■日本のメス犬の乳腺腫瘍の疫学的解析:九州沖縄地方の研究
Epidemiological analysis of mammary tumors in female dogs in Japan: A study based on Kyushu-Okinawa region
Vet J. 2025 Jan 14:310:106301.
doi: 10.1016/j.tvjl.2025.106301. Online ahead of print.
Shinji Hirano , Tatsuro Hifumi , Noriaki Miyoshi
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犬の乳腺腫瘍(CMTs)は、メス犬(FDs)の一般的な腫瘍で、それら病変のほぼ半数は悪性である。
我々は、九州沖縄地方で2005年から2023年までに収集した切除バイオプシー症例(n=7802)を用い、日本のCMTsの疫学を調べた。一般統計と多変量解析を通し、CMTと悪性CMT(mCMT)リスクに対する犬種、不妊、年齢の影響と有病率を調査した。CMT組織学的タイプの分布も、異なる犬種と雑種で比較した。
個人動物病院からの症例からなるこの集団(n=6197)において、CMTとmCMT症例の頭数(それぞれ2928頭と822頭)と調整した有病率は、4.76-8.09/1000頭で、時間と共に増加した(P<0.001)。多変量モデルで、CMTあるいはmCMTの高リスクあるいは低リスクの犬種を確認した。避妊したFDsのCMTのリスクは、避妊していないFDsよりも低かった(リスク比=0.57、95%CI:0.53-0.61)。最も高い発生率の年齢と比較し、8歳以上、14歳以上の犬は、それぞれCMTおよびmCMTと同様の率だった。特定の犬種は、雑種犬と比較してCMTの組織学的タイプに偏りがあった。
これは、日本のCMTの最初の疫学的解析で、CMTコントロールに対する有用な供給源となるだろう。(Sato訳)
■犬と猫の乳腺腫瘍の術前診断における細針吸引およびコアニードルバイオプシーの比較
Comparison of Fine-Needle Aspiration and Core Needle Biopsy for the Pre-Operative Diagnosis of Canine and Feline Mammary Gland Tumours
Vet Comp Oncol. 2024 Sep 5.
doi: 10.1111/vco.13006. Online ahead of print.
Thitida Pakdeesaneha , Katriya Chankow , Sirichai Techarungchaikul , Thitiporn Thongsima , Mintraporn Kongtia , Theerawat Tharasanit
乳腺腫瘍は、メスの犬と猫を侵す一般的な腫瘍である。
鑑別診断のゴールドスタンダードとして、猫(n=64)および犬(n=83)の切除後の病理組織検査結果がある乳腺腫瘍を診断する術前の細針吸引(FNA)およびコアニードルバイオプシー(CNB)の精度を比較した。また、CNBの針のサイズ(18Gと16G)の影響も調査した。
FNA、18G CNB、16G CNBは、90%から97.7%の範囲で、猫の乳腺腫瘍の診断に関し同様の精度を示した(p>0.05)。しかし、それらの方法は犬の乳腺腫瘍の診断精度においてより低かった:FNAで46.7-50.9%、18G CNBで63.3%、16G CNBで73.6%。
結論として、猫および犬の乳腺腫瘍に対し、FNAおよびCNBは術前診断法として随意に使用できる。しかし、動物種や診断法のような診断精度に利竅する因子を考慮すべきである。(Sato訳)
■炎症性乳癌の犬の生存性とQOLに対するリン酸トセラニブとカルプロフェンの影響
Impact of Toceranib Phosphate and Carprofen on Survival and Quality of Life in Dogs with Inflammatory Mammary Carcinomas
Vet Sci. 2024 Sep 13;11(9):430.
doi: 10.3390/vetsci11090430.
Miguel Garcia-de la Virgen , Isabel Del Portillo Miguel , Elisa Maiques , Ignacio Pérez Roger , Enric Poch , Juan Borrego
犬の炎症性乳癌(IMC)は、一般に血管内皮成長因子とシクロオキシゲナーゼ-2過剰発現が発生し、その侵襲性及び血管新生特性に寄与する犬の乳腺癌のアグレッシブで珍しい型である。
この研究の目的は、測定可能なIMCがある犬において、リン酸トセラニブとカルプロフェンの併用治療法の効果と安全性を評価することだった。
病理組織学的にIMCを確認した15頭のメス犬を含め、トセラニブ(2.24-2.75mg/kg PO週3回)とカルプロフェン(4.4mg/kg/24h
PO)で治療した。当初の評価は、身体検査、腫瘍測定、CBC、生化学、尿検査、3方向の胸部エックス線、腹部超音波検査を含めた。身体の状況およびQOLのドローアップ評価は隔週で行い、RECIST
v1.0基準を用いた腫瘍反応評価は毎月行った。
完全あるいは部分反応は観察されなかったが、60%の犬は安定疾患を維持し、無増悪生存期間中央値は76日で、総生存期間は90日だった。特に60%の犬は、QOLの改善と疾患の安定で臨床的有益性を示した。治療はよく許容し、報告はグレードI/II毒性だけだった。
IMCの犬の癌に対する生物学的活性は限られているが、このプロトコールはQOLを高めると思われ、価値ある緩和的オプションを提供する。(Sato訳)
■オス犬の乳腺腫瘍の発生と精巣腫瘍発症との弱い相関:概要
Occurrence of mammary gland tumours in male dogs and its weak association with development of testicular tumours: a review
J Appl Genet. 2023 Dec 21.
doi: 10.1007/s13353-023-00818-z. Online ahead of print.
Angelika Tkaczyk-Wlizło , Krzysztof Kowal , Anna Śmiech , Brygida Ślaska
乳腺腫瘍(MGTs)は、メス犬に一般的に発生する腫瘍である。しかし、オス犬のMGTsの珍しい症例が数年間報告されている。メス犬と比較してオス犬のMGTsの発生率は低いため、獣医腫瘍学は主にメス犬で診断された乳腺腫瘍に焦点を当て、この科学的分野で広範囲な研究がおこなわれている。ゆえに、オス犬に対する十分な疫学的データはなく、それら腫瘍発症の病因はいまだ、あまり理解されていない。
この文献レビューの目的は、長年にわたりこの問題のスケールをより理解するため、オス犬のMGTsの症例を提示することだった。
92の腫瘍を持つ74頭の罹患したオス犬の解析で、オス犬の大部分のMGTsは良性腫瘍(特に腺腫の型)で(54.3%)、後方の乳腺で発生することが多い(58.1%)ことを示した。オス犬の犬MGTsの数の増加は、7-13歳で、ピークは11歳だと分かった。罹患した犬の年齢は犬種と関係なかった。乳腺腫瘍は雑種(20.2%)、コッカースパニエル(18.9%)、ジャーマンシェパード(10.8%)で多く診断された。
オス犬のMGT発症と精巣腫瘍(TTs)の同時発生との関連は、長年議論されている。このように、この研究に両腫瘍の発症症例は含まれていた。結果として、MGTsの12.7%の症例のみが、TTsの病歴も述べられているだけだった。ゆえに、それら腫瘍間の一般的な関連はないと考えるべきである。(Sato訳)
■乳癌の犬において局所および全身性抗腫瘍効果を誘発するササゲモザイクウイルスのネオアジュバント腫瘍内免疫療法
Neoadjuvant Intratumoral Immunotherapy with Cowpea Mosaic Virus Induces Local and Systemic Antitumor Efficacy in Canine Mammary Cancer Patients
Cells. 2023 Sep 8;12(18):2241.
doi: 10.3390/cells12182241.
Guillermo Valdivia , Daniel Alonso-Miguel , Maria Dolores Perez-Alenza , Anna Barbara Emilia Zimmermann , Evelien Schaafsma , Fred W Kolling 4th , Lucia Barreno , Angela Alonso-Diez , Veronique Beiss , Jessica Fernanda Affonso de Oliveira , María Suárez-Redondo , Steven Fiering , Nicole F Steinmetz , Johannes Vom Berg , Laura Peña , Hugo Arias-Pulido
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新規薬剤を評価する最適なモデルがないことは、ヒトの乳癌(BC)に対する効果的な免疫療法の開発が遅れている。
この前向きオープンラベル研究において、ヒトのBCに似ている自発腫瘍の犬の乳癌(CMC)と診断された11頭の愛玩犬に対し、空のササゲモザイクウイルス-様粒子(eCPMV)によるネオアジュバント腫瘍内免疫療法を応用した。
2回のネオアジュバント腫瘍内eCPMV注射は、全ての患犬の注射した腫瘍、注射した犬の同側および反対側の乳腺鎖にある注射していない腫瘍の縮小を起こしたことが分かった。腫瘍の縮小は、臨床ステージ、腫瘍のサイズ、病理組織学的グレード、腫瘍の分子的サブタイプと無関係だった。注射した腫瘍のRNA-seq-based解析で、DNA複製活性の減少と腫瘍微小環境における活性化樹状細胞浸潤の増加が示された。
免疫組織化学解析で、腫瘍内の好中球、TおよびBリンパ球、プラズマ細胞の有意な増加が証明された。
eCPMV腫瘍内免疫療法は、いずれの副作用も無く、抗腫瘍効果が証明された。
この新しい免疫療法は、ヒトのBC患者に対して結果改善の可能性を持つ。(Sato訳)
■偶然診断された乳腺腫瘍は非偶発的な乳腺腫瘍よりも悪性である確率は低い
Incidentally diagnosed mammary gland tumors are less likely to be malignant than nonincidental mammary gland tumors
J Am Vet Med Assoc. 2023 Jun 29;1-6.
doi: 10.2460/javma.23.03.0133. Online ahead of print.
Casey B Murphy , Michael G Hoelzler , Allison Rohde Newgent , Albert Botchway
目的:偶発的および非偶発的に診断された犬の乳腺腫瘍(MGT)の悪性率を比較する
動物:乳腺腫瘍を切除したメス犬96頭
方法:2018年から2021年の間で個人経営の紹介施設で、乳腺腫瘍を切除した全てのメス犬の医療記録を再調査した。各犬のシグナルメント、各腫瘍の病理組織結果、病院を受診した各犬の主な理由に関するデータを入手した。非偶発的MGTsで受診した犬と、異なる状況で受診し検査で偶然MGTsが見つかった犬との間で悪性腫瘍の比率を比較した。
結果:この研究で合計195個の腫瘍を96頭の犬から切除していた。偶発発見されたMGTsの犬において、88個中82個(93%)の腫瘍は良性で、6個(7%)は悪性だった。非偶発的MGTsの犬で、107個中75個(70%)の腫瘍は良性で、32個(30%)は悪性だった。偶発的MGTsに比べ、非偶発的MGTsは有意に悪性である確率が高かった(OR、5.83;95%CI、2.31-14.73;P=.001)。非偶発的MGTsの犬は、偶発的MGTsの犬に比べて、切除した悪性MGTがある確率が6.84倍高かった(OR、6.84;95%CI、2.47-18.94;P<.001)。悪性の確率は、体重において各1-kg増加するに当たり5%上昇した(OR、1.05;95%CI、1.01-1.09;P=.013)。より大きな腫瘍は、より小さな腫瘍よりも悪性である確率が高かった(P=.001)。
臨床的関連:MGTsと偶然診断された多くは良性で、切除後に良好な予後が得られる。小さな犬および直径3cm未満のMGTsの犬は、悪性である確率が低い。(Sato訳)
■崩壊した乳腺腫瘍からの出血のコントロールに対してマイクロ波アブレーションを行った犬2例
Microwave ablation for the control of bleeding from disintegrated mammary tumours in two dogs
Vet Med Sci. 2023 Feb 6.
doi: 10.1002/vms3.1089. Online ahead of print.
Yuta Kawamura , Hiroki Itou , Akitomo Kida , Hiroki Sunakawa , Kenji Kawamura
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16歳メスのミニチュアダックスフンド(犬1)と13歳メスのアメリカンコッカスパニエル(犬2)が、乳腺腫瘍の潰瘍からの出血を主訴に来院した。
犬1は地方病院からの転院で、コントロールできない持続出血による出血性ショック状態だった。胸部エックス線検査で肺転移を疑う複数の結節性陰影を認めた。
犬2は右第5主演のマス病変からの間欠的出血を呈していた。重度僧帽弁機能不全(ASAステータスIII)による高い麻酔リスクなため、飼い主は腫瘍の外科的切除を希望しなかった。ゆえに、適切な止血を達成するため、局所麻酔下のマイクロ波アブレーション(MWA)を選択した。
2頭は、出血しているマス病変の周りに局所麻酔を施し、崩壊している部分にマイクロ波アブレーションを行った;犬1は出血性ショックの改善のための輸血後にMMAを行った。アブレーション部分を保護するために非粘着性の包帯を使用した。2頭の潰瘍部分は瘢痕化し、完全な止血に導いた。
犬1は再出血予防のため、31病日に腫瘍切除を行った:病理検査結果は、カプセル構造により覆われたアブレーション部分を伴う乳腺癌に一致した。
著者の知るところでは、これは獣医療で乳腺腫瘍の出血を止めるため、MWAの使用を述べた最初の症例報告である。MWAは、犬の崩壊した乳腺腫瘍からの出血を局所麻酔下で止めるための実行可能で潜在的な効果的緩和治療様式である。(Sato訳)
■乳癌のメス犬に対するカルボプラチンと低用量シクロフォスファミド併用の薬物動態
Pharmacokinetics of Carboplatin in Combination with Low-Dose Cyclophosphamide in Female Dogs with Mammary Carcinoma
Animals (Basel). 2022 Nov 10;12(22):3109.
doi: 10.3390/ani12223109.
Marília Carneiro Machado , Priscila Akemi Yamamoto , Leandro Francisco Pippa , Natália Valadares de Moraes , Fabiane Maria Fernandes Neves , Ricardo Dias Portela , Stella Maria Barrouin-Melo , Anna Hielm-Björkman , Ana Leonor Pardo Campos Godoy , Alessandra Estrela-Lima
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この研究の目的は、乳癌の犬に対するカルボプラチンの許容性、効果、薬物動態に対するメトロノームシクロフォスファミドの影響を評価することだった。
乳癌の16頭のメス犬をグループ分けした:300mg/m2静脈投与(i.v.)カルボプラチン療法(G1=8)、あるいは300mg/m2 i.v.カルボプラチンとメトロノーム法で12.5mg/m2経口シクロフォスファミド(G2=8)。調査した動物は臨床評価、乳腺切除、カルボプラチン化学療法、薬物動態解析のための連続血液サンプリングを行った。有害事象と生存率をモニターした。2回目、および4回目の化学療法サイクルにおいてカルボプラチンの薬物動態パラメーターの算出に、非コンパートメント解析を応用した。
GIの血漿濃度-時間曲線下面積(AUC)において、カルボプラチンPKは10倍のバリエーションで高い個体間変動性を示した。カルボプラチンの全身性血症暴露は、AUCおよび最大血漿濃度(Cmax)値を考慮して処置間は同等だった。G1と比較した時、G2の赤血球(p≦0.0001)、血小板(p=0.0005)、総白血球数(p=0.0002)、分節好中球(p=0.0007)は減少したが、生存率は増加した(p=0.0044)。
結論として、乳腺腫瘍のメス犬においてカルボプラチンに、低1日量のシクロフォスファミドの追加は有望な結果を示した。(Sato訳)
■2017年から2021年の中国本土の犬の乳腺腫瘍の疫学的調査
Epidemiological Investigation of Canine Mammary Tumors in Mainland China Between 2017 and 2021
Front Vet Sci. 2022 Jun 22;9:843390.
doi: 10.3389/fvets.2022.843390. eCollection 2022.
Hui-Hua Zheng , Chong-Tao Du , Chao Yu , Yu-Zhu Zhang , Rong-Lei Huang , Xin-Yue Tang , Guang-Hong Xie
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疫学的研究で、疾患の挙動の解析、リスクファクターの定義、基本的予後基準の確率ができるようになった。
この研究の目的は、2017年から2021年の間に診断された犬の腫瘍の疫学的および臨床的特徴を判定することだった。
結果は、犬の乳腺腫瘍は最も一般的な腫瘍で、5年間のそれらの相対的発生率は46.71%(504/1079)で、良性は48.41%(244/504)、悪性は51.59%(260/504)だった。純血種は提出物の84.13%(424/504)を占め、メスの成犬(9-12歳)が最も多く罹患し、続いて5-8歳のメス犬だった。意外に2.58%(13/504)はオス犬に発生した。
また、高い発生率(77.38%、390/504)で乳腺腫瘍は不妊手術を受けていない犬で診断され、異なる発生率が異なる地域で観察された(中国北東、南東、北西、南西)。
臨床因子に対し、腫瘍のサイズは0.5-28cmの範囲で、0-5cmが最も一般的な腫瘍サイズ(47.82%、241/504)で、悪性腫瘍(4.33±2.88cm、平均±SD)は、良性腫瘍(3.06±1.67cm)よりも大きかった(p<0.001)。単一腫瘍の発生率(55.36%、279/504)は、複数腫瘍の発生率よりも高かったが、後者は悪性腫瘍の発生率が高かった(74.67%、168/225)。
この研究で、我々は犬の乳腺腫瘍は、乳腺の最後の対により一般的にできることも見つけた。また、多重線形回帰は3つの独立した変数(年齢、腫瘍のサイズ、腫瘍の数)と犬の乳腺腫瘍の組織学的特性との間に直線の有意な関係があることを示した[(p>|t|)
< 0.05]。
これは、疫学的臨床リスクと組織学的診断との関連を明らかにする、中国の大きなデータセットの最初の回顧的統計学的解析である。犬の腫瘍疾患の知識の改善、犬乳腺腫瘍の早期予防に役立つ。(Sato訳)
■犬の炎症性乳癌に対する新規治療としてササゲモザイクウイルスのネオアジュバントin situワクチン接種
Neoadjuvant in situ vaccination with cowpea mosaic virus as a novel therapy against canine inflammatory mammary cancer
J Immunother Cancer. 2022 Mar;10(3):e004044.
doi: 10.1136/jitc-2021-004044.
Daniel Alonso-Miguel , Guillermo Valdivia , Diego Guerrera , Maria Dolores Perez-Alenza , Stanislav Pantelyushin , Angela Alonso-Diez , Veronique Beiss , Steven Fiering , Nicole F Steinmetz , Maria Suarez-Redondo , Johannes Vom Berg , Laura Peña , Hugo Arias-Pulido
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背景:ヒトの炎症性乳癌(IBC)に対応する犬の炎症性乳癌(IMC)は、犬の乳癌の致死的な型である。IMCの犬は特定の治療がなく、予後は悪い。この原理証明前臨床試験は、IMCと診断された犬において、ネオアジュバント腫瘍内(in situ)emptyササゲモザイクウイルス(eCPMV)免疫療法の効果、安全性、生存性への影響を評価した。
方法:IMCの犬を研究に登録した。5頭は内科治療を行い、5頭は毎週ネオアジュバントin situ eCPMV免疫療法(0.2-0.4mg/注射)を投与し、2度目のeCPMV注射後内科治療を行った。効果は、腫瘍成長の縮小;安全性は血液および血漿の血液および生化学変化;犬の結果は生存解析で評価した。血液細胞のeCPMV誘発性の免疫変化は、フローサイトメトリーで分析した。腫瘍微環境内の変化はCD3(Tリンパ球)、CD20(Bリンパ球)、FoxP3(Tregリンパ球)、ミエロペルオキシダーゼ(MPO;好中球)、Ki-67(増殖指数、PI;腫瘍細胞増殖)、Cleaved
Caspase-3(CC-3;アポトーシス)免疫組織化学染色で評価した。
結果:2回のネオアジュバントin situ eCPMV注射は、全身性有害事象もなく14日目に全ての犬で腫瘍の縮小を起こした。IMCに対する外科手術は一般にオプションではないが、IMCの2頭の犬において腫瘍サイズの縮小で手術が可能となった。末梢血において、in
situ eCPMV免疫療法は、有意なTreg+/CD8+比の減少、lagging予測バイオマーカーとしてふるまうCD8+GranzymeB+T細胞の変化に関係した。TMEにおいて、より高い好中球浸潤、MPO発現、より低い腫瘍Ki-67
PI、CD3+リンパ球の増加、FoxP3+/CD3+比の減少(全ての比較に対しp<0.04)、CC-3免疫染色の変化なしが、治療前の腫瘍サンプルと比べた時に、治療後の腫瘍組織で観察された。eCPMVで治療したIMC犬は、内科治療で治療した犬よりも総生存期間を統計学的有意に改善した(P=0.033)。
結論:ネオアジュバントin situ eCPMV免疫療法は抗腫瘍効果を証明し、全身性の副作用もなくIMC犬において生存性を改善した。eCPMV誘発性変化は、免疫反応のドライバーとして好中球に向けられる。ネオアジュバントin situ eCPMV免疫療法は、犬のIMCに対する革新的な免疫療法と、ヒトIBC患者に対する潜在的な今後の免疫療法となる可能性があった。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍において卵巣摘出術は腫瘍発生のリスクを減らし、組織学的連続体に影響する
Ovariectomy reduces the risk of tumour development and influences the histologic continuum in canine mammary tumours
Vet Comp Oncol. 2021 Dec 15.
doi: 10.1111/vco.12793. Online ahead of print.
Julia Gedon , Axel Wehrend , Martin Kessler
犬の乳腺腫瘍形成に対する避妊手術の影響は、ここ数十年にわたり活発な議論の源となっている。
この研究の目的は、全体で1459の乳腺腫瘍(MTs)を切除した625頭のメス犬の大規模集団で不妊状態、腫瘍の大きさ、悪性度の程度の関係を述べることだった。
MTがある犬は未避妊が多く(80.3%)、コントロール群>19000頭のメス犬と比べ、腫瘍集団の犬で未避妊犬が平均以上だった(p<0.0001)。複数のMTは340頭で発生し(54.4%)、未避妊の犬で有意に多く見られた(57.8%vs.避妊済み40.7%)。避妊した犬は悪性MTである確率が有意に高くはないが(p<0.001)、より攻撃的な腫瘍サブタイプに有意によく罹患した(p<0.0001)。腫瘍の大きさ増大とだんだんと悪性の表現型になる正の相関が、未避妊(rs=0.179;p=0.0003)と比べ避妊済みの犬(rs=0.217;p=0.021)でわずかに強かった。
卵巣摘出後、良性から悪性への進行はより小さな腫瘍で起こり、直径が2cm以上になった時、未避妊の犬の62.0%に比べ、避妊済みの犬は86.9%で悪性だった(p=0.0002)。未避妊の犬はMTsと腫瘍の多様性に対するリスクが高かった。未避妊の犬のMTsに比べ、避妊済みの犬のMTsは悪性でより攻撃的なサブタイプに属している頻度が高かった。
避妊済みの犬において、良性から悪性への組織学的進行や、さらに癌の進行連続体に沿うことはより小さな腫瘍のサイズで発生する。(Sato訳)
■メス犬の乳腺腫瘍と関連する死亡率を含む繁殖障害の有病率
Prevalence of Reproductive Disorders including Mammary Tumors and Associated Mortality in Female Dogs
Vet Sci. 2021 Sep 4;8(9):184.
doi: 10.3390/vetsci8090184.
Claire Beaudu-Lange , Sylvain Larrat , Emmanuel Lange , Kevin Lecoq , Frédérique Nguyen
メス犬、特に未避妊あるいは遅くに避妊した犬は、乳腺腫瘍(MTs)を含む繁殖障害のリスクが増す。
この回顧的研究は、動物病院1施設に来院したメス犬の集団において、繁殖病理の有病率と関連した死亡率を評価した。
2000年から2003年に生まれたメス犬の医療記録を再調査した。研究には599症例を含め、そのうち293症例は死ぬまでフォローアップした。死亡原因は、避妊の状況に従って分析した。
599頭のメス犬の中で、306頭は未避妊(51%)、50頭(8%)は2歳までに避妊しており(ES、早期避妊)、243頭(41%)は2歳以降に避妊していた(LS、遅れて避妊)。その生涯で、79頭(13.2%)は子宮蓄膿症を発症し、160頭(26.7%)は乳腺腫瘍を発症した。
完全にフォローアップできた293頭のうち、103頭(35.1%)は、その生涯で1つ以上のMTが発生し、そのうち53頭(51.5%)は乳癌で死亡した。避妊した(ES+LS)メス犬は、未避妊と比べ乳癌で死亡するリスクが4倍低下していた(OR=0.23、95%CI、0.11-0.47、p<0.0001)。
この低不妊率集団において、MTsは生涯を通しメス犬の35.1%で発症し、その半数が死亡原因だった。(Sato訳)
■悪性乳腺腫瘍の犬におけるシクロフォスファミド化学療法の効果と毒性の評価:回顧的研究
Assessment of Efficacy and Toxicity of Cyclophosphamide Chemotherapy in Canines with Malignant Mammary Tumor: A Retrospective Study
Vet Med Int. 2021 Aug 12;2021:5520603.
doi: 10.1155/2021/5520603. eCollection 2021.
R V Suryawanshi
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外科切除と化学療法が犬の乳腺腫瘍(CMT)の治療に一般的に使用される治療様式だが、異なる治療様式が同様の効果と毒性を持つかどうかは不明である。
この臨床研究の目的は、治療前後に臨床、血液-生化学、エックス線、病理組織学的評価により、犬の悪性乳腺腫の外科的切除とシクロフォスファミド化学療法の効果と毒性を評価することだった。
獣医教育病院に報告された悪性乳腺腫の18頭の犬を、各群9頭の2群に振り分けた。I群(n=9)は悪性乳腺腫の外科的切除のみで治療し、II群(n=9)は、乳腺腫瘍の外科的切除と3週連続、1週間に1回の50-100mg/m2のシクロフォスファミド静脈投与で治療した。
II群において、7頭(78%)はシクロフォスファミド3回投与後に腫瘍の完全寛解と、生活の質と生存性の増加を示し、残りの2頭は、1年後に腫瘍の再発を示した。化学療法3回目の後、元気消失、中程度の脱毛、嘔吐、食欲不振、貧血、血尿のような一般的な副作用を示した犬もいた。
結論として、犬の悪性乳腺腫瘍の管理に対し、外科的切除とシクロフォスファミド化学療法の組み合わせは効果的なプロトコールで、毒性は最小であり、犬の生活の質と生存性を増加させる可能性がある。(Sato訳)
■メトロノームシクロフォスファミド、COX-2阻害薬、リン酸トセラニブで治療した犬の炎症性乳癌と診断された犬の臨床結果
Clinical outcome of dogs diagnosed with canine inflammatory mammary cancer treated with metronomic cyclophosphamide, a COX-2 inhibitor and toceranib phosphate
Vet Comp Oncol. 2021 Aug 14.
doi: 10.1111/vco.12760. Online ahead of print.
D Alonso-Miguel , G Valdivia , P García-San José , A Alonso-Diez , I Clares , M Portero , L Peña , M D Pérez-Alenza
犬の炎症性乳癌(IMC)は、高悪性度、侵襲性、効果的な治療がいまだないため、治療が困難である。
この回顧的研究は、二次的IMCと診断された犬において、経口COX-2阻害薬とリン酸トセラニブ、経口シクロフォスファミドの組み合わせ(多剤療法、MT)と、COX-2阻害剤単独療法(単剤療法、ST)の効果を比較する。
臨床反応、有害事象、総生存期間(OST)、無病生存期間(DFS)、進行までの時間(TTP)を評価した。
16頭の犬を含め、8頭はMT、8頭はSTで治療した。OST中央値は、MTで治療した犬(96.0vs37.5日;p=0.046)、手術をしなかった犬よりも術後の犬(41.5vs86.5日;p=0.038)で有意に長かった。また、TTP中央値は、MTで治療した犬で有意に長かった(P=0.010)。手術をしなかったIMCの犬において、臨床利益(CB)は、MTで治療した犬の100%(n=3)、STで治療した犬の33%(n=1)に達した;反応持続期間は、MT症例で有意に長かった(p=0.026)。治療の30日目、疾患の進行がないことは、より長いOST、DFS、TTPと有意に関係した(それぞれp=0.018、p=0.002、p<0.001)。有害事象は、STと比べてMTで治療した犬に多く発生した(p=0.026)。MTプロトコールは、軽度から中程度の毒性を引き起こし、支持療法で解消したので、その薬剤の組み合わせは、ほとんどの犬で適度に許容した。
トセラニブ、COX-2阻害薬、経口シクロフォスファミドの組み合わせはIMCの犬に対し、潜在的治療効果のあるプロトコールかもしれない。(Sato訳)
■乳腺切除と同時に避妊手術を行ったメス犬に対する回顧的研究と生存分析
A retrospective study and survival analysis on bitches with mammary tumors spayed at the same time of mastectomy
Vet Comp Oncol. 2021 Aug 5.
doi: 10.1111/vco.12759. Online ahead of print.
Penelope Banchi , Emanuela Maria Morello , Alessia Bertero , Alessandro Ricci , Ada Rota
この研究の目的は、乳腺腫瘍のあるメス犬で、乳腺切除と同時に避妊手術を行った時、無病生存期間(DFS)が上昇するかどうか回顧的に評価することと、性腺摘出を含む手術プランを計画する時、臨床データの有用性を調査することだった。
489の腫瘍がある225頭のメス犬の特徴を回収した。手術を行ったメス犬116頭のうち、52頭は乳腺切除と卵巣切除を実施し、46頭は乳腺切除のみ、18頭はすでに避妊済みだった。カプラン-マイヤーによる分析と、スチューデントT検定、カイ二乗、one-way ANOVAテストをグループ間の比較で実施した。
卵巣切除と乳腺切除を行ったメス犬のDFSは、避妊しなかった犬(P=0.0064)あるいはすでに避妊済みの犬(P=0.0098)よりも長かった。避妊する状況は腫瘍の大きさ(避妊実施:2.75cm±2.72;避妊しなかった:1.76cm±2.04;P=0.039)に影響を受けたが、悪性腫瘍に影響を受けなかった(P>0.05)。良性と悪性腫瘍の間(9.1歳±2.8と10±2.3;P=0.004)、複数と単一腫瘍(10.18歳±2.6と9.3±2.8;P=0.007)、純血犬と雑種犬(10.46歳±1.78と9.27±2.68;P=0.005)の間に年齢の差は検出されなかった。
悪性腫瘍は良性腫瘍よりも大きく(2.17年±2.31と1.34年±1.82;P=0.005)、悪性度に従い大きさも増大した。2cmよりも大きい腫瘍がある犬(P<0.006)や、胸部乳腺の最初のペアに腫瘍がある犬(P=0.00009)のDFSはより短かった。
乳腺腫瘍があり、避妊していないメス犬のオーナーには性腺摘出を提案するべきで、年齢、腫瘍の大きさ、その位置は手術を行うときに注意深く考慮するべきである。(Sato訳)
■乳癌の猫の外科手術単独vsメトロノームシクロフォスファミドとメロキシカムvsドキソルビシン:137症例の回顧的研究
Adjuvant doxorubicin vs metronomic cyclophosphamide and meloxicam vs surgery alone for cats with mammary carcinomas: A retrospective study of 137 cases
Vet Comp Oncol. 2020 Nov 3;e12660.
doi: 10.1111/vco.12660. Online ahead of print.
Gonçalo N Petrucci , Joaquim Henriques , Luís Lobo , Hugo Vilhena , Ana C Figueira , Ana Canadas-Sousa , Patrícia Dias-Pereira , Justina Prada , Isabel Pires , Felisbina L Queiroga
この研究で猫の乳癌において、補助的治療として低用量シクロフォスファミド化学療法+メロキシカムの効果と副作用を評価し、高用量ドキソルビシンあるいは外科手術単独と比較した。
8か所の獣医施設で2008年から2018年の間に乳癌の治療を行った228頭のメス猫の医療記録を再調査した。完全な腫瘍ステージングがあり、根治的乳腺切除が行われた猫のみを研究に含めた。
137頭の猫を3つの処置群に振り分けた:手術で治療した1群(n=80)、手術とドキソルビシンの補助治療を行った2群(n=34)、手術と低用量メトロノームシクロフォスファミドとメロキシカムの補助治療を行った3群(n=23)。研究のエンドポイントは無病期間(DFI)と総生存期間(OS)だった。毒性の評価はVCOG-CTCAE基準に従い評価した。
DFI中央値は1群が270日、2群が226日、3群が372日だった。
OS中央値は、1群が338日、2群が421日、3群が430日だった。
群間に有意差はなかった(DFI:P=0.280、OS:P=0.186)。毒性は2群の52.9%(n=18)、3群の39.1%(n=9)の猫に観察され、軽度から中程度の強度だった。有意差はなかった(P=0.306)。
結論として補助的化学療法は生存期間を改善せず、全体の有益性は依然証明されていない。猫の乳癌に対する補助的化学療法の有効性を明らかにするため、無作為化前向き試験が必要である。(Sato訳)
■両側乳腺切除で治療した乳癌の猫における術中デスモプレッシンの効果
Effect of Perioperative Desmopressin in Cats With Mammary Carcinoma Treated With Bilateral Mastectomy
Vet Comp Oncol. 2020 Jul 3.
doi: 10.1111/vco.12636. Online ahead of print.
Christopher J Wood , Margaret L Chu , Laura E Selmic , Philipp D Mayhew , David E Holt , Marina Martano , Bernard Séguin , Ameet Singh , Sarah E Boston , Cassie Lux , Julius M Liptak
犬のグレードIIおよびIIIの乳癌の犬において、術中のデスモプレッシンの投与は局所再発および転移率の有意な低下および生存期間の延長を示している。
この研究の目的は、両側乳腺切除で治療した乳癌の猫において、術中デスモプレッシンの投与を行った場合と行わなかった場合の腫瘍学的結果を比較することだった。
9か所の施設の医療記録を検索し、乳癌と診断され、両側乳腺切除で治療した猫を確認した。1回あるいは段階的両側乳腺切除で治療した60頭の猫を含めた。
デスモプレッシンで治療した猫と治療しなかった猫の腫瘍学的結果に有意差はなかった。術中デスモプレッシンで治療した全ての猫に副作用は見られなかった。1回で両側切除した猫の18頭(38.3%)と段階的両側切除で治療した猫の3頭(23.1%)に術後合併症が見られた(p=0.48)。組織学的グレードと提唱5ステージ組織学的ステージング修正システムは、両方とも無病期間を予想した。組織学的に不完全切除は、転移率上昇、腫瘍の進行、生存期間中央値(MST)の短縮に有意に関係した。局所再発した猫のMSTが有意に短かった。
この研究の結果は、猫の乳癌の治療で両側乳腺切除を行った時、術中デスモプレッシンの使用は結果を改善するということを支持しない。(Sato訳)
■単発あるいは多発性のマスがある犬の乳腺部のマスの悪性腫瘍の有病率
Prevalence of malignancy in masses from the mammary gland region of dogs with single or multiple masses.
J Am Vet Med Assoc. 2019 Oct 1;255(7):817-820. doi: 10.2460/javma.255.7.817.
Litterine-Kaufman J, Casale SA, Mouser PJ.
目的:単発あるいは多発性のマスがある犬の乳腺部からのマスの悪性腫瘍の有病率を判定する
動物:乳腺マスを切除した95頭のメス犬
方法:2009年から2014年の間にAngell動物メディカルセンター病理部に提出された乳腺組織の全てのメス犬の医療記録を再調査した。各犬に対し、犬種、体重、年齢、不妊状況、マスの数、部位、組織的分類に関するデータを入手した。悪性腫瘍の有病率は、単発と多発のマスおよび乳腺5対の中で比較した。また、単発と多発のマスの犬は、年齢と不妊状況で比較した。
結果:評価した161のマスの中で、137(85%)は良性あるいは非腫瘍性と分類され、24(15%)は悪性と分類された。95頭中5頭(5%)は乳腺由来のマスではなかった。年齢、不妊状況、マスの数(単発vs多発)は、悪性腫瘍の有病率と有意な関連がなかった。第4乳腺(腹部尾側)のマスの悪性腫瘍の有病率は、他4つの乳腺の組み合わせよりも有意に低かった。
結論と臨床関連:乳腺に複数のマスがある犬は、単一マスの犬より悪性腫瘍の確率が有意に高いということはなく、それら2群は同様に管理できると示唆された。第4乳腺のマスの悪性腫瘍の有病率がより低いことの臨床的関連を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■猫乳癌107頭における外科アプローチと無腫瘍期間、生存期間の関連性
Association of surgical approach with complication rate, progression-free survival time, and disease-specific survival time in cats with mammary adenocarcinoma: 107 cases (1991?2014)
J Am Vet Med Assoc. 2018 Jun 1;252(11):1393-1402. doi: 10.2460/javma.252.11.1393.
Gemignani F, Mayhew PD, Giuffrida MA, Palaigos J, Runge JJ, Holt DE, Robertson NA, Seguin B, Walker M, Singh A, Liptak JM, Romanelli G, Martano M, Boston SE, Lux C, Busetto R, Culp WTN, Skorupski KA, Burton JH.
目的:猫乳癌における外科アプローチと合併症率、無腫瘍生存期間、生存期間の関連を調査すること。
デザイン:回顧的調査
動物:107頭の猫
方法:猫乳癌切除(片側、両側[分割もしくは一括])を行ったものの記録を1991年?2014年に行った9施設で調査した。関連する臨床病理学的データ、外科詳細、補助療法を調査した。結果としては、合併症、無腫瘍生存期間、生存期間を求めた。
結果:合併症は片側切除61頭中12頭(19.7%)、段階的両側切除14頭中5頭(35.7%)、一括両側切除32頭中13頭(40.6%)で認められた。両側群は片側群よりも高率に発生した。無腫瘍期間は片側(289日)より両側(542日)で有意に生存期間の延長が認められた。腫瘍増大に影響ある因子としては、片側切除、潰瘍、リンパ節転移、第4乳腺からの発生があった。腫瘍による死因に関連があった因子としては、リンパ節転移と局所および遠隔転移があった。転移がない場合には片側切除が生存期間に影響を及ぼした。化学療法は生存期間によい影響をもたらした。
結論と臨床意義:猫乳癌の両側切除は無腫瘍期間の延長と生存期間の延長をもたらした。段階的乳腺切除は合併症率を減らす可能性があるかもしれない。(Dr.Taku訳)
■乳腺腫瘍のメス犬における血清ネオプテリンとC-反応性蛋白の変化
Changes in serum neopterin and C-reactive protein concentrations in female dogs with mammary gland tumours.
Pol J Vet Sci. 2018 Dec;21(4):691-696. doi: 10.24425/124307.
Szczubia? M, Dabrowski R, ?opuszy?ski W, Bochniarz M, Krawczyk M.
この研究の目的は、乳腺腫瘍のメス犬における血清ネオプテリンとC-反応性蛋白(CRP)濃度を測定し、それらの指標の値と、その腫瘍のいくつかの臨床的特性との関連を評価する。
53頭のメス犬を研究し、それには乳腺腫瘍の43頭の犬(良性10頭、悪性33頭)と健康なコントロール犬10頭が含まれた。ネオプテリンとCRP濃度は、ELISA法と市販のELISAキットで判定した。
乳腺腫瘍の犬の平均血清ネオプテリン濃度は、健康犬よりも低かったが、有意差は見られなかった。同じく、腫瘍の大きさ、腫瘍の潰瘍化、転移を基にメス犬に、ネオプテリン濃度の有意差は見られなかった。
悪性腫瘍の犬の平均CRP濃度は、良性腫瘍やコントロール犬よりも有意に高かった(P<0.05)。さらに、転移性悪性腫瘍の犬の血清CRP濃度は、非転移性乳腺腫瘍の犬よりも有意に高かった(P<0.05)。3cmより小さい腫瘍の犬のCRP濃度は、それ以上の腫瘍の犬よりも有意に低く(P<0.05)、潰瘍がある腫瘍の犬は、潰瘍がない犬よりも有意に高かった。
以上の所見は、犬の乳腺における腫瘍形成過程で血清ネオプテリン濃度に有意な変化を起こさないと示唆される。悪性腫瘍の進行したステージの犬において、血清CRP濃度がより高くなることは、犬の悪性乳腺腫瘍の潜在的予後マーカーの可能性が示唆されるかもしれないが、この仮説は追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬乳腺腫瘍のビタミンD受容体表現と臨床病理、プロゲステロン/エストロゲン受容体の関連
Vitamin D receptor expression in canine mammary gland and relationship with clinicopathological parameters and progesterone/oestrogen receptors
Sanchez-Cespedes R, Fernandez-Martinez MD, Raya A, Pineda C, Lopez I, Millan
Y.
Vet Comp Oncol. 2018;16:E185?E193.
ビタミンD受容体は核クラス2受容体ファミリーに属する。ビタミンD受容体はリガンド転写因子でビタミンD合成の活性産物であるカルシトリオールの作用を媒介する。今日、カルシトリオールの作用として増殖・分化・アポトーシス・血管新生・浸潤・転移のような腫瘍の特徴を調整する能力が知られている。ビタミンD受容体の発現はヒト乳癌で実証されておりビタミンDは治療対象として有望である。正常乳腺と腫瘍におけるビタミンD受容体の発現と臨床病理学パラメータ、プロゲステロン/エストロゲン受容体(PR/ER)について検討を行った。ビタミンD受容体、Ki67、PR、ERの表現を41頭の乳腺腫瘍50検体の免疫染色で評価した。筋上皮細胞と内腔上皮細胞層でビタミンD受容体染色陽性であった。
良性腫瘍(6/15, 40%)、悪性腫瘍(9/34, 26.5%)より正常組織(37/37, 100%)でビタミンD受容体の表現が高かった(P=0.001)。ビタミンD受容体は10歳よりも若い方が多かった(P=0.017)。ビタミンD受容体と品種、腫瘍数、大きさ、組織分類、悪性度、Ki67、PR、ERとの関連は認められなかった。ビタミンD受容体と生物学的挙動の関連性評価についてはさらなるサンプルが必要であり、ヒト乳癌のモデルとして犬は有用な可能性がある。(Dr.Maru訳)
■犬の乳腺腫瘍におけるチロシンキナーゼ発現分析:予備研究
Tyrosine kinase expression analyses in canine mammary gland tumours - A pilot study.
Acta Vet Hung. 2018 Jun;66(2):294-308. doi: 10.1556/004.2018.027.
Koltai Z, Szabo B, Jakus J, Vajdovich P.
腫瘍形成チロシンキナーゼのメッセンジャーRNAレベルを、犬の乳腺腫瘍でreal-time RT-PCRを用いて測定した。続いて、チロシンキナーゼと血管内皮成長因子(VEGF)を13頭の犬の悪性および健康な乳腺組織で検査した:VEGFR1、VEGFR2、EGFR、ErbB2、PDGFR1、c-kitおよびc-MET。
それらすべての因子の発現レベルは、同じ犬から採取した正常な乳腺組織よりも腫瘍組織で有意に高かった。より高い悪性度判定は、より高いVEGFR1レベルと関係した。グレードIIIの腫瘍は、有意に高いVEGF、c-METおよびc-KIT mRNA発現を示したが、低悪性度のグレードIの腫瘍はグレードIIやIIIに分類された腫瘍よりも有意に高いPDGFR1とEGFR発現を示した。
VEGF、VEGFR1、c-KIT、c-METの存在増加は、腫瘍悪性度増加に寄与するそれらシグナル伝達分子として負の予後因子である。
このデータは、犬の乳腺腫瘍でVEGFとVEGR1、PDGFR1、c-KITおよびc-METのような、いくつかの腫瘍形成チロシンキナーゼの複合過剰発現および調節不全の存在に対する最初のエビデンスを提供する。
ゆえに犬の乳腺腫瘍は、チロシンキナーゼ抑制療法に対する潜在的なターゲットとなるかもしれない。(Sato訳)
■術後に化学療法を行った犬と行わなかった犬における乳癌の外科的治療
Surgical treatment of mammary carcinomas in dogs with or without postoperative chemotherapy.
Vet Comp Oncol. 2016 Sep;14(3):252-62. doi: 10.1111/vco.12092. Epub 2014 Apr 16.
Tran CM, Moore AS, Frimberger AE.
この回顧的研究で生存性に関する予後因子を確認した;手術(n=58)、あるいは手術と補助化学療法(n=36)で治療した乳癌(MCA)の犬94頭、予後不良因子を持つ犬の部分集団の生存データを比較した。
多変量解析において、生存期間中央値(MST)の独立した予測値は臨床ステージ、リンパ節侵入(LI:有179日;無1098日)、潰瘍(有118日;無443日)およびサージカルマージン(不完全70日;完全872日)だった。完全なサージカルマージンはステージ1-3の乳癌の犬(不完全68日;完全1098日)とリンパ節侵入の犬(不完全70日;完全347日)のMSTに関係した。補助化学療法で治療した進行性疾患の犬(ステージ4あるいはリンパ節侵入)で、MSTの統計学的有意な改善は見られなかった(化学療法有228日;無194日);しかし、ミトキサントロンとカルボプラチンの投与を受けた完全なサージカルマージンの犬5頭の平均生存期間は1139日だった。(Sato訳)
■早期ステージの乳腺腫瘍の犬のQOLと疼痛
Quality of life and pain in dogs with early-stage mammary tumours.
Acta Vet Hung. December 2015;63(4):451-7.
Larissa Faustino; Maria Lallo
癌による二次的な疼痛のある犬のクオリティオブライフ(QOL)を評価するスケールを用い、乳腺腫瘍(MTs)のメス犬のQOLを評価した。
2群を作成した:1群は腫瘍学的にステージIに分類される乳腺腫瘍のある80頭のメス犬(平均年齢±SD=9.9±3.8歳)、2群は乳腺腫瘍のない健康なメス犬80頭(平均年齢:7.7±1.8歳)。結果は標準化された国際的に容認されている疼痛スケールのアンケートに対する回答を基にした。
この前向きおよび記述研究により、1群の犬の63%が乳腺腫瘍の存在によりQOLに変化があったと示された。QOLを損なうリスクは、乳腺腫瘍のないメス犬に比べると1群の犬で2.1倍高かった。乳腺腫瘍は疼痛を8.3倍、排便困難を10倍増加させた。
犬の小さな乳腺腫瘍でさえQOLに干渉するような疼痛を引き起こす可能性があると結論付けることができる。(Sato訳)
■乳腺癌の犬における腫瘍摘出の際の卵巣子宮摘出術の影響:無作為比較試験
Effect of Ovariohysterectomy at the Time of Tumor Removal in Dogs with Mammary Carcinomas: A Randomized Controlled Trial.
J Vet Intern Med. 2015 Dec 21. doi: 10.1111/jvim.13812. [Epub ahead of print]
Kristiansen VM, Pena L, Diez Cordova L, Illera JC, Skjerve E, Breen AM, Cofone MA, Langeland M, Teige J, Goldschmidt M, Sorenmo KU.
背景 卵巣ホルモンは、乳腺の癌化に重要な役割を果たしている。しかし、卵巣子宮摘出術 (OHE)によって卵巣除去することで、乳腺癌の犬の予後が改善するかどうかについては明らかではない。
目的 腫瘍摘出の際のOHEが乳腺癌の犬の予後を改善するかどうかについて明らかにすること、およびホルモン因子がOHEの影響を変化させるようなことがあるかどうかについて評価すること
動物 乳腺癌の60頭の未避妊雌
方法 腫瘍を摘出する際に、OHEを実施する(31頭)またはしない(29頭)に1:1の割合で無作為に割り付けた。手術前の血清エストラジオール
(E2)およびプロジェステロン濃度を測定し、腫瘍の診断を病理組織学的に確定し、腫瘍のエストロジェン受容体(ER)およびプロジェステロン受容体の状態を免疫組織化学染色した。少なくとも2年間は、3-4ヶ月おきに再発と転移についてモニターした。単変量サブグループ解析に加えて、再発と全死因死亡をエンドポイントとして単変量および多変量の生存解析を実施した。
結果 全体として、単変量解析では、OHEは再発や全死因死亡の危険率を有意に低下させることはなかった(それぞれハザード比
0.64, P=0.18および 0.87, P=0.64)。多変量解析では、OHEは再発の危険率に有意な影響を与えなかったが(ハザード比
0.54, P=0.12)、ERの状態とE2の間に相互作用効果が確認された(P=0.037)。サブグループ解析では、E2が増加した犬またはグレード2の腫瘍の犬の群において(それぞれハザード比
0.22, P=0.012および 0.26, P=0.02)、OHEを実施しない群と比較して、OHEを実施した群において再発の危険率が低下することがわかった。
結論 グレード2、ER陽性の腫瘍、または手術前の血清E2濃度が増加した犬は、OHEによって利益をうける乳腺癌の犬のサブセットであるようである。(Dr.Taku訳)
■犬の領域および根治的乳腺切除に関連する外科的ストレスと術後合併症
Surgical stress and postoperative complications related to regional and radical mastectomy in dogs.
Acta Vet Scand. 2015 Jun 24;57(1):34. doi: 10.1186/s13028-015-0121-3.
Horta RS, Figueiredo MS, Lavalle GE, Costa MP, Cunha RM, Araujo RB.
背景:メス犬の乳腺腫瘍の局所コントロールで外科手術は一般的な治療である。乳腺の解剖学、リンパ支配、わかっている予後因子が重視されれば、様々な術式が使用されると思われる。
この研究の目的は、領域および根治的片側乳腺切除を行った犬で、手術時間、侵害受容、血液学的変化などの手術ストレスと術後合併症を比較することだった。
18頭の犬が各術式を選択した。術後疼痛(侵害受容)、血液学的変化、術後合併症を2群間で比較した。
結果:根治的乳腺切除で治療した群は、手術時間がより長く、より強い生理学的変化を示し、侵害受容スケールのスコアがより高く、術後合併症をより多く経験した。
結論:犬において領域乳腺切除と比べ、根治的乳腺切除は長い手術時間、大きい侵害受容刺激、大きな手術ストレス、術後合併症の発生が多いことと関係した。長期結果の評価がこの研究の目的ではないが、犬の乳腺腫瘍の治療に対し、外科的アプローチを選択するとき術後の回復やQOLを考慮すべきだと示唆される。(Sato訳)
■術後の化学療法を行った、あるいは行わなかった犬の乳癌の外科治療
Surgical treatment of mammary carcinomas in dogs with or without postoperative chemotherapy.
Vet Comp Oncol. 2014 Apr 16. doi: 10.1111/vco.12092.
Tran CM, Moore AS, Frimberger AE.
この回顧的研究は、外科手術(n=58)、あるいは手術と補助化学療法(n=36)で治療した乳癌の犬94頭と、予後不良因子を持つ犬の集団において、生存に関する予後因子の確認と生存データの比較を行った。
多変量分析を基に、生存中央期間(MST)の独立した指標は、臨床ステージ、リンパ浸潤(LI;有179日;無1098日)、潰瘍(有118日;無443日)、外科的マージン(不完全70日;完全872日)だった。完全な外科的マージンはステージ1-3の乳癌(不完全68日;完全1098日)およびLI(不完全70日;完全347日)の犬のMSTに関係した。補助的化学療法で治療した進行疾患(ステージ4あるいはLI)の犬のMSTに統計学的有意な改善はなかった(化学療法228日、無194日)が、ミトキサントロンとカルボプラチンを投与された完全な外科的マージンの5頭の犬の平均生存期間は1139日だった。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍における組織因子の発現と悪性度、ステージ、止血および炎症マーカーとの相関
Expression of tissue factor in canine mammary tumours and correlation with grade, stage and markers of haemostasis and inflammation.
Vet Comp Oncol. 2014 Mar 28. doi: 10.1111/vco.12089.
Andreasen EB, Nielsen OL, Tranholm M, Knudsen T, Kristensen AT.
ヒトの癌における組織因子(TF)発現は、プロコアグラント状態や転移の促進に関係している。
この研究は犬の乳腺腫瘍にTFが発現するかどうかを評価した。28頭の犬の40の上皮性乳腺腫瘍を調べた。組み替え犬TFに対するポリクローナル抗体を用いた免疫組織化学により腫瘍のTF発現を評価した。また、その犬のトロンボエラストグラフィー、止血および炎症パラメーターも評価した。
TFは良性腫瘍の44%、悪性腫瘍の58%に認めた。腫瘍性管腔上皮細胞の細胞質膜および/あるいは細胞質内に散在性に局在した。TF発現と腫瘍のステージあるいは悪性度に関連は見られなかった。TF発現とアンチトロンビンおよびプラスミノーゲンに有意な関連があり、大規模なTF発現は播種性血管内凝固(DIC)を随伴する1頭の犬の未分化乳癌と分類されたリンパ節転移に見られた。(Sato訳)
■猫の乳腺腫瘍:大きさが重要なので早期介入は命を救う
Mammary Tumours in the Cat: Size matters, so early intervention saves lives.
J Feline Med Surg. May 2013;15(5):391-400.
Joanna Morris
実際の関連:乳腺腫瘍は犬と猫で一般的な腫瘍だが、猫で組織学的に悪性の有病率はかなり高い(悪性と良性の比率は少なくとも4:1)。
臨床的チャレンジ:猫の乳腺腫瘍で管理が困難なのは、そのより攻撃的な特性による。予後は腫瘍の大きさに影響されるため、乳腺腫瘍の早期認識と治療が重要である。原発腫瘍は外科的に切除可能だが、化学療法が有意に生存期間を延ばしたと示す研究はない;ゆえに転移巣が残されたままというのは重要な臨床的問題である。
患者群:乳腺腫瘍は通常老齢メス猫に見られ、主に避妊手術をしていない。シャムネコと東洋種に素因があるかもしれない。オス猫の乳腺腫瘍が発生する可能性もあるが、まれである。
エビデンスベース:このレビューは、猫の乳腺腫瘍の原因、病理、症状、診断、ステージング、治療、予後をまとめる。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍において血管内皮成長因子発現に関連する腫瘍関連マクロファージ
Tumour-associated macrophages are associated with vascular endothelial growth factor expression in canine mammary tumours.
Vet Comp Oncol. 2013 Oct 4. doi: 10.1111/vco.12067.
Raposo TP, Pires I, Carvalho MI, Prada J, Argyle DJ, Queiroga FL.
腫瘍関連マクロファージ(TAMs)は、血管新生の重要な役割を含む発癌と関係している。
この研究で、犬の乳腺腫瘍(CMT)におけるTAMsと血管新生の関係を述べる。
ホルマリン固定パラフィン包埋CMTサンプル(n=128:悪性97頭、良性31頭)で、MAC387、血管内皮成長因子VEGFとCD31発現を検出するため免疫組織化学染色を行った。臨床病理変数と腫瘍血管新生のマーカーの潜在的関連を評価するため統計学的解析を行った。MAC387発現により検出されたTAMsは悪性乳腺腫瘍(P<0.001)とVEGF陽性腫瘍(P=0.002)に有意に関係し、また悪性乳腺腫瘍内のVEGF発現にも関係した(P=0.043)。臨床病理学的変数との関連は、TAMsと浸潤性成長があること(P=0.031)、低管腔形成(P=0.040)、リンパ節転移(P=0.016)に見つかった。
この結果はTAMsが犬の乳腺腫瘍の血管新生に影響し、TAMsがこの疾患の治療ターゲットであるかもしれないという仮説を支持する。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍における腫瘍関連マクロファージの予測値
Prognostic value of tumour-associated macrophages in canine mammary tumours.
Vet Comp Oncol. 2012 Apr 26. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00326.x.
Raposo T, Gregorio H, Pires I, Prada J, Queiroga FL.
腫瘍関連マクロファージ(TAMs)はヒトの乳癌の予後不良と関係していることが分かっている。腫瘍の微環境の一部として、TAMsは腫瘍の進行に影響する重要な貢献物である。今までのところ、犬の乳腺腫瘍(CMT)におけるTAMsの予後値は報告されていない。
この研究で、59の犬の乳腺腫瘍(20良性、39悪性)においてMAC387免疫組織化学的発現を評価した。
TAM値は良性の乳腺腫瘍と比べ、悪性で有意に高かった(P=0.011)。悪性腫瘍で、TAMsは皮膚の潰瘍(P=0.022)、組織学的タイプ(P=0.044)、核グレード(P=0.031)、脈管分化(P=0.042)に関係した。生存解析において、より高いレベルのTAMsを持つ腫瘍と総生存性の低下に有意な関連を認めた(P=0.030)。TAMsは予後値を持つと証明されている。それらの所見は犬の乳腺腫瘍における新しい治療ターゲットとしてTAMsの使用の可能性を示唆する。(Sato訳)
■18頭のオス犬における27の乳腺腫瘍の組織学的、免疫組織化学的および臨床特性
Histologic, immunohistochemical, and clinical features of 27 mammary tumors
in 18 male dogs.
Vet Pathol. July 2012;49(4):602-7.
J J Bearss; F Y Schulman; D Carter
18頭のオス犬(内15頭は去勢済み)の27の乳腺腫瘍を収集した。診断時の平均年齢は9.2歳(範囲、2-14歳)だった。その犬のうち7頭はコッカースパニエルだった。5頭の犬には複数の乳腺腫瘍があった。全ての腫瘍は良性だった。26は腺房と乳頭の混合パターンを持つ単純な腺腫だった。17症例で腺房パターンが優勢だった。1つの腺腫は多数の筋上皮成分を複合していた。25の腫瘍のうち25の筋上皮成分は、カルポニンおよびp63に対して免疫組織化学的に陽性だった。
関連した臨床的情報が得られた症例のうち、肥満、精巣腫瘍、性ホルモン療法の病歴の報告はなかった。それらの腫瘍で外科切除が唯一報告された治療だった。1頭の犬のみ追加で乳腺腫瘍が発生したと報告された。乳腺腫瘍がもとで死亡した、あるいは安楽死された犬はいなかった。
珍しいが、乳腺腫瘍はオスに発生する。乳腺腫瘍はほとんどが細胞性だが、カルポニンおよびp63に対し免疫組織化学検査で示される完全な筋上皮の存在は、臨床的行動ドキュメントとして良性である。(Sato訳)
■良性及び悪性犬乳腺腫瘍の鑑別に対する通常およびドップラー超音波検査
Conventional and Doppler ultrasound for the differentiation of benign and
malignant canine mammary tumours.
J Small Anim Pract. June 2012;53(6):332-7.
M A R Feliciano; W R R Vicente; M A M Silva
目的:この研究の目的は、メス犬における良性および悪性乳腺腫瘍の鑑別で、通常およびドップラー超音波検査の感受性を評価することだった。
方法:60頭の犬の乳腺腫瘍を評価し、1群(良性腫瘍)と2群(悪性腫瘍)に振り分けた。腫瘍は通常の超音波検査、ドップラーモード、血管内皮細胞増殖因子検出のため免疫組織化学および病理粗組織により審査した。
結果:通常超音波検査により、2つの実験群に腫瘍を分けるのは無効だった。同様に、カラーフロードップラー超音波検査により、2群間で血管新生の存在およびその特性に相関はなかった。Triplexドップラー超音波により平均最大速度28.71cm/s(悪性)および19.91cm/s(良性)を得られ、有意差があった(P=0.01)。血管内皮細胞増殖因子に対して、2群の平均スコアは2.22、1群は1.66だった(P=0.03)。血管内皮細胞増殖因子と血管新生の存在(P=0.04、r=0.3658)、および血管内皮細胞増殖因子と最大速度(P=0.04、r=0.3913)の間に正の層間を認めた。
臨床的意義:ドップラー評価はメス犬の乳腺腫瘍の悪性度を予測する手助けとなるだろう。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍における予後マーカーとしてのIL-8
Interleukin-8 as a prognostic serum marker in canine mammary gland neoplasias.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Feb 17. [Epub ahead of print]
Gelaleti GB, Jardim BV, Leonel C, Moschetta MG, Zuccari DA.
雌犬の乳腺腫瘍は、乳腺腫瘍の臨床的、病理学的、診断的、予後的な研究における優れたモデルである。予後および予測マーカーは、研究においても日々の診断においても有用である。インターロイキンは、癌において基本的な役割があり、腫瘍の増殖、浸潤、転移でとくに機能を持っている。インターロイキン-8 (IL-8)は、腫瘍発生および血管新生促進作用を持っている事が知られており、多くの人の腫瘍においてその過剰発現が認められる。
雌犬において、IL-8の血清レベルを測定し、臨床的病理学的な特徴と乳腺腫瘍の臨床的な進行と関連するかを検討した。
乳腺腫瘍があり、12ヶ月の追跡ができた30頭の雌犬とコントロールの50頭においてIL-8を免疫酵素学的に測定した。IL-8濃度と臨床的なパラメーターの相関を検討した。
コントロールと比較して、腫瘍をもった犬において、IL-8濃度の統計学的な有意差が認められた。さらに、個々のパラメーターを評価すると、IL-8の量は、腫瘍の進行、リンパ節転移、再発および死亡と正の相関があった。単変量および多変量解析によって、腫瘍の再発、転移、臨床ステージの進行、IL-8高値、死亡のリスクの関連が認められた。これは、腫瘍再発と転移を示す犬におけるIL-8量が高いこととも一致していた。
IL-8の過剰発現は、多くの人の腫瘍において検出されており、通常予後が悪い事と関連している。血管新生を促進することに加え、IL-8は乳腺腫瘍細胞の転移の表現型と強く関連している。進行したステージの乳腺癌患者において、高いIL-8濃度が検出される。
我々の結果は、乳腺腫瘍の犬において、IL-8が、乳腺癌に対する非浸潤性の予後のマーカーとして使用できること、疾患の進行と再発を予測するのに使用できることを示している。このサイトカインが上昇していることは、独立した生存予後マーカーとして、そして予後が悪い動物を同定するのに使用できる。(Dr.Taku訳)
■局所的に進行した犬乳癌で補助的周術デスモプレッシンの効果とその組織学的グレードとの関連
Effect of adjuvant perioperative desmopressin in locally advanced canine mammary carcinoma and its relation to histologic grade.
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Jan-Feb;47(1):21-7.
Guillermo A Hermo; Esteban Turic; Daniel Angelico; Alejandra M Scursoni; Daniel E Gomez; Cristina Gobello; Daniel F Alonso
デスモプレッシン(DDAVP)は止血特性を持つバソプレッシンペプチド類似体で、出血性疾患の患者の術中にうまく使用されている。近年発表された実験および臨床データは、DDAVPの術中投与が残存乳癌細胞の広がりおよび生存性を最小限にできると示している。
この研究の目的は、局所に進行した乳がんのメス犬における術中DDAVPの効果と組織学的グレードとの関連を探求することだった。
当初募集した32頭の犬のうち、最終的にステージIIIあるいはIVの乳癌を持つ28頭の未避妊メス犬で研究した。それらの犬を無作為にDDAVP1μg/kg静脈投与群(n=18)と、プラセボとして生理食塩水投与群(n=10)に振り分けた。罹患乳腺の一括乳房切除を実施した。腫瘍の悪性度はElstonとEllisの方法により、高分化型(グレード1)、中分化型(グレード2)、未分化型(グレード3)にグレード分けした。
コントロール群と比べ、グレード2あるいは3の癌を持つ犬においてDDAVP療法は疾患フリー生存期間(P<0.001)および総生存期間(P<0.01)を有意に延長させた。グレード1の癌を持つ犬において、治療群間の疾患フリー期間あるいは総生存期間に有意差は見られなかった。
このデータは、小動物の侵襲的癌の管理における手術補助としてデスモプレッシンが優秀な候補であると示唆する。この分野の更なる研究が必要である。(Sato訳)
■犬の乳腺腫瘍の異種移植モデルにおけるシクロオキシゲナーゼ阻害剤の効果
Effect of cyclooxygenase inhibitors in a xenograft model of canine mammary tumours
Veterinary and Comparative Oncology, Volume 9, Issue 3, pages 161?171, September 2011
K. Sonzogni-Desautels, D. W. Knapp, E. Sartin, M. Dore
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の抑制は、いくつかの癌の予防および/あるいは治療する方法として可能性を示す。我々の目的は、マウスにおける犬の乳腺腫瘍の成長に対し、COX-2の選択的阻害剤デラコキシブおよびCOX-1、COX-2阻害剤ピロキシカムの効果を比較することだった。
ヌードマウスに対する異種移植誘導にCMT-9を使用した。マウスにはピロキシカム(0.6mg/kg)、デラコキシブ(6mg/kg)、コントロール液を投与した。処置後0-24日の間、腫瘍体積にグループ間の有意差が見られなかった。
実験の第2シリーズはより高い用量のピロキシカム(0.9mg/kg)で実施した。処置後14-21日の腫瘍体積はコントロールよりも有意に小さかった。
それらの結果は、COXの抑制がマウスにおける犬乳癌異種移植片の成長を低下させることを示し、COX阻害剤が犬においてポジティブな影響を持つ可能性があることを示唆する。(Sato訳)
■悪性乳腺腫瘍の犬の予後におけるCox-2発現の役割
The role of Cox-2 expression in the prognosis of dogs with malignant mammary tumours.
Res Vet Sci. June 2010;88(3):441-5.
Felisbina L Queiroga, Isabel Pires, Luis Lobo, Carlos S Lopes
最近、犬の乳腺腫瘍(CMT)におけるシクロオキシゲナーゼ(Cox)-1および-2酵素の免疫組織化学的検出が述べられている。しかし、それらの発現の予後価値の確立が必要である。
この研究の目的は、臨床病理学的パラメーター(腫瘍サイズ、組織学的種類、壊死、リンパ節転移)、無病生存期間(DFS)および総生存期間(OS)とその発現の相関を評価することにより、悪性乳腺腫瘍におけるCox(-1、-2)の予後価値を調査することだった。
悪性腫瘍の27頭のメス犬を調査した。Cox-2発現は手術時のリンパ節転移、追跡調査中の遠隔転移発生(p=0.038)、DFS(p=0.03)、OS(p=0.04)に関係した。多変量生存分析で、Cox-2は独立した予後因子としてその意義を持たないことを示した。Cox-1発現は統計学的有意な関係が認められなかった。
この研究は、悪性乳腺腫瘍のメス犬で補助療法の一環として試験的Cox-2特異抑制剤の有用性を示唆する。(Sato訳)
■犬の乳癌におけるCOX-2発現:血管新生と全体の生存性の相関
Cox-2 expression in canine mammary carcinomas: correlation with angiogenesis and overall survival.
Vet Pathol. November 2009;46(6):1275-80.
G E Lavalle, A C Bertagnolli, W L F Tavares, G D Cassali
メス犬において乳腺腫瘍は最も一般的な腫瘍性プロセスである。COX-2の触媒産物であるプロスタグランジンE2は腫瘍の発育および血管新生を促すかもしれない。それはいくつかのヒトの癌で調査されており、またその疾患の進展との関連も調査されている。しかし、獣医療において腫瘍病理学の臨床的関連は更なる調査を必要とする。血管新生は主な固形腫瘍の成長および転移に必要で、ヒトや犬の乳癌における予後と関連している。
この研究の目的は、犬の乳癌におけるCOX-2発現と微小血管密度を評価し、それらと動物の総生存性を関連付けることだった。
46の乳癌(19乳管、27化生)と健康な乳腺においてCOX-2と血管新生を免疫組織化学的に評価した。腫瘍の血管新生を評価するため、微小血管密度(MVD)はCD31染色で判定した。免疫染色により46/46(100%)の腫瘍はCOX-2およびCD31に陽性を示し、腫瘍の種類で統計学的な違いはなかった。COX-2蛋白発現はCD31染色と明確に相関した(r=0.3742、P=.0104)が、腫瘍の種類に有意に相関しなかった。より長い総生存性は低い微小血管密度(P=.0002)および低いCOX-2スコア(P=.01)の化生性癌(P=.028)で観察された。
我々の結果は、微小血管密度の増加とCOX-2発現の増加は、研究した犬の乳腺腫瘍で直線的相関を持ち、また予後不良およびより短い総生存性に関係することを示す。これは、メス犬の進行した腫瘍性乳房疾患の治療および管理に対してCOX-2抑制物質が代替となりえることを示唆する。(Sato訳)
■犬の炎症性乳がんにおける予後因子:43症例(2003~2008年)
Prognostic factors for dogs with mammary inflammatory carcinoma: 43 cases (2003-2008).
J Am Vet Med Assoc. 2009 Oct 15;235(8):967-72.
Marconato L, Romanelli G, Stefanello D, Giacoboni C, Bonfanti U, Bettini G, Finotello R, Verganti S, Valenti P, Ciaramella L, Zini E.
目的
犬の炎症性悪性腫瘍(IC)における臨床的特徴、治療、転帰を記述し、全生存期間に関連した患者関連因子、腫瘍関連因子、治療関連因子を同定すること。
研究デザイン
Retrospective case series
動物
43頭の飼育犬
方法
病理学的に体表リンパ節浸潤を認め、臨床的にICと診断された犬の医療記録から概説した。臨床学的ステージ分類、治療、毒性、反応および生存期間をデータとして検索した。
結果
26頭(60%)の犬が原発性のIC、17(40%)頭が二次性のICであった。治療前の検査では35頭(81%)の犬で遠隔転移を認め、2頭(5%)で局所転移を認めた。29頭中6頭(21%)で凝固異常を認めた。16頭(37%)の犬はIC特異的な治療を受けず、24頭(56%)の犬は内科療法のみを受け、2頭(5%)は外科的切除および内科療法、1頭(2%)は外科的切除のみを受けた。41頭(95%)の犬では進行性疾患で、一方2頭(5%)は安定性の疾患であった。全頭における平均生存期間は60日であった(1-300日)。凝固障害をもつ犬は凝固障害をもたない犬よりも明らかに生存期間が短かった(オッズ比0.28)。内科治療を受けた犬は、内科治療を行わなかった犬よりも明らかに生存期間が長かった(オッズ比2.54)。
結論および臨床的関連性
本研究結果により、炎症性乳がんは犬において、慎重な予後に関連する生物学的に悪性の挙動をとることが示唆された。また内科治療が転帰を改善させるかもしれず、それゆえIC罹患犬に対して治療を行うことを支持するものとなることが示唆された。(Dr.Ka2訳)
■良性および悪性犬乳腺腫瘍における予後マーカーの発現と腫瘍の大きさの関係
The relationship between tumour size and expression of prognostic markers in benign and malignant canine mammary tumours
E. Ferreira , A. C. Bertagnolli , M. F. Cavalcanti , F. C. Schmitt and G. D. Cassali
担癌患者で腫瘍の大きさは臨床ステージの決定における最も重要な決定因子の1つである。この研究の目的は、メス犬における乳腺腫瘍の鑑別の指標として腫瘍の大きさの価値を評価することだった。原発病変の大きさ、領域リンパ節へのその播種の程度、遠隔転移の有無をもとにした腫瘍リンパ節転移(TMN)分類を、乳腺腫瘍と診断された120頭の雌犬に適用した。38症例からパラフィンブロックを選択し、乳癌の予後および予測マーカーに対する免疫組織化学染色で検査した。カプラン-マイヤー生存曲線を110頭のメス犬で算出した。大きな腫瘍(T3)はほとんどが悪性で、プロゲステロンレセプターの低発現、細胞増殖マーカーの高発現を示した。大きな腫瘍マスがあるメス犬の全体的な生存期間はより短かった。この研究は、メス犬における乳腺腫瘍の予後指標として腫瘍の大きさの重要性を強調するものである。(Sato訳)
■新規の乳腺癌マーカーとしての血漿中のミッドカイン
Cancer Sci. 2009 Sep;100(9):1735-9. Epub 2009 Jun 1.
Midkine in plasma as a novel breast cancer marker.
Ibusuki M, Fujimori H, Yamamoto Y, Ota K, Ueda M, Shinriki S, Taketomi M, Sakuma S, Shinohara M, Iwase H, Ando Y.
ヘパリン結合性成長因子であるミッドカインは、多くの種類の癌においてアップレギュレートする。この研究の目的は、乳癌患者の血漿ミッドカイン濃度を測定し、その臨床意義を評価することだった。自動免疫測定分析計(東ソー株式会社 AIAシステム)を使って、健常のボランティア95名、非浸潤性乳管癌(DCIS)患者11名、遠隔転移のない原発性浸潤性乳癌(PIBC)患者111名、そして遠隔転移のある乳癌(MBC)患者25名のミッドカイン濃度を測定した。原発性浸潤性乳癌患者において、我々は、血漿ミッドカイン濃度と臨床病理学的因子との関連について研究した。
免疫反応性のミッドカインは健常のボランティアで検出されて、カットオフ値は750pg/mlで確立された。乳癌患者において、血漿ミッドカイン濃度は正常値より上昇した。非浸潤性乳管癌患者11人中1人(9.1%)、原発性浸潤性乳癌患者111人中36人(32.4%)そして遠隔転移のある乳癌患者25人中16人(64%)でミッドカイン濃度の上昇が見られた。原発性浸潤性乳癌患者において、上昇したミッドカイン濃度は閉経状態(P = 0.0497)と核のグレード(P = 0.0343)と関連があった。ミッドカイン濃度に基づいた癌検出率は、CA15-3 (P < 0.0001)、CEA (P = 0.0077)そしてNCCST-439 (P < 0.0001)などの3つの従来の腫瘍マーカーに基づく癌検出率より高かった。ミッドカインと共に2つの従来の腫瘍マーカー(CA15-3/CEA、CA15-3/NCCST-439、あるいは CEA/NCCST-439)を使った乳癌の検出率は、3つの伝統的な腫瘍マーカーのコンビネーションで検出するより有意に高かった。ミッドカインは乳癌の検出において、伝統的な腫瘍マーカーより優れた有効な新規腫瘍マーカーとなるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■化学療法、外科手術、COX-2阻害剤(メロキシカム)を使用した猫乳腺腫瘍の治療
Treatment of feline mammary tumours using chemotherapy, surgery and a COX-2
inhibitor drug (meloxicam): a retrospective study of 23 cases (2002-2007)
J. F. Borrego , J. C. Cartagena and J. Engel
This work was presented in part at the WORLDvetCANCER meeting, Copenhagen, February 2008.
乳癌と組織学的に確認された猫23頭においてCOX-2阻害剤(メロキシカム)、化学療法、外科手術を組み合わせた治療効果を評価した。全ての症例に積極的な外科手術とドキソルビシンベースの化学療法を実施した。手術後、その日からメロキシカムの経口投与を開始し、無期限で継続した。血清腎パラメーターを3-5ヶ月毎に測定した。
3頭の猫は高窒素血症を発症した。一方、他の4つの腎パラメーターは増加したものの正常値内を維持した。カプラン-マイヤー生存期間中央値は460日だった。カプラン-マイヤー無病期間中央値は269日だった。生存期間は他の研究と同様で、この併用治療の使用を支持するものではなかった。大規模症例の前向き研究が猫の乳腺腫瘍の治療でこの多様式プロトコールの有用性を調査することが望まれる。(Sato訳)
■イヌの乳腺腫瘍;良性から悪性への組織学的連続;臨床および病理組織学的所見
Canine mammary gland tumours; a histological continuum from benign to malignant; clinical and histopathological evidence
Vet Comp Oncol. September 2009;7(3):162-172. 26 Refs
K. U. Sorenmo, V. M. Kristiansen, M. A. Cofone, F. S. Shofer, A.-M. Breen, M. Langeland, C. M. Mongil, A. M. Grondahl, J. Teige, M. H. Goldschmidt
この研究は乳腺腫瘍を持つイヌにおける臨床および病理組織学的所見を述べ、良性から悪性への進行に一致する病理組織および臨床所見と、ヒトの乳癌の疫学と比較する。236個の腫瘍を持つ90頭のメス犬の臨床および病理組織データを研究した。
悪性腫瘍のイヌは、良性腫瘍のイヌよりも有意に高齢だった(9.5歳v.s.8.5歳)、P=0.009。悪性腫瘍は良性腫瘍よりも有意に大きかった(4.7cmv.s.2.1cm)、P=0.0002。66%は1つ以上の腫瘍があり、組織学的進行の所見は、腫瘍の大きさの増加で分かった。悪性腫瘍を持つイヌは、良性腫瘍のイヌよりも新規原発腫瘍を有意に発生しやすかった、P=0.015。
それらの所見は、イヌの乳腺腫瘍が良性から悪性へと進行する;悪性腫瘍はヒトの乳房発癌のような臨床および病理組織学的類似を伴う組織学的連続体の最終段階かもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の炎症性乳癌12例:臨床特性、シクロオキシゲナーゼ-2発現、ピロキシカム投与に対する反応
Inflammatory mammary carcinoma in 12 dogs: Clinical features, cyclooxygenase-2 expression, and response to piroxicam treatment.
Can Vet J. May 2009;50(5):506-10.
Carlos H de M Souza, Evandro Toledo-Piza, Renee Amorin, Andrigo Barboza, Karen M Tobias
犬の炎症性乳癌(IMC)はまれで、治療に対する反応が乏しい局所侵襲性の高転移性腫瘍である。この研究の目的は、IMCの犬の病歴、徴候、臨床症状、従来の化学療法で治療した患犬の結果とピロキシカムで治療した患犬の結果の比較、IMC細胞のCox-2発現の評価、治療をもとにしたCox-2発現と結果の相関を遡及的に評価することだった。
全ての腫瘍に強いシクロオキシゲナーゼ-2発現が存在した。臨床状況および疾患安定性の改善はピロキシカムを投与した全ての犬で認められ、進行フリー生存期間の平均と中央値は171日および183日だった。
ドキソルビシンベースのプロトコールで治療した3頭の生存期間中央値は7日で、ピロキシカムを投与した犬(中央値、185日)よりも有意に短かった。結論として炎症性乳癌の犬の治療に対する単一薬剤としてピロキシカムを考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の乳癌の治療におけるドキソルビシンベースの補助化学療法の評価
Evaluation of adjuvant doxorubicin-based chemotherapy for the treatment of feline mammary carcinoma.
J Vet Intern Med. 2009 Jan-Feb;23(1):123-9.
C J McNeill, K U Sorenmo, F S Shofer, L Gibeon, A C Durham, L G Barber, J L Baez, B Overley
背景:猫の乳癌(FMC)は局所侵襲性で高転移性腫瘍である。潜在的に高転移性腫瘍のため、しばしばドキソルビシンベースの補助化学療法で治療するが、この治療戦略の効果を評価するデータはほとんどない。
仮説:FMCに対してドキソルビシンベースの補助化学療法は、外科手術単独と比較して結果を改善する。
動物:外科手術単独(Sx)あるいは手術とドキソルビシンベースの補助化学療法(Sx+Chemo)で治療した自然発生でバイオプシーによりFMCを確認した猫。
方法:遡及コホート研究。臨床データを収集し、群間の違いを確認するため比較した。転帰を判定し、比較した。無病生存(DFS)および総生存に対する予後因子を評価した。
結果:37頭はSx群、36頭はSx+Cheno群の合計73頭の猫を評価した。SxおよびSx+Chemo群の臨床データに違いは認められなかった。SxおよびSx+Chemo群のDFS期間中央値は、それぞれ372日および676日で(P=.15)、生存期間(ST)中央値はそれぞれ1406日および848日だった(P=.78)。片側根治的乳腺切除を行った猫に対して、Sx+Chemo群のSTは、Sx群と比較して有意に長かった(それぞれ1998日v.s.414日、P=.03)。
結論と臨床意義:この研究でFMCの猫に対するドキソルビシンベースの補助化学療法の利点は見つからなかった。負の予後因子を持つ猫のサブグループで、補助化学療法が役に立つのかどうかを判定する追加研究が必要である。(Sato訳)
■局所乳腺切除の雌犬の乳腺腫瘍再発
Mammary tumor recurrence in bitches after regional mastectomy
Vet Surg. January 2008;37(1):82-6.
Nina Stratmann, Klaus Failing, Andreas Richter, Axel Wehrend
目的:局所乳腺切除後の残存乳腺連鎖組織における新しい乳腺腫瘍成長の組織診断および発生率を調査する
研究構成:前向き臨床研究
動物:単一乳腺腫瘍の切除を行った雌犬(n=99)
方法:単一腫瘍切除のために局所乳腺切除を行った雌犬を、術後1年以上追跡調査した。腫瘍の種類、再発、転移発生に関するデータを記録した。
結果:初回手術後、57頭(58%)に同側の乳腺連鎖に新しい腫瘍が発生し、そのうち77%はもう一度手術した。新しい腫瘍発生までの期間と、1度目、2度目の腫瘍のタイプの組織診断に有意な相関は見られなかった。31頭の犬は、最初とその次の腫瘍の組織診断が同じで、初回悪性腫瘍の犬は、別の悪性腫瘍を発生しやすいという有意な相関があった(P=.0089)。新しい腫瘍の組織学的分類は、初回の腫瘍が取り除かれた側に接して位置する場合、悪性であることが多かった(P=0.26)。
結論:我々の結果は、単一腫瘍を切除する局所乳腺切除後の58%の犬に、同側連鎖の残存乳腺に新しい腫瘍が発生することを示す。
臨床関連:このことを単一乳腺腫瘍の犬の外科管理(根治または局所乳腺切除)を決するときに考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の炎症性乳癌:21例の病理組織学、免疫組織化学、臨床上の意義
Canine inflammatory mammary carcinoma: histopathology, immunohistochemistry and clinical implications of 21 cases.
Breast Cancer Res Treat. 2003 Mar;78(2):141-8.
Pena L, Perez-Alenza MD, Rodriguez-Bertos A, Nieto A.
ヒトの炎症性乳癌(IBC)は乳癌の中で最も悪性度の高い種類であり、非常に予後が悪い。犬は自然発生性の炎症性乳癌(IC)の報告のある特殊な動物種であるが、詳細は明らかではない。この研究の目的は犬ICの病理組織学的、免疫組織化学的特徴を明確にするとともに臨床的特徴を検討することである。ICと診断され、臨床データと剖検データの存在する21例の犬が研究に含まれた。剖検での組織サンプルにより、病理組織学的再調査と免疫組織化学的研究((Ki-67, エストロゲンレセプター (ER),プロゲステロンレセプター (PR),P53腫瘍抑制蛋白質)を行った。組織学的研究において癌のいくつかの種類(充実性、管状、乳頭状、腺扁平上皮状)と3つの脂質の多い癌が明らかになった。全ての腫瘍はER陰性だった。腫瘍の皮膚浸潤には組織学的に2つの形態が観察された。管状/乳頭状と肉腫様である。
皮膚への肉腫様の浸潤は過去の黄体ホルモン薬による治療歴(P=0.006)、ICの原発の種類(P=0.03)、局所の極度な疼痛(P=0.02)、皮膚リンパ管の塞栓の減少(P=0.01)、p53の発現の増加(P=0.001)が有意に関連していた。PR発現は切除後ICに続発して有意に高かった(p = 0.04)。PRの欠如は剖検時、肺転移の存在と関連があった(P=0.04)。犬の原発性ICは乳癌の中でも最も悪性の形態をとり、病理組織学的、免疫組織化学的にもはっきりと異なっている。プロゲスチンと内分泌に関したメカニズムは犬のICの発生に関係がありそうである。犬のICはヒトのIBCの自然発生性モデルとして、とりわけ新しい治療の試みに関する研究において、役立つかもしれない。(Dr.HAGI訳)
■酢酸メレンゲストロール(MGA)避妊薬を使用した動物園ネコ科の動物における乳癌の組織学的特徴
Histologic features of mammary carcinomas in zoo felids treated with melengestrol acetate (MGA) contraceptives
Vet Pathol. May 2007;44(3):320-6.
D McAloose, L Munson, D K Naydan
強力合成プロゲスチンの酢酸メレンゲストロール(MGA)は、1975年から動物園のネコ科に避妊薬として使用されている。乳腺癌は動物園のネコ科への投与に関連しているが、それら腫瘍の組織学的特徴とステロイドレセプター発現は述べられていない。動物園のネコ科の乳腺腫瘍を1986-1998年の間に関係する動物園に依頼し、28件のMGA投与、3件の無治療ネコ科から合計31件の乳腺癌を受け取った。組織学的パターン、腫瘍グレード、転移の発生をもとに癌を評価し、癌にMGA投与ネコ科と自然発生のものに違いがあるか判定するため、腫瘍の特徴を比較した。エストロゲン-、プロゲステロン-レセプター発現を31件中17件で評価した。
31件の腫瘍中、22(70.9%)は複合組織パターン、29(93.5%)はハイグレード、28(90.3%)は転移していた。腫瘍の中で、管乳頭パターン(87.1%、n=27)が最も一般的で、固形(61.3%、n=19)、篩状(38.7%、n=12)、コメド(25.8%、n=8)はあまり一般的でなく、ムチン(3.2%、n=1)はほとんどなかった。MGA投与と無治療の動物園のネコ科は同様のパターン、乳腺癌のグレード、転移率を示した。
それらの結果は、動物園のネコ科の乳癌は、管乳頭パターン優勢で攻撃的な習性を持つハイグレードであることを示す。17件の癌のうち5件はプロゲステロンレセプターを発現し、1件はエストロゲンレセプターを発現した。この研究でより多くの動物園のネコ科がMGAを投与されているが、乳癌は無治療、MGA投与ネコ科で同様の発生、習性を示した。MGAと悪性乳腺腫瘍の発生の関連は、動物園のネコ科でこの避妊薬を使用するとき考慮すべきである。(Sato訳)
■乳腺腫瘍の犬の循環血管内皮成長因子の臨床意義
Clinical significance of circulating vascular endothelial growth factor in dogs with mammary gland tumors
J Vet Med Sci. January 2007;69(1):77-80.
Yuka Kato, Kazushi Asano, Toshiaki Mogi, Kenji Kutara, Kenji Teshima, Kazuya Edamura, Shigehisa Tsumagari, Atsuhiko Hasegawa, Shigeo Tanaka
循環血管内皮成長因子(VEGF)の増加は、悪性腫瘍のヒトで予後指標として示唆される。この研究の目的は、乳腺腫瘍(MGT)の犬の循環VEGFの臨床意義を評価することだった。
健康犬と比較し、MGTの犬の血漿および血清VEGFは有意に高かった。MGTの犬で、悪性群の血漿および血清VEGFは良性群よりも有意に増加した。また、術後転移がある群とない群で血漿および血清VEGFの有意差があった。循環VEGFは犬MGTの予後判定に臨床的に利用できると思われる。(Sato訳)
■細胞スメアにおける犬乳腺上皮腫瘍のフラクタル次元
Fractal dimension of canine mammary gland epithelial tumors on cytologic smears
Vet Clin Pathol. December 2006;35(4):446-8.
Radostin Simeonov, Galina Simeonova
背景:フラクタル幾何学は、不規則および複雑な形態を描写する、モデリングする、分析する、プロセスするのに使用できるツールである。医療における過去の調査は、フラクタル分析は腫瘍細胞の核の不規則な境界特徴づける腫瘍病理に応用も可能と述べられている。
目的:この研究の目的は、フラクタル次元パラメーターが犬の乳腺上皮腫瘍が悪性か良性かの鑑別に細胞標本で使用可能かどうかを明らかにすることだった。
方法:核表面のフラクタル次元は、正常な犬乳腺種上皮細胞、乳腺腫、乳頭管癌、固形癌、未分化癌の細胞の針吸引により得たヘマカラー染色細胞スメアに対し、コンピューター支援形態計測で測定した。データーをマンホイットニーU検定で分析した。
結果:正常な犬乳腺上皮細胞と比べ、全ての腫瘍タイプで平均フラクタル次元の有意差が観察された(P<.001)(固形癌と未分化癌の間のフラクタル次元を除く)。
結論:形態計測パラメーター、フラクタル次元は、細胞標本での犬乳腺上皮腫瘍の良性、悪性の診断的鑑別の補助となる。(Sato訳)
■犬の乳房切開で3縫合法の比較
Comparison of Three Methods for Closure of Mastectomy Incisions in Dogs
Aust Vet Pract. December 2006;36(4):156-162. 33 Refs
Papazoglou, Tsioli, Karayannopoulou, Savvas, Kazakos, Kaldrymidou
60頭の犬の乳腺腫瘍の管理で、局所または片側乳腺切除を行った。それらをランダムに従来の乳房切除閉鎖法(閉塞式ドレナージ設置)、皮膚のみ閉鎖(閉塞式ドレナージ設置)、いかなるドレーン設置を行わず従来の閉鎖法群とする3つの群に振り分けた。従来の乳房切除閉鎖法はデッドスペースをなくすための吸収縫合と皮膚縫合を組み合わせたものだった。術後1、6、10日目の各切開創は臨床スケールに従いグレードをつけた。全ての犬は術後1ヶ月目に再検査した。手術時間は、ドレナージ設置を行った(P=0.014)、またはドレナージを行わなかった(P=0.008)従来の乳房切除閉鎖法よりも皮膚閉鎖のみの方が有意に短かった。3つの閉鎖方法でどの時点でも合併症に関する有意差は見られなかった。ドレーンの有無は結果に影響しなかった。(Sato訳)
■腫瘍性乳腺を持つメス犬のリンパ排液:リンパ管造影研究
The lymph drainage of the neoplastic mammary glands in the bitch: a lymphographic study
Anat Histol Embryol. August 2006;35(4):228-34.
M N Patsikas, M Karayannopoulou, E Kaldrymidoy, L G Papazoglou, P L Papadopoulou, S I Tzegas, N E Tziris, D G Kaitzis, A S Dimitriadis, A K Dessiris
この調査目的は、直接リンパ管造影法を使用したメス犬の腫瘍性乳腺のリンパ排液を研究することだった。41の自然症例の研究から導かれた主な結論は以下である。:第1または頭側胸部、および第2または尾側胸部腫瘍性乳腺は、通常同側の腋窩リンパ節に流れ、まれに同時に同側の腋窩および胸骨リンパ節に流れる。第3または頭側腹部腫瘍性乳腺は、通常同時に同側の腋窩と浅鼠径リンパ節に流れるが、時々頭側のみ同側腋窩リンパ節に流れる。まれに尾側のみ同時に同側浅鼠径および内側腸骨リンパ節に流れる。第4または尾側腹部腫瘍性乳腺は、通常尾側のみ同側浅鼠径リンパ節に流れる。まれに同時に同側腋窩および浅鼠径リンパ節に流れる。第5または鼠径腫瘍性乳腺は通常同側浅鼠径リンパ節に流れるが、まれに同側膝窩リンパ節や同側大腿内側面のリンパ叢にも流れる。腫瘍性乳腺と隣接正常乳腺のリンパ連結は、1症例のみで認められた。腫瘍性乳腺のリンパ廃液パターンは、同じエックス線撮影法を使用した正常乳腺で述べられるものとわずかに異なる。(Sato訳)
■犬における良性および悪性乳腺腫瘍の組織特性とB-モードおよびドップラー超音波所見の比較
Comparison of B-mode and Doppler ultrasonographic findings with histologic features of benign and malignant mammary tumors in dogs
Am J Vet Res. June 2006;67(6):985-91.
Helena T Nyman, Ole L Nielsen, Fintan J McEvoy, Marcel H Lee, Torben Martinussen, Eva Hellm駭, Annemarie T Kristensen
目的:犬における良性および悪性乳腺腫瘍の組織所見と、B-モードおよびカラードップラー超音波特性の比較と相関
研究集団:26頭の犬の49の乳腺腫瘍
方法:切除前に腫瘍の大きさ、エコー発生性、エコーパターン、音響伝達、侵襲性、血管分布を評価するため、B-モードおよびカラードップラー超音波検査を実施した。腫瘍のパラフィン包埋薄切片をH&E染色し、壊死、嚢、軟骨、骨、石灰化、組織周囲の侵襲、組織不均一性の存在を検査した。血管分布の評価のため、ヴァーヘフ・ヴァン・ギーゾン法で染色した血管の数と分布を記録した。
結果:超音波画像における腫瘍のエコー発生性およびエコーパターンは、組織学的に検出された組織不均一性に相関した。音響増強は壊死または嚢胞部分の存在に相関した。超音波により判定された組織周囲への腫瘍侵襲は、組織所見と相関しなかった。超音波および組織検査により判定された腫瘍内の血流分布と、検出された血管数に有意な相関が認められた。
結論と臨床関連:犬の乳腺腫瘍で、超音波検査による特徴は、組織病理変化と相関が明白である。データは、乳腺腫瘍の犬の評価における、特に組織組成と腫瘍血管分布の評価で超音波検査が重要な役割を演じることを示唆する。(Sato訳)
■酢酸メゲストロールに関係する乳腺線維腺腫様過形成
Mammary Fibroadenomatous Hyperplasia Associated with Megestrol Acetate
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:39-40 Jul'04 Case Report 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
MacDougall LD; Can Vet J 2003;44:227-229
イントロダクション:
背景:老齢猫の乳腺腫瘍の予後は非常に悪い。約90%が腺癌で、診断時には転移している。
一方、若い猫の一般的な乳腺腫瘍は、乳腺線維腺腫様過形成と呼ばれるプロゲストゲン依存性導管過形成である。それは良性で、自然退縮の可能性がある。黄体が源ならば卵巣切除、アグレプリストンのようなプロゲストゲン拮抗剤の使用、プロゲストゲン投与中止など、プロゲストゲンの影響を取り除くと同時に退縮する。
猫で一般的に使用されるプロゲストゲンは、酢酸メゲストロールである。猫へのその薬剤の使用はラベルに記載されていない。
目的:この症例報告で、去勢済みオス猫の乳腺線維腺腫様過形成を述べる。
サマリー:
症例報告:1.5歳の去勢済みオス猫が、下顎の掻痒性皮膚炎で来院した。局所洗浄と同時に全身性抗生物質とグルココルチコイド投与を行ったが、皮膚炎の改善は見られなかった。初回来院から1ヵ月後、酢酸メゲストロールを1mg/kg1日1回5日間処方し、その後3週間0.5mg/kg週2回投与した。処方を再調剤し、追加の18日間投与した。投与し始めてからほぼ2ヵ月後、猫は歩きたがらなくなり、急激な非対称の乳腺拡大を起こした。乳腺の検査から、温かい水腫様そして充血性の右鼡径部乳腺の拡大が顕著だった。胸部エックス線写真、血液像、血清化学は正常だった。乳腺と領域リンパ節の切除を行った。組織検査で二次性乳腺炎を伴う線維腺腫様過形成が明らかとなった。ほとんどの乳腺は手術後10-15日で退縮したが、持続性の乳腺炎と下顎の皮膚炎によりオーナーは安楽死を依頼した。検死は実施されなかった。
結論:酢酸メゲストロールのようなプロゲストゲンの投与は、オスメスともに乳腺繊維腺腫様過形成を誘発する可能性があり、そのリスクは直接用量に依存しない。
臨床への影響
急性の非対称性乳腺腫脹を伴う5歳以下の猫は、最初に乳腺線維腺腫様過形成を疑うべきである。多くは妊娠、または自然排卵した若いメス猫で、活動性の黄体を持つ。卵巣切除または発情サイクルの進行で起こる黄体融解により、乳腺腫脹の退行が起こるだろう。
プロゲストゲンの投与は、どの年齢のオスまたはメスの乳腺線維腺腫様過形成の原因となる可能性がある。論理的で有効な治療はプロゲストゲン投与中止である。しかし、退縮は4-6週間必要かもしれない。(Sato訳)
■悪性乳腺腫瘍の犬における術後2年生存に関係する予後因子:79例(1998-2002)
Prognostic Factors Associated with Survival Two Years After Surgery in Dogs with Malignant Mammary Tumors: 79 Cases (1998-2002)
J Am Vet Med Assoc 227[10]:1625-1629 Nov 15'05 Retrospective Study 19 Refs
Shih-Chieh Chang, DVM, MVS; Chao-Chin Chang, DVM, PhD; Tien-Jye Chang,
DVM, PhD; Min-Liang Wong, PhD
目的:悪性乳腺腫瘍の切除術を行ったメス犬の予後因子を確かめる
構成:遡及症例シリーズ
動物:悪性乳腺腫瘍のメス犬79頭
方法:犬種、年齢、性別、腫瘍の大きさ(最大直径)、罹患乳腺の数と位置、腫瘍確認から外科的切除までの時間、遠隔転移のX線所見、術式、避妊(OHE)状況、腫瘍の組織学的分類、生存期間などの情報を医療記録から入手した。
結果:一変量分析の結果は、術後2年の生存に臨床ステージ、腫瘍サイズ、OHE状況、付属リンパ節への転移または遠隔転移、腫瘍の組織学的分類が有意に関係することを示した。直径>5cmの腫瘍および術前>6ヶ月に認められていた腫瘍は付属リンパ節に転移していることが多かった。卵巣子宮摘出術は単純癌の犬よりも複合癌の犬により有効だった。多変量分析で、臨床ステージ、腫瘍サイズ、OHE状況が術後2年生存に有意に関連した。
結論と臨床関連:結果から悪性乳腺腫瘍の犬の術後2年生存に対し、腫瘍ステージ、腫瘍サイズ、OHE状況が有意な予後要因であると示唆された。さらに、直径>5cmの腫瘍、および術前>6ヶ月に腫瘍が存在したイヌは、リンパ節転移のリスクが高くなっていた。(Sato訳)
■犬の炎症性乳癌:33症例(1995-1999)
Inflammatory Mammary Carcinoma in Dogs: 33 Cases (1995-1999)
J Am Vet Med Assoc 219[8]:1110-1114 Oct 15'01 Retrospective Study 21 Refs
Ma Dolores Perez Alenza, DVM, PhD; Enrique Tabanera, DVM, PhD; Laura Pena, DVM, PhD
目的:犬における炎症性乳癌(IC)の疫学、臨床および病理特性を判定する
構成:回顧的研究
動物:ICの犬33頭とIC以外の悪性乳腺腫瘍の犬153頭
方法:医療記録を再検討し、特徴、病歴、身体検査所見、胸部X線、検死結果を入手した。
結果:436頭中33頭(7.6%)は、異形成または乳腺の腫瘍の為、獣医教育病院で検査し、最低1つの悪性腫瘍を持つ186頭中33頭(17.7%)はICだった。33頭中32頭は未不妊だった。ICの犬は他の悪性乳腺腫瘍の犬よりも有意に年齢が高く、ICの犬で腫瘍は最後に見られた発情開始後平均52日で最初に気付き、一方他の乳腺腫瘍の犬では平均137日で発見されていた。ICの犬に食欲不振が見られやすく全身の虚弱、体重減少、胸郭転移があった。ICの犬は姑息的治療で平均25日生存した。組織学的に、皮膚リンパ管の関与がICの犬19頭中14頭(74%)に確認された。ICの2つの臨床形(原発と二次的)が認められた。原発性ICのイヌは臨床状況が悪かった。
結論と臨床関連:犬のICはあまり一般的ではないが、紛れもなく存在する。皮膚リンパ関与の組織所見は、犬で病理診断のホールマークと考慮すべきである。(Sato訳)
■卵巣子宮摘出術と猫の乳腺癌との関連性
Association between Ovarihysterectomy and Feline Mammary Carcinoma
J Vet Intern Med 2005;19:560-563
Beth Overley, Frances S. Shofer, Michael H. Goldschmidt, Dave Sherer, and Karin U. Sorenmo
猫の乳腺癌の病因論はよく理解されていない。推定ではあるが品種、繁殖状態、そしてプロゲスチンへの定期的な暴露などの危険因子が考えられている。
卵巣子宮摘出術(OHE)を実施した年齢と乳腺癌への発展との関連性は証明されていない。従って猫の乳腺癌への発展において、卵巣子宮摘出術を実施した年齢、品種、プロゲスチンおよび経産の影響を決定するため患者対照研究が実施された。症例は乳腺組織の組織学的検査によって乳腺癌と診断された雌猫であった。コントロール群は同じ生検母集団から選択された乳腺腫瘍と診断されなかった雌猫であった。コントロール群は年齢と診断した年でほぼ症例に合わせた。
308症例と400頭のコントロール群のアンケートを獣医師に送った。総合的なアンケート回答率は58%だった。乳腺癌の母集団においてインタクトの猫は明らかに(比率[OR] 2.7、信頼区間[CI] = 1.4-5.3、P < .001)多かった。6ヶ月齢前に避妊手術を受けた猫はインタクトの猫に比べて乳腺癌へ発展するリスクの91%の減少が見られた(比率0.9、信頼区間 = 0.03-0.24)。1歳までに避妊手術を実施した猫は乳腺癌へ発展するリスクが86%減少した(比率 0.14, 信頼区間= 0.06-0.34)。
経産は猫の乳線癌への発症に影響しなかった。プロゲスチン暴露はほとんど乳癌と関連がなかった。
1歳までに避妊手術を受けた猫は乳腺癌へ発展するリスクが明らかに減少することを示している。(Dr.Kawano訳)
■自発性猫乳腺腫瘍におけるHER-2/neuの免疫組織化学的検出
Immunohistochemical Detection of HER-2/neu Expression in Spontaneous Feline Mammary Tumours
Vet Comp Oncol 3[1]:8-15 Mar'05 Original Article 51 Refs
J. Winston, D.M. Craft, T.J. Scase and P.J. Bergman
乳腺腫瘍(MGT)は、猫で三番目に良く見られる腫瘍である。85%以上は悪性で、転移もよく認められる。HER-2/neuプロト癌遺伝子は、185-kDa経膜チロシンレセプターキナーゼ蛋白をエンコードする。人のMGT約25-30%は悪性細胞内にHER-2/neu蛋白過剰発現を示し、過剰発現は、転移傾向の増大、予後の低下に関係している。今まで、猫や自発性乳腺腫瘍を持つ猫におけるHER-2/neuの発現を調査し、発表された報告はない。犬と比較した猫の悪性乳癌の比率増加、人乳癌のHER-2過剰発現を伴う悪性度の増加と予後低下の関連をもとに、自発性悪性乳腺癌が腫瘍性乳腺上皮細胞にHER-2/neuが過剰発現するという仮説を立てた。
MGTの猫30頭でHER-2/neu免疫組織化学的発現を測定した。DakoポリクローナルおよびCB11モノクローナル抗体を使用したHER-2/neuを発現している猫MGT細胞比率中央値は、それぞれ85と92.5だった。DakoポリクローナルおよびCB11モノクローナル抗体を使用した過剰発現に一致するHER-2/neu発現強度グレード2および3はそれぞれMGTの猫の90、76.7%だった。2抗体間の過剰発現一致レベルは70%だった。これらから、HER-2/neu過剰発現は自発性MGTの猫で一般的と思われ、ゆえに人の乳癌のHER-2/neu過剰発現のすばらしいモデルであること思われる。(Sato訳)
■犬乳腺腫瘍における変化した酸化-抗酸化プロフィール
Altered oxidant-antioxidant profile in canine mammary tumours.
Vet Res Commun 29[4]:287-96 2005 May
Kumaraguruparan R, Balachandran C, Manohar BM, Nagini S
メス犬で乳腺腫瘍はよく認められる腫瘍の1つである。変化した抗酸化物質容量と連結した活性酸素種の過剰産生により起こる酸化ストレスは、癌の全ての種の病因と関連している。しかし、犬の乳腺腫瘍で脂質過酸化と抗酸化の状態の程度は調査されていない。この研究で、犬乳腺腫瘍の酸化-抗酸化プロフィールを評価した。メス犬25頭の腫瘍組織で、チオバルビツール酸反応物質形成を証拠とする脂質過酸化、脂質ヒドロペルオキシド、抱合型ジエン、抗酸化スーパーオキシドジスムターゼの状態、カタラーゼ、還元型グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオンS-トランスフェラーゼ、ビタミンCを評価した。腫瘍組織の脂質過酸化は、一致する近接単純組織と比較して高まっていた。これは酵素、非酵素抗酸化物質両方の有意な上昇に付随した。この研究は、脂質過酸化により誘発される抗酸化物質の上方制御が、近接する正常な対応組織以上に腫瘍細胞を選択的に成長させる要因を与えると示唆する。(Sato訳)
■オス猫の乳腺腫瘍の臨床的特徴
Katherine A. Skorupski et al. : J Vet Intern Med 19[1]:52- : Clinical Characteristics of Mammary Carcinoma in Male Cats
オス猫の乳腺腫瘍に関する報告はほとんどない。本研究の目的は、オス猫の乳腺癌の臨床的特徴を調べるとともにメス猫の乳腺腫瘍と比較し、予後を明らかにすることにある。39例のオス猫で乳腺癌と診断された。全て一人の病理学者により生検材料の再調査が行われ、27例で完全な経過が判明した。調査内容として、年齢や性別、種類、去勢時の年齢、プロゲスチンの投与歴、診断時の年齢、腫瘍の大きさ、外科手術の種類(腫瘤切除、単一乳房切除、拡大切除)、臨床病期、補助療法、再発時期、生存期間、死亡原因を含めた。診断時の年齢は12.8歳でメス猫と比べて遅い傾向が見られた。局所再発は20例中9例(45%)でメスと同様であった。プロゲスチンの投与歴は、判っているだけで22例中8例(36%)であった。局所再発までの期間は310日(127~1,363日)、生存期間中央値344日(14~2,135日)であった。腫瘍の大きさとリンパ節浸潤は負の予後因子であった。本研究から、オス猫の乳腺腫瘍はメスのものと多くの類似点があり、悪い臨床経過を取ることが判明した。
コメント:発生要因には、ホルモン剤の投与がありますが、これは、マーキングの抑制や口内炎の治療でしょう。
その他にも、ヒトでは染色体異常でXXYとなるクラインフェルター症候群というものがあります。正常な男性は一時的には乳腺が発育するものの最終的には退縮するのですが、この症候群では残るのだそうです。それが、乳腺腫瘍になるのです。
XXYといえば、三毛猫のオスを思い出します。以前、三毛猫のオスが以前勤めていた動物病院の前に捨てられていましたが、それ以降、もう1例遭遇しました。その猫は去勢目的の来院でしたが。三毛猫のオスは確かに少ないようですが、実際には、男性ホルモンの分泌が少なく、マーキングしないことからオスと気付かれることが少ないんでしょうね。だから、実際以上に希少と思われているのかもしれません。
そういえば、オス犬でも人とほぼ同じく乳腺腫瘍の1%程度で発生するそうです。知り合いにこの話をしたところ、副腎皮質機能亢進症を発症しているオス犬を治療しているとこのことでした。ホルモン異常で乳腺が発達したのでしょうか。猫ほど挙動は悪くないそうで、この文献の通り、同じ種のメスと同じような挙動をとるんですね。人より犬のほうが発生率が高いとされ、4~5頭に1頭のはずですから、オス500頭いれば1頭いるはずですが、私はまだ経験していません。三毛猫のオス以上に珍しいのでしょうか。(圓尾拓也 takuya-dvm@vet.ne.jp)
■イヌ乳腺腫瘍のシクロオキシゲナーゼ-2発現
Cyclooxygenase-2 expression in canine mammary tumors.
Vet Pathol 40[2]:207-12 2003 Mar
Dore M, Lanthier I, Sirois J
雌イヌで最もよく見られる腫瘍が乳腺腫瘍である。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)誘導は、ヒトでさまざまな癌に関係があるとされている。しかし、COX-2の発現はイヌの乳腺腫瘍で調査されていない。正常な乳腺(n=4)、単純、または混合乳腺腫(n=63)、単純、または混合乳腺癌(n=84)を免疫組織化学で調査した。結果は、正常な乳腺でCOX-2は発現しなかったが、乳腺腫の24%、乳腺癌の56%に検出された(P<0.001)。COX-2発現の発生とCOX-2シグナルの強度は乳腺腫よりも乳腺癌のほうが高かった(P<0.001)。COX-2はイヌ乳腺腫瘍に釣り合って誘発し、その発現は良性腫瘍よりも悪性腫瘍でより多く激しくなるという結果は初めて証明され、このことはイヌの乳腺腫瘍化でCOX-2が重要な役割を担う可能性を示唆している。(Sato訳)
■乳腺の線維腺腫様過形成のアグレプリストン療法
Aglepristone Treatment of Fibroadenomatous Hyperplasia of the Mammary Glands
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:38-39 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Gorlinger S, Kooistra HS, van den Broek A, et al. J Vet Intern Med 2002;16:710-713
背景:線維腺腫様過形成は、乳産生がある、またはない1つ以上の乳腺の急速な腫脹が特徴の乳腺良性腫瘍である。腫脹が原因の皮膚潰瘍の可能性を除けば炎症はない。多くの罹患ネコは、最近発情があり、妊娠した、または妊娠しなかったが排卵、または自発排卵を誘発している若いメスネコである。全ての症例の線維腺腫様過形成にプロゲステロン受容体が認められる。プロゲステロン源またはその投与を除去すると腫瘍退縮が起こる。避妊したメスやオスは、プロゲストゲンを投与すれば時々発生する。
目的:この報告の目的は、線維腺腫様過形成のネコに対するアグレプリストンの効果を述べることである。
サマリー
方法:線維腺腫様過形成の19頭のメスネコ(未避妊)、2頭のオス、1頭の去勢済みオスネコを研究した。最も年齢の高いネコは19ヶ月齢だった。6頭のメスネコは、卵巣摘出で乳腺腫瘍の改善がなかった。3頭は、針吸引生検により線維腺腫様過形成と確認された。
プロゲストゲンは、発情を予防するためメスネコ10頭に投与されていた。2頭のオスネコは、問題行動に対しプロゲストゲンで治療されていた。7頭のメスネコは最近発情し、2頭は妊娠していた。2頭のメスネコと1頭のオスは、プロゲステロンの分泌増加、またはプロゲストゲンの投与履歴がなかった。
15頭のネコは、4週間各週2日連続アグレプリストン10mg/kg皮下投与を行った。それから投与量は症状が改善するまで、毎週1回20mg/kgに変更した。
結果:1-2週間以内に全頭腫瘍が急速に退縮した。1頭を除き、すべて完全に寛解した。不完全寛解のネコは、治療後4週間で80%寛解した。週1回、または2回の投与は、同じように成功した。11頭のネコは頻脈だと考えられ、心拍数200bpm以上でアテノロールを投与した。2頭の妊娠ネコは、最初の注射から2日目、5日目に流産した。その後2頭は子宮内膜炎を発症した。
結論:ネコの線維腺腫様過形成は、プロゲステロンブロッカーのアグレプリストンでうまく治療できる。
臨床への影響
線維腺腫様過形成のネコの大多数は未不妊で、最近排卵、またはプロゲストゲンを投与されている。卵巣子宮摘出術によるプロゲストゲンの源の除去、またはプロゲストゲン投与中止は効果がある。プロゲステロン受容体注射を毎週使用することは、プロゲステロンの源が確認できないネコで有効かもしれない(この研究の19頭中3頭)。線維腺腫様過形成の繁殖用雌ネコの処置はどこにもない。この研究で妊娠ネコにアグレプリストンを投与した後、流産を起こし子宮内膜炎を発症した。我々の認識では、アメリカでアグレプリストンは入手できない。
最も多い合併症の1つに頻脈が認められた。原因は確認されなかった。頻脈の発生率は、検査した集団のネコが若く、頻脈が200bpm以上と定義されていたため、過大評価されているのかもしれない。若い健康なネコは、心拍数が240bpmまでと思われる。(Sato訳)
■悪性乳腺腫瘍のイヌで生存率に宿主の要因がどう影響するか
Influence of Host Factors on Survival in
Dogs with Malignant Mammary Gland Tumors
J Vet Intern Med 17[1]:102-106 Jan-Feb'03
Review Article 24 Refs
Jeffrey C. Philibert, Paul W. Snyder, Nita
Glickman, Larry T. Glickman, Deborah W. Knapp,
David J. Waters
我々の研究の目的は、診断時の年齢、肥満度、ホルモン状態などの特別な宿主の要因が、イヌ悪性乳腺癌の予後に影響を及ぼすかどうか判定する事と、過去の報告されたリスクファクター(すなわち、組織学的サブタイプ、腫瘍の大きさ、WHOステージ)が、多数の罹患犬の一連の症例に有力かどうかを確認する事だった。過去に治療歴がなく、切除バイオプシーをせず、脂肪の原因が解っていない乳腺癌の99頭のメス犬を研究した。
診断時の年齢(経時的、または生理的)、肥満、またはホルモン状態(すなわち、避妊vs未避妊、避妊を行った時期に関係なく)で、生存率に関する意義は無かった。分析した腫瘍ファクターのうち、未分化癌の組織学的サブタイプ(P=.02)、WHOステージ1(P=.01)、診断時の転移あり(P=.004)、3cm以下の腫瘍の大きさ(P=.005)は、全て生存性に有意に影響した。腫瘍に関連した死亡と分類された犬は、他の原因で死亡した犬と比較して術後の生存期間が短かった(14ヶ月vs23ヶ月;P=.03)。結論として、組織学的サブタイプ、WHOステージ、腫瘍の大きさは、依然イヌ乳腺腫瘍の予後因子として重要性をもっている。他の予後因子の更なる研究は、腫瘍に局所療法で適切に接し、そのイヌが補助的化学療法を必要とするのかどうか判定するために必要である。(Sato訳)
■猫の乳腺腺癌:予後因子としての腫瘍サイズ
Feline mammary adenocarcinoma: tumor size
as a prognostic indicator.
Can Vet J 43[1]:33-7 2002 Jan
Viste JR, Myers SL, Singh B, Simko E
乳癌と腺癌(MACs)は猫で比較的一般的な腫瘍である。冒された猫の切除後生存期間は腫瘍の大きさと反比例しているが、異なる腫瘍サイズのカテゴリーで報告されている中央生存期間は全く様々である。この変動性が、報告されている予後の重要性を減少させている。我々の研究では、直径3cm以上のMACsの猫は平均生存期間12ヶ月であるのに対し、直径3cm以下のMACsでは生存期間21ヶ月であった。
3cmより小さなMACsの猫の生存期間は3~54ヶ月の幅であった。それ故に腫瘍サイズ単独は3cm以下のMACsの猫において予後の有用性が限定的である。直径3cm以上のMACsの猫では腫瘍サイズが予後とのより高い関連性が現れてきた。なぜならこの研究は他と同様に、3cm以上のMACsの猫は中間生存期間4~12ヶ月の幅であり予後が悪い事を示している。(Dr.Massa訳)
コメント:猫の乳腺腫瘍を診たときに、大きさが3cm以上あるかどうかが勝負の分かれ目になりそうですね。
■犬の乳腺腫瘍におけるエストロジェン受容体
Sobczak-Filipiak M et al; Pol J Vet Sci 5[1]:1-5
2002; Estrogen receptors in canine mammary
gland tumours.
この研究のねらいは腫瘍性実質細胞におけるエストロジェン受容体発現と犬の乳腺腫瘍のタイプとの関係を確立する事である。乳腺腫瘍を含んだ調査材料は66頭得られた。パラフィン切片がHE染色され、モノクローナル抗体とLSAB/Peroxidase/Universal
Kitで免疫組織化学的に染色された。
エストロジェン受容体発現は約59%の症例で腫瘍細胞の核内に、約89%の症例で細胞質に認められた。約20%の症例では核内にも細胞質内にも極端に乏しかった。調査された腫瘍においてエストロゲン受容体の発現と有糸分裂指針の値に相関性は見つからなかった。(Dr.Massa訳)
コメント:犬の乳腺腫瘍の手術時に避妊手術を行うべきかどうかは確実な結論は出ていないと思います。この文献でも同様の結果ですね。
■犬の乳腺腫瘍の培養細胞で、50%抑制濃度を判定した化学療法のインビトロでの効果
In vitro efficacy of chemotherapeutics as
determined by 50% inhibitory concentrations
in cell cultures of mammary gland tumors
obtained from dogs.
Am J Vet Res 62[11]:1825-30 2001 Nov
Simon D, Knebel JW, Baumgartner W, Aufderheide
M, Meyer-Lindenberg A, Nolte I
目的:犬の乳腺腫瘍の培養細胞でカルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシンの50%抑制濃度(IC-50)を決定することと、インビトロでの効果が臨床で直接使用できる濃度の範囲かどうか調査した
供試物:犬から切除した30個の乳腺腫瘍
方法:30個の腫瘍の細胞培養を行った。培養組織にカルボプラチン、シスプラチン、ドキソルビシンを添加した。培養物の発育抑制を、添加後24、48、72時間にDNA測定で調査した。IC-50値をlinear
interpolationを用いて算出した。
結果:培養物は感受性のパターンで変化した。ドキソルビシンはプラチナ誘導体よりも有意に低いIC-50値を示した。シスプラチンとカルボプラチンは同様の効果があった。カルボプラチンとドキソルビシンのIC-50値は、臨床で直接使用できる濃度以内であったが、シスプラチンは一部しかそうでなかった。我々は腫瘍のサブタイプ(すなわち、腺癌、固形癌、悪性混合腫瘍)に対する感受性の違いは検出しなかった。
結論と臨床関連:この研究で判定したIC-50値は、犬の乳腺腫瘍の培養でインビトロな化学療法薬剤効果を判定できた。感受性の変化は明白で、各腫瘍の感受性や抵抗パターンの評価の重要性を強調するものとなった。インビトロとインビボの直接相関を評価する前向き研究を、乳腺腫瘍の犬の治療としてインビボの化学受容性分析の臨床予測値を決定するために行うべきである。(Sato訳)
■イヌ乳腺腫瘍の発生率および予後に影響する要因
Perez Alenza MD et al; J Small Anim Pract
2000 Jul;41(7):287-91; Factors influencing
the incidence and prognosis of canine mammary
tumours.
イヌ乳腺腫瘍の発生率に関係している要因を回顧した。雌イヌにおいて加齢、未卵巣切除もしくは2.5歳以降に卵巣切除、プロジェスタージェン処置はすべて同様に乳腺過形成のリスク増加を導く。加えて、若齢での肥満、市販フードに相反しているような自家製フード(牛肉と豚肉に富み、鶏肉に乏しい)を基本とした慣習的な食事もまた、乳腺腫瘍の発生に関係がある。発生率に関係する他の要因もまた議論した。診断時の加齢、浸潤的な成長(近隣組織への固着)、大きな腫瘍、皮膚の潰瘍、腋下もしくはソケイリンパ節への関与は、乳腺腫瘍の外科切除後に生存の可能性が低くなる事と関係する臨床パラメーターである。腫瘍の組織学的分類とグレードは予後の確定を可能にする。S-phase
fraction測定とKi-67免疫染色による腫瘍増殖が存在すると予後は悪い。(Dr.Yoshi訳)
■犬の炎症性乳癌:33症例(1995~1999)
Ma Dolores Perez Alenza, DVM, PhD et al;
J Am Vet Med Assoc 219[8]:1110-1114 Oct 15'01
Retrospective Study 21 Refs; Inflammatory
Mammary Carcinoma in Dogs: 33 Cases (1995-1999)
目的:犬の炎症性乳癌(IC)の疫学的、臨床的そして病理学的な特徴を決定するため
構成:回顧した研究
動物:炎症性乳癌の犬33頭と炎症性乳癌以外の悪性乳腺腫瘍の犬153頭
手順:医療記録、徴候、病歴、身体検査所見、胸部レントゲン検査、検死の結果が再検討されました。
結果:乳腺の異形成または腫瘍のために獣医科病院で検査された436頭中33頭(7.6%)の犬と、ともかく一つの悪性腫瘍を有する186頭中33頭(17.7%)の犬が炎症性乳癌でした。
33頭中32頭は未避妊でした。炎症性乳癌の犬は、他の悪性腫瘍の犬と比較して有意に高齢であった。そして炎症性乳癌の犬において、腫瘍は最後の発情開始後、平均52日で初めて認められました。それに対して他の乳腺腫瘍の犬では137日であった。炎症性乳癌の犬はより食欲不振で全身の虚脱、体重減少、胸部転移があったようでした。炎症性乳癌の犬は緩和治療により平均25日間生存しました。組織学的には、皮膚リンパ管への関わりは炎症性乳癌の犬19頭中14頭(74%)で確認されました。炎症性乳癌の2つの臨床形式(原発性と続発性)が明らかにされました。
原発性炎症性乳癌の犬は臨床的により悪い健康状態にありました。
結論と臨床との関連性:結果は、犬において炎症性乳癌は希であるが、明らかに存在していることを示唆している。皮膚リンパ管との関わりの組織所見は、犬における炎症性乳癌の病理診断となる顕著な特徴だと熟考するべきです。(Dr.Massa訳)
コメント:炎症性乳癌は非常に予後の悪い乳腺腫瘍です。一般的には手術不適応であり、疼痛緩和などの対症療法が主な治療となります。進行が非常に早く、安楽死を選択せざるを得ない場合もあります。
今回の文献においても発生後平均1ヶ月弱で死亡している事からもその進行の速さが伺えます。
★乳腺腺癌の犬の生存率における避妊手術の効果と避妊手術のタイミング
C.B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin
Endocrinol 11[1]:21 Jan-Apr'01 Retrospective
Study 0 Refs ;Effect of Spaying and Timing
of Spaying on Survival of Dogs with Mammary
Carcinoma
背景
全ての犬の乳腺腫瘍のおおよそ半分は悪性です。早期の子宮卵巣摘出手術は、犬の乳腺新生物を引き起こすリスクを減少させることが明らかになりました。上皮由来の犬の、乳腺腫瘍の大多数が卵胞ホルモン(エストロジェン)受容体を示すことから、生殖ホルモンが疾病発生の役割を果たしているかもしれない事を示唆しています。乳腺腫瘍切除時の付随的な避妊手術のいかなる潜在的な利点も不明瞭です。
要約
乳腺腺癌を持つ137頭の犬が3つに分類されました。
1)腫瘍手術前または後、避妊手術されなかった犬(そのまま)
2)腫瘍発生前2年以内にまたは腫瘍手術に付随して避妊手術した犬(避妊手術1)
3)腫瘍発生に2年以上前に避妊手術された犬(避妊手術2)
診断の平均年齢は10.5±2.6歳(レンジ5~17)、組織学的に94頭(68.6%)が管状型、29頭(21.6%)が固形、11頭(8%)が無構造性で、3頭がそれ以外であった。46(32.6%)の腫瘍は脈管内浸潤の証拠が明白でした。乳腺腫瘍診断時に86頭は性的にそのままで、51頭が避妊手術されていました。86頭中22頭は手術に付随して避妊手術された。
そのままのグループの犬はふたつの避妊手術しているグループより無構造性の腫瘍型であった。避妊手術1のグループの犬は調査終了時にまだ生存していました。104頭の死亡例の16頭(12%)はその乳腺腫瘍によって死亡した。64頭(47%)は転移または局所再発のために安楽死させられました。12頭(9%)はその他の原因で死亡しました。12頭(9%)は乳腺癌に無関係な原因で安楽死されました。
避妊手術1のグループは中間生存期間が755日でそのままのグループ(286日)や避妊手術2のグループ(301日)の犬よりかなり長期間生存しました。避妊手術1の犬は、作成されたグループの間で違いを調整した後の、そのまま、または避妊手術2のグループのいずれかの犬と比較して45%長期間生存した。著者は、子宮卵巣摘出手術は、乳腺腫瘍切除手術に付随すると効果的だと結論づけた。
臨床的影響
犬の上皮由来乳腺腫瘍のほとんどはエストロゲン受容体を示している。受容体とポスト受容器の出来事が機能していると仮定すると、そのままの卵巣と内生的なエストロジェンの分泌が成長を刺激し、悪性の乳腺腫瘍の転移を早めることができる。それでも以前の研究は乳房切除手術時の子宮卵巣摘出手術の利点を示していませんでした。この研究から、腫瘍手術前2年以下に避妊手術された犬は腫瘍手術前2年以上あるいはそのままの犬より生存期間がかなり長かった。
著者は子宮卵巣手術と腫瘍発生の長い間隔は、エストロジェン受容器表出の緩やかな減退や、続く卵巣ホルモンの除去の利点の減少と関連していると示唆します。(Dr.Massa訳)