■後肢跛行を示す犬の股関節脱臼の診断に対し超音波検査は正確な画像検査様式である
Ultrasound is an accurate imaging modality for diagnosing hip luxation in dogs presenting with hind limb lameness
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jul 26:1-9.
doi: 10.2460/javma.24.05.0321. Online ahead of print.
Amy B Todd-Donato, Gretchen M VanDeventer, Ian R Porter, Ursula Krotscheck
目的:後肢跛行のある犬に対し、股関節脱臼の診断に対する超音波検査の精度を判定する
方法:後肢跛行を呈し、股関節脱臼が懸念される24頭の飼い犬を、2021年4月1日から2022年7月1日までのこの前向き診断精度研究に登録した。熟練の超音波検査士と、初心者の超音波検査士が、診断を知らされず、ポイントオブケア超音波装置を用いて股関節の超音波検査を実施した。また、熟練の検査士は、併発の骨盤及び股関節疾患の特徴をみるため、ハイエンドの超音波装置でより包括的超音波検査を行った。骨盤のエックス線写真は、股関節脱臼の診断に対する標準基準として用いた。
結果:股関節脱臼の超音波検査診断は高い精度を示し、初心者および熟練検査士はそれぞれ脱臼の有無の検出で84.2%から100%、脱臼の方向の診断に対し80.6%から98.1%の範囲で、かなりの検査士間の一致性だった(κ=0.722)。エックス線写真と比べ、超音波検査はほぼ完ぺきな一致性(κ=0.913)で骨関節症の有無を、かなりの様式間の一致性(κ=0.775)で大腿骨頭/骨頚および骨盤の非軸部分の骨折の有無を正確に診断した。36%の犬において、殿筋、双子筋および関節包を含む股関節安定性に貢献する軟部組織構造の傷害を確認した。
結論:超音波検査は股関節脱臼の有無の正確な診断、併発する股関節および骨盤疾患を示すことに利用できる。
臨床的関連:急性外傷の患者、エックス線検査がすぐに使えない移動診療あるいはリモート現場で外傷分類に、通常のポイントオブケアプロトコールの一部として、アプリケーションに超音波検査の使用を含める。(Sato訳)
■犬の股関節形成不全:診断画像検査
Canine Hip Dysplasia: Diagnostic Imaging.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2017;47(4):777-793.
J Ryan Butler , Jennifer Gambino
犬の股関節形成不全のスクリーニング検査として診断画像検査が主要な方法である。複数の方法が利用可能で、各々利点や欠点及び制限がある。股関節確徴エックス線写真は最も使用される方法で、変形関節症の評価やスクリーニングツールとして一番よく使用される。PennHip法のような伸延エックス線撮影法は脱臼の検出を改善し、今後の変形関節症発症の予測能力を改善する。MRIのようなより高度検査は効果で広く利用できないが、犬のスクリーニングを改善するかもしれず、軟骨の健常性の評価を改善可能である。(Sato訳)
■股関節形成不全:臨床症状と身体検査所見
Hip Dysplasia: Clinical Signs and Physical Examination Findings.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2017;47(4):769-775.
Jason Syrcle
股関節形成不全は犬の一般的な発育障害で、いろいろな程度の股関節脱臼、進行性の股関節構造のリモデリング、その後に変形関節症が発現する。若年に発現し、臨床症状は4-12ヶ月齢で初めて明らかになることが多い。股関節形成不全の仮診断は、シグナルメント、病歴、身体検査所見を基に下される。この状態の若年犬を確認するには、Ortolani検査が役立つツールである。その後の追加診断検査は診断と最適な治療の促進に優先させることができる。(Sato訳)
■若齢期恥骨結合固定術
Juvenile Pubic Symphysiodesis.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2017;47(4):851-863.
Kathleen A Linn
適切に選んだ犬において、若齢期恥骨結合固定術は、関節の適合性を改善し、股関節のゆるみを減少させ、股関節の変形性関節症の進行を戻す、あるいは防ぐことができる。
効果的に行うため、股関節が軽度から中程度のゆるみだけの若齢期に手術を行うべきである。若齢期恥骨結合固定術は厳密な治療法に先立ち行う処置として最適である。股関節形成異常のリスクが考えられる犬は、12週齢でOrtolaniテストによりスクリーニングすべきで、陽性症状の犬には、さらに画像検査とその後の手術を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の股関節全置換の成功率と合併症率に影響を与える物の評価
Evaluation of variables influencing success and complication rates in canine total hip replacement: results from the British Veterinary Orthopaedic Association Canine Hip Registry (collation of data: 2010-2012).
Language: English
Vet Rec. April 2017;0(0):.
Elisabeth R Henderson , Andrew Wills , Andrew M Torrington , Andy P Moores , David Thomson , Gareth Arthurs , Gordon Brown , Hamish R Denny , Harry W Scott , Ian Macqueen , James Dunne , Jeremy Onyett , John D Walker , John Prior , Martin R Owen , Neil Burton , Richard Whitelock , Sarah Girling , Shane Morrison , Simon Gilbert , Sorrel J Langley-Hobbs , Toby J Gemmill , Christoph K Stork , Steve Bright , Eithne Comerford , Rob Pettitt , Nick Macdonald , John F Innes
この研究の目的は、股関節全置換術(total hip replecament:THR)の合併症とオーナーが評価した結果の報告に関する変数を評価することである。
2011年9月から2012年12月の間にBritish Veterinary Orthopaedic Association-Canine
Hip Registry (BVOA-CHR)に加わったものを過去のデータ(2010年1月から2011年8月)と分けて、そして組み合わせて再評価した。オーナーからのデータ収集には結果を評価するアンケートを使用した。
外科医の報告した合併症発生率は8.2%で、オーナーが報告した合併症発生率は4.3%だった。BioMedtrix BFX cup/stemプロテーゼを使用したTHRは、BioMedtrix CFX cup/stemプロテーゼを使用したTHRよりも合併症の発生率が高かった(P=0.002);BioMedtrix CFX cup/stemプロテーゼに対し、BioMedtrix BFX cup/stemプロテーゼを使用した時の合併症は4.48倍起こりやすかった。BioMedtrix BFX cup/stemプロテーゼを使用したTHRはハイブリッドプロテーゼ(BioMedtrix BFX cup/CFX stem, BioMedtrix CFX cup/BFX stem)と比較して合併症の発生率は高かった(P=0.046);ハイブリッドプロテーゼに対し、BioMedtrix BFX cup/stemプロテーゼを使用した時の合併症は2.85倍起こりやすかった。
95%の症例において、THRの結果に対するオーナーの満足度は「非常の良い」か「良い」だった。BVOA-CHRからの合併症率は過去の研究と同様だった。
プロテーゼの種類は合併症率に関係し、BioMedtrix BFX(circa 2012)は高い短期合併症率を示すことをデータが示す。(Sato訳)
■二重移動性股関節全置換術後の結果と合併症。50症例の最低6か月にわたる臨床およびエックス線検査による経過観察
Outcome and complications after dual mobility total hip replacement. Fifty cases with a minimum of six months clinical and radiographic follow up.
Vet Comp Orthop Traumatol. July 2012;25(6):.
P Guillaumot; A Autefage; T Dembour; J-L Chancrin
目的:二重移動性寛骨臼コンポーネントを伴う犬全股関節プロテーゼの6か月以上の経過観察を通して臨床およびエックス線写真上の結果を報告する
方法:股関節形成不全あるいは外傷に対し、著者らの1人がセメント使用の片側二重移動性股関節プロテーゼ手術を行い、6か月以上の臨床およびエックス線撮影の経過観察を行った犬の結果を評価した。
結果:50頭の犬を調査した。経過観察期間は6-38か月(平均14.4ヶ月)だった。術中合併症は、寛骨臼破壊(n=1)、大転子骨折(n=1)で、2件は術中の管理に成功した。術後合併症は、寛骨臼コンポーネントの無菌的ルーズニング(n=2;、2件は外科的に修正)、インプラント敗血症(n=3;全て外植)、寛骨臼骨折(n=1;保存的管理)、大転子骨折(n=1;保存的管理)、坐骨神経無動作(n=1)だった。術後脱臼あるいは大腿骨のインプラントの無菌的ルーズニングを起こした症例はいなかった。結果は3症例が不良(3インプラント敗血症)、3症例が並(1寛骨臼コンポーネントのルーズニング、1寛骨臼骨折)、44症例(88%)が良あるいは優良だった。
臨床意義:二重移動性股関節プロテーゼを行った50頭の犬のこのシリーズにおいて、術後寛骨大腿脱臼を起こした症例はいなかった。このインプラントでのデータで認められた良好な結果を確認するため、より多くの症例と長期追跡調査を行った研究が必要である。(Sato訳)
■股関節形成不全のラブラドールレトリバーにおける運動時間、跛行の程度、股関節可動域の関係
Associations among exercise duration, lameness severity, and hip joint
range of motion in Labrador Retrievers with hip dysplasia.
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2013;242(11):1528-33.
Laura M Greene; Denis J Marcellin-Little; B Duncan X Lascelles
目的:股関節形成不全の犬の跛行の程度と股関節可動域に関係するファクターを評価することと、股関節可動域と跛行の程度の間の関係を調べること
構成:前向き症例シリーズ
動物:オーナー所有の股関節形成不全のラブラドールレトリバー60頭
方法:オーナーに犬の毎日の運動持続時間、種類(すなわち低インパクトvs高インパクト)、ライフスタイルに関するアンケートを行った。罹患股関節の可動域は、透明なプラスチックの関節角度計で測定した。形成不全の結果として股関節の亜脱臼あるいは脱臼の有無、骨盤の腹背エックス線像に対する股関節の最も大きな骨増殖体あるいは骨棘の大きさを記録した。多変量解析は跛行、股関節屈曲の喪失、股関節伸展の喪失に関係するファクター、大きな骨増殖体に関係するファクターを確認するため行った。
結果:股関節形成不全の犬の跛行の程度の減少に運動が関係した。この逆の関係の強さは、より長い運動持続時間で増加した。跛行は脱臼がない犬よりも、股関節脱臼の犬でより重症だった。股関節の進展は、1歳年を取るごとに1度低くなり、骨増殖体あるいは骨棘の大きさは3年歳を取るごとに1mm大きくなった。
結論と臨床関連:日々のより長い運動時間は、股関節形成不全の犬のより低い跛行スコアと関係した。股関節形成不全に続発する股関節脱臼の犬は、脱臼がない犬よりも高い跛行スコアを示した。(Sato訳)
■犬の動物の整形外科基金の股関節スコアとペンヒップ進展指数値の相関の評価
Evaluation of the relationship between Orthopedic Foundation for Animals' hip joint scores and PennHIP distraction index values in dogs.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(5):532-41.
Michelle Y Powers; Georga T Karbe; Thomas P Gregor; Pamela McKelvie; William T N Culp; Hilary H Fordyce; Gail K Smith
目的:犬における股関節形成異常の所見を検出する2つの判別検査方法(動物の整形外科基金(OFA)とPennHIP)を比較する
構成:診断検査評価研究
動物:1987年6月から2008年7月の間に日常的に股関節判別検査を受けている24ヶ月齢以上の犬439頭
方法:犬に鎮静をかけ、ペンヒップエックス線写真撮影を実施した(股関節を外側に広げる(HE)、外側から圧迫、肢を後方に進展像)。HEエックス線像はOFA評価に提出した。HEエックス線像のコピー、圧迫、進展エックス線像を進展指数(DI)による股関節の緩みの定量を含む通常のペンヒップ評価に提出した。
結果:犬の14%(60/439)の犬の股関節スコアはOFA標準でエクセレントだったが、それらの犬のうち52%(31/60)のDIは0.30以上(範囲、0.14-0.61)だった。OFAが評価したグッドの股関節の犬の82%(183/223)はDIが0.30以上(範囲、0.10-0.77)で、OFAが評価したフェアーの股関節の犬の94%(79/84)はDIが0.30以上(範囲、0.14-0.77)だった。OFA標準によるフェアーからエクセレントの股関節を持つ全ての犬のうち、80%(293/367)はDIが0.30以上だった。OFAが評価したボーダーラインの股関節、あるいは軽度、中程度、重度股関節形成異常の全ての犬のDIは0.30以上(範囲、0.30-0.83)だった。
結論と臨床関連:犬は、進展エックス線写真により判定するとき、臨床的に重要な受動の股関節の緩みを隠し、OFAによる表現型的に正常と判定された。結果から、HEエックス線写真のOFAによるスコアリングは、犬の変形性関節症の感受性を過小評価し、交配を通して股関節形成異常を減少させる、あるいは撲滅の進行を妨げるものかもしれないと示唆された。(Sato訳)
■経仙腸ロッドの透視補助による設置を使用した仙腸骨-脱臼の限られた観血的整復と安定化
Limited open reduction and stabilization of sacroiliac fracture-luxations using fluoroscopically assisted placement of a trans-iliosacral rod in five dogs
Vet Surg. October 2007;36(7):633-43.
Christopher S Leasure1, Daniel D Lewis, Colin W Sereda, Kara L Mattern, Carl T Jehn, Jason L Wheeler
目的:限られた観血的整復後、仙腸骨骨折-脱臼の安定化に透視下による経皮的経-仙腸ロッドの設置法を述べる
研究構成:遡及臨床症例シリーズ
動物:仙腸骨骨折-脱臼の犬(n=5)
方法:インプラント設置、骨折整復、骨盤管直径比、整復の維持、インプラントの安定性、癒合の評価と全ての合併症の確認のため、医療記録とエックス線写真を再検討した。患肢機能の長期評価を確認するためオーナーと連絡を取った。
結果:犬の体重は6-31kgだった。経仙腸ロッドは、正確に仙骨体を横切るように設置した。仙腸関節の整復平均(±SD)比率は、92.9±6.6%だった。骨盤管直径比は時間経過で有意差がなかった。早期術後期間に死亡した1頭を除き、全ての仙腸骨骨折-脱臼は明らかな合併症もなく治癒した。最終の身体、エックス線検査(217±205日)で3頭は音がでる、1頭はわずかな跛行があった。オーナーは犬の足の機能を良いまたは優良と評価した(355±205日)。
結論:仙腸骨折-脱臼の限られた観血的整復後、術中透視を用いて経仙腸ロッドを正確に設置できる。経仙腸ロッドは両側の安全な固定ができ、早期負重を可能にし、一貫して犬の長期臨床結果は良好だった。
臨床関連:経仙腸ロッドは、特に両側骨折-脱臼および/または筋骨格傷害併発の犬において仙腸骨折-脱臼の安定化に適したインプラントである。(Sato訳)
■授乳を通して子犬へのレラキシンおよびエストロジェンの伝達と股関節の緩みに関係する可能性
Transmission of relaxin and estrogens to suckling canine pups via milk and possible association with hip joint laxity
Am J Vet Res. January 2008;69(1):59-67.
Bernard G Steinetz, Alma J Williams, George Lust, Christian Schwabe, Erika E Bullesbach, Laura T Goldsmith
目的:股関節形成不全(HD+)の遺伝傾向を持つ子犬の股関節の異常な緩みが、ミルクで運ばれるホルモンの摂取に関係するかどうかを判定する
動物:HD+の7頭のメスのラブラドールレトリバーと股関節形成不全の素因が低い(HD-)8頭およびそれらの子犬
方法:HD+授乳中のメス犬のミルク中に含まれる免疫活性レラキシン、エストロジェン、エストロジェン前駆物質濃度とそれらの子犬の血清濃度を、HD-のメス犬および子犬の濃度と比較した。アロマターゼ抑制物質(CGS 16,949A)を、ミルクに含まれる前駆物質から合成されるエストロジェンを抑制するため授乳中のHD+メス犬の子犬に注射し、股関節の緩みをコントロールの同腹子のそれと比較した。HD-のメス犬の子犬にエストラジオールシピオネートと犬レラキシンを注射し、それらのホルモンが股関節の緩みを誘発するかどうか判定するため、その子犬の股関節の緩みをコントロールの同腹子と比較した。
結果:授乳中ずっとHD+およびHD-メス犬のミルク中のエストロジェンおよびレラキシンは高濃度だった。ミルクにより運ばれたレラキシンおよび総エストロジェンの血清濃度は全ての子犬で同じだったが、HD+メス犬の子犬のみエストラジオール-17Bが検出された。CGS16,949Aを投与した子犬の股関節の緩みは減少した。エストラジオールシピオネートおよびレラキシンを投与したHD-メス犬の子犬で股関節の緩みは増加した。
結論と臨床関連:ミルクに含まれる母性ホルモンおよび前駆物質は犬の新生児の循環に吸収され、HD+子犬において股関節の緩みに作用するかもしれない。ゆえに股関節形成不全の表現型発現は、抗ホルモン療法で防ぐことができるかもしれない。(Sato訳)
■犬の股関節脱臼のトグルロッド整復:62例(2000-2005)
Toggle rod stabilization for treatment of hip joint luxation in dogs: 62 cases (2000-2005)
J Am Vet Med Assoc. September 2006;229(6):984-9.
Jennifer L Demko, Brian K Sidaway, Kelley M Thieman, Derek B Fox, Carolyn R Boyle, Ron M McLaughlin
目的:股関節脱臼の犬のオープントグルロッド整復の結果を調査する
動物:62頭の犬
方法:医療記録から徴候、手術方法、術後ケアの情報を入手した。その後の追跡調査のため全てのオーナーにアンケートを送付した。
結果:脱臼から手術までの経過時間の分布は二峰性で、24頭(39%)は傷害から2日以内に検査、23頭(37%)は7日以上たってから検査していた。術後合併症は62頭中16頭(26%)で起こり、16頭中10頭の合併症は術後1週間以内に発生していた。よく起こった合併症は1週間以内の再脱臼だった。手術時間が2時間以内の犬(2/40(5%))は、2時間以上かかった犬(5/22(23%))よりも再脱臼に有意になりにくかった。術後最低6ヶ月の足の機能率(0=跛行なし、5=まったく加重しない跛行)をたずねたとき、27頭中23頭(85%)のオーナーはスコア0、または1を示した。
結論と臨床関連:この研究結果は、トグルロッド整復が犬の股関節脱臼に効果的な処置だと示唆する。しかし再脱臼など合併症は一般的だった。(Sato訳)
■イヌの股関節全置換術に関係する肺塞栓症
Pulmonary embolism associated with canine total hip replacement.
Vet Surg 32[2]:178-86 2003 Mar-Apr
Liska WD, Poteet BA
目的:肺の灌流スキャンと超音波検査により、イヌの股関節全置換術(THR)中に塞栓血症が起こるかどうか判定する事
研究構成:前向き臨床試験
動物:股関節全置換術を行う40頭の飼育犬
方法:股関節全置換後、そして(99m)Tc-MAA肺スキャン完了後すぐに胸部X線を撮影した。THR後48時間目に28等のイヌにシンチグラム造影を行った。術中超音波検査(肋間、または経食道)をTHRを行う他の12頭で実施した。大腿骨に穴をあけ、その削りくずを洗浄吸引し準備した骨髄腔に、よくこねたポリメタクリル酸メチルを流し込む前、大腿骨構成部分挿入中、そして5-8分後に右房、右室、肺流出路を観察した。肺塞栓診断(PIOPED)分類システムの前向き調査変法で肺スキャンを評価した。
結果:肺のX線異常所見は見られなかった。分節、亜分節灌流欠損が23頭(82%)のイヌで起こり、9頭(32%)は重度、11頭は中程度、3頭は軽度に分類した。特別な肺葉の偏りは見られなかった。脂肪塞栓を示す途切れ途切れの桑の実様欠損がよく見られた。10頭のイヌで超音波検査により塞栓血症を観察した。8頭のイヌで、さまざまなサイズの粒子、2頭で粒子と気泡、2頭で塞栓は観察されなかった。塞栓血症は、大腿骨幹挿入後10秒以内に観察され、<1分持続した。肺塞栓は移動前>8分間右房に留まっていた。
結論:股関節全置換術中、ほとんどのイヌに空気、粒子、または両方の塞栓血症が発生する。(Sato訳)
■犬における背外側亜脱臼スコアの再現性と股関節変形性関節症の肉眼的所見との相関性
Lust G et al; Am J Vet Res 62[11]:1711-5
2001 Nov; Repeatability of dorsolateral subluxation
scores in dogs and correlation with macroscopic
appearance of hip osteoarthritis.
目的:若い犬における、背外側亜脱臼(DLS)スコアが、股関節変形症の徴候を現して行くのに対し、信頼性ある予測として、用いることができるかどうか、そして、さまざまな年齢で、測定したDLSスコアが、互いに相関するかどうかを調査することです。
動物:129頭の犬(ラブラドール・レトリバー、グレイ・ハウンド、そしてラブラドール・レトリバーとグレイ・ハウンドの雑種)
手順:4、8、そして12カ月齢で撮影したレントゲン写真と、剖検(8から36カ月齢)時に撮影したレントゲン写真に関して、DLSスコアを測定しました。剖検時、股関節を肉眼的に診査し、軟骨変性度合いで、スコアを付けました。
結果:4(n=35,r(s)= -0.62),8(n=106,r(s)=-0.54)、そして12(n=15,r(s)=-0.87)ヵ月齢でのDLSスコアは、軟骨変性スコアと有意に相関性があり、また、8ヵ月齢時のDLSスコアは、剖検時(n=39,r(s)=0.87)に得られたスコアと、有意に相関性がありました。4ヵ月齢時のDLSスコアは、8ヵ月齢時のスコアと有意に異なりましたが、その後は、スコアの有意な違いはありませんでした。8ヵ月齢時における、低(<45%)、中(45%以上、55%以下)、高(>55%)
DLSスコアに対する、軟骨病変の公算比は、それぞれ8.0、2.6、そして0.2でした。
結論と臨床関連:結果は、8ヵ月齢時のDLSスコアは、不十分でありながらも、妥当な剖検時における、股関節軟骨状態の予測値であることを示唆しております。このように、DLS測定法は、股関節形成不全を持つ犬の、早期同定に有用であると考えられます。(Dr.K訳)