■犬の全身性振戦:198症例(2003-2023)
Generalized Tremors in Dogs: 198 Cases (2003-2023)
J Vet Intern Med. 2025 May-Jun;39(3):e70062.
doi: 10.1111/jvim.70062.
Theofanis Liatis , Sofie F M Bhatti , Steven De Decker

背景:犬の全身性振戦に関係する疾患は、犬の大集団で大規模な調査が行われていない。

仮説/目的:犬の全身性振戦に関係する疾患、症候学、振戦の表現型を述べ、基礎疾患に関係する可能性がある臨床的特徴を確認する

動物:合計198頭の犬

方法:2003年1月から2023年12月の間に確定診断あるいは仮診断された全身性振戦の犬の回顧的1施設研究。

結果:犬の全身性振戦に関係する最も一般的な疾患は、中毒(91/198;46%)、特発性全身性振戦症候群(IGTS;49/198;24.7%)、低カルシウム血症(13/198;6.6%)、起源不明の髄膜脳炎(MUO;9/198;4.5%)、低血糖(6/198;3%)、高カルシウム血症(5/198;2.5%)、変性脳疾患(5/198;2.5%)だった。IGTSの犬は、メス(p=0.002)、より若い(p=0.002)、急性の進行性一側化症状を伴い(全て3つに対しp<0.001)、比べて中毒の犬は、オス(p=0.002)、若いから中年齢(p=0.002)、超急性非進行性対称性症状を伴った(全て3つに対しp<0.001)。

行動学的変化(p=0.01)、過剰流涎(p=0.04)、異常な精神状態(p=0.01)、両側の散瞳(p=0.02)、あるいは全身性知覚過敏(p=0.002)は、中毒でよく見られ、食欲不振や前庭小脳症状(両方ともp<0.001)はIGTSで一般的だった。振戦のみを示した犬は、中毒で45%、IGTSで22%の犬だった(p=0.01)。コルチコステロイド投与なしで症状の発現から48時間以内の改善は、もっぱら中毒の犬で認められた(p<0.001)。

結論と臨床的重要性:中毒とIGTSは、犬の全身性振戦に関係する最も一般的な疾患だった。病歴および臨床的特徴は、臨床医が鑑別診断、診断および治療プラン組立の調整に役立つかもしれない。(Sato訳)
■6週間あるいは6か月プレドニゾロンプロトコールで治療したステロイド反応性髄膜炎-動脈炎の犬の再発率を比較する前向き無作為化試験
Prospective randomized trial comparing relapse rates in dogs with steroid-responsive meningitis-arteritis treated with a 6-week or 6-month prednisolone protocol
J Vet Intern Med. 2024 Jun 19.
doi: 10.1111/jvim.17130. Online ahead of print.
Jeremy H Rose , Colin J Driver , Lorna Arrol , Thomas J A Cardy , Joana Tabanez , Anna Tauro , Ricardo Fernandes , Imogen Schofield , Sophie Adamantos , Nicolas Granger , Thomas R Harcourt-Brown

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背景:伝統的にプレドニゾロンの6か月コースが、ステロイド反応性髄膜炎-動脈炎(SRMA)の治療に使用されるが、この薬物はQOLの悪化の可能性がある副作用と関係する

仮説/目的:プレドニゾロン6か月プロトコールと6週間プロトコールで、SRMAの臨床症状の解消や再発率に有意差はないだろう

動物:イギリスの複数の二次診療施設からの44症例。44頭中20頭は6か月プロトコールで治療し、44頭中22頭は6週間プロトコールで治療した。

方法:前向き無作為化試験と12か月フォローアップ。再発した場合、同プレドニゾロンプロトコールを再び開始した。二項ロジスティックおよびポアソン回帰モデリングによる再発の分析。

結果:全ての犬は、それらの治療プロトコールに反応した。再発は、6か月プロトコールの6/20(30%)、6週間プロトコールの9/24(38%)に発生した。2群間の少なくとも1回の再発の発生リスクに統計学的差はなかった(オッズ比=1.40;95%CI、0.40-4.96、P=0.60)。再発した15頭中、10/15(67%)は1回再発し、3/15(20%)は2回、2/15(13%)は3回再発した。2群間の総再発事象の発生率比(IRR)に統計学的差は検出されなかった(IRR=1.46;95%CI、0.61-3.48;P=0.40)。

結論と臨床的重要性:“短期”6週間プレドニゾロンプロトコールは、SRMAの治療に使用でき、それによっておそらく、プレドニゾロンの副作用の持続期間や重症度を減ずることができる。(Sato訳)
■MRI画像検査で起源不明の髄膜脳炎と壊死性病変が疑われる犬の長期結果と予後因子:37症例(2007-2020)
Long-term outcomes and prognostic factors in dogs with meningoencephalitis of unknown origin and suspected necrotic lesions on magnetic resonance imaging: 37 cases (2007-2020)
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jun 19:1-9.
doi: 10.2460/javma.24.03.0222. Online ahead of print.
Chih-Ching Wu , Ya-Pei Chang

目的:壊死性脳炎(NE)の犬の長期結果、総生存期間、無増悪生存期間、予後因子を述べる

動物:NEの臨床的診断を受けた飼い犬37頭

方法:全ての犬はMRIとCSF検査を行った。Cox比例ハザード回帰で再燃及び死亡リスクに関連するシグナルメント、病歴、診断調査結果、最初の再燃前の治療を含む因子を調べた。

結果:総および無増悪生存期間の中央値は、それぞれ639日(IQR、342-1482日)と233日(IQR、111-775日)だった。総生存期間は無増悪生存期間と強く相関した。死亡あるいは安楽死した4頭(11%)の犬は、診断から3か月以内だった。6か月以内の再燃は、より短い総生存期間と関係した。しかし、総生存期間に対する予後因子は見つからなかった。29日から6か月持続した臨床症状を呈する犬のカテゴリー(OR、3.26;95%CI、1.35-7.90)は、より高い再燃リスクと関係した。発作は75.7%の犬が呈し、再発率は100%だった。

臨床的関連:この報告はNEの犬に対する包括的フォローアップ情報を提供し、予後はまずまずで、早期死亡率は低いことを明らかにする。発作は非常に一般的な臨床症状で、再発率は高い。(Sato訳)
■起源不明の髄膜脳炎と診断された82頭の犬の種々の免疫抑制剤による予後と生存性の回顧的研究(2010-2021)
Retrospective evaluation of prognosis and survival with various immunosuppressants in 82 dogs diagnosed with meningoencephalitis of unknown etiology (2010-2021)
BMC Vet Res. 2023 Dec 12;19(1):269.
doi: 10.1186/s12917-023-03800-3.
So-Hee Kim , Ye-In Oh , Su-Min Park , Ju Hyun An , Tae-Hee Kim , Sung-Soo Kim , Jae-Gon Ah , Kyoung-Won Seo , Hwa-Young Youn

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背景:起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUE)は、異常な自己免疫反応により起こる中枢神経系(CNS)の非感染性炎症性脳疾患に対する包括的な用語である。この研究の目的は、補助的免疫抑制剤使用によるMUEの臨床反応および生存性の違いを比較することである。MUEと診断された82頭の犬の医療記録を回顧的に再調査した。

結果:総生存期間は769日(範囲14-2687日)だった。各補助剤に対する生存期間中央値は:レフルノミド1035日(範囲126-2163日)、ミコフェノール酸モフェチル865日(範囲39-2192日)、シクロスポリン441日(範囲11-2176日)、シトシンアラビノシド754日(範囲6-1898日)、ミコフェノール酸モフェチルとシトシンアラビノシドの併用132日(範囲23-1227日)だった。免疫抑制剤による副作用の発生率に有意差はなかったが、レフルノミド群の3頭(18.7%)は中程度から重度の貧血を確認した。

結論:MUE犬の生存期間と反応率は、使用した補助的免疫抑制剤に依存して違いがあった。MUEの犬においてレフルノミドは、長期生存期間と比較的良好な反応率を示した。しかし、免疫抑制剤の標準化した投与量と支持療法および持続的モニタリング間隔の今後の大規模研究が必要である。(Sato訳)
■犬の起源不明の髄膜脳炎の短期結果に対する急性期蛋白の予測値
Predictive Value of Acute Phase Proteins for the Short-Term Outcome of Meningoencephalitis of Unknown Origin in Dogs
Animals (Basel). 2023 Aug 10;13(16):2575.
doi: 10.3390/ani13162575.
Aurora Cocchetto , Andrea Zoia , Rita Aragão , Laura Ventura , Marika Menchetti

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起源不明の髄膜脳炎(MUO)は、中枢神経系(CNS)の一般的な炎症疾患の1つである。

この研究は、起源不明の髄膜脳炎(MUO)の犬の短期結果を予測するバイオマーカーとして、急性期蛋白(APPs)と他の炎症性血清パラメーターの増加の可能性と役割の可能性を評価する。

回顧的コホート研究を計画した。MUOと新規に診断された48頭の飼い犬のAPPプロフィールと全身性炎症の他のマーカーをMUOと診断され7日生存した犬と死亡した犬で比較した。

39頭(81%)は7日のフォローアップ期間最終に生存していたが、9頭(19%)は死亡あるいはMUOのために安楽死されていた。研究した炎症の11のマーカーでは、生存した犬と死亡した犬で違いはなかった;この理由に対し、それらはこの研究の結果を基に、どれも短期結果の予測因子として使用できなかった。

これは、MUOであるが、中枢神経系(CNS)の重度炎症状態に関係することが多く、この状況はおそらく独占的にCNSと孤立したものであることを確認する。(Sato訳)
■全低酸素性虚血性脳傷害の犬8頭と猫2頭の臨床症状、診断、治療、結果(2010-2022)
Clinical presentation, diagnosis, treatment, and outcome in 8 dogs and 2 cats with global hypoxic-ischemic brain injury (2010-2022)
J Vet Intern Med. 2023 Jun 14.
doi: 10.1111/jvim.16790. Online ahead of print.
Abbe Harper Crawford , Elsa Beltran , Cecilia-Gabriella Danciu , Dylan Yaffy

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背景:全低酸素性虚血性脳傷害(GHIBI)は、様々な程度の神経学的機能障害を起こす。機能的回復の確率を予測するようなデータは限られている。

仮説:より長い時間の低酸素虚血性障害および最初の72時間で神経学的改善のないことは、負の予後指標である。

動物:GHIBIの臨床症例10頭

方法:臨床症状、治療および結果を含むGHIBIの犬8頭と猫2頭を述べた回顧的ケースシリーズ

結果:6頭の犬と2頭の猫は、動物病院で心肺停止あるいは麻酔の合併症を経験し、即座に蘇生された。7頭は低酸素性虚血性障害から72時間以内に、進行性の神経学的改善を示した。4頭は完全に回復し、3頭は残存性の神経学的欠損があった。1頭は1次診療所で蘇生後に昏睡を呈した。MRI検査で広範性の大脳皮質の腫脹と重度の脳幹圧迫を確認し、安楽死された。

2頭の犬は病院外で心肺停止となり、1頭は交通事故、もう1頭は喉頭閉塞によるものだった。交通事故の犬はMRI検査で広範性の大脳皮質の腫脹と重度脳幹圧迫を確認後に安楽死された。喉頭閉塞の犬は、心肺蘇生から22分後に自発的循環が回復した。しかし、その犬は失明し、方向感覚がなくなり、前庭性運動失調を伴う歩行不能な四肢不全麻痺となり、受診後58日で安楽死された。脳の病理組織検査で、重度広範性大脳および小脳皮質壊死を確認した。

結論と臨床的重要性:低酸素性虚血性障害の持続時間、広範性脳幹の関与、MRIの特徴、神経学的回復率は、GHIBI後の機能的回復の確率の指標を提供することができた。(Sato訳)
■犬の脳脊髄液採取に関する合併症
Complications associated with cerebrospinal fluid collection in dogs
Vet Rec. 2023 Mar 12;e2787.
doi: 10.1002/vetr.2787. Online ahead of print.
Rory Fentem , Aran Nagendran , Katia Marioni-Henry , Megan Madden , Stephanie Phillipps , Camilla Cooper , Rita Gonçalves

背景:犬の脳脊髄液(CSF)採取に関する合併症の確認を目的とした。

方法:これは、神経学的疾患の調査に対し、CSF採取を行った犬102頭から集めたデータを用いた、前向き観察多施設研究だった。CSFは小脳延髄槽(CMC)、腰部くも膜下腔(LSAS)あるいは両方の部位から採取した。処置前、処置中、処置後のデータを集めた。CSF採取に関する合併症の概要を述べるために記述統計を実施した。

結果:CSFサンプリングは108回試み、100回はCSFが採取できた(92.6%)。CMCからの採取は、LSASよりも成功する確率が高かった。CSF採取後、神経学的悪化が見られた犬はいなかった。歩行可能な犬においてCSF採取前後のshort-formグラスゴー複合測定疼痛スコアに有意差はなかった(p=0.13)。

制限:合併症の不足は、他で報告された潜在的合併症のいくつかの発生の定量能を制限した。

結論:トレーニングを積んだ人により行われる場合、CSF採取の合併症頻度は低いと、この結果は臨床医や飼い主への説明に使用できると思われる。(Sato訳)
■10頭のフレンチブルドッグにおける耳原性感染による二次的な細菌性髄膜炎:回顧的ケースシリーズ
Bacterial meningitis secondary to otogenic infection in 10 French bulldogs: A retrospective case series
Vet Rec Open. 2023 Jun 13;10(1):e263.
doi: 10.1002/vro2.63. eCollection 2023 Jun.
Sarah Butterfield , Danielle Whittaker , Joana Tabanez , Jordina Caldero Carrete , Clare Pitchford , Charles R J Mattias , Abbe Crawford , Clare Rusbridge

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背景:犬の細菌性髄膜炎/脳炎の臨床的管理について、発表されたガイドとなる情報は限られている

方法:これは2か所の紹介センターからの10頭のフレンチブルドッグからなる回顧的ケースシリーズである。症例は、中耳/内耳内の異常な液体/軟部組織の不透明度(MRI検査で関係する髄膜/頭蓋内関与)の検出、敗血症を示唆する脳脊髄液(CSF)所見および/あるいは抗生物質使用後の臨床的改善をもとに、耳原性感染によるものと思われる細菌性髄膜炎/脳炎と診断された。

結果:10頭(メス3頭、オス7頭)が含まれ、年齢中央値は60か月だった。犬は急性発現(中央値2日)を呈し、前庭症状および/あるいは口腔内あるいは頚部痛の進行性の履歴があった。5頭は同時に外耳炎の肉眼的症状があった。一般的なMRI所見は、隣接する髄膜の増強を伴う鼓室胞内の物質が認められた。全8頭のCSFの解析で、髄液細胞増殖が認められ、細胞内細菌が2頭の細菌培養陽性を含む3頭に見られた。1頭は診断後安楽死された。残りの9頭は抗生物質の治療を受け、6頭は外科的治療を行った。外科的に治療した3頭は、2週間以内に神経学的に正常となり、残りの3頭は改善した。内科的治療を受けた2頭は改善し、1頭は4週のフォローアップ期間内に完全に解消と報告された。研究制限は、その回顧的特性と、最小限の長期フォローアップで、サンプルサイズが小さいことだった。

結論:フレンチブルドッグの細菌性髄膜炎/脳炎は、良好な結果を得るために内科および外科的治療の両方を必要とする可能性がある。(Sato訳)
■蓄膿のない細菌性髄膜炎あるいは髄膜脳炎の犬24頭の臨床症状、治療、結果(2010-2020)
Clinical presentation, treatment, and outcome of 24 dogs with bacterial meningitis or meningoencephalitis without empyema (2010-2020)
J Vet Intern Med. 2023 Jan 14.
doi: 10.1111/jvim.16605. Online ahead of print.
Faye Rawson , Max Foreman , Thomas Mignan , Jack Galer , Anne Fraser , Abbe Crawford

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背景:細菌性髄膜炎(BM)および髄膜脳炎(BMEM)は、ヒトにおいて高い症例死亡率と神経学的後遺症に関係するが、犬の結果においてのデータは限られている。

仮説/目的:犬の臨床症状、再燃および長期神経学的欠損に焦点を置いて、BM/BMEMの臨床病理学的特徴、治療および結果を報告する

動物:蓄膿がないBM/BMEMと診断された24頭の飼い犬

方法:2010年1月から2020年8月までの5か所の獣医紹介病院から、BM/BMEMと診断された犬の遡及的ケースシリーズ

結果:24頭の犬を含めた。臨床症状の継続期間中央値は2日(範囲≦24時間-30日)で、記録された症状は発熱(3)および頸部の知覚過敏(10)だった。神経学的欠損は18頭の犬で存在し、精神状態の変化(12)、運動失調(8)、歩行不能状態(8)、斜頸(8)、脳神経欠損(13)が含まれた。細胞内細菌は、15/24頭の脳脊髄液(CSF)解析で認められ、CSFの細菌培養陽性は8/21頭だった。中耳炎/内耳炎(OMI)は15/24頭で診断され、そのうち6/15頭は全耳道切除と側方鼓室胞切開を行った。20頭の犬は生存して退院した。抗生物質投与期間の中央値は8週間(範囲、2-16週間)だった。グルココルチコイドは15頭の犬に投与した。フォローアップの中央値は92日(範囲、10-2233日)だった。残存した神経学的欠損は9頭で報告され、1症例は再燃を疑われた。

結論と臨床的重要性:BM/BMEMの犬の臨床症状は不定で、細菌感染の病巣はOMIのことが多く、ほとんどの犬は治療で完全回復する。(Sato訳)
■推定的下垂体卒中の犬26頭:臨床所見、治療、結果
Presumed pituitary apoplexy in 26 dogs: Clinical findings, treatments, and outcomes
J Vet Intern Med. 2023 Apr 21.
doi: 10.1111/jvim.16703. Online ahead of print.
Christian W Woelfel , Christopher L Mariani , Michael W Nolan , Erin K Keenihan , Sophia P Topulos , Peter J Early , Karen R Muñana , Sarah E Musulin , Natasha J Olby

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背景:下垂体卒中は、下垂体内の出血あるいは梗塞を指し、急性神経異常を起こす。この状況は犬であまり述べられていない。

目的:下垂体卒中の犬の主訴、検査所見、内分泌障害、MRI、治療、結果を述べること

動物:神経学的機能不全を急に起こした飼い犬26頭

方法:回顧的ケースシリーズ。急性神経学的機能不全を伴い、MRIあるいは組織病理学的に出血あるいは梗塞のエビデンスがある鞍内あるいは鞍上マスが認められた場合、下垂体卒中と診断した。臨床的情報は、医療記録および画像報告から入手した。

結果:一般的な主訴は、精神状態の変化(16/26、62%)、消化管機能不全(14/26、54%)が含まれた。歩様あるいは姿勢の変化(22/26、85%)、精神状態の変化(18/26、69%)、脳神経障害(17/26、65%)、頸部あるいは頭部痛覚過敏(12/26、46%)、高体温(8/26、31%)が頻度の高い検査所見だった。10頭(38%)の犬は、受診前に内分泌障害のエビデンスがなかった。一般的なMRI所見は出血病変のT1強調低-等信号(21/25、84%)、下垂体マス病変の周囲増強(15/25、60%)、脳ヘルニア(14/25、56%)、閉塞性水頭症(13/25、52%)が含まれた。15頭(58%)は生存して退院した。それらの犬の7頭は内科治療単独(生存期間中央値143日;範囲、7-641日)で、8頭は内科治療と放射線治療を受けた(生存期間中央値973日;範囲、41-1719日)。

結論と臨床的重要性:下垂体卒中の犬は、種々の神経学的疾患の急性症状と不定な内分泌機能障害を呈する。生存して退院した犬は、良好な結果となり得る。(Sato訳)
■前庭疾患に関係する悪心を伴う犬に対するオンダンセトロン:二重盲検無作為化対照交差試験
Ondansetron in dogs with nausea associated with vestibular disease: A double-blinded, randomized placebo-controlled crossover study
J Vet Intern Med. 2022 Jul 29.
doi: 10.1111/jvim.16504. Online ahead of print.
Lea Henze , Sarah Foth , Sebastian Meller , Friederike Twele , Marios Charalambous , Hannah Kenward , Jonathan Elliott , Ludovic Pelligand , Holger A Volk

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背景:犬の急性の前庭系機能不全の他の症状の中で、悪心と嘔吐は一般的な症状である。現在、マロピタントやメトクロプラミドのような制吐薬が一般に使用されるが、悪心をコントロールしているとは思えない。非対照予備試験では、前庭症候群の犬の悪心に対し、オンダンセトロンのような5-HT3-受容体拮抗薬の良好な効果を示唆している。

目的:前庭症候群の犬の悪心を示唆する振る舞いに対し、オンダンセトロンの効果を評価し、確認する

動物:神経科を受診した前庭症候群と悪心の臨床症状のある14頭の犬

方法:対照、二重盲検、交差試験。作成した数字で表す評価スケールを用い、1時間ごとに4時間まで行動評価を実施した。基準の流涎、唇をなめる、発声、落ち着きがない、嗜眠、一般的な悪心にスコアを付けた。嘔吐の発生を記録した。T0(投与前)とオンダンセトロン(0.5mg/kg)あるいはプラセボを静脈注射後、T2(投与後2時間目)でスコアを付けた。投与後2時間で処置を交代した。過去に悪心の臨床症状との相関を示されている血清アルギニンバソプレッシン(AVP)濃度の測定のために採血を行った。

結果:悪心の臨床的解消は、オンダンセトロン投与後1時間で観察されたが、血清AVP濃度は、投与後4時間で低下した。

結論と臨床的重要性:オンダンセトロンの静脈投与は、急性前庭症候群による悪心のある犬に対し有益である。オンダンセトロンは実質的に急速に悪心行動の臨床症状を減少させ、嘔吐を止めた。(Sato訳)
■健康な犬の脊髄反射に対するメデトミジン、ミダゾラム、ケタミン、プロポフォール、イソフルランの影響
Effect of medetomidine, midazolam, ketamine, propofol and isoflurane on spinal reflexes in healthy dogs
Vet Med Sci. 2022 Sep 9.
doi: 10.1002/vms3.938. Online ahead of print.
Donya Saberfard , Ali Asghar Sarchahi , Hossein Kazemi Mehrjerdi

背景:時に、脊髄傷害の動物を検査するため、鎮静あるいは全身麻酔でさえ使用が必要となる。それらの薬剤は、脊髄反射に影響を及ぼし、神経学的検査の結果を変えるかもしれず、また、病変の位置を診断するのが困難になるかもしれない。

目的:この研究の目的は、犬の脊髄反射に対し病院でよく使用される5種類の前麻酔薬および麻酔薬の影響を評価することだった。

方法:10頭の健康な成犬を3群に参加させた。全ての群で、犬にメデトミジンとミダゾラムで前処置を行った;その後、1群はケタミン、2群はプロポフォール、3群はイソフルランで麻酔を導入した。注射前、メデトミジン注射後15分、ミダゾラム注射後20分、麻酔導入後15、30、45、60分で脊髄反射を評価した。

結果:メデトミジンは単シナプス反射(膝蓋骨および前脛骨反射)を減ずることはなかったが、それらを増加させた一方で、多シナプス足引っ込め反射に対し影響はなかった。ミダゾラムは脊髄反射に影響はなかった。ケタミンは膝蓋骨、前脛骨、橈側手根伸筋反射に影響はなかったが、多シナプス疼痛関連反射を減じた。プロポフォールとイソフルランは全ての脊髄反射を消滅させた。

結論:メデトミジン、ミダゾラム、ケタミンは単シナプス反射(膝蓋骨および前脛骨反射)を減ずる影響はなく、病院で落ち着かない動物の神経学的検査に使用されるかもしれない。プロポフォールとイソフルランは、全ての脊髄反射反応を消滅させ、神経学的検査に適していない。(Sato訳)
■遺伝的にリスクのあるパグにおいて壊死性髄膜脳炎の潜在的早期臨床的表現型
A potential early clinical phenotype of necrotizing meningoencephalitis in genetically at-risk pug dogs
J Vet Intern Med. 2022 May 27.
doi: 10.1111/jvim.16444. Online ahead of print.
Rebecca Windsor , Samuel Stewart , Jessica Schmidt , Mario Mosqueda , Ignazio Piras , Stefan M Keller , Briana Steinmetz , Dori L Borjesson , Matthew Huentelman , Chand Khanna

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背景:パグの壊死性髄膜脳炎(NME)は、急速に進行し、従来の免疫抑制療法への反応が悪い致死的神経炎症性疾患である。一般的に診断は、重度神経異常が現れた後になされる。

仮説/目的:NMEの遺伝的リスクのあるパグは、NMEの特徴的な臨床症状を発症する前に、神経学的異常を表すかもしれない。

動物:NMEに対して無症候性の4歳以下のパグ36頭

方法:生殖系列ゲノムワイド遺伝子型決定を伴う前向き観察コホート研究。中枢神経系疾患の再現性所見を証明するため、神経学的検査を4週間あけて実施した。MRI、脳脊髄液分析、感染性疾患の検査を、神経学的検査上で検出された再現性異常のある全てのパグで実施した。

結果:この集団で全体の対立遺伝子頻度のリスクは、40%だった;NMEに対し5頭(14%)はハイリスク、19頭(53%)は中間リスク、12頭(33%)は低遺伝子リスクだった。神経学的検査上で検出された再現性異常は遺伝子的リスクのある犬8/24(33%)、低リスク犬で0/12(0%)だった。臨床的異常は、多病巣性脊髄痛8/8、威嚇反応低下5/8、姿勢反応欠損の片側化5/8頭が含まれた。遺伝子型リスクとこの臨床的表現型の存在との間に強い関係があった(P=.03)。

結論と臨床的重要性:我々の所見は、明らかに無症候性の遺伝的リスクのあるパグにおいて、NMEの新しい早期臨床的表現型の存在は、早期診断および治療的臨床試験を計画するために使用できるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の特発性全身性振戦症候群
Idiopathic generalised tremor syndrome in dogs
Vet Rec. 2022 Jun 14;e1734.
doi: 10.1002/vetr.1734. Online ahead of print.
Stephanie Phillipps , Steven DeDecker , Rodrigo Gutierrez-Quintana , Emili Alcoverro , Sergio A Gomes , Rita Goncalves

背景:特発性全身性振戦症候群(IGTS)は、振戦を引き起こし、前庭小脳性症状を起こすことも多い。犬のIGTSに対する過去の発表は症例報告に制限があり、あるいは構造上の原因が除外されていないものである。

方法:脳のMRI検査を行っているIGTSと診断された犬75頭の医療記録を回顧的に集めた。

結果:雑種犬が最も多く(41.3%)、続いてウエスト・ハイランド・ホワイトテリア(14.7%)、コッカスパニエル(10.7%)が罹患した。オスよりもメスが高い比率で罹患した(68.0%)。罹患した犬の年齢中央値は17か月(範囲6-121か月)で、体重の中央値は9.15kg(範囲2.9-26kg)だった。全ての犬は振戦を呈し、ほとんどが神経学的症状の付随を経験した(93.3%)。17頭(22.7%)は高体温、31頭(41.3%)は消化器症状があった。ほとんどの症例の脳のMRI検査は正常で、脳脊髄液検査は軽度の髄液細胞増加を認めることが多かった。

全ての犬はプレドニゾロンで治療し、39頭(51.3%)はジアゼパムも投与した。フォローアップ期間の中央値は13か月(範囲0-134か月)だった。総体的に結果は良好だったが、16頭(21.3%)は臨床症状の再発が報告され、10頭(13.2%)は軽度の臨床症状の持続を経験した。

結論:IGTSは全身性振戦と前庭小脳性症状がある全ての犬で、一般的によく罹患するより若くより小型の犬で疑うべきである。(Sato訳)
■犬の中枢神経系の炎症性疾患:イングランドの回顧的研究(2010-2019)
Inflammatory Disease Affecting the Central Nervous System in Dogs: A Retrospective Study in England (2010-2019)
Front Vet Sci. 2022 Jan 27;8:819945.
doi: 10.3389/fvets.2021.819945. eCollection 2021.
Rita Gonçalves , Steven De Decker , Gemma Walmsley , Sarah Butterfield , Thomas W Maddox

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犬の中枢神経系(CNS)に影響する炎症性疾患の疫学は十分わかっていない。

犬のCNSに影響する炎症性疾患の異なる原因の相対比率を報告することと、脳及び脊髄に影響する最も一般的な疾患に対する予測因子、感染vs.免疫介在性の状況に対する予測因子を確認する。

これは、10年間2か所の紹介病院で、リスクファクターの確認に多変量及び多項ロジスティック回帰を用いた回顧的コホート研究だった。

CNSに影響する炎症性疾患と診断された計1140頭の飼い犬を含めた。15の異なる診断が確認され、免疫介在性(83.6%)疾患は、感染性疾患(16.4%)よりも一般的だった。最もよく診断された免疫介在性疾患は、起源不明の髄膜脳炎(47.5%)、ステロイド反応性髄膜炎-動脈炎(30.7%)で、感染性疾患では椎間板脊椎炎(9.3%)、耳原性頭蓋内感染(2.2%)だった。

より高い年齢(p < 0.001, OR = 1.019, 95% CI: 1.014-1.024)、より重い体重(p < 0.001, OR = 1.049, 95% CI: 1.025-1.074)、オス犬(p = 0.009, OR = 1.685, 95% CI: 1.141-2.488)、受診までのより長い期間の臨床症状持続(p < 0.001, OR = 1.011, 95% CI: 1.006-1.017)、臨床症状の進行性(p < 0.001, OR = 2.295, 95% CI: 1.463-3.599)、潜在的に関係した先行事象の確認(p = 0.0012, OR = 1.93, 95% CI: 1.159-3.213)、受診時の知覚過敏(p < 0.001, OR = 2.303, 95% CI: 1.528-3.473)は感染性疾患の診断と関係した。

我々のデータは犬の炎症性CNS疾患の原因として、感染性疾患よりも免疫介在性疾患の方がより一般的であると示す。最も一般的な診断に対するリスクファクターは、それらを調査する臨床医のガイドとなる有用な情報を提供するため、シグナルメント、病歴、身体および神経学的検査所見から確認された。(Sato訳)
■後天性ナルコレプシーが疑われた8頭の犬
Suspected acquired narcolepsy in 8 dogs
J Vet Intern Med. 2021 May;35(3):1448-1454.
doi: 10.1111/jvim.16116. Epub 2021 May 7.
Koen M Santifort , Edward J Ives , Joe Fenn , Francesca Raimondi , Filipa Lourinho , Paul J J Mandigers , Niklas Bergknut

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背景:獣医療で後天性ナルコレプシーは報告されることは珍しい

目的:後天性ナルコレプシーが疑われる犬の症状、臨床病理学的特徴、診断画像検査所見、管理を述べる

動物:後天性ナルコレプシーに一致する臨床的特徴を示す犬8頭

方法:オンラインで後天性ナルコレプシーが疑われる症例を募集し、潜在的症例の詳細な医療記録の回顧的再調査を行った。委員会認定獣医神経医による検査中、脳のMRIを含む診断作業と脳脊髄液の分析中にカタプレクシーに一致する事象が存在する犬を含めた。

結果:7頭のフレンチブルドッグと1頭のチワワ(年齢範囲、9-66か月)を含めた。起源不明の髄膜脳炎を2頭で診断し、炎症の頭蓋外病巣が2頭で確認され(吸引性肺炎、食道炎、中耳炎)、4頭は診断検査で異常が見つからなかった。全ての犬の治療にプレドニゾロンが使用され、6頭はイミプラミンが投与され、2頭はシトシンアラビノシドが投与された。症状の初期寛解は全ての犬で観察されたが、その後臨床症状の再発が4頭で記録され、そのうち3頭は治療の調節あるいは再開に反応した。

結論と臨床的重要性:カタプレクシー発現の存在で、頭蓋内(および頭蓋外)の病態の存在を除外する完全な診断作業を促すべきである。推定後天性症例における症状の寛解および再燃、両方に対する可能性は、認識している臨床医およびオーナーにとって重要である。(Sato訳)
■ラフォラ病の28頭のビーグルの臨床症状の回顧的ケースシリーズ
A retrospective case series of clinical signs in 28 Beagles with Lafora disease
J Vet Intern Med. 2021 Sep 5.
doi: 10.1111/jvim.16255. Online ahead of print.
Thomas Flegel , Marion Kornberg , Franziska Mühlhause , Sophie Neumann , Andrea Fischer , Franziska Wielaender , Florian König , Akos Pakozdy , Pia R Quitt , Andrea N Trapp , Konrad Jurina , Frank Steffen , Kai W Rentmeister , Cornelia Flieshardt , Josephine Dietzel

背景:ラフォラ病のビーグルの臨床症状およびその進行はあまり述べられていない。

目的:ラフォラ病のビーグルの臨床症状を述べる

動物:遺伝検査あるいは病理組織検査で確認されたラフォラ病の28頭のビーグル

方法:回顧的多施設症例シリーズ。シグナルメント、臨床症状、診断検査、治療に関するデータを病院のデータファイルから抜き出した。神経学的障害、認知機能の変化、行動学的変化、治療への反応、生存期間についてのアンケートをオーナーに送付した。

結果:臨床症状の発現は、8.3歳(平均;範囲、6.3-13.3)だった。全ての犬は、強直間代性発作の初期臨床症状(n=11/28;39%)および遅発性強直間代性発作(n=12/28;43%)のようなミオクローヌスの事象があった。協調の欠如(n=21/25;84%)、視力障害(n=15/26;58%)、聴覚障害(n=13/26;50%)は遅れて発症した。精神的低下は、ハウストレーニングの喪失(排尿;n=8/25;32%)、学んだタスクの実行困難(n=9/25;36%)、新しいタスクの学習困難(n=7/23;30%)として観察された。一般的な行動変化は:光感受性の増加(n=20/26;77%)、空間を凝視する(n=16/25;64%)、ストレス抵抗性の低下(n=15/26;58%)、騒音感受性の増加(n=14/26;54%)、分離不安(n=11/25;44%)だった。この文献の執筆中、21頭は生存し(年齢中央値11.9歳;範囲9.8-18.6)、7頭は死亡していた(平均年齢12.1歳;SD:1.3;範囲、10.5-12.6)。

結論と臨床的重要性:ビーグルのラフォラ病は、重要な行動変化、精神的低下、神経学的障害に加えミオクローヌスの自傷および全身性強直間代性発作を引き起こす。それでも、比較的正常な寿命が予測できる。(Sato訳)
■犬の入院変数と脳ヘルニアの関連の回顧的評価(2010-2019):54症例
Retrospective evaluation of the relationship between admission variables and brain herniation in dogs (2010-2019): 54 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2021 Oct 5.
doi: 10.1111/vec.13147. Online ahead of print.
Jiwoong Her , Amy B Yanke , Katherine Gerken , Jin Yoon , Ashley Antonia Peters , Erik Hofmeister , Lenore M Bacek , Kendon W Kuo

目的:脳ヘルニアがある犬とない犬の入院中収縮期血圧(SBP)、心拍数(HR)、修正グラスゴーコーマスケール(MGCS)スコアを記録し、脳ヘルニアとそれらの関連を調べる

デザイン:2010年から2019年の間の回顧的研究

場所:大学獣医教育病院

動物:MRIで判定した脳ヘルニアの飼育犬44頭とコントロール群の飼育犬40頭

介入:なし

測定値と主要結果:医療記録からSBP、HR、MGCSスコアと結果を抽出した。MGCSスコアは情報が適切に入手できた犬の最初の神経学的検査を基に算出した。コントロール犬に比べ、脳ヘルニアの犬はSBPが有意により高く(P=0.0078)、SBP-HR差がより大きく(P=0.0006)、MGCSスコアがより低かった(P<0.0001)。カットオフ値がSBP≧178mmHg、SBP-HR≧60、MGCSスコア≦14で、特異性が90%-98%である。SBP>140mmHgとHR<80回/分の組み合わせで、脳ヘルニアと診断した犬の感受性24%、特異性100%だった(P<0.0001)。

結論:高SBP、SBPとHRの差がより大きい、より高いSBPと低いHRの組み合わせ、低MGCSスコアは、入院時の神経症状を呈する犬の脳ヘルニアに関係した。それらの異常の早期認識は、獣医師が脳ヘルニアを疑う助けとなり、タイムリーな治療の決断に役立つかもしれない。(Sato訳)
■脳血管疾患の疑いがある犬の特徴と結果:66症例(2009-2016)
Characteristics and outcome of suspected cerebrovascular disease in dogs: 66 cases (2009-2016)
J Small Anim Pract. 2021 Sep 29.
doi: 10.1111/jsap.13422. Online ahead of print.
T Ozawa , N Miura , H Hasegawa , T Uemura , Y Nakamoto , M Tsujio , T Takeuchi , M Shiraishi

目的:脳血管疾患の疑いがある犬の臨床症状を述べる

素材と方法:1つの病院で2009年11月から2016年12月まで、医療記録から脳血管疾患(CVD)を経験した犬を検索した。著者らは急性発現、臨床症状、MRI所見を基に脳血管疾患を診断した。病歴、臨床症状、併発疾患、梗塞領域、脳脊髄液検査結果、発現した月、転帰を脳血管疾患群とコントロール群(脳血管疾患以外の脳障害の犬)で調査した。

結果:合計122頭のCVD症例が、研究期間中に受診した5312頭から見つかった。122頭のうち66頭(1.2%)がこの研究の対象選択基準にマッチし、分析に含めた。前脳梗塞は66頭中51頭で観察され、そのうち24頭(47.1%)は発作を経験した。脳血管疾患と診断された犬の頭数は、8月(9/59頭)と12月(13/59頭)で不相応に高かった。結果の調査で、55頭中11頭に悪化が観察された。

臨床意義:脳血管疾患の犬で発作は重要な臨床症状の1つである。日本において、脳血管疾患と診断された犬の頭数には、有意な季節的変化があった。この報告で観察された臨床的特徴は過去の報告とは異なり、この領域における追加調査の必要性が強調される。(Sato訳)
■前庭症候群の犬における吐き気のオンダンセトロンによる治療
The use of ondansetron for the treatment of nausea in dogs with vestibular syndrome
BMC Vet Res. 2021 Jun 21;17(1):222.
doi: 10.1186/s12917-021-02931-9.
S Foth 1, S Meller , H Kenward , J Elliott , L Pelligand , H A Volk

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背景:前庭症候群は吐き気を伴うことが多い。現在、その治療に良いとされる薬剤は、吐き気ではなく、嘔吐を止めるために開発されている。吐き気を抑制する5-HT3受容体拮抗薬の効果は、化学療法で述べられているが、前庭障害による二次的な吐き気では述べられていない。

方法:吐き気に関連する前庭症候群の犬16頭を、オープンラベル多施設研究に含めた。吐き気のような振る舞いの強さを、オンダンセトロン投与(0.5mg/kg i.v.)前と2時間後に確認された5ポイントスケールで分析した。流涎、唇をなめる、落ち着きがない、発声、嗜眠および嘔吐の発生と頻度を評価した。

結果:全ての犬は最初に吐き気の症状を示したが、嘔吐を示したのは31%の犬だけだった。全ての犬の吐き気の強さは、オンダンセトロン投与から2時間目に有意に低下し(p≦0.0001)、11頭で分析した発声(p>0.9999)を除く吐き気の症状(流涎(p=0.0078)、唇をなめる(p=0.0078)、落ち着きがない(p=0.0039)、嗜眠(p=0.0078))が含まれた。

結論:この結果は、全ての研究した犬において見られた吐き気の治療において、オンダンセトロンの潜在的有効性の予備的エビデンスを提供する。嘔吐は5頭にのみ観察され、吐き気は単独で発生する可能性を示し、嘔吐中枢の先行する刺激としてのみ認知するべきではない。(Sato訳)
■神経膠腫の犬の臨床的特徴、診断、生存性解析
Clinical features, diagnosis, and survival analysis of dogs with glioma
J Vet Intern Med. 2021 Jun 12.
doi: 10.1111/jvim.16199. Online ahead of print.
Roberto José-López , Rodrigo Gutierrez-Quintana , Cristian de la Fuente , Edgar G Manzanilla , Anna Suñol , Dolors Pi Castro , Sonia Añor , Daniel Sánchez-Masian , Francisco Fernández-Flores , Emanuele Ricci , Katia Marioni-Henry , Joan Mascort , Lara A Matiasek , Kaspar Matiasek , Paul M Brennan, Martí Pumarola

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背景:犬の神経膠腫はあまりよく分かっていない

目的:比較脳腫瘍コンソーシアム診断的分類を用い、神経膠腫の犬の大規模サンプルの臨床病理所見、診断的画像検査の特徴、生存性の特徴を述べる

動物:神経膠腫と病理組織学的に診断された91頭の犬

方法:多施設回顧的ケースシリーズ。シグナルメント、臨床病理所見、診断的画像検査の特徴、治療、結果を使用した。新しい犬の神経膠腫の診断シェーマに従い腫瘍を再分類した。

結果:臨床病理所見、生存性と腫瘍のタイプあるいはグレードに関連は見つからなかった。しかし、根治的治療(84日;95%CI、45-190)は、保存療法(26日;95%CI、11-54)と比べて生存期間中央値を有意に改善した(P=.03)。MRI検査において、乏突起膠腫は星状細胞腫(それぞれOR、42.5;95%CI、2.42-744.97;P=.04;OR、45.5;95%CI、5.78-333.33;P<.001)や未定義神経膠腫(それぞれOR、84;95%CI、3.43-999.99;P=.02;OR32.3;95%CI、2.51-500.00;P=.008)と比べ、滑らかなマージンと関係し、T1協調運動低信号で、一般に星状細胞腫よりも脳室に接していた(OR、7.47;95%CI、1.03-53.95;P=.049)。隣接の脳構造への腫瘍の広がりは、高グレード神経膠腫と関連した(OR、6.02;95%CI、1.06-34.48;P=.04)。

結論と臨床的重要性:神経膠腫の犬の予後は悪いが、生存解析で確認されたリスクファクターは、予後をインフォームし、新しく確認したMRIの特徴は、腫瘍タイプとグレードの診断をさらに正確にできる。(Sato訳)
■プレドニゾロンとシクロスポリンで治療した原因不明の髄膜脳脊髄炎の犬の再発と生存期間
Survival time and relapse in dogs with meningoencephalomyelitis of unknown origin treated with prednisolone and ciclosporin: a retrospective study
Aust Vet J. 2020 Aug 13.
doi: 10.1111/avj.12994. Online ahead of print.
S L Brady , A P Woodward , Mar le Chevoir

目的:プレドニゾロンとシクロスポリンで治療した起源不明の髄膜脳脊髄炎(MUO)の仮診断を受けた犬の結果を解析することと、生存期間と再発率に対する犬の変数の数の影響を調べること

デザイン:回顧的ケースシリーズ

方法:2010年6月から2018年1月までに1施設において、プレドニゾロンとシクロスポリンで治療したMUOの飼育犬40頭の医療記録を回顧的に再調査し、生存期間と死亡/再発に対する予後指標を評価した。最短のフォローアップ期間は診断後11か月だった。

結果:生存期間中央値は1345日(95%CI:487-∞)だった。死亡あるいは再発の危険に、多病巣MRI異常、後頭蓋窩のMRI異常、診断時の脳脊髄液の総有核細胞数あるいは総蛋白値、診断時の脳圧上昇の疑いの関連はなかった。

結論:プレドニゾロンとシクロスポリンを併用した治療で長期生存を達成できるかもしれない。この集団で、診断時の脳圧上昇の疑いは、長期結果に影響しなかった。(Sato訳)
■原因不明の髄膜脳脊髄炎の犬におけるミコフェノール酸モフェチルとプレドニゾロンの併用治療の評価:86頭の回顧的研究(2009-2017)
Evaluation of Treatment With a Combination of Mycophenolate Mofetil and Prednisolone in Dogs With Meningoencephalomyelitis of Unknown Etiology: A Retrospective Study of 86 Cases (2009-2017)
BMC Vet Res. 2020 Jun 12;16(1):192.
doi: 10.1186/s12917-020-02414-3.
Joong-Hyun Song , Do-Hyeon Yu , Hee-Chun Lee , Tae-Sung Hwang , Young Joo Kim , Su-Jin An , Dong-In Jung

背景:原因不明の髄膜脳脊髄炎(MUE)に対し、グルココルチコイドと補助的免疫調節剤の併用療法は、一般に標準治療法として受け入れられている。著者らは補助剤としてミコフェノール酸モフェチル(MMF)とグルココルチコイドによる治療は、MUEの犬において効果的でよく許容するプロトコールだろうと仮説を立てた。

2009年5月から2017年6月の間のMUEの犬86頭を含めた(メス59頭、オス27頭;平均年齢5.93歳;平均体重3.83kg)。MMFとプレドニゾロンで治療したMUEの犬の医療記録を評価し、治療反応、生存期間、治療に関する副作用を調べた。

結果:部分あるいは完全奏功(CR)が75頭の犬で記録された。治療開始から総生存期間中央値は558日だった。治療期間中(診断から死亡まで)再燃がなくCRを示した犬は、生存期間中央値が有意に長かった。CRに達しなかった犬は4.546の有意に高い死亡ハザード比を記録した。臨床徴候と臨床症状の発症の間隔は、CR、再発率、生存期間と有意な関係はなかった。副作用は消化器の不調26頭(30.23%)、散発的な感染17頭(19.77%)、膵炎7頭(8.14%)だった。

結論:MUEに対する補助的MMF治療は安全で、他の免疫抑制プロトコールに匹敵すると結果は示唆する。管理を成功させるには、CRの達成と再発の予防に治療の焦点を当てるべきである。(Sato訳)
■衝動性眼球振動の犬4頭と猫1頭
Saccadic oscillations in 4 dogs and 1 cat.
J Vet Intern Med. July 2018;32(4):1392-1396.
DOI: 10.1111/jvim.15144
Edward J Ives , Edward MacKillop , Natasha J Olby

衝動性眼球運動のコントロールに影響する障害は、不随意衝動性眼球振動を起こし、人医で広く報告されている。獣医療で衝動性眼球振動の発生や潜在的意義に関する情報は今のところ限られている。

オプソクローヌスに一致する不随意眼球運動を示す3頭の犬と1頭の猫の病歴を提示し、特発性全身性振戦症候群と神経セロイドリポフスチン沈着(NCL)の最終診断を得た。macrosaccadic oscillationsに非常に似ている眼球運動がある1頭の犬も提示し、NCLの最終診断を得た。全ての動物には小脳疾患の臨床症状があった。

人医のように、不随意眼球運動のそれらの形式の認識は、小脳の神経解剖学的局在を示唆する。

オプソクローヌスおよびmacrosaccadic oscillationsは獣医療で認識されず、実際より報告の少ない不随意衝動性眼球運動の形式である。(Sato訳)
■頭蓋内膿瘍と診断された犬の臨床症状、MRI所見、転帰の回顧的評価(2008-2015):9症例
Retrospective evaluation of the clinical presentation, magnetic resonance imaging findings, and outcome of dogs diagnosed with intracranial empyema (2008-2015): 9 cases.
J Vet Emerg Crit Care. July 2019;29(4):431-438.
DOI: 10.1111/vec.12859
Alexander K Forward , Ioannis N Plessas , Sérgio Guilherme , Steven De Decker

目的:頭蓋内膿瘍の犬において、臨床症状、高度画像診断所見、短期および長期結果を述べる

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:頭蓋内膿瘍と診断された飼育犬

方法:2か所の二次診療施設の医療記録から頭蓋内膿瘍と診断された犬を検索した。この研究に含めるため、以下3つの組み込み基準のうち1つ以上満たした犬とした:MRI検査で膿瘍を示唆する脳実質外物質の蓄積が腔を占める、膿瘍を示唆する脳脊髄液分析、頭蓋内手術中の膿の直接視認。

結果:頭蓋内膿瘍の犬9頭が含まれ、年齢中央値は3.5歳(範囲:4か月-12.5歳)だった。全頭緊急来院し、9頭中7頭は神経学的異常を示し、9頭中2頭は眼球後腫脹と眼球突出を示した。6頭は外科処置、1頭は内科で管理し、残り2頭は安楽死された。典型的なMRI所見は、灰白質と比較して脳実質外のT1強調で低-等信号、T2強調で高信号物質が含まれ、様々な程度のコントラスト増強があり、8頭中6頭はMRIで隣接した構造からの連続感染の所見を示した。
7頭の犬で、1つ以上のサンプルを培養と感受性試験に提出し、エンテロコッカス(サージカルスワブ)、ストレプトコッカス・ニューモニア(脳脊髄液)、コアグラーゼ陽性スタフィロコッカス(耳のスワブ)が培養された。抗生物質治療の期間中央値は6週間(範囲:2-28週)だった。治療を試みた全頭退院し、入院期間中央値は7日(範囲:4-10日)だった。7頭中4頭(1頭はフォローアップできず、2頭は他の理由で安楽死)はこの文献の執筆中も生存し、4頭は神経学的に正常と思われ、長期結果は良好だった。

結論:犬の頭蓋内膿瘍はまれな状況ではあるが、適切に治療した症例は良好な結果が得られる可能性がある。(Sato訳)
■神経疾患の犬において小脳延髄と腰部脳脊髄液分析の比較
Comparison of cerebellomedullary and lumbar cerebrospinal fluid analysis in dogs with neurological disease.
J Vet Intern Med. 2020 Jan 18. doi: 10.1111/jvim.15700. [Epub ahead of print]
Lampe R, Foss KD, Vitale S, Hague DW, Barger AM.

背景:脳脊髄液(CSF)分析は、神経疾患の犬の基礎疾患プロセスの分類に役立つ。従来、CSFは病変の尾側で採取するべきだと言われている。しかし、この主張を正しいとするエビデンスはあまりない。

仮説と目的:神経疾患の評価で来院した犬で、小脳延髄(CM)と腰椎槽から採取したCSFの臨床病理学的違いを評価する

動物:神経疾患を調べるため、MRI検査とCSF採取を行う51頭の飼育犬

方法:全ての犬で、脳脊髄液をCMおよび腰椎槽から前向きに採取した。総蛋白(TP)濃度、赤血球(RBC)数、総有核細胞数(TNCC)を採取から30分以内に分析した。結果と細胞所見を1人の病理学者が解釈した。

結果:51のペアサンプルを採取した。TNCC(P<0.001)、RBC(P<0.001)、TP(P<0.001)は採取部位で異なった。神経障害部位でグループ分けした時、TP(頭蓋内、P<0.001;頸部、P<0.001;胸腰部、P<0.001)とRBC数(頭蓋内、P<0.001;頸部、P≦0.002;胸腰部、P=0.006)は有意に差があった。TNCCは頸部(P=0.04)および胸腰部(P=0.004)病変位置で有意差があったが、頭蓋内(P=0.30)ではなかった。66.7%(34/51)の症例で、採取部位により病理学者の解釈は異なった。

結論:脳あるいは頸部脊髄に病変のある犬において、CMと腰椎槽の両方から液を採取することに臨床的利点があるかもしれない。胸腰部脊髄障害の犬において、CM槽から採取したCSFは、基礎疾患プロセスを表さないかもしれない。(Sato訳)
■起源不明の猫髄膜脳脊髄炎:16症例の回顧的解析
Feline meningoencephalomyelitis of unknown origin: A retrospective analysis of 16 cases.
Can Vet J. October 2017;58(10):1073-1080.
Arianna Negrin , Sarah Spencer , Giunio Bruto Cherubini

原因不明の猫の髄膜脳脊髄炎(feline meningoencephalomyelitis of unknown origin:FMUO)のシグナルメント、臨床症状、MRI所見、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)分析、治療、結果を述べる。

CSF細胞増加症、CSFのPCR-感染性疾患結果陰性、特徴的MRI所見の組み込み基準に合った16頭の猫の医療記録を回顧的に検討した。

年齢中央値は9.4歳だった。臨床症状は運動失調、固有感覚欠如、発作、脊髄の知覚過敏が含まれた。CSFの有核細胞数は増加し(中央値70.7個/μL)、16頭中15頭で主に混合細胞増加症とCSF蛋白濃度が上昇していた。MRI検査で13頭に実質内浸潤の境界不明な病変が見られた。

全ての猫はコルチコステロイドベースの治療プロトコールを受けた;追加の治療は、ロムスチン、シタラビン、抗痙攣薬が含まれた。再検査時に12頭中5頭に軽度の神経症状が記録されたが、7頭は正常だった。

これは猫のMUOの最初の研究で、不定な神経症状の猫において重要な鑑別診断の1つとしてFMUOが強調される。免疫調節両方で予後は良好と思われる。(Sato訳)
■手持ち耳音響放射スクリーナーを用いた子犬の聴覚障害の検出
Detection of Deafness in Puppies Using a Hand-Held Otoacoustic Emission Screener.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2017 Jul/Aug;53(4):198-205.
Michael H Sims , Erin Plyler , Ashley Harkrider , Karen McLucas

この研究の目的は、子犬の聴覚障害の検出において手持ち耳音響放射スクリーナーの使用を評価することだった。特に様々な犬種、6-10週齢の34頭の子犬(両性別)から歪成分耳音響放射を記録し、同子犬から記録した聴覚脳幹誘発電位(brainstem auditory evoked responses:BAER)とその結果を比較した。

起きている、あるいは軽く麻酔をかけた子犬の両耳から記録を入手し、各耳からの結果を比較した。

正常なBAERsだった全て62の耳のうち、歪成分耳音響放射スクリーナーは“Pass”の反応だった。片耳あるいは両耳でフラットなBAER記録の3頭の子犬はスクリーナー結果“Reffer”だった。異常なBAERs(振幅減少と潜伏延長の波形)とスクリーナーで“Refer”反応の2つの耳で、1つの外耳道にぎっしりと詰まった壊死組織片があり、別の耳道は正常だった。

スクリーナー技術はヒトの乳児での応用を証明しており、使用の費用と容易さから子犬のBAER検査の魅力的な代替法である。(Sato訳)
■ラブラドールレトリバーとジャックラッセルテリアの犬の発作性運動障害の自然史
Natural history of canine paroxysmal movement disorders in Labrador retrievers and Jack Russell terriers.
Vet J. July 2016;213(0):33-7.
Mark Lowrie , Laurent Garosi

犬の発作性ジスキネジア(paroxysmal dyskinesia:PD)の典型的な疾患進行の描写は、臨床試験中の治療薬の評価の助けとなるかもしれない。
我々の目的は、PDの診断を受け薬剤投与を受けていない集団で、自然な疾患経過を確認することだった。

臨床的にPDと確認され、3年以上経過観察できた59頭の犬(36頭ラブラドール、23頭JRTs)を回顧的に再調査した。

若く発現したPDの犬は、驚愕あるいは突然の動きに誘発され、オスに偏り(75%)、多くは全体のサンプル集団になった。21頭(36%)は、群発エピソードからなる1つ以上の事象があった。自傷の持続時間と頻度は、1個体においても劇的に変化した。経過観察中央値は7年だった。調査したどの犬にも併発疾患は確認されなかった。その自然史は自己限定で32%は寛解、75%は改善した。ラブラドールとJRTsそれぞれ、頻度と持続時間に関し事象は減少した。群発がない犬よりある犬で寛解は低かった。

神経学的欠損がなく、映像素材とPDを支持する病歴データがある犬において、高度神経画像処理法の診断利益は低いとそれらの所見は示唆する。群発エピソードの存在は、犬PDの予後に対する予測値である。

更なる研究において、この研究で述べられた未治療の犬において、自発性寛解率や改善を最初に考慮しないPDに対し、治療反応を報告する時には注意すべきである。(Sato訳)
■原因不明の髄膜脳炎と診断された犬の1週間生存に対する予後因子
Prognostic factors for 1-week survival in dogs diagnosed with meningoencephalitis of unknown aetiology.
Language: English
Vet J. August 2016;214(0):91-5.
I Cornelis , H A Volk , L Van Ham , S De Decker

犬の原因不明の髄膜脳炎(meningoencephalitis of unknown aetiology:MUA)の長期結果は評価されているが、短期生存および治療の初期反応についてはあまり分かっていない。

この研究の目的は、犬でMUAと診断後、7日生存に対する潜在的予後因子を評価することだった。

2006年から2015年の間にMUAと診断された犬の医療記録を再調査した。過去に述べられている組み入れ基準と、全ての犬に対する7日生存データを使用した。悪い結果は1週間以内に死亡と定義した。組み入れ基準に合った116頭のうち30頭(26%)は診断から7日以内に死亡した。解析したものは、年齢、性別、体重、臨床症状の持続期間と診断前の治療、静脈血糖値と乳酸濃度、CBCにおける白血球数、脳脊髄液(cerebrospinal fluid:CSF)分析の総有核細胞数/総蛋白濃度/白血球鑑別、発作および群発発作の存在、来院時の精神状態、神経解剖学的所在、画像所見、診断後の治療だった。

多変量解析で悪い結果に有意に関係するものを3つ確認した;退院時精神機能低下、発作の存在、CSF分析で好中球の比率増加。
最適な治療の開始にもかかわらず、MUAの診断から1週間以内に死亡した犬は1/4以上で、短期予後因子の評価の必要性が強調される。この研究による情報は、予後の情報を罹患犬の飼い主に提供する臨床スタッフに役立つだろう。(Sato訳)
■キアリ様奇形
Chiari-like Malformation.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2016;46(2):231-42.
Catherine A Loughin

キアリ様奇形は、大後頭孔に小脳がヘルニアを起こす尾側頭蓋窩の構造のミスマッチがある頭頚接合部の状態である。このヘルニアは、このヘルニアは脊髄の水分蓄積を誘発する可能性があり、脊髄空洞症とも知られている。ひっかいた後の疼痛は最も一般的な臨床症状である。他に見られる神経学的症状は、顔面神経欠損、発作、前庭症候群、運動失調、威嚇反射欠損、固有受容欠損、頭部振戦、側頭筋萎縮、多病巣中枢神経系症状である、MRIが診断の第一選択であるがCTも使用可能である。(Sato訳)
■先天性水頭症
Congenital Hydrocephalus.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2016;46(2):217-29.
Chelsie M Estey

水頭症にはいくつかのタイプがあり、脳脊髄液(CSF)貯留の部位を基に特徴づけられる。先天性水頭症の動物の身体的特徴は、ドーム状の頭蓋骨、永続的泉門、両側腹外側斜視などが含まれるかもしれない。内科治療はCSF産生を低下させることである。最も一般的な外科的治療は脳室腹腔シャントの設置である。術後合併症は、感染、妨害物、ドレナージ異常、機械的破損などが含まれるかもしれない。(Sato訳)
■犬の頭部外傷:アップデート
Canine head trauma: an update
In Pract. January 2016;38(1):3-8.
Simon Platt; Courtenay Freeman; Elsa Beltran

外傷性脳傷害(TBI)は重度鈍性頭部外傷後の犬の25%に発生し、外傷後てんかんを起こす可能性がある。ゆえに、TBI後の他の全身性傷害および神経評価に対する臨床検査は重要で、頻繁な再検査も必要である。

この文献は、TBIsを評価する現在利用可能な画像検査方法のアップデートと治療を決定するための進歩した段階的システムを述べる。(Sato訳)
■会陰尿道造瘻を行う猫において超音波ガイドによる陰部神経ブロック
Ultrasound-guided pudendal nerve block in cats undergoing perineal urethrostomy: a prospective, randomised, investigator-blind, placebo-controlled clinical trial.
J Feline Med Surg. April 2014;16(4):340-5.
Chiara Adami; Thomas Dayer; Claudia Spadavecchia; Giovanni Angeli

この研究の目的は、会陰尿道造瘻を行う猫においてブピバカインの超音波ガイドによる陰部神経ブロックを実施した時の鎮痛効果と安全性の面から臨床的有効性を評価することだった。

会陰尿道造瘻を計画している18頭の飼育猫で研究し、2つの治療群に振り分けた。他で述べられているように0.3ml/kgの生食(C群)あるいは0.5%ブピバカイン(B群)を用い、全身麻酔下で陰部神経ブロックを実施した。総注射量を、注射の2部位(左と右)で等量に分割した。

術中、侵害受容の評価は、レスキューの鎮痛剤の必要性、基本値と比較した生理学的パラメーターの変化の評価を基にした。術後疼痛の評価は覚醒時、それから1、2、3時間後に3種類の疼痛スケールで実施した。

B群の猫はC群の猫よりも、術中の心拍数が低く、鎮痛剤もほとんど必要としなかった。術後、B群はC群よりも疼痛スコアが低く、レスキューのブプレノルフィンを必要とすることも少なかった。医原性のブロックに関連する合併症は観察されなかった。

結論として、超音波ガイドによる陰部神経ブロックは、会陰尿道造瘻を行う猫において信頼できる鎮痛効果をもたらす猫の処置として臨床的に有用と考えられる。(Sato訳)
■腰椎狭窄に伴う持続勃起症の犬の一例
Priapism associated with lumbar stenosis in a dog.
Reprod Domest Anim. August 2013;48(4):e58-64.
R Payan-Carreira; B Colaco; C Rocha; C Albuquerque; M Luis; H Abreu; Ma Pires

持続性の長期にわたる不随意の勃起である持続勃起症は犬であまりない。

この報告は持続勃起で当院に来院した13歳のオスのポインターの症例を述べる。
この状態は数日続く間欠的な持続勃起症の状況が続き、当初は肛門周囲を咬むことに関係した炎症と血腫によるものとしていた。飼育者は陰茎を包皮に入れることができなくなった。来院時、48時間食欲不振、処置を嫌がり、体調の悪化、ふらつきを示した。

身体評価中、包皮と陰茎に局所血管の顕著な怒張を認めた。臨床的状況から神経が原因と疑い、腹部エックス線検査で脊椎症の所見を認めた。臨床状況を説明後、飼育者は安楽死を依頼した。

剖検で、外陰部動脈からの領域血管の拡大、全ての海綿状腔内への血液の貯留を確認し、陰茎の勃起構造内にうっ血と血栓が付随していた。持続勃起症の原因となり得るような骨盤臓器の有意な変化は見られなかった。腰椎-仙椎領域を注意深く検査し、脊椎症によるL7-S1狭窄の症状が明らかだった。

ここで述べた症例は、1頭の犬に見られた神経学的原因による持続勃起症の珍しい状況である。剖検所見は、腰部脊柱狭窄による馬尾圧迫に引き続くものと示唆される。(Sato訳)
■臨床的に症状を呈していない犬におけるキアリ様奇形の罹患率
Prevalence of Chiari-like Malformations in Clinically Unaffected Dogs.
J Vet Intern Med. 2014 Oct 15. doi: 10.1111/jvim.12477.
Harcourt-Brown TR, Campbell J, Warren-Smith C, Jeffery ND, Granger NP.

背景 犬において臨床症状の発生や脊髄空洞症の発生におけるキアリ様奇形(CM)の重要性は、完全には理解されていない。おそらくは症状を呈していない犬における様々なCMの定義というものが不明だからというのが一因であるといえる。

仮説/目的 目的は、現在使用されている3つの定義に従いCMまたは脊髄空洞症が無症候性である犬におけるCMの罹患率を明らかにすること、MRIの際に、短頭の場合や頭部の位置がCMの罹患率を明らかにすることへの影響を調査することである。
動物 CMや脊髄空洞症の明らかな症状がない199頭の飼い犬

方法 回顧的な、盲検。大後頭孔へ小脳の圧入と埋伏またはヘルニアがあるかについて、得られたMRIを解析した。頭部の位置と頭蓋指数(短頭の測定)とCMの診断の関係についてはロジスティック回帰分析により分析した。

結果 185頭のキャバリア以外の犬においては、圧入は44%において認められ(95% CI, 47-51%)、埋伏は22%において認められた(95% CI, 16-28%)。ヘルニアを示した無症候のキャバリア以外の犬はいなかった。回帰分析によって、頭部を伸ばした場合および頭蓋指数が上がると(より短頭になると)、圧入と埋伏の可能性が有意に増加することが明らかとなった。

結論と臨床的意義 小脳の圧入と埋伏が多いことは、これらは正常な解剖学的なバリエーションであり、そのためCMの定義とするにはふさわしくないことを示唆している。犬におけるCMの将来的な研究は、正常と異常な動物の境目の重なりを最小限にするように、より厳密に症例とコントロールを定義するべきである。(Dr.Taku訳)
■アメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアにおける重度亜急性壊死性脳症(Leigh-like Syndrome)
Severe Subacute Necrotizing Encephalopathy (Leigh-like Syndrome) in American Staffordshire Bull Terrier Dogs.
J Comp Pathol. May 2013;148(4):345-53.
D Collins; J M Angles; J Christodoulou; D Spielman; S A Lindsay; J Boyd; M B Krockenberger

7つの近縁の同腹子から17頭の6-8週齢のアメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアの子犬が、急速に進行する中枢性前庭神経症状を呈した。その犬種のl-2ヒドロキシグルタル酸尿および小脳皮質変性、チアミン欠損症など過去に報告されている遺伝性失調は除外された。乳酸値および乳酸:ピルビン酸比の上昇は、呼吸鎖欠損あるいはリー様脳症のエビデンスを支持した。

全ての症例の病理組織は、前提および脳幹のオリーブ核を中心とした神経網の軟化を伴う両側対称性壊死性脳症を示した。

これは、アメリカン・スタッフォードシャー・ブル・テリアにおけるリー様脳症に一致した遺伝性の急速に進行する致死的壊死性脳症の最初の報告である。(Sato訳)
■犬と猫におけるシトシンアラビノシドとメトトレキサートのクモ膜下投与の安全性
Safety of intrathecal administration of cytosine arabinoside and methotrexate in dogs and cats.
Vet Comp Oncol. 2014 Jul 15. doi: 10.1111/vco.12109. [Epub ahead of print]
Genoni S, Palus V, Eminaga S, Cherubini GB.

この研究目的は、犬と猫においてシトシンアラビノシド単独あるいはメトトレキサートの併用でクモ膜下投与した時の短期安全性を回顧的に評価することだった。

2008年9月から2013年12月の間に受診し、炎症性(原因が分からない髄膜脳脊髄炎)あるいは腫瘍性の脳あるいは脊髄疾患の疑いと診断し、シトシンアラビノシド単独あるいはメトトレキサートと併用してクモ膜下投与で治療した112頭の犬と8頭の猫を研究した。麻酔から覚醒する間の投与中および入院期間中の有害事象に関して記録した情報を評価した。

結果は、1頭が麻酔から覚醒中にシトシンアラビノシドとメトトレキサート投与後、全身性強直間代性発作を起こしたが、ジアゼパムの静脈内投与に反応したということだった。

これらの結果を基に、著者らはシトシンアラビノシド単独あるいはメトトレキサートとの併用のクモ膜下投与は犬と猫で安全な方法だと結論づける。(Sato訳)
■頭部外傷後の猫の発作の有病率
Prevalence of seizures in cats after head trauma.
J Am Vet Med Assoc. December 1, 2012;241(11):1467-70.
Kristina S Grohmann1; Martin J Schmidt ; Andreas Moritz; Martin Kramer

目的:頭部外傷後の猫における発作の有病率を判定する

構成:回顧的横断研究

動物:頭部外傷のある52頭の猫

方法:頭部外傷を受けた猫のカルテから情報を入手し、外傷から最低2年経過した猫のオーナーに電話で聞き取りを行った。猫の頭部外傷の重症度は修正グラスゴー・コーマ・スケール(mGCS)で分類し、スコアと発作発症の関係を判定した。

結果:9頭は中程度の頭部外傷(mGCSスコア9-14)、43頭は軽度(mGCSスコア15-18)だった。追跡期間(頭部外傷後2年以上)で発作を起こした猫はいなかった。頭部外傷後、猫の発作の有病率に対する95%信頼区間は0%-5.6%だった。頭部外傷の重症度と発作のリスクに有意な相関はなかった。

結論と臨床関連:軽度から中程度の頭部外傷が、受傷後の発作を起こす可能性は低いと結果は示した。しかし、臨床医は頭部外傷の病歴を持つ猫の続発性てんかんの発症に関して監視すべきである。
■ゴールデンレトリバーと他の犬種の犬における特発性ホーナー症候群における神経薬理学的病変部位
Neuropharmacological lesion localization in idiopathic Horner's syndrome in golden retrievers and dogs of other breeds.
Vet Ophthalmol. 2013 Sep 12. doi: 10.1111/vop.12096.
Simpson KM, Williams DL, Cherubini GB.

目的:ゴールデンレトリバーの特発性ホーナー症候群(HS)は、フェニレフリンの除神経性過敏薬理試験をもとにもっぱら節前性障害であるかどうかを調査すること

研究した動物:2000年から2012年の間にHSを呈した犬のカルテ。追加の眼あるいは全身症状を呈した犬は除外した。

方法:調査した臨床データは年齢、性別、臨床症状の持続期間、補助的診断検査結果、1%フェニレフリンの点眼に対し散瞳までの時間だった。病変は節後(20分以内に散瞳)あるいは節前(20分から45分で散瞳)として診断した。

結果:9犬種の21頭のカルテを含めた。ホーナー症候群に対する原因病理を5頭で確定し、ゴールデンレトリバーはその中にいなかった。全ての診断は薬理学的病変部位と相関した。平均年齢8.5歳(範囲:4-13)のゴールデンレトリバー(8頭オス、2頭メス)がいた。病変部位は8頭(平均:10分(範囲:6-18))のゴールデンレトリバーが節後、2頭(20分と24分)が節前と診断された。全ての症例は片側で、15週(範囲:11-20)以内に完全に解消していた。どの犬からも再発は報告されなかった。

結論:10頭のゴールデンレトリバーのうち8頭は特発性節後HSと診断され、純粋に節前部位という過去の報告と反する。犬の特発性HSの原因病理は決定したままであるにもかかわらず、血管病因は除外できない。MRI血管造影を使用した追加研究は病因を明らかにするのに役立つだろう。(Sato訳)
■キアリ様奇形および脊髄空洞症に関する臨床症状を示すキャバリアキングチャールズスパニエルの長期結果
Long-term outcome of Cavalier King Charles spaniel dogs with clinical signs associated with Chiari-like malformation and syringomyelia.
Vet Rec. November 2012;171(20):501.
I N Plessas; C Rusbridge; C J Driver; K E Chandler; A Craig; I M McGonnell; D C Brodbelt; H A Volk

キアリ様奇形(CM)と脊髄空洞症(SM)が複合した疾患は、神経因性疼痛(NeP)の発症に関係しており、一般にキャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)が罹患する。

この前向きコホート研究は、診断から39(±14.3)ヶ月の期間、CMおよび/あるいはSMとNePを示唆する臨床症状が見られる48頭のCKCSsを追跡した。

研究終了時に36頭の犬は生存していた;5頭の犬は無関係の原因あるいは原因不明で死亡し、7頭はNePを示唆する重度の臨床症状のため安楽死された。追跡期間の間、ひっかき行動、顔面をこする行動、発声、運動能力を評価した。48頭中9頭のひっかき行動は治まった(P<0.001)が、運動不耐性、発声あるいは顔面をこする行動を示す犬の数に統計学的に有意な変化はなかった。ビジュアルアナログスケール(VAS)(0mm:無症状100mm:重度臨床症状)を基にした臨床症状の総重症度は、中央値75mm(四分位数間領域(IQR)68-84)から84mm(IQR71.5-91)に増加した(P<0.001)。1/4の犬は変化なし、あるいは改善した。一般に、ほとんどのオーナーは彼らの犬のQOLは容認できるものと感じていた。

行われていた薬物治療は、ガバペンチンあるいはプレガバリンおよび/あるいは間欠的カルプロフェンだった。オーナーの彼らの犬の進行に対する認知とVASを基にした進行に強く正の相関があった(Spearman's rank correlation(s(r))0.74、P<0.001)。

総じて、この研究はNePを示唆する臨床症状は、CMおよび/あるいはSMのCKCSsの3/4で進行すると示唆する。(Sato訳)
■骨髄由来の自己間葉系幹細胞の脊髄損傷の犬の治療への使用
Use of autologous mesenchymal stem cells derived from bone marrow for the treatment of naturally injured spinal cord in dogs.
Stem Cells Int. 2014;2014:437521. doi: 10.1155/2014/437521. Epub 2014 Feb 25.
Penha EM, Meira CS, Guimaraes ET, Mendonca MV, Gravely FA, Pinheiro CM, Pinheiro TM, Barrouin-Melo SM, Ribeiro-Dos-Santos R, Soares MB.

損傷の治療への幹細胞の使用はかなり研究されている。

外傷性の脊髄損傷の4頭の犬において自己骨髄由来間葉系幹細胞 (MSC)移植の治療効果について検討した。MSCはin vitroで培養し、増殖率と細胞生存率を検討した。

細胞浮遊液を調整し、脊髄に外科的に投与した。動物は、臨床的およびMRIで評価した。外科手術およびMSCの投与10日後に、後肢の運動失調性運動反応の反射亢進に加えて固有受容性反応はまだ低下したままであったが、皮筋反射が進行性に改善し、浅部痛覚反応と深部痛覚反応の低下が改善した。それぞれの犬は、時間とともにこれらの歩様の改善も見られた。4頭中2頭において、腸および膀胱機能の中等度の改善と同時に意識反応の回復が認められた。18ヶ月の臨床的なモニタリングの間に、4頭中3頭において、動きの改善を伴う明らかな臨床症状の改善を認めた。しかし、MRIの変化に関連したような臨床的な改善は認められなかった。

MSCは脊髄損傷の後の幹細胞療法の可能性のある候補であることが示唆された。(Dr.Taku訳)
■1頭のボーダーコリーにみられた中心核ミオパシー
Centronuclear myopathy in a Border collie dog.
J Small Anim Pract. October 2012;53(10):608-12.
S Eminaga; G B Cherubini; G D Shelton

2歳のオスのボーダーコリーが1年前から後肢の運動誘発性の虚脱を呈していた。身体検査で、全身性の筋肉萎縮を認めた。神経学的検査では、全身性の神経筋障害を支持した。筋電図検査でほぼすべての筋肉における自発的電気活動が明らかとなった。未固定およびホルムアルデヒド固定のバイオプシーサンプルを上腕三頭筋、最長筋、外側広筋から採取した。バイオプシー標本の病理組織、組織化学、超微細構造検査は中心核あるいは筋細管ミオパシーと一致した。その犬はL-カルニチン、co-enzyme Q10、ビタミンB合剤の支持療法で臨床的に改善した。
著者の知るところでは、これは1頭のボーダーコリーに見られた中心核/筋細管ミオパシーの最初の報告である。(Sato訳)
■虚血性脊髄障害と臨床およびMRI検査で診断された19頭の猫の臨床結果(2000-2011)
Clinical outcome in 19 cats with clinical and magnetic resonance imaging diagnosis of ischaemic myelopathy (2000-2011).
J Feline Med Surg. February 2013;15(2):132-41.
Anita Theobald; Holger A Volk; Ruth Dennis; Davide Berlato; Luisa De Risio

猫の虚血性脊髄障害についての過去の発表は、1頭の症例報告や少数の症例シリーズに限られている。総体的予後は悪いと思われ、42%の猫は安楽死されている。

この研究で、虚血性脊髄障害と仮診断(臨床およびMRI像所見を基に)された19頭の猫の臨床結果を回顧的に評価した。

来院時の神経学的機能不全の程度は、過去に報告された症例と同様で、歩行不全麻痺から完全な痛覚を伴う麻痺まで幅があった。最も一般的な病変部位(MRIによる)はC1-C5(30%)、C6-T2(30%)脊髄分節でT3-L3、L4-S1脊髄分節を伴うものがそれぞれ25%と15%だった。脊髄梗塞発生に対する潜在的刺激あるいは素因は12頭で確認され、労作、外傷、全身麻酔、腎疾患、甲状腺機能亢進症、高血圧、肥大型心筋症が含まれた。歩行の回復までの時間中央値は3.5日(3-19日)だった。4頭(21%)の猫は診断から2か月以内に安楽死された。残り15頭(79%)は好ましい結果だった。経過観察期間は6か月から10年4か月、中央値3年1か月だった。

来院時に麻痺が存在した時でも、生存した猫は全て長期で、オーナーへの追跡調査では正常なQOLに回復していると報告されており、推定の虚血性脊髄障害からの回復に関する長期予後はほとんどの猫で良好だと示唆される。(Sato訳)
■1頭のジャーマンシェパードのsplit cord malformationのMRI
MRI of a split cord malformation in a German shepherd dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Sep-Oct;48(5):344-51.
Brian Allett1; Michael R Broome; David Hager

9歳メスの避妊済みジャーマンシェパードが、原因不明の慢性神経性膀胱機能不全のため、胸腰椎のMRI検査を受けにきた。胸椎の横断T2強調画像でsplit cord malformationタイプII(すなわち脊髄披裂)を確認した。

split cord malformationは、脊髄の異常な発生で脊髄の一部が矢状に割れ、2つの半脊髄になる脊髄癒合不全の形である。胸椎の病変部位は、上位運動ニューロン膀胱の犬の臨床症状に一致した。ヒトで起こるspinal dysraphismは同様のMRI像を示し、この報告で述べられた犬と同じような臨床症状を起こす可能性がある。(Sato訳)
■1頭の犬の非化膿性脳炎
Nonsuppurative encephalitis in a dog.
Vet Pathol. July 2012;49(4):731-4.
S Schoniger; K Klose; H Werner; B-A Schwarz; T Muller; H-A Schoon

4歳オスのジャーマンハンティングテリアが、振戦、呼吸困難、開口障害、咽頭および喉頭の筋肉組織の攣縮、低体温を呈し、その後集中治療にもかかわらず死亡した。臨床症状の前には嘔吐と下痢があった。

脳の顕微鏡検査で、多病巣性非化膿性脳幹脳炎を認めた。いくつかの病巣内神経細胞は核内封入体を含有した。免疫組織化学検査により、オーエスキー病ウイルス(ブタヘルペスウイルス1型)抗原が脳の神経細胞や三叉神経節の神経節細胞で検出された。脳組織のウイルス培養でオーエスキー病ウイルスの存在を確認した。免疫組織化学とPCR法でオーエスキー病ウイルスを確認された脳の病理組織所見は、オーエスキー病ウイルス誘発性脳炎と一致する。東ドイツからのイノシシから分離されたオーエスキー病ウイルスと、今回分離されたオーエスキー病ウイルスは塩基配列決定で100%相同を示した。(Sato訳)
■犬の脊髄水空洞症の管理として空洞くも膜下腔短絡術
Syringosubarachnoid shunt as a management for syringehydromyelia in dogs.
J Small Anim Pract. April 2012;53(4):205-12.
L Motta; G C Skerritt

目的:脊髄水空洞症/脊髄空洞症の管理として空洞くも膜下短絡術の効果を回顧的に評価する

方法:MRIによりキアリ様奇形に関係する脊髄水空洞症/脊髄空洞症と診断された11頭の犬で、頸部(9頭)あるいは腰部(2頭)脊髄に空洞くも膜下短絡を設置した。1頭の犬は空洞くも膜下短絡設置の4か月前に後頭骨下部減圧(大後頭孔減圧)を実施した。術後数時間、2週間、6か月に全頭を神経学的に評価した。回顧的に症例に術前および術後疼痛スコアを割り当てた。

結果:術中あるいは周術の合併症はなかった。1頭(9%)は術後5週間で安楽死された。進行性の神経学的改善は術後2週間と6か月目に9頭(81.8%)に観察された。他の犬(9%)には臨床的改善が見られなかった。1頭(9%)の犬は空洞くも膜下短絡の再設置を行った。7頭(63.6%)の犬は術後1-4年(平均2.6年)経過して生存していた。

臨床的意義:十分に大きな空洞の存在に空洞くも膜下短絡の設置は、キアリ様奇形およびそれに関連する脊髄水空洞症/脊髄空洞症の犬に有益であると思われる。(Sato訳)
■非外傷性頭蓋内出血の犬の併発している医学的異常と長期予後
CONCURRENT MEDICAL CONDITIONS AND LONG-TERM OUTCOME IN DOGS WITH NONTRAUMATIC INTRACRANIAL HEMORRHAGE.
Vet Radiol Ultrasound. 2012 Apr 26. doi: 10.1111/j.1740-8261.2012.01934.x. [Epub ahead of print]
Lowrie M, De Risio L, Dennis R, Llabres-Diaz F, Garosi L.

非外傷性頭蓋内出血は、脳あるいは周辺組織から起こる出血である。血管破裂が原因で原発あるいは続発性かもしれない。

シグナルメント;関与する頭蓋内区画;病変の大きさと数;併発している医学的異常の種類と有病率;長期予後を判定するため、非外傷性頭蓋内出血の犬75頭のMRI特性を検討した。

出血病変は実質内(n=72)、硬膜下(n=2)あるいは脳室内(n=1)だった。75頭中33頭に併発する医学的異常が見られた。単一病変が5mm以上の43頭中13頭にAngiostrongylus vasorum感染、頭蓋内リンパ腫および髄膜腫などの併発病変が検出された。5mm以上の複数の病変を持つ20頭のうち、7頭はAngiostrongylus vasorum感染、2頭は血管肉腫の転移、5頭は脳転移の疑い、1頭は敗血症だった。複数病変を持つ12頭のうち、2頭は副腎皮質機能亢進症、2頭は慢性腎疾患、1頭は甲状腺機能低下症があった。それら5頭のうち、全てが高血圧で12か月以内に4頭が死亡した。5mm未満の単一病変がある犬はいなかった。5mm以上の単一病変の犬43頭中26頭、5mm以上の複数病変の犬20頭中6頭、5mm未満の複数病変を持つ犬12頭中8頭の長期結果は良かった。Angiostrongylus vasorum感染は非外傷性頭蓋内出血の犬で最も一般的な併発疾患(16/75)であり、16頭中14頭で結果は良好だった。非外傷性頭蓋内出血の予後を併発する医学的異常および病変の数と大きさで報告する。(Sato訳)
■独特の神経症状を呈する21頭の成猫における緩徐進行型リンパ組織球性髄膜脳脊髄炎
Slowly progressive lymphohistiocytic meningoencephalomyelitis in 21 adult cats presenting with peculiar neurological signs.
J Feline Med Surg. April 2012;14(4):250-6.
Luisa De Risio1; Richard Brown; Bryn Tennant; Andy Sparkes; Lara Matiasek; Alberta De Stefani; Herbert Weissenbock; Kaspar Matiasek

21頭の猫が尾のこわばった伸展、行動変化、痙攣性や失調性歩様を特徴とする緩徐進行性神経症状の病歴を示した。

全ての猫は屋外に行き来でき、スコットランド北西の同じ地理的田園地域で生活していた。組織学的所見はリンパ組織球性髄膜脳脊髄炎だった。免疫組織化学的に15の病因を除外し、インターフェロン誘導性Mx蛋白の有意な発現を示し、潜在的原因として今のところ未確認の感染、あるいは環境免疫原性誘因が示唆された。発現が高年齢(平均9歳)、非常にゆっくりとした臨床症状の進行(平均11ヶ月)、特異な臨床症状(特に尾の姿勢)は、過去にリンパ組織球性髄膜脳脊髄炎の猫で報告されていない。(Sato訳)
■多嚢胞性髄膜腫の犬3頭の臨床およびMRI所見
Clinical and MRI findings in three dogs with polycystic meningiomas.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Sep-Oct;48(5):331-8.
Fiona M K James; Ronaldo C da Costa; Amy Fauber; Andrew S Peregrine; Beverly McEwen; Joane M Parent; Robert Bergman

避妊済みのメスのラブラドールレトリバー1頭と、去勢済みのオスのゴールデンレトリバーを、前脳を起源とする慢性(すなわち、3週から24週の範囲)の神経症状のために評価した。症状は発作、円を描くように歩く、行動変化だった。MRIで脳実質の圧迫や偏移の原因となる脳外、コントラスト増強、多室、液体に満たされた、マスエフェクトのある嚢胞様病変を認めた。鑑別診断は嚢胞性腫瘍、膿瘍、他の感染性嚢胞(例えば多胞条虫シスト)、液体が満たされた異常(例えばくも膜のう腫)だった。嚢胞様病変は全ての症例で吻側大脳鎌に付着していた。

また、症例2は尾側間脳に2つ目の多嚢胞マスがあった。外科的バイオプシー(症例3の前頭蓋骨切除を介した吻側腫瘍の1回)、死後組織学的(症例1,2)に多嚢胞性髄膜腫を確認した。腫瘍タイプはビメンチンに対する免疫組織化学染色陽性の移行性(症例1と3)および線維性(症例2)だった。また症例3はE-カドヘリン、s100、CD34も陽性だった。全ての症例で染色は大部分がグリア線維性酸性蛋白質とパンサイトケラチン陰性で、髄膜腫の診断を支持するものだった。これは犬の多嚢胞性髄膜腫の最初の症例報告である。多嚢胞性髄膜腫は珍しいが、外科的切除および他の治療介入に対する計画に影響する頭蓋内嚢胞様病変の鑑別診断に加えることが重要である。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた獲得性低コバラミン血症性脳障害の疑い:コバラミン補給後の脳障害症状とMRI病変の解消
Suspected acquired hypocobalaminaemic encephalopathy in a cat: resolution of encephalopathic signs and MRI lesions subsequent to cobalamin supplementation.
J Feline Med Surg. May 2012;14(5):350-5.
Katherine Simpson; Ian Battersby; Mark Lowrie

現症と初期調査:8歳避妊済みのメスのブリティッシュショートヘアーキャットが、一進一退の神経症状の病歴で来院した。神経解剖学的局在化は、びまん性の前脳疾患に一致した。血中アンモニア濃度は上昇した。腹部超音波検査と胆汁酸刺激試験は正常だった。MRIで独占的ではないが、主にT2強調シーケンス上で高強度、両側、対照的、びまん性病変が見られ、灰白質に影響を及ぼしていた。血清コバラミン(ビタミンB12)濃度は低値だった。尿素回路異常を起こす低コバラミン血症が、高アンモニア血症を起こしえる原因と考えられた。

治療:日々のコバラミン注射により急速に臨床改善が見られた。治療から8週間で神経学的検査に顕著な異常はなくなり、MRI病変は完全に解消した。

臨床的重要性:これは獲得性に猫低コバラミン血症が脳障害を引き起こした最初の症例報告である。またこの症例は、コバラミン不足のコンパニオンアニマルにおける可逆的な脳MRI異常を述べるにおいて独特である。(Sato訳)
■猫の頭部外傷:外傷性脳傷害の評価と管理
Head trauma in the cat: 2. Assessment and management of traumatic brain injury.
J Feline Med Surg. November 2011;13(11):815-23.
Laurent Garosi; Sophie Adamantos

実際の関連:ネコの外傷患者は一般診療でよく見られ、ある程度の脳傷害を受けていることも多い。
臨床的チャレンジ:外傷性脳傷害の猫は、わずかな神経学的障害から重篤な神経学的障害までの様々な臨床症状を示すと思われる。適切な管理は迅速で正確な患者の評価と脳傷害の病態生理学の理解により行われる。それらの患者の管理において最も重要な事柄は、脳の灌流と酸素化の維持である。減圧術を必要とする重度頭部傷害の猫に対し、早期介入が重要である。
エビデンスベース:一般診療で比較的遭遇する機会が多いにもかかわらず、外傷性脳傷害の治療をサポートする臨床的エビデンスベースは限られている。ゆえに適正な療法は獣医療で議論の的となっており、ほとんどは実験研究あるいはヒトの頭部外傷研究をもとにしている。この概説は、存在する限りの現在のエビデンスおよび著者の臨床的経験を利用し、猫の外傷性脳傷害の診断と管理への特異的アプローチの詳細を述べる。(Sato訳)
■犬の壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)に関する包括的な免疫組織化学的研究
Comprehensive Immunohistochemical Studies on Canine Necrotizing Meningoencephalitis (NME),Necrotizing Leukoencephalitis (NLE), and Granulomatous Meningoencephalomyelitis (GME).
Vet Pathol. 2012 Jan 18.
Park ED, Uchida K, Nakayama H.

犬において、壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)などいくつかの特発性髄膜脳炎がある。それらは免疫介在性と考えることが多いが、これらの疾患の病因はいまだ解明されていない。

この研究で、これらの状況やこれらに反応して産生される炎症性細胞集団によって惹起される病変の組織病理を、それらの病因を理解するため、壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)に罹患した犬で検査した。

壊死性髄膜脳炎(n=25)、壊死性白質脳炎(n=5)、そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(n=9)に罹患した犬の脳組織が使われた。炎症性細胞はCD3、IgG、CD20、CD79acyそしてCD163に対する抗体を使った免疫組織化学で確認した。壊死性髄膜脳炎(NME)と壊死性白質脳炎(NLE)において、大脳白質と視床と同じように、大脳皮質でそれぞれ軟化性変化が位置した。壊死性髄膜脳炎(NME)と壊死性白質脳炎(NLE)の脳病変の分布は犬種特異的であった。
肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)では、多くが類上皮マクロファージで構成される肉芽腫性病変が、大脳白質、小脳および脳幹で観察された。IgG-, CD20-,そしてCD79acy陽性細胞 (B細胞)の比率は壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の間で有意に違いはなかったが、CD3陽性細胞 (T細胞)のそれは肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)で増加した。壊死性髄膜脳炎(NME)と壊死性白質脳炎(NLE)において、CD163陽性細胞 (マクロファージ)は大脳皮質と大脳白質でそれぞれび慢性に浸潤していた。しかし肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)においてCD163陽性細胞は、大脳と大脳白質の血管周囲に蓄積した。

これらの病理的な病変の分布は壊死性髄膜脳炎(NME)、壊死性白質脳炎(NLE)そして肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)の間で全く違ったが、炎症性細胞の比率は著しく違いがなかった。(Dr.Kawano訳)
■1頭の犬のSporobolomyces roseusに関連する肉芽腫性髄膜脳炎
Granulomatous Meningoencephalitis Associated With Sporobolomyces roseus in a Dog.
Vet Pathol. November 2011;48(6):1158-60.
V Saey; A Vanhaesebrouck; S Maes; L Van Simaey; L Van Ham; P Deschaght; R Ducatelle

1頭のジャーマンシェパードの多病巣性進行性脳疾患の臨床症状を評価した。支持療法にかかわらず、入院後すぐにその犬は死亡した。死後、病変内真菌菌糸を伴う肉芽腫性髄膜脳炎が診断された。その真菌はPCR増幅とITS2領域の塩基配列決定によりSporobolomyces roseusと同定された。(Sato訳)
■猫の失明と行動変化:一般的な神経学的原因
Blindness and behavioural changes in the cat: Common neurological causes.
J Feline Med Surg. November 2011;13(11):863-73.
Cristian Falzone; Mark Lowrie

実際の関連:失明と行動学的変化は、猫で比較的一般に単独あるいは両方同時に起こり、猫と飼い主の関係を悪くする原因となる。失明は主に眼科、代謝、あるいは頭蓋内疾患で起こり得る。同様に行動学的変化は主に頭蓋内あるいは全身性疾患で起こるが、視覚欠損あるいは外部環境(すなわち医学的問題ではない)の相互作用の変化で二次的にも起こる。視覚を巻き込む解剖学的経路は行動学的調節に関係するそれらと非常に密接である。ゆえに、失明を起こす脳病変(特に前脳病変)も行動学的異常を引き起こすことが多い。

臨床のチャレンジ:部分あるいは一側性の失明症例において、明らかな視覚欠損は飼い主あるいは臨床医にはっきり分からないかもしれない。むしろ視覚障害は、ジャンプが嫌や外出を喜ばないなどの行動変化としてより敏感に示されるかもしれない。同様に行動学的問題は偶発的と思われ、ゆえに行動学的障害を呈す猫は、評価時に臨床的に正常と思われるかもしれない。行動学的変化は顕著な両側性失明あるいは全身性疾患が進行しないかぎり気づかないことが多い。

読者:この文献は、それら難解な症例を見極めるために実行できる臨床および神経学的検査の重要な側面を臨床医に強調する目的で、それら2つの主要な障害を別々に論じる。(Sato訳)
■キングチャールズスパニエルの脊髄空洞症の有病率
Prevalence of asymptomatic syringomyelia in Cavalier King Charles spaniels.
Vet Rec. June 2011;168(25):667.
J E Parker; S P Knowler; C Rusbridge; E Noorman; N D Jeffery

555頭のキングチャールズスパニエルの単一集団で、脊髄空洞症の有病率を調査した。脊髄空洞症の臨床症状がないとオーナーが証言する全ての犬で、その疾患の有無を判定するためMRIを実施した。脊髄空洞症の有病率に対する性別および年齢の影響を判定するために、データをロジスティック回帰で分析した。加齢のみに有意な影響があることが分かった。脊髄空洞症の有病率は12ヶ月齢の犬で25%、72ヶ月齢以上の犬で70%のピークに増加した。(Sato訳)
■煙の吸引後に白質脳軟化症とニューロンの層状壊死を起こした1頭の犬
Leukoencephalomalacia and laminar neuronal necrosis following smoke inhalation in a dog.
Vet Pathol. September 2011;48(5):1016-9.
A Th A Weiss; C Graf; A D Gruber; B Kohn

煙吸引後の急性呼吸器および神経疾患はよく述べられているが、ヒトでは煙あるいは一酸化炭素の暴露後に白質脳軟化症に関係する遅発神経学的症状も認めることがある。
この症例は、1頭の犬がアパートの火事から助け出された後、6日目から進行性の神経学的症状を発症した。煙吸引から9日目の検死で、大脳中心部白質の白質脳軟化症が大脳皮質ニューロンの層状壊死と共に見られた。これはヒト以外の動物における低酸素後遅発性白質脳症の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の肉芽腫性髄膜脳脊髄炎あるいは壊死性脳炎の犬に対する治療としてロムスチンとプレドニゾロンあるいはプレドニゾロン単独の経口投与の比較
Comparison of oral administration of lomustine and prednisolone or prednisolone alone as treatment for granulomatous meningoencephalomyelitis or necrotizing encephalitis in dogs.
J Am Vet Med Assoc. February 2011;238(3):337-45.
Thomas Flegel; Irene C Boettcher; Kaspar Matiasek; Anna Oevermann; Marcus G Doherr; Gerhard Oechtering; Diana Henke

目的:犬の肉芽腫性脳脊髄炎(GME)あるいは壊死性脳炎(NE)の治療としてロムスチンおよびプレドニゾロンの経口投与とプレドニゾロン単独の経口投与を比較する

構成:回顧的コホート研究

動物:GMEの犬25頭とNEの犬18頭(それぞれ8頭と5頭の診断は確認された)。

方法:GMEあるいはNEの犬の記録から初期神経学的評価と臨床病理学的所見の結果、治療、追跡臨床病理学的所見(ロムスチン投与犬)、生存期間を再調査した。ロムスチンとプレドニゾロンで治療したGMEあるいはNEの犬はそれぞれ1群(n=14)、3群(10)に振り分けた。プレドニゾロン単独で治療したGMEあるいはNEの犬はそれぞれ2群(11)、4群(8)に振り分けた。

結果:全ての犬に対し12時間ごとにプレドニゾロンを経口投与した。1および3群においてロムスチンの平均投与量は、6週間ごとに60.3mg/m2経口投与だった。1群から4群の生存期間中央値はそれぞれ457日、329日、323日、91日(1群と2群あるいは3群と4群の間に有意差なし)だった。治療から最初の12ヶ月以内に、プレドニゾロン投与量の中央値は全群で減少した;6、9、12ヶ月目の1群の減少は2群よりも有意に大きかった。併用投与は高頻度で白血球減少を起こしたが、肝臓酵素活性に対して有意な影響はなかった。

結論と臨床関連:GMEとNEの犬において、ロムスチンとプレドニゾロン、あるいはプレドニゾロン単独経口投与は同様の効果だった。治療法にロムスチンを含めても一般によく許容した。(Sato訳)
■犬の変性性脊髄症
Canine degenerative myelopathy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2010;40(5):929-50.
Joan R Coates; Fred A Wininger

犬の変性性脊髄症(DM)は多くの犬種で起こる成犬に発現する致死的神経変性性疾患である。後肢の初期上位運動ニューロン痙性不全対麻痺と全身性固有受容運動失調が、弛緩性下位運動ニューロン四肢不全麻痺に進行する。近年、スーパーオキシドジムスターゼ1(SOD1)遺伝子のミスセンス変異がDMのリスクファクターであることが分かり、DMはヒトの筋萎縮性側索硬化症(ALSあるいはルーゲーリック病)のある型に類似することが示唆される。
この文献は犬DMのシグナルメント、臨床的スペクトル、診断アプローチ、治療に関して現在の認識を概説する。両疾患に対するSOD1変異の関連を議論し、病原メカニズムを比較する一方でトランスレーショナル医療に対する展望を伝える。(Sato訳)
■犬の後肢の超音波ガイドによる神経ブロック
Ultrasound-guided nerve blocks of the pelvic limb in dogs.
Vet Anaesth Analg. September 2010;37(5):460-70.
Yael Shilo , Peter J Pascoe, Derek Cissell, Eric G Johnson, Philip H Kass, Erik R Wisner

目的:犬の坐骨および伏在神経の遮断における超音波ガイドの有効性を評価し、予測できる効果の発現と持続に使用する麻酔量がこの方法でより少なく出来るかどうかを判定する

研究構成:10日のウォッシュアウト期間を設けた前向き無作為(用量と肢)盲検実験的交差試験

動物:年齢12.3±0.5(平均±SD)ヶ月、体重18.7±0.8(平均±SD)kgの健康なメスのハウンドドッグ6頭

方法:超音波ガイドを使用し、生理食塩水0.2ml/kg(Sal)あるいは0.5%ブピバカイン0.05(低用量;LD)、0.1(中用量;MD)、0.2(高用量;HD)ml/kgを2/3を坐骨神経、1/3を伏在神経に分けて神経周囲に注射した。注射完了後すぐに、デクスメデトミジン鎮静とアチパメゾール逆転を使用してブロックを実施した。運動/固有受容および感覚機能にそれぞれ0-8、0-2スケールでスコアを付けた。臨床に適切なブロックは運動スコア2以上、感覚スコア1以上とした。統計分析はノンパラメトリック法を使用した。

結果:副作用は認めなかった。ブピバカインと生理食塩水コントロールの処置に有意差があったが、3つのブピバカイン処置の間には有意差はなかった。臨床に適切な坐骨および伏在ブロックの成功率は両方とも67%(CI95%0.22-0.96)だった。ブロックの発現と持続期間は、それぞれ20-160、20-540分の幅があった。

結論と臨床関連:ブピバカインの用量で有意に優れたものはなかったが、高容量でより良好なブロックが得られる傾向があった。この方法が臨床で有効に使用できるようになるには、テクニックあるいは用量のさらなる修正が必要である。(Sato訳)
■小動物の先天性脊髄奇形
Congenital spinal malformations in small animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. September 2010;40(5):951-81.
Diccon R Westworth; Beverly K Sturges

脊髄の先天的異常は小動物で一般的である。奇形のタイプ、部位、重症度、関連臨床症状の発現時期、神経学的機能障害の進行は様々である。より明確に理解するため、著者は修正したヒトの分類シェーマを使用して種々の脊髄奇形を提示し、現在広く容認されている定義と用語を用いる。高度画像検査を利用した診断アプローチ、外科管理に重点を置く。(Sato訳)
■脳梗塞の8頭の犬のCT診断
Computed tomography diagnosis of eight dogs with brain infarction.
Aust Vet J. October 2010;88(10):374-80.
A E H Paul; Z Lenard; C S Mansfield

目的:神経症状の急性発現を呈し、CT画像検査で脳梗塞と確定診断された8頭の犬の医療記録を再検討した。

構成:回顧的1センター症例レビュー

結果:前小脳動脈の領域で虚血性梗塞がスパニエル種の3頭の犬に確認された。全ての小脳梗塞は非出血性だった。終脳梗塞は5頭の犬で、中大脳動脈(2/5)および前大脳動脈(3/5)の領域に確認された。それらのうちの1頭は虚血性梗塞だったが、ほかの梗塞全て出血性と思われた。全ての犬は老齢(8歳以上)で、6頭の犬に併発疾患が認められた。1頭の犬はその神経症状が重度のため、診断後に安楽死され、1頭の犬は診断から2ヵ月後に腎疾患のために安楽死された。6頭の犬は診断から最低1年は生存した。

結論:CTは犬の脳血管発作の診断に有効で、梗塞後の減衰の早期変化を伴う画像のスペクトルとして示すことが可能で、微小マスの影響を検出した。MRIと比較すると、CTは出血性梗塞の検出に特に感度がいいが、不十分な発現の虚血性およびラクナ梗塞ではそうではない。(Sato訳)
■猫の口-顔面痛症候群(FOPS):113症例の回顧的研究
Feline orofacial pain syndrome (FOPS): a retrospective study of 113 cases.
J Feline Med Surg. June 2010;12(6):498-508.
Clare Rusbridge, Sarah Heath, Danielle A Gunn-Moore, Susan Penelope Knowler, Norman Johnston, Angus Kennedy McFadyen

猫の口-顔面痛症候群(FOPS)は、口の不快感および舌の切断の行動学的症状を持つ猫の疼痛疾患である。この報告は100頭のバーミーズを含む113頭の猫の症例シリーズからの所見を述べる。FOPSは神経障害痛疾患が疑われ、バーミーズ猫種に圧倒的に見られることから遺伝性疾患が示唆され、おそらく知覚三叉神経情報を処理する神経節あるいは/および中枢が関与する。
この疾患は時折起こり、典型的に片側性の無痛間隔がある不快感を特徴とする。多くの症例で、その不快感は口の運動が引き金となる。この疾患は再発することが多く、やがて絶え間なくなるかもしれない。このシリーズで12%の症例はその状態のために安楽死された。口腔疾患あるいは歯の萌出による三叉神経終末の感作は病因論で重要な要因と思われる。63%の症例は口腔病変の病歴を持ち、少なくとも16%は永久歯の萌出のときに不快感の最初の症状を経験していた。20%の猫でFOPSの事象は不安を引き起こす状況に直接関連しえるように、外因もその疾患に影響する可能性がある。FOPSは従来の鎮痛剤に抵抗性を示す可能性があり、良好に管理するのに鎮痛作用のある抗痙攣薬を必要とする症例もある。(Sato訳)
■脳室腹腔シャント術による水頭症の治療を施した14頭の犬の術式、術後合併症および結果
Surgical technique, postoperative complications and outcome in 14 dogs treated for hydrocephalus by ventriculoperitoneal shunting.
Vet Surg. February 2011;40(2):183-91.
Alberta De Stefani; Luisa De Risio; Simon R Platt; Lara Matiasek; Alejandro Lujan-Feliu-Pascual; Laurent S Garosi

目的:脳室腹腔(VP)シャント術で治療した内部閉塞性水頭症疑いによる二次的な重度神経症状を持つ犬において合併症の頻度とタイプおよび結果を報告する

研究構成:症例シリーズ

動物:犬(n=14)

方法:VPシャント術を受けた犬に対して医療記録(2001-2006)を再調査した。研究する犬の基準は、完全な医療記録、内科療法に非応答性の進行性前脳症状、正常な代謝プロフィール、トキソプラズマgondii、ネオスポーラcaninum、犬ジステンパーウイルスに対する陰性抗体価および/あるいは脳脊髄PCR、脳のMRI所見、VPシャント術の確認診断、経過観察情報だった。

結果:5頭の犬の水頭症は特発性、9頭の犬は後天性(脳室間腫瘍、脳室内出血、炎症性疾患)だった。4頭は術後1週間から18ヵ月後に合併症を起こし、その合併症は脳室カテーテル移動、感染、シャント排水低下、腹膜カテーテルのねじれ、弁破損、腹部皮膚壊死だった。それらのうち3頭は1回以上の修正手術で改善し、1頭は抗生物質の治療が成功した。1頭を除き全ての犬は術後1週間以内に退院し、かなりの神経学的改善が見られた。全ての犬の生存期間中央値は320日(1-2340日)で、特発性水頭症の犬は274日(60-420日)、二次的水頭症の犬は365日(1-2340日)だった。

結論:VPシャント術はほとんどの犬で神経学的症状の軽減に成功し、術後合併症の発生率は29%であるが、その合併症は内科あるいは外科的に解消した。(Sato訳)
■不明確な原因の髄膜脳脊髄炎の犬におけるアザチオプリンとプレドニゾンの併用療法の効果:40症例(2000-2007年)
Evaluation of treatment with a combination of azathioprine and prednisone in dogs with meningoencephalomyelitis of undetermined etiology: 40 cases (2000-2007).
J Am Vet Med Assoc. 2010 Oct 15;237(8):929-35.
Wong MA, Hopkins AL, Meeks JC, Clarke JD.

目的:不明確な原因の髄膜脳脊髄炎(MUE)に罹患した犬において、アザチオプリンとプレドニゾンの併用療法の効果を評価すること

デザイン:回顧的症例シリ-ズ

動物:40頭の犬

方法:プレドニゾンとアザチオプリンで治療した髄膜脊髄脳炎の犬の診療記録で治療に対する反応、生存期間そして副作用を評価した。

結果:全ての犬は治療中に改善した。24頭(60%)の犬は完全寛解(臨床症状の解消)し、他の16頭(40%)の犬は部分寛解(改善したが症状は解消していない)した。完全寛解したほとんどの犬は神経学的に正常を維持した。6頭の犬は部分寛解後も安定していた。11頭の犬は臨床症状の再発があった。12頭の犬がこの研究期間中に死亡し、18頭の犬が生存し、2頭の犬は経過観察できなかった。中央生存期間は1834日(50日-2469日の範囲)であった。完全寛解した犬は、そうでない犬より有意に生存期間が長かった。再発した犬は、そうでない犬より有意に生存期間が短かった。もっとも一般的な副作用は体重増加、毛が薄くなる、肝酵素活性上昇であり、これら全てはコルチコステロイド併用に起因するかもしれない。真性糖尿病、乾性角結膜炎、乳腺腺腫、リンパ腫そして肝臓マスなどの副作用は少なかった。

結論と臨床関連:アザチオプリンは髄膜脊髄脳炎の犬の治療にとって安全であり、プレドニゾンに対する補助的な効果がある可能性がある。組織学的確定診断をしたうえでの前向き二重盲検コントロール研究は、これらの所見を実証するのに保証される。(Dr.Kawano訳)
■猫の神経学的検査。始め方
Neurological examination of the cat. How to get started.
J Feline Med Surg. May 2009;11(5):340-8.
Laurent Garosi

実用的関連:獣医療での神経学的診断は非常に努力を必要とするもので、特に神経症状をもつ多くの動物が緊急で来院する。にもかかわらず、神経障害を確定診断する専門医設備のないところでさえ、多くの情報がいくらかの基礎知識および論理的で段階的アプローチにより得ることができる。

臨床的挑戦:猫において神経学的容態の診断が下せない最も一般的な原因は、神経系内の問題がどこに存在するのかの正確な位置づけ、どのような種類の疾患プロセスがそこで起こっているのかなど初期検討の欠如である。また、これは診断的検査から診断に導く最善の推測を支持する神経学的評価を臨床医が無視するように仕向けるハードルとなっている。

読者:この文献は穏やかな臨床医および多くの臨床医も嫌がる神経学的症例に対し、猫を初診で診察する全ての獣医師が確実にどんな症状でもアプローチできるようにすることを目的とする。猫の神経学的検査のほとんどを実施するために必要なツールも提供する。(Sato訳)
■犬と猫の前庭疾患
Vestibular disease in dogs and cats.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2010;40(1):81-100.
John H Rossmeisl Jr

前庭系は、全身性固有受容と視覚系、平衡の維持に加え、主要感覚(特殊固有受容)系である。前庭疾患の臨床症状は、非対称性運動失調、斜頚、病的眼振などである。前庭系の末梢あるいは中枢構成に対して観察される前庭徴候の神経解剖学的所在は、原因、診断アプローチ、予後が神経解剖学的診断に依存するため、前庭機能不全の患者の管理に重要である。
この文献は小動物前庭疾患の一般的原因の診断および治療と同様に、機能的前庭神経解剖学を概説する。(Sato訳)
■外傷性脳傷害後に見られた視床下部-下垂体軸欠損の犬の1例
Hypothalamic-pituitary axis deficiency following traumatic brain injury in a dog
J Vet Emerg Crit Care. Jun 2009;19(3):269-274. 22 Refs
Catherine Foley, DVM, Kiko Bracker, DVM, DACVECC, Sharon Drellich, DVM, DACVECC

目的:1頭の犬の外傷性脳傷害に関与する内分泌機能障害を述べる

要約:12週齢の犬が外傷性脳傷害で来院し、従来の支持療法に反応しなかった。即座のスクリーニングで持続性低体温、電解質異常、低血圧、低張尿が見られ、副腎皮質機能低下症、中枢性尿崩症、甲状腺機能低下症、成長ホルモン欠乏などの重度視床下部-下垂体障害が検出された。電解質異常、尿容量オスモル濃度および血圧は関連障害の治療で改善した。

新奇情報:これは外傷性脳傷害の1頭の犬に見られた全身性視床下部-下垂体機能不全、あるいは汎下垂体機能低下症の最初の報告である。(Sato訳)
■マウスにおける自律神経活動を調節することによるマイクロチタンのリラックス効果
Relaxant effect of microtitan via regulation of autonomic nerve activity in mice.
Life Sci. 2009 Aug 26;85(9-10):408-11. Epub 2009 Jul 24.
Aoi W, Takanami Y, Kawai Y, Otsuki T, Kawake T, Naito Y, Yoshikawa T.

目的:マイクロチタンは神経系に影響を及ぼす可能性が示されている。本研究ではマウスの睡眠中の自発活動と自律神経活動におけるマイクロチタンの効果を検査した。

方法:ICRマウスをプラセボとマイクロチタングループの2群に分け、マイクロチタンシートあるいはプラセボシートで含浸させたゴムのシートが入った容器に入れた。両方のグループにおいて、自発活動運動、代謝パラメーターそして心拍変動(HRV)を測定した。

主要な所見:明るい時間帯における自発活動はプラセボシートと比較してマイクロチタンシートに入ったマウスで減少した。尿中ノルアドレナリン濃度もマイクロチタンで減少した。心拍変動は遠隔測定法で測定し、自律神経活動を評価した。R-R間隔データのパワースペクトル解析は、副交感神経活動を示す高周波数帯がマイクロチタンにより有意に増加したことを示した。しかし、低周波―高周波のパワースペクトラル比はプラセボシートに入れたマウスに比べ、マイクロチタンシートに入れたマウスで減少した。

意義:マイクロチタンは自律神経活動を調節することによって睡眠期の休息を促進し、マイクロチタンにリラックス効果があることを示している。(Dr.Kawano訳)
■神経学的疾患を伴う2頭の老齢犬におけるラフォラ様小体および他のポリグルコサン小体の特徴
Characterisation of Lafora-like bodies and other polyglucosan bodies in two aged dogs with neurological disease
Vet J. November 2008;0(0):.
Marquez , Perez , Serafin , Teijeira , Navarro , Marti Pumarola

犬ラフォラ病は神経学的症状および脳や他の臓器にある種のポリグルコサン小体(PGB)、ラフォラ小体(LB)の蓄積を特徴とする炭水化物代謝の遺伝疾患である。正常な犬の加齢で脳にPGBsが蓄積し、特にそれらはアミロイド小体(CA)に相当する。
この研究で進行性の振戦、運動失調および対麻痺を呈す2頭の老齢犬に、脳の至る所、主に視床下部、小脳の分子層で豊富なPGBsを認めた。2頭からの視床下部および小脳PGBsはトルイジンブルーで染色した時にCAよりもアルコール抵抗性異染性がより低かった。ニューロン特異エノラーゼ(NSE)、グリア線維性酸性蛋白(GFAP)、200KDa神経フィラメント、S-100、タウ、ユビキチン、熱ショック蛋白25および70に対するそれらPGBsの免疫組織化学研究によりCAといくらかの相違を示した。(Sato訳)
■動物の脳疾患のMRIパート1:基本原理と先天性脳疾患
MRI of brain disease in veterinary patients part 1: Basic principles and congenital brain disorders.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2010;40(1):21-38.
Silke Hecht, William H Adams

動物において中枢神経系疾患の診断にMRIを使用する頻度は増えており、急速に脳および頭蓋内疾患の評価において選択される画像様式となっている。
この文献は、MRIの基本原理、シーケンスの描写、脳画像診断におけるそれらの応用、脳MRI検査の解釈に対するアプローチの概要を述べる。
水頭症、血管原性浮腫、脳ヘルニア、発作関連変化、先天性脳疾患のMRI診断など一般的な頭蓋内疾患の画像所見の詳細な考察を述べる。後天性脳疾患のMRI評価はパート2で述べる。(Sato訳)

■動物の脳疾患のMRIパート2:後天的脳疾患
MRI of brain disease in veterinary patients part 2: Acquired brain disorders.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2010;40(1):39-63.
Silke Hecht, William H Adams

MRIは獣医療における革命的脳画像診断で、頭蓋内異常プロセスの特徴付けの改善を可能にする。この文献は感染性炎症、非感染性炎症、脳血管性、代謝性、栄養性、中毒性、退行性、外傷性、腫瘍性の原因などの後天性脳疾患のMRI特性に焦点を当てる。先天性頭蓋内疾患はパート1で述べる。(Sato訳)
■猫海綿状脳症サーベイランスにおけるイタリアの猫の神経病理
Neuropathology of italian cats in feline spongiform encephalopathy surveillance
Vet Pathol. September 2008;45(5):626-33.
B Iulini, C Cantile, M T Mandara, C Maurella, G R Loria, M Castagnaro, C Salvadori, C Porcario, C Corona, A Z Perazzini, A Maroni, M Caramelli, C Casalone

猫海綿状脳症(FSE)は、牛海綿状脳症に罹患した牛の組織を含む餌を食べることに関係する伝播性海綿状脳症で、プリオン蛋白(PrP(sc))の異常なイソ型の中枢神経系における蓄積を特徴とする。臨床的に進行性の致死的神経学的症候群を呈し、他の猫の神経学的疾患との鑑別は容易ではない。FSEの症例のほとんどはイングランドで報告されており、1990年に初めて検出されたが、わずかな症例も他のヨーロッパの国々で報告されている。イタリアにおけるFSEの可能性がある症例を確認するため、イタリアの保健省は2年間のサーベイランスプロジェクトに資金を供給し、神経症状を持つ110頭の家猫の脳を、海綿状脳症に対する組織学検査、PrP(sc)を検出するため免疫組織化学検査で評価した。FSEの症例は発見できなかったが、その研究は他の神経疾患に対するイタリア猫集団をモニタリングするのに有効だった。腫瘍(21.8%)、毒-代謝脳障害(18.2%)、肉芽腫性脳炎(15.5%)、化膿性脳炎(4.6%)、外傷(3.6%)、循環器疾患(3.6%)、変性(2.7%)、神経筋疾患(1.8%)だった。20%の脳には組織病変が見つからなく、5.5%のサンプルは不適切で除外した。(Sato訳)
■シーズーの灰白質脳脊髄障害における臨床病理学的およびMRIの特徴
Clinicopathologic and magnetic resonance imaging characteristics associated with polioencephalomyelopathy in a Shih Tzu.
J Am Vet Med Assoc. 2009 Sep 1;235(5):551-7.
Kent M, Platt SR, Rech RR, Neravanda D, Uhl EW, Schatzberg SJ.

症例
17ヶ月、7kgのシーズーが3ヶ月の間の進行性の前肢の脱力を認めた。
臨床知見
神経解剖学的に頸胸部(C6-T2)領域の脊髄分節異常が疑われた。電気生理学的検査では前肢の自発活動の異常を認めた。MRI検査ではC5-C7椎体にわたる脊髄に病変が検出され、同時に頸随頭側の一部、尾側丘および前庭核、小脳核に対称的病変が存在した。先天性の代謝異常を示す代謝産物を検出する検査では異常は認めなかった。
治療および転帰
MRI検査を行う前に、クリンダマイシン(14mg/kg PO q12h)、トリメトプリムースルファジアジン(17mg/kg PO q12h)、プレドニゾン(1mg/kg PO q24h)が処方された。しかし状態が悪化したため安楽死の転帰をとった。剖検ではMRI所見と一致する、頸随、尾側丘、前庭核および小脳核に肉眼的病変が認められた。顕微鏡的には脳および脊髄の灰白脳脊髄障害を認めた。これには反応性アストロサイト(腫脹したミトコンドリアが高頻度に認められる)と大型のニューロンの保持を伴う重度の神経網の海綿状変化が認められた。
臨床的重要性
本報告におけるシーズーの灰白脳脊髄障害の形態は、オーストラリアンケトルドッグでの記載と類似していた。これらは人のリー病と類似しており、ミトコンドリア異常が示唆される。(Dr.Ka2訳)
■犬の外傷性気脳症
Traumatic pneumocephalus in a dog
J Am Vet Med Assoc.2009 May 15;234(10):1295-8.
Haley AC, Abramson C.

症例
進行性の四肢不全麻痺を呈した17か月の犬で、2か月齢の時に頭蓋顔面に外傷を負っていた。
臨床所見
神経学的検査では延髄領域の障害が示唆された。CT検査では脳室系から頚髄クモ膜下腔に渡る広範な気脳症を認めた。
治療および転帰
患者の状態の悪化のため、緊急的に両側の経前頭骨開頭術を行った。術中に大量の化膿性肉芽腫瘍物質を認めた。術後8週目には神経学的検査、CT検査における異常は改善した。
臨床的関連性
本知見からは、顔面頭蓋の外傷を負った病歴を持つ犬において、神経学的に頭蓋内疾患が疑われたときには、気脳症を鑑別に含めるべきであることが示唆された。(Dr.Ka2訳)
■虚血性脊髄症が疑われた犬52頭におけるMRI所見と臨床的関連性
Magnetic Rosonace Imaging findings and clinical associations in 52 dogs with suspected ischemic myelopathy
J Vet Intern Med.2007 Nov-Dec;21(6):1290-8.
De Risio L, Adams V, Dennis R, McConnell F, Platt S.

背景
虚血性脊髄症のMRI所見に関しては、人医学領域では記載されているが、獣医学領域ではわずかにしか記載されていない。
仮説
この研究の目的は、虚血性脊髄症が疑われる多数の犬を用いて、MRI所見、検査時期、神経学的な症状との関連性を明らかにすることである。
動物と手法
2000~2006年の間に虚血性脊髄症と仮診断を受けた犬の医療記録とMR画像を用いて解析した。供試犬の基準は急性発症で非進行性及び無痛性であること、発症から7日以内に脊髄のMRI(1.5テスラ)検査を受けていること、完全な医療記録および経過観察の情報があることとした。仮診断はヒストリー、臨床症状、MRI検査所見および脳脊髄液検査所見に基づいて行われた。MRI検査における病変の範囲は以下の基準を用いて評価した。(1)矢状断像においてT2強調領域の長さと、C6椎体からL2椎体までの長さとの割合、(2)脊髄横断面の面積との割合として、横断像における脊髄内T2強調領域が最大となる部位の面積。
結果
52頭の犬が供試された。うち41頭がMRI検査で異常を認め、11頭が異常を認めなかった。MRI検査での異常所見の発現は、検査を実施した時機とは有意に相関しなかった(P = .3)が、受診時の歩様状態とは相関を認めた(P = .04)。受診時の症状の重症度はMRI検査での病変の大きさと相関した(P = .02)。
結論および臨床的重要性
受診時の症状の重症度はMRI検査における病変部の存在と大きさに相関する。(Dr.Ka2訳)
■l-2- Hydroxyglutaric Aciduriaのスタッフォードシャーブルテリアにおける神経病理所見
Neuropathological Findings in a Staffordshire Bull Terrier with l-2-Hydroxyglutaric Aciduria
J Comp Pathol. February 2008;0(0):.
E Scurrell, E Davies, E Baines, G B Cherubini, S Platt, W Blakemore, A Williams, S Schoniger

l-2-Hydroxyglutaric aciduria (l-2-HGA)は、ヒトや犬で報告される遺伝性神経代謝障害である。11ヶ月齢のスタッフォードシャーブルテリアで、臨床症状とMRI所見をもとにその疾患が疑われた。l-2-HGAは尿有機物分析およびDNA検査により確認され、犬は安楽死された。
剖検の所見は、大脳皮質の灰白質、視床、小脳、脳幹に優勢に見られた顕著な海綿状変化を特徴とする脳の顕微鏡的病変のみだった。海綿状変化は、境界明瞭、ニューロン周囲および血管周囲に認める明らかな空胞の特徴がある。免疫組織化学および超微細構造的検査で、侵された細胞は星状細胞と確認した。(Sato訳)
■パグの壊死性髄膜脳炎の遺伝率および伝播分析
Heritability and transmission analysis of necrotizing meningoencephalitis in the Pug
Res Vet Sci. November 2008;0(0):.
Kimberly A Greer, Schatzberg , Porter , Jones , Thomas R Famula, Keith E Murphy

パグの壊死性髄膜脳炎(NME)は、原因不明の若年で発現する常に致死的な疾患である。種の偏りは遺伝構成要素を強く示唆し、研究した症例ではウイルス性病因は陰性と証明されている。現在の研究は、最初にパグにおけるNMEに関与する遺伝構成要素の分析が行われた。完全な医療記録、個別特徴、血糖情報を分析した4698頭の犬に関するデータと58頭の罹患犬で収集した。異なる性別間および有意に異なる毛色間および不定発現で高い近親交配率が明らかだった。発現年齢中央値は19ヶ月で、生存期間中央値は23日だった。ヘルペス、アデノ、パルボウイルスのスクリーニングは陰性だった。データはパグにおけるNMEの強い家族性遺伝が示す。この調査は現在までに分析された最も多数のパグNME集団から疾患のパラメーターを提供し、過去に認識されていない家族性遺伝の証拠を提供する。(Sato訳)
■成人のキアリ奇形関連性脊髄空洞症の長期経過:外科的に治療した157症例の分析
Long-term follow-up of Chiari-related syringomyelia in adults: analysis of 157 surgically treated cases.
Neurosurgery. 2009 Feb;64(2):308-15; discussion 315.
Aghakhani N, Parker F, David P, Morar S, Lacroix C, Benoudiba F, Tadie M.

目的:キアリ奇形関連性脊髄空洞症を外科的に治療した長期結果を決定すること

方法:キアリ奇形関連性脊髄空洞症に罹患した患者を外科的に治療した157症例の医療カルテを回顧的に分析した。臨床的あるいは放射線学的に結果を予測する因子について議論し、我々の結果と他の文献における大規模シリーズの因子とを比較した。

結果:74人の男性と83人の女性(年齢:16-75歳、施術した平均年齢:38.3歳)がこの研究に参加した。疼痛と感覚障害が最も頻繁に見られた初期症状だった。術前徴候の平均持続期間は8.2年だった。経過観察期間は82-204ヶ月(中央,88ヶ月)だった。研究の最後に術後99人(63.06%)の患者は改善し、48人(30.58%)は安定し、9人(5.73%)は悪化し、そして1人(0.63%)は術後の期間に死亡した。改善あるいは安定を予測する因子は施術時期が若齢であること、発作性頭蓋内圧亢進の臨床徴候の有無だった。予後不良に関連する因子は施術時期が高齢であること、クモ膜炎の有無、長経路障害症候群の臨床徴候の有無だった。クモ膜炎あるいは扁平頭蓋底の存在は悪い臨床徴候と関連があった (それぞれP = 0.05 と 0.0001)。術後のMRI検査でのシストの大きさが予後不良の予測となった(P = 0.002)。

結論:長期的な安定あるいは改善が平均で90%の確率で、キアリ奇形関連性脊髄空洞症の治療には外科手術が効果的であり、安全であることが我々の結果から確かめられた。明らかに臨床徴候が進行している患者に対しては、出来るだけ早急に外科手術をすることが推奨される。(Dr.Kawano訳)
■犬の睡眠発作の病態生理と臨床管理
Review of pathophysiology and clinical management of narcolepsy in dogs
Vet Rec. September 2007;161(11):375-80. 30 Refs
M Tonokura, K Fujita, S Nishino

睡眠発作は人や動物で見られる慢性睡眠障害である。17犬種が散発的に、ドーベルマン、ラブラドールレトリバー、ダックスフントでは家族性に発生する。それらの犬が呈する特性は、人の睡眠発作に著しく似ており、脱力発作(感情的刺激に対する反応で突然の筋緊張喪失)、より短い睡眠潜伏などである。最近では家族性(無発現変異レセプター)、散在性(リガンド産生減少)両方による犬睡眠発作の病因は、ヒポクレチン/オレキシン神経伝達の欠損に関与するといわれている。ヒポクレチン欠損は、脳脊髄液中のヒポクレチン-1の測定により検出可能で、これは臨床でヒポクレチン、リガンド欠損症例の診断に使用できた。睡眠発作は進行性でも命を脅かすものでもないが、臨床症状は生涯持続し、終生治療とケアが必要とされる。この文献は、犬の睡眠発作研究の最近の進歩を概説し、その疾患の診断と治療を紹介する。(Sato訳)
■老犬の海馬における領域特定ニューロン喪失は強化により減少する
Region specific neuron loss in the aged canine hippocampus is reduced by enrichment
Neurobiol Aging. January 2008;29(1):39-50.
Christina T Siwak-Tapp, Elizabeth Head, Bruce A Muggenburg, Norton W Milgram, Carl W Cotman

海馬および嗅内皮質内のニューロン喪失は、人の加齢の機能として発生する。まず我々は、老犬においてニューロン喪失が起こるという仮説を研究した。左半球から海馬の小部分および犬嗅内皮質におけるニューロンの片側総数をoptical fractionatorの使用により算出した。ビーグルの老犬(13.0-15.0歳)および若犬(3.4-4.5歳)の脳を分析した。若犬の脳と比較して老犬の脳における海馬の門は、有意なニューロン喪失(約30%)を示した。残りの海馬の亜領域および嗅内皮質で違いは検出されなかった。
我々はさらに、抗酸化物質強化食あるいは行動強化が門ニューロンの加齢に伴う喪失を減少させるだろうという仮説を研究した。老犬の行動強化は、コントロールと比較して門のニューロンがより多かった(約18%)。
それらの結果は、左半球における老齢犬海馬は選択的ニューロン喪失を示し、行動強化がこの喪失を減少させるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬における頭蓋内くも膜嚢胞に対する開頭と嚢胞腹膜シャントによる治療
Craniotomy with cystoperitoneal shunting for treatment of intracranial arachnoid cysts in dogs
Vet Surg. July 2007;36(5):416-22.
Curtis W Dewey, Ursula Krotscheck, Kerry S Bailey, Dominic J Marino

目的:犬頭蓋内くも膜嚢胞(IAC)の治療で嚢胞腹膜シャント(CPS)設置と減圧開頭術を述べ、4頭の結果を評価する
研究構成:遡及研究

動物:IACの犬4頭

方法:MRI(3頭)またはCT(1頭)によりIACと診断された犬の医療記録を評価した。術前に全ての犬はさまざまな程度の神経学的機能不全を呈していた。術側の横静脈洞を犠牲にし、側方(吻側テント)/後頭下開頭術を実施した。低圧バルブシャント(出径3mm、長さ7.0cm)の吻側(脳室)端を嚢胞腔内に横方向に設置した。遠位端は腹膜腔内に設置した。1人以上の著者により、さまざまな期間で全ての犬を直接、またはオーナーに電話、またはその両方で再チェックした。術後3頭の犬は画像検査をした(CT-1頭;MRI-1頭;超音波-1頭)。

結果:術中合併症は横静脈出血が限界を超えたので1頭で輸血を必要とした。術後合併症はなかった。神経学的機能不全の臨床症状は3頭で解消し、1頭はおおむね改善した。後者の1頭は長期低用量コルチコステロイド療法を必要とした。再度手術を必要とした犬はいなかった。追跡調査期間平均は23.8ヶ月(範囲、12-43ヶ月)だった。頭蓋内嚢胞の虚脱は、繰り返し画像検査をした3頭で検証した。2頭でCTまたはMRIにおける嚢胞の所見はなかった。3頭目で少量の液体を超音波検査において、小脳の吻側に認めたが嚢胞と確認できるものはなかった。1頭でシャントの吻側面がシフトしていたが、これは臨床的悪化に何も関係しなかった。

結論:CPS設置と開頭術は、よく許容し、持続性の改善または機能不全の解消をもたらす。再画像検査を行った3頭で嚢胞減圧を確認した。再手術が必要な犬はいなかった。過剰な横静脈洞出血は、輸血を必要とするかもしれない潜在的危険がある。この方法で治療した他のIACの犬は、その効果を完全に評価する必要があるだろう。

臨床意義:IACの臨床的影響を受ける犬で、CPS設置の開頭術は効果的な治療法と思われる。(Sato訳)
■犬における虚血性および出血性脳卒中
Ischaemic and haemorrhagic stroke in the dog
Vet J. June 2008;0(0):.
Annette Wessmann, Kate Chandler, Laurent Garosi

脳血管疾患は、脳に供給される血管のどんな病的プロセスからも起こる。急激に起こることを特徴とする脳卒中は、ヒトで死因の第三位である。犬におけるこのまれな疾患は、高度診断的画像検査の出現でだんだんと認められるようになっている。MRIは脳卒中の第一の診断ツールで、特に虚血性脳卒中に対する拡散強調画像およびMR血管造影、出血性脳卒中に対するグラディエントエコーシーケンスの使用である。ヒトや犬で基礎原因が常に認められるわけではない。犬の脳卒中に関係すると思われる基礎疾患は、甲状腺機能低下症、腫瘍、敗血症、高血圧、寄生虫、血管奇形、凝固障害なのである。治療は主に支持療法で、数週間以内に回復することが多い。基礎疾患がない場合、予後は通常良好である。(Sato訳)
■パグにおける壊死性髄膜脳炎の疫学
Epidemiology of Necrotizing Meningoencephalitis in Pug Dogs
J Vet Intern Med. 2008 Jul-Aug;22(4):961-8.
J M Levine, G T Fosgate, B Porter, S J Schatzberg, K Greer

背景:壊死性髄膜脳炎(NME)の組織学的像はすでに明らかにされているが、シグナルメント、地理的分布、季節性、治療、罹患犬の生存期間に関する報告はほとんどない。

動物: NMEのパグ60頭およびその他の頭蓋内疾患(non-NME群)で同年齢のコントロールのパグ14頭。

方法:安楽死または頭蓋内疾患で死亡したパグが前向き試験として得られた。すべての犬を剖検し、組織病理学やさまざまな感染症の検査を行い、NMEとnon-NME群に分類した。群間でシグナルメント、地理分布、季節性、治療および生存期間を比較した。

結果:NMEのパグにおける臨床症状の初発年齢の中央値は18ヶ月(幅、4-113ヶ月)であった。メス犬は、コントロール群(6/14)と比較すると、NME群(40/60)でより多く存在した。体重に関して、NMEのパグ(7.81kg)は、コントロールのパグ(9.79kg)よりもより有意(P=0.012)に軽かった。NMWのパグにおける中央生存期間は93日(平均1-680日)、無治療群よりもいくつかの治療を受けている犬のほうが有意(P= 0.003).に長く生存した。抗痙攣薬は長期生存期間に有意に関係する唯一の治療だった(P=0.003)。

結論と臨床の重要性:今回報告されたNME犬の高い集団を基に、NMEはパグの頭蓋内兆候の一般的な原因であると考えられる。NEMのパグは一般的にほとんどが若い雌の成犬である。NMEの最適な治療を決定するには更なる調査が必要だが、抗痙攣薬は生存期間に有益に影響するように考えられる。(Dr.IDE訳)
■起源がわからない髄膜脳脊髄炎の犬11頭のプレドニゾロンおよびシトシンアラビノシドの組み合わせによる治療
Treatment of 11 dogs with meningoencephalomyelitis of unknown origin with a combination of prednisolone and cytosine arabinoside
Vet Rec. February 2008;162(8):241-5.
P Menaut, J Landart, S Behr, D Lanore, C Trumel

起源がわからない髄膜脳脊髄炎の所見を持つ犬11頭の記録を再検討した。そのうち2頭の疾患は局所型で、残りの9頭は散在型だった。散在型9頭のうち5頭は前脳、全9頭は脳幹、1頭は小脳を侵されていた。それらは3週間毎のシトシンアラビノシドと免疫抑制量のプレドニゾロンのプロトコールで治療した。オーナーや紹介元の獣医師によるクオリティーオブライフに関する治療に対する反応は、5頭は優良、5頭は良、1頭は不良で、それらの生存期間の範囲は78日から603日以上だった。累積2年生存率は58.4%だった。シトシンアラビノシドに関する骨髄抑制および他の副作用は認められなかった。(Sato訳)
■犬の肉芽腫性髄膜脳脊髄炎
Granulomatous Meningoencephalomyelitis in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet. November 2007;29(11):678-690. 65 Refs
P. Filippo Adamo, DVM, DECVN, William M. Adams, DVM, DACVR, Howard Steinberg, VMD, PhD, DACVP

肉芽腫性髄膜脳脊髄炎(GME)は犬の中枢神経系を侵す起源が不明な非化膿性炎症疾患である。GMEは脳および脊髄の実質および髄膜における単核細胞の大きな血管周囲カフを組織学的特徴とする。治療しないままだと通常死に到る。グルココルチコイドの免疫抑制量は、GMEの治療の主軸であるが、新しくより効果的な治療が最近提唱されている。この文献は、犬のGMEの病理、起源、臨床症状、治療反応および予後を概説する。(Sato訳)
■犬の壊死性髄膜脳炎におけるグリア繊維性酸性蛋白質(GFAP)と抗GFAP自己抗体
Glial fibrillary acidic protein (GFAP) and anti-GFAP autoantibody in canine necrotising meningoencephalitis.
Vet Rec. 2007 Aug 25;161(8):261-4.
Toda Y, Matsuki N, Shibuya M, Fujioka I, Tamahara S, Ono K.

犬の壊死性髄膜脳炎(NME)の臨床的マーカーを確立することと、その病因を解明するため、壊死性髄膜脳炎の32頭の犬と他の炎症性中枢神経系疾患の23頭の犬と種々の中枢神経系疾患の犬27頭と5頭のパグを含む25頭の健常犬において脳脊髄液(CSF)でグリア繊維性酸性蛋白質(GFAP)と抗GFAP自己抗体を測定した。壊死性髄膜脳炎の犬でより高濃度の抗GFAP自己抗体が検出された。
壊死性髄膜脳炎を診断するための抗GFAP自己抗体の診断的感受性と特異性はそれぞれ91%と73%だった。
壊死性髄膜脳炎の犬の数頭と健康なパグは、脳脊髄液中に高濃度のグリア繊維性酸性蛋白質(GFAP)が検出された。これはパグがアストロサイトの犬種特異的脆弱性をもっていることを示す。グリア繊維性酸性蛋白質の漏出と自己抗体の発生は壊死性髄膜脳炎の病因を理解するための手がかりとなるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬18頭、猫9頭の医原性坐骨神経傷害(1997-2006)
Iatrogenic sciatic nerve injury in eighteen dogs and nine cats (1997-2006)
Vet Surg. July 2007;36(5):464-71.
Franck Forterre, Ales Tomek, Ulrich Rytz, Leo Brunnberg, Andre Jaggy, David Spreng

目的:紹介教育病院に入院した(1997-2006)犬猫で、医原性末梢神経傷害に関与する臨床特性を報告する

研究構成:遡及研究

動物:犬18頭、猫9頭

方法:患者は治療後発症した坐骨神経機能不全による単不全麻痺の急性症状を示した。神経学的検査と電気診断検査を実施した。外科的治療は他の症例で使用した神経包括及び遅延再建手術を使用した。

結果:神経傷害を持つ27頭のうち、25頭は手術により起きた(18頭は骨盤傷害の治療)。腸骨仙骨脱臼整復は脛骨(猫4頭)及び腓骨(犬3頭)神経機能障害を起こした。他の原因は、大腿骨折の髄内ピンニング(3)、他の整形外科手術(骨盤セメント人工関節(2)、脛骨プラトー平坦化骨切術(1))、会陰ヘルニア縫縮(1)だった。神経傷害は筋肉注射後発生した(猫1頭、犬1頭)。即座の外科治療は、髄内ピン除去、セメント押し出し、または包括縫合だった。遅延神経移植を2頭の犬で行った。1年以内に13頭は完全に回復し、7頭で臨床改善、7頭では改善が見られなかった。回復しなかった7頭のうち5頭は、寛骨臼または腸骨骨折だった。

結論:医原性坐骨神経傷害は、多くが骨盤の整形外科疾患の治療中に発生し、予後は悪かった。犬猫の坐骨神経機能不全の臨床変動は、種の解剖学的相違により説明できる。

臨床関連:医原性坐骨神経傷害は、完全機能回復に対する不確かな予後を持つ重度消耗性運動機能障害を引き起こす。(Sato訳)
■老齢犬の行動異常におけるガンマ-アミノ酪酸(GABA)の緩和効果
Alleviative effects of gamma-aminobutyric acid (GABA) on behavioral abnormalities in aged dogs.
J Vet Med Sci. 2005 Oct;67(10):1063-6.
Inagawa K, Seki S, Bannai M, Takeuchi Y, Mori Y, Takahashi M.
動物病院に来院した老齢犬(平均年齢:15.3歳)にガンマ-アミノ酪酸(GABA, 30 mg/kg)を食事に混ぜて1日1回2週間投与した。犬の老化に関連してよく見られる問題行動に対し、GABAの効果を飼い主が主観的に評価した。いずれの観察可能な副作用ももなく、いくつかの行動異常が著しく改善された。認知障害症候群に対する効果は常に観察されるわけではなかったが、GABAを投与した犬はneurovegetableな機能不全によって惹起されるかもしれない感情面や症状で改善を示す傾向があった。従ってGABA投与は老齢犬の生活の質を改善させる効果的な手段の一つかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■大脳ブラストミセス症:ボリコナゾール治療症例シリーズ
Cerebral blastomycosis: a case series incorporating voriconazole in the treatment regimen
Med Mycol. November 2006;44(7):659-64.
Sergio M Borgia1, Jeffrey D Fuller, Alicia Sarabia, Philippe El-Helou
1 William Osler Health Centre, Ontario, Canada.

大脳ブラストミセス症はあまり報告されない疾患である。我々は、標準抗真菌療法で過去に治療し、その後ボリコナゾールで治療に成功した大脳ブラストミセス症の3例を報告する。1例目は最初に皮膚と骨の随伴ブラストミセス症を呈した29歳男性。2例目は前立腺、肺、皮膚病変を最初に呈した50歳男性。3例目は片麻痺と多発大脳内ブラストミセス症を呈した63歳男性だった。この報告は著者の知るところでは、カナダでのイトラコナゾールによる治療後のCNSブラストミセス症の再発について最初の2例、ボリコナゾールによる治療に成功した大脳ブラストミセス症の世界で最初のヒト症例3例を紹介する。(Sato訳)
■退行性脊髄症が疑われる犬で日々管理された理化学療法が生存時間を増加させます。
J Vet Intern Med. 2006 Jul-Aug;20(4):927-32.
Daily controlled physiotherapy increases survival time in dogs with suspected degenerative myelopathy.
Kathmann I, Cizinauskas S, Doherr MG, Steffen F, Jaggy A.

ここに報告された研究の目的は、退行性脊髄症の50頭の犬のシグナルメントと臨床像を評価し、平均生存時間が様々な手段の理化学療法を実施した22頭の犬で有意に影響したかどうかを評価し、神経学的状態、解剖学的位置あるいは兆候が見られた年齢が理化学療法を実施した犬の生存時間に影響を与えたかどうかを決定することであった。ジャーマンシェパード、クバース、ホファヴァルトおよびバーニーズマウンテンドッグが好発犬種として有意差(P < .05)がありました。診断時平均年齢は9.1歳で、雄雌とも同じく罹患しました。56%(n=28)の病変は第3胸椎から第3腰椎に、44% (n = 22)は第3腰椎から第3尾椎に解剖学的に位置しました。徹底的な理学療法(n=9)を受けた動物は中等度(n=6; 平均130日)あるいは何もしない場合(n = 7; 平均55 日)より長く(平均 255日)生存しました(P<.05)。さらに、今回の結果で理学療法を受けた罹患犬が理学療法を受けなかった動物より長い間歩行可能であったことが示されました。(Dr.Kawano訳)
■急性脊髄梗塞を疑う猫2例のMRI特性と文献の再検討
MRI characteristics of suspected acute spinal cord infarction in two cats, and a review of the literature.
J Feline Med Surg. 2005 Apr;7(2):101-7.
MacKay AD, Rusbridge C, Sparkes AH, Platt SR.

10歳去勢雄ペルシャ猫と4歳避妊雌のドメスティックショートヘア(DSH)がそれぞれ重度の四肢不全麻痺と片側麻痺の急性発症のため評価した。両方の猫には、左側ホルネル症候群もあった。猫の神経学的検査ではペルシャでは第5頚椎(C5)から頭側に、DSHでは左側頚部膨大部(C6-T2)に病変が限局した。身体検査ではその他に顕著な異常は認められなかった。通常の血液検査と脊髄レントゲン写真は、ペルシャでは正常であり、DSHでは実行しなかった。脳脊髄液(CSF)検査は、ペルシャで実施したが、全血が混入したため中止しDSHでは実施しなかった。ペルシャのMRIではT1強調画像で等~低信号、T2強調画像で高信号、そしてガドリウム造影にてわずかに強調されたC1~C3分節(わずかに左側)における脊髄実質内の病変が明らかになった。DSHのMRIではT1強調画像で低信号、T2強調グラジエントエコー画像で高信号のC7(主に左側)分節で脊髄実質内の病変が明らかになった。造影剤は使用しなかった。両方の症例のMRI所見から人間のケースの比較に基づいて急性脊髄梗塞が高く示唆された。両方の猫は支持療法だけで完全な神経学的回復をみせた。この論文は、猫で疑われた急性脊髄梗塞に関する2つのケースについて説明し、MRIの潜在的診断値を示しており、パブリッシュされたケースの簡単な批評があるこの状態の臨床的症候群について議論します。(Dr.Kawano訳)
■中枢性vs末梢性前庭疾患の犬における神経機能障害の兆候
Signs of neurologic dysfunction in dogs with central versus peripheral vestibular disease.
J Am Vet Med Assoc. 2005 Aug 15;227(4):570-4.
Troxel MT, Drobatz KJ, Vite CH.

目的: 中枢性前庭疾患(CVD)もしくは末梢性前庭疾患(PVD)の犬における神経機能障害の特異的な症状の頻度を調査し、斜頚の程度、眼振の割合そして回転後眼振の振動数がCVDとPVDの鑑別に役立つかどうか決定する。

設計: 前向き臨床研究

動物:前庭系機能障害を伴う飼い主所有の犬40頭
方法: 斜頚の程度、眼振の割合そして回転後眼振の振動数の程度を評価する、拡張した前庭系検査に沿って標準的な神経学的検査を実施した。

結果:CVDの犬は明らかにPVDの犬より歩行困難である傾向がありました。PVDの犬はCVDの犬より向きを変える、あるいは一方向に傾きやすく、休息性眼振がより起こりやすかった。休息性眼振の中央割合はPVDの犬より明らかに高かったが、両者に斜頚の程度、腹側斜視の存在そして回転後眼振の振動数に有意な相違は認められなかった。

結論と臨床関連:四肢不全麻痺による歩行困難は明らかにCVDの犬でより一般的で、向きを変えたり傾くことは明らかにPVDでより一般的である。斜頚の程度あるいは回転後眼振の振動数はどちらもCVD とPVDの鑑別には役立たないかもしれないが、休息性眼振率は両者を鑑別するのに役立つかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■猫の炎症性脳脊髄液分析:臨床疾患と予後
Inflammatory Cerebrospinal Fluid Analysis in Cats: Clinical Diagnosis and Outcome
J Feline Med Surg 7[2]:77-93 Apr'05 Retrospective Study 17 Refs
M Singh, DJ Foster, G Child, WA Lamb

中枢神経系疾患を持ち、付随炎症性脳脊髄液(CSF)分析を行った猫62頭の医療記録から、徴候、CSF分析と補助検査が存在する中枢神経系疾患の種類を正確に予測できるかどうか判定するため、遡及的に調査した。炎症性CSFは総有核細胞数>5細胞/μlのもの、または総有核細胞数は正常だが有核細胞較差数は異常なものと定義した。性別、CSF炎症程度、神経解剖学的位置および全身症状は最終診断にほとんど寄与する情報を提供しなかった。63%の症例で、臨床症状、臨床病理データ、補助診断検査をもとに仮診断を下すことが出来た。CSF分析単独では、ネコ伝染性腹膜炎、クリプトコッカス種感染、腫瘍、外傷のみ診断で有効だった。総体的に広範囲な診断評価にもかかわらず、37%の猫は特定診断できなかった。炎症性CSFの猫の予後は1年未満生存している猫が77%ということで悪かった。(Sato訳)
■脳梗塞の犬33頭の診断調査の結果と長期結果(2000-2004)
Results of Diagnostic Investigations and Long-Term Outcome of 33 Dogs with Brain Infarction (2000-2004)
J Vet Intern Med 19[5]:725-731 Sep-Oct'05 Retrospective Study 62 Refs
L. Garosi, J.F. McConnell, S.R. Platt, G. Barone, J.C. Baron, A. de Lahunta, and S.J. Schatzberg

MRIで脳梗塞と診断した急性発症、非進行性、頭蓋内機能不全を呈す33頭の犬の医療記録を再検討した。10頭の犬の剖検で脳梗塞を確認した。すべての犬はCBC、生化学、甲状腺および副腎検査、尿検査、胸部および腹部画像検査、脳脊髄液検査の評価を行っていた。凝固能と動脈圧の結果はそれぞれ32頭、28頭で得られた。画像所見をもとに、梗塞をそれらのタイプ(territorialまたはラクナ)および脳内の位置(終脳10頭、視床/中脳8頭、小脳15頭)で分類した。
梗塞の位置またはタイプと年齢、性別、全身性高血圧の発生、併発疾患の有無に顕著な関連は認められなかった。小型犬種(<15kg)は有意にterritorialy小脳梗塞になりやすく、大型犬種(>15kg)はラクナ視床または中脳梗塞になりやすかった。併発疾患は33頭中18頭に認められ、慢性腎疾患(8頭)、副腎皮質機能亢進症(6頭)がよく見られた併発疾患だった。33頭中10頭は重度で、神経の状態の改善が見られない、または併発疾患が重度なため安楽死した。梗塞のタイプ、梗塞の位置と患者の結果に関連は認められなかった。併発疾患を持つイヌは、確認できる疾患を持たない犬より有意に生存期間が短かく、その後の梗塞により神経症状を有意に再発しやすかった。(Sato訳)
■イヌのストレプトコッカス性脊髄硬膜外蓄膿
Streptococcal Spinal Epidural Empyema in a Dog
Aust Vet Pract 34[1]:16-22 Mar'04 Case Report 16 Refs
J. A. Braddock, P. L. C. Tisdall, P. Martin and R. Malik

5歳の去勢済みイングリッシュスタッフォードシャーブルテリアが、後枝跛行の急性発現で来院した。症状は、沈うつ、発熱、歩行不能、対麻痺、右前肢の腫脹と跛行まで進行した。脊髄造影を行い、4つの脊椎にわたる胸部脊髄の圧迫を認めた。探査的ヘミラミネクトミーで、硬膜外化膿を認め、硬膜外表面切除物質と尿の標本からランスフィールド群C S. dysgalactiae equisimilisが分離された。ヘミラミネクトミーによる脊髄の減圧とベータラクタム系抗生物質の経口、静脈内投与で徐々にだが完全な微生物学的治癒に至ったが、後遺症として軽度神経障害が残った。(Sato訳)
■犬における変性性腰仙部狭窄
Degenerative Lumbosacral Stenosis in Dogs
Vet Med 100[7]:500-516 Jul'05 Review Article 42 Refs
Marc Kent, DVM, DACVIM (neurology, internal medicine)

変性性腰仙部狭窄は馬尾症候群の一般的な原因で、老犬の神経障害として比較的よく見られる。この状況を早期に認識したら、治療により病的状態を有意に緩和できるかもしれない。
この専門用語は、脊髄分節、脊髄神経根、会陰の坐骨神経支配に関係する脊髄神経、膀胱、尿道および肛門括約筋、尾の不随意に影響する臨床症候群に当てはまる。特にそれら構成に影響する疾患は、第7腰脊髄神経(L7)、第1-3仙脊髄神経(S1-3)、尾神経を構成するため、さまざまな程度の後枝不全麻痺、尿、便失禁を起こしえる。
腰仙部疾患という用語は、坐骨神経、腰仙、尾神経に寄与する脊髄分節領域に影響する全ての病的状況を含む。馬尾症候群は、最終のいくつかの脊髄神経根の対に影響する病的状況を意味する。このように腰仙部疾患および馬尾症候群は非特異的状況である。代わりに、それらはそれぞれ腰仙部脊髄分節または脊髄神経根の機能障害を起こすさまざまな疾患の臨床症状である。その結果それら2つの症候群は同様の臨床症状を呈す可能性がある。
腰仙部疾患、または馬尾症候群の原因は、変性性腰仙部狭窄、先天性腰仙部狭窄、急性椎間板突出、椎間板脊椎炎、外傷性骨折、脱臼、または亜脱臼、原発腫瘍(骨肉腫、血管肉腫、線維肉腫のような椎体を巻き込む、または末梢神経鞘腫または髄膜腫のような末梢神経を巻き込むもの)、前立腺癌のような転移性腫瘍、馬尾の神経炎のような炎症性疾患、脊髄蓄膿、椎骨の先天的病変などである。腰仙部疾患、または馬尾症候群の用語に特別に含まれないが、同様の臨床症状を起こしえる他の疾患は、線維軟骨性塞栓脊髄症、筋障害、重症筋無力症、遠位大動脈や腸骨動脈の血栓症、股関節形成不全、十字靱帯疾患、多発性関節症のような寛骨大腿および膝関節の整形外科疾患が挙げられる。
すべてそれら原因の詳述は、この文献の範囲を超えている。その代わりにこの文献は、変性性腰仙部狭窄に関与する解剖学的構成、臨床症状、診断評価、治療介入、予後を中心に述べる。(Sato訳)
■若い犬と猫における発作:病態生理学と診断
Seizures in Young Dogs and Cats: Pathophysiology and Diagnosis
Compend Contin Educ Pract Vet 27[6]:447-460 Jun'05 Review Article 129 Refs
Joan R. Coates, DVM, MS, DACVIM (Neurology); and Robert L. Bergman, DVM, MS, DACVIM (Neurology)

若い犬と猫における発作は、あいまいな臨床特性のためにほとんど注目されていません。人の医療において、脳発達の確かな側面が、幼年時代の発作における役割を持っていると現在考えられております。未熟な脳におけるてんかん発作(例;発作の発生)は、抑制および興奮機構、イオン微小環境、そして髄鞘形成の程度により影響を受けます。発作活動後の障害および損失に対する易損性をより少なくするために発達中のニューロンが現れます。1歳未満の犬と猫は、症候的なてんかんを持ちやすいのかもしれません。若い犬と猫における発作の潜在的原因の早期認識は、適切な診断的考察と、折りのよい治療介入にとって重要であります。(Dr.K訳)
■老化に関する犬のモデルから老化と痴呆のコリン作働性仮説に対する更なる証拠
Further evidence for the cholinergic hypothesis of aging and dementia from the canine model of aging.
Prog Neuropsychopharmacol Biol Psychiatry. 2005 Mar;29(3):411-22.
Araujo JA, Studzinski CM, Milgram NW.

ヒトの老化と痴呆における記憶低下はコリン作動系の機能障害とリンクする。老犬はヒトの老化と痴呆をモデル化する認識機能障害と神経病理学を示す。 この論文は抗コリン作動性薬物のスコポラミン、および目新しいアセチルコリンエステラーゼ抑制剤であるphenserineを使った研究に基づき、犬の認識的な老化においてコリン作動性に関連性を示す最近の証拠を再検討する。特に、我々は (1) 犬においてスコポラミン障害による認知的な特異性 (2) スコポラミン障害における老化への影響、および(3) 犬の認識的性能におけるphenserineの効果を調べる。
私たちの調査結果は、以前に学習した鑑別能力によって示される非認知的な行動または長期的、意味的な記憶を混乱させないような投与量のスコポラミンで仕事の記憶能力が混乱したことを示す。
欠損のこのパターンは人間と犬の老化においても見られる。私たちは、老犬が若齢犬よりスコポラミンの障害による影響により敏感であることを示し、年齢の増加と共にコリン作動性神経の機能が低下することを示す。phenserineを投与した犬は偽薬コントロールと比べて学習と記憶が改善されたことを示す。
コリン作動性衰退が記憶障害をもたらすかもしれないが、記憶障害は注意そして/または新しい情報のコード化における欠損による二次的なものかもしれないということが調査結果から示唆される。同時にこれらの結果は犬のコリン作動系が年齢と共に減退し、老犬が治療をスクリーニングし、年齢依存性認知機能低下においてアミロイド病理学とコリン作動系機能障害との関係を検査することにおける独特なモデルであることを示唆する。(Dr.Kawano訳)
■神経疾患のコルチコステロイド投与
Administering Corticosteroids in Neurologic Diseases
Compend Contin Educ Pract Vet 27[3]:210-220 Mar'05 Review Article 52 Refs
Simon R. Platt, BVM&S, DACVIM, DECVN, MRCVS; *Carley J. Abramson, DVM, DACVIM, MRCVS; Laurent S. Garosi, DVM, DECVN, MRCVS

グルココルチコステロイドの主な薬理学的効果は、それらの抗炎症特性、免疫抑制効果、潜在的な抗腫瘍的役割である。中枢神経系(CNS)傷害は、コルチコステロイド投与の利点を受けると思われる複数の、そして複雑な異常生理プロセスを含む。残念なことにそれら薬剤の臨床試験は、中枢神経障害の治療に決定的または優れた役割を持つことを証明されていない。中枢性神経系の炎症は感染性かもしれないが、多くの症例で最初にステロイドの作用の利点を受ける患者も特異的病原は原因として確認されない。脳血管性疾患のような他の神経疾患は、コルチコステロイド療法の効果がないかもしれない一方、ある種の神経腫瘍のタイプには、唯一利用できる有効な治療となるかもしれない。(Sato訳)
■髄膜腫の診断における硬膜尾徴候
The dural tail sign in the diagnosis of meningiomas.
Vet Radiol Ultrasound. 1998 Jul-Aug;39(4):297-302.
Graham JP, Newell SM, Voges AK, Roberts GD, Harrison JM.

人では硬膜尾徴候は造影T1 MRI強調像で見られる。この所見は髄膜腫に特異的であると考えられている。
この研究の目的は犬や猫でどれくらい硬膜尾徴候が起こるか、そして犬や猫の髄膜腫に特異的であるかどうかを決定することであった。既に髄膜腫と診断された18頭の犬と4頭の猫においてMR検査を実施した。診断は10頭の髄膜腫(犬7頭、猫3頭)、3頭の神経膠腫、2頭の下垂体腫瘍、2つの腫瘍タイプの1例、そして炎症性疾患による塊状病変を伴う5頭の患蓄が含まれた。
診断の知識なしで、硬膜尾徴候の存在について3人の検査員別々に造影T1強調画像を評価してもらった。この結果でそれぞれの患畜の診断と検査員の能力を比較した。 結果を平均すると、観察者によって検知は40~80%の違いがあったが、検査員の10人中6人(60%)が硬膜尾徴候の存在を報告した。それぞれの検査員は1例の偽陽性結果、2例の色素嫌性腺癌と1例のトキソプラズマ性髄膜脳炎を報告した。 硬膜尾徴候が観察されたら、関連するマスはまず髄膜腫である。 硬膜尾徴候が脳膜腫のマージンを超えて腫瘍の浸潤を示すかどうかは不明である。治療を計画する際これを考慮すべきである。(Dr.Kawano訳)
■犬の急性神経症状と関連した犬ジステンパー感染症
Canine distemper infection associated with acute nervous signs in dogs.
Vet Rec. 1992 Apr 4;130(14):291-3.
Raw ME, Pearson GR, Brown PJ, Baumgartner W.

ワクチン接種をしている犬8頭が突然短期間の進行性運動失調、不全麻痺あるいは麻痺を発症した。組織病理学的検査によりウイルス感染を示唆する非化膿性髄膜脳炎が明らかになり、そして、免疫組織化学的検査において5頭の犬で犬ジステンパーウイルス抗原の存在を確かめた。ジステンパーは犬の臨床検査からは疑われていなかった。(Dr.Kawano訳)
■アメリカンブルドックにおける不定型神経細胞セロイドリポフスチン症
A Variant Form of Neuronal Ceroid Lipofuscinosis in American Bulldogs
J Vet Intern Med 2005;19:44-51

神経セロイドリポフスチン症(NCLs)は、神経系の細胞内に自己蛍光性脂質色素の沈着を特徴とする遺伝性神経変性疾患である。9頭の血縁のあるアメリカンブルドックが不全対麻痺と四肢の測定障害を呈した。非外来の四肢不全麻痺はこの疾患の末期で観察された。他の犬種におけるほとんどの報告とは一致せず、臨床症状は1-3歳の間に発生し、数年かかけてゆっくり進行した。4頭の罹患犬と、血縁はあるが罹患しなかった6頭の犬において8つの異なるライソソーム蓄積病の血液検査結果は陰性であった。
罹患した4頭の犬は安楽死され、組織病理学検査は脳脊髄幹全体に沿ったニューロン及び軸索球と網膜においてPAS染色陽性となる封入体のび慢性の蓄積を示した。
ほどんどの重度な病変は脳幹の固有受容核と脊髄でみられ、臨床症状と一致した。
蓄積物質は脂質ペルオキシダーゼの産物のため自己蛍光性で免疫組織化学的に陽性であった。
微細構造分析はNCLと一致した。
家系分析は常染色体の劣勢遺伝形質モードを支持する。アメリカンブルドックのNCLは以前に報告がなく、これらの所見は犬の疾患における不定型であることを示唆する。(Dr.Kawano訳)
■ボーダーコリーにおける神経セロイドリポフスチン症に関するMRI所見
Magnetic resonance imaging of neuronal ceroid lipofuscinosis in a border collie.
J Vet Med Sci. 2004 Nov;66(11):1453-6.
Koie H, Shibuya H, Sato T, Sato A, Nawa K, Nawa Y, Kitagawa M, Sakai M, Takahashi T, Yamaya Y, Yamato O, Watari T, Tokuriki M.

23ヶ月齢、体重19.4kg、去勢雄のボーダーコリーが視力障害、行動異常、聴覚過敏そして病的な恐怖を主訴に日本大学アニマルメディカルセンターに委託された。MRI検査で僅かに拡張した大脳回そして小脳溝と左室の拡張が明らかになった。これは犬の神経セロイドリポフスチン症のMRI所見に関する初めての報告である。(Dr.Kawano訳)

■ラブラドールレトリーバーにおける神経セロイド・リポフスチン症
Neuronal ceroid-lipofuscinosis in a Labrador Retriever.
J Vet Diagn Invest. 2003 Sep;15(5):457-60.
Rossmeisl JH Jr, Duncan R, Fox J, Herring ES, Inzana KD.

進行性部分発作の11ヶ月の病歴と犬のセロイド・リポフスチン症(NCL)の層状型の剖検所見を伴なう8歳のラブラドールレトリーバーを提示する。この症例の臨床的な、光学顕微鏡による、そして超微細構造の特徴はヒトの成人型セロイド・リポフスチン症(NCL)(Kufs病)に最も密接に類似する。これはラブラドールレトリーバー種で発生したセロイド・リポフスチン症(NCL)の初めての報告である。(Dr.Kawano訳)
■背髄クモ膜嚢胞のイヌ17頭
Spinal Arachnoid Cysts in 17 Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:271-282 May-Jun'03 Retrospective Study 22 Refs
Todd M. Skeen, DVM; Natasha J. Olby, Vet MB, PhD; Karen R. Munana, MS, DVM; Nicholas J. Sharp, BVM, PhD

ヒトや獣医療で背髄圧迫の原因としてくも膜嚢胞はまれである。イヌで、それらの嚢胞は一般にクモ膜下腔に発生し、クモ膜と軟膜により線引きされている。イヌの背髄クモ膜嚢胞の報告はあるが、それらの多くは、外科的治療で分離した症例で、比較的短期間の追跡調査しか行っていない(<1年)。この文献の目的は、背髄クモ膜嚢胞の一連の症例を提示し、臨床症状の傾向の調査、短期(<1年)そして長期(>1年)予後の調査、長期予後が良い事に関係する要因を判定することであった。
背髄クモ膜嚢胞は著者の動物病院で14年の間に17頭のイヌで診断した。嚢胞は一般に、若いイヌの第1-3頚椎(n=7)の背側クモ膜下腔、大型犬種または老齢、小型犬種(<20kg;しかし3/10は>20kg)の尾側胸椎(n=10)だった。一般的な症例の症状は、無痛覚、進行性の運動失調だった。推尺過大は、頚部または胸部背髄クモ膜嚢胞のイヌのそれぞれ前肢、または後肢によく見られた。頚部嚢胞の1/7、胸腰部嚢胞の6/10で、尿または便失禁または両方が起こった。尿失禁は尿道の共同運動障害も典型的に見られた。
脳脊髄液分析などの支持的検査所での評価は、4頭の尿路感染の併発を除いては目立ったものはなかった。脊髄造影、CT、MRI、またはそれらの組み合わせで、病変位置を見出し、1頭を除き仮診断を行い、背髄クモ膜嚢胞の最終診断は手術時に行った。15頭のイヌはラミネクトミーで外科的に治療し、加えて嚢胞開窓術(n=5)、有袋化(n=9)、または切除(n=1)を行った。よい結果が得られなかった5頭中3頭は、神経症状のの再発が術後14-26ヶ月で起こった。残りの2頭は安楽死し、1頭はそのクモ膜嚢胞そしてもう1頭は球状細胞大脳白質萎縮によるものだった。
長期結果が良いことの有意な予後指標は認められなかった。しかし、予後良の傾向にある要因は、3歳以下、臨床症状の4ヶ月持続以下、術式として有袋化だった。
著者は、この疾患はまれであるが、上行運動ニューロンサインや推尺過大の見られる歩行動物で、尿や便失禁が見られるときは、背髄クモ膜嚢胞の存在を疑う臨床医の指標を高くするべきである。(Sato訳)
■75頭の線維軟骨性塞栓症:回復率に影響を及ぼす臨床所見と要因
Fibrocartilaginous embolism in 75 dogs: clinical findings and factors influencing the recovery rate.
J Small Anim Pract 44[2]:76-80 2003 Feb
Gandini G, Cizinauskas S, Lang J, Fatzer R, Jaggy A

背髄に線維軟骨性塞栓症を持つ75頭の記録を回顧的に評価した。21頭(A群)の診断は組織病理学的に確認され、54頭(B群)はその疾患の疑いがあるままだった。その2群を比較した。特に注目したのは、物理療法手段、回復率、予後判定基準の記述だった。結果は、線維軟骨性塞栓症になったイヌの多くは、中年齢、大型、超大型犬種だった。臨床症状は、発生が最急性で、非進行性でしばしば非対称性だった。脳脊髄分析は、大多数のイヌで正常だった。背髄内の腫脹は、それら患者の脊髄造影で唯一検出された異常だった。予後不良と膨張の併発の間、対称的臨床症状と深部痛覚の低下に正の相関があった。しかし、診断作業後即座に始める物理/水治療は回復率に多大な影響を持つように思われた。(Sato訳)
■ヨークシャーテリアの壊死性脳炎:症例報告と文献再検討
Necrotising encephalitis in the Yorkshire terrier: a case report and literature review.
J Small Anim Pract 43[10]:459-63 2002 Oct 11 Refs
Kuwamura M, Adachi T, Yamate J, Kotani T, Ohashi F, Summers BA

4歳避妊済みヨークシャーテリアが、2ヶ月にわたる左前肢の跛行、円を描いて回る、転倒を主訴に来院した。来院後11日目の磁気共鳴影像法(MRI)検査で、右側脳室の拡大が分かった。臨床症状発現後約10ヶ月に安楽死を行い、その後顕著な大脳の変性と空洞化、右側側脳室の拡張所見があった。顕微鏡的に右脳室の白、灰質の空胞化と壊死が観察され、豊富な大円形細胞と繊維性星状細胞増加があった。出血と血管周囲の袖口様単球細胞集積が中脳に見られた。リンパ球浸潤とグリア細胞増殖からなる炎症病変も、頚部脊髄の背側束に存在した。この症例は、脊髄を巻き込んだヨークシャーテリアの壊死性脳炎(NEYT)と診断された。
NEYTは原因不明の中枢神経系の広範囲破壊的非化膿性炎症の結果起こる慢性進行性神経障害である。過去10年間で12症例の成犬、または老齢のヨークシャーテリアが発表されている。CTやMRIは特徴的な多病巣性空胞化、脳質拡大を検出でき、死亡前の診断を容易にする。(Sato訳)
■アラスカンハスキーにおける亜急性壊死性脳疾患
Wakshlag JJ, de Lahunta A, Robinson T, Cooper BJ, Brenner O, O'Toole TD, Olson J, Beckman KB, Glass E, Reynolds AJ.
J Small Anim Pract 1999 Dec;40(12):585-9 Related Articles, Books
Subacute necrotising encephalopathy in an Alaskan husky.

29カ月齢、メスのアラスカンハスキーが横臥位、四肢不全麻痺および失明と脳神欠損症を伴う痴呆症状を示しました。その犬の症状は2カ月以上にわたり進行していましたが、わずかな固有感覚失調を伴う軽い推尺過大症へと回復し、威嚇反射は減少、採食行動の再開が見られ、進行が止まりました。MRI検査において、視床から髄質への左右対称性の空洞化の拡がりが明らかとなりました。尾状核、被殻、前障における明らかな変性病変はわずかでした。脳脊髄液中の乳酸とピルビン酸濃度は正常範囲でした。剖検と組織学的検査では、小脳虫部における皮質の神経細胞変性および大脳溝深部にある新皮質での退行性変化と同様にMRI検査所見も確証しました。(Dr.Shingo訳)

★日本におけるパグの壊死性髄膜脳炎
Kobayashi Y et al;J Comp Pathol 1994 Feb;110(2):129-136 Related Articles, Books ;Necrotizing meningoencephalitis in pug dogs in Japan.

この報告は、3頭のパグにおける壊死性髄膜脳炎の記録です。本疾患における日本で最初の記録となります。3つの特徴的組織変化がありました。すなわち、(1)灰質と白質の両方を含む大脳半球の非化膿性細胞浸潤、(2)脳実質周囲あるいは全体を侵害するという強い傾向を持つ、髄膜と血管周囲への単核細胞浸潤、(3)しばしば炎症反応を伴わない選択的大脳皮質の壊死。パグ脳炎と診断したこれらの3症例は、アメリカ、スイス、イタリアでの報告された症例と似ておりました。今回の症例は全て臨床徴候発現の2週間以内に、妊娠あるいは偽妊娠の臨床暦を持つメスでした。(Dr.K訳)

★マルチーズの壊死性髄膜脳炎
Stalis IH et al; Vet Pathol 1995 May;32(3):230-235 Related Articles, Books, LinkOut ; Necrotizing meningoencephalitis of Maltese dogs.
壊死性髄膜脳炎を持つ5頭の若齢マルチーズの臨床的、病理学的特徴を、パグの壊死性髄膜脳炎の報告と比較研究しました。マルチーズの年齢は9カ月齢から4才までの範囲でした。4頭がオスで1頭がメスです。犬は死亡する3日から20週間内に、発作のみあるいは他の神経徴候を併発するという病歴でした。3頭の犬における脳脊髄液検査では、高蛋白と多球症が認められました。剖検で、4頭の犬における灰質と白質の識別欠如を伴う大脳の非対称性の腫脹と、側脳室の軽度から中程度の非対称性拡張が認められました。組織学的に大脳灰質と白質、それを覆う脳脊髄膜、隣接する視床、海馬の広範な壊死と非化膿性炎症がありました。臨床徴候が最も長かった4才の犬には、炎症がほとんどありませんが、星状細胞増加症を伴う広範な変質領域の萎縮が認められました。これらのマルチーズにおける臨床推移と病理学的変化は、パグの壊死性髄膜脳炎の症例報告と同様のもので、この障害がパグに特有なものではないということが示唆されました。(Dr.K訳)

★壊死性脳炎(パグ脳炎)のパグから自己抗体の発見
Uchida K et al; Vet Pathol 1999 Jul;36(4):301-307 Related Articles, Books ; Detection of an autoantibody from Pug dogs with necrotizing encephalitis (Pug dog encephalitis).

間接免疫抗体法検査(IFA)により、2頭のパグ(NO1と2)の血清と脳脊髄液(CSF)中に、犬の脳に対する自己抗体を検出しました。NO1の犬は、2才のオスでひどい沈鬱、運動失調そして全身性発作の徴候を現し、発症後2ヵ月で死亡しました。NO2の犬は、9カ月齢のオスでひどい全身性発作を呈し、発症後17ヵ月で死亡しました。組織病理学的検査所見でNO1の犬には、大脳の灰白質と白質の両方にリンパ球、プラズマ細胞、そして少数の好中球による、中程度からひどい多病巣性の浸潤が認められました。NO2には、細胞浸潤は軽度であるものの、星状細胞浸潤を伴う大脳皮質のひどい多病巣性壊死像を認めました。フルオレセイン・イソチオシアン酸塩標識抗犬IgGヤギ血清を用いたIFA(免疫蛍光検査)と、焦点画像化システムを用いた検査では、6頭のコントロール犬のCSFに認められなかった反応が、これらのパグのCSF中においては神経膠細胞に対する特異的反応が認められました。これらのパグからのCSFと抗神経繊維膠酸蛋白ウサギ血清(GFAP)を用いた、二重標識IFAで自己抗体がGFAP陽性星状細胞とそれらの細胞質突起に結合していることが明らかになりました。免疫ブロット解析により、これらのパグのCSFからの自己抗体が人のGFAP分子量と一致する58kdと54kdに、2つの共通陽性バンドを持つことが分かりました。星状細胞に対する自己抗体の役割はまだ明らかにされておりません。しかしながら、自己抗体の存在がパグ脳炎に特異的なものであるならば、有益な臨床診断マーカーであり、この独特な犬の神経病の病因の鍵となるでしょう。(Dr.K訳)

★ペキニーズにおける海馬皮質欠陥に付随した壊死性髄膜脳炎
Cantile C et al; Vet Pathol 2001 Jan;38(1):119-122 Related Articles, Books ; Necrotizing meningoencephalitis associated with cortical hippocampal hamartia in a Pekingese dog.

ペキニーズのオス4才が、治療に反応しない再発性発作と進行性の異常歩様および行動の病歴で来院しました。剖検で右海馬の異常に加え、右側頭頭頂骨骨皮質における広範な皮質欠損、白質、右脳幹神経節、内嚢の軟化が観察されました。脳の組織学的検査では、左大脳半球における中程度からひどい非化膿性髄膜脳炎と右大脳半球における軽度の炎症を伴った広範な梗塞様病変が認められました。右海馬において、錐体細胞が脳回に似たパターンで配列しており、星状神経膠細胞と繊維性星状細胞と混ざり合っているのが観察されました。炎症性病変の組織学的特徴は壊死性髄膜脳炎と一致しており、いわゆるパグ脳炎で述べられているものと似ておりました。海馬の変化は形成異常(片側性海馬皮質欠損)として解釈し、臨床徴候と壊死性炎症性障害とは関連がありませんでした。(Dr.K訳)

★壊死性髄膜脳炎を持ったパグにおける同側性半盲
Beltran WA et al; J Small Anim Pract 2000 Apr;41(4):161-164 Related Articles, Books ;Homonymous hemianopia in a pug with necrotising meningoencephalitis.

以前に半盲に対する治療を受けた24ヵ月齢のメスのパグが、全身性発作とその他の神経的異常を訴え来院しました。CT、脳脊髄液検査、臨床徴候から壊死性髄膜脳炎が示唆されました。これは7ヶ月後の安楽死後、脳の病理学的検査によって確証されました。典型的な病理学的病変が、右大脳の視覚野皮質を含む、大脳両半球の様々な領域に認められました。(Dr.K訳)

★パグ脳炎のMRIと組織病理学所見
Kuwabara M et al; J Vet Med Sci 1998 Dec;60(12):1353-1355 Related Articles, Books ; Magnetic resonance imaging and histopathology of encephalitis in a Pug.

8ヵ月間、頻繁な癲癇発作を呈した3才のメスのパグをMRI検査したところ、拡大した大脳脳室と、右側頭葉中央と左頭頂下部に加え、両側大脳半球の全皮質における炎症性障害が認められました。同領域の病理組織像で、グリア細胞の随伴増殖、神経食現象を伴った広範なニューロンの退化、血管周囲の顕著なリンパ球様細胞で特徴付けられる髄膜脳炎であると明らかにされました。(Dr.K訳)

★犬の中枢神経組織の炎症性疾患
Thomas WB. ;Clin Tech Small Anim Pract 1998 Aug;13(3):167-178 Related Articles, Books, LinkOut ;Inflammatory diseases of the central nervous system in dogs.

中枢神経組織(CNS)の炎症性疾患は、犬における発作の重要な原因です。特異的疾患として、犬ジステンバー、狂犬病、クリプトコッカス症、コクシジオイデス症、トキソプラズマ症、ネオスポラ症、ロッキー山紅斑熱、エールリッヒ症、肉芽腫性髄膜脳脊髄炎、そしてパグ脳炎があります。発作を持つ犬が持続性の神経障害で発作発現が1才以内または、5才以上である、または全身性疾患の徴候を示す場合、炎症性疾患を考慮すべきであります。詳細な病歴、検査、脳脊髄液の解析は炎症性疾患の診断上重要でありますが、広範な診断的検査をもってしても、特異的病因が明らかにされるのは、CNSの炎症性疾患を持つ犬のわずか3分の2以下であります。(Dr.K訳)


訳者コメント:パグ脳炎、不意に来られるとつい戸惑ってしまいそう…。という気持ちで検索してみました。予後は例外なく悪いようです。パグに特有なものでもなさそうであるという報告もいくつかありました。日本でも1994年に初めて報告されたぐらいですから、良く分かっていないことも多いようです。診断は臨床症状(治療に反応しない発作やその他の神経症状)、脳脊髄液検査、CTということですね。コルチコステロイドで臨床症状の軽減が見られることはあるようです。勉強会のメモ書きがあったんですけれど(あくまでメモ書きですので)、放射線治療でパグ脳炎の改善があるようです(ただし、再発するとのこと)。