■卵巣子宮摘出術を行う犬において酸化ストレスとバイタルパラメーターに対するメデトミジン-ブトルファノールとメデトミジン-ブプレノルフィンの影響
Effects of Medetomidine-Butorphanol and Medetomidine-Buprenorphine on Oxidative Stress and Vital Parameters in Dogs Undergoing Ovariohysterectomy
Animals (Basel). 2024 Apr 30;14(9):1349.
doi: 10.3390/ani14091349.
Evelina Burbaitė , Sandra Čechovičienė , Ieva Sarapinienė , Birutė Karvelienė , Vita Riškevičienė , Gintaras Daunoras , Dalia Juodžentė
酸化ストレス(OS)は、酸素を含むフリーラジカルとそれらの除去の間の不均衡により起こる。全身麻酔は活性酸素の酸性を増加させ、ゆえに酸化ストレスを引き起こす。
我々の目的は、卵巣子宮摘出術(OHE)を行う犬において、酸化ストレスと心肺パラメーターに対し、メデトミジン-ブトルファノール(MEDBUT)とメデトミジン-ブプレノルフィン(MEDBUP)の影響を判定することだった。
10頭の健康なメス犬を無作為に2群に振り分けた:MEDBUT群(n=5)はメデトミジンとブトルファノールを投与し、MEDBUP群(n=5)はメデトミジンとブプレノルフィンを投与した。OSは、5つの異なるタイムポイント(麻酔薬投与から術後2時間まで)の間に総抗酸化能(TAS)、総酸化能(TOS)、酸化ストレス指数(OSI)を測定することで評価した。観察されたバイタル心肺パラメーターには、心拍数(HR)、呼吸数(fR)、非侵襲性収縮期(SAP)および拡張期(DAP)動脈血圧、酸素飽和度(SpO2)、終末期CO2(EtCO2)、体温(BT)が含まれた。
心肺パラメーターは、MEDBUTで鎮静をかけた犬において有意に大きな程度で変化した(p<0.05)。
研究を通し、メデトミジン-ブトルファノールの投与は、OSパラメーターを増加させる確率が高かったが、メデトミジン-ブプレノルフィンは、酸化ストレスのレベルの低下を示した。(Sato訳)
■選択的不妊手術後の犬の尿細管傷害のエビデンス
Evidence of renal tubular injury in canine patients after elective desexing
Aust Vet J. 2024 Oct 25.
doi: 10.1111/avj.13385. Online ahead of print.
Francesca G Male , Christopher T Quinn
目的:アメリカ麻酔学会(SA)グレードIの選択的不妊手術を行った犬で、尿の顕微鏡検査を用い、周術期急性腎傷害(AKI)の頻度を調査し、AKI発症のリスクに影響する術前および術中因子を評価した。
デザイン:2020年9月から2020年10月の間に行った前向き観察臨床研究
場所:大学教育病院
動物:ASA Iと分類され、選択的不妊手術を行う5か月から5歳のメス犬32頭とオス犬4頭
方法:腎臓尿細管傷害(RTI)のマーカーを確認するため、術前と術後20-24hに尿検査を実施した(特に沈渣分析で顆粒および腎尿細管上皮細胞(RTEC)円柱の有無)。犬は不妊手術プログラムの一部として完全な身体検査と、尿比重(USG)測定、PCV、総血漿タンパク、血清クレアチニン(sCr)を含む術前評価を実施した。麻酔記録は術中の低血圧(どのような持続期間でも平均動脈圧(MAP)<60mmHgと定義した)の全てのエビデンスに対し調査した。MAPは間接オシロメトリック法で測定した。解析に対し、犬は罹患および非罹患群に細分類した(罹患犬は術後に顆粒およびRTEC円柱が増加)。その後にカテゴリー的および比較分析は、円柱増加と術前、術中および術後変数との関係を確認するため、群間で実施した。
結果:RTIの頻度が5.6%と確認した。これは、円柱と、低血圧エピソードと総持続時間(p=0.027)と回数(p=0.016)との有意な関係を伴った。
結論:RTIは、選択的不妊手術を行うASA Iの動物患者において、麻酔で考慮すべき事柄の1つである。低血圧エピソードの持続時間および回数とRTIの頻度との関係の認知は、動物患者で低血圧の早期検出と迅速で効果的な介入の重要性を強調する。(Sato訳)
■麻酔下の犬の末梢酸素飽和度の評価に対する透過型パルスオキシメーターとヒトのスマートウォッチの比較
Comparison of human smartwatch and transmittance pulse oximetry for evaluating peripheral oxygen saturation in anesthetized dogs
Iran J Vet Res. 2024;25(2):166-169.
doi: 10.22099/IJVR.2024.47628.6884.
M G Senocak , S Okur , U Ersoz , L E Yanmaz , Y Kocaman , F Turgut , A G Bedir , O T Orhun
背景:パルスオキシメトリーは、麻酔中の動物のモニタリングに有益なツールで、酸素投与療法の妥当性を評価する
目的:麻酔下の犬でGarmin Fenix 5X plus (GF5Xp)スマートウォッチと透過型パルスオキシメーター(TPO)により得たパルスオキシメーターの読みを比較する
方法:去勢のために麻酔を必要とする12頭の臨床犬を、この研究に前向きに登録した。デクスメデトミジン5μg/kgの筋肉内注射で前処置を行った。麻酔はプロポフォールの静脈内投与で導入し、セボフルランで維持した。TPO(238目盛り)を用い舌から得た動脈ヘモグロビン酸素飽和度(SpO2)の読みを、GF5Xpスマートウエアラブルデバイス(238目盛り)を用い脛骨外側から得た測定値と比較した。
この比較は、方法間の差(%)はそれらの平均SpO2(ゴールドスタンダード-デバイス)に対し計画したBland-Altman plotで実施し、一致の限界は、平均±1.96倍標準偏差として表した。
結果:犬のSpO2レベルは、TPOで得られた読みと比較して、GF5Xpで過大評価され、-0.3%のバイアス(95%CI:-3.1%-2.5%)だった。
結論:GF5Xpは犬のTPOと置き換えることができるかもしれない。覚醒している犬や屋外の犬で、生理学的範囲の精度を確認するための、今後の研究が必要である。(Sato訳)
■健康な犬においてメデトミジンの鎮静効果を逆転させるアチパメゾールの鼻腔内噴霧あるいは滴下と筋肉内注射の比較
Comparison of intranasal atipamezole by atomization or drops with intramuscular injection for reversing sedative effects of medetomidine in healthy dogs
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2024 Nov 18.
doi: 10.1111/vec.13439. Online ahead of print.
Majid Jafarbeglou , Mehdi Marjani , Mohammadreza Oghbaei , Mohammadreza Paryani , Reza Bakhshi-Khanghah
目的:健康犬におけるメデトミジン誘発の鎮静を逆転するため、アチパメゾールの鼻腔内(IN)噴霧、IN滴下、IM注射の効果を判定し、比較する
デザイン:前向き無作為化盲検研究
場所:大学教育病院
動物:最小の診断あるいは治療処置に対し鎮静が必要な、平均体重29.9±5.6kg(平均±SD)の雑種のシェルター所有犬40頭
介入:メデトミジン投与(40μg/kg)後20分で、ドッグハンドラーがアチパメゾールを200μg/kgでIN噴霧(ATI-INA、n=10)、IN滴下(ATI-IND、n=10)、IM注射(ATI-IM、n=10)により投与した。コントロール群(n=10)にはアチパメゾールを投与しなかった。
測定値と主要結果:アチパメゾール投与の容易さを評価した。鎮静スコア、心拍数(HR)、呼吸数(RR)、血圧(BP)をメデトミジン投与前(T0)、アチパメゾール投与前(T20)、アチパメゾール投与後の複数の間隔で記録した。
ATI-IMの回復が最も速く、続いてATI-INA、ATI-INDが最も遅かった。メデトミジンの不都合な心血管の影響は完全に軽減することはなかった。ATI-IMは、最初HRの回復を示し、続いて減少した。両IN群のHRは、ATI-IMに比べ、よりゆっくり増加したが、その後の低下は観察されなかった。ATI-IMは一時的なBPの低下を起こしたが、正常血圧を維持した。BPの段階的な低下はIN群で認められた。T50 時、全てのアチパメゾール群のRRは、コントロールとは異なり、preアチパメゾール値とくらべてATI-IM犬において有意なRRの増加が観察された。副作用は観察されなかった。
結論:アチパメゾールの全ての経路の投与は、メデトミジン誘発の鎮静を効果的に逆転し、ATI-IMが最も速かった。INルートはハンドラーが犬に投与することが簡単で、偶発的な薬剤暴露のケースで実行可能な代替法となる(特に病院の外部で)。(Sato訳)
■帝王切開を行う猫においてアルファキサロンあるいはプロポフォールによる麻酔導入の回顧的評価
Retrospective evaluation of the induction of anaesthesia with alfaxalone or propofol in cats undergoing caesarean section
J Feline Med Surg. 2024 Nov;26(11):1098612X241275270.
doi: 10.1177/1098612X241275270.
Carlotta Lambertini , Giulia Ballotta , Marco Cunto , Ida Carlotta Iovine , Francesca Spaccini , Monika Joechler , Daniele Zambelli , Noemi Romagnoli
目的:犬でいくつかの帝王切開に対する麻酔プロトコールが述べられているが、帝王切開を行う猫における麻酔学者の研究はない。この研究の目的は、プロポフォールあるいはアルファキサロンを麻酔導入で投与し、全身麻酔の維持をイソフルランで行い、緊急帝王切開を行った母猫から生まれた子猫の生存力と結果を評価することだった。
方法:この回顧的研究において、2014年1月から2022年12月の間にボローニャ大学獣医教育病院で、難産のために緊急帝王切開を行った全ての猫を分析した。母猫は、プロポフォール2-6mg/kg IV(P群)あるいはアルファキサロン1-3mg/kg IV(A群)を緩徐に投与し、全身麻酔はイソフルランで維持した。全ての子猫の生存性を出生時および24h後に評価し、また、出生時の子猫の心拍数、呼吸数、粘膜の色を評価した。
結果:この研究に含まれた14頭のうち、全身麻酔の導入に対し、8頭はアルファキサロン(A群)、6頭はプロポフォール(P群)を投与された。合計50頭の子猫が帝王切開で生まれた:A群は30頭、P群は20頭の子猫。出生時の全体の子猫の生存率は90%だった:A群は96.7%(29/30)、P群は80%(16/20)。24h生存率は、A群で93.1%、P群で87.5%だった。
結論と関連性:この研究の結果から、帝王切開を行う猫において、全身麻酔の導入に対しアルファキサロン、プロポフォール共に実行可能であることが証明された。(Sato訳)
■2つの異なる低用量のデクスメデトミジンを使用した犬の全身麻酔からの覚醒の質を評価する
Evaluation of the Quality of Recovery from General Anesthesia in Dogs with Two Different Low Doses of Dexmedetomidine
Animals (Basel). 2024 May 5;14(9):1383.
doi: 10.3390/ani14091383.
Chiara Di Franco , Irene Nocera , Pierre Melanie , Angela Briganti
この研究の目的は、犬に2つの低用量のデクスメデトミジンを投与し、全身麻酔からの覚醒の質を評価することだった。
この盲検無作為化臨床試験に対し、診断的処置あるいは選択的手術(避妊/去勢)のために全身麻酔を行う30頭の犬を含めた。
犬を無作為に3群に振り分け、麻酔終了時にデクスメデトミジン1μg/kg IVボーラス投与(D1)、デクスメデトミジン0.5μg/kgのボーラス投与(D0.5)、NaClのボーラス投与を全て3群に合計0.5mLの液に調整して投与した。ボーラス投与後、麻酔医は、5分ごとに心拍数、収縮期および平均血圧、呼吸数、酸素飽和度を測定することで犬をモニターした。覚醒の質も、4つの異なるスケールを用いることで評価した。抜管時間、頭を持ち上げるまでの時間、起立までの時間も記録した。
生理食塩水投与と比較し、デクスメデトミジンを投与された2群は、より良く覚醒し、譫妄の発生も低かった。房室ブロックの存在が低いNaClと比較し、D1およびD0.5群の心拍数は低く、収縮期圧はより高かった。D1(17±6分)の抜管時間は、D0.5(10±4分)やNaCl(8±3分)と比べて有意に長かった(p<0.0001);D1(25±10分)の頭を持ち上げるまでの時間は、NaCl群(11±5分)よりも有意に長かった(p=0.0023)が、D0.5(18±9分)ではそうではなかった。3群の起立までの時間に有意差は見つからなかった(D1 50±18分、D0.5 39±22分、NaCl 28±17分)。
覚醒段階中の0.5μg/kgあるいは1μg/kg IVでのデクスメデトミジンのボーラス予防的投与は、全身麻酔を行った犬の覚醒の質を改善する。(Sato訳)
■犬の導入中のプロポフォールあるいはアルファキサロンの血行動態効果の比較
Comparison of hemodynamic effects of propofol or alfaxalone during induction in dogs
Front Vet Sci. 2024 Sep 11:11:1442670.
doi: 10.3389/fvets.2024.1442670. eCollection 2024.
Diego Sarotti , Paolo Franci , Stefano Oricco , Roberto Rabozzi , Elena Lardone
この無作為化前向き臨床試験で、犬の麻酔導入に対するプロポフォールとアルファキサロンの血行動態効果を比較した。
個人の二次診療施設で種々の処置を行う31頭の健康な犬に、アセプロマジン(0.015mg/kg)とメタドン(0.15mg/kg)の筋肉内注射で前処置を行った。その後、導入にプロポフォール5mg/kgを30秒以上かけて投与し、25mg/kg/hで維持(P群)、あるいは導入にアルファキサロン2mg/kgを30秒以上かけて投与し、10mg/kg/hの持続定量点滴を行った(A群)。
心拍数(HR)、平均動脈圧(MAP)、経胸腔心エコー検査による動脈血流の速度時間積分値(VTI)を、麻酔導入前と180秒まで15秒ごとに測定した。挿管に対して不十分な麻酔の犬は、血行動態評価から除外した。低血圧(60mmHg以下の全てのMAP値)の事象も記録した。統計学的解析は、必要に応じてANOVA for repeated measures、two-way repeated measures ANOVA、paired t-tests、Wilcoxon signed rank-testを利用した。有意はp<0.05と設定した。
P群の2頭(2/14)、A群の3頭(3/17)は、相関に麻酔が浅すぎたので研究から除外した。処置Pは、導入期間中45秒から75秒の間のMAPが有意に減少し、HR、VTI、VTI x HRに有意な変化はなかった。処置Aは、60秒から105秒の間にHPが増加し、150秒から180秒の間にVTIが低下した。群間の解析では、MAP(p=0.12)、HR(p=0.10)、VTI(p=0.22)、VTI x HR(p=0.74)にいずれの違いも示されなかった。導入中、P群の3/12頭(25%)、A群の1/14頭(8%)に低血圧が検出された。
健康な前処置を行った犬において、プロポフォールとアルファキサロンの導入は、同様の血行動態変動を起こす。プロポフォール導入は、短期のMAPの低下を起こすが、アルファキサロン導入は、心拍数の有意な増加でMAPと心拍出量を保つ。(Sato訳)
■成犬のプロポフォール全静脈麻酔に対する硫酸マグネシウム静脈内注入の効果:無作為化盲検
The effect of intravenous magnesium sulphate infusion on total intravenous anesthesia with propofol in adult dogs: A randomized, blinded trial
Vet Anaesth Analg. 2024 Jul 26:S1467-2987(24)00131-4.
doi: 10.1016/j.vaa.2024.07.007. Online ahead of print.
Gilberto Serighelli Júnior , Felipe Comassetto , Gabriela Borges Conterno , João Victor de Souza , William de Souza Ferreira , Leonardo Bergmann Griebeler , Nilson Oleskovicz
目的:プロポフォールの全静脈麻酔下で機械的に喚起している犬において、硫酸マグネシウム(MgSO4)の持続定量点滴(CRI)の心肺、動脈血ガス、プロポフォール-節約効果を評価する
研究計画:盲検無作為化臨床試験
動物:合計24頭の健康な成犬
方法:犬に前投薬としてアセプロマジン(0.05mg/kg)とモルヒネ(0.5mg/kg)の筋肉内投与を行い、生理食塩水あるいはMgSO4(50mg/kgを15分かけて)とプロポフォール(麻酔導入の効果が出るまで)の静脈内(IV)ボーラス投与を行った。麻酔はIVプロポフォール点滴で維持した(0.3mg/kg/分で開始、必要により調整)。並行して、3つのIV点滴のうち1つを投与した:GS(0.9%NaCl)、GM30(MgSO4、30mg/kg/時)あるいはGM80(MgSO4、80mg/kg/時)。プロポフォール導入および維持用量を記録した。
以下の変数を基礎(T0)、ボーラス投与後(T1)、機械的換気開始後(T5)、処置終了まで15分ごと(T15-T120)で記録した:平均動脈圧、心拍数、末梢酸素飽和度、呼気終末二酸化炭素分圧、体温、血液ガス変数、間接熱量測定、抜管時間。p<0.05の値を有意と考えた。
結果:GSに比べ、プロポフォール導入ボーラス用量はGM30(31.2%、p=0.04)およびGM80(38.9%、p=0.003)で低かった。GM80の維持プロポフォール点滴速度は、16.9%低く(p=0.03)、周術期間中のプロポフォールCRIレスキューが少なく済んだ。GM30およびGM80は、GSよりも抜管時間が早かった(それぞれ46.2%、p=0.002と48.9%、p=0.001)。
結論と臨床的関連:MgSO4の50mg/kgボーラス注入後、MgSO4のCRI(30および80mg/kg/時)は、プロポフォール導入および維持(CRI)必要量を減らし、心肺安定性を維持し、抜管までに必要な時間を低減させた。(Sato訳)
■犬のプロポフォール麻酔中の心エコー検査パラメーターに対するブトルファノール-メデトミジンとブトルファノール-デクスメデトミジンの影響
Effect of Butorphanol-Medetomidine and Butorphanol-Dexmedetomidine on Echocardiographic Parameters during Propofol Anaesthesia in Dogs
Animals (Basel). 2024 May 3;14(9):1379.
doi: 10.3390/ani14091379.
Andrej Bočkay , Carlos Fernando Agudelo , Mária Figurová , Nela Vargová , Alexandra Trbolová
この研究は、犬のプロポフォール麻酔中の心エコー検査パラメーターに対し、ブトルファノール-メデトミジンとブトルファノール-デクスメデトミジンの組み合わせの影響を比較した。
犬を無作為に2群に振り分けた。ブトルファノール-メデトミジン(BM)群において、ブトルファノール(0.2mg/kg)とメデトミジン(15μg/kg)を静脈投与した;ブトルファノール-デクスメデトミジン(BD)群において、ブトルファノール(0.2mg/kg)とデクスメデトミジン(7.5μg/kg)を使用した。麻酔はプロポフォールで導入し、プロポフォールの持続定量点滴で維持した(0.2mg/kg/min)。
心エコー検査パラメーターは、覚醒している犬で評価した(T0)。心エコー検査は、前投薬後10分(T1)、続いて30分(T2)、60分(T3)、90分(T4)で再度実施した。その犬は、麻酔下で診断的処置(エックス線写真、CT)を受けた。
T1時、両群において心拍数および心拍出量の有意な減少を認めた。BMとBD間の一回拍出量に有意差はなかった。ブトルファノール-デクスメデトミジンの投与は、ブトルファノール-メデトミジンにより起こるものと比べ、拡張期の左室内径および左房径の有意な増加を引き起こした。
この研究は、ブトルファノール-メデトミジンとブトルファノール-デクスメデトミジンの組み合わせは、両群において心拍数および心拍出量の同じような減少を引き起こしたことを示した。‘新’弁の逆流は、それらの投与後発生した。(Sato訳)
■スパニッシュ・グレイハウンド犬においてアルファキサロンとブトルファノールの筋肉内注射の鎮静の質と心肺、心エコー、エックス線および心電図の影響
Sedation Quality and Cardiorespiratory, Echocardiographic, Radiographic and Electrocardiographic Effects of Intramuscular Alfaxalone and Butorphanol in Spanish Greyhound Dogs
Animals (Basel). 2023 Sep 16;13(18):2937.
doi: 10.3390/ani13182937.
Julio Fernández Castañer , Setefilla Quirós Carmona , Carmen Martínez Bernal , Juan Morgaz Rodríguez , Rocío Navarrete Calvo , María Del Mar Granados Machuca
Free PMC article
スパニッシュ・グレイハウンド犬において、アルファキサロンとブトルファノールの筋肉内投与後、鎮静の質、心肺変数の変化を評価した。
21頭の成犬を含めた。犬にはアルファキサロン(2mg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)を筋肉内に投与した。鎮静前と薬剤投与30分後、鎮静のスコアリング、心肺パラメーター(血液ガス分析も含む)、心エコー像、胸部エックス線写真、心電図測定を実施した。
中程度の鎮静が観察され、振戦、眼振、聴覚過敏のような副作用を認めた。心拍数、観血的血圧、pH、動脈酸素飽和度、酸素分圧、二酸化炭素分圧の統計学的に有意な変化が見られた。拡張末期用量、拡張期左室径、大動脈および肺動脈フロー、拡張期経僧帽弁フロー、左房/大動脈比を含む心エコー変数とPQ間隔およびQT間隔を含む心電図パラメーターは統計学的に有意な変化を示した。
結論として、健康犬へのアルファキサロンとブトルファノールの筋肉内投与は、軽度の心肺、心エコーおよび心電図変化を伴う中程度の鎮静を起こし、エックス線像上の心臓サイズの変化はなかった。(Sato訳)
■犬のキシラジンの鎮静効果を打ち消すための鼻腔内アチパメゾール投与の評価
Evaluation of the use of intranasal atipamezole to reverse the sedative effects of xylazine in dogs
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Dec 6.
doi: 10.1111/vec.13357. Online ahead of print.
Alex P Focken , Jordan M Woodsworth , Jennifer M Loewen
目的:犬のキシラジンの鎮静効果を打ち消すため、アチパメゾールの鼻腔内投与の能力を評価する
デザイン:前向き概念実証研究
場所:大学研究実験室
動物:6頭の健康なスタッフの飼い犬
介入:犬を1.1mg/kgのキシラジン静脈投与で鎮静をかけた。各犬の鎮静スコアは、3回の測定で鎮静スコアが>13/21に達するまで5分ごとに記録した。達成したら、0.3mg/kgのアチパメゾールを、粘膜噴霧器を使用し、鼻腔内に投与した。鎮静スコアは打消しが達成される(<4/21)まで、5分ごとに記録を続けた。
測定値と主要結果:アチパメゾールの鼻腔内投与後、起立および正常な覚醒までの平均時間は、それぞれ6分30秒と7分20秒だった。
結論:アチパメゾールの鼻腔内投与は、キシラジンの鎮静効果の打ち消しに成功した。この研究の所見は、手術を行う犬や、最適な投与量に対する生物学的利用脳研究におけるキシラジンの暴露を含む種々の場面において、アチパメゾールの鼻腔内投与の潜在的使用に対する今後の対照前向き研究の正当性を提供する。(Sato訳)
■ギリシャの大学病院での犬と猫の麻酔中の死亡率に対する回顧的研究
A Retrospective Study on Canine and Feline Mortality during Anaesthesia at a University Clinic in Greece
Animals (Basel). 2023 Aug 1;13(15):2486.
doi: 10.3390/ani13152486.
Konstantinos Varkoulis , Ioannis Savvas , Tilemachos Anagnostou , George Kazakos , Kiriaki Pavlidou
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ギリシャの大学施設で、犬と猫の集団における麻酔中の死亡率と、潜在的な一因を回顧的コホート研究で調査した。2018年1月1日から2019年12月31日までにテッサロキニのアリストテレス大学の獣医学部で全身麻酔を行った犬1187頭と猫250頭のデータを心停止と死亡率に関して解析した。
犬において、心停止の割合は1.1%、死亡率は0.6%で、猫では2.8%と0.8%だった。健康/軽度疾患(ASA I-II)の犬の死亡率は0.1%、猫では0.5%だった。病気(ASA III-V)の犬の死亡率は2.6%、病気の猫は2.2%だった。
犬において、ASAの状況は心停止および死亡率と正の関連があり、健康/軽度疾患の犬よりも、病気の犬は心停止になる確率が23倍、死亡の確率が24.5倍高かった。心停止および死亡率に関係する他の要因は、麻酔プロトコールと強心薬の使用だった。猫では前処置および強心性の補助は心停止と死亡と関連した。猫の麻酔は、犬よりも周麻酔管理において、リスクがより高く、より大きな警戒を要する。(Sato訳)
■犬の全身麻酔のプロポフォールの導入量に対する年齢の影響
The effect of age on the induction dose of propofol for general anesthesia in dogs
PLoS One. 2023 Jul 3;18(7):e0288088.
doi: 10.1371/journal.pone.0288088. eCollection 2023.
Chiara E Hampton , Anderson da Cunha , Amber Desselle , Patricia Queiroz-Williams , Erik H Hofmeister
目的:ヒトにおいて、手順通りの鎮静および麻酔に必要とされるプロポフォールの用量(DOP)は、年齢と共に有意に減少する。この研究の目的は、気管内挿管を行うために必要なDOPは、犬の年齢とともに減少するのかどうかを判定することだった。
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:1397頭の犬
方法:紹介センターで麻酔をかけた犬のデータ(2017-2020)を、絶対年齢、生理学的年齢、平均余命(麻酔を行った時の年齢と過去の文献で入手した各犬種の死亡予測年齢との比率)、独立変数として他の因子、従属変数としてDOPの組み合わせを使用し、後退消去と3つの多変量線状回帰モデルで分析した。平均余命の各四分位数(<25%、25-50%、50-75%、75-100%、>100%)に対するDOPは、一方向ANOVAで比較した。有意はα=0.025でセットした。
結果:平均年齢は7.2±4.1歳、平均余命59.8±33%、体重19±14kg、DOP3.76±1.8mg/kgだった。年齢モデルの中で、唯一平均余命がDOPの予測因子だった(-0.37mg/kg;P=0.013) が、臨床的重要性は最小だった。平均余命四分位数によるDOPは、それぞれ3.9±2.3、3.8±1.8、3.6±1.8、3.7±1.7、3.4±1.6mg/kgだった(P=0.20)。ヨークシャーテリア、チワワ、マルチーズ、10kg以下の雑種犬、シーズはより高いDOPを必要とした。去勢済みのオス、ASA E、ボクサー、ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー種においては、特定の前投薬薬剤と共にDOPは減少した。
結論と臨床的関連:ヒトで観察されたものと対称的に、DOPの年齢カットオフ予測値は存在しなかった。犬種、前投薬薬剤、緊急処置、生殖状態のような他の因子と共に経過した平均余命の比率は有意にDOPを変化させた。老犬において、プロポフォールの用量は、それらの経過した平均余命を基に調節できる。(Sato訳)
■犬の鎮静の深さと導入プロポフォール必要量に対するクラシック音楽の効果
Effect of Classical Music on Depth of Sedation and Induction Propofol Requirements in Dogs
Vet Sci. 2023 Jul 3;10(7):433.
doi: 10.3390/vetsci10070433.
Stefanos G Georgiou , Aikaterini I Sideri , Tilemachos L Anagnostou , Pagona G Gouletsou , Vassiliki G Tsioli , Apostolos D Galatos
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この前向き無作為化盲検交差実験研究の主な目的は、犬の鎮静の深さ、麻酔の導入に必要なプロポフォール量に対するクラシック音楽の効果を評価することだった。
20頭の犬が、各々3か月間隔で3つの異なる処置を受けた:拡声器でショパン、モーツァルト、音楽なし。犬はアセプロマジン及びブトルファノールの筋肉内注射で前処置し、麻酔はプロポフォール静脈内注射で導入した。異なる処置間で鎮静の深さ、麻酔の導入に必要なプロポフォール量を比較するため、著者らは正規分布からわずかな偏差のため鎮静の深さに対して非パラメトリック検定(Kruskal-Wallis test)を利用し、プロポフォール必要量に対してパラメトリック(ANOVA)を利用した。
音楽(ショパンあるいはモーツァルト)を聞かせた時、音楽なしと比較して犬の鎮静はより深く、挿管に対するプロポフォールの必要量は少なかった(p<0.05)。クラシック音楽を聞かせることは、鎮静のレベルに対し正の影響を及ぼし、より顕著な中枢神経系抑制が気管挿管に対して必要なプロポフォール量の約20%減量の一因になると思われる。
ゆえに、少なくともこの研究で使用した特定の麻酔前投薬を利用した時、術前期間中にクラシック音楽を聞かせるとこは、有益な効果を及ぼすように見えた。(Sato訳)
■犬と猫の気管内挿管による合併症:動物麻酔専門医のアンケート調査
Complications secondary to endotracheal intubation in dogs and cats: A questionnaire-based survey among veterinary anaesthesiologists
Vet Anaesth Analg. 2023 Feb 21;S1467-2987(23)00031-4.
doi: 10.1016/j.vaa.2023.02.007. Online ahead of print.
Moriz Ettore Klonner , Svenja Springer , Christina Braun
目的:犬と猫の気管内挿管に向けた麻酔医の態度と、気管内挿管による二次的合併症の認知された合併症を調査する
研究デザイン:横断オンラインアンケートベース研究
方法:E-mailによる配布したオンラインアンケートを用い、犬と猫の気管内挿管による二次的な合併症の認知された発生率を調査した。気管内挿管に向けた態度、挿管した動物の取り扱い数および比率を調査した。研究集団は、獣医麻酔および鎮痛のアメリカおよびヨーロッパの大学でトレーニングした専門医、研修医、実習医だった。一変量記述統計を算出した。各合併症に対し、平均発生率スコア(MIS)を算出し、範囲は1(なし)から5(常に)とした。また、Wilcoxon signed-rank test and binary regression analysesを実施した。P値≦0.05を有意と考えた。
結果:全体の回答率は35.1%で、完答率は26.6%だった。全身麻酔を行うほとんどの犬と猫が挿管された。気管内挿管は、現代の麻酔の不可欠な部分と考えられた。調べられた犬の合併症(16)と猫の合併症(24)の発生に有意差が見られた(p≦0.001)。もっとも頻度が多く見られた合併症は、犬でカフの漏れ(MIS3.20)と挿管中の発咳(MIS3.10)で、猫では挿管中の発咳(MIS3.01)と喉頭痙攣(MIS2.91)だった。社会人口統計および診療-特異面は、報告した合併症の発生に重要な役割を持つとは思えなかった。
結論と臨床関連:気管内挿管は、回答者によれば最高技術水準の方法と考えられた。認知された低い発生率のメジャーな合併症とより頻度の高いマイナーな合併症と関係した。犬と猫の間の違いは説明される必要がある。この研究の回顧的および自己報告特性を考えると、本当の発生率は違うかもしれない。(Sato訳)
■犬におけるデキサメデトミジン筋注の薬物動態と薬力学
Pharmacokinetics and pharmacodynamics of intramuscular dexmedetomidine in dogs
Am J Vet Res. 2023 Feb 7;1-5.
doi: 10.2460/ajvr.22.10.0184. Online ahead of print.
Turi K Aarnes , Brian T Dent , Jeffrey Lakritz , Butch KuKanich , Vincent A Wavreille , Phillip Lerche , Carolina H Ricco Pereira , Richard M Bednarski
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目的:犬のデキサメデトミジンの筋肉内投与後の薬物動態と薬力学を調査する
動物:平均体重±SDが25.2±1.8kgの6頭の健康な研究犬(オス3頭、メス3頭)
方法:各犬にデキサメデトミジンを10μg/kgで筋肉内(IM)投与した。心拍数、呼吸数を聴診と胸の動きの目視でカウントした。鎮静は2点鎮静スコアリングシステムで評価した。血漿濃度は超高速液体クロマトグラフィー-質量分析で測定した。デキサメデトミジンIM後のタイムデータに対する血漿濃度を、血管外投与に対するノンコンパートメント分析で分析した。
結果:デキサメデトミジンのIM注射後の2時間かけ、各犬の血漿濃度は変動した。幾何平均(範囲)最大血漿濃度は109.2(22.4-211.5)ng/mlで、20.5(5-75)分で起こり、平均半減期は25.5(11.5-41.5)分だった。デキサメデトミジンの投与後30分から2時間で、心拍数は基礎値よりも有意に低く、45分から1.75時間で呼吸数は基礎値よりも有意に低かった。投与後30分から1.5時間でより有意に鎮静した。鎮静発現までの時間中央値は、7.5分(範囲、2-10分)で、鎮静ピークまでの時間中央値は30分(範囲、15-60分)だった。
臨床関連:デキサメデトミジン10μg/kgの筋肉内注射から2時間の間、血漿濃度の変動は全ての犬で発生した。おそらく、これはデキサメデトミジン誘発性局所血管収縮のため吸収の変化による。血漿濃度の変動にかかわらず、全ての犬はデキサメデトミジンのIM投与後に鎮静がかかった。(Sato訳)
■敗血症の犬の麻酔処置に対し吸入あるいは完全静脈麻酔に関係する術前輸液療法プロトコールの比較
Comparison of preoperative fluid therapy protocols associated with inhalational or total intravenous anesthesia for anesthetic procedures in dogs with sepsis
Braz J Vet Med. 2022 Sep 8;44:e001222.
doi: 10.29374/2527-2179.bjvm001222. eCollection 2022.
Vírgínia Conceição Tavares Lima , Anna Julia Rodrigues Peixoto , Maria Eduarda Dos Santos Lopes Fernandes , Lucinéia Costa Oliveira , Ana Carolina de Souza Campos , Ágatha Ferreira Xavier de Oliveira , Naiara Vidal Stocco , Cristiane Divan Baldani , Felipe Farias Pereira da Câmara Barros , Cássia Maria Molinaro Coelho
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この無作為化臨床試験は、感染病巣のコントロールに対し外科的処置を行う敗血症のメス犬の心肺の安定性において、吸入あるいは完全静脈麻酔に関係する異なる輸液治療プロトコールを評価した。
大学獣医病院で2018年から2019年の間に子宮蓄膿症と敗血症の診断を受け、治療された32頭のメス犬を募集した。入院、診断、臨床および血液検査評価後、犬を無作為に以下のグループに振り分けた:プロポフォール5(P(5):術前制限輸液療法-5mL/kg/hと静脈全身麻酔);プロポフォール10(P(10):術前非制限輸液療法-10mL/kg/hと静脈全身麻酔);イソフルラン5(I(5):術前制限輸液療法-5mL/kg/hと吸入全身麻酔)。入院(LAC1)および退院時(LAC2)の乳酸、心拍数(HR)、呼吸数(RR)、収縮期血圧(SBP)、直腸温(RT)、酸素飽和度(SpO2)、二酸化炭素排出率(EtCO2)を、PRE、T10、T20、T30、T40、T50、TEXT、TDIS時に分析した。
18頭の犬で乳酸の20%のクリアランスが発生し、P(10)群は一番良いパフォーマンスを示した。グループの中で昇圧剤の必要性に統計学的違いはなかった。周術期において、制限輸液に比べ非制限輸液療法は、より大きな心血管安定性を示した。全身麻酔に関し、麻酔維持中のプロポフォールよりもイソフルランは、より大きな心肺の安定性を示した。
結論として、3つの提案されたプロトコールは安全で、それらの優位性に違いはなかったが、患者に対する個別化が可能な時、いくつかの観察された変化は関連し、考慮できるかもしれない。(Sato訳)
■犬の全身麻酔中の起源不明の急性高カリウム血症の遡及的評価
Retrospective evaluation of acute hyperkalemia of unknown origin during general anesthesia in dogs
Vet Anaesth Analg. 2022 Dec 23;S1467-2987(22)00236-7.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.12.005. Online ahead of print.
Tainor Tisotti , Andrea Sanchez , Jordan Nickell , Christopher K Smith , Erik Hofmeister
目的:麻酔下の犬の起源不明の急性高カリウム血症の症例を報告することと特徴を述べる
研究計画:多施設遡及的臨床研究
動物:麻酔中に急性高カリウム血症を発症した飼い犬19頭の医療記録
方法:2015年1月から2022年12月の間に急性高カリウム血症を発症した犬の麻酔記録を評価した。収集したデータは個体群統計、事象までの麻酔時間、電解質および血液ガス測定値、心電図(ECG)異常、麻酔プロトコールの一部として使用した薬剤、高カリウム血症治療と結果が含まれた。
結果:合計13症例が、麻酔中に明らかな基礎原因がなく急性高カリウム血症が証明され、組み込み基準に合致した。犬は(平均±標準偏差(範囲))6.5±5.0(3-10)歳で、体重18.0±14.3(5.1-40.0)kgだった。全ての犬は、前投薬の一部としてデキサメデトミジンと1つのオピオイドを投与していた。全ての犬は>60分持続の吸入麻酔を行っていた。
最初の臨床症状は徐脈で、抗コリン作用薬投与に最小の反応で、中程度/重度の低血圧を伴っているものも多かった。それらの症状に急速に続き高カリウム血症および/あるいは心停止に当てはまるECG変化が起きた。高カリウム血症に対する迅速な確認と治療±デキサメデトミジン逆転で12頭は生存し、1頭は死亡した。
結論と臨床関連:起源不明の高カリウム血症は、命を脅かす合併症であり、全身麻酔中に起こる可能性がある。健康な犬において、デキサメデトミジンとあるオピオイドの麻酔前投与に続き、1時間以上の吸入麻酔は、この合併症の素因かもしれない。デキサメデトミジン投与後>90分の心拍数の突然の減少、あるいはECG変化は、血中カリウム濃度の測定を正当化するかもしれない。(Sato訳)
■麻酔をかけた犬において4つの気管内チューブ洗浄プロトコールの比較
Comparison of four endotracheal tube cleaning protocols in anesthetized dogs
J Am Vet Med Assoc. 2023 Jan 2;1-6.
doi: 10.2460/javma.22.10.0446. Online ahead of print.
Charlotte R Marquis , Tamara Gull , John Dodam , Lori Thombs , Alex Bukoski
目的:犬に麻酔をかけた後に回収した気管内チューブ(ETTs)に、4つの洗浄プロトコールを使用し、その効果を比較する
サンプル:100ETTs(プロトコール毎に25本)
方法:ETT再利用と洗浄処置を判定するために作った10の質問アンケートを、獣医麻酔医の1サンプルにメールで送付した。調査結果を基に、前向き臨床試験において使用する4つのETT洗浄プロトコールを選択した。犬には、滅菌ポリ塩化ビニルETTsを相関した。抜管時、各ETTを細菌発育のために培養し、1-4のプロトコールに無作為に振り分け(水洗(P1)、中性洗剤洗浄(P2)、中性洗剤洗浄とグルコン酸クロルヘキシジン(CHG)浸漬(P3)、中性洗剤洗浄と漂白剤浸漬(P4))、乾燥後再度培養した。細菌の種類は、質量分析と16s rRNA塩基配列決定法で同定した。洗浄後発育がないETTsの比率を、Fisher exact test with Bonferroni correctionを用いてプロトコール間で比較した。
結果:返答者の半数は、再利用したETTsの使用前に滅菌せず、洗浄法は多岐にわたり、報告された方法にはエビデンスに基づいたものはなかった。使用後、洗浄後に細菌が発育しなかったETTsの数は、P1が15/25(60%)、P2が14/25(56%)、P3が20/25(80%)、P4が17/25(68%)だった。ペアワイズ比較でプロトコール間にいずれの統計学的有意差も認めなかった。
臨床関連:小動物において、滅菌なしでETTsを再利用する獣医麻酔医もおり、洗浄プロトコールも多岐にわたる。調べたプロトコール間に違いは確認されなかった。今後、小動物診療で使用に対する安全で効果的なETT洗浄プロトコールを確認する研究が必要である。(Sato訳)
■全身麻酔を行った犬270頭の胃食道逆流の発生率に対する前投薬の影響
The Effect of Premedication on the Incidence of Gastroesophageal Reflux in 270 Dogs Undergoing General Anesthesia
Animals (Basel). 2022 Oct 4;12(19):2667.
doi: 10.3390/ani12192667.
Eugenia S Flouraki , Ioannis Savvas , George Kazakos , Tilemahos Anagnostou , Dimitrios Raptopoulos
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この前向き、非無作為化研究で、麻酔をかけた犬の胃食道逆流(GOR)の発生率に対する、9の異なる前投薬処置の効果を評価した。
非胸腔、非腹腔選択的外科手術、あるいは侵襲的診断処置を行う犬270頭を研究に含め、前投薬の種類で定義した9群(30頭/群)に振り分けた。前投薬は、デキサメデトミジンとモルヒネ、ペチジン、ブトルファノール、アセプロマジンと3つのオピオイドのうち1つ、あるいはミダゾラムと上記オピオイドのうち1つだった。麻酔はプロポフォールで導入し、イソフルランで維持した。食道pHは、pH-メーター電極を使用して測定し、pH-値が4以下、7.5以上をGORと考えた。
この研究により119/270(44.1%)の犬が、麻酔中に逆流エピソードを経験したことが明らかとなった。逆流の発生率は群間で違いがなかった(p=0.117)。AB群はpH-測定の開始10分以内に逆流し、DB群の犬は30分以内に逆流した(p=0.029)。去勢手術に比べ、侵襲的診断処置のGORの発生率は低かった(p=0.09)。
この研究の結果は、麻酔をかけた犬において、使用したオピオイドでGORの発生率が増加するものはないと示唆する。(Sato訳)
■アメリカの一般診療で卵巣子宮摘出術を行う犬に対して使用する麻酔と鎮痛法
Anesthetic and analgesic techniques used for dogs undergoing ovariohysterectomies in general practice in the United States
Vet Anaesth Analg. 2022 Aug 9;S1467-2987(22)00127-1.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.07.010. Online ahead of print.
Brittany M Kramer , Peter W Hellyer , Mark Rishniw , Lori R Kogan
目的:アメリカ(US)の一次診療の獣医師が、犬の通常の卵巣子宮摘出術を実施する時の麻酔および鎮痛プロトコールについての情報を得ること
研究計画:横断調査
集団:USの一次診療の獣医師
方法:当初、ニュージーランドで作成されたオンライン匿名調査を、許可を得て修正し、Veterinary Information Network (VIN)メンバーで利用できるようにした。その調査は麻酔前評価、前処置および導入プロトコール、維持プロトコール、モニタリング機器、術後鎮痛および鎮静プロトコール、疼痛評価のカテゴリーで、健康な若齢犬において卵巣子宮摘出術についての質問を行った。
結果:合計1213人のUSの獣医師が調査を完了した。回答者(n;%)は術前検査(PCV(135;11%)、CBC(889;73%)、生化学パネル(1057;87%))と手術日の朝の麻酔前検査(1083;90%)を実施すると報告した。最も一般的に投与される薬剤は前処置でアセプロマジン(512;42%)、ヒドロモルフォン(475;39%)あるいはブトルファノール(463;38%)、麻酔導入に対しプロポフォール(637;67%)、維持麻酔に対しイソフルラン(882;73%)だった。多くの獣医師は、静脈内カテーテルの設置(945;78%)、電解質液の投与(747;67%)、補温サポート(1160;96%)を行っていると報告した。周術および術後鎮痛には、局所麻酔(545;45%)、オピオイド(844;70%)、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)(953;79%)が含まれた;NSAIDsは家庭での使用に処方された(985;81%)。ほとんどの犬は手術当日に退院し(1068;88%)、1-2日以内のフォローアップで連絡を取った(914;75%)。
結論と臨床関連:犬の通常の卵巣子宮摘出術に対する麻酔管理は、USのVINメンバーの中でも一様ではなかった。この研究からの情報は、彼らの臨床管理との比較で全ての獣医師、鎮痛に対するオプションを強調し続けるための獣医麻酔の教師にとって役に立つ。(Sato訳)
■イギリスの一次動物病院の犬で全身麻酔と鎮静に関連する死亡率
Mortality related to general anaesthesia and sedation in dogs under UK primary veterinary care
Vet Anaesth Analg. 2022 Jun 30;S1467-2987(22)00101-5.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.03.006. Online ahead of print.
Stephanie Jw Shoop-Worrall , Dan G O'Neill , Jaime Viscasillas , David C Brodbelt
目的:全身麻酔(GA)/鎮静の関係する全体(不妊特異処置を加えて)の死亡率に対し、イギリスの一次動物病院で見られた犬を定量およびリスクファクターを調べる
研究計画:UK一次動物病院電子記録調査、VetCompass(300以上の診療所を含む)内のネステッドケース-コントロール研究
動物:GA/鎮静を行った計157318頭
方法:症例は2010年1月から2013年12月までにGA/鎮静処置を行い48時間あるいは2週間以内に記録されたGA/鎮静関連死の犬を含めた。コントロールはそれらの期間内に死亡しなかったGA/鎮静を行った犬から無作為に選択した。全ての外科手術と不妊特異手術に対してGA/鎮静関連死のリスクを算出した。GA/鎮静関連死との個体群統計学的および臨床的関係は、多変量ロジスティック回帰モデリング後のオッズ比として報告した。統計学的有意は5%とした。
結果:GA/鎮静処置をした157318頭の犬から、48時間以内に159頭(0.10%)、2週間以内に219頭(0.14%)がGA/鎮静関連死していた。不妊手術を行った89852頭のうち、8頭がGA/鎮静関連死していた(0.009%)。より高い年齢、American Society of Anaesthesiologists health statusの悪いスコア、より切迫した処置は死亡の確率増加と関係した。雑種犬と比較して、ロットワイラー、ウエストハイランドホワイトテリアはGA/鎮静関連死の確率がより高く、コッカスパニエルはより低かった。
結論と臨床関連:GA/鎮静関連死に対する全体のリスクは比較的低く、特に去勢や避妊手術の犬の部分集団で低かった。評価した関連とリスクは、臨床診療で共有する意思決定をアシストするかもしれず、検討のベンチマークを提供する。(Sato訳)
■健康な犬においてヒドロモルフォン、アセプロマジン、デキサメデトミジン、グリコピロレートの筋肉内混注後のプロポフォール静注およびイソフルラン吸入麻酔の鎮静および心肺の影響
Sedative and cardiopulmonary effects of intramuscular combinations of hydromorphone, acepromazine, dexmedetomidine, and glycopyrrolate followed by intravenous propofol and inhalant isoflurane anesthesia in healthy dogs
Am J Vet Res. 2022 Aug 18;83(10):ajvr.22.06.0098.
doi: 10.2460/ajvr.22.06.0098.
Brittany M Kramer , Rachel C Hector , Marlis L Rezende , Ann M Hess , Khursheed R Mama
目的:健康な犬において、プロポフォールの導入およびイソフルランの維持麻酔に続くアセプロマジン、デキサメデトミジン、ヒドロモルフォンおよびグリコピロレートの種々の組み合わせの鎮静および心肺効果を評価する
動物:健康なメスのビーグルの成犬6頭
方法:イソフルランで麻酔中、血行動態の測定に対し犬に機器を付けた。覚醒後2時間目、処置間に1週間おき、交差デザインで4つのIMの組み合わせのうち1つを投与した:ヒドロモルフォン(0.1mg/kg)とアセプロマジン(0.005mg/kg;HA);ヒドロモルフォンとデキサメデトミジン(0.0025mg/kg;HD);ヒドロモルフォン、アセプロマジン、デキサメデトミジン(HAD);ヒドロモルフォン、アセプロマジン、デキサメデトミジン、グリコピロレート(0.02mg/kg;HADG)。30分後の鎮静にスコアを付けた。生理学的変数と心臓指数は鎮静後、プロポフォールで麻酔導入後、イソフルランで維持中15分ごとに60分間(760mmHgで目標呼気濃度、1.3%)測定した。
結果:処置の中で鎮静スコアに有意差はなかった。鎮静後とイソフルラン麻酔の最初の15分間を通し、平均±SD心臓指数は、HD(88±31mL/分/kg)とHAD(103±25mL/分/kg)に比べ、HA(202±45mL/分/kg)とHADG(185±59mL/分/kg)で有意に高かった。どの処置でも心室性不整脈は見られなかった。
臨床関連:健康な犬において、プロポフォールおよびイソフルラン麻酔前のHADGIM投与は、有害な作用なく容認できる心肺機能を提供した。この組み合わせは、健康な犬のルーティンな麻酔前処置として考慮すべきである。(Sato訳)
■健康なビーグル犬の麻酔導入でプロポフォール量に対するアセプロマジンとブトルファノールの静脈投与の効果
Effects of intravenous acepromazine and butorphanol on propofol dosage for induction of anesthesia in healthy Beagle dogs
Vet Anaesth Analg. 2022 Mar 15;S1467-2987(22)00045-9.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.03.002. Online ahead of print.
Stephanie C Dantino , Stephanie A Kleine , Christopher K Smith , Sayge M Smith , Xiaojuan Zhu , Reza Seddighi
目的:犬のプロポフォール麻酔導入量に対し、アセプロマジン、ブトルファノールあるいはそれらを併用した静脈内(IV)前処置の効果を判定する
研究計画:前向き、盲検、ラテン方陣デザイン
動物:健康なビーグル犬(オス3頭、メス3頭)、年齢3.79±0.02歳、体重10.6±1.1kg、平均±標準偏差
方法:各犬を週1回、6つのIV処置のうち1つに振り分けた:0.9%生理食塩水(SAL)、低用量アセプロマジン(0.02mg/kg;LDA)、高用量アセプロマジン(0.04mg/kg;HDA)、低用量ブトルファノール(0.2mg/kg;LDB)、高用量ブトルファノール(0.4mg/kg;HDB);アセプロマジン((0.02mg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)の併用(ABC)。基礎値と前処置後10分の生理学的変数と鎮静スコアを収集した。その後、15秒かけてプロポフォールを1mg/kg IVで投与し、続いて挿管できるまで15秒ごとにボーラス投与した(5秒かけて0.5mg/kg)。プロポフォール用量、生理学的変数、覚醒時間、覚醒スコア、副作用をモニターし、記録した。データはmixed-effects anovaを用いて解析した(p<0.05)。
結果:プロポフォール用量は、SAL(4.4±0.5mg/kg)に比べて全ての処置で低かった;最も少ない量はABCで記録された(1.7±0.3mg/kg)。導入後の平均動脈圧(MAPs)は、処置LDA、HDA、ABCで基礎値よりも低かった。無呼吸と低血圧(MAP<60mmHg)は全ての処置の数頭で発生し、最も高い低血圧の発生率は処置ABCだった(4/6頭)。
結論と臨床関連:アセプロマジンとブトルファノールのIV前処置後、挿管に対して必要なプロポフォール量は最も少なくなったが、それでも低血圧と無呼吸は発生した。(Sato訳)
■健康なビーグル犬の麻酔導入でプロポフォール量に対するアセプロマジンとブトルファノールの静脈投与の効果
Effects of intravenous acepromazine and butorphanol on propofol dosage for induction of anesthesia in healthy Beagle dogs
Vet Anaesth Analg. 2022 Mar 15;S1467-2987(22)00045-9.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.03.002. Online ahead of print.
Stephanie C Dantino , Stephanie A Kleine , Christopher K Smith , Sayge M Smith , Xiaojuan Zhu , Reza Seddighi
目的:犬のプロポフォール麻酔導入量に対し、アセプロマジン、ブトルファノールあるいはそれらを併用した静脈内(IV)前処置の効果を判定する
研究計画:前向き、盲検、ラテン方陣デザイン
動物:健康なビーグル犬(オス3頭、メス3頭)、年齢3.79±0.02歳、体重10.6±1.1kg、平均±標準偏差
方法:各犬を週1回、6つのIV処置のうち1つに振り分けた:0.9%生理食塩水(SAL)、低用量アセプロマジン(0.02mg/kg;LDA)、高用量アセプロマジン(0.04mg/kg;HDA)、低用量ブトルファノール(0.2mg/kg;LDB)、高用量ブトルファノール(0.4mg/kg;HDB);アセプロマジン((0.02mg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)の併用(ABC)。基礎値と前処置後10分の生理学的変数と鎮静スコアを収集した。その後、15秒かけてプロポフォールを1mg/kg IVで投与し、続いて挿管できるまで15秒ごとにボーラス投与した(5秒かけて0.5mg/kg)。プロポフォール用量、生理学的変数、覚醒時間、覚醒スコア、副作用をモニターし、記録した。データはmixed-effects anovaを用いて解析した(p<0.05)。
結果:プロポフォール用量は、SAL(4.4±0.5mg/kg)に比べて全ての処置で低かった;最も少ない量はABCで記録された(1.7±0.3mg/kg)。導入後の平均動脈圧(MAPs)は、処置LDA、HDA、ABCで基礎値よりも低かった。無呼吸と低血圧(MAP<60mmHg)は全ての処置の数頭で発生し、最も高い低血圧の発生率は処置ABCだった(4/6頭)。
結論と臨床関連:アセプロマジンとブトルファノールのIV前処置後、挿管に対して必要なプロポフォール量は最も少なくなったが、それでも低血圧と無呼吸は発生した。(Sato訳)
■健康犬に対するデキサメデトミジン低用量の鼻腔内投与あるいは筋肉内投与の鎮静効果の比較
Comparison of the sedative effects of intranasal or intramuscular dexmedetomidine at low doses in healthy dogs: a randomized clinical trial
Vet Anaesth Analg. 2022 Aug 12;S1467-2987(22)00130-1.
doi: 10.1016/j.vaa.2022.08.003. Online ahead of print.
Víctor López-Ramis , Susana Canfrán , Ignacio A Gómez de Segura
目的:健康犬に対しデキサメデトミジンを鼻腔内あるいは筋肉内で投与した時の鎮痛効果の比較
研究計画:前向き無作為化盲検臨床試験
動物:16頭の健康な飼い犬の1群
方法:犬を無作為に2群のどちらかに振り分けた(デキサメデトミジン5μg/kgを鼻腔内ルート(IN)(1つの鼻孔から粘膜噴霧器による)、あるいは筋肉内ルート(IM)(軸上筋肉内に)。鼻腔内投与の容易さ、鎮静スコア、鎮静の発現、心肺変数、機械的侵害受容域値(MNTs)、種々のカテーテル処置に対する反応を薬剤投与から0(基礎)、5、10、15、20、25、30、35、40、45分で記録した。データは適切に一方向分散分析、マン-ホイットニーU検定、カイ二乗検定で比較した。
結果:年齢、性別、体重、BCS、気質はグループで違いがなかった。鎮静スコア、MNTs、静脈カテーテル留置に対する反応で、両ルートでデキサメデトミジンを投与した時に違いはなかった(それぞれ、p=0.691;p=0.630;p=0.435)。鎮静の発現は、INおよびIM群で違いはなく、それぞれスコア4.2±0.9と5.5±1.2に達するのに9±5分と8±4分だった(p=0.467)。IN群とIM群で最も高い鎮静スコアにはそれぞれ30分、35分で到達し、鎮静スコアは9.7±2.0と9.5±2.3だった(p=0.799)。呼吸数はIN群で多かった(p=0.014)が、心拍数(p=0.275)、収縮期(p=0.957)、拡張期(p=0.837)あるいは平均動脈血圧(p=0.921)にルートによる違いはなかった。
結論と臨床関連:デキサメデトミジンを5μg/kgでの鼻腔内投与は、健康な犬で効果的な鎮静を提供する。(Sato訳)
■犬と猫の長時間陽圧ベンチレーションに関係する合併症:67症例
Complications associated with long-term positive-pressure ventilation in dogs and cats: 67 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Jan 10.
doi: 10.1111/vec.13177. Online ahead of print.
Laura A Cagle , Kate Hopper , Steven E Epstein
目的:犬と猫において陽圧ベンチレーション(PPV)に関係する合併症を調べる
計画:2009年10月から2013年9月までの回顧的研究
場所:大学教育病院
動物:58頭の犬と9頭の猫
測定値と主要結果:医療記録を回顧的に再調査し、シグナルメント、PPVに関係する合併症、PPVの持続時間、結果を記録した。PPV中に記録された一般的な合併症は、低体温41/67(61%)、低血圧39/67(58%)、心不整脈33/67(49%)、正の体液バランス31/67(46%)、口腔病変25/67(37%)、角膜潰瘍24/67(36%)だった。疾病コントロールセンターの基準から推定されるベンチレーター関連事象(VAE)の定義は、この研究で最低4日間、PPVを受けた21症例に適応された。ベンチレーターが関連する状況は、感染関連性のベンチレーターが関係する状況の21症例中5症例(24%)で発生し、ベンチレーターが関連する肺炎は21症例中3症例(14%)で確認された。
結論:長時間PPVを受けた犬と猫において、合併症は一般的、多様で、集中的、持続的な動物のモニタリングと最適な看護ケアプロトコールの重要性を強調する。確認された合併症の多くは、介入なしで重篤になる可能性があり、最適な器機のアラームが動物の安全性を改善できると示唆される。VAE基準のような獣医特別監視ツールの開発は、今後の調査に役立ち、効果的な多施設研究を可能にするだろう。(Sato訳)
■イソフルランで麻酔をかけた犬の心臓トロポニンIレベルに対しデキサメデトミジン±アトロピン投与の影響
Effect of administering dexmedetomidine with or without atropine on cardiac troponin I level in isoflurane-anesthetized dogs
J Vet Med Sci. 2021 Oct 8.
doi: 10.1292/jvms.20-0657. Online ahead of print.
Hsin-Yu Huang , Kai-Yueh Liao , Wei-Yau Shia , Chao-Chin Chang , Hsien-Chi Wang
Free article
健康犬において、デキサメデトミジン投与±アトロピンが心臓トロポニンI(cTnI)濃度を上昇させるかどうかを判定するのが目的だった。10μg/kgデキサメデトミジン+アトロピンはcTnI濃度を上昇させるが、5μg/kgデキサメデトミジン+アトロピンは上昇させないと仮説を立てた。
整形外科あるいは避妊手術を行う健康な18頭の飼育犬を研究に加えた。犬を無作為にアトロピン(0.02mg/kg)-デキサメデトミジン(10μg/kg)、生理食塩水-デキサメデトミジン(10μg/kg)、アトロピン(0.02mg/kg)-デキサメデトミジン(5μg/kg)群に振り分けた。
各犬は、アトロピンあるいは生理食塩水の筋注(IM)で前処置した。10分後、デキサメデトミジン(10あるいは5μg/kg)-モルヒネ(0.5mg/kg)-ミダゾラム(0.2mg/kg)のIMを行った。これに続き、10分後にプロポフォールで麻酔導入し、イソフルランと100%酸素で維持した。
全処置後6、12、24時間目の血漿cTnI濃度中央値は、基礎値より有意に高かった。全処置後の6と12時間目のアトロピン-デキサメデトミジン(10μg/kg)群のcTnI濃度は、生理食塩水-デキサメデトミジン(10μg/kg)やアトロピン-デキサメデトミジン(5μg/kg)群よりも有意に高かった。全ての群のcTnI濃度は全処置後72時間以内に正常に戻った。
アトロピンとデキサメデトミジン(10μg/kg)の組み合わせの投与は、cTnI濃度を上昇させ、無症候性の心筋ダメージを示す。(Sato訳)
■90頭の犬における胃食道逆流の発生率に対する術前絶食法の効果
The Effect of the Preoperative Fasting Regimen on the Incidence of Gastro-Oesophageal Reflux in 90 Dogs
Animals (Basel). 2021 Dec 29;12(1):64.
doi: 10.3390/ani12010064.
Paraskevi Tsompanidou , Joris H Robben , Ioannis Savvas , Tilemahos Anagnostou , Nikitas N Prassinos , George M Kazakos
Free PMC article
この研究の目的は、全身麻酔下の犬における胃食道逆流(GOR)の発生率に対し、3つの異なる術前絶食方法の効果を調べることだった。
非腹部及び非胸部の選択的手術を行う90頭の犬を研究に含め、3群に平等に振り分けた。犬に一日安静時エネルギー必要量(RER)の半分の缶詰を前処置前3時間に給餌(3H群)、一日RERの1/4の缶詰を前処置前3時間に給餌(3Q群)、一日RERの半分の缶詰を前処置前12時間に給餌(12H群)した。犬はアセプロマジンとペチジンで前処置し、プロポフォールで導入し、イソフルランで維持した。麻酔中、食道pHをモニターした。
個体群および手術関連のパラメーターは群間で差がなかった。GORの発生率は、3H群で11/30(36.7%)、3Q群で9/30(30%)、12H群で5/30(16.7%)であり、統計学的な違いはなかった(p=0.262)。一日RERの半分から1/4への術前食事量の削減はGORの発生率を抑えなかったが、より低い食道のpHとなった(p=0.003)。
この研究の結果は、麻酔前12時間に給餌した犬と比べ、麻酔前3時間に給餌することがGOR発生抑制にいかなる有益な効果も持たないことを示唆する。(Sato訳)
■卵巣子宮摘出術後の食欲不振の犬に食欲を誘発するためのプロポフォールの使用
Use of propofol to induce food consumption by anorectic dogs following ovariohysterectomy
J Am Vet Med Assoc. 2021 Jul 1;259(1):56-61.
doi: 10.2460/javma.259.1.56.
Virginia Papageorgiou, Charalampos Ververidis, Tilemachos Anagnostou, Ioannis Savvas, George Kazakos
目的:選択的避妊手術後の食欲がない犬に、2mg/kgのプロポフォールIV投与は食物摂取を誘発できるかどうか判定する
動物:食餌を避妊手術後6時間で提供された時に自発的に食べなかった健康なメス犬51頭
方法:無作為化盲検対照臨床試験において、避妊手術後6時間目にプロポフォール(2mg/kg;n=31)、あるいは等量の生理食塩水(0.9%NaCl;n=20)を投与した。その後、給餌し、食物摂取を再評価した。処置前と直後に疼痛、鎮静、ストレスのスコアを付けた。
結果:プロポフォール群の31頭中27頭(87%)は、投与後すぐに食物を食べたが、プラセボ群は20頭中1頭(5%)しか食べなかった。2群間で疼痛、鎮静、ストレススコアに違いを認めなかった。プロポフォール群の犬に対する鎮静スコアは、プロポフォール投与後すぐに増加した。
結論と臨床的関連:選択的外科処置後の食欲不振のメス犬において、食物摂取はプロポフォール2mg/kgのIV投与で効果的に誘発できると結果は示唆した。(Sato訳)
■鎮静および麻酔をかけた犬におけるデキサメデトミジン誘発性徐脈のリドカイン静脈投与による治療
Use of intravenous lidocaine to treat dexmedetomidine-induced bradycardia in sedated and anesthetized dogs
Vet Anaesth Analg. 2020 Dec 23;S1467-2987(20)30279-8.
doi: 10.1016/j.vaa.2020.11.005. Online ahead of print.
Tainor Tisotti , Alexander Valverde , Ashley Hopkins , M Lynne O'Sullivan , Brad Hanna , Luis Arroyo
目的:デキサメデトミジンを静脈内投与(IV)し、その後デキサメデトミジン誘発性徐脈の治療のため、リドカインをIV投与した鎮静および麻酔犬の心肺機能を評価する
研究計画:前向き無作為化交差実験研究
動物:体重9.1±0.6kg(平均±標準偏差)の6頭のメスの純血ビーグル犬
方法:犬を3つのうち1つの処置に無作為に振り分けた:デキサメデトミジン(10μg/kg IV)を意識のある(処置SED1とSED2)、あるいはイソフルラン麻酔下(終末呼気イソフルラン濃度1.19±0.04%;処置ISO)の犬に投与した。
30分後、SED1とISOにリドカイン(2mg/kg)をIVボーラス投与し、続いて20分後に2度目のボーラス投与(2mg/kg)を行い、30分のリドカイン定速注入(L-CRI)を50(SED1)あるいは100μg/kg/分(ISO)で行った。SED2においては、5分後にリドカインボーラスとL-CRI(50μ/kg/分)を投与した。心肺機能測定値は、デキサメデトミジン投与後、リドカインボーラス投与後、L-CRI中、L-CRIを中止し30分後に入手した。混合線形モデルを処置内の比較に使用した(P<0.05)。
結果:全ての処置で、デキサメデトミジン投与後に投与した時、リドカインボーラス及びL-CRIは有意に心拍数と心指数を増加させ、平均血圧、全身脈管抵抗指数、酸素摂取率を低下させ、一回拍出量指数に影響しなかった。
結論と臨床関連:健康な実験犬において、デキサメデトミジン誘発性徐脈に対し、リドカインは有効な治療だった。(Sato訳)
■犬の麻酔導入に対し希釈したプロポフォールと希釈しないプロポフォールの必要量と心肺効果
Dose requirement and cardiopulmonary effects of diluted and undiluted propofol for induction of anaesthesia in dogs
Vet Anaesth Analg. 2020 Dec 15;S1467-2987(20)30266-X.
doi: 10.1016/j.vaa.2020.10.008. Online ahead of print.
Hanna Rögels , Fernando Martinez-Taboada
目的:プロポフォール(10mg/mL)と希釈したプロポフォール(5mg/mL)を用いた犬の麻酔導入の質と、用量、心肺効果を比較する
研究計画:無作為化盲検臨床研究
動物:合計28頭の飼育犬(オス12頭/メス16頭)
方法:アセプロマジン(0.02mg/kg)とメタドン(0.2mg/kg)を筋肉内注射後、麻酔医にグループ分けを知らせず、挿管に達するまでプロポフォール(UP、10mg/mL)あるいは希釈したプロポフォール(DP、5mg/mL)を静脈内に投与した(0.2mL/kg/分)。鎮静、挿管、導入の質に0-3でスコアを付けた。導入前と導入後の心拍数(PR)、呼吸数、収縮期(SAP)、平均(MAP)、拡張期(DAP)動脈血圧を比較した。最初の呼吸までの時間と導入用量を記録した。データは正常性に対して解析し、マン-ホイットニーUあるいはスチューデントt検定を適切な時に実施した。有意性はp<0.05に設定した。平均±標準偏差あるいは中央値(範囲)でデータを示した。
結果:導入に達するまで投与したプロポフォールの用量は、DP群(2.62±0.48mg/kg)がUP群(3.48±1.17mg/kg)よりも少なかった(p=0.021)。導入前と導入後のPR、SAP、MAP、DAPおよび呼吸数に群間の違いは見られなかった。それら変数の導入後および導入前の値の差も群間で同様だった。最初の呼吸までの時間に群間の差はなかった。鎮静スコアは群間で同じだった。気管挿管の質は、UP(0-1)がDP(0-2)よりもわずかに良かった(p=0.036)が、導入の全体的な質は同様だった(UP0(0-1)とDP0(0-1)、p=0.549)。
結論と臨床関連:希釈したプロポフォールは、重大な心肺変数の変化もなく、麻酔導入までの用量を減らした。(Sato訳)
■プロポフォールで麻酔した犬における血液、血清生化学パラメーター、赤血球酸化/抗酸化状態に対するドキサプラムの影響
The effects of doxapram on haematology, serum biochemical parameters and erythrocyte oxidant/ antioxidant status in dogs anaesthetized with propofol
Vet Med Sci. 2020 Nov 18.
doi: 10.1002/vms3.398. Online ahead of print.
Soroush Sabiza , Hadi Naddaf , Seyedeh Misagh Jalali , Ali Baniadam , Bahman Mosallanejad
この前向き無作為化実験研究において、プロポフォール麻酔後の犬の血液、血清生化学、抗酸化状態に対するドキサプラムの影響を判定した。
24頭の健康なオスの雑種犬、1-2歳、20.4±2.6kgを研究した。最低1週間のウォッシュアウト期間を設け、各犬に2度麻酔をかけた。犬はアセプロマジン(0.1mg/kg)の筋肉注射で鎮静をかけた。40分後、静脈内(IV)プロポフォール(4mg/kg)滴定で麻酔導入し、30分間プロポフォール(0.2mg/kg/min)で維持した。
プロポフォール中止後、塩酸ドキサプラム(2mg/kg)をPD群にIV投与し、同量の生理食塩水をPS群に投与した。血液パラメーターは4回解析した:鎮静直前(T1)、処置後(T2)、完全覚醒後(T3)、24時間後(T4)。
血液学的評価は、PD群のT4(24時間後)のヘマトクリット値が有意に低下していたことを除き、群間で有意差はなかった。単球、平均赤血球ヘモグロビン量、赤血球分布幅、血小板数を除き、ドキサプラム投与後から覚醒まで全ての血液学的変数の減少傾向が見られた。PS群と比べ、血清尿素、クレアチニン、グルコース、コレステロール、直接ビリルビン濃度、ALLT活性はドキサプラム投与後変化しなかった。ドキサプラム投与後、クレアチニン(T3)、アルブミン(T2)、タンパク(T2&T3)は低下し、グルコース(T2&T3)、BT(T3)は上昇した。測定した抗酸化パラメーターはどの時間でも群間に違いはなかった。
プロポフォール麻酔後の犬に対し、ドキサプラム(2mg/kg)IVは血液、血清生化学変数、酸化/抗酸化状態に対し、大きな負の影響を誘発しなかった。(Sato訳)
■エピネフリンのネブライゼーションは犬の短頭種閉塞性気道症候群の重症度を低下させる
Nebulization of epinephrine to reduce the severity of brachycephalic obstructive airway syndrome in dogs
Vet Surg. 2020 Oct 12.
doi: 10.1111/vsu.13523. Online ahead of print.
Phil H Franklin , Nai-Chieh Liu , Jane F Ladlow
目的:犬の短頭種閉塞性気道症候群(BOAS)に対し、エピネフリンのネブライザーの術前および術後効果を判定する
研究計画:前向き臨床研究
サンプル集団:中程度から重度BOASのパグ、フレンチブルドッグ、イングリッシュブルドッグ31頭
方法:全身気圧プレチモスグラフィーを用い、術前に0.9%生食で希釈した0.05mg/kgエピネフリンのネブライゼーション前後でBOAS重症度(BOAS指数;0%-100%)を判定した。同じプロトコールを術後に繰り返した(手術から24時間以内)。
結果:5頭はネブライゼーションを許容しなかったので除外し、術後のデータは13頭の犬で入手できた。エピネフリンのネブライゼーションは、術前(9.6%(3.1%から-30.2%)、n=26)および術後(14.3%(0.9%から-24.3%)、n=13)、全ての犬種の犬のBOASを低下させた。BOAS指数の術前の低下は、フレンチブルドッグ(5.2%(3.1%から-30.2%)、P=0.03)に比べ、基礎BOAS指数>70%の犬(17.3%(1.8%から-27.4%))やパグ(16.9%(0.8%から-27.4%))でより大きかった(P=0.006)。単純直線回帰を使用し、パグにおける基礎BOAS指数とBOAS指数の低下との正の相関を確認した(n=10、P=0.001)。4頭の犬の副作用として悪心を認めた。
結論:この研究で、エピネフリンのネブライゼーションはBOAS指数を低下させた。この効果は、BOAS指数>70%の犬の術前および手術から回復している犬において臨床的意義があった。
臨床意義:この研究は、BOASの犬の周術管理において、エピネフリンのネブライゼーションの使用を支持するエビデンスを提供する。(Sato訳)
■全身麻酔中の犬の胃食道逆流の2つの局所治療の比較
Comparison of two topical treatments of gastro-oesophageal regurgitation in dogs during general anaesthesia
Vet Anaesth Analg. 2020 May 21;S1467-2987(20)30093-3.
doi: 10.1016/j.vaa.2020.04.010. Online ahead of print.
Asher Allison , Maria Italiano , Rebecca Robinson
目的:全身麻酔下の胃食道逆流発生後、吸引、洗浄、重炭酸ナトリウムの滴下注入は、それを行わなかった時と比べ、より食道pHが大きく変化するかどうかを調査する
研究デザイン:前向き無作為化臨床研究
動物:22頭の飼育犬の1群
方法:全身麻酔下で胃食道逆流(GOReg)を呈している犬を無作為にグループ化した:洗浄なし(G1)あるいは洗浄あり(G2)。全ての犬は逆流物質が回収できなくなるまで食道吸引を行った。G2の犬は吸引水が透明になるまで水道水で食道洗浄を行った。その後、全ての犬の食道に4.2%重炭酸ナトリウム(0.6ml/kg)を注入した。食道pHプローブを設置し、GOReg後すぐ(T1)、吸引後すぐ(T2)、食道洗浄後すぐ(T3;G2のみ)、重炭酸ナトリウム注入後すぐ(T4)のpHを記録した。 カテゴリー的データはFisher’s exact testで解析し、連続データはtwo-sample t-testかWilcoxon rank-sum testで解析した。パラメトリックデータは、平均±標準偏差として報告し、ノンパラメトリックデータは中央値(四分位数館領域)として報告する。P値<0.05は有意と考えた。
結果:両群の食道pHはGOReg後すぐに低かった(G1:2.95(2.20-4.18)、G2:3.29(1.41-4.03))が、T1、T2、T4での食道pHに群間の有意差はなかった。食道洗浄は有意にpHを上昇させたが、群間で重炭酸投与後のpHの全体的な変化に有意差はなかった(G1:3.16±1.52、G2:3.52±1.47)。GOReg後の有害事象は記録されなかった。
結論と臨床的関連性:両群は食道pHにおいて同様の臨床的に重要な上昇を見せた。食道洗浄はpHを上昇させたが、これは重炭酸ナトリウムを注入した時の最終的な食道pHに影響することはなく、ゆえに不必要なステップかもしれない。(Sato訳)
■選択的避妊あるいは去勢手術を行う健康犬において麻酔覚醒の質および時間に対するミダゾラムの効果
Effect of midazolam on the quality and duration of anaesthetic recovery in healthy dogs undergoing elective ovariohysterectomy or castration.
Vet Anaesth Analg. September 2019;46(5):587-596.
DOI: 10.1016/j.vaa.2019.05.008
Josephine Kropf , Jm Lynne Hughes
目的:選択的避妊あるいは去勢手術を行う健康犬において、ミダゾラムの単一投与の使用は覚醒期の質および持続時間に影響するかどうかを判定する
研究計画:前向き無作為化プラセボ対照盲検臨床試験
動物集団:不妊手術を行う74頭の飼育犬
方法:単純記述スケール(SDS)を用いたケージの様子のスコアを付けた後、アセプロマジン(0.03mg/kg)とペチジン(3mg/kg)の筋肉内注射(大腿四頭筋)で前処置を行った。20分後の鎮静をSDSでスコアを付けた。オス犬はミダゾラム(0.25mg/kg)(M群)あるいは等量のハルトマン液(P群)とプロポフォールの静脈内注射(IV)で導入した。メス犬はプロポフォール単独で導入し、最初の卵巣の術中処置の5分前にミダゾラム(M群)あるいはハルトマン液(P群)を投与した。
麻酔は酸素とイソフルランで維持した。術中の鎮痛は手術開始前にモルヒネ(0.3mg/kg IV)を投与した。オス犬には、精巣内にリドカイン(1mg/kg)を投与した。全ての犬に処置の最後にメロキシカム(0.2mg/kg IV)を投与し、抜管後と30分後にSDSで覚醒についてスコアを付けた。抜管、頭を上げる、フセの状態、起立までの時間と覚醒中の合併症を記録した。データは中央値(範囲)で示した。
結果:起立までの時間はP群(44(4-137)分)よりもM群(56(13-179)分)の犬で有意に長く、M群(3(2-6))の早期覚醒スコアはP群(3(1-5))よりも総じて悪かった。P群(n=22)よりもM群(n=30)で有意により多くの犬が低血圧を示した。
結論と臨床関連:不妊手術を行う健康なオスとメス犬の一集団において、ミダゾラムの投与は起立までの時間を延長させ、覚醒の質に対し軽度の負の影響があった。(Sato訳)
■重篤な犬の麻酔導入に対しプロポフォール単独あるいはミダゾラムを加えた時の用量と心肺への影響
Dose and Cardiopulmonary Effects of Propofol Alone or With Midazolam for Induction of Anesthesia in Critically Ill Dogs
Vet Anaesth Analg. 2020 Apr 11;S1467-2987(20)30071-4.
doi: 10.1016/j.vaa.2020.03.006. Online ahead of print.
Rodrigo Aguilera , Melissa Sinclair , Alexander Valverde , Shane Bateman , Brad Hanna
目的:緊急腹部外科手術を必要とするAmerican Society of Anesthesiologists status ≥IIIの犬の麻酔導入で、プロポフォール単独あるいはミダゾラムを加えた時の用量と心肺への影響を判定する
研究計画:前向き無作為化盲検臨床試験
動物:合計19頭の飼育犬
方法:心拍数、動脈血圧、心指数、全身血管抵抗指数、動脈血ガス、呼吸数、直腸温測定の機器を設置のため、犬にフェンタニル(2μg/kg)静脈内注射(IV)で鎮静をかけた。IVフェンタニル(3μg/kg)追加後、鎮静の質にスコアを付け、心肺変数を記録した。麻酔導入はIVプロポフォール(1mg/kg)と生理食塩水(0.06ml/kg、PS群;9頭)あるいはミダゾラム(0.3mg/kg;PM群;10頭)で行い、気管挿管まで6秒ごとにプロポフォール(0.25mg/kg)IVを追加した。導入/挿管の質にスコアを付け、麻酔はイソフルランで維持した。変数は、横臥、自発呼吸の5分間、それからメカニカルベンチレーションで仰臥の15分間記録した。一般線状混合モデルは、群間の多様な比較のため事後解析で使用した(P<0.05)。
結果:群間あるいは導入前後の群内の群の個体、体温、心肺変数に差はなかった。麻酔導入のプロポフォール用量に群間の有意差があり(PS群は1.9±0.5mg/kg、PM群は1.1±0.5mg/kg)、導入/挿管スコアはPM群が有意に良かった。
結論と臨床関連:重篤な犬で、プロポフォール単独のより高い用量と比べた時、ミダゾラムと共に導入した場合のプロポフォール導入用量は減少し、心肺変数の改善はないが導入の質は改善した。(Sato訳)
■肥満犬の硬膜外注射を補助する超音波検査の使用
The use of ultrasound to assist epidural injection in obese dogs.
Vet Anaesth Analg. 2019 Oct 22. pii: S1467-2987(19)30306-X. doi: 10.1016/j.vaa.2019.10.003. [Epub ahead of print]
da Silva LC, Pacheco PF, Sellera FP, Futema F, Cortopassi SR.
目的:肥満犬の穿刺部位の確認および硬膜外腔の深さを測定するため、超音波検査の使用を評価する
研究デザイン:選択的整形外科手術を行う犬の前向き研究
動物:年齢6.93±2.56歳で、体重46.5±4.1kg(平均±標準偏差)の肥満したラブラドールのオス犬7頭の1集団
方法:それらの犬に対する麻酔プロトコールに硬膜外麻酔を含めた。犬に麻酔をかけ、後肢を前に曲げた伏臥位で、腰仙部椎間板腔の位置を調べるために超音波画像検査を使用した。脊椎とプローブに関する横断面の交点で刺入ポイントを確認した。17ゲージ、8.9cmツーイ針を皮膚に垂直に刺し、腰仙部椎間板腔に進めた。刺入の試み回数を記録し、針の深さは皮膚から黄色靭帯の距離で比較した。
結果:全ての犬で、硬膜外注射は最初の試みで刺入できた。皮膚から硬膜外腔までの距離は、超音波検査で測定した場合、5.95±0.62cmで、ツーイ針で測定した場合、5.89±0.64cmだった。それらの測定値に差はなかった(P=0.26)。測定法の間にかなりの高い相関係数0.966が得られた(P<0.001)。
結論と臨床関連:7頭の肥満犬において、腰仙部硬膜外注射の刺入ポイントを超音波検査で確認できた。超音波検査は腰仙部椎間板腔の位置決定に使用でき、硬膜外注射を実施するため最適な刺入ポイントを確認できることを結果は示す。(Sato訳)
■アルファキサロンの静脈内投与に関係するアナフィラキシーの犬の一例
Anaphylaxis associated with intravenous administration of alphaxalone in a dog.
Aust Vet J. June 2019;97(6):197-201.
DOI: 10.1111/avj.12824
M Haworth , M McEwen , B Dixon , S L Purcell
症例報告:アルファキサロン(Alfaxan®, Jurox, NSW, Aust)の静脈内投与後、その犬のアナフィラキシー症例の臨床症状と管理を述べ、それは過去に報告されていない。
前肢跛行の通常の画像検査を行うメスの避妊済みキャトルドッグを、70分前にアセプロマジンとメタドンで鎮静後、Alfaxanで導入した。Alfaxanの静脈内投与後すぐに急性低血圧に関係する嘔吐と下痢を起こした。胆嚢壁浮腫はアナフィラキシーと一致して見られた。その犬は急速輸液に反応した。アドレナリンは必要なかった。犬は反応から6時間以内に完全に回復し、3日後に導入剤としてプロポフォールを使用し、何事もなく再び麻酔をかけた。
結論:著者の知るところでは、これは犬のAlfaxan静脈内投与に関係するアナフィラキシーの最初に発表された症例である。Alfaxanの2003年から2013年に小動物で反応のAPVMAの報告は、呼吸器、循環器、消化器系に関与するこの症例報告所見と一致する。(Sato訳)
■犬のイソフルランの最小肺胞濃度に対するガバペンチンの経口投与の効果
Effect of oral administration of gabapentin on the minimum alveolar concentration of isoflurane in dogs.
Am J Vet Res. 2019 Nov;80(11):1007-1009. doi: 10.2460/ajvr.80.11.1007.
Johnson BA, Aarnes TK, Wanstrath AW, Ricco Pereira CH, Bednarski RM, Lerche P, McLoughlin MA.
目的:犬のイソフルランの最小肺胞濃度(MAC)に対し、ガバペンチン(20mg/kg)の経口投与の効果を判定する
動物:6頭の健康な成犬(オス3頭、メス3頭、平均体重±SD、24.8±1.3kg)
方法:各犬を2度麻酔にかけた。犬は最初2つの処置のうち1つに振り分けた(ガバペンチン(20mg/kg、PO)投与から2時間後にイソフルランで麻酔維持、またはイソフルラン単独で麻酔維持)。最低7日後、犬にもう一方の処置を行った。イソフルランのMACは、上顎頬粘膜に設置した電極を刺激するiterative bracketing techniqueの使用で測定した。血行力学変数とバイタルパラメーターは、犬が刺激に反応しない最小終末呼気イソフルラン濃度で記録した。結果変数に対する処置の効果は、ペアt-検定で解析した。
結果:イソフルランの平均±SD MACは、イソフルラン単独の犬(0.91 ± 0.26%)と比べ、ガバペンチンとイソフルランの犬(0.71 ± 0.12%)で有意に低かった。イソフルランのMACの平均減少率は20±14%だった。血行力学変数に処置間の有意差はなかった。抜管までの平均時間は、イソフルラン単独の犬(23 ± 15 minutes)よりもガバペンチンとイソフルランの犬(6 ± 4 minutes)で有意に短かった。
結論と臨床関連:犬のイソフルランの麻酔維持の2時間前のガバペンチンの経口投与は、血行力学変数あるいはバイタルパラメーターに影響することなく、MAC補助効果を示した。(Sato訳)
■アセプロマジンあるいはメデトミジンで鎮静をかけた犬のケトフォールによる麻酔の評価
Evaluation of anesthesia produced by ketofol in acepromazine- or medetomidine-sedated dogs.
J Adv Vet Anim Res. 2019 Apr 14;6(2):215-221. doi: 10.5455/javar.2019.f335. eCollection 2019 Jun.
Wamaitha MN, Mogoa EM, Mande JD.
目的:アセプロマジン(ACP)かメデトミジンで鎮静をかけた12頭のオスの雑種犬に対する、ケトフォール(ケタミン+プロポフォール混合液)麻酔を評価するため、無作為化盲検臨床研究を実施した。
素材と方法:ACPを前投与したA群(6)とメデトミジンを前投与したB群(6)に、ケトフォール(ケタミンとプロポフォール)を用いて導入、麻酔維持した。通常の陰嚢前切開による去勢手術を実施した。鎮静スコアと覚醒の状態を評価し、記録した。麻酔の持続と深さを無呼吸と眼瞼およびペダル反射の有無、立たせる試み、筋肉振戦、術後疼痛を用いて評価した。単純統計をスチューデントt検定とマンホイットニー検定(P<0.05)用いて比較した。
結果:メデトミジンで鎮静をかけた犬は、ACPの犬よりも鎮静スコアが高かった。メデトミジン-ケトフォール(24.5±3.1分)は、ACP-ケトフォール(10.0±4.4分)よりも有意に長い麻酔持続時間だった(p<0.05)。ACP-ケトフォールで麻酔をかけた犬の67%は、去勢完了までにケトフォールの追加が必要だった。しかし、メデトミジン-ケトフォールで麻酔をかけた犬に追加の必要はなかった。メデトミジン-ケトフォールは、ACP-ケトフォールと比べ、麻酔は顕著に深く、麻酔からの覚醒もよりスムースだった。
メデトミジン-ケトフォール(中央値、スコア6)は、ACP-ケトフォール(中央値、スコア7)よりも全体の術後鎮痛はよかったが、統計学的有意差はなかった(P=0.25)。両プロトコール共に去勢に対し適正な麻酔を提供したが、ACP-ケトフォールで麻酔をかけた犬の半数以上で手術終了までに追加投与が必要となり、メデトミジン-ケトフォールがより良いプロトコールと思われた。
結論:この研究は、犬の去勢に対し、メデトミジン-ケトフォール麻酔の使用を推奨し、両プロトコール共に術後鎮痛は投与されたが、ACP-ケトフォールで去勢をした犬はよりそのようにすべきである。(Sato訳)
■犬の噴霧あるいは滴下による鼻腔内投与と筋肉内注射によるメデトミジンの鎮静効果の比較
Comparison of the sedative effects of medetomidine administered intranasally, by atomization or drops, and intramuscular injection in dogs.
Vet Anaesth Analg. 2019 Jun 8. pii: S1467-2987(19)30124-2. doi: 10.1016/j.vaa.2019.05.003. [Epub ahead of print]
Jafarbeglou M, Marjani M.
目的:健康犬において、メデトミジンの鼻腔内噴霧(INA)と、鼻腔内滴下(IND)および筋肉内注射(IM)の鎮静効果の比較
研究デザイン:前向き盲検無作為化研究
動物:体重27±4.3kg(平均±標準偏差)の18頭の雑種のシェルター飼育犬のグループ
方法:犬を無作為に6頭ずつに振り分け、メデトミジン(40μg/kg)をINA、IND、IMルートで投与した。投与の容易さはresistance scaleで評価した。複合鎮静スコア(CSS)、心拍数(HR)、呼吸頻度(RF)は直前(T0、基礎)と投与後15、45、75、120分で測定した。鎮静発現の時間を記録した。投与の容易さと鎮静の発現は、Kruskal-Wallis and post hoc Dunn's testsで分析した。経過のCSS、HR、RFはrepeated measures analysis of anovaとleast significant difference testsを使用して分析した。群間のタイムポイントでの比較は、Tukey's post hoc testを使用した。有意はp<0.05とした。
結果:投与の容易さで群間の差は見られなかった(P=0.346)。CSSは全ての群で基礎値より増加した。鎮静の発現は、IMで6.3±2.0分、INAで7.2±2.5分、INDで20.7±5.4分だった。INDのCSSはT15で他の群より低く、T45でINAよりも低かった。IMとIMAでCSSに違いはなかった。全ての群のHRとRFは各基礎値よりも低下した。T45-T120でINDのHRはIMよりも低かった。
結論と臨床関連:鼻腔内噴霧のメデトミジン(40μg/kg)は、健康犬の鎮静でIM注射の代替非侵襲ルートとなり得る。鼻腔内滴下は鎮静の発現が緩やかだった。(Sato訳)
■健康犬の麻酔前投薬に対しミダゾラムとメデトミジンの併用
Use of midazolam in combination with medetomidine for premedication in healthy dogs.
Vet Anaesth Analg. January 2019;46(1):74-78.
DOI: 10.1016/j.vaa.2018.08.001
Delphine Le Chevallier , Louisa Slingsby , Jo Murrell
目的:健康犬の麻酔前投薬において、メデトミジン単独と比較し、異なる用量で静脈内(IV)メデトミジンとミダゾラム連続投与の鎮静効果、プロポフォールの節約特性、導入と挿管の質に対する影響を評価すること
研究デザイン:前向き無作為化盲検臨床研究
動物:体重18±7kg(平均±標準偏差)の計40頭の健康な飼育成犬
方法:犬を4群に振り分けた:メデトミジン15μg/kg(陽性コントロール群)、メデトミジン10μg/kgとミダゾラム0.2mg/kg、メデトミジン5μg/kgとミダゾラム0.3mg/kg、メデトミジン5μg/kgとミダゾラム0.2μg/kg。同じ臨床医が0-15(0=鎮静なし;15=深い鎮静)のcomposite simple descriptive sedation scaleを用い、投与後T2.5分とT5分に鎮静を評価した。導入に対するプロポフォールの用量、導入の質、挿管の容易さ、全ての有害事象を記録した。
結果:T2.5分とT5分で治療群の鎮静スコアに有意差はなかった(それぞれp=0.82とp=0.63)。ミダゾラムとメデトミジンの併用で、鎮静前とは異なる動揺、興奮、落ち着きがない、攻撃性、発声のような矛盾した行動を71%の犬が示した(P<0.0001)。プロポフォールの必要量は群間で違いがなかった。導入と挿管の質は全ての群でスムーズだった。
結論:この研究した用量で健康犬において、麻酔前投薬としてメデトミジン-ミダゾラムの併用IV投与は、中程度の鎮静を誘発したが、矛盾した行動の高い発生と関係した。この薬剤併用IV投与は健康犬において麻酔前投薬として推奨されない。(Sato訳)
■MRI撮影中にアルファキサロンの偶発的過剰投与をした成猫の1例
Accidental alfaxalone overdose in a mature cat undergoing anaesthesia for magnetic resonance imaging
Wendy Bayldon, Jennifer E Carter, Thierry Beths, Leon N Warne, Ted Whittem, Lorena Martinez and Sébastien H Bauquier
Journal of Feline Medicine and Surgery Open Reports
1-6 (2016)
症例要約:本ケースレポートはMRIの麻酔を行なっている12歳の猫におけるアルファキサロン10倍投与での臨床症状と治療について記載する。その猫は麻酔中止後数時間にわたり意識低下と心肺抑制が続き回復に時間がかかったものの退院した。その間、フェースマスクによる酸素吸入、静脈点滴、加温といった支持療法を行なった。麻酔維持にアルファキサロンを使用するメリットとしては薬物動態と以前に報告された致死量が議論される。過量投与を減らす戦略が述べられている。
妥当性と新規性:持続点滴によるアルファキサロンの意図しない過量投与はこれまで猫では報告がなかった。治療は支持療法であり、心肺機能の維持が重要である。可能であれば、ヒューマンエラーを減らすよう設計されたスマートポンプを用いて持続点滴に関連するエラーを予防するべきである。(Dr.Maru訳)
■猫に対するアルファキサロンの静脈および筋肉内投与の薬物動態と効果
Pharmacokinetics and effects of alfaxalone after intravenous and intramuscular administration to cats.
N Z Vet J. July 2018;66(4):172-177.
DOI: 10.1080/00480169.2018.1455541
D Rodrigo-Mocholi , E Escudero , E Belda , F G Laredo , V Hernandis , P Marin
目的:猫に対するアルファキサロンのI/VおよびI/M投与後の薬物動態と、麻酔および鎮静効果を調査する
方法:ヨーロッパ短毛猫(オス3頭、メス3頭)、平均体重4.21(SD 0.53)kg 、年齢3.8(SD 0.9)歳をこのクロスオーバー2処置2時期研究に登録した。5mg/kgのアルファキサロンをI/VあるいはI/Mで投与した。薬剤投与後、2-480分の間に血液サンプルを採取し、アルファキサロンの濃度をHPLCで解析した。血漿濃度-時間曲線を非コンパートメント分析で分析した。薬剤投与後5-120分の間にnumerical rating scale(0-18)で鎮静スコアを評価した。導入期の薬剤投与から座る、伏臥、横臥までの時間、覚醒期の頭をあげる、伏臥、起立位までの時間を記録した。
結果:アルファキサロンの平均半減期と平均滞留時間は、I/V(0.49(SD 0.07)と0.66(SD 0.16)時間)よりもI/M(1.28(SD 0.21)と2.09(SD 0.36)時間)投与後がより長かった(P<0.05)。アルファキサロンI/M注射後の生物学的利用能は94.7(SD 1.98)%だった。伏臥および横臥までの平均時間は、I/V(全ての猫で0分)と比較してI/M(3.73(SD 1.99)と6.12(SD 0.90)分)投与でより長かった(P<0.01)。全身麻酔を示す鎮静スコア(スコア>15)はI/V投与後5-15分から記録され、深い鎮静(スコア11-15)は20分と30分時に記録された。I/M投与後の深い鎮静は10-45分から観察された。各群の1頭は覚醒中に運動亢進を示し、残りの猫は何事もなく覚醒した。
結論と臨床関連:猫に対するアルファキサロンI/V投与で、麻酔の急速でスムースな導入が得られる。I/M投与はI/V投与に比べ、より長い薬剤暴露と延長した半減期が得られた。ゆえに、アルファキサロンのI/M投与は、I/V投与よりは鎮静の発現が緩やかで、全身麻酔というよりは深い鎮静となることを考慮すれば、猫の信頼できて、適当で簡単なルートとなり得る。(Sato訳)
■ロクロニウム0.3mg/kgの静脈内投与は猫の気管挿管に対する状況を改善する:無作為化プラセボ-対照試験
Intravenous rocuronium 0.3 mg/kg improves the conditions for tracheal intubation in cats: a randomized, placebo-controlled trial.
Language: English
J Feline Med Surg. January 2018;0(0):1098612X18754425.
Daniel M Sakai , Kailee Anne Zornow , Luis Campoy , Christina Cable , Leslie D Appel , Holly J Putnam , Manuel Martin-Flores
目的:選択的卵巣子宮摘出術に対し麻酔をかける猫で、気管挿管を容易にするため、ロクロニウム0.3mg/kg静脈投与(IV)の使用を評価した。
方法:30頭のメス猫をケタミンとミダゾラムで麻酔導入後、無作為にロクロニウム0.3mg/kg IVあるいは等量の普通の生理食塩水を投与する群に振り分けた。導入から30秒後、処置を知らされていない調査員が気管挿管を試みた。試みた回数、挿管完了までの時間を測定した。5つの異なる要素からなる複合スコアを基に、挿管状況が容認可能か不可能かを評価した。導入後の無呼吸の持続時間を測定し、ヘモグロビン不飽和(SpO2<90%)の症例を確認した。
結果:挿管はロクロニウムを投与した猫でより早く完了し(ロクロニウム12秒(範囲8-75秒);生食60秒(範囲9-120秒))、試みも少なかった(ロクロニウム1回(範囲1-2回);生食2回(範囲1-3回)、両方P=0.006)。最初の試みでの許容できない挿管状況はロクロニウムの猫で3/15頭、生食で10/15頭に発生した(P=0.01)。無呼吸はロクロニウムで4±1.6分、生食で2.3±0.5分持続した(P=0.0007)。不飽和の症例は観察されなかった。
結論と関連:猫でロクロニウム0.3mg/kg IVは生食に比べて挿管状況を改善し、短時間の無呼吸だけで、挿管までの時間や試行回数を減らす。(Sato訳)
■プロポフォール注入後に尿の緑色への変色が見られた1頭の犬
Green discolouration of urine following propofol infusion in a dog.
Language: English
J Small Anim Pract. September 2017;58(9):536-538.
D Flaherty , A Auckburally
3歳の避妊済みワイマラナーが頚部痛と四肢麻痺を呈した。MRI検査でC3脊椎領域に脊髄膿瘍と考えられる硬膜外マスを確認し、次の朝に外科的探査を行うスケジュールを組んだ。一晩のうちに、吸気時の胸部で奇異性内向き運動を伴う異常に大きな呼吸パターンをするようになった。動脈血ガス解析で呼吸性アシドーシスを認め、過剰な呼吸性疲労を防ぐためベンチレーター補助を開始した。メカニカルベンチレーション中、麻酔はプロポフォールTarget Controlled Infusionシステムを用いて維持し、続いて尿採取システムに明るい緑色の尿が排泄された。
過去にヒトで示されているが、1頭の犬でプロポフォール使用後に緑色の尿が出た最初の報告と思われる。(Sato訳)
■手術前3時間の“軽食”は犬の胃食道逆流の発生を減少させる
A "Light Meal" Three Hours Preoperatively Decreases the Incidence of Gastro-Esophageal Reflux in Dogs.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Nov/Dec;52(6):357-363.
Ioannis Savvas , Dimitrios Raptopoulos , Timoleon Rallis
獣医療及び医療臨床研究からの新しいエビデンスは、術前の絶食時間を減らすことが、手術中の胃食道逆流(gastro-esophageal reflux:GER)の発生を少なくするかもしれないと示している。
全身麻酔中のGERの発生に対する2つの異なる術前絶食時間の影響を評価するため、120頭の犬を無作為に2群に振り分けた:前処置の3時間前に缶詰を与えた(C3群、n=60)、前処置の10時間前に缶詰を与えた(C10群、n=60)。その犬はプロピオニル-プロマジンで前処置した。チオペンタールナトリウムで導入し、ハロタンで維持した。pH電極を食道に導入し、食道pHをコンスタントにモニターした。食道pHが4以下、あるいは7.5以上をGERの指標とした。
C3群の60頭中3頭、C10群の60頭中12頭がGERを起こし、その差は統計学的に有意だった(P=0.025)。
麻酔の3時間前に1日量の半量を犬に与えることは、10時間前に同量、同タイプの餌を与える時と比較して有意に麻酔中のGERの発生を少なくする。
いつもの犬のえさを1日量の半量与えることは、臨床診療において有効かもしれない。(Sato訳)
■健康犬の脾臓の造影超音波検査に対する鎮静の影響
EFFECT OF SEDATION ON CONTRAST-ENHANCED ULTRASONOGRAPHY OF THE SPLEEN IN HEALTHY DOGS.
Vet Radiol Ultrasound. 2016 May-Jun;57(3):276-81.
Federica Rossi , Caroline Fina , Emmelie Stock , Katrien Vanderperren , Luc Duchateau , Jimmy H Saunders
脾臓の造影超音波検査は、この臓器の灌流のダイナミック評価が可能だが、投与された鎮静剤により主観および定量的評価は強く影響を受ける。
この前向き実験研究の目的は、健康犬において脾臓の造影超音波検査中の脾臓の灌流に対する2つの鎮痛剤の影響を検査することだった。
6頭の健康なビーグル犬で脾臓の造影超音波検査を以下の3つのプロトコールの交差研究計画で繰り返した:起きた状態、0.2mg/kgブトルファノール筋注(IM)、デキサメデトミジン500μg/m(2)IM。燐脂質安定化六フッ化硫黄マイクロバブル液(SonoVueR, Bracco Imaging, Milano, Italy)の静脈投与後、脾臓実質の造影強度と灌流パターンを評価し、灌流パラメーターを計算した。
初期相において正常な脾臓はわずかに不均一だったが、その後の実質は均一になった。ブトルファノールの鎮静で脾臓の灌流に変化はなかった。デキサメデトミジンは有意に脾臓の造影が低下し、全体の検査中にびまん性の実質の低エコー源性となった。測定したパラメーターは有意に変化し、到達時間(AT;P<0.0001)およびピークまでの時間(TTP;P<0.0001)の延長、ピークの強度(PI;P=0.0108)、wash-in(P=0.0014)、曲線下面積(AUC;P=0.0421)の低下が見られた。
所見は犬の脾臓造影超音波検査処置に対する鎮静で、ブトルファノールの使用とデキサメデトミジンの使用禁忌を支持した。初期静脈相の脾臓の短時間、びまん性不均一は正常所見と確認できた。(Sato訳)
■フェンタニル誘発性収縮不全の犬2例
Fentanyl-induced asystole in two dogs.
J Small Anim Pract. June 2015;56(6):411-3.
M Jang; W-G Son; I Lee
フェンタニルは小動物で麻酔中の術中鎮痛薬として使用される。
イソフルラン麻酔下の2頭の犬において、フェンタニル初期量3μg/kgのボーラス投与で重度徐脈と収縮不全が観察された。最初の症例では10μg/kgグリコピロレートの前処置は収縮不全を防がなかった;2番目の症例で徐脈を5μg/kgグリコピロレート静脈内投与で治療したが、心拍数は持続的に低下し、その後収縮不全が現れた。
2症例の収縮不全は0.04mg/kgアトロピンの静脈投与と閉胸圧迫で急速に回復した。
この症例報告は、イソフルラン麻酔下の犬においてフェンタニル投与により誘発された収縮不全を述べる。アトロピンはフェンタニル誘発性収縮不全の処置においてグリコピロレートよりも効果的だった。(Sato訳)
■全身麻酔下の猫の呼吸数と瞳孔径変化に対する音楽とそのジャンルの影響:患者の安全性促進に寄与
Influence of music and its genres on respiratory rate and pupil diameter variations in cats under general anaesthesia: contribution to promoting patient safety.
J Feline Med Surg. February 2016;18(2):150-9.
Filipa Mira; Alexandra Costa; Eva Mendes; Pedro Azevedo; L Miguel Carreira
目的:この研究の目的は、全身麻酔下の猫において何かしら聴覚刺激処理がある場合を認識することと、異なる音楽ジャンルを麻酔下の猫に聞かせ、呼吸数(RR)と瞳孔径(PD)の変化を評価し、これと麻酔深度を関連付けることだった。
方法:選択的卵巣子宮摘出術を行う12頭の猫に、術中3ポイント(T1=開腹時;T2=卵巣茎の結紮離断時;T3= 子宮体の結紮離断時)で3つの異なるジャンルの音楽(クラシック(CM)、ポップ(PM)、ヘビーメタル(HM))を2分間聞かせた。複数パラメーター医療モニターでRRを測定し、デジタルノギスで瞳孔径を測定した。音楽は完全に猫の耳を覆うヘッドホンで聞かせた。P値<0.05を統計学的に有意と考えた。
結果:全ての外科的ポイントでRR(T1、P=0.03;T2、P=0.00;T3、P=0.00)、PD(T1、P=0.03;T2、P=0.04;T3、P=0.00)に関し刺激状況間の統計学的有意差が得られた。PRとPDに対しCMを聞いたとき、ほとんどの猫がより低い値を示し、PMを聞いたときは中間の値、HMを聞いたときはより高い値だった。
結論と関連性:全身麻酔下の猫は聴覚刺激処理を行いそうだと示唆される。音楽の暴露は音楽のジャンルで変わるRRおよびPDの変化を誘発し、自律神経系活性に関係する。手術室で音楽の使用は麻酔量減量、望まれない副作用を最小にし、ゆえに患者の安全性が向上するかもしれない。(Sato訳)
■鯉をプロポフォールに浸漬した後の生理および生化学的評価
Physiologic and biochemical assessments of koi (Cyprinus carpio) following immersion in propofol.
J Am Vet Med Assoc. December 1, 2014;245(11):1286-91.
Ayako Oda; Kate M Bailey; Gregory A Lewbart; Emily H Griffith; Lysa P Posner
目的:鯉(Cyprinus carpio)の全身麻酔を誘起する浸漬薬剤としてプロポフォールの効果を判定する
計画:前向き交差試験
動物:10匹の成長した鯉(平均±SD体重、325±81g)
方法:研究中1週間のウォッシュアウト期間を設け、鯉に4つの濃度のプロポフォール(1、2.5、5、10mg/L)を暴露した。続く試験で、鯉をプロポフォール(5mg/L)で麻酔をかけ、プロポフォール(3mg/L)で20分間麻酔を維持した。背側筋に針を刺す方法で有害刺激への反応を評価した。
結果:1mg/Lのプロポフォール濃度で、鯉は鎮静化したが麻酔にかかることはなかった。2.5、5、10mg/Lの濃度では、それぞれ平均±SD麻酔導入時間が13.4±3.3、3.8±1.1、2.3±0.9分で、平均覚醒時間は12.9±8.3、11.0±6.3、18.1±13.0分、平均心拍数は57±25、30±14、22±14回/分、平均鰓蓋回数は58±18、68±15、48±22回/分で針を刺すのに反応したのは10匹中1匹、10匹中2匹、10匹中0匹だった。全ての鯉は満足に覚醒した。20分の麻酔後、2匹の覚醒は4時間以上かかり、1匹は死亡した。
結論と臨床関連:鯉のプロポフォールの浸漬は、濃度が2.5mg/L以上で全身麻酔を誘発した。20分のプロポフォールによる麻酔維持は、9匹中2匹で覚醒時間が延長し、9匹中1匹が死亡した。(Sato訳)
■肥満の小動物における術中生理学と薬理学
Perioperative physiology and pharmacology in the obese small animal patient.
Vet Anaesth Analg. March 2015;42(2):119-32.
Lydia Love; Martha G Cline
目的:犬と猫の肥満により誘発される生理学および薬理学的変化とその術中ケアとの関連に関して入手できる文献を再検討する
研究計画:文献再検討
データベース:PubMed、CAB、Web of Science
結論:犬や猫の肥満は、ますますよく見られるようになっている慢性的炎症の状態である。ヒトのその状況と似ており、小動物の肥満は内分泌、呼吸器、心血管機能の変化と関係していると思われる。また、肥満における体組成の変化は、薬物動態学的変数に影響する可能性がある。呼吸や心血管の支持ケアへの注意や薬物量の調節など、術中ケアの修正は肥満の犬や猫で必要かもしれない。(Sato訳)
■従来の気管内挿管の代わりとして犬の気道装置の盲目的挿入
A blind insertion airway device in dogs as an alternative to traditional endotracheal intubation.
Vet J. February 2015;203(2):187-91.
Timothy James; Michael Lane; Dennis Crowe; William Pullen
気管内挿管は気道の安定を確保する標準的な処置である;しかし、選択的外科処置や緊急時においてヒトでは喉頭気道管理システムの使用が増している。
この研究で、二腔盲目挿入気道装置(BIAD)を犬の食道内に設置し、肺を換気する能力を評価した。
最初は安楽死した10頭の犬で評価し、続いて選択的避妊あるいは去勢処置を行う15頭の雑種犬のグループと健康犬10頭のグループで評価した。処置後の評価は、炎症の症状や粘膜の損傷を検査する喉頭鏡で目視検査を含めた。全ての動物でその装置は適切な換気を提供した;その犬は麻酔下あるいはしっかりとした鎮静化で10分から2時間行い、何事もなく覚醒した。食道炎、吸引性肺炎、気管炎、皮下気腫、食道裂傷などの所見は観察されなかった。
結論として、二腔気道装置の使用は犬の気道管理システムの代替法としてさらに研究する必要がある。(Sato訳)
■犬の肺動脈弁狭窄に対しバルーン弁形成中の麻酔の管理と合併症:39症例(2000-2012)
Management and complications of anaesthesia during balloon valvuloplasty for pulmonic stenosis in dogs: 39 cases (2000 to 2012).
J Small Anim Pract. April 2014;55(4):207-12.
R V Ramos; B P Monteiro-Steagall; P V M Steagall
目的:この研究の目的は、バルーン弁形成を行う犬において麻酔の管理と合併症を報告することである。
方法:2000年から2012年の間に肺動脈弁狭窄と診断され、バルーン弁形成を行った犬のカルテを回顧的に調査した。
結果:39症例を確認した(28頭オス、11頭メス)。年齢と体重の中央値(範囲)は6か月(4-48か月)と11.5kg(2.0-30.3kg)だった。最も一般的に見られた犬種は雑種(n=7、17.9kg)とイングリッシュブルドック(n=6、15.3%)だった。多く導入に使用された麻酔は、ケタミン-ジアゼパム(n=8、20.5%)、プロポフォール-ジアゼパム(n=8、20.5%)、プロポフォール-ミダゾラム-リドカイン(n=6、15.4%)の静脈内投与で、フェンタニルあるいはリドカインと併用してイソフルランで維持した。麻酔と手術時間(平均±sd)は268.5±54分と193.2±50分だった。一般的な術中合併症は低血圧(n=19、48.7%)、徐脈(n=8、20.5%)、脱飽和(n=7、17.9%)だった。心臓不整脈は21頭(53.8%)で観察された。バルーン拡張後の重度低血圧に続き心停止で1頭(2.6%)が死亡した。
臨床意義:肺動脈弁狭窄でバルーン弁形成を行う若い犬で麻酔はうまく実施できる。麻酔の管理には合併症の厳密なモニタリングと即座の治療が必要である。麻酔リスクはバルーン拡張中に増加し、心停止が起こるかもしれない。(Sato訳)
■健康な犬の麻酔導入に対しプロポフォールとプロポフォールとケタミンの混合物であるケトフォールの比較
Comparison of propofol with ketofol, a propofol-ketamine admixture, for induction of anaesthesia in healthy dogs.
Vet Anaesth Analg. November 2014;41(6):575-82.
Fernando Martinez-Taboada; Elizabeth A Leece
目的:プロポフォールあるいはケトフォール(プロポフォールとケタミンの混合液)を使用した健康犬の麻酔導入に関する比較
研究デザイン:前向き、無作為、対照、盲検
動物:70頭の健康な犬(33頭オスと37頭メス)、年齢6-157ヶ月、体重4-48kg
方法:前処置の後、プロポフォール(10mg/mL)あるいはケトフォール(9mgプロポフォールおよび9mgケタミン/mL)を喉頭鏡検査及び気管挿管が可能になるまで静脈点滴した。心拍数(PR)、呼吸数(f(R))、動脈血圧(ABP)を前処置後の値と比較し、最初の呼吸までの時間(TTFB)を記録した。鎮静の質、気管挿管、麻酔導入に処置が知らされていない1人の観察者によりスコアを付けた。マンホイットニーあるいはt検定を実施し有意はp≦0.05とした。
結果:導入液量(平均±SD)はプロポフォール(0.4±0.1mL/kg)よりもケトフォール(0.2±0.1mL/kg)の方が少なかった(p<0.001)。PRはケトフォールで増加(35±20回/分)したが、プロポフォール後は一貫しなかった(4±16回/分)(p<0.001)。ケトフォールの投与した時の平均動脈血圧(MAP)(82±10mmHg)はプロポフォール(77±11)よりも有意に高かった(p=0.05)。TTBFは同じだが、ケトフォールの使用でf[R]は大きく低下した(中央値(範囲):ケトフォール-32(-158から0)プロポフォール-24(-187から2)回/分))(p<0.001)。鎮静は両群同じだった。気管挿管と導入の質はプロポフォールよりもケトフォールの方がよかった(P=0.04と0.02)。
結論と臨床関連:ケトフォールによる麻酔導入はプロポフォールよりも心拍数およびMAPはより高かったが、呼吸数は低かった。ケトフォールの導入の質や気管挿管は一貫して良好だったが、プロポフォールを使用した時はより不定だった。(Sato訳)
■健康なビーグル犬でプロポフォールとプロポフォール-ケタミン混合による導入および完全静脈麻酔の心肺機能、覚醒の質、必要総量の比較
A comparison of cardiopulmonary function, recovery quality, and total dosages required for induction and total intravenous anesthesia with propofol versus a propofol-ketamine combination in healthy Beagle dogs.
Vet Anaesth Analg. July 2015;42(4):350-9.
Martin J Kennedy; Lesley J Smith
目的:プロポフォール(P)または1:1mg/mLで混合したプロポフォールとケタミン(KP)による導入および60分の完全静脈麻酔(TIVA)の心肺機能、覚醒の質、必要総量を比較する。
研究計画:無作為化交差試験
動物:体重9.4±1.8kgのメスのビーグル10頭
方法:導入とTIVAの維持麻酔を行うため、Pあるいは1:1mg/mLの比率のKPの犬に対する投与を無作為に行った。基準となる体温、脈拍、呼吸数(fR)、非侵襲性平均血圧(MAP)、ヘモグロビン酸素飽和度(SpO2)を記録した。犬に挿管し、ルームエアの自然呼吸とした。心拍数(HR)、fR、MAP、SpO2、呼気終末二酸化炭素分圧(Pe’CO2)、体温、流涎スコアを5分ごとに記録した。動脈血ガス解析を10分、30分、60分、覚醒後に実施した。60分で注入を中止し、総薬剤投与量、抜管までの時間、覚醒スコアを記録した。他の処置を1週間後に実施した。
結果:導入でKPはプロポフォールよりも有意に必要量が少なく(4.0±1.0mg/kg v.s. 5.3±1.1mg/kg、p=0.0285)、維持も少なかった(0.3±0.1mg/kg/分 v.s. 0.6±0.1mg/kg、p=0.0018)。KPはHRが有意に高かった。PとKPともに基準と比べて有意にMAPが低かった。いくつかの計測点でKPのMAPが有意に高かった。Pは呼吸変数に最小限の影響だったが、KPは有意な呼吸抑制が起きた。流涎スコア、抜管までの時間あるいは覚醒スコアに有意な違いはなかった。
結論と臨床関連:ケタミンとプロポフォールの1:1mg/mlでの混合による健康犬への完全静脈麻酔は有意にプロポフォール量を減らし、HRは高く、MAPを改善し、覚醒の質に違いはなかったが、プロポフォール単独よりも有意に呼吸抑制を起こした。(Sato訳)
■卵巣子宮摘出術を行う猫でアルファキサロンあるいはケタミン-メデトミジン:術中パラメーターと術後疼痛の比較
Alfaxalone or ketamine-medetomidine in cats undergoing ovariohysterectomy: a comparison of intra-operative parameters and post-operative pain.
Vet Anaesth Analg. November 2014;41(6):644-53.
Karin S Kalchofner Guerrero; Iris M Reichler; Andrea Schwarz; Rahel S Jud; Michael Hassig; Regula Bettschart-Wolfensberger
目的:卵巣子宮摘出術(OHE)におけるアルファキサロンあるいはケタミン-メデトミジン麻酔後の猫の術後疼痛と、術中および術後の生理学的パラメーターを比較する
研究計画:前向き盲検無作為化臨床研究
動物:21頭の健康な猫
方法:猫を無作為に2群に振り分けた:A群、アルファキサロンで導入、維持(5mg/kg、IVに続きボーラス2mg/kg、IV);MK群、導入はメデトミジン30μg/kg、IM後ケタミン5mg/kg、IVで行い、ケタミン2mg/kg、IVで維持。メロキシカム(0.2mg/kg、IV)を術後に投与した。基本の生理学的データを収集した。composite pain scale(CPS;0-24ポイント)、ビジュアルアナログスケール(VAS0-100mm)、mechanical wound threshold (MWT)デバイスの3つの方法で時間T=-2、0、0.5、1、2、4、6、8、12、16、20、24時間で術後疼痛を評価した。CPSが13ポイント以上の場合、ブトルファノール(0.2mg/kg、IM)を投与した。適切であれば、一般線形モデル、Kruskal-Wallis解析、Bonferroni-Dunn test、unpaired t-test、Fisher's exact testを用いてデータを解析した。有意はp<0.05とした。
結果:A群においてVASsは0.5、1、2、4、20時間で有意に高かった。MK群において8、12時間のMWT値は有意に高かった。両群においてMWTの基準と比較して術後は有意に低下した。どの時点でもCPSに違いはなかった。5頭はレスキューの鎮痛を必要とした(A群4頭、MK群1頭)。
結論と臨床関連:OHEを行う猫において、ケタミン-メデトミジンによる麻酔は、アルファキサロンよりも術後のより良い鎮痛をもたらすことが分かった。しかし、一次性痛覚過敏は両群で起こった。OHEを行う猫でアルファキサロンによる麻酔導入と維持は適しているが、追加の鎮静および鎮痛薬を強くお勧めする。(Sato訳)
■鯉(Cyprinus carpio)の浸漬麻酔に対するアルファキサロンの効果
The efficacy of alfaxalone for immersion anesthesia in koi carp (Cyprinus carpio).
Vet Anaesth Analg. July 2014;41(4):398-405.
Larry J Minter; Kate M Bailey; Craig A Harms; Gregory A Lewbart; Lysa P Posner
目的:鯉(Cyprinus carpio)の麻酔で水浸による1つの導入用量と2つの維持用量の生理学および行動学的効果の特徴を述べる
研究計画:前向き、被検者内完全交差試験
動物:体重中央値344.5g(範囲292.0-405.0g)の成長した鯉(Cyprinus carpio)6尾
方法:動かなくなりまで鯉をアルファキサロン10mg/Lを含む水につけ、その後、水再循環システムで1あるいは2.5mg/Lのアルファキサロンで維持した。麻酔導入および回復期の時間を記録した。麻酔前、麻酔中、麻酔後の生理学および血液ガスパラメーターを評価した。侵害刺激に対する反応も評価した。
結果:全ての鯉の導入麻酔時間の中央値は5.4分だった。覚醒までの時間中央値は1.0mg/Lの量で11.8分、2.5mg/Lの量で26.4分であり、有意差があった(P=0.04)。鰓蓋の動作の停止が1.0mg/Lの鯉で0/6尾、2.5mg/Lの鯉で4/6尾に見られた。全ての麻酔の期間で心拍数の中央値に違いは観察されなかった。侵害刺激に対する反応は1.0mg/Lで6/4尾、2.5mg/Lで0/6尾だった。酸素化と換気は実験中に変化しなかったが、血液pHの有意な低下と、血中乳酸濃度の上昇が見られた。
結論と臨床関連:浸漬によるアルファキサロンの投与は、導入および維持麻酔剤として鯉の死亡率もなく急速で確かな麻酔を提供した。2.5mg/Lの維持量は侵害刺激に対する反応も十分防ぐが、鰓蓋の動く回数において臨床的に関連する抑制をかけた。(Sato訳)
■猫における鼻腔内および筋肉内ケタミン-ミダゾラム併用投与の比較
Comparison of intranasal and intramuscular ketamine-midazolam combination in cats.
Vet Anaesth Analg. March 2015;42(2):178-81.
Mehdi Marjani; Vahid Akbarinejad; Mohsen Bagheri
目的:猫におけるケタミン-ミダゾラム併用投与を鼻腔内(INS)と筋肉内(IM)の経路で比較することだった。
研究計画:乱塊法
動物:12頭の健康な雑種猫(オス6頭、メス6頭)
方法:薬剤の併用は、ケタミン(14mg/kg)とミダゾラム(0.5mg/kg)だった。IM群では大腿四頭筋に注射した;INS群は両外鼻孔に均等に滴下した。心拍数と呼吸数、末梢ヘモグロビン酸素飽和度(SpO2)と直腸温を投与前と一定間隔でモニターした。発現までの時間、鎮静の持続時間、覚醒中から頭を上げるまで、胸骨の横臥まで、回復までの時間を記録した。
結果:IMよりもINSの時間が短かった胸骨の横臥までの時間まで(p=0.034)を除いて、測定したどの時間もグループ間で有意差はなかった。呼吸数はIMよりもINSで多かった(p=0.029)が、他の生理学的パラメーターで有意差はなかった。鎮静がかかる前とさらに鎮静がかかった時の両群のSpO2は低かった。
結論:INSケタミン-ミダゾラムは猫の鎮静に有効であることが実証された。
臨床関連:猫においてケタミン-ミダゾラムの鼻腔内投与は非外傷性で、この薬剤を鎮静誘発に使用するときケタミン併用の注射の疼痛を避けることができるかもしれない。(Sato訳)
■卵巣子宮摘出術を行う猫においてアセプロマジンあるいはメデトミジンで鎮静後の完全静脈麻酔に対するアルファキサロンの最小注入速度
Minimum infusion rate of alfaxalone for total intravenous anaesthesia after sedation with acepromazine or medetomidine in cats undergoing ovariohysterectomy.
Vet Anaesth Analg. September 2014;41(5):480-90.
Andrea Schwarz; Karin Kalchofner; Julia Palm; Stephanie Picek; Sonja Hartnack; Regula Bettschart-Wolfensberger
目的:ブトルファノール-アセプロマジンあるいはブトルファノール-メデトミジンで前処置し、卵巣子宮摘出術を行う猫において、アルファキサロンによる完全静脈麻酔(TIVA)の導入量、その後の最小注入速度、続く心肺への影響、覚醒の特性、アルファキサロン血漿濃度を判定すること
研究計画:前向き無作為盲検臨床研究
動物:28頭の健康な猫
方法:卵巣子宮摘出術を行う猫を2群に振り分けた:ブトルファノール(0.2mg/kg筋肉内注射(IM))と共に、AA群(n=14)はアセプロマジン(0.1mg/kg IM)とMA群(n=14)はメデトミジン(20μg/kg IM)。
麻酔はアルファキサロンで効果が出るまで導入し(0.2mg/kg静脈内注射(IV)20秒ごと)、最初はアルファキサロン8mg/kg/h IVで維持し、注入速度は心拍数(HR)、呼吸数(fR)、ドップラー血圧(DBP)および眼瞼反射の有無により5分ごとに調節した(±0.5mg/kg/h)。猫が動く/嚥下する場合(0.5mg/kg)、あるいは呼吸数が40回/分より多い場合(0.25mg/kg)、アルファキサロンをIVボーラスで追加投与した。血漿アルファキサロン濃度測定のために静脈血サンプルを採取した。術後はメロキシカム(0.2mg/kg IV)を投与した。線形混合モデル、カイ二乗、フィッシャーの正確、T検定でデータを解析した。
結果:アルファキサロンの麻酔導入量はMA群の方が少なかった(MA群:1.87±0.5mg/kg;AA群:2.57±0.41mg/kg)。無呼吸になった猫はいなかった。術中のボーラス投与必要数およびTIVA速度(AA群:11.62±1.37、MA群10.76±0.96mg/kg/h)で群間有意差はなかった。血漿濃度は0.69から10.76μg/mlの範囲だった。MA群において、fR 、終末呼気CO2、体温、DBPは有意に高く、HRは低かった。
結論と臨床関連:猫においてメデトミジンあるいはアセプロマジンによる鎮静後、アルファキサロン完全静脈麻酔により、ベンチレートのサポートを必要としない適当な麻酔が得られた。それら前処置後、著者らは最初のアルファキサロン完全静脈麻酔の注入速度10mg/kg/hを推奨する。(Sato訳)
■犬における低用量メデトミジンとブトルファノールあるいはメタドンの筋肉内注射による鎮静効果
The sedative effects of intramuscular low-dose medetomidine in combination with butorphanol or methadone in dogs.
Vet Anaesth Analg. 2015 Mar 20. doi: 10.1111/vaa.12256. [Epub ahead of print]
Puighibet Z, Costa-Farre C, Santos L, Canfran S, Gomez de Segura IA.
目的:犬に対する低用量メデトミジンとブトルファノールあるいはメタドンの混合筋肉内注射(IM)の鎮静効果を比較する
研究計画:前向き盲検無作為化臨床試験
動物:診断あるいは外科的選択的処置に対し、鎮静が必要な健康な成犬48頭
方法:犬にメデトミジン(2.5μg/kg)とブトルファノール(0.4mg/kg)あるいはメタドン(0.4mg/kg)の併用でIMにより鎮静をかけた。鎮静の程度は10分ごとに30分間、numeric descriptive scaleを用いて評価した。心拍数(HR)、呼吸数、毛細血管再充満時間、体温、つま先をつまんだ時の反応を記録した。30分時の静脈カテーテル設置の反応も評価した。
結果:どの研究ポイントでも2つの組み合わせの処置に鎮静の程度に関する有意差はなく、最大効果が20分から30分の中程度から深い鎮静が得られた。両オピオイドの組み合わせで10分から30分の間にHR低下が見られた(P<0.05);この低下に処置間の有意差はなかった(P>0.05)。他の変数のいずれにも処置間の違いは見られなかった。
結論と臨床関連:低用量メデトミジンとブトルファノールあるいはメタドンとの組み合わせは、同程度の鎮静をもたらす。(Sato訳)
■猫の去勢手術に対し筋肉内メデトミジン-ケタミンの単独あるいはモルヒネまたはトラマドールを追加して投与した時の麻酔、鎮痛および心肺効果
Anaesthetic, analgesic and cardiorespiratory effects of intramuscular medetomidine-ketamine combination alone or with morphine or tramadol for orchiectomy in cats.
Vet Anaesth Analg. July 2014;41(4):411-20.
Gareth E Zeiler; Brighton T Dzikiti; Geoffrey T Fosgate; Frik G Stegmann; Frans J Venter; Eva Rioja
目的:猫の去勢手術でメデトミジンとケタミンの筋肉内(IM)投与のみ、あるいはモルヒネかトラマドールを追加して投与した時の麻酔、鎮痛、心肺効果を比較する
研究計画:無作為化盲検前向き臨床研究
動物:30頭の飼い猫
素材と方法:各群10頭の猫にメデトミジン(60μg/kg)とケタミン(10mg/kg)の組み合わせのみ(MedK);モルヒネ(0.2mg/kg)を追加(MedKM)、あるいはトラマドール(2mg/kg)を追加(MedKT)して筋肉内投与した。導入の時間、主術中および覚醒中の出来事を記録し、生理学的パラメーターを測定し記録した。鎮痛は投与後3-8時間ごとにビジュアルアナログスケール、コンポジットスコアリングシステム、von Frey収縮域値装置で評価した。データは線形混合モデル、Kruskal-Wallis、カイ二乗検定で分析した(P<0.05)。
結果:導入と覚醒時間の中央値(分)はグループ間で有意差がなかった(P=0.125):導入5.6(2.7-8.0)、7.4(5.1-9.6)、8.0(5.8-14.9)と覚醒128.5(95.1-142.8)、166.4(123.1-210.0)、142.9(123.4-180.2)、それぞれMedK、MedKT、MedKM。2頭の猫(MedKM)は気管内挿管の時にアルファキサロンを必要とした。全てのグループで3、4頭が術中のイソフルラン追加を必要とした。全体的に動脈内酸素張力は低かった(平均±SD:66±2mmHg)。手術で収縮期動脈圧(P<0.001)、ヘモグロビン飽和(P<0.001)、呼吸数(P=0.003)、心拍数(P=0.002)の上昇を引き起こした。疼痛スコアはグループ間に有意差がなかった。Von Frey反応は全ての時間で減少した;切り替え時間は処置により変化した(P<0.001)、MedKはMedKM、MedKTと比べて基準値に戻るのがより速かった。追加の鎮痛処置を必要とした猫はいなかった。
結論と臨床関連:猫の去勢で全て3つのプロトコールは十分な麻酔と鎮痛を得ることができる。しかし、手術を維持するのにレスキューの麻酔が必要な猫もいる。酸素の供給を勧める。(Sato訳)
■2頭の猫に見られた脳幹脊髄モルヒネ誘発の掻痒とプロポフォールの麻酔量での治療
Neuraxial morphine induced pruritus in two cats and treatment with sub anaesthetic doses of propofol.
Vet Anaesth Analg. September 2013;40(5):517-20.
Thomas Gent; Isabelle Iff; Regula Bettschart-Wolfensberger; Martina Mosing
病歴:2頭の猫が整形外科のために来院した。
身体検査:整形外科的傷害を除いては、臨床的検査で異常はなかった。
管理:麻酔管理の一部として、1頭の猫にくも膜下モルヒネを投与し、他の1頭は硬膜外モルヒネを投与した。覚醒後、激しいグルーミングが観察された。十分な鎮痛を行った後のこの行動は、掻痒と解釈した。最初の猫は、当初掻痒をメデトミジンの持続定量点滴(CRI)1と1.5μg/kg/時で管理した。低用量では鎮静したが掻痒は消えず、高用量では掻痒は消えたが鎮静も誘発した。2回のプロポフォール(脂質乳剤)0.1mg/kgのボーラス投与で鎮静を起こすことなく掻痒が消えた。2頭目の猫は、20分かけ4回のプロポフォール0.1mg/kgのボーラス投与で治療に成功した。
追跡:プロポフォールでの治療後、2頭の掻痒は再発せず、退院した。
結論:これは猫のモルヒネ誘発性掻痒で、低用量プロポフォールで管理した最初の臨床報告である。それらの症例は、脂質製剤形態のプロポフォールに対する止痒メカニズムを示唆する。(Sato訳)
■ビーグル犬でブトルファノール、ミダゾラム、アルファキサロンの組み合わせによる心肺への影響と麻酔効果
Cardiopulmonary and anesthetic effects of the combination of butorphanol, midazolam and alfaxalone in Beagle dogs.
Vet Anaesth Analg. 2014 Aug 12. doi: 10.1111/vaa.12223.
Seo JI, Han SH, Choi R, Han J, Lee L, Hyun C.
目的:犬においてブトルファノール、ミダゾラム、アルファキサロンを組み合わせて使用した場合の生理学的変数、動脈血ガス値、麻酔導入の質、覚醒の質を評価する。
動物:体重8.3±3.1kgの健康なビーグルの成犬10頭
方法:ブトルファノールの静脈投与(IV)前、10分後のミダゾラム、アルファキサロンのIV前、その後20分間5分ごとに直腸温(T)、心拍数(PR)、呼吸数(RR)、平均動脈圧(MAP)、動脈血ガスを測定し、記録した。Mモードの心エコー検査で左室(LV)指数をアルファキサロンの投与前と5分後に測定した。麻酔導入と覚醒の質的スコアを割り当て、麻酔と覚醒の持続時間を計算し、有害事象を記録した。
結果:導入および覚醒の質に対するスコアはすばらしかった。重大な有害事象は観察されなかった。導入から抜管、起立(フルリカバリー)までの平均±SD時間はそれぞれ29±6分と36±8分だった。薬剤投与後、PR、RR、MAPに統計学的に有意な変化があった。アルファキサロンのの注射後、一時的な高炭酸ガス血となった。心エコー検査によるLV指数はアルファキサロン注射後に低下したが、それらは統計学的に有意な変化ではなかった。
結論と臨床関連:健康犬においてブトルファノール、ミダゾラム、アルファキサロンの組み合わせは、素晴らしい質の導入と麻酔を提供し、心肺への影響は最小だった。(Sato訳)
■犬のプロポフォール麻酔に対するトリフルプロマジンHCLとジアゼパム前処置の血液生化学的研究
Haemato-biochemical studies on triflupromazine HCL and diazepam premedication for propofol anaesthesia in dogs
Vet World. November 2012;5(11):672-675. 17 Refs
L Suresha; B N Ranganath; M S Vasanth; L Ranganath
目的:犬の血液生化学パラメーターに対し、麻酔前投薬としてプロポフォールと組み合わせたトリフルプロマジンHclとジアゼパムの効果を研究する
素材と方法:年齢、性別、犬種にかかわりなく異なる外科手術を行う犬16頭の臨床的症例を2つの群、すなわち8頭ずつA群(トリフルプロマジンHcl-プロポフォール)とB群(ジアゼパム-プロポフォール)に無作為に振り分けた。以下の異なる間隔でヘパリン化シリンジによりにより採血した:前処置前、前処置後15分目、プロポフォールで導入後15分、1時間、6時間、24時間、48時間目。サンプルは種々の血液および生化学分析にかけた。
結果:両群において48時間の観察している間、血液学的に総赤血球数(TEC)、パック細胞容積(PCV)、ヘモグロビン(Hb)の有意な落ち込み(P0.05)を示したが、TLCは有意ではない低下を示した。この研究で、A群における血糖値は15分から1時間の間に有意に上昇し、B群では15分から6時間の間に有意に上昇した。48時間の観察期間を通して両群の総血漿タンパク(TPP)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリフォスファターゼ(AP)、クレアチニン濃度に有意差はなかった。
結論:2つの麻酔の組み合わせは安全で、スムースなストレスのない覚醒を伴う有効性を認めた。しかし、ジアゼパムに比べてトリフルプロマジンHcl前投与は、より良く早い鎮静効果、プロポフォールの導入量以下で麻酔の長期持続、より短い覚醒時間をもたらした。(Sato訳)
■中枢神経軸性麻酔により誘発した低血圧と掻痒の猫の1例
Hypotension and pruritus induced by neuraxial anaesthesia in a cat.
Aust Vet J. October 2012;90(10):402-3.
S H Bauquier
ブピバカインと併用した予防的硬膜外モルヒネ投与は、長時間持続する鎮痛を得るのに効果的だが、中枢神経軸性麻酔は心血管抑制および掻痒を引き起こす可能性がある。
この報告は、右十字靱帯断裂の外科的修復で来院した3歳の避妊済みメスの家猫短毛種に、髄膜下モルヒネおよびブピバカイン投与後の低血圧と掻痒の発症および治療を示す。
オピオイド誘発性掻痒は通常たびたび起こる合併症と考えられないが、容易に覚醒中の不安と誤解されるかもしれない。オンダンセトロンの投与で治療でき、ヒトでは一般に投与から30分以内に反応する。(Sato訳)
■健康な猫の血液学的数値に対する標準的麻酔プロトコールの影響
Effects of a standardized anesthetic protocol on hematologic variables in healthy cats.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):701-5.
Marc P Dhumeaux; Elisabeth C R Snead; Tasha Y Epp; Susan M Taylor; Anthony P Carr; Ryan M Dickinson; Marina L Leis
この研究は猫の血液学的数値に対する静脈内ケタミンおよびミダゾラム投与、筋肉内ブプレノルフィン投与を使用した麻酔プロトコールの影響を評価した。
12頭の健康な成猫から麻酔の導入前後にCBC検査のため採血した。
麻酔の導入後、赤血球数、ヘモグロビン濃度、ヘマトクリット値の有意な低下を認めた。平均して赤血球数とヘマトクリット値は25%低下し、ヘモグロビン濃度は24%低下した。
ヘマトクリット値を基にすると、麻酔前に貧血と考えられる猫がいないにもかかわらず、麻酔中の猫から採取した3/12サンプル(25%)は貧血患者に属すると解釈されていただろう。
この研究は、このプロトコールで麻酔をかけた後に採取した血液のCBCは、貧血の誤診をするかもしれないので注意して解釈すべきだと示唆する。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症の猫に対するアルファキサロンとブトルファノール併用皮下投与による鎮静
Sedation of hyperthyroid cats with subcutaneous administration of a combination of alfaxalone and butorphanol.
Aust Vet J. April 2013;91(4):131-6.
S Ramoo; L A Bradbury; G A Anderson; L A Abraham
目的:甲状腺機能亢進症の猫のグループに対し、アルファキサロンとブトルファノールの皮下投与による鎮静、呼吸および心血管系への効果を評価する
デザイン:前向き単一施設観察研究
方法:飼い主が所有する甲状腺機能亢進の猫(n=20)を研究し、アルファキサロン(3mg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)を皮下投与して鎮静をかけた。45分の観察耳管の間で15分ごとに鎮静のスコア、心拍数、呼吸数、血圧を測定し、鎮静前の値と比較した。45分終了時、最小限の抵抗性があり、咽頭反射が損なわれていない場合、ヨウ素131の経口投与に対し十分な鎮静かどうかを評価した。
結果:最大鎮静スコア中央値は注射後45分で達成した。最も低い平均心拍数、呼吸数、血圧は注射後30分で起きた。3つのタイムポイント全てで呼吸数の有意な減少を認めた(P<0.001)。収縮期、拡張期、平均血圧測定値も注射後15、30分で有意に低下した(P<0.05)。
結論:アルファキサロンとブトルファノールの皮下投与は、短時間の処置を行う猫の鎮静に使用できる。血圧の一時的低下が見られた猫もいたので、モニターすべきである。甲状腺が正常な猫においても鎮静、呼吸、心血管系への影響が同じかどうかを調べる追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の帝王切開においてアルファキサロンとプロポフォールによる麻酔導入後のアプガールスコア
Apgar score after induction of anesthesia for canine cesarean section with alfaxalone versus propofol.
Theriogenology. November 2013;80(8):850-4.
A Doebeli; E Michel; R Bettschart; S Hartnack; I M Reichler
22頭の母犬、81頭の子犬で、緊急帝王切開に対し麻酔導入剤としてアルファキサロンとプロポフォールの新生児の生命力に対する影響を研究した。
外科適応と評価後、母犬をアルファキサロン(1-2mg/kg)かプロポフォール(2-6mg/kg)による麻酔導入に無作為に振り分けた。両薬剤は気管内挿管可能になるまで静脈投与し、イソフルランで維持した。新生児の活力は、心拍数、呼吸努力、反射感応性、運動性、粘膜色を考慮した修正アプガールスコア(最大スコア10)で評価した;出産後5、15、60分目に採点した。
出産後3か月まで出産した子犬数、生存した子犬の率にグループによる違いはなかった。麻酔導入薬と採点の時間はアプガールスコアと関係したが、出産の時間は関係しなかった。出産後5、15、60分目のアルファキサロン群のアプガールスコアは、プロポフォール群のものよりも高かった;群間で総スコアの差は3.3(95%信頼区間:1.6-4.9;P<0.001)だった。
結論として、緊急帝王切開を行うメス犬の麻酔導入に、アルファキサロンとプロポフォールは安全に使用できる。それら薬剤を使用後の子犬の生存性は同じだが、アルファキサロンの方が出産後60分の間の子犬の活力が良かった。(Sato訳)
■犬のプロポフォール必要量に対するボディコンディションの影響
The effect of body condition on propofol requirement in dogs.
Vet Anaesth Analg. 2013 Sep;40(5):449-54. doi: 10.1111/vaa.12034. Epub 2013 Mar 28.
Boveri S, Brearley JC, Dugdale AH.
目的:犬の筋肉内(IM)麻酔前投薬の鎮静効果、あるいは気管内挿管ができるまでの静脈内(IV)プロポフォール必要量にボディコンディションスコア(BCS)が影響するかどうかを判定する
研究構成:前向き臨床研究
動物:全身麻酔をかける46頭の飼育されている犬
方法:BCS(BCS、1(痩せた)-9(肥満))に従い犬をグループ分けした:もしBCSが4-5ならば正常体重群(NG、n=25)、もしBCSが6以上ならば体重過多群(OG、n=21)。メデトミジン(5μg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)のIM注射の前と20分後に鎮静状態に対するスコアを付け、挿管が可能になるまでプロポフォールの1.5mg/kg/分での微量点滴で麻酔導入した。投与したプロポフォールの総量を記録した。データの正常性を検査し、それからスチューデントT検定、マン-ホイットニーU検定、カイ二乗検定あるいは線上回帰で適宜分析した。
結果:NGのプロポフォール必要量の平均(±SD)は2.24±0.53mg/kgで、OGは1.83±0.36mg/kgだった。群間の差は統計学的に有意だった(P=0.005)。鎮静の程度は群間で違いがなかった(P=0.7)。導入後の無呼吸はNGの犬25頭中11頭、OGの犬21頭中3頭で発生した(P=0.052)。
結論:正常なボディコンディションスコアの犬と比べ、肥満犬は挿管可能になるまでの体重あたりのプロポフォール静脈投与の必要量はより少なく、静脈麻酔投与量は除脂肪体重に従い算出するべきだと示唆される。過体重/肥満犬において、体重あたりのより低い投与量は、導入後の無呼吸を少なくさせるのかもしれない。BCSによるIM前投薬の効果に有意な影響はなかった。
臨床関連:過体重の犬におけるプロポフォールでの全身麻酔導入は、正常体重の犬よりも少ない量が予想される。(Sato訳)
■90分の全身麻酔を行った健康犬の体温低下を防ぐ3つの異なる方法の比較
Comparison of three different methods to prevent heat loss in healthy dogs undergoing 90 minutes of general anesthesia.
Vet Anaesth Analg. 2013 Jan 24. doi: 10.1111/vaa.12010.
Clark-Price SC, Dossin O, Jones KR, Otto AN, Weng HY.
目的:標準的な麻酔中の体温低下を抑える方法としてタオルを敷く、温水パッドを敷く、強制温風ブランケットをかぶせる処置の比較
研究構成:前向き無作為交差研究
動物:体重16.3-19.6kgの8頭の健康な雑種犬
方法:犬は90分間4回麻酔をかけた。犬をスチール台の上に乗せる(処置TA)、犬の下にコットンタオルを敷く(処置TO)あるいは循環温水パッドを敷く(処置WP)、あるいは犬の下にタオルを敷いて上に強制温風ブランケットをかぶせる(処置WAB)処置を行った。直腸温(RT)を5分ごとに記録した。麻酔前のRT(基線)から与えられた時点のRTを引いて体温変化(ΔRT)を計算し、時間とともに比較した。
結果:90分後、各ΔRTはTAで3.42±0.29度、TOで2.78±0.43度、WPで1.98±0.29度、WABで0.91±0.27度だった。ΔRTの有意差は、20分時のTAとWAB(0.94±0.42度、p=0.0206)、30分時のTOとWAB(1.16±0.62、p=0.0063)、50分時のWPとWAB(0.96±0.98度、p=0.0249)、35分時のTAとWP(1.19±0.54度、p=0.0091)、70分時のTOとWP(1.12±0.56度、p=0.0248)、75分時のTAとTO(0.96±0.62度、p=0.0313)で発生した。各処置の間のΔRTのそれらの違いは、示された時間から麻酔終了まで持続した。
結論と臨床的関連:麻酔中の体温低下を抑えるための処置で、調べた他の方法よりも強制温風ブランケットの方が優れていた。中型犬で20分以上の麻酔に対して効率のいい体温喪失技術を使用すべきです。(Sato訳)
■犬の新しいミダゾラムゲルの鼻腔内投与後の生物学的利用能
Bioavailability of a novel midazolam gel after intranasal administration in dogs.
Am J Vet Res. April 2012;73(4):539-45.
Joseph S Eagleson; Simon R Platt; Deborah L Elder Strong; Marc Kent; Anne C Freeman; Peter P Nghiem; Bo Zheng; Catherine A White
目的:犬への新しいミダゾラムの生体付着型ゲル製剤鼻腔内(IN)投与後の薬物動態と、ミダゾラム液のIN、IV、直腸投与後の薬物動態と比較する
動物:10頭(オス5頭、メス5頭)の健康なビーグル成犬
方法:犬を4つの処置群に分けた交差試験。最初はミダゾラム液(5mg/ml)を1群にIV投与(0.2mg/kg)、2群に直腸投与、3群にIN投与した。4群は0.4%ヒドロキシプロピルメチルセルロースミダゾラムゲル製剤(50mg/ml)をIN投与(0.2mg/kg)した。各犬は処置間隔に7日間のウォッシュアウト期間を設けて、全て4つの処置を受けた。ミダゾラム投与前後に血液サンプルを採取した。ミダゾラムの血漿濃度は高速液体クロマトグラフィーで測定した。
結果:ゲル製剤のIN投与後の血漿濃度ピークは、液体のINおよび直腸投与後のそれよりも有意に高かった。ピーク濃度までの平均±SD時間は11.70±2.63分(ゲルIN)、17.50±2.64分(液体IN)、39±14.49分(液体直腸)だった。ミダゾラムの平均生物学的利用能は70.4%(ゲルIN)、52.0%(液体IN)、49.0%(液体直腸)だった。ゲル製剤のIN投与後の生物学的利用能は、液体のINおよび直腸投与後のそれよりも有意に高かった。
結論と臨床的関連:ミダゾラムゲルのIN投与は、血漿ピーク濃度と生物学的利用能に関してミダゾラム液体のINおよび直腸投与よりも優れていた。(Sato訳)
■去勢を行うオス猫においてリドカインの精巣内および皮下投与は術中の血行動態反応および心拍変動性を変化させる
Intratesticular and subcutaneous lidocaine alters the intraoperative haemodynamic responses and heart rate variability in male cats undergoing castration.
Vet Anaesth Analg. 2012 Oct 4. doi: 10.1111/j.1467-2995.2012.00773.x.
Moldal ER, Eriksen T, Kirpensteijn J, Nodtvedt A, Kristensen AT, Sparta FM, Haga HA.
目的:去勢に対する術中の侵害受容反応を軽減するのに精巣内および皮下リドカイン投与の有効性を、心拍数(PR)、平均動脈圧(MAP)を測定することで評価することと、この反応を評価するのに心拍変動性(HRV)分析の適応性を検査すること
研究構成:無作為、管理下、観察者盲検実験研究。
動物:去勢のために来院した39頭の健康なオス猫。
方法:全身麻酔のみの群をコントロール群(GA)とし、処置群(LA)は局所麻酔(リドカイン2mg/kg)を精巣内および皮下に追加投与した。PRとMAPを麻酔基線(T0) 、処置(T1)、左精巣切開(T2)、精索牽引(T3)、自己結紮と精索の切除(T4)、右側切開(T5)、精索牽引(T6)、自己結紮と精索の切除(T7)に記録した。HRV分析は3回5分間隔で分割した:基線(H0)、処置(H1)、手術(H2)。
結果:両群のPRおよびMAPは術中T3以降有意に増加した;しかし処置群(LA)における増加は、コントロール群(GA)よりも有意に低かった。HRV分析については、術中の以下のパラメーターに関して群間の有意差を認めた:TP(総電力)、VLF(超低周波)、SDNN(NN間隔(心電図での連続したR波の間隔)の標準偏差)、TI(triangular index)はLA群でより低かった。GA群の平均NNは有意に低く、LA群のLF(低周波)およびLFn(低周波、標準化値)はより低かった。両群のH1からH2までのHF(高周波)およびHFn(高周波、標準化値)は有意に低下した。
結論と臨床関連:全身麻酔中の猫において、精巣内および皮下へのリドカイン投与は侵害受容反応を軽減し、HRV分析は術中侵害受容を評価するのに有望な調査ツールであることがわかった。(Sato訳)
■通常の去勢手術を行う犬のイソフルラン必要量に対する精巣内リドカイン注射の効果
Effect of intratesticular lidocaine on isoflurane requirements in dogs undergoing routine castration.
J Small Anim Pract. July 2012;53(7):393-7.
M W McMillan; C J Seymour; J C Brearley
目的:去勢手術を行う犬に対する精巣内リドカイン投与のイソフルラン節約効果を評価する
方法:30頭の犬にブプレノルフィン0.02mg/kg筋肉内注射およびカルプロフェン4mg/kgの静脈内注射の全身鎮痛処置を含めた標準麻酔法を用いた。無作為に各精巣内にリドカイン1mg/kgの注射を行うリドカイン群とリドカインを使用しないコントロール群に振り分けた。1.3%の終末呼気イソフルラン濃度で10分後に基準の生理学的パラメーターを測定した。それらのパラメーターを基準から10%以内に維持するように手術中終末呼気イソフルラン濃度を変更し、5つのタイムポイントで記録した。
T0は基準、T1は手術開始、T2からT3は精巣茎をクランプした時、T4は皮膚縫合時だった。終末呼気イソフルラン濃度は分散分析とボンフェローニ検定で比較した。
結果:各研究群を15頭の健康な犬で構成した。終末呼気イソフルラン濃度はコントロールと比較してリドカイン群で有意に低かった;T2(P<0.01)、T3(P<0.01)、T4(P<0.01)。
臨床意義:去勢を行う犬において精巣内のリドカイン注射はイソフルラン必要量を低下させる。(Sato訳)
■まれな周麻酔悪性高熱の犬の1例
Unusual perianesthetic malignant hyperthermia in a dog.
J Am Vet Med Assoc. February 2012;240(4):450-3.
Chiara Adami; Shannon Axiak; Karina Raith; Claudia Spadavecchia
症例記述:下位運動ニューロン四肢麻痺を患った7ヶ月齢のオスのシベリアンハスキーに電気診断検査と筋肉および神経のバイオプシー標本採取のために麻酔をかけた。
臨床所見:周麻酔身体検査で高い直腸温を認め、血清生化学検査で高い筋肉および肝酵素活性を示した。その犬は2度麻酔をかけた。犬はイソフルランで麻酔し、中程度の高炭酸血症および軽度の高体温を発症した。2度目の犬の麻酔には注射麻酔剤を使用し、その間に犬は重度悪性高熱を起こした。麻酔後に実施した遺伝子検査では、骨格筋でカルシウム放出チャンネルを調節するRYR1遺伝子の異常を認めなかった。
臨床特性を基に、他の神経筋障害は除外できたため、骨格筋イオンチャンネルを含む遺伝的チャンネル障害を疑った。
治療と結果:その犬は呼吸装置を外し、体表面にアイスパックをあて、フットパッドにアルコールをつけるなど積極的な体の冷却を実施した。冷たい晶質液をIV投与した。間歇的な100%酸素の陽圧ベンチレーションは終末呼気二酸化炭素分圧を低下させるために実施した。ダントロレンが入手できなかったため、体温低下補助にアセプロマジンを投与した。悪性高熱から犬は回復し、入院13日でオーナーのもとに退院した。
臨床関連:遺伝的筋障害に罹患した犬は、RYR1遺伝子異常がなくても麻酔による悪性高熱のリスクを考慮すべきである。(Sato訳)
■ニューヨーク州で2つの避妊-中性化プログラムの猫において麻酔が死亡に関係した54症例の剖検所見
Post-mortem findings in 54 cases of anesthetic associated death in cats from two spay-neuter programs in New York State.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):959-66.
Jodie A Gerdin; Margaret R Slater; Margaret R Slater; Kathleen V Makolinski; Andrea L Looney; Leslie D Appel; Nicole M Martin; Sean P McDonough
猫において麻酔が関連する死亡(AAD)はまれだが、ヒトよりははるかに多く発生する。猫のAADの死亡後の調査は一般的でなく、散発的にしか発表されない。
ここで著者らは猫のAADの54症例の所見を報告する。
肺、心臓、全身疾患を含む、重大な肉眼および/あるいは顕微鏡的既存疾患は33%の症例に認められた。より高い頻度で診断されたのは肺疾患で(症例の24%)、猫肺虫感染(症例の9%)の症例が含まれる。肥大型心筋症の2症例を含む心疾患は、頻度がより低かった(症例の11%)。4%は外科的合併症で死亡した。
63%の症例は重大な肉眼あるいは顕微鏡的疾患は見られなかった。
それらの所見は他の地域あるいは他の施設の猫のAADの典型となるものかどうかを判定する追加研究が必要である。この研究はAADsの死後調査は重要で価値ある仕事だと証明するものである。(Sato訳)
■野良猫の不妊手術に対するメデトミジン、ケタミン、ブプレノルフィンの評価
Evaluation of medetomidine, ketamine and buprenorphine for neutering feral cats.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):896-902.
Kelly A Harrison; Sheilah A Robertson; Julie K Levy; Natalie M Isaza
メデトミジン(M、100μg/kg)、ケタミン(K、10mg/kg)およびブプレノルフィン(B、10μg/kg)のコンビネーションで筋肉内注射による投与し、野良猫(n=101)の避妊および去勢手術に対する評価を行った。11頭(11%)の猫は外科的麻酔を穏やかに維持するため、追加麻酔(マスクによるイソフルラン)を必要とした。外科手術完了時に皮下にアチパメゾール(A、125μg/kg)を投与した。全ての猫は手術から回復し、次の日に放した。
全ての猫で麻酔中に最低1回はヘモグロビン飽和(SpO(2))値<95%を記録した。
このMKBコンビネーションは野良猫不妊手術クリニックで使用できるが、イソフルランの追加が必要な場合もある。この麻酔方法に関係する低SpO(2)の臨床意義を調査するため、追加研究が必要である。(Sato訳)
■猫の麻酔後低体温の有病率の回顧的研究
Retrospective study of the prevalence of postanaesthetic hypothermia in cats.
Vet Rec. February 2012;170(8):206.
J I Redondo; P Suesta; L Gil; G Soler; I Serra; C Soler
術後低体温の有病率、その臨床的予測値、結果を調査するため、猫の275件の麻酔記録の回顧的研究を行った。麻酔の間、体温を記録した。麻酔終了時に到達した体温を、高体温(>39.50度)、正常体温(38.50-39.50度)、わずかに低体温(38.49-36.50度)、中程度低体温(36.49-34.00度)、重度低体温(<34.00度)に分類した。多重回帰による統計分析で処置終了時の体温に影響する要因を確認した。前
投薬前の平均(sd)体温は、38.2(1.0)度だった。導入から60、120、180分での体温は、35.4(1.4)度、35.0(1.5)度、34.6(1.5)度だった。低体温の普及率は、わずかが26.5%(95%信頼区間21.7-32.0%)、中程度が60.4%(95%信頼区間54.5-66.0%)、重度が10.5%(95%信頼区間7.4-14.7%)だった。麻酔終了時に記録された体温の低下に関係する変数は、麻酔時間、麻酔の理由(ささいな処置と比較して、腹部および整形外科で有意に体温が低下した)、麻酔リスク(ハイリスクの猫はローリスクの猫よりも低い体温を示した)だった。前投薬前の体温は最終体温の上昇と関係した。(Sato訳)
■猫のブピバカインによる下顎神経ブロック後に見られた重度心血管抑制の1例
Severe cardiovascular depression in a cat following a mandibular nerve block with bupivacaine.
Vet Anaesth Analg. November 2011;38(6):614-8.
Francesco Aprea; Enzo Vettorato; Federico Corletto
観察報告:12歳の老猫に下顎扁平上皮癌切除のための麻酔をかけた。前投薬デクスメデトミジンとメタドンの筋肉内注射後、効果が出るまでアルファキサロンの静脈投与で麻酔導入し、経口気管挿管後に酸素と気化イソフルランで維持した。1.16mg/kgのブピバカインで下顎神経ブロックを行ってから約5分後、その猫は重度心血管抑制を発症した。麻酔を中止し、心肺機能蘇生を開始した。アトロピン(0.02mg/kg IV、3回反復)に続いてアチパメゾール(0.08mg/kg IV)を投与した。その後、ドブタミン(1μ/kg/min IV)を心血管機能が十分と考えられるまで投与した。麻酔から覚醒中に猫は発作のようなものを起こし、プロポフォールの不定量の投与でコントロールした。猫はプロポフォール投与の中止後、残存神経症状も、何事もなく覚醒し、外科処置は延期した。
結論:この臨床報告は、1頭の猫において下顎神経ブロックをブピバカインで行った後に起きた心血管および神経学的合併症に対し、うまく管理できたことを述べている。治療は成功したが、蘇生中に投与された薬剤の意義は、はっきりしないままである。(Sato訳)
■犬と猫における麻酔による死亡のリスク:3546例の観察的コホート研究
Risk of anaesthetic mortality in dogs and cats: an observational cohort study of 3546 cases.
Vet Anaesth Analg. 2012 Jan;39(1):59-68.
Bille C, Auvigne V, Libermann S, Bomassi E, Durieux P, Rattez E.
目的:フランスの個人病院における犬と猫の麻酔による死のリスクを評価すること
研究デザイン:観察的コホート研究
用いた動物:2008年4月15日から2010年4月15日の間にCentre Hospitalier Veterinaire des Cordeliersで麻酔をうけた全ての小動物
方法:制御でき可逆性に中枢神経系を抑制し、鎮痛させた薬剤による意識のない状態、かつ十分に気管内挿管できる状態を全身麻酔と定義した。意識が戻り、体温が36℃以上で腹這いを維持できるようになった時点を麻酔の終了時とし、その時点における動物の転帰(生存または死亡)を評価した。麻酔中の死亡を記録した。麻酔による死亡と、米国麻酔学会(ASA)状態分類、品種、年齢、手技、麻酔の目的、麻酔の方法、モルヒネとブピバカインの組み合わせで硬膜外投与をしたかなどとの関連について解析した。
結果:研究期間に、3546頭が全身麻酔された。本研究における全死亡率は1.35%であった(3546頭中48頭、95%信頼区間は0.96-1.75)。健康な動物(ASA 1および2)の死亡率は0.12%であった(2602頭中3頭、95%信頼区間は0.02-0.34)。病気の場合(ASA 3以上)、全死亡率は4.77%であった(944頭中45頭、95%信頼区間は3.36-6.18)。ASA 3, 4, 5における死亡率は、それぞれ2.90%, 7.58%, 17.33%であった。ASA 3以上における麻酔による死亡の確立の増加と関連している主な因子は、健康状態の悪さであった(米国麻酔学会術前状態分類)。その動物がうけた麻酔の目的とモルヒネとブピバカインの組み合わせで硬膜外投与したことは、麻酔中の死亡の発生と関連はなかった。品種と年齢の影響も認められなかった。
結論と臨床的意義:麻酔による死亡の確立の増加と関連する因子、とくに健康状態の悪さ、が明らかとなった。術前の患者の評価と臨床状態の改善に対して、可能な限り努力する必要がある。麻酔の前に危険因子を同定することで、熟練したスタッフによって注意深く観察することにつながる。これは、よりよい結果を生み出す事になろう。(Dr.Taku訳)
■犬のイソフルラン誘発低血圧の治療に対する乳酸リンゲル液あるいはヘタスターチ静脈内投与の効果
Effect of intravenous administration of lactated Ringer's solution or hetastarch for the treatment of isoflurane-induced hypotension in dogs.
Am J Vet Res. November 2009;70(11):1345-53.
Turi K Aarnes, Richard M Bednarski, Phillip Lerche , John A E Hubbell, William W Muir, William W Muir 3rd
目的:犬のイソフルラン誘発低血圧に対する晶質(乳酸リンゲル液[LRS])あるいはコロイド(ヘタスターチ)液のIV投与の効果を判定する
動物:健康なビーグル6頭
方法:3回にわたり、各犬をプロポフォールおよびイソフルランで麻酔し、熱希釈カテーテルを設置した(肺動脈)。血流力学変動値の基準評価後、収縮期動脈圧(SABP)が80mmHgになるまで終末呼気イソフルラン濃度を増加させた。その時(0分時)、3つの処置(輸液なし、LRS(80ml/kg/h)、ヘタスターチ(80ml/kg/h))のうち1つを開始した。輸液はSABPが基準の10%以内、あるいは輸液最大量80ml/kg(LRS)あるいは40ml/kg(ヘタスターチ)になるまで継続した。血流力学変動値はとびとびに測定した(0から120分、LRSあるいはヘタスターチ投与犬は追加で150分および180分)。総蛋白濃度、PCV、コロイド浸透圧、血液粘度などのいくつかの項目も基準及びその後とびとび(0から120分)に測定した。
結果:LRS80ml/kgの投与は、どの犬のSABPも上昇させなかったが、ヘタスターチ40ml/kg以下の投与は6頭中4頭のSABPを上昇させた。輸液は心指数を増加させ、全身血管抵抗を低下させた。ヘタスターチ投与に比べ、LRSの投与は血液粘度を低下させた。LRSの投与はPCVおよび総蛋白濃度を低下させたが、ヘタスターチの投与はコロイド浸透圧を上昇させた。
結論と臨床関連:この結果はLRSよりもヘタスターチの静脈内投与が、犬のイソフルラン誘発性低血圧の治療に薦められることを示した。(Sato訳)
■外科手術を行う種々の犬種に対するプロポフォールおよびフェンタニル注入
Propofol and fentanyl infusions in dogs of various breeds undergoing surgery.
Vet Anaesth Analg. November 2009;36(6):523-31.
Valentina Andreoni, J M Lynne Hughes
目的:選択的外科手術を行う犬において、プロポフォールの不定割合での注入とフェンタニルの一定割合での注入を併用した麻酔法の心血管変動値、麻酔効果および覚醒具合を報告する
研究構成:前向き臨床試験
動物:年齢2.7±2.65歳、体重24±11kgの犬27頭
方法:アセプロマジン(0.03あるいは0.05mg/kg)の筋肉内注射およびカルプロフェン(4mg/kg)の皮下注射による前処置後、プロポフォール(4.0±0.5mg/kg)の静脈内注射(IV)で導入した。全頭、炭酸正常状態を維持するため、100%酸素で換気した。
プロポフォールは0.4mg/kg/minで20分間注入し、それから0.3mg/kg/minとした。平均動脈圧(MAP)が70mmHg以下に低下した場合、プロポフォール注入を0.1mg/kg/minに減量した。麻酔導入から5分経過した時点でフェンタニル(2μg/kg)をIV投与し、その後0.5μg/kg/minで注入し、アトロピン(40μg/kg)をIV投与した。
心拍数、MAP、呼吸数、1回換気量、終末CO2、反射の有無、動作および覚醒時間とその具合を記録した。
結果:平均麻酔時間は131±38.5分だった。平均心拍数はアトロピン注射後10分でピークとなり、次第に低下して55分で麻酔前の値に到達した。MAPは容易に70mmHg異常を維持した。自発呼吸、抜管、頭を持ち上げる、伏臥までの平均時間は、それぞれ21±10.1分、33±14.6分、43±19.7分、65±23.4分だった。覚醒はスムーズで穏やかだった。伏臥姿勢までの時間は麻酔時間とプロポフォール総量に有意に相関し、抜管までの時間はプロポフォール総量に相関した。
結論と臨床関連:プロポフォールとフェンタニル注入は、外科手術に対し安定した心血管機能と良好な状態が得られた。注入率のある程度の修正が長期覚醒時間の改善に必要である。(Sato訳)
■子猫の麻酔中の胃-食道逆流:ランジアルマスクと気管内チューブの比較
Gastro-oesophageal reflux during anaesthesia in the kitten: comparison between use of a laryngeal mask airway or an endotracheal tube.
Vet Anaesth Analg. November 2009;36(6):547-54.
Aikaterini I Sideri, Apostolos D Galatos, George M Kazakos, Pagona G Gouletsou
目的:子猫の麻酔中にランジアルマスク(LMA:laryngeal mask airway)あるいは気管内チューブ(ET)を使用したときの胃-食道逆流(GOR)の発生率を比較する
研究構成:前向き無作為クロスオーバー実験研究
動物:12-15週齢、体重0.57-1.73kg(平均1.13±SD0.26)、メス19頭、オス21頭の合計40頭の家猫短毛種実験猫
方法:子猫に2回麻酔をかけ、1回はLMA、1回はETを使用した。麻酔室でイソフルランによる麻酔導入後、気管にETの挿入あるいはLMAの設置を行い、pH電極を食道下部に導入した。食道pHのモニタリングをイソフルランでの麻酔維持中45分間実施した。実験終了時に胃pHを測定した。実験中にGORを起こした子猫は、15日間スクラルフェート、シサプリド、ラニチジンで治療した。
結果:食道pHは6.51±0.76、胃pHは1.54±0.59だった。GORはETを使用したとき9頭、LMAを使用したとき20頭で観察され、有意差が認められた(p=0.013)。逆流はほぼ酸性で、1頭のみアルカリ性だった。GORのほとんどは麻酔導入後まもなく起こり、食道pHは実験終了まで4.0以下を維持した。吐出が見られたものはいなかった。
結論と臨床関連:子猫においてランジアルマスクの使用は、観察者には分からない麻酔中の胃-食道逆流の発生を増加させる。術後期間において食道炎の症状を示す子猫がいれば、この発生を考慮すべきである。(Sato訳)
■ラセミケタミンあるいはS-ケタミンを投与し去勢手術を行ったオス猫の麻酔覚醒の質
Anaesthesia recovery quality after racemic ketamine or S-ketamine administration to male cats undergoing neutering surgery
Schweiz Arch Tierheilkd. December 2008;150(12):599-607.
M P Larenza, H Althaus, A Conrot , C Balmer , U Schatzmann, R Bettschart-Wolfensberger
猫の去勢でラセミケタミン(RS-ket)あるいはS-ケタミン(S-ket)で麻酔し、その術後麻酔覚醒および鎮痛の質を比較した。20頭の飼育オス猫にメデトミジン(0.03mg/kg)とS-ket(6mg/kg;n=10)あるいはRS-ket(10mg/kg;n=10)を筋肉内投与した。通常の去勢手術後、猫にアチパメゾール(0.15mg/kg)を筋肉内投与した。アチパメゾール投与から30分および60分後、投与した薬剤を知らない1人の観察者がビジュアルアナログスケール(VAS)、4点スケール、鎮静、刺激によらない行動、外部刺激による行動的反応を用いて鎮痛を評価した。15mm以下のVASを示す猫にはブトルファノールを投与した。伏臥および立位までの時間を記録した。60分後、猫にカルプロフェン(4mg/kg)を皮下投与した。
S-kit、RS-kit投与量の60%の麻酔はより早く覚醒した。60分で、S-ket群における平静な猫は、行動学的変化がほとんどない傾向にあった。RS-ket群の猫は、30分でより鎮静状態にあり、外部刺激に対しより弱く反応した。術後すぐの鎮痛は両群ともに適切と考えられ、ブトルファノール投与を必要とした猫はいなかった。(Sato訳)
■供血猫に対する2つの麻酔プロトコールの比較
Comparison of two anesthetic protocols for feline blood donation.
Vet Anaesth Analg. May 2010;37(3):230-9.
Maria B Killos, Lynelle F Graham, Justine Lee
目的:供血猫に対し、ケタミン-ミダゾラム-ブトルファノール(KMB)の筋肉注射、あるいは酸素-セボフルラン(SEV)の吸入で麻酔中の血行力学変動値およびその後の覚醒の質を比較すること
研究構成:前向き盲検無作為交差試験
動物:年齢4-8歳、体重5.2-6.4kgの健康な飼育雑種猫20頭
方法:1回目の供血はKMBで麻酔し、次はSEVで麻酔した。心拍数(HR)、呼吸数(f(R))、脈の質、粘膜の色、毛細血管再充満時間、動脈血酸素飽和度(SpO(2))、非侵襲動脈血圧(ドップラー)を採血中1分毎に何も知らされていない観察者が評価した。何も知らされていない麻酔科医が薬剤を操作し、血行力学的変化に対応した。各々全血55mLを5-22分かけて経静脈穿刺で採取した。ドナーには覚醒前にラクトリンゲル液60mLを皮下投与した。帰宅する前、ドナーは供血後最低4時間監視した。オーナーには麻酔プロトコールを知らせず、供血後24時間の猫の行動に関するアンケートに答えてもらった。
結果:両プロトコール共に十分な拘束が得られたが、顕著な低血圧によりSEV猫16頭(84%)、KMB猫8頭(42%)が処置を必要とした。KMB猫は体温39.7度以上の処置後高熱を経験した。全ての猫は2時間以内の対症療法に反応した。オーナーはSEV後の方が、家庭で正常な行動に戻るのが有意に早いと感じた。
結論:全ての猫は低血圧を経験し、多くが処置を必要とした。低血圧の発生および程度にプロトコール間の有意差はなかった。主な処置後合併症は、KMBに伴う高体温だった。
臨床関連:供血中の低血圧の可能性の結果から、麻酔プロトコールにかかわらず全ての供血猫に静脈(IV)確保および血圧モニターが推奨される。KBMで処置後高体温のリスクがあり、体温モニターが薦められる。正常な行動への回復はSEVの方が早い。(Sato訳)
■犬と猫の硬膜外麻酔と麻酔
Epidural analgesia and anesthesia in dogs and cats
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2008;38(6):1205-30.
Alexander Valverde
硬膜外に投与される薬剤の現在の認識は、獣医患者において広く多様な状況での鎮痛を行う効果的な方法と認められている。薬剤と投与量の適切な選択は、最小限の副作用で脊髄の特定部分の鎮痛を得ることが出来る。硬膜外麻酔は吸入麻酔による全身麻酔の代替法であるが、両方法の組み合わせがより一般的で、各方法で使用する薬剤の投与量を減ずることができる。硬膜外麻酔と静脈麻酔も横隔膜より尾側の外科処置において吸入麻酔なしで使用できる。(Sato訳)
■犬において低用量メデトミジン、ブトルファノール単独あるいはその組み合わせの静脈注射による鎮静効果
The sedative effects of low-dose medetomidine and butorphanol alone and in combination intravenously in dogs.
Vet Anaesth Analg. January 2010;37(1):1-6.
Nicolas M Girard, Elizabeth A Leece, Jm Cardwell, Vicki J Adams, Jacqueline C Brearley
目的:犬においてメデトミジン(1μg/kg)およびブトルファノール(0.1mg/kg)単独、あるいはその組み合わせの静脈投与(IV)
による鎮静効果を評価する
研究構成:前向き盲検無作為臨床試験
動物:年齢6.2±3.2歳、体重26±12.5kgの健康(American Society of Anesthesiologists I)な犬60頭
方法:犬を4群に振り分けた:S群(塩化ナトリウム0.9%IV)、B群(ブトルファノールIV)、M群(メデトミジンIV)、MB群(メデトミジンおよびブトルファノールIV)。同じ臨床医により投与前と投与後12分目に、19が最大鎮静を示す数的スコアリングシステムを用いて鎮静を査定した。心拍数(HR)、呼吸数、脈拍の質、毛細血管再充満時間と直腸温を各鎮静スコア査定後に記録した。鎮静スコア、鎮静スコア差(投与後スコア-投与前スコア)、患者の変動値を、標準分布変動に対し一方向分散分析で、歪んだ分布および/あるいは不等分散を持つ変動に対しKruskal-Wallis検定で比較した。有意が見つかったところは、更なる評価でpair-wise法に対しBonferroni多重比較を使用した。
結果:犬種、性別、不妊状態、年齢、体重は群間で違いがなかった。薬物投与前の鎮静スコアは群間で同様だった(p=0.2)。鎮静処置後の沈静スコアは、S群(平均2.5 +/- 1.8) (p < 0.001)、M群(3.1 +/- 2.5) (p < 0.001)、B群(3.7 +/- 2.0) (p = 0.003)に比べ、MB群(9.5 +/- SD 5.5)が有意に高かった。鎮静スコア差はS群[0 (-1 to 4)] (p < 0.001)およびM群[0 (0-6)] (p < 0.001)と比べMB群[7 (0-13)]が有意に高かった。心拍数はS群と比べ、MおよびMB群で有意に低下した(p<0.05)。
結論と臨床関連:低用量メデトミジン(1μg/kg)IVとブトルファノール0.1mg/kgIVの併用は、メデトミジンあるいはブトルファノール単独投与よりも深い鎮静をもたらせた。両メデトミジン群において心拍数は有意に低下した。(Sato訳)
■犬におけるデクスメデトミジン投与前のアセプロマジンあるいはアトロピンの鎮静および心肺効果
Sedative and cardiorespiratory effects of acepromazine or atropine given before dexmedetomidine in dogs
Vet Rec. June 2008;162(26):852-6.
R K Alvaides, F J Teixeira Neto, A J A Aguiar, D Campagnol, P V M Steagall
アセプロマジンは鎮静作用の増強およびデクスメデトミジンによる昇圧反応を減衰させる可能性を持つという仮説を確かめるため、このα2作用薬を処置した6頭の健康な成犬においてアセプロマジンあるいはアトロピンの効果を比較した。乱塊法で5μg/kgのデクスメデトミジン静脈内投与15分前に、生理食塩水、0.05mg/kgアセプロマジン、あるいは0.04mg/kgアトロピンを静脈内投与した。デクスメデトミジン投与20分後、犬の心拍数は50-63%減少し、一過性に平均動脈圧は上昇した。アトロピンはα2作用薬誘発徐脈を防ぎ、高血圧の重症度と持続時間を増加させたが、アセプロマジンはその昇圧効果の大きさおよび持続時間をわずかに低下させたことを除き、α2作用薬の心血管効果を実質的に修正しなかった。
全ての処置犬にデクスメデトミジンは中程度から強度の鎮静を誘発させたが、犬の鎮静スコアは処置群間で相違がなかった。
アセプロマジンとデクスメデトミジンの組み合わせは、デクスメデトミジン単独と比較して明らかな利点はなかったが、デクスメデトミジン投与前のアトロピン投与は、重度高血圧反応のために禁忌である。(Sato訳)
■犬における胃内容量と酸度に対する麻酔前絶食時間と餌の種類の影響
The effect of pre-anaesthetic fasting time and type of food on gastric content volume and acidity in dogs
Ioannis Savvas DVM, PhD, Timoleon Rallis DVM, PhD & Dimitris Raptopoulos DVM, PhD, DVA, Diplomate ECVAA
目的: 犬における胃内容(GC)量とpHに対する麻酔前絶食時間と多様な餌の影響を調査すること
研究構成:無作為、横断、前向き実験研究
動物:15頭の雑種犬(メス9頭、オス6頭、1-4歳、10-24.5kg)
方法:各犬に無作為に同様の7つの処置を行った:麻酔前3時間にドライフード(処置3D)、麻酔前3時間に缶詰(1日の半量)(処置3C)、麻酔前3時間に無脂肪牛乳(処置3M)、麻酔前10時間にドライフード(処置10D)、麻酔前10時間に缶詰(処置10C)、麻酔前10時間に低脂肪缶詰(処置10F)、麻酔前10時間に低蛋白缶詰(処置10P)。全ての犬はプロピオニルプロマジンで前処置を行い、チオペンタールナトリウムで導入、ハロタンで維持した。胃内容を口胃カテーテルで吸引し、その量とpHを測定した。
結果:どの3時間処置の犬よりも10Fの処置をした犬の胃内容pHは有意に低かった。10Dと10Pの処置をした犬は3Dおよび3Cの処置をした犬よりも有意にpHが低かった。3Mの処置をした犬は、他の3時間処置をした犬よりも有意にpHが低かった。3Dの処置をした犬は、3M、10C、10F、10Pの処置をした犬よりも胃内容量が有意に多かった。
結論と臨床関連:麻酔前3時間に1日の半量の缶詰を与えることは、使用した他のタイプの餌と比較して胃内容量が有意に増加することはなかった。胃内容pHも高かった。このタイプの餌を麻酔導入3時間前に与えることは、犬の麻酔中の胃食道逆流の発生を低下させるのに役立つかもしれない。(Sato訳)
■麻酔下の犬の食道pHに対するオメプラゾールの効果
The effect of omeprazole on oesophageal pH in dogs during anaesthesia.
J Small Anim Pract. 2009 Oct;50(10):540-4.
Panti A, Bennett RC, Corletto F, Brearley J, Jeffrey N, Mellanby RJ.
目的
犬において手術時の胃食道逆流は食道炎や食道狭窄といった麻酔後の合併症に関わっていると考えられている。本研究の目的は、麻酔下の犬の食道内pHに対する、プロトンポンプインヒビターであるオメプラゾールの術前投与の効果を確認するためのものである。
方法
選択的後肢の整形外科手術を実施した47頭の犬を対象とした。これらをランダムに治療群(n=22)、対照群(n=25)に振り分けた。治療群では手術4時間前にオメプラゾール(1mg/kg PO)を単回投与した。すべての犬には標準的な麻酔プロトコールが施された。pH測定プローブは麻酔導入後、食道遠位に設置し、連続的にモニターした。
結果
治療群では4頭(18%)の犬が突然の食道内pHの低下(<4)を呈した。対照群では同様の現象が13頭(52%)でみられた。胃食道逆流は治療群よりも対照群で多くみられた(オッズ比4.7、95%信頼区間1.1-24.7、P=0.032)。
臨床的重要性
本研究は、オメプラゾールの術前投与が、麻酔下の犬での胃食道逆流の発生を抑える効果があることを示唆している。(Dr.Ka2訳)
■犬のイソフルラン誘発低血圧の治療において乳酸リンゲルあるいはヘタスターチの静脈内投与の効果
Effect of intravenous administration of lactated Ringer's solution or hetastarch for the treatment of isoflurane-induced hypotension in dogs
Journal of the American Veterinary Medical Association
November 1, 2009, Vol. 235, No. 9, Pages 1063-1063
Turi K. Aarnes; Richard M. Bednarski; Phillip Lerche; John A. E. Hubbell; William W. Muir III
目的:犬のイソフルラン誘発低血圧の治療において晶質(乳酸リンゲル乳酸リンゲル[LRS])あるいはコロイド(ヘタスターチ)液の静脈内投与の効果を決定すること
動物:6 頭の健常ビーグル
方法:それぞれの犬は、プロポフォールとイソフルランで麻酔をかけ、温度希釈カテーテル(肺動脈)を設置した。血行力学の変数の基線評価に続いて、収縮期動脈血圧(SABP)が80mmHgに達するよう呼気終末イソフルラン濃度が増加させた。0分の時点において、3つの静脈治療(輸液なし, LRS [80 mL/kg/h], あるいはhetastarch [80 mL/kg/h]))のうち1つを開始した。輸液投与はSABPが基線の10%以内あるいは最大容量が80 mL/kg (乳酸リンゲル) あるいは40 mL/kg (ヘタスターチ)に達するまで続けた。血行力学の変数は一定間隔(乳酸リンゲルあるいはヘタスターチで治療した犬において0-120分、さらに150分と180分)で測定した。総蛋白濃度、PCV、膠質浸透圧そして血液粘稠性などのいくつかの臨床病理変数は基線とその後の間隔(0-120分)で評価した。
結果:乳酸リンゲル80 mL/kgの投与はどの犬のSABPも増加させなかったが、ヘタスターチ40 mL/kgは6頭の犬のうち4頭のSABPを増加させた。輸液投与は心臓指数を増加させ、収縮期血管抵抗を減少させた。ヘタスターチ治療と比較して、乳酸リンゲルの投与は血液粘稠性を減少させた。乳酸リンゲルによる治療はPCVと総蛋白濃度を減少させたが、ヘタスターチによる治療では膠質浸透圧を増加させた。
結論と臨床関連:乳酸リンゲルよりヘタスターチの静脈投与の方が、犬のイソフルラン誘発性低血圧の治療に推奨される。(Dr.Kawano訳)
■5頭の猫におけるメデトミジンと比較したロミフィジン3用量の鎮静および心肺効果
Sedative and cardiorespiratory effects of three doses of romifidine in comparison with medetomidine in five cats
Vet Rec. January 2008;162(3):82-7.
E Belda, F G Laredo, M Escobar, M Soler, X Lucas, A Agut
5頭の猫に対するロミフィジン3用量(200、400、600μg/kg)およびメデトミジン(80μg/kg)筋肉内投与の効果を比較研究した。各処置の鎮静の質、心血管、呼吸効果を評価し、鎮静の発現時間と持続時間、猫の回復時間を測定した。心肺変化も分析した。ロミフィジン200μg/kgの投与量は、他の用量よりも中程度の鎮静、最小限の心肺および他の副作用をもたらし、臨床的に優れていた。しかし、ロミフィジンのその用量で、メデトミジンのその用量でみられる深く確実な鎮静を誘発することはなかった。(Sato訳)
■猫の卵巣摘出における麻酔必要量に対する局所麻酔の効果
The effect of local anaesthesia on anaesthetic requirements for feline ovariectomy
Vet J. November 2007;0(0):.
Luca F Zilberstein, Yves P Moens, Eleonore Leterrier
卵巣摘出術を行う猫において、全身麻酔に対し追加局所麻酔の麻酔節約効果を評価するため、補足ケタミン投与を用いた。リドカイン2%(L群)を皮膚浸潤(1mg/kg)、両卵巣に対する局所投与(splash block)(2mg/kg、各)および腹筋層(1mg/kg)に投与する群と、同部位にNaCl0.9%投与する群(S群)に56頭の健康な猫を無作為に振り分けた。麻酔導入は、メデトミジン20μg/kgとケタミン5mg/kgを混ぜて筋肉内注射で行った。
直腸温、ECG、心拍数、呼吸数を連続的に測定した。ケタミン補足ボーラス投与(1mg/kg、静脈内)は、術中に動く反応があったときに投与した。
局所リドカインは、補足ケタミンの必要性を有意に減少させた。すべての動物は合併症なくオーナーの元に返っていった。このプロトコールで局所麻酔は、猫の卵巣摘出術中の注射可能な麻酔の必要性を減少させた。(Sato訳)
■正常犬における主要腹部動脈のドップラー変動値に対するメデトミジンの影響
Effects of medetomidine on doppler variables of major abdominal arteries in normal dogs
Vet Res Commun. September 2007;0(0):.
N Mino, L Espino, A Barreiro
この研究の目的は、腹部動脈のドップラー変動値に対するメデトミジン投与の影響を評価することだった。研究集団は健康犬20頭だった。メデトミジンの血行動態の影響を腹部大動脈、腎動脈、頭側腸間膜動脈、腹腔動脈のドップラー変動値を使用し明示した。
犬を持続的にモニターし、メデトミジン注射前、注射後10、40、80分後、アチパメゾール投与後に別々の測定を実施した。異なる血管の固有ドップラースペクトルの変化は、腹部大動脈でより著しく、より大きな逆流が認められた。研究したいずれの血管でも10分時の収縮期最大流速(PSV)、拡張終期速度(EDV)、平均速度(MV)は有意に低下し、この影響はアチパメゾールを投与するまで続いた。Pulsatility index(PI)は10分時の腹部大動脈で有意に増加し、アチパメゾール投与まで研究中持続した。抵抗指数(RI)はどの血管でも有意に変化したわけではなかった。10分時の腹部大動脈、頭側腸間膜動脈、腹腔動脈の血流量は有意に低下し、アチパメゾール投与まで持続した。
我々は、研究した全ての腹部血管におけるRIの補助的超音波評価でよい鎮静をもたらしえると結論付ける。一方、他のドップラー変動値の変化は、メデトミジン投与が鎮静および非鎮静犬で有意な血行動態の違いを起こすと示唆する。(Sato訳)
■犬における中鎖及び長鎖トリグリセリド乳剤である新しい製剤のプロポフォールの臨床評価
Clinical evaluation of a new formulation of propofol in a medium-chain and long-chain triglycerides emulsion in dogs
J Vet Pharmacol Ther. August 2007;30(4):288-94.
J I Redondo Garcia
中鎖及び長鎖トリグリセリド乳剤を混合したプロポフォール製剤は、従来の長鎖トリグリセリド製剤に変わり最近臨床で導入されている。この前向き多施設研究は、犬におけるこのプロポフォールの新製剤の、使用に関する臨床効果と合併症を調査した。この研究にスペインの動物病院46施設が参加した。種々の診断及び治療目的で実施した合計541件の麻酔処置(118 ASA I、290 ASA II、101 ASA III、32 ASA IV)を評価した。麻酔導入に少なくともプロポフォールを使用していることを除き、麻酔プロトコールを制限しなかった。プロポフォールの導入用量と処置中の麻酔合併症の発生を記録した。カイ二乗検定で、使用した維持麻酔(プロポフォールvs.吸入麻酔)、麻酔リスク(ASA分類)、麻酔の理由に従い合併症の発生を比較した。
アルファー2作用薬で前処置した犬は、フェノチアジン(3.9±1.4mg/kgi.v.)、ベンゾジアゼピン(4.0±1.4mg/kgi.v.)で前処置した犬よりも必要用量が少なかった(平均±SD、2.9±1.3mg/kgi.v.)。頻度が多かった合併症は、気管挿管困難(1.3%)、導入後無呼吸(11.3%)、チアノーゼ(0.6%)、徐呼吸(2.6%)、頻呼吸(2.8%)、徐脈(2%)、頻脈(2.6%)、低血圧(0.2%)、ショック(0.2%)、嘔吐(4.6%)、てんかん様発作(2.8%)、早期覚醒(7.4%)、覚醒遅延(0.9%)だった。注射の痛み、吸引性肺炎の症例はいなかった。1頭は導入中、2頭は麻酔からの覚醒中、計3頭の犬が死亡した(0.55%)。この研究は新しいプロポフォール製剤が、犬の全身麻酔導入に有効で有益だと示す。(Sato訳)
■犬においてルーチンな麻酔前の血液および生化学スクリーニングは正当化されるか?
Is routine pre-anaesthetic haematological and biochemical screening justified in dogs?
Vet Anaesth Analg. January 2008;0(0):.
Michaele Alef1, Ferdinand von Praun, Gerhard Oechtering
目的:麻酔が必要な犬において通常の血液および生化学スクリーニングが有効かを判定し、麻酔前のリスク評価において最も有効な検査を確立すること
動物:2003年1月から2004年4月の間にライプツィヒ大学で手術を行った1537頭の飼育犬
素材と方法:標準的な病歴および身体検査結果を入手した後、麻酔を必要とするすべての犬をASA身体状況群、判定された麻酔前治療の必要性、提唱される麻酔プロトコールで振り分けた。それから血液学的(ヘマトクリット、赤血球数、白血球数、血小板数、ヘモグロビン濃度)および血清生化学検査(血漿尿素、クレアチニン、グルコース、総タンパク、ナトリウムおよびカリウム濃度、血清アラニンアミノトランスフェラーゼ、アルカリフォスファターゼ、リパーゼ活性)を全ての動物で実施した。それからそれらの結果を次の4つに使用した。1)各犬のASA身体状況を再定義、2)麻酔前治療の必要性が変化したもの、3)手術を行う犬の安定性の再判定、4)最初に提唱された麻酔プロトコールの安定性の再検査。
結果:1537頭中1293頭(84.1%)の病歴および臨床検査で、血液学的および生化学検査は正常な状況下で不必要と考えられるだろうと示された。それらの内、ASA1に分類されたのは63.9%、ASA2は28.5%、ハイリスクは7.6%だった。スクリーニング結果が異常値を示した犬もおり、1293頭中16.7%は異常な血漿尿素レベルで、5.9%は参照値以上だった。しかし、104頭(8%)のみ検査結果を入手してより高い身体状況カテゴリーに再編成された。追加のスクリーニングデータで、手術延期が10頭(0.8%)、追加の麻酔前処置が19頭(1.5%)、麻酔プロトコールの変更が2頭(0.2%)で指示された。
結論:術前スクリーニング検査により明らかとなった変化は、通常臨床関連はほとんどなく、麻酔方法を大きく変更させるようなものではなかった。
臨床関連:犬において麻酔前の血液検査は、病歴および身体検査で問題の可能性が認められなければ、追加の重要な情報を得られにくい。(Sato訳)
■健康犬の空腸造瘻フィーディングチューブ設置において、(鎮静と硬膜外、局所麻酔で腹腔鏡アシスト)、(全身麻酔、腹腔鏡アシストまたは回復外科)での心肺反応の比較
Comparison of cardiopulmonary responses during sedation with epidural and local anesthesia for laparoscopic-assisted jejunostomy feeding tube placement with cardiopulmonary responses during general anesthesia for laparoscopic-assisted or open surgical jejunostomy feeding tube placement in healthy dogs
Am J Vet Res. April 2007;68(4):358-69.
Saundra A Hewitt, Brigitte A Brisson, Melissa D Sinclair, William C Sears
目的:鎮静下、硬膜外、局所麻酔の健康犬で腹腔鏡アシスト空腸造瘻フィーディングチューブ(J-チューブ)設置の使用評価と、この硬膜外麻酔プロトコールと腹腔鏡アシストまたは開腹J-チューブ設置中全身麻酔の心肺反応を比較する
動物:健康な雑種犬15頭
方法:全身麻酔下で開腹J-チューブ設置(n=5;1群)、全身麻酔下で腹腔鏡アシストJ-チューブ設置(5;2群)、鎮静、硬膜外及び局所麻酔下で腹腔鏡アシストJ-チューブ設置(5;3群)に無作為に振り分けた。心肺反応は、基準(0)、処置中5分毎(5-30分)、処置後(脱硫化後(2、3群)または閉腹開始時(1群))に測定した。1回拍出量、心指数、O(2)運搬量を計算した。
結果:3群の犬全て鎮静、硬膜外および局所麻酔下で腹腔鏡アシストJ-チューブ設置に許容した。心血管パラメーターの比較は、1、2群と比較して3群の犬で心指数、平均動脈圧、O(2)運搬量が有意に高かった。全身麻酔下で腹腔鏡アシスト群と開腹J-チューブ設置群の間(すなわち1群と2群)には最小限の血行動態パラメーターの違いしか見られず、その差は健康な研究犬での臨床意義を見出せなかった。
結論と臨床関連:鎮静と硬膜外および局所麻酔は、健康犬で腹腔鏡アシストJ-チューブ設置に十分な状況を提供した。この麻酔法は全身麻酔よりも心肺抑制がより少なく、重度疾患の患者でJ-チューブ設置のよりより選択と思われる。(Sato訳)
■猫に対してプロポフォールを含む麻酔を反復投与したときの臨床評価
Clinical assessment of repeated propofol-associated anesthesia in cats
J Am Vet Med Assoc. November 2007;231(9):1347-53.
Carla Rohrer Bley, Malgorzata Roos, Jill Price, Katja Ruess-Melzer,
Julia Buchholz, Valerie Poirier, Barbara Kaser-Hotz
目的:猫において、プロポフォール含む麻酔の反復投与による麻酔覚醒の質、臨床症状、そして赤血球の状態の影響を評価すること。
統計:初期研究。
動物:放射線治療のために短時間麻酔を行った37例の猫。
方法:5日連続で一日2回、13頭の鼻端に扁平上皮癌を患った猫に麻酔が施された。初めは、プロポフォールもしくはミタゾラム( 0.2mg/kg[0.09mg/lb])とプロポフォールのコンビネーションを用いていたが、その後ケタミンとミタゾラムの連日投与が行われた(後者のデータは分析されなかった)。19日間、24頭のワクチン関連肉腫の猫(グループ2)に対してプロポフォールもしくはミタゾラムとプロポフォールのコンビネーションで12回の麻酔が行われた。両グループとも麻酔はプロポフォールで維持された。血液検査が麻酔前、麻酔中、そして放射線治療の終了時に行われた。両グループ間におけるヘマトクリットとヘモグロビン濃度の変化が比較された。
結果:麻酔平均時間は8.1分であった。(範囲:5~20分);麻酔覚醒時に副作用はみられなかった。プロポフォールの総投与量はグループ1(6.34mg/kg[2.88mg/lb])とグループ2(4.71mg/kg[2.14mg/lb])の間で違いは無かった。ミタゾラムの投与はプロポフォールの投与量を26%減らした。全体を通して、ヘマトクリットとヘモグロビン濃度の基準値からの減少、また臨床学的な重要性という点においても両グループ間において有意な違いはみられなかった。しかしながら、基準値と比較すると、それぞれのプロトコールにおける6回および12回終了後の両グループ間の値は有意に低かった。放射線治療の間、両グループで少数のハインツ小体が確認された。
結論と臨床関連:結果より、プロポフォールを含む短時間麻酔の繰り返しは猫の短時間の放射線治療において、臨床学的に重要性のある血液学上の変化はみられなかった。(Dr.UGA訳)
■犬におけるハロタン、イソフルラン、セボフルランの心肺作用に対する出血の影響
A study of the effect of hemorrhage on the cardiorespiratory actions of halothane, isoflurane and sevoflurane in the dog
Vet Anaesth Analg. March 2007;34(2):107-16.
Francisco J Teixeira Neto et al
目的:出血前後のハロタン(HAL)、イソフルラン(ISO)、セボフルラン(SEVO)の等効力濃度により引き起こされる心肺変化を比較する
研究構成:前向き無作為臨床試験
動物:体重15.4±3.4kg(平均±SD)の24頭の健康な成犬
方法:犬を無作為に3群に振り分けた(n=8/群)。各群麻酔を酸素下HAL(1.3%)、ISO(1.9%)、SEVO(3.5%)の最小肺胞濃度1.5で維持した。呼吸正常を維持するために調節換気を実施した。心肺変動値は基準(導入後60-90分の間)、30分かけて血液32ml/kg(算出した血液量の40%)を抜去直後と30分後に評価した。
結果:基準状態中、ISOとSEVOはHALよりも心指数(CI)が高かった。心拍数は基準時SEVOでより高く、平均動脈圧(MAP)と平均肺動脈圧は群間に違いがなかった。出血後ISOおよびSEVOで心拍数はより高かったが、HALと比較した時ISOのみCIがより高かった。ISO麻酔犬で、MAPは出血直後により高く、これはよりよいCI維持、基準からの全身血管抵抗指数の増加に関連した。
結論:ISOおよびSEVOの血行動態反応は正常血液量の犬で同様であるが、かなりの血液喪失後ISOは早い期間で循環機能のよりよい維持を起こす。
臨床関連:吸入麻酔は、血液喪失を呈す動物で賢明に使用すべきである。しかし、それらの状況下で吸入麻酔を使用するならば、イソフルランがSEVOまたはHALより血行動態をより安定させると思われる。(Sato訳)
■猫における麻酔後高熱
Post-anesthetic hyperthermia in cats
Vet Anaesth Analg. January 2007;34(1):40-7.
Lysa P Posner, Robin D Gleed, Hollis N Erb, John W Ludders
目的:ヒドロモルホンおよび、またはケタミンが猫の通常の外科を行うとき、麻酔後高熱に関与するかどうかを調査する
研究構成:前向き臨床研究
動物:卵巣子宮摘出(OVH)、去勢、または抜爪術を行う健康な40頭の成猫
材料と方法:各ネコを4つの群(n=10)に無作為に振り分けた。麻酔前投薬として、全ての猫にグルコピロレート(0.01mg/kg)とアセプロマジン(0.02mg/kg)の皮下注射(SC)およびヒドロモルホン(0.1mg/kgSC)またはメデトミジン(7.5?g/kgSC)を投与した。麻酔はジアゼパム(0.1mg/kg)とケタミン(5mg/kg)またはプロポフォール(6mg/kg効果が出るまで注入)で導入した。1群(HDK)はヒドロモルホンとジアゼパム-ケタミンを投与。2群(HP)はヒドロモルホンとプロポフォール。3群(MDK)はメデトミジンとジアゼパム-ケタミン。4群(MP)はメデトミジンとプロポフォールを投与した。薬剤投与前、抜管時、その後5時間目まで1時間に1回直腸温を測定した。
結果:麻酔と手術後5時間の間に少なくとも各群の1頭は直腸温が>39.2度となった。HDK、HP、MDK、MPの群で麻酔前の体温を越えた猫の割合は、それぞれ86%、80%、25%、34%だった。HDK、HP、MDK、MPの群で最高体温は、それぞれ41.6度、40.3度、39.2度、40.1度だった。抜管後5時間で、群間の体温に差はなかった。
結論:麻酔および手術後5時間まで、猫の体温は麻酔前の体温以上になるかもしれない。ヒドロモルホンの使用は、麻酔後の高体温に関係している。しかし、高体温は他の薬剤使用でも起こるかもしれない。
臨床関連:ヒドロモルホンを投与した猫は、麻酔および手術後に高体温をしっかりモニターすべきである。(Sato訳)
■若い50頭の健康犬における手術時不整脈の有病率
Prevalence of perioperative arrhythmias in 50 young, healthy dogs
Can Vet J. February 2007;48(2):169-77.
Felix M Duerr, Anthony P Carr, Tanya Duke, Cindy L Shmon, Eric Monnet
この研究の目的は、2種類の麻酔プロトコール(1群:プロポフォールとイソフルラン;2群:チオペンタールとハロセン)を使用し、健康な若い犬の通常の避妊または去勢後に発生する不整脈のタイプと頻度を調査することだった。
身体検査と標準心電図検査で臨床的に正常と判定した2歳以下の犬50頭を、24時間歩行可能な心電図検査で評価した。術後期間の最も一般的な律動異常は、2度房室ブロック(44%)、心室性早期波形(44%)、房室性早期波形(32%)だった。研究目的に対し、24時間で100回以上の心室性または房室性早期波形、またはいかなるRonT現象の発生、心室性または房室性頻脈を臨床的に重要な不整脈と分類した。術後期間の9頭で重要な不整脈が観察され、5頭は1群、4頭は2群だった。それらの犬は1歳以下だった。RonT現象は2群の4頭、1群の1頭で発生した。この研究結果は、RonT現象を含む重要な不整脈が、使用した両プロトコールで通常の外科手術を行った若い健康犬の術後期間に起こりえることを示す。(Sato訳)
■犬においてイソフルランの最小肺胞濃度に対する出血による循環血液量減少の影響
The effect of hypovolemia due to hemorrhage on the minimum alveolar concentration of isoflurane in the dog
Vet Anaesth Analg. September 2006;33(5):296-301.
Sima F Mattson, Carolyn L Kerr, Doris H Dyson, Kuldip K Mirakhur
目的:犬におけるイソフルランの最小肺胞濃度(MAC)に対し、循環血液量減少の影響を判定すること。
構成:無作為クロスオーバー試験
動物:体重18.2-29.0kgの6頭の健康なメスの雑種犬
方法:犬をランダムに振り分け、最低18日の試験間隔で正常循環血液量、または循環血液量減少状態のイソフルランのMACを測定調査した。両方の場合においてイソフルランで導入、40分間維持麻酔し、橈側皮静脈、背側中足動脈内に脈管カテーテルを設置した。循環血液減少群に振り分けた犬は、血液30ml/kgを1ml/分の割合で動脈カテーテルから採血した。全ての犬は麻酔から覚醒した。イソフルラン中止から30分後、フェイスマスクでイソフルランにより再導入した。
気管挿管し、Bain麻酔回路に接続した。メカニカルベンチレーションを10呼吸数/分、1回呼吸量10-15ml/kgの割合で開始した。気道ガスを連続してモニターし、終末呼気二酸化炭素濃度30-40mmHg(4.67-5.33kPa)に維持するよう1回呼吸量を調節した。体温は37-38度で維持した。MACの測定は、つま先の間につけた電気刺激を使用し、MACは電気刺激の反応で意図的な動きが起こる時と起こらない時の終末呼気イソフルラン濃度平均値として定義した。MAC値はスチューデントt検定で群間の比較を行った。イソフルランのMACは、正常循環血液量の犬(1.15±0.02%)よりも循環血液量減少犬(0.97±0.03%)の方が有意に低かった(p<0.0079)。
イソフルランのMACは出血による循環血液量減少の犬で低下する。診断および治療処置中の循環血液量減少犬をイソフルランで麻酔維持するとき、獣医師はより低い濃度で調節すべきである。(Sato訳)
■犬の麻酔中の胃食道逆流に対するハロタン、イソフルラン、セボフルランの影響
Influence of halothane, isoflurane, and sevoflurane on gastroesophageal reflux during anesthesia in dogs
Am J Vet Res. November 2006;67(11):1821-5.
Deborah V Wilson, Daniel T Boruta, A Tom Evans
目的:整形外科を行う犬でイソフルランの使用よりハロタンまたはセボフルランの維持麻酔が、胃食道逆流(GER)の発生をより少なくするかどうかを判定する
動物:90頭の犬
方法:選択的整形外科手術中に犬を評価した。嘔吐の病歴がある、または胃腸機能に影響を及ぼすであろう薬剤を投与されていた犬は研究から除外した。使用した麻酔プロトコールは、チオペンタールで麻酔導入前にマレイン酸アセプロマジン、モルヒネの投与を標準とした。犬を振り分け、維持麻酔にハロタン、イソフルラン、セボフルランを投与した。麻酔中に食道pHを測定するため、センサーが先端についたカテーテルを設置した。食道pH<4または>7.5を胃食道逆流と定義した。
結果:麻酔中51頭の犬に酸性GERが1回以上あった。逆流はイソフルランで14頭、ハロタンで19頭、セボフルランで18頭検出された。GERの犬で、プローブ設置からGER発現までの平均±SD時間は36±65分で、食道pHは測定時間の平均64%で<4を維持した。GERと手術開始、犬をサージェリーテーブルに上げるまたは下ろすことの間に有意な関連は見られなかった。麻酔導入後すぐにGERを起こした犬は、より逆流を起こしやすかった。
結論と臨床関連:3種の一般的に使用する吸入麻酔薬による麻酔維持は、GERの同様のリスクを持つ。(Sato訳)
■猫の麻酔からの覚醒に対するプロポフォール投与時間の影響
The effect of the duration of propofol administration on recovery from anesthesia in cats
Vet Anaesth Analg. January 2006;33(1):2-7.
Peter J Pascoe, Janet E Ilkiw, Karen J Frischmeyer
目的:猫の覚醒割合に対するプロポフォールの導入、30分、150分注入の影響を判定する
研究構成:無作為クロスオーバー前向き実験研究
動物:体重3.9±0.5kgの健康な避妊済み成猫6頭(平均4.3歳、範囲2-7歳)
方法:猫に3つの処置を各々実施した。:プロポフォールで麻酔導入(T1)、導入後30分注入 (T30)、導入後150分注入(T150)。プロポフォールは鈍い足の屈筋反射を維持するように増量または減量した。麻酔中および覚醒中を通しモニターした。中心静脈カテーテルから静脈血を麻酔前、30分注入の30分時、150分注入の30、60、90、120、150分時に採取した。猫の頭を上げる、よつんばいになる、立ち上がる、運動失調なく歩行する状態をプロポフォール投与中止後5、10、20、40、60、80、120、160、180、210、240分時に記録した。生理学的値のデータをスチューデントt検定(30分注入)または分散分析(150分注入)で分析した。ノンパラメトリックフリードマン検定(およびpost-hoc Tukey's Studentized range test)で覚醒時間に差があるかどうか判定した。結果はp<0.05を有意と考えた。
結果:運動失調なく歩行するまでの時間がT1(80±15分)、T30(74±26分)と比較してT150(148±40分)が有意に長かった。(他覚醒時間に有意差はなかった)。プロポフォールの麻酔は中程度だが有意な呼吸抑制とPCVおよび総蛋白の低下を伴った。
結論と臨床関連:健康な猫でのプロポフォールによる長期麻酔は、覚醒遅延を起こすと思われる。(Sato訳)
■犬におけるプロポフォールの目標制御注入法:麻酔導入のための4つの指標に関する評価
Target-controlled infusion of propofol in dogs--evaluation of four targets for induction of anaesthesia
Vet Rec. December 2005;157(24):766-70.
G C Musk, D S J Pang, T Beths, D A Flaherty
20頭の犬からなる4グループに、血液中のプロポフォールが2.5?/ml、3.0?/ml、3.5?/ml、4.0?/mlとなるよう設定されたプロポフォールの目標制御注入法を用いて麻酔をかけました。犬の脈拍数と呼吸数を、前投薬と導入前、気管挿管直後、3分後、5分後(各0、3、5分) に記録し、動脈血圧をオシロメーター法により、導入直前、0分、3分、5分で記録しました。2.5、3.0、3.5そして4.0?/mlの指標は、それぞれ犬の13頭(65%)、16頭(80%)、20頭(100%)、そして20頭(100%)で、麻酔導入に成功しました。導入後無呼吸の発生は、各グループの5分後で、それぞれ0頭(0%)、1頭(5%)、2頭(10%)、8頭(40%)で、5分での無呼吸発生は、4.0?/ml群(P<0.05)で他のグループより有意に高くなりました。全てのグループで、導入直前とその後の測定値との間で血圧における有意な減少がありました(P<0.05)。特定の指標での麻酔導入に関して、グループ間に統計的な有意差はありませんでしたが、3.5?/mlの指標が、無呼吸発生における有意な増加をみせず好結果の麻酔導入を確実にするように思われます。(Dr.K訳)
■ネコのデスフルラン麻酔の導入、覚醒特性
Evaluation of the induction and recovery characteristics of anesthesia with desflurane in cats.
Am J Vet Res 65[6]:748-51 2004 Jun
Barter LS, Ilkiw JE, Pypendop BH, Steffey EP
目的:ネコのデスフルラン麻酔の導入と覚醒特性を質的、量的に評価すること
動物:ネコ6頭
方法:麻酔はデスフルランで導入し維持した。個々の最小肺胞濃度(MAC)値を判定した。麻酔を総麻酔時間(MAC判定を含む)5時間、1.25×MACで維持した。ネコは麻酔から覚醒した。導入と覚醒期間はビデオで録画し、後に0-100(100は一番良い)の等級付けを用いてスコアをつけた。事象のタイミングを記録した。
結果:デスフルランのMACは10.27±1.06%で、平均用量は5.6±0.2MAC-時だった。協調運動の喪失、横臥、気管内挿管の時間は、それぞれ1.3±0.4、2.3±0.3、6.4±1.1分だった。麻酔導入の質のスコア中央値は93(範囲91-94)だった。最初の運動、抜管、起立、協調運動を伴うジャンプと接地能力までの時間は、それぞれ2.8±1.0、3.8±0.5、14.3±3.9、26.4±5.1分だった。デスフルランの肺胞ウォッシュアウトは急速だった。麻酔覚醒の質のスコア中央値は、94(範囲86-96)だった。
結論と臨床関連:デスフルランは、ネコで麻酔の急速導入、覚醒が見込める。評価者は、導入、回復の総体的な質はすばらしいと評価した。結果は、健康なネコの麻酔の導入と維持にデスフルランの使用を支持するものだった。(Sato訳)
■犬のプロポフォール誘発鎮静における静脈内ジアゼパムあるいは微少量メデトミジンの効果
Effects of Intravenous Diazepam or Microdose Medetomidine on Propofol-Induced Sedation in Dogs
Journal of the American Animal Hospital Association 42:18-27 (2006)
Jeff C. H. Ko, DVM, MS, Diplomate ACVA, Mark E. Payton, PhD, Alison G. White, DVM, David S. Galloway, DVM, MS and Tomohito Inoue, DVM
このクロスオーバー試験は、ジアゼパムと微小量メデトミジンの両方が鎮静を誘発するためのプロポフォール必要量をかなり減少できるという仮説を検証することである。
4つの異なる薬品、すなわち高容量ジアゼパム(0.4 mg/kg 静脈内投与[IV])、低容量ジアゼパム (0.2 mg/kg IV)、メデトミジン(1 ?g/kg IV)、そしてプラセボ(0.5ml生理食塩水IV )に続いて気管挿管できるだけのプロポフォール(8 mg/kg IV)を投薬した。
メデトミジンの効果は高容量ジアゼパムの効果に匹敵し、低容量ジアゼパムあるいはプラセボよりの効果より明らかに良かった。すべての治療群の犬は一時的な低酸素血症に陥り導入と覚醒過程は類似した。(Dr.Kawano訳)
■イヌの脾臓の大きさに4つの麻酔プロトコールがどう影響するか
The Effect of Four Anesthetic Protocols on Splenic Size in Dogs
Vet Anaesth Analg 31[2]:102-108 Apr'04 Prospective Study 24 Refs
Deborah V Wilson, BVSc, MS, Diplomats AM, A Thomas Evans DVM, MS, Diplomate ACVA, Rachael E Carpenter DVM & David R Mullineaux PhD
目的:イヌの術中の脾臓の大きさに対し、4つの麻酔プロトコールが及ぼす影響特性を述べる
研究構成:前向き実験研究
動物:年齢1.1±0.3歳、体重10.9±2.7kgのビーグル24頭
方法:イヌを4つの麻酔プロトコールに振り分けた。(1)アセプロマジンとブトルファノールで前処置、チオペンタール導入(2)アセプロマジンとブトルファノールで前処置、プロポフォール導入(3)メデトミジンとブトルファノールで前処置、プロポフォールで導入(4)メデトミジンとブトルファノールで前処置、ケタミンとジアゼパムで導入。それから維持麻酔はハロセンとした。開腹時、脾臓の長さ、幅、厚さを測定し、閉腹直前に再度測定した。脾臓の面積と体積を算出した。ヘマトクリット値と総血清タンパク(TSP)を導入前後と開腹中に測定した。
結果:脾臓体積は、(4)のプロトコールが一番大きく(161.2±40.2?;p<0.05)、最小は(2)のプロトコールだった。体積の差は、群間の長さ、幅、厚さによるものだった。研究期間終了時の面積、長さ、幅に有意な変化は見られなかった。全頭ヘマトクリット値は有意に低下したが、異なる時間で見られた。その低下は、アセプロマジンを投与している場合前処置後、(3)のプロトコールでは導入後、(4)のプロトコールでは術中に発生した。
結論:脾臓体積が術中最小にするなら、アセプロマジンとプロポフォールのプロトコールで麻酔すべきである。メデトミジン、ジアゼパム、ケタミンの投与は、より脾臓体積を大きくするだろう。研究した麻酔プロトコールの使用後、脾臓の大きさとヘマトクリット値の関連不足は、脾臓部位以外への赤血球の隔離を示唆する。(Sato訳)
■動物における局所麻酔薬としてのリドカイン2.5%とプリロカイン2.5%の共融混合物の使用
Use of a Eutectic Mixture of Lidocaine 2.5% and Prilocaine 2.5% As a Local Anesthetic in Animals
J Am Vet Med Assoc 226[12]:1990-1992 Jun 15'05 Topics in Drug Therapy 34 Refs
Ronald S. Erkert, DVM, and Charles G. MacAllister, DVM, DACVIM
リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%は、小児における局所麻酔薬として開発された、リドカイン25mg/gとプリロカイン25mg/gを含有する局所に適用される乳濁液です。リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%は、静脈カテーテル法、包皮環状切除、脊椎穿刺、そして伝染性軟疣の掻爬などを行う間の無痛化のために、新生児や小児において、しばしば使用されます。成人では、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%は、皮膚移植組織の供与部位の皮膚片の調整、ちょっとした生殖器外科、鼓膜切開、そして高齢患者における脚潰瘍の外科的デブリドマンなど、さまざまな皮膚処置の無痛化としてうまく使用されてきました。
ヒトにおいて、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%乳濁液は、深い層に適用され(10c㎡領域当たり、1~2ml)、閉鎖性包帯剤で覆います。時間反応研究では、健康患者の前腕に乳濁液塗布後90-120分で、最も確かな無痛化が達成され、少なくとも2時間持続されました。最大麻酔深度到達は90分塗布に続く30分、および120分塗布に続く60分間で、およそ5mmでした。皮膚の厚さと状態が最大効果時間を決定するのに重要です。血漿中のリドカインとプリロカインの最大濃度は、急速に達し、健康な無傷の前腕皮膚と比較して、健康な無傷の顔面皮膚にリドカイン2.5%とプリロカイン2.5%を適用した時により高くなります。さらに同様の研究結果が、リドカインとプリロカインは、病的皮膚により急速に浸透し、比較可能な位置で、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%の塗布後正常皮膚で60分であったのに対し、15分で無痛化を導いたということを明らかにしました。
ヒトの医療で広範囲に使用されているにもかかわらず、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%は、獣医療において一般的に使用されません。しかしながら、動物における静脈穿刺と皮膚のバイオプシーで、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%の使用を調査した研究が少数存在します。研究目的に使用される動物での研究結果では、犬と猫における橈側皮静脈とウサギにおける耳介静脈のカテーテル法のための良い麻酔は、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%の塗布後、および60分の粘着性包帯と薄いポリエチレンラップの閉鎖性包帯で達成されたということを示しました。
さらに、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%は、塗布後の閉鎖性包帯をせずに、猫の耳介入れ墨の置換術とギニアピッグの静脈穿刺で効果的な無痛化を提供するようです。しかしながら、ラットの尾に対するリドカイン2.5%とプリロカイン2.5%塗布は、効果的な無痛化を起こさず、これは処置に対するいかなる反応よりも、拘束ストレスが大きかったためと思われました。研究結果は、リドカイン2.5%とプリロカイン2.5%の使用は、研究に使われる犬、猫、そしてウサギで、静脈穿刺を行う際、特に不慣れな職員が処置を施す場合、有利であったということを示しております。(Dr.K訳)
■犬におけるイソフルランの最小肺胞濃度に対するリドカインの影響
Effect of lidocaine on the minimum alveolar concentration of isoflurane in dogs
Veterinary Anaesthesia and Analgesia
Volume 31 Issue 4 Page 264 - October 2004
RESEARCH PAPER
Alexander Valverde* DVM, DVSc, Diplomate ACVA, Thomas J Doherty MVB, MSc, Diplomate ACVA, Jorge Hernandez* MVZ, MPVM, PhD & Wendy Davies* BS
抄録
目的:犬のイソフルラン(I)の最小肺胞濃度(MAC)に対して、低用量一律点滴(LCRI;50?g/kg/min)と高用量CRI(HCRI;200?g/kg/min)でリドカインを点滴投与したときの影響を判定する
研究構成:前向き実験研究
動物:体重20-26.3kgの10頭の雑種犬(4頭メス、6頭オス)
方法:犬にイソフルランで麻酔をかけ、機械的ベンチレーションを実施した。機械的、または電気的刺激を用い、基準MACを測定した。3分以上かけてリドカイン(2mg/kg IV)を投与し、続いてLCRIにより投与した。30分後MACを測定した。LCRIのMACを1度測定し、30分間リドカイン点滴を中止した。2度目のリドカイン(2mg/kg IV)をボーラス投与、続いてHCRIにより投与し、MACを再測定した。MAC直上そして直下の呼吸終末イソフルラン濃度でリドカイン濃度、その代謝産物を測定した。心拍数と血圧を測定した。
結果:イソフルランの最小肺胞濃度は両タイプの刺激で1.34±0.11(%;平均±SD)だった。LCRIはMACを1.09±0.13(18.7%減)、HCRIは0.76±0.10(43.3%減)に有意に低下させた。LCRIによる血漿濃度(ng/ml、中央値;MAC直上、直下値)は、リドカインで1465そして1537;グルシネキシリダイド(GX)で111そして181;モノエチルグリシネキシリダイド(MEGX)で180そして471だった。HCRIではリドカイン4530、4691;GX784、862;MEGX714、710だった。高用量点滴後30分目の血圧は有意に上昇した。
結論と臨床関連:リドカイン点滴は用量依存的にイソフルランのMACを低下させ、心拍数や血圧に臨床的に意義のある変化を誘発しなかった。(Sato訳)
■ネコの麻酔後の小脳機能不全
Postanesthetic Cerebellar Dysfunction in Cats
J Vet Intern Med 18[3]:368-369 May-Jun'04 Retrospective Study 10 Refs
Merav Shamir, Gadi Goelman, and Orit Chai
1998年から2002年の間に、何事もない短時間の全身麻酔から覚醒時に発症した小脳機能不全の症状を持つ11頭のネコを、獣医教育病院Koret School(KSVMTH)で検査した。神経症状は、軽度から重度の四肢の運動失調、意図的な振戦、威嚇反応の欠如、hoppingの遅延などだった。ネコは麻酔時、それぞれ異なる年齢で、神経疾患の前症状はどのネコにも見られなかった。臨床症状発現から1日-4年経過して検査し、6ヶ月から8年の追跡調査で神経学的欠損は変わらないままだった。
医療、麻酔記録で、全頭ペルシャの雑種で、そのうち7頭はイスラエルの同じ町で発現していることを示していた。全頭使用していた麻酔はケタミンのみだった。ケタミン投与後、不可逆性小脳損傷となるペルシャ雑種ネコの遺伝構成素因があるのかもしれない。(Sato訳)
■犬と猫におけるプロポフォールの反復投与
Repetitive propofol administration in dogs and cats.
J Am Anim Hosp Assoc 40[4]:255-60 2004 Jul-Aug
Matthews NS, Brown RM, Barling KS, Lovering SL, Herrig BW
プロポフォールのボーラス投与を、3日間続けて、10頭の犬(6mg/kg、静脈注射[IV])と10頭の猫(10mg/kg、IV)に行いました。無呼吸の発生率、心拍数と呼吸数、血圧、覚醒までの時間、完全血球数と生化学的プロフィールにおける変化を記録しました。犬において無呼吸は認められませんでしたが、3頭の猫で発生しました。ハインツ小体のわずかな増加が、6頭の猫で認められましたが、その増加は、臨床的に重要とみなされませんでした。亜硫酸水素塩を含むプロポフォールの、3日間連続したボーラス投与では、いかなる明白な累積副反応も認められませんでした。(Dr.K訳)
■イヌのオピオイド投与に関連した嘔吐の発生に対するアセプロマジンの効果
Effects of Acepromazine on the Incidence of Vomiting Associated with Opioid Administration in Dogs
Vet Anaesth Analg 31[1]:40-45 Jan'04 Prospective Study 14 Refs
Alexander Valverde DVM, DVSc, Diplomate ACVA; Shauna Cantwell DVM, MVSc, Diplomate ACVA; Jorge Hernandez MVZ, MPVM, PhD; Celeste Brotherson DVM
目的:麻酔前処置としてオピオイドを投与されたイヌに対するアセプロマジンの制吐特質を評価する
研究構成:無作為前向き臨床研究
動物:116頭(ASA I or II)のイヌに選択的外科処置を行った。その集団は、オス、メス、純血種、雑種、0.25-13.4歳、1.8-57.7kgのイヌで構成されていた。
方法:イヌを無作為に3群に振り分け、前向き臨床研究を行った。全群にアセプロマジン(0.05mg/kg筋肉注射)を投与した。1群は、オピオイド投与15分前にアセプロマジンを投与した。2群は、オピオイドとアセプロマジンを一緒に投与した。3群は、オピオイド投与15分後にアセプロマジンを投与した。各イヌには、3つの異なるオピオイドのうち1つを筋肉内投与した。(硫酸モルヒネ0.5mg/kg、塩酸ヒドロモルホン0.1mg/kg、塩酸オキシモルホン0.075mg/kg)
結果:オピオイド前にアセプロマジンを投与したイヌ(1群)は、2群(45%)や3群(55%)に比べ有意に嘔吐の発生が低かった(18%)。鎮静の程度は、オピオイドを第1薬剤として投与したイヌ(3群)よりも、アセプロマジンとオピオイドを同時投与したイヌ(2群)のほうが有意に低かった。
結論と臨床関連:オピオイド投与の15分前にアセプロマジンを使用すると、オピオイドにより誘発される嘔吐の発生率を低くする。(Sato訳)
■イヌのチオペンタールやプロポフォールの導入投与量、心肺変化に対し、メデトミジン-ミダゾラム、アセプロマジン-ブトルファノール、ミダゾラム-ブトルファノールの影響
Effects of medetomidine-midazolam, acepromazine-butorphanol, and midazolam-butorphanol on induction dose of thiopental and propofol and on cardiopulmonary changes in dogs.
Am J Vet Res 63[12]:1671-9 2002 Dec
Kojima K, Nishimura R, Mutoh T, Hong SH, Mochizuki M, Sasaki N
目的:イヌのチオペンタールやプロポフォールの導入投与量に対し、メデトミジン-ミダゾラム(MM)、アセプロマジン-ブトルファノール(AB)、ミダゾラム-ブトルファノール(MB)の用量節約効果を評価し、心肺変化を検査すること
動物:23頭の健康なビーグル
手段:イヌにMM、AB、MB、生理食塩(0.9%NaCl)溶液(PS)を筋肉内投与し、チオペンタールまたはプロポフォールで麻酔導入した。薬剤投与前後と気管内挿管後0、5、10、15分後に心肺測定を行った。
結果:MM、AB、MBの麻酔前投薬により導入投与量は有意に減少した(それぞれ、チオペンタール、20、45、46%;プロポフォール、42、58、74%)。MM-チオペンタール、MM-プロポフォール、AB-プロポフォールの覚醒時間はPS-チオペンタール、PS-プロポフォールと比較して有意に延長した。MMの投与で比較的大きな心血管変化が引き起こされ、麻酔導入後も持続した。AB、MB投与で、気管挿管中そして気管挿管直後に心血管変化を引き起こし、チオペンタール、またはプロポフォール導入で有意に減少した。しかし、軽度の低血圧がAB-プロポフォールで発生した。麻酔導入中MM投与のイヌで無呼吸が観察されたが、ほとんどの呼吸変動値に有意な変化は見られなかった。
結論と臨床関連:MMの麻酔前投薬は、チオペンタールやプロポフォールの麻酔導入量を著しく減少させたが、顕著な心肺変化を引き起こした。AB、MBの麻酔前投薬は、チオペンタールとプロポフォールの導入投与量を中程度減少させ、それら麻酔の導入により心血管変化は改善したが、ABは軽度低血圧を引き起こした。(Sato訳)
■イヌの急性出血後のデスフルランの心血管効果
Cardiovascular Effects of Desflurane Following Acute Hemorrhage in Dogs
J Vet Emerg Crit Care 13[1]:7-12 Mar'03 Original Study 34 Refs
Paulo S.P. Santos, DVM, MS, James N.B.M. Andrade, DVM, MS, Andre L. Selmi, DVM, MS, Jorge L.O. Costa, DVM, MS, Rafael R. Faleiros, DVM, MS and Newton Nunes, DVM, MS, PhD *
目的:急性出血後のイヌで、心血管効果の判定
構成:実験研究
動物:8頭の雑種犬
操作:意識のあるイヌで、平均動脈圧(MAP)が60mmHgに落ち込むまで血液を抜き、出血を誘発した。更なる血液の除去または補充により1時間血圧を60mmHgに維持した。デスフルランを気管内チューブの挿管が可能になるまでマスクで嗅がせ、デスフルラン終末呼気濃度10.5V%を維持した。
測定値と主要結果:収縮期、拡張期、平均動脈血圧(SAP,DAP,MAP)、中心静脈圧(CVP)、心拍出量(CO)、一回拍出量(SV)、心指数(CI)、全身脈管抵抗(SVR)、心拍数(HR)、呼吸数(RR)、動脈血の二酸化炭素分圧(PaCO2)、動脈pHを出血前とその後60分、挿管後5、15、30、45、60分で記録した。
基準値と比較したとき、出血後60分のSAP、DAP、MAP、CO、CI、SV、PaCO2、動脈pHは減少し、HR、RRは増加した。出血後測定した値と比較し、挿管直後、MAPと動脈pHは減少し、PaCO2は増加した。挿管後15分のSAP、DAP、MAP、動脈pH、SVRは減少した。30分と45分で、MAPとDAPは減少したままで、PaCO2は増加した。挿管後5分の測定値と比較して30分後動脈pHは増加した。
結論:急性出血後のイヌにデスフルランを投与したとき、血圧と動脈pHは有意な変化を引き起こした。(Sato訳)
■イヌでメデトミジンにより引き起こされたストレス関連神経ホルモンと代謝反応に対するアチパメゾールとヨヒンビンの拮抗作用
The antagonistic effects of atipamezole and yohimbine on stress-related neurohormonal and metabolic responses induced by medetomidine in dogs.
Can J Vet Res 67[1]:64-7 2003 Jan
Ambrisko TD, Hikasa Y
この研究は、メデトミジン(20μg/kg、IM)により引き起こされる神経ホルモン的そして代謝反応に対し、アチパメゾール(40、120、320μg/kg、IM)、ヨヒンビン(110μg/kg、IM)、生理食塩水の拮抗作用の比較を目的とした。5頭のビーグルを各5つの実験群に無作為に使用した。血液サンプルを6時間の間採取した。メデトミジンは、ノルエピネフリン、エピネフリン、インシュリン、遊離脂肪酸濃度を有意に低下させ、血漿グルコース濃度を上昇させた。アチパメゾールとヨヒンビンはそれらの作用に拮抗した。アチパメゾールの逆転作用は、エピネフリンを除き用量依存性だった。ヨヒンビンは、アチパメゾールに比べ、血漿ノルエピネフリンとインシュリン濃度の上昇延長を引き起こし、より半減期が長いためかもしれなかった。ヨヒンビンのみコルチゾール濃度を上昇させた。グルカゴンや乳酸濃度は有意に変化しなかった。それらの所見をもとに、イヌでメデトミジン誘発の鎮静を拮抗するとき、我々は他の指示がない限りメデトミジン投与量の2-6倍でのアチパメゾールのIM使用を推奨する。(Sato訳)
■イソフルレン麻酔犬で、硬膜外ケタミンの血行力学への影響
Hemodynamic effects of epidural ketamine in isoflurane-anesthetized dogs.
Vet Surg 26[6]:505-9 1997 Nov-Dec
Martin DD ; Tranquilli WJ ; Olson WA ; Thurmon JC ; Benson GJ
目的:この研究の目的は、イソフルレン麻酔中の硬膜外ケタミン投与による血行力学への影響を判定することだった。
研究構成:前向き単回投与試験
動物:体重25.3±3.88kgの6頭の健康犬(5頭オス、1頭メス)
方法:一度麻酔を導入し、あらかじめ決められている個々のイソフルレン最小肺胞濃度(MAC)の1.5倍で維持した。イヌに機器を装着し、基準測定値記録前の30分間安定状態を保った。体重4.5kgに対し、1mlの生理食塩水にケタミン2mg/kgを混ぜて、腰仙部硬膜外腔に注射した。血液力学データを、硬膜外ケタミン注射後5、10、15、20、30、45、60、75分目に記録した。統計分析は、すべての時の反復測定値の分散分析(ANOVA)も含めた。すべてのデータは基準値と比較した。P<.05を有意と考えた。
結果:心拍数、平均動脈圧、平均肺動脈圧、中心静脈圧、肺毛細血管楔入圧、心指数、収縮期脈管抵抗、肺脈管抵抗、ダブルプロダクトの基準値±平均値の標準誤差(X±SEM)は、それぞれ108±6回/分、85±10mmHg、10±2mmHg、3±1mmHg、5±2mmHg、2.3±0.3L/分/m2、21.4±1.9mL/回/m2、3386±350ダイン/秒/cm5、240±37ダイン/秒/cm5、12376±1988回/分×mmHgだった。基準値とケタミン注射後のどの時点での値とに有意さは見られなかった。
結論:ケタミン2mg/kgの硬膜外注射は、イソフルレン麻酔中の血行力学に最小限の影響しか及ぼさなかった。(Sato訳)
■鎮静化をしていないアイリッシュウルフハウンドの間接動脈血圧測定:この犬種の正常値
Indirect Arterial Blood Pressure Measurement in Nonsedated Irish Wolfhounds: Reference Values for the Breed
J Am Anim Hosp Assoc 38[6]:521-526 Nov-Dec'02 Original Article 25 Refs
Janice M. Bright, BSN, MS, DVM, DACVIM; Mariellen Dentino, MD, Fellow ACIM
動脈血圧値は心臓脈管疾患の患者の評価と治療に非常に重要である。イヌで正常動脈血圧はより高い種で年齢依存性である。この様な理由で、患者から入手した血圧値は、犬種、年齢特異性正常値と比較するべきである。アイリッシュウルフハウンドは、大型犬のサイトハウンドで、心血管疾患の素因を持つことが知られている。それらの心血管系を評価するのに正常値は非常に重要になるだろう。この研究は、いろいろな年齢の健康な非鎮静時のアイリッシュハウンドで参照血圧値を求めるために行った。血圧に対する年齢、体重、性別、不安の影響も評価した。
鎮静をかけていない健康なアイリッシュウルフハウンド158頭の尾骨動脈から、尾の基部にオシロメトリック法を用いて動脈血圧測定を行った。立っている状態から2-3回血圧を測定し、横臥している状態から繰り返し測定し平均化した。オスメスともに評価し、年齢、体重の範囲はそれぞれ2-116ヶ月、17-81kgだった。平均収縮期、拡張期、そして平均動脈圧はそれぞれ116.0mmHg、69.2mmHg、87.8mmHgだった。
血圧測定値は若いイヌ(<24ヶ月)に比べて年を取っているイヌ(>24ヶ月)のほうが有意に高かった。立っている状態と、横臥状態で、収縮期血圧(SAP)と平均動脈血圧(MAP)に有意差はなかったが、拡張期血圧(DAP)は立っている時のほうがわずかに低かった。メスのウルフハウンドに対し、オスの収縮期血圧のほうが有意ではないがわずかに高かった。しかし、性別はDAPやMAPに対し有意な影響を持たなかった。落ち着いているイヌのSAP、DAP、MAPは、不安なイヌよりも有意に低かった。SAP、DAP、MAP値に対し、年齢、性別、気分の影響の間に有意な相互作用が存在し、それらの変化はアイリッシュウルフハウンドの血圧値に相互作用を持つことを示している。
著者は、他のサイトハウンドや犬種と比べ、正常なアイリッシュウルフハウンドのSAP、DAP、MAPが比較的低いと結論付ける。また、アイリッシュハウンドの血圧値は、性別、年齢、気分の相互作用を取り入れた特定の正常範囲に従い解釈するべきである。それらは文献内の表形式で示されている。(Sato訳)
■イヌでハロタンやイソフルラン麻酔の導入剤としてプロポフォールの使用
The Use of Propofol as an Induction Agent for Halothane and Isoflurane Anesthesia in Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 34[1]:84-91 Jan/Feb'98 Reports of Original Studies 25 Refs
Antonello Bufalari, DVM; Susan M. Miller, DVM; Claudia Giannoni, PhD; Charles E. Short, DVM, PhD, Dipl. ACVA, Dipl. ECVA
プロポフォールは、バルビツールや他の麻酔剤と化学的に関連のない静脈内投与(IV)麻酔剤である。麻酔導入から吸入麻酔維持を行うために、麻酔前処置をせずにプロポフォールを使用する臨床的情報はほとんどない。この研究は、プロポフォール導入後、麻酔剤としてハロタンとイソフルランの性質を比較するために行った。第2に著者は、臨床現場で意図的に、動きまたは侵害刺激に対する脳波活性の変化を防ぐハロタンまたはイソフルランの最低肺胞濃度で、プロポフォール/吸入麻酔コンビネーションの効果的そして安全な使用に対する主観的、客観的ガイドラインの判定を試みた。
前処置をしていないイヌにプロポフォール(6.6mg/kg、IV)60秒以上かけて投与したとき、副作用なしに安全、スムース、確実な麻酔導入ができた。プロポフォールの呼吸抑制効果は認められたが、それらは臨床で管理できるものだった。プロポフォール-吸入麻酔は、プロポフォールで導入後、早期挿管吸入麻酔の投与で最適な状態をもたらすことができる。プロポフォールは麻酔導入に効果的なIV薬で、よく使用されるイヌの吸入麻酔剤と適合性がある。(Sato訳)
■麻酔犬の開胸腔で酸素運搬に対する片肺換気の影響
Effect of one-lung ventilation on oxygen delivery in anesthetized dogs with an open thoracic cavity.
Am J Vet Res 64[4]:443-8 2003 Apr
Kudnig ST, Monnet E, Riquelme M, Gaynor JS, Corliss D, Salman MD
目的:麻酔犬の開胸腔で酸素運搬に対する片肺換気の影響を評価すること
動物:8頭の臨床的に正常なウォーカーハウンドの成犬
方法:各イヌに麻酔をかけ、開胸したときにある期間片肺換気とした。スワン・ガンツカテーテルを、血行力学変動値測定と混合静脈血サンプル入手のために使用した。足背動脈にカテーテルを挿入し、動脈圧を測定し動脈血サンプルを採取した。酸素運搬指数を算出し、心肺機能に対する片肺換気の影響を評価するのに使用した。血行力学と肺の変動値に対する影響を分析した。
結果:片肺換気は、PaO2、動脈酸素飽和度(SaO2)、混合静脈酸素飽和度、動脈酸素含有量(CaO2)を有意に低下させた。片肺換気は、PaCO2、生理的な死腔、肺胞-動脈酸素差を有意に増加させた。SaO2、CaO2、PaCO2の変化は有意差だったが、臨床的な重要性は考えられなかった。片肺換気は肺動脈楔状圧、平均肺動脈圧、シャント比率の有意な増加を誘発した。片肺換気は心指数、体血管抵抗指数、肺血管抵抗指数、酸素運搬指数に有意な影響を与えなかった。
結論と臨床関連:片肺換気はガス交換と血行力学機能に影響するが、臨床的に正常なイヌの開胸腔時ある期間の酸素運搬には影響しなかった。片肺換気は手術中健康犬の開胸で安全に使用できる。(Sato訳)
■イヌの帝王切開の麻酔法としてプロポフォール-イソフルランの使用
Use of Propofol-Isoflurane as an Anesthetic Regimen for Cesarean Section in Dogs
J Am Vet Med Assoc 211[3]:313-317 Aug 1'97 Prospective Study 26 Refs
Pia M.E. Funkquist, DVM; Gorel C. Nyman, DVM, PhD; Ann-Marie J. Lofgren; Eva M. Fahlbrink DVM
目的:イヌの帝王切開の麻酔法としてプロポフォール-イソフルレンの評価と、このプロトコールと硬膜外麻酔、チオペンタールナトリウム導入麻酔との比較を行う
構成:前向き研究
動物:帝王切開を行う141頭の雌イヌ
手順:141頭にプロポフォール導入の全身麻酔を行い帝王切開した。挿管後麻酔は、イソフルレン吸入麻酔(0.5-2.0%)で維持し、酸素:笑気を65:35で投与した。誘導後、子犬の出産を始める前に20分間待った。新生児の生存性を、術後すぐに確認した。術後期間中の子犬の生存を確かめるためにオ-ナーに電話で調査を行った。この研究の生存率を、硬膜外麻酔下やチオペンタールナトリウムで導入した全身麻酔により行った帝王切開のそれと比較した。
結果:全頭、導入、維持、回復に関する問題は見られなかった。帝王切開で生まれた412頭の子犬のうち、293頭(71%)は生存、13頭(3%)は生まれたとき生存していたが20分以内に死亡、106頭(26%)は死産だった。プロポフォール-イソフルレンで導入した母イヌから生まれた子犬の生存率は、硬膜外麻酔で生まれた子イヌのそれと同じだった。全身麻酔下で母親に行った帝王切開により生まれた子犬の生存率は、チオペンタールナトリウムで導入した母イヌよりもプロポフォールのほうが高かった。
臨床関連:プロポフォールで導入し、イソフルレンで維持する全身麻酔は、イヌの帝王切開実施時の無難な麻酔である。(Sato訳)
■サイトハウンドの麻酔
Anesthesia of the sighthound.
Clin Tech Small Anim Pract 1999 Feb;14(1):38-43
Court MH
サイトハウンドは視覚で獲物を高速追走するように、選択的に繁殖されてきた犬種の古代グループです。おそらく、この選択的過程により、これらの犬は、麻酔管理の副作用が起こり得るかなりの特異体質を持っています。
これらには、
1)高体温のような、ストレス誘発性の臨床的合併症を導きえる神経質な様相;
2)麻酔中、低体温になりやすいような、高い体積-体表面積率である痩せた体格;
3)他の犬種と比較して高ヘマトクリット値、および血清低蛋白であるような血液学的相違は、麻酔前の血液検査の解釈を複雑にしているかもしれません。;
4)特にチオペンタールのような、静脈麻酔薬からの覚醒が延長する結果、肝臓の薬物生体内変換障害;そして薬物相互作用のリスク増大などがあります。
サイトハウンドの安全な麻酔管理は、鎮静剤前投薬と、術中ストレスを最小限にするべく、適切な鎮痛剤を使用するべきです。チオペンタールや、他のチオバルビツール酸塩は、これらの犬に使うべきではありません。選択できる静脈麻酔薬として、プロポフォール、ケタミン/ジアゼパムコンビネーション、そしてメトヘキシタルが推奨されます。クロラムフェニコールのような、薬物生体内変換を抑制する薬物との同時投与は避けましょう。イソフルランを用いた吸入麻酔は、好ましい麻酔維持法です。中心体温は、しっかりとモニターし、低体温を最小限にするための手技を、麻酔中、および覚醒期の両方で用いるべきであります。(Dr.K訳)
■イソフルレンで麻酔したイヌで硬膜外ブトルファノールの薬物動態
Pharmacokinetics of epidural butorphanol in isoflurane-anaesthetized dogs.
J Vet Pharmacol Ther 19[4]:268-73 1996 Aug
Troncy E ; Besner JG ; Charbonneau R ; Cuvelliez SG ; Blais D
16頭の健康な雄イヌをこのプロトコールに無作為に供した。イヌを酸素-イソフルレンで麻酔した。腰仙部硬膜外腔に刺入したカテーテルから、8頭(B群)は0.25mg/kgのブトルファノールを投与し、他8頭(S群)は同量の等張生食液を投与した。血漿と脳脊髄液(CSF)のブトルファノール濃度を、電気化学的検出の高速液体クロマトグラフィーで測定した。ブトルファノールの最大濃度と、この濃度到達時間は血液で42.28ng/mlで13.88分、脳脊髄液で18.03ng/ml、30分だった。分布容積、クリアランス、平均分布と半減期は、それぞれ4.39L/kg、2.02L/h.kg、16.5分、189.1分だった。B群で硬膜外ブトルファノール投与後、前、後肢刺激に続き測定した平均イソフルレン最小肺胞濃度値は31%減少した。皮膚痛覚消失(針刺し試験)はB群でイソフルレン麻酔終了後3時間持続し、ブトルファノールの血漿鎮痛投与量(9ng/ml)に対応していた。それらの結果は、鎮痛が脈管系吸収に続き、背髄上位構造に対するブトルファノールの作用で主に得られることを示唆する。(Sato訳)
■実験的に誘発した甲状腺機能低下症のイヌで、イソフルレンMAC1.0、1.5、2.0による心血管への影響
Cardiovascular effects of 1.0, 1.5, and 2.0 minimum alveolar concentrations of isoflurane in experimentally induced hypothyroidism in dogs.
Vet Surg 25[2]:171-8 1996 Mar-Apr
McMurphy RM ; Hodgson DS ; Bruyette DS ; Fingland RB
甲状腺機能正常のイヌと、機能低下したイヌのイソフルレンに対する心血管作用を判定するためにこの研究を実施した。4頭の健康な雑種犬を、甲状腺切除前(PRE)、切除後6ヶ月(HYP)、1-チロキシンの経口投与2ヵ月後に研究した。心拍数(HR)、心拍出量(Q)、一回拍出量(SV)、収縮期、拡張期、平均動脈血圧(SAP,DAP,MAP)、全末梢血管抵抗(TPR)を覚醒犬で判定し、同じイヌで、終末呼気イソフルレン濃度1.28%、1.92%、2.56%のときに測定した。麻酔をかけたイヌで、呼吸を調節し、PACO2を38-42mmHgに維持した。PRE、HYP、SUPのイヌで、イソフルレンはQ、SV、SAP、DAP、MAPの用量依存的有意な低下を引き起こした(P<.05)。覚醒時、心拍出量はPREまたはSUPのイヌよりもHYPのイヌが低かった。また覚醒時のTPRはPREやSUPのイヌと比べてHYPのイヌで上昇した。麻酔中、PREやSUP群よりもHYP群のQ、SV、SAP、MAPがより低い傾向を見せたが、有意な低下は1.5MACのSAPのみだった。甲状腺機能低下症のイヌでイソフルレンによる心血管への影響は、甲状腺が正常なイヌと同様で、Q、SV、動脈圧に用量依存の低下をもたらす。(Sato訳)
■犬における、メデトミジンにより誘発された、ストレス関連性神経ホルモンと代謝反応に関する、アチパメゾールとヨヒンビンの拮抗作用
The antagonistic effects of atipamezole and yohimbine on stress-related neurohormonal and metabolic responses induced by medetomidine in dogs.
Can J Vet Res 67[1]:64-7 2003 Jan
Ambrisko TD, Hikasa Y
この研究の目的は、メデトミジン(20μg/kg,IM)により誘発された、神経ホルモンと代謝反応に対し、アチパメゾール(40,120,そして320μg/kg,IM)、ヨヒンビン(110μg/kg,IM)、そして生理食塩水の拮抗作用を比較することです。無作為に、それぞれ5つの実験群へ、5頭のビーグル犬を用いました。血液サンプルは、6時間で回収しました。メデトミジンは、有意に、ノルエピネフリン、エピネフリン、インスリン、そして遊離脂肪酸値を減少させ、血漿グルコース値を増加させました。
アチパメゾールとヨヒンビンは、共に、これらの影響を拮抗しました。アチパメゾールの逆転作効果は、エピネフリンを除いて、用量依存性でした。ヨヒンビンは、そのより長い半減期により、アチパメゾールと比較して、血漿ノルエピネフリンとインスリン値における、増加を持続しました。ヨヒンビン単独投与は、コルチゾール値を増加しました。グルカゴンと乳酸値は、有意な変化はありませんでした。これらの所見から、我々は、犬における、メデトミジンによる鎮静を拮抗させる時、他の状態を示さない限り、メデトミジンの2から6倍量のアチパメゾールIMを用いることを推奨します。(Dr.K訳)
■笑気と併用したハロセンとイソフルレンで犬に麻酔をかけた時、下部食道括約筋圧とバリアー圧に与える影響の比較
A comparison of the effects of halothane and isoflurane in combination with nitrous oxide on lower oesophageal sphincter pressure and barrier pressure in anaesthetised dogs.
Vet Rec 137[26]:658-61 1995 Dec 23-30
Hashim MA ; Waterman AE ; Pearson H
外科手術、ハロセンとイソフルランが食道圧に与える影響を30頭の犬で研究した。犬にマレイン酸アセプロマジン(0.1mg/kg)と塩酸ペチジン(1mg/kg)の併用で前処置を行い、チオペンタール(10mg/kg)で導入した。10頭の犬はハロセン麻酔で腹部外科手術を行い、10頭はイソフルレン麻酔で腹部外科を行い、10頭はハロセン麻酔のみで手術を行わなかった。
胃内圧、下部食道括約筋圧と食道バリアー圧を、導入後5-10分、最初の外科切開後5-10分、腹部手術中、皮膚を縫合している間測定した。
グループ間で下部食道括約筋圧に有意差は見られなかったが、導入直後や皮膚を縫合している間と比較すると、外科処置をしている間の圧力は全頭で上昇した。ハロセンで腹部外科手術を行っている間、手術を行なわなかったグループよりも有意にバリアー圧が上昇した(P<0.05)。ハロセンの腹部外科群、非外科群と比べて、イソフルランで腹部外科を行った後の皮膚縫合中のバリアー圧は低かった(P<0.001)。下部食道括約筋はハロセンよりもイソフルランにより感受性を示した。(Sato訳)
■犬にハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルランによる急速吸入麻酔導入を行った時の心肺効果
Rapid inhalation induction of anesthesia by halothane, enflurane, isoflurane and sevoflurane and their cardiopulmonary effects in dogs.
J Vet Med Sci 57[6]:1007-13 1995 Dec
Mutoh T ; Nishimura R ; Kim H ; Matsunaga S ; Kadosawa T ; Mochizuki M ; Sasaki N
24頭のビーグルにハロタン、エンフルラン、イソフルラン、セボフルランを等麻酔濃度(2.5MAC)で、マスクによる急速吸入導入麻酔(RII)を行い評価した。動きの違い、麻酔の導入から挿管までの時間の違いは、各血液/ガスの溶解性の違いに主に関係していた。最も速くスムーズな麻酔導入はセボフルラン(209.0±44.2秒)で観察され、ついでイソフルラン(285.8±34.1秒)だった。ハロタンによる導入は最も長かった(790.3±75.7秒)。急速吸入導入麻酔中の動きは、他の群に比べセボフルレン群が最小だった。心拍数、心拍出量、ダブルプロダクトは、ハロタン群を除く全群で吸入を始めると増加した。それらの変化は吸入を始めると生理学的レベルを超過したが、挿管後約10分で維持レベル(1.5MAC)に急速に回帰した。よって、呼吸器そして/または心機能の重要な問題もなく、イヌの急速吸入導入麻酔で一番良いガス麻酔はセボフルランと思われた。イソフルランもある程度の動きはでるが、急速に導入できた。(Sato訳)
■イソフルレンで麻酔したイヌで、キシラジンの硬膜外注射後の心血管効果
Cardiovascular effects after epidural injection of xylazine in isoflurane-anesthetized dogs.
Vet Surg 24[3]:283-9 1995 May-Jun
Greene SA ; Keegan RD ; Weil AB
6頭の健康なイヌで、イソフルレン麻酔中キシラジン、または等張生理食塩液を硬膜外に注射後に起こる心血管への影響を評価した。イソフルレンとO2でイヌを麻酔し、終末呼気濃度2.0%で維持した。ベンチレーションをPaCO2が35-45mmHgになるようにコントロールした。足背動脈にカテーテルを設置し、動脈血圧(AP)(収縮期AP、平均AP、拡張期AP)の測定と採血に使用した。動脈pHと血液ガス分圧(PaO2、PaCO2)を判定した。心拍出量は温度希釈で測定した。心電図(ECG)、心拍数(HR)、中心核体温、中心静脈圧(CVP)、平均肺動脈圧、終末呼気イソフルレン濃度(ETISO)終末呼気CO2圧(ETCO2)をモニターした。全身脈管抵抗(SVR)、動脈HCO2濃度、塩基平衡、心指数(CI)を算出した。
基準測定終了後、5ml等張生理食塩液中キシラジン(0.2mg/kg)液、または等張生理食塩液5mlを、腰仙部硬膜外腔に注射した。そして硬膜外注射後、5、15、30、45、60、75、90、105、120分のデータを記録した。反復測定のため、データを2元分散分析法(ANOVA)で分析した。有意差が見られた時、ボンフェローニ法で平均値を比較した。有意さのレベルをP<.05とした。拡張期動脈圧の平均値は、キシラジンの硬膜外注射後15分と比較して、90,120分時に減少した。心拍数、収縮期血圧、平均血圧、中心静脈圧、心指数、全身脈管抵抗、平均肺動脈圧、体温、ETCO2、ETISO、動脈pH、PaCO2、PaO2、血漿重炭酸濃度、塩基平衡で、群間のいかなる時の差も検出されなかった。(Sato訳)
■メデトミジン前処置の犬で、イソフルラン麻酔前の導入におけるケタミン又はイソフルランの麻酔効果
Anesthetic Effects of Ketamine or Isoflurane Induction Prior to Isoflurane Anesthesia in Medetomidine-Premedicated Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 37[5]:411-419 Set-Oct'01 Original Article 18 Refs
Jeff C. H. Ko, DVM, MS; Steven M. Fox, DVM, MS, PhD, MBA; Ronald E. Mandsager, DVM
メデトミジンは、犬の一般的な麻酔前処置同様、化学的抑制のための鎮静としても使用されています。メデトミジン前処置の犬で、麻酔移行までにマスク導入、またはケタミン、プロポフォールの静脈注射、もしくはフェンタニルが使用できます。しかし、今のところ、ケタミンとイソフルランのマスク導入の影響を、比較した情報はありません。加えて、メデトミジンと抗コリン作用薬の併用は、論議の的となるところで、アトロピンを併用した時、高血圧と交互脈の発生が指摘されています。
この研究の目的は、メデトミジンの鎮静効果(±アトロピン)を評価する事と、ケタミンとイソフルランのマスク導入について、導入と回復の特性を比較し、メデトミジン前処置犬におけるイソフルラン麻酔の心肺への影響を評価する事です。
12頭の猟犬タイプの雑種犬を、無作為指名交差試験に用い、4種類の麻酔プロトコールを評価しました。:メデトミジン前処置(±アトロピン;MA,M)とイソフルランマスク導入(MA-Iso、M-Iso)、メデトミジン前処置(±アトロピン;MA,M)とケタミン静脈注射導入(MA-K、M-K)でした。挿管後、全頭酸素下イソフルランで30分間維持し、それから回復させました。メデトミジンは全頭横臥姿勢に導きました。ケタミン導入グループで、よりすばやく円滑に気管挿管が出来ました。しっぽを鉗子ではさむテイルクランプで評価した麻酔深度は、全てのグループでエクセレントでした。抜管所要時間や、回復特性にグループ間の有意差は見られませんでした。
徐脈(<60回/分)は、メデトミジン投与後(アトロピンに関わらず)数分以内に、ほとんどの犬で起こり、明白な洞性不整脈を示す犬もいました。加えて、気が付いた不整脈には、心室性期外収縮、交互脈、第Ⅱ度房室ブロック(アトロピンを併用したものの後半によくみられた)でした。ケタミンを与えた犬の、呼吸低下はより顕著で、無呼吸がMA-K、M-Kグループの半数に観察されました。しかし、この呼吸抑制は、酸素化に影響しませんでした。著者は、メデトミジン前処置犬は、ケタミンやイソフルランで導入でき、イソフルランで維持して、良好な麻酔と麻酔からの回復を得られると結論付けました。しかし、ケタミンの副作用的無呼吸のため、メデトミジン前投薬、ケタミン導入の時には陽圧人工呼吸器を利用すべきです。(Sato訳)
■猫の力学的左室流出路障害に対するメデトミジンのドップラーエコー心検査的影響
Doppler Echocardiographic Effects of Medetomidine on Dynamic Left Ventricular Outflow Tract Obstruction in Cats
J Am Vet Med Assoc 221[9]:1276-1281 Nov 1'02 Clinical Trial 38 Refs
Leigh A. Lamont, DVM, MS; Barret J. Bulmer, DVM; David D. Sisson, DVM, DACVIM; Kurt A. Grimm, DVM, MS, DACVA, DACVCP; William J. Tranquilli, DVM, MS, DACVA
目的:左室肥大の猫で、力学的左室流出路障害に対するメデトミジンの影響を評価すること
構成:臨床試験
動物:心エコー検査で力学的左室流出路障害が認められた6頭の家猫短毛種
方法:猫を横臥姿勢に拘束し、基本のM-modeとドップラー心エコー検査を実施した。連続的にECGを記録し、血圧をドップラー計測装置で間接的に測定した。それからメデトミジン(20μg/kg)をIM投与し、15分後検査を繰り返し行った。
結果:メデトミジン投与後、心拍数、左室流出路の速度、左室流出路圧勾配の有意な減少が起こった。ANCOVAにより心拍数の影響を調節後、左室機能の収縮または拡張指数にいかなる有意差も認めなかった。
結論と臨床関連:結果は、力学的左室流出路障害の猫にメデトミジンを投与すると、流出路障害を除去するかもしれない。そしてメデトミジンは、この様な猫の分集団に適切な鎮静、鎮痛剤であるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■ウマの前処置としてキシラジンとメデトミジンの臨床比較
Clinical Comparison of Xylazine and Medetomidine for Premedication of Horses
J Am Vet Med Assoc 221[8]:1144-1149 Oct 15'02 Clinical Trial 22 Refs
Kazuto Yamashita, DVM, PhD; William W. Muir III, DVM, PhD, DACVA, DACVECC; Sae Tsubakishita, DVM; Eric Abrahamsen, DVM, MSc, DACVA; Phillip Lerch, DVM, MSc; John A. E. Hubbell, DVM, MSc, DACVA; Richard M. Bednarski, DVM, MSc, DACVA; Roman T. Skarda, DMV, PhD, DACVA; Yasuharu Izumisawa, DVM, PhD; Tadao Kotani, DVM, PhD
目的:全身麻酔を行うウマの前処置としてメデトミジンとキシラジンの鎮痛効果と心肺への影響を比較する事
構成:無作為臨床試験
動物:ウマ40頭
方法:20頭のウマはメデトミジン(10μg/kg、IM)で前処置を行い、残りの20頭はキシラジン(2mg/kg、IM)で前処置を行った。グアイフェネシンとケタミンの混合で麻酔をかけ、ハロタンで維持した。麻酔導入時に十分鎮静がかかっていない場合、メデトミジン、またはキシラジンの追加投与を行った。麻酔導入後、四肢の動きを抑える必要性があるときに、ペントサルナトリウムを投与した。低血圧にはドブタミンで治療した。呼吸低下や低酸素血症は、間欠的陽圧ベンチレーションを行った。麻酔導入、維持、覚醒の質と吸入麻酔への移行の質にスコアーをつけた。
結果:吸入麻酔への移行の質に対するスコアーは、キシラジンよりメデトミジンで前処置をしたウマの方が有意に高かった。しかし他のスコアー、覚醒時間、うつ伏せや立たせるために必要だった試みの回数に群間有意差はなかった。
結論と臨床関連:結果は、全身麻酔を行うウマの前処置としてメデトミジンは適当であると示唆する。吸入麻酔への移行はメデトミジンで前処置したウマの方がスムーズだった事を除けば、メデトミジンの鎮痛や心肺への影響はキシラジンのそれと同様だった。(Sato訳)
■イソフルレン麻酔犬に、モルヒネ、キシラジンとモルヒネの組み合わせを硬膜外に投与したことによる心血管系への影響
Cardiovascular effects of epidurally administered morphine and a xylazine-morphine combination in isoflurane-anesthetized dogs.
Am J Vet Res 56[4]:496-500 1995 Apr
Keegan RD ; Greene SA ; Weil AB
6頭の健康犬をイソフルレンで麻酔維持している間に、モルヒネ、モルヒネ-キシラジン併用、生理食塩水(コントロール)を硬膜外に投与し、心血管への影響を評価した。イソフルレンとO2で導入し、終末呼気イソフルレン濃度を2.0%で維持した。ベンチレーションは、PaCO2が35-45mmHgになるよう調節した。収縮期、平均、拡張期圧測定と採血のために足背動脈にカニューレを装着した。動脈血pH、ガステンションを30分毎に判定した。心拍出量は熱希釈法で判定した。ECG、心拍数、体温、中心静脈圧、平均肺動脈圧、肺毛細血管楔入圧、終末呼気イソフルレン濃度、CO2テンションをモニターした。全身、肺血管抵抗、動脈HCO3-濃度、塩基過剰、心指数を算出した。
基準値測定を行った後に、5mlの等張生理食塩水中モルヒネ(0.1mg/kg)、5mlの等張生理食塩水中モルヒネとキシラジン(モルヒネ0.1mg/kgとキシラジン0.02mg/kg)、等張生理食塩水5mlを腰仙部硬膜外腔に注射した。注射後5、15、30、45、60、75、90、105、120分のデータを記録した。頻回測定の分散分析を含む統計分析を行った。有意性はP<0.05とした。
3つの処置で、どの時間も変動値の有意差は認められなかった。
結果は、イソフルレンで麻酔を維持した犬に、モルヒネ、モルヒネとキシラジンの硬膜外投与を行っても心血管系に有意な副作用を起こさない事を示した。(Sato訳)
■ミダゾラム
Midazolam
Compend Contin Educ Pract Vet 24[10]:774-777 Oct'02 Pharm Profile 20 Refs
Matt R. Read, DVM, MVSc
ミダゾラム(Versed, Roche Laboratories)はベンゾジアゼピン系トランキライザーで、動物の鎮静や全身麻酔の補助薬として使用される。ミダゾラムは水溶性イミダゾール・ベンゾジアゼピン誘導体である。水溶性のため、ジアゼパムのようにプロピレングリコールで溶解する必要がない。ミダゾラムは最初のベンゾジアゼピンで、IVやIM投与共に信頼性があり、ジアゼパムよりも明らかに用途が広く使用しやすい。ジアゼパムの筋肉内投与は、組織の刺激、痛み、吸収不定、予測不可能な臨床効果に関係する。それらの負の効果は、プロピレングリコール溶媒のためと思われる。
ミダゾラムはジアゼパムの2倍ベンゾジアゼピンレセプターに親和性があり、2、3倍作用が強く、より急速に作用し持続時間は短い。犬でIM投与後、素早く吸収し、ほぼ完全吸収の15分以内に血漿濃度がピークに達する。高度脂溶性のため、高蛋白結合能と広い分布容積を持つ。薬物動態研究により素早く代謝される事がわかり、結果ジアゼパムと比較して、短い消失半減期(犬で77分)と素早いクリアランスをもたらす。
動物では、ミダゾラムは全身麻酔の前投薬として主に使用される。術前の鎮静と不安緩解、骨格筋の弛緩を向上させ、麻酔の維持や導入に必要な強い麻酔の必要投与量を減じる。単独使用では、動物に確実な鎮静をもたらさない。反応は動物種で変化し、同じ動物でさえ個々で変化を示す。動物は2つのうち1つの典型的な反応を示す。それは、鎮静し、失調し、うつ伏せ、または横臥の姿勢をとるか、不快感を示し、興奮して拘束に抵抗性を示す。後者の反応は、ミダゾラム単独のIV投与後に良く起こり、犬よりも猫でよく観察される。
しかし、ミダゾラムは他の鎮静剤と組み合わせて使用すれば、より予測可能な結果が得られる。オピオイドと組み合わせる事が出来、衰弱患者や重症患者に対する鎮静を得られる。その鎮静は、オピオイドとアセプロマジンを組み合わせた時よりも、典型的に深い鎮静でなく、持続時間も短い。しかし、ミダゾラムを組み合わせた時の心肺への副作用は少ない。ケタミンと組み合わせ、IM投与が可能で、素早く予想通りの鎮静が得られる。またミダゾラムは、ケタミンのような解離性薬剤を使用したときに良く見られる流涎、発作行動、筋肉硬直を抑える効果もある。
ミダゾラムはケタミンと組み合わせて、挿管可能になるまでの犬猫の麻酔導入にも使用できる。犬でケタミン-ジアゼパム、ケタミン-ミダゾラムと比較した時、導入は同様の質であるが、完全な気管挿管に至るまで、薬剤再投与の必要な患畜がより少なかったことから、ケタミン-ミダゾラムの方が全体的により良かった。両薬剤の組み合わせによる心肺への影響は同等で、ケタミン-ミダゾラムの蘇生時間は同等か、より短い事が解っている。
ジアゼパムのように、ミダゾラムはてんかん重積状態の抗痙攣剤として使用できる。素早く完全な吸収のため良く使用されるのはIV投与だが、この目的で人手はIM投与も行われている。
犬で、0.1-0.3mg/kgの投与量で使用されるときが最も効果的である。0.1mg/kg以下の投与量では、犬の導入に必要なチアミラール量を少なくする効果はない。ネコでの有効範囲は、0.05-0.5mg/kgで確立されており、気管挿管に最も効果的なケタミンとの組み合わせ量は0.3mg/kgである。IV導入で、ジアゼパムとケタミンを組み合わせる時と同じ様に、50:50(v:v)で混合し1.0ml/9.1kgの投与量で使用できる。ということは、0.28mg/kgミダゾラム、5.5mg/kgケタミンの投与量で臨床効果が得られる。(Sato訳)
■イソフルレンで麻酔した犬の脳圧と心血管の変動値にメデトミジンの投与がどう影響するか
Effects of medetomidine administration on intracranial pressure and cardiovascular variables of isoflurane-anesthetized dogs.
Am J Vet Res 56[2]:193-8; 1995 Feb;
Keegan RD ; Greene SA ; Bagley RS ; Moore MP ; Weil AB ; Short CE
終末呼気イソフルレン濃度1.3%、機械ベンチレーターで炭酸正常状態(PaCO2, 35 to 45 mm of Hg)に保った健康な雑種犬6頭で、メデトミジン静脈投与(0.03 mg/kg)後の脳圧と心血管変動値を評価した。脳圧、心拍数、動脈血圧、心拍出量、平均肺動脈圧、肺毛細血管楔入圧、中心静脈圧、終末呼気CO2圧とイソフルレン濃度、動脈pHとCO2そしてO2圧、中核体温の基準値を判定した。脳灌流圧、心指数、全身そして肺血管抵抗、血漿HCO3-濃度、塩基過剰を計算した。脳圧は、クモ膜下ボルト法で脳実質と安全な頭蓋冠に設置した、光ファイバー変換機で測定した。心拍出量は熱希釈法で測定した。終末呼気CO2圧とイソフルレン濃度は、赤外線ガス分析で判定した。
メデトミジンの投与で脳圧に変化はなかったが、心拍数、心指数、終末呼気CO2、HCO3-の有意な減少(P<0.05)と、収縮期、平均、拡張期圧;肺動脈圧;全身血管抵抗;中心静脈圧;肺毛細血管楔入圧の有意な増加をもたらした。(Sato訳)
■プロポフォールで麻酔した猫におけるロミフィジン高用量投与が心血管系に及ぼす影響
Cardiovascular effects of a high dose of romifidine in propofol-anesthetized cats.
Am J Vet Res 63[9]:1241-6 2002 Sep
Muir WW 3rd, Gadawski JE
目的:プロポフォールで麻酔した猫に対し、塩酸ロミフィジンの筋肉内投与が及ぼす血液動態への影響を判定する
動物:15頭の成家猫短毛種
方法:猫をランダムにロミフィジン0、400、2000μg/kg、IMの投与を受ける群に振り分けた。猫はプロポフォールで麻酔し、酸素の機械換気を行った。右頚静脈、左頚動脈、右大腿動脈、右大腿静脈を外科的に分離し、カテーテルを設置した。心拍数、PR、QRS、QT間隔の持続時間、平均肺動脈圧、平均右心房圧、収縮期、拡張期、平均動脈圧、左心室収縮期圧、左心室拡張末期圧、心拍出量をモニターした。体血管抵抗、左心室圧の変化率、ダブルプロダクトを算出した。動脈、静脈血サンプルを嫌気的に採取し、pH、血液ガス均衡(Po2とPco2)を調査した。
結果:ロミフィジン400、2000μg/kgの筋肉内投与は、心拍数、心拍出量、左心室圧の変化率、ダブルプロダクト、pHを低下させた。動脈、肺動脈圧、左心室圧、左心室拡張末期圧、右心房圧は増加し、それから徐々に正常値に戻った。動脈血液ガスは変化しなかったが、静脈Pco2は増加し、静脈Po2は低下した。低用量と高用量の有意差はほとんどなく、調査した投与量は最大の血液動態への影響を起こす事を示唆した。
結論と臨床関連:ロミフィジンは心血管への影響を起こし、他のα2-作用薬のそれに類似している。ロミフィジンの抗投与量は、心血管障害を持つ猫で注意しながら使用するべきである。(Sato訳)
■モルヒネ、ブトルファノール、ブプレノルフィン、そしてU50488Hが猫のイソフルレン麻酔の最小肺胞濃度にどう影響するか
Effects of morphine, butorphanol, buprenorphine, and U50488H on the minimum alveolar concentration of isoflurane in cats.
Am J Vet Res 63[8]:1198-202 2002 Aug
Ilkiw JE, Pascoe PJ, Tripp LD
目的:レセプターに対する相互作用を変化させるオピオイドが、猫のイソフルレン最小肺胞濃度(MAC)の減少を導くかどうか判定する
動物:12頭の健康な避妊済み猫
方法:猫をイソフルレンで麻酔し、動脈血を採取し、動脈血圧を測定できるような機器を装着した。各薬剤を別々に研究し、各薬剤について猫は2種類の投与量を受けるようにランダムに振り分けた。研究した薬剤は、モルヒネ(0.1または1.0mg/kg)、ブトルファノール(0.08または0.8mg/kg)、ブプレノルフィン(0.005と0.05mg/kg)、そしてU50448H(0.02と0.2mg/kg)だった。全ての薬剤を生食(0.9%NaCl)5mlで希釈し、5分かけて点滴した。イソフルレンのMACは、薬剤投与時と3時間の中で判定しなおしたイソフルレンMACの3通りで判定した。
結果:全ての薬剤はどの時のMACにも有意な効果を与えた。モルヒネ単独では投与量間の違いは無かった。モルヒネ、ブトルファノール、ブプレノルフィン、U50488H投与に反応するイソフルレンMACの最大平均(±SD)減少は、それぞれ28±9、19±3、14±7、11±7%だった。
結論と臨床関連:モルヒネ(1.0mg/kg)とブトルファノール(0.08と0.8mg/kg)のイソフルレンMACを有意に減少させた事は、臨床的に重要と考えられた。しかし、モルヒネ(0.1mg/kg)、ブプレノルフィン(0.005と0.05mg/kg)、U50488H(0.02と0.2mg/kg)によるイソフルレンMACの有意な減少は、臨床に影響するとは考えられず、それらは測定方法の誤りから低下したからだった。猫へのモルヒネ、またはブトルファノールの投与は、強力な吸入麻酔の必要性を減じ、吸入麻酔との組み合わせで、有益な可能性をもつ。(Sato訳)
■連続2時間プロポフォール点滴の心血管への影響:イソフルレン麻酔と比較
Cardiovascular Effects of a Continuous Two-Hour Propofol Infusion in Dogs: Comparison With Isoflurane Anesthesia
Vet Surg 22[6]:537-543 Nov/Dec'93 Experimental study 22 Refs
Robert D. Keegan, DVM, Diplomate ACVA, and Stephen A. Greene, DVM, MS, Diplomate ACVA
連続プロポフォール点滴とイソフルレンによる2時間の麻酔中、心血管への影響を同じ6頭の健康犬で比較した。犬をプロポフォール(5mg/kgの静脈注射後すぐに0.4mg/kg/minでプロポフォール点滴を開始)の麻酔とイソフルレン(2.0%終末呼気濃度)の麻酔を受けるものに無作為に振り分けた。プロポフォール点滴は、軽水準で維持するように調節した。プロポフォール麻酔の犬は、より高い全身脈管抵抗のために全身動脈圧が高値になった。イソフルレン麻酔の犬は、心拍数と平均肺動脈圧が高くなった。心指数の違いはなかった。無呼吸とチアノーゼがプロポフォール麻酔の導入時に観察された。麻酔終了時、抜管までの平均時間は、プロポフォールで13.5分、イソフルレンで12.7分だった。プロポフォールの連続点滴(0.44mg/kg/min)で、軽水準の麻酔が出来る。点滴麻酔中のベンチレーターによるサポートが推奨される。(Sato訳)
■イソフルレンで麻酔した犬の静脈内にケタミン-ミダゾラムの大量瞬時(ボーラス)投与または点滴投与を行ったときの心血管への影響
Cardiovascular effects of intravenous bolus administration and infusion of ketamine-midazolam in isoflurane-anesthetized dogs
Am J Vet Res 54[10]:1715-1720 Oct'93 Experimental study 27 Refs
John D. Jacobson, DVM, MS; and Sandee M. Hartsfield, DVM, MS
ケタミン(10mg/kg)とミダゾラム(0.5mg/kg)の静脈内投与による心血管への影響を、イソフルレン(終末呼気濃度1.7%)で麻酔した12頭の健康犬で調査した。6頭の犬には、ケタミン-ミダゾラム混合(K-M)剤の30秒以上かけたボーラス投与、残り6頭には15分以上かけた点滴投与を行った。ケタミン-ミダゾラム混合剤のボーラス、点滴投与で、試験の終わりには正常値近くに回復する平均収縮期血圧、心指数、一回拍出係数の早期有意な低下(P<0.05)を示した。点滴群で心拍数の有意な低下(P<0.05)が見られ、終わりごろに正常値に回復した。K-Mボーラス投与後1頭が死亡した。収縮期血圧、心指数、一回拍出係数の基準から平均最大の低下は、点滴群よりボーラス投与群で有意に大きかった(P<0.05)。その結果、点滴後のK-Mの心血管への影響はボーラス群よりも程度が軽かった。塩基過剰とpHaは点滴群で有意に低下した(P<0.05)が、同じような変化は両群で起こった。
4頭の犬を、イソフルレンの一時的な影響を判定するために、終末呼気イソフルレン濃度1.7%で維持した。それらの犬にはK-Mを投与しなかった。心拍数、心指数、一回拍出係数、左右心室一回仕事量係数は、さまざまな間隔で採取したサンプルでも有意に増加し、特に試験の終わりでそうだった。
イソフルレン麻酔は、K-Mの心臓刺激特性を効果的にブロックした。ケタミン-ミダゾラム混合剤は、イソフルレン麻酔中慎重に使用するべきで、ゆっくりと点滴による投与は急速ボーラス投与よりも安全かもしれない。(Sato訳)
■ラットにケタミン、アトロピン、ミダゾラムを1回筋肉内注射したときの病理組織学的影響
Histopathologic effects of the single intramuscular injection of ketamine, atropine and midazolam in a rat model.
Vet Hum Toxicol 44[5]:306-10 2002 Oct
Barrueto F Jr, Salleng K, Sahni R, Brewer KL
ケタミンとアトロピンは、小児科の意識鎮静で1つの注射器に混ぜて筋肉内注射をよく行います。しかし、ミダゾラムを加えた時の影響は研究されていない。我々は、ケタミン、アトロピン、ミダゾラム(KAM)を混ぜてラットモデルの筋肉内に1回注射を行い、注射部位周囲の組織学的ダメージを起こすかどうか調査した。1群(n=12)では、小児科意識鎮静を得られる割合で、ケタミン、アトロピン、ミダゾラムを1回注射した。2群(n=12)は同じ量の等張生理食塩水を筋肉内投与した。3群(n=5)はケタミンとアトロピン(KA)を投与し、4群(正常は)は注射しなかった。
各群1匹ずつ4匹を注射後1,3,7日に犠牲にし、3群のKAラットは全て7日目に犠牲にした。注射した肢を採取し、ホルマリンで固定して塩酸で脱灰、カットしてスライドにした。スライドがどの物か解らないようにして病理学者が検査した。全群の1日目の注射部位は、筋周囲の浮腫と出血、組織球浸潤を伴う壊死と筋細胞の変性を認めた。それらは、3日目まで様々な程度で変化した。7日目の病理組織学変化は、生食注射を行ったラットで全て解消しており、KA注射を行ったラットでは、軽度-ダメージ無しだった。KAM注射を行ったラット全てで、7日目でも持続的な病理変化を呈していた。これらの組織学的所見から、ケタミン、アトロピン、ミダゾラムの混合筋肉内注射は、その部位に長期に持続する変性性変化を引き起こすかもしれない。(Sato訳)
■犬にいろいろな前処置を行い、プロポフォールを投与したときの副作用
Adverse effects of administration of propofol with various preanesthetic regimens in dogs.
J Am Vet Med Assoc 202[7]:1111-5 1993 Apr 1
Smith JA ; Gaynor JS ; Bednarski RM ; Muir WW
イソフルレンで麻酔した40頭の犬で、麻酔導入に対するプロポフォールの影響を評価した。プロポフォールは急速に作用する非バルビツレート薬で、静脈投与で超短時間麻酔を起こす。4種類の麻酔前処置を行った。それは、麻酔前投薬無しの麻酔、前投薬にアセプロマジン(0.1mg/kg、IM)、ジアゼパム(0.2mg/kg、IV)または、アセプロマジン(0.02mg/kg)とブトルファノール(0.4mg/kg)を行った。心拍数、収縮期動脈血圧(SAP)、呼吸、導入と覚醒の質、導入と覚醒時の副反応、副作用を記録した。プロポフォールの静脈投与は、不定な無呼吸を40頭中34頭で起こした。
チアノーゼ(2頭)と注射の痛み(3頭)は導入中たまに見られた。1頭はプロポフォール投与後、心室性期外収縮を起こした。前処置に関係なく、投与後すぐに静脈CO2張力は増加しpHは低下した。アセプロマジン(投与前178mmHg、投与後128mmHg)、そしてアセプロマジン/ブトルファノール(投与前184mmHg、投与後98mmHg)で処置した犬へプロポフォール投与後、収縮期動脈血圧の有意な低下を見せた(P<0.05)。導入に使用した時、麻酔関連の副作用を起こし、いくらかは麻酔前投薬で抑える事ができた。覚醒特性は麻酔前投薬で変化し、プロポフォールの投与に無関係だった。(Sato訳)
■イソフルレン-キシラジンで麻酔した犬でアトロピンとグリコピロレートによる血液動態変化
Hemodynamic effects of atropine and glycopyrrolate in isoflurane-xylazine-anesthetized dogs.
Vet Surg 22[2]:163-9 1993 Mar-Apr
Lemke KA ; Tranquilli WJ ; Thurmon JC ; Benson GJ ; Olson WA
副交感神経系の感受性の変化は、キシラジンの血液動態へ部分的反応を起こす。この研究では、イソフルレン麻酔を施した犬にキシラジンを静脈投与した後、アトロピン、またはグリコピロレートを静脈注射し、それによる血液動態の変化を比較評価した。
6頭の健康なビーグル(8.2-10.7kg)を2つの別の研究に7日間供した。イソフルランと100%酸素の調節呼吸で、麻酔導入と維持を行った。持続的な終末呼気イソフルラン濃度(1.8%)と動脈二酸化炭素分圧値(35-45mmHg)が得られてから、基準データを記録し、キシラジン(0.5mg/kg、i.v.)を投与した。実験1ではその5分後にアトロピン(0.1mg/kg、i.v.)を投与し、実験2ではグリコピロレート(0.025mg/kg、i.v.)を5分後に投与した。
血液動態変動値は、キシラジン投与3分後と抗コリン作用薬投与3分後に記録した。実験2で、グリコピロレート投与10分後に両側の迷走神経を切断し、血液動態変動値を3分後に記録した。キシラジン投与後に心拍数、心指数、一回拍出係数は減少し、動脈圧や体血管抵抗は増加した。抗コリン作用薬投与後、心拍数、心指数、ダブルプロダクト(心拍数×収縮期血圧)は増加した。アトロピンとグリコピロレートによる血液動態パラメーターの違いは見られなかった。同様に、グリコピロレートと両側迷走神経切断に有意差はなかった。(Sato訳)
■犬のイソフルレン-酸素麻酔でブトルファノールの心血管系への影響
Cardiovascular effects of butorphanol in isoflurane-oxygen anesthetized dogs
Vet Surg 18[3]:254 May/Jun'89 Scientific Abstracts from the 1988 ACVA Annual Meeting
C. L. Tyner; S. A. Greene; S. M. Hartsfield
6頭の健康な雑種犬の実験研究
実験構成:イソフルレン/酸素で犬に麻酔をかけ、ベンチレートを行った。ブトルファノール0.2mg/kgの静脈投与を行い、その後0、5、10、15、30、45、60分目に心肺パラメーターを判定した。
結果:ブトルファノールは、平均動脈圧(注射後5-45分)、収縮期動脈圧(5-30分)、拡張期動脈圧(5-60分)、心拍出量(5分時)、ダブルプロダクト(心拍数×収縮期血圧)(5-15分)、肺動脈温(10-60分)、動脈CO2張力とpH(45分時)を減少させた。(Sato訳)
■犬で、モルヒネとイソフルレンの相互作用
Morphine-isoflurane interaction in dogs
Vet Surg 18[3]:254 May/Jun'89 Scientific Abstracts from the 1988 ACVA Annual Meeting
E. P. Steffey; J. D. Baggot; J. H. Eisele; M. J. Woliner; K. A. Jarvis; A. R. Elliott; M. Tagawa
犬での実験研究
実験構成:イソフルレンで麻酔した犬に、モルヒネ0.5、1、2mg/kg、IVを行い、薬物動態とMACへの影響を判定した。
結果:モルヒネは全頭のイソフルレンMACを減少させ、用量に正比例し、時間に反比例した。モルヒネ2mg/kgは、注射後40分間MACを50%減少させ、150分間30%減少させたが、0.5mg/kgの場合、40分間はMACを25%減少させ、150分間は5%減少させた。
モルヒネの半減期は、59.4±2.7分で、クリアランスは62.3±4.9ml/min/kgで用量とは無関係だった。(Sato訳)
■ハロセンとイソフルランの麻酔効果にマレイン酸アセプロマジンがどう影響するか
The effect of acepromazine maleate on the anesthetic potency of halothane and isoflurane
J Am Anim Hosp Assoc 24[6]:609-613 Nov/Dec'88 25 Refs
1A. I. Webb, BVSc, PhD, DVA; J. M. O'Brien, DVM; 1Dept of Med Sci, College of Vet Med, Box J-126, JHMHC, Univ of Florida, Gainesville, FL 32610
健康な雑種犬6頭の実験研究
研究期間の1週間に各犬を最低6回実験した。導入、維持麻酔はハロタンかイソフルランで行い、肺胞最小濃度(MAC)を判定した。アセプロマジン0.2mg/kgか0.5ml生食を筋肉注射し、MACを再判定した。
結果:平均MACの有意な減少が、アセプロマジンを投与したハロタン、イソフルラン群で認められ、生食では認められなかった。
アセプロマジンの投与で、ハロタン(28.2%)よりも、より大きなイソフルラン(48.1%)の平均MAC減少を起こした。
要約:アセプロマジンは麻酔必要量(MACにより判定)を減少させ、ハロタンよりイソフルランにより強く見られた。(Sato訳)
■麻酔前処置としてメデトミジン、またはアセプロマジンを投与した犬の術中ストレス反応の評価
Evaluation of the perioperative stress response in dogs administered medetomidine or acepromazine as part of the preanesthetic medication.
Am J Vet Res 63[7]:969-75 2002 Jul
Vaisanen M, Raekallio M, Kuusela E, Huttunen P, Leppaluoto J, Kirves P, Vainio O
目的:麻酔前処置としてメデトミジン、またはアセプロマジンを投与した犬の術中ストレス反応の比較
動物:選択的卵巣子宮摘出術を行った42頭の飼育犬
手順:各犬を、メデトミジン(20μg/kg、IM)と酒石酸ブトルファノール(0.2mg/kg、IM)またはマレイン酸アセプロマジン(0.05mg/kg)とブトルファノール(0.2mg/kg)の麻酔前処置を行うように無作為に振り分けた。約80分後プロポフォールで麻酔導入し、イソフルランで維持した。各犬に術前カルプロフェン、術後にブプレノルフィンの投与も行った。エピネフリン、ノルエピネフリン、コルチゾール、β-エンドルフィンの血漿濃度を、周術期間のいろいろな段階で測定した。また心血管、臨床変動値もモニターした。
結果:エピネフリン、ノルエピネフリン、コルチゾール濃度は、メデトミジン投与群で有意に低かった。β-エンドルフィン濃度は2群間の差がなかった。アセプロマジン群に比べ、メデトミジンの投与群は、心拍数が有意に低く、平均動脈血圧は有意に高かった。
結論と臨床関連:結果は、麻酔前処置としてメデトミジンが、ストレス関連ホルモンの周術濃度現象作用につき、アセプロマジンよりもいくらか利点があるかもしれないことを示している。特に安定したカテコラミン濃度を提供する事は、交感神経系の周術活動を減弱する助けとなるかもしれない。(Sato訳)
■健康で起きている猫にケタミンの静脈注射後、ミダゾラムの最適静脈投与量
The optimal intravenous dose of midazolam after intravenous ketamine in healthy awake cats.
J Vet Pharmacol Ther 21[1]:54-61 1998 Feb
Ilkiw JE ; Suter C ; McNeal D ; Farver TB ; Steffey EP
ケタミン(3mg/kg)と様々な投与量のミダゾラム(0,0.05,0.075,0.1,0.3,0.5mg/kg)の静脈投与の効果を、24頭の健康で薬物療法されていない猫で投与から完全覚醒までの時間を調査した。侵害刺激無しでの短時間の拘束、侵害刺激を行った時の短期間の拘束、気管内挿管ができる最適量を判定するのを目的とした。覚醒特性も望ましくない行動同様に、覚醒中に観察し記録した。頭を落とし横臥状態までのミダゾラム投与量は、半数がその状態になる量(ED50)が0.016mg/kgで、95%がその状態になる(ED95)のは0.054mg/kgだった。尺骨神経の刺激に対し、半数が反応しなくなる量は0.286mg/kgで、95%が反応しなくなる量が0.652mg/kgだった。嚥下反射喪失や喉頭鏡を舌の上に置けるようになるまでは、ED50が0.265mg/kg、ED95が0.583mg/kgだった。
挿管できる状態のED50は0.265mg/kgで、侵害刺激に反応しなくなるED50は0.286mg/kgとなり、試験投与量0.3mg/kgに近づいた。その投与量で、喉頭鏡の反射の欠如は3.67±2.27分持続し、尺骨神経の反応がないのは2.50±2.20分持続した。運動失調を伴いながら歩行するまでは41.5±15.18分かかり、完全に覚醒するまでは3.6±1.3時間を要した。覚醒時の主な行動パターンは正常に見えたが、異常パターンを示す猫もいた。
20頭中9頭は異常な覚醒状態で、そのうち4頭は落ち着きがなく、5頭は鎮静状態であった。20頭中7頭は接した時に異常な行動を示し、そのうち3頭は接するのが難しく、4頭は簡単に接する事ができた。20頭中8頭は、押さえつけると異常な行動を示し、そのうち半数はそれが難しく、半数は簡単だった。20頭中5頭は、覚醒中によく鳴いた。侵害刺激を行わない化学的拘束のED50には0.042mg/kg必要で、試験投与量の0.05mg/kgに近づいた。その投与量で、頭を落とし横臥状態を維持した時間は5.49±4.02分で、運動失調を伴いながら歩けるようになるまで25.96±5.77分、完全に覚醒するまで1.7±0.4時間かかった。覚醒中の主な行動パターンは正常で、異常行動を示した猫もいた。2頭は鎮静状態で、1頭は接触がより難しく、1頭は押さえつけるのが簡単で、3頭はよく鳴いた。(Sato訳)
■成犬で、麻酔導入と覚醒に関するイソフルレンとセボフルレンの比較
Comparison of isoflurane with sevoflurane for anesthesia induction and recovery in adult dogs.
Am J Vet Res 59[4]:478-81 1998 Apr
Johnson RA ; Striler E ; Sawyer DC ; Brunson DB
目的:2種類の吸入麻酔剤(イソフルレンとセボフルレン)で、マスク麻酔導入と覚醒特性の比較
動物:16頭の臨床的の正常な若い成犬ビーグル
方法:交叉方法で、ランダムにマスクと循環麻酔系のセボフルレンとイソフルレンに供した。気化器の濃度を段階的に増し、最小肺胞濃度(MAC)が同じ(2MAC)まで増して、イソフルレンは2.6%、セボフルレンは4.8%に到達した。テイルクランプの反応がなくなるまで、その濃度をコンスタントに維持し、挿管した。終末呼気濃度をイソフルレンは1.8-2.0%、セボフルレンは3.3-3.8%に(1.4-1.6MAC)30分維持した。犬は、テイルクランプの刺激に反応するまで覚醒させた。自発嚥下反射が見られたら、抜管した。犬は伏臥状態になり自然に立ち上がるようにした。
結果:セボフルレン導入は、眼瞼反射喪失時間、テイルクランプの反応喪失、挿管までの時間がより短く、イソフルレン導入よりも良かった。両麻酔共に素早くスムーズに回復した。
結論:セボフルレンのマスク導入は、イソフルレンよりも素早く良質であった。回復時間とその質は同等であった。
臨床関連:それらの結果から、セボフルレンはマスク導入の安定した吸入麻酔剤で、イソフルレンよりも早くスムーズな導入ができる利点が見えた。(Sato訳)
■フィラリアに感染している、またはしていないビーグル犬で、メデトミジンの鎮静鎮痛効果
Venugopalan CS ; Holmes EP ; Crawford MP ; Kearney MJ ; Fucci V
Sedative and analgesic effects of medetomidine in beagle dogs infected and uninfected with heartworm.
Vet Res Commun 22[2]:97-106 1998 Feb
メデトミジンの鎮静鎮痛効果を、フィラリア感染(HW+)ビーグルとフィラリア未感染(HW-)ビーグルに静脈注射(IV)、筋肉内注射(IM)で30μg/kg、40μg/kg、それぞれ投与して評価した。姿勢、音に対する反応、ペダル反射をモニターした。偽のX線写真のポジションをとらせる事を、相対的な臨床での使用を評価するために行った。観察時間は0、15、30、60、90、120、180分とした。また、注射から自分で立っていられなくなるまでの時間(down time)、横臥から伏臥までの時間(伏臥時間)そして伏臥から立ち上がるまでの時間(起き上がる時間)も注目した。
両投与経路でも素早い鎮痛と鎮静が得られた。IM、IV投与のdown timeはほぼ同じで、メーカー使用推奨投与量を裏付けた。HW+犬は、down timeがより短く、アドレナリン作用性α2活性により脳への血流量が増したためと思われた。伏臥時間、起き上がる時間共に、グループ間の相違はなく、同程度の代謝を示唆した。全頭で鎮痛、鎮静作用は、実施した処置に適切であった。HW-犬はHW+犬に比べ、その処置の間の取り扱いに抵抗が少なかった。全体的に、潜在性のフィラリア感染犬に対しても短時間の化学的拘束を目的として、適切な薬剤と思われた。(Sato訳)
■犬の挿管後の無呼吸に対し、プロポフォールの2パターンの注入速度またはチオペンタールがどう影響するか
Effect of propofol at two injection rates or thiopentone on post-intubation apnoea in the dog.
J Small Anim Pract 42[2]:71-4 2001 Feb
Murison PJ
麻酔導入時の換気に対する影響を、チオペンタール(10mg/kg)、またはプロポフォール(4mg/kgを急速注入、4mg/kgをゆっくり注入)で麻酔を行った66頭の挿管後に研究した。麻酔前処置としてアセプロマジンとモルヒネを投与し、麻酔は笑気、酸素中のハロセンで維持した。呼吸装置接続から最初の呼吸までの時間を測定した。無呼吸は15秒以上の自発呼吸の停止とした。呼吸数と毎分換気量を麻酔最初の5分間に測定した。
プロポフォール(速59%、遅64%)はチオペンタール(32%)よりも無呼吸の発生が多かったが、有意差はなかった。最初の呼吸までの時間は、チオペンタールよりもプロポフォールの方が有意に長く、ゆっくり注入した時が最も延長した(中央値は、チオペンタールが4秒、急速プロポフォールが19.5秒、緩プロポフォールが28.8秒)。結論として導入剤と注入速度は、挿管後の無呼吸の発生と持続時間に影響を及ぼす。(Sato訳)
■プロポフォールの静脈投与が犬の食欲刺激にどう影響するか?
The effect of propofol administered intravenously on appetite stimulation in dogs.
Contemp Top Lab Anim Sci 39[6]:43-6 2000 Nov
Long JP, Greco SC
食欲不振は、食欲減退、食物嫌悪と定義される。食欲不振の臨床症状には多くの原因があり、全身性疾患、痛み、熱、ストレス、代謝障害、嗜好性の減少や食餌に対して嫌がる事を学習するなどである。食欲の乱れは、コンパニオン、実験動物医学でよくみられる。裏付けのない証拠や個人の経験から、プロポフォールの催眠誘起量で静脈投与すると急速な食欲刺激を起こすと言われている。容量反応効果の確立は、臨床適用で重要となる。よってこの研究は健康な、若い成犬の食欲刺激に対するプロポフォールの効果について定量定質化をするのを目的とする。6頭の純粋雄犬(6ヶ月)をクラスAの売主から導入した。個々に犬を飼育し、研究期間を通して制約無しに水を与えた。テストコンディションと満腹の程度を確実に同じにするため、食餌の制限も無しとした。
各研究日ごとに無作為に犬を実験群とコントロールに振り分けた。実験群には異なる投与量(0.5、1.0、1.5、2.0、3.0mg/kg)で単回プロポフォールの静脈投与を行い、コントロールには生食を投与した。処置者には、動物の固体識別と投与量を隠していた。
3.0mg/kg以上の投与量は、深い鎮静と失調を起こし、食物摂取の身体的抑制を起こした。3.0mg/kgはテストした再高用量だった。犬は毎日正確な投与量を守るために体重測定した。投与はほぼ同時刻になるように行った。食物摂取量は投与後15、30、60、120、1440分後に記録した。食物摂取は(食物摂取(g)/体重(kg)/単位時間(min))として明確に示した。1週間の休息時間を置いて、繰り返し行った。type RBF-65 randomized-block factoral design (ANOVA)でデータを分析した。各犬はそれ自身のコントロ-ルに任せた。2つの実験は分離して分析を行い、P-値が0.05以下のものを、統計的に有意とした。
食餌量の有意(P、0.05)な増加は、唯一0-15分の時間間隔のときに観察された。他の時間帯では有意な増加はなかった。このデータは、プロポフォールの食欲刺激効果が、注射後の最初の15分に見られる事を示している。この効果のメカニズムの説明と、他の種類でもこれが起こるのかどうか、追加の研究が必要である。(Sato訳)
■プロポフォールとイソフルレンで麻酔をかけた健康犬に、カルプロフェンを投与したときの腎臓への影響
Renal Effects of Carprofen Administered to Healthy Dogs Anesthetized with Propofol and Isoflurane
J Am Vet Med Assoc 217[3]:346-349 Aug 1'00 Clinical Trial 27 Refs
Jeff C.H. Ko, DVM, MS, DACVA; Takayoshi Miyabiyashi, BVS, PhD, DACVR; Ronald E. Mandsager, DVM, DACVA; Terrell G. Heaton-Jones, DVM; Daniel .F Mauragis
目的:健康犬の一般的な麻酔後のカルプロフェンの腎臓への影響を判定する
構成:無作為臨床試験
動物:10頭のイングリッシュハウンド(6頭メス、4頭オス)
方法:コントロール群(n=5)とカルプロフェン群(5)にランダムに振り分けた。麻酔はプロポフォール(6-8mg/kg、IV)で導入しイソフルレン(終末呼気濃度、2.0%)で維持した。各犬を1週間間隔で2回、60分の麻酔を行った。各麻酔中平均動脈圧は60-90mmHGで維持し、カルプロフェン群には2回目の麻酔の前日9:00AMと6:00PM、2回目の麻酔当日7:00AMに(2.2mg/kg)経口投与した。糸球体ろ過率(GFR)を、各麻酔中に腎臓シンチグラフィーを用いて測定した。全身麻酔前2日間と後5日間に毎日、血清クレアチニン、BUN、尿中GGT:クレアチニン濃度比を測定した。
結果:全ての期間中、BUN、血清クレアチニン濃度、尿中GGT:クレアチニン比、糸球体ろ過率の有意差は、治療群間に見られなかった。
結論と臨床関連:プロポフォールとイソフルレンで麻酔した健康犬の腎機能に、カルプロフェンは有意な変化を起こさなかった。結果、カルプロフェンは術中鎮痛目的に先立って安全に使用でき、正常な心肺機能の維持をもたらす事ができると示唆する。(Sato訳)
■犬の麻酔導入で、プロポフォール、プロポフォール-ケタミンの比較研究
Comparative study of propofol or propofol and ketamine for the induction of anaesthesia in dogs.
Vet Rec 146[20]:571-4 2000 May 13
Lerche P, Nolan AM, Reid J
犬の麻酔導入で、プロポフォール単独、プロポフォールとケタミンの効果を比較した。健康犬30頭をアセプロマジンとペチジンで前処置し、各治療に無作為に振り分けた。1群はプロポフォール4mg/kgIV、2群はプロポフォールとケタミン各2mg/kgIVで導入した。ハロセンで維持し、非再呼吸Bain回路を通し、酸素と笑気(1:2)で混合し送り込んだ。種々心肺パラメーターを導入後、2、5、10、15、20、25、30分に測定し、麻酔中や覚醒中の動物を観察して副作用を記録した。麻酔中、2群(95-102回/分)の心収縮動脈圧はそうではないが、心拍数は一貫して1群(73-90回/分)よりも高かった。導入後の無呼吸は、1群(15頭中6頭)よりも2群(15頭中11頭)でよく起こった。筋収縮は各群3頭に見られた。覚醒時間は両群よく似ていた。健康犬に対するプロポフォールとケタミンは、プロポフォール単独麻酔導入に匹敵する。
■プロポフォールで麻酔した犬の眼内圧と部分CO2圧の評価
Evaluation of Intraocular and Partial CO2 Pressure in Dogs Anesthetized with Propofol
Vet Ophthalmol 3[1]:17-19 Mar'00 Clinical Study 24 Refs
Cristina Mendes Batista; Jose Luis Laus *; Newton Nunes; Paulo Sergio Patto dos Santos; Jorge Luiz Oliveira Costa
プロポフォールが眼内圧や終末呼気CO2に与える影響を調査した。後者が高いと眼内圧に変化をもたらすかもしれない。20頭の犬を2群に振り分けた。1群はプロポフォール10mg/kgIVで導入し、0.2%デキストロース溶液で薄め0.4mg/kg/minで1時間点滴維持しました。2群はコントロールとし、デキストロース溶液のみ1群のように投与しました。展開眼圧計(トノペン)で眼内圧を測定し、終末呼気CO2は部分CO2圧の判定に用いました。測定を1時間まで15分おきに行い、最初は静脈投与直前に行った。両群の眼内圧、終末呼気CO2共に統計学的有意差はなかった。結果によるとプロポフォールは眼内圧や終末呼気CO2に影響しないと思われる。(Sato訳)
■グレイハウンドの完全静脈麻酔:プロポフォールとフェンタニルの薬物動態-予備的研究
Total intravenous anesthesia in greyhounds: pharmacokinetics of propofol and fentanyl--a preliminary study.
Vet Surg 28[6]:513-24 1999 Nov-Dec
Hughes JM, Nolan AM
目的:グレイハウンドで麻酔法としてプロポフォールとフェンタニル併用した点滴の評価
動物:体重25.58±3.38kgの臨床的に健康なグレイハウンド8頭(オス4頭、メス4頭)
構成:予見的実験研究
方法:アセプロマジン(0.05mg/kg)の筋注で麻酔前処置を行った。45分後プロポフォール(4 mg/kg)の静脈急速大量投与で導入し、プロポフォール点滴を開始した(time = 0)。導入5分後、フェンタニル(2 microg/kg)とアトロピン(40 microg/kg)を静脈投与し、フェンタニル点滴を開始した。プロポフォール(0.2 to 0.4 mg/kg/min)点滴を90分続け、フェンタニル(0.1 to 0.5 microg/kg/min)点滴を70分続けた。心拍数、血圧、呼吸数、終末呼気炭酸濃度、体温、麻酔深度を記録し、自発呼吸に戻る、抜管、頭をあげる、立ち上がるまでの時間と麻酔の質も記録した。麻酔前後の種々の時間帯に、プロポフォールとフェンタニル分析のために採血した。
結果:全頭の平均心拍数は不定で、点滴中は52-140回/分であった。同時間の平均血圧は、69-100mmHgであった。臨床評価として、全頭軽い外科麻酔と思われた。プロポフォールの点滴中止後、自発呼吸に戻る、抜管、頭をあげる、立ち上がるまでの平均時間(±SEM)は、それぞれ26±7、30±7、59±12、105±13分であった。8頭中5頭は、覚醒中クンクン鳴き、遊泳運動をした。
点滴中の全血プロポフォール濃度は、1.21-6.77μg/mLであった。プロポフォールの平均残留時間(MRTinf)は104.7±6分で、平均体クリアランス(Clb)は53.35±0.005mL/kg/min、安定状態での分布容積(Vdss)は3.27±0.49L/kgだった。点滴中7頭の血漿フェンタニル濃度は、1.22-4.54ng/mlだった。血漿フェンタニル濃度が>0.77、<1.17ng/mLの時に自発呼吸が戻った。フェンタニルの平均残留時間は、111.3±5.7分だった。平均体クリアランスは29.1±2.2mL/kg/minで、安定状態での分布容積は2.21±0.19L/kgだった。
結論と臨床関連:外科的刺激を行わなかったグレイハウンドで、プロポフォールとフェンタニル点滴で維持した完全静脈麻酔は十分な麻酔が得られ、アトロピンの投与で徐脈を防ぐことができた。不十分な回復がいくらかあるが、この犬種や雑種で臨床症例に対しさらに価値がある調査をしています。(Sato訳)
■犬でチオペンタールナトリウムとプロポフォールを1:1で混合した時の麻酔と心肺への影響
Jeff C.H. Ko, DVM, MS, DACVA et al; J Am Vet Med Assoc 215[9]:1292-1296 Nov 1'99 Random Crossover Study 19 Refs; Anesthetic and Cardiorespiratory Effects of a 1:1 Mixture of Propofol and Thiopental Sodium in Dogs
目的:犬でプロポフォールとチオペンタールナトリウムを1:1(vol:vol)で混合し、その麻酔、心肺効果について各薬剤を単独使用したときのものと比較した
構成:無作為クロスオーバー研究
動物:10頭の健康なウォーカーハウンド
方法:1週間間隔で、プロポフォール(6mg/kg)、チオペンタール(15mg/kg)またはプロポフォール(6mg/kg)とチオペンタール(15mg/kg)を混合して投与した。薬剤を90秒以上かけて、または意識を失うまでゆっくり静脈内投与した。挿管可能になるまで、最初の投与量の10%を増量し投与した。挿管までの必要量、導入と覚醒の状態、導入から挿管に続き最小の運動失調で歩くまでの時間、挿管でき横臥していた持続時間を記録した。心拍、呼吸数や平均、収縮期、拡張期の血圧、ヘモグロビン酸素飽和度(SpO2)、そして終末呼気CO2濃度(ETCO2)を、挿管前後に判定した。
結果:挿管できるまでのプロポフォールとチオペンタールの必要量は、混合した方がより少なかったが、有意差はなかった。チオペンタール群の横臥の持続時間や導入から歩くまでの時間は、他の群と比べて長く、覚醒の状態も悪かった。全群の犬は正常血圧だった。呼吸数、心拍数、ETCO2、SpO2は群間で違いはなかった。
結論と臨床関連:プロポフォールとチオペンタール1:1混合剤は、単独使用と同質の麻酔を行えた。覚醒の状態や時間はプロポフォールと同様で、チオペンタールより優れていた。(Sato訳)
■頭蓋内の障害を持つ犬猫の難治性発作に対するプロポフォールによる治療
Steffen F et al; J Small Anim Pract 41[11]:496-9 2000 Nov ;Propofol for treatment of refractory seizures in dogs and a cat with intracranial disorders
頭蓋内から発生する種々の障害による発作で、12頭の犬と1頭の猫が来院し、1つ以上のプロポフォール(2-8mg/kg)の丸薬で治療しました。全ての動物は、以前ジアゼパム単独、または、フェノバルビタールおよび/またはペントバルビタールの組み合わせた医療を受けていました。よりいっそうの痙攣を予防する発作コントロールを11頭で達成しました。1頭はプロポフォールの投与によりコントロールに成功した期間の後、発作の再発を繰り返しました。バルビツレート療法に抵抗し発作を続けていた他の犬は、プロポフォールの投与に続き死亡しました。回顧的研究は、プロポフォールは伝統的な医療に抵抗するてんかん様状態をコントロールするのに効果的な薬剤かもしれず、ペントバルビタール投与に替わるものかもしれないと示唆します。(Dr.Sato訳)
■清潔な創傷で、プロポフォール使用に関する術後創傷感染率:回顧的研究
The association of propofol usage with postoperative wound infection rate in clean wounds: a retrospective study.
Vet Surg 28[4]:256-9 1999 Jul-Aug
Author(s): Heldmann E, Brown DC, Shofer F
目的:犬猫の清潔な外科的創傷の術後感染率にプロポフォールの使用が影響を及ぼすかどうか判定すること
研究構成:回顧的研究
サンプル集団:清潔な外科手術を行った犬と猫863頭
方法:以前に行った術後感染症に対する疫学研究の一部外科症例の医療、麻酔記録を再検討した。清潔な外科創傷を持つ全ての動物の記録で、プロポフォールが導入や術中維持麻酔として使用されていたかどうか再調査した。創傷感染率に対するプロポフォール使用の影響を判定するため、Fisher's exact testでデータを分析し、続けて様々な要因(手術時間、毛刈りから手術までの時間、抗生物質使用、併発している種々の感染、内分泌疾患、周術期間での免疫抑制剤の使用)を調節するため、複合ロジスティック解析も行いました。
結果と結論:清潔な外科創傷を持つ犬猫863頭中、46頭が麻酔過程の一部でプロポフォールを使用していました。プロポフォールを使用した46頭中6頭(13%)は、術後創傷感染を起こしましたが、プロポフォールを使用しなかった場合、817頭中33頭(4%)が感染を起こしました(P=.014;%差=9%;95%信頼区間=0.5%-24%)。他の評価したものを調整すると、プロポフォールを使用した動物は、使用しなかった動物よりも3.8倍術後の創傷感染を起こしやすかった(95%信頼区間=1.5-9.9)。
臨床との関わり:プロポフォールは、細菌発育のサポート能のある脂質ベース懸濁液です。汚染の可能性がある溶液の投与は、外科創傷感染、他の病的状態、死亡率に寄与するかもしれません。溶液調剤時の厳密な無菌操作と使用薬剤を速やかに使い切る事は、外来汚染の可能性を少なくするために必要となります。(Sato訳)
■プロポフォール:獣医診療での鎮静と麻酔への応用
Propofol: application in veterinary sedation and anesthesia.
Clin Tech Small Anim Pract 14[1]:1-9 1999 Feb
Glowaski MM ; Wetmore LA
プロポフォールは、小動物の鎮静、麻酔導入、維持麻酔として使用できます。それらの状態からの回復は、一般的に急速でスムーズです。その薬剤は、急速な投与時に見られる、心臓や呼吸のネガティブな影響を最小限にするためにゆっくり静脈投与するべきです。目下利用可能な製剤は防腐剤を含まず、薬剤使用時に無菌操作を厳密に行わなければいけません。プロポフォールは、既存疾患を持つ患畜で、回復の遅れを最小限にする麻酔導入薬として使用できます。低用量でも興奮を引き起こさないので、X線検査などの痛みを伴わない処置時の鎮静にも有効です。この調査は、小動物臨床の多様な臨床応用に焦点を当て、適応、推奨、禁忌やその使用にまつわる議論も行っています。(Sato訳)
■比較臨床研究:プロポフォール-ハロセン、チオペンタール-ハロセン麻酔
J.I. Redondo-Garcia, DVM et al; Canine Pract 24[1]:10-13 Jan/Feb'99 Clinical Study 24 Refs; A Comparative Clinical Study: Propofol-Halothane and Thiopental-Halothane Anesthesia in Ill Dogs
84頭の犬で、吸入麻酔前の導入剤として、プロポフォールとチオペンタールナトリウムの臨床比較を行いました。以下のように犬を2つのグループに無作為に振り分けました。前投薬はアセプロマジン(0.05mg/kg IM)とアトロピン(0.01mg/kg IM)、導入麻酔は、チオペンタール(チオペンタール群)またはプロポフォール(プロポフォール群)の静脈投与で、ハロセンで維持しました。チオペンタールは9.61±3.96mg/kg、プロポフォールは3.45±1.47mg/kgで投与しました。チオペンタールは心拍数をより高くし、抜管まで長時間を要しましたが、呼吸数はプロポフォール群より多くなりました。動脈酸素飽和度や直腸温に関してグループ間の有意差は見られませんでした。このように犬の一般的な麻酔に、安全かつ効果的な選択可能薬としてプロポフォールを推奨でき、どんな麻酔リスクや術式にでも使用できるかもしれません。しかし、チオペンタールによる導入で使用される濃度と比較して、麻酔維持に必要なハロセンの濃度を高く設定する必要があります。(Sato訳)
■犬で、3週間の機械的ベンチレーションと集中治療を行う中で、ペントバルビタール、ペントバルビタール-プロポフォールに関する血漿電解質と代謝産物濃度
Plasma electrolyte and metabolite concentrations associated with pentobarbital or pentobarbital-propofol anesthesia during three weeks' mechanical ventilation and intensive care in dogs.
Lab Anim Sci 48[5]:513-9 1998 Oct
Gronert GA ; Haskins SC ; Steffey EP ; Fung D
集中治療のセッティングを行った臨床上正常な犬17頭で、長期人工呼吸(3週間)と栄養補給を行い、深い鎮静のためにプロポフォールとペントバルビタールを使用しました。両薬剤共に耐性を獲得しました。ペントバルビタールと組み合わせたプロポフォールの点滴の速さは、75μg/kg/分を選択しました。ペントバルビタールのみの点滴は、5-6mg/kg/hで始め、良好でした。両薬剤の組み合わせは、円滑で安定した麻酔ができ、集中治療人員の最低限の介入ですみました。血液ガス張力や電解質、副甲状腺ホルモン(PTH)、代謝産物濃度は、犬の状態が悪化しない限り(例えば、感染、気胸)通して一般に安定していました。
時間と共にヘマトクリット値や赤血球数は減少し、主に多数の血液サンプル採取によるものと思われました。白血球数、ALP、リン、フィブリノーゲン、コレステロール、トリグリセリド値は時間と共に上昇し、ペントバルビタールや、ペントバルビタールとプロポフォールの組み合わせに関連していました。それらの変化は、ストレスや炎症、代謝変化、プロポフォールの脂質溶剤に対する、一般的な反応に関連して出現するものでした。トリグリセリド濃度の上昇は、プロポフォールを使用した時の方が大きかったです。死亡率は47%で、2-18日の間に死亡しました。(Sato訳)
■メデトミジンの前投薬を行った犬で、プロポフォールまたはケタミン麻酔の臨床効果と安全性
Title: Clinical efficacy and safety of propofol or ketamine anaesthesia in dogs premedicated with medetomidine.
Source: JOURNALS ABSTRACT (Vet Rec 142[23]:631-4 1998 Jun 6)
Author(s): Hellebrekers LJ ; van Herpen H ; Hird JF ; Rosenhagen CU ; Sap R ; Vainio O
メデトミジンとプロポフォールまたはケタミンの組み合わせで、種々の外科(60%)そして非外科(40%)術を行った犬で、鎮静や麻酔導入について比較しました。84頭の犬を4部門で使用しました。導入10-15分前にメデトミジンを1000μg/m2の割合で筋肉内投与し、その後プロポフォール(n=44)、ケタミン(n=40)の有効投与量で麻酔導入を行いました。メデトミジンの鎮静にかかった平均時間(SD)は6.7(5.4)分で、心拍数や呼吸数は減少しました。16頭に副作用が見られ、そのうち13頭は嘔吐でした。麻酔導入は、プロポフォール(2.1[0.7]mg/kg)、またはケタミン(3.7[1.9]mg/kg)の静脈内投与で行い、麻酔の追加投与は手術の長さに応じて行い、1回行ったのは17%、2回は11%、3回以上行ったのは24%でした。ケタミンで麻酔を行った犬の心拍数は、プロポフォールのそれよりも有意に高かったですが、その他生理学的有意差は見られませんでした。プロポフォール群で5つの副作用が見られたのに対し、ケタミン群では11の副作用が見られ、それらは一般的により重度のものでした。麻酔からの回復の質は、プロポフォール群の89%で順調と考えられましたが、ケタミン群においてはたった63%でした。(Sato訳)
■犬でプロポフォール麻酔により起こった呼吸抑制と無呼吸
Respiratory depression and apnea induced by propofol in dogs.
Am J Vet Res 59[2]:157-61 1998 Feb
Muir WW 3rd ; Gadawski JE
目的:最大限のプロポフォール静脈投与量が、非鎮静犬で重大な副反応を起こさないであろうという判定をする事
動物:8-12ヶ月零で8.8-11.3kgの臨床的に正常な犬6頭(オス3頭、メス3頭)
方法:プロポフォールを、最初6.5mg/kg、20mg/10秒の割合で静脈投与しました。その後の投与量は2.5mg/kgずつ増量させ(例えば2回目は9mg/kg)最低3日間間隔を置きました。この方法を重大な呼吸、心臓血管系、神経系副反応が出現する投与量まで繰り返し、その投与量を判定しました。
結果:全ての犬で、重要な副作用として判定されたのは無呼吸でした。無呼吸の持続時間は不定でしたが、14mg/kg以上で、用量依存的に延長しました。
結論:呼吸抑制や無呼吸は、プロポフォールを静脈投与した犬で最もよく見られる副反応です。無呼吸投与量を超えた量で、20 mg/kg/10 sの割合でプロポフォールを投与すれば、最低限の心血管抑制ですみます。
臨床関連:犬でプロポフォールの静脈投与後(特に、急速投与を行った時)呼吸抑制と無呼吸が起こりうるかもしれないと予想しておくべきです。(Sato訳)
■臨床的に正常な犬で、リン酸ヒスタミンの皮内注射に対するプロポフォール麻酔の影響
Effects of propofol anesthesia on intradermally injected histamine phosphate in clinically normal dogs.
Am J Vet Res 59[1]:7-9 1998 Jan
Kennis RA ; Robertson SA ; Rosser EJ Jr ; Hauptman JG
目的:物理的に拘束した、またはプロポフォールで麻酔した臨床的に正常な犬で、リン酸ヒスタミンの皮内注射に対する皮膚試験反応を比較する事
動物:臨床的に正常な成犬12頭
方法:非麻酔犬(グループ1)を拘束し、胸部の右側の毛をそりました。無菌の緩衝生理食塩水(陰性コントロール)と5種類の希釈した燐酸ヒスタミン(各0.05ml)を単回皮内注射しました。丘疹の大きさを15分後に測定しました。プロポフォールの麻酔を行った犬(グループ2)の毛をそり、生理食塩水とヒスタミンを皮内注射しました。非麻酔犬のように丘疹の大きさを測定しました。麻酔犬で、ヘモグロビン飽和度、心拍、呼吸数、横臥から立ち上がるまでの時間を記録しました。24時間後、グループを反対にし、胸部の左側で試験を繰り返しました。
結果:平均丘疹サイズはプロポフォール麻酔中の犬で有意に(P<0.05)小さいものとなりました。心拍、呼吸数は、うまく維持できましたが、麻酔最初の6分間にヘモグロビン飽和度は減少しました。
結論と臨床関連:統計的に有意ですが、平均丘疹サイズの違いは臨床的に重要ではありません。アトピー犬の皮内試験にプロポフォール麻酔は使用されるでしょう。空気アレルゲンの皮内試験反応に対するプロポフォールの影響を調査する更なる研究を、その使用を推奨する前に実施するべきです。(Sato訳)
■アトロピン、ブトルファノール、メデトミジンの前投薬を行った犬で、プロポフォールが麻酔、心肺にどう影響するか
Kurt A. Grimm, DVM, MS, DACVA et al; Vet Ther 2[1]:1-9 Winter'01 Prospective Study 36 Refs ;Anesthetic and Cardiopulmonary Effects of Propofol in Dogs Premedicated with Atropine, Butorphanol, and Medetomidine
健康犬で、プロポフォール(2.2mg/kg)の静注、メデトミジン(22.0μg/kg)の筋注、ブトルファノール(0.22mg/kg)の静注、アトロピン(0.022mg/kg)の静注を組み合わせ、麻酔や心肺への影響を評価しました。麻酔は、筋弛緩と鎮痛の特徴がありました。心拍は、メデトミジンとプロポフォールの投与で減少しました(131から113回/分)が、アチパメゾール(110μg/kg)の静脈投与で基準線に回帰しました。前投薬後、軽度の酸性血、炭酸過剰、低酸素症、そしてSaO2の減少を起こしました。PaO2とSaO2はプロポフォール注射で、さらに減少しました。結論として、この組み合わせは、健康犬の効果的な麻酔プロトコールという事がわかり、ちょっとした外科手技に適応すべきです。(Dr.Sato訳)
★一般的な麻酔を行った犬の喉頭不全麻痺の罹患率
Broome C et al; Aust Vet J 78[11]:769-72 2000 Nov Prevalence of laryngeal paresis in dogs undergoing general anaesthesia.
目的:ある条件での犬の喉頭不全麻痺の罹患率と、罹患犬の顕著な特徴の鑑別を評価すること
構成:250頭の喉頭鏡試験を必要とする予見的研究
方法:一般的な麻酔を行った犬250頭の喉頭の動きを観察しました。それらの犬における喉頭不全麻痺のひどさを、階級分けしました(0=正常な喉頭の動き、4=片側性の喉頭不全麻痺)。次に挙げる情報も、各犬で記録しました:年齢、性別、体重、犬種、コンディションスコアー、麻酔プロトコール、疾患の臨床的な疑い、観察者。
結果:検査した犬の25%に、いろいろな程度の喉頭不全麻痺が存在しました。それらの犬は、正常な犬よりも有意に年齢が高かったです(P<0.001)。年齢が進むに連れ、喉頭不全麻痺もひどくなる傾向にありました。性別に差はありませんでした。それらの犬は、正常犬より有意に体重が重かったです(P<0.02)過体重の犬は、正常なコンディションスコアーの犬より、不全麻痺のグレードが有意に高かったです(P<0.05)。ラブラドールレトリバーとロットワイラーは、喉頭不全麻痺になるリスクが有意に高かったです(P<0.05)。臨床的な疑いは、高い診断価値を持つことが分りました。観察者間の信頼性に対する、クラス間の相関係数は0.95でした。
結論:調査した犬で、喉頭不全麻痺は高い罹患率を示し、年齢と犬種に強い関係がありました。この研究の結果は、罹患性のある犬種では、進行退行性疾患の概念を、確かなものとしています。この病気が存在するという臨床の疑いは、信頼性のある指標となりました。使用した階級分けシステムは、どの観察者でも一致する高い割合を持っています。(Dr.Sato訳)
★猫の一般的な麻酔後に起きた急性の失明
I.R. Jurk et al; Vet Ophthalmol 4[2]:155-158 Jun'01 Case Report 14 Refs ;Acute Vision Loss After General Anesthesia in a Cat
去勢済み6歳の短毛種家猫は、一般的な麻酔後、盲目となって2週間だということで来院しました。行動変化、嗜眠、食欲不振や神経障害も示していました。目の評価は、瞳孔反射や強い光に対する反射は正常で、他に異常はないですが、盲目でした。一般感染病原体の血清学的検査結果は陰性で、脳脊髄液分析も正常でした。履歴と、安楽死後の検査で、麻酔による低酸素による、大脳皮質の壊死が明らかになりました。(Dr.Sato訳)
★メデトミジンで起こる徐脈の発生率にアトロピンの前処置がどう影響するか
Jeff C. H. Ko, DVM, MS, DACVA et al;J Am Vet Med Assoc 218[1]:52-58 Jan 1'01 Crossover Trial 17 Refs Effects of Preemptive Atropine Administration on Incidence of Medetomidine-Induced Bradycardia in Dogs
目的:メデトミジンで鎮静させる時に、アトロピンの前処置がどのように心肺に影響するのか調べること
構成:無作為クロスオーバー試験
動物:12頭の健康な成犬
方法:6つの治療を行いました。それぞれ治療は、アトロピン(0.04mg/kg[0.018mg/lb]筋注)の投与、または生食(0.9%NaCl,1ml,筋注)、そして10分後のメデトミジンの投与(10,20,40ug/kg[4.5,9.1,18.2ug/lb]筋注)でした。治療は最低1週間隔のランダムな投与を行いました。アトロピンとメデトミジンの投与前後の心肺への影響を調査しました。横たわっている時間、鎮静の性質、回復を調べました。
結果:徐脈(心拍<60回/分)は生食に続きメデトミジンを投与した全ての犬に見られ、メデトミジンの投与量は徐脈や第2度房室ブロックのひどさや頻度に相関しませんでした。しかし、メデトミジンの用量依存的に平均そして心拡張期の血圧の増加が、生食やアトロピンに関係なく観察されました。アトロピンの前処置の有効性として徐脈や第2度房室ブロックを予防しましたが、交互脈や高血圧を引き起こしました。徐脈に対するアトロピンの予防効果は50分続きました。血液ガス評価はすべての治療時で正常値以内であり、基線評価に有意差はありませんでした。メデトミジンの高用量投与は横臥時間がより延長しました。
結論と臨床関連:メデトミジンで鎮静をかける時、アトロピンでの前処置は効果的に50分間徐脈を予防しますが、高血圧と交互脈も引き起こします。(Dr.Sato訳)