■小動物の重篤疾患関連コルチコステロイド不足
Critical illness-related corticosteroid insufficiency in small animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2011;41(4):767-82.
Linda G Martin

重篤疾患関連コルチコステロイド不足(CIRCI)は疾患に関連した内分泌異常と評される。CIRCIは特に敗血症あるいは敗血症性ショックのような重篤疾患の大きなストレスを受ける間、その要求量の増加に関係するコルチゾール産生不足を特徴とする。CIRCIの顕著な症状は、昇圧療法を必要とする輸液蘇生に反応がない低血圧である。コルチコステロイド投与はCIRCIの患者で指示される。
この文献は重篤疾患に反応するコルチコステロイドの生理学および病態生理学、CIRCIの発生、臨床特徴、診断、治療を検討する。
■犬への局所的なデキサメタゾンの投与が、インスリン、グルコース、甲状腺ホルモン、コルチゾル値に及ぼす影響
Influence of topical dexamethasone applications on insulin, glucose, thyroid hormone and cortisol levels in dogs.
Res Vet Sci. 2011 Jun;90(3):491-7. Epub 2010 Jul 27.
Gottschalk J, Einspanier A, Ungemach FR, Abraham G.

ビーグル犬を用いて、2種類のデキサメタゾン製剤の局所投与(皮膚および点耳)が、血漿インスリン、グルコース、甲状腺ホルモン、コルチゾル値に及ぼす影響について検討した。
両治療とも、コルチゾルの基礎値を有意に低下させ、著しいインスリンの上昇(約50%)を起こしたが、血清グルコース値を変化させる事はなかった。デキサメタゾンの点耳は、時間がたつにつれて徐々に血漿サイロキシン(T4)の放出を阻害した(18-50%)のに対し、皮膚へのデキサメタゾンは、迅速にT4値を低下させた。両製剤とも、血漿トリヨードサイロキシン(T3)値を低下させたが、皮膚のデキサメタゾンによる反応の方が、点耳よりも強かった。薬剤を中止すると、中止後1週間にはインスリンの分泌は基礎値へと戻ったが、コルチゾル、T4およびT3値は、基礎値にまで低下しなかった。
これらの結果は、局所的なグルココルチコイドの投与によって、視床下部-下垂体-副腎軸の抑制が同時に起こり二次性に甲状腺機能低下症を起こしたが、膵内分泌を増感したことが示唆される。従って、こうした投与によって内分泌のストレス軸の活性が予想外に様々な影響を受けることについて注意深く検討する必要がある。(Dr.Taku訳)
■犬の多発内分泌疾患:35症例(1996-2009)
Multiple endocrine diseases in dogs: 35 cases (1996-2009).
J Am Vet Med Assoc. June 2011;238(12):1616-21.
Shauna L Blois; Erica Dickie; Stephen A Kruth; Dana G Allen

目的:特異障害および各障害の診断時期の間隔などを含む、2つ以上の内分泌障害を持つ第3のケアセンターから来た犬の集団の特徴を述べる

構成:回顧的症例シリーズ

動物:2つ以上の内分泌障害を持つ35頭の犬

方法:医療記録を検討し、以下を記録した:臨床症状、身体検査所見、CBC、血清生化学検査、尿検査、尿サンプルの好気性細菌培養、内分泌検査、診断画像検査、剖検の結果。

結果:2つ以上の内分泌疾患を持つ35頭の犬を確認した。77%の犬(27/35)はオスで、最初の内分泌障害診断時の平均年齢は7.9歳だった。ミニチュアシュナウザーが最もよく見られた犬種だった。35頭中28頭(80%)は2つの障害、7頭(20%)は3つの障害があった。最も一般的な障害の組み合わせは、57.1%(20/35)の犬で真性糖尿病と副腎皮質機能亢進症;22.9%(8/35)の犬で副腎皮質機能低下症と甲状腺機能低下症;28.6%(10/35)の犬で真性糖尿病と甲状腺機能低下症だった。1つ目と2つ目の内分泌障害の診断の間の平均期間は14.5ヶ月で、1つ目と3つ目の内分泌障害の診断の間の平均期間は31.1ヶ月だった。

結論と臨床関連:結果から多発性内分泌障害の発生は犬で珍しいと示唆された。この犬の集団で内分泌障害の一般的な組み合わせは、真性糖尿病と副腎皮質機能亢進症、続いて副腎皮質機能低下症と甲状腺機能低下症だった。(Sato訳)
■正常が異常なとき:隠れた内分泌疾患の検査室診断の鍵
When normal is abnormal: keys to laboratory diagnosis of hidden endocrine disease.
Top Companion Anim Med. May 2011;26(2):45-51.
Thomas K Graves

獣医臨床医は一般に異常なときに印が付く検査結果のパネルに信頼を置くが、同様に正常な結果を解釈するのに注意すべきである。内分泌疾患の患者を評価するときに、これについていくつかの例がある。正常な白血球像の所見(ストレス像の欠如)は、犬の副腎不全を示している可能性があり、ミネラルコルチコイド欠乏の明確な指標がないとき、この疾患は特に分かりづらい。甲状腺機能亢進症の猫は、それらのパラメーターに影響する疾患であるにもかかわらず正常な血清甲状腺ホルモン濃度、正常なヘマトクリット値、正常な血清クレアチニン濃度のときがある。高窒素血症、等張尿、高血圧にもかかわらず正常な血清リン濃度は、臨床医を原発性腎疾患よりも原発性高アルドステロン血症の診断に向ける可能性がある。高カルシウム血症にもかかわらず、正常な血清上皮小体ホルモン濃度は不適当で、原発性上皮小体機能亢進症の存在を示すかもしれない。同様に正常な血清インスリン濃度で低血糖の場合、高インスリン血症の症例を見つけることができる。それら異常な患者の正常な所見、それらのメカニズムを概説する。(Sato訳)
プロリゲストンの使用で管理した3頭の下垂体性小人症のジャーマンシェパード
Use of Proligestone in the Management of Three German Shepherd Dogs with Pituitary Dwarfism
Sm Anim Clin Endocrinol. 2002 Sep-Dec;12(3):3.
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM , Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM

背景:下垂体性小人症はまれな疾患であるが、いくつかのジャーマンシェパードの家族に劣性形質が示されている。それは均衡性小人症、子犬の皮毛からなる二次毛の保持、一次毛の欠如、脱毛を起こす。他の下垂体ホルモン、特に甲状腺刺激ホルモン(TSH)、プロラクチン、性腺刺激ホルモンの欠乏がよく見られる。成長ホルモンによる治療は高価で、ヒト成長ホルモンに対する抗体を持つことが多く、その結果効果はなくなる。いくつかのプロゲスチンは、犬の乳腺組織から成長ホルモン分泌を促進させ、犬の下垂体性小人症の治療に有孔かもしれない。
要約:典型的な臨床症状、正常以下のインシュリン様成長因子-1(IGF-1)をもとに診断した下垂体性小人症の6-7ヶ月齢のジャーマンシェパード3頭(オス1、メス2)に、3週間おきにプロリゲストン10mg/kgを皮下投与した。臨床反応と血清IGF-1濃度を治療中モニターした。犬は正常な副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)反応試験結果を示し、正常な血清T4濃度だったが、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)投与後のT4反応は低下した。2頭の犬は、TRH投与後増加しない低い正常な血清TSH濃度を示した。1頭の犬はTRH投与後ほんのわずか増加したTSH濃度の上昇を示した。検出不可能な基底TSH濃度の犬2頭は、レボチロキシンで治療した。そのうち1頭はプロリゲストン投与前の37週間レボチロキシンを投与したが改善しなかった。
プロリゲストン投与開始から10週以内に全ての犬の皮毛の質が改善した。一次毛は最初尾の全体に見られ、背側、体幹と続いた。1頭はプロリゲストン投与を中止したら皮毛喪失が再発した。全ての犬は治療中体重が増加した。1頭は35週の追跡期間で治療のいかなる合併症も起きなかった。2頭の犬(オスとメス)で9週目と12週目に乳腺の発達が見られた。2頭で治療後28日目と81日目に頭部および頚部周囲の軟部組織形成増加、吸息喘鳴、歯間腔増加、足の腫脹などの末端肥大症の症状が見られた。1頭の16週目に再発性膿皮症が見られた。1頭で治療開始から87週目、投与中止から6週目に再発性の外陰部排泄物が見られた。
治療開始から96週目の卵巣子宮摘出術で嚢胞性子宮内膜過形成が見られた。犬の皮毛は避妊手術後3週間で劇的に改善した。オス犬は皮毛喪失が再発したので治療開始から117週目(プロリゲストンは57週目に中止)に去勢した。この処置の後皮毛は改善した。2頭の犬は末端肥大症、運動時の息が荒くなるなどの症状で投与を中止し、その後臨床症状の改善で治療を再開した。治療後全ての犬で血清IGF-1濃度が増加した。当初の用量で1頭の血清IGF-1濃度は増加しなかったため、プロリゲストンの用量を増加し、副作用は見られていない。3週間おきの15mg/kgプロリゲストン投与でIGF-1濃度は増加した。血清IGF-1濃度が200ng/mlを超えた2頭で末端肥大症の症状が出現した。レボチロキシンの投与を受けなかった犬で、血清T4濃度はプロリゲストン投与中に増加した。著者は、プロリゲストンが下垂体性小人症の治療にうまく使用でき、血清IGF-1濃度が200ng/ml以下になるよう調整すべきだと結論付けた。
臨床関連:プロリゲストン投与は、犬の下垂体性小人症の比較的安価な治療法である。プロゲスチン治療の効果は、乳腺からの持続性GH産生増加にかかわらず受け入れられると思われる。生理学的分泌は拍動性である。プロリゲストンは、メドロキシプロゲステロンのような他のプロゲスチンと比較して乳腺および子宮に対する副作用がより少ないためそれらの症例に選択した。この研究の3頭中2頭に乳腺発達、嚢胞性子宮内膜過形成が見られ、プロリゲストンに副作用がないわけではないことを示唆する。治療犬は不妊すべきである。IGF-1を200ng/mlを維持するより低い用量で副作用をより少なくし、許容可能な臨床反応を得ることが可能である。(Sato訳)
■犬原発性上皮小体機能亢進症の対する3つの治療方法の遡及的評価
Retrospective evaluation of three treatment methods for primary hyperparathyroidism in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):70-7.
Liberty Rasor, Rachel Pollard, Edward C Feldman

原発性上皮小体機能亢進症を治療した110頭の犬の医療記録を再審査した。犬は上皮小体摘出(n=47)、経皮超音波ガイド下アルコールアブレーション(n=15)、経皮超音波ガイド下熱焼灼(n=48)で治療した。上皮小体摘出を行った48頭中45頭(94%)は、中央値561日間、高カルシウム血症をコントロールできた。アルコールアブレーション処置を行った18頭中13頭(72%)は、中央値540日間、高カルシウム血症をコントロールできた。熱焼灼治療をおこなった49頭中44頭(90%)は、中央値581日間、高カルシウム血症をコントロールした。(Sato訳)
■上皮小体機能低下症:病態生理学と診断
Hypoparathyroidism: Pathophysiology and Diagnosis
Compend Contin Educ Pract Vet 27[4]:270-279 Apr'05 Review Article 25 Refs
Alicia K. Henderson, DVM & Orla Mahony, MVB, DACVIM

カルシウムは体のほぼ全ての細胞で生命維持に重要な役割を演じる。結果として、カルシウムの恒常性は、上皮小体ホルモン(PTH)、ビタミンD、カルシトニンの活性により正確に組織化される。上皮小体機能低下症は、PTH欠乏を特徴とする内分泌障害で、低カルシウム血症および高燐血症を起こす。原因には免疫介在性、外科的腺破壊および血中マグネシウム減少、人でよく定義されるその他の状況がある。低カルシウム血症は全身性発作を含む神経、神経筋異常を主に引き起こす。診断は低カルシウム血症、高燐血症の存在、不適切に低いPTH濃度とともに、特に腎疾患など低カルシウム血症となる他の疾患の除外である。(Sato訳)

■上皮小体機能低下症:治療
Hypoparathyroidism: Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 27[4]:280-287 Apr'05 Review Article 16 Refs
Alicia K. Henderson, DVM & Orla Mahony, MVB, DACVIM

上皮小体機能低下症は、上皮小体ホルモン欠乏を原因とする疾患で、低カルシウム血症と高燐血症を引き起こす。治療は急性、亜急性、維持期に分けることが出来る。カルシウム添加とビタミンD療法は主となる治療である。合成上皮小体ホルモンの置換療法は、ヒトの新興治療である。血清カルシウム濃度の頻繁なモニタリングは、高カルシウム血症や腎不全などの深刻な結果を避けるために重要である。適切な処置と入念なモニタリングにより、良い質、長期生存を伴う好ましい予後をもたらす。(Sato訳)
■上皮小体ホルモンの組織化学:アデノーマか過形成
Parathyroid Hormone Histochemistry: Adenoma or Hyperplasia
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:25-26 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
van Vonderen IK, Kooistra HS, Peeters ME, et al.; J Comp Path 2003;129:61-69

イントロダクション:

背景:上皮小体機能亢進症は原発性、または二次性に起こる可能性がある。原発性上皮小体機能亢進症は、二次性のものより少ない。大多数の原発性上皮小体機能亢進症症例は、自立孤立性上皮小体腺腫により起こる。上皮小体癌または上皮小体の自立性原発(結節)性過形成はまれな症例である。

目的:この調査の目的は、健康犬、原発性上皮小体過形成、上皮小体腺腫および慢性腎不全による二次的な上皮小体過形成の犬の組織学的上皮小体異常、上皮小体ホルモン免疫組織化学を述べることだった。
サマリー:

方法:原発性上皮小体機能亢進症の5頭、慢性腎不全による二次的上皮小体機能亢進症の3頭、10週間前に下垂体切除を行ったコントロール犬8頭の臨床所見、組織学的所見、上皮小体ホルモン免疫組織化学を評価した。

結果:原発性上皮小体機能亢進症の5頭中、2頭は上皮小体の結節性過形成、他3頭には1つの腺腫が存在した。非結節性(瀰漫性)過形成が慢性腎不全の犬3頭の上皮小体に存在した。過形成、腺腫性両方の上皮小体組織は、細胞質上皮小体ホルモン免疫組織化学染色を拡散させ、健康な上皮小体ホルモンはそうでなかった。正常、過形成、腺腫の上皮小体組織の限局性副核上皮小体ホルモン標識が存在し、ゆえに機能状態には非特異的である。

結論:原発性多結節性過形成が過形成よりも複数腺腫に存在する。

臨床関連:上皮小体の孤立および複数腺腫(多結節性過形成)は、機能的、免疫組織学的に同一である。しかし、それらの起源または原因は異なるかもしれない。孤立性腺腫は、傷害または細胞加齢変化を獲得しやすい一方、多結節性腺腫は、家族性の発端、または上皮小体の慢性刺激を起こしやすい。上皮小体の二次的過形成から自律多結節性変化への転換は、三次性上皮小体機能亢進症といわれる。
上皮小体の多結節性病変を持つ原発性上皮小体機能亢進症と診断された患者は、上皮小体機能亢進症の家族性傾向や複数内分泌腫瘍に関して評価すべきである。また、特に慢性腎不全のような、二次的上皮小体機能亢進症の本来の原因となり三次性上皮小体機能亢進症に進行するかもしれない併発疾患も評価すべきである。(Sato訳)
■イヌの原発性上皮小体機能亢進症の経皮超音波ガイド下高周波熱アブレーション
Percutaneous Ultrasonographically Guided Radiofrequency Heat Ablation for Treatment of Primary Hyperparathyroidism in Dogs
J Am Vet Med Assoc 218[7]:1106-1110 Apr 1'01 Clinical Trial 21 Refs
Rachel E. Pollard, DVM; Craig D. Long, DVM, DACVR; Richard W. Nelson, DVM, DACVIM; William J. Hornof, DVM, MS, DACVR; Edward C. Feldman, DVM, DACVIM

目的:原発性上皮小体機能亢進症のイヌの上皮小体massに対する、超音波ガイド下高周波熱アブレーションの効果と安全性を評価する

構成:臨床試験

動物:11頭のイヌ

方法:全頭、超音波検査で1つ、または2つの上皮小体のmassを認めた。イヌに麻酔をかけ、20ゲージの針に覆いかぶさったカテーテルを、超音波ガイド下で上皮小体のmassに刺入した。Mass全体の実質が超音波で明らかに変化するまで、高周波の熱をカテーテルのスタイレットに適用した。血清総、イオン化カルシウムと上皮小体ホルモン濃度をアブレーション処置後、5日間毎日モニターし、可能ならば、3ヶ月間隔で1,2回繰り返した。イヌの副作用をモニターした。

結果:6頭で1回の治療、2頭で2回の治療を必要とし、3頭の治療は不成功だった。治療が成功した8頭で、最終処置2日以内に、血清総、イオン化カルシウム濃度は正常範囲内になった。血清上皮小体ホルモン濃度は、8頭で治療後24時間以内に低下した。そのうち5頭に、低カルシウム血症が起こり、すべて治療を必要とした。1頭は、一時的に声が変化した。他の副作用は報告されなかった。

結論と臨床関連:上皮小体massの超音波ガイド下高周波熱アブレーションは、原発性上皮小体機能亢進症のイヌの外科手術に変わるものとして安全で効果的な方法である。(Sato訳)
■L-デプレニルを使用したネコの先端巨大症の治療
Treatment of Acromegaly in a Cat Using L-Deprenyl
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:5-6 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Abraham L, Helmond SE, Mitten RW, et al. Aust Vet J 2002;80:479-483

イントロダクション

背景:先端巨大症は、成長ホルモンの過剰産生の結果である。ネコの先端巨大症は、腺下垂体の好酸性細胞腺腫により引き起こされる。伸長した下顎骨、足の増大、歯間腔の増大などの臨床症状はわずかである。成長ホルモンのインシュリン拮抗作用による二次的な糖尿病がよく最初に診断される。それから糖尿病がインシュリン耐性のとき、先端巨大症が疑われ、他の症状にも気づく。成長ホルモンの同化作用は、成長ホルモンよりも簡単に測定できるインシュリン様成長因子Iにより仲介される。
ドパミンは成長ホルモン分泌を抑制する。ドパミン作用薬は、ヒトの先端巨大の管理に効果的である。L-デプレニルはドパミン作用薬で、安全マージンが広いと報告されている。

目的:この報告の目的は、ネコの先端巨大症の治療にL-デプレニルを使用した結果を述べることである。

サマリー

症例報告:体重6.5kgの14歳去勢済みオスの家ネコ短毛種を真性糖尿病と診断し、中時間作用型組み替え型ヒトインシュリンで治療した。7IUの投与量で反応がないのに気づき、インシュリン耐性を疑った。ブタインシュリンを試したが効果はなかった。
さらなる診断検査と治療の変更のために来院した。来院時の身体検査で、幅広い頭蓋、軽度上顎前出、腹部肥大臓器、触知可能な甲状腺に気づいた。インシュリン投与を漸次27IU1日2回まで増加したが、高血糖のコントロールは不十分だった。通常の検査所見は、コントロール不能な糖尿病と一致した。総チロキシン濃度は、2回の検査とも正常だった。副腎皮質刺激ホルモン刺激前後の血漿コルチゾール濃度は、正常範囲内だった。インシュリン様成長因子I濃度は上昇していた。頭部のCT検査で、下垂体massを認めた。心エコー検査で、心肥大を認めた。
L-デプレニルによる治療を1日1回5mgで開始した。1ヵ月後、より低い投与量で副作用が観察されないとき、1日1回10mgの投与量に増量した。先端巨大症、またはインシュリン耐性に対する治療効果は見られなかった。先端巨大症の診断から9ヵ月後、退行性関節症のためネコは動きたがらなくなった。オーナーは安楽死を希望し、剖検で大きな好酸性細胞腺腫を確認した。
結論:この報告で使用した投与量で、L-デプレニルは先端巨大症に関するインシュリン抵抗、または先端巨大症の臨床症状を回復させるのに無効だった。
臨床への影響

結果:ネコの先端巨大症の良好な治療方法は不明である。多くは、二次的糖尿病、最終的に心臓に起こる心肥大、腎機能不全を起こす腎肥大に対し、可能ならばインシュリンの大量投与で管理しなければならない。下垂体切除はいまだ実用的ではない。下垂体腫瘍の外部ビーム照射は効果で、麻酔の繰り返し投与が必要で、有効性を示している。ヒトの先端巨大症の内科療法は、ドパミン作用薬、ソマトスタチン類似物質、成長ホルモン受容体拮抗剤などである。ソマトスタチン類似物質のオクトレオチドは、ネコの先端巨大症の治療に試されており、望んだ結果は得られていない。
L-デプレニルは、この報告のネコで使用した経口投与量よりもかなり低い静脈投与量で、ネコのモノアミン酸化酵素活性を有意に低下させることが示されている。獣医療でL-デプレニルは主に、イヌの下垂体依存性副腎皮質機能亢進症や認知機能障害の治療に使用されている。それは敏捷性を促進し、身体活動を増加させるが、下垂体依存性副腎皮質機能亢進症を管理する効果は悪い。この報告のネコで、先端巨大症の管理に無効だった。(Sato訳)
■先天性成長ホルモン(GH)欠乏症の犬の治療におけるプロゲスチン誘発性成長ホルモン産生
Kooistra HS et al; Domest Anim Endocrinol 15[2]:93-102 1998 Mar; Progestin-induced growth hormone (GH) production in the treatment of dogs with congenital GH deficiency.

近年、プロゲスチンに犬と猫の乳腺における成長ホルモン(GH)遺伝子発現を誘発するの能力のあることが証明され、いくつかの型のGH欠乏症に対してプロゲスチン処置の可能性が見出されている。
下垂体異常による先天性矮小症のオスとメスのジャーマンシェパード1頭づつに対して、体重あたり2.5-5mgの酢酸メドロキシプロゲステロン(MPA)を、最初は3週間おきに、その後6週間おきに皮下注射しました。
両方の犬で、体のサイズは増加し、被毛は完全な成犬のものとなりました。副作用として、両方の犬で掻痒性膿皮症の周期的な再発があり、メスの犬には子宮粘液腫を伴う、嚢胞性の子宮内膜過形成が見られました。
身体の改善と並行して血漿インスリン様成長因子I濃度は急激に上昇しました。血漿GH濃度は上昇傾向にありましたが、基準値の上限を越えることはありませんでした。
にもかかわらず、1頭の犬では、わずかに末端肥大症の特徴が見られました。これはおそらく乳腺のGHは下垂体のGHとは異なり、1日中平均して放出されるからだと思われます。循環GH濃度の中程度の増加でさえ、過度の上昇を起こすかもしれません。このことはMPAが異種成長ホルモンの代わりとして、犬の先天性成長ホルモン欠乏症の治療において長期投与が可能であることを結論づけています。(Dr.Shingo訳)

コメント:この1年くらいで、成長しきらない犬(ゴールデンとバーニーズ)に遭遇しているのですが、みなさんのところではどうでしょうか?
■下垂体性矮小症のジャーマンシェパードにおける複合型下垂体ホルモン欠乏症
C.B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin Endocrinol 11[2]:1-4 May-Aug'01 Case Report 0 Refs; Combined Pituitary Hormone Deficiency in German Shepherd Dogs with Dwarfism

背景:ジャーマンシェパードにおける下垂体性矮小症(下垂体性小人症)は、単一性常染色体の劣性形質です。下垂体前葉となるラトケ嚢の頭蓋咽頭外胚葉由来細胞の分化不全が、嚢胞形成を起こします。そのシストが周囲の細胞を圧迫したり、あるいは、二次的に下垂体前葉細胞の機能障害を形成することが、下垂体前葉ホルモン欠乏症の原因となっているかどうかはわかりません。下垂体性矮小症の犬における成長ホルモン(GH)欠乏症が、しばしば二次的な甲状腺機能低下症に随伴して起こります。他の下垂体ホルモンの欠乏症もあるかもしれません。

要約:異常な被毛と同じ様な成長遅延を評価するために、8頭の矮小症(小人症)のジャーマンシェパード(雄4頭、雌4頭)の委託を受けました。紹介を受けた時点での年齢の中央値は6ヶ月で、平均体重は9.8kgでした。身体検査で4頭全ての雄犬は停留睾丸であることがわかりました。
2頭の雌犬には連続性の心雑音があり、PDA(動脈管開存症)が示唆され、2頭には持続発情に合致する臨床徴候がみられました。通常の検査で、7頭に血漿クレアチニン濃度の上昇が見られました。平均血漿サイロキシン濃度は一般的に低値を示しました(正常な基準範囲が19-46 nmol/lのところ、7-29 nmol/lの範囲で平均17 ± 3 nmol/Iでした)。平均血漿インスリン様成長因子-I(1GF-I)濃度は41-98 ug/lの範囲で、平均62 ± 10ug/lでした(幼若なジャーマンシェパード犬の基準範囲は345 ± 50 ug/lです)。
複合した下垂体前葉の機能が、4種類の放出ホルモン(副腎皮質刺激ホルモン放出ホルモン、成長ホルモン放出ホルモン、性腺刺激ホルモン放出ホルモン、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)を使用してテストされました。矮小症(小人症)におけるGHの平均基礎血漿濃度は0.5 ug/lで、これは同じ年齢の健康なビーグル犬の1.8 ug/lに比べると明らかに低く、刺激に対する反応もありませんでした。矮小症の犬の甲状腺刺激ホルモン(c-TSH)の平均基礎血漿濃度は0.05 ug/l、プロラクチンは1.0 ug/lで、これらの数値もまたビーグル犬に比べて有意に低値でした(それぞれ0.18 ug/lと1.4 ug/l)。そして、どちらにおいても刺激に対する変化は見られませんでした。
基礎血漿黄体形成ホルモン(LH)濃度でビーグル犬と有意差はありませんでした。矮小症におけるLH濃度の刺激ピーク値は、ビーグル犬のピークレベルに比べると有意に低値を示しました。雄犬における血漿卵胞刺激ホルモン(FSH)濃度は、刺激試験を通して、検出できうる限界にも満たない結果となりました。雌犬においては、ビーグル犬に比べて、基礎血漿FSHレベルはわずかに低く、下垂体前葉上の刺激に続いてわずかな増加しか見られませんでした。矮小症の犬の基礎血漿副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)濃度は111 ng/lで、これはビーグル犬のそれに匹敵する数値でした。そして、同様の方法で刺激を行った後の増加レベルもまたビーグル犬の報告と同じでした。
コンピュータ断層撮影法(CT)で下垂体の高さが2.4 〜5.6 mm、幅が2.7〜6.5 mm、長さが2 〜8 mmの範囲でした。最も小さい下垂体の犬で、均質なコントラストの増強がありました。他の7頭の犬では、下垂体領域に嚢胞がありました。著者は、ジャーマンシェパードの矮小症(小人症)では、GH、c-TSH、プロラクチンの混合した減少があり、同様にゴナドトロピンの放出に障害があると考えました。嚢胞形成と下垂体形成不全もまた顕著な特徴として確認しました。

臨床関連:アメリカにおけるジャーマンシェパードの下垂体性矮小症(下垂体性小人症)は相対的に見て、あまり一般的ではありません。その発現率は、ヨーロッパにおいては比較的高いと思われています。以前の治療法として、動物にGHを処置することが注目されました。ところが、この研究と以前の研究では、甲状腺機能低下症を処置するために甲状腺ホルモンの補充の重要性を強調しています。シスト形成が下垂体性矮小症はどのように寄与するか、もしそれがあったとしても、現段階では確かではありません。下垂体性矮小症を導く遺伝的欠損は 副腎皮質刺激ホルモン産生細胞の分化後に起こるのかも知れません。そして、それと同時に嚢胞形成が起こるのかも知れません。しかしながら、同時発生的嚢胞をもつ矮小症では、その嚢胞が成長ホルモン産生細胞、甲状腺刺激ホルモン産生細胞、性腺刺激ホルモン産生細胞機能障害の本質の一因となる圧迫を作り出しているのかも知れません。副腎皮質刺激細胞は最初、下垂体前葉細胞の中で発達します。
それらもまた最後には圧迫によってなくなります。予想される事として、ACTHの分泌は、他の下垂体腺部細胞が機能障害を受けていると判明した後も下垂体矮小症で生かされていました。成長ホルモン産生細胞は圧迫によってほとんどが影響されやすく、おそらく甲状腺刺激ホルモン産生細胞が無くなる前に機能障害を受ける。下垂体性矮小症のジャーマンシェパードは、初診時に、二次的甲状腺機能低下症を発症しているとは限りませんが、最終的にはほとんどがそれに発展していくでしょう。(Dr.Shingo訳)

コメント:発生学的な文献で内容的に難しいです。下垂体矮小症の犬では、成長ホルモンと性ホルモン、甲状腺ホルモンの分泌不全がみられ、それによる障害が発生するということです。今回の文献では、副腎皮質ホルモンの濃度は正常だとありましたが、副腎皮質ホルモン分泌不全型もあるようです。文献の中にも「副腎皮質刺激細胞も消失されてくる」とあります。それぞれの症状に応じた治療が必要となってきますね。