多病巣性の膿瘍形成だった。Escherichia coliは最も一般的に培養された病原体で、42頭中18頭で分離された。病理組織学的に、47頭中10頭で基礎にある肝臓腫瘍が明らかとなった。

外科的治療が49頭中41頭で実施され、そのうち35頭が生存して退院した。内科治療は49頭中8頭で行われ、そのうち5頭は生存して退院した。

一変量解析で、低血糖と多病巣性膿瘍は、生存のオッズ低下と関係した(それぞれ、OR:0.2、95%CI:0.03-0.9、P=0.04;OR:0.07、95%CI:0.01-0.6、P=0.02)。多変量解析では、多病巣性膿瘍のみが、生存のオッズ低下と関係した(OR:0.09、95%CI:0.01-0.87、P=004)。

結論:肝膿瘍は珍しいが、非特異的な臨床症状を呈し、肝酵素活性が上昇している犬、特に体温上昇と好中球が増加している犬では鑑別診断に残しておくべきである。この研究では生存して退院した犬の割合は、過去に報告された生存率と一致しており、総集団の56頭中40頭(71%)は生存して退院した。評価した変数で生存して退院することを予測できるものはなかったが、低血糖と多病巣性膿瘍は、予後的意義を判定するため、大規模集団で評価すべきである。(Sato訳)
■インドシアニングリーンと近赤外線胆管造影を用いた胆嚢粘液嚢腫の犬の胆管の開存性の判定
Determining the patency of biliary tracts in dogs with gallbladder mucocele using near-infrared cholangiography with indocyanine green
PLoS One. 2024 May 22;19(5):e0300395.
doi: 10.1371/journal.pone.0300395. eCollection 2024.
Su-Hyeon Kim , Sungin Lee

胆管粘液嚢腫(GBM)には胆嚢切除が指示されている。胆管の開存性の評価や正確な胆管系の視認性は、術後の損なわれた胆汁流のリスクを減らすために重要である。ゆえに、術中胆管造影(IOC)は、胆管傷害を防ぐため、胆嚢切除術中に推奨されている。インドシアニングリーン(ICG)胆管造影は広く人医療で報告されているが、獣医療で1つの研究しか実行されていない。

ゆえに、この研究の目的は、経口胆道画像を確認するため、IOCに対するICGの使用を証明し、犬の胆嚢切除中に総胆管の開存性を判定することだった。

この研究は27頭の犬で構成し、17頭は胆嚢粘液嚢腫(GBM)で、10頭はコントロールとし、特にGBMに対し選択的胆嚢切除を行った犬を含めた。ICG注射(0.25mg/kg)は手術の最低45分前に静脈内投与した。手術中、胆管造影からの蛍光像をモニターに映し出し、蛍光強度(FI)の比較のため白黒モードを利用した。胆嚢(GBs)と総胆管(CBD)のFI値は、FI分析ソフト(MGViewer V1.1.1, MetapleBio Inc.)を用いて測定した。

結果は、全ての症例でCBD開存性の確認を首尾よく証明した。可動性GBMは部分的に胆嚢の可視性を示したが、不動のGBMは限られた可視性しか示さなかった。また、CBD開存性や胆嚢強度の評価を広く超えて、残りの肝外胆管枝構造の適切な可視化に対する洞察も提供した。

我々の研究は、GBMの犬において、胆嚢切除中の胆嚢管や総胆管の開存性の評価に対し、ICGの静脈内注射を使用する蛍光IOCのポテンシャルを証明し、胆管の外科的カテーテル操作やフラッシュの必要性をなくすことができる。獣医療でICG胆管造影の広い適応性を調査し確認するための今後の研究を正当化する。(Sato訳)
■肝外門脈体循環シャントの>15kgの犬の臨床症状と短期結果
Clinical presentation and short-term outcomes of dogs ≥15 kg with extrahepatic portosystemic shunts
Vet Surg. 2023 Oct 16.
doi: 10.1111/vsu.14040. Online ahead of print.
Kate Spies , Jessica Ogden , Allyson Sterman , Jackie Davidson , Valery Scharf , Bianca Reyes , Jill Kristine Luther , Libby Martin , Raymond Kudej , Tiffany Stockman , Hayley Maloof-Jones Gallaher , Nicole J Buote , Meghan Smith , Brittany Ciepluch , Riley Amore , Alec H Sherman , Mandy L Wallace

目的:手術で治療した、あるいは手術をしなかった単一の肝外門脈体循環シャント(EHPSS)の>15kgの大型犬において、個体群統計、臨床症状、シャントの解剖学的構造、臨床的進行性、合併症を述べる

研究計画:複数施設の回顧的(10の大学病院と1の個人紹介施設)。

動物:犬≧15kg(n=63)

方法:2005年1月から2020年12月31日までに、EHPSSと診断された15kg以上の犬の医療記録を再調査した。犬は最低90日フォローアップした。シグナルメント、臨床症状、診断、シャントの解剖学的構造、治療、介入、周術期合併症を評価した。

結果:年齢中央値は21.9か月(IQR:9-36.8)だった。多く見られた犬種はゴールデンレトリバーだった(17/63頭)。門脈大静脈(17/63)および脾下大静脈(15/63)シャント配置が最も一般的だった。門脈低形成は18の画像報告で認められた。外科的に治療した犬のうち、14/45(35.6%)は短期合併症があり、3/45(6.7%)はシャント関連で死亡した。外科的減衰を行う生存した犬の15/40は内科管理をやめることができ、9/40は減量できた。全て内科的に管理した、手術しなかった犬(18/18)は、彼らのオリジナルのシャント関連の薬物投与方法を維持した。

結論:15kg以上の肝外門脈体循環シャントの犬の臨床症状は、小型犬種の犬でより一般的の報告されるものと同じだった。15kg以上のより大きな犬において、単一EHPSSの外科的治療は、小型犬種の犬と同じような臨床的短期結果を示した。

臨床意義:臨床医は、EHPSSの大型犬は、小型犬種の犬の同じような特徴と臨床的結果を持つことを知っておくべきである。低形成の門脈の存在意義については、今後の研究が求められる。EHPSSの大型犬に対する外科的治療は実行可能なオプションである。(Sato訳)
■猫の胆石症の有病率と臨床的関連:98症例の複数施設回顧的研究
Prevalence and clinical relevance of cholelithiasis in cats: A multicenter retrospective study of 98 cases
J Vet Intern Med. 2023 Oct 2.
doi: 10.1111/jvim.16868. Online ahead of print.
Audrey Brunet , Cyril Duperrier-Simond , Suzanne Amoyal , Ghita Benchekroun , Juan Hernandez , Lorris Lecot , Thibaut Lurier , Jean-Luc Cadoré , Emilie Krafft

Free article

背景:犬で胆石症は珍しく、主に偶発的所見である;このトピックに対し現在猫の文献はあまりない。

仮説:猫の胆石症の有病率、臨床症状、管理および結果を報告する

動物:胆石症の猫98頭

方法:回顧的複数施設のケースシリーズ。3病院の電子データベースから、超音波検査(US)により胆石症と診断された猫を検索した。胆石症は、臨床病理学的症状、胆道US所見、臨床症状を説明する可能性のある他の疾患の存在次第で偶発的(IC)あるいは徴候的(SC)と分類した。多変量解析で胆石症の臨床的発現、SC群内、生存性に関係する因子を調査した。

結果:腹部USを行った猫の中で観察された胆石症の有病率は0.99%(95%CI、0.79%-1.19%)だった。胆石症は41%がIC、59%がSCに分類された。胆道内の複数の部位で見つかる胆石(OR、8.11;95%CI、2.32-34.15;P=.001)、あるいは閉塞のUS像と関係する胆石(OR、18.47;95%CI、2.13-2413.34;P=.004)は、SCと有意に関係した。肝胆管疾患の併発は、SCの症例の83%で疑われた、あるいは確認された。SCの43頭(74%)は生存して退院した。胆道閉塞(BTO)は生存性と負の関係があった(OR、13.87;95%CI、1.54-124.76;P=.001)。フォローアップできたICの猫(47%)で、胆石症に関係する臨床病理学的症状を発症した猫はいなかった。

結論と臨床的重要性:猫の胆石症は珍しく、無症候性の可能性がある。症候性の胆石症は、他の肝胆管疾患あるいはBTO、その両方と関係することが多い。胆道閉塞の結果はより悪い。(Sato訳)
■犬と猫の外傷性胆汁性腹膜炎の診断と外科的治療
Diagnostic and surgical treatment for traumatic bile peritonitis in dogs and cats
J Am Vet Med Assoc. 2024 Apr 3:1-6.
doi: 10.2460/javma.24.01.0049. Online ahead of print.
Heath W McAlexander , Janet A Grimes , Sharon L Ullman , Grace Pei-Chun Lai , Megan Davis , Brett G Darrow , Vanna M Dickerson

目的:外傷性胆汁性腹膜炎に対する手術を行った犬と猫の短期結果を述べる

動物:13頭の犬と4頭の猫

方法:多施設、回顧的研究。6施設の医療記録から、2006年から2022年までの外傷性胆汁性腹膜炎に対し再調査した。臨床症状、追加の傷害、外科的治療、結果を記録した。

結果:外傷は犬で来院前の中央値2日(範囲、1-22日)、猫で中央値4日(範囲、1-22日)に発生した。総ビリルビン値は、犬13頭中11頭、猫4頭中2頭で上昇した。10頭の犬と1頭の猫の総胆管(CBD)、3頭の犬の胆嚢、2頭の猫の胆嚢管、1頭の犬と1頭の猫の肝管で破裂が発生した。最も一般的な手術は、犬で胆嚢十二指腸吻合とCBD修復で、猫で胆嚢切除だった。13頭中11頭の犬と全ての猫は、生存して退院した(88.2%総生存性)。生存した犬と猫のフォローアップ中央値は、それぞれ35日(範囲、14-401日)と30日(範囲、14-90日)だった。胆嚢切除を行った1頭の犬は、術後20日で胆汁性腹膜炎が再発した。

外傷性胆汁性腹膜炎の外科的治療後の短期生存性は良好で、再発は珍しいと思われた。もっとも頻度の高い破裂部位は、犬でCBD、猫で胆嚢管だった。

臨床的関連:外傷後に腹水がある犬と猫において、腹水のビリルビンの測定を考慮すべきである。外科医は胆嚢以外の部位での破裂の確認、取り組みの準備をすべきである。(Sato訳)
■犬の推定特発性慢性肝炎に対する治療としてミコフェノール酸モフェチル
Mycophenolate mofetil as a treatment for presumed idiopathic chronic hepatitis in dogs: Six cases (2010-2022)
Vet Med Sci. 2023 Sep 2.
doi: 10.1002/vms3.1261. Online ahead of print.
Michelle K Beehler , Shawn A Kearns , Zachary J Crouse

Free article

目的:この研究の目的は、ミコフェノール酸モフェチル(MMF)で治療した推定特発性慢性肝炎の犬6頭の、臨床所見、治療、結果を述べることだった。

素材と方法:2010年1月から2022年6月の間に病理組織学的に診断された特発性慢性肝炎で、最低2週間MMFで治療し、2度のフォローアップ検査を受けている犬を確認するため、回顧的に医療記録を検索した。各犬で記録したデータは、シグナルメント、臨床症状、診断検査結果、治療を含めた。

結果:6頭の犬は、初期用量中央値9.6mg/kg PO q12hのMMFで治療されていた。MMFで報告された有害反応は、食欲低下、嘔吐、下痢が含まれた。全頭において、MMFは開始から4-18週の間、ALTの46%以上の改善で判定した時、特発性慢性肝炎の治療に対して好結果で長期使用されていた。3頭はまた、プレドニゾンの漸減投与に対して4-6か月間一時的に使用されていた。2頭の犬で、ALTは参照範囲内を維持し、1頭はMMFを単独にした時、非常に軽度に上昇した。全頭の飼い主は、薬物治療の許容性は良いと報告した。

臨床的意義:著者の知るところでは、これは6頭の犬における特発性慢性肝炎の治療に対し、MMFの使用±プレドニゾンの漸減投与を述べた最初の報告である。この報告における犬の結果を基に、ALTの減少による測定、臨床症状の改善により特発性慢性肝炎の長期使用に効果的であるという可能性がある。(Sato訳)
■外科的結紮あるいは内科管理で治療した先天性門脈体循環シャントの犬の結果
Outcomes in dogs with congenital extrahepatic portosystemic shunts treated with surgical ligation or medical management
Vet Med Sci. 2023 Jun 8.
doi: 10.1002/vms3.1171. Online ahead of print.
Rebecca L Beardall , Julia P Sumner , Jenna V Menard , Stephen A Parry

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目的:この研究の目的は、完全結紮、部分的結紮、または内科管理で肝外門脈体循環シャント(EHPSS)の治療を行った犬の違いを評価することだった。

研究計画:回顧的一施設研究

サンプル集団:外科的結紮(n=62)、手術で結紮なし(n=2)、内科管理(n=88)で治療したEHPSSの犬(n=152)

方法:医療記録から、シグナルメント、治療変数、合併症、結果に対するデータを再調査した。カプラン-マイヤープロットは、グループ全体の生存性の評価に作成した。Cox比例ハザードモデルは、複数の予測的変数と生存期間の関連の評価に使用した。Outcomes of interest に対し、backwards、stepwaise回帰を実施した(p<0.05)。

結果:完全結紮は外科的減衰を試みた犬の46/64(71.9%)で実行できた。1頭は、門脈高血圧が疑われたため、部分的結紮後に安楽死された。EHPSSの完全結紮を行った犬は、内科管理群よりも生存期間中央値(MST)が有意に長かった(MST到達せずvs1730日(p<0.001))。臨床症状の完全な解消(さらなる内科治療や食事変更の必要がない)は、EHPSSの完全結紮の16/20(80%)の犬と部分結紮の4/10(40.0%)の犬で達成できた。

結論:この研究で、臨床的に実行できるEHPSSの治療において、縫合結紮(完全あるいは部分的)は最善の臨床結果が得られ、内科管理よりも長く生存した。

臨床的意義:犬のEHPSSの治療に対する内科管理は有効な治療オプションであるが、より良い臨床結果は外科的治療で達成される。(Sato訳)
■手術後の持続性シャントが残っている先天性肝外門脈体静脈シャントの犬は尿路結石の有病率が高い
Dogs with congenital extrahepatic portosystemic shunts that have persistent shunting after surgery have a higher prevalence of urolithiasis
J Am Vet Med Assoc. 2023 May 18;1-8.
doi: 10.2460/javma.23.02.0087. Online ahead of print.
Nienke C Burger , Nausikaa Devriendt , Gonçalo Serrano , Emmelie Stock , Hilde de Rooster , Dominique Paepe

目的:先天性肝外門脈体静脈シャント(cEHPSS)の段階的な減衰術長期後の犬において尿路結石の有無を報告する

動物:cEHPSSの段階的減衰を行った飼い犬25頭で、そのうち19頭はcEHPSSが閉鎖し、6頭は術後に複数の後天的門脈体静脈シャント(MAPSS)を発症した

方法:前向きフォローアップと回顧的研究を実施した。cEHPSS手術を行い、経脾臓門脈シンチグラフィーあるいはCT血管造影を術後3か月目に行い、それによる判定した術後のcEHPSSの状態が分かっている犬を前向きに連絡し長期フォローアップ受診を依頼した(術後最低6か月)。回顧的データを集め、前向きフォローアップの受診中、完全な履歴、血液検査及び尿検査、尿路の超音波検査を、泌尿器症状及び尿路結石の有無の評価のために実施した。

結果:組み入れた25頭で、cEHPSSが閉鎖している19頭中1頭(5%)、MAPSSの6頭中4頭(67%)は長期フォローアップで尿石があった。MAPSSの3頭(50%)は新規の尿石ができた。長期、当初尿石症があった、およびなかったcEHPSSの閉鎖している犬は、MAPSSの犬と比べて有意に尿石症が少なかった(それぞれP=.013およびP=.010)。当初に腎結石のあったcEHPSSの閉鎖した4頭の犬において、長期フォローアップの受診時に腎結石はより小さく、あるいは視認できなくなっていた。

臨床関連:cEHPSSの手術後にMAPSSを発症した犬は、cEHPSSの閉鎖した犬と比べて尿石症のリスクが大きい。さらに、尿酸アンモニウム結石は門脈体静脈シャントがなくなるならば、溶解するかもしれない。(Sato訳)
■肝内門脈高血圧の犬の予後指標
Prognostic indicators in dogs with intra-hepatic portal hypertension
Can Vet J. 2023 Feb;64(2):174-180.
Shaun Calleja , Robert Shiel , Laura Bree , Paolo Silvestrini , Mary Trehy , Lucy McMahon , Kevin Murtagh

目的:この遡及的研究の主な目的は、肝疾患による二次的な門脈高血圧の犬の1集団を述べ、予後が病歴、臨床および臨床病理学的データから推測できるかどうか評価することだった。

動物と方法:2011年から2020年の間に肝内門脈高血圧と診断された犬(N=76)を含めた;先天性肝臓異常が分かっている犬は除外した。生存への影響は、病歴、臨床および臨床病理学的変数に対し、一変量および多変量Cox比例ハザードモデルで評価した。

結果:犬は中央値14日(範囲:0-2028日)生存し、31.6%は診断から2日以内に安楽死され、23.7%は2か月以上生存している。黄疸の存在、臨床症状の持続期間(数日で発現)は、一変量解析において結果と有意に関係した(それぞれHR=1.846、95%CI:1.094-3.117、P=0.02;HR=0.995、95%CI:0.990-1.000、P=0.033)。しかし、多変量解析では黄疸の存在のみが、死亡の危険増加に有意に関係した。

結論:この研究の結果は、門脈高血圧は予後不良と関係することを示す;しかし長期生存を示す可能性がある犬もいる。(Sato訳)
■肝膿瘍の外科的治療を行った38頭の犬の結果
Outcome in 38 dogs surgically treated for hepatic abscessation
Vet Surg. 2022 Nov 22.
doi: 10.1111/vsu.13921. Online ahead of print.
Vanna Dickerson , Breanna Poses , Philip Hyndman , Jourdan McPhetridge , Valery Scharf , Brad Matz , Ameet Singh , Janet A Grimes

目的:犬の肝膿瘍の外科的治療後の結果を報告する

研究計画:遡及的

動物:38頭の犬

方法:6施設の記録で、2010年から2020年の間に肝膿瘍に対する外科的治療を行った犬を評価した。シグナルメント、臨床症状、内科治療、外科治療、術後結果を医療記録から入手した。長期結果は可能な時は記録した。生存期間中央値はKaplan-Meier product-limit法で評価した。

結果:術前に腹水は32/38頭で、敗血症性腹膜炎は21/23サンプルで確認された。肝葉切除は最も一般的な手術だった(27頭)。単一病原体が24/35頭で培養され、一般にはEscherichia coliだった。肝臓腫瘍は11/36頭で確認された。入院期間中央値は5日(範囲、3-17)で、21頭に合併症が記録された(一版に吐出、誤嚥性肺炎、膵炎)。2頭は術中に死亡し、6頭は退院前に死亡した。生存して退院した犬の生存期間中央値は638日だった。そのうち19頭は術後中央値301日(範囲、3-1418)でフォローアップできなくなり、11頭は術後中央値291日(範囲、7-1292)で死亡した。膿瘍の再発は見られなかった。

結論:敗血症性腹膜炎は、肝膿瘍に一般的に続発した。周術期合併症は薬1/3の犬で記録された。術後期間を生存した犬の長期予後は良好だった。

臨床意義:肝膿瘍を外科的に治療した犬は、周術期合併症のリスクが高いが、長期予後は良好で、再発のリスクは明らかに低い。(Sato訳)
■肝外門脈体循環シャントの犬の外科的治療後にシャントの閉鎖を評価するための異なる血液検査の評価
Evaluation of different blood tests in dogs with extrahepatic portosystemic shunts to assess shunt closure after surgical treatment
Vet Surg. 2022 Jun 21.
doi: 10.1111/vsu.13840. Online ahead of print.
Nausikaa Devriendt , Dominique Paepe , Gonçalo Serrano , Hilde de Rooster

目的:犬の肝外門脈シャント(EHPSS)の漸進的減衰後、EHPSS閉鎖を評価するため、異なる個別および併用血液検査の感受性と特異性を判定する

研究計画:臨床的前向き研究

動物:EHPSSの飼い犬20頭

方法:絶食アンモニア(FA)、食前、食後、ペア血清胆汁酸(SBA)、リドカイン/モノエチルグリシンキシリジド(L/MEGX)検査、血清ヒアルロン酸(SHA)を診断時、術後1、3、6か月目に実施した。経脾臓門脈シンチグラフィーを術後3か月目にEHPSS閉鎖を判定するために実施した。術後のシャント閉鎖を判定するそれらの感受性と特異性を算出した。

結果:個々の血液パラメーターを評価すると、術後シャント閉鎖の判定でFAの特異性は最も高かった(100%)が、リドカイン投与後15分で測定したSHAとMEGX(T15)は感受性が最も高かった(それぞれ96.9%と96.2%)。最も確実な血液検査の組み合わせは、SHA(感受性96.9%、特異性81.8%)とL/MEGX検査(T15時のMEGX:感受性100%、特異性72.4%)の組み合わせ、あるいはL/MEGX検査(T15時のMEGX)とFA(感受性100%、特異性82.8%)あるいは食後SBA(感受性100%、特異性81.5%)の組み合わせだった。

結論:EHPSSの漸進的減衰後、シャント閉鎖の判定でSHAおよびL/MEGX検査は感受性の高い検査だった。検査のパフォーマンスはそれらの検査を互いに、あるいは従来のFAあるいは食後SBAのような検査と組み合わせることでも改善できた。

臨床的意義:EHPSS閉鎖の判定でSHAおよびL/MEGX検査(特に従来の血液検査と組み合わせた時)は感受性の高い血液検査だが、まだ画像検査がEHPSS閉鎖を確認するために必要である。(Sato訳)
■超音波検査を用いた犬の胆泥の進行を評価する多施設回顧的研究
A multicenter retrospective study assessing progression of biliary sludge in dogs using ultrasonography
J Vet Intern Med. 2022 Apr 15.
doi: 10.1111/jvim.16423. Online ahead of print.
Thomas Butler , Nick Bexfield , Cecile Dor , Nicoletta Fantaconi , Iris Heinsoo , Darren Kelly , Andrew Kent , Matthew Pack , Susanna J Spence , Patricia M Ward , Penny Watson , Katie E McCallum

背景:胆泥(BS)は超音波検査で確認されることが多く、偶発的と述べられている。胆汁うっ滞と分泌過多はBSや胆嚢粘液嚢腫(GBM)形成に役割を持つと仮定される。最近の研究は、BSとGBMの組成に類似点が証明されており、文献ではBSからGBMへの進行のいくつかの例がある。

目的:12か月以上かけ犬において、BSの存在と後のGBMの発生との間の関連を評価する

動物:12か月以上超音波検査でフォローアップしたBSのある犬154頭

方法:全てのタイムポイントが利用できる9か所のUKの二次診療施設から医療記録を回顧的に収集した。準客観的スコアリングシステムを利用し、随時胆嚢(GB)内のBSの量を追跡した。

結果:20頭の犬が研究期間中にGBMを発症した。シェットランドシープドッグ(OR、40.99;95%CI、3.61-465.95;P=.003)とボーダーテリア(OR、11.66;95%CI、3.28-46.63;P<.001)はGBM発症に対する独立したリスク因子だった。20頭中9頭において、重力に依存しないBS(NDBS)をGBM発症前に形成することが分かり、GBMのリスク犬種は、よりNDBSがある確率が高かった。GBM発症に対するオッズは、BSスコアと共に上昇した。

結論と臨床的重要性:NDBSの犬はGBM発症に対するリスクがあると思われ、層別化したスコアリングシステムは、特にリスク犬種で長い時間にわたり準客観的モニタリングを考慮に入れることができた。(Sato訳)
■肝疾患の犬の胃十二指腸潰瘍
Gastroduodenal ulceration in dogs with liver disease
J Vet Intern Med. 2022 Mar 21.
doi: 10.1111/jvim.16413. Online ahead of print.
Allison L O'Kell , Alexander E Gallagher , Kirsten L Cooke

背景:犬の肝疾患は胃十二指腸潰瘍(GDU)の原因としてあげられることが多いが、GDUと肝疾患に関係する研究は限られている。

目的:肝疾患の犬のGDUの存在を証明する

動物:フロリダ大学小動物病院で、先天性あるいは後天性肝疾患の診断するため、肝バイオプシー、CT造影検査あるいは両方をおこなった40頭の犬

方法:横断研究。犬は標準化した方法で胃十二指腸内視鏡検査を実施し、写真撮影とビデオ撮影を行った。食道、胃、十二指腸内の病変(出血、糜爛、潰瘍)にグレードスケールを基に点数を付けた。食道静脈瘤の有無を記録した。犬は肝疾患の原因により4群に分類した(炎症性疾患、肝硬変、先天性、その他)。潰瘍、糜爛、あるいは両方の有無と総内視鏡スコアを群間で比較した。

結果:40頭の犬を登録した(先天性13頭、炎症性13頭、肝硬変3頭、その他11頭)。4頭の犬はGDUがあり(10%;95%CI、3-24%)、6頭は糜爛があった(15%;95%CI、6-30%)。総内視鏡スコア(P=.21)、あるいは群間の潰瘍、糜爛あるいは両方がある犬の集団とない集団(P=.25)で違いは見つからなかった。

結論と臨床的重要性:胃十二指腸潰瘍は、この集団の肝疾患の犬の10%に見つかった。特定原因の病気の多数の犬において、それらの所見を確認するため、追加研究が求められる。(Sato訳)
■アジアの胆嚢粘液嚢腫の犬の超音波パターン、臨床所見、予後変数
Ultrasonographic patterns, clinical findings, and prognostic variables in dogs from Asia with gallbladder mucocele
J Vet Intern Med. 2022 Feb 15.
doi: 10.1111/jvim.16384. Online ahead of print.
Jared A Jaffey , Rachael Kreisler , Kate Shumway , Yan-Jane Lee , Chung-Hui Lin , Lawren L Durocher-Babek , Kyoung-Won Seo , Hojung Choi , Ko Nakashima , Hiromi Harada , Hideyuki Kanemoto , Lee-Shuan Lin

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背景:胆嚢粘液嚢腫(GBM)は犬の一般的な胆嚢疾患で、6種類に分類されるが、この分類シェーマの有用性は不明である。胆嚢切除は高い死亡率と関係しているが、更なる質問を正当化する。

目的:GBMの種類の超音波検査診断の臨床価値を調査し、胆嚢切除を行うGBMの犬の予後因子を確認する

動物:216頭の犬

方法:回顧的コホート研究。アジアの6か所の獣医二次病院で、2014年から2019年の間に診断されたGBMの犬の超音波画像を再検討し、GBMの種類(すなわち、タイプI-VI)を割りあてた。

結果:GBMのタイプI(OR, 8.6; 95% CI, 2.6-27.8; P < .001)とIII(OR, 10.0; 95% CI, 2.5-40.8; P = .001)に比べてタイプVの犬、タイプI(OR, 10.5; 95% CI, 1.8-61.2; P = .009)とIII(OR, 12.3; 95% CI, 1.8-83.9; P = .01)に比べてタイプVIの犬は、胆管疾患の症状を示す確率が高かった。胆嚢切除後の死亡の独立した予測因子は年齢(OR, 2.81; 95% CI, 1.41-5.59; P = .003)、術中の収縮期血圧(SBP)最下値が含まれた。SBP最下点と胆嚢破裂の間に相互作用があった;胆嚢破裂のある犬(OR, 0.92; 95% CI, 0.89-0.94; P < .001)のSBP最下値と胆嚢破裂がない犬(OR, 0.88; 95% CI, 0.82-0.93; P < .001)のSBP最下点。

結論と臨床的重要性:GBMの発達ステージが上がると、胆管に関係する臨床症状の確率が高くなることに関係する可能性があった。SBP最下値は、特に胆嚢破裂がある場合、予後あるいは潜在的に修正可能な変数として今後調査に値する。(Sato訳)
■高ビリルビン血症を呈する犬の臨床所見と生存に関わる因子の評価:オーストラリア、ビクトリア州の115症例(2015-2020)
Clinical findings and assessment of factors associated with survival in dogs presenting with hyperbilirubinaemia: 115 cases in Victoria, Australia (2015-2020)
Vet Rec Open. 2022 Aug 16;9(1):e42.
doi: 10.1002/vro2.42. eCollection 2022 Dec.
Abigail Brough , Charles Caraguel , Susan Ciaravolo , Alison Stickney

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イントロダクション:犬の医療で高ビリルビン血症は、重要な臨床病理所見の1つである。この研究の目的は、高ビリルビン血症の犬の臨床症状および結果を述べることと、生存に関係する因子を確認することだった。

素材と方法:南オーストラリアの2か所の二次センターからの高ビリルビン血症の犬の遡及的研究(2015-2020)。シグナルメント、臨床症状、臨床病理学的データ、診断、結果は臨床記録を検索して入手した。一変量解析とロジスティック回帰モデリングを結果と全体の生存の比較に使用した。

結果:合計115症例を含めた。最も一般的な臨床症状は、嘔吐(63.5%)、食欲不振(62.6%)、元気消失(55.7%)、発熱(18.3%)だった。肝前性黄疸は18症例(15.7%)、肝性黄疸は51症例(44.3%)、肝後性黄疸は42症例(36.5%)だった。全ての症例を通した生存期間中央値は40日(95%CI:9-126日)だった。診断時に血清ビリルビンが60μmol/L以上の犬(オッズ比(OR)=3.55;95%CI:1.53-8.22;p=0.003)、肝前性黄疸の犬は、肝性(OR=4.35;95%CI:1.18-16.0;p=0.027)及び肝後性黄疸(OR=6.52;95%CI:1.67-25.5;p=0.007)と比べて死亡のリスクが増加した。

結論:肝性及び肝後性黄疸と比べ、肝前性黄疸は有意に高い死亡リスクと関係した。診断時に血清ビリルビン>60μmol/Lは、有意に生存期間中央値短縮と関係した。このカットオフは、今後の診断調査、治療を進めるに当たり、飼い主との話し合いに役立つかもしれない。このカットオフの妥当性を証明する今後の前向き研究が必要である。(Sato訳)

3.5mg/dL=60μmol/L
■犬の総胆管のカテーテル処置とフラッシュをしない胆嚢切除後の長期結果
Long-Term Outcome after Cholecystectomy without Common Bile Duct Catheterization and Flushing in Dogs
Animals (Basel). 2022 Aug 17;12(16):2112.
doi: 10.3390/ani12162112.
Matteo Rossanese , Phillipa Williams , Andrew Tomlinson , Filippo Cinti

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この研究の目的は、総胆管(CBD)のフラッシュとカテーテル処置をしないで、胆嚢粘液嚢腫(GBM)に対する胆嚢切除を行った犬の結果を報告する。

これは3か所の獣医紹介病院の回顧的多施設研究で、GBMと診断された82頭の犬を含めた。医療記録を臨床および病理組織学的所見を再検討した。長期の結果は飼い主へのアンケートで調査した。

総胆管は88%が正常(≦4mm)、10%が軽度拡張(5-6mm)、2.4%が中程度拡張(≧7mm)と考えられた。手術は83%の犬で複雑なものではなかった。術中合併症は21%の犬で記録され、低血圧が最も一般的だった、一方で術後合併症は20%の犬で認められ、嘔吐/吐出が最も一般的だった。この研究で胆嚢切除を行った犬の96%は生きて退院した。フォローアップの範囲は142-3930日(中央値549日)だった。85%の犬はフォローアップ時に生存していた。

CDBのカテーテル処置とフラッシュをせずにGBMに対する胆嚢切除を行った犬は、回復とQOLに対し好ましい予後を示す。(Sato訳)
■先天性門脈体循環シャントが疑われた犬において肝機能検査と超音波検査の診断価値
Diagnostic value of liver function tests and ultrasonography in dogs with suspected congenital portosystemic shunts
Vet Rec. 2022 Jan 31;e1381.
doi: 10.1002/vetr.1381. Online ahead of print.
Nausikaa Devriendt , Gonçalo Serrano , Emmelie Stock , Dominique Paepe , Hilde de Rooster

背景:犬の先天性門脈体循環シャント(cPSS)の診断は困難な可能性がある。この研究は、cPSSがあると疑われる犬において、絶食時アンモニア(FA)、食前、食後、ペア血清胆汁酸(SBA)、腹部超音波検査(aUS)の診断パフォーマンスを報告する。

方法:初診時にcPSSがあると疑われた犬の医療記録を回顧的に再検討した。

結果:cPSSが疑われた192頭の犬を含めた:cPSSは147頭で確認され、45頭で除外された。cPSSの診断に対し、FAは一番良い感受性と特異性(それぞれ77.4%と93.3%)の組み合わせだった。感受性と陰性適中率はペアSBAが100%で、この集団においてcPSSの除外にペアSBAが一番良い検査だった。aUSの感受性と特異性はそれぞれ80.8%と90.0%だった。

結論:cPSSに匹敵する臨床症状の犬において、FAの上昇はcPSSを示唆し、正常なペアSBAはcPSSがある確率が低かった。aUSはcPSSの診断で有用なツールだが、ほぼ20%の症例でcPSSを描写するために追加画像検査が必要である。また、特に肝前後大静脈に入っていない肝外cPSSの症例において、cPSSの位置を誤診する可能性がある。(Sato訳)
■多発性後天性門脈体循環シャントの犬の臨床的特徴、予後因子、長期結果:72症例(2000-2018)
Clinical characteristics of, prognostic factors for, and long-term outcome of dogs with multiple acquired portosystemic shunts: 72 cases (2000-2018)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Dec 15;260(S1):S30-S39.
doi: 10.2460/javma.20.12.0703.
Elizabeth V Anglin, Cassie N Lux, Xiaocun Sun, Christian A Folk, Constance Fazio

目的:多発性後天性門脈体循環シャント(MAPSSs)の犬の臨床的特徴、予後因子、長期結果を確認することと、生存期間が過去の門脈体循環シャント減衰と関係するのかどうかを調べる

動物:MAPSSsの飼育犬72頭

方法:2000年1月から2018年8月までに診断されたMAPSSsの犬の医療記録から、シグナルメント、病歴および診断的所見、管理方法と結果を再調査した。

結果:MAPSSsに関連する死亡原因の犬(n=23)の生存期間中央値は580日(範囲、156-1363日)だった。無関係の原因に対し、MAPSS関連の死亡に有意に関係する因子は、最終検査時の体重、最初と最終血液検査時のアルブミン濃度、コレステロール、全固形分、血糖値が含まれた。初発症状の時に医療管理を受けていないあるいは精神状態の抑制の症状がない犬は、MAPSSsの関連する原因で死亡する確率が低かった。犬の状態(生存vsMAPSSsの関連する原因で死亡vsMAPSSsの関連しない原因で死亡vs原因不明で死亡)は、生存期間と有意に関係しなかった。

結論と臨床関連:MAPSSsの犬に対する生存期間は、過去の門脈体循環シャント減衰により短縮せず、MAPSSsと関連する、しないで違いはなかった。肝機能不全に一致する生化学変化の進行がみられるMAPSSsの犬は、MAPSSsの関連する原因で死亡する確率が高く、正常な寿命を生きる確率は低かった。(Sato訳)
■先天性門脈体循環シャントの手術後に神経症状を発症した犬の長期結果とQOL:50症例(2005-2020)
Long-term outcome and quality of life of dogs that developed neurologic signs after surgical treatment of a congenital portosystemic shunt: 50 cases (2005-2020)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Nov 18;1-9.
doi: 10.2460/javma.20.11.0606. Online ahead of print.
Antía Escribano Carrera , Anya M Morrissey , Victoria J Lipscomb , Michael S Tivers , Alex Chan , Vera Lisa Pinel Pisco , Davina M Anderson , William A Fox-Alvarez , Barbara M Kirby Dvm , Hilde de Rooster , Genziana Nurra , Donald A Yool , Ameet Singh , Melanie Olive , Jean Phillipe Billet , Ronan A Mullins

目的:単一の先天性門脈体循環シャントの手術後、減衰後神経症状(PANS)を発症し、30日以上生存した犬の生存期間とQOLを調べ、退院時に見られた神経症状が解消あるいは再発するのかどうかを確認する

動物:飼育犬50頭

方法:医療記録を回顧的に再調査し、神経症状や発作活動に関係するフォローアップデータを入手した。飼い主には発作を含む神経症状の有無、QOLに関係するアンケートに答えてもらった。

結果:50頭中30頭(60%)は、減衰後発作±他の発作の内神経症状があり、20頭(40%)は発作以外の神経症状があった。24頭(48%)は退院時に神経症状が完全に解消していた。退院時に発作以外のPANSがまだあった残りの26頭うち18頭(69%)の症状は解消した。減衰後発作があった30頭中15頭の発作は再発した。33頭中27頭(82%)の飼い主は、犬の長期(術後30日以上)QOLを高いと判断した。45頭(90%)は6か月以上生存した。退院時に呈していた多く(29/43(67%))の神経症状(発作以外)は解消した。

臨床的関連:これら所見は、最低30日生存したPANSのほとんどの犬が6か月以上生存し、高いQOLを達成できることを強調した。発作以外の神経症状のほとんどは術後1か月以内に解消した。減衰後発作のある犬の半数は再発した。(Sato訳)
■術前の血清C-反応性蛋白濃度は胆嚢粘液嚢腫の犬の胆嚢破裂の検出に使用できる
Preoperative serum C-reactive protein concentration can be used to detect gallbladder rupture in dogs with gallbladder mucocele
Am J Vet Res. 2022 Jan 1;1-10.
doi: 10.2460/ajvr.21.09.0141. Online ahead of print.
Makoto Asakawa , Mayuko Fukuzawa , Midori Goto Asakawa , James A Flanders

目的:胆嚢粘液嚢腫(GBM)の治療で胆嚢切除を行う犬において、術前の胆嚢破裂(GBR)の検出に血清C-反応性蛋白(CRP)濃度を使用できるかどうかを調べる

動物:2017年から2020年までにコンパニオンアニマル紹介病院でGBMのため、胆嚢切除を行う45頭の犬

方法:電子カルテを再調査し、胆嚢切除前24時間以内に血清CRP濃度を測定している犬を含めた。手術中に胆嚢が破裂しているか、無傷かどうかでグループ分けした。GBRを予測するため、術前のCRP濃度を使用した時の精度を、腹部超音波検査および他の術前血液検査の精度と比較した。

結果:手術時に15頭の犬のGBRは存在した。GBRの犬(15.1mg/dL;四分位範囲、7.4-16.8mg/dL)の術前CRP濃度の中央値は、無傷の胆嚢の犬(2.65mg/dL;四分位範囲、0.97-13.4mg/dL)よりも有意に高かった。GBRの予測に術前CRP濃度を使用した時の感受性、特異性、精度はそれぞれ100%、67%、78%だった。

臨床的関連:GBMを理由に胆嚢切除を行う犬において、GBRの検出に対し術前CRP濃度測定は、素晴らしい感受性と中程度の特異性を示した。GBRの検出に対する術前CRP濃度を使用した精度は、術前の腹部超音波検査の精度より優れていることはなかった。しかし、CRP濃度を超音波検査の結果と組み合わせた時、感受性、特異性、精度はそれぞれ100%、93%、96%だった。(Sato訳)
■犬の慢性胆嚢炎:臨床病理学的特徴と肝臓との関連
Chronic Cholecystitis of Dogs: Clinicopathologic Features and Relationship with Liver
Animals (Basel). 2021 Nov 21;11(11):3324.
doi: 10.3390/ani11113324.
Ikki Mitsui , Shigeaki Ohtsuki , Kazuyuki Uchida

(1)背景:犬の慢性胆嚢炎は組織病理学的にあまり調査されていない。また、胆嚢と肝臓疾患との関連は不明である。

(2)方法:著者らは臨床データ、病理組織、組織化学、免疫組織化学および統計分析を用い、犬の慢性胆嚢炎に対する顕著な特徴を提供することを目的とした。

(3)結果:超音波検査で異常な外科的に切除した犬の胆嚢219例の我々の調査で、189症例(86.3%)の粘膜のリンパプラズマ細胞性浸潤(慢性胆嚢炎)を明らかにした。この集団で、スラッジ、重力依存あるいは非依存の純粋な顆粒状の高エコー物質(105/219、47.9%)は、粘液嚢腫(51/219、23.2%)よりもより多く見られた。粘膜リンパ濾胞は68/219症例(31%)で検出され、永続的な抗原刺激の影響を示唆した。重度炎症性胆嚢の41/60(68.3%)、軽度炎症の18/219(14%)、炎症がない胆嚢の3/18(16.7%)で組織化学的に細菌が検出され、細菌と慢性胆嚢炎の関連の可能性が示唆された。軽度の炎症、変化あるいは炎症、変化がないと同時肝生検が示したことは、原発性門脈低形成および軽度肝細胞変性と一致した。

(4)結論:我々の統計分析の結果を基に、犬の慢性胆嚢炎は原因のわからない(がおそらく細菌)永続的な炎症過程で、肝臓病理は犬の慢性胆嚢炎の原因になる可能性は低いと結論付ける。(Sato訳)
■保存的あるいは外科的に治療した胆石症の38頭の犬の臨床特徴と結果
Clinical features and outcomes in 38 dogs with cholelithiasis receiving conservative or surgical management
J Vet Intern Med. 2021 Oct 29.
doi: 10.1111/jvim.16284. Online ahead of print.
Frederik Allan , Penny J Watson , Katie E McCallum

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背景:ヒトの胆石は石を溶かすためにウルソデオキシコール酸が使用されるが、胆石の犬の内科管理の効果は不明である。

目的:胆石の犬で、内科的に治療した症例に焦点を当て、臨床特徴と結果を述べることと、外科あるいは内科治療に対し、治療方法決定に影響する患者の因子を確認する

動物:腹部超音波検査(AUS)で確認した胆石のある38頭の犬

方法:2010年から2019年の間にAUSで胆石のある犬の医療記録を回顧的に再調査した。症例は症候性(n=18)あるいは偶発性(n=20)に分類し、内科治療(n=13)、外科治療(n=10)、無治療(n=15)群に振り分けた。生化学変数および胆石の位置を症候性と偶発性群で、それぞれマン-ホイットニーUとカイ二乗検定で比較した。生存期間は、カプラン-マイヤー解析で比較した。

結果:症候性の症例は、偶発性の症例よりもALP(P=.03)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(P=.03)、ALT(P=.02)が高かった。症候性症例のより高い比率(44.4%)で、偶発症例(0%;P=.003)よりも総胆管結石症だった。外科的治療の70%、内科治療の7.7%、無治療の0%の犬に、来院時に総胆管結石があった。17頭の犬はフォローアップのAUSを行っていた:内科治療の8頭中4頭、外科的治療の7頭中5頭、無治療の2頭中1頭は胆石症が完全に解消した。生存期間中央値は457.4日で、偶発及び症候性の犬の間に有意差はなかった。

結論と臨床的重要性:犬の胆石症の管理に対し、内科治療は効果的と思われ、治療方法決定において、臨床症状と胆石の位置が重要な役割を持つ。(Sato訳)
■犬の胆嚢壁の厚さと低アルブミン血症との関連の調査
Investigation of the association between gall bladder wall thickness and hypoalbuminaemia in dogs
J Small Anim Pract. 2021 Jul 12.
doi: 10.1111/jsap.13358. Online ahead of print.
J Sparago , N Rademacher , S Dehghanpir , J Post , C C Liu , A N Johnston

目的:犬の胆嚢壁の厚さと血清/血漿アルブミン濃度の相関を評価する

素材と方法:重度低血清/血漿アルブミン濃度(<1.5g/dL)と、胆嚢壁肥厚(>2mm)の超音波所見がある犬を確認するため、デジタル医療記録データベースの回顧的検索を行った。共分散モデルの分析で胆嚢壁の厚さと、サンプルタイプ(血清vs血漿)、年齢、病因、アルブミン、共変量としてアルブミンの病因を解析した。

結果:216頭の犬が組み込み基準に合致した。146頭の犬は、胆嚢壁が肥厚していた(1群)。この群の犬の血清/血漿アルブミン濃度の中央値は2.2g/dL(1-5g/dL)で、84頭(57.5%)は低アルブミン血症(<2.5g/dL)だった。重度低アルブミン血症(<1.5g/dL)の犬の検索で70頭が確認された(2群)。この群で、胆嚢壁の厚さの中央値は1.3mm(0.2-6.1mm)で、17頭(24.3%)は胆嚢壁が肥厚していた。血清/血漿アルブミン濃度と胆嚢壁の厚さは、1群(r=0.0044、p=0.9580)あるいは2群(r=-0.1137、p=0.3487)に対し有意に相関しなかった。免疫介在性疾患の犬において、胆嚢壁の厚さとアルブミン濃度の間に中程度の負の相関(-0.64)が確認された(p=0.03)。

臨床的意義:犬の胆嚢壁の厚さと血清/血漿アルブミン濃度は、独立した変数である。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫の犬の凝固系の評価
Evaluation of coagulation parameters in dogs with gallbladder mucoceles
J Vet Intern Med. 2021 Jun 30.
doi: 10.1111/jvim.16203. Online ahead of print.
Michelle Pavlick , Armelle DeLaforcade , Dominique G Penninck , Cynthia R L Webster

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背景:胆嚢粘液嚢腫(GBM)は犬の一般的な胆嚢疾患である。GBMの犬の凝固状態に対する情報は限られている。

仮説/目的:GBMの犬の凝固変化のパターンと、臨床病理的異常を伴うものと疾患重症度の超音波所見の相関を調べる

動物:超音波検査で確認したGBMの犬23頭を前向きに登録した

方法:GBM確認時、CBC、血清生化学パネル、尿検査、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、第VIII因子、プロテインC(PC)、ヴォン・ウィルブランド因子(vWF)、抗トロンビン活性、フィブリノーゲン、D-ダイマー、トロンボエラストグラフィー(TEG)のために血液および尿を採取した。胆嚢粘液嚢腫は超音波でタイプ1-5に分類した。臨床症状、基礎疾患に対して医療記録を再検討し、全身性炎症反応症候群(SIRS)があるかどうか判定した。

結果:TEGパラメーター、最大振幅、Gを基に、GBMの犬の19/23(83%)は、凝固亢進に一致する評価を示した。血漿を基にした凝固検査で、GBMの犬は、総PC活性(20/23、87%)、フィブリノーゲン(9/23、39%)、血小板数(9/23、39%)、D-ダイマー(6/15、40%)の上昇、aPTTの延長(9/22、41%)、低vWF活性(5/21、24%)を認めた。TEG G値と全ての凝固あるいは臨床病理変数、GBMの超音波ステージ、あるいはSIRSの存在により評価した疾患重症度に相関は見つからなかった。

結論と臨床的重要性:超音波検査でGBMを認めた犬は、凝固亢進を支持する全血カオリン活性化TEGの変化があるが、従来の血漿を基にした凝固検査は、止血の複雑な状態があることを示唆する。(Sato訳)
■慢性肝疾患の犬の血小板機能
Platelet function in dogs with chronic liver disease
J Small Anim Pract. 2021 Apr 26.
doi: 10.1111/jsap.13342. Online ahead of print.
A Wilkinson , D Panciera , S DeMonaco , K Boes , M Leib , K Clapp , J Ruth , T Cecere , D McClendon

目的:慢性炎症および/あるいは線維性肝疾患の犬において、血小板機能、頬粘膜出血時間、血漿ヴォン・ヴィレブランド因子濃度を評価することと、健康犬のその結果と比較する

素材と方法:肝臓バイオプシーを行った慢性炎症および/あるいは線維性肝疾患の犬18頭と年齢がマッチした健康なコントロール犬18頭を含む予備研究。血小板機能は、作動薬としてアデノシン二燐酸(ADP)を用い、PFA-100によるclosure timeを測定することで評価した。頬粘膜出血時間、closure time、血漿ヴォン・ヴィレブランド因子抗原を両群の犬で測定した。超音波ガイド下針生検を行った後、バイオプシー後の出血と全ての測定値の関連があるかどうかを判定するために出血をモニターした。

結果:肝疾患群(中央値76.3;範囲53-118.5秒)とコントロール群(72.8;57-89.5秒)のclosure timeに違いはなかった。肝疾患群(中央値138;範囲95-229秒)の頬粘膜出血時間は、コントロール群(103;63-200秒)よりも長かった。肝疾患群(中央値203;範囲109-351%)とコントロール群(165.5;63-246%)の血漿ヴォン・ヴィレブランド因子抗原濃度に違いはなかった。

臨床的意義:この研究において、慢性壊死炎症性および/あるいは線維性肝疾患の犬に、頬粘膜出血時間、closure time、ヴォン・ヴィレブランド因子解析による評価として、明らかに臨床的に関連する血小板機能の障害はなかった。また、この研究で経皮的超音波ガイド下バイオプシーを行った犬に、バイオプシー処置後の出血の合併症を経験した犬はいなかった。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫形成の犬の蛋白尿:回顧的症例コントロール研究
Proteinuria in dogs with gallbladder mucocele formation: A retrospective case control study
J Vet Intern Med. 2021 Feb 6.
doi: 10.1111/jvim.16051. Online ahead of print.
Crystal Lindaberry , Shelly Vaden , Kathleen M Aicher , Gabriela Seiler , James Robertson , Rachel Cianciolo , Ching Yang , Jody L Gookin

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背景:蛋白尿は、犬の罹病率および死亡率に対し、独立したリスク因子である。犬における蛋白尿と胆嚢粘液嚢腫形成との関連は不明である。

目的:胆嚢粘液嚢腫形成あるいは臨床病理的共存症が蛋白尿と関係しているか判定する

動物:粘液嚢腫形成の5頭の犬と過去の研究から犬種および年齢が同じのコントロール犬25頭

方法:回顧的症例-コントロール研究。蛋白尿は、尿ディップスティック蛋白濃度(mg/mL)と尿比重(USG)比の算出により定義した。臨床病理所見、ポスト・コートロシン・コルチゾール濃度、甲状腺機能プロフィール、疾病重症度スコアを記録した。
結果:コントロール犬と比較した粘膜嚢腫形成の犬の尿ディップスティック蛋白濃度とUSG比の中央値と、比率が≧1.5の犬の頭数が有意に高かった。蛋白尿はCBCあるいは血清生化学プロフィール異常との有意な関係はなかったが、疾患重症度との関係は増加した。

結論と臨床的重要性:犬の胆嚢粘液嚢腫形成は蛋白尿と有意に関係する。粘液嚢腫形成の犬における蛋白尿の診断と治療は、それらの犬の長期腎臓罹病率を最小限にするかもしれない。(Sato訳)
■超音波所見を基にした胆管破裂の犬でも正常な総血清ビリルビン値かもしれない
Dogs with biliary rupture based on ultrasound findings may have normal total serum bilirubin values
Vet Radiol Ultrasound. 2020 Dec 19.
doi: 10.1111/vru.12937. Online ahead of print.
Kassandra Wilson , Danielle Powers , Britton Grasperge , Chin-Chi Liu , L Abbigail Granger

高ビリルビン血症ではないことが、犬の胆管破裂の疑いを少なくする可能性がある。この疑いと治療の遅れが、死亡率を高める可能性がある。

この回顧的観察研究の目的は、胆管破裂の疑いと超音波検査で診断された犬のグループにおいて、超音波と血清ビリルビンの所見を述べることだった。

2007年から2019年にかけ、胆管破裂の疑いと超音波検査の報告がある症例を1施設の記録で検索した。各症例の臨床所見を記録した。

合計35頭の犬が組み込み基準に合い、それらのうち30頭は胆管破裂を確認していた。胆管破裂を確認した犬の40%(12/30)は血清ビリルビン値が正常参照範囲内だったことが分かった。胆管破裂と破裂していない犬の間に血清ビリルビン値の統計学的差はなかった。胆管破裂と破裂していない犬の間に白血球増加と好中球増多に統計学的有意差があった。ヒトの文献で見られる”白色胆汁”に似たムチン物質が胆管破裂の6頭の腹水内に見られ、それらのうち3頭は胆汁色素も欠如していた。

この研究からの所見は、胆管破裂でも正常ビリルビン値の犬がいるかもしれず、ゆえにこの鑑別診断の除外理由として使用するべきではないことを示す。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫に対する選択的および非選択的胆嚢切除を行った犬の臨床所見
Clinical findings for dogs undergoing elective and nonelective cholecystectomies for gall bladder mucoceles
J Small Anim Pract. 2021 Feb 15.
doi: 10.1111/jsap.13312. Online ahead of print.
S L Friesen , D A Upchurch , D L Hollenbeck , J K Roush

目的:この研究の目的は、胆嚢粘液嚢腫の犬に対する選択的および非選択的胆嚢切除後の合併症と死亡率を述べることだった。2つ目の目的は、総胆管カテーテル処置に対する異なる方法の合併症と死亡率を報告することだった。

素材と方法:2004年から2018年の間に胆嚢粘液嚢腫に対する胆嚢切除を行った犬を確認するため、多施設回顧的ケースシリーズを実施した。胆嚢破裂、胆管拡張、臨床症状あるいは高ビリルビン血症の有無を基に非選択あるいは選択的に分類した。各胆嚢切除は3つのグループに分類した:十二指腸切開と逆行性カテーテル処置、順行性カテーテル処置あるいはカテーテル処置なし。各々評価した重症度および死亡率の上昇をもとに合併症を4グレードに分類した。

結果:選択的胆嚢切除を行った死亡率は31頭中2頭(6%)、非選択的胆嚢切除を行った90頭中21頭(23%)だった。選択的胆嚢切除に対する合併症率は52%、非選択的胆嚢切除に対しては50%だった。選択的カテゴリーにおける合併症の多くはグレード1(軽度)だった。術後の高体温は、十二指腸切開と逆行性総胆管カテーテル処置を行った犬の35%、順行性総胆管カテーテル処置を行った犬の4%、総胆管カテーテル処置を行わなかった犬の7%に発生した。

臨床意義:この研究における胆嚢粘液嚢腫の犬に対する選択的胆嚢切除は、死亡率が低く、マイナーな合併症の頻度は比較的高かった。(Sato訳)
■犬の肝外門脈体循環シャントの漸次外科的減衰後の肝臓環流改善に対するマーカー、血清ヒアルロン酸
Serum hyaluronic acid, a marker for improved liver perfusion after gradual surgical attenuation of extrahepatic portosystemic shunt closure in dogs
Vet J. 2021 Feb;268:105604.
doi: 10.1016/j.tvjl.2020.105604. Epub 2020 Dec 29.
N Devriendt , G Serrano , E Meyer , K Demeyere , D Paepe , E Vandermeulen , E Stock , H de Rooster

門脈体循環シャント(PSS)の犬の外科的減衰を行った後、現在使用されている肝機能検査は一貫した基準がなされていない。PSSの犬の血清ヒアルロン酸(sHA)濃度は、健康犬よりも診断時に高いと報告されている。

この研究の目的は、肝外(EH)PSSの漸次外科的減衰前後の犬のsHA濃度を測定し、sHA濃度が持続的シャントと閉鎖したEHPSSを鑑別できたかどうかを判定することで、肝臓環流のマーカーとしてsHAを評価することだった。sHAの特異性は、EHPSSの犬のsHA濃度と他の肝疾患のsHA濃度を比較することで評価した。

EHPSSの犬20頭のsHA濃度を診断時、術後1、3、6か月目に測定した。また、他の肝疾患の犬10頭のsHA濃度を測定した。

EHPSS診断時のsHA濃度中央値は、335.6ng/mL(43.0-790.7ng/mL)だった。全ての犬は、外科的結果にかかわらず、術後1か月からsHA濃度が有意に低下した(P<0.05)。術後のフォローアップで受診時、EHPSSが閉鎖した犬と持続性のシャントがある犬のsHAに有意差があった(P<0.05)。他の肝疾患の犬のsHA濃度中央値は、89.8ng/mL(22.9-160.0ng/mL)で、EHPSS診断時の犬よりも有意に低かった(P<0.001)。

結論として、sHAはEHPSSの外科的減衰後の肝臓環流の判定を補助できる確かな非侵襲性バイオマーカーである。また、sHAはEHPSSの犬と他の肝疾患の犬の鑑別に使用できる可能性がある。(Sato訳)
■犬の超音波ガイド下の経皮肝臓バイオプシーに関係する出血と合併症
Hemorrhage and complications associated with percutaneous ultrasound guided liver biopsy in dogs
J Vet Intern Med. 2020 Oct 30.
doi: 10.1111/jvim.15942. Online ahead of print.
Jonjo Reece , Michelle Pavlick , Dominique G Penninck , Cynthia R L Webster

背景:肝臓胆管系疾患の犬の診断を得るため、肝臓バイオプシーが必要なことも多い。バイオプシー後の出血の心配はある。

目的:犬の経皮的超音波ガイド下の肝バイオプシー(PUGLB)後の出血の程度と合併症の発生率を述べ、出血と合併症に対するリスクファクターを調査する。

動物:肝臓胆管疾患が疑われ、PUGLBを行った102頭の飼育犬

方法:医療記録を回顧的に再調査した。ヒトのガイドラインを用い、大出血はPCV(ΔPCV)≧6%の絶対的減少と定義した。それとは別に、合併症は介入が必要な臨床的に関連する生理学的妥協あるいは死亡と定義した。ΔPCVと合併症の発生および初期PCV、凝固変数、肝酵素の血清活性、血清ビリルビン濃度、バイオプシーの回数、バイオプシーの針のゲージ、放射線科医の経験、組織学的診断、超音波検査変数との関連を比較した。

結果:PUGLB前、凝固変数のほとんどの異常は軽度だった。バイオプシー後、PCVの低下は、87/102頭(85.3%)で発生した。平均ΔPCVは-7.2%±4.5%だった。大出血は43/102頭(42.2%)および合併症は2/102頭(1.9%)の犬で発生した。ΔPCVはバイオプシー前のPCVと有意な正の相関を示した。ΔPCVあるいは合併症と、検査した全ての変数に相関はなかった。

結論と臨床的重要性:凝固系が正常あるいは軽度異常のこの研究の犬の集団で、経皮的超音波ガイド下肝臓バイオプシーは臨床的には分からない大出血の高い発生率(42.5%)を示したが、合併症はあまりなかった(1.9%)。(Sato訳)
■イングリッシュスプリンガースパニエルの慢性肝炎に対するプレドニゾロン療法:12症例の前向き研究
Prednisolone therapy for chronic hepatitis in English springer spaniels: a prospective study of 12 cases.
Vet Rec. 2020 Feb 12. pii: vetrec-2019-105642. doi: 10.1136/vr.105642. [Epub ahead of print]
Bayton W, Watson PJ, Bexfield NH.

背景:イングリッシュスプリンガースパニエル(ESS)は慢性肝炎(CH)のリスク増加を示す。CHの68頭のESSの過去の研究(1頭しかコルチコステロイドを投与されていない)では、生存期間中央値が189日と示された。CHの数頭のESSはプレドニゾロン療法で改善すると思われる:ゆえに、この犬種においてプレドニゾロンの反応を調査することを目的とした。

参加者:特発性CHと組織学的に確認されたESSをプレドニゾロン1-2mg/kg/dayで治療した。9頭のメスと3頭のオスのESSが登録された(診断時の年齢中央値5歳)。症例は臨床的にモニターし、肝細胞の損傷および機能のマーカーを評価するため、生化学サンプルを採取した。

結果:プレドニゾロンの平均初期投与量は1.1mg/kg/dayだった。全ての症候を示す症例は、当初に臨床的改善を示した。2症例はプレドニゾロン投与中に安楽死された。診断からの経過の中央値は1715日(範囲:672-2105日)で、その残りの症例は臨床的に良好で、7頭の犬はいまだに平均投与量0.4mg/kgのプレドニゾロンを隔日投与されている。統計学的解析で、プレドニゾロン投与から2-4週後に血清ALP、ALT、ビリルビンの有意な減少(P<0.05)が証明された。

結論:この研究は、CHのいくらかのESSがプレドニゾロンと標準的支持治療で管理した時、臨床および生化学パラメーターを改善したことを示す。(Sato訳)
■胆管疾患の細胞学的特徴:回顧的研究
The cytologic features of biliary diseases: A retrospective study
Vet Clin Pathol. 2020 Sep 6.
doi: 10.1111/vcp.12880. Online ahead of print.
Carlo Masserdotti

背景:臨床データや機械のサポートとともに、組織学的検査は胆管疾患の認識に貢献する。肝臓および胆管細胞の量および質の変化は発生する可能性があるが、胆管症に影響された肝臓からの細胞学的サンプルの記述はあまり見られない。

目的:この研究は、組織学的に胆管症と確認された犬と猫の細胞学的サンプルにおいて、胆管細胞、肝細胞、炎症性細胞の量および質の変化を述べる。

方法:胆管症と組織学的に確認した肝臓からの細胞学的サンプルを再検討し、細胞学的にみられる変化を述べるために比較した。サンプルはClinica Veterinaria Sant'AntonioとLaboratorio Veterinario Brescianoのアーカイブから入手し、統計分析は実施しなかった。

結果:合計196の細胞学的サンプルを選択基準に従い抽出し、88頭は犬、108頭は猫だった。胆管症の合計8つのカテゴリーが確認、記述されているが、確定診断を得るため組織学的検査を必要とすることも多く、犬で胆管症の6つのカテゴリー、猫で7つのカテゴリーが細胞学的情報を提供する。

結論:細胞学的検査と共に臨床および超音波検査データが急性および慢性胆汁うっ滞、慢性胆管炎、猫リンパプラズマ細胞性胆管炎、胆管細胞性腫瘍における肝臓異常の確認に有効であり得る。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫に対する胆嚢切除を行った犬の胆道系処置と結果の関連:複数施設の回顧的研究
Association between biliary tree manipulation and outcome in dogs undergoing cholecystectomy for gallbladder mucocele: A multi-institutional retrospective study
Vet Surg. 2020 Nov 23.
doi: 10.1111/vsu.13542. Online ahead of print.
Hunter J Piegols , Galina M Hayes , Samantha Lin , Ameet Singh , Daniel K Langlois , Daniel J Duffy

目的:胆嚢粘液嚢腫に対する胆嚢切除を行う犬で、総胆管(CBD)のカテーテル処置は結果と関係するか、またその関係はカテーテル法により変化するかどうかを調べる

研究計画:複数施設の回顧的コホート研究

動物:胆嚢粘液嚢腫に対し胆嚢切除を行った犬(n=252)

方法:4か所の獣医教育病院で、電子カルテの再調査により犬を確認した。基本となる犬の特徴、手術所見、順行性vs逆行性CBDカテーテル処置を含む方法、術中結果、術後結果、合併症を記録した。変数はカテーテル処置を行った犬と行わなかった犬で比較した。

結果:カテーテル処置を行った犬は、アメリカ麻酔科学会スコアがより高く(P=0.04)、総ビリルビンがより高く(P=0.01)、手術時にCBDが拡張している確率が高かった(P<0.01)。メジャーおよびマイナーな術中合併症は2群で同じだった。手術時間はカテーテル処置群でより長かった(P=0.01)。術後合併症の全体の発生率は2群で同じだった;しかし術後の膵炎はCBDカテーテル処置実施に関係した(P=0.01)。この関係は、基本の群差に向けた誰変量モデルにおいて独立した関係として保持された(P=0.04)。術後膵炎発祥の見込みは、順行性および逆行性カテーテル処置で違いがなかった(P=0.57)。

結論:CBDのカテーテル処置は、術後膵炎の発症に関係した。これはカテーテル処置の方法に影響されなかった。

臨床意義:犬の開腹胆嚢切除中の総胆管のカテーテル処置の必要性は、術後膵炎を誘発するかもしれないので、特に胆管閉塞のエビデンスがない犬に対し注意深く考えるべきである。(Sato訳)
■先天性門脈体循環シャントの犬に対する安息香酸ナトリウムとフェニル酪酸ナトリウムの経口投与の効果
Efficacy of orally administered sodium benzoate and sodium phenylbutyrate in dogs with congenital portosystemic shunts.
J Vet Intern Med. May 2019;33(3):1331-1335.
DOI: 10.1111/jvim.15477
Giora van Straten , Diewke van Dalen , Sietske J Mesu , Jan Rothuizen , Erik Teske , Bart Spee , Robert P Favier , Ingeborg M van Geijlswijk

背景:高アンモニア血症は、肝性脳症を起こす可能性があり、重度症例では最終的に昏睡や死亡を引き起こすかも知れない。犬において、先天性門脈体循環シャント(CPSS)は、高アンモニア血症に対する最も多い原因である。従来の治療は、タンパク修正食、非吸収性二糖類、抗生物質あるいはそれらの組み合わせである。安息香酸ナトリウム(SB)とフェニル酪酸ナトリウム(SPB)は、ともに尿素回路酵素欠損による高アンモニア血症のヒトの急性および長期治療に使用される。両処置は代替経路で過剰な窒素の排泄を促進することにより、血中アンモニア濃度をより低くすると思われている。

目的:CPSSの犬の高アンモニア血症および臨床症状に対するSBとSPBの経口投与の効果と安全性を評価する

方法:無作為化二重盲検プラセボ対照交差試験。CPSS犬の血中アンモニアと胆汁酸濃度を、SB、SPB、プラセボ投与前と5日間投与した後に測定した。治療間に3日のウォッシュアウト期間を設けた。標準のアンケートを作成し、各処置の前後の臨床症状を評価するため、オーナーに配布した。

結果:血中アンモニア濃度はいずれの処置の影響もうけず、プラセボ投与の時に見られたものと同じだった。また、SBとSPB投与は臨床症状を改善しなかった。投与中の副作用は、食欲不振、嘔吐、元気消失だった。

結論と臨床的重要性:我々の結果から、SBあるいはSPBはCPSSの犬の従来の治療に有用ではないと結論付ける。(Sato訳)
■胆嚢切除、内科治療、あるいはその両方で治療した胆嚢粘液嚢腫の犬の長期生存性
Long-term survival of dogs treated for gallbladder mucocele by cholecystectomy, medical management, or both.
J Vet Intern Med. September 2019;33(5):2057-2066.
DOI: 10.1111/jvim.15611
Max Parkanzky , Janet Grimes , Chad Schmiedt , Scott Secrest , Andrew Bugbee

背景:胆嚢粘液嚢腫(GBM)は一般的に胆嚢切除で治療される。まれに内科管理が報告されており、内科と外科管理は比較されていない。

仮説/目的:内科管理あるいは胆嚢切除またはその両方でGBMを治療した犬の生存性を比較する

動物:2011年から2017年の間にGBMと診断され、胆嚢切除あるいは内科治療またはその両方で治療された飼育犬89頭

方法:その可能性がある症例を医療記録データベースで検索して確認した。収集したデータはシグナルメント、臨床病理検査、治療、超音波画像および報告だった。犬は担当獣医師の判断で選ばれた治療方法によりグループに分けた(内科治療、外科治療および両方)。生存解析を実施し、予後変数を確認し、治療群で比較した。

結果:診断後、最低14日生存した犬で、外科、内科、内科ののち外科治療群でそれぞれの生存期間中央値は、1802日(95%CI、855-未到達)、1340日(95%CI、444-1340)、203日(95%CI、18-525)で、有意に異なった(P<0.0001)。胆嚢粘液嚢腫の種類(P=0.05)、血清ALP活性(P=0.0001)および血清クレアチニン(P=0.002)、リン(P=0.04)濃度は、群全体で生存性の低下に関係した。腹部超音波(AUS)検査における胆嚢破裂の疑いは、外科群において生存性の増加と相関した(P=0.02)。

結論と臨床的重要性:内科治療に対し、GBMの胆嚢切除による治療は、術後すぐの期間(14日)を生存した犬において一番長い生存期間をもたらせた。内科治療は外科治療に比べ生存期間がより短いが、手術が実施できないときには妥当な代替治療である。(Sato訳)
■犬の急性肝傷害に対し脂肪由来間葉系幹細胞の治療応用
Therapeutic applications of adipose-derived mesenchymal stem cells on acute liver injury in canines.
Res Vet Sci. 2019 Oct;126:233-239. doi: 10.1016/j.rvsc.2019.09.004. Epub 2019 Sep 12.
Yan Y, Fang J, Wen X, Teng X, Li B, Zhou Z, Peng S, Arisha AH, Liu W, Hua J.

この研究で、四塩化炭素により人工的に誘発した犬の急性肝傷害モデルにおいて、犬脂肪由来間葉系間細胞(cADSCs)の治療の可能性を調査した。

主要cADSCs細胞を培養し、その後犬モデルに静脈内投与した。6頭の雑種犬を何もしないコントロール群、四塩化炭素モデル群、四塩化炭素誘発cADSCs移植群の3群に振り分けた。

四塩化炭素液の腹腔内注射後、実験犬の血中AST、ALT、ALB値の結果で、急性肝傷害の正確な誘導を確認した。さらに肝構造は明確な肉眼的ダメージを示した。

投与した犬の肝臓にcADSCsは帰着した。血中AST、ALT、ALBは急速に低下した。H&EおよびPAS染色による組織学的評価は、犬の肝組織の構造および肝臓グリコーゲン合成能が、cADSCs移植後にコントロールレベルまで回復できたことを示した。ゆえに、cADSCsは肝傷害の回復に治療的役割を演じることができる。

全体的に、この研究は、犬の急性肝傷害モデルに静脈注射による主要cADSCs移植は、肝臓の回復に確実な治療的役割を演ずることができると証明する。それらの結果は、臨床的にペットの急性肝疾患に対し、新しい治療の考え方を提供するかもしれない。(Sato訳)
■肝胆嚢外科手術中の露出に役立つ横隔膜切開:31頭の犬の多施設回顧的レビュー
Diaphragmotomy to aid exposure during hepatobiliary surgery: a multi-centre retrospective review of 31 dogs.
J Small Anim Pract. 2020 Feb 20. doi: 10.1111/jsap.13121. [Epub ahead of print]
Dean B, Anderson T, Garcia-Pertierra S, Jenkins G, Cantatore M, Craig A, Harris K, Ryan T.

目的:術中の肝胆嚢病変の露出を横隔膜切開で補助した犬の肝胆嚢外科手術の術式、術中および術後合併症、短期及び長期結果を報告する

素材と方法:4か所の専門のイギリスの小動物二次病院の臨床記録から、2014年1月から2019年5月の間に横隔膜切開を実施した犬を回顧的に再調査した。シグナルメント、診断、行った手術、横隔膜切開テクニック、横隔膜切開と気胸の管理、術中および術後合併症、短期結果および長期結果を記録した。

結果:31症例を確認した。最も一般的な横隔膜切開と組み合わせた肝胆嚢手術は、単一肝葉切除(14/31)と胆嚢切除(11/31)だった。一般的な診断は、肝細胞癌(10/31)、胆嚢粘液嚢腫(7/31)、肝臓結節性過形成(4/31)だった。周術死亡率は9.7%(3/31)が、それら死亡例は、横隔膜切開によるものとは考えられなかった。術後合併症は、周術期間を生存した67.9%(19/28)の症例で見られ、そのうち25.0%(7/28)は横隔膜切開によるもの、あるいはその確率が高いものによると考えられる合併症を起こした。それら7つの合併症は、非外科的治療後に解消した。生存して退院した28症例中26症例は術後中央値4か月(範囲10日-24か月)でフォローアップが得られ、横隔膜切開に関連する合併症のエビデンスがないことが分かった。

臨床意義:横隔膜切開は安全と思われ、肝胆嚢病変の腹部露出を増加させる。露出改善の利点は、気胸を誘発する本質的なリスクに対し、慎重に評価すべきである。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫の犬の胆嚢炎の有病率と結果に対する影響
Prevalence and impact of cholecystitis on outcome in dogs with gallbladder mucocele.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Dec 19. doi: 10.1111/vec.12910. [Epub ahead of print]
Rogers E, Jaffey JA, Graham A, Hostnik ET, Jacobs C, Fox-Alvarez W, Van Eerde E, Arango J, Williams F 3rd, DeClue AE.

背景:犬の胆嚢粘液嚢腫は命に係わる可能性がある肝外胆汁疾患である。この研究の主要目的は、肉眼および病理検査で胆嚢粘液嚢腫を確認した犬において、胆嚢炎の有病率を評価することと、胆嚢炎、それに含まれるサブタイプ(例えば急性、慢性から急性、壊死を伴う、慢性)と生存性との関連があるかどうかを調査することだった。2つ目の目的は、胆嚢炎と術中の細菌学的培養陽性との関連があるかどうかを評価することだった。

鍵となる所見:胆嚢粘液嚢腫の219頭の犬を、この多施設回顧的研究に含め、63頭(28.8%)の犬は胆嚢炎の病理学的所見があった。胆嚢炎のもっとも一般的な型は、慢性から急性になったもの(n=22/63、34.9%)と壊死を伴うもの(n=20、31.7%)だった。31頭(14.1%)の犬は最低1つの分離細菌が発育したが、88.7%は術前48時間以内あるいは術中に抗生物質を投与されていた。胆嚢炎あるいはそのサブタイプと生存性の間に関連はなかった。さらに、胆嚢炎と術中細菌培養陽性との間に関係はなかった。合計38頭(17.4%)の犬は入院中に死亡あるいは安楽死された。

意義:胆嚢粘液嚢腫の犬の胆嚢炎は一般に同時罹患するが、生存性低下と関係はなかった。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫の超音波検査による診断を受けた犬の副腎および甲状腺機能不全の調査
Investigation of adrenal and thyroid gland dysfunction in dogs with ultrasonographic diagnosis of gallbladder mucocele formation.
PLoS One. 2019 Feb 27;14(2):e0212638. doi: 10.1371/journal.pone.0212638. eCollection 2019.
Aicher KM, Cullen JM, Seiler GS, Lunn KF, Mathews KG, Gookin JL.

胆嚢粘液嚢腫形成は、犬の新しい病気の一つで、胆管閉塞や胆嚢破裂となる可能性のある異常な濃い粘液の形成と、胆嚢上皮からのゲル形成ムチンの濃縮顆粒の分泌増加を特徴とする。この病気は、高い罹病率と死亡率を示し、その病因は不明である。罹患犬は、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症、高脂血症を同時に診断される可能性が有意に増加している。それらの内分泌障害が素因のある犬の胆嚢粘液嚢腫形成を悪化させる同時発生的原発疾患過程を意味するのか、同時に発生した内分泌や脂質代謝の攪乱を反映するのかは不明である。

この研究で、胆嚢粘液嚢腫形成の犬は副腎皮質や甲状腺機能のオカルトや非定型異常の有病率が高くなっているだろうという仮説を調査し、それは内分泌攪乱の存在を示唆し、疾患病因へのより深い洞察を提供するだろう。

著者らは胆嚢粘液嚢腫を超音波検査により診断された犬と、そうではない犬の症例-コントロール研究を実施し、合成コシントロピンの投与前後で、血清中の副腎由来のステロイドの定量マス分光測定により副腎機能を判定した。同時に血清甲状腺ホルモン濃度の判定と、尿中ヨウ素:クレアチニン比(UICR)の測定によりヨウ素の充足を評価した。研究は、胆嚢粘液嚢腫の犬とコントロール犬の甲状腺臓器ヨウ素の測定値と保存した甲状腺組織の組織学的検査で補足した。

胆嚢粘液嚢腫の犬は、コシントロピンによる副腎刺激で過剰なコルチゾール反応を示した。胆嚢粘液嚢腫の犬の10%は副腎皮質機能亢進症の確定診断あるいは疑いに対して、検査所ベースの基準に合致した。コントロール犬と比較して、基礎血清デヒドロエピアンドロステロン(DHEAS)が増加している胆嚢粘液嚢腫の犬の数が有意に多かった。

胆嚢粘液嚢腫の犬の26%は甲状腺機能低下症の診断に対する検査所ベースの基準に合致したが、抗チログロブリン抗体は検出されなかった。コントロール犬と比べ、胆嚢粘液嚢腫の犬のUICRsは有意に高かった。胆嚢粘液嚢腫形成の犬の関係しないグループからの甲状腺組織の検査は、甲状腺炎の組織学的エビデンスや、臓器ヨウ素の含量に有意差を示さなかった。

それらの所見は、胆嚢粘液嚢腫の犬は、その疾患の基礎にある病因の潜在的手がかりとなるコルチゾール合成により大きな能力を持ち、DHEAS上昇を正確に指摘することが示唆される。自己免疫甲状腺炎のエビデンスが欠如した甲状腺機能不全の高い有病率は、胆嚢粘液嚢腫の犬の甲状腺ホルモン代謝の混乱を示唆するが、非甲状腺病の影響は除外できない。胆嚢粘液嚢腫の犬の高いUICRは意義が不明だが、今後の研究の興味のあるところである。(Sato訳)
■犬の先天性肝外門脈体循環シャントの減衰後の血液変数の診断的価値
Diagnostic value of blood variables following attenuation of congenital extrahepatic portosystemic shunt in dogs.
Vet Rec. 2019 Oct 29. pii: vetrec-2018-105296. doi: 10.1136/vr.105296. [Epub ahead of print]
Vallarino N, Pil S, Devriendt N, Or M, Vandermeulen E, Serrano G, Paepe D, Bosmans T, de Rooster H.

背景:この研究の目的は、肝外門脈体循環シャント(EHPSS)の術後閉鎖が術前血液検査を基に予測できるかどうか判定することと、門脈体循環シャントの術後形成(多発性後天性門脈体循環シャント(MAPSS)あるいは持続性EHPSS)の残存を評価するための血液変数の精度を判定すること。

方法:回顧的に先天性EHPSSを外科的に治療し、術後3-6か月に術後経脾臓門脈シンチグラフィーあるいはCT血管造影を行った犬62頭を含めた。

結果:検査した術前血液変数で明白に外科手術結果を予測できたものはなかった。術後の絶食静脈アンモニア(FA)値は常に手術の失敗(残存シャントあるいはMAPSS)を示したが、正常FA値は術後シャントの状況に対し全ての情報を提供するわけではなかった。ペア血清胆汁酸(SBA)は術後シャント形成あるいは術後シャント形成除外を確認するのに十分信頼があるとは言えなかった。術後正常な低FA値を認め、食前SBAの上昇は、残存シャントがある確率が高かった(感受性0.79、特異性0.83)が、術後SBAが参照限界値以下の場合は、手術成功の症例で観察されることが多かった(感受性0.93、特異性0.67)。

結論:血液変数、特にFAとSBAの組み合わせは、EHPSS手術後の手術結果を確実に評価する高度医療画像検査の有効な代替法とは言えない。(Sato訳)
■胆のう粘液のう腫の犬の転帰に対する臨床症状、内分泌障害、手術のタイミング、高ビリルビン血症の影響
Effect of clinical signs, endocrinopathies, timing of surgery, hyperlipidemia, and hyperbilirubinemia on outcome in dogs with gallbladder mucocele.
Vet J. 2019 Sep;251:105350. doi: 10.1016/j.tvjl.2019.105350. Epub 2019 Jul 31.
Jaffey JA et al

胆のう粘液のう腫(GBM)は犬の肝外胆汁症候群で、死亡率は7-45%である。ゆえに、この研究の目的は、臨床的治療方針決定を改善するのに利用する変数と生存性の関係を確認することだった。

この回顧的研究において、41か所の獣医紹介病院から、GBMの肉眼および病理組織学的診断のある合計1194頭の犬を含めた。

一変量解析で異常な臨床症状を認めるGBMの犬は、無症状の犬よりも死亡の確率が有意に大きかった(OR、4.2;95%CI、2.14-8.23;P<0.001)。多変量モデルで、黄疸のオーナーの認識(OR、2.12;95%CI、1.19-3.77;P=0.011)、副腎皮質機能亢進症の併発(OR1.94;95%CI、1.08-3.47;P=0.026)、ポメラニアン種(OR、2.46;95%CI、1.10-5.50;P=0.029)を含むカテゴリー的変数は、死亡の確率上昇と関係し、嘔吐は死亡の確率低下(OR、0.48;95%CI、0.30-0.72;P=0.001)と関係した。多変量モデルにおける連続変数、総血清/血漿ビリルビン濃度(OR、1.03;95%CI、1.01-1.04;P<0.001)、年齢(OR、1.17;95%CI、1.08-1.26;P<0.001)は死亡の確率上昇と関係した。死亡を予測するバイオマーカーとして総血清/血漿ビリルビン濃度の臨床的有用性は、感受性0.61(95%CI、0.54-0.69)と特異性0.63(95%CI、0.59-0.66)と悪かった。

この研究で、GBMの犬の総血清/血漿ビリルビン濃度、年齢、臨床症状、副腎皮質機能亢進症併発、ポメラニアン種を含むいくつかの予後的変数を確認した。甲状腺機能低下症あるいは真性糖尿病の有無は、この研究で転帰に影響を及ぼさなかった。(Sato訳)
■肝外先天性門脈シャントをフィルムバンドあるいはアメロイドリングコンストリクターで治療した犬の結果
Outcomes of dogs treated for extrahepatic congenital portosystemic shunts with thin film banding or ameroid ring constrictor.
Vet Surg. 2019 Jul 4. doi: 10.1111/vsu.13273. [Epub ahead of print]
Matiasovic M, Chanoit GPA, Meakin LB, Tivers MS.

目的:一つの施設で単一肝外先天性門脈シャント(CPSS)をフィルムバンド(thin film banding:TFB)あるいはアメロイドコンストリクター(AC)の設置で治療した犬の結果を比較する

研究デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:TFB(n=53)あるいはAC(n=23)で治療したCPSSの飼育犬76頭

方法:シグナルメント、術前、術中、術後管理と短期結果の記録を調べた。2回目の手術データも調べた。長期結果はオーナーに向けられた健康関連QOLアンケートで入手した。合併症率、死亡率、修正手術を治療群間で比較した。

結果:術後合併症は、TFBの15頭(28%)の犬(9%死亡率、n=5)とACの8頭(35%)の犬(4%死亡率、n=1)で発生した。長期経過は56頭41頭で入手でき、中央値は55か月(範囲、15-89か月)だった。持続性シャントの存在に対する修正手術は当初TFBで治療した14頭(29%)で実施し、ACで治療した犬にはいなかった(P=0.007)。長期結果スコアの中央値は両群ともに良好だった;14頭中9頭の修正手術は良好な結果をもたらした。

結論:修正手術を必要とする持続性のシャントの存在は、ACよりもTFBで治療した時により多くみられたが、両治療ともに好ましい長期結果に達した。

臨床意義:TFBよりもAC設置によるCPPSの治療は、シャントの減衰に対してより信頼でき、修正手術の防止となる。(Sato訳)
■肝外門脈体循環シャントの外科的管理に対するシャント形態の影響
Implications of shunt morphology for the surgical management of extrahepatic portosystemic shunts.
Aust Vet J. 2018 Nov;96(11):433-441. doi: 10.1111/avj.12756.
White RN, Parry AT, Shales C.

目的:犬と猫のシャント閉鎖部位の選択に対し、肝外門脈体循環シャント形態の影響を述べる

方法:先天的肝外門脈体循環シャントを治療した犬と猫の連続症例の回顧的レビュー

結果:合計54頭の犬と10頭の猫が基準に合い、5つの異なるシャントタイプが見られた:左胃横隔静脈、右胃下大静脈(タイプAi、Aii、Aiii)、脾下大静脈、結腸下大静脈、左胃-奇静脈。例外なく、CT造影所見と手術時の直接目視により、異常なシャント血管と全身静脈系の連絡の4つの一致部位を確認した:網嚢孔レベルの後大静脈;食道裂孔レベルの左横隔膜静脈;大動脈裂孔レベルの奇静脈;第6、第7腰椎レベルの後大静脈あるいは腸骨静脈。術中の腸間膜門脈造影の使用は、手術時のすべての門脈枝血管がシャント減衰のポイントに近いことを確認するのに有効だった。

結論:肝外門脈体循環シャントの一般的なタイプに対し、シャントと全身静脈系の連絡に4つの一致する部位しかないことを確認した。この情報は、犬と猫のシャントの部位と減衰に対する系統的アプローチの使用を支持する。(Sato訳)
■犬の肝内門脈シャントのセロハン絞扼術あるいは経皮経静脈コイル塞栓術の結果
Outcomes of cellophane banding or percutaneous transvenous coil embolization of canine intrahepatic portosystemic shunts.
Language: English
Vet Surg. November 2017;0(0):.
J Brad Case , Sarah J Marvel , Mandy C Stiles , Herb W Maisenbacher, 3rd , Beau B Toskich , Dan D Smeak , Eric L Monnet

目的:先天性肝内門脈シャント(congenital intrahepatic portosystemic shunts:CIHPSS)をセロハン絞扼術(cellophane banding:CB)あるいは経皮経静脈コイル塞栓術(percutaneous transvenous coil embolization:PTCE)で治療した犬の臨床結果を比較する。

研究計画:二施設回顧的研究

動物:CIHPSSの犬58頭(2001-2016)

方法:CIHPSSに対し、CBあるいはPTCEを行った犬の医療記録から、シグナルメント、体重、血液検査値、シャント部位、減衰方法、処置時間、入院期間、合併症、追跡調査の日時、当てはまる場合の死亡原因について調査した。

結果:31頭はCBを行い、27頭はPTCEを行った。グループ間で性別、術前PCV、アルブミン、コレステロールあるいは胆汁酸に違いはなかった。PTCEで治療した犬の体重はより重かった。CBを行った犬は、PTCE犬と比べてよりleft divisional shuntsと診断されたため、シャントの部位に違いがあった。CBとPTCEの処置時間に違いはなかった。CBで治療した犬は、PTCEで治療した犬より、マイナーな術後合併症が持続し、入院期間も長かった。1年および2年生存率はCB群で89%、PTCE群でそれぞれ87%と80%だった。5年時に生存している比率は、CB犬で75%、PTCE犬で80%だった。

結論:CBとPTCEは同じような短期および中期生存性を示す。PTCEは回復によるCBに対する最小侵襲代替法である。しかし、CBは同じアプローチを必要とする同時腹部処置を可能にする。(Sato訳)
■完全な肝外先天性門脈シャント結紮後の犬51頭の長期血清胆汁酸濃度
Long-term serum bile acid concentrations in 51 dogs after complete extrahepatic congenital portosystemic shunt ligation.
Language: English
J Small Anim Pract. August 2017;58(8):454-460.
P Bristow , M Tivers , R Packer , D Brockman , V Ortiz , K Newson , V Lipscomb

目的:単一の先天性肝外門脈シャントの完全な縫合結紮を行った犬に対する長期的胆汁酸刺激試験結果を報告する

素材と方法:単一先天性肝外門脈シャントの完全な縫合結紮を行った全ての犬の病院記録からデータを集めた。血清胆汁酸測定を再度行うため、オーナーに紹介センターあるいは地域獣医師のもとに訪れるよう要請した。特発性てんかんと診断され胆汁酸刺激試験を受けた犬を比較集団として使用した。

結果:51頭の研究犬が含まれ、平均追跡調査期間は62ヶ月だった。48頭は複数の後天性シャントの所見がなく、術前測定値と比較し、長期追跡調査時の食餌前と食餌後の血清胆汁酸濃度は有意に回復していた。コントロール犬と比較し、全てのタイムポイントで完全結紮を行った犬(複数の後天性シャント所見なし)に対し、食餌前と食餌後の血清胆汁酸は統計学的に有意に高かった(全ての比較に対しP<0.001)。

臨床意義:完全縫合結紮で治療した犬において血清胆汁酸の軽度上昇は、身体検査異常がなく、正常なボディコンディションスコアで臨床症状の再発がなければ、臨床的関連がないと結果は示唆する。(Sato訳)
■49頭の犬の単一先天性肝外門脈シャントの治療においてアメロイドリングコンストリクターとセロファン絞扼術の結果の比較(1998-2012)
Comparative outcomes between ameroid ring constrictor and cellophane banding for treatment of single congenital extrahepatic portosystemic shunts in 49 dogs (1998-2012).
Vet Surg. 2018 Feb;47(2):179-187. doi: 10.1111/vsu.12747. Epub 2017 Dec 16.
Traverson M, Lussier B, Huneault L, Gatineau M.

目的:アメロイドリングコンストリクター(ameroid ring constrictor:ARC)あるいはセロファン絞扼(cellophane banding:CB)で漸減させた単一先天性肝外門脈シャント(congenital extrahepatic portosystemic shunt:CEHPSS)の犬において、結果の比較と予後因子を確認する

研究計画:回顧的多施設研究

動物:CEHPSSの犬49頭(ARCを行った犬23頭;CBを行った犬26頭)

方法:ARCあるいはCBで治療したCEHPSSの犬の医療記録から術後(<1か月)、中期(1-6か月)、長期(>6か月)結果を再調査した。術後合併症、残存シャント、長期結果に関係する因子を検出するためにデータを評価した。

結果:術後合併症率はARC(26.1%)とCB(23.1%、P=0.89)の間に違いはなく、体重に負の関連があった(P=0.03)。全体で術後死亡率は低かった(2.0%)。ARCとCBの臨床的長期結果は、それぞれ優良が45.0%、39.1%、良が55.0%と60.9%だった。腹部超音波検査上で推定された残存シャント率はARC(0%)よりもCB(31.6%)で大きかった。

結論:CEHPSSに対しARCとCB共に効果的で、低い疾病率と死亡率で良から優良な結果が得られた。腹部超音波検査の結果からCBで治療した犬に残存シャントが疑われた比率が高かった。しかし、この仮説を確認するため、検証する評価方法で追加の前向き無作為研究を実施するべきである。(Sato訳)
■胆泥と胆嚢粘液嚢腫の犬の胆嚢内容物の回顧的分析
Retrospective analysis of canine gallbladder contents in biliary sludge and gallbladder mucoceles.
Language: English
J Vet Med Sci. February 2017;79(2):366-374.
Shinya Mizutani , Shidow Torisu, Yasuyuki Kaneko, Shushi Yamamoto, Shinsuke Fujimoto, Benedict Huai Ern Ong, Kiyokazu Naganobu

胆泥、胆嚢粘液嚢腫、胆石を含む犬の胆嚢疾患の病態生理学はあまり理解されていない。

この研究の目的は、胆泥や胆嚢粘液嚢腫の病態生理学を明らかにするため、胆嚢内容物の構成、胆嚢の細菌感染を評価する。

犬の胆嚢内容物、合計43サンプル(胆泥21、胆嚢粘液嚢腫22)を赤外分光法による成分分析に供し、結果の赤外スペクトルを豚のムチンの其れと比較した。43サンプルのうち41は好気性および嫌気性細菌培養でも評価した。

胆泥20(95.2%)と胆嚢粘液嚢腫22(100%)サンプルの内容物は、豚のムチンと同様の赤外スペクトルを示した。胆泥と胆嚢粘液嚢腫内容物は、同様の赤外スペクトルを示したが、胆泥の1(4.8%)サンプルは、蛋白質で構成されていると判定した。胆嚢の細菌感染率は胆泥で10.0%、胆嚢粘液嚢腫で14.3%だった。確認された細菌種のほぼ全てが腸内細菌叢だった。

それらの結果は、胆嚢粘液嚢腫と胆泥の胆嚢内容物の主成分がムチンで、両方の病態生理学は胆嚢の細菌感染の確率が低いということを示す。ゆえに、胆嚢粘液嚢腫と胆泥は同じ病態生理の可能性があり、独立した疾患というよりは、おそらく連続した疾患でありえる。このように、胆泥は胆嚢粘液嚢腫の出現に先立つステージと考えることができた。(Sato訳)
■インビトロにおけるアメロイドリングコンストリクターの閉鎖率に対する反復ガス滅菌の影響
Effects of repeated gas sterilization on closure rates of ameroid ring constrictors in vitro.
Am J Vet Res. January 2016;77(1):84-7.
William W Kimberlin; Jennifer L Wardlaw; Richard W Madsen

目的:インビトロでアメロイドリングコンストリクターの閉鎖率に対し、繰り返し行うガス滅菌の影響を調べる

サンプル:24個の3.5mmアメロイドリングコンストリクター

方法: 0、1、5、10回ガス滅菌を行う4つの処置群にアメロイドリングコンストリクターを6個ずつ振り分けた。滅菌後、蛋白質濃度3g/dLの犬の血漿でコンストリクターを27日間インキュベートした。インキュベート前と、その後様々な時期のコンストリクターの画像をデジタルカメラで撮影し、内腔直径を測定した。

結果:全ての群のアメロイドリングコンストリクターの内腔閉鎖の平均±SD%は、0日目(血漿インキュベート前)で85.2±1.6%、27日目で95.4±0.8%だった。0日目の平均内腔面積は3.64±0.43mm(2)(95%信頼区間、2.67-4.77mm(2))で、27日目は1.32±0.25mm(2)(95%信頼区間、0.76-2.04mm(2))だった。27日目に完全に閉鎖したアメロイドリングコンストリクターはなかった。

結論と臨床関連:アメロイドリングコンストリクターの全体の閉鎖率は、10回までの繰り返し行うガス滅菌により影響を受けないと思われた。獣医の外科医は、臨床使用に対しリングの特性の安定性が維持できているだろうという信頼をもって、10回までアメロイドリングコンストリクターの再滅菌ができると示唆された。(Sato訳)
■肝外門脈シャントをThin Film絞扼術で治療した20頭の犬の画像および臨床結果
Imaging and Clinical Outcomes in 20 Dogs Treated with Thin Film Banding for Extrahepatic Portosystemic Shunts.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):736-45.
Nathan C Nelson , Laura L Nelson

目的:先天性肝外門脈シャント(CEPSS)の犬に対するfilm band帯減衰術の有効性を臨床、生化学および画像関連の結果測定を用いて前向きに評価する

研究計画:前向きケースシリーズ

動物:CEPSSの犬(n=20)

方法:CEPSSの飼育犬でシャント血管のthin film絞扼術を実施した。術前と術後最低6か月で血清胆汁酸とCT血管造影検査を実施し、オーナーには犬の臨床症状に関する健康アンケートに答えてもらった。術後のCT画像でband閉鎖の有効性、門脈/大動脈比の変化、肝臓容積/体重比の変化、最適な場所にbandが設置されているかどうかを評価した。術前および術後健康アンケートデータと血清胆汁酸を比較した。

結果:13頭においてbandを設置した血管の周りは完全に閉鎖していた。残りの7頭の血管腔は狭かったが完全には閉じていなかった。8頭においてバンドの位置は最適に至らず、内蔵血液の全身への排出あるいは持続する二次的シャント枝を許した。肝臓の容積/体重比および門脈/大動脈径比はほとんどの犬で増加した。血清胆汁酸は1頭を除き低下したが、19頭のオーナーは健康の改善を報告した。

結論:thin film絞扼術は設置した全ての血管というわけではないが、多くは完全に閉塞させた。不適切なbandの位置あるいは不完全な閉塞の犬であっても、我々の結果を基に臨床的改善が期待できる。(Sato訳)
■犬と猫の肝性脳症
Hepatic encephalopathy in dogs and cats.
J Vet Emerg Crit Care. Jul/Aug 2016;26(4):471-87.
Jonathan A Lidbury , Audrey K Cook , Jorg M Steiner

目的:犬と猫の肝性脳症(HE)の病因、臨床症状、診断、管理を比較検討する

データソース:ヒト、犬、猫のHEに関する文献を医療データベースから検索した。ここ5年以内に発表された文献を特に重視した。

ヒトのデータ総合:HEの病因は複雑で、完全には理解されていないが、アンモニアは中心的役割を演じると思われる。高アンモニア血症は星状細胞にグルタミンの蓄積を誘発し、星状細胞の腫脹と神経学的機能不全を起こす。肝硬変の患者におけるHEの発症は予後不良の指標である。ヒトのHEに対し発酵性二糖類ラクツロースと抗菌剤リファキシミンはアメリカ食品医薬品局の良いと認める治療である。重度のタンパク制限は、もはやこの状況の患者で推奨されない。

動物のデータ総合:HEは犬と猫の門脈体循環シャントに関係することが多い。犬と猫のHEの病因でアンモニアは中心的役割を演じるが、マンガンや内因性ベンゾジアゼピンのような他の因子も寄与する。最近は大豆蛋白ベースの食餌が犬のHEの治療に有効であることが分かった。重度食餌中タンパク制限は罹患動物で有害となることも多い。獣医療のHEの管理において通常使用される薬剤の臨床試験はないが、ラクツロースとメトロニダゾールのような抗菌剤は確立された治療である。

結論:HEはおそらくコンパニオンアニマルで過小診断されている潜在的な命に係わる状況である。種々の推奨治療が提唱されているが、この状況の最適な管理法に関して獣医の文献でのエビデンスは不足している。犬と猫のHEの病因の理解は進んでいるので、新しい診断検査や治療薬は利用可能になるかもしれない。(Sato訳)
■犬の急性肝不全の回顧的評価(1995-2012):49症例
Retrospective evaluation of acute liver failure in dogs (1995-2012): 49 cases.
J Vet Emerg Crit Care. Jul/Aug 2016;26(4):559-67.
Carrie Lester , Johanna Cooper , Rachel M Peters , Cynthia R L Webster

目的:急性肝不全(ALF)の犬の臨床症状と結果を述べる

計画:1995年1月から2012年12月までの回顧的ケースシリーズ

場所:大学教育病院

動物:肝性脳症を伴う、あるいは伴わない血清高ビリルビン血症と凝固障害(プロトロンビン時間が参照範囲上限の1.5倍以上)を付随する臨床症状の急性発現として定義した急性肝不全を49頭の犬で診断した。

方法:医療記録から臨床症状、病歴、身体検査所見、臨床病理データ、診断画像検査所見、肝臓の病理組織検査、治療と結果を回顧的に分析した。

主要結果:呈していた症状は食欲不振(28/49、57%)、嘔吐(25/49、51%)、神経学的異常(17/49、35%)、多渇/多尿(10/49、20%)だった。肝性脳症と思われる神経学的障害は28/49(57%)の犬の入院中のある時点で発症した。高ビリルビン血症と血清肝酵素活性上昇の他に出現した一般的な臨床病理異常は、血小板減少(25/49、51%)、低アルブミン血症(23/49、46%)、白血球増加(17/49、34%)、貧血(14/49、29%)、低カリウム血症(13/49、27%)、低血糖(10/49、20%)だった。ALFの原因は、腫瘍(13/49、27%)、レプトスピラ症疑い(4/49、8%)、虚血(1/49、2%)が含まれた。残りの症例は特発性だが、それらのうち15頭は潜在的肝細胞毒に暴露されていた。
肝臓の病理検査を受けた35/49(71%)の犬の一般的な病変は、壊死(19/39、48%)、リピドーシス(16/39、41%)、空胞変性(7/49、14%)、炎症(4/49、8%)などだった。合併症は腹水(20/49、41%)、出血傾向(14/49、29%)、膵炎(12/49、24%)、急性尿細管壊死(11/49、22%)だった。7頭(14%)の犬は生きて退院した。生存犬はALT活性がより高く、正常なアルブミン濃度を維持していることが多く、入院中に臨床的出血あるいは腹水を発症しなかった。

結論:犬の急性肝不全は複数の原因と関係し、高い死亡率を示す。生存性を上げる計画が至急に求められる。(Sato訳)
■犬の胆泥:200頭の超音波と臨床所見
Gallbladder Sludge in Dogs: Ultrasonographic and Clinical Findings in 200 Patients.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 May-Jun;52(3):125-31.
Audrey K Cook , Anisha V Jambhekar , Allison M Dylewski

犬の胆嚢(GB)の超音波検査中にエコー源性の内容物に気付くことが多いが、胆泥の重要性はよくわかっていない。

獣医学校で実施された連続200の超音波検査中にGB内容物を評価し、1-5スケールで胆泥を定量化した。GBの容積は保存した画像から算出した。医療記録は犬の個体群統計、臨床病理所見、診断/障害の判定に用いた。多くの犬(66.5%)にはGB内にいくらかの高エコーの物質があった。4頭の犬は粘液嚢胞と診断した。

統計学的目的に対し、均一な非エコー源性の胆汁あるいは最少の泥の犬(80.5%)は、>25%の泥がある犬(17.5%)と比較した。>25%の泥がある犬は、最少の泥の犬よりも有意に年齢が高かった(8歳に対し11歳)。血清コレステロールとビリルビン濃度およびALP、GGT活性は、胆泥の有無と関係なかった。自然発生の副腎皮質機能亢進症あるいは甲状腺機能低下症の犬には、>25%の泥がある確率が高かった(オッズ比5.04)。また、>25%の泥はGB容積の増加には関係し、このことは胆嚢の機能あるいは収縮性の変化が胆泥の形成に影響するかもしれないと示唆している。(Sato訳)
■犬の胆汁嘔吐症候群:20症例の回顧的研究(2002-2012)
Bilious Vomiting Syndrome in Dogs: Retrospective Study of 20 Cases (2002-2012).
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 May-Jun;52(3):157-61.
Leah Ferguson , Sara A Wennogle , Craig B Webb

胆汁嘔吐症候群(BVS)は病歴として早朝に胆汁を嘔吐する状態であるが、その他の特徴は不十分である。嘔吐は粘膜刺激を起こす胃腔への十二指腸液の逆流により起こると考えられる。

コロラド州立大学獣医教育病院(CSUVTH)の医療記録を、2002年から2012年の間の“犬”と“胆汁嘔吐症候群”で検索した。眼による精査で症例病歴中のBVSの診断を確認した。17症例において診断は病院で犬と接触中の間もBVSのままだった。

治療は食事回数を増やす、夜遅くに給餌する、制酸薬、消化管運動促進剤、胃保護薬などだった。12頭の犬は治療で改善した。5頭は改善しなかった、あるいは追跡できなかった。3頭の猫のBVSの診断は、胃腺癌、食餌の無分別、肝障害に変更となった。BVSの診断に最もなりやすかった患者は、胆汁嘔吐の慢性的病歴を持つ若い、雑種、去勢したオス犬と思われる。治療の反応は、異常な消化管運動性、局所胃炎、胃のpH、あるいは嘔吐中枢の刺激がBVSの重要な因子かもしれないと示唆する。まれにBVSと診断される犬は、除外診断としてそれを確認する十分な診断評価を受けた。(Sato訳)
■肝疾患の犬と猫に対する栄養の検討
Nutritional Considerations for Dogs and Cats with Liver Disease.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jan-Feb;52(1):1-7.
Rebecca D Norton; Catherine E Lenox; Paul Manino; James C Vulgamott

犬と猫の肝疾患の栄養管理の目的は、基礎にある原因の治療と対照的に臨床症状を治療することに向けられている。特に臨床医はダメージを受けた肝臓に残っている代謝能力を痛めつけることを避けることに力を注ぎ、一方で再生に対し十分な栄養を提供する。犬と猫に見られる肝疾患と関連する臨床症状の簡単な概要および特定栄養の概説を、肝疾患における栄養学的目標を達成するため推奨される栄養量と栄養源と共に論じる。(Sato訳)
■犬の肝外門脈体循環シャントの形態と臨床症状の関連性:53症例(2009-2012)
Analysis of the relationship of extrahepatic portosystemic shunt morphology with clinical variables in dogs: 53 cases (2009-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Sep 1;245(5):540-9. doi: 10.2460/javma.245.5.540.
Kraun MB, Nelson LL, Hauptman JG, Nelson NC.

目的:種々の形態の肝外門脈体循環シャント(EHPSSs)の犬の中で、臨床的変数の違いを調査する

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:EHPSSsの犬53頭

方法:3年間の間にEHPSSの術前CT血管造影を行った犬のカルテを再検討した。臨床的変数とシャントの形態の関連を調査するため解析した。個別と共にいくつかのグループで形態を解析した。

結果:シャントの形態は脾後大静脈(10)、脾横隔膜(9)、脾奇静脈(11)、右胃-後大静脈(10)、右胃-後大静脈と尾側ループ(12)、右胃-奇静脈と尾側ループだった。EHPSSに関するいくつかの生化学変数は、脾後大静脈シャントの犬で最も低かった。術前の臨床症状は、右奇静脈(7/12[58%])よりも後大静脈(36/41[88%])に入るシャントの犬の方によく見られ、横隔膜(14/21[67%])より肝臓尾側(29/32[91%])に入る方がよく見られた。神経症状は他の部位(6/21[29%])よりも後大静脈肝臓尾側(21/32[66%])に入るシャントの方がより多く見られ、脾後大静脈シャントで最も多かった。尿路症状は胃脾静脈起源(10/30[33%])よりも右胃静脈起源(14/23[61%])のシャントの方によく見られた。

結論と臨床関連:脾後大静脈シャントは、他のシャント形態よりも多くの臨床的異常を引き起こした。尾側後大静脈(特に肝臓尾側)に入るシャントの犬はより臨床症状を示す可能性が高いことを結果は示唆した。(Sato訳)
■肝胆道外科の現在のコンセプト
Current Concepts in Hepatobiliary Surgery.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2015;45(3):463-75.
Harry W Boothe, Jr

コンパニオンアニマルで実施される最も一般的な肝臓の処置は、肝臓バイオプシーと部分的肝切除である。
胆道の外科では胆嚢が関与することも多いが、胆管の外科的介入も行われるかもしれない。肝胆道の外科手術は重大な全身疾患や致死的合併症の可能性がある患者で実施され、困難なことも多い。

領域解剖の詳細な理解、患者管理のチームコンセプトの使用(特に部分的肝切除を行う患者に対し)、そして集中的な周術期モニタリングとサポートの準備は合併症を最小に、結果を最大にするのに役立つ。(Sato訳)
■先天性門脈体循環シャントの現在のコンセプト
Current Concepts in Congenital Portosystemic Shunts.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 2015;45(3):477-87.
Kelley M Thieman Mankin

先天性門脈体循環シャント(CPSS)は門脈血が肝臓を迂回し、体循環につながる血管異常である。術前にCPSSを診断とうまくいけばシャントの解剖学的位置を特定するために血液検査や画像検査を実施する。小型犬種や大型犬種においてCPSSは異なる位置で見つかる可能性がある。ほとんどのCPSSは外科的に一番よく管理される。

CPSSの外科的管理の目標は、門脈高血圧を避けながら、シャント血管から血液を門脈系にゆっくりと向けなおすことである。多くの術式が利用でき、開放性や腹腔鏡および塞栓術のような低侵襲のものもある。(Sato訳)
■肝細胞癌のあるスコティッシュテリアと肝細胞癌のないスコティッシュテリアにおける進行性空胞性肝障害の臨床特性
Clinical features of progressive vacuolar hepatopathy in Scottish Terriers with and without hepatocellular carcinoma: 114 cases (1980-2013).
J Am Vet Med Assoc. October 1, 2014;245(7):797-808.
Catherine C Cortright; Sharon A Center; John F Randolph; Sean P McDonough; Kellie A Fecteau; Karen L Warner; Ann M Chiapella; Rhonda L Pierce; A Heather Graham; Linda J Wall; John H Heidgerd; Melisa A Degen; Patricia A Lucia; Hollis N Erb

目的:肝細胞癌(HCC)のある、またはない進行性空胞性肝障害(VH)のスコティッシュテリアにおけるシグナルメント、臨床特徴、臨床病理変数、肝臓超音波特徴、内分泌プロフィール、治療反応、死亡年齢の特徴を述べる

計画:回顧的ケースシリーズ

動物:進行性VHのスコティッシュテリア114頭

方法:1980年から2013年までの電子データベースで、びまん性グリコーゲン様VHと病理組織診断を受けた年齢1歳以上の成犬のスコティッシュテリアを検索した。入手できる肝臓標本の切片でHCCがある、またはないびまん性VHを確認するため、組織学的に再評価した;HCCのある8頭のみが腫瘍性組織を利用できた。身体検査、組織病理、治療、生存データを得た。

結果:114頭中39頭(34%)の犬が手術あるいは検死時、または腹部超音波検査で検出したHCCがあった。組織所見は、HCCが見たところ形成異常の肝細胞病巣ののちに起こると示した。HCCのある、またはないVH罹患犬の間で臨床病理値、死亡年齢に有意差は見つからなかった。肝臓の銅濃度の高い犬26頭中15頭(58%)に、銅関連肝障害に一致する組織学的特徴があった。副腎皮質機能亢進症に一致する症状が40%(46/114)の犬に観察されたが、確定診断は一貫性のないものだった。ACTH投与前後の副腎性ホルモン濃度の評価は、検査した犬の88%(22/25)で高プロゲステロン、80%(20/25)の犬が高アンドロステンジオンだった。

結論と臨床関連:結果はスコティッシュテリアのVHは副腎ステロイドの産生とHCCの疾病素因に関係するかしれないと示唆した。VHの犬において、早期腫瘍検出のために頻繁な血清生化学検査及び超音波検査が勧められる。(Sato訳)
■犬における細菌性胆管炎、胆嚢炎、またはその両方
Bacterial Cholangitis, Cholecystitis, or both in Dogs.
J Vet Intern Med. 2016 May 20. doi: 10.1111/jvim.13974. [Epub ahead of print]
Tamborini A, Jahns H, McAllister H, Kent A, Harris B, Procoli F, Allenspach K, Hall EJ, Day MJ, Watson PJ, O'Neill EJ.

背景 細菌性の胆管炎および胆嚢炎は報告が稀で、犬においてあまりわかっていない病気である。

目的 これらの疾患の臨床的な特徴を明らかにすること

動物 細菌性胆管炎、胆嚢炎またはその両者のあった27頭の飼い犬

方法 2000年1月から2011年6月に4か所のVeterinary Schools in Ireland/United Kingdomに来院した、細菌性胆管炎、胆嚢炎またはその両者の犬の多施設、回顧的症例研究。カルテの調査で、病理組織学的に胆管炎または胆嚢炎と確定され、胆汁の培養や細胞診の結果が細菌の関与を支持している、という組み入れ基準を満たしている全症例を確認した。

結果 研究期間に得られた約460頭の肝炎の症例で組み入れ基準を満たしたのは27頭であった。典型的な臨床病理学的所見は、肝酵素活性の上昇、高ビリルビン血症、炎症性の白血球像であった。特異的ではなかったが、超音波所見によって26頭中25頭において診断を決める助けとなった。もっともよく分離された肝胆道系の細菌は、Escherichia coli(n=17, 16頭)、Enterococcus spp.(n=8, 6頭)、Clostridium spp.(n=5, 5頭)であった。抗菌薬耐性は、好気性菌の重要な特徴であった。16の分離されたE. coliのうち10が、3つ以上の抗菌薬のクラスに耐性であった。胆管の破裂が約1/3の症例において認められ、明らかに致死率と関連していた(8頭中4頭)。退院した犬は、要注意からよい予後であった。2ヶ月の時点で18頭中17頭は生存しており、再評価した10頭中5頭は2-12ヶ月後に肝酵素は持続的に上昇したままであった。

結論と臨床的意義 細菌性胆管炎と胆嚢炎は、現在の文献で書かれているより多く発生し、黄疸、発熱、腹痛、炎症性の白血球像や胆嚢の異常を示すような超音波所見があるときに考慮するべきである。(Dr.Taku訳)
■中程度の漏斗胸の1頭の猫における肝臓の外側左葉捻転
Left lateral liver lobe torsion in a cat with moderate pectus excavatum.
J Feline Med Surg. 2015;0(0):.
Georg Haider; Zelimir Dokic; Birgitt Petritsch; Dragan Lorinson

6歳、体重3.1kgの避妊済みメスの家猫短毛の猫が2日間の食欲不振で紹介されてきた。身体検査で漏斗胸(PE)は明らかで、腹部頭側にマスを触知した。血清生化学検査で肝酵素の重度上昇が見られた。エックス線検査でPEは中程度のグレードで、5x3cmの軟部組織のマスが腹部頭側に見られた。デュプレックス超音波検査で、マスは脈管血栓を伴う拡大した肝葉と確認した。

肝葉捻転(LLT)の診断を外科的に確認し、外側左葉は切除した。1か月と6か月に行った経過観察で臨床検査あるいは血清生化学検査で更なる異常は見つからなかった。

経過観察の検査で、より年を取った動物で必須ではない中程度PEの治療を必要とするような、いかなる臨床症状もPEは引き起こしていないと思われた。

これはPEを併発したLLTの最初の報告で、外科的にLLTを治療した2個目の猫の症例である。PEにより横隔膜に解剖学的異常を持つ動物は、LLTを発症するリスクが高いのかもしれない。LLTの早期診断と外科的介入は、さらなる影響もなく良好な臨床結果を得ることができる。(Sato訳)
■4週齢の1頭のパグに見られた肝外胆道閉鎖
Extrahepatic biliary atresia in a 4-week-old pug.
Vet Surg. January 2015;44(1):35-40.
Cetina Thiel; Sarah Steinbach; Martin Schmidt; Kerstin Amort; Nanette Zahn; Martin Kramer; Andreas Moritz

目的:1頭の犬に見られた肝外胆道閉鎖の診断および外科療法を報告する。

研究計画:臨床報告

動物:犬1頭

方法:4週齢のメスのパグが、無胆汁性の便、元気消失、あまり体重が増えない状態を呈した。便の色と腹部超音波所見を基に、肝外胆道閉鎖を疑った。術中、大十二指腸乳頭が確認されず、胆嚢十二指腸吻合を実施した。

結果:術後1日目の便の色は正常と考えられた。術後6か月目の超音波検査で、胆嚢は小さいまま、瘻は機能していた。10か月後の血清生化学値はALTの軽度上昇(149U/L;参照範囲(RI)、0-85U/L)を示したが、ALPおよびグルタミン酸デヒドロゲナーゼは正常範囲内だった。
15か月経過時、臨床検査は正常で、血中アンモニア濃度は正常範囲内(43μmol/l;RI:<100μmol/l)だったが、胆汁酸濃度は顕著に上昇したままだった(絶食、95μmol/l(RI:<20μmol/l)から食後、127μmol/l(RI:<35μmol/l))。

結論:肝外胆道閉鎖に超音波検査と便の色は非侵襲性の診断的裏付けをとるのに有効である。非常に若い犬でも胆嚢十二指腸吻合による外科的修正は良好な臨床結果を得ることができる。肝外胆道閉鎖の犬の長期予後は不明である。(Sato訳)
■犬猫の急性肝不全
Acute liver failure in dogs and cats.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2015 Jul;25(4):455-73. doi: 10.1111/vec.12304. Epub 2015 Apr 16.
Weingarten MA, Sande AA.

目的:急性肝不全(ALF)の定義、ヒトと動物の文献の再検討、獣医と人医でのALFに対する病因と診断、治療オプションにおける現行のコンセプトを論じる

病因:獣医療において、肝毒素暴露、感染性病原体、炎症性疾患、外傷、低酸素傷害が一般的なALFの原因である。

診断:過去に肝疾患が見つかっていない急性肝傷害の進行、高ビリルビン血症(血漿ビリルビン>50μM/L(>2.9mg/dl))の発現から8週間以内に起こる全てのグレードの肝性脳症の発症、凝固障害の存在が見られたときは、患者はALFと考えられるかもしれない。診断検査はより特異的に肝機能不全を特徴づけるか、あるいは病理検査を必要とすることも多い。

治療:欠陥のある肝臓を助ける支持療法、肝臓の喪失した機能の代償はALFの患者の治療の基礎である。体外肝臓補助装置や移植のような先進治療は人医で現在利用可能である。

予後:ALFの予後は病因、肝臓のダメージの程度、治療への反応に依存する。獣医療では予後は一般に悪い。(Sato訳)
■犬の肝性脳症の想定される増悪因子:118症例(1991-2014年)
Putative precipitating factors for hepatic encephalopathy in dogs: 118 cases (1991-2014).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Jul 15;247(2):176-183.
Lidbury JA, Ivanek R, Suchodolski JS, Steiner JM.

目的 血漿アンモニア濃度と肝性脳症の重症度との関係を明らかにし、人の肝性脳症を起こすような因子が、疾患を治療された犬において肝性脳症の臨床症状が存在することと関連するかについて明らかにする。
デザイン 回顧的症例研究

動物 肝性脳症の118頭の犬

方法 1991年10月1日から2014年9月1日に肝性脳症と診断された犬の記録について獣医教育病院のカルテ情報を調べた。肝性脳症の重症度は、5ポイントスケールでグレード分けし、疾患の重症度と血漿アンモニア濃度の関連を調べた。肝性脳症と全身性炎症反応性症候群、消化管出血、食事の選り好み、便秘、フロセミド治療、尿毒症、低カリウム濃度、低ナトリウム濃度、アルカローシス、高アンモニア血症の関連について、フィッシャーの正確確率検定、多変量ロジスティック回帰分析で検討した。

結果 来院時の肝性脳症の重症度は、血漿アンモニア濃度とは有意に相関していなかった。来院前に肝性脳症の治療を受けていた犬は、そうではない犬と比較して、来院時の疾患の臨床症状を示している可能性は有意に低かった(オッズ比 0.36, 95%信頼区間 0.17-0.78)。来院時の臨床症状が存在することと有意に関連する肝性脳症の増悪因子は認められなかった。

結論と臨床的意義 肝性脳症の治療は臨床症状を緩和することを示している。犬の肝性脳症の増悪因子を同定するためにはさらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■犬における細菌性胆嚢炎と細菌性胆汁の特徴、治療、転帰について
Characterization, treatment, and outcome of bacterial cholecystitis and bactibilia in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2015 May 1;246(9):982-9. doi: 10.2460/javma.246.9.982.
Lawrence YA, Ruaux CG, Nemanic S, Milovancev M.

目的 犬における細菌性胆嚢炎と細菌性胆汁の病歴、臨床病理学的、超音波検査、微生物学的、外科的、病理組織学的な特徴を明らかにし、これらの症例において治療に対する反応と転帰について評価すること。

研究デザイン 回顧的症例対照研究

動物 2010年から2014年の間に獣医教育病院で評価した40頭の飼い犬(組織学的に細菌性胆嚢炎と判断した、または細胞学的な検査により細菌性胆汁であった10頭(症例)と細菌性胆汁ではない30頭(コントロール))

方法 症例犬について、シグナルメント、病歴、臨床病理学的所見、超音波検査所見、微生物学検査、手術所見、病理組織学的変化、治療、転帰についてカルテを調べてまとめた。統計的および臨床病理学的なデータおよび超音波検査所見は、症例とコントロール犬の間で比較した。来院前の抗生物質治療、胆嚢内の胆砂の形成、動きのない胆泥があるか、細菌性胆汁や細菌性胆嚢炎の存在の関係を評価した。

結果 犬における細菌性胆汁や細菌性胆嚢炎の特徴となるような所見はなかった。症例犬は、動きのない胆泥をもっていることが多いようにみえ、またコントロール犬よりも胆管内胆砂形成がより重度であった。胆嚢を病理組織学的に検査したすべての犬(6/6)は細菌性胆嚢炎をもっていた。10頭のうち5頭がダックスフンドだった。内科的または外科的な治療の予後はよかった。

結論と臨床的意義 細菌性胆汁と細菌性胆嚢炎は、胆管疾患による症状のある犬において重要な鑑別診断であった。ダックスフンドの発生が多かったが、これは好発犬種ということなのかもしれない。動きのない胆泥がある場合、肝胆道系疾患を持つ犬を日常的に評価する際に、胆汁の細胞学的検査を考慮するべきである。(Dr.Taku訳)
■犬の肝内門脈体循環シャントの血管内評価と治療:100症例(2001-2011)
Endovascular evaluation and treatment of intrahepatic portosystemic shunts in dogs: 100 cases (2001-2011).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Jan 1;244(1):78-94. doi: 10.2460/javma.244.1.78.
Weisse C, Berent AC, Todd K, Solomon JA, Cope C.

目的:犬の肝内門脈体循環シャントの血管内治療後の短期および長期結果を評価する

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:犬100頭

方法:全ての犬には血管内シャント減衰した、またはしなかった血管造影評価があった。犬のデータ、合併症、結果、生存期間に関して医療記録を再調査した。

結果:先天性肝内門脈体循環シャントの犬95頭は111回の処置を受けていた(1処置83%(79/95)、2処置以上17%(16/95);5頭は門脈-中心静脈圧較差が大きいため処置なし)。血管造影で38頭は右、33頭は左、19頭は中心区分単一シャント(n=90)と10頭は複合あるいは複数シャントを確認した。92頭の犬は大動脈ステント設置とシャント内への血栓形成性コイルの挿入で部分的シャント減衰を実施し、3頭は完全急性シャント閉塞を実施した。メジャーな術中合併症(3/111(3%))は、2頭の犬の一時的重度門脈圧亢進で、1頭の消化管出血だった。メジャーな術後(術後<1週間)合併症(14/111(13%))は発作あるいは肝性脳症(7/111(6%))、心停止(2/111(2%))、頚静脈部出血(2/111(2%))、肺炎(1/111(1%))、門脈圧亢進の疑い(1/111(1%))、急死(1/111(1%))だった。追跡調査の中央値は958日(範囲、0-3411日)だった。治療した犬の生存期間中央値は2204日(範囲、0-3411日)だった。治療した犬86頭中70頭(81%)の結果は、優良(57/86(66%))あるいはまずまず(13/86(15%))だった。

結論と臨床関連:犬の肝内シャントの血管内治療は、低い罹病率および死亡率で、過去の報告された開放手術法の結果と比べて同じような成功率だと示唆された。この集団の中で胃腸の潰瘍は一般的な所見であり、現在、終生の胃保護剤が推奨される。(Sato訳)
■小動物における肝胆道疾患への検査所における診断アプローチ
A laboratory diagnostic approach to hepatobiliary disease in small animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2013;43(6):1209-25, v.
Seth E Chapman; Roger A Hostutler

犬と猫の肝胆道疾患の確認に対し、通常の生化学検査は一般に、血清酵素、蛋白、他の有効なマーカーが含まれる。参照値範囲外の結果は、直接の肝細胞傷害、肝細胞や胆道上皮による酵素誘導、あるいは肝機能低下で起こり得る。しかし、生化学異常の検出は必ず臨床的に重要な疾患を示すわけではない。肝胆道疾患の検出および治療に対する包括的アプローチのために、検査結果は病歴および身体検査所見、診断的画像検査、他の分析と相関させるべきである。(Sato訳)
■犬の肝疾患に対する機能性食品:エビデンスの評価
Nutraceuticals for canine liver disease: assessing the evidence.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2013;43(5):1171-9.
Jean-Michel Vandeweerd; Carole Cambier; Pascal Gustin

機能性食品あるいは栄養サプリメントは、犬の肝疾患の補助的治療に対して促販されている。しかし、S-アデノシルメチオニン、シリマリン、ビタミンEのような一般的に使用される機能的食品についての科学的文献で最小限の情報しか得られない。犬の肝疾患における肝保護剤のような、それらの物の効果に関する強い臨床的エビデンスは存在しない。このエビデンスが出てくるまで、個々の獣医師は肝疾患の犬に栄養サプリメントを使用するという決断に責任を持つべきである。(Sato訳)
■CTによる先天性肝外門脈体循環シャントの犬のアメロイドリングの生体内挙動の評価
Evaluation of in vivo behavior of ameroid ring constrictors in dogs with congenital extrahepatic portosystemic shunts using computed tomography.
Vet Surg. October 2014;43(7):834-42.
Geraldine B Hunt; William T N Culp; Kelli N Mayhew; Philipp Mayhew; Michele A Steffey; Allison Zwingenberger

目的:犬の先天性肝外門脈体循環シャントのアメロイドコンストリクターの生体内閉鎖パターンを評価する
試験計画:前向き研究

動物:先天性肝外門脈体循環シャントの犬22頭

方法:アメロイドリングの設置直前、最低8週間後に造影CT検査を実施した。プラスチックに包まれたアメロイドコンストリクターを17頭で使用し、金属コンストリクターを5頭で使用した。門脈体循環シャントを通る残存血流の存在、追加の異常血管、後天性シャントとアメロイドコンストリクターに関係する軟部組織を記録した。17のプラスチックコンストリクターについて術後の内径を記録した。内径と術前術後の血清プロテイン濃度との関連を調べた。

結果:アメロイドコンストリクターが完全に閉じたものはなかった:常にシャントの閉鎖はアメロイドリング内の軟部組織に依存した。シャントの残存血流は4頭の犬に存在した(18%)が、これがシャント分画の持続的上昇を起こしたのは1頭だけだった。アメロイドコンストリクター内径の変化と血清蛋白濃度に有意な関連はなかった。

結論:アメロイドコンストラクター設置後の完全なシャント閉鎖は、通常軟部組織反応に依存する。直径5mm以上のアメロイドコンストリクターは、完全なシャント閉鎖に促進させないかもしれない。(Sato訳)
■ウルソデオキシコール酸を投与した健康な犬の血清肝プロフィールの評価
Assessment of serum hepatic profiles of healthy dogs receiving ursodeoxycholic acid
Aust Vet Pract. June 2013;43(2):410-413. 14 Refs
R Lucena; S Guil-Luna; B Blanco; P J Ginel

ウルソデオキシコール酸(UDCA)は、犬の胆汁に微量に存在する胆汁酸である。ウルソデオキシコール酸は、その利胆、肝保護、免疫調節特性により肝障害の犬に投与されている。

この研究はウルソデオキシコール酸の投与が、健康な犬の血清生化学変数に変化をもたらすかどうかを調査した。

ウルソデオキシコール酸を12頭の健康な犬に15日間、15mg/kg1日1回経口投与で投与した。胆汁酸、総ビリルビンの血清濃度、ALT、AST、ALP、GGTの活性を投与の1、7、15日目に測定した。

研究中にどの犬にも臨床的副作用は見られなかった。各タイムポイントの全ての平均濃度、血清変数の活性は参照範囲内を維持した。平均血清総ビリルビン濃度は1日と比べ15日目で有意に低かった(P=0.007)。平均血清ASTおよびGGT活性は15日目で有意に増加した(それぞれP=0.042、P=0.028)。

12頭の健康な犬において、15日間のウルソデオキシコール酸1日1回15mg/kgでの投与は、いくつかの血清生化学変数の濃度と活性に統計学的に有意な変化を誘発したが、全ての変数は参照範囲内を維持した。

このように、ウルソデオキシコール酸を投与した犬に見られる濃度と活性の変化は、健康な犬で期待される直接の薬剤効果以外の何かを反映するかもしれない。(Sato訳)
■犬における胆嚢粘液嚢腫と高脂血症の関連:回顧的ケースコントロール研究
The association between gall bladder mucoceles and hyperlipidaemia in dogs: A retrospective case control study.
Vet J. 2013 Oct 26. pii: S1090-0233(13)00533-9. doi: 10.1016/j.tvjl.2013.10.019.
Kutsunai M, Kanemoto H, Fukushima K, Fujino Y, Ohno K, Tsujimoto H.

犬における胆嚢粘液嚢腫 (GM) の診断は獣医療域において頻度が増加しつつある。原発性の犬種特異的な高脂血症は、シェットランドシープドッグ、ミニチュアシュナウザーにおいて報告されており、これらの犬種において他の犬よりもGMがより起こりやすいということが知られている。

本研究の目的は、犬のGMと高脂血症の関連について評価することである。

この研究デザインは、回顧的ケースコントロール研究である。東京大学動物医療センターにおいて2007年4月1日から2012年3月31日の間にGMと診断された犬のカルテを調査した。

GMがあり、血清コレステロール、トリグリセリド、または血糖値のどれかの記録が残っている58頭の犬を用いた。高コレステロール血症(37症例中15例、オッズ比 (OR):2.92、95%信頼区間[CI] 1.02-8.36)と高トリグリセリド血症(24症例中13例、オッズ比 (OR):3.55、95%信頼区間[CI] 1.12-15.91)がGMと有意に関連していた。ポメラニアン(OR: 10.69)、アメリカンコッカースパニエル(OR: 8.94)、シェットランドシープドッグ(OR: 6.21)、ミニチュアシュナウザー(OR: 5.23)、チワワ(OR: 3.06)が有意にGMに罹患しやすかった。58症例のうち39頭は、膵炎(5例)、副腎皮質機能亢進症(2例)、甲状腺機能低下症(2例)といった少なくとも一つ以上の併発症をもっていた。

GMと高脂血症の間には有意な相関が認められ、高脂血症がGMの病態に役割を果たしている事が推察された。(Dr.Taku訳)
■犬の慢性肝炎に対する経口プレドニゾロン治療の回顧的研究
A retrospective study of oral prednisolone treatment in canine chronic hepatitis.
Vet Q. 2013 Aug 13.
Favier RP, Poldervaart JH, van den Ingh TS, Penning LC, Rothuizen J.

背景: 原因物質に関係なくプレドニゾロンが慢性肝炎に罹患した犬の生存を長くするという研究報告は1つしかない。この回顧的研究の目的は、36頭の特発性慢性肝炎の生存、臨床病理変化、そして組織学的グレードとステージに関するプレドニゾロン治療の効果を観察することだった。

動物と方法: 原発性銅蓄積と関連のない慢性肝炎に罹患した36頭(中央年齢: 8.6 歳; 範囲: 2.0-14.6歳)のプレドニゾロンで治療した犬の臨床記録を概説した。臨床病理結果は20頭の犬でプレドニゾロン投与(1 mg/kg BW/day)の前後でペアワイズ法での相関を解析した。少なくとも6週間治療し、生検で肝炎が依然として存在していればさらに6週間治療した。臨床結果や生存時間(カプラン・マイヤー推定法)に関係する追跡データを解析した。

結果:経過の時点で、11頭の犬は完全寛解、8頭の犬は臨床症状が再発し、17頭の犬は残存病変があった。治療にも関わらず、20頭の犬は肝炎関連性の原因で死亡した。肝硬変がない犬は有意に肝硬変がある犬に比べて長く生存した。初期診断で凝固障害があると診断したすべての10頭の犬において、プレドニゾロン治療は1週間以内に慢性特発性肝炎と関連した凝固障害を正常化した。

結論: プレドニゾロンは、部分的に肝炎において有益な効果があり、少なくともある症例では、それが繊維症の進行を抑制するかもしれず、それは早期診断と治療の重要性を強調するということを我々の所見は示している。我々は、肝硬変に罹患した犬へのプレドニゾロン治療には有益な効果は認められなかった。我々は、犬の慢性特発性肝炎に関連した凝固障害に対するプレドニゾロン治療の非常に好ましい効果を文書化することが出来た。(Dr.Kawano訳)
■犬における胆嚢疾患と胆嚢破裂と関連した臨床的、超音波検査そして血液検査所見:45症例
Clinical, ultrasonographic, and laboratory findings associated with gallbladder disease and rupture in dogs: 45 cases (1997-2007).
J Am Vet Med Assoc. 2009 Feb 1;234(3):359-66. doi: 10.2460/javma.234.3.359.
Crews LJ, Feeney DA, Jessen CR, Rose ND, Matise I.

目的: 犬における胆嚢疾患と胆嚢破裂と関連した臨床的、超音波検査そして血液検査所見を認識すること

デザイン:回顧的症例シリーズ

動物:45頭の飼い主所有の犬

方法:超音波検査を行い、組織学的に胆嚢疾患であると確定した犬のカルテを概説した。シグナルメント、病歴、診療兆候、血液検査結果、胆汁の細菌培養、手術あるいは剖検(無傷あるいは破裂)時の胆嚢の状態、組織病理学的所見、レントゲン所見、超音波所見そして予後を分析した。


結果:最も一般的な超音波所見はエコー源性腹水、肥厚あるいは薄層した胆嚢壁、そして胆嚢窩のエコー源性反応であった。45頭中18頭(40%)の犬は胆嚢破裂をしていた。破裂は胆嚢壊死の組織所見、レントゲン的に漿膜のディテールが減少し、超音波的に胆嚢周囲のエコー源性反応、胆嚢周囲のエコー源性液体そして全体的な腹水と関連した。45頭中21頭(47%)の犬は粘液嚢腫で、それらのうち9頭(43%)は胆嚢破裂であった。40頭中11頭は細菌培養で陽性であり、それらのうち5頭は胆嚢破裂であった。たった2頭は細菌性胆汁培養と胆嚢粘液嚢腫が同時に陽性であった。生存率は86%で術前での胆汁漏出、細菌培養の陽性結果あるいは粘液嚢腫とは明らかな関連はなかった。

結論と臨床重要性:胆嚢周囲反応の超音波検査所見、局所的あるいは全身的エコー源性腹水あるいは減少したレントゲン検査における腹腔のディテールは胆嚢破裂を疑う鑑別が上昇する。粘液嚢腫あるいは細菌性胆嚢感染は胆嚢破裂の犬において最も一般的に併発する所見だった。(Dr.Kawano訳)
■日本のアメリカンコッカースパニエルの慢性肝炎
American Cocker Spaniel Chronic Hepatitis in Japan.
J Vet Intern Med. 2013 Jun 19. doi: 10.1111/jvim.12126.
Kanemoto H, Sakai M, Sakamoto Y, Spee B, van den Ingh TS, Schotanus BA, Ohno K, Rothuizen J.

背景 アメリカンコッカースパニエルは慢性肝炎になりやすい

目的 日本のアメリカンコッカースパニエルにおける慢性肝炎の臨床的および組織学的特徴を明らかにすること

動物 2003年から2009年の13症例

方法 後向き研究。慢性肝疾患のあるアメリカンコッカースパニエルについてカルテを調査した。病歴、身体検査所見、臨床病理学的特徴、肝臓の超
音波検査所見、肝臓の病理組織学、免疫染色について評価した。

結果 年齢の中央値は4.6歳(1.9-10.7歳)であった。臨床症状は、食欲低下 (11/13)、腹水 (11/13)、元気低下(9/13)、下痢 (7/13)、黒色便(2/13)が認められた。13頭中1頭にのみ黄疸が認められた。臨床病理学的な異常は、肝酵素の上昇(12頭中9頭でGGTの異常、10頭中7頭でASTの異常、13頭中6頭でALTの異常、13頭中6頭でALPの異常)、血清胆汁酸濃度の上昇(12頭中10頭)、低アルブミン血症(13頭中10頭)であった。肝臓は、全ての犬において表面が不整であり、13頭中11頭において、腹部超音波検査(2例)、腹腔鏡(4例)またはその両方(5例)により後天性の門脈体循環シャントが確認された。肝臓の病理組織では、全ての症例において重度の線維化と肝硬変が確認され、さらに小葉離断性肝炎(7例)、門脈周囲線維化(1例)、小結節性肝硬変(3例)、大結節性肝硬変(2例)に分類できた。炎症の活動性は、軽度から中等度であった。免疫組織化学染色によって胆管の増生が明らかとなった。生存期間の中央値は、913日(範囲 63-1981日)であった。

結論と臨床的意義 日本のアメリカンコッカースパニエルの肝炎は、ステージが進行するまで、臨床的には無症状であり、肝硬変、重度の胆管増生/おそらくは肝前駆細胞の増殖、門脈高血圧、後天性の門脈体循環シャントになるような重度の肝臓の線維化と関連していたが、比較的長期間の生存が認められた。小葉離断性肝炎は、他の国で以前に報告されている症例より、より一般的であるようにみえる。(Dr.Taku訳)
■犬の肝疾患における肝臓の超音波検査所見と病理組織学的診断の比較:138例
A Comparison of Hepatic Sonographic Features and Histopathologic Diagnosis in Canine Liver Disease: 138 Cases.
J Vet Intern Med. 2013 May 6. doi: 10.1111/jvim.12091.
Kemp SD, Panciera DL, Larson MM, Saunders GK, Werre SR.

背景:超音波検査は、犬の肝疾患の診断評価において一般的に使用される。

仮説と目的:肝臓の超音波所見が、肝臓の病理組織学検査所見を予測できるかを決定すること。超音波検査所見と病理組織学的検査に基づく肝疾患の分類を結びつけることができると仮説をたてた。

動物:腹部超音波検査と病理組織学的検査の両方によって肝臓を評価された138頭の犬。25頭が、病理組織に基づいて、正常、変性、血管性、炎症性、腫瘍のどれかに分類された。13頭は再生性結節であった。

方法:後向き研究。病理組織検査と腹部超音波検査によって肝臓を評価した症例について、2005年から2010年のカルテを検索した。超音波所見を独立して評価した後、その超音波検査所見によって、それぞれの病理組織学的診断または線維化の程度に関連した異常を同定できるかについて解析した。

結果:超音波検査において大きな異常がなかった肝臓の64%に、病理組織学的な異常が認められた。小肝症と異常な血管が同定できるという両方が、血管系疾患の病理組織学的診断と有意に関連していた。肝臓の腫瘤は、腫瘍の診断と有意に関連していた。総胆管の拡張と胆嚢壁の肥厚は肝炎と有意に関連していた。肝線維化を示す一貫性のある超音波検査所見はなかった。

結論と臨床的意義:腫瘤、小肝症、異常な血管、胆管の変化といった超音波検査所見は特異的な病理組織学的な異常と関連していたが、こうした超音波検査所見は、多くの疾患において一貫性なく検出された。総じて、肝臓の超音波検査による異常によって潜在性疾患を予測するには相当な限界がある。(Dr.Taku訳)
■胆嚢粘液嚢腫と犬の内分泌疾患の関連:回顧的症例コントロール研究
Gall bladder mucoceles and their association with endocrinopathies in dogs: a retrospective case-control study.
J Small Anim Pract. 2009 Dec;50(12):630-5. doi: 10.1111/j.1748-5827.2009.00811.x.
Mesich ML, Mayhew PD, Paek M, Holt DE, Brown DC.

目的:回顧的症例コントロール研究を通して犬の内分泌疾患と胆嚢粘液嚢腫の診断の関連性を観察すること

方法:外科的あるいは超音波検査で胆嚢粘液嚢腫と診断した78症例の記録で、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症そして糖尿病の有無を検査した。胆嚢粘液嚢腫の犬と年齢と品種が適合した健常犬(合計156頭)が同じ併発疾患について検査した。条件付きロジスティック回帰で適合した症例とコントロール分析を実施した。

結果:副腎皮質機能亢進症に罹患した犬における粘液嚢腫のオッズは、副腎皮質機能亢進症に罹患していない犬の29倍(P=0.001; 95%信頼区間3.8, 219.9)であった。糖尿病に罹患している犬と罹患していない犬の間には違いがなかった。胆嚢粘液嚢腫と甲状腺機能低下症の間には有意な関連性が認められたが、可能性がある観察者バイアスも認められた。

結論と臨床重要性:肝胆道疾患の血液学的エビデンスがある急性疾患を呈した副腎皮質機能亢進症の犬は、胆汁性粘液嚢腫の存在を評価すべきである。胆嚢粘液嚢腫と診断した犬は、臨床的な疑いがあれば、併発する副腎皮質機能亢進症のためスクリーニング検査をすべきである。(Dr.Kawano訳)
■健康な猫における食前および食後の胆嚢容積の超音波検査による評価
Ultrasonographic evaluation of preprandial and postprandial gallbladder volume in healthy cats.
Am J Vet Res. October 2012;73(10):1583-8.
Alessia Diana; Carlo Guglielmini; Swan Specchi; Morena Di Tommaso; Marco Pietra; Marco Baron Toaldo; Mario Cipone

目的:健康な猫の胆嚢の体積(GBV)に対する標準食摂食の影響を非侵襲的に評価する

動物:健康な家猫短毛種10頭(4頭は避妊済み、5頭は去勢済み、1頭はオス)

方法:鎮静をかけていない猫を背側および左側横臥位にし、それぞれ肋骨下および右肋間音響窓から胆嚢の超音波検査による測定を行った。胆嚢の体積は直線測定値から楕円式(体積(ml)=長さ(mm)x高さ(mm)x幅(mm)x0.52)を用いて割り出した。12時間絶食後(0分)、50gの標準市販食(蛋白、44.3%;脂肪、30.3%;炭水化物15.6%(乾物%))を与えた後5、15、30、45、60、120分の測定値を記録した。

結果:肋骨下および右肋間窓から得られた胆嚢直線測定値あるいはGBVの一致性は良好だった。摂食は胆嚢直線測定値とGBVを直線的に減少させた。肋骨下および右肋間窓からの平均±SD胆嚢容積は、0分時でそれぞれ2.47±1.16mlおよび2.36±0.96mlで、120分時は0.88±0.13mlおよび0.94±0.25mlだった。胆嚢の幅が最も密接に食後のGBVの変化を反映していた。

結論と臨床的関連:猫においてGBVの食後変化の超音波検査による評価(肋骨下あるいは右肋間音響窓による)は、胆嚢収縮性の評価に使用できると結果は示した。それらのデータは異常に胆嚢が空になっている猫の確認に役立つだろう。(Sato訳)
■犬における限局性の肝臓の病変の超音波ガイドによるFNAの正確性:140症例(2005-2008年)
Accuracy of US-Guided FNA of Focal Liver Lesions in Dogs: 140 Cases (2005-2008).
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Mar 27. [Epub ahead of print]
Bahr KL, Sharkey LC, Murakami T, Feeney DA.


細胞診および病理組織学的なサンプル採取を行なった限局性の肝臓の病変(FLL)の検出について、2005年3月から2008年10月に腹部の超音波検査を実施した犬のカルテを調査した。各サンプルは、悪性腫瘍、炎症、過形成もしくは良性の腫瘍、空胞変性、髄外造血、胆汁鬱滞、壊死、顕微鏡的な異常なし、といった病理組織学的な進行を表す主な分類に当てはまるかどうかで分類した。選択のバイアスの評価は、病理組織学的所見が得られなかったために比較解析から除外した症例と比較することで、病理組織学的所見が得られた症例の細胞診による診断の相対分布を調査することで行なった。

細胞診の感度は、空胞変性について最も高く(57.9%)、次は腫瘍(52.0%)であった。細胞診は、腫瘍について最も陽性的中率(PPV)が高く(86.7%)、空胞変性がそれに続いた(51.6%)。細胞診は、炎症、壊死、過形成については、感度およびPPVがより低かった。犬のFLLについて細胞診によって疾患を同定できるかは病理組織学的な進行によって様々であった。

臨床医は、細胞診によって腫瘍の診断が得られたときには、自身をもってよいが、腫瘍の可能性を否定するためには細胞診はあまり信頼性がない。細胞診は、炎症についても感度とPPVが低く、空胞変性の診断には診断能は限られている。(Dr.Taku訳)
■猫の肝リピドーシスにおけるアディポカインの変動
Alterations in Adipokines in Feline Hepatic Lipidosis.
J Vet Intern Med. 2013 Mar 10. doi: 10.1111/jvim.12055.
Mazaki-Tovi M, Abood SK, Segev G, Schenck PA.

背景 猫の肝リピドーシス (HL)は、脂質と炭水化物の代謝の変化と関連している。アディポカインであるアディポネクチン、レプチンは、脂質を低下させ、インスリンの感受性をあげる効果がある。

仮説 猫のHLにおいて、アディポネクチンとレプチンの血清濃度が変化している。

動物 飼い主さんの所有する、55頭の健常猫と45頭の肝疾患の猫

方法 肝疾患の猫を、臨床症状、検査所見、腹部超音波検査に加えて、肝臓の細胞診、病理組織学的所見およびその両方に基づいて、HL(20頭)、HLおよび併発疾患(19頭)または他の肝疾患(6頭)に分けた。血清サンプルを収集し、ボディコンディションスコアを決定した。

結果 アディポネクチンの平均血清濃度は、健常猫(1.5μg/ml)と比較して、HLの過体重の猫(4.5μg/ml)、HLと併発疾患をもつ過体重の猫(4.4μg/ml)、他の肝疾患の過体重の猫(6.1μg/ml)においてより高かった (それぞれP<0.001、P<0.001、P=0.04)。レプチンの平均血清濃度は、健常猫(4.9μg/ml)と比較して、HLの猫(9.8μg/ml)やHLと併発疾患をもつ猫(10.7μg/ml)においてより高かった (それぞれP<0.001、P<0.001)。他の肝疾患の猫は、健常猫(4.9μg/ml)と同程度のレプチン濃度であった。肝疾患の猫において、アディポネクチンの濃度は、アラニンアミノトランスフェラーゼ活性と相関しており(r=0.40、P=0.0069)、レプチン濃度は、アルカリフォスファターゼ活性と相関していた(r=0.42、P=0.0051)。

結論と臨床的意義 猫のHLにおいてアディポネクチン濃度は変化している。レプチン濃度が増加していることはHLと特異的に関連しており、アディポネクチン濃度が増加している事と肝疾患は関連していた。(Dr.Taku訳)
■胆嚢粘液嚢腫に対して、胆嚢摘出術を実施した犬における臨床所見および予後因子
Clinical Findings and Prognostic Factors for Dogs Undergoing Cholecystectomy for Gall Bladder Mucocele.
Vet Surg. 2013 Jan 17. doi: 10.1111/j.1532-950X.2012.01072.x. [Epub ahead of print]
Malek S, Sinclair E, Hosgood G, Moens NM, Baily T, Boston SE.

目的 胆嚢粘液嚢腫に対して胆嚢摘出術を実施した犬における臨床所見および予後因子を明らかにすること

研究デザイン 後ろ向き症例シリーズ研究

動物 胆嚢粘液嚢腫のあった43頭の犬

結果 胆嚢粘液嚢腫の診断は病理組織学的に確認し、74%は術前の腹部超音波検査によって診断できた。術中に胆嚢破裂の所見が認められたのは10頭(23%)であり、16頭(37%)では以前に腹腔内に漏れ出た所見が認められた。1頭の犬は胆嚢の内容物の細菌培養で陽性を示した。手術時に得られた肝臓の生検において最も多く認められた病理組織学的所見は、胆管肝炎、胆管の増生、胆汁鬱滞であった。単変量解析によって、術後に低血圧が認められることが予後の悪い事と有意に関連していた(P=0.05)。生存した犬と死亡した犬の間で、術後の血清乳酸の平均(P=0.034)と術後のPCV(P=0.063)において有意差が認められた。

結論 胆嚢粘液嚢腫のために胆嚢摘出術を実施した犬において、血清乳酸濃度が術後に上昇することと、術後に早期に生じる低血圧は、臨床的に悪い転帰をたどることと関連している。(Dr.Taku訳)
■胆管炎と膵炎の猫における磁気共鳴画像(MRI)とMR胆膵管造影所見
Magnetic resonance (MR) imaging and MR cholangiopancreatography findings in cats with cholangitis and pancreatitis.
J Feline Med Surg. 2012 Nov 9. [Epub ahead of print]
Marolf AJ, Kraft SL, Dunphy TR, Twedt DC.

胆管肝炎/胆管炎は、猫において最も一般的な肝臓疾患である肝リピドーシスに次いで2番目に多く、多くの場合は膵炎を併発している。磁気共鳴画像(MRI)とMR胆膵管造影 (MRCP)は、ヒトにおいては胆管と膵管の疾患の診断において正確かつ高感度および特異性がある画像診断法になりつつある。

本前向き症例研究では、臨床病歴、身体検査、適切な診断検査結果に基づいて、胆管炎およびまたは膵炎を疑う10頭の猫を組み入れた。MRIとセクレチン負荷MRCPを実施し、比較のために、超音波検査と腹腔鏡による生検により組織学的診断を行なった。膵炎を疑う猫において、MRIによってT1造影前低信号およびT2強調膵臓実質および拡張した膵管といった膵臓の異常が明らかとなった。MRIによる肝臓の所見は非特異的なものであった。10頭のうち9頭の猫は、胆嚢壁の肥厚、胆嚢壁の中等度の造影強調およびまたは胆嚢内の貯留物といった胆管系の異常を認めた。10頭のうち8頭の猫は、肝炎または胆管炎だけではなく、膵炎の組織学的所見も認められ、1頭の猫は肝臓のリンパ腫と診断された。これらの猫において超音波検査よりMRI/MRCPが勝っている点は、膵炎に伴う顕著な膵臓の信号の変化および検査医の技術や腸管のガスの干渉に阻まれる事なく、膵臓と肝胆道系をわかりやすく評価し測定できることである。猫の腹部のMRI/MRCP画像は、超音波画像所見が曖昧な場合には有用であるかもしれない。(Dr.Taku訳)
■リンパ球性胆管炎の猫の胆汁中における細菌DNAの検出
Detection of bacterial DNA in bile of cats with lymphocytic cholangitis.
Vet Microbiol. April 2012;156(1-2):217-21.
C M A Otte; O Perez Gutierrez; R P Favier; J Rothuizen; L C Penning

この研究で著者らは、リンパ球性胆管炎(LC)の猫の胆汁が無菌ではないことを示すため、猫の胆汁サンプルにおいて16SリボソームRNA遺伝子増幅をもとにした分子法を利用して成功している。おそらくこれは胆管における炎症過程が拡張を起こすという事実による。結果として細菌は総胆管を経由して腸から容易に侵入できる。患畜およびコントロール両方で分離された菌の多様性及びヘリコバクター属の存在は細菌胆汁が、疾患の続発で、LCの原因ではないことを示唆する。(Sato訳)
■犬の肝外先天性門脈体循環シャントの治療-何がエビデンスベースか
Treatment of extrahepatic congenital portosystemic shunts in dogs - what is the evidence base?
J Small Anim Pract. January 2012;53(1):3-11.
M S Tivers; M M Upjohn; A K House; D J Brockman; V J Lipscomb

肝外先天性門脈体循環シャント(CPSS)の犬で、種々の外科および内科療法が推奨されている。

このレビューの目的は、犬の肝外CPSSの管理に対するエビデンスベースを評価することだった。「犬の肝外CPSSで一番短期および長期結果が良い治療オプションはどれ?」という疑問に関係する文献を確認するため、2010年11月にオンライン書籍検索を実施した。修正グレード付けシステムを基に文献にエビデンスのレベルを割り当てた。

38の文献を検討に含めた。36の文献はグレード4に、2つはグレード5に分類された。短期および長期結果を調査するタイミングと方法は、研究ごとに多彩だった。1つの前向き研究(グレード4a)は、内科治療よりも外科的治療をした犬の方が有意に長く生存したと示した。4つの回顧的研究(グレード4b)は2つの外科的方法の結果を比較していたが、合併症あるいは結果に関して治療グループ間の統計学的有意差はなかった。

このレビューで肝外CPSSの治療に対するエビデンスベースは弱いことが分かった。どれよりもこれを1番に推奨する短期および長期結果のエビデンスが欠如している。(Sato訳)
■ラブラドールレトリバーにおける食餌中の亜鉛と銅の量と肝臓の銅と亜鉛濃度の相関について
Association of Dietary Copper and Zinc Levels with Hepatic Copper and Zinc Concentration in Labrador Retrievers.
J Vet Intern Med. 2012 Sep 24.
Fieten H, Hooijer-Nouwens BD, Biourge VC, Leegwater PA, Watson AL, van den Ingh TS, Rothuizen J.

背景:銅関連性肝炎はラブラドールレトリバーにおける遺伝性疾患である。遺伝的要因の他、食餌からの銅と亜鉛の摂取が病態に関与する事が疑われている。

目的:市販されているドライフード中の銅と亜鉛の量が、ラブラドールレトリバーの肝臓の銅と亜鉛の濃度と関連があるかについて検討する。

動物:少なくとも1年以上1つのブランドで同じ種類の市販のドライフードを食べている55頭のラブラドールレトリーバー。これらの中で、44頭は、銅関連性肝炎のラブラドールレトリーバーの家族がいた。

方法:肝臓の生検、血液サンプル、食餌サンプルを得た。肝臓の標本は、組織学的にスコア化し、銅と亜鉛の濃度を定量した。食餌中の銅と亜鉛の濃度を測定した。食餌性の銅と亜鉛の摂取と、肝臓の銅と亜鉛の濃度の関連を線形回帰分析によって解析した。

結果:食餌中の銅の濃度が高く、亜鉛濃度が低いことは、肝臓の銅の濃度が高いことと有意に関連していた。食餌性の摂取と肝臓の亜鉛については関連が認められなかった。

結論と臨床的意義:市販に入手可能な犬のドライフードにおいて食餌中の銅と亜鉛の現行の濃度は、肝臓の銅へ影響し、遺伝的に銅への感受性があるラブラドールレトリバーにおいて銅関連性の肝炎の進行のリスク因子となりうる。(Dr.Taku訳)
■後天性と先天性の門脈体循環シャントの若齢犬における臨床的および臨床病理学的異常:93症例(2003-2008年)
Clinical and clinicopathologic abnormalities in young dogs with acquired and congenital portosystemic shunts: 93 cases (2003-2008).
J Am Vet Med Assoc. 2012 Sep 15;241(6):760-5.
Adam FH, German AJ, McConnell JF, Trehy MR, Whitley N, Collings A, Watson PJ, Burrow RD.

目的:臨床的および臨床病理学的なデータが、若齢犬における先天性体循環シャント(CPSSs)と後天性門脈体循環シャント(APSSs)を鑑別する補助になるかについて決定すること

方法:後向き症例研究。

動物:30ヶ月以下のCPSSsの犬(62頭)とAPSSsの犬(31頭)

方法:2003年7月から2008年7月の間に診断された31頭のAPSSsと62頭のCPSSsの犬を3カ所の紹介病院のカルテより抽出した。シグナルメント、臨床症状、身体検査、臨床病理学的データを記録し、両群における違いを決定するために統計学的解析を行なった。

結果:単変量解析によると、CPSSの犬と比較して、APSSの犬の方が、年齢が高く、体重が重く、ボディコンディションが悪かった。CPSSの犬においては、下痢がより少なく、神経症状がより多かった。APSSにおいては、腹水がより多く(フィッシャーの正確確立検定、オッズ比は50.2で95%信頼区間は6.2から409.7)、アルブミン濃度には両群で有意差はなかった。臨床病理学的パラメータを評価するのに用いたロジスティック回帰分析によると、Hctが低く(オッズ比は1.42x10(-12)で95%信頼区間は1.42x10(-17)から4.0x10(-6))、平均赤血球容積が高く(オッズ比は1.27で95%信頼区間は1.08から1.50)、アラニンアミノトランスフェラーゼ濃度が高い(オッズ比は1.005で95%信頼区間は1.001から1.009)ことが、APSSの犬においてより起こりやすかった。

結論と臨床的意義:先天性と後天性のシャントの犬において、臨床病理学的にいくつかの差が認められた。しかし、単独で評価すると、これらは2つの病態を鑑別することができないようである。CPSSにおいて腹水が珍しいことを認識していれば、APSSである可能性をより早く認識でき、それによって獣医師はさらなる診断や飼い主に適切に助言が可能となる。(Dr.Taku訳)
■猫のリンパ球性胆管炎の治療に対するプレドニゾロンとウルソデオキシコール酸の後向き比較検討
Retrospective comparison of prednisolone and ursodeoxycholic acid for the treatment of feline lymphocytic cholangitis.
Vet J. 2012 Jul 25.
Otte CM, Penning LC, Rothuizen J, Favier RP.

リンパ球性胆管炎の26頭の猫の生存期間に対するプレドニゾロンとウルソデオキシコール酸 (UDCA)の治療効果を評価し、予後因子を決定するために後向き研究を実施した。多くの罹患猫は雄(76.9%, P=0.006)であり、ノルウェイジャンフォレストキャットの罹患率が高かった(P=0.021)。臨床症状は、体重減少、黄疸、食欲不振、嘔吐、倦怠などであった。血液検査では、肝酵素、胆汁酸の上昇と高ガンマグロブリン血症が認められた。品種、性別、治療方法は、生存期間と有意に関連していた。UDCAと比較して、プレドニゾロンの治療により有意に長い生存期間が得られた。(Dr.Taku訳)
■104頭の猫の肝生検における銅および鉄の蓄積と病理組織学的所見
Hepatic copper and iron accumulation and histologic findings in 104 feline liver biopsies.
J Vet Diagn Invest. 2012 May 14.
Whittemore JC, Newkirk KM, Reel DM, Reed A.

犬と比較して、猫の肝疾患における銅と鉄蓄積の役割はあまり明らかではない。従って、本研究の目的は、猫の肝生検にて様々な病気のときに銅と鉄の蓄積量と分布を比較することである。
104頭の飼い猫からの肝生検の結果を、病理組織学的な病変によって分類した。ルベアン酸によって銅を、プルシアンブルーによって鉄の蓄積を、量(0-3)および部位(小葉中心性、中心帯、門脈周囲、ランダム)によってグレード分けした。Kruskal-Wallis検定およびピアソンのカイ二乗検定によって、それぞれ金属の蓄積程度と部位の違いを診断カテゴリー間で評価した。
組織学的診断は、正常(n=12)、先天性(n=6)、腫瘍性(n=16)、感染およびまたは炎症(n=39)、その他(n=31)であった。18サンプルでは、肝細胞の鉄染色は陰性であった。残りのサンプルの中で、グレード1が38頭、グレード2が40頭、グレード3が8頭で沈着していた。92サンプルは、銅に陰性で、残りのサンプルの中で、グレード1が5頭、グレード2が6頭、グレード3が1頭で沈着していた。異なる診断カテゴリー間で鉄または銅の蓄積量に有意差は認められなかった。診断カテゴリーと銅や鉄の蓄積の部位は、関連がなかった。肝臓への鉄の蓄積は一般的であり、組織学的診断との関連はなかった。
肝細胞への銅蓄積は、以前に報告されているより猫において一般的であり、線維化の変化の場合と同様の分布パターンを示しており、病理組織学的に正常な肝細胞には存在しなかった。(Dr.Taku訳)
■植物製剤の肝臓保護効果
[Hepatoprotective effect of plant preparations].
Eksp Klin Farmakol. 2002 Jan-Feb;65(1):41-3.
Katikova OIu, Kostin IaV, Tishkin VS.

テンサイやニンジンジュース、ドックローズの煎出物そしてコーンシルクの抽出物、ペパーミントの葉、そして一般的なトクサのハーブなどの植物起源のオリジナル成分の肝臓保護活性を、テトラクロロメタンにより誘発された急性肝炎モデルで研究した。
肝細胞溶解、胆汁うっ滞、脂肪の過酸化そして血清の抗酸化システムに関するデータの分析によって、そのような製剤が膜保護や抗酸化特性を持っていることを示している。これは、ALT活性、総ビリルビン濃度、最終(マロンアルデヒド)と中間(ジエン抱合体)脂質過酸化物の減少、そして内在性αトコフェロール濃度とグルタチオン依存酵素活性の減少の欠如によって明らかにされた。(Dr.Kawano訳)
■犬の腹腔鏡による肝臓バイオプシーの安全性と有効性:80症例(2004-2009)
Safety and efficacy of laparoscopic hepatic biopsy in dogs: 80 cases (2004-2009).
J Am Vet Med Assoc. January 2012;240(2):181-5.
Sarah L Petre; Janet Kovak McClaran; Philip J Bergman; Sebastien Monette

目的:犬の腹腔鏡による肝臓バイオプシーの安全性と有効性を評価する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:80頭のオーナー所有犬

方法:肝疾患が疑われたため、2004年-2009年の間に腹腔鏡による肝臓バイオプシーを行った犬の医療記録を、シグナルメント、周術および術後合併症、組織学的診断に対する情報を得るため再調査した。その後の情報は医療記録およびオーナーへの電話での会話により入手した。

結果:80頭中76頭(95%)が生存して退院した。3頭(4%)は開腹への変更が必要だったが、そのうち腹腔鏡によるバイオプシー処置に関係する出血のコントロールにより開腹が必要となった犬はいなかった。他の3頭(4%)は輸血を必要とし、3頭とも術前に貧血があった。全ての腹腔鏡によるバイオプシーサンプルは十分な大きさで、組織学的診断を得られる肝三つ組の十分な数を含んでいると考えられた。しかし、再検討に利用できる複数のスライドがある49頭中7頭は、組織診断と一致しなかった。

結論と臨床的関連:腹腔鏡によるバイオプシーは、有病率と死亡率は低く、犬において安全な方法で、組織学的検査に十分なサンプルが得られる。しかし、組織診断と一致しない可能性があるため、複数のサンプルを採取すべきである。(Sato訳)
■犬の門脈体静脈シャントに関連するような肝臓血行動態:レビュー
Liver haemodynamics as they relate to portosystemic shunts in the dog: a review.
Res Vet Sci. October 2011;91(2):175-80.
R W Furneaux

肝臓における血流の恒常性の調節を行ういくつかの因子がある。それらには、新血管新生および洞様血管や閉塞した肝静脈から離れる他の肝内シャントなどがある。犬の門脈体静脈シャントの管理に使用される現行の術式は、肝臓への門脈血あるいは肝臓から肝静脈血の流れを修正する。そのような変更は長期肝臓灌流という言葉で重要な結果を持つかもしれない。
このレビューは正常に灌流している肝臓内の血行動態と、血液供給が変更されている肝臓内の血行動態を考察する。(Sato訳)
■イングリッシュスプリンガースパニエルの慢性肝炎:臨床症状、組織学的記述および転帰
Chronic hepatitis in the English springer spaniel: clinical presentation, histological description and outcome.
Vet Rec. October 2011;169(16):415.
N H Bexfield; C Andres-Abdo; T J Scase; F Constantino-Casas; P J Watson

慢性肝炎(CH)の組織学的診断を受けた68頭のイングリッシュスプリンガースパニエル(ESS)の医療記録および肝臓組織検査結果を回顧的に検討した。肝臓組織で犬アデノウイルス-1(CAV-1)、犬パルボウイルス、犬ヘルペスウイルスおよび病原性レプトスピラ種のPCRを実施した。生存期間を算出するために追跡調査情報を入手した。来院時の年齢中央値は3年7ヶ月齢(範囲、7か月-8年5ヶ月)で、48頭のメスと20頭のオスだった。臨床症状は非特異的で、5頭は無症候性だった。全ての犬は、1つ以上の肝胆汁性酵素の血清活性が上昇していた。病理組織検査では、さまざまな程度の線維症を伴う肝細胞壊死およびアポトーシスを認めた。全68頭の肝実質のいたるところに主にリンパプラズマ細胞性浸潤が見られたが、それらのうち45頭には炎症性浸潤をなす好中球性成分も見られた。有意な銅蓄積もなく、PCRによる原因病原体も認めなかった。生存期間中央値は189日(範囲、1-1211日)、38頭は診断後3か月以内に死亡し、12頭は1年以上生存した。(Sato訳)
■猫の胆管炎の超音波所見
Ultrasonographic findings of feline cholangitis.
J Am Anim Hosp Assoc. January 2012;48(1):36-42.
Angela J Marolf; Lesley Leach; Debra S Gibbons; Annette Bachand; David Twedt

猫における胆管炎は胆道系の一般的な炎症疾患である。炎症細胞浸潤がリンパ球優勢あるいは好中球優勢かにより2つの主要な型がある。それらの患者において使用される一般的な画像検査は超音波検査である。
この回顧的研究で、胆管炎の組織診断が下された26頭の猫の超音波検査を評価した。ほとんどの猫は、超音波検査で正常な肝臓の大きさ、エコー発生性、正常な胆道系であった。統計学的に有意な変化は、高エコーの肝実質、高エコーの胆嚢内容、膵臓の大きさの増加だった。リンパ球と好中球型を区別する統計学的有意な変化はなかった。
瀰漫性の肝臓高エコー発生性、胆嚢内容物および拡大した膵臓などの超音波検査特性が見られた猫は胆管炎があるかもしれない。(Sato訳)
■先天性門脈体循環シャントで肝性脳症のある犬は、無症状の犬よりC反応性蛋白の血清濃度が高い
Dogs with congenital porto-systemic shunting (cPSS) and hepatic encephalopathy have higher serum concentrations of C-reactive protein than asymptomatic dogs with cPSS.
Metab Brain Dis. 2012 Feb 23.
Gow AG, Marques AI, Yool DA, Crawford K, Warman SM, Eckersall PD, Jalan R, Mellanby RJ.

肝性脳症(HE)は、肝臓疾患の患者において重要なmorbidityと致死の原因であり、HEの病態と治療の研究を進めるために、多くのHEのげっ歯類モデルが用いられている。しかし、ヒトのHEを完璧に類似したモデルは存在せず、より大型の自然発症する動物モデルが必要であることは、広く認識されている。
犬における一般的な先天性異常の一つである門脈体循環シャント(cPSS)は、運動失調、見当識障害、無気力、時には昏睡といった人のHEと類似した臨床症状を引き起こす。人のHEでは炎症との関連性が最近示されているように、cPSSの犬においてもHEと炎症が同様に関連しているとの仮説をたてた。
この仮説を検討するために、30匹の健常犬、19匹のHEの症状がないcPSSの犬、27頭のHEの症状があるcPSSの犬において、C反応性蛋白(CRP)を測定した。健常犬とHEの犬、HEがある犬とない犬の間においてCRP濃度は有意差が認められた(それぞれP<0.001またはP<0.05)。
炎症と犬のHEの間に関連があったという新しい知見は、cPSSの犬のHEが人のHEと同様の病態を示しているという考えを支持するものである。結果として、cPSSの犬は、人のHEの良い自然発生モデルであり、HEの発生と炎症の役割を検討するのに用いることができる。(Dr.Taku訳)
■猫の胆管炎:徴候、原因、診断、治療、予後
[Cholangitis in cats: symptoms, cause, diagnosis, treatment, and prognosis].
Cholangitis bij kat symptomen, oorzaak, diagnose, therapie en prognose.
Language: Dutch
Tijdschr Diergeneeskd. May 2011;136(5):332-8.
C M A Otte; L C Penning; J Rothuizen; R P Favier

胆管の炎症は猫で一般的である。この概説論文は種々の胆管炎のタイプ(すなわち、肝吸虫による胆管炎、好中球性胆管炎、リンパ球性胆管炎)について現在分かっていることを報告する。肝吸虫による胆管炎、好中球性胆管炎に対する治療は可能で、予後は良い。しかし、リンパ球性胆管炎の原因は不明で、現在裏付けのある治療法はない。いくつかの原因は文献で記載されているが、この疾患の原因を証明し、適切な治療法を開発するために、より研究が必要である。(Sato訳)
■7頭の犬および2頭の猫における肝外胆管破裂の一次修復と総胆管切開
Choledochotomy and primary repair of extrahepatic biliary duct rupture in seven dogs and two cats.
J Small Anim Pract. January 2011;52(1):32-7.
S G Baker; P D Mayhew; S J Mehler

目的:肝外胆管破裂の一次修復あるいは総胆管切開を行った犬と猫の臨床所見と結果を報告する

方法:総胆管切開あるいは胆管の一次修復を行った犬(n=7)および猫(n=2)の回顧的研究

結果:全ての症例で肝外胆管閉塞が手術時に確認された。4頭の犬と2頭の猫の基礎原因は総胆管結石で、2頭の犬は胆管破裂に関与する胆嚢粘液嚢腫、1頭の犬は胆嚢カルチノイドによる二次的な胆管を閉塞する濃縮胆汁によるものだった。3頭の犬と2頭の猫は肝外胆管閉塞を解消するため総胆管切開を実施し、胆管破裂の4頭の犬は、その欠損の一次修復を行った。胆管破裂の1頭の犬は術後4日目に再探査を行い、修復部位の離解を認め、再修復した。全ての動物は退院し、肝外胆管閉塞の臨床的再発はなかった。

臨床意義:肝外胆管破裂の一次修復および総胆管切開は、この少数症例集団において周術罹病率が低く、死亡はなかった。カテーテル法で胆管開存性が再確立できない、あるいは胆管が不連続で存在するとき、これらの方法で単独、あるいは他の方法と組み合わせることのできる妥当なオプションである。(Sato訳)
■犬の慢性肝炎における線維症関連遺伝子の発現
Expression of fibrosis-related genes in canine chronic hepatitis.
Vet Pathol. July 2011;48(4):839-45.
H Kanemoto; K Ohno; M Sakai; K Nakashima; M Takahashi; Y Fujino; H Tsujimoto

犬の慢性肝炎の線維症の分子的調節はあまり分かっていない。著者は、他の種(ヒト、マウス、ラット)における線維症に関連すると報告された遺伝子の発現レベルを判定し、肝炎の犬における線維症の程度、腹水および/あるいは黄疸の有無に対するそれらの遺伝子の関連を解明するために定量的PCRを利用した。9つの線維症関連遺伝子を分析した:PDGFB、PDGFD、MMP2、TIMP1、THBS1、COL1A1、COL3A1、TGFB1、TGFB2。
慢性肝炎の犬15頭、健康なコントロール犬4頭の肝臓サンプルを腹腔鏡バイオプシーで入手し、組織検査および定量的PCR分析に供した。全9つの遺伝子の発現は、線維症の程度に有意な正の相関を示した(P<.01、r>.70)。さらに、TGFB1を除く全ての遺伝子の発現レベルは、肝不全関連徴候(腹水/黄疸)を持つ犬で有意に高かった(P<.05)。
結果は、それら9つの遺伝子は、犬の慢性肝炎における線維症の発症に不可欠であると示唆する。(Sato訳)
■最新研究:胆嚢粘液嚢腫の犬は一般的な内分泌疾患の傾向がある
Research Updates: Dogs with gallbladder mucoceles may be prone to common endocrine diseases
Vet Med. July 2010;105(7):299,301. 2 Refs
Erika Meler, Barrak Pressler

胆嚢粘液嚢腫の犬の過去の報告は、甲状腺機能低下症および副腎皮質機能亢進症との関連を示唆している。この研究の目的は、胆嚢粘液嚢腫の犬における3つの一般的な内分泌障害の診断頻度、つまり甲状腺機能低下、副腎皮質機能亢進、真性糖尿病の犬における胆嚢粘液嚢腫発症のリスクの総体的増加を判定することだった。(Sato訳)
■セロファン絞扼により先天性肝外門脈体循環シャントの外科的減衰を行った猫の結果:9症例(2000-2007)
Outcomes of cats undergoing surgical attenuation of congenital extrahepatic portosystemic shunts through cellophane banding: 9 cases (2000-2007).
J Am Vet Med Assoc. January 2011;238(1):89-93.
Julien Cabassu; Howard B Seim, 3rd; Catriona M Macphail; Eric Monnet

目的:セロファン絞扼(CB)により徐々に閉塞させた先天性肝外体循環シャント(CEPSS)の猫の長期予後を評価する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:CBで減衰させたCEPSSの猫9頭

方法:2000年1月から2007年3月の間にCB法によりCEPSSを外科的に治療した猫の医療記録を再評価した。抽出したデータは、術前臨床症状、投薬、血清胆汁酸(SBA)濃度を含む診断検査結果、術式、術中および術後合併症、長期経過観察情報だった。

結果:無反応性の発作を起こした2頭は、CB処置後3日以内に安楽死された。9頭中7頭は術後15日目に生存していた。4頭の猫は長期経過観察でいかなるCEPSSの臨床症状もなかった。その時点で、5頭の食後SBA濃度は参考範囲内で、1頭は持続的流涎が見られた。1頭はビウレットアンモニウム結石があり、術後2年以上経て除去した。1頭はコントロールできない発作により術後105日目に安楽死された。3年生存率は66%だった。

結論と臨床関連:抑制されない発作活動はCB後の死亡の最も多い原因だった。処置後CEPSSの猫の長期予後は、中から良だった。
術後期間すぐに生存しているCEPSSの猫の長期予後は中から良だった。術中減衰がないセロファン絞扼は、猫において徐々に閉塞する方法として明らかに容認できるものである。猫は術後期間に神経障害の発症をしっかりとモニターすべきである。(Sato訳)
■先天性門脈シャントの犬における外科あるいは内科療法後の生存性の比較
Comparison of survival after surgical or medical treatment in dogs with a congenital portosystemic shunt.
J Am Vet Med Assoc. June 2010;236(11):1215-20.
Stephen N Greenhalgh, Mark D Dunning, Trevelyan J McKinley, Mark R Goodfellow, Khama R Kelman, Thurid Freitag, Emma J O'Neill, Ed J Hall, Penny J Watson, Nick D Jeffery

目的:内科あるいは外科療法を受けた先天的門脈シャント(CPSS)の犬の生存性を比較する

構成:前向きコホート研究

動物:単一CPSSの飼育犬126頭

方法:3つの二次診療施設のうち1つで犬を検査し、単一CPSSを診断した。徴候、臨床症状、血液あるいは生化学検査結果にかかわらず内科あるいは外科療法を行った。生存性データをCox回帰モデルで分析した。

結果:追跡期間中央値579日の間、126頭中18頭はCPSSの結果として死亡した。外科的に治療した犬は、内科的に治療した犬よりも有意に長く生存した。CPSSの内科v.s.外科治療(treatment-only model)の危険率は、2.9(95%信頼区間、1.1-7.2)だった。CPSS診断時の年齢は生存性に影響しなかった。

結論と臨床関連:内科および外科治療共にCPSSの犬の長期生存を達成できるが、統計分析の結果は、外科手術が内科治療よりも好ましいという広く持たれている信念を支持する。しかし、二次診療施設の犬から成る研究集団は、内科治療の効果が過小評価されているかもしれないと示唆した。外科治療は長期生存性のより良いチャンスだが、内科管理は容認できる第一線の選択を提供した。検査時の年齢は生存性に影響せず、このことは早期外科的介入が必須でないことを暗示した。内科治療で容認できる改善が見られないCPSSの犬は、その後外科的に治療できる。(Sato訳)
■シリマリンの臨床エビデンスに関するメタアナリシスによる最新のシステマティックレビュー
An updated systematic review with meta-analysis for the clinical evidence of silymarin.
Forsch Komplementmed. 2008 Feb;15(1):9-20.
Saller R, Brignoli R, Melzer J, Meier R.

背景:肝疾患の治療においてシリマリン(Silybum marianumの果実からの特殊な抽出物)の潜在的な利点は議論の余地がある課題として残っている。

方法:このシステマティックレビューのために、シリマリン、シリビニン、シリクリスチンあるいはノゲシそして臨床試験などの検索ワードで電子データベースから検索したところ65本の論文がみつかった。判断基準として'二重盲検試験' あるいは '単盲検試験' をみたした論文は19本しかなかった。これらの論文は臨床の観点から分析し、メタアナリシス計算を実施した。

結果:中毒性肝疾患におけるシリマリンの治療効果に関する臨床エビデンスはほとんどない。ウイルス性肝炎、特にC型肝炎の進化に有利に影響するエビデンスはない。プラセボと比較してアルコール性肝疾患において、血清ASTはシリマリンで治療したグループで減少(p = 0.01)したが、血清ALPは減少しなかった。大部分がアルコール性の肝硬変において、総死亡率はシリマリン治療群で16.1%、プラセボで20.5%であった(有意差なし);肝臓が関連した死亡率はシリマリン治療群で10.0%、プラセボで17.3%(p = 0.01)であった。

結論:利用可能な臨床エビデンスに基づいて、起こりうるリスクとありそうな利益を考えると、タマゴテングダケ中毒の治療において支持成分としてシリマリンを使用することは合理的であり、また(アルコール性そしてChild’A’グレードの)肝硬変でも使用することは合理的であるということを結論付けることができる。既存のエビデンスを統合し、新たな潜在的用途を探った一貫した研究プログラムは非常に歓迎されるだろう。(Dr.Kawano訳)
■ラブラドールレトリバーの銅性肝炎
Copper-associated hepatitis in labrador retrievers.
Vet Pathol. May 2009;46(3):484-90.
R Smedley, T Mullaney, W Rumbeiha

肝臓の銅レベルが上昇したラブラドールレトリバーが報告されている:しかし、原発性銅性肝炎がこの犬種で発生するかどうかは不明である。
この研究の目的は、ミシガン州立大学のDiagnostic Center for Population and Animal Healthからの症例の再調査により、銅性肝炎がラブラドールで確認できるかどうかを調査することだった。4歳から11歳の16頭のラブラドールレトリバー(オス3頭、メス12頭、1頭不明)に、豊富な細胞質内銅およびヘモジデリンを有するマクロファージを特徴とする多病巣性および癒着した小葉中心性肝炎を認めた。他の病変は、多病巣性、小葉中心性およびランダムな有色素肉芽腫、肝細胞性壊死、肝内胆汁うっ滞、小葉中心性あるいは架橋線維症、時折偽葉形成などだった。ローダニン染色切片で、小葉中心および中間帯肝細胞の細胞質およびマクロファージ内に銅が集中し、これは銅性肝炎に一致した。12頭の犬で、肝臓の銅レベルの定量ができ、2頭を除く全ての犬のレベルは、2000ppm乾燥重量以上だった。1頭の肝臓銅レベルは1990ppm乾燥重量で、進行した肝硬変を持つ1頭のレベルは1490ppm乾燥重量だった。それら所見は、原発性銅性肝炎がラブラドールレトリバーで起き易い事を示唆する。(Sato訳)
■犬と猫の肝胆道疾患における細胞保護剤の治療的使用
Therapeutic use of cytoprotective agents in canine and feline hepatobiliary disease.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2009 May;39(3):631-52.
Webster CR, Cooper J.

多くの医薬品、栄養補助食品そして植物性抽出物が肝臓疾患における細胞保護剤として利用されている。この論文ではSアデノシルメチオニン、Nアセチルシステイン、ウルソデオキシコール酸、シリマリンそしてビタミンEの作用機序、関連する薬物動態、副作用そして臨床適応について概説する。試験管内研究、動物実験モデルそして人医療と獣医臨床試験に関する文献では、肝胆道疾患においてこれらの細胞保護剤の効果と使用に関して概説している。(Dr.Kawano訳)
■ケアンテリア家系の肝門脈微小血管異形成の特徴
Characterization of hepatoportal microvascular dysplasia in a kindred of cairn terriers.
J Vet Intern Med. 1996 Jul-Aug;10(4):219-30.
Schermerhorn T, Center SA, Dykes NL, Rowland PH, Yeager AE, Erb HN, Oberhansley K, Bonda M.

肝門脈微小血管異形成(MVD)は肝臓の血管構造の先天性疾患であり、ケアンテリア家系において記述がある。ケアンテリア(n = 165)で血清胆汁酸検査を実施した。絶食時あるいは食後血清胆汁酸の異常で確認された罹患犬を、2つのグループに分けた。グループ1(n = 147)は家系分析のために使用した。グループ2(n = 18)は、病歴、身体検査、臨床病理検査、肝臓や門脈循環の画像診断そして肝臓の組織病理に基づいて特徴付けた。グループ2は健常犬(n = 2)、肝門脈微小血管異形成(n = 11)そして肉眼的門脈体循環血管異常(PVSA) (n = 5)が含まれた。高い血清胆汁酸濃度を除いて、肝門脈微小血管異形成の犬は病歴、身体検査、臨床病理所見、腹部レントゲン検査、腹部超音波検査あるいは経結腸性シンチグラム造影で健常犬と区別不能であった。微小血管異形成の犬におけるコントラスト門脈造影では、大きな肝臓内あるいは肝臓外のシャント血管以外に門脈血管系の末端支脈の異常が明らかになった。肝門脈微小血管異形成の犬の組織病理学的異常は門脈体循環血管異常の犬で報告されているものと似ていた。家系分析で肝門脈微小血管異形成は常染色体遺伝を示した。
微小血管異形成の犬は、血清胆汁酸濃度が高く、インドシアニングリーンクリアランスが異常で、門脈体循環血管異常を示唆するような肝臓病理であったが、門脈体循環血管異常の特徴的な臨床所見が欠けていた。微小血管異形成の臨床意義は不明確である。微小血管異形成の犬は評価した時は臨床的に正常だったが、長期間の経過観察はできていない。肝門脈微小血管異形成の犬は、更なる診断評価において混乱を避けるために早期に認識しておくべきである。(Dr.Kawano訳)
■犬の胆嚢粘液嚢胞の最新情報
An update on gallbladder mucoceles in dogs
Vet Med. Apr 2009;104(4):169-176. 32 Refs
Rebecca Quinn, DVM

胆嚢粘液嚢腫が犬で診断される頻度は多くなっているが、その実際の発生率は不明なままである。この疾患の基礎原因はまだ議論の余地があるが、胆嚢上皮内の粘液線過形成が強く関与している。外科的管理が従来の治療選択であるが、最近の症例ベースのエビデンスでは、内科管理に反応する患者もいることを示唆している。
この文献で、我々は胆嚢の解剖および生理を概説し、粘液嚢腫発生の病理生理を考察する。また胆嚢粘液嚢胞の犬の臨床症状、診断、管理を述べる。(Sato訳)
■単一先天性門脈体循環シャントの治療で経静脈コイル塞栓を使用した犬6例
Transvenous coil embolisation for the treatment of single congenital portosystemic shunts in six dogs
Vet J. May 2008;176(2):221-6.
Roberto Bussadori, Claudio Bussadori, Lorena Millan, Serafin Costilla, Jose Antonio Rodriguez-Altonaga, Maria Asuncion Orden, Jose Manuel Gonzalo-Orden

この文献は、単一先天性門脈体循環シャント(CPSs)(肝内および肝外)に、インターベンショナルラジオロジーを用い経皮コイルで異常血管を塞栓させる方法を述べる。手早く多目的カテーテルを後大静脈に導入し、その後門脈体循環シャントまで進めた。自動拡張性ステントを後大静脈に設置し、コイル移動を避けるため続いてシャントに設置し、コブラ様血管カテーテルをステントに通し、シャントにコイルを設置するように使用した。この方法を犬6頭のCPSの治療に使用した。
結果から、コイルを使用するCPSの経皮塞栓は、従来の外科手術よりも侵襲性が低い方法で、門脈高血圧を発生することなく異常血管の完全な閉鎖が行えると思われる。(Sato訳)
■犬における最小侵襲胆のう瘻形成術:設置法の評価と肝外胆管閉塞での使用
Minimally invasive cholecystostomy in the dog: evaluation of placement techniques and use in extrahepatic biliary obstruction
Vet Surg. October 2007;36(7):675-83.
Sean M Murphy, Julian D Rodriguez, Jonathan F McAnulty

目的:胆のう瘻形成カテーテル設置の4つの方法の評価と犬3頭における肝外胆管閉塞の管理で腹腔鏡下(Lap)胆のう瘻形成術を報告すること

研究構成:実験研究および臨床報告

動物:犬の死体(n=20);犬2頭と猫1頭の患畜

方法:Pigtail胆のう瘻形成カテーテルを超音波(US)または腹腔鏡下で20頭の犬の死体に挿入した。挿入ルートは経腹膜または経肝だった。研究した方法は、腹腔鏡下経腹膜、超音波下経腹膜、超音波下経肝、超音波下セルディンガー法(犬5頭/群)だった。挿入成功、胸膜穿通、穿刺部位漏出(腹腔鏡下経腹膜群)を評価した。
3頭の臨床的肝外胆管閉塞症例は、腹腔鏡下経腹膜法で治療した。

結果:挿入成功は腹腔鏡下経腹膜法で100%だったが、超音波下経腹膜および超音波下セルディンガー法では0%だった。超音波下経肝法は、5つのうち3つで設置成功した。全ての超音波下経肝および超音波下セルディンガー法では胸膜を貫通した。腹腔鏡下経腹膜カテーテルの漏出圧は平均75cmH2O(±20cmH2O)だった。腹腔鏡下経腹膜胆のう瘻形成術は2頭の犬で顕著な改善をもたらしたが、猫ではカテーテルが妨げとなった。1頭の犬は自然に総胆管が開通し、残り2頭は胆のう小腸吻合が成功した。

結論:死体を使用した検査で、腹腔鏡下経腹膜胆のう瘻形成術は高い挿入成功率、胸膜穿通がないことで優れていた。2頭の臨床症例で、腹腔鏡下経腹膜設置は、患者の安定化に向けた胆汁廃液がうまくできた。

臨床関連:一時的胆のう瘻形成術の役割はまだ確立されていないが、肝外胆管閉塞における患者の安定化および死亡率の減少を助けるものかもしれない。(Sato訳)
■犬において静脈内カテーテルと直接静脈穿刺により採取した血液におけるプロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間およびフィブリノーゲン濃度の比較
Comparison of prothrombin time, activated partial thromboplastin time, and fibrinogen concentration in blood samples collected via an intravenous catheter versus direct venipuncture in dogs
Am J Vet Res. July 2008;69(7):868-73.
Vera A Maeckelbergh, Mark J Acierno

目的:留置IVカテーテルおよび直接静脈穿刺により採取した犬の血液サンプルにおいて、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、フィブリノーゲン濃度を比較する

動物:治療のためにIVカテーテルの留置を必要とするICUに入院した犬35頭

方法:カテーテル設置時および設置から24時間後に、IVカテーテルおよび直接静脈穿刺により血液サンプルを採取した。プロトロンビン時間、APTT、フィブリノーゲン濃度を測定した。

結果:5頭は研究から除外し、残り30頭の結果を使用した。PTの一致性(偏り)は、0タイムポイント時-0.327秒(一致性の限界、-1.350から0.696秒)、24時間タイムポイント時0.003秒(一致性の限界、-1.120から1.127秒)だった。APTTの一致性は、0タイムポイント時-0.423秒(一致性の限界、-3.123から2.276秒)、24時間タイムポイント時0.677秒(一致性の限界、-3.854から5.207秒)だった。フィブリノーゲン濃度の一致性は、0タイムポイント時-2.333mg/dl(一致性の限界、-80.639から75.973mg/dl)、24時間タイムポイント時-1.767mg/dl(一致性の限界、-50.056から46.523mg/dl)だった。

結論と臨床関連:2つのサンプル採取法の一致性は、0時、24時間時におけるPT、APTT、フィブリノーゲン濃度に対して臨床的に容認できるものだった。重篤な患者における複数の直接静脈穿刺の実施は困難あるいは望ましくないことが多い。PTおよびAPTTをモニターするためのIVカテーテルからの血液採取は、更なる静脈傷害、患者の不快感、それら危険な患者から採取する血液量の減少を防ぐことができる。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢胞の非外科的消散:犬2例
Nonsurgical resolution of gallbladder mucocele in two dogs
J Am Vet Med Assoc. June 2008;232(11):1688-93.
Romanie Walter, Marilyn E Dunn, Marc-Andre d'Anjou, Manon Lecuyer

症例記述:2頭の犬で胆嚢粘液嚢胞を診断した。2頭の粘液嚢胞は、外科的介入の必要もなく内科療法で解消した。

臨床所見:12歳の避妊済みメスのミニチュアシュナウザーは、胃腸疾患と血清肝酵素高活性の病歴があった。胆嚢粘液嚢胞および甲状腺機能低下症と診断された。6歳の不妊済み雑種犬は、間歇的な慢性下痢と再発性外耳炎があった。胆嚢粘液嚢胞および甲状腺機能低下症と診断された。

治療と結果:1番目の犬はS-アデノシルメチオニン、オメガ-3脂肪酸、ファモチジン、ウルソジオール、レボチロキシンで治療した。3ヶ月以内に胃腸管の状況のかなりの改善と胆嚢粘液嚢胞の完全な解消が見られたが、その後の追跡モニタリングができなかった。
2番目の犬は、フェンベンダゾール、ウルソジオール、レボチロキシンで治療し、低アレルギー食を給餌した。1ヵ月後、腹部超音波検査で胆嚢粘液嚢胞の解消を認め、治療を継続した。2ヶ月、4ヶ月目の評価でも粘液嚢胞の完全な解消を認めた。

臨床関連:胆嚢粘液嚢胞の非外科的解消を認めた2頭の臨床経過の概要は、胆嚢粘液嚢胞を持つ全ての犬が外科手術を必要とするわけではないと示した。甲状腺機能低下症は、胆嚢を空にすることを遅延させているかもしれず、胆嚢粘液嚢胞の病因におけるその役割を調査する意味がある。この情報はあるが、コントロール群、標準治療、追跡調査を設けた更なる前向き研究が実施できるまで、著者は胆嚢粘液嚢胞の犬の治療で外科的介入を推奨する。(Sato訳)
■犬における食後およびCeruletide血清胆汁酸刺激の比較
Comparison of Postprandial and Ceruletide Serum Bile Acid Stimulation in Dogs
J Vet Intern Med. June 2008;0(0):.
N Bridger, B Glanemann, R Neiger

背景:食後(PP)血清胆汁酸(SBA)刺激は、犬の肝機能障害の検出に重要な検査である。しかし、この検査は種々の変化に影響を受け、注射可能なコレシストキニン類似物(ceruletide)を使用する標準化したアプローチの方が有利かもしれない。

仮説:犬におけるceruletide血清胆汁酸刺激は、食後血清胆汁酸刺激よりも感受性がある。

動物:門脈体循環シャント(PSS)の犬(n=11)と上部呼吸器疾患(URD)の犬(n=9)を調査した。健康な犬(n=13)と他の疾患の犬(n=17)をコントロールとした。
方法:全ての犬に食餌およびceruletideで血清胆汁酸刺激を行った。刺激した血液サンプルをそれぞれ60/120分、20/30/40分目に採取した。結果は統計学的に比較し、感受性と特異性はreceiver-operating特性曲線により判定した。

結果:刺激した血清胆汁酸濃度は、コントロールに比べ2つの研究群のほうが有意に高かった。
PSSの犬で、食後(120分)の感受性と特異性(>35μmol/l)は100%、ceruletide後(30分)はそれぞれ91%と100%だった。それらの値の違いに統計学的有意はなかった。
URDの犬で、食後(120分)の感受性と特異性(>22μmol/l)は44%と88%で、ceruletide後(30分)はそれぞれ100%と88%だった。

結論と臨床意義:ceruletide血清胆汁酸刺激は、食後血清胆汁酸刺激に関係する外因および内因性の影響を回避する。結果は犬のceruletide血清胆汁酸刺激が食後血清胆汁酸刺激と同様に実施でき、上部呼吸器疾患の犬の肝機能障害の検出により感受性がある。(Sato訳)
■5歳以上の犬における先天性肝外門脈体循環シャント減衰の臨床結果
Clinical outcome of congenital extrahepatic portosystemic shunt attenuation in dogs aged five years and older: 17 cases (1992-2005)
J Am Vet Med Assoc. March 2008;232(5):722-7.
Deanna R Worley, David E Holt

目的:5歳以上の犬における肝外門脈体循環シャント(EHPSS)治療結果の評価

構成:遡及症例シリーズ

動物:17頭の飼育犬

方法:EHPSSの外科的減衰化を行った犬(5歳以上)の医療記録を評価した(1992-2005)。臨床症状、臨床病理所見、術式、結果などのデータを記録した。追跡調査情報は、その犬の検査、または獣医師やオーナーへの電話での質問により入手した。

結果:犬(5-9歳、年齢中央値6.6歳)は、神経(n=12)、尿路(8)、消化管(6)EHPSS関連臨床症状があった。血清胆汁酸とアンモニア濃度は検査した全ての犬で異常値だった。EHPSSの治療は、完全(n=6)あるいは部分的(2)結紮減衰、アメロイド圧迫器設置(9)だった。術後2頭は死亡した。13頭の犬で追跡調査情報が得られた(6-120ヶ月)。心不全(n=1)、細菌性肝炎(2;1頭は腎盂腎炎併発)、原因不明(3)が原因で死亡していた。中央値23ヶ月で8頭中5頭の血清胆汁酸濃度はほぼ正常化し、中央値25ヶ月で5頭中3頭のアンモニア濃度は正常範囲内に低下した。異常な肝機能検査結果を呈した犬は臨床症状に関与しなかった。長期生存期間の中央値は72ヶ月だった。

結論と臨床関連:5歳以上の犬におけるEHPSSの減衰化は、生存した犬の肝機能不全の症状を改善したが、正常肝機能への回復は予想よりも少なかった。(Sato訳)
■肝外胆管閉塞の超音波特性:猫30例
Ultrasonographic features of extrahepatic biliary obstruction in 30 cats
Vet Radiol Ultrasound. 2007 Sep-Oct;48(5):439-47.
Hugues A Gaillot, Dominique G Penninck, Cynthia R L Webster, Sybil Crawford

我々の研究の目的は、自発肝外胆管閉塞の超音波特性を概説し、閉塞の原因として腫瘍、炎症、胆石の鑑別補助になりえるかどうかを判定することだった。術前超音波検査と肝外胆管閉塞を確認した30頭の猫を調査した。肝外胆管閉塞の97%の猫で、総胆管径が5mm以上だった。胆嚢拡張は<50%の猫に見られた。超音波検査は総胆管の全ての閉塞性胆石(結石またはプラグ)を確認できた。しかし、総胆管径も所見またはいずれの他の超音波特性も閉塞の原因として腫瘍及び炎症の鑑別ができなかった。短期間の臨床症状(10日以内)は閉塞性胆石症に関係していると思われた。(Sato訳)
■無症候性肝炎を持つドーベルマンの肝臓(64)Cu排泄
Hepatic (64)Cu excretion in Dobermanns with subclinical hepatitis
Res Vet Sci. October 2007;83(2):204-9.
Paul J J Mandigers, Peter Bode, Ank M T C Van Wees, Walter E van den Brom, Ted S G A M van den Ingh, Jan Rothuizen, Jan Rothuizen

ドーベルマンが銅排泄の障害を持っているかどうか調べるために、静脈内放射性銅アイソトープ((64)Cu)をトレーサーとして使用した。5頭の患犬と8頭の正常犬(5頭は正常なドーベルマン、3頭はビーグル)を研究した。5頭のメスのドーベルマン患犬は無症候性肝炎で、肝臓の銅濃度が上昇していた(中央値822mg/kg、範囲690-1380mg/kg乾物)。正常犬の5頭のドーベルマンと3頭のビーグルは、異常な肝臓組織病理所見がなく、肝臓銅濃度は正常と思われた(ドーベルマン;中央値118mg/kg、範囲50-242mg/kg乾物;ビーグル;中央値82mg/kg、範囲50-88mg/kg乾物)。(99m)Tc-Bis-IDA肝胆道シンチグラフィーで全頭胆汁うっ滞は除外された。(64)Cuの血漿クリアランスは、全頭同等で統計学的有意差はなかった。統計学的有意ではないが、胆汁内への(64)Cuの排泄は、正常犬に比べ無症候性肝炎のドーベルマンで少なかった。この所見は、ドーベルマンにおける慢性肝炎の病因で、銅排泄障害がその一端を担っているかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■健康な犬と肝障害の犬における血漿L-カルニチン濃度
Plasma L-carnitine concentration in healthy dogs and dogs with hepatopathy
Vet Clin Pathol. June 2007;36(2):137-40.
Stephan Neumann, Heike Welling, Sibylle Thuere, Franz-Josef Kaup

背景:L-カルニチンは脂質代謝で重要な役割を持つ。L-カルニチン代謝の障害は、その生物のエネルギー供給に影響する可能性がある。L-カルニチンはもっぱら肝臓で合成される。ゆえに、我々は、肝疾患がL-カルニチン代謝に影響しえると仮説を立てた。

目的:この研究の目的は、異なる程度の異なる肝疾患の犬の血漿L-カルニチン濃度と、健康犬の血漿L-カルニチン濃度を比較することだった。

方法:炎症性肝疾患の16頭、肝臓腫瘍の12頭を研究に含めた。肝疾患は、臨床化学、超音波、肝バイオプシー標本の組織検査で診断した。L-カルニチン濃度は、質量分析で血漿サンプルの測定を行い、不対スチューデントt-検定で群間比較した。

結果:健康なコントロール(24.4 +/- 8.4 micromol/L)との比較で、肝疾患の犬の血漿L-カルニチン濃度(44.2 +/- 23.7 micromol/L)は有意に高かった(P<.0001)。中程度(n=8; 33.6 +/- 13.7 micromol/L)と重度肝炎(n=8; 57.4 +/- 22.9 micromol/L)の犬のL-カルニチン濃度にも有意差が見られた(P=.02)。肝炎と肝腫瘍の犬の血漿L-カルニチン濃度に差はなかった。

結論:犬の肝疾患は、血漿L-カルニチン濃度上昇を伴った。肝炎の程度は明らかにL-カルニチン濃度に影響した。(Sato訳)
■ある成犬に見られた核黄疸
Kernicterus in an adult dog
Vet Pathol. May 2007;44(3):383-5.
C R Sangster, C K Stevenson, B A Kidney, D L Montgomery, A L Allen

7歳避妊済みメスのウィートンテリアが、肝細胞性、胆汁うっ滞性肝酵素活性の増加および609μmol/lの極度の高ビリルビン血症(参照値:1.0-4.0μmol/l)を伴う黄疸、嗜眠、食欲不振を呈した。検死所見は、顕著な黄疸と肝臓の赤と黄色の斑だった。視床および視床下核の黄色の変色がホルマリン固定の脳の亜肉眼検査で検出した。脳の組織学的検査は、変色した核内の神経壊死、プルキンエ細胞の壊死、肉眼的変色を伴う大脳皮質灰白質および核のアルツハイマータイプII星状細胞を認めた。肝臓の組織検査は、小房周囲ブリッジパターン、しばしば門脈三管に伸びる広範囲壊死を認めた。激症肝不全から起こる極度の高ビリルビン血症による二次的な成犬の自然発生核黄疸症例を報告する。ペットでこの疾患の報告はほとんどなく、新生児、すなわち1例の馬、1例の子猫だった。(Sato訳)
■犬の肝疾患の指標として血清L-フェニルアラニン濃度の評価
Evaluation of serum L-phenylalanine concentration as indicator of liver disease in dogs: a pilot study
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Jul-Aug;43(4):193-200.
Stephan Neumann, Heike Welling, Sibylle Thuere

必須アミノ酸は肝臓で代謝されるため、肝疾患はそれらの代謝を損なうかもしれない。この研究で肝疾患を持つ28頭の犬の血清L-フェニルアラニン濃度を、健康犬28頭及び非肝臓疾患の犬13頭のものと比較した。肝疾患の犬は、健康犬(P<0.001)及び非肝臓疾患の犬(P<0.01)と比較して、有意にL-フェニルアラニン血清濃度が上昇していた。異なる程度の肝疾患の犬で、L-フェニルアラニン血清濃度に有意差はなかった。絶食時胆汁酸にL-フェニルアラニンの感受性と特異性は匹敵した。(Sato訳)
■肝臓動静脈フィステルの犬の外科および介入放射線治療
Surgical and interventional radiographic treatment of dogs with hepatic arteriovenous fistulae
Vet Surg. April 2007;36(3):199-209.
Guillaume Chanoit, Andrew E Kyles, Chick Weisse, Elizabeth M Hardie

目的:犬の肝動静脈フィステル(HAVF)の外科および介入放射線治療後の結果を報告する

研究構成:遡及研究

動物:HAVFの犬(n=20)

方法:HAVFの犬の医療記録を再検討した。紹介獣医師とオーナーに電話で連絡を取り、病歴、臨床症状、生化学および血液プロフィール、超音波および血管造影所見、外科所見、HAVF修正に使用した方法、生存期間、臨床追跡調査を記録した。

結果:犬HAVFは単一のフィステルよりもむしろ動静脈奇形としてよく見られた。複数の肝外門脈体静脈シャントが19頭の犬で認められた。外科(肝葉切除または栄養動脈の結紮)および/または介入放射線(異常動脈のglue塞栓形成)を17頭の犬で行った。13頭の犬は外科手術のみ、4頭はglue塞栓形成のみ、1頭は両方で治療した。外科手術のみで治療した3頭は1ヵ月後に死亡し、その後3頭は持続的臨床症状により安楽死、または死亡した。Glue塞栓形成で治療した犬で処置後1ヶ月以内に死亡した犬はおらず、追跡調査時(9-17ヶ月)臨床症状もなく全ての犬は生存していた。全体で、長期追跡調査した犬12頭中9頭(75%)は臨床症状の食餌、または薬剤管理が必要だった。

結論:外科よりglue塞栓形成後の方が、HAVF関連死の発生頻度が少ない。
臨床関連:glue塞栓形成は犬HAVFの治療で外科手術に変わる良い代替処置と思われる。(Sato訳)
■高トリグリセリド血症の有無によるミニチュアシュナウザーの血清肝酵素活性の検討
Serum liver enzyme activities in healthy Miniature Schnauzers with and
without hypertriglyceridemia
J Am Vet Med Assoc. January 2008;232(1):63-7.
Panagiotis G Xenoulis, Jan S Suchodolski, Melinda D Levinski, Jorg M Steiner

目的:健康なミニチュアシュナウザーにおける高トリグリセリド血症が肝酵素の上昇と関連があるかどうかを決定すること。

統計:交差区分試験。

動物:血清トリグリセリド値が基準値内である65頭のミニチュアシュナウザーをグループ1、血清トリグリセリド値がわずかに高い20頭をグループ2、そして血清トリグリセリド値が中程度から非常に高い20頭をグループ3とした。

方法:それぞれの犬の医療履歴に関する調査票を作成し、ALP、ALT、GGTの値を計測した。

結果:ALPの中央値はグループ1、2と比べてグループ3で有意に高かったが、グループ1と2で有意性は認められなかった。ALTの中央値はグループ1よりグループ3で有意に高かったが、他のグループ間では有意性を認めることはなかった。グループ1、2、3を比較するとALP値は有意に高くなる傾向にあった(オッズ比はそれぞれ26.2、192.6であった)。グループ3はグループ1と比較すると、ALT値(オッズ比;8.0)、AST値(オッズ比;3.7)、GGT値(オッズ比;11.3)もまた有意に高くなる傾向があった。グループ3ではグループ1と比較すると2倍以上、有意に肝酵素の上昇(オッズ比;31.0)が認められた。

結論と臨床関連:以上の結果より、ミニチュアシュナウザーの軽度から重度の高トリグリセリド血症は肝酵素の上昇と関連することが示された。(Dr.UGA訳)
■シェットランドシープドックの胆嚢疾患:38例(1995-2005)
Gallbladder disease in Shetland Sheepdogs: 38 cases (1995-2005)
J Am Vet Med Assoc. July 2007;231(1):79-88.
Ale L Aguirre, Sharon A Center, John F Randolph, Amy E Yeager, Alicia M Keegan, H Jay Harvey, Hollis N Erb

目的:シェットランドシープドックにおける胆嚢疾患のリスク、臨床特性、治療反応を判定する

構成:遡及症例-コントロール研究

動物:胆嚢疾患を持つ38頭のシェットランドシープドック

方法:徴候、病歴、身体所見、検査結果、画像特徴、併発疾患、組織所見、治療、生存率に対し医療記録を再調査した。

結果:胃腸症状を持つ成熟犬は、胆嚢疾患の素因があった(オッズ比、7.2)。胆嚢粘液嚢腫は25頭で確認した。併発疾患には、膵炎、高脂血症、コルチコステロイド過剰、甲状腺機能低下症、蛋白喪失腎症、真性糖尿病、胆石症、胆嚢運動不全などだった。死亡率は胆汁性腹膜炎がある犬で68%、ない犬で32%だった。死亡した犬は、WBC、好中球数高値、低カリウム濃度だった。摂取前高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、高血清肝酵素活性が一般的だが、38頭中11頭の胆嚢疾患は思わず発見されたものだった。組織検査(n=20)は、20頭で胆嚢嚢胞粘膜過形成、16頭で胆嚢炎、9頭で門脈周囲肝炎、7頭で空胞肝障害を認めた。外科手術は、胆嚢切除(n=17)と胆嚢症腸吻合(n=4)を行った。臨床症状のない1頭の高脂血症犬は、脂肪制限食とウルソデオキシコール酸の使用開始後、6ヶ月で胆嚢粘液嚢腫は改善した。

結論と臨床関連:シェットランドシープドックは多くの罹患犬で粘液嚢腫、併発異脂肪血症または運動不全をもつ胆嚢疾患の素因がある。ほとんどの犬は、粘液嚢腫に発展中臨床症状はなかった。臨床的罹患犬における胆嚢切除後の低死亡率は、先攻外科手術がより妥当な治療戦略かもしれないことを示唆する。(Sato訳)
■犬の胆嚢吸引液
Gallbladder aspirate from a dog
Vet Clin Pathol. December 2006;35(4):467-70.
Jennifer A Neel, Jaime Tarigo, Carol B Grindem

膵炎と炎症性腸疾患の病歴を持つ7歳、去勢済みラブラドールレトリバーが嘔吐と食欲不振で来院した。血清生化学所見は、胆汁うっ滞、肝細胞傷害、肝機能低下を示した。超音波検査で胆嚢内の沈渣とガスを認め、気腫性胆嚢炎の診断がなされた。緊急胆嚢切除を実施した。手術時に採取した胆汁の細胞学的検査でCyniclomyces guttulatus(昔はSaccharomycopsis guttulatusとして知られる)に一致する真菌と共に細菌(bactibilia)の混合集団を認めた。同様の真菌は糞便スメアにも見られた。培養した細菌は、上行感染を示唆する正常な胃腸細菌叢のものだった。真菌は偶発的と解釈した。胆嚢の組織病理は、活動性(化膿性)、慢性(リンパ球性)胆嚢炎と肝組織切片は慢性肝疾患の所見を示した。肝臓培養陽性は、細菌性肝炎または胆管肝炎の併発を示した。支持療法にもかかわらず、その犬は衰え続け、30日後に安楽死した。検死で肝疾患末期が確認されたが、初めの原因は見つからなかった。このケースは、急性胆嚢炎の発症における細菌胆汁の役割と、胆汁での偶発的所見としてC guttulatusの稀有な細胞診所見に焦点を当てている。(Sato訳)
■肝臓および腎臓嚢胞の超音波ガイド下排液およびアルコール化:22例
Ultrasound-assisted drainage and alcoholization of hepatic and renal cysts: 22 cases
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):112-6.
Andrea Zatelli, Paola D'Ippolito, Ugo Bonfanti, Eric Zini

超音波ガイド下排液とアルコール化を行った、症候性腎臓または肝臓嚢胞の犬猫22例を遡及的に評価した。一般的な主訴は、食欲不振、すすんで動かない、嘔吐だった。全症例で腹部痛は観察された。全身性高血圧は、腎嚢胞の犬4頭、猫4頭で認められた。嚢胞排液とアルコール化は19頭で合併症なく達成でき、処置後全ての臨床症状は解消した。3例で、一時的な出血がアルコール化時に観察され、処置を中止した。腎嚢胞の犬4頭で血圧の正常化がみられたが、4頭の猫は高いままだった。(Sato訳)
■セントバーナードの子犬に見られた肝臓の外側、内側左葉捻転
Left lateral and left middle liver lobe torsion in a saint bernard puppy
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Sep-Oct;42(5):381-5.
Dirsko J F von Pfeil, L Ari Jutkowitz, Joe Hauptman

5ヶ月齢、オスのセントバーナードが、急性の虚脱、腹部不快感で来院した。有意所見は頭側腹部マス、出血性腹部貯留液、貧血、播種性血管内凝固だった。試験開腹で、肝臓の外側左葉、内側左葉捻転、過去に文献で述べられていない状態が明らかとなった。1つ以上の肝葉の捻転はあまりない状況であるが、若い犬、成犬ともに急性腹症症候群の鑑別診断に入れるべきである。早期診断と迅速な外科的介入で治癒が望めると思われる。(Sato訳)
■犬の肝外門脈体循環シャント評価で三次元マルチスライスコンピューター断層撮影法
Three-dimensional multi slice helical computed tomography techniques for canine extra-hepatic portosystemic shunt assessment
Vet Radiol Ultrasound. 2006 Sep-Oct;47(5):439-43.
Giovanna Bertolini, Edoardo C Rolla, Alessandro Zotti, Marco Caldin

この研究の目的は、門脈体循環シャントを示唆する臨床、超音波所見を持つ6頭の犬において、最大値投影法(MIP)およびボリュームレンダリング(VR)で三次元(3D)マルチスライスコンピューター断層(CT)血管造影の可能性と有用性を調査することだった。さらに、門脈とシャント血管の径の測定も目的とした。MIPとVR再構成は各犬で実施し、全てのシャント血管の起始部と付着部を検出した。さらに、3D再構築は血管形態と局所解剖のすばらしい描写が可能だった。全ての診断と脈管測定値は手術により確認された。3Dマルチ検出CT血管造影法は、門脈体循環シャントが疑われる犬の評価で確実性があり、非侵襲性で正確な方法である。(Sato訳)
■犬の胆管手術に関する長期生存とリスクファクター:34例(1994-2004)
Long-term survival and risk factors associated with biliary surgery in dogs: 34 cases (1994-2004)
J Am Vet Med Assoc. November 2006;229(9):1451-7.
Pierre M Amsellem, Howard B Seim, Catriona M MacPhail, Ron M Bright, David C Twedt, Robert H Wrigley, Eric Monnet

目的:犬の胆管手術後の生存期間に関係する因子を判定する

構成:遡及症例シリーズ

動物:胆管外科を行った犬34頭

方法:医療記録から性別、犬種、体重、手術時の年齢、病歴および臨床検査所見、術前術後CBC、血清生化学パネルおよび凝固プロフィール結果、腹部超音波所見、細菌培養および組織検査結果、手術所見、術後合併症、生存期間などのデータを抽出した。追跡調査情報は、医療記録、またはオーナーと担当獣医師の電話による対話から入手した。

結果:原発胆管所見は、胆のう粘液のう腫(n=20頭)、炎症性疾患(4)、外傷(3)、腫瘍(1)だった。二次的胆管疾患は膵炎(n=4)、膵臓腫瘍(1)、十二指腸穿孔(1)だった。1年、2年生存率は共に66%だった。加齢;ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ活性;麻酔前の心拍数;BUN、リン、ビリルビン濃度;胆管排泄路変更術の使用は死亡のリスクファクターだが、膵炎はそうでなかった。しかし膵炎は長期生存性の悪さに関係した。

結論と臨床関連:犬の胆管外科後の長期予後は慎重を要する。しかし早期術後期間を生存した犬は長期予後はよかった。膵炎の犬は予後が悪かった。全体的に胆管排泄路変更を行った犬は、行わなかった犬よりも予後が悪かった。(Sato訳)
■胆嚢粘液嚢腫の犬14頭における超音波所見と臨床所見
Ultrasonographic appearance and clinical findings in 14 dogs with gallbladder mucocele.
Besso JG, Wrigley RH, Gliatto JM, Webster CR.
Vet Radiol Ultrasound. 2000 May-Jun;41(3):261-71.

超音波で胆嚢が拡張し不動の星状あるいは微細な筋状の胆汁パターンをした14頭の犬について説明します。14頭中4頭がコッカースパニエルで、小型犬と老齢犬が際立ちました。ほとんどの犬は吐き気、食欲不振そして嗜眠など非特異的な臨床症状を呈しました。腹痛、黄疸そして高体温が身体検査上で最も一般的な所見でした。1頭を除く全ての犬は総ビリルビン/もしくはALP、ALTそしてγ-GTPが上昇しました。全ての犬が組織学的そして/あるいは肉眼的評価で胆嚢粘液嚢腫と診断しました。超音波検査にて粘液嚢腫は星形あるいは微細な筋状胆汁パターンに特徴付けられ、重力に依存した胆汁の流れが見られないことで胆汁性沈積物とは区別できた。
超音波検査における胆嚢壁の肥厚と壁の明瞭化は様々で非特異的でした。5頭全ては外科あるいは剖検にて胆管閉塞の証拠がありましたが、嚢胞状あるいは一般的な胆管は5頭で正常な大きさでした。胆嚢壁整合性の喪失そして/あるいは胆嚢破裂は50%の犬で見られ、全頭で基底部に位置していました。超音波で胆嚢壁が不連続であれば胆嚢破裂が示唆されますが、どちらの胆汁パターンも胆嚢破裂を予測できませんでした。胆嚢周囲における高エコー性の脂肪や液体は胆嚢破裂が示唆されるが診断には繋がりません。胆嚢壁の壊死は10頭中9頭において組織学的に認められたので、少なくともほとんどの犬において存在すると考えられ、胆嚢破裂を治療しないならば、それを防止するために粘液嚢腫では胆嚢摘出術が適切な治療だと思われました。粘膜過形成は組織学的に検査したすべての胆嚢で見られました。
9頭中6頭の胆汁で好気性細菌培養陽性でした。5頭は組織学的に胆嚢炎と診断し、4頭が細菌性胆汁培養で単純な胆嚢感染の兆候が見られました。すべての粘液嚢腫で胆嚢感染は見られず、胆汁うっ滞と粘膜過形成は粘液嚢腫形成に含まれる初期の要因かもしれません。私達の研究の結果に基づいて、我々は超音波検査における無動性の星形あるいは微細な筋状の胆汁パターンを伴う拡張した胆嚢の存在における2つの治療方法を示します。肝胆道系疾患の臨床的あるいは生化学的兆候が見られた場合に胆嚢摘出術を施術し、臨床的あるいは生化学的に異常ではない時には内科療法(抗生物質やコレレチン)と超音波検査を使った追跡による患者のモニターをする。好気性胆汁培養は全ての患者から超音波ガイドによるFNAあるいは手術時に採取すべきです。(Dr.Kawano訳)
■猫の肝外胆管閉塞に対する胆嚢腸吻合による治療:22例(1994-2003)
Cholecystoenterostomy for treatment of extrahepatic biliary tract obstruction in cats: 22 cases (1994-2003)
J Am Vet Med Assoc. May 2006;228(9):1376-82.
Nicole J Buote, Susan L Mitchell, Dominique Penninck, Lisa M Freeman, Cynthia R L Webster

目的:肝外胆管閉塞(EHBTO)で、胆汁排泄路変更術を行った猫の予後に関係する因子を確認する

構成:回顧的症例シリーズ

動物:22頭の猫

方法: EHBTOと外科的に確認し、胆嚢腸吻合を行った猫の医療記録を再検討した。

結果:臨床症状と身体検査所見は、嘔吐、食欲不振、黄疸、嗜眠、虚弱、体重減少だった。一般的な臨床病理異常は、高血清肝酵素活性、高血清ビリルビン濃度だった。21頭の猫で腹部超音波検査を実施し、すべて21頭の所見はEHBTOに一致するものだった。血圧をモニターした15頭中11頭は、術中低血圧だった。18頭は術後貧血で、14頭は持続的低血圧を認めた。9頭の肝外胆管閉塞は腫瘍で起こり、13頭は慢性炎症性疾患で起こっていた。14頭の猫は退院できるまで生存したが、術後6ヶ月以上生存したのは6頭だけで、それらの猫は慢性炎症性疾患の猫だった。腫瘍の猫の生存期間中央値(14日)は炎症性疾患の猫(255日)よりも有意に短かった。結果に関係する他の変動値はなかった。

結論と臨床関連:結果から腫瘍による二次的なEHBTOの猫は、慢性炎症性疾患によるEHBTOの猫より予後が悪いと思われる。しかし、胆嚢腸吻合をおこなったEHTBOの猫の総合的な予後は、慎重を要すから悪いと考えるべきで、術中合併症の発生率も高い。(Sato訳)
■犬の肝臓の細菌学的研究
Bacteriological study of the liver in dogs.
J Small Anim Pract 45[8]:401-4 2004 Aug
Niza MM, Ferreira AJ, Peleteiro MC, Vilela CL

この研究目的は、健康犬の肝臓における細菌の潜在的存在を確認することだった。通常の腹部外科のために来院した20頭に開腹を行った。研究に選別した犬は、肝疾患のない健康な成犬で、感染症状または肉眼的肝臓異常が見られない犬とした。バイオプシーサンプルを組織学的、細菌学的に検査した。8頭の肝臓は細菌学的検査で陰性だった。残り12頭は、肝臓内に多種多様な細菌叢が潜在していた。12種の細菌種が確認された。19頭の肝臓は組織学的に最小または異常がなく、1頭のみ間質性線維症および小柱状の配列不整が見られた。組織変化は細菌の存在に関与しなかった。このように結果は、健康犬の肝臓に異なる細菌種が潜在しているかもしれないと示した。それら微生物は、病原体となる可能性があるにもかかわらず、検出可能な病気の症状の原因ではなかった。(Sato訳)
■ドーベルマン・ピンシャーの慢性肝炎:再調査
Chronic hepatitis in Doberman pinschers. A review.
Vet Q. 2004 Sep;26(3):98-106.
Mandigers PJ, van den Ingh TS, Spee B, Penning LC, Bode P, Rothuizen J.

ドーベルマン・ピンシャーの慢性肝炎は通常4~7才の雌犬に多く見られ、80年代前半で最初に認識されました。ドーベルマンの肝炎の組織病理学的特徴は繊維症、限界板壊死そして門脈三つ組みにおける進行性リンパ球およびプラズマ細胞浸潤を組織学的特徴とした小結節性肝硬変である。現在どちらも解明されていませんが、病原論に2つの仮説があります。最初の仮説は銅の中毒症です。2番目は自己免疫です。私たちのグループの最近の研究の結果と、他の犬種における類似性と相違そして両方の仮説に関する研究を調査した。
最近の調査に基づくとドーベルマン・ピンシャーの慢性肝炎は、銅中毒症の型である見込みが強い。自己免疫を示すいくつかの指摘がありますが、これはまだ不明瞭なままである。(Dr.Kawano訳)
■犬の門脈体循環シャントの鑑別における絶食血漿アンモニアおよび胆汁酸濃度の診断価値
Diagnostic value of fasting plasma ammonia and bile acid concentrations in the identification of portosystemic shunting in dogs
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):13-9.
M J Gerritzen-Bruning, T S G A M van den Ingh, J Rothuizen

門脈体循環シャントは、門脈の先天的奇形(PVA)または、実質性肝疾患や門脈血栓症による二次的な門脈高血圧による後天性シャント(AS)として起こる。門脈体循環シャントに対して使用される2つの一般的なスクリーニング検査は、胆汁酸および血漿アンモニア濃度である。この研究で、門脈体循環シャントの診断に対する検査として12時間絶食血漿アンモニア(AMM)と胆汁酸濃度(BA)を比較した。
AMMおよびBAの同時測定を行い、門脈体循環シャントを確認または除外した377頭の犬の医療記録を使用した。それらの犬を2群に分けた(1群:門脈体循環シャントあり、n=153、2群:門脈体循環シャントなし、n=184)。1群の犬をさらに2つに分類した(1a群:PVA、n=132、1b群:AS、n=21)。
PVA検出のAMMの感受性は100%、BAでは92,2%だった。全体の門脈体循環シャント(PVAまたはAS)に対し、AMMの感受性は98%、BAは88.9%だった。全集団でAMMの特異性は89.1%、BAは67.9%だった。シャントを持つ犬153頭、シャントがない犬28頭を含む肝疾患の犬のみならば、シャント検出のAMMの特異性は89.3%、BAは17.9%だった。
結論として、一般集団もしくは肝疾患の犬でPVAおよび門脈体循環シャント検出においてAMMは高い感受性と特異的パラメーターである一方、BAは少し感受性が低く、特異性はかなり低い。(Sato訳)
■犬における胆嚢粘液嚢腫の外科管理:22症例(1999-2003)
Surgical Management of Gallbladder Mucoceles in Dogs: 22 Cases (1999-2003)
J Am Vet Med Assoc 225[9]:1418-1422 Nov 1'04 Retrospective Study 11 Refs
Deanna R. Worley, DVM; Heidi A. Hottinger, DVM, DACVS; Howard J. Lawrence, DVM, DACVS

目的:胆嚢粘液嚢腫に対する外科的治療を受けた犬における、予後指標と推奨治療を明らかにすること、およびその術前、術中、術後所見を記述することです。

計画:回顧的研究

動物:22頭の飼育された犬

手順:外科的治療を受けた胆嚢粘液嚢腫の犬に関する医療記録を再調査しました。病歴、臨床徴候、選択された臨床病理学的解析と腹部超音波検査の結果、施行された外科手技、肝生検標本の組織学的検査の結果、そして生存期間を記録しました。追跡調査情報を、オーナーと紹介獣医師の電話聞き取りにより入手しました。

結果:犬は7から15才で、非特異的臨床徴候(嘔吐、食欲低下、そして不活発)を呈しました。身体検査所見では、黄疸、抑うつ所見、そして腹部触診で不快徴候を呈しました。腹部超音波検査の結果を基に、6頭は胆嚢粘液嚢腫が強く疑われ、16頭は確定診断を受けました。術後15頭が生存しました;このうち3頭は胆汁性腹膜炎で、4頭は膵炎でした。1頭は重度な膵炎のため安楽死され、1頭は急性腎不全のため安楽死されました;5頭は膵炎、胆嚢炎、あるいは胆汁性腹膜炎により死亡しました。全ての犬で、肝臓の異常が組織学的に明らかにされました。

結論と臨床関連:生存に関する明らかな予測因子はありませんでした。術前所見、胆嚢破裂、施行された外科手技、肝臓の組織学的検査結果、または膵炎の発生と外科治療の予後(生存対非生存)との間にいかなる関連も認めませんでした。胆嚢十二指腸吻合術と胆嚢切除術は、胆嚢粘液嚢腫に対し、許容できると思われます。(Dr.K訳)
■犬猫の先天的疾患に起因する門脈体循環シャントの解剖学的構造に対する種類の影響
Effect of breed on anatomy of portosystemic shunts resulting from congenital diseases in dogs and cats: a review of 242 cases.
Aust Vet J 82[12]:746-9 2004 Dec
Hunt GB

目的:犬猫の門脈体静脈脈管異常の解剖学的構造に対する動物種や品種の影響を評価する

構成:シドニーのUniversity Veterinary Centreに来院した233頭のイヌと9頭の猫の回顧的研究

方法:品種、性別、年齢、解剖学的構造、組織学的診断に関し症例記録を調査した。門脈体循環血管の奇形が、先天性、または肝臓、門脈静脈系の発育上の異常に起因する症例を含めた。

結果:疾患の状況は、門脈脈管が開存する単一先天性門脈体循環シャント(犬214頭、猫9頭)、門脈形成不全(犬9頭)、門脈形成不全に起因する複数の後天性シャント(犬7頭)、胆道閉塞(犬1頭)、微小血管形成異常(犬1頭)だった。1頭のマルチーズは、単一先天性シャントと肝硬変に起因する複数後天性シャントが見られた。有意に多く見られた品種は、マルチーズ、シルキーテリア、オーストラリアンキャトルドック、ビションフリーゼ、シーズ、ミニチュアシュナウザー、ボーダーコリー、ジャックラッセルテリア、アイリッシュハウンド、ヒマラヤンだった。ビションフリーゼでは、メスのほうが有意に認められやすかった(12:2、P<0.001)。214頭のイヌ(91.4%)と猫全頭のシャントは減衰に敏感に反応した。19頭のイヌ(8.2%)は手術不可能なシャントだった。大型犬の手術可能なシャント61のうち56(92%)は肝臓内シャントだったのに対し、小型犬は10/153(7%)だった(P<0.0001)。門脈体循環シャントの素因のない品種は、素因のある品種と比較して非典型的、または手術不可能なシャントになりやすかった(29%v.s.7.6%、P<0.0001)。猫の品種とシャントタイプに有意な相関は認めることが出来なかった。

結論:犬の品種はシャントの解剖学的構造に有意に影響している。門脈体循環シャントの症状を呈する動物は、大部分手術可能、または手術不可能な状態かもしれない。獣医師は、非典型的、または手術不可能なシャントが先天的門脈体循環シャントの素因を持たない品種でより起こりやすいと認識すべきである。(Sato訳)
■猫の先天的肝線維症による後天性門脈体循環シャント:2症例
Acquired Portosystemic Shunting in 2 Cats Secondary to Congenital Hepatic Fibrosis
J Vet Intern Med 19[5]:765-767 Sep-Oct'05 Case Report 15 Refs
Maurice M.J.M. Zandvliet, Viktor Szatmari, Ted van den Ingh, and Jan Rothuizen

この症例報告で、多嚢胞性疾患をもち、腎疾患より門脈体循環シャントの症状を示す猫2頭を紹介する。犬に比べ、猫の後天性門脈体循環シャントは珍しい。我々の知識では、猫の多嚢胞疾患の症状として先天性肝線維症による後天性門脈体循環シャントの最初の報告である。同じくしてそれら猫の臨床症状は、肝性脳症のものだった。それら2症例をもとに、肝性脳症を呈するペルシャ猫およびその交雑種には、肝臓組織検査をした方がよいと思われる。もし超音波病変が先天的門脈体循環シャントのみの時でも、不必要な外科手術を防ぐため、肝線維症の存在の可能性を評価すべきである。(Sato訳)
■体重増量と減量中の猫の肝臓での脂肪酸代謝および脂質蓄積におけるカルニチンとタウリンの影響
Effects of carnitine and taurine on fatty acid metabolism and lipid accumulation in the liver of cats during weight gain and weight loss.
Am J Vet Res. 2003 Oct;64(10):1265-77.
Ibrahim WH, Bailey N, Sunvold GD, Bruckner GG.

目的: 猫の肝臓での脂質蓄積の防止においてカルニチン(Ca)あるいはタウリン(Ta)補充の効果を調査する。

動物: 24 頭の成猫

手順: 十分なn-6多価不飽和脂肪酸(PUFAs)、少な目の長鎖n-3 多価不飽和脂肪酸(n-3 LPUFA)そしてコーングルテンを含んだ体重を増量させる食餌を猫に20週間与えた。
猫は体重の30%以上増加させ、4種類の減量食(6頭の猫/ダイエット)を7~10週間(コントロール食、コントロールダイエットにカルニチンを加えた食餌、コントロールダイエットにタウリンを加えた食餌、そしてコントロールダイエットにカルニチンとタウリンを加えた食餌)割り当てた。

結果:体重の増量と減量の間、肝臓に脂質はかなり蓄積したが、減量後のカルニチン(Ca)あるいはタウリン(Ta)によって肝臓の脂質は変化しなかった。カルニチンは肝臓トリグリセリドにおいてn-3 と n-6多価不飽和脂肪酸を増加させ、13Cパルミテートの超低密度リポ蛋白、肝臓トリグリセリドへの取り込みを減少させ、血漿ケトン体を増加させた。カルニチンは減量も明らかに増加させたが、除脂肪体重率へ脂肪を変えることはなかった。タウリンはどんな変数にもあまり影響しなかった。n-3 多価不飽和脂肪酸の少ないダイエットは体重増加中、猫が肝リピドーシスになりやすい傾向があり、減量中はさらに症状が悪化しやすかった。
ミトコンドリア数は、体重増量と減量の間減少したが、治療による影響はなかった。カルニチンは体重減量の間、起こりやすい肝リピドーシスになることもなく脂肪酸酸化とブドウ糖利用を改善した。

結論と臨床関連: 猫の肝リピドーシスを誘導する主なメカニズムは、脂肪酸酸化の減少であるように思われます。カルニチンは脂肪酸酸化を改善するかもしれませんが、n-3脂肪酸の少ない食餌を与えている猫では肝リピドーシスを改善しないでしょう。(Dr.Kawano訳)
■イヌの胆嚢粘液嚢胞:30症例(2000-2002)
Gallbladder Mucocele in Dogs: 30 Cases (2000-2002)
J Am Vet Med Assoc 224[10]:1615-1622 May 15'04 Retrospective Study 25 Refs
Fred S. Pike, DVM, DACVS; John Berg, DVM, MS, DACVS; Norval W. King, DVM, DACVP; Dominique G. Penninck, Dunk, DVSc, DACVR; Cynthia R. L. Webster, DVM, DACVIM

目的:胆嚢粘液嚢胞のイヌの長期結果を判定する

構成:回顧的研究

動物:胆嚢切除を行った23頭を含む胆嚢粘液嚢胞のイヌ30頭

方法:医療記録から、徴候、病歴、臨床、超音波検査、手術時所見を再検討した。追跡情報を周術入院期間生存した全てのイヌから入手した。

結果:23頭のイヌは全身性疾患の症状があった。7頭は臨床症状がなかった。ALT、ALPの血清活性の中央値、血清総ビリルビン濃度、総WBC数は、破裂を起こさなかったイヌよりも胆嚢が破裂したイヌで有意に高かった。破裂を検出する超音波検査の感受性は85.7%だった。胆嚢切除を行ったイヌ全体の周術死亡率は21.7%だった。破裂を起こしたイヌの死亡率は有意に高くはなかった。8.7%のイヌの胆汁、または胆嚢壁から好気性細菌を分離した。退院した全18頭は、臨床症状が完全に解消していた。院内再検査を行ったイヌで、血清肝酵素活性は術前に比べ有意に低下した。12頭中9頭の1つ以上の肝酵素血清活性の持続的上昇が見られた。12頭中6頭は、肝臓エコー検査で持続的異常を呈した。平均追跡期間は13.9ヶ月だった。

結論と臨床関連:結果は、胆嚢切除が胆嚢粘液嚢胞の有効な治療であると示唆する。周術死亡率は高いが、退院後の予後はすばらしい。胆嚢の破裂は、緊急手術の正当な理由となるが、よい結果を妨げることはない。(Sato訳)
■3頭の犬と1頭の猫における肝葉捻転
Hepatic lobe torsion in 3 dogs and a cat.
Vet Surg 30[5]:482-6 2001 Sep-Oct
Swann HM, Brown DC

目的:3頭の犬と1頭の猫における肝葉捻転に関する臨床像を明らかにすることです。

研究デザイン:回顧的臨床研究

動物:それぞれ飼主のいる犬3頭と猫1頭

方法:医療記録を再調査し、特徴、臨床徴候、身体検査所見、行った診断的検査、治療、転帰、追跡調査に関する情報を検索しました。

結果:診察する4時間から1週間前に臨床徴候が現れました。肝臓捻転の明らかな原因を持たなかった2頭において、所見は非特異的でした。これらの所見には、嗜眠(2)、多飲多尿(2)、そして食欲不振(1)がありました。他の2頭において、所見は肝葉捻転の潜在原因を暗示しました。1頭の犬では、捻転は外傷性横隔膜ヘルニアと関連しました。猫は、破裂した肝細胞癌による二次的な腹腔内出血を伴っておりました。血液検査異常は非特異的でした。ねじれた肝葉は、外側左葉(2)、尾状葉(1)、内側右葉(1)がありました。3頭の犬で、罹患した肝葉の外科的切除(2)、あるいは整復(1)を試みて、2頭で成功しました。

結論:肝葉捻転は、稀な疾患ですが、ヒト、ウサギ、犬、豚、猫、そして馬で報告されております。外側左葉が最も頻繁に影響を受けます。この病態は、特発性、あるいは腫瘍関連、または肝臓の支持靭帯の (先天性や外傷性) 欠損が考えられます。

臨床関連:よじれた肝葉の迅速な外科的切除あるいは整復が、血栓症や続発性壊死のような静脈閉塞に関する有害作用を避け、良い結果を導き得ます。(Dr.K訳)
■先天性肝外門脈体循環シャントのイヌで、外科的減衰中の門脈の血行動態変化の超音波評価
Ultrasonographic Assessment of Hemodynamic Changes in the Portal Vein During Surgical Attenuation of Congenital Extrahepatic Portosystemic Shunts in Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[3]:395-402 Feb 1'04 Case Series 36 Refs
Viktor Szatmari, DVM; Frederik J. van Sluijs, DVM, PhD; Jan Rothuizen, DVM, PhD; George Voorhout, DVM, PhD

目的:外科的シャント結紮に関する門脈血行動態変化の判定と、シャント狭小化の最適程度と予想結果を判定する超音波基準の確立

構成:症例シリーズ

動物:単一先天性肝外門脈体循環シャントを持つ17頭のイヌ

方法:シャントとシャント部の門脈頭側と尾側で、術中ドップラー超音波検査を用い、結紮前後の流速、方向を判定した。血中アンモニア濃度と腹部超音波検査実施により、術後1ヶ月の結果を評価した。

結果:シャント起源と胃十二指腸静脈進入ポイントの間の門脈部分で、シャント減衰前に17頭中9頭の肝臓から離れる血流が認められた。肝臓から離れる血流が、シャント結紮後肝臓に向かう血流になった場合、高アンモニア血症は解消した。肝臓から離れる門脈の流れは、胃十二指腸静脈からシャントに向かう血流により起こっていた。17頭中12頭で、シャント減衰により肝臓から離れる血流を肝臓に向かう血流に転換した。慢性門脈高血圧が発症、または術中死亡は、シャント起源の尾側門脈うっ血指数が、3.6倍に増加したとき発生した。

結論と臨床関連:頭側門脈やシャントで、肝臓に向かう血流が確立された後、更なるシャントの狭小化は禁忌である。シャント尾側の門脈うっ血指数3.5倍以上の増加は避けるべきである。もしシャント起源の頭側でシャント閉鎖後、肝臓から離れる血流の方向がそのままならば、門脈枝の重度低形成のため、結果が悪いと予測できる。(Sato訳)
■腸からの酸素の取り込み ウサギを使った実験
Eur J Med Res. 2001 Nov 20;6(11):488-92.
Uptake of oxygen from the intestine-- experiments with rabbits.
Forth W, Adam O.

背景: 静脈の門脈血は本質的には肝臓への酸素供給に貢献する。門脈血の酸素化に関して、酸素に富んだ水を胃に供給したときの効果をウサギで調査した。
材料と方法:麻酔下の15羽のウサギに、胃チューブより 1リットル中の酸素量が45mg、80mgあるいは150mg 含有する水を30ml投与した。胃、腹腔、そして門脈同様に胃の静脈において測定プローブを用い、酸素圧を連続的にモニターした。
結果:経胃的に供給した水は、その温度の上昇に伴い酸素をゆっくり運んだ。遊離酸素は腹腔に浸透するのがわかった、そして、胃内の酸素圧と腹腔内の酸素圧との間に用量反応性の関連が確立された。1リットル中の酸素量が45mgの水による腹腔内の酸素濃度の増加はわずかであったが、1リットル中の酸素量が80mgもしくは150mgの水は 10rspによる酸素の増加を誘発し、腹腔内圧で20mmHg、および門脈で最大14mmHgまで上昇した。 酸素浸透はガス拡散で知られている身体的そして生理的パラメータに従って起こった。酸素と同時に水が二酸化炭素を豊富に含有していれば、酸素の拡散は増強された。
結論: 私たちの結果は、1リットル中の酸素量が45mg以上に酸素化された水を経胃的に供給した場合、腹腔内や門脈に酸素を運ぶことを示す。 この効果は脂肪肝あるいは肝炎など障害を受けた肝臓潅流の状態において臨床の関連性を持つかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■不顕性肝炎のドーベルマン・ピンシャー5頭におけるn-ペニシラミン投与4ヵ月後の肝臓病理学的改善
Improvement in Liver Pathology after 4 Months of n-Penicillamine in 5 Doberman Pinschers with Subclinical Hepatitis
J Vet Intern Med 19[1]:40-43 Jan-Feb'05 Case Report 37 Refs
* P.J.J. Mandigers, T.S.G.A.M. van den Ingh, P. Bode, and J. Rothuizen

肝の銅濃度上昇と、持続性(3-4年)の潜在性肝炎を持つ、メスのドーベルマン・ピンシェル5頭をD-ペニシラミンで4ヵ月間治療しました。治療前と治療後、臨床的、血液学的(赤血球、白血球、そして白血球分画と血小板数)、そして臨床化学的検査(クレアチニン、アルカリフォスファターゼ、アラニンアミノトランスフェラーゼ、総胆汁酸濃度)を行いました。そして肝生検で組織学的検査を行い、銅濃度を定量的に測定しました。治療中、いかなる副作用も観察されず、CBCと血清化学検査結果に変化はありませんでした。平均肝臓銅濃度は、治療前1036mg/kg乾物で、治療後407mg/kgまで減少しました(p=.03)。銅濃度は、全ての犬で減少しました(134および1135mg/kg乾物の間)。組織病理学的所見は、5頭すべてにおいて、改善、または正常に戻っておりました。我々は、D-ペニシラミンがこれらの犬における、銅貯留を効果的に減少させ、病変の組織学的所見を改善させたということを結論付けます。しかしながら、D-ペニシラミンは、銅キレート作用と抗炎症特性の両方を持つため、この疾患に関する病因論で、結論を得るのは無理かもしれません。(Dr.K訳)
■犬猫の先天性門脈体循環シャント
Congenital Portosystemic Shunts in Dogs and Cats
N Z Vet J 52[4]:154-162 Aug'04 Review Article 114 Refs
CJ Broome, VP Walsh and JA Braddock

先天性門脈体循環シャント(PPS)は、肝内または肝外に分類される腸管から肝臓を迂回して血液が流れる異常な血管連絡である。臨床症状は一般に神経、胃腸、泌尿器系に関連し、漠然としたものもある。また通常の血液検査に見られる変化は、多くの場合軽度で非特異的である。このような理由で診断には代わりとなる検査が必要である。診断検査には、血清胆汁酸濃度、アンモニア負荷試験、門脈造影、超音波検査、そして/またはシンチグラフィーがある。
内科療法として、胃腸管からの脳障害毒素の吸収を抑えることでより長く生存するかもしれない。外科療法は、シャント血管の減衰を目的とし、生存率を改善する。伝統的なアプローチは、シャントの完全、または部分結紮で行われている。より近年のアプローチは、アメロイド圧迫、またはセロハンバンドを用いゆっくり徐々に減衰させていくものである。相対的に、外科療法の予後は犬でgood、猫でfairである。(Sato訳)
■ネコの肝外胆管外科:症例シリーズと回顧
Extrahepatic biliary tract surgery in the cat: a case series and review.
J Small Anim Pract 44[5]:231-5 2003 May 43 Refs
Bacon NJ, White RA

ネコの肝外胆管外科を行った4症例を述べる。疾患の原因は、胆嚢、遠位総胆管、大十二指腸乳頭の炎症、総胆管の外傷性裂離だった。2頭のネコには胆汁性腹膜炎が見られた。胆嚢腸造瘻を3頭で行い、そのうち2頭は5週間目、3ヶ月目に安楽死した。残りの1頭はこの執筆時に生存していた。1頭は胆嚢切除で治療した。文献の回顧で、胆嚢迂回後早期の高い死亡率を示し、2週間以上生存する症例は50%、6ヶ月以上生存する症例は23%に過ぎない。生存したネコは抗生物質に反応する間歇的嘔吐と食欲不振を繰り返した。胆嚢迂回を避けた時術後の死亡は無かった。胆嚢腸造瘻や、一次的迂回方法を取った時はどんな時も、術後合併症や死亡の見込みが増加するため、予後はより悪いと話すべきである。(Sato訳)
■イヌの血清アルカリフォスファターゼ活性上昇の持続期間に対しグルココルチコイド投与量の影響について
Glucocorticoid Dose Effects on the Duration of Increased Serum Alkaline Phosphatase Activity in Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:37-38 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Ginel PJ, Lucena R, Fernandez M. Duration of increased serum alkaline phosphatase activity in dogs receiving different glucocorticoid doses. Res Vet Sci 2002;72:201-204

イントロダクション

背景:イヌの血清アルカリフォスファターゼ活性は、主に肝臓由来である。2つの肝臓由来アルカリフォスファターゼ酵素の1つは、コルチコステロイド誘発性である。異なる外因性コルチコステロイドの種類や剤型、投与量の違いに対する血清アルカリフォスファターゼ活性上昇の持続期間は分かっていない。

目的:この研究の目的は、プレドニゾン、メチルプレドニゾン、デキサメサゾンの一般的な投与量に対する反応として、血清アルカリフォスファターゼ活性の上昇の持続期間と影響を評価することだった。

サマリー

方法:血清アルカリフォスファターゼ活性が正常な健康犬10頭の3つの群に、異なるグルココルチコイドを投与し、血清アルカリフォスファターゼ活性をモニターした。1群は経口プレドニゾロン1mg/kg/dayで3週間投与し、2群は、皮下に酢酸メチルプレドニゾン1.1mg/kgを1回投与し、3群は経口デキサメサゾンを0.25mg/kg/dayで1週間投与した。イヌの体重は15kgから35kgの間だった。血清アルカリフォスファターゼ活性を、投与後毎週再検査した。

結果:グルココルチコイド投与後、全ての群の血清アルカリフォスファターゼ活性が有意に増加したが、副腎皮質機能亢進症の明らかな臨床症状を呈したイヌはいなかった。1群は、1週、2週、3週で有意に上昇した。プレドニゾン投与中止から1週間後、血清アルカリフォスファターゼ活性濃度は正常範囲に戻った。2群の犬で、血清アルカリフォスファターゼ活性は上昇し、注射から4-5週後にも正常以上を維持した。3群のイヌは、デキサメサゾン投与から1週間以内にアルカリフォスファターゼ活性の有意な上昇を示した。デキサメサゾン投与中止後2週間で基準濃度に戻った。

結論:血清アルカリフォスファターゼ活性上昇の持続期間は、比較的短時間作用型グルココルチコイドの適度の投与量で変化した。血清アルカリフォスファターゼ濃度が正常に回帰するのに、経口グルココルチコイド投与後3週間、持続性グルココルチコイドの皮下注射後4週間のクリアランスが必要と思われる。

臨床への影響

この研究の目的は、血清アルカリフォスファターゼ活性に対する外因性グルココルチコイドの影響の量と持続期間を判定することだった。これは、一般に使用される3種類のグルココルチコイドの投与量と頻度のうちで行った。しかし、この研究は、イヌの適度のグルココルチコイド刺激が、一様に副腎皮質機能亢進症の臨床症状が出る前、または症状がなく血清アルカリフォスファターゼ活性を有意に上昇させることも示している。過去の研究の同様の所見は、ディスカッションの章で再検討している。
ゆえに、血清アルカリフォスファターゼ上昇がないイヌの10%以上で、自発性グルココルチコイド産生副腎皮質機能亢進症と診断されたイヌの古い研究を説明するのは困難である。正常血清アルカリフォスファターゼ活性のイヌは、非ステロイド誘発血清アルカリフォスファターゼ酵素の推定上遺伝異常が削除可能、または過剰なグルココルチコイドに関与しない副腎皮質機能亢進症の非典型的な型のグルココルチコイド産生副腎皮質機能亢進症を疑うべきではない。(Sato訳)
■高アンモニア血症のイヌの超音波所見:90症例(2000-2002)
Ultrasonographic Findings in Dogs with Hyperammonemia: 90 Cases (2000-2002)
J Am Vet Med Assoc 224[5]:717-727 Mar 1'04 Retrospective Study 48 Refs
Viktor Szatmari, DVM; Jan Rothuizen, DVM, PhD; Ted S. G. A. M. van den Ingh, DVM, PhD; Frederik J. van Sluijs, DVM, PhD; George Voorhout, DVM, PhD

目的:高アンモニア血症のイヌで超音波検査異常を判定する

構成:回顧的研究

動物:高アンモニア血症の飼育犬90頭

方法:腹部血管や臓器の超音波検査を系統だった方法で実施した。超音波診断が先天性門脈体循環シャントだったイヌは、開腹手術、または検死を行ったもののみ含めた。腹部血管が正常だったイヌや、超音波診断が後天性門脈体循環シャントや門脈高血圧のイヌは、組織検査のための肝臓バイオプシー標本を提出したもののみを含めた。

結果:超音波検査で、11頭の門脈体循環シャントを除外した。後天性門脈体循環シャントは17頭で見つかり、そのうち3頭は動脈門脈フィステル、14頭は他の肝臓異常だった。先天性門脈体循環シャントは61頭で見つかり、そのうち19頭は肝内シャント、42頭は肝外シャントだった。肝内シャントは14頭で左門脈枝から、5頭で右門脈枝から発生していた。肝外シャントは、脾静脈、右胃静脈、または両方から起こり、後大静脈、または胸腔に入っていた。超音波検査は24頭の脾-後大静脈シャント、9頭の右胃-後大静脈シャント、8頭の脾-非対部分シャント、1頭の右胃-非対部分シャントを明らかにした。

結論と臨床関連:超音波検査は、高アンモニア血症のイヌの基礎疾患を非侵襲的に特徴付ける、信頼性ある診断方法であるといえる。拡張した左精巣、または卵巣静脈は、後天性門脈体循環シャントの確かな指標だった。(Sato訳)
■イヌの先天性門脈体循環シャントの診断と犬種との関係
Association of Breed with the Diagnosis of Congenital Portosystemic Shunts in Dogs: 2,400 Cases (1980-2002)
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1636-1639 Dec 1'03 Retrospective Study 20 Refs
* Karen M. Tobias, DVM, MS, DACVS, and Barton W Rohrbach, VMD, MPH, DACVPM

目的:イヌの先天性門脈体循環シャント(CPSS)と毎年診断される割合と、全体の割合を判定し、CPSSに対してリスクが増える犬種を明らかにする

構成:回顧的研究

動物:1980年1月から2002年2月28日の間に獣医療データベース(VMDB)に報告した、獣医教育病院のCPSSの症例犬2400頭

手順:CPSSと診断された割合を、毎年そして22.2年間VMDBに記録された全ての犬と各犬種を算出した。オッズ比と補正信頼区間を、CPSSと診断された各犬種と雑種犬の比率を比較することで、最低100頭カウントされた犬種で算出した。

結果:先天性門脈体循環シャントは、全てのイヌの0.18%、雑種犬の0.05%で報告された。CPSSの診断比率は、1980年の10000頭中5頭から2001年の1000頭に増加した。ヨークシャーテリアは、CPSSの診断数で最大を占めた。33犬種は、雑種犬に比べCPSSの診断を有意に受ける傾向にあった。診断の最大比率は、ハバネーゼ(3.2%)、ヨークシャーテリア(2.9%)、マルチーズ(1.6%)、ダンディディモントテリア(1.6%)、パグ(1.3%)で見られた。

結論と臨床関連:雑種犬に比べ、CPSSのリスクの増加は、一定の犬種で認められた。特定犬種のオッズ比の増加は、CPSSの遺伝傾向の仮説を支持する。オーナーと獣医師は、CPSSのリスクがある犬種の、繁殖に使用する犬や臨床症状を示す犬で、適切な診断検査を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬猫の超音波ガイド下肝臓針吸引生検と細胞所見の正確性:97症例(1990-2000)
Accuracy of Ultrasound-Guided Fine-Needle Aspiration of the Liver and Cytologic Findings in Dogs and Cats: 97 Cases (1990-2000)
J Am Vet Med Assoc 224[1]:75-78 Jan 1'04 Retrospective Study 12 Refs
Kelly Y. Wang, DVM; David L. Panciera, DVM, MS, DACVIM; Raida K. Al-Rukibat, DVM, MS, DACVP; Zaher A. Radi, DVM, PhD

目的:犬猫の超音波ガイド下肝臓の針吸引生検と細胞所見の正確性を評価する

構成:回顧的研究

動物:56頭のイヌと41頭のネコ

処置:1990年から2000年に、肝臓の細胞診と組織病理検査で評価した犬猫の医療記録を再検討した。組織、細胞診断を空胞性肝障害、炎症、腫瘍、肝硬変、原発性胆汁うっ滞、シャント、正常、その他に分類した。

結果:組織病理診断と細胞診断の全体の一致性は、イヌ症例56頭中17頭(30.3%)、ネコ症例41頭中21頭(51.2%)でみられた。高率で一致した部類は、空胞性肝障害だった。空胞性肝障害は、それぞれイヌで11頭中7頭、ネコで18頭中15頭の細胞診で確認し、組織学検査は主となる疾患過程を示した。しかし、細胞診検査で多く誤診された部類でもあった。炎症疾患は、イヌの20頭中5頭、ネコの11頭中3頭で正確に確認した。

結論と臨床関連:犬猫の細胞診と組織病理所見の不一致の程度と細胞診の限界を認識しておくことは、肝疾患の診断でよりよく決定する助けとなるだろう。(Sato訳)
■顕著な細胞学的所見として腹水に粘液性物質を伴うイヌ胆汁性腹膜炎の3症例
Three Cases of Canine Bile Peritonitis with Mucinous Material in Abdominal Fluid as the Prominent Cytologic Finding
Vet Clin Pathol 32[3]:114-120 Fall'03 Case Report 20 Refs
Sean D. Owens; Ruanna Gossett; M. Rebecca McElhaney; Mary M. Christopher; Sonjia M. Shelly

背景:胆汁性腹膜炎は、重度の腹腔内非敗血症性炎症反応である。自発的な胆管系の破裂、または胆道の炎症、閉塞、処置の合併症、または外傷により胆汁の全身、または局所の漏洩から起こると思われる。細胞学的に腹水の胆汁は、金-緑色顆粒性色素として出現する。

目的:この報告の目的は、胆汁性腹膜炎のイヌ3頭に見られた腹水の非典型的な細胞学的特徴を述べることである。

方法:診断作業の一部として、胆汁性腹膜炎のイヌ3頭から腹水を採取し、検査した。2頭で、液体のビリルビン濃度を判定し、腹水の直接塗抹にHall's bile染色、Alcian blue-periodic acid-Schiff染色、Mayer's mucicarmine染色を行った。

結果:3頭の腹水中で凝集槐などに見られる非細胞粘液性原繊維物質が、顕著な細胞学的所見だった。胆汁色素は観察されなかった。3頭の腹水には、好中球主体の炎症細胞数の増加が認められた。総タンパク濃度は2.9-5.6g/dlだった。腹水の総ビリルビン濃度は、同時に測定した血清ビリルビン濃度の2倍以上だった。特別染色の結果をもとに、不定形の物質は粘液物質として明確だったが、ビリルビンは陰性だった。全ての犬で胆汁性腹膜炎は、一般的な胆道の裂け目から生じていた。

結論:腹水に原線維性粘液物質を伴う胆汁性腹膜炎は、イヌで過去に報告されていない。その物質はヒトや実験的にイヌで肝外胆道閉塞の続発症として見られる”白色胆汁”に似ている。イヌの腹水に粘液物質が観察された時や腹水ビリルビン濃度が血清ビリルビン濃度の2倍以上になっている時は、肝外胆道の破裂を疑うべきである。(Sato訳)
■イヌの肝内門脈大静脈シャントの減衰中、門脈の術中超音波検査
Intraoperative Ultrasonography of the Portal Vein During Attenuation of Intrahepatic Portocaval Shunts in Dogs
J Am Vet Med Assoc 222[8]:1086-1092 Apr 15'03 Case Report 49 Refs
* Viktor Szatmari, DVM; Frederik J. van Sluijs, DVM, PhD; Jan Rothuizen, DVM, PhD; George Voorhout, DVM, PhD

先天性肝内門脈体循環シャントのイヌ7頭で、二重ドップラー超音波検査による門脈血流流速の術中測定法を述べる。この研究の目的は、術中超音波検査がそのようなイヌの腸間膜門脈造影法に成り代わるようなものなのかどうかを判定することと、量的門脈血流力学変動値が門脈圧よりも臨床結果によりよく相関するか判定することだった。
超音波測定値が、平均の全身動脈血圧の変化や、体内諸臓器の所見をもとにシャントの減衰を行う外科医の意思決定に影響を及ぼす事はなかった。全頭合併症なく回復し、外科医は7頭全て成功だと考えた。
術中B-モードの超音波検査は、シャントや門脈枝の解剖学的構造のリアルタイムな情報を映し出し、腸間膜門脈造影に代わる有効なものかもしれないと示唆した。減衰前の時間-平均門脈血流速の範囲は6.5-33.7cm/sで、減衰後は5.0-9.5cm/sだった。狭い範囲の結紮後の流速は、術中超音波検査が術中門脈圧測定に変わるものかもしれないと示唆した。(Sato訳)
■犬と猫における、肝胆汁性疾患の合理的薬物療法
Rational Pharmacologic Therapy of Hepatobiliary Disease in Dogs and Cats
Compend Contin Educ Pract Vet 25[6]:432-447 Jun'03 Review Article 105 Refs
Laura Lee Sartor, DVM & Lauren A. Trepanier, DVM, PhD, DACVIM, DACVCP
University of Wisconsin-Madison

犬と猫における肝胆汁性疾患の治療は、それらの炎症に対し抗繊維素剤、銅剤、肝保護剤、抗菌剤、利尿剤、凝血剤、あるいは制酸剤などの多様な薬剤の使用をしばしば必要とします。この論文は、犬と猫の肝胆汁性疾患の調節における、次の薬剤の最適な使用と、適応に関して検討しました;グルココルチコイド、アザチオプリン、コルヒチン、亜鉛、D-ペニシラミン、ウルソディオール、ビタミンE、S-アデノシル-L-メチオニン、オオアザミ(シリマリン)、カルニチンとタウリン、抗菌剤、ラクツロース、スピロノラクトンと他の利尿剤、ビタミンK1、そして、胃腸保護剤です。(Dr.K訳)
■小葉内肝内門脈大静脈シャントの治療で、アメロイド圧迫器の設置、肝葉切除と共に行う門脈大静脈静脈移植の使用
Use of Portocaval Venografts with Ameroid Constrictor Placement and Hepatic Lobectomy for Treatment of Intralobular Intrahepatic Portocaval Shunts in Four Dogs
J Am Vet Med Assoc 222[4]:455-460 Feb 15'03 Case Report 15 Refs
Kelly L. Gellasch, DVM; Alison J. Patricelli, DVM; Gretchen K. Sicard, DVM; Jonathan E McAnulty, DVM, PhD

肝内門脈体循環シャントの完全な減衰のための肝葉切除は、安全で効果的な外科治療と思われる。肝内シャントの血管が肝葉内に最終的に触ることができる、または門脈造影によりその存在が確認できるとき、肝葉切除は完全なシャントの減衰の技術的に簡単で効果的な方法である。肝葉切除後適切な値に門脈圧を維持するために、外頚静脈移植を使用することで肝外門脈大静脈シャント血管を作成することができる。1つのシャント設置後も門脈圧が依然高い場合は、2つ目のシャント血管を作成できる。漸次、そして安全なシャント血管の減衰は、最初の手術時に肝外移植した血管にアメロイド圧迫器を設置することで達成される。(Sato訳)
■肝内門脈体循環シャントの犬の生存率と予後指標:32症例(1990-2000)
Survival and prognostic indicators for dogs with intrahepatic portosystemic shunts: 32 cases (1990-2000).
Vet Surg 31[6]:561-70 2002 Nov-Dec
Papazoglou LG, Monnet E, Seim HB 3rd

目的:肝内体循環シャント(IPSS)の犬の短期結果と長期生存期間の予後指標を判定すること

研究構成:回顧的研究

動物:様々な犬種の32頭のイヌ

方法:肝内体循環シャントの犬の医療記録から得た臨床データを再検討し、その中身は性別、手術時の年齢、体重、術前ヘマトクリット値(PCV)、血漿総タンパク濃度(TP)、アルブミン(ALB)、血清ALT、ALP活性、食前そして食後胆汁酸濃度(pre-BA、post-BA)、血中尿素窒素(BUN)、グルコース濃度、好中球バンド、経直腸核シンチグラフィー造影シャント分画、血管造影を実施したかどうか、手術時のシャント部位、シャントの完全または部分結紮を行ったかどうか、手術終了時の直腸温、手術時間であった。追跡調査は、獣医教育病院の来院時、またはオーナーや紹介獣医師に対する電話調査で確認した。

結果:生存期間の中央値は35.68ヶ月で、1年-、2年-残存確率はそれぞれ60%と55%だった。体重、TP、ALB、BUNは短期結果の予後指標と認められた。PCVとTPは長期生存の予後指標として確認された。

結論:肝内体循環シャントのイヌで、PCVとTPは長期生存の予後指標として認められ、体重、TP、ALB、BUNは短期予後指標として認められた。手術時のシャント部位は短期、長期生存率に影響を及ぼさなかった。

臨床関連:TP、ALB、BUN、PCVは肝内シャントの犬の予後判定に使用可能である。(Sato訳)
■グルココルチコイドの異なる投与量で投与された犬の血清アルカリフォスファターゼ活性上昇の持続期間
Duration of increased serum alkaline phosphatase activity in dogs receiving different glucocorticoid doses.
Res Vet Sci 72[3]:201-4 2002 Jun
Ginel PJ, Lucena R, Fernandez M

外因性グルココルチコイドの暴露で、血清アルカリフォスファターゼ(ALP)活性は様々な増加を示すが、その持続期間ははっきりとしていない。この研究で、臨床的に正常な成犬10頭の3群で、異なる種類のグルココルチコイドを治療量で投与した。1群にはプレドニゾン1mg/kg/dayP.O.3週間、2群は酢酸メチルプレドニゾン1.1mg/kg/days.c.1回投与、3群はデキサメサゾン0.25mg/kg/dayP.O.1週間投与した。
1群で7(P<0.01)、14(P<0.001)、21日(P<0.001)に統計学的に有意な上昇を示した。投与中止後、血清ALPは7日で正常となった。2群は投与後3週間有意な血清ALP活性上昇を示した(7日(P<0.05)、14日(P<0.001)、21日(P<0.01))。3群で、1週間後に有意な上昇を示し(P<0.001)、投与中止後2週間かけて正常に戻った。
結論として、ALP活性の上昇持続期間は変わりやすく、全頭で短期作用グルココルチコイドならば3週間、長期作用メチルプレドニゾンならば4週間の期間が正常に戻るまでに必要となる。(Sato訳)
■犬と猫における、肝臓のニードルバイオプシー標本と楔生検標本の診断上の比較
Diagnostic Comparison of Needle and Wedge Biopsy Specimens of the Liver in Dogs and Cats
J Am Vet Med Assoc 220[10]:1483-1490 May 15'02 Prospective Study 52 Refs
Terri L. Cole, DVM; Sharon A. Center, DVM, DACVIM *; Shannon N. Flood, DVM, DACVIM; Peter H. Rowland, DVM, DACVP; Beth A. Valentine, DVM, PhD, DACVP; Karen L. Warner, BA/S; Hollis N. Erb, DVM, PhD

目的:犬と猫の肝臓から採取した、ニードルバイオプシー標本の形態学的診断と楔生検標本の形態学的診断を比較することです。
計画:前向き試験
動物:124頭の犬と猫。
手順:それぞれの動物から2つのニードルバイオプシー標本を採取し、楔生検標本は、開腹手術、または死後解剖の時、同じ肝葉から採取しました。各標本の組織学的特徴を3人の検査官が採点しました。形態学的診断は、組織学的特徴を採点してから行いました。形態学的診断に関して、3人の検査官のうち、少なくとも2人の意見が一致したものだけを症例としました。楔生検での形態学的診断を確定診断としました。物理的特徴(長さ・幅・表面領域、分断の程度、そしてニードルバイオプシー標本と楔生検の表面領域に関しての、門脈3主徴の数)を調査しました。

結果:確定診断には、肝壊死(n=10)、胆管炎-肝胆管炎(13)、慢性肝硬変(12)、犬の空胞肝障害(11)、門脈体静脈管異常-微小血管形成異常(17)、新生物(10)、種々の肝障害(18)、そして肝障害の異常なし(33)がありました。個々の検査官で、ニードルバイオプシー標本の形態学的診断が、楔生検標本の形態学的診断と一致したのは、標本の56と67%でした。3人の検査官全員の診断が一致したのは、ニードルバイオプシー標本で44%、楔生検標本で65%でした。ニードルバイオプシー標本の形態学的診断が、最終診断と一致したのは、124頭中59頭(48%)でした。
結論と臨床関連:結果は、犬と猫の肝臓のニードルバイオプシー標本は、慎重に解釈しなければならないと言うことを示唆します。(Dr.K訳)
■猫の胆石症の外科治療:9症例
Christopher S. Eich, DVM, DACVS et al; J Am Anim Hosp Assoc 38[3]:290-296 May-Jun'02 Retrospective Study 26 Refs; The Surgical Treatment of Cholelithiasis in Cats: A Study of Nine Cases

猫の胆石症は、胆管閉塞疾患の原因としてまれに報告があります。この研究の目的は、閉塞性胆石症の猫9例の臨床症状、診断テスト結果、外科治療の結果を紹介することです。
よく見られる症状は、連続的な嘔吐(9/9)、脱水(9/9)、食欲不振(6/9)、黄疸(5/9)、嗜眠(4/9)で、ALP、ALT、AST、血清ビリルビン、またはそれらの組み合わせが上昇し、ビリルビン血症を併発したネコでは、ビリルビン尿が見られました。全頭、猫レトロウイルス陰性で、8頭で実施した凝固面に関しても正常範囲内でした。
腹部X線検査を行った6頭中5頭で、X線不透過性の胆石を写し出しました。8頭で腹部超音波検査を実施し、全てに肝外閉塞を思わせる胆管の拡張が見られ、7頭で胆石を確認しました。全頭開腹し、大きく拡大した胆嚢や肝外胆管系を認めました。5頭は胆嚢切除、1頭は胆嚢切開、3頭は胆管路変更術を行ないました。多くは複合胆石(7/9)で、分析結果の多くは炭酸カルシウムでした。石は、胆嚢(胆石)や胆管内(総胆管結石)に在りました。全頭に異常な肝臓組織変化が見られ、7頭は肝胆管炎、2頭は肝リピドーシスでした。多く(7/9)は術後長期(平均21ヶ月;中央値24ヶ月)にわたり内科療法の追加もなく(2頭は肝胆管炎の処置と、炎症性腸疾患のためにプレドニゾンの投与を必要とし)生存しましたが、肝リピドーシスの2頭は術後すぐに死亡しました。この研究で、再発を起こした猫はいませんでした(追跡期間13-27ヶ月)が、胆嚢切除を行わなかった時には再発の可能性があります。
結論として、胆嚢切除は、低い罹患率と死亡率を示す事がこの研究で明らかとなり、胆石症の猫の多く(7/9)は、肝リピドーシスを併発しない限り術後長期間(24ヶ月)生存しました。(Sato訳)
■犬の肝臓吸引物で、炎症の細胞学的評価
Douglas J. Weiss DVM, PhD et al; Vet Clin Pathol 30[4]:193-196 Winter'01 Retrospective Study 8 Refs ; Cytologic Evaluation of Inflammation in Canine Liver Aspirates

10年以上にわたり、肝臓吸引細胞診は犬猫の肝疾患を評価するため、日常的に行われています。しかし、炎症性肝疾患を検出する肝細胞診の有用性は明確でありません。犬51頭の肝細胞診報告を、回顧的に再検討し、同時に行った外科的バイオプシーでの決定報告と比較しました。炎症性肝疾患の細胞診の総合的感受性は93%で、特異性は96%でした。化膿性肝炎(n=14)における細胞診の感受性は100%で、特異性は93%、慢性活動性肝炎(n=13)では、感受性が100%、特異性93%、リンパ球性肝炎(n=3)では感受性33%、特異性100%でした。犬の肝臓吸引細胞検査は、化膿性肝炎と慢性活動性肝炎の検出で高い感受性試験であるが、リンパ球性肝炎では非感受性であると結論付けます。(Dr.Sato訳)

■犬における、異常門脈短絡血管検出のための、腸間膜門脈造影の感度に関して患畜ポジショニングがどう影響するか:34症例(1997-2000)
Peter V. Scrivani, DVM, DACVR et al; J Am Vet Med Assoc 219[9]:1251-1253 Nov 1'01 Retrospective Study 6 Refs; Influence of Patient Positioning on Sensitivity of Mesenteric Portography for Detecting an Anomalous Portosystemic Blood Vessel in Dogs: 34 Cases (1997-2000)

目的:外科的腸間膜門脈造影中、異常な門脈短絡血管の検出が、患畜のポジショニングで変化するかどうかを明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:シンチグラフィー、または外科的に、門脈体循環シャントと診断された犬34頭。
手順:門脈体静脈血管に対し、門脈造影を行いました。左側横臥、右側横臥、そして背側横臥位の結果、そして、2または3ポジションの結果から、感度を計算しました。ポジションにおける感度の違いと、2人の検査官の違いを評価しました。
結果:感度は、背側、右側、そして左側横臥位で、それぞれ85、91、そして100%でした。感度は、左側横臥位より、背側横臥位で低い結果となりましたが、有意差ではありませんでした。背側横臥位と右側横臥位、または右側横臥位と左側横臥位における、結果の感度で有意差はありませんでした。背側横臥位と右側横臥位の組み合わせの感度は97%で、背側横臥位単独よりも感度良いものの、有意差ではありませんでした。左側横臥位における感度が100%だったために、このポジションの結果と、他のポジションの結果を組み合わせた、改良ポジションを評価する必要はありませんでした。
結論と臨床関連:腸間膜門脈造影の結果は、患畜のポジショニングにより異なりました。最適なポジションは、患畜により変化に富みましたが、左側横臥位がより良く、背側横臥位はより悪いものと考えられます。感度は、患畜を直交軸横臥位にして、検査を実施することにより向上すると考えられます。(Dr.K訳)