■日本の緑茶から分離したカテキンの経口投与は歯周病菌Porphyromonas gulaeの増殖を抑制し犬猫の歯周病により起こる歯肉炎や口臭を改善する
Oral treatment with catechin isolated from Japanese green tea significantly inhibits the growth of periodontal pathogen Porphyromonas gulae and ameliorates the gingivitis and halitosis caused by periodontal disease in cats and dogs
Int Immunopharmacol. 2024 Dec 17:146:113805.
doi: 10.1016/j.intimp.2024.113805. Online ahead of print.
Chiharu Ohira , Mao Kaneki , Daiki Shirao , Narumi Kurauchi , Tomoki Fukuyama
犬猫の90%が1歳で歯周病を発症すると言われている。Porphyromonas gulae (P. gulae)、Porphyromonas
gingivalis (P. gingivalis)を含む複数の細菌感染により歯周病が発症し、重度の歯肉炎、口臭、骨溶解が起こる。歯周病は不可逆的な疾患のため、獣医療においては予防歯科が妥当となっている。
この研究は、歯周病の犬と猫において、P. gulaeとP. gingivalisに対する殺菌効果、炎症の抑制、口臭の軽減に焦点を当てた緑茶から分離したカテキンの効果を調査した。
インビトロにおいて、カテキンは用量依存的にP. gulaeとP. gingivalisの生存能力を有意に抑制した。P. gulaeとP. gingivalisに関係するバイオフィルム形成も有意に抑制したが、その効果は殺菌効果というほど強くはなかった。P.
gulaeとP. gingivalisにより生じた硫化水素とメチルメルカプタンは、短期間のカテキンでも有意に減少した。P. gulaeにより誘発される炎症性サイトカイン産生とP-38およびJNKのリン酸化は用量依存的に抑制された。
1か月(30-35日)の0.01892%カテキンを含むウェットフードの給餌は、有意に口臭とP. gulae活性を改善したが、歯垢や歯肉炎に対する影響はなかった。
我々の所見は、カテキンの経口投与は、犬と猫の歯周病を予防できることを示す。(Sato訳)
■小型から中型の犬の120頭の破損した上顎第4前臼歯に対して3つの異なるシーラーによる根管治療の結果
Outcomes of root canal treatments with three different sealers for 120 fractured maxillary fourth premolar teeth in small-to medium-sized dogs
Front Vet Sci. 2024 May 9:11:1382645.
doi: 10.3389/fvets.2024.1382645. eCollection 2024.
Daehyun Kwon , Dae Sung Yoo , Seong Soo Kang , Kwangsik Jang , Se Eun Kim
イントロダクション:歯の破損は、犬猫の一般的な外傷性顎顔面傷害の1つである。機能的に重要な歯に起こる歯髄露出を伴う破損に対し、根管治療(RCT)は、抜歯前に選択される治療だと思われる効果的な治療オプションであると文献は示している。アメリカで最も一般的に報告される破損は犬歯であるが、小型及び中型の犬が多くいる韓国では上顎第4前臼歯の破損が一般的である。炎症が起こることなく歯の機能性を回復させるため、RCTは機械的および化学的に感染した根管から歯髄組織と細菌を除去し(クリーニングとシャーピング)、物質を満たすことで根管をふさぐ。ヒトで使用されるさまざまな方法、器具、材料は、獣医歯科の応用に修正されている。
方法:この研究は、シングルコーン法の単純応用で3つの異なるシーラー(シリコンベースシーラー、生体セラモックシーラー、水酸化カルシウムベースシーラー)を用い、120頭の小型及び中型の犬(25kg未満)において、上顎第4前臼歯のRCTの結果を解析した。
結果:上顎第4前臼歯のRCTの全体の成功率は90.83%で、8.33%は失敗のエビデンスはなく、0.83%は失敗だった。
議論:3つのシーラー間に有意差はなかった。さらに、既存の歯根尖部病変(PAL)が、RCTの成功率を低下させる因子として再確認された。また、我々の研究で各rootのファイルのworking
lengthとmaster apical fileを歯内治療獣医師のために新しい参照として解析した。(Sato訳)
■1頭の犬に見られたクロピドグレル投与後の歯の浸食
Dental erosion following clopidogrel administration in a dog: A case-based study
Vet Med Sci. 2024 Mar;10(2):e31384.
doi: 10.1002/vms3.1384.
Se Eun Kim
Free PMC article
10歳の去勢済みオスのチワワが、はちみつと混ぜて経口薬物療法を始めて数か月後に発生した片側性の歯の浸食を呈した。犬に投与した全ての経口薬剤でpH検査を実施し、エナメル質浸食の原因を調べた。薬剤の中で、唯一酸性の薬剤はクロピドグレル(pH2.65)だった。
本症例と同状況下で歯の表面に対するクロピドグレルの影響を評価するため、他の犬の2本の抜歯した歯をクロピドグレル-はちみつ混合または、はちみつのみに浸漬し、追加の予備研究を計画した。
クロピドグレル-はちみつで抜歯した歯の浸漬開始から3週間後、コントロールの歯と比べて電界放出走査型電子顕微鏡解析でより荒い表面を認め、エネルギー分散型エックス線分光法解析でCa/C比の減少を示した。
この症例において、クロピドグレルの歯の表面への長期暴露は、歯の浸食の原因かもしれない。(Sato訳)
■犬の歯周病に関係する臨床的パラメーターと細菌に対する電気技術歯ブラシ応用の効果
The Effects of Electrolytic Technology Toothbrush Application on the Clinical Parameters and Bacteria Associated with Periodontal Disease in Dogs
Animals (Basel). 2024 Oct 24;14(21):3067.
doi: 10.3390/ani14213067.
Nemanja Zdravković , Nemanja Stanisavljević , Milka Malešević , Goran Vukotić , Tatjana Stevanović , Ivan Bošnjak , Milan Ninković
この研究の目的は、犬の口腔衛生と歯周病に関係する一般的な細菌の存在に対し、電解及び非電解歯ブラシの効果を比較することだった。
犬の歯周病は世界的に一般的な問題である。歯周病の予防に歯磨き処置が勧められており、犬の口腔衛生診療において電解歯ブラシを使用する場合に追加の利点がある。
この8週間の研究に26頭の犬を登録し、治療とコントロールの2群に振り分けた。全ての犬で同じ歯ブラシを用いて毎日歯磨きを実施し、コントロール群は電源を外した。研究開始前と4および8週後に、麻酔下で口腔検査を行い、細菌分析のためのサンプリングも行った。この研究は、飼い主、獣医師、検査スタッフに対し盲検で行った。
治療群における平均歯肉指数(0.55から0.31)と歯石指数(0.55から0.38)の改善が記録された。コントロール群において、歯垢指数の最初の改善(0.97から0.53)後、8週目には1.21に有意に上昇した(p<0.05)。細菌の相対存在量は、治療群で検査した4種類全ての細菌で減少したが、コントロール群において、研究前と8週目と比較し、レベルが3.67log2に上昇した。両群で有害事象は記録されなかった。(Sato訳)
■耳下腺管拡張症の犬の臨床所見、外科的治療と結果:14症例(2010-2023)
Clinical findings, surgical treatment and outcome in dogs with parotid duct ectasia: 14 cases (2010-2023)
J Small Anim Pract. 2023 Nov 7.
doi: 10.1111/jsap.13685. Online ahead of print.
I Martinez , B Mielke , L Rutherford , M Cantatore , F Cinti , T Charlesworth , B de la Puerta , M Rossanese
目的:耳下腺管拡張症と診断された犬の臨床症状、診断所見、外科的治療と結果を述べる
素材と方法:2010年から2023年の間に6か所の小動物二次診療施設で耳下腺管拡張症と診断された犬の医療記録を、回顧的に再調査した。結果は飼い主あるいは紹介元獣医師に連絡を取ることで評価した。
結果:14頭の犬を含めた。片側性の顔面の腫脹が最も一般的な臨床症状だった。全ての犬のCT検査で、蛇行した液体に満たされた空洞状管状構造が、拡張した耳下腺管に一致していた。外科手術は、耳下腺管乳頭の造袋術、導管の外科的探査のみ、導管の外科的探査と耳下腺管造袋術、耳下腺摘出あるいは一括耳下腺管切除が含まれた。14頭中13頭の耳下腺管拡張の病因は確定しなかった。1症例において、導管から異物が回収された。フォローアップ期間(範囲21-2900日)中に臨床症状の再発は認められなかった。
臨床意義:耳下腺管拡張は、片側性、波動感のある無痛性の管状の腫脹がある犬で考慮すべきである。このケースシリーズで報告された全症例において、外科的治療の予後は良く、再発のエビデンスもなかった。(Sato訳)
■犬の歯石、歯垢、歯肉炎、口臭の低減に対する日々の蜂の巣形状のデンタルチューの効果
Effectiveness of a Daily Honeycomb-Shaped Dental Chew in Reducing Calculus, Plaque, Gingivitis and Malodor in Dogs
J Vet Dent. 2024 May 31:8987564241255043.
doi: 10.1177/08987564241255043. Online ahead of print.
Susan E Crowder , Mary Berg , Jan Bellows , Marjory Artzer , Scott MacGee , Loren Schultz
犬の歯周疾患は良く見られる。ペットに対する口腔衛生や口腔ケアへの飼い主のコンプライアンスは低い。標準治療は年1回の画像検査を伴う全身麻酔下での歯科予防と、その後の毎日のブラッシングを含むホームケアである。年1回の予防的歯科処置と歯周疾患を管理する維持期との間で、時間効率、費用効果が良く、管理が容易で、結果として口臭を引き起こす歯石、歯垢、歯肉炎を減らす方法が飼い主に提供されるべきである。
この研究の目的は、種々の犬種、頭蓋骨のタイプ、年齢、体重を含む飼い犬で、その普段の家庭環境において、硬化した歯石、歯垢、歯肉炎、口臭の軽減に対する蜂の巣形状のデンタルチューの効果を評価することだった。鎮静下で歯石、歯肉炎スコア、揮発性硫黄合成物の測定を実施し、毎日蜂の巣形状のデンタルチュートリーツを60日間連続で与えた後、全身麻酔下で評価した。
全体的に統計学的有意な比率軽減は、歯石(26.6%)、歯垢(14.2%)、口臭(46.71%)に見られた。歯肉炎スコアには統計学的有意な軽減(0.99%)を認めなかった。
連続60日間、この蜂の巣形状のデンタルチューを毎日使用すると、歯石、歯垢および関連する口臭を有意に減少させた。(Sato訳)
■ビーグル犬の歯垢、歯石、口臭低減に対するデンタルチューの効果
Effect of dental chew on reducing dental plaque, dental calculus and halitosis in beagle dogs
Res Vet Sci. 2024 May 13:174:105304.
doi: 10.1016/j.rvsc.2024.105304. Online ahead of print.
Lumin Wang , Xiang Liu , Yanhua Tang , Sisi Cai , Zhijie Zheng , Yuan Yuan , Xiaolu Zhang , Haili Tang , Xinyu Chen , Haichong Wu
歯周病は成犬の最も一般的な臨床疾患で、主に歯垢の蓄積で起こり、犬の口の健康をひどく危険にさらし、腎臓、心筋、肝臓問題を引き起こす症例もいる。
この研究の目的は、ビーグル犬において機械的および化学的特性を持つデンタルチュー(Cature Brushing Treats product)の臨床効果を調べることだった。
試験群の犬には、食後に1日2回のデンタルチューを与えた;コントロール群には処置をしなかった。嗜好を14日目と29日目に評価した。呼気および歯石における揮発性硫黄化合物(VOC)の濃度も29日目に評価した。
14日目の歯垢のインデックスに有意差がないことを結果は示した。一方で、29日目でコントロール群と比べ、試験群の歯垢の蓄積(37.63%)、歯石(37.61%)、VSC濃度(81.08%)は有意に低下していた。(Sato訳)
■犬の扁桃窩の異物の臨床症状、内視鏡所見、結果:7症例(2020-2023)
Clinical manifestations, endoscopic findings and outcomes of tonsillar fossa foreign bodies in dogs: seven cases (2020-2023)
J Small Anim Pract. 2024 Feb 8.
doi: 10.1111/jsap.13706. Online ahead of print.
G Boot , A Petitpre , A Lamoureux
目的:扁桃の異物の犬の臨床症状および結果は文献で述べられていない。このケースシリーズの目的は、犬の口蓋扁桃窩における異物の有無、臨床症状、内視鏡所見、結果を述べることだった。
素材と方法:二次診療施設で2020年から2023年の間に内視鏡で除去された扁桃窩異物のあった犬の医療記録を再検討した。完全な医療記録のある犬を含めた。
結果:7頭の犬を含めた。報告された全ての臨床症状の中で、全ての犬に咳払いが急に発生した。口蓋扁桃の拡大、扁桃窩からの突出が7頭中4頭に観察された。全ての犬で異物は内視鏡のガイダンス下で除去された;1頭を除き、全ての犬で植物性の異物が見つかった(6/7)。臨床症状の完全な解消は、フォローアップの情報が得られた5頭で報告された。
臨床的意義:犬の扁桃窩は珍しいが異物の可能性がある場所で、正常な口蓋扁桃の所見の犬もいるため、扁桃の肉眼的病変がなくても探査すべきである。急性の咳払いは、扁桃窩異物の疑いを持つべきである。予後は除去後良好と思われる。(Sato訳)
■犬の唾液腺腫と副腎皮質機能亢進症と長期グルココルチコイド投与との関係:回顧的症例-コントロール研究
Sialocele and Its Association with Hypercortisolism and Long-Term Glucocorticoid Treatment in Dogs: Retrospective Case-Control Study
Animals (Basel). 2023 Dec 28;14(1):120.
doi: 10.3390/ani14010120.
Jeong-Yeol Bae , Jung-Il Kim , Jin-Young Kim , Guk-Il Joung , Hong-Ju Lee , Jae-Beom Lee , Joong-Hyun Song
Free PMC article
唾液腺腫の犬は、副腎皮質機能亢進症の併発あるいは長期にグルココルチコイドが投与されていることが多い。しかし、この関連は調査されていない。
この回顧的にマッチさせた症例-コントロール研究で、犬の唾液腺腫と副腎皮質機能亢進症、長期グルココルチコイド投与との関係を調査した。
2018年1月1日から2022年12月31日の間の記録を回顧的に再調査した。唾液腺腫と診断された19頭の犬の記録で、副腎皮質機能亢進症と長期グルココルチコイド投与を調査した。各唾液腺腫の犬に対し、2つの年齢および犬種をマッチさせたコントロール(38頭)を、同じ併発疾患に対し調査した。ロジスティック回帰解析を使用した。副腎皮質機能亢進症の犬の唾液腺腫の確率は、副腎皮質機能亢進症のない犬の15.56倍だった(p=0.02;95%CI:1.54-156.79)。長期グルココルチコイド投与の犬(中央値8か月;範囲、5-13)の唾液腺腫の確率は、長期グルココルチコイド投与のない犬の7.78倍だった(p=0.03;95%CI:1.23-49.40)。唾液腺腫があることと、年齢、性別、体重に関係は見られなかった。
この結果は、唾液腺腫は犬の副腎皮質機能亢進症と長期グルココルチコイド投与に有意に関係したことを示す。ゆえに、副腎皮質機能亢進症あるいは長期グルココルチコイド投与の犬は、唾液腺腫の可能性を精査すべきである。加えて、唾液腺腫の犬は、副腎皮質機能亢進症の併発および長期グルココルチコイド暴露を確認すべきである。(Sato訳)
■非短頭犬種の犬の口蓋垂切除:27症例の回顧的研究
Staphylectomy in nonbrachycephalic dogs: A retrospective study of 27 cases
Can Vet J. 2023 Aug;64(8):765-772.
Cameron J Himel , Daniel S Linden , Janet A Grimes , Kelley M Thieman Mankin , Jason D Coggeshall , Whitney S Coggeshall , Brad M Matz
目的:非短頭犬種の犬の口蓋垂切除に関係する合併症と結果を報告する
動物:軟口蓋が伸長しており、口蓋垂切除を行った非短頭犬種の犬27頭
方法:回顧的研究
結果:上部気道の呼吸音増加(70.4%)、呼吸困難(44.4%)が一般的に呈している臨床症状だった。この研究集団で見つかった上部気道の併発している異常は、喉頭虚脱(25.9%)、喉頭麻痺(14.8%)が含まれた。この研究で使用された最も一般的な口蓋垂切除の方法は、口腔及び鼻腔粘膜の並置で縫合する鋭利な切除だった(66.7%)。この研究の犬の全体のマイナーな術後合併症率は33.3%で、多く見られたのは逆流/嘔吐(11.1%)と発咳(11.1%)だった。酸素補給や一時的気管切開を必要とした犬はいなかった。
結論:口蓋垂切除は非短頭犬種の犬において許容性は良く、合併症率は比較的低い。併発する気道の異常は、軟口蓋過長の非短頭犬種の犬の中で一般的で、短頭犬種の犬と同様だった。
臨床的関連:軟口蓋の過長は非短頭犬種の犬でも起こる可能性があることを臨床医は知っておくべきで、外科的修正は可能で、メジャーあるいは悲劇的な合併症はめったにない。(Sato訳)
■先天性硬口蓋欠損の修復および口蓋裂修復後の残存した口腔鼻瘻孔閉鎖のための隔膜の使用:7頭の犬(2019-2022)
Use of a barrier membrane to repair congenital hard palate defects and to close oronasal fistulae remaining after cleft palate repair: seven dogs (2019-2022)
J Am Vet Med Assoc. 2023 Oct 6;262(1):1-10.
doi: 10.2460/javma.23.07.0393. Print 2024 Jan 1.
Ana C Castejón-González, Alexander M Reiter
目的:先天性硬口蓋欠損および、過去の口蓋裂(CFP)修復後に残存する口腔鼻瘻孔(ONF)の閉鎖に対し、犬の隔膜の使用を述べる
動物:7頭の飼い犬
方法:硬口蓋欠損は、中央に寄せるフラップ(Von Langenbeck法)、あるいは有茎フラップ(2-フラップ口蓋形成術)と、粘膜骨膜弁の基礎をなす耳介の耳介軟骨自家組織、あるいは大腿筋膜自家組織で閉鎖した。
結果:全ての口蓋欠損はそれらのタイプとサイズおよび周囲組織の特徴から、裂開のリスクが高いと考えられた。隔膜は先天性硬口蓋欠損修復の5頭の犬と、過去のCFP修復後に残存するONFの閉鎖のための2頭の犬に使用した。全ての症例で臨床症状は解消した。完全な成功(すなわち、口蓋欠損の完全な閉鎖と臨床症状がない)は5頭(先天性硬口蓋欠損の4頭、過去のCFP修復後に残存するONFの1頭)で達成した。機能的成功(不完全閉鎖だが臨床症状はない)の1頭の遺残ONFは、手術前よりも小さくなった。
臨床的関連:粘膜骨膜弁の基礎をなす隔膜は、先天性硬口蓋欠損の修復および過去のCFP修復後に残存するONFの閉鎖を行う犬の代替法となるかもしれない。(Sato訳)
■歯周炎の犬のデンタルホームケアの遵守:処置後調査
Adherence to dental home care in dogs with periodontitis: a post-treatment survey
Acta Vet Scand. 2023 Dec 19;65(1):59.
doi: 10.1186/s13028-023-00718-6.
John Svärd , Karolina Brunius Enlund
Free PMC article
背景:歯周炎は犬で一般的な疾患で、歯のブラッシングの形式の毎日のデンタルホームケアは予防と治療において重要である。これにもかかわらず、多くの研究で歯磨きのアドバイスの遵守が低いことを明らかにしている。
この研究の目的は、歯周炎の犬の中でデンタルホームケアのコンプライアンスを評価することと、日常的なブラッシングに影響する因子を理解することだった。
スウェーデン農業大学、大学動物病院においてデンタルクリーニングと歯磨きの指示を受け、歯周炎と診断されている63頭の犬の飼い主にアンケートをメールした。長鎖は電話調査で補足し、57%の応答率だった。
結果:この研究は、歯磨きに対する犬の飼い主のルーティーン、経験、態度、モチベーションを示す。42%は彼らの犬の歯を毎日磨いていたが、その他の人は頻度が少ないか、全くしていなかった。非協力的な犬やルーティーンの確率が難しいのような、報告された困難なことが、あまりブラッシングをしないことを説明するのかもしれない。
結論:歯周炎の犬の飼い主は、一般的な犬の槐西集団よりもデンタルケア推奨に従う傾向にあることを研究は示唆するが、その犬の半数以上は予防的ケアが不十分であることも現している。歯周炎の有病率が高いことで、歯磨きの頻度が低いことに向けた情報源に対する必要性がある。飼い主のニーズの理解は、ルーティーンのような毎日のブラッシングの確立の助けとなる可能性があり、犬の口腔ヘルスと全体的な幸福を改善する。(Sato訳)
■米国の一次診療動物病院において実施された犬と猫の歯科処置における抗菌剤使用
Antimicrobial use practices in canine and feline dental procedures performed in primary care veterinary practices in the United States
PLoS One. 2023 Dec 8;18(12):e0295070.
doi: 10.1371/journal.pone.0295070. eCollection 2023.
J Scott Weese , Ian Battersby , JoAnn Morrison , Nathaniel Spofford , Maria Soltero-Rivera
Free PMC article
この研究は、米国における動物病院で歯科処置を受けた犬と猫の抗菌剤の利用を回顧的に調査した。
2020年に合計818150頭の動物(犬713901処置、猫104249処置)に、全身麻酔下で歯科処置を行った。それらには、デンタル予防と抜歯が含まれた。動物の個体統計データ、抗菌剤治療、治療期間、歯周病スコア、抜歯を行ったかどうか、抜歯した本数を記録した。
我々の結果は、犬の116723/713901(16.4%)処置、猫の14264/104249(14%)処置に局所あるいは全身性抗菌剤を使用していることを示した。年齢、体重、1本以上の抜歯、歯周病(全てのステージ)の診断は、一変量解析(全てP<0.001)および多変量解析を使用して、抗菌剤投与の確率増加に関係した。
クリンダマイシン、アモキシシリンクラブラン酸、アモキシシリンは、犬と猫に使用された一般的な経口抗菌剤だった。最も優先度の高い臨床的に重要な抗菌剤(HPCIA)として分類された薬剤は、犬の30960/116723(26.5%)頭、猫の7469/14264(52%)に投与されていた。
得られた結果は、犬と猫の患者のケアを最適にするための処置のインフォームや、歯科処置中の抗菌剤の慎重な使用を促進することができる。(Sato訳)
■抗菌剤療法を使用しない口腔外科手術を行った13頭の犬の菌血症の存在
The Presence of Bacteremia in 13 Dogs Undergoing Oral Surgery Without the Use of Antibiotic Therapy
J Vet Dent. 2023 Nov 23:8987564231207208.
doi: 10.1177/08987564231207208. Online ahead of print.
Melissa Blazevich , Chanda Miles
この研究の目的は、健康な犬において、デンタルスケーリング、ルートプレーニング(SRP)、抜歯から一過性菌血症を起こすのかどうか、その細菌は口腔フローラかどうか、産生された菌血症の量は、術前-、術中-、術後抗菌剤療法を正当化するのかどうかを評価した。
1本以上の歯の抜歯を必要とする慢性歯周病の健康な犬13頭から血液培養を入手した。計画された処置の前2週間および術中-あるいは術後に抗菌剤療法を受けていない犬を含めた。菌血症の有無および菌血症のクリアランスが処置後に起こるのかどうか判定するため、血液採取を特定の時間経過で行った。
この研究で、歯科処置を通して異なる時間経過で、一過性の菌血症が発症することが分かった。最終のサンプル収集の時、いずれの血液培養にも明らかな細菌増殖はなかった。血液培養の結果は、時間経過のいずれかの1つで、13頭中4頭のみ細菌増殖のエビデンスがあった;しかし、最終の採取で、細菌増殖はなく、全身性抗菌剤療法の使用をしなくても一過性の菌血症は清浄化されていたことを示唆した。
この研究は、他の健康な犬でSRPおよび抜歯から一過性菌血症が産生されるというエピソードのある重度歯周病に対し、全身性抗菌剤の使用は正当化されないと示唆する。(Sato訳)
■犬の急性口咽頭スティック傷害の内視鏡的治療:46症例(2010-2020)
Endoscopic treatment of acute oropharyngeal stick injuries in dogs: 46 cases (2010-2020)
J Small Anim Pract. 2023 Jun 21.
doi: 10.1111/jsap.13642. Online ahead of print.
A Kilduff-Taylor , S J Baines
目的:イギリスの紹介センターで、鋼製内視鏡で治療した急性口咽頭スティック傷害の犬の長期結果を再調査する
素材と方法:2010年から2020年の間に治療した犬の回顧的解析と紹介獣医外科医と飼い主に対するフォローアップ。医療記録の検索を実施し、シグナルメント、臨床症状、治療、長期結果に関するデータを記録した。
結果:急性口咽頭スティック傷害の犬66頭を確認し、それらのうち46頭(70.0%)は、傷の内視鏡検査を行っていた。犬は種々の犬種、年齢(中央値=3歳;範囲0.6-11歳)、体重(中央値=20.4kg;範囲7.7-38.4kg)で、58.7%の犬はオスだった。傷害から紹介までの時間の中央値は、1日(範囲2時間-7日)だった。
犬に麻酔をかけ、傷害路を、重力で生理食塩水注入を用いる14.5フレンチ外套に対応する0度と30度前方斜視型、2.7mm径、18cm長鋼製内視鏡を用いて探索した。掴むことができた全ての異物は、鉗子で除去した。傷害路は生理食塩水でフラッシュし、全ての眼に見える異物の除去の確認のために再点検した。長期フォローアップができた40頭のうち、38頭(95.0%)に大きな長期合併症はなかった。残りの2頭は、内視鏡検査後に頚部膿瘍を発症し、そのうち1頭は再度内視鏡検査後に解消し、もう1頭は開放手術後に解消した。
臨床意義:鋼製内視鏡で治療した急性口咽頭スティック傷害の犬の長期フォローアップは、95.0%の症例で良好な結果を示した。(Sato訳)
■シクロスポリンとメトロニダゾールを用いた犬の慢性潰瘍性口内炎の薬剤治療
Medical Management of Canine Chronic Ulcerative Stomatitis Using Cyclosporine and Metronidazole
J Vet Dent. 2023 Jan 17;8987564221148755.
doi: 10.1177/08987564221148755. Online ahead of print.
Kimberly R Ford , Jamie G Anderson , Barbara L Stapleton , Brian G Murphy , T K Santosh Kumar , Todd Archer , Andrew J Mackin , Robert W Wills
犬の慢性潰瘍性口内炎(CCUS)は、自然に発生し、痛みが強く、口腔を衰弱させる状況になることも多く、免疫介在性の要素も疑われる。薬剤治療の反応は一般的に悪いため、より効果的な薬剤治療の確認が必要である。
前向き臨床試験を、CCUSの管理においてシクロスポリンとメトロニダゾールの併用の効果を評価するために計画した。シクロスポリンとメトロニダゾールは、CCUSに関係する臨床症状を効果的に最小にするという仮説だった。
CCUSに一致するバイオプシーで確認した診断のある飼い犬10頭に、シクロスポリン(5mg/kg)を1週間、続いてメトロニダゾール(15-20mg/kg)を追加し、両方を1日1回経口投与した。シクロスポリンの投与間隔は、次第に延長した。犬を6か月間観察し、32点犬潰瘍性口内炎疾患活動性指数(CUSDAI)を用いて評価した。規則的なシクロスポリン治療的薬剤モニタリングも、全血シクロスポリン濃度とT細胞性IL-2発現の薬力学評価により行った。
結果、シクロスポリンとメトロニダゾールの併用は、CCUSの臨床症状を最小に、CUSDAIスコアを減少させることに効果的だと証明した。血液シクロスポリン濃度やT細胞性IL-2も、臨床症状の改善やCUSだいスコアの改善を予測しなかったが、血液薬剤濃度とT細胞性IL-2の抑制との相関があった。
臨床症状とCUSDAIスコアの評価は、治療の反応を評価する最も効果的な方法と思われ、治療的薬剤濃度のモニタリングは、規則的に指示されると思われない。(Sato訳)
■16頭の犬の歯肉のサーモグラフィック検査
Thermographic Examination of the Gingiva of 16 Dogs
J Vet Dent. 2022 Aug 2;8987564221117738.
doi: 10.1177/08987564221117738. Online ahead of print.
Kürs Ad Yiğitarslan , Candemir Özcan , Bekir Cetintav
歯肉炎は犬の一般的な歯周病で、歯肉の炎症を呼ぶ。歯肉指数(GI)、乳頭出血指数(PBI)、プラーク指数(PI)は、ヒトの観察を基にした歯肉の健康状態を示す口腔指数である。炎症による熱の変化は歯肉炎で予想される。獣医学で広く普及する診断ツールのサーモグラフ画像検査は、動物の体のある領域で異常な体表温度の確認に使用できる。
この研究では、16頭の犬の458本の歯から、口腔検査結果とサーモグラフィック画像を入手した。
第一に、犬の歯肉疾患を診断するための熱画像処置を定義した。第二に、各口腔指数に対し組織の参照表面温度を判定した。第三に各指数のレベル間の統計学的に有意な熱の差を比較した。
統計分析により、いくつかの指数レベルにおいて有意な熱の差があり、歯肉炎の熱の検査においてプラークの有無は重要な病因ファクターであることを示した。
この研究は、歯肉炎の犬の口腔組織において、サーモグラフィック画像が熱の変化の判定に使用できることを示した。(Sato訳)
■従来のボン・ランゲンベック法の修正法を使用した犬の口蓋裂の外科的閉鎖:12症例(2015-2022)
Surgical closure of cleft palate defects in dogs using a modification of the traditional von Langenbeck technique: 12 cases (2015-2022)
J Am Vet Med Assoc. 2023 Feb 2;1-10.
doi: 10.2460/javma.22.09.0421. Online ahead of print.
Michael M Pavletic
目的:犬の両側双茎皮粘膜骨膜フラップを利用した修正ボン・ランゲンベック法の有効な使用について、著者の外科的ガイドラインを述べる
動物:硬口蓋と軟口蓋の口蓋裂のある12頭の飼い犬
方法:12頭の口蓋裂の犬は、2015年5月20日から2022年3月24日までにエンジェルアニマルメディカルセンターを受診した。犬の年齢は5か月から3歳だった。この前向き研究において全て12頭は、オリジナルのボン・ランゲンベック法の修正法を使用して硬口蓋裂を閉鎖した。
結果:口蓋裂(硬および軟)の閉鎖は、全て12頭で1回の処置により成功した。小さな残存開口が各犬の切歯乳頭レベルでみつかった;これはこの報告において臨床的結果ではなかった。
臨床関連:ボン・ランゲンベック法(報告された単純な閉鎖修正を利用した)は、狭い欠損や広い欠損の閉鎖に効果的だった。成功させるには、各フラップが完全に遊離させることで、口蓋裂を覆うようにテンションフリーで進めることが容易である。垂直マットレス縫合はフラップ縁を裏返し、適切な治癒のため、直接コラーゲン表面の接触を可能にする。口蓋のしわでの縫合は、縫合の切断リスクを低下させるために組織の引っ掛かりを増加させる。垂直マットレス縫合間に設置する細かな断続縫合は、切開縁の適切なアライメントを維持する。著者は口蓋裂の閉鎖前、最低5か月まで待ち、ドナー領域の成熟を可能にし、より効果的な縫合の保持能力を改善する。(Sato訳)
■若い猫と犬の歯肉炎と口内スピロヘータの関係
The association between gingivitis and oral spirochetes in young cats and dogs
PLoS One. 2023 Jan 27;18(1):e0281126.
doi: 10.1371/journal.pone.0281126. eCollection 2023.
Seiya Yamaki , Masato Tachibana , Hisae Hachimura , Masao Ogawa , Shinya Kanegae , Hirokazu Amimoto , Takashi Shimizu , Kenta Watanabe , Masahisa Watarai , Akiteru Amimoto
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若い犬で歯肉炎は良く起こるが、歯周病の早期ステージでスピロヘータがたびたび発見される。
この研究では、若い猫と犬における歯肉炎と口内スピロヘータの関係を調べた。
歯肉炎の程度は、1歳以下の68頭の猫と31頭の犬で評価し、プラークは各裂肉歯から収集した。プラークサンプル中のスピロヘータとPorphyromonas gulaeを検出するため、特定プライマーを用いPCRで16S rRNA遺伝子を増幅した。全てのデータは、Fisher's exact probability testとオッズ比(OR)と95%信頼区間(95%CI)で解析した。
歯肉炎の有病率は、若い犬(45.2%)よりも若い猫(92.6%)で有意に高かった。歯肉炎の症例においてPCRによるスピロヘータの陽性率は、若い猫で85.4%、若い犬で15.4%だった。P.gulaeの陽性率は、若い猫で66.7%、若い犬で15.4%だった。2つの結果は若い犬よりも若い猫で有意に高かった。
若い猫においてスピロヘータは歯肉炎と有意に関係した(OR=7.95;95%CI=1.17、53.83;P<0.05)が、P.gulaeはそうではなかった(OR=2.44;95%CI=0.38、15.66;P=0.23)。それらの結果は、スピロヘータは猫の歯周病の早期ステージに関係するかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■1頭の犬の口腔鼻腔瘻におけるトラフェルミンの効果の肉眼および組織学的評価
Visual and histological evaluation of the effects of trafermin in a dog oronasal fistula model
J Vet Med Sci. 2021 Nov 22.
doi: 10.1292/jvms.21-0393. Online ahead of print.
Kazuhiro Watanabe , Syun Tahara , Hiroyuki Koyama , Mamu Shimizu , Mifumi Kawabe , Shingo Miyawaki
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犬の口腔鼻腔瘻を治療する標準方法は、その孔をふさぐために抜歯が必要である;ゆえに、その問題はその歯を喪失することだろう。
この研究において、抜歯をしない治療で、トラフェルミンの歯周組織再生効果を調査するため、口腔鼻腔瘻の4頭の犬モデルにトラフェルミンを適用した。孔は各犬の上顎犬歯の口蓋側に沿って作成した。その孔の1つをトラフェルミンで満たし、対側はコントロールとして放置した。
4週間後、トラフェルミン側で非石灰化の歯周組織量の有意な減少を示した。また、口腔鼻腔瘻の閉鎖は、全て4頭のトラフェルミン側において8週目に肉眼および組織学的に確認された。(Sato訳)
■積極的デンタルホームケアに対する用手、超音波歯ブラシあるいはナイロン、マイクロファイバーの布を用いた犬の処置による口腔衛生および順応の改善
Improved Oral Health and Adaptation to Treatment in Dogs Using Manual or Ultrasonic Toothbrush or Textile of Nylon or Microfiber for Active Dental Home Care
Animals (Basel). 2021 Aug 24;11(9):2481.
doi: 10.3390/ani11092481.
Lena Olsén , Anna Brissman , Sara Wiman , Fanny Eriksson , Camilla Kaj , Karolina Brunius Enlund
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口腔衛生の悪化は、疼痛を引き起こしたり、健康を害したりする犬の一般的な問題の1つである。良好な口腔衛生を維持し、歯周病を予防するゴールドスタンダードは、日々の歯磨きである。しかし、多くの犬の飼い主はそれが難しいことが分かり、そして犬は嫌がることが多い。
利用できるいくつかの異なるツールがあり、この個体内研究において、4つの異なる積極的デンタルホームケア処置オプションを研究した:用手および超音波歯ブラシ、ナイロン手袋、マイクロファイバー指布。
ビーグル犬において、歯肉炎、歯垢、歯石に対するその処置の効果を評価した。各犬に1日1回、歯の頬側に対し2つの処置を行った(左右の歯に対し2種類の歯ブラシ(N=10)、あるいは2種類の布(N=11)
のどちらか)。犬の歯は、評価者にわからないように追加の同様の犬(N=7)を加えて、5週間の処置期間の前後に評価した。また、この研究で、恐怖、不安、ストレス(FAS)プロトコールを用い、処置中の犬のストレスレベルを評価した。
全ての4つの処置は、歯肉炎と歯垢を減らし、犬の口腔衛生を改善した。さらに、歯石の量が減少した個体もいた。デンタルケアに対し、時間と共に犬は順応した。この情報は、彼らの犬の歯を磨く飼い主を励ますのに使用できる。(Sato訳)
■唾液腺腫瘤の犬における下顎および舌下唾液腺切除に対する腹側および側方アプローチの比較
Complications between ventral and lateral approach for mandibular and sublingual sialoadenectomy in dogs with sialocele
Vet Surg. 2021 Feb 27.
doi: 10.1111/vsu.13601. Online ahead of print.
Filippo Cinti , Matteo Rossanese , Paolo Buracco , Guido Pisani , Rosario Vallefuoco , Federico Massari , Vincenzo Montinaro , Diego Rossetti , Matteo Gobbetti , Matteo Cantatore
目的:唾液腺腫に側方(LAT)あるいは腹側傍正中(VPM)アプローチで下顎および舌下唾液腺切除を行った犬の合併症を比較する
研究計画:回顧的多施設研究
動物:下顎および舌下唾液腺腫のある犬(140)
方法:2004年から2020年までにLATあるいはVPMアプローチで、下顎および舌下唾液腺切除を行った犬の医療記録を再検討した。臨床および病理組織学所見はグループ間の比較のために解析した。
結果:70頭の犬を各群に含めた。多く見られた犬種は雑種犬(26%)で、オス犬(99/140(71%)、未不妊/不妊)が多かった。VPMアプローチ群の犬は、二腹筋トンネル形成を行い、ドレインあるいはバンデージの設置する確率が高かった。LATアプローチ群の犬はより重く、炎症性偽膜の切除を行う確率が高かった。
群間の合併症率に有意差は見つからなかった(LAT(20%)、VPM(31%)、P=.116)。再発はLATアプローチ後により多かった(5/70
vs 0/70;P=.029)が、手術創関連の合併症はVPMアプローチ後に多かった(20/70 vs 9/70;P=.018)。手術時間の延長は再発リスク増加と関係し、他の変数で合併症率に影響するものはなかった。
結論:下顎および舌下唾液腺切除に対して、腹側傍正中アプローチは、LATアプローチよりも再発のリスクは少なかったが、手術創関連の合併症のリスクは高かった。
臨床意義:下顎および舌下唾液腺切除に対する腹側傍正中アプローチは、唾液腺腫の犬における再発の低さで優先されるかもしれないが、手術創関連の合併症は一般的である。(Sato訳)
■種々の疾患の犬の唾液および血清のC-反応性蛋白濃度の比較分析
Comparative Analysis of C-Reactive Protein Levels in the Saliva and Serum of Dogs With Various Diseases
Animals (Basel). 2020 Jun 17;10(6):E1042.
doi: 10.3390/ani10061042.
Yoo-Ra Cho , Ye-In Oh , Gun-Ho Song , Young Jun Kim , Kyoung-Won Seo
この研究は、C-反応性蛋白(CRP)濃度を測定することで、病気の犬の炎症および非炎症状態の違いの特徴を調べるために実施した。また、血清と唾液のCRP濃度に関連があるかどうかも調査した。
32頭の飼育犬のCRP濃度を測定し、その後、血清CRP濃度をもとに炎症および非炎症群に分類した。
唾液のCRP濃度は、非炎症群よりも炎症群でより高かった(p<0.05)。さらに、唾液と血清CRP濃度との間に正の相関があった(R=0.866、p<0.001)。
それらのデータは犬の唾液中CRP測定が、効果的で非侵襲的に炎症状態を検出できることを示唆する。(Sato訳)
■179頭の犬の唾液腺疾患の回顧的研究(2010-2018)
A retrospective study of salivary gland diseases in 179 dogs (2010-2018)
J Vet Diagn Invest. 2020 Jul;32(4):604-610.
doi: 10.1177/1040638720932169.
Danielle E Lieske , Daniel R Rissi
唾液腺疾患はヒトでよく特徴づけられているが、犬での報告はあまりない。ここでは、2010年から2018年までにAthens Veterinary
Diagnostic Laboratoryに提出された179頭の犬の唾液腺標本の臨床および病理学的特徴を述べる。
罹患犬の平均年齢は8.5歳;性別あるいは犬種素因は見られなかった。標本提出の主な理由は、局所腫脹だった(107症例;59.7%)。口腔外(メジャー)唾液腺は125症例(69.8%)で、口腔(マイナー)唾液腺は43症例(24%)で関係した。11症例(6.1%)で病変の位置(口腔外あるいは口腔)は特定できなかった。
診断は、非特異的唾液腺炎(89症例;49.7%)、正常な唾液腺(42症例;23.4%)、腫瘍(36症例;20.1%)、唾液腺脂肪腫症(7症例;3.9%)、壊死性唾液腺化生(4症例;2.2%)、外傷性出血(1症例;0.5%)が含まれた。
唾液腺炎(63症例)、腫瘍(23症例)、脂肪腫症(5症例)の多くの症例、壊死性唾液腺化生の全症例、外傷性出血の症例は口腔外の唾液腺が罹患していた。多くの腫瘍(32症例、腫瘍の88.8%)は上皮性の悪性で、続いて円形細胞腫瘍(2症例;5.5%)、癌肉腫(1症例;2.7%)、組織発生が判定できない腫瘍(1症例;2.7%)だった。(Sato訳)
■歯石を取るための噛むおやつとして使用した圧力鍋で処理した牛の骨により起こるビーグルの歯の損傷の評価
Evaluation of teeth injuries in Beagle dogs caused by autoclaved beef bones used as a chewing item to remove dental calculus.
PLoS One. 2020 Feb 13;15(2):e0228146. doi: 10.1371/journal.pone.0228146. eCollection 2020.
Pinto CFD, Lehr W, Pignone VN, Chain CP, Trevizan L.
歯石(DC)は家庭犬においてよく見られる口腔の問題である。噛むおやつは歯の表面からDCを取るのに使用される;また、口腔衛生や動物の福祉の助けとなる。生の牛の骨を噛むことは手短に成犬のDCを減らすことができるが、口腔病変の原因となるために人気がない。
この研究は、犬の歯根、エナメル、歯肉に対し、骨を噛むことの影響を評価した。
完全任意配列ブロック法で12頭のビーグル成犬を無作為に2処置群に振り分けた:皮質骨(CB)あるいは海綿骨(SB)。口腔内エックス線写真を0日目と14日目に撮影し、歯石の評価は0、3、6、9、12、14日目にキャプチャーした画像を用いて実施した;統合プログラムを歯石でおおわれている面積と歯全体の面積の比率の測定に使用した。
与えてから3日以内に両歯列の第1及び第2前臼歯と大臼歯から完全にDCは除去され、それらの歯は噛むことに使用される頻度が高いことが示された(P<0.10)。骨はDC除去に効果が高く、歯肉の炎症も減少した。骨の硬さにかかわらず、病変あるいは歯根およびエナメルの破損はなく、骨を食べたことによる食道あるいは腸閉塞もなかった。しかし、SBではいくらかの歯肉病変(n=4)および歯への骨の残存(n=2)が見られた。歯肉病変は毎日および新しい骨を13日間連続して与えたためだった。
特定の骨の部分はほぼ90%の歯石を手短に除去できるため、家庭での後腔ケアプログラムに用いるべきで、歯周クリーニング処置の間隔を広げることが可能である。長期に骨を与えた時の評価と歯および歯周組織に対する評価を行う長期研究が必要である。(Sato訳)
■犬の歯周病と全身疾患との関連
Relation between periodontal disease and systemic diseases in dogs.
Res Vet Sci. 2019 Jun 12;125:136-140. doi: 10.1016/j.rvsc.2019.06.007. [Epub ahead of print]
Pereira Dos Santos JD, Cunha E, Nunes T, Tavares L, Oliveira M.
犬の歯周病(PD)は頻度が高く、広範囲に広がる炎症疾患の1つである。PDの病原の始まりは、歯の細菌バイオフィルムと動物免疫-炎症反応の組み合わせで促される。局所の影響に加え、全身は遠位の組織や器官に影響を及ぼす歯垢関連の菌血症により二次的に起こり得る。
この回顧的研究の主要目的は、犬136頭の群で、PDと全身結果(腎臓、肝臓、心臓)の関連にアクセスし、評価することだった。
全ての動物の臨床記録で、一般および全身情報を評価し、さらに一般線状モデルとオッズ比で解析した。動物をPD群とコントロール群(PDではない犬)に編成した。この集団で加齢はPD確立のリスクファクター(OR=1.04、P<0.01)であると証明された。小型犬種(<10kg)はPD群で最も多く、この疾患の影響をより受けやすかった。一方で、PD進行において性別あるいは不妊状態の影響は観察されなかった。全身疾患に関して、PDと心疾患の間に統計学的有意な関連(P=0.026)が得られた。
結果は、PDが全身結果と関連する動物の「健康」に対する有意に悪い影響を及ぼす可能性があり、それらの動物の罹病率や死亡率を増加させるかもしれないことを示す。PD予防と、この疾患とその管理に関してオーナーの情報に焦点を当てることは、積極的なPDコントロールプログラムに対する重要なポイントである。(Sato訳)
■ヨークシャーテリアの歯周病の長期評価
A longitudinal assessment of periodontal disease in Yorkshire terriers.
BMC Vet Res. 2019 Jun 21;15(1):207. doi: 10.1186/s12917-019-1923-8.
Wallis C, Pesci I, Colyer A, Milella L, Southerden P, Holcombe LJ, Desforges N.
背景:歯周病は、犬の一般的な口腔疾患で、全身疾患に関係している。この研究の目的は、歯ブラシで歯磨きをしている、していないヨークシャーテリアの集団で、歯周病の広がりを調べることだった。各犬を37-78週齢の間に2-5回、全身麻酔下で評価した。歯肉炎と歯周炎の広がりは、口の各歯に対し確認した。歯肉炎の測定は、プローブ使用で出血までの時間を使用し、歯周炎は臨床的アタッチメントロス(プローブの深さ、歯肉後退、分岐露出)の広がりを基にした。
結果:37週齢で評価した49頭中、98%は少なくとも1つの歯あるいは面が早期歯周炎だった(PD2、<25%アタッチメントロス)。口の歯周炎の歯の平均比率は29.6%、95%信頼区間(23.6、36.4)だった。37週齢に比べ、78週齢の早期歯周炎のオッズは2.74(2.23、3.37)倍高かった。37週齢、78週齢ともに、全ての他の歯のタイプと比べ、犬歯の歯周炎の確率は有意に高かった(P<0.001)。また、同タイムポイントで、臼歯や小臼歯と比べ、切歯の歯周炎の確率は有意に高かった(P<0.001)。
結論:ヨークシャーテリアのような歯周炎が発症しやすい犬種は、若い時から歯周病の予防に対する効果的な処置が必要である。予防的ホームケアを取組むなら歯磨きが最も効果的な方法の1つであるが、この研究でわかったように常に現実的というわけではない。ゆえに、犬やオーナーに実践的な歯垢の蓄積を遅らせる、あるいは防ぐ他の方法が必要である。(Sato訳)
■前向き無作為化盲検臨床試験により犬の3つのデンタルプラークコントロールの効果を評価する
Prospective randomised blinded clinical trial assessing effectiveness of three dental plaque control methods in dogs.
J Small Anim Pract. April 2019;60(4):212-217.
DOI: 10.1111/jsap.12964
R M Allan , V J Adams , N W Johnston
目的:一般的な臨床現場で、歯のプラークの蓄積をコントロールするため、3つの一般的に使用する方法の有効性を評価する
素材と方法:盲検で、募集時に無作為化した犬の一群に、通常のスケーリングとポリッシング処置を行った後、3つの方法の1つを開始した:歯ブラシと動物用歯磨き粉を使用した1日1回の歯磨き、1日1回歯科衛生用ガムを1つ与える、あるいは歯科用療法食を与える。何も知らされていない人が、6週の研究期間終了時に、プラークの蓄積(被覆度および厚さ)にスコアを付けた。
結果:合計22頭の犬が研究を終え、同時にプラークコントロールの3つの方法の有効性を評価した。毎日のデンタルガムあるいは歯科用食の使用と比べ、プラーク蓄積のコントロールにおいて毎日の歯磨きは3倍以上の有効性を示した。餌とデンタルガムのデンタルプラークスコアは、互いに有意差はなく、歯磨き群と比較してそれら2群の歯のスコアにより大きな変動が見られた。
臨床意義:この研究計画は、きれいな歯のモデルを使用し、6週間のプラークの蓄積を評価する効果的な方法を示している。次にこの研究は毎日の歯磨きが、犬の口の健康を最適にし、プラークの蓄積を減らす最も効果的な方法であると示すエビデンスを加える。(Sato訳)
■53頭のラブラドールレトリバーにおける歯周部の健康状態の長期的評価
A longitudinal assessment of periodontal health status in 53 Labrador retrievers.
J Small Anim Pract. September 2018;59(9):560-569.
DOI: 10.1111/jsap.12870
C Wallis , K V Patel , M Marshall , R Staunton , L Milella , S Harris , L J Holcombe
目的:ラブラドールレトリバーにおける歯肉炎と歯周炎の進行の発生とその割合を判定する
素材と方法:1.1-5.9歳の53頭の歯周の状態を2年間、6か月ごとに評価した。全身麻酔下で、各歯の歯肉炎全周に関し歯肉炎と歯周炎の拡がりを測定した。
結果:最初の評価で全ての犬に歯肉炎があった。歯側面の多く(64.2%)は非常に軽度の歯肉炎だった。全ての歯のタイプの口蓋/舌面は、プローブ使用で出血する確率が高かった:それらの面の63.0%は軽度あるいは中程度の歯肉炎だった。2年かけて56.6%の犬は歯周炎を発症し、早くも1.9歳で罹患した。歯周炎の歯の比率と年齢には有意に正の相関があった。124本の歯(5.7%)が歯周炎を発症し、そのうち88本(71.0%)は切歯だった。鑷子の口蓋/舌面は最初に発症した(切歯面の2.8%)。
臨床的意義:歯周炎は、起きている犬で見ることが難しい領域に発症し、病気の検出や治療には定期的な鎮静、あるいは麻酔が必要であることを意味する。(Sato訳)
■1頭の犬の上顎第四前臼歯の軟部組織被覆を増すための半月状歯肉フラップ歯冠側移動
Semilunar Coronally Advanced Periodontal Flap to Increase Soft Tissue Coverage of a Maxillary Fourth Premolar in a Dog.
Language: English
J Vet Dent. June 2017;34(2):100-105.
Allen Skinner , Brook Niemiec
7歳、31.3kg避妊済みメスのゴールデンレトリバーが、右の第四前臼歯のMiller Class Iの歯肉退縮のために来院した。
この歯に半月状歯肉フラップ歯冠側移動を実施し、歯の約3mmの軟部組織の被覆の増加を作成した。
縫合が必要ない、従来の歯肉伸展フラップ以上の利点を持つと思われるこの方法は、より迅速に実施でき、フラップの側方からの血液供給を維持し、手術部位の裂開のリスクを減らす可能性が高い。
この症例は、半月状歯肉フラップ歯冠側移動がMiller Class Iの歯肉退縮を治療するための適した方法であることを示す。(Sato訳)
■通常の犬の歯科処置中の麻酔合併症に対する心疾患の影響
The Effect of Heart Disease on Anesthetic Complications During Routine Dental Procedures in Dogs.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2017 Jul/Aug;53(4):206-213.
Jennifer E Carter , Alison A Motsinger-Reif , William V Krug , Bruce W Keene
全身麻酔の一般的な理由として歯科処置があり、獣医師の中で心疾患は麻酔の合併症の発生を増加させるという懸念が広がっている。心疾患の犬の麻酔に関する不安は、専門センターに紹介する一般的な原因である。
通常の歯科処置に対する麻酔を行う犬で、麻酔合併症に対する心疾患の潜在的影響を調べるため、専門センターへの紹介を考えるに十分な程度の心疾患を持つ犬100頭(症例)と、同じ教育病院で同様の処置を行う心疾患の無い犬100頭(コントロール)の麻酔合併症を比較した。
麻酔合併症の発生を評価するため医療記録を再調査した。どちらの群でも死亡した犬はおらず、評価した麻酔合併症の全てに群間の有意差はなかったが、心疾患群の犬は有意に高齢で、アメリカ麻酔学会スコアがより高かった。
コントロールと比較して心疾患群においてより頻繁にミダゾラムとエトミデートが使用され、α-2作用薬の使用頻度は低かった。
この研究は、心疾患の犬で、経験を積んだ人による麻酔と通常の歯科処置中の注意深いモニターにより、麻酔合併症のリスクが有意に増加するということはないと示唆する。(Sato訳)
■上顎神経ブロック後に片側性眼球後血腫を起こした犬の1例
Unilateral retrobulbar hematoma following maxillary nerve block in a dog.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. November 2016;26(6):815-818.
Claire M Loughran , Anthea L Raisis , Griet Haitjema , Zigrida Chester
目的:上顎神経ブロックの実施に続発した眼球後血腫形成の1頭の犬の臨床所見と管理を述べる
症例概要:11歳の犬が全身麻酔下で実施する抜歯を含む通常の歯科処置で来院した。メタドンの筋肉注射の前処置後、挿管が十分可能な麻酔深度までアルファキサロンの静脈投与で導入した。100%酸素とイソフルランで麻酔を維持した。両側上顎神経ブロックを実施した。
左神経ブロックの投与中、血液を吸引した。左上顎神経ブロックの設置後20分で、眼球突出、眼窩周囲腫脹、広範囲な強膜出血、注射部位の周りの口蓋粘膜の中程度腫脹上に2x2cmの範囲で斑状出血が見られた。それらの病変は血管穿刺後の眼球後血腫形成によるものだった。
即座のドレナージ路の創造と抗炎症薬(カルプロフェン2mg/kg PO 12時間毎7日間)、広域抗菌剤療法(セフォビシン8mg/kg
SC1回)、点眼(viscotears、2滴 OS 12時間毎7日間)で治療した。眼窩周囲の腫脹はドレナージから1時間以内に顕著に縮小し、1週間後にはほぼ完全に解消した。
提供された新しい、あるいは独特な情報:この症例報告は、上顎神経ブロック後の片側眼球後出血の発症とうまくいった治療を詳しく述べる。この状況の管理は迅速な認識と目に永久的なダメージを防ぐ治療が必要である。治療の基本はドレナージで、眼窩内圧および眼内圧の上昇を急速に低下させる。著者の知識では、これは英語の文献でこの合併症の最初の考証である。(Sato訳)
■血縁のあるスコティッシュテリア3頭の木様膜炎の症状、臨床病理、剖検所見
Presentation, clinical pathological and post-mortem findings in three related
Scottish terriers with ligneous membranitis.
J Small Anim Pract. May 2016;57(5):271-276.
S L Mason , C Fisher , L Ressel , N X Bommer , L M Buckley , T Nuttall
重度結膜炎および呼吸症状の調査で来院した3頭の血縁のスコティッシュテリアにおいて木様結膜炎と歯肉炎を診断した。支持的治療は効果がなく、その疾患により死亡あるいは安楽死された。
2頭の犬の剖検で結膜、歯肉、気管、喉頭、心外膜の重度増殖性線維性病変と胸腔および腹腔を通して複数の線維性癒着など多岐にわたる異常が見られた。1頭は内水頭症と小脳虫部の欠損があった。木様膜炎を病理組織検査で確認した。
犬でのこの状態は珍しいが、重度結膜炎と歯肉炎に対し重要な鑑別診断である。(Sato訳)
■ミニチュアダックスフンドの舌に見られる多発性組織球性泡沫細胞結節
Multiple Histiocytic Foam Cell Nodules in the Tongue of Miniature Dachshund
Dogs.
Vet Pathol. May 2016;53(3):625-8.
C Katou-Ichikawa , T Izawa , H Sasai , M Kuwamura , J Yamate
ミニチュアダックスフンドは日本で一般的な犬種で、肉芽腫性疾患の素因があることが分かっている。
ここで著者らは7頭のミニチュアダックスフンドにおける複数の舌結節の病理学的な特徴を報告する。
7頭の犬には主に舌の腹側や外側表面上に、複数の様々な大きさの結節があった。また1頭には左の口腔粘膜にマスがあった。3症例は外科的切除後再発した。組織学的に舌の結節はオイルレッドO、PAS、アルシアンブルーに陰性の明白な空胞の細胞質をもつ泡沫細胞の集合体から成った。それらはCD204(マクロファージスカベンジャーレセプター)とMHCクラスIIに対し陽性で、Iba-1、E-カドヘリン、アディポフィリン、サイトケラチン、S-100、ネスチンに対し陰性だった。
それらの所見はミニチュアダックスフンドの多発性舌結節は一般的ではなく、マクロファージ由来の泡沫細胞から成る独特の病変で、これまで報告された犬の舌疾患に一致しないことを示す。(Sato訳)
■先天性口蓋欠損の犬の頭蓋顎顔面異常:CT所見
Craniomaxillofacial Abnormalities in Dogs With Congenital Palatal Defects: Computed Tomographic Findings.
Vet Surg. May 2015;44(4):417-22.
Ana Nemec; Lise Daniaux; Eric Johnson; Santiago Peralta; Frank J M Verstraete
目的:先天性口蓋欠損の犬の頭蓋顎顔面異常を評価する
研究計画:回顧的CT研究
動物:先天性口蓋欠損の犬(n=9)
方法:CT検査で口蓋裂と診断した犬のカルテとCT報告書(1995-2012)を調査した。収集したデータは各犬の犬種、年齢、性別、体重、身体検査、血液検査、過去の口蓋の手術回数、口腔/歯の検査所見と口蓋裂の診断だった。頭部の身体検査はstructure-by-structureベースで再検討した。
結果:鼓室胞に最も一般的に異常が見られ(8頭)、続いて鼻甲介(6)、鼻中隔、鋤骨、くし状板(4)、前頭洞、側脳室(3)だった。他の異常は咬合、歯、切歯骨、上顎骨、下顎骨、舌骨装置、頭蓋骨、鼻咽腔に関係した。口蓋裂の軟部組織欠損は骨欠損よりも常に小さかった。
結論:先天的口蓋欠損の犬における頭蓋顎顔面異常は一般的で、それらのいくつかはQOLにマイナスの影響を及ぼすかもしれない。手術計画で重要なことは、口蓋裂の軟部組織構造は骨欠損の大きさを過小評価するかもしれない(特に修復失敗)。(Sato訳)
■犬の口蓋欠損の段階的二重層閉鎖6症例
Staged double-layer closure of palatal defects in 6 dogs.
Vet Surg. May 2015;44(4):423-31.
Santiago Peralta; Ana Nemec; Nadine Fiani; Frank J M Verstraete
目的:犬の決定的二重層硬口蓋欠損閉鎖の前に選択的抜歯を含む段階的アプローチを報告する
研究構成:回顧的ケースシリーズ
動物:口蓋欠損の犬(n=6)
方法:選択的な上顎抜歯を行い、4-8週間後、二重層の局所全層粘膜フラップによる決定的硬口蓋欠損修復を行った。
結果:全ての口蓋欠損は複雑と考えられた。最初の試みで3頭は完全に硬口蓋が閉鎖した;2頭は完全な閉鎖までに修正手術が必要で、1頭は閉鎖に失敗し、さらなる治療は断念した。選択的抜歯に関係する合併症や長期結果は見られなかった。
結論:選択的抜歯と二重層アプローチに粘膜フラップを用いた決定的外科的修復は、複雑な硬口蓋欠損を治療するときの有効な代替法である。(Sato訳)
■犬において歯磨きは口腔細菌を抑制する
Tooth brushing inhibits oral bacteria in dogs.
J Vet Med Sci. November 2015;77(10):1323-5.
Kazuhiro Watanabe; Kotaro Hayashi; Saku Kijima; Chie Nonaka; Kazuaki Yamazoe
この研究では、20頭のビーグル犬においてスケーリング、ポリッシング、毎日の歯のブラッシングを実施し、口腔内細菌数を細菌カウンターによって測定した。
犬は無作為にスケーリング(S)、スケーリングとポリッシング(SP)、スケーリングと毎日の歯のブラッシング(SB)およびスケーリングとポリッシングと毎日の歯のブラッシング(SPB)群に振り分けた。スケーリングのすぐ後と、その後1-8週まで毎週、その犬の上顎第4前臼歯の頬側面からサンプルを採取した。
研究を通してS群と比較してSBおよびSPB群における細菌数は有意に少なかった。
犬において1日1回の歯のブラッシングは口腔細菌増殖を抑制したと示唆される。(Sato訳)
■犬の生活歯髄療法:190症例(2001-2011)
Vital pulp therapy in dogs: 190 cases (2001-2011).
J Am Vet Med Assoc. February 15, 2014;244(4):449-59.
Niina Luotonen; Helena Kuntsi-Vaattovaara; Eva Sarkiala-Kessel; Jouni J T Junnila; Outi Laitinen-Vapaavuori; Frank J M Verstraete
目的:犬の生活歯髄療法(VPT)の結果に関係する因子を評価する
計画:回顧的研究
サンプル:138頭の犬の190個の歯
方法:カルテを再調査した;VPT前、直後、経過観察中および最後に得られたエックス線写真を評価した。治療は成功(持続的二次性の象牙質産生のエックス線所見あり、未熟歯における持続的歯根形成、根尖歯周炎および内部あるいは外部炎症性歯根再吸収の臨床およびエックス線像がない)、失敗の所見はない(根尖歯周靭帯腔の幅が他の部分の歯周靭帯腔の幅よりも広いが2倍以上はない以外は成功の所見あり)、失敗(歯髄壊死、根尖歯周炎あるいは炎症性歯根再吸収のエックス線所見あり)と分類した。診断あるいは治療に関係する変数と結果の関係を多項ロジスティック回帰分析で評価した。
結果:全体では失敗の所見がない23個(12%)の歯を含む190個中162個(85%)が成功、28個(15%)の歯は失敗として分類された。ミネラルトリオキサイドアグリゲートだけで治療した歯の総成功率は149個中137個(92%)で、Ca(OH)2だけで治療した歯は36個中21個(58%)だった。生活歯髄へのCa(OH)2の使用とドレッシング剤の深部への侵入は、それぞれ有意に治療失敗の確率増加と関係した。
結論と臨床関連:ミネラルトリオキサイドアグリゲートによる生活歯髄療法は、不正咬合を治療するための歯冠整復に使用に対し、また未熟あるいは成熟永久歯において最近起きた歯冠破損の治療に対し有効なオプションだと示された。(Sato訳)
■猫の口内炎に対する抜歯の効果:95症例(2000-2013)
Effect of tooth extraction on stomatitis in cats: 95 cases (2000-2013).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Mar 15;246(6):654-60. doi: 10.2460/javma.246.6.654.
Jennings MW, Lewis JR, Soltero-Rivera MM, Brown DC, Reiter AM.
目的:口内炎の猫で抜歯に対する長期反応を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:口内炎の猫95頭
方法:14年間で抜歯により治療した口内炎の猫のカルテを再検討した。個体群統計情報、診断結果、全顎抜歯(FME)に対し部分抜歯(PME)などの術式、特別な内科管理を記録した。治療の反応に従って猫を分類した。
結果:術後経過観察期間の中央値は231日(範囲、33-2655日)だった。95頭の猫のうち、抜歯および長期内科管理(EMM)後、6頭(6.3%)は改善せず、25頭(26.3%)は少し改善した。抜歯後、37頭(39%)は臨床的にかなり改善し、27頭(28.4%)は完全に解消し、それら64頭のうち、44頭(68.8%)は良い結果となるまで、ある程度の期間EMMを必要とした。治療に対する全体の反応に抜歯の程度(PMEに対しFME)は関係しなかった。最初の再検査の時、異常な行動が解消した(OR、7.2)、口の炎症が減少した(OR、3.5)、抗菌剤の追加内科管理が必要ない(OR、3.7)という猫は抜歯によるより良い長期の反応が見られた。
結論と臨床関連:口の炎症部分の抜歯は、口内炎の猫の2/3以上でかなりの改善あるいは完全寛解をもたらせた。全顎抜歯は、部分抜歯以上の付加価値をもたらさないと思われる。口内炎の多くの猫は、かなりの臨床改善あるいは完全寛解に達するため、長期内科管理を必要とするかもしれない。(Sato訳)
■再発性頚部唾液嚢腫の外科的管理を行った犬4例
Surgical management of recurrent cervical sialoceles in four dogs.
J Small Anim Pract. June 2013;54(6):331-3.
V Tsioli; L G Papazoglou; E Basdani; P Kosmas; G Brellou; T Poutahidis; S Bagias
舌下腺の不適切な切除に関した再発性頚部唾液嚢腫を4頭の犬で診断した。3頭の犬は、口からのアプローチで残存舌下腺の切除で管理した。残りの1頭は、口からのアプローチで舌下腺の確認ができなかったため、腹側アプローチで管理した。全症例の結果は良好で、10か月の経過観察中央値で再発は見られなかった。(Sato訳)
■慢性歯肉口内炎の猫における歯のエックス線所見(2002-2012)
Dental radiographic findings in cats with chronic gingivostomatitis (2002-2012).
J Am Vet Med Assoc. February 1, 2014;244(3):339-45.
Nicodin Farcas; Milinda J Lommer; Philip H Kass; Frank J M Verstraete
目的:猫の慢性歯肉口内炎(FCGS)のある猫とない猫における歯のエックス線所見を比較した。
デザイン:回顧的症例-コントロール研究
動物:FCGSの猫101頭(症例)と他の口腔疾患の猫101頭(コントロール)
方法:コントロールは症例と年齢および治療日がマッチした猫だった。従来の全顎の歯のエックス線像を歯槽骨喪失(歯周炎)の分布、パターン、程度、歯の吸収、頬骨への拡がり、歯の破損、残留歯根について評価した。
結果:全ての症例と77頭(76%)のコントロールが歯周炎だった;歯周炎の拡がりと程度の差は有意で、準全般あるいは全般、そして中程度あるいは重度歯周炎が症例の78頭(77%)と93頭(92%)に認められたのに対し、コントロールでは28頭(28%)と38頭(38%)だった。症例における歯槽骨喪失のパターンは、コントロールと比較して水平骨喪失が優性で、垂直骨喪失の有意ではない増加がみられた。症例はコントロールよりも外部炎症性歯根再吸収(49頭(49%)vs25頭(25%))および残留歯根(57頭(56%)vs28頭(28%))がある可能性が高かった。歯の破損を起こした症例(14頭(14%))はコントロール(35頭(35%))よりも少なかった。品種、性別、猫の吸収性病変あるいは頬骨への拡がりには症例とコントロールに差がなかった。
結論と臨床的関連:猫の慢性歯肉口内炎は他の口腔疾患よりも、より広い分布と重度歯周炎に関係し、外部炎症性歯根再吸収と残留歯根の高い有病率が示唆された。猫の慢性歯肉口内炎の猫に対し、関連する歯周炎の拡がりの診断、外部炎症性歯根再吸収の検出、残存歯痕の確認に全顎エックス線像が指示される。(Sato訳)
■小型犬の全歯エックス線検査による歯科異常の評価
Assessment of dental abnormalities by full-mouth radiography in small breed
dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Jan-Feb;49(1):23-30.
Chun-Geun Kim; So-Young Lee; Ju-Won Kim; Hee-Myung Park
この研究は、小型犬の歯科異常の有病率を判定し、歯科異常と年齢の関係を解析するため全歯エックス線所見を評価した。異常なエックス線所見の前もって決めた16のカテゴリーで233頭の小型犬を評価した。
トータルで9786本の永久歯を評価できた。それらのうち、8308本を評価し、2458本(29.6%)に異常なエックス線所見を認めた。異常なエックス線所見の中で最も一般的な歯は、下顎第1後臼歯(左側74.5%、右側63.9%)と、上顎第4前臼歯(左側40.5%、右側38.2%)だった。16のカテゴリーの中で、全てのタイプの骨喪失(15.8%)は、最も一般的に検出されたエックス線異常所見だった。遺伝的素因のある歯の状態は、下顎の臼歯に発生することが多かった。シーズは未萌出歯および含歯性のう胞の存在する頻度が高かった。
異常なエックス線所見の歯の中で、付随、付加、重大と考えられたのはそれぞれ4.5%、19.8%、5.3%だった。通常の口腔検査で気づくことはなく、エックス線でのみ検出された所見は、老犬でより一般的に見られた。全歯のエックス線検査は、正確な診断をするための重要な情報を得るために実施すべきである。(Sato訳)
■ウイルス性と疑われた猫の慢性歯肉口内炎の胸腺抽出物による管理
Management of feline chronic gingivostomatitis of suspected viral origin
with a thymic extract
J Am Holistic Vet Med Assoc. Spring 2013;32(0):22-24. 14 Refs
Richard E Palmquist
胸腺抽出物Kyosenex(Kyosenex, ULR Laboratories LLC, 5333 Likini Street,
Honolulu, HI 96818)を猫の歯肉口内炎の難治症例の管理に使用した。その猫は特に口腔尾側部に劇的に反応した。その状況は治療をやめると再発し、その薬剤の再処置で再び改善した。これは治療の不足など原因を示す。QOLが非常に改善するため、追加研究が示される。(Sato訳)
■歯原性嚢胞の犬の臨床症状と組織所見:41症例(1995-2010)
Clinical signs and histologic findings in dogs with odontogenic cysts:
41 cases (1995-2010).
J Am Vet Med Assoc. December 2011;239(11):1470-6.
Frank J M Verstraete; Bliss P Zin; Philip H Kass; Darren P Cox; Richard C Jordan
目的:歯原性嚢胞の犬において臨床症状と組織所見の特徴を示すことと、組織所見が臨床的特徴に関係するかどうかを判定する
構成:後ろ向き症例シリーズ
動物:41頭の犬
方法:品種、年齢、性別、病変位置などの臨床データに関して医療記録を調査した。顕微鏡的切片および診断画像検査結果を再検討した。
結果:1995年から2010年の間で歯原性嚢胞の犬41頭を確認した。29頭は歯の構造を持った嚢胞、1頭は歯根嚢胞、1頭は外側歯周嚢胞、1頭は歯肉包含嚢胞があった。また9頭は臨床的、組織学的特徴が歯原性嚢胞を示唆したが、診断ではヒトでよく見られる歯原性角化嚢胞が確認された。全9頭においてそれらの嚢胞は上顎に位置し、正常に生え出た歯を囲むようにあった。
歯原性嚢胞の犬29頭のうち、23頭は単一嚢胞、5頭は2つの嚢胞、1頭は3つの嚢胞があった。6つの嚢胞は生え出てない犬歯に関係し、30の嚢胞は生え出てない第一小臼歯に関係した(1つの嚢胞は両方の歯に関与)。歯の構造を持った嚢胞は種々の犬種に確認されたが、いくつかの短頭種は研究期間中の病院集団と比較して多く見られた。
結論と臨床的関連:結果は種々の歯原性嚢胞が犬に発生することを示唆した。また、ヒトで報告される歯原性角化嚢胞に似た嚢胞も確認された。著者らはこの状況を犬歯原性不全角化嚢胞と呼ぶことを提唱する。(Sato訳)
■柔らかい生皮は犬の歯石形成を少なくする
Soft rawhide reduces calculus formation in dogs.
J Vet Dent. Summer 2009;26(2):82-5.
George K Stookey
ビーグル犬の飼育集団において歯石の形成に対し、柔らかい生皮の新製品の効果を評価するため、この臨床調査を行った。この研究は、4週間の試験期間と試験期間中1週間のウォッシュアウト期間を設けた2方向交差試験として構成した。
全ての犬にはドライの市販食および自由に飲める水道水を与えた。犬はそれらの歯石および歯垢形成割合をもとにしてペアを作り2つのグループに分けた。
各検査期間は完璧な歯肉縁上スケーリング、歯冠ポリッシング後すぐに開始し、テスト群の犬には正常な食餌後約4時間目に柔らかい生皮トリーツを与えた。
検査は従来の指数を用い、経験豊富な臨床試験官により最後の採食から約20-24時間後に実施した。
データは、1日1回柔らかい生皮おやつ製品を与えることが、歯石(28%)、歯垢(19%)、歯肉炎(46%)の形成に対し統計学的に有意な減少をもたらしたことを示した。(Sato訳)
■犬の歯肉下検体における推定的な歯周病関連細菌の検出
DETECTION OF PUTATIVE PERIODONTAL PATHOGENS IN SUBGINGIVAL SPECIMENS
OF DOGS
Brazilian Journal of Microbiology (2007) 38:23-28
Sheila Alexandra Belini Nishiyama; Gerusa Neyla Andrade Senhorinho; Marco Antonio Gioso;
Mario Julio Avila-Campos,
この研究において、Porphyromonas gingivalis, Prevotella
intermedia, Tannerella forsythensis, Fusobacterium nucleatum, Dialister pneumosintes, Actinobacillus
actinomycetemcomitans, Campylobacter rectus, Eikenella corrodens and Treponema denticolaなどの推定的な歯周病菌の存在を、PCR法を使うことによって歯周炎に罹患した(25)そして罹患していない(15)40頭の異なる犬種の歯肉下検体で調査した。それぞれの菌種のPCR産物は特異的な単位複製配列を示した。歯周炎に罹患した25頭の犬において、P. gingivalis が16頭(64%)、C. rectus が9頭(36%)、A. actinomycetemcomitansが6頭(24%), P. intermedia が5頭(20%)、T. forsythensis が5頭(20%)、F. nucleatum が4頭(16%)、そしてE. corrodens が3頭(12%)検出された。T. denticola と D. pneumosintesは歯周炎に罹患した犬の検体からは検出されなかった。さらに、P. gingivalis は、歯周病に罹患していない1頭(6.66%)の雑種犬でしか検出されなかった。
これらの微生物が歯周炎に罹患した犬の歯周微生物叢に存在しており、これらの推定的な歯周微生物が家庭のペットにおいて歯周炎にどんな役割を持つか評価することが重要であることを我々の結果は示している。特に犬は、環境そして治療面において、飼い主からこれらの歯周病原菌を獲得しているかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬における歯石蓄積予防に関するペレットフードの大きさとポリリン酸の効果
Effect of pellet food size and polyphosphates in preventing calculus accumulation in dogs.
J Vet Dent. 2007 Dec;24(4):236-9.
Hennet P, Servet E, Soulard Y, Biourge V.
12~24ヶ月齢の40頭の雌のビーグルをそれぞれ10頭ずつの4つのグループに分けた。粒の直径を50%増加させることは、歯石が42%減少することと関連があることが結果から示された。抗歯石剤であるトリポリリン酸ナトリウムによる粒のコーティングはさらに55%の歯石の減少を引き起こした。トリポリリン酸ナトリウムは少なくともヘキサメンタリン酸ナトリウムと同じくらい効果的であることが示された。歯の歯石減少効果は、切歯や犬歯と比べて尾側に位置する噛み砕く歯において最も明白な効果が観察され、その効果は位置によって違いが見られた。プラークや歯石に対する力学的効果で製品を検査した場合に、噛まない歯によるスコア化の関連が疑問視される必要がある。(Dr.Kawano訳)
■犬猫の歯破損治療オプション
Dental fracture treatment options in dogs and cats
Vet Med. Jul 2008;103(7):363-371. 19 Refs
Matthew Lemmons, DVM, DAVDC, Daniel T. Carmichael, DVM, DAVDC
歯破損の多くの患者は、痛みや感染の明らかな臨床症状を示さず、彼らの食欲も変化がないままと思われる。この明らかに害がないことが、しばしば臨床医に診断的検査やタイムリーな治療介入を見合わせようという事態を引き起こしている。
しかし、そのまま放置された破損歯は慢性の痛みのもととなる可能性があり、歯髄炎、歯髄壊死、骨炎、洞腔に通ずる歯根吸収、顔面腫脹、歯の喪失を誘発する可能性がある。適切な歯科解剖学の理解、破損診断、エックス線検査、破損歯の病理学的結果は、歯破損症例の積極的な評価および治療または紹介に駆り立てるはずである。(Sato訳)
■臨床的に適切なシクロスポリン血中濃度に関与する犬の歯肉過形成:犬腎移植モデルにおける知見
Gingival overgrowth in dogs associated with clinically relevant cyclosporine blood levels: observations in a canine renal transplantation model
Vet Surg. April 2008;37(3):247-53.
Hyun-Sook Nam, Jonathon F McAnulty, Ho-Hyun Kwak, Byung-Il Yoon, Changbaig Hyun, Wan-Hee Kim, Heung-Myong Woo
目的:腎移植およびマイクロエマルジョン化シクロスポリンA(MCsA)投与後の犬の歯肉過形成発症を調査する
研究構成:実験研究
動物:健康な雑種成犬(n=5)
方法:犬の腎移植の研究の一部として、拒絶反応を予防するためMCsA(20mg/kg/day)、アザチオプリン、プレドニゾロンを投与し、歯肉変化の発現をモニターした。3ヵ月後プレドニゾロンを中止した。MCsA投与量は、全血濃度波形の谷を400-700ng/mlに維持するよう調節した。歯肉変化は、週1回の検査および写真記録で評価し、病理組織検査のために28週目に歯肉バイオプシーを実施した。
結果:急性拒絶反応のため1頭は死亡した。歯肉過形成は4頭中3頭で発症した。一番早い歯肉変化は、移植から20週目の歯間乳頭に発生した。病理組織検査において基礎結合組織は肥厚し、線維芽細胞、炎症性浸潤物の増加を成していた。
結論:MCsAベースの治療による長期免疫抑制は、MCsAを治療、免疫抑制レベルで32週間維持する時、顕著な歯肉過形成を誘発しやすくなる。
臨床関連:MCsAは犬の免疫介在性疾患や移植後拒絶反応を防ぐために使用される。長期間MCsAを投与する犬で、MCsA血中濃度、および歯肉過形成は歯間乳頭のルーチンな検査によりモニターすべきである。(Sato訳)
■猫の破骨細胞と骨吸収に対するpHのインビトロにおける影響:FORLの病因に対する関連
The in vitro effect of pH on osteoclasts and bone resorption in the cat: implications for the pathogenesis of FORL
J Cell Physiol. October 2007;213(1):144-50.
Mariusz Muzylak, Timothy R Arnett, Joanna S Price, Michael A Horton
老齢猫で破骨細胞過活性による歯科病変が流行しており、野生化した猫でも報告されている。猫骨破壊吸収病変(FORL)は、そのまま歯根骨折やその後の歯の喪失になりやすい歯の広範な吸収を起こす。FORLの原因病因は不明である。最近の研究では、全身性のアシドーシスが破骨細胞活性を増加させ、猫の口の感染、または炎症の部位がアシドーシスを起こしやすいと言われている。
これを調査するため、我々は猫の血から破骨細胞を作成し、牛の皮質骨のスライスにおける培養でそれらが多数(約400)作られることを発見した。アシドーシスでは、基準pH7.25で14日まで維持した培養において細胞の大きさを増加させ、平均破骨細胞エリアは0.01±0.003mm(2)だった。一方、11日から14日の間にpH7.15にして培養した細胞は8.6倍の増加を認めた(0.086±0.004mm(2))。アシドーシスでは破骨細胞数の中程度の増加を認めた。pH6.92にすると、吸収窩により覆われた骨スライス部分で5倍の増加を示した(約70%の骨スライス吸収)。
これら所見に従い、破骨細胞における吸収活性を反映するキーとなる酵素であるプロトンポンプ酵素およびカテプシンK発現(両方とも約3倍)の有意な増加が観察された。それらの結果は、猫においてアシドーシスは破骨細胞形成および機能的活性化の主要調節因子であることを示し、局所pH変化は、FORLの病因で重要な役割を演じるかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■猫の唾液粘液嚢胞:7症例の遡及研究
Salivary Mucoceles in Cats: A Retrospective Study of Seven Cases
Vet Med. Sep 2007;102(9):582-585. 20 Refs
Kristina M. Kiefer, DVM, Garrett J. Davis, DVM, DACVS
この症例シリーズにおいて最も一般的な主訴は、呼吸喘鳴、あるいは胃腸症状を起こすかもしれないがま腫の存在に関するものだった。まれではあるが、いかなる口腔内腫脹を持つ猫でも唾液粘液嚢胞は鑑別診断に含めるべきである。粘液嚢腫が診断されれば、粘液嚢胞の造袋術と共に唾液腺組織の切除が急速な改善と治癒の最大のチャンスとして進められる。適切な外科切除後の長期予後は良好である。(Sato訳)
■作業犬の破損犬歯に対する接着セメントフルキャストメタルクラウン
[Adhesively cemented full-cast metal crowns on traumatized canine teeth in working dogs]
Tijdschr Diergeneeskd. March 2007;132(5):156-62. Dutch
Andries van Foreest, Moss Tijssens
この遡及研究で、歯折または重度磨耗犬歯を持つ35頭の番犬に58のメタルクラウンを設置した。全ての犬は治療後、仕事に復帰できた。3個(5%)のメタルクラウンははずれ、2つのメタルクラウンは、原因不明でなくなっただけだった。その後、犬の訓練中に歯冠裏で6本(100%)の犬歯が裂けた。ゆえに我々の診療所で、この処置の成功率は81%(47/58)だった。歯の断端の高さとクラウンの喪失に有意な相関が認められた。さらなる研究が求められる。(Sato訳)
■犬における虫歯
Dental caries in the dog.
J Vet Dent 15[2]:79-83 1998 Jun
Hale FA
歯科紹介診療所における、435頭の犬に関する歯科記録を再調査しました。23頭の犬(5.3%)が、1本あるいはそれ以上の虫歯(齲歯)でした。47齲歯病変に関し、19病変(40%)は陥凹形成と亀裂の齲歯で、17病変(36%)は平滑な表面の齲歯で、11病変(23%)は歯根齲歯でした。12頭は対称性病変でした。最も一般的に罹患した歯は、第4小臼歯と第1、2臼歯でした。20の罹患した歯は抜歯し、17歯は空洞調剤薬により治療し、合成、あるいはグラスイオノマー材で、元に戻しました。4頭の犬において、元に戻した10歯を治療後、1年、またはそれ以上追跡調査しました。;元に戻した全ての歯が無傷で、齲歯もまったく進行しておりませんでした。(Dr.K訳)
■ビーグルの歯肉間隙液と免疫介在物質に対する塩酸クリンダマイシンの影響
Effect of Clindamycin Hydrochloride on Gingival Crevicular Fluid and Immune Mediators in Beagles
Vet Ther 3[2]:177-188 Summer'02 Double-Blind Study 57 Refs
Karl Zetner, DrMedVet; Georg Pum, DVM; Wolf-Dieter Rausch, PhD; Xio-Hui Rausch-Fan, MD, DMD, PhD; Shui Ting Hung, PhD
歯肉炎と歯周炎はしばしばイヌで観察される状態で、主な原因は細菌性プラークである。歯肉間隙液(GCF)とそれに含まれるいくつかの生化学物質は、診断的、そして治療の成果の評価に使用される。クロスオーバー構成の盲目試験を、イヌのGCFの量、その免疫介在物質(ロイコトリエンB4[LTB4]、プロスタグランジンE2[PGE2]、多形核[PMN]エラスターゼ)の濃度に対し塩酸クリンダマイシンの治療を評価するために行った。10頭にはクリンダマイシン11mg/kg/日14日間投与し、10頭のイヌはコントロールとして投与しなかった。
5ヶ月の休薬期間後、治療を逆にした。各一連の研究の始まりと終わりに、GSF量を測定し、プラークと歯肉の指標を、各イヌの6本の歯を参考として調査した。LTB4、PGE2、PMNエラスターゼ濃度をELISAにより判定した。両方の一連の研究で、クリンダマイシン治療犬のプラークと歯肉指標は有意に下がった(P<.0001)。GCF量も治療後有意に減少し(P<.0001)、PGE2、PMNエラスターゼ、LTB4濃度は両シリーズで有意に減少した(P<.05)。クリンダマイシンの抗菌効果は、血中、唾液中の高濃度によるだけでなく、歯肉間隙にも存在することにもよる。(Sato訳)
■コンパニオンアニマルの下顎骨でクリンダマイシン濃度
Concentrations of Clindamycin in the Mandibular Bone of Companion Animals
Vet Ther 4[2]:166-171 Summer'03 Original Study 25 Refs
* Karl Zetner, DrMedVet, DEVDC; Heinz Schmidt, DrMedVet; Stefan Pfeiffer, DrMedVet
重度歯垢、歯肉炎/歯周炎、歯石のあるイヌ17頭とネコ13頭で、専門的な歯のクリーニングと抜歯を行う前5日間に、1日1回クリンダマイシン(11mg/kg)を投与し、下顎のクリンダマイシン濃度を判定した。それらの動物は、オーストリア、ウィーンの獣医学大学外科眼科病院歯科部門の患者だった。抜歯後歯槽形成術中にクリンダマイシン濃度を判定した。下顎約1-3立法ミリメートルを多根歯の歯根内隔壁と突出口唇/頬側歯槽縁から小さなロンジュールで切除した。イヌのクリンダマイシンの平均濃度は8.18μg/g(範囲=3.16-24.08μg/g)で、ネコで17.43μg/g(範囲=2.45-51.60μg/g)だった。イヌネコの下顎でクリンダマイシン濃度は、歯周処置、抜歯、下顎の損傷後感染に対し有効と思われる。(Sato訳)
■抜歯に関係する眼窩貫通
Orbital penetration associated with tooth extraction.
J Vet Dent 20[1]:8-17 2003 Mar
Smith MM, Smith EM, La Croix N, Mould J
3頭のネコと2頭のイヌを、抜歯手技に関係する眼科の合併症で評価した。眼球、1例は脳傷害を引き起こす眼窩貫通は、歯科エレベーターによる医原的傷害の二次的なものだった。その結果、3症例の罹患した眼は摘出、1症例は脳の膿瘍形成で死亡した。早期治療または選択されるべきものは、獣医眼科外科専門医への紹介でそのような結果を防げるかもしれない。尾側上顎歯根と眼窩が解剖学的に隣接していることの認識、診断的口腔内歯科エックス線検査の適切な解釈、抜歯術の技術的熟練が、獣医歯科診療のそれらの合併症を最小限にするだろう。(Sato訳)
■猫における歯垢と歯肉炎に対する歯科用チュウの効果
Effect of a dental chew on dental substrates
and gingivitis in cats.
J Vet Dent 2002 Dec;19(4):201-4
Ingham KE, Gorrel C, Bierer TL.
処方食やそれに付随する添加物の使用により、規則的な専門的治療の必要性がなくなるわけではないが、専門家による口腔の診察と治療の合間に、歯肉の衛生状態の改善に役立つかもしれない。
この研究は猫において歯科用チュウがもたらす歯科衛生と歯肉の健康状態への効果を評価するために行った。
ドライフードのみ与えられている猫、または、ドライフードと歯科用チュウを与えられている猫において歯垢の蓄積と歯肉炎の進行を評価した。
4週間連続した期間をひとつの試験相として、2回のクロスオーバー構成で行った。
結果、ドライフードに毎日歯科用チュウを付け加えることで、猫における歯表面への歯垢と歯石の沈着を減らし、歯肉炎の程度を軽減する効果があることを示した。(Dr.Madoron訳)