■一次診療施設において甲状腺機能低下症の診断および治療を行っている犬の甲状腺機能低下症の可能性の評価:102症例(2016-2021)
Assessment of the likelihood of hypothyroidism in dogs diagnosed with and treated for hypothyroidism at primary care practices: 102 cases (2016-2021)
J Vet Intern Med. 2024 Feb 5.
doi: 10.1111/jvim.16993. Online ahead of print.
Victoria Travail , Carolina Fernandez Sanchez , Jose M Costo , Nicola Valentine , Megan Conroy , Venessa Lee , Dimitrios Bouziopoulos , Kathryn Bateman , Emma Gatehouse , Judith Cruzado-Perez , Danica Pollard , Valerie Lamb , Florence Juvet , Darren Kelly

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背景:甲状腺機能が正常な犬において甲状腺機能低下症の誤った診断がなされている可能性があり、その犬の集団での甲状腺機能低下症の有病率はいまだ不明である。

目的:一次診療施設で甲状腺機能低下およびレボチロキシン補給を必要とされそうな甲状腺機能低下症と診断され、治療されている犬の比率を回顧的に評価する

動物:102頭の飼い犬を研究に含めた。

素材と方法:一次診療施設7施設の電子データベースで、レボチロキシン補給で治療している犬を確認するため、検索した。3人のEuropean College of Veterinary Internal Medicine-Companian Animals (ECVIM-CA)専門医が別々に各症例を以下のように臨床的評価4つのうち1つに振り分けた:確認した、あるいは甲状腺機能低下の確率が高い、疑われるが確認していない、甲状腺機能低下の確率は低い、甲状腺機能低下症を疑う理由はない。彼らはレボチロキシン補給が適切であるかどうかについてコメントした。

結果:「確認した、あるいは甲状腺機能低下の確率が高い」、「疑われるが確認していない」、「甲状腺機能低下の確率は低い」、「甲状腺機能低下症を疑う理由はない」について、それぞれ専門医1は38.2%、5.9%、3.9%、52%の症例、専門医2は48%、22.6%、22.6%、6.9%の症例、専門医3は55.9%、11.8%、13.7%、18.6%の症例と評価した。専門医1、専門医2、専門医3はそれぞれ、58.8%、52.9%、45.1%の症例がレボチロキシン補給が指示されないと考えた。

結論:それらの結果は、一次診療施設で甲状腺機能低下症は過度に、また誤って診断されているかもしれない懸念を支持し、甲状腺機能検査は、その疾患の予備検査で可能性が高い犬にのみ実施すべきである。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症の犬の消化器症状の回顧的評価
Retrospective Evaluation of Gastrointestinal Signs in Hypothyroid Dogs
Animals (Basel). 2023 Aug 19;13(16):2668.
doi: 10.3390/ani13162668.
Eleonora Gori , Paola Gianella , Ilaria Lippi , Veronica Marchetti

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甲状腺機能低下症(hypo-T)の犬の消化器(GI)症状についての知見はあまりない。

我々の目的は、hypo-T犬の併発消化管症状の有病率と特徴を評価することと、hypo-T犬の臨床病理、肝臓-小腸超音波所見を述べること、甲状腺補充療法(THRT)後の消化管症状の変化を調査することだった。

2か所の病院からhypo-Tを疑う犬の医療記録を回顧的に再調査した。組み入れ基準は:(1)甲状腺機能低下症に関連する徴候および臨床病理学的異常がある(すなわち、軽度貧血、高脂血症);(2)全身性急性疾患に罹患していない;(3)甲状腺軸に影響するような治療を受けていないことだった。

甲状腺機能低下症は低fT4あるいはTT4と高TSHおよび/あるいは不適切なTSH-刺激試験反応を用いて確認していた;その他の犬は甲状腺機能正常群に振り分けた。臨床的病歴、GI症状、血液生化学パラメーター、腹部超音波所見を記録した。hypo-Tの犬はGI群(最低2つのGI症状)と非GI群(1つ以下のGI症状)に振り分けた。THRT後3-5週間のフォローアップ情報を記録した。

合計110の医療記録を精査した:31頭はhypo-Tで、79頭は甲状腺機能が正常だった。Hypo-Tの犬は、甲状腺機能正常犬(24%)(p=0.04)よりも高いGI症状の有病率(44%)を示し、特に便秘(p=0.03)と下痢(p=0.001)だった。hypo-Tの犬の中で、GI群と非GI群の間で血液パラメーターの違いは見つからなかった。Hypo-Tの犬は、甲状腺機能正常犬よりも胆嚢の変化の有病率が高かった(20/25;80%と32/61;52%p=0.04)。hypo-TのGI群は、THRT後のGI症状で有意な改善を示した(p<0.0001)。hypo-Tの犬の併発GI疾患に対する特定の調査は欠如しているが、THRT後のGI症状の改善は、GI症状と甲状腺機能低下症の関連を支持する。(Sato訳)
■犬の甲状腺機能に対する薬剤の影響
Influence of medications on thyroid function in dogs: An update
J Vet Intern Med. 2023 Jul 27.
doi: 10.1111/jvim.16823. Online ahead of print.
Timothy A Bolton , David L Panciera

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合成、分泌、分布、代謝を含む1つ以上の側面において、甲状腺ホルモンの生理学を変化させる薬剤により、誤った甲状腺機能検査結果となる可能性がある。

20年前のJournal of Veterinary Internal Medicine (JVIM)における最後のレビューの発表から、犬の甲状腺機能検査に対しアミオダロン、ゾニサミド、吸入麻酔、クロミプラミン、トリロスタン、トセラニブの影響を評価している。またグルココルチコイド、スルホンアミド、フェノバルビタール、非ステロイド性抗炎症薬の影響に対する最近の研究もレビューするだろう。それらの影響を知っておくことは、甲状腺機能低下症の誤診、不必要な治療を避けるために必要である。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症の猫の管理とモニタリング:オーストラリアの獣医師の調査
Management and monitoring of hyperthyroid cats: a survey of Australian veterinarians.
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):559-567.
Lucy Kopecny , Paul Higgs , Angie Hibbert , Richard Malik , Andrea M Harvey

目的:この研究は猫の甲状腺機能亢進症の管理とモニタリングに対するオーストラリアの獣医師のアプローチ法を評価することと、最近UKで行われた同様の調査の結果を比較する

方法:オンラインで回答できるアンケートを、オーストラリアの全ての州と地域の獣医師に送付した。そのアンケートは甲状腺機能亢進症の管理、抗甲状腺薬の使用vs放射線ヨウ素治療vs外科的甲状腺切除、追加で回答者に対する地理的情報に関する質問で構成された。

結果:546人の臨床医から回答が得られた。猫甲状腺機能亢進症の長期管理で最もよく好まれた治療は、抗甲状腺薬物治療(305/546;56%)と放射線ヨウ素(210/546;38%)で、費用に懸念がない場合、かなり多くの回答者は放射線ヨウ素を選択した(425/546;78%)。しかし、最も多い回答者は、放射線ヨウ素に対する治療あるいは紹介した症例がほとんどなかった(中央値2)。最も多い獣医師(500/546;92%)は長期に、あるいは甲状腺機能亢進症の最終的な治療前に抗甲状腺薬物療法を使用した。薬物治療に対し、45%の獣医師は1日2回カルビマゾールを使用していた。慢性腎臓病の無い甲状腺機能亢進症の猫で、半数の回答者(274/546)は参照範囲内に総チロキシン濃度の維持を目標としていた。血圧のモニタリングは一般的ではなかった。外科的甲状腺切除はまれに実施されていた。

結論と関連:UKと比較して、放射線ヨウ素はオーストラリアの獣医師に好まれる頻度が多く、この管轄区においてコストが低く、入院期間がより短く利用しやすいことと関係していると思われるが、抗甲状腺薬物療法は最も頻繁に使用される治療様式だった。しかし、認知コスト、成功率の予想や利用しやすさに関する誤った理解など、その利用に対する障壁は残ったままである。甲状腺機能亢進症の猫の管理やモニタリングに対する推奨の最近の変化は、この時点で獣医師に広く採用されていると思えない。(Sato訳)
■甲状腺疾患ではない犬で低血漿チロキシンおよび高血漿甲状腺刺激ホルモン濃度となるリスク因子
Risk factors for low plasma thyroxine and high plasma thyroid-stimulating hormone concentrations in dogs with non-thyroidal diseases.
J Vet Med Sci. 2019 Jun 14. doi: 10.1292/jvms.19-0169. [Epub ahead of print]
Nishii N, Okada R, Matsuba M, Takashima S, Kobatake Y, Kitagawa H.

本研究の目的は、甲状腺疾患のない犬において、甲状腺軸変化に対する独立したリスク因子を確認することである。

この回顧的横断研究において、甲状腺疾患のない犬207頭のデータと血漿サンプルを使用した。血漿チロキシン(T4)あるいは甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度の変化における種々の因子(疾患の程度、性別、年齢、犬種、疾患のカテゴリーと持続期間、薬物)の関与を多変量ロジスティック回帰で解析した。

解析した207頭の犬のうち、99頭(47.8%)の血漿T4濃度は低かった一方で、45頭(21.7%)のTSH濃度は高かった。未去勢のオス(オッズ非(OR)、3.25;1.67-6.35;P<0.001)、ラブラドールレトリバー(OR、18.70;2.32-151.00;P=0.006)、中程度(OR2.39;1.21-4.74;P=0.0012)および重度疾患(OR、6.84;2.27-20.70;P<0.001)は低血漿T4濃度に対するリスク増加と関係した。それに対し、未去勢オス(OR、3.93;1.51-10.30;P=0.005)、避妊済みメス(OR、4.22;1.59-11.20;P=0.004)、高齢(OR、2.73;1.28-5.84;P=0.009)、ミニチュアダックスフンド(OR、5.39;2.38-12.20;P<0.001)は高血漿TSH濃度のリスクを増加させた。

疾患の重症度は犬NTISに対する独立したリスク因子として判定されていた。また性別、年齢、犬種も甲状腺疾患のない犬の甲状腺軸の変化に関与した。(Sato訳)
■7頭の成猫の自発性原発性甲状腺機能低下症
Spontaneous primary hypothyroidism in 7 adult cats.
J Vet Intern Med. November 2018;32(6):1864-1873.
DOI: 10.1111/jvim.15239
Mark E Peterson , Marcia A. Carothers , David A. Gamble , Mark Rishniw

背景:成猫の自然に発生した甲状腺機能低下症は珍しく、4症例のみ報告されている。

目的:自発性甲状腺機能低下症の成猫の病歴、臨床、検査、シンチグラフィーの特徴を述べる

動物:甲状腺機能低下症を疑い紹介された7頭の成猫

方法:前向き症例シリーズ。著者らは猫のシグナルメント、臨床症状、身体検査の結果、定期的な血液および甲状腺ホルモン検査、甲状腺画像検査(甲状腺シンチグラフィーあるいは超音波検査)のデータを集めた。その後、レボチロキシンで猫を治療し、治療に対する反応を評価した。

結果:猫は3.5-11歳で、明らかな品種の偏りはなかった;6/7頭はオス猫だった。2/7頭のみが甲状腺機能低下症の症状(皮毛の変化、元気消失、肥満)により最初に検査した;その他の猫は通常の甲状腺のモニタリング、あるいは甲状腺結節の触知で検査した。4頭は高窒素血症(血清クレアチニン2.2-3.4mg/dL)だった。6頭の猫は低血清T4およびfT4で、7頭すべて高甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度だった。6/7頭で、甲状腺シンチグラフィーにおいて強度の放射性核種取り込みを伴う両側甲状腺腫を明らかにした;その他で画像検査は目に見える甲状腺組織を示さなかった。

レボチロキシン投与後、T4とfT4の血清濃度が上昇し、TSHは低下した;高窒素血症の猫の高い血清クレアチニンは正常となった;繰り返しの画像検査で甲状腺腫の大きさの減少を認めた。

結論と臨床的重要性:原発性甲状腺機能低下症は成猫で発症し、過去に考えられていたよりも有病率は高い。ほとんどの猫は甲状腺過形成に関係する甲状腺機能低下症の甲状腺腫形を形成すると思われるが、甲状腺萎縮は一般的に少ないと思われる。レボチロキシンの補給で、臨床および検査異常は改善または解消する。(Sato訳)
■猫の甲状腺機能亢進症に対するリスクファクターとして品種、毛色、毛の長さ
Breed, Coat Color, and Hair Length as Risk Factors for Hyperthyroidism in Cats.
J Vet Intern Med. July 2017;31(4):1028-1034.
V J Crossley , A Debnath , Y-M Chang , R C Fowkes , J Elliott , H M Syme

背景:甲状腺機能亢進症は老猫でよく見られるが、原因病理はあまり分かっていない。甲状腺機能亢進症のリスク低下は、確かなカラーポイント種で報告されており、過去にこの知見は、チロシンがメラニン色素に変換される限定された能力のため、甲状腺ホルモン産生に対する相対的により大きなチロシン利用能の結果と仮説が立てられている。毛の色素沈着と甲状腺機能亢進症のリスクとの潜在的関わりを調査した研究は限られている。

目的:疾患のリスクファクターとして品種、毛の色、毛の長さの調査を行うことで、皮毛表現型と甲状腺機能亢進症の関連を確認する

動物:イギリスの1カ所の獣医教育病院(2006-2014)に紹介されてきた10歳以上の4705頭の猫のデータを使用した。

方法:ベイズの多変量ロジスティック回帰を使用し、甲状腺機能亢進症のリスクファクターを解析する回顧的、疫学的、横断研究。

結果:バーミーズ(odds ratio [OR], 0.01; 0.00-0.23; P = .004)、トンキニーズ(OR, 0.05; 0.00-0.95; P = .046)、ペルシャ(OR, 0.21; 0.10-0.44; P < .001)、シャム(OR, 0.27; 0.12-0.61; P = .002)、アビシニアン(OR, 0.04; 0.00-0.74; P = .031)、ブリティッシュショートヘアー種(OR, 0.47; 0.28-0.79; P = .004)はイエネコ短毛種と比べ甲状腺機能亢進症のリスクが低下していた。長毛、雑種猫(OR, 1.30; 1.03-1.64; P = .028)は甲状腺機能亢進症のリスクが増加した。雑種猫において毛の色/パターンは甲状腺機能亢進症に関係しなかった。

結論と臨床意義:著者らはトンキニーズ、アビシニアン、ブリティッシュショートヘアー種における甲状腺機能亢進症のリスク低下を確認し、甲状腺機能亢進症のリスクと毛の長さの関連を確認し、バーミーズ、シャム、ペルシャ種のリスク低下を確かめた。それら所見をさらに調査する追加研究が求められる。(Sato訳)
■過剰な3、5、3’-トリヨードチロニンにより誘発した甲状腺中毒の犬の1例
Thyrotoxicosis induced by excessive 3,5,3'-triiodothyronine in a dog.
J Am Vet Med Assoc. June 2017;250(12):1427-1431.
Wendy A Morré, David L Panciera, Gregory B Daniel, Kent R Refsal, Markus Rick, Kathy Arrington

症例記述:7歳去勢済みオスのハバニーズが、12週にわたる活動亢進、攻撃性、健康な食欲だけど進行性体重減少のため、獣医教育病院で評価した。

臨床所見:頻脈が身体検査中に唯一顕著な所見だった。血清3、5、3’-トリヨードチリロニン(T3)と遊離T3濃度は顕著に増加し、チロキシン(T4)、遊離T4および甲状腺刺激ホルモン濃度は、それぞれ参照範囲内あるいは以下だった。甲状腺シンチグラフィーで、異所甲状腺組織ではなく甲状腺による99m過テクネチウム酸ナトリウムの取り込み抑制が明らかになり、T3の外因性源により誘発された甲状腺中毒が示唆された。

治療と結果:その犬は24時間入院し、その餌を変更した後は、臨床症状は急速に解消し、血清T3および遊離T3濃度はそれぞれ参照範囲内に回復した。これでその犬の家庭環境においてT3の外因性源の疑いが上った。その犬が食べていた市販の牛肉ベースの缶詰の分析で、製品推奨量を超えた高濃度のT3(1.39μg/g)およびヨウ素(82.44μg/g)が明らかとなった。その犬の環境で他のT3源は確認されなかった。

臨床関連:著者らによれば、外因性T3による1頭の犬の臨床的甲状腺中毒だが、外因性T3の源が確認されなかった最初の報告である。このケースは、臨床所見と甲状腺機能試験結果に矛盾が生じる時、血清T3および甲状腺刺激ホルモン濃度に加え、T4および遊離T4濃度の測定の重要性を強調する。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症の猫の体重、ボディコンディション、筋コンディションの評価
Evaluation of Body Weight, Body Condition, and Muscle Condition in Cats with Hyperthyroidism.
Language: English
J Vet Intern Med. 2016 Nov-Dec;30(6):1780-1789.
M E Peterson , C-A Castellano , M Rishniw

背景:甲状腺機能亢進症の猫に見られる体重減少への筋肉の痩せに対し、脂肪喪失の寄与は不明である。

目的:甲状腺機能亢進症の猫の体重、ボディコンディションスコア(BCS)、マッスルコンディションスコア(MCS)を調査する

動物:無治療の甲状腺機能亢進症の猫462頭で、そのうち117頭は治療後再評価した。

方法:前向き横断前後研究。無治療の甲状腺機能亢進症の猫の体組成(体重、BCS、MCS)を評価した。それらの猫の部分集団は治療後に甲状腺機能が正常になった3-12か月で再評価した。

結果:治療前の体重(中央値、4.36kg;IQR、3.5-5.2kg)は、診断1-2年前に記録した発病前の体重(5.45kg;IQR、4.6-6.4kg、P<0.0001)よりも軽かった。154頭(35.3%)の猫は細い、あるいは異常に痩せていた;357頭(77.3%)は筋肉量が減少していた。治療後の猫は体重(中央値、4.1-5.0kg)、BCS(中央値、3/5-3.5/5)、MCS(2/3-3/3)が増加した(P<0.001)が、治療した猫の45%で軽度から中程度の筋肉の痩せが持続した。

結論と臨床意義:多くの甲状腺機能亢進症の猫は体重が減少するが、理想あるいは過体重のBCSを維持し、1/3の猫のみが体重不足である。ヒトの甲状腺機能亢進症の患者のように体重減少は痩せた筋肉に関係し、甲状腺機能亢進症の猫の>75%が影響を受ける。治療が成功すると多くは体重が増加し、BCSも増えるが、ほぼ半数は正常な筋肉量に回復しない。(Sato訳)
■原発性上皮小体機能亢進症の犬の機能的と思われる上皮小体結節に対する超音波ガイド下経皮的エタノール注入による治療後の結果:27症例(2008-2011)
Outcomes for dogs with primary hyperparathyroidism following treatment with percutaneous ultrasound-guided ethanol ablation of presumed functional parathyroid nodules: 27 cases (2008-2011).
J Am Vet Med Assoc. October 1, 2015;247(7):771-7.
Talia Guttin; Van W Knox, 4th; Jeremy S Diroff

目的:原発性上皮小体機能亢進症の犬の推定機能的上皮小体結節に、超音波ガイド下で経皮的エタノール注入を行った結果を述べる

計画:回顧的ケースシリーズ

動物:頸部超音波検査で確認した推定機能的上皮小体結節へ27回の超音波ガイド下エタノール注入処置を行った原発性上皮小体機能亢進症の犬24頭

処置:各処置で犬に麻酔を施した。各結節に対し、95%エタノールを超音波ガイダンスで中心に注射した(超音波測定値を基に注入量を算出)。治療から高カルシウム血症の解消までの間隔、合併症、臨床病理データの経過を記録した。

結果:5つの処置は2結節への同時処置だった。3頭の犬は、最初の治療失敗、あるいは他の結節の発育などの理由で2回目の処置を行った。27回の処置のうち、23回の処置(85%)後に高カルシウム血症は解消した。それら23回の処置のうち、22頭(96%)は処置後の72時間以内に高カルシウム血症は解消した。6頭の犬に低カルシウム血症が検出された(治療後2日(1頭)、7日(3頭)、14日(1頭)、21日(1頭)。そのうち5頭は軽度の一時的な低カルシウム血症で、1頭はカルシウム補給が必要な臨床症状を発症した。処置中の副作用はなかったが、2頭は遅延性の副作用を示した;総合併症率(遅延性の有害事象や臨床的低カルシウム血症を含む)は11.1%だった。長期の経過観察のデータは、19頭中17頭で正常なカルシウム血が持続されていることを示した。

結論と臨床関連:犬の原発性上皮小体機能亢進症に対し、機能的上皮小体結節への超音波ガイド下での経皮的エタノール注入は有効な治療と思われ、麻酔時間は短く、最小の合併症で、低カルシウム血症のリスクも低いことが示唆された。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症の猫の内科管理とモニタリング:イギリスの一般開業医の調査
Medical management and monitoring of the hyperthyroid cat: a survey of UK general practitioners.
J Feline Med Surg. October 2014;16(10):788-95.
Paul Higgs; Jane K Murray; Angie Hibbert

猫の甲状腺機能亢進症は一般診療でよく診断される。

この研究は猫の甲状腺機能亢進症の管理に関するイギリスの一般開業医(GPs)の意見と経験を評価した。これには、好む治療様式、チロキシン(T4)濃度に関する治療猫のモニタリング、併発疾患と薬物副作用を含めた。

603人のGPsが34の質問からなるオンラインアンケートに答えた。経口投与治療が最も好まれる治療オプション(回答した人の65.7%)で、続いて甲状腺切除(27.5%)、放射線ヨウ素(5.5%)だった。治療の費用を考慮するファクターから除外した時、有意に放射線ヨウ素を選択する診療医が多かった(40.5%、P<0.001)。内科管理中に総T4濃度をターゲットとした時、48.4%は参照範囲(RI)の半分以下、32.3%はともかくRI内、13.1%はRIの上半分以内、0.5%はRI以上を目標とした;3.4%は身体的評価のみで効果を評価した。

慢性腎疾患(CKD)の存在下で、通常症例のターゲットと比較した時、有意によりRIの上半分以内(40.3%)あるいはRI以上(9.8%)に総T4濃度をターゲットとする可能性が高かった(P<0.001)。治療開始後の隠れたCKDあるいは高血圧に対する評価は、一貫して行われているわけではなかった。

モニタリング計画の変動は、CKDや高血圧が検出されないまま、CKDを併発した猫の不適切なT4濃度抑制、潜在的に重要な血液学的異常の認識の遅れをもたらすかもしれない。(Sato訳)
■過剰な甲状腺ホルモンを含むオールミートの市販のフードあるいはおやつの摂取による犬の外因性甲状腺中毒:14症例(2008-2013)
Exogenous thyrotoxicosis in dogs attributable to consumption of all-meat commercial dog food or treats containing excessive thyroid hormone: 14 cases (2008-2013).
J Am Vet Med Assoc. January 1, 2015;246(1):105-11.
Michael R Broome; Mark E Peterson; Robert J Kemppainen; Valerie J Parker; Keith P Richter

目的:高濃度の甲状腺ホルモンを含む市販の犬の餌あるいはおやつの摂取による外因性甲状腺中毒の犬の所見を述べる

計画:回顧的および前向きケースシリーズ

動物:14頭の犬

方法:食餌による外因性甲状腺中毒の犬を確認するためにカルテを回顧的に検索した。1症例が見つかり、その後の症例は前向きに確認した。ミートベースの過剰な甲状腺ホルモンを含む疑いがある製品の給餌を中止する前と中止した後、血清甲状腺ホルモン濃度を評価した。疑われる餌やおやつを中止する前に14頭中13頭、中止後の13頭中1頭で甲状腺組織を評価するシンチグラフィーを実施した。6頭の罹患犬に与えている5種の市販の製品の7サンプルのチロキシン濃度を解析した;結果は主観的に10種の他の市販の餌と6種の牛の筋肉あるいは肝臓サンプルの所見と比較した。

結果:血清総チロキシン濃度は、最初の評価時、全ての犬で高かった(中央値、8.8μg/dL;範囲、4.65-17.4μg/dL);シンチグラフィーで検査した13頭中13頭で甲状腺放射性核種が主観的に減少していた。疑われる餌やおやつの給餌を中止してから4週間以上で、全ての犬の総チロキシン濃度は参照範囲内となり、あるならば甲状腺中毒に関係する症状は解消した。検査した餌あるいはおやつサンプルの分析で、疑われる製品の甲状腺濃度中央値は1.52μgのチロキシン/gであったのに対し、関係の無い市販の餌は0.38μgのチロキシン/gだった。

結論と臨床関連:おそらく甲状腺組織が混入したミートベースの製品の摂取により二次的に甲状腺中毒が起こる可能性があり、疑われる餌の認識および給餌中止により元に戻り得ることが示された。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症と動脈血栓塞栓症の1頭の犬におけるレボチロキシン投与後の心房細動の転換
Conversion of atrial fibrillation after levothyroxine in a dog with hypothyroidism and arterial thromboembolism.
J Small Anim Pract. May 2014;55(5):278-82.
B Chow; A French

6歳避妊済みメスの雑種犬が3週間にわたる両後肢の跛行と進行性の神経欠損と1週間にわたる心臓不整脈で紹介されてきた。
その犬は甲状腺機能低下症、心房細動、心筋機能不全、動脈血栓塞栓症と診断された。レボチロキシン補給から2週間後心臓除細動が起こり、次第に収縮機能も改善した。

著者の知るところでは、獣医あるいはヒトの文献で持続性の心房細動を伴う甲状腺機能低下症で、レボチロキシン単独療法で洞リズムへの転換を述べた最初の症例報告である。(Sato訳)
■1頭のミニチュアピンシャーの食事性甲状腺機能亢進症による原発性無発情
Primary anestrus due to dietary hyperthyroidism in a miniature pinscher bitch.
Can Vet J. August 2014;55(8):781-5.
Besim Hasan Sontas; Ilse Schwendenwein2; Sabine Schafer-Somi3

2歳のメスのミニチュアピンシャーが生まれてから骨と生の食餌を与えられ、40日コースのカベルゴリンの処置にもかかわらず発情の症状を示さなかった。血清(51nmol/l)と犬に与えていた肉汁(183nmol/l)の中のチロキシン濃度上昇が検出された。食餌の変更と経口カベルゴリン投与により、13日目に発情前期の症状が見られ、妊娠し、5頭を正常に出産した。(Sato訳)
■自然発生の甲状腺機能亢進症の猫におけるヨード制限食の給餌の効果
Effect of Feeding an Iodine-Restricted Diet in Cats with Spontaneous Hyperthyroidism.
J Vet Intern Med. 2015 Jun 17. doi: 10.1111/jvim.13368. [Epub ahead of print]
Hui TY, Bruyette DS, Moore GE, Scott-Moncrieff JC.

背景 甲状腺機能亢進症の猫の機能亢進の臨床症状をコントロールする方法として、ヨード制限食のみを給餌する方法が提示されている。

目的 自然発生の甲状腺機能亢進症の猫におけるTT4濃度と臨床症状に対するヨード制限食を給餌する効果を明らかにすること

動物 自然発生の甲状腺機能亢進症の49頭の飼い猫

方法 回顧的症例研究。甲状腺機能亢進症の猫に市販されているヨード制限食のみを与えた。臨床的な反応は、食事管理中に21-60日、60-180日の時点で体重の変化、心拍数と血清TT4、BUN、クレアチニン濃度によって評価した。

結果 血清TT4は、21-60日、60-180日の時点でそれぞれ、48頭中20頭(42%)、47頭中39頭(83%)で正常になった。21-60日の時点でTT4濃度が基準範囲以上の猫は、同じ期間にTT4濃度が正常になった猫と比較して有意に開始時のTT4濃度が高かった(P=0.038)。研究期間に体重も有意には増加せず(P=0.34)、心拍数も有意に低下しなかった(P=0.64)。血清クレアチニン濃度の有意な低下が認められた(P=0.028)。血清TT4濃度が低い基準範囲にあった猫を、基準範囲の高い値であった猫と比較すると、体重の増加もクレアチニンの増加も有意では認められなかった(P=0.41および0.54)。

結論と臨床的意義 ヨード制限食は、自然発生の甲状腺機能亢進症の猫の大部分に対して基準範囲にTT4濃度を維持するのに1年以上にわたり効果的であったが、すべての臨床症状を改善するわけではなかった。(Dr.Taku訳)
■甲状腺機能亢進症の猫におけるカルシウムホメオスタシス変化に対する病態生理学的メカニズムの調査
Investigation of the pathophysiological mechanism for altered calcium homeostasis in hyperthyroid cats.
J Small Anim Pract. July 2013;54(7):367-73.
T L Williams; J Elliott; J Berry; H M Syme

目的:甲状腺機能亢進症の猫の低カルシウム血症に対して考えられる病態生理学的メカニズム(血漿カルシトリオール濃度の低下および/あるいは併発、潜在慢性腎疾患の存在)の調査

方法:前向きコホート研究。通常の血漿生化学パラメーター、血漿上皮小体ホルモンとカルシトリオール濃度、イオン化カルシウム濃度、静脈pHを、甲状腺機能亢進症の診断時と治療後に測定した。イオン化カルシウム濃度の予測因子を判定するため線形回帰分析を使用した。

結果:甲状腺機能亢進症の猫(n=45)は、健康な老齢猫(n=52)よりもイオン化カルシウム濃度が低かったが、高窒素血症がない甲状腺機能亢進症の猫よりも慢性腎疾患を併発、あるいは潜在している甲状腺機能亢進症の猫の方が高かった。血漿カルシトリオール濃度はコントロール猫よりも甲状腺機能亢進症の猫の方が高かった。血漿総チロキシン濃度と静脈pHはイオン化カルシウム濃度の独立した予測因子だった。血漿総チロキシン濃度も、血漿上皮小体ホルモンおよびカルシトリオール濃度に対する補正後のイオン化カルシウム濃度の予測因子だった。

臨床的意義:甲状腺機能亢進症の猫の低カルシウム血症は、慢性腎疾患の併発あるいは潜在、または血漿カルシトリオール濃度低下と関係しなかった。甲状腺ホルモン濃度の上昇は、まだ明らかではないが、上皮小体ホルモンおよびカルシトリオールによるコントロールとは別のメカニズムを通してイオン化カルシウム濃度に影響しているのかもしれない。(Sato訳)
■ただT4だけよりは:猫の甲状腺機能亢進症の診断的検査
More Than Just T4: Diagnostic testing for hyperthyroidism in cats.
J Feline Med Surg. September 2013;15(9):765-77.
Mark E Peterson

臨床でのチャレンジ:甲状腺機能亢進症の臨床的特徴を呈している老猫において、甲状腺疾患の診断の確認は通常簡単である。しかし、偽陰性および偽陽性結果の可能性は全ての甲状腺機能検査(特に無症候の猫の通常スクリーニング検査の状況で)に存在し、臨床におけるジレンマを誘発する。例えば、高い血清T4値が甲状腺機能亢進症の臨床症状がない猫で見つかるかもしれず、あるいは正常な総T4濃度の猫で甲状腺機能亢進症の疑いがもたれるかもしれない。

実際の関連性:甲状腺機能の正常な猫において、不必要な治療および副作用の可能性を回避するため、甲状腺機能検査は常に猫の病歴、臨床症状、身体検査所見、他の血液検査結果を考慮して解釈すべきである。

裏付け:この文献で、著者は一般的に推奨される甲状腺機能検査の使用を概説し、診断での難しさを示す臨床的シナリオに注目する。そうすることで、獣医および比較文献、彼自身の臨床経験、今回まで公表されていない彼の病院で連続して診断した100頭の甲状腺機能亢進症の猫から得たデータを利用する。(Sato訳)
■猫の甲状腺機能亢進症:甲状腺疾患のこの流行の原因はなにか?予防はできるのか?
Hyperthyroidism in cats: what's causing this epidemic of thyroid disease and can we prevent it?
J Feline Med Surg. November 2012;14(11):804-18.
Mark Peterson

実際の関連:1970年代後半で最初に報告されてから、猫の甲状腺機能亢進症の有病率において劇的な増加を示している。現在は最も一般的な猫の内分泌障害として世界で認められている。

患畜集団:甲状腺機能亢進症は10歳以上の猫における病的状態の重要な原因である。全てのシニア猫の10%以上がこの障害を発生すると推測される。

臨床的チャレンジ:その頻度にかかわらず、この一般的な疾患の基礎にある原因は不明で、その障害を防ぐ方法も示唆されていない。猫の甲状腺機能亢進症において複数のリスクファクターが述べられているため、1つ以上のファクターがその病因に関与している可能性が高い。持続的、終生にわたる環境甲状腺攪乱化学物質、相加あるいは相乗的に共に作用する餌あるいは水の中の甲状腺腫誘発物質の暴露は、最初に甲状腺機能正常の腺腫を誘発し、その後自律的腺腫様過形成、甲状腺腺腫および甲状腺機能亢進症を起こすかもしれない。

裏付け:このレビューは猫の甲状腺機能亢進症に対するリスクファクターに関して得られるエビデンスをまとめるため、文献リサーチ研究を用いる。知られている甲状腺腫誘発物質は猫の餌、飲んでいる水あるいは環境に存在するかもしれないということをもとに、甲状腺腫瘍および甲状腺機能亢進症の予防あるいは有病率の減少できるかもしれないと、オーナーが実行できる手段を提案する。(Sato訳)
■アメリカの3地域からの市販キャットフード中のヨウ素濃度:2008-2009
Iodine concentration in commercial cat foods from three regions of the USA, 2008-2009.
J Feline Med Surg. August 2013;15(8):717-24.
Charlotte H Edinboro; Elizabeth N Pearce; Sam Pino; Lewis E Braverman

フード中のヨウ素濃度の変動は、猫の甲状腺機能亢進症発症のリスクファクターの1つとして示唆されており、1979年に流行性疾患と最初に述べられている。

3つの国際的研究は市販キャットフードのヨウ素濃度を検査している。アメリカにおける112種の市販キャットフードのヨウ素濃度を測定し、4.5kgの成猫あるいは1.4kgの子猫を想定し、日々のヨウ素摂取量を記述的疫学研究で算出し、(1)食物の産地、(2)パッケージの種類、(3)ブランドからブランドの変化、(4)ヨウ素補充の種類、(5)シーフード成分の種類と数、(6)子猫と療法食による猫のヨウ素摂取量の違いを調査した。

缶詰フードに劇的な変動(摂取量約49-9639μgヨウ素/日)があり、ヨウ素濃度の相違は、もし猫が最初にヨウ素欠乏、その後過剰ヨウ素の食事を食べた場合、結節性過形成を引き起こし、その後臨床的甲状腺機能亢進症を誘発するかもしれないと示唆される。製造業者はアメリカの全ての製品と地域で適切なヨウ素補充を確実に行うよう奨励される。(Sato訳)
■ヨードを制限した食餌の甲状腺機能亢進症の飼い猫への効果
Effects of an iodine-restricted food on client-owned cats with hyperthyroidism.
J Feline Med Surg. 2013 Nov 14. [Epub ahead of print]
van der Kooij M, Becvarova I, Meyer HP, Teske E, Kooistra HS.

この前向き、多施設、無比較、非盲検研究の目的は、甲状腺機能亢進症の飼い猫におけるトータルT4 (TT4)濃度および臨床的なパラーメーターへのヨード制限食の効果を評価することである。

本研究には225頭の猫を用い、ヨード制限食を与えた。身体検査、獣医師および飼い主からのアンケート、TT4の濃度、尿素窒素およびクレアチニンを0週目、4週目、8週目に記録した。

136頭のメス猫と89頭の雄猫が含まれていた(年齢の中央値は15歳齢で、4-21歳の範囲)。グループ1(113頭)は、以前に抗甲状腺ホルモンの治療を受けており、グループ2(112頭)は、新しく診断された猫であった。この時点で2つのグループに差は認められなかった。4週目にはTT4濃度は減少し(P <0.0001)、4週目から8週目には有意な変化はなかった。4週目の時点で88頭中56頭において、8週目の時点で68頭中51頭において、TT4濃度は基準範囲内であった。臨床症状(嘔吐、多尿、多渇、活動性の亢進、多食、体重減少、被毛の状態、生活の質)は、4週目までに改善した(P <0.0001)。クレアチニン濃度は、0週目から4週目にかけて減少した(P =0.001)。ヨード制限食を与えることによる副作用は認められなかった。

結論としては、甲状腺機能亢進症の飼い猫において、ヨード制限食は、TT4濃度を正常化し、4週間以内に甲状腺機能亢進症の臨床症状を改善するのに有用な管理方法である。これらのことは過去に抗甲状腺薬を使用されていた猫だけではなく、新たに診断された猫に対しても用いることができる。(Dr.Taku訳)
■新しいメチマゾールの親油性製剤による甲状腺機能亢進症の猫の1日1回の経皮的投与の効果と安全性
The efficacy and safety of a novel lipophilic formulation of methimazole for the once daily transdermal treatment of cats with hyperthyroidism.
J Vet Intern Med. November 2011;25(6):1357-65.
K E Hill; M A Gieseg; D Kingsbury; N Lopez-Villalobos; J Bridges; P Chambers

背景:経皮的メチマゾールに対する過去の研究は、溶媒としてプルロニックレシチンオルガノゲルを使用している。これは、メチマゾールのような親油性薬剤に対して、最も適した溶媒ではないのかもしれない。

仮説/目的:猫における甲状腺機能亢進症の治療で、メチマゾールの新しい親油性製剤の1日1回経皮投与は、経口カルビマゾールと同様の安全性と効果を示す。

動物:甲状腺機能亢進症と診断された45頭の飼育猫

方法:前向き研究。新しく甲状腺機能亢進症と診断され、治療していない猫にカルビマゾール(5mgPOq12時間)あるいは24時間毎のメチマゾール(10mg)耳介内側塗布で治療した。猫は治療後0、1、4、8、12週目に検査した。臨床症状、体重、収縮期血圧、全血検査、血清生化学および尿検査、総血清チロキシン濃度(TT4)、血清メチマゾール濃度を記録した。

結果:0日目にはグループ間の有意差は認められなかった。両製剤は甲状腺機能亢進症の治療に有効だった。グループ間のチロキシン濃度、体重、血圧、心拍数、ALP、ALT、クレアチニン、尿素、尿比重に有意差は見られなかった。両グループにおいて血清メチマゾール濃度とTT4-濃度の相関は乏しかった。

結論と臨床的意義:この12週間の試験で、甲状腺機能亢進症の猫の治療において、耳介に投与する経皮メチマゾールの新規製剤の1日1回の塗布は、1日2回の経口カルビマゾールと同様の有効性と安全性だった。この新規製剤と経皮投与は、オーナーに実用的な利点をもたらすことができる。(Sato訳)
■自然発生の甲状腺機能亢進症の猫における低コバラミン血症の有病率
The prevalence of hypocobalaminaemia in cats with spontaneous hyperthyroidism.
J Small Anim Pract. 2011 Feb;52(2):101-6.
Cook AK, Suchodolski JS, Steiner JM, Robertson JE.

目的:中程度から重度の甲状腺機能亢進症の猫における低コバラミン血症の有病率を調べることと、コバラミンの状況と選択した血液学的パラメーターとの相関を調査すること。

方法:76頭の自然発生の甲状腺機能亢進(血清T4濃度≧100nmol/L)の猫と、100頭の甲状腺が正常な老齢猫の血清コバラミン濃度を測定した。甲状腺機能亢進の猫の中で、低コバラミン血症を伴う猫の赤血球および好中球数を、適切な血清コバラミン濃度(≧290ng/L)の猫のものと比較した。

結果:甲状腺機能亢進の猫のコバラミン濃度中央値は、コントロール群よりも低かった(409vs672ng/L;P=0.0040)。また、甲状腺機能亢進の猫の40.8%は正常以下の血清コバラミン濃度で、コントロールは25%の猫だった(P=0.0336)。弱い負の相関(係数:-0.3281)が甲状腺機能亢進集団の血清コバラミン濃度とT4濃度の間に見られ、T4濃度が中央値153nmol/L以上の猫のコバラミン濃度中央値は、T4濃度がその値以下の猫よりも低かった(P=0.0281)。低コバラミン血症は甲状腺機能亢進の猫の好中球減少あるいは貧血に関係しなかった。

臨床的意義:T4≧100nmol/Lの猫のある程度の集団は低コバラミン血症で、猫において甲状腺機能亢進症は直接あるいは間接的にコバラミンの摂取、排泄あるいは利用に影響すると示唆される。(Sato訳)
■犬の甲状腺癌の治療に同時に両側性の甲状腺摘出をした後の予後:15例(1994年-2010年)
Outcome following simultaneous bilateral thyroid lobectomy for treatment of thyroid gland carcinoma in dogs: 15 cases (1994-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2012 Jul 1;241(1):95-103.
Tuohy JL, Worley DR, Withrow SJ.

目的:同時に別々に生じた両側性の可動性の犬の甲状腺癌 (TGCs)の摘出の結果を評価すること
研究デザイン:複数症例の後向き研究

動物:同時に別々に生じた両側性の可動性TGCsを摘出した15頭の犬

方法:1994年から2010年までのカルテから適切な診断と治療がなされた犬を探した。集めた情報は、シグナルメント、臨床兆候、診断検査の結果、腫瘍の可動性(触診で全方向に1cm以上動くものを可動性のある腫瘍とした)、合併症、補助療法、帰結であった。

結果:可動性があり、別々の、両側性のTGCsは全ての犬において除去された。15頭の犬の中で、9頭は完全な上皮小体の摘出が必要となり、4頭において上皮小体を再移植し、2頭は保存した。合併症は、出血および喉頭神経傷害であり、重篤な結果はなかった。13頭の犬は、手術後カルシトリオールの投与をうけ、なかには補助的なカルシウム投与をうけたものもいた。術後早期に11頭の犬に低カルシウム血症が発症し、補正した。研究の最後に、7頭はカルシトリオールの投与を受け続け、なかには補助的なカルシウム投与をうけたものもおり、8頭は長期的な甲状腺ホルモン治療が必要となった。6頭の犬は補助的な化学療法を受けた。最後の追跡検査でも、局所再発や新規の遠隔転移は認められなかった。生存期間の中央値は38.3ヶ月であった。3匹の犬は追跡することができなくなり、8頭は生存しており(術後4.3?77ヶ月)、4頭は関係のない原因で死亡した。

結論と臨床的な関連性:両側性の甲状腺摘出をうけたTGCsの犬において、上皮小体を保存できなかったとしても、功を奏する結果が得られた。補助的な化学療法の治療結果への役割は明らかにすることはできなかった。(Dr.Taku訳)
■猫の自発性甲状腺機能亢進症の治療としてイオパノ酸の効果
Efficacy of iopanoic acid for treatment of spontaneous hyperthyroidism in cats.
J Feline Med Surg. June 2011;13(6):441-7.
Alexander E Gallagher; David L Panciera

イオパノ酸はヒトの甲状腺機能亢進症の治療で使用されているヨウ素を含む経口胆嚢造影剤で、最近は猫の甲状腺機能亢進症の実験モデルで評価されている。
この研究の目的は、自然発生甲状腺機能亢進症の猫で、イオパノ酸の効果を評価することだった。
11頭の猫で研究した。
8頭は最初50mgを12時間毎に経口投与し、3頭は100mgを12時間毎に経口投与した。投与前(基準)および治療開始から2、4、12週目にオーナーへの質問表、身体検査、全血球計算、生化学分析、T(3)およびT(4)濃度を評価した。
基準に比べ、全てのタイムポイントで平均血清T(3)濃度は低下した。平均T(4)濃度は4および12週目に基準よりも上昇していた。5頭の猫は最初の4週間で部分的反応を示したが、効果は一時的で、どのタイムポイントでも臨床症状あるいは身体検査所見の有意な改善は見られなかった。
イオパノ酸は、いくつかの猫の甲状腺中毒症の急性管理に有益かもしれないが、長期管理には適さないと示唆される。(Sato訳)
■犬猫の先天性甲状腺機能低下症:概説
Congenital hypothyroidism of dogs and cats: A review.
N Z Vet J. May 2011;59(3):115-22.
K Bojanic; E Acke; Br Jones

先天性甲状腺機能低下症は珍しく、犬や猫の先天性内分泌疾患を過少診断され、本当の発生率は不明である。その疾患は甲状腺ホルモンの産生に影響する主要欠損に依存する広い範囲の臨床症状を起こすかもしれない。成獣になってから呈する症例もある。
先天性甲状腺機能低下症の特徴的な臨床症状は精神的欠陥、骨格発育異常で不均衡性こびと症を起こす。甲状腺腫はあったりなかったりする。
犬において先天性甲状腺機能低下症の述べられている原因は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)あるいは甲状腺刺激ホルモン(TSH)の欠乏、あるいは不応、甲状腺発育不全、内分泌不全、ヨウ素欠乏などである。
猫ではTSH不応、甲状腺発育不全、内分泌不全、ヨウ素欠乏は確認されている。多くの症例で適切な補充療法により治療は成功し、特に早期に開始したときには恒久的発育異常は予防できる。この概説は犬と猫で報告された症例、診断的研究、推奨される治療を述べる。(Sato訳)
■猫の全身高血圧:診断と管理
Feline systemic hypertension: Diagnosis and management.
J Feline Med Surg. January 2011;13(1):35-43.
Rebecca L Stepien

臨床関連:長年にわたり猫の高血圧の臨床重要性が認識されており、多くの猫の臨床家はこの症候群をかなり見慣れている。一度全身性高血圧を確認したら、破滅的(例えば網膜剥離による失明)あるいはわずかな標的器官障害(例えば腎障害を促進)を避けるために長期管理が必要である。

患者群:猫の全身性高血圧は腎疾患および甲状腺機能亢進症の一般的な合併症の1つで、両疾患とも老齢の猫に多い。15歳で、それら2つの疾患のうち少なくとも1つを発症する確率が高い。長期に生存している猫をうまくケアする時、併発疾患を持つ猫において高血圧を最適に長期にわたり管理することは臨床重要性の問題である。

臨床的挑戦:不安、気難しいあるいは明らかに非協力的な猫において、信頼できる血圧の分析を行うために正確な血圧を測定することは、猫の診療で今も重要な問題である。

診断:高血圧性脈絡膜症(眼底検査)所見および高血圧性心臓変化(胸部聴診)の所見の評価を組み合わせてドップラーあるいはオシロメトリック法を用いた収縮期血圧の注意深い測定は、猫の全身性高血圧の診断で必須である。腎臓および甲状腺機能の評価など他の診断法は、基礎疾患を検出するのに必要である。

エビデンスベース:多数のうまく計画された臨床研究は、猫の高血圧の診断および治療の最もよい方法を我々が理解するのに非常に進歩している。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症の犬の甲状腺ホルモンモニタリングに対する抗炎症量のプレドニゾンの影響
Effect of an anti-inflammatory dose of prednisone on thyroid hormone monitoring in hypothyroid dogs.
Vet Dermatol. April 2011;22(2):202-5.
Sarah H O'Neill; Linda A Frank; Lisa M Reynolds

副腎皮質ホルモンを同時投与される甲状腺機能低下の犬は珍しくない。甲状腺ホルモンを補給されている甲状腺機能低下の犬は定期的にモニタリングが必要なため、甲状腺ホルモン濃度をプレドニゾンが変化させるかどうかを知っておくことは、犬が治療を受けている間の検査が可能、あるいはすべきかどうか、投与量補正が適切かどうかを判定するのに役立つだろう。
この研究で、抗炎症量のプレドニゾンの短期投与の影響を、自然発生した甲状腺機能低下症の犬で判定した。8頭の成犬に7日間1日1回プレドニゾン(1.0mg/kg、経口)を投与し、それから14日間隔日投与した。血清総チロキシン(T(4))、free T(4)(fT(4))、甲状腺刺激ホルモン(TSH)を7、21、28日目に測定し、基準データと比較した。総T(4)濃度は7日目に有意に低下したが、21あるいは28日目は基準から有意な変化はなかった。fT(4)とTSH濃度は研究中どのポイントでも基準から有意に変化しなかった。2頭の犬は7日目に総T(4)濃度が低下しており、甲状腺ホルモンの補給を変更しなければいけなかった。
1mg/kgのプレドニゾン量の1日1回7日間の経口投与は総T(4)濃度を低下させたがfT(4)は変化せず、fT(4)は日々のプレドニゾン投与にあまり影響を受けないかもしれない。抗炎症量のプレドニゾン隔日投与は甲状腺ホルモンモニタリングに干渉することはなかった。(Sato訳)
■2頭の犬における医原性甲状腺機能亢進症の心血管症状
Cardiovascular manifestations of iatrogenic hyperthyroidism in two dogs.
J Vet Cardiol. August 2010;12(2):141-146.
Deborah M Fine, Anthony H Tobias, John D Bonagura

2頭の犬を医原性甲状腺中毒症と診断した(1頭は確定、1頭は推定)。2頭の身体検査所見は、興奮、頻呼吸、頻脈だった。上室性転位を伴う洞性頻脈を1頭で診断し、もう1頭には失神と心房粗動が存在した。2頭はそれらの臨床症状をひどくしているような併発心疾患があった。ヒトにおける過剰な甲状腺ホルモン補充は、洞性頻脈、上室性頻脈、心房細動、心房粗動などの上室性不整脈を引き起こす。2頭の臨床症状と律動異常は甲状腺中毒症解消とともに改善した。(Sato訳)
■犬の骨格筋に対して慢性甲状腺機能低下症の及ぼす影響の長期研究
Longitudinal study of the effects of chronic hypothyroidism on skeletal muscle in dogs.
Am J Vet Res. July 2009;70(7):879-89.
John H Rossmeisl, Robert B Duncan, Karen D Inzana, David L Panciera , G Diane Shelton

目的:実験的に誘発した甲状腺機能低下症が犬の骨格筋に対する影響を研究し、観察された全ての筋障害性異常の特徴を述べる

動物:9頭のメスの雑種成犬;6頭は131ヨウ素照射で甲状腺機能低下症を誘発し、3頭は無処置コントロール犬

方法:臨床検査を毎月実施した。甲状腺機能低下症を誘発する前とその後18ヶ月まで6ヶ月毎に筋電計検査、血漿クレアチンキナーゼ、ALT、AST、乳酸、LDHイソ酵素活性の測定、骨格筋形態学的-体型測定検査を実施した。血漿、尿、骨格筋カルニチン濃度の基準、6ヶ月、18ヶ月における測定も実施した。

結果:甲状腺機能低下状態の犬は処置後、筋障害の筋電計および形態学的所見を起こし、研究期間を通して持続したが、それらの変化はどの時点でも無症状性だった。甲状腺機能低下性の筋障害は、血漿クレアチンキナーゼ、ASTおよびLDH5イソ酵素活性を有意に増加させ、ネマリン杆状封入体、実質的および進行的なI型筋原繊維優勢、平均II型繊維部分の減少、異常なミトコンドリアの筋細胞膜下集積、筋原繊維変性の特徴を示した。慢性甲状腺機能低下症は、骨格筋フリーカルニチンの実質的な枯渇に関与した。

結論と臨床関連:慢性の実験で誘発した甲状腺機能低下症は、実質的であるが無症状の筋エネルギー代謝異常および骨格筋カルニチン喪失を示す表現型筋障害変化を起こした。それらの異常は、甲状腺機能低下の犬でよく報告される嗜眠および運動不耐性などの非特異性臨床症状の原因となるかもしれない。(Sato訳)
■猫の1日1回投与をサポートする徐放性カルビマゾール錠の薬物動態
Pharmacokinetics of controlled-release carbimazole tablets support once daily dosing in cats
J Vet Pharmacol Ther. June 2008;31(3):213-9.
R Frenais, S Burgaud, L J I Horspool

メチマゾールのプロドラックであるカルビマゾールは、猫の甲状腺機能亢進症の治療に用いられる。徐放性錠剤(Vidalta, Intervet)として健康な猫へのカルビマゾール15mgの経口投与後、メチマゾールの薬物動態を調査した。従来の錠剤形態と比較し、徐放性錠剤は明白な濃度のピークをもたらさず、メチマゾールはかなりの時間循環中に存在した。カルビマゾール投与後ピーク濃度に達する時間はかなり長かった(t(max)6h)。カルビマゾールの絶対生物学的利用能は約88±11%だった。13日間連続の1日1回経口投与で血漿中のメチマゾールの蓄積を誘発しなかった。カルビマゾールの吸収の程度は、絶食した猫より食餌を与えた猫に投与したときに約40%高かった。徐放性製剤を投与した後のメチマゾールの相対経口生物学的利用能は、従来の製剤と同様だった(83±21%)。このカルビマゾール徐放性錠剤の薬物動態は、甲状腺機能亢進症の猫の1日1回投与による治療(開始用量および維持治療両方)をサポートする。
■犬甲状腺機能低下症の病因病理所見
Etiopathologic findings of canine hypothyroidism
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2007;37(4):617-31, v. 50 Refs
Peter A Graham, Kent R Refsal, Raymond F Nachreiner

犬甲状腺機能低下症の原因はさまざまであるが、ほとんどの症例は不可逆性後天性甲状腺病理変化から起こり、ほんの少数のみ甲状腺または下垂体の先天的異常により起こる。原発性甲状腺不全のうち、少なくとも半数は免疫介在性甲状腺炎による。近年の研究は、実験およびヒトの研究で分かったことに加え、犬甲状腺疾患の遺伝及び免疫に焦点を当てている。疫学と診断検査研究は、更なる研究の方向性のため寄与する因子、起こった疑問における情報を提供し続けている。甲状腺成分に対する血清抗体は甲状腺の病的状態や機能不全でよく見られ、それら性質と頻度の理解は、甲状腺診断検査結果の解釈に重要である。(Sato訳)
■若い健康なトレーニング前のグレイハウンドにおける甲状腺ホルモン濃度
Thyroid hormone concentrations in young, healthy, pretraining greyhounds
Vet Rec. November 2007;161(18):616-9.
R E Shiel, S F Brennan, A J Omodo-Eluk, C T Mooney

健康な若いグレイハウンド46頭中42頭(91.3%)における総チロキシン(T(4))濃度は、非犬種得意参照値範囲以内で、16頭(34.8%)は測定検出の限界以下だった。フリーT(4)濃度は、20.5%の犬で正常範囲以下、13%は検出下限以下だった。
対照的に、全頭の総トリヨードチロニン濃度は非犬種得意参照範囲以内か、あるいはそれ以上で、67%は上半分の中に入っていた。全頭の甲状腺刺激ホルモン濃度は非犬種得意参照範囲内だった。
結果は、若いグレイハウンドの総T4および遊離T4濃度は他の犬種よりも著しく低く、この犬種においてそれぞれの値が分析検出下限以下であっても甲状腺機能低下症の調査に信頼を置いて用いることはできないことを示す。(Sato訳)
■犬の甲状腺機能低下症の検査
Testing for hypothyroidism in dogs
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2007;37(4):647-69, v. 80 Refs
Duncan C Ferguson

犬の甲状腺機能低下症は、一般的な内分泌障害である。広く可能性のある甲状腺機能検査全てを概要するよりも、この文献では検査の選択の論理学的進歩、総チロキシン、トリヨードサイロニン、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、抗甲状腺抗体を強調することに焦点をあてる。この文献で、犬TSH分析の現在の状態、この分析を改善する可能性について広く論議している。(Sato訳)
■犬猫の甲状腺外科
Thyroid surgery in dogs and cats
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2007;37(4):789-98, viii. 24 Refs
MaryAnn G Radlinsky

甲状腺外科は、甲状腺の悪性及び良性腫瘍、過形成で指示される。腹側頚部正中アプローチで、両側甲状腺の診査が可能である。取り巻く神経血管構造、食堂を避けるよう注意すべきである。両甲状腺の評価は、部分または完全甲状腺切除を行う前になされるべきである。甲状腺外科の合併症は、術中出血、反回喉頭神経の損傷に関する臨床症状、上皮小体血液供給、または上皮小体切除などである。(Sato訳)
■猫の甲状腺機能亢進症の病因病理所見
Etiopathologic findings of hyperthyroidism in cats
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2007;37(4):633-45, v. 63 Refs
Mark E Peterson, Cynthia R Ward

現在までの研究で、猫の甲状腺機能亢進症発症の原因となりえる単一優性因子が特定されていない。むしろ研究のほとんどが、この種の甲状腺機能亢進症が多因子性疾患という広く支持される観点の所見をさらに提供する。この時点で、もっともありえる候補者は、餌または猫の環境に存在を示されている甲状腺腫誘発化学薬品が1つ以上含んでいる。また甲状腺刺激ホルモンレセプター遺伝子の突然変異、またはG蛋白に関係する遺伝子の突然変異が、この疾患の病因で重要な役割を演じると思われる。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症の犬の治療前と治療後の超音波検査
Pre- and post-treatment ultrasonography in hypothyroid dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2007 May-Jun;48(3):262-9.
Olivier Taeymans, Sylvie Daminet, Luc Duchateau, Jimmy H Saunders

原発性甲状腺機能低下症は成犬によく見られる内分泌障害である。しかし、よく使用される生化学検査の正確性が比較的低いことから偽陽性診断も一般的である。この研究の目的は、甲状腺機能低下症の犬の甲状腺の超音波検査特性を述べることと、臨床徴候及びゴールドスタンダードの生化学甲状腺検査と組み合わせて使用するグレースケール超音波検査の診断感受性を算出し、また甲状腺機能低下症の治療後の超音波検査特性の進展を調査することだった。
18頭の犬を遡及的に研究した。初回来院時にすべての犬に超音波検査を行い、それから13頭の犬は1,2回の追加超音波検査を行った。初回来院時、エコー源性低下の感受性は76.5%(95%CI[50.0-93.0%])、不均質性は64.7%(95%CI[38.3-85.8%])、不規則な被膜描写は70.6%(95%CI[44.0-89.7])、異常な葉形は64.7%(95%CI[38.3-85.8%])、甲状腺体積の相対的減少は47.1%(95%CI[23.0-72.2%])だった。それら5つのパラメーターを組み合わせると、初回来院時で後天性甲状腺機能低下症の検出でグレースケール超音波検査の全体の感受性は94.1%(95%CI[71.3-99.9%])だった。甲状腺体積の持続的減少は治療後も見られたが、他の調査したパラメーターは追跡期間中有意に変化しなかった。最終来院時に正常と考えられる甲状腺はなかった。グレースケール超音波検査は犬の原発性甲状腺機能低下症の診断において感受性があり素早くできる検査である[Sato訳]
■ボルゾイに見られたリンパ球性甲状腺炎の家族性発現
The familial occurrence of lymphocytic thyroiditis in borzoi dogs.
Am J Med Genet. 1985 Oct;22(2):409-14.
Conaway DH, Padgett GA, Nachreiner RF.

原発性甲状腺機能低下症の原因を確かめるためにボルゾイに関連するグループの犬で6年間研究した。4世代の犬を分析した。リンパ球性甲状腺炎を伴う2頭の腹子を交配させ、甲状腺の生検評価に基づいて10頭の子が2.5歳までにリンパ球性甲状腺炎を持っているとして診断された。
さまざまな甲状腺病変が犬のこの同腹子で示されました。 このレポートはボルゾイ犬の同系繁殖グループの連続した3世代におけるリンパ球性甲状腺炎の発生を記録します。この犬のグループにおける特徴を示すための常染色体劣勢遺伝様式が提案された。(Dr.Kawano訳)
■甲状腺機能亢進症の猫101頭における甲状腺切除の結果
Results of thyroidectomy in 101 cats with hyperthyroidism
Vet Surg. April 2006;35(3):287-93.
Elaine C Naan, Jolle Kirpensteijn, Hans S Kooistra, Marijke E Peeters

目的:甲状腺機能亢進症の猫における甲状腺切除後の結果、特に周術、術後合併症と再発について述べる

研究構成:回顧的研究

動物:101頭の甲状腺機能亢進症の猫

方法:診断検査は、血漿カルシウム、ナトリウム、カリウム、尿素、クレアチニン濃度の術前測定と甲状腺シンチグラフィーを行った。包内切開変法を実施した。術後の副甲状腺機能を毎日数回の血漿カルシウム濃度測定により評価した。その後の状態は標準的な電話による調査で入手した。

結果:甲状腺シンチグラフィーで9頭の猫の異所性過形成甲状腺組織(EHTT)が明らかとなった。術前、91頭中29頭は低カリウム血症だった。2頭は術後3日以内に死亡し、86頭中5頭は術後一時的な低カルシウム血症を起こした。組織検査で、88頭中3頭の甲状腺癌が確認された。3-59ヶ月の間に5頭で甲状腺機能亢進症が再発し、そのうち4頭は術前にEHTTを認めていた。EHTTとそうでない甲状腺機能亢進症の猫の再発率に有意差が見られた(P<.001)。

結論:心血管悪影響を最小にするような麻酔法で、経験をつんだ外科医による甲状腺切除後の合併症はほとんどない。EHTTを伴う甲状腺機能亢進症は、再発の機会が有意に高かった。

臨床関連:甲状腺切除の外科的合併症発生率は低く、放射性ヨウ素が利用できない時、甲状腺機能亢進症の猫の治療で有効である。術前甲状腺シンチグラフィーが推奨される。EHTTが存在するとき、再発疾患を起こす機会が高いので、外科手術は推奨されない。(Sato訳)
■メチマゾールの投与頻度
Frequency of Administration of Methimazole
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:22-23 Jul'04 Prospective Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Trepanier LA, Hoffman SB, Kroll M, et al.; J Am Vet Med Assoc 2003;222:954-958

イントロダクション:

背景:メチマゾールはその甲状腺で濃縮され、甲状腺ホルモン合成を抑制する。猫の甲状腺機能亢進症の薬理学的コントロールに使用される。副作用で見られるものとして多くは嘔吐と食欲不振であるが、時折重度血液疾患、顔面腫脹と掻痒、肝障害が起こりえる。
血漿半減期は2-6時間である。よって、少なくとも最初は1日2-3回の投与が推奨される。しかし、特に甲状腺での濃縮により血漿半減期以上に生物学的効果が延長するかもしれない。

目的:この研究目的は、甲状腺機能亢進症の猫に対し、メチマゾール1日1回投与が1日2回と同様効果的で安全かどうかを判定することだった。

サマリー:

方法:甲状腺機能亢進症と新規に診断された40頭の猫を、メチマゾール経口投与1日1回5mg(25頭)と、2.5mg2回投与(15頭)に無作為に振り分けた。身体検査、ヘモグラム、血清生化学値、T4濃度、尿検査、血圧を各猫で、治療0、2、4週目に評価した。

結果:2、4週目の血清T4濃度は、1日2回の猫に比べ、1回の猫で有意に高かった。投与2週目で、1日2回投与していた猫の87%が血清T4濃度が正常範囲内となっており、それに対し、1日1回投与の猫はたった54%だった。投与4週目で、1日2回投与の猫の92%が正常血清T4濃度となったが、1日1回の猫はたった71%だった。副作用の発生率に有意差はなかった。

結論:メチマゾールの1日1回投与では、1日2回投与と同様の有効性はない。
臨床関連:この研究で使用したメチマゾールの投与量は、ネコの甲状腺機能亢進症の初期治療に一般に推奨される投与量ほど高くなかった。また血清T4濃度の低下率は、高用量投与猫ほど急速ではなかった。それにもかかわらず、予想されたよりも副作用の発生率は高く全体で44%、肝障害10%、顔面の擦過15%だった。
副作用の明らかな高発生率に関し、少なくとも2つの解釈がある。1番目は、この研究の猫は、より密にモニターし、副作用の発生に対し、より感度の閾値が高かった。2つ目は、メチマゾールのより高い初期投与量を投与することが、免疫介在性副作用の発生率を低下させるタキフィラキシーを生じるかもしれないということだった。メチマゾールの初期高用量経皮投与の追加研究が必要である。(Sato訳)
■ヨウ素131、メチマゾール、またはその両者で治療した甲状腺機能亢進症の猫に関する生存期間:167症例(1996-2003)
Survival times for cats with hyperthyroidism treated with iodine 131, methimazole, or both: 167 cases (1996-2003)
J Am Vet Med Assoc. February 2006;228(4):559-63.
Rowan J Milner, Carla D Channell, Julie K Levy, Michael Schaer

目的:ヨウ素131、メチマゾール、あるいはその両者で治療した甲状腺機能亢進症の猫に関する生存期間を比較し、生存期間に関連した因子を明らかにすることです。

計画:回顧的症例集

動物:167頭の猫

手順:血清チロキシン高値、甲状腺シンチグラム造影の結果、あるいはその両者の結果をもとに甲状腺機能亢進症を確認された猫の医療記録を再調査しました。

結果:55頭の猫(33%)がヨウ素131単独、65頭(39%)は、メチマゾールに続きヨウ素131、47頭(28%)は、メチマゾール単独で治療されました。166頭中24頭の猫(14%)は、既存の腎疾患、そして115頭(69%)は、既存の肝疾患がありました。
年齢は明確に生存期間と相互関係があり(r=0.4)、より高齢の猫ほど、より長く生存するように思われました。既存の腎疾患を持った猫は、そうでない猫より有意に短い生存期間でした。既存の腎疾患の猫を除いた場合、メチマゾール単独で治療した猫の中央生存期間(2年;四分位数間領域[IQR]、1年から3.9年)は、ヨウ素131単独(4年;IQR、3年から4.8年) 、あるいはメチマゾールに引き続きヨウ素131(5.3年;IQR、2.2年から6.5年)で治療した猫の中央生存期間よりも有意に短くなりました。

結論と臨床関連:結果は、年齢、既存の腎疾患、そして治療法が、甲状腺機能亢進症の内科治療を受けた猫における生存期間に関連することを示唆しております。(Dr.K訳)
■重度疾患の甲状腺の形態と機能
Morphology and Function of the Thyroid in Severe Sickness
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:11-12 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Torres SMF, Feeney DA, Lekcharoensuk C, et al.; J Am Vet Med Assoc 2003;222:1079-1085

イントロダクション:

背景:多くの犬が、無関係の非甲状腺疾患を持つ甲状腺機能低下症を評価された。この疾患はたびたび甲状腺機能検査を変化させ、甲状腺機能低下症と誤診を招く状況を導く。甲状腺機能検査を変化させる原因は、多くの要素からなり複雑である。可能性のある原因には、TSHの分泌または生理活性の低下、甲状腺ホルモン分泌障害、血漿輸送タンパク結合の抑制、細胞内移行低下、甲状腺ホルモンの代謝変化、その他のメカニズムなどである。

目的:この研究目的は、重度非甲状腺疾患の犬の甲状腺機能と甲状腺組織の変化を評価することだった。

サマリー:

手順:甲状腺組織同様、T4、遊離T4(fT4)、犬甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)血清濃度を、重度疾患の66頭の犬で評価し、臨床上正常で、正常な甲状腺機能検査結果を持つ61頭(ビーグル43頭、クーンハウンド13頭、雑種5頭)のイヌと比較した。疾患犬はその疾患のため1-270日の間にすべて安楽死された。疾患には、腫瘍19頭、腎臓障害12頭、胃腸疾患9頭、感染疾患7頭、心臓疾患4頭、残りの犬はいくつかの他の疾患を持っていた。甲状腺を安楽死した全ての犬から採取し、甲状腺コロイドの相対量、濾胞上皮、間質を測定することにより組織学的に評価した。

結果:健康犬に比べ、疾患犬の血清T4、fT4平均血清濃度は有意に低かった。グループ間に血清c-TSH濃度の有意差はなかった。血清T4は59%が正常以下、fT4は32%が正常以下、c-TSHは8%が正常以上だった。疾患犬65頭中43頭で、少なくとも測定したホルモンの1つは、基準範囲から外れていた。それら43頭のうち、正常以下のT4は17頭、fT4単独は2頭で正常以下、血清c-TSH濃度上昇は2頭の異常でしかなかった。血清T4、fT4濃度の低下は19頭の犬に同時に見られ、3頭は、血清T4濃度低下とc-TSH濃度上昇を起こしていた。甲状腺機能検査結果が基準値から外れていた43頭の疾患犬のうち19頭は、主にコルチコステロイドやフェノバルビタールなどの甲状腺機能検査に影響するような薬剤を投与されていた。甲状腺組織検査のコロイド、上皮、間質の量に関し、グループ間に差はなかった。健康犬で、上皮の量と血清T4、fT4両方との正の相関が見つかり、それらホルモンと組織検査のコロイド量間に負の相関があった。疾患犬で、ホルモン濃度と甲状腺組織測定に相関は認められなかった。

結論:血清T4、fT4濃度は、重度非甲状腺疾患の犬で正常範囲以下となる頻度が高い。

臨床への影響:

この研究は、重度疾患犬の甲状腺機能検査の解釈はかなり難しいと証明する。血清fT4濃度はT4よりも影響を受ける頻度が少ないが、疾患犬の約1/3は血清fT4が基準以下だった。この研究で、かなり重度で安楽死になる状況であるということよりも甲状腺機能低下症を疑った犬はいないことから、評価した甲状腺機能検査の正確性は、甲状腺機能低下症を疑う犬の集団でより高くなるだろうと予測される。しかし、甲状腺機能低下症を疑う犬で特に委託集団の併発疾患は一般的である。甲状腺機能検査は、存在する非甲状腺疾患が、すべて解消、または管理できるまで延期するべきである。(Sato訳)
■甲状腺機能や形態に対する臭化カリウムの影響
Potassium Bromide Effects on Thyroid Function and Morphology
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:9-10 Jul'04 Prospective Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Paull LC, Scott-Moncrieff JCR, DeNicola DB, et al.; J Am Anim Hosp Assoc 2003;39:193-202

イントロダクション:

背景:抗痙攣薬フェノバルビタールなどの多数の薬剤は甲状腺機能検査に影響を及ぼす。フェノバルビタールの長期投与は、T4、遊離T4濃度の低下を起こさせる。臭化物はハロゲン化物なので、臭化物は甲状腺ホルモンの合成や吸収に対しヨウ化物と競合する可能性がある。

目的:この研究の目的は、正常犬に対する臭化カリウムの短期、長期投与が甲状腺機能に影響するかどうかを判定することだった。

サマリー:

手順:健康犬に臭化カリウム(KBr)または水(各群5頭)を180日間投与した。KBrの負荷投与量(100mg/kg1日2回)を最初の2日間投与し、その後維持量を1日1回30mg/kgとした。血清臭化物濃度250-300mg/dlに到達させるため、120日後にKBrの投与量を調節した。投与中定期的に身体検査を行い、血清生化学、T4、犬甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)、臭化物(KBr投与群)を測定するのに、採血を3、30、120、177日目に行った。血清遊離T4と甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)刺激試験を投与前と投与177日目に測定した。全頭182日目に片側甲状腺摘出を実施し、甲状腺を組織学的に検査した。

結果:どの犬にも甲状腺機能低下症、または慢性臭素中毒の臨床症状は認められなかった。血清生化学検査異常は、臭化物による塩化物の偽上昇に限られていた。血清臭化物濃度は、30日目から研究終了まで全頭治療域内、または以上で、177日目に1頭は目標範囲内、1頭は目標範囲以上、3頭は目標範囲以下だった。投与犬とコントロールの間に、血清T4、遊離T4、c-TSH濃度、TRHに対するT4とTSH反応の有意差は見られなかった。しかし、両群投与前の値と比較し、177日目にかなりの血清T4と遊離T4濃度低下、post-TRH c-TSH濃度の上昇、T4の比率増加があった。治療群間で、甲状腺重量、甲状腺組織病理学検査に差はなかった。

結論:6ヶ月間の経口KBr投与は、犬の甲状腺機能検査に影響を及ぼさない。

臨床への影響:
この研究で、甲状腺機能に対するKBr投与の影響がないことは、過去のKBrで治療したてんかん発作の犬の研究と一致する。ゆえにフェノバルビタールが唯一甲状腺機能に影響する一般に使用される抗痙攣剤と思われる。しかし、この研究は頭数が少なく、投与犬、コントロール犬共に、研究期間中かなりの血清T4、fT4濃度の低下は、臭化物投与の影響が隠されている可能性がある。(Sato訳)
■甲状腺機能に対するクロミプラミンの影響
Clomipramine Effects on Thyroid Function
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:7-8 Jul'04 Prospective Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Gulikers KP, Panciera DL; J Vet Intern Med 2003;17:44-49

イントロダクション:

背景:グルココルチコイド、強化スルホンアミド、抗痙攣薬、他多くの薬剤は、甲状腺機能や血漿タンパク結合に変化をもたらすと報告されている。それら薬剤のなかで、三環系抗うつ剤は、甲状腺ヨウ素吸収、甲状腺ペルオキシダーゼ活性を阻害し、甲状腺刺激ホルモン(TSH)放出を抑制するかもしれないと示されている。三環系抗うつ剤のクロミプラミン(Clomicalm Novartis Animal Health, Greensboro, NC)はアメリカで犬の分離不安の治療に承認されている。推奨投与量が犬の甲状腺ホルモン合成や放出を抑制するならば、甲状腺機能低下症や臨床的に意義のある甲状腺ホルモン不足を実際に起こしていると誤診する可能性がある。

目的:この研究目的は、健康犬の視床下部-下垂体-甲状腺軸に対する長期クロミプラミン投与の影響を評価することだった。

サマリー:

方法:14頭の健康犬に112日間クロミプラミンを3mg/kg経口1日2回で投与した。血清総T4、遊離T4(fT4)、T3、リバースT3(rT3)、犬-TSH(c-TSH)を測定し、さらにc-TSH試験に対する甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)反応を0、7、28、42、56、112日目に測定した。
結果:血清T4、fT4、rT3濃度は0日目の濃度と比較し、28日目以降に有意に低下した。血清T4、fT3濃度の平均最低値は、それぞれ112日目で35%と38%低下だった。血清T3濃度は低下したが、不定であった。血清c-TSH濃度、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン刺激後のc-TSHは有意に変化しなかった。臨床甲状腺機能低下症症状は観察されなかった。
結論:4ヶ月の投与期間内にクロミプラミンは犬の臨床甲状腺機能低下症を起こさなかったが、偽甲状腺機能低下症の範囲に血清T4とfT3濃度を低下させる可能性がある。

臨床への影響:

4ヶ月クロミプラミンを健康犬に投与しても甲状腺機能低下症の症状を示さなかったが、犬分離不安症に対するクロミプラミンの投与は、4ヶ月以上継続するかもしれない。より長期の投与期間、併発非甲状腺疾患、他の薬剤投与が甲状腺機能低下症の臨床症状を誘発するかどうかはわからない。クロミプラミンを投与されている犬で、T4、fT3血清濃度は急速に抑制され、原発性甲状腺機能低下症の可能性の調査を複雑にするだろう。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症のネコの定量的甲状腺シンチグラフィー
Quantitative Thyroid Scintigraphy in Hyperthyroid Cats
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:16-17 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Daniel GB, Sharp DS, Nieckarz JA, et al. Quantitative thyroid scintigraphy as a predictor of serum thyroxin concentration in normal and hyperthyroid cats. J Vet Radiol Ultrasound 2002;43:374-382

イントロダクション

背景:甲状腺機能亢進症はネコの内分泌障害でよく診断される。一般的な原因は、複数機能亢進甲状腺腺腫または腺腫性過形成である。併発疾患がない進行した症例の診断は、ベースラインの血清T4濃度を規準にできる。しかし、疾患の早期ステージ、または併発疾患により複雑なもので、血清ベースラインT4濃度は、正常範囲内かもしれない。そのとき、診断は甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)刺激、またはT3抑制試験、またはシンチグラフィーに依存する。甲状腺の機能状態は、シンチグラフィーにより主観的に評価されるが、画像は定量でき、甲状腺活性は客観的に評価される。

目的:この研究目的は、ネコの甲状腺摂取定量の方法を比較し、血清T4濃度の増加に最も相関する方法を判定することである。

サマリー

方法:甲状腺機能亢進症の治療に来た43頭のネコと8頭の正常なネコに甲状腺シンチグラフィーを実施した。画像を甲状腺による放射性同位元素の投与摂取率により定量した。2、5、10、20分の平均そして最大甲状腺:唾液腺比、放射性同位元素摂取率

結果:血清T4濃度が上昇している全てのネコの摂取はより大きかった。定量した測定値は、血清T4濃度と有意に相関していた。もっとも有意な相関は、放射性同位元素を投与後20分のリニアグレイスケールを用い、画像化した甲状腺葉のちょうど最大強度部位を使用した甲状腺:唾液腺(頬骨/臼歯)画像比だった。20分時の平均甲状腺:唾液腺画像比は、コントロールネコで0.85:1、甲状腺が正常な臨床ネコで0.72:1、軽度甲状腺機能亢進症のネコで2.50:1、中程度甲状腺機能亢進症のネコで3.82:1、重度甲状腺機能亢進症のネコで8.38:1だった。

結論:甲状腺:唾液腺画像比は、甲状腺代謝状態の良い指標である。

臨床への影響

20分時の甲状腺:唾液腺画像比は、甲状腺機能亢進症のネコの血清T4濃度を正確に予測する。その比率は2時間比較的安定する。シンチグラフィーの甲状腺:唾液腺比は、T3抑制、またはTRH刺激試験が必要な甲状腺機能亢進症が否定された猫と、甲状腺が正常なT4濃度が正常高値を示すネコとの鑑別の手助けとなるかもしれない。併発疾患が存在するときの甲状腺機能亢進症の診断に、シンチグラフィーが有効かどうかを判定することが残っている。(Sato訳)
■ネコの経皮的メチマゾールの生物学的利用能
Bioavailability of Transdermal Methimazole in Cats
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:18 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Hoffman SB, Yoder AR, Trepanier LA. Bioavailability of transdermal methimazole in a pluronic lecithin organogel (PLO) in healthy cats. J Vet Pharmacol Therap 2002;25:189-193

イントロダクション

背景:メチマゾールや関連合成物は、ネコの甲状腺機能亢進症のほぼ全症例に対する最初の推奨治療である。甲状腺機能亢進症の長期管理に対し、この治療を使用するときに問題となってくるのは、経口投与の遵守である。種々薬剤の経皮的吸収は、皮膚を通して薬剤の浸透性を増加させる胸膜性-レシチンオルガノゲル(PLO)の使用で高めることができる。経皮的メチマゾールの投与は、長期投与に対するコンプライアンスの低下問題を幾分解消させると思われる。

目的:この研究目的は、健康ネコへのメチマゾール1回の経皮投与の生物学的利用能を判定することだった。

サマリー

方法:無作為三重クロスオーバー試験で、6頭の健康なネコにメチマゾール5mgを経口、静脈内、経皮的に1回投与した。局所メチマゾールは、耳介内側の毛が生えていない部分に塗布した。投与間隔を1週間離した。血清メチマゾール濃度測定のため、24時間まで複数回採血した。種々の薬物動態パラメーターを判定し、メチマゾールの生物学的利用能判定のため、投与経路間の比較を行った。

結果:経皮投与の曲線下面積、最大濃度、絶対生物学的利用能は有意に低かった。経皮投与後、血清メチマゾール濃度が検出できたのはたった2頭だった。経皮的に投与されたメチマゾールを吸収した1頭のみが、経口投与と同じ程度だった。経口投与後の生物学的利用能の範囲は、27%-51%だった。

結論:健康ネコへのPLO中メチマゾールの1回投与は悪く、不定な吸収を起こした。

臨床への影響

PLOに混合したメチマゾールの局所投与で吸収が悪いにもかかわらず、この方法は甲状腺機能亢進症ネコの血清甲状腺ホルモン濃度の低下に効果を示している。実際、メチマゾールの経皮的投与は、広く使用され、甲状腺機能亢進症の管理に効果的である。PLOの繰り返し投与が皮膚の浸透性を増加させ、吸収を高めることができ、現研究で吸収の悪さを長期間使用する治療の効果と比較して説明される。また、皮膚の血流は、甲状腺機能亢進症により増加し、この研究の正常なネコで示された吸収力にくらべ、より皮膚吸収を容易にすると思われる。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症のイヌの血清フルクトサミン濃度
Serum Fructosamine Concentrations in Dogs with Hypothyroidism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:11-12 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Reusch CE, Gerber B, Boretti FS. Vet Res Comm 2002;26:531-536

イントロダクション

背景:フルクトサミンは、血漿タンパクにグルコースが非酵素的に付着することで形成される循環糖タンパクである。この反応の割合は、タンパクが循環している全てのときの血漿平均グルコース濃度に依存する。ゆえに糖尿病の動物で、血清フルクトサミン濃度は低血糖のコントロールの程度だけでなく、血漿にタンパクが存在する時間とその濃度にも依存する。低タンパク血症、高脂肪血症、高窒素血症や他の因子は、血清フルクトサミン濃度の報告で低下を起こさせる可能性がある。おそらくタンパクの代謝回転を増すため、甲状腺機能亢進症はネコのフルクトサミン濃度の低下を起こす。甲状腺機能低下症のイヌで予測されるはずの血清フルクトサミン濃度の変化は確立されていない。

目的:この研究目的は、甲状腺機能低下症のイヌの血清フルクトサミン濃度は上昇するかどうかと、甲状腺ホルモンの補充で低下するかを判定することだった

サマリー

方法:甲状腺機能低下症の11頭のイヌを研究した。10頭は、甲状腺刺激ホルモン(TSH)刺激試験の反応で正常以下の血清T4となったことで、T4に対する自己抗体を持つ1頭は、検出不能な遊離T4低濃度と血清イヌ(c)-TSH濃度の上昇により甲状腺機能低下症を確認した。血糖値、アルブミン、グロブリン濃度は全頭正常範囲内だった。レボチロキシン1日2回0.02mg/kg投与開始前(n=11)と開始後3-6週間(n=8)、8-24週間(n=3)目に血清フルクトサミン測定を行った。血清フルクトサミンの正常範囲は、98頭の正常犬で207-340?mol/lと判定した。イヌへの使用で過去に実証されているニトロブルーテトラゾリウム法を使用してフルクトサミンを測定した。

結果:治療前の甲状腺機能低下症犬の血清フルクトサミン濃度は、コントロールよりも有意に高かった。9頭の甲状腺機能低下犬の血清フルクトサミン濃度は正常以上で、5頭の濃度は、400?mol/lを超えていた。レボチロキシン投与開始後最初の再チェックで、最初上昇していた7頭中5頭の血清フルクトサミンは正常範囲内に低下した。最初に血清フルクトサミン濃度が上昇していたイヌ3頭のより長期にわたる追跡調査で、全頭濃度が正常に戻った。各イヌで投与中の最終測定値と最初の濃度を比較したとき、有意な血清フルクトサミン濃度の低下が認められた。

結論:血清フルクトサミン濃度は、平均血糖値に依存せず、甲状腺機能低下症のイヌで上昇する。

臨床への影響

適切な真性糖尿病管理をモニターするため一般に使用されるが、血清フルクトサミン濃度測定は、この疾患の診断にも推奨されている。甲状腺機能低下症の真性糖尿病の臨床症状はひどく異なるため、真性糖尿病の診断で血清フルクトサミンの増加は、より多くの混乱を招くだろうと思われる。実際、糖尿病はほとんど全ての症例の持続高血糖と糖尿により簡単に認識され、たとえ糖尿病の診断に指示されてもフルクトサミン測定はまれである。フルクトサミンはインシュリンで治療している糖尿病犬の糖血症コントロールの不完全を測定するものであるが、個々の症例に使用する場合、その結果の解釈で、フルクトサミン濃度に影響する甲状腺機能低下症や他の因子を考慮すべきである。(Sato訳)
■通常のワクチン接種後の抗チログロブリン抗体
Antithyroglobulin Antibodies After Routine Vaccination
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:12-13 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Scott-Moncrieff JC, Azcona-Olivera J, Glickman NW, et al. J Am Vet Med Assoc 2002; 221: 515-521

イントロダクション

背景:自己免疫性甲状腺炎は、イヌの原発性甲状腺機能低下症の主要な原因と思われる。原発性甲状腺機能低下症のイヌの約50%は、甲状腺濾胞のコロイドの主なタンパク質であるチログロブリンに自己抗体を持つ。リンパ急性甲状腺炎は、ある種で遺伝性疾患と立証されており、他の多くの種は、遺伝的素因を示唆する甲状腺機能低下症の傾向を示す。ある研究者は、甲状腺炎などの種々の自己免疫性疾患発症を通常のワクチン接種が誘発すると提唱しているが、立証されないままである。

目的:この研究の目的は、通常のイヌのワクチン接種が、抗チログロブリン抗体を誘発させるかどうかを判定することである。

サマリー

方法:8週齢のメスのビーグル20頭を4つの群に均等に振り分けた。5頭はワクチンを接種しないコントロール群、5頭は多価ワクチン(イヌジステンパーウイルス、アデノウイルス-2、パラインフルエンザウイルス、パルボウイルス、コロナウイルス、レプトスピラインテロガンス)接種群、5頭は狂犬病ワクチン接種群、5頭は多価ワクチンと狂犬病ワクチン接種群とした。多価ワクチンは、8、10、12、16、20、26、52週齢に投与し、それから4歳まで6ヶ月ごとに接種した。狂犬病ワクチンは16、52週齢とそれから毎年接種した。
血清抗ウシチログロブリン抗体、抗イヌチログロブリン抗体、ジステンパーとパルボに対する抗体を測定するため、血液採取を8、16、26週齢に行い、それからワクチン接種直前、ワクチン接種後2週間など年に4回採取した。CBC、血清生化学、血清T4、甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度を8、16、26週、各ワクチン接種直前、接種後2週間目に評価した。
追加の実験犬、2歳以上の飼育犬16頭をワクチン前後に調査した。全ての犬は、研究前に最低1回のワクチン接種を受けていた。多価ワクチンと狂犬病ワクチン接種前と接種後14日目に身体検査を行い、血液サンプルでCBC、血清生化学、血清T4、TSH濃度、ウシそしてイヌ抗チログロブリン抗体を評価した。

結果:実験ビーグルで、研究期間中血液像や血清生化学に異常は認められなかった。全てのワクチン接種犬は、検査したウイルスに対し高い力価を作り出した。自発性甲状腺炎は3頭で発症し、1歳からイヌ抗チログロブリン抗体の高力価を起こし、研究の終わりには甲状腺機能低下症の所見を特徴とした。それらの犬は研究分析から除外し、ワクチン未接種群の3頭、多価ワクチン群の4頭を残した。
ワクチン接種前と4年の研究の終了時、イヌまたはウシチログロブリンに対する抗体に群間差は認められなかった。しかし、各ワクチン接種後、ワクチン未接種群には認められないウシチログロブリンに対する抗体の一時的な増加が起こった。犬チログロブリンに対する抗体の増加も、多価ワクチンには認められないが、狂犬病ワクチンの接種後に認められた。ウシチログロブリン抗体の増加の程度は、多価ワクチンのみ接種した群よりも、狂犬病ワクチンを接種した2つの群の犬でより顕著だった。同様に、イヌチログロブリンに対する抗体は、狂犬病ワクチン接種の2群で最も高かったが、多価ワクチンを投与したイヌで有意な増加は認められなかった。
ワクチン接種前、または研究終了時の血清T4、TSH濃度に、異なる群間の有意差は認められなかった。4年目の血清T3濃度は、他の群よりもワクチン未接種群で有意に低かった。16頭の飼育犬で、ワクチン接種後14日目の血清T4、T3、TSH濃度、またはウシチログロブリン抗体に差は認められなかった。しかし、飼育犬でワクチン接種後14日目にイヌチログロブリンに対する抗体の有意な増加があった。

結論:ワクチン接種後にチログロブリンに対する抗体が発生したが、甲状腺機能に対する影響は分からなかった。

臨床への影響

ワクチン後に発生するチログロブリンに対する抗体の意義は不明である。ワクチン接種後2週間と1年のみ検査をしたため、抗体反応の持続期間は判定しなかった。ワクチン接種を行ったすぐは、抗チログロブリン抗体試験の陽性を誘発する可能性があるので、自己免疫甲状腺疾患のイヌの通常のスクリーニング検査は、とくに狂犬病ウイルスのワクチン接種から可能なかぎり期間をおいて実施すべきである。ワクチン接種が自己免疫甲状腺炎を誘発する、または甲状腺機能に影響する研究の、持続期間に対する証拠はなかった。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症の治療と治療モニタリング
Treatment and Therapeutic Monitoring of Hypothyroidism
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:14-15 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Dixon RM, Reid SWJ, Mooney CT. Treatment and therapeutic monitoring of canine hypothyroidism. J Sm Anim Pract 2002;43:334-340

イントロダクション

背景:甲状腺機能低下症に対する経口レボチロキシン添加の薬物動態はかなり変動し、同じ投与量を投与したイヌで血清T4濃度は4倍変動することもある。このことは、不十分な治療や過剰添加を引き起こす可能性がある。治療に対する臨床反応は非常に重要であるが、臨床反応が唯一の治療の判定となるとき、軽微から適度、過剰、不十分な添加は、検出されないかもしれない。ヒトの治療は、血清甲状腺刺激ホルモン(TSH)濃度が正常になるまで行われる。残念なことに、今日利用できるイヌTSH分析は、レボチロキシン投与量の調整に使用するほど感度が良くない。

目的:この研究の目的は、甲状腺機能低下症のイヌで、一般的なレボチロキシン投与療法に対する、臨床、検査反応を評価することだった。

サマリー

方法:31頭のイヌで臨床症状、TSH反応試験をもとに甲状腺機能低下症を診断した。全頭、1日1回0.02mg/kgのレボチロキシン投与で治療した。治療前、治療から9-28日、29-70日、71-112日目に、レボチロキシン投与後6時間目の身体検査、体重、全血球数、血清生化学、血清T4、TSH濃度により評価した。レボチロキシンの投与量は、治療の臨床反応のみで判断し、変更した。
結果:治療前、1頭を除き全頭の血清T4濃度は正常以下だったが、血清TSH濃度は84%のイヌが上昇していた。治療前の値と比較し全治療時間で血清T4、TSH濃度は、それぞれ上昇と低下を示した。レボチロキシンの投与量は、11頭で増量し、3頭で減量し、それら補正の多くは、2回目、または3回目の評価時になされた。治療開始時の平均投与量は0.0199mg/kgだったが、最終評価時0.0245mg/kgだった。
全頭1日1回のみの投与だった。慢性下痢の1頭は、非常に高用量(0.076mg/kg)を必要とした。レボチロキシンの増量を必要としたイヌの11サンプルのうち、8サンプルは血清T4濃度が35nmol/l以下だったが、補正を必要としなかったイヌの59サンプルのうち4サンプルしか血清T4が35nmol/l以下を示さなかった。治療に対する反応が不十分だった2頭のみ血清T4は正常範囲より低かった(14.9nmol/l以下)。
血清TSH濃度中央値は、治療前の中央値1.52mg/mlから、補正が必要なイヌの投与量を補正する直前の0.15mg/mlに低下した。補正が必要だったイヌの11頭中4頭の血清TSH濃度は0.33mg/dl以上だったが、用量変更を必要としなかったイヌの59サンプルのうち4つのみがこの範囲以上だった。補正を必要とした3頭のイヌの血清TSH濃度は、0.69mg/ml以下の正常範囲以上だった。
減量を必要とした3頭のうち2頭の血清T4濃度は100nmol/l以上で、多飲や活動亢進などの甲状腺機能亢進症の軽度臨床症状を呈した。治療中甲状腺機能低下症の臨床症状が発現した他の1頭は、服用後血清T4濃度が49nmol/lだった。甲状腺機能亢進症の臨床症状は、3頭とも減量後解消した。血清T4濃度が約100nmol/lで甲状腺機能亢進症の臨床症状を示さなかった2頭は、減量しなかった。
最終的に全頭レボチロキシン投与に対する臨床反応は良い、または非常に良かった。通常、治療開始から3-4日以内に、態度や活動性の改善が認められた。各評価時に体重は減り、3回目の観察時の平均減量は8.7%だった。一般に2回目の評価時に、皮膚異常の改善が見られた。皮毛喪失の増加が最初に頻繁に見られ、その後再発毛した。29-70日の評価で正常な皮毛となったイヌもいれば、最終71-112日の検査でいまだ異常を呈するイヌもいた。血清コレステロールやトリグリセリド濃度は、治療前に比べ各評価時に有意に低下した。赤血球数やヘモグロビンは、以前と比べ各評価時有意に増加した。

結論:レボチロキシン1日1回の投与は、イヌ甲状腺機能低下症の効果的な治療で、治療に対し良い反応を示したイヌの、服用後6時間目の血清T4濃度は約55nmol/lだった。

臨床への影響

この研究は、レボチロキシン1日1回投与が、3ヶ月の間に適切に臨床症状の急速な改善、または解消をもたらすことを示している。しかし、約50%の症例で用量補正が必要となり、多くは1日1回0.025mg/kgの用量に適度に増量させる必要がある。
治療は適切かどうかは臨床反応で判定し、全頭、臨床上正常になる十分な添加を受けた。ヒトで、甲状腺機能低下症のレボチロキシン投与は、微妙な甲状腺機能亢進症や低下症を避けるため、正常血清TSH濃度を維持するように補正する。この研究のイヌでは、TSH濃度をモニタリングでほとんど役に立たないことが示されたため、甲状腺の状態の他の臨床、または生化学マーカーが有効となるだろう。残念なことにこの研究で、最大の努力にもかかわらず確認されたものはなかった。(Sato訳)
■甲状腺の触診での大きさと血清チロキシン濃度
Palpable Size of the Thyroid and Serum Thyroxine Concentration
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:15-16 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Norsworthy GD, Adams VJ, McElhaney MR, et al. J Fel Med Surg 2002;4:139-143

イントロダクション

背景:正常な甲状腺機能試験結果の老齢ネコで、甲状腺部分に触知可能なmassがあることがある。それらが、将来甲状腺機能亢進症に進行する変化か、病的重要性を持たない偶発所見かは不明である。

目的:この研究の目的は、甲状腺機能が正常なネコと甲状腺機能亢進症のネコで、各ネコの血清T4濃度に対する甲状腺の触診での大きさを関連付けることだった。

サマリー

方法:血清T4濃度を測定し、臨床症状を記録したネコ155頭で、甲状腺の増大を見るため、頚部腹側触診の特別な方法を実施した。回顧的、前向き研究を組み合わせて研究を5年以上行った。
触診法は、首、そして頭部を水平面から45度の角度で、また外側に45度回転させて伸張させた。臨床医はネコの後方に立ち、頭部が左を向いているときは、右の人差し指で気管の右側腹側頚部、喉頭から胸部気管の入り口にかけて触診した。頭部と指の位置をわずかに変化させ4回首の各側を触診した。反対側も同じように繰り返した。
甲状腺の大きさは、任意の測定法によりグレード分けした。触診で甲状腺が触れない場合は0、わずかに触れる場合は1、2.5cm異常の長さがある場合6とした。2から5は、わずかに触れるものから2.5cmまでの大きさを、釣り合わせて当てはめた。1人の試験官により全頭の触診を行った。

結果:血清T4濃度をもとに、132頭は甲状腺正常(正常T4)、23頭は甲状腺機能亢進症(T4上昇)と考えた。甲状腺機能亢進症の22頭(96%)、甲状腺正常ネコの78頭(59%)で触診可能な甲状腺が見つかった。触診可能なネコで、片側性の拡大は72%に見られ、両側性は28%だった。甲状腺正常ネコと甲状腺機能亢進のネコの年齢中央値は、それぞれ12.3歳と13.6歳だった。触診スコアー0-3と4-6のネコで、甲状腺機能亢進症の罹患率を比較したとき、より大きな甲状腺のネコは、有意に甲状腺機能亢進症になっているようだった。甲状腺正常ネコで3以上の触診スコアーを持つネコはいないが、甲状腺機能亢進症のネコの18頭は4-6のスコアーを呈した。2頭の甲状腺機能亢進症のネコには、シンチグラフィーによる胸腔内甲状腺組織を確認した。著者は、高い触診スコアーを示すとき、血清T4濃度の傾向を認めたが、明らかな統計分析を適応しなかった。

結論:甲状腺が正常なネコのかなりの頭数に、触診可能な甲状腺があり、甲状腺機能亢進症のネコは正常なネコよりも大きな甲状腺結節を持つ傾向がある。

臨床への影響

正常ネコの触診可能な甲状腺の高普及率に驚かされる。研究したネコの甲状腺の組織評価なしで、触診スコアー陽性の理由に関する結論を述べるのは困難である。1960sのネコの甲状腺の検死研究で0.5cmに至る嚢胞性濾胞が50%以上の症例に見つかったことが示されているが、単一甲状腺腫(おそらく非機能性)も良く見られた。
その研究の構成はネコの選択に関して不明で、真の甲状腺機能亢進症の罹患率判定は不可能にしている。臨床で経時的に来院するネコの群の評価は、甲状腺増大の本当の普及率を判定しようとするならばより有効なものとなるだろう。
この研究で使用した触診法は、多くの臨床医が使用するものと同じで、注意深い腹側頚部触診が全頭で行われるべきと思い出させるものである。しかし、なぜそのような甲状腺が正常なネコが高率に甲状腺の増大を持つのかは不明である。この集団が一般診療に来院するネコの代表となるならば、甲状腺機能亢進症の罹患率は、この時点で15%と予測され、過去予想されたものよりはるかに高い。(Sato訳)
■ニュージーランドにおける猫の甲状腺機能亢進症の危険因子の多変量解析
Multivariate analysis of risk factors for feline hyperthyroidism in New Zealand.
N Z Vet J. 2005 Feb;53(1):53-8.
Olczak J, Jones BR, Pfeiffer DU, Squires RA, Morris RS, Markwell PJ.

目的:ニュージーランドでの猫の甲状腺機能亢進症の推測される危険因子について症例対照研究を使って調査すること。

方法: ニュージーランドにおいて375頭(125頭の甲状腺機能亢進症の猫、125頭の無作為に選んだ対照猫、125頭の年齢および性が一致した対照猫)の猫のオーナーを含むアンケートベースの症例対照研究が、甲状腺機能亢進症の可能性のある危険因子と猫の発生との関連を調べるために行われた。猫とオーナーの人口統計学、既往歴、猫の屋内あるいは野外の生活環境、および猫の食事に関して1996年12月から1998年2月までのデータが集められた。論理計算回帰式へ向けた段階的なそれぞれの変数と多変量に対する記述的解析、一変量論理計算回帰式を含むさまざまな統計的手法でデータを分析した。

結果: 多変量解析で、罹患しやすい猫は雌 (比率(OR)= 3.3%:95%信頼区間(CI)=1.2-9.0)で、罹患しない無作為対照猫より老齢であることが明らかになった。純粋種の猫が家猫の短毛種と長毛種(OR=0.01; 95% CI=0.001-0.20)より、甲状腺機能亢進症と診断されるリスクはかなり低かった。
多頭飼育では単独飼育に比べ甲状腺機能亢進症は特定されにくかった(OR=0.15; 95% CI=0.05-0.44)。甲状腺機能亢進症の猫は対照猫に比べ主に6.6倍も床で眠ると報告されやすかった(95% CI=1.8-23.9)。規則的にノミ駆除剤を使った寝具を使う猫は、甲状腺機能亢進症のかなり高いリスク (OR=57.6; 95% CI=3.8-->200)をもち、殺虫剤スプレーを規則的に使用している家庭で生活した猫もある程度リスクが上がった(OR=3.3; 95% CI=1.2-9.3)。
水溜まりからの飲水と、堆肥あるいは動物肥料などの有機菜園肥料の定期的な使用との相互作用は、病気と診断されるリスクが5.3倍増加することに関連していた (95% CI=1.1-25.6)。
市販の缶詰めを少なくとも毎日の必要量の半分を食べた猫は、罹患していない猫に比べて2倍甲状腺機能亢進症と診断されやすかった(95% CI=1.1-25.6)。さまざまな風味のする缶詰キャットフードを食べた猫は1つの風味だけの缶詰キャットフードを食べている猫より甲状腺機能亢進症と診断されやすかった(OR=3.8; 95% CI=1.5-9.6)。歯科疾患の存在は甲状腺機能亢進症と診断されるリスクが5.5倍の増加することに関連しており、そしてこの関連は猫の年齢と無関係だった(95% CI=1.7-17.5)。

結論: この研究結果は、いくつかの以前の研究を支持し、拡大したもので、甲状腺機能亢進症の罹患条件においてニュージーランドの猫が多くの点でヨーロッパと北アメリカの猫と同様であることを示した。 雌猫が甲状腺機能亢進症に罹患しやすいという所見は以前に報告された研究と食い違った。
特定された疾病関連の病因が不明瞭なままで残っているので、広く普及している猫の内分泌障害のさらなる研究が望まれる。(Dr.Kawano訳)
■競技調整前と調整後の健康なソリイヌで、甲状腺ホルモン濃度の変化
Alterations in thyroid hormone concentrations in healthy sled dogs before and after athletic conditioning.
Am J Vet Res 65[3]:333-7 2004 Mar
Evason MD, Carr AP, Taylor SM, Waldner CL

目的:健康なソリイヌ集団で、甲状腺ホルモン濃度に競技調整の与える影響を判定する

動物:健康なソリイヌ19頭の成犬

方法:トレーニングを行っていない(すなわちレースのないシーズン)ソリイヌ、そして再度4ヶ月間イヌを可能な最大運動でトレーニングした後、チロキシン(T4)トリヨードサイロニン(T3)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、遊離T4(fT4)、遊離T3(fT3)、T3、T4、チログロブリンに対し検出された自己抗体の血清濃度を測定した。

結果:トレーニングをやめているイヌの濃度に比べ、トレーニング状況のピークのイヌでT4、fT4濃度の有意な低下とTSH濃度の有意な上昇が認められた。トレーニング状況がピークのときの19頭中11頭、19頭中8頭のイヌのT4、fT4血清濃度は、確立された正常範囲以下だった。トレーニングをやめているイヌ19頭中9頭のfT4濃度は、正常範囲以上だった。

結論と臨床関連:健康なソリイヌで、トレーニング状況下にない犬と比較し、トレーニングがピークのときT4、fT4濃度は低下し、TSH血清濃度は上昇した。それらのイヌの多くは、甲状腺ホルモン濃度が正常範囲内のままだったが、正常範囲以外の値は、甲状腺の状態を間違って評価する可能性が出てくる。競技ソリイヌの甲状腺ホルモン濃度に、持久力トレーニングはかなり影響する。(Sato訳)
■ネコで甲状腺機能亢進症の治療で、経皮超音波ガイド下高周波熱アブレーション
Percutaneous Ultrasound-Guided Radiofrequency Heat Ablation for Treatment of Hyperthyroidism in Cats
J Am Vet Med Assoc 223[11]:1602-1607 Dec 1'03 Prospective Study 26 Refs
Kevin F. Mallery, DVM; Rachel E. Pollard, DVM, DACVR; Richard W. Nelson, DVM, DACVIM; William J. Hornof, DVM, MS, DACVR; Edward C. Feldman, DVM, DACVIM *

目的:ネコの甲状腺機能亢進症の治療で、経皮高周波熱アブレーションの効果と安全性を判定すること

構成:前向き研究

動物:9頭のネコ

方法:臨床症状、高血清総チロキシン(TT4)と遊離チロキシン(fT4)濃度により甲状腺機能亢進症を診断した。1つまたは2つの機能亢進頚部甲状腺結節を、シンチグラム造影と超音波検査で検出した。もし異常な甲状腺葉が1つならば、熱アブレーションをその葉に行った。2つならば、より長い葉に適用した。全部で9頭のネコに14回熱アブレーションを実施した。臨床症状、血清TT4、fT4、カルシウム濃度を処置後2日間毎日、最初の1ヶ月毎週、その後月1回モニターした。喉頭機能を評価し、頚部超音波検査、甲状腺シンチグラム造影も行った。甲状腺機能が正常ならば、熱アブレーション後9ヶ月間、または甲状腺機能亢進症の再発のため、オーナーが代替療法を選択するまで、モニターを持続した。

結果:血清TT4、fT4濃度は、処置後2日間以内に全14回(14回のうち10回は正常範囲以内)の熱アブレーション処置で一次的に低下した。ネコは0-18ヶ月(平均4ヶ月間)、甲状腺機能を正常に保った。全頭甲状腺機能亢進症が再発した。副作用には、一時的なホーナー症候群(2頭)、臨床症状がない喉頭麻痺(1頭)が見られた。

結論と臨床関連:ネコの甲状腺機能亢進症の治療としての経皮的熱アブレーションは、一次的には効果的であるが、永続はしない。(Sato訳)
■ネコの嚢胞性甲状腺と上皮小体病変
Cystic Thyroid and Parathyroid Lesions in Cats
J Am Anim Hosp Assoc 39[4]:349-354 Jul-Aug'03 Case Report 25 Refs
Dianne E. Phillips, DVM, BSc; MaryAnn G. Radlinsky, DVM, MS, DACVS; Julie R. Fischer, DVM, DACVIM; David S. Biller, DVM, DACVR

頚部に出現する嚢胞性のマスは珍しい。ネコで、唾液腺粘液嚢胞、鰓溝性嚢胞、甲状舌管嚢胞が報告されている。甲状腺、または上皮小体、その両方から出現する膿疱性結節はほとんどなく、付随甲状腺機能亢進、または上皮小体機能亢進の有無により機能性、非機能性に分類されるだろう。この一連の症例報告は、嚢胞性甲状腺、上皮小体、またはその両方が存在する4頭のネコを報告する。
症例no.1は16歳で、避妊済みメスの家ネコ短毛種(DSH)で食欲不振を体重減少を呈していた。一般身体検査で2.5×1.0cmの無痛性頚部腹側マスを認めた。症例no.2は15歳去勢済みオスのDSHで、液体に満ちている頚部腹側マスに関係する間歇的嚥下困難、吐き戻しで紹介されてきた。症例no.3は26歳甲状腺機能亢進症と診断された避妊済みDSHで、右甲状腺部位に2cmの無痛性皮下マスが存在した。症例no.4は、15歳避妊済みDSHで3ヶ月間にわたる頚部腹側の腫れの評価で紹介されてきた。
CBC、ホルモン(例えば、チロキシン、上皮小体ホルモン)評価を含む血清生化学検査、頚部腹側超音波検査で、病変の位置、基礎機能性疾患の評価を行い4頭中3頭で確認された。細胞学的評価のため、4頭中3頭でFNAにより嚢胞中の液体を採取し、1頭で嚢胞液のホルモン分析を行い上皮小体機能亢進症と確定診断が下された。甲状腺/上皮小体部分の外科的探査を4頭中3頭で実施し、診断(甲状腺嚢胞、甲状腺嚢胞腺腫、上皮小体腺癌)、治療的マスの外科的切除を行い、全3頭とも臨床症状の長期解消をもたらした。No.3で甲状腺嚢腺腫と上皮小体結節が検死で確認された。
著者は、甲状腺嚢胞と嚢胞性上皮小体マスの早期識別が重要で、機能亢進性の上皮小体病変は早期外科的介入が必要であるのに対し、機能的嚢胞性甲状腺病変は内科的に管理できるものもある。追跡調査できたこの報告の症例で、長期予後は嚢胞性病変の外科的切除後大変良かった。(Sato訳)
■イヌの心機能に対する甲状腺機能低下症の影響
[The effect of hypothyroidism on cardiac function in dogs]
Dtsch Tierarztl Wochenschr 110[6]:231-9 2003 Jun
Stephan I, Nolte I, Hoppen HO

甲状腺ホルモンは心臓への直接、間接的影響を持つ。そして甲状腺機能低下に関係する左室機能抑制の可能性がある。この文献は、甲状腺機能低下症のイヌ10頭の心臓所見(聴診、心電図、心エコー検査)を述べる。治療前の心電図検査で、低心拍数、R-波の低下、徐脈性不整脈(第1度-2度房室ブロック)が見つかった。ほとんどのイヌの心エコー検査は、収縮性の減少と左室壁厚の減少を示した。7頭のイヌにレボチロキシンを補充した後再検査した。治療の効果は、心電図検査で心拍数の増加、R-波の増高、徐脈性不整脈を消失させた。心エコー検査で、収縮性の増加と左室壁の厚さが増したことを示した。(Sato訳)
■甲状腺機能に対するトリメトプリム-スルファメトキサゾールの影響
Trimethoprim-Sulfamethoxazole Effects on Thyroid Function
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:9-10 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Williamson NL, Frank LA, Hnilica KA. J Am Vet Med Assoc 2002;221:802-806

イントロダクション

背景:強化スルホンアミドをイヌに投与したとき、おそらく甲状腺ホルモン合成低下の結果として、甲状腺ホルモン分泌低下が認められている。長期間の投与や比較的高用量の投与で、その抑制効果は甲状腺機能低下症の臨床症状を起こすに足りる。甲状腺機能の変化は、スルホンアミドの投与中止後、可逆的である。
目的:この研究目的は、血清T4とイヌ甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)濃度に対するトリメトプリム-スルファメトキサゾールの影響と、その混合薬剤の投与中止後、回復に必要な期間を調査すること。

サマリー

方法:いろいろな犬種の7頭の健康な飼育犬で、血清T4とc-TSH濃度測定により甲状腺が正常であると判定した。血清T4が正常以下、TSHが正常以上、または好中球数が3000/μlに落ち込むまで、全てのイヌにトリメトプリム-スルファメトキサゾールを1日2回26.5-31.3mg/kgで経口投与した。血清T4とc-TSH濃度、全血球数算出、シルマー涙試験の判定を、全頭6週間毎週行った。

結果:トリメトプリム-スルファメトキサゾール投与は、6頭で3週間後に中止した。3頭は血清T4濃度の低下とc-TSH濃度上昇が認められ、1頭は好中球減少、2頭はそれら両方が認められた。1頭は、血清T4、c-TSH濃度、好中球数に識別可能な変化がなく、6週間の研究期間中トリメトプリム-スルファメトキサゾールを投与した。投与中2週目(10.9ng/ml)、3週目(4.7ng/ml)に平均血清T4濃度は有意に低下した。また、投与1週間後、3頭で血清T4濃度が正常範囲以下となった。投与中2週目、3週目に血清c-TSH濃度は有意に上昇した。血清c-TSH濃度は2週目に1頭のみ上昇したが、3週目には5頭が正常範囲以上となった。3週目に投与を中止した6頭で、薬剤中止後1週間の4週目に5頭の血清T4濃度は正常範囲内となった。4週目に血清T4濃度が正常範囲以下の1頭は、5週目に正常に戻った。血清c-TSH濃度は、投与中止後1週、2週で高濃度の5頭は、2週、4週目に正常となった。1頭の血清c-TSH濃度は、中止後4週目まで高値を維持した。投与による白血球数に対する有意な影響はなかった。しかし、3週目の平均好中球数は有意に低下した。シルマー涙試験結果は、3週目の1頭の片眼を除いて、全頭全時間正常だった。

結論:トリメトプリム-スルファメトキサゾールの高用量投与は、甲状腺機能の急速抑制、または好中球数の減少、またはその両方を起こす。

臨床への影響

スルホンアミドの抗甲状腺効果は、急速で、一貫して血清T4濃度を正常範囲以下に低下させる。この研究で使用した投与量は、皮膚感染に推奨されていることもあり、トリメトプリム-スルホンアミドメーカーの犬に対する推量投与量の2倍である。過去の報告では、甲状腺機能低下症の臨床症状や、甲状腺機能検査の異常は、スルホンアミド投与中止後解消すると発表している。甲状腺機能検査結果の解釈は、高用量のスルホンアミドを投与されている全てのイヌで変化すると予測できる。この研究で回復は急速であるが、より長期投与は、治療中止後も抑制する期間が延びるかもしれない。(Sato訳)

甲状腺機能に対するエトドラックの影響
Etodolac Effects on Thyroid Function
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:7-8 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Panciera DL, Johnston SA. Am J Vet Res 2002;63:1492-1495

イントロダクション

背景:新世代の非ステロイド性抗炎症薬は、アメリカでイヌでの使用が最近認可されている。それらの中にシクロオキシゲナーゼ(COX)-1、-2阻害剤エトドラック(EtogesicR)がある。その薬剤は、胃腸管への副作用が比較的少ない強力な抗炎症剤である。エトドラックは血漿タンパクと結合し、甲状腺ホルモンのような血漿タンパク結合ホルモンに置換することにより、正常範囲、そして甲状腺が正常な患者の遊離T4濃度はそのままだが、血漿タンパク結合ホルモンの削減により総T4濃度が低下するような平衡状態をおこす可能性がある。

目的:この研究目的は、臨床上健康なイヌの甲状腺機能検査や血漿タンパクに対するエトドラック投与の影響を評価することだった。

サマリー

方法:雑種の臨床上正常なイヌ19頭の血液サンプルで、T4、遊離T4、T3、イヌ甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)濃度を、約14mg/kg1日1回経口投与でエトドラック投与前2回にわたり測定した。また投与前に、総血漿タンパク、アルブミン、グロブリン濃度と血清重量オスモル濃度も測定した。エトドラック投与後2週間と4週間目に、以前測定した血清甲状腺機能ホルモン、血漿タンパク、血清重量オスモル濃度を再測定した。
結果:エトドラックの投与は、測定した血清甲状腺ホルモン、c-TSH濃度や血清重量オスモル濃度に有意な変化を起こさなかった。血漿総タンパク、アルブミン、グロブリン濃度は、投与開始後2週間、4週間目に有意に低下した。
結論:エトドラック1ヶ月以内の投与で血漿タンパクの低下は見られたが、甲状腺ホルモン試験結果(T4、遊離T4、T3、c-TSH濃度)は変化しない。

臨床への影響

この研究の結果にもとに、臨床上健康犬へのエトドラック治療的投薬は、血漿タンパクに対するT4、またはT3の結合親和力、または総結合部位に有意な変化をもたらさなかった。循環T4、T3の99%以上は、血漿タンパクの特にアルブミンと結合する。血漿タンパクの低下は重要だが、T4、T3に対する結合部位を有意に減少させるほどのものでは無いようである。残りの血漿タンパクの非結合部位は、軽度なとき低蛋白血症の補正を助けるのかもしれない。胃腸や尿管への薬剤とタンパク喪失から胃腸、または腎臓ダメージのリスクがより大きい老齢、または健康でないイヌにエトドラックの投与、または長期投与は、エトドラックや他の非ステロイド性抗炎症剤により甲状腺ホルモン濃度の有意な変化を起こすかもしれない。近年、そして現在の薬剤使用は、内分泌検査結果の解釈で、常に考慮することが重要である。(Sato訳)

■健康な成猫で血清甲状腺ホルモン濃度に対する食餌中大豆の影響
Effect of dietary soy on serum thyroid hormone concentrations in healthy adult cats.
Am J Vet Res 65[5]:586-91 2004 May
White HL, Freeman LM, Mahony O, Graham PA, Hao Q, Court MH

目的:健康な成猫で、血清甲状腺ホルモン濃度に対する大豆食短期給餌と大豆フリー食給餌の影響を比較する

動物:18頭の健康な成猫

方法:ネコを無作為に振り分け、クロスオーバー構成で大豆食、または大豆フリー食を3ヶ月間給餌した。CBC、血清
生化学プロフィール、甲状腺ホルモン分析、尿中イソフラボン濃度測定などの分析を行った。

結果:主要大豆イソフラボンのゲニステインを、食餌変更前の18頭中10頭の尿で確認した。大豆フリー食との比較で、大豆食のネコは有意に高い総チロキシン濃度(T4)、遊離T4(fT4)濃度を示したが、総トリヨードサイロニン(T3)濃度は変化しなかった。またT3/fT4比も有意に低かった。増加の程度(T4;8%、fT4;14%)は少ないが、それらの変化は、基準参照値上限以上のfT4値を持つネコの比率が増加したため起こった(18頭中1頭から4頭に)。他の測定パラメーターに食餌の有意な影響は見られなかった。

結論と臨床関連:食餌中大豆の短期給餌は、ネコの甲状腺ホルモン恒常性に対し測定可能で適度な影響を持つ。
T3濃度に関しT4の増加は、5’-ヨードチロニン脱ヨウ素酵素の抑制、またはT3クリアランスの向上によるのかもしれない。大豆は、ネコの一般的な食餌要素で、血清T4濃度を増加させる。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症のネコでメチマゾールの1日2回に対し1回投与の効果と安全性
Efficacy and Safety of Once Versus Twice Daily Administration of Methimazole in Cats with Hyperthyroidism
J Am Vet Med Assoc 222[7]:954-958 Apr 1'03 Clinical Trial 18 Refs
Lauren A. Trepanier, DVM, PhD, DACVIM, DACVCP; Stacey B. Hoffman, MS, DVM; Mandy Kroll, DVM, DABVP; Ilona Rodan, DVM, DABVP; Laura Challoner, DVM

目的:甲状腺機能亢進症のネコで、メチマゾールの1日1回投与が、1日2回投与と同様の効果と安全性があるかどうかを判定すること

構成:無作為非盲目臨床試験

動物:新規に甲状腺機能亢進症と診断された40頭のネコ

手順:ネコを、メチマゾール5mgPO1日1回投与(n=25)、または2.5mgPO1日2回投与(n=15)群に無作為に振り分けた。体重、CBC、血清生化学検査、血清チロキシン濃度、尿検査などの完全な身体検査を実施し、血圧を治療開始前と2、4週後に測定した。

結果:治療開始後2週目(3.7vs2.0μg/dl)、4週目(3.2vs1.7μg/dl)で1日1回投与していたネコのほうが、1日2回投与していたネコよりも血清チロキシン濃度が有意に高かった。また、治療から2週間後、甲状腺機能が正常になったネコの割合は、1日2回投与(87%)よりも1日1回投与(54%)のネコのほうが低かった。副作用(主に胃腸の不調や顔面のかゆみ)を起こしたネコの割合は、群間に有意差がなかった。

結論と臨床関連:結果は、甲状腺機能亢進症のネコへのメチマゾールの1日1回投与は、1日2回投与と同様の効果を示さず、ルーチンな使用に推奨できない。(Sato訳)

■甲状腺機能亢進症のネコの経皮的メチマゾール投与
Transdermal Methimazole Treatment in Cats with Hyperthyroidism
J Feline Med Surg 5[2]:77-82 Apr'03 Retrospective Study 16 Refs
* G Hoffmann; SL Marks; J Taboada; GL Hosgood; KJ Wolfsheimer

この研究の目的は、甲状腺機能亢進症のネコに経皮的メチマゾール投与を行い、血清チロキシン濃度と臨床反応を評価し、更なる調査が示されるかどうかを判定することだった。甲状腺機能亢進症のネコ13頭の臨床そして検査データを回顧的に評価した。メチマゾール(Tapazole)を、胸腺由来レシチンオルガノゲル(PLO)ベースの溶媒で作成し、2.5mg/頭24時間ごと-10.0mg/頭12時間ごとの投与範囲で耳介内面に塗布した。治療期間中、平均4.3週間(再評価1)そして再度平均5.4ヶ月(再評価2)で再評価した。
臨床改善が見られ、治療前の濃度(平均:97.5nmol/l、SEM:11.42、SD:39.5)と比較して再評価1(平均39.57nmol/l、SEM:14.4、SD:41.2)、そして再評価2(平均:36.71nmol/l、SEM:13.9、SD:45.56)でチロキシン濃度の有意な低下が見られた。副作用は報告されていなかった。(Sato訳)
■日本の甲状腺機能低下、肥満、健康なイヌの血清でELISAにより検出されたチログロブリン自己抗体の普及率
Prevalence of thyroglobulin autoantibodies detected by enzyme-linked immunosorbent assay of canine serum in hypothyroid, obese and healthy dogs in Japan.
Res Vet Sci 76[2]:129-32 2004 Apr
Lee JY, Uzuka Y, Tanabe S, Sarashina T

チログロビン自己抗体(TgAA)を、甲状腺機能低下(n=19)、肥満(n=28)、臨床的に健康なイヌ(n=52)の血清から市販入手可能の免疫検査キットを使用して検出した。TgAA陽性結果は、甲状腺機能低下の19頭中10頭、肥満犬28頭中1頭、臨床的に健康なイヌ52頭中1頭で得られた。臨床上健康なTgAA陽性犬は低総T(4)、低遊離T(4)、高イヌTSHにより支持される甲状腺機能低下の追加所見があった。犬種で、ゴールデンレトリバーは、甲状腺機能低下(9/19)とTgAA陽性甲状腺機能低下犬(6/10)の頻度が高かった。この研究は、日本のイヌのTgAAの普及率について初めて調査したもので、臨床医の有効な基準になると思われる。(Sato訳)

■ソリイヌの血漿甲状腺ホルモン濃度に対するレースに出る、訓練しないことの影響
Effects of Racing and Nontraining on Plasma Thyroid Hormone Concentrations in Sled Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[2]:226-231 Jan 15'04 Cross-Sectional Study 31 Refs
Justine A. Lee, DVM; Kenneth W Hinchcliff, BVSc, PhD; Richard J. Piercy, VetMB, MS; Karin E. Schmidt, DVM; Stuart Nelson Jr, DVM

目的:ソリイヌの血漿チロキシン(T4)、遊離チロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、チログロブリン自己抗体(TgAA)濃度に対し、レース出場と訓練しないことの影響を判定し、他の犬種に適応される参照範囲と結果を比較すること

構成:横断研究

動物:122頭のソリイヌ

方法:レース前とレース後、またはアラスカのIditarod Trail Sled Dog Raceから離れ、レースから3ヶ月経過しているイヌの血漿甲状腺ホルモン濃度を測定した。

結果:レース前のT4、fT4濃度は、ソリイヌのそれぞれ26%と18%が非ソリイヌの正常範囲以下だった。レース後すぐのソリイヌの92%は、血漿T4濃度が正常範囲以下だった。レース後3ヶ月のソリイヌの25%は、血漿T4濃度が正常範囲以下だった。レース前のイヌと3ヵ月後のイヌから採取したサンプルのT4、fT4、TSH、TgAAに有意差は見られなかった。

結論と臨床関連:血漿T4、fT4、TSH濃度は、長距離ソリイヌレースを走り終えたイヌで低下した。多くの臨床上正常なソリイヌは、非ソリイヌの正常範囲より低い血漿T4、fT4値を示す。我々は、ソリイヌの正常範囲が血漿T4が5.3-40.3nmol/l、血漿fT4が3.0-24.0pmol/l、TSHが8.0-37.0mU/Lと提唱する。(Sato訳)
■猫の胆石症と甲状腺機能亢進症
Cholelithiasis and Hyperthyroidism in a Cat
Sm Anim Clin Endocrinol 12[2]:7 May-Aug'02 Case Report 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM
Elwood CM, White RN, Freeman K, et al. J Fel Med Surg 2001;3:247-252

背景:胆汁の胆石発生素因は、胆嚢運動障害、胆管感染、胆汁酸度や胆汁塩濃度の低下、胆嚢ムチンの増加などが挙げられる。胆石はネコでまれだが、甲状腺機能亢進症は、異常な胆嚢の運動性や胆汁酸度の低下、ビリルビン産出増加を起こしえる事から、胆汁の胆石に対するリスクが増す。

要約:14歳避妊済みの家猫短毛種が、嗜眠、食欲不振、皮毛塑造、多渇多飲の履歴で来院した。身体検査で痩せた体の状態と気管の左1cmの皮下結節が明らかとなった。血清ALP、ALT活性は軽度に上昇した。心電図では脚ブロックを伴う洞性頻脈が見られた。腹部X線検査で胆嚢部分にX線不透過性の多角形の物体が写し出された。超音波検査で、その物体は胆嚢内のエコー源性のものだった。胆嚢のエコーガイド下吸引物は、細菌学的に無菌だった。血清T4濃度と猫トリプシン様免疫反応物質は増加していた(それぞれ206nmol/L;正常範囲19-65nmol/L、132μg/L;正常範囲12-82μg/L)。甲状腺機能亢進症と胆石症の診断が成された。甲状腺摘出と胆嚢切除を実施し、成功した。切除した頚部結節は、顕微鏡的に甲状腺腫と確認された。胆嚢壁にはリンパプラズマ細胞性の炎症が見られた。膵臓には、膵管を取り囲むようなリンパ球の限局性集積が見られた。胆石の分析で、50%が炭酸カルシウム、50%がビリルビンカルシウムで構成されているとわかった。著者は、肝胆汁性疾患、膵臓疾患、甲状腺機能亢進症の併発が胆石症の原因となったと締めくくる。

臨床への影響:猫の甲状腺機能亢進症は、内分泌障害とよく診断される。甲状腺機能亢進症が胆石症の単純な素因ならば、疾患との関連が現在より多くの猫で認められるはずである。今回のケースは、胆石症を引き起こすには、肝胆汁性、膵臓性疾患や餌の影響など第3、または第4の要因を必要とする関係があったのかもしれない。全ての甲状腺機能亢進症の猫は、特に食欲が旺盛ならば胆石症は胆石症の評価を受けていない。(Sato訳)
■甲状腺機能低下症と関連した犬の行動
Canine Behaviors Associated With Hypothyroidism
J Am Anim Hosp Assoc 39[5]:431-434 Sep-Oct'03 Pearls of Veterinary Practice 19 Refs
Bonnie V. Beaver, DVM, MS, DACVB; Lore I. Haug, DVM, MS, DACVB
Dept of Small Animal Medicine and Surgery, CVM, Texas A&M University, College Station, TX 77854-4474

甲状腺機能低下症は、いくつかの異なる体機能と関連した臨床徴候を伴う、相対的によく見られる犬の内分泌障害です。これらの徴候の多くは、不活発、寒冷不耐性、性欲減退、運動不耐性、体重増加などの行動発現です。最近、甲状腺機能低下症と犬の攻撃性との関連の可能性を記述した逸話的報告がありました。これらの状況で、攻撃性は、「不機嫌」な態度となったと述べられている動物で、ただ単に不平を現しているだけかもしれません。この関連の根底基盤は、明らかにされておりませんが、甲状腺機能低下症関連性攻撃は、甲状腺ホルモン補充療法に、よく反応した攻撃性の特異タイプと考慮するべきであります。
獣医医療の逸品において、 Drs. Beaver と Haugは、このユニークな犬の甲状腺機能低下症の症状に関する臨床例を供給するための症例報告を使用しております。彼らは、攻撃性問題、特に成熟した動物でゆっくりと展開している攻撃性を発現しているすべての犬において、甲状腺機能を評価することを推奨し続けております。加えて、犬の甲状腺機能低下症は、行動徴候の多くが(主に精神鈍感と不活発)共有されるように、疑わしい犬の認知機能障害を発現している犬において、鑑別診断を考慮するべきであります。この犬の甲状腺機能低下症診断の簡単な書評は、現在の検査指標と限界なども提供します。(Dr.K訳)
■犬の甲状腺の機能と組織に対し抗痙攣性投与量の臭化カリウムの影響
Effect of Anticonvulsant Dosages of Potassium Bromide on Thyroid Function and Morphology in Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 39[2]:193-202 Mar-Apr'03 Original Article 37 Refs
Lisa C. Paull, DVM; J. Catharine R. Scott- Moncrieff, MA, VetMB, MS, MRCVS, DACVIM, DECVIM; Dennis B. DeNicola, DVM, PhD, DACVP; Nita Glickman, MS, MPH; Kent R. Refsal, DVM, PhD; Larry T: Glickman, VIVID, DrPh, FACE

年令、犬種、併発疾患の状態、一定の薬剤の投与などのいくらかの非甲状腺の要因が、甲状腺機能低下症の診断に影響するかもしれない。臭化カリウムは、てんかんの犬の補助的な抗痙攣療法に良く使用される。一定の動物種の甲状腺機能に影響する事がわかっているが、甲状腺機能に対する長期影響は完全に評価されていない。この研究の目的は、犬の甲状腺機能に臭化カリウムがどういう影響を及ぼすのか、前向きプラセボ-コントロール臨床試験で評価することである。
成犬の実験ハウンドドック10頭(オス4頭、メス6頭)をこの研究に使用した。治療犬には臭化カリウムの初回量(100mg/kg、PO、12時間毎)を2日間投与し、その後維持量(30mg/kg、PO、24時間毎)を180日間投与した。コントロール犬には、同量の蒸留水をプラセボとして投与した。基底総チロキシン(TT4)、遊離チロキシン(平衡透析法によるfT4)、基底甲状腺刺激ホルモン血清濃度を研究期間の間に評価し、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン刺激試験を、研究の始めと終わりに全頭に行った。また研究終了時に全頭の片側甲状腺摘出も実施し、その組織の重量、病理組織学的甲状腺活動類別シェーマをもとに評価した。どの犬にも甲状腺機能低下症の臨床症状や臭素中毒の徴候は見られなかった。研究終了時に2群間のどのパラメーターにも差は見られなかった。全てのときにTT4、fT4の有意な低下が見られたが、それらの変化は、両研究群とも同様だった。この研究全頭に見られたこの低下の原因は不明である。
著者は、臭化カリウムは犬の甲状腺機能や組織に有意な影響を及ぼさないと結論付ける。(Sato訳)
■チロキシン注射で誘発した甲状腺機能亢進症が犬の心血管機能にどう影響するか
Effect of Induced Hyperthyroidism by Thyroxine Injection on Cardiovascular Function in Canine Model
Sm Anim Clin Endocrinol 12[1]:7 Jan-Apr'02 Review Article 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM (Editor) & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM (Assoc. Editor) Sm An Clin Endo

背景:甲状腺機能亢進症は、機能性甲状腺腫瘍の犬や、甲状腺機能低下症の犬の治療で甲状腺ホルモンを過剰投与した犬に起こる。臨床所見は、体重減少、多尿、多渇、食欲増加、活動亢進である。心血管変化は、頻脈、不整脈、高血圧、心筋肥大である。医原性甲状腺機能亢進症の発生率は、一般に低いと考えられており、そのため広い安全マージンがあると思われている。しかし、これは長期間の副作用を十分モニターしていないための誤った仮説であるかもしれない。

要約:7日間6頭の犬に、レボチロキシン0.75mg/kgを静脈投与した。心電図と血圧を投与前と7日後に測定した。7日後の血清T4、T3濃度は、投与前の濃度の約2倍だった。血清犬甲状腺刺激ホルモン濃度は、約70%の有意な減少を見せた。また心拍数、P波の高さと持続時間、QRSの持続時間、R波の高さ、ST区間、T波の高さは減少した。PR間隔とQT間隔の減少も見られた。心収縮期、平均血圧は有意に減少したが、平均値は正常範囲内であった。著者は、レボチロキシンの大量投与後に心血管変化は急速に起こると結論付けた。

臨床とのかかわり:甲状腺機能亢進症で起こる心血管変化は、うっ血性心不全を軽度またはかなり重度に引き起こしえる。急なレボチロキシン(T4)の過剰投与は、頻脈、高血圧、心不整脈の原因となり得る。リオチロキシン(T3)、またはT4とT3の組み合わせにより治療は、動物を急性医原性甲状腺機能亢進症の危険に曝すかもしれない。長期の軽度から中程度のレボチロキシン過剰投与にかかわる、長期間の副作用の調査も必要である。(Sato訳)
■犬の甲状腺機能に対する薬剤の影響
Influence of Various Medications on Canine Thyroid Function
Compend Contin Educ Pract Vet 24[7]:511-522 Jul'02 Review Article 69 Refs
Keven P. Gulikers, DVM, MS & David L. Panciera, DVM, MS, DACVIM

多くの薬剤は甲状腺機能に変化を与え、臨床的甲状腺機能低下症を引き起こすものもある。スルホンアミドは、よく使用される最も強い抗甲状腺薬剤の可能性を秘めており、高用量長期投与で甲状腺機能低下症を起こしえる。グルココルチコイド、フェノバルビタール、クロミプラミンもよく使用され、甲状腺機能テスト結果を変化させ、自然発生の甲状腺機能低下症の誤診を招くかもしれない。NSAIDs、X線造影剤、アミオダロンは、犬の甲状腺機能に変化を及ぼすと分かっている薬剤である。それらの薬剤の投与を受けている甲状腺機能試験結果の解釈は慎重に行うべきである。≪Sato訳≫
■イヌの甲状腺機能低下に関係する状態
Panciera DL.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 2001 Sep;31(5):935-50
Conditions associated with canine hypothyroidism.

イヌの甲状腺機能低下によって引き起こされる臨床症状に関連する文献の注意深い回顧は、甲状腺機能低下と他の状態が関連するいくつかの仮定が、逸話の証明を根拠とすることを示している。皮膚症状は最も多くの甲状腺機能低下症のイヌに見られるが、特定の異常と品種差ははっきりと定義されている。肥満と無気力によって証明される代謝率の減少もまた一般的である。神経学的な症状は一般的ではないが、甲状腺機能低下症のイヌにおいてはっきりとおこる。心臓の異常は一般的であるようにみえるが、それらの臨床的な意義は疑わしい。甲状腺機能低下症のイヌにおこる唯一の血液異常は貧血である。後天的なvon Willebrand's 病 、もしくは他の出血異常であるとの証明はごくわずかである。甲状腺機能低下症に継発する繁殖機能不全はオスイヌにおいてあまり起こることはなく、メスイヌにおいても異常を支持する証拠はない。甲状腺機能低下症に伴う巨大食道、喉頭麻痺、眼の異常、胃腸の機能不全は確立されている。イヌ甲状腺機能低下症の今後の研究は、この一般的な内分泌病の症状と病態生理学の所見のより明白に理解された定説へと変ってゆくであろう。(Dr.Yoshi訳)
■ネコの甲状腺機能亢進症:臨床症状の範囲とカルビマゾール治療の反応
Feline Hyperthyroidism: Spectrum of Clinical Presentations and Response to Carbimazole Therapy
Sm Anim Clin Endocrinol 11[1]:6 Jan-Apr'01 Clinical Study 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS; Dave Panciera, DVM, MS; Carrie Waters, DVM, PhD

背景:甲状腺機能亢進症の内科管理は、外科や放射性ヨー素療法を計画している時でさえ、事実上全ての症例に推奨されます。腎不全がないことを確実にするために、甲状腺機能が正常と確定した後に腎機能を評価するべきです。また内科治療は術前の麻酔リスクを減少させるでしょう。カルビマゾールは、チオンアミドの抗甲状腺薬で、ネコでメチマゾールへの急速な転換を起こします。おそらく、カルビマゾール10mgがメチマゾール約6mgに変換するので、メチマゾールよりも副作用が少ないように思えます。

要約:総T4濃度の上昇を基に甲状腺機能亢進症のネコ25頭で、病歴、身体検査、全血球検査、血清生化学検査の評価を行いました。カルビマゾール5mg、経口1日3回投与の反応を、14頭のネコで13週間モニターしました。症状の履歴は、多食(56%)、体重減少(52%)、多飲多尿(48%)、不安(28%)、食欲欠乏(28%)、嗜眠(20%)、嘔吐(16%)、下痢(8%)、失調(8%)でした。4頭のネコは、日常的なルーチン検査で甲状腺機能亢進症と診断しました。身体検査での異常所見は、触診可能な拡大した甲状腺(60%)、ボディコンディションの悪化(54%)、頻脈(33%)、心雑音(25%)、乾いて粗野な皮毛(8%)でした。血液学的異常は、リンパ球減少、異型赤血球増加、好中球増多でした。血清生化学的異常は、ALTの上昇(59%)、高窒素血症(50%)、高グロブリン血症(23%)、高ナトリウム血症(18%)、高カリウム血症(18%)、高血糖(14%)、血清ALPの症状(14%)でした。血清T4濃度の軽度増加(正常より1.5倍以内)は、50%でしか認められませんでした。カルビマゾール投与開始後、6、13週に14頭中11頭で血清T4濃度が正常以下に減少しました。ほとんどの猫で、臨床症状の改善が見られました。投与後6週間には、甲状腺のマスが触知できなくなりました。副作用は10%のネコで報告されていますが、詳細は分りませんでした。1頭に痒みと顔面の擦過傷が見られましたが、投与を変更する事もなく、局所グルココルチコイド投与で反応を見せました。腎性高窒素血症を伴う3頭で、慢性腎不全の特別でない治療とカルビマゾール投与量の減量で肯定的な反応を見せました。著者は、より少ない臨床的異常を持つネコは、早期発見のために甲状腺機能亢進症を診断され、カルビマゾールは効果的で、安全な治療と結論付けます。

臨床への影響:治療症例数は少ないのですが、この研究でカルビマゾール療法はメチマゾールより少ない副作用を示しています。ヒトの甲状腺機能亢進症の治療後、メチマゾールは甲状腺内で20時間以上高濃度を維持します。そしてカルビマゾール療法では、1日3回より1回、2回で同様の効果が得られるに違いありません。これが副作用の発生を変えるかどうか分りません。13週の治療後、3頭は甲状腺機能更新症のままでした。このようなネコへのカルビマゾール投与量は定まっていませんし、腎不全を併発しているネコでは、投与量を減量させる事も明らかではありません。高窒素血症の高い発生率は、外科的甲状腺摘出や放射性ヨー素療法のようなより恒久的な治療方法の前に、抗甲状腺薬使用の重要性を指摘しています。カルビマゾールのような甲状腺総合抑制剤の投与は、甲状腺マスの実質的な減少をもたらすわけではありません。それで、治療後なぜ、甲状腺が触知できなくなるかは明らかでありません。(Sato訳)

■ヨー素131で甲状腺機能亢進症のネコを治療したときの長期健康と生存予測
C. B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin Endocrinol 11[3]:7 Sep-Dec'01 Retrospective Study 0 Refs; Long-Term Health and Predictors of Survival for Hyperthyroid Cats Treated with Iodine 131

背景:放射性ヨー素投与は、ネコの甲状腺機能亢進症で一番良い治療法と考えられています。95%以上の症例に有効で、再発率が低く安全です。治療後、約10%の症例は血清T4濃度が低くなりますが、小数しか症状を出しません。甲状腺機能亢進症ネコ集団は、老齢で、多くの併発疾患があり、長期予後に影響を及ぼす可能性の要因を認識することは重要です。

要因:甲状腺機能亢進症と診断し、放射性ヨー素治療を行ったネコ231頭の医療記録を回顧的に評価しました。診断は、血清T4またはT3濃度の上昇と、テクネチウム99mナトリウムパーテクネテートと甲状腺の画像化異常放射線核種で下しました。全てのネコに、2.8-8.9mCiヨー素131の静脈投与を行いました。放射線ヨー素投与量は、甲状腺結節の数と大きさや、体重により調節しました。各症例の診断時の年令、症状発現時の年令、性別、種類、体重、併発疾患についての情報を入手しました。併発疾患を、全くない又は最小限、心臓関連(頻脈、不整脈、肥大性心筋症)、心臓腎臓関連、心臓と他の問題、全く別の問題に分類しました。甲状腺機能亢進症の診断時平均年令は13歳でした。平均体重3.6kgで105頭のオスと126頭のメスがいました。生存期間中央値は25ヶ月でした。併発臨床問題が全くない、又は最小限のネコは7%でした。心臓関連問題は43%、心臓と他の主要な問題は38%、心臓と腎臓の問題は5%、他主要な問題は7%の猫に見られました。複数の問題を抱えているネコは40%いました。最終の追跡調査時、69%は1つ以上の主要な問題を抱えていました。29%は併発疾患がない又は最小で、33%は慢性腎不全や糸球体腎炎、12%は癌、3%は胃腸問題、19%は他の疾患でした。甲状腺機能低下症は5頭で見られ、甲状腺機能亢進症は1頭に見られました。最終追跡調査時に25%のネコは生存していました。診断時の年令と性別のみ、生存を有意に予想できるものとなりました。メスはオスより治療後長期間生存する傾向にあり、死亡時の平均年齢は15歳でした。ちょうど死亡時に罹っていた疾患は、腎不全(41%)、癌(26%)、最小の問題のみ(16%)、中枢神経疾患(5%)、胃腸(4%)、心臓(4%)、その他(14%)でした。健康問題の種類、すなわち癌や腎疾患、2つ以上の健康問題の存在は、生存の負の予測値となりました。著者は、この研究で作った生存統計を用いて、放射性ヨー素投与を考えている甲状腺機能亢進症の猫の飼育者により正確な予後を伝える事ができると締めくくります。
臨床への影響:放射性ヨー素投与は、甲状腺機能亢進症の安全で効果的な治療法で、2%は甲状腺機能低下症、1%以下に甲状腺機能亢進症の再発が見られます。高価な治療法なので、生存データがあることで、年令や性別を基に生存の正確な評価を可能にします。例えば、14歳で、オス猫ならば、2年後生存確率が48%予想できますし、メスネコで同年齢ならば61%見込めます。あいにく、診断時にどれくらいの猫が腎関連疾患を患っているかは不明ですが、治療後の死亡前最終評価時にはとても高い発生率(33%)を示します。甲状腺機能亢進症の治療後発生する腎不全は、多くの他の研究でもわかっており、現存腎疾患以前の結果と思われています。たぶん過還流により、甲状腺機能亢進症が腎傷害を引き起こすのか、現存腎不全が単に同時に起こるのかは分っていません。(Sato訳)
■犬の甲状腺機能低下症関連性病態
Panciera DL; Vet Clin North Am Small Anim Pract 31[5]:935-50 2001 Sep 77 Refs; Conditions associated with canine hypothyroidism.

犬の甲状腺機能低下症による臨床徴候に関する文献を注意して再調査してみると、いくつかの仮説は、裏付けに乏しい証拠を元にされた他の病態を、甲状腺機能低下症と関連づけて考えられているということがわかりました。皮膚症状は甲状腺機能低下症の犬の殆どに存在するが、特異的な異常と繁殖変異は明確に定義されなければなりません。
肥満と嗜眠による代謝率の低下もまた普通にみられます。神経症状は一般的でありませんが、甲状腺機能低下症の犬で起こることは明らかです。心臓の異常所見が一般的に見られますが、それらの臨床的意義は疑わしい。甲状腺機能低下症の犬で貧血が起こるという血液学的異常は唯一一致した所見です。後天性フォン・ウィルブランド病や他の出血障害に関する証拠は無視することができます。
甲状腺機能低下症による二次的な雄犬の生殖機能障害が起こるとは考えにくく、雌犬における異常を支持する証拠もありません。甲状腺機能低下症と巨大食道、咽喉頭麻痺、眼球異常、胃腸障害との関連を証明することが必要です。犬の甲状腺機能低下症に対する将来的な研究は、病態の理解と、この一般的な内分泌疾患の発現と病態生理学的発見をさらに明確にして、定説を変えることに役立つかもしれません。(Dr.Shingo訳)

■甲状腺ホルモンの急性過量補充
Camille DeClementi Safrit, VMD; Vet Med 96[6]:424-430 Jun'01 Toxicology Brief 10 Refs; Acute Thyroid Hormone Supplement Overdosage

甲状腺ホルモンの、単発で急な過量は、長期にわたる過量に比べると激しい甲状腺中毒症を生じる事は少ない。急性過量になるような状況では、その臨床徴候はホルモンの生理学的影響の拡大です。
犬と猫において、L-thyroxine(レボサイロキシン)の急性過量は、嘔吐、下痢、活動亢進、高血圧症、嗜眠、頻脈、頻呼吸、呼吸困難、異常な瞳孔の光反射などが生じる可能性があります。最も一般的な症状は軽度~中程度の活動亢進と頻脈であると報告されています。ASPCA APCCのデータベースによると、軽度の活動亢進と頻脈の徴候は、犬でレボサイロキシンを0.2 mg/kgという低用量の経口投与した時に発現しました。
犬におけるレボサイロキシン急性過量の症状は、摂取後1時間~9時間以内に見られます。
L-triiodothyronine(レボトリヨードサイロニン)過量は、T3の即時的な細胞利用能の結果として、レボサイロキシン摂取と比較してみると、臨床徴候はより急速に始まり、効果の持続は短時間であると予想されます。
犬と猫において、甲状腺ホルモンサプリメントの過量投与の治療は、臨床徴候発現の防止と管理に照準を当てたものです。無症候性の患者での嘔吐の誘発は、もしそれが摂取して2時間以内に起こるこのであれば、嘔吐のために配合を禁止する必要はないと思われます。嘔吐の後に活性炭と塩類下剤を与えます。活性炭の多量投与は紹介されていません。ECG、血圧測定、全血球計算、電解質を含む生化学的プロフィール、血清甲状腺ホルモン濃度などを測定し、患者をモニターすることです。処置は支持的、対症的に行います。臨床徴候が管理され、他の根底にある危険因子がなければ、全回復の予後は良い。臨床徴候の回復と血清甲状腺ホルモンが正常に回復するまで、継続治療と経過観察を行うことです。(Dr.Shingo訳)

コメント:ひとつめの文献は甲状腺機能低下症関連病態の最新文献の一つです。参考にしてみてください。
ふたつめはレボサイロキシンの過量投与ですが、これに限らず、他の薬でも投薬量には注意したいものです。
ちなみに、ご存じだと思いますが、レボサイロキシン(T4製剤)の推奨量は「0.02-0.04mg/kg/day」でレボトリヨードサイロニン(T3製剤)は「4-6μg/kg BID」です。

■市販の食餌に高濃度ヨードを添加した時の子犬の甲状腺機能の変化
Castillo VA et al; Vet J 161[1]:80-4 2001 Jan; Changes in thyroid function in puppies fed a high iodine commercial diet.

ブエノスアイレスにある動物クリニック大学で、市販の餌を与えた犬のヨウ素131の摂取量が異常に低い事が注目されました。しかし、8つの異なる市販の餌に含まれる総ヨード量を調べたところ、1日の必要量を越えるヨードが摂取されていることが分かりました。この異例を調査するために、18頭の犬を3つのグループにわけ、それぞれに次のような餌を与えました。
(1)家で作った餌(2)市販の餌(3)家でつくった餌に市販の餌と同等のヨウ化カリウムを補ったもの。
2と3のグループにおけるヨウ素131の摂取量は明らかに減少しており、血清T4およびFT4に関しても同様に減少していました。ところが、ヨードの尿中排泄量および血清中の甲状腺刺激ホルモン(TSH)は増加していました。甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)-TSHテストでは、グループ2の犬では増加反応を示しました。一方、TRH-T4テストでは、グループ2、3の両方で抑制されました。その結果から、アルゼンチンのいくつかの市販の餌の中には過剰な量のヨードを含むものがあり、明らかな甲状腺機能障害や甲状腺機能低下症を起こす原因となっていることがわかりました。(Dr.Shingo訳)

■リンパ球性甲状腺炎
Graham PA et al; Vet Clin North Am Small Anim Pract 31[5]:915-33, vi-vii 2001 Sep 56 Refs; Lymphocytic thyroiditis.

犬におけるリンパ球性甲状腺炎は、機能的甲状腺機能低下症を誘発しうる状態です。犬の甲状腺機能低下症の50%以上は、リンパ球性甲状腺炎と関連があります。ヒトと実験的事例での証拠から、それは免疫調節機能が欠損した病気であると言われています。しかし、犬で自然発症しているこの病気の分子学的病因の特異的研究はいまだに成果がでていません。現在の段階では、研究されている種で、この病気は遺伝的なものであり、もし発症すればゆっくりと甲状腺機能低下症に進行していくことがわかっています。犬における無症状性の甲状腺炎から甲状腺機能低下症に進行する影響因子はまだ明らかにされていません。しかし、他の種においては、過剰なヨードの摂取は重要な要因であることがわかっています。(Dr.Shingo訳)

コメント: 直接的に皮膚病に関係した文献ではありませんが、ヨードと甲状腺機能低下症の関連に注目してみました。1つめはアルゼンチンの文献でしたが、食餌に含まれる過剰なヨードが甲状腺機能に影響を及ぼすというものです。日本でも同様な事例があるのかどうかわかりませんが、甲状腺機能低下症に限らず、その他の内分泌疾患動物における食餌管理は重要ですね。次回も甲状腺機能低下症(関連病態と甲状腺ホルモンの過量投与)に関する特集です。