第22号−毎週月曜日発行
ご意見ご要望、Q&A、お待ちしております。
編集委員を募集しています。何らかのテーマを連載したいと言う方どしどし連絡ください。
お知り合いの方にもご紹介くださいね。連絡待ってま〜す。
CONTENTS
●Dr.Kの気になる文献
●Dr.Massaの腫瘍系文献
●Dr.Shingoの皮膚系文献
●Dr.Satoの気になる文献
●Q&A
●新製品情報
●セミナー情報
●一口まめ知識
●編集後記
●Dr.Kの気になる文献
■猫における、毛包虫症と皮膚糸状菌症を伴う皮膚黄色腫
Vogelnest LJ ; Aust Vet J 79[7]:470-5 2001 Jul; Cutaneous xanthomas with concurrent demodicosis and dermatophytosis in a cat.
絶食からの高脂肪血症に関連した、複合的な皮膚黄色腫を、9カ月齢の長毛猫で診断しました。頭部と頚部に、丘疹と痂皮形成を伴う、激しい掻痒が生じ、最初は、好酸球性肉芽腫関連の病変として診断しましたが、頭部と耳介で、進行性に、病変が展開していきました。掻痒は、プレドニゾロンと、クロラムブチルの投与で管理しました。繰り返す組織学検査で、皮膚黄色腫と、併発した軽度な毛包虫症を確定診断しました。顕著な絶食による、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、そして一過性の高血糖症を、その後確認しました。低脂肪食(Hill`s Feline r/d)を用いた、高脂肪血症と黄色腫対する治療と、これまで報告されていない、経口ミルベマイシン毎日投与の、猫毛包虫症に対する治療を開始しました。多様なピンク色の脱毛斑と丘疹が、漸進的に退行するものの、免疫抑制剤治療を減ずると、掻痒は、再発し、皮膚掻爬による、毛包虫陰性にもかかわらず、境界明瞭な脱毛が頭部、四肢、そして体幹に発現しました。被毛サンプルの真菌培養では、Microsporum canisが、培養されました。全ての皮膚病変が、グリセオフルビンの治療で消散しました。併発角膜潰瘍と、乾性角結膜炎は、結局、局所シクロスポリンの治療により、消散しました。真性糖尿病が、皮膚病変消散後、6ヵ月で発現しました。うっかりした脂肪食摂取後に、一過性の、丘疹と掻痒が起こるものの、低脂肪食と、インスリン治療で、6ヵ月後には、皮膚、および眼科の、いかなる異常も認められなくなりました。原発性高脂肪血症は、掻痒誘発性黄色腫の、原因であると疑われます。これは、猫における、皮膚黄色腫、毛包虫症、そして皮膚糸状菌症の併発に関する報告で、初めてのものであると思われます。(Dr.K訳)
コメント:高脂肪血症は、複雑ですね?日ごろの診療でも、基礎疾患が何であるかを、検索するのに、1役かうかもしれません。皮膚糸状菌症に対して、ここでは、グリセオフルビンだけ用いてましたが、このような状態の症例を目の前にすると、肝臓機能も心配になるので、他の抗真菌薬使いたくなるのは、私だけでしょうか?ご意見お待ちしております。
●Dr.Massaの腫瘍系文献
PDAの写真です。
●Dr.Shingoの皮膚系文献
■犬の象皮症
Kimberly Lower, DVM et al; Vet Med 95[5]:360-362 May'00 Case Report 6 Refs; A Dog with Elephant-Like Skin
9ヶ月の間、脱毛、肥厚および脂漏性の皮膚病変をもつウェストハイランドホワイトテリアのウェスリーが来院しました。酵母および細菌性の皮膚炎と外耳炎、2次的な甲状腺機能低下症と診断しました。酵母性皮膚炎に対して、過酸化ベンゾイルシャンプーを使用し、その後2%クロルヘキシジンコンディショナーをつける、局所的な処置を施しました。4週間、10mg/kg のケトコナゾールをSIDで経口投与しました。細菌性の膿皮症に対して、セファレキシン22 mg/kg TIDの経口投与が行われ、それは8週間続けられました。細菌性外耳炎に対しては、エンロフロキサシンとデキサメサゾンが混合されたイヤークリーナー(6mlエンロフロキサシンと12mgのデキサメサゾンと24mlのDermaPet Ear/Skin Cleanser)の局所療法が行われました。30日で、苔癬化は50%、掻痒症は最小限にまで改善され、足の毛は再び発毛しはじめました。ケトコナゾールの投薬量は、徐々に10 mg/kg 隔日に減少し2週間をかけて休止していきました。治療開始後、5ヶ月が経ちましたが、苔癬化、掻痒症、脱毛の再発は認められていません。
■放し飼いのフロリダピューマにおける皮膚糸状菌症
Rotstein DS et al; J Zoo Wildl Med 30[2]:281-4 1999 Jun; Dermatophyte infections in free-ranging Florida panthers (Felis concolor coryi).
3頭の放し飼いのフロリダピューマが臨床的に皮膚糸状菌症と診断されました。2頭はTrichophyton mentagrophytes 、1頭は Microsporum gypseumに感染していました。これらのうち2頭は若年の雄で、限局したものから、限局したものが融合したような皮膚糸状菌症と診断しまし、1頭はM. gypseum、もう1頭はT.mentagrophytesによるものでした。この若い雄達は、処置はされませんでしたが、臨床症状は6ヶ月以上かけて自然回復しました。3頭目のピューマは南フロリダから来た成熟雄で、T. mentagrophytesによる皮膚糸状菌症が全身に拡がっていました。そのピューマは最初、脱毛と擦過傷および潰瘍があり、頭部、両耳、頚部、後肢に多病巣性の膿皮症があり、腹部領域は苔癬化にまで進行し、二本の指の爪は失われていました。野外での45日間隔の局所療法では改善は認められませんでした。そのピューマは、皮膚糸状菌のさらなる進行と他の爪の喪失、他のピューマへの病気の蔓延を防ぐために、一カ所に捕獲して、集中的な経口療法を行う必要がありました。9.5mg/kgのイトラコナゾールを1日1回フードに混ぜて6週間与えました。処置後、爪の再生は認められましたが、脱毛の多病巣領域は残りました。2回の真菌培養で陰性結果が得られた後、野生に戻されました。皮膚糸状菌症の全身治療のために、絶滅の危機に瀕した放し飼いの動物を、その生息地から一時的に移動させることには、年齢や生殖能力、施設の保有、処置管理、将来的にうまく動物を再び群れに戻すことなどの要素を考慮する必要性があります。
今回、野生のピューマの皮膚糸状菌症の治療データは、マニアックだったかも知れませんが、野良猫を治療するときの参考になれば・・・と思いまして訳してみました。
●Dr.Satoの気になる文献
■犬で、エンロフロキサシンの生化学、血液学的副作用の調査
Tras B et al; J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 48[1]:59-63 2001 Feb; Investigation of biochemical and haematological side-effects of enrofloxacin in dogs.
今回の研究で、エンロフロキサシンの生化学、血液学、血液ガスパラメーターの影響を調査しました。検査要素の変化を、治療期間中モニターしました。エンロフロキサシンを14日間、健康犬10頭に投与しました(5mg/kg筋注、1日1回)。アシドーシス、一時的なAST、間接ビリルビン、ナトリウム、CO2分圧、平均赤血球容積レベルの増加と、無機リンレベル、イオン化カルシウム、カリウム、O2分圧、標準重炭酸塩の低下を認めました。この研究結果は、血液ガスパラメーターに認められたそれらは、薬物の長期使用を考慮すべきものであると示唆します。(Dr.Sato訳)
猫の網膜変性との関係が示唆されているエンロフロキサシンですが、犬でも2週間の連続接種で血液要素に変化を起こさせるようです。今まで、あまり気にせず注射していましたが、これからちょっと気にかけようと思いました。長期投与している動物の血液検査結果に異常値が出るかもしれませんね。どの程度出るのかな〜
●Q&A
●新製品情報
【ACC−β1000】
ACC+ヘテロ型β−D−グルカン(ヤマブシタケ)の1000mg粒剤で、アガリクス(100mg)、ヤマブシタケ(100mg)、サメ軟骨(300mg)、キチン・キトサン(290mg)、キチン・オリゴ糖(10mg)、麦芽糖水飴・乳糖(200mg)、セルロース・コーンスターチ
対応症例:悪性腫瘍、認知障害
投与量:1Tab/5kg/day、BW10kg以上は10kgとみなしてください
発売元:森健商
〒264-0012 千葉県千葉市若葉区坂月町221−37
TEL・FAX 043-235-0725
【ビクタスS注射液の内容変更】
・乳酸を従来品の半量以下に減量
浸透圧を下げ、注射時の腫脹、硬結、疼痛の緩和
・リドカインを含有しなくなりました
リドカインの薬理作用が発現しません
【マキシダーマジェル】
共立製薬 ジェルタイプのスキンケアローション
特徴
・中性化亜鉛
亜鉛は抗炎症・抗菌・創傷治癒などの作用を有する事が知られています。マキシダーマジェルは、特定のアミノ酸(タウリン、L-リジン)を結合させる事により、酸化亜鉛を中性のまま可溶化することに成功し、生物学的利用能を高めました。
・水溶性の亜鉛が皮膚に容易に浸透し、創傷によって失われる亜鉛成分を補給します。
・保湿性のジェルが皮膚をやさしく保護し、表皮の創傷、炎症、潰瘍またはすり傷の保護と刺激緩和に役立ちます。
・pH6.7〜7.0で、ペットの皮膚のpHに近いため、皮膚に刺激を与えません。
・併用する事でステロイドや抗菌剤の減量が期待できます。
・無色・無味・無臭。ペットが舐めても安全です。
成分
グルコン酸亜鉛、L-リジン、タウリン、グリセリン、カルボキシメチルセルロース、メチルパラベン、プロピルパラベン、脱イオン水
●セミナー情報
●一口まめ知識・・・知ってました?
Vet MailというHPで(http://www.vet.ne.jp/index.html)獣医師限定無料アドレスを入手できます。新規登録で必要事項を入力すると自分で決めたアドレスが作れます。そのアドレスにきたメールを今使っているサーバーに転送指定すれば、もしプロバイダーが変更になっても〜.vet.ne.jpのアドレス転送先を変えるだけでよいので、いちいちアドレスが変わったよというお知らせをしなくてすみます。
●まとめ
ウエスティーの皮膚病は、昔苦労した憶えがあります。今回の文献で、シャンプーとケトコナを組み合わせ、良い成績をあげていますね。このような症例は多いので、前回のマラセチアの文献の検査方を参考にして、ケトコナを使用するのも良いかもしれませんね。
★コンピューターがウイルスの脅威に曝されています。IE5.5やIE6などの最新バージョンをダウンロードしてセキュリティをあげたり、outlookの設定で、メールを自動的に開封済みにしないような設定にして、対抗しましょう。プロバイダーによっては、ウイルスチェックを事前にしてくれるオプションがありますので、それに申し込むのも1つの手ですね。1度自分のコンピューターが感染していないか、ウイルスチェックを実行し、感染していたならば、速やかに駆除してくださいね。
編集委員
編集長 Dr.Sato
副編集長 Dr.K & Dr.Massa & Dr.Shingo &Dr.Yoshi
HPアドレス−過去ログ:http://www.55dr.com
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