■猫の線維芽細胞成長因子(FGF)-23に対する参照範囲の確立
Establishing a Reference Interval for Fibroblast Growth Factor (FGF)-23 in Cats
Animals (Basel). 2024 Jun 3;14(11):1670.
doi: 10.3390/ani14111670.
Sandra Lapsina , Jennifer von Luckner , Nicole Nagler , Simon Franz Müller , Elisabeth Müller , Ingo Schäfer
Affiliations expand
線維芽細胞増殖因子(FGF)-23は、phosphaturic hormoneである。FGF-23濃度の上昇と慢性腎臓病(CKD)の進行との関係は、猫、犬、ヒトで証明されている。猫のFGF-23の参照範囲(RIs)に関する情報は限られている。
我々の目的は、臨床的に健康な猫の大規模集団でRIsの確立と、性別と年齢の相関を調査することだった。
目立つもののない全血数と血清化学プロフィールの合計118頭の猫を含めた。臨床的に病気の猫、併発疾患の猫、CKDの疑い、腎臓食を食べている猫は除外した。FGF-23濃度は、FGF-23 ELISAキットで測定した。RIsは参照範囲アドバイザーソフト(Microsoft Excel)2.1で算出した。
FGF-23濃度は性別および年齢と相関した。FGF-23濃度に対するRIは、85.8-387.0pg/mL(90%CI:下限40.5-103.9pg/mL、上限354.6-425.0pg/mL)にわたった。年齢(p=0.081)あるいは性別(p=0.191)に有意な関連は検出されなかった。同じ診断測定法の他の研究は、79頭の猫で算出したRIsは56-700pg/mL、108頭の猫で<336pg/mLで、この研究と一致し、性別あるいは年齢といずれの相関も検出されなかった。(Sato訳)
■急性腎傷害の犬の貧血
Anemia in Dogs with Acute Kidney Injury
Vet Sci. 2024 May 13;11(5):212.
doi: 10.3390/vetsci11050212.
Ilaria Lippi , Francesca Perondi , Giulia Ghiselli , Sara Santini , Verena Habermaass , Veronica Marchetti
CKDの犬の貧血は良く知られている合併症だが、AKIの犬におけるその頻度はあまり調査されていない。
この研究の目的は、IRISグレード、病因、治療および結果に関連する貧血の頻度、重症度、再生率を回顧的に評価することだった。
AKIに一致する病歴、検査及び超音波所見の犬(2017-2023)の医療記録を回顧的に再調査した。病因に従い、AKIを虚血性/炎症性(IS)、感染性(INF)、腎毒性性(NEP)、閉塞性(OBS)、不明(UK)に分類した。またAKIの犬は治療管理(内科vs.血液透析)、退院(生存者vs.非生存者)に従い分類した。貧血はHCT<37%と定義し、軽度(HCT30-37%)、中程度(HCT20-29%)、重度(13-19%)、非常に重度(<13%)に分類した。貧血は小赤血球性(MCV<61fL)、正赤血球性(61-73fL)、大赤血球性(>73fL)に分類した。貧血は低色素性(MCHC<32g/dL)、正色素性(32-38g/dL)、高色素性(>38g/dL)と考えた。再生率は、欠如(RET≦60000/μL)、軽度(61000-150000/μL)、中程度(>150000/μL)と考えた。
合計120頭のAKIの犬を研究に含め、貧血は86/120頭(72%)で認められた。貧血の重症度は32/86頭(37%)で軽度、40/86頭(47%)で中程度、11/86頭(13%)で重度、3/86頭(3%)で非常に重度だった。貧血は71/86頭(83%)で正色素性、12/86頭(14%)で高色素性、3/86頭(3%)で低色素性だった。56/86頭(65%)は正赤血球性貧血、27/86頭(31%)は小赤血球性貧血、3/86頭(4%)は大赤血球性貧血を呈した。非再生性貧血は76/86頭(88%)で認められた。
貧血の頻度は、IRISグレードの進行で有意に増加した(p<0.0001)が、IRISグレードの中で見つかった貧血の重症度に有意差はなかった。全てのIRISグレードにおいて、貧血の非再生性型の頻度は再生性型よりも有意に高かった(p<0.0001)。
我々のAKIの犬集団において、貧血は非常に頻度の高い所見で、ヒトの腎臓学における現在の所見と一致する。(Sato訳)
■犬のアンギオテンシン変換酵素阻害薬投与後の腎機能悪化に対するリスク因子の回顧的評価
Retrospective evaluation of risk factors for worsening renal function after angiotensin-converting enzyme inhibitor treatment in dogs
J Vet Intern Med. 2024 Nov 20.
doi: 10.1111/jvim.17252. Online ahead of print.
Yelim Lee , Minju Baek , Dongseop Lee , Jinyeong Park , Yeon Chae , Byeong-Teck Kang , Taesik Yun , Hakhyun Kim
背景:アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)は、腎機能を悪化させる(WRF)原因となる可能性がある。ゆえに、ACEi療法開始後1-2週間で腎機能の再評価が勧められる。
目的:心疾患、蛋白尿、全身性高血圧に対し、ACEiの投与を受けている犬において、WRFのリスク因子を確認する
動物:ACEiを投与されている飼い犬156頭を含めた。
方法:血清クレアチニン(sCr)濃度をWRF(sCr≧0.3mg/dLの上昇)の検出とグレード付のため、初診時と最初の再評価時に測定した。グレード1(非高窒素)、2(軽度)、3(中から重度)WRFは、それぞれsCrが≦1.6mg/dLを維持、1.7-2.5mg/dL上昇、2.6-5.0mg/dLの上昇と特徴づけた。初診時の個体群統計および総蛋白値、アルブミン、血中尿素窒素、クレアチニン、対称性ジメチルアルギニン、血糖値、トリグリセリド、総コレステロール濃度、血清電解質濃度のような血清化学データを評価した。ACEiで治療後のWRFに対するリスク因子を多変量モデリングで確認した。
結果:ACEi治療後の腎機能の悪化は、27/156頭(17%、95%CI、0.11-0.23)で確認された。グレード1、2、3にそれぞれ17頭、2頭、8頭が分類された。唯一の有意なACEiを投与された犬のWRFに関係する因子は、フロセミドの併用(オッズ比、5.05;95%CI、2.05-12.4;P<.001)と既存の高窒素血症(オッズ比、3.21;95%CI、1.28-8.03;P=.01)だった。
結論と臨床的重要性:WRFは一般的ではなく、軽度だが、フロセミドを投与されている、あるいは既存の高窒素血症のある犬ではACEiを慎重に処方するべきである。(Sato訳)
■腎性蛋白尿のある犬の血栓性疾患に関係する因子:150症例の回顧
Factors associated with thrombotic disease in dogs with renal proteinuria: A retrospective of 150 cases
J Vet Intern Med. 2023 Dec 26.
doi: 10.1111/jvim.16973. Online ahead of print.
Luca Fortuna , Harriet M Syme
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背景:腎性蛋白尿のある犬の中で血栓性疾患(TD)に対する追加のリスクファクターの知識は限られている;それらは、全身性動脈(AT)、全身性静脈(VT)、肺循環(PT)に影響するTDで異なるかもしれない。
仮説/目的:腎性蛋白尿のある犬でTDのある犬とない犬、AT、VT、PTのある犬の間でシグナルメントおよび臨床病理学的データを比較する
動物:回顧的症例-対照研究。データベース検索(2004-2021)で、TDがある、TDがない蛋白尿の犬(UPC>2)を確認した。臨床病理学的データは記録から入手した。TD群と非TD群は、二項ロジスティック回帰で比較し、AT、VT、PT群は多項式回帰で比較した。正常なデータは平均±SDで、非正常なデータは中央値(25th、75th百万分位数)で表した。
結果:キャバリアキングチャールズスパニエルはTD群で多く見られた(OR=98.8、95%CI:2.09-4671、P=.02)。NTD症例と比べ、TD症例は血中の好中球の濃度がより高く(11.06(8.92,16.58)x10(9)/L vs 7.31(5.63、11.06)x10(9)/L、P=.02)、好酸球の濃度はより低く(0(0、0.21)x10(9)/L vs 0.17(0.04、0.41)x10(9)/L、P=.002)、血清アルブミンはより低かった(2.45±0.73g/dL vs 2.83±0.73g/dL、P=.04)。AT症例はVT症例よりも血清アルブミン濃度が高く(2.73±0.48g/dL vs 2.17±0.49g/dL、P=.03)、PT症例よりも年齢が上だった(10.6±2.6歳 vs 7.0±4.3歳、P=.008)。VT症例は、PT症例よりも年齢が上で(9.1±4.2歳 vs 7.0±4.3歳、P=.008)、血清コレステロール濃度が高かった(398(309-692mg/dL )vs 255(155-402mg/dL)、P=.03)。
結論と臨床的重要性:血栓のできる部位の違いは、病因の違いを反映することができた。(Sato訳)
■犬の慢性腎臓病に対するオリゴ-フコイダン、フコキサンチン、L-カルニチンの効果
Effect of Oligo-Fucoidan, Fucoxanthin, and L-Carnitine on Chronic Kidney Disease in Dogs: A Retrospective Study
Animals (Basel). 2024 Jun 5;14(11):1696.
doi: 10.3390/ani14111696.
Naeun Hong , Ju-Hyun An , Sung-Soo Kim , Su-Min Park , Ga-Hyun Lim , Ye-In Oh , Kyoung-Won Seo , Hwa-Young Youn
慢性腎臓病(CKD)は、老齢の犬猫で一般的に発生する。オリゴ-フコイダン、フコキサンチン、L-カルニチン(OFL)合剤は、抗炎症、抗酸化、抗繊維化効果を含む種々の腎臓保護特性を持つ。
それらの効果は自然発生の犬のCKDにおいて調査されていないため、CKDの犬においてそれらの腎臓保護活性を調査した。
合計50頭(OFL、n=28;コントロール、n=22)をこの分析に含めた。6か月時にコントロールとOFL群の間に、血清血中尿素窒素とクレアチニン濃度の有意差を確認した。群間の電解質の有意差は見られなかった。6か月時の高窒素血症(CKD IRISステージ2-4)のコントロール群とOFL群の間に、血清クレアチニン濃度の有意差を確認した。
このOFL合剤は、過去の動物研究に一致する腎臓保護効果を示した。OFLの併用は、犬のCKDの進行を潜在的に遅らせることができ、補助療法として使用できる。(Sato訳)
■アンギオテンシン変換酵素阻害薬で治療した蛋白尿(UPC>2.0)の犬の反応と生存性
Response and survival of dogs with proteinuria (UPC > 2.0) treated with angiotensin converting enzyme inhibitors
J Vet Intern Med. 2023 Oct 10.
doi: 10.1111/jvim.16864. Online ahead of print.
Emily A Fulton , Alix R McBrearty , Darren J Shaw , Alison E Ridyard
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背景:アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)は、糸球体性蛋白尿に対して勧められる治療である。ACEiに対する反応の頻度、提案される尿タンパク/クレアチニン比(UPC)目標達成と生存性の関係は不明である。
目的:ACEi療法に対する反応率と、ポジティブな反応が生存性の改善に関係するのかどうかを判定する
動物:蛋白尿(UPC>2.0)の犬85頭
方法:蛋白尿の治療でACEiを処方している犬(UPC>2.0)を含めた回顧的研究。基礎クレアチニン、アルブミン、コレステロール、UPC、収縮期血圧を記録し、追跡したUPCを再検討した。治療反応は、3か月以内のUPC<0.5あるいは基礎値からの50%以上の削減達成と定義した。結果のデータは、総及び12か月生存性を判定するために収集した。
結果:35頭(41%)の犬は、ACEiの治療に反応した。治療反応は生存期間中央値(反応犬は664日(95%CI,459-869日);非反応犬は177日(95%CI,131-223日))および12か月生存性(生存は反応犬の79%;非反応犬の28%)両方と統計学的に関係した。基礎の高窒素血症あるいは低アルブミン血症もより悪い予後と関係し、12か月時の死亡のオッズ比はそれぞれ5.34(CI:1.85-17.32)と4.51(CI:1.66-13.14)だった。正常な基礎クレアチニンおよびアルブミンの犬25頭において、治療への反応は、12か月生存性と関係した(生存は反応犬の92%;非反応犬の54%、P=.04)。
結論と臨床的重要性:UPCが>2.0の時、3か月以内の提案されるUPCの目標達成は、有意な生存性の恩恵と関係すると思われる。重症度の低い犬(高窒素血症や低アルブミン血症がない)において、いまだ治療に対する反応は生存性の恩恵と関係する。(Sato訳)
■犬の安定した腎機能と進行性の機能障害の鑑別
Differentiation of stable kidney function versus progressive dysfunction in dogs
J Vet Intern Med. 2023 Oct 20.
doi: 10.1111/jvim.16885. Online ahead of print.
Larry D Cowgill , Gilad Segev , Shelly Vaden , Sheri Ross , Cedric Dufayet , Leah A Cohn , Mary Nabity , Giosi Farace , Donald Szlosek , Zenhwa Ouyang , Sarah Peterson , Melissa Beall , Murthy Yerramilli , David Polzin
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背景:循環クレアチニンと対称性ジメチルアルギニン(SDMA)は腎機能のバイオマーカーで、安定vs進行性慢性腎臓病(CKD)を定義するため多様に使用されている。バイオマーカーの値の逆数(クレアチニン(-1)あるいはSDMA(-1))の勾配モニタリングは有望性が示されているが、このアプローチを使用した安定vs進行性CKDの鑑別を行うための量的基準が欠如している。
目的:安定vs進行性CKDを鑑別するクレアチニン(-1)およびSDMA(-1)勾配カットオフ値の評価
動物:110頭の臨床的に健康な大学スタッフの飼い犬と、 進行性X連鎖性遺伝性 腎症(XLHN)の19頭のオスのコロニー犬
方法:最大3年の健康犬(HDs)における2前向き観察研究、1腎機能バイオマーカーの追跡、最大1年の進行性HLHNのオスのコロニー犬における1腎機能バイオマーカーの追跡を組み合わせた回顧的解析。HDのクレアチニン(-1)あるいはIDEXX SDMAを用いて測定したSDMA(-1)の最小勾配を、安定腎機能に対する勾配カットオフ値として割り当てた。
結果:安定vs進行性勾配カットオフ値は、クレアチニン(-1)に対し-0.0119週 x dL/mgで、SDMA(-1)に対し-0.0007週 x dL/μgだった。
結論と臨床的重要性:研究したCKD集団において、進行性の機能障害は、クレアチニン(-1)あるいはSDMA(-1)の勾配を用いて、安定腎機能と鑑別できる。それらの基準は、犬の他の集団におけるCKDを特徴づけること、および自然発生のCKDの犬の進行率の程度に対するガイドラインの設置に役立つかもしれない。(Sato訳)
■犬の超音波ガイド下による経皮的腎嚢胞硬化療法においてより低いエタノール濃度(83%)を使用した結果のまとめ
Review of outcomes of using lower ethanol concentration (83%) in percutaneous ultrasound-guided renal cyst sclerotherapy in dogs
J Vet Sci. 2023 Aug 7.
doi: 10.4142/jvs.23045. Online ahead of print.
Sanghyeon Yoon , Jungmin Kwak , Deokho Im , Hakyoung Yoon
背景:腎嚢胞に対する治療として経皮的腎嚢胞硬化療法(PRCS)には、通常は高濃度のエタノール(90%以上)で実施される。この研究は、犬のその処置に対し、より低い濃度のエタノール(83%)を使用した症例を再調査した。
方法:犬で83%エタノールを使用し、硬化療法で治療した腎嚢胞の症例の記録を再調査した。治療結果は、治療前の腎嚢胞の容積と治療後の容積の比較により評価し、減容積率は超音波像を使用し以下に分類した:最初の容積の<50%(失敗);最初の容積の≧50%だが<80%(部分的成功);最初の容積の≧80%だが<95%(大きな成功);最初の容積の≧95%(完全な成功)。
結果:9頭の犬の腎臓のうち、83%エタノールでの腎嚢胞硬化療法で1つの腎臓は部分的成功、4つは大きな成功、あとの4つは完全な成功だった。副作用は観察されなかった。減容積率の平均は、90.00±11.00だったが、最小および最大減少率はそれぞれ65%と100%だった。
結論:より低い濃度のエタノール(83%)は、PRCSにおける腎臓の消毒に良い。(Sato訳)
■慢性腎臓病の犬において蛋白尿に関係する鉄とトランスフェリンの尿中喪失に対する最初の研究
The first study on urinary loss of iron and transferrin in association with proteinuria in dogs with chronic kidney disease
Vet World. 2023 Jan;16(1):154-160.
doi: 10.14202/vetworld.2023.154-160. Epub 2023 Jan 26.
Nawat Sannamwong , Chollada Buranakarl , Saikaew Sutayatram , Monkon Trisiriroj , Thasinas Dissayabutra
Free PMC article
背景と目的:貧血は慢性腎臓病(CKD)の生存において重要なファクターの1つである。CKDでの貧血は、エリスロポエチンの産生不足、鉄とその結合蛋白の利用能不足のような種々の因子と関係する。総鉄結合能(TIBC)と鉄濃度の減少は、蛋白尿と共にそれらの尿中喪失と関係しているかもしれない。この研究の目的は、蛋白尿の程度に関係した鉄およびトランスフェリン(TF)の尿中喪失を調べることだった。
素材と方法:この研究はCKDの犬37頭で行った。犬は平均尿蛋白クレアチニン比(UPC)比が<4と>4を基に蛋白尿の重症度に従い、2群に振り分けた。ヘマトクリット(HCT)、血液化学、血漿鉄、血漿TF、UPC比、尿中鉄/クレアチニン非(U-Iron/CR)、尿中TF/クレアチニン比(U-TF/CR)を評価した。
結果:貧血は、CKDのステージングがより高い時のHCTの低下により証明された腎障害の重症度と関係した。UPC比>4の犬は、U-Iron/CR(p<0.01)とU-TF/CR(p<0.001)のより高い尿中喪失があり、血漿TIBC(p<0.001)が低かった。UPC比はU-Iron/CR(r=0.710、p<0.001)とU-TF/CR(r=0.730、p<0.001)と正の関連があったが、TIBC(r=-0.462、p<0.01)では負だった。
結論:蛋白尿は、鉄とTFの尿中喪失と関係し、CKDの貧血の一因かもしれない。(Sato訳)
■犬と猫の高血圧緊急症の症状、治療、結果の評価:15症例(2003-2019)
Evaluation of presentation, treatment and outcome in hypertensive emergency in dogs and cats: 15 cases (2003-2019)
J Small Anim Pract. 2022 Jul 10.
doi: 10.1111/jsap.13530. Online ahead of print.
D Beeston , R Jepson , S Cortellini
目的:高血圧緊急症は、ヒトの医療でよく認識されているが、獣医療では限られている。この研究の目的は、高血圧緊急症の犬と猫の症状、治療、結果を判定することだった。
素材と方法:以下のように確認した高血圧緊急症の犬と猫の遡及的ケースシリーズ:非侵襲性ドップラー収縮期血圧が180mmHg以上で、急性の発作の発現、精神状態の変化±横臥あるいは視覚消失を含む標的器官ダメージを伴う急性の病歴。シグナルメント、病歴、身体検査及び臨床病理所見、収縮期血圧、抗高血圧治療と結果を含むデータを集めた。
結果:発作(n=9)、視覚消失(n=4)、精神状態の変化+横臥(n=2)あるいは-横臥(n=2)を呈する7頭の犬と8頭の猫を含めた。年齢中央値は9歳(範囲1-15)で、受診前の臨床症状の持続期間は1.5日(範囲1-15)だった。受診時の収縮期血圧の中央値は230mmHg(範囲190-300)だった。アムロジピンが一般的な第一選択薬(n=10)で、続いてヒドララジン(n=4)、高張生理食塩水(n=1)だった。高血圧緊急症の病因は、急性腎傷害(n=9)、特発性高血圧(n=3)、甲状腺機能亢進症(n=1)、リンパ腫(n=1)、推定的皮膚および腎臓糸球体腎症(n=1)だった。5頭の猫と3頭の犬は生存し、総生存率は53.3%だった。
臨床的意義:このシリーズで高血圧緊急症は、様々な症状を呈していた。大多数で、急性腎傷害は高血圧の原因と考えられた。症例のほぼ半数が生存できなかったことを考慮し、高血圧緊急症に対する治療の今後の評価が求められる。(Sato訳)
■急性腎傷害から回復した犬の長期結果:132症例
Long-term outcome of dogs recovering from acute kidney injury: 132 cases
J Vet Intern Med. 2022 Apr 28.
doi: 10.1111/jvim.16435. Online ahead of print.
Mali Bar-Nathan , Hilla Chen , Dar Rimer , Gilad Segev
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背景:急性腎傷害(AKI)から回復した犬の長期結果に関する情報は限られている。
目的:AKIから回復した犬の長期結果を調べ、血清クレアチニン濃度(sCr)正常化と長期結果に対する予測因子を確認する
動物:退院後30日以上生存したAKIの犬132頭
方法:回顧的研究。生存して退院したAKIと診断された犬の医療記録の検索。フォローアップデータを医療記録とオーナーあるいは主治医あるいはその両方への電話による聞き取りから回収した。
結果:推定の生存期間中央値(MST)は1322日(95%CI、1147-1626)で、76%の犬は最終連絡時に生存していた。sCrの正常化は、退院時に55%の犬で認められ、加えて20%がフォローアップ期間中に認められた。sCrの正常化した犬の比率は、AKIグレードの上昇とともに低下した(P=.02)。長期生存はsCr正常化と関係しなかった(P=.63)。病因は長期結果と関係した(P=.004)。
結論と臨床的重要性:AKIの犬の長期生存は、過去に述べられたものより長い。99頭(75%)のsCrは退院時、あるいはフォローアップ期間内に正常化した。sCrの正常化は長期生存と関係しなかった。おそらくは、CKD進行率が緩やかなため、sCrが正常化した犬の推定MSTは、高窒素血症の慢性腎臓病(CKD)を発症した犬と比べて差がなかった。病因はsCrの正常化と長期生存の判定に重要なファクターの1つで、その重症度よりも腎臓傷害の可逆性の重要性を強調するものである。(Sato訳)
■犬の急性腎傷害:病因、臨床および臨床病理所見、予後マーカー、結果
Acute kidney injury in dogs: Etiology, clinical and clinicopathologic findings, prognostic markers, and outcome
J Vet Intern Med. 2022 Feb 1.
doi: 10.1111/jvim.16375. Online ahead of print.
Dar Rimer , Hilla Chen , Mali Bar-Nathan , Gilad Segev
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背景:急性腎傷害(AKI)は一般的で、致死的状況の可能性を持つ。
目的:AKIの犬の病因、臨床および臨床病理所見、入院期間、結果の特徴を述べ、ネガティブな予後のマーカーを確認する。
動物:獣医教育病院でAKIと診断し入院した飼い犬249頭
方法:回顧的研究。AKIの犬に対する医療記録の検索。
結果:一般的な臨床症状は元気消失(225/249、90%)、食欲不振(206/249、83%)、嘔吐(168/249、68%)だった。病因には虚血/炎症(144/249、58%)、感染(19/249、8%)、腎毒性(14/249、6%)、その他(13/249、5%)が含まれた。院内感染性のAKIは9%(23/249)の犬で診断された。初診及びピークの血清クレアチニン(sCr)濃度中央値は、4mg/dL(範囲、1.1-37.9)と4.6mg/dL(範囲、1.1-43.1)だった。犬のAKIの分類は、グレードI、6(2%)、グレードII、38(15%)、グレードIII、89(36%)、グレードIV、77(31%)、グレードV、39(16%)だった。164頭(66%)の犬は生存した。死亡とAKIグレードには正の関係があった(P=.009)。症例死亡率は無尿ではない犬と比べ、無尿の犬でより高かった(28%vs50%;オッズ比(95%CI):2.5(1.39-4.6);P=.002)。47頭(18.8%)の犬は血液透析を実施し、そのうち60%は生存した。
結論と臨床的重要性:AKIの2/3の犬は生存した。院内感染性のAKIは一般的だった。無尿の存在、AKIグレード、他の臓器の関与を反映したAKIの重症度は結果と関係した。(Sato訳)
■健康及び慢性腎臓病(CKD)の犬はメタボロミクスに違いがあり、腎臓食は病気の進行を遅らせるかもしれない
Healthy and Chronic Kidney Disease (CKD) Dogs Have Differences in Serum Metabolomics and Renal Diet May Have Slowed Disease Progression
Metabolites. 2021 Nov 16;11(11):782.
doi: 10.3390/metabo11110782.
Marcio Antonio Brunetto , Bruna Ruberti , Doris Pereira Halfen , Douglas Segalla Caragelasco , Thiago Henrique Annibale Vendramini , Vivian Pedrinelli , Henrique Tobaro Macedo , Juliana Toloi Jeremias , Cristiana Fonseca Ferreira Pontieri , Fernanda Maria Marins Ocampos , Luis Alberto Colnago , Marcia Mery Kogika
Free PMC article
犬の慢性腎臓病(CKD)は有病率が高く、メタボローム解析は、CKDの食餌の役割をより理解するために近年導入されている。
この研究の目的は、健康な犬(CG)とCKDの犬(CKD-T0とCKD-T6)で、食餌が代謝物質に影響するかどうか評価するために血清メタボロームプロフィールを比較することだった。
CKDステージ3あるいは4(IRIS)の6頭(メス5頭;オス1頭;7.47±2.31歳)を含めた。CGは、10頭の健康なメス犬(5.89±2.57歳)でメンテナンス食を与えていた。血清代謝物は1H 核磁気共鳴(1H NMR)スペクトラで解析した。主成分分析法(PCA)および部分的最小二乗判別分析(PLS-DA)を、腎臓食を与える前(CKD-T0)および与えた後(CKD-T6)の群でメタボロームプロフィールの違いを評価するために実施した。データ解析はCIMCA-Pソフトウェアで実施した。
CKDの犬は、尿素、クレアチニン、クエン酸、脂質の増加を伴う代謝物プロフィールの変化を示した。CKD群の乳酸、分岐鎖アミノ酸(BCAAs)およびグルタミンは低下した。しかし、食餌を与えて6か月後、CKD-T0とCKD-T6の代謝プロフィールは似ていた。メタボロームプロフィールは代謝機能障害およびCKDの進行の評価と認識に有効かもしれず、その食餌はCKDの進行を維持および遅らせるのに役立っていると思われる。(Sato訳)
■犬や猫における唾液中尿素検査紙:予備研究
A saliva urea test strip for use in feline and canine patients: a pilot study
J Vet Diagn Invest. 2022 Apr 12;10406387221086917.
doi: 10.1177/10406387221086917. Online ahead of print.
Matthew R Nickel , Hillary M Sweet , Albert Lee , Kaylee Bohaychuk-Preuss , Connie Varnhagen , Merle Olson
高窒素血症に対するスクリーニング検査の即時、非侵襲的方法として、唾液中尿素検査紙(Kidney-Chek; SN Biomedical)を評価した。
この検査は半定量的な方法で、7段階の唾液中尿素濃度で間接的に血清尿素<3から>17mmol/Lを評価する。
血清尿素1.3-37mmol/Lの犬92頭(14頭が高窒素血症)と、4.1-89.3mmol/Lの猫56頭(16頭が高窒素血症)を登録した。
各動物種において唾液中尿素と血清尿素に対する正の相関が見つかった(犬: rs = 0.30, p < 0.005; 猫: rs = 0.50, p < 0.001)。半定量的データを、記載範囲の中心点の各濃度であると考えて連続的データに変換後、受信者操作特性曲線分析は、犬の曲線下面積0.81、猫の0.83で検査所の参照範囲(犬:2.1-11.1mmol/L;猫:5-12.9mmol/L)上限以上の血清尿素検出に対し、良好なパフォーマンスを示した。
著者らは、より高い検査結果の高窒素血症を確実に確認できないことで、この検査は除外試験として使用することを推奨した。検査紙の読みが≧9-11mmol/Lの犬、≧12-14mmol/Lの猫に対する追加の調査が勧められる。(Sato訳)
■蛋白喪失性腎症の犬においてアスピリンあるいはクロピドグレル投与中の血小板凝集測定試験とクロピドグレル代謝物濃度の測定値
Platelet aggregometry testing during aspirin or clopidogrel treatment and measurement of clopidogrel metabolite concentrations in dogs with protein-losing nephropathy.
J Vet Intern Med. 2020 Jan 25. doi: 10.1111/jvim.15694. [Epub ahead of print]
Shropshire S, Johnson T, Olver C.
背景:蛋白喪失性腎症(PLN)の犬は血栓予防のため、抗血小板薬で治療されるが、薬剤の反応を調べる標準化された方法は存在しない。健康犬とPLNの犬の間でクロピドグレル代謝物濃度(CM)が異なるのかどうかも不明である。
目的:健康犬とPLN犬のCMの比較と、PLN犬の血小板凝集測定(PA)を用いたアスピリンあるいはクロピドグレルに対する反応を評価する
動物:健康犬6頭とPLN犬14頭
方法:健康犬で応答犬あるいは非応答犬を確認するため、アデノシン二リン酸(ADP)、アラキドン酸(AA)、生理食塩水を用いた血小板凝集測定を基準、クロピドグレル投与から1週間後に実施した。応答犬の定義には、服用から1あるいは3時間目、ADPに対し≧60%の減少あるいはAAに対し≧30%の減少とした。クロピドグレル投与後1および3時間後に健康犬とPLN犬のCMとPAを測定した。血小板凝集測定は、PLN犬でクロピドグレルあるいはアスピリン投与前、投与後1、6、12週間目で実施した。
結果:クロピドグレルを投与されたPLN犬において、ADPに対しては全てのタイムポイントで基準からPAは異なっていたは、AAに対してはどのタイムポイントでも違いはなかった。反応がなかった1頭を除き、ほとんどの犬は1つあるいは両方のタイムポイントで反応した。アスピリンを投与されたPLNの犬では、ADPあるいはAAに対し、どのタイムポイントでも基準からの違いは観察されなかった。健康犬とPLN犬の間に各タイムポイントのCMの違いは見つからなかった。
結論と臨床的重要性:血小板凝集測定は、クロピドグレルあるいはアスピリン治療に対する反応を評価するための客観的な方法かもしれず、PLNの犬は健康犬と同じようにクロピドグレルを代謝すると思われる。(Sato訳)
■犬の特発性腎性血尿の回顧的研究:臨床所見と内科治療後の結果
A retrospective study of canine idiopathic renal haematuria: clinical findings and outcome following medical treatment
J Small Anim Pract. 2021 Jun 1.
doi: 10.1111/jsap.13352. Online ahead of print.
A J Kortum , J Bazelle , A Gomez Selgas , A C C Kent , T L Williams , M E Herrtage
目的:イギリスの特発性腎性血尿の内科的に治療した犬の大規模集団において、その進行の特徴を述べ、記録する。
素材と方法:4か所のイギリスの紹介施設から、特発性腎性血尿が確認された犬(n=14)、あるいはそれが疑われた犬(n=27)の合計41頭の飼育犬の回顧的研究。犬の臨床所見と結果(2001-2018)は、カルテの再検討と電話によるフォローアップで判定した。
結果:診断からの生存期間中央値は、治療や臨床反応にかかわらず長かった(1482(152-1825)日)。1頭のみが特発性腎性血尿のため安楽死され、貧血あるいは高窒素血症はあまり発生しなかった。合計25頭の犬が、アンギオテンシン変換酵素阻害剤あるいはアンギオテンシン受容体ブロッカーの投与を受け、そのうち23頭はベナゼプリル(0.44(0.19-0.82)mg/kg/日)、2頭はエナラプリル(0.40と0.78mg/kg/日)、1頭はテルミサルタン(1mg/kg/日)だった。フォローアップで尿検査を行った症例で、血尿の完全な解消は、アンギオテンシン偏肝酵素阻害剤/アンギオテンシン受容体ブロッカーで治療後の19頭中8頭(42%)で証明され、19頭中5頭(26%)は部分的改善、19頭中6頭(31%)は改善しなかった。逆に、結果が得られた無処置の2頭のうち、1頭は部分的改善、もう1頭は改善しなかった。
臨床意義:この研究で、特発性腎性血尿の予後は良く、合併症率は低い。血尿の解消あるいは改善はアンギオテンシン変換酵素阻害剤/アンギオテンシン受容体ブロッカーで治療した犬、および無治療の犬両方に見られ、それら治療の有効性及び安全性を評価する追加研究の必要性を示している。(Sato訳)
■犬と猫の血清および尿腎臓バイオマーカーに対する歯周病と歯のクリーニング処置の影響
The impact of periodontal disease and dental cleaning procedures on serum and urine kidney biomarkers in dogs and cats
PLoS One. 2021 Jul 29;16(7):e0255310.
doi: 10.1371/journal.pone.0255310. eCollection 2021.
Jean A Hall , Franci J Forman , Gerd Bobe , Giosi Farace , Murthy Yerramilli
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この研究の目的は、犬と猫において腎機能および組織ダメージに対する血清および尿のバイオマーカーを基にし、歯のクリーニング処置の利点と固有のリスクを評価することだった。
31頭の無症候性で、身体検査で歯周病と診断され、全身麻酔下で歯のクリーニングを獣医師に勧められたたほとんどが高齢犬(3-14歳の種々の犬種の去勢済みオス14頭と避妊済みメス17頭)と猫(2-16歳の家猫短毛種の去勢済みオス19頭と避妊済みメス12頭)を前向き研究で評価した。
歯のクリーニング処置前、6時間後、1週間後に犬と猫から血清及び尿サンプルを収集した。腎機能のバイオマーカー(血清クレアチニン(Cr)、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)、血中尿素窒素(BUN)、尿比重(USG)、尿蛋白クレアチニン(UPC)比)についてサンプルを分析した。腎組織ダメージに対するバイオマーカーのパネルも評価した(血清β-アミノイソブチル酸(BAIB)、尿中シスタチンBおよびクラステリン)。
歯のクリーニング処置前1週間に収集したサンプルでは、年齢増加と歯周病の重症度は、異常な腎機能バイオマーカー値(年齢:SDMAおよびCr濃度上昇と等張尿性のUSG値;疾患重症度:UPC比上昇)と尿中シスタチンBおよびクラステリン濃度上昇とリンクしていたことを示した。
歯のクリーニング処置直後、上昇したSDMA濃度の猫の頭数増加が観察された(特に歯の処置の時間がより長い猫)。歯の処置時間の延長(≧60分)は、尿中シスタチンBおよびクラステリン濃度上昇とリンクしたが、より短い時間の処置は、尿中シスタチンBおよびクラステリンの濃度低下とリンクした。より高いSDMA濃度は、歯のクリーニング処置後の1週間の猫で持続し、クリーニング処置前の1週間のUPC比上昇とリンクした。
結論として、この研究の結果は、歯の疾患重症度、腎臓組織傷害と腎機能の障害とのリンクを示す。猫へのより長い歯の処置時間は、腎臓傷害の固有リスクと腎機能の障害を持つかもしれない。(Sato訳)
■リスクファクターの治療的管理をしている犬の慢性腎臓病進行の評価
Evaluation of Chronic Kidney Disease Progression in Dogs With Therapeutic Management of Risk Factors
Front Vet Sci. 2021 May 5;8:621084.
doi: 10.3389/fvets.2021.621084. eCollection 2021.
Sofía Perini-Perera , Javier Del-Ángel-Caraza , Alicia Pamela Pérez-Sánchez , Israel Alejandro Quijano-Hernández , Sergio Recillas-Morales
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IRIS推奨に従い、確認したリスクファクターの管理を行っている自然発生した慢性腎臓病(CKD)の犬の進行の特徴を述べるため、この研究を実施した。
CKDの診断を受け、ステージを判定した犬で、診断から最大730日まで長期のフォローアップができた犬を含めた。CKDの発生に対しリスクファクターがある合計545頭を解析し、そのうち36頭が組み込み基準に当てはまった。
加齢は80.6%の症例で確認された。当初のリスクファクターは、炎症/感染性疾患、麻酔-外科処置の病歴、心疾患、腫瘍、内分泌障害、腎毒性薬の暴露により示された。フォローアップ期間中、CKDの進行は47.2%の症例で確認され、進行したステージでより顕著だった。血清対称性ジメチルアルギニン(SDMA)は唯一の糸球体濾過量(GFR)マーカーで、CKDの早期ステージ中の研究期間の中で違いを示し、疾患の進行や腎機能の低下に関係した。
早期と進行したCKDステージの生存曲線に有意差が観察された。生存期間短縮に関連するファクターは、高燐血症、貧血、低ボディコンディションスコア(BCS)だった。動脈高血圧や腎臓蛋白尿の存在と生存期間短縮の間に違いは見つからなかった。さらに、対称性ジメチルアルギニン上昇および/あるいは腎臓蛋白尿のような早期疾患マーカーの異常の持続所見を基にしたCKDの診断と、リスクファクターのタイムリーな治療的管理は、CKDの安定化、進行したステージへの進行を抑え、好ましいより高い生存率を可能にした。(Sato訳)
■非高窒素血症で蛋白尿を呈する犬の慢性腎臓病の進行の評価
Evaluation of the progression of non-azotemic proteinuric chronic kidney disease in dogs
Res Vet Sci. 2021 May 24;138:11-18.
doi: 10.1016/j.rvsc.2021.05.018. Online ahead of print.
H Miyakawa , M Ogawa , A Sakatani , R Akabane , Y Miyagawa , N Takemura
蛋白尿は犬の慢性腎臓病(CKD)の進行に対するリスクファクターと認識されている。しかし、犬の非高窒素血症の蛋白尿を呈するCKDの予後は、限られた範囲でしか研究されていない。さらに、CKDの進行を遅らせるために蛋白尿をどの程度抑えるべきなのかは不明なままである。
この研究の目的は、犬の非高窒素血症の蛋白尿を呈するCKDにおいて、(1)疾患進行に関するファクターを確認する、(2)時間平均の尿蛋白:クレアチニン比(UPC)と尿アルブミン:クレアチニン比(UAC)を用いる進行に関する治療経過中の蛋白尿、アルブミン尿、血圧の程度を調査した。
21頭の非高窒素血症で蛋白尿を呈するCKDの犬を研究に含めた。高UPCおよびUACはCKDの進行と関係した(P<.05)。進行予測に対するそれらの時間平均のパラメーターのカットオフ値は、それぞれ4.1と2.0だった。非高窒素血症で蛋白尿を呈するCKDの犬において、より重度の蛋白尿とアルブミン尿は進行と関係した。
この研究は、治療中のUPC≧4.1およびUAC≧2.0は、非高窒素血症で蛋白尿を呈するCKDのより早い進行と関係するため、治療的調査の正当性が示唆される。(Sato訳)
■高窒素血症および健康犬におけるアンピシリンの薬物動態
Ampicillin pharmacokinetics in azotemic and healthy dogs
J Vet Intern Med. 2021 Jan 20.
doi: 10.1111/jvim.16026. Online ahead of print.
Kelly N Monaghan , Mary Anna Labato , Mark G Papich
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背景:犬のアンピシリンの薬物動態に影響する腎臓病のようなファクターの影響についてあまりわかっていない
目的:健康な犬と高窒素血症の犬の静脈に1回アンピシリンを投与したのちに薬物動態を判定する
動物:急性腎傷害を呈する犬9頭と健康な犬10頭
方法:これは前向き研究である。22.2mg/kg(平均投与量)のアンピシリンを1回静脈に投与した。設定した間隔で採血し(投与直前、1、2、4、12、24時間後)、高速液体クロマトグラフィーで解析し、血漿薬物濃度の薬物動態解析を行った。
結果:高窒素の犬のピークアンピシリン濃度(mcg/mL;97.07(36.1)vs21.3(50.26))、P<0.001(幾何学平均(変動係数、CV%))、半減期(時間;5.86(56.55)vs(0.97(115.3))、P<0.001)、AUC(h x mcg/mL;731.04(83.75)vs33.57(53.68))、P<0.001)は健康犬よりも大きかった。また、高窒素の犬のクリアランス(30.06(84.19)vs655.03(53.67);mL/kg h、P<0.001)、分布容積(253.95(30.14)vs916.93(135.24);mL/kg、P<0.001)は健康犬よりも低かった。
結論と臨床的重要性:高窒素血症の犬のアンピシリンの薬物濃度上昇と緩やかなクリアランスは、病的状態に関係する抗生物質に寄与する臨床的重要性を持つ可能性があり、腎臓機能の低下した犬においてアンピシリンの量の調整の必要性を示すことが求められる。(Sato訳)
■犬の蛋白尿と血圧に対するテルミサルタン、アンギオテンシン変換酵素阻害薬、あるいはその併用の効果
Effect of telmisartan, angiotensin-converting enzyme inhibition, or both, on proteinuria and blood pressure in dogs
J Vet Intern Med. 2021 Mar 26.
doi: 10.1111/jvim.16102. Online ahead of print.
Brittany L Fowler , Darko Stefanovski , Rebecka S Hess , Kathryn McGonigle
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背景:臨床現場において、犬の全身高血圧および蛋白尿のコントロールに対するテルミサルタン(TEL)、アンギオテンシン-受容体ブロッカーの使用はあまり報告されていない。
目的:蛋白喪失性腎症(PLN)の犬の収縮期血圧および蛋白尿に対し、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)単独、TELとの併用、TEL単独の効果を判定する
動物:PLNに対し治療している42頭の飼育犬
方法:2012年から2018年までに大学教育病院で、PLNの管理にベナゼプリルあるいはエナラプリル単独、TEL単独あるいはその併用を行った犬の医療記録の回顧的観察研究。非侵襲性血圧および尿蛋白-クレアチニン比(UPC)を時間と共に治療グループ間で比較した。事後解析に続き、多変量混合効果線状回帰モデルを治療グループ間の周辺平均および差の推定に使用した。
結果:ACEi単独グループと比較して、ACEiとTELの併用は、収縮期血圧を13mmHg(95%CI:4-22mmHg)有意に低下させた(P=.007)。ACEi単独と比べ、ACEi+TELはUPCを2.5(95%CI:0.6-4.4)有意に低下させた(P=.01)。TEL単独と比べACEi+TELのUPCは3.8(95%CI:0.8-6.8)有意に低かった(P=.01)。
結論と臨床的重要性:テルミサルタンは犬の全身高血圧と蛋白尿の治療に使用できる。(Sato訳)
■犬の尿蛋白クレアチニン比に対する3つの分析器の比較
Comparison of three types of analyzers for urine protein-to-creatinine ratios in dogs
J Vet Sci. 2021 Jan;22(1):e14.
doi: 10.4142/jvs.2021.22.e14.
Sumin Ji , Yeseul Yang , Yeji Jeong , Sung Hyun Hwang , Myung Chul Kim , Yongbaek Kim
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背景:慢性腎臓病の犬において、尿蛋白の定量は重要である。種々の分析器が尿蛋白クレアチニン比(UPCR)の測定に使用されている。
目的:この研究の目的は、3つのタイプの分析(自動ウェット化学分析、院内ドライ化学分析、ディップスティック読み取り機器)により得られたUPCRを比較することと、その差が臨床的治療決定プロセスに影響する可能性があるかどうかを調査することだった。
方法:115頭の犬から尿サンプルを採取した。3つの分析器を使用してUPCR値を測定した。UPCR値間の一致性の解析にBland-Altman and Passing Bablok testsを使用した。各解析器で得たUPCR値を基に尿サンプルを正常あるいは蛋白尿と分類し、その分類の一致をCohen's kappa coefficientで評価した。
結果:ディップスティック読み取り機器で得られたUPCRと、他の分析器で得られたUPCRの間に、比例的で一貫した差があることをPassing and Bablok regressionは示した。蛋白尿の分類の一致は、自動ウェット化学分析器および院内ドライ化学分析器の間で非常に高かった(κ=0.82)が、ディップスティック読み取り機器は、自動ウェット化学分析器(κ=0.52)と院内ドライ化学分析器(κ=0.53)との中程度の一致だった。
結論:尿のディップスティック検査は、簡単で広く使用されているポイントオブケア検査であるが、我々の結果はディップスティック検査で得られたUPCR値は臨床的使用に対し適切ではないことを示す。機器間の変動は、UPCR値を基にした臨床的治療決断過程に影響するかもしれず、獣医療で強調すべきである。(Sato訳)
■巣状分節性糸球体硬化症の犬77頭の臨床病理特性、原因、予後
Clinicopathologic characteristics, pathology, and prognosis of 77 dogs with focal segmental glomerulosclerosis
J Vet Intern Med. 2020 Sep;34(5):1948-1956.
doi: 10.1111/jvim.15837. Epub 2020 Jul 7.
Sarah K Lorbach , Jessica A Hokamp , Jessica M Quimby , Rachel E Cianciolo
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背景:巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)は、非免疫性の複雑な糸球体障害の一般的な原因で、犬でこの疾患に関係する予後や臨床病理所見は述べられていない。
目的:FSGSの犬の症状を特徴づけ、その生存性に関係する臨床因子を確認する
動物:国際獣医腎臓病理サービスに提出された腎臓バイオプシーサンプルの評価を基にFSGSと診断された77頭の犬
方法:2015年1月から2017年5月の間に蛋白尿の評価でバイオプシーした犬の医療記録の回顧的再検討
結果:蛋白尿の評価でバイオプシーした全ての犬の中でFSGSの発生率は26%だった。有意にオス(29;37.7%)よりもメス(48;62.3%)の方が多く罹患した(P=.04)。バイオプシー時の血清クレアチニン濃度(SCr)の中央値は1.2mg/dL(範囲、0.3-8.7)、血清アルブミン濃度(Alb)の中央値は2.8g/dL(範囲、1.1-4.6)、収縮期血圧の中央値は153.5mmHg(範囲、95-260)、尿蛋白:クレアチニン比の中央値は5.9(範囲、1.4-22)だった。全ての原因で死亡した犬(n=32)に対し、バイオプシー後の生存期間中央値は258日(範囲、26-1003)だった。生存期間が短いことに関する因子は、SCr≧2.1mg/dL(P<.01)、Alb<2g/dL(P<.01)だった。
結論と臨床的重要性:FSGSの多くの犬はメスで、一般に高血圧、高窒素、重度低アルブミン血症だが、腹水あるは浮腫はあまりみられなかった。生存期間に有意に関係する変数はSCrとAlbだった。(Sato訳)
■犬の慢性腎臓病のステージングに対し超音波検査はどのように有効か:855頭の超音波所見
How Ultrasound Can Be Useful for Staging Chronic Kidney Disease in Dogs: Ultrasound Findings in 855 Cases
Vet Sci. 2020 Oct 1;7(4):E147.
doi: 10.3390/vetsci7040147.
Francesca Perondi , Ilaria Lippi , Veronica Marchetti , Barbara Bruno , Antonio Borrelli , Simonetta Citi
慢性腎臓病(CKD)の犬において、いくらかの超音波検査(US)異常は、その疾患の進行を伴う他のものよりも良い相関を示している。
この研究の目的は、異なるステージのCKDの犬において、最も多い腎臓US異常の普及率を評価することと、IRISステージにそれらが関係するかを調査することだった。
855頭の犬の医療記録と超音波検査の報告を回顧的に含めた。
最も多い腎臓超音波検査の異常は:皮質エコー源性の増加、皮質-髄質接合(C/M)の異常比、腎盂拡張だった。
異なるIRISステージの犬に対し、不整な輪郭、異常な皮質-髄質接合、異常なC/M、皮質エコー源性の増加、腎盂拡張において統計学的有意差が見つかった。US異常が1つ以上ある犬の頭数は、IRISステージの進行で有意に増加した。
結論として、我々のCKD集団において、皮質エコー源性の増加、異常なC/M接合および腎盂拡張は最もよく見られたUS異常だった。
US異常なしが有意に高い普及率を示したが、US異常>3を呈した犬の頭数は、IRIS2からIRIS4に有意に増加した。腎臓超音波検査は、優秀な補助的診断検査で、CKDの進行のモニターする時に、腎臓機能パラメーターと一緒に使用すべきである。(Sato訳)
■進行した慢性腎臓病の犬に対する新しい食餌サプリメントの効果
Efficacy of a new dietary supplement in dogs with advanced chronic kidney disease
PeerJ. 2020 Aug 14;8:e9663.
doi: 10.7717/peerj.9663. eCollection 2020.
Elisa Martello , Francesca Perondi , Maria Teresa Capucchio , Ilaria Biasato , Elena Biasibetti , Tiziana Cocca , Natascia Bruni , Ilaria Lippi
慢性腎臓病(CKD)は老齢犬の一般的な疾患である。
この研究はIRISステージ3のCKDの犬において、炭酸カルシウム、グルコン酸乳酸カルシウム、キトサンと重炭酸ナトリウムを含む食餌サプリメントの効果を評価する。
20頭の犬を研究に登録し、10頭には新しい食餌サプリメントを180日間投与し(T群)、あとの10頭はコントロール群とした(C群)。血液および生化学検査、尿検査は30日毎に実施した。
C群に比べ、T群の血清リン濃度は有意な減少、血清重炭酸およびイオン化カルシウム値の有意な上昇を記録した。研究終了時、C群と比べ、T群の尿タンパク・クレアチニン比(UPC)は有意に低かった。
このテストしたサプリメントは、進行したCKDの犬に対し支持治療として考慮できた。(Sato訳)
■慢性腎臓病の犬の生存性に栄養的および検査的パラメーターが影響する
Nutritional and Laboratory Parameters Affect the Survival of Dogs With Chronic Kidney Disease
PLoS One. 2020 Jun 30;15(6):e0234712.
doi: 10.1371/journal.pone.0234712. eCollection 2020.
Vivian Pedrinelli , Daniel Magalhães Lima , Caio Nogueira Duarte , Fabio Alves Teixeira , Mariana Porsani , Cecilia Zarif , Andressa Rodrigues Amaral , Thiago Henrique Annibale Vendramini , Marcia Mery Kogika , Márcio Antonio Brunetto
慢性腎臓病は犬でよく見られ、診断時のクレアチニン、アルブミン、リンの血清濃度のような因子がそれらの犬の生存性に影響するかもしれない。
この回顧的研究の目的は、慢性腎臓病の犬の生存性と、検査パラメーター(クレアチニン、リン、アルブミン、ヘマトクリット値)および栄養学的パラメーター(ボディコンディションスコア、マッスルマススコア、食餌のタイプ、食欲、給餌方法)との相関性を評価することだった。
ステージ2から4の慢性腎臓病の犬116頭を含め、診断から死亡までを考慮し生存性を算出した。生存曲線をカプラン-マイヤー解析で作成し、生存曲線間の比較はログランク検定で実施した。
生存性に関係する因子は、疾患ステージ(p<0.0001)、血清リン濃度(p=0.0005)、ヘマトクリット(0.0001)、ボディコンディションスコア(p=0.0391)、マッスルマススコア(p=0.0002)、食餌のタイプ(p=0.0009)、給餌方法(p<0.0001)、食欲(p=0.0007)だった。
この研究で得られたデータを基に、慢性腎臓病の犬の生存性延長に対し、早期診断と栄養学的評価、腎臓病を食べることが決定力のある戦略であると締めくくることができる。(Sato訳)
■犬の持続性腎臓蛋白尿のテルミサルタンによる治療効果:二重盲検無作為化臨床試験
Efficacy of telmisartan for the treatment of persistent renal proteinuria in dogs: A double-masked, randomized clinical trial
J Vet Intern Med. 2020 Nov 9.
doi: 10.1111/jvim.15958. Online ahead of print.
Bianca N Lourenço , Amanda E Coleman , Scott A Brown , Chad W Schmiedt , Max C Parkanzky , Kate E Creevy
背景:犬の蛋白尿の治療に対し、アンギオテンシンII受容体ブロッカーのテルミサルタンに効果に関する情報は限られている
目的:慢性腎臓病と持続性の腎性蛋白尿の犬において、エナラプリルと比較したテルミサルタンの抗蛋白尿効果を評価する
動物:慢性腎臓病で、尿蛋白-クレアチニン比(UPC)>0.5(高窒素血症の場合)あるいは≧1.0(非高窒素血症の場合)の飼育犬39頭
方法:この前向き無作為化二重盲検臨床試験において、犬はブロックランダム化で(高窒素血症および全身性動脈高血圧の有無に従い)、テルミサルタン(1.0mg/kg PO q24h)あるいはエナラプリル(0.5mg/kg PO q12h)を投与し、120日間続けた。受診時にUPC>0.5の場合、30日および60日目で研究薬剤投与量の増量、90日目に他の研究薬剤の追加を実施した。基礎値と比較したUPCの比率変化を全てのタイムポイントで計算した。データは中央値(範囲)として示す。
結果:39頭(テルミサルタン群20頭、エナラプリル群19頭)の犬を含めた。30日目のUPCの比率変化は、エナラプリル群(-35%(-74%-87%))に比べ、テルミサルタン群(-65%(-95%-104%))でより大きかった(P=0.002)。より早く受診した持続性蛋白尿の犬の中で、60日目(P=0.02)、90日目(P=0.02)においてテルミサルタンはエナラプリルより優れていたままだった。併用療法が可能な時、120日目の研究群でUPCの比率変化に違いは観察されなかった。併用療法は4/13(31%)の犬において関連高窒素血症を起こした。
結論と臨床的重要性:腎性蛋白尿の犬に対し、テルミサルタンは適切な第一選択療法と思われる。(Sato訳)
■進行した慢性腎臓病を食餌療法で治療している犬における電解質濃度と炎症誘発および酸化状態の評価
Evaluation of Electrolyte Concentration and Pro-Inflammatory and Oxidative Status in Dogs with Advanced Chronic Kidney Disease under Dietary Treatment.
Toxins (Basel). 2019 Dec 19;12(1). pii: E3. doi: 10.3390/toxins12010003.
Halfen DP, Caragelasco DS, Nogueira JPS, Jeremias JT, Pedrinelli V, Oba PM, Ruberti B, Pontieri CFF, Kogika MM, Brunetto MA.
ミネラル代謝、線維芽細胞増殖因子23(FGF-23)、総抗酸化能、炎症マーカーに対する腎臓食の効果についての統合する研究は過去に行われていない。
この研究で、慢性腎臓病(CKD)のステージ3あるいは4の犬において、ミネラル代謝、酸化ストレス、炎症に対する腎臓食の効果を評価した。
基準(T0)および食餌治療開始から6か月後(T6)のボディコンディションスコア(BCS)、筋肉コンディションスコア(MCS)、血性生化学値、カルシウムイオン(i-Ca)、総カルシウム(t-Ca)、リン(P)、尿素、クレアチニン、副甲状腺ホルモン(PTH)、FGF-23、インターロイキン6(IL-6)、インターロイキン10(IL-10)、腫瘍壊死因子α(TNF-α)、総抗酸化能(TAC)を測定した。
血清尿素、P、t-Ca、i-Ca、PTH、FGF-23、IL-6、IL-10、TNF-α、TAC測定値は、T0とT6で差はなかった。血清クレアチニンは、T6で上昇し、血清PTH濃度は、血清クレアチニンと尿素に正の相関を示した。I-Caは尿素と負の相関を示し、血清リンはFGF-23と正の相関を示した。尿素とクレアチニンは正の相関を示した。
CKDステージ3あるいは4の犬において、6か月の食餌と支持療法の組み合わせは、尿毒症、酸塩基平衡、血圧、総抗酸化能、炎症性サイトカインレベルの管理、BCSおよびMCSの維持に効果的だった。(Sato訳)
■慢性腎臓病の犬のタンパク尿および収縮期血圧に対するテルミサルタンの影響
Effects of telmisartan on proteinuria and systolic blood pressure in dogs with chronic kidney disease
Res Vet Sci. 2020 Sep 22;133:150-156.
doi: 10.1016/j.rvsc.2020.09.019. Online ahead of print.
Yuichi Miyagawa , Ryota Akabane , Atsushi Sakatani , Mizuki Ogawa , Masayoshi Nagakawa , Hirosumi Miyakawa , Naoyuki Takemura
慢性腎臓病(CKD)の犬の腎臓タンパク尿は、腎臓機能障害の進行と生存期間の短縮に関係する。レニンアンギオテンシン-アルドステロン系阻害は、腎臓蛋白尿の治療に主として使用される。
この回顧的非盲検研究において、タンパク尿のCKDの犬において、テルミサルタン(アンギオテンシンIIレセプターブロッカー)の抗タンパク尿および抗高血圧効果を評価した。
タンパク尿CKDの犬28頭を研究に含め、全ての犬にテルミサルタン1mg/kg24時間毎POを投与した。尿蛋白クレアチニン比(UPC)、尿アルブミンクレアチニン比(UAC)、収縮期血圧(SBP)は、テルミサルタン投与後に有意に低下した(P<0.05)。120日目のUPC、UAC、SBPの変化率中央値は、-65.1%、-75.9%、-9.7%だった。10頭(36.7%)は、120日目にUPC<1.0を達成し、そのうち6頭はUPC<0.5だった。45日目に10頭(36%)のUPCが50%以上低下し、120日目には17頭(61%)が低下した。
17頭(61%)は基本、高血圧で、そのうち10頭(59%)は120日目のSBPが<160mmHgだった。
二元配置反復測定分散分析で、SBP、UPC、UACにおいて観察された変化が腎臓食給餌によるものではないと考えられた。
結論として、タンパク尿CKDの犬において、テルミサルタン投与により抗タンパク尿および抗高血圧効果が得られる。(Sato訳)
■犬に対する唾液尿素検査ストリップ法の予備評価
Preliminary evaluation of a salivary urea test strip method for use in dogs.
Vet Clin Pathol. 2019 Aug 10. doi: 10.1111/vcp.12765. [Epub ahead of print]
Sanchini L, Hare CHZ, Restif O, Williams TL.
背景:犬とヒトにおいて唾液尿素濃度は、血清尿素濃度と相関する。現在、唾液尿素濃度は、ヒトの使用で確認されている唾液尿素検査ストリップ法を用いて半定量的に判定可能である。
目的:犬の唾液尿素検査ストリップスコアの再現性を評価することと、唾液尿素検査ストリップスコアと血清尿素濃度の相関を評価する
方法:intra-runおよびinter-run変数を判定した(3つ組でn=10)。犬の唾液尿素検査ストリップと血清尿素濃度の相関は、Spearman's相関係数で評価した。受信者操作特性曲線は、血清尿素濃度>7.4mmol/L(検査参照値の上限)の犬を確認するため、唾液尿素検査ストリップスコアの診断パフォーマンスを評価するのに使用した。
結果:intra-runの再現性は良好(28/30一致した結果)だったが、inter-runの再現性は中程度(23/30一致した結果)だった。唾液と血清尿素濃度は、中程度の正の相関を示した(rs = .63, n = 33; P < .0001)。唾液尿素検査ストリップスコア≧4は、血清尿素濃度>7.4mmol/L検出に対し57%の感受性と96%の特異性を示した。
結論:犬において唾液尿素検査ストリップを用いて尿毒症が検出できる。我々の予備データを基に、唾液尿素検査ストリップスコア1または2は、多くの症例で臨床に関連のある尿毒症を除外できるかもしれないが、スコア3の犬では、繰り返し唾液尿素検査が推奨される。≧4のスコアの犬は、追加の調査が必要となる確率が高い。(Sato訳)
■高窒素血症の慢性腎臓病の猫の集団で血漿総マグネシウムの予後意義
Prognostic importance of plasma total magnesium in a cohort of cats with azotemic chronic kidney disease.
J Vet Intern Med. July 2018;32(4):1359-1371.
DOI: 10.1111/jvim.15141
D Hendrik N van den Broek , Yu-mei Chang , Jonathan Elliott , Rosanne E Jepson
背景:慢性腎臓病(CKD)のヒトで、低マグネシウム血症は、死亡率増加と腎機能低下に関係する。さらに、マグネシウムは猫のCKDの重要な予後因子である線維芽細胞増殖因子23(FGF23)と逆比例する。しかし、CKDの猫の血漿マグネシウムの予後的意義は不明である。
目的:高窒素血症のCKDの猫において、血漿FGF23濃度、全死因死亡、疾患進行と血漿総マグネシウム濃度(tMg)の関係を調べる
動物:IRIS2-4のCKDの飼育猫174頭の記録
方法:コホート研究。高窒素血症のCKDの猫は、ロンドンにある2か所のファーストオピニオンの病因の記録から確認した(1999-2013)。基礎血漿tMgとFGF23濃度および死亡と進行のリスクとのありえる関連をそれぞれ、線状、Cox、ロジスティック回帰で調べた。
結果:血漿tMg(参照間隔、1.73-2.57mg/dl)は、血漿クレアチニンおよびリン濃度を対照としたとき、血漿FGF23と逆に関係した(部分相関係数、-0.50;p<0.001)。低マグネシウム血症は12%(20/174)の猫に見られ、独立して死亡リスク増加と関係した(補正危険率、2.74;95%信頼区間(CI)、1.35-5.55;P=0.005)。高マグネシウム血症(有病率、6%;11/174)と生存性の補正しない場合の関係(危険率、2.88;95%CI、1.54-5.38;P=0.001)および低マグネシウム血症と進行性CKDとの関係(危険率、17.7;95%CI、2.04-154;P=0.009)は、多変量解析で有意性が失われた。
結論と臨床意義:低マグネシウム血症はより高い血漿FGF23濃度と関係し、死亡のリスクを高めた。CKDの猫で血漿tMG濃度の測定は、予後的情報を増加させるが、それらの知見は関連あるいは原因となるかどうか今後の調査が必要である。(Sato訳)
■血漿カルシウムとリンの積は慢性腎臓病の犬の寿命を予測するのに使用できる
A plasma calcium-phosphorus product can be used to predict the lifespan of dogs with chronic kidney disease.
Can Vet J. 2019 Dec;60(12):1319-1325.
Lucero MC, Duque FJ, Gil M, Ruiz P, Macías-García B, Cristóbal JI, Zaragoza C, Barrera R.
慢性腎臓病(CKD)に罹患した犬の生存性の予測に対して、血清カルシウムとリンの積(sCaPP)を評価した。
犬(N=150)を回顧的に研究し、追跡調査でコントロールとして25頭の健康犬を用い、寿命を判定した。血液検査と尿検査を実施し、血圧を測定した。犬をsCaPP(70mg2/dL2以上と以下)、IRISステージ(IRIS1-4)に従いグループ分けした。
sCaPP>70mg2/dL2の犬は、<70mg2/dL2の犬よりも生存期間が短かった(45.48日(範囲:5.8-149日)vs505.40日(範囲:113.31-539.52日)、平均(95%信頼区間);それぞれP≦0.01)。同様に、進行したIRISステージの犬は、sCaPPのレベルがより高く、より低い生存率が伴うことを示した(平均mg2/dL2(95%信頼区間);IRIS1:42.83(範囲29.58-62.10);IRIS2:63.18(範囲46.34-90.09);IRIS3:95.57(範囲:88.34-127.19);IRIS4:130.38(範囲:125.16-153.52)。
ゆえに、sCaPPは犬のCKDの予後において有用なツールであることを示すことができた。(Sato訳)
■犬と猫の慢性腎臓病の進行を予測する血漿硫酸インドキシル濃度
Plasma indoxyl sulfate concentration predicts progression of chronic kidney disease in dogs and cats.
Vet J. 2018 Feb;232:33-39. doi: 10.1016/j.tvjl.2017.12.011. Epub 2017 Dec 15.
Chen CN, Chou CC, Tsai PSJ, Lee YJ.
硫酸インドキシルは、ヒト、実験動物、犬と猫において腎機能障害の重症度が増すと増加する蛋白結合尿毒症性毒素である。硫酸インドキシルの上昇は、慢性腎臓病の人で予後と関連している。しかし、今まで硫酸インドキシルが犬と猫の慢性腎臓病の進行を予測できるかどうかは研究されていない。
慢性腎臓病の猫58頭と犬36頭を研究した。血漿硫酸インドキシルを高速液体クロマトグラフィーで測定した。腎臓病の進行は、IRISステージが1段階進むこと、および/あるいは3か月以内の同じステージ中で血清クレアチニン濃度0.5mg/dLの上昇と定義した。
非進行グループと比較して、腎不全の異なるステージを通し、基礎血漿硫酸インドキシル濃度は腎臓進行グループで上昇した(P<0.05)(特にIRISステージ2および3の動物)。腎臓病の進行予測において、硫酸インドキシルの受信者操作特性曲線下面積は、犬および猫共に0.75以上だった。また、硫酸インドキシル濃度は猫の血中尿素窒素、血清クレアチニン、リンの上昇と、ヘマトクリットの低下に相関したが、犬ではリン濃度の上昇のみに相関した。
硫酸インドキシルは慢性腎臓病の犬と猫の進行リスクのバイオマーカーとして役立った。(Sato訳)
■甲状腺機能亢進症の猫における隠れた慢性腎臓病のマーカーとして血清対称性ジメチルアルギニン濃度の評価
Evaluation of Serum Symmetric Dimethylarginine Concentration as a Marker for Masked Chronic Kidney Disease in Cats With Hyperthyroidism.
J Vet Intern Med. January 2018;32(1):295-304.
M E Peterson , F V Varela , M Rishniw , D J Polzin
背景:甲状腺機能亢進症は、血清クレアチニン濃度を下げる可能性がある糸球体濾過率を増加させ、体筋肉量を減少させるため、慢性腎疾患(chronic kidney disease:CKD)の診断を複雑(隠す)にする可能性がある。現在、甲状腺機能亢進症の治療後に明らかになるような高窒素血症のCKDを持つ甲状腺機能亢進の猫を確実に予測できる臨床試験はない。
目的:治療していない甲状腺機能亢進の猫において、隠れた高窒素血症の潜在的マーカーとして、血清対称性ジメチルアルギニン(symmetric dimethylarginine:SDMA)を調査する
動物:甲状腺機能亢進の猫262頭と年齢がマッチした臨床的に正常な猫206頭
方法:前向き研究。著者らは放射線ヨウ素(131I)治療前と、治療後1、3、6か月目にクレアチニン、尿素窒素、SDMA、T4、TSH濃度を測定し、持続性の治療後クレアチニン濃度>2.1mg/dLを基に131I治療猫を高窒素あるいは非高窒素に分類した。nonparametric testでグループを比較し、receiver operating characteristic analysisとlogistic regressionで診断精度を判定した。
結果:甲状腺機能亢進の猫で、治療前に高窒素血症の猫はいなかったが、131I処置後4-8か月(中央値、6か月)で再チェックした時、42頭(16%)が高窒素血症となった;そのうち14頭は処置前にSDMA濃度が高かった。治療していない甲状腺機能亢進の猫で、前高窒素血症性(隠れた)CKDに対する診断検査として、SDMAの感受性は33.3%、特異性は97.7%を示した。
結論と臨床意義:甲状腺機能亢進の猫において、血清SDMA濃度が高いという所見は、治療後の高窒素血症発症の予測に役立つ可能性がある。この検査は高い診断検査の特異性(偽陽性結果がほとんどない)があるが、感受性は比較的低い(多くの甲状腺機能亢進の猫において高窒素血症を予測しない)。(Sato訳)
■高窒素血症ではない犬において血清イオヘキソールクリアランス、血清SDMA濃度、血清クレアチニン濃度の関係
Relationship between serum iohexol clearance, serum SDMA concentration, and serum creatinine concentration in non-azotemic dogs.
J Vet Intern Med. 2019 Nov 14. doi: 10.1111/jvim.15659. [Epub ahead of print]
McKenna M, Pelligand L, Elliott J, Cotter D, Jepson R.
背景:血清クレアチニンと対称性アルギニン(SDMA)は、臨床現場で糸球体濾過率(GFR)の代理マーカーとして使用される。飼育犬において、GFR、SDMA、血清クレアチニンの相関に関連するデータは限られている。
目的:飼育犬の一集団において、GFR、SDMA、血清クレアチニンの間の関連を述べることと、高窒素血症となる前の慢性腎臓病を検出するため、SDMAと推算GFRの臨床的有用性を比較する
動物:2012年から2017年の間に血清イオヘキソールクリアランスにより実施した推算GFRが分かっている119頭の犬の医療記録
方法:アーカイブしたサンプルを用いた前向き研究。GFR、SDMA、血清クレアチニン結果を再検討し、結果データに連絡を取る研究所に提出した。この研究集団に含まれる全ての犬は、非高窒素血症だった。GFR、SDMA、血清クレアチニンの間の関連は、回帰分析により判定した。GFR低下を検出するためのSDMAおよび血清クレアチニンに対する感受性、特異性、陽性および陰性尤度比を、95%信頼区間を用いて算出した。
結果:血清クレアチニンとSDMAはGFR (それぞれR2 = 0.52 and 0.27, P < .0001)およびお互い(R2 = 0.33, P < .0001)に中程度相関した。SDMA>14μg/dLは、GFR40% 以上低下の検出に対し、感受性90%だったが、非特異的(50%)だった。GFR40%以上低下の検出に対する適切なSDMA濃度のカットオフ値は>18μg/dL(感受性90%、特異性83%)だった。
結論と臨床重要性:腎機能低下に対し精査した非高窒素血症の犬において、>14μg/dLよりも>18μg/dLのカットオフ値を用いることは、感受性を損なうことなくSDMAの特異性を上げる。(Sato訳)
■犬の腎FNAの診断への利用と超音波所見の利用
Evaluation of the diagnostic utility of cytologic examination of renal fine-needle aspirates from dogs and the use of ultrasonographic features to inform cytologic diagnosis
Camille A. McAloney, Leslie C. Sharkey, Daniel A. Feeney, Davis M. Seelig, Anne C. Avery, Carl R. Jessen
(J Am Vet Med Assoc 2018;252:1247–1256)
目的:犬の腎FNAサンプルの細胞学的特徴を述べるため診断に適した標本の割合、腫瘍非腫瘍診断の有用性評価、超音波所見の細胞診への有用性について特徴付ける。
デザイン:回顧的調査
サンプル:100頭の犬から得た102サンプルと97超音波所見
方法:超音波ガイド腎FNAしたものを特定し回顧調査を行なった。スライドを解釈に適しているか不適か判定し、適しているものは細胞診断を行なった。腫瘍と非腫瘍は、組織学的もしくはリンパ球のクローンアッセイにより、感度、特異性、予測値を評価した。超音波所見により腫瘍と非腫瘍を述べた。
結果:102のうちの74(72%)で解釈に適していると判断され、26が診断制度分析に含められた。腫瘍と非腫瘍の感度はそれぞれ78%、50%で特異性は50%、77%でリンパ腫の感度は100%であった。腎臓の超音波所見による腫瘍の評価はさまざまであったが、癌(5/5)、リンパ腫(5/7)、他の腫瘍(3/4)は腫瘤を形成し、非腫瘍(n=5)は腫瘤ではなかった。
結論と臨床意義:腎FNAは他の臓器と同率に評価ができ腫瘍の診断に有用であった。画像的特徴は腫瘍と非腫瘍の区別に役立つ可能性があるがさらなる検討が必要である。(Dr.Maru訳)
■慢性腎臓病の犬の細菌尿の頻度:201症例の回顧的研究
Frequency of bacteriuria in dogs with chronic kidney disease: A retrospective study of 201 cases.
J Vet Intern Med. 2019 Feb 14. doi: 10.1111/jvim.15434. [Epub ahead of print]
Lamoureux A, Da Riz F, Cappelle J, Boulouis HJ, Benchekroun G, Cadore JL, Krafft E, Maurey C.
背景:慢性腎臓病(CKD)の猫において、陽性の尿培養(positive urine culture:PUC)の有病率の増加をいくつかの研究は示している;犬の情報はない
目的:CKDの犬の集団でPUCの頻度を述べることと、PUCのリスク因子を判定することと、臨床病理データとPUCの関係を確認すること
動物:CKDの飼育犬201頭
方法:回顧的観察研究。CKDの診断を受け、膀胱穿刺で採取した尿の培養をした犬を2か所の獣医教育病院で募集した。PUCの頻度を計算し、リスク因子確認のため多変量解析を実施し、臨床病理データとの関連を調査した。
結果:CKDの犬65頭(32%)がPUCで、IRISステージ1の8頭(28%)が含まれた;8%の犬だけが尿路感染の症状を示した。Escherichia coliが一番多く分離された(67%)。オス犬よりもメス犬(オッズ比、3.22;95%CI、1.67-6.37;P<0.001)、尿比重が1.013-1.024の犬よりも等張尿の犬(オッズ比、2.48;95%CI、1.24-5.03;P=0.01)でPUCの確率が高かった。白血球エステラーゼ試験陽性と尿沈渣で見つかった微生物は有意にPUCと関係した(共にP<0.001)。
結論と臨床意義:IRISステージ1でも、CKDの犬はPUCの頻度が高く、症例の多くは無症候性である。CKDの犬においては尿培養の定期的な評価が考えられるが、PUCの臨床的関連は依然不明なままで、今後の評価が必要である。(Sato訳)
■無症候性レプトスピラ感染は犬の慢性腎疾患に関係する
Asymptomatic leptospiral infection is associated with canine chronic kidney disease.
Comp Immunol Microbiol Infect Dis. 2019 Feb;62:64-67. doi: 10.1016/j.cimid.2018.11.009. Epub 2018 Nov 24.
Sant'Anna R, Vieira AS, Oliveira J, Lilenbaum W.
犬のレプトスピラ症は、急性あるいは慢性疾患を特徴とする。無症候性キャリアーとしてその細菌を尿細管に保有し、長い期間尿に排泄する犬もいるかもしれない。慢性腎臓病(CKD)は多因子性で、病態生理は広く議論されている。
この研究の目的は、CKDの発生が、流行地域の犬の無症候性レプトスピラ感染と関係しているかどうかを調査することだった。
血清学的および尿PCRを、流行地域のCKDの犬16頭と健康な犬48頭で実施した。
細菌排出犬の頻度は非CKDの犬(20.8%)よりもCKDの犬(75%)で多かった。
ゆえに、著者らの結果は、無症候性レプトスピラ感染は慢性腎臓病と関係し、流行地域でCKDの犬に対し、鑑別診断が重要であると証明するものである。公衆衛生に対する明白な影響以外に細菌排泄犬の早期検出は動物の健康の改善およびCKDの発生を避けることにも役立つと思われる。(Sato訳)
■正常猫の定量的超音波造影の腎臓における加齢の影響
Influence of ageing on quantitative contrast-enhanced ultrasound of the kidneys in healthy cats
Emmelie Stock, Dominique Paepe, Sylvie Daminet, Luc Duchateau, Jimmy H Saunders, Katrien Vanderperren
Veterinary Record (2018) doi: 10.1136/vr.104490
腎臓における加齢の変性の影響はヒトでは広く研究されている。しかしながら獣医療における腎臓の老化への興味は近年に過ぎない。造影超音波検査は意識下の猫で非侵襲的に腎灌流の評価が可能である。1-16歳の健康猫43頭で腎灌流パラメータが得られ、4群(1-3歳、3-6歳、6-10歳、10歳より上)に分けた。腎パラメータ(血清クレアチニン、血清尿素、尿比重、尿タンパククレアチニン比、収縮期圧)も測定した。年齢間で灌流パラメータに有意差は認められなかった。1-3歳と10歳より上で比べると、年齢の上昇によってピーク造影強度とwashi-inにおける曲線下面積が低下傾向にあり、循環血液量の低下が示唆された。さらに年齢による血清と尿パラメータに有意差は認められなかったものの10歳より高齢では血圧がより高かった。(Dr.Maru訳)
■ペルシャ猫の常染色体優性多発性嚢胞腎の診断に対する年齢に応じた超音波検査基準
Age-based ultrasonographic criteria for diagnosis of autosomal dominant polycystic kidney disease in Persian cats.
J Feline Med Surg. April 2018;0(0):1098612X18764591.
DOI: 10.1177/1098612X18764591
Juliana M Guerra , Mariana F Freitas , Alexandre G T Daniel , Arine Pellegrino , Natalia C Cardoso , Isac de Castro , Luiz F Onuchic , Bruno Cogliati
目的:ペルシャ猫において常染色体優性多発性嚢胞腎(autosomal dominant polycystic kidney disease:ADPKD)の診断に対し、超音波基準を確立する
方法:82頭のペルシャ猫を腎臓超音波検査で評価し、PKD1のエクソン29でC→A塩基転換に対し遺伝子型を調べた。また、血液学的特徴、血清生化学検査、尿検査を実施した。
結果:年齢、性別、不妊状況はADPKD(n=12)とnon-ADPKD(n=70)で違いはなかった。分子遺伝子/超音波検査をまとめた後、15ヶ月齢までの猫に、少なくとも1つの腎嚢胞があることがADPKDの診断に十分だった。16-32ヶ月齢の猫での診断には2つ以上の嚢胞が必要で、33-49ヶ月齢の猫での診断には、少なくとも3つの嚢胞が正当だった。最終的に50-66ヶ月の猫では4つ以上の嚢胞で診断が導かれた。ADPKDの猫は、罹患していない猫よりも血清カルシウム濃度が高かったが、血液検査、尿検査、他の生化学値に違いはなかった。
結論と関連:画像検査と分子遺伝子データをまとめることで、ペルシャ猫のADPKDの診断に対する年齢別の超音波基準を初めて確立できた。特に画像基準の開発は、分子遺伝子ベースの診断検査へのアクセスとコストに関し、現在制限がある臨床現場で適切であり、有効である。(Sato訳)
■腎臓疾患の液体および電解質障害を管理する
Managing Fluid and Electrolyte Disorders in Kidney Disease.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2017;47(2):471-490.
Cathy Langston
体の恒常性を維持するのが腎臓の役割のため、腎臓疾患は体液、電解質、酸塩基平衡の混乱を誘発する。尿毒症クライシスの最も効果的な治療は、注意の行き届いた水和の査定、特定患者に合わせた輸液治療プラン、体液と電解質バランスの頻繁な再評価など体液バランスの注意深い管理である。ナトリウム、塩素イオン、カリウム、カルシウム、リンの障害に腎疾患で遭遇することも多く、命を脅かすこともあるかもしれない。代謝性アシドーシスと栄養サポートが必要なことも多い。(Sato訳)
■他の猫種と比較したバーマンの血清対称性ジメチルアルギニンとクレアチニン
Serum symmetric dimethylarginine and creatinine in Birman cats compared with cats of other breeds.
Language: English
J Feline Med Surg. October 2017;0(0):1098612X17734066.
Saverio Paltrinieri , Marco Giraldi , Amanda Prolo , Paola Scarpa , Eleonora Piseddu , Massimo Beccati , Benedetta Graziani , Stefano Bo
目的:この研究の目的は、他の犬種と比べバーマン猫の血清クレアチニンが高いかどうか、臨床的に健康なバーマンと一般集団の猫と対称性ジメチルアルギニン(SDMA)濃度が同じかどうかを評価する。これはこの品種で慢性腎臓病(CKD)をよりよく評価できるようにする。
方法:臨床的に健康なバーマン(n=50)と他の品種の猫(n=46)で血清クレアチニンとSDMAを測定し、その結果を統計学的に比較した。バーマンにおける品種特異参照範囲(reference interval:RI)を確立し、一般猫集団のRI(0.0-14.0μg/dl)と比較した。
結果:バーマンのクレアチニン(1.58±0.36mg/dl)とSDMA(12.2±2.8μg/dl)は他の品種の猫(1.19±0.17mg/dl;10.3±2.5μg/dl)よりも高かった(P<0.001)。バーマン50頭中20頭(40%)において、血清クレアチニンは我々検査所の非品種特異RIとIRISステージ2に分類する推奨域値(1.6mg/dl)よりも高かった。バーマン50頭中10頭(20.0%)と他の品種の4頭(8.7%)のSDMA濃度は既存のRIよりも高かった。バーマンの中で、SDMA>14μg/dlの猫の集団は、クレアチニン>1.6mg/dlの猫の集団よりも少なかった(P<0.017)。しかし、バーマン10頭中7頭と他の品種4頭中4頭のRI上限からの偏差は、その方法の分析変動性よりも低かった。その品種特異RI(3.5-18.7μg/dl)は、既存のものと重複した。
結論と関連:バーマンにおいて非品種特異RIsを利用するとき、SDMAはクレアチニンよりもCKDのより良いマーカーかもしれない。クレアチニンとSDMAを一組にした分析は、バーマンのCKDの診断およびステージングで過誤を防ぐのに役立つだろう。(Sato訳)
■1頭の猫の水腎の切除後にみられた非尿性滲出性胸水の消散
Resolution of nonurine transudative pleural effusion in a cat after removal of a hydronephrotic kidney.
Language: English
J Am Vet Med Assoc. July 2017;251(1):80-83.
Maura E Duffy, Andrew J Specht, Ahmira R Torres, May-Li Cuypers
症例記述:3歳の避妊済みメスのベンガル猫を右腎の水腎症と両側の胸水のために評価した。
臨床所見:胸水の細胞検査で、高率のリンパ球を伴う純粋な浸出液の特徴を示した。液体の生化学検査の結果は、尿や乳糜ではなかった。血清生化学検査や心エコー検査で低アルブミン血症や心疾患による流体静力学的高圧の所見はなかった。腹部超音波検査で、右尿管の水尿管と右腎の水腎症が見つかった。
治療と結果:試験的開腹と右腎の腎摘出を実施した。手術時に後腹膜腔と胸腔の間に連絡所見はなかった。他の治療は行わなかった。術後1週間で胸水が溜まっている所見はなく、胸水に関係する臨床症状の再発は術後1年以上観察されなかった。
臨床関連:腹腔内疾患で二次的な、低血漿タンパク濃度に無関係の浸出性、非乳糜性胸水は獣医療で珍しい。この症例は、より一般的な疾患が確認されない胸水の猫に対し、尿路閉塞を鑑別診断に加えるべきだと強調するものだった。異常な腎臓あるいは後腹膜腔と胸腔に直接連絡の所見がないときでも、水腎症の腎臓の摘出は治癒的だと思われた。(Sato訳)
■続発性腎性骨障害はコンパニオンアニマルにあるのか
Does Secondary Renal Osteopathy Exist in Companion Animals?
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. November 2016;46(6):1151-62.
Gilad Segev , Hagar Meltzer , Anna Shipov
続発性腎性上皮小体機能亢進症は慢性腎臓病の不可避な結果である。
ヒトの患者では、この疾患は骨の質を低下させ、骨折のリスクを増やす。最近のエビデンスでは、コンパニオンアニマルにおいて骨の質の低下が示唆され、犬と比べ猫に明白で、おそらく、より長い経過をたどるためと思われる。それら所見の臨床意義はまだ調べられていない。しかし、臨床医は慢性腎臓病の動物は骨の質が低下し、骨折のリスクが増していることを心に留めておくべきである。(Sato訳)
■猫の腎機能の低下を評価する反復測定値
Repeated measurements of renal function in evaluating its decline in cats.
Language: English
J Feline Med Surg. February 2018;0(0):1098612X18757591.
Natalie C Finch , Harriet M Syme , Jonathan Elliott
目的:この研究の目的は、非高窒素血症および高窒素血症の猫の腎機能マーカーの変動性と、そのマーカーの変化率を述べることだった。
方法:飼育猫において腎機能のマーカーとして血漿クレアチニン濃度とその相反性、糸球体濾過率(GFR)、尿比重(USG)を研究した。GFRはcorrected slope-intercept iohexol clearance法で測定した。腎機能検査は、基礎時と2度目のタイムポイントで実施した。集団内変動性(変動係数;CV%)を基準タイムポイントで判定した。個別内変動性(CV%)とその期間の変化率は反復測定値から判定した。
結果:29頭の猫を研究に組み込み、そのうち5頭は高窒素血症の慢性腎臓病だった。クレアチニン濃度の個別内変動性(CV%)は非高窒素血症の猫よりも高窒素血症の猫で低かった(8.82% vs 6.81%)が、GFRの個別内変動性は高窒素血症の猫でより高かった(19.98% vs 28.94%)。集団内変動性は、USGで最も高かった(高窒素血症の猫で67.86%、非高窒素血症の猫で38.00%)。高窒素血症と非高窒素血症の猫においてクレアチニン濃度に負の変化率(それぞれ-0.0265と-0.0344μmol/l/day)があり、高窒素血症と非高窒素血症の猫におけるGFRに正の変化率(それぞれ0.0062と0.0028ml/l/day)があった。
結論と関連:個別内変動性データは、高窒素血症の猫の腎機能の連続モニタリングで、クレアチニン濃度はより有用なマーカーであることを示唆する。対照的に非高窒素血症の猫において、腎機能の連続モニタリングで、GFRはより有用なマーカーである。高窒素血症のCKDの猫の多くは、研究中に腎機能の明らかな低下を示さなかった。(Sato訳)
■慢性腎臓病の診断前の犬と猫におけるリンとたんぱく質供給についての知見
Observation about phosphorus and protein supply in cats and dogs prior to the diagnosis of chronic kidney disease.
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl). 2018 Apr;102 Suppl 1:31-36. doi: 10.1111/jpn.12886.
Boswald LF, Kienzle E, Dobenecker B.
ヒトやペットの慢性腎臓病(CKD)に対し、栄養学的リン(P)過剰はリスクファクターとなるかもしれないというエビデンスがある(Advances in Nutrition: An International Review Journal (2014), 5, 104; The American Journal of Clinical Nutrition, (2013), 98, 6; Journal of Feline Medicine and Surgery, (2017); The source of phosphorus influences serum PTH, apparent digestibility and blood levels of calcium and phosphorus in dogs fed high phosphorus diets with balanced Ca/P ratio. Proc. Waltham International Nutritional Sciences Symposium, USA; Clinical aspects of natural and added phosphorus in foods, 2017, Springer Science+Business, Media)。
CKDの診断前の犬と猫の食餌履歴において、Pとたんぱく質摂取に関するデータを集めるための回顧的研究を行った。
2009年10月から2016年3月の間にミュンヘンのLudwig-Maximilians-大学動物栄養および栄養学講座の栄養相談サービスに訪れ、包括的栄養履歴のあるCKDの犬75頭と猫16頭を評価した。
CKDと診断されていない、あるいは疑いがない症例と年齢があった犬(n=57)と猫(n=18)をコントロールとした。
4グループ(猫CKD、猫コントロール、犬CKD、犬コントロール)で最も頻度が高く与えられている餌のタイプは手作り食だった。全てのグループにおいて、Pとタンパク質供給は推奨給与量(RDA; Nutrient requirements of dogs and cats (2006), National Research Council, National Academy Press)より過剰(>150%)だった。グループ間でPとたんぱく質摂取に関する違いはなかった。RDAに関するPとたんぱく質摂取は犬より猫の方で全体的に高かった。
CKDの猫はコントロール猫よりも診断前にPとたんぱく質摂取が有意に高いことを示した(170±36 vs 123±34mg P/kg BW0.67 ; p < .05)。それらの知見は今後P過剰の長期影響を調査するきっかけとなる。(Sato訳)
■SUBを用いた感染性腎炎の猫4頭の治療
Treatment of pyonephrosis with a subcutaneous ureteral bypass device in four cats
Megan Cray, Allyson C. Berent, Chick W. Weisse, Demetrius Bagley
J Am Vet Med Assoc 2018;252:744?753
症例
尿管閉塞により検査を行った猫4頭
臨床所見
臨床的、臨床病理学的異常は食欲不振、削痩、体重減少、貧血、白血球増加、好中球増加、リンパ球減少、高窒素血症と非特異的であった。全例で細菌性腎盂腎炎と診断された。2頭では尿検査で細菌尿が、2頭は膀胱穿刺の培養で細菌が、手術中に腎盤から採取した尿の培養から3頭で細菌が確認された。尿管閉塞の原因は結石3頭、周囲組織による狭窄1頭であった。
治療と結果
全例で腎盤の洗浄と尿管バイパス装置を皮下に設置(SUB)を実施した。術後、1頭で膿による閉塞があり取り替える必要があった。この方法は閉塞解除と感染性腎炎の治療として有効であった。3頭で感染消失が得られ、1頭はSUB1ヶ月後に無症候生の細菌尿が持続していた。
臨床意義
この少数例の結果から腎盤洗浄とSUBは閉塞性感染性腎炎の治療オプションとなりうるかもしれない。(Dr.Maru訳)
■日本で長期におやつのペットジャーキーを食べた後に見られた後天性ファンコニー症候群の犬の2例
Acquired Fanconi syndrome in two dogs following long-term consumption of pet jerky treats in Japan: case report.
Language: English
J Vet Med Sci. May 2017;79(5):818-821.
Akira Yabuki , Tomoko Iwanaga , Urs Giger , Mariko Sawa , Moeko Kohyama , Osamu Yamato
最近、北アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパのほとんどが小型犬種の犬において、腎臓ファンコニー症候群は中国製のペットジャーキーを食べることと関係している。
著者らは日本においてペットジャーキーを食べた後に見られたファンコニー症候群の2頭の犬について報告する。
雑種犬とフレンチブルドッグが体重減少、多尿、多飲を呈した。数年間、オーナーは中国で準備した鶏を含むペットジャーキーを大量に与えていた。診断は高血糖を伴わない糖尿、重度アミノ酸尿が明らかで、1症例は、ケトン尿、低カリウム血症、代謝性アシドーシスも見られた。中国製ペットジャーキーの長期摂食に関係するファンコニー症候群の診断が下された。
2頭ともペットジャーキーの中止と支持療法で完全に回復した。
中国産ペットジャーキーの摂食に関係する犬のファンコニー症候群は、糖尿と全身性アミノ酸尿を伴う広範囲の近位尿細管障害を起こす可能性があり、アジアにおいて考慮もすべきである。ジャーキーが関係するファンコニー症候群は、おやつの中止と、代謝性異常を修正する支持療法で完全に元に戻すことができる。(Sato訳)
■猫の慢性腎臓病の治療に対する脂肪由来の同種間葉幹細胞静脈投与の評価:8頭の猫の無作為化プラセボ対照臨床試験
Assessment of intravenous adipose-derived allogeneic mesenchymal stem cells for the treatment of feline chronic kidney disease: a randomized, placebo-controlled clinical trial in eight cats.
J Feline Med Surg. February 2016;18(2):165-71.
Jessica M Quimby; Tracy L Webb; Elissa Randall; Angela Marolf; Alex Valdes-Martinez; Steve W Dow
目的:猫の慢性腎臓病(CKD)は、尿細管間質性腎炎と腎臓線維症の進行の原因となる炎症を特徴とする。間葉幹細胞(MSCs)は、げっ歯類のCKDモデルで抗炎症および抗線維症効果が証明されている。しかし、愛玩動物において疾患に対するMSC療法の有効性を評価する無作為化試験はあまり報告されていない。この研究の目的は、無作為化プラセボ対照試験を用い、猫のCKDの治療に対し、同種MSCsの有効性を評価することだった。
方法:特定病原体フリーの研究猫の低温保存した脂肪組織からMSCsを分離し、培養した。CKDの猫を無作為化プラセボ対照盲検一方向横断臨床試験に登録した。4頭のCKDの猫に無作為に2x10(6)MSCs/kgを2、4、6週目に静脈投与した。4頭のCKDの猫に無作為にプラセボを投与し、2頭の猫はMSC治療群に乗り換え、1頭の猫は試験完了しなかった。CBC、生化学および尿検査を0、2、4、6、8週目に実施した。核シンチグラフィーによる糸球体濾過率(GFR)、尿蛋白:クレアチニン比(UPC)を0、8週目に測定した。
結果:低温保存した脂肪組織から展開した同種MSCを6頭の猫に3回投与し、副作用はなかった。MSCsを投与した猫の血清クレアチニン、BUN、カリウム、リン、核シンチグラフィーによるGFR、UPC、PCVに有意な変化は見られなかった。プラセボ投与猫のGFRの個別変化は16%、36%、0%と比較してMSCs投与猫は12%、8%、8%、2%、-13%、-67%だった。
結論と関連:低温保存した脂肪組織から展開した同種MSCの投与中に副作用は見られず、腎機能の有意な改善は投与後すぐには観察されなかった。MSC投与が、CKDの猫において疾患の進行に影響するかどうか判定するため、長期経過観察が必要である。(Sato訳)
■高トリグリセリド血症とそうでないミニチュアシュナウザーにおける蛋白尿とリポ蛋白リパーゼ活性
Proteinuria and lipoprotein lipase activity in Miniature Schnauzer dogs with and without hypertriglyceridemia.
Language: English
Vet J. June 2016;212(0):83-9.
E Furrow , J Q Jaeger , V J Parker , K W Hinchcliff , S E Johnson , S J Murdoch , I H de Boer , R G Sherding , J D Brunzell
ラットにおいて自発性の高脂血症は糸球体疾患を引き起こす。特発性の高トリグリセリド血症(HTG)はミニチュアシュナウザーによく見られるが、蛋白尿との関連は不明である。リポ蛋白リパーゼ(LPL)や肝性リパーゼ(HL)のような主要脂質代謝酵素の活性低下は、高脂血症と蛋白尿の循環関連に影響を及ぼしているかもしれない。ミニチュアシュナウザーにおいて、それらの酵素も調査されていない。
この研究の目的は、ミニチュアシュナウザーにおけるHTGと蛋白尿の関連を調べ、犬の部分集団においてLPLとHL活性を測定することだった。
57頭のミニチュアシュナウザーを研究した(34頭はHTG、23頭はHTGではない)。全ての犬で絶食時血清トリグリセリド濃度と尿蛋白クレアチニン比(UPC)を測定し、17頭(8頭はHTG、9頭はHTGではない)でLPLとHL活性を測定した。
トリグリセリド濃度とUPCの間に強い正の相関が見られた(r=0.77-0.83、P<0.001)。蛋白尿(UPC≧0.5)はHTGの犬の60%に見られ、HTGではない犬の全頭に見られなかった(P<0.001)。蛋白尿の犬に高窒素血症や低アルブミン血症はなかった。HTGの犬はHTGではない犬と比べLPL活性で65%低下が見られた(P<0.001);HL活性に違いはなかった。
ミニチュアシュナウザーのHTGで蛋白尿が発生し、脂質誘発性糸球体傷害によると思われた。LPLの活性低下はHTGの重症度によるかもしれないが、更なる分析検証が必要である。(Sato訳)
■犬における造影剤誘発性の腎傷害の回顧的研究(2006-2012年)
A retrospective evaluation of contrast-induced kidney injury in dogs (2006-2012).
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2016 Aug 24. doi: 10.1111/vec.12511.
Goic JB, Koenigshof AM, McGuire LD, Klinger AC, Beal MW.
目的 造影剤誘発性腎症 (CIN) が存在するかということについて犬の罹患率を評価する
研究デザイン 2006-2012年の回顧的症例調査
設定 大学の教育病院
動物 ヨード系の造影剤を静脈内投与された1217頭の飼い犬についてCINの証拠について調査した。組み入れには、造影剤の投与前1週間以内および投与後1週間以内に血清クレアチニンの測定をしていることとした。92回の造影剤の投与をされた86頭の犬が組み入れに適格とされた。
介入 なし
測定と主な結果 静脈内へのヨード系造影剤の投与後1週間以内にベースラインのクレアチニン濃度から44.2μmol/L (0.5mg/dl)以上上昇している場合にCINとした。造影剤投与の全部で7.6% (7/92) がCINの基準を満たした。造影剤投与後のクレアチニンだけではなくクレアチニン濃度の変化も、CINのないブループよりもCINのあるグループにおいて有意に高かった(投与後のクレアチニンの中央値 150μmol/L (1.7mg/dl)に対して70.7μmol/L (0.8mg/dl)、クレアチニンの変化の中央値 53μmol/L (0.6mg/dl) に対して0μmol/L)。動物のシグナルメント、最初のクレアチニン濃度、造影剤の投与回数、造影剤の投与される用量、麻酔の時間、静脈内輸液投与、腎毒性薬剤の投与、昇圧療法の使用は、グループ間で有意な違いはなかった。
結論 本症例群において、造影剤の投与と腎傷害における一時的な関連によって、犬におけるCINのリスクが明らかになった。本研究は回顧的研究であるため、造影剤の投与と腎傷害の間の因果関係を明らかにすることはできなかった。犬におけるCINをさらに評価するための前向き研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■慢性腎臓病の猫と正常な猫におけるリン結合剤としてスクラルファートを評価する
Evaluating Sucralfate as a Phosphate Binder in Normal Cats and Cats with Chronic Kidney Disease.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jan-Feb;52(1):8-12.
Jessica Quimby; Michael Lappin
高リン血症のコントロールは慢性腎臓病(CKD)の管理で重要な部分である。
この研究の目的は、正常な猫と正常リン血のCKDの猫において、リン結合剤としてスクラルファートの効果を判定することだった。
500mgのスクラルファートの懸濁液を2週間、8時間毎に経口投与し、血清リン、リンの尿分画排泄、糞中リン濃度を測定した。
スクラルファートを投与した正常な猫において、血清リン濃度、リン尿排泄に有意な変化は見られず、14.7%の投与後に嘔吐が発生した。スクラルファートを投与したCKDの正常リン血の猫5頭のうち、3頭は嘔吐、食欲不振、便秘、窒素血症増加を含む臨床的代謝不全を経験した。それらの猫において糞中リン濃度において有意な変化を起こさなかった。CKDの猫において脱水や代謝不全に関係する窒素血症の悪化により、血清リン濃度およびリン尿排泄に対するスクラルファート投与の効果は判定が難しかった。副作用および薬剤治療の効果の明らかな欠如により、研究は中止した。
この研究はリン結合剤としてスクラルファート製剤の効果を確認できず、研究中の副作用は問題のあるものだった。(Sato訳)
■犬の腎疾患の評価における進歩
Advances in the evaluation of canine renal disease.
Vet J. 2016 Apr 27. pii: S1090-0233(16)30034-X. doi: 10.1016/j.tvjl.2016.04.012.
Cianciolo R, Hokamp J, Nabity M.
腎疾患の犬の評価における多くの近年の進歩は、我々の診断アルゴリズムを改善し、治療戦略に影響を及ぼしている。
尿検査や血清バイオマーカー評価のような非侵襲性の方法は、臨床診断に役立ち、臨床的あるいは金銭的理由により腎バイオプシーができない犬に処置できる。いくつかのバイオマーカーは影響を受けている構造(糸球体か尿細管)がどこかわかるかもしれず、傷害の存在の種類あるいは程度を示す。
多くの研究が必要であるが、いくつかのバイオマーカー(例えば、尿蛋白クレアチニン比や尿中免疫グロブリン)が結果の悪化を予測するのに有効だと示す研究もある。
重要なことには、腎臓傷害に対するバイオマーカーの感受性と特異性は確立されるべきで、臨床医はそれらの分析の限度を理解する必要がある。腎臓バイオプシーを実施した場合、その後専門診断サービスで、腎臓病理学の専門家により評価すべきである。特異染色のパネル、免疫グロブリンおよび補体因子の検出に対する免疫蛍光検査、透過型電子顕微鏡は、糸球体疾患の症例でルーチンに使用できる。
それらの進歩した診断は、免疫複合体介在性糸球体疾患の確定診断を得るため、免疫沈着物の検出に使用できる。
バイオマーカー分析の結果および包括的腎臓バイオプシー評価を統合し、臨床医は犬に免疫抑制を行うか、行わないかのような十分な情報に基づいた治療決断ができる。(Sato訳)
■犬の実験誘発性急性腎傷害後の腎臓再生に対する自家骨髄由来間葉系幹細胞の評価
Evaluation of autologous bone marrow-derived mesenchymal stem cells on renal regeneration after experimentally induced acute kidney injury in dogs.
Am J Vet Res. 2016 Feb;77(2):208-17. doi: 10.2460/ajvr.77.2.208.
Lim CY, Han JI, Kim SG, Lee CM, Park HM.
目的:実験的に誘発した急性腎傷害の犬の治療に対し、自家骨髄由来間葉系幹細胞(BM-MSC)療法の有用性を評価すること
動物:健康犬6頭
方法:シスプラチン5mg/kg静脈投与で腎臓傷害を誘発した(0日目)後、即座に生理食塩液(0.9%NaCl)10ml(3頭)あるいはBM-MSCs1x10(6)個/kgが入った10mlの生理食塩液(3頭)を静脈投与した。シスプラチンの投与前と、1日目から4日目にかけて各犬のCBC、血清生化学検査、尿検査を実施した。全ての犬で-7日と2日目に糸球体濾過率を測定した;-14日および4日目にBM-MSC処置犬においてMRIによりBM-MSCのトラッキングを実施した。4日目のサンプル採取およびBM-MSCトラッキングの後、全頭安楽死した;腎臓組織のサンプルは組織評価、免疫組織化学解析および逆転写PCR解析によりサイトカインプロファイリングを実施した。
結果:両群の腎臓組織には、単核炎症細胞浸潤、尿細管壊死、拡張した尿細管、糸球体損傷が見られた。しかし、コントロール犬と比較してBM-MSC投与犬の線維性変化は少なく、腎臓尿細管上皮細胞の増殖が増していた。腫瘍壊死因子-αおよびトランスフォーミング成長因子-βの発現はコントロール群よりもBM-MSC投与群の方が少なかった。BM-MSC投与犬において腎機能が改善したという検査データはなかった。
結論と臨床関連:この研究の結果は、犬の急性腎傷害を実験的に誘発した後の腎臓再生を自家BM-MSCsは加速させるかもしれないと示唆した。(Sato訳)
■慢性腎臓病の猫のオーナーに対する食餌と薬剤療法の調査
Survey of dietary and medication practices of owners of cats with chronic kidney disease.
J Feline Med Surg. December 2015;17(12):979-83.
Jessica E Markovich; Lisa M Freeman; Mary A Labato; Cailin R Heinze
この研究の目的は、慢性腎臓病(CKD)の猫の食餌および薬物療法パターンを述べることだった。
この前向き横断記述試験において、CKDの猫のオーナーにウェブ調査に答えてもらった。この調査はCKD-、ペット-、獣医-、繁殖-関連ウェブサイトとリストサーブに宣伝した。
CKDの1089頭の猫のオーナーがこの研究に参加した。報告されたCKDの猫の平均年齢は13.7±4.2歳だった。40%の猫(430/1089)の猫は併発疾患があり、甲状腺機能亢進症、心疾患および炎症性腸疾患が多かった。食餌の選択に対し、最も一般的な理由は獣医師の推奨(684/1032;66%)で、51%(556/1089)のオーナーは餌の一部の組成を腎臓病に対して作られた獣医療法食を与えていた。
多くのオーナー(466/1079;43%)は、彼らの猫が異常な食欲だと報告した;それらオーナーのうち、52%は週のうち5-7日は彼らの猫の食欲があまりなく、あるいは宥めて食べるように仕向けることが必要だと報告した。47%の猫は皮下輸液を受けており、51%は経口薬剤療法を受けていた;しかし、多くの猫(811/1036;78%)はリン結合剤の投与を受けていなかった。56%の猫は市販のおやつを、38%の猫はサプリメントをもらっていた。
食欲不振あるいは食欲低下はCKDの猫の一般的な問題で、それらの疾患に向いていない餌を与えることを誘発するかもしれない。この情報は、CKDの猫に対する治療あるいは栄養研究の計画に有用かもしれない。(Sato訳)
■慢性腎臓病の飼い猫における新しい猫パラミクソウイルスの発見
Discovery of new feline paramyxoviruses in domestic cats with chronic kidney disease.
Virus Genes. October 2015;51(2):294-7.
Michael Sieg; Kristin Heenemann; Antje Ruckner; Iwan Burgener; Gerhard Oechtering; Thomas W Vahlenkamp
パラミクソウイルスはエンベロープを有するRNAウイルスの大きな科に属し、獣医や人医で重要な病原体を含む。近年、モルビリウイルス属猫パラミクソウイルスが香港や日本の猫で検出された。
ここで著者らはいくつかの新しい猫パラミクソウイルスの発見を述べる。それら種々のウイルスの感染は、慢性腎臓病(CKD)に罹患した猫の尿サンプルで検出された。尿路障害の臨床症状がない猫でウイルスのRNAが見つからないことは、猫パラミクソウイルス(FPaV)感染とCKDの関係を強調する。検出したウイルスの系統解析は、最低2つの異なる種を表し、そのうち1つは過去に香港と日本で検出された猫モルビリウイルスを表している。
また、新しいFPaVは現在知られているパラミクソウイルス種にウイルスL-遺伝子のヌクレオチドレベルで73%のホモロジーのみを共有していることが検出された。(Sato訳)
■猫の慢性腎臓病の進行に関する危険因子
Risk Factors for Development of Chronic Kidney Disease in Cats.
J Vet Intern Med. 2016 Mar 6. doi: 10.1111/jvim.13917. [Epub ahead of print]
Finch NC, Syme HM, Elliott J.
背景 猫において慢性腎臓病 (CKD)の進行に関する危険因子を同定することで、より早期に発見できるのもしれない。
仮説/目的 臨床データおよびアンケートの情報を評価することによって、猫におけるCKDの尿毒症への進行の危険因子を同定できる。
動物 148匹の9歳以上の飼い猫。
方法 猫を本研究に組み入れ、様々な期間にわたり追跡した。飼い主には、組み入れ時の飼い猫に関するアンケート調査を実施した。歯科疾患についてのさらなる情報は、歯科に関する分類システムができたときに再度調査した。変数は、単変量および多変量Cox回帰分析によって解析した。
結果 最終的な多変量Cox回帰分析においては、毎年または高頻度のワクチン、中等度の歯科疾患、重度の歯科疾患がある場合、CKDの尿毒症に進行しやすいことが予測された。
結論 我々の研究によって、ワクチンの頻度および歯科疾患の重症度とCKDの進行の間に独立した関連が示唆された。これらのリスク因子に対する腎傷害の病態生理学的なメカニズムを明らかにするさらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■犬の全身動脈圧と尿蛋白排泄に対するヒドロコルチゾンの影響
The effects of hydrocortisone on systemic arterial blood pressure and urinary protein excretion in dogs.
J Vet Intern Med. 2008 Mar-Apr;22(2):273-81. doi: 10.1111/j.1939-1676.2007.0039.x. Epub 2008 Feb 27.
Schellenberg S, Mettler M, Gentilini F, Portmann R, Glaus TM, Reusch CE.
背景:自然に発生した副腎皮質ホルモン過剰の犬において、高血圧と蛋白尿が一般的に認められる。しかし、血圧(BP)や蛋白尿に対する外因性のグルココルチコイドの影響とそれらの変化が可逆的かどうかに関する情報はほとんどない。
仮説:ヒドロコルチゾンの投与は全身性BPおよび尿蛋白排泄を増加させ、それらの影響はヒドロコルチゾンの投与中止後に元に戻る。
動物:6頭のコントロール犬と6頭のヒドロコルチゾンの投与犬
方法:BP、尿蛋白:クレアチニン比(UPC)、微量アルブミン尿(MALB)、尿中アルブミン:クレアチニン比(UAC)、尿ゲル電気泳動をヒドロコルチゾン(8mg/kg経口12時間毎12週間)、あるいはプラセボの投与前、投与中、投与後に評価した。
結果:ヒドロコルチゾンの投与中28日目にBPは123mmHg (範囲114-136mmHg)から最大143mmHg(128-148mmHg)に、UPCは0.17(0.15-0.28)から0.38(0.18-1.78)へとかなり上昇した。4頭の犬でMALBが発生し、全ての犬でヒドロコルチゾン投与最終84日目にUACが有意に上昇した。BPと尿蛋白の上昇は可逆性で、ヒドロコルチゾンの投与中止後1か月以内に完全に解消した。SDS-AGEで蛋白尿は、ヒドロコルチゾンの投与中顕著に増加した主にアルブミン尿であることが分かった。さらに25-30kDaのたんぱく質がオス犬で見つかり、質量分析でアルギニンエステラーゼ(主要分泌性前立腺蛋白)と確認された。
結論と臨床意義:長期のヒドロコルチゾンの投与は全身性BPおよび尿蛋白排泄を有意だが、軽度上昇させ、ヒドロコルチゾンの投与中止後1か月以内に元に戻る。(Sato訳)
■慢性腎疾患の猫のオーナーの食餌および薬物療法の調査
Survey of dietary and medication practices of owners of cats with chronic kidney disease.
J Feline Med Surg. 2015;0(0):.
Jessica E Markovich; Lisa M Freeman; Mary A Labato; Cailin R Heinze
この研究の目的は、慢性腎疾患(CKD)の猫の食餌および薬物療法のパターンを述べることだった。
この前向き横断記述的研究において、CKDの猫のオーナーにWEBでのアンケートに答えてもらった。この研究はCKD-、ペット-、獣医師-、繁殖-関連のウェブサイトおよびリストサーブに広告を出した。この研究にCKDの猫1089頭のオーナーが参加した。
広告されたCKDの猫の平均年齢は13.7±4.2歳だった。40%(430/1089)の猫は併発疾患があり、甲状腺機能亢進症、心疾患、炎症性腸疾患が多かった。食餌の選択に対し、獣医師の勧めが最も一般的な理由(684/1032;66%)で、オーナーの51%(556/1089)は食餌のいくらかの構成として腎疾患のために作られた療法食を与えていた。多くのオーナー(466/1079;43%)は彼らの猫が異常な食欲があると報告した;それらのオーナーのうち52%は彼らの猫は食欲があまりない、あるいは週に5-7日は食べるのをなだめすかす必要があると答えた。47%の猫は皮下輸液を受け、51%は経口薬物療法を受けていた。しかし、ほとんどの猫(811/1036;78%)はリン結合薬物を投与されていなかった。56%の猫は市販の猫のおやつを与えられ、38%の猫は食餌サプリメントを与えられていた。食欲不振あるいは食欲低下はCKDの猫の一般的な問題で、その疾患に対して最適に及ばない食餌を与えることが誘発しているのかもしれない。この情報は、CKDの猫に対する治療あるいは栄養研究の計画に役立つかもしれない。(Sato訳)
■ACTH依存性副腎皮質機能亢進症の犬の治療後の腎機能の長期経過観察
Long-term follow-up of renal function in dogs after treatment for ACTH-dependent hyperadrenocorticism.
J Vet Intern Med. 2012 May-Jun;26(3):565-74. doi: 10.1111/j.1939-1676.2012.00915.x. Epub 2012 Mar 30.
Smets PM, Lefebvre HP, Meij BP, Croubels S, Meyer E, Van de Maele I, Daminet S.
背景:クッシング症候群の犬で全身性高血圧と蛋白尿はよく見られる合併症で、副腎皮質機能亢進症の治療後、常に解消するわけではない。ゆえに、クッシング症候群の犬は治療前後に腎機能不全のリスクがあるかもしれない。
仮説/目的:ACTH依存性副腎皮質機能亢進症(ADHAC)の犬の治療前後の腎機能を評価する
動物:ADHACの犬19頭とコントロール犬12頭
方法:治療前と治療後1、3、6、12ヶ月目に腎機能を評価した。12頭はトリロスタンで治療し、7頭は経蝶形骨性下垂体切除で治療した。通常の腎マーカーを測定し、尿中アルブミン(uALB)、免疫グロブリンG(uIgG)およびレチノール結合蛋白(uRBP)をELISAで解析した。尿中N-アセチル-β-D-グルコサミニダーゼ(uNAG)は比色定量で判定した。全ての尿マーカーは尿中クレアチニン濃度(c)を指標にした。クレアチニンの血漿クリアランス(Cl(creat))、外-イオヘキソール(Cl(exo))、内-イオヘキソール(Cl(endo))を糸球体濾過率(GFR)の測定に使用した。一般線形モデルでデータを分析した。
結果:治療後の血清クレアチニンと尿素濃度は上昇したが、参照範囲内を維持していた。血漿Cl(creat)とCl(endo)は治療後有意に低かった一方でCl(exo)は違いがなかった。尿蛋白クレアチニン比(UPC)、uALB/c、uIgG/c、uRBP/cは治療後低下したが、12か月目の13頭中5頭は蛋白尿のままだった。尿中NAG/cは有意に変化しなかった。
結論と臨床意義:治療後のGFRの低下と持続的蛋白尿は臨床医の注目するところと思われる。持続的蛋白尿や低GFRの犬の腎臓の病理組織検査を含む追加研究が、腎機能をさらに評価するために必要である。(Sato訳)
■腎臓用食餌を与えている健康な猫における新しい経口リン結合剤レンジアレンの効果と許容性
Efficacy and acceptability of the new oral phosphate binder LenziarenR in healthy cats fed a renal diet.
J Vet Pharmacol Ther. June 2015;38(3):278-89.
J N King; P C Delport; H G Luus; H L Erasmus; P M Barnes; C Speranza
リンの含有量を抑えてある市販の食餌(腎臓食)を与えている健康な猫において、新しい経口リン結合剤レンジアレン(SBR759)び効果と許容性を評価した。
盲検、無作為化、並行群間比較試験で36頭の猫(6頭ずつ)に、レンジアレンを0.125、0.25、0.5、1g/日で投与した群を、参照製剤Lantharenol(3.0g/日)群、プラセボ群と比較した。全ての製剤は28日間、1日1回与える食餌に混ぜた。
レンジアレンは有意に用量に関係して血清および尿中リン濃度、糞便の明白なリンの吸収率、分画尿中リン排泄が低下した。Lenziarenを投与した猫はプラセボ群よりも有意に食べる量が減ったが、これによる体重や許容性の評価に負の影響はなかった。陽性コントロール、Lenziarenと比較した時、レンジアレンは有意により許容性があり(0.125、0.5、1.0g/日)、食餌摂取量がより多く(0.125、0.5、1.0g/日)、血清リン(0.5、1.0g/日)と尿中リン濃度(1.0g/日)の減少効果がより大きかった。
結論として、レンジアレンは腎臓食を与えている健康な猫において有効な経口リン結合剤だった。レンジアレンの許容性は良かった。臨床試験に対し0.25-1.0g/頭/日の用量が推奨される。(Sato訳)
■アロプリノールで治療していた1頭のメス犬におけるキサンチン石による膿腎
[Pyonephrosis due to xanthine stones in a bitch treated with allopurinol].
Pyonephrose durch Xanthinsteine bei einer mit Allopurinol behandelten Hundin.
Language: German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. 2014;42(1):49-54.
R Maier; F X Lutter; E Lohss-Baumgartner
2歳の避妊済み雑種のメス犬が、腹部疼痛、発熱、嘔吐の救急で来院した。急性腹症の原因は、尿管を遮断するような4個のキサンチン結石による左腎の膿腎だった。
激しく変化した左腎の外科的摘出後、急速に回復した。その犬はリーシュマニア症により、長期にわたりアロプリノールで治療されており、その使用からキサンチン結石形成が起こっている可能性が高かった。
さらに右腎に小さい結石があったため、薬物療法は中止した。その後は低プリン食を投与し、リーシュマニア抗体価と腎機能は定期的にモニターしている。(Sato訳)
■慢性腎疾患の猫で嘔吐と食欲不振に対するマロピタントの長期使用:盲検プラセボ対照臨床試験
Chronic use of maropitant for the management of vomiting and inappetence in cats with chronic kidney disease: a blinded, placebo-controlled clinical trial.
J Feline Med Surg. 2015 Aug;17(8):692-7. doi: 10.1177/1098612X14555441. Epub 2014 Oct 21.
Quimby JM, Brock WT, Moses K, Bolotin D, Patricelli K.
目的:マロピタントは急性嘔吐に良く使用される。猫の薬物動態と毒性研究でより長い期間の使用は安全と思われると示された。この研究の目的は、猫の慢性腎疾患(CKD)に関係する慢性嘔吐と食欲不振に管理におけるマロピタントの有効性を評価することである。
方法:無作為化プラセボ対照盲検臨床試験に、CKDに起因する慢性嘔吐と食欲不振の主訴があり、併発疾患の不明なstable International Renal Interest SocietyステージIIあるいはIIIの41頭の猫を登録した。CBC、血清生化学、尿検査、尿培養、T4、血圧を登録に必要とした。マロピタントを4mg経口で1日1回2週間投与した(中央値1.1mg/kg、範囲0.6-2.9mg/kg)。オーナーには毎日嘔吐の発生数、食欲と活動性のスコアを付けてもらった。身体検査、体重、ボディコンディションスコア、血清生化学検査を試験期間の前後に行った。治療群の比較にマンホイットニー検定を使用した。
結果:33頭が試験を完了した:21頭(ステージIIは9頭、IIIは12頭)は薬剤の投与を受け、12頭(ステージIIは7頭、IIIは5頭)はプラセボを投与された。マロピタントを投与されたCKDの猫の嘔吐は統計学的に有意に減少した(P<0.01)。食欲スコア、活動性スコア、体重あるいは血清クレアチニンは、マロピタントを投与した猫とプラセボで統計学的な有意差は出なかった。
結論と関連性:マロピタントはCKDの猫の嘔吐を緩和することが証明され、栄養管理に役立つかもしれない。(Sato訳)
■健康な犬における超過体重と尿中蛋白濃度との関係
Association between excess body weight and urine protein concentration in healthy dogs.
Vet Clin Pathol. June 2014;43(2):255-60.
Karen M Tefft; Darcy H Shaw; Sherri L Ihle; Shelley A Burton; LeeAnn Pack
背景:顕著な過体重の人は、進行性の蛋白尿と肥満が関連する糸球体症(ORG)による続発性腎不全を起こす可能性がある。試験的に肥満を誘発した犬の糸球体病変はORGの人のそれらと似ている。
目的:この研究の目的は、理想体型の犬と比べ、過体重および肥満犬において尿中蛋白およびアルブミン排泄がより多くなるかどうかを評価することだった。
方法:基礎の健康状態に対し飼育犬をスクリーニングした。9ポイントスコアシステムを使用したボディコンディションスコア(BCS)でそれらの犬を振り分けた。6以上のBCSの犬を過体重/肥満として分類し、4あるいは5を理想体重とした。それから尿中蛋白:クレアチニン比(UPC)および尿中アルブミン:クレアチニン比(UAC)を測定し、20頭の過体重/肥満犬と22頭の理想体重のコントロール犬で比較した。
結果:過体重/肥満犬のUPC中央値(0.04(範囲、0.01-0.14;四分位数間領域、0.07))およびUAC中央値(0.41(0-10.39;3.21))は、理想体重の犬のUPC中央値(0.04(0.01-0.32;0.07))およびUAC中央値(0.18(0-7.04;1.75))と有意差がなかった。
結論:ORGに一致する臨床病理学的異常はこの研究の過体重/肥満犬で見られなかった。(Sato訳)
■腎臓被移植猫の後腹膜線維症:29症例(1998-2011)
Retroperitoneal fibrosis in feline renal transplant recipients: 29 cases (1998-2011).
J Am Vet Med Assoc. December 1, 2013;243(11):1580-5.
Chloe Wormser; Heidi Phillips; Lillian R Aronson
目的:腎臓を移植した猫にのちに発生する後腹膜線維症に関係する特徴、治療、予後を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:29頭の猫
方法:1998年から2011年の間にペンシルバニア大学獣医学部で腎臓移植後に後腹膜線維症を発症した猫の医療記録からシグナルメント、移植日、年齢、尿および血液検査結果、診断時の血圧、感染疾患および投薬既往歴、麻酔プロトコール、術中合併症を調べた。
結果:138頭の被移植猫のうち、29頭(21%)が臨床的に重要な後腹膜線維症を発症した。19頭(66%)はオスで、腎移植時の年齢中央値は8歳(範囲、4-13歳)だった。移植から後腹膜線維症の診断までの日数中央値は62日(範囲、4-730日;平均、125日)だった。最も一般的な臨床症状は元気消失と食欲不振だった。全ての罹患した猫は後腹膜線維症診断時に高窒素血症(BUN>32mg/dL;クレアチニン>2.0mg/dL)と貧血(PCV<35%)だったが、移植後の退院時に高窒素血症はなく、貧血も目立ってなかった。25頭の猫は管外圧迫を軽減するために移植尿管から瘢痕組織を切り離し、外科的尿管剥離に成功した。最初の診断から中央値180日(範囲、8-343日)で6頭(22%)の後腹膜線維症が再発し、再度の尿管剥離で治療に成功した。
結論と臨床関連:腎臓被移植猫にかなりの比率で後腹膜線維症が発症し、閉塞性尿路障害を示唆する臨床病理所見、画像異常、あるいは症状が見られた場合、全ての腎臓被移植猫の鑑別診断に後腹膜線維症を加えるべきである。(Sato訳)
■5つの屈折計による犬と猫の比重測定とピクノメーター分析および乾燥による全固形物との比較
Comparison of specific gravity analysis of feline and canine urine, using five refractometers, to pycnometric analysis and total solids by drying.
N Z Vet J. 2015 Jan 27:1-16.
Tvedten H, Ouchterlony H, Lilliehook I.
要約目的:猫と犬の尿比重の測定で5つの屈折計測定を実施し、全固形物およびピクノメーター分析の重量の参照値と比較する
方法:通常の尿検査に供された27頭の猫と31頭の犬の尿サンプルを使用した。尿比重を5つの屈折計で測定した。4つは光学、手持ちの温度補償法の屈折計で、1つはデジタルモデルだった。尿は全固形物の正確な重さを測定するために乾燥させた。全固形物(g/L)は2.33で割ることで推定比重に換算した。4頭の猫と7頭の犬のサンプルの尿比重はピクノメーターで測定した。屈折計および乾燥全固形物あるいはピクノメーターの結果から計算した比重(比重-1として分析)の一致性を評価するためLimits of agreement analysisを使用した。
結果:5つの屈折計からは各々明らかに異なる結果が報告された。屈折計の結果は、全固形物からの推定比重と比較して比例する負バイアスが、ピクノメーターによる結果と比較して一定の負バイアスが認められた。猫の尿に対してデザインされた2つの屈折計からは、全固形物から算出した比重と比較して0.007および0.008ユニットの平均負バイアス、ピクノメーターの結果と比較して0.006ユニットの平均負バイアスの同じような最も低い比重が報告された。
結論:参考にした方法や他の屈折計と比較して、屈折計の結果は尿比重の上昇に一致して上昇しなかった。2つの猫の屈折計は、参考にした方法や他の屈折計よりも比重の結果が一貫して低く報告された。
臨床関連:この不正確さを理由に、獣医師は犬と猫の腎臓濃縮能の評価で1.030や1.035のような厳密なカットオフ値を使用するべきではない。それらの臨床的評価において屈折計による比重結果の変動性を考慮すべきである。2つの猫の屈折計は誤った低い比重結果を報告すると思われた。(Sato訳)
■慢性腎疾患に対する健康なラグドール猫の規則的な検査パラメーターおよび超音波検査による前向き評価
Prospective evaluation of healthy Ragdoll cats for chronic kidney disease by routine laboratory parameters and ultrasonography.
J Feline Med Surg. October 2013;15(10):849-57.
Dominique Paepe; Valerie Bavegems; Anais Combes; Jimmy H Saunders; Sylvie Daminet
ラグドールブリーダー団体は、多発性嚢胞腎(PKD)、慢性間質性腎炎、家族性腎異形成あるいは腎石灰化症の結果として腎臓の問題が起こるかもしれないとラグドールの飼育者に前もって通告することが多い。
健康なラグドールとラグドールではない猫を血清クレアチニンおよび尿素濃度測定、ルーチンな尿検査および腹部超音波検査で前向きに評価した。ラグドール全頭は遺伝的PKD検査も実施した。
ラグドール133頭とコントロール62頭を研究した。ラグドールは有意に血清尿素濃度が低く、尿比重が高かった。しかし、クレアチニン濃度中央値、尿蛋白:クレアチニン比中央値、血清クレアチニンあるいは尿素濃度が参照値を超えている猫の比率に違いはなかった。
超音波検査による1つ以上の腎臓の変化は、ラグドール133頭中66頭(49.6%)、コントロール62頭中25頭(40%)で見つかった。ラグドールには分節に分かれた皮質病変(7.5%v.s.0%)、異常な腎臓被膜(19.5%v.s.8%)、エコー源性尿(51.9%v.s.25.8%)がより多く見られた。慢性腎疾患(CKD)は超音波検査によりラグドール133頭中7頭(5.3%)で疑われたが、コントロールでは0頭で有意差に近かった。検査所のパラメーターでそれらラグドールの7頭中1頭でのみ腎臓機能不全が確認された。全てのラグドールはPKD陰性だった。
結論として、1つめは品種特異の血清クレアチニン参照値がラグドールで必要とならないだろう。2つめは腎臓の超音波検査の異常はラグドールでもラグドール以外の猫でも一般的である。3つめは健康な若いラグドールがPKDやCKDに罹患することは珍しいが、CKDを発症するラグドールの感受性の増加は排除できない。最後にラグドールは分節に分かれた皮質病変の素因があり、腎臓梗塞あるいは皮質瘢痕化を示すのかもしれない。(Sato訳)
■犬の急性腎傷害における糸球体濾過率、尿の産生量、電解質の分画クリアランスと生存との関連性
Glomerular Filtration Rate, Urine Production, and Fractional Clearance of Electrolytes in Acute Kidney Injury in Dogs and Their Association with Survival.
J Vet Intern Med. 2015 Jan 16. doi: 10.1111/jvim.12518.
Brown N, Segev G, Francey T, Kass P, Cowgill LD.
背景 急性の腎傷害(AKI)は犬において一般的である。自然に生じたAKIの犬における腎機能の指標の継時的な変化について評価した研究は少ない。
目的 腎機能の標準的な指標の継時的な変化を明らかにし、AKIの経過をより明確にし、回復のマーカーとなりうるものを同定すること。
動物 AKIの10頭の犬
方法 症例は前向きに組み込み、生存した犬と生存できなかった犬に分けた。尿量は、7日間閉鎖システムによって測定した。溶質の排泄と糸球体濾過率(GFR)を計測するために、1時間と24時間の尿クリアランスを毎日実施した。溶質の排泄は、1時間と24時間に採取した両方の尿に基づいて排泄比 (ER)と分画クリアランス(FC)として計算した。
結果 4頭が生き残り、6頭が死亡した。来院時、GFRは、それぞれの群で差はなかったが、生存できなかった群では増加しなかったが、生存群では時間とともに有意に増加した(P = .03)。Naの分画クリアランスは、生存群において時間とともに有意に減少した(20.2-9.4%, P < .0001)が、生存できなかった群ではそうではなかった。溶質のERとFCはかなり相関していた(r, 0.70-0.95)。
結果と臨床的影響 排泄比は、溶質の排泄の傾向を表す代替マーカーとして臨床的に使用できそうである。GFR、尿量の増加、NaのFCの減少は、腎臓の回復のマーカーである。NaのFCは、単純で非侵襲的であり、費用対効果のある方法であり、腎機能の回復を評価するのに用いることができる。(Dr.Taku訳)
■移植後のシクロスポリン中心の免疫抑制に関連した悪性腫瘍の発生:猫の腎移植されたレシピエントにおける罹患率、危険因子、生存
Post-transplant malignant neoplasia associated with cyclosporine-based immunotherapy: prevalence, risk factors and survival in feline renal transplant recipients.
Vet Comp Oncol. 2014 Oct 10. doi: 10.1111/vco.12120.
Wormser C, Mariano A, Holmes ES, Aronson LR, Volk SW.
本研究の目的は、猫の腎移植されたレシピエント(111頭)と腎移植をうけていないコントロール群(142頭)について、悪性腫瘍の発生率について比較し、移植後の悪政腫瘍の発生(PTMN)が長期的な生存に影響するかを明らかにすることである。
25頭(22.5%)の腎移植をうけたレシピエントは、PTMNと診断され、そのうちの14頭(56%)はリンパ腫と診断された。腎移植後にPTMNになった猫の全生存期間(中央値 646日、IQR 433-1620日)は、PTMNにならなかった猫の生存期間(中央値 728日、IQR 201-1942日)と比較して有意差はなかった。しかし、PTMNと診断されてからの生存期間の中央値はたった13日であった。6頭(4.2%)のコントロールの猫は、悪性腫瘍と診断された。コントロール群と比較して、移植をうけた猫は悪性腫瘍の発生が6.6倍高く、リンパ腫になる可能性が6.7倍高かった。(Dr.Taku訳)
■1次診療施設において評価された猫における慢性腎臓病の進行に関連するリスク因子
Risk factors associated with the development of chronic kidney disease in cats evaluated at primary care veterinary hospitals.
J Am Vet Med Assoc. 2014 Feb 1;244(3):320-7. doi: 10.2460/javma.244.3.320.
Greene JP, Lefebvre SL, Wang M, Yang M, Lund EM, Polzin DJ.
目的 猫における慢性腎臓病(CKD)の診断に関連するリスク因子を同定すること
研究デザイン 回顧的症例対照研究
動物 CKDと臨床的に診断され、血清クレアチニン濃度が1.6mg/dl以上であり、尿比重が1.035以下の1230頭の猫と、1230頭の年齢が一致したコントロール猫
方法 755の1次診療施設に連れてこられた猫のカルテから抽出したCKDのリスク因子と予測される情報を、多重ロジスティック回帰分析した。CKDと診断する6-12ヶ月前を評価した。またはコントロールに入れた猫において、それより早期の臨床症状だけではなく、これらの間に体重の変化した割合を、CKDの進行と関連づけて解析した。
結果 CKDのリスク因子としては、痩せたボティコンディション、以前に歯周病や膀胱炎があったか、前年に麻酔や明らかな脱水があったか、去勢雄か(避妊雌と比較して)、北東以外の合衆国に住んでいるか、などがあった。脱水していない猫において体重が増加していること、短毛の猫、以前に糖尿病と診断されたことがあることでCKDの可能性は低下し、嘔吐、多尿や多渇、食欲やエネルギーロス、口臭が診断した時点またはコントロール群に入れた時点で存在することで増加したが、6-12ヶ月前にこれらの症状が報告されることでは可能性は増加することも低下することもなかった。前の6-12ヶ月の間に体重減少の中央値が、CKDの猫で10.8%、CKDがない猫で2.1%であった。
結論と臨床的意義 猫においてCKDと診断される可能性は、いくつかの変数、最近体重が減ってきたこと、とくに他の因子と組み合わせることによって影響をうけ、猫のCKDに対する評価を正当化する。(Dr.Taku訳)
■さまざまな段階の腎臓機能の老齢猫における上皮小体ホルモン濃度
Parathyroid hormone concentration in geriatric cats with various degrees of renal function.
J Am Vet Med Assoc. November 2012;241(10):1326-35.
Natalie C Finch; Harriet M Syme; Jonathan Elliott
目的:慢性腎疾患の高窒素血症ステージではない猫は、参照範囲内に血漿リン濃度を維持するための代償性の生理学的メカニズムとして、血漿上皮小体ホルモン濃度が上昇しているかどうかを調査する
構成:前向き縦断研究
動物:様々な段階の腎機能を持つ118頭の飼育されている老齢猫
方法:各猫から血漿生化学分析のために採血し、血漿PTH濃度を測定した。また研究開始時(基準)と12か月後の尿比重を測定するため採尿した。30頭のサブセットに対し、基準時の血漿カルシトリオール濃度を測定した。12か月の終了時、腎機能を基に猫を3群に分類した。基準時と12か月後、カルシウムのホメオスタシスに関係する変数の血漿濃度を3群で比較し、またグループ内でも比較した。多変量直線回帰法を血漿PTH濃度と関係する変数の確認に使用した。
結果:血漿PTH濃度は、高窒素血症ではない猫よりも高窒素血症を発症した猫で有意に増加し、血漿カルシウムおよびリン濃度の変化が検出される前に増加した。血漿カルシトリオールとPTH濃度の間に中程度の正の関係を認めた。血漿PTH濃度は多変量モデルにおいて年齢、血漿尿素、クレアチニン、総カルシウム濃度と関連した。
結論と臨床関連:腎臓の二次的上皮小体機能亢進は、猫の高リン血症および低カルシウム血症の所見がなくても高窒素血症前に発症しえることが示唆された。(Sato訳)
■糸球体性疾患を疑い生検をした犬における免疫複合体による糸球体腎炎の有病率:501例(2007年?2012年)
Prevalence of immune-complex glomerulonephritides in dogs biopsied for suspected glomerular disease: 501 cases (2007-2012).
J Vet Intern Med. 2013 Nov;27 Suppl 1:S67-75. doi: 10.1111/jvim.12247.
Schneider SM1, Cianciolo RE, Nabity MB, Clubb FJ Jr, Brown CA, Lees GE.
背景 糸球体腎症は犬においてよくある腎疾患の原因である。
目的 糸球体性疾患を疑い生検をした北アメリカの犬における免疫複合体による糸球体腎炎(ICGN)の有病率を明らかにすること。
動物 2007年1月1日から2012年12月31日の間にテキサス獣医腎臓病サービスにおくられてきた腎臓の生検(733例)を調査した。糸球体疾患を疑い生検を実施した犬を組み入れた。
方法 光学顕微鏡 (LM)、免疫蛍光法(IF)、透過電子顕微鏡法(TEM)によりサンプルを評価した。個々の症例に対して診断を分類するために、所見について回顧的に評価した。ICGNの診断は、LMとIFがはっきりしないときに、TEM所見によって結論づけた。
結果 本研究に用いた501例の犬のうち、241例(48.1%)はICGNであり、103頭 (20.6%)は原発性の糸球体硬化症、76頭(15.2%)はアミロイド症、45頭 (9.0%)は非免疫複合体性糸球体症、24頭 (4.8%)は非免疫複合体性腎症、12頭 (2.4%)は原発性の尿細管間質疾患であった。多くのICGNの症例(241頭中66頭、27.4%)は、確定診断にTEMが必要であり、そのうち14例(5.8%)はLMで疑いもされなかった。ICGNと診断されなかった症例の中には、免疫複合体の沈着を除外するためにTEMを必要とした症例がかなりおり(260頭中60頭、23.1%)、189例中14頭は (7.4%)は、LMにおいてICGNと仮診断された。
結果と臨床的意義 糸球体性疾患を疑って生検をした犬の約半数がICGNとは異なる病態であった。腎臓の生検は、正しく原疾患を分類し、最適の治療法を実施するのに必要である。さらに、多くの場合に、熟練した腎臓病理学者によるTEMとIFの評価が正確な診断を行なうのに必要である。(Dr.Taku訳)
■犬の特発性腎性血尿に対する内視鏡ガイド下の硬化療法による腎臓温存治療:6症例(2010-2012)
Endoscopic-guided sclerotherapy for renal-sparing treatment of idiopathic renal hematuria in dogs: 6 cases (2010-2012).
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2013;242(11):1556-63.
Allyson C Berent; Chick W Weisse; Erinne Branter; Larry G Adams; Alissa Aarhus; Nicole Smee; Rebecca Berg; Demetrius H Bagley
目的:犬の特発性腎性血尿(IRH)の腎臓温存治療に対する硬化療法の使用を述べ、臨床結果を報告する
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:IRHの6頭(腎盂8個)
方法:硬化療法を行った犬のカルテを再検討した。どちら側からの出血かを判定するため、各尿管膀胱移行部を膀胱鏡で確認し、内視鏡と透視ガイドにより逆行性尿管腎盂造影を行った。腎盂尿管移行部バルーンを尿管閉塞のために使用し、腎盂を満たす量を記録した。滅菌硝酸銀液に続きポピドンヨード混合物を腎盂に注入した。処置の後に、ダブルピッグテイル尿管ステントを設置した。処置前と処置後の生化学的変化、画像パラメーター、臨床結果に対する情報を入手した。
結果:6頭(5頭オス1頭メス)の犬の片側(4頭)、両側(2)出血に対し、硬化療法を行った。5つは右側、3つは左側だった。犬の年齢と体重の中央値は3歳と42.4kgだった。処置時間の中央値は150分だった。尿管ステントを処置後設置していなかった1頭の犬は、腎臓疼痛と腎盂拡張の短期的症状を示した。顕微鏡的血尿の消失は6頭中4頭で見られた(中央値6時間)。他2頭は適度に改善した。追跡調査の中央値は8か月だった(範囲、3.5-20.5ヶ月)。
結論と臨床関連:特発性腎性血尿に対する話題の硬化療法は安全で効果的だった。犬の特発性腎性血尿に対する局所硬化療法は、尿管腎摘出を超える有用で最小侵襲性の腎臓温存治療だと考えられた。(Sato訳)
■ベナゼプリルで治療している蛋白尿があって尿毒症のない犬における蛋白尿のコントロールのための腎臓処方食の効果の評価
Evaluation of the Effects of a Therapeutic Renal Diet to Control Proteinuria in Proteinuric Non-Azotemic Dogs Treated with Benazepril.
J Vet Intern Med. 2013 Dec 26. doi: 10.1111/jvim.12246.
Cortadellas O, Talavera J, Fernandez Del Palacio MJ.
背景 アンギオテンシン変換酵素阻害剤 (ACEIs)は、慢性腎臓病の犬の蛋白尿のコントロールに現在使用されている。腎臓食 (RDs)は尿毒症の犬の管理に有用であるが、蛋白尿があって尿毒症のない (PNAz)犬への効果についてはあまり知られていない。
仮説 ベナゼプリル(Be)で治療しているPNAzの犬へRDを給餌することによって、維持食(MD)と比較して蛋白尿のコントロールをより改善する。
動物 22頭のPNAz (尿タンパククレアチニン比 (UPC)が1より大きい)犬
方法 ランダム化非盲検臨床試験。犬は、MD(100kcal MEあたり5.5gの蛋白)/BeグループかRD(100kcal MEあたり3.7gの蛋白)/Beグループへ振りわけ60日間試験した。血清アルブミン濃度が2g/dlより低い犬にはアスピリン(1mg/kg 12時間おき)を投与した。身体検査、全身血圧(SBP)の測定、全血球計算 (CBC)、生化学パネル、尿検査、UPCを0日目 (D0)と60日目 (D60)に測定した。
結果 D0には、評価した測定値に両グループで有意差はなかった。試験の間、log UPC(等比中項[95%信頼区間])とSBP(平均±SD mmHg)は、RDグループにおいて有意に(ペアT検定, P = 0.001)低下したが(logUPCD0 = 3.16[1.9-5.25]; UPCD60 = 1.20 [0.59-2.45]; SBPD0 = 160 ± 17.2; SBPD60 = 151 ± 15.8)、MDグループでは低下しなかった(UPCD0 = 3.63[2.69-4.9]; UPCD60 = 2.14 [0.76-6.17]; SBPD0 = 158 ± 14.7; SBPD60 = 153 ± 11.5)。しかし、RM-ANOVA法では、これらの変化が食事を変えた事による結果であるとは確定できなかった。体重とアルブミン濃度は両グループにおいて有意な変化はなかった。
結論と臨床的意義 Beで治療しているPNAzの犬に対してRDを給餌することは、MDを給餌する場合と比較して、蛋白尿とSBPをコントロールする助けとはなり、臨床的に明らかな栄養不良を起こす事もないが、もう少し研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■慢性腎疾患の猫の尿路感染
Urinary tract infections in cats with chronic kidney disease.
J Feline Med Surg. June 2013;15(6):459-65.
Joanna D White; Mark Stevenson; Richard Malik; David Snow; Jacqueline M Norris
慢性腎疾患(CKD)の猫において、尿培養結果陽性と関係する臨床症状と全体の有病率を評価するため、定期的な尿培養を実施した。
尿培養陽性が下部尿路疾患、あるいは腎盂腎炎の臨床症状と関係しないことをオカルト尿路感染と定義した。多変量ロジスティック解析、Cox比例ハザード回帰モデルでオカルト尿路感染に対する危険因子、その生存性との関連を評価した。
25頭の猫から31の尿培養陽性結果が得られた。尿培養陽性の87%はアクティブ尿沈渣だった。最も一般的な感染病原体は大腸菌で、ほとんどの細菌はアモキシシリンクラブラン酸に感受性があった。25頭の猫のうち18頭はオカルト尿路感染だった。それらの猫の中でメス猫の加齢は有意に尿培養陽性と関係した;オカルト尿路感染と生存性に有意な関連はなく、短期間(200日)においてのみ生存性を予測するものは血清クレアチニンだった。
結論として慢性腎疾患の猫の中で、オカルト尿路感染の猫は老齢、メス猫に起きやすかったが、窒素血症の程度と関係なかった。オカルト尿路感染の存在、治療した時も生存性に影響しなかった。(Sato訳)
■猫の尿比重の測定においてデジタル屈折計と光学手持ち屈折計の比較
Comparison of digital and optical hand-held refractometers for the measurement of feline urine specific gravity.
J Feline Med Surg. February 2011;13(2):152-4.
Alexander D Bennett; Grace E McKnight; Steve J Dodkin; Kerry E Simpson; Anita M Schwartz; Danielle A Gunn-Moore
尿比重(USG)の測定は、腎臓の濃縮能を評価するための尿検査で重要な要素である。
この研究の目的は、手持ちの光学アナログ屈折計と猫用デジタル機器のUSG値の違いを定量化することである。
55頭の猫の尿サンプルを検査した。それら2つの屈折計の間には統計学的有意差があり(P<0.001)、光学屈折計(平均比重1.031)はデジタル屈折計(平均比重1.027)よりも一貫して高かった。そのサンプルの無作為に取り出した結果(n=10)を尿重量オスモル濃度と比較し、光学、デジタル機器共に良好な相関を示した。
正確なUSGの読みは重要である一方、2つの機器の間の統計学的意義は臨床的に重要とは思われにくく、ゆえにその結果により患者の評価、あるいは治療プランが変化する見込みもない。
デジタルおよび光学屈折計共に、尿重量オスモル濃度と高い相関を示し、臨床でのUSGの評価において両機器は有効だが、このデジタル機器は読み取りがより簡単で、主観的解釈の可変性をなくすことができる。(Sato訳)
■犬の尿比重の測定に対するデジタル屈折計と光学アナログ手持ち屈折計の比較
Comparison of a digital and an optical analogue hand-held refractometer for the measurement of canine urine specific gravity.
Vet Rec. 2012 May 5;170(18):463. doi: 10.1136/vr.100348. Epub 2012 Apr 14.
Paris JK, Bennett AD, Dodkin SJ, Gunn-Moore DA.
尿比重(USG)は尿濃縮能の測定のため臨床で使用され、通常は屈折計で測定する。犬の尿の評価のため、光学アナログ屈折計とデジタル屈折計の比較は報告されていない。
この研究の目的は、犬のUSGの測定に対し、デジタル屈折計と光学アナログ手持ち屈折計を比較し、尿重量オスモル濃度との相関を評価することだった。
前向き研究。自然排尿サンプルを285頭の入院中の成犬から採取し、デジタルと光学の屈折計の両方でUSG値を測定した。
50頭の犬で、凝固点降下浸透圧計により尿の重量オスモル濃度も測定した。
2つの屈折計の間には小さいが統計学的に有意差があり(P<0.001)、光学アナログ屈折計の測定値は、デジタル屈折計よりも高かった(平均差0.0006、SD0.0012)。それぞれ屈折計測定値は、91.5%の症例で<0.002の変動を見せた。光学アナログとデジタル屈折計の測定値は重量オスモル濃度と良好な相関を示した(それぞれr=0.980とr=0.977、両方P<0.001)。
統計学的に有意だが、2つの屈折計の差は臨床的に意義があると思えない。両機器は犬のUSGの正確な評価をもたらす。(Sato訳)
■さまざまな段階の腎機能の老齢猫における上皮小体ホルモン濃度
Parathyroid hormone concentration in geriatric cats with various degrees of renal function.
J Am Vet Med Assoc. November 2012;241(10):1326-35.
Natalie C Finch; Harriet M Syme; Jonathan Elliott
目的:慢性腎疾患の非高窒素血症のステージの猫は、血漿リン濃度を参照値内に維持するため代償性の生理学的メカニズムとして血漿上皮小体ホルモン(PTH)濃度を上げているかどうかを確かめる。
構成:前向き縦断研究
動物:さまざまな段階の腎機能の飼い主所有猫118頭
方法:各猫において血漿生化学検査及び血漿PTH濃度測定のために血液サンプルを入手し、研究開始(基線)および12か月後の尿比重測定のため尿サンプルを入手した。そのうち30頭の猫は、基線で血漿カルシトリオール濃度を測定した。12か月の終了時に猫の腎機能を基に1から3群に振り分けた。基線と12か月後に、カルシウム恒常性に関与する変数の血漿濃度を3群間で比較し、また研究期間のグループ内でも比較した。血漿PTH濃度に関与する変数を確認するために多変量直線回帰を使用した。
結果:まだ高窒素血症になってない猫のPTH濃度と比較して、高窒素血症になった猫の血漿PTH濃度は有意に増加し、血漿カルシウムおよびリン濃度の変化前にPTH濃度が増加することが分かった。血漿カルシトリオールとPTH濃度の間に中程度の正の関連を確認した。最終多変量モデルにおいて血漿PTH濃度は、年齢、血漿尿素、クレアチニンおよび総カルシウム濃度に関連した。
結論と臨床関連:結果は、腎臓の二次的上皮小体機能亢進症は猫の高窒素血症前に、高リン血症、、低カルシウム血症がなくても起こる可能性があることを示唆した。(Sato訳)
■ラグドール猫の腎疾患に対するスクリーニング検査:回顧的評価
Screening of ragdoll cats for kidney disease: a retrospective evaluation.
J Small Anim Pract. October 2012;53(10):572-7.
D Paepe; J H Saunders; V Bavegems; G Paes; L J Peelman; C Makay; S Daminet
目的:ラグドールの腎臓異常の有病率を評価すること。ラグドールのブリーダーはよく顧客に今後の腎臓問題、主に慢性間質性腎炎および多発性嚢胞腎によるものに気を付けるよう注意する。ゆえに、腹部超音波検査、血清クレアチニンおよび尿素濃度測定、遺伝的検査により精査されたラグドールは、腎疾患のリスク増加の実証された科学的エビデンスもなくよく実施される。
方法:8年間1つの施設で腎疾患のためのスクリーニング検査をしたラグドールの回顧的評価
結果:腎臓超音波検査は244頭の健康なラグドールで実施された。7頭は多発性嚢胞腎陽性で、21頭は慢性腎疾患が疑われ、8頭は重要性が不明な異常があり、2頭は1つの腎臓しか見えなかった。慢性腎疾患があると疑われた猫は正常な腎臓像の猫よりも有意に年齢が高く、有意に血清尿素およびクレアチニン濃度が高かった。遺伝的検査をした125頭全て多発性嚢胞腎に対し陰性だった。しかし、超音波検査で陽性の7頭中1頭のみが多発性嚢胞腎に対する遺伝子検査を行った。
臨床的意義:慢性腎疾患に匹敵する超音波像はこのラグドール集団のほぼ10%の猫に認め、多発性嚢胞腎は低い有病率(<3%)で発生した。ラグドールが慢性腎疾患の素因を持つかどうか明らかにする研究が必要である。(Sato訳)
■過剰腎の両側融合の猫の1例
Bilateral fusion of a supernumerary kidney in a cat.
J Feline Med Surg. June 2012;14(6):424-7.
Juneo Freitas Silva; Jankerle Neves Boeloni; Adriana Monteiro Cima; Rogeria Serakides; Natalia M Ocarino
過剰腎の両側融合の珍しい症例を、高窒素血症と慢性腸炎で死亡した8歳メスの雑種猫の検死中に発見した。
腸炎は別にして、検死で4つの腎臓を認め、2つは腰椎下左領域、2つは腰椎下右領域に存在し、皮質と髄質領域はきれいに個別化し独立していた。しかし腎盂は部分的に癒合し、1本の尿管が出ていた。腎臓は小さく、白っぽく硬く不規則な表面をしていた。
顕微鏡的に全ての腎臓で、形成不全の特徴を持つ未熟な腎糸球体と尿細管の中の正常な腎糸球体と尿細管を認めた。糸球体硬化、腎石灰沈着、間質線維症の病巣も観察された。(Sato訳)
■犬と猫の慢性腎疾患の管理に対するエビデンスベースの段階的アプローチ
Evidence-based step-wise approach to managing chronic kidney disease in dogs and cats
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care, Article first published online: 7 MAR 2013
David J. Polzin DVM, PhD, DACVIM
目的:エビデンスベースの治療をうまく適用する獣医師とオーナーの関係を作り上げることで、臨床結果を最高にする目的を持ち長期間、慢性腎疾患(CKD)を上手に管理する骨組みを提供する
病因:最終的にCKDは機能的ネフロンの喪失から起こる。しかし、この喪失の原因となる特定の疾患過程は通常、CKDの患者の腎臓で発生している慢性的変化(例えば線維化)や代償性の順応により判定できない。早期診断はCKDの病因をより良く理解する助けになるかもしれない。
診断:CKDの診断は、長期間(一般に3か月以上)存在している原発性腎疾患による腎機能喪失の確認を基にする。
治療:治療の目的は、(1)腎機能喪失の進行を緩める、(2)CKDの臨床および生化学的結果を改善させる、(3)適切な栄養摂取を維持することである。それらの目的は、(1)CKDの進行を促進する順応過程を管理する、(2)水分、栄養、ミネラル、電解質の摂取をコントロールする、(3)ホルモン不足を修正することで達成される。
予後:CKDの犬の短期予後は、良好から不良まで変化し、長期予後は一般に慎重から不良まで、その犬の国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)のCKDステージに依存する。
CKDの猫の短期および長期予後は、IRISのCKDステージに依存して良好から不良まで変化すると思われる。しかし、猫の予後はより変わりやすく、予測できない。(Sato訳)
■明らかな慢性腎疾患の老猫とそうでない老猫の寿命に対するメロキシカムの影響の回顧的分析
A retrospective analysis of the effects of meloxicam on the longevity of aged cats with and without overt chronic kidney disease.
J Feline Med Surg. December 2012;14(12):876-81.
Richard A Gowan; Randolph M Baral; Amy E Lingard; Melissa J Catt; Wibke Stansen; Laura Johnston; Richard Malik
投与開始時に自然発生の慢性腎疾患(CKD)がある猫とそうでない猫の生存性に対する長期メロキシカム治療の影響を調査した。
2件の猫専門病院のデータベースから、6か月以上メロキシカムの連続投与を行っている7歳以上の猫を検索した。再調査に対する完全な医療記録が得られた猫だけ研究に含めた。
腎臓群の寿命の中央値は18.6歳(95%信頼区間17.5-19.2歳)で、非腎臓群は22歳(95%信頼区間18.5-23.8歳)だった。CKDの診断後の寿命の中央値は1608日(95%信頼区間1344-1919日)で、過去にCKDの猫で発表された生存期間よりも良好だった。両群で最も一般的な死亡原因は腫瘍だった。メロキシカムの長期経口投与は、既存の安定したCKDの猫や、IRISステージII、IIIの猫でさえも寿命を短くするとは思えない。ゆえに、慢性的な痛みを持つ猫で、QOLおよび寿命に対し要求を満たすには、メロキシカムを治療法に組み入れることを考えるべきである。(Sato訳)
■健康な猫における塩酸メデトミジンと塩酸キシラジンの利尿効果の比較
Comparison of the diuretic effects of medetomidine hydrochloride and xylazine hydrochloride in healthy cats.
Am J Vet Res. December 2012;73(12):1871-80.
Yusuke Murahata; Yoshiaki Hikasa
目的:健康な猫で塩酸メデトミジンと塩酸キシラジンの用量関連利尿効果を調査する。
動物:5頭の未不妊猫(オス4頭、メス1頭)
方法:5頭の猫に11処置を実施した。猫には生理食塩水(0.9%NaCl)(コントロール)、塩酸メデトミジン(20、40、80、160、320μg/kg)、塩酸キシラジン(0.5、1、2、4、8mg/kg)をIM投与した。尿と血液サンプルを24時間中に9回採取した。測定した変数は尿量、pH、比重;血漿アルギニンバソプレッシン(AVP)濃度;クレアチニンと電解質濃度、同様に尿および血漿の重量オスモル濃度だった。
結果:注射後5時間までにメデトミジンおよびキシラジン共に尿産生を増加させた。キシラジンは用量依存の利尿効果があったが、メデトミジンはそうではなかった。尿比重と重量オスモル濃度は両薬剤に対し用量依存で低下した。自由水クリアランスは注射後5時間までに増加した一方で、糸球体濾過率、浸透圧クリアランス、血漿浸透圧、電解質濃度は有意に変化しなかった。AVP濃度曲線下面積は、メデトミジンの用量依存で低下したがキシラジンはそうではなかった。しかし、これは利尿に関係なかった。
結論と臨床関連:猫におけるメデトミジンおよびキシラジンは、腎臓の水の再吸収減少により顕著な利尿を誘発した。AVP濃度の変化を含むメデトミジンの利尿効果はキシラジンのものとは異なっていた。尿路閉塞、循環血液量減少、あるいは脱水の猫にそれら薬剤を投与するときは注意すべきである。(Sato訳)
■犬および猫におけるロッキングループピッグテール腎造瘻カテーテルの使用:20症例(2004-2009)
Use of locking-loop pigtail nephrostomy catheters in dogs and cats: 20 cases (2004-2009).
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(3):348-57.
Allyson C Berent; Chick W Weisse; Kimberly L Todd; Demetrius H Bagley
目的:犬猫におけるロッキング-ループピッグテール腎造瘻カテーテル(PNC)設置の方法と臨床的有効性を述べる
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:PNC設置を行った16頭の猫(18個の腎臓)と4頭の犬(4個の腎臓)
方法:PNC設置を行った動物の医療記録を再検討した。PNCsは超音波および透視下ガイドで経皮的に、あるいは腹側正中切開で透視下ガイドにより設置した。PNC設置にセルディンガー変法あるいは1-穿刺トロッカーイントロダクション法を使用した。術前の腎盂の大きさ、術後の腎盂の減圧、カテーテルの開存性、血清生化学変化、尿サンプルの微生物培養の結果を再検討した。カテーテルが決まった位置にあった期間、カテーテル除去の理由と方法、合併症、臨床結果に注目した。
結果:PNC設置の理由は、尿管結石(15個の腎臓)、尿管狭窄(3個)、悪性の閉塞(2個)経皮的腎石除去術(2)だった。22個のカテーテルのうち7個は経皮的に設置され、15個は腹部正中切開で設置された。カテーテルのサイズは5F(n=17)か6F(5)だった。PNCsは中央値7日間(範囲、1-28日)留置を維持した。カテーテルが関連した合併症は、尿漏れ(n=1)、家庭で自らによる偶発的抜去(1)だった。全てのカテーテルに関し、腎盂の減圧は一時的尿の迂回と排泄を行うことで達成できた。
結論と臨床関連:腎盂の減圧を達成するため一時的に尿路迂回を必要とする犬猫で、ロッキング-ループPNCsの設置は、安全で有効、よく許容できる方法だった。(Sato訳)
■トロンボエラストグラフィで検討した蛋白漏出性腎症の犬における凝固亢進状態
Hypercoagulability in Dogs with Protein-Losing Nephropathy as Assessed by Thromboelastography.
J Vet Intern Med. 2013 Mar 25. doi: 10.1111/jvim.12067.
Lennon EM, Hanel RM, Walker JM, Vaden SL.
背景 蛋白漏出性腎症 (PLN)の犬は、血栓症のリスクがあるが、凝固亢進になるメカニズムとどの程度の犬がそのリスクにあるかは知られていない。
目的 PLNの犬におけるトロンボエラストグラフィ (TEG)を決定し、血清アルブミン(SALB)、UPC、抗トロンビン活性との関連を明らかにすること。
動物 28頭のPLNの飼い犬(尿タンパククレアチニン比 (UPC) >2.0)および8頭のコントロール犬をこの観察研究に前向きに組み入れた。
方法 TEGパラメーター、抗トロンビン活性、血清生化学プロファイル、UPCを測定した。TEGの解析はカオリン活性を用いて2サンプルずつ行ない、反応時間 (R)、クロット形成時間 (K)、αアングル(α)、最大振幅 (MA)、凝固強度 (G)を解析した。
結果 PLNの犬は、コントロールの犬と比較して、Kが低く(P=0.004)、α、MA、Gが高かった(それぞれP=0.001、P<0.001、P<0.001)。TEGパラメーターとUPC、SALB、抗トロンビンの間に有意な相関は認められなかった。12頭のPLNの犬(42.8%)は、高窒素血症であり、19頭(67.8%)は低アルブミン血症(SALB <3.0g/dl)であり、11頭はSALBが2.5g/dlより低かった。
結果と臨床的意義 PLNの犬は、コントロール犬と比較して凝固亢進状態にあることを示すTEG値を示したが、抗トロンビン、SALB、UPCはこうした結果を予測することには使用できなかった。抗凝固療法を行なうべき時を予測するためには、個々の患者において総合的に凝固能の評価することが必要である。(Dr.Taku訳)
■犬の1つの腎臓マーカーとしての尿中クラステリン
Urinary clusterin as a renal marker in dogs.
J Vet Diagn Invest. March 2012;24(2):301-6.
Juan D Garcia-Martinez; Asta Tvarijonaviciute; Jose J Ceron; Marco Caldin; Silvia Martinez-Subiela
犬の尿中クラステリン測定に対する種特異酵素免疫測定を確証し、腎臓損傷のマーカーとして尿中クラステリンの使用をリーシュマニア症の犬集団で評価した。
リーシュマニア症の64頭と健康な11頭、合計75頭の犬から尿を採取した。リーシュマニアの犬を5群に振り分けた:I(n=9;血清クレアチニン(SCr)<1.4mg/dl、尿蛋白-クレアチニン(UPC)比≦0.5);II(n=29;SCr<1.4mg/dl、UPC>0.5);III(n=6;SCr≧1.4mg/dl-<2mg/dl、UPC>0.5);IV(n=13;SCr≧2mg/dl-<5mg/dl、UPC>0.5);V(n=7;SCr≧5mg/dl、UPC>0.5)。尿中クラステリン濃度を測定し、尿中クラステリン-クレアチニン比を計算した。
犬の尿中クラステリン分析は、正確精度および検出限界結果を基に良好な解析パフォーマンスを示した。I群および健康群と比較して、II-V群の尿中クラステリンとクラステリン-クレアチニン比の統計学的有意な増加を示した。
尿中クラステリン濃度と尿中クラステリン-クレアチニン比が腎損傷の解析的エビデンスのある犬において増加することと、尿中クラステリン-クレアチニン比は慢性腎疾患の早期バイオマーカーとして使用できるかもしれないと、この研究結果は示している。(Sato訳)
■慢性腎疾患の犬と猫の手作り食に対するレシピの評価
Evaluation of recipes for home-prepared diets for dogs and cats with chronic kidney disease.
J Am Vet Med Assoc. March 2012;240(5):532-8.
Jennifer A Larsen; Elizabeth M Parks; Cailin R Heinze; Andrea J Fascetti
目的:慢性腎疾患(CKD)の動物に対して推奨される食餌のレシピを評価し、成犬と成猫の必要量に対するそれらのレシピの栄養学的プロフィールを比較し、CKDの管理に対するそれらの妥当性を評価する。
構成:評価研究
サンプル:CKDの犬(n=39レシピ)および猫(28)の使用するため作られた67の手作り食のレシピ
方法:カロリー、多量栄養素カロリー配分、微量栄養素濃度を判定するのにコンピューターソフトウエアでレシピを分析し、CKDの管理に対する妥当性を評価した。
結果:各レシピの分析に対し仮説が必要で、成獣に対する全てのNational Research Council栄養所要量(RA)に合うレシピはなかった。RAsと比較して、粗蛋白質あるいは少なくとも1アミノ酸の濃度は犬のレシピ39個中30個(76.9%)、猫のレシピ28個中12個(42.9%)で低かった。コリンは犬(37/39(94.9%))と猫(23/28(82.1%))のレシピで最も一般的にRA以下だった。セレン(34/39(87.2%)犬と9/28(32.1%)猫レシピ))、亜鉛(24/39(61.5%)犬と19/28(67.9%)猫レシピ)、カルシウム(22/39(56.4%)犬と7/28(25.0%)猫レシピ)濃度も推奨以下が多かった。犬と猫レシピのリン濃度中央値は、0.58および0.69g/1000kcalだった。
結論と臨床関連:栄養学的妥当性の多くの問題が見つかり、そのレシピの使用は、かなり変わりやすく、不適切な食餌になることもあり得るものだった。多くのレシピは個々の患者の栄養学的および臨床的必要性に合ってなく、長期給餌に注意して使用すべきである。(Sato訳)
■犬のネフローゼ症候群:臨床特性とエビデンスベースの治療考察
Nephrotic syndrome in dogs: clinical features and evidence-based treatment considerations.
Top Companion Anim Med. August 2011;26(3):135-42.
Emily S Klosterman; Barrak M Pressler
ネフローゼ症候群(NS)は低アルブミン血症、蛋白尿、高脂血症、間質スペースおよび/あるいは体腔への液体蓄積が同時に存在すると定義され、犬、猫およびヒトの糸球体疾患のまれな合併症である。罹患動物は大量の蛋白を尿に出すため、明らかに異常な尿蛋白:クレアチニン比を示すことが多い。しかし、低アルブミン血症が関連する血漿コロイド浸透圧の低下は、多くの実験モデルにおける液体管外遊出を説明するのは不十分である、代わりに静水圧を結果的に増加させるナトリウムの異常な尿細管保持、あるいは血管透過性の全身的増大がNS発症の原因となる主要な欠陥かもしれない。ヒトのNSに関連する要因(”ネフローゼ域”血清アルブミン濃度および尿蛋白濃度、特定の糸球体疾患サブタイプ)は過去に犬でも重要と考えられているが、糸球体疾患の症例シリーズや散発の症例報告を含むそれらの患者の記述は限られていた。しかし、より最近のネフローゼv.s.非ネフローゼ糸球体疾患の犬の大規模集団による症例コントロール比較研究は、疾病素因、同時に起こる臨床病理学的異常はNSのヒトにおいて典型的に遭遇するものとは異なるが、症例の進行および患者の予後に対する負の影響は似ている。
この文献は主要な現行の理論を簡単に概説し、NSの病因に対するエビデンス、その後糸球体疾患の犬のこの症候群の臨床特性の概観をサポートする。
著者はまた罹患犬のレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の調節不全の疑いを最小限にすることを基本とするエビデンスベースおよび経験ベースの治療推奨法を提供する。(Sato訳)
■真性糖尿病の猫における微量アルブミン尿と蛋白尿の有病率
The prevalence of microalbuminuria and proteinuria in cats with diabetes mellitus.
Top Companion Anim Med. August 2011;26(3):154-7.
Suliman A Al-Ghazlat; Cathy E Langston; Deborah S Greco; Nyssa J Reine; Suzanne N May; Frances S Shofer
真性糖尿病(DM)の猫66頭、他の疾患の非糖尿病猫35頭、健康な非糖尿病猫11頭における微量アルブミン尿(MA)および蛋白尿の有病率をE.R.D.- HealthScreen Feline Urine Testを私用して評価した。糖尿病猫のMA有病率は、非糖尿病疾患猫および健康なコントロール猫よりも高かった(それぞれ70%、39%、18%、P<.0001)。また、尿蛋白/クレアチニン比(UPC)>0.4で定義される蛋白尿の糖尿病猫の有病率はコントロール猫よりも有意に高かった(それぞれ70%、35%、9%、P<.0001)。MAとUPCの結果には有意だが弱い相関があった(P<.0001、r=0.43)。
我々の結果はDMの猫においてMAはよく見られることを示した。更なる研究でDMの猫の微量アルブミン尿の存在およびその程度の予後価値を評価する必要がある。(Sato訳)
■猫免疫不全ウイルス感染猫と腎疾患
Renal Disease in Cats Infected with Feline Immunodeficiency Virus.
J Vet Intern Med. 2012 Jan 23.
Baxter KJ, Levy JK, Edinboro CH, Vaden SL, Tompkins MB.
背景:猫免疫不全ウイルス(FIV)とヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染は、免疫異常、日和見感染、炎症性疾患、腫瘍などの類似した臨床症状を引き起こす。腎疾患は、HIV感染に関連した4番目に多い死因である。
目的:猫においてFIV感染と腎疾患の関連を検討する。
動物:飼い猫(FIV感染猫153頭、非感染猫306頭)と研究用コロニーのSPF猫(FIV感染猫95頭、非感染猫98頭)を用いた。
方法:後向きと前向きを含む横断研究。血液尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン、尿比重(USG)、尿蛋白クレアチニン比(UPC)を、FIV感染および非感染猫の間で比較した。FIV感染猫については、総CD4陽性、CD8陽性Tリンパ球数をフローサイトメトリーで測定し、CD4陽性/CD8陽性Tリンパ球比を計算した。血清クレアチニンが1.9mg/dl以上でUSG 1.035以下の場合、腎高窒素血症とした。尿沈渣に異常がなく、UPCが0.4より高い場合に蛋白尿とした。
結果:飼い猫の中では、FIV感染と腎高窒素血症の間に相関は認められなかった(P=0.24)。しかし、FIV非感染猫(195頭中20頭、10.3%)と比較して、より多くのFIV感染猫が(64頭中16頭、25.0%)蛋白尿を示していた(P <0.01)。避妊または去勢の状態と健康状態は、FIV感染猫において蛋白尿の危険因子とはならなかったが、UPCは、CD4陽性/CD8陽性Tリンパ球比と正の相関が認められた(スピアマンの順位相関計数rho = 0.37, P =0.01)。SPF猫のなかでは、FIV感染と腎高窒素血症(P =0.21)、FIV感染と蛋白尿(P =0.25)の間に相関は認められなかった。
結論と臨床的意義:蛋白尿はFIV自然感染と関連していたが、腎高窒素血症は関連していない。(Dr.Taku訳)
■正常な猫において食餌中タンパク含有量の腎臓パラメーターに対する影響
Effects of dietary protein content on renal parameters in normal cats.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):698-704.
Brianna Backlund; Debra L Zoran; Mary B Nabity; Bo Norby; John E Bauer
23頭の健康な避妊済みメス猫において、腎臓パラメーターに対する食餌中タンパク含有量の影響を評価する。
目的は、タンパクの多く入った食餌を食べている猫は、尿検査で腎機能の検出可能な変化がなく、血清尿素窒素(UN)およびクレアチニン値が高くなるかどうか判定することだった。シングル無作為クロスオーバー構成を使用した。食餌試験の最低1か月前から猫に標準維持食を与えた。それらは2相で与えた。1相目は、猫を無作為に高蛋白(HP=46%代謝エネルギー(ME))あるいは低蛋白食(LP=26%ME)に振り分けた。2相目は、猫に1相目で与えなかった食餌を与えた。研究期間中(10週)に2週間間隔で血液および尿サンプルを採取した。
低蛋白食を与えた時と比べて、高蛋白食を与えた時のUN、アルブミン、アラニンアミノトランスフェラーゼ、尿比重は有意に高く、クレアチニン、リンは有意に低かった(P<0.05)が、対応する正常値範囲外に平均値を認めたものはなかった。
食餌摂取量はUNの臨床的に有意な変化およびいくつかの他の生化学分析値に統計学的有意な変化を起こさせる可能性があるが、全ての分析値は正常範囲内を維持するだろう。ゆえに、特別な患者において正確な食餌の聞き取りは、腎パラメーターが食餌により影響を受けているかどうかを判定する手助けとして必要である。(Sato訳)
■慢性腎疾患と年齢が同じのコントロール猫におけるミルタザピンの薬物動態
The Pharmacokinetics of Mirtazapine in Cats with Chronic Kidney Disease and In Age-Matched Control Cats
Journal of Veterinary Internal Medicine, Volume 25, Issue 5, pages 985?989, September/October 2011
J.M. Quimby, D.L. Gustafson, K.F. Lunn
背景:慢性腎疾患の猫(CKD)はしばしば食欲不振となり、食欲を刺激するミルタザピンの投与にベネフィットがあるかもしれない。慢性腎疾患の猫における薬物動態はよくわかっていない。
仮説:慢性腎疾患はミルタザピンのクリアランス/生物学的利用率(CL/F)を遅らせる。
動物:6頭の慢性腎疾患猫と年齢の同じ6頭の健常猫(AMC)。2頭の慢性腎疾患猫はそれぞれIRISステージⅡ、ⅢそしてステージⅣであった。
方法:処置前、ミルタザピン1.88mgを単回経口投与した後0.5, 1, 1.5, 2, 4, 8, 24そして 48時間後に血液を採取した。ミルタザピン濃度はタンデム型質量分析に繋がれた液体クロマトグラフィーによって測定された。仕切られていない薬物動態学のモデリングが行なわれた。
結果:平均年齢は11歳(慢性腎疾患猫)と10.8歳(AMC猫)であった。平均血清クレアチニン濃度±標準偏差 (SD)は3.8±1.6mg/dL (慢性腎疾患猫)と、1.3±0.4mg/dL (AMC猫)であった。平均半減期±標準偏差は、15.2±4.2時間 (慢性腎疾患猫) と12.1±1.1時間 (AMC猫)であった。平均薬物血中濃度-時間曲線下面積 (AUC)±標準偏差は770.6±225.5ng/mL?hr (慢性腎疾患猫)と、555.5±175.4ng/mL?hr (AMC猫)であった。平均クリアランス/生物学的利用率±標準偏差は、0.6±0.1L/hr/kg (慢性腎疾患猫) そして 0.8±0.16L/hr/kg (AMC猫)であった。マン・ホイットニイ検定では、グループ間において、薬物血中濃度-時間曲線下面積(P=0.01)とクリアランス/生物学的利用率(P=0.04)に統計的有意差があった。慢性腎疾患の猫において48時間の算出した蓄積因子は1.15であった。
結論:慢性腎疾患はミルタザピンのクリアランス/生物学的利用率を遅らせるかもしれない。単回低用量ミルタザピンは、慢性腎疾患猫において48時間間隔で薬を飲むことに匹敵する半減期に帰着した。(Dr.Kawano訳)
■アビシニアンの関連した猫の糸球体疾患による持続的な血尿とタンパク尿
Persistent haematuria and proteinuria due to glomerular disease in related Abyssinian cats.
J Feline Med Surg. 2008 Jul;10(3):219-29. Epub 2008 May 2.
White JD, Norris JM, Bosward KL, Fleay R, Lauer C, Malik R.
若いアビシニアン系猫における糸球体疾患の8症例を述べる。血尿は最も一貫した特徴であった。6頭の猫はネフローゼ症候群へ発展した。血尿を伴う猫の短期予後はよかったが、ネフローゼ症候群の猫は6頭の猫のうち3頭は浮腫が改善したが予後不良であった。3頭の猫から採取した腎臓生検の顕微鏡検査では正常あるいは軽度の異常のみが明らかになった。剖検を行った3頭において、組織学的異常としては軽度糸球体間質の細胞過形成と限局的増殖性糸球体症と一致した糸球体係蹄とボウマン嚢の癒着が含まれた。この糸球体症に関する更なる調査をするためには、遺伝性疾患である可能性を調査するための遺伝性疾患分析と糸球体異常を特徴づけるための超微細構造的そして免疫組織化学的研究が必要である。糸球体疾患、潜在的には家族性疾患は、アビシニアンと関連猫において持続性の血尿あるいはタンパク尿の調査に関して考慮されるべきである。(Dr.Kawano訳)
■シンバイオティックのアゾディルは慢性腎疾患の猫のフードに振りかけたときに高窒素血症を変化させなかった
Azodyl, a synbiotic, fails to alter azotemia in cats with chronic kidney disease when sprinkled onto food.
J Feline Med Surg. June 2011;13(6):405-9.
Mark Rishniw; Susan G Wynn
猫の慢性腎疾患(CKD)におけるプロバイオティック療法の効果はあまり明らかにされていないが、人気が出てきている。しかし、猫のオーナーはメーカーによる指示のカプセルのまま投与するよりも、フードにそれらを混ぜてプロバイオティクスを投与する方が多い。それらの非推奨投与法の効果は不明である。
この二重盲検コントロール臨床試験において、自然発生CKDの猫10頭にプロバイオティック-プレバイオティック合剤(シンバイオティック)か、シリアムハスク(プレバイオティックのみ)を2ヶ月間無作為に投与した。薬剤はフードに振りかけるか、混ぜる、あるいは懸濁液として投与した。血中尿素窒素(BUN)とクレアチニンを投薬前に2度測定し、その後投薬中2ヶ月間で月に1回測定した。オーナーと臨床医は治療を知らされていなかった。各猫のBUNとクレアチニンの最大比率変化を算出した。グループ間で比率変化の違いは検出されなかった(BUNとクレアチニン両方に対しP=0.8)。この研究で使用したシンバイオティックサプリメントは、フードに混ぜる、あるいは懸濁液として投与したときに、CKDの猫の高窒素血症を減少させなかった。ゆえに、オーナーはこのシンバイオティックをこの方法で投与すべきではない。(Sato訳)
■尿試験紙で測定した尿中蛋白濃度に対する尿サンプル中の精液の影響
Effect of semen in urine specimens on urine protein concentration determined by means of dipstick analysis.
J Am Vet Med Assoc. March 2010;236(6):673.
Laurie G Prober, Cheri A Johnson, N Bari Olivier, Jennifer S Thomas
目的:尿試験紙で測定した尿中蛋白濃度に対する尿サンプル中の精液の影響を判定する。
サンプル集団:3頭の去勢したオスの成犬から採取した14の尿サンプル、7頭の去勢していない成犬から採取した14の精液サンプル
方法:尿の全射精液あるいは尿の精子がない精漿の段階希釈を作成し、変更がない尿サンプル、希釈尿サンプルを市販の尿試験紙で分析した;pH、サンプルの比重も測定した。精液サンプルの精子数およびWBC数、精漿の蛋白濃度を測定した。
結果:全射精液(希釈1:1、1:2、1:16、1:256)あるいは精漿(希釈1:1、1:2、1:16、1:64)を加えた尿サンプルの尿試験紙により判定した蛋白濃度は、変更のない尿サンプルの濃度よりも有意に高かった。1:2の希釈で全射精液を加えた全13サンプルと、1:2の希釈で精漿を加えた12サンプルは尿試験紙で血液陽性だった。精液サンプルの精子数あるいはWBC数と、精子がない精漿の蛋白濃度に有意な直線状の相関はなかった。
結論と臨床関連:結果は精子が存在するかどうかにかかわらず、去勢していないオス犬の尿サンプルの尿試験紙による分析で、精液の混入は蛋白および血液に対する偽陽性を示す可能性があることを示唆した。(Sato訳)
■特発性ファンコニー症候群の犬における生存期間、寿命そして生活の質
Survival time, lifespan, and quality of life in dogs with idiopathic Fanconi syndrome.
J Am Vet Med Assoc. 2004 Aug 1;225(3):377-83.
Yearley JH, Hancock DD, Mealey KL.
目的:特発性ファンコニー症候群の犬の生存期間を評価すること
デザイン:症例シリーズ
動物:特発性ファンコニー症候群の犬60頭
方法:特発性ファンコニー症候群を抱える獣医師とオーナーに配られたアンケートと、利用できる時は医療記録の確認によりデータを抜き出した。診断で使用した基準、投薬、生存期間、犬の全身状態に関するオーナーの主観的認知に対してアンケートと記録を再検討した。
結果:58頭がバセンジーであった。報告によると、57頭の犬(95%)が単一の治療方法の使用で管理された。ファンコニー症候群と診断した後の中央生存時間は5.25年であった:中央推定寿命は、11.3-12.1年の間であると算出された。この研究期間中に生きていた29頭中28頭(97%)の犬のオーナーが、一般状態が“良い“-”優良“と主観的に評価した。発作やその他の神経学的機能不全が11頭の犬で報告された。
結論と臨床関連:特発性ファンコニー症候群の犬の予想される寿命は、罹患していない犬に比べて実質的に短縮せず、罹患した犬はオーナーの主観的評価によって一般的に“良い”-“優良”の生活の質であることが結果から示唆された。他の方法で治療した犬が少数だったため、治療計画が生存期間あるいは寿命にどんな影響を与えていたかは検出できなかった。神経学的な異常のある犬が高い割合で見られたが、これがファンコニー症候群と関連したか?あるいは神経疾患に対する品種関連性の素因があるのか?については決定できなかった。(Dr.Kawano訳)
■犬慢性腎疾患に対する治療の裏づけのある概説
An evidence-based review of therapies for canine chronic kidney disease.
J Small Anim Pract. May 2010;51(5):244-52.
P Roudebush, D J Polzin, L G Adams, T L Towell, S D Forrester
犬の腎疾患の好結果を生む治療および予防は、原因あるいは悪化因子の確認および除去、規則正しい基礎の専門的評価の提供、必要なときは包括的治療プログラムの実行など多次元アプローチが必要である。ここ数年、多くの治療および予防処置が犬の慢性腎疾患に対して開発あるいは提唱されているが、効果あるいは有効性の証拠は欠如あるいは非常に不定なことが多い。従って、この系統的概説の主要目的は、犬の慢性腎疾患の管理する様々な面を支持する証拠を確認および批判的に評価することだった。(Sato訳)
■ネフローゼ症候群を伴うあるいは伴わない糸球体疾患に罹患した犬のシグナルメント、臨床病理所見、組織学的診断そして予後の比較
Comparison of Signalment, Clinicopathologic Findings, Histologic Diagnosis, and Prognosis in Dogs with Glomerular Disease with or without Nephrotic Syndrome
Journal of Veterinary Internal Medicine
Volume 25, Issue 2, pages 206?214, March/April 2011
Klosterman, E., Moore, G., de Brito Galvao, J., DiBartola, S., Groman, R., Whittemore, J., Vaden, S., Harris, T., Byron, J., Dowling, S., Grant, D., Grauer, G. and Pressler, B. (2011),.
背景:著しい低アルブミン血症と関連した糸球体疾患に罹患した人では最も一般的にネフローゼ症候群(NS)へ進行する。高ナトリウム血症、高血圧そして進行性腎不全は人の非ネフローゼ症候群患者よりネフローゼ症候群患者でより一般的である。
仮説/目的:ネフローゼ症候群の犬は、非ネフローゼ糸球体疾患(NNGD)の犬に比べ、より高い血清コレステロール、中性脂肪そしてナトリウム濃度、高い尿蛋白クレアチニン比(UPC)、収縮期血圧そして低い血清アルブミン濃度になる。ネフローゼ症候群は膜性糸球体症とアミロイドーシスと関連がある。罹患した犬はより高窒素血症になりやすく、生存期間がより短い。
動物:234頭の飼い主の所有する犬(ネフローゼ症候群78頭と非ネフローゼ糸球体疾患の犬156頭)
方法:多施設回顧的症例コントロール研究で、ネフローゼ症候群と非ネフローゼ糸球体疾患の犬を比較する。ネフローゼ症候群は低アルブミン血症、高コレステロール血症、蛋白尿そして血管外液体貯留で定義した。シグナルメント、臨床病理変化、組織病理学的診断そして生存期間を両方のグループで比較した。
結果:年齢、血清アルブミン、クロライド、カルシウム、リン、クレアチニンそしてコレステロール濃度と尿蛋白クレアチニン比はネフローゼ症候群と非ネフローゼ糸球体疾患の犬で明らかに異なった。両方のグループは診断した時点で同じように高窒素血症である傾向があり、ネフローゼ症候群は組織学的診断と関連がなかった。ネフローゼ症候群(12.5日)の中央生存期間は、非ネフローゼ糸球体疾患(104.5日)に比べて有意に短かった。血清クレアアチニン(< or ≧1.5 mg/dL)に基づいて分類すると、ネフローゼ症候群VS非ネフローゼ糸球体疾患犬の生存性は、非高窒素血症の犬においてのみ有意差があった(51 VS 605日)。
結論と臨床重要性:ネフローゼ症候群の存在は、非高窒素血症の糸球体疾患に罹患した犬において予後不良と関連した。ネフローゼ症候群への進行防止が保証される:しかし、この研究で特別な介入は評価しなかった。(Dr.Kawano訳)
■猫における高窒素血症発症の指標の評価
Evaluation of predictors of the development of azotemia in cats.
J Vet Intern Med. 2009 Jul-Aug;23(4):806-13.
R E Jepson, D Brodbelt , C Vallance, H M Syme, J Elliott
背景:老齢猫で慢性腎不全(CKD)は一般的な病態である。尿濃縮能が不十分な持続的高窒素血症の発症をもとに診断される。早期発見のためのバイオマーカーが求められる。
仮説:臨床変動値、尿濃縮能、蛋白尿、N-アセチル-ベータ-D-グルコサミニダーゼ(NAG)指数は、12ヶ月以内に高窒素血症を発症するリスクを持つ猫を予測するだろう。
動物:老齢の非高窒素血症の飼育猫(9歳以上)
方法:高窒素血症発症、死亡、あるいは研究終了時(2007年9月30日)まで、6ヶ月ごとに健康な非高窒素血症の老齢猫の集団をモニターする前向き縦断的コホート研究。基準臨床、生化学値および尿検査値、尿蛋白クレアチニン比(UP/C)、尿アルブミンクレアチニン比(UA/C)、高窒素血症発症の指標として尿中NAG指数を、多変量ロジスティック回帰分析を用いて評価した。
結果:年齢中央値13歳の118頭の猫で研究した。95頭(80.5%)は追跡調査しており、あるいは12ヶ月の研究終了時に達し、30.5%(29/95)は高窒素血症を発症した。年齢、収縮期血圧、血漿クレアチニン濃度、尿比重、UP/C、UA/C、NAG指数は一変量分析で有意に高窒素血症発症と関連した(P<=.05)。しかし、多変量分析では、UP/C(モデル1)あるいはUA/C(モデル2)のどちらかを伴う血漿クレアチニン濃度のみが有意性を維持した。
結論と臨床重要性:この研究は以前健康な老齢猫の集団で、高窒素血症の高い発生率を示す。現在の尿蛋白は高窒素血症発症と有意に関係するが、原因となる関連は推測できない。NAG指数の評価により更なる有益性を得ることはなかった。(Sato訳)
■慢性腎不全猫の酸化ストレスと好中球機能
Oxidative Stress and Neutrophil Function in Cats with Chronic Renal Failure.
J Vet Intern Med. 2010 Apr 2.
Keegan RF, Webb CB.
背景:酸化ストレスは、慢性腎不全(CRF)の進行に重要な役割を果たし、好中球機能は酸化ストレスによって障害を受けるかもしれない。
仮説:慢性腎不全の猫は、健常猫に比べて酸化ストレスが増加し、好中球機能が低下している。
動物:既に慢性腎不全と診断されている20頭の猫と年齢が同じ10頭の健常猫を比較した。
方法:生化学プロフィール、完全血球計算、尿検査、抗酸化能力、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)酵素活性、還元型グルタチオン/酸化型グルタチオン(GSH/GSSG)比、そして好中球貪食性と酸化バーストを測定した。統計比較(2-tailed t-検定)は平均+/-標準偏差で報告した。
結果:慢性腎不全の猫は、健常猫に比べ血清尿素窒素、クレアチニン、そしてリン濃度が明らかに高く、ヘマトクリット値と尿比重は明らかに低かった。
GSH/GSSG比は、慢性腎不全群(177.6 +/- 197, 61.7 +/- 33; P < .02)で有意に高かった。ところが、抗酸化能力は慢性腎不全群(0.56 +/- 0.21, 0.81 +/- 0.13 Trolox units; P < .005)で有意に低かった。SOD活性は健常猫と慢性腎不全猫で同じだった。平均蛍光強度の増加として測定される大腸菌貪食後の好中球酸化バーストは、健常猫に比べ慢性腎不全の猫(732 +/- 253, 524 +/- 54; P < .05)で有意に高かった。
結論:慢性腎不全猫における高いGSH/GSSG比と、低い抗酸化能力は、抗酸化防御メカニズムの活性化と一致する。健常猫の濃度を越えるSODなどの抗酸化サプリメントが、慢性腎不全の猫に有益かどうかということはまだわかっていない。(Dr.Kawano訳)
■犬の多尿および多飲の原因を確認するのに飲水制限よりもデスモプレシンのほうが安全である
Desmopressin is safer than water deprivation to identify the cause of polyuria and polydipsia in dogs
Vet Med. Jun 2009;104(6):284.
Marjorie L. Chandler, DVM, MS, MACVSc, DACVN, DACVIM, DECVIM, MRCVS
老齢犬や等張尿の犬で、慢性腎疾患の初期に陥りやすく過度な脱水は障害を起こしえるため、デスモプレシン試験でさえ注意が必要である。さらに、説明できない多尿および多飲の動物が、脱水状態およびその尿比重が<1.030で来院した場合、飲水制限テストは不必要で禁忌である。(Sato訳)
■急性腎後性高窒素血症:原因、臨床病理、病態生理学
Acute Postrenal Azotemia: Etiology, Clinicopathology, and Pathophysiology
Compend Contin Educ Pract Vet. November 2009;31(11):520-530. 10 Refs
尿肝破裂および閉塞が体からの尿の正常な収集および排出を妨げたとき、結果として起こる高窒素血症が腎後性と呼ばれる。腎後性高窒素血症は、同時に腎前性および/あるいは腎性高窒素血症と同時に起こる可能性がある。腎後性高窒素血症の検出は、注意深い病歴および身体検査所見と特異的な診断検査結果を必要とする。高窒素血症の腎後性原因の迅速な修正は潜在的な内因性腎臓ダメージを制限し、臨床結果を良いほうに向けることができる。ゆえに、腎後性高窒素血症は全ての高窒素血症患者で調査すべきである。(Sato訳)
■水分出納に関する小児科疾患
Pediatric disorders of water balance.
Endocrinol Metab Clin North Am. 2009 Dec;38(4):663-72.
Ranadive SA, Rosenthal SM.
体液のホメオスタシスには適切な水分摂取、完全な口渇メカニズムと腎臓からの適切な自由水排泄による調節、アルギニンバソプレシン(AVP、抗利尿ホルモンとしても知られている)の適切な分泌による媒介が必要である。アルギニンバソプレシンは、腎集合尿細管上皮細胞の側底膜に存在するGタンパク質共役受容体であり、X染色体でコード化されているV2バソプレシン受容体(V2R)への結合によって抗利尿効果を発揮する。V2バソプレシン受容体(V2R)活性化の後、増加した細胞内環状アデノシン一リン酸は、増加した水透過性と抗利尿に帰着する集合尿細管細胞の頂端膜への水チャンネルアクアポリン2の往復を媒介する。水分出納に関する臨床疾患は一般的で、アルギニンバソプレシン(AVP)分泌および応答性など多くのステップでの異常に関する記載がある。この論文は、水分出納に関する主要な疾患、尿崩症そして、抗利尿ホルモンの不適切な分泌候群に焦点をあてている。(Dr.Kawano訳)
■急性あるいは慢性腎不全急性増悪の犬猫の治療として持続性腎代替療法の使用:33症例(2002-2006)
Use of continuous renal replacement therapy for treatment of dogs and cats with acute or acute-on-chronic renal failure: 33 cases (2002?2006)
J Vet Emerg Crit Care. August 2008;18(4):370-382. 31 Refs
Shenandoah H. Diehl, DVM, DACVECC, Ravi Seshadri, DVM, DABVP, DACVECC
目的:積極的な内科管理に治療抵抗性の急性あるいは慢性腎不全急性増悪の飼育犬17頭と飼育猫16頭において持続性腎代替療法(CRRT)の使用に関係する適応、臨床特徴、結果、合併症を述べる
シリーズ概略:29%の犬と44%の猫は既存の慢性腎疾患(CKD)のエビデンスがあった。CRRTの持続期間の中央値は犬で16.3時間(範囲0.3-83.0時間)、猫で11.5時間(範囲1.0-35.5時間)だった。犬の血中尿素窒素(BUN)の中央値は、41.0 mmol/L(115.0mg/dl)から11.8 mmol/L(33.0mg/dl)、クレアチニンの中央値は636.5 mmol/L(7.2mg/dl)から274 mmol/L(3.1mg/dl)に改善した。猫のBUNの中央値は、46.4 mmol/L(130mg/dl)から13.9(39.0mg/dl)、クレアチニンの中央値は1069.6 mmol/L(12.1mg/dl)から291.7 mmol/L(3.3mg/dl)に改善した。代謝性アシドーシスは80%の犬、71%の猫で解消した。高カリウム血症は100%の犬、88%の猫で解消した。CRRTで見られた合併症は、医原性低カリウム血症、医原性代謝性アルカローシス、臨床上低カルシウム血症、総合高カルシウム血症、フィルタ凝固、貧血、低体温、神経学的合併症などだった。41%の犬と44%の猫は生存して退院した。犬は0頭、猫は1頭のみ新規にCKDと診断された。
提供された新情報:CRRTは積極的な内科管理に反応しない犬猫の急性、あるいは慢性腎不全急性悪化の管理に対する実行可能なオプションの可能性がある。この研究でCRRTに関係する合併症の頻度は、広く使用が推奨されるようになる前に、この様式の更なる経験を正当化する。(Sato訳)
■猫の腎移植およびシクロスポリンベースの免疫抑制後、悪性腫瘍の発生率とリスクファクター
Incidence and risk factors for development of malignant neoplasia after feline renal transplantation and cyclosporine-based immunosuppression
Vet Comp Oncol. March 2009;7(1):45-53. 29 Refs
C. W. Schmiedt, J. A. Grimes, G. Holzman, J. F. McAnulty
この研究の目的は、猫の腎移植レシピエント(症例、n=45)における移植後悪性腫瘍(PTMN)に対する発生率とリスクファクターを分析、報告し、移植を受けていない猫(コントロール、n=79)の集団の発生率と比較する。症例の医療記録から徴候、血液検査および随伴疾患、術後シクロスポリン濃度、生存期間(ST)、PTMNが発生したかどうか、PTMNの種類、発生までの期間(TTO)、診断後のSTに関する情報を収集した。PTMNは45頭中11頭(24%)で発生し、そのうち4例はリンパ腫だった。全てのPTMNのうちTTO中央値は1020日だった。リンパ腫のTTO中央値は454日だった。PTMNの診断後ST中央値は15日だった。リスクファクターは認められなかった。コントロールとの比較で、症例はPTMN発生の比率が6倍以上高かった。(Sato訳)
■犬腎臓自己移植における早期移植機能に対する新しい臓器灌流液の影響
The influence of a novel organ perfusion solution on early graft function in canine renal autotransplantation
Vet Surg. June 2008;37(4):383-9.
Maximilian M R Polyak, Astrid Grosche, Simon Towl, Alison J Morton
目的:犬の早期移植機能に対する腎臓潅流液の影響を評価する
研究構成:実験無作為研究
動物:未去勢オスの雑種成犬(n=12)
方法:犬は対側腎切除を行い、尿管膀胱吻合を行わず腎自己移植を行った。移植腎を新しい臓器潅流液でフラッシュし、生理食塩水(0.9%NaCl)でフラッシュしたものと比較した。血清クレアチニン(Cr)と血中尿素窒素(BUN)濃度を移植後毎日7日間測定した。術後1日目に超音波ガイド下腎バイオプシーを実施し、電子顕微鏡で評価した。犬は7日目に安楽死した。
結果:全頭研究を完遂した。生理食塩水群のCrおよびBUN濃度は、各術後日で臓器灌流液群よりも有意に高かった(S Cr、P=.01;BUN、P=.001)。ループ近位尿細管細胞の核とミトコンドリアの電子顕微鏡写真は、生理食塩水群で顕著な超微細構造の破壊、臓器潅流液群で軽度の超微細構造の破壊を示した。
結論:フラッシュ液の組成は、生きたドナーの腎移植で早期移植機能に影響する可能性がある。
臨床関連:専用のフラッシュ液の使用は、抗原-介在事象とは別に犬の腎移植における早期移植機能を改善する可能性がある。(Sato訳)
■猫において高窒素血症への発展を予知する因子の評価
Evaluation of predictors of the development of azotemia in cats.
J Vet Intern Med. 2009 Jul-Aug;23(4):806-13.
Jepson RE, Brodbelt D, Vallance C, Syme HM, Elliott J.
背景:慢性腎疾患(CKD)は老齢猫における一般的な疾患である。不十分な尿濃縮力を伴う持続性高窒素血症への発展に基づいて診断する。早期発見のためバイオマーカーが求められる。
仮説:臨床変動値、尿濃縮力、蛋白尿そしてN-Acetyl-beta-D-glucosaminidase(NAG)活性指数が、猫において12ヶ月以内に高窒素血症へと発展するリスクの予測因子となるだろう。
動物:飼い主が所有している非高窒素血症の老齢(9歳以上)猫
方法:高窒素血症、死に至るまで、あるいはこの研究の最後(2007年9月30日)まで、6ヶ月毎に健康で非高窒素血症の老齢猫の集団を観察する前向き縦断コホート研究。高窒素血症へ発展する予測因子としてベースラインの臨床症状、生化学検査データそして尿検査データ、尿蛋白クレアチニン比(UP/C)、尿中アルブミンクレアチニン比(UA/C)そして尿中N-Acetyl-beta-D-glucosaminidase(NAG)指数を評価するために多重ロジスティック回帰分析を使った。
結果:年齢中央値13歳の118頭の猫が集まった。95頭(80.5%)の猫は追跡し、あるいは12ヶ月の研究を最後まで続け、そのうち30.5%(29/95)は高窒素血症になった。単変量解析において年齢、収縮期血圧、血漿クレアチニン濃度、尿比重、UP/C、UA/C、NAG指数は、高窒素血症への発展と有意な関連性があった(P<or=.05)。しかし多変量解析では、UP/C (Model 1)あるいはUA/C (Model 2)を兼ね備えた血漿クレアチニン濃度のみが有意なままであった。
結論と臨床意義:この研究はこれまでの健康な老齢猫の母集団における高窒素血症の高い発生率を証明する。因果関係を推論することは出来なかったが、来院時の蛋白尿は有意に高窒素血症への発展と関連があった。NAG指数の評価は補足的な利益を提供しなかった。(Dr.Kawano訳)
■ラットにおける慢性腎不全に対するγ-アミノ酪酸の保護的な役割
Protective role of gamma-aminobutyric acid against chronic renal failure in rats.
J Pharm Pharmacol. 2006 Nov;58(11):1515-25.
Sasaki S, Yokozawa T, Cho EJ, Oowada S, Kim M.
5/6腎摘出ラットの残存腎臓モデルを使って、慢性腎不全CRF)に対するγ-アミノ酪酸(GABA)の保護的な効果を観察した。腎摘出は腎機能障害をもたらし、それは血清尿素窒素、クレアチニン(Cr)そしてクレアチニンクリアランスで評価した。しかし、GABAの投与によって腎機能が回復し、GABAの長期投与は腎保護効果を増加させた。さらに腎摘出したコントロールラットは尿中ナトリウムの増加を伴うNa排泄分画(FE(Na))の上昇を示したが、GABAは有意なNa 排泄分画の低下をもたらした。
また腎摘出は血清アルブミンの減少および尿蛋白パターンの変化を伴う尿蛋白の増加に帰着したが、GABAを投与したラットは腎摘出による慢性腎不全に関連したこれらの変化の改善を示した。
これはGABAが疾患の進行を抑制し、慢性腎不全に対して保護的な役割を担うことを示唆している。慢性腎疾患の進行の危険因子の一つとして、高血圧症もGABAによって制御された。GABAがトリグリセリドと総コレステロール値の減少を伴う血清脂質プロフィールの改善を通じ、慢性腎不全に対して保護的役割を担うかもしれないことも示している。
さらに腎摘出は抗酸化酵素活性の低下および脂質過酸化の上昇を伴う腎酸化ストレスを導いた。GABAの投与は、スーパーオキサイド・ジスムターゼとカタラーゼの増加および脂質過酸化の減少を通じ、腎摘出によって誘発された酸化ストレスを減弱させた。
腎摘出下における糸状体、尿細管そして間質病変などの病理組織学的病変も、フィブロネクチン発現の抑制を備えたGABAによって改善された。
この研究でGABAが血圧と脂質プロファイルの調節によって腎機能障害を減弱させ、また腎摘出によって誘発された酸化ストレスを回復させたことも証明され、それは腎不全の進行に対してGABAの保護的効果の有望な可能性が示唆された。(Dr.Kawano訳)
■多発性のう胞腎:超音波と遺伝検査を比較したスロベニアにおける概説と発生
Polycystic kidney disease: a review and occurrence in Slovenia with comparison between ultrasound and genetic testing
J Feline Med Surg. November 2007;0(0):.
Aleksandra Domanjko-Petri?, David Cernec, Marko Cotman
多発性のう胞腎(PKD)は、ペルシャやペルシャ関連猫に多く見られる遺伝性常染色体性腎疾患である。陽性猫は腎皮質および髄質、時折他の腹腔臓器に発生するさまざまな大きさの複数嚢胞を持つ。PKDは中齢から老齢期に腎不全をよく誘発する。腎のう胞は経験豊富な超音波検査士および高解像度の機器により7週齢で超音波検査により診断できる。しかし超音波検査は現在遺伝スクリーニング検査に変わってきている。大学病院で過去7年の間に、年齢5ヶ月から18歳のさまざまな種類の合計340頭の猫を超音波学的に検査した。それらのうち、13.8%がPKD陽性で、ペルシャ猫に高率に認められた(36%)。性別による傾向は認められなかった。停止変異を起こすPKD1遺伝子のエクソン29位置3284でC>A変異を検査した罹患猫8頭(ペルシャ種)のヘテロ接合部位に認められている。全てのヘテロ接合性猫は超音波検査も陽性だった。(Sato訳)
■自然発症性慢性腎臓疾患の猫の生存 (2000-2002)
Survival in cats with naturally occurring chronic kidney disease (2000-2002).
J Vet Intern Med. 2008 Sep-Oct;22(5):1111-7. Epub 2008 Aug 6.
Boyd LM, Langston C, Thompson K, Zivin K, Imanishi M.
背景:自然発症性慢性腎臓疾患(CKD)の猫の生存期間は、十分特徴付けられていない。
仮説:診断した時点や腎前性高窒素血症の補正後の血清クレアチニン濃度(SCr)に基づく腎疾患のステージは、猫の生存期間と強く関連がある。
動物:2000年4月から2002年1月までに評価した、飼い主が所有している211頭の自然発症性慢性腎疾患に罹患した猫
方法:血清クレアチニン濃度(SCr)が2.3 mg/dL以上の733頭の回顧的症例論評。医療記録の調査で、この研究のすべての他の包含と除外基準を満たした211頭の猫を特定した。臨床特性、臨床病理データそして生存時間は医療記録から抽出した。もし記録に記載がなかった場合は、飼い主と委託された獣医師に経過を追跡するため電話で連絡した。診断した時点とベースライン(すなわち腎前性高窒素血症の補正後)の両方のInternational Renal Interest Society (IRIS)のステージでの生存時間を決定するためにKaplan-Meier法による生存曲線を実施した。
結果:診断した時点でIRIS分類ステージIIbの猫の中央生存日数は1151日(2~3107日)で、ステージIII(中央778日、範囲22~2100日)あるいはステージⅣ(中央103日、範囲1~1920日)より長かった(P値<.0001)。診断した時点でのステージの影響に関するP値は<.0001だった。
結論と臨床関連:診断した時点での血清クレアチニン濃度に基づく慢性腎臓疾患のIRISによるステージは、自然発症性慢性腎臓疾患の猫の生存日数を強く予測するものとなる。(Dr.Kawano訳)
■酸化ストレスと慢性腎不全
Oxidative stress and chronic kidney disease.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2008 Jan;38(1):157-66, vi.
Brown SA.
慢性腎不全(CKD)の進行率の緩徐化は、罹患した犬や猫の管理において重大な意味を持つ部分である。腎臓の酸化ストレスは、以前は犬のCKDの進行要因および、猫のCKDにおいても同様におそらく重要であると認識されていない。レニンーアンギオテンシン阻害剤、カルシウムチャンネル阻害剤、n-3多価不飽和脂肪酸そして抗高血圧作用と抗蛋白尿療法がCKDに罹患した犬と猫において一般的に推奨されている。これらの治療は活性酸素種の産生を減少させることによって腎臓の酸化ストレスを減らすと期待されている。特異的な抗酸化剤の食餌への補完が、腎臓の酸化ストレスとCKDの進行を制限する重要な事柄だと新しいデータは示唆している。(Dr.Kawano訳)
■成長ホルモン投与は尿毒症ラットの骨粗しょう症を防ぐ
Growth hormone treatment prevents osteoporosis in uremic rats
Histol Histopathol. November 2007;22(11):1231-9.
I Berger, G Piecha, R Rabkin, N Kaya, A Geldyyev, D Sun, Y Chen, N Koleganova, M-L Gross
イントロダクション:成長ホルモン(GH)は長骨の成長を起こす。成長板のGHレセプターが慢性腎不全で減少することがわかっている。慢性腎不全でGHの治療的応用は確立されていない。最近の研究は尿毒症ラットモデルにおいて骨代謝に対するGH投与の影響を明確にしようとしている。
方法:SD系ラットにサブトータルな腎切除(SNX)または見せかけの手術を行った。SNXラットは無作為に4群に分けた。尿毒症から10週後から6週の間、異なる量のGH(1.5、4.0、10.0mg/kg)または溶媒を投与した。骨および腎形態を評価した。骨密度、海綿質の厚さ、骨芽細胞表面、類骨容積、破骨細胞量、吸収容積。
結果:GH投与は吸収部分を減少させ破骨細胞はより少量となった。類骨容積、骨芽細胞数、活性骨芽細胞の比率、成長板の厚さ、平均皮質幅が増加した。GHレセプター(GHR)蛋白発現はGH投与ラットで増加した。IGF-1発現はSNX-Vラットの骨芽細胞、軟骨芽細胞で減少し、GH投与後増加した。TGF-ベータ発現は見せかけの手術を行ったラットと比較して、SNX+V群における骨細胞、軟骨芽細胞で下方修正された。下方修正は投与量に関係なく投与したラットで防がれた。
結論:尿毒症動物においてGHの投与は、非尿毒症コントロールのレベルに骨密度を増加させた。成長ホルモンは腎性骨ジストロフィーを防ぐ可能性を持つと思われる。(Sato訳)
■慢性腎疾患の猫の予後因子
Prognostic factors in cats with chronic kidney disease
J Vet Intern Med. 2007 Sep-Oct;21(5):906-16.
Jonathan N King, Severine Tasker, Danielle A Gunn-Moore, Gunther Strehlau, BENRIC (benazepril in renal insufficiency in cats) Study Group
背景:慢性腎疾患(CKD)は猫において罹患し死亡する一般的な原因の一つである。
仮説:一部の基礎項目がCKD猫の生存期間の短縮と関連性がある。
動物:飼い猫。
方法:血漿クレアチニン濃度が2.0mg/dl以上で尿比重(USG)が1.025以下のCKD猫に対してプラセボでベナゼプリルを比較した前向き臨床試験を実施した。我々は190例とプラセボ群95例に対して、最大1097日フォローアップし、「腎臓生存期間」への影響について調査を行った。腎臓生存期間は、治療の開始から、腎不全に関連した非経口的液体治療が要求された時点まで、もしくは、安楽死や死亡したときまでと定義された。
結果:プラセボ群の95例のうち、58例は生存中であり、37例は腎臓生存終点(死亡n=0,安楽死n=17, 非経口補液n=12,非経口補液後に安楽死n=8)に達した。血漿クレアチニン濃度の上昇、尿蛋白クレアチニン比(UPC)の上昇、血中白血球数の上昇が生存期間短縮と有意に関連性があり(P<0.01)、独立した危険因子であった。血漿リン濃度上昇、尿素濃度上昇、血中ヘモグロビン濃度もしくはヘマトクリットの低下もまた腎臓生存期間短縮と有意に関連性があり(P<0.01)、独立した危険因子であった。なぜなら、これらの項目は血漿クレアチニン濃度と有意に関係性があった(P<0.01)ためであった。
臨床的重要性:様々な項目がCKD猫の腎臓生存期間短縮の一部と有意な関連を認めた。(Dr.HAGI訳)
■急性腎不全の犬猫の腎周囲滲出液
PERIRENAL EFFUSION IN DOGS AND CATS WITH ACUTE RENAL FAILURE
ANDREW HOLLOWAY, ROBERT O'BRIEN
Veterinary Radiology & Ultrasound 48 (6), 574-579
腎周囲液体貯留は尿漏出、出血、膿瘍、腫瘍の超音波検査特性として述べられている。この遡及研究の目的は、急性腎不全の犬猫における追加超音波所見として腎周囲滲出を報告することだった。18頭の急性腎不全の原因は、腎毒性(4)、レプトスピラ症(3)、腎臓リンパ腫(2)、尿管腎結石(2)、前立腺尿道閉塞(1)、間質性腎炎と尿管炎(1)だった。3頭には基礎原因が認められなかった。
腎周囲液の超音波所見は、15頭の両側にみられた。2頭の片側性腎周囲液は、尿管閉塞の同側に認められた。大量の浸出液は尾側後腹膜腔に伸びていた。腎実質性疾患を示唆する追加の超音波所見は、軽度(5)、中程度(5)、重度(2)腎盂拡張、腎臓エコー原性の増加(11)、腎臓の大きさの増加(9)または減少(2)、尿管および/または腎結石(3)だった。腎周囲液量と腎機能不全の程度に関係は見られなかった。大量の浸出液を持つすべての動物は安楽死した。急性腎不全で起こる腎周囲液は、腎周囲と後腹膜結合組織内のリンパ排液を上回る腎間隙への尿細管逆漏に関係する限外濾過液と考えられるが、尿の流れに対する閉塞も原因の1つかもしれない。限局性腎周囲後腹膜のフリーな液体は、腎疾患を疑われる動物の特性、予後判定を補助する有効な超音波検査特性と思われる。(Sato訳)
■イギリスのペルシャ猫で猫常染色体優性多発性のう胞腎を起こす一塩基遺伝子多型の新しいリアルタイムPCR法による検出
Detection of the single nucleotide polymorphism causing feline autosomal-dominant polycystic kidney disease in Persians from the UK using a novel real-time PCR assay
Mol Cell Probes. February 2007;21(1):31-4.
Chris R Helps, Severine Tasker, Frances J Barr, Sheila J Wills, Timothy J Gruffydd-Jones
常染色体優性多発性のう胞腎(AD-PKD)は、猫で最も優性に遺伝する遺伝性疾患で特にペルシャ猫に見られる。最近までその疾患は腎臓超音波スクリーニングで診断されている。AD-PKDの原因となる遺伝子突然変異の確認で、現在その疾患の精査に進化した分子技術が使用可能である。我々は、AD-PKDの原因となる一塩基遺伝子多型を検出可能な、迅速で感受性、特異性のあるリアルタイムPCR遺伝子型分析を開発している。
AD-PKDの超音波精査を行ったイギリスのペルシャおよびエキゾチックショートヘアー72頭のうち、29頭は疾患が見つかり、41頭は陰性、2頭はどちらともいえなかった。近頃発表されたPCR-RFLP法は、29頭の疾患猫全てでAD-PKD突然変異の存在を示し、陰性41頭とどちらともいえない2頭は欠如を示した。我々のリアルタイムPCR遺伝子型分析は、PCR-RFLP結果と完全に一致した。2005年4月から2006年1月までに分析した600件の血液、頬粘膜スワブで、165件がAD-PKD陽性、435件が陰性とわかり、罹患率は27.5%だった。AD-PKDをもつ194頭全てに変異に対する異型接合を見つけた。(Sato訳)
■急性腎不全でのドパミンの使用
Use of Dopamine in Acute Renal Failure
J Vet Emerg Crit Care. June 2007;17(2):117-126.
Nadja E. Sigrist, DrMedVet, FVH, DACVECC
目的:ドパミンの現在の理解と急性腎不全(ARF)の予防及び治療での使用を再検討する
データソース:オリジナル文献調査と科学的再検討
ヒトデータ総合:健康なヒトおよび腎不全のヒトの少数の研究で、低用量ドパミン投与はナトリウム排泄と尿排泄を増加させると示されている。しかし、いくつかの大きなメタアナシスで、ドパミン投与は死亡率または透析必要性を変化させなかった。副作用の可能性のため、ARFの予防と治療に対するドパミンの使用は、人医でもはや推奨されない。
縦位データ総合:健康な動物および傷害前に投与されるならばARFの動物モデルで低容量ドパミンは尿排泄を増加させる。犬猫で自然発生のARFにおける低用量ドパミン療法の効果を考察した研究はない。
結論:低用量ドパミン療法の副作用の可能性、大規模ヒト試験結果、獣医療で情報の欠如のため、獣医療におけるARFの治療でドパミンの使用は、さらに評価すべきである。(Sato訳)
■レプトスピラにより起こる急性腎不全の標準治療にジルチアゼム療法を追加したときの評価
Evaluation of Adding Diltiazem Therapy to Standard Treatment of Acute Renal Failure Caused by Leptospirosis: 18 Dogs (1998-2001)
J Vet Emerg Crit Care. June 2007;17(2):149-158.
Karol A. Mathews, DVM, DVSc, DACVECC, Gabrielle Monteith, BSc
目的:犬のレプトスピラ症による二次的急性腎不全(ARF)の治療として静脈内(IV)ジルチアゼムの効果と安全性を評価する
構成:遡及研究
動物:9月から12月の間に治療したレプトスピラsppで起こるARFの犬18頭(1998-2001)
方法:レプトスピラsppにより起こるARFを治療した全ての犬をこの研究に供し、IV輸液、±フロセミド、抗生物質投与の標準処置で治療した。オーナーが同意した犬に、ジルチアゼム0.1-0.5mg/kgをゆっくりIV投与し、続いて1-5μg/kg/minの定率輸液を行った。2群間(ジルチアゼムv.s.標準)で結果測定値を比較した。血清クレアチニンが正常範囲に落ちる、または安定するまで入院から60時間以内にジルチアゼムを投与した。安全性の主要結果測定値は収縮期血圧(SBP)だった。効果の主要測定値は血清クレアチニンの低下率と大きさだった。
結果:18頭中11頭にジルチアゼムを投与した。ジルチアゼム群のクレアチニン低下率は、標準群の1.76倍速かった(P=0.054)。腎機能の回復は有意に治療群に関連する傾向を示した(正確P=0.08、オッズ比=3.62)。この効果は臨床的に関連があるかもしれない。ジルチアゼムは臨床的に関連する影響をSBPに及ぼさなかった。
結論と臨床関連:レプトスピラ症による二次的な急性腎不全の犬で、腎機能の回復は標準療法にジルチアゼムを加えて投与することにより改善する。(Sato訳)
■肝臓および腎臓嚢胞の超音波ガイド下排液およびアルコール化:22例
Ultrasound-assisted drainage and alcoholization of hepatic and renal cysts: 22 cases
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):112-6.
Andrea Zatelli, Paola D'Ippolito, Ugo Bonfanti, Eric Zini
超音波ガイド下排液とアルコール化を行った、症候性腎臓または肝臓嚢胞の犬猫22例を遡及的に評価した。一般的な主訴は、食欲不振、すすんで動かない、嘔吐だった。全症例で腹部痛は観察された。全身性高血圧は、腎嚢胞の犬4頭、猫4頭で認められた。嚢胞排液とアルコール化は19頭で合併症なく達成でき、処置後全ての臨床症状は解消した。3例で、一時的な出血がアルコール化時に観察され、処置を中止した。腎嚢胞の犬4頭で血圧の正常化がみられたが、4頭の猫は高いままだった。(Sato訳)
■慢性腎不全と代謝性アシドーシスの犬の血清カルシウムイオン
Serum ionized calcium in dogs with chronic renal failure and metabolic acidosis
Vet Clin Pathol. December 2006;35(4):441-5.
Marcia M Kogika, Marcio D Lustoza, Marcia K Notomi, Vera Abf Wirthl, Regina Ms Mirandola, Mitika K Hagiwara
背景:慢性腎不全(CRF)は犬によく見られる疾患で、代謝性アシドーシス、カルシウム、リン障害など多くの代謝性疾患が観察されえる。アシドーシスはカルシウムイオン(i-Ca)分画を変化させるかもしれず、通常その濃度が増加する。
目的:この研究で、CRFと代謝性アシドーシスの犬で血清i-Ca濃度に対するアシドーシスの影響を評価した
方法:犬を2群で研究した。1群(コントロール群=40頭の健常犬)、2群(CRFと代謝性アシドーシスの犬25頭)。血清i-Caをイオン選択電極法で測定し、他の生化学分析は通常の方法で行った。
結果:2群のi-Ca濃度は1群よりも有意に低かった。2群の犬の56%は低カルシウム血症だった。総カルシウム(t-Ca)濃度をもとにしたとき、2群の8%しか低カルシウム血症が観察されなかった。pHとi-Ca濃度に相関は認められなかった。I-Caと血清リン濃度(r=-.284;P=.022)同様に血清t-Caとi-Ca濃度(r=.497;P<.0001)にわずかだが有意な相関が検出された。
結論:CRFと代謝性アシドーシスの犬のi-Ca濃度は、カルシウムの生物学的活性型を判定するのに重要なt-Caにより広く変化した。代謝性アシドーシスはi-Ca濃度の上昇に影響せず、そしてCRFにおけるアシドーシス以外の他の因子は、低リン血症や他の化合物がカルシウムと複合体を形成するかもしれないというようにi-Ca分画を変化させるかもしれない。(Sato訳)
■猫の全身疾患における微量アルブミンと尿中アルブミン-クレアチニン比の関連
Association of microalbuminuria and the urine albumin-to-creatinine ratio with systemic disease in cats
Journal of the American Veterinary Medical Association
April 15, 2007, Vol. 230, No. 8, Pages 1165-1169
Jacqueline C. Whittemore, DVM, DACVIM; Zona Miyoshi, DVM; Wayne A. Jensen, DVM, PhD, MBA; Steven V. Radecki, PhD; Michael R. Lappin, DVM, PhD, DACVIM
目的-猫の病気を検出するために、半定量的そして定量的な微量アルブミン尿測定と尿中アルブミン-クレアチニン比(UAC)の診断的有用性を決定する
企画-前向き研究
動物-獣医教育病院で評価された441頭の猫
方法-完全な医療記録がある猫から採取した尿を集めた。尿スティック検査結果で、尿蛋白-クレアチニン比(カットオフ値0.1と0.4)、半定量的そして定量的微量アルブミン尿測定結果(カットオフ値1 mg/dL)そして尿中アルブミン-クレアチニン比(カットオフ値100と200mg/g)を判定した。研究に登録して3ヶ月以内に下した臨床診断を記録した。標準として使用した病気の状態で感受性と特異性を決定した。ロジスティック回帰分析の平均で臨床診断、性別、年齢、血清尿素窒素濃度、血清クレアチニン濃度、血圧、尿の細菌培養結果、直腸温、膿尿、血尿、細菌尿を評価した。
結果-研究に適した441頭のうち、40頭は健常で、401頭は1つ以上の病気を抱えていた。ロジスティック回帰分析の結果から年齢、病気の存在、尿路疾患、高窒素血症、血尿そして膿尿の存在と微量アルブミン尿測定の一つあるいは両方の結果と明らかな関連性が示唆された。
結論と臨床関連-微量アルブミン尿は基礎疾患と関連した。全身疾患検出のための微量アルブミン尿測定の感受性と特異性は、他の検査に比べて優れていた。他のスクリーニング方法に加えて微量アルブミン尿検査を実施することで、さらに隠れた疾患を識別することが出来るかもしれない。この推奨を確証するために微量アルブミン尿の検出がある場合とない場合におけるスクリーニング検査の予測的な値を評価する前向き研究が必要である。(Dr.Kawano訳)
■正常猫と慢性腎不全猫における血清上皮小体ホルモンとイオン化カルシウム濃度に対する、カルシトリオール連日投与と間欠的投与の影響に関する比較
Comparison of the effects of daily and intermittent-dose calcitriol on serum parathyroid hormone and ionized calcium concentrations in normal cats and cats with chronic renal failure
J Vet Intern Med. 2006 Nov-Dec;20(6):1307-13.
Roger A Hostutler, Stephen P DiBartola, Dennis J Chew, Larry A Nagode, Patricia A Schenck, P臺vi J Rajala-Schultz, W Tod Drost
要約
背景:慢性腎不全は二次的上皮小体機能亢進症に併発し、伝統的にリンの制限食とリン吸着剤の投与により管理されています。カルシトリオールによる慢性腎不全の早期治療は、1度確定されたなら必要ですが、上皮小体過形成は治療により直ちに消散しません。
仮説:カルシトリオールの連日投与と間欠的投与は、イオン化高カルシウム血症を引き起こすことなしに、正常な猫と慢性腎不全の猫において血漿上皮小体ホルモン濃度を減少させるであろう。
動物:正常な猫10頭;慢性腎不全の猫10頭
方法:フェーズ1はカルシトリオールを14日間毎日投与(2.5ng/kg PO q24h)しました。フェーズ2はカルシトリオールを14日間間欠的に投与(8.75ng/kg PO q84h)しました。7日のウォッシュアウト期間でフェーズ1と2に設けました。各フェーズに先立ち、カルシトリオール、上皮小体ホルモン、そしてイオン化カルシウム濃度を測定しました。両フェーズの1日目、2日目、3日目で、血清イオン化カルシウム濃度を測定しました。両フェーズの最終日、カルシトリオール投与後0、2、4、そして6時間後に、カルシトリオールと上皮小体ホルモン、そしてイオン化カルシウム濃度を測定しました。
結果:全体的に、血清上皮小体ホルモン濃度は、正常猫よりも慢性腎不全の猫で有意により高値(P=.022)となりましたが、正常猫と慢性腎不全の猫の両者に関する血清上皮小体ホルモン濃度は、カルシトリオールが毎日あるいは間欠的に投与されたかにかかわらず、カルシトリオール投与前と投与後14日で、有意差はありませんでした。カルシトリオール投与による副作用(特にイオン化高カルシウム血症)は、カルシトリオール投与開始後3日にわたる評価で、いずれの猫群、いずれのフェーズにおいても認められませんでした。
結論と臨床的意義:この投薬量を用いた際、カルシトリオール療法は、正常猫と腎不全の猫の両者において、投与前と投与後の血清上皮小体ホルモン濃度に有意差をもたらしませんでした。これらの投与量に関し、カルシトリオール投与の副作用は認められませんでした。明白な効果のない潜在的理由として、研究が小規模で不十分な期間であったのと、カルシトリオールの不十分な投与量、カルシトリオールの投与、あるいは製剤の問題、そしてカルシトリオールの消化管吸収が不定であることなどが考えられます。(Dr.K訳)
■犬の糸球体腎炎:蛋白尿と治療に関する新たな考え
Canine glomerulonephritis: new thoughts on proteinuria and treatment
J Small Anim Pract. October 2005;46(10):469-78. 73 Refs
G F Grauer
要約
犬における糸球体疾患は、単に腎疾患の一般的な型だけではなく、慢性腎不全の重要な原因のひとつでもあります。糸球体毛細血管壁における免疫複合体の存在が、犬の糸球体疾患の主な原因であり、一般的に糸球体腎炎と呼びます。持続性蛋白尿の結果となる、損傷を受けた糸球体毛細血管壁からの血漿蛋白、主にアルブミンの漏出が、糸球体腎炎の臨床病理学的特長所見であります。近年のエビデンスは、現在の疾患標識に加え、持続性蛋白尿は、進行性の糸球体および尿細管間質性障害、また付加的なネフロン喪失と関連していることを示唆しております。おそらく、糸球体腎炎に対する最良の治療は、糸球体での免疫複合体の沈着あるいは形成をまねく、根本的な炎症性、免疫介在性、あるいは腫瘍性疾患の鑑別と補正であります。特発性糸球体腎炎の症例において、アンギオテンシン変換酵素阻害剤は、蛋白尿を減少を示しており、疾患の進行を遅延させるかもしれません。(Dr.K訳)
■犬の溶血性-尿毒症性症候群
Hemolytic-Uremic Syndrome in a Dog
Vet Clin Pathol 34[3]:264-269 Fall'05 Case Report 26 Refs
Marta Dell'Orco, Walter Bertazzolo, Luigi Pagliaro, Paola Roccabianca, Stefano Comazzi
3歳避妊済みボクサーが、食欲不振、嘔吐、出血性下痢の急性発症で来院した。脈管内溶血、血小板減少、急性腎不全を伴う細血管異常性溶血性貧血を検出した。犬は、輸液、制吐剤、抗生物質、利尿剤で治療した。支持療法の甲斐なく犬の状態は悪くなり、オーナーは安楽死を選択した。検死では、壁側腹膜および小腸の漿膜面に散在性点状出血を認めた。組織病変は、腎臓と腸小動脈のみを巻き込んだ重度動脈炎と微小血管血栓症に一致した。最終診断は溶血性-尿毒症性症候群(HUS)で、犬ではあまり見られない障害だった。主に胃腸の臨床症状はヒト(主に子供)の典型的、または下痢関連HUS(D+HUS)と同じで、ベロ毒素産生性大腸菌の増殖が原因である。細菌毒素は吸着でき、主に腎臓で限られた損傷を伴う内皮傷害、止血の活性化、血栓を起こす。まれであるが、細血管異常性溶血性貧血を伴う犬の鑑別にHUSを考慮すべきである。(Sato訳)
■健康で起きている猫の糸球体ろ過率、腎血流量、尿排泄量に対する輸液および利尿剤投与の影響
Effects of administration of fluids and diuretics on glomerular filtration rate, renal blood flow, and urine output in healthy awake cats
Am J Vet Res. April 2006;67(4):715-22.
Jennifer M McClellan, Richard E Goldstein, Hollis N Erb, Ned L Dykes, Larry D Cowgill
目的:健康で起きている猫の糸球体ろ過率(GFR)、腎血流量(RBF)、尿排泄量(UO)に対して一般的に使用される利尿処置の効果の判定と2つのGFR測定法の比較
動物:8頭の健康な猫
方法:無作為クロスオーバー構成で、猫を無作為に4群に振り分けた:コントロール;輸液IV投与;輸液とマンニトールIV投与;輸液、ドパミン、フロセミドのIV投与。GFRおよびRBFの血漿クリアランス測定にイヌリンとパラアミノ馬尿酸をそれぞれ使用した。またGFR測定にtechnetium-Tc-99m-diethylenetriaminepentacetic acid (99mTc-DTPA)の血漿クリアランスも使用した。
結果:フロセミド-ドパミンは他の群に比べ最大尿排泄量を誘発した。マンニトールおよび輸液処置はコントロールに比べRBFを増加させた。輸液処置ではなくマンニトールは、フロセミド-ドパミンに比べRBFを増加させた。2群で99mTc-DTPAおよびイヌリンクリアランスで算出したGFR値に有意差はなかった。全ての群で99mTc-DTPAの使用はイヌリンの使用に比べGFRの過小評価を起こした。
結論と臨床関連:健康で起きている猫にフロセミド-ドパミンの投与は、UOを増加させるにもかかわらず、GFRまたはRBFを増加させなかった。輸液療法および輸液とマンニトールはRBFを改善させた。99mTc-DTPAによるGFR測定は、正確な測定が必要な時にイヌリンクリアランスの代用が常にできるわけではない。(Sato訳)
■オーストラリアの猫の自然発生した慢性腎疾患:184例の前向き研究
Naturally-occurring chronic renal disease in Australian cats: a prospective study of 184 cases
Aust Vet J. June 2006;84(6):188-94.
J D White, J M Norris, R M Baral, R Malik
目的:シドニー限定の集団で、自然発生猫慢性腎疾患(CRD)の症例を述べる
構成:前向き症例シリーズ
方法:研究対象の基準は、不十分な尿濃縮(尿比重≦1.035)を伴う正常範囲以上の血清クレアチニン濃度、CRDと一致する検死所見、腎蛋白尿または再水和にもかかわらない高窒素血症の存在とした。死亡前、または死亡後に特定の原因が認められた場合はその猫を除外した。病歴、身体所見、血清クレアチニン濃度をもとに猫を2つのカテゴリー(腎機能不全:renal insufficiencyまたは腎不全:renal failure)に分類した。CRDの猫の性別と年齢をオーストラリアの都会のペット猫集団と比較した。CRDの猫の種類は、各動物病院に来院した猫の種類と比較した。種類と性別の比較はフィッシャー検定で行った。年齢比較はマンホイットニーU検定を使用した。CRDと診断された猫の年齢は、Kruskal-Wallis検定を用い動物病院間で比較した。
結果:基準を満たした猫は184頭(メス99頭、オス85頭)だった。CRDの猫の中で、オス(中央値12歳)はメス(中央値15歳;p=0.001)より有意に若かった。CRDの猫の全体のオスとメスの比率は、対照のペット猫集団と同様(p=0.41)だが、9-11歳の年齢ではCRDのオス猫が過半数以上を占めた(p=0.038)。腎機能不全と診断された猫(123頭;年齢中央値15歳)は腎不全と診断された猫(61頭;年齢中央値11歳;p=0.0001)よりも有意に老齢だった。CRDの猫の診断されたときの年齢は、動物病院間でかなりの異なりを見せた(p=0.002)。
結論:CRDのオス猫はメス猫よりも有意に若かった。より若い猫は老齢猫よりも進行したステージと診断されやすかった。CRDと診断されたときの猫の年齢は、ネコがかかっていた病院に影響を受けた。CRDの原因または疾患の進行率での違いをそれらの違いが反映するかどうかはさらなる調査を必要とする。この研究において、種類がCRD発症に有意な役割を持つことは示されなかった。(Sato訳)
■猫の自然発症慢性腎疾患の食餌変更による治療の臨床評価
Clinical evaluation of dietary modification for treatment of spontaneous chronic kidney disease in cats
J Am Vet Med Assoc. September 2006;229(6):949-57.
Sheri J Ross, Carl A Osborne, Claudia A Kirk, Stephen R Lowry, Lori A Koehler, David J Polzin
目的:ステージ2または3の慢性腎疾患(CKD)の猫で、成猫維持食に比べ尿毒症エピソード、死亡率を最小にするのに蛋白、リン、ナトリウム、脂肪内容を修正した腎臓食が優れているかどうかを判定する
構成:二重盲検無作為コントロール臨床試験
動物:自然発症ステージ2、または3CKDの飼育猫45頭
方法:猫を無作為に成猫維持食(n=23)、または腎臓食(22)に振り分け、24ヶ月まで3ヶ月ごとに評価した。維持食と比較し、腎臓食の尿毒症、腎臓関連の死亡、全ての死亡原因を最小にする効果を評価した。
結果:腎臓食群で基準時および12-、24-ヶ月の間に血清尿素窒素濃度は有意により低くなり、血中重炭酸濃度は高くなった。体重、Hct、尿中蛋白クレアチニン比、血清クレアチニン、カリウム、カルシウム、上皮小体ホルモン濃度に有意差は見られなかった。維持食を与えた猫で有意に大きくなった比率は、腎臓食を与えていた猫(0%)に比べ、尿毒症エピソード(26%)だった。腎臓食を与えた猫で、全ての死亡原因ではなく腎臓関連の死亡が有意に減少した。
結論と臨床関連:この研究で評価した腎臓食は、自然発症ステージ2または3CKDの猫において尿毒症エピソード、腎臓関連死を最小にする面で維持食よりも優れていた。(Sato訳)
■ブルマスチフの家族性糸球体腎症
Familial glomerulonephropathy in the bullmastiff.
Vet Pathol 41[4]:319-25 2004 Jul
Casal ML, Dambach DM, Meister T, Jezyk PF, Patterson DF, Henthorn PS
11頭のブルマスチフに関連した糸球体疾患を組織病理学的に診断し、臨床、検査データを個々に収集した。4頭のメスと7頭のオス犬が罹患し、年齢は2.5-11歳だった。嗜眠、食欲不振などの臨床症状は非特異的で、死亡、または安楽死前の短い期間で認められた。5頭の罹患犬の一連の血液サンプルが得られ、死亡前の2.75年まで劇的な血液尿素窒素とクレアチニン濃度の上昇を認めた。タンパク-クレアチニン比は6頭中6頭で上昇し、1頭は死亡3.5年前から正常以上だった。検死時の腎臓は、肉眼的に正常か、わずかに小さかった。腎臓の組織学的異常は、硬化症を伴う慢性糸球体腎症と一致した。罹患犬に関する系統検査で、常染色体劣性遺伝を支持する証拠が得られた。(Sato訳)
■慢性腎不全や甲状腺機能亢進症の猫で複数の足に関与した石灰沈着症
Calcinosis Involving Multiple Paws in a Cat with Chronic Renal Failure and in a Cat with Hyperthyroidism
Vet Dermatol 16[1]:74-78 Feb'05 Case Report 16 Refs
J. Declercq and S. Bhatti
猫2例の複数の足の石灰沈着症について述べる。転移性病原が、高リン酸塩血症とカルシウム×リン溶解度積>7g/Lの検査所見により支持された。その時点で有効な猫上皮小体ホルモン検査がなかったので上皮小体機能亢進症は確認できなかった。1頭は慢性腎不全と診断され、当初顎の不規則な結節性石灰沈着を認めた。食餌や内科管理は成功せず、最終的に安楽死した。もう1頭は検査所見とシンチグラフィー画像検査により甲状腺機能亢進症と診断された。また、その猫は高窒素血症の見られない高リン酸塩血症だった。131Iの放射線ヨウ素の静脈内投与で血清総チロキシン濃度とリン濃度は低下し正常化した。結果的に足の切開沈着は解消した。(Sato訳)
■腎生検:手技と合併症の回顧調査:犬283例、猫65例
Renal Biopsy: A Retrospective Study of Methods and Complications in 283 Dogs and 65 Cats
J Vet Intern Med 19[6]:794-801 Nov-Dec'05 Retrospective Study 22 Refs
Shelly L. Vaden, Jay F. Levine, George E. Lees, Reid P. Groman, Gregory F. Grauer, and S. Dru Forrester
腎疾患の犬猫の確定診断に腎バイオプシーがよく必要とされる。283頭の犬と65頭の猫における腎生検の合併症、同様に合併症の発生および適切な腎生検標本の獲得に関与すると思われる要因を回顧的に調査した。4つの施設の医療記録から抽出したデータをロジスティック回帰を使用して評価した。
蛋白尿が犬の腎生検を行う一般的な指標だった。合併症は犬の13.4%、ネコの8.5%で報告され、よく見られたものは重度出血で、ほとんど見られないものは水腎症と死亡だった。腎生検後に合併症を起こした犬は、年齢4-7歳および>9歳、体重<5kg、血清クレアチニン濃度>5mg/dlが多かった。大多数の犬(87.6%)と猫(86.2%)の生検標本は満足のいく状態であると考えられた。全身麻酔下で採取した犬の生検標本はより質がよく、外科的に得たものは腎皮質のみ含んでいることが多かった。
腎生検は比較的安全な方法で、重度合併症の確率は低いと結論をだした。病院の診療と患者の違いで、得られた標本の質、合併症の比率、両方に影響する可能性がある。(Sato訳)
■蛋白喪失性腎症
Protein-Losing Nephropathy
Compend Contin Educ Pract Vet 27[9]:686-695 Sep'05 Review Article 37 Refs
Jill Brunker, DVM, DACVIM
獣医療の質が発達し続けるほど、コンパニオンアニマルの寿命は増大しております。微量アルブミン尿のようなより診断的検査方法の発展により、正確な判断と早期介入が腎不全の進行を遅らせ、生命維持を達成します。さらに、蛋白尿を検出することは、全身性疾患の存在を示し、獣医師にとって、潜在疾患を鑑別する助けとなる、より診断的検査を行うきっかけとなるでしょう。(Dr.K訳)
■レプトスピラ症の犬5症例の急性腎不全の管理における腹膜透析
Peritoneal Dialysis in the Management of Acute Renal Failure in 5 Dogs with Leptospirosis
J Vet Emerg Crit Care 15[3]:201-205 Sep'05 Case Report 24 Refs
Nicole F. Beckel, DVM, Therese E. O'Toole, DVM, Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVECC, DACVIM and Mary A. Labato, DVM, DACVIM
目的:レプトスピラ症が原因の急性腎不全(ARF)を起こした犬5頭の管理で、腹膜透析(PD)の使用を紹介する
一連の症例概要:全てのイヌは、PDを行う前にアンピシリンと輸液(IV)でレプトスピラ症を治療した。犬の年齢中央値は5歳(2-6歳)で、Leptospira Bratislavaの陽性力価を持っていた。PDの期間中央値は4日(範囲3-16日)だった。
PDは全頭の高窒素血症を低下させた。PD開始時血清血中尿素窒素中央値は、192mg/dl(範囲140-235mg/dl)で、PD終了時63mg/dl(範囲48-139mg/dl)だった。PD開始時と終了時の血清クレアチニン中央値は12.8mg/dl(範囲7.7-16.9mg/dl)と3.4mg/dl(範囲1.4-11.1mg/dl)だった。PD中に認められた合併症は、低カリウム血症(n=3、60%)、低アルブミン血症(n=2、40%)、低マグネシウム血症(n=1、20%)、後肢浮腫(n=2、40%)、中枢神経系症状(n=2、40%)、透析物貯留(n=1、20%)、カテーテル部位からの漏出(n=1、20%)が認められた。どの犬も腹膜炎は認められなかった。4頭(80%)が生存して退院した。レプトスピラ症による急性腎不全の犬の尿毒症の管理に腹膜透析は効果的だった。(Sato訳)
■正常な、そして腎機能が低下したネコの腎機能や血圧に対し、食餌中塩分がどう影響するのか
Effects of dietary sodium chloride intake on renal function and blood pressure in cats with normal and reduced renal function.
Am J Vet Res 65[5]:620-7 2004 May
Buranakarl C, Mathur S, Brown SA
目的:正常なネコや、腎機能が低下したネコの収縮期動脈圧(ABP)に対する塩化ナトリウム(NaCl)の摂取が変化したときの影響を研究する
動物:21頭の成猫(7頭は腎臓に障害なし[コントロールネコ;C群]、7頭は片側腎摘出で腎梗塞を起こしたネコ[遺残腎モデル;RK群]、7頭は片側腎梗塞で反対側の腎臓はラップし、同時にアムロジピンの経口投与を行っているネコ[遺残ラップモデル;WA群])
方法:全てのネコに、NaCl量のみ違う(50、100、200mgNa/kg)3種類の餌を、各餌7日間連続で給餌した。ABPをラジオテレメトリーで連続的に記録し、また腎機能(糸球体ろ過率[GFR])を各給餌6日目に測定した。
結果:NaClの食餌中添加はABPに影響しなかったが、C群とWA群のGFRを増加させた。最低量のNaCl摂取時RK、WA群のレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系は活性化したが、WA群へのNaCl添加はこの活性を抑制した。最低NaCl摂取は低カリウム血症とNaClの添加に反応するカリウムの高い機能的排泄に関与した。動脈圧受容器再設定が、慢性高血圧後の所見だったが、NaCl添加により変化しなかった。
結論と臨床関連:低NaCl摂取は、ABPに有益な所見がない不適当なカリウム尿、GFRの低下、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の活性化に関与した。ゆえに、この一般的な食餌の処方は、ネコの低カリウム性腎障害や、進行性腎傷害に寄与する可能性があった。(Sato訳)
■イヌの尿中アルブミン排泄に対する運動の影響
The Effects of Exercise on Urinary Albumin Excretion in Dogs
J Vet Intern Med 18[1]:52-55 Jan-Feb'04 Clinical Study 21 Refs
Anthony T. Gary, Leah A. Cohn *, Marie E. Kerl, and Wayne A. Jensen
持続性の微量アルブミン尿症は、ヒトやイヌの早期進行性腎疾患に関する糸球体ダメージの指標と示されている。ヒトで、一時的、または可逆的微量アルブミン尿症は、運動と共に起こることが示されている。最近はイヌの微量アルブミン尿を測定する半定量的試験が利用可能になっている。この研究の目的は、軽度-中程度の運動がイヌの微量アルブミン尿症を誘発するかどうか判定することだった。高血糖、尿路感染、高窒素血症、尿蛋白:クレアチニン比>1の除外検査を行った後、26頭のイヌを研究に供した。運動は、20分間の平坦トレッドミル走行とした。
尿サンプルを2日別々の日の運動前、運動の日の午前、運動後3時間、運動後7-9時間、運動後翌日、翌々日の午前に採取した。26頭中24頭は、この処置を運動セッション間最低7日の間隔をあけて繰り返した。イヌのE.R.D.(早期腎疾患)-スクリーン尿検査(E.R.D.-スクリーン検査)で、半定量尿中アルブミン濃度を判定した。E.R.D.-スクリーン検査による判定で微量アルブミン尿陽性サンプルを、定量アルブミン濃度を判定するため、さらに分析した。4頭(15%)が微量アルブミン尿陽性だった。それら各イヌで、運動後尿中アルブミン濃度の量的増加が無く、運動前後に微量アルブミン尿が存在した。研究中、22頭(85%)のイヌが微量アルブミン尿陰性で、運動後どの時間でも微量アルブミン尿症を発症しなかった。95%信頼区間で、運動後微量アルブミン尿症を起こすと思われるイヌの割合は、0-15%の間である。(Sato訳)
■自発性慢性腎不全の犬における初回蛋白尿と罹患率の関係
Evaluation of the Association Between Initial Proteinuria and Morbidity Rate or Death in Dogs with Naturally Occurring Chronic Renal Failure
J Am Vet Med Assoc 226[3]:393-400 Feb 1'05 Prospective Study 31 Refs
Frederic Jacob, DVM, PhD, DACVIM; David J. Polzin, DVM, PhD, DACVIM *; Carl A. Osborne, DVM, PhD, DACVIM; James D. Neaton, PhD; Claudia A. Kirk, DVM, PhD, DACVN, DACVIM; Timothy A. Allen, DVM, DACVIM; Laurie L. Swanson
目的:慢性腎不全(CRF)の初回診断時における尿中蛋白-クレアチニン比(UP:C)>1.0が、犬の慢性腎不全の尿毒症状発症、死亡、進行のリスクを大きくすることに関係するかどうか判定する
構成:前向き集団研究
動物:CRFの犬45頭
方法:犬を前向きに初回UP:C<1.0または>1.0をもとに2群に振り分けた。蛋白尿の程度、尿毒症発症、死亡の関連を初回UP:C>1.0の犬を3亜群に振り分ける前後に判定し、初回UP:C<1.0のイヌと比較した。相反血清クレアチニン濃度における変化を腎機能低下の評価に使用した。
結果:収縮期血圧とUP:Cを除き、最初の犬の臨床像は同じだった。尿毒症発症と死亡の相対危険度は、UP:C<1.0の犬に比べ、>1.0のイヌは約3倍高かった。反する結果に対する相対危険度は、UP:Cで1-単位増毎に約1.5倍高くなった。腎機能の低下は、<1.0の犬に比べ、UP:C>1.0の犬の方がより大きかった。
結論と臨床関連:初回UP:C>1.0の慢性腎不全のイヌは、<1.0の犬に比べ尿毒症発症、死亡のリスクがより大きくなった。自発性慢性腎不全の犬のUP:Cの初回測定は予後をより正確にする値かもしれない。(Sato訳)
■レーズンやぶどうを食べたことに関係する急性腎不全4例
Acute Renal Failure Associated with Raisin or Grape Ingestion in 4 Dogs
J Vet Emerg Crit Care 14[3]:203-212 Sep'04 Case Report 11 Refs
E. M. Mazzaferro, MS, DVM, PhD, DACVECC, P A. Eubig, DVM, T. B. Hackett, DVM, MS, DACVECC, M. Legare, DVM, C. Miller, DVM, DACVIM, W. E. Wingfield, DVM, MS, DACVS, DACVECC and L. Wise, DVM, MS, DACVIM
目的:レーズンまたはぶどうを食べた後の急性腎不全を起こした犬4症例の記述
症例要約:4頭は、さまざまな量のレーズンまたはぶどうを食べた後、乏尿性、または無尿性急性腎不全を呈した。嘔吐発現前、全頭健康で過去に腎不全の徴候はなく、腎毒性の可能性がある他の薬剤も暴露されていなかった。この症例シリーズは、4頭の臨床経過と使用した種々の治療様式を述べる。
新しい、または特別な情報提供:これはレーズン、またはぶどうを食べた後の腎不全を起こした犬に関する臨床症状、治療、臨床転帰を述べた最初の報告である。レーズンやぶどうに関する腎毒性の原因は依然分からないままである。それら犬でレーズン、またはぶどうに関する急性腎不全の4症例中2例の転帰は良好だった。(Sato訳)
■慢性腎不全のネコの酸塩基平衡:腎機能悪化の影響
Acid-base balance of cats with chronic renal failure: effect of deterioration in renal function.
J Small Anim Pract 44[6]:261-8 2003 Jun
Elliott J, Syme HM, Markwell PJ
ネコ慢性腎不全(CRF)の過去のクロスセクショナル研究で、代謝性アシドーシスが、重度腎不全(血漿クレアチニン濃度>400μmol/l)のネコの52.6%に認められた。この長期研究の目的は、代謝性アシドーシスが、慢性腎不全のネコで腎機能の悪化に先行、または同行するのかどうかを判定することだった。最低4ヶ月以上の長期間追跡調査している慢性腎不全のネコ55頭のデータを分析した。
21症例は、研究期間中に血漿クレアチニン濃度の有意な上昇と体重減少を伴い腎機能の悪化を示した。21症例中5症例で、酸血症が腎機能の悪化といっしょに起こった。それらネコの1症例のみに、腎機能悪化前に代謝性アシドーシスの所見があった。他の1症例は腎機能悪化前に代謝性アシドーシスが発現した。それらデータは、代謝性アシドーシスの生化学的所見が、一般的にネコ慢性腎不全の経過が進むまでは発生しないと示唆する。(Sato訳)
■イヌネコの腎臓アミロイドーシスの管理
Managing Renal Amyloidosis in Dogs and Cats
Vet Med 98[4]:320-332 Apr'03 Review Article 26 Refs
Barrak M. Pressler, DVM & Shelly L. Vaden, DVM, PhD, DACVIM
残念なことにイヌネコのアミロイドーシスは、通常腎不全発生後に診断される。腎生検を含む蛋白尿を示すイヌの積極的な検査は、この種でタンパク喪失性腎障害がアミロイドーシスの主要症状発現となるため、一度腎臓外の炎症の原因を除外するため正当な理由をもつ。シャーペイとネコは典型的にアミロイドの髄質沈着を持つため、蛋白尿はこの疾患の初期に認識されないかもしれない。しかし、ネコが蛋白尿を呈すとき、または腎不全を起こす素因血統のとき、アミロイドーシスの疑いを増すべきである。
腎生検はアミロイドーシスの確定診断法である。経皮または外科的腎皮質の生検は、問題の種類や血統、訓練された超音波技師の有用性をもとに選択すべきである。アミロイドーシスの適切な治療は未だ不明であるが、早期介入は予後を改善するかもしれない。シャーペイでコルヒチンが選択薬剤である。他の犬種でこの薬剤の有効性をさらに判定する研究が必要である。(Sato訳)
■猫の慢性腎不全:古い病気の新しい展望
Chronic renal insufficiency in the cat: A new look at an old disease
Dec 1, 2003
慢性腎不全は猫において一般的な病気である。病気はより急速に進行するが、多くの猫はかなり少ない臨床症状を伴いながら数年生きるであろう。不運にも多くの猫は最後には病気に屈服する。これらの猫の従来のモニタリングは高窒素血症の進行、電解質と酸―塩基平衡の変化、カルシウム及びリン濃度の変化と非再生性貧血の進行を評価するための定期的な血液生化学と完全血球計算である。これらの症例の長期管理は一般的に、電解質及び酸―塩基異常の補正、水溶性ビタミン補給、胃腸管の副作用の緩和そして血清リン濃度のコントロールが目的である。より重篤な症例において、利尿をもたらすため毎日の皮下補液が投与され、重篤な貧血患者においてエリスロポエチン療法が考慮される症例もあるかもしれない。最近全身血圧のモニタリング及びコントロールの重要性がより広く容認されている。
慢性腎不全の猫の数が多いにも関わらず、生存時間の予測は難しいかもしれない。腎不全の進行に関して明確な、臨床上利用できる危険因子は猫において広く確立されていない。さらに疾患の管理は過去10年間においてほとんど変化していない。2003年のACVIMフォーラムの最近の文献(#103,104,106 and 228)はこれらの論点に取り組もうとしている。
人医領域において、蛋白尿が慢性腎不全の進行において独立した危険因子であり、患者の生存時間に関係している。さらにアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が蛋白尿を減少させ、生存時間を延長させると示された。糸球体毛細血管の内皮細胞孔の大きさを減らし、リポプロテインの代謝を改善し、糸球体内圧を減らし、糸球体の細胞増殖を減らすことなどACE阻害剤が尿蛋白を減らす幾つかのメカニズムがある。
最近、猫における蛋白尿及び蛋白尿を最小限にする能力の重要性が、獣医学研究者において興味の対象になっている。ある研究(慢性腎不全の猫の生存時間における蛋白尿の影響; D. Gunn-Moore)は慢性腎不全の猫193頭を観察した。猫に3年以上ベナゼプリル(0.5-1 mg/kg 1日1回)か、プラセボが無作為に投与した。ベナゼプリルで治療した猫は、プラセボグループに比較して尿蛋白:クレアチニン(UPC)が低く、血清蛋白濃度が高かった。平均生存時間は2つのグループにおいて有意な違いはなかったが、ベナゼプリルで治療したグループは生存率がより高かった。
その他の研究は(慢性腎不全または/もしくは高血圧の猫における生存時間と蛋白尿排泄の関係; HM Syme)が様々なパラメーター(年齢、収縮期血圧、血漿クレアチニン濃度、尿タンパク濃度、尿蛋白:クレアチニン)において慢性腎臓疾患の猫を正常な猫と比較した。尿蛋白:クレアチニンは明らかに生存時間の予測するものとなることが示された。尿蛋白:クレアチニンが0.43以上の猫における平均生存時間はたったの281日であったが、尿蛋白クレアチニンが0.43以下の猫における平均生存時間は766日であった。興味あることに収縮期血圧は生存時間の予測にはならなかった。
蛋白尿は猫の慢性腎疾患の進行にとって危険因子となるように思われ、さらに生存時間の短縮と関連があるように思われる。ACE阻害剤、ベナゼプリルは尿蛋白:クレアチニンをより少なくするように思われ、行う際、生存時間を延長させるかもしれず、猫の腎疾患の進行を緩和するかもしれない。
尿蛋白:クレアチニン比などの尿の定期的な評価は慢性腎疾患の全ての猫において遂行すべきである。さらにベナゼプリル療法はより伝統的な治療管理と共に考慮するべきである。
ACE阻害剤による蛋白尿の減少が腎疾患の進行を緩和し、最終的に生存時間を改善かどうか決定するため更なる観察が必要とされる。慢性腎疾患の猫における長期のベナゼプリル療法に関して可能性のある副作用も同じく観察すべきである。(Dr.Kawano訳)
■イヌの尿サンプルの尿中アルブミン、総タンパク濃度に対する尿路感染と血液混入サンプルの影響
Effects of Urinary Tract Inflammation and Sample Blood Contamination on Urine Albumin and Total Protein Concentrations in Canine Urine Samples
Vet Clin Pathol 33[1]:14-19 Spring'04 Original Article 10 Refs
Shelly L. Vaden, Barrak M. Pressler, Michael R. Lappin, Wayne A. Jensen
背景:尿路感染と出血は、総尿中タンパク濃度を測定した研究結果からイヌの蛋白尿の一般的な原因と思われる。イヌの尿中アルブミン(UAlb)濃度の定量方法が、近年利用可能になっている。しかしアルブミン尿に対する炎症の影響は知られていない。
目的:この研究の目的は、イヌの尿中アルブミン濃度や、尿タンパク:クレアチニン(UPC)比に対し、膿尿や血液混入サンプルで示される尿路感染の影響を判定することだった。
方法:獣医教育病院に来院した、または研究所イヌ集団の一部だった膿尿を示すイヌから尿サンプルを採取した。血尿の効果を真似るため、基礎アルブミン、総タンパク濃度が検出限界以下のイヌの顕微鏡学的に正常な尿サンプルにイヌの全血を加えた。尿中アルブミン濃度は、イヌアルブミン特異拮抗ELISAで測定した。UPC比は通常の方法で判定した。
結果:膿尿の70サンプルのうち、67%はごくわずかな尿中アルブミン濃度で、81%は正常UPC比だった。UPC比ではなく尿中アルブミン濃度は、血尿、または細菌尿を併発した膿尿サンプルで有意に高かった(P<0.05)。全血を正常な尿にくわえたとき、サンプルが見た目ピンク色になるまで尿中アルブミン濃度は、1mg/dlを超えなかった。UPCはどんなに希釈しても0.4を超えなかった。
結論:膿尿のほとんどのイヌは、アルブミン尿や蛋白尿を認めなかった。しかし、アルブミン尿は、血尿、または細菌尿の併発した膿尿のイヌでより起こりそうだと思われる。血尿は、肉眼で見えるようになるまで尿中アルブミンを増加させず、さらにUPC比も増加させないと思われる。(Sato訳)
■イヌの片側腎臓完全閉塞で抵抗指数に対する静脈内マンニトール投与の効果
Effect of Intravenous Mannitol upon the Resistive Index in Complete Unilateral Renal Obstruction in Dogs
J Vet Intern Med 17[2]:158-162 Mar-Apr'03 Review Article 30 Refs
Hojung Choi, Sungjun Won, Woojo Chung, Kichang Lee, Dongwoo Chang, Heechun Lee, Kidong Eom, Youngwon Lee, Junghee Yoon *
基準に対し、非閉塞腎で腎抵抗指数(RI)は変化せず、フロセミドの投与後閉塞腎で増加することがいくらかの研究で明らかである。我々の知るところでは、イヌの腎抵抗指数に対するマンニトール投与の影響は報告されていない。我々は、8頭の若い成犬の16個の腎臓でマンニトール投与後の腎抵抗指数を評価した。平均抵抗指数は基準より有意に低下した(P<.01)。また、左の完全尿管閉塞を5頭のイヌで誘発した。
ドップラー超音波検査の評価を5日間行った。5日目には、閉塞犬へのマンニトール投与後30分そして60分にドップラー検査を繰り返し行った。左尿管閉塞誘導後、左腎の抵抗指数は5日連続で有意に増加した。マンニトールの投与で非閉塞の反対側の腎臓の抵抗指数は減少した。このように閉塞腎と非閉塞腎の抵抗指数の差は正常以上に増加した(P<.001)。結論としてマンニトールの投与は、ドップラー超音波検査で片側尿管閉塞を判定する他の利尿剤として有効かもしれない。(Sato訳)
■慢性腎不全の貧血のイヌと、組み替え型ヒトエリスロポエチン誘発性赤血球形成不全のイヌで、組み替え型イヌエリスロポエチンの臨床効果と安全性
Clinical Efficacy and Safety of Recombinant Canine Erythropoietin in Dogs with Anemia of Chronic Renal Failure and Dogs with Recombinant Human Erythropoietin-Induced Red Cell Aplasia
J Vet Intern Med 18[1]:81-91 Jan-Feb'04 Clinical Study 40 Refs
John F. Randolph, Janet Scarlett, Tracy Stokol, and James N. MacLeod
組み替え型イヌエリスロポエチン(rcEPO)療法の効果と安全性を、慢性腎不全により貧血のイヌ19頭(1群)と慢性腎不全で、組み替え型ヒトエリスロポエチン(rhEPO)誘発性赤血球形成不全のイヌ6頭(2群)で評価した。ヘマトクリット値(Hct)と絶対網状赤血球数(ARC)は最初の8週間毎週モニターし、CBC(ARCを含む)、血清鉄プロフィールを月に1回評価し、血清生化学検査を2週間ごとに6ヶ月(2群)から12ヶ月(1群)実施した。
1群の犬で、HctとARCはrcEPO投与最初の1週間で有意に増加し、5週後Hct中央値は>35%を維持した。対照として2群のHctとARCの中央値は、rcEPO投与で、1群よりも投与量を増やしても有意に変化しなかった。それにもかかわらず、2群の6頭中2頭(33%)は、rcEPO投与で赤血球増生、網状赤血球増加、Hctの上昇を起こした。収縮期血圧の中央値は両群で有意に変化しなかったが、5頭は研究中に収縮期血圧>180mmHgとなった。食欲とエネルギー準位は、1群のほとんどでHctの上昇と共に改善した。組み替え型cEPOは、rhEPO投与犬で起こりえる顕著な赤血球形成不全を原因とするもの以外の慢性腎不全による二次的な非再生性貧血のイヌの赤血球産生を刺激した。残念ながら過去にrhEPO誘発性赤血球形成不全を起こしたイヌの赤血球再生の回復に効果はなかった。(Sato訳)
■正常犬で、腎切開後の腎機能に対するフェノルドパムの効果
Effect of fenoldopam on renal function after nephrotomy in normal dogs.
Vet Surg 32[6]:566-73 2003 Nov-Dec
Zimmerman-Pope N, Waldron DR, Barber DL, Forrester SD, Wilcke JR, Marini M
目的:二分腎切開を行った正常犬の腎機能に対するフェノルドパムの効果を評価し、また正常犬の腎機能に対する二分腎切開の効果も評価した。
研究構成:コントロール無作為盲目実験
サンプル集団:16頭の雑種成犬
方法:イヌを性別、体重、おおよその年齢でペアを作り、2つのグループに振り分けた:フェノルドパム(F)またはプラセボ(P)。(99m)Tc-DTPAを用いた定量腎シンチグラフィーを基にした基準糸球体ろ過率(GFR)、血中尿素窒素(BUN)、血清クレアチニン(SCr)、尿検査、尿培養を術前実施した。正中開腹により左側腎切開を行った。グループFの犬には、90分間フェノルドパム(0.1μg/kg/min)をIV投与し、グループPの犬には、90分間同量の生食(0.9%NaCl)を投与した。体温、心拍数、呼吸、直接動脈圧、尿量を麻酔中記録した。術後1、21、42日目に腎機能をScr、BUN、GFRを測定して評価した。
結果:測定した生理変動値で、グループ間に有意差はなかった。グループ間、手術前後、コントロールの腎臓で、GFR、BUN、SCrに有意差は認められなかった。
結論:15分間の腎動脈閉鎖と単純連続皮膜縫合を用いた正常犬の二分腎切開は、腎機能の悪影響を示さなかった。
臨床とのかかわり:この研究で示したように、二分腎切開は腎機能を低下させない。腎保護剤の周術投与は、正常犬に必要ない。(Sato訳)
■常染色体優性多嚢胞腎疾患の猫で、血圧、腎機能、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対するエナラプリルの影響
Effect of enalapril on blood pressure, renal function, and the renin-angiotensin-aldosterone system in cats with autosomal dominant polycystic kidney disease.
Source: JOURNALS ABSTRACT (Am J Vet Res 60[12]:1516-25 1999 Dec)
Author(s): Miller RH, Lehmkuhl LB, Smeak DD, DiBartola SP, Radin J
目的:常染色体優性多嚢胞腎疾患(ADPKD)の猫の血圧、腎機能、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)を評価し、それらに対するエナラプリルの影響を調査すること
動物:ADPKDの猫6頭と、年齢が合致した健康猫6頭
手順:血圧、心拍数を測定するため、ラジオテレメトリーカテーテルを各猫の左大腿動脈に設置した。24時間血圧、心拍数、運動活性の基準データを取った。それからRAAS状態、腎機能の評価のため血液を採取した。エナラプリル(0.5mg/kg、P.O.24時間毎)を1週間投与し、データを繰り返し取った。
結果:ADPKDの猫とコントロールの間に、基準の血圧、心拍数、運動活性、RAAS状態、腎機能に関する相違は見られなかった。ADPKDの猫に高血圧は見られなかった。両群でエナラプリル投与後15-17時間で血圧の有意な低下が見られた。また、エナラプリルの投与で、血症レニン活性の有意な増加が見られ、アンギオテンシン変換酵素活性、心房ナトリウム利尿ペプチド濃度の有意な低下が見られたが、糸球体ろ過率や有効腎血漿流量の変化は最小限に留まった。
結論と臨床関連ADPKDのヒトで高血圧はよく見られるが、ADPKDの猫では血圧は正常だった。エナラプリルの投与(0.5mg/kg、P.O.24時間ごと)は、正常血圧の猫やADPKDの猫の血圧を有意に低下させ、RAAS酵素活性やホルモン濃度に予想可能な変化を引き起こした。エナラプリルは腎機能に最小限の影響しか与えなかった。(Sato訳)
■慢性腎不全のネコの自発性高血圧で、血漿アルドステロン濃度、血漿レニン活性、血圧に対するアンギオテンシン変換酵素阻害剤の効果
Effects of Angiotensin-Converting Enzyme Inhibition on Plasma Aldosterone Concentration, Plasma Renin Activity, and Blood Pressure in Spontaneously Hypertensive Cats with Chronic Renal Disease
Vet Ther 3[2]:157-166 Summer'02 Prospective Trials 40 Refs
Jennifer L. Steele, DVM; Rosemary A. Henik, DVM, MS, DACVIM; Rebecca L. Stepien, DVM, MS, DACVIM
ネコの慢性腎不全に高血圧が一般に見られ、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の不適切な活性化が、高血圧状態に貢献していると思われる。それぞれ血管収縮とナトリウムそして水分保持を起こすアンギオテンシンIIとアルドステロンの血漿濃度を低下させる高血圧が存在するとき、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤が一般に投与される。ここで報告する研究は、慢性腎疾患を持つ自発性高血圧のネコ16頭のRAAS活性や血圧に対し、一般に処方される2つのACE阻害剤エナラプリルやベナゼプリルの効果を評価するため6ヶ月間行った。血漿アルドステロンと血漿レニン活性に、高血圧のACE阻害剤による有意な影響はなく、16頭中14頭のネコで、ACE阻害剤単独療法では収縮期血圧が170mmHg以下に低下しなかった。それらの結果は、RAASの持続的活性がACE阻害剤投与にもかかわらず高血圧のネコで存在し、ACE阻害剤は、高血圧のネコの抗高血圧療法として第一に使用すべきではないと示唆している。(Sato訳)
■犬と猫における糸球体腎炎:診断と治療
Glomerulonephritis in Dogs and Cats: Diagnosis and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 23[9]:798-804 Sep'01 Review Article 36 Refs
David C. Grant, DVM; S. Dru Forrester, DVM, MS, DACVIM
Virginia Tech
尿生殖路炎症の所見がなく、蛋白尿が証明された時、初めて糸球体腎炎(GN)を疑います。診断は、GNに関連すると認識されている併発疾患と、蛋白尿の腎前性、および腎後性原因の除外に関して、患者を完全に評価することを必要とします。確定診断には腎臓生検を必要とします。過去において、その管理は、基礎疾患の除去、免疫抑制、そしてGNの合併症予防のための処置でした。免疫抑制療法は、人におけるGN形態をある程度管理する事に成功してきましたが、犬と猫においては有益ではなく、むしろ有害かもしれません。最近、アンギオテンシン変換酵素阻害薬とトロンボキサン合成酵素阻害薬の使用が犬のGN管理において、有益な効果を示しております。
編者メモ:「犬と猫における糸球体腎炎:糸球体機能、病態生理学、そして臨床徴候」という表題をつけた一対の論文が、コンペンディウムの2001年8月(Vol,23,No8)号に出ました。(Dr.K訳)
■自然発生慢性腎不全のネコの酸-塩基状態の評価
Assessment of acid-base status of cats with naturally occurring chronic renal failure.
J Small Anim Pract 44[2]:65-70 2003 Feb
Elliott J, Syme HM, Reubens E, Markwell PJ
ネコ慢性腎不全(CRF)の合併症でよく代謝性アシドーシスが報告されているが、この疾患のネコの酸-塩基状態は一般開業医にほとんど評価されていない。自然発生慢性腎不全のネコ59頭によるクロス-セクショナル研究を、酸-塩基障害の行き渡りを判定するために行った。血漿クレアチニン濃度をもとに、軽度、中程度、重度と症例を分類した。27頭の健康な、年齢が合致したネコの群を比較として評価した。静脈血低pH(<7.270)が重度症例19頭中10頭(52.6%)で判明し、中程度では20頭中3頭(15%)、軽症例では20頭中0頭だった。酸血症は、低血漿重炭酸や低塩化イオン濃度両方によるアニオンギャップの増加に関係していた。尿サンプルの生化学分析で、腎不全の重症度が増すとともに尿pHが低下することを示した。重炭酸の尿喪失は、酸血症の発生に関係がなく、腎不全の重症度が増すにつれ、尿中アンモニウムイオン排泄が低下する傾向が見られた。自然発生慢性腎不全のネコは、疾病が進行するまで酸-塩基障害の血漿生化学的所見を示さない。(Sato訳)
■誘発した慢性腎不全に関する、犬における、エナラプリルを用いた、アンギオテンシン変換酵素の抑制効果に関する評価
Evaluation of the effects of inhibition of angiotensin converting enzyme with enalapril in dogs with induced chronic renal insufficiency.
Am J Vet Res 64[3]:321-7 2003 Mar
Brown SA, Finco DR, Brown CA, Crowell WA, Alva R, Ericsson GE, Cooper T
目的:犬の腎不全モデルにおいて、アンギオテンシン変換酵素抑制剤のエナラプリルが、全身動脈圧と腎糸球体管圧を、より低下させ、腎障害の進行を軽減するかどうかを、調査することです。
動物:部分摘出により、腎質量を減らした、18頭の成犬。
手順:腎臓部分摘出の術後、基準測定を行い、犬を2群へ均等に分け、プラセボ(グループ1)、またはエナラプリル(0.5mg/kg,PO,q12h;グループ2)を、6ヵ月間投与しました。
結果:全身動脈血圧値は、間接法および直接法により、投与開始3ヵ月と6ヵ月で行い、それぞれ、グループ1より、グループ2において、有意に低下しました。毎月の尿蛋白クレアチニン比は、3ヵ月で、有意差があっただけではあるものの、一貫して、グループ1におけるものより、グループ2において、より低下しました。グループ1と比較して、6ヵ月で、グループ2における、腎糸球体毛細管圧の有意な低下が、明らかとなりましたが、グループ2における、腎糸球体濾過率は、変化しませんでした。腎糸球体の二次元領域の測定により評価した、腎糸球体肥大は、両グループ間で類似しておりました。腎糸球体と尿細管間質性病変は、グループ1と比較して、グループ2で、有意に減少しました。
結論と臨床関連:データは、アンギオテンシン変換酵素の抑制は、進行する腎障害を調節するのに効果的で、これは、腎糸球体肥大ではなく、腎糸球体、および全身性高血圧の低下に関連することを示唆しております。アンギオテンシン変換酵素の抑制は、犬における腎疾患の進行を、調節するのに効果的であると考えられます。(Dr.K訳)
■猫のベナゼプリルの薬物動態と薬力学に対し腎不全がどう影響するか
Effect of renal insufficiency on the pharmacokinetics and pharmacodynamics of benazepril in cats.
J Vet Pharmacol Ther 25[5]:371-8 2002 Oct
King JN, Strehlau G, Wernsing J, Brown SA
猫で、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤であるベナゼプリルの薬物動態(PK)そして薬力学(PD)に対する腎不全の影響を研究した。猫でベナゼプリルの活性代謝物であるbenazeprilatは、主に(85%)胆汁排泄により排出される。合計20頭のコントロールと、部分腎切除で中程度腎不全の猫32頭を使用した。最低10日間プラセボ、またはベナゼプリル(0.25-2mg/kg)を1日1回投与した後、安定状態で評価した。PKの指標は血漿総benazeprilatの曲線下面積(0a24h)とした。PDの指標は、テレメトリーで測定した収縮期、拡張期、平均血圧とし、血漿ACE活性は、生体外分析で評価した。
腎機能は、イヌリンクリアランスにより測定した糸球体ろ過率(GFR)と血漿クレアチニン濃度(1/PCr)で評価した。コントロールと比較した時、腎不全の猫はGFR(0.57±0.41ml/min kg)の78%削減、血漿クレアチニン(2.7±1.0mg/dl)、尿素(44.0±11.9mg/dl)、ACE活性の増加、血圧の中程度増加(収縮期血圧171.8±5.1mmHg)していた(全パラメーターP<0.05)。ベナゼプリルの投与を受けた猫は、プラセボ投与猫と比較して収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧、ACEが有意に低く(P<0.05)、GFR値は高かった。ベナゼプリルを受けている猫の腎不全の程度による収縮期血圧、拡張期血圧、平均血圧、benazeprilatまたはACE値の有意差は見られなかった。中程度腎不全の猫でベナゼプリルの投与量調節は必要ないと結論付ける。(Sato訳)
■腹膜透析:腎不全のためだけでなく
Peritoneal Dialysis: Not Just for Renal Failure
Compend Contin Educ Pract Vet 24[10]:758-771 Oct'02 Review Article 28 Refs
Melissa Garcia-Lacaze, DVM; Rebecca Kirby, DVM, DACVIM, DACVECC; Elke Rudloff, DVM, DACVECC
Animal Emergency Center, Glendale, Wisconsin
致死的な毒性、体液の過負荷、極度の体温は、腹膜透析により素早く効果的に治療できる。必要ならば、腹膜カテーテル、透析液は多くの病院で簡単に入手できるもので作成可能である。透析液組成、温度、貯留時間を調節する事で、溶質と温度交換の割合は最大限となる。腹膜透析を止める決断は、一度臨床異常が矯正されたり、毒素の血清濃度が容認範囲内になったらなされる。体温異常、致死的毒物の摂取、体液過負荷、急性乏尿性腎不全など、多くの病態の管理に使用できる。
腹膜カテーテルや透析液は購入できる、または多くの病院で手に入るもので作成できる。(Sato訳)
■犬の腎機能と形態に腎切開がどう影響するか
The effect of nephrotomy on renal function and morphology in dogs.
Vet Surg 31[4]:391-7 2002 Jul-Aug
Stone EA, Robertson JL, Metcalf MR
目的:2等分腎切開、または反対側の節間腎切開が糸球体ろ過率に影響するかどうかと、2等分腎切開が節間腎切開よりも副反応が少ないかどうかを判定する事
研究構成:術後1、4、8、15、29日の安楽死の時期により3頭ずつ犬を5群に分けた
動物:15頭の健康な未避妊雌犬
方法:総腎臓糸球体ろ過率と、単一腎臓糸球体ろ過率をテクネチウムTc99m-DTPAで測定し、それから4日以内に左の腎臓に節間腎切開、右の腎臓に2等分腎切開を行った。1日目の群をのぞいて、安楽死される前の日に糸球体ろ過率を再測定した。1、4、8、29日目の群から取り出した腎臓の組織学検査を行った。病変の程度に0から4のスコアーをつけた。腎切開前後の各腎臓の単一腎臓糸球体ろ過率を比較した。各時期の組織学的、糸球体ろ過率の変化を、2等分腎切開と節間腎切開を行った腎臓で比較した。
結果と結論:術後3日目、総腎臓糸球体ろ過率は基準から176%増加し、節間腎切開と2等分腎切開の単一腎臓糸球体ろ過率に違いはなかった。
7日目に総、単一腎臓糸球体ろ過率は基準に戻った。2等分腎切開は、節間腎切開よりも腎臓内出血、皮質梗塞、炎症を多く起こした。4週間目、2つの方法に組織学的有意差は認めなかった。
臨床関連:節間腎切開と2等分腎切開は、糸球体ろ過率に悪影響を及ぼさなかった。節間腎切開の場合、追加の外科的手技とそれに伴う時間がかかるため、2等分腎切開が犬で選択される方法である。(Sato訳)
■犬における、自発性慢性腎不全の治療調節
Frederic Jacob, DVM, DACVIM et al; J Am Vet Med Assoc 220[8]:1163-1170 Apr 15'02 Clinical Trial 38 Refs; Modification for Treatment of Spontaneous Chronic Renal Failure in Dogs
目的:自発性慢性腎不全の犬の尿毒症発症と死亡率において、腎疾患用食(RF)が成犬用維持食(MF)より優れているかどうかを判定することです。
計画:二重盲目無作為管理下臨床治験
動物:自発性慢性腎不全の犬38頭
手順:犬を、無作為に、成犬用維持食給与群と腎疾患用食給与群に割り当て、24ヵ月間まで評価しました。2群とも、似たよう臨床的、生化学的、血液学的所見でした。尿毒症発症と死亡率に関する食事の影響を比較しました。腎機能の変化は、血清クレアチニン濃度と、血清クレアチニン濃度の逆数の連続的評価により、評価しました。
結果:成犬用維持食に比べて腎疾患用食は、軽度そして中程度の腎不全の犬における尿毒症発作と死亡率に関して、有益な効果がありました。腎疾患用食給与群の犬は、成犬用維持食給与群の犬と比較して、腎機能減退がより緩慢でした。
結論と臨床関連:食餌の変更は、軽度や中程度の自発性慢性腎不全の犬における、尿毒症と死亡率の腎外徴候を、最小限に抑えるのに有益です。結果は、腎疾患用食を与えた犬での尿毒症発症遅延と関連死亡率は、少なくとも部分的に腎不全の進行率の減少に関与しているという仮説と一致します。
注解:使用した腎疾患用食は、Hill's Prescription Diet 犬K/Dドライフードです。維持食は、10種の一般的な市販成犬用維持食とし作られたものです。腎疾患用食は、成犬維持食より、低蛋白、低リン、低ナトリウムです。成犬用維持食には強化されていない、オメガ3多価不飽和脂肪酸を補充しております。研究はHill's Scienceと技術センターから、大々的に支援されました。(Dr.K訳)
■肥満初期の腎臓における機能的および構造的変化
Henegar JR et al; J Am Soc Nephrol 2001 Jun;12(6):1211-7; Functional and structural changes in the kidney in the early stages of obesity.
この研究の目的は、高脂肪食によって引き起こされる肥満初期の腎臓において、組織学的および機能的変化を試験することであった。肥満していないイヌ(n = 8)には標準的なイヌの食事、肥満イヌ(n = 8) には標準的なイヌの食事に加え、調理した牛肉脂肪の補充を、それぞれ7~9週間もしくは24週間行った。肥満していないイヌの平均値と比較して、肥満イヌでは体重が58 +/- 5% 、腎臓の重量が31 +/- 7% 重かった。血漿レニン活性およびインスリン濃度は、肥満していないイヌと比較して肥満イヌでは2.3倍高かった。肥満していないイヌと比較して、肥満イヌでは平均動脈圧の増加は12 +/- 3 mmHg 、GFRは38 +/- 6% 、腎血漿流量は61 +/- 7% 大きかった。肥満していないイヌに比較して、高脂肪食給与のイヌにおいて糸球体のボーマン領域は有意に大きく(+41 +/- 7%)、主にボーマン嚢の拡張(+22 +/- 7%)のためであった。肥満していないイヌに比較して、肥満イヌにおいてはメサンギウム構造の増加と糸球体と管基底膜の肥厚、糸球体の分裂細胞数(増殖細胞核抗原染色)%が36 +/- 8% 大きかった。半定量免疫組織学的分析の評価により、糸球体転換成長ベータ1因子発現の傾向があり、高脂肪食で高かった。それゆえ、動脈血圧の上昇、高インスリン血症、レニン-アンギオテンシン系の活性化、糸球体の過剰ろ過、腎臓における構造的な変化の原因となる高脂肪食は、長期肥満に関係する更に深刻な糸球体傷害の先駆けとなるであろう。(Dr.Yoshi訳)
コメント:高脂肪食の給与は、腎機能に傷害をもたらすようです。肥満犬には低脂肪食で減量を徹底したいものです。
■猫の腎臓移植後、生存率と合併症の診断的予測となるもの
Diagnostic predictors of complications and survival after renal transplantation in cats.
Vet Surg 30[6]:515-21 2001 Nov-Dec
Adin CA, Gregory CR, Kyles AE, Cowgill L
目的:腎臓被移植猫の術後合併症と生存率を予測する術前の診断的所見の判定
研究構成:回顧的臨床研究
動物:腎臓同種被移植猫61頭
方法:1996年1月1日から1999年12月1日の間に、同種腎移植を行った猫61頭の連続的な医療記録を再検討しました。年令、診断、体重、ボディコンディションスコアー、術前内科治療、心収縮期血圧、ヘマトクリット値、入院時と手術時の生化学的パラメーター、術後合併症、術後の生存率を記録しました。術前データと術後の合併症の発生との関係を、ロジスティック解析法を用いて調査しました。術後の生存率は、カプランメイヤー累積生存図を描きました。術後生存と共変動との関連を、Cox比例危険分析法で分析しました。
結果:2つのパラメーターは、術後の中枢神経(CNS)障害の発生と有意に関連しました:手術時血中尿素窒素濃度(オッズ比=1.083;95%信頼区間=1.018-1.148)と手術時血清クレアチニン濃度(オッズ比=1.8;95%信頼区間=1.413-2.187)。移植後6ヶ月の生存率は59%といっても、3年生存率は42%を維持しました。調査した全ての共変動のうち、被移植者の年令(相対危険率=1.183;95%信頼区間=1.039-1.148)のみ有意に生存率と関係していました。
結論と臨床関連:術前腎臓機能不全の標準的な測定は、腎臓移植後の生存率を予測するものではありませんが、術前高窒素血症の程度が増すことは、術後、中枢神経障害のリスクの増加に関係します。被移植者の年令が高くなることは、移植後の生存率の低下に関係します。[Dr.Sato訳]
■ネコにおけるスタノゾロールの肝毒性
Harkin KR et al; J Am Vet Med Assoc 2000 Sep 1;217(5):681-4; Hepatotoxicity of stanozolol in cats.
目的:ネコにおけるスタノゾロールの肝毒性を決定すること スタノゾロール誘発の肝毒性にみられる臨床病理学的・組織病理学的異常を同定すること
意図:臨床試験と症例
動物:12頭の健康なネコ、6頭の慢性腎不全のネコ、3頭の歯肉炎と口内炎のネコ
方法:健康なネコと腎不全のネコに4週間スタノゾロールを投与した(1日目は25mg i.m、その後12時間おきに2mg p.o.)。歯肉炎と口内炎のネコには、スタノゾロールを24時間おきに毎日1mg p.o.で投与した。
結果:多くの健康なネコと腎不全のネコには、スタノゾロール投与開始後7~10日以内に顕著な食欲不振、グルーミングの欠如、運動性の低下がみられた。血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)活性はスタノゾロール投与後18頭中14頭において有意に上昇したが、血清アルカリフォスファターゼ活性は、3頭において軽度に上昇したのみだった。スタノゾロール投与後、ほんの2週間後に、血清ALT活性が1000U/L以上の4頭のネコで血液凝固異常がみられたが、4頭中3頭でビタミンK投与にて48時間以内に改善した。スタノゾロール投与中止後4週間以上テストした全てのネコ18頭は生存し、肝酵素活性は正常値であった。歯肉炎のネコ3頭のうち2頭はスタノゾロール投与開始後2~3ヶ月間、重度の肝不全を呈し、共に血液凝固異常へと進展した。ネコ5頭の肝バイオプシー標本の組織学的評価から、明らかな肝細胞壊死を伴わない、び慢性肝リピドーシスと胆汁鬱帯が明らかとなった。
結論と臨床関連:結果はネコにおいて、スタノゾロールの肝毒性を示唆する。(Dr.Yoshi訳)
コメント:スタノゾロールは蛋白同化ホルモンの一つで、ネコの慢性腎不全時の貧血治療に使われることがあります。肝毒性があるようですので、使用時は注意したいです。
★猫で、両側の尿管離断の緊急治療に、一時的な、両側の腎造瘻カテーテルの使用
Bruce S. Nwadike, DVM, DACVS et al; J Am Vet Med Assoc 217[12]:1862-1865 Dec 15'00 Case Report 13 Refs ;Use of Bilateral Temporary Nephrostomy Catheters for Emergency Treatment of Bilateral Ureter Transection in a Cat
2歳のヒマラヤンを、4日間の嘔吐、嗜眠、食欲不振で検査しました。その猫は、5日前に子宮摘出と、左の卵巣遺残の除去を受けていました。研究所の検査結果と排泄性尿路造影で、尿毒症と両側性の尿管閉塞を認めました。腎造瘻カテーテルを尿排泄のために設置し、完全な治療前の生理学的利尿の時間を稼ぎました。2日間で、猫の全身状態はすばらしく改善しました。試験的開腹を行い、結紮された両尿管を見つけました。尿管の健康な近位部分を、膀胱に埋め込みました。術後6ヶ月、猫は健康で、排泄性の尿路造影で、両尿管はうまく機能している事を確認しました。尿管の両閉塞は、補正が難しい命に関わる状態です。腎造瘻カテーテルの設置は、尿管の外科的修復に必要な麻酔の前に、猫の生理的状態を改善します。(Dr.Sato訳)
★超音波ガイドによる経皮的ドレナージを使用した膿腎症の治療:2例
Viktor Szatmari, DVM et al; J Am Vet Med Assoc 218[11]:1796-1799 Jun 1'01 Case Report 16 Refs; Ultrasound-Guided Percutaneous Drainage for Treatment of Pyonephrosis in Two Dogs
膿腎症は、完全にまたは、ほとんど完全に腎機能を失う、実質の化膿性破壊です。犬で膿腎症の治療は、いまだ腎摘出を行っています;しかし、最近の報告で、局所や普通の麻酔を必要としない、腎盤への経皮的超音波ガイドドレナージ装着法が紹介されており、その方法を実施した2頭の結果を報告します。
簡単に説明すると、悪い方を上に向けた横臥姿勢に保定し、皮膚を無菌的に消毒しました。腎盤に向け、超音波ガイド下で、22Gの針で、経皮的に刺入し、サンプルを分析のために採取しました。それから静脈カテーテルで、腎盂から出来る限りの膿を除去しました。加えてポピドンヨードで、腎盂を洗浄しました。超音波ガイドドレナージと腎盂の洗浄は、腎盂が小さくて針を刺せなくなるまで、繰り返し毎日行いました。2頭とも回復し、その後元気だという報告を受けました。(Dr.Sato訳)
★ペルシャ猫や他の猫の多発性嚢胞腎疾患:超音波検査法を用いた先見的研究
Beck C et al, Aust Vet J 79[3]:181-4 2001 Mar Feline polycystic kidney disease in Persian and other cats: a prospective study using ultrasonography.
目的:1999年の2月から8月の間にメルボルン大学の診療所や病院を訪れた、ペルシャ猫の多発性嚢胞腎の罹患率を調査する事
構成:飼育されている動物を用いた、予見的臨床研究を実施しました
方法:メルボルン大学獣医診療所や病院を訪れた、13週から10歳零の250頭のペルシャ猫に両腎臓の超音波検査を行いました。猫を仰臥、または横臥に保定し、アルコールとジェルを皮膚に塗布しました。そして腎臓の、縦断、矢状断、横断面を超音波検査しました。試験時に、それぞれの猫が多発性嚢胞腎であるか、ないかを記録しました。加えてエキゾチック(短毛ペルシャ)14頭、ラグドール4頭、ブリティッシュショートヘアー3頭を検査しました。
結果:検査したペルシャ猫の45%は、腎実質に無響の嚢胞の存在をもとに、多発性嚢胞腎であると分りました。それらの猫の年齢範囲は、13週から10歳でした。エキゾチックの50%は多発性嚢胞腎であるのに対し、ラグドール、ブリティッシュショートヘアーの、全ての猫はそうではありませんでした。ただ1頭の多発性嚢胞腎の猫だけ腎疾患の臨床徴候を見せたと報告がありました。
結論:1999年の2月から8月の間にメルボルン大学を訪れた、ペルシャ猫の多発性嚢胞腎の罹患率は45%でした。エキゾチックでは、わずかに高い発生率で50%でした。(Dr.Sato訳)
★シドニーとブリズベーンで、ペルシャとペルシャ系の猫における優性常染色体多発性嚢胞腎疾患の罹患率
Barrs VR et al; Aust Vet J 79[4]:257-9 2001 Apr; Prevalence of autosomal dominant polycystic kidney disease in Persian cats and related-breeds in Sydney and Brisbane.
目的:優性常染色体多発性嚢胞腎疾患の型が、ペルシャやペルシャ系の猫で確認されています。2つの特性は、この疾患を次世代にはなくす事を目標とします:罹患猫を明らかにするための、優性常染色体の継承の流れ、腎臓超音波検査。
この研究の狙いは;シドニーとブリズベーンのペルシャとペルシャ系猫の罹患率調査、居住場所の影響、猫種による罹患率の調査、この疾患の罹患率を臨床家に警告することと、猫の繁殖家にこの疾患を次世代に残さない方法の申し出をすることです。
構成:この計画には、10ヶ月以上のペルシャ、ペルシャ系猫を使用しました。誤った陰性結果を起こす可能性があるので、若い猫は除外しました。Medison 600 with a 7.5 MHz mechanical sector scanner (228例、ブリズベーン) または、ATL UltraMark-9 with a 5 to 10 MHz linear array transducer (92頭、シドニー)を使用し、腎超音波検査を実施しました。居住場所の影響(シドニー対ブリズベーン)と猫種におけるこの疾患の罹患率をtwo-tailed Fisher's Exact testsを使用し調べました。
結果:合計320頭の猫(ペルシャ230頭、ヒマラヤン48頭、エキゾチック17頭、バーミラ14頭、ラグドール6頭、チンチラ5頭)を試験しました。この疾患の罹患率は、シドニーで45%、ブリズベーンで42%、性的偏りはありませんでした。ラグドールではこの疾患は認められませんでしたが、少数しか検査していません。バーミラ14頭中2頭(14%)は陽性で、長毛種や短頭種の特徴がある猫は、多発性嚢胞腎疾患の形質を切り離せません。
結論:この結果で、オーストラリアの純血種や長毛種の優性常染色体多発性嚢胞腎の罹患率は、目下とても高いです。超音波検査計画は簡単に開設でき、猫の繁殖家に助成援助できます。(Dr.Sato訳)