■猫の節足動物媒介性感染症
SE Shaw et al; J Feline Med Surg 3[4]:193-209
Dec'01 Review Article 120 Refs; Arthropod-Transmitted
Infectious Diseases of Cats
節足動物媒介性-寄生微生物疾患が、猫での新たな問題です。それらは、これまでの熱帯地方や亜熱帯地方で、重大な疾患の起こすだけではなく、現在、温暖な気候や、都会的な環境で猫の原因疾患として、ますます認められています。加えて、現在、潜伏感染した猫が、バルトネラ症のような人の節足動物媒介性感染症の、保菌動物となり得るかもしれないということが知られています。これらの疾患の出現は、世界中、都心とその近郊にまで、及ぶダニ分布の拡大、これまでの非流行地域への感染猫の移動、診断のための分子技術の適用と、病原体同定の革命的な進歩など、多数の要因によるものです。(Dr.K訳)
■フランスの南東部、フランスガイアナ、マルティニク、セネガル、そしてコートディヴォアールにおける、犬のQ熱血清保有率の調査
Boni M et al; Vet Microbiol 64[1]:1-5 1998
Nov; Survey of seroprevalence of Q fever
in dogs in the southeast of France, French
Guyana, Martinique, Senegal and the Ivory
Coast.
フランス、フランスガイアナ、マルティニク、セネガル、そしてコートディヴォアールのフランス軍隊に所属する429頭の犬で、血清学的調査を行いました。Coxiella
burnetiiT相、U相抗原に対する血清学的、細胞内の人畜共通寄生体調査を、間接免疫蛍光法により行いました。特異抗体は、マルティニク以外の、フランス(9.8%)、セネガル(11.6%)、コートディヴォアール(8.3%)、フランスガイアナ(5.2%)で認められました。ヒツジと接触していない352頭の犬に比べ、接触している77頭の犬が、有意に高い血清保有率を示しました。我々の結果は、ヒツジと密接に生活している犬が、Coxiella
burnetiiに感染し、人の感染源となり得るかもしれないことを示唆しております。(Dr.K訳)
■日本における、Coxierlla burnetiiに対する抗体の保有率
Htwe KK et al; J Clin Microbiol 1993 Mar;31(3):722-3;
Prevalence of antibodies to Coxiella burnetii
in Japan.
我々は、626人(獣医師275人、肉加工従業員107人、呼吸器障害患者184人、健常人60人)の血清サンプルを用い、Coxiella
burnetii抗体の保有率を、間接免疫蛍光検査により評価しました。C.burnetiiのT相とU相抗原に対し、それぞれ54人(8.6%)と103人(16.5%)が、陽性反応を示しました。健常人と呼吸器障害患者で、割合は異なりました。抗体保有率は、動物と密接に接触している健常人(例えば、獣医師と肉加工従業者)に関し、高くなりました。(Dr.K訳)
■日本の家庭猫における、Coxiella burnetiiの血清疫学的調査
Morita C et al; Microbiol Immunol 1994;38(12):1001-3;
Seroepidemiological survey of Coxiella burnetii
in domestic cats in Japan.
猫は、特に都市部における、人のQ熱を媒介する重要な保菌動物の一つであると仮定されています。これまでに、日本の猫における、Coxiella
burnetii感染症のいかなる証拠もありません。日本の各地域から集めた、100頭の猫の血清を、C.burnetiiに対する抗体に関して検査しました。100検体のうち、16検体から、C.burnetii抗体が検出されました。抗体の保有率は、日本の北東から、南西にかけて減少しました。抗体の高い保有率は、4歳以上の猫で観察されました。猫が、日本における、人のQ熱の重要な感染源の一つであるかもしれないということを否定することは難しいです。(Dr.K訳)
■パラフィン包埋した臨床サンプルでCoxiella
burnetii のDNAを検出するためのPCRを用いた、日本における慢性Q熱の回顧的調査
Yuasa Y et al; J Clin Microbiol 1996 Apr;34(4):824-7;
Retrospective survey of chronic Q fever in
Japan by using PCR to detect Coxiella burnetii
DNA in paraffin-embedded clinical samples.
我々は、病因が未解明であった慢性心内膜炎の患者から得たパラフィン包埋組織において、Coxiella
burnetiiのDNAを検出するためPCRを用いました。発表されたC.burnetii
htpB遺伝子の核酸配列に基づいて、285bpの増幅フラグメントを産生するため、プライマーを選択しました。56患者からの合計60サンプルを用いて、C.burnetii
DNAの存在を検査しました。4人の患者からの5サンプルが、陽性となりました。増幅DNAフラグメントの全てが、C.burnetiiの公表された配列から予測されたTthHB8I限定領域を所有してました。4人の陽性患者の1人に、リケッチア様の粒子が、ギムザ染色した組織切片に認められました。これは、日本における慢性Q熱の最初の報告です。(Dr.K訳)
■北海道における、乳牛のCoxiella burnetii抗体の出現における季節性変化
Yanase T et al; Microbiol Immunol 1997;41(2):73-5;
Seasonal variations in the presence of antibodies
against Coxiella burnetii in dairy cattle
in Hokkaido, Japan.
乳牛におけるCoxielaa burnetii感染の罹患率と季節性変化を、北海道の農家で、免疫蛍光抗体法を用いて血清疫学的に調査しました。1993年8月から、1995年10月にかけて、農場の2つの牛舎における、28頭の雌牛からの、合計364血清サンプルを集めました。抗体陽性雌牛の数と、それらの抗体力価は、夏に減少し、冬に有意に高くなることがわかりました。さらに、抗体は約5ヶ月で抗体陽転した雌牛において、検出可能となりました。(Dr.K訳)
■日本での飼鳥と野鳥におけるコクシエラ症
To H et al; J Wildl Dis 1998 Apr;34(2):310-6;
Coxiellosis in domestic and wild birds from
Japan.
顕微鏡凝集反応(MA)テストにより、日本17県からの飼鳥1,951羽中41羽(2%)と、5県からの野鳥863羽中167羽(19%)において、Coxiella
burnetii感染の血清学的証拠が認められました。ネスティッドPCRにより、飼い鳥の41羽中17羽(41%)と、野鳥の167羽中37羽(22%)に、感染の細菌学的証拠が得られました。また、5羽のハシブトカラス(Corvus
macrorhynchos) (それらの血清はMAテストとPCRともに陽性)からの、血清、脾臓、そして糞標本の、実験室マウス接種によりC.burnetiiが分離されました。家庭ウズラ(Coturnix
coturnix japonica)(3%)、家庭タイワンアヒル(Cairina
moschata) (3%)、家庭鶏(2%)、家庭マガモ(Anas
platyrhynchos domesticus) (2%)、ハシボソカラス(Corvus
corone) (37%)、ハシブトカラス(35%)、そして野生カワラバト(Columba
livia) (6%)が、C.burnetiiに対する検査で、血清学的陽性を示しました。感染した家畜に密接して生活、あるいは摂食している鳥の間で、高い保菌率の傾向がありました。これは、鳥がC.burnetii感染症の伝播様式を保つのに、主要でないものの一つであるということを、示唆しています。(Dr.K訳)
■岡山県の犬舎で、クリイロコイタマダニが付着した犬におけるダニ媒介性疾患の調査
Inokuma H et al; J Vet Med Sci 60[6]:761-3
1998 Jun; Survey of tick-borne diseases in
dogs infested with Rhipicephalus sanguineus
at a kennel in Okayama Prefecture, Japan.
岡山県の犬舎で、クリイロコイタマダニが付着した犬における、ダニ媒介性疾患の範囲を調査するため、血清学的検査を行いました。22頭中3頭(13.6%)は、
Ehrlichia canis陽性でした。19頭中2頭(10.5%)は、Rickettsia
japonica陽性でした。22頭中3頭(13.6%)は、Babesia
gibsoni陽性でした。これらの動物のうちCoxiella
burnetii や、Hepatozoon canis陽性のものはありませんでした。吸血した雌ダニからの血リンパドロップスメア中に、ミクロフィラリアが認められましたが、種は分かりませんでした。これらのダニは、日本において稀とされる家庭犬への病原体伝播を起こし得ます。(Dr.K訳)
■日本における、Coxiella burnetii感染症に関する認知の進歩
Hirai K et al; J Vet Med Sci 1998 Jul;60(7):781-90;
Advances in the understanding of Coxiella
burnetii infection in Japan.
Q熱は、リケッチア属のCoxiella burnetiiによって起こる人畜共通感染症です。1937年における最初の記述以来、世界中多くの国に発生が認められています。人におけるQ熱と、動物におけるコクシエラ症の血清学的証拠は、1950年代に日本で報告されましたが、1989年に急性Q熱患者から、C.burnetiiの分離が報告されるまで、疾患の系統的研究は始まりませんでした。疾患の疫学に関する膨大な情報に加えて、C.burnetiiが日本人から分離されることが、近年、急速に増加しています。この評論は、日本におけるC.burnetiiの分離に関するいくつかの特徴と一緒に、疾患の疫学を、5つの区分、すなわち、コクシエラ感染症、Q熱、伝播様式、感染症の検査診断と、日本で分離されたいくつかの特徴に要約しました。この評論は、我々と、他のグループからの、未発表である最近の資料を含んでおります。(Dr.K訳)
■繁殖障害を持った乳牛における、Coxiella
burnetii感染症の罹患率
To H et al; J Vet Med Sci 1998 Jul;60(7):859-61;
Prevalence of Coxiella burnetii infection
in dairy cattle with reproductive disorders.
繁殖障害のある乳牛207頭における、Coxiella
burnetiiの罹患率を、間接免疫蛍光抗体法(IF)、ネスティッドPCR法、そして分離を用いて調査しました。C.burnetii抗原のT相とU相に対するIF抗体が、それぞれ、122頭(58.9%)と、125頭(60.4%)の血清で認められ、PCR陽性は、8頭(3.9%)の血清サンプルと、51頭(24.6%)の乳汁サンプルで、認められました。さらに、実験マウス接種によって、51頭(24.6%)の乳汁サンプルから、C.burnetiiが分離されました。結果は、IF検査とPCRは、牛のコクシエラ症の診断に、有用であるということを示唆しています。繁殖障害を持つ乳牛が、日本での動物と人の両者における、C.burnetii感染源の重要な保菌動物の一つであるかもしれないということを、否定するのは困難です。(Dr.K訳)
■乳牛舎の粉塵からの、Coxiella burnetiiの検出
Yanase T et al; Microbiol Immunol 1998;42(1):51-3;
Detection of Coxiella burnetii from dust
in a barn housing dairy cattle.
我々は、PCRにより乳牛の牛舎から集めた粉塵サンプル内のCoxiella
burnetiiの検出を試みました。10個所の粉塵サンプル(換気扇5箇所、横げた5箇所)を、札幌近郊にある牛舎内2箇所から集めました。C.burnetiiは、10箇所中5箇所のサンプルから検出されました。C.burnetiiによる空気汚染が、牛舎内で起こると思われました。(Dr.K訳)
コメント:先日、テレビで放送されておりました、人の慢性疲労症候群の原因菌の一つとして、紹介されていた、Coxiella
burnetiiをキーワードに要約を検索してみました。このような、ネタを考えるマスコミの人たちに、感心してしまいましたが、これを見た人たちが、過剰に刺激されないよう、情報の冷静な解釈も必要であると感じました。ちなみに、獣医師の抗体保有率は、高いようですね。
動物のC.burnetiiに関する検査は、下記のURLを参考にして下さい。
http://www.kitasato.or.jp/rcb/kical/index.html#menu