■四肢の骨肉腫に対して断脚を行った小型犬種の犬において補助化学療法は生存期間を延長する
Adjuvant Chemotherapy Is Associated With Prolonged Survival Time in Small-Breed Dogs Undergoing Amputation for Appendicular Osteosarcoma
Vet Comp Oncol. 2025 Jan 11.
doi: 10.1111/vco.13041. Online ahead of print.
Stefano Zanardi , Silvia Sabattini , Federica Rossi , Matteo Rossanese , Paolo Buracco , Vincenzo Montinaro , Marina Aralla , Alfredo Dentini , Elisa Pizzi , Enrico Volpe , Giovanni Tremolada , Laura Marconato
四肢骨肉腫の大型犬種の犬に対し、補助的化学療法は確立された治療である;しかし、それに注目した研究が限られているため、小型犬種の犬において補助的化学療法が結果を改善かどうかは不明である。
この回顧的研究の目的は、治療的切除を行った15kg以下の四肢骨肉腫の犬で術後補助化学療法を行った犬と、行わなかった犬の腫瘍学的結果を調査することだった。
指標は、遠隔進行までの時間(TTDP)および総生存期間(OS)だった。複数施設からの医療記録を再調査し、43頭の犬を解析に含めた:17頭は外科手術のみ行い、26頭は補助化学療法も行った。全ての犬のTTDP中央値は265日で、治療群に有意差はなかった。全ての犬のOS中央値は270日で、断脚した犬(150日)と、それに補助的化学療法を加えた犬(353日、p=0.002)で有意差があった。
この集団において、小型犬種の骨肉腫は大型犬種と同じような攻撃的挙動を示した。補助的化学療法は生存期間を延長させるかもしれない。四肢骨肉腫の小型犬種の犬において、転移の広がりに向けた補助的化学療法の必要性に対する決定的なエビデンスを提供するため、今後の無作為化研究が必要である。(Sato訳)
■軸および四肢骨腫瘍に対し外科的安定化と非定位放射線治療を行った犬の結果
Outcomes in dogs undergoing surgical stabilization and non-stereotactic radiation therapy for axial and appendicular bone tumors
Front Vet Sci. 2024 Jan 11:10:1283728.
doi: 10.3389/fvets.2023.1283728. eCollection 2023.
Maureen A Griffin , Andrea Mastorakis , Brandan Wustefeld-Janssens , Tiffany Wormhoudt Martin , Lili Duda , Bernard Seguin , Giovanni Tremolada
背景:犬の骨腫瘍の治療に対するインプラント設置による外科的安定化と、非定位プロトコールで放射線治療(RT)を行った犬の情報は限られている。
目的:主要な目的は、骨腫瘍の局所治療としてインプラント設置による外科的安定化と非定位RTの両方を行った犬において、臨床的特徴、短期及び長期結果(合併症、機能、疾患進行を含む)を述べることだった。
方法:2施設の回顧的ケースシリーズを実施した。
動物:骨腫瘍の局所治療としてインプラント設置による外科的安定化と非定位RTを実施した飼い犬8頭を含めた。
結果:腫瘍のタイプは、骨肉腫あるいはその疑い(5)、プラズマ細胞腫(2)、グレード3線維肉腫(1)が含まれた。放射線照射プロトコールは、5頭で少分割(緩和目的)、3頭で分割(根治目的)だった。5頭はRTと手術後、以下の合併症を経験した;2頭はグレード1の合併症、1頭はグレード2の合併症、1頭はグレード1と2の合併症、1頭はグレード2と3の合併症。臨床症状は主観的にすべての犬で改善し、手術/RT後に証明された機能に関する結果があった(7)。その7頭中4頭は機能と臨床症状の長期改善を維持したが、3頭はその後生体力学的合併症(スクリューの緩み)、手術部位感染、局所疾患進行(各1頭)に関係する術後中央値133日(範囲91-186)で、臨床症状の再発/進行を経験した;その後の治療でそれら3頭の臨床症状は改善を示し、このように全体的に良好な長期機能的結果を経験した。
局所疾患のコントロールあるいは緩和のためのサルベージとして、断脚あるいは追加の椎体外科手術を必要とした犬はいなかった。無増悪期間中央値は206日(範囲25-1078)、生存期間中央値は253日(範囲122-1078)で、追加1頭は575日目以降フォローアップできなかった。2頭は局所疾患の進行を経験し、6頭は全身疾患進行を経験した;局所疾患の進行を起こした2頭は、緩和目的のRTプロトコールを受けた。
臨床的関連:この集団で、局所治療のためにインプラント設置による外科的安定化と少分割あるいは分割の非定位RTを行った原発性骨腫瘍の犬は、メジャーな合併症の低発生率、治療後の良好な肢の機能及び歩行、疾患の進行にもかかわらず比較的長期の生存期間を示した。(Sato訳)
■頭蓋顎顔面骨肉腫の犬35頭の定位体放射線治療の結果
Outcomes of 35 dogs with craniomaxillofacial osteosarcoma treated with stereotactic body radiation therapy
Vet Comp Oncol. 2024 Jan 21.
doi: 10.1111/vco.12960. Online ahead of print.
Johnny Altwal , Ber-In Lee , Mary-Keara Boss , Susan M LaRue , Tiffany Wormhoudt Martin
犬の頭蓋顎顔面骨肉腫(OSA)は、一般的には外科的に治療される;しかし、手術が実行可能ではない症例や、非侵襲的治療が望まれる症例で定位体放射線治療(SBRT)が、局所腫瘍コントロールで選択されるかもしれない。
この研究において、SBRTで治療した35頭の犬を評価した。9頭(26%)は頭蓋、7頭(20%)は下顎、19頭(54%)は上顎OSAだった。最初のイベント発生までの時間(TFE)中央値は171日で、全体の生存期間中央値(MST)は232日だった。部位-特異MSTsは下顎で144日、頭蓋で236日、上顎で232日(p=.49)だった。肺の転移性疾患は、12/35(34%)で観察され、6頭(17%)はSBRT前、残りの6頭(17%)はSBRT後に検出された。
18のSBRT後の有害事象が認められた。獣医放射線治療腫瘍学グループ基準によると、5つは急性(14%)、3つは晩発性(9%)グレード3事象だった。2頭の神経学的症状はearly-delayed
effectsが疑われた。死亡原因は、22/35(63%)で局所進行、9/35(26%)で転移、4頭は不明だった。
一変量解析において、化学療法の投与は、より長いTFEと関係した(p=.0163)が、肉眼的腫瘍容積の容積はより短いTFEと関係した(p=.023)。化学療法の投与と、SBRTの5分割vs1分割は、生存期間延長と関係した(p=.0021と.049)。
それらの所見を基に、化学療法とSBRT5分割を組み入れた治療プロトコールは、その野の正常組織を注意深く考えSBRTを選択した、頭蓋顎顔面骨肉腫の犬に対し考慮できた。(Sato訳)
■1頭の避妊済みのトイプードルの乳腺の原発性軟骨肉腫の多臓器転移
Multi-organ metastases of primary chondrosarcoma of the mammary gland of a spayed Toy Poodle
J Comp Pathol. 2023 Jun 21;204:35-38.
doi: 10.1016/j.jcpa.2023.05.005. Online ahead of print.
Seung-Won Yi , A-Ra Cho , Yoon Jung Do , Young-Hun Jung , Han Gyu Lee , Eun-Yeong Bok , Tai-Young Hur , Sung-Lim Lee , Eunju Kim
12歳避妊済みのメスのトイプードルの原発性乳腺軟骨肉腫の多臓器転移に関係する臨床および病理組織所見を報告する。
剖検時、多病巣性、境界明瞭な、灰白から明るい茶色のいろいろなサイズの円い結節が、肺、心筋、肝臓、膵臓、脾臓、小腸および腎臓に無作為に分布していた。それらの臓器には、組織学的に未熟な軟骨構造と初期の間葉細胞が見られた。軟骨の好塩基性細胞外基質に位置する腫瘍細胞は、細胞質空胞変性と円い小胞状の核があり、サフラニンOとアルシアンブルーに染まった。
我々の知るところでは、これは1頭の犬の乳腺を起源とする多臓器転移性軟骨肉腫の最初の報告である。(Sato訳)
■再発性顎顔面骨肉腫の1頭の犬の長期補助的メトロノーム化学療法
Long-term adjuvant metronomic chemotherapy in a dog with recurrent maxillofacial osteosarcoma
Vet Med (Praha). 2023 May 25;68(5):225-230.
doi: 10.17221/43/2022-VETMED. eCollection 2023 May.
Min-Jung Jung , Keun-Young Yoon , Yun-Mi Kim , Jong-Sun Lee , Joo-Won Choi , Ji-Hyun Kim , Hun-Young Yoon , Jung-Hyun Kim
骨肉腫(OSA)は、犬の最も一般的な悪性の骨腫瘍である;しかし、上顎骨のOSAは四肢OSAよりも珍しい。口腔メラノーマも犬でよく発生し、遠隔転移も多い。
17歳のイングリッシュコッカースパニエルが、右上顎の成長中のマスと右下口唇のマスで紹介されてきた。部分的上顎切除後に骨肉腫と診断され、右下口唇のマスは口腔メラノーマと診断された。
メトロノーム化学療法(MC)を実施し、MC開始後から5週間で副作用のため投与回数は漸減した。MCの130週後、化学療法は腎臓病のために中止した。化学療法中止後、再発と転移を示唆する所見が検出された。その犬は手術から193週後に死亡し、予想された生存期間の8-14倍長かった。
著者の知るところでは、これは、上顎OSAと口唇メラノーマの1頭の犬において、外科手術とMCを含む長期併用化学療法の成功した最初の症例報告である。我々の結果は、MCの適切な管理を実施できれば、生存期間を大きく延長できることを示す。(Sato訳)
■犬の骨肉腫における転移性の進行パターンと臨床結果との関係:83頭の犬の検死研究
Patterns of metastatic progression and association with clinical outcomes in canine osteosarcoma: A necropsy study of 83 dogs
Vet Comp Oncol. 2023 Aug 17.
doi: 10.1111/vco.12927. Online ahead of print.
K I Silver , S Patkar , C Mazcko , E P Berger , J A Beck , A K LeBlanc
骨肉腫は転移性の高い原発性の骨腫瘍で、犬とヒト共に自然に発生する。最も一般的な部位(肺)以外の臓器への転移パターンはあまり特徴づけられておらず、転移性進行パターンと患者の特徴との特別な関係があるのかどうかは不明である。
この回顧的研究は、前向き臨床試験において標準化した治療と臨床的モニタリングを受けた犬83頭の検死所見の特徴を示し、転移のパターンと、結果とそれらのパターン、他の犬と腫瘍-特異因子との関連を証明する。
転移の合計20か所の異なる部位が証明され、最も一般的な部位は肺、続いて骨、腎臓、肝臓、心臓だった。2つの異なる群が転移パターンを基に確認された。登録場所、trial arm、性別、血清ALP活性、腫瘍の部位、臨床結果の間に有意な関係はなかった。2つ目の癌のタイプは10頭の検死で確認された(10/83;12%)。
それらのデータは、肺以外の骨肉腫転移の広範囲な特性を公開し、その疾患の臨床的モニタリングのベンチマークを提供する。さらにこの研究は、特定の臓器や組織に対する骨肉腫の転移の傾向と関連するかもしれない原発腫瘍の転写的特性に対する洞察を提供する。(Sato訳)
■唾液腺の骨外骨肉腫で外科的切除と補助療法により長期生存した犬の1例
A dog with extraskeletal osteosarcoma of the salivary glands survived long-term, following surgical resection and adjuvant therapy
J Vet Med Sci. 2023 Jan 24.
doi: 10.1292/jvms.22-0400. Online ahead of print.
Naoki Umeda , Hinako Yamazoe , Atsuhito Wada , Katuyuki Nagata
Free article
12歳のフレンチブルドッグが右下顎のマスを呈した。CT検査で、唾液腺起源のマスで右下顎骨に連続していないことを認めた。
そのマスは外科的に切除し、その後、組織病理および免疫化学検査により唾液腺の骨外骨肉腫と診断された。
サージカルマージンはクリアだったが、術後非ステロイド性抗炎症薬(NSIDs)による補助的治療を開始した。初回検査から249日目に肺転移が観察された;そのため、NSAIDsと共にトセラニブを開始した。
その犬はこの疾患の初回検査から496日目に死亡したが、外科、NSIDs、トセラニブの組み合わせで良好に長期管理できた。(Sato訳)
■カナダ西部の大型犬及び超大型犬の四肢骨肉腫発生のリスクファクター
Risk factors for appendicular osteosarcoma occurrence in large and giant breed dogs in western Canada
Can Vet J. 2023 Feb;64(2):167-173.
Kimberly Williams , Sarah Parker , Valerie MacDonald-Dickinson
目的:犬の四肢骨肉腫(OSA)の発生に対するリスクファクターは多くの研究で調査されているが、矛盾した結果もある。この研究の目的は、カナダ西部の大型犬と超大型犬の四肢OSAのある犬とない犬の1集団において、体重、年齢、犬種、性別、不妊状態、ボディコンディションスコア、過去の跛行を解析することだった。
動物と処置:2000年から2020年までに、四肢OSAと診断された227頭の大型あるいは超大型犬の医療記録を、454頭の大型及び超大型犬のコントロール集団の記録と比較した。
結果:性腺を摘出した犬、ボディコンディションスコア(BCS)、跛行の病歴(OSA以外の)は、OSAを呈する確率増加に関係した。ラブラドールレトリバーと比べロットワイラーやグレートデンを含む犬種は、四肢OSA発生に対する確率増加を示した。
結論と臨床関連:肥満や跛行は、四肢骨肉腫と独立して関係すると思われる。この研究は避妊したメス犬は、他の性別や不妊状況の組み合わせと比べて最大リスクであると示した;それらファクターのさらなる調査は有益だろう。(Sato訳)
■犬のステージIII骨肉腫の治療に対するゾレドロネートの評価:第二相研究
Evaluation of zoledronate for the treatment of canine stage III osteosarcoma: A phase II study
Vet Med Sci. 2022 Nov 18.
doi: 10.1002/vms3.1000. Online ahead of print.
Ashley A Smith , Stephanie E S Lindley , Greg T Almond , Noelle S Bergman , Brad M Matz , Annette N Smith
Free article
背景:四肢骨肉腫の犬の90%以上は、標準治療にもかかわらず肺転移を起こす。ステージIIIの疾患に対して利用できる治療は効果が限られている。ビスホスホネートのゾレドロネートは、犬の骨肉腫細胞のアポトーシスを誘発し、腫瘍微環境を調節すると思われる。
目的:この前向き一施設第IIa試験で、骨肉腫の肺転移がある犬の単剤ゾレドロネートの使用を調査した。
方法:ゾレドロネートを月に1回投与し、反応を胸部エックス線写真で評価した。
結果:11頭の犬を登録した。反応の評価が得られた8頭中2頭が安定疾患に達した。無進行期間の中央値は、28日だった(範囲:4-93日)。ステージIII-特異生存期間中央値は92日だった。有害事象は4頭の犬で報告された;2頭はグレードIII異常の毒性を発症した。顕著な有害事象は、結膜炎、発熱、低カルシウム血症、低リン血症が含まれた。
結論:この集団では、ゾレドロネートはステージIIIの骨肉腫に対し単剤として限られた効果しか持たないと思われ、予期しない毒性に関係するかもしれない。この臨床研究はAVMA Animal Health Studies Database上に登録した(AAHSD004396)。
■担癌犬の緩和治療においてゾレドロネートの許容性と効果の遡及的評価
Retrospective assessment of tolerability and efficacy of zoledronate in the palliative treatment of cancer-bearing dogs
Aust Vet J. 2022 Nov 16.
doi: 10.1111/avj.13218. Online ahead of print.
M G Lopes , G Tosi , K A McNaught , J S Morris
ゾレドロネートはビスホスホネートの1つで、犬の悪性腫瘍の高カルシウム血症や腫瘍関連骨疼痛の治療に使用されることが多い。しかし、獣医療でのその使用に関する情報は不足している。
この遡及的研究の目的は、担癌犬の緩和治療においてゾレドロネートの許容性を報告することと、悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療に対するゾレドロネートの効果を評価することだった。
114回のゾレドロネートの点滴を受けた37頭(22頭は腫瘍関連の骨疼痛、15頭は悪性腫瘍の高カルシウム血症)の犬を含めた。許容性はゾレドロネート投与後の低カルシウム血症、あるいはVeterinary
Cooperative Oncology Group-Common Terminology Criteria for Adverse Events
criteriaにより定義される他の有害事象がないことにより評価した。効果は、高カルシウム血症の犬においてゾレドロネート投与前後に入手したイオン化カルシウム濃度の比較で評価した。
ゾレドロネート点滴の79%において、有害事象の報告はなかった。他の21%の点滴で発生した有害事象の多くは、併用化学療法あるいは基礎の腫瘍性疾患による可能性があった。ゾレドロネートの投与後、クレアチニンの小さいが有意な上昇が見られたが、臨床的に重要な腎疾患に発展した犬はいなかった。ゾレドロネート投与後にイオン化カルシウムが得られた8頭の高カルシウム血症の犬において、投与から7日以内に急速にイオン化カルシウムは低下した。
ゾレドロネートはよく許容し、記録された有害事象はほとんどないが、血清クレアチニンのモニタリングが勧められる。ゾレドロネートは悪性腫瘍の高カルシウム血症の治療に有効だと思われる。(Sato訳)
■四肢骨肉腫の犬に対し少分割緩和放射線療法±ビスホスホネート後の結果の回顧的評価:165症例(2010-2019)
Retrospective Evaluation of Outcome in Dogs With Appendicular Osteosarcoma Following Hypofractionated Palliative Radiation Therapy With or Without Bisphosphonates: 165 Cases (2010-2019)
Front Vet Sci. 2022 May 10;9:892297.
doi: 10.3389/fvets.2022.892297. eCollection 2022.
Beck Ringdahl-Mayland , Douglas H Thamm , Tiffany W Martin
Free PMC article
目的:犬の四肢骨肉腫(OSA)の治療で、標準緩和放射線療法(RT)プロトコール単独あるいはビスホスホネート(BPs)の併用で治療した犬の生存期間を報告し、BPsが生存性に影響するかどうかを判定する。2つ目の目的は、治療を行う犬において結果に影響すると思われる予後的特徴を確認することだった。
計画:回顧的ケースシリーズ
素材と方法:2010年から2019年の間にフリントアニマル癌センターで、OSAと推定あるいは確認され、1日1回少分割RT(8Gy x 2)で治療した犬を回顧的に評価した。臨床データは医療記録から抽出し、補助的治療は記録した。結果は医療記録および電子的フォローアップで評価した。
結果:165頭を含めた。68頭はそれらの緩和的治療の一部としてBPsを投与されていた。最初のRT治療から死亡までの生存期間中央値にグループ間の有意差はなかった(BP群119日vs非BP群109日、p=0.758)。この集団で年齢(>9歳)のみが予後的だと分かった(p=0.031)。生存期間に関係が見つからなかった因子は、BP薬物タイプ、BP投与のタイミング、腫瘍の位置、体重、犬種、性別、治療までの期間、化学療法の併用、救済の断脚が含まれた。
結論:この結果は、少分割RTに加えてBPsで治療した犬とBPsで治療しなかった犬の結果に差はないことを示唆する。OSAに対し緩和治療を行う犬において、少分割RTにBPsを加えることでQOLの改善が得られるかどうか調べるため、前向き研究が必要である。(Sato訳)
■遠隔転移のない四肢骨肉腫の犬の結果に対する断脚後の補助化学療法のタイミングと影響
Timing of adjuvant chemotherapy after limb amputation and effect on outcome in dogs with appendicular osteosarcoma without distant metastases
J Am Vet Med Assoc. 2021 Oct 1;259(7):749-756.
doi: 10.2460/javma.259.7.749.
Laura Marconato, Paolo Buracco, Gerry A Polton, Riccardo Finotello, Damiano Stefanello, Ondrej Skor, Lida Bicanova, Ombretta Capitani, Franck Floch, Emanuela Morello, Maria Teresa Camerino, Katherine Smallwood, Silvia Sabattini
目的:遠隔転移のない四肢骨肉腫の犬において、最適な断脚と補助化学療法までの間隔(TI)を判定し、TIが結果と関係するかどうかを調べた。
動物:9か所の獣医腫瘍学センターで治療した168頭の飼育犬
方法:潜在的予後変数と結果に関係する犬の医療記録からデータを集めた。罹患肢の断脚後3、5、7、10、15、20、30日以内あるいは>30日で化学療法を受けたかどうかでグループ分けした。断脚後の腫瘍進行までの時間と生存期間に関係する変数を確認し、最適なTIを決定するために分析を実施した。
結果:TIの中央値は14日(範囲、1-210日)だった。TI≦5日の犬(375日;95%CI、162-588日)の腫瘍進行までの時間中央値は、TI>5日の犬(202日;95%CI、146-257日)のそれより有意に長かった。TI≦5日の犬(445日;95%CI、345-545日)の総生存期間中央値はTI>5日の犬(239日;95%CI、186-291日)のそれより有意に長かった。
結論と臨床的関連:遠隔転移のない四肢骨肉腫の犬に対し、断脚後の補助化学療法の早期開始(5日以内)は、有意に臨床的に関連する生存的利益に関係したことを所見は示した。それらの結果は、化学療法のタイミングが重要な予後的変数であるかもしれないと示唆した。(Sato訳)
■表在性骨肉腫の犬12頭の回顧的分析
A retrospective analysis of 12 dogs with surface osteosarcoma
Vet Comp Oncol. 2021 May 25.
doi: 10.1111/vco.12741. Online ahead of print.
Matthew R Cook , Joshua Lorbach , Brian D Husbands , William C Kisseberth , Sarah Samuels , Catrina Silveira , Brandan G Wustefeld-Janssens , Raelene Wouda , Samuel Keepman , Michelle L Oblak , Laura E Selmic
犬の骨肉腫(OSA)のほとんどは骨髄腔から起こるが、骨の表面から起こるものも存在する。ヒトにおいて、表在性OSAは骨髄OSAよりも進行が遅く、より良い結果のものも多い。
この回顧的ケースシリーズの目的は、表在性OSAの犬の臨床結果、潜在的予後因子を評価することだった。
過去に表在性OSAと診断された11頭の犬の医療記録を含めた。症例の病理組織は、ケースレビュー中に2人の獣医解剖病理学者により評価した。無増悪期間中央値(PFI)および全体の生存期間中央値(OST)は、カプランマイヤー法を用いて算出した。グループ間の比較は、ログランク検定を用いて行った。
6頭は骨膜性OSA、4頭は傍骨性OSA、1頭は分類されない表在性OSAと診断された。2頭は診断時に転移性疾患があるのが分かり、4頭は治療後に転移病巣が発生した。表在性OSAの全ての犬に対するPFI中央値とOST中央値は、425日と555日だった。骨膜性OSAと診断された6頭のPFI中央値が461日、OSTの中央値は555日だったが、傍骨OSAのPFIは350日、OSTは算出できなかった。複数の予後因子(手術、全身性補助療法、診断時のALP上昇、四肢vs軸方向部位、有糸分裂数、腫瘍のグレード)を評価し、PFIあるいはOSTに対する予後的なものはなかった。
表在性OSAの犬は、ヒトの表在性OSAと一致して、より長いPFIとOSTを示すと思われる。(Sato訳)
■犬の四肢骨肉腫の予後と臨床病理学的特徴の関係
Relationship Between Clinicopathological Features and Prognosis in Appendicular Osteosarcoma in Dogs
J Comp Pathol. 2020 Oct;180:91-99.
doi: 10.1016/j.jcpa.2020.09.003. Epub 2020 Oct 6.
Tainã N Guim , Matheus V Bianchi , Cíntia De Lorenzo , Aline S Gouvêa , Daniel G Gerardi , David Driemeier , Saulo P Pavarini , Luciana Sonne
骨肉腫は犬の最も一般的な原発性の骨腫瘍で、四肢の骨格に出ることが多い。
2008年から2018年にかけて153頭で診断された四肢骨肉腫の臨床病理と予後の特徴を報告する。
外科手術および化学療法を行った22頭の生存データを、予後との関連に対し、臨床、病理組織および免疫組織化学データで統計学的に比較した。
罹患犬の平均年齢は9.1歳、平均体重は33.4kgだった。性別に偏向はなかったが、メスの発生率がわずかに高かった(52%)。大型の雑種犬と純血犬が一般的に罹患した。124症例(92.5%;124/134)で罹患したのは長骨だった。長骨内で罹患した先端は、近位上腕骨(29%)、遠位橈骨(17.7%)、遠位大腿骨(15.3%)、近位脛骨(7.2%)の骨端だった。
組織学的に骨芽細胞性骨肉腫が最も一般的に検出され(56.9%)、軟骨芽細胞性(13.7%)、毛細血管拡張性(11.8%)、線維芽細胞性(7.8%)、富巨細胞型(5.2%)、未分化腫瘍(4.6%)が続いた。切断した肢全体から70の切除生検のうち28で、所属リンパ節が分析のために入手でき、所属リンパ節への転移は14.3%(4/28)で観察された。診断画像検査あるいは検死した症例の75%(39/52)で遠隔転移が見つかった。肺が最も一般的な転移部位だった(87.2%;34/39症例)。
体重、年齢、性別、罹患した肢あるいは骨、組織学的分類、有糸分裂数あるいは組織学的グレードは生存性に影響しなかった(P>0.05)。罹患した肢の近位端(n=7)にある腫瘍は、遠位端(n=15)のものよりも予後が悪い傾向があった(P=0.06)。それらの症例の1年生存率は14.3%なのに対し、遠位端の腫瘍は40%だった。断脚(n=16)あるいは肢温存(n=6)法を化学療法と使用した時の生存率に有意差はなかった(P=0.20)。
断脚あるいは肢温存手術と化学療法を行った犬の生存期間は、73-1185日で、平均および中央値は376日と256日だった。全ての症例で、軽度から顕著なオステオポンチンの細胞質免疫標識が見つかったが、標識された腫瘍細胞の強度(P=0.66)や比率(P=0.49)は生存に影響しなかった。(Sato訳)
■犬の指骨、中手骨および中足骨の原発性骨肉腫の生物学的挙動
Biological behavior of primary osteosarcoma of the digits, metacarpal and metatarsal bones in dogs
Vet Comp Oncol. 2020 Sep 7.
doi: 10.1111/vco.12652. Online ahead of print.
Giovanni Tremolada , Douglas H Thamm , Milan Milovancev , Bernard Seguin
指、中手骨、中足骨にできる骨肉腫(OSA)は珍しく、他の部位と比べ予後がより良いのかもしれない。
この研究の目的は、それらの骨にできた骨肉腫の生物学的挙動、無増悪期間(PFI)、生存期間(ST)および補助的化学療法の効果を回顧的に評価することだった。
2か所の大学施設からの医療記録を調べ、15症例を含めた。シグナルメントと病歴に対し、記述統計を使用した。PFIとST中央値の評価に対し、カプラン-マイヤ法を利用した。化学療法の予後的効果、リンパ球および単球数を調査した。グループ間のPFIとSTの比較にログ-ランク解析を使用した。
全体のPFIおよびSTの中央値は377日と687日だった。評価したどの変数にも有意差は見られなかった。
この研究において、指、中手骨、中足骨にOSAができた犬は、他の肢の部位にOSAができた犬より、生存期間が長いと思われる。それらの結果を確認し、補助化学療法の潜在的効果を調査するため、犬の頭数がより多い研究が必要である。(Sato訳)
■四肢骨肉腫の2頭の犬における孤立推定肺転移の経皮的マイクロ波アブレーション
Percutaneous Microwave Ablation of Solitary Presumptive Pulmonary Metastases in Two Dogs With Appendicular Osteosarcoma
Vet Surg. 2020 Jun 10.
doi: 10.1111/vsu.13469. Online ahead of print.
Josephine A Dornbusch , Vincent A Wavreille , Brian Dent , Jason A Fuerst , Eric M Green , Laura E Selmic
目的:2頭の犬の推定肺転移の経皮的マイクロ波アブレーション(MWA)とその結果を述べる
動物:自然発生の四肢骨肉腫の治療後に肺病変のある2頭の犬
研究計画:予備的前向き臨床試験
方法:2頭の大型犬が、断脚後146日と217日目に転移病巣切除の代替療法として、MWAを行うため、3次動物病院から依頼を受けた。その2頭はそれぞれの病院で化学療法プロトコールを受けていた。
結果:超音波あるいはCTガイドによるMWAの新しい経皮アプローチは首尾よく実行できた。唯一の合併症は気胸で、1頭で治療が必要だった。それらの処置後の週で、2頭は家で元気だと報告があった。転移疾患が確認された犬(犬1)と推定された犬(犬2)のMWA後、犬1は82日目に死亡し、犬2は19日目に安楽死された。
結論:2頭の犬で肺結節の経皮的MWA は、メジャーな合併症もなく技術的に実行可能だった。
臨床意義:経皮的MWAは骨肉腫の肺転移の治療に対し、最小侵襲のオプションを提供するかもしれない。肺の腫瘍病変内の組織学的細胞死の確認と生存性に対するMWAの有益性を評価するため、追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の四肢骨肉腫の皮膚および皮下転移:20症例
Cutaneous and subcutaneous metastasis of appendicular osteosarcoma in dogs: 20 cases.
J Vet Intern Med. 2019 Jul 11. doi: 10.1111/jvim.15557. [Epub ahead of print]
Parachini-Winter C, Curran KM, Pellin M, Laver T, Hanot C, Vernier TH, Séguin B.
背景:犬の四肢骨肉腫の転移は肺が最も多く、一般的に末期の事象と考えられる。皮膚あるいは皮下転移(CSM)に関係する挙動と予後はあまり定義されていない。
目的:犬のCSMを伴う四肢骨肉腫に関する集団と予後の情報を集める
動物:四肢骨肉腫とCSMのある犬20頭
方法:回顧的ケースシリーズ。四肢骨肉腫と診断され、CSMを発症した犬を確認するため、医療記録を検索した。個体群統計データ、転移の順、CSM臨床特性を評価した。カプラン-マイヤー生存曲線を作成し、犬のグループ間の生存性を比較するのにlog-rank testsを使用した。
結果:19頭(95%)のCSMは偶発的所見だった。17頭(85%)は肺転移を起こし、1頭(5%)は骨転移を起こした。安楽死前に他の転移部位は検出されなかった。CSMがない期間とCSM生存期間の中央値は、160日(範囲:0-542日)と55日(範囲:5-336日)だった。CSM生存期間の中央値は手術と化学療法(94日)、化学療法のみ(64日)の犬が、それらの治療を受けなかった犬(11日)よりも有意に長かった(P=0.002およびP=0.03)。CSMの診断後、生存に関係する他の因子はなかった。
結論と臨床的重要性:皮膚および皮下組織は、骨肉腫の最初に検出される転移部位かもしれない。CSM診断後、2か月未満の生存中央値で予後は重篤である。この所見は症例選択でバイアスがかかっているが、手術と化学療法の治療で結果が改善するかもしれない。(Sato訳)
■断脚と1回のカルボプラチンの皮下注入で治療した四肢骨肉腫の犬の有害事象と結果
Adverse events and outcomes in dogs with appendicular osteosarcoma treated with limb amputation and a single subcutaneous infusion of carboplatin.
J Am Vet Med Assoc. 2019 Aug 1;255(3):345-351. doi: 10.2460/javma.255.3.345.
Santamaria AC, Simcock JO, Kuntz CA.
目的:四肢骨肉腫の犬を断脚後に1回のカルボプラチンのSC注入で治療した場合の有害事象と結果を評価する
動物:2006年1月1日から2017年1月15日の間に四肢骨肉腫を断脚とカルボプラチンのSC注入で治療した45頭の飼育犬
方法:医療記録を見直し、シグナルメント、腫瘍の位置、治療、臨床病理学的検査結果、診断画像検査結果、化学療法の副作用、無転移期間、生存期間、オーナーや紹介獣医師との情報交換についてのデータを集めた。所見はKaplan-Meier
survival analysisとMantel-Haenszel log-rank testで評価した。
結果:45頭が組み込み基準に合ってることを確認した(45頭中12頭は過去のケースシリーズで報告されていた)。治療前にCTあるいはエックス線検査で検出可能な肺転移がある犬はいなかった。全ての犬は計画したプロトコールを完了した。生存期間中央値(MST)は196日だった;無転移期間は197日だった。45頭中3頭(7%)は、化学療法に関連する消化器症状で入院が必要だった。化学療法が関連する死亡例はなかった。
結論と臨床関連:カルボプラチンのSC注入の許容性は良かったが、この研究の結果は、断脚のみで治療した骨肉腫の犬で報告されたMSTと変わらず、IV補助化学療法を受けた犬の過去に報告された生存期間のより低い範囲のものだった。ゆえに、著者らはカルボプラチンのSC注入のこのプロトコールは勧めることができないが、代わりにカルボプラチンのIV投与を推奨する。(Sato訳)
■四肢骨肉腫で断脚とカルボプラチン完遂後の維持としてのメトロノーム的シクロホスファミドの評価
Evaluation of metronomic cyclophosphamide chemotherapy as maintenance treatment for dogs with appendicular osteosarcoma following limb amputation and carboplatin chemotherapy
Arata Matsuyama, Courtney R. Schott, Geoffrey A. Wood, Danielle Richardson, J. Paul Woods, Anthony J. Mutsaers
J Am Vet Med Assoc 2018;252:1377-1383
目的:四肢骨肉腫における断脚とカルボプラチン 投与後のメトロノーム的シクロホスファミドと補助的メロキシカムによる効果の検証。
デザイン:回顧的コホート内ケースコントロールスタディ
動物:39頭の四肢骨肉腫で断脚とカルボプラチン完遂したもの(2011年1月-2015年12月)
方法:シクロホスファミド(15mg/m2, PO, SID)とメロキシカム(0.1 mg/kg, PO, SID)をするもしくはしない群に分けた。Breslow
rankテストを行った。
結果:19頭はメトロノーミック、20頭はコントロール。年齢、性別、体重、血清ALP、腫瘍の発生部位、悪性度、サブタイプに有意差はなかった。メトロノーミック期間中央値は94日(幅7-586日)で、無菌性膀胱炎による中止が11頭(58%)であった。11頭(28%)は分析時に生存しており、追跡期間中央値は450日(幅204-1,400日)であった。両群で無腫瘍期間と全生存期間に差はなかった。
結論と臨床的意義:メトロノーミックを追加しても無腫瘍生存期間と全生存期間に差はなかった。無菌性膀胱炎は一般的であり、フロセミドなどの予防を検討するべきである。(Dr.Maru訳)
■1頭の猫の脊椎骨肉腫の治療に対する脊椎置換
Vertebral replacement for the treatment of vertebral osteosarcoma in a cat.
J Vet Med Sci. June 2017;79(6):999-1002.
Kohei Nakata , Harumi Miura , Hiroki Sakai , Takashi Mori , Sanae Shibata , Hidetaka Nishida , Sadatoshi Maeda , Hiroaki Kamishina
7歳の猫が後肢運動失調で紹介されてきた。エックス線およびCT検査で、L1椎弓の骨吸収が明らかとなり、脊髄造影で圧迫性硬膜外病変を確認した。
そのマスが外科的に切除し、病理組織学的に巨細胞性骨肉腫と診断された。3年後、再発した腫瘍の切除と脊椎固定を実施した。6か月後、再発マスの根治的切除のため、脊椎切除を実施し、チタニウム脊椎ケージを設置した。
その猫は最初の手術から約5年生存している。
この症例報告は、猫の脊椎骨肉腫に対する根治的治療として脊椎切除と椎体置換を述べる。(Sato訳)
■自然発生の四肢骨肉腫の犬における疼痛の特徴と緩和治療に対する反応
Pain characterization and response to palliative care in dogs with naturally-occurring appendicular osteosarcoma: An open label clinical trial.
PLoS One. 2018 Dec 6;13(12):e0207200. doi: 10.1371/journal.pone.0207200. eCollection 2018.
Monteiro BP, de Lorimier LP, Moreau M, Beauchamp G, Blair J, Lussier B, Pelletier JP, Troncy E.
この研究の目的は、四肢骨肉腫(OSA)の犬の骨癌の疼痛の(定量的感覚試験(QST)、スタンス非対称性指数、疼痛スコアとクオリティオブライフ(QoL))特徴を調べることと、段階的緩和鎮痛治療を評価することである。
OSAの飼育犬13頭の疼痛プロフィールを、7頭の健康犬と比較した。それから犬を前向き非盲検臨床試験に登録した。測定した結果は一次および二次収縮域値(MT)、条件刺激性疼痛調節(CPM)、スタンス非対称性指数、actimetry(最大および最小活動周期)、ビジュアルアナログスケール、QoLだった。基礎評価後の段階的治療は、シミコキシブ(2mg/kg24時間毎)、アミトリプチリン(1-1.5mg/kg24時間毎)、ガバペンチン(10mg/kg8時間毎)の経口投与だった;再評価は14(D14)、21(D21)、28(D28)日後に実施した。統計は線形混合モデル(α=5%;one-sided)を使用した。集中侵害受容感受性(一次および二次MT、動的アロディニア)をOSA犬で記録した。
健康犬はCPMに反応したが、OSA犬でCPMは不十分だった。構成概念妥当性はQSTプロトコールで観察された。非対称性指数はOSA犬で有意に存在した。CPMはD14で有意に改善した。基礎値(log平均±SD:4.1±0.04)と比較した時、最大活動actimetryはD14(4.3±0.04)、D21とD28(両方で4.2±0.04)で有意に改善した。基礎値と比較した時、最小活動actimetryは治療後全てのタイムポイントで低下し、夜間の休憩時に改善を示した。他に有意な治療効果は観察されなかった。触覚域値とactimetryを除き、シミコキシブ-アミトリプチリンにガバペンチンを加えた時に全ての結果は悪化した。
骨癌の犬は、末梢および中枢感作を特徴とする広範囲体性感覚感受性に影響を受け、不十分な抑制システムを持つ。この厳しい疼痛は、大部分は緩和鎮痛治療に反応が悪く、後者は特異性および感受性結果にのみ検出された。(Sato訳)
■犬椎骨骨肉腫に対する定位照射9頭の結果
Outcome of 9 dogs treated with stereotactic radiation therapy for primary or metastatic vertebral osteosarcoma
K. E. Swift, S. M. LaRue
Vet Comp Oncol. 2018;16:E152?E158.
犬の原発性および転移性椎骨骨肉腫は予後不良である。犬椎骨骨肉腫の治療としては切除、放射線、化学療法の組み合わせが報告されている。この回顧的研究では定位放射線治療を行なったときの失敗のパターン、局所制御期間、生存期間を分析した。
9頭で実施し、分割回数は1-5回で線量は13.5-36Gyであった。6頭は原発、3頭は転移性病変であった。神経スコアの改善が4頭で、変化なし4頭、悪化1頭であった。脊髄の痛みのあった6頭中5頭で改善が得られた。生存期間中央値は139日で疼痛緩和期間中央値は77日であった。原発、転移での生存、神経学的スコアに違いはなかった。根治的照射と生存期間は類似しており局所コントロールは課題であった。線量制限因子は脊髄の晩発障害であるが多くはその前に亡くなっていた。(Dr.Maru訳)
■遠位橈骨骨肉腫の患肢温存法としての肢の短縮:犬の一例
Sarah E. Boston, Owen T. Skinner
Limb shortening as a strategy for limb sparing treatment of appendicular osteosarcoma of the distal radius in a dog
Veterinary Surgery. 2018;47:136?145
目的:遠位橈骨に対する新しい患肢温存法の開発と犬の一例報告
デザイン:症例報告
動物:ラブラドールレトリーバー、避妊メス、14歳が右橈骨遠位骨肉腫と病的骨折に見舞われた。5年前に肥満細胞腫をマージンギリギリ切除と右中手骨にフルコースの放射線治療が実施されていた。この来院前に2回の緩和照射を受けていた。
方法:患肢温存のために標準的な遠位橈骨の切除がなされた。6cmの骨欠損に対して補綴具を入れる代わりにプレートによる関節固定を実施した。
結果:術後の患肢の機能は良好で短縮しても問題なかった。X線では早期に癒合が認められた。合併症としては、一部の皮膚壊死(外科的に管理)、感染(長期抗生物質により治癒)、ネジ穴による第3中手骨骨折(ネジの除去と外固定)という3つのものが発生した。化学療法によると思われる合併症にて127日後に安楽死となった。
結論:患肢の短縮による温存は技術的に可能であり、肢は著しく短縮するものの機能に問題はなかった。(Dr.Maru訳)
■骨肉腫に対する薬剤転用の比較腫瘍学アプローチ
Comparative oncology approach to drug repurposing in osteosarcoma.
PLoS One. 2018 Mar 26;13(3):e0194224. doi: 10.1371/journal.pone.0194224. eCollection 2018.
Parrales A, McDonald P, Ottomeyer M, Roy A, Shoenen FJ, Broward M, Bruns T, Thamm DH, Weir SJ, Neville KA, Iwakuma T, Fulbright JM.
背景:骨肉腫(OS)は1980年後半から生存性の改善がほとんど見られない奇病である。奇病に対する新しい創薬は、新薬開発にかけるコストと時間が限られている。FDAですでに認可されている薬剤の転用は、この制限を克服するのに役立つ。癌の創薬の他の制限は、ヒトにみられる正確な再現性の前臨床モデルが欠けている、OSに対し、モデルとしての犬の使用は、ヒトでそうであるように自発的に局所侵襲と肺転移を起こす犬のOSとしてこの制限を最小限にできる。
方法:この研究で、ヒトおよび犬OS細胞系に対し、選択的成長抑制を証明された2286種のFDA認可薬剤のライブラリーから薬剤を確認するため、高処理スクリーンを使用した。その後、確認したリード化合物は、OSに対する活性を証明されている7種の他の薬剤で相乗効果を試験した。それらの結果はin
vitroアッセイとOSのin vivoマウスモデルで確認した。
結果:ヒトと犬のOS細胞系、両方に対し選択的成長抑制を証明した13の薬剤を確認した。追加のin vitro併用薬剤スクリーンでオーラノフィンを選択した。オーラノフィンはOSの生存能力およびアポトーシス誘導に対しボリノスタットとラパマイシンで相乗効果を示した。オーラノフィンはヒトおよび犬OS異種移植片において単剤での成長抑制を示し、ラパマイシンあるいはボリノスタットとの組み合わせで共同成長抑制が観察された。オーラノフィンとボリノスタットあるいはラパマイシンの組み合わせで処置した腫瘍組織において、有意なKi67陽性細胞の減少とcleaved caspase-3レベルの増加があった。
結論:オーラノフィン単独あるいはラパマイシンあるいはボリノスタットとの併用は、OSに対する有効な新しい治療ストラテジーなのかもしれない。ヒトの臨床評価の前置きとして、追加研究でOSの犬に対するオーラノフィンの効果を評価すると思われる。(Sato訳)
■犬の転移性四肢骨肉腫に対するトセラニブ(パラディア)回顧的評価
Retrospective evaluation of toceranib (Palladia) treatment for canine metastatic appendicular osteosarcoma.
Language: English
Can Vet J. October 2017;58(10):1059-1064.
Changseok Kim , Arata Matsuyama , Anthony J Mutsaers , J Paul Woods
この回顧的研究で、四肢骨肉腫(appendicular osteosarcoma:OSA)の肉眼的肺転移があり、トセラニブで治療した犬の結果を評価した。
OSAの肉眼的肺転移があり、トセラニブで治療した20頭の犬の医療記録を調査した。
トセラニブ投与量の中央値と投与期間は、2.52mg/kg(範囲:2.12-2.72mg/kg)と60日(範囲:17-231日)だった。無増悪生存期間(PFS)と総生存期間(OS)は36日(範囲:17-231日)と90日(範囲:17-433日)だった。臨床的有効率は10%(2/20;部分奏功1頭、安定疾患1頭)だった。初期肺結節の最大長は有意にPFS(P=0.01)とOS(P=0.02)に影響を及ぼした。転移性OSAの犬の予後は不良で、トセラニブにより10%の犬が臨床的有効性を示しただけだった。
トセラニブはOSAの肉眼的肺転移のある犬の結果を改善しないだろうと示唆される。(Sato訳)
■定位放射線療法と外科的安定化の併用で治療した四肢原発性骨腫瘍の犬の結果と合併症
Outcome and complications in dogs with appendicular primary bone tumors treated with stereotactic radiotherapy and concurrent surgical stabilization.
Language: English
Vet Surg. August 2017;46(6):829-837.
Sarah E Boston , Arathi Vinayak , Xiaomin Lu , Susan Larue , Nicholas J Bacon , Jason A Bleedorn , Carlos H M Souza , Nicole P Ehrhart
目的:定位放射線療法(stereotactic radiotherapy:SRT)と固定の併用で治療した四肢原発性骨腫瘍の犬の結果を考証する
研究計画:多施設回顧的ケースシリーズ
動物:四肢骨肉腫の仮診断あるいは確定診断を受けた18頭の犬
方法:SRTと固定で治療した四肢原発性骨腫瘍の犬の医療記録で、シグナルメント、術前ステージングと診断、放射線量、安定化方法、結果に関して再調査した。
結果:13/18症例の遠位橈骨に病変があった。15/18症例において骨肉腫あるいは肉腫が細胞あるいは組織学的に確認された。7症例に治療時の病的骨折が診断され、11症例は病的骨折のリスクが高いと考えられた。5症例はSRTを1回照射、13症例は3回照射を受けた。外科的固定は10症例でSRTの最終照射の麻酔時に同時に実施した。安定化は骨プレート(n=15)あるいはインターロッキングネイル(n=3)で行われた。17症例は補助的化学療法を受けた。
合併症は16/17症例で発生し、それらの15/17はメジャーな合併症と考えられた。4症例は1つ以上の合併症を経験した。感染が最も一般的な合併症で、15/17症例で診断され、13/15症例においてメジャーな合併症と考えられた。3症例において術後骨折はメジャーな合併症と記録された。9症例は中央値152日で断脚した。生存期間中央値は344日だった。
結論: SRTと安定化の併用による犬の骨腫瘍の治療は、非常に高い合併症率だった。病的骨折のリスクがある犬に対し、患肢救済に対する代替法を考えるべきである。(Sato訳)
■下顎、橈骨、脛骨の腫瘍の犬の個体別多孔性チタニウム内部人工器官の臨床結果:12症例(2013-2016)
Clinical outcomes of patient-specific porous titanium endoprostheses in dogs with tumors of the mandible, radius, or tibia: 12 cases (2013-2016).
Language: English
J Am Vet Med Assoc. September 2017;251(5):566-579.
Jonathan P Bray, Andrew Kersley, Warwick Downing, Katherine R Crosse, Andrew J. Worth, Arthur K House, Guy Yates, Alastair R Coomer, Ian W M Brown
目的:下顎、橈骨、脛骨に腫瘍を持つ犬における骨格構造の機能的置換のためのカスタムデザインの個別インプラントに関するプロセス、達成した結果の特徴を述べる
計画:前向きケースシリーズ
動物:3か所の紹介病院で2013年6月から2016年9月の間に治療した下顎腫瘍の犬6頭、橈骨遠位面の腫瘍5頭、脛骨遠位面の腫瘍1頭
方法:腫瘍のステージング後、種々のコンピューターによるデザインアプリケーションにより、その犬のCTスキャンからインプラントをデザインし、チタニウム-6アルミニウム-4バナジウム合金を選択的レーザー溶解でプリントした。計画通り各骨切術を確実にするために熱可塑性物質で切断冶具を作成した。骨切術に続き、適切なサイズと長さのスクリューでインプラントを欠損部に固定した。
結果:正常な臨床的機能の初期回復は12頭中11頭で良好から優良だった。しかし、メジャーな合併症で5頭の犬の肢のインプラントの修正あるいは切断の結果となり、それらの合併症のうち最低3つはインプラントのデザインあるいは製造の結果と考えられた。2頭で感染が発症し、1頭は治療が成功した。最も長く生存した犬は2年間良好な肢の機能を維持した。
結論と臨床関連:これはカスタマイズした3Dプリントのチタニウムインプラントで管理した犬の最も大きなシリーズ報告である。3Dプリントは複雑で個別の3-Dジオメトリーの作成を可能にし、複数の解剖学的部位に関与する骨癌の機能を残す治療を可能にする。(Sato訳)
■遠位橈骨骨肉腫の患肢温存のため尺骨ロールオーバー転位で治療した犬の長期結果:26頭の犬の27患肢
Long-term outcome of dogs treated with ulnar rollover transposition for limb-sparing of distal radial osteosarcoma: 27 limbs in 26 dogs.
Language: English
Vet Surg. October 2017;46(7):1017-1024.
Bernard Seguin , Matthew D O'Donnell , Peter J Walsh , Laura E Selmic
目的:尺骨グラフトの生存度、合併症、主観的な患肢の機能、無症候期間(disease-free interval:DFI)、生存期間(survival time:ST)を含む、尺骨ロールオーバー転位(ulnar rollover transposition:URT)患肢温存術で治療した遠位橈骨骨肉腫の犬の結果を調べる
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:尺骨が巻き込まれていない遠位橈骨骨肉腫の飼育犬26頭
方法:URTで治療した犬のデータを、手術時、医療記録から回顧的に、オーナーと紹介獣医師との連絡から収集した。
結果:URT法は26頭の犬の27患肢に実施した。尺骨グラフトは17患肢で生存可能、3患肢で生存不可能、7患肢で不明だった。合併症は20患肢に見られた。12患肢に感染が診断された。15患肢にバイオメカニカルな合併症が発生し、2患肢で局所再発した。獣医師あるいはオーナーが付けた患肢機能のグレードは、2患肢が不良、4患肢がまあまあ、14患肢が良好、3患肢が優良、4患肢は不明だった。DFI中央値は245日、生存期間中央値は277日だった。
結論:URT法は尺骨グラフトの生存性を維持した。合併症率は高いが、患肢機能は容認できると思われた。この方法の実施に当たり、尺骨の遠位面の十分な長さが保存されるべきであるが、症例を適切に選別した時、局所再発は他の患肢温存法と比較して増えることはなかった。(Sato訳)
■犬の転移性骨肉腫に対するリン酸トセラニブの前向き評価
Prospective evaluation of toceranib phosphate in metastatic canine osteosarcoma
Vet Comp Oncol. 2017 Jun 15. doi: 10.1111/vco.12328.
Laver T, London CA, Vail DM, Biller BJ, Coy J, Thamm DH
【アブストラクト】 測定可能な犬の転移性骨肉腫(OSA)の効果的な治療は一般的には不足している。予備的な回顧的研究では、トセラニブ(TOC)による治療で、測定可能な転移性OSAでは約50%の症例で臨床的有用性(客観的反応あるいは臨床的に意義のある疾患安定)が認められることが示唆された。
この臨床試験の目的は、測定可能な肺転移性骨肉腫に対するTOC治療の臨床的な結果を前向きに評価することである。2つ目の目的は血漿血管内皮成長因子(vascular
endothelial growth factor:VEGF)と循環制御性T細胞(Treg)パーセンテージの変化を確認することで臨床的な有用性を評価する潜在的なバイオマーカーを特定することである。
過去に断脚によって治療された四肢骨肉腫による肺転移が認められる犬22例が、TOCにて前向きに治療された。有害事象(Adverse Event:AEs)は一般的に認められたが、殆どが低グレードだった。9例の犬が進行性病変(Progressive Disease:PD)、生活の質の低下、ご家族の要望の為、8週目の評価前に治療を中止した。8週(もしくはより早く)で病気の進行度を評価した犬のうち、3/17(17.6%)が維持病変であり、その他の症例で進行性病変が認められた。全症例の無病進行生存期間の中央値は57日(範囲:7?176日)であり、中央生存期間は89日(範囲:7?574日)だった。血漿VEGF濃度はTOC治療の4週後には有意に高くなったものの、末梢血のTregのパーセンテージは変化がなかった。概して、この臨床試験の結果からは、犬の転移性OSAのTOC単剤治療は支持されなかった。(Dr.Masa訳)
■骨肉腫の犬の血清総コレステロール濃度の予備評価
Preliminary evaluation of serum total cholesterol concentrations in dogs with osteosarcoma.
J Small Anim Pract. 2017 Jun 29. doi: 10.1111/jsap.12702. [Epub ahead of print]
Leeper H, Viall A, Ruaux C, Bracha S.
目的:骨肉腫の犬の総血清コレステロール濃度は変化するのか調べること。四肢骨肉腫の犬の総血清コレステロール濃度と臨床結果の関係を評価すること。
素材と方法:骨肉腫の犬64頭の回顧的多施設研究。コントロール集団は骨肉腫の症例と同じ年齢および体重の健康犬(n=31)および外傷性骨折の犬(n=30)だった。生存分析は、現行の標準療法を受けている四肢骨肉腫の犬35頭で行った。統計学的関連は、一変量および多変量解析で分析した。年齢、性別、原発腫瘍部位、総コレステロール濃度、単球およびリンパ球数、ALPに関する情報も含めた。
結果:骨肉腫の犬の64頭中29頭(45.3%)において、総コレステロールは参照範囲(3.89-7.12mmol/L)(150-275mg/dL)異常に上昇したが、同様の上昇は、骨折コントロール30頭中3頭(10%)(P<0.0001)、同じ年齢/体重コントロール31頭中2頭(6.5%)(P=0.0002)にしか見られなかった。骨肉腫の犬の全体の死亡率に対し、総コレステロールの上昇はハザード比(0.27、P=0.008)低下に有意に関係した。
臨床医意義:それらの結果は、総コレステロール上昇は犬の骨肉腫と関係し、予後の意義はあるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■四肢骨肉腫の犬におけるカルボプラチン療法中の体重変化の評価
Evaluation of Weight Change During Carboplatin Therapy in Dogs With Appendicular Osteosarcoma.
J Vet Intern Med. 2017 May 15. doi: 10.1111/jvim.14724. [Epub ahead of print]
Story AL, Boston SE, Kilkenny JJ, Singh A, Woods JP, Culp WTN, Skorupski KA, Lu X.
背景:獣医療における癌悪液質の有病率は広く研究されておらず、今までのところは動物におけるこの症候群を効果的に評価する最終的な診断基準はない。
目的:(1)断脚とカルボプラチン単剤で治療した四肢骨肉腫の犬において補助化学療法のコース中の体重変化パターンを判定することと、(2)術後の体重変化が骨肉腫の犬の生存期間に対する負の予後指標かどうかを判定すること。
動物:四肢骨肉腫と診断された88頭の犬。犬は3カ所の獣医教育病院から集めた。
方法:回顧的多施設研究。四肢骨肉腫と診断され、断脚後、最低4回のカルボプラチンを投与した犬を含めた。各犬の分析したデータは、シグナルメント、腫瘍の部位、術前血清アルカリフォスファターゼ活性(ALP)、各カルボプラチン投与時の体重(kg)だった。
結果:化学療法のコースでわずかに体重の増加は見られたが、この変化は統計学的に有意ではなかった。体重変化は生存に有意な影響を持たなかった。施設、犬の性別、血清ALP活性は生存に有意な影響を持たなかった。
結論と臨床意義:それらの犬で体重変化は予後因子ではなく、四肢骨肉腫の犬において体重減少単独は安定した癌悪液質の判定方法ではないかもしれない。(Sato訳)
■犬の骨病変の診断における細胞診と組織生検の精度の比較評価
Comparative Assessment of the Accuracy of Cytological and Histologic Biopsies in the Diagnosis of Canine Bone Lesions.
J Vet Intern Med. 2017 Apr 4. doi: 10.1111/jvim.14696. [Epub ahead of print]
Sabattini S, Renzi A, Buracco P, Defourny S, Garnier-Moiroux M, Capitani O, Bettini G.
背景:骨肉腫(osteosarcoma:OSA)は、他の発生頻度の低い原発性骨腫瘍、転移疾患、腫瘍様病変と区別すべきで、治療や予後がそれにより変わってくるからである。ゆえに、術前組織診断が一般的に優先される。これには、全身麻酔下で病的骨折を含む潜在的合併症を伴うような複数のバイオプシーによる採取が必要である。細針吸引細胞診は、不快感や病的状態を明らかに減らし、より速い診断が可能である。
仮説/目的:この研究の目的は、犬の骨破壊病変の診断において、細胞診と組織バイオプシーの精度を比較することだった。
動物:骨病変のある68頭の犬
方法:回顧的研究。精度は、追跡情報もある手術あるいは死後サンプル、非腫瘍病変の症例の最終組織診断と、以前の診断を比較することで評価した。
結果:研究には、50頭の原発性悪性骨腫瘍(40頭はOSA、5頭は軟骨肉腫、2頭は線維肉腫、3頭は未分化肉腫)、6頭の腺癌転移、12頭の非腫瘍性病変を含めた。精度は細胞診で83%(感受性、83.3%;特異性、80%)、組織診断で82.1%(感受性、72.2%;特異性、100%)だった。腫瘍の種類は、細胞診の50%、組織診断の55.5%の症例で正確に確認できた。
結論と臨床意義:細胞診の精度は腫瘍の種類の判定でさえも組織診断と同じだった。細胞診で良性病変を悪性と診断した症例はなかった。これは、積極的な外科手術を含む悪性骨腫瘍の治療において防ぐべき最も重要な過失である。信頼できる診断方法であるから、細胞診は犬の骨病変の術前に決断を助けるため、より考慮すべきである。(Sato訳)
■断脚後、連続して短期で終わるドキソルビシンおよびカルボプラチン化学療法による犬骨肉腫の治療
Canine Osteosarcoma Treated by Post-Amputation Sequential Accelerated Doxorubicin
and Carboplatin Chemotherapy: 38 Cases.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 May-Jun;52(3):149-56.
Angela E Frimberger , Catherine M Chan , Antony S Moore
犬の四肢骨肉腫は獣医療で重要な臨床的問題である。現在の標準的な治療法は、断脚後の化学療法で結果を改善している;しかし長期生存の比率は依然比較的低く15-20%である。確立された予後因子は、血清アルカリフォスファターゼ濃度、組織学的グレード、リンパ球と単球数が含まれる。
著者らは標準よりも処置間の間隔が短いが、dose intensityを増すことで結果を改善する目的をもち、活性を持つと知られている薬剤を基に許容性があると予測したプロトコールを用いた。
肺転移がなく四肢骨肉腫と確認し、断脚後この化学療法プロトコールを行った38頭の犬を回顧的に評価した。生存期間中央値は317日で、1-および2-生存率は43.2%と13.9%だった。毒性は他の標準用量プロトコールと同様で、5.2%の犬は合併症で入院し、支持療法で解消した。また化学療法が関連した死亡はなかった。多変量解析で血清アルカリフォスファターゼ濃度(正常あるいは高い)(P=0.004)、化学療法を最後までしたかどうか(P=0.001)は有意に生存期間に影響することが分かった。転帰はこの疾患の犬に対し他の発表されている多くの化学療法プロトコールで報告されているものと同じだった。(Sato訳)
■犬の四肢骨肉腫の補助治療でカルボプラチンに対しカルボプラチンとドキソルビシンを交互に使用する方法:無作為第III相試験
Carboplatin versus alternating carboplatin and doxorubicin for the adjuvant treatment of canine appendicular osteosarcoma: a randomized, phase III trial.
Vet Comp Oncol. March 2016;14(1):81-7.
K A Skorupski; J M Uhl; A Szivek; S D Allstadt Frazier; R B Rebhun; C O Rodriguez, Jr
犬の四肢骨肉腫に対する補助化学療法について多くの研究が発表されているが、最適な化学療法プロトコールにたいするコンセンサスはない。
この研究の目的は、四肢骨肉腫の犬の断脚後、2つのプロトコールのどちらがより長い無症候期間(DFI)と関係するか判定することだった。
組織学的に四肢骨肉腫と確認され、肉眼での転移がなく断脚を行った犬を登録資格とした。犬を無作為にカルボプラチン6回投与と、カルボプラチンとドキソルビシンを交互に3回ずつ投与するスケジュールに振り分けた。
50頭の犬を研究した。カルボプラチン単独投与をした犬の方が、カルボプラチンとドキソルビシンを交互に投与した犬よりも有意に長いDFI(425日v.s.135日)だった(P=0.04)。毒性は両群同じだった。
それらの結果は、カルボプラチンとドキソルビシンを合計6回投与する方法と比較して、カルボプラチンの6回投与は優れたDFIに関係すると示唆する。(Sato訳)
■橈骨遠位骨肉腫の犬45頭における2世代の金属体内プロテーゼを用いた患肢温存手術の結果
Outcomes of Limb-Sparing Surgery Using Two Generations of Metal Endoprosthesis
in 45 Dogs With Distal Radial Osteosarcoma. A Veterinary Society of Surgical
Oncology Retrospective Study.
Vet Surg. January 2016;45(1):36-43.
Katherine E Mitchell; Sarah E Boston; Marvin Kung; Sarah Dry; Rod C Straw; Nicole P Ehrhart; Stewart D Ryan
目的:金属体内プロテーゼを用いた患肢温存手術で治療した橈骨遠位骨肉腫(OSA)の犬の結果を報告することと、2世代の体内プロテーゼの結果を比較すること
研究計画:複数施設の回顧的ケースシリーズ
動物:体内プロテーゼと化学療法で治療した橈骨遠位骨肉腫の犬45頭
方法:第1世代体内プロテーゼ(GEN1)か第2世代体内プロテーゼ(GEN2)で治療した犬のデータを診療記録とエックス線写真から得た。手術の結果には術後の跛行評価とその有無、重症度、合併症発現までの期間を含めた。腫瘍学的結果には局所再発または転移の有無、局所再発までの期間、転移がない期間(MFI)、生存期間を含めた。手術および腫瘍学的結果をGEN1とGEN2で比較した。
結果:28頭はGEN1を17頭はGEN2を使用していた。39件の合併症(96%、マイナー14件、メジャー29件)が起こり、感染(78%)、インプラント関連の合併症(36%)、局所再発(24%)が含まれた。転移頻度は67%で、MFI中央値は188日(95%信頼区間[CI]:126-250日)だった。生存期間は34日から6.1年で、中央値は289日(95%CI:207-371日)だった。GEN1とGEN2を使用した犬の間で、合併症の程度、頻度、合併症発現までの期間、MFI、生存期間に有意差は見られなかった。
結論:橈骨の患肢温存手術に対し、GEN1とGEN2を使用した犬の結果に有意差はなかった。金属体内プロテーゼに対し、転移の頻度と生存期間は、断脚と治癒的集中化学療法で治療した犬のそれと同じようなものだった。(Sato訳)
■犬のインプラント関連腫瘍:16症例(1983-2013)
Implant-associated neoplasia in dogs: 16 cases (1983-2013).
J Am Vet Med Assoc. October 1, 2015;247(7):778-85.
Andrew G Burton; Eric G Johnson; William Vernau; Brian G Murphy
目的:犬のインプラントが関連する腫瘍の臨床および病理学的特徴を述べる
計画:回顧的症例-コントロール研究
動物:インプラントの関連腫瘍がある犬16頭とインプラントがない骨肉腫のコントロール犬32頭
方法:1983年の間から2013年の間に治療した金属インプラント(症例)に関係する腫瘍のある犬のカルテを再調査した。自然に発生した骨肉腫の犬2頭(コントロール)を腫瘍の位置、年齢、性別を基に各症例にマッチさせた。
結果:インプラント設置から腫瘍の診断までの期間中央値は5.5年(範囲、9か月-10年)だった。後肢が最も頻繁に罹患し、脛骨(8/16)および大腿骨(5/16)、1つの腫瘍は大腿骨と骨盤を巻き込んでいた。インプラントの関連する腫瘍は最も多く骨幹に見られ(15/16)、自然発生の骨肉腫のコントロール犬と比較して、症例犬においては有意に長骨骨幹を巻き込む可能性が高かった。骨肉腫は最もよく見られた腫瘍で、インプラントの関連する腫瘍16のうち13を占めた。それら骨肉腫症例のうち7頭で、病理組織検査結果の概要は、骨芽細胞性非増殖性(n=3)、軟骨芽細胞性(2)、骨芽細胞性増殖性(1)、線維芽細胞性(1)群に細分類できた。3症例は組織球肉腫、線維肉腫、紡錘細胞肉腫の診断があった。
結論と臨床関連:この研究結果は、犬の自然に発生した腫瘍とインプラントの関連する腫瘍の重要な解剖学的違いを強調した。(Sato訳)
■1頭の犬の坐骨軟骨肉腫の後肢を温存した座骨切除:症例報告と術式
Ischiectomy With Limb Preservation for a Dog With Ischial Chondrosarcoma:
Case Report and Surgical Technique.
Vet Surg. July 2015;44(5):571-5. 10 Refs
Michelle L Oblak; Sarah E Boston
目的:犬の座骨切除に対する術式を述べ、1症例の処置を報告する。
研究計画:症例報告
動物:坐骨に軟骨肉腫のある11歳の避妊済みメスの雑種
方法:その犬は後肢の跛行を呈し、レントゲン検査で左坐骨の溶解病変が確認された。ステージ1疾患の悪性度判定と確認後、後肢を温存した座骨切除を実施した。
結果:その犬は手術から回復し、当初は後肢に中程度の跛行がみられた。時間とともに後枝の使用は満足なものに回復し、局所再発や転移の所見もなく術後500日以上生存した。
結論:後肢を温存した座骨切除は技術的に簡単明快な方法で、この症例において術後の後肢の機能は良好だった。坐骨に限られた骨腫瘍の犬の治療でこの方法を考慮すべきである。(Sato訳)
■1頭の猫の骨肉腫による上皮小体ホルモン関連蛋白誘発性の高カルシウム血症
Parathyroid hormone-related protein-induced hypercalcemia due to osteosarcoma
in a cat.
Vet Clin Pathol. March 2015;44(1):141-4.
Masashi Yuki; Makiko Nitta; Tetsuo Omachi
15歳の去勢済みオスの雑種猫が右後肢の遠位に肉腫があると来院した。生化学検査で血中尿素、クレアチニン、総カルシウム、上皮小体ホルモン関連蛋白(PTHrP)濃度の上昇を認めた。
マスは後肢の断脚により外科的に除去した。組織検査を基に骨肉腫が診断された。高窒素血症、総カルシウム、イオン化カルシウム、PTHrPなど、全ての異常な血清の分析物濃度は術後すぐに改善した、
生化学の結果はPTHrP誘発性高カルシウム血症を起こす骨肉腫によるものだった。(Sato訳)
■四肢の原発性骨腫瘍のある犬のステージングに対して併用する画像診断様式の比較
Comparison of concurrent imaging modalities for staging of dogs with appendicular
primary bone tumours.
Vet Comp Oncol. March 2015;13(1):28-39.
M L Oblak; S E Boston; J P Woods; S Nykamp
この研究は四肢の原発性骨腫瘍のある犬において長骨エックス線検査、骨シンチグラフィー、胸部エックス線検査と比べ、転移の評価に対する全身CT検査の使用を評価した。
15頭の犬でこの予備研究を行った。骨転移の検出に構成参照基準を使用し、陰性胸部エックス線検査はCTと比較した。
確定病変は骨シンチグラフィーにおいてのみ確認された。全ての病変は構成参照基準に一致するとは限らなかった。エックス線検査あるいはCTにおいて確定病変が確認されたものはなかった。エックス線検査で見えなかった病変が胸部CTで確認された。はっきりしないすりガラスの肺病変は4頭中3頭で進行した。
全身CT検査は骨シンチグラフィーの適した代替検査ではなかったが、補助的診断様式としては有用だった。エックス線検査で見えない肺病変はCT検査で確認でき、犬におけるすりガラスの肺病変は転移を疑うべきである。(Sato訳)
■犬の転移性骨肉腫に対するイホスファミドによるサルベージ療法の評価
Evaluation of ifosfamide salvage therapy for metastatic canine osteosarcoma.
Vet Comp Oncol. 2014 Dec;12(4):249-57. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00355.x. Epub 2012 Sep 18.
Batschinski K, Dervisis NG, Kitchell BE.
転移性骨肉腫(OSA)と診断された犬に対するイホスファミドサルベージ治療の毒性と反応率を評価するため、回顧的研究を行った。
OSAと診断され、過去に標準的な化学療法で治療した犬を研究した。19頭の犬が基準を満たし、17頭で反応を評価した。
イホスファミドの投与量は375mg/m2から425mg/m2の範囲(中央値375mg/m2)で、1頭に対する投与回数の中央値は2回(範囲1-7回)だった。イホスファミドの全体の反応率は11.8%だった(完全反応(CR)=1/17、部分反応(PR)=1/17、安定疾患(SD)=2/17、進行性疾患(PD)=13/17)。2頭は毒性のために入院した。最初のイホスファミドの投与から死亡までの生存期間中央値は95日だった。イホスファミドは許容できるものだったが最小の抗腫瘍活性しか観察されなかった。(Sato訳)
■33頭の犬の軟部組織及び内臓の骨外骨肉腫の治療後の結果:2008-2013
Outcome following treatment of soft tissue and visceral extraskeletal osteosarcoma in 33 dogs: 2008-2013.
Vet Comp Oncol. 2015 Feb 3. doi: 10.1111/vco.12141.
Duffy D, Selmic LE, Kendall AR, Powers BE.
骨外骨肉腫(EOS)は、骨の関与がない類骨の形成を特徴とする内臓あるいは軟部組織に発生する珍しい、より悪性の間葉系腫瘍である。それらの腫瘍は非常に珍しいため、治療結果に関しても情報が非常に少ない。
この研究の目的は、犬の乳腺および甲状腺ではない軟部組織および内臓EOSの外科的治療後の結果を述べることだった。
33頭の犬を確認し、最も多い原発腫瘍部位は脾臓だった。広範、根治的腫瘍切除を行った犬は、辺縁腫瘍切除のみ行った犬より生存期間が長かった(生存期間中央値90日(範囲0-458日)v.s.13日(範囲0-20日))。
非乳腺、非甲状腺軟部組織および内臓EOSの犬の管理において、外科手術を考慮すべきである。(Sato訳)
■上顎、下顎、頭蓋冠にできた犬の骨肉腫の転帰と予後因子:1986年から2012年の183症例
Outcome and prognostic factors for osteosarcoma of the maxilla, mandible, or calvarium in dogs: 183 cases (1986-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Oct 15;245(8):930-8. doi: 10.2460/javma.245.8.930.
Selmic LE, Lafferty MH, Kamstock DA, Garner A, Ehrhart NP, Worley DR, Withrow SJ, Lana SE.
目的 犬における上顎、下顎、頭蓋冠にできた骨肉腫の生物学的挙動、臨床的な転帰と予後因子について明らかにすること
デザイン 回顧的症例シリーズ
動物 上顎、下顎、頭蓋冠にできた骨肉腫の183頭の飼い犬
方法 1986年から2012年の上顎、下顎、頭蓋冠にできた骨肉腫を治療した犬のカルテを調査した。病理組織学的に骨肉腫と診断され、頭部のこれらの骨から発生した原発性腫瘍を治療した犬を用いた。
結果 平均年齢は9.3歳齢であり、体重は31.8kgであった。多くの犬(183頭中124頭,
67.8%)は純血種であり、最もよく罹患していた部位は、上顎であった(80頭,
43.7%)。治療は、緩和的治療のみ(183頭中11頭, 6.0%)、緩和的分割照射(12頭、6.6%)、分割または定位放射線治療(18頭、9.8%)、外科手術(135頭、73.8%)、外科手術と分割照射の両方(7頭、3.8%)などを行なった。83頭の犬には、補助的な化学療法を行なった。局所的な再発や進行は156頭中80頭(51.3%)において認められ、156頭中60頭(38.5%)は、遠隔転移が認められた。全頭の生存期間の中央値は239日であった。外科手術を実施した犬は329日の生存期間の中央値であった。病理組織学的にサージカルマージンに腫瘍が認められない場合、進行や再発(危険率
0.4)および死亡(危険率 0.5)の危険性が有意に低下していた。頭蓋冠に骨肉腫が認められた犬は、局所の再発や進行の危険性が有意に増加していた(危険率
2.0)。
結論と臨床的意義 本研究では、組織学的にマージンの腫瘍が認められない犬において腫瘍を切除すれば、他の治療よりも、より局所コントロールがうまくいき、長い生存期間が望めることが明らかとなった。(Dr.Taku訳)
■犬の口腔および顎顔面骨肉腫:レビュー
Oral and maxillofacial osteosarcoma in dogs: a review.
Vet Comp Oncol. 2012 Aug 31. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00352.x.
Farcas N, Arzi B, Verstraete FJ.
犬の骨肉腫はその組織学、臨床および生物学的挙動に関して不均一な疾病である。挙動の違いは腫瘍の部位に関係する。口腔および顎顔面骨肉腫は一般に四肢骨肉腫と区別して、軸骨肉腫あるいは扁平骨の骨肉腫の大きな分類の中で報告される。ヒトの口腔および顎顔面骨肉腫に似て、犬でも四肢骨肉腫よりも攻撃的な挙動が少ないと思われる。理想的にはマージンフリーの広範囲な外科切除で局所コントロールが達成される。局所コントロールの失敗が予後不良の一番の原因である。化学療法や放射線治療の結果は不定である。
この文献の目的は、四肢および軸骨肉腫と比較して、口腔および顎顔面骨肉腫の文献を概説する。ヒトの口腔および顎顔面骨肉腫との類似と相違を述べる。(Sato訳)
■骨肉腫の犬に対してメトロノーム療法と最大耐用量の化学療法を組み合わせた場合の毒性の評価
Evaluation of toxicities from combined metronomic and maximal-tolerated dose chemotherapy in dogs with osteosarcoma.
J Small Anim Pract. 2014 May 7. doi: 10.1111/jsap.12228.
Bracha S, Walshaw R, Danton T, Holland S, Ruaux C, Obradovich J.
目的 ピロキシカムとシクロフォスファミドのメトロノーム療法を最大耐用量のカルボプラチン単独またはカルボプラチンおよびドキソルビシンと組み合わせた場合の耐用性について評価する
方法 骨肉腫と診断された30頭の犬の回顧的研究。全ての犬は、断脚をされており、最大耐用量の抗癌剤を用いた2つのプロトコールのうちの1つで治療された。メトロノーム化学療法はこれらのプロトコールとともに実施され、継続治療した。プロトコールとしては、0.3mg/kgのピロキシカムと10-12mg/m2のシクロフォスファミドに、300mg/m2のカルボプラチン単独または300mg/m2のカルボプラチンと30mg/m2のドキソルビシンを交互に投与するものを使用した。
結果 14頭の犬をカルボプラチンとメトロノーム療法で治療し、16頭をカルボプラチンとドキソルビシンを交互に使用しメトロノーム療法と組み合わせた。グレード3および4の毒性は、前者において有意に多かった (P=0.018)。カルボプラチンとメトロノーム療法の無症候期間は192日であり、交互とメトロノーム療法を組み合わせた182日と比較して有意差はなかった(P=0.916)。2つの群の生存期間の中央値は、それぞれ217日と189日であった。
臨床的意義 ピロキシカムとシクロフォスファミドによるメトロノーム療法は最大耐用量の化学療法の治療と用いても安全に投与可能である。カルボプラチンとメトロノーム療法で治療した犬において、毒性は有意に多く認められた。(Dr.Taku訳)
■犬の頭蓋外扁平骨および不規則骨の骨肉腫の生存性に対する臨床および病理組織学的予後因子の評価
Evaluation of clinical and histopathologic prognostic factors for survival in canine osteosarcoma of the extracranial flat and irregular bones.
Vet Pathol. July 2013;50(4):704-8.
M A Kruse; E S Holmes; J A Balko; S Fernandez; D C Brown; M H Goldschmidt
骨肉腫は犬の最も一般的な骨腫瘍である。しかし現在の文献は主に四肢骨肉腫に集中している。
この研究は、扁平骨および不規則骨骨肉腫における組織学的および臨床的因子の予後価値を調査し、臨床的因子は生存期間に有意に関係する一方で、組織学的因子は関係しないだろうと仮説を立てた。
椎骨、肋骨、胸骨、肩甲骨、骨盤の骨肉腫のバイオプシーサンプルを再検討し、同時に生存情報臨床データをカルテ、獣医師および飼い主から入手した。
病理組織学的変数は46頭で分析し、臨床的変数は臨床データがそろっている27頭で分析した。
病理組織学的Cox回帰モデルにおいて、グレードを含む全ての組織学的特徴と生存期間に有意な関係はなかった。臨床的Cox回帰モデルにおいて、腫瘍の部位と生存期間、同様にALPの正常以上への上昇比率と生存期間に有意な関係があった。ALP上昇を考慮すると、肩甲骨に骨肉腫がある犬は、他の部位に腫瘍はある犬と比べて有意に死亡に対する危険が大きかった(2.8)。腫瘍の部位を考慮すると、正常からALPの100%増加ごとに死亡に対する危険は1.7増加した。
犬の扁平および不規則骨の骨肉腫に対し、グレードを含む病理組織学的特徴は生存の正確な指標と思えない。ALP上昇、肩甲骨にある腫瘍のような臨床的変数は、生存期間短縮に関係した。(Sato訳)
■犬の尺骨骨肉腫:30症例(1992-2008)
Ulnar osteosarcoma in dogs: 30 cases (1992-2008).
J Am Vet Med Assoc. July 1, 2013;243(1):96-101.
Ramesh K Sivacolundhu; Jeffrey J Runge; Taryn A Donovan; Lisa G Barber; Corey F Saba; Craig A Clifford; Louis-Philippe de Lorimier; Stephen W Atwater; Lisa DiBernardi; Kim P Freeman; Philip J Bergman
目的:犬の尺骨骨肉腫の生物学的挙動を調査し、生存期間の予測指標を評価する
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:原発性尺骨骨肉腫の犬30頭
方法:カルテを再調査した。生存期間の予測指標を確認するために記録および調査した変数は、シグナルメント、尺骨の腫瘍位置、腫瘍の大きさ、血清ALP活性、術式、切除の完全性、腫瘍ステージ、腫瘍のグレード、組織学的サブタイプ、転移の発生、化学療法の使用だった。
結果:9施設から30症例を確認した。11頭は部分的尺骨切除、14頭は断脚処置を行い、5頭は切除を実施しなかった。22頭は化学療法を受けた。無病期間と生存期間の中央値は、それぞれ437日と463日だった。一変量分析で判定した生存期間に対する負の予後因子は、組織学的サブタイプと肺転移の発生だった。血管拡張性や血管拡張性混合サブタイプ(n=5)は、多変量分析で確認された唯一の負の予後因子だった(生存中央期間、208日)。血管拡張性サブタイプの犬は、6.99倍病死しやすかった。
結論と臨床関連:この集団の尺骨骨肉腫に対する予後はあまり悪くなく、他の肢にできた骨肉腫の犬に対する予後よりも良いかもしれない。部分的尺骨切除は合併症率が低く、良好から優良な機能で、生存期間を短縮することはなかった。血管拡張性や血管拡張性混合組織学的サブタイプは、生存期間に対する負の予後因子だった。化学療法の効果についてはさらに評価が必要である。(Sato訳)
■犬の四肢の骨肉腫に対するカルボプラチンとパミドロン酸の補助療法
Adjuvant therapy with carboplatin and pamidronate for canine appendicular osteosarcoma.
Vet Comp Oncol. 2013 May 10. doi: 10.1111/vco.12040.
Kozicki AR, Robat C, Chun R, Kurzman ID.
犬の四肢の骨肉腫(OSA)に対して断脚と化学療法は治療の主軸である。インビトロの研究で犬のOSAに対するパミドロン酸の抗腫瘍活性が示されている。
この研究の目的は、四肢に骨肉腫があり断脚で治療した17頭の犬で、標準的な術後カルボプラチン化学療法にパミドロン酸を加えた時の安全性を評価することだった。副次的評価項目として無病期間(DFI)中央値と生存期間中央値(MST)を評価した。副作用の発生率と治療結果は、カルボプラチン単独で治療したコントロール患犬14頭と比較した。
パミドロン酸治療による副作用は確認されなかった。研究群のDFI中央値は185日で、コントロール群は172日だった(P=0.90)。研究群のMSTは311日で、コントロール群は294日だった(P=0.89)。犬の四肢のOSAの治療でカルボプラチンにパミドロン酸を加えても安全で、標準のカルボプラチン治療の効果を損なわない。(Sato訳)
■犬の下顎骨骨肉腫の生物学的挙動:50症例の後ろ向き研究(1999-2007)
Biological behaviour of canine mandibular osteosarcoma. A retrospective study of 50 cases (1999-2007).
Vet Comp Oncol. 2013 Feb 15. doi: 10.1111/vco.12020. [Epub ahead of print]
Coyle VJ, Rassnick KM, Borst LB, Rodriguez CO Jr, Northrup NC, Fan TM, Garrett LD.
この後ろ向き研究の目的は、犬の下顎骨骨肉腫(OSA)の生物学的挙動を述べることと、無転移期間(MFI)と生存期間(ST)に関係する因子を調べることだった。
OSAに対し、下顎骨切除で治療した犬の記録(1999-2007)を再調査した。保管された腫瘍サンプルで分裂指数(MI)および腫瘍グレードを評価した。
化学療法を受けていた21頭を含む50頭を検討した。29頭(58%)の犬は転移を起こした。MFIの中央値は627日で、STの中央値は525日だった。単変量解析でMI>40はMFIおよびST短縮の予後因子だった。グレードもMFIとSTに影響し、1年時の腫瘍無転移の頭数はグレードII/IIIの犬で21頭中5頭(24%)に対し、グレードIの犬で22頭中16頭(72%)だった(P=0.002);グレードII/IIIの犬は21頭中5頭(24%)生存し、グレードIの犬は22頭中17頭(77%)生存した(P=0.001)。多変量解析で組織学的グレードと補助化学療法がMFIとSTの予後因子だった。(Sato訳)
■犬の四肢骨肉腫の治療で断脚後の新しいドキソルビシンとカルボプラチン化学療法プロトコールの毒性と効果
Toxicity and efficacy of a novel doxorubicin and carboplatin chemotherapy
protocol for the treatment of canine appendicular osteosarcoma following
limb amputation.
Aust Vet J. March 2012;90(3):69-74.
Ae Lane; Ml Black; Km Wyatt
目的:四肢骨肉腫で断脚を行った犬の治療で、ドキソルビシンとカルボプラチンの新規化学療法プロトコールの安全性と効果を評価する
構成:回顧的研究
方法:2003年9月から2009年12月までに、転移疾患の所見がない四肢骨肉腫と診断され、断脚と14日毎のドキソルビシン2回投与、その後カルボプラチン3週毎の4回投与の補助化学療法で治療した犬をPerth
Veterinary Oncologyの医療記録で確認した。
血液学的および消化管毒性を医療記録の情報を基に評価し、CBC結果を記録した。Kaplan-Meier product-limit法を使用し、無病期間(DFI)中央値、総生存期間(OST)を判定することでプロトコールの効果を評価した。
結果:合計33頭の犬が基準を満たした。DFI中央値は231.5日、OST中央値は247日だった。血液毒性に関して、最も多い骨髄毒性として記録されたのは56%の犬のグレード1-2の好中球減少で、9%の犬はグレード3-4の好中球減少を経験し、すべてドキソルビシン投与後に起こった。最も多い消化管毒性は15頭(47%)のグレード1-2で、5頭(16%)の犬はグレード3-4の消化管毒性を経験した。
結論:この化学療法プロトコールは、この集団の疾患再発までの期間あるいは総生存期間を延長させなかった。二剤プロトコールは生存期間を改善させず、ゆえに著者らはカルボプラチンを使用する単剤プロトコールが毒性も少なく、同等の効果があると結論付ける。(Sato訳)
■腹部大動脈軟骨肉腫の犬の1例
Abdominal aortic chondrosarcoma in a dog.
J Vet Med Sci. November 2011;73(11):1473-6.
Bo-Ram Lee; Su-Hyung Lee; Hyekyung Lee; Hyunwook Kim; Dae-Yong Kim; Jihye Choi
14歳雑種犬が後肢の不全麻痺と急性疼痛を呈した。超音波検査により遠位腹部大動脈における腔内マスと血流シグナルの突然の消失を認めた。マスは血流と比較して均質で高エコーなエコー質だった。臨床症状は腹腎機能検査と超音波検査を基にした素因疾病として血栓塞栓症と下垂体依存性の疑いを示唆したが、組織学的検査により遠位腹部大動脈から発生した大動脈軟骨肉腫が診断された。原発性大動脈肉腫は極めてまれで、骨外軟骨肉腫は今まで2症例しか報告されていない。超音波検査で腔内大動脈マスが観察され、後肢の急性不全麻痺が見られるときは、鑑別診断に大動脈腫瘍を加えるべきである。(Sato訳)
■犬の骨肉腫の診断時における腹部超音波検査所見と治療結果の関係
Abdominal ultrasonographic findings at diagnosis of osteosarcoma in dogs
and association with treatment outcome
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 2 FEB 2012
O. Sacornrattana, N. G. Dervisis, E. A. McNiel
この研究目的は犬の骨肉腫(OSA)の診断時に見られる腹部超音波検査所見を述べることと、治療結果との関係を調査することだった。
初期評価の一部として腹部超音波検査を行っているOSAと診断された犬118頭の医療記録を検討した。57%の犬に超音波検査による異常が確認された。その変化の頻度が最も高かった臓器は脾臓だった。多くの超音波検査上の変化は良性あるいは臨床結果は不明なものと考えられ、一方転移は3頭(2.5%)の犬で確認され、そのうち2頭(1.7%)は転移の他の証拠はなかった。何かしら超音波検査で異常があった犬は、原因療法を受ける見込みが少なく(P=0.005)、生存期間がより短かったが、これには統計学的有意性がなかった(P=0.071)。しかし、肝臓(P=0.021)、または腎臓(P=0.003)に病変が確認された犬は統計学的に生存期間がより短かった。(Sato訳)
■犬骨肉腫の診断で細針吸引と比較したコア吸引細胞診の新しい方法
A novel method of core aspirate cytology compared to fine-needle aspiration for diagnosing canine osteosarcoma.
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Sep-Oct;47(5):317-23.
Steven A Neihaus; Jennifer E Locke; Anne M Barger; Luke B Borst; Robert L Goring
犬の骨肉腫(OSA)の診断で、吸引細胞診の診断精度に関する獣医学的文献での情報はほとんどない。
著者は溶解および/あるいは増殖性骨病変がある27頭の犬で、コア吸引細胞診(CA)と呼ばれる細胞学的サンプリングの新規方法と細針吸引(FNA)および病理組織の診断精度を比較した。
OSAの細胞学的診断の確認にアルカリフォスファターゼ(ALP)染色を実施した。
OSAの診断精度はFNAで85%、CAで95%だった。ALP染色はOSAの診断に対し100%感受性があった。骨髄バイオプシー針を使用したCAは、皮質骨の穿通が可能で、FNAよりも大きな骨針で細胞学的吸引ができた;しかし2つの方法の診断精度に有意差はなかった。犬のOSAを疑う病変の評価で、ALP染色と共に行う吸引細胞診は安全、正確、最小侵襲性の診断検査だった。(Sato訳)
■眼球摘出後の眼窩骨外骨肉腫の猫1頭:症例報告
Orbital extraskeletal osteosarcoma following enucleation in a cat: a case report.
Vet Ophthalmol. May 2010;13(3):179-83.
Brooke S Groskopf, Richard R Dubielzig, Stephanie L Beaumont
目的:眼球摘出から5年後に発生した1頭の猫の眼窩骨外骨肉腫の珍しい症例を報告する
病歴:2002年、去勢済みオスの家猫短毛種2歳の左眼を眼科医が摘出し、それをComparative Ocular Pathology Laboratory of Wisconsin (COPLOW)に委託した。COPLOWはその左眼を猫びまん性虹彩メラノーマと診断した。
2007年、その摘出部位の中程度腫脹で別の動物病院を受診した。触診で外側眼窩縁に沿った硬いマスを認め、試験的眼窩切開で嚢胞および腹外側眼窩縁に癒着したマスが見られた。嚢胞とマスはその獣医師により切除され、COPLOWに委託した。COPLOWはその組織を眼窩結膜含有嚢胞および獲得性骨肉腫と診断した。
結論:眼球摘出後、残った結膜上皮は眼窩の結合組織に包埋され、嚢胞発生の原因となった。嚢胞壁は筋線維芽細胞性コラーゲンに富んだ基質からなり、慢性刺激および腫瘍発育の核として作用した。組織病理学の面からこの眼窩骨肉腫は、猫ワクチン関連肉腫(VAS)、猫外傷後眼肉腫、マイクロチップ関連肉腫に似ており、原因は、埋没した上皮、水晶体蛋白、ワクチン成分、異物としてのマイクロチップのような抗原性物質の暴露に関連すると仮説を立てた。(Sato訳)
■原発性胸壁腫瘍の犬39頭の根治的治療後の腫瘍学的結果(1992-2005)
Oncologic outcome after curative-intent treatment in 39 dogs with primary chest wall tumors (1992-2005).
Vet Surg. July 2008;37(5):488-96.
Julius M Liptak, Debra A Kamstock , William S Dernell, Gabrielle J Monteith, Scott A Rizzo, Stephen J Withrow
目的:骨性胸壁の原発性腫瘍を持つ犬の臨床特徴を述べ、腫瘍学的結末および予後因子を判定する
研究構成:Historical cohort
動物:胸壁に自然に発生した腫瘍を持つ犬(n=39)
方法:胸壁切除および再建で治療した肋骨および/あるいは胸骨腫瘍を持つ犬の医療記録を調査した。シグナルメント、術前臨床特性、再建方法、腫瘍学的結末(局所再発、転移、生存期間)を医療記録およびオーナーあるいは依頼元獣医師への電話調査から判定した。腫瘍学的結末と予後因子はカプラン-マイヤー生存分析およびCox比例ハザードで判定した。血清アルカリフォスファターゼ(ALP)濃度上昇は腫瘍の種類に関係するかどうかをロジスティック回帰分析で判定した。
結果:胸壁から発生した腫瘍を持つ39頭の犬のうち、25頭は骨肉腫、12頭は軟骨肉腫、2頭は血管肉腫だった。肋骨骨肉腫の犬の生存期間中央値(MST)は290日だった。骨肉腫の犬の総ALP活性上昇は有意に生存期間を短縮させた(210日v.s.675日、P=.0035)。肋軟骨肉腫の犬のMSTは算出できず(平均1301日)、生存性は他の種類の肋骨腫瘍よりも有意に高かった(P=.0321)。
結論:局所腫瘍再発は生存期間に対し有意に影響する理由で、肋骨腫瘍は不完全切除のリスクを減らすために大きなマージンを取って切除すべきである。肋軟骨肉腫の犬の予後は非常に良いが、他の種類の腫瘍は注意が必要である。
臨床関連:骨肉腫と軟骨肉腫は胸壁に良く見られる原発腫瘍である。原発性肋軟骨肉腫の犬の予後は外科切除単独で非常に良好であるが、原発性肋骨骨肉腫の犬には外科手術と補助的化学療法が推奨され、予後は注意が必要である。(Sato訳)
■肋骨関与の毛細血管拡張性骨肉腫の切除に対する外側開胸術後の右室破裂を起こした犬の1例
Right ventricular rupture after lateral thoracotomy for removal of rib-associated telangiectatic osteosarcoma in a dog
J Vet Emerg Crit Care. Jun 2009;19(3):280-285. 18 Refs
Reto Barmettler, Dr med vet, David E. Spreng, Dr med vet, DECVS, DACVECC, Daniela Gorgas, Dr med vet, DECVDI, Gernot Scharf, Dr med vet, DECVDI, Horst Posthaus, Dr med vet, PhD, DECVP, Nadja E. Sigrist, Dr med vet, FVH, DACVECC
目的:1頭の犬に見られた肋骨関与毛細血管拡張性骨肉腫(TOS)の切除後、限局性右室破裂を起こした症例を述べる
症例概要:2歳避妊済みメスの体重20kgの雑種犬が、胸腔内活動性出血による代償性循環血液量減少性ショックで来院した。その犬は適切な輸液により安定した。その後CT検査で、心臓を押すように肋骨体から発生した巨大な石灰化マスが明らかとなった。このマスの外科的切除から2日目、限局性右室破裂が起こり、その犬は死亡した。マスはその後TOSと確認された。
新奇情報:TOSによる二次的血胸は過去に述べられているが、この報告は肋骨関与胸腔内TOSの切除に対する開胸および肋骨切除のまれな合併症として、自発限局性右室破裂を初めて述べるものである。(Sato訳)
■犬におけるオルソボルテージ放射線療法後の放射線骨壊死と放射線誘発骨腫瘍
Osteoradionecrosis and radiation induced bone tumors following orthovoltage radiation therapy in dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2008 Mar-Apr;49(2):189-95.
Kenji Hosoya, Jean M Poulson, Chieko Azuma
放射線骨壊死と放射線誘発骨腫瘍は放射線療法のまれな合併症である。獣医療でそれらの合併症に関する情報はほとんどない。
我々は、肢にdefinitiveオルソボルテージ放射線療法を行った犬119頭(122部位)における、それら合併症の特徴をあげ、リスクファクターを調査した。全ての犬で長期生存性が期待された。注目した合併症は、エックス線、組織学的、またはその両方で評価した放射線骨壊死と二次的骨腫瘍だった。合併症率はKaplan-Meier product-limit法で算出し、Fisher's exact testまたはカイ二乗検定で合併症率を比較した。生存期間中央値は1405日で、追跡調査期間中央値は657日だった。10例の放射線誘発骨腫瘍、5例の放射線誘発骨折、両方を起こした2頭を認め、全体の合併症率は11%だった。放射線骨壊死の潜伏期間の範囲は、1.2-6.4年で、放射線誘発骨腫瘍の範囲は2.6-8.7年だった。上腕骨(P<0.0001)および7歳以下の犬(P=0.014)において合併症は有意に高かった。メガボルテージ光子あるいは電子の照射を受けた犬における同様の合併症の評価が必要である。(Sato訳)
■保険に加入している400000頭のスウェーデンの犬における10歳までの骨腫瘍:発生率と生存率
Bone tumors in a population of 400 000 insured Swedish dogs up to 10 y of age: incidence and survival
Can J Vet Res. October 2007;71(4):292-9.
Agneta Egenvall, Ane Nodtvedt, Henrik von Euler
この研究の目的は、種類、性別、居住地域による犬骨腫瘍の発生率、診断までの生存率、診断後の生存率を述べることだった。1995年から2002年の間にスウェーデンの保険会社に加入した10歳以下の犬を研究した。合計764頭の犬が骨腫瘍の請求を行い、発生率は5.5頭/10000頭リスク犬年(DYAR)だった。6歳、8歳、10歳時の骨腫瘍の犬の比率は、それぞれ0.13%、0.30%、0.64%だった。リスクがある上位3犬種は、アイリッシュウルフハウンド、セントバーナード、レオンバーグだった(発生率それぞれ99、78、53頭/10000頭DYAR)。診断後の生存期間中央値は、1日以上生存した419頭の犬において56日だった。犬種、年齢、メスをコントロールしたCox回帰モデルは、骨腫瘍リスクの低下を示し、危険率0.71(99%信頼区間0.58-0.87)だった。(Sato訳)
■四肢の骨肉腫切除後に微少転移を患った犬にカルボプラチンとドキソルビシンを交互に投与した方法:50症例
Use of alternating administration of carboplatin and doxorubicin in dogs with microscopic metastases after amputation for appendicular osteosarcoma: 50 cases (1999-2006).
J Am Vet Med Assoc. 2008 May 15;232(10):1504-10.
Bacon NJ, Ehrhart NP, Dernell WS, Lafferty M, Withrow SJ.
目的:犬の四肢骨肉腫の切除後に想定される微少転移に対し、カルボプラチンとドキソルビシンを交互に用いる化学療法のプロトコールにおける効果と副作用を調べるとともに、患蓄と腫瘍、そして治療に関連する予後因子を評価すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:50頭の家庭犬。
方法:四肢骨肉腫の切除をしてカルボプラチンとドキソルビシンを交互に用いる化学療法のプロトコールを行った犬についてカルテをもとに回顧的調査を行った。化学療法を行う前に全身チェックを行い、検出可能な転移がないことを確認した。無腫瘍期間、生存期間、そして毒性のデータがカルテとオーナーと紹介元の獣医師との話から得られた。
結果:無腫瘍期間中央値は202日、生存期間中央値は258日であった。29例(58%)は計画通りにプロトコールを実施が可能であり、残りは転移や副作用の為に離脱した。グレード3もしくは4の骨髄抑制が50例中9例(18%)でみられ、グレード3もしくは4の消化器毒性が50例中6例(12%)でみられた。化学療法と関連した死亡例は無かった。単変量解析により無腫瘍期間の改善と有意に関連していた因子として、腫瘍の発生部位(橈骨)、初回に使用した薬剤がドキソルビシンであったこと、そして化学療法を始めたのが切除後14日以上経過してからであること、断脚前の骨スキャンで肋骨部が含まれなかったことがあった。多変量解析で生存期間の延長に有意に関連していた因子として、腫瘍の位置(橈骨)と化学療法をプロトコール通りに実施が可能ということが挙げられた。
結論と臨床関連:カルボプラチンとドキソルビシンの交互の投与における腫瘍寛解期間と生存期間は単発投与でのこれらの報告と同様であった。オーナーには毒性について十分な説明をするべきである。化学療法の順序と開始する時期については更なる検討が必要である。(Dr.UGA訳)
■原発性骨腫瘍の犬の姑息的治療としてサマリウムSm 153 lexidronam:35症例(1999-2005)
Samarium Sm 153 lexidronam for the palliative treatment of dogs with primary bone tumors: 35 cases (1999-2005)
J Am Vet Med Assoc. June 2007;230(12):1877-81.
Sandra M Barnard, R Max Zuber, Antony S Moore
目的:原発性骨腫瘍の犬で、サマリウムSm 153 lexidronamの使用に関する生存期間と対症効果を評価する
構成:遡及症例シリーズ
動物:原発性付属肢(n=32)、軸(3)骨腫瘍の犬35頭
方法:37MBg/kgの率で1-4回サマリウムSm 153 lexidronamをIV投与した。跛行の改善により測定した治療の反応、生存期間を判定した。
結果:付属肢主要の32頭のうち、20頭(63%)は放射性サマリウムの初回投与から2週間後、跛行の程度に改善を見せ、8頭(25%)は程度に変化がなく、4頭(12%)は悪化した。全体の生存期間中央値は100日で、3頭(8.6%)は1年後生存していた。付属肢腫瘍の犬32頭の生存期間中央値は93日で、3頭(9.4%)は1年後生存していた。これは、過去に唯一治療として断脚を行った付属肢骨肉腫の犬162頭の集団の生存期間中央値134日と有意差がなかった。
結論と臨床関連:結果は、治癒目的の治療の候補でない原発性骨腫瘍の犬における痛みの緩和にサマリウムSm 153 lexidronamは有効かもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の四肢骨肉腫における発生率と内因性危険因子:179症例
Prevalence of and intrinsic risk factors for appendicular osteosarcoma in dogs: 179 cases (1996-2005)
J Am Vet Med Assoc. October 2007;231(7):1076-80.
Julie A Rosenberger, Norma V Pablo, P Cynda Crawford
目的:グレーハウンドと他の犬種を比較したときの四肢骨肉腫の発生率と、骨肉腫の進行に関連した内因性危険因子を決定すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:原発性の四肢骨肉腫を発症した179頭の犬。
方法:1996年から2005年の間に原発性四肢骨肉腫と診断された犬の医療記録が用いられた。骨肉腫の発生率と無調整オッズ比が、雑種犬の比率を参照して比較することで様々な種において計測された。年齢と性別が最も発生率の高い
3種間において内因性危険因子として調べられた。
結果:骨肉腫の発生率の最も高い品種はグレーハウンド(21/339[6.2 %])であり、ロットワイラー(51/969[5.3%])、グレートデン(13/297
[4.4%])がそれに続いた。骨肉腫を認めたグレーハウンドは21頭全てがレースから引退したものであった。性別はこれらの種においては骨肉腫の危険因子とされなかったが、
3種全てにおいて年齢と共に骨肉腫のリスクが増加した。骨肉腫の診断年齢は、ロットワイラー(8.3歳)とグレートデン(
7.8歳)と比較するとグレーハウンド(平均9.9歳)において有意に高齢であった。ロットワイラーとグレートデンは骨肉腫が後肢に比べ前肢により多く発症した。3
種全てにおいて最も発症率が高かった部位は上腕骨近位端と橈骨遠位端であったが、大腿骨近位端もまたグレーハウンドにおいては好発部位であった。
結論と臨床関連:今回の研究の結果より、グレーハウンド、ロットワイラー、そしてグレートデンは雑種犬と比較すると骨肉腫の発生を増加させる危険因子を持っているとされた。(Dr.UGA訳)
■超音波ガイド下針吸引による四肢骨肉腫の診断:36例
Diagnosing appendicular osteosarcoma with ultrasound-guided fine-needle aspiration: 36 cases
J Small Anim Pract. March 2007;48(3):145-50.
T Britt, C Clifford, A Barger, S Moroff, K Drobatz, C Thacher, G Davis
目的:超音波ガイド下針吸引を使用して四肢骨病変からの診断的細胞標本入手能力を判定する。二つ目の目的は、細胞評価と組織病理結果の比較、アルカリフォスファターゼの存在に対し悪性間葉系細胞染色の有用性を判定する。
方法:組織学的診断持つ36の攻撃的な四肢骨病変の吸引物を研究した。骨髄腔または隣接軟部組織マスに針を誘導するため、超音波を使用した。ライト-ギムザ、nitroblue tetrazolium chloride/5-bromo-4-chloro-3-indoyl phosphate toluidine salt (NBT/BCIP)で染色したスメアを研究した。
結果:36症例のうち23症例の診断サンプルを入手した。32の診断サンプルのうち、細胞学的に肉腫を示すものは、感受性97%(信頼区間:83-100%)、特異性100%(信頼区間:16-100%)だった。細胞診で肉腫の診断がなされたとき、アルカリフォスファターゼ染色は100%(信頼区間:87-100%)感受性で骨肉腫を示した。
臨床意義:この研究結果は、攻撃的骨病変の超音波ガイド下針吸引は悪性間葉系細胞の確認、および肉腫の診断に有効な手段であることを示す。効率的で最小限の侵襲ですむ。さらに、骨吸引からのアルカリフォスファターゼ陰性悪性間葉系細胞の確認は骨肉腫を除外し、アルカリフォスファターゼ陽性悪性間葉系細胞は骨肉腫を示唆する。(Sato訳)
■リンパ腫または骨肉腫の犬における化学療法中の予防的トリメトプリム-サルファジアジン:二重盲目プラセボ対照試験
Prophylactic trimethoprim-sulfadiazine during chemotherapy in dogs with lymphoma and osteosarcoma: a double-blind, placebo-controlled study
J Vet Intern Med. 2007 Jan-Feb;21(1):141-8.
J D Chretin, K M Rassnick, N A Shaw, K A Hahn, G K Ogilvie, O Kristal, N C Northrup, A S Moore
背景:化学療法の投与は病的状態発生リスクに関与する。獣医腫瘍学で化学療法関連病的状態の管理は第一に支持されている。
仮説:この研究の目的は、リンパ腫または骨肉腫の犬の化学療法関連病的状態に対し予防的抗菌剤使用の影響を評価することだった。
動物:研究資格は、骨肉腫またはリンパ腫と組織学的に確認された犬とした。
方法:最初にドキソルビシン化学療法投与後14日間、プラセボまたはトリメトプリム-サルファジアジンを投与する群に無作為に振り分けた。オーナーと臨床医は治療に関し盲目とした。7日目と14日目にCBC、身体検査とパフォーマンス、中毒グレードを評価した。調査した結果は入院、感染の疑い、胃腸毒性、好中球減少、非血液学的毒性、クオリティオブライフだった。
結果:骨肉腫34頭とリンパ腫39頭の73頭を研究した。トリメトプリム-サルファジアジンを投与した犬(n=36)は、入院率(P=.03)、非血液学的毒性(P=0.039)、グレード2-4の非血液学的毒性(P<.0001)、グレード2-4の胃腸毒性(P=.007)、変化したパフォーマンス(P=.015)を有意に低下させた。群で、抗菌剤を投与した骨肉腫の犬(n=34)は、非血液学的毒性の発生はほとんどなく(P=.02)と重度非血液学的毒性は少なかった(P=.038)。リンパ腫の犬(n=39)は入院(P=.035)、非血液学的毒性の程度(P=.036)、パフォーマンスの変化(P=.015)の発生は有意に低下した。
結論:骨肉腫またはリンパ腫の犬で、予防的トリメトプリム-サルファジアジンの使用は、最初のドキソルビシン投与から14日間、病的状態を減ずるのに有効である。(Sato訳)
■犬骨肉腫における腫瘍グレード付けの臨床病理的関連
Clinicopathological relevance of tumour grading in canine osteosarcoma
J Comp Pathol. January 2007;136(1):65-73.
P Loukopoulos, W F Robinson
腫瘍のグレード付けは、生物学的侵略性を評価し、多くの悪性疾患で予後重要性を持つ。140例の原発性犬骨肉腫とその転移巣の臨床病理特性を分析し、それらと確立されたグレード付けシステム、その構成パラメーター(有糸分裂指数、壊死、多形性)の相互関係を研究した。それら腫瘍の35%はグレードIII(ハイグレード)、37%はグレードII、28%はグレードIだった。転移のある原発腫瘍は、非転移性骨肉腫よりも有意にグレードが高かった。
軟骨芽細胞または毛細血管拡張サブタイプではなく、骨芽細胞最小増殖サブタイプに属する骨肉腫は、ハイグレードの症例が有意に多い線維芽細胞骨肉腫とは異なる。4歳以下の犬は、老齢犬よりもグレード、スコア、有糸分裂指数が高い骨肉腫だった。四肢は体幹と異なり高い有糸分裂指数を持つ。遠位主要は近位よりも高いグレードを持つ。頭腫瘍はほとんど他の部位と異なり、低いグレード、有糸分裂指数である。肋骨骨肉腫は、特に高度の壊死を呈した。有糸分裂指数は腫瘍部位で広く変化した。多形性は、ほとんどの骨肉腫は高度に多形性なので、切り離して検査するときの予後のメリットはない。(Sato訳)
■犬の肺転移を伴う膝蓋骨の骨肉腫
Osteosarcoma of the patella with pulmonary metastases in a dog
Vet Radiol Ultrasound. 2001 May-Jun;42(3):218-20.
M D Lucroy1, J N Peck, C R Berry
6歳の去勢済みロットワイラーの進行性右後肢跛行を検査した。右膝のエックス線写真で、活動性骨病変に一致する膝蓋骨の頭側面に沿った骨溶解病変と不整な骨新生があった。胸部エックス線で、肺転移に一致する肺野全体に複数軟部組織結節状陰影があった。顕微鏡的に右膝蓋骨の針吸引サンプルには、骨肉腫の細胞学的特徴を持つ多形紡錘細胞が含まれていた。ここで述べた犬の初期診断時における肺転移の存在は、膝蓋骨の骨肉腫は、四肢骨肉腫に見られるのと同じようなアグレッシブな生物学的動向を持つ可能性があることを示唆する。(Sato訳)
■犬の肝臓の原発性軟骨肉腫
Primary chondrosarcoma in the liver of a dog
Vet Pathol. November 2006;43(6):1033-6.
S Chikata, S Nakamura, R Katayama, S Yanagisawa, Y Matsuo, I Yamane, K Takahashi
6歳未去勢オスのゴールデンレトリバーの肝臓方形葉に原発性軟骨肉腫が見つかった。部分的肝切除から6ヵ月後、肝臓での再発が見られた。その後10ヶ月で全身転移により死亡した。組織学的に肝臓のマスは、豊富な軟骨様基質を持つ腫瘍性の軟骨細胞が見られ、腫瘍細胞の細胞性、多態性がより優勢な粘液様部分がいくらかあった。腫瘍細胞は過ヨウ素酸Schiffに陽性で、ビメンチンとS-100蛋白に免疫組織化学的陽性を示した。基質はアルシアンブルーで濃く染まり、トルイジンブルー染色で異染性を示した。この腫瘍は、肝臓の結合組織で、多能性間葉細胞由来かもしれない。我々の知識の及ぶ限りでは、ヒトを含め全ての哺乳類で、肝臓に原発した骨外軟骨肉腫の最初の報告である。(Sato訳)
■遠位橈骨に骨肉腫を持つ犬における肢温存術のための皮質同種移植と内部人工器官:異なる2つの肢温存法の前向き臨床比較
Cortical allograft and endoprosthesis for limb-sparing surgery in dogs with distal radial osteosarcoma: a prospective clinical comparison of two different limb-sparing techniques
Vet Surg. August 2006;35(6):518-33.
Julius M Liptak, William S Dernell, Nicole Ehrhart, Mary H Lafferty, Gabrielle J Monteith, Stephen J Withrow
目的:皮質同種移植と内部人工器官および術後化学療法を使用する肢温存術で治療をおこなった、橈骨遠位の骨肉腫(OSA)を持つ犬の外科的および腫瘍学的結果を比較し、結果に対する予測因子を評価した。
研究構成:前向きコホート研究
動物:橈骨遠位の自然発生非転移性OSAを持つ犬(n=20)
方法:前向き無作為に肢温存法を実施した。方法は、皮質同種移植(n=10)または内部人工器官(10)とシスプラチン、カルボプラチンおよび/またはドキソルビシンの単剤または2つの薬剤プロトコールを使用したフルコース補助化学療法を行った。外科的(術中所見、術後感染、構成の不全)および腫瘍学(局所腫瘍再発、転移、生存性)結果を比較した。外科および腫瘍学的結果における術中、術後変化の影響を評価した。
結果:グループ間の外科的および腫瘍学的結果に臨床的有意差は認められなかった。内部人工器官群のグループでインプラントにより置換された橈骨の比率は有意に大きかった(60.9%v.s.48.6%、P=.008)。インプラントの種類に関係なく構造不全を持つ犬の生存期間中央値(MST)は685日で、構造不全のない犬のMST(322日、P=.042;危険率[HR]16.82)より有意に長かった。術後感染を起こした犬では、転移フリー期間中央値とMSTが有意に長かった(685
days versus 289 days; P = .034, HR 24.58)。疾患フリー期間と全体の肢救済率はそれぞれ70%と85%だった。全体のMSTは430日だった。
結論:遠位橈骨のOSAを持つ犬に対し、皮質同種移植または内部人工器官は肢温存法に使用できる。構造物不全および術後感染はインプラントに種類に関係なく有意に生存期間を改善する。
臨床関連:外科的、腫瘍学的結果が同様なことから犬の橈骨遠位面の患肢救済に対し、内部人工器官は皮質同種移植に代わる魅力的なものであるが、内部人工器官は即座に入手可能な既成インプラントで、皮質同種移植に関する骨収集および貯蔵の必要性など面倒がない。術後感染がいかに生存期間を改善するかというメカニズムの更なる調査が必要で、解明できれば犬やヒトのOSAの結果を改善する機会を提供するかもしれない。(Sato訳)
■犬骨肉腫細胞に対するシクロオキシゲナーゼ抑制剤メロキシカムの抗腫瘍効果
Antineoplastic effect of the cyclooxygenase inhibitor meloxicam on canine osteosarcoma cells
Res Vet Sci. June 2006;80(3):308-16.
Birgitt Wolfesberger, Ingrid Walter, Claudia Hoelzl, Johann G Thalhammer, Monika Egerbacher
癌発生で、シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)活性は明白な役割をもっているが、治療でCOX-2抑制剤の意義は完全な調査を必要としている。COX-1よりもCOX-2を優先で抑制効果を持つ非ステロイド抗炎症剤のメロキシカムが、犬骨肉腫(D-17)細胞にどう影響するかを研究した。我々はD-17細胞がmRNAとCOX-2蛋白を発言することを証明した。
メロキシカムでの治療は、時間-そして用量依存性抑制を細胞の成長にもたらせた。アポトーシスがメロキシカム誘発性細胞死に役割を演じるかどうか調査するため、アガロースゲル電気泳動を実施し、アポトーシスで典型的に見られるDNA-ラダーパターン同様アネキシンVテストによる早期アポトーシス変化をみつけた。さらに電子顕微鏡検査で、アポトーシスの典型的な超微細構造変化が認められた。カスパーゼ3の免疫化学染色によるアポトーシス細胞の定量化で結果を確認した。しかし、犬の骨肉腫の治療に対し、その使用の可能性を評価するためメロキシカムによるさらなる調査が必要である。(Sato訳)
■犬の骨肉腫細胞におけるメロキシカム、およびメロキシカムとドキソルビシンのインビトロ効果
In vitro effects of meloxicam with or without doxorubicin on canine osteosarcoma cells.
Wolfesberger, B., Hoelzl, C., Walter, I., Reider, G. A., Fertl, G., Thalhammer, J. G., Skalicky, M., Egerbacher, M.
J. vet. Pharmacol. Therap.29, 15?23.
下熱、鎮痛、消炎などすでに広く使用されているシクロオキシゲナーゼ(COX)阻害剤は、腫瘍の予防および治療の可能性がある薬剤として考慮されることも増えている。人や犬骨肉腫でCOX-2が検出されているので、COX-1、COX-2、COX-3(ウエスタンブロット法により示される)も発現する確立したD-17骨肉腫培養細胞系に対し選択性COX-2阻害剤メロキシカムの効果を評価している。薬剤処置後、生存細胞の評価にXTT増殖キットを使用した。
培養3日後また3週間後、低濃度(1、2、4、10μm)時のメロキシカムで細胞数は増加し、一方高濃度(100、200μm)では顕著な抗増殖効果が観察された。化学療法薬剤のドキソルビシンは、全ての濃度(60-1920nm)で細胞毒性を示した。メロキシカムとドキソルビシンを混合して腫瘍細胞への暴露は相乗効果とともに、準相加および拮抗的な結果を示し(ドキソルビシン240nmで)、特にメロキシカムが血清で普通に見られる濃度と組み合わせるとそうなった。
1つのインビトロ研究をもとに最後に注意すべきことは、犬骨肉腫の治療でメロキシカムは役に立たず、インビボの研究の結果が異なるかもしれない。(Sato訳)
■犬の骨肉腫に対する生物分解性ポリマー内局所配送シスプラチン1回および2回処置の生存率分析
Survival Analysis of One Versus Two Treatments of Local Delivery Cisplatin in a Biodegradable Polymer for Canine Osteosarcoma
Vet Comp Oncol 3[2]:81-86 Jun'05 Original Article 17 Refs
M. L. Mehl; B. Seguin; W. S. Dernell; M. Lafferty; P. H. Kass; and S. J. Withrow
この研究目的は、犬における断脚後の骨肉腫(OSA)の処置に対する生物分解性ポリマー内局所配送シスプラチン(OPLA-Pt)の1回処置および2回処置を評価した。医療記録を回顧的に再検討し、105頭を研究した。39%の犬が断脚後OPLA-Pt1回の処置(外科的埋没)を、61%が2回の処置を受けた。OPLA-Ptの2回の処置は、1回に比べ疾患フリー期間、または生存期間に有意な効果を示さなかった。腫瘍の解剖学的部位は予後因子として確認でき、近位上腕骨骨肉腫の犬の疾患フリー期間および生存期間が最も短かった。犬骨肉腫の治療で断脚後局所配送シスプラチンの2度目の投与による利点はなかった。(Sato訳)
■インビトロで、イヌとヒトの骨肉腫細胞のビス燐酸アレンドロネートとゾレドロネートによる発育抑制
The Bisphosphonates Alendronate and Zoledronate are Inhibitors of Canine and Human Osteosarcoma Cell Growth in vitro
Vet Comp Oncol 1[4]:207-215 Dec'03 Original Report 34 Refs
V. J. Poirier, M. K. Huelsmeyer, I. D. Kurzmanl, D. H. Thamm and D. M.
Vail
ビス燐酸(BPs)は、骨ミネラルに高親和力を持ち、骨再吸収を抑制するピロ燐酸の非加水分解類似物の分類される。2つのイヌ、そして2つのヒト骨肉腫(OSA)細胞系で、細胞サイクル分布に対する影響と発育、アポトーシス誘発に対する、2窒素含有BPsであるアレンドロネート(ALE)、ゾレドロネート(ZOL)のインビトロでの影響を調査する。IC50の比色定量分析により調査したとき、全ての細胞系で両薬剤とも有意に細胞発育を低下させ(P<0.001)、それぞれ値の範囲は、ALE7.3-61.4?M、ZOL7.9-36.3?Mだった。細胞サイクル分析法や、アネキシン-V結合療法で分析したとき、両BPsは、アポトーシスとなった細胞の比率を有意(P<0.001)に用量依存的に増加させた。ALEとZOLは細胞サイクルの各期で細胞の比率を変化させたが、程度と比率は、両薬剤と細胞系に依存した。それらのデータは窒素含有BPsがイヌとヒトOSA細胞に対し、直接抗腫瘍活性を持つことを示す。(Sato訳)
■近位大腿骨骨肉腫の犬に対する肢温存術
Limb-sparing surgery in a dog with osteosarcoma of the proximal femur.
Vet Surg 34[1]:71-7 2005 Jan-Feb
Liptak JM, Pluhar GE, Dernell WS, Withrow SJ
目的:複合同種移植-補綴法を用いて、近位大腿骨骨肉腫の犬の肢温存術に成功したことを報告する
研究構成:臨床報告
動物:飼育犬
方法:大腿骨近位面のステージIIBを、腫瘍学と肢温存原理に従い切除した。骨欠損部は、近位大腿同種移植片で再建し、長茎の大腿補綴をセメントで固めた。軟部組織再建は、同種移植片上で宿主の靭帯をそれぞれ同種間靭帯に縫合した。寛骨大腿関節機能は、標準的な全股関節形成術により維持した。
結果:同種移植-補綴複合法を用いた、大腿骨近位面の患肢温存術による肢の機能はすばらしかった。術後合併症は、修正を必要とする大腿骨複合移植片および同種移植片癒合不全の無菌的緩み、外傷性インプラント脱臼、局所腫瘍再発などだった。同種移植片癒合不全の外科的安定化後、患肢機能はすばらしかったが、患肢温存術後270日目のインプラント脱臼後は悪化した。肺および骨への転移が診断され、局所腫瘍再発がそれぞれ596日、650日と推測された。局所および転移病巣の進行により肢温存手術後688日目に安楽死した。
結論と臨床関連:大腿骨近位面の原発性骨腫瘍の犬の肢温存術は、十分な機能的結果を実現できる。(Sato訳)
■犬骨肉腫と他のビメンチン陽性腫瘍のアルカリフォスファターゼ染色による鑑別
Use of alkaline phosphatase staining to differentiate canine osteosarcoma from other vimentin-positive tumors.
Vet Pathol 42[2]:161-5 2005 Mar
Barger A, Graca R, Bailey K, Messick J, de Lorimier LP, Fan T, Hoffmann W
溶解骨病変の吸引生検は、原発骨腫瘍の初期評価で優れた診断検査である。しかし、細胞学的に骨肉腫(OSA)と線維肉腫、軟骨肉腫、滑膜細胞肉腫、プラズマ細胞骨髄腫など他の骨腫瘍との鑑別は困難である。
この研究目的は、アルカリフォスファターゼ染色による骨肉腫と、免疫細胞化学または免疫組織化学染色でビメンチンを示す他の腫瘍との鑑別の感受性と特異性を判定することである。ALPは肝臓、腎臓、腸、胎盤、骨など複数組織に存在する加水分解酵素である。仮説で、腫瘍の活動的な骨産生は、ALP染色で特異的に陽性になるはずである。無染色の細胞標本をニトロブルーテトラゾリウムクロライド/5-ブロモ-4-クロロ-3-インドリルフォスフォネートトルイジン塩-フォスファターゼ培地で8-10分間インキュベートした。陽性反応は、細胞の膜を灰色から黒に変色させる。サンプルが細胞性を表すかどうか判定するため、ロマノフスキー染色で対比染色した。
合計61のビメンチン陽性腫瘍が評価され、組織病理学的に確認された。ビメンチンを発現し、ALP陽性の腫瘍は、33例の骨肉腫、1例の骨の多葉腫瘍、1例のメラニン欠乏性メラノーマ、1例の軟骨肉腫だった。ビメンチンを発現し、ALP陰性の腫瘍は、軟骨肉腫(4例中3例)、複数線維肉腫、複数滑膜細胞肉腫だった。感受性は100%、特異性は89%だった。結論として、ALPは骨肉腫の診断で高い感受性を持つかなり特異的なマーカーです。(Sato訳)
■外科手術、カルボプラチン、ドキソルビシン、ピロキシカムによる犬骨肉腫の治療
Treatment of Canine Osteosarcoma with Surgery, Carboplatin, Doxorubicin and Piroxicam
Aust Vet Pract 34[3]:98-102 Sep'04 Clinical Study 42 Refs
Veronika Langova, Rod Straw, Anthony Mutsaers and Doug Thamm
組織学的に骨肉腫と確認した13頭の犬を、外科手術、補助的化学療法で治療した。診断時に転移病変の所見を持つイヌはいなかった。化学療法プロトコールは、ドキソルビシン(15mg/㎡)、カルボプラチン(150-220mg/㎡)の静脈注射を3週間ごとに4サイクル行った。また細胞毒性薬剤も同時に投与した。プロトコールの期間中、0.3mg/kg1日1回のピロキシカムを経口投与した。犬は治療プロトコールによく許容した。4頭が軽度好中球減少や、自ら制御できる胃腸症状を起こしただけだった。疾患フリー期間と生存期間の中央値は210日と450日だった。(Sato訳)
■インビトロでビスホスホネートのアレンドロネートとゾレドネートは、イヌとヒトの骨肉腫細胞増殖を抑制する
The Bisphosphonates Alendronate and Zoledronate are Inhibitors of Canine and Human Osteosarcoma Cell Growth in vitro
Vet Comp Oncol 1[4]:207-215 Dec'03 Original Report 34 Refs
V. J. Poirier, M. K. Huelsmeyer, I. D. Kurzmanl, D. H. Thamm and D. M. Vail *
ビスホスホネート(BPs)は、骨ミネラルに高い親和性を持ち、骨再吸収を抑制するピロ燐酸塩の非加水分解類似物質に分類される。2つの窒素含有BPs、アレンドロネート(ALE)とゾレドロネート(ZOL)のイヌと2つのヒト骨肉腫(OSA)細胞系で、増殖、アポトーシス誘導、そして細胞周期分布に対するインビトロ効果をここで調査する。IC50による比色分析により、7.3-61.4 uM(ALE)、7.9-36.3 uM(ZOL)の範囲で、両薬剤とも全ての細胞系の増殖を有意に低下させた(P<0.001)。両BPsは細胞周期分析とアネキシン-V結合による調査で、アポトーシスを起こす細胞の比率を用量依存的に有意に増加させた(P<0.001)。ALEとZOLは細胞周期の各期における細胞の比率を変化させたが、その程度と比率は両薬剤と細胞系に依存した。それらのデータは、窒素含有BPsがイヌとヒトのOSA細胞に対し、直接抗腫瘍活性を持つということを示す。(Sato訳)
■遠位橈骨骨肉腫のイヌの治療で、低温殺菌腫瘍自家移植と補助的化学療法
Pasteurized tumoral autograft and adjuvant chemotherapy for the treatment of canine distal radial osteosarcoma: 13 cases.
Vet Surg 32[6]:539-44 2003 Nov-Dec
Morello E, Vasconi E, Martano M, Peirone B, Buracco P
目的:転移所見がない遠位橈骨骨肉腫の犬13頭で、補助化学療法と低温殺菌自家移植肢スペアリング法を組み合わせて治療した結果を報告する
研究構成:前向き臨床研究
動物:遠位橈骨骨肉腫を持つ13頭のイヌ
方法:切除した腫瘍部分を65℃40分間低温殺菌し、自家移植で肢スペアリング方法を行った。補助化学療法(シスプラチンまたはシスプラチンとドキソルビシン)を全頭に投与した。
結果:生存期間の平均と中央値は、531日と324日(範囲180-1868日)だった。総生存数は、6ヶ月で100%、12ヶ月で50%、18ヶ月で44%、24ヶ月で22%だった。肺転移は5頭(38%)で発生した。観察された合併症は、局所の再発(2頭、15%)、自家移植感染(4頭、31%)、インプラントの破損(3頭、23%)だった。肢の機能は、12頭(92%)で良く、1頭は悪かった。
結論:腫瘍骨部分による低温殺菌骨自家移植は、実行可能性、治癒のパターン、合併症、生存性に関し、イヌの遠位橈骨骨肉腫の肢スペアリングで皮質骨自家移植の効果的な代替療法だった。
臨床関連:低温殺菌骨自家移植の使用で、イヌ骨同種移植バンクの必要がなくなり、またレシーピエントの部位にうまくフィットする利点を持つ。(Sato訳)
■What Is Your Diagnosis?
J Am Vet Med Assoc 223[4]:439-440 Aug 15 '03 Case Report 4 Refs
Mitchell Gillick, DVM, and Deidre Galbo, DVM
病歴
8歳50kg避妊済みロットワイラーを、左後肢の加重しない跛行で診察した。身体検査で、イヌは神経質で警戒しているように見え、体の状態は問題なかった。左の足根部に顕著な腫れと、触診での捻髪音が認められた。左足根部のエックス線写真を撮影した。
X線診断
踵骨近位1/3に横骨折がある。両骨折断片に溶解性病変があり、踵骨近位の背側面に骨膜増生の所見がある。溶解性病変は関節にまたがって認められない。軟部組織の腫れは、踵骨を取り巻いている。
コメント
臨床とX線所見は、基礎疾患過程の二次的な病的骨折にほぼ一致する。左踵骨のバイオプシー標本を、ジャムシディー針で採取した。組織病理学的所見は、骨肉腫の診断だった。オーナーは更なる作業を拒み、手術や化学療法に関心を持たなかった。踵骨に副木を当て、おうちに送り届けた。カルプロフェンを2週間投与した。退院してから4週間後に副木をはずした。生検部位は治癒し、踵骨の捻髪音はほとんどなくなったが、踵骨の近位面を取り巻くように骨性の腫脹が明白となっていた。さらに痛みの管理を持続してもらうよう、オーナーは獣医師に依頼した。
我々の認識では、踵骨の骨肉腫はイヌで報告されていないが、この種の最も一般的な骨性腫瘍である。超大型犬>35kgは、<10kgのイヌよりも60倍骨肉腫が発生しやすい。(Sato訳)
■犬の脚のスペアとなる新しい方法として低温殺菌した腫瘍の自家移植:臨床報告
Pasteurized tumoral autograft as a novel
procedure for limb sparing in the dog: A
clinical report.
Vet Surg 31[6]:525-32 2002 Nov-Dec
Buracco P, Morello E, Martano M, Vasconi
ME
目的:遠位橈骨骨肉腫(OSA)の犬で足の予備として原発骨腫瘍を切除し、低温殺菌して腫瘍の自家移植材を作成し、その使用を評価する
研究構成:臨床症例報告
動物:9歳オスのマレンマシェパード
方法:右遠位橈骨骨肉腫を切除後、腫瘍自家移植材を低温殺菌した。切除した骨を、ウォーターバスの中で65度に予熱した滅菌生食液が入っている滅菌防水箱の中に置いた。その箱を腫瘍細胞を死滅させるため、40分間65度のウォーターバスの中に浸け続けた。それからその移植材を手根関節固定のため、標準的なAO/ASIF方法をもとにプレートとスクリューで被移植体に固定した。シスプラチン(70mg/㎡静注)の3回投与を3週間隔で行った。初回投与は術後その日に行った。
結果:自己移植材は同種移植材に匹敵して結合し、708日後金属インプラントを取り外した。その後全荷重から足を保護するため、1ヶ月の運動制限とスプーンスプリントを使用した。肢機能は中から良で、56ヶ月病気フリー期間を維持している。
結論:切除した原発骨腫瘍から作成した低温殺菌自己移植材は、治癒のパターンと可能性の面で付属肢骨肉腫のイヌの肢のスペアとなる皮質骨同種移植に成り代わる有効なものである。
臨床関連:この方法は、犬の骨同種移植材バンクの設立や維持が困難な時、足のスペアとなる代替法になりえる。(Sato訳)
■24頭の骨肉腫に対する4分画の緩和的放射線療法
Four Fraction Palliative Radiotherapy for
Osteosarcoma in 24 Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 38[5]:445-451 Sep-Oct'02
Retrospective Study 25 Refs
Eric M. Green, DVM, DACVR; William M. Adams,
DVM, DACVR; Lisa J. Forrest, VMD, DACVR
ヒトや犬での原発性骨腫瘍や転移病巣に関する痛みや機能障害の一時的軽減に、放射線療法は有効である。しかし、進行した癌や骨肉腫で述べられている3分画(0、7、21日目に治療)の緩和療法プロトコールは、最後の2つの治療は2週間間隔が基本となっている。そしてこの猶予が、腫瘍の再増殖を許すと思われ、あるいは、放射線療法の効果を損なっているかもしれない。獣医療の患者に対する最適な緩和療法のプロトコールの決定にまだ注目されていない。この回顧的研究の目的は、4分画(0、7、14、21日目)8Gyの60Co放射線照射プロトコールにより、犬骨肉腫に関する痛みと機能障害の軽減について評価することと、他の緩和療法プロトコールで報告されている反応と比較する事である。
骨肉腫と診断された24頭の犬(年齢中央値10歳;範囲4-12歳)に、前述のプロトコール、3週間で合計32Gy26部位(身体中心部n=11;付属肢n=15)に対して緩和的放射線療法を行った。放射線療法に対する付属肢部位の反応は、跛行の減少または改善、部分的または完全負重の増加、またはそれらの組み合わせで定義した。口や鼻の腫瘍部位に対する反応は、食欲の改善、腫瘍退縮、またはそれらの組み合わせで定義した。治療した26部位中24部位(96%)で反応があった。反応が出始めた時期の中央値は、付属肢と身体中心部両方とも14日目で、反応持続期間の中央値はそれぞれ94.5日と81.5日だった。またそれらの所見に有意差はなかった。17頭の犬は局所、または転移病巣のため安楽死された。また1頭は転位病巣で死亡し、5頭は無関係の原因で死亡、1頭は生存している。付属肢骨肉腫と、身体中心部骨肉腫の犬の生存期間中央値は、それぞれ313日と162日だった。しかしこれは有意差ではなかった。
放射線療法の副作用はほとんどなかったが、脱毛、粘膜炎、湿性の落屑、腫瘍壊死が見られた。しかしそれらは一般に軽度で、付属肢部位に対し、身体中心部位で良く起こった。
著者は、付属肢、または身体中心部の骨肉腫に関する臨床症状の緩和に、4分画プロトコールは有効で、3分画緩和プロトコールよりも高い反応率、生存期間の延長を期待出来るだろうと締めくくる。転移の進行を遅らせる効果的な全身療法と、頻回放射線照射の併用は、骨肉腫に侵された犬の生活の質や生存期間をさらに改善する治療計画となる可能性がある。(Sato訳)
■犬の付属肢骨肉腫でX線、CT、MRI評価の比較
Garrett J. Davis, DVM et al; J Am Vet Med
Assoc 220[8]:1171-1176 Apr 15'02 Case Series
21 Refs; Comparison of Radiography, Computed
Tomography, and Magnetic Resonance Imaging
for Evaluation of Appendicular Osteosarcoma
in Dogs
目的:犬の切断した肢で、原発性付属肢骨肉腫の顕微鏡的広がりを判定する一番よい画像様式を決定する事
構成:症例シリーズ
動物:付属肢に骨肉腫のある10頭の犬
方法:腫瘍免疫賦活化学療法を受けていない付属肢に骨肉腫がある犬10頭に、断脚の処置を行った。切断した肢をX線、CT、MRIで画像化し、腫瘍細胞の長軸への広がりと髄内繊維症に関連した長さを判定するために顕微鏡的検査を行った。各種画像検査で検出した変化を、顕微鏡学的な実際の腫瘍の長さと比較した。一番腫瘍の長さを予測できた画像化方法を判定するためにデータを分析した。
結果:頭尾側X線像で求めた測定値は、腫瘍の長さを一番正確に予測したが、1本の肢でかなり低く見積もり、他の肢ではわずかに低く見積もった。CTによる測定は、髄内繊維症を考慮した時に一番正確だったが、1本の肢で低く見積もった。MRIでは、正確性が一番低かったが、低く見積もる事はなかった。
結論と臨床関連:犬の骨肉腫の診断でX線を使用するが、“肢を惜しんで”断脚する前に腫瘍の広がりを確かめる追加の画像検査を行う方がよいかもしれない。腫瘍の長さを過小評価する事は、不完全切除を高確率で起こし、局所再発を招く事になりかねない。[Sato訳]
■犬における主な付属肢の骨腫瘍
Primary Appendicular Bone Tumors in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 24[2]:128-138
Feb'02 Review Article 34 Refs
Christine L. Watson, DVM & Michael D.
Lucroy, DVM, MS, DACVIM (Oncology)
犬における4つの一般的な付属肢の骨腫瘍は骨肉腫、繊維肉腫、軟骨肉腫、血管肉腫である。主な骨腫瘍の仮診断は症状、経歴、臨床症状、レントゲン所見に基づいて行われる。最終診断は生検検体の組織病理評価によって得られる。詳細な患者の評価はミニマムデーターベース、胸部レントゲン、整形外科、神経学的検査を含み、治療選択を変更となる併発疾患の鑑別をするのに必要である。全ての主な骨腫瘍治療は腫瘍の外科管理と転移病巣の補助化学療法を意図している。麻薬的無痛法と緩和的放射線療法を含む適正な痛みの管理は、外科治療を望まない犬に必要である。(Dr.Massa訳)
コメント
現在のところ、付属肢の骨腫瘍は断脚術が一般的に行われています。健康肢に問題がなく、美観上の変化を飼い主が許容できる場合には手術に関する問題は少ないのですが、飼い主が患肢の温存を希望する場合には獣医師の判断は困難なものになります。断脚以外の治療選択の理論的根拠となる文献報告自体が少ない上に、的確なペインコントロールが必要になるからでしょう。これからのガン治療は温存とペインコントロールが鍵になるのでしょうね。
■リンパ腫と骨肉腫の犬における亜鉛、クロム、鉄の血清濃度
Kathy J. Kazmierski et al; J Vet Intern Med
15[6]:585-588 Nov-Dec'01 Clinical Study 22
Refs ;Serum Zinc, Chromium, and Iron Concentrations
in Dogs with Lymphoma and Osteosarcoma
我々は癌の犬の亜鉛、クロム、鉄の血清濃度を正常犬と比較した。リンパ腫(n
= 50)と骨肉腫(n = 52)の犬を評価した。リンパ腫の犬は平均亜鉛濃度(平均±SD;
1.0±0.3 mg/L)が、正常犬(1.2±0.4 mg/L)と比較して有意に低値(P
= .0028)であった。骨肉腫の犬でも平均亜鉛濃度は低値(1.1±0.4
mg/L)であったが、この差違は有意ではなかった(P
= .075)。血清クロム濃度は正常犬(4.7±2.8
ug/L)と比較して、リンパ腫(2.6±2.6 ug/L,
P = .0007)と骨肉腫(2.4±3.1 ug/L, P = .0001)の犬で有意に低値であった。血清鉄濃度と総鉄結合容量は、正常犬(それぞれ175.1±56.7ug/dLと277.1±47.4
ug/dL)と比較して、リンパ腫(それぞれ110.8±56.7
ug/dL, P < .0001,と236.6± 45.6 ug/dL,
P < .0001)と骨肉腫(それぞれ99.6±49.3ug/dL,P<.0001,と245.0±43.8
ug/dL, P = .0011)の犬で有意に低値であった。フェリチン濃度の中央値は、正常犬(805.8±291.1
ug/L,P<.0001)と比較して、リンパ腫(1291.7±63.0
ug/L)と骨肉腫(826.5±309.2 ug/L, P <.0001)の犬で有意に高値であった。癌の犬における、これらのミネラル異常の臨床的意義を診査するためには、さらなる調査が必要である。(Dr.Massa訳)
コメント:リンパ腫と骨肉腫においては血清中の亜鉛、クロム、鉄濃度が低値になるという文献です。
腫瘍性疾患におけるミネラル定量検査は臨床の現場ではあまり一般的ではありません。今回の文献内容からすると腫瘍の代謝系への関与はありそうですので、これからの研究によって亜鉛、クロム、鉄などの血清ミネラル量が疾患の重症度や予後の判定に役立つようになるといいですね。
■犬の四肢骨肉腫における血清ALP活性の予後の有意性
Caroline K. Garzotto et al; J Vet Intern
Med 14[6]:587-592 Nov/Dec'00 Retrospective
Study 28 Refs ; Prognostic Significance of
Serum Alkaline Phosphatase Activity in Canine
Appendicular Osteosarcoma
四肢骨肉腫の61頭の犬を、断脚とシスプラチン、ドキソルビシンによる化学療法で治療しました。総ALP(TALP)活性の測定のために、治療前後に血清サンプルを得ました。同様に骨要素(BALP)、肝(LALP)とコルチコステロイド誘導性(CALP)イソ酵素の活性も測定しました。ALP活性と生存率間の関係を、Cox
proportional hazards regression分析とKaplan-Meier
log rank分析で調査しました。TALP、BALP、LALPの平均活性は、治療後有意に減少しました(P
< .001)。治療前のTALPとLALP活性は生存率と有意に関連していました(それぞれP
.006と .001)。治療前のBALP活性と生存率との相関関係は、有意に似通っていました(P.054)。治療後のCALP、TALP、BALP、LALP活性と生存率に、有意な相関はありませんでした。治療前TALPとBALP活性が正常であった犬は、増加していた犬に比べて有意に長期間生存していました(それぞれP
= .001と.003)。治療前に正常、または増加したTALP活性をもつ犬の中央生存期間はそれぞれ12.5と5.5ヶ月でした。また治療前に正常、もしくは増加したBALP活性をもつ犬の中央生存期間はそれぞれ16.6と9.5ヶ月でした。骨肉腫を持つ犬を含めた将来の臨床試験の計画において、ALP活性と一致して無作為に分類する考慮が必要である。付け加えてALP活性は、個々の患者、又は飼い主の要求に対し、補助化学療法の積極性を調整しようとする臨床医によって、熟考された要素とするべきである。(要約)(Dr.Massa訳)
コメント
骨肉腫が疑われる症例においてALP値の上昇はよく認められます。ALP値と生存率に関係があるというこの文献の内容は、クライアントに対するインフォームドコンセントの上で非常に有用なデータになると思われます。ちなみにBALP、LALP、CALP値のうちBALPは検査センターでの測定が可能なようです(私の知る限りでは)。正常値が確立されれば、骨肉腫の予後を判定するのにBALPは良い指標になりますね。
■22頭の大型種犬における体軸骨格骨肉腫の回顧した分析
Margaret E. Dickerson et al; J Vet Intern
Med 15[2]:120-124 Mar-Apr'01 Retrospective
Study 25 Refs; Retrospective Analysis of
Axial Skeleton Osteosarcoma in 22 Large-Breed
Dogs
体軸骨格の骨肉腫(OSA)を持つ22頭の大型犬種犬(15kg以上)の医療記録が、転移率と新生物に関連した生存率を判定するために再検討されました。全ての犬は緩和放射線療法(n=12)、決定的放射線療法(n=8)、外科療法(n=7)、化学療法(n=12)、またはこれらのいくつかを組み合わせた療法を含め、1つ以上の方法により治療されました。転移は22頭中10頭(46%)で証明され、中央生存期間は137日でした。主たる死因は局所再発(54%)でした。品種(レトリバーvs純血種vs雑種の生存期間はそれぞれ100,182,264日でした。)と放射線療法プロトコール(緩和放射線療法による犬の治療vs決定的放射線療法ではそれぞれ79日、265日でした。)は有意に生存率と関係していました。(P
< .05) 大型犬種の体軸骨格OSAの転移率と中央生存期間は、大型犬の四肢骨格OSAで報告されていることと類似しているようである。決定的な放射線治療は軸骨格骨肉腫の治療の役割を果たすかもしれない。(要約)(Dr.massa訳)
コメント:大型犬の四肢(特に長骨骨幹部)に骨肉腫が好発し予後不良であることはよく知られていますが、体軸骨格に骨肉腫が発生した時も同様に予後が悪いようですね。四肢の骨肉腫なら断脚手術が第一選択になるところですが、軸骨格の骨肉腫では手術困難な場合も多く積極的な放射線療法が期待できそうです。全国的にも放射線療法を実施できる施設が整いつつあり、腫瘍治療は新しい一歩を踏み出そうとしています。
■4頭の犬に見られた骨肉腫の自然退縮
Margo L. Mehl, DVM et al; J Am Vet Med Assoc
219[5]:614-617 Sep 1'01 Case Report 18 Refs
;Spontaneous Regression of Osteosarcoma in
Four Dogs
原発性悪性骨腫瘍の自然退縮はまれですが、ヒトの文献で報告されています。著者の知るところでは、犬猫での原発性骨腫瘍の自然退縮は、報告されていません。骨肉腫(OSA)はヒトで良く見られる原発性骨腫瘍で、犬での発生率はヒトより40-50倍高いと報告されています。この報告で、4頭から採取した骨生検標本でハイグレードの骨肉腫と診断し、その後、特別な腫瘍治療を行わず、自然に退縮しました。犬の骨肉腫は、ヒトの骨肉腫と同じような性質を持っています。(Dr.Sato訳)
■犬のとう骨末端骨肉腫の近位への広がりを決定するためのレントゲン写真、核のシンチグラフィ、および組織病理学の精度
Leibman NF et al; Vet Surg 30[3]:240-5 2001
May-Jun ;Accuracy of radiography, nuclear
scintigraphy, and histopathology for determining
the proximal extent of distal radius osteosarcoma
in dogs.
目的
犬の末端とう骨骨肉腫の近位への広がりを見極めるためのレントゲン写真、核のシンチグラフィ、および組織病理学の精度を比較すること
研究デザイン
回顧した臨床研究。
標本母集団
末端とう骨の骨肉腫でコロラド州立大学を受診した20頭の飼い主所有の犬。
方法
骨肉腫が確認され、四肢温存処置を受けた20頭の犬の医療記録が再検討されました。
レントゲン写真とシンチグラフィー両方から、各とう骨の側面像で直接測定は行われ、とう骨の末端のレントゲン写真またはシンチグラフィーの範囲から、とう骨の長さと腫瘍の近位への広がりの距離を決定した。とう骨の全長に対する末端のとう骨の患部の割合が算出された。
同様な比率は、また、マクロスライドを用いて決定し、それは四肢温存処置で削除された骨の全体の部分を含んでいました。3つ全ての測定方法が比較されました。
結果
核シンチグラフィは、マクロスライド標本測定法と比較すると、腫瘍範囲をかなり過大評価しました。レントゲン写真も腫瘍範囲を過大評価が、これらの結果はマクロスライド材料測定法と有意差がありませんでした。
結論
レントゲン写真および核シンチグラフィは、同病変の病理組織学的マクロスライドと比較して犬のとう骨末端骨肉腫の範囲を有意に過大評価します。核シンチグラフィは、レントゲン写真より腫瘍範囲を大きく過大評価しました。
臨床講義の関連
レントゲン写真は、とう骨末端骨肉腫の範囲測定のより正確な方法であるが、核シンチグラフィがより大きく腫瘍範囲を過大評価するので、シンチグラフィは、四肢温存術において近位の骨切り部位を決定する、より大きい安全マージンを、提供できるかもしれない。しかしながらシンチグラフィを利用する時には注意するべきです。なぜなら、この方法は患者が四肢救助の候補として適切ではないと外科医に思わせるような、とう骨患部範囲を過大評価するかもしれない。(Dr.Massa訳)