■免疫介在性溶血性貧血に対する再燃リスク因子:163頭の犬の回顧的研究
Relapse Risk Factors for Immune-Mediated Hemolytic Anemia: A Retrospective Study of 163 Dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2024 Sep 1;60(5):188-192.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7371.
Sidney Bannister , Deborah Keys , Ewan Wolff
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、赤血球の免疫が介在する破壊と定義される。再燃は認められるが、リスク因子はあまり限定されていない。
受診時のより低いPCV、入院中のより多い輸血、より高い総ビリルビンは、再燃のリスク上昇と関係するだろうという仮説を立てた。
診断時PCV30%未満と以下の2つが確認された時にIMHAと定義した:球状赤血球、クームス試験陽性、総ビリルビン上昇、ヘモグロビン血症、スライド凝集陽性。
1か所の専門病院で2005年1月から2019年12月の間の163頭を評価する回顧的研究だった。13の再燃が見られた。3及び12か月の再燃する可能性(95%信頼区間(CI))は0.05(0.02-0.13)と0.11(0.06-0.22)だった。2回あるいはそれ以上輸血を必要とした犬の12か月の再燃の可能性(95%CI)は0.20(0.09-0.42)で、輸血しなかった犬は0.07(0.02-0.19)だった(P=.191)。
診断時の低PCVは、再燃のリスク上昇と関係しなかった(ハザード比(95%CI0.95(0.86-1.04)、P=.238)。より高い総ビリルビンは、再燃のリスク上昇と有意に関係した(P=.003)。総ビリルビンが1mg/dL上昇するごとに、再燃に可能性が0.17(95%CI0.06-0.28)城諸膵誰。それらの犬はより密接なモニタリングを必要とする可能性が高いだろう。(Sato訳)
■関連のない免疫介在性血小板減少症の犬の補助治療としてレフルノミドの回顧的評価:20症例(2008-2021)
Retrospective evaluation of leflunomide as an adjunctive therapy in dogs with non-associative immune-mediated thrombocytopenia: 20 cases (2008-2021)
J Small Anim Pract. 2024 Mar 3.
doi: 10.1111/jsap.13715. Online ahead of print.
D J Spear , Z J Crouse , S A Kearns
目的:関連のない免疫介在性血小板減少症の治療における補助治療としてレフルノミドを述べる
素材と方法:2008年3月から2021年9月の間にレフルノミドで治療した、関連のない免疫介在性血小板減少症と診断された犬の回顧的研究を行った。集めたデータは、シグナルメント、臨床症状、身体検査所見、実施した診断検査だった。投与した薬物、入院期間、血小板濃度>150 x 10(9)/Lまでの時間、レフルノミド治療中の有害事象を記録した。診断から1年以内の再燃を報告した。
結果:合計20頭の飼い犬が組み入れ基準に合致した。レフルノミドとプレドニゾンの併用で20頭中19頭(95%)が血小板濃度>150 x 10(9)/Lを達成し、4頭(21.1%)は治療中あるいは治療後すぐに再燃した。副作用は、下痢(n=5)、軽度リンパ球減少(n=9)、軽度の間欠的貧血(n=1)だった。1頭はレフルノミドによるものと思われる肝毒性を発症し、薬剤中止後解消した。1頭は治療中の誤嚥性肺炎に対して治療した。2頭はレフルノミド投与中に安楽死した。
臨床意義:入院の長さ、血小板回復までの時間、治療反応と再燃率は、代替治療プロトコールに匹敵した。ほとんどの副作用はレフルノミド投与量の調節を必要としなかった;しかし、2頭はレフルノミド治療の実行中に死亡し、そのうち1頭は免疫抑制による致死的感染を経験するという抗しがたいエビデンスがあった。肝毒性は依然レフルノミド治療の既知の合併症で、連続した生化学検査が推奨される。(Sato訳)
■犬の原発性免疫性血小板減少症の臨床的診断および予後マーカーを確認する前向きコホート研究
A prospective cohort study to identify clinical diagnostic and prognostic markers of primary immune thrombocytopenia in dogs
J Vet Intern Med. 2024 Jan 11.
doi: 10.1111/jvim.16985. Online ahead of print.
Marjory B Brooks , Robert Goggs , Amelia H Frye , Jessica Armato , Marnin Forman , Julia Hertl , Michael Koch , John P Loftus , John Lucy , Brandi Mattison , Julia Merriam , Sarah Shropshire , Laura Van Vertloo , Austin Viall , Dana N LeVine
Free article
背景:犬の原発性免疫性血小板減少症(pITP)は、診断的に難しく、重症度の臨床的マーカーは欠けている。
目的:pITPと二次性ITP(sITP)を鑑別する臨床病理学的特徴、およびpITPの犬の出血重症度、輸血、生存性に関係するマーカーを確認する
動物:98頭の血小板減少症の犬(pITP58頭、sITP40頭)
方法:血小板数50000/μL未満の飼い犬を、前向き複数施設コホート研究に登録した。病歴と治療の情報(最大7日間を通して)を標準データフォームに記録した。出血評価ツール(DOGiBAT)を用いて、毎日出血重症度のスコアを付けた。入院時の血液サンプルをCBC、生化学、C-反応性蛋白濃度、凝固パネルのため、血小板表面関連免疫グロブリンG(PSAIg)、血小板膜蛋白およびリン脂質発現の測定のために収集した。同時発生疾患のエビデンスのある犬は、sITPと分類した。
結果:決定的なpITP診断検査は見つからなかった。しかし、pITP症例は、sITP症例よりも血小板数、Dダイマー濃度、血小板膜蛋白発現がより少ない特徴があった。pITPとsITPの鑑別は、症例の性別、凝固プロフィール、血小板数、Dダイマー、PSAIgと組み合わせたロジスティック回帰モデリングを用いてさらに高められた。pITP重症度のセカンドモデルは、低いヘマトクリット値と高いBUN濃度が非生存と関係したことを示した。入院時にヘマトクリットが低いが、血小板数あるいはDOGiBATスコアが低くないことは輸血と関係した。
結論と臨床的重要性:確認研究中、入院時に臨床病理所見から構築したモデルは、pITPとsITPの鑑別を改善し、発現時の最も重度なpITP症例を確認できるかもしれない。(Sato訳)
■犬の免疫介在性多発性関節炎における胸部エックス線検査と腹部超音波検査の診断的有用性:77症例
Diagnostic Utility of Thoracic Radiography and Abdominal Ultrasonography in Canine Immune-Mediated Polyarthritis: 77 Cases
Animals (Basel). 2024 Feb 6;14(4):534.
doi: 10.3390/ani14040534.
Julia W Y Tang , Anna Saiz , Alina Vulpe , Ariadna Ribas Latre , Rita Furtado , Mayank Seth , Ferran Valls Sanchez
犬の免疫介在性多発性関節炎(IMPA)の症例において、胸部エックス線検査と腹部超音波検査は、標準の診断的調査の一部である。しかし、犬のIMPAの管理に向けた胸部および腹部画像検査の臨床的重要性は不明なままである。
この研究の主な目的は、IMPAと診断された犬の胸部エックス線検査と腹部超音波検査で認められた所見を述べることと、それら症例の最初のアプローチと管理において胸部エックス線検査と腹部超音波検査の診断的有用性を評価することだった。
2008年から2022年の間に一か所の紹介病院で、胸部エックス線検査と腹部超音波検査を行ったIMPAと診断された77頭の犬を含めた。品質保証のため、それら77頭の犬の診断的画像検査結果を、何も知らされていない認定診断画像検査専門医が再検討した。その後、それらの犬の診断的画像検査報告を含む医療記録を3人の何も知らされていない認定内科専門医により再検討した。過去の質問とスコアリングシステムの修正バージョンを用い、3人の内科専門医が各症例に対する胸部エックス線写真と腹部超音波像の総診断的有用性と診断的有用性スコアに対する答えを出した。エックス線検査と超音波検査で確認された腹部所見が述べられた。症例管理に即座に影響するにかなり十分と考えられる所見の症例において、その後に行われた追加調査の結果も述べられた。
30症例に胸部エックス線検査で検出された異常はなく、6症例に腹部超音波検査で検出されたものはなかった。内科医のほとんどは、70症例のIMPA診断時の全体の症例管理に胸部エックス線検査は有用ではないと考え、57症例の全体の症例管理に腹部超音波検査は有用ではないと考えた。内科医の多くは、95%の症例の胸部エックス線検査、61%の腹部超音波検査の有用性に対し意見が一致した。
胸部エックス線検査の最も一般的な所見は、軽度の気管支肺胞パターンで、腹部超音波検査の最も一般的な所見は軽度のリンパ節腫脹だった。
ゆえに、この犬の集団において、胸部エックス線検査と腹部超音波検査は多くの異常所見を確認したが、IMPAの最初の診断時において、その症例の多くのその所見は全体の症例管理に向けて有用とは思われなかった。このように、胸部エックス線検査と腹部超音波検査の使用は、犬のIMPAの最初の診断的検査を考慮する時には、注意深く考えるべきである。(Sato訳)
■プレドニゾロン、シクロスポリン、オクラシチニブの併用で治療して完全寛解した前駆細胞標的免疫介在性貧血の犬2症例
Complete remission of two canine cases with precursor-targeted immune-mediated anemia after combination therapy with prednisolone, cyclosporine, and oclacitinib
Open Vet J. 2023 Sep;13(9):1205-1211.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i9.16. Epub 2023 Sep 30.
Masashi Yuki , Hiroto Taira , Momoko Narita , Takanori Inden , Shunya Yokota , Eiji Naito , Sadatoshi Maeda
背景:前駆細胞標的免疫介在性貧血(PIMA)は、非再生性貧血を呈し、無効な赤血球産生のエビデンスを持つ犬で述べられている。その発生は、赤血球前駆細胞への免疫標的化に関係するかもしれないと示唆されているが、この病因は確定されていない。PIMAはグルココルチコイドで主に治療されるが、その単独で効果がない症例においては、免疫抑制剤も併用治療として使用される。しかし、PIMAの全ての症例がそれらの治療で寛解に至るわけではない。
症例記述:重度非再生性貧血の犬2頭が、骨髄検査を含む臨床的病理検査を基にPIMAと診断され、全血輸血とプレドニゾロンの免疫抑制量、ミコフェノール酸モフェチル、シクロスポリンで治療された。しかし、それらの治療で寛解には至らなかった。そのため、免疫介在性疾患の治療に近年応用されている、ヤヌスキナーゼ-1阻害薬のオクラシチニブの併用投与を実施した;この併用法で貧血は改善し、PIMAの完全寛解を達成した。
結論:従来の免疫抑制療法で寛解に達さなかったPIMAの犬の治療で、オクラシチニブは1つのオプションとなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の免疫介在性溶血性貧血と臨床的に疑われた急性膵炎、予備研究
Immune-mediated haemolytic anaemia and clinically suspected acute pancreatitis in dogs, a pilot study
Top Companion Anim Med. 2023 Oct 4:100821.
doi: 10.1016/j.tcam.2023.100821. Online ahead of print.
Giulia Gianesini , Michele Drigo , Andrea Zoia
急性膵炎はかなりの溶血(とりわけ事実上血管内)の合併症を持つ可能性がある。ゆえに、この研究の目的は、犬免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と、臨床的に疑われる急性膵炎(CSAP)と、CSAP発生/発展における算出したフリー血漿ヘモグロビン(Hbfp)の役割との関係を調査することだった。
このコホート研究では、IMHAの犬95頭と、IMHA以外の病因の病犬95頭の記録で、CSAO発生/発展に対する比較を行った。
診察時、IMHAの12/95頭はCSAPの基準に合ったが、病気のコントロール犬では3/95頭しか基準に合わなかった(ꭕ2χ2=1.58、P=0.008)。入院7日以内に、IMHAの追加の9頭がCSAPに発展していた。
Hbfpを算出し、CSAPのIMHAの犬/CSAPを発展した犬と、CSAPはないIMHAの犬で比較した。IMHAの犬において、算出したHbfp濃度≧0.08g/dLは、CSAPがある/発展する相対リスク(RR)を上昇させた(RR=2.54、95%CI、1.51-4.29;P=0.003)。CSAPがある/発展するIMHAの犬とCSAPがないIMHAの犬の間で、短期予後に対する有意な影響は見つからなかった。
この研究は、IMHAの犬はCSAPがあるリスクを上昇させ、Hbfp濃度は、急性膵炎の病因に関係するかもしれないことを示した。(Sato訳)
■犬の溶血性貧血の診断および予後バイオマーカーとしてカルボキシヘモグロビン
Carboxyhemoglobin as a diagnostic and prognostic biomarker of hemolytic anemias in dogs
J Vet Intern Med. 2022 Dec 26.
doi: 10.1111/jvim.16617. Online ahead of print.
Ran Nivy , Gila Sutton , Yarn Bruchim
背景:ヘモグロビン代謝中の一酸化炭素の内因性の産生は、カルボキシヘモグロビンの形成を誘発する。カルボキシヘモグロビン濃度は、溶血性貧血(HA)のヒトで異常に高い。
仮説:カルボキシヘモグロビン濃度の測定は、貧血の他の型とHAを鑑別できる。
動物:HAの犬27頭(免疫介在性HA、n=22;微小血管障害性HA、n=5)、非HAの犬27頭(腎疾患、n=14;免疫介在性血小板減少症、n=6;その他、n=7)、貧血のないコントロール犬24頭
方法:前向きコホート研究。入院時、退院時、30日目にカルボキシヘモグロビン定量、CBC、生化学プロフィールを実施した。グループはMann-WhitneyとKruskal-Wallis testsで比較した。受信者操作特性(ROC)解析を、貧血の犬のHAの診断に対するカルボキシヘモグロビンの予測的有用性の調査に使用した。
結果:カルボキシヘモグロビン(中央値(四分位数間領域))は、HAの犬(7.7%(2.5%))と非HAの犬(3.6%(1.05);P<.001)、およびHAの犬と貧血のない犬(3.5%(0.65%);P<.001)の間で違いがあった。非HAと貧血のない犬の間で違いは検出されなかった。貧血の犬でHAを予測するためのカルボキシヘモグロビンに対するROC曲線下面積は0.997(95%CI、0.99-1.00)。3つの最適なカットオフポイントを確認し、5.05%、4.55%、4.85%が含まれ、それぞれ感受性/特異性92.6%/100%、100%/92.6%、96.3%/96.3%に相当した。カルボキシヘモグロビンもCBC、化学分析いずれも生存性に関係しなかった。
結論と臨床的重要性:カルボキシヘモグロビンは犬のHAの優秀な予測変数で、貧血の診断およびモニタリングに対する有用な補助ツールになるかもしれない。(Sato訳)
■原発性免疫介在性多発性関節炎の犬の説明と結果:73症例(2012-2017)
Description and outco of dogs with primary immune-mediated polyarthritis: 73 cases (2012-2017)
J Small Anim Pract. 2022 Nov 2.
doi: 10.1111/jsap.13565. Online ahead of print.
S Ravicini , A Kent , M Dunning , S Baines , S Clarke , F Allerton
目的:コルチコステロイド単独あるいはコルチコステロイドと2つ目の免疫抑制剤で治療を開始する原発性免疫介在性多発性関節炎(長期結果、再燃率を含む)の記述を提供する
素材と方法:原発性免疫介在性多発性関節炎と診断された犬を確認するため、2012年1月から2017年12月までの医療記録を再調査した。シグナルメント、臨床病理所見、治療の種類と期間、再燃および結果尾含むデータを記録した。
結果:73頭の犬を含めた。54頭の犬はコルチコステロイド単独療法で開始し(うち27頭は後に追加の免疫抑制剤を導入した)、19頭は最初から複数様式の免疫抑制で治療した。69/73頭(95%)は治療に良好に反応したが、14/73頭(19%)の犬は免疫介在性多発性関節炎がもとで死亡した。臨床症状の再燃は39/73頭(53%)(治療中31/39頭)し、17頭の犬は複数回の再燃が観察された。完全な治癒(免疫抑制剤の永久的中止)は46頭(63%)で達成された。全体的に、81%の犬は延長した時間枠でよく管理された疾患だった(≧1131日)。複数様式の免疫抑制で治療を開始した14/19頭(74%)、コルチコステロイド単独で開始した32/54頭(59%)は完全な治癒に到達した。
臨床的意義:この研究は、原発性免疫介在性多発性関節炎の犬の大集団で、延長したフォローアップ情報を提供する。免疫抑制療法は大多数の犬でやめることができたが、疾患関連の死亡率は高いままである。(Sato訳)
■犬の非関連性免疫介在性溶血性貧血において免疫抑制剤と抗血栓プロトコールの回顧的解析
Retrospective analysis of immunosuppressive and anti-thrombotic protocols in nonassociative immune mediated hemolytic anemia in dogs
J Vet Intern Med. 2023 Feb 21.
doi: 10.1111/jvim.16652. Online ahead of print.
Jennifer Weng , Nyssa A Levy , Haley Y Abbott , Jose A Mix , Robert W Wills , Andrew J Mackin , John M Thomason , Harry Cridge
背景:非関連性免疫介在性溶血性貧血(na-IMHA)に対する治療プロトコールの有効性を支持するエビデンスは弱い
仮説/目的:na-IMHAにおいて種々の薬剤の効果を調査する
動物:242頭の犬
方法:多施設の回顧的研究(2015-2020)。混合モデル線形回帰による解析を通し、血中血球容積(PCV)安定までの期間と入院期間により免疫抑制効果を判定した。疾患再燃の発生、死亡、抗血栓効果を混合モデルロジスティック回帰で分析した。
結果:コルチコステロイドの使用vs多剤プロトコールは、PCV安定までの期間(P=.55)、入院期間(P=.13)、症例致死率(P=.06)に対し効果はなかった。コルチコステロイドの投与を受けていた犬(11.3%)はフォローアップ中(中央値:28.5日、範囲:0-1631日)に、複数の薬剤を使った犬(3.1%)のフォローアップ中(中央値:47.0日、範囲:0-1992日)よりも再燃した率が高かった(P=.04;オッズ比:3.97;95%CI:1.06-14.8)。
薬剤プロトコールを比較した時、PCV安定化(P=.31)、再燃(P=.44)、症例致死率(P=.08)に効果はなかった。入院期間は、コルチコステロイド単独に比べ、コルチコステロイドとミコフェノール酸モフェチル群で1.8日(95%CI:0.39-3.28日)長かった(P=.01)。クロピドグレルvs複数の薬剤の使用は、血栓症発症に効果はなかった(P≧.36)。
結論と臨床的重要性:2つ目の免疫抑制剤の追加は、すぐの結果測定値を変えることはなかったが、再燃を減らすかもしれない。複数の抗血栓剤の使用は、血栓症の発生を減らさなかった。(Sato訳)
■非再生性免疫介在性貧血が疑われる犬の免疫抑制療法に対する反応の評価:11症例(2012-2018)
Evaluation of responses to immunosuppressive therapy in dogs with suspected non-regenerative immune-mediated anaemia: 11 cases (2012-2018)
J Small Anim Pract. 2023 Apr 7.
doi: 10.1111/jsap.13614. Online ahead of print.
K Morishita , M Sugawara-Suda , J Yamazaki , N Sasaki , K Nakamura , H Ohta , M Takiguchi
目的:非再生性免疫介在性貧血の犬で、ヘマトクリット値の5%増加を達成するのに必要な時間と免疫抑制療法の反応時間を調べること
素材と方法:2012年12月から2018年5月の間に北海道大学獣医教育病院において、非再生性免疫介在性貧血と診断された飼い犬を登録した。最初の治療法は、プレドニゾロン(2mg/kg/日)と、シクロスポリン(10mg/kg/日まで)8週間が含まれた。最初の方法に反応しなかった犬は、プレドニゾロンとミコフェノール酸モフェチル(15mg/kg、1日2回)からなる2つ目の方法に進んだ。網状赤血球数とヘマトクリット値を1-2週間ごとにモニターした。治療反応は、60x10(3)/μL以上の絶対網状赤血球数あるいはヘマトクリット値の増加と定義した。
結果:研究期間中、非再生性免疫介在性貧血に対する組み込み基準を23頭の犬が満たした。12頭の犬は種々の理由でこの研究から除外し、残る11頭で治療反応を評価した。治療反応は11頭中8頭で観察され、反応までの時間中央値は39.5日(範囲8-92日)だった。反応した2頭は最初の治療法を継続できず、おそらくはシクロスポリンにより誘発した食欲不振と悪心により、2つ目の方法に切り替えた:シクロスポリンの中止でそれらの症状は改善した。ヘマトクリット値5%増加達成までにかかる時間は、他の6頭で評価し、中央値55.5日(範囲8-135日)だった。
臨床意義:ここでは、非再生性免疫介在性貧血の犬において、標準化された治療プロトコールへの反応を報告する。可能性のある副作用と予期される治療結果を知っておくことは、この状況を治療する獣医臨床家に対して役立つと思われる。(Sato訳)
■非関連性(原発性)免疫介在性溶血性貧血の犬における全身性高血圧の回顧的評価(2016.12-2019.4):26症例
Retrospective evaluation of systemic hypertension in dogs with nonassociative (primary) immune-mediated hemolytic anemia (December 2016 to April 2019): 26 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Jan 25.
doi: 10.1111/vec.13128. Online ahead of print.
Georgina B F Hall , David Q Stoye , Emily K Thomas , Geoff J Culshaw
目的:非関連性免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の犬の集団で、受診時および入院中の動脈高血圧の有病率を報告する。収縮期血圧(SBP)と死亡率、予後指標、犬溶血性貧血客観的スコアとの関連を判定する。
デザイン:回顧的観察研究(2016年12月から2019年4月)
場所:大学教育病院
動物:非関連性(原発性)IMHAでICUに来た26頭の臨床犬と、発作治療あるいはモニタリングでICUに入院した特発性てんかんの臨床犬23頭のコントロール群
介入:なし
測定値と主要結果:高血圧はSBP≧160mmHgと定義し、重度高血圧はSBP≧180mmHgとした。平均SBPは、ICUコントロール犬(138 mm Hg, SD = 14; P < 0.005)と比べ、IMHAの犬(161 mm Hg, SD = 21)で有意に上昇した。高血圧は入院期間全体で26頭中13頭(50%)に存在し、26頭中3頭(11.5%)は重度だった。最低1日の入院中、26頭中18頭(69.2%)は高血圧で、26頭中8頭(34.6%)は重度高血圧だった。高血圧は短期死亡あるいは犬溶血性貧血客観的スコアに関係しなかった。
結論:この回顧的研究で、高血圧はICU入院犬のコントロール集団よりも非関連性IMHAの犬の有病率がより多かった。自己免疫状況と高血圧の関係は、ヒトにおいて過去に報告されているが、犬の集団内ではそうではなかった。犬の高血圧は、炎症性あるいは自己免疫性の病因があるのかもしれない。抗高血圧治療が必要な時に備え、犬のIMHAではSBPを密接にモニターすべきである。(Sato訳)
■犬の原発性免疫介在性溶血性貧血と原発性免疫介在性血小板減少症の治療における脾摘
Splenectomy in the management of primary immune-mediated hemolytic anemia and primary immune-mediated thrombocytopenia in dogs
J Vet Intern Med. 2022 Jul 7.
doi: 10.1111/jvim.16469. Online ahead of print.
Jason P Bestwick Barbara J Skelly , James W Swann , Barbara Glanemann , Nick Bexfield , Zeta Gkoka , David J Walker , Paolo Silvestrini , Sophie Adamantos , Mayank Seth , James Warland
Free article
背景:犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)あるいは免疫介在性血小板減少症(ITP)、あるいは両方の管理に対する脾摘の使用についての現在の報告には限りがある。
目的:犬のIMHA、ITPおよびIMHAと重度血小板減少の併発(CIST)に対する管理の一部として、脾摘の使用を回顧的に述べる。それら1つ以上の群において、脾摘は免疫抑制剤の減量あるいは休薬を可能にする有益性があるだろうと仮説を立てた。
動物:2005年から2016年の研究期間で、7か所のUKの紹介病院において17頭の飼い犬(IMHA7頭、ITP7頭、CIST3頭)を確認した。
方法:診断、管理、脾摘前後の治療反応に関する情報を含めたアンケートで回顧的にデータを収集した。臨床的結果を基に、管理プロトコールの一部として脾摘による治療を成功、あるいは不成功と分類した。
結果:ITPの7頭中6頭は、それらの管理プロトコールの一部として脾摘でうまく管理できた(3頭完全、3頭部分奏功)が、その後1頭は推定的IMHAを発症した。IMHA7頭のうち、管理プロトコールの一部として4頭はうまく管理できた(2頭完全、2頭部分奏功)。CIST群において、管理プロトコールの一部として脾摘に1頭(1/3)は完全に反応した。
結論と臨床的重要性:脾摘は孤立したITPのほとんどの症例で成功し、よく許容したと考えられた。IMHAおよびCISTの症例で脾摘の有益性があるかどうかは、この研究で判定できなかった。(Sato訳)
■免疫介在性疾患の犬に対しミコフェノール酸モフェチル投与の副作用の回顧的研究
A retrospective study of adverse effects of mycophenolate mofetil administration to dogs with immune-mediated disease
J Vet Intern Med. 2021 Jul 6.
doi: 10.1111/jvim.16209. Online ahead of print.
Kenjiro Fukushima , Michael Lappin , Marie Legare , Julia Veir
Free article
背景:ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の有害事象(AEs)に関する情報は限られている
目的:免疫介在性疾患の犬におけるMMFの潜在的AEsの頻度と種類を評価する
動物:免疫介在性疾患が疑われ、MMFで治療した131頭の犬
方法:回顧的研究。AEsを見つけ、消化管(GI)、血液、他のカテゴリーにグループ分けするため、医療記録を再検討した。年齢、投薬量、体重、性別をAEsがある犬とない犬で、マン-ホイットニーU検定及びカイ二乗検定を用いて分析した。
結果:MMFの開始用量の中央値は17.5mg/kg/日(四分位数間領域(IQR)=15.1-20.6mg/kg/日)で、治療期間の中央値は56日(IQR=14-236日)だった。MMFは免疫介在性溶血性貧血(n=31)、免疫介在性血小板減少症(n=31)、落葉状天疱瘡(n=15)、免疫介在性多発性関節炎(n=12)、その他(n=42)に処方された。全体的に、MMFの潜在的AEsは、131頭中34頭(GI24.4%(31/127)、好中球減少4%(3/76)、貧血4%(1/25)、血小板減少4.0%(1/25)、皮膚病1.5%(2/131))に観察された。AEsがある犬(n=37)あるいはAEsがない犬(n=94)で、性別、年齢、体重、MMFの用量に関して有意差はなかった(それぞれP=.06、0.13、0.24、0.26)。
結論と臨床的重要性:MMFを投与した犬において、GIのAEsが最もよく見られた。潜在的血液および皮膚のAEsはあまり犬で発症しないため、臨床医は免疫介在性疾患の犬に対し、MMFを処方する時はそれらを認識すべきである。(Sato訳)
■免疫介在性溶血性貧血の治療に対する戦略
Therapeutic Strategies for Treatment of Immune-Mediated Hemolytic Anemia
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2020 Aug 16;S0195-5616(20)30077-2.
doi: 10.1016/j.cvsm.2020.07.010. Online ahead of print.
Robert Goggs
免疫介在性溶血性貧血は、犬の一般的な血液疾患である。疾患の治療は、グルココルチコイドを用いた免疫抑制、あるとすれば、アザチオプリン、シクロスポリン、あるいはミコフェノール酸モフェチルのような他の薬剤の組み合わせが含まれる。治療薬剤のモニタリングは、シクロスポリンおよびミコフェノール酸モフェチルの有用性、安全性を最大限に高めるかもしれない。
この疾患は炎症誘発性および血栓形成促進性である。ゆえに、抗血栓薬投与は必須で、抗凝固療法は診断時に開始するべきである。
追加の治療は血液酸素含有をサポートするための赤血球輸血が含まれる。更なる治療は、治療的血漿交換、抗CD20モノクローナル抗体、補体抑制剤が含まれるかもしれない。(Sato訳)
■免疫介在性血小板減少症が疑われた犬の治療でビンクリスチンを投与されている犬の好中球減少
Neutropenia in dogs receiving vincristine for treatment of presumptive immune-mediated thrombocytopenia
J Vet Intern Med. 2021 Jan 9.
doi: 10.1111/jvim.16029. Online ahead of print.
Kathryn A LaQuaglia , James B Robertson , Katharine F Lunn
Free article
背景:多剤併用化学療法で使用されるとき、好中球減少はビンクリスチンの副作用である。
目的:免疫介在性血小板減少症(ITP)の治療に対し、ビンクリスチンの投与を受けている犬において、好中球減少の発生率を判定、好中球減少に対する潜在的リスクファクターを確認、結果に対する好中球減少の影響を判定すること。
動物:ITPの仮診断を受けた飼育犬127頭
方法:この回顧的コホート研究において、15年間でITPの仮診断を受け、ビンクリスチンで治療した犬を確認するため、医療記録を再調査した。ビンクリスチンを投与されている犬において、好中球減少の発生に対するリスクファクターの確認にロジスティック回帰を使用した。好中球数≧40000個/μL までの時間、生存性、入院期間を好中球減少の犬と好中球減少ではない犬で比較した。
結果:推定ITPの犬127頭にビンクリスチンが投与されていた;19頭が好中球減少を起こした。シクロスポリンの投与は有意(P<0.001)に好中球減少の発生と関係した(オッズ比:12.97、95%CI:4.17,40.35)。好中球減少の犬(4日;範囲、1-14日)と、好中球減少ではない犬(3日;範囲0-48日)の血小板≧40000個/μLになるまでの時間中央値に差はなかった。生存して退院する比率は両群ともに95%だったが、好中球減少の犬(6日;範囲、3-22日)の入院期間中央値は、好中球減少ではない犬(4日;範囲、2-15日)と比べて有意に長かった。
結論と臨床的重要性:ビンクリスチンを投与されている犬において、シクロスポリン投与は好中球減少の発生に関係し、ビンクリスチンの代謝に対する影響に関係するのかもしれない。ITPに対しビンクリスチンの治療を受けている犬において、特にシクロスポリンを併用している場合は好中球数をモニターすべきである。(Sato訳)
■犬の免疫介在性溶血性貧血における胸部エックス線検査と腹部超音波検査の診断的有用性
Diagnostic utility of thoracic radiographs and abdominal ultrasound in canine immune-mediated hemolytic anemia.
Can Vet J. 2019 Oct;60(10):1065-1071.
Andres M, Hostnik E, Green E, Langston C, Parker VJ, Gilor C, Rudinsky AJ.
犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)において、異常を確認するための胸部エックス線検査と腹部超音波検査の有用性を評価する。
再生成貧血とIMHAの臨床診断があり、胸部エックス線検査あるいは腹部超音波検査を評価の一部として実施した犬を含めた。画像検査の有用性は、過去に使われたシェーマを基に評価した。
患犬の集団と臨床症状は、IMHAの過去の報告と一致した。50頭中38頭は同じ臨床評価と判断が胸部エックス線検査なしで実施されていた。64頭中32頭は、同じ臨床評価と判断が腹部超音波検査なしで実施されていた。
結果は、IMHAの犬において、胸部エックス線検査と腹部超音波検査は、併発異常を確認する有用性は変動することを示す。画像検査で確認された異常は、IMHAと関係するのか、あるいは患者の予後に影響を及ぼすのかをさらに調査するため、前向き研究をするべきである。(Sato訳)
■原発性免疫介在性溶血性貧血:61頭の犬の回顧的長期研究
Primary immune-mediated haemolytic anaemia: a retrospective long-term study in 61 dogs.
Aust Vet J. 2019 Aug 27. doi: 10.1111/avj.12875. [Epub ahead of print]
Weingart C, Thielemann D, Kohn B.
目的:この研究の目的は、臨床症状、検査結果および治療反応について、観察期間を90日以上設け、原発性免疫介在性溶血性貧血(pIMHA)の犬の疾患経過を述べることである。
素材と方法:2003年1月と2011年12月の期間の臨床的記録を再調査した。pIMHAの診断は、PCV<0.35L/Lの溶血性貧血、クームステスト陽性および/あるいは赤血球凝集、球状赤血球および基礎疾患の除外を基にした。組み込みは、初診後90日以上モニターできる犬だった。
結果:pIMHAの61頭の犬を含めた。最初のPCVの範囲は0.08-0.30L/L(中央値0.16)だった。免疫抑制療法は、全頭にプレドニゾロンが含まれた;追加で32頭はシクロスポリン(28)、シクロフォスファミド(5)、レフルノミド(2)、あるいはヒト静脈用免疫グロブリン(2)が継続的に投与された。61頭中33頭は薬剤を67-3372日(中央値334日)後に中止した;28頭は薬剤を減量したが、研究終了まで中止しなかった。3頭は免疫介在性血小板減少症を発症した(132日目、156日目、680日目)。観察期間の範囲は96-4147日(中央値628日)だった。合計22.9%(14/61)の犬は94-3972日後(中央値517日)に再発した。5頭は96-1188日後(中央値628日)に再発のため安楽死された。
臨床意義:pIMHAの犬の長期予後は良好である。しかし、数年後に再発する可能性がある。再発は90日以上生存したpIMHAの犬のもっとも一般的な死亡原因だった。(Sato訳)
■健康な猫における経口および静脈内ミコフェノール酸モフェチルの安全性
Safety of oral and intravenous mycophenolate mofetil in healthy cats.
J Feline Med Surg. February 2018;20(2):184-188.
Jennifer E Slovak , Nicolás F Villarino
目的:この研究の目的は、健康な猫における静脈内(IV)および経口ミコフェノール酸モフェチル(MMF)の安全性と臨床効果を評価することだった。
方法:体重>3.5kgの健康な成猫24頭に、IV MMF(2時間以上かけて点滴)あるいは蛍光MMFを投与した。使用した用量は以下だった:5mg/kg IV1回(n=2)、10mg/kg1日に12時間毎にIV(n=1)、20mg/kg1日に12時間毎にIV(n=6)、10mg/kg3日間12時間毎にIV(n=5)。分析目的に各猫の最終投与から12時間までの間隔で血液を採取した。経口MMFは10mg/kgを12時間毎に7日間(n=3)、15mg/kgを12時間毎に7日間(n=3)、15mg/kgを8時間毎に7日間(n=4)投与した。
結果:MMFの副作用は最小限だった。IV投与中も投与後も、どの猫にも食欲不振や嘔吐はなかった。14頭中4頭のみがIV投与後12-48時間に下痢を起こした。経口MMFを投与した10頭中1頭が食欲不振を起こし、嘔吐は見られなかった。経口MMFを投与した10頭中5頭は2日目から7日目の間に下痢が見られた。
結論と関連:猫は3日までのMMF10mg/kg12時間毎のIV投与と、7日までの15mg/kg以下の12時間毎の経口投与に許容した。用量依存の消化管副作用の発生が見られた。MMFは猫への使用を考慮できる有効な代替免疫抑制剤かもしれない。(Sato訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬に対する分割および非分割プレドニゾロン投与法の無作為化比較試験
RANDOMISED CONTROLLED TRIAL OF FRACTIONATED AND UNFRACTIONATED PREDNISOLONE REGIMENS FOR DOGS WITH IMMUNE-MEDIATED HAEMOLYTIC ANAEMIA.
VET REC. 2019 MAY 2. PII: VETREC-2018-105104. DOI: 10.1136/VR.105104. [EPUB AHEAD OF PRINT]
SWANN JW, SZLADOVITS B, THRELFALL AJ, GARDEN OA, CHANG YM, CHURCH DB, GLANEMANN B.
方法:無作為化非盲検非劣性試験で、原発性免疫介在性溶血性貧血の犬に対し、経口プレドニゾロンの非分割法での治療が分割法より優れているかどうかを検討した。犬には同じ一日量のプレドニゾロンを非分割(グループ1、開始4㎎/㎏1日1回経口)あるいは分割(グループ2、開始2㎎/㎏1日2回経口)して投与した。オーナーに対し副作用とQOLに対するアンケートを取った。終了点は、8週間生存、長期QOLの変化と臨床病理パラメーターの変化を含めた。
結果:39頭の犬で研究し、そのうち5頭は中止し、17頭は各グループに振り分けた。募集した症例数は、非分割投与が分割よりも優れているかどうか判定するには少なかった。グループ2の犬で、総血清ビリルビンはより速やかに低下したが、グループ1では多渇がより速やかに改善した。血圧と多尿に対するスコアは、次第にグループ2の犬でより高くなったが、リンパ球数はより低かった。
結論:同じ1日量おプレドニゾロンを非分割で投与した場合、この研究で副作用はほとんどなかったが、生存に対する影響は評価できなかった。(Sato訳)
■過去に原発性免疫介在性溶血性貧血を治療した犬のワクチン接種と関連有害事象
Vaccination and Associated Adverse Events in Dogs Previously Treated for Primary Immune-Mediated Hemolytic Anemia.
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 Jan/Feb;55(1):29-34. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6868. Epub 2018 Nov 14.
Moon A, Veir J.
この研究は、原発性免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の診断後、ワクチン接種を受けた犬の集団において、ワクチン反応の割合を述べる。2つ目の目的は、ワクチン接種と最初のIMHAの診断までの経過時間を述べることだった。
医療記録から原発性IMHAの基準に合った症例を確認した。オーナーと紹介獣医師に診断後の犬のワクチン接種に関して調査した。紹介獣医師にはIMHAの診断前のワクチン接種に関して調査した。
44症例から完全な返答があった。22頭の犬は診断後もワクチン接種を受けており、22頭は受けていなかった。ワクチン接種から最初の診断までの経過時間中央値は280日だった。診断の30日以内にワクチン接種した犬はいなかった。ワクチン接種した22頭のうち、2頭はその後に起こりうる反応があった:狂犬病と犬のジステンパーワクチンを投与した1頭は嘔吐と蕁麻疹の発疹、狂犬病ワクチンを接種した1頭は再発性貧血。
ワクチンの反応率は、過去に報告されているものより高かったが、評価した期間は過去の研究よりも長かった。
この集団で最初のワクチン接種とIMHA発症との関連、ワクチン接種とワクチン反応の関連ははっきりわからず、感受性の偶然の一致あるいは違いを反映しているのかもしれない。(Sato訳)
■推定原発性免疫介在性好中球減少症の犬35例:回顧的研究
Presumed primary immune-mediated neutropenia in 35 dogs: a retrospective study.
Language: English
J Small Anim Pract. June 2017;58(6):307-313.
L Devine , P J Armstrong , J C Whittemore , L Sharkey , N Bailiff , A Huang , M Rishniw
目的:原発性免疫介在性好中球減少症と思われる犬の集団において、6か月と1年時の臨床的特徴、血液検査結果、骨髄の特徴、使用された治療(薬剤と用量)、治療に対する臨床反応、再発および転帰を述べること
方法:随意提出の複数施設で募集した回顧的記述的ケースシリーズ。最低2回のCBCで好中球濃度<1.5x10(9)個/L、診断的骨髄吸引あるいはバイオプシーを基に他の好中球減少症の原因の除外、続発性免疫介在性好中球減少症の除外を基に、免疫介在性好中球減少症を仮診断した。2006年から2013年の間にそれらの診断基準に合い、ヘマトクリット≧29%で、治療の開始後に最低2回のCBCを実施した犬を含めた。
結果:35頭の犬の情報を含めた。多くの症例(21頭)で好中球減少は0.5x10(9)個/L以下、11頭で0.5-0.99x10(9)個/L、3頭で1.0-1.49x10(9)個/Lだった。8頭は血小板減少症があり、3頭は重度(<49.9x10(9)個/L)だった。23頭の犬は骨髄増生があり、10頭は骨髄形成不全、2頭は正常な骨髄造血だった。コルチコステロイド療法開始から2週以内に33頭中32頭の好中球減少は解消し、1か月以内には全ての犬が解消した。好中球減少の再発は1年以内に12頭で起こった。
臨床意義:推定原発性免疫介在性好中球減少症例へのコルチコステロイド療法の初期反応はすばらしい。免疫抑制薬物療法を徐々に減らす間、あるいはその後に34%の症例は再発したため、再発の長期モニタリングが妥当である。(Sato訳)
■犬のレフルノミドの安全性と効果に対する回顧的研究
A Retrospective Study on the Safety and Efficacy of Leflunomide in Dogs.
Language: English
J Vet Intern Med. 2017 Sep-Oct;31(5):1502-1507.
M Sato , J K Veir , M. Legare , M R Lappin
背景:免疫介在性疾患の犬に対するレフルノミド使用に関して得られる臨床的情報はあまりない。
目的:自然発生の免疫介在性疾患の犬の治療に対し、レフルノミドの安全性と効果を報告すること
動物:免疫介在性疾患が疑われ、その治療にレフルノミドを使用した92頭の犬
方法:1995年1月から2014年12月の回顧的医療記録再調査。シグナルメント、体重、レフルノミドに対する根本適応、レフルノミドの用量、治療期間、併用薬、治療反応、有害事象に関するデータを抽出した。
結果:レフルノミド投与に関連すると考えられる有害事象は、下痢(3/92、3.3%)、元気消失(2/92、2.2%)、原因不明の出血(3/92、3.3%)、血小板減少(2/31、6.5%)、肝酵素活性上昇(1/16、6.3%)だった。有害事象が見られた犬(n=11;中央値、2.9mg/kg/d;範囲、1.8-3.6mg/kg/d)と、見られなかった犬(n=81;中央値1.6mg/kg/d;範囲、0.8-4.3mg/kg/d)に有意な用量差が見られた(P<0.001)。治療反応は17頭の犬で評価できた。17頭中12頭(70.5%)はレフルノミドの使用で明らかに良い反応だった。レフルノミドに反応した犬(n=12;中央値、1.9mg/kg/d;範囲、1.0-3.5mg/kg/d)と、反応しなかった犬(n=5;中央値、1.7mg/kg/d;範囲、1.0-2.0mg/kg/d)の用量に有意差はなかった(P=0.22)。
結論と臨床意義:レフルノミドの開始投与量は、現在示されている3-4mg/kg/dよりも、2mg/kg/dにするべきだと示唆される。(Sato訳)
■原発性免疫介在性溶血性貧血のイヌにおける予後予測因子:多施設にわたる症例登録の結果
Predicting Outcome in dogs with Primary Immune-Mediated Hemolytic Anemia: Results of a Multicenter Case Registry.
J Vet Intern Med. 2015 Oct 16. doi: 10.1111/jvim.13642. [Epub ahead of print]
Goggs R, Dennis SG, Di Bella A, Humm KR, McLauchlen G, Mooney C, Ridyard A, Tappin S, Walker D, Warman S, Whitley NT, Brodbelt DC, Chan DL.
背景 免疫介在性溶血性貧血 (IMHA)の犬における予後の予測は難しく、予後因子として一貫して認識されたものはほとんどない
目的 イギリス諸島における犬のIMHAの来院と管理を前向きに調べ、以前に報告された2つの疾患重症度スコアである犬溶血性貧血スコア (CHAOS)とTokyoスコアを評価し、独立した予後マーカーを同定するために、オンラインによる症例登録を行った。
動物 10の紹介病院において原発性IMHAの276頭の犬のデータを2008年から2012年に集めた。
方法 以前に報告された疾患重症度スコアによる予後予測を、一変量ロジスティック回帰分析によって行った。入院中の死亡または退院後30日までにおける死亡の独立した予後因子を多変量ロジスティック回帰分析によって行った。
結果 純血種が89.1%(246頭)を占めていた。免疫抑制療法は、88.4%の犬 (244頭)に対して実施し、76.1% (210頭)が抗血栓療法を、74.3%(205頭)が輸血を行われていた。74%(205頭)の犬が退院でき、67.7%(187頭)が退院30日後に生存していた。2頭は、30日の時点で追跡できなかった。一変量分析において、CHAOSは入院中の死亡と30日以内の死亡と関連していた。Tokyoスコアはどちらの予後とも関連していなかった。退院時における予後予測として、SIRS分類、ASA分類、ALT、ビリルビン、尿素、クレアチニンを含むモデルは、82%の症例において当てはまった。ASA分類、ビリルビン、尿素、クレアチニンは、入院中の死亡または30日以内の死亡と独立して関連していた。
結論と臨床的意義 腎機能、ビリルビン濃度およびASA分類のマーカーは、IMHAの犬の予後と独立して関連していた。本研究とは異なる集団においてこのスコアの確認をする必要がある。(Dr.Taku訳)
■原発性免疫介在性溶血性貧血の犬に対するエノキサパリンの使用:21症例
Use of enoxaparin in dogs with primary immune-mediated hemolytic anemia: 21 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2015 Mar 14. doi: 10.1111/vec.12286.
Panek CM, Nakamura RK, Bianco D.
目的 原発性免疫介在性溶血性貧血 (IMHA) の犬において低分子量ヘパリンであるエノキサパリンの使用で血栓症の併発と頻度を明らかにすること
研究デザイン 後ろ向き症例研究
設定 2つの紹介個人動物病院
動物 21頭の免疫介在性溶血性貧血の飼い犬
治療 病院に来たときから単独の抗凝固療法としてエノキサパリン(0.8mg/kg 皮下 6時間ごと)で治療した。
結果 2頭のみがエノキサパリン療法に関連する軽度の出血の併発症を起こした。血栓症の頻度は評価できなかった。長期的な生存については、原発性IMHAの犬で報告されている他の抗凝固療法と同等であった。
結論 エノキサパリンの使用は、原発性IMHAの少数の犬のグループでは安全であった。エノキサパリン療法が、原発性IMHAにおいて他の抗凝固療法と比較して、致死率と血栓症の併発を減らすかどうかについては不明のままである。(Dr.Taku訳)
■ミコフェノール酸モフェチルとグルココルチコイドによる犬特発性免疫介在性溶血性貧血の治療:30症例(2007-2011)
Treatment of canine idiopathic immune-mediated haemolytic anaemia with mycophenolate mofetil and glucocorticoids: 30 cases (2007 to 2011).
J Small Anim Pract. August 2013;54(8):399-404.
A Wang; J R Smith; K E Creevy
目的:グルココルチコイドとミコフェノール酸モフェチルで治療した特発性免疫介在性溶血性貧血の犬の短期結果と有害事象の頻度を、代替の免疫抑制プロトコールのものと比較した。
方法:免疫介在性溶血性貧血の犬の医療症例記録の回顧的研究を実施した。シグナルメント、臨床病理データ、投与した薬剤、入院期間、短期生存性と有害事象に関するデータを収集した。グルココルチコイドとミコフェノール酸モフェチルで治療した犬(ミコフェノール酸モフェチル群)と他の2-薬剤免疫抑制プロトコールで治療した犬(合同群)で変数を比較した。
結果:特発性免疫介在性溶血性貧血の64症例を確認した。2頭は治療せずに安楽死され、3頭はグルココルチコイド単独、7頭は2つの追加薬剤を投与されていた。52頭はグルココルチコイドと追加の免疫抑制剤を投与されていた:30頭はミコフェノール酸モフェチル、15頭はシクロスポリン、6頭はアザチオプリン、1頭はヒト免疫グロブリン。ミコフェノール酸モフェチル群と合同群の間に退院率、30日生存率、60日生存率に関する有意差はなかった(フィッシャーの正確確率;それぞれP=0.272、0.518、1.000)。ミコフェノール酸モフェチル群で観察された唯一の有害事象は下痢(n=5)だった。
臨床意義:特発性免疫介在性溶血性貧血の犬に対するミコフェノール酸モフェチルの投与は安全と思われる。グルココルチコイドとミコフェノール酸モフェチルの併用は、この疾患の治療に使用される他の免疫抑制プロトコールと同じように有効である。(Sato訳)
■免疫介在性血小板減少症の治療をしていた1頭の犬に見られた医原性副腎皮質機能亢進症、皮膚石灰沈着、心筋梗塞
Iatrogenic hyperadrenocorticism, calcinosis cutis, and myocardial infarction in a dog treated for IMT.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 May-Jun;48(3):209-15.
Kimberly Hsu; Elisabeth Snead; Jennifer Davies; Anthony Carr
免疫介在性血小板減少症に対する治療を受けていた8歳オスのイングリッシュブルドッグが、コルチコステロイド療法開始から90日後に皮膚石灰沈着症と診断された。24日後、その犬は虚脱後に昏睡状態を呈し、安楽死された。
剖検で、冠動脈硬化とうっ血性心不全を誘発する心筋梗塞を認めた。この犬では皮膚石灰沈着と心筋壊死がコルチコステロイド投与に関係する合併症と思われた。皮膚石灰沈着の分類とコルチコステロイドの免疫抑制量の使用に関係する重要な関連を論じる。(Sato訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬における血栓形成のメカニズムと抗凝固療法
Prothrombotic mechanisms and anticoagulant therapy in dogs with immune-mediated hemolytic anemia.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2013 Jan;23(1):3-13. doi: 10.1111/j.1476-4431.2012.00824.x.
Kidd L, Mackman N.
目的 溶血性疾患における血栓の病態生理学および免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の犬における血栓予防の効果を見直すこと
情報源 Pubmed, INDEX VETERINARIUSSおよびVeterinary Information Networkの雑誌データベースをコンピューターで調査したもの、および活字になった論文の文献一覧を手作業で検索した
人のデータ統合 実験データによると、溶血は、凝固を促進する可能性のある組織因子を単球と内皮細胞に誘導し、それによって凝固系が活性化することを示唆している。さらに、傷害を受けた赤血球、活性化した血小板、微粒子と呼ばれる小さな細胞由来の細胞膜小胞により、露わになった陰イオン性リン脂質を含む膜表面を与える事により凝固カスケードのプロトロンビナーゼ(活性化第V因子と活性化第X因子)およびテナーゼ(活性化第VIII因子と活性化第IX因子)複合体の結合部位として働き、凝固が生じるようである。微粒子の中には、組織因子を含んでいるものもあり、さらに凝固を生じさせる。大部分の血栓は動脈由来よりも静脈由来であるため、ヒトにおける溶血性疾患の血栓予防は主に血小板というよりは凝固カスケードをターゲットとしている。治療レベルに達しているかを確認するために、未分画ヘパリンの使用をこまめにモニターする。
獣医療のデータ統合 血栓塞栓性疾患はIMHAの犬の生存に影響を与える主要な因子である。溶血によって血栓形成促進状態になるようである。肺の血栓塞栓症(静脈の血栓)が非常によく生じるように、静脈においても動脈においても血栓は生じる。組織因子が血栓形成促進状態の進行に関与することを示唆する証拠がある。ヘパリン,抗血小板薬としてのアスピリン、クロピドグレルは、IMHAの犬の血栓予防に対して使用されている。しかし、認められた治療評価項目と対照研究がないため、生存に影響があるか、1つの薬剤が他のものより効果があるかを決定するのが難しい。
結論 IMHAの犬における血栓予防に対してエビデンスに基づいた推奨を得るために、個々に調節したヘパリンや他の抗凝固薬を抗血小板薬と比較する前向き臨床試験が必要である。(Dr.Taku訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬における赤血球に結合した免疫グロブリンのアイソタイプ:54症例(2001-2010年)
Erythrocyte-bound immunoglobulin isotypes in dogs with immune-mediated hemolytic anemia: 54 cases (2001-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2012 Jul 15;241(2):227-32.
Harkin KR, Hicks JA, Wilkerson MJ.
目的:原発性免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の犬における赤血球に結合した免疫グロブリンのアイソタイプを同定する。
研究デザイン:後向きに調べた症例群。
動物:54頭のIMHAの犬
方法:2001年1月から2010年4月にIMHAと診断された犬のカルテを調査した。免疫グロブリン(Ig)のアイソタイプ(赤血球に結合したIgを同定するためにフローサイトメトリーによる直接免疫蛍光法によって検査した)、ヘマトクリット、血清ビリルビン濃度、自己凝集の有無、球状赤血球の程度、入院期間、90日後の予後について記録した。
結果:来院時のヘマトクリットは、1つのIgのアイソタイプをもった犬と比較して、IgGとIgMをもった犬の方が有意に低かった。また球状赤血球の程度は、IgMのみをもった犬と比較してIgGとIgMが結合した犬においてより高かった。IgMのみをもった犬は、IgGのみを赤血球表面にもっている犬と比較して、自己凝集がより起こりやすいということはなかった。Igのアイソタイプは、生存期間とは関係ないが、最初の血清全ビリルビン濃度は、生存しなかった群においてより高かった。
結論と臨床的意義:2つ以上のIgアイソタイプ、とくにIgGとIgM、を赤血球にもつIMHAの犬は、貧血、球状赤血球、自己凝集の程度がより重度であるようである。(Dr.Taku訳)
■免疫介在性血小板減少症に対する治療オプション
Therapeutic options for immune-mediated thrombocytopenia
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care, Article first published online: 25 JAN 2012
Reid K. Nakamura DVM, DACVECC, Emily Tompkins DVM, Domenico Bianco DVM, PhD, DACVIM
目的:免疫介在性血小板減少症(IMT)に対する治療オプションを検討する
データソース:「免疫介在性血小板減少症」あるいは「免疫性血小板減少性紫斑病」、「免疫性血小板減少症」の言葉で、PubMedを用い検索したオリジナル研究発表およびレビュー文献
獣医およびヒトデータ総合:ヒトの臨床研究で効果が証明されている成人発症型免疫性血小板減少症に対する治療オプションはいくらかあるが、第一線の薬物治療は相変わらずコルチコステロイドと免疫グロブリン療法のままである。トロンボポエチンレセプター作用薬療法およびより少なくリツキシマブは最初の臨床試験で大きな効果を示しており、IMTの管理に対するヒトのケアの標準になるかもしれない。獣医療における治療オプションはより多様性がなく、ビンクリスチンとヒト静脈免疫グロブリン療法しかコントロール臨床研究で評価されていない。
結論:獣医療でIMTの管理に対する治療オプションはいくらかあるが、多くは臨床研究で調査されていない。動物でIMTに対する最適な治療戦略を確認する研究が待たれる。(Sato訳)
■犬における特発性免疫介在性血小板減少症と最近うけたワクチン接種について
Idiopathic Immune-Mediated Thrombocytopenia and Recent Vaccination in Dogs.
J Vet Intern Med. 2011 Dec 13.
Huang AA, Moore GE, Scott-Moncrieff JC.
背景:犬の免疫介在性血小板減少症(ITP)の原因としてワクチン接種が挙げられることが多い。人、特に子供においては、関連性が示されているものの、犬においてははっきりと確立されていない。
目的:犬において、最近うけたワクチン接種とITPの関連が存在することを明らかにする
動物:特発性ITPと仮診断された48匹の飼い犬と、同じ年齢の免疫介在性疾患のない96匹の飼い犬
方法:後向き、症例対照研究。Purdue大学の獣医学データベースと病院情報システムで犬の情報を得た。
結果:ITPの犬の来院時の年齢の中央値は7歳齢(範囲2-15歳齢)であった。ITP群の大部分は、雑種犬であり(38%)、3症例以上いた純血種はいなかった。ITPの診断より42日以内にワクチン接種された犬の数は、ITPの症例(4/48, 8%)とコントロールの症例(13/96, 14%)の間で有意差がなかった(P = .361)。
結論と臨床的意義:犬の特発性ITPと最近接種したワクチンの間の関連性を明らかにすることはできなかった。しかし、症例数が少ないため、関連がある可能性は完全には除外できず、さらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬におけるトロンボエラストグラフィーの使用:39症例(2000-2008)
Use of thromboelastography in dogs with immune-mediated hemolytic anemia: 39 cases (2000?2008)
J Vet Emerg Crit Care. Oct 2009;19(5):484-488. 22 Refs
Virginia B. Sinnott, DVM, Cynthia M. Otto, DVM, PhD, DACVECC
目的:免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の自然発症例の凝固亢進状態の有無、その存在により生存性に違いが出るかどうかを確かめるため、トロンボエラストグラム(TEGs)を分析する。
構成:2000年1月から2008年6月の間の回顧的研究。医療記録を評価した。病院で死亡あるいは退院までで終了とした。
場所:アカデミック教育病院
動物:IMHAの診断を受け、入院中に1回以上TEGを実施した犬39頭
介入:なし
測定値と主要結果:TEGによる4つの値を評価した:R time (R)、 K time (K)、アルファ角(α)、最大振幅。それらの値から正常凝固、凝固亢進、凝固低下に犬を分類するため、凝固指数(CI)を算出した。
CIをもとにして39頭中33頭は凝固亢進だった。残りの6頭は正常凝固だった。Fisher's exact testを使用して、正常凝固CIを示した犬は、凝固亢進犬と比べて死亡率は増加(100%)した(P=0.02)。また部分トロンボプラスチン時間の延長は、凝固亢進TEG値を妨げることはなかった。
結論:IMHAの犬の多くは、TEGにより測定したとき凝固亢進状態だった。この犬の集団では、正常CIは予後不良と関係した。TEGはIMHAの犬の凝固状態に関連するプロトロンビン時間および部分トロンボプラスチン時間に追加および相補的情報をもたらし、予後の予測および抗凝固剤を用いる決断を進めるのに役立つと思われる。(Sato訳)
■フローサイトメトリー法で検出された血小板結合抗体を保有する、あるいは保有していない血小板減少症罹患犬の基礎疾患および臨床病理学的変化
Underlying diseases and clinicopathologic variables of thrombocytopenic dogs with and without platelet-bound antibodies detected by use of a flow cytometric assay: 83 cases (2004-2006).
J Am Vet Med Assoc. 2009 Oct 15;235(8):960-6
Dircks BH, Schuberth HJ, Mischke R.
目的
血小板結合抗体(PBAs)を保有する、あるいは保有していない血小板減少症罹患犬の基礎疾患および臨床病理学的変化を特徴づけるため。そして原発性免疫介在性血小板減少症(IMT)罹患犬の臨床病理学的変化を評価するため。
研究デザイン
Retrospective case series
動物
83頭の血小板減少症罹患犬
方法
医療記録を用いて、2004年から2006年の間にPBAテストが実施された犬を特定した。PBAsはフローサイトメトリー法を用いて測定された。
結果
PBAsは83頭中37頭(45%)で検出された。13頭で原発性IMTが疑われた。血小板数の中央値はPBAsが検出されなかった犬よりもPBAsが検出された犬で有意に低値であった。また原発性IMTが疑われた犬では二次性IMTの犬よりも有意に血小板数の中央値が低値を示した。平均血小板容積(MPV)の増加(>14.3fL)はPBAsが検出された犬群(7/26{27%})よりも検出されなかった犬群(19/33{58%})で有意に多かった。原発性IMTが疑われた犬ではMPVの増加は認められなかった。骨髄生検では、PBAsが検出された犬群(14/21 [67%])の方が検出されなかった犬群(7/18 [39%])よりも巨核球形成を認めた犬の割合が多かった。巨核球形成の増加は骨髄生検を実施した原発性IMTの疑胃を持つ犬の全頭で認められた。
結論と臨床的関連性
血小板数、骨髄生検結果およびMPVは犬において原発性IMTと他疾患による血小板減少症との鑑別に有用である可能性がある。参考基準値内あるいはそれ以下のMPVのときは巨核球形成の活性増大を除外することはできない。(Dr.Ka2訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬の初期治療においてグルココルチコイドに加えてヒト免疫グロブリンの使用
Use of human immunoglobulin in addition to glucocorticoids for the initial treatment of dogs with immune-mediated hemolytic anemia
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):158-164. 32 Refs
Megan F. Whelan, DVM, DACVECC, Therese E. O'Toole, DVM, DACVIM, Daniel L. Chan, DVM, DACVECC, DACVN, MRCVS, Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVECC, DACVIM, Armelle M. deLaforcade, DVM, DACVECC, Sybil L. Crawford, PhD, Susan M. Cotter, DVM, DACVIM
目的:犬免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の初期治療で、ヒト静脈用免疫グロブリン(hIVIG)の有用性を判定する
構成:盲検、無作為、臨床試験
場所:獣医教育病院
動物:原発性IMHAの28頭の飼育犬
介入:IMHAの診断後、ブラインド方式で無作為にhIVIGあるいはプラセボ投与群に振り分けた。次に14日間、全ての犬に単独免疫抑制剤としてグルココルチコイドを投与した。全ての犬に抗凝固として低分子ヘパリンを投与した。血栓塞栓の合併症をモニターするため、研究プロトコールの開始および終了時にDダイマー濃度を測定した。
測定値と主要結果:28頭中25頭(89%)の犬は退院した。そのうち13頭はhIVIG、12頭はプラセボを投与した犬だった。14日目に24頭(86%)は生存し、そのうち13頭はhIVIG、11頭はプラセボを投与した犬だった。診断時、全ての犬の86%でDダイマー濃度の上昇が見られた。
結論:IMHAの犬の初期治療で、コルチコステロイド療法に対するhIVIGの追加は、初期反応を改善させず、また入院期間の短縮ももたらさなかった。(Sato訳)
■プレドニゾロンおよびシクロスポリンAによる治療で前糖尿病状態から一過性の高血糖を呈した犬の1例
Transient hyperglycaemia in a prediabetic dog treated with prednisone and cyclosporin A.
Aust Vet J.2009 Sep;87(9):352-5.
Murray SC, Gasser A, Hess RS.
免疫介在性溶血性貧血に罹患した犬が、プレドニゾロンおよびシクロスポリンAによる治療に関連して、インスリン療法を必要とする一過性の高血糖および尿糖を呈した。短期間のインスリンおよびシクロスポリンAによる治療を続け、その後はプレドニゾロン療法を続けたが、持続的高血糖状態にあった12週間はさらなるインスリン療法を必要としなくなった。我々の仮定では、インスリン分泌量が基準以下の前糖尿病状態にある犬では、プレドニゾロンおよびシクロスポリンAによる治療でインスリン抵抗性が増大し、シクロスポリンAの投与を中止することでその抵抗性が減弱すると考えられた。(Dr.Ka2訳)
■犬の暫定的原発性免疫介在性血小板減少症の急性管理のための人静脈注射用免疫グロブリンに対する前向きランダム化二重盲検プラセボコントロール研究
A Prospective, Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Study of Human Intravenous Immunoglobulin for the Acute Management of Presumptive Primary Immune-Mediated Thrombocytopenia in Dogs.
J Vet Intern Med. 2009 Aug 5.
Bianco D, Armstrong PJ, Washabau RJ.
背景:免疫介在性血小板減少症(IMT)は犬において一般的な血液学的疾患である。人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)は犬のIMTにおいて有益な効果があるかもしれない。
仮説:暫定的原発性免疫介在性血小板減少症(pIMT)と思われる犬への人静脈注射用免疫グロブリン(0.5 g/kg)の単回投与は、血小板数の回復を促進させ、患者ケアのコストを増加させることなく入院期間をより短くする安全で補助的な緊急治療である。
動物:原発性免疫介在性血小板減少症と仮診断した飼い主所有の18頭の犬
方法:前向きランダム化二重盲検プラセボコントロール臨床試験
結果:6ヵ月以上の期間において、人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)投与に関連した同定できる即時性あるいは遅発性副反応は見られなかった。人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)群における中央血小板数回復時間は3.5日(平均+/-標準偏差: 3.7 +/- 1.3日; 範囲, 2-7日)で、プラセボ群は7.5日(平均+/-標準偏差: 7.8 +/- 3.9日; 範囲, 3-12 日)だった。人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)群における中央入院期間は4日(平均+/-標準偏差: 4.2 +/- 0.4日;範囲, 2-8日)で、プラセボ群は8日 (平均+/-標準偏差: 8.3 +/- 0.6日;範囲, 4-12日)だった。初期の患者ケアの費用に関して両群に著しい違いは認められなかったが、血小板数回復時間の短縮(P= .018)と入院期間の短縮(P= .027)は、人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)群において有意差が認められた。
結論と臨床意義:コルチコステロイド単独と比較して、人静脈注射用免疫グロブリン(hIVIG)の単回注射による補助的緊急療法は安全であり、暫定的原発性免疫介在性血小板減少症の犬の小集団において、医療ケアの費用を増加させることなく血小板数回復時間と入院期間を有意に減少させた。(Dr.Kawano訳)
■原発性免疫介在性溶血性貧血に罹患した犬における非分画ヘパリン療法に関する回顧的研究
A Prospective Study of Unfractionated Heparin Therapy in Dogs With Primary Immune-Mediated Hemolytic Anemia
Journal of the American Animal Hospital Association 45:125-133 (2009)
Elizabeth L. Breuhl, DVM, MS, Diplomate ACVIM, George Moore, DVM, PhD, Diplomate ACVPM, Diplomate ACVIM, Marjory B. Brooks, DVM, Diplomate ACVIM and J. Catharine Scott-Moncrieff, MA, MS, Vet MB, Diplomate ACVIM
免疫介在性溶血性貧血に罹患した18頭の犬に対して6時間ごとに300IU/kg(sc)の標準投与量で非分画ヘパリン療法を開始した。ヘパリンによる活性化部分トロンボプラスチン時間の延長やXa因子抑制(抗Xa活性)の変化を治療のはじめの40時間において連続的にモニターした。最初の40時間において、18頭中8頭だけが抗Xa活性が0.35 U/mL以上に達した。出血の症状を出した犬はいなかった。15頭の犬が退院の時点で生きていた:11頭は1年後に生存しており、剖検した6頭の死亡した犬のうち3頭で血栓が見られた。(Dr.Kawano訳)
■2マイクロタイター犬クームス試験のパフォーマンス
Performance of 2 microtiter canine Coombs' tests
Vet Clin Pathol. June 2007;36(2):179-83.
Jed A Overmann, Leslie C Sharkey, Doug J Weiss, Dori L Borjesson
背景:RBC表面の免疫グロブリンまたは補体を検出するクームス試験は、犬の一般的な溶血性貧血の原因である免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の検査確認として長くスタンダードとされている。しかし、この検査は比較的感受性が低い。試験感受性の最適化は、検査結果、臨床診断、あるケースではタイムリーな方法で最適な治療の慣行のより少ない矛盾で導かれるだろう。
目的:この研究の目的は、1)IMHAの検出で2つのクームス試験の感受性と特異性の特徴付け、2)製造元の指導以上の複数の抗血清希釈を使用する効果を述べる、3)検査プロトコールで一価抗血清の必要性を評価することだった。
方法:65頭の犬の全血サンプルをクームス試験し、評価した。前もって定めた基準に沿って犬をIMHA陽性、または陰性に分類した。IHMA分類は、クームス試験結果と2つのマイクロタイタープレート形式を適応させたクームス試験とで比較した。1つ目のクームス試験(VMRD Coombs' test)は単一多価抗血清(VMRD, Inc, Pullman, WA, USA)を利用し、2つ目のクームス試験(University of Minnesota [U of MN] Coombs' test)は多価及び一価抗血清両方を使用した。
結果:VMRDクームス試験の感受性は61%、特異性は100%で、U of MNクームス試験は82%と95%だった。複数抗血清希釈液の使用は、6つの追加クームス陽性試験結果をもたらせた。全ての陽性クームス試験結果は、一価抗血清で陽性だった。
結論:マイクロタイタープレート形式を使用するとき、U of MNクームス試験は、VMRDクームス試験と比較したとき、犬のIMHA検出により感受性のある検査だった。複数抗血清希釈液の使用は、試験感受性を増加させる。しかし、感受性はクームス試験プロトコールで一価抗血清の使用により増加しなかった。(Sato訳)
■原発性免疫介在性溶血性貧血の犬における活性化した血小板の検出
Detection of activated platelets in dogs with primary immune-mediated hemolytic anemia.
J Vet Intern Med. 2006 May-Jun;20(3):682-6. Links
Weiss DJ, Brazzell JL.
血栓塞栓症は免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の疾病率と死亡率の主な原因となる。著者の知識によれば、IMHAに関連した血栓塞栓症における血小板の役割は大々的に調査されていない。ここに報告された研究において、原発性IMHAと関連して活性化した状態で血小板が循環しているかどうか決定するために、フローサイトメトリーによるP-selectinの細胞膜での発現を評価した。原発性IMHA20頭の平均 P-selectin発現 は20頭の健常犬の値と比べて8.1倍多かった。IMHAの犬20頭のうち15頭(75%)は、健常犬の推奨範囲を超えるP-selectin平均蛍光強度(MFI)中央値を持っていた。さらに、酢酸ミリスチン酸ホルボール(PMA)で血小板を活性化した後のP-selectin平均蛍光強度(MFI)は健康コントロール犬よりIMHAの犬で2.1倍多かった。免疫抑制療法で治療したすべての犬と低容量未分画ヘパリンを皮下注射した18頭の犬の治療にも関わらず、7頭の犬は血栓塞栓症に一致した臨床症状が発症した。これらの結果からIMHAの多くの犬で血小板は活性化した状態で循環しているという仮説を支持する。(Dr.Kawano訳)
■猫19例における原発性免疫介在性溶血性貧血:診断、治療、結果(1998-2004)
Primary immune-mediated hemolytic anemia in 19 cats: diagnosis, therapy, and outcome (1998-2004)
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):159-66.
Barbara Kohn, Christiane Weingart, Vera Eckmann, Mareike Ottenjann, Wolfgang Leibold
犬に比べ、猫の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の発生頻度は少ない。クームス試験(CT)の値は疑問視されているが、その使用に関する詳細な調査は欠けている。この研究の目的は、原発性IMHA(pIMHA)の猫19頭を詳述し、直接CTの診断値を研究することだった。92頭の猫でCTを実施した。健康な5頭、非貧血性の病気を持つ9頭、異なるタイプの貧血を持つ55頭の猫は陰性だった。18頭の貧血の猫(2頭は猫白血病ウイルス(FeLV)陽性、1頭は胆管肝炎、15頭は基礎疾患なし)はCT陽性だった。さらに、貧血の猫5頭(リンパ腫1頭、pIMHA4頭)において生食で洗浄後も凝集は持続した。
pIMHAの基準は、CT陽性(15)または持続的凝集(4)および他の疾患の除外だった。19頭の年齢は、0.5-9歳(中央値2歳)でオスが多かった。入院時PCVは6-22%(中央値12%)。11頭の貧血は非再生性だった。追加であげられる検査結果異常は、白血球増加(2)、リンパ球増加(6)、高ビリルビン血症(13)、高グロブリン血症(10)、肝酵素活性増加(10)だった。初期治療は、輸血(10)、晶質(11)、プレドニゾロン(19)、抗生物質(19)、H2ブロッカー(11)投与がなされた。最初の来院から17頭中4頭が9、63、240、2160日目に安楽死された(死亡率23.5%)。再発は16頭中5頭で報告された(31%)。
このようにpIMHAは過去に認識されているより高頻度で発生することがあきらかで、犬よりも予後はより良好である。CTは免疫介在性の病原確認に有効だった。(Sato訳)
■犬の免疫介在性溶血性貧血に関する、予後因子、生存率、そして治療プロトコールの評価:151症例(1993-2002)
Evaluation of Prognostic Factors, Survival Rates, and Treatment Protocols for Immune-Mediated Hemolytic Anemia in Dogs: 151 Cases (1993-2002)
J Am Vet Med Assoc 226[11]:1869-1880 Jun 1'05 Retrospective Study 47 Refs
Tristan K. Weinkle, DVM; Sharon A. Center, DVM, DACVIM; John F. Randolph, DVM, DACVIM; Karen L. Warner, LVT; Stephen C. Barr, BVSc, PhD, DACVIM; Hollis N. Erb, DVM, PhD
目的:犬の免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に関する、予後因子、生存率、そして治療プロトコールを評価することです。
計画:回顧的研究
動物:潜在的感染症、あるいは腫瘍性疾患と関連しない、IMHAの犬151頭。
手順:初診時の特徴;ワクチン暦;追跡調査30日、60日、365日の予後;検査データ;画像検査所見;そして剖検所見などの医療記録を再調査し、情報を記録しました。比較のため、球状赤血球の存在、自己凝集反応、赤血球再生反応、そして受けた治療(アザチオプリン、アザチオプリンと微量アスピリン、アザチオプリンと混合分子ヘパリン[mHEP]、またはアザチオプリンと微量アスピリンとmHEP)により、犬をグループ分けしました。すべての犬が、グルココルチコイドを投与されました。
結果:コッカースパニエル、ミニチュアシュナウザー、不妊手術済み、そして雌犬が平均以上でした。確実な臨床病理学的変化は、死亡率の増大と関連しました。アザチオプリン、アザチオプリンと微量アスピリン、アザチオプリンとmHEPそしてアザチオプリンと微量アスピリンとmHEPでの治療後の生存率は、退院時で、それぞれ74%、88%、23%、そして70%、;30日で、それぞれ57%、82%、17%、そして67%、;1年で、それぞれ45%、69%、17%、そして64%でした。比較で、犬のIMHAの7文献に照合した、退院時、30日、そして1年後の平均生存率は、それぞれ57%、58%、そして34%でした。
結論と臨床関連:グルココルチコイド、アザチオプリン、そして微量アスピリンの併用治療は、IMHAの犬における、短期、および長期生存を有意に改善しました。(Dr.K訳)
■免疫介在性溶血性貧血:3頭の犬におけるAncylostoma caninum(鉤虫)感染との関連の可能性
Immune-mediated haemolytic anaemia: possible association with Ancylostoma caninum infection in three dogs.
J S Afr Vet Assoc 72[1]:52-4 2001 Mar
Lobetti RG, Schoeman T
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、原発性、あるいは続発性であると考えられます。原発性IMHAはいかなる潜在原因もない状況で認められる一方、続発性IMHAは腫瘍形成、伝染性疾患、または薬物のような潜在原因によって誘発されます。この論文は、腸管寄生虫Ancylostoma caninum(鉤虫属)との関連が疑われた、典型的なIMHA徴候を持つ3頭の犬について記述しております。腸管蠕虫は糞便検査で、診断が困難であることがあるので、治療の一部として、明白な潜在原因のないIMHAを呈する動物に対しては、多様な糞便検査を行うことが適切であると思われます。(Dr.K訳)
■免疫介在性溶血性貧血:70症例(1988-1996)
Immune-Mediated Hemolytic Anemia: 70 Cases (1988-1996)
J Am Anim Hosp Assoc 35[5]:384-391 Sep/Oct'99 Retrospective Study 26 Refs
* Michele E. Reimer, DVM, MS; Gregory C. Troy, DVM, MS; Lorin D. Warnick, DVM, PhD
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)は、犬においてよく見られる血液疾患で、担当医に対し、治療上の難題をもたらします。IMHAの病因は、原発性(すなわち、特発性)と続発性に分類できます。犬におけるIMHA症例の60%から70%が特発性です。IMHAに対する治療は、免疫抑制で管理されます;グルココルチコイド、シクロフォスファミド、そしてアザチオプリンは、治療で最も一般的に使用される薬剤です。支持療法として、非経口輸液、抗生剤、そして輸血などがあります。特発性IMHAに関する死亡率は、獣医学文献で報告されているものとして、おおよそ20%から80%の範囲で、まれに生存期間とともに報告されております。この研究の目的は、IMHAと年齢、犬種、そして性別との関連を調査し、罹患した犬の生存期間と死亡率を記述し、IMHAの犬の生存と、検査結果および治療プロトコールの関連を調査することです。
1988年1月から1996年2月の間に、バージニア州―メリーランド州地域大学獣医内科で、IMHAと確定診断された70頭の犬を再調査しました。IMHAと年齢、性別、そして犬種の関係は、同じ期間に病院へ受診したコントロール犬と罹患犬を比較することで評価しました。結果は、年齢(すなわち;2歳から4歳および5歳から7歳)と犬種(すなわち;コッカーおよびイングリッシュ・スパニエル)が、IMHAの発生率増大と有意に関連するということを示しました。2歳以下の犬、およびゴールデン・レトリバーは、リスクが減少しました。症例の70%がメス(避妊済および未避妊共に)でした。血液および血清生化学異常は共通しておりました。血清アルカリフォスファターゼと血清総ビリルビン濃度の増大が、生存の低下と有意に関連しました。この研究は、退院後3ヵ月以内に死亡している犬が大半で、死亡率70%のIMHAに罹患した犬の長期生存を用心深いものとして論証しております。プレドニゾンとアザチオプリンで治療された犬は、他の治療群の犬より、平均中央生存期間がより長くなりました;しかしながら、小規模な研究の為、これらの結果は偏っているかもしれません。著者は、プレドニゾンとアザチオプリンの併用療法で治療された犬の追加研究が、必要であろういうことを結論とします。 (Dr.K訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬における、白血球増加と剖検所見との相関:34症例(1994-1999)
Correlation Between Leukocytosis and Necropsy Findings in Dogs with Immune-Mediated Hemolytic Anemia: 34 Cases (1994 - 1999)
J Am Vet Med Assoc 218[8]:1308-1313 Apr 15'01 Retrospective Study 16 Refs
Patricia M. McManus, VMD, PhD, DAVCP & Linden E. Craig, DVM, PhD, DAVCP
目的:免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の犬における、白血球増加の重症度が、剖検病変の重症度と関連するかどうかを明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:死亡および完全剖検検査に先立ち、48時間以内にCBCを行ったIMHAの犬34頭。
手順:犬を自主的に4つの白血球増加群(基準範囲内、軽度白血球増加、中程度白血球増加、重度白血球増加)と、病変の重症度で分類した3群(軽度病変、中程度病変、重度病変)に割り当てました。
結果:中程度から重度な白血球増加は、中程度から重度な剖検病変と相関しておりました。血栓塞栓症、あるいは貧血性低酸素症による肝臓、腎臓、心臓、肺、そして脾臓内の虚血性壊死が、剖検時に認められたもっとも一般的な重要病変でした。軽度病変の犬はいずれも、中程度、あるいは重度な白血球増加を呈しませんでした。重症に陥った14頭中4頭の犬は、基準範囲内のWBC数でしたが、4頭全てが、好中球左方移動を示しました。これらの4頭中3頭が、好中球の中毒性変化を示しました。
結論と臨床関連:IMHAの犬における、中程度から重度な白血球増加、好中球左方移動、好中球の中毒性変化は、治療を複雑に、あるいは予後を悪化させ得る、中程度から重度な組織障害の可能性があることに臨床医は注意すべきであります。病変は、貧血性低酸素症、血栓塞栓症の続発として発現します;そのため、治療目標は、血液酸素運搬能力を改善させることと、血栓塞栓症をモニタリングすることに焦点を合わせるべきです。(Dr.K訳)
■イヌの急性免疫介在性溶血性貧血の初期治療で、シクロフォスファミドはプレドニゾン単独以上の薬効を示さない:無作為コントロール臨床試験
Cyclophosphamide Exerts No Beneficial Effect over Prednisone Alone in the Initial Treatment of Acute Immune-Mediated Hemolytic Anemia in Dogs: A Randomized Controlled Clinical Trial
J Vet Intern Med 17[2]:206-212 Mar-Apr'03 Review Article 26 Refs
Nicola Mason, Derek Duval, Frances S. Shofer, Urs Giger *
回顧的報告がその有効性を示唆しているため、イヌの重度特発性免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の初期治療に、シクロフォスファミドがプレドニゾンと併用して通常使用される。この無作為コントロール前向き臨床試験は、シクロフォスファミドとプレドニゾンの併用療法が、IMHAの初期治療でプレドニゾン療法単独以上により効果的かどうかを評価した。
18頭の急性重度特発性IMHAのイヌを、無作為に2つの治療群のうち1つに振り分けた。P群は4週間プレドニゾン療法単独投与(1-2mg/kg、PO12時間毎)を受け、PC群はプレドニゾン(1-2mg/kg、PO12時間毎)とシクロフォスファミド(50mg/ml、PO24時間毎、週4日連続)の投与を4週間受けた。
P群の死亡率は20%(2/10)で、PC群は38%(3/8)だった。2群間の連続的なCBC評価で相違はなかった。しかし、P群の犬で網状赤血球の増加が見られたが、PC群の治療最初の1週間は網状赤血球増加の抑制が見られた。球状赤血球は、PC群(28日)よりもP群(21日)のほうが早く解消したが、クームス試験結果が陰性になるまでの時間は、群間で同じだった。両群で輸血後の充填赤血球(pRBCs)容積に差は見られなかったが、PC群で2度目の輸血を必要としたイヌが多かった。この有限研究の結果は、急性重度特発性免疫介在性溶血性貧血の初期治療に、シクロフォスファミド+プレドニゾンの投与は、プレドニゾン単独投与以上の有効性はないことを示唆する。(Sato訳)
■免疫介在性溶血性貧血の犬における、血液型、犬種、性別、そして菌血症に関する症例対照研究
Case-Control Study of Blood Type, Breed, Sex, and Bacteremia in Dogs with Immune-Mediated Hemolytic Anemia
J Am Vet Med Assoc 224[2]:232-235 Jan 15'04 Case-Control Study 20 Refs
Sybille A. Miller, DVM, DACVIM; * Ann E. Hohenhaus, DVM, DACVIM; Anne S. Hale, DVM
目的:血液型、犬種、または性別が、犬における免疫介在性溶血性貧血(IMHA)の危険因子となるかどうか、IMHAの犬において、菌血症は一般的であるかどうかを調査することです。
計画:症例対象研究
動物:IMHAの犬33頭、血液型(犬赤血球抗原1.1,1.2,3,4,5,そして7)が明らかな、IMHAでない1,014頭の犬、品種が明らかなIMHAでない15,668頭の犬、性別が明らかなIMHAでない15,589頭の犬です。
手順:IMHAの犬に関する血液型、品種、そして性別分布をコントロール犬のデータと、Fisher exact testsを用いて、オッズ比(ORs)を算出することにより比較しました。IMHAの犬に関して、可能であったものは、血液サンプルの細菌培養結果を記録しました。
結果:コントロール犬と比較し、IMHAのコッカー・スパニエル(n=10)において、犬赤血球抗原7は、有意な遮蔽効果(OR,0.1)と関連がありました。コッカー・スパニエル、ビション・フリーゼ、ミニチュア・ピンシャー、ラフ・コーテッド・コリー、そしてフィンランドスピッツは、メスの場合、IMHAのリスクが有意に増大しました(OR,2.1)。IMHAの犬12頭からの血液サンプルを、細菌培養のために提出しましたが、いずれも菌血症はありませんでした。
結論と臨床関連:結果は、血液型、品種、そして性別が、犬のIMHAにおける役割を演じているかもしれないことを示唆しております。(Dr.K訳)
■レフルノミド要約
犬の従来の治療に反応しない自然発生した免疫介在性、および炎症性疾患に対するレフルノミドの効果的治療
Leflunomide effectively treats naturally occurring immune-mediated and inflammatory diseases of dogs that are unresponsive to conventional therapies
Proceedings 16th ACVIM Forum, San Diego, CA 1998, Abstract 113
Clare R. Gregory, Alan Stewart, Beverly Sturges, Andrea Cannon, Theresa Ortega, Randall E. Morris
実験研究で、げっ歯モデルにおける自己免疫性および炎症性疾患の治療に、レフルノミドが有効であることが明らかとなっている。この研究は、犬における、これらの疾患の管理、特に、コルチコステロイド療法が無効であったものに対し、レフルノミドが有効かどうかを明らかにするため行いました。
レフルノミド療法に選択した臨床症例には、以下の免疫介在性、および炎症性疾患の犬を含みます:
1) 免疫抑制剤(グルココルチロイド、アザチオプリン、シクロフォスファミド)、抗炎症剤、脾臓摘出の種々併用など、従来的な治療によって管理できなかったもの。
2) コルチコステロイド療法に対して重度な副作用があったもの。
3) 他の犬において、レフルノミド単独療法で、以前にコントロールされた条件のもの。
投与量:レフルノミドは、最初4mg/kg.sidで投与し、それから20μg/mlの血漿レベルになるように調節しました。レフルノミドは、単独療法にするつもりで、従来療法に付加的に開始しました。
治療と結果:以下の22症例をレフルノミドで治療しました:
・ 免疫介在性血小板減少症の犬(3/22)は、レフルノミドで、8-20ヵ月間治療しました。3頭全て、正常な血小板数に回復しました。うち2頭はレフルノミド単独です。
・ 免疫介在性溶血性貧血とエバンス症候群の犬(6/22)は、9-21ヵ月間治療しました。6頭中5頭は、正常なRBC数に回復し、1頭は、骨髄繊維症で死亡しました。
・ 全身性組織球増殖症の皮膚と鼻型の犬(3/22)は、4-18ヵ月以上治療し、全て完全寛解しました。内臓に併発した1頭の犬は、死亡しました。
・ 免疫介在性多発性筋炎と落葉状天疱瘡は、レフルノミド療法で、効果的に管理されました。
結論:従来療法に反応しなかった犬における、自然発生疾患の多くをレフルノミドで有効に治療できました。コルチコステロイドの必要性は、大いに減少、または無くなりました。レフルノミドは、犬における全身性組織球増殖症の治療に、有効となった最初の薬剤です。(Dr.K訳)
■3頭の犬における、炎症性または軟化性病変の治療に対するレフルノミド:予備的臨床研究
Leflunomide for treatment of inflammatory or malacic lesions in three dogs: A preliminary clinical study
Proceedings 16th ACVIM Forum, San Diego, CA 1998, Abstract 40
BK Sturges, RA LeCouteur, CR Gregory, PD Koblick, and RJ Higgins
グルココルチコイド療法に重度な副作用を発生した3頭の犬における、炎症性、または脳軟化性病変の治療に、免疫調整剤レフルノミドを使用しました。犬は、瀰漫性、または多病巣性脳機能障害の臨床徴候を呈していました。病変の診断は、それぞれの犬において、治療前の脳生検をもとに行いました。それぞれの犬で、原因不明の重度な進行性脳疾患と診断されました。
診断的精密検査は、CBC、血清生化学検査、尿分析、胸部レントゲン検査、腹部超音波検査、CSF分析、MRI、そしてCT-ガイド下での脳生検を行いました。
生検結果:脳生検では、慢性非化膿性脳炎(1/3)、軽度急性脳炎(1/3)、そして、生検に先立って10日間グルココルチコイドを与えられた犬における、脳軟化症(1/3)ということが明らかとなりました。
治療と結果:以前の治療でグルココルチコイドの免疫抑制量を3頭全てが使用され、2/3頭の犬は完全寛解、1/3頭の犬は部分的寛解という結果でした。しかしながら、グルココルチコイド療法の2-3ヵ月後、医原性クッシングと診断され、レフルノミド(投与量不明)が開始され、グルココルチコイドを漸減しました。追跡神経学的検査、CSF分析、そしてMRIは、レフルノミド療法開始後12ヵ月で行い、3頭全てに好ましい反応を表しました。3頭全ては、レフルノミド療法開始後12ヵ月以上生存中です。(Dr.K訳)
■レフルノミドとマロノニトリラマイド
Leflunomide and malononitrilamides
Am J Med Sci. 1997 May; 313(5): 289-301. Review
Silva Junior HT, Morris RE
レフルノミドは、自己免疫性疾患の実験モデル、および他家移植(遺伝的に異なる同種個体間の移植)、または異種移植に有効な新しい免疫調整薬です。二段階臨床試験において、進行したリウマチ性関節炎の患者において、高い許容性と有効性を示しました。レフルノミドの免疫調整活性は、マロノニトリラマイドである、初期代謝産物A77 1726に起因します。
この種の化合物に関するin vitroとin vivo作用機序は、完全に明らかにされておりません。いくつかのマロノニトリラマイド類似化合物とA77 1726は、T-cellとB-cell増殖を抑制、免疫グロブリン産生を抑制、そして細胞粘着を妨害します。いかなる中心分子作用機序も、マロノニトリラマイドの全ての作用を説明するものではありませんが、新しいピリミジン生合成の抑制とチロシンキナーゼ活性関連サイトカイン因子と成長因子レセプターの抑制が、T-cellとB-cellの増殖と機能に関する、A77 1726の作用として仮説がたてられております。
レフルノミドは、活発なリウマチ性関節炎の患者に対し、10mgと25mgの1日量で投与した時、有効です。25mg投与量の効果は、より高い副作用(胃腸症状、体重減少、アレルギー反応、皮疹、そして可逆性脱毛)の発生率に関連します。A77 1726の長い血漿半減期(11から16日)のために、負荷用量が、定常状態濃度を達成させるために必要です。10mgまたは20mgの1日量を使った、3期無作為プラセボコントロール試験が、2期試験の結果を拡大、確証するために、米国と英国で現在進行中です。
A77 1726のマロノニトリラマイド類似化合物は、移植前臨床モデルの免疫抑制効果に関して、評価されています。もし、この類似化合物が、これらのモデルにおいて、レフルノミドに似た治療指数で、1期試験におけるA77 1726より短い半減期で有効となれば、臨床試験と1期データは、臓器移植被移植者における、2期試験の類似化合物として選択使用されるかもしれません。(Dr.K訳)
■犬免疫介在性溶血性貧血の死亡率と血栓塞栓症の予想因子:犬72頭の回顧的研究
Prognostic Factors for Mortality and Thromboembolism in Canine Immune-Mediated Hemolytic Anemia: A Retrospective Study of 72 Dogs
J Vet Intern Med 16[5]:504-509 Sep-Oct'02 Retrospective Study 31 Refs
Anthony P. Carr, David L. Panciera, Linda Kidd
免疫介在性溶血性貧血(IMHA)と診断された犬72頭の医療記録を、疾患、死亡率、血栓塞栓症の危険因子を見つけるため再検討した。32頭の凝固データで、死亡率または血栓塞栓症の危険因子について評価した。コッカスパニエルはIMHAのリスクが高かった(P=.012)。ワクチンのタイミングはIMHA発症と関係なかった。PCVの範囲は5-33%で平均16±5%だった。
自己凝集反応は42%の犬で見られた。血小板数(n=60)は3000から793000/μL(平均160117±133571;中央値144000)だった。血小板減少症(血小板数<200000/μL)は70%の犬に見られ、22%の犬が重度の血小板減少(血小板数<50000/μL)だった。ワンステッププロトロンビン時間(OSPT)は検査した28%の犬で延長が見られ、活性部分トロンボプラスチン時間(APTT)の延長は検査した47%の犬に見られた。フィブリン(フィブリノーゲン)分解産物(FDPs)は28頭検査し16頭(57%)で検出された。播種性血管内凝固(DIC)は31頭中10頭(32%)の犬で診断し、8頭で疑いがあった。剖検を行った25頭中20頭に血栓塞栓症が見つかった。死亡率は58%だった。
血小板減少症(P=.008)と血清ビリルビン濃度>5mg/dl(P=.015)が死亡率のリスクファクターで、低アルブミン血症はほぼ有意性を示した(P=.053)。重度血小板減少症(P=.046)、血清ビリルビン濃度>5mg/dl(P=.038)、低アルブミン血症(P=.016)は血栓塞栓症のリスクファクターだった。継続データの評価で、血小板数の減少(P=.057)、ビリルビン増加(P=.062)そしてアルブミンの減少(P=.054)は生存率の減少にほぼ有意性を示した。血栓症のより高いリスクには、アルカリフォスファターゼ(ALKP)の増加(P=.042)、ビリルビン増加(P=.047)そしてアルブミンの減少(P=.012)があった。(Sato訳)
■犬における重症の免疫介在性血小板減少症の治療にビンクリスチンとプレドニゾロンまたはプレドニゾロン単独使用した血小板数回復の比較
Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVECC, DACVIM et al; J Am Vet Med Assoc 220[4]:477-481 Feb 15'02 Prospective Study 16 Refs; Comparison of Platelet Count Recovery with Use of Vincristine and Prednisone or Prednisone Alone for Treatment for Severe Immune-Mediated Thrombocytopenia in Dogs
目的:プレドニゾロンとビンクリスチンの組み合わせと比較したプレドニゾロン単独の効果を評価するため
計画:予想される症例の研究
動物:重症の原発性IMTの犬24頭
方法:すべての犬が免疫抑制用量のプレドニゾロン(1.5~2 mg/kg [0.7 to 0.9 mg/Ib],PO,q12h)を投与された。12頭の犬にはビンクリスチン(0.02 mg/kg [0.01 mg/Ib], IV)単回追加投与を行った。血小板数や輸液量と結果が監視された。応答は、40000/uI以上の血小板数増加とした。応答しなかったプレドニゾロングループの犬は7日目にビンクリスチンの1回投与を行った。
結果:プレドニゾンとビンクリスチンを投与された犬はプレドニゾロン単独より有意に早く血小板数が40000/ul以上に増加した(平均±標準偏差、それぞれ4.9±1.1と6.8±4.5日)。同様にプレドニゾロン単独治療で失敗した治療の7日後に、ビンクリスチンを投与した犬において急速な応答が観察された。さらに、プレドニゾロングループと比較してビンクリスチングループにおいて入院期間が短縮された(それぞれ5.4±0.3と7.3±0.5日)。ビンクリスチンに起因する副作用は、どのような犬においても全く観察されなかった。
結論と臨床との関連:IMTの犬において、ビンクリスチンとプレドニゾンの併用は、プレドニゾン単独使用と比較して、より急速な血小板数の増加や入院期間の短縮と関連している。重度原発性IMTの犬に対し、ビンクリスチンの早期使用は意味があるものと思われる。(Dr.Massa訳)
コメント:IMTなどの場合、血小板数増加の目的でプレドニゾロンやビンクリスチンのほか様々な免疫抑制剤が使用されていますが、この文献を見ると重症でもビンクリスチンで対応できる様ですね。
★原発性免疫介在性溶血性貧血の犬の止血異常
J. Catharine Scott-Moncrieff , MA, MS, Vet MB et al; J Am Anim Hosp Assoc 37[3]:220-227 May-Jun'01 Clinical Study 46 Refs Hemostatic Abnormalities in Dogs With Primary Immune-Mediated Hemolytic Anemia
免疫介在性溶血性貧血(immune-mediated hemolytic anemia :IMHA)は、赤血球(red blood cell :RBC)破壊の抗体が介在する疾患で、犬にひどい貧血をよく起こします。原発性IMHAの犬の死亡率報告は、26-70%の範囲で、死亡の原因となる血栓塞栓症は、凝固促進状態が根本にあるためかもしれません。この研究の目的は、原発性IMHAの犬の止血異常と、それが患畜へどう影響するかの予見的評価、そしてグルココルチコイド治療がそれらの異常に影響を及ぼすかどうか見分ける事です。
IMHAに罹患している20頭の犬を、13ヶ月にわたって評価しました。この研究に入るまでに、8頭はコルチコステロイドの1-7日間(中央値、3.5日)の投与を受けていました;以前に細胞毒性薬の治療を受けた犬は、この研究から除外しました。その後、全ての犬は、個々の主治医の判断による、免疫抑制剤プロトコールの治療を受けました。
完全な凝固試験は、コーネル大学の凝固研究所で、各犬に行われました。次にあげる異常は、完全(4つ)に、または播種性血管内凝固(DIC)の仮診断(3つ)を支持すると思われました:血小板減少、プロトロンビン時間(PT)または部分的トロンボプラスチン時間(aPTT)の延長、低抗トロンビン(AT)活性、低フィブリノーゲン濃度、フィブリノーゲン分解生成物質(FDP)濃度の増加、D-2重体濃度の増加。9頭でaPTTは増加しました;2頭でPTは増加しました;17頭でフィブリノーゲンは増加しました(この研究で、参考範囲よりフィブリノーゲンが低かった犬はいません);10頭でATは減少しました;12頭でFDP濃度が増加しました;16頭でD-2重体は増加しました。4つまたはそれ以上のDICの実験室での基準は9頭に認められ、DICの3つの診断基準はさらに4頭で見られました。死亡した6頭中、3頭に検死を実施し、よく見られる死亡原因は血栓塞栓症発生で、他に死亡した2頭の原因も、これを疑われました;生存していた2頭も血栓塞栓症発生を疑われました。この研究での死亡率は、どんな臨床的発見や研究所での変化と有意な関連はなく、以前にプレドニゾンの治療を受けている、受けていないに関わらず、違いはありませんでした。
著者は、抗凝固剤、抗血栓症薬、または、両方の使用の研究治験はIMHAの犬の死亡率を減少させるという根拠があると締めくくります。
★免疫介在性溶血性貧血の犬の生存に影響を及ぼす薬物療法:88例(1989-1999)
Sophie A. Grundy, BVSc & Claudia Barton, DVM, DACVIM;J Am Vet Med Assoc 218[4]:543-546 Feb 15'01 Retrospective Study 28 Refs;Influence of Drug Treatment on Survival of Dogs with Immune-Mediated Hemolytic Anemia: 88 Cases (1989-1999)
目的:免疫介在性溶血性の犬を死なせないための様々な治療を評価すること。
構成:過去の交差部分調査
動物:特発性免疫介在性溶血性貧血の88頭
方法:1989年8月から1999年8月までの免疫介在性溶血性貧血の治療を受けた犬の医療記録を調査しました。退院し生存、診察時のPCV、自己凝集反応、治療薬物と投与量が記録されました。
結果:治療はプレドニゾン、デキサメタゾン、アザチオプリン、ダナゾール、サイクロスポリン、シクロフォスファマイド、牛ヘモグロビン溶液、そしてヒト免疫グロブリンの投与でした。全体の死亡率は50.5%でした。アザチオプリン、サイクロスポリン、ダナゾール、ヒト免疫グロブリンの使用で、死亡との相関関係はありませんでした。免疫抑制剤の多剤併用と、単剤投与の間に死亡率の有意差は認められませんでした。シクロフォスファマイドと牛ヘモグロビン溶液の使用は死亡する危険が有意に増すことに関連しています。
結論と臨床関連:この結果は、免疫介在性溶血性貧血の治療に、シクロフォスファマイドと牛ヘモグロビン溶液の使用は死亡のリスクが増加すると示唆します。(Dr.Sato訳)