■犬の敗血症性および無菌性腹水の鑑別で総有核細胞数の診断的有用性
Diagnostic utility of the total nucleated cell count for differentiation of septic and sterile peritoneal effusions in dogs
Vet Clin Pathol. 2024 Feb 6.
doi: 10.1111/vcp.13315. Online ahead of print.
Amy E DiDomenico , Megan E Jacob , Devorah M Stowe , Erika J Gruber
背景:適切な内科および外科的治療を開始するため、敗血症性腹膜炎の迅速で正確な診断は重要である。
目的:この研究の目的は、犬の敗血症性と非敗血症性腹水を鑑別するため、総有核細胞数(TNCC)、絶対好中球数、好中球の比率、総蛋白(TP)の診断的有用性を調べる
方法:2008年から2018年の間で電子カルテから腹水サンプルを回顧的に検索し、細菌培養および/あるいは細胞診結果を基に敗血症性あるいは非敗血症性を分類した。受信者操作特性(ROCs)曲線を使用し、連続変数を二分するために分析した最適なカットポイントで、各検査の全体の診断的有用性を述べた。陽性および陰性尤度比はそれらのカットポイントで算出した。
結果:87の敗血症性及び79の非敗血症性腹水を含む合計166の独特なサンプルを含めた。グループ間の犬の性別、年齢、入院日数に有意差はなかった。敗血症性の腹水は、非敗血症性のものと比べ、TP、TNCC、絶対好中球数、好中球比率が有意に高かった。ROC曲線下面積は、TNCC(0.80)、絶対好中球数(0.80)、好中球比率(0.64)、TP(0.63)だった。TNCCと絶対好中球数の最適なカットオフ値は、それぞれ17.13x10(3)個/μLと19.88x10(3)個/μLで、陽性および陰性尤度比は2.39と0.28、2.85と0.28だった。
結論:総有核細胞数と絶対好中球数は、同じような診断的有用性で敗血症性と非敗血症性腹水の鑑別に役立つが、同時の顕微鏡的評価なしの使用で感受性あるいは特異性は十分ではなかった。(Sato訳)
■膿胸の猫29頭と犬60頭の病因と浸出液の特徴(2010-2020)
Etiology and effusion characteristics in 29 cats and 60 dogs with pyothorax (2010-2020)
J Vet Intern Med. 2023 Apr 26.
doi: 10.1111/jvim.16699. Online ahead of print.
Lynelle R Johnson , Steven E Epstein , Krystle L Reagan
Free article
背景:膿胸(胸腔への炎症性の衛気隊の貯留)は、犬において異物の吸入によることが多いが、猫の病因は識別がより難しい可能性がある。
目的:膿胸の猫と犬において臨床、微生物所見、病因を比較する
動物:29頭の猫と60頭の犬
方法:2010年から2020年の間に膿胸と診断された犬と猫の医療記録を再検討した。臨床所見、液体分析、微生物検査結果を取集した。
結果:液体サンプル採取前に同率の猫(45%)と犬(47%)で抗菌剤が投与されていた。年齢、胸腔内液の総蛋白濃度、あるいは好中球の割合にグループ間の違いはなかったが、滲出細胞数は、犬より猫の方が有意に多かった(P=.01)。細胞内細菌を含む好中球は犬(44/60、73%)よりも猫(27/29、93%;P=.05)で多く確認された。胸部への貫通性の傷害は、膿胸の原因として猫(76%)と犬(75%)、同率で関係した。2頭の猫と1頭の犬で病因は判定できなかった。猫(中央値、3)は犬(中央値、1;P=.01)より1頭当たりの細菌分離数が多く、猫(23/29、73%)は犬(27/60、45%;P=.003)より嫌気性菌が分離されることが多かった。
結論と臨床的重要性:猫と犬の膿胸の病因は同じだった。猫は犬よりも液体細胞数がより多く、1頭あたりに確認される分離細菌数が多く、検出される細胞内細菌はより一般的だった。(Sato訳)
■犬の腫瘍性腹水および胸水における予測因子として総タンパク濃度
Total protein concentration as a predictor of in neoplastic peritoneal and pleural effusions of dogs
Vet Clin Pathol. 2022 May 10.
doi: 10.1111/vcp.13122. Online ahead of print.
Ashley L Parsley , Amy N Schnelle , Erika J Gruber , William E Sander , Anne M Barger
背景:腫瘍性の腔内浸出液の診断は、浸出液内の腫瘍性細胞の確認が必要であるが、腫瘍性浸出液の細胞所見は、形成のメカニズムが変化するためにかなり変動する可能性がある。追加のパラメーターがあいまいな細胞学的結果の解釈に役立つかもしれない。
目的:細胞性が低い(≦5000有核細胞/μL)の犬の腹水および胸水において、総タンパク濃度が腫瘍の診断のサポートに使用できるかどうかを評価する
2014年から2019年の間に、イリノイ大学獣医教育病院に提出された犬の胸水及び腹水分析を回顧的に評価した。浸出液は、組織あるいは細胞学的に腫瘍性あるいは非腫瘍性に区分した。非腫瘍性浸出液は、メカニズムに従い下位区分した:コロイド浸透圧の低下;静水圧の上昇、血管透過性亢進、尿の漏出、リンパの漏出。TP及び血中アルブミンと浸出液TPの比を群間で比較した。
結果:腫瘍性27症例と非腫瘍性65症例を評価した。非腫瘍群よりも腫瘍群のTPは高かった(P=.001)。非腫瘍性よりも腫瘍性浸出液の血中アルブミンと浸出液TPの比は低く(P=.001)、血中アルブミンと浸出液TPの比が0.6以下の浸出液は、腫瘍性である確率が5.6倍高かった(95%CI、1.69-17.36;P-.003)。
結論:浸出液のTP濃度は、非腫瘍性よりも腫瘍性で有意に高かったが、群間のオーバーラップを考慮すれば、この差の診断的有用性は低い。血中アルブミンと浸出液TPの比が0.6以下の症例は、腫瘍が原因の確率が高いかもしれない。(Sato訳)
■アナフィラキシー関連の腹腔内出血の犬11例
Anaphylaxis-related hemoperitoneum in 11 dogs
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Oct 29.
doi: 10.1111/vec.13017. Online ahead of print.
Aubrey L Hnatusko , John C Gicking , Gregory R Lisciandro
目的:アナフィラキシーに関連した腹腔内出血の独特な合併症を述べる
デザイン:2012年9月から2017年8月までの回顧的ケースシリーズ
場所:2か所の個人の緊急および専門二次診療施設
動物:来院あるいは紹介時、アナフィラキシーおよび腹腔内出血と診断された11頭の飼育犬
介入:なし
測定値と結果:組み入れ基準は、目撃者がいる、あるいは目撃者がいないで推定の蜂に刺された、ALTの上昇、腹水スコアを伴う腹部FAST(AFAST)検査の実施、胆嚢壁浮腫の超音波像、腹腔内出血のため、アナフィラキシー(低血圧、頻脈、嘔吐、下痢、虚弱、虚脱、±皮膚症状)と一致した臨床症状を含めた。全ての犬は外科的介入なく、内科的に管理した。91%(n=10)の犬は退院した。
結論:腹腔内出血の発生は、アナフィラキシー反応で見られる可能性があるが、正確なメカニズムは完全には分からないままである。内科療法は妥当で、それらの犬で成功する可能性がある;腹腔内出血のための外科手術は指示されない。(Sato訳)
■猫の胸水の特徴と原因に関係する要因
Characterization of and factors associated with causes of pleural effusion in cats.
J Am Vet Med Assoc. July 2018;253(2):181-187.
Marina Dominguez Ruiz, Florence Vessieres, Guillaume R Ragetly, Juan L Hernandez
目的:罹患猫の大集団でその特徴を述べることと、胸水の原因と種々の臨床因子の潜在的関係を調査する。
デザイン:回顧的ケースシリーズとコホート内横断研究
動物:2009年1月1日から2014年7月14日の間の完全に胸水の原因を調査している飼育猫380頭
方法:電子カルテを再検討し、猫特徴、臨床症状、胸水の原因、治療、退院時の生存状況に関してデータを集めた。変数は胸水の原因との関係に対し調査した。
結果:87頭(22.9%)の猫は入院中に死亡あるいは安楽死となった。うっ血性心不全(CHF)が胸水の最も一般的な原因(155頭(40.8%))で、続いて腫瘍(98頭(25.8%))だった。他の原因は、膿胸、特発性乳糜胸、外傷、猫伝染性腹膜炎、非外傷性横隔膜ヘルニアが含まれた。外傷あるいは猫伝染性腹膜炎の猫は、CHFあるいは腫瘍の猫よりも有意に若かった。リンパ腫の猫は、癌腫の猫よりも有意に若かった。CHFの猫(平均±SD、36.9±1.2℃)の入院時の直腸温は、他の原因の胸水の猫(37.9±1.2℃)よりも有意に低かった。
結論と臨床関連:この研究で胸水の猫は、予後が悪かった;CHFと腫瘍が一般的な原因だった。年齢と低体温は、胸水の猫の基礎原因の鑑別の助けとなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の腹水分析
Analysis of Canine Peritoneal Fluid Analysis.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2017;47(1):123-133.
Andrea A Bohn
犬の腹水分析を異なる分析シェーマの妥当性を査定することで、回顧的に検討した。細胞3000個/μLとタンパク2.5g/dLのカットオフが推奨される。総有核細胞数と総蛋白濃度の分析は単に腹水分析の最初のステップに過ぎない;顕微鏡検査、臨床症状、他の検査データが、腹水分析の最終分類を判定するのに全て重要であり、その腹水分析の最も重要な面は、診断に役立つかどうかにかかわらず、何か求めるものではないと心に留めておくことである。滲出メカニズムの議論、研究観察、腹水分析後の推奨される診断ステップを含める。(Sato訳)
■メチレンブルーの横隔膜脚への注射による犬の胸管の着色
Injection of the diaphragmatic crus with methylene blue for coloration of the canine thoracic duct.
Vet Surg. October 2014;43(7):829-33.
Benjamin J Bayer; Mauricio Dujowich; Alexander I Krebs; Timothy G Leeds; Gregory M Anderson; David F. Merkley
目的:横隔膜脚および腸間膜リンパ節へのメチレンブルーの注射後、胸管(TD)の着色の発現と強さを比較する
研究計画:実験研究
動物:成犬(n=18)
方法:メチレンブルー(1%溶液、0.5mg/kg以下)を、第10肋間開胸により横隔膜左脚(n=9)あるいは右脚(n=9)に注射した。胸管の着色を10分間かけてグレード付けした。その後、右肋骨側開腹を全頭で実施し、同量のメチレンブルーを腸間膜リンパ節に注射した(n=18)。胸管の着色のグレード付けを繰り返した。犬の体重、左および右脚間で注射した造影剤の量、横隔膜脚注射と腸間膜リンパ節注射との間で成功結果の数に対する統計学的解析を実施した。
結果:左脚注射の6頭、右脚注射の4頭で胸管着色が起き、それぞれ2頭と3頭が明白に着色した。腸間膜リンパ節注射の全頭は成功結果だった。成功結果の数は、横隔膜脚注射と比較して腸間膜リンパ節注射後の方が有意に多かった(P<0.001)。
結論:横隔膜脚や腸間膜リンパ節へのメチレンブルーの注射は、胸管を着色させるが、胸管の着色グレードの平均や成功結果の数は腸間膜注射後の方が有意に高かった。(Sato訳)
■特発性乳糜胸の猫における乳糜槽アブレーション
[Cisterna chyli ablation in three cats with idiopathic chylothorax].
Cisterna-chyli-Ablation bei drei Katzen mit idiopathischem Chylothorax.
Language: German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. August 2013;41(4):221-8.
C Thiel; S Held; M Kramer
目的:補助あるいは単独の外科処置として乳糜槽のアブレーションで治療した3頭の猫の慢性、特発性乳糜胸の発表
材料と方法:3頭の猫の臨床および診断的検査結果、治療および経過、そして乳糜槽のアブレーションの手術方法を述べる。
結果:乳糜槽のアブレーションに関する術中あるいは術後合併症はなかった。乳糜槽の術中の可視化は、術前の脂肪栄養の少量の投与、あるいは術中のリンパ系への希釈メチレンブルーの注射により容易に達成できる。胸管結紮、亜全心膜切除併用あるいは単一の外科処置として胸管の結紮がうまくいかなかった後、乳糜槽のアブレーションを実施した。
臨床的関連:乳糜槽のアブレーションは猫で合併症なく実施できる。この方法は、過去に外科療法で失敗している症例、あるいは再発リスクを減らすため、他の外科的オプションと使用する補助療法として考えるべきである。(Sato訳)
■胸水のNT-proBNP濃度を用いた心臓由来または心臓とは関係ない猫の胸水の鑑別
Differentiating between feline pleural effusions of cardiac and non-cardiac origin using pleural fluid NT-proBNP concentrations.
J Small Anim Pract. 2013 Dec;54(12):656-61. doi: 10.1111/jsap.12152. Epub 2013 Nov 7.
Humm K, Hezzell M, Sargent J, Connolly DJ, Boswood A.
目的 胸水と尿中のNT-proBNPが心臓性と非心臓性の胸水を区別する事ができるかを評価すること
方法 心臓性または非心臓性と分類した胸水をもった猫から、前向き研究として、血液、尿、胸水を採取した。NT-ProBNP濃度は、猫特異的なELISA法によって測定した。各群は統計学的に比較し、血漿、胸水、尿における心臓性と非心臓性の胸水を分類するためのカットオフ値を決定するために、受信者操作特性(ROC)曲線を作成した。
結果 胸水のある40頭の猫(22頭の心臓性および18頭の非心臓性)を用いた。血漿と胸水中のNT-proBNP濃度は、強く相関していた。血漿中NT-proBNP、胸水中NT-proBNPおよび尿中NT-proBNP/クレアチニン濃度の比は、心臓性の群で有意に高かった(それぞれP<0.001、P<0.001、P=0.035)。(ROC)曲線を作成すると、血漿NT-proBNP濃度のカットオフは214.3 pmol/mlであり、感度は86.4% (95%信頼区間;66.7-95.3%)で特異性は88.9% (95%信頼区間;67.2-96.9%))であった。胸水のNT-proBNPのカットオフは322.3pmmol/mlであり、感度は100% (95%信頼区間;85.1-100%)で特異性は94.4% (95%信頼区間;74.2-99.0%))であった。適切な感度と特異性が得られる尿のNT-proBNP/クレアチニン比のカットオフ値は得られなかった。
臨床的意義 胸水中のNT-proBNPを測定することは、猫の胸水の原因として心臓性と非心臓性を区別することができる。(Dr.Taku訳)
■胆汁胸のシャムネコの1例
Biliothorax in a Siamese cat.
J Feline Med Surg. December 2011;13(12):984-7.
Brandan G Wustefeld-Janssens; Joao F Loureiro; Joanna Dukes-McEwan; Alexander J German; Alexander J German; Rachel D Burrow
2歳の去勢済みオスの猫は、胆汁胸のさらなる検査で来院した。当初、その猫は膿胸を胸腔洗浄のための両側性胸部ドレーンなどで治療した。5日後、胸水は澄んだ黄色に変化し、血清ビリルビン濃度15μmol/lと比べ、427μmol/lだった。試験的外科手術で、胆嚢と胸腔の瘻管を形成するように胆嚢の横隔膜面と対応する横隔膜に2mmの裂を認めた。その欠損は通常通り修復し、猫は完全回復した。
その裂は胸腔造瘻チューブ設置時に作られたと思われる。猫で胆汁胸は過去に発表されておらず、胸腔造瘻チューブ設置後の珍しい合併症と思われる。(Sato訳)
■特発性乳糜胸を外科的に治療した犬の長期予後:11症例(1995-2009)
Long-term outcome of dogs treated surgically for idiopathic chylothorax: 11 cases (1995-2009).
J Am Vet Med Assoc. July 2011;239(1):107-13.
Carlos Adrega da Silva; Eric Monnet
目的:特発性乳糜胸に対し、外科的治療を行った犬の長期予後を判定する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:1995年11月から2009年4月の間に手術を行い、術後最低4ヶ月の経過観察を行っている特発性乳糜胸の11頭の飼育犬
方法:徴候、病歴、身体検査所見、臨床病理検査結果、エックス線所見、術式、術後合併症、結果、死亡原因を医療記録から再調査した。
結果:10頭の犬は胸骨正中切開、1頭は右側肋間開胸術(5および9肋間腔)を行った。全頭で胸管結紮および亜全心嚢切除を実施した。手術時に8頭は胸腔大網留置、2頭は受動的胸腔腹腔シャント設置、1頭は胸膜癒着術を実施した。初回手術時に2頭は肺硬結、他の2頭は肺葉捻転のために肺葉切除を実施した。肺葉切除を行った犬と行わなかった犬の無疾患期間中央値に有意差はなかった。5頭に術後合併症が発生した。経過観察期間中央値は46ヶ月だった。11頭中8頭は術後5年で臨床症状がなかった。胸腔大網留置を行わなかった3頭中2頭は臨床症状が再発した。
結論と臨床関連:特発性乳糜胸を外科的に治療した犬の予後はまずまずで、肺葉切除は負の予後指標ではないと示唆された。(Sato訳)
■胸管結紮と大網化による乳糜胸の治療
Chylothorax treated via thoracic duct ligation and omentalization.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Sep-Oct;46(5):312-7.
Kayla Stewart; Sheldon Padgett
犬猫の乳糜胸はまれな命に危険をもたらす可能性のある疾患である。2001年から2005年の間に乳糜胸の外科的管理を行った12頭(犬5頭、猫7頭)の医療記録を検討した。全ての動物は胸管結紮と胸腔大網化を行っていた。数頭は亜全心膜切除および/あるいは胸膜剥離を組み合わせたものもいた。全ての動物は手術で死亡せず、追跡調査できた。猫の生存期間中央値は209日(範囲2-1328日)、犬で211日(範囲7-991日)だった。他の最近の研究よりも術後死亡率は高かったが、胸腔大網化に直接起因する合併症はなかった。この管理方法と他の方法の結果を比較する対照前向き研究が必要である。(Sato訳)
■犬の胸膜及び縦隔の滲出液;81症例の回顧的研究
Canine pleural and mediastinal effusions: a retrospective study of 81 cases.
J Small Anim Pract. 2002 Oct;43(10):447-51.
Mellanby RJ, Villiers E, Herrtage ME.
犬の胸膜及び/もしくは縦隔の滲出液を呈する81症例がケンブリッジ大学のクイーンズ獣医大学病院にて1992年から2000年の間調査されたレントゲン検査及び超音波心臓検査記録から確認された。全ての症例は少なくとも12ヶ月の期間追跡調査した。28の基礎疾患のプロセスが、胸膜及び/もしくは縦隔の滲出液と関連していた。最も一般的な疾患は膿胸(13症例)であった。他に確認された主な疾患は、特発性心内膜液浸出、前縦隔腫瘍、特発性乳び胸、二次性肺転移そして拡張型心筋症であった。全症例の約1/4は初期治療後完全に回復し、全症例の1/3は斃死もしくは最初の観察後直ぐに安楽死された。(Dr.Kawano訳)
■右心不全に関連した乳糜胸の猫5頭
Bonagura, DVM, MS et al; J Am Vet Med Assoc
204[1]:84-89 Jan 1'94 Clinical Report 25
Refs; Chylothorax associated with right-sided
heart failure in five cats
−右側うっ血性心不全に関する乳糜胸を、5頭の猫で診断しました。1頭は、軽度の心嚢水を伴う限局性の心膜疾患と心源性非クロム親和性傍神経節腫を認めました。他の2頭は、うっ血性心疾患(1頭はファロー四徴候と三尖弁逆流、もう1頭は、心臓内隆起欠損と三尖弁形成異常)、そしてあとの2頭は特発性心筋症を認めました。全ての猫に、頚静脈の拡大を認め、心エコーでの評価は、それらの猫の心疾患の状態を明らかにするのに役立ちました。完全に近い心膜切除は、心源性腫瘍の乳糜胸を改善しました。一方、右側心不全の内科管理では、ファロー四徴候の猫や心筋症の2頭の胸水を、一時的に減少させました。(Dr.Sato訳)
■犬の収縮性心膜炎による乳糜胸
Campbell SL et al; J Am Vet Med Assoc 206[10]:1561-4
1995 May 15 ;Chylothorax associated with
constrictive pericarditis in a dog.
6歳雑種犬の収縮性心膜炎で、乳糜胸を認めました。臨床症状は、肝腫大、両側性の頚静脈拍動、こもった心音聴取、呼吸困難でした。胸水を胸部X線検査で確認しました。胸腔穿刺で、コレステロール/トリグリセリド比(0.14)で確認した乳糜液を3L排液しました。心エコー検査で、収縮性心膜炎と思われる、多数のフィブリン垂を持つ肥厚した心膜を認めました。収縮性心膜炎を示す、中心静脈、右心房、右心室の高圧、右心室拡張期圧記録、スクエアルートサインが明らかでした。
試験的開胸と心膜切除を行いました。組織病理学的検査結果は、慢性非化膿性心膜炎でした。犬の状態は、術後改善し、11ヵ月後の再評価で、中心静脈圧、身体検査、胸部X線結果は、正常でした。乳糜胸はしばしば予後不良となりますが、乳糜胸の原因が、収縮性心膜炎の場合、試験的開胸と心膜切除で治療できます。(Dr.Sato訳)
■猫の乳糜胸:外科手術の役割は?
T.W. Fossum ; J Feline Med Surg 3[2]:73-79
Jun'01 Original Article 36 Refs ;Chylothorax
In Cats: Is There A Role For Surgery?
乳糜胸は、心疾患、縦隔洞のマス、糸状虫疾患や外傷などの基礎となる原因疾患を多数認める、複雑な疾患です。この疾患の管理は、原因を特定する事に注意を向けるべきで、可能ならば、基礎疾患を治療します。特発性乳糜胸の猫は、自然に回復する場合があるので、内科療法を勧めます。オーナーには、その猫が繊維化胸膜炎になる可能性があることを、認識してもらうべきです。内科療法が実行できない、または不成功に終わった時は、外科の介入を考慮するべきです。外科のオプションは、腸間膜リンパ管造影と胸管結紮、心嚢切除、受動的胸膜腹膜シャント作成、能動的胸膜腹膜または胸膜静脈シャント作成、胸膜癒着です。それらのうち、著者は、胸管結紮と心嚢切除だけ行っています。というのも、もし成功した時には、完全な乳糜の消散が得られる事により、繊維性胸膜炎になるリスクが減少するからです。大網設置は、補助療法として有益な事もありますが、この方法も、繊維性胸膜炎を起こす可能性があります。特発性乳糜胸の猫に液体が溜まる原因が解るまで、治療成功率は思っているより低いままでしょう。より進んだ研究は、この疾患の基礎にある異常生理メカニズムを、確定する事に目を向ける必要があります。(Dr.Sato訳)