■イギリスの二次診療施設における犬の慢性発咳の回顧的研究:329症例(2012-2021)
Retrospective Study of Chronic Coughing in Dogs in a Referral Centre in the UK: 329 Cases (2012-2021)
Animals (Basel). 2025 Jan 17;15(2):254.
doi: 10.3390/ani15020254.
Carla Asorey Blazquez , Ico Jolly Frahija , Arran Smith , Rachel Miller , Mayank Seth , Edgar Garcia Manzanilla , Ferran Valls Sanchez
小動物診療で慢性の発咳は一般的な主訴で、幅広い鑑別診断があり、かなり異なる治療と予後を持つ。最低8週間持続する時、その発咳は慢性と考えられる。
この回顧的研究の目的は、2012年1月から2021年12月までにイングランドの二次診療を受診した犬の集団において、慢性発咳の最も一般的な原因を述べることだった。また、シグナルメント、体重、咳の特徴、±付随する臨床症状との関連が確認できた場合は評価した。
合計329頭の犬が組み込み基準に合致した。最も多い診断は、気道虚脱(102/329、30.7%)、慢性気管支炎(80/329、24.3%)、腫瘍(62/329、18.8%)、感染性気管支肺炎(54/329、16.4%)だった。その他の診断もより少数の症例で確認された。ポメラニアン、チワワ、ヨークシャーテリアは気道虚脱でよく見られた犬種だった。慢性気管支炎に対する予測因子は確認されなかった。
より体重が軽い(オッズ比(OR)0.92、95%CI:0.90-0.95)、痰を伴わない(OR14.3、CI:3.44-50)発作性の咳(OR4.9、95%CI:2.2-11.0)、運動不耐性(OR3.3、95%CI:1.7-6.3)は気道虚脱の確率を上昇させた。
より高齢の犬(OR1.025、95%CI:1.014-1.036)、より重い体重(OR1.048、95%CI:1.018-1.080)、無気力(OR5.1、95%CI:1.5-17.7)、喀血(OR8.6、95%CI:1.9-38.4)、体重減少(OR4.0、95%CI:1.1-15.3)、食欲不振(OR、6.5、95%CI:1.9-22.1)が腫瘍の確率を上昇させた。
痰を伴う咳(OR3.0、95%CI:1.5-6)、鼻汁(OR4.1、95%CI:1.4-11.9)は感染性気管支肺炎の予測因子だった。
より若い年齢(OR0.96、95%CI:1.061-1.150)、より体重が重い(OR1.097、95%CI:1.037-1.161)、喀血(OR11.8、95%CI:1.8-78.5)は、気道異物の確率を上昇させた。
より体重が重い(OR1.105、95%CI:1.061-1.150)、より高齢(OR1.041、95%CI:1.022-1.061)、吐出は喉頭麻痺の予測因子だった。
喉頭蓋後傾はより若い年齢(OR0.969、95%CI:0.943-0.994)、嚥下困難(OR42.5、95%CI:4.7-382.7)、吐出(OR11.6、95%CI:1.2-113.1)と関係した。
上記の所見全ては、鑑別診断の優先順位を付けるのに役立ち、その結果、診断計画と優先される検査の有効性を増加させ、財政的制約のある症例においてはさらに重要となる。最後に、診断ツールの適切な選択は、獣医の力を最適にするのに役立つ。(Sato訳)
■小型犬種の犬の気管虚脱の回顧的研究:110症例(2022-2024)
A retrospective study of tracheal collapse in small-breed dogs: 110 cases (2022-2024)
Front Vet Sci. 2024 Aug 14:11:1448249.
doi: 10.3389/fvets.2024.1448249. eCollection 2024.
Mi-Rae Kim , Se-Hoon Kim , Min-Ok Ryu , Hwa-Young Youn , Ji-Hye Choi , Kyoung-Won Seo
背景:気管虚脱(TC)のグレードは、狭くなった内腔の直径により評価する。しかし、TCグレードと臨床徴候の重症度との関係に対する研究はない。
目的:TCと診断された小型犬種の犬の臨床的特徴を調査し、透視によるグレーディングが咳の重症度と関係するのかどうかを判定する
方法:2022年から2024年までの医療記録を回顧的に再調査した。TCの診断はエックス線透視検査で確認した。多重線形回帰を使用し、咳の重症度に影響する因子を調査し、有意レベルはp<0.05とした。
結果:TCの犬132頭を確認し、22頭は除外した。最終集団は110頭の犬で、年齢は2-19歳、有意な性差はなかった。ほとんどの犬(97.2%)は、BCS≧4だった。トップ4の犬種(マルチーズ、ポメラニアン、プードル、チワワ)の中で、最も重度の虚脱は気管分岐領域で観察された。透視による虚脱のグレードは、大部分が高いBCS(p<0.007)と低体重(p<0.001)に関係した。しかし、興味深いことに虚脱部位の透視所見とグレードは、咳の重症度と関係しなかった(p=0.350)。特に、臨床徴候は、体重減量、環境の変化、薬物治療後に86.6%の症例で改善した。
結論と臨床的関連:小型犬種の犬において、咳の重症度は透視で診断したTCの領域あるいはグレードと関係しなかった。(Sato訳)
■短頭種閉塞気道症候群の鋭利な口蓋垂切除を行う犬の出血を抑えるため両側上顎神経ブロックにアドレナリン追加した場合の評価、前向き無作為化研究
Evaluation of the addition of adrenaline in a bilateral maxillary nerve block to reduce hemorrhage in dogs undergoing sharp staphylectomy for brachycephalic obstructive airway syndrome. A prospective, randomized study
Vet Surg. 2023 Oct 4.
doi: 10.1111/vsu.14039. Online ahead of print.
Phillipa J Williams , Chiara De Gennaro , Jackie L Demetriou
目的:短頭種の閉塞性気道症候群(BOAS)の治療に対し、口蓋垂切除を行う犬において、術中出血を抑えるため、両側上顎神経ブロックにアドレナリン(0.00198%)の使用を評価する
研究計画:前向き無作為化二重盲検対照試験
サンプル集団:BOASの治療で、切除および縫合の鋭利な口蓋垂切除を行う臨床的に症状のある飼い犬計32頭。計16頭を無作為にアドレナリン(A)グループと非-アドレナリン(NA)群に振り分けた。
方法:リドカイン単独(NA群)あるいはリドカインとアドレナリン併用(A群)を用い、口蓋垂切除前に全ての犬に両側上顎神経ブロックを実施した。全体の出血量は、綿花を先端に付けたアプリケーターとスワブの重量を精密スケールで量ることで測定した。加えて、半定量出血スコア(1-5)で判定した。犬は処置中の術中血液動態安定性をモニターした。
結果:A群の総出血量はNA群よりも有意に少なかった(P=.013)。半定量出血スコアの中央値は、NA群に比べA群が有意に低かった(P=.029)。アドレナリン使用による有意な副作用は認められなかった。
結論:この研究は、切除および縫合の鋭利な口蓋垂切除で、両側上顎神経ブロックにアドレナリンを使用することは、術中出血を有意に少なくし、使用は安全と思われることを示した。
臨床意義:潜在的な臨床的利点は、視野の改善、不必要な血液喪失の予防、血液吸引リスクの低減が含まれる。(Sato訳)
■喉頭部の挫傷で気管切開チューブ設置をした1頭の犬の重度皮下気腫の管理において皮下カテーテルの成功的使用
The successful use of a subcutaneous catheter in the management of severe subcutaneous emphysema in a dog with laryngeal crush injury and tracheostomy tube placement
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Oct 4.
doi: 10.1111/vec.13322. Online ahead of print.
Maude Poirier , Rebecca A L Walton
目的:1頭の犬の重度喉頭挫傷と一時的気管切開チューブ設置により、二次的な重度皮下気腫の管理に対して行った皮下カテーテルの設置を述べる
症例概要:6歳、オスの去勢済みケルピーは、犬の攻撃で重度の喉頭挫傷を受けた。症例の管理は、重度呼吸障害と挫傷に関係する吸気性呼吸困難のため、一時的に気管切開チューブを設置が含まれた。入院中、その犬は重度皮下気腫、気縦隔、気胸を喉頭挫傷と一時的気管切開の合併症により発症した。気管切開瘻が治癒する間、再発性皮下気腫の管理に皮下カテーテルを設置した。受傷から5か月で、その犬は興奮や浅速呼吸中に軽度喘鳴があるが正常に回復した。
提供された新規あるいは独特な情報:これは喉頭挫傷と一時的気管切開チューブ設置による皮下気腫の管理に、皮下カテーテルの使用を述べる獣医療において最初の報告である。(Sato訳)
■市販および3Dプリントのシリコンステントを使用した短頭種の犬2頭の永久気管開口の管理の長期結果
Long-term outcome of permanent tracheostomy management in two brachycephalic dogs using a commercial and a three-dimensional-printed silicone stent
Vet Surg. 2024 Mar 25.
doi: 10.1111/vsu.14085. Online ahead of print.
Janina N Janssen , Gabriele M Gradner , Lea Liehmann
目的:永久気管開口の管理をサポートするシリコンステントの利用の長期結果を報告する
研究デザイン:短期ケースシリーズ
動物:短頭種の飼い犬2頭
方法:ステージIIIの喉頭虚脱の短頭種2頭に永久気管開口術を行った。気管切開の治癒後、開口部のサポートと家庭でのケアを容易にするため、シリコンステントを装着した。1頭は市販で入手可能なシリコンステントをフォローアップ期間の2年装着した。症例2の犬は、市販のステントで皮膚のただれを起こしたため、3Dプリントの長さを延長した医療グレードのシリコンステントを作成した。
結果:2頭はシリコンステントをよく許容した。ステントのケアは、アシスタントなしで飼い主に管理してもらった。シリコンステントは、開口部の周りの清浄を容易にし、そのステントが虚脱から気管開口部を守るため、気道の開通の信頼が増すと感じたと報告した。症例1で最初のステント装着から1年後の気管鏡検査で、気管開口部は最小の眼に見える変化を認めるだけだった。症例2で3Dプリントのシリコンステントは、皮膚のスコアを解消に導き、その犬は13か月後の関係のない疾患に倒れるまで快適に装着していた。
結論:永久気管開口の犬の家庭でのケアを改善するため、シリコンステントの装着は簡単で費用対効果の高い方法である。症例2のようなより大きな犬は、カスタムメイドの3Dプリントのステントが有益かもしれない。(Sato訳)
■短頭種閉塞性気道症候群の手術を受けた短頭種犬における術後呼吸の合併症とそのリスクファクターに対する回顧的観察コホート研究:199症例(2019-2021)
A retrospective observational cohort study on the postoperative respiratory complications and their risk factors in brachycephalic dogs undergoing BOAS surgery: 199 cases (2019-2021)
J Small Anim Pract. 2024 Feb 27.
doi: 10.1111/jsap.13707. Online ahead of print.
M C Filipas , L Owen , C Adami
目的:短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)の手術を受けた犬において、麻酔後の呼吸の合併症の発生を観察し、その有病率とリスクファクターを調査する
素材と方法:199頭の臨床記録からデータを回顧的に解析した。一変量ロジスティック回帰に続き、多変量ロぞスティック回帰を使用し、従属変数(この研究犬において観察された術後の呼吸の合併症としてセット)と種々の独立した共変動との関係を確認した。model-fitの質は尤度比検定で評価した。P≦0.05を統計学的有意と考えた。
結果:4つの術後の呼吸の合併症が観察された;低酸素血(n=10/199;5%)、再度気管挿管を必要とする呼吸困難(n=13/199、7%)、気管切開を必要とする呼吸困難(n=10/199、5%)、吸引性肺炎(n=12/199、6%)。一変量ロジスティック回帰で術後吸引性肺炎と、ボディコンディションスコアと米国麻酔学会分類増加との関係を示した;しかし、それらの共変量は多変量モデル有意で評価した時は維持しなかった。気管切開のリスクファクターは、術前および術後吸引性肺炎(オッズ比:9.52、95%CI:1.56-57.93)と短頭種閉塞性気道症候群グレード上昇(オッズ比:4.65、95%CI:0.79-27.50)だった。
臨床的意義:短頭種閉塞性気道症候群グレードが高いことと吸引性肺炎(周術期に発症あるいは既存の状況)は、術後の気管切開に対するリスクファクターかもしれない。吸引性肺炎の術前診断は、術後合併症のリスクをさらに増加させるかもしれない。(Sato訳)
■フレンチブルドッグの運動に対する体温調節に対する短頭種閉塞性気道症候群の外科的治療の影響:予備研究
The effect of the surgical treatment of brachycephalic obstructive airway syndrome on the thermoregulatory response to exercise in French bulldogs: a pilot study
Front Vet Sci. 2023 Oct 12:10:1229687.
doi: 10.3389/fvets.2023.1229687. eCollection 2023.
Žiga Žgank , Alenka Nemec Svete , Helena Lenasi , Janez Vodičar , Vladimira Erjavec
イントロダクション:上部気道の解剖学的変化により、短頭種の犬は気道抵抗が増し、蒸発性熱喪失に対する表面積が減少し、呼吸および体温調節問題(短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)と言われる症候群)の傾向を示す。非短頭種の犬と比べ、短頭種は低い環境温度や比較的低い身体活動レベルでも熱関連傷害により影響受けやすい。
外科的治療は臨床症状を軽減し、BOASに伴う犬の体温調節能力を改善する可能性がある。この研究の目的は、フレンチブルドッグのBOASの外科的矯正前後の体温調節反応を調査することだった。
方法:13頭の犬をトレッドミルの活動的な運動を受けさせ、直腸温(RT)と心拍数(HR)の変動を測定した。2回の独立した手術前後のセッションで実験を実施した。その試験は2つの連続した2.5km/hのスピードによる5分間の歩行で、30分の回復時間を置き、1つ目は傾斜0%、2つ目は傾斜5%で実施した。直腸温と心拍数は、試験開始前(t0)、1つ目終了時(t1)、2つ目終了時(t2)、回復時間の15分目(t3)、30分目(t4)で測定した。
結果:休息値に比べ、RTとHRは運動中および回復中の有意な増加が観察され、運動強度は体温調節反応の検証に十分だった。外科的治療前と比べ、手術後の運動中(t1:p=0.004;t2:p<0.001)のRTの上昇は有意に低かった。手術前と比べて回復後のより低いRTの傾向が観察されたが、統計学的有意に到達しなかった。RTと同様に、手術前と比べ、手術後の運動中(t1:p=0.020;t2:p=0.011)のHRは有意に低かったが、回復においては有意に到達しなかった。
結論:BOASのフレンチブルドッグにおいて、BOASの外科的治療は、運動中の体温調節を改善できる。(Sato訳)
■気管切開で近位気管異物の緊急除去を行った1頭の犬と1頭の猫
Emergency Removal of a Proximal Tracheal Foreign Body by Tracheotomy in a Dog and a Cat
Case Rep Vet Med. 2023 Sep 16;2023:6478643.
doi: 10.1155/2023/6478643. eCollection 2023.
Teruo Itoh , Atsuko Kojimoto , Hiroki Shii
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犬と猫における近位気管内異物の緊急症例の報告はほとんどない。
ここで、近位気管異物に対する緊急気管切開を行った1頭の犬と1頭の猫を報告する。
症例1は1頭の犬で、近位気管の大きな石による呼吸停止を起こしていた。その石は麻酔なしで気管切開により即座に除去した。挿管と麻酔下のベンチレーション後、低酸素は持続したが、下部気管から100mLの血様液体の吸引後に改善した。
症例2は1頭の猫で、近位の気管の石と右肺の不透過性増加による呼吸困難を呈していた。医師は麻酔のマスク導入後に気管切開により除去し、気管挿管後に切開を閉鎖した。抜管後すぐのエックス線像は、悪化した右の無気肺を示し、再挿管と陽圧換気で軽減した。
2症例共に手術後完全に回復した。
緊急気管切開は、近位気管の大きな異物に対して指示されるかもしれない。また、下部気道の同時発生の状況には気を付けなければいけない。(Sato訳)
■慢性気道疾患の犬と猫に使用した吸入チャンバーの細菌汚染
Bacterial Contamination of Inhalation Chambers Used for Cats and Dogs with Chronic Airway Diseases
Pathogens. 2023 Feb 8;12(2):275.
doi: 10.3390/pathogens12020275.
Friederike Karoline Klenk , Vanessa De Simoi , Yury Zablotski , Bianca Désirée Ballhausen , Georg Wolf , Bianka Schulz
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獣医療では、慢性呼吸器疾患の犬と猫の吸入治療に対して、吸入チャンバー(ICs)が定期的に使用される。治療は通常生涯、毎日必要になるので、デバイスが使用されることが多い。
この研究の目的は、使用する洗浄方法に関して、犬と猫に使用したICsの細菌汚染を確認することだった。
慢性気道疾患の猫66頭、犬19頭のICsのスワブを、標準化したプロトコールで採取し、その後に培養した。飼い主にペットの病歴、使用しているデバイスの洗浄方法に関するアンケートに答えてもらった。
全体で、ICsの64%/(54/86)に汚染が見つかった;マスクは他のパーツよりも有意に汚染頻度が高かった(p<0.001)。一番多く培養された細菌は環境汚染だった;しかし、病原の可能性を持つものもあった。洗浄方法と頻度は汚染の有無に有意な影響を及ぼさなかった。
犬と猫に使用したICsの細菌汚染は一般的だが、洗浄の方法や頻度により有意な影響を受けることはなかった。日和見感染性細菌による潜在的な感染を避けるため、ICsのメンテナンスに関して飼い主への指導が勧められる。(Sato訳)
■自然発生の特発性乳糜胸の犬において胸管結紮±心膜切除後の解消、再発、乳糜再分布
Resolution, recurrence, and chyle redistribution after thoracic duct ligation with or without pericardiectomy in dogs with naturally occurring idiopathic chylothorax
J Am Vet Med Assoc. 2022 Dec 22;1-9.
doi: 10.2460/javma.22.08.0381. Online ahead of print.
Philipp D Mayhew , Ingrid M Balsa , Joshua A Stern , Eric G Johnson , Joanna Kaplan , Carina Gonzales , Michelle A Steffey , Erin Gibson , Briana Hagen , William T N Culp , Michelle Giuffrida
目的:±収縮性心膜生理(CPP)の犬において特発性乳糜胸(IC)の胸腔鏡治療の結果を述べ、胸管結紮(TDL)後の乳糜流再分布のパターンを評価する
動物:26頭の飼い犬
方法:この前向きコホート研究において、心エコー検査および心臓カテーテル設置を、ICの犬のCPPを証明するために実施した。CPPが存在する場合、胸腔鏡TDLと心膜切除を実施した(TDL/P群)。CPPのエビデンスがない犬は、胸腔鏡TDLのみを実施した(TDL群)。犬は術前、術後すぐ、可能ならば3か月後のCTリンパ造影検査を実施した。周術期の病的状態、解消及びその後の再発率、長期結果を記録した。
結果:17頭はTDL、9頭はTDL/Pを実施した。26頭中25頭(96%)は周術期間に生存した。1頭は心膜切除中に心室細動で死亡した。TDLとTDL/Pの解消率はそれぞれ94%と88%で(P=.55)、フォローアップ中央値25か月(範囲、4-60か月)内で、TDLの1頭は後に再発した。術後3か月のCTリンパ造影検査で、結紮部位を通る乳糜流は17頭中5頭で認められ、そのうち1頭は術後13か月で再発した。17頭中15頭において、RDL後の乳糜の再分布は、主に腰部リンパ管叢への逆流だった。
臨床関連:CPPのエビデンスがない犬において、ICの治療はTDLのみで非常に予後は良好だった。ICの治療においてCPPのない場合、心膜切除の追加の利点は懐疑的である。(Sato訳)
■短頭種閉塞性気道症候群の外科的治療前後の心エコー検査解析
Echocardiographic analysis of dogs before and after surgical treatment of brachycephalic obstructive airway syndrome
Front Vet Sci. 2023 May 4;10:1148288.
doi: 10.3389/fvets.2023.1148288. eCollection 2023.
Maja Brložnik , Alenka Nemec Svete , Vladimira Erjavec , Aleksandra Domanjko Petrič
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短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)の犬は、ヒトの閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)に対する貴重な動物モデルである。BOASの外科的治療後に上部気道閉塞の症状は改善するが、心臓の形態や機能に対する外科手術の影響は研究されていない。
ゆえに、我々はBOASの外科的治療前後の犬の心エコー検査変数を比較した。
外科的修正を予定しているBOASの18頭の飼い犬(フレンチブルドッグ7頭、ボストンテリア6頭、パグ5頭)を含めた。外科手術前と、6-12か月(中央値9か月)後に完全な心エコー検査を実施した。7頭の非短頭種の犬をコントロール群に含めた。
手術後、BOASの犬は、長軸指数において左房/大動脈比(LA/Ao)が有意に大きくなり(p<0.05)、拡張期指数において左室後壁の厚さが大きくなった。また、心室中隔の拡張後期輪運動速度(Am)がより高く、心尖部四腔像において右室グローバルストレインおよび左室グローバルストレインが増加し、また後大静脈虚脱指数(CVCCI)がより高かった。
手術前、BOASの犬は非短頭種犬と比べてCVCCI、Am、心室中隔のピーク収縮期輪運動速度(Si)、心室中隔の拡張早期輪運動速度(Ei)が有意に低かった。手術後、非短頭種犬と比べてBIOSの犬は、基礎指数時の右室内径、収縮指数の右室領域、僧帽弁輪面収縮期可動域指数、三尖弁輪面収縮期可動域指数がより小さく、またAm、Si、Ei,心室中隔の拡張後期輪運動速度がより低く、LA/Aoがより大きかった。
BOASの犬と非短頭種犬の間の重要な違いは、BOAS犬のより高い右心圧と、収縮期および拡張期心室機能の低下を示し、OSA患者の研究結果と一致している。顕著な臨床的改善と並行して、右心圧低下、右室収縮期および拡張期機能が手術後に改善した。(Sato訳)
■スペイン南西部における779頭の犬の逆くしゃみに対する調査研究:有病率と潜在的関連因子
Survey research on reverse sneezing in 779 dogs in Southeast of Spain: Prevalence and possible related factors
Res Vet Sci. 2023 May 29;160:62-68.
doi: 10.1016/j.rvsc.2023.05.010. Online ahead of print.
Jesús Talavera López , Blanca García Cubillos , Alberto Muñoz Prieto
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逆くしゃみ(RS)は、正常な犬で上部気道の刺激に対する反応で発生すると思われる生得の反射と考えられるが、現在、その有病率は不明である。
この研究の目的は、スペイン南西部の犬でRSの有病率を評価することと、選択した個体群統計的および環境変数の潜在的影響を調べることだった。
2か月で無作為に選択した779頭の飼い犬に対するアンケートを基にした。RSを経験した犬の総有病率は52.9%(412/779)だった。性別および性的状況(避妊済みメス)、犬の大きさと体重(5kg未満のトイ犬と5-14kgの小型犬)、犬種(主にヨークシャー、チワワ、ビション、シーズ)、年齢(>10歳)に依存する統計学的有意な素因が見つかった。同じ家に他のペットがいなくて、都市に住んでいる犬も有意により素因があった。それらのプロフィールの犬はまた、RSエピソードの頻度が高く(毎日1回以上)、より激しい症状(15日持続)を示す傾向があった。
我々の研究で見られたものは、逆くしゃみは犬の集団の半分以上が呈する重要な反射の1つである。その素因は性別、性的状況、大きさ、犬種、年齢、居住環境、他のペットとの同居に依存して変化する。RSの病態生理、診断、治療に関して更なる注目が是認される。(Sato訳)
■気管気管支樹に経鼻胃チューブを誤って設置した後の気胸の犬の死亡を含む結果:13症例(2017-2022)
Outcomes, including death, in dogs with pneumothorax following nasogastric feeding tube misplacement in the tracheobronchial tree: 13 cases (2017-2022)
J Am Vet Med Assoc. 2023 May 5;1-7.
doi: 10.2460/javma.22.12.0585. Online ahead of print.
Adesola Odunayo , Meredith't Hoen , Jacob Wolf , Kristen Marshall , Kara Osterbur , Kathleen Maxwell
目的:フィーディングチューブ設置の合併症は不明だが、ヒトや動物でフィーディングチューブ設置中の命を脅かす気胸は報告されている。この文献は、13頭の犬における気管気管支樹に鼻胃(NG)チューブの誤設置に関係する気胸の発生とその結果を述べる。
動物:4か所の病院で、種々の病状でNGチューブを設置して治療した13頭の犬
結果:4777頭中14頭(0.3%)が、NGチューブの気管気管支樹への誤設置の副作用として気胸が発症した。1頭は医療記録の不備のために除外した。フィーディングチューブのサイズは5Fから10Fで、一般的に使用されていたチューブは、フラッシィングスタイレットのポリウレタンチューブだった。13頭中9頭は、NGチューブ設置後に呼吸困難のエビデンスを発症した。11頭は胸腔穿刺を必要とし、5頭は胸腔造瘻チューブを設置した。5頭は気胸発症後に心肺停止となり、5頭中3頭は心配蘇生を行った。心肺蘇生を行った3頭中2頭は退院した。13頭中5頭は首尾よく退院したが、5頭は死亡あるいは気胸のため安楽死された。
臨床的関連:犬においてNGチューブ設置において気胸は珍しいが、命を脅かす可能性のある合併症で、即座に対処しなければ死亡を誘発するかもしれない。臨床医はこの合併症を知っておき、適切ならばすばやく胸腔穿刺を行う準備をしておくべきである。(Sato訳)
■短頭種の犬15頭の超音波と従来の鋭利な口蓋垂切除術の比較
A comparison of harmonic and traditional sharp staphylectomy techniques in 15 brachycephalic dogs
J Small Anim Pract. 2022 Sep 30.
doi: 10.1111/jsap.13548. Online ahead of print.
O Gilman , L Moreira , M Dobromylskyj , I Doran
目的:この目的は、鋭利な口蓋垂切除と超音波凝固切開を用いた口蓋垂切除を比較し、手術時間、術中出血と結果を評価することだった。超音波口蓋垂切開は、手術時間を短縮し、術中出血を少なくし、相対的改善がより大きくなるだろうと仮説を立てた。
素材と方法:2020年7月から2021年9月の間に獣医紹介病院に短頭種閉塞性気道症候群で受診し、外科的矯正を行った犬を前向きに登録した。術式は無作為化し、手術時間、口蓋垂切除時間、術中出血、入院、14日の再チェック時の患者のCambridge
BOAS Gradeの変化を記録した。
結果:15頭の犬が登録された:7頭の犬は鋭利な切除、8頭は超音波口蓋垂切除を行った。9頭の犬はフォローアップに応答し、それぞれ7頭中4頭と8頭中5頭だった。超音波口蓋垂切除では、出血が少なく(0対9綿棒)、平均口蓋垂切除時間が短縮(3分36秒対14分50秒)した。総手術時間、入院日数、Cambridge
BOAS Gradeの変化に統計学的有意差は見られなかった。超音波口蓋垂切除により切除された軟口蓋の切除縁に平均0.68mmの熱性壊死が見られた。
臨床的意義:超音波口蓋垂切除は、口蓋垂切除時間、術中出血が鋭利な口蓋垂切除に比べて少なくでき、犬の術後回復あるい長期結果に対し有害な影響はなかった。(Sato訳)
■犬と猫の非心原性肺水腫の回顧的評価(2000-2021):31症例
Retrospective evaluation of noncardiogenic pulmonary edema in dogs and cats (2000-2021): 31 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Apr 23.
doi: 10.1111/vec.13290. Online ahead of print.
Jacqueline R Nemi , Kate Hopper , Steven E Epstein
目的:犬と猫の非心原性肺水腫(NCPE)の臨床的特徴、病因、結果を特徴づける。また、死亡との関係を評価した。
デザイン:回顧的研究
場所:獣医教育病院
動物:飼い犬30頭と飼い猫1頭
介入:なし
測定値と主要結果:動物の特徴、臨床的履歴、酸素化の評価、エックス線像、治療および結果を含むデータを集めた。NCPEの原因は、上部気道閉塞、感電、溺水、神経学的病因、不明が含まれた。病因は31症例中21症例(68%)で分かっていたが、残りの10症例(32%)は不明に分類された。NCPEの最も一般的な原因は上部気道閉塞で、31症例中14症例(45%)に見つかった。胸部エックス線写真の大多数は、瀰漫性に分布した間質肺胞混合の肺パターンを示した(52%)。
酸素治療は27頭の犬(90%)に投与された。フロセミドは14頭(40%)に投与された。入院期間中央値は48時間(範囲:1-192時間)だった。23頭(74%)は生きて退院した。6頭は機械的ベンチレーションを行い、そのうち2頭(33%)は生きて退院した。機械的ベンチレーションの必要性のみが、死亡に関係するパラメーターだった(P=0.03)。
結論:非心原性肺水腫は、犬に多く見られる異質な疾患プロセスの1つである。様々な原因があるが、上部気道閉塞が最も一般的と思われる。全体の予後は、機械的ベンチレーションの必要ない動物では良好である。(Sato訳)
■肺炎の犬の胸部エックス線写真と急性期タンパクの連続評価
Serial evaluation of thoracic radiographs and acute phase proteins in dogs with pneumonia
J Vet Intern Med. 2022 May 26.
doi: 10.1111/jvim.16448. Online ahead of print.
Julie Menard , Ian Porter , Assaf Lerer , Sarah Robbins , Philippa J Johnson , Robert Goggs
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背景:肺炎の犬の急性期タンパク(APP)は治療のガイドになるかもしれないが、エックス線写真の異常との相関はあまり特徴づけられていない。
目的:エックス線写真の変化とAPP濃度を評価する胸部エックス線写真重症度スコアリングシステム(TRSS)の開発とAPPおよびエックス線写真正常化までの時間と抗菌剤治療の持続期間を比較する
動物:16頭の飼い犬(12頭は誤嚥性肺炎、4頭は市中感染性肺炎)
方法:1、3、7、14、28、60日目にC-反応性タンパク(CRP)、血清アミロイドA(SAA)、ハプトグロビンの濃度を測定し、1、7、14、28、60日目に直交2方向胸部エックス線写真を撮影した。治療は臨床医がガイドし、APP濃度は分からないようにしていた。エックス線写真重症度スコアは、第3者のレントゲン医に仲裁してもらい2人の認定レントゲン医により盲検、無作為化回顧的レビューにより評価した。
結果:CRP(7日(7-14))およびSAA(7日(7-14))濃度の正常化までの時間中央値(四分位数間領域(IQR))は、抗菌剤治療期間(17.5日(14.5-33.5);それぞれP=.001および.002)およびTRSS正常化(14日(8.8-52);それぞれP=.02および.02)よりも短かった。CRPとSAA濃度はTRSSと正の相関を示した。(CRP rs、0.643;SAA rs,0.634;両方ともP<.0001)。CRPおよびSAA共に正常な胸部エックス線写真曲線下面積(AUC)、それぞれ0.873および0.817を確認した、両方ともP<.0001。TRSSアサインメントに対する観察者間の一致性は中程度だった(κ、.499;P<.0001)。
結論と臨床的重要性:CRPとSAA濃度は、エックス線写真の回復前、臨床医が抗菌剤治療を中止する前に正常化した。CRPとSAA濃度は、肺炎の犬に対し抗菌剤治療の中止のガイドとなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の逆くしゃみ:30頭の観察研究
Reverse Sneezing in Dogs: Observational Study in 30 Cases
Vet Sci. 2022 Nov 29;9(12):665.
doi: 10.3390/vetsci9120665.
Jesús Talavera , Patricia Sebastián , Giorgia Santarelli , Ignacio Barrales , María Josefa Fernández Del Palacio
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逆くしゃみ(RS)は、獣医師に相談される頻度の高い主訴であるが、臨床的情報は不足している。
この研究の目的は、RSの犬30頭の集団において、臨床的特徴を述べることだった。
シグナルメント、臨床的特徴、診断検査の結果、最終診断、進展を回顧的に評価した。
性別および不妊状態は、診断カテゴリーに平等に分布していた。中型犬(15-30kg、17%)や大型犬(≧30kg、7%)と比べて有意に多かったのはトイ種(≦5kg、50%)、小型犬(5-15kg、27%)だということが分かった。RSは症例の多く(67%)において、主要な飼い主の心配事だった。多くの症例は慢性のRS(60%、≧3か月)を呈し、1週間の1回以上起きていた(60%)。
多くの症例は、それに加えて臨床的呼吸器症状(63%)があり、身体検査では顕著なものはなかった(63%)。炎症性気道疾患は、57%に存在し、続いて解剖学的-機能的疾患(27%)、鼻/鼻咽頭異物(10%)があった。2頭(7%)は診断がつかなかった。フォローアップの犬61%において、治療にもかかわらずRSは持続した。
他は正常で、RSをたまに起こす犬もいるが、RSは潜在的な鼻咽腔粘膜の刺激のマーカーの1つと考えるべきで、常に十分調査すべきである。(Sato訳)
■鼻咽頭-口咽頭瘻の臨床症状として逆くしゃみを呈する犬の1例
Reverse sneezing as a clinical manifestation of nasopharyngeal-oropharyngeal fistula in a dog
Can Vet J. 2022 Nov;63(11):1119-1123.
Marianthi Gelatos , Sara A Colopy , Kenneth Waller , Jessica C Pritchard
6歳避妊済みメスのラブラドールレトリバーを、3か月にわたる観血的逆くしゃみとえずきで評価した。評価時の所見は、頻繁な逆くしゃみと、何も出ないレッチングが含まれた。鎮静下で目に見える病因はなかった。頭蓋の造影CT検査で軟口蓋の左腹側内にガスで満たされた欠損を認めた。鼻咽頭鏡検査で左尾腹側鼻咽腔壁に非侵食性欠損が存在した。
外科的探査で、左口蓋扁桃窩内に鼻咽頭-口咽頭瘻を認めた。その犬は瘻の部位に3か月前に目撃されている口咽頭スティック傷害(OSI)を起こしていた。そのOSIは二次閉鎖により治癒しており、経口抗生物質とNSAIDで治療していた。しかし、その犬は鼻汁や膿瘍形成のような慢性OSIの特徴的な症状が欠けていた。軟口蓋の欠損は外科的にデブリードして閉鎖し、左口蓋扁桃は切除した。
その犬の逆くしゃみとレッチングはなくなり、完全に回復した。(Sato訳)
■日本の呼吸器症状のある犬1050頭の遡及的研究(2005-2020)
Retrospective study of 1050 dogs with respiratory symptoms in Japan (2005-2020)
Vet Med Sci. 2022 Oct 17.
doi: 10.1002/vms3.983. Online ahead of print.
Yuta Nakazawa , Takafumi Ohshima , Michio Fujita , Aki Fujiwara-Igarashi
背景:解剖学的部位を基にした呼吸疾患の発生率、あるいは犬種とそれらの疾患との関連を調査している研究はほとんどない。
目的:この研究の目的は、日本の犬で犬呼吸疾患の有病率、犬種との関連を調査した。
方法:呼吸器症状のある犬の医療記録を遡及的に再検討し、犬種と疾患の関係を評価するためオッズ比(OR)を算出した。
結果:呼吸器症状のある1050頭の犬を研究に含めた。ミニチュアダックスフンドは、呼吸器疾患に罹患する最も一般的な犬種だった。気管気管支疾患の中で、いくつかの小型犬種と気管気管支虚脱との間に有意な関係があった(ミニチュアダックスフンド(OR:4.44、8.43、95%CI:3.17-6.22、4.33-16.0)と慢性気管支炎および気管支拡張症)。鼻の疾患の中で、ミニチュアダックスフンド(OR:27.2、95%CI:16.8-44.8)とゴールデンレトリバー(OR:21.0、95%CI:6.43-69.3)は、それぞれ非感染性鼻炎と鼻アスペルギルス症に一番多く罹患した。短頭種閉塞性気道症候群は最も一般的な咽頭及び喉頭の疾患でいくつかの短頭種で犬種との関連が見つかった(ポメラニアン(OR:2.7、95%CI:1.42-5.17))。
結論:犬の呼吸疾患は、日本でポピュラーな犬種と強く相関している。特にミニチュアダックスフンドは、多くの呼吸疾患と関係し、国際的な報告と異なるかもしれない。ゆえに、この結果は犬の呼吸疾患の早期検出、予防、治療、病態生理学の解明に役立つかもしれない。(Sato訳)
■誤嚥性肺炎に対する治療を行った犬において肺の超音波検査、胸部エックス線検査、C-反応性蛋白、臨床所見の比較
Comparison of lung ultrasound, chest radiographs, C-reactive protein, and clinical findings in dogs treated for aspiration pneumonia
J Vet Intern Med. 2022 Mar 5.
doi: 10.1111/jvim.16379. Online ahead of print.
Nina Fernandes Rodrigues , Léna Giraud , Géraldine Bolen , Aline Fastrès , Cécile Clercx , Søren Boysen , Frédéric Billen , Kris Gommeren
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背景:誤嚥性肺炎(AP)の犬において、入院時と連続フォローアップ時の臨床所見、胸部エックス線写真(CXR)、肺超音波検査(LUS)所見、C-反応性蛋白(CRP)濃度の比較がなされていない。
仮説:APの犬の肺超音波病変は、市中感染性肺炎(comAP)のヒトで述べられている其れと同様である;CXRとLUS病変の重症度は同様である;CRP濃度の正常化は、画像検査異常の回復に先行し、より密接に犬の臨床的改善を反映する。
動物:APの犬17頭
方法:前向き観察研究。入院時(n=17)、診断から2週間(n=13)、1か月後(n=6)に臨床検査、CXR、LUS、CRP測定を実施した。全ての犬は抗生物質で治療された。肺超音波検査およびCXR犬アスピレーション(AP)スコアリングシステムを異常の比較に使用した。
結果:B-ラインおよびshred sign±ブロンコグラムを入院時の17頭中14頭、17頭中16頭のLUSで確認した。胸部エックス線写真およびLUSスコアは、各タイムポイントで両犬APスコアリングシステムを用いて有意に違っていた(18領域/犬、P<.001)。臨床的およびCRPの正常化は、フォローアップ中に全頭で認められた。フォローアップ1か月目の6頭中1頭以外、全頭のLUSでshred signは消失したが、B-ラインおよびCXRの異常は、それぞれ5頭中4頭、および全頭で持続した。
結論と臨床的重要性:肺の超音波所見は、comAPのヒトのそれらと似ており、CXR所見は異なった。Shred signとCRP高濃度は、犬の連続評価中の臨床所見をよりよく反映する。(Sato訳)
■気管虚脱の犬において鍼は心拍数変動、酸化ストレスレベル、運動耐性、QOLを改善する
Acupuncture Improves Heart Rate Variability, Oxidative Stress Level, Exercise Tolerance, and Quality of Life in Tracheal Collapse Dogs
Vet Sci. 2022 Feb 18;9(2):88.
doi: 10.3390/vetsci9020088.
Phurion Chueainta , Veerasak Punyapornwithaya , Weerapongse Tangjitjaroen , Wanpitak Pongkan , Chavalit Boonyapakorn
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臨床診療において、小型犬の呼吸器障害の中で、気管虚脱は一般的にみられるものの1つである。現在、ヒトの呼吸器疾患の治療で、良い効果をもたらすことが示されている代替治療として鍼が広く使用されている。
この研究は気管虚脱の犬に対する鍼の効果を示した。著者らは、鍼が心拍数変動、酸化ストレスに対する血清バイオマーカー、運動パフォーマンス、QOLを含む種々のパラメーターを改善することで、気管虚脱の犬を助けることができると仮説を立てた。
気管虚脱疾患の小型犬種の飼い犬20頭を登録した。研究は2つの5週間間隔に分けた。最初の期間中、犬は通常のケアを行い、鍼治療は使用しなかった(NAC)。その期間が完了後、1週間全ての形式の治療を中止し、2つ目の期間を開始した。2つ目の期間において、全ての犬は通常のケアを再度開始し、5週連続で週に1回鍼治療を行った(AC)。マロンジアルデヒド(MDA)濃度測定のため、2つの期間の開始時と終了時に採血した。心拍数変動(HRV)は両期間の第1、3、5週目に記録した。運動試験は、AC期間の開始時と終了時に実施し、各期間の終了時には飼い主にアンケートに答えてもらった。
結果は、鍼は気管虚脱の臨床症状の軽減し、MDA濃度を低下させ、交感神経迷走神経バランスを改善できることを示した。著者らは鍼治療が犬の気管虚脱に対する補助治療として使用できたと示唆する。(Sato訳)
■犬の陰圧性肺水腫の回顧的評価(2006-2018):35症例
Retrospective evaluation of negative-pressure pulmonary edema in dogs (2006-2018): 35 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2021 Nov 30.
doi: 10.1111/vec.13166. Online ahead of print.
Vicente J Herrería-Bustillo , Sophie Adamantos , Christopher R Lamb , Marta García-Arce , Emily Thomas , María Rocío Saiz-Álvarez , Simon Cook , Stefano Cortellini
目的:陰圧性肺水腫(NPPE)の犬の集団において、臨床的特徴と転帰を述べ、その疾患の主要な原因を確認し、有病率と死亡率に関係するものを評価する。
デザイン:回顧的研究
場所:イギリスの3か所の大学教育病院と2か所の個人委託センター
動物:NPPEを呈した35頭の飼育犬
介入:なし
測定値と主要結果:犬の特徴、臨床的病歴、臨床病理学的異常、エックス線写真の特徴、治療、結果を含むデータを収集した。年齢中央値は4ヶ月齢(範囲2-90か月)、体重中央値は7.1kg(範囲1.7-37.2kg)だった。NPPEの多くの原因は、リードを引っ張る、ほぼ首つり、偶発的窒息、解剖学的気流閉塞、ヒトによる意図的気道閉塞が含まれる。NPPEの最も一般的な原因は、偶発的窒息だった(症例の40%)。解剖学的閉塞の犬は、24ヶ月齢異常だった。肺胞-動脈勾配増加を伴う低酸素血症は来院時に一般的だった。胸部エックス線写真の多く(65.7%)は、過去に文献で述べられているように、尾背側領域の肺胞あるいは間質性パターンを示した。酸素療法は33頭(94.3%)の犬に実施した。フロセミドは18頭(51.4%)の犬に投与した。入院期間中央値は2日(範囲0-14日)だった。28頭(80%)は生存し、退院した。7頭の犬は機械的換気を行い、そのうち2頭(28.6%)のみが生存し、退院した。機械的ベンチレーションが必要なことが、死亡率に関係する唯一のパラメーターだった(P<0.001)。
結論:NPPEのほとんどの症例は、若齢犬で起きる。上部気道閉塞に関係する異なる出来事は、NPPEの事象を起こす可能性がある。フードあるいはおもちゃ、首つりに近い窒息は、NPPEの誘発原因として文献で過去に述べられていない。(Sato訳)
■臨床的改善とC-反応性蛋白濃度の正常化を基にした急性誤嚥性肺炎の犬の抗菌薬投与中止
Antimicrobial discontinuation in dogs with acute aspiration pneumonia based on clinical improvement and normalization of C-reactive protein concentration
J Vet Intern Med. 2022 Mar 29.
doi: 10.1111/jvim.16405. Online ahead of print.
Nina Fernandes Rodrigues , Léna Giraud , Géraldine Bolen , Aline Fastrès , Cécile Clercx , Kris Gommeren , Frédéric Billen
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背景:誤嚥性肺炎(AP)の犬における最適な治療期間に関するエビデンスと、罹患犬の長期フォローアップにおける胸部エックス線写真(TXR)と肺の超音波検査(LUS)の役割は欠如している。C-反応性蛋白(CRP)は犬の細菌性肺炎をモニターする確実な急性期蛋白である。
仮説:臨床的改善および血清CRP濃度を基にした抗菌薬中止の安全性と、フォローアップ中のTXRおよびLUSの有用性を調査する
動物:APと診断され抗菌薬で治療した犬
方法:前向き観察研究。臨床的改善および血清CRP正常化を基に、1、3、5週間後に抗菌薬を中止した。各診察時、QOLの質問、身体検査、血清CRP、TXR、LUSを評価した。再発の可能性に対し、治療中止後の短期(2週間)および長期(>1か月)フォローアップを実施した。
結果:17頭の犬を含めた。抗菌薬は12頭(70.6%)の犬は1週間後に中止し、残りの5頭(29.4%)は3週間後に中止した。どの犬でも短期の再発は観察されず、長期の再発は3頭の犬で診断された。胸部エックス線写真とLUSは診断に有効だったが、臨床的改善と血清CRPの正常化の後に画像の正常化が遅れてくるので、フォローアップ中の追加の情報が得られなかった。
結論と臨床的重要性:APの犬は、臨床的改善と血清CRPの正常化後に中止する短期抗菌薬方法を用いて、安全で効果的な治療ができる。治療に良好な反応がない、難しい症例に対して画像検査は有効かもしれない。(Sato訳)
■異常な呼吸パターンの犬と猫の呼吸の臨床症状とその部位との関連
Association between respiratory clinical signs and respiratory localization in dogs and cats with abnormal breathing patterns
Vet J. 2021 Oct 13;105761.
doi: 10.1016/j.tvjl.2021.105761. Online ahead of print.
M Domínguez-Ruiz , C R Reinero , A Vientos-Plotts , M E Grobman , D Silverstein , E Gomes , K Le Boedec
ペットの呼吸器症状の診断価値は調査されている。この研究の目的は、異常な呼吸パターン(ABP)のペットにおいて、呼吸症状と病気の位置とに一般的に想定される関係を研究することだった。
3つの病院を受診したABPの犬と猫で、病気の位置の調査を許された場合に含めた。呼吸器症状と病気の位置の仮定された関係を、混合効果ロジスティック回帰で評価した。感受性、特異性、陽性診断尤度比を算出した。
ABPの115頭の犬と49頭の猫を登録した。確認した関係は:胸腔外気道疾患を伴う吸気性努力呼吸(オッズ比(OR)、9.1;95%CI、3.0-27.2);胸腔内気道疾患を伴う呼気性努力呼吸(OR、6.5;95%CI、2.3-18.1);胸膜スペース疾患を伴う心音/肺音の減衰と奇異呼吸(奇異呼吸:OR、4.5;95%CI、1.7-12.1;音の減衰:OR11.5;95%CI、4.0-33.3);鼻/喉頭疾患を伴ういびきと減少した鼻の気流(鼻の気流:OR、26.2;95%CI、8.1-84.8;いびき:OR、155.2;95%CI、24.9-968.8);喉頭あるいは気管疾患を伴う喘鳴(喉頭疾患:OR、39.9;95%CI、7.6-209.0;気管疾患:OR、32.4;95%CI、4.2-248.0);気管支疾患を伴う気管感受性(OR、3.8;95%CI、1.5-9.6);肺あるいは気管支疾患を伴う湿性ラ音(肺疾患:OR、5.4;95%CI、2.1-13.8:気管支疾患:OR、3.9;95%CI、1.6-9.8);気管疾患を伴うガチョウのような鳴き声(ガチョウのような鳴き声をする全ての犬は気管の関与があった)。
ABPの動物において選択した呼吸器症状は、ペットの基礎呼吸器疾患の原因の起源を突き止め、優先順位を決定するガイダンスとなり、目標を絞った治療が可能となる。(Sato訳)
■呼吸関連性肺高血圧をシルデナフィルで治療した25頭の犬の臨床的特徴と結果
Clinical features and outcome in 25 dogs with respiratory-associated pulmonary hypertension treated with sildenafil.
J Vet Intern Med. 2019 Dec 9. doi: 10.1111/jvim.15679. [Epub ahead of print]
Johnson LR, Stern JA.
背景:肺高血圧(PH)は、多くの一般的な心配疾患に続発する可能性があり、シルデナフィルの使用は、罹患犬のケアを改善している。
目的:呼吸に関連したPHの犬において、シルデナフィルに対する反応を評価する
動物:PHの犬25頭
方法:前向き臨床試験。ドップラー心エコー検査で中程度から重度のPHの犬を確認し、基礎疾患を検出するため追加検査を実施した。17点QOLアンケートを完了し、臨床的に診断された呼吸疾患の管理に必要と考えられる薬剤と共にシルデナフィルを処方した。30日後、再度心エコー検査とQOL調査のために受診してもらった。
結果:年齢の中央値は12.4歳、ほとんどの犬は小型犬種の犬(体重中央値、6.5kg)だった。失神(64%)、発咳(56%)、呼吸困難(32%)は一般的な主訴だった。PHに関係する呼吸疾患には、気管気管支軟化症、肺線維症、炎症性気道疾患、短頭種症候群、複数疾患が見られた犬もいた。25頭中8頭(32%)は1か月以内に死亡あるいは安楽死された。残りの犬で、三尖弁逆流圧勾配(前、83.0±17.4mmHg、後、55.4±17.4mmHg)とQOLスコアは、シルデナフィル開始1か月後には有意に改善した。50%死亡率は、研究開始後6か月に達し、4頭は診断後5年生存している。
結論と臨床的重要性:シルデナフィルの反応性は、呼吸に関連したPHの犬で不定だが、1か月以上生存した犬でQOLの改善が見られ、長期に生存した犬もいる。(Sato訳)
■内科あるいは内視鏡によるデブリードメントで治療した23頭の犬の鼻腔ポリープ症の診断と結果
Diagnosis and outcome of nasal polyposis in 23 dogs treated medically or by endoscopic debridement
Can Vet J. 2021 Jul;62(7):736-742.
Enrico Bottero , Emanuele Mussi , Fabiano Raponi , Davide De Lorenzi , Pietro Ruggiero
この研究は、犬の鼻腔ポリープの臨床、診断的、病理学的特徴とそれらが内科、内視鏡、外科治療にどのように反応するかを述べる。
2010年から2018年までに複数施設の獣医内視鏡グループのデータベースから検索した。全ての犬は内視鏡検査を行い(N=23)、組織学的に鼻腔ポリープ症と組織学的に診断された犬を含めた。
初診時の臨床症状は、くしゃみ(91%)、鼻汁(83%)、いびき(74%)、前頭鼻変形(17%)だった。13頭の頭部エックス線写真で、鼻甲介の溶解(6/13)、片方(4/13)あるいは両方(6/13)の鼻腔の不透過性亢進、鼻の鋤骨の溶解(3/13)を含む変化が77%の症例で認められた。鼻腔ポリープ症は、特徴的な内視鏡所見があった。
この犬の集団と鼻腔腫瘍の犬の集団は臨床的および診断的に同じだったが、鼻腔ポリープの犬はより若いことが多く、ポリープ様組織は鼻の外面だった。
犬のポリープ症の治療でステロイド単独は効果的ではなかったが、レーザーや鉗子による内視鏡的デブリードメントはより効果的だった。(Sato訳)
■37頭の犬の推定遊走性植物性異物による二次的な気胸の治療と結果
Treatment and outcome of spontaneous pneumothorax secondary to suspected migrating vegetal foreign body in 37 dogs
Vet Rec. 2021 Jun 9;e22.
doi: 10.1002/vetr.22. Online ahead of print.
Paul Sériot , Antoine Dunié-Mérigot , Clément Baudin Tréhiou , Laurent Blond , Fanny Bernardin , Laure Poujol , Sophie Gibert
背景:この研究の目的は、推定遊走性の植物の異物(MVFB)による二次的な自然発生の気胸(SP)の外科的所見、治療と結果を述べる
方法:この回顧的研究に、CT検査でMVFBによる二次的なものと思われたSPと一致し、胸部外科手術を行った犬を含めた。CTでMVFBが確認された(1群)あるいは疑われただけ(2群)かどうかで2群に振り分けた。
結果:37頭(1群が21頭、2群が16頭)の犬を含めた。1群の21頭中18頭、2群の16頭中10頭が、手術中にMVFBを確認できた。CT上の影響を受けている肺葉と手術所見の一致は、40葉中34葉で観察された。37症例中9症例で、肺の穿孔がMVFBの所見がないのに確認された。37の肺葉切除が実施された:15は完全、24は部分的。気胸の再発は観察されなかった。4頭は、2度目の瘻管形成により、最初の手術から1.5-3か月後に、MVFBの除去のため2回目の手術が必要だった。
結論:CTで計画した手術アプローチにより、退院前にすべての症例でSPが解消し、短期結果は良く、メジャーな合併症はなかった。CTは85%の症例で穿孔した肺葉を確実に評価した。あとからできる瘻管の臨床症状は、CT上で確認したMVFBを手術で見つけられなかった症例の33%で発生した。(Sato訳)
■原発性自然発生気胸の犬の外科的治療と結果:110症例(2009-2019)
Surgical management and outcome of dogs with primary spontaneous pneumothorax: 110 cases (2009-2019)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Jun 1;258(11):1229-1235.
doi: 10.2460/javma.258.11.1229.
Rachel Dickson, Valery F Scharf, Aleisha E Michael, Meagan Walker, Chris Thomson, Janet Grimes, Ameet Singh, Michelle Oblak, Brigitte Brisson, J Brad Case
目的:原発性自然発生性気胸の犬に対する外科的管理と関連する結果を述べる
動物:外科的管理を行った原発性自然発生の気胸の飼育犬110頭
方法:7か所の獣医教育病院の医療記録を再検討した。シグナルメント、病歴、臨床症状、エックス線およびCT所見、外科的方法、術中および術後合併症、結果、病理組織所見を含むデータを集めた。フォローアップ情報は、紹介元獣医師あるいはオーナーに連絡を取って入手した。
結果:110頭の犬を含め、フォローアップ期間の中央値は508日(範囲、3-2377日)だった。99頭(90%)は胸骨正中切開、9頭(8%)は肋間開胸、2頭(2%)は胸腔鏡手術を単独介入として行った。水疱性病変は一般的に左前葉(51/156(33%)病変)および右前葉(37/156(24%)病変)で見つかった。>30日までフォローアップできた100頭のうち、13(13%)は気胸を再発し、手術から再発までの期間中央値は9日だった。再発は手術から>30日と比較して、手術から30日以内に起こる確率が有意に高かった。手術から>30日での再発はまれだった(3頭(3%))。再発のリスクファクターは確認されなかった。
結論と臨床関連:原発性自然発生気胸のほとんどの犬において、正中胸骨切開による肺葉切除により気胸が解消した。気胸の再発は一般的に術後期間すぐに起こり、追加の水疱の発生よりも、初回胸腔探査中の病変の見落としを反映しているかもしれない。(Sato訳)
■15頭の犬の肺葉捻転:超音波検査上の辺縁バンドサイン
Lung lobe torsion in 15 dogs: Peripheral band sign on ultrasound
Vet Radiol Ultrasound. 2020 Oct 31.
doi: 10.1111/vru.12918. Online ahead of print.
Audrey Belmudes , Guillaume Gory , Eddy Cauvin , Anaïs Combes , Hélène Gallois-Bride , Laurent Couturier , Delphine N Rault
犬の肺葉捻転は、通常エックス線検査、内視鏡検査、CT検査の特徴を基に診断する。超音波検査の記述はほとんど発表されていない。
この多施設回顧的および前向き観察研究の目的は、超音波検査上の捻じれた肺葉の辺縁で、低エコー領域を形成する肺のバンドあるいはラインの存在を調査することと、CTおよび組織学的所見とそれを比較することで、その意義を評価することだった。
外科的あるいは剖検で肺葉捻転を確認した15頭の犬を含めた。
全ての犬は超音波検査とCT検査を受けていた;13頭は追加の病理組織検査を実施していた。14症例において、胸部超音波検査は捻転肺葉の拡散した反射亢進している界面部分を覆いかぶさるように辺縁低エコーバンドを示した。CTにおいて、中央の肺気腫は、辺縁の軟部組織減衰バンドにより囲まれ、14症例の周辺に影響していた。1症例のバンドは観察されず、その肺葉は完全に固まっていた。組織検査で、肥厚した臓器膜±基礎にある肺実質の出血性壊死からなる相当する辺縁バンドが得られた。この辺縁バンドは、肺灌流と換気に重要な役割を演じ、肺辺縁がより虚血する傾向となる気道と血管の特異的なフラクタル臓器に関連するのかもしれない。
我々の所見は、超音波検査上の虚脱していない肺葉において、中心の気腫に関係する辺縁低エコーバンドの存在は、血液供給と空気の流れの欠陥を示唆し、ゆえに肺葉捻転を疑うべきである。(Sato訳)
■酸素サポートエスカレーションを必要とする22頭の犬の急性低酸素呼吸不全における高流量鼻カニューレ酸素療法
High-flow nasal cannula oxygen therapy in acute hypoxemic respiratory failure in 22 dogs requiring oxygen support escalation
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Jul;30(4):364-375.
doi: 10.1111/vec.12970. Epub 2020 Jun 24.
Tiffany A Jagodich , Alexa M E Bersenas , Shane W Bateman , Carolyn L Kerr
目的:急性低酸素呼吸不全の犬において、心肺変数や結果に対する高流量鼻カニューレ(HFNC)酸素療法の効果を判定する
デザイン:前向き連続臨床試験
場所:大学獣医教育病院
動物:従来の酸素サポートに反応しない飼育犬22頭
介入:従来の酸素補給でSpO2>96%、PaO2>75mmHgにならない、あるいは呼吸数/努力が改善しなかった後で、HFNC療法の開始
測定値と主要結果:生理的変数、血液ガス分析、呼吸困難/鎮静/許容性スコアをHFNC開始(従来の酸素サポート(タイム0あるいはT0))前、その後HFNC酸素供給中30分時、60分時、7±1時間時に収集した。T0と比較して、HFNCを使用して呼吸数は1時間時(P=0.022)および7時間時(P=0.012)に低下し、呼吸困難スコアは全ての時に低下し(P<0.01)、SpO2は全ての時に上昇した(P<0.01)。T0に比べ、動脈/静脈PCO2に差はなかったが、PaCO2は流量に相関した。呼吸の評価を基に、60%の犬は30分のHFNCの使用に反応し、最終的に45%はHFNCの使用に反応し、生存した。臨床的空気漏出症候群は観察されなかった。
結論:HFNCの使用は、ベンチレーションを損なうことなく従来の酸素療法に比べて、酸素化や呼吸動作を改善した。HFNCの使用は、標準酸素供給と機械的ベンチレーションのギャップを埋めるための有益な酸素サポート様式と思われる。(Sato訳)
■犬の鼻鏡検査により確認された鼻腔内異物:42症例
Nasal foreign bodies identified by rhinoscopy in dogs: 42 cases
J Small Anim Pract. 2020 Sep 28.
doi: 10.1111/jsap.13220. Online ahead of print.
Maria Joana Dias , Sofia Mouro , Ryane E Englar , Rodolfo O Leal
目的:犬の鼻鏡検査により確認された鼻腔内異物のシグナルメント、臨床症状、位置、タイプを評価する
素材と方法:2012年4月から2019年6月までに診察に来院し、鼻鏡検査により鼻腔内異物と診断された犬の医療記録を回顧的に再調査した。
結果:42頭が研究に含める基準にあった。30頭(71.4%;30/42)は純血種だった。オスは症例の59.5%(25/42)を占めた。年齢中央値は4歳で、76.2%(32/42)の犬は7歳までだった。平均体重は21.8kgで、10kg以上の犬が多くを占めた(78.6%;33/42)。くしゃみは78.6%(33/42)の症例で発症した。全ての症例の異物は鼻鏡で回収された。52.4%(22/42)の犬は右鼻腔から、42.9%(18/42)の犬は左鼻腔から異物を回収した。2頭(4.8%;2/42)は各鼻腔に1つずつ異物があった。
ほとんどの鼻腔内異物(90.5%;38/42)は草のノギだった。3頭(7.2%;3/42)は鉱物、1頭(1/42)は織物だった。35頭のフォローアップで、97.1%(34/35)は臨床症状が解消した。7頭(16.7%;7/42)はフォローアップできなかった。
臨床意義:鼻腔内異物は、7歳までの犬、体重10kg以上の犬でよく見られた。くしゃみが主な臨床症状だった。異物の大多数は草のノギで、鼻鏡は鼻腔内異物回収の効果的な手段だった。(Sato訳)
■75頭の犬の好酸球性気管支炎、好酸球性肉芽腫、好酸球性気管支肺症(2006-2016)
Eosinophilic bronchitis, eosinophilic granuloma, and eosinophilic bronchopneumopathy in 75 dogs (2006-2016).
J Vet Intern Med. 2019 Aug 29. doi: 10.1111/jvim.15605. [Epub ahead of print]
Johnson LR, Johnson EG, Hulsebosch SE, Dear JD, Vernau W.
背景:好酸球性肺疾患は、かなりの病的状態を起こす良く分かっていない炎症性気導疾患である。
目的:エックス線検査、気管支鏡検査、気管支肺胞洗浄(BAL)液の分析を基に定められた好酸球性肺疾患の犬の臨床所見を述べること。カテゴリーには、好酸球性気管支炎(EB)、好酸球性肉芽腫(EG)、好酸球性気管支肺症(EBP)を含めた。
動物:75頭の飼育犬
方法:特発性BAL液好酸球増加の犬に対し、医療記録を回顧的に再検討した。抽出した情報は、臨床症状の持続期間と特質、気管支鏡検査所見、検査データだった。胸部エックス線写真は、浸潤パターン、気管支拡張、リンパ節肥大について評価した。
結果:EBの診断があてられた31頭の犬において、胸部エックス線検査は正常あるいは気管支パターンを示した。9頭は腔内マス病変があり、気管支鏡検査でEGと診断された。残りの35頭はエックス線所見の変化、気導の黄緑色の粘液、粘膜変化、気導虚脱をもとに、EBPであると分類された。年齢と発咳の持続期間に群間の差はなかった。EBの犬は他の2群と比べ、気管支拡張あるいは末梢好酸球増加となる確率は低く、BAL液内の総有核細胞数が少なく、好酸球の比率は低かった。過去の報告とは対照的に、EGの犬の長期生存(>55か月)が実証された。
結論と臨床重要性:好酸球性肺疾患の犬は、画像検査、気管支鏡検査およびBAL液細胞所見で分類できる。それらの群の治療に対する反応を確立する追加研究が必要である。(Sato訳)
■80症例の特発性肺葉捻転の治療後の長期生存性
Long-term Survival After Treatment of Idiopathic Lung Lobe Torsion in 80 Cases
Vet Surg. 2020 May;49(4):659-667.
doi: 10.1111/vsu.13406. Epub 2020 Mar 14.
Matteo Rossanese , Brandan Wustefeld-Janssens , Cleo Price , Ben Mielke , Sam Wood , Nicola Kulendra , Guillaume Chanoit
目的:肺葉捻転(LLT)の治療を行った犬の結果を報告することと、生存性に対する予後因子を判定する
研究計画:4か所の獣医教育病院による回顧的多施設研究
動物:LLTの犬(n=80)
方法:臨床および病理組織所見に対し、医療記録を再調査した。長期結果はオーナーへのアンケートで評価した。肺葉捻転は、病因を基に特発性あるいは二次性に分類した。
結果:最も多かった犬種はパグ(47.5%)とサイトハウンド(16.2%)だった。LLTの原因は、77%で原発性、21%で二次性、2%で不明と考えられた。術後の合併症は14%で記録された。全体で、95%の犬は生きて退院し、フォローアップの中央値は1095日(範囲、7-3809日)だった。93%の犬の結果が優良、89%の犬のQOLが優良とオーナーが評価した。原発性LLTの犬(この研究で中央値に達せず)は二次性のLLTの犬(921日;範囲、7-2073日;P=0.001)よりも長く生存した。
結論:全体的に、LLTに対する肺葉切除後の長期生存性は優良だった。原発性LLTは二次性LLTよりも長期生存に関係した。LLTに対し肺葉切除を行った犬の臨床結果に対する長期のオーナーの評価は優良と考えられた。
臨床的影響:肺葉切除を行った原発性LLTの犬は、二次性LLTの犬よりも長い生存期間で、術後の結果は優良である。(Sato訳)
■パグの成犬及び若年犬の肺葉捻転
Lung lobe torsion in adult and juvenile pugs
Vet Rec Case Rep. July 2018;6(3):e000655.
Andrea Claire Holmes , Mickey Tivers, Karen Humm, Sophie Adamantos
この肺葉捻転(lung lobe torsion:LLT)のパグ13頭のケースシリーズは、文献におけるパグの最も大きなケースシリーズで、発症時、生後12か月前と後の犬を比較した。
過去のケースシリーズと同じで、LLTのパグの年齢中央値は17か月だった;しかし6頭は12か月未満だった(発症時13頭中3頭は11-13週)。性別、不妊状況、罹患した肺葉、臨床症状の持続期間および性質、退院後の生存期間、合併症に関して、12か月未満の発症とその後の発症した犬に違いはなかった。若年性の発現は、いくつかの犬に固有のLLTのリスクがあることを示唆するのかもしれない。
これは、LLTが若年の短頭種動物において直観的診断ではないかもしれないため、興味深く重要で、臨床家はこの通常ではない状況を知っておくべきである。(Sato訳)
■35頭の犬と4頭の猫の肺葉捻転
Lung lobe torsion in 35 dogs and 4 cats.
Can Vet J. 2019 Jan;60(1):60-66.
Benavides KL, Rozanski EA, Oura TJ.
この研究の目的は、手術あるいは剖検で肺葉捻転(LLT)を確認した動物の退院生存率を評価することと、術前浸出液、罹患肺葉、動物の大きさを予後指標として評価することだった。
医療記録の検索で、診断を確認した35頭の犬と4頭の猫を確認し、17頭は小型犬、18頭は大型犬、3頭はイエネコ短毛猫、1頭はミンスキンcatだった。罹患した肺葉は、右中葉(n=18)、左前葉(n=18)、右前葉(n=2)、左後葉(n=1)、副葉(n=1)だった。2頭の動物は手術前に死亡した;残り37頭は開胸した。治療した全ての小型犬と猫は生存した;18頭中12頭の大型犬は生存し、全体の退院生存率は87%だった。この集団で、術前の胸水と罹患した肺葉は、退院生存率に影響しなかった。
LLTの小型犬と猫は開胸後の優れた退院生存率を示すと思われ、大型犬の生存率は良好だと思われる。(Sato訳)
■下部気道炎症に関係する気管支結石症とその後に膿胸を起こした猫の1例
Broncholithiasis associated with lower airway inflammation and subsequent pyothorax in a cat.
JFMS Open Rep. 2018 Jan-Jun;4(1):2055116917746798.
Ferran Valls Sanchez , Jennifer Stewart , Catherine Bovens , Jordi Puig
症例概要:12歳メスの避妊済み家猫短毛猫が、長期にわたる慢性の咳が、ここ2か月で悪化してきたとのことで来院した。胸部エックス線検査で、多数のミネラルの混濁像が肺野の至る所に見られた。気管支鏡検査で淡黄色物質の複数の気管支の栓が存在し、気管支結石症に一致した。気管支肺胞洗浄液の細胞診で、軽度の好中球性炎症を示し、細菌培養は陰性だった。その猫は慢性炎症性下部気道疾患と気管支結石症と診断され、気管支腔内の分泌物の石灰化が原因と思われた。
その猫は経口プレドニゾロンで6年間治療し、治療に良く反応した。6年後、その猫は重度呼吸困難を発症し死亡した。剖検で慢性多病巣性気管支結石症、肺膿瘍、膿胸を認めた。
関連と新規情報:猫で気管支結石症は非常に珍しいものの1つである;しかし、著者らは新規の1症例を報告しており、特に他の一般的な原因が除外され、エックス線像がそれを示唆するときには、猫の慢性発咳に対する鑑別診断として考慮すべきである。
この症例において、肺膿瘍化と膿胸の病因は、少なくともある部分では気管支結石症によるものだと仮説を立てた。胸膜疾患は、気管支結石症の1つの合併症と考えるべきである。(Sato訳)
■犬と猫の急性肺損傷と急性呼吸窮迫症候群の有病率、リスクファクター、管理、結果、検死所見の回顧的評価
Retrospective evaluation of the prevalence, risk factors, management, outcome, and necropsy findings of acute lung injury and acute respiratory distress syndrome in dogs and cats: 29 cases (2011-2013).
J Vet Emerg Crit Care. November 2017;27(6):662-673.
Anusha Balakrishnan , Kenneth J Drobatz , Deborah C. Silverstein
目的:動物の急性肺損傷(VetALI)および動物の急性呼吸窮迫症候群(VetARDS)に対する有病率とリスク因子を判定すること、メカニカルベンチレーションと予後を評価すること、臨床症状と検死所見の関連を評価すること
計画:回顧的研究
場所:大学教育病院
動物:VetALIあるいはVetARDSの臨床診断を受けた24頭の犬と5頭の猫。コントロール集団はVetALIあるいはVetARDS以外の呼吸器疾患の臨床診断を受けた24頭の犬と5頭の猫
介入:なし
測定値と主要結果:ICUを訪れた犬の3.2%と猫の1.3%がVetALIあるいはVetARDSと診断された。全身性炎症反応症候群(犬16/24頭、猫2/5頭)が最も誘発する状況で、嘔吐とその後の胃内容物の吸引(犬9/24頭)、敗血症(犬5/24頭、猫3/5頭)、頻回輸血(犬4/24頭)、外傷(犬3/24頭)、有害薬物反応(犬1/24頭、猫1/5頭)が続いた。コントロールと比較した時、これらの状況のどれもVetALIあるいはVetARDSの発症リスクに有意に関係するとはいえなかった。
12頭の犬(50%)と4頭の猫(80%)はメカニカルベンチレーションを行い、その時間の中央値は犬で18時間(範囲:6-174時間)と猫で15.5時間(範囲:6-91時間)だった。全体で犬2頭、猫1頭の3頭は生きて退院した。
検死結果は犬8/22頭および猫3/4頭で入手できた。合計犬6/8頭(75%)と猫3/3頭(100%)は、VetALIあるいはVetARDSの診断の病理組織学的基準に合っていた。
結論:この研究で、VetALIあるいはVetARDSは犬の50%、猫の80%でメカニカルベンチレーションを必要とする重篤な呼吸困難を起こす可能性がある。それらの疾患は、予後不良および高率の人道的安楽死と関係する。(Sato訳)
■永久気管切開の犬の長期結果と死亡あるいは再手術に関係するリスクファクター
Long-term outcome and risk factors associated with death or the need for
revision surgery in dogs with permanent tracheostomies.
J Am Vet Med Assoc. May 2019;254(9):1086-1093.
DOI: 10.2460/javma.254.9.1086
Janet A Grimes, Anastacia M Davis, Mandy L Wallace, Allyson A Sterman, Kelley M Thieman-Mankin, Samantha Lin, Valery F Scharf, Katelyn C Hlusko, Brad M Matz, Karen K Cornell, Catherine A M Vetter, Chad W Schmiedt
目的:永久気管切開(PTs)の犬における、長期結果を評価し、死亡あるいは再手術に関係するファクターを確認する
デザイン:回顧的コホート研究
動物:4つの獣医教育病院のいずれかで2002年1月から2016年6月の間にPTを受けた飼育犬69頭
方法:医療記録を再検討し、シグナルメント、病歴、臨床症状、エックス線および喉頭検査所見、食道異常の有無、PTを受けた日時と理由、術後合併症、死亡原因、生存期間を含むデータを抽出した。PTを受けた後<2週間生存した犬は除外した。
結果:メジャーな合併症は69頭中42頭(61%)で発生し、吸引性肺炎(13(19%))、皮膚のしわによる閉塞(13(19%))、孔の狭窄(12(17%))が多かった。再手術は69頭中24頭(35%)で実施し、多かった原因は孔の狭窄あるいは皮膚のしわによる閉塞(どちらも9/24(38%))だった。短頭種の犬は、そうでない犬よりも再手術の確率が高かった(OR、3.5;95%CI、1.2-10.2)。総生存期間中央値は1825日で、PTを受ける前にコルチコステロイドを投与されていた犬、気管虚脱の犬、より老齢の犬は生存期間が短かった。
結論と臨床関連:この研究の結果は、PTの作成は、犬の閉塞性上部気導疾患に対する実行可能な治療オプションで、PT実施後長期生存が見込めることを示すが、犬の吸引性肺炎のリスクを減らすことはないかもしれない。(Sato訳)
■喉頭蓋反転の外科的治療を行った犬の術中およびメジャーな術後合併症と生存性:犬50頭(2003-2017)
Intraoperative and major postoperative complications and survival of dogs undergoing surgical management of epiglottic retroversion: 50 dogs (2003-2017).
Vet Surg. 2019 May 20. doi: 10.1111/vsu.13226. [Epub ahead of print]
Mullins RA, Stanley BJ, Flanders JA, López PP, Collivignarelli F, Doyle RS, Schuenemann R, Oechtering G, Steffey MA, Lipscomb VJ, Hardie RJ, Kirby BM, McAlinden AB.
目的:喉頭蓋反転(ER9に対し、外科的に治療した犬の術中およびメジャーな術後合併症を報告すること、各方法のメジャーな術後合併症発生率を比較する、外科的に治療した犬の生存性を報告する
研究デザイン:多施設回顧的研究
サンプル集団:78処置で治療した50頭の犬
方法:2003年から2017年の11施設でERと診断され、外科的に治療した犬の医療記録を再調査した。合併症は術中およびメジャーな術後合併症に振り分けた。
結果:術中合併症は、78処置のうち2処置(2.6%)で発生した。36件のメジャーな術後合併症は、74処置のうち36処置(48.7%)後、22頭で記録された。術後合併症は、非切開性喉頭蓋固定の12処置中7処置(58.3%)、切開性喉頭蓋固定の43処置中23処置(53.5%)、部分的喉頭蓋切開の4処置中2処置(50%)、亜全喉頭蓋切開の12処置中2処置(16.7%)、他の外科処置の3処置中2処置(66.7%)後に発生した。喉頭蓋固定失敗は、もっとも一般的なメジャーな術後合併症だった。メジャーな術後合併症の発生率は、処置間で差はなかった(P=0.1239)が、喉頭蓋固定処置を併用した時(30/55)は、喉頭蓋切開処置(4/16;P=0.048)よりも合併症発生率が高かった。30頭(60%)は生存し、中央値は928日(範囲、114-2805日)で、8頭(16%)は411日(範囲、43-1158日)後に追跡できず、12頭(24%)は301.5日(範囲、3-1212日)後に死亡/安楽死となった。生存期間中央値は、716日の中央値後、到達しなかった。
結論:術中合併症はあまりないが、メジャーな術後合併症は、特に喉頭蓋固定処置後によく見られた。
臨床意義:ERの外科的治療は、高率なメジャーな術後合併症に関係する(特に喉頭蓋固定処置)が、長期生存性を達成できる。(Sato訳)
■10頭の犬の難治性鼻副鼻腔アスペルギルス症のポサコナゾールとテルビナフィンによる治療
Treatment of refractory sino-nasal aspergillosis with posaconazole and terbinafine in 10 dogs.
J Small Anim Pract. September 2017;58(9):504-509.
J Stewart , D Bianco
目的:従来の局所および全身治療に反応しない犬の自然発生鼻副鼻腔アスペルギルス症の治療で、ポサコナゾールとテルビナフィンの安全性と効果を判定する
素材と方法:鼻副鼻腔アスペルギルス症で、従来の治療に反応しない飼育犬10頭に前向きにポサコナゾール5mg/kg1日2回、6か月間投与した。同時に全ての犬はテルビナフィン30mg/kg1日2回とドキシサイクリン5mg/kg1日2回を6-18か月間投与した。
結果:参加した10頭は研究を完了した。治療反応は完全な臨床的寛解(n=7)、部分的な臨床的寛解(n=3)と定義した。2頭は混合治療の中止後に再発した。全ての犬は混合治療開始後、1年以上生存し、8頭はこの文献を書いているときも生存している。臨床的に関連する副作用あるいは肝酵素活性の増加は混合治療中に発生しなかった。
臨床意義:この研究の結果は、犬の難治性鼻副鼻腔アスペルギルス症の治療に対し、この組み合わせの治療が安全で許容性が良いことを示唆する。長期治療で長期生存が可能であるが、再発の可能性はある。より大きな前向き追加研究が、それらの予備的所見を評価するために必要である。(Sato訳)
■肺塞栓症の犬におけるD-dimer濃度の診断的有用性
Diagnostic utility of D-dimer concentrations in dogs with pulmonary embolism.
J Vet Intern Med. 2013 Nov-Dec;27(6):1646-9. doi: 10.1111/jvim.12177. Epub 2013 Aug 28.
Epstein SE, Hopper K, Mellema MS, Johnson LR.
背景:犬の肺塞栓症(pulmonary embolism:PE)は全身性疾患の合併症の1つである。確証的検査がないため、生前診断は困難である。
目的:検死で確認したPEの犬において、D-dimer濃度の診断的有用性を回顧的に判定する
動物:D-dimer濃度を測定しており、検死時にPEと確認した10頭の犬と、検死時にPEではなく、D-dimer濃度が分かっているコントロール犬10頭
方法:電子医療記録データベースで、来院時にD-dimer濃度を測定して、検死時にPEを確認した犬を検索した。年齢、性別、犬種があったコントロール群を確認した。シグナルメント、PEの部位、凝固プロフィールを収集した。感受性、特異性、陰性適中率(negative
predictive value:NPV)、陽性適中率(positive predictive value:PPV)をD-dimer濃度250ng/mLを用いて算出した。
結果:PEのある犬と無い犬で、凝固プロフィールに違いはなかった。D-dimer濃度のカットオフ値として250ng/mLを用いた時、PEの診断に対する感受性は80%、特異性は30%だった。NPVは60%、PPVは53.0%だった。PEの除外に対し、D-dimer濃度<103ng/mLは感受性100%、値なしは特異性100%だった。
結論と臨床意義:D-dimer濃度<250ng/mLはPEがないことに高い感受性を持つが、正常なD-dimer濃度の犬でもPEが発生する可能性がある。D-dimer濃度の上昇はPEに対し特異的ではない。(Sato訳)
■誤嚥性肺炎の猫の臨床およびエックス線所見:28症例の回顧的評価
Clinical and radiographic findings in cats with aspiration pneumonia: retrospective evaluation of 28 cases.
J Small Anim Pract. 2019 Mar 6. doi: 10.1111/jsap.12990. [Epub ahead of print]
Levy N, Ballegeer E, Koenigshof A.
目的:猫の誤嚥性肺炎の臨床的症候群を述べることと、可能性のある素因を記録すること
素材と方法:「誤嚥性肺炎」あるいは「気管支肺炎」の診断で、猫の回顧的医療記録腱索を実施した。完全な医療記録があり、誤嚥性肺炎に相当する肺の変化を示す3方向胸部エックス線写真があり、肺や心臓の疾患の他の原因を示唆する他のエックス線あるいは身体検査所見がない猫を含めた。
結果:28症例を確認した。可能性のある素因状況は:嘔吐(12頭;43%)、麻酔(5頭;18%)、経腸栄養(5頭;18%)、既存の食道疾患(4頭;14%)、神経学的疾患(2頭;7%)、喉頭疾患(1頭;3.6%);15頭(53%)は1つ以上の素因状況を持っていた。最もよく影響を受けた肺葉は、右中葉(18頭;64%)、続いて左前葉(16頭;57%);16頭(57%)は複数の肺葉が冒されていた。ほとんどの猫は生存して退院(25頭;89%)し、入院日数の中央値は3日だった。
臨床意義:猫の誤嚥性肺炎発症で可能性のある素因は、犬の集団の記録と同じである。猫の誤嚥性肺炎は、嘔吐、麻酔、経腸栄養を受けた後に起こる。抗生物質や支持療法による生存率は高く、この研究で89%の猫が生きて退院した。(Sato訳)
■圧迫性胸腔内マスの緩和のための両側性気管支ステントを設置した猫の1症例 フルテキスト
Bilateral bronchial stent deployment for palliative treatment of a compressive intrathoracic mass in a cat.
JFMS Open Rep. 2018 Jan-Jun;4(1):2055116917753816.
Kieran Borgeat , Kerry Simpson , David Reese , Helen Wilson , Joanna Potter , Daniel Ogden
症例概要:腔外圧迫の臨床症状緩和に気管支ステントが有効かもしれない。ここで我々は、知っている限り、両側気管支ステントを臨床的に使用している最初の猫の1症例を述べる。主に気管支圧迫の呼吸器症状は、ステント処置後に軽減した。マイナーな合併症は発生した、特に:ステント設置中の重度低酸素;おそらくベンチレーション誘発性肺傷害に関連する一時的な自己限定性の術後気胸;気管支肺炎(おそらく既存);術後の発咳の一時的悪化。ステントは長期に良く許容した。その猫は、おそらくは腫瘍の食道への進行による機能障害に関連する吐出の臨床症状により、ステント処置から44週目に安楽死された。
関連と新規情報:この症例において、腔外気管支圧迫に関連する呼吸器症状において、気管支ステントは実行可能で、その処置は長期改善をもたらすと思われた。(Sato訳)
■短頭種気道閉塞症候群による二次的な重度喉頭虚脱の犬15頭の永久的気管開口術の長期結果
Long-term outcome of permanent tracheostomy in 15 dogs with severe laryngeal collapse secondary to brachycephalic airway obstructive syndrome.
Vet Surg. July 2018;47(5):648-653.
DOI: 10.1111/vsu.12903
Matteo Gobbetti , Stefano Romussi , Paolo Buracco , Valerio Bronzo , Samuele Gatti , Matteo Cantatore
目的:短頭腫気道閉塞症候群による二次的な重度喉頭虚脱の治療に対し、永久的気管開口術の長期予後を報告する
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:永久的気管開口術で治療した重度喉頭虚脱の短頭種犬15頭
方法:フォローアップデータは医療記録あるいは電話によるオーナーとの会話で入手した。生存期間中央値の算出にはカプランマイヤー法を使用した。死亡は気管開口術と関係、あるいは無関係で分類した。合併症は、命にかかわるもの、あるいは修正手術が必要な時にメジャーと分類した。オーナーには術後の分類としてQOLの改善、変化なし、悪化および開口部の管理で単純あるいは大変かどうかを尋ねた。
結果:生存期間中央値は100日だった。メジャーな合併症は、15頭中12頭(80%)で診断され、8頭は死亡(生存期間中央値15日)および4頭は修正手術が必要だった。15頭中7頭(47%)は関係のない原因で死亡あるいは研究終了時に生存していた(生存期間中央値1982日)。9頭の術後のQOLは顕著に改善と判断された。開口部の管理は、8頭の犬で単純、4頭の犬で大変と報告された。
結論:短頭種犬の永久的気管開口術は合併症および術後死亡のリスクが高かった。しかし、良好なQOLで長期生存(5年以上)は15頭中5頭で証明された。
臨床意義:より保存的手術で改善しなかった重度喉頭虚脱の短頭種犬において、永久的気管開口術は、適当な救済オプションである。(Sato訳)
■9歳ヨークシャーテリアに見られた呼吸器上皮の鼻咽頭嚢胞
[Nasopharyngeal cyst of the respiratory epithelium in a 9-year-old Yorkshire
terrier].
Nasopharyngeale Zyste des respiratorischen Epithels bei einem 9 Jahre alten Yorkshire Terrier.
Language: German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. April 2017;45(2):109-114.
Alexander Acker , Cetina Thiel, Kernt Kohler, Kerstin von Puckler, Andreas Moritz, Martin Kramer
9歳のヨークシャーテリアにおいて、鼻咽腔の呼吸上皮のシストを診断した。呼吸困難を起こす鼻咽腔の完全閉塞がCTと内視鏡で検出された。シスト壁の最小侵襲アブレーションを内視鏡ガイド下で実施し、その後病理組織検査を行った。シストの切除後すぐに、臨床徴候は解消した。手術から3か月後の内視鏡検査で異常はなかった。この症例において、シスト壁の最少侵襲の内視鏡アブレーションはうまくいく治療法だった。(Sato訳)
■漏斗胸:10頭の子猫の前向きコホートにおいてCTおよび中期手術結果
Pectus excavatum: computed tomography and medium-term surgical outcome in a prospective cohort of 10 kittens.
Language: English
J Feline Med Surg. August 2016;18(8):613-9.
Timothy M Charlesworth , Tobias Schwarz , Christopher P Sturgess
目的:この研究の目的は、子猫の漏斗胸(pectus excavatum:PE)の重症度を評価するため、臨床症状と共にCT検査の使用を報告することと、外科手術決定をガイドすること;また、外科的矯正を行った子猫の前向き集団で中期結果を報告することだった。
方法:これは中程度/重度PEと診断された10-15週齢の子猫(n=10)の前向き研究だった。
結果:CT検査は外科的矯正に対する患者の選択、外科手術の計画に対し有益な追加情報を提供する。従来のエックス線インデックス(椎体、前頭矢状面)は、CTで判定した様相の妥当な近似値を提供するが、それらは臨床症状の程度と関連があまりないように思える。子猫は側方に変形していることが多く、臨床症状の重症度は低いが、正中の変形はより重度である。重度PEの子猫7頭中6頭は、4週間腹側にスプリントを当て、中期結果は優秀だった。
結論と関連:正中の胸骨偏位による拡張期充満の制限は、PEの猫において運動不耐性の重要な原因となるかもしれない。罹患猫の評価、示された時の手術の計画を行うのにCTが使用できる。(Sato訳)
■後天性特発性喉頭麻痺の犬の術後早期吸引性肺炎の発生に対するメトクロプラミドの効果
Effect of Metoclopramide on the Incidence of Early Postoperative Aspiration Pneumonia in Dogs with Acquired Idiopathic Laryngeal Paralysis.
Language: English
Vet Surg. July 2016;45(5):577-81.
Milan Milovancev , Katy Townsend , Jason Spina , Connie Hurley , S Christopher Ralphs , Brian Trumpatori , Bernard Seguin , Kieri Jermyn
目的:片側披裂軟骨側方化を行った犬の術後短期における吸引性肺炎の発生に対し、メトクロプラミドの周術期静脈持続点滴(continuous
rate infusion:CRI)の効果を評価する
研究計画:前向き無作為化多施設臨床試験
動物:術前の胸部エックス線検査が正常な特発性喉頭麻痺の飼育犬61頭
方法:一定の麻酔、鎮痛、管理プロトコールで全ての犬に片側披裂軟骨側方化を行った。処置群の犬には、周術24時間メトクロプラミドの静脈CRIを行った。全ての犬は、抜糸の時点(術後10-14日)で身体検査とオーナーの聞き取りに基づき、吸引性肺炎の臨床症状に対して評価した。吸引性肺炎を疑われた全ての犬は胸部エックス線検査を実施していた。
結果:術後短期間に6頭の犬が吸引性肺炎を発症し(コントロール犬2/28、処置犬4/33)、総発生頻度10%でコントロールと処置犬に有意差はなかった。この研究で測定した変数においてコントロールと処置犬に有意差はなかった。
結論:この研究で使用した用量で周術期のメトクロプラミド投与は、片側披裂軟骨側方化を行った特発性喉頭麻痺の犬の術後短期の吸引性肺炎発生率に影響しなかった。(Sato訳)
■短頭種症候群
Brachycephalic Syndrome.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):691-707.
Gilles Dupre , Dorothee Heidenreich
短頭種症候群を呈する動物は、多レベルの気道閉塞と二次的な構造の虚脱に見舞われる。狭窄した鼻孔、変形した鼻甲介、鼻咽頭虚脱、軟口蓋延長と肥厚、喉頭虚脱、左気管支虚脱は異常に関係する最も一般的なものと述べられている。鼻形成および口蓋形成とより新しい外科方法および術後ケア計画は中年齢の犬でも、予後の有意な改善をもたらせている。(Sato訳)
■短頭種症候群の新しいアプローチ。2レーザーアシスト鼻甲介切除(LATE)
A Novel Approach to Brachycephalic Syndrome. 2. Laser-Assisted Turbinectomy
(LATE).
Vet Surg. February 2016;45(2):173-81.
Gerhard U Oechtering; Sabine Pohl; Claudia Schlueter; Riccarda Schuenemann
目的:短頭種の犬における鼻腔内路開存性を改善する閉塞した鼻甲介組織のインターベンショナルレーザーアシスト切除を基にした新しい手術方法を紹介することと、CTおよび鼻鏡を用いた短期および長期結果を確認する
研究計画:前向き臨床研究
動物:短頭種症候群により重度呼吸困難の治療で紹介された犬(n=158;パグ70頭、フレンチブルドッグ77頭、イングリッシュブルドッグ11頭)
方法:鼻腔内閉塞を評価するためCT検査と前部および後部鼻鏡検査を実施した。ダイオードレーザーを用いてレーザーアシスト鼻甲介切除(LATE)を複数の段階からなる手術の一部として実施した。気道閉塞を起こしていた鼻甲介を切除した。
結果:鼻甲介の閉塞部分は、全ての犬で開存した鼻道を形作り、LATEで安全に効率的に除去した。新しく開発した術式は3段階からなる:(1)鼻甲介腹側の切除;(2)吻側の異常に成長した鼻甲介(RAT)の切除;(3)尾側の異常に成長した鼻甲介(CAT)の切除。この処置の合併症は、158頭中51頭(32.3%)に見られた一時的な術中出血などだった;しかし158頭中2頭(1.3%)のみが一時的タンポナーデを必要としただけだった。6か月後、158頭中25頭(15.8%;パグ1頭、フレンチブルドッグ24頭)で鼻甲介の再発育から再閉塞の恐れのある組織の切除を必要とした。
結論:鼻腔内閉塞のある短頭種の犬において、開存した鼻道を作成するのにLATEは効果的な方法である。(Sato訳)
■犬と猫の肺切除後の呼吸機能と生存性
Postoperative Respiratory Function and Survival After Pneumonectomy in
Dogs and Cats.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):775-81.
Stephanie A Majeski , Michele A Steffey , Philipp D Mayhew , Geraldine B Hunt , David E Holt , Jeffrey J Runge , Philip H Kass , Matthew Mellema
目的:犬と猫で1つの肺葉切除を行った犬と比較して術後すぐの呼吸機能の評価を含め、肺切除の指標とその後の結果を述べる
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:自然発生の肺疾患のある犬(n=16)と猫(n=7)
方法:右あるいは左の肺切除を行った犬と猫の医療記録(1990-2014)を調査した。調べたデータはシグナルメント、病歴、術前診断、手術記載、呼吸機能を含む術後データ、退院後の結果だった。呼吸機能の比較のため、正中胸骨切開(n=15)あるいは肋間開胸術(n=15)で1つの肺葉切除を行った犬の医療記録を調査した。
結果:23症例(犬16頭、猫7頭)が含まれた。先天的(犬1頭、猫1頭)、腫瘍(犬8頭、猫1頭)、感染(犬7頭、猫5頭)疾患のために肺切除を実施した。術後の吸引性肺炎が2頭で起こった;16頭中15頭(94%)の犬と7頭中6頭(86%)の猫は生存して退院した。肺切除後、1つの肺葉切除を行った犬と比べて、有意に高い21%酸素で術後PaO2となり(P=.033)、より低い術後A-a勾配を示した(P=.004)。犬の生存期間(最終追跡調査時、右側打ち切り)の範囲は2日から7年(算出中央値=1868日)で、猫は1日から585日だった。
結論:種々の肺疾患に対して犬と猫の肺切除後すぐの肺機能は許容できるもので、多くは長期に生存期間を伸ばしている。(Sato訳)
■8例の犬の持続的な気胸に対して、自己血パッチ療法を行った症例の回顧的評価
Retrospective evaluation of the use of autologous blood-patch treatment for persistent pneumothorax in 8 dogs (2009?2012)
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2014 Mar-Apr;24(2):215-20. doi: 10.1111/vec.12152.
Oppenheimer N, Klainbart S, Merbl Y, Bruchim Y, Milgram J, Kelmer E
【目的】 持続的な気胸の治療に自己血パッチ(ABP)による胸膜癒着術を用いた8例の犬の臨床経過、結果と成功率を明らかにする。
【研究デザイン】 回顧的症例研究
【場所】 教育大学病院
【動物】 8例の飼い主所有の犬
【介入】 持続的な気胸の犬の非凝固化血を無菌的に頚静脈から採取し、すぐに胸腔に注入した。
【方法と主な結果】 8例中7例で手技は成功した。ABPまでの気胸を示した期間の中央値は4日だった(範囲:2-6日)。気胸は4例で1回の処置ですぐに改善した。胸膜癒着術が3例でもう1回、1例でもう2回実施され、その後4例中3例で改善した。8例の症例で合計13回のABPが実施され、5例(62.5%)で1回目の処置後改善し、追加で行うことで、87.5%の確率で成功した。1例でABPが上手く行かず、入院後の肺炎と進行性病変で処置後3日後に安楽死した。2例で軽度から中程度の合併症を認めたが、双方とも改善した。
【結論】 外科的介入や保存療法に反応しない持続的な気胸の症例に対して、ABPはシンプルで、安価であり、比較的安全な手技である。ABPに続発した感染は2例で認められ、1例で改善した。(Dr.Masa訳)
コメント:自然発生気胸に対しては、外科と非外科的管理で外科的処置の有意に関する報告がありますが(David
A et al., JAVMA, 2002)、持続性気胸や多葉に病変がおよぶ場合、ならびにご家族の希望によっては、経験的にも有用な手段だと思います。
■細菌性肺炎の犬における治療の反応を評価する場合の急性相蛋白の有用性について
The Utility of Acute-Phase Proteins in the Assessment of Treatment Response in Dogs With Bacterial Pneumonia.
J Vet Intern Med. 2016 Dec 29. doi: 10.1111/jvim.14631. [Epub ahead of print]
Viitanen SJ, Lappalainen AK, Christensen MB, Sankari S, Rajamaki MM.
背景 急性相蛋白(APPs)は、炎症の感度の高いマーカーであり、血清C反応性蛋白(CRP)は細菌性肺炎(BP)の犬において有用な診断マーカーであることが最近示された。市中感染による肺炎の人においては、APPsが治療の反応性の評価を補助する追跡マーカーとしての有用性がある。
目的 この研究の目的は、BPの犬における治療の反応のマーカーとしてのAPPの適応性について検討することである。
動物 BPと診断された19頭の犬と64頭の健常犬。
方法 本研究は前向き縦断的観察研究として行われた。BPの自然経過の間、血清CRP、血清アミロイドA(SAA)、ハプトグロビン濃度を追跡した。17頭中8頭については、抗生剤治療の期間を決めるのに(治療はCRPが正常になった後5-7日で中止した)、血清CRPが正常になったことを使用し、退院した17頭中9頭は通常の推奨される方法によって治療した。
結果 最初に測定したすべてのAPPは有意に上昇していたが、上昇の程度は疾患の重症度とは関連がなかった。C反応性蛋白とSAA濃度は、抗菌治療を始めたあと迅速に低下した。血清CRPが正常に戻ることを抗生剤治療の期間の決定に用いると、再発数を増やすことなく治療の期間は有意に短くなった(P=0.015)。
結論と臨床的意義 血清CRPとSAAは回復の過程をよく反映しており、そのため治療反応のマーカーとして使用できる。結果によると、血清CRPが正常になることが、BPの犬の抗生剤治療の期間を決めるのに使用可能かもしれない。(Dr.Taku訳)
■喉頭麻痺の犬の片側披裂軟骨側方化前後の咽頭機能の評価
Evaluation of Pharyngeal Function in Dogs with Laryngeal Paralysis Before and After Unilateral Arytenoid Lateralization.
Vet Surg. November 2015;44(8):1021-8.
Natalia Andrade; Marc Kent; Elizabeth W Howerth; MaryAnn G Radlinsky
目的:正常および特発性喉頭麻痺(ILP)の犬において、片側披裂軟骨側方化前後の食道造影、局所咽頭/喉頭感受性試験、筋電図検査による咽頭および喉頭機能を評価する
研究:前向き対照コホート試験
動物:喉頭麻痺の犬(ILP;n=8)と年齢/犬種を合わせた犬(AB、n=8)、若い犬種を合わせた犬(B、n=8)を採用した
方法:評価は食道造影、局所咽頭/喉頭感受性試験、電気診断検査で行った。食道造影は液体と缶詰で行った。咽頭および喉頭感受性は、麻酔導入時の咽頭/喉頭の粘膜に綿棒を応用することで検査した。全ての犬において、電気性理学的検査は、EMG、直接誘発筋電位、運動神経伝導速度、F波検査を含めた。それらは前後肢、外咽頭筋、軸上筋、咀嚼筋で行った。
結果:局所咽頭および喉頭感受性試験は、年齢をあわせた健康なコントロール犬と比較してLPの犬で低下した。食道造影は頭側および尾側食道の運動機能障害を示した。胃食道逆流は他の2群と比較してILPの犬で有意に多かった。全ての罹患犬において、EMG異常は両側後肢および前肢の骨間筋に限られていた。
結論:ILPの犬は、反回神経(RLN)および傍反回神経(pRLN)機能不全だけでなく、同時に頭側喉頭神経機能不全も存在すると思われる。(Sato訳)
■吸入ステロイドで治療した特発性好酸球性気管支肺疾患の犬の長期的な追跡
Long-term follow-up in dogs with idiopathic eosinophilic bronchopneumopathy treated with inhaled steroid therapy.
J Small Anim Pract. 2016 Jul 28. doi: 10.1111/jsap.12529. [Epub ahead of print]
Canonne AM, Bolen G, Peeters D, Billen F, Clercx C.
背景 犬の特発性好酸球性気管支肺疾患の治療は、長期的な経口コルチコステロイド療法による。副作用を避けるため、吸入ステロイド治療を使用することが増えているが、長期にわたる臨床的な反応と副作用の可能性についてはわずかにしか報告されていない。
目的 好酸球性気管支肺疾患の犬において長期的なフルチカゾンによる臨床反応と副作用を明らかにすること
方法 好酸球性気管支肺疾患の犬の症例群においてフルチカゾン単独療法で少なくとも6ヶ月治療した症例。臨床的な反応と副作用について、身体検査、標準化されたアンケート、ACTH刺激試験によって評価した
結果 6ヶ月から5年間治療されていた8頭の犬を治療した。初期には、すべての犬において咳の改善が認められ、2頭の犬は臨床症状がなくなったままであったが、3頭はよくコントロールされ、3頭は重度の再発を示した。下垂体-副腎軸の抑制はフルチカゾン単独治療で2年以上治療した2頭の犬において認められ、医原性副腎皮質機能亢進症の臨床症状を示した犬が1頭のみ認められた。
臨床的意義 フルチカゾン単独療法は、大部分の犬において初期には改善または寛解させたが、長期的な治療において咳をなくすことができなかった症例も存在した。さらに、そのような治療は下垂体-副腎軸の抑制を起こすようである。最適な治療を決定する為には、フルチカゾンと経口で治療した両方の群を含む前向きでより多くの症例を用いた無作為試験が必要である。(Dr.Taku訳)
■糖尿病でうっ血性心不全の1頭の猫における猫喘息のシクロスポリンによる治療
Treatment of feline asthma with ciclosporin in a cat with diabetes mellitus
and congestive heart failure.
J Feline Med Surg. December 2015;17(12):1073-6.
Laura A Nafe; Stacey B Leach
過去に糖尿病と診断されている5歳の家猫短毛猫が、発咳と呼吸困難を主訴に来院した。
診断検査では、肥大性心筋症によるうっ血性心不全と同時に喘息が認められた。
全ての臨床症状と好酸球性気導炎症は、心不全の治療に対する薬物療法を受けている間に、シクロスポリンの同時経口投与で解消した。
シクロスポリンは、経口グルココルチコイド療法の使用が禁忌と思われる併発疾患(例えば糖尿病、重度心疾患)のある猫で、猫喘息の治療として考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の気管支壁肥厚を評価するCT気管支壁厚と肺動脈径比の精度
Accuracy of a computed tomography bronchial wall thickness to pulmonary
artery diameter ratio for assessing bronchial wall thickening in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):264-71.
David Szabo; James Sutherland-Smith; Bruce Barton; Elizabeth A Rozanski; Olivier Taeymans
CTは発咳、頻呼吸、運動不耐性などの肺症状がある動物を評価するため、動物医療で使用されることが増えているが、動物医療で気管支壁肥厚の定量測定はまだ確認されていない。
犬の慢性気管支炎は、組織学的に気管支壁の肥厚を特徴とする疾患である。慢性気管支炎の16頭の犬と、咳に関係しない状況で来院した72頭の犬の胸部CT像を評価した。気管支壁の厚さと隣接する肺動脈径の比較する比率を左右の前葉と後葉で測定した。
慢性気管支炎あるいは非罹患犬の犬において、左および右の反胸郭、犬の体重、犬の年齢、像のスライス厚、あるいは使用したCT装置に有意差はなかった。慢性気管支炎の犬は、非罹患犬よりも有意に比率が大きかった(P<0.001)。慢性気管支炎および非罹患犬共に、前葉の比率は後葉の比率よりも有意に大きかった(P<0.001)。前葉の比率の受信者動作特性曲線は曲線下面積が0.912で、指間嗜癖粃糠を予測する高い精度を示している。前葉において比率が0.6以上は、慢性気管支炎の存在を予測する感受性は77%、特異性は100%を示し、CTで気管支壁肥厚を支持するときには、このカットオフ値を使用することを提案する。(Sato訳)
■犬の気管の直径と長さの決定に対するエックス線検査とCT検査の比較
Comparison of radiography and computed tomography for determining tracheal
diameter and length in dogs.
Vet Surg. January 2015;44(1):114-8.
James E Montgomery; Kyle G Mathews; Denis J Marcellin-Little; Steve Hendrick; James C Brown
目的:気管ステントのサイズの選択を目的に行われる気管の大きさのエックス線およびCT検査での測定値を比較する
研究計画:交差
動物:犬15頭
方法:気管あるいは呼吸疾患の所見のない犬の屍体の頸部および胸部のCTおよびデジタルエックス線検査を行った。3人の試験者が5か所の気管部位で各々3つの自主的測定値を出し、各屍体の気管の長さを各エックス線写真、CTスキャンで測定も行った。
結果:3人ともCTによる気管測定値はエックス線検査の測定値と比較して平均1.03mm(P<0.01)大きかった。
結論:犬の気管のエックス線検査による測定値は、気管の大きさを常に小さく見積もり、CT測定値の方が気管のステントのサイズを選択するのにより好ましい。(Sato訳)
■3頭の短頭種の犬における上部気道閉塞を起こした鼻腔内類表皮嚢胞
Intranasal epidermoid cyst causing upper airway obstruction in three brachycephalic
dogs.
J Small Anim Pract. August 2014;55(8):431-5.
D Murgia; M Pivetta; K Bowlt; C Volmer; A Holloway; R Dennis
この症例報告は、付加的上部気道閉塞を起こした鼻腔内類表皮嚢胞のある3頭の短頭種の犬について述べる。
犬のいろいろな部位で類表皮嚢胞は述べられているが、著者の知るところでは、鼻腔内類表皮嚢胞は過去に報告されていない。
全ての犬は粘液膿性から出血性の鼻汁を呈した。頭部のMRI検査で、鼻腔を部分的あるいは完全にふさぐ片側性あるいは両側性の嚢胞病変の存在を認め、同側鼻甲介の萎縮も伴っていた。病変のある鼻腔に外側歯槽粘膜アプローチの変法を用いて全ての犬の嚢胞病変を外科的に除去した。各犬において嚢胞内容物の好気性、嫌気性、真菌培養は陰性で、切除組織の組織検査は良性の鼻腔内類表皮嚢胞と一致した。2頭の犬の上部気道閉塞は臨床的に改善した。(Sato訳)
■上部気道閉塞の犬における一時的気管切開時のシリコン製気管瘻ステントの使用
Use of silicone tracheal stoma stents for temporary tracheostomy in dogs with upper airway obstruction.
J Small Anim Pract. November 2014;55(11):551-9.
T Trinterud; P Nelissen; R A S White
目的:上部気道閉塞の犬で、一時的気管切開に対するシリコン製気管瘻ステントの使用例を報告する
方法:シリコン製気管瘻ステントを設置した犬のカルテの回顧的再検討
結果:18頭の犬が3時間から8か月の期間、気管切開口の維持のためシリコン製気管瘻ステントを設置した。記録された術中あるいは手術直後の合併症はなかった。11頭の犬は、36時間から6週間後に単純な牽引でステントを除去し、気管瘻は二次癒合で治癒するまま放置した。18頭中5頭は気管切開に依存していると判断し、ステント設置後5日から8か月の期間ののち、永久的な気管開口への変更を行った。1頭は呼吸機能が悪かったためステントを設置したまま3か月後に安楽死され、1頭は関係のない原因で死亡した。5日間以上ステントを設置した10頭中6頭(60%)において、肉芽組織形成はステントの移動を引き起こした。
臨床意義:シリコン製気管瘻ステントは上部気道閉塞の選ばれた犬において、従来の気管切開に変わるものとして使用できると思われる。5日以上になるステントステントの長期使用は肉芽形成のために推奨されない。部分的気管輪切除の長期結果は不明である。(Sato訳)
■胸腔外気管虚脱の治療で人工気管輪を設置した23頭の犬における長期結果、合併症、疾患の進行
Long-term outcome, complications and disease progression in 23 dogs after
placement of tracheal ring prostheses for treatment of extrathoracic tracheal
collapse.
Vet Surg. January 2015;44(1):103-13.
Hope K Chisnell; Anthony D Pardo
目的:市販されている腔外輪の外科的設置で治療した胸腔外気管虚脱の犬における合併症、長期結果、疾患の進行を報告する
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:犬(n=23)
方法:胸腔外気管虚脱を腔外輪で治療した犬のカルテ(2002-2011)を調査した。術後10か月経って行ったオーナーへの聞き取りで手術への反応、術後臨床症状の進行、薬剤投与の頻度を判定した。長期再評価(術後10か月経過して)で生存犬に対しエックス線検査、必要ならば気管鏡検査を行った。
結果:23頭中、術後22頭が生存して退院した。術後2週間目、長期再評価時で全ての犬の臨床症状は改善していた。14頭(65%)の犬は術後、呼吸器症状に対する内科管理が必要なかった。4頭(17%)の犬は術後のある時点で喉頭麻痺と診断されたが、9%の犬が術後48時間以内に診断された。2頭の犬で以前設置した輪の間に追加の輪を設置し、1頭は胸腔内気管虚脱に対して腔内ステントの設置で治療した。臨床症状の見られる3頭は、気管虚脱の進行と一致した。オーナーでのアンケートによれば、全てのオーナーは手術の結果に満足していた。
結論:重度頸部気管虚脱の市販腔外輪設置による治療は、QOLおよび良好な長期結果に関して全体的な改善を導き、約三分の一の犬は内科管理の継続を必要とする。ほとんどの犬は術後疾患の進行に一致する臨床症状を認めない。(Sato訳)
■草の種子による異物がある44頭の犬と10頭の猫のCT所見
Computed tomographic findings in 44 dogs and 10 cats with grass seed foreign bodies.
J Small Anim Pract. 2014 Nov;55(11):579-84. doi: 10.1111/jsap.12278. Epub 2014 Oct 7.
Vansteenkiste DP, Lee KC, Lamb CR.
目的:草の種子の異物がある犬と猫のCT所見の最近の報告を追加する
方法:CTスキャンを実施し、その後スキャンを含む部位から同入院期間中に草の種を回収した症例の回顧的調査
結果:44頭の犬と10頭の猫の記録を再調査した。ほとんど7月から12月に来院した。臨床症状の持続期間の中央値は4週間(範囲2日から2年)だった。多く見られた臨床症状は軟部組織腫脹(30%症例)、発咳(28%)、くしゃみ(28%)、鼻汁(26%)だった。草の種子を回収した部位は胸郭(35%症例)、鼻腔(31%)、耳(7%)、頭部や頚部の他の部位(22%)、腰下の筋肉(2%)、後肢(2%)だった。草の種子は10症例(19%)においてCT像で視認できた。52症例(96%)のCT像で二次的病変が視認でき、滲出物の収集(37%)、膿瘍(24%)、リンパ節腫大(22%)、肺硬化(20%)が含まれた。4%の動物のCT像は正常に思えた。
臨床意義:気道内の草の種子はCT像で視認できることも多いが、一般に確定診断の方法というよりは二次的病変の部位特定に対してより有効だと思われる。(Sato訳)
■犬と猫の喉頭疾患
Laryngeal disease in dogs and cats.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2014;44(1):19-31.
Catriona MacPhail
喉頭にまつわる最も一般的な疾患過程は喉頭麻痺で、猫よりも犬により多く発生する。喉頭麻痺の診断は、喉頭運動と共に呼吸努力の協調運動と麻酔レベルに対する精密な注意が必要である。外科的披裂軟骨の側化は喉頭麻痺の犬の呼吸とQOLを改善させる。しかし、吸引性肺炎は合併症として認められ、全身性神経障害が進行する可能性がある。
喉頭虚脱は慢性的な上部気道閉塞の全ての原因から起こる可能性があるが、最もよく関係するのは短頭腫気道症候群である。一般的に珍しいのは喉頭腫瘍で犬よりも猫で発生することが多い。(Sato訳)
■慢性の咳が認められる犬と猫における気管気管支ブラシ細胞診と気管支肺胞洗浄:45症例(2012-2014年)
Tracheobronchial brush cytology and bronchoalveolar lavage in dogs and cats with chronic cough: 45 cases (2012-2014).
J Vet Intern Med. 2015 Mar;29(2):526-32. doi: 10.1111/jvim.12566.
Zhu BY, Johnson LR, Vernau W.
背景 末梢気道病変がない場合、慢性の咳がある動物は、正常な気管支肺胞洗浄(BAL)液の細胞診の結果を示す。気管気管支ブラシ細胞診は、より大きな気道における炎症を検出できるが、この方法の評価については獣医学領域であまり行われていない。
目的 慢性の咳のある犬と猫において、気道のブラシ細胞診と気管支肺胞洗浄液の結果を比較すること
動物 慢性の咳の検査のために気管支内視鏡を実施した40頭の犬と5頭の猫
方法 前向き研究。気管支鏡と気管支肺胞洗浄を実施し、そのあと主気道の気管気管支ブラシ採取を行った。BAL液の細胞学的評価とブラシ細胞診の結果について、炎症があるかないか、炎症細胞の種類が一致するかについて比較した。
結果 ブラシ細胞診では、炎症性のBAL液が得られた40頭の犬のうち34頭(85%)において、主気道の炎症が認められた。しかし、炎症の種類は34頭中23頭において異なっていた。BAL液において炎症が認められた5頭の猫について、4頭においてはブラシ細胞診で炎症が認められたが、全ての猫において炎症の種類は一致しなかった。
結論と臨床的意義 ブラシ細胞診は、炎症があるかについてはBALとよく一致したが、異なる方法によって検出された炎症の種類は通常異なっていた。ブラシ細胞診は、BALに補足情報を加えることができるが、呼吸器疾患の診断と治療における気管気管支ブラシ細胞診の意義についての情報をさらに必要とするであろう。(Dr.Taku訳)
■気管虚脱の犬26頭における自己拡張型ニチノールステントの使用
Use of nitinol self-expandable stents in 26 dogs with tracheal collapse.
Schweiz Arch Tierheilkd. February 2014;156(2):91-8.
J Beranek; H Jaresova; U Rytz
気管虚脱(TC)の治療に自己拡張型ニチノールステントを使用した新しいアプローチの治療を述べる。ニチノールステントを設置した26頭の犬の医療記録を回顧的に再検討した。
TCの程度に関係なく気管の全長をサポートした。1つのステントでは十分気管全体に広がらない症例では2つ重ねたステントを使用した。ステントの適切なサイズを選択する特定のランドマークとして、輪状軟骨のちょうど後方、気管の頭側の放射線透過性部分の直径を測定した。26頭中9頭に2つの自己拡張型ニチノールステントを挿入した;残りの症例の気管は1つのステントのみでサポートした。
臨床症状が再発した26頭中10頭で経過を見るため気管鏡検査を実施した。それらの症例は、ステント破損、肉芽あるいは過剰なステント短縮による二次性の気管狭窄が起こっていた。狭窄している内腔を追加のステント設置で広げることができた。
全気管をサポートすると、インプラントの端でニチノールが破損するリスクを低減するかもしれない。長期間の臨床的改善(26頭中25頭、96%)は他の研究結果に匹敵する。(Sato訳)
■呼吸器症状を呈した502頭の犬から分離した細菌の抗生物質感受性
Antibiotic susceptibility of bacterial isolates from 502 dogs with respiratory signs.
Vet Rec. 2014 Dec 2. pii: vetrec-2014-102694. doi: 10.1136/vr.102694.
Rheinwald M, Hartmann K, Hahner M, Wolf G, Straubinger RK, Schulz B.
本研究の目的は、呼吸器症状を呈した犬から採取した気管支肺胞洗浄液(BALF)サンプルから得た細菌の種類の罹患率を検索し、抗生物質の感受性を明らかにすることである。
呼吸器疾患の症状があり、BALFサンプルの細菌培養および感受性に関連した情報が得られた場合に、臨床例を組み入れた。1989年1月より2011年12月の間に来院した493頭の飼育されている犬のカルテを回顧的に調査した。
35%のサンプルでは、細菌は培養されなかった。培養が陽性であったサンプルから分離した細菌は、Streptococcus種(陽性の31%)、Enterobacteriaceae(Escherichia coli(15%)を含めて30%)、Staphylococcus種(19%)、Pasteurella種(16%)、Pseudomonas種(14%)であった。原発性の呼吸器の病原体としては、Bordetella bronchisepticaが8%の症例で分離された。エンロフロキサシンが、最も感受性があるパターンを示した。全分離の86%およびグラム陰性細菌の87%は、この抗生物質に感受性であった。アモキシシリンクラブラン酸は、グラム陽性細菌において最も高い(92%)感受性パターンを示した。
そのため、細菌性の下部呼吸器感染の犬における経験的または初期治療としては、これらの抗生物質が推奨される。(Dr.Taku訳)
■短頭種の鼻の内部:レーザー補助による鼻甲介切除後の甲介再生と粘膜接触ポイント
Inside the brachycephalic nose: conchal regrowth and mucosal contact points after laser-assisted turbinectomy.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Jul-Aug;50(4):237-46. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6086.
Schuenemann R, Oechtering G.
この前向き観察研究で、短頭種の犬のレーザーアシスト鼻甲介切除(LATE)後の甲介再生と再生した甲介の粘膜接触に関して検討した。
閉塞性鼻甲介のためにLATEを行った80頭の短頭種の犬(パグ41頭、フレンチブルドック39頭)を術後7日と6か月目に内視鏡で評価した。6か月目では、フレンチブルドックの96%とパグの65%の鼻腔で鼻甲介の再生を認めた。フレンチブルドックの方がパグよりも再生のグレードが高かった。閉塞性の再生により修正外科手術をフレンチブルドックの17%、パグの3%で必要とした。接触ポイントの平均数は、手術前のフレンチブルドック3.0、パグ1.7から、甲介再生後のそれぞれ1.2と0.2に減少した。術後、鼻孔の再虚脱が接触ポイントの再発頻度に有意に影響した。
鼻甲介間の粘膜接触により起こる鼻腔内閉塞の治療でLATEは効果的だと証明された。甲介の再生は切除後よく起こるのだが、接触ポイントの数が有意に減少するため、新しい甲介は閉塞を少なくする。まれに再閉塞のために修正手術が必要である。甲介の重要な生理学的機能は非閉塞性再生を望ましいものにする。(Sato訳)
■短頭種の鼻の内部:鼻腔内粘膜接触ポイント
Inside the brachycephalic nose: intranasal mucosal contact points.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 May-Jun;50(3):149-58.
Riccarda Schuenemann; Gerhard U Oechtering
この研究の目的は、短頭種と正常な頭の犬において鼻腔内粘膜接触ポイントの状態を評価することである。合計82頭の短頭腫の犬(パグ42頭、フレンチブルドック40頭)をそれらの鼻腔内粘膜接触に対し鼻鏡で評価し、25頭の正常な頭の犬はコントロール群として評価した。
それらのうち、短頭種の鼻腔162が評価でき、140の鼻腔は鼻腔内構造間の接触があった(87%)。内甲介や中隔甲介粘膜接触ポイントは最も一般に接触が見られた部位だった。フレンチブルドックは鼻腔内あたり平均3つの粘膜接触ポイントを持ち、パグの鼻腔内あたり平均1.7よりも有意に有病率が高かった。中隔の偏移は62%の短頭種の犬に見られた。コントロール群において、粘膜接触ポイントは50の鼻腔のうち7(14%)でしか見られず、中隔の偏移はそれら症例の16%で起こっていた。接触ポイントの平均は大きい正常な頭の犬で0.1、小さな頭の犬で0.3だった。
短頭種の犬の鼻腔内粘膜接触は一般的なものとして確認され、過去に報告されていない問題だった。多数の接触ポイントは鼻腔内路の内腔を減少させ、潜在的鼻腔内閉塞を示す。罹患犬はもしかするとレーザーを用いた鼻甲介切除を用い、閉塞している甲介の切除が有効かもしれない。(Sato訳)
■犬における永久的気管開口の長期結果:21症例(2000-2012)
Long-term outcome of permanent tracheostomies in dogs: 21 cases (2000-2012).
Can Vet J. 2014 Apr;55(4):357-60.
Occhipinti LL, Hauptman JG.
上部気道閉塞による永久的気管開口術を受けた犬の長期結果、生存性、合併症をこの回顧的研究で報告する。2施設における12年間での医療記録(n=21)からデータを得た。死亡まで追跡し、合併症、死亡原因、生存期間を報告する。
大きな合併症は50%の犬で報告され、20%の犬は修正手術を受けた。最も一般的な合併症は吸引性肺炎で、修正手術の必要があった。生存期間中央値は328日で、25%の犬は1321日以上生存した。術後様々な時期に家で急死する犬(26%)もいた。
上部気道の末期の患者に対して永久的気管開口は使用可能な方法であるが、術後様々な時期に急死する犬もいて、気道閉塞によるものと考えられる。(Sato訳)
■細菌性呼吸器疾患の犬の診断的バイオマーカーとしての血清C-反応性蛋白
Serum C-reactive protein as a diagnostic biomarker in dogs with bacterial respiratory diseases.
J Vet Intern Med. 2014 Jan-Feb;28(1):84-91. doi: 10.1111/jvim.12262. Epub 2013 Dec 18.
Viitanen SJ, Laurila HP, Lilja-Maula LI, Melamies MA, Rantala M, Rajamaki MM.
背景:C-反応性蛋白(CRP)は犬の主要な急性期蛋白である。健康な動物で血清濃度は低いが、炎症の刺激後に急速に増加する。
目的:この研究目的は、犬の種々の呼吸器疾患においてCRP濃度を調査することと、細菌性呼吸器疾患の診断でバイオマーカーとして使用できるかどうかを判定することである。
動物:呼吸器疾患のある合計106頭の個人的に飼育されている犬(細菌性気管気管支炎(BTB)17頭、慢性気管支炎(CB)20頭、好酸球性気管支肺症(EBP)20頭、犬特発性肺線維症(CIPF)12頭、心原性肺水腫(CPE)15頭、細菌性肺炎(BP)22頭)と72頭の健康なコントロール犬
方法:前向き横断観察研究として行った。血清サンプルでCRPを測定した。診断は臨床および検査所見、診断的画像検査、呼吸器サンプルの細胞診および微生物学的検査のような選択的診断方法、心エコー検査、病理組織検査で確認した。
結果:BTB(中央値、23mg/L;四分位数間領域、15-38mg/L、P=0.0003)、CB(13、8-14、P<0.0001)、EBP(5、5-15、P<0.0001)、CIPF(17、10-20、P<0.0001)、CPE(19、13-32、P<0.0001)の犬およびコントロール犬(14、8-20、P<0.0001)と比較して、BP(121、68-178)の犬のCRP濃度は有意に高かった。CB(P=0.001)、あるいはEBP(P<0.0001)の犬およびコントロール犬(P=0.029)と比べてBTBの犬のCRP濃度は有意に高かった。
結論と臨床意義:それらから、特に細菌性肺炎の診断においてCRPは追加のバイオマーカーとして使用できるポテンシャルがあることを示す。(Sato訳)
■犬の慢性気管支炎
Canine chronic bronchitis.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2014;44(1):107-16.
Elizabeth Rozanski
慢性気管支炎は最低2か月、ほとんどの日に咳をし、特定の原因が認められないと定義される症候群である。老齢の小型犬種に最もよく見られるが、中型犬や大型犬でも認められる。診断検査は、身体検査、血液検査、エックス線検査、気管支鏡による気道検査、細胞検査、培養である。治療は刺激物の暴露を避ける、気道の炎症を減らす、咳のコントロールに向けられる。(Sato訳)
■犬のリンパ球プラズマ細胞性鼻炎におけるアルテルナリア属とクラドスポリウム属の潜在的役割
Potential role of Alternaria and Cladosporium species in canine lymphoplasmacytic rhinitis.
J Small Anim Pract. April 2013;54(4):179-83.
E Mercier; I R Peters; F Billen; G Battaille; C Clercx; M J Day; D Peeters
目的:鼻腔腫瘍のない犬と、リンパ球プラズマ細胞性鼻炎や鼻腔腫瘍の犬の鼻腔粘膜バイオプシーにおける特定真菌DNA量の比較により、犬のリンパ球プラズマ細胞性鼻炎の病因におけるアルテルナリア属とクラドスポリウム属の潜在的役割を評価する
方法:アルテルナリア属とクラドスポリウム属のDNAの検出に定量リアルタイムPCR(qPCR)法を用いた。リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(n=8)、鼻腔腫瘍(n=10)、コントロール(n=10)の犬の鼻腔粘膜バイオプシーを分析した。既知のコピー数の標準曲線を用い、各サンプルのコピー数を算出し、グループの中での違いをKruskal-Wallis検定で評価した。
結果:グループ間で有意差は見つからなかった。低レベルのアルテルナリアDNA(10-100コピー/PCR)は1つのサンプルで検出され、非常に低いレベルのDNA(<10コピー/qPCR)は6サンプルで検出され、21のサンプルは陰性だった。低レベルのクラドスポリウムDNAは2サンプルで検出され、非常に低いレベルのDNAは18サンプルで検出され、8サンプルは陰性だった。
臨床意義:この研究の結果、アルテルナリア属とクラドスポリウム属は犬の鼻腔フローラの一部で、それらの真菌はリンパ球プラズマ細胞性鼻炎の病因に恐らく関与しないことが示された。(Sato訳)
■自然に発症した慢性気管支疾患(猫喘息および慢性気管支炎)の猫に対するブデソニド吸入療法
Inhaled budesonide therapy in cats with naturally occurring chronic bronchial disease (feline asthma and chronic bronchitis).
J Small Anim Pract. 2013 Oct;54(10):531-6. doi: 10.1111/jsap.12133. Epub 2013 Sep 4.
Galler A, Shibly S, Bilek A, Hirt RA.
目的:自然に発症した喘息および慢性気管支炎の猫における吸入ブデソニドの長期使用を紹介し、その効果を査定する
方法:喘息あるいは慢性気管支炎と診断され、1日2回の400μgの吸入ブデソニドを処方している猫43頭の飼育者に連絡を取り、アンケートによる情報を入手した。2か月以上経過しても吸入ブデソニドを投与している19頭の猫は臨床的に再検査し、気圧計による全身体積変動記録および副腎皮質刺激ホルモン刺激検査を行った。
結果:20頭の猫は飼育者により治療が中止されていた。今でも吸入ブデソニドを投与している猫(n=23)は臨床的に改善し、再検査した19頭の猫は治療前よりも有意に基礎PENH(P=0.048)値は有意に低く、PCPenh300(P=0.049)値は有意に高かった。コルチコステロイド誘発の副作用はどの猫にも観察されなかったが、視床下部-下垂体-副腎軸抑制は15頭中3頭で見つかった。
臨床的意義:吸入ブデソニドの治療は良好な耐容性を示し、臨床症状および気圧計による全身体積変動パラメーターの改善をもたらせた。猫の中には吸入ブデソニド療法で視床下部-下垂体-副腎軸の抑制を起こすものもいたが、コルチコステロイドの副作用に起因する臨床症状を示した猫はいなかった。(Sato訳)
■犬の感染性呼吸器疾患における新しい病原体
New and emerging pathogens in canine infectious respiratory disease.
Vet Pathol. March 2014;51(2):492-504.
S L Priestnall; J A Mitchell; C A Walker; K Erles; J Brownlie
犬の感染性呼吸器疾患は一般的で世界で見られる多因性病因の疾患症候群である。
このレビューは犬の呼吸器疾患に関係している6種のウイルス(犬呼吸器コロナウイルス、犬ニューモウイルス、犬インフルエンザウイルス、汎親和性犬コロナウイルス、犬ボカウイルス、犬ヘパシウイルス)と2種の細菌(ストレプトコッカス
zooepidemicus、マイコプラズマ cynos)の概要を示す。いくつかの病原体の原因となる役割は明確である一方で、他のものについては、この複合症候群に対するそれらの病因および寄与を明らかにする目的の調査が継続中である。最近の発見あるいは新規所見を重視して、各病原に対する病因論、臨床疾患、病原性、疫学を述べる。(Sato訳)
■1頭の若い猫に見られた肺線虫感染に関与する可逆性肺高血圧
Reversible pulmonary hypertension associated with lungworm infection in a young cat.
J Vet Cardiol. September 2012;14(3):465-74.
Mark Dirven; Viktor Szatmari; Ted van den Ingh; Rolf Nijsse
10週齢の2頭の子猫が呼吸困難を呈した。2週間後、呼吸困難は悪化し、2頭とも心雑音が発生していた。1頭の子猫は死亡し、剖検で猫肺虫による重度肉芽腫性肺炎および中程度の細気管支炎と細気管支周囲炎を認めた。
心エコー検査、胸部エックス線結果、もう1頭の猫の糞便検査から肺高血圧を伴う猫肺虫感染による重度寄生虫性肺炎と判断した。
ミルベマイシン-オキシムとプラジクアンテルの反復投与で子虫の排泄はなくなり、気管支肺炎と肺高血圧の臨床、エックス線、心エコー症状は解消した。(Sato訳)
■臭化物が関係する下部気道疾患:7頭の猫の後ろ向き研究
Bromide-associated lower airway disease: a retrospective study of seven
cats.
J Feline Med Surg. August 2012;14(8):591-7.
Coralie Bertolani; Juan Hernandez; Eymeric Gomes; Laurent Cauzinille; Agnes Poujade; Alexandra Gabriel
7頭の猫が神経疾患に対する臭化物(Br)療法を開始してから、軽度から中程度の発咳および/あるいは呼吸困難を呈した。呼吸音および喘鳴の増加を示した3頭の猫の胸部聴診は異常だった。1頭の猫の血液検査で軽度好酸球増加を認めた。胸部エックス線写真で多数の猫にperibronchial cuffingサインを伴う気管支パターンを認めた。2頭で気管支肺胞洗浄を実施し、好中球性及び好酸球性炎症が明らかになった。1頭の猫で行った病理検査は内因性脂肪肺炎(EnLP)を示した。
全ての猫は臭化物投与中止後、ステロイド療法で改善した。5頭の猫はステロイドを完全に中止し、臨床症状の再発はなかった。1頭の猫は臨床症状が続いているにもかかわらず治療を中止した。EnLPを呈した猫は続発性気胸を発症し、回復しなかった。
臭化物が関係する下部気道疾患は、治療開始から数か月後に見られる可能性があり、臭化物療法中止後にのみ臨床的改善が起こる。(Sato訳)
■猫の呼吸困難の原因で心臓性と非心臓性の鑑別に対するvertebral heart scaleの使用
Use of the vertebral heart scale for differentiation of cardiac and noncardiac
causes of respiratory distress in cats: 67 cases (2002-2003).
J Am Vet Med Assoc. February 1, 2013;242(3):366-71.
Meg M Sleeper; Risa Roland; Kenneth J Drobatz
目的:猫の呼吸困難の他の原因からうっ血性心不全を鑑別するため、vertebral
heart scale(VHS)システムの有効性を評価する
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:急性呼吸困難の猫67頭
方法:1年間、呼吸困難を理由に急患として評価した飼い猫のカルテを再調査した。研究に含めるに当たり、猫は入院後12時間以内に心エコー検査と胸部エックス線検査の評価を行っているものとした。VHSは各猫で2人の観察者により算出した。シグナルメント、身体検査、心エコー所見は各猫で再調査した。
結果:呼吸困難の猫の心拡大の評価において、2人の観察者の間の一致度は83%だった(k=0.49)。2人の観察者で感受性と特異性を最適にするVHSのカットポイントは同じだった。8.0より大きいVHS値は心疾患を精査するときの一番良いカットポイントで、9.3より大きいVHS値は心疾患の存在に対して非常に特異的だった。8.0-9.3の間の測定値は、呼吸困難の原因のあいまいな部分(すなわち、原因がうっ血性心不全か呼吸器疾患か)で、追加の診断情報を提供するのに最も有効なのは心エコー検査だろう。
結論と臨床的関連:VHSシステムは、不安定な猫において心エコー検査が利用できない、あるいは妥当でない場合、緊急な状況で呼吸困難の原因が心臓性か、非心臓性かを鑑別するのに有効なツールかもしれないと結果は示唆した。(Sato訳)
■細菌による呼吸器疾患の犬の診断マーカーとしての血清C反応性蛋白
Serum C-Reactive Protein as a Diagnostic Biomarker in Dogs with Bacterial Respiratory Diseases.
J Vet Intern Med. 2013 Dec 18. doi: 10.1111/jvim.12262.
Viitanen SJ, Laurila HP, Lilja-Maula LI, Melamies MA, Rantala M, Rajamaki MM.
背景 C反応性蛋白(CRP)は、犬における主要な急性相蛋白である。健常犬において血清濃度は低く、炎症刺激によって急激に増加する。
目的 この研究の目的は、様々な呼吸器疾患の犬においてCRP濃度を測定し、CRPが細菌による呼吸器疾患の診断にバイオマーカーとして使用できるかどうかを決定することである。
動物 呼吸器疾患(17頭の細菌性気管気管支炎(BTB)、20頭の慢性気管支炎 (CB)、20頭の好酸球性気管支肺疾患
(EBP) 12頭の犬特発性肺線維症 (CIPF)、15頭の心源性肺水腫 (CPE)、22頭の細菌性肺炎
(BP))をもつ106頭の飼い犬と72頭の健常コントロール。
方法 この研究は,前向き横断観察研究として実施された。血清サンプル中のCRPを測定した。臨床所見、検査所見、画像所見および、呼吸器サンプルの細胞学的および微生物学的な解析、超音波検査、病理組織学的解析などの方法を選んで確定診断した。
結果 BPの犬 (中央値 121 mg/L、四分位範囲 68-178 mg/L) は、BTB (中央値 23 mg/L、四分位範囲 15-38 mg/L、P = 0.0003)、CB (中央値 13 mg/L、四分位範囲 8-14 mg/L、P < 0.0001), EBP (中央値 5 mg/L、四分位範囲 5-15 mg/L、P < 0.0001), CIPF (中央値 17 mg/L、四分位範囲 10-20 mg/L、P < 0.0001)、CPE (中央値 19 mg/L、四分位範囲 13-32 mg/L、P < 0.0001)、健常コントロール犬 (中央値 14 mg/L、四分位範囲 8-20 mg/L、P < 0.0001)よりも有意に高いCRP濃度を示していた。BTBの犬は、CB(P = 0.001)やEBP(P < 0.0001)の犬および健常犬(P = 0.029)よりも有意に高いCRP濃度を示していた。
結果と臨床的意義 これらの結果は、補助的なバイオマーカーとして、とくにBPの診断において、CRPが使用できる可能性を示唆している。(Dr.Taku訳)
■再発性気胸の治療に胸膜アクセスポートを使用した犬の2例
Use of pleural access ports for treatment of recurrent pneumothorax in two dogs.
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(4):467-71.
Alane Kosanovich Cahalane; James A Flanders
症例記述:8歳去勢済みのオスの雑種犬(犬1)と13歳避妊済みメスの雑種犬(犬2)を自発気胸のために評価した。
臨床的所見:2頭とも発咳、頻呼吸、チアノーゼ、嗜眠、あるいはそれらの組み合わせと共に気管支肺胞呼吸音が低下していた。エックス線検査で2頭とも気胸を認め、犬2においては肺葉の硬化も認めた。胸腔穿刺後、気胸は緩和したが再発した。
治療と結果:犬1は当初胸腔造瘻チューブの設置で治療したが、抜管後に気胸が再発した時点で開胸術を行い、肺胞内嚢胞破裂が疑われたため、左後葉切除を実施して肺胞内嚢胞が組織学的に確認された。
犬2は開胸し、左後葉切除と左前葉の部分切除を行い、びまん性肺気腫と診断された。この犬は肺葉捻転のため右後葉を切除する2度目の手術を行った。
気胸が再発し、追加手術が実行できると考えられなかったとき、胸腔から繰り返し空気を除去するため2頭に胸膜アクセスポートを設置した。ポートは犬1で17日間、犬2で14日間臨床的に使用した。
犬1はポート設置後18日目に気胸が再発した時、もう1回手術をして成功したが、呼吸困難と頻呼吸が再発した17か月後に安楽死された。犬2はポート設置後23か月、それ以上気胸は再発しなかった。
臨床的関連:以上の所見から、犬の自発気胸の管理に胸膜アクセスポートが役立つと思われる。(Sato訳)
■アニマルシェルターで飼育されている猫の上部気道疾患に対するアモキシシリンクラブラン酸、セフォベシン、ドキシサイクリンの効果の比較
Comparison of the efficacy of amoxicillin-clavulanic acid, cefovecin, and doxycycline in the treatment of upper respiratory tract disease in cats housed in an animal shelter.
J Am Vet Med Assoc. July 2012;241(2):218-26.
Annette L Litster; Ching Ching Wu; Peter D Constable
目的:上部気道疾患(URTD)の臨床症状を持つシェルター飼育の猫に対するアモキシシリンクラブラン酸、セフォベシン、ドキシサイクリンの効果を比較する
研究構成:無作為前向き臨床試験
動物:URTDの猫48頭
方法:結膜および鼻のスワブ標本を入手し、培養と感受性試験を行った。1日目、猫を3つの処置群に16頭ずつ無作為に振り分けた:アモキシシリンクラブラン酸(12.5mg/kg、PO、q12h、14日間)、セフォベシン(8.0mg/kg、SC、1回)、ドキシサイクリン(10.0mg/kg、PO、q24h、14日間)。眼鼻汁、くしゃみ、発咳、呼吸困難、挙動、食欲について14日間1日2回スコアーを付けた(0(主観的に正常)から3(顕著に異常))。
結果:分離された細菌のほとんどはマイコプラズマspp(n=22)とボルデテラbronchiseptica(9)だった。アモキシシリンクラブラン酸あるいはドキシサイクリンで治療した猫は、14日目に有意に体重増加していた。ドキシサイクリンを投与した猫は、アモキシシリンクラブラン酸あるいはセフォベシンの猫よりも有意に眼鼻汁スコアー合計が低かった。アモキシシリンクラブラン酸あるいはドキシサイクリンで治療した猫は、セフォベシンの猫よりも有意にくしゃみスコアー合計が低かった。アモキシシリンクラブラン酸で治療した猫は、2日目に有意に挙動および食欲スコアーが低下し、他のグループはより後で低下した(セフォベシンとドキシサイクリン群の挙動スコアーはそれぞれ5日と7日目、食欲スコアーは10日と11日目)。
結論と臨床的関連:上部気道疾患の臨床症状を持つ猫の治療で、セフォベシン1回の皮下投与よりもアモキシシリンクラブラン酸あるいはドキシサイクリンの経口投与の方がより効果的だと思われた。(Sato訳)
■2頭の小型犬に見られた鼻石症
Rhinolithiasis in two miniature dogs.
J Small Anim Pract. June 2012;53(6):361-4.
R Schuenemann; G Oechtering
この症例報告はチワワとペキニーズの2頭に見られた鼻石症を述べる。2頭とも慢性の鼻閉塞と鼻漏を呈した。2頭ともCTスキャンで鼻石がわかり、1頭は内視鏡による摘出、1頭はレーザーアシストの内視鏡外科手術で除去した。チワワの石の成分は炭酸カルシウムだった。ペキニーズは園芸材料の形状から外因性の可能性を確認した。著者の知るところでは、獣医療で鼻石症の最初の報告である。(Sato訳)
■自然発症の慢性気管支疾患(猫喘息および慢性気管支炎)の猫に対する吸入ブデソニド療法
Inhaled budesonide therapy in cats with naturally occurring chronic bronchial disease (feline asthma and chronic bronchitis).
J Small Anim Pract. 2013 Sep 4. doi: 10.1111/jsap.12133. [Epub ahead of print]
Galler A, Shibly S, Bilek A, Hirt RA.
目的 自然発生の喘息と慢性気管支炎の猫において吸引ブデソニドの長期的な使用について調べることとその効果を明らかにすること
方法 喘息または慢性の気管支炎と診断され、吸入ブデソニド 400μgを1日2回ずつ処方された43頭の猫の飼い主に連絡をとり、アンケートによって情報を得た。2ヶ月以上経った後でも吸引ブデソニドを投与されている19匹の猫については、臨床的に再評価し、気圧全身プレチスモグラフィーおよびACTH刺激試験を実施した。
結果 20頭の猫において、治療は飼い主によって中断されていた。吸引ブデソニドを受け続けていた23頭の猫は、臨床的に改善し、再評価した19頭の猫は、治療前より有意に低い(P=0.048)PENH基礎値および有意に高いPCPenh300値(P=0.049)を示した。コルチコステロイド誘発性の副作用が認められた猫はおらず、視床下部下垂体副腎軸の抑制は15頭中3頭において認められた。
臨床的意義 吸引ブデソニドによる治療は耐用性があり、臨床症状と気圧全身プレチスモグラフィーの改善をもたらした。吸引ブデソニド療法は視床下部下垂体副腎軸の抑制を起こす場合があることがわかったが、コルチコステロイドの副作用による臨床症状を示した猫はいなかった。(Dr.Taku訳)
■88頭の特発性喉頭麻痺における犬の腹側喉頭切開による両側喉頭声帯切除
Bilateral Ventriculocordectomy via Ventral Laryngotomy for Idiopathic Laryngeal
Paralysis in 88 Dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Jul-Aug;48(4):234-44.
Cynthia Zikes; Timothy McCarthy
88頭の犬の特発性喉頭麻痺を、腹側正中喉頭切開からの両側喉頭声帯切除で治療した。
この後ろ向き分析の目的は、この方法で外科的に管理した多数の犬の長期追跡調査結果を得ることである。
医療記録と完全なオーナーへのアンケート情報で88頭の短期間(14日)追跡調査結果と42頭の長期間(6か月以上)追跡調査結果を得た。
短期の主要な術後合併症は88頭中3頭(3.4%)で認めた。長期の主要な合併症は42頭中3頭(7.1%)で認めた。手術の結果は93%で非常に満足のいくもので7%は不十分と考えられた。このシリーズの3頭の犬は誤嚥性肺炎を発症した。
腹側正中喉頭切開からの両側喉頭声帯切除は、短期、長期合併症ともに低い発生率だった。この方法の簡単なこと、患者の外科的外傷が少ない、満足のいく結果から、この手術は犬の特発性喉頭麻痺の治療に対する1つのオプションと考慮すべきである。(Sato訳)
■一時的気管開口チューブ設置を行った犬42頭の合併症(1998-2007)
Complications associated with temporary tracheostomy tubes in 42 dogs (1998
to 2007).
J Small Anim Pract. February 2012;53(2):108-14.
I Nicholson; S Baines
目的:気管開口チューブの合併症の種類と頻度を確認し、それらの合併症あるいは悪い結果に関係する要因を判定すること
方法:一時的気管開口チューブ設置を行った犬をデータベースから検索し、その医療記録を精査した。シグナルメント、呼吸器疾患の病歴、診断、手術、チューブのケアの種類と頻度、合併症のタイプ、転帰を記録した。
結果:42件の記録があった。42例中36例(86%)に合併症が発生した。ブルドッグは固定したチューブが他の犬種よりも移動しやすく(P=0.0376)、3つ以上の合併症の種類がある症例は、より合併症が少ない症例よりも通常のケアを多く行った(P=0.0370)。42例中34例(81%)は気管開口チューブの管理に成功しており、チューブ抜去まで生存したか、重大なチューブの合併症がないまま安楽死を選択した。またブルドッグは有意にチューブの設置が不成功になりやすく(P=0.0376)、治療中に重度の徐脈を起こす犬もいた(P=0.0176)。チューブ設置が不成功だった犬は、成功した犬よりも有意に若かった(P=0.0331)。
臨床的意義:犬の気管開口チューブは、高い合併症発生率を示したが、ほとんどの犬は良好な結果を示す。注意深い管理がチューブを設置した犬で、特にブルドッグや治療中に徐脈を呈した犬の結果を改善するかもしれない。(Sato訳)
■短頭種の犬の気道閉塞症候群に関係する喉頭虚脱の外科的管理
Surgical management of laryngeal collapse associated with brachycephalic airway obstruction syndrome in dogs.
J Small Anim Pract. January 2012;53(1):44-50.
R N White
目的:犬のステージIIおよびIIIの喉頭虚脱の管理として、輪状披裂軟骨側方化と甲状披裂軟骨尾-側方化を組み合わせて(披裂軟骨喉頭形成術)使用する方法を述べる
方法:短頭種の気道閉塞症候群に関係した生命を脅かすステージIIあるいはIIIの喉頭虚脱に罹患した12頭の犬の継続的シリーズの回顧的研究
結果:術前に、ステージII虚脱(2/12)あるいはステージIII虚脱(10/12)を肉眼検査で確認した。全ての症例において、左側披裂軟骨喉頭形成術を実施した。2頭の犬は重篤な呼吸機能障害の持続のため、術後に安楽死された。残りの10頭は、その方法で主観的な声門裂の拡大と、それに関連した呼吸機能の改善をもたらした。それらの犬の長期追跡調査結果(中央値3.5年)は、全ての飼い主が犬の呼吸機能、運動耐性、QOLの手術により顕著に改善したと考えていることを示した。
臨床的意義:輪状披裂軟骨および甲状披裂軟骨尾-側方化の組み合わせた方法は、犬のステージIIおよびIII喉頭虚脱の治療に対して有効な方法と思われる。(Sato訳)
■全身性エリテマトーデスに関係する続発性両側喉頭麻痺の犬の1例
Acquired bilateral laryngeal paralysis associated with systemic lupus erythematosus
in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. January 2012;48(1):60-5.
Heather Kvitko-White; Kelley Balog; J Catharine Scott-Moncrieff; Anthony Johnson; Gary C Lantz
4歳避妊済みメスのラブラドールレトリバーが急性呼吸困難で来院し、両側性喉頭麻痺が見つかった。身体検査と生化学検査は全身性エリテマトーデス(SLE)に一致し、喉頭麻痺に対する他の明らかな原因がなかった。その後の免疫抑制および支持療法で、その犬は正常な喉頭機能を取り戻した。6週後の定期検診で、鎮静化の喉頭検査で正常な機能を確認した。SLEに関係する喉頭麻痺はヒトで報告されているが、これは犬のSLEに関係する続発性喉頭麻痺の最初の報告である。(Sato訳)
■家猫短毛種とペルシャ猫の気管のエックス線測定
Radiographic measurements of the trachea in domestic shorthair and Persian
cats.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):881-4.
Gawain Hammond; Mary Geary; Erica Coleman; Danielle Gunn-Moore
気管の径は胸部エックス線写真で評価でき、気管径と骨格測定値の比を基にして犬の気管径を評価する。しかし、猫の参照値の範囲は入手できない。気管の狭小化は重大な臨床問題を引き起こすかもしれないが、犬の気管形成不全は臨床的に無症状で、猫での報告はまれである(中-および短頭種)。気管径と気管:胸郭入口、気管:肋骨を家猫短毛種(DSH)(n=68)とペルシャ猫(n=40)の集団で算出した。
これはそれらの品種のエックス線気管測定値に対する参照値である。正常なDSH猫の気管径は胸郭入口の径の18%であるべきで、ペルシャ猫は20%と提唱される。(Sato訳)
■犬の咽頭粘液嚢胞:14症例
Pharyngeal mucoceles in dogs: 14 cases.
J Am Anim Hosp Assoc. January 2012;48(1):31-5.
Kevin P Benjamino; Stephen J Birchard; Jacqui D Niles; Kimberly D Penrod
この報告は、咽頭唾液腺粘液嚢胞の一連の犬の臨床的特徴を述べる。咽頭粘液嚢胞の犬14頭の後ろ向き研究を実施した。1983年から2003年の間の医療記録からシグナルメント、臨床症状、診断、術式、短期および長期結果に関する情報を再調査した。研究集団で一般的な犬種はミニチュアおよびトイプードルで、79%の犬はオスだった。よくみられる臨床症状は呼吸困難(50%)だった。診断は細針吸引で93%の犬に粘液様物質を認めた。
切除した唾液腺の病理組織検査では、実施した全ての犬にリンパプラズマ細胞性炎症を認めた。43%の犬は咽頭粘液嚢胞と同側に頸部粘液嚢胞があった。
13頭の犬で外科的治療を行い、それは下顎および舌下唾液腺の切除、粘液嚢胞の切除あるいは粘液嚢胞の造瘻術だった。2頭のみ咽頭粘液嚢胞が再発した。
この研究で、咽頭粘液嚢胞は主に小型犬に発生し、呼吸症状を呈すことが多い。多くの犬で手術が成功する。(Sato訳)
■呼吸困難の犬と猫の症例における奇異呼吸と胸膜疾患の関連性:389症例(2001-2009年)
Relationship between paradoxical breathing and pleural diseases in dyspneic dogs and cats: 389 cases (2001-2009).
J Am Vet Med Assoc. 2012 May 1;240(9):1095-9.
Le Boedec K, Arnaud C, Chetboul V, Trehiou-Sechi E, Pouchelon JL, Gouni V, Reynolds BS.
目的 呼吸困難を示す犬と猫において奇異呼吸と自然発生の胸膜疾患がどの程度関連するかを明らかにする
研究デザイン 横断的研究
動物 National Veterinary Schools of Alfort and Toulouse(フランス)において、2001年1月から2009年10月の間に検査され、呼吸困難と記録された犬(195頭)と猫(194頭)。
方法 犬と猫を、奇異呼吸の有無によって2グループに分けた。種毎に層別解析を行なった。罹患した動物のシグナルメントと奇異呼吸の発生について記録した。呼吸困難の犬と猫において、奇異呼吸と胸膜疾患の関連を解析した。
結果 多変量解析によって、胸膜疾患と奇異呼吸の間には強い関連性が認められた(犬のオッズ比は12.6で、95%信頼区間は、4.6-31.2であった; 猫のオッズ比は14.1で、95%信頼区間は,6.0-33.5であった)。
呼吸困難の犬と猫のそれぞれにおける奇異呼吸の有病率は、27%および64%であった。奇異呼吸がある場合およびない場合の呼吸困難の動物における胸膜疾患の発生率は、犬においては49%および9%であり、猫においては66%および13%であった。胸膜疾患の予測という点での奇異呼吸の感度と特異性は、犬において0.67および0.87であり、猫において0.90および0.58であった。奇異呼吸の陽性適中率と陰性適中率は、呼吸困難の犬において0.49および0.91であり、呼吸困難の猫において0.66および0.87であった。奇異呼吸を示す動物における年齢、性別、猫の品種、犬の形態型は、他の呼吸困難の動物と有意差はなかった。
結論と臨床的意義 奇異呼吸は、呼吸困難の犬と猫において胸膜疾患と強い関連が認められた。臨床医は、この臨床症状が認められた場合、適切な緊急処置を実施し、診断法を行なう必要がある。(Dr.Taku訳)
■慢性膿胸の管理として肺切除後の臨床的結果
Clinical outcome following pneumonectomy for management of chronic pyothorax
in four cats.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):762-7.
Abbe H Crawford; Zoe J Halfacree; Karla C L Lee; Daniel J Brockman
肺切除は胸の片側の全肺葉の切除である。試験的開胸および肺切除で管理した猫の慢性膿胸の4症例の臨床所見、治療、結果を報告する。全ての症例は当初胸腔ドレーン設置および抗生物質で内科的に管理した。しかし、内科療法で解消せず、膿瘍部分あるいは顕著な肺葉硬化に一致する診断画像所見を認め外科的管理の決断を支持した。正中胸骨切開による外科的探査を実施し、肉眼による視診を基に、非機能的肺を切除した。3頭の猫は左側肺切除、1頭は右側肺切除を実施した。全ての症例は生きて退院し、長期経過観察で素晴らしいクオリティオブライフが報告された。肺切除を猫はよく許容すると思われる。(Sato訳)
■犬の6分間歩行テストの評価
Evaluation of the 6-minute walk test in pet dogs.
J Vet Intern Med. March 2011;25(2):405-6.
R A Swimmer; E A Rozanski
背景:人医で6分間歩行テスト(6MWT)は障害の程度を客観的に評価し、病気の進行あるいは治療に対する反応の客観的所見を得るのに広く使用される。
仮説/目的:6MWTはペットの犬において実行が簡単で、よく許容するだろう。肺疾患の犬は健康犬よりも歩く距離が短くなるだろう。
動物:病院地域から69頭の健康犬を募集した。軽度から中程度の肺疾患のある6頭を、教育病院で評価のために来院した動物から募集した。
方法:前向き研究。6分間、犬に廊下を歩かせて、その距離を測定した。歩行前と歩行後でパルスオキシメトリーおよび心拍数を記録した。年齢、肢の長さ、ボディーコンディションスコア、体重などの犬の身体的特徴を記録した。健康犬と罹患犬はスチューデントT検定(P<.05)で比較した。健康犬において年齢、身体的特徴、歩行距離で相関を算出した。
結果:健康犬は522.7±52.4m歩行したのに対し、疾患犬(n=6)は384.8±41.0m歩行した(P<.001)。健康犬において身体的特徴と歩行距離の間に低(r=0.13)から中(r=0.27)の相関があった。
結論と臨床意義:6MWTは簡単に実施でき、健康犬と肺疾患の犬を鑑別した。(Sato訳)
■重症疾患関連コルチコステロイド不足を示した敗血症性ショックの犬の1例
Critical illness-related corticosteroid insufficiency in a dog with septic shock
J Vet Emerg Crit Care. Jun 2009;19(3):262-268. 31 Refs
Jamie L. Peyton, DVM, Jamie M. Burkitt, DVM, DACVECC
目的:敗血症性ショックの1頭の犬におけるヒドロコルチゾン反応性低血圧と重症疾患関連コルチコステロイド不足(CIRCI)の症例を述べる
症例概要:誤嚥性肺炎の1頭の犬が昇圧剤に反応しない低血圧を伴う敗血症性ショックを発症した。標準ACTH刺激試験を実施し、CIRCIと一致する鈍化したコルチゾール反応を示した。ヒドロコルチゾン投与から2時間以内にショックから好転し、その後8時間かけて昇圧剤からの完全離脱が達成できた。その犬は回復して退院した。退院から1ヵ月後に実施したACTH刺激試験は、CIRCIの解消と一致する正常な副腎応答性を示した。
新奇情報:これは1頭の犬における自然発症敗血症性ショックに関与するヒドロコルチゾン反応性低血圧と一次的CIRCIの最初の症例報告である。(Sato訳)
■1頭の猫で気管異物の独特な取り除き方法の使用
Use of a unique method for removal of a foreign body from the trachea of a cat.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(6):689-94.
Michelle E Goodnight; Brian A Scansen; Aimee C Kidder; Edward S Cooper; Amy L Butler
症例記述:9ヶ月齢2.96kgの避妊済みメスの家猫長毛種が、気管内異物除去で入院した。
臨床所見:猫は中程度の呼吸困難を示したが、その他は健康に思われた。胸部エックス線検査で気管に異物を認めた。
治療と結果:猫に麻酔をかけ、気管の内視鏡検査で異物の回収を試みた。異物の形と平滑な構造のために、内視鏡による除去は失敗した。その異物の位置と気管切開に関係するリスクを考慮すると、異物の外科的除去は理想的と思われなかった。透視ガイドによりover-the-wireバルーンカテーテルを異物の尾側に設置し、その後バルーンを拡張させて口方向にゆっくり牽引して異物(景観用砂利のかけらと同定)の除去に成功した。猫は異物除去後、酸素補給と支持療法を必要とした。
臨床関連:猫の気管からの異物除去に対し、内視鏡あるいは開胸術に変わる最少侵襲方法として透視技術を使用した。この方法の使用は、処置の間の猫の絶え間ない換気が可能だった。(Sato訳)
■猫の気管支疾患におけるプロペントフィリンの使用:前向き無作為陽性コントロール研究
Use of propentofylline in feline bronchial disease: prospective, randomized, positive-controlled study.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Sep-Oct;46(5):318-26.
Ulrike Stursberg; Isabella Zenker; Silke Hecht; Katrin Hartmann; Bianka S Schulz
プロペントフィリンは、テオフィリンのそれとよく似た気管支拡張作用のあるメチルキサンチン誘導体である。気管支疾患の19頭の猫で研究した。全ての猫は低用量のプレドニゾロンを投与されており、それらのうち10頭にプロペントフィリンを追加投与した。研究終了時にプロペントフィリン投与猫は、観察期間中に聴診スコア、呼吸パターンスコア、エックス線学的気管支マーキングスコアが有意に改善し、咳は少なく、睡眠も少なくなった。コントロール群では有意な変化は見られなかった。この研究は気管支疾患の猫におけるプレドニゾロンとプロペントフィリンのコンビネーション療法がプレドニゾロンの単一療法よりも優れているというエビデンスを提供する。(Sato訳)
■急性呼吸器疾患の犬におけるニューモウイルス
Pneumovirus in dogs with acute respiratory disease.
Emerg Infect Dis. June 2010;16(6):993-5.
Randall W Renshaw, Nancy C Zylich, Melissa A Laverack, Amy L Glaser, Edward J Dubovi
限られた犬の中で循環する呼吸器ウイルスを判定するため、呼吸器疾患のシェルター犬からの鼻および咽頭スワブサンプルを分析した。不明なウイルスを1つ分離した。検査したモノクローナル抗体は、おそらくニューモウイルスだと示した。PCRおよびシーケンス分析は、ネズミニューモウイルスに非常に関連していることを示した。(Sato訳)
■2頭のキャバリアキングチャールズスパニエルの同腹子に見られたニューモシスチス肺炎
Pneumocystis Pneumonia in Two Cavalier King Charles Spaniel Littermates
Aust Vet Pract. March 2009;39(1):2-9. 19 Refs
F. J. Meffert
頻呼吸、発咳、呼吸困難など慢性の間歇的呼吸器症状を持つ2頭のキングチャールズスパニエル同腹子においてニューモシスチス肺炎を診断した。胸部エックス線検査で瀰漫性間質パターンが認められた。ニューモシスチス病原体は、1頭目の剖検時肺組織の細胞および病理組織検査、2頭目は生存中の気管支分泌物の細胞診で確認された。1頭目は診断前に急速に悪化し、安楽死された。2頭目はニューモシスチス肺炎の診断後、2ヶ月目に巨大食道を発症し、持続的吐出のために安楽死された。
著者の知識では、これはキャバリアキングチャールズスパニエル同腹子に見られたニューモシスチス肺炎の最初の報告であり、この犬種における基礎的遺伝性免疫欠損をさらに支持するものである。(Sato訳)
■呼吸困難の神経生理学
The neurophysiology of dyspnea
J Vet Emerg Crit Care. December 2008;18(6):561-571. 108 Refs
Matthew Scott Mellema, DVM
目的:呼吸困難の神経生理学に関する人および獣医文献の再検討と、呼吸困難感の軽減を目的にしたいくつかの新しい治療の薬効に対する所見を提供する
データソース:データソースは科学的レビュー、症例報告、オリジナル研究出版物、最近のリサーチカンファレンスプロシーディングだった。
人総合データ:血中酸素付加レベル依存性機能的MRI技術の使用は、人において空気飢餓により活性化した脳領域は、また恐怖、痛み、渇きの認知による活性化される場所であることを明らかにしている。人の被験者において、肺slowly
adapting receptors (SARs)の発火を高めることが分かっている薬剤は、中枢呼吸衝動を変えることなく呼吸困難感を軽減できることが分かっている。いくつかの小研究も、霧状オピオイドは肺の末梢オピオイドレセプターの活性化を経て明らかに呼吸困難感を低減できると示している。
獣医総合データ:小動物および大動物臨床患者集団に関連するいくつかの動物モデルがある。霧状のSAR感作剤(フロセミド)のラットへの投与は、肺拡張に対するSAR発火を高める。気道閉塞に対する行動的逃避は、軽く麻酔をかけた猫で霧状フロセミドにより治療したときに軽減する。オピオイド作用薬は、犬およびモルモットの気道からアセチルコリンや他の媒介物質の放出を抑制することが示されている。pre-Botzinger Complexの両側破壊のヤギモデルを使用した研究では、空気飢餓起因の現在のパラダイムを支持しない。
結論:獣医患者は、状況に関係する不快感の起源の理解に取り組む呼吸困難のアプローチから利益を得ているかもしれない。いくつかの新しい治療は、呼吸衝動を変えることなく呼吸困難感を軽減する見込みを示している。獣医療でそれら治療の安全性と効果を判定する追加研究が必要である。(Sato訳)
■膿胸を治療した犬における結果の評価:46症例(1983-2001)
Evaluation of outcomes in dogs treated for pyothorax: 46 cases (1983-2001).
J Am Vet Med Assoc. March 2010;236(6):657-63.
Harry W Boothe, Lisa M Howe, Dawn M Boothe, Loren A Reynolds, Mark Carpenter
目的:膿胸の犬に対し、初期の経験的な抗生物質使用の適切さと、結果に対する治療アプローチの影響を調査する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:以下のどちらか一方(n=15)あるいは両方(31)で確認された膿胸の犬46頭:胸水あるいは組織における細胞内細菌(41)および胸水の培養により発見された細菌(36)
方法:1983年から2001年の間に膿胸に対する治療を行った犬の医療記録を調査した。徴候、病歴、臨床症状、治療、画像診断結果、細胞および微生物学的評価に対するデータを入手した。再検査(n=15)、委託獣医師(26)およびオーナー(24)に連絡することで追跡調査した。
結果:最低1回抗生物質および胸腔穿刺(n=7;非侵襲性群)、胸膜洗浄およびヘパリンを併用あるいは併用しない胸腔ドレーン(26;侵襲群)、胸膜洗浄およびヘパリンを併用あるいは併用しない胸腔ドレーンと開胸術(13;外科群)で46頭の犬を治療した。7頭で膿胸は再発し、そのうち5頭は死亡あるいは安楽死された。それぞれの群において短期生存率は29%、77%および92%、長期生存率は29%、71%および70%だった。胸膜洗浄およびヘパリン療法は短期-および長期生存性の見込みを増加させた。抗生物質感受性試験の結果は、経験的な抗生物質選択が35%のリスクで無効であることを示唆した。
結論と臨床関連:この研究の膿胸の犬において、良好な治療効果は外科(短期生存性)および胸膜洗浄、ヘパリン療法(短期および長期生存性)で達成された。犬の膿胸の非侵襲性治療に対して侵襲性治療(外科)はより良い長期結果を導くという仮説は上記所見から支持されなかった。(Sato訳)
■委託された集団における呼吸困難を呈する90頭の猫の原因と予後
Aetiology and outcome in 90 cats presenting with dyspnoea in a referral population.
J Small Anim Pract. September 2009;50(9):466-73.
S Swift, J Dukes-McEwan, S Fonfara, J F Loureiro, R Burrow
目的:呼吸困難は非特異的な重篤症状で、命にかかわることもあり、即座の治療を必要とする。呼吸困難の猫は重大な基礎疾患を持つことが多い。呼吸困難を呈する猫における基礎疾患を検討し、患者の徴候と予後の関連を調査した。
方法:90頭の呼吸困難の猫の医療記録を回顧的に再検討し、原因(心臓、呼吸器、腫瘍、外傷)に基づき異なるグループに振り分けた。臨床症状の持続期間、来院までの期間、入院期間、生存率を分析した。
結果:心臓(38%)、呼吸器(32%)、腫瘍性(20%)疾患が猫呼吸困難の主な原因だった。呼吸器疾患の猫は来院前の臨床症状の持続期間が有意に長かった(P<0.001)。腫瘍の猫は有意に高齢だった(P<0.001)。グループ間で呼吸数の有意差は認められなかった(P=0.154)。心臓聴診において心拍数上昇(P<0.001)および異常は心臓群で認められることが多かった。
臨床意義:猫の呼吸困難で認められる頻度の高い原因は、心臓に続き呼吸器および腫瘍疾患だった。来院時の心拍数、心雑音あるいはギャロップの聴取が心臓性の原因を確認するのに有効である。生存率の改善は呼吸器群で認められ(P=0.027)、一方腫瘍群の猫は最も悪い予後だった。(Sato訳)
■犬における重度バリウム誤嚥の内科および外科管理
Medical and surgical management of severe barium aspiration in a dog
J Vet Emerg Crit Care. December 2008;18(6):639-645. 24 Refs
Stacy D. Meola, DVM, MS, Elisa M. Mazzaferro, DVM, MS, PhD, DACVECC, Brendan McKiernan, DVM, DACVIM, Jason L. Wheeler, DVM, MS, DACVS
目的:犬における硫酸バリウム誤嚥性肺炎の珍しい症例の内科および外科管理を述べる
症例概要:体重33kgの黒ラブラドールレトリバー避妊済みメス5歳がバリウム誤嚥性肺炎の評価で来院した。誤った胃チューブの設置によりバリウム約200mlが尾側肺葉に注入されていた。右後葉、右中葉、副葉肺葉切除を実施し、19日間入院で集中的に管理した。
NEW OR UNIQUE INFORMATION PROVIDED:これは良好な結果が得られた犬における重度硫酸バリウム誤嚥に対する気管支鏡検査、気管支肺胞洗浄、培養、開胸および肺病理組織検査を含む完全な診断作業の最初の報告である。(Sato訳)
■上部気道閉塞の猫の治療における常置気管開口術の結果:21症例(1990-2007)
Outcome of permanent tracheostomy for treatment of upper airway obstruction in cats: 21 cases (1990-2007).
J Am Vet Med Assoc. March 2009;234(5):638-43.
Matthew W Stepnik, Margo L Mehl, Elizabeth M Hardie, Philip H Kass, S Brent Reimer, Bonnie G Campbell, Michael B Mison, Chad W Schmiedt, Clare R Gregory, H Phil Hobson
目的:上部気道閉塞の猫における常置気管開口術の臨床結果を判定する
構成:遡及症例シリーズ
動物:21頭の猫
方法:医療記録から経緯、徴候、臨床症状、術前臨床病理検査の結果、上部気道閉塞の原因、術式、術後合併症、転帰についての情報を再調査した。
結果:上部気道閉塞の原因は、腫瘍(扁平上皮癌(n=6)あるいは悪性リンパ腫(2))、炎症性喉頭疾患(5)、喉頭麻痺(4)、外傷(3)、原因不明の喉頭のマス(1)だった。14頭の猫は術後すぐのあいだに呼吸困難を呈し、呼吸困難の多くは気道の小孔あるいは他の部分の粘液性プラグによるものだった。11頭は死亡し、そのうち6頭は術後入院中に死亡し、5頭は退院後死亡した。多くは腫瘍の進行のために7頭は安楽死され、2頭はこの研究時点で生存していた。残りの2頭は退院後追跡できなかった。全体で、情報が得られた20頭の猫の生存期間中央値は20.5日(範囲、1日-5年)だった。炎症性喉頭疾患のために常置気管開口術を行った猫は、他の理由でその手術を行った猫よりも6.61倍死亡しやすかった。
結論と臨床関連:上部気道閉塞の猫における常置気管開口術は、高い合併症と死亡率に関係する一般的でない方法だったと結果は示した。(Sato訳)
■犬鼻腔副鼻腔アスペルギルス症の最新情報
Update on canine sinonasal aspergillosis
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):901-16, vi. 60 Refs
Dominique Peeters, Cecile Clercx
鼻腔副鼻腔アスペルギルス症は、若年から中年の他は健康な犬で起こる鼻汁のよく見られる原因である。罹患動物の局所免疫機能不全が疑われ、罹患犬の鼻部粘膜におけるインターロイキン-10mRNA発現増加の役割は現在研究中である。画像診断技術の近年の進歩にもかかわらず、その診断のゴールドスタンダードは、内視鏡検査中の真菌プラークの直接視認、または細胞診あるいは組織病理検査による真菌要素の観察である。治療は難しい可能性があるが、非侵襲法によるエニルコナゾールあるいはクロトリマゾールの局所使用が治療の成功率を上げており、罹病率や入院期間を低下短縮させている。(Sato訳)
■猫の膿胸
Feline pyothorax - New insights into an old problem: Part 1. Aetiopathogenesis and diagnostic investigation
Vet J. May 2008;0(0):.
Vanessa R Barrs, Julia A Beatty
猫の膿胸は小動物臨床医が良く遭遇する重篤な緊急疾患である。昔から咬傷からの胸壁穿通が感染の主要ルートとみなされている。新しい情報がこのドクマを脅かしており、猫で口腔咽頭フローラの吸引が胸腔の感染の通常ルートであると示されている。胃腸フローラおよび真菌などの珍しい病原体の役割は、ある症例、特に子猫で確認されている。2部の概説のうち最初は、猫の膿胸の臨床所見をその疾患の原因病理論の理解を改善することに焦点を置き、次に診断的調査の意味について論じる。(Sato訳)
■猫の膿胸-過去の問題に対する新しい洞察
Feline pyothorax - new insights into an old problem: Part 2. Treatment recommendations and prophylaxis
Vet J. May 2008;0(0):.
Vanessa R Barrs, Julia A Beatty
最近まで、猫の膿胸は一般的に予後不良と考えられている。しかし、来院から48時間生存する多くの猫は積極的な医療管理によりうまく治療できることがわかってきている。
この第二章で、この疾患の管理に対する論理的なガイダンスを述べ、特に抗菌剤選択に関して焦点を置く。患畜の安定化、支持療法、胸膜腔ドレナージおよび洗浄のテクニック、外科の適応を概説する。(Sato訳)
■副鼻腔アスペルギルス症と特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎の犬における組織サイトカインとケモカインmRNA発現の違い
Distinct tissue cytokine and chemokine mRNA expression in canine sino-nasal aspergillosis and idiopathic lymphoplasmacytic rhinitis.
Vet Immunol Immunopathol. 2007 May 15;117(1-2):95-105. Epub 2007 Feb 3.
Peeters D, Peters IR, Helps CR, Gabriel A, Day MJ, Clercx C.
特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)と副鼻腔アスペルギルス症(SNA)は、犬の鼻汁の最も一般的な原因に含まれる。両疾患の病因はあまりよく理解されていない。特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)は刺激物、汚染物質あるいはアレルゲンの吸引に対する慢性炎症反応であると言われているが、特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)のほとんどの症例がアスペルギルス症(SNA)の診断未確定症例であるという人もいる。局所の免疫機能不全が、犬のアスペルギルス症(SNA)において日和見感染を起こしやすくすると考えられている。
この研究は、これらの疾患における病因が同じか異なるのかを決定するために、犬の特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)とアスペルギルス症(SNA)において局所組織免疫応答の性質を観察する。サイトカインとケモカインのパネルをコード化し、mRNAを増幅するよう設計された特別な分析器を使って、 QRT-PCR法で疾患の犬と健常犬の鼻生検から分離したRNAで実行した。
アスペルギルス症(SNA)はコントロールと比べてIL--6, IL-8, IL-10, IL-12p19, IL-12p35, IL-12p40, IL-18, IFN-γ, TNF-α, TGF-β, eotaxin-2そして全ての4つの単球化学遊走蛋白(MCPs)をエンコードしているmRNAの発現を有意に増加させた。特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)はコントロールと比べてIL-5, IL-8, IL-10, IL-12p19, IL-12p40, IL-18, TNF-α, TGF-β, 単球化学遊走蛋白-2(MCP-2)と単球化学遊走蛋白-3(MCP-3 )をエンコードするmRNAの発現を有意に増加させた。特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)に罹患した犬よりアスペルギルス症(SNA)の犬と比べてIL-6, IL-8, IL-10, IL-12p35, IL-12p40, IL-18, IFN-γ, TNF-α, TGF-βそして全ての単球化学遊走蛋白をエンコードするmRNAの発現がより有意であり、明らかにIL-5の発現が少なかった。
従って、鼻粘膜におけるサイトカインとケモカイン遺伝子発現の特性は、アスペルギルス症(SNA)の犬と特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)の犬とは異なる。アスペルギルス症(SNA)に罹患した犬における鼻粘膜の免疫反応はTh1型であるが、特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)に罹患した犬の鼻粘膜では部分的なTh2免疫反応が起こるように思われる。アスペルギルス症(SNA)の犬におけるIL-10とTGF-β転写物の増加が、アスペルギルス感染を明確にできないことに関連すると考えられる。これらの結果は特発性リンパ球プラズマ細胞性鼻炎(LPR)とアスペルギルス症(SNA)の病因が異なるという最初のエビデンスとなる。(Dr.Kawano訳)
■肺疾患の動物に対する栄養学的考慮
Nutritional considerations for animals with pulmonary disease
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):989-1006, viii. 96 Refs
Scott J Campbell
人や獣医文献で最近発表されていることは、肺疾患の患者は栄養サポートから得られる最適な利益を確保する特別な栄養学的考慮を必要とすることを指摘している。この分野の追加研究は必要であるが、獣医療でこれまで行われたわずかな研究からの情報、および人の文献から推定される情報を使用し、先行して推奨することができる。それらの推奨は、肺疾患の患者にかなりの臨床的利益をもたらす見込みがある。この文献は、入手可能な情報の要点と他の関連情報源への関連を提供するのが目的である。(Sato訳)
■間質性肺疾患
Interstitial lung diseases
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):937-47, vi-vii. 37 Refs
Carol R Reinero, Leah A Cohn
犬猫でいくつかの非感染性非腫瘍性間質性肺疾患(ILDs)が認められている。総体的に犬猫でそれらILDsは特徴があまりないが、臨床症例シリーズの記述をもとにしたその状態の意識は向上していると思われる。肺バイオプシーがILDsの確定診断、特徴づけ、分類できる方法である。組織病理所見は、臨床医に適切な治療を選択させる助けとなり、オーナーに正確な予後を伝えることが可能である。それら肺疾患の確定的な認識をもつことでのみ、臨床経過および治療の反応の知識を改善できる。(Sato訳)
■呼吸画像検査の進歩
Advances in respiratory imaging
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):879-900, vi. 34 Refs
Eric G Johnson, Erik R Wisner
従来のエックス線写真は、いまだ呼吸器疾患の第一診断画像アプローチであるが、CTは鼻部および胸部病的所見を特徴付ける補助的方法として非常に貴重なことが証明されている。従来のエックス線写真と比較するとCTは重なる構造の重複画像をなくし、優れたコントラスト解像度を提供する。それらの利点は、病変のより正確な特徴と位置が分かり、鼻鏡検査、気管支鏡検査、外科的手技のガイドとして貴重である。(Sato訳)
■呼吸器疾患へのアプローチ
Approach to the respiratory patient
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):861-78, v. 49 Refs
Carrie J Miller
呼吸器疾患の犬猫を評価するときいくつかの難題が起こる。病歴は長期になる可能性があり、呼吸器異常を認識または示した時期がわからないオーナーもいる。良い病歴聴取および徹底的な身体検査は評価時に重要である。いくつかの非侵襲的診断法があり、呼吸器疾患の診断の助けになりえるが、他により侵襲的な検査は麻酔が必要で、呼吸器疾患に潜在的な危険となりえる。この文献は呼吸器系の機能を概説し、完全な病歴と身体検査、同様に適切な診断検査を実行することで、犬猫の呼吸器疾患を確認、診断する一番よい方法に焦点を当てる。(Sato訳)
■猫の慢性鼻汁75例 (1993~2004年)
Chronic nasal discharge in cats: 75 cases (1993-2004).
J Am Vet Med Assoc. 2007 Apr 1;230(7):1032-7.
Demko JL, Cohn LA.
目的:猫の慢性鼻汁の最も一般的な病因診断と確定病因診断に関する組織学的、身体検査、他の診断を確認すること。
形式:一連の回顧的症例検討
動物:1ヶ月以上の鼻汁が継続した75例の猫
方法:罹患した猫のカルテから、シグナルメント、臨床徴候、継続期間、鼻汁の種類、身体検査、検査所見、高度画像所見の結果を再検討した。
結果:鼻汁の特異的な病因診断は猫の36%のみで確認された。腫瘍(上皮系腫瘍またはリンパ腫)は最も一般的な病因診断であった。鼻汁の性状と存在部位は特異的な病因診断にあまり貢献しなかった。くしゃみと嘔吐は最も一般的に併発する臨床症状であった。日常的に行われるCBC、血清生化学パネル、尿検査は特異的病因診断に貢献しなかった。病因診断は、高齢の猫、CTやMRIの実施した猫、鼻の生検を行った猫で得られる傾向があった。
結論と臨床関連:CTやMRIと生検などの検査により診断可能例が増える傾向にあるが、猫の慢性鼻汁の原因は分からないままのことも多い。(Dr.HAGI訳)
■受身の喫煙者としての犬:家庭犬における環境タバコ煙への暴露の影響
The dog as a passive smoker: effects of exposure to environmental cigarette smoke on domestic dogs.
Nicotine Tob Res. 2007 Nov;9(11):1171-6.
Roza MR, Viegas CA.
動物に対するタバコの影響に関して入手できるわずかな研究では、研究の大部分ではマスクの使用か気管切開で能動的に喫煙する動物が含まれる。今回の研究では家庭犬における受身の煙の暴露による影響を観察した。27-106ヶ月(M = 38.6+/-15.8)で体重が1.9-4.0kg (M = 3.04+/-0.48)の30頭のヨークシャーテリア(雄18頭)を検体とした。
半分の犬は居住者が最低24カ月少なくとも1日に20本のタバコを吸う家から来た。そして、他の半分は喫煙しない家から来た。細胞集団と大食細胞細胞質内の炭粉症の存在を測定するためにすべての動物の気管支肺胞洗浄をした。さらに気管生検査も実施した。環境のタバコの煙の暴露を特徴付けるため、免疫クロマトグラフィー法で尿中コチニンを測定した。コチニンはタバコの煙に暴露された犬では陽性だったが、タバコの煙に暴露されなかった犬では検出されなかった。タバコの煙に暴露された犬において、マクロファージとリンパ球集団が明らかに(p<.05)増加し、炭粉症がマクロファージの細胞質に観察された。免疫クロマトグラフィー法による尿コチニン濃度の測定は、環境のタバコの暴露を確かめるために使用できる効果的な方法である。
気管支肺胞洗浄液による細胞学的分析によって家庭の動物におけるタバコの煙に対する受動暴露によって惹起された気道の変化が証明された。(Dr.Kawano訳)
■犬好酸球性気管支肺疾患
Canine eosinophilic bronchopneumopathy
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2007;37(5):917-35, vi. 70 Refs
Cecile Clercx, Dominique Peeters
好酸球性気管支肺疾患(EBP)は、気管支肺胞洗浄液細胞標本の検査または気管支粘膜の組織検査で証明される肺および気管支の好酸球浸潤を特徴とする疾患である。EBPの正確な原因は不明だが、空気アレルゲンの過敏症が疑われる。診断は、典型的な病歴および臨床症状、細胞または組織検査による気管支肺好酸球増加の証明、下部気道好酸球増加のわかっている原因の除外に信頼を置く。多くの犬は経口コルチコステロイド療法にすばらしい反応を見せる。しかしこの治療の副作用により制限を受ける可能性がある。新しい治療アプローチが研究されており、エアロゾル療法の使用、シクロスポリン、Tヘルパー2免疫反応を防ぐ薬剤などである。(Sato訳)
■犬における気管虚脱と喉頭麻痺の鑑別のための呼吸音サイン
Sound signature for identification of tracheal collapse and laryngeal paralysis in dogs
J Vet Med Sci. January 2005;67(1):91-5.
Seong-Chan Yeon, Hee-Chun Lee, Hong-Hee Chang, Hyo-Jong Lee
要約
この研究の目的は喉頭麻痺と気管虚脱の犬の上部気道音が、正常な犬と比較して、明瞭な音特性があるかどうかを調査することです。喉頭麻痺の犬5頭の呼吸音と気管虚脱の犬5頭の呼吸音を記録しました。警笛音は気管虚脱の犬における、主な臨床徴候でした。喉頭喘鳴は喉頭神経切除により実験的に作成した喉頭麻痺の犬における主な臨床徴候で、2タイプ、ⅠおよびⅡの喘鳴があり、それを記録しました。これらの音全てを、音スペクトログラム解析を用いて解析しました。通常の咳、2タイプの喘鳴音、警笛音の間に、音の時間(sec)、強度(dB)、高さ(Hz)、第1フォルマント(Hz)、第2フォルマント(Hz)、第3フォルマント(Hz)、第4フォルマント(Hz)において有意差があり、音解析は、気管虚脱と喉頭麻痺の犬に対する有用な診断様式かもしれないと言うことを示唆しております。(Dr.K訳)
■気管虚脱の犬の気管内ステント術
Endotracheal stenting therapy in dogs with tracheal collapse
Vet J. March 2007;0(0):.
Fei Sun, Jesus Uson, Javier Ezquerra, Veronica Crisostomo, Laura Luis, Manuel Maynar
犬の気管虚脱は一般的な呼吸疾患で、典型的に呼吸障害と呼吸困難のエピソードが増える慢性発咳の病歴を呈する。内科治療が選択され、反応がよくないときに外科的修復が考慮される。最小限の侵襲性気管内ステント術は研究をもとに新しい治療とされているが、合併症の可能性を克服するためさらなる改良が求められている。この文献の目的は、人医療と獣医療の気管管腔内ステント術の比較概要を提供する。現在利用可能なステント、動物への臨床応用のそれらの可能性を述べる。(Sato訳)
■膿胸の犬15頭に好結果をもたらした内科治療
Successful medical treatment of 15 dogs with pyothorax
J Small Anim Pract. January 2007;48(1):12-6.
M S Johnson, M W S Martin
目的:膿胸で受診した15頭の犬において、抗生物質と単一胸腔穿刺術を含める、非外科的管理の成功を再検討することです。
方法:獣医循環器センターの症例ファイルより、回顧的に16頭の犬を選択しました。
結果:1頭の犬は超音波検査で肺膿瘍を疑われたマスと診断され、手術を適応しました。15頭の犬は内科的に治療しました。スプリンガー・スパニエルが最もよく見られた品種(6症例)で、続いてラブラドール・レトリバー(3症例)が見られました。鎮静あるいは全身麻酔下で、胸腔穿刺を片側性に行い、化膿性滲出液を可能な限り除去しました。胸腔の洗浄は行いませんでした。殆どの犬で、抗生物質療法は、アンピシリン、平均投与量33mg/kg1日3回と、メトロニダゾール25mg/kg1日2回の投与でした。抗生物質は少なくとも6週間投与しました。全ての犬は完全に回復し、長期追跡調査で再発はありませんでした。これは、著しく広範に胸膜癒着し、最小量の滲出液だった1頭の犬も含まれました。
臨床的意義:肺の腫瘤あるいは硬化がなく、顆粒性胸膜滲出液でない犬において、内科療法は、胸膜癒着を伴う膿胸の慢性症例すら、治癒的であると思われます。(Dr.K訳)
■猫における肺血栓塞栓症
Pulmonary thromboembolism in cats
J Vet Intern Med. 2004 Jul-Aug;18(4):533-5.
Thomas Schermerhorn, Julie R Pembleton-Corbett, Bruce Kornreich
要約
肺血栓塞栓症(PTE)は、猫で診断されることは稀で、その疾患の臨床的特徴は良く分かっておりません。17頭の猫で、剖検時にPTEが診断され、24年間で罹患率は0.06%でした。罹患した猫の年齢範囲は10ヵ月齢から18歳でしたが、若齢(4才以下)と老齢(10才以上)の猫が中年齢の猫よりも、より一般的に罹患しておりました。オスとメスは同じ程度に罹患しておりました。PTEの猫における大部分(n=16)が、しばしば重度な併発疾患を持っておりました。
PTEと関連性が確認された最も一般的な疾患には、腫瘍、原因不明の貧血、そして膵炎がありました。糸球体腎炎、脳炎、肺炎、心疾患、そして肝リピドーシスの猫も、この研究に認められました。PTEの殆どの猫で、死亡、あるいは安楽死に先立ち、呼吸速拍、および呼吸困難が明らかでしたが、PTEは研究に使われたいかなる猫においても、死亡前に承認されませんでした。結論として、PTEはいかなる年齢の猫にも罹患し、種々の全身性炎症性疾患に関連します。犬におけるPTE診断に用いられる、同様の臨床判定基準が、猫にも適用されるべきであるということを推奨します。(Dr.K訳)
■犬の咽頭障害の診断:67症例の遡及研究
Diagnosis of pharyngeal disorders in dogs: a retrospective study of 67 cases
J Small Anim Pract. March 2006;47(3):122-9.
F Billen, M J Day, C Clercx
目的:咽頭障害の分布頻度を調査し、異なる咽頭部分の疾患で起こる臨床症状を比較する。調査法の検討
方法:咽頭部の異常を呈する犬67頭の医療記録を遡及的に再調査し、解剖学的部位により分類した(鼻咽頭、口腔咽頭、喉頭咽頭)。臨床症状、内視鏡所見、追加サンプリングの結果を再検討した。
結果:鼻咽頭障害は最も多く見られ(49%)、そのうち多く診断されたのは後鼻孔mass(33頭中24)で、次いで喉頭咽頭障害(37.5%)、口腔咽頭障害(10.5%)だった。咽頭内開口狭窄のまれな疾患は離して分類した(3%)。総体的に良い相関が、細胞診と組織病理サンプルに見られた。全てのカテゴリーの疾患で、上部気道と消化管両方に関連する臨床症状が報告された。
臨床意義:咽頭障害は多くが鼻咽頭に位置し、特に後鼻孔massが多かった。逆行性検鼻に対するフレキシブル内視鏡の使用が、近位鼻咽頭部の適切な検査に必須である。臨床症状で異なる咽頭部内の咽頭障害の鑑別は出来ない。(Sato訳)
■犬の細胞診による鼻アスペルギルス症の診断:4つの異なる採取法の比較
Diagnosis of canine nasal aspergillosis by cytological examination: a comparison of four different collection techniques
J Small Anim Pract. June 2006;47(6):316-9.
D De Lorenzi, U Bonfanti, C Masserdotti, M Caldin, T Furlanello
目的:犬の鼻アスペルギルス症-ペニシリウム症の細胞学的確認で、4つの異なるサンプル採取法の有益性と診断価値を比較する
方法:持続的鼻汁、アスペルギルス症を示唆する臨床、エックス線所見の病歴を持つ15頭の犬を4つの異なる細胞サンプル採取法を用いて評価した。それらは、鼻汁の直接スメア、全身麻酔下での盲目スワブ採取、直接内視鏡下で疑われる病変のブラッシング、直接内視鏡下で疑われる病変の粘膜バイオプシーの圧平法だった。
結果:直接スメア採取と盲目スメア採取は検査症例のそれぞれ13.3%、20%で真菌菌糸を検出し、ブラシサンプルは真菌菌糸を93%、芽胞を45%検出、圧平サンプルは菌糸を100%、芽胞を36%検出した。
臨床意義:この研究は、鼻アスペルギルス症-ペニシリウム症の診断で直接内視鏡下で採取したときの細胞サンプルの正確性は高いことを確認し、盲目スワブまたは鼻汁のサンプルから作成したものの価値は低いことを示した。(Sato訳)
■犬の鼻咽頭狭窄のバルーン拡張
Balloon dilatation of nasopharyngeal stenosis in a dog
J Am Vet Med Assoc. August 2006;229(3):385-8.
Allyson C Berent, Jennifer Kinns, Chick Weisse
症例記述:術後胃内容の吐出から始まった6ヶ月に渡る上部気道喘鳴のために検査した。
臨床所見:一定の喘鳴は呼気、吸気中に明白で、吸気中がより悪かった。犬の口を手で開けた状態にすると喘鳴は明白でなかった。CT、鼻鏡検査、エックス線透視により鼻咽頭狭窄の診断を確認した。
治療と結果:犬に麻酔をかけ、狭窄のバルーン拡張法を実施した。繊維組織形成を低下させる処置後、4週間プレドニゾンを処方した。犬は当初改善したが、症状は3.5週後に再発し、バルーン拡張を再度実施した。しかし、今回は拡張手技の終わりに狭窄部にトリアムシノロンを注射した。2ヵ月後、犬に喘鳴の臨床症状は見られなかったが、追跡調査のCT画像で軽度の狭窄が見られたため、3回目の手技を実施し、拡張手技の終わりに再び狭窄部にトリアムシノロンを注射した。3回目の手技後3ヶ月、6ヶ月目共に犬は臨床的に正常と聞いている。
臨床関連:これらから犬の鼻咽頭狭窄にバルーン拡張は効果的だと思われる。(Sato訳)
■原発性肺実質疾患を持つ呼吸困難の猫における臨床経過、診断所見、検死診断
Clinical Course, Diagnostic Findings and Necropsy Diagnosis in Dyspneic Cats with Primary Pulmonary Parenchymal Disease: 15 Cats (1996-2002)
J Vet Emerg Crit Care 15[1]:38-47 Mar'05 Retrospective Study 48 Refs
Valerie Sauve DMV, Kenneth J. Drobatz DVM, MSCE, DACVIM, DACVECC, Amy B. Shokek VMD, Alexia L. McKnight DVM, DACVR and Lesley G. King MVB, DACVIM, DACVECC
目的:原発性肺実質疾患の呼吸困難を呈す猫の病歴、診断所見、臨床経過と検死診断の相関性をみる
構成:回顧的研究
実施場所:ペンシルバニア大学Matthew J. Ryan動物病院
動物:胸部X線検査において肺実質疾患を持つ呼吸困難を主訴として集中治療室(ICU)に入院した6ヶ月以上で完全な検死を行った飼育猫
介入:なし
測定および主な結果:猫を肺の組織病理学をもとに2群に振り分けた(炎症n=8、腫瘍n=7)。年齢、体重、臨床症状、臨床症状の持続期間、身体検査所見、胸部エックス線写真、入院期間、治療、転帰に関し、群間の統計学的差はなかった。炎症性肺疾患(11.59k/?l±4.49)よりも腫瘍疾患(26.60k/?l±10.41)の猫の平均総白血球数は統計学的に高かった(P=0.026)。細菌、またはウイルス性肺疾患の猫(5日、範囲1-7日)は、全ての他の猫(30日、範囲7-365日)よりも疾患の持続期間中央値が有意に短かった(P=0.0042)。超音波ガイド下肺針吸引生検(FNA)で5/5症例において正確な診断がなされた。
結論:肺実質疾患の猫の47%は腫瘍があった。死亡前に臨床診断を得ることは困難だった。肺FNAはこれら症例の最も役立つ診断ツールであると思われた。(Sato訳)
■イヌの気管の結節性免疫細胞由来(AL)アミロイドーシス
Nodular Immunocyte-Derived (AL) Amyloidosis in the Trachea of a Dog
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1302-1306 Apr 15'04 Case Report 21 Refs
M. Faulkner Besancon, DVM; Brian A. Stacy, DVM; Andrew E. Kyles, BVMS, PhD, DACVS; Peter F. Moore, BVSc, DACVP; William Vernau, BVMS, DVSc, PhD, DACVP; Sean D. Smarick, VMD; Larry A. Rasor, DVM
去勢済み7歳のミニチュアシュナウザーを、苦しそうな呼吸、虚脱に進行する呼吸困難の病歴で検査した。頚部エックス線写真上で、気管の頚部尾側部の限局性軟部組織のmassが認められ、気管鏡検査中に、背側気管膜から1×1cmの有茎多結節で、ピンク色の腔内massが広がり、気管腔の約80%が閉塞していると思われた。massを取り除くため、気管切除および吻合を実施し、イヌは合併症もなく回復した。組織学検査で、massは大きな均一細胞の集積からなり、大部分プラズマ細胞浸潤にかすかな繊維原性好酸性物質が混ざっていた。チオフラビンTとコンゴレッドの切片染色の検査で、その好酸性物質はアミロイドと確認した。結節性免疫細胞由来(AL)アミロイドーシスの診断がなされた。術後17ヶ月で、気管に関与する髄外プラズマ細胞腫のため、そのイヌの呼吸困難が再発した。(Sato訳)
■犬猫の横隔膜ヘルニアにおける術後の周術死亡率:92症例(1990-2002)
Perioperative Survival Rates After Surgery for Diaphragmatic Hernia in Dogs and Cats: 92 Cases (1990-2002)
J Am Vet Med Assoc 227[1]:105-109 Jul 1'05 Retrospective Study 9 Refs
Thomas W. G. Gibson, DVM; Brigitte A. Brisson, DMV, DVSc, DACVS; William Sears, MS, MSc
目的:入院24時間以内の外傷性横隔膜ヘルニアに対する外科処置を行った犬猫の生存率と、手術のタイミングが周術死亡率に影響するかどうかを判定する
構成:回顧的研究
動物:外傷性横隔膜ヘルニアを外科的に処置した63頭の犬と29頭の猫
方法:医療記録を再検討し、周術生存率と入院に関し手術のタイミングの変化、急性および慢性横隔膜ヘルニアの関係を評価した。
結果:92頭中82頭(89.1%)は術後生存して退院した。64頭(69.6%)は入院12時間以内に手術を受け、84頭(91.3%)は入院24時間以内に手術を受けていた。入院から退院までの日数中央値は4日(2-33日)だった。急性症例のデータ(68頭)を個別に分析した。急性横隔膜ヘルニアの63頭(92.6%)は、病院に入院後24時間以内に手術を受け、それらのうち59頭(93.7%)は生存し、退院した。急性横隔膜ヘルニアの29頭(42.6%)は受傷後24時間以内に手術を受け、29頭中26頭(89.7%)が生存し、退院した。入院24時間以内に手術を受けた犬猫で、急性、慢性全体の周術生存率は89.7%だった。
結論と臨床関連:入院24時間以内に手術を行った犬猫68頭の結果は、急性横隔膜ヘルニアの早期外科的介入が良好な周術生存率をもたらすと示唆した。(Sato訳)
■呼吸と咳反射における鎮咳薬の効果の相違
Difference in the effects of antitussive drugs on respiration and cough reflex
Nippon Yakurigaku Zasshi. 1983 Sep;82(3):213-22
Yanaura S, Kitagawa H, Hosokawa T, Misawa M.
脳幹における咳中枢と呼吸中枢の関係を理解するために、我々は呼吸運動と咳反射においてコデイン、デキストロメトルファン、エプタゾシンとホミノベンなどの鎮咳薬の作用を調査した。軽く麻酔した犬において右側上部の喉頭神経の切断端における電気的な刺激を使用することで咳を引き起こした。薬は椎骨動脈に動脈内投与した。呼吸数(RR)、呼吸の振幅(RA)、呼吸量(RV)そして引き起こされる咳反射の数(NC)と振幅(AC)はインデックスリストとして測定した。
コデインは0.3mgでRR、RVそしてNCの減少をもたらし、さらに1mg でACも減少させた。デキストロメトルファンは0.3mgでRRとRVを増加させ、むしろNCとACを増強させたが、RRとRVを増やしたとしても、3mgではNCとACを減らしました。エプタゾシンは1mgでRA、NCそしてACの減少をもたらし、さらに10mgでRVも減少させた。ホミノベンは0.3-3mgで容量依存的にRR、RAそしてRVを増加させたが、3mgではNCとACを減少させた。これらの調査結果は、鎮咳薬に対する咳反応と呼吸反応の閾値が薬によって異なり、そして、脳幹の呼吸中枢と咳中枢が質的に異なる方法で影響を受けることを示唆する。(Dr.Kawano訳)
■2頭のネコの気道閉塞による二次的な気管狭窄
Tracheal narrowing secondary to airway obstruction in two cats.
J Small Anim Pract 45[1]:29-31 2004 Jan
Fujita M, Miura H, Yasuda D, Hasegawa D, Orima H
2頭のネコの気管狭窄を述べる。2頭は、吸気時X線検査で、胸部入り口のちょうど頭側で気管狭窄が認められた。呼気時X線検査で狭窄は見られなかった。MRIで2頭とも鼻腔腫瘍が疑われたが、気管狭窄部に異常は認められなかった。鼻部バイオプシーで、1頭は鼻腔内リンパ腫、1頭は鼻部腺癌が確認された。前者は化学療法で治療した。後者のオーナーはさらなる治療を望まなかった。鼻腔内リンパ腫のネコの気管狭窄は、化学療法開始後消失し、これは狭窄が鼻部腫瘍に関連していると思われた。特に狭窄に対する気道の注意深い評価が、気管狭窄のネコで推奨される。(Sato訳)
■気管支拡張症のイヌの個体群統計、臨床、エックス線特性:316症例(1988-2000)
Demographic, Clinical, and Radiographic Features of Bronchiectasis in Dogs: 316 Cases (1988-2000)
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1628-1635 Dec 1'03 Retrospective Study 47 Refs
Eleanor C. Hawkins, DVM, DACVIM; Jessica Basseches, MA, DVM; Clifford R. Berry, DVM, DACVR; Martha E. Stebbins, DVM, PhD, DACVPM; Kelly K. Ferris, DVM
目的:イヌの気管支拡張症の個体群統計、臨床、エックス線検査の特徴を判定する
構成:回顧的研究
動物:獣医療データベース(VMDB)で確認できた289頭とノースキャロライナ州立大学獣医教育病院で検査した27頭の犬
方法:VMDBで認められたイヌの個体群統計特性を、VMDBに記録されているイヌの集団全体の特性と比較した。教育病院で検査したイヌの医療記録を再検討した。その診断は胸部エックス線像により確認された。
結果:VMDBのデータ分析で、アメリカンコッカスパニエル、ウエストハイランドホワイトテリア、ミニチュアプードル、シベリアンハスキー、イングリッシュスプリンガースパニエル、10歳以上のイヌで気管支拡張症のリスクが増大することを示した。教育病院で検査したイヌの中で、咳が最も多い臨床症状だった。過度の気道粘液所見があったが出血はなかった。種々の細菌が、気管支洗浄と気管支肺胞洗浄液から分離された。胸部エックス線検査で、円筒状気管支拡張、全体的な病変、右頭側肺葉関与が一般的だった。追跡エックス線写真がある14頭中7頭に、エックス線での病変の進行が見られなかった。気管支拡張症の診断前の臨床症状持続期間の中央値は、9ヶ月(範囲、1日-10年)だった。生存期間の中央値は16ヶ月(範囲、2日-72ヶ月)だった。
結論と臨床関連:結果は、かなりの臨床的異常が見られるにもかかわらず、気管支拡張症のイヌは数年間生存するかもしれないと示唆する。ある種の純粋犬種や老犬は、気管支拡張症発症のリスクが増大するかもしれない。(Sato訳)
■鈍性外傷に遭った犬と猫における、外傷後胸部レントゲン写真の診断的価値と臨床所見
Clinical Findings and Diagnostic Value of Posttraumatic Thoracic Radiographs in Dogs and Cats with Blunt Trauma
J Vet Emerg Crit Care 14[4]:259-268 Dec'04 Retrospective Study 39 Refs
Nadja E. Sigrist, Dr. med. vet., FVH, Marcus G. Doherr, PD, Dr. med. vet., Ph.D., DECVPH and David E. Spreng, PD, Dr. med. vet., DECVS, DACVECC
目的:鈍性外傷を受けた犬と猫における臨床所見を特徴づけ、外傷後胸部レントゲン所見と臨床的呼吸器検査結果を比較することです。
計画:回顧的臨床研究
場所:小動物臨床教育大学病院
動物、介入および測定:2001年9月から2003年5月の間に、鈍性外傷の履歴で来院した63頭の犬と96頭の猫の臨床記録と、胸部レントゲン写真を調査しました。呼吸困難の臨床徴候(呼吸数(RR)、肺聴診)と転帰を鈍性外傷のレントゲン所見と比較しました。
結果:犬の49%と猫の63.5%は、胸部外傷があるとするレントゲン所見を呈しました。犬の22%と猫の28%は、正常なレントゲン写真を呈しました。異常な聴診結果は、胸部外傷のレントゲン所見、レントゲンスコアそして挫傷の存在と程度などと有意に関連しました。その他の損傷がない動物の72%では、胸部レントゲンで、胸部外傷所見を呈しました。レントゲン所見と転帰との間には、いかなる相関もありませんでしたが、来院時の外傷スコアは、転帰、および胸部外傷所見と有意に関連し、レントゲンスコアとは相関しませんでした。
結論:胸部外傷は、多くの鈍性外傷患者において遭遇します。鈍性外傷を受けた動物のRRは、胸部損傷を予測するのに有用ではありませんが、異常な胸部聴診結果は、胸部異常を示します。したがって、完全な胸部聴診は、全ての外傷動物において必須であり、胸部レントゲンの必要性を評価するのに役立つでしょう。(Dr.K訳)
■ネコ喘息の臨床診断を受けたネコの気胸:5症例(1990-2000)
Pneumothorax in Cats with a Clinical Diagnosis of Feline Asthma: 5 Cases (1990-2000)
J Vet Emerg Crit Care 13[2]:95-101 Jun'03 Retrospective Study 24 Refs
Edward S. Cooper, VMD, Rebecca S. Syring, DVM, DACVECC, Lesley G. King,
MVB, DACVECC, DACVIM *
目的:この文献は、気胸の併発により複雑化したネコ喘息を持つ5頭のネコの臨床所見を特徴付ける。
構成:回顧的研究。1990-2000年の間にペンシルバニア大学動物病院に来院し、喘息と気胸の診断を同時に受けたネコの医療記録を再検討した。
結果:ネコ喘息421症例のうち、5等が包括基準を完全に満たした(1.2%)。5頭とも来院時呼吸困難を示した。1頭のネコはパンティングで、4頭のネコの呼吸数はそれぞれ28、52、58、120回/分(bpm)(平均呼吸数65±39bpm)だった。病歴は、無治療の慢性の発咳(n=3)、過去喘息の治療(n=1)、過去の疾患なし(n=1)だった。5頭中4頭に胸腔穿刺を行い、それらのうち3頭には胸部ドレーンを必要とした。
4頭には即座の酸素供給が必要で、1頭にはベンチレーションが必要だった。5頭全頭で最初のエックス線写真に気胸の所見があった。追跡エックス線写真で、4頭に部分的、または完全な気胸の改善が認められ、2-7日の入院で退院したが、それから追跡調査ができなかった。1頭のネコは、機械による人工呼吸がはずせなかったので安楽死し、検死で末期ネコ喘息と肺気腫を確認した。
結論:小気道閉塞は喘息患者に肺胞内圧の増加、気腫、自然気胸を起こりやすくし、そのネコに呼吸困難を導きえる。来院時呼吸困難の程度にかかわらず、それらネコの短期の予後は良かった。(Sato訳)
■3頭のネコに見られた真菌性鼻炎と副鼻腔炎
Fungal Rhinitis and Sinusitis in Three Cats
J Am Vet Med Assoc 222[10]:1380-1384 May 15'03 Case Report 34 Refs
Kamil Tomsa, DVM; Tony M. Glaus, DVM, DACVIM; Cindy Zimmer, Med Vet; Craig E. Greene, DVM, DACVIM
アスペルギルス種またはアオカビ種により引き起こされる鼻腔、または副鼻腔の局所感染を3頭のネコで診断した。慢性の粘液膿性鼻汁、鼻出血、下顎リンパ節障害などの症状が見られた。鼻鏡検査、診断画像検査所見は、鼻粘膜の重度炎症と鼻甲介の破壊像に合致した。鼻鏡検査で2頭のネコに真菌プラークが見られ、バイオプシー標本の組織学的検査で、真菌コロニーを取り巻く炎症性の浸潤が全頭で明らかだった。3頭とも真菌培養の結果は陰性だった。アスペルギルス種の抗体に対する血清免疫電気泳動の結果は2頭のネコで陽性だった。イトラコナゾールの投与は1頭の臨床症状の管理に有効であったが、肝臓中毒症が起こった。クロトリマゾールの鼻腔内単回注入でその後このネコは臨床症状の長期解消が得られた。ネコの局所アスペルギルス症-アオカビ症は、臨床的に他の病原体による鼻腔、または副鼻腔の病変と区別が付きにくく、慢性鼻汁のネコの検査を行うときには考慮するべきである。(Sato訳)
■特発性乳糜胸の治療で、胸管結紮と心膜切除
Thoracic Duct Ligation and Pericardectomy for Treatment of Idiopathic Chylothorax
J Vet Intern Med 18[3]:307-310 May-Jun'04 Prospective Study 12 Refs
Theresa W. Fossum, Michelle M. Mertens, Matthew W. Miller, John T. Peacock, Ashley Saunders, Sonya Gordon, Galen Pahl, Lori A. Makarski, Anne Bahr, and Phil H. Hobson
乳糜胸は破壊的疾患で、内科、外科管理とも成功率は、満足のいく結果が得られていない。乳糜胸の動物で、心膜肥厚が、乳糜から誘発される慢性炎症に関与して起こっているものもある。我々は、心膜の肥厚が、胸管(TD)結紮後、リンパ管伝達を通し乳糜の排液を妨げるよう作用する異常な静脈圧と、右側静脈圧の増加を引き起こすだろうと仮説を立てた。また、罹患動物の胸管結紮後起こる漿液滲出が、心膜切除により効果的に治療、または予防できるという仮説も立てた。
テキサスA&M大学に5.5年間の間に来院した17頭の動物に、胸管結紮と心膜切除を行い、追加の3頭に心膜切除のみを行った。19頭(イヌ9頭とネコ10頭)は、特発性乳糜胸の評価で来院し、1頭は他で行った胸管結紮後の漿液性胸水があった。7頭のネコ、6頭のイヌの心膜肥厚が主観的に認められたほかは、全頭心エコー検査は正常だった。術後イヌ10頭中10頭、ネコ10頭中8頭で、胸水貯留の臨床症状は解消した。この研究の乳糜胸の外科的治療の全体での成功率は(すなわち胸水貯留の解消)、90%だった(イヌ100%、ネコ80%)。それらのデータは、特発性乳糜胸の動物で、胸管結紮と心膜切除の組み合わせが良好な結果をもたらすと示唆する。(Sato訳)
■イヌの膿胸:胸膜の解剖学と異常生理学
Canine Pyothorax: Pleural Anatomy and Pathophysiology
Compend Contin Educ Pract Vet 25[3]:172-179 Mar'03 Review Article 32 Refs
Jason A. Scott, DVM; Douglass K. Macintire, DVM, MS, DACVIM, DAVECC
リンパ、動脈、静脈、毛細血管、弾性結合組織層が胸膜内層や胸膜腔の正常な生理的機能の責任を果たす。Starling's forcesによる胸膜液の移動と胸膜腔内への液体の異常な集積が、それら恒常維持力の変化で起こる。ほとんどの膿胸の感染ルートは不明である。罹患したスポーツ種の多数に見られる、気道の他の部分からの草ノギの回収は、膿胸のよくある原因として草ノギの吸引と移動に支持するものである。(Sato訳)
■イヌの膿胸:臨床症状、診断、治療
Canine Pyothorax: Clinical Presentation, Diagnosis, and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 25[3]:180-194 Mar'03 Review Article 42 Refs
Jason A. Scott, DVM ; Douglass K. Macintire, DVM, MS, DACVIM, DAVECC *
イヌの膿胸の臨床症状は、遅発し、非特異的でありえる。発熱、呼吸困難、体重減少が、身体検査所見でよく見られる。診断はエックス線写真所見と吸引した胸水の分析でなされる。胸膜の感染は、多細菌感染の高い普及を見る。ドレナージや洗浄を行わない抗菌剤療法は膿胸に無効である。かなり治療が遅れると、重度肺機能不全を起こしえ、外科的介入が必要となるかもしれない。予後は、早期診断、積極的な内科および/または外科的治療で中~良である。(Sato訳)
■腔内セルフ-拡張胆管ウォールステントを使用したイヌの進行気管虚脱の管理
Management of Advanced Tracheal Collapse in Dogs Using Intraluminal Self-Expanding Biliary Wallstents
J Vet Intern Med 18[1]:31-42 Jan-Feb'04 Retrospective Study 21 Refs
Andreas Moritz, Matthias Schneider, and Natali Bauer
従来の治療で難治性の気管虚脱の飼育犬24頭を、腔内セルフ-拡張ステンレス内部人工器官(Wallstent)で管理した。臨床症状の初期改善は95.8%のイヌに認められた。2頭(8.3%)のイヌは、ステント移植後中央期間6日以内に、それぞれステントの不適切な設置と大きさ、肺気腫により死亡した。ほとんどのイヌで、乾性の発咳が一時的に発生した。各1頭(4.1%)が、軽度一時的な気管出血、気縦隔を起こした。結果は、腔内安定処置の初期生存率は、気管外人工器官の外科的設置に匹敵することを示した。治療後中央期間68日以内に、18頭のイヌに臨床的再評価を行った。
治療したイヌのうちステント移植後、30.4%は無症候、60.9%は著しく改善、4.3%は症候性のままだった。内視鏡検査を行った全てのイヌで、ウォールステントは、ほぼ完全に気管上皮を覆っていた。18頭中15頭で、ステント移植後175日の中央期間以内に内部人工器官の中央値27.3%の短縮が認められた。この短縮は、2頭のイヌの臨床症状に関与していた。5頭で、ステロイド反応性肉芽腫形成がみられ、3頭で気管内腔の重度縮小を起こした。結果は、ウォールステントの移植は、気管の頚部に加え、胸部気管虚脱の安定化を最小限の侵襲で提供したと思われる。ゆえに重度気管虚脱の管理に対する最小侵襲法は、外科手術に代替する魅力的な方法である。(Sato訳)
■犬の鼻腔アスペルギルス症のエニルコナゾールの鼻腔内注入による治療
Intranasal Infusion of Enilconazole for Treatment of Sinonasal Aspergillosis in Dogs
J Am Vet Med Assoc 221[10]:1421-1425 Nov 15'02 Case Series 16 Refs
Jean-Luc Zonderland, DMV; Christoph K. Stork, Dr Med Vet; Jimmy H. Saunders, DMV; Annick J. Hamaide, DMV; Marc H. Balligand, DMV, PhD; Cecile M. Clercx, DMV, PhD *
目的:イヌの鼻腔、副鼻腔アスペルギルス症の治療で1%、2%エニルコナゾール注入の有効性を判定すること
構成:症例シリーズ
動物:アスペルギルス症の飼育犬26頭
手順:全頭に典型的なアスペルギルス症状が見られ、鼻鏡検査で肉眼的に副鼻腔、または鼻腔内に鼻甲介破壊に関する真菌プラークが見られた。鼻鏡検査中に、細心の注意を払って鼻腔と前頭洞の創面切除を行った。9頭(A群)は非侵襲性注入変法を用い1%エニルコナゾールで治療した。7頭(B群)は、内視鏡ガイドで前頭洞に設置したカテーテルにより2%エニルコナゾールで治療した。完全治癒するまで、さらに治療を必要とするか判定するため、全頭に追跡鼻鏡検査を行った。
結果:治療前の年齢、疾患持続期間、臨床スコアー、鼻鏡検査スコアーは両群同じだった。A群で、19頭中17頭が治癒し、それら9、6、2頭はそれぞれ1、2、3回の治療後治癒した。残りの2頭は治療プロトコールの終わる前に安楽死された。B群で、全頭治癒した。6頭は1回、1頭は2回の治療後治癒した。鼻滲出液、鼻出血、くしゃみのようなわずかな副作用しか起こらなかった。
結論と臨床関連:広範囲の鼻鏡での創面切除後、1%そして2%エニルコナゾールの鼻腔や前頭洞への注入は、アスペルギルス症の治療として有効だった。内視鏡により設置したカテーテルによる鼻腔内投与は、完治までにほとんど注入回数を必要としなかった。追跡鼻鏡検査を強く勧める。(Sato訳)
■慢性横隔膜ヘルニア:イヌ34頭とネコ16頭
Chronic diaphragmatic hernia in 34 dogs and 16 cats.
J Am Anim Hosp Assoc 40[1]:51-63 2004 Jan-Feb
Minihan AC, Berg J, Evans KL
2週間以上経過した横隔膜ヘルニアの外科手術を行った34頭のイヌと16頭のネコの医療記録を再検討し、長期追跡調査の情報を入手した。多く見られた臨床症状は呼吸困難と嘔吐だったが、多くは食欲不振、嗜眠、体重減少のような非特異的症状を呈した。胸部X線検査は、動物の66%しか横隔膜ヘルニアの所見を示さず、確定診断に追加の画像検査を要した。36症例は、正中切開で整復し、14症例は、腹腔切開と頬骨正中切開を必要とした。14頭の整復に、肺または横隔膜と脱出臓器の完全癒着の剥離が必要だった。14頭は、肺、肝臓、腸管の一部切除を必要とした。全てのヘルニアは、組織フラップや、メッシュインプラントを使用することなく縫合できた。21頭は、術後の一時的な合併症を起こした。多くは気胸だった。死亡率は14%だった。退院した34頭(79%)は、臨床症状が完全に解消し、追跡期間中再発した動物はいなかった。9頭は追跡調査できなかった。(Sato訳)
■アイリッシュウルフハウンドの鼻炎/気管支肺炎症候群
Rhinitis/Bronchopneumonia Syndrome in Irish Wolfhounds
J Vet Intern Med 17[6]:843-849 Nov-Dec'03 Clinical Study 17 Refs
C. Clercx, I. Reichler, D. Peeters, K. McEntee, A. German, J. Dubois, E Schynts, N. Schaaf-Lafontaine, T. Willems, M. Jorissen, and M.J. Day
鼻炎/気管支肺炎症候群のアイリッシュウルフハウンドの臨床、免疫、遺伝、病理特性を述べる。検査した犬は、ベルギー、オランダ、イギリス、カナダ、ドイツ、スイスのものだった。症状は、一次的から持続性の粘液、または粘液膿性鼻漏、発咳、呼吸困難だった。エックス線、鼻鏡、気管支鏡所見は様々だった。繊毛超微細構造の分析を5頭で行ったが、特徴的な原発性繊毛欠損(原発性繊毛運動異常)は見られなかった。IgA、IgG、IgMの血清、気管支肺胞洗浄液(BALF)濃度を、数頭の罹患犬と臨床的に正常なアイリッシュウルフハウンドで測定した。血清IgA濃度は、検査した8頭中5頭の罹患犬で、正常範囲よりも低く、BALF IgA濃度は、2頭の罹患成犬で正常範囲よりも高かった。末梢血のリンパ球部分集団CD4とCD8比(CD4:CD8)を3頭の罹患犬で検査し、正常範囲内だった。1頭の罹患犬で、BALF CD4:CD8を検査し、正常範囲よりも高かった。検査した4頭中1頭で、好中球貪食作用の低下が認められた。ベルギー、カナダ、ドイツ、スイス犬の系統分析では、共通の祖先を認め、遺伝性症候群を示唆する。(Sato訳)
■犬における気管支拡張症に関する、個体群統計学的、臨床的、そしてレントゲン的特徴:316症例(1988-2000)
Demographic, Clinical, and Radiographic Features of Bronchiectasis in Dogs: 316 Cases (1988-2000)
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1628-1635 Dec 1'03 Retrospective Study 47 Refs
* Eleanor C. Hawkins, DVM, DACVIM; Jessica Basseches, MA, DVM; Clifford R. Berry, DVM, DACVR; Martha E. Stebbins, DVM, PhD, DACVPM; Kelly K. Ferris, DVM
目的:犬における気管支拡張症に関する、個体群統計学的、臨床的、そしてレントゲン的特徴を明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:獣医療データベース(VMDB)により確認された289頭の犬と、ノースカロライナ州立獣医大学病院で、検査された27頭の犬です。
手順:VMDBにより確認された犬の個体群統計学的特徴を、VMDBに載録された犬の全個体群の特徴と比較しました。大学病院で検査された犬の医療記録を再調査しました;診断は、胸部レントゲンの検査により行いました。
結果:VMDBのデータ解析は、アメリカン・コッカー・スパニエル、ウエストハイランド・ホワイトテリア、ミニチュア・プードル、シベリアン・ハスキー、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、そして10歳以上の犬が、気管支拡張症のリスクが増大していることを示しました。大学病院で検査された犬では、咳がもっとも一般的な臨床所見でした。出血のない過剰な気道粘液の徴候がありました。種々の細菌微生物が、気管洗浄および気管支肺胞洗浄サンプルから分離されました。胸部レントゲンでは、広汎性の円柱状気管支拡張で、右肺前葉が侵されているのが最も一般的でした。追跡レントゲン調査が得られた14頭中7頭の犬で、レントゲン病変に関し、いかなる進行も見られませんでした。気管支拡張症と診断される以前の、臨床徴候の中央持続時間は、9ヵ月でした(範囲、1日から10年)。中央生存期間は16ヵ月でした(範囲、2日から72ヵ月)。
結論と臨床関連:結果は、かなりの臨床的異常にもかかわらず、気管支拡張症の犬は、数年間生存するかもしれないということを示唆しております。いくらかの純血犬と高齢犬は、展開する気管支拡張症のリスクが増大すると思われます。(Dr.K訳)
■ネコの鼻咽頭ポリープ
Nasopharyngeal polyps in cats.
Clin Tech Small Anim Pract 17[4]:174-7 2002 Nov 18 Refs
Kudnig ST
鼻咽頭ポリープは非腫瘍性で、中耳または耳管から出現する炎症性の増殖で、咽頭に広がる。鼻咽頭ポリープの正確な原因は不明で、提唱される原因としては、慢性上部気道感染、慢性中耳炎、鼻咽腔からの上行感染の反応、または先天的原因などである。臨床症状は、通常ホーナー症候群や中耳炎や内耳炎のような斜頚を伴う鼻咽腔の閉塞に関連する。診断ツールは、軟口蓋上の指、または視覚検査、フレキシブル光ファイバーによる尾側鼻鏡検査、X線検査、CT、MRIなどである。ポリープの牽引切除と併用した腹側鼓室胞切開は、推奨される治療であるが、プレドニゾロン療法に続く牽引のみの治療は、特に中耳炎の確証がないときには考慮できる症例もある。(Sato訳)
■イヌの胸管の着色に、膝窩と腸間膜リンパ節へのメチレンブルー注射
Popliteal and mesenteric lymph node injection with methylene blue for coloration of the thoracic duct in dogs.
Vet Surg 32[4]:359-64 2003 Jul-Aug
Enwiller TM, Radlinsky MG, Mason DE, Roush JK
目的:膝窩、または腸間膜リンパ節にメチレンブルーの注射を行った後、胸管着色の始まる時間とその彩度を比較し述べること
研究構成:実験研究
動物:20頭の成犬
方法:右第10肋間開胸、右傍肋骨開腹、そして右膝窩リンパ節アプローチを各イヌで行った。メチレンブルー(1%溶液0.5mg/kg、最大10mg)を、腸間膜(M群、10頭)または膝窩(P群、10頭)リンパ節に注射した。胸管の色を5分毎に60分までグレード(0-3)をつけた。M群とP群の平均胸管色グレードデータ、成功数、そして体重群間の統計分析を行った。
結果:胸管の着色は、全てのM群とP群の6頭に見られた。着色は注射後最初の0-10分に記録され、15頭は60分間持続した。平均胸管色グレードは、M群の注射前と比較して、注射後全時間帯で有意に増加した。M群でより多くの成功結果が得られた(P=.03)。
結論:腸間膜、または膝窩リンパ節にメチレンブルーを注射すると、胸管の着色に成功したが、平均グレードや成功数共に、腸間膜注射後のほうが有意に高かった。
臨床関連:リンパ節注射後の胸管着色は、10分以内に起こり60分間持続した。この情報は、乳糜胸の症例で、胸管結紮を計画し、胸管の観察が望まれる時有効である。両リンパ節部位の注射は成功するだろうが、腸間膜リンパ節注射はより信頼できる方法である。(Sato訳)
■イヌの鼻顔副鼻腔道の診断で陽性鼻腔造影と鼻腔内副鼻腔造影の使用
Use of Positive Contrast Rhinography and Intranasal Sinography for Diagnosis of a Naso facial Sinus Tract in a Dog
J Am Vet Med Assoc 222[11]:1569-1572 Jun 1'03 Case Report 18 Refs
* Robert de J. Cruz-Arambulo, DVM; Eric Monnet, DVM, PhD; Phillip F. Steyn,
BVSc, MS; Suzanne Shelly, DVM; Cheryl Hays
イヌの喧嘩後20日目に、2歳雌のブルドックをイヌの体に重度に広がった皮下気腫のため評価した。胸部エックス線写真で、重度気縦隔で後腹膜腔に自由空気が広がり気腹症を起こしていることが明らかになった。気管鏡検査では、気管、咽頭、喉頭の途切れは見られなかった。鼻腔と鼻部の皮下組織の裂け目が疑われた。
更なる診断検査は、陽性鼻腔造影と鼻腔内副鼻腔造影だった。血管造影カテーテルを左の鼻孔に挿入することにより、陽性鼻腔内副鼻腔造影で、左鼻腔と鼻平面の背側面の皮下組織との間に広がった副鼻腔道が明らかとなった。皮下気腫、気縦隔、肺後腹膜気腫の改善は、副鼻腔道の鼻腔内開存の外科的閉鎖後1日目に始まった。著者の知るところでは、このX線検査法は報告されていない。(Sato訳)
■犬における短頭種症候群
Brachycephalic Syndrome in Dogs
Daniel A. Koch, Susanne Arnold, Madeleine
Hubler, Pierre M. Montavon
Compend Contin Educ Pract Vet 25(1):48-55,
2003
狭窄鼻孔や過長軟口蓋は、犬の短頭種症候群の初期症状であるようだ。吸気時の間、陰圧の上昇の結果、上部気道の軟部組織が内腔へ吸引され、症状が悪化する。短頭種症候群に最も共通した徴候は、ストレスや熱に対する不耐性、吸気時の喘鳴や窒息である。激しく冒された動物は、致命的な発作にいたる傾向がある。外科的な矯正には、狭窄鼻孔の楔形切開、軟口蓋の短縮や、喉頭嚢切開が含まれる。(Dr.Boo訳)
■猫の胸水
Pleural Effusion In Cats
Vet Med 97[11]:812-818 Nov'02 Review Article
11 Refs
Claus D. Buergelt, DVM, PhD, DACVP
胸腔内への異常な液体の貯留である胸水は、猫の原発性の問題であることは通常なく、他の障害による二次的なものである。液体の細胞学的性質は、非炎症性または炎症性でありえる。その液体は水溶性、血様性、粘液性であったり、その色は透明、乳白色または黄色、赤、茶、緑色だったりする。
非炎症性の液体貯留は、水胸、乳糜胸、血胸を示すだろう。感染による炎症は、胸膜炎を起こし膿胸(胸部蓄膿)の原因となる。膿胸は猫で普通に見られ、吸引性肺炎、肺の細菌性膿瘍の破裂、食道や肺からの穿孔性異物、胸部貫通性咬傷などから起こっているかもしれない。胸水の他の原因には、胸部腫瘍、低タンパク血症、うっ血性心不全、急性膵炎、肺塞栓症等がある。治療と予後は滲出液の原因によるので、液体貯留が非感染性、感染性または腫瘍性か判定することが重要である。
従来、水胸、膿胸、乳糜胸、血胸という言葉は、肉眼的に液体の種類を述べるために使用される。より正確な臨床病理学的言葉は、漏出液、乳糜滲出液、炎症性滲出液、出血性滲出液、腫瘍性滲出液である。
胸腔で液体貯留の割合を判定するメカニズムは、静水圧、膠質浸透圧、毛細血管透過性、リンパ流により調節される。通常、3mlまでの胸膜滲出液が、胸膜表面を潤すために存在する。この液体には相対的に細胞やタンパクが存在しない(すなわち、総タンパク濃度<1.5g/dl、<500個の細胞/μL)。犬猫で、左右の胸腔は有窓性の縦隔により通じているので、ほとんどの滲出は両側性である。(Sato訳)
■犬の自然気胸の選択性危険因子と外科または非外科的管理:64症例(1986-1999)
Surgical and Nonsurgical Management of and
Selected Risk Factors for Spontaneous Pneumothorax
in Dogs: 64 Cases (1986-1999)
J Am Vet Med Assoc 220[11]:1670-1674 Jun
1'02 Retrospective Study 22 Refs
David A. Puerto, DVM, DACVS; Daniel J. Brockman,
BVSc, DACVS; Christopher Lindquist, VMD;
Kenneth Drobatz, DVM, DACVIM, DACVECC
目的:犬の自然発生気胸の外科治療と非外科治療の結果を比較した
構成:回顧的研究
動物:思い当たる外傷の経歴のない気胸の犬64頭
方法:医療記録から、徴候、胸部エックス線所見、治療、組織学的所見、予後に関する情報を得た。罹患犬の徴候を、この研究期間に気胸以外の理由で緊急来院した260頭のコントロール集団と比較した。
結果:他の理由で緊急来院したコントロール集団と比較して、症例集団で代表的な犬種はシベリアンハスキーだった。28頭は非外科的(すなわち、ケージレストを伴う、または伴わない胸腔穿刺やチューブ胸部造瘻術)に治療し、36頭は外科的治療を行った。最終結果に関する情報は、外科的治療を行った33頭(追跡期間中央値、485日)、非外科的治療の15頭(追跡中央値、336日)で得られた。外科的治療を行った犬の再発(1/30)と死亡率(4/33)は、非外科的治療の犬(それぞれ、6/12、8/15)よりも有意に低かった。確定診断は、外科的治療を行った36頭中34頭を含む38頭の犬で得られた。26頭は水疱性肺気腫、4頭は腫瘍であった。2頭は植物異物の遊走により2次的に自然発生の気胸を起こした。
結論と臨床関連:結果は、外科的処置を行った自然発生の気胸の犬の再発率と死亡率が、非外科的処置のみの犬のそれよりも有意に低い事を示唆している。早期外科の介入は、確定診断と自然発生の気胸の治療として推奨される。(Sato訳)
■イヌの喀血に関する臨床症状、臨床病理検査結果、原因、転帰
Nathan L. Bailiff, DVM et al; J Am Anim Hosp
Assoc 38[2]:125-133 Mar-Apr'02 Retrospective
Study 38 Refs; Clinical Signs, Clinicopathological
Findings, Etiology, and Outcome Associated
With Hemoptysis in Dogs: 36 Cases (1990-1999)
喀血は、喉頭以降の気道からの血液、血様粘液の喀出と定義されます。この研究の目的は、徴候、臨床症状、検査とX線データ、基礎疾患、喀血を主訴とした犬の転帰を調査する事です。
36頭の犬を評価しました。年齢中央値は5歳(範囲6ヶ月から13歳)でした。1頭が3ヶ月前から喀血の病歴があったのを除いて、他の症例は来院1週間前からの病歴でした。喀血が起こる前に咳に気付いていた犬では、その持続期間は1日から1年の範囲で、咳、頻呼吸、呼吸困難はよく見られる病歴、身体検査所見でした。貧血は11頭で見られ、1頭は重度で、基礎疾患の変化を反映する臨床病理所見を伴っていました。全頭胸部X線検査は異常で、肺胞間質性パターンがよく見られましたが、胸部X線検査だけでは、肺出血は主要肺疾患と明確に分けることはできませんでした。
喀血の素因疾患は、細菌性気管支肺炎(n=7)、腫瘍(n=5)、外傷(n=5)、免疫介在性血小板減少症(ITP、n=4;各血小板数<25-30×10[3]/μL)、犬糸状虫疾患(n=4)、殺鼠剤中毒(n=3)、肺葉捻転(n=1)、うっ血性左心不全(n=1)、肺高血圧(n=1)、異物性肺炎(n=1);4頭で、1つ以上の基礎疾患が見つかりました。最初に来院している間に7頭は安楽死し、1頭は気管支鏡検査後、院内で死亡しました。残りの28頭は、改善または、十分に安定したと考え、退院しました。それらの犬のうち、5頭は基礎疾患のために退院後1-6ヶ月で、死亡または安楽死しました。喀血のひどさ(ヘマトクリット値と総タンパク値の減少をもとに)は、基礎疾患の過程や、患畜の予後を決めるのに有効でありませんでした。
少数の犬や、多数の基礎となる原因により、結果に対する統計的推論が出せませんが、免疫介在性血小板減少症は、来院時100%安楽死されているので最も予後が悪いと思われます。また腫瘍の犬や、多くの原因を持つ犬の喀血も、予後が悪いものでした。(Sato訳)