■短頭種閉塞性気道症候群の短頭種の犬の血小板増多症
Thrombocytosis in brachycephalic dogs with brachycephalic obstructive airway syndrome
Vet Med (Praha). 2023 Feb 15;68(2):57-61.
doi: 10.17221/23/2021-VETMED. eCollection 2023 Feb.
Vladimira Erjavec , Alenka Nemec Svete

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短頭種の犬は、短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)として知られる形態関連の呼吸器障害の傾向がある。その全体的な結果のため、BOASは全身性疾患と考えなければならない。

この研究の目的は、さまざまなグレードのBOASと非短頭種の犬における血小板数(PLT)、平均血小板容積(MPV)、血小板クリット(PCT)を調べることだった。後者はコントロール群とした。

BOASの犬106頭と非短頭種の犬41頭を含めた。疾患の重症度に従い、BOASの犬をグレード1(17頭)、グレード2(42頭)、グレード3(47頭)に分類した。

血小板増多症は全てのBOASの犬の46%(49/106)に見つかった。より高い血小板massが全てのBOASの犬の62%(66/106)に見つかった。非短頭種の犬と比べ、全てのグレードのBOASの犬において、有意に高いPLT、MPV、PCTを認めた(P<0.05)。しかし、BOASにおけるPLT及び血小板指数の役割、それらと炎症および凝固能亢進との関連を明らかにする今後の研究が必要である。(Sato訳)
■158頭の猫の血小板増多症(2011-2018)
Thrombocytosis in 158 cats (2011-2018)
J Feline Med Surg. 2023 Jul;25(7):1098612X231185680.
doi: 10.1177/1098612X231185680.
Leigh A Howard , Andrew D Woolcock , John A Christian , George E Moore

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目的:血小板増多症はあまり見られない血液異常で、ヒトや犬で種々の生理学、代謝性、炎症性および腫瘍性疾患と関係する。猫で血小板増多症はあまり述べられていない異常である。この研究の目的は、基礎疾患プロセスと重症度を基にして猫の血小板増多症を明らかにすることと、猫のコントロール集団と比較することだった。

方法:2011年から2018年の間で血小板が増加した猫(>600 x 10(3)/μL;血小板増多症群)と血小板が正常な猫(200-600 x 10(3)/μL;2:1年齢のあったコントロール群)の医療記録を再検討する回顧的研究を行った。全ての猫の血小板数は、血液塗抹評価を基に算出した。猫が血小板増多症の重症度で分類した(軽度、中程度、顕著)。全ての症例で診断を記録し、腫瘍、内分泌、炎症性疾患に大まかに分類した。

結果:合計158頭が血小板増多と確認し、315頭の猫はコントロール群だった。両群で非腫瘍性炎症性疾患が最も多く診断された(血小板増多症の猫の54.4%とコントロールの56.2%;P=0.77);しかし、消化管疾患はコントロール群(34.5%)と比べて、血小板増多症の猫(75.6%;P<0.0001)でより一般的だった。腫瘍はコントロール群(25.4%)と比べて、血小板増多症の猫(44.3%;P<0.0001)でより多く診断された。円形細胞腫瘍は両群でもっとも多い腫瘍診断だったが、消化管および多中心型リンパ腫は血小板増多症の猫でより多く診断された。血小板増多症の重症度と病因の間に関係は見られなかった。

結論と関連性:猫の血小板増多症は、コントロール集団と比べ、消化管、肝胆道あるいは免疫介在性疾患とより一般的に関係する。腫瘍(特に多中心および消化管型リンパ腫)は、血小板増多症の猫でより一般的に診断された。(Sato訳)
■イギリスの犬の血小板減少症の原因:762症例の回顧的研究
Causes of thrombocytopenia in dogs in the United Kingdom: A retrospective study of 762 cases
Vet Med Sci. 2023 May 22.
doi: 10.1002/vms3.1091. Online ahead of print.
Marina Martín-Ambrosio Francés , Mayank Seth , Mellora Sharman , Danica Pollard , Ana Liza Ortiz , Rachel Miller , Thomas Natsiopoulos , David Walker , Bryn Jones , Joshua Hardwick , Barbara Glanemann , Andrés Salas Garcia , Jessica Bacon , Aida Gómez Selgas

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背景:血小板減少症は犬の一般的な検査異常の1つで、多くの疾患がその発症に関係している。原発性免疫介在性血小板減少症(pITP)の診断に対し、血小板濃度の減少程度の感受性及び特異性に対する評価は報告されていない。

目的:イギリスの犬において血小板減少症の異なる原因の有病率を報告することと、血小板減少症の異なる原因における血小板濃度の有用性を調査すること

方法:2017年1月から2018年12月の間に重度紹介病院を受診した血小板減少症の犬762頭の医療記録を回顧的に再検討した。症例は以下のカテゴリーに振り分けた:pITP、感染性疾患、腫瘍、炎症/他の免疫介在性疾患、その他。異なるカテゴリーの有病率を算出し、血小板濃度を比較した。受信者操作特性(ROC)曲線を、血小板減少症の原因の鑑別に対する血小板濃度の有用性の調査に使用した。

結果:血小板減少症に関係する最も一般的な疾患カテゴリーは、腫瘍(27.3%)、続いてその他の原因(26.9%)、pITP(18.8%)、炎症/免疫介在性疾患(14.4%)、感染性疾患(12.6%)だった。pITPの犬は他の4つのカテゴリーの犬と比べ、有意に血小板濃度が低かった(中央値8 x 10(9)/L、範囲:0-70 x 10(9)/L)。血小板濃度は、血小板減少症の他の原因とpITPの鑑別に有用で(ROC曲線下面積=0.89、95%CI、0.87-0.92)、血小板濃度≦12 x 10(9)/Lは感受性60%、特異性90%だった。

結論:重度の血小板減少は、pITPの診断に高い特異性を持ち、過去の疫学研究と比較して、この血小板減少のイギリスの犬の集団においては、より有病率が高かった。逆に、感染性疾患の犬の比率は、他の地域からの過去の報告より低かった。(Sato訳)
■犬の末梢血好酸球増加症:有病率と関係する疾患
Peripheral blood eosinophilia in dogs: Prevalence and associated diseases
Vet Med Sci. 2022 Jun 2.
doi: 10.1002/vms3.832. Online ahead of print.
Abigail Guija-de-Arespacochaga , Loïc Kremer , Frank Künzel , Ilse Schwendenwein

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背景:犬の好酸球増加症は、ここ20年以上評価されていない。ヒトの局所的な違いのように、長期にわたり有病率と関係する疾患の変化が予想できる。

目的:犬の顕著な血液好酸球増多の有病率と原因を調べる

方法:回顧的研究。2013年から2017年の間に>1.5 x 10(9)/Lの好酸球数(顕著な好酸球増多)の犬317の臨床的病歴を評価した。犬はメジャーな臨床的所見により10群に振り分けた。

結果:好酸球増多は10829頭中1592頭に存在した(14.7%);軽度(0.8-1.49 x 10(9)/L)は78.4%、中程度(1.5-4.9 x 10(9)/L)は20.5%、重度(>5 x 10(9)/L)は1.1%の症例だった。ロットワイラーは多く見られた(16.1%)。顕著な好酸球増多の317症例のうち、19.6%は腫瘍、19.1%は消化管障害、13.6%は健康、10.4%は内部寄生虫、6%は呼吸器、5.4%は神経系、5.4%は皮膚、4.8%は泌尿生殖器、3.2%は内分泌障害、12.6%は種々のものだった。腫瘍群でリンパ腫(29%)と肥満細胞腫(12.9%)はもっとも頻度の高い腫瘍だった。合計72.6%の担癌犬は8歳以上だったが、63.6%の内部寄生虫の犬と86%の明らかに健康な犬は5歳以下だった。呼吸器障害の犬において好酸球増多は有意に高かった(p<0.0146)。白血球増多は50.2%の症例で見つかった。

結論:老犬で顕著な血液好酸球増多の最も一般的な原因は悪性腫瘍で、内部寄生虫症はより若い犬に一般的だった。好酸球増多は明らかに健康な若い犬で一般的に見られ、寄生虫感染の誤診に関係するかもしれない。(Sato訳)
■総高カルシウム血症と総低カルシウム血症の犬における予測的イオン化カルシウムの診断性能
Diagnostic performance of predicted ionized calcium in dogs with total hypercalcemia and total hypocalcemia
Vet Clin Pathol. 2021 Dec 6.
doi: 10.1111/vcp.13024. Online ahead of print.
Matthieu Lebastard , Benoît Cuq , Mellora J Sharman , Julie Danner , Kevin Le Boedec

背景:異常な総カルシウム(tCa)値は必ずしも調節不全のイオン化カルシウムを意味しない

目的:異常なtCaの犬において、実際のカルシウム状態に関し予測的イオン化カルシウム(piCa)の診断性能を評価する

方法:これは横断複数施設研究だった。piCaとその予測期間(PI)を3か所の異なる病院から114頭(増加62頭、減少52頭)の犬で算出した。また、全ての犬のイオン化カルシウムと生化学プロフィールも入手した。イオン化高カルシウム血症(iHyperCa)およびイオン化低カルシウム血症(iHypoCa)を確認するため、PiCaの感受性、特異性、的中率、診断的不一致をロジスティック回帰解析で算出した。

結果:iHyperCaは、tCaが参照範囲上限以上の高燐血症の犬の28%、非高燐血症の犬の66%で見つかった。piCaは、高燐血症の犬の72.2%、非高燐血症の犬の93.2%を正確に分類した。比較的に、tCa域値を12mg/dLまで上げることで、その時の高燐血症の犬の50%および非高燐血症の犬の75%を適切に分類した。
iHypoCaは、tCaが減少している31/52頭(60%)でのみ見つかった。piCaは病院次第で、55.2%-100%のiHypoCaの犬を正確に分類した。そのPIはiHyperCaに対し高感受性(100%)、iHyperCa(100%)およびiHypoCa(100%)の両方に対し高特異性を示した。

結論:tCa上昇単独では、イオン化カルシウムの状態を確実に判定できない。高燐血症を伴っても、piCaおよびそのPIは、イオン化カルシウム測定値が得られないとき、異常なtCa値を解釈する信頼性のある代替法である。しかし、tCaの参照範囲が7.6-11.4mg/dLから著しく異なる場合、piCa値は、過少/過大評価するかもしれない。(Sato訳)
■1回のビンクリスチンの静脈内投与に対する反応の血小板数と機能
Platelet number and function in response to a single intravenous dose of vincristine
J Vet Intern Med. 2021 May 16.
doi: 10.1111/jvim.16169. Online ahead of print.
Erin C Allen , Jaime L Tarigo , Dana N LeVine , Jamie P Barber , Benjamin M Brainard

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背景:ビンクリスチンは循環血小板数を増加させると思われるが、新しく放出された血小板の機能的能力は不明である。

目的:犬に対し1回のビンクリスチンの静脈内投与後の成熟および未熟(網状)血小板の機能性を評価し比較する

動物:10頭の健康な目的繁殖犬

方法:前向きに犬に0.02mg/kgビンクリスチンあるいは0.9%生理食塩水を1回IV注射した。投与前、投与後3、5、7日目の血小板(静止およびトロンビン刺激後)をP-セレクチン(CD62P)発現のフローサイトメトリック判定で評価した。網状化血小板は、チアゾールオレンジ(TO)染色で鑑別した。

結果:生理食塩水に比べ、ビンクリスチンの投与は0日目から7日目まで(225±58から273±65x103 /μL、vs 299±76.4から214±20x103 /μL、P=.01)血小板数を増加させ、0日目から5日目まで網状化血小板の比率を増加させた(3.9±1.5%から6.1±1.6%、P=.02)。全ての日で、網状化血小板は、成熟血小板よりもCD62Pの静止発現がより大きかった(49.6±4% vs 10.2±1%、P≦.001)。全ての日を通し、ビンクリスチン及び生理食塩水投与群の網状化血小板によるCD62P発現は、刺激ない時(P=.7)あるいは、トロンビン刺激後(P=.33)で違いがなかった。

結論と臨床的重要性:ビンクリスチン投与の反応で放出される網状化血小板の機能は、成熟血小板と同様である。(Sato訳)
■犬の自家多血小板血漿は大きな皮膚創傷の治癒を高める
Autologous Platelet-Rich Plasma Enhances the Healing of Large Cutaneous Wounds in Dogs
Front Vet Sci. 2020 Oct 26;7:575449.
doi: 10.3389/fvets.2020.575449. eCollection 2020.
Ilaria Iacopetti , Marco Patruno , Luca Melotti , Tiziana Martinello , Silvia Bedin , Tamara Badon , Edoardo Maria Righetto , Anna Perazzi

多血小板血漿(PRP)はヒトや獣医療において、皮膚創傷治癒に非常に重要な役割を演じることが分かっている。意外なことに今まで、犬の亜急性全層皮膚創傷に対するPRP治療を報告している研究はない。

この研究の目的は、大きな亜急性皮膚創傷を示す6頭の犬において、自家PRPの2日連続処置と15日後の2回目の処置の効果を評価することだった。

治療した全頭の収縮率、再上皮化、治癒は、合併症あるいは副作用(PRP連続治療に関係する)はどの犬にも起こらず、全ての創は完全閉鎖と再上皮化を達成した。

我々の結果は、異なる原因の亜急性の大きな皮膚創傷において、自家PRPの局所反復治療の肯定的な効果を示唆する。ゆえに、このPRP治療は犬の亜急性の大きな創傷症例において、治癒過程を促す単純で、費用対効果の高い有効な代替法といえる。(Sato訳)
■大動脈血栓症の犬の治療と結果:100症例(1997-2014)
Outcome and treatments of dogs with aortic thrombosis: 100 cases (1997-2014)
J Vet Intern Med. 2020 Sep;34(5):1759-1767.
doi: 10.1111/jvim.15874. Epub 2020 Aug 15.
Mackenzie Ruehl , Alex M Lynch , Therese E O'Toole , Bari Morris , John Rush , C Guillermo Couto , Samantha Hmelo , Stacey Sonnenshein , Amy Butler , Julien Guillaumin

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背景:犬において、大動脈血栓症(ATh)は珍しい状態で、治療、結果、リスクファクターの理解が限られている。

目的/仮説:AThの犬の治療、結果、潜在的リスクファクターを述べる

動物:超音波検査あるいは肉眼的検死をもとにAThと診断された飼育犬

方法:2か所の教育施設からの複数施設回顧的研究

結果:100頭の犬を確認した。アンチトロンビン診断、35/100頭は歩行不能だった。犬を急性(n=27)、慢性(n=72)、不明(n=1)に分類した。44頭はATh の傾向を思わせる少なくとも1つの併存症があり、他の23頭は複数の併存症があった。残りの明らかな併存症のない23頭は、原因不明に分類した。ATh発症に潜在的に関連する併発疾患には、蛋白漏出性腎症(PLN)(n=32)、腫瘍(n=22)、外因性コルチコステロイド投与(n=16)、内分泌疾患(n=13)、感染(n=9)が含まれた。PLNの犬は、PLN以外の犬よりも抗トロンビン活性が低かった(それぞれ64%と82%)(P=0.04)。

65頭の犬が入院し、その後41頭は退院した。16頭は外来として治療し、19頭は入院時に安楽死された。院内処置は様々だが、血栓溶解剤(n=12)単独あるいは血栓摘出と併用(n=9)が含まれた。57頭は生きて退院した。16頭は180日生存した。回帰解析で、発現時の歩行状態は、生存して退院と有意に相関した(P<0.001)。

結論/臨床的重要性:AThの犬は予後が悪く、来院時に歩行不能の犬はより悪い。凝固亢進に関係する併存症の存在が一般的であるが、AThの基礎原因は常に確認できるわけではなかった。(Sato訳)
■犬と猫の低ナトリウム血症
Hyponatremia in dogs and cats.
J Vet Emerg Crit Care. September 2019;29(5):461-471.
DOI: 10.1111/vec.12881
Andrew G Burton , Kate Hopper

目的:犬と猫の低ナトリウム血症に対する病態生理学、診断アプローチ、推奨治療を再検討する

病因:低ナトリウム血症は、ほぼ体内全水分量(TBW)の増加から起こり、ナトリウム喪失からではない。抗利尿ホルモン(ADH)の異常は、低ナトリウム血症の原因の一般的な部分である。

診断:低ナトリウム血症の診断は、TBWの増加の原因に注目する。患者の容量状態の評価、尿中ナトリウムの測定は、重要なファクターである。血漿重量オスモル濃度の測定あるいは算出した見積もりも、低ナトリウム血症のガイドとなり得る。

治療:血清ナトリウムの急速な是正は、浸透圧性脱髄症候群を促進する可能性がある。一般的なルールとして、血清ナトリウム濃度は24時間かけて≦10mmol/L上げるべきだが、神経学的異常が見られるならば血清ナトリウムの急速な上昇が示される。患者のナトリウム欠乏の経産を基に量を決め、高張生理食塩液で上げることができる。水の摂取あるいは保持の基礎原因の治療も、完全に低ナトリウム血症を解消させるために必要である。

予後:正常な血清ナトリウムの犬猫と比べ、軽度低ナトリウム血症(参照値の下限より<5mmol/L低い値)の犬猫でさえ死亡率は有意に高い。犬の特定疾患状態中に低ナトリウム血症がある場合も死亡リスク増加と関係する。(Sato訳)
■犬と猫における骨髄サンプリングに関する合併症
Complications associated with bone marrow sampling in dogs and cats
J Small Anim Pract. 2020 Dec 4.
doi: 10.1111/jsap.13274. Online ahead of print.
G A Woods , M Simpson , A Boag , J Paris , C Piccinelli , C Breheny

目的:犬と猫の骨髄サンプリング中の合併症の有病率と関連する動物および方法の要因を評価する

材料と方法:回顧的コホート研究で、2012年から2019年にかけて骨髄サンプリングを行った犬と猫を確認するために記録を評価した。シグナルメント、特定の臨床病理所見の有無、骨髄サンプリングの解剖学的部位、試みた回数、サンプリングの診断的クオリティー、鎮痛プロトコール、処置後の合併症を記録した。

結果:合計131頭の犬と29頭の猫を研究に含めた。160症例中22症例(14%)で合併症を記録した。22症例中20症例(91%)の骨髄サンプリングの一般的な合併症は疼痛で、残りの症例には紫斑が報告された。局所麻酔ブロックを160症例中98症例(61%)で使用した。

臨床意義:疼痛を除き、骨髄サンプリングに関する合併症は珍しく、症例あるいは処置変数に明確な関連は検出されなかった。血小板減少及び好中球減少が存在する犬と猫の出血および感染は珍しい合併症である。合併症を最小限にするため、処置中の鎮痛は強く推奨される。(Sato訳)
■緊急治療室に来た犬と猫のカリウム異常と病気の重症度と予後の関連の回顧的評価(2014年1月-2015年8月):2441症例
Retrospective evaluation of the severity of and prognosis associated with potassium abnormalities in dogs and cats presenting to an emergency room (January 2014-August 2015): 2441 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Sep 3. doi: 10.1111/vec.12889. [Epub ahead of print]
Hoehne SN, Hopper K, Epstein SE.

目的:縦位菌球治療部に来院した犬と猫のカリウム異常と重症度、併発臨床症状、疾患過程の関係と、死亡率との関係を判定する

デザイン:20か月の回顧的および記述研究

場所:大学教育病院

動物:来院した1916頭の犬と525頭の猫

介入:なし

測定値と主要結果:入院24時間以内にカリウム濃度を測定した動物の医療記録を確認した。低カリウム血症および高カリウム血症は<3.5mmol/Lと>5mmol/Lと定義した。カリウム異常に対する疾患プロセスと病態生理学的リスクファクターの関連は、中程度から重度カリウム異常(<3mmol/Lあるいは≧6mmol/L)に対して再検討した。正常カリウム、軽度、中程度、重度異常カリウム血症に関係する死亡率を評価した。

異常なカリウム濃度の全体の有病率は、犬で27%、猫で40%だった。中程度から重度の低カリウム血症および高カリウム血症は、それぞれ犬の3%、猫の8%および犬の2%、猫の7%に存在した。中程度から重度の低カリウム血症は、一般的に消化管疾患と関係し(犬の48%、猫の44%)たが、中程度から重度の高カリウム血症は一般的に尿路疾患と関係した(犬の60%、猫の97%)。低カリウム血症の犬と高カリウム血症の犬と猫は、正常なカリウムの動物より有意に死亡率が高かった(P<0.001)。軽度低カリウム血症の犬と軽度高カリウム血症の犬は、正常なカリウムの犬より死亡率が高かった(P<0.0001)が、これは猫では見られなかった。

結論:この集団でカリウム異常は一般的で、死亡率が高くなることと関係した。中程度から重度の低カリウム異常は、この集団では少なく、消化器や尿路疾患の動物で多く発生した。(Sato訳)
■骨髄障害のミニチュアダックスフンドの臨床および臨床病理特性と結果
Clinical and Clinicopathological Features and Outcomes of Miniature Dachshunds With Bone Marrow Disorders
J Vet Med Sci. 2020 Apr 17.
doi: 10.1292/jvms.19-0439. Online ahead of print.
Akiyoshi Tani , Hirotaka Tomiyasu , Aki Ohmi , Koichi Ohno , Hajime Tsujimoto

犬の非再生性免疫介在性貧血、赤芽球癆、骨髄形成異常症候群のような非腫瘍性骨髄障害は、非再生性貧血の主要な原因である。しかし、日本で犬の非腫瘍性骨髄障害の臨床および臨床病理学的特徴について研究されていない。

ゆえに、著者らは回顧的研究として貧血を誘発する非腫瘍性骨髄障害の犬種素因を最初に調査し、ミニチュアダックスフンド(MD)に犬種素因があることを発見した。この所見を基に、予備的回顧的研究としてMDsにおける非腫瘍性骨髄障害の臨床および臨床病理学的特徴を調査し、免疫抑制治療-反応および-抵抗性MDsの間でそれらを比較した。

治療抵抗性のMDsは末梢血において形成異常の特徴の頻度が増し、血小板増多を示すことが分かった。それらの結果は、治療抵抗性のMDsにおける骨髄障害が、治療に反応するMDsのそれらと比べ明白に異なる特徴かもしれず、免疫抑制療法に対する感受性は末梢血の血小板増多と形成異常の特徴を基に予測できたことを示す。ゲノムにおける異常を調べる追加研究が、MDsの骨髄障害の病態生理学を説明するのに必要である。(Sato訳)
■猫の原発性赤血球増多症:18頭の猫の多施設ケースシリーズ
Feline primary erythrocytosis: a multicentre case series of 18 cats.
J Feline Med Surg. January 2018;0(0):1098612X17750333.
Hannah Darcy , Katherine Simpson , Isuru Gajanayake , Mayank Seth , Yvonne McGrotty , Balazs Szladovits , Barbara Glanemann

ケースシリーズ概要。猫原発性赤血球増多症(PE)の回顧的多施設ケースシリーズを評価した。その目的は、管理と予後判定を導くため、疾患の症状と進行をより理解するためだった。

症例記録からパック細胞容積増加(PCV;>48%)、関連および二次的赤血球増多症を除外する十分な検査、最低12か月あるいは死亡までの追跡調査データを評価した。

18頭の猫をケースシリーズに含めた。シグナルメントにおいて有意な傾向は見られなかった。発作と精神状態変化は、最も多く見られた症状だった(両方ともn=10)。PCV中央値は70%(総蛋白濃度中央値は76g/l)で、他の一貫した血液学的変化はなかった。

16頭は生存して退院した。当初、生存している猫16頭中15頭で瀉血を実施し、退院後、16頭中10頭で瀉血を行った。ヒドロキシウレアは一般的な補助療法で16頭中10頭で使用した。

生存して退院した16頭のうち14頭はこの研究をまとめた時点で生存しており(退院後>17か月)、2頭の死亡した猫は診断後5年以上生存していた。PCVの安定は臨床症状の解消と相関しなかった。

関連と新規情報。認知とは対照に、猫の原発性赤血球増多症は瀉血と薬物療法で一般にうまく管理でき、生存期間延長のエビデンスもある。ヒドロキシウレアの使用は瀉血を中止できた。
■犬で使用するスマートホンベースのpoint-of-careヘモグロビン分析の確認
Validation of a smartphone-based point-of-care hemoglobin assay for use in dogs.
J Vet Emerg Crit Care. March 2017;27(2):206-211.
Kate S Farrell , Phillip L Chapman , Lauren A Sullivan

目的:血清脂肪血、溶血あるいはビリルビンの上昇がない犬において、ヘモグロビン(hemoglobin:Hgb)濃度の標準測定法に対し、(POC)測定におけるスマートホンベースの分光学的定量法を確認する

計画:前向き観察研究

場所:大学教育病院

動物:臨床病理検査所に提出したCBCと対応した生化学プロフィールを持つ139頭の犬

介入:なし

測定値と主要結果:CBCに対して提出した血液管を、POCスマートホンデバイスで実施するHgb測定のために集めた。各全血サンプルは2ストリップを用い繰り返しスマートホンで動作させ、1頭に対し計4回のPOC Hgbを読み取った。各犬で収集したデータはCBC Hgb値、4 POC Hgb値、選択した生化学値(ビリルビン、脂肪血、溶血、黄疸)だった。
キャリブレーション式は加重線形回帰で算出した:算出したCBC=(avgPOC-0.4871)/1.0015。各犬に対し、百分率誤差を推定値と正確なHgb値の間で計算した;95%百分率誤差の範囲は13.2%から20.1%だった。百分率誤差の標準偏差は全体で7.9%だった。サンプルをさらにCBC Hgb 濃度(低、正常、高)に従い分けた場合、百分率誤差の標準偏差はHgb<13g/dLの時6.7%、Hgb13-20g/dLの時8.9%、Hgb>20g/dLの時6.5%だった。4回のPOCの読み取り値の中での変動係数は3.4%だった。

結論:Hgbを測定するスマートホンベースの測光法は、標準検査のHgb測定の臨床的に有効なPOC代替法である。優れたサンプル内の再現性があり、百分率誤差の標準偏差はCBCの範囲にわたり比較的一定だった。分光学的定量法に影響するかもしれないより広い範囲の疾患や生化学異常(すなわち、異常ビリルビン、黄疸、脂肪血、溶血)の追加サンプリングがこの研究の所見を広げるために求められる。(Sato訳)
■低アルブミン血症を治療する
Treating Hypoalbuminemia.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2017;47(2):451-459.
Bobbi J Conner

低アルブミン血症は一般的で、全身性炎症性反応症候群、胃腸障害、肝障害、糸球体疾患に誘発されるものなど、種々の疾患プロセスに関係する。低血清アルブミン濃度が直接原因となる臨床症状を発症する動物もいる。

低アルブミン血症は予後不良と関係する強いエビデンスがある;しかし、アルブミン補給を正当化するエビデンスは欠如している。ヒト血清アルブミン投与の重度有害事象が頻繁に報告され、他の製剤の有益性のエビデンスもほとんどない。

多くの患者はアルブミンを含む製剤の投与を必要としないだろう。臨床医は重篤患者に対し早期の経腸栄養補給を考えるべきである。(Sato訳)
■犬と猫における炎症性疾患の貧血の概説
A review of anaemia of inflammatory disease in dogs and cats.
Language: English
J Small Anim Pract. July 2016;57(7):348-53.
S Chikazawa , M D Dunning

通常の動物診療において炎症性疾患の貧血は、貧血のよくある原因の1つである。よく見られるのは、軽度から中程度、正球性、正色素性、非再生性である。赤血球の寿命の短縮、鉄代謝の抑制、エリスロポエチンに対する骨髄反応障害の全てがその発症の原因である。炎症性疾患の貧血は犬と猫のよく知られた貧血の原因であるが、動物で特定の診断基準が確立されていないため、疫学的情報が不足している。

人医の種々の疾患状態において炎症性疾患の貧血は予後不良と関係する;しかし、獣医療におけるその臨床意義と治療はよくわかっていない。
この総説は犬と猫の炎症性疾患の貧血を述べ、その意義の可能性を考える。(Sato訳)
■犬の急性出血モデルにおける止血の変化
Assessment of hemostatic changes in a model of acute hemorrhage in dogs.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2016 Feb 18. doi: 10.1111/vec.12457.
Lynch AM, deLaforcade AM, Meola D, Shih A, Bandt C, Guerrero NH, Ricco C.

目的:伝統的な凝固検査(例えば血小板数、プロトロンビン時間[PT]、活性化部分トロンボプラスチン時間[aPTT])、カオリン活性化トロンボエラストグラフィー(TEG)、全血マルチプル電極インピーダンス血小板凝集測定を使用して犬の実験的急性出血後の止血の変化を評価する。

計画:前向き研究

場所:研究施設

動物:5頭のビーグル

処置:犬に麻酔をかける前に基準となるPCV、総血漿タンパク(TPP)動脈血ガス、血小板数、PT、aPTT、TEG、フィブリノーゲン、凝集測定の評価のために採血した。追加の4つのタイムポイント(20%血液量喪失後、40%血液量喪失後、60分低血圧維持後、自家血液輸血後)で採血した。また心拍数、直接動脈圧を各ポイントで測定した。

測定と主要結果:全てのポイントでPCV(P=0.048)、TPP(P<0.0001)、動脈圧(P<0.0001)の有意な低下が見られた。出血後、血小板数は有意に変化しなかった(P=0.879)が、血小板機能はアラキドン酸(P=0.004)やADP(P=0.008)を作用薬として使用した時に低下した。TEG変数R(P=0.030)、MA(P=0.043)、G(P=0.037)は軽度ではあるが有意に出血後変化した。PT(P<0.0001)およびaPTT(P=0.041)の有意な延長、フィブリノーゲン濃度の有意な低下(P=0.002)も見られた。

結論:このモデルでは安定した血小板数を示したが、出血後に血小板機能障害が発生した。また、出血に関する有意な変化はaPTT、フィブリノーゲン、MAで実証された。自然に出血を起こした犬において血小板機能検査を行う更なる調査が必要である。(Sato訳)
■貧血ではない犬の網状赤血球増加症:有病率の増加と潜在的病因
Reticulocytosis in nonanemic dogs: increasing prevalence and potential etiologies.
Vet Clin Pathol. March 2015;44(1):26-36.
Kimberly M Pattullo; Beverly A Kidney; Susan M Taylor; Marion L Jackson

背景:ここ数年で犬の貧血がない網状赤血球増加症(RAA)の有病率増加が疑われている。

目的:ここ数年、我々の犬の集団でRAAの有病率が増加しているかどうかを判定することと、潜在的素因を確認する。

方法:2000年から2012年の間で毎年成犬のRAAの有病率を判定した。2011年と2012年の間で確認されたRAAの犬において、臨床的病歴、CBCデータを全ての犬で分析し、オーナーには食餌およびサプリメントに対する情報を含むアンケートに答えてもらった。また、RAAの犬14頭の血清鉄濃度(Fe)、総鉄結合能(TIBC)およびトランスフェリン飽和率(%TS)を測定し、8頭の健康なコントロール犬と比較した。

結果:貧血がない網状赤血球増加症は1035頭の犬で確認され、有病率は2006年から増加した。2006年以降に評価されたRAAの犬(n=853)は、2006年以前の犬(n=182)と比べて有意にMCVが低く、小赤血球症である確率が高かった。20011年と2012年に研究した犬(n=31)を含む2006年以降に評価された犬で骨関節症の発生増加が観察されており、より後半でNSAID、オメガ3脂肪酸、グルコサミンの投与がより一般的になっている。コントロール犬と比べてRAAの犬の平均Feと%TSは有意に低く、TIBCは高かった。

結論:我々の犬の集団で、近年RAAの有病率は増加している。骨関節症の診断増加に関係する抗炎症剤やサプリメントのより広範な使用は寄与因子として考慮すべきである。(Sato訳)
■犬における凝固亢進状態の診断へのPTとAPTTの短縮の回顧的評価:25症例 (2006-2011年)
Retrospective evaluation of shortened prothrombin time or activated partial thromboplastin time for the diagnosis of hypercoagulability in dogs: 25 cases (2006-2011).
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2016 Apr 13. doi: 10.1111/vec.12478.
Song J, Drobatz KJ, Silverstein DC.

目的 PTとAPTT値の短縮と、凝固亢進に関係する臨床症状、肺血栓塞栓症 (PTE)の疑い、D-ダイマーの濃度、トロンボエラストグラム (TEG)指数の関係性を評価すること

デザイン 2006-2011年の回顧的観察研究

場所 獣医大学の教育病院

動物 TEGを実施しており、PTとAPTTが短縮していた23頭の犬と、TEGを実施しており、PTとAPTTが正常であった23頭のコントロール犬

測定と主な結果 シグナルメント、凝固試験の結果 (PT, APTT, D-ダイマー濃度)、TEG測定値(R、K、α、最大振幅)および計算した凝固インデックス、臨床的な凝固亢進の所見(静脈内または動脈内カテーテルの血栓、血管の血栓症、PTE疑い)について評価した。PTとAPTTが短縮していた犬は、PTとAPTTが正常な犬と比較して、血栓形成(P=0.038)、PTE疑い(P<0.001)、D-ダイマー濃度の増加(P<0.001)が有意に多かった。TEG値と比較したときには有意な所見はなかった。

結論 犬においてPTとAPTTが短縮していることは、血栓症の確率が高くなり、PTEを疑う頻度も高くなり、循環しているD-ダイマーも増加するといった所見を伴う凝固亢進状態を示唆しているようである。凝固亢進状態と診断するためにPTとAPTTを評価するには、前向き研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■貧血の猫22頭のヘモプラズマ種による感染
Infection with haemoplasma species in 22 cats with anaemia.
J Feline Med Surg. 2015;0(0):.
Christiane Weingart; Severine Tasker; Barbara Kohn

目的:猫の血液向性マイコプラズマ(ヘモプラズマ)の自然感染の臨床経過に関する情報は限られている。この研究の目的は、ヘモプラズマ症に自然感染し貧血の猫の臨床症状と疾患の経過を述べることだった。

方法:貧血を呈し、ヘモプラズマに感染している猫で徴候、臨床症状、検査データ、感染の経路に関するデータを回顧的に解析した。診断は従来のヘモプラズマPCR解析で確定した。

結果:2005年から2014年の間にヘモプラズマ感染は22頭の貧血(ヘマトクリット値5-25%(中央値17%);参照範囲30-44%)の猫('Candidatus Mycoplasma haemominutum'、n=12;Mycoplasma haemofelis、n=3;'Candidatus Mycoplasma turicensis'、n=2;種が判定できない、n=4;全3種の重感染、n=1)で見つかった。13頭の猫に併発疾患があった。全ての猫は抗生物質治療を行った;15頭の猫は血液製剤を投与した。6頭の猫は併発疾患、持続的重度貧血あるいは金銭的制約のために11週以内に安楽死された。

10頭の猫は14-199週(中央値26週)の間経過観察を行った。ヘモプラズマPCRは3-23週後に7頭中5頭で陰性となった。陽性の2頭は18週、および199週後も陽性だった。ヘモプラズマ感染の再活性は2頭で起こり、初診から177週までに1回と3回起こった。さらなる2症例で再活性が疑われた。併発疾患により経過観察の10頭中4頭は、初診から14-180週で安楽死された。

結論と関連:ヘモプラズマ種の感染は慢性が多く、数か月で再活性化する可能性があり、安楽死の理由とはなりにくい。(Sato訳)
■16日から60日齢の犬における血液および生化学変数の経時的変化
Age-related changes in hematologic and serum biochemical variables in dogs aged 16-60 days.
Vet Clin Pathol. March 2015;44(1):47-57.
Runa Rortveit; Bente K Saevik; Anna V Eggertsdottir; Ellen Skancke; Frode Lingaas; Stein I Thoresen; Johan H Jansen

背景:子犬の血液および血清生化学数を報告した文献は限られている。子犬は成犬と生理学的に異なるため、年齢の影響が予測される。

目的:目的は16-60日齢の子犬の血液および生化学値の年齢に関係する変化を示すことと、成犬の参照範囲(RI)と結果を比較することだった。2つ目の目的はこの年齢群のRIを決定することだった。

方法:主に雑種犬の臨床的に健康な子犬101頭から227件の血液サンプルを集めた。年齢の影響を評価するため、結果を成犬のRIと比較し、16-60日齢内の変動を研究した。16-24日、28-45日、46-60日齢の参照範囲を決定した。

結果:成犬に比べ、子犬で低かった値はRBC、HGB、HCT、アルブミン、グロブリン、総タンパク、クレアチニン濃度とナトリウム:カリウム比だった。成犬と比べ、子犬で高かった値はALPとCK活性、無機リン、カルシウム、カリウム濃度だった。MCV、MCHC、アルブミン:グロブリン比、血糖値に対しては、成犬と比較した子犬の値の違いはいくつかの年齢群で見つかった。WBC、リンパ球、好中球、単球、好酸球、血小板の絶対数、RDW、AST、ALT、アミラーゼ、リパーゼ活性と胆汁酸、コレステロール、尿素、ナトリウム、塩素に関しては成犬のRIと比べ、年齢の特別な違いは見られなかった。

結論:年齢は子犬のいくつかの血液および血清生化学値に有意に影響することを結果は支持し、年齢特異RIを正当化する。(Sato訳)
■重度高ナトリウム血症の一頭の猫における原発性潜在性口渇
Primary hypodipsia in a cat with severe hypernatremia.
J Feline Med Surg. March 2014;16(3):240-2.
Jonathan Bach; Kimberly Claus

臨床的概要:4.5歳、去勢済みオスの家猫短毛種が2か月前から虚弱、後肢運動失調に進行する筋肉振戦、軽度顔面単収縮、食欲不振、多尿を呈した。原発性潜在性口渇と結果的に起こる高ナトリウム血症が診断された。積極的な輸液療法とモニタリングが当初安定化に必要で、その猫の状況は水を加えた缶詰フードの長期使用で管理に成功した。

診療との関連:原発性潜在性口渇は臨床現場で珍しいが、この症例の経験は関連した高ナトリウム血症が、維持水分を得るために水分を多くした餌を使用することでうまく管理できることを示唆する。(Sato訳)
■犬の特発性赤芽球癆と非再生性免疫介在性貧血:43症例(1988-1999)
Idiopathic pure red cell aplasia and nonregenerative immune-mediated anemia in dogs: 43 cases (1988-1999).
J Am Vet Med Assoc. 2000 May 1;216(9):1429-36.
Stokol T, Blue JT, French TW.

目的:赤芽球癆(PRCA)と非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)の犬の臨床兆候、検査結果、治療そして予後を検査すること

デザイン: 回顧的研究

動物: 重度非再生性貧血の犬43症例

方法: 1988年から1999年までの間に骨髄検査をして赤芽球癆(PRCA)、非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)もしくは無効な赤血球生成と診断した犬のカルテをレビューした。組み込みの基準は基礎疾患がなく5日以上の重度な非再生性貧血(Hct < 20%; < 60.0 x 10(3) 網状赤血球/microliter)を呈することであった。シグナルメント、臨床兆候、検査結果、治療そして予後の情報をとった。

結果: 犬の中央年齢は6.5 歳であった。避妊雌とラブラドールレトリーバーは明らかに多く見られた。中央Hct値は再生が見られず11% (median, 1.5 x 10(3) 網状赤血球/microliter)であった。直接クームス試験の結果は犬の57%で陽性であった。生化学的異常は高鉄血症と高トランスフェリン血症が含まれた。骨髄所見はPRCA (5%)から赤血球過形成 (55%)までであった。骨髄繊維症が一般的であった。免疫抑制剤で犬は治療し、治療に対する反応は、完全に反応した症例が55%、部分的に反応した症例が18%、乏しかった症例が 27% であった。死亡率は28%であった。

結論と臨床関連性: 重度の非再生性貧血、正常な白血球数と血小板数、高鉄血症、軽度臨床兆候、そして基礎疾患がない犬は免疫介在性の病因と考えるべきである。骨髄所見は稀な赤芽球癆(PRCA)から赤血球系過形成であった。骨髄繊維症は罹患した犬でしばしば認められ、骨髄吸引で防ぐことができるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬と猫における高ナトリウム血症の頻度、重症度および予後について
Incidence, severity and prognosis associated with hypernatremia in dogs and cats.
J Vet Intern Med. 2015 May;29(3):794-800. doi: 10.1111/jvim.12582.
Ueda Y, Hopper K, Epstein SE.

背景 高ナトリウム血症は人においてかなりの罹患率であり死に関連している。犬と猫における高ナトリウム血症の頻度と重要性については検討されていない。

仮説/目的 大学の教育病院における犬と猫の高ナトリウム血症の頻度と予後について明らかにする。

動物 全血または血清のナトリウム濃度を測定した16691頭の犬と4211頭の猫

方法 回顧的研究。高ナトリウム血症の重症度とそれに関連した致命率を明らかにするために、60ヶ月間に全血または血清のナトリウム濃度を測定した動物のカルテを調査した。中等度(基準範囲より11-15mmol/L超えている)または重度(基準範囲より16mmol/L以上超えている)の高ナトリウム血症の症例をさらに記録した。

結果 957頭の犬(5.7%)と338頭の猫(8.0%)が高ナトリウム血症と診断された。高ナトリウム血症の犬と猫の致命率は、それぞれ20.6%および28.1%であり、血液または血清ナトリウム濃度が正常な犬と猫は、それぞれ4.4%および4.5%であった。高ナトリウム血症が高いほど、より高い致命率に線形に相関していた (P<0.0001)。高ナトリウム血症は、低ナトリウム血症より高い致命率と関連していた。中等度または重度の高ナトリウム血症の動物の中で、犬の50%および猫の38.5%は、来院前の高ナトリウム血症で来院し、犬の50%、猫の61.5%は院内で高ナトリウム血症に進行した。

結論と臨床的意義 高ナトリウム血症は犬や猫においては多くはないが、高い致死率を示していた。高ナトリウム血症があることや重度であることは予後予測として有用であるかもしれない。(Dr.Taku訳)
■1頭の犬に見られた交通事故と上腕骨骨折後の動脈血栓
Arterial thrombosis after vehicular trauma and humeral fracture in a dog.
J Am Vet Med Assoc. August 1, 2013;243(3):394-8.
Kristina M Depaula; Armelle M deLaforcade; Ryan G King; Holly Hughs; Randy J Boudrieau

症例:3歳、体重19kgの避妊済みメスの雑種が、車にあたった後に連れてこられた。傷害は、気胸、血胸、肺挫傷、腋窩皮膚全層創傷、右上腕骨の中央グレードI横骨折だった。状態の安定化後、骨折の開放整復と内固定を実施した。退院時には負重した跛行をしていた。骨折修復から8日目、その犬は右前肢の負重しない跛行と疼痛の急性発現で再評価に来院した。

臨書所見:右前肢の身体検査所見(ナックリングと冷たさ、指の脈の欠如)は血栓を示唆した。超音波検査により、右前肢に最低の血流しか認めない右上腕動脈血栓を確認した。

治療と結果:未分画ヘパリンを入院から最初の36時間、連続IV点滴で投与した。クロピドグレルもこの時から投与開始した。入院中に急速な臨床的改善を見せ、入院から48時間で退院した。36時間目の未分画ヘパリン点滴中止で通院へ移行でき、ダルテパリンの皮下投与を開始した。ダルテパリンとクロピドグレルの通院治療は継続した。5週間後の再身体検査と超音波検査で血栓の解消と前枝への正常な血流を確認した。その時点で抗凝固剤投与は中止した。

臨床的関連:適切な治療で解消されない跛行を伴う、あるいは伴わない重度外傷あるいは骨折修復後の急性疼痛の症状を持つすべての犬で血栓症を疑うべきである。この症例では、未分画ヘパリンとクロピドグレル投与、その後ダルテパリンとクロピドグレルの通院治療で患肢への血流の再開が達成できた。
■犬と猫の凝固障害における現在の診断的傾向
Current diagnostic trends in coagulation disorders among dogs and cats.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2013;43(6):1349-72, vii.
Marjory B Brooks; James L Catalfamo

系統的止血アンバランスからの血管傷害による出血を鑑別するための診断的精密検査は、一般的に幅広いスクリーニング検査と特別分析の組み合わせである。一次止血、二次止血、線溶の3つの重なり合う相の特徴は、出血の臨床症状が見られる患者を評価するための単純な診断的枠組みを提供する。

フローサイトメトリー、トロンビン生成分析、トロンボエラストグラフィー、抗凝固剤モニタリングのような新しい方法は、動物医療では調査中である。しかし、診断あるいは治療を改善するそれらの能力は、臨床試験でさらに研究を必要とする。(Sato訳)
■フォン・ヴィレブランド病に罹患したメス犬と罹患していないメス犬における妊娠、泌乳、発情周期中のフォン・ヴィンブランド因子の評価
Evaluation of von Willebrand factor during pregnancy, lactation and oestrous cycle in bitches affected and unaffected by von Willebrand disease.
Reprod Domest Anim. June 2013;48(3):416-22.
C R S Mattoso; R K Takahira; S L Beier; J P Araujo, Jr; J E Corrente

ヒトや犬において、妊娠中にフォン・ヴィレブランド因子(vWF)の血漿濃度が上昇するが、その上昇のメカニズムはまだわかっていない。

この研究の目的は:(1)フォン・ヴィレブランド病(vWD)に罹患したメス犬と罹患していないメス犬において妊娠期間中とその後の発情周期中におけるvWF濃度の変化を評価すること;(2)両群のvWF濃度とコルチゾール濃度の関連を見ることだった。

vWDに罹患した7頭(G1)と罹患していないメス犬9頭(G2)を使用した。妊娠中、出産、授乳、妊娠していない発情周期の11時期(妊娠1、妊娠2、出産、授乳1、授乳2、授乳3、無発情期、発情前期、発情期、発情休止期1、発情休止期2)で評価した。以下の試験を実施した;フォン・ヴィレブランド因子抗原(vWF:Ag)、アルブミン、コルチゾールの測定。

両群において妊娠していない発情周期中のvWF濃度は安定していたが、妊娠中は増加し、出産時に最も高い値が観察された。無発情期と比べてG1、G2においてそれぞれvWFの70%、124%の上昇が見られた。vWFとコルチゾールの間に関連は見られなかった。両群で妊娠中にvWF:Agの値は変化し、出産時にピークとなった。両群共に妊娠後の発情周期の異なる時期においてvWFの値は変化しなかった。妊娠中のvWFの評価は、vWDに対する偽の陰性結果をもたらす可能性があるが、妊娠していない発情周期では、どのポイントでも評価が可能である。(Sato訳)
■猫の予後ツールとして変性性左方移動
Degenerative left shift as a prognostic tool in cats.
J Vet Intern Med. 2014 May-Jun;28(3):912-7.
A G Burton; L A Harris; S D Owens; K E Jandrey

背景:犬と猫で変性性左方移動(DLS)は悪い予後指標として報告されている。この主張を調査して報告されたデータは犬で限られ、猫の研究は報告されていない。

仮説/目的:DLSを示した猫集団の特徴を述べることと、DLSの有無や重症度が安楽死あるいは死亡のリスク増加に関係するかどうかを判定する

動物:カルフォルニア大学デービス獣医教育病院に1995年4月1日から2010年4月1日までに受診したDLSを示す108頭(症例)とDLSがない322頭の猫

方法:回顧的症例-コントロール研究。全ての症例は未成熟顆粒球前駆細胞が成熟好中球の数を超過している像の24時間以内に実施したCBCがあった。コントロールは来院年と主要診断でマッチさせた。生存分析をDLSと他の潜在性指標からの死亡あるいは安楽死のリスクを判定するため使用した。

結果:症例はコントロールと比較して病院内で死亡あるいは安楽死の確率が高かった(60/108(56%)に対し107/322(33%))。一変量および多変量解析でDLSは入院猫の死亡あるいは安楽死の有意な予後指標だった(危険率、1.57;95%信頼区間、1.13-2.18)。傾向分析はDLSの重度が増すことで、安楽死あるいは死亡の危険の傾向が増すことを示した。

結論と臨床意義:DLSの猫は、そうでない猫よりも入院中の死亡あるいは安楽死の確率が1.57倍高い。またDLSの程度が増すことは死亡あるいは安楽死の確率が増すことと関係する。(Sato訳)
■犬の特発性好中球減少症と関連する臨床病理学的兆候、治療に対する反応そしてリスク要因の評価
Evaluation of clinicopathologic features, response to treatment, and risk factors associated with idiopathic neutropenia in dogs: 11 cases (1990-2002).
J Am Vet Med Assoc. 2006 Jul 1;229(1):87-91.
Brown CD, Parnell NK, Schulman RL, Brown CG, Glickman NW, Glickman L.

目的:犬の特発性好中球減少症と関連する臨床病理学的兆候、治療に対する反応そしてリスク要因の評価

デザイン: 回顧的症例シリーズ

動物: 11頭の犬
方法: 特発性好中球減少症の犬の医療カルテをレビューした。シグナルメント、病歴、臨床兆候そして治療に対する反応を記録し、好中球減少症の原因が分かっている犬、好中球減少症がない犬(コントロール)と比較した。

結果: 好中球減少症の原因が分かっている犬と比較して、特発性好中球減少症の犬は好中球数がより低くより若かった。コントロール犬と比較した時、年齢が4歳以下の犬は特発性好中球減少症へ発展するリスクがあった。特発性好中球減少症のすべての犬において、好中球減少症はプレドニゾロン投与(2 to 4 mg/kg [0.9 to 1.8 mg/lb], PO, daily)後18日以内に寛解し、重篤な合併症や感染は認められなかった。

結論と臨床関連: 免疫介在性病因は原因が分かっていない特発性好中球減少症の犬に考慮すべきである。重度な好中球減少症と若齢は、犬の特発性好中球減少症と明らかに関連があった。予後はプレドニゾロン治療でよいように思われる。(Dr.Kawano訳)
■1頭のチワワに見られた無フィブリノーゲン血症の治療
Treatment of afibrinogenemia in a chihuahua.
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Jan-Feb;49(1):70-4.
Gregory Chambers

この報告は、1頭のチワワにおける無フィブリノーゲン血症の診断と治療を述べる。

フィブリノーゲンが無い、あるいは微量というフィブリノーゲン分析結果と共に、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびトロンビン凝固時間(TCT)の延長は、無フィブリノーゲン血症の診断を支持した。鑑別疾患には、一般的な凝固障害、肝不全、播種性血管内凝固(DIC)が含まれる。積極的な寒冷沈降物あるいは血漿輸血が無フィブリノーゲン血症の治療に必要である。凝固障害の治療に対する現行のガイドラインは、血漿輸血(15-30mL/kg、あるいはPTとaPTTが正常になるまで)が含まれる。

この報告は、標準的血漿輸血レベルを投与し、PTおよびaPTTレベルが正常化した後、2日持続した出血を伴う一例を紹介する。この症例では血漿54mL/kg以上投与してから2か月まで安定した。

人医では寒冷沈降物あるいはフィブリノーゲン濃縮物を、小出血に対し血中フィブリノーゲン濃度が100mg/dLに、大出血では200mg/dLになるように使用する。

さらに研究が必要であるが、著者は、動物の無フィブリノーゲン血症症例において積極的な輸血とモニタリングが必要であると示唆する。(Sato訳)
■イヌの血友病Aの診断後の臨床転帰
Clinical outcome after diagnosis of hemophilia A in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2014 Sep 15;245(6):677-83. doi: 10.2460/javma.245.6.677.
Aslanian ME, Sharp CR, Rozanski EA, de Laforcade AM, Rishniw M, Brooks MB.

目的 血友病A(第8因子欠損症)のイヌの臨床経過について評価し、第8因子凝固活性が臨床症状の程度や転帰と関連しているかを明らかにすること

研究デザイン 調査研究

サンプル 第8因子欠損の飼い犬39頭について対象となる情報
方法 血友病Aのイヌ(第8因子凝固活性20%以下)を同定するために、ACVIMとACVECCのemailリストサービスに登録された調査を通じて情報を集めた。第8因子欠損の重症度は、軽度(第8因子凝固活性が6-20%)、中等度(第8因子凝固活性が2-5%)、重度(第8因子凝固活性が2%未満)に分類した。

結果 39頭(38頭の雄と1頭の雌)のイヌのデータを集めた。雑種犬、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバーが最も多く罹患していた。大部分のイヌ(39頭中34頭)は、1歳齢より前に診断された。歯の生えはじめ、小さな外傷、ワクチン接種、選択的な(自分で選択できる)外科手術などに関連した出血が第8因子凝固活性測定を実施する理由として最も多かった。罹患したイヌでは、第8因子欠損の程度によらず、同じような自発的な出血の症状が認められた。4頭のイヌは、診断時に治療することなく安楽死された。30頭のイヌは、1回以上の輸血を受けたが、第8因子凝固活性は輸血の必要性には影響がないようにみえた。

結論と臨床的意義 結果は、血友病Aのイヌが、臨床的な経過において様々であり、長期的な予後がよいことを示している。臨床症状の重症度、輸血の必要性、長期的な予後を予測するのに、残った第8因子凝固活性は有用でないようである。(Dr.Taku訳)
■プレドニゾロンで治療された健常犬における止血プロファイルと血栓症のリスク:ランダム化比較試験
Hemostatic profile and thromboembolic risk in healthy dogs treated with prednisone: a randomized controlled trial.
BMC Vet Res. 2013 Dec 31;9(1):268. doi: 10.1186/1746-6148-9-268.
Romao FG, Campos EF, Mattoso CR, Takahira RK.

背景 血栓症は、副腎皮質機能亢進症(HAC)のような疾患と関連している。抗炎症や免疫抑制効果のために主に用いられるコルチコステロイドであるプレドニゾロンのような薬剤も止血のバランスをかえる可能性がある。副腎皮質機能亢進症が凝固因子を増加させ、線溶系を低下させることによって血栓形成を刺激することが知られている。しかし、プレドニゾロン投与がどのように犬の止血に影響しているか、用量に依存するのかどうかは知られていない。ゆえに、本研究の目的はプレドニゾロンの投与が犬の止血プロファイルにどのように影響するのかを示すことである。

結果 アンチトロンビンの有意な低下が両グループ(抗炎症量および免疫抑制量)において治療15日後に認められた。免疫抑制量のプレドニゾンを投与されていた犬において、血小板凝集の増加が認められた。

結論 我々の研究から得られた結果から、抗凝固因子(アンチトロンビン量)の低下があったにもかかわらず、副腎皮質機能亢進症が血栓症のリスクを増加させる可能性を推測することはできなかった。(Dr.Taku訳)
■吸引とコアバイオプシー法の組み合わせがコア骨髄標本の質に及ぼす効果
Effect of a combined aspiration and core biopsy technique on quality of core bone marrow specimens.
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Jan-Feb;49(1):16-22.
Jason P Reeder; Eleanor C Hawkins; Michelle C Cora; Steven L Marks; Carol B Grindem

骨髄吸引とコアバイオプシー両方を必要とする症例に対し、各標本を別々(直接)に採取することと比べて、同じ針と部位を使用すること(すなわち組み合わせ法)は時間、費用、不快感を低減させる。組み合わせてアプローチする利点は、標本の質を犠牲にしてまで行うべきではない。

この研究では、安楽死直後の26頭の犬の近位上腕骨から組み合わせ法によりコア骨髄標本を採取し、反対側の上腕骨から直接採取したコア標本と比較した。各犬の2つのコアサンプルを相対的な全体の質で比較した。組み合わせ法を使用した4頭と、直接法を使用した1頭はバイオプシーが成功しなかった。組み合わせ法では骨髄長がより短く、出血のアーティファクトがより一般的だった。細胞性、巨核細胞数、骨髄球/赤芽球比(M/E比)、鉄貯蔵、診断の質に違いはなかった。

直接コアバイオプシーは依然理想的な方法である;しかし、組み合わせ法で得られたサンプルでも妥協の程度は小さかった。臨床的患畜に対し、組み合わせ法のアドバンテージは、診断的感度の潜在的喪失に対し重きを置き続けるべきである。(Sato訳)
■ボーダーコリーと他の犬種の犬における血清コバラミン、尿中メチルマロン酸、血漿総ホモシステイン濃度
Serum cobalamin, urine methylmalonic acid, and plasma total homocysteine concentrations in Border Collies and dogs of other breeds.
Am J Vet Res. August 2012;73(8):1194-9.
Sabina Lutz; Adrian C Sewell; Beat Bigler; Barbara Riond; Claudia E Reusch; Peter H Kook

目的:血清コバラミン(Cbl)、尿中メチルマロン酸(uMMA)、血漿総ホモシステイン(tHcys)濃度に対する参照範囲を決定し、健康なコントロール犬の値と、遺伝性コバラミン欠乏が確認されている犬種のボーダーコリーの値と比較すること

動物:113頭のボーダーコリー、典型的な食餌を与えている健康なコントロール犬35頭、骨や生の食物食を独占的に食べさせている健康な犬12頭

方法:各犬から尿および血液サンプルを採取し、Cbl、uMMA、tHcys濃度を測定した。

結果:Cbl(261-1001ng/l)、uMMA(0-4.2mmol/molクレアチニン)、tHcys(4.3-18.4μmol/l)濃度の参照範囲を決定した。4頭のボーダーコリーのCbl濃度は検出限界値(150ng/l)以下で、それらの犬のuMMAおよびtHcys濃度中央値はそれぞれ4064mmol/molクレアチニンおよび51.5μmol/lだった。臨床的異常は発達不良、嗜眠、貧血、蛋白尿等だった。異常はコバラミン投与後に改善した。
CblおよびtHcys濃度が参照範囲内のボーダーコリー109頭のうち、41頭(37.6%)のuMMA濃度は高かった(範囲、5-360mmol/mol)。生食を与えていた犬の結果はコントロール犬と同じだった。

結論と臨床的関連:遺伝性コバラミン欠乏は、種々の臨床症状を伴う珍しい疾患である。
健康で正常なコバラミン血のボーダーコリーと、コバラミン欠乏の臨床症状のあるボーダーコリーのメチルマロン酸尿の所見は驚くべきもので、それらの犬はそれぞれコバラミンの細胞内処理の欠如あるいは、腸のコバラミン吸収不良かもしれないと指摘された。コバラミン吸収および代謝経路を調査する研究が求められる。(Sato訳)

■164犬種の犬における血清コバラミン濃度の評価(2006-2010)
Evaluation of serum cobalamin concentrations in dogs of 164 dog breeds (2006-2010).
J Vet Diagn Invest. November 2012;24(6):1105-14.
Niels Grutzner; Shannon M Cranford; Bo Norby; Jan S Suchodolski; Jorg M Steiner

血清コバラミン濃度の変化は、膵外分泌不全(EPI)あるいは胃腸炎のような消化管疾患の犬で観察されている。

この研究の目的は、1)血清コバラミン濃度の低い犬の多い犬種を確認すること、2)そのような低下を伴う犬がEPIに対する診断上の血清トリプシン様免疫反応(cTLI)を示すかどうかを判定すること、3)2009年のアメリカケンネルクラブ(AKC)の犬種ランキングリストにある犬種で血清コバラミン検査に提出された数を比較することだった。

この回顧的研究において、28675件のコバラミン検査の結果を再検討した。秋田犬、チャイニーズシャーペイ、ジャーマンシェパード、グレイハウンド、ラブラドールレトリバーは参照値下限以下の血清コバラミン濃度を示す比率が増加していた(<251ng/l;全てP<0.0001)。秋田犬、チャイニーズシャーペイ、ジャーマンシェパード、ボーダーコリーは分析器の検出限界以下の血清コバラミン濃度を示す比率が増加していた(<150ng/l;全てP<0.0001)。血清コバラミン濃度<150ng/lの秋田犬、ボーダーコリー、ジャーマンシェパードはEPIの診断上考慮される血清cTLI濃度を示す可能性が高かった(≦2.5μg/l;全てP≦0.001)。AKCランキングリストで比較して血清コバラミン検査に提出されたサンプルの最も高い比率の犬種は、グレイハウンド(オッズ非:84.6;P<0.0001)だった。秋田犬とボーダーコリーにおいて、潜在的犬種特異消化管障害が血清コバラミンおよびcTLI濃度低下の頻度増加に原因があるのか追加研究が求められる。(Sato訳)
■180頭の貧血の猫の後向き研究:特徴、病因、生存に関する情報
A retrospective study of 180 anaemic cats: features, aetiologies and survival data.
J Feline Med Surg. 2013 Feb;15(2):81-90. doi: 10.1177/1098612X12461008. Epub 2012 Sep 18.
Korman RM, Hetzel N, Knowles TG, Harvey AM, Tasker S.

この研究は180頭の貧血の猫を用いている。記述データと生存データを用いた。それぞれの猫は、貧血の病因、DAMNITV分類(退行性、発育異常、代謝性、その他、腫瘍性,感染性、炎症性、免疫介在性、毒性、外傷性、血管性疾患)と貧血の重症度によって分類した。

64頭(35.6%)の猫はPCV/Htが軽度 (20-24.9%)であり、58頭(32.2%)は中等度(14-19.9%)、23頭(12.8%)は重度(11-13.9%)、35頭(19.4%)は非常に重度(<10.9%)の貧血であった。

貧血が生じた病因としては、出血(37頭、20.6%)や溶血(19頭、10.6%)よりも骨髄の異常 (95頭、52.8%)がより多かった。DAMNITVの分類では、腫瘍性(36頭、20%)、代謝性(21頭、11.7%)、外傷(15頭、8.3%)、その他(14頭、7.8%)、炎症(11頭、6.1%)、免疫介在性(11頭、6.1%)、発育異常(8頭、4.4%)、中毒(2頭、1.1%)、血管性疾患(1頭、0.6%)よりも、感染性疾患(39頭、21.7%)がより多かった。骨髄の異常は、より重度な貧血と関連していた (p=0.003)。

55頭(30.6%)の猫が安楽死され、13頭(7.2%)が死亡したのに対し、多くの猫(112頭、62.2%)は、退院した。退院できるかは貧血の重症度とは関連がなく、溶血の猫が、骨髄性疾患の猫よりもより退院しやすいというように、貧血の病因と有意に関連していた(p=0.046)。退院できるかということもまた、腫瘍の猫は難しく、免疫介在性疾患の猫はよりしやすいというように、DAMNITV分類とも有意に関連していた(p=0.010)。Cox比例ハザードモデルを用いると、生存は貧血の重症度とは関連がなく、DAMNITV分類(P=0.011)、年齢(P=0.082)と関連しており、免疫介在性疾患の猫とより若い猫はより生存しやすいということがわかった。(Dr.Taku訳)
■犬の大動脈の血栓症:31症例(2000-2010年)
Aortic thrombosis in dogs: 31 cases (2000-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2012 Oct 1;241(7):910-5.
Lake-Bakaar GA, Johnson EG, Griffiths LG.

目的:犬の大動脈血栓症の臨床症状、治療、転帰について明らかにする

デザイン:後向き症例研究

動物:31頭の大動脈血栓症の犬

方法:記録を後向きに調査し、シグナルメント、病歴、身体検査所見、臨床検査、鑑別診断、併発疾患の有無について情報を集めた。

結果:臨床的または剖検により大動脈血栓症と診断した31頭の犬の記録を調査した。臨床症状の始まりは、急性が14頭(45%)で、慢性が15頭(48%)、2頭(6%)については記録がなかった。大腿動脈の拍動は、6頭(19%)の犬においては客観的に弱く、17頭(55%)では消失していた。多かった臨床検査の異常としてはBUNの高値(13頭)、クレアチニン濃度の高値(6頭)、クレアチンキナーゼ活性の高値(10頭)、Dダイマー濃度の高値(10頭)、尿タンパククレアチニン濃度比が0.5以上の蛋白尿(12頭)であった。併発疾患は、腫瘍(6頭)、最近のコルチコステロイドの投与(6頭)、腎疾患(8頭)、心疾患(6頭)であった。生存期間の中央値は、臨床症状が急性に始まった場合(1.5日:幅 0-120日)よりも慢性的に始まった犬(30日:幅 0-959日)で有意に長かった。

結論と臨床的意義:大動脈血栓症は、犬において稀であり、研究期間に来院した犬の0.0005%でしかなかった。大動脈血栓症の犬の臨床症状は、大動脈血栓塞栓症の猫で認められるものとは異なっていた。生存期間の中央値は、急性疾患の犬よりも慢性疾患の犬の方が有意に長かった。一部の犬においては長期間の生存が可能であったが、治療にもかかわらず、予後は一般的には悪かった。(Dr.Taku訳)
■180頭の貧血の猫の後向き研究:特徴、病因、生存についての情報
A retrospective study of 180 anaemic cats: Features, aetiologies and survival data.
J Feline Med Surg. 2012 Sep 18.
Korman RM, Hetzel N, Knowles TG, Harvey AM, Tasker S.

本研究は180頭の貧血の猫についてである。記述データと生存データを集めた。猫は、貧血の原因と、DAMNITVの分類(退行性、異例、代謝性、その他、腫瘍性、感染性、炎症性、免疫介在性、中毒、外傷性、血管性)、貧血の重症度によって分類した。

64頭の猫(35.6%)は軽度(PCV/HCT 20-24.9%)であり、58頭(32.2%)は中等度(14-19.9%)、23頭(12.8%)は重度(11-13.9%)であり、35頭(19.4%)は非常に重度(<10.9%)であった。

貧血の原因としては、骨髄の異常(95頭、52.8%)が、出血(37頭、20.6%)や溶血(19頭、10.6%)よりもより多かった。
DAMINITV分類では、感染性疾患(39頭、21.7%)が、腫瘍(36頭、20%)、代謝性(21頭、11.7%)、外傷(15頭、8.3%)、その他(14頭、7.8%)、炎症性(11頭、6.1%)、免疫介在性(11頭、6.1%)、異例(8頭、4.4%)、中毒(2頭、1.1%)、血管性疾患(1頭、0.6%)よりも多かった。

骨髄の異常は、より重度の貧血と有意に関連していた(P=0.003)。55頭(30.6%)は安楽死され、13頭(7.2%)が死亡したのに対し、大部分の猫(112頭、62.2%)は死亡する事なく退院した。生存して退院できるかは貧血の重症度とは関係なく、溶血の猫が骨髄疾患の猫よりもより退院しやすいというように、貧血の原因と有意に関連していた(P=0.046)。生存して退院できるかは、またDAMNITVの分類とも有意に関連しており (P=0.010)、腫瘍の猫はより難しく、免疫介在性疾患の猫は生存して退院する可能性が高かった。Cox回帰分析では、生存は、貧血の重症度とは関連なく、DAMNITV分類(P=0.011)と年齢 (P=0.082)と関連しており、免疫介在性疾患の猫とより若い猫の方が生存可能なようであった。(Dr.Taku訳)
■猫の特発性赤芽球癆の管理における補助療法としてシクロスポリンの使用
Clinical use of cyclosporine as an adjunctive therapy in the management of feline idiopathic pure red cell aplasia.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):885-95.
Katrina R Viviano; Julie L Webb

特発性赤芽球癆(PRCA)と診断された飼育猫のグループで、シクロスポリンの臨床的使用を述べる。全10頭の猫をグルココルチコイドとシクロスポリンの併用で治療した。10頭中8頭で経過観察のデータが入手でき、寛解に達する中央値は31日、維持の中央値は406日だった。
8頭中7頭で治療は減量あるいは中止した;2/7は治療中止後緩解を維持し、5/7は再燃した。4頭は寛解に再導入し、3/4は長期低用量療法を続けた。
シクロスポリン療法に関係する副作用は、投与量減量あるいは薬剤投与中止に反応した。
猫特発性赤芽球癆はグルココルチコイドとシクロスポリンの併用免疫抑制療法に反応した。再燃は特に薬剤中止後によく認められた。ゆえに、多くの猫が長期維持低用量療法を必要とした。(Sato訳)
■第VII凝固因子に対する犬の特異ELISA
Canine specific ELISA for coagulation factor VII.
Vet J. December 2011;190(3):352-8.
Tom Knudsen; Mads Kjelgaard-Hansen; Mikael Tranholm; Mikael Tranholm; Bo Wiinberg; Bo Wiinberg; Jes T Clausen; Jens Jacob Hansen; Timothy C Nichols; Marianne Kjalke; Asger L Jensen; Annemarie T Kristensen

犬の第VII凝固因子(FVII)欠乏は遺伝性あるいは後天性に起こり、治療しない場合に命の危険がある出血を起こすかもしれない。FVIIプロコアグラント活性はFVII活性により測定できる(FVII:C)が、犬の特異FVII抗原(FVII:Ag)の測定値の分析はまだ利用されていない。

この研究において血漿中のFVII:Agの測定に対する犬特異ELISAを開発し、検証した。そのFVII:Ag ELISAは同型接合およびヘテロ接合の遺伝性FVII欠乏を正確に診断した。

遺伝性犬FVII欠乏の診断において、FVII:Cのような活性をベースとする分析とともに、FVII:Ag ELISAは役立つと思われる。(Sato訳)
■血小板増加症:165頭の犬の後向き調査
Thrombocytosis: a retrospective study of 165 dogs.
Vet Clin Pathol. 2012 Mar 5.
Neel JA, Snyder L, Grindem CB.

背景:血小板増加症は、炎症、腫瘍、鉄欠乏、脾臓摘出、薬剤の投与など様々な状況と関連している。

目的:この研究の目的は、犬における血小板増加症と関連する疾患や状況を明らかにすることである。

方法:この後向き研究では、血小板増加症(血小板数 60万/μl以上)で1年間完全に情報を得られた犬を用いており、犬種、性別、年齢、CBC、ALP、GGT、グルココルチコイドまたはビンクリスチンの投与、診断について評価した。

結果:血小板増加症は、5432頭中240頭(4.6%)において認められ、165頭(3.1%)が対象基準を満たした。血小板増加症は、全ての犬において二次的で生じており、基礎疾患や状況としては、腫瘍(56頭、33.9%)、炎症(55頭、33.3%)、その他の疾患(26頭、15.8%)、腫瘍とその二次的な疾患(13頭、7.9%)、内分泌疾患(8頭、4.8%)、複数の疾患(7頭、4,2%)であった。
腫瘍の犬では、癌(24頭)、円形細胞腫瘍(20頭)、特にリンパ腫と肥満細胞腫、が最も頻度が高い腫瘍であった。炎症性疾患では、免疫介在性疾患(11頭)、神経疾患(8頭)、感染性疾患(6頭)、アレルギー性疾患(5頭)、整形外科疾患(4頭)、消化器疾患(4頭)、その他(17頭)であった。165頭の犬のうち、73頭(44.2%)は、グルココルチコイド(55頭)またはビンクリスチン(18頭)の投与を受けていた。24頭(14.5%)の犬においては、顕著(850-969 x 103/μl)または極度の (970 x 103/μl以上)血小板増加症が認められ、12頭(50%)において腫瘍が認められた。血栓症は、13頭(7.9%)において認められた。

結論:犬における血小板増加症は、腫瘍および炎症性疾患の二次性に生じることが最も多く、グルココルチコイドおよびビンクリスチンの投与と関連している事が一般的であった。血栓症の併発は、少数の犬において生じていた。顕著または極度の血小板増加症は、他の疾患よりも腫瘍でより起こりやすいようである。(Dr.Taku訳)
■犬147症例の血清蛋白電気泳動
Serum protein electrophoresis in 147 dogs.
Vet Rec. April 2011;168(17):456.
S W Tappin; S S Taylor; S Tasker; S J Dodkin; K Papasouliotis; K F Murphy

血清蛋白電気泳動(SPE)に対する参照値間隔を75頭の臨床的に健康な犬のグループで作成し、8.5年の間にブリストル大学に来院した臨床症例から得たSPE結果と比較した。SPEを実施していた合計147頭の犬は、完全な症例記録が入手でき、このように含有基準に合致した。症例記録およびSPE結果から得た徴候と最終診断は、新しく作成した参照値間隔をもとに正常および異常に振り分けた。症例はSPE蛋白分画異常およびDAMNITV分類システムを使用した診断によりグループ分けした。

147症例のうち、140症例(95.2%)は異常なSPE結果だった。最も一般的な蛋白分画異常はアルブミンの低下(59.3%)に続くガンマグロブリンの多クローン性増加(38.6%)だった。ベータ1グロブリン低下およびベータ2グロブリン増加は、それぞれ36.4%、30.0%に認められた。

異常SPE結果に関係する最も一般的なDAMNITV分類は、感染/炎症疾患で、140症例中79症例(56.4%)で診断された。単クローン性高グロブリン血症は8症例(5.7%)で見られ、診断が付いた全ての症例で基礎にリンパ球増殖疾患が存在し、多発性骨髄腫(4症例)、脾臓プラズマ細胞腫(1症例)、肝臓プラズマ細胞腫(1症例)、リンパ腫(1症例)だった。(Sato訳)
■猫の血漿生化学値に対する正常値範囲の種依存性
Breed dependency of reference intervals for plasma biochemical values in cats.
J Vet Intern Med. 2010 Jul-Aug;24(4):809-18.
B S Reynolds, D Concordet, C A Germain, T Daste, K G Boudet, H P Lefebvre

背景:臨床病理学における基準値間隔(RI)は重要である。猫のRIに対する種類の影響はあまり考証されていない。

仮説/目的:猫の血漿生化学値に対するRIは種類依存性である。

動物:バーマン(n=132)、シャルトルー(n=129)、メインクーン(n=139)、ペルシャ(n=136)の4種類、合計536頭の臨床的に健康で絶食を行った飼育猫

方法:前向き観察研究。頚静脈から採血し、リチウムヘパリン入りの毛細管に入れた。血漿グルコース、尿素、クレアチニン、総蛋白、アルブミン、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、塩素イオン、総CO2濃度、ALT、ALP活性をドライスライド生化学分析器で測定した。RIは2.5から97.5パーセンタイルを境界とした中央95%間隔で定義した。データは0.05の第一種過誤で線型混合エフェクトモデルにより分析した。

結果:有意(P<.05)な種の影響は13項目中9項目で観察された。種間差の規模はクレアチニン、グルコース、総蛋白で臨床的に関連する可能性があった。年齢、体重、性別、飼育環境は異なる項目に対し有意(P<.05)に種関連の影響があった。

結論と臨床意義:種特異基準値間隔は猫で考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の血清アミロイドA(SAA)濃度測定のための商業的に利用可能なヒト血清アミロイドA比濁法免疫測定の評価
Evaluation of a commercially available human serum amyloid A (SAA) turbidimetric immunoassay for determination of feline SAA concentration.
Vet Res Commun. 2006 Nov;30(8):863-72.
Hansen AE, Schaap MK, Kjelgaard-Hansen M.

血清アミロイドA(SAA)は、特にもし迅速に信頼でき自動化した測定が利用可能にすることができるなら、炎症性疾患の診断およびモニターに役立ちそうな猫の急性期の蛋白である。商業的に利用可能な自動化されたヒト血清アミロイドA比濁法免疫測定(SAA-TIA)を、猫のSAAの決定のために評価した。Intra-assayとinter-assayの不正確さは、それぞれ有意な不正確さはなくそれぞれ2.1-9.9%そして7.0-12.5%の範囲であった。
88頭の猫は、(A)急性期反応(APR)の有無(それぞれn=23と65)と、(B)臨床診断(臨床的に健康な猫、炎症性/感染性疾患と診断した猫、内分泌性/代謝性疾患、腫瘍性疾患そしてその他の疾患(それぞれn=43、13、8、4そして20))に基づいて振り分けた。予期していた通り、(A)急性期反応がある、そしてない猫と(B)炎症性/感染性疾患を伴う猫は、腫瘍性疾患を除く他の診断したグループに比べ、測定したSAA濃度は異なる結果となった。
結論として、猫のSAA濃度は、ヒトSAAを測定するのにデザインされた商業的に利用可能な比濁法免疫測定を使うことで確かに測定することが出来、ルーチンな診断目的のためのパラメーターとしての測定を促進すべきである。(Dr.Kawano訳)
■犬の特発性真性赤芽球癆と非再生性免疫介在性貧血: 43 症例(1988-1999)
Idiopathic pure red cell aplasia and nonregenerative immune-mediated anemia in dogs: 43 cases (1988-1999).
J Am Vet Med Assoc. 2000 May 1;216(9):1429-36.
Stokol T, Blue JT, French TW.

目的:真性赤芽球癆(PRCA)と特発性非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)の犬の臨床兆候、血液検査結果、治療そして予後を決定すること

デザイン:回顧的研究

動物:重度の非再生性貧血を伴う43頭の犬

方法:1988年から1999年の間に骨髄分析の結果に基づいて、真性赤芽球癆、特発性非再生性免疫介在性貧血あるいは効果のない赤血球生成と判定した臨床記録をレビューした。研究に参加するための基準は、基礎疾患を伴わない重度非再生性貧血 (ヘマトクリット値< 20%; < 60.0 x 10(3) 網状赤血球数/μl)の5日以上の病歴があることであった。シグナルメント、臨床症状、血液検査結果、治療そして予後に関する情報を集めた。

結果:犬の中央年齢は6.5歳だった。避妊した雌犬とラブラドールレトリバーが明らかに多かった。中央ヘマトクリット値は再生(中央値, 1.5 x 10(3) 網状赤血球数/μl)の所見がなく11%であった。直接クームス試験結果は57%の犬で陽性であった。生化学検査異常は鉄過剰症と高い割合でのトランスフェリンの飽和であった。骨髄所見は真性赤芽球癆 (5%) から赤血球過形成(55%)までの範囲だった。骨髄線維症は一般的であった。犬は免疫抑制薬で治療し、反応は完全、部分、不十分がそれぞれ55, 18, そして 27% であった。死亡率は28%であった。

結論と臨床関連:免疫介在性の病因は、重度非再生性貧血、正常白血球そして正常血小板数、鉄過剰症、軽度臨床症状、そして基礎疾患の所見の欠如を伴う犬では考慮すべきである。骨髄所見は稀な真性赤芽球癆から赤血球過形成にまで及んだ。骨髄線維症は罹患した犬でしばしば検出され、骨髄吸引を妨害するかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■獣医教育病院での犬の骨髄疾患の発生率と分類に関する回顧的研究(1996-2004)
A retrospective study of the incidence and the classification of bone marrow disorders in the dog at a veterinary teaching hospital (1996-2004).
J Vet Intern Med. 2006 Jul-Aug;20(4):955-61.
Weiss DJ.

背景: 8年間の回顧的研究で、大学付属病院の臨床病理科において犬の骨髄疾患の発生率と分類を評価した。

動物:獣医教育病院で骨髄疾患の評価を行った犬。

仮説: 犬の骨髄疾患の範囲と有病率のよりよい理解は、数年の回顧的研究で達成できる。

方法: 717頭の骨髄吸引塗抹、コア生検標本、そして症例記録をレビューした。

結果: 骨髄標本は最初に原発性骨髄疾患の有無に基づいて分類した。非形成異常と非悪性病態変化が14の小分類に分けられた。頻繁に観察された病的疾患は、非再生性免疫介在性貧血、赤芽球癆、骨髄壊死、骨髄線維症そして血球貪食症候群が含まれた。骨髄形成不全(n = 61)は骨髄形成異常症候群(n = 27)、先天性 (n = 1) そして二次的 (n = 33)骨髄形成不全に小分類された。腫瘍の126症例は急性白血病(n = 46)、慢性白血病(n = 7)、悪性リンパ腫ステージV(n = 28)、多発性骨髄腫(n = 25)、悪性組織球症(n = 11)、転移性肥満細胞腫(n = 3)、肉腫(n = 5)そして癌腫 (n = 1)であった。

結論と臨床重要性:この研究は、北アメリカの二次診療施設で犬の骨髄疾患の範囲と発生率に関する一般的な指標を提供する。(Dr.Kawano訳)
■犬の原発性赤芽球癆: 13 症例 (1996-2000)
Primary pure red cell aplasia in dogs: 13 cases (1996-2000).
J Am Vet Med Assoc. 2002 Jul 1;221(1):93-5.
Weiss DJ.

目的:赤芽球癆(PRCA)の犬の臨床兆候、血液検査結果、治療そして予後を検討すること
デザイン:回顧的研究

動物:重度の非再生性貧血と骨髄での赤血球形成不全を伴う13頭の犬

方法:1996年から2000年の間に血液と骨髄分析の結果に基づいて赤芽球癆と確定診断した犬の臨床記録をレビューした。研究に含めるための基準は重度非再生性貧血(Hct < 20%; 網状赤血球数< 1.0%)、骨髄での選択的赤血球形成不全、そして貧血を起こす基礎疾患の欠如であった。

結果:犬の中央年齢は6.5歳であった。雌は明らかに多くみられた。中央ヘマトクリット値は10%、中央網状赤血球数は0.1%であった。直接クームス試験結果は検査した全ての犬で陰性であった。そして、球状赤血球症は2頭の犬で明らかだった。全ての犬はプレドニゾロンで治療し、2頭の犬はプレドニゾロンとシクロフォスファミドで治療した。治療に対する反応で完全、部分、不十分はそれぞれ10頭、1頭、そして2頭であった。ヘマトクリット値が5%以上増加するのに必要とした中央時間は38日であり、完全寛解に必要とした中央時間は118日だった。経過観察の情報が得られた10頭のうち、1頭だけ長期の免疫抑制療法を必要とした。

結論と臨床関連:赤芽球癆の犬は免疫抑制薬による治療に対して容易に反応するように見える。:しかし、血液学的反応は治療開始後、数週間から数ヶ月間は観察されないかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬の血漿サンプルにおいてプロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、フィブリノーゲン濃度に対する保存状態の影響
Effect of storage conditions on prothrombin time, activated partial thromboplastin time and fibrinogen concentration on canine plasma samples.
J Vet Sci. June 2010;11(2):121-4.
Giuseppe Piccione , Stefania Casella, Claudia Giannetto, Elisabetta Giudice

この研究で、健康犬の血液サンプルを使用し、プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびフィブリノーゲン濃度に対する保存状態の影響を評価した。
様々な犬種の35頭の犬で研究した。クエン酸塩添加血液を採取し、血漿を4分割してコアグロメーターにより選択した凝固パラメーターを評価した。1つ目は採取後1時間以内に分析し、残りの3つはそれぞれ4度で4,8,24時間保存して分析した。一方向反復測定値分散分析で、8時間と比べ24時間目のPT、採取時と比べ8および24時間目および8時間目と比べ4,24時間目のフィブリノーゲン濃度は有意な低下する影響を示した。
結論として、この研究の結果はフィブリノーゲンのみが明らかに低下する傾向があることを示す。実際、aPTTは採取から最低24時間の冷蔵でも実質的影響を受けない。PTはその得られた結果が犬の参照値内なので、統計学的違いは生物学的意義を示す必要がないことを示した。(Sato訳)
■貯蔵した馬の血液における活性酸素代謝物(d-ROMs)と抗酸化力測定(BAP)の安定性
The stability of the reactive oxygen metabolites (d-ROMs) and biological antioxidant potential (BAP) tests on stored horse blood.
Vet J. 2010 Feb;183(2):217-8. Epub 2008 Nov 17.
Celi P, Sullivan M, Evans D.

馬の獣医学において酸化的ストレス(OS)の役割への関心が増加していることから、それを定量化するための確かな方法を開発する必要性が高まっている。この研究では、我々は、15頭の健常馬で実施した活性酸素代謝物(d-ROMs)の安定性および抗酸化力測定(BAP)に関して冷蔵(4度)の影響を記述した。頸静脈より採取した血液サンプルは直ぐに氷の上におき、d-ROMs とBAP テストの両方を使って分析した。4度の冷蔵庫にも検体を入れ、3時間、7時間そして24時間後に検査した。平均結果は24時間まで同様だった。そして、各馬で最小量の変化が見られた。この所見は、これらの検査に対し馬の血液サンプルを保管するには、冷蔵庫が最適であり、このアプローチが現場条件下で酸化的ストレス(OS)を測定するための技術的に簡単で、信頼できる検査を獣医師に提供するだろう。(Dr.Kawano訳)
■トロンビンの生理学および病態生理学
Thrombin physiology and pathophysiology
J Vet Emerg Crit Care. Feb 2009;19(1):11-22. 74 Refs
Louis G. Licari, DVM, Jan P. Kovacic, DVM DAVCECC

目的:生理学および臨床疾患におけるトロンビンの役割を概説し、抗血栓薬の薬理を考察する
データソース:オリジナルリサーチ論文、科学的レビュー、テキスト

ヒトデータ総合:トロンビンとトロンビンレセプターは、種々の生理学および病理学的過程に関与し、トロンビン関連薬理学的介入に非常に大きな興味を起こさせる。

獣医データ総合:特に獣医患者におけるトロンビンに対して利用可能な臨床的リサーチデータはほとんどないが、蛋白分解酵素活性化レセプターに対するオリジナルリサーチのいくつかは獣医施設で実施され、ヒトの分子生物学研究の多くが犬を含めた動物に対し行われている。

結論:トロンビンは凝固、抗凝固、線維素溶解において重要な役割を持つ。抗血栓治療は血栓症防止に重点を置く一方で止血を維持する。医薬品は、特定疾患過程に関係する凝固経路の特定成分、血栓塞栓症のリスクを持つ処置と共に証明されている予防効果、発現の速さおよび可逆性の容易さ、限られたモニターの必要性、経口製剤形態および生物学的利用能で選択する。トロンビン生理学の他の側面に対する最近の洞察は、炎症および敗血症、末梢血細胞活性および走化性、脈管内皮および平滑筋活性、細胞発育および組織修復、有糸分裂誘発、腫瘍、傷害後の神経組織の機能のような種々の他の経過における薬理介入に対する機会を呈している。(Sato訳)
■犬と猫の好中球減少症:261症例の回顧的研究
Neutropenia in dogs and cats: a retrospective study of 261 cases
Journal of the American Animal Hospital Association, Vol 37, Issue 2, 131-139
MR Brown and KS Rogers

好中球減少症の犬232頭と猫29頭のカルテを、好中球減少の根底にある病因の範囲を検査するために再調査した。非細菌性感染症;著しい炎症、細菌性敗血症、あるいは内毒血症のため需要が増加;薬物関連性好中球減少症;原発性骨髄疾患;免疫介在性好中球減少症;そして原因不明の疾患の6つの病因に分類された。好中球減少症への発展と関連する最大の単一の分類は非細菌感染疾患(例えば猫白血病ウイルス[FeLV]、猫免疫不全ウイルス[FIV]、ヒストプラズマ、クリプトコッカスそしてパルボウイルス)でありパルボウイルスは全症例の47.1%だった。最も少ない原因(0.38%)は自然に発症する免疫介在性好中球減少症だった。(Dr.Kawano訳)
■胃拡張捻転症候群に罹患した犬における低分子ヘパリンの異なる投与量での効果と安全性
Effectivity and Safety of Different Dosages of Low Molecular Weight Heparin in Dogs Suffering from Gastric Volvolus/Dilatation Complex
15th ECVIM-CA Congress, 2005
Prof Reinhard Mischke; C. Wust

この研究の目的は、しばしば播種性血管内凝固(DIC)に関与する胃拡張捻転症候群(GVDS)に罹患した犬において、低分子ヘパリン(LMWH)の効果と安全性を評価することだった。
GVDSに罹患した60頭の犬で研究した。19頭はコントロール(1群、抗凝固処置なし)とした。残りの群は、術後から7日間8時間ごとにダルテパリンナトリウムの皮下注射を行った。個々の投与量は、75 anti-FXaU/kg (n=21、2群)、100 anti-FXaU/kg (n=14、3群)、150 anti-FXaU/kg (n=6、4群)だった。
取り決めた時間に、臨床検査、血漿ヘパリン活性、血小板数、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)、第V因子活性、アンチトロンビン活性、溶解性フィブリンの測定および血液、生化学検査を実施した。
4群の全ての犬は重度出血の合併症(主に手術創部分)を発症した。この事実により、150anti-FXaU/kg1日3回で処置した6頭(4群)を、100 anti-FXaU/kg1日3回のプロトコールに修正し、研究構成(3群)に組み入れた。3群の14頭中6頭、2群21頭中3頭、コントロール犬の0頭は有意な出血症状発現を示した。2、3、4群における平均血漿ヘパリン活性は、それぞれ0.43±0.17 anti-FXaU/ml、0.60±0.21 anti-FXaU/ml、1.01±0.39 anti-FXaU/mlの最大値に達した。
他の臨床パラメーター、溶解性フィブリンの測定値、第V因子活性、プロトロンビン時間は群間で有意差を示さなかった。他の群と比較したとき、4群の犬のAPTT値は有意に高かった。またアンチトロンビン活性の用量依存性の低下が観察された。
この研究の結果は、GVDSに罹患した犬における臨床結果および消費性凝固障害に対し、LMWHはポジティブな影響を持たないことが示される。高用量のLMWHを投与した犬におけるAPTTの延長およびアンチトロンビンの低下は、直接ヘパリン効果を反映する。
ヘパリン治療の安全面に関し、我々の研究結果は、ダルテパリン用量>75 anti-FXaU/kg1日3回およびヘパリン活性濃度>0.5 anti-FXaU/mlになるようなダルテパリンの投与は、大きな外科手術後の犬に避けるべきであることを示す。(Sato訳)
■犬における低分子ヘパリン(エノキサパリン)皮下投与の薬物動態
Pharmacokinetics of subcutaneous low molecular weight heparin (enoxaparin) in dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2009 Nov-Dec;45(6):261-7.
Kari V Lunsford, Andrew J Mackin, V Cory Langston, Marjory Brooks

非分画ヘパリンは、その抗凝固効果のため人や獣医療で使用される標準のヘパリンである;しかし複雑な薬力学的側面を持ち、密接なモニタリングを必要とする。低分子ヘパリンはより予測可能な生物学的利用能を持ち、個々の患者のモニタリングなしで標準的に投薬できる。
この研究計画は、1)犬において血漿エノキサパリン濃度のマーカーとしてanti-Xa活性を使用し、低分子ヘパリンであるエノキサパリンの皮下投与の薬物動態を評価、2)確立したターゲットレンジ内に活性を維持するため必要な投与量を確立することだった。
0.8mg/kgSC6時間毎のエノキサパリン投与は、出血の合併症の所見がなく正常犬においてanti-Xa活性の目標濃度を一貫して維持した。(Sato訳)

■健康な猫の凝固パラメーターに対する低分子ヘパリンの影響
The effect of a low molecular weight heparin on coagulation parameters in healthy cats.
Can J Vet Res. April 2009;73(2):132-6.
Cheryl L Vargo, Susan M Taylor, Anthony Carr, Marion L Jackson

低分子ヘパリン(LMWH)であるダルテパリンナトリウムを8頭の健康な猫に1日2回(100IU/kg)、合計13回皮下投与した。抗活性化第X因子(anti-Xa)活性を投与前(0時)、初回投与後4、6、8、12時間目、3回目投与後4時間目、最終投与後4、6、8、12時間目に測定した。4頭の猫は1回の投与後4時間目に測定可能なanti-Xa活性が見られ、6時間で基準に戻った。4頭の猫のどのタイムポイントでもanti-Xa活性は検出されなかった。プロトロンビン時間(PT)、活性部分トロンボプラスチン時間(APTT)、抗トロンビン(AT)濃度はLMWH投与の影響を受けなかった。
ダルテパリン100IU/kg皮下投与は、8頭中4頭の猫のanti-Xa活性をもたらさず、他の4頭の健康な猫において4時間以上anti-Xa活性を維持できなかった。(Sato訳)
■犬における重度赤血球形成異常の結果としてのキャボットリング
Cabot rings as a result of severe dyserythropoiesis in a dog
Vet Clin Pathol. June 2008;37(2):180-3.
Janina Lukaszewska, Krzysztof Lewandowski

11歳メスのダックスフントが、沈うつ、下痢、体重減少、肝臓、脾臓、右肺前葉のマスのエックス線所見を呈した。CBCの結果は、重度非再生性貧血(HCT14.2%、ヘモグロビン、4.3g/dl、網状赤血球66000/μl)と顕著な正染性正赤芽球症(有核赤血球6.39x10(3)/μl)を示した。末梢血スメア検査は、顕著な大赤血球優勢の赤血球大小不同、ハウエルジョリー小体、散在性好塩基斑点、多核および異形有核赤血球などの顕著な赤血球系形成異常を示した。好中球過分葉と巨形態も見られた。特に多染性の多くの赤血球は、繊細な赤紫色の楕円あるいは8の字構造として現れるキャボットリングに相当する封入体を含んだ。まれにキャボットリングは細胞外で観察された。犬は輸血、プレドニゾン、エリスロポイエチン、ビタミン補給など対症治療を行ったが、貧血の悪化は進行した。犬は来院後2ヶ月で安楽死された。
骨髄吸引およびコアバイオプシー標本を安楽死時に採取し、浸潤性癌細胞と一緒に、特に赤血球形成異常を伴う全ての細胞列に顕著な形成異常変化が見られた。剖検を実施し、組織検査で骨髄、脾臓、肝臓への複数転移を伴う肺の低分化腺癌が認められた。最終診断は、転移性腺癌による二次的な顕著な骨髄形成異常だった。ヒトの骨髄形成異常でまれにキャボットリングが見つかるが、犬で過去に述べられたことはない。この症例での所見を基に、キャボットリングは重度赤血球形成異常の犬にまれに発生するかもしれない。(Sato訳)
■臨床的に意味のある静脈血栓症のリスクを持つと考慮される犬において低分子ヘパリンとヘパリンの凝固効果の比較
Coagulation effects of low molecular weight heparin compared with heparin in dogs considered to be at risk for clinically significant venous thrombosis
J Vet Emerg Crit Care. Feb 2009;19(1):74-80. 49 Refs
Kielyn C. Scott, DVM, Bernie D. Hansen, DVM, DACVECC, DACVIM, Teresa C. DeFrancesco, DVM, DACVECC, DACVIM

目的:抗Xa因子活性(AXa)に対する3つの抗凝固プロトコールの効果を比較する

構成:前向き無作為二重盲検

場所:獣医教育大学病院

動物:静脈血栓症のリスクを考慮される18頭の犬

処置:各犬を3群(n=6/群)に無作為に振り分け、24時間処置した:低用量ヘパリン(LDH)、高用量ヘパリン(HDH)、ダルテパリン(DP)。LDH群は非分画ヘパリン(UFH)300U/kg/dの定量持続静脈内投与(CRI)、HDH群はUFH100U/kgの静脈内ボーラス投与後900U/kg/dのCRI、DP群は0、12、24時間目のDP100U/kgの皮下投与を行った。
測定値と主要結果:活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)およびAXa分析を行うため、0、4、28時間目に合計54サンプルを採取した。6サンプルはAXa>0.1U/mlで、そのうち5サンプルはHDH群4時間目のものだった。4時間目のHDH群からの2サンプルは、aPTT延長(93および200秒)と最高値のAXa(0.6および1.0U/ml)を示した。HDH群のあとの4頭は、出血のため研究を完遂できなかった。研究を完遂した犬で出血傾向を示した犬はいなかった。

結論:ヒトで治療と考慮される値までDPおよびLDHはAXaを増加させず(それぞれ0.5-1および0.35-0.75U/ml)、両プロトコールは臨床疾患を持つ犬のAXaを増加させるには不十分と思われる。HDHの2頭はこの範囲にAXaが増加したが、aPTTに予期せぬ影響を示し、出血を起こす犬もいた。(Sato訳)
■猫の血清クレアチンキナーゼ活性と食欲不振との関係
J Vet Intern Med. 1997 Jan-Feb;11(1):9-13.
Correlation between serum creatine kinase activities and anorexia in cats.
Fascetti AJ, Mauldin GE, Mauldin GN.

栄養不良の猫を確実に同定、あるいは支持的な栄養補給中のモニタリングを可能にする有用な生化学的分析はない。クレアチンキナーゼ(CK)活性は栄養不良の患者で高く、栄養上の介入に応じて減少するかもしれないことが人々の研究で示されている。
この研究の目的は、食欲不振の猫における血清CK活性の定量の価値を決定し、これらの患者において栄養学的サポートをモニターする際に、この検査の有効性を評価することだった。血清CK活性は、食欲がある猫(Group 1, n = 25)と経鼻食道チューブを通じて栄養学的サポートを受けている入院中の食欲不振の猫(Group 2, n = 25)で評価した。食欲不振猫(中央値= 2,529 U/ L, 範囲88-153,000 U/L)は、コントロールグループ(中央値=175 U/L, 範囲81-363 U/L, P < .001)に比べて血清CK活性が有意に高かった。血清CK値とAST活性(P < .05; r = .59)およびLDH活性(P < .05; r = .41)の両方との間に有意な正の相関関係があった。血清CK活性は、入院時に比べ栄養サポートを48時間行った後の食欲不振の猫で有意に低く、継続的なサポートで最終的に正常に戻った。血清CK活性は栄養状態を評価し、モニタリングしている猫において有用なマーカーとして役立つかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■重篤な犬および健康な犬におけるヒトアルブミンに対する血清抗体
Serum antibodies against human albumin in critically ill and healthy dogs
J Am Vet Med Assoc. April 2008;232(7):1004-9.
Linda G Martin, Teresa Y Luther, Debra C Alperin, John M Gay, Stephen A Hines

目的:重篤および健康な犬におけるヒトアルブミン(HA)に対する抗体反応の大きさと持続期間の特徴を調べる

構成:コホートおよび横断研究

動物:治療プロトコールの一環として25%HAの投与を受けた重篤な犬14頭、過去にHAの暴露がなく25%HAの点滴を2回投与した健康な犬2頭(陽性コントロール)、HAの暴露がない47頭の健康な犬および重篤な犬21頭(陰性コントロール)

方法:HAに対するIgGを検出するELISAを開発した。重篤な犬のHAの点滴前、HA投与後退院時、4-6週間後、6ヵ月後の血清サンプルを採取した。両陽性コントロール群から2-4週間間隔で101週間血清サンプルを採取した。各陰性コントロール犬から1回血清サンプルを採取した。

結果:14頭全ての重篤な犬は、HAに対する血清IgGが発生した。抗体反応のピークは、HA投与後4-6週間目に検出した。両陽性コントロール犬において、HAに対するIgGはHA投与後10日目に検出され、その後97週間持続した。抗体反応のピークは1頭で3週目、その他で9週目に検出された。陰性コントロール犬68頭中5頭(7%)は陽性抗体反応を持っていた。

結論および臨床関連:結果は、犬はHA暴露後に明白なIgG反応が発生し、HA投与の履歴がない犬でも抗HAIgG陽性の犬もいることを示唆した。(Sato訳)
■納豆キナーゼの経口投与による血漿における線維素溶解活性の増強
Enhancement of the fibrinolytic activity in plasma by oral administration of nattokinase.
Acta Haematol. 1990;84(3):139-43.
Sumi H, Hamada H, Nakanishi K, Hiratani H.

“納豆”と呼ばれる伝統的な発酵食品における強力な線維素溶解酵素(納豆キナーゼ.NK)の存在は、以前我々が報告した。繊維素溶解パラメーターおよび組織プラスミノーゲン活性化因子の産生によって示されるように、NK(あるいは納豆)の経口投与により血漿中において軽度で持続的な繊維素溶解活性の増強が起こることが確認された。実験的に血栓症を誘発した犬にもNKカプセルを経口投与し、血管造影で血栓の溶解を観察した。NKは安全性が証明されており、大量生産が可能なので、NKは塞栓症の予防だけではなく、その疾患の治療にも使用する可能性がある薬剤であることが結果から示唆された。(Dr.Kawano訳)
■血小板減少症の犬における骨髄の細胞学的検査の診断的使用:58症例(1994-2004)
Diagnostic use of cytologic examination of bone marrow from dogs with thrombocytopenia: 58 cases (1994-2004)
J Am Vet Med Assoc. November 2007;231(10):1540-4.
Matthew D Miller, Katharine F Lunn

目的:血小板減少症の犬の骨髄の細胞学的検査の診断的使用を判定する

構成:遡及症例シリーズ

動物:血小板減少症の犬58頭

方法:血小板減少症の犬の医療記録を検索、再検討した。血小板減少症で骨髄の細胞学的検査を行った犬を調査した。他の血液異常を示す犬、過去に造血系腫瘍の診断を受けた犬、過去に細胞毒性薬で治療された犬は除外した。骨髄細胞所見を再調査した。結果を重度血小板減少症の犬(< 20,000 platelets/microL)と軽度から中程度の血小板減少症の犬(20,000 to 200,000 platelets/microL)で比較した。

結果:58頭の犬が基準に合致した。診断的骨髄吸引を行った55頭のうち、36頭は重度血小板減少症だった。骨髄の細胞学的評価は、それら犬の実質的な非巨核球骨髄異常を明らかにせず、または確定診断が得られなかった。軽度から中程度の血小板減少症の犬19頭は診断的骨髄吸引で診断された。それらの犬のうち4頭の骨髄細胞所見で非巨核球異常を認めた。軽度から中程度の血小板減少症の犬と比較して、重度血小板減少症の犬の骨髄の細胞学的検査で異常を認めたものは有意に少なかった。

結論と臨床関連:骨髄の細胞学的検査で、重度血小板減少症の犬の特定の異常、または予後の情報を得られにくい。(Sato訳)
■重篤患者のマグネシウム障害
Magnesium Disturbances in Critically Ill Patients
Compend Contin Educ Pract Vet. July 2007;29(7):420-427. 36 Refs
Yonaira E. Cortes, DVM, Lisa Moses, VMD, DACVIM

マグネシウム変化は、神経筋、心血管、代謝系に顕著な影響を及ぼす可能性がある。医療現場での臨床検査の最近の進歩で、救命救急現場における血清マグネシウム濃度の変化をモニター、治療の実行が現在容易になっている。この文献は、重篤患者で正常な恒常性メカニズム、臨床的異常、マグネシウム障害の治療戦略を概説する。(Sato訳)
■猫におけるクロピドグレルの抗血小板効果と薬物動力学
Antiplatelet effects and pharmacodynamics of clopidogrel in cats.
J Am Vet Med Assoc. 2004 Nov 1;225(9):1406-11.
Hogan DF, Andrews DA, Green HW, Talbott KK, Ward MP, Calloway BM.

目的:猫におけるクロピドグレルの抗血小板効果と薬物動力学を評価すること。

設計:オリジナル研究

動物:目的を持って繁殖した5頭の家猫

方法:75mgを24時間毎の経口投与で10日間、37.5 mgを24時間毎の経口投与で10日間、18.75 mgを24時間毎の経口投与で7日間、クロピドグレルを投与した。すべての猫において治療の間隔を少なくとも2週間あけて、この順番で投与した。投薬後3、7、10日(75 と 37.5 mg)あるいは7日(18.75mg)でアデノシン二リン酸(ADP)とコラーゲンに対する血小板凝集および口腔粘膜出血時間(OMBTs)を測定した。投薬前と投薬最後において、ADPあるいはコラーゲンによる血小板刺激に続き、血漿セロトニン濃度を測定した。薬の効果がなくなったかどうか決定するために投薬を中止した後に、血小板凝集、OMBTそしてセロトニン濃度をさまざまな時間で評価した。

結果:3つの投与量すべてにおいて、ADPに反応した血小板凝集、コラーゲンに反応した血小板凝集そしてセロトニンン濃度は明らかに減少し、投与期間中すべての測定時間においてOMBTは増加した。投薬中止後7日ですべての値が基底値に戻った。投与量の間に明らかな違いは見出されなかった。投薬と関連した副作用が見られた猫はいなかった。

結論と臨床関連:クロピドグレル18.75~75mgの投与量での24時間毎の経口投与は、猫において明らかに抗血小板効果があることが結果から示唆される。(Dr.Kawano訳)
■犬猫の血小板減少症の管理
Managing Thrombocytopenia in Dogs and Cats
Vet Med. 1999 ;94(5):460-465. 10 Refs
C. Guillermo Couto

我々の病院で血小板減少症は犬における自然出血の最も一般的な原因であるが、猫ではまれである。循環血小板数の減少は、血小板産生の低下、血小板の寿命の短縮、またはその両方で起こりえる。ほとんどの検査所が犬猫の血小板数の正常範囲を150000-400000/μlとしているにもかかわらず、確定犬種の健康犬は持続的に低い血小板数を示す。例えば、キャバリアキングチャールズスパニエルは往々に75000/μl以下、グレーハウンドは一般に80000-110000/μlである。臨床的に明らかな自然出血は通常血小板数25000/μl以下で起こる。しかし、犬猫の軽度胃腸出血および静脈穿刺中の出血延長は、25000-50000/μlの血小板数で起こりえる。
猫の血小板減少の一般的な原因は血小板産生の低下(特にレトロウイルス誘発骨髄障害)だが、犬ではまれである。表1は血小板の産生低下を一般的に起こす障害を載せている。血小板の末梢破壊を引き起こす4つの一般的なメカニズムは、免疫介在性メカニズム、薬物関連メカニズム(調整生ウイルスのワクチン接種を含む)、腫瘍、敗血症関連メカニズムである(表1)。播種性血管内凝固で血小板消費の増加、脾腫またはまれに肝腫による壊死巣分離は、血小板寿命の短縮による血小板減少にも寄与する可能性がある。血小板減少患者の合理的評価は、病因診断に導く頻度が高く、適切な治療が可能である。コルチコステロイドおよびドキシサイクリンまたはその両方の治療試行は、病院診断がまだ確立されていない犬に使用できる。骨髄吸引及び血清学検査は、犬猫の血小板減少を評価する追加手段である。(Sato訳)
■Hemoglobin Glutamer-200を投与した犬における血液学、生化学、血液ガス値の評価
Evaluation of Hematological, Chemistry and Blood Gas Values in Dogs Receiving Hemoglobin Glutamer-200
J Vet Emerg Crit Care. March 2007;17(1):37-44. 19 Refs
Marie E. Kerl, DVM, DACVIM, DACVECC, Paige F. Langdon, DVM, DACVIM, Charles E. Wiedmeyer, DVM, PhD, DACVP, Keith R. Branson, DVM, DACVA

目的:hemoglobin glutamer-200 (Hb-200)が健康犬の全血数(CBC)、生化学プロフィール、COオキシメトリー、ポイントオブケア(POC)テスティングに干渉する程度を評価する

構成:前向き縦断実験研究

場所:獣医教育病院

動物:目的を持って繁殖した研究ハウンド6頭

介入:犬にFDA承認ヘモグロビンベース酸素キャリアー(Hb-200)を、2時間かけて7.5ml/kgで静脈投与した。動脈および静脈血サンプルを投与前(0時)、投与後3、8、14、26、50、74、98、122、146時間目に採取した。
測定値と主要結果:どの犬にも副作用は認められなかった。Hb-200投与後に特徴的な粘膜、血清、血漿の色の変化が起こった。充填赤血球量、赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット、クレアチニン、コレステロール、アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼなどの検査値は基準より有意に低かった。平均赤血球ヘモグロビン濃度、動脈pH、動脈総二酸化炭素、動脈重炭酸イオン、アミラーゼ、アルブミン、総蛋白、グロブリン、カルシウム、リン、総ビリルビン、一酸化炭素ヘモグロビン、メトヘモグロビンなどの検査値は基準より有意に大きかった。全ての値は、146時間のモニター期間終了時に基準に戻った。

結論:正常犬でHb-200の投与は、多数の検査パラメーターで統計学的に有意な変化を引き起こす。それらの変化は危機的疾患の犬のケアで臨床的意義を持たないと思われる。(Sato訳)
■猫の血小板増加症:51例の遡及研究(2000-2005)
Thrombocytosis in cats: a retrospective study of 51 cases (2000-2005)
J Feline Med Surg. March 2007;0(0):.
Francesca Rizzo, Simon W Tappin, Severine Tasker

2000年1月から2005年10月の間にブリストル大学小動物病院に来院した猫の血液学プロフィールで血小板増加症(定義:血小板>700x10(9)/l、スメア評価で確認)を評価した。血小板増加症は79頭(病院猫集団の4.64%)の猫で見つかり、値の範囲は703-1895x10(9)/lだった。完全な医療記録が入手できた51例で徴候、臨床症状、他の血液学的異常の併発、診断、結果を評価した。他の変動値(猫免疫不全ウイルス/猫白血病ウイルス状態、チロキシンレベル、ヘモプラズマ、PCR、トキソプラズマ抗体価)も評価した。
血小板増加症の有無と猫種、性別の間に関連はなかった。臨床症状で最もよく見られたのは胃腸症状だった。併発血液異常で最も多かったのはリンパ球減少だった。到達した最終診断をもとに、DAMNITV分類および影響を受けたボディシステムにより猫をグループ分けした。DAMNITV分類の中で、炎症/感染状況は血小板増加症に最も多く関連していた。ボディシステムによると、胃腸関与が最も多く、続いて内分泌症例だった。血小板増加症の程度と結果に関連はなかった。(Sato訳)
■猫の汎脂肪組織炎と重度低カルシウム血症
Pansteatitis and severe hypocalcaemia in a cat
J Feline Med Surg. December 2006;0(0):.
Eric Zini, Beat Hauser, Pete Ossent, Renate Dennler, Tony M Glaus

13歳のシャムネコが嗜眠および進行性腹部膨大の検査で来院した。血清化学検査で総およびイオン化血清カルシウムの重度低下が認められた。腹部超音波検査で大網に低エコーをちりばめた高エコー所見が見られた。高血清上皮小体ホルモンとカルシウムの低分画排泄で、上皮小体疾患と電解質の腎臓喪失を除外した。開腹手術で、大網は不透明、白色、硬かった。剖検で、胸腔、皮下脂肪も侵されているのがわかった。組織病理で、びまん性のカルシウム石鹸形成を伴う汎脂肪組織炎の診断が確認された。重度低カルシウム血症は時折猫で見られるが、汎脂肪組織炎の関与は過去に報告されていない。ヒトで、カルシウム石鹸と低カルシウム血症の原因と結果の相関は認められているが、関連はまれである。(Sato訳)
■犬の血球貪食症候群:24症例(1996-2005)
Hemophagocytic syndrome in dogs: 24 cases (1996-2005)
J Am Vet Med Assoc. March 2007;230(5):697-701.
Douglas J Weiss

目的:犬の血球貪食症候群の頻度、考えられる原因、臨床および臨床病理特性を判定する

構成:遡及研究

動物:24頭の飼育犬

方法:1996-2005年に得た診断的骨髄標本(吸引スメアとコアバイオプシー材料)を持つ犬の記録を再調査した。含める基準は、血液の2血球減少または汎血球減少および骨髄吸引で>2%血球貪食マクロファージの存在だった。

結果:評価した骨髄標本617件のうち、血球貪食症候群の所見は24件(3.9%)で検出された。チベタンテリア種は血球貪食症候群の犬の中で多く見られた。血球貪食症候群に関する臨床症状は、発熱、黄疸、脾腫、肝腫、下痢などである。血球貪食症候群は免疫介在性、感染、腫瘍性骨髄形成異常状態に関与し、特発性としても発生する。総体的に、感染関連血球貪食症候群の犬は、免疫介在性や特発性血球貪食症候群の犬よりも1ヶ月生存率が良かった。

結論と臨床関連:結果は、血球貪食症候群は過去に小数例の報告をもとに疑われたものより、頻度が多く発生しているかもしれないと示された。ほとんどの犬は基礎疾患の状態で説明できるが、特発性血球貪食症候群も認められた。どの原因の血球貪食症候群も致死的可能性がある。しかし、予後は関連疾患経過、治療成功の可能性をもとに補正すべきである。(Sato訳)
■納豆キナーゼの経口投与による血漿中の線維素溶解活性の増強
Enhancement of the fibrinolytic activity in plasma by oral administration of nattokinase.
Acta Haematol. 1990;84(3):139-43.
Sumi H, Hamada H, Nakanishi K, Hiratani H.

以前我々は“納豆”と呼ばれる伝統的な発酵食品における潜在的な線維素溶解酵素(ナットウキナーゼ、NK)の存在について報告した。繊維素溶解系のパラメーターや組織プラスミノーゲン活性化因子の産生で示されるように、ナットウキナーゼ(あるいは納豆)の経口投与で血漿中に繊維素溶解活性の軽度そして頻繁な増強をもたらすことが確認された。実験的に血栓症とした犬に経口的にナットウキナーゼカプセルを投与し、血管造影にて血栓の溶解を確認した。得られた結果から納豆キナーゼは安全で大量生産可能なので、ナットウキナーゼが塞栓症の治療だけではなく、病気の予防となる可能性があることが示唆される。(Dr.Kawano訳)
■家猫短毛種において新しく認識された血液型
A newly recognized blood group in domestic shorthair cats: the Mik red cell antigen
J Vet Intern Med. 2007 Mar-Apr;21(2):287-92.
Nicole M Weinstein, Marie-Claude Blais, Kimberly Harris, Donna A Oakley, Lillian R Aronson, Urs Giger

背景:AおよびB赤血球抗原に対して産生される自然発生同種抗体は、急性溶血性輸血反応を引き起こす可能性がある。AB血液型系に関係のない血液不適合は、通常のクロスマッチ試験を通して輸血後、または溶血性輸血反応の結果としても疑われている。

仮説:AB適合猫の中で、クロスマッチ結果の不適合は、過去に輸血をしたことがないドナー猫のグループで、新規に認められた血液抗原に対する自然発生同種抗体の存在を意味する。関連する同種抗体は、この赤血球抗原が欠如した猫の腎移植レシピエントで、この赤血球抗原を発現する赤血球の不注意な輸血後、溶血性輸血反応をもとに臨床的に重要である。

方法:血液ドナーと非血液ドナー猫で、直接抗グロブリンおよびクロスマッチテストにより自己および同種抗体の有無、AB血液型状態の血液型を評価した。標準チューブおよび新規ゲルカラム法を使用した。

結果:65頭中3頭の血漿および腎移植レシピエントの猫1頭は、AB適合赤血球をを伴うクロスマッチ試験結果不適合を起こし、それら猫がそれら欠けている赤血球抗原に対し同種抗体を形成したことを示し、Mikと名付けた。3頭のドナーと腎移植レシピエントは互いにクロスマッチ適合だった。チューブおよびゲルカラムクロスマッチ試験結果は同様だった。

結論と臨床意義:この新規Mik赤血球抗原の欠如は、自然発生抗Mik同種抗体に関与し、ABマッチ輸血後の急性溶血性輸血反応を誘発する可能性がある。(Sato訳)
■犬のDal血液型:ダルメシアンの中で赤血球抗原の欠如
Canine Dal blood type: A red cell antigen lacking in some Dalmatians
J Vet Intern Med. 2007 Mar-Apr;21(2):281-6.
Marie-Claude Blais, Lisa Berman, Donna A Oakley, Urs Giger

背景:輸血で感作された犬はその後産生される同種抗体をもとに、12種以上の血液型はこれまで認められており、いくらかは犬赤血球抗原(DEA)として分類されている。

仮説:過去に輸血で感作されたダルメシアンで、特定の同種抗体の発生をもとに、新しい犬赤血球抗原が疑われた。

動物:26頭のダルメシアン(血液適合研究を必要としたダルメシアン1頭を含む);55頭の犬血液ドナー

方法:血液型、クロスマッチ、直接クームス試験などを含む血清学的検査を、標準チューブ法とヒトの血液バンクから適応させた新しいgel column technologyで実施した。

結果:貧血のダルメシアンの輸血後40日目に、55頭の比ダルメシアン犬に対する全ての主クロスマッチ検査が不適合だった。最初に輸血前に適合した2頭のドナーも今回不適合で、共通の赤血球抗原に対する同種抗体の発生を示唆した。同腹子は利用できなかったが、血縁がないダルメシアン25頭中4頭はクロスマッチ適合で、それらは同じ赤血球抗原を失っていると示唆された。患者は血液型DEA1.1、3、4、5陽性だがDEA7陰性だった。さらなる血液型とクロスマッチ検査は、それら不明な血液型の関与を支持しなかった。産生された同種抗体は免疫グロブリンGクラスのものであると判定された。

結論と臨床意義:ダルメシアンで獲得された同種抗体の確認をもとに、おそらくDalと名付けられた新しい共通の血液型が確認された。Dal抗原が欠如したダルメシアンは、遅延、急性溶血性輸血反応のリスクをもちやすい。(Sato訳)
■猫の動脈血栓塞栓症と組織プラスミノーゲン活性化因子を使用した血栓溶解療法の見込みある有用性
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1988 Jan;18(1):79-86.
Feline aortic thromboemboli and the potential utility of thrombolytic therapy with tissue plasminogen activator.
Pion PD.

猫の動脈血栓塞栓症は一般的で、現時点で効果的治療がないため臨床状態を破壊する。組織プラスミノーゲン活性化因子を使った血栓溶解療法は、臨床的な症候群の解決において比較的非侵襲的な方法で見込みもある。ヒトの臨床試験において、組織プラスミノーゲン活性化因子は、これまでに利用可能な血栓溶解剤よりも長所がある。これまでに利用可能な血栓溶解剤は厳重なモニタリングが必要で、一般的に高価でモニターや管理するための人的費用が必要という厄介な問題がある。血栓と関連したプラスミノーゲンのための特異的な存在であるt-PAはより安全で、血栓溶解治療に関連したこれまでの危険を伴うことなく効果的な血栓溶解を可能にする。動脈血栓塞栓症の猫において、早期の臨床試験では急性血栓溶解には効果的であるが、リスクと治療効果に関する疑問が高まりよりコントロールした研究が必要であろう。
動脈血栓塞栓症の猫に対するt-PA療法は、入院と薬物で余計に約500~1500$のコストがかかることが予測される。ほとんどの獣医師の顧客は、良質の獣医のケアに費用を費やすことを厭わないということは、良い変化をもたらすことに匹敵する。しかし、有益な治療進歩としてのt-PA療法をみなす前に、我々は原因病理論と再血栓塞栓症の可能性を考えなくてはなりません。コントロール研究の結果は発表されていないが、一般的に猫では高い再発率の可能性があると考えられている。t-PAで治療した猫の50%が25mg/kg3日1回の推奨用量でのアスピリン療法にも関らず再血栓塞栓症となる。猫の心筋の疾患(心筋症)の治療と/あるいは、リスクを伴う抗凝固状態の猫に対する効果的な方法を見つけることが、血栓溶解療法に関連した金銭的および人的労力に対するコストを正当化する手助けとなるだろう。(Dr.Kawano訳)
■犬のアジリティー競技中の血液、生化学変化
Hematologic and biochemical changes during canine agility competitions
Vet Clin Pathol. March 2007;36(1):30-5.
S Rovira, A Mu?oz, M Benito

背景:運動の異なる種類に対する正常な反応は、遂行前、トレーニングレベルまたは評価できる運動不耐性で確立する必要がある。

目的:この研究の目的は、アジリティー競技中の犬の血液、生化学変化を述べることだった。

方法:15頭の犬で40の障害がある距離360-400mにわたるアジリティー試験を行った。基本となる静脈血サンプルを競技1週間前、運動直後、回復5分、15分、30分目に採取した。CBC、血漿生化学プロフィール、乳酸濃度を自動分析器を用い標準法で測定した。血清コルチゾール濃度は、競合免疫酵素分析で測定し、インシュリンはサンドイッチELISAで測定した。

結果:アジリティー試験の血液反応は、RBC数、ヘモグロビン濃度、HCTの有意な増加があり、総蛋白濃度の変化はなかった。血清トリグリセリド濃度は運動後増加し、回復30分で最大値が観察された。運動後乳酸濃度は、無酸素性作業閾値4mmol/lを越えていた。血清乳酸脱水素酵素活性は、回復30分後有意により高かった。他の検査項目に有意差は見られなかった。

結論:我々の結果は、アジリティー競技で脾臓の収縮、脂肪分解の増加、筋肉のエネルギー再合成に関係する無酸素経路の利用に一致する、血液および生化学検査結果が軽度から中程度変化することを示す。(Sato訳)
■犬のアジリティー競技中およびその後の体液および電解質シフト
Fluid and electrolyte shifts during and after Agility competitions in dogs
J Vet Med Sci. January 2007;69(1):31-5.
S Rovira, A Muz, M Benito

この研究で、アジリティー運動に関する脾臓収縮の関連する貢献、赤血球沈殿容積の増加に対する血管区分外の体液シフトを調査する。電解質濃度と脱水のマーカーの変化の評価も目的とする。両性別の15頭に約100秒間のアジリティー運動を行った。競技終了後最初の30秒以内、回復5分、15分、30分時に血液サンプルを採取した。安静値は以前に測定した。以下のパラメーター、赤血球沈殿容積(PCV)、血漿乳酸(LA)、総血漿蛋白(TPP)、アルブミン(ALB)、尿素(BUN)、クレアチニン(CREA)、塩化物(Cl)、カルシウム(Ca)、リン(P)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)を測定した。
血漿容積(PV)、総RBC容積(V(RBC))、血液量(BV)の変化は、運動直後と回復30分時に算出した。アジリティー競技中、BV、V(RBC)、PVはそれぞれ12、21、4%増加し、脾臓収縮がBV増加の主な決定因子を示していることが分かった。吸息値と比較して、脾臓の貯蔵により赤血球の再捕獲(V(RBC)、-12%)による回復後のBVは低下(-5%)した。またアジリティー運動は血漿ClおよびLAの増加、ALB、CaおよびPの有意な減少、Na、K、BUN、CREA濃度の修正欠如を誘発した。(Sato訳)
■猫でナトリウム:カリウム比の低下:49症例
Decreased sodium:potassium ratios in cats: 49 cases.
Vet Clin Pathol. 2005 Jun;34(2):110-4.
Bell R, Mellor DJ, Ramsey I, Knottenbelt C.

背景:この測定の重要性は調査されていませんが、猫の生化学パネルでナトリウム:カリウム比(Na:K)がしばしば報告されます。

目的:この研究の目的は、委託病院母集団において、この生化学異常の発生率を決定、またよりナトリウム:カリウム比が低下しそうな特殊疾患を認識、低下したナトリウム:カリウム比と関連した猫の疾患の程度を考証する事だった。

方法:ナトリウム:カリウム比が低下した49頭の猫のグループと、同一の病院母集団から無作為に選択したナトリウム:カリウム比が正常な50頭の猫のグループを比較した。

結果:49頭の猫のうち12頭(24.5%)は胃腸疾患に罹患しており、10頭(20.4%)は尿路疾患、8頭(16.3%)は内分泌疾患、8頭(16.3%)は心呼吸器疾患、そして5頭(10.0%)は他のボディーシステムに影響する疾患に罹患していました。6頭(12.2%)はアーティファクトでナトリウム:カリウム比が低下した。
副腎皮質機能低下症の猫は認められなかった。
統計学的な分析によって、これらの疾患は罹患グループにおいて、明らかに多いあるいは少ない疾患はなかったが、ナトリウム:カリウム比が低下した猫のかなり高い割合(P = .025)で体腔内液体貯留が認められた。
血清カリウム濃度は罹患グループで明らかに(P < .0001)高かったが、2つのグループにおいて平均ナトリウム濃度に明らかな違いはなかった。

結論:ナトリウム:カリウム比の低下は、副腎皮膚質機能低下症より液体貯留を伴う猫を含む他の疾患に罹患している猫で頻繁に起こった。この生化学異常を伴う猫を評価する時、これらの所見を考慮すべきである。(Dr.Kawano訳)
■猫の毒性好中球:臨床、臨床病理特性、疾患罹患率、結果-遡及症例コントロール研究
Toxic neutrophils in cats: clinical and clinicopathologic features, and disease prevalence and outcome--a retrospective case control study
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):20-31.
Gilad Segev, Eyal Klement, Itamar Aroch

毒性好中球は、ロマノフスキー染色血液スメアで種々の核、細胞質異常を呈し、炎症や感染に関与する。ここで報告されたこの遡及研究の目的は、猫の毒性好中球と臨床病理特性、疾患、予後の関連を調査することだった。毒性好中球を伴う猫(n=150)を陰性コントロール猫(n=150)と比較した。フィッシャー、独立T-検定、ノンパラメトリックマン-ホイットニー検定、二乗カイ検定などで統計分析した。毒性好中球の猫は、発熱、黄疸、嘔吐、下痢、沈うつ、脱水、虚弱、悪液質、白血球増加、好中球増加、左方移動、好中球減少、貧血、低カリウム血症、低カルシウム血症の有意に高い罹患率(P<.05)を示した。それらの猫で、感染(ウイルスと細菌)と代謝障害のとき、ショック、敗血症、汎白血球減少症、腹膜炎、肺炎、上部気道疾患の罹患率は有意に高かった。コントロール猫は、ネコ喘息、アレルギー性、特発性、脈管の疾患の罹患率が有意に高かった。入院期間と治療コストは毒性好中球の猫の方が有意に高かった(P<.001)。毒性好中球の猫の53%は白血球数が正常、47%は好中球数が正常で、一方43%の猫で異常や左方移動は見られず、毒性好中球は炎症または感染の血液学的所見のみだった。結論として毒性好中球は確実な臨床病理異常に関連することがわかり、存在するときは診断の補助、入院期間や費用の見積もりをしやすくするかもしれない。毒性好中球のための血液スメアの評価は有益な臨床情報を提供した。(Sato訳)
■尿細管性アシドーシス
Renal Tubular Acidosis
Compend Contin Educ Pract Vet 27[7]:513-529 Jul'05 Review Article 40 Refs
Laura Riordan, DVM and Michael Schaer, DVM, DACVIM, DACVECC

この文献は、獣医療患者の尿細管アシドーシス(RTA)に関する病態生理学、原因、診断、治療、進行について述べる。RTAは正常な糸球体ろ過率存在下の非アニオンギャップ代謝性アシドーシスとして分類される。近位RTAは近位尿細管の重炭酸イオン吸収欠乏により起こり、遠位RTAは遠位尿細管の重炭酸イオン産生低下により起こる。RTAは一時的、または恒久的で他の疾患により二次的に起こりえる。治療は、注意深く酸‐塩基および電解質モニタリングをしながら重炭酸イオン補給、そして潜在する原因の治療などである。(Sato訳)
■重態患者の低カルシウム血症
Hypocalcemia in a Critically Ill Patient
J Vet Emerg Crit Care 15[2]:136-142 Jun'05 Case Report 32 Refs
Tamara B. Wills, DVM, Andrea A. Bohn, DVM, PhD, DACVP *; and Linda G. Martin, DVM, MS, DACVECC

目的:危機的敗血症犬の臨床的低カルシウム血症症例を報告する

症例概要:12歳避妊済みメスのイングリッシュシープドックが、片側椎弓切除術後5日目に敗血症性ショックを呈した。ストレプトコッカス・キャニスが切開部位から培養された。術後7日目筋肉振戦が認められ、その後血清カルシウムイオン濃度低下が分かり、それに対する処置をした。敗血症と低カルシウム血症のため集中モニタリング、輸液療法、抗生物質投与を継続したが、術後2週間目に安楽死した。
提供された新しい、または特異情報:人で特に敗血症、膵炎、横紋筋融解など重態患者で、血清カルシウム濃度低下は一般的所見である。獣医療患者で、敗血症または連鎖球菌感染は、低カルシウム血症を起こす要因としては考えにくい。血清カルシウムイオン濃度低下が考えられるメカニズムは、カルシウムイオンの細胞内蓄積、上皮小体の感受性や機能の変化、ビタミンD濃度または活性の変化、カルシウムの腎臓喪失、重度低マグネシウム血症である。炎症誘発性サイトカインやカルシトニンも危機的疾患の低カルシウムイオンに寄与すると報告されている。多くの獣医師は、重症患者の評価に血清カルシウムイオン濃度の代わりに総カルシウム濃度を信頼し、低カルシウム血症発症を見逃しているかもしれない。血清カルシウムイオン濃度は、危機的疾患の獣医療患者の評価で総カルシウム濃度以上に推奨される。(Sato訳)
■犬の骨髄壊死:34症例(1996-2004)
Bone Marrow Necrosis in Dogs: 34 Cases (1996-2004)
J Am Vet Med Assoc 227[2]:263-267 Jul 15'05 Retrospective Study 21 Refs
Douglas J. Weiss, DVM, PhD, DACVP

目的:犬の骨髄壊死の発生率、考えられる原因、臨床および臨床病理特性を確認する

構成:回顧的研究

動物:34頭の飼育犬

方法:1996年から2004年に実施した骨髄標本の細胞学的検査報告を再検討した。壊死の存在、基質の破壊、食作用マクロファージ、個々の細胞壊死、または骨髄線維症を示す全ての報告をさらに評価した。

結果:研究期間中に実施した骨部位評価の報告609のうち34(5.6%)は骨髄壊死の所見があった。9頭は関係する疾患、または薬物、毒素暴露の証拠はなく、25頭は関係する疾患、または薬物暴露があった。特発性骨髄壊死の全9頭は貧血(平均Hct、14%)であったが、3頭のみ好中球減少で3頭は血小板減少だった。全9頭は骨髄線維症だった。関係する疾患、または薬物暴露を受けた犬25頭中、14頭(56%)のみ貧血(平均Hct、33%)を示した。また14頭(56%)は好中球減少、18頭(72%)は血小板減少だった。10頭(40%)のみ骨髄線維症だった。

結論と臨床関連:結果は骨髄壊死が血液疾患を持つ犬で一般的かもしれないと示唆する。多くの犬で、骨髄壊死は基礎疾患、または薬物暴露に関与したが、特発性骨髄壊死も認められた。骨髄壊死の可能性を疑うべき疾患は、敗血症、リンパ肉腫、全身性エリテマトーデスで、薬剤暴露に関しては化学療法、フェノバルビタール、カルプロフェン、メトロニダゾール、ミトタンである。(Sato訳)
■犬のD血液型システムにおける表現型と遺伝子頻度分布の種差
Breed differences in the phenotype and gene frequencies in canine D blood group system.
J Vet Med Sci. 1994 Aug;56(4):623-6.
Ejima H, Nomura K, Bull RW.

多くの異なった品種の犬の血液型のDシステムを3,191頭の犬で研究した。 Dシステムの表現型と遺伝子頻度分布を測定した。 これらの頻度は日本固有の品類の間でかなり異なった。 D1表現型の頻度は日本以外の品種より日本固有の品種で高かった。逆に、日本以外の種類に、D2表現型が一般的であった。 日本の雑種として記述された犬のDシステム頻度は日本固有の品種と日本以外の品種の中間であった。 最もおもしろい調査結果の1つは柴犬だけが日本固有であったが、アフガンハウンドのD1遺伝子の頻度(0.3333)が柴犬と同じであったことである。別の日本の品種は土佐犬で、そのD1遺伝子頻度は0.063で日本以外の品種であるマルチーズ(0.097)より低かった。(Dr.Kawano訳)
■健康、疾患時のアルブミン:低アルブミン血症の原因と治療
Albumin in Health and Disease: Causes and Treatment of Hypoalbuminemia
Compend Contin Educ Pract Vet 26[12]:940-949 Dec'04 Review Article 35 Refs
Juliene L. Throop, VMD; Marie E. Kerl, DVM, DACVIM, DACVECC; Leah A. Cohn, DVM, PhD, DACVIM

低アルブミン血症は、産生低下、喪失の増加、再分布、またはアルブミンの希釈により起こる可能性がある。中程度から重度低アルブミン血症の患畜で、液体貯留、血漿容積の低下、血栓塞栓症を起こすかもしれない。低アルブミン血症の原因となる基礎疾患経過の治療が、低アルブミン血症患畜の管理で最も重要な要素を占める。しかし、栄養サポート、薬物投与の調整、血栓塞栓症の予防、適切なコロイド浸透圧の維持も同じく重要である。(Sato訳)
■危機的疾患のネコで高ナトリウム血症:病態生理学
Hypernatremia in Critically Ill Cats: Pathophysiology
Compend Contin Educ Pract Vet 26[6]:422-433 Jun'04 Review Article 22 Refs
Kristen Temo, DVM; Elke Rudloff, DVM, DACVECC; Marla Lichtenberger, DVM,

重篤なネコで高ナトリウム血症は、予期しない合併症としてよく見られる。集中治療患者で、不適切な水分摂取、腎不全、頭部外傷、呼吸疾患、感染、ホルモン失調、真性糖尿病や薬剤療法による浸透圧利尿により致死的状況となりえる。急速な細胞内水分喪失から、高ナトリウム血症は急性に、そして主に中枢神経系に影響を及ぼし、嗜眠、発作、昏睡、死亡を引き起こす。この文献は危機的疾患のネコで高ナトリウム血症の病態生理学を再検討する。(Sato訳)
■偏心性赤血球症の犬の回顧的調査:60例
A Retrospective Study of 60 Cases of Eccentrocytosis in the Dog
Vet Clin Pathol 34[3]:224-231 Fall'05 Retrospective Study 68 Refs
Marco Caldin, Erika Carli, Tommaso Furlanello, Laia Solano-Gallego, Silvia Tasca, Carlo Patron, George Lubas

背景:偏心性赤血球は末梢血塗抹で見られる、細胞の片側にヘモグロビンが偏移した赤血球である。赤血球膜と細胞骨格に限局するこの異常は、酸化ダメージにより誘発される。偏心性赤血球は犬で希に報告されており、玉ねぎとにんにく摂取および酸化剤投与に関与する。

目的:この研究の目的は、犬の偏心性赤血球症の発生と程度、偏心性赤血球に関与する疾患と障害を述べることである。

方法:2.5年間に来院した全ての犬症例の詳細な病歴、身体検査結果、CBC、生化学と凝固プロフィール、尿検査結果を調査した。偏心性赤血球が見られたら1+(少)から4+(多)にグレード分けした。偏心性赤血球症の程度は、貧血と網状赤血球増加で比較した。

結果:偏心性赤血球は4251頭中60頭(0.4%)の血液スメアーで認め、そのうち40頭(66.6%)は軽度から中程度の貧血だった。偏心性赤血球症は薬剤投与の16頭(26.6%)、玉ねぎおよびにんにく摂取を疑う11頭(18.3%)、ビタミンK拮抗剤中毒の8頭(13.3%)、ケトアシドーシス性糖尿病の7頭(11.6%)、T-細胞リンパ腫の5頭(8.3%)、重度感染の4頭(6.6%)、代償性真性糖尿病の1頭(1.6%)、その他8頭(13.3%)で見つかった。ウィペット、ボクサー、イングリッシュセッターなどの犬種と若犬が多く見られた。

結論:我々は偏心性赤血球と真性糖尿病、T-細胞リンパ腫、ビタミンK拮抗剤中毒の関与を初めて述べる。偏心性赤血球の重要性は、酸化過程の徴候である可能性があるので過小評価するべきではない。(Sato訳)
■好酸球増加症の調査と可能性のある治療
Investigation of hypereosinophilia and potential treatments.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2003 Nov;33(6):1359-78, viii.
Lilliehook I, Tvedten H.

好酸球増加症は好酸球の過剰で、犬と猫において好酸球5x10(9)/L以上 (>5000/microL)と定義されています。より高い好酸性数あるいは好酸球増加症に罹患しやすい傾向がある犬種はロットワイラー、ジャーマンシェパード、シベリアンハスキー、アラスカマラミュートそしてキャバリア・キングチャールズ・スパニエルが含まれます。犬の好酸球増加症の2つのより一般的な原因は肺好酸球増加症候群(PIE)と胃腸疾患である。最も高い好酸性数は肺炎もしくはPIEの犬で起こりえます。猫の好酸球増多症の最も一般的な原因はノミアレルギーです。 猫で最も重度な好酸球増多症はノミアレルギー、猫喘息、および好酸球性肉芽腫で起こります。喘息に罹患した人の患者における革新的な最近の治療で、好酸性数を減少させるのに成功していますが、兆候を減少させることは無く、困惑し期待はずれでした。多くの好酸球増加症における好酸性の役割は謎です。(Dr.Kawano訳)
■通常のイヌの血漿生化学検査に対する異なる抗凝固剤の影響
The effects of different anticoagulants on routine canine plasma biochemistry.
Vet J 167[3]:294-301 2004 May
Ceron JJ, Martinez-Subiela S, Hennemann C, Tecles F

イヌの生化学検査結果に対するヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、クエン酸ナトリウム、シュウ酸フルオライド/カリウムの影響を研究し、血清と比較した。10頭の明らかに健康なイヌから採血し、核抗凝固剤を含む異なるチューブにいれ検査した。血清とヘパリン化血漿のアルブミン、アセチルコリンエステラーゼ、カルシウムイオン、カリウムに違いが認められた。ほとんどの代謝物と酵素にいかなる変化も見られなかったが、EDTAを使用したとき、電解質、アルカリフォスファターゼ、アセチルコリンエステラーゼ、胆汁酸、フルクトサミン、アルブミンの有意な低下が認められた。クエン酸ナトリウムは、ほとんどの代謝物や酵素を10-15%低下させ、おそらくサンプル希釈の影響と思われた。シュウ酸フルオライド/カリウムは、生化学パラメーターのいくつかを変化させるかもしれない溶血を引き起こした。(Sato訳)
■高カルシウム血症の二ナトリウムパミドロン酸処置
Pamidronate Disodium Treatment of Hypercalcemia
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:20 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Pesillo SA, Khan SA, Rozanski EA, et al. J Vet Emerg Crit Care 2002;12:177-181

イントロダクション

背景:ビタミンD類似物質は、アメリカで15-20年間殺鼠剤として使用されている。イヌネコによる偶発的摂取は、一般に高カルシウム血症を引き起こす。ここ最近、ヒトで乾癬のような上皮化障害のコントロールに、ビタミンD類似物質が局所的に使用されている。カルシポトリエンは、ビタミンD類似物質でヒトの局所薬剤として入手できる。ラットでの毒性研究では、広い安全マージンを持つとされているが、イヌの安全マージンは大きくないのかもしれない。

目的:この報告の目的は、イヌのカルシポトリエンによる高カルシウム血症のパミドロン酸療法を述べることである。

サマリー

症例報告:3歳避妊済みメスのボクサーが、多尿、多飲、嘔吐、嗜眠、食欲不振で来院した。4日前、局所抗乾癬ビタミンD3類似物質のカルシポトリエンを100g摂取していた。カルシポトリエン摂取後36時間の動物病院来院時検査所見は、重度高カルシウム血症(16.3mg/dl)、中程度高燐血症(7.2mg/dl)だった。病院で、無菌生食、フロセミド、デキサメサゾン、シメチジンの投与を受けた。また、二ホスホン酸の二ナトリウムパミドロン酸を一回投与した。補助療法は継続した。3日目、動物病院でイヌの血清イオン化カルシウム濃度は正常だった。その日イヌは退院し、プレドニゾンの漸減投与を行った。10ヵ月後、電話での調査により正常との報告を受けた。

結論:他のカルシウム排尿促進療法と共にパミドロン酸併用は、カルシポトリエン誘発高カルシウム血症の安全で効果的な治療である。

臨床への影響

エチドロン酸、アレンドロン酸、パミドロン酸は二ホスホン酸である。二ホスホン酸は、破骨細胞活性、1,25ジヒドロキシビタミンD3産生、骨再吸収を抑制する。この報告で、もし、どれくらいパミドロン酸の追加が、イヌの高カルシウム血症の解消をもたらすかどうかは不明である。カルシポトリエンの摂取は、1週間高カルシウム血症を起こす重要なものとなっているかも知れず、自発的解消が起こりえたり、他のカルシウム排尿促進療法(生食、フロセミド、デキサメサゾン、プレドニゾン)が高カルシウム血症の解消に重要なものとなっていたりするのかもしれない。
特にパミドロン酸は、高カルシウム血症の従来のカルシウム排尿促進療法と比較しても効果である。胃腸管からの吸収が悪く、胃を刺激し、ゆえに経口剤として使用できないため、院内投与も必要である。その直接、間接的なコストを正当化するため、より高カルシウム血症のパミドロン酸療法の利点に対するより客観的な証拠が必要である。(Sato訳)
■ゴールデン・レトリバーにおける遺伝的スペクトリン欠乏症
Hereditary Spectrin Deficiency in Golden Retriever Dogs
J Vet Intern Med 19[2]:187-192 Mar-Apr'05 Experimental Study 26 Refs
Robbert J. Slappendel, Rob van Zwieten, Martin van Leeuwen, and Chris T W. M. Schneijdenberg

赤血球浸透圧脆弱性(OF)を増大させるスペクトリン欠乏症は、北欧系のヒトにおける最も一般的な先天性溶血性貧血である、遺伝的球状赤血球症の特徴です。溶血性貧血から回復したものの、OFがしつこく増大したままだった5頭のゴールデン・レトリバーの成犬で、ラジオイムノアッセイにより、赤血球スペクトリン濃度が、正常の50-65%であったことが明らかとなりました。系図の発端に関連した19頭のゴールデン・レトリバーの見かけ上、健康な家系のうち10頭において、OFはまた増大し、スペクトリン濃度は減少しました(60-73%)。系図解析で、常染色体優性遺伝であることが明らかになりました。さらに、血液疾患のなかった無作為に選択したゴールデン・レトリバー134頭のうち、23頭(17%)において、OFが増大しました。
これらのゴールデン・レトリバーにおいて、OF増大の5頭においてスペクトリン濃度が減少し、正常OFの6頭では、スペクトリン濃度は基準範囲内となり、この個体群において、スペクトリン欠乏症とOF増大は高く関連する(P<.002)ということを示唆しました。これらの患者をオランダのゴールデン・レトリバー個体群の代表的サンプルと考慮した場合、スペクトリン欠損症はオランダのゴールデン・レトリバーの11.2-24.6%に発生すると考えられます(信頼値=0.95)。血液塗抹において、球状赤血球は免疫介在性貧血の犬に唯一認められました。電子顕微鏡で走査すると、スペクトリン欠損のゴールデン・レトリバーからの血液は、新鮮に固定した際、わずかに円鋸歯状を、呈しますが、24時間培養後、たくさんの棘状球状赤血球を現します。
我々は、潜在性常染色体優性スペクトリン欠損症が犬に発生し、オランダのゴールデン・レトリバーにおいては、頻発するということを結論付けます。ゴールデン・レトリバーにおけるスペクトリン欠損症が、ヒトと同様に、溶血性貧血を引き起こすかどうかは不明です。(Dr.K訳)
■ブドウ膜炎を呈した犬の真性多血症
Polycythemia vera in a dog presenting with uveitis.
J Am Anim Hosp Assoc. 2003 Jul-Aug;39(4):355-60.
Gray HE, Weigand CM, Cottrill NB, Willis AM, Morgan RV.

2歳、去勢雄、雑種犬が1ヵ月のレッドアイと間欠的嘔吐そして2週間の多飲多尿を呈した。両側性前ブドウ膜炎と左眼におけるアクティブな脈絡網膜炎が眼科検査で見つけられた。 完全血球計算で増加した赤血球細胞集団の所見が示された。胸部と腹部レントゲン検査、腹部超音波検査、そしてドップラー心エコー検査では目立った所見はなかった。血清エリスロポイエチン濃度は低く、真性多血症の診断に一致した。瀉血と経口ヒドロキシウレアによる治療に続いてすべての全身性そして眼の兆候は解決し寛解に達した。(Dr.Kawano訳)
■イヌの血栓塞栓疾患の診断に対する血漿D-二量体
Plasma D-dimer for the diagnosis of thromboembolic disorders in dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 33[6]:1419-35 2003 Nov 31 Refs
Stokol T

フィブリンのD-領域末端にXIIIa因子が架橋結合する時、血栓形成中にD-二量体が作られる。D-二量体エピトープは、血栓がプラスミンにより溶解されるとき暴露される。このようにD-二量体は、トロンビンとプラスミンの活性化を表し、線維素溶解に特異的である。D-二量体濃度は、DICや他の血栓塞栓症のイヌで増加するが、D-二量体は生理学的、病理学的線維素溶解の指標であるため、整形外科、腫瘍、内部出血などの線維素溶解が関与する状態でも値が高くなる。DICの診断の補助的検査として使用可能であるが、その目的の単独検査として推奨できない。D-二量体は、イヌの肺血栓塞栓症を検出する有効な検査所検査としての可能性を持つ。獣医療で、治療や患者のケアを臨床的に決断する補助として、この検査の適切な使用を判定するため、更なる研究が必要である。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルの巨大血小板障害
Giant platelet disorder in the Cavalier King Charles Spaniel.
Exp Hematol 32[4]:344-50 2004 Apr
Cowan SM, Bartges JW, Gompf RE, Hayes JR, Moyers TD, Snider CC, Gerard DA, Craft RM, Muenchen RA, Carroll RC

目的:キャバリアキングチャールズスパニエル(キャバリア)の血小板の臨床、機能、形態特性を述べる

素材と方法:69頭の臨床上正常なキャバリアから血液を採取し、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)とクエン酸で抗凝固処置を施した。自動、手動で血小板数を計測した。ADP(2、4、8、16、32μM)に対する血小板凝集比率を判定した。血小板内部形態、密顆粒分布を検査するのに電子顕微鏡検査を実施した。心臓病専門医は、心雑音の質を記録した。

結果:キャバリアの51.43%(36/69)に血小板減少(<100000/μL)が見られた。33.33%(22/69)に巨大血小板(>3ミクロン)が見られた。平均手動血小板数は118770/μLだった。血小板計測の手動(EDTA血)と自動(EDTAとクエン酸血)方法は相関した。心雑音は38%(26/69)に存在した。罹患犬と心雑音、徴候、毛色間に関連はなかった。キャバリアよりもコントロール犬で平均血小板凝集比率は有意に高かった(79%vs38%、p=0.001)。ADPに対する反応は、血小板減少、巨大血小板、心雑音、その原因のどんな組み合わせにも影響されなかった。正常、巨大血小板の血小板電子顕微鏡検査で、内部形態は正常だった。

結論:良性遺伝巨大血小板障害は、キングチャールズスパニエルの約50%に見られる。血小板減少、巨大血小板、ADPに対する反応で血小板凝集の減少特性を持つ。血小板超微細構造は正常である。クエン酸、EDTA血も正確な血小板数を計測できる。僧帽弁心内膜症との関連、血小板糖蛋白構造を判定する更なる研究が示される。キャバリアは、遺伝巨大血小板障害のモデルに有効かもしれない。(Sato訳)
■抗凝固中毒のイヌの診断で、ビタミンK欠如、または拮抗により産生されるタンパク検査の使用
Use of a Test for Proteins Induced by Vitamin K Absence or Antagonism in Diagnosis of Anticoagulant Poisoning in Dogs: 325 Cases (1987-1997)
J Am Vet Med Assoc 222[2]:194-198 Jan 15'03 Retrospective Study 14 Refs
* Michael E. Mount, DVM, PhD, DABVT; Brian U. Kim, DVM, MPVM, DACVPM; Philip H. Kass, DVM, PhD, DACVPM

目的:抗凝固中毒犬の判定で、ビタミンK欠如または拮抗時産生タンパク(PIVKA)試験を、ワンステージプロトロンビン時間(OSPT)と活性部分トロンボプラスチン時間(APTT)検査と比較して有用性を判定すること

構成:回顧的研究

動物:325頭の犬

手順:抗凝固中毒、肝疾患、播種性血管内凝固、他の血管関連疾患、免疫介在性疾患、または他の慢性、急性疾患の犬で、PIVKA、OSPT、APTT測定結果の比較を行った。平均、四分位値、分布域値を判定した。

結果:抗凝固中毒の診断に対し、150秒臨界値でのPIVKA試験は、>98%特異性と>90%の感受性で、300秒臨界値では、>99%特異性、>79%感受性だった。診断群中PIVKA値の比較は、抗凝固中毒の犬と全て他の群の犬の間の有意差を示した。

結論と臨床関連:150秒臨界値のPIVKA試験は、他の凝固障害と抗凝固中毒を識別するのに診断上有効である。重度肝疾患は偽陽性を起こしえる。ビタミンKの投与または早期評価(抗凝固性物質摂取2.3時間以内)は偽陰性結果を起こすかもしれない。>150秒のPIVKA試験結果と抗凝固中毒の臨床症状を持つ犬は、高い試験感受性と特異性により抗凝固中毒があると確信を持って考慮できる。(Sato訳)
■低蛋白血症の犬における、大動脈血栓溶解のための、遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲン活性剤の使用
Use Of Recombinant Tissue-Plasminogen Activator For Aortic Thrombolysis In A Hypoproteinemic Dog
J Am Vet Med Assoc 212[4]:539-543 Feb 15'98 Case Report 29 Refs
Amy C. Clare, DVM and Brian J. Kraje, DVM

5.25歳のオスのヨークシャー・テリアで、蛋白漏出性腸疾患に続発した、大動脈遠位部の血栓症が疑われ、評価を行いました。後肢麻痺は明白で、四肢は低体温、そして股動脈拍は触知されませんでした。ドップラー超音波検査により、大動脈末端部における、血栓が見つかりました。アルブミンと抗トロンビンⅢの喪失を導いた腸疾患が、この犬における、凝固亢進の疑わしい原因でした。全身性の線溶現象の臨床所見を誘発することなく、大動脈の末端部を再疎通させる為、遺伝子組み換え型組織プラスミノーゲン活性剤であるアルテプラーゼを使いました。アルテプラーゼは、プラスミノーゲンのフィブリン特異的活性剤で、従来のストレプトキナーゼ療法より、有効で安全と思われます。人での血栓塞栓症における使用に関する最近の情報では、アルテプラーゼのボーラス投与が、より早期に動脈開通性を導き、出血のリスクを減少させるということを示唆しています。(Dr.K訳)
■犬におけるナトリウム-カリウム比の臨床意義
The clinical implication of sodium-potassium ratios in dogs.
J Vet Sci 1[1]:61-5 2000 Jun
Pak SI

疾患の診断に対する電解質の有用性で、多くの証拠はありますが、特異的疾患に関して血清ナトリウムと血清カリウムの直接関連に関する証拠は非常に限られております。この研究は、犬における、疾患とNa:K比との間の関連を検討するために行いました。1997年1月から1999年12月までの間で、Na:K比が27以下となった全部で39症例を、ソウル大学校、獣医大学病院の医療記録から検索しました。10頭(25.6%)は、腎臓または泌尿器疾患、そして6頭(15.4%)は、寄生虫疾患でした。その他、深部膿皮症、膝蓋骨脱臼グレードIII、細菌性肺炎、糖尿病、膵炎、そして子宮蓄膿症を含める種々雑多な疾患がありました。
Na:K比は、寄生虫疾患より腎不全の犬で、有意に低くなりました(P=0.0735)。Na:K比<27の基準について、27頭の犬(69.2%)は、高カリウム血症であったのに対し、13頭の犬(33.3%)は、低ナトリウム血症でした。20から24のNa:K比であった13頭のうち、6頭は腎臓、または尿路疾患として、2頭は糖尿病、2頭は寄生虫疾患として診断されておりました。9頭の犬のNa:K比は、<20で、腎不全がもっとも多い罹患率でした(55.6%)。血清Na:K比は、血清ナトリウム濃度( gamma=0.4703)よりも血清カリウム濃度( gamma= -0.8710)とより密接に関係しておりました。糖尿病の2頭の犬は、正常ナトリウムに対し高カリウム血症の電解質パターンを呈しておりました。副腎皮質機能低下症の診断に関するNa:K比の有用性を判定する為、また膝蓋骨脱臼と電解質不均衡の関連を確証する為には、更なる研究が必要とされます。(Dr.K訳)
■高ナトリウム血症
Hypernatremia.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 19[2]:231-40 1989 Mar REVIEW ARTICLE 30 Refs
Hardy RM
Department of Small Animal Clinical Sciences, University of Minnesota College of Veterinary Medicine, St. Paul, MN.

高ナトリウム血症は、生命を危うくする可能性のある電解質異常です。この問題は、殆どしばしば、動物からの水の喪失により起こりますが、稀な症例では、食塩の過剰により起こります。高ナトリウム血症に陥りやすい重要な病態には、下痢、嘔吐、熱射病、発熱、水摂取不足、過剰な利尿剤使用、腎疾患、そして下垂体性尿崩症などがあります。もし、動物がいつでも飲水できる状況ならば、この状況に展開するのは稀です。臨床徴候は、中枢神経系障害と関連し、発作や昏睡へと発展し得ます。
診断は、血清ナトリウム濃度に基づきます;170mEq/L以上なら治療を開始するべきです。治療は患者の容量状況と、高ナトリウム血症の考えられる原因に関する情報を基に行います。一般には、蒸留水や他の低張輸液で5%にしたデキストロースを静脈内にゆっくり投与します。投与速度は、水不足量が48から72時間かけて置換されるよう調節するべきです。高ナトリウム血症の急速すぎる補正は、動物の悪化と脳浮腫を導く可能性があります。食塩中毒の症例では、肺水腫を避ける為、緩徐な水置換に加えて、利尿剤を投与しなければなりません。(Dr.K訳)
■医原性のマグネシウム過剰投与;2症例
Iatrogenic magnesium overdose: 2 case reports
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care
Volume 14 Issue 2 Page 115 - June 2004

目的:高マグネシウム血症の臨床兆候と治療、医原性電解質毒性を起こしえる薬物の誤用に関する記述
要約:我々は医原性静脈内マグネシウム過剰投与の2症例を報告する。2頭とも嘔吐、低血圧、徐脈、弛緩性麻痺、重篤な精神虚弱など重度の心臓血管系、神経学的兆候を呈していた。診断は血清イオン化マグネシウム濃度をもとに下した(3.47mmol/L;基準範囲:0.43-0.58 mmol/L 症例1 ;4.64 mmol/L:基準範囲:0.42-0.55 mmol/L 症例2)。
利尿を目的に0.9%生理食塩水およびグルコン酸カルシウム溶液の静脈内投与により治療した。24時間以内に、血清マグネシウム濃度の正常化とともに心臓血管系および神経学的兆候も改善した。2頭とも合併症を併発することなく退院した。2頭とも危機的な病状のために入院し、低マグネシウム血症を呈していたため硫酸マグネシウムの静脈内投与による治療を受けた。高マグネシウム血症の原因は、投与量の計算間違いによる硫酸マグネシウム溶液の誤投与であった。特に複数回の静脈内投与を受ける危機的な患者においては、間違いやすい薬物表示や測定値の様々な単位によって計算間違いを起こしうる。

提供された新しい情報:今回の報告は獣医学領域において医原性のマグネシウム過剰投与に関する初めての報告である。これら2症例は、迅速な認識と支持療法により予後は良好であった。(Dr.Kawano訳)
■高カルシウム血症のネコの上皮小体ホルモン関連タンパク
Parathyroid Hormone-Related Protein in Cats with Hypercalcemia
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:17-18 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Bolliger AP, Graham PA, Richard V, et al. Vet Clin Pathol 2002;31:3-8

イントロダクション

背景:悪性腫瘍の高カルシウム血症は、イヌよりネコであまり見られない。この症候群の病因は腫瘍の種類によって変化するが、上皮小体ホルモン関連タンパク(PTHrP)の産生は、ヒトやイヌのある種腫瘍で起こる高カルシウム血症の一般的な介在物質である。腫瘍組織からPTHrPの分泌は、破骨細胞の骨吸収やカルシウムの腎尿細管再吸収を増加させ、二次的な高カルシウム血症を起こす。リンパの腫瘍、扁平上皮癌、他の癌は、ネコの悪性腫瘍による高カルシウム血症の主要な原因である。

目的:この研究の目的は、高カルシウム血症のネコの血清、または血漿PTHrP濃度を判定し、腫瘍の存在とPTHrP濃度の増加の関係を調査することだった。
サマリー

方法:内分泌診断検査所で、正常以上(1.4mmol/l以上)のイオン化カルシウム(iCa)濃度を認めた322頭のネコのサンプルをこの回顧的研究で評価した。上皮小体ホルモン(PTH)、PTHrP、iCaの血清、または血漿濃度をすべてのネコで測定した。
ネコを3群のうち1つに振り分けた。上皮小体非依存群は、高カルシウム血症に対し、適切に上皮小体ホルモン濃度が抑制されていると考えた(すなわちPTHの正常範囲中間以下)。正常範囲正常中間から上限のPTH濃度は、あいまいな群とした。正常以上のPTH濃度を示す高カルシウム血症のネコは、原発性上皮小体機能亢進症に一致する上皮小体依存群と考えた。

結果:ネコは、82%が上皮小体非依存性、10%があいまい、8%が上皮小体依存性だった。31頭は検出可能な、または上昇したPTHrP濃度を示し、そのうち28頭が上皮小体非依存性、3頭があいまいな群に分類された。
PTHrPが上昇した7頭で、追加の臨床情報を収集した。研究基準にもかかわらず、それらのうち2頭のiCa濃度が上昇ではなく正常高値だったが、総カルシウム濃度は、過去から上昇していた。それら全7頭で、5頭は種々の癌、1頭はリンパ腫、1頭は上皮内癌を併発した多病巣性腺腫性甲状腺過形成などの悪性腫瘍を検出した。PTHrPに対する腫瘍の免疫組織化学染色を、6頭のカルシウムの正常なネコの肺腫瘍と一緒にPTHrP濃度の上昇した5頭の高カルシウム血症のネコに行った。高カルシウム血症の有無にかかわらず全腫瘍で、正常ネコと比べてPTHrPに対する染色が増加していた。

結論:高カルシウム血症のネコの血清PTHrP濃度測定は、ネコの悪性腫瘍による高カルシウム血症の有無を判定する補助となる。ネコの悪性腫瘍の高カルシウム血症の診断に、免疫組織化学検査は十分ではない。

臨床への影響
高カルシウム血症のネコを評価するとき、血清PTHrP濃度の測定は有効である。PTHrP上昇は、悪性腫瘍の高カルシウム血症の診断を支持するが、この研究の構成が回顧的なので、PTHrPの上昇した多くの高カルシウム血症のネコの腫瘍の存在を確認しなかった。他の種の様にネコで、高カルシウム血症の原因が多くの要素からなり、血清PTHrP濃度が全ての症例で見つかるわけではないので、腫瘍の証拠を見つけるための高カルシウム血症のネコを完全に評価することは非常に重要なままである。特に肺の癌は、研究した7頭の少数群で、高カルシウム血症に関した多く認められた腫瘍だった。PTHrPの中部領域に対する抗体を使用した免疫組織化学検査は、ネコの悪性腫瘍の高カルシウム血症の診断に特異的である。(Sato訳)
■犬と猫における赤血球増多症:診断と管理
Erythrocytosis in Dogs and Cats: Diagnosis and Management
Compend Contin Educ Pract Vet 26[2]:104-118 Feb'04 Review Article 63 Refs
E. Kelly Nitsche, DVM, DABVP (Canine/Feline)

犬と猫の赤血球増多症は、さまざまな原因で起こります。相対的赤血球増多症は、正常赤血球(RBC)質量と関連しますが、絶対的赤血球増多症(原発性と二次性)は、RBCs数の増加で特徴付けられます。原発性赤血球増多症は、犬と猫の稀な骨髄増殖性疾患で、人における真性赤血球増加症にいくぶん似ております。二次性赤血球増多症は、しばしば、腎腫瘍と関連しますが、その他の腫瘍、低酸素の心肺疾患、高高度な環境、副腎皮質機能亢進症、そして重度な肥満とも関連すると考えられます。エリスロポイエチン(EPO)の調節と濃度における異常は、赤血球増多症の絶対型と関連します。動物の血清EPO値の測定は有用ですが、犬と猫に関する種特異的解析の不足が、現在利用可能な検査の臨床有用限界と思われます。原発性赤血球増多症となった犬と猫の長期生存は、
間欠的瀉血とヒドロキシ尿素を用いた治療により達成されるでしょう。二次性赤血球増多症に対する治療の成功は、基礎疾患の鑑別と治療に従属します。(Dr.K訳)
■ネコ血液向性マイコプラズマ症(ネコヘモバルトネラ症)
Feline hemotropic mycoplasmosis (feline hemobartonellosis).
Vet Clin North Am Small Anim Pract 33[4]:773-89 2003 Jul 89 Refs
Sykes JE

血液向性マイコプラズマ(FHM)は、世界中でネコの貧血の重要な代表的原因である。過去にヘモバルトネラ種として知られ、それら病原体の16S rRNA遺伝子の塩基配列は、マイコプラズマとして分類されている。ネコで、M haemofelisとCandidatus M haemominutumの2種類がネコで認められている。後述の病原体単独は、自然感染ネコの疾患に関係していないが、FeLV感染ネコで貧血や、FeLV誘発骨髄増殖性疾患の発症を加速する原因になるかもしれない。
それら病原体の伝播様式は解き明かされていない。それにもかかわらず、それら培養不可能な病原体に対する感受性DNAベース検査の開発で、ネコ血液向性マイコプラズマの疫学と病原の理解を改善させている。FHMに一致する臨床症状や検査の異常を伴うネコは、ドキシサイクリンで治療するべきである。エンロフロキサシンは効果的な代替療法と思われる。クロスマッチング後の充填赤血球の輸血が、重度貧血のネコには必要と思われ、FHMの診断が確かで、抗生物質単独の反応が不十分ならばプレドニゾンの追加も必要と思われる。FHMのネコで、最もよくある併発感染のFeLVを検査すべきである。(Sato訳)
■アスピリン誘発性血小板機能不全と慢性肝疾患による止血障害を示すイヌでデスモプレッシンの皮下投与の効果
Effects of DDAVP administrated subcutaneously in dogs with aspirin-induced platelet dysfunction and hemostatic impairment due to chronic liver diseases.
J Vet Med Sci 65[1]:83-6 2003 Jan
Sakai M, Watari T, Miura T, Maruyama H, Koie H, Yamaya Y, Takeuchi A, Hasegawa A

アスピリン誘発性血小板機能不全と慢性肝疾患で止血障害のイヌに対するデスモプレッシン(DDAVP)の止血効果を評価するため、3μg/kgのデスモプレッシンを皮下投与した。アスピリン誘発性血小板機能不全のイヌ(n=5)で、BMBT(頬粘膜出血時間)の延長が、DDAVP投与後有意に短縮した(2.2±1.2分、P<0.05) 。慢性肝疾患のイヌ(n=4)で、DDAVP注射後、活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)は0.9-3.0秒に短縮する傾向にあり、2症例の延長したBMBTは4.2分、1.7分と短縮した。
ゆえに、それらの結果は、DDAVPがアスピリン誘発性血小板機能不全と慢性肝疾患のイヌに見られる頬粘膜出血時間の延長を短縮させることを示した。DDAVPは、止血障害のイヌに対するバイオプシーや外科手術のような侵襲性の処置において止血の助けになるかもしれない。(Sato訳)
■ダルメシアンのアセトアミノフェン中毒
Acetaminophen toxicosis in a Dalmatian.
Can Vet J 44[2]:142-4 2003 Feb
MacNaughton SM

11歳避妊済みメスのダルメシアンが、アセトアミノフェン中毒の疑いで来院した。イヌは重度に抑制された状態だった。メトヘモグロビン血症、顔面浮腫、血色素尿症は、輸液、N-アセチルシステイン、アスコルビン酸、重炭酸ナトリウムによる治療に反応した。イヌのアセトアミノフェン中毒に典型的な、肝臓のダメージに関する臨床徴候は見られなかった。(Sato訳)
■健康な犬における、血漿乳酸濃度に及ぼす採血部位、繰り返しての採血、pH、そしてPCO2の影響
Effect of sampling site, repeated sampling, pH, and PCO2 on plasma lactate concentration in healthy dogs.
Am J Vet Res 60[4]:521-4 1999 Apr
Hughes D ; Rozanski ER ; Shofer FS ; Laster LL ; Drobatz KJ

目的:麻酔のかかっていない健康な犬で、一般的に使われる採血部位からのサンプルに関する、血漿乳酸濃度の変動を特徴付けることです。

動物:60頭の健康な犬

手順:反復ラテン方格法を用いた横断的研究です。血液を得るために使った3箇所(橈側皮静脈、頚静脈、大腿部動脈)に関し、全て指示かできるよう6群のうち1群に、それぞれ犬を割り振りました(n=10)。直接電流測定を用いてサンプルのpH、PO2、PCO2、血糖、乳酸濃度を直ちに解析しました。

結果:血漿乳酸濃度のおける有意差が、橈側皮静脈(最も高い)、大腿部動脈、そして頚静脈(最も低い)からの血液サンプル間で明らかとなりました。採血部位に関係なく、最初に得たサンプルの血漿乳酸中央値は、それ以降に採血したサンプルより低値となりました。共変動が、血漿乳酸、pH、そしてPCO2の間に認められましたが、相関率は低いものでした。

結論と臨床関連:血漿乳酸濃度は、採血部位で異なりました。血漿乳酸濃度の基準範囲は、0.3から2.5mmol/Lでした。健康な犬でさまざまな部位からのサンプルと、繰り返してのサンプルに関する、血漿乳酸濃度の違いはわずかです。この基準範囲の使用は、犬における血漿乳酸濃度の臨床活用を容易にすると考えます。(Dr.K訳)
■犬における高トリグリセリド血症と発作
Hypertriglyceridemia and Seizures in Dogs
<<Comp, Oct 1996
Richard B. Ford, DVM, MS
高トリグリセリド血症は、発作病歴を持つ犬において考慮すべきです。特発性てんかんと診断されたミニチュア・シュナウザーの少数に、絶食時高トリグリセリド血症と白濁血清を認めます。抗てんかん薬の併用なしに、食事療法だけでトリグリセリド濃度減少と、発作消失に成功している患畜もいます。(Dr.K訳)
■猫の特発性高リポ蛋白血症
Companion Anim Pract 19[6]:5-9 Jun/Jul'89 15 Refs
Capt. Karen D. Brooks, DVM Eglin Air Force Base, Florida 32542
Idiopathic hyperlipoproteinemia in a cat

2才の避妊済、ペルシャ系雑種猫の症例報告です。

病歴/臨床徴候は、乳白色房水、IOP減少、そして網膜脂肪血症を伴う、片側性再発性の前ブドウ膜炎でした。;両飛節に紅斑、潰瘍化した、出血性の堅い小結節がありました。

検査所見では、脂肪血症、低密度リポ蛋白質と高密度リポ蛋白質分画の増加を伴う高コレステロール血症、そして超低密度リポ蛋白トリグリセリドの増加を伴う、高トリグリセリド血症が認められました。リポプロテインリパーゼ活性は、ヘパリン100IU/kg.IV.の注射後、4活性単位[low normal]5分でした。

皮膚生検所見では、黄色肉芽腫と、診断しました。

特発性高リポ蛋白血症と診断しました。

治療は、低脂肪、高繊維食 [Prescription Diet Feline r/d : Hill's]と、水にマグロ缶60-70g(嗜好性を考慮して)の給餌で行いました。

結果:治療を開始後10週で、脂肪血症、高コレステロール血症、トリグリセリド値と同様、眼と皮膚の病変は、完全に消散しました。消散後の数ヶ月間、r/dを給与していた間は正常でした。オーナーは、それから、もとの食事であるFancy Feast [Carnation]に戻し、その3ヵ月後に、網膜脂肪血症、皮膚病変、そして脂肪血症が再発しました。食事へのω-3脂肪酸添加で、眼の病変は改善しましたが、皮膚病変、または脂肪血症は改善しませんでした。低脂肪食に切り替えてから、4週で皮膚病変は改善しました。
■ミニチュア・シュナウザーの特発性高リポ蛋白血症
Companion Anim Pract 19[4]:33-37 Apr/May'89 3 Refs
Monte Richardson, DVM Animal Medical Group, 1401 N Sepulveda Blvd, Manhattan Beach, CA 90266
Idiopathic hyperlipoproteinemia in a miniature schnauzer

10歳の避妊済、ミニチュア・シュナウザーの症例報告です。
病歴/臨床徴候は、嗜眠、食欲不振、肥満、腹部圧痛、肝肥大、左胸部領域における皮下腫瘤、虚脱、嘔吐、そしてピンク色の尿でした。
検査所見では、白血球増加、好中球増多、高蛋白血症、高グロブリン血症、網状赤血球増多症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、蛋白尿、細菌尿、そして、尿中における白血球、および赤血球の増加を認めました。
尿の細菌培養で、非溶血性Staphylococcus sp.を認めました。
レントゲン検査所見では、肥満、肝肥大、脾腫、心肥大、膀胱結石を認めました。
ニードル吸引による生検所見で、胸部腫瘤は脂肪腫でした。
診断:ミニチュア・シュナウザーの特発性高リポ蛋白血症と仮診断しました。
治療は、低脂肪、高繊維食 [Prescription Diet Canine r/d : Hill's]を1日あたり、2/3缶またはドライ1カップのみと、トリメトプリム・スルファジアジン[Tribrissen : Coopers]を、15mg/lb.PO.sid、4週間だけで行いました。膀胱結石(100%シュウ酸カルシウム) は、その後、外科的に除去しました。
結果:臨床および検査所見の改善は、1ヵ月で認められ、3ヵ月後の追加検査で、血漿トリグリセリドとコレステロール値はさらに減少しました。(Dr.K訳)
■特発性高リポ蛋白血症を持つミニチュア・シュナウザーの血漿リポ蛋白質の超遠心分離法と電気泳動の特徴
Ultracentrifugal and Electrophoretic Characteristics of the Plasma Lipoproteins of Miniature Schnauzer Dogs With Idiopathic Hyperlipoproteinemia
J Vet Intern Med 7[4]:253-260 Jul/Aug'93 Experimental study 23 Refs
Marlyn S. Whitney, DVM, PhD, G. Daniel Boon, DVM, MS, Alan H. Rebar, DVM, PhD, Jon A. Story, PhD, and Gerald D. Bottoms, PhD

ミニチュア・シュナウザーの特発性高リポ蛋白血症をより特徴付けるため、20頭のミニチュア・シュナウザー(MS)と、11頭の他の犬種(DOB)の血漿リポ蛋白質を、超遠心分離法、電気泳動そして生化学検査により評価しました。17頭のミニチュア・シュナウザーは健康;3頭は真性糖尿病でした。健康なミニチュア・シュナウザー17頭中6頭と、3頭すべての糖尿病のミニチュア・シュナウザーからの血漿は、肉眼的に脂肪血症(lipemic) でした。脂肪血症は、健康なlipemicMSと、糖尿病MSの1頭で、軽微な指標となりました。全てのDOBは、透明な血漿でした;8頭は健康で、3頭は糖尿病です。全ての健康なlipemicMSと、糖尿病lipemicMSは、過剰な超低密度リポ蛋白質に関連した高トリグリセリド血症でした。カイロミクロン血症が、6頭中4頭の健康lipemicMSと、糖尿病lipemicMS3頭全てに存在しました。超遠心分離法と電気泳動の、正常な低密度リポ蛋白質の特徴に対し、6頭中4頭の健康lipemicMSで、リポ蛋白質は不足していました。11頭のうち、4頭の健康nonlipemicMSのリポ蛋白質パターンは、超低密度リポ蛋白質の増大と、正常低密度リポ蛋白質に対するリポ蛋白質の低下に関連した、軽度な高トリグリセリド血症により特徴付けられました。糖尿病DOBのリポ蛋白質パターンは、健康なDOBと、とても良く似ていました;糖尿病lipemicMSのパターンは、明らかに白濁した健康なlipemicMSと似ていました。結論として、ミニチュア・シュナウザーの高リポ蛋白血症は、付随するカイロミクロン血症を伴う、または伴わない、超低密度リポ蛋白質の増大により、特徴付けられます。;いくつかの犬は、低密度リポ蛋白質の減少があるかもしれません。(Dr.K訳)
■猫における、アテローム性動脈硬化症と、皮膚黄色腫症に関連した高リポ蛋白血症
Vet Q 16[4]:199-202 1994 Dec
Wisselink MA ; Koeman JP ; Wensing T ; de Bruijne J ; Willemse T
Hyperlipoproteinaemia associated with atherosclerosis and cutaneous xanthomatosis in a cat.

両側性ブドウ膜炎と、多数の黄色腫(皮膚の脂肪沈着)が、3.5才の卵巣子宮切除済のペルシャ猫で認められました。猫は2年間コルチコステロイドの治療を受けておりました。検査は、一般血液化学プロファイル、胸部および腹部のレントゲン検査、複数の皮膚パンチバイオプシーの組織病理学検査、セルロース-アセテート電気泳動と、予備的な超遠心分離検査による血液脂質構成要素の解析を行いました。総脂質量は、23g/lでした。超遠心分離調査では、以上に高いVLDL(超低密度リポ蛋白質)と、LDL(低密度リポ蛋白質:悪玉)分画と、減少したHDL(高密度リポ蛋白質:善玉)分画を認めました。突然の盲目のために、オーナーの希望により猫を安楽死しました。剖検で、広範な腹部脈管、大動脈壁、そして冠状血管における、重度のアテローム性動脈硬化所見が明らかになりました。正確な病因は断定できないままではありますが、これらの異常所見は、長期のコルチコステロイドの使用により複雑化した、原発性高リポ蛋白血症で説明できるかもしれません。(Dr.K訳)
■犬の炎症性腸疾患による重度な鉄欠乏性貧血の2症例
Ristic JM et al; J Small Anim Pract 43[2]:80-3 2002 Feb; Two cases of severe iron-deficiency anaemia due to inflammatory bowel disease in the dog.

2頭の犬が嗜眠と貧血のために、紹介されて来ました。委託された獣医外科医による、予備検査で再生性の乏しい重度な貧血が明らかになりました。1つの症例の貧血は小球性で、もう1つの症例では低色素性でした。これらの所見は、慢性失血性貧血を示唆するものでした。1頭は、紹介されるまでの2週間、単発的に嘔吐は見られたものの、2症例とも、胃腸疾患の表面的な徴候はありませんでした。2頭の犬は、肉眼的に正常な大便でしたが、さらなる検査の結果、糞便の潜血が明らかになりました。開腹下で、胃腸の複数部位の全層生検を行いました。これらは、1つの症例では、十二指腸の分節型好酸球性腸炎を呈し、隣接する空腸にも認められ、もう1つの症例では、顕著な慢性リンパ球性胃炎が認められました。2つの症例は、重度な全身性疾患が胃腸疾患の臨床徴候がなくても、胃腸病から起こりえることを例証しております。(Dr.K訳)
■アビシニアンとソマリにおける貧血、脾腫、そして赤血球浸透圧脆弱性増大
Barbara Kohn, Dr med vet et al; J Am Vet Med Assoc 217[10]:1483-1491 Nov 15'00 Case Series 48 Refs; Anemia, Splenomegaly, and Increased Osmotic Fragility of Erythrocytes in Abyssinian and Somali Cats

目的:アビシニアンとソマリにおける、赤血球浸透圧脆弱化で特徴づけられる、慢性間欠性重度溶血性貧血の臨床的、臨床病理学的特徴を明らかにすることです。
計画:症例集
動物:13頭のアビシニアンと5頭のソマリ
手順:病歴、血統情報、そして一般検査結果、特殊赤血球研究、そして脾臓と肝臓標本の組織学評価を解析しました。
結果:貧血の臨床徴候が、最初に発現した年齢の範囲は、6ヵ月から5才でした。10頭の猫に、脾腫が認められました。大抵の場合、PCVは15から25%でしたが、時々5%ほどになりました。貧血は、大赤血球症と、軽度な網状赤血球増多症の特徴がありましたが、異形赤血球増多症は、認めませんでした。高グロブリン血症、リンパ球増加症、軽度の高ビリルビン血症、肝酵素活性上昇が、共通所見でした。クームステストと、感染症の検査結果は、陰性でした。罹患猫(平均浸透圧脆弱化0.66から0.78%)における、赤血球浸透圧脆弱化は、健康猫(0.48から0.58)と比較して、高い結果となりました。いかなる固有膜蛋白異常、赤血球酵素欠損、または異常血色素症も、認められませんでした。脾臓と肝臓標本の組織学評価で、骨髄外造血と、ヘモジデリン沈着症が、明らかにされました。5頭のうち4頭のソマリは、近親系統でした。
結論と臨床関連:明白な品種偏向、猫において知られている、他の貧血の原因を除外した、血統解析結果に基づいて、我々は、これらの猫における溶血性貧血は、新たな遺伝的赤血球欠陥であると考えます。免疫介在性赤血球破壊に対する、遺伝的素因は除外できませんでした。(Dr。K訳)