■犬と猫の難治性うっ血性心不全の長期管理に対する皮下フロセミド治療
Subcutaneous Furosemide Therapy for Chronic Management of Refractory Congestive Heart Failure in Dogs and Cats
Animals (Basel). 2025 Jan 26;15(3):358.
doi: 10.3390/ani15030358.
Sergio F Lombardo , Heidi Ferasin , Luca Ferasin
うっ血性心不全(CHF)の治療において、経口利尿薬の効果が減じることは、腸の薬剤吸収低下により二次的に起こり得る。
この研究の目的は、犬と猫の難治性CHFの症状のコントロールで皮下(SC)フロセミド投与の効果を判定することと、この投与ルートの実行可能性を評価することだった。
難治性CHFを皮下(SC)フロセミドで治療した病歴のある13頭の犬と17頭の猫の臨床記録を回顧的に再調査した。複数回の用量調節にもかかわらず、経口利尿剤に対する臨床的反応が満足のいくものではなかった時、この理由により飼い主が安楽死を考慮している時、代替療法としてSCフロセミドの投与を提供した。動物の呼吸数及び努力の満足な管理、全ての飼い主の満足が、全ての症例で認められた。SCフロセミド投与後、犬の生存期間中央値は106(95%CI:22-154)日で、猫は89(95%CI:35-749)日だった。
この研究は、過去に経口利尿薬に満足のいかない反応を示す犬と猫の、心臓性うっ血の症状をコントロールするのに、フロセミドの皮下投与は、効果的で実行可能な治療オプションだと思われることを示した。(Sato訳)
■ピモベンダン単独で治療しているステージB2粘液腫様僧帽弁疾患の犬の心エコー検査的変化
Echocardiographic Changes in Dogs with Stage B2 Myxomatous Mitral Valve Disease Treated with Pimobendan Monotherapy
Vet Sci. 2024 Nov 25;11(12):594.
doi: 10.3390/vetsci11120594.
Andrew Crosland , Pablo Manuel Cortes-Sanchez , Siddharth Sudunagunta , Jonathan Bouvard , Elizabeth Bode , Geoff Culshaw , Joanna Dukes-McEwan
この研究の目的は、ステージB2の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬の心臓サイズに対し、長期ピモベンダン単独治療の影響を評価することだった。
MMVDで心拡大(LA/Ao≧1.6、LVIDdN≧1.7)と診断された31頭のデータを含めた。処置群はピモベンダンで治療した犬だった(n=24)。何も心臓の薬剤を投与されていない犬はコントロールだった(n=7)。左房と左室径の心エコー的変化は、経時的に比較した。診断と最初のフォローアップ(中央値3-6か月)の間にLVIDdNに対する群×時間の有意な相互作用があった(p=0.011)。ピモベンダン群の経時的LVIDdNの有意な減少があった(p=0.038)が、コントロール群ではなかった(p=0.216)。LA/Aoに対し群×時間の有意な相互作用はなく、群の影響はなかった(p=0.561)が、両群のLA/Aoは、経時的に低下した(p=0.01)。
心エコーのステージングがオプションで、心雑音の検出を基にピモベンダンを処方する時は制限が勧められる。ピモベンダンを投与されているステージB2の犬が、ステージB2のMMVDに対する心エコーの分類基準にもはや合致していないものもいて、ステージB1と誤分類されている可能性があり、不適切に薬剤投与が中止されていた。
我々はそれらの犬が逆に再構築されたステージB2と呼ぶことを提唱する。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬の死亡前の臨床的パラメーターの変化と肺高血圧の予後的結果
Alteration of clinical parameters before mortality and prognostic outcomes of pulmonary hypertension in dogs with myxomatous mitral valve disease
Open Vet J. 2024 Sep;14(9):2237-2249.
doi: 10.5455/OVJ.2024.v14.i9.11. Epub 2024 Sep 30.
Phuttipan Channgam , Walasinee Sakcamduang , Kittara Chanmongkolpanit , Pemika Kaenchan , Wasana Buayam , Yada Janhirun , Rassameepen Phonarknguen , Mookmanee Tansakul , Nattapon Riengvirodkij
背景:粘液腫様僧帽弁変性(MMVD)は、一般的犬の心疾患で、肺高血圧(PH)を伴うことも多い。心エコー検査はMMVDの有用な診断ツールであるが、小動物病院でその利用は限られている。
目的:この研究の目的は、MMVD±PHの犬において、心臓性の死亡に対する予後指標として、臨床パラメーター、生化学、心臓バイオマーカーを確認することだった。
動物:99頭のMMVDの犬と19頭の正常な犬
方法:5-年縦断研究において、臨床および検査測定値、心エコーパラメーターに含めるデータを6か月ごとに収集した。犬は死亡あるいはフォローアップ不可能までモニターし、可能なときは死亡原因を判定した。死亡を予測する因子を確認するために統計学的解析を実施した。
結果:ボディコンディションスコア、総蛋白、左室内径短縮率、平均赤血球容積は、切迫した心臓死の前兆だった。高い血中尿素窒素クレアチニン比、心拍数、低いヘモグロビン濃度は、死亡リスク上昇と関係した。N-終末pro-B-タイプナトリウム利尿ペプチドも、心臓関連死の重要な指標で、より高い濃度でリスク上昇を示す。さらに、PHを伴うMMVDの犬は、PHを伴わない犬よりも有意に生存率が低かった。しかし、MMVDステージCとPHを伴うD、MMVDステージCとPHではないD群に生存性の有意差は観察されなかった。
結論:特にそれらの所見は、心エコー検査が実施できないとき、臨床的パラメーターやバイオマーカーを用いた犬のMMVD進行のモニタリングに有益な洞察を提供する。(Sato訳)
■犬の心外膜ペースメーカー設置は、合併症率が低く、QOLを改善した
Epicardial pacemaker placement is associated with low complication rate and improved quality of life in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jun 19:1-10.
doi: 10.2460/javma.24.04.0232. Online ahead of print.
Matteo Rossanese , Dan Brockman , Guillaume Chanoit , Jilli Crosby , Peter Scott , Benito de la Puerta , Joanna Dukes-McEwan , Mattia Basili
目的:心外膜ペースメーカー(EP)設置を行った犬の合併症と結果を述べ、生存性との関係する因子を確認し、術後の臨床症状および健康関連QOL(HRQoL)の改善を調査した
動物:EP設置を行った飼い犬52頭
方法:4か所のUKベースの委託病院の医療記録を検索し、2010年7月から2022年12月までのデータを回顧的に再調査した。EP設置後の結果に寄与する因子を評価した。
結果:紹介されてきた主な理由は、虚脱/失神事象(n=36)、運動不耐性(15)、顕著な徐脈(46)だった。第三度房室ブロック(39/52(75%))は、ペースメーカー設置に対する主な適応で、EP設置の一般的な理由は、過去の経静脈ペースメーカー移動/キャプチャーの喪失(n=12)および小さな体格(10)が含まれた。術中および術後合併症は、それぞれ11%の犬と23%の犬に認められた。
全体で96%の犬が生存退院し、フォローアップ期間の中央値は462日(範囲、31-3139日)だった。EPインプラント時の心筋あるいは弁疾患併発の存在は、生存性低下と関係した。飼い主は、臨床症状の減少、活動レベルの増加、HRQoLの改善を報告した。
臨床的関連:心外膜ペースメーカーインプラントは、人工的心臓ペーシングが必要とする犬に対し有用なオプションである。合併症は一般的だが、全体の結果に影響しなかった。心臓病理が併発している犬は、EP設置後の寿命がより短かったが、臨床症状の改善および活動レベルの増加をともない、HRQoLは良好と思われた。(Sato訳)
■心エコー検査による肺動脈と左房の比率:犬の肺高血圧の血行動態的分類に対する非侵襲的変数
The echocardiographic pulmonary to left atrial ratio: A noninvasive variable for the hemodynamic classification of pulmonary hypertension in dogs
J Vet Intern Med. 2024 May 7.
doi: 10.1111/jvim.17097. Online ahead of print.
Andrea Corda , Francesca Corda , Plamena Pentcheva , Mariangela Puci , Alessandra Mollica , Pablo Gomez Ochoa , Thouraya Dabbagh , Maria Luisa Pinna Parpaglia
Free article
背景:肺高血圧(PH)の血行動態的分類は、重要な臨床的意味を持つ。しかし、犬のPHを血行動態的に分類するのに数個の心エコー検査による変数しか使用されていない。
目的:PHの犬において、心エコー検査による肺動脈/左房比指数(ePLAR)を評価すること
動物:PHの中程度から高い可能性を持つ犬46頭
方法:横断研究。変数は、前毛細血管PH(PrePH(n=24))vs後毛細血管PH(PostPH(n=22))の犬、結合性PH(CombPH(n=14))vs孤立性PH(IsoPH(n=8))の犬でt-、マン-ホイットニー、ピアソンのカイ、フィッシャーの正確検定で比較した。受信者操作曲線とYouden指数でグループの中の鑑別を行う最適なePLARカットオフ値の確認を行い、級内相関係数(ICC)は測定値の信頼度の判定に使用した。
結果:PrePHの平均(SD)ePLARは、PostPH群のそれよりも高かった(それぞれ0.36(0.13)vs0.26(0.09);P=.005)。CombPHのePLAR中央値(四分位数間領域)は、IsoPHサブグループのそれよりも高かった(それぞれ0.29(0.24-0.38)vs0.20(0.16-0.23);P=.001)。IsoPHを確認するためのePLARのベストなカットオフ値は、<0.245(カットオフポイントのAUC=0.86;感受性(95%CI=0.71(0.47-0.95);特異性(95%CI=1(0.76-1))だった。ICC解析は高度の信頼度を示した。
結論と臨床的重要性:ePLARは、PHの中程度から高い可能性を持つ犬のPHの血行動態的分類を行う有効な非侵襲的変数と考えることができる。ePLARの評価は、犬のPHの治療的管理において役立てることができる。(Sato訳)
■僧帽弁疾患の犬モデルにおける選択的肺血管拡張薬の心血管作用の比較研究
Comparative Study of Cardiovascular Effects of Selected Pulmonary Vasodilators in Canine Models of Mitral Valve Disease
Biology (Basel). 2024 Apr 30;13(5):311.
doi: 10.3390/biology13050311.
Yunosuke Yuchi , Ryohei Suzuki , Narumi Ishida , Shuji Satomi , Takahiro Saito , Takahiro Teshima , Hirotaka Matsumoto
過去の報告では、犬の肺高血圧(PH)に対して、いくつかの経口肺血管拡張薬が効果的であると示されている。しかし、それらの血行動態作用を比較している研究はない。
我々の目的は、実験的に誘発した僧帽弁逆流の犬において、15μg/kgベラプロストナトリウム、1.0mg/kgシルデナフィル、それらの併用の血行動態作用を比較することだった。
この実験的交差研究で、右側心カテーテル法と心エコー検査を用い、経口肺血管拡張薬の血行動態および機能的作用を評価した。
ベラプロストは、肺および全身血管抵抗を低下させた。また、ベラプロストは左心サイズおよび左房圧を悪化させることなく、右室一回拍出量および左室心拍出量を増加させた。
ベラプロストよりも、シルデナフィルの肺血管拡張作用はより強く、その全身性血管拡張作用はより弱かった。しかし、シルデナフィルは、左室容積、左房圧指標、左室心拍出量を有意に増加させた。併用療法は、左心サイズ、左房圧指標を悪化させることなく最も強い肺および全身血管拡張作用を起こした。
ベラプロストとシルデナフィル共に、犬PHに対し効果的だった;しかし、シルデナフィルは左心負荷の悪化のリスクと関係した。ベラプロストとシルデナフィルの併用療法は、相乗的に肺および全身血管を拡張させ、重度PH症例に対しより効果のある治療オプションであると示している。(Sato訳)
■ビーグル犬においてピモベンダン経口液はピモベンダンチュワブル錠と生物学的同等性である
Pimobendan oral solution is bioequivalent to pimobendan chewable tablets in beagle dogs
J Vet Intern Med. 2025 Jan-Feb;39(1):e17248.
doi: 10.1111/jvim.17248.
Olaf Kuhlmann , Michael Markert
背景:粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)は小型犬種の犬で診断されることが多い。ピモベンダン経口液は、小型及びトイ犬種の犬において、正確な投薬を改善するために開発されている。
仮説/目的:健康な研究用に特別に繁殖された犬において、薬物動態および薬力学的研究でピモベンダンチュワブル錠とピモベンダン経口液の生物学的同等性を証明する
動物:この薬物動態研究において、24頭のビーグル犬に4期間の交差デザインで投薬した。薬力学研究では、遠隔操作プローブをインプラントした4頭の雑種犬と2頭のビーグルを、2方向交差デザインに含めた。
方法:両研究共に、前向き無作為化クロスオーバー試験として計画した。犬は各剤型を1回5mg/kgで投与し、ピモベンダンおよびO-デスメチル-ピモベンダン(ODMP;主要代謝物)の測定のため、連続血液サンプリングを行った。血液動態の高い扁洞性のため、参照スケール平均生物学的同等性(RSABE)を適用した。薬力学的研究に対し、犬に各剤型を0.25mg/kgで投与した。左室最大圧で補正したベースラインと心拍数は、連続で記録し、あらかじめ定義した生物学的同等性域値と比較した。
結果:ピモベンダンは高い変動性の薬物と証明された。RSABE法を基に、両剤型は生物学的同等性だった。薬力学的結果は生物学的同等性を支持した。
結論と臨床的重要性:ピモベンダンの新しい経口液は、食品医薬品局(FDA)が支持するRSABE法と薬力学的データを基に適用し、生物学的同等性ということが分かった。このように、新しい液体製剤は、小型及びトイ犬種の犬の正確な投与を容易にするため使用できる。(Sato訳)
■犬の病状発現前の粘液腫様僧帽弁疾患のより進んだステージの心エコー検査なしの診断と管理
Diagnosis and management of a more advanced stage of preclinical myxomatous mitral valve disease in dogs without echocardiography
Schweiz Arch Tierheilkd. 2024 Dec;166(12):619-631.
doi: 10.17236/sat00438.
M Baron Toaldo
Free article
犬の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)は最も一般的な心疾患である。適切な診断とステージングは、心エコー検査の手段で実施できる。早期疾患ステージは、弁閉鎖不全とより進行したフェーズで心拡大を伴うかもしれない。この病状発現前のフェーズの正確な診断と心臓拡大の確認は、適切な薬剤治療を勧めるために実行すべきである。
心エコー検査が利用できないあるいは犬のオーナーが断った時、その疾患の確認や臨床的に関連した心拡大を予測する代替方法が実行できる。それらの中で、心臓の聴診と心雑音の強さの評価、胸部エックス線写真で得られた心臓椎体サイズによる心臓の大きさ、特にN-終末pro-B-typeナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)のような心臓バイオマーカーは、単一テストあるいは組み合わせで、うっ血性心不全のリスクが上昇した犬の確認、早期のピモベンダンの治療が必要なために実施することができる。
特に、心雑音強度≧3/6(中程度あるいはより大きい)、側方肋胸部エックス線ビューから得られる椎体心臓サイズ≧11.5ユニット、NT-proBNP値>1100pmol/Lの血漿濃度は、臨床的に関連する心拡大の存在を示唆する所見で、特異性は良い。
弁疾患の疑いのある犬の管理において臨床医の助けとなる実際的なアルゴリズムが、臨床的検査から始まり、適切なコントロールと治療を勧めるための前述の追加検査を用いたものが作成されている。(Sato訳)
■健康および病気の犬と猫の血清の心臓トロポニンIの診療現場の検出に対する迅速検査の評価
Evaluation of a rapid test for point-of-care detection of cardiac troponin I in serum of healthy and diseased dogs and cats
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2024 Nov 18.
doi: 10.1111/vec.13438. Online ahead of print.
G Santarelli , P Sebastián Marcos , J Talavera , S D Aznar-Cervantes , J Fernández Del Palacio
目的:(1)>1ng/mLの心臓トロポニンI(cTnI)値の定性検出に対する迅速検査の結果と、参照量的方法を使用して得られた結果を比較することと、(2)このポイントオブケア(POC)アッセイを使用した迅速検査結果の半定量的評価を実施すること
デザイン:2015年4月から2020年11月までの前向き横断研究
場所:二次的紹介病院
動物:心血管疾患のある、心血管疾患のない80頭の犬と20頭の猫
介入:なし
測定値と主要結果:血清サンプルを入手し、化学ルミネセンスアッセイ(参照標準)と同時にcTnI迅速検査を行った。迅速検査の陽性結果は、検出線の色の濃さの主観的評価を基に、さらに軽度および強陽性に分類した。
迅速検査は全ての患者で有効と思われた。定性および定量法で31頭の犬と5頭の猫の陽性サンプルが、43頭の犬と13頭の猫で陰性サンプルが一致し、強および中程度の一致を起こした。色スケール群間で有意差があった。
結論:評価した迅速検査は、犬と猫のcTnI>1ng/mLの濃度を判定する実行可能なPOCオプションを提供し、実証された従来の定量アッセイに中程度から強い一致性を示す。さらに、半定量評価が上昇の程度の判断を可能にする。(Sato訳)
■健康な犬におけるレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対するスピロノラクトンによるミネラルコルチコイドレセプター拮抗の効果の包括的特徴描写
Comprehensive characterization of the effect of mineralocorticoid receptor antagonism with spironolactone on the renin-angiotensin-aldosterone system in healthy dogs
PLoS One. 2024 Feb 23;19(2):e0298030.
doi: 10.1371/journal.pone.0298030. eCollection 2024.
Allison K Masters , Jessica L Ward , Emilie Guillot , Oliver Domenig , Lingnan Yuan , Jonathan P Mochel
目的:健康な犬におけるレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)の従来及び選択的armのバイオマーカーに対するスピロノラクトンの用量-暴露-反応効果の特徴を述べる
動物:10頭の健康なパーパスブレッドのビーグル犬
方法:研究犬を無作為に2つのスピロノラクトン用量群に振り分けた(2mg/kg PO q24hr、4mg/kg PO q24hr)。7日コースのスピロノラクトンの投与に続き、交差(AB/BA)計画で14日間のウォッシュアウト期間を設けた。アンギオテンシンペプチドとアルドステロンを、均衡分析を用いて血清で測定し、血漿カンレノンと7-α-チオメチルスピロノラクトン(TMS)を液体クロマトグラフィー-質量分析/質量分光(LC-MS/MS)で定量した。研究結果は投与前後、群間で比較した。
結果:スピロノラクトン投与後、血清アルドステロン濃度は有意に増加し(P=0.07)、用量群間で統計学的な違いはなかった。2度目の投与期間中のみ、スピロノラクトン投与後、基礎値と比べてアンギオテンシンII(P=0.09)、アンギオテンシンI(P=0.08)、アンギオテンシン1-5(P=0.08)と、血漿レニン活性に対する代替マーカー(P=0.06)の有意な増加が検出された。全体で、基礎値からの変化にスピロノラクトン投与量間の有意な違いはなかった。スピロノラクトン用量、血漿カンレノンあるいは血漿TMSとRAAS分析物は弱い相関(R<.04)だった。投与中のいずれのスピロノラクトン用量でも、有害な臨床あるいは生化学的作用は見られなかった。
結論:健康犬におけるスピロノラクトンの投与は、血清アルドステロン濃度を上昇させ、RAASの従来および選択的armの他のバイオマーカーに影響した。2および4mg/kg/日用量間でRAASに対する影響に違いはなかった。健康犬で4mg/kg/日の用量は安全で許容性は良かった。(Sato訳)
■犬の肺静脈-肺動脈比は粘液腫様僧帽弁疾患進行の評価に利用できる
Pulmonary-vein-to-pulmonary-artery ratio can be utilized to evaluate myxomatous mitral valve disease progression in dogs
Am J Vet Res. 2024 Apr 29:1-8.
doi: 10.2460/ajvr.24.01.0004. Online ahead of print.
Min-Suk Kim, Jiyoung Kim, Min Woong Seo, Chul Park
Free article
目的:米国獣医内科学会(ACVIM)合意ガイドラインに従い分類した粘液腫様僧帽弁変性(MMVD)の犬において、肺静脈-肺動脈非(PV:PA)の診断価値を評価する
動物:2020年8月5日から2023年7月19日までの飼い犬80頭(MMVD65頭、心疾患なし(コントロール群)15頭)。
方法:これは回顧的研究である。MMVDの犬をACVIM合意ガイドラインに従い分類した。この研究で全ての犬の心エコー像、胸部エックス線写真、必要とされた他の測定値を再検討した。PV:PAと以下の変数:椎骨心臓サイズ、椎骨左房サイズ、左心房-大動脈比、標準化左室内径、ピーク薊僧帽弁早期拡張期速度との関連を判定するため、スピアマンの相関を使用した。受信者操作特性(ROC)曲線解析を使用し、ステージB1とB2、ステージB2とCの鑑別においてPV:PAの価値を評価した。
結果:全ての従来の指数は、PV:PAと相関を示した。ステージB1とB2に対するROC曲線下面積(AUC)は0.83で、ステージB2の鑑別に対するカットオフ値は1.52だった。ステージB2とCに対するAUCは0.81で、ステージCの鑑別に対するカットオフ値は2.09だった。
臨床的関連:コントロールとステージB1群、ステージB1とB2群、ステージB2とC群の間のPV:PAに有意な違いがあった。PV:PAは、MMVD犬の評価に使用できるインデックスとなり得る。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患の犬の肺高血圧に対する指標
Indicators for pulmonary hypertension in dogs with degenerative mitral valve disease
Vet World. 2023 Dec;16(12):2515-2520.
doi: 10.14202/vetworld.2023.2515-2520. Epub 2023 Dec 25.
Pasika Chalermpromma , Sirilak Disatian Surachetpong
Free PMC article
背景と目的:肺高血圧(PH)は、犬の変性性僧帽弁疾患(DMVD)の一般的な合併症である。この研究の目的は、DMVDステージCの犬において、エックス線検査とM-モードおよび2次元心エコー検査を通し、PHの指標を判定することだった。
素材と方法:DMVDステージCの犬133頭の回顧的研究を実施した。犬は2群に振り分けた:DMVDとDMVD+PH。特徴、胸部エックス線検査所見、心エコー変数を記録し、解析した。
結果:肺高血圧は56頭の犬で診断され、有病率は42.1%だった。一変量ロジスティック回帰分析で、PHと右側心拡大、肺動脈拡大、左室サイズ、内径短縮率との関係を認めた。多変量ロジスティック回帰分析で、肺動脈拡大(オッズ比(OR):5.96;95%CI:1.45-24.54;p=0.014)と、左室サイズ減少(OR:0.02;95%CI:0.003-0.13;p=0.001)はPHと有意に関係することを示した。肺動脈拡大と左室サイズ減少を用いたDMVDステージCの犬のPHの予測精度は中程度だった(曲線下面積0.77;95%CI:0.68-0.86)。
結論:肺高血圧はDMVDステージCの犬で一般的である。エックス線検査により評価した肺動脈拡大と、心エコー検査により評価した左室サイズの減少の存在はPHと関係し、DMVDステージCのPHの予測因子として役立つかもしれない。(Sato訳)
■犬の肺高血圧症は凝固能低下と関係する:66症例の回顧的解析(2013-2021)
Pulmonary hypertension is associated with hypocoagulability in dogs: a retrospective analysis of 66 cases (2013-2021)
Am J Vet Res. 2024 Feb 12:1-8.
doi: 10.2460/ajvr.23.11.0252. Online ahead of print.
Sahee Min, Sonya R Wesselowski, Mary B Nabity, Igor Yankin
目的:肺高血圧(PH)の心エコー上のエビデンスがある犬の凝固プロフィールを述べ、PHの心エコー上のエビデンスがない犬の凝固プロフィールと比較し、凝固プロフィールとPHの心エコー上の見込みとの関連を判定すること
動物:PHの犬66頭(ケース)とPHの無い86頭の犬(コントロール)
方法:2013年から2021年の間で7日以内に心エコー検査と凝固パネルを実施している犬の記録の回顧的評価。評価の7日以内に抗血栓薬を投与された犬、先天性あるいは後天性凝固異常、凝固異常を誘発する可能性のある他の重度全身性疾患と診断された犬は除外した。PHの心エコー検査での見込みが低い犬も除外した心エコー検査結果を基に犬をPH群と非PH群に振り分けた。個体群統計、臨床病理、伝統的凝固パラメーター、VCM Vet(Entegrion)パラメーターを2群間で比較した。
結果:コントロールよりもPHの犬は有意に年齢が高く(中央値、11歳vs9.5歳、P=.02)、有意に体重が軽かった(中央値、7.3kgvs19.3kg、P<.001)。またコントロールよりもPHの犬は、プロトロンビン時間(PT;P=.02)、部分トロンボプラスチン時間(PTT;P<.0001)、フィブリノーゲン(P=.045)の増加する%は有意に大きかった;しかし、抗トロンビン濃度は低かった(P=.005)。PH群の65頭中8頭(12.3%)、非PH群の86頭中1頭(1.2%)はPTおよび/あるいはPTTが参照範囲の50%以上上昇していた(P=.005)。PHの犬はPTおよびPTTを基にOHがない犬よりも凝固能低下の確率が11.9倍高かった(95%CI:1.5-97.9;P=.02)。
臨床的関連:この研究は、従来の凝固検査により判定した犬の凝固能低下と、中程度から高い心エコー検査でのPHの見込みとの関連を示した。PHの犬において(特に抗血栓治療の開始前)、凝固能の状態をモニタリングする重要性を強調する。(Sato訳)
■25頭の犬の特発性若年性心室性不整脈の臨床的結果
Clinical outcome of idiopathic juvenile ventricular arrhythmias in 25 dogs
J Vet Cardiol. 2023 Dec 15:51:188-194.
doi: 10.1016/j.jvc.2023.12.001. Online ahead of print.
A Reuter , T C DeFrancesco , J B Robertson , K M Meurs
イントロダクション/目的:構造上の心疾患がない若年齢心室性不整脈(JVA)が、限られた長期フォローアップで少数の犬種において特徴づけられている。この研究の目的は、大学教育病院を受診したJVAの犬の臨床的結果を述べることだった。
動物、素材、方法:特発性心室性不整脈の2歳未満の25頭の犬が、医療記録の検索で確認された。構造上の心疾患、全身疾患、異常なトロポニン(実施していれば)がある場合は除外した。心電図およびホルターモニターデータで、診断時および随時、不整脈の頻度と複雑性を評価した。飼い主および主治医とのコンタクトを通し、長期フォローアップを得た。
結果:含まれた犬種はジャーマンシェパード(8)、ボクサー(4)、グレートデン(3)、雑種(2):以下は各1頭、アナトリアンシェパード、フレンチブルドッグ、ゴールデンレトリバー、グレートピレニーズ、ラブラドールレトリバー、シャイロシェパード、ミニチュアプードル、シベリアンハスキーだった。診断時の平均年齢は7.9か月(範囲、2-22か月)だった。全体の生存期間中央値は10.96歳(範囲1.75-15.66歳)だった。ホルターデータを基にした心室拍動数の平均減少は86.7%/年(P値-0.0257)だった。
結論:このケースシリーズにおいて多くの症例で、特発性若年性心室性不整脈は、次第に異所性興奮は減少し、良好な長期予後となった。若年性心室性不整脈は依然として除外診断だが、過去の報告よりも幅広い犬種で考慮されえる。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬における心エコー上左房サイズを基にしたエックス線写真上の脊椎心臓スコアと脊椎左心房サイズのカットオフの判定
Determination of radiographic vertebral heart score and vertebral left atrial size cutoffs based on echocardiographic left atrial size in dogs with myxomatous mitral valve disease
Vet Radiol Ultrasound. 2023 Dec 26.
doi: 10.1111/vru.13324. Online ahead of print.
Radu Andrei Baisan , Vasile Vulpe
犬の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の進行は、左房拡大の一般的な原因である。近年は、心エコー上の測定を基にした左心房(LA)サイズの分類が提唱されている。
この研究では、MMVDの犬の心エコー検査で測定したLAサイズの異なる群に対し、VHSおよびVLASのカットオフ値を報告することで、エックス線上LAサイズを判定する。
この回顧的分析的横断研究に、心エコー上LAサイズで正常(LA/Ao<1.6)、軽度(1.6-1.89)、中程度(1.9-2.2)、重度拡大(>2.2)を基にしてグループ分けしたMMVDと診断された犬を含め、ACVIM分類と比較した。各犬の右ラテラルエックス線写真でVHSとVLASを測定し、カットオフ値を算出した。
MMVDの103頭の犬を研究に含めた。LA/Ao比とVHS(rs , 0.823, P < .01)あるいはVLAS(rs , 0.834, P < .01)との間にvery strongな正の相関が観察された。心エコー検査のLA域値1.6、1.9、2.2に対して、VHSのカットオフ10.7v、11v、11.5vが確立され、それぞれ感受性は79%、92%、90%で、特異性は97%、90.7%、78.1%であり、VLASのカットオフ2.5v、2.7v、2.9vが確立され、それぞれ感受性は73%、80%、83.3%で、特異性は94%、92%、86.3%だった。
この研究の結果は、粘液腫様僧帽弁疾患の犬において、エックス線検査を基にした臨床決定を容易にするかもしれない。(Sato訳)
■無症候のキャバリアキングチャールズスパニエルの心エコー検査によるステージB2粘液腫様僧帽弁疾患を予測するための身体検査、心電図検査、エックス線検査、バイオマーカーの使用
Use of physical examination, electrocardiography, radiography, and biomarkers to predict echocardiographic stage B2 myxomatous mitral valve disease in preclinical Cavalier King Charles Spaniels
J Vet Cardiol. 2023 Oct 7:50:1-16.
doi: 10.1016/j.jvc.2023.10.001. Online ahead of print.
S Wesselowski , S G Gordon , R Fries , A B Saunders , K T Sykes , J Vitt , B Boutet , J Häggström , S Kadotani , J Stack , B G Barnett
イントロダクション:キャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)は、粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)発症の素因がある。ステージB2MMVDの犬は、薬剤治療の有益性を得る。
目的:(1)個別のスクリーニング検査の種特異的なカットオフ値の開発、(2)病状発現前のCKCSにおいて心エコー検査によるステージB2MMVDの確認のために組み合わせた身体検査(PE)、ECG、エックス線像、血液ベースのバイオマーカー変数を用いた予測モデルの開発
動物:心臓の薬物治療を受けていない病状発現前のCKCSの成犬(N=226)
素材と方法:前向き横断研究。登録したCKCSにPE、ECG、エックス線検査、ドップラー血圧測定、心エコー検査およびバイオマーカー検査を実施した。犬は心エコー検査のみでMMVDステージによりグループ分けした。ステージB2を確認するための個々の検査の差別化能力を評価し、予測モデルは4つの「検査」(PE、ECG、エックス線像、バイオマーカー)から得られた変数を用いて開発した。
結果:N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)とエックス線検査の椎骨心臓サイズ(VHS)は、ステージB2とステージA/B1を鑑別する個別の診断検査で一番良い差別化能力を持ち、曲線下面積(AUC)はそれぞれ0.855と0.843だった。NT-proBNP≧1138pmol/LあるいはVHS≧11.5はステージB2の予測に高い特異性があった(それぞれ90.1%と90.6%)。複数検査からの変数を組み入れた予測モデルは、1つの検査よりも良い差別化能力があった。4つの検査の予測モデルのAUCは0.971だった。3つおよび2つの検査モデルのAUCはそれぞれ0.925-0.959と0.895-0.949の範囲だった。
結論:NT-proBNPとVHSは、個別の検査としてCKCSの心エコー検査によるステージB2MMVDの予測に良好な有用性を持つ。複数の検査変数を組み入れた予測モデルは優れた差別化能力を持つ。(Sato訳)
■急性うっ血性心不全の犬においてフロセミドの静脈投与後の尿中ナトリウム濃度と治療効果との相関
Urine sodium concentration after intravenous furosemide in dogs with acute congestive heart failure and correlation with treatment efficacy
J Vet Intern Med. 2023 Dec 1.
doi: 10.1111/jvim.16955. Online ahead of print.
Victoria Convey , Terry Huh , Erin J Achilles , Laura K Massey , Victoria F McKaba , Kerry A Loughran , Marc S Kraus , Anna R Gelzer , Alexandra V Crooks , Mark A Oyama
Free article
背景:急性うっ血性心不全(CHF)の犬の不十分なナトリウム利尿は、利尿抵抗性の潜在的マーカーだが、尿中ナトリウム濃度(uNa)と脱うっ血がうまくいく頻度との関係についてあまりわかっていない。O2供給は、重度CHFの犬で一般的な治療である。O2補給治療開始から中止までの時間は、一般的に時間経過と脱うっ血の容易さを反映する。
仮説/目的:フロセミドの静脈投与後の尿中Na濃度は、入院中のO2補給の治療時間(timeO2)と、酸素補給治療中止(DCSO2)の累積成功頻度と相関するだろう。
動物:急性CHFの51頭の犬
方法:回顧的観察単一施設研究
結果:低uNaの犬は、高uNaの犬より平均timeO2が有意に長かった(uNa<87mmol/L、24.2±2.6時間vs uNa≧87mmol/L、16.6±1.7時間;P=.02)。低uNaのDCSO2の累積頻度(12時間、28%;24時間、42%;36時間、73%)は、高uNa(12時間、28%;24時間、88%;36時間、96%;P=.005)と比較してより低いことと相関した。Loop利尿薬POの履歴、血清低Cl濃度(sCl)、高PCVは、低uNaと関係した。尿中Na濃度は、体重減少を含む利尿剤反応性の他の測定基準より性能が良かった。
結論と臨床的重要性:急性CHFの犬において、フロセミドIV後の尿中Na濃度は、timeO2とDCSO2累積頻度を予測し、利尿剤反応性の重要な側面を反映する可能性が高い。尿中Naは、CHFの犬の利尿剤反応性と治療効果を評価できる。(Sato訳)
■異なる僧帽弁疾患ステージの犬において4つの異なる方法でのエックス線左房サイズ測定
Radiographic Left Atrial Size Measurement of Dogs in Different Mitral Valve Disease Stages with Four Different Methods
Animals (Basel). 2023 Dec 13;13(24):3835.
doi: 10.3390/ani13243835.
David Marbella Fernández , Jose Alberto Montoya-Alonso
Free PMC article
左房サイズ(LAS)は、僧帽弁疾患(MVD)の犬において、その疾患の進行により増加する。椎骨左房サイズ(VLAS)、修正椎骨左房サイズ(M-VLAS)、エックス線左房径(RLAD)は、犬のエックス線写真上のLASを評価すると報告された方法である。全てそれらの方法は、LASを椎骨単位に変換する。胸郭入口(TI)は、異なるステージのMVDの犬の心陰影を測定するための信頼できる参照ポイントとして使用されている。
この研究の目的は、参照としてTIを使用した右側胸部エックス線像で犬のLASを測定する時の臨床的有用性を評価することと、異なるMVDステージの犬を鑑別できるかどうかを調べることだった。
胸郭入口左房スコア(TILAS)を得るために、TIによりLASを分割した。これは4つの異なる方法(VLAS、M-VLAS、RLAD、TILAS)を用い、LASを評価するために行った、見たところ健康な犬135頭を含めた回顧的観察研究だった。一般集団から36頭を選択し、異なるMVDステージの100頭と比較した。
TILASは、コントロール犬とMVD犬の間で有意に異なり、疾患ステージとともに増加した:コントロール犬0.51±0.08、B1 0.57±0.14、B2 0.75±0.13、C 0.84±0.18。過去の研究で示されたように、VLAS、M-VLAS、RLADも疾患の進行により増加した。TILASの心臓が拡大したMVD犬の鑑別精度は、VLAS、M-VLAS、RLADに匹敵した(それぞれAUC0.91vs0.93、0.90、0.94)。TILAS>0.8は、MVDにより心臓拡大を起こした犬を確認できる。(Sato訳)
■呼吸器症状を呈する犬のうっ血性心不全の検出の助けとなる椎体左房サイズと椎体心臓サイズの有用性
Utility of vertebral left atrial size and vertebral heart size to aid detection of congestive heart failure in dogs with respiratory signs
J Vet Intern Med. 2023 Oct 26.
doi: 10.1111/jvim.16918. Online ahead of print.
Evan S Ross , Lance C Visser , Nicholas Sbardellati , Brianna M Potter , Alex Ohlendorf , Brian A Scansen
Free article
背景:心エコー検査が利用できないとき、呼吸器症状の原因として心源性vs非心源性の鑑別が困難となる可能性がある。エックス線検査の椎体左房サイズ(VLAS)と椎体心臓サイズ(VHS)は、特に左房サイズを推定するVLASで、心エコー検査による左心サイズを予測すると示されている。
仮説/目的:呼吸症状を呈する左側うっ血性心不全(CHF)を予測するVLASとVHSの診断精度を比較する
動物:呼吸器症状を呈し、エックス線で肺異常が見られる114頭の犬
方法:回顧的横断研究。犬は24時間以内に心エコー図と胸部エックス線写真を入手しておかなければいけなかった。CHFの診断は、呼吸器症状、心疾患、LA拡大、心源性肺水腫の存在を基に確認した。
結果:57頭の犬はCHFを有し、57頭の犬はCHFがなかった。VHS(AUC0.85;95%CI:0.77-0.91)に比べ、VLAS(AUC、0.92;95%CI:0.85-0.96)はCHFの有意に正確な指標だった(P=.03)。最適なVLASのカットオフ値は、>2.3椎体(感受性、93.0%;特異性、82.5%)だった。心雑音のグレード(P=.02)とVLAS(P<.0001)は、CHFと独立して関係したが、VHSはそうではなかった。CHFではない犬において、VHSの増加(54%)は、VLASの増加(24%)よりも有意に一般的だった(P=.01)。結果はより老齢やより小型犬のサブサンプルでも同様だった。
結論と臨床的重要性:心エコー検査が利用できない場合、VLASおよび心雑音のグレードは、呼吸器症状が心源性か非心源性かの鑑別を助ける臨床的有用性を持つ。それらの所見は、特に呼吸器症状を呈しVHSが増加した犬において、CHFの除外に役立つかもしれない。(Sato訳)
■自然発生の症候性粘液腫様僧帽弁変性の犬の心拍変動に対するピモベンダン、フロセミド、エナラプリル併用の影響
Impact of a combination of pimobendan, furosemide, and enalapril on heart rate variability in naturally occurring, symptomatic, myxomatous mitral valve degeneration dogs
BMC Vet Res. 2023 Oct 12;19(1):201.
doi: 10.1186/s12917-023-03770-6.
Prapawadee Pirintr , Nakkawee Saengklub , Pakit Boonpala , Robert L Hamlin , Anusak Kijtawornrat
Free PMC article
背景:ピモベンダン、利尿剤、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEi)は、犬の慢性心臓弁膜症の管理に広く使用されている;しかし、心拍変動(HRV)に対する併用の影響は不明である。この研究の目的は、ピモベンダン、利尿剤、ACEiの併用療法に対する反応において、症候性粘液腫様僧帽弁変性(MMVD)のある犬の心拍変動性(HRV)を評価することだった。
結果:MMVDステージC(n=17)を登録し、ピモベンダン(0.25mg/kg)、エナラプリル(0.5mg/kg)、フロセミド(2mg/kg)1日2回の経口投与前、投与後1、3、6か月の心エコー像、血圧測定、血液化学プロフィールと共に1時間-ホルター心電図記録を入手した。
結果は、MMVDステージCの犬は、基礎値としてtime-domain指数、低周波(LF)、高周波(HF)、total powerの値がより低く、LF/HFの値がより高かった。3剤治療は、MMVDステージCの犬のそれらのパラメーターを有意に増加させた(P<0.05)。time domainパラメーターと体重による標準化した左室拡張期内径との間に中程度の正の相関が観察された(P<0.05)。
結論:MMVDステージCの犬は、副交感神経緊張あるいは交感神経活性亢進の消退によりHRVが低く、併用療法は、心拍変動性増加から推測される心臓自律神経調節の増強を示したと結論付けることができる。ゆえに、併用療法は、MMVDステージCの犬において、自律神経系活性を正常に回復させるのに有効かもしれない。(Sato訳)
■左房破裂の疑いによる心嚢水を呈する粘液腫様僧帽弁疾患の犬の臨床症状、心エコー所見、治療戦略および予後:回顧的症例-コントロール研究
Clinical presentation, echocardiographic findings, treatment strategies, and prognosis of dogs with myxomatous mitral valve disease presented with pericardial effusion due to suspected left atrial tear: a retrospective case-control study
J Vet Cardiol. 2023 Nov 10:51:105-115.
doi: 10.1016/j.jvc.2023.11.005. Online ahead of print.
A A Czech , T M Glaus , F Testa , G Romito , M Baron Toaldo
Free article
イントロダクション/目的:粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、左房破裂(LAT)は、命に係わる合併症である。この研究の目的は、LATの犬の臨床症状、心エコー所見、治療戦略、生存性を述べ、LATのない同様のMMVDのステージの犬のコントロール群と比較することだった。
動物と素材と方法:LATの犬15頭とLATではない犬15頭を含む2施設の回顧的症例-コントロール研究を行った。臨床および心エコーデータを再検討し、生存の情報を集めた。
結果:各群の9頭はMMVDのステージCだったが、残りはステージB2だった。両群の年齢、体重、性別、腎臓数値、心エコーによる心臓の大きさに違いはなかった。LATに関係して最も多く報告された症状は、虚弱、呼吸器症状、失神が含まれた。治療は不定で、主にうっ血性心不全の管理に焦点を置かれた。LATの3頭の犬は、心膜穿刺を受けた。LATの犬全15頭は心臓の原因で死亡した(5頭は入院後の最初の7日間で死亡した)。LATの犬15頭の生存期間中央値は52日で、コントロール群は336日だった(P=0.103)。最初の7日の間に死亡したLATの5頭を除けば、生存期間中央値は407日に延長し、コントロール群との比較で違いはなかった(P=0.549)。
結論:MMVDでLATの犬は、高い短期死亡率を持つ;しかし、急性期を生存すると、同様の進行したMMVDでLATのない犬と長期予後は変わらないのかもしれない。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬の慢性腎臓病の進行の評価
Evaluation of progression of chronic kidney disease in dogs with myxomatous mitral valve disease
Front Vet Sci. 2023 Aug 24;10:1200653.
doi: 10.3389/fvets.2023.1200653. eCollection 2023.
Hyejin Yun , Yoonhoi Koo , Taesik Yun , Yeon Chae , Dohee Lee , Sijin Cha , Jeeyune Kim , Hakhyun Kim , Mhan Pyo Yang , Byeong Teck Kang
Free PMC article
イントロダクション:心血管および腎疾患は、心血管腎臓軸障害(CvRD)においてお互いに影響することが知られている。粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)や慢性腎臓病(CKD)を含むCvRDは犬で述べられているが、MMVDの重症度によるCKDの進行に対する数個の報告しかない。
この研究の目的は、犬のCKDの進行の割合に、MMVDの存在が関係するのかどうかを評価することだった。最初の診断からIRISステージの悪化までの期間、高リン血症および等張尿発生までの期間を評価した。
素材と方法:この回顧的研究において、CKDの進行は、少なくとも1レベルのIRISステージの上昇、高リン血症あるいは等張尿の発生として判定した。CKDの進行はMMVDの犬とMMVDではない犬で比較した。
結果:CKDの犬を2群に振り分けた:MMVDの犬とMMVDではない犬(n=63、併発群;n=52、CKD群)。併発群はさらにACVIMガイドラインを基に2つの亜群に振り分けた(B1群、n=24;B2群、n=39)。IRISステージ1からIRISステージ2へのCKDの進行の期間は、CKD群よりも併発群で有意に短かった(ログ-ランク検定、p<0.001)。MMVDはステージ1からステージ2への進行リスク上昇に関係した(ハザード比、6.442;95%CI、2.354-18.850;p<0.001)。併発群とCKD群において、高リン血症あるいは等張尿の発現のタイミングに有意差はなかった。
結論:この研究の結果は、MMVDがCKD進行のリスク因子の可能性があることを示唆する。我々の所見は、CKD単独と比べ、CKDとMMVDが併発している犬の予後予測に役立つかもしれない。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬に対するピモベンダンの経口投与後の薬物動態
Pharmacokinetics of pimobendan after oral administration to dogs with myxomatous mitral valve disease
J Vet Intern Med. 2023 Sep 30.
doi: 10.1111/jvim.16891. Online ahead of print.
Anna K McManamey , Teresa C DeFrancesco , Kathryn M Meurs , Mark G Papich
Free article
背景:ピモベンダンは粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬に対する重要な治療の1つである。健康犬での薬物動態は報告されているが、心疾患の犬での報告はない。
仮説/目的:自然発生したMMVDの犬の集団において、年齢、犬種、ボディコンディションスコア、心疾患のACVIMステージのような犬の特徴あるいは生化学検査値が、経口投与したピモベンダンとその代謝物の薬物動態に変化を及ぼすかどうかを調べる
動物:MMVD ACVIMステージB2、C、Dで、血液濃度が安定状態までピモベンダンを投与した飼い犬57頭
方法:前向き観察研究。サンプルはピモベンダン投与後特定の間隔で、スパースサンプリングを用いて採取した。血漿ピモベンダンと活性代謝物(O-デスメチル-ピモベンダン、ODMP)濃度を、高速液体クロマトグラフィーと蛍光検出で測定した。データは1集団薬物動態アプローチと非線形混合効果モデリング(NLME)で解析した。多数の共変数はNLMEモデルで調べた。
結果:吸収および消失半減期(T1/2)は、ピモベンダンで約1.4および1時間、ODMPで1.4および1.3時間だった。薬物動態パラメーターはかなり変動し、特にピモベンダン吸収および消失速度とODMPの吸収速度の値は、変動係数がそれぞれ147.84%、64.51%、64.49%だった。評価された共変動は、可変性の有意な源ではなかった。
結論と臨床的重要性:このMMVDの犬の集団の中で、薬物動態パラメーターはかなりの変動があった。その可変性は犬の年齢、体重あるいはコンディションスコア、心疾患のステージ、用量、血清クレアチニンあるいはアルカリフォスファターゼと関係しなかった。(Sato訳)
■肥大型心筋症の犬の心エコーを用いた臨床所見、血漿心臓トロポニンIおよび病理所見:回顧的研究
Clinical findings using echocardiography and plasma cardiac troponin I and pathological findings in dogs with hypertrophic cardiomyopathy: A retrospective study
Open Vet J. 2023 Jun;13(6):742-752.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i6.9. Epub 2023 Jun 11.
Takeki Ando , Takeshi Izawa , Hidetaka Nishida , Hideo Akiyoshi
Free PMC article
背景:肥大型心筋症(HCM)は犬で珍しいと考えられ、臨床データは乏しい。心臓トロポニンI(cTnI)は心筋ダメージと壊死のバイオマーカーで、猫やヒトのHCMの診断に使用できる。
目的:犬のHCMの診断に、臨床データのcTnIの存在が、心エコー検査と組み合わせて使用できるかどうかを調査した。
方法:この研究は、心エコー検査で求心性の心肥大の臨床エビデンス、血清総チロキシン濃度≦5μg/dL、収縮期血圧≦180mmHg、大動脈狭窄の欠如の飼い犬を含めた。全症例は検死した。
結果:心筋肥大(平均直径、18.3±1.8μm)、心筋線維錯綜配列(70%)、間質性線維症(80%) 、小血管疾患(100%)を評価した。HCMの犬で、左室は求心性、ほぼ対称性、大動脈径以上に肥大していた。体重により標準化した拡張末期心室中隔(拡張期の心室中隔厚(IVSDN))は0.788(四分位数間領域(IQR)、0.7-0.92)で、正常範囲(5%-95%、IQR:0.33-0.52)を超えていた。合計で、HCMの犬の70%は失神と呼吸困難があり、全ての犬のcTnI濃度が高く(中央値、3.94ng/ml)、正常の上限(0.11ng/ml)を超えており、心筋のダメージを示していた。IVSDNと血清cTnI濃度は相関した(ρ = 0.839、 p = 0.01)。
結論:心室壁肥厚、高い血清cTnI濃度は、HCMを仮診断でき、治療の開始あるいは追加診断検査を促すことができる。(Sato訳)
■僧帽弁弁尖のばたつきがある2頭のチワワに見られた逆の再構築とうっ血性心不全の解消
Resolution of congestive heart failure and reverse remodeling in two Chihuahuas with flail mitral valve leaflets
J Vet Cardiol. 2023 May 4;47:55-63.
doi: 10.1016/j.jvc.2023.05.002. Online ahead of print.
S Wesselowski
粘液腫様僧帽弁疾患の状況で、腱索断裂による僧帽弁(MV)弁尖のばたつきの発症は、重度僧帽弁逆流を起こすことが多い疾患の合併症が知られている。
2症例はオスの去勢済みチワワで、重度僧帽弁逆流を起こし、うっ血性心不全の発症を誘発したMV前尖のばたつきを起こしていた。2頭は不定な期間を経て、繰り返しの心臓評価で左側心臓の逆の再構築が明らかとなり、僧帽弁逆流が減少し、フロセミドをやめることができた。
珍しいが、僧帽弁逆流の改善は、手術をしないでも起こることがあるかもしれず、左側心臓の逆の再構築で、フロセミドが中止できる。(Sato訳)
■正常なビーグル犬の僧帽弁に対する高用量プレドニゾロン投与の長期組織学的影響
Long-term histological effects of high-dose prednisolone administration on the mitral valve in normal Beagle dogs
Open Vet J. 2023 Feb;13(2):150-170.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i2.3. Epub 2023 Feb 7.
Sachiyo Tanaka , Shuji Suzuki , Misaki Shimura , Asaka Kawana , Aki Tanaka , Satoshi Soeta , Yasushi Hara
Free PMC article
背景:近年、左室肥大や心機能不全が高コルチゾール血症のヒトや犬および実験的に高用量プレドニゾロンで治療した犬で報告されている。しかし、我々の知る限り、僧帽弁(MV)に対する高グルココルチコイド血症(HGC)の影響に対して報告されていない。
目的:この研究の目的は、MVに対するHGCの影響を調べるため、高用量プレドニゾロンを投与した犬のMVと健康な犬のそれを比較することだった。
方法:我々は、高用量グルココルチコイド(GC)頭よ(P)と健康(C)な犬から得たサンプルを比較することで、MVに対するHCGの影響を調査した。P群は84日間プレドニゾロンを投与した(2mg/kg、bid、po)健康な犬(n=6)で、C群は関係のない理由で安楽死された健康なビーグル犬(n=6)を含めた。両群から僧帽弁の前尖(AML)と後尖(PML)を採取し、ヘマトキシリン-エオジン、アルシアンブルー、マッソントリクローム染色を施した。また、アディポネクチン(AND)とGCレセプター免疫化学染色を実施した。組織学的評価は、AMLとPMLの近位、中央、遠位のatrialis、spongiosa、fibrosaと全層で実施した。
結果:spongiosa層厚と全厚の比率は、C群よりもP群でより高かった(近位および中央AML)。しかし、fibrosa層厚と全厚の比率は、C群よりもP群で低かった(中央PML)。C群よりもP群の酸性硫酸化mucosubstance沈着の領域はfibrosa層と全層で同じ(中央AML)だったが、コラーゲン沈着のそれは、spongiosaと全層で同じだった(近位および中央AML)。また、spongiosa層のADN発現はC群よりもP群で高かった(中央AML)。
結論:それらの所見は、合成GCsの長期投与がMVの組織学的変化を誘発すると示唆する。それらの変化は、HGCの犬のMV機能不全を誘発するかもしれない。(Sato訳)
■犬の粘液腫様僧帽弁疾患の重症度は好中球/リンパ球および単球/リンパ球比を用いて予測できるかもしれない
Severity of myxomatous mitral valve disease in dogs may be predicted using neutrophil-to-lymphocyte and monocyte-to-lymphocyte ratio
Am J Vet Res. 2023 Apr 10;1-9.
doi: 10.2460/ajvr.23.01.0012. Online ahead of print.
Dayoung Ku , Yeon Chae , Chaerin Kim , Yoonhoi Koo , Dohee Lee , Taesik Yun , Dongwoo Chang , Byeong-Teck Kang , Mhan-Pyo Yang , Hakhyun Kim
Free article
目的:粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、好中球/リンパ球比(NLR)、単球/リンパ球比(MLR)および血小板/リンパ球比(PLR)を調べること
動物:MMVDの犬106頭と健康な犬22頭を研究に含めた。
方法:それぞれCBCのデータを入手し、NLR、MLR、PLRをMMVDの犬と健康な犬とで比較した。その比率もMMVD重症度に従い分析した。
結果:MMVD CおよびDの犬(NLR:4.99(3.69-7.27);MLR:0.56(0.36-0.74)のNLRおよびMLRは健康犬(NLR:3.05(1.82-3.37)、P<.001;MLR:0.21(0.14-0.32)、P<.001)、MMVDステージB1の犬(NLR:3.15(2.15-3.86)、P<.001;MLR:0.26(0.20-0.36)、P<.001)、MMVDステージB2の犬(NLR:3.22(2.45-3.85)、P<.001;MLR:0.30(0.19-0.37)、P<.001)のそれよりも有意に高かった。MMVD CおよびDの犬と、MMVD Bの犬とを区別するNLRとMLRの受信者操作特性曲線下面積は、それぞれ0.84と0.89だった。
NLRの最適なカットオフ値は4.296(感受性、68%;特異性、83.95%)で、MLR値は0.322(感受性、96%;特異性、66.67%)だった。うっ血性心不全(CHF)の犬において、NLRとMLRは治療後に有意に低下した。
臨床的関連:犬のCHFの補助的指標として、NLRとMLRは使用できる。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患とうっ血性心不全の犬における生存性の予測因子として選択した血液、生化学および心エコー変数
Selected hematological, biochemical, and echocardiographic variables as predictors of survival in canine patients with myxomatous mitral valve disease and congestive heart failure
J Vet Cardiol. 2023 Mar 6;46:18-29.
doi: 10.1016/j.jvc.2023.03.001. Online ahead of print.
M Brložnik , A Pečjak , A Nemec Svete , A Domanjko Petrič
イントロダクション/目的:粘液腫様僧帽弁疾患によるうっ血性心不全(CHF)の犬の生存性と、犬種、年齢、体重、治療期間、選択した血液および心エコー変数との関係を調査した。また、安定したCHFの犬と安定しないCHFの犬の間と、入院した犬と入院しない犬との間の選択した心エコーおよびルーチンな血液変数の違いを確認しようと考えた。
動物、素材と方法:この回顧的研究には、完全な心血管精密検査を行った犬を含めた。血液検査と最初と最終心エコー検査結果を含めた。共変量はCox比例ハザードモデルで解析した。
結果:この研究で粘液腫様僧帽弁疾患の犬165頭を評価した:安定した犬96頭と不安定なCHFの犬69頭。合計107頭(64.8%)は死亡し、58頭(35.2%)は検閲した。死亡した犬の生存期間中央値は11.5か月(範囲、11日-4.3年)だった。不安定なCHFの犬は、安定したCHFの犬よりも有意に好中球が多く、カリウム濃度が低く、入院した犬は、入院しない犬よりも白血球、好中球、単球数、尿素およびクレアチニン濃度が高かった。生存にマイナスに関係した変数は、より年齢が高い、不安定なCHF、治療期間、白血球数、尿素濃度、左房/大動脈比だった。チワワは死亡リスクが低かった。
結論:選択した血液および心エコー変数は、安定した犬、不安定なCHFの犬を区別し、生存性を予測する。(Sato訳)
■無症状の粘液腫様僧帽弁疾患の犬の左心拡大の予後的意義
Prognostic significance of left cardiac enlargement in dogs with preclinical myxomatous mitral valve disease
J Vet Cardiol. 2022 Dec 29;45:50-58.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.12.004. Online ahead of print.
G Grosso , T Vezzosi , O Domenech , R Tognetti
イントロダクション:犬の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)に対する最近のコンセンサスが得られたガイドラインでは、左房拡大(LAE)あるいは左室拡大だけが見られる犬はステージB1に分類される。ステージB2に分類されるにはLAEと左室拡大が同時に見られることが必要である。この研究の1つ目の目的は、修正された定義によるステージB1とステージB2の予後を評価することだった。2つ目の目的は、ステージB1におけるLAEの予後的関連を評価することだった。
動物:MMVDの犬440頭(ステージB1は276頭、ステージB2は164頭)
素材と方法:回顧的および観察研究。左房-大動脈比および標準化した左室収縮末期径を心臓の大きさの定義に使用した。長期結果は、飼い主および紹介元獣医師への電話聞き取りで評価した。心臓関連および全ての原因による死亡率を評価した。
結果:ステージB1の犬の生存期間中央値は、心臓関連死(2344vs1341日;P<0.001)、全ての原因による死亡(1832vs855日;P<0.001)を考慮してもステージB2の犬よりも長かった。年齢、左房-大動脈比、標準化した左室収縮末期径は、心臓関連死および全ての原因による死亡の独立した予測因子だった。全ての原因による脂肪を考慮すると、ステージB1の中で、LAEのある犬はLAEのない犬よりも生存は短かった(1183vs1882日;P=0.005)。
議論と結論:ステージB1の犬は、ステージB2の犬よりも長く生存した。ステージB1の中で、LAEは全ての原因による死亡を考慮すると予後的意義があった。この所見は、臨床症状のないMMVDの管理において有効な予後的情報に加えることができた。(Sato訳)
■ボルゾイの心疾患の多施設回顧的研究
A multicenter, retrospective study of cardiac disease in Borzoi dogs
Front Vet Sci. 2023 Jan 26;10:1102494.
doi: 10.3389/fvets.2023.1102494. eCollection 2023.
K Tess Sykes , Sonya Wesselowski , Ashley B Saunders , Sonja S Tjostheim , Brianna M Potter , Anna R M Gelzer , Natalie Katz , Jessica L Ward , Emily T Karlin , Lauren E Markovic , Aliya N Magee , Jonathan A Abbott , Saki Kadotani , Giulio Menciotti
ボルゾイは大きく、比較的珍しいサイトハウンドで、突然死するという裏付けに乏しい報告がある。
この多施設回顧的コホート研究の目的は、20年間の研究で17施設を通し、検索した記録から獣医心臓医を評価のために受診したボルゾイのサンプルを述べる。
研究サンプルは152頭の飼い主所有のボルゾイからなり、一般的に87頭(52%)は繁殖前のスクリーニングで、続いて28頭(18%)は不整脈の評価で受診していた。131/152頭(86%)は心エコー検査を実施しており、85/131頭(65%)は構造的に正常で、40/85頭(47%)の構造的に正常な犬は、ほんのわずか、あるいは軽度の房室弁逆流があった。三尖弁形成異常は最も一般的に診断された先天性心疾患だった(n=6)。粘液腫様僧帽弁疾患(n=12)と拡張型心筋症(n=13)は同じ頻度で診断されたが、92%の弁疾患症例は軽度だった。
48/452頭(23%)のみが、不整脈のスクリーニングで診断的心電図(ECG)及び/あるいはホルターモニターを行っていた。それでも、心エコー診断が利用できる25/131頭(19%)において、診断的ECG、心エコー検査中の同時ECGモニタリング、及び/あるいはホルターモニターを含む利用できる心臓評価全体で確認された。それら25頭のボルゾイのうち、76%は最小あるいは構造的心疾患はなく、5頭は突然死の家族性の病歴があった。
突然死は長期結果のデータが得られたボルゾイ3/55頭(5%)で報告された。
結論として、ボルゾイは一般的にほんのわずか、あるいは軽度の房室弁不全を持ち、心室性不整脈及び拡張型心筋症を発症するかもしれない。(Sato訳)
■食餌変更後に心臓形態および機能の著しい改善を示した食餌関連拡張型心筋症の小型犬の1例
A Case of a Small-Breed Dog with Diet-Related Dilated Cardiomyopathy Showing Marked Improvements in Cardiac Morphology and Function after Dietary Modification
Vet Sci. 2022 Oct 27;9(11):593.
doi: 10.3390/vetsci9110593.
Takahiro Saito , Ryohei Suzuki , Yunosuke Yuchi , Yuyo Yasumura , Takahiro Teshima , Hirotaka Matsumoto , Hidekazu Koyama
Free article
11歳メス、体重2.1kgのパピヨンが、浅速呼吸を主訴に当施設に紹介されてきた。初診時(0日)、臨床症状はかかりつけ医の薬物治療で改善したが、胸部エックス線写真と心エコー検査で、左心拡大と左室機能不全を認めた。拡張型心筋症(DCM)の臨床診断がなされ、ピモベンダン、テモカプリル、タウリンの経口投与を開始した。しかし、10日目、呼吸状態は悪化し、フロセミドを処方した。54日目、心臓のサイズに大きな改善は観察されなかった。また、この犬に与えていた食餌は、U.S. Food and Drug Administrationによる食餌関連DCMに対する推奨に合っており、その犬の餌をグレインフリーからグレインを含む餌に変更した。
1191日目、犬の呼吸状態は安定し、臨床症状は観察されなかった。胸部エックス線写真と心エコー検査は、左心のサイズの改善を示した。また、左室と右室の心筋の緊張の改善が、食餌の変更後に観察された。
我々は、拡張型心筋症に関係する食餌を疑う必要性があるかもしれず、小型犬といえ、食餌の修正による良好な予後が期待できるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の左側うっ血性心不全の非経口フロセミド治療後の腎傷害発症に対するリスクファクターの遡及的評価
Retrospective evaluation of risk factors for development of kidney injury after parenteral furosemide treatment of left-sided congestive heart failure in dogs
J Vet Intern Med. 2022 Oct 18.
doi: 10.1111/jvim.16571. Online ahead of print.
Maria E Giorgi , Jonathan P Mochel , Lingnan Yuan , Darcy B Adin , Jessica L Ward
Free article
背景:左側うっ血性心不全(CHF)に対するフロセミドで治療した犬において腎傷害(KI)が実証されている
仮説/目的:フロセミドで治療した犬のKI発症に対するリスクファクターを調べることと、生存に対するKIの影響を判定する
動物:CHFに対し非経口フロセミドを投与された79頭の飼い犬
方法:血清クレアチニン(sCr)と電解質濃度を入院中と、検出およびステージKIの再評価の最初の外来時に測定した。タイムポイント間に投与されたフロセミドの用量を算出した。KIの予測因子と随時血清生化学検査結果における比率変化を確認するため、多変量モデリングを実施した。
結果:腎傷害は38/79(48%)頭で確認され、ほとんどが入院中に起こった。腎傷害は25頭がグレードI、9頭がグレードII、4頭がグレードIIIだった。より高い血圧が入院中の急性KIに関係した(オッズ比、1.03;95%CI:1.01-1.07;P=.03)が、POフロセミド投与は退院後のKIと関係した(オッズ比、7.77;95%CI:2.05-68.6;P=.02)。基礎sCrとフロセミド持続点滴の使用は、KIのリスク増加に関係しなかった。腎傷害は長期結果と関係しなかった。グレードII-IIIのKIの犬13頭のうち、9頭の高窒素血症が可逆的で、6頭はKI後>1年生存した。
結論と臨床的重要性:CHFに対し非経口フロセミドの投与を受けたこの犬の集団において、KIは一般的で多くが非高窒素血症(グレードI)であり、生存に影響しなかった。(Sato訳)
■犬の粘液腫様僧帽弁疾患と心不全の管理において重要なカギとなる栄養素
Key nutrients important in the management of canine myxomatous mitral valve disease and heart failure
J Am Vet Med Assoc. 2022 Oct 8;1-10.
doi: 10.2460/javma.22.07.0319. Online ahead of print.
Dorothy P Laflamme
犬の心不全の最も一般的な原因は、粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)で、犬の心疾患症例の約75%を占め、特により小さい犬で一般的である。ここ数十年、心疾患のヒトに対し、低ナトリウム食が推奨されているが、犬でこれを支持するエビデンスはほとんどない。しかし、近年、心臓の健康に他の栄養素が重要であることが明らかになっている。MMVDによる二次的な心疾患の犬は、ミトコンドリアのエネルギー代謝とATP利用能の低下、酸化ストレスと炎症の増加を含む代謝変化パターンを経験する。それらの変化は疾患早期で起こり、心疾患の悪化とともに進行する。
正常機能をサポートし、それらの変化に向けたカギとなる栄養素には、オメガ-3脂肪酸、中鎖トリグリセリド、マグネシウム、ビタミンEとタウリンを含む抗酸化物、アミノ酸メチオニンとリジンが含まれる。長鎖オメガ-3脂肪酸は、抗炎症、抗血栓、他の利点を提供する。中鎖トリグリセリド由来の中鎖脂肪酸とケトンは、心臓ミトコンドリアに対する代替エネルギー源を提供し、フリーラジカル酸性の減少を助ける。
マグネシウムはミトコンドリアの機能、正常な心リズムをサポートし、他の利益も提供する。ビタミンEとタウリンは、酸化ストレスに対抗し、タウリンも直接心臓に利益がある。MMVDの犬は、血漿メチオニンが減少している。メチオニンとリジンは、カルニチン産生と他の機能に対して重要である。
この文献は、MMVDおよび他の心臓の状況における、それらや他の栄養素の機能と利益を支持するエビデンスをまとめる。(Sato訳)
■アメリカ獣医内科学会ステージB2粘液腫様僧帽弁疾患の犬における腎臓および心臓機能の選択した指数に対する標準用量と高用量ピモベンダンの効果
Effect of standard-dose and high-dose pimobendan on select indices of renal and cardiac function in dogs with American College of Veterinary Internal Medicine stage B2 myxomatous mitral valve disease
J Vet Intern Med. 2022 Sep 13.
doi: 10.1111/jvim.16537. Online ahead of print.
Joanna L Kaplan , Lance C Visser , Catherine T Gunther-Harrington , Eric S Ontiveros , Luke A Wittenburg , Carrie A Palm , Joshua A Stern
Free article
背景:ピモベンダンは腎機能に対し好ましい効果があると思われるが、これは粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬においてよく研究されていない。
目的:前臨床MMVDの犬において、糸球体濾過率(GFR)および心臓サイズと機能に対し、標準用量(SDピモ)および高用量ピモベンダン(HDピモ)の影響を判定する
動物:ステージB2MMVDの非高窒素血症の犬30頭
方法:前向き、無作為化、二重盲検、プラセボ対照臨床試験。心エコー検査、GFRの評価(イオヘキソールクリアランス)、N-末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)、クオリティオブライフ(QOL)スコアを基礎値、プラセボ(n=6)、SDピモ0.2-0.3mg/kg12時間毎(n=12)、HDピモ0.5-0.6mg/kg12時間毎(n=12)を投与後7-10日目に測定した。
結果:グループ間のGFRあるいはQOLスコアに有意差は見つからなかった(P≧.07)。HDピモ後、NT-proBNP(-46.1(20.2)%)、左房容積(LAV;-27.1(16.9)%)、左室拡張末期容積(EDV;-21.8(15.0)%)、収縮末期容積(ESV;-55.0(20.7)%)の平均(SD)%変化は、プラセボ(それぞれ、0.5(19.9)%、1.3(15.6)%、-0.2(8.2)%、-7.3(35.6)%)と有意差があった(P≦.004)が、SDピモ後(それぞれ、-36.6(16.1)%、-22.7(14.9)%、-16.7(12.5)%、-41.6(14.8)%;P>.05)の%変化に有意差はなかった。SDピモ後のNT-proBNP、LAV、EDV、ESVの%変化は、プラセボと有意差があった(P<.05)。
結論と臨床的重要性:結果は、ステージB2MMVDの非高窒素血症の犬において、ピモベンダン(SDピモあるいはHDピモ)は腎機能に影響しないかもしれないと示唆する。この我々の研究の制約内で、高用量ピモベンダンは、標準用量のピモベンダン以上のアドバンテージを示さなかった。(Sato訳)
■変性性弁疾患や拡張型心筋症の犬において総ビリルビンは死亡の独立した予測因子の1つである
Total bilirubin is an independent predictor of death in dogs with degenerative valvular disease and dilated cardiomyopathy
J Vet Cardiol. 2022 Jun 22;43:10-26.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.06.005. Online ahead of print.
A Chong 1, M Appleton , D Casamián-Sorrosal , S Raheb , M L O'Sullivan , A Pires , S Fonfara
イントロダクション:犬の心血管疾患と肝臓系の関係に関しての発表はあまりない。この研究の目的は、拡張型心筋症(DCM)あるいは変性性弁疾患(DVD)の犬の肝臓パラメーターと生存性および疾患ステージの関連を評価することだった。
動物、素材および方法:ACVIMステージBあるいはCのDVDあるいはDCMの犬と健康なコントロール犬の肝臓パラメーターを解析する回顧的研究。肝臓パラメーター、疾患のタイプとステージ、生存性の関連を調査した。
結果:99頭の犬を研究に含めた:DVD61頭、DCM22頭、コントロール16頭。DCM、DVDと疾患ステージの間に肝臓パラメーター濃度の差が認められた。一変量解析でALT(P<0.001)、AST(P=0.02)、総ビリルビン(P=0.005)が死亡の予測因子として確認された。多変量解析において、総ビリルビンは死亡の独立した予測因子のままだった。
結論:DCM、DVDと疾患ステージの間に見られた差は、疾患特異血行動態および疾患の進行と一致する確率が高い。死亡の独立した予測因子として総ビリルビンの役割は、DVDおよびDCMの犬において心血管-肝臓相互作用は、心疾患のヒトに対する報告のように疾患進行と結果に対して関連があるかもしれないと示される。犬の心疾患に対する肝機能の役割の追加研究が必要である。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患による左房破裂の犬と腫瘍性心タンポナーデの犬の臨床症状、臨床経過、予後の遡及的評価:70症例(2015-2019)
Retrospective evaluation of clinical signs, clinical course, and prognosis between dogs with left atrial rupture secondary to myxomatous mitral valve disease and those with neoplastic cardiac tamponade (2015-2019): 70 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Aug 12.
doi: 10.1111/vec.13236. Online ahead of print.
Hiroaki Sugiura , Tamami Suzuki , Shiho Mimura , Hideyuki Kanemoto
目的:粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)による二次的な左房破裂(LAR)が疑われる犬の臨床症状、臨床経過、予後を述べ、腫瘍性心タンポナーデ(NCT)が疑われる犬のそれと比較する。
デザイン:2015年11月から2019年10月までの遡及的研究
場所:時間外救急動物病院
動物:MMVDによる二次的なLARの犬23頭(LAR群)とNCTの犬47頭(NCT群)
介入:なし
測定値と主要結果:以下が研究集団(LAR群 vs NCT群)の特徴でP<0.05を有意とした:オス犬、83% vs 66%;年齢中央値、11.9 vs 12.5歳;体重中央値、3.8 vs 6.4kg(P<0.001)。チワワとミニチュアダックスフンドがLARとNCT群でそれぞれ多く見られた。2群間の臨床所見の統計学的な違いは以下(LAR vs NCT):肺水腫、43% vs 0%;心嚢血栓、70% vs 6%(P<0.001);心嚢穿刺の無効(心嚢液の吸引が成功したかしないか)、58% vs 2%(P<0.001);受診後48時間以内の死亡率、35% vs 9%(P<0.01)。2群の退院後の生存期間の有意差は認められなかった。
結論:心タンポナーデを伴う犬で、MMVDによる二次的なLARの診断を受けた犬の比率は過去に報告されたものより高かった。さらに、NCT群と比べ、LAR群において肺水腫の頻度、心膜穿刺の無効、短期死亡率は高かった。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬において酸化ストレスマーカー、炎症性マーカー、リンパ球部分母集団、臨床状況に対するコエンザイムQ10サプリメントの効果
Effects of Coenzyme Q 10 Supplementation on Oxidative Stress Markers, Inflammatory Markers, Lymphocyte Subpopulations, and Clinical Status in Dogs with Myxomatous Mitral Valve Disease
Antioxidants (Basel). 2022 Jul 22;11(8):1427.
doi: 10.3390/antiox11081427.
Natalia Druzhaeva , Alenka Nemec Svete , Gabrijela Tavčar-Kalcher , Janja Babič , Alojz Ihan , Katka Pohar , Uroš Krapež , Aleksandra Domanjko Petrič
Free article
粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、コエンザイムQ10(CoQ10)サプリメントの効果に対するデータは十分ではない。
この研究の目的は、MMVDの犬において、酸化ストレスマーカー(グルタチオンペルオキシダーゼ、F2-イソプロスタン)、炎症のマーカー(腫瘍壊死因子-α、TNF可溶性受容体II、白血球とそれらのサブタイプ)、リンパ球部分母集団(ヘルパーT、細胞障害性Tリンパ球、活性化Tリンパ球およびBリンパ球を含める)、心エコー検査及び臨床パラメーターに対するCoQ10サプリメントの効果を調査することだった。
この無作為化対照二重盲検縦断研究において、ACVIMステージB2、ステージCおよびD(うっ血性心不全(CHF))のMMVDの犬43頭に、水様性コエンザイムQ10(100mg1日2回)、あるいはプラセボを3か月間投与し、サプリメントを投与しない12頭の健康な犬をコントロールとした。健康犬は1回、MMVD犬はサプリメント投与前後に全てのパラメーターを測定した。
CHFの犬(ACVIMステージCおよびD)の我々の集団において、CoQ10のサプリメントは、好中球比率、リンパ球比率、リンパ球濃度にポジティブに影響した。
結論:CoQ10の経口サプリは、MMVDとCHFの犬に対し炎症を減少させることに関し有益かもしれない。(Sato訳)
■犬の抗高血圧薬の比較効果:系統的レビュー
Comparative efficacy of antihypertensive drugs in dogs: a systematic review
Top Companion Anim Med. 2022 May 28;100674.
doi: 10.1016/j.tcam.2022.100674. Online ahead of print.
Hyeong-Il Choi , Joonyoung Kim , In-Sik Shin , Ha-Jung Kim
犬において、全身性動脈高血圧は、標的臓器ダメージ(TOD)を与える健康状態である。高血圧緊急事態の予防および、TODのリスク低下のため、早期、効果的な治療は重要である。
この研究は、犬の高血圧の下にある疾患を調査し、抗高血圧薬の短期効果を比較した。
我々は、2017年から2018年の間に抗高血圧薬で治療した飼い犬の医療記録を評価した。この研究は、全身性動脈高血圧(収縮期血圧(SBP)、≧150mmHg)と診断された75頭の犬を含めた。犬は以下の抗高血圧薬での治療を基に分類した:カルシウムチャンネルブロッカー(CCB)アムロジピン、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACEI)ラミプリル、アンギオテンシンレセプターブロッカー(ARB)テルミサルタン、単独治療あるいは併用治療(テルミサルタン+アムロジピンあるいはラミプリル+アムロジピン)。収縮期血圧は、4週間かけて間接ドップラー法を用いて測定した。
自然発生の副腎皮質機能亢進症は、全身性高血圧と関連して診断された最も一般的な疾患だった。テルミサルタン群において、ラミプリルと比べ、3週間で最も早く収縮期血圧が低下した。テルミサルタンとアムロジピンの併用は、4週間の治療期間を通し、収縮期血圧の最大の低下を示した。
この研究は、犬において種々の抗高血圧薬の使用に対し、ガイドラインを提案するものとして有意義である。
■粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬とそうではない犬の心エコー測定値と心拡大の予測に関係する異なるエックス線写真スコアの比較
Comparison of different radiographic scores with associated echocardiographic measurements and prediction of heart enlargement in dogs with and without myxomatous mitral valve disease
J Vet Cardiol. 2022 Sep 6;44:1-12.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.08.004. Online ahead of print.
C Levicar , J L Granados-Soler , F Freise , J F Raue , I Nolte , J-P Bach
イントロダクション:粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)のステージングは、心エコー検査と一緒に胸部エックス線写真を必要とする。この研究の目的は、健康な犬と異なるステージのMMVDの犬において、従来及びグレースケール反転画像のエックス線スコア椎体心サイズ(VHS)、左房幅(LA幅)、エックス線左房径(RLAD)、椎体左房サイズ(VLAS)の平均値を算出し、ステージ割り当てのカットオフ値を見つけることだった。
動物:異なるステージのMMVDの犬150頭と罹患していない50頭の犬を評価した。
方法:エックス線スコア、心エコー検査の左房大動脈比、標準化した拡張終期の左室内径、臨床検査の結果を入手した。エックス線スコアと心エコー値の相関の評価、エックス線によるステージ割り当てに対するカットオフ値の判定、従来のものと反転エックス線写真における値を比較するために分析を実施した。
結果:犬種特異のより高いVHSを除外後、VHS、LA幅、RLAD、VLASの平均は、コントロール群とステージB1で同じだった。全てのエックス線スコアは、ステージB2とCで上昇した。心拡大を確認(つかりステージB1とB2の鑑別)するカットオフ値は、VHSで11.0、LA幅で1.8、RLADで2.0、VLASで2.3だった。RLAD以外で従来と反転エックス線写真におけるスコアは同じだった。
結論:ステージ割り当てに対する異なるエックス線スコアのカットオフ値を算出した。従来あるいは反転グレースケールを用いたエックス線心スコアは、心エコー検査が使用できないときにMMVDの異なるステージを鑑別できるツールだった。(Sato訳)
■僧帽弁逆流の犬においてエックス線写真上の後肺動脈/静脈比は肺高血圧を予測できる
Caudal pulmonary artery to vein ratio on radiography can predict pulmonary hypertension in dogs with mitral regurgitation
Vet Radiol Ultrasound. 2022 Sep 1.
doi: 10.1111/vru.13145. Online ahead of print.
Sang-Kwon Lee , Jihye Choi
僧帽弁逆流(MR)の犬において、肺高血圧症(PH)は、予後不良の重要の予測因子である。MRの犬においてPHを予測するエックス線写真の可能性は不明である。
この遡及的観察分析研究の目的は、MRの犬においてPHを予測するエックス線写真上のパラメーターを確認することだった。
心エコー検査でMRと診断された合計302頭の犬を登録した。主肺動脈、左房、左室、右室腔、前および後肺動脈および静脈のサイズのようなエックス線所見と医療記録を、PHの存在に従い評価した。前および後肺血管の直径は、それぞれ第4肋骨と第9肋骨で比較し、肺動脈と対応する静脈の比率(CdPA/CdPV)を算出した。
肺高血圧は77頭(25.5%)で診断され、PHの有病率はMRのグレードと共に増加した。PHがあるとき、CdPA/CdPVは有意に高かった(P<0.001)。多変量解析では、CdPA/CdPVはMRの犬においてPHに有意に関係した唯一の独立したエックス線写真上のパラメーターだった(P=0.028)。CdPA/CdPVのカットオフ値1.10は、MRの犬のPH検出に対し90.6%の特異性と31.1%の感受性を示した。
MRの犬において、エックス線写真上の後肺動脈が、対応する静脈よりも1.1倍大きい時は、高い特異性でPHを予測できる。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患による心原性肺水腫の犬において貧血のない網状赤血球増加症の有病率
Prevalence of Reticulocytosis in the Absence of Anemia in Dogs with Cardiogenic Pulmonary Edema Due to Myxomatous Mitral Valve Disease: A Retrospective Study
Vet Sci. 2022 Jun 14;9(6):293.
doi: 10.3390/vetsci9060293.
Sol-Ji Choi , Won-Kyoung Yoon , Hyerin Ahn , Woo-Jin Song , Ul-Soo Choi
Free PMC article
小型犬種において粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)は、一般的な心疾患である。MMVDの犬は、心原性肺水腫(CPE)による呼吸困難の臨床症状を呈することも多い。低酸素状態において貧血を伴わない網状赤血球増加症(RAA)は、血液学的所見の1つである。
MMVDによるCPEの犬において、RAAの有病率を評価し、RAAは呼吸困難の改善に伴い可逆的かどうか評価することを目的とした。
MMVDによるCPEの飼育犬29頭を含めた。CPEの発現から6週間以内に死亡した犬を非生存群に含め、その他は生存群に含めた。
21頭のうち17頭(80.9%)にRAAが認められた。RAA群において、網状赤血球絶対数は、CPE解消により有意に減少した(p<0.001)。RAA群において最初の測定時の平均網状赤血球絶対数は163.90±50.77で、CPE解消後は78.84±25.64だった。RAA群において、1回目、2回目の測定で生存群および非生存群に平均網状赤血球絶対数の有意差は見られなかった。
MMVDによるCPEの犬にRAAは発生し、CPEの解消後に改善可能であることを結果は示す。(Sato訳)
■うっ血性心不全の発現前の無症候性粘液腫様僧帽弁疾患の犬における椎骨左房サイズの変化
Change of Vertebral Left Atrial Size in Dogs With Preclinical Myxomatous Mitral Valve Disease Prior to the Onset of Congestive Heart Failure
J Vet Cardiol. 2022 May 11;42:23-33.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.05.003. Online ahead of print.
Dohee Lee , Taesik Yun , Yoonhoi Koo , Yeon Chae , Dayoung Ku , Dongwoo Chang , Byeong-Teck Kang , Mhan-Pyo Yang , Hakhyun Kim
イントロダクション/目的:胸部エックス線検査で胸骨左房サイズ(VLAS)は、粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬の左房拡大の評価に使用できると提唱されている。しかし、前臨床MMVDの犬がうっ血性心不全(CHF)発症のリスクが高いか、低いかの鑑別にVLASが使用できるかどうかは不明のままである。我々はこの可能性を調査した。
動物、素材と方法:MMVDの犬41頭を回顧的に2群に分類した(CHFを発症した群(CHF群、n=17)、CHFがないままの群(no-CHF群、n=24)。3つのタイムポイントで椎骨心臓スケール(VHS)およびVLASの値、特定の期間間隔でVHSおよびVLASの変化(ΔVHS、ΔVLAS)、1か月ごとの値の変化率(ΔVHS/月、ΔVLAS/月)を比較した。
結果:初診時の群間のVLASに有意差はなかった。CHFの発現前中央値105日(四分位数間領域83-155)(CHF群)、あるいは最終受診時(no-CHF群)で、CHF群のVLAS(平均、2.9;標準偏差±0.4)はno-CHF群のVLAS(2.6±0.3)よりも有意に高かった(p=0.028)。180日以内にCHFを発症すると思われる犬と、そうでない犬の鑑別において、ΔVLAS/月(曲線下面積、0.91;p<0.001)は高い診断精度を示した。
結論:前臨床MMVDの犬のVLASおよびΔVLAS/月は、今後180日以内にCHFを発症するリスクを持つ犬の確認に有効かもしれない。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患ステージCによる二次的な肺高血圧の犬の生存期間に関連する因子
Factors related to survival time in dogs with pulmonary hypertension secondary to degenerative mitral valve disease stage C
Int J Vet Sci Med. 2022 Apr 29;10(1):25-32.
doi: 10.1080/23144599.2022.2067630. eCollection 2022.
Jutamas Udomkiattikul , Noppasorn Kirdratanasak , Panatsada Siritianwanitchakul , Wasaporn Worapunyaanun , Sirilak Disatian Surachetpong
変性性僧帽弁疾患(DMVD)の犬の肺高血圧症(PH)は、一般的な合併症の1つです。
この研究の目的は、DMVDステージCの二次的なPHの犬の生存期間を判定し、生存期間に関係する因子を判定することだった。
DMVDステージCによる二次的なPHの犬37頭で、生存期間中央値と、年齢、性別、犬種、体重、失神の有無、心拍数、収縮期血圧、うっ血性心不全(CHF)の症状、椎骨心臓スコア(VHS)、左あるいは右心拡大の有無、PHの可能性、薬剤治療のような関連因子を分析するために回顧的研究を実施した。データはログ-ランクテストとカプラン-マイヤー曲線のプロットを用いて分析した。
結果は、DMVDステージCによる二次的なPHの犬の生存期間中央値は368日で、生存期間中央値を短縮する因子は、雑種犬、VHS>11.5、右心拡大の存在、腹水とPHの高い可能性だと示した。死亡の危険増加と関係する因子は、雑種犬、右心拡大と腹水の犬だった。
それらの所見は、DMVDステージCによる二次的なPHの犬の予後と管理に対し有効かもしれない。(Sato訳)
■慢性肺高血圧の犬モデルの心機能と血行動態に対するベラプロストナトリウムの調査
Investigation of Beraprost Sodium on Cardiac Function and Hemodynamics in Canine Models of Chronic Pulmonary Hypertension
Front Vet Sci. 2022 Apr 14;9:876178.
doi: 10.3389/fvets.2022.876178. eCollection 2022.
Ryohei Suzuki , Yunosuke Yuchi , Takahiro Saito , Takahiro Teshima , Hirotaka Matsumoto , Hidekazu Koyama
Free PMC article
肺高血圧(PH)は、犬において肺動脈圧(PAP)の上昇±肺血管抵抗を特徴とする重篤な疾患の1つである。PHの犬でベラプロストナトリウム(BPS)の有用性を評価した研究はない。
この研究は、慢性の塞栓性PHの犬モデルにおいて、心機能と血行動態に対するBPSの効果を評価し、BPSの最適用量を調べた。
この前向き交差試験は、慢性塞栓性PHの8頭の犬モデルにおいて、BPSの3つの用量(5、15、25μg/kg、1日2回)で試験した。全ての犬は1週間の経口BPSの持続投与前後で、観血的PAP測定、心エコ^検査、非観血的収縮期血圧測定を実施した。
研究中にBPSの副作用が見られた犬はいなかった。全てのBPSの投与量は、収縮期PAPと肺血管インピーダンスを有意に低下させた。また、収縮期血管インピーダンスは、BPS15、25μg/kgで有意に低下した。BPSの全ての用量で、右室1回拍出量および長軸ストレインは有意に減少した。BPS15μg/kgで左室1回拍出量と円周ストレインは減少した。この研究でBPSの許容性は良かった。
慢性PHの犬モデルにおいて、用量依存性の肺の血管に対する拡張効果が観察された。また、BPS15μg/kgで全身及び肺の脈管に対し、バランスのとれた拡張効果を示した。さらに、全身及び肺の血管インピーダンスの減少に伴い、左及び右室機能は有意に改善した。
我々の結果は、BPSが犬のPHの治療に有効かもしれないと示唆する。(Sato訳)
■無症候性の犬の変性性弁疾患:診断と現在及び今後の治療
Asymptomatic Canine Degenerative Valve Disease: Diagnosis and Current and Future Therapies
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2022 May;52(3):819-840.
doi: 10.1016/j.cvsm.2022.01.010.
Sonya G Gordon , Ashley B Saunders , Sonya R Wesselowski
犬の変性性弁疾患(DVD)は、心疾患と心不全の主要な原因である。ACVIMにより2009年に発表された最初のコンセンサス声明は2019年にアップデートされ、DVDの診断と治療に対するガイドラインを提供している。それらのアップデートされたガイドラインは、十分な左心拡大を特徴とするステージB2 DVDにおいて、ピモベンダンによる治療を推奨した。ステージB2の定義にあっていない、あるいは超過していないDVDの無症候性の犬は、ステージB1と考えられる。ステージB1 DVDの治療は推奨されていない。
この文献は、ステージBに関連するアップデートされたDVDガイドラインの関連する科学的背景と実際の適応を議論する。また、うっ血性心不全に関連しない臨床症状を起こしえるDVDの一般的な続発症の管理も再検討する。現在の推奨法に対する新しいエビデンスの影響、新規診断アプローチへの一見、および今後の治療の可能性も述べる。(Sato訳)
■アムロジピンは7日以上かけて犬の僧帽弁逆流量を減少させる:粘液腫様僧帽弁変性の犬24頭の研究
Amlodipine decreases mitral regurgitation volume in dogs over 7 days: A study of 24 dogs with myxomatous mitral valve degeneration
Vet Rec Open. 2022 Apr 5;9(1):e33.
doi: 10.1002/vro2.33. eCollection 2022 Dec.
Sool Yi Park , Won-Seok Oh , Seunggon Lee
Free PMC article
背景:アムロジピン(ジヒドロピリジンカルシウム-チャンネルブロッカー)は、粘液腫様僧帽弁変性(MMVD)の治療として現在調査されている。しかし、心エコー指数の変化を基にした中程度-重度自然発生MMVDに対するアムロジピンの効果は分かっていない。
動物:ACVIMステージB2以上のMMVDが自然発生した飼育小型犬(n=24)
方法:過去の薬剤治療を含めた犬の基本情報を記録した。全ての犬は、彼らの既存薬剤投与に加え、7日間アムロジピン0.1mg/kg1日2回経口投与を行った。アムロジピン投与前と1週間後の収縮期血圧を測定し、X-ray、心エコー検査、血液検査データを入手した。
結果:左室拡張期末内径、左房径、E波は、アムロジピン投与から1週間後に統計学的に減少した(全てp<0.001)。副作用は報告されなかった。
結論:それらの所見は、ACVIMステージB2-CのMMVDの犬に対し、低用量アムロジピンは治療として考慮すべきだと示唆する。(Sato訳)
■感染性心内膜炎の犬の結果と予後因子:113症例(2005-2020)
Outcome and prognostic factors in infective endocarditis in dogs: 113 cases (2005-2020)
J Vet Intern Med. 2022 Mar 9.
doi: 10.1111/jvim.16380. Online ahead of print.
Krystle L Reagan , Lance C Visser , Steven E Epstein , Joshua A Stern , Lynelle R Johnson
Free article
背景:感染性心内膜炎(IE)と診断された犬の結果に関係する因子の特徴はよくわかっていない。
目的:IEの犬の結果と予後因子を評価する
動物:IEの113頭の犬
方法:2005年から2020年の間に修正Duke基準を満たした犬の医療記録を回顧的に再調査した。シグナルメント、既存の状況、臨床病理所見、治療方法、結果を記録した。死亡率に関係する分類的因子を確認するため、一変量ロジスティック回帰を実施し、その後多変量解析を実施した。
結果:犬は生存(n=47)、非生存(n=57)、追跡不能(n=9)に分類した。退院時の生存および1か月時の生存は、それぞれ113頭中79頭(70%)、104頭中56頭(54%)で、生存期間中央値(MST)は72日だった。死亡率に関係するリスク因子は、鬱血性心不全の発症(オッズ比(OR)、11.8;95%CI、1.4-97.8)、血栓塞栓事象(OR、5.7;95%CI、2.3-14.4)、急性腎傷害(OR、6.2;95%CI、2.0-18.8)が含まれた。抗血栓の薬剤投与は生存性と関係した(OR、0.35;95%CI、0.13-0.97)。抗血栓の治療を行わなかった犬のMSTは92日で、抗血栓の治療を行った犬は研究期間中にMSTに到達しなかった。関与した心臓弁、確認した原因菌は結果と相関しなった。
結論と臨床的重要性:血栓塞栓事象、急性腎傷害、うっ血性心不全があるIEの犬は、死亡のリスクがより高かった。抗血栓薬の投与は長期生存期間と関係した。(Sato訳)
■犬の動脈管開存症の外科的結紮:破裂の発生率とリスクファクター
Surgical ligation of patent ductus arteriosus in dogs: Incidence and risk factors for rupture
Vet Surg. 2022 Mar 16.
doi: 10.1111/vsu.13802. Online ahead of print.
Janet A Grimes , Kelley M Thieman Mankin
目的:犬の動脈管開存症(PDA)の外科的結紮に関係する破裂の確率と死亡率を調べ、破裂のリスクファクターを確認する
研究デザイン:回顧的コホート
動物:外科的結紮を行ったPDAの犬285頭
方法:シグナルメント、体重、外科的所見、合併症、残存血流の有無、生存性に関する情報を記録した。破裂した症例と破裂しなかった症例の年齢、体重、残存血流の有無を比較した。
結果:最初の外科的アプローチは、心膜外(144)、心膜内(46)、報告なし(94)、ジャクソン-ヘンダーソン(1)だった。PDAの破裂は7.0%の犬で発生した(20/285、心膜外13頭、心内膜3頭、報告なし4頭)。破裂した犬と破裂しなかった犬に、年齢あるいは体重の違いは見つからなかった。総死亡率は0.4%(1/285)だった。追加のメジャーな合併症は1.4%の犬で発生し、全て破裂しなかったグループだった。結紮後の残存血流の全確率は9.4%だった。破裂した犬は、破裂しなかった犬よりも残存血流がある確率が高かった(P=.012)。破裂後(止血のみ)に結紮を実施した場合、破裂した犬と破裂しなかった犬の間に残存血流率の違いは認められなかった(P=.398)。
結論:PDAの外科的結紮に伴う破裂の割合は低かった。破裂に対する特定のリスクファクターは確認されなかった。
臨床意義:PDA破裂の上手な治療は可能で、この犬の集団における死亡率が低いことが裏付けである。同時あるいはその後の措置において破裂後のPDAの結紮は残存血流の確率を減少させる。(Sato訳)
■Bacillus amyloliquefaciensによる犬の感染性心内膜炎の治療成功例
Successful treatment of canine infective endocarditis caused by Bacillus amyloliquefaciens
Vet Q. 2022 Jan 22;1-8.
doi: 10.1080/01652176.2022.2033879. Online ahead of print.
Hyeona Bae , Tae-Sung Hwang , Lee Hee-Chun , Dong-In Jung , Sang-Hyun Kim , DoHyeon Yu
Bacillus amyloliquefaciensは、グラム陽性細菌で、ヒトや動物のプロバイオティックとして利用される。犬において感染性心内膜炎(IE)の報告はない。
8歳の避妊済みメスのマルチーズが、1か月にわたる発熱、元気消失、体重減少、後肢跛行を呈した。血液検査結果は、非再生性貧血、好中球増多、高グロブリン血症、蛋白尿を示した。心エコー検査で僧帽弁の中隔弁尖上の疣腫と左房の血栓塞栓を認めた。継続的血液培養結果は、血液サンプルが動物のプロバイオティック細菌種と一般的に考えられるBacillus amyloliquefaciensに対し一貫して陽性だと示した。
広域スペクトラム抗生物質(アモキシシリンクラブラン酸およびセフォタキシム)と抗凝固剤(クロピドグレルとリバロキサバン)を4か月間投与した。臨床症状は抗菌療法に反応した。
4か月後、その犬の発熱はなく、左房の血栓塞栓のサイズも減少していた。抗菌療法後、血液培養において細菌は分離されなかった。
我々の知識では、これはBacillus amyloliquefaciensの菌血感染による犬IEの最初の症例報告である。(Sato訳)
■犬(K9)粘液腫様僧帽弁疾患の長期的結果(LOOK-Mitral)レジストリー:基本治療の特徴
The longitudinal outcome of canine (K9) myxomatous mitral valve disease (LOOK-Mitral) registry: Baseline treatment characteristics
J Vet Cardiol. 2022 Feb 18;41:99-120.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.02.001. Online ahead of print.
A Franchini , M Borgarelli , J A Abbott , G Menciotti , S Crosara , J Häggström , S Lahmers , S Rosenthal , W Tyrrell
目的:犬(K9)粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の長期結果レジストリー(LOOK-mitralレジストリー)に含まれる犬の登録受診時、獣医心臓専門医により処方された、あるいは修正された薬剤治療を述べることと、心臓専門医の処方傾向に対するEPICトライアルおよび他の選択された変数の影響を評価する
動物:2015年から2018年にLOOK mitralレジストリーに登録された6102頭の犬の医療記録を再検討し、6016頭を含めた。
結果:心臓専門医により2599頭の犬に薬剤は処方された(ステージB1の15%、ステージB2の90%、ステージCの全頭)。アンギオテンシン変換酵素阻害薬(Ace-i)は、ステージB1の犬に対し最もよく処方された治療だった(n=352、9%)。ピモベンダンとAce-iの組み合わせは、ステージB2の犬の最も一般的な治療だった(n=367、41%)。フロセミドとAce-iとピモベンダンは、ACVIMステージCの犬に処方された最も一般的な心臓薬剤治療だった(n=704、57%)。各ステージ内で、より大きな左房および左室径の犬は、Ace-i、ピモベンダン、あるいはスピロノラクトンが投与される確率が高かった。EPICトライアルの発表後、ステージB2でピモベンダンの処方が4倍増加した。さらにEPIC後、Ace-iの処方は15%減少し、スピロノラクトンの処方は30%減少した。974頭の犬において、薬剤は紹介された獣医師により処方された。これは心臓専門医により変わらなかった(12%)、修正されなかった(74%)、中止されなかった(14%)。
結論:EPICトライアルと左房および左室系の心エコーによる測定は、心臓専門医の処方傾向に影響を及ぼしている。(Sato訳)
■心房細動の犬における心臓突然死の有病率
Prevalence of sudden cardiac death in dogs with atrial fibrillation
J Vet Intern Med. 2021 Nov 9.
doi: 10.1111/jvim.16297. Online ahead of print.
Kieran Borgeat , Matthew Pack , Jo Harris , Alex Laver , Joonbum Seo , Omri Belachsen , Joshua Hannabuss , Julie Todd , Luca Ferasin , Jessie Rose Payne
Free article
背景:ヒトにおいて心房細動(AF)は、血栓形成障害のような二次的リスクファクターとは別に、心臓突然死(SCD)のリスク上昇に関係する。犬においてSCDはいくつかの心疾患で述べられているが、AFとSCDの関係は報告されていない。
仮説:(a)AFのより高い比率の犬がSCDを経験するだろう、(b)SCDは複合心室不整脈と関係するだろう
動物:AFの142頭の犬とAFではない127頭の犬
方法:回顧的、多施設、症例-コントロール研究。AF群に含まれた犬は、心エコー診断でマッチした洞リズムのコントロール群の犬と比較した。記述統計学を使用し、SCDとなった各群の比率を確認し、カイ二乗検定で比較した。AFの犬のSCDに対するリスクファクターは、バイナリロジスティック回帰を用いた単変量および多変量レベルで評価した。
結果:AFの犬はコントロールの犬よりも有意に高い比率でSCDとなった(14.8%vs5.5%;P=.01)。診断時により若いこと、より大きな左房、失神の病歴全てがAFの犬のSCDの独立した予測因子だった(χ2、16.3;P=.04)。
結論と臨床的重要性:心房細動は犬のSCDのより高い有病率と関係した。失神の病歴は、SCDリスクの有効な予測因子かもしれない。(Sato訳)
■犬で3つのスマートウォッチモデルの心拍数測定の精度
Accuracy of heart rate measurements of three smartwatch models in dogs
Top Companion Anim Med. 2022 Mar 8;100654.
doi: 10.1016/j.tcam.2022.100654. Online ahead of print.
Latif Emrah Yanmaz , Sitkican Okur , Ugur Ersoz , Mumin Gokhan Senocak , Ferda Turgut
この研究の目的は、ヒト用に設計された3つのスマートウォッチモデルを犬に適用した時、心拍数(HR)測定値の正確性を評価することだった。
年齢2-3歳、体重20-30kgの雑種犬15頭のグループを使用した。Garmin Fenix 5X plus (GF5Xp)、Samsung Gear S3 (SGS3)、Polygold A-6 (PDA6)を無作為に犬の脛骨に装着し、1時間、5分ごとにHRの記録を集めた。参照方法として動物用モニター(VPM)を使用した。ブランド-アルトマンプロットをスマートウォッチの違いを判定するために適用した。受信者操作特性曲線を感受性と特異性の解析のために作成した。
VPMにより測定したHRの範囲は、65-200bpm(平均、143±28.1bpm;中央値、154bpm)だった。スマートウォッチの中で、最も低い(44bpm)HRはPDA6で測定され、最も高い(201bpm)HRはSGS3で測定された。スマートウォッチの中で、VPMの一致性において、GF5XpとSGS3は1に等しい傾斜で、残差標準偏差はほぼ0だった。カットオフHR(160bpm)で、SGS3は最も高い感受性だった(97.4%)が、PDA6は最も低い感受性だった(68.0%)。GF5Xp、SGS3、PDA6の特異性はそれぞれ97.1%、98.0%、98.0%だった。
SGS3とGF5Xpは、獣医師にとって追加機器を必要とせず犬のHPをモニターする理想のツールになり得る。(Sato訳)
■病状発現前の僧帽弁疾患の犬におけるピモベンダンの治療効果:プラセボ-コントロール二重盲検クロスオーバー試験
The effect of treatment with pimobendan in dogs with preclinical mitral valve disease - a placebo-controlled double-blinded crossover study
BMC Vet Res. 2021 Sep 25;17(1):310.
doi: 10.1186/s12917-021-03014-5.
Stephanie Klein , Ingo Nolte , Katja Rumstedt , Maximiliane Sehn , Jonathan Friedemann Raue , Franziska Weiner , Julia Sophie Treese , Martin Beyerbach , Jan-Peter Bach
背景:ピモベンダンは鬱血性心不全(CHF)および心拡大を伴う前臨床性の変性性僧帽弁疾患(DMVD)の犬の治療に対し広く使用される薬剤である。心拡大のない前臨床性DMVDの犬の治療の恩恵は、明らかになっていない。生活の質に関するいくつかの陽性効果と心臓バイオマーカーの低下は確認できた。
この研究はプラセボ-コントロール二重盲検クロスオーバーデザインを用い、それらの結果をさらに調査することを目的とした。
合計15頭の犬のうち、8頭はシーケンス群AB(最初の処置期間中にピモベンダン(A)、2度目の期間中にプラセボ(B)を投与)に振り分けた。それに対しシーケンス群BAは最初にプラセボ、続いてピモベンダンを投与した。各処置期間は6か月続け、基礎評価と90日及び180日後にフォローアップを行った。評価は、オーナーにアンケートに答えてもらい、心臓エコー検査、標準化した亜最大運動試験前後にNT-proBNP、cTnIの測定を行った。
結果:NT-proBNP値はピモベンダン投与期間中に有意に低下し、180日目には運動後の上昇は減少した。運動前後のcTnIおよび乳酸に対する有意な治療効果は確認できなかった。処置で左室のサイズは小さくなったが、左房のサイズの有意な変化は見られなかった。オーナーはピモベンダンで処置している犬は、90日目(11/15)と180日目(12/15)にはより活動的になったと答えた。プラセボで処置している犬は、90日目(2/15)と180日目(5/15)により活動的になったと述べた。
結論:DMVD ACVIM B1の犬において、ピモベンダンは運動前後の心臓バイオマーカーの濃度と左室のサイズに対する縮小効果があった。運動試験を心臓バイオマーカーの評価に加えることは、DMVDの犬のピモベンダン投与を開始する決断を改善するかもしれない。(Sato訳)
■6ヶ月齢の柴犬における拡張型心筋症の若齢型の1症例
A case of juvenile form of dilated cardiomyopathy in a 6-month-old Shiba Inu dog
Can Vet J. 2022 Feb;63(2):152-156.
Koichi Shimizu , Ryohei Suzuki , Yoshitaka Ikeda , Yohei Mochizuki , Takahiro Teshima , Masaki Michishita , Hirotaka Matsumoto , Hidekazu Koyama
6ヶ月齢の柴犬が発咳、運動不耐性、肺水腫で獣医教育病院に運ばれてきた。
その犬は、Levine2/6の収縮期雑音があった。経胸心エコー検査で左房と左室の拡張(左房/大動脈比:2.8)、僧帽弁と三尖弁逆流、重度の左室心筋の低運動(短縮率11.8%)を認めた。バブル造影心エコー検査で先天的シャントは認めなかった;ゆえにその犬は拡張型心筋症の早期発現と臨床的に診断された。
初診からピモベンダン、タウリン、トラセミド、硝酸イソソルビドで治療した。435日後の心エコー検査で収縮機能は改善していないことが分かった。465日目、心房細動が心電図で確認され、塩酸ジルチアゼムによる治療を開始した。その後、初診から1087日目の突然死まで、その犬は臨床的に安定を持続した。
剖検の病理組織検査で、左房と左室腔の重度拡張、心室心筋の減弱したwavy fibersを認め、若齢の拡張型心筋症を確認した。
これは1頭の柴犬に見られた拡張型心筋症の若齢型の最初の報告である。この症例報告は、過去に報告された若い犬の拡張型心筋症の症例と違い、この犬のより長い予後のエビデンスを提供する。
鍵となる臨床メッセージ:これは、1頭の柴犬における拡張型心筋症の若齢型の症例の最初の報告である。この報告は、この犬の予後は過去に報告された若い犬の拡張型心筋症の症例と異なるというエビデンスを提供する。(Sato訳)
■ループ利尿剤とヒドロクロロチアジドで治療した進行した心不全の犬14頭の回顧的研究
A retrospective study of 14 dogs with advanced heart failure treated with loop diuretics and hydrochlorothiazide
Open Vet J. Jul-Sep 2021;11(3):342-345.
doi: 10.5455/OVJ.2021.v11.i3.2. Epub 2021 Jul 10.
Koji Iwanaga , Ryuji Araki , Mitsuhiro Isaka
背景:米国獣医内科学会ガイダンスによると、犬の僧帽弁閉鎖不全(MI)による進行した心不全に対し、サイアザイド系利尿剤の使用が推奨される。しかし、進行した心不全の犬でのサイアザイド系利尿剤の使用の大規模な報告はない。
目的:この回顧的研究は、心不全の犬に対しヒドロクロロチアジド(HTCZ)とループ利尿薬を併用した治療効果を評価した。
方法:この研究には2施設において、MIと進行した肺水腫と診断された14頭の犬を含めた。全ての症例において、高用量ループ利尿剤(トルセミド;0.78-4mg/kg/day)で肺水腫が改善しなかった。トルセミドにHTCZ(0.2-0.84mg/kg/day)を加える前後の心エコー検査と腎機能検査結果を統計学的に比較した。
結果:HTCZ投与後の心エコー検査のデータは、心臓ストレスに関連するものの有意な改善を示した:左房/大動脈比、拡張期の左室内径の正常化、E波速度(m/s)。しかし、血中尿素窒素、クレアチニン濃度が上昇し、カリウム濃度は低下して、HTCZ投与後の腎機能の低下を示した。
結論:犬のMIによる進行した心不全の間、ループ利尿剤にHTCZの併用投与は有益かもしれないと示唆される。また、この結果は、ループ利尿剤に抵抗性を持つ犬に広げることも可能で、心機能の改善を起こす。しかし、ループ利尿剤とHTCZを併用は腎機能を悪化させるため、その使用に関して推奨する前に注意すべきで、腎機能をモニターすべきである。(Sato訳)
■心疾患の犬の長期結果に対するアンギオテンシン変換酵素阻害剤の用量依存的効果の回顧的研究
Retrospective evaluation of a dose-dependent effect of angiotensin-converting enzyme inhibitors on long-term outcome in dogs with cardiac disease
J Vet Intern Med. 2021 Aug 13.
doi: 10.1111/jvim.16236. Online ahead of print.
Jessica L Ward , Yen-Yu Chou , Lingnan Yuan , Karin S Dorman , Jonathan P Mochel
Free article
背景:犬でアンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEIs)はよく処方されるが、その理想的な用量は不明である。
仮説/目的:心疾患の犬で、長期の結果に関しACEIsの用量-反応の相関性が存在する
動物:心疾患のある144頭の犬、現在あるいは過去に鬱血性心不全のある63頭の犬
方法:回顧的医療記録の再調査。2-年生存あるいは最初の鬱血性心不全(CHF)発現からの生存に関係する変数を判定するのに、Cox比例ハザードモデルを使用した。
結果:ACEIの初期投与量の中央値は、0.84(四分位数間領域(IQR)、0.56-0.98)mg/kg/dayで、108/144(75%)の犬は12時間毎の投与を受けていた。腎機能検査結果、血清電解質濃度、血圧において、ACEIの初期処方と最初の再評価(中央値、14日後)の間に、臨床的に関連する変化は発生しなかった。
一変量解析において、より高いACEI用量は、最初のCHF発現からの生存期間延長と関係し(P=0.005)、CHFの犬のサブグループ内のACEI処方時、より高いACEI用量は、2年時の生存性改善と関係した(P=.04)。
多変量解析において、ACEIの12時間毎(ハザード比(HR)、0.30;95%CI、0.10-0.88;P=.03)、受診時1のより高い血清カリウム濃度は2-年生存率を予測するものだった。ACEIsの許容性は良く、8/144(5.6%)の犬だけが、副作用を理由にACEIの減量あるいは中止となった。
結論と臨床的重要性:ACEIsの1日2回投与が心臓保護効果に最適かもしれない。(Sato訳)
■チワワの粘液腫様僧帽弁疾患に伴う腸の合併症
Intestinal Complication With Myxomatous Mitral Valve Diseases in Chihuahuas
Front Vet Sci. 2021 Nov 23;8:777579.
doi: 10.3389/fvets.2021.777579. eCollection 2021.
R Araki , K Iwanaga , Kazunori Ueda , M Isaka
Free PMC article
ヒトにおいて腸に対する心疾患の影響が報告されているが犬ではない。
MMVDを起こしやすい犬種で、診療において高い頻度で遭遇するチワワにおいて、鬱血と組織低潅流を起こす粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の腸に対する影響を調査した。
この研究において、心エコー検査と胸部レントゲン検査を基に4群に69頭のチワワをグループ分けした:19頭は健康なチワワ(H)、50頭はACVIMコンセンサスに従い分類したMMVDのチワワ(ステージB1、B2、C/D)。全ての症例において腸脂肪酸-結合蛋白(I-FABP)とD/L-乳酸濃度、腸粘膜傷害のマーカーを測定した。
I-FABPは他の群よりもステージC/Dのチワワの方が有意に高く(p<0.05)、ステージB2の犬はHの犬よりも有意に高かった(p<0.05)。D-乳酸はHやステージB1の犬と比べ、ステージB2およびC/Dの犬の方が有意に増加した(p<0.05)。L-乳酸は他のどの群よりもステージC/Dの犬で有意に高く(p<0.05)、HやステージB1の犬よりもステージB2の犬が有意に高かった(p<0.05)。
腸粘膜傷害のリスクは、MMVDによる心不全のチワワにおいて有意に高く、そのリスクは心疾患悪化に伴い増加する可能性があることを示唆する。これはMMVDの腸の合併症を調査する最初の研究で、更なる調査が今後必要である。(Sato訳)
■拡張型心筋症による鬱血性心不全のドーベルマン・ピンシャーに対するスピロノラクトンを評価する前向き臨床試験
Prospective clinical trial evaluating spironolactone in Doberman pinschers with congestive heart failure due to dilated cardiomyopathy
J Vet Cardiol. 2021 Jun 25;S1760-2734(21)00077-1.
doi: 10.1016/j.jvc.2021.06.001. Online ahead of print.
A Laskary , S Fonfara , H Chambers , M L O'Sullivan
イントロダクション/目的:拡張型心筋症(DCM)の犬において、アルドステロン拮抗薬のスピロノラクトンが、有益な生存効果を持つかどうかは不明である。この研究の主な目的は、DCMによる鬱血性心不全(CHF)を示すドーベルマン・ピンシャーの生存期間に対し、スピロノラクトンを従来の治療に加えた時の効果を評価することだった。
動物:DCMによるCHFのドーベルマン・ピンシャー67頭
素材と方法:試験計画は、前向き無作為化盲検およびプラセボ対照。無作為に50-75mgのスピロノラクトンを1日2回(n=34)あるいはプラセボ(n=33)を標準的なCHF療法に加えて投与した。フォローアップの受診は、エンドポイントまで1-6週毎を目標とした。QOLのアンケート、身体検査を受診ごとに実施し、腎生化学、ECG、心エコー検査、胸部エックス線検査は必要ならば再評価した。主要なエンドポイントは、心臓死までの期間(CHFによる死亡あるいは安楽死、突然死と定義)だった。
結果:スピロノラクトン群の主要エンドポイントまでの期間の中央値(183日)は、プラセボ群(124日)と統計学的な有意差がなかった(p=0.254)。スピロノラクトン群(n=7)の心房細動(AF)の発症は、プラセボ群(n=15、p=0.037)よりも有意に頻度が少なかった。
結論:スピロノラクトン群の心臓死までの期間の中央値に、プラセボ群と統計学的有意差はなかったが、従来の治療にスピロノラクトンの追加は、AFの発生を減少させた。(Sato訳)
■健康な成犬に26週間トラセミドを毎日投与した時の安全性
Safety of torasemide in healthy adult dogs administered daily for 26 weeks
J Vet Pharmacol Ther. 2021 Nov 17.
doi: 10.1111/jvp.13030. Online ahead of print.
Evelyne Coussanes , Emilie Guillot , Reynald Magnier , Anne Geneteau , Jonathan Elliott
32頭(オス16頭、メス16頭)の健康な若いビーグルを8頭の4群に無作為に振り分けた。コントロール群は無処置とした。
トラセミドを最初の1-5日は0.5mg/kg1日1回経口投与し、その後182日目まで0.25mg/kgで投与した。追加の2群はこの投与法の3倍と5倍で投与した。
処置犬(主に高用量)は、口腔粘膜の乾燥、利尿のエビデンス、食餌消費の低下、最初の3週間かけて体重増加の減少、飲水量の増加、赤血球数、ヘモグロビン、カルシウムおよびマグネシウムの増加、塩素、リン、カリウム、ナトリウムの減少、尿pHの上昇、尿比重の低下、血清アルドステロン濃度の増加を示した。トラセミドの血漿濃度は用量依存的に上昇し、蓄積のエビデンスは示さなかった。心電図パターンや腎臓および副腎の肉眼的および顕微鏡的所見も変化したが、それらの変化はほとんどが主に過剰投与群で確認された。
結論として、トラセミドは26週間1日1回0.25mg/kgで投与した時は安全だと分かり、いずれの変化も既知の利尿効果に一致するものだった。(Sato訳)
■犬の感染性心内膜炎の診断に対し血清心筋トロポニン-I濃度の評価
Evaluation of serum cardiac troponin-I concentrations for diagnosis of infective endocarditis in dogs
J Vet Intern Med. 2021 Aug 10.
doi: 10.1111/jvim.16234. Online ahead of print.
Eoin Kilkenny , Claire Watson , Joanna Dukes-McEwan , Elizabeth F Bode , Melanie J Hezzell , Jessie Rosie Payne , Kieran Borgeat
Free article
背景:犬の感染性心内膜炎(IE)は、重度の疾患と高い症例死亡率と関係するが、非特異的な臨床症状を呈することも多い。
仮説/目的:心筋トロポニン-I(cTnI)の血清濃度は、IEの犬で上昇し、IEの犬と同じ臨床的特徴の他の疾患の犬と鑑別できる。IEの犬において、血清cTnIの濃度は生存期間と負の相関を示す。
動物:72頭の飼育犬;IEの29頭、ステージ-Bの粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の27頭、免疫介在性疾患(IMD)の16頭。
方法:回顧的臨床コホート研究。血清cTnIの濃度を、診断時にすべての犬で測定した。臨床所見と心エコー検査の解釈も記録した。統計学的分析は、Kruskal-Wallis test、pairwise Mann-Whitney U tests、receiver operator characteristic、Cox proportional hazards、を含めた。
結果:cTnIの血清濃度は、IE群(0.69ng/mL(0.03-80.8))の犬が、MMVD(0.05ng/mL(0.02-0.11)、P<.001)およびIMD群(0.05ng/mL(0.03-0.57)、P<.001)よりも有意に高かった。cTnIの増加は、中程度の精度でIEを予測するものだった(曲線下面積0.857(95%CI、0.745-0.968、P<.001)。cTnIのカットオフ値0.625ng/mLは、この研究サンプルにおいて100%特異性(95%CI、90%-100%)と52%感受性(95%CI、33%-70%)があった。IEの犬において、cTnI濃度と生存期間に関係はなかった(ハザード比1.013、95%CI、0.993-1.034、P=.2)。
結論と臨床的重要性:IEの犬の心筋トロポニン-I濃度は、前臨床のMMVDあるいはIMDの犬と比べて有意に高い。適合する臨床症状の犬において、血清cTnI濃度>0.625ng/mLはIEを支持する。(Sato訳)
■拡張型心筋症による頻脈の犬の心機能に対するピモベンダンの急性効果
Acute Effects of Pimobendan on Cardiac Function in Dogs With Tachycardia Induced Dilated Cardiomyopathy: A Randomized, Placebo-Controlled, Crossover Study
Front Vet Sci. 2021 Jul 1;8:646437.
doi: 10.3389/fvets.2021.646437. eCollection 2021.
Kaitlin Abbott-Johnson , Kursten V Pierce , Steve Roof , Carlos L Del Rio , Robert Hamlin
背景:ピモベンダンは、変性性僧帽弁疾患や拡張型心筋症(DCM)を含む心疾患の犬において、有意な生存性の利点を提供する。その陽性変力効果はよく知られているが、複雑な作用があり、生存性の利点に隠れたメカニズムは完全に特徴づけられていない。二次的血行力学的効果は、DCMにおける僧帽弁逆流(MR)を減少させるかもしれず、ピモベンダンのその利点は、心臓の弛緩の改善や心房機能の改善につながるかもしれない。
仮説/目的:この研究は、DCM表現型の犬におけるピモベンダンの急性の心臓効果の調査を目的とした。ピモベンダンは左房(LA)の収縮性を増加させ、僧帽弁逆流を減少させ、拡張機能を改善させて、循環NT-ProBNPレベルをより低くするだろうと仮説を立てた。
動物:DCM表現型で誘発された頻脈のある研究コロニーから7頭のその目的のため繁殖されたビーグルで研究した。
方法:プラセボ対照単盲検クロスオーバーデザインでピモベンダンの効果を研究した。要するに、基礎と投与後3時間目の心エコー検査と採血を7日間あけて実施した。犬には無作為に基礎検査後、プラセボあるいは0.25mg/kgのピモベンダンを経口投与した。観察者には全ての測定が完了するまで、その処置を伏せた。
結果:ピモベンダンを投与した時、プラセボ犬より収縮機能が有意に増加し、MRが減少した。LAサイズ、LA emptying fraction、LA機能指数あるいは僧帽弁A波速度を含む左房測定値に検出可能な差はなかった。心拍数はピモベンダンで有意に低下した。また心拍数を正常化する等容性弛緩時間も減少した。NT-proBNPレベルは高度の変動性があった。
結論:僧帽弁逆流の重症度の改善と変弛緩機能の改善は、ピモベンダンを投与された心疾患の犬に対して報告された生存性の利点によるものかもしれない。ピモベンダンは心エコー検査で評価したLA機能を明らかに改善せず、この薬剤の1回投与でNT-proBNPは有意に変化しなかった。他の画像検査様式でLAの効果をより特徴づけ、MR重症度の全体の改善をより定量化し、DCMの拡張機能に対するピモベンダンの長期使用を評価するための追加研究が必要である。(Sato訳)
■急性心不全の犬と猫における血清電解質の臨床的関連:回顧的研究
Clinical relevance of serum electrolytes in dogs and cats with acute heart failure: A retrospective study
J Vet Intern Med. 2021 Jun 7.
doi: 10.1111/jvim.16187. Online ahead of print.
Marine Roche-Catholy , Iris Van Cappellen , Laurent Locquet , Bart J G Broeckx , Dominique Paepe , Pascale Smets
Free article
背景:鬱血性心不全のヒトにおいて、低塩素血症は強い負の予後因子であるが、急性CHFの小動物における電解質異常の異味は不明である。
目的:急性CHFの小動物の入院時に存在する電解質異常を証明することと、電解質異常と利尿剤の用量、入院期間、生存期間と
の関連を評価する
動物:急性CHFを初めて起こした46頭の犬と34頭の猫
方法:回顧的研究。電解質濃度と利尿剤用量の関係をSpearman rank correlation coefficientsで評価した。入院期間と生存性の相関を、それぞれ単純線状回帰およにCox比例ハザード回帰で評価した。
結果:最も一般に見られた電解質異常は、24%(犬9/46頭、猫10/34頭)で見られた低塩素血症だった。犬だけに、入院時の血清塩素濃度(中央値113mmol/L(97-125))と退院時(中央値5.2mg/kg/日(1.72-9.57);r=-0.59;P< .001)と末期心不全(中央値4.7mg/kg/日(2.02-7.28);r=-0.62;P= .005)のフロセミド用量に有意な負の相関が確認された。全ての電解質濃度に対し、入院期間や生存期間に有意なハザード比は見つからなかった。
結論と臨床的重要性:急性CHFの犬において、血清塩素濃度と利尿剤用量の間に見られた関連は、疾患重症度および治療反応のマーカーとして低塩素血症が役立つ可能性があると示唆される。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患の犬において心エコー検査により算出した肺動脈圧の正確性
Accuracy of echocardiographically estimated pulmonary artery pressure in dogs with myxomatous mitral valve disease
J Vet Cardiol. 2021 Mar 24;35:90-100.
doi: 10.1016/j.jvc.2021.03.003. Online ahead of print.
G Menciotti , J A Abbott , M Aherne , S M Lahmers , M Borgarelli
イントロダクション:肺高血圧の心エコー検査による確認は、粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、悪い結果の独立した指標の1つである。通常収縮期肺動脈圧は、簡易ベルヌーイ式(sPAP_D)により定義されたものとして、三尖弁逆流のドップラーで判定した速度とその関係を基に算出する。実験研究で、その方法は不完全だが、MMVDの犬におけるその正確性は不明だと示唆されている。
動物:心臓のリモデリングと測定可能な三尖弁逆流があるMMVDの犬20頭
方法:血流に誘導した熱希釈モニタリングカテーテルを、右頚静脈に経皮的に設置し、主肺動脈に進めた。肺動脈収縮期圧を記録した(右心カテーテル処置により得られた収縮期肺動脈圧(sPAP_C))。同時に2人目の操作者は同時に、sPAP_Dを算出するため、三尖弁逆流性速度スペクトルを取得した。各操作者には他の方法の結果を知らせなかった。
結果:技術的な難しさで、2頭のカテーテルによるデータの解析ができなかった。よって18頭の対となる測定値を、相関およびBland-Altman解析を通し、sPAP_CとsPAP_Dの比較に使用した。sPAP_CとsPAP_Dの統計学的に有意なバイアス(平均差=0.5mmHg;信頼区間=-6.5mmHg、+7.5mmHg)は見つからなかった。その方法の間の一致の間隔は広かった(-27.3mmHg、+28.2mmHg)。有意な線形関係は2つの方法の間に確認されなかった(r=0.11、p=0.17)。
結論:MMVDと心臓リモデリング(±以前に鬱血性心不全と診断された)の犬において、心エコー検査で算出した肺動脈圧は、sPAP_Cの測定値と一致性が不十分である。それらの犬において、sPAP_Dは、sPAP_Cの値を20mmHg以上、過小あるいは過大評価する可能性があり、ゆえに、sPAP_Dの解釈には注意するべきである。(Sato訳)
■T波peak-end間隔とT波peak-endとQT間隔比:粘液腫性僧帽弁疾患の犬に対する新しい不整脈原性および生存性マーカー
T-wave peak-end interval and ratio of T-wave peak-end and QT intervals: novel arrhythmogenic and survival markers for dogs with myxomatous mitral valve disease
J Vet Cardiol. 2021 Feb 27;35:25-41.
doi: 10.1016/j.jvc.2021.02.004. Online ahead of print.
Beatriz de Carvalho Pato Vila , Aparecido Antonio Camacho , Marlos Gonçalves Sousa
イントロダクション/目的:ここ数年、T波のpeak-end間隔(Tpte)やTpte/QT比のような新しいマーカーが、心室性不整脈や死亡率に対し高い感受性を持つことが示されている。著者らは粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、それらとQT間隔、心拍数に対して補正したQT間隔(QTc)およびQTばらつき(QTd)のような心室性再分極の誰のパラメータを分析した。また、疾患の進行、心エコー検査パラメータ、心室性不整脈とそれらの関連を調査し、臨床症状の発症あるいは最終的な結果として死亡率でそれらの予後的価値を評価した。
動物、素材と方法:疫学、臨床、心エコー検査、心電図のデータをMMVDの犬236頭、健康犬15頭から入手した。MMVD群は予後と生存性の情報も記録した。10誘導心電図記録において全ての心室性再分極指数を測定した。
結果:QT間隔を除いて、ほとんどの再分極マーカーは、不整脈の頻度、MMVDの進行に伴い増加した。心室性不整脈を一番よく確認したパラメータ(AUC>0.7)は、Tpte(aVR、rV2、平均rV2-V10、平均rV2-V4)とTpte/QT(II、aVR、rV2)だった。生存解析において、生存期間中央値において最も差がある統計学的に有意なマーカーは、Tpte(全ての誘導の最大、rV2-V10の最大)、QTc aVR、Tpte rV2だった。
結論:TpteとTpte/QTはMMVDの犬の臨床的リスク層別化に対する良好な非侵襲性マーカーである。
■粘液腫性僧帽弁疾患の犬における左房サイズのエックス線写真による定量
Radiographic quantification of left atrial size in dogs with myxomatous mitral valve disease
J Vet Intern Med. 2021 Feb 26.
doi: 10.1111/jvim.16073. Online ahead of print.
Christopher Lam , Brad J Gavaghan , Fiona E Meyers
Free article
背景:心エコーがない時、粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の犬において、胸部エックス線写真による心拡大の確認は、疾患重症度の分類に対して、なくてはならない基準である。
目的:修正胸骨左房サイズ(M-VLAS)は、二次元で左房(LA)の客観的エックス線評価を容易にし、既存の方法よりもLA拡大をより正確に確認する
動物:種々のステージのMMVDの犬64頭とコントロールの健康犬6頭
方法:回顧的症例対照研究。種々の重症度のMMVDの犬に対し医療記録を検索した。修正した胸骨左房サイズ、胸骨左房サイズ(VLAS)、胸骨心臓サイズ(VHS)、エックス線上左房径(RLAD)を胸部エックス線写真から測定し、心エコー検査による測定値と比較した。
結果:LA/Aoに対する正の相関は、M-VLAS(r=0.77、P<.001)、VLAS(r=0.76、P<.001)、RLAD(r=0.75、P<.001)、VHS(r=0.67、P<.001)で確認された。LA/Ao≧1.6の犬の確認において、受信者操作特性解析は、M-VLASに対し曲線下面積が0.97(95%CI、0.94-1.00)で、VHS(0.90、95%CI、0.94-1.00、P=.03)よりも優れていた。M-VLASを用い、≧3.4胸骨のカットオフ値は、LA拡大の予測において92.7%の感受性と93.1%の特異性だった。
結論と臨床的重要性:M-VLASは、VHSよりも優れており、MMVDの犬のエックス線写真による左房拡大の確認を行うにおいて、正確で再現性のある方法を提供する。(Sato訳)
■犬の拡張型心筋症の回顧的研究
Retrospective study of dilated cardiomyopathy in dogs
J Vet Intern Med. 2020 Dec 21.
doi: 10.1111/jvim.15972. Online ahead of print.
Kimberly J Freid , Lisa M Freeman , John E Rush , Suzanne M Cunningham , Megan S Davis , Emily T Karlin , Vicky K Yang
Free article
背景:アメリカ食品医薬品局は、犬と猫における潜在的に食餌が関係する拡張型心筋症(DCM)を調査している。
目的:シグナルメント、食餌情報、心エコー検査の変化、生存性についてDCM症例を回顧的に再調査する
動物:飼育犬(n=71)
方法:2014年1月1日から2018年9月30日までにDCMと診断された犬の医療記録を調査した。犬は“伝統的”あるいは“非伝統的”餌カテゴリーにグループ分けし、餌かどうかは診断後に変更した。
結果:非伝統的な餌を食べていた犬に対し、それらの餌を変更した犬は餌を変更しなかった犬と比べ、より大きい割合の犬が正常な収縮期左室内径(P=0.03)および左房:大動脈比(P<0.001)に低下した。非伝統的な餌を食べ、餌を変更しなかったDCMの犬(生存期間中央値、215日;範囲、1-852日)と比べ、餌を変更したDCMの犬(生存期間中央値、337日;範囲、9-1307日)の生存期間は有意に延長した(P=0.002)。
結論と臨床的重要性:非伝統的な餌を食べているDCMの犬は、餌の変更後に心臓機能の改善を経験する可能性があるが、餌とDCMの潜在的関係を調査する必要がある。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患による二次的肺高血圧の犬の治療においてシルデナフィルの短期効果
Short-term effects of sildenafil in the treatment of dogs with pulmonary hypertension secondary to degenerative mitral valve disease
Vet World. 2020 Oct;13(10):2260-2268.
doi: 10.14202/vetworld.2020.2260-2268. Epub 2020 Oct 29.
Karun Saetang , Sirilak Disatian Surachetpong
背景と目的:肺高血圧(PH)は、変性性僧帽弁疾患(DMVD)の一般的な合併症の1つである。ホスホジエステラーゼ-5阻害剤であるシルデナフィルは、選択的に肺血管を拡張させることで、肺動脈圧を低下させる効果がある。この研究の目的は、DMVDにより引き起こされるPHの犬において、従来の治療とシルデナフィルを組み合わせた時の効果を評価した。
素材と方法:従来の治療でステージCのDMVDによる二次的なPHと診断された14頭の犬を、無作為にプラセボ(n=7)とシルデナフィル(n=7)群に振り分けた。0日目、登録した犬は基準として身体検査、臨床スコア査定、心電図検査、収縮期血圧測定、採血、胸部エックス線検査、心エコー検査を実施した。それから犬には従来の治療と与わせてシルデナフィルあるいはプラセボを8時間毎に1週間投与した。7日目、全ての犬は、基準の評価を再び実施した。
結果:0から7日目には、シルデナフィル群は推定収縮期肺動脈圧(sPAP)の有意な低下を経験した(P=0.043)。さらに、プラセボ群と比べ、シルデナフィルで治療した犬の総臨床スコアは低下した(P=0.007);しかし、シルデナフィルの治療前後で、肺スコアに違いはなかった。
結論:DMVDによる二次的なPHの犬において、シルデナフィルは推定sPAP と臨床スコア低減に、従来の治療と相乗効果があった。(Sato訳)
■犬の心嚢水の管理における心膜カテーテル設置と針心膜穿刺の前向き評価
Prospective evaluation of pericardial catheter placement versus needle pericardiocentesis in the management of canine pericardial effusion
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Dec 4.
doi: 10.1111/vec.13030. Online ahead of print.
Simon Cook , Stefano Cortellini , Karen Humm
目的:心嚢水(PE)のある犬における心膜カテーテルと針心膜穿刺の安全性と効果を比較する
デザイン:前向き無作為化臨床試験
場所:大学教育病院
動物:2017年1月から2019年8月までに心膜穿刺を必要とする飼育犬30頭
介入:心膜カテーテル留置によるPEドレナージに続き、4-6時間毎に選択的ドレナージを行う(カテーテル群)、あるいは必要な時に針心膜穿刺を繰り返す(針群)処置を無作為に行った。
測定値と主要結果:15頭をカテーテル群、15頭を針群に振り分けた。シグナルメント、浸出の原因、心膜穿刺前、中、後の不整脈の発生、処置の長さ、反復ドレナージの詳細に関するデータを集めた。心膜カテーテル設置(17.7分(±11.8))と針心膜穿刺(12.1分(±8.6))の平均処置時間(P=0.192)、あるいはカテーテル(36%)と針群(64%)の新規不整脈の割合(P=0.24)に有意差はなかった。心膜カテーテルは本来の位置に21時間(範囲、14-85)の中央値で保たれた。針群の15頭中3頭(20%)は最初の心膜穿刺から24時間以内に心膜穿刺を繰り返す必要があった。4症例の心膜カテーテルは、大量のPEドレナージの反復を可能にした(中央値、10.6mL/kg;範囲、8.5-10.6)。
結論:心膜カテーテルは、針心膜穿刺に代わる安全な方法と思われる。設置には最小の鎮静が必要で、素早く設置できる。それら留置の性質や使用は、針心膜穿刺と比較しても不整脈の割合が高くなることはなく、臨床的に重要なPE再発事象において有利かもしれない。(Sato訳)
■16頭の犬の心室性不整脈に対する硫酸マグネシウムの静脈内投与の効果の予備評価
Preliminary evaluation of the efficacy of intravenous magnesium sulfate for the treatment of ventricular arrhythmias in 16 dogs
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Oct 10.
doi: 10.1111/vec.13004. Online ahead of print.
Amber B Schoeller , Elke Rudloff , Cheryl L Waldner , Tyler C Klose , Andrew K Linklater
目的:犬の心室異所性拍動の数の減少あるいは、心室頻脈から洞リズムへの変換にたいする硫酸マグネシウムIVの効果を評価する
デザイン:前向き観察実行可能性調査
場所:個人二次センター
動物:以下の1つ以上を呈する16頭の飼育犬:(1)持続性あるいは発作性心室性頻脈(心拍>180/分)、(2)単形あるいは多形心室波形>60異所性/分
介入:処置前(T1)血中クレアチニンおよび電解質濃度を測定した。60秒II誘導ECGストリップと収縮期動脈血圧(SABP)を記録した。硫酸マグネシウム0.1mmol/kg(0.2mEq/kg)を5分かけてIV投与した。硫酸マグネシウム投与完了後5分(T2)、電解質濃度を再び測定した。60秒II誘導ECGストリップとSABPを記録した。T1およびT2ECG記録中の60秒に発生する異所性心室および上室性拍動(洞拍動)の数を比較した。T1およびT2電解質およびSABPも比較した。
結果:T2時にはマグネシウムイオン濃度が上昇し、心拍数と心室性異所性拍動の数が減少し、上室性拍動の数が増加した。T2時に2頭は洞リズムに変換したが持続しなかった。
結論:心室異所性拍動の犬に対する硫酸マグネシウム0.1mmol/kg(0.2mEq/kg)の静脈投与は、心室拍動や心拍数を低下させた。しかし、調べた用量で、心室性頻脈性不整脈の犬に対し第一選択治療として、硫酸マグネシウムの使用に関する特別な結論を出すことはできない。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患と鬱血性心不全を新規に発現した犬の経口トラセミドの効果
Efficacy of oral torasemide in dogs with degenerative mitral valve disease and new onset congestive heart failure: The CARPODIEM study
J Vet Intern Med. 2020 Aug 7.
doi: 10.1111/jvim.15864. Online ahead of print.
Beatrice Besche , Thomas Blondel , Emilie Guillot , Catherine Garelli-Paar , Mark A Oyama
背景:トラセミドは犬の鬱血性心不全(CHF)を治療する可能性のある強力なループ利尿剤である。
目的:変性性僧帽弁疾患(DMVD)によりCHFが初めて起こった犬において、フロセミドと比較したトラセミドの効果と安全性を評価する
動物:DMVDにより初めてCHFが起きた319頭の犬
方法:標準のCHF治療に加え、トラセミドvsフロセミドPOの二重盲検無作為化非劣性研究。第1の効果の基準は、肺水腫と発咳の減少、14日目の呼吸困難あるいは運動耐性の悪化が見られないことだった。2つ目のエンドポイントは、84日目の臨床反応、死亡あるいは安楽死までの時間、心臓の理由による早期研究中止が含まれた。
結果:トラセミド24時間毎(n=161)は、フロセミド12時間毎(n=158)に非劣性だった;14日目の第1の効果基準に合致した犬の比率はグループ間で同様だった(トラセミド、74.4%(95%CI、66.8%-81.0%)vsフロセミド、73.5%(95%CI、65.7%-80.4%);リスク比(RR)、1.01;95%CI、0.89-1.15;P=0.87)。84日目の効果は同様の結果を示した(RR、1.05;95%CI、0.88-1.25;P=0.6)。研究中のどの時期においてもフロセミドを投与された犬と比べ、トラセミドを投与した犬はエンドポイントまでの期間がより長く、死亡、安楽死、早期研究中止となる確率が半数以下だった(ハザード比、0.36;95%CI、0.19-0.65;P=0.001)。
結論と臨床的重要性:DMVDにより初めてCHFの発現に対し、トラセミドは第一選択PO治療としてフロセミドに劣っていなかった。フロセミドに比べ、トラセミドは心臓関連死、あるいは早期研究中止のリスクを有意に低下させた。(Sato訳)
■プレドニゾロンの長期投与:健康なビーグル犬の心筋組織に対する影響
Long-term administration of prednisolone: effects on the myocardial tissue of healthy beagle dogs
J Vet Med Sci. 2020 Dec 2.
doi: 10.1292/jvms.20-0401. Online ahead of print.
Sachiyo Tanaka , Hitomi Shibuya , Shuji Suzuki , Nobuo Kanno , Yasuji Harada , Asaka Sato , Satoshi Soeta , Yasushi Hara
この研究ン目的は、犬の心筋に対する長期高グルココルチコイド血症の構造的および機能的影響を調査することと、それらパラメーターと病理組織変化を比較することだった。
12頭の健康なオスのビーグル犬を登録し、高用量プレドニゾロン群(P;n=6)とコントロール群(C;n=6)に振り分けた。P群にはプレドニゾロン2mg/kgBIDを84日間投与した。臨床パラメーターは、全身性コルチコステロイド投与開始前、開始後7、28、56、84日目に測定した心エコー検査と非侵襲性収縮期血圧(SBP)を用いて測定した。組織学評価については、P群(薬剤投与期間終了時)とC群(無関係の理由で安楽死が予定されている日)の犬から心血管組織を採取した。
P群において、左室自由壁(LVFW)と心室中隔(IVS)の肥厚、左室(LV)拡張機能の低下、SBP上昇を含む臨床変化が投与開始後に観察された。組織学的評価中、P群にLVFWとIVSの線維症が観察された。さらに、C群と比べP群のグルココルチコイドレセプター(GCR)レベルの減少がLVFW、右室自由壁(RVFW)、IVSで観察され、ミネラルコルチコイドレセプター(MCR)レベルの増加がLVFWとRVFWで観察された。
結論として、副腎皮質機能亢進症の犬において、線維症がLV構造および機能的異常を引き起こすかもしれない。さらにGCR下方制御と上方制御されたMCRが心筋線維症に影響するかもしれない。(Sato訳)
■臨床的に健康なケアンテリアの子犬における推定的に無害性心雑音が自然消失する年齢
Age when presumptive innocent cardiac murmurs spontaneously disappear in clinically healthy Cairn terrier puppies.
Vet J. June 2019;248(0):25-27.
DOI: 10.1016/j.tvjl.2019.04.002
M D B van Staveren , V Szatmári
ケアンテリアの子犬で、最初の健康チェック中に無害性心雑音はよく見られる所見である。それらの雑音が自然に消失する年齢は報告されていない。
この研究の目的は、臨床的に健康なケアンテリアの子犬の一集団において、推定無害性心雑音が消失する年齢を確かめることだった。
9か月かけて、227頭の臨床的に健康なケアンテリアの子犬(年齢中央値、53日;範囲、45-76日)に獣医心臓専門医が聴診を行い、82頭に推定無害性心雑音を確認した。20頭の子犬のオーナーは、連続検査のために病院に来てもらった。3頭のオーナーは病院に1回しか来ず、ゆえにそれらの子犬は検閲した。それゆえに、この長期観察研究は、雑音が消失するまで、毎月心臓の聴診を行った17頭の子犬を経過観察した。
最後の雑音が聴取できた20頭の子犬の年齢中央値は65日(範囲52-285日)だった。雑音が聞き取れなくなった時の17頭の年齢中央値は87日(範囲71-347日;95%CI、63-111日)だった。17頭中4頭は3ヶ月齢で雑音があり、そのうち2頭は6ヶ月齢以上雑音があった。雑音が聴取できたもっとも年齢の高い子犬は9.5ヶ月齢だった;この雑音は11.5ヶ月齢には聞こえなくなった。
この集団のほとんどのケアンテリアの子犬において、推定無害性雑音は3ヶ月齢までの自然に解消した。(Sato訳)
■鬱血性心不全の猫におけるトラセミドの許容性:21症例の回顧的研究(2016-2019)
Tolerance of torasemide in cats with congestive heart failure: a retrospective study on 21 cases (2016-2019)
BMC Vet Res. 2020 Sep 16;16(1):339.
doi: 10.1186/s12917-020-02554-6.
Camille Poissonnier , Sarra Ghazal , Peggy Passavin , Maria-Paz Alvarado , Solène Lefort , Emilie Trehiou-Sechi , Vittorio Saponaro , Alix Barbarino , Julia Delle Cave , Charlie-Rose Marchal , Boris Depré , Etienne Vannucci , Renaud Tissier , Patrick Verwaerde , Valérie Chetboul
背景:鬱血性心不全(CHF)の犬において、ループ利尿剤のトラセミドの効果は証明されている。しかし、犬やヒトと違い、自然発生のCHFの猫において、トラセミドの使用についてあまり述べられていない。ゆえに、この回顧的研究の目的は、自然発生のCHFの猫における経口トラセミドの治療的使用を述べること、この猫集団の標準薬物療法に加え、トラセミドの治療に続く臨床経過の研究中、その潜在的副作用を述べることだった。
結果:トラセミドの投与を受けたCHFの飼育猫21頭(年齢中央値=10.6歳(四分位数間領域(IQR)=6.5-11.2))の医療記録を再調査した。トラセミドの用量、他の併用薬剤、身体検査の特徴、心エコー検査のデータ、フォローアップ中の潜在的副作用を含むデータを集めた。診断から心臓による死亡までの期間を算出するために生存分析を実施した。
CHFに関連する呼吸困難は全ての猫(胸水(8/21)、肺水腫(5/21)、両方(8/21))で認め、関連した腹水は4/21頭で確認した。全ての猫でCHFの原因を心エコー検査で判定した:肥大(n=10)、拘束性(n=6)、不整脈原性右室(n=3)、拡張(n=1)心筋症、大動脈弁異常(n=1)。
開始時のトラセミドの用量中央値は0.21mg/kg(IQR=0.17-0.23)、24時間毎だった。ほとんどの猫(20/21)の臨床症状は最初の2週間で、顕著な副作用も見られず減少した。トラセミド処方後の生存期間中央値は182日(IQR=46-330)だった。
単独のループ利尿薬治療としてフロセミドの投与を受けたCHFの猫54頭を含む同時期にコントロール群とこの研究群を比較した。コントロール群の猫の生存期間中央値(IQR)、すなわち148日(9-364)はトラセミド群の其れと有意差がなかった(P=0.962)が、CHFを再発した猫はコントロール群(19%)よりもトラセミド群(52%)で有意に多かった。
結論:このケースシリーズは、自然発生のCHFの猫においてトラセミドが使用できることを証明する。この治療的興味は、前向き臨床試験で確認する必要がある。(Sato訳)
■健康犬のレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対するトラセミドとフロセミドの影響の比較
Comparison between the effects of torsemide and furosemide on the renin-angiotensin-aldosterone system of normal dogs.
J Vet Cardiol. 2019 Nov 14;26:51-62. doi: 10.1016/j.jvc.2019.11.003. [Epub ahead of print]
Potter BM, Ames MK, Hess A, Poglitsch M.
イントロダクション/目的:著者らは約等力の用量(同じような利尿)のトラセミドおよびフロセミドは、循環レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対し、同等の影響を持つだろうと仮説を立てた。
動物、材料と方法:6頭の健康な中年齢のオスのビーグルに無作為にトラセミド(0.1mg/kg PO q12h)、フロセミド(2.0mg/kg PO q12)、あるいはプラセボを10日間、ウォッシュアウト期間を10日間設け、クロスオーバーデザインで3期間投与した。血液採取は1,5,9日に行い、24時間尿採取は2,6,10日目に終了した。反復測定値解析とボンフェローニ補正後、p<0.05で調節した変数を調査し、さらにTukey’s法も用いた。
結果:24時間尿産生は10日目の利尿のみ有意に異なり、トラセミドはフロセミドよりも38%多く利尿を起こした。しかし、平均3-日利尿で有意差はなかった。24時間のナトリウム、塩素、カリウムの尿中排泄に利尿薬間の有意差はなかったが、フロセミドはトラセミドよりもカリウム利尿が少なかった。5/6および9/10日目において、プラセボと比較した時、利尿群の血清レニン、アンギオテンシンII、アルドステロンと尿中アルドステロン-クレアチニン比は有意に増加した。利尿薬間でそれらの値に有意差はなかった。利尿薬群においてクレアチニン、血中尿素窒素濃度は比較できるほど上昇したが、全ての犬は参照範囲内を維持した。
結論:約等力の用量(20:1)で、トラセミドとフロセミドは同等のレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系活性化を起こした。フロセミドに似たトラセミドのカリウム排泄プロフィールは、仮説を立てたミネラルコルチコイド-レセプターブロック能力への支持を低くする。(Sato訳)
■1匹の小型のトイプードルにおける心房中隔欠損閉鎖
Atrial Septal Defect Closure in a Midget Toy Poodle
Open Vet J. 2020 Apr;10(1):11-15.
doi: 10.4314/ovj.v10i1.3. Epub 2020 Jan 20.
Keisuke Sugimoto , Yohei Mochizuki , Teppei Kanda , Akihiro Ohnishi , Masahiro Miyabe , Yuko Wada , Masaki Kochi , Takuma Aoki
背景:超小型犬の心房中隔欠損(ASD)は珍しい先天性心疾患で、ASD治療に関する報告はない。
症例記述:体重1.4kg、7ヶ月齢のメスのトイプードルが心拡大を呈した。心エコー検査で二次孔型ASD、右室右房拡大、肺高血圧を認めた。ASDを通る血流は、左右シャントだった。カテーテル法と開胸術を組み合わせたハイブリッドアプローチでASD閉鎖を行った。治療から10か月、心拡大と肺高血圧は改善した。
結論:超小型犬種でも、ASDはハイブリッドアプローチで治療可能である。(Sato訳)
■犬の心嚢液の管理における心膜カテーテル設置の回顧的研究(2007-2015):18症例
Retrospective evaluation of pericardial catheter placement in the management of pericardial effusion in dogs (2007-2015):18 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Jun 22. doi: 10.1111/vec.12862. [Epub ahead of print]
Cook S, Cortellini S, Humm K.
目的:心嚢液(PE)のある犬における心膜カテーテルの使用と関連有害事象の詳細を述べる
デザイン:回顧的研究
場所:獣医教育病院
動物:2007年5月から2015年1月の間に心膜液ドレナージに対し、心膜カテーテル設置を行った飼育犬18頭
介入:なし
測定値と主要結果:全ての心膜カテーテル設置は来院5時間以内に行い、通常は1時間以内(中央値72.5分、範囲45-300分)に行った。18頭中10頭はブトルファノールで鎮静をかけ、4頭はミダゾラムを追加した。4頭は心膜カテーテルで1つのドレナージのみを設置し、即座に除去した。他14頭の心膜カテーテルはその場に中央値18時間(範囲2-88時間)維持した。その14頭中10頭は心膜カテーテル設置後再ドレーンした。報告された主要な有害事象は、18頭中6頭の新規不整脈で、その6頭中4頭は抗不整脈の治療を行った。感染や機能性合併症の報告はなかった。10頭は退院し、1頭は死亡し、7頭は安楽死された。
結論:セルディンガー変法で、心膜腔への胸腔ドレナージカテーテル刺入は、犬のPEsの管理の補助として設置できる。主に、関連する有害事象は不整脈である。設置には最小の鎮静が必要で、処置後の鎮痛は必要としない傾向がある。ドレナージの繰り返しにカテーテルをその場に維持可能で、スタッフが必要な時間、鎮静の繰り返しを低減できる可能性がある。22%で治療が必要な不整脈に関係し、対照的に心膜穿刺単独では13%である。これは、多くの施設で入手可能な器材を使用して簡単に設置できる。(Sato訳)
■食餌介入は早期臨床発現前の粘液腫性僧帽弁疾患の犬の左房拡大を減らす:36頭の犬の盲検無作為化対照研究
Dietary intervention reduces left atrial enlargement in dogs with early preclinical myxomatous mitral valve disease: a blinded randomized controlled study in 36 dogs.
BMC Vet Res. 2019 Nov 27;15(1):425. doi: 10.1186/s12917-019-2169-1.
Li Q, Heaney A, Langenfeld-McCoy N, Boler BV, Laflamme DP.
背景:粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)は、犬でよく自然に発生する心疾患で、エネルギー代謝、酸化ストレス、炎症における変化に関係する。エネルギー不足は心不全発症の原因となる役割を演ずる。
この研究では、エネルギー源の代わりとして中鎖トリグリセリド、炎症を減らすための魚油、抗酸化剤、心臓の健常性と機能に重要な他のカギとなる栄養を含む栄養の心臓保護ブレンド(CPB)は、MMVDの進行を緩やかにする、あるいは防ぐことができるかどうかを判定した。
19頭のMMVDの早期ステージの犬と、犬種-、年齢-、性別がマッチした17頭の健康な犬を6か月の盲検、プラセボ対照研究に登録した。各群の犬はコントロール食(CON)かCPB添加食に無作為に振り分けた。心エコー検査は基準時、3か月目、6か月目に実施した。
結果:健康犬に変化は見られなかった。MMVD-CON群の犬は、6か月時に左房径(LAD)と左房大動脈比(LA/Ao)が基準より平均10%増加したが、MMVD-CPB群の犬は3%の減少を示し、有意な時間と餌の相互作用を起こした(それぞれP=0.037、P=0.005)。より多くのMMVD-CONの犬は研究中にステージB1からB2に進行した。MMVD-CPB群の犬はLADの6か月変化と血圧の間に正の相関がみられた(収縮:P=0.050、拡張:P=0.035)が、MMVD-CON群の犬には見られなかった。
結論:この結果は、早期MMVDの犬において、LAサイズと僧帽弁逆流の減少と進行を緩やかにする、あるいは進行の防止にCPBを基にした食餌介入の効果を証明した。(Sato訳)
■僧帽弁逆流の重症度と左室収縮期径は若いキャバリアキングチャールズスパニエルの生存を予測する
Mitral Regurgitation Severity and Left Ventricular Systolic Dimension Predict Survival in Young Cavalier King Charles Spaniels.
J Vet Intern Med. July 2017;31(4):1008-1016.
M J Reimann , J E Møller , J Haggstrom , T Martinussen , S S C Zatrazemi , L Svanholm , L B M Nielsen , H D Pedersen , L H Olsen
背景:犬の粘液腫性僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease:MMVD)の発症と進行は予測が難しい。将来悪い結果のリスクが高い犬の若齢での確認が望ましい。
仮説/目的:キャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)において、長期心臓および総死亡率の予測に対し、若年で得られたMMVDに関係する選択した臨床および心エコー検査特徴の的中率を研究する
動物:個人飼育のCKCS1125頭
方法:1-3歳で検査したCKCSを含む回顧的研究。長期結果は、オーナーに電話聞き取りで評価した。死亡予測に対する変数の値をCox proportional hazardとKaplan-Meier analysesで調査した。
結果:カラードップラー心エコー検査で、中程度から重度の僧帽弁逆流(mitral regurgitation:MR)の存在(ハザード比(HR)=3.03、95%信頼区間(95%CI)=1.48-6.23、P=0.0025)は、間欠的な中程度から重度MRの存在(HR=2.23、95%CI=1.48-6.23、P=0.039)でも心臓死のハザードの有意な増加に関係した。MRと性別の有意な相互作用がそう死亡率にあり(P=0.035)、オスと中程度から重度MRはMRがないオスと比べて高い総死亡率が示されたが、メスのMR群の間には違いは見られなかった。体重で標準化した左室収縮期末内径(LVIDSN)が増加すると、心臓の死亡率(HR=1.37、95%CI=1.14-1.63、P<0.001)と総死亡率(HR=1.13、95%CI=1.02-1.24、P=0.016)のリスクは増加した。
結論と臨床意義:CKCSにおいて間欠的だったとしても中程度から重度MRと、3歳未満の犬のLVIDSN増加は晩年の心臓死に関係した。(Sato訳)
■粘液腫性僧帽弁疾患の他の犬種と比較したキャバリアキングチャールズスパニエルの肺高血圧の有病率
The prevalence of pulmonary hypertension in Cavalier King Charles spaniels compared with other breeds with myxomatous mitral valve disease.
J Vet Cardiol. 2019 Jun;23:21-31. doi: 10.1016/j.jvc.2019.01.002. Epub 2019 Feb 23.
Sudunagunta S, Green D, Christley R, Dukes-McEwan J.
イントロダクション:肺高血圧(PH)は、粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の一般的な結果である。キャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)はMMVDに頻繁に罹患し、他の犬と比べ異なる疾患の進行を取ると思われる。この研究の目的は、CKCSが他の犬種と比べ、MMVDの結果としてPHを発症する確率が高いかどうかを判定することである。2番目の目的は、犬種あるいはPHが生存性に影響するかどうかを探求することである。
動物:MMVDと診断された94頭のCKCSと93頭の非CKCSの犬を研究に含めた。
方法:これはMMVDの犬の回顧的再調査である。PH、うっ血性心不全の有無、僧帽弁E波速度(E vel)と等容弛緩時間の比(E/IVRT)を含む心エコー検査変数に対するデータを分析し、CKCS/非CKCSとPHがある犬/PHがない犬で比較した。生存分析も実施した。
結果:American College of Veterinary Internal Medicine (ACVIM)ステージ(P<0.001)、CKCS(P=0.005)、左房大動脈比(LA/Ao)(p<0.001)、E vel(P<0.001)、log10(E/IVRT)(p<0.001)は、PH発症に対する一変量レベルで有意だった。多変量レベルで、唯一ACVIMステージが有意を維持し(P=0.044)、この研究でMMVD悪化がPH発症の優勢な決定因子だと示唆される。
肺高血圧はCHF(P<0.001)と死亡(心臓性(P<0.001)と総死亡率(P=0.011)両方)の確率増加に関係した。CKCSは非CKCSの犬よりも心臓性死亡を経験する確率が高かった(P=0.004)。
結論:この研究で、PHの発症はACVIMステージに基づくMMVD悪化に関係した。(Sato訳)
■原発性無症候性肥大性心筋症の猫における携帯型心電計記録
Ambulatory electrocardiogram recordings in cats with primary asymptomatic hypertrophic cardiomyopathy.
J Feline Med Surg. February 2017;19(2):158-164.
Sofia Hanas , Anna Tidholm , Bodil S Holst
目的:この研究の目的は、無症候性肥大性心筋症(hypertrophic cardiomyopathy:HCM)の鎮静をかけていない猫で、24h携帯型心電図(electrocardiogram:ECG)(ホルター)を使って家庭環境での心拍数、リズム、心室性期外収縮(ventricular premature complexes:VPCs)と心房性期外収縮(atrial premature complexes:APCs)を測定することと、それらをコントロール猫と比較する。
方法:15頭の個人で飼育している無症候性HCMの猫を研究した。我々のグループが過去の発表した23頭の健康な猫のデータをコントロールとして使用した。臨床検査、血圧測定、心電図検査、ホルター記録、生化学検査を全ての猫で実施した。ホルター記録は家庭環境で入手した。
結果:良質な三極ECGsをHCMの15頭から入手した。HCMの猫15頭の心拍数中央値は145(四分位数間領域(IQR)137-184)回/分だった。HCMの全ての猫は正常洞調律を呈した;60%の猫は間欠性洞不整脈が見られた。VPCsの数の中央値は3(IQR1-17)だった。3頭の猫はAPCsがあり、3頭の猫は補充収縮と間欠性洞不整脈が両方見られた。
結論と関連:HCMの無症候性の猫は、家庭環境の24h携帯型ECGでVPCsとAPCsがほとんどなかった。HCMの猫の60%で間欠性洞不整脈が観察された。この研究は、無症候性HCMの猫において心拍数とVPCsとAPCsの数が、健康なコントロール猫で見られたものと同様であることを示す。(Sato訳)
■健康な猫でのアラセプリルの薬物動態
Pharmacodynamics of alacepril in healthy cats.
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):706-709.
Keisuke Sugimoto , Yoko Fujii , Izumi Takubo , Toshinori Shiga , Hiroshi Sunahara , Takuma Aoki , Kensuke Orito
目的:この研究の目的は猫でのアラセプリルの薬物動態を調べることと、最適な臨床使用量を決定することだった。
方法:6頭の実験猫を使用した。各猫にアラセプリルを1mg/kg、2mg/kg、3mg/kgで1回経口投与した。投与前、投与後2、4、6、8、12、24、36、48、72時間目に採血し、血清アンギオテンシン変換酵素(ACE)活性を測定した。同タイムポイントの収縮期血圧も測定した。
結果:ACE活性の用量依存性の抑制が観察された。アラセプリルの2mg/kg、3mg/kgの用量は、ACE活性を効果的に抑制すると考えられた。どのタイムポイントでもグループ間の収縮期血圧に有意差は見られなかった。
結論と関連:アラセプリル2-3mg/kg24時間毎が猫の臨床使用に対し最適な投与量と思われる。(Sato訳)
■急性左側うっ血性心不全の犬猫100頭におけるフロセミドの断続的静脈ボーラス投与と持続点滴投与
Constant rate infusion vs. intermittent bolus administration of IV furosemide in 100 pets with acute left-sided congestive heart failure: A retrospective study.
Vet J. 2018 Aug;238:70-75. doi: 10.1016/j.tvjl.2018.07.001. Epub 2018 Jul 29.
Ohad DG, Segev Y, Kelmer E, Aroch I, Bdolah-Abram T, Segev G, Klainbart S.
この研究の目的は、急性左側うっ血性心不全(left-sided congestive heart failure:L-CHF)の犬と猫においてフロセミドの断続的静脈ボーラス(intravenous bolus:IVB)投与に持続点滴(constant rate infusion:CRI)投与を追加することで医療結果を改善するかどうかを調べる。
L-CHFで入院した合計76頭の飼育犬と24頭の飼育猫を、IVB群(犬43頭と猫16頭)とCRI群(犬33頭と猫8頭)に回顧的に分類した。
犬のCRI群において使用したフロセミド用量(中央値0.99mg/kg/h;範囲0.025-3.73mg/kg/h)の中央値は、IVB群で使用した用量(中央値1.19mg/kg/h;範囲0.027-7.14mg/kg/h;P=0.008)よりも低かった。治療前の値と比較してIVB群(P=0.005)とCRI群(P=0.039)の呼吸数はより低かった。
全体の短期死亡率は15%だった。CRI群と比較し、IVB群は長期の入院傾向が見られた(P=0.07)。IVB群に比べ、CRI群のクレアチニンと総血漿タンパク濃度はより上昇し、脱水と高窒素血症のリスクがより高いことを示唆した。CRIとIVBには安全なプロフィールの違いがあるかもしれず、大きなサンプルを用いた前向き研究の根拠となる。(Sato訳)
■洞不全症候群の1頭の犬におけるシロスタゾールの長期効果
Long term effects of cilostazol in a dog with sick sinus syndrome.
Language: English
J Vet Med Sci. June 2017;79(6):1031-1034.
Nobuyuki Kanno , Tomohiro Suzuki
洞不全症候群(sick sinus syndrome:SSS)は失神を誘発する可能性のある徐脈性不整脈の1つのタイプである。シロスタゾールはヒトのSSSや他の徐脈性不整脈の患者に対し有効な治療と報告されている。この報告は、1頭のSSSの犬においてシロスタゾールによる長期治療の成功例を紹介する。
9歳オスのミニチュアシュナウザーが失神と不安定な歩様の病歴を呈してきた。シロスタゾール投与後、総心拍数(HR)、平均HR、心室性期外収縮(PVCs)の頻度が増加し、最大HRおよび最大休止時間は減少した。また、失神の回数は減少した。
シロスタゾール投与開始から1418日目に突然死亡した。シロスタゾールはSSSの犬の有効な治療薬かもしれない。(Sato訳)
■犬の血清アンギオテンシン変換酵素活性に対するベナゼプリルとピモベンダンの効果
Effect of benazepril and pimobendan on serum angiotensin-converting enzyme activity in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. 2018 Feb 2. doi: 10.1111/jvp.12475. [Epub ahead of print]
King JN, Christinaz C, Strehlau G, Hornfeld J.
犬へのベナゼプリルとピモベンダンの併用を支持するため、この研究の目的は血清アンギオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme:ACE)活性に対するベナゼプリルとピモベンダンの効果を評価することだった。
合計48頭の健康なビーグル犬を並行デザイン試験で4つの群(12頭ずつ)に無作為に振り分けた:A(コントロール、プラセボ1日2回(BID));B(0.5-1.0mg/kgベナゼプリルを朝に1回(SID)、夜はプラセボ);C(0.25-0.5mg/kgベナゼプリルBID);D(0.25-0.5mg/kgベナゼプリルBIDと0.125-0.25mg/kgピモベンダンBID)。試験品は15日間経口投与した。血清ACE活性を1日目と15日目に測定した。
1日目と15日目、基礎値やコントロール群と比較してB、C、D群の平均血清ACE活性は有意に低かった。B、C、D群の平均ACE活性に有意差は見られなかった。B群へのC群の非劣性が証明された。
結論として、0.25-0.5mg/kgベナゼプリルBIDは、0.5-1.0mg/kgベナゼプリルSIDと比較して血清ACE活性の非劣性の阻害を示した。ピモベンダンは血清ACE活性に対するベナゼプリルの作用に有意な影響を及ぼさなかった。この結果は、犬のベナゼプリルBIDとピモベンダンの併用を支持する。(Sato訳)
■心嚢液のある犬における嘔吐の有病率
Prevalence of vomiting in dogs with pericardial effusion.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. March 2017;27(2):250-252.
Rachel Fahey , Elizabeth Rozanski , April Paul , John E Rush
背景:心嚢液(pericardial effusion:PE)は犬で一般的である。臨床症状は心タンポナーデと関連心血管代償不全発症まであいまいなものかもしれない。いくらかの症例では嘔吐が過去に確認されているが、PEの犬の嘔吐の実際の有病率は不明である。
この研究の目的は、PEに関連する嘔吐の有病率を報告することと、嘔吐が浸出液、その時の血漿乳酸濃度、除去したPEの量の基礎にある原因に関係するかどうかを判定することだった。
鍵となる所見:PEと診断した49頭の犬の医療記録を回顧的に調査した。医療記録から集めたデータは、シグナルメント、嘔吐の有無、その時の血漿乳酸濃度、PEの病因だった。
PEと確認した49頭中25頭(51%)は、最近嘔吐していた。嘔吐はその時の血漿乳酸濃度>5.0mmol/Lの犬においてより一般的に見られる(P=0.02)が、PEの特定の病因に無関係だった。心膜穿刺により得られたPEの量は、嘔吐した犬(8.7±3.4mL/kg)と嘔吐しない犬(9.1±4.3mL/kg)で違いはなかった(P=0.79)。
重要性:嘔吐はPEの犬で一般的に見られ、特に、低灌流のエビデンスのある犬に見られる。心嚢水は虚弱あるいは虚脱を呈し、嘔吐したことがある犬において鑑別診断に加えるべきである。(Sato訳)
■症状発現前の粘液腫性僧帽弁疾患と心肥大の犬におけるピモベンダンの効果
Effect of Pimobendan in Dogs with Preclinical Myxomatous Mitral Valve Disease and Cardiomegaly: The EPIC Study-A Randomized Clinical Trial.
Language: English
J Vet Intern Med. 2016 Nov-Dec;30(6):1765-1779. 36 Refs
A Boswood , J Haggstrom , S G Gordon , G Wess , R L Stepien , M A Oyama , B W Keene , J Bonagura , K A Macdonald , M Patteson , S Smith , P R Fox , K Sanderson , R Woolley , V Szatmari , P Menaut , W M Church , M L O'Sullivan , J-P Jaudon , J G Kresken , J Rush , K A Barrett , S L Rosenthal , A B Saunders , I Ljungvall , M Deinert , E Bomassi , A H Estrada , M J Fernandez del Palacio , N S Moise , J A Abbott , Y Fujii , A Spier , M W Luethy , R A Santilli , M Uechi , A Tidholm , P Watson
背景:ピモベンダンは粘液腫性僧帽弁疾患(myxomatous mitral valve disease:MMVD)によるうっ血性心不全(congestive heart failure:CHF)の犬の治療において有効である。CHF発現前の犬に対する効果は不明である。
仮説/目的:症状発現前のMMVDにより心臓のサイズが増大していて、他の心臓血管薬剤の投与を受けていない犬に対し、ピモベンダンを投与(0.4-0.6mg/kg/d分割量)するとCHFの症状の発現、心臓関連死、あるいは安楽死を遅らせるだろう。
動物:左房大動脈比≧1.6、拡張期標準左室内径≧1.7、脊椎心サイズ和>10.5のMMVDの飼育犬360頭
方法:前向き無作為化プラセボ-コントロール盲検多施設臨床試験。主要結果変数はCHFの発現、心臓関連死、安楽死の複合までの期間だった。
結果:主要エンドポイントまでの期間中央値は、ピモベンダン群が1228日(95%CI:856-NA)で、プラセボ群が766日(95%CI:667-875)だった(P=0.0038)。プラセボ群と比較したピモベンダン群のハザード比は0.64(95%CI:0.47-0.87)だった。他の変数に対して補正後も有益だった。治療群で有害異常に差はなかった。ピモベンダン群の犬はより長く生存した(ピモベンダン群の生存期間中央値は1059日(95%CI:952-NA)でプラセボ群は902日(95%CI:747-1061))(P=0.012)。
結論と臨床意義:心エコーおよびエックス線検査で心拡大のあるMMVDの犬に対するピモベンダンの投与は、症状発現前の期間を延長させ、安全で良好な容認性を示す。約15か月の症状発現前の期間の延長は、かなりの臨床的有益性を表す。(Sato訳)
■猫の胸部エックス線写真のバレンタイン型心陰影は主に左房拡大による
A valentine-shaped cardiac silhouette in feline thoracic radiographs is primarily due to left atrial enlargement.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):245-50.
Trisha J Oura; Aisha N Young; Bruce W Keene; Ian D Robertson; Dennis E Jennings; Donald E Thrall
猫のDVあるいはVD胸部エックス線写真において、バレンタイン型心陰影の原因について対立する情報が発表されている。
この回顧的横断研究の目的は、バレンタイン型は主に左房拡大によるものだという仮説を検証することだった。
エックス線写真上にバレンタイン型心陰影のある猫に対し画像と、完全な心エコー検査を回収し、独立して再検討した。エックス線上のバレンタイン型の重症度を記録するため、主観的スコアリングシステムを使用した。エックス線側面像において左房拡大の主観的エックス線所見と、医療記録を基にした最終診断も記録した。
合計81頭の猫が基準に合った。心エコー検査による左房の大きさと、エックス線写真上のバレンタイン型の重症度に強い正の相関があった(P<0.001)。重度左房拡大の併発がないときに、バレンタイン型の重症度に対し心エコー検査での右房の大きさの影響はなかった。この状況で右房拡大は重度バレンタイン型を観察する確率が増加した。左房拡大がない、あるいは軽度から中程度のみの時、心陰影の形に対し右房拡大の影響はなかった。心疾患の最終診断のカテゴリーとバレンタイン型の重症度に相関はなかった。
この研究からの所見は、猫のエックス線写真においてバレンタイン型心陰影は主に左房拡大によるもので、重度左房拡大が併発している場合のみ、右房拡大はその形に影響するという仮説を支持した。(Sato訳)
■心房細動の犬の心拍数管理に対する院内心電図と24時間ホルター計の比較
Evaluation of in-hospital electrocardiography versus 24-hour Holter for rate control in dogs with atrial fibrillation.
J Small Anim Pract. July 2015;56(7):456-62.
A R Gelzer; M S Kraus; M Rishniw
目的:犬の院内ECGによる心拍数が、家庭でのホルター計による24時間平均心拍数(Holter24h)を予測できるかどうか、それは徐脈v.s.頻脈心房細動の確認に有効かどうかを評価する
素材と方法:心房細動の34頭の犬において、1分ECGと24時間のホルター系の記録の82ペアを獲得した。最初の24時間ホルター計は、Holter24h域値140bpmを基にして、ECG心拍数が徐脈または頻脈心房細動の犬を確認できるかどうか調べるために使用した。
結果:ECG心拍数はHolter24hを95%許容範囲-21から83bpmで、26bpm(95%CI:3bpm、48bpm;P<0.015)過剰評価した。院内ECGによる心拍数155bpmは、Holter24hによる140bpmの確認に対し感受性73%、特異性100%だった;院内ECGによる心拍数160bpm未満は感受性と特異性ともに91%だった。
臨床意義:心房細動の犬の心拍数の院内ECGによる評価は、家庭環境での心拍数を確実に予測するものではない。しかし、院内心拍数が155bpm以上は、頻脈心房細動を確認するのに有効で、臨床医は抗不整脈療法が有効かもしれない症例を層別化できる。(Sato訳)
■僧帽弁閉鎖不全の犬と比較した健康犬の胸部エックス線写真上の肺血管の測定
Measurements of the pulmonary vasculature on thoracic radiographs in healthy dogs compared to dogs with mitral regurgitation.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):251-6.
Heejin Oui; Juyeon Oh; Seoyeon Keh; Gahyun Lee; Sunghoon Jeon; Hyunwook Kim; Junghee Yoon; Jihye Choi
この研究は、過去に報告された健康犬と僧帽弁閉鎖不全の犬の鑑別のために、肺の血管と肋骨の直径を比較するエックス線検査法を再評価した。
第4肋骨レベルの頭側肺動脈および静脈の幅、第9肋骨レベルの尾側肺動脈および静脈の幅、第4肋骨と第9肋骨の直径を前向きに集めた健康犬(n=40)と回顧的に集めた僧帽弁閉鎖不全の犬(n=58)で測定した。
健康犬において肺動脈と付随する静脈の大きさは同じだった。前葉の脈管は第4肋骨よりも小さかった。しかし、健康犬において右の肺動脈径の67.5%、静脈径の65%は第9肋骨よりも大きかった。僧帽弁閉鎖不全の犬の右尾側肺静脈径(特に中程度および重度)は健康犬のそれよりも有意に大きかった(P<0.001)。右の尾側肺動脈と比較して付随の肺静脈の拡大を検出する比較法は、僧帽弁閉鎖不全の予測する最も高い感受性(80.2%)、特異性(82.5%)だった。カットオフ値1.22を第9肋骨基準に応用するときの特異性(73%)は、最もよく使用される1以下の値(感受性89.7%、特異性63.8%)よりも高かったが、感受性は低かった(73%)。
我々は右尾側肺静脈の大きさの評価、および健康犬と僧帽弁閉鎖不全の犬のそれを鑑別するエックス線写真の判定基準として、付随肺動脈および1.22 x第9肋骨径の使用を推奨する。(Sato訳)
■健康犬における非水性ピモベンダン溶液の単回経口投与後の薬物動態と心血管効果
Pharmacokinetics and cardiovascular effects following a single oral administration of a nonaqueous pimobendan solution in healthy dogs.
J Vet Pharmacol Ther. February 2016;39(1):45-53.
M Yata; A J McLachlan; D J R Foster; S W Page; N J Beijerink
ピモベンダンは犬のうっ血性心不全(CHF)の治療で使用される強心性血管拡張薬である。
この研究の目的は、単回投与、盲検、並行用量研究を用い、ピモベンダンの非水性経口溶液の薬物動態と心血管への効果を調査することだった。
8頭の健康な犬を水(陰性コントロール)とピモベンダン溶液からなる2つの処置群に振り分けた。投与後24時間の間に血漿サンプルと非侵襲性の心血管機能の測定値を入手した。ピモベンダンとその活性代謝物を超高速液体クロマトグラフィー-質量分析(UHPLC-MS)で定量した。
経口ピモベンダン溶液は急速に吸収され(最大濃度までにかかる時間(Tmax)1.1時間)、直ちに活性代謝物に変換された(代謝物Tmax1.3時間)。ピモベンダンとその活性代謝物の消失半減期は短かった(それぞれ0.9時間と1.6時間)。最大心血管効果は、1回の経口投与後2-4時間で起こり、測定可能な効果は、収縮機能の新エコー検査指数で主に見られた。有意な効果は8時間まで持続した。研究犬でピモベンダンの非水性経口液の許容性は高かった。(Sato訳)
■心室中隔欠損の犬と猫のシグナルメント、臨床特性、心エコー所見、転帰:109症例(1992-2013)
Signalment, clinical features, echocardiographic findings, and outcome of dogs and cats with ventricular septal defects: 109 cases (1992-2013).
J Am Vet Med Assoc. July 15, 2015;247(2):166-75.
Eric Bomassi; Charlotte Misbach; Renaud Tissier; Vassiliki Gouni; Emilie Trehiou-Sechi; Amandine M Petit; Aude Desmyter; Cecile Damoiseaux; Jean-Louis Pouchelon; Valerie Chetboul
目的:心室中隔欠損(VSDs)の犬と猫のシグナルメント、臨床特性、心エコー所見、転帰を調べる
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:VSDsの犬56頭と猫53頭
方法:従来の方法とドップラー心エコー検査で診断されたVSDsの犬と猫のカルテを再調査した。シグナルメント、臨床状況、心エコー所見、転帰のデータを記録した。研究集団と種別および臨床状況による亜集団で重要変数を解析した。
結果:109頭中53頭(48.6%)のVSDsは孤立性(すなわち単発欠損)だった。ほとんど(82/109[75.2%])のVSDsは膜性あるいは膜性周囲だった。テリアとフレンチブルドッグが犬種では多く見られた。ほとんどの孤立性VSDsは無症状(43/53[81%])で、肺体血流比は<1.5(24/32[75%])だった。VSD直径とVSD:大動脈直径比は、犬の肺体血流比(それぞれr=0.529、r=0.689)、猫の肺体血流比(それぞれr=0.713、r=0.829)と有意に相関した。孤立性VSDに対し、1頭の犬は開式外科的修復を行い、生存分析から除外した。データが得られた孤立性VSDsの残りの動物のうち(37/52[71%])、無症状な動物が初診断後に症状を見せたものはおらず、全ての原因で死亡した年齢の中央値は12歳だった。
結論と臨床関連:孤立性VSDsのほとんどの犬と猫の生存期間は長かった;診断時に臨床症状のあるものは少なく、経過観察で診断後に臨床症状が出たものもいなかった。(Sato訳)
■粘液腫様僧帽弁疾患によるうっ血性心不全の犬における血清C反応性蛋白濃度の上昇
Increased serum C-reactive protein concentrations in dogs with congestive heart failure due to myxomatous mitral valve disease.
Vet J. 2015 Dec 22. pii: S1090-0233(15)00521-3. doi: 10.1016/j.tvjl.2015.12.006.
Reimann MJ, Ljungvall I, Hillstrom A, Moller JE, Hagman R, Falk T, Hoglund K, Haggstrom J, Olsen LH.
人と犬における心血管系疾患ではC反応性蛋白(CRP)濃度の軽度の上昇が認められる。犬の粘液腫様僧帽弁疾患 (MMVD)とCRPの関連についてほとんど評価されておらず、報告されている結果には相違がある。
本研究の目的は、新しい自動犬特異的高感度CRPアッセイ (Gentian hsCRP)によって測定したCRPの血清濃度が犬のMMVDの重症度および臨床的な変数と関連があるかを調べることである。
異なる重症度のMMVDをもつ188頭の飼い犬を使用した。犬は、ACVIM consensus statement guidelineによって分類した(グループA 58頭、グループB1 56頭、グループB2 38頭、グループC 36頭)。データは記述統計学および重回帰分析によって解析した。
うっ血性心不全の犬(グループC)は、グループA(中央値0.97mg/L,1-3四分位、<0.50-1.97, P=0.001), B1(中央値0.78mg/L,1-3四分位、<0.50-1.73, P<0.0001), B2(中央値0.60mg/L,1-3四分位、<0.50-1.23, P<0.0001)と比較して有意に高いCRP濃度(中央値2.65mg/L,1-3四分位、1.09-5.09)を示した。LA比 (P=0.0002,調整済みR2 =0.07) および体重で標準化した左室拡張末期径(P=0.0005,調整済みR2 =0.06)をはじめとした疾患重症度を反映するような他の変数はCRP濃度と正の相関を示したが、CHFを解析から除いた場合、この関連は認められなくなった。
結論として、無症候性のMMVDの重症度はCRP濃度との相関が認められなかったが、CHFの犬においてはCRP濃度が軽度に上昇していた。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の心臓腫瘍の記述的レビュー
A descriptive review of cardiac tumours in dogs and cats.
Vet Comp Oncol. 2015 Sep 30. doi: 10.1111/vco.12167.
Treggiari E, Pedro B, Dukes-McEwan J, Gelzer AR, Blackwood L.
犬と猫で心臓腫瘍は珍しく、偶然見つかることが多い。
一般的な種類は血管肉腫(HSA)、大動脈体腫瘍(非クロム親和性傍神経節腫や傍神経節腫)やリンパ腫などである。それらの腫瘍は組織学的タイプと無関係な軽度から重度、致死的臨床症状を引き起こす可能性があり、心血管機能の変化、あるいは心臓周囲腔への局所出血/浸出液に関係するかもしれない。
心臓腫瘍は腫瘍の出血および潜在的不整脈、マスの影響による他の症状を管理するのを目的とした対症療法が必要かもしれない。追加の治療オプションは、手術、化学療法、放射線療法である。薬物療法では完全寛解の可能性は低く、薬物管理(血管肉腫の補助的化学療法以上)は更なる調査が必要だが、多剤化学療法はリンパ腫に勧められる。
この報告の目的は、記述的レビューにおいて現在の文献をまとめ、批判的に評価する。しかし、解釈はほとんどの研究で確定診断がなく、回顧的特性により限られている。(Sato訳)
■原発性および二次性の心筋症の猫の生存期間について
Survival in cats with primary and secondary cardiomyopathies.
J Feline Med Surg. 2015 Jun 9. pii: 1098612X15588797.
Spalla I, Locatelli C, Riscazzi G, Santagostino S, Cremaschi E, Brambilla P.
目的 猫の心筋症(CMs)は、様々な心筋疾患が混在している。もっとも一般的なCMは肥大型心筋症(HCM)で、次に拘束型心筋症(RCM)が多い。様々な種類のCMの生存と転帰を比較する研究は足りない。さらに全身性の疾患から心血管系が生じている場合の生存への影響についてはほとんど知られていない。この回顧的研究の目的は、10年以上の間に我々の施設に来院したHCM、RCM、二次性のCMに罹患した猫における生存と予後因子を比較することである。
方法 本研究では症例の記録と超音波検査が完全にある94頭の猫を用いた。50頭はHCMであり、14頭はRCM、30頭は二次性のCMであった。
結果 統計学的に有意な生存期間の違いが、HCM(生存期間の中央値865日), RCM(273日), 二次性のCM(心臓による死亡率は50%より少ない)の間に認められた。全症例および原発性のCM群(HCM + RCM)において、CMの種類にかかわらず多変量解析でリスク因子は、臨床症状があること、左房内径大動脈径比(LA/Ao)の増加および凝固亢進状態であった。
結論と意義 猫における原発性CMsは、猫の心血管系の生理学に関連したいくつかの共通の特徴(すなわち、LAの幅および凝固亢進状態)をもっているため、それが末期のCMにおける生存に多大な影響を与える。臨床症状が存在することは、CMがなんであれ、疾患の重症度のマーカーとして考えられる。二次性のCMsは、よりよい状態であるが、もとの疾患が適切に管理できないのであれば、この猫たちもまた予後は悪いであろう。(Dr.Taku訳)
■重度大動脈弁下部狭窄の犬の生存性に対するβブロッカーの影響
Influence of Beta blockers on survival in dogs with severe subaortic stenosis.
J Vet Intern Med. 2014 May-Jun;28(3):857-62.
B D Eason; D M Fine; D Leeder; C Stauthammer; K Lamb; A H Tobias
背景:大動脈弁下部狭窄(SAS)は犬の一般的な先天性心欠陥の1つである。重度SASはよくβアドレナリン受容体ブロッカー(βブロッカー)で治療されるが、このアプローチはたいてい経験的である。
目的:重度SASの犬の生存期間に対してβブロッカーでの治療の影響を判定する
方法:1999年から2011年の間で、重度の合併症を伴わないSAS(圧較差[PG]≧80mmHg)と診断された犬のカルテの回顧的調査。
結果:50頭の犬が研究基準に合致した。27頭の犬はβブロッカーで治療され、23頭は無治療だった。診断時の年齢中央値は無治療群で有意に大きかった(1.2歳v.s.0.6歳;P=0.03)。診断時のPG中央値に治療群と無治療群で差はなかった(127v.s.121mmHg;P=0.2)。Cox比例ハザード回帰を使用し、生存性に対する診断時のPG、診断時の年齢、βブロッカーによる治療の影響を確認した。全ての原因の多変量死亡分析において、診断時の年齢(P=0.02)と診断時のPG(P=0.03)のみが生存期間に影響した。心臓の死亡分析において、PGのみが生存期間に影響した(P=0.03)。βブロッカーによる治療は、全ての原因(P=0.93)あるいは心臓が原因(P=0.97)の死亡分析において生存期間に影響しなかった。
結論:我々の研究で重度大動脈弁下部狭窄の犬においてβブロッカーによる治療は生存性に影響せず、診断時の圧較差がより高くなることが、死亡のリスク増加に関係した。(Sato訳)
■右大動脈弓遺残の外科手術後の犬の短期および長期結果
Short- and long-term outcome of dogs following surgical correction of a persistent right aortic arch.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 May-Jun;50(3):181-6. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6034. Epub 2014 Mar 21.
Krebs IA, Lindsley S, Shaver S, MacPhail C.
この研究は犬の右大動脈弓遺残(PRAA)の手術後の退院までの生存性、退院後の生存性、長期結果を報告する。退院までの生存性、術後生存性、長期結果を分析出来た犬はそれぞれ52頭、28頭、23頭の犬だった。92%の犬は退院の時まで生存し、退院まで生存した犬の18%は術後2か月以内に安楽死された。犬種、来院時の年齢、性別は退院までの間の死亡比率増加と関連がなかった。長期結果は、優良30%、良57%、不良13%だった。
この研究は退院前と手術から2か月以内の比較的高い死亡率を示しているが、長期結果においては生存者の87%で良か優良である。残存の臨床症状あるいは長期の食餌変更の必要性を示す犬も多いが、オーナーの満足度は高い。(Sato訳)
■NT-proANPの上昇は粘液腫性弁疾患による僧帽弁逆流のキャバリアキングチャールズスパニエルでうっ血性心不全のリスクを予測する
Increased NT-proANP predicts risk of congestive heart failure in Cavalier King Charles spaniels with mitral regurgitation caused by myxomatous valve disease.
J Vet Cardiol. September 2014;16(3):141-54.
Anders S Eriksson; Jens Haggstrom; Henrik Duelund Pedersen; Kerstin Hansson; Anna-Kaisa Jarvinen; Jari Haukka; Clarence Kvart
目的:粘液腫性僧帽弁疾患による僧帽弁逆流の進行に対するマーカーとして、血漿N末端プロ心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)と一酸化窒素最終産物(NOx)の予測的価値を評価する
動物:自然発生の粘液腫性僧帽弁疾患のある個人飼育のキャバリアキングチャールズスパニエル78頭
方法:4.5年かけて312の測定値からなる前向き縦断研究。臨床値を記録し、NT-proANP濃度をラジオイムノアッセイで測定し、NOxは比色で分析した。うっ血性心不全(DHF)を予測するため、時間-変化共変動とCox比例ハザードモデルで作成した。
結果:将来CHFを予測するNT-proANPのハザード比(1000pmol/l上昇毎)は6.7(95%信頼区間、3.6-12.5;p<0.001)だった。1000pmol/lより上のNT-proANPの犬に対するCHFまでの時間中央値は、11ヶ月(95%信頼区間、5.6-12.6ヶ月)で、それに比べて1000pmol/l以下の犬では54ヶ月(46-無限)だった(P<0.001)。個別変数内および変数間のため、NOxに対する最も一致した分析はわずかだったが、CHFになった犬はなってない犬よりも平均NOx濃度がより低かった(23vs.28μmol/l、p=0.016)。CHFのリスクは心拍数(>130回/分)および心雑音のグレード(≧3/6)増加で上昇した。
結論:僧帽弁逆流によるCHFのリスクは、血中NT-proANP濃度が1000pmol/lを超えた犬で増加する。NT-proANPの測定は、数か月以内にCHFを発症するかもしれない犬を確認する有用なツールである。(Sato訳)
■犬の肺動脈弁狭窄:病犬の回顧的コホートにおける生存性とリスク因子
Pulmonic stenosis in dogs: survival and risk factors in a retrospective cohort of patients.
J Small Anim Pract. September 2013;54(9):445-52.
C Locatelli; I Spalla; O Domenech; E Sala; P G Brambilla; C Bussadori
目的:肺動脈弁狭窄の犬の生存性とリスク因子を調査する
方法:50mmHg以上の肺動脈弁狭窄で肺動脈バルーン弁形成を行った犬と行わなかった犬の症例記録の回顧的再検討。生存曲線と多変量解析を全集団および部分集団において算出した。
結果:172症例を調査した。全集団において生存性に負に影響する因子は、臨床症状(危険率(HR)3.44、P<0.001)、診断時の年齢がより若い(HR3.96、P=0.001)、弁形態タイプB(HR3.33、P=0.001)だった。肺動脈バルーン弁形成群のうち、臨床症状(HR3.44、P<0.001)のみが有意だった。弁形成を行わなかった群のうち、ドップラー勾配(HR1.02、P<0.001)、臨床症状(HR5.41、P=0.002)、弁形態タイプB(HR10.20、P=0.001)、診断時の年齢がより若い(HR12.82、P<0.001)が生存性に負に影響した。肺動脈バルーン弁形成を行った重度肺動脈弁狭窄の犬(HR0.47、P=0.047)と中程度の肺動脈弁狭窄の無症状の犬(HR0.10、P=0.042)は結果がより良かった。診断時の年齢がより若いことは、右側うっ血性心不全の犬(HR14.02、P=0.01)でより悪い結果と関連した。
臨床意義:臨床症状、弁形態タイプBと診断時の年齢は、肺動脈弁狭窄の犬のリスク因子である。肺動脈バルーン弁形成は重度肺動脈弁狭窄の犬で適切な治療選択である。(Sato訳)
■心不全と慢性の僧帽弁閉鎖不全症の犬における犬膵特異的リパーゼ濃度
Canine Pancreatic-Specific Lipase Concentrations in Dogs with Heart Failure and Chronic Mitral Valvular Insufficiency.
J Vet Intern Med. 2015 Jan 14. doi: 10.1111/jvim.12521.
Han D, Choi R, Hyun C.
背景 慢性の僧帽弁閉鎖不全症(CMVI)は非常に多く、うっ血や組織灌流の低下の臨床症状を起こす。
仮説 CMVIから生じる組織低灌流によって、血清犬膵特異的リパーゼ濃度によって明らかとなる膵炎を犬に引き起こす。
動物 CMVIから生じる心不全の異なるステージの40頭の犬と22頭の年齢がマッチした健常犬の計62頭の飼い犬で、完全な心臓の検査と通常の検査室の検査に基づいた。
方法 前向き対照観察研究。血清犬膵特異的リパーゼ免疫活性(cPLI)濃度は、健常群とCMVI群において定量的なcPLI検査によって測定した。
結果 血清cPLI濃度は、健常群では54.0 μg/L(IQR: 38.0-78.8 μg/L)で、ISACHC I、ISACHC II、ISACHC IIIではそれぞれ55.0 μg/L(IQR: 38.3-88.8 μg/L)、115.0 μg/L(IQR: 45.0-179.0 μg/L)、223.0 μg/L(IQR: 119.5-817.5 μg/L)、であった。血清cPLIとの密接な相関が、左房大動脈比(LA/Ao)比(r = 0.597; P = .000)および心不全の重症度(r = 0.530; P = .000)に認められた。
結果と臨床的意義 本研究は、CMVIがCMVIによって引き起こされるうっ血性心不全における膵臓の傷害と関連していることを明らかにした。そのため、心不全の犬をモニターするのに、cPLIを間欠的に測定することは有用である。(Dr.Taku訳)
■犬の心電図記録に対する体位の影響
Effect of body position on electrocardiographic recordings in dogs.
Aust Vet J. July 2013;91(7):281-6.
J A Stern; K W Hinchcliff; P D Constable
目的:犬の心電図を周波数応答に対しアメリカ心臓協会ガイドラインで記録した時、体位(立位、右横臥位)が心電図の質や心電図変数の値に影響を及ぼすかどうかを判定する
デザイン:恣意的標本を用いた横断研究
方法:65頭のそり犬で、各犬の立位、右横臥位で無作為な順番で2回心電図を測定した。II誘導と準直交誘導(I、aVF、V10)を記録し、筋肉振戦アーチファクトを評価した。
結果:右横臥位の犬から得られたII誘導心電図は、立位の犬の心電図よりも筋肉振戦アーチファクトが少なく、その結果QRS区間がより短くなった。右横臥位の場合、P、Q、R、S波の振幅は選択した誘導で異なり、平均電気軸は右に20度シフトした。
結論:立位と比べ、右横臥位は筋肉振戦アーチファクトを減らすことで犬の心電図記録の質を改善させ、特定の誘導でP、R、S波の振幅を変化させ平均電気軸の右へのシフトを起こさせる。(Sato訳)
■猫における体の大きさと代謝マーカーおよび左室肥大との関係
Relationship of Body Size to Metabolic Markers and Left Ventricular Hypertrophy in Cats.
J Vet Intern Med. 2014 Nov 20. doi: 10.1111/jvim.12503.
Freeman LM, Rush JE, Feugier A, van Hoek I.
背景 肥大型心筋症の猫は、肥大型心筋症がない猫よりもより体格が大きく、IGF-1濃度が高い。
仮説/目的 本研究の目的は、初期の成長と左室肥大の間の関係を明らかにするために、成猫の集団におけるエコー所見を評価することである。
動物 成長曲線を入手可能な3歳以上の集団のうち28頭の避妊雌または去勢雄(20頭の雄と8頭の雌)
方法 症例対照研究。身体検査と超音波検査を実施し、体重、ボディコンディションニングスコア(BCS)、頭部の長さと幅を測定した。グルコース、インスリン、NT-proBNP、IGF-1濃度を測定し、成長データを収集した。逐次重回帰分析を行った。
結果 平均年齢は5.2 ± 1.1歳であった。現在のBCSは、4-9(中央値 6)であり、平均体重は4.88 ± 1.29 kgであった。体重の変動は、6ヶ月(平均 3.26 ± 0.80 kg)と12ヶ月齢(平均 4.02 ± 1.02 kg)によって明らかであった。心臓の異常は、心雑音 (7頭 24%)、ギャロップ音 (3頭 10%)、不整脈 (1頭 4%)であった。28頭のうち14頭(50%)は左室肥大のエコー所見が認められた。頭部の幅(P = .017)、体重(P < .001)、NT-proBNP (P = .023)、IGF-1 (P = .013-.022)は、左室肥大についてのいくつかの測定値と有意に関連していた。
結論と臨床的意義 体格、IGF-1、左室肥大と肥大型心筋症には関係がある可能性があり、将来的な前向き研究を必要である。(Dr.Taku訳)
■犬における左心房拡大を同定するための左心房容量と左心房大動脈比の違い
Discrepancies in Identification of Left Atrial Enlargement Using Left Atrial Volume versus Left Atrial-to-Aortic Root Ratio in Dogs.
J Vet Intern Med. 2014 Jul 23. doi: 10.1111/jvim.12410.
Wesselowski S, Borgarelli M, Bello NM, Abbott J.
背景 左心房の大きさは、粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の犬において予後を知る上で重要である。
仮説 左心房大動脈比(LA:Ao)と体重を加味したbiplane area-length法を使用した左心房容量が、左心房拡大(LAE)を同定するのにどの程度一致するかを比較すること。
動物 60頭のMMVDの犬と22頭の健常犬を断層超音波検査で前向きに調査した。
方法 LA Vol/BWの正常上限は1.1ml/kgであると定義した。LA:Aoは1.5以下のとき正常と判断した。全疾患重症度を決めるために、個々の犬はについて左房の大きさ以外の超音波検査上のパラメーターに基づいて僧帽弁逆流重症度スコア(MRSS)を決めた。ACVIMステージ分類も用いた。
結果 60頭の罹患犬のうち、20頭はACVIMステージB1であり、25頭はステージB2、15頭はステージCであった。LA:Ao比が正常な12頭においてLA Vol/BWでLAEが同定され、これらのうち7頭はステージB1で、5頭はステージB2であった。この診断の不一致率は有意であった(P = .00012)。診断の差異があった12頭のうち、B2の5頭中5頭、B1の7頭中3頭が中等度のMRSSをもっており、B1の7頭中4頭は軽度のMRSSをもっていた。重度のMRSSの犬において、LA:AoとLA Vol/BWの間に診断的な差異が明らかとはならなかった。
結論と臨床的意義 LAEを診断する際に、LA:AoとLA Vol/BWの間に不一致が存在することが明らかとなった。軽度のLAEを同定するには、LA Vol/BWはLA:Aoよりも勝っているようである。(Dr.Taku訳)
■末端肥大症の11頭の猫の心エコー所見
Echocardiographic Findings in 11 Cats with Acromegaly.
J Vet Intern Med. 2014 Jun 24. doi: 10.1111/jvim.12386.
Myers JA, Lunn KF, Bright JM.
背景 末端肥大症の猫の心臓の変化についての情報は限られている。
仮説・目的 本研究の目的は、末端肥大症の猫における心エコー所見を明らかにすることである。
動物 2008年から2012年の間にコロラド州立大学で末端肥大症と診断された18頭の猫。18頭のうち11頭について心エコー検査を実施した。
方法 心エコー検査を実施した末端肥大症の猫を探すために、カルテを回顧的に調査した。
結果 みつかった11頭の猫のうち、7頭は左室の求心性肥大を示し、6頭は左房の拡大、7頭は拡張能の異常を示した。11頭全ての猫は、構造的または機能的な心疾患を示していた。
結論と臨床的意義 心血管系の異常は、末端肥大症の猫で認められることが多く、こうした猫では心臓の評価をきちんとすることが必要である。(Dr.Taku訳)
■健康な成猫と無症状の心疾患を持つ猫における睡眠時および安静時呼吸数
Sleeping and resting respiratory rates in healthy adult cats and cats with subclinical heart disease.
J Feline Med Surg. April 2014;16(4):281-90.
Ingrid Ljungvall; Mark Rishniw; Francesco Porciello; Jens Haggstrom; Dan Ohad
心疾患を持つ患者で睡眠時および安静時呼吸数は一般的に測定される数値である。しかし、健康な飼育猫あるいは無症状の心疾患(SHD)を持つ猫においてそれらの数値に対する情報は少ない。ゆえに、59頭の心エコー検査で正常な猫(EN)、28頭の見た目に健康な猫(AH)、54頭のSHDの猫のオーナーに家で8-10回別々の機会に測定してもらった睡眠時呼吸数(SRR)および休息時呼吸数(RRR)を検証し特徴を述べる。
EN猫、AH猫および軽度あるいは中程度の左房(LA)拡大(左房と大動脈比[LA:AO]の分位で確定)のSHD猫において、平均睡眠時呼吸数(SRR平均)は一貫して<30回/分;SRR平均の中央値約21回/分だった。重度LA拡大のSHD猫のSRR平均は時に30回/分を超え、他のSHD猫よりも多かった(P<0.05)。
平均安静時呼吸数はSRR平均よりも一貫して多かった(P<0.05)。体重ではなく、年齢や地域がENとAH猫のSRR平均に影響した。猫のSRRとRRRは日によって顕著に変化せず、低い変位係数で裏付けされた。データ収集は多くの参加者で問題となるものはなく容易だと考えられた。
我々のデータは健康な猫およびSHDの猫の家庭環境で得られたSRRとRRRの有効なガイドラインを提供し、臨床的心疾患の猫の管理に有効性を保証すると思われる。SRR平均が>30回/分の猫および複数測定したSRRが>30回/分の猫は、追加の評価をする理由となる。(Sato訳)
■無症状の心疾患がある犬において睡眠および休息時呼吸数
Sleeping and resting respiratory rates in dogs with subclinical heart disease.
J Am Vet Med Assoc. September 15, 2013;243(6):839-43.
Dan G Ohad; Mark Rishniw; Ingrid Ljungvall; Francesco Porciello; Jens Haggstrom
目的:左側うっ血性心不全を起こす可能性がある無症状の心疾患を持つ犬において、家庭環境で測定した睡眠時呼吸数(SRRs)および休息時呼吸数(RRRs)の特徴を述べる
デザイン:前向き横断研究
動物:無症状の左側心疾患のある成犬190頭
方法:ほとんどの犬は、いろいろな程度の僧帽弁疾患、あるいは拡張型心筋症だった。1週間から6か月の期間、飼い主に1-分SRRsあるいはRRRsを集めてもらった。臨床医には各犬の心電図および医療データを提供してもらった。
結果:それらの犬の平均SRR(SRR平均、16回/分)は平均RRR(RRR平均、21回/分)よりも有意に少なかった。7頭のSRR平均と33頭のRRR平均は25回/分よりも多く、1頭のSRR平均と12頭のRRR平均は30回/分よりも多く、それらの犬のほとんどは左房(LA)/大動脈比が>1.8だった。中程度のLA拡大のある犬は、他の犬と比べて有意にSRR平均が高かった。しかし、LA拡大の各4レベルのSRR平均の中央値は20回/分未満であり、RRR平均の中央値は25回/分未満だった。両グループの犬でSRRとRRRは10回連続測定で安定していた。心臓の薬物による治療、あるいは肺高血圧の有無はSRR平均あるいはRRR平均と関係しなかった。
結論と臨床関連:症状がない様々な程度の左側心疾患を確認した犬で、一般にSRR平均は25回/分未満で、いつでも超過することがまれで、SRRとRRRは個々の犬のSRR平均あるいはRRR平均にかかわらず安定を維持すると結果は示唆した。(Sato訳)
■右左シャントを起こした卵円窩裂のあるキャバリアキングチャールズスパニエルの1例
Fossa ovalis tear causing right to left shunting in a Cavalier King Charles Spaniel.
J Vet Cardiol. December 2012;14(4):541-5.
Geri A Lake-Bakaar; Mai Yee Mok; Mark D Kittleson
左房裂は粘液腫性僧帽弁変性による重度僧帽弁逆流でまれに起こる。左-右シャントを起こす僧帽弁逆流による心房間中隔裂は珍しい。急性心房間中隔裂に続発する右-左シャントはヒトの文献で非常にまれに報告され、獣医学文献で、犬では報告されていない。
この例は、心房間中隔を通る右-左シャントの急性発現に続発する急性呼吸困難を呈した1頭の犬の臨床、エックス線、心エコー、肉眼病理、病理組織的特徴を述べる。
これはその後、三尖弁逆流および肺高血圧による二次的な中隔の裂によるものと証明された。後天性右-左シャントの心房中隔欠損の存在は、臨床および予後の重要性があり、急性呼吸困難の原因と考えるべきである。(Sato訳)
■3頭の犬の心房細動に関係した血栓性合併症
Thrombotic complications associated with atrial fibrillation in three dogs.
J Vet Cardiol. September 2012;14(3):453-8.
Paul J Usechak; Janice M Bright; Thomas K Day
心房細動(AF)は犬で最も一般的な慢性の病的不整脈で、ヒトで血栓塞栓症がAFの一般的な合併症であるのに対し、犬では過去に報告されていない。
この報告では3頭の犬のAFに関係する血栓性合併症を述べる。2頭の心エコー検査中に血栓と思われる球形の左房マスを確認した。他の1頭はエコーおよび剖検で動脈血栓塞栓症を確認した。
それらの症例は犬のAFに関係する心房内血栓形成、心臓性塞栓疾患の独特な生前記述を提供し、薬理的除細動あるいは直流電気的除細動の前に、血栓に対する心房の完全な心エコー評価の重要性について認識を高める。(Sato訳)
■右心房クロム親和性傍神経節腫の犬の1例
Right atrial chromaffin paraganglioma in a dog.
J Vet Cardiol. September 2012;14(3):459-64.
Aaron C Wey; Frances M Moore
犬の心臓の腫瘍は比較的珍しく、最も一般的な腫瘍は右房血管肉腫と心基底部に起こる傍神経節腫(例えば非クロム親和性傍神経節腫や大動脈体腫瘍)などがある。心臓内の傍神経節腫はヒトでまれな腫瘍で、獣医の文献ではほとんど述べられていない。この報告は右房に心臓内クロム親和性傍神経節腫(非副腎性クロム親和性細胞腫)のある1頭の成犬の臨床経過と病理組織所見を述べる。(Sato訳)
■右心症と内臓逆位の犬の1例
Dextrocardia and Situs inversus in a dog
Vet World. June 2012;5(6):369-372. 8 Refs
G L G Almeida; M B Almeida; L X Freitas; A C M Santos; A V Mattos
目的:本研究の目的は内臓逆位を伴う右心症の1症例を報告することである
症例病歴と観察:9歳オスのコッカースパニエルが非湿性咳のため心臓評価で紹介されてきた。胸部レントゲンと超音波検査で心臓だけでなく肝臓、胆嚢、胃、脾臓、大動脈、後大静脈などの腹部臓器も逆位であることを示した。右心症自身を除けば心エコー検査は正常だった。心電図においてP-QRST波はD1誘導で逆転した。それらの結果を基に、その症例を全内臓逆位を伴う右心症と診断した。
検討:内臓逆位を伴う右心症(DSI)は、全ての内部臓器の正常な解剖学的配列の左右逆を特徴とする珍しい先天的異常である。犬において報告された症例の大部分はカラタゲナー症候群(KS)に関係があるが、この症例は繊毛障害のエビデンスはなかった。レントゲンおよび超音波検査のほかに、この報告で実証されたようにDSIを診断するのに心電図検査が大きな価値を持つだろう。(Sato訳)
■肥大型心筋症の猫における予後予測因子
Prognostic Indicators in Cats with Hypertrophic Cardiomyopathy.
J Vet Intern Med. 2013 Oct 17. doi: 10.1111/jvim.12215. [Epub ahead of print]
Payne JR, Borgeat K, Connolly DJ, Boswood A, Dennis S, Wagner T, Menaut P, Maerz I, Evans D, Simons VE, Brodbelt DC, Luis Fuentes V.
背景 左房拡大 (LA)、鬱血性心不全 (CHF)、大動脈血栓塞栓症 (ATE)は肥大型心筋症 (HCM)の猫において、生存率の低下と関連しているが、心エコー所見の予後への影響は明らかにされていない。
仮説/目的 HCMの猫において、LAのエコー所見、左室 (LV)の収縮期と拡張期の評価が予後に重要であると仮説を立てた。
動物 HCMと診断された282頭の猫
方法 Royal Veterinary Collegeにおいて2004年から2009年の間に来院した罹患猫の臨床所見および超音波所見を後向きに調査した。超音波検査において拡張期LV壁厚が6mm以上の猫のみを用いた。転帰は、カルテまたは紹介医および飼い主から得た。
結果 164頭の猫が死亡し、うち107頭は心臓死であったと思われる。心臓死のリスクの増加の単変量予測は、高齢、雑音がない、ギャロップ音や不整脈がある、CHFまたはATEのどちらかが存在する、LVの肥厚が激しい (9mm以上)、FSが30%以下、局所的な壁の運動性の低下、左房の大きさが増加している、左房機能が低下している、自然に出たエコー造影または血栓が見えることまたはその両方、左室流出路の閉塞がないこと、拡張期拘束型流入パターンであった。Cox比例ハザードモデルによって、LA機能不全、LVの収縮機能の低下、LVの極度の肥厚が、独立した心臓性生存期間の低下の予測因子であった。
結論と臨床的意義 LA機能、LVの極度な肥厚、LVの収縮機能を超音波検査で測定することは、HCMの猫の重要な予後情報となる。(Dr.Taku訳)
■動脈血栓塞栓症:リスク、現実、合理的第一線アプローチ
Arterial thromboembolism: risks, realities and a rational first-line approach.
J Feline Med Surg. July 2012;14(7):459-70.
Virginia Luis Fuentes
実際の関連:猫の動脈血栓塞栓症(ATE)は一般的だが、心筋疾患のひどい合併症で安楽死を必要とすることも多い。左房の内皮機能障害とうっ血が、局所血小板賦活および血栓形成を引き起こす。血栓の塞栓は、影響された血管床の重度虚血を起こす。末端大動脈における血栓の典型的な「サドル血栓」の存在で、診断は身体検査によりなされる。重度虚血により複数の肢が影響を受けた猫の予後は不良だが、片方の肢のみ、あるいは運動機能が存在する場合はいくぶん良い。
患者グループ:心筋症により二次的に左房拡大を起こしている猫は典型的に素因を持つが、甲状腺機能亢進症、肺腫瘍、僧帽弁上狭窄の猫もリスクがあるかもしれない。
管理:一番の優先は鎮痛処置で、重度の疼痛はメタドンあるいはフェンタニルの持続点滴で管理すべきである。うっ血性心不全(CHF)はフロセミドによる治療が必要であるが、疼痛による頻呼吸はCHFに似た症状になりえる。血栓溶解療法は勧められないが、抗血栓療法は可能な限り早期に始めるべきである。アスピリンとクロピドグレルは十分に通用する。
エビデンスベース:ATEのいくつかの観察研究が報告されている。リスクを負っている猫でATEの治療あるいは予防に対する無作為盲検コントロール研究は報告されていないが、猫におけるアスピリンとクロピドグレルを比較するような研究は現在行われている。(Sato訳)
■犬の肺高血圧症に対する低用量イマチニブの治療効果
Therapeutic effect of low-dose imatinib on pulmonary arterial hypertension in dogs.
Can Vet J. 2013 Mar;54(3):255-61.
Arita S, Arita N, Hikasa Y.
この研究は、肺高血圧症(PAH)の血行動態障害および犬の慢性心不全による臨床症状に対する低用量イマチニブの効果を決める試験的研究である。
6例のPAHの飼い犬に対して、メシル酸イマチニブを経口で3mg/kg 24時間おきに30日間投与した。イマチニブの投与前と投与30日後に、身体検査、血清生化学検査、レントゲン検査、心臓の超音波ドップラー検査を実施した。
イマチニブ投与後に臨床スコアは有意に低下した。収縮期肺動脈圧、心拍数、三尖弁最高逆流速度、左心房・大動脈比、右心室および左心室Teiインデックス、拡張早期左室流入速波形と僧帽弁輪運動速度の比、血漿中心房性ナトリウム利尿ペプチド濃度は治療後に有意に低下した。拡張期血圧、一回拍出量、心拍出量、左室内径短縮率は治療後に有意に増加した。これらの結果から低用量イマチニブ療法は、PAHの犬における心不全に対して効果的である事が示唆される。(Dr.Taku訳)
■ピモベンダンの薬理と臨床的使用の概説
A review of the pharmacology and clinical uses of pimobendan.
Journal of Veterinary Emergency and Critical Care, Volume 22, Issue 4, pages 398?408, August 2012
Kimberly L. Boyle DVM, Elizabeth Leech DVM, DACVECC
目的:ピモベンダンの薬理、研究開発、臨床的使用を概説する
データソース:1984-2011年8月までのオリジナル研究文献と臨床研究
獣医学的データ総合:ピモベンダンは犬の慢性心臓弁膜症(CVHD)や拡張型心筋症(DCM)に続発するうっ血性心不全(CHF)の治療に対する使用が認められている。専門家による獣医学的ガイドラインは、慢性心臓弁膜症によるCHFの患者に対する急性、病院ベースの治療の管理にピモベンダンの使用を勧めている。
結論:ホスホジエステラーゼ3(PDE3)抑制とカルシウム感受性特性を持つ強心性血管拡張薬であるピモベンダンの使用は、DCMおよびCVHDに続発するCHFの犬の管理において標準治療のコンポーネントと考えられる。さらなる研究で無症候性CVHD、肺動脈高血圧、無症候性心筋疾患、他の原因によるCHF、CHFの猫におけるこの薬剤の適応外使用に対する安全性と効果を確認する必要性がある。(Sato訳)
■明らかに健康な猫の心室の2次元ガイドMモードとパルスドップラー心エコー評価
Two-dimensionally-guided M-mode and pulsed wave Doppler echocardiographic evaluation of the ventricles of apparently healthy cats.
J Vet Cardiol. September 2012;14(3):423-30.
Aleksandra Domanjko Petri?; Mark Rishniw; William P Thomas
目的:健康で鎮静をかけていない猫の2次元ガイド(2D-ガイド)Mモードおよびパルス波(PW)ドップラー心エコー検査結果の参照値範囲を決定する
動物:53頭の健康で鎮静をかけていない家庭猫
材料と方法:5.0および7.5MHz二重イメージングトランスデューサーを使用し2D-ガイドPWドップラーで標準画像平面を通して猫を検査した。心エコーのACVIMガイドラインを用い、左室(LV)Mモード測定値と心臓内PWドップラーデータを入手した。異なるビューで測定した同領域のドップラー変数を適切なところの取り決めに対し比較した。全ての測定変数に対し記述統計を行った。選択したMモードおよびPWドップラー心エコー変数と、体重、年齢との相関を統計学的に比較し、有意をP<0.01とした。
結果:多くの猫(42/51)は拡張期LV中隔と後壁拡張期径が4.5mm未満だった(最大=5.7mm)。唯一中隔拡張期壁径と体重に弱い相関があった(P=0.36)。弁を通過する最大速度(m/s)は大動脈1.04(範囲:0.77-1.40);LV流入0.60(範囲:0.43-0.95)(E波)、0.47(範囲:0.32-0.76)(A波)、RV流入0.56(範囲:0.37-0.85)、肺動脈弁(右)0.96(範囲:0.65-1.21)だった。僧帽弁流入に対し、心拍数180回/分以下でE波とA波は通常別々に測定可能で、いつの拡張期波(EA)になるのは心拍数が190回/分以上だった。最大E波速度は心拍数と相関した。年齢に相関する変数はなかった。
結論:我々の研究は明らかに健康な猫の包括的2D-ガイド心エコーMモードとPWドップラーの参照値データを提供する。(Sato訳)
■犬の僧帽弁修復
Mitral valve repair in dogs.
J Vet Cardiol. March 2012;14(1):185-92.
Masami Uechi
重度僧帽弁逆流の犬の予後は内科療法単独であまりよくない。周囲僧帽弁輪形成および人工腱索設置など外科的僧帽弁修復は耐久性を備え、長期抗血栓療法の必要もなく、長期臨床結果を改善した。このアプローチは小型犬を含む犬の患者で成功している。小型犬で利用できる僧帽弁修復の方法を説明する。(Sato訳)
■全身性の炎症をもった重篤な犬における心筋傷害の予後への重要性
Prognostic Importance of Myocardial Injury in Critically Ill Dogs with Systemic Inflammation.
J Vet Intern Med. 2013 May 16. doi: 10.1111/jvim.12105.
Langhorn R, Oyama MA, King LG, Machen MC, Trafny DJ, Thawley V, Willesen JL, Tarnow I, Kjelgaard-Hansen M.
背景 ヒトにおいて心臓病とは関係なく重篤な場合、心筋トロポニンIおよびT (cTnIおよびcTnT)によって検出される心筋傷害というものが、複合的な予後スコアとは関係なくICUにおける死亡と関連している。
仮説 心筋傷害が存在することが、全身の炎症をもった重篤な犬における短期的な死を予測でき、確立された犬の予後スコアと併せるとさらなる予後情報となる。
動物 全身性の炎症があり、原発性の心臓疾患のないICUに収容された42頭の犬
方法 前向きコホート研究。ICUに収容された時点で、cTnIおよびcTnT、CRP、数種のサイトカインを測定するために血液サンプルを採取した。 急性患者の生理的および実験室的評価(APPLE)スコアおよび生存予測指数を収容された最初の24時間以内に計算した。それぞれのバイオマーカーと重症度の予後への能力を検討するために、受信者操作特性(ROC)曲線を使用した。心臓のマーカーが重症度スコアに有意に関係するかを評価するために重回帰分析を行なった。
結果 28日後の致死率は26%であった (42頭中11頭)。cTnI濃度は、中央値0.416ng/ml (範囲 0.004-141.5)であり、cTnT濃度は、中央値13.5ng/L (範囲 <13-3744)であった。cTnI、cTnTおよびAPPLEスコア全てが、ROC曲線下の面積と有意な予後因子であった(95%信頼度がそれぞれ0.801, 0.790, 0.776)。さらに予後の特異性を与えるのに、cTnIはAPPLEスコアに有意に寄与していた(P=0.025)。
結論と臨床的意義 心筋傷害のマーカーは全身性の炎症の犬において短期的な死亡を予測し、cTnIがAPPLEスコアに有意に貢献していた。
■健康な猫における経口ピモベンダンの薬物動態
Pharmacokinetics of oral pimobendan in healthy cats.
J Vet Cardiol. December 2012;14(4):489-96.
Andrew S Hanzlicek; Ronette Gehring; Butch KuKanich; Kate S Kukanich; Michele Borgarelli; Nicole Smee; Emily E Olson; Marco Margiocco
目的:健康な猫における経口ピモベンダンの薬物動態を述べる
動物:18頭の研究目的の特別猫
方法:10頭の猫で、ピモベンダンの1回の経口投与(0.28±0.04mg/kg)前と、その後複数のタイムポイントで採血した。8頭の猫で、ピモベンダンの経口投与を1日2回で合計7回行い(0.31±0.04mg/kg)、1日目と3日目の3つのタイムポイントで採血した。高速液体クロマトグラフィー-タンデム型質量分析でピモベンダンの血漿濃度を定量した。
結果:ラグタイムを伴うセントラルコンパートメントへの1次吸収と、それからの排泄による1コンパートメントオープンモデルがピモベンダンの性質をよく描写する。2頭の猫は消化管副作用から遅延した最小吸収のため、最終薬物動態描写より除去した。ラグタイム(0.3±0.06h)後、ピモベンダンは急速に吸収され(吸収半減期=0.2±0.08h)、排泄された(消失半減期=1.3±0.2h)。最大血漿濃度(34.50±6.59ng/mL)は高く、薬物投与後0.9hと予測した。定常状態における見かけの分布容積(生物学的利用能あたり)は大きかった(8.2±2.5L/kg)。複数投与研究は強い薬物動態モデルを示した。
結論:体重ベースで同じ量を投与した時、犬で過去に報告されたものよりも、猫ではかなり長い消失半減期と最大薬剤血漿濃度を持つ。(Sato訳)
■犬の大動脈血栓症:31症例(2000-2010)
Aortic thrombosis in dogs: 31 cases (2000-2010).
J Am Vet Med Assoc. October 2012;241(7):910-5.
Geri A Lake-Bakaar; Eric G Johnson; Leigh G Griffiths
目的:犬の大動脈血栓症の臨床症状、治療、転帰を述べる
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:大動脈血栓症の犬31頭
方法:記録を回顧的に再調査し、シグナルメント、それまでの症状、身体検査所見、検査所見、確定診断、併発疾患の有無についてデータを集めた。
結果:大動脈血栓症の臨床的あるいは死後診断を受けた31頭の記録を再検討した。臨床症状の発現は、14頭(45%)が急性、15頭(48%)が慢性で、2頭(6%)は記述がなかった。股動脈脈拍は6頭(19%)が主観的に弱く、17頭(55%)は消失していた。多く認められた検査結果異常は、高いBUN濃度(n=13)、クレアチニン濃度(6)、クレアチニンキナーゼ活性(10)、D-dimer濃度(10)、尿蛋白-クレアチニン比>0.5のタンパク尿(12)だった。同時に見られた状況として、腫瘍(n=6)、コルチコステロイドの最近の投与(6)、腎疾患(8)、心臓疾患(6)があった。生存期間中央値は臨床症状が急性発現の犬(1.5日;範囲、0-120日)と比べて慢性発現の犬(30日;範囲0-959日)の方が有意に長かった。
結論と臨床関連:大動脈血栓症は犬で珍しい疾患で、研究期間中に病院に入院した動物の0.0005%を占めるに過ぎない。大動脈血栓症の犬の臨床症状は、猫で見られるものと違っていた。生存期間中央値は急性疾患の犬と比べて慢性疾患の犬の方が有意に長かった。治療にかかわらず、結果は典型的に悪いが、長期間生存する犬もいた。(Sato訳)
■健康な猫における左房および左室機能の心エコー数値に対する鎮静の影響
Effects of sedation on echocardiographic variables of left atrial and left ventricular function in healthy cats.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):678-85.
Jessica L Ward; Karsten E Schober; Virginia Luis Fuentes; John D Bonagura
猫の心エコー検査でコンプライアンスを容易にするため鎮静が使用されることも多いが、心エコー数値に対する鎮静剤の影響はあまり述べられていない。
この研究では健康な猫の心エコー指数に対する2つの鎮静プロトコールの影響を調査し、特に左房サイズと機能、左室拡張パフォーマンスの評価に重点を置いた。
7頭の猫にアセプロマジン(0.1mg/kg、IM)とブトルファノール(0.25mg/kg、IM)、あるいはアセプロマジン(0.1mg/kg、IM)とブトルファノール(0.25mg/kg、IM)とケタミン(1.5mg/kg、IV)で鎮静をかける前後に心エコー検査(経胸腔二次元、スペクトラルドップラー、カラーフロードップラー、組織ドップラー画像検査)を行った。
アセプロマジン/ブトルファノール/ケタミン投与後の心拍数は有意に増加し(増加の平均±SD、40±26回/分)、アセプロマジン/ブトルファノール投与後の非観血的収縮期血圧は有意に低下した(低下の平均±SD、12±19mmHg)。心エコー数値のほとんどは、鎮静後を基線値と比較して有意差がなかった。両プロトコールは左室拡張末期径を軽度縮小させ、左室拡張末期壁厚を軽度増大させた。
以上からこの研究は、それらの鎮静プロトコールが心エコー測定値に対して臨床的に意味のある影響を及ぼさないことを示し、アセプロマジン、ブトルファノールおよび/あるいはケタミンによる鎮静が健康な猫の心エコー検査を容易にする手助けとなると思われた。(Sato訳)
■自然発生の後天性の僧帽弁粘液腫様変性疾患の犬における咳のリスク要因
Risk Factors for Coughing in Dogs with Naturally Acquired Myxomatous Mitral Valve Disease.
J Vet Intern Med. 2013 Feb 9. doi: 10.1111/jvim.12039. [Epub ahead of print]
Ferasin L, Crews L, Biller DS, Lamb KE, Borgarelli M.
背景 咳は、慢性の変性性の粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)の犬における鬱血性心不全(CHF)の主要な臨床症状として報告されている。またこれらの動物において、併発する気道疾患と大きくなった左心房による左主気管の圧迫が、咳の原因として考えられている。
目的 自然発生の後天性のMMVDに罹患した犬において、咳と、CHF、異常なX線の気道パターン、心肥大といった他の可能性のある原因との関係を明らかにすること
動物 206頭の病院に来院した犬
方法 MMVDに罹患し、かつ超音波検査と胸部X線検査を含む全ての心臓の評価を実施した犬のカルテを後向きに検討した。
結果 単変量解析では、CHFは咳の予測因子ではなく(OR = 1.369; 0.723, 2.594)、異常なX線の気道パターン(OR = 3.650; 2.051, 6.496)とX線上(OR = 3.637; 1.904, 6.950)または超音波検査(OR = 2.553; 1.436, 4.539)によって左心房が大きくなっている事がMMVDの犬の咳と有意に関連していた。多変量解析においても同様のリスク因子が有意であった。
結論と臨床的意義 この研究は、MMVDの犬において咳とCHFが有意には関連していないことを示唆する。しかし、X線検査における異常な気道パターンと左心房の拡大は、咳と関連していた。こうした犬においてCHFの診断と臨床的な管理を考える際には、この重要な結果を考慮にいれるべきである。(Dr.Taku訳)
■健康で若いスフィンクスの成猫における心エコーパラメーター
Echocardiographic parameters in healthy young adult Sphynx cats.
Schweiz Arch Tierheilkd. February 2012;154(2):75-80.
E Mottet; C Amberger; M G Doherr; C Lombard
この回顧的研究の目的は、鎮静させていない健康な若い成猫のスフィンクスにおける2-次元(2D)およびモーション-モード(M-モード)心エコーパラメーターの正常参照値を決定することと、家猫短毛種(DSH)のそれと比較することだった。
繁殖前に131頭のスフィンクスの心臓スクリーニング検査を行った。30頭の健康な家猫成猫をコントロール群とした。完全な心臓超音波検査を、全ての猫の右傍胸骨長軸および短軸像を用いて行った。スフィンクスと健康なDSHとの心エコーパラメーターの違いはわずかだった。2DおよびM-モードでの左房(LA)径、M-モードで測定した左房/大動脈(LA/Ao)比と収縮時の左室内径(LVIDs)のみ異なっていた。
結論として、スフィンクスの心臓は特定の2-D心エコー所見を示すことも多いが、M-モードの心臓径はDSHのそれらと同様である。(Sato訳)
■肥満犬における超音波検査による左室の肥大の証拠
Echocardiographic Evidence of Left Ventricular Hypertrophy in Obese Dogs.
J Vet Intern Med. 2012 Nov 29. doi: 10.1111/jvim.12018. [Epub ahead of print]
Mehlman E, Bright JM, Jeckel K, Porsche C, Veeramachaneni DN, Frye M.
背景:ヒトにおいては肥満による心筋症が生じるが、犬において肥満に対する心筋の肉眼的および細胞の反応については不明である。
目的:正常血圧の肥満犬においてin vivoで心筋の形態や機能を明らかにし、肥満犬の剖検においてコラーゲン、中性脂肪、心筋の断面積 (CSA)を定量すること。
動物:病歴も身体検査上も何らかの疾患がない正常血圧の肥満犬(n=19)と、年齢が一致していて理想的な体重の痩せた健常犬(n=19)の超音波検査によるドップラー測定値。剖検データについては、心疾患が明らかではなかった4頭の肥満犬と12頭の痩せた犬から得た。
方法:心筋の形態と機能については前向き観察研究を、超音波検査によるドップラー測定によって行なった。左室(LV)の組織は、中性脂肪、コラーゲン、筋細胞のCSAの定量のために集めた。
結果:痩せた健常犬と比較して、肥満犬は、収縮期血圧が上昇しており(肥満153 ± 19 mm Hg、健常133 ± 20 mm Hg、 P = .003)、拡張末期(肥満 9.9 ± 1.8 mm、健常 8.7 ± 1.5 mm、 P = .03)および収縮末期(肥満 15.2 ± 2.3 mm、健常 12.9 ± 2.3 mm、 P = .004)の左室自由壁の厚さが増加していた。等容性弛緩時間は、正常範囲と比較して、肥満犬の7/19(37%)において延長していた。心筋の中性脂肪とコラーゲンの量および筋細胞CSAは、両群において同等であった。
結論と臨床的意義:ヒトのように、LVの肥大と拡張機能不全は肥満犬において早期の心筋の変化となりうる場合がある。(Dr.Taku訳)
■心不全の猫に対するピモベンダン経口投与の効果
Effect of oral administration of pimobendan in cats with heart failure.
J Am Vet Med Assoc. July 2012;241(1):89-94.
Sonya G Gordon; Ashley B Saunders; Risa M Roland; Randolph L Winter; Lori Drourr; Sarah E Achen; Crystal D Hariu; Ryan C Fries; May M Boggess; Matthew W Miller
目的:心室収縮機能不全を特徴とする心不全の猫で、臨床および心エコー検査変数、生存期間に対しピモベンダン経口投与の影響を判定する
構成:後ろ向きコホート研究
動物:ピモベンダンを投与している(平均±SD投与量、0.26±0.08mg/kg、PO、q12h)心不全の飼育されている猫27頭(オス16頭、メス11頭)
方法:病歴、検査結果、診断画像所見、受けている治療、生存期間に関する情報を、心疾患のためにピモベンダンを投与されている猫の医療記録から入手した。可能な時は、追加の経過情報を主治医およびオーナーに対する電話聞き取りで入手した。
結果:全ての猫の平均±SD年齢は8.9±5.2歳だった。全ての猫はいくつかの心臓の薬物投与を受けていた。心疾患のタイプは分類不能の心筋症(CM;n=11(41%)、拡張型心筋症(8(30%))、催不整脈性右室心筋症(4(15%))、うっ血性心疾患(3(11%))、領域運動低下を伴う肥大型心筋症(1(4%))だった。全ての猫は心室収縮機能不全だった。僧帽弁の収縮期前方運動がある1頭の猫は、ピモベンダンの投与開始後に重度低血圧を起こし、生存率分析から除外した。生存期間中央値は167日(95%信頼区間、32-339日)だった。
結論と臨床関連:いろいろな原因の心室収縮機能不全を特徴とする心不全の猫に対し、ピモベンダンは十分許容すると思われた。僧帽弁の収縮期前方運動のある猫では、ピモベンダンを投与すると全身性低血圧を起こすかもしれない。うっ血性心不全の猫の治療に推奨できるようになる前に、ピモベンダンの用量とその効果を確認する追加研究が必要である。(Sato訳)
■中等度の心不全の犬に対するロスバスタチンによる長期単独療法の多面的効果
Pleiotropic Effects of Long-Term Monotherapy with Rosuvastatin in Dogs with Moderate Heart Failure.
Cardiology. 2012 Oct 31;123(3):160-167.
Zaca V, Mishra S, Gupta RC, Rastogi S, Sabbah HN.
目的:本研究の目的は、中等度の心不全 (HF)の犬の左心室 (LV)の心筋におけるロスバスタチン (RSV)の多面的効果の可能性について調査することである。
方法:低用量のRSV (7頭)、高用量のRSV (7頭)または治療無し(コントロール, 7頭)をランダムに選択し3ヶ月治療されたHF犬または7頭の健常犬から、LV組織を採取した。炎症誘発性サイトカインであるIL-6、骨髄由来幹細胞マーカーであるcKitおよびSca1、血管内皮増殖因子(VEGF)および繊維芽細胞増殖因子(FGF)、一酸化窒素合成酵素 (NOS)のアイソフォームに加えて、肥大促進因子であるNGFI-A結合蛋白1 (Nab1)、ホスファターゼテンシンホモログ (PTEN)、ホスフイノシチド3キナーゼ (PI3K)、哺乳類ラパマイシン標的蛋白 (mTOR)のmRNAと蛋白発現を測定した。
結果:Nab1, PTEN, PI3K, mTORおよびIL-6はコントロールにおいて上昇していた。高用量のRSVは、Nab1, PTEN, PI3K, mTORおよびIL-6の発現を正常値近くまで低下させた。健常犬と比較してコントロール犬のcKitおよびSca1は有意に増加し、VEGFとFGFは減少した。RSV療法は、さらにcKit, Sca1, VEGFおよびFGFの発現を増加させた。高用量のRSVは、NOSのアイソフォームの発現を正常にした。
結論:こうしたRSVの多面的効果は、部分的には、LVの機能と構造のリモデリングに対して示されるよい効果の説明になるだろう。(Dr.Taku訳)
■5頭の犬のピモベンダン中毒の疑いに続発する心血管作用の臨床症状
Clinical signs of cardiovascular effects secondary to suspected pimobendan toxicosis in five dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Jul-Aug;48(4):250-5.
L Noelani Reinker; Justine A Lee; Lynn R Hovda; Mark Rishniw
この研究の目的は、大量のピモベンダン摂取が疑われる、あるいは分かっている犬の医療記録を再調査し、ピモベンダン中毒に関係する臨床症状を述べることである。
ミネソタ州ミネアポリスにあるアニマルポイズンコントロールセンターのペットポイズンヘルプラインのデータベースで、2004年11月から2010年4月までのピモベンダン中毒を含む症例を検索した。
合計98症例が確認された。そのうち2.6mg/kgから21.3mg/kgの量を摂取した7頭の犬を選び、さらに評価した。臨床症状は重度頻脈(4/7)、低血圧(2/7)、高血圧(2/7)を含む心血管異常だった。2頭の犬には臨床症状が見られなかった。
広い安全性のプロフィールにもかかわらず、ピモベンダンの大量摂取は個々のペットに対しリスクが存在するかもしれない。催吐および活性炭の投与などの迅速な除染は無症候の患者に勧められる。
対症および支持療法は、低血圧の治療、必要分の水和のための静脈輸液の使用、高用量ピモベンダン中毒に対する血圧および心電図モニタリングを含めるべきである。
臨床医は高用量ピモベンダン中毒に関係する臨床症状を知っておくべきである。ここで報告した犬は、全頭入院し、支持療法に反応し、摂取から24時間以内に退院した。(Sato訳)
■症状のある僧帽弁疾患の犬において、治療に対してアミノ末端pro-B型ナトリウム利尿ペプチド量が低下することは生存を予測する
Lowered N-terminal pro-B-type natriuretic peptide levels in response to treatment predict survival in dogs with symptomatic mitral valve disease.
J Vet Cardiol. 2012 Aug 1.
Wolf J, Gerlach N, Weber K, Klima A, Wess G.
目的 鬱血性心不全(CHF)のヒトでは、治療を始めた後のナトリウム利尿ペプチド(NP)量がより低い事、減少率が大きい程、予後が良い事と関連している。そのため、この研究の目的は、アミノ末端pro-B型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)とpro心房性ナトリウム利尿ペプチド31-67 (ProANP31-67)の絶対値と相対変化と、症状のある粘液変性性僧帽弁疾患 (MMVD)の動物における心臓に関連した生存期間の関係を明らかにすることである。さらに、12ヶ月生存した群と非生存群の臨床的および心臓の超音波検査上の特徴を比較した。
動物、材料と方法 MMVDによるCHFの26頭の犬。治療開始後7日および30日の間のNP量の絶対濃度および変化率、心不全(HF)クラスだけではなく、最初のNP濃度を、心臓に関連した生存期間の潜在的な予測因子として検討した。さらに心臓の超音波検査のパラメーター、クレアチニン濃度、フロセミドの用量を12ヶ月生存群と非生存群の間で比較した。
結果 治療後のNT-proBNP量が965 pmol/l以下の犬は、965 pmo/l以上の犬よりも、有意に長い生存期間を示した(P = 0.03)。HFのクラスが高いほど、NP量に非依存的に、生存がより短くなる可能性が高かった(P = 0.03)。犬を12ヶ月生存によって群分けすると、治療後のNT-proBNP量のみが両群において有意に異なっていた。
結論 来院時のHFクラスと治療開始後のNT-proBNP量は、症状のあるMMVDの犬の致死が予測できる。ProANP 31-67の濃度、NP量の低下の割合、クレアチニンや尿素の濃度、心臓の超音波検査のパラメーター、フロセミドの用量は、転帰を予測しなかった。(Dr.Taku訳)
■症状発現前の慢性心臓弁膜症の犬38頭に対するカルベジロール投与の回顧的レビュー
Retrospective review of carvedilol administration in 38 dogs with preclinical chronic valvular heart disease.
J Vet Cardiol. March 2012;14(1):243-52.
Sonya G Gordon; Ashley B Saunders; Crystal D Hariu; May M Boggess; Matthew W Miller
目的:前臨床的(ACVIMステージB)慢性心臓弁膜疾患(CVD)の犬の臨床的および心エコー検査パラメーター、結果に対するカルベジロール投与の効果を報告する。
動物、材料と方法:38頭のオーナー所有犬の回顧的症例シリーズ。個体群統計、身体検査と診断的画像所見、血圧(BP)、投与方法の詳細、結果を、前臨床的CVDのためにカルベジロールを投与した犬の医療記録から入手した。可能な時は、追加追跡情報を担当獣医師およびオーナーへの電話調査で入手した。
結果:基本となるデータとその後の経過データを評価した。年齢と体重に対する中央値および四分位数間領域(IQR)は8.6(7.2-10.8)歳、8.5(7.6-9.6)kgだった。38頭中14頭はオス、33頭はキャバリアキングチャールズスパニエル、33頭はステージB2 CVDだった。カルベジロールの開始投与量は、0.31(0.26-0.35)mg/kg1日2回POだった。その後に到達したカルベジロール投与量は、1.11(0.81-1.32)mg/kg1日2回だった。滴定までの間に副作用は記録されなかった。全ての犬の生存期間中央値は48.5ヶ月、95%信頼区間は38.3-58.6だった。
結論:この研究では、前臨床的CVDの小型犬で、ここで報告された投与量のカルベジロールはよく許容することを示唆する。効果を評価するための前向き研究が必要とされる。(Sato訳)
■健康な猫と肥大型心筋症の猫における心拍数と左室機能に対するイバブラジンの効果
Effects of ivabradine on heart rate and left ventricular function in healthy cats and cats with hypertrophic cardiomyopathy.
Am J Vet Res. February 2012;73(2):202-12.
Sabine C Riesen; Karsten E Schober; Danielle N Smith; Cristiane C Otoni; XiaoBai Li; John D Bonagura
目的:健康な猫および肥大型心筋症(HCM)の猫の心拍数(HR)、左室(LV)収縮および拡張機能、左房パフォーマンスに対するペースメーカー奇異性電流(I(f))抑制剤イバブラジンの効果を評価する
動物:健康な猫6頭と無症状HCMの猫6頭
方法:麻酔下の猫に心臓カテーテルを設置し、エスモロール(200-400μg/kg/min、IV)、エスモロールとドブタミン(5μg/kg/min、IV)、イバブラジン(0.3mg/kg、IV)、イバブラジンとドブタミンの投与で誘発した血行力学的状態の範囲を研究した。左室収縮および拡張機能、心拍出量、左房機能をカテーテルベース法および心エコー検査で研究した。
結果:イバブラジンの投与は、HCMの猫のHR、心筋仕事量、LV収縮機能を有意に低下させ、LV拡張終期圧、LV拡張終期壁応力、LV弛緩時定数(tau)を有意に増加させた。イバブラジンとドブタミンの同時投与は、カテコラミンの鈍い変時性効果を伴うLV収縮性と拡張機能を有意に向上させた。HCMの猫の左房パフォーマンスは、イバブラジン投与で有意に変化しなかった。回帰分析で、HCMの猫のLV圧上焦の最大率とtauの間に関係を認めた。
結論と臨床的関連:イバブラジンは麻酔下のHCMの猫のいくつかの心血管変数に有意に影響した。覚醒しているHCMの猫で、それらの所見を臨床的に確認する研究が必要である。(Sato訳)
■猫の超音波ガイド下による連続経腹部心臓バイオプシー
Ultrasound-guided serial transabdominal cardiac biopsies in cats.
Vet J. March 2012;191(3):341-6.
Vivian J van Essen; Joost J Uilenreef; Viktor Szatmari; Edwin J B Veldhuis Kroeze; Raoul V Kuiper; Jan Rothuizen; Jan Rothuizen; Alain de Bruin
猫の心筋症のメカニズムを解明するために、同一個体内の形態および分子的変化を研究する間、猫の左室の異なる場所から連続したバイオプシーを得るための経皮/経横隔膜コア針バイオプシー法を開発した。
超音波ガイダンスで麻酔をかけた健康な29頭の成猫から経壁左室心筋サンプルを入手した。18G のオートマチックバイオプシー針を、最後肋骨と胸骨の間から横隔膜を通って胸腔に刺入した。バイオプシーは左室壁から採取した。5頭の猫で4週間間隔の3度の単回バイオプシーを実施した。連続バイオプシーを行った3頭を含む6頭の猫を剖検した。
心機能あるいは心臓の構造に対する長期的影響もなく、合計87検体を採取した。バイオプシーは一時的単一心室期外収縮複合体とタンポナーデではない心膜液貯留を起こした。剖検で横隔膜に少量の繊維結合組織を認め、心臓には隣接筋肉組織に有意な顕微鏡的病変がないことが分かった。良質なバイオプシー素材は形態および分子的研究に適していた。
以上から、この低侵襲の超音波ガイド下心バイオプシー法は、実験現場で猫心筋症を研究するための連続バイオプシーを安全に採取できる。(Sato訳)
■小型犬の人工心肺下における僧帽弁修復:48症例(2006-2009)
Mitral valve repair under cardiopulmonary bypass in small-breed dogs: 48 cases (2006-2009).
J Am Vet Med Assoc. 2012 May 15;240(10):1194-201.
Uechi M, Mizukoshi T, Mizuno T, Mizuno M, Harada K, Ebisawa T, Takeuchi J, Sawada T, Uchida S, Shinoda A, Kasuya A, Endo M, Nishida M, Kono S, Fujiwara M, Nakamura T.
目的:小型犬の僧帽弁閉鎖不全に対し、人工心肺下の僧帽弁修復(MVR)が有効な治療かどうかを判定する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:2006年8月から2009年8月の間に手術を行った僧帽弁閉鎖不全の小型犬48頭(体重1.88-4.65kg;年齢5-15歳)
方法:人工心肺回路により人工心肺を実施した。心停止を誘発後、僧帽弁輪形成を実施し、腱索を人工のゴアテックス腱で置換した。左房の閉鎖と心臓再スタートのため斜断解除後、胸部を閉鎖した。
結果:術前の心雑音はグレード3/6から6/6で、胸部エックス線検査は心臓の拡大(胸骨心臓サイズ中央値、12.0 vertebrae;範囲9.5-14.5vertebrae)を示し、心エコー検査では重度僧帽弁逆流と左房拡大(左房と大動脈根の比の中央値、2.6;範囲1.7-4.0)を示した。48頭中45頭は生存して退院した。手術から3か月後、心雑音はグレード0/6から3/6に減少し、胸部エックス線写真の心陰影は減少した(胸骨心臓サイズ中央値11.1v、範囲、9.2-13.0v)。心エコー検査で僧帽弁逆流と左房と大動脈根の比(中央値、1.7;範囲、1.0-3.0)の顕著な減少を確認した。
結論と臨床的関連:著者らは小型犬で人工心肺下において僧帽弁修復を実施し、成功した。これは僧帽弁閉鎖不全の犬で有効な外科的治療かもしれないと示唆される。人工心肺下の僧帽弁修復は、小型犬の僧帽弁閉鎖不全の治療で有益と思われる。(Sato訳)
■動脈血栓塞栓症:リスク、現実性、合理的な初期アプローチ
Arterial Thromboembolism: Risks, realities and a rational first-line approach.
J Feline Med Surg. 2012 Jul;14(7):459-70.
Fuentes VL.
実際の関連性: 猫の動脈血栓塞栓症(ATE)は一般的であり、心筋疾患の重篤な併発症であり、多くの場合安楽死が必要となる。左房内の内皮の機能不全と血液の鬱滞によって局所における血小板の活性化と血栓の形成が生じる。血栓塞栓は、影響を受けた血管床に重度な虚血を引き起こす。大動脈の終末における典型的な「サドル血栓」がある場合、診断は通常身体検査によって行なわれる。重度の虚血によって影響された複数の肢をもった猫の予後は悪いが、一肢しか罹患していない場合や、運動機能が残っている場合は、かなり良い。
患者群:心筋症による二次的な左房肥大のある猫は罹患しやすく、甲状腺機能亢進症、肺の腫瘍、僧帽弁上の狭窄がある猫もリスクが高い。
管理:鎮痛が最も優先され、重度の痛みがある場合は、メタドンまたはフェンタニルの持続点滴で管理されるべきである。鬱血性心不全(CHF)は、フロセミドによる治療を必要とするが、痛みによる頻呼吸はCHFの症状と似ている。血栓溶解療法は推奨されず、抗血栓療法をできるだけ早く始めるべきである。 アスピリンとクロピドグレルが良好な耐用性を示す。
根拠: ATEの観察研究がいくつか報告されている。ATEの治療についても予防についても、リスクのある猫において無作為盲検は報告されていない。猫におけるアスピリンとクロピドグレルを比較する研究は現在行なわれている。(Dr.Taku訳)
■犬の変性性僧帽弁疾患における肺高血圧症
Pulmonary hypertension in canine degenerative mitral valve disease.
J Vet Cardiol. March 2012;14(1):149-64.
Heidi B Kellihan; Rebecca L Stepien
変性性僧帽弁疾患に続発する肺高血圧は、獣医療で長年臨床的に認識されており、この症候群の臨床診断は、心エコー検査やドップラー心エコー検査の普及により非常に高まっている。僧帽弁疾患のこの合併症の治療に内科療法が利用でき、タイムリーな診断が寿命およびQOLにより重要である。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患の犬におけるうっ血性心不全の最初の発現の予測:予測コホート研究
Prediction of first onset of congestive heart failure in dogs with degenerative mitral valve disease: The PREDICT cohort study.
J Vet Cardiol. March 2012;14(1):193-202.
Caryn A Reynolds; Dorothy Cimino Brown; John E Rush; Philip R Fox; Thaibihn P Nguyenba; Linda B Lehmkuhl; Sonya G Gordon; Heidi B Kellihan; Rebecca L Stepien; Bonnie K Lefbom; C Kate Meier; Mark A Oyama; Mark A Oyama
目的:変性性僧帽弁疾患(DMVD)の犬におけるうっ血性心不全(CHF)の初発に対するリスクファクターを判定する
動物:DMVDによる二次的なCHFがある、またはない犬82頭を誘導群に回顧的に振り分けた。無症候性DMVDの犬65頭を前向き確認手段に補充した。
方法:犬のCHFのリスクに関係する変数を誘導群で確認し、予測モデルの構築に使用し、その後確認群の縦断研究を通して前向きに研究した。
結果:誘導群のロジスティック回帰分析で、左房:大動脈根の径比(LA:Ao)、NT-proBNPの血漿濃度を含む予測モデルを産出した。このモデルを確認集団に前向きに適用した時、69.2%の症例でCHFの最初の発症を正確に予測した。確認集団の分析で、血漿NT-proBNP濃度と左室拡張末期径指数(LVIDd:Ao)はDMVDの犬のCHFの最初の発症に対する独立したリスクファクターだと示された(NT-proBNP≧1500pmol/L、オッズ比(OR)、5.76、95%信頼区間(CI)、1.37-24.28、P=0.017;LVIDd:Ao≧3、OR、6.11、95%CI、1.09-34.05、P=0.039)。
結論:左心の大きさ、血漿NT-proBNP濃度の測定は、DMVDの犬のCHFの最初の発症のリスクを別々に評価することができる。それらのパラメーターは、DMVDの犬の管理に役立つだろう。(Sato訳)
■幼少期の肥満、成人期の肥満、心血管リスクファクター
Childhood adiposity, adult adiposity, and cardiovascular risk factors.
N Engl J Med. November 2011;365(20):1876-85.
Markus Juonala; Costan G Magnussen; Gerald S Berenson; Alison Venn; Trudy L Burns; Matthew A Sabin; Sathanur R Srinivasan; Stephen R Daniels; Patricia H Davis; Wei Chen; Cong Sun; Michael Cheung; Jorma S A Viikari; Terence Dwyer; Olli T Raitakari
背景:幼少期の肥満は、心血管リスクの増加に関係する。このリスクは幼少期の過体重あるいは肥満だったが成人期で肥満ではない人において減ずるのかは不明である。
方法:著者らは幼少期および成人期ボディ-マス指数(BMI、体重(kg)/身長(m)の二乗)を測定した4つの前向きコホート研究からのデータを分析した。追跡調査の平均期間は23年だった。高い体脂肪蓄積状態を定義するため、過体重および肥満に対する国際的年齢特異および性別特異BMIカットオフポイントを子供に使用し、BMIカットオフポイント30を成人に適用した。
結果:6328人の被検者からデータを得た。幼少期から成人期まで一貫して高い体脂肪蓄積状態にあった被検者は、幼少期に正常なBMIだった人および成人期に非肥満の人と比較して、2型糖尿病(相対リスク、5.4;95%信頼区間(CI)、3.4-8.5)、高血圧(相対リスク、2.7;95%CI、2.2-3.3)、低密度リポ蛋白コレステロール濃度の上昇(相対リスク、1.8;95%CI、1.4-2.3)、高密度リポ蛋白コレステロール濃度の低下(相対リスク、2.1;95%CI、1.8-2.5)、トリグリセリド濃度の上昇(相対リスク、3.0;95%CI、2.4-3.8)、頸動脈アテローム性動脈硬化(頸動脈の内膜-中膜厚の増加)(相対リスク、1.7;95%CI、1.4-2.2)のリスクが増加した(全てP≦0.002)。幼少期に過体重あるいは肥満だったが成人期は非肥満の人は、幼少期から成人期まで一貫して正常なBMIの人の結果のリスクと同じだった(全てP>0.20)。
結論:幼少期に過体重あるいは肥満で成人期も肥満の人は、2型糖尿病、高血圧、異脂肪血症、頸動脈アテローム性動脈硬化のリスクが増加していた。幼少期に過体重あるいは肥満で成人期は非肥満となった人のそれらのリスクは、今まで肥満ではなかった人と同様だった。(Sato訳)
■不整脈の犬におけるアミオダロンの使用の回顧的評価(2003-2010)
Retrospective evaluation of the use of amiodarone in dogs with arrhythmias (from 2003 to 2010).
J Small Anim Pract. January 2012;53(1):19-26.
B Pedro; J Lopez-Alvarez; S Fonfara; S Fonfara; H Stephenson; J Dukes-McEwan
目的:上室性および心室性不整脈の犬におけるアミオダロンの効果を評価し、治療犬における副作用を述べる。
方法:治療前後、経過観察中のアミオダロン投与に対する指標、心拍数、ALP、ALT、チロキシン(T4)、甲状腺刺激ホルモン値を述べるため、28頭の犬の記録を回顧的に検索した。
結果:上室性不整脈の犬16頭と心室性不整脈の犬12頭をアミオダロンで治療した。アミオダロン療法は26頭の犬の心拍数を有意に減少させ(P<0.001)、不整脈と臨床症状の程度を改善させた。治療前と治療後でALP(P=0.596)、ALT(P=0.842)、T4(P=0.789)、甲状腺刺激ホルモン(P=0.064)に有意差はなかった。維持療法で、アミオダロン血中濃度中央値は、0.8mg/L(範囲0.2-11.6mg/L)で容認される参照値範囲(0.5-2.0mg/L)内だったが、大多数のデスエチルアミオダロン濃度は0.1mg/L(範囲0.1-0.9mg/L)で、ヒトの参照値間隔(0.5-2.0mg/L)をもとにすると正常以下だった。
臨床的意義:一般的な抗不整脈薬で効果がない、あるいは禁忌の時、犬の上室性および心室性不整脈の治療でアミオダロンは有効で安全な代替薬とおもわれる。(Sato訳)
■1頭の猫で疑われたバルトネラ関連心筋炎と上室性頻脈
Suspected Bartonella-associated myocarditis and supraventricular tachycardia in a cat.
J Vet Cardiol. December 2011;13(4):277-81.
Reid K Nakamura; Sarah A Zimmerman; Michael B Lesser
通常の身体検査で確認された頻脈性不整脈を呈す4歳メスの避妊済み家猫短毛種を評価した。上室性頻脈(SVT)を心電図検査(ECG)で確認した。心エコー検査では構造的心疾患は見つからなかった。血清学的検査でバルトネラ陽性抗体価を確認した。その猫は、SVTの管理のための抗不整脈薬、バルトネラに対するアジスロマイシンで治療した。抗生物質療法完了後、バルトネラ抗体価は1/4に低下し、最終的に抗不整脈薬を中止した。治療中止から1週間、1か月、3か月後の再検査で、SVTは確認されなかった。(Sato訳)
■大動脈肺動脈側枝を伴う肺動脈閉鎖と心室中隔欠損を持つ1頭の犬
Pulmonary atresia and ventricular septal defect with aortopulmonary collaterals in an adult dog.
J Vet Cardiol. December 2011;13(4):271-5.
Sandra P Tou; Bruce W Keene; Piers C A Barker
肺動脈閉鎖および心室中隔欠損(PA-VSD)を、2歳の去勢済みテリアの雑種で診断した。経胸郭心エコー検査で大きな心室中隔欠損、騎乗大動脈および重度右室肥大を認めた。主肺動脈は確認できず、肺動脈閉鎖あるいは総動脈幹開存に一致した。経食道心エコー検査および血管造影で下行性胸大動脈から起こる大動脈肺動脈側副循環を伴うPA-VSDを確認した。この症例報告は、1頭の成犬で珍しい先天性欠損のPA-VSDの生前診断を述べる。(Sato訳)
■長距離ランニングレース中の心停止
Cardiac arrest during long-distance running races.
N Engl J Med. January 2012;366(2):130-40.
Jonathan H Kim; Rajeev Malhotra; George Chiampas; Pierre d'Hemecourt; Chris Troyanos; John Cianca; Rex N Smith; Thomas J Wang; William O Roberts; Paul D Thompson; Aaron L Baggish; Race Associated Cardiac Arrest Event Registry (RACER) Study Group
背景:アメリカでは毎年約2百万人が長距離ランニングレースに参加している。レースに関連する心停止の報告はこの行事の安全性について懸念を生じさせている。
方法:著者らは2000年1月1日から2010年5月31日までにアメリカでのマラソンおよびハーフマラソンに関係する心停止の発生率と結果を調査した。生存者、死亡者の近親者へのインタビュー、医療記録の再調査、剖検データの分析により臨床特性を判定した。
結果:1090万人のランナーのうち、59人(平均±SD年齢、42-13歳;51人男性)が心停止を起こした(発生率、0.54/100000参加者;95%信頼区間、0.41-0.70)。大多数の心停止の原因は循環器病だった。ハーフマラソン中(0.27/100000人;95%信頼区間、0.17-0.43)よりマラソン中(1.01;95%信頼区間、0.72-1.38)、女性(0.16;95%信頼区間、0.07-0.31)よりも男性(0.90;95%信頼区間、0.67-1.18)で発生率は有意に高かった。最も高いリスク群の男性マラソンランナーは、研究した10年間の後半で心停止の発生率が増加していた(2000-2004年、0.71/100000人;95%信頼区間、0.31-1.40;2005-2010年、2.03/100000人;95%信頼区間、1.33-2.98;P=0.01)。心停止の59例のうち、42例(71%)は致死的(発生率、0.39/100000人;95%信頼区間、0.28-0.52)だった。完全な臨床データがそろった31例の中で、関係者による心肺蘇生の開始、肥大型心筋症以外の基礎疾患の有無が、生存性を最も強く予測するものだった。
結論:マラソンおよびハーフマラソンの心停止および突然死の総合的リスクは低い。最も一般的に肥大型心筋症あるいはアテローム性冠動脈疾患が関係する心停止は、主に男性マラソン参加者に発生する;この群の発生率はこの10年で増加していた。(Sato訳)
■進行した心不全の犬3頭におけるループ利尿薬トルセミドの使用
Use of the loop diuretic torsemide in three dogs with advanced heart failure.
J Vet Cardiol. December 2011;13(4):287-92.
Mark A Oyama; Gordon D Peddle; Caryn A Reynolds; Gretchen E Singletary
利尿薬は心不全の犬の治療の主軸である。進行した心不全の犬において、フロセミドのようなループ利尿薬の中-高用量は、うっ血性心不全の症状を促進する神経内分泌系の顕著な活性化のような影響を減ずるのに使用される。ループ利尿薬トルセミドは、長い半減期、利尿作用の効果増大、抗アルドステロン効果など、進行した心不全の治療に対して適したいくつかの特性を持つ。この症例報告は進行した心不全で明らかなフロセミドの耐性を持つ3頭の犬に対するトルセミドの投与を詳述する。(Sato訳)
■拡張型心筋症の犬におけるQRS間隔と生存性の関係:266頭の臨床症例の回顧的研究
Association of QRS duration and survival in dogs with dilated cardiomyopathy: A retrospective study of 266 clinical cases.
J Vet Cardiol. December 2011;13(4):243-9.
Brigite M Pedro; Joana V Alves; Peter J Cripps; Peter J Cripps; Mike J Stafford Johnson; Mike W S Martin
目的:拡張型心筋症(DCM)の犬におけるQRS間隔と生存期間の関連を研究することにより、その予後的価値を調査すること
方法:DCMと診断された犬の医療記録から良質のECG記録があるものを回顧的に選抜した。ECG記録からQRS間隔を測定し、2つの異なるモデルを
使用した:2値変数(犬をQRS間隔<60ms、または≧60msの2群に振り分けた)および連続変数。生存期間は、カプラン-マイヤー法およびCox比例ハザードモデルで分析した。
結果:266頭の犬が基準にあった。60ms以上のQRS間隔は、60ms未満の犬よりも生存期間短縮に関係した(ハザード比1.34、95%信頼区間1.05-1.71、P=0.02)。持続変数を考慮した時、ハザード比は1msのQRS間隔増加につき1.015だった(95%信頼区間1.006-1.024、P=0.001)。60ms未満のQRS間隔の犬の生存期間中央値(IQ range)は25週間(97-65)で、60ms以上のQRS間隔の犬では13週間(3-34)だった。
結論:体表ECG記録からQRS間隔測定は比較的簡単に実施できる。60ms以上の間隔はDCMの犬の生存期間短縮に関係し、臨床家に追加の予後の情報をもたらすかもしれない。(Sato訳)
■猫5品種における肥大型心筋症の超音波検査および臨床徴候の比較:344症例の後向き研究(2001-2011年)
Comparative Echocardiographic and Clinical Features of Hypertrophic Cardiomyopathy in 5 Breeds of Cats: A Retrospective Analysis of 344 Cases (2001-2011).
J Vet Intern Med. 2012 Mar 23.
Trehiou-Sechi E, Tissier R, Gouni V, Misbach C, Petit AM, Balouka D, Carlos Sampedrano C, Castaignet M, Pouchelon JL, Chetboul V.
背景:原発性の肥大型心筋症(HCM)は、猫の心疾患で最も多く、ある品種においては遺伝性であることが示されている。しかし、品種によるHCMの型と生存を比較した研究はほとんどない。
目的:HCMの特定の品種の猫において疫学的な特徴、臨床所見、左室(LV)幾何学パターン、生存を比較することである。
動物:344頭の猫で、通常の超音波検査により原発性のHCMと診断された5品種(ペルシャ、短毛種 (DS)、スフィンクス、メインクーン (MC)、シャルトリュー)
方法:後向き研究。品種と臨床症状に従って分類した。
結果:診断時の年齢は、他の品種(DS、シャルトリュー、ペルシャで、それぞれ中央値 8.0、8.0、11.0歳齢)と比較して、MC(2.5歳齢)とスフィンクス(3.5歳齢)で低かった(P <0.01)。LV流出路障害の割合は、他の品種(115/303, 38%)と比較して、ペルシャ(23/41, 56%)において高かった(P <0.01)。最初の心臓事象が認められた年齢は、他の品種(中央値 7歳齢)と比較して、MC(2.5歳齢)において低かった(P <0.01)。15歳以上生存した猫はすべて、DS、ペルシャ、シャルトリューであった。(すべての心臓による死の24%にあたる)突然死は、3品種(DS, MC, スフィンクス)においてのみ認められた。
結論と臨床的意義:人と同じように、猫のHCMはかなり様々な表現型が認められ、それらは疫学、左室幾何学パターン、臨床経過(すなわち、診断時の年齢、最初の心臓事象、死因)という点についてそれぞれの品種に特異的な特徴がある。(Dr.Taku訳)
■一般診療において心臓血管疾患の猫の臨床症状と左房のサイズ
Clinical signs and left atrial size in cats with cardiovascular disease in general practice.
J Small Anim Pract. January 2012;53(1):27-33.
S Smith; J Dukes-McEwan; J Dukes-McEwan
目的:猫の一般臨床集団の集団特性、臨床症状、単純心エコー検査測定値を評価し、広く利用されている方法で呼吸器疾患を含む他の疾患と心疾患の猫を確実に区別する特性を見分ける
方法:心疾患(n=103)、呼吸器疾患(n=19)、正常群(n=29)を呈する猫を前向きに採用した。全ての猫は、完全な臨床検査、心エコー検査、確定診断に必要な追加診断処置を行った。猫をグループ1:心疾患±呼吸器疾患なし;グループ2:臨床症状がない心疾患;グループ3:臨床症状を伴う心疾患に分類した。心雑音、ギャロップ、不整脈の有病率と左房の大きさをグループ間で比較した。
結果:グループ3の心拍数は低いことが多かった。心雑音はグループ2でよく聴取されたが、グループ3の雑音の有病率は有意に低かった。呼吸困難、ギャロップ音、不整脈、左房径はグループ間で有意に異なっていた。
臨床意義:心拍数は猫の心不全の診断であてにならない。心不全の臨床症状がある猫で心雑音がないことが多いが、不整脈やギャロップ音はよくみられる。一般診療で左房径の心エコー測定値が16.5mm以上の場合、心不全と呼吸器疾患を区別できるかもしれない。(Sato訳)
■猫170症例におけるピモベンダンの使用(2006-2010)
Use of pimobendan in 170 cats (2006-2010).
J Vet Cardiol. December 2011;13(4):251-60.
John M MacGregor; John E Rush; Nancy J Laste; Rebecca L Malakoff; Suzanne M Cunningham; Natalie Aronow; Daniel J Hall; Justin Williams; Lori L Price
仮説/目的:ネコにおける治療的なピモベンダンの使用、投与した患者集団、可能性のある副作用を述べ、標準的な心不全療法と組み合わせたピモベンダンの投与後の臨床経過を報告する。様々な原因のうっ血性心不全を含む進行した心疾患を持つ猫は、種々の他の薬剤と組み合わせてピモベンダンを使用する時、副作用は最小限でその使用に耐えるだろうと仮説を立てた。
動物、材料と方法:自然発生の心疾患を持つ170頭の飼育猫で、そのうち164頭はうっ血性心不全があった。医療記録を再調査し、オーナーおよび紹介獣医師に経過データのため連絡を取った。収集したデータは、ピモベンダン投与量、併用した他の薬剤、身体検査時に収集したデータ、心不全の有無、副作用、心疾患の分類、心エコー検査データ、生存期間だった。初回の受診とその後の受診の間の有意性についてデータを分析した。
結果:全ての猫はピモベンダンで治療した。ピモベンダン投与量の中央値は0.24mg/kg12時間毎だった。ピモベンダンはACEI、利尿剤、抗血栓薬などの多剤併用で使用した。5頭(3%)はピモベンダンが関与する潜在的副作用があった。1頭(0.6%)は使用中止に至るほど重度の副作用が推定されていた。うっ血性心不全の猫164頭のピモベンダン開始後の生存期間中央値は151日(範囲1-870日)だった。
結論:進行した心疾患の猫で種々の併用薬剤と一緒に使用するとき、ピモベンダンをうまく許容すると思われる。猫のうっ血性心不全の治療に対する有効性を有するかどうか正確に査定する無作為コントロール研究が必要である。(Sato訳)
■腫瘍性と非腫瘍性の心嚢貯留液の鑑別に対する心臓MRI
Cardiac magnetic resonance in the differentiation of neoplastic and nonneoplastic pericardial effusion.
J Vet Intern Med. 2011 Sep-Oct;25(5):1003-9. doi: 10.1111/j.1939-1676.2011.0762.x. Epub 2011 Jul 22.
Boddy KN, Sleeper MM, Sammarco CD, Weisse C, Ghods S, Litt HI.
背景:心臓MRI(CMR)は人で心臓腫瘍に対し選択される画像診断様式である。腫瘍性心嚢貯留液(PE)は予後不良であるが、良性特発性心嚢貯留液はそうではない。確定診断は外科的介入のため重要である。しかし近現在、超音波検査と心嚢貯留液細胞診などの利用できる診断技術では不確定である。
仮説/目的:心嚢貯留液と関連した心MRIの所見を記述し、心嚢貯留液の良性と腫瘍性原因の鑑別においてCMRは役立つかどうかを決定する、
動物:経胸壁心エコー法(TTE)で心嚢液貯留を診断した8頭の飼い主が所有する犬
方法:心臓MRIは1.5Tで実施し、dark-blood、steady-state free procession法、造影前と造影後T1強調画像、そしてdelayed inversion recovery prepped 画像が含まれた。
結果:血管肉腫を疑う4頭の犬において、心臓MRI(CMR)で心臓の腫瘤は確認でき、腫瘍のタイプを予測することに役立った。1頭の疑わしい経胸壁心エコー法(TTE)を行った症例において、心臓MRIでは腫瘤を検出できなかったが、腫瘍は後に診断された。他の疑わしい症例では、心臓MRIでは腫瘤は検出できなかったが、心膜穿刺の合併症と一致する所見が見られた。心臓性腫瘍の根拠のない1頭の犬において、腹部MRI画像で推定的な肝臓と脾臓転移が認められた。オリジナルの心臓MRI研究の再評価において、腫瘍陰性と解釈された2頭の疑わしい症例は腫瘍陽性であると再評価した。
結論と臨床重要性:心臓MRIはこれらの8症例において経胸壁心エコー法(TTE)と比較して心臓腫瘍の診断を実質的に改善しなかったが、範囲、解剖学的位置、そして可能性のある腫瘍のタイプに関して役に立つ描写的な情報をもたらし、腫瘍の確認において、心臓MRIが広く更なるトレーニングを必要とすることを確証させた。(Dr.Kawano訳)
■アイゼンメンジャー症候群の犬5頭に対するクエン酸シルデナフィルの効果
Effects of sildenafil citrate on five dogs with Eisenmenger's syndrome.
J Small Anim Pract. November 2011;52(11):595-8.
K Nakamura; M Yamasaki; H Ohta; N Sasaki; M Murakami; W R Bandula Kumara; M Takiguchi
目的:アイゼンメンジャー症候群と二次的な赤血球増多を伴う犬に対してシルデナフィルの効果を判定する
方法:これは前向き単一群非盲検研究である。アイゼンメンジャー症候群と二次的赤血球増多を伴う5頭の臨床犬で研究した。シルデナフィル療法(0.5mg/kg1日2回)の前後でNYHA機能的クラス、PCV、肺動脈加速時間と駆出時間の比、血清エリスロポイエチン濃度を評価した。
結果:NYHA機能的クラスは基準値(中央値3;範囲2-3)と比較して、シルデナフィル療法開始から1か月後(中央値2;範囲1-2、P=0.031)および3か月後(中央値2;範囲1-2、P=0.031)で有意に改善した。PCVは基準値(中央値71%;範囲58-74)と比較して、投与から3か月後(中央値59%;範囲56-63、P=0.031)に有意に低下した。特に投与から1か月後に加速時間と駆出時間の比は増加し、血清エリスロポイエチン濃度は低下したが統計学的有意はなかった。
臨床意義:アイゼンメンジャー症候群の犬の臨床症状と二次的赤血球増多はシルデナフィルで改善した。シルデナフィル療法はアイゼンメンジャー症候群の犬に対する有効な治療と思われる。(Sato訳)
■診断不能な虚脱、失神あるいは運動不耐性の153症例に関する回顧的研究:結果
A retrospective study of 153 cases of undiagnosed collapse, syncope or exercise intolerance: the outcomes
Article first published online: 22 DEC 2010
Journal of Small Animal Practice, Volume 52, Issue 1, pages 26?31, January 2011
L. Barnett, M. W. S. Martin, J. Todd, S. Smith, M. Cobb
目的:基礎疾患が特定できない虚脱、失神、あるいは運動不耐性を呈する犬の長期予後を回顧的に評価すること
方法:2つの動物病院に来院した動物の臨床記録を評価した。少なくとも6ヶ月前に虚脱、失神、あるいは運動不耐性を呈し、診察したにもかかわらず確定診断がつかなかった犬が参加した。これらの症例の追跡調査を飼い主への電話インタビューで実施した。
結果:153症例が追跡調査に成功した。臨床兆候は64症例(42%)で解決し、35頭の犬(23%)は臨床兆候が続いた。ところがこれらのうち22頭が治療介入なしで改善した。17症例(11%)において後で診断が下され、あるいは治療され、そして37頭の犬(24%)が死亡した。死亡した犬の18頭(12%)が最初の症状と関連していると考えられた。調査した問題に関連する死亡と悪化の全体的な発生率は症例の16.2%だった。ボクサーの死亡は明らかに他の犬種に比べより一般的であった(36%)。
臨床関連性:死亡と悪化は、確定診断ができない虚脱、失神そして運動不耐性があるボクサー以外の犬種では珍しい結果である。(Dr.Kawano訳)
■バルーン弁形成術あるいは外科手術を行わなかった肺動脈弁狭窄の犬55頭の結果
Outcome in 55 dogs with pulmonic stenosis that did not undergo balloon valvuloplasty or surgery.
J Small Anim Pract. June 2011;52(6):282-8.
A J Francis; M J S Johnson; G C Culshaw; B M Corcoran; M W S Martin; A T French
目的:バルーン弁形成術あるいは弁手術を行わず、三尖弁逆流がある、またはない肺動脈弁狭窄の犬において、その結果、心臓死の独立予測変数、心臓死を予測するドップラーで得られた圧較差カットオフを判定する
方法:1997年7月から2008年10月の間に2箇所のイギリス委託センターに来たバルーン弁形成術あるいは弁手術を行っていない肺動脈弁狭窄の全ての症例の医療記録を再検討した。包含基準は肺動脈弁狭窄の診断、1.6m/s以上のスペクトラルドップラー肺動脈速度、特徴的な弁尖の形態学的異常だった。除外基準は三尖弁異形成など重大な心臓欠陥の併発だった。三尖弁逆流の犬も含めた。犬はドップラーで得られた圧較差に従い、軽度、中程度、重度肺動脈弁狭窄カテゴリーに分類した。
結果:三尖弁逆流の存在および重度狭窄は心臓死の独立した予測変数だった。60mmHg以上の肺動脈圧較差は、心臓死の予測の86%感受性と71%特異性を示した。
臨床意義:60mmHg以上の肺動脈圧較差、三尖弁逆流のある症例で心臓死の確率は増加するが、結果に対する三尖弁逆流の重症度の影響は症例数が少ないために測定できなかった。それらの動物は介入による利益があるかもしれない。(Sato訳)
■犬の特発性心嚢水-3年研究
Idiopathic Pericardial Effusion in Dogs - A three year study
Vet Scan. 2011;6(1):78. 8 Refs
K Satish Kumar; V V V Amruth Kumar; P Nagaraj; D S Tirumala Rao
ハイデラバードの動物病院に紹介されてきた811頭の犬のうち、さまざまな犬種と性別の28頭の犬に特発性心嚢水(IPE)を認めた。最も高い罹病率がオスのラブラドールレトリバー7.5歳で示された。運動不耐性、安静時呼吸困難、虚弱、腹水、発咳、食欲不振、粘膜蒼白、粘膜チアノーゼ、労作あるいは運動後の失神、末梢浮腫が来院時の臨床症状だった。電気的変化を伴う低電位QRS群、拡大した球状心が認められた。心外膜および心膜の間の低エコーから無響(エコーフリー)部分を除き、心エコー検査で有意な変化は認められなかった。フロセミドとラミプリル、心膜穿刺は、6ヶ月間の再発もなくIPEの治療で有効だった。(Sato訳)
■治療的遺伝子移植による犬の拡張型心筋症の治療の状況
Status of therapeutic gene transfer to treat canine dilated cardiomyopathy in dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2010;40(4):717-24.
Meg M Sleeper , Lawrence T Bish, H Lee Sweeney
治療的遺伝子移植は、衰えた心臓の分子レベルで発生する代謝障害に対抗しようと試みるアプローチのため、すべての基礎原因による拡張型心筋症の1つの治療方法として見込みがある。カルシウム運用の異常とアポトーシスの割合上昇は、心疾患の多くのタイプで起こる異常で、遺伝子療法は心疾患の多数のげっ歯類モデルで有効性が証明されているそれらの代謝不足をターゲットとしている。現在、著者は犬特発性拡張型心筋症を治療するこのアプローチを評価している。(Sato訳)
■粘液腫性僧房弁疾患の犬36頭のホルターモニター
Holter monitoring in 36 dogs with myxomatous mitral valve disease.
Aust Vet J. October 2010;88(10):386-92.
S Crosara; M Borgarelli; M Perego; J Haggstrom; G La Rosa; A Tarducci; R A Santilli
目的:粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)の犬における不整脈の有無、心不全のクラスと左房拡大の潜在的関係を述べる。心拍数(HR)の評価で標準心電図(ECG)とホルターモニターを比較する。
実験方法:体重20kg以下の36頭の犬の研究群を、臨床症状がないMMVD(前臨床)、臨床症状があるMMVD(臨床)に振り分けた。標準心エコー図、ECG、24時間ホルター記録を全ての犬で入手した。
結果:最低および平均ホルター心拍数は、前臨床群よりも臨床群のほうが高かった。臨床群は前臨床群よりも心室性不整脈が多く見られた。左房拡大は、より上室性不整脈の存在に関係した。
結論:不整脈はMMVDの犬において一般的な所見で、ホルターモニタリングは心拍数モニタリングおよび診断において信頼できるツールである。(Sato訳)
■犬の肺高血圧:診断と治療
Pulmonary hypertension in dogs: diagnosis and therapy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2010;40(4):623-41.
Heidi B Kellihan, Rebecca L Stepien
肺高血圧症(PH)は獣医療で何年にもわたり臨床症候群として認識されているが、犬における心エコー検査、ドップラー心エコー検査が広く普及したことによりルーチンで正確な臨床診断が非常に高まった。
獣医療で多くのPH症例は前毛細血管あるいは後毛細血管として分類できる。患者のそれら部分集団は臨床症状、治療に対する反応、予後に関して異なることも多い。この一般的な慢性疾患の多くの場合荒廃的な臨床合併症を効果的に治療する医療は現在利用可能で、正確な診断さらには患者の寿命およびクオリティオブライフに対して重要である。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた完全型房室中隔欠損
Complete atrioventricular canal in a dog.
J Vet Cardiol. August 2010;12(2):135-140.
Vittorio Saponaro, Francesco Staffieri, Delia Franchini, Antonio Crovace
この報告は1頭の若い犬に見られた完全型心内膜床欠損とも呼ばれる完全型タイプA房室(AV)管の症例を詳述する。完全型AV管は3タイプに分類される:共通AV弁および心室腔間の漏れの程度に応じてA、B、C。欠損であるが、この犬は外科的治療を行わず、初診から19ヶ月の間ISACHCクラスIbを維持している。(Sato訳)
■56例の連続症例犬における動脈管開存症の経静脈閉鎖
Transvenous occlusion of patent ductus arteriosus in 56 consecutive dogs.
J Vet Cardiol. August 2010;12(2):75-84.
Julie E Blossom, Janice M Bright, Leigh G Griffiths
目的:様々な程度の動脈管および患者の大きさで、動脈管開存症(PDA)に対する経静脈カテーテル閉鎖の安全性と有効性を考証する
動物、素材と方法:コロラド州立大学に紹介されPDAと診断された56頭の連続症例の回顧的研究。全ての症例は大腿静脈からの経静脈アプローチを利用した。PDAの最小径4mmあるいは1つのコイルを配置後不安定な症例には1つのコイル(Flipper)を用いて閉鎖した。
結果:56頭中54頭(96.4%)の犬は経静脈ルート単独で動脈管閉鎖を達成した。コイル閉鎖を試みた42頭中39頭(92.9%)は取り外し可能なFlipperコイルを使用して閉鎖し、そのうち38頭(97.4%)は単一のコイルのみを必要とした。16頭は動脈管閉鎖用Amplatzer((R))あるいは血管プラグを用いて閉鎖した。処置後、評価した39頭中36頭(92.3%)で残存動脈管血流はない、あるいはほんの軽度だった。処置の死亡率は1.7%で、主要合併症率は7.0%だった。
結論:経静脈アプローチの経カテーテル閉鎖は、犬のPDAの安全で有効な治療方法である。小型犬(<2.5kg)に有効である。(Sato訳)
■心原性および非心原性肺水腫:病態メカニズムと原因
[Cardiogenic and non cardiogenic pulmonary edema: pathomechanisms and causes]
Schweiz Arch Tierheilkd. July 2010;152(7):311-7. German
T Glaus, S Schellenberg, J Lang
肺水腫の発症は心原性および非心原性に分けられる。病原的に心原性水腫は左側うっ血性心不全により肺毛細血管における静水圧上昇が原因である。
非心原性肺水腫は低い肺胞内圧、透過性亢進、神経性水腫と基礎病原に依存して分類される。原因のいくつかの重要な例は、低い肺胞内圧に対する喉頭麻痺あるいは絞扼のような上部気道閉塞、透過性亢進に対するレプトスピラ症およびARDS、神経水腫に対するてんかん、脳外傷および感電などがある。治療は非常に異なるため、心原性と非心原性の鑑別は常に容易というわけではないが、多くは関連性がある。非心原性水腫の特定の基礎となる原因の同定は、治療面だけでなく特に予後の面からもさらに重要である。原因に依存し、予後は非常に悪いものから完全に回復する見込みがあるものまで幅がある。(Sato訳)
■犬の感染性心内膜炎:診断と治療
Infective endocarditis in dogs: diagnosis and therapy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2010;40(4):665-84.
Kristin MacDonald
感染性心内膜炎(IE)は細菌性疾患で、犬でよく起こる。犬におけるIEの診断の難しさと過少報告が、この疾患の罹病率が低く報告される理由である。一般に原因となる細菌は、スタフィロコッカス種、ストレプトコッカス種、大腸菌、バルトネラ種である。うっ血性心不全、免疫介在性疾患、血栓塞栓症はIEの主要合併症である。心エコー検査によるIEの診断および長期広域スペクトラム抗生物質投与は、その疾患のタイムリーな検出、治療に貢献すると思われる。(Sato訳)
■犬の拡張型心筋症:臨床例367頭の予後所見の回顧的研究
Canine dilated cardiomyopathy: a retrospective study of prognostic findings in 367 clinical cases.
J Small Anim Pract. August 2010;51(8):428-36.
M W S Martin , M J Stafford Johnson , G Strehlau, J N King
目的:拡張型心筋症(DCM)の犬の臨床症状、診断所見、生存期間と施された治療の影響の関係を再調査する
方法:拡張型心筋症の犬367頭の回顧的観察研究。心臓が原因で死亡あるいは安楽死までの生存期間をカプランマイヤー法と一変量および多変量Cox比率ハザードモデルで分析した。0.05以下の両側P値を統計学的有意と考えた。
結果:多変量モデルで、左室径(LVDs)-指数(P=0.0067)、エックス線上で肺水腫の存在(P=0.043)、心室性期外収縮の存在(VPCs)(P=0.0012)、血漿クレアチニンの高値(P=0.0002)、血漿タンパク質の低値(P=0.029)およびグレートデーン種(P=0.0003)は生存性に負の関連があった。ほとんどの犬はアンギオテンシン変換酵素阻害剤(93%)あるいはフロセミド(86%)で、多くの犬はジゴキシン(50%)および/あるいはピモベンダン(30%)で治療されていた。13頭の犬は追跡調査できなかった。この研究では使用薬剤と生存性の関連性に結論を出せなかった。
臨床意義:このDCMの犬のグループにおいてLVDs-指数が予後を評価する単一の最も良い変動値だった。生存性に負の関連を持つ他の変動値は、エックス線上で肺水腫の存在、VPCsの存在、血漿クレアチニン高値、血漿タンパク質低値、グレートデーン種だった。(Sato訳)
■犬変性性粘液腫性僧帽弁疾患:自然な発展、臨床症状、治療
Canine degenerative myxomatous mitral valve disease: natural history, clinical presentation and therapy.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2010;40(4):651-63.
Michele Borgarelli, Jens Haggstrom
粘液腫性僧帽弁疾患は老齢犬で一般的な状態である。罹患した多くの犬は長期間臨床的に無徴候である。しかし、それらの動物の約30%は心不全の進行を呈し、その疾患の結果として最終的に死亡する。左房拡大や特に左房の大きさの変化は、いくつかの研究から進行の最も信頼できる指標と思われるが、心不全に発展するリスクの高い無徴候の犬の認識方法を明確にするさらなる研究が求められる。
その疾患の自然な成り立ちに対する公表データおよびその疾患の進行遅延に対する早期治療の効果を評価する公表研究結果によると、うっ血性心不全(CHF)の臨床症状発現を遅らせるような治療は現在のところないと思われる。より重度の患犬の理想的な治療は、おそらく外科的僧帽弁修復あるいは僧帽弁置換であるが、現在利用可能なオプションではない。いくつかの臨床経験と共に臨床試験の結果は、明らかなCHFの犬はフロセミド、ACEI、ピモベンダン、スピロノラクトンなどの内科治療で比較的長期間、許容できるQOLで管理できることを示唆している。(Sato訳)
■胸腔鏡下で亜全心膜切除および右房マス切除を行った犬の1例
Thoracoscopic subtotal pericardiectomy and right atrial mass resection in a dog.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(5):551-4.
Denise M Crumbaker, Matthew B Rooney, J Brad Case
症例説明:避妊済みメスのコーギーの雑種10歳を、3週間にわたる嗜眠と体重増加のため検査した。
臨床所見:身体検査所見は鈍い心音、浮球法で波動感を伴う膨隆腹を認めた。胸部エックス線検査でほぼ球状の心陰影、胸部超音波検査で心嚢液貯留と右心耳から発生した有茎マスを認めた。
治療と結果:初期治療は心膜穿刺を行った。1週間後に胸腔鏡下右房マス切除を実施した。外科的合併症は見られず、術後約28時間後に退院した。マスの組織検査結果は、不完全マージンのグレード2血管肉腫だった。術後35日目からドキソルビシンによる治療を開始した。マス切除後177日目に転移病巣に関連する合併症により安楽死された。
臨床関連:これらの所見から、右房マスのある犬において胸腔鏡下右房マス切除とドキソルビシンの補助治療の組み合わせは、開胸術に変わる利用可能な方法と示唆される。(Sato訳)
■見かけ上正常な犬における体重と心拍数の相関
Correlation of heart rate to body weight in apparently normal dogs.
J Vet Cardiol. August 2010;12(2):107-110.
Allison P Lamb, Kathryn M Meurs, Robert L Hamlin
目的:見かけ上健康な犬における体重と心拍数の相関を評価する
動物:2-80kgの犬60頭
方法:24時間携帯型心電図で心拍数を評価した。最低、平均、最大心拍数、心室期外収縮(VPC)数、上室性期外収縮(SVC)数を各犬で表にした。
結果:最低、最大、平均心拍数は体重と相関しなかった。全ての犬に対し、最低心拍数中央値は42bpm(回/分)、平均心拍数中央値は73bpm、最大心拍数中央値は190bpmだった。VPCsおよびSVC数の中央値は0だった。
結論:この研究は見かけ上健康な犬における心拍数と体重の相関を支持しない。(Sato訳)
■獣医診療における犬の心拍数と体の大きさの相関の欠如
Lack of correlation between canine heart rate and body size in veterinary clinical practice.
J Small Anim Pract. August 2010;51(8):412-8.
L Ferasin, H Ferasin, C J L Little
目的:心拍数(HR)と体重の関係は犬で報告されており、小型犬種は大型犬種よりもHRが高いと一般的に信じられている。この研究の1つ目の目的は、獣医診療で健康な犬の体重はHR測定値に影響しないという帰無仮説を検証することだった。2つ目の目的は、性別、犬種形態、年齢、態度のようなほかの項目が臨床現場で犬のHR測定値に有意な影響を及ぼすかどうかを調査することだった。
方法:この調査は2つの異なる研究で実施した:243頭の心電図記録に対する回顧的分析と153頭の標準化した臨床検査をもとにした前向き研究
結果:2つ別々の研究はHRと体重の有意な相関をまったく示さなかった(それぞれP=0.5705、P=0.4682) 。それらの環境下で被験犬の形態や性別はHR測定値に明らかな影響を示さなかった。しかし、1歳以下の犬は老齢犬よりも有意に高いHRsを示すように思えた(P<0.05)。最後に被験犬の態度もHRに対し有意な影響を持つことが分かった。より低い値はリラックスした犬で記録され、高い値は興奮したあるいは神経質な犬で見られた(P<0.05)。
臨床意義:体重を決定因子と考慮した場合、正常なHRは徐脈あるいは頻脈と間違って解釈される可能性があった。代わりに通常の臨床検査を行っている健康犬のHRはその犬の態度あるいは12ヶ月以下ならばその年齢に関連するが、体重との関連は明らかにない。(Sato訳)
■血管拡張性ショックおよび心肺停止に対するバソプレッシンによる治療
The use of vasopressin for treating vasodilatory shock and cardiopulmonary arrest
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):145-157. 92 Refs
Richard D. Scroggin Jr., DVM, DACVIM, Jane Quandt, MS, DVM, DACVA, DACVECC
目的:血管拡張性ショック中の末梢血管運動緊張の喪失に対する3つの潜在性メカニズムを論じる;バソプレッシン生理学の概説;血管拡張性ショックおよび心肺停止におけるバソプレッシンの入手可能な動物実験およびヒトでの臨床研究の概説;血管拡張性ショックおよび心肺停止におけるバソプレッシンの使用にたいするデータの再調査をもとにした推奨を作成すること
データソース:ヒトの臨床研究、獣医実験研究、フォーラムプロシーディング、著書、米国心臓協会ガイドライン
ヒトおよび動物データ総合:敗血症性ショックは最も一般的な血管拡張性ショックの様式である。輸液蘇生を行った敗血症および出血性ショックの動物モデルにおけるバソプレッシンの外因性投与は、平均動脈圧を有意に増加させ生存性を改善する。エピネフリンと比較した自発循環への回帰、初期心律動、生存性に対するバソプレッシンの効果はまちまちである。
心室細動、無脈心室頻拍、非特異性心肺停止のヒトの患者における生存性の改善は、バソプレッシンv.s.エピネフリンの4つの小規模研究で観察されている。しかし、3つの大規模研究で、初期心律動にかかわらず心肺停止の患者におけるバソプレッシンとエピネフリンの間に有意差は見られなかった。心肺停止に対しバソプレッシンを使用する獣医臨床試験は実施されていない。
結論:輸液蘇生およびカテコラミン(ドブタミン、ドパミン、ノルエピネフリン)投与に反応がない血管拡張性ショックの小動物にはバソプレッシン(0.01-0.04U/min、IV)を考慮すべきである。電気機械解離あるいは心室不全収縮の小動物において心肺蘇生中のバソプレッシン(0.2-0.8U/kg、IV1回)投与は、心筋および大脳血流に対して有効と思われる。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患の犬の心房中隔破裂による後天性心房中隔欠損
Acquired atrial septal defects secondary to rupture of the atrial septum in dogs with degenerative mitral valve disease.
J Vet Cardiol. August 2010;12(2):129-134.
Gordon D Peddle, James W Buchanan
変性性僧帽弁疾患の犬で、心房中隔破裂による二次的な後天性心房中隔欠損(ASDs)は珍しい。それら欠損の心エコー診断は過去に述べられていない。
生前に確認された2症例の心エコー検査特徴をこの報告で述べる。相対的に小さいサイズの犬では2次元エコー図でASDsの確認は難しい、あるいは過少報告するかもしれない。後天性ASDsは、その犬の生理学、治療プラン、予後を変化させるかも知れず、右側心不全の症状を示す全ての変性性僧帽弁疾患の症例でそれらの発生および有無を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬におけるエンドトキシンショックに対するウリナスタチンの効果
[Effects of ulinastatin on endotoxin shock in dogs]
Masui. 1992 Mar;41(3):413-20.
Okano S, Tagawa M, Urakawa N, Ogawa R.
エンドトキシンショックに対するプロテアーゼ活性を抑制するウリナスタチンの治療効果を17頭のビーグルを使って評価した。5,000あるいは25,000U/kgの投与量でウリナスタチンを単回静脈内注射ではエンドトキシン誘発性循環障害を抑制することが出来なかったが、エンドトキシン投与後早期に起こる肺動脈圧と肺血管抵抗の増加を有意に抑制した。エンドトキシンショックによるPGI2, TXA2 そしてLTB4 の上昇は25,000 U/kgのウリナスタチン投与で有意に抑制された。顆粒球性エラスターゼ活性の上昇は、ウリナスタチン投与によって用量依存性に抑制した。以上の結果からウリナスタチンはエンドトキシンショックの治療において有望な薬剤であるかもしれないことを示す。(Dr.Kawano訳)
■一般的なヨーロッパクサリヘビ(Vipera berus)に咬まれた犬24頭の心筋細胞ダメージ
Myocardial cell damage in 24 dogs bitten by the common European viper (Vipera berus).
Vet Rec. May 2010;166(22):687-90.
L Pelander, I Ljungvall, J Haggstrom
この研究で、一般的なヨーロッパクサリヘビ(Vipera berus)に咬まれた結果として、心臓特異トロポニンI(cTnI)の血清濃度増加で反映する心筋ダメージが起こるかどうか、このダメージは臨床的関連を持つECG異常がないまま起こるかどうかを調査した。蛇に咬まれた後に来院した24頭の犬を研究した。全ての犬の入院時、12、24、36時間後にECGを記録し、cTnIの分析のために血清を採取した。
13頭(54%)の犬は検出可能な血清cTnI濃度ではなく(<0.2μg/l)、またECGにも異常がなかった。5頭(21%)はcTnIの血清濃度は増加していたが、ECGに異常はなかった。6頭(25%)はTcnI濃度が上昇し、ECGに異常もあった。6頭(25%)はECGに異常があったが、cTnI濃度は検出できなかった。この研究中3頭(12.5%)のみ、血清cTnI濃度がずっと1.0μg/lを超えていた。心筋細胞ダメージ所見は24頭中8頭(32%)で見つかった。それら8頭中3頭に不整脈が検出された。(Sato訳)
■犬の上室性頻拍:65症例(1990-2007)
Supraventricular tachycardia in dogs: 65 cases (1990-2007)
J Vet Emerg Crit Care. October 2008;18(5):503-510.
Sharon T. Finster, DVM, Teresa C. DeFrancesco, DVM, DACVECC, DACVIM, Clarke E. Atkins, DVM, DACVIM, Bernie D. Hansen, DVM, MS, DACVIM, DACVECC, Bruce W. Keene, DVM, MS, DACVIM
目的:上室性頻拍(SVT)の犬の徴候、臨床所見、予後の特徴を述べる
構成:遡及研究
場所:ノースカロライナ州立大学獣医教育病院
動物、介入、測定:症例選択は、1990-2007年の間に獣医教育病院に来院したSVTの全ての犬とした。最低1回のSVTを発症した犬の医療記録を抽出した。徴候、病歴、心電図、エックス線、心エコー所見、治療、治療の反応を再調査してまとめた。死亡日時と原因を判定するため追跡調査を行った。カプラン-マイヤー生存曲線を作成し、分析した。患者の特徴と治療の反応および予後の関連性を評価した。
主要結果:65頭の記録はSVTの診断を証明した。62%はオスだった。ラブラドールレトリバーとボクサーがほかの一般病院集団と比べよく見られた。来院時の年齢中央値は9歳(範囲0.5-15.5歳)だった。SVT中の心拍中央値は270回/分(範囲187-375回/分)だった。最も一般的な主訴は失神(30%)で、23%は診断時に無症候だった。多くの犬は構造的心疾患(65%)だった。生存期間中央値は472日(<1-2007日)だった。持続的SVT(>30秒)の確認は、生存性(P=0.50)、およびうっ血性心不全の有無(P=0.70)に影響しなかった。
結論:SVTの犬の大多数は、SVTの診断時に構造的心疾患あるいは重度併発疾患を持っていた。しばしば持続的および一時的な持続性不整脈があるが、SVTは死亡率のあきらかな主要因子ではない。(Sato訳)
■心膜内肉芽組織による心内膜液滲出および心タンポナーデが見られた犬の1例
Pericardial effusion and cardiac tamponade caused by intrapericardial granulation tissue in a dog
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):187-192. 21 Refs
Joshua L. Parra, DVM, Erick A. Mears, DVM, DACVIM, Davin J. Borde, DVM, DACVIM, Mark S. Levy, DVM, DACVS
目的:1頭の犬に見られた心膜内肉芽組織が原因の心内膜滲出液および心タンポナーデの外科的管理成功報告を述べる
症例概要:8ヶ月齢オスのグレータースイスマウンテンドックが2週間にわたる進行性嗜眠、腹部膨満、呼吸困難を呈し、心臓評価を委託された。来院日、急性虚脱を起こした。心エコー検査で、右房自由壁の虚脱の原因となる14cmの多房心膜嚢胞性病変とその結果起こる心タンポナーデが観察された。その後2回の心内膜滲出液の急性エピソードを経験後、亜全心膜切除を実施し、臨床症状は解消した。マスの病理組織診断は、血腫あるいは膿瘍の解消で起こるような炎症および肉芽組織だった。
提供された新奇情報:これは心内膜滲出液および心タンポナーデの原因が心膜内肉芽組織だった最初の報告である。(Sato訳)
■僧帽弁逆流の犬の心原性肺水腫のレントゲン特性:61症例(1998-2007)
Radiographic features of cardiogenic pulmonary edema in dogs with mitral regurgitation: 61 cases (1998-2007).
J Am Vet Med Assoc. November 2009;235(9):1058-63.
Alessia Diana, Carlo Guglielmini, Mauro Pivetta, Antonina Sanacore, Morena Di Tommaso, Peter F Lord, Mario Cipone
目的:僧帽弁逆流(MR)の犬の肺水腫(PE)のエックス線学的分布を評価することと、エックス線所見の位置と僧帽弁逆流ジェット(MRJ)の方向との関係を調査する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:僧帽弁疾患(MDV;51頭)、拡張性心筋症(9)、肥大製心筋症(1)から起こる心原性PEおよびMRを持つ61頭の犬
方法:MRのドップラーエコー所見の犬の胸部エックス線写真で、肺水腫の部位(瀰漫性、肺門周囲、限局性)の再検討を行った。またカラードップラーの評価として、MRJの方向(中心性、遠心性)およびエックス線所見の分布(対称性、非対称性)も評価した。
結果:肺の不透過性の瀰漫性、肺門周囲、限局性増加は、それぞれ61頭中11頭(18%)、7頭(11.5%)、43頭(70.5%)に見られた。単一肺葉あるいは2つの同側性肺葉における非対称性PEのエックス線所見は21頭に見られ、そのうち右尾側葉のみは17頭だった。MRJのドップラー画像は46頭で入手できた。中心性MRJの犬31頭のうち、28頭に対称性PEを示すエックス線所見があった。遠心性MRJの犬15頭のうち、11頭に非対称性PEのエックス線所見があり、それらの犬はすべてMDVだった。
結論と臨床関連:心原性PEの犬において、肺の不透過性増加のエックス線上での対称性分布は、中心性MRJに関与することが多く、逆に非対称性分布は特にMVDの犬において遠心性MRJに関与することが多かった。(Sato訳)
■犬の心嚢貯留液の心エコーおよび臨床病理学的特徴:107例(1985-2006)
Echocardiographic and clinicopathologic characterization of pericardial effusion in dogs: 107 cases (1985-2006).
J Am Vet Med Assoc. December 2009;235(12):1456-61.
Kristin A MacDonald, Orla Cagney, Michael L Magne
目的:心嚢貯留液のある犬における心臓マスの診断のための心エコー検査の感受性と特異性を評価する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:心嚢貯留液を持つ犬107例
方法:1985年から2006年までカルフォルニアデービス大学獣医教育病院で検査した心嚢貯留液を持つ犬の記録を再検討した。心エコー検査および心嚢切除あるいは検死を実施したものを含めた。感受性、特異性および転移率を、心嚢貯留液の各種原因に対し算出した。
結果:心嚢貯留液をもつ107頭は、外科(n=48頭)、検死(44)あるいはその両方(15)で評価した。心エコー検査では、マスなし(n=41頭)、右房(RA)マス(38)、心基底部(HB)マス(23)、心膜マス(2)、HBおよびRAマス(2)、右室マス(1)だった。心臓マス検出の感受性と特異性はそれぞれ82%と100%で、RAマス検出は82%と99%、HBマス検出は74%と98%だった。ほとんどのHBマスは神経内分泌あるいは異所性甲状腺組織であったが、3例は血管肉腫、4例は中皮腫だった。ほとんどのRAマスは血管肉腫だったが、このグループには神経内分泌腫瘍、異所性甲状腺組織、中皮腫、リンパ肉腫、肉腫も含まれた。腫瘍性原因の中で、転移率は差がなかった(50%-66%)。
結論と臨床関連:心エコー検査は、心嚢貯留液を持つ犬の診断、RAあるいはHBマスの鑑別に高い感受性と特異性を持った。全ての原因の心臓マスに対する高い確率の転移があった。(Sato訳)
■健康犬の循環レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系に対するピモベンダンおよびフロセミドの急性効果
Acute effect of pimobendan and furosemide on the circulating renin-angiotensin-aldosterone system in healthy dogs.
J Vet Intern Med. 2009 Sep-Oct;23(5):1003-6.
M B Sayer, C E Atkins, Y Fujii, A K Adams, T C DeFrancesco, B W Keene
背景:レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)は心拍出量低下状態およびループ利尿薬、血管拡張薬のような確かな心血管治療薬により活性化する。
仮説:inodilatorピモベンダンの短期治療は、その血管拡張作用が陽性変力特性により相殺され、ゆえに傍糸球体装置でのRAAS刺激を改善させるため、循環RAASを活性化させないだろう。さらにピモベンダンはフロセミドにより起こるRAAS活性化を抑制するだろう。
動物:9頭の健康な実験犬で研究した。
方法:実験、クロスオーバー研究。犬に4日間ピモベンダン(0.5mg/kg12時間毎)を投与し、続いてフロセミド(2mg/kg12時間毎)を投与し、その後休薬期間を設け、それらの薬剤を併用した。アルドステロン:クレアチニン(A:Cr)を各治療サイクルの終わりに測定した。
結果:ピモベンダン投与で平均尿中A:Crに有意な増加は見られなかった(コントロール尿中A:Cr=0.46、標準偏差(SD)0.33;ピモベンダンA:Cr=0.48、SD0.28)。
フロセミド(尿中A:Cr=1.3、SD0.70)投与後およびフロセミドとピモベンダンの併用(尿中A:Cr=2.9、SD1.6)後の平均尿中A:Crは有意な増加を見せた。
結論と臨床関連:高用量ピモベンダンの短期投与は健康犬のRAASを活性化させない。ピモベンダンはフロセミド投与に関係するRAAS活性化を防ぐことはできなかった。健康犬におけるそれらの結果は、フロセミド投与(±ピモベンダン)にはRAAS抑制療法を併用すべきであると示唆する。(Sato訳)
■レントゲン検査によるキャバリアの僧帽弁閉鎖不全症の診断成績
Reader performance in radiographic diagnosis of signs of mitral regurgitation in cavalier King Charles spaniels.
J Small Anim Pract.2009 Sep;50 Suppl 1:44-53.
Hansson K, Haggstrom J, Kvart C, Lord P.
目的
僧帽弁閉鎖不全症での心肥大(HE)および心不全(HF)をレントゲン検査で診断する際の、その精度と誤差を評価する。
方法
4つの経験水準を代表する16人の読影者で、心肥大、左心房肥大(LAE)や心不全の有無に関し、様々な重症度の僧帽弁閉鎖不全症例50例のレントゲン写真を評価した。読影成績は受信者動作特性(ROC)曲線の曲線下面積(AUC)を用いて参考標準と比較した。読影者間の一致性としてK値を求めた。心不全の診断が困難な症例に関しては、統計的に異常値となる読影者を含めたものと、除外したものを用いて分析した。
結果
AUCはHEで0.89、LAEで0.93、HFで0.92だった。経験のある読影者ほど診断の確実性は増すが、精度は増加しなかった。K値はHEで0.53から0.67、LAEで0.61から0.69、HFで0.49から0.58の範囲だった。HFの診断が困難な症例では精度は落ち、経験のある読影者の方が経験のない読影者よりも成績が良かった。統計的に異常となる読影者を除いた場合では、経験のある読影者と経験のない読影者の差は大きくなった。
臨床的重要性
レントゲン検査では、心臓のサイズおよび間接的なMRの重症度の評価として、HEではなくてLAEを用いるべきである。HFにおいては読影者間の一致性があまり高くなかった。読影者の精度を調べる研究では、読影者間の誤差の影響を考慮するべきである。(Dr.Ka2訳)
■健康な犬の心エコーパラメーターに対するイソフルランの影響
Effects of isoflurane on echocardiographic parameters in healthy dogs
Vet Anaesth Analg. February 2008;0(0):.
Marlos G Sousa, Roberta Carareto, Andrigo B De-Nardi, Fabio L C Brito, Newton Nunes, Aparecido A Camacho
目的:健康な事前に薬物が投与されていない犬において、イソフルレン最小肺胞濃度(MAC)約1.0倍の最小呼気濃度で、心エコーに対する影響を研究する
研究構成:前向き実験研究
動物:両性別体重11.6±2.72kgの雑種成犬16頭
方法:覚醒している時に基準となる心エコー検査を実施後、気管挿管が可能になるまでマスクでイソフルレンの吸気濃度をあげて麻酔導入した。挿管後、麻酔時間の残り、終末呼気濃度を1.4%に低下させた。終末呼気濃度が到達後、25、40、55分に連続心エコー図を記録した。
結果:心拍数に変化は見られなかった。しかし、左室拡張終期径(平均最大変化:13.8%)、収縮中の心室中隔厚(15.2%)、心室中隔肥厚分画(72.2%)、左室自由壁肥厚分画(63.5%)、駆出率(39.9%)、短縮率(46.7%)の有意な減少が見られた。また、基準値よりも僧帽弁、肺、大動脈弁の最高血流速度は有意に低かった。拡張終期左室容積指数(覚醒時から約32.1%)、1回拍出係数(58.2%)、心指数(55.3%)も覚醒時と比較して低下が観察された。
結論および臨床関連:我々の結果は、1xMACイソフルランが、健康犬の心筋を有意に抑制することを示す。心血管に余裕のない犬にイソフルレンを使用するとき、心筋機能のそれらの変化を注意深く考慮する必要がある。(Sato訳)
■心膜穿刺に関与する有害事象:85症例(1999-2006)
Adverse events associated with pericardiocentesis in dogs: 85 cases (1999?2006)
J Vet Emerg Crit Care. August 2009;19(4):352-356. 20 Refs
Karen R. Humm MA, VetMB, DACVECC, MRCVS, Elizabeth A. Keenaghan-Clark MA, VetMB, MRCVS, Amanda K. Boag MA, VetMB, DACVIM, DACVECC, FHEA, MRCVS
目的:心膜穿刺中あるいはその後に発生した有害事象の頻度を調べることと、有害事象が心嚢液貯留の原因あるいは心膜穿刺の頻度と関連があるか判定する
構成:遡及研究
場所:委託病院
動物、介入および測定:112回の心膜穿刺を行った85頭の犬の医療記録を再検討した。心膜穿刺中および心膜穿刺後48時間以内のすべての有害事象を記録した。有害事象の頻度を、心膜液貯留の原因でおそらく腫瘍性のものと腫瘍性ではないもので比較し、また最初およびその後の心膜穿刺でも比較した。
主要結果:有害事象の発生率は、心膜穿刺後1時間以内に10.7%、48時間以内に15.2%だった。グループ間で有害事象の頻度に有意差はなかった。最も多く認められた有害事象は律動異常だった。有害事象の出た犬の41%は48時間以内に安楽死あるいは死亡した。
結論:心膜穿刺から48時間以内に見られる有害事象の発生率は15.2%だった。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた細菌性心内膜炎に関与するジャーボードタイプ欠損および第3度房室ブロック
Gerbode type defect and third degree atrioventricular block in association with bacterial endocarditis in a dog
J Vet Cardiol. November 2008;0(0):.
Peddle , Boger , Van Winkle , Oyama
ジャーボードタイプ欠損はヒトで先天性あるいは後天性と思われる左室流出路と右房が交通している珍しい疾患である。犬では過去に一度だけ報告されている。ヒトで後天性型は細菌性心内膜炎、外傷、弁置換術、他の原因による二次的なものと報告されている。
我々は1頭の老齢犬に見られた大動脈弁および三尖弁の細菌性心内膜炎に関与する、左室流出路と右房および右室が交通(ジャーボードタイプ欠損)した症例を報告する。その犬は第3度房室ブロックも発症し、根底に大動脈弁下部狭窄も見られた。
この症例のジャーボートタイプ欠損は、細菌性心内膜炎により膜性心室中隔の侵襲および破壊により二次的に獲得したものと著者は考える。(Sato訳)
■肺動脈血栓塞栓症
Pulmonary thromboembolism
J Vet Emerg Crit Care. Feb 2009;19(1):30-52. 244 Refs
Robert Goggs, BVSc, DACVECC, MRCVS, Livia Benigni, DVM, DECVDI, MRCVS, Virginia Luis Fuentes, MA VetMB, PhD, DVC, DACVIM, DECVIM-CA, MRCVS, Daniel L. Chan, DVM, DACVECC, DACVN, MRCVS
目的:小動物における肺動脈血栓塞栓症(PTE)の病理生理、臨床症状、診断、治療を概説する
データソース:犬および猫のPTE診断および血栓塞栓症療法におけるヒトおよび獣医臨床研究、概説、テキスト、最近の調査
ヒトデータ総合:ヒトでは、臨床確率アセスメントおよびポイントオブケアDダイマーベースアルゴリズムが広く使用される。肺動脈造影CT検査がヒトにおけるPTE診断のゴールドスタンダードである。心エコー検査は罹患患者のベッドサイドの評価で使用されることが多くなってきている。低リスクの患者において、抗凝固剤単独が推奨される、一方心原性ショックの患者は血栓溶解の後、抗凝固剤で治療される。
獣医データ総合:PTEは凝固亢進、血流鬱帯、あるいは内皮傷害で起こる多くの素因になる状態に関与する。危険な状態にある患者を確認することが、小動物で診断のカギである。トロンボエラストグラフィーは凝固亢進患者を同定する方法である。肺動脈造影CT検査はPTEの診断で画像診断の選択として、選択的肺動脈造影検査に代わるものかもしれない。PTE療法は急性治療および慢性管理に対し、適切なその患者に合わせた血栓塞栓薬物療法を組み合わせた支持療法である。PTEに対する血栓溶解療法はまだ議論されているが、血行動態的に不安定な急性PTEにおいて指示されるかもしれない。特定に状況における血栓予防は合理的であるが、効果の証拠は限られている。予後は、心肺の障害の程度、患者の治療への反応に依存する。小動物の死亡率は不明である。
結論:小動物でPTEの同定および治療において新しい診断技術および治療の進歩は、有意な改善の可能性を提供する。新しい診断様式の確認および治療方法の評価を行う更なる研究が求められるべきである。(Sato訳)
■僧房弁疾患の犬におけるナトリウム利尿ペプチドの適中率
Predictive value of natriuretic peptides in dogs with mitral valve disease.
Vet J. 2009 May;180(2):195-201.
Tarnow I, Olsen LH, Kvart C, Hoglund K, Moesgaard SG, Kamstrup TS, Pedersen HD, Haggstrom J.
ナトリウム利尿ペプチドは犬の心不全の診断において役立つ。しかし、粘液腫様変性僧帽弁疾患(MMVD)の早期のステージでの検出に対する有用性は議論されている。
この研究では、前臨床段階の僧帽弁閉鎖不全症(MR)の39頭のキャバリア・キングチャールズ・スパニエル(CKCS)、心不全(HF)の臨床徴候がある16頭の犬、そして13頭の健常コントロール犬において、N末端pro心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)とN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)を評価した。
27頭のキャバリア・キングチャールズ・スパニエルと10頭のコントロール犬は、初期検査から4年後に再検査を行い、飼い主に電話をすることによって初期検査から5年後での犬の状態を把握した。全ての犬は臨床検査と超音波検査で評価した。重度僧帽弁閉鎖不全症のキャバリア・キングチャールズ・スパニエルは、コントロール群および重度僧帽弁閉鎖不全症がないキャバリア・キングチャールズ・スパニエルと比べて、N末端pro心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)とN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)はより高かった。心不全の臨床徴候を示す犬は、N末端pro心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)とN末端プロ脳性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)が著しく上昇した。再検査で測定したナトリウム利尿ペプチドの血漿濃度は逆流ジェットサイズの進行を予測できた。(Dr.Kawano訳)
■トイ犬種における体外式二相性除細動の効果と安全性
The efficacy and safety of external biphasic defibrillation in toy breed dogs
J Vet Emerg Crit Care. August 2008;18(4):362-369. 27 Refs
Seung-Gon Lee, DVM, MS, Hyeong-Sun Moon, DVM, Changbaig Hyun, DVM, PhD
目的:トイ犬種(体重<5kg)における二相性(BP)除細動の効果と安全性を評価する
構成:前向き臨床実験研究
場所:獣医教育病院
動物:5頭の犬(予備研究)および10頭の犬(二相性と単相性除細動の比較研究)
測定値と主要結果:除細動の効果を二相性(BP)および単相性(MP)除細動後にE80(除細動成功の確率80%)を推定することにより比較した。BP除細動に対するE80は7.24±1.33J(2.24±0.41J/kg)で、MP除細動では10.24±1.34J(3.18±0.12J/kg)だった。BP波形は成功した除細動に対し30%少ないショックエネルギーを必要とした。除細動の安全性を比較するため、BP、MP除細動中およびその後の心臓バイオマーカー、心電図、心エコーによる左室指数、大動脈圧を評価した。BPあるいはMP除細動で治療した犬は全頭生存した。電気機械解離はMP除細動中に5頭中2頭で発生した。MP除細動群において心臓バイオマーカーの濃度は上昇し、長期間持続した。心電図変化(例えば、QT延長、ショック後等電ST部への回帰時間)は、MP除細動群においてより重度で長期だった。また、MP群の総体的左室心機能はBP群に比べ激しく低下した。
結論:我々の所見は、BP除細動はMP除細動と比べより効果的で安全であることを示唆する。トイ犬種に対し容認できるショックエネルギーは2-4J/kgであると判定した。(Sato訳)
■キャバリアキングチャールズスパニエルの慢性僧帽弁疾患:95例(1987-1991)
Chronic mitral valve disease in cavalier King Charles spaniels: 95 cases (1987-1991)
J Am Vet Med Assoc. October 1993;203(7):1023-9.
A W Beardow, J W Buchanan
イギリスでキャバリアキングチャールズスパニエル(CKCS)における慢性僧帽弁疾患による収縮期心雑音は特によく見られる。アメリカ血統のCKCSでも同様に慢性僧帽弁疾患の罹患率が高いかどうか判定するため、394頭のCKCSに対する聴診結果を分析した。左心尖部収縮期雑音が22%の犬で聴取された。罹患範囲は1歳未満で9%、4歳以上で56%、10歳以上で100%だった。性別間および種々の毛色の中で罹患率に違いはなかった。1年後79頭の再検査で、新しく21%の犬に発生していた。慢性僧帽弁疾患の128頭の紹介病院症例における初回検査時の年齢の比較は、17頭のCKCSにおける平均年齢が6.25歳であったのと比べ、他の犬種で平均年齢は12歳だった。エコー検査および剖検所見は、CKCSにおける慢性弁膜疾患過程で、腱索断裂および僧帽弁逸脱が主に起きていることを示した。(Sato訳)
■拡張型心筋症による鬱血性心不全のドーベルマンピンシャーの致死率に対するピモベンダンの効果
Effect of Pimobendan on Case Fatality Rate in Doberman Pinschers with Congestive Heart Failure Caused by Dilated Cardiomyopathy
J Vet Intern Med. June 2008;0(0):.
M R O'Grady, S L Minors, M L O'Sullivan, R Horne
背景:利尿剤、アンギオテンシン変換酵素阻害剤、ジゴキシンあるいはそれらの薬剤の併用など従来の治療にもかかわらず、拡張型心筋症(DCM)の犬の生存性は低い。イノダイレーターであるピモベンダンは、陽性変力およびバランスの取れた末梢血管拡張特性を兼ね備える。
仮説:通常の治療にピモベンダンを併用したとき、DCMによる鬱血性心不全(CHF)を持つドーベルマンピンシャーの罹病率を改善し、致死率を低下させるだろう。
動物;拡張型心筋症による鬱血性心不全のドーベルマンピンシャー16頭。
方法:一次結果変動値として治療不全を伴う前向き無作為二重盲検プラセボコントロール研究と二次結果変動値として生活の質(QoL)指数。治療はフロセミド(必要なときは経口)および塩酸ベナゼプリル(0.5mg/kg12時間毎PO)で行い、犬を無作為に性別でペアとしピモベンダン(0.25mg/kg12時間毎PO)あるいはプラセボ(1錠12時間毎PO)を投与した。
結果:ピモベンダンを投与した犬は、治療不全になるまでの時間が有意に改善した(ピモベンダン中央値130.5日;プラセボ中央値14日;P=.002;リスク比=0.35、P=.003、5%以下信頼限界=0.13、95%以上信頼限界=0.71)。プラセボ群の治療不全に達した犬の数と率はQoL分析が不可能だった。
結論と臨床意義:ピモベンダンは、拡張型心筋症による鬱血性心不全の治療に対し第一選択として使用すべきである。(Sato訳)
■赤血球凝集と全血粘性におけるプロ繊維素溶解酵素であるナットウキナーゼの効果
Effects of nattokinase, a pro-fibrinolytic enzyme, on red blood cell aggregation and whole blood viscosity.
Clin Hemorheol Microcirc. 2006;35(1-2):139-42.
Pais E, Alexy T, Holsworth RE Jr, Meiselman HJ.
野菜チーズのような食品である納豆は、歴史的に1000年以上前から広がり日本においてかなり人気がある。ナットウキナーゼと呼ばれる繊維素溶解酵素は納豆から抽出できる;その酵素は275個のアミノ酸残基で構成されるサブチリシン様セリンプロテアーゼで、分子量が27.7kDaである。
試験管内および生体内での研究において一貫して酵素の強力なプロ繊維素溶解効果を示している。しかし、現在様々な血行動態パラメーターにおけるナットウキナーゼの効果を評価している研究はない。そこで我々は赤血球凝集と血液粘性における酵素の効果の評価を始めている。
37度で30分ナットウキナーゼと一緒に血液サンプルを保温(最終活性は 0, 15.6, 31.3, 62.5 そして125 units/ml) した。赤血球凝集はMyrenne MA-1 aggregometerを使って測定し、血液粘性はコンピューターによって制御されている走査型キャピラリー・レオメーター (Rheolog)で測定した。試験管内での結果から、明らかな用量依存的な赤血球凝集の減少と低剪断粘性を示し、過去の動物を使った生体内の実験で得られた結果と同じ濃度で明らかに有益な効果が示された。従って我々の予備的なデータは、試験管内においてナットウキナーゼの前向きな血行動態学的効果を示し、治療薬としての潜在的な可能性と追加研究および臨床知見の必要性が示唆された。(Dr.Kawano訳)
■血圧に関する納豆キナーゼの効果:ランダム化コントロール試験
Effects of nattokinase on blood pressure: a randomized, controlled trial.
Hypertens Res. 2008 Aug;31(8):1583-8.
Kim JY, Gum SN, Paik JK, Lim HH, Kim KC, Ogasawara K, Inoue K, Park S, Jang Y, Lee JH.
この研究の目的は、前高血圧あるいはステージ1高血圧患者の血圧において、納豆キナーゼのサプリメントの効果を検査することだった。ランダム化二重盲検プラセボコントロール試験において、無治療で収縮期血圧が130~159mmHgの範囲にある20~80歳の86名の参加者に、8週間にわたり納豆キナーゼ(2,000 FU/カプセル)あるいはプラセボカプセルを投与した。73人の患者がプロトコールを完遂した。
コントロール群と比較して8週間の治療介入後の収縮期血圧と拡張期血圧(DBP)における正味の変化はそれぞれ-5.55 mmHg(95%信頼区間[CI], -10.5 ~ -0.57 mmHg; p<0.05)と-2.84 mmHg (95%信頼区間[CI], -5.33 ~ -0.33 mmHg; p<0.05)だった。レニン活性における一致した正味の変化は、コントロール群と比較して納豆キナーゼ群で-1.17 ng/mL/hだった(p<0.05)。結論として、納豆キナーゼのサプリメントは収縮期血圧と拡張期血圧を下げる結果となった。これらの所見から納豆キナーゼの摂取を増やすことが、高血圧の予防と治療に重要な役割を果たすことが示された。(Dr.Kawano訳)
■ウサギの腹部動脈における経皮経管的血管形成術後の再狭窄に対する納豆キナーゼの効果
[Effect of nattokinase on restenosis after percutaneous transluminal angioplasty of the abdominal artery in rabbits]
Nan Fang Yi Ke Da Xue Xue Bao. 2008 Aug;28(9):1538-41.
Gong M, Lin HB, Wang Q, Xu JP.
目的:ウサギの腹部動脈における頸動脈バルーン法( Balloon injury )後の内膜の肥厚に対する納豆キナーゼの効果を観察することと、経皮経管的血管形成術後(PTA:Percutaneous Transluminal Angioplasty)の再狭窄を防ぐための新規方法を探索することが目的だった。
方法:56頭のニュージーランドラビットを無作為に7つのグループに分け、すなわち溶媒コントロールグループ、モデルグループ、ナットウ抽出洗浄液グループ、精製納豆キナーゼ洗浄液グループ、静脈内精製納豆キナーゼ注射グループ、クロピドグレルグループそしてクロピドグレル-アスピリングループとした。バルーン傷害は大腿動脈からウサギの胸大動脈へカテーテルを挿入して誘導した。血小板数に注意し、血小板凝集を観察し、腹部動脈は病理学的分析のため採材した。腹部動脈においてMMP-2とMMP-9の発現を免疫組織化学的に検出した。
結果:モデルグループと納豆キナーゼ治療グループの間で、血小板数、血小板凝集率あるいはMMP-2とMMP-9の発現に明らかな相違は無かった(P>0.05)。モデルグループの指標に比べ、それぞれの納豆キナーゼ治療グループにおける狭窄の指標は有意に大きく、新生内膜増殖の指標はよりわずかであった(P<0.01 あるいは 0.05)。
結論:納豆キナーゼは、血小板あるいはMMP-2とMMP-9発現対するその作用とは別に経皮経管的血管形成術後のウサギの腹部動脈狭窄を抑制させることができる。(Dr.Kawano訳)
■猫の遠位動脈血栓塞栓症の治療における血栓吸引療法の使用
Use of rheolytic thrombectomy in the treatment of feline distal aortic thromboembolism.
J Vet Intern Med. 2006 Mar-Apr;20(2):290-6.
Reimer SB, Kittleson MD, Kyles AE.
この前向き臨床試験の目的は、自然発症性の猫の動脈血栓塞栓症の治療において市販で入手可能な血栓吸引療法システムの安全性と効果を評価することだった。調査に登録した6頭すべての猫は遠位動脈の位置で発症しており、両後肢が影響を受けた症状を呈していた。猫に麻酔をかけ、動脈にアクセスするため1つの頚動脈において動脈切開術を実施した。選択的動脈造影を使用し、血栓塞栓の存在を確認した。透視による誘導を使い、血栓の位置まで血栓吸引システムを進めた。
手順中、血栓溶解の進展を評価するために断続的に反復血管造影を行った。血栓吸引システムの使用で6頭中5頭において血栓溶解に成功した。6頭中3頭は生存して退院した。これらの結果は、この疾患の治療において従来使用される治療と比較して有利である。猫の遠位動脈血栓塞栓症は予後が悪く、失望させるような病気である。血栓吸引療法は猫の遠位動脈血栓塞栓症を含む血栓塞栓症の治療において、代替療法として獣医師に提供されるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬心疾患の調査における異なるナトリウム利尿ペプチドの診断精度
The diagnostic accuracy of different natriuretic peptides in the investigation of canine cardiac disease
J Small Anim Pract. January 2008;49(1):26-32.
A Boswood, J Dukes-McEwan, J Loureiro, R A James, M Martin, M Stafford-Johnson, P Smith, C Little, S Attree
目的:我々の目的は、心疾患の犬と呼吸器疾患の犬を識別するのに、犬N末端pro-B-typeナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)に対する新しいサンドイッチELISAの正確性を判定、確認することと、NT-proBNP濃度を狂わせる変動値の影響を判定することだった。
方法:新しい分析法の確認研究を行った。エチレンジアミン四酢酸(EDTA)血漿および血清で、N末端心房性ナトリウム利尿ペプチド(NT-proANP)およびNT-proBNPの濃度を、検査所で患者の臨床状況を隠した状態の犬77頭のサンプルで評価した。各サンプルタイプおよびテストの診断精度は、受信者操作特性曲線を用いて評価した。年齢、性別、腎機能の指標の影響を多変量回帰分析で評価した。
結果:血清および血漿NT-proBNP濃度は、最適カットオフ濃度210pmol/lで呼吸疾患と心疾患の犬を正確に区別できた。NT-proBNP濃度はサンプルタイプに影響されなかった。クレアチニン濃度の上昇は、NT-proBNP濃度の上昇に関与した。この集団でナトリウム利尿ペプチド濃度に年齢および性別による有意な影響は認められなかった。
臨床意義:犬NT-proBNPは明らかに心疾患の存在を示す有効なマーカーであるが、濃度は犬の腎機能を考慮して解釈すべきである。(Sato訳)
■犬の僧房弁閉鎖不全症におけるピモベンダンの効果
Effects of pimobendan for mitral valve regurgitation in dogs.
J Vet Med Sci. 2007 Apr;69(4):373-7.
Kanno N, Kuse H, Kawasaki M, Hara A, Kano R, Sasaki Y.
ピモベンダンは2つの作用機序がある:トロポニンCのカルシウム感受性を増加させることによって心筋の収縮力を増加させ、PDEIIIを抑制することによって血管拡張を促進する。心筋の増強作用及びホスホジエステラーゼ(PDE)活性抑制作用を有することで、強心作用及び血管拡張作用の2つの作用を同時に示し、従来の製剤とはまったく異なった作用機序を持つ。この研究で軽度僧房弁閉鎖不全症(MR)の犬の心機能、血行力学そして神経ホルモン因子に対するピモベンダンの効果を検査した。犬に0.25 mg/kg1日2回で4週間ピモベンダンを投与した。
ピモベンダンで心拍と心拍出量は変化しなかったが、収縮期血圧が徐々に低下し、僧房弁逸脱の程度が減少する傾向にあった。腎血流量は明らかに増加し、糸球体ろ過率は2、4週間でわずかに増加した。さらに4週間を超えると血漿ノルエピネフリン濃度が明らかに減少し、収縮期の指数がわずかに増加し、左心房径と左心室径が明らかに減少し、心臓の大きさも改善した。これらの結果からピモベンダンは犬のMRの治療に有効だと思われる。しかし、軽度と中等度のMRを持つより多くの犬を使ったピモベンダンのさらなる長期間の研究が、ピモベンダンの安全性を確立するため、および生活の質の改善を実証するために必要である。(Dr.Kawano訳)
■軽度変性性僧房弁疾患の犬におけるピモベンダンとベナゼプリルの単独療法の心臓の副作用の比較:前向き無作為盲検コントロール試験
Comparative adverse cardiac effects of pimobendan and benazepril monotherapy in dogs with mild degenerative mitral valve disease: a prospective, controlled, blinded, and randomized study.
J Vet Intern Med. 2007 Jul-Aug;21(4):742-53.
Chetboul V, Lefebvre HP, Sampedrano CC, Gouni V, Saponaro V, Serres F, Concordet D, Nicolle AP, Pouchelon JL.
背景:ピモベンダン(PIMO)は犬の変性性僧房弁疾患(MVD)においていくつかの有益な効果があるかもしれないという強心性血管拡張薬である。しかし収縮期の心筋機能不全がない犬におけるピモベンダンの心臓に対する効果に関して利用できる情報は少ない。
仮説: アンギオテンシン変換酵素阻害剤であるベナゼプリル(BNZ)と比較して、PIMOは早期の犬MVDの弁の逸脱を悪化させるかもしれない。
動物:無症候性MVDの12頭のビーグルをBNZあるいはPIMOをそれぞれ0.25 mg/kg PO 24時間毎および12時間毎で512日間投与する2つのグループ(n = 6)に無作為に分けた。
方法: 研究は前向き盲検無作為平行グループ構成で追跡した。512日後、犬を剖検し、心臓の組織病理検査を盲検法で実施した。
結果: 内径短縮率(P < .0001)と組織ドップラー変数(P = .001)で評価した基準値と比較して、PIMOグループにおいて15日目には収縮機能の増加がする明らかな治療効果が観察された。
同時に逆流ジェット信号の最大面積とピーク速度が増加(P < .001)した。しかしこれらの変数はBNZグループでは安定したままであった。僧房弁病変の組織学的グレードはBNZグループに比べてPIMOグループでより重度であった。
さらに急性局所性出血、内皮の乳頭状の過形成そしてグルコサミノグリカンの腱索への浸潤はPIMOグループの犬の僧房弁で観察されたが、BNZグループでは観察されなかった。
結論と臨床関連:PIMOは無症候性MVDの犬では心機能と形態学的影響に対する有害作用がある。症候性MVDの犬におけるさらなる調査が現在求められている。(Dr.Kawano訳)
■健康犬におけるフロセミドおよびトルセミドの経口投与
Effects of oral administration of furosemide and torsemide in healthy dogs
Am J Vet Res. October 2007;68(10):1058-63.
Yasutomo Hori, Fumihiko Takusagawa, Hiromi Ikadai, Masami Uechi, Fumio Hoshi, Sei-ichi Higuchi
目的:健康な犬においてフロセミドおよびトルセミドの短期、長期投与後の利尿効果、耐容性、副作用を調査すること
動物:8頭の雑種犬
方法:クロスオーバー研究において、フロセミド(2mg/kg)、トルセミド(0.2mg/kg)、プラセボ(ビフィズス菌(1mg/kg))を各犬に12時間毎14日間経口投与した。血液および尿サンプルを投与前(基準データ)、投与後1日目(短期投与)、14日目(長期投与)に採取し、尿量、尿比重およびBUN、クレアチニン、アルドステロン濃度、クレアチニンクリアランスなど選択した臨床病理変動値を測定した。
結果:基準値と比較して、フロセミドあるいはトルセミドの短期投与は即座に有意に尿量を増加させた。各薬剤の長期投与後、尿比重は有意に低下した。プラセボの影響と比較すると、24時間尿量はフロセミドあるいはトルセミド短期投与後有意に増加した。またそれは、トルセミド短期投与と比較し、長期投与後有意に増加した。フロセミドあるいはトルセミドの長期投与は、基準値と比較してBUNおよび血漿クレアチニン濃度を上昇させた。両薬剤の長期投与後、基準値と比べると血漿アルドステロン濃度は有意に上昇し、フロセミドよりトルセミドのほうが有意に高かった。
結論と臨床関連:犬においてフロセミドの14日目に利尿抵抗が起こったが、トルセミドでは起こらなかった。しかし、両ループ利尿剤は、投与前の基準と比べBUNおよび血漿クレアチニン濃度の上昇に関与した。(Sato訳)
■深いイソフルラン麻酔中の塩酸ドパミンおよび塩酸ドブタミンに対する低血圧の犬の反応
Response of hypotensive dogs to dopamine hydrochloride and dobutamine hydrochloride during deep isoflurane anesthesia
Am J Vet Res. May 2007;68(5):483-94.
Monica Rosati, Doris H Dyson, Melissa D Sinclair, William C Sears
目的:深いイソフルラン麻酔中の犬で、塩酸ドパミンおよび塩酸ドブタミンを単独、または種々の比率で組み合わせて投与したときの用量関連心血管および尿排出(UrO)効果を評価し、目標とする平均動脈圧(MAP;70mmHg)と心指数(CI;150mL/kg/min)を達成する個々の容量を確認すること
動物:10頭の若い臨床的に正常な犬
方法:3回測定し基準MAPが50mmHgになるようイソフルラン平衡を保った後、クロスオーバー研究で無作為にドパミン(3, 7, 10, 15, 20 microg/kg/min)、ドブタミン(1, 2, 4, 6, 8 microg/kg/min)、ドパミン-ドブタミン併用(3.5:1, 3.5:4, 7:2, 14:1,14:4 microg/kg/min)をIV投与した。各投与量で20分注入後、選択した心血管、UrO効果を測定した。
結果:ドパミンは有意な用量依存反応を起こし、目標とするMAPおよびCIに7 microg/kg/minで達成した。2 microg/kg/minのドブタミンはCI値のみ有意に影響した。どの投与量でもドパミンはUrOに有意に影響したが、ドブタミンはそうではなかった。目標とするMAPおよびCI値は、7:2 microg/kg/minのドパミン-ドブタミン併用で達成した。MAPに対するドパミン関連用量反応、CIに対するドパミン-およびドブタミン関連用量反応を確認した。UrOの変化はドパミンのみ関連した。
結論と臨床関連:イソフルラン麻酔犬で、7 microg/kg/minのドパミンがガイドライン用量と思われる。ドブタミン単独はMAPを改善しなかった。心血管およびUrO効果に関するデータは、ドパミンとドブタミンの併用がドパミン単独の使用より大きな益をもたらすことはないことを示唆した。(Sato訳)
■ホイペットの心エコー検査基準値
Echocardiographic reference values in whippets
Vet Radiol Ultrasound. 2007 May-Jun;48(3):230-8.
Bavegems V, Duchateau L, Sys SU, De Rick A.
この研究の目的は、ホイペットの心エコー検査基準値を確立し、それらと過去に発表された一般犬集団の基準値との比較、また心エコー検査測定値に対する性別および繁殖ラインの影響があるかどうかを判定する。
心臓徴候のない見たところ健康なホイペット105頭の心エコー検査パラメーターをその犬種の基準値作成に使用し、過去に2度発表された参照範囲のそれらの値と比較した。さまざまな体重のホイペットに対し正常M-モードおよび2次元平均値の再現に有効な相対成長式Y=aM(b)の係数と、95%予測間隔の上限、下限を算出した。
第一に、ホイペットは拡張期、収縮期で予測より有意に大きい左室径、増大した左室壁と心室中隔の厚さを持つことがわかった。左室内径短縮率は基準値よりも有意に低かった。
第二に、体重差を考慮し、オスとメスを比較するとメスは、拡張期および収縮期の左室径が有意に大きかった。レース犬とショー犬の間に些細な違いが見られた。
結論としてこの研究の結果は、種特別基準値が心エコー検査で必要であると確認するものだった。ホイペットでこの研究に見られた値が、それらの犬で心拡張、肥大、および/または収縮性低下の過大解釈を避けるため基準値として使用できる。(Sato訳)
■猫への低分子ヘパリンの使用:57症例(1999-2003)
Use of low molecular weight heparin in cats: 57 cases (1999-2003).
J Am Vet Med Assoc. 2004 Oct 15;225(8):1237-41. Links
Smith CE, Rozanski EA, Freeman LM, Brown DJ, Goodman JS, Rush JE.
目的:猫における低分子ヘパリン(dalteparin)の投与と関連した投与期間、合併症そして動脈血栓塞栓症の頻度を決定すること
デザイン:回顧的研究
動物:dalteparinで治療した57頭の猫
方法:dalteparinで治療した猫の診療記録からデータを記録し、投与の簡便性と起こり得る副作用に関する情報を集めるために飼い主に電話をした。
結果:飼い主はdalteparinを簡単に投与できた。平均投与量は1日1回もしくは2回で99 U/kgだった。出血の合併症はほとんどなかった。172日の経過観察時間中央値でdalteparinを飼い主が投与した心筋症の43頭の猫のうち、8頭の猫は動脈血栓塞栓症となるか動脈血栓塞栓症の疑いがあった。
結論と臨床関連:Dalteparinは飼い主が簡単に投与でき、猫はよく耐えた。Dalteparin投与が動脈血栓塞栓症の頻度と重症度を軽減するかどうかはまだ分かっていない。(Dr.Kawano訳)
■健常猫と無症候性肥大型心筋症の猫の血清中の凝固マーカーの評価
Evaluation of coagulation markers in the plasma of healthy cats and cats with asymptomatic hypertrophic cardiomyopathy.
Vet Clin Pathol. 2007 Jun;36(2):167-72.
Bedard C, Lanevschi-Pietersma A, Dunn M.
背景:血栓症や動脈血栓塞栓症は、特に左房が拡張している猫の心筋症でよく見られる合併症である。活性化した凝固のマーカーは、左房サイズに関連した肥大型心筋症(HCM)の猫の凝固状態を評価するために役立つかもしれない。
目的:この研究の目的は、臨床的に健常な猫と肥大型心筋症の猫においてトロンビンーアンチトロンビン複合体(TAT)、D-dimerそしてフィブリン分解産物(FDP)の血漿濃度を比較することだった。プロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)そしてアンチトロンビン活性も比較し、肥大型心筋症の猫において左房サイズと凝固結果との関連性について評価した。
方法:臨床的に健康な猫19頭と肥大型心筋症の猫20頭から血液を採取した。肥大型心筋症のすべての猫は無症候性で心疾患の兆候は見られなかった。超音波検査で左房の直径と左房から近位大動脈(Ao)径 (LA:Ao)比を測定した。
結果:健常猫の血漿中のD-dimerとTAT濃度の推奨範囲はそれぞれ0.09-0.32 microg/mL と2.0-20.0 microg/Lで確立された。肥大型心筋症の猫でTAT、 D-dimerそして FDP の濃度はそれぞれ5頭、3頭、2頭で増加した。TATとD-dimer濃度そしてPT と aPTT はグループ間で明らかな違いはなかった。アンチトロンビン活性は著しい範囲の重複があったが、肥大型心筋症の猫で明らかに(P=.03)減少した。LA直径とLA:Ao比は凝固結果と関連性がなかった。
結論:過凝固状態の検査による根拠は肥大型心筋症の猫の45%で見出された。左房サイズは過凝固状態の検査による根拠と関連性がなかった。肥大型心筋症の猫において凝固マーカーと血栓症のリスクとの関連性はまだ評価されていない。(Dr.Kawano訳)
■鬱血性心不全の犬におけるイミダプリルの臨床評価:EFFIC研究の結果
Clinical evaluation of imidapril in congestive heart failure in dogs: results of the EFFIC study
J Small Anim Pract. May 2007;48(5):265-70.
B Besche, V Chetboul, M-P Lachaud Lefay, E Grandemange
目的:軽度から重度の鬱血性心不全(New York Heart AssociationステージII-IV)を呈す犬におけるイミダプリルの臨床効果と安全性を、非劣性アプローチによる陽性コントロールのイミダプリルの成功率と比較することで評価した。
方法:このgood, clinical practice compliant, multicentre study (EFFIC study)にフランス、ベルギー、ドイツの20箇所の142頭の飼育犬を研究した。この研究で犬は種々の犬種、年齢、体重だった。2群に無作為に振り分け、84日間テスト製剤イミダプリルまたは陽性コントロールベナゼプリルを投与し、同時に追跡調査も行った。両薬剤とも0.25mg/kgで1日1回投与し、臨床観点から必要と考えられたときは、倍量の0.5mg/kgを投与した。また、肺水腫、および・または腹水、上室整不整頻脈、および・または拡張型心筋症を呈した犬は随伴治療を行った。New York Heart Associationステージの進展、”機能的症状”スコアを主な効果の基準として評価した。
結果:イミダプリル群の成功率は66%、ベナゼプリル群は68%だった。安全性に関し、各群の35頭は最低1つの副作用を呈した。各群の9頭は少なくとも1つの重度副作用を呈した。それらの結果に有意差は見られなかった。
臨床意義:イミダプリルは参考とした製剤のベナゼプリルと同様の効果と安全性を示した。(Sato訳)
■心疾患の猫の食餌パターン
Dietary patterns of cats with cardiac disease
J Am Vet Med Assoc. March 2007;230(6):862-7.
Danielle S Torin, Lisa M Freeman, John E Rush
目的:心疾患の猫の食餌摂取と食餌パターンを調査する
構成:前向き研究
動物:先天性心疾患または原発性心筋症の猫95頭
方法:オーナーに猫の食餌に関する標準的な電話による聞き取りを行ない、カロリー、脂肪、蛋白、ナトリウム、マグネシウム、カリウムの日々摂取量を判定するのに24時間の食餌を再現した。
結果:95頭の猫のうち、18頭(19%)はうっ血性心不全の病歴があり、73頭(77%)は心疾患の臨床症状はなかった。55%(52/95)の猫は併発疾患があった。全ての猫の38%(36/95)、うっ血性心不全の病歴を持つ猫の72%(68/95)で食欲不振が報告された。多くの猫(57%[54/95])は、定期的におやつや食べ残しをもらっていた。約半数の猫は薬剤、サプリメントまたはその両方を経口的に投与していた。34%(32/68)のオーナーのみ、猫に薬剤を投与するのにフードを使用していた。猫は蛋白、ナトリウム、カリウム、マグネシウムに対しAssociation of American Feed Control Officials (AAFCO)の最小値以上を消費し、ほとんど全ての猫は脂肪もそうであった。日々の栄養摂取は、評価した栄養素すべてで変動した。
結論と臨床関連:心疾患の猫の食餌摂取は変動するが、食餌サプリメント使用、薬剤投与のためのフード使用、与えるおやつの結果は、心疾患の犬の同様の研究で見られたものと異なっていた。この情報は、心疾患の猫の治療、栄養研究の構成に有効と思われる。(Sato訳)
■変性性僧帽弁疾患の犬の腱索断裂:罹病率、生存性、予後因子(114例、2001-2006)
Chordae tendineae rupture in dogs with degenerative mitral valve disease: prevalence, survival, and prognostic factors (114 cases, 2001-2006)
J Vet Intern Med. 2007 Mar-Apr;21(2):258-64.
Fran?§ois Serres1, Val??rie Chetboul, Renaud Tissier, Carolina Carlos Sampedrano, Vassiliki Gouni, Audrey P Nicolle, Jean-Louis Pouchelon
背景:変性性僧帽弁疾患(MVD)は小型犬で一般的な心疾患で、腱索断裂(CTR)はこの疾患で可能性のある合併症である。CTRを持つ犬の生存時間および生存性を予測する予後因子は不明である。
仮説:MVDの犬でCTRの有病率と予後は、心不全クラスでそれぞれ増加および減少する。
動物:この研究でMVDの犬706頭を使用した。
方法:CTRの診断は、左および右胸骨傍4-チャンバー像を使用し、いくつかの2次元画像面で確認した、振動する僧帽葉の先端が収縮中に左房内に向いていることをもとにした。
結果:MVDの犬706頭中114頭でCTRが診断され、それらのほとんど(106/114)は、カラードップラーによる評価で重度僧帽弁逆流を持っていた。CTR有病率は、国際小動物心臓学会議(ISACHC)臨床クラスに伴い増加した(すなわちISACHCクラスIa、Ib、II、IIIに対しそれぞれ1.9、20.8、35.5、69.6%[P<.05])。57頭の治療犬(アンギオテンシン変換酵素阻害剤と利尿剤)で長期追跡調査ができ、それらの58%(33/57)は最初のCTR診断から1年以上生存した(生存期間中央値425日)。臨床クラス、診断時の腹水または急性呼吸困難の有無、心拍数、血漿尿素濃度、左房の大きさは生存性を予測するものだった。
結論と臨床関連:CTRは過去に示唆されていたものより、より長い全体の生存期間に関与する。その予後のほとんどは、臨床、生化学因子の組み合わせに依存する。(Sato訳)
■犬の心内膜液滲出:診断、治療、予後
Canine Pericardial Effusion: Diagnosis, Treatment, and Prognosis
Compend Contin Educ Pract Vet. July 2007;29(7):405-411. 26 Refs
Scott P. Shaw, DVM, DACVECC1, John E. Rush, DVM, MS, DACVIM, DACVECC
心内膜液滲出のほとんどの症例は、身体検査を通して診断されえる。身体検査所見は、こもった心音、奇脈、経静脈怒張などである。エックス線写真は球状の心陰影を示すと思われる。心エコー検査は、確実に心膜液滲出を診断する。心膜穿刺は、心膜タンポナーデの緊急治療として指示される。心膜切除は、いくらかの犬で生存性を改善すると思われる。予後は基礎の原因により大きく変化する。(Sato訳)
■不整脈惹起性右室心筋症のボクサーにおけるオメガ-3脂肪酸
Omega-3 fatty acids in Boxer dogs with arrhythmogenic right ventricular cardiomyopathy
J Vet Intern Med. 2007 Mar-Apr;21(2):265-73.
Caren E Smith, Lisa M Freeman, John E Rush, Suzanne M Cunningham, Vincent Biourge
背景:モデル動物やヒトでオメガ-3脂肪酸は不整脈を減じると示されている。それらの効果は、自然に発生した不整脈を持つ犬で研究されていない。
仮説:不整脈惹起性右室心筋症(ARVC)のボクサーで、魚油は心室性不整脈の頻度を減じるだろう。
動物:ARVCのボクサー24頭を研究した
方法:抗不整脈薬の投与を受けていない無症候性ボクサーを心エコー、心電図で評価した。最低1回の心室性期外収縮(VPC)を持つ犬に24時間測定可能心電図(AECG)記録を行った。24時間で>95VPCsの犬を無作為に3つの処置に振り分けた。(1)魚油、2g;(2)亜麻仁油、2g;(3)ひまわり油、2g(コントロール群)、6週間。観察官とオーナーには治療群を伏せた。全ての基準測定を、6週間添加後繰り返した。
結果:基準時、年齢、性別、血圧、体重、心エコー測定値、VPCsに差はなかった。全頭の24時間VPCsの発生数中央値は、基準時で543回(範囲、96-40063回)、6週添加後193回(範囲、6-14825回)だった。VPCs/24hは魚油群(基準中央値=397回[範囲、249-10587回];6週中央値=162回[範囲、16-3781回];P=.02)で低下したが、亜麻仁油(P=.58)、またはコントロール群(P=.48)ではそうではなかった。
結論と臨床意義:それらのデータは、亜麻仁油でなく魚油添加6週間でARVCのボクサーの不整脈を減じ、この一般的疾患の治療に有効となりえることを示唆する。適量、治療期間を知るためにさらに研究が必要である。(Sato訳)
■覚醒している犬と猫の末梢、中心静脈圧の評価
Evaluation of peripheral and central venous pressure in awake dogs and cats
Am J Vet Res. December 2006;67(12):1987-91.
Rosalind S Chow, Phillip H Kass, Steve C Haskins
目的:覚醒している犬猫で、異なるカテーテルサイズ、カテーテル設置部位、体位で測定したとき、末梢静脈圧(PVP)が中心静脈圧(CVP)に相関するかどうかを判定する
動物:36頭の犬と10頭の猫
方法:機能性の頚静脈、末梢静脈カテーテルを設置した犬猫で研究した。末梢静脈カテーテル(18-24ゲージ)は頭側、外側伏在、または内側伏在静脈に設置した。中心静脈カテーテル(5.5-8.5F)は頚静脈に頭側大静脈に進めて設置した。カテーテルをプレッシャートランスデューサーと2つ同時の圧トレースを表示可能な血圧モニターに接続した。各動物で5つの対のPVPとCVP測定値の平均を算出した。異なるカテーテルサイズ、カテーテル設置部位、体位で測定したときPVPとCVPの相関を判定した。
結果:犬で平均±SDPVPが5.7±5.8mmHg でCVPよりも高く、猫で6.0±6.9mmHgでCVPよりも高かった。しかし、重回帰分析結果は、カテーテルサイズ、カテーテル設置部位、体位に関係なくPVPとCPVの有意な相関を示さなかった。犬猫共に、相関は弱かった。
結論と臨床関連:異なるカテーテルサイズ、カテーテル設置部位、体位で評価したとき、PVPはCVPとほとんど相関しなかった。覚醒している犬猫で、末梢静脈圧は、おおよそのCVPと用いるべきではない。(Sato訳)
■栄養と心筋症:自然発症動物モデルからの教訓
Nutrition and cardiomyopathy: lessons from spontaneous animal models.
Curr Heart Fail Rep. 2007 Jun;4(2):84-90.
Freeman LM, Rush JE.
自然発症性の犬の拡張型心筋症と猫の肥大型心筋症は一般的な病気で、ヒトの心疾患モデルとして広く利用されていない。栄養の目的は低塩分食だけではなく、栄養素によって病気を調節することができ、かなり薬物療法を補助するということが研究者によって報告されています。タウリンなど、ある栄養素の欠乏が心筋症に寄与するが、n-3脂肪酸やカルニチンそして抗酸化物質などのいくつかの栄養素も、特異的な薬理学的効果を発揮するかもしれません。自然発症性心筋症の犬と猫は、心疾患の栄養学的調節を研究するための刺激的で将来有望なモデルとなります。(Dr.Kawano訳)
■長期低体温循環停止中に中枢神経系を保護するエリスロポエチン:犬モデルの実験研究
Erythropoietin protects the central nervous system during prolonged hypothermic circulatory arrest: an experimental study in a canine model
J Thorac Cardiovasc Surg. June 2006;131(6):1331-7.
Mitsuhiro Kawata, Shinichi Takamoto, Kazuo Kitahori, Hiroyuki Tsukihara, Tetsuro Morota, Minoru Ono, Noboru Motomura, Arata Murakami, Yoshihiro Suematsu
目的:最近のデータはエリスロポエチンが虚血性、外傷性傷害から脳や脊髄を保護すると示唆している。この研究では犬の実験モデルを使用し、長期低体温循環停止中にエリスロポエチンが中枢神経系を保護するかどうかを判定した。
方法:10頭のビーグル成犬に、ヒト組み替えエリスロポエチン5000U/kg、または生食を無作為に静脈注射した。各犬はそれから心肺バイパス下で、120分間深い低体温循環停止(18度)状態においた。その後、脳脊髄液のタウ蛋白濃度、犬の神経学的欠損の修正マーカー、脳と脊髄の組織病理特性を検査した。
結果:術後6時間(20±12vs.144±54pg/ml;P=.036)および12時間後(64±35vs.478±103pg/ml;P=.01)のエリスロポエチン投与群のタウ蛋白濃度は未処置群よりも有意に低かった。エリスロポエチン投与群の総神経欠損スコアーは59±31(0、正常;500、脳死)で、未処置群は376±30だった(P=.0117)。組織病理検査で、海馬CA1の虚血性神経変化とアポトーシスは投与群で有意に低いことが分かった(それぞれP<.01、P=.028)。
結論:この研究は、エリスロポエチンが部分的に壊死(虚血性神経変化)およびアポトーシス両方を防ぐことにより、長期低体温循環停止中の中枢神経を保護することが示された。(Sato訳)
■長期ピモベンダン療法を行った2頭の犬における、僧帽弁逆流と心筋肥大の増大
Increased mitral valve regurgitation and myocardial hypertrophy in two dogs with long-term pimobendan therapy
Cardiovasc Toxicol. 2005;5(1):43-51.
R Tissier, V Chetboul, R Moraillon, A Nicolle, C Carlos, B Enriquez, J-L Pouchelon
要約
この論文の目的は、inodilatorピモベンダンで長期にわたり治療した2頭の犬における、新奇な副作用を記述することです。我々は、それぞれ10ヶ月と5ヶ月間、ピモベンダンを投与されて、我々の循環器科へ紹介された、ジャーマン・シェパード(症例1)とプードル(症例2)を報告します。2頭の犬で、慣習的なドップラーエコー検査により、僧帽弁逆流と心筋肥大が明らかとなりました。組織ドップラー画像(TDI)を最初の症例で行い、異常な弛緩形勢を示しました。最初の検査後、両症例でピモベンダン投与を中止し、犬はそれぞれ、3ヵ月後と1ヵ月後に再検査しました。
心エコー検査により評価した僧帽弁逆流は、両犬とも減少しており、症例1では収縮期雑音が消失しておりました。重要なことに、症例1において、殆どの心エコー検査およびTDIパラメーターが、正常化する傾向にあり、心筋肥大と弛緩異常の両者における少なくとも一部逆転がinodilator療法中に生じたことを示唆しております。これは、ピモベンダンで治療された犬における臨床状態の中で、僧帽弁逆流における増大を記述した最初の報告です。我々はまた、ピモベンダンが心室肥大を誘導するかもしれないということを示唆しましたが、この所見を確認するための前向き研究が必要です。(Dr.K訳)
■牧羊犬の拡張型心筋症に対してありえる疾病素因
A possible predisposition to dilated cardiomyopathy in Huntaway dogs
N Z Vet J. October 2006;54(5):231-4.
J S Munday, C B Dyer, A C Hartman, G M B Orbell
目的:ニュージーランド牧羊犬と他の犬種との拡張型心筋症(DCM)の罹患率の比較
方法:1999年1月から2006年3月までに診断されたDCM症例を確認するため、マッシー大学検死データベースを利用した。心エコー検査、肉眼的検死、組織学所見がこの診断と一致した場合、DCMがあると考えた。それから牧羊犬の罹患率と、全権種に見られる罹患率、大形犬種に見られる罹患率と比較した。
結果:20頭をDCMと確認した。1頭は診断に心エコー検査を使用し、他の11頭は肉眼的検死で診断された。DCMの肉眼的診断は11頭中6頭で組織学的に確認された。牧羊犬のDCMの罹患率は、全犬種の罹患率(p=0.008)、大型犬種の罹患率(p=0.025)よりも有意に高かった。DCMと診断された全4頭の牧羊犬はオスで、平均年齢は4歳だった。3頭は心機能減弱による徴候を呈し、1頭は慢性腎不全の徴候を呈した。来院前に臨床徴候が見られた期間は、1日-3週間の範囲だった。
結論:この研究結果は、牧羊犬にDCMを発祥する疾病素因があるかもしれないと示唆する。この犬種の罹患率の増加は有意だが、認められた罹患牧羊犬の数は少数であり、それた予備所見を確認するのに追加症例が必要だった。
臨床関連:牧羊犬はニュージーランドで最も一般的な使役犬である。使役犬の早期死亡は、農家の重大な経済損失が予想される。牧羊犬のDCMのさらなる調査は、この犬種の罹患率の低下を可能にするかもしれない。(Sato訳)
■犬の後天性房室弁疾患の治療においてピモベンダンとベナゼプリルの臨床効果
Clinical efficacy of pimobendan versus benazepril for the treatment of acquired atrioventricular valvular disease in dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Jul-Aug;42(4):249-61.
Lombard CW, Jons O, Bussadori CM.
後天的な房室心臓弁膜症の犬76頭で、ランダム化、陽性コントロール、多施設研究において塩酸ベナゼプリル(25頭))とピモベンダン(41頭)の効果を決定するために評価した。 この研究は56日間と長期間の評価に分けた。 同時にフロセミド (ピモベンダン[31頭]、ベナゼプリル[25頭])を投与したサブグループにおいて、心不全スコアは56日目の優れた総合的な効果の評点(P<0.0001)と等しく、ピモベンで有意(P=0.0011)に改善した。ピモベンダンで治療した犬の長期的な中央生存(すなわち死亡あるいは治療の失敗)は415日で、ピモベンダンで治療しなかった犬では128日であった(P=0.0022)。(Dr.Kawano訳)
■心不全の管理におけるピモベンダンの治療
Use of pimobendan in the management of heart failure.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2004 Sep;34(5):1145-55.
Fuentes VL.
ピモベンダンは心不全の犬において多くの国で利用可能な経口強心性血管拡張薬です。 それはPDE III阻害薬と共にカルシウム感受性を増加させる効果があり、結果として心不全における陽性変力作用と静脈性およびergic情報伝達経路に影響を与える。カルシウム感受性効果は心不全の患者で、より重要となるかもしれない。 人間の患者の臨床実験で、好ましい神経分泌ホルモン効果を伴う血行動態効果と運動耐性の持続的な改善を示している。ある研究では死亡率の増加傾向が無意味であることを示したが、催不整脈作用は観察されなかった。
自然発症性の犬の心不全における研究では、ピモベンダンの効果がACE阻害剤の効果に優れてるまではいかないかもしれないが少なくとも匹敵していると示唆します。ピモベンダンは将来、犬の心臓病の治療における役割が増加しそうです。(Dr.Kawano訳)
■感染性心内膜炎の犬における原因病原体と臨床特性の関連の評価:71例(1992-2005)
Evaluation of the relationship between causative organisms and clinical characteristics of infective endocarditis in dogs: 71 cases (1992-2005)
J Am Vet Med Assoc. June 2006;228(11):1723-34.
Jane E Sykes, Mark D Kittleson, Patricia A Pesavento, Barbara A Byrne, Kristin A MacDonald, Bruno B Chomel
目的:感染性心内膜炎(IE)の犬の微生物学的所見を評価し、異なる感染病原体による疾患の臨床特徴に違いがあるかどうかを判定する
構成:遡及症例シリーズ
動物:IEを確認された、または疑われる犬71頭
方法:医療記録の細菌培養と感受性試験、ベクターにより運ばれた疾患に対する血清検査、栄養生長に対するPCR検査結果を再検討した。症例は原因病原体でグループ分けし、病原体群間の関連、種々の血液、生化学、臨床変動値を判定した。感染病原体と転帰間の関連を判定するため、生存時間解析を使用した。
結果:71頭中41頭(58%)で原因細菌を同定した。グラム陽性球菌が原因菌で最も多く(21/41;51%)、ストレプトコッカスキャニスは24%だった。グラム陰性菌は41頭中9頭(22%)で検出された。バルトネラ種の感染は、血液培地における菌の発育の陰性結果を示す31頭中6頭(19%)で検出された。大動脈弁関与、うっ血性心不全はバルトネラ種感染の心内膜炎でよく見られ、それらの犬は無熱性の傾向があった。バルトネラ種の感染は、生存に対する負の相関があった。僧帽弁関与と多発性関節炎は、ストレプトコッカス性心内膜炎の犬によく見られた。
結論と臨床関連:ストレプトコッカスは、IEの一般的な原因菌で僧帽弁に感染しやすく、多発性関節炎に関与していた。バルトネラ種感染によるIEの犬は、多くは無熱性でうっ血性心不全を発症しやすく、まれに僧帽弁に関与し、生存期間はより短かった。(Sato訳)
■犬における術後心室性不整脈に対するリドカインとプロカインアミドの急性血行動態効果の比較
Comparison of acute hemodynamic effects of lidocaine and procainamide for postoperative ventricular arrhythmias in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Jul-Aug;42(4):262-8.
John C Chandler, Eric Monnet, Andrew J Staatz
術後心室性不整脈を2%塩酸リドカインまたは塩酸プロカインアミド静注(IV)で治療している間、その2群の犬の心拍数、収縮期、拡張期、平均圧を測定した。各薬剤IV投与後、血行動態パラメーターは有意な変化を起こさなかった。また、2%リドカインで治療した犬の血行動態パラメーターの変化と、プロカインアミドで治療した犬のそれに有意差はなかった。臨床で適切に投与するなら、術後心室性不整脈の治療にIVプロカインアミドのボーラス1回投与は安全だった。(Sato訳)
■犬と猫の利尿剤としてループ利尿薬フロセミドとトラセミドの効果
The effects of the loop diuretics furosemide and torasemide on diuresis in dogs and cats.
J Vet Med Sci. 2003 Oct;65(10):1057-61.
トラセミドはフロセミドとスピロノラクトンの効果を合わせた新しいループ利尿薬です。猫と犬におけるトラセミドの効果は報告されていません。この研究で猫と犬におけるフロセミドとトラセミドの利尿効果を比較した。圧負荷による心肥大を伴う猫にプラセボ、トラセミド0.3 mg/kgあるいはフロセミド1 mg/kg または3 mg/kgを経口投与した。健常犬と僧房弁閉鎖不全症の犬にプラセボ、トラセミド0.2 mg/kgそしてフロセミド2 mg/kg を7日間経口投与した。投与前とそれぞれの投薬後1、 2、 3、 4、5、 6、8、 12そして 24 時間で尿サンプルを採取した。尿量と尿中ナトリウムイオンそしてカリウムイオンを測定した。フロセミドとトラセミドの両方とも投与後1時間で尿量が増加した。
フロセミドは猫と犬において2~3時間でピークとなる、容量依存性の尿量増加をもたらす。トラセミドは猫と犬で投与後2~4時間でピークを示し、12時間持続するが、フロセミドの利尿効果は投与後6時間で消失する。僧房弁閉鎖不全症の犬において、7日間のトラセミド投与は明らかに尿のカリウム排泄を減少させた。血漿アルドステロン濃度はフロセミドで変化が無かったが、トラセミドで増加した。結論として、トラセミドの1/10の濃度はフロセミドと同等の効果があり、猫と犬においてより長く利尿効果が得られた。トラセミドは猫と犬のうっ血性心不全あるいは水腫の治療に役立つことが示唆された。(Dr.Kawano訳)
■拡張型心筋症の犬の予後指標
Prognostic indicators for dogs with dilated cardiomyopathy
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):104-10.
Michele Borgarelli, Roberto A Santilli, David Chiavegato, Gino D'Agnolo, Renato Zanatta, Alessandro Mannelli, Alberto Tarducci
この研究の目的は、拡張型心筋症の犬の種々臨床変化、ECG、心エコー、ドップラー心エコー変動値の予後を左右する値を調査することである。63頭の犬で生存に関連する11の変動値を評価した。調査した変動値は診断時の年齢、心不全(HF)のクラス、呼吸困難、腹水、心房細動(AF)、駆出率(EF)、E-point septal separation(EPSS)、拡張末期容量指数(ESV-I)、拘束または非拘束性経僧帽弁血流(TMF)パターンであった。生存期間中央値は671日(95%以下信頼限界350日)だった。生存曲線は、重度HF、腹水、140ml/m2以上のESV-I、25%以下のEF、拘束性TMFパターンが生存期間に有意な負の関連を持つことを示した。洞調律とAF両方を持つ犬39頭は適切なTMF記録を有し、それらの犬でTMFパターンの層別化後、拘束性TMFパターンは最も重要な負の予後指標だった。
拡張型心筋症の犬で、拘束性TMFパターンは有効な予後指標であることがわかる。HFのクラス、腹水、ESV-I、EFも適切なTMFパターンが記録されなければ、有用な指標であると締めくくる。(Sato訳)
■犬における歯科予防後の僧帽弁心内膜炎
Mitral Valve Endocarditis After Dental Prophylaxis in a Dog
J Vet Intern Med 19[2]:268-270 Mar-Apr'05 Case Report 14 Refs
Sandra P. Tou, Darcy B. Adin, and William L. Castleman
9歳去勢済みラットテリアが、3週間にわたる発熱、食欲不振、体重減少の評価でフロリダ大学獣医教育病院(UF-VMTH)に来院した。オーナーによると、臨床症状は通常の歯科予防から帰ってすぐ始まった。抜歯は行わず、処置中、処置後抗生物質を投与しなかった。
著者の知るところでは、これは粘液腫性僧帽弁変性を伴う小型犬種で、歯科予防後すぐ発生した僧帽弁心内膜炎の最初に報告された症例である。基礎心疾患と素因を持たせる一時的な出来事、両方がこの症例独特な面である。歯科予防とIEの直接原因となる関係はこの犬で証明できないが、処置前の臨床疾患がなく、処置後すぐ臨床症状が急速に発現したことから、歯科清浄の二次的な後天性IEを示唆する。犬猫の扁桃と口腔粘膜からS bovisが分離されており、この報告の犬の疾患の起源と発現として歯科疾患と予防を支持する。歯科予防後の感染性心内膜炎(IE)発症は、歯科予防をうけた僧帽弁の粘液腫変性を伴う多数の小型犬種がIEを発症しなかったことをもとに一般的でないと考えられている。免疫抑制疾患、コルチコステロイド療法、先天性心疾患のような他の素因はこの犬で確認されなかった。術中抗生物質投与されていなかった犬は、IE感受性に寄与しているのかもしれない。変性性弁膜症の関係と歯科予防との強い関連は、過去の臨床状況で報告されておらず、抗生物質予防処置は、粘液腫性弁変性の犬にルーチンに考慮すべきかの疑問があがる。
この報告にかかわらず、粘液腫政変性の犬のIE発生率は低く、ふつうそれら患者すべてに予防的抗生物質のルーチンな使用を指示する必要はない。低リスク患者に対する予防抗生物質の使用は、幅広い抗生物質の使用に薬物耐性の脅威が増えるため、かなり問題が多い。抗生物質の賢明な選択と使用は、薬物耐性菌の出現予防に必須である。今日、IEを防ぐ抗生物質予防の効果に対する決定的証拠は、人または獣医界で示されておらず、依然議論となる話題である。菌血症に関与する可能性がある処置を行う僧帽弁逸脱症の人に使用するのと同様、犬に標準的な抗生物質予防法の効果があるか判定する追加研究が必要だろう。(Sato訳)
■心疾患を伴う犬におけるカルベジロールの心血管と腎臓へ影響
Cardiovascular and renal effects of carvedilol in dogs with heart failure.
J Vet Med Sci. 2002 Jun;64(6):469-75.
犬の心血管と腎機能そして薬物動力学に対するカルベジロール(β遮断薬)の急性効果を決定すること。雄と雌の15頭の成熟した雑種犬(7-15kg)を実験に使用した。8頭の犬をコントロールとし、7頭の犬を医原性僧帽弁逆流(MR)実験動物とした。カルベジロール(0.2、0.4、および0.8mg/kg 経口投与)を投与し,血中カルベジロール濃度を逆相高速液体クロマトグラフィーで分析した。イソプロテレノールまたはフェニレフリンの反応も評価した。
イソプロテレノール(0.025 microg /kg/min)を5分間サフェナ静脈から注入し、そしてフェニレフリン(5microg/kg)はカルベジロール(0.2, 0.4 mg/kg)あるいはプラセボと一緒に4日間投与した。
心拍数と血圧を測定し、そして左心室短縮率を超音波診断装置で測定した。糸球体濾過率(GFR)と腎血漿流量(RPF)は、チオ硫酸ナトリウムとパラアミノ馬尿酸ナトリウムを注入し測定した。カルベジロール(0.2mg/kg)は、腎機能と動脈血圧そして左心室収縮機能を変化させずに心拍数を減少させた。カルベジロール0.4(mg/kg)は心拍、血圧そして腎機能を低下させた。イソプロテレノールによる心拍増加作用は0.4 mg/kg のカルベジロールで36時間まで有意に抑えた。カルベジロール0.2mg/kgは24時間この効果を抑制した。従ってカルベジロールの投与量を測定する必要がり、心不全の犬には0.2mg/kg以下から開始して0.4 mg/kgまで増量すべきである。(Dr.Kawano訳)
■バルトネラ心内膜炎の犬6症例の病理
Pathology of bartonella endocarditis in six dogs.
Vet Pathol 42[3]:370-3 2005 May
Pesavento PA, Chomel BB, Kasten RW, McDonald KA, Mohr FC
カルフォルニアデービス大学の獣医教育病院に来院した犬の5年間の回顧的研究で、包埋弁組織のPCR増幅により31頭が弁膜性心内膜炎と組織学的に診断され、31頭中6頭(19%)にバルトネラ病原体の関与があった。確認されたバルトネラ症例は、大動脈弁単独(5/6)または三尖弁と併発(1/6)だった。バルトネラ心内膜炎の顕微鏡的特徴を、非バルトネラ心内膜炎の弁と比較し、弁変化は感染微生物に関連しなかった(心内膜炎)。バルトネラ心内膜炎の特徴は、繊維、石灰化、内皮増殖、不定炎症を伴う新生血管形成の組み合わせだった。それらの特徴で特異的なものはなかったが、その組み合わせは培養可能な細菌により起こる心内膜炎と心内膜炎の区別が可能である。超微細構造分析で、細胞外、上皮内細菌両方明らかだった。現在、臨床病歴、血清学、PCRがバルトネラ心内膜炎の病因診断確立に必要である。(Sato訳)
■犬の感染性心内膜炎における臨床病理所見と転帰:71例(1992-2005)
Clinicopathologic findings and outcome in dogs with infective endocarditis: 71 cases (1992-2005)
J Am Vet Med Assoc. June 2006;228(11):1735-47.
Jane E Sykes, Mark D Kittleson, Bruno B Chomel, Kristin A MacDonald, Patricia A Pesavento
目的:感染性心内膜炎(IE)の犬における臨床、検査、検死所見を評価する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:IEが明確な、またはその可能性のある71頭の犬
方法:記録から徴候、臨床的特徴、臨床病理検査および画像診断結果を再検討した。年発生率と生存に対する変数の影響を生存曲線分析を用いて判定した。
結果:IEの全体の発生率は0.05%だった。最も罹患するのは大型犬種で、5歳以上が75%以上を占めた。71頭中36頭(51%)が大動脈弁を侵され、59%は僧帽弁を侵されていた。免疫介在性多発性関節炎、敗血症性関節炎、末梢動脈血栓塞栓症による跛行は53%の犬に認められた。71頭中17頭(24%)の犬に神経学的合併症が診断された。71頭中31頭(44%)に血栓塞栓疾患が疑われた。IEに関する死亡率は56%で、生存期間中央値は54日だった。生存に関する負の因子は、血小板減少、血清クレアチニン高濃度、腎臓の合併症、血栓塞栓性の合併症だった。
結論と臨床関連:IEの診断は、発熱、収縮期または拡張期心雑音、歩行運動障害を持つ犬で疑うべきである。血小板減少、高血清クレアチニン濃度、血栓塞栓症、または腎臓の合併症を持つ犬は生存期間がより短いと思われる。(Sato訳)
■うっ血性心不全の犬の転帰と低ナトリウム血症および高血糖の関連
Association of Hyponatremia and Hyperglycemia With Outcome in Dogs With Congestive Heart Failure
J Vet Emerg Crit Care 14[3]:177-182 Sep'04 Retrospective Study 44 Refs
Colleen A. Brady, DVM, DACVECC, Dez Hughes, BVSc, MRCVS, DACVECC and Kenneth J. Drobatz, DVM, MSCE, DACVECC, DACVIM
目的:うっ血性心不全(CHF)を持つ犬の治療前の血漿ナトリウムとグルコース濃度を評価することと、生存、非生存間の違いを評価する
構成:遡及研究
動物:心臓の内科治療を受ける前のCHFの犬59頭
介入:なし
測定と主要結果:CHFの犬の平均血漿ナトリウム濃度は正常範囲(144-156mmol/l)以下で、生存犬(147±4mmol/l)に比べ非生存犬(141±6mmol/l)は有意に低かった(P=0.009)。平均血漿グルコース濃度は正常範囲(76-117mg/dl)以上で、生存犬(100±13mg/dl)に比べ非生存犬(128±52mg/dl)は有意に高かった(P=0.004)。非生存犬の44%は低血漿ナトリウム、高血漿グルコース濃度を併発したが、生存犬で両異常をもつ犬はいなかった(P<0.0001)。
結論:CHFの犬における、より低い血漿ナトリウムとより高い血漿グルコースは予後の悪さと関連する。(Sato訳)
■猫の心房細動:50例(1979-2002)
Atrial Fibrillation in Cats: 50 Cases (1979-2002)
J Am Vet Med Assoc 225[2]:256-260 Jul 15'04 Retrospective Study 22 Refs
Etienne Cote, DVM, DACVIM; Neil K. Harpster, VMD, DACVIM; Nancy J. Laste, DVM, DACVIM; Kristin A. MacDonald, DVM, DACVIM; Mark D. Kittleson, DVM, PhD, DACVIM; Betsy R. Bond, DVM, DACVIM; Kirstie A. Barren, DVM, DACVIM; Stephen J. Ettinger, DVM, DACVIM; Clarke E. Atkins, DVM, DACVIM
目的:心房細動(AF)猫の特徴、臨床症状、診断所見、治療、転帰を判定する
構成:回顧的研究
動物:猫50頭
方法:AFの診断基準(最低2誘導のECG、P波の明らかな欠如、上室性律動、納得のいく不規則な律動)に合った猫で心エコー検査を行った猫の医療記録を再検討した。
結果:41頭のオス(37頭去勢)と9頭のメス(7頭避妊)だった。41頭は雑種、9頭は純血種だった。平均±SD年齢は10.2±3.7歳だった。一般的な主訴は、呼吸困難、大動脈血栓塞栓症、嗜眠だった。11頭の猫のAFは付随所見だった。平均±SD心拍数は223±36回/分だった。一般的な心エコーでの異常は、拘束性、または未分類の心筋症(n=19)、求心性左室肥大(18)、拡張型心筋症(6)だった。平均±SD左心房-大動脈直径比(n=39)は2.55±0.80だった。一般的な胸部X線所見は、心臓肥大、胸水、肺水腫だった。生存期間中央値(n=24)は165日(範囲、0-1095日)だった。24頭中8頭は、AF診断後1年以上生存した。
結論と臨床関連:結果は、心房の拡大を引き起こすに十分な構造上重度心疾患の高齢猫で、AFが主に発生することを示唆する。それら猫の心房細動は、非代償性心疾患の症状が明白なとき、通常最初に検出されたが、付随所見として認められたりもする。(Sato訳)
■健康な猫における家と病院での心拍数と心拍数変化
Heart Rate and Heart Rate Variability of Healthy Cats in Home and Hospital Environments
J Feline Med Surg 7[3]:195-202 Jun'05 Original Article 41 Refs
Jonathan A. Abbott DVM, Dipl ACVIM (Cardiology)
心拍数とその変化を調査するため、16頭の健康な若い猫に遠隔測定器を装着した。研究対象とする前に猫に心エコー検査を実施した。心エコー検査で猫を拘束したときの心拍数を、同時に記録した心電図の4-5連続RR区間から算出した。病院(VTH)の静かな場所で遠隔操作により心電図データをとり、その後オーナーの家(home)で実施した。移動データはデジタル方式で採取し、4分間隔の被験者のRR間隔タコグラムを高速フーリエ変換して心拍数変化を測定した。安静時の猫で洞性不整脈はよく見られた。平均(±SD)として出した心拍数(bpm)は:拘束時心拍数:187(±25)、病院での心拍数:150(±23)、家での心拍数:132(±19)で、各値にそれぞれ有意差が見られた。心拍数変動のプロフィールで有意差は、猫が病院にいる時交感神経緊張がより高まる(副交感神経緊張はより低下)と思われる。(Sato訳)
■実験的に誘発した僧帽弁閉鎖不全症の犬における持続放出性二硝酸イソソルビド(EV151)の効果
Effect of sustained release isosorbide dinitrate (EV151) in dogs with experimentally-induced mitral insufficiency.
J Vet Med Sci. 2003 May;65(5):615-8.
Nagasawa Y, Takashima K, Masuda Y, Kataoka T, Kuno Y, Kaba N, Yamane Y.
実験的に誘発した僧帽弁閉鎖不全症の7頭の犬において麻酔下で血行力学的効果を調査するために、二硝酸イソソルビド(ISDN)の持続放出型(EV151)を異なる容量(0, 2, 8 and 16 mg/kg)で投与した。投薬で肺動脈楔入圧(前負荷)、心拍出量そして全身血管抵抗(後負荷)が変わった。
動脈圧はコントロール群、2 mg/kgで投与した動物で増加したが、8 そして 16 mg/kg で投与後1~2時間で減少した。2, 8 そして 16 mg/kgで投与した動物で全身血管抵抗の減少に付随して心拍出量が増加した。ISDNは2 mg/kgでマイルドな血管拡張を引き起こし8 そして 16 mg/kgで強力な血管拡張を引き起こした。無麻酔の犬での更なる実験が有益となるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■粘液腫性僧帽弁疾患により引き起こされた犬の心不全におけるピモベンダンの有効性と安全性
Efficacy and safety of pimobendan in canine heart failure caused by myxomatous mitral valve disease.
J Small Anim Pract 46[3]:121-30 2005 Mar
Smith PJ, French AT, Van Israel N, Smith SG, Swift ST, Lee AJ, Corcoran BM, Dukes-McEwan J
目的:粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)により引き起こされた軽度から中程度の心不全(HF)の犬において、6ヵ月間以上ラミプリルとの対照により、ピモベンダンの有効性と安全性を評価することです。
方法:前向き無作為、単純盲目、平行群試験。MMVDにより引き起こされた軽度から中程度のHFを持つ飼い犬(n=43)を、6ヵ月間、ピモベンダン(P dogs)、あるいはラミプリル(R dogs)のいずれかを投与する群に、無作為に割り当てました。予後測定は、HF有害結果、HFの直接結果として明白な試験失敗;研究期間中に投与されたフロセミド最大投与量(mg/kg/day);HFの直接結果として追加来院となった要件などを検討しました。
結果:ピモベンダンの治療は、ラミプリルの治療と比較して、うまく許容されました。P dogsのHF有害作用はR dogsと同様25%でした(オッズ比4.09、95%信頼区間1.03から16.3、P=0.046)。
臨床的意義:R dogsは総合的により高いスコアでした。これは、基準でP dogsよりも病態がより進行したものが多かったためかもしれません(P=0.04)。これらの結果は、高いオッズ比が更なる研究を確証しますが、慎重に解釈すべきです。(Dr.K訳)
■心不全の管理におけるピモベンダンの使用
Use of pimobendan in the management of heart failure.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 34[5]:1145-55 2004 Sep 47 Refs
Fuentes VL
ピモベンダンは犬の心不全における使用のために、多くの国で利用可能な経口イノダイレーター化合物です。カルシウム感作作用は、心不全患者でもっとも重要と想定されますが、ピモベンダンはPDEIII抑制とカルシウム感作作用を兼ね備え、弱った心臓で脈および情報伝達経路活性と陽性変力作用をもたらします。ヒト患者における臨床研究では、有利な神経ホルモン作用を伴う血行力学的、運動耐性における一様の改善が明らかにされました。ある研究では、有意差のない死亡率の増大傾向を示唆しましたが、催不整脈作用は観察されませんでした。犬の自然発生した心不全における研究では、 ピモベンダンの作用は、まさったものではないとしても、ACE阻害剤の作用と類似するという事を示唆しております。ピモベンダンは、犬の心不全の治療において、今後、役割を増すと思われます。(Dr.K訳)
■肺動脈弁狭窄のイヌ40頭のバルーン弁形成の結果
Results of balloon valvuloplasty in 40 dogs with pulmonic stenosis.
J Small Anim Pract 45[3]:148-53 2004 Mar
Johnson MS, Martin M
バルーン弁形成を試みた重度肺動脈弁狭窄を呈すイヌ43頭の記録を再検討した。34頭(79%)は初回来院時症候性であった。全てのイヌは、ドップラーで経-狭窄圧勾配が80mmHg以上、軽度から重度の右室肥大所見を同時に呈していることから、バルーン弁形成術を選択した。40頭のイヌにバルーン弁形成術を行った。2頭は異所冠状動脈、1頭は肺動脈にカテーテルを設置するのが不可能なため、その措置を行わなかった。全体で40頭中37頭(93%)はバルーン化に成功し、来院時の平均圧勾配124mmHgから術後6ヶ月の67mmHgへと、圧勾配46%の平均減少を起こした。3頭はバルーン弁形成術中死亡し(同時欠損があった)、3頭はその処置に対する臨床反応が悪かった。このようにバルーン弁形成術は成功し、以前症候を示した症例の80%に持続性臨床改善をもたらした。この研究は、過去に発表されたものより大規模なイヌ集団のバルーン弁形成術の結果を述べるために実施した。(Sato訳)
■バルーン弁形成術またはアテノロールで治療した重度弁下部大動脈狭窄の犬の生存期間
Survival Times in Dogs with Severe Subvalvular Aortic Stenosis Treated with Balloon Valvuloplasty or Atenolol
J Am Vet Med Assoc 227[3]:420-424 Aug 1'05 Prospective Study 24 Refs
Kathryn M. Meurs, DVM, PhD, DACVIM; Linda B. Lehmkuhl, DVM, MS, DACVIM; John D. Bonagura, DVM, MS, DACVIM
目的:バルーン弁形成法、またはベータ‐アドレナリン作用性受容体ブロッカーのアテノロールで治療した重度弁下部大動脈狭窄(SAS)の犬の生存期間を調べる
構成:前向き研究
動物:重度SAS(収縮期ピーク圧勾配80mmHg)の24ヶ月未満の犬38頭
方法:バルーン弁形成術を10頭の犬に行い、その成果を判定するため6週間後に再検査した。残り28頭は無作為にバルーン弁形成術を受ける犬(n=15)と、長期アテノロールを投与する犬(13)に振り分け、9年間、または死亡するまで毎年検査を繰り返した。
結果:最初の10頭で、基の平均圧勾配(平均±SD、167±40.1mmHg)と比較し、バルーン弁形成術6週後は有意に低下した(119±32.6mmHg)。バルーン弁形成術を行った犬の生存期間中央値(55ヶ月)はアテノロールを投与した犬の生存期間中央値(56ヶ月)と有意差はなかった。
結論と臨床関連:バルーン弁形成術は少なくとも短期間、重度SASの犬の収縮期ピーク圧勾配を有意に低下させる可能性があると思われる。バルーン弁形成術とアテノロール投与を行った犬で、生存期間に明確な有効性は見られなかった。(Sato訳)
■猫の動脈血栓塞栓症: 急性発症の127症例(1992-2001)と低用量アスピリンで長期管理した24症例
Arterial thromboembolism in cats: acute crisis in 127 cases (1992-2001) and long-term management with low-dose aspirin in 24 cases.
J Vet Intern Med. 2003 Jan-Feb;17(1):73-83.
Stephanie A. Smith, Anthony H. Tobias *, Kristin A. Jacob, Deborah M. Fine, Pamela L. Grumbles
猫の動脈血栓塞栓症(ATE)の127症例を再検討した。 アビシニアン、バーマン、ラグドール、および雄猫が際立った。頻呼吸(91%)、低体温(66%)、そして肢の運動機能の欠如(66%)が一般的だった。 診断された90頭の猫の基礎疾患は甲状腺機能亢進症(12)、心筋症(拡張型[8]、未分類[33]、閉塞性肥大型 [5], 肥大型 [19])、腫瘍 (6)その他 (4)基礎疾患なし(3)であった。
一般的な異常は、左房拡大(93%)、うっ血性心不全(CHF、44%)そして不整脈(44%)だった。
CHFではない猫の89%は頻呼吸だった。 一般的な生化学的異常は、高血糖、高窒素血症そして異常に高い血清濃度の筋酵素であった。
肢の急性動脈血栓塞栓症を治療した87症例のうち39頭(45%)が退院して生存した。 生存患畜と非-生存患畜の間で体温(P<.00001)、心拍(P=.038)、血清リン濃度(P=.024)、運動機能(P=.008)、そして罹患した肢の数(P=.001)に関して有意差が見られた。
生存患畜と非生存患畜の間で年齢、呼吸数、他の生化学分析あるいはCHE併発を比較した時の有意差は見られなかった。直腸温度に基づく論理計算回帰モデルで、37.2度での50%生存率が推測された。退院した猫の中央生存時間(MST)は117日であった。11頭の猫が動脈血栓塞栓症を再発し、5頭の猫は肢の問題が発現した。うっ血性心不全の猫(MST: 77 日)はうっ血性心不全がない猫(MST: 223 日; P = .016)より明らかに生存期間が短かった。高用量のアスピリン(≧40 mg/猫 72時間毎)と低用量のアスピリン(5 mg/猫 72時間毎)を投与した猫の間に、生存率あるいは再発率の有意な違いは認められなかった。低用量での副作用の頻度は少なくより軽度であった。(Dr.Kawano訳)
■カルフォルニア北部のイヌ感染性心内膜炎の前向き研究(1999-2001):優勢な病原体としてのバルトネラの出現
A Prospective Study of Canine Infective Endocarditis in Northern California (1999-2001): Emergence of Bartonella as a Prevalent Etiologic Agent
J Vet Intern Med 18[1]:56-64 Jan-Feb'04 Prospective Study 39 Refs
Kristin A. MacDonald, Bruno B. Chomel, Mark D. Kittleson, Rick W. Kasten, William P. Thomas, and Patricia Pesavento
カルフォルニア北部のイヌのバルトネラによる感染性心内膜炎の発生率を判定し、感染性心内膜炎の他のイヌと比較するため、前向き研究を行った(1999年6月-2001年5月)。18頭のイヌで、生前臨床症状と心臓超音波検査をもとに感染性心内膜炎を診断した。5頭(28%)の病原体はバルトネラ種で、バルトネラに対する抗血清反応により診断した(力価>1:512;範囲、1:1024-1:4096)。またクエン酸合成遺伝子(glt A)の部分DNA塩基配列決定法と感染弁のPCR-制限断片長多型(RFLP)陽性により死後確認した。7頭(39%)のイヌの病原体は、従来の細菌だった。6頭(33%)には病原体が認められなかった。Bartonella vinsonii berkhoffii (n = 3), B clarridgeiae (n = 1), B clarridgeiae-様病原体 (n = 1)が認められた。
B clarridgeiaeによる感染性心内膜炎症例のみ血液培養陽性だった。バルトネラが原因のイヌすべてAnaplasma phagocytophilumの血清反応も持っていた。また大動脈弁のみに病変が認められた。バルトネラが原因で無い感染性心内膜炎の症例のうち、31%は大動脈弁、61%は僧帽弁、8%は両方だった。僧帽弁感染性心内膜炎のイヌは、大動脈弁の全てのイヌ(P=.004)、バルトネラによる大動脈弁の感染性心内膜炎のイヌよりも長生きした(P=.002)。結論として、バルトネラはカルフォルニア北部のイヌの感染性心内膜炎の一般的な原因である。高バルトネラ血清力価(>1:512)は、バルトネラによる大動脈弁感染性心内膜炎の生前診断に有効である。(Sato訳)
■老齢の中国人における冠状動脈性心疾患と脳梗塞に関する温度極値と死亡率
Temperature extremes and mortality from coronary heart disease and cerebral infarction in elderly Chinese.
Lancet. 1995 Feb 11;345(8946):353-5.
Pan WH, Li LA, Tsai MJ.
1981年から1991年まで台湾での心血管系疾患における野外温度と死亡率との関係を研究した。気候が記録された選択地域で生活する25歳以上の760万人の居住者において、11年間に冠動脈疾患で30,085人、脳梗塞で21,750人、脳出血で39,818人が死亡した。温度―死亡率の関連性は、より年をとった人で特に明らかだった。冠動脈疾患と脳梗塞において、温度と死亡率の間でU字型の関連性が観測された。
冠動脈疾患(26-29℃)と脳梗塞(27-29℃)において死亡した最低温度の範囲はより寒い気候の国より高かった。より年をとった人で、32℃の脳梗塞に対するリスクは、27-29℃のリスクより66%高かった:リスクは27-29℃から1℃の低下あたり3.0%増加した。32℃での冠動脈疾患のリスクは26-29℃のリスクより22%高かった:26-29℃を下回るとリスクは1℃の減少あたり2.8%増加した。
脳出血の死亡率は1℃増加することで3.3%の割合で減少した。これらの結果は血栓塞栓症と出血性心血管系疾患における病態生理学的な相違を暗示している。より年をとった人において不十分な温度調節では心血管系疾患が突然起こるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■健康なメインクーンの成猫における、Mモード心エコー検査パラメータの測定
Measurement of M-mode Echocardiographic Parameters in Healthy Adult Maine Coon Cats
J Am Vet Med Assoc 226[5]:734-737 Mar 1'05 Prospective Study 13 Refs
Lori Drourr, DVM; Bonnie K. Lefbom, DVM, DACVIM; Steven L. Rosenthal, DVM, DACVIM; William D. Tyrrell Jr, DVM, DACVIM
目的:鎮静のかかっていない、メインクーンの成猫における、Mモード心エコー検査パラメータに関する基準値を決定し、これらの値を、鎮静のかかっていない家庭猫の成猫で報告されたデータと比較することです。
計画:前向き研究
動物:105頭の健康なメインクーンの成猫
手順:3年間に渡り、Mモード心エコー検査(標準的な右傍胸骨経胸法を含める)を交配前評価の一貫として、メインクーンに行いました;健康な個体におけるMモードパラメータの値を集め、健康な家庭猫の成猫に関して報告された値と比較する為、平均値を算出しました。
結果:メインクーンの平均±SD体重は、家庭猫よりも有意に大きいものでした。メインクーンにおける、拡張末期と収縮末期(LVIDdとLVIDs)の左室内径、収縮末期の心室中隔壁厚(IVSS)、収縮末期の左室後壁壁厚(LVPWs)、収縮末期の左心房径(LADs)、大動脈基部内径(Ao)の平均値は、健康な家庭猫における値と有意に異なりました。2群間で検出された最も大きな違いは、LVIDd、LADs、そしてAoの値でした。線形回帰分析では、体重と心拡張期終末の各LVIDd、LVPWs、IVSs、Ao、LADs、そして左室後壁壁厚との間の有意な相関を除き、不十分と示されました。
結論と臨床関連:メインクーンにおける、いくつかのMモード心エコー検査パラメータ値は、家庭猫で報告されているものと異なります;これらの違いは、この品種における、正常と異常を識別する心エコー所見を解釈するのに考慮に入れるべきです。(Dr.K訳)
■ドキソルビシン誘発性心筋症の犬の左室自由壁のひだ形成
Plication of the free wall of the left ventricle in dogs with doxorubicin-induced cardiomyopathy.
Am J Vet Res 66[2]:238-43 2005 Feb
de Andrade JN, Camacho AA, Santos PS, Fantinatti AP, Nunes N, Stopiglia AJ
目的:心肺バイパスなしで、左室収縮機能を改善させる方法として、左心室領域や体積を低下させる左室の自由壁のひだ形成を評価する
動物:8頭の雑種成犬
方法:ドキソルビシン投与(30mg/m2、i.v.、21週ごと168日間)で、各犬に拡張型心筋症(DCM)を誘発させた。2頭は心筋症誘発中に死亡した。4頭のひだ形成手術を実施した。2頭のイヌは手術を行わなかった(コントロール)。心拍出量(CO)、2次元M-モード心エコー検査、動脈血圧、心電図検査、血球数、血清生化学検査をDCM誘発後とひだ形成後1、2、7、15、21、30、60、90、120、150、180日目に記録した。移動式心電図(ホルター)記録を手術日に24時間行った。
結果:1頭はひだ形成手術後死亡した。心室ひだ形成を行った残りの犬は、術後CO、駆出分画、分画短縮が有意に改善し、左室領域、容積が有意に減じた。心電計、ホルター計の記録で、術後1週間目の処置なしで改善した早発心室波形を示した。コントロール犬の臨床状況は低下し、それら2頭は心筋症誘発後約40日間で死亡した。
結論と臨床関連:左心室の自由壁のひだ形成は、ドキソルビシン誘発心筋症を伴う犬の左室収縮機能を改善した。自発性拡張型心筋症の犬にそれを応用したときを評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■肥大型心筋症の猫における徐放性ジルチアゼムの1日1回投与の評価
Evaluation of Extended-Release Diltiazem Once Daily for Cats With Hypertrophic Cardiomyopathy
Journal of the American Animal Hospital Association 41:98-103 (2005)
Michelle Wall, DVM, Diplomate ACVIM, Clay A. Calvert, DVM, Diplomate ACVIM, Sherry L. Sanderson, DVM, PhD, Diplomate ACVIM, Diplomate ACVN, Andrea Leonhardt, BS, LVT, Corrie Barker, DVM, Diplomate ACVIM and Tiffany K. Fallaw, BS
13頭の猫に毎日1回経口的に30mgもしくは60mgの徐放性ジルチアゼムを投与した後、血清ジルチアゼム濃度を測定した。24時間連続で血液検体を採取した。両方の容量において通常6、12、18、24時間で200ng/ml以上の上昇した血清濃度に帰着した。30mgの投与量は時々18、24時間で50ng/ml以下の低い濃度と関連があった。60mgの投与量(9.3~14.8mg/kg)は飼い主が所有している猫25頭中9頭(36%)で嗜眠、胃腸障害そして体重減少と関連があった。胃腸障害は1週間以内に認められ、そして体重減少は治療開始2~6ヶ月後に検出された。(Dr.Kawano訳)
■猫の心拡張不全の慢性治療に関する前向き、二重盲目、複数機関評価:仮解析
Prospective, Double-Blinded, Multicenter Evaluation of Chronic Therapies for Feline Diastolic Heart Failure: Interim Analysis.
ACVIM 2003
Fox PR,1 for the Multicenter Feline Chronic Heart Failure Study Group. 1The Animal Medical Center, New York, NY.
肺水腫を伴う心拡張不全(HF)は、猫における症候性心疾患の最も一般的な原因であります。最適な治療法は、転帰に関するデータ比較が少ない為に、困惑してきました。これといってある薬剤の使用を支持する臨床治験がありません。
慢性心不全管理に対する基本的アプローチのエビデンスを創始するため、我々は、1998年、5月に、前向き、二重盲目、プラセボコントロール、複数機関臨床試験を始めました。
完全無作為化ブロック計画で、HFの初発を生存した猫を4つの治療群のひとつに割り当てました。それによると、全ての猫はフロセミド(1.1-2.5mg/kg qd)を投与されてました。さらに、プラセボ(プラセボグループと呼ぶ)、アテノロール(1.1-2.5mg/kg)、ディラコール(30mg/cat)、あるいはエナラプリル(0.4-0.6mg/kg)1日1回のいずれかを受けました。我々はHF再発までの期間、研究期間、そして死亡率を査定しました。intention-to-treatの原則により、データを解析しました。この研究は進行中で、活発な治療群(グループ2、3、4と呼ぶ)に関して、盲目が継続しております。
我々は、HFの猫118頭(HCM57頭、HOCM37頭、そしてRCMあるいはUCM24頭)を登録しました。疾患分類の比率(HCM、HOCM、その他)は、治療群に差はありませんでした(P=0.18)。プラセボグループ、グループ2、3、4に関する患者の特徴は、それぞれ、:体重(平均-5.5、5.1、5.7、4.9kg;P=0.089);年齢(平均-8.7、6、8、5才;P=0.154);品種(DSH-70%、73%、88%、66%;P=0.86);そして性別(オス、77%、54%、78%、66%;P=0.8)でした。
39頭の猫のコーホートにおける25%HF再発までの比較期間は、プラセボ群(フロセミド単独)が、最も長く補正されておりました(254日)。グループ4はプラセボより顕著に悪くなりました(92日、危険率、202%、P=0.03)。グループ2(99日、危険率、144%)そしてグループ3(153日、危険率、124%)は、プラセボに対し、より悪い転帰をとるように示されましたが、確率はそれぞれP=0.22とP=0.47でした。研究期間(グループ2,3,4とプラセボの比較)は、グループ4が最も短く(危険率139%,P=0.11);グループ3は、プラセボよりわずかに悪く(危険率113%,P=0.6)、グループ2はわずかに、より有望な所見でした(危険率74%,P=0.19)。全症例の死亡率は、58.5%でした。心不全および/あるいは血栓塞栓症による死亡が、69頭中63頭の猫で発生しました。全体の研究個体群(P=0.8)あるいは亜群(DHS猫のみ,P=0.6、あるいはHOCMとHCMコーホート,P=0.8)を考察した時、全体的な死亡率は、治療により影響を受けませんでした。
このように、暫定的な解析で、フロセミドにアテノロール、ディラコール、あるいはエナラプリルのいずれかを、明記された用量で追加し、長期管理することは、フロセミド単独管理と比較して、臨床転帰における大きな利益を提供すると言う証拠はほとんどありませんでした。(Dr.K訳)
■猫のエナラプリルによる、アンギオテンシン変換酵素の用量依存的抑制
Dose-dependent inhibition of angiotensin converting enzyme by enalapril in cats.
J Vet Med Sci 64[4]:385-7 2002 Apr
Uechi M, Imamoto S, Ishikawa Y
猫における心不全は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)抑制剤で治療されますが、血行動態、ACE活性の抑制に関するエナラプリルの異なる用量の効果に関する資料は、いまだ発表されておりません。エナラプリルの効果を評価する為、0.25、0.5、または1.0mg/kgを1日1回(sid,PO)、あるいは1日2回(bid,PO)投与を行い、血漿ACE活性、間接血圧、心拍数を測定しました。血漿ACE活性と血圧は用量依存性に下がりました。1日2回投与による血圧は、二相性作用がありました。エナラプリル0.25mg/kg bidは、24時間後40%まで血漿ACE活性を抑制し、0.5と1.0mg/kg sid、そして0.5と1.0mg/kg bidの効果とほぼ同様でしたが、0.25mg/kg sidは23%までの抑制でした。猫におけるエナラプリルは、1日量が0.5mg/kg以上ならば、同じようなACE抑制効果をもたらすと考えられます。(Dr.K訳)
■肥大型心筋症の猫における、後天性僧帽弁狭窄症
Acquired mitral stenosis in a cat with hypertrophic cardiomyopathy.
J Vet Med Sci 65[11]:1265-7 2003 Nov
Takemura N, Nakagawa K, Machida N, Washizu M, Amasaki H, Hirose H
7才の去勢済オスの短毛家猫を、心電図、胸部レントゲン、そして心エコー検査所見により、肥大型心筋症(HCM)と診断し、僧帽弁狭窄症(MS)も疑われました。心臓の死後検査では、HCMに一致した形態学的特徴が明らかとなりました。さらに、交連の癒合と繊維組織の柱への腱索全体の癒合を引き起こした、両僧帽弁葉に拡大した腱索表面の著しい繊維付着が認められました。この症例は、猫におけるHCMに関連し、後天性MSが起こりえるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■猫の特発性心筋症:106頭の猫に関する回顧的研究(1994-2001)
Feline Idiopathic Cardiomyopathy: A Retrospective Study of 106 Cats (1994-2001)
J Feline Med Surg 5[3]:151-159 Jun'03 Retrospective Study 19 Refs
L Ferasin; CP Sturgess; MJ Cannon; SMA Caney; TJ Gruffydd-Jones; PR Wotton
1994年9月から2001年9月の間に、ブリストル大学の猫センターへ来院した、特発性心筋症の猫106頭に関する症例記録を回顧的に再調査しました。肥大型心筋症(HCM)(57.5%)が、最も一般的な型で、次いで拘束型心筋症(RCM)(20.7%)、拡張型心筋症(DCM)(10.4%)、そして未分類心筋症(UCM)(10.4%)が認められました。1頭の猫は中隔縁柱心筋症(MBCM)に一致した心エコー変化を呈しました。罹患した大部分の猫は、短毛の家猫(DSH)(57.5%)でした。来院時心筋症の猫に関する平均年齢(±SD,範囲)は、オスとメスの等配分で、6.8才(4.3,0.5-16)でした。臨床所見、心電図変化、そしてレントゲン異常も再調査しました。追跡資料が入手できた73頭の猫に関する中央生存期間は300日でした。HCM(492日)、RCM(132日)、DCM(11日)と比較すると、UCM(925日)の猫で、より長い生存期間が観察されました。(Dr.K訳)
■全身性高血圧の猫75頭における、M-モード心エコー検査異常のスペクトル
Spectrum of m-mode echocardiographic abnormalities in 75 cats with systemic hypertension.
J Am Anim Hosp Assoc 40[5]:359-63 2004 Sep-Oct
Henik RA, Stepien RL, Bortnowski HB
M-モード心エコー異常の範囲と頻度を明らかにする為、高血圧の猫75頭で、回顧的研究を行いました。結果は、猫の21.3%がM-モード測定の正常基準範囲内であることが示されました。心エコー異常となった猫に関して、変化は不定でした。高血圧の猫の39%が、拡張期における心室間隔壁肥厚を呈し、41.3%は、拡張期における左室(LV)後壁の肥厚を呈しました。短縮率と拡張期におけるLV内径は、それぞれ82.7%と86.7%の猫が正常でしたが、5頭のうち1頭の猫は、左心房拡張を呈しました。高血圧の猫における心エコー所見の著しい変動性は、心エコーが高血圧症のスクリーニングテストとして信頼できないものにします。(Dr.K訳)
■犬心疾患に対するカルベジロールの新しい治療戦略
Carvedilol may be new therapeutic strategy for canine heart disease
Jan 1, 2002
DVM Newsmagazine
この15年間はうっ血性心不全(CHF)のための新しい医学の治療において関心と開発の復活をみた。
神経ホルモン拮抗薬は、進行性心機能障害に寄与するメカニズムと戦うための主要戦略となった。βアドレナリン受容体遮断薬は、この目的のため使われるいくらかのさらに新しい薬である。
神経ホルモン変化
交感神経系の緊張の増加と副交感神経活性の低下は、うっ血性心不全に付随するいくつかの神経ホルモンの変化に特性を示す。
短期間のこれらの変化は心拍出と血圧を増加させるが、それらは心肥大とリモデリング、後負荷の増加、心筋の線維化/壊死、そして心不整脈の誘発など有害な慢性効果をもたらす。β遮断薬はこれらの有害な効果を制限し、様々な原因による二次的な人のうっ血性心不全において罹患率を減少させ、長期の生存を向上させる。
有益な特性
カルベジロールは、人の患者におけるうっ血性心不全の治療のために認可された最初のβ遮断薬であった。
この非選択性β遮断薬(β1とβ2受容体を阻害)は、心疾患患者においてその有益な効果を説明するのに役に立つかもしれない独特の性質を持つ。
カルベジロールは末梢血管抵抗(その薬物は元来、抗高血圧薬剤として評価された)を減らすβ1受容体も遮断する。カルベジロールは、人や犬において活発に酸素―フリーラジカルを取り除く抗酸化作用もある。その薬剤は心室の心筋細胞のクラスII、そして伝わるところによるとクラスIに対する抗不整脈薬としても作用する。
人のうっ血性心不全の治療のためにカルベジロール(そして他のβ遮断薬)を使用することは周知のことであるが、獣医学領域におけるその薬剤の使用経験は限られている。Robert Hamlin や彼の研究チームは最近犬のカルベジロールの薬理学について評価(57-60ページ AJVR, Jan 2000, Vol 61:1)し、そして昨年5月のACVIMフォーラムでこれと他の情報を提示(107ページ, Proceedings of the 19th Annual Veterinary Medical Forum, 2001.)した。
カルベジロールは犬の経口投与後約10%の生物学的利用率を持っており、薬物のほとんど(95%)が蛋白と結合する。それは脂肪親和性で細胞膜に蓄積される。主な代謝経路は肝臓で75%以上が糞便に排泄される。化合物のほんの8% が尿中に排泄される。1.25 mg/kgまでの用量増加によく耐えられ、経口投与後2-4時間で血漿濃度がピークに達する。
獣医学領域での使用
カルベジロールの複数の薬理学効果によって、獣医心臓病患畜に対する幾つかの可能性のある用途がある。早期そして継続的関心は心筋の収縮機能不全、原発性特発性拡張型心筋症を伴う犬における使用に集中している。
人における臨床状態や生存性の改善が最初に報告されたのはそのような患者であった。すべてのβ遮断薬は陰性変力作用をもっているので、拡張型心筋症の犬におけるカルベジロールの処方前に慎重な患畜の選択が必要となる。
著者は体重25㎏以下では3.125mg 経口投与 1日2回もしくは25㎏以上で25mg1日2回でスタートし徐々に増量する人のプロトコールを採用した。増量期における心臓の代謝障害(嗜眠、呼吸困難、咳)の徴候に対し、モニターするようにオーナーに指示した。カルベジロールは不安定な心臓病患畜には禁忌である。その薬物は他の代償性患畜においてうっ血性心不全を進行させるかもしれないので、その薬物は重度の心筋収縮機能不全(局所心筋短縮率15%以下)の患畜において極端な注意のもとで使用すべきである。
カルベジロールはドキソルビシンの心毒性の治療にとって理論的に理想的な薬剤である。この化学療法剤は電気的障害と心筋不全に帰着する酸素フリーラジカルの生成を通して心筋の障害を引き起こす。その病気は進行性でしばしば心臓が原因の死を引き起こす。
カルベジロールの抗酸化作用、抗不整脈効果そして交感神経系の拮抗作用は、ドキソルビシン誘発心臓病の患畜の治療に最適である。
さらにカルベジロールは心臓の不整脈の治療にも有益であると証明されるかもしれない。著者はカルベジロールで治療した拡張型心筋症のドーベルマンピンシャーとボクサーにおいて抗不整脈効果(24時間ホルターレコーデジングで測定した心室性期外収縮において80%以上減少)を証明している。
人の患者におけるこの薬の使用及び犬における逸話に富む報告への圧倒的なサポートにもかかわらず、獣医領域の患畜においてカルベジロールの使用を支持する客観的データはなく、獣医臨床試験の結果が待たれる。新しい研究も粘液腫性弁膜変性の犬に対するこの薬の使用を評価している。これらの研究結果から、間もなくうっ血性心不全患畜の治療のため、獣医臨床家が利用できる薬物用品にカルベジロールが加わるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■心房細動で、聴診による正確な心拍数
Accuracy of Heart Rate Obtained by Auscultation in Atrial Fibrillation
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:237-239 May-Jun'03 Original Article 6 Refs
* Tony M. Glaus, Dr. med. vet.; Michael Hassig, Dr. med. vet., PhD; Bruce W. Keene, DVM, MS
イヌの不整脈拍は心疾患の良くある合併症で、よく病理学的不整脈拍となる心房細動を伴う。治療はAV結節を横切る脱分極に対する心室反応率のコントロールを通し行われる。心拍数の正確な評価は、治療成功を評価するのに非常に重要で、最小限の訓練を行い家庭でオーナーにより実施されることも少なくない。この研究の目的は、心房細動中の心臓聴診で心拍評価の正確性を判定することと、この評価の正確性に臨床経験が影響を及ぼすか評価することだった。
慢性心房細動で、心室反応率が148-176回/分のイヌで、15秒間の心臓聴診による心拍数の絶対誤差を、同時に心電図で測定した心拍数を聴診したものと比較することで判定した。専門委員会による正式認可の下りた専門獣医師、内科研修医、経験のある獣医のナースにより評価された心拍数は、外科研修医や学生により評価したものよりも有意に正確だった。10%誤差を臨床関連正確性の現れと考慮したとき、30%の個人しか正確に心拍数を評価していなかった。4人の専門医のうち3人、7人の内科研修医とナースのうち4人、4人の外科研修医うち0人、12人の学生のうち2人が正確だった。他のテスト問題64%に対し、外科研修医と学生の12.5%が正確な評価を下した。
この研究の結果は、心房細動で心拍数の聴診がかなり不正確で、臨床経験が心拍数の正確な評価に影響するかもしれないと思われる。著者は、比較的訓練を受けていない個人(ペットオーナーのような)による心房細動の心拍数の聴診評価は、臨床方針決定の心音基準を提供しないかもしれないと結論付ける。(Sato訳)
■右大動脈弓遺残の犬における気管症状と関連する脈管異常
Tracheal Signs and Associated Vascular Anomalies in Dogs with Persistent Right Aortic Arch
J Vet Intern Med 18[4]:510-514 Jul-Aug'04 Retrospective Study 12 Refs
James W. Buchanan
食道、気管の周りに1つ以上の血管輪を持つ55頭の犬の医療記録を、関連脈管異常の特性と頻度を判定し、右大動脈弓遺残(PRAA)の診断に対するエックス線写真上気管変位の信頼性を判定するため再検討した。
55頭中52頭(95%)がPRAAだった。PRAAの52頭中44%は圧縮動脈異常も存在した。17頭は食道後左鎖骨下動脈を持ち、6頭は閉鎖性左大動脈弓を伴う重複性大動脈弓だった。特徴的な気管変位は、PRAAの犬に一貫して存在した。背腹、または腹背像で、心臓の頭側縁に近い気管の中程度から著しい限局性左方向の弯曲が、27頭の入手したエックス線写真に100%認められた。
中程度または顕著な限局性気管狭小化もDVまたはVDエックス線写真の74%、そしてラテラルの29%に見られた。巨大食道のイヌ30頭中30頭、コントロールの63頭中62頭の気管位置は、VDまたはDVで中線または右側だった。PRAAの新生児犬の組織学検査で、すでに生まれる前の気管変位と圧迫所見を示した。DVまたはVDエックス線写真の心臓頭側縁近くの気管限局性左方変位は、固形食を食べた後吐出する若い犬でPRAAの確実な所見であり、血管輪圧搾の診断を確かめるのに陽性食道造影は必要ない。(Sato訳)
■内発性ネコ高血圧:臨床と心超音波検査異常、そして生存率
Spontaneous Feline Hypertension: Clinical and Echocardiographic Abnormalities, and Survival Rate
J Vet Intern Med 17[1]:89-95 Jan-Feb'03 Review Article 27 Refs
* Valerie Chetboul, Herve P. Lefebvre, Carine Pinhas, Bernard Clerc, Maya Boussouf, Jean-Louis Pouchelon
高血圧に関係する視覚、神経、心呼吸、尿疾患または高血圧にたびたび関係する疾患(甲状腺機能亢進症や慢性腎不全)を思わせる評価で来院したネコ188頭の無処置ネコのうち58頭で全身性高血圧を診断した。高血圧のネコは、正常血圧のネコよりも有意に高齢(13.0±3.5歳vs9.6±5.0歳;P<.01)で、網膜病変(48vs3%;P<.001)、ギャロップ調律(16vs0%;P<.001)、多尿多渇(53vs29%;P<.01)の罹患率が高かった。網膜症のネコ(262±34mmHg)の血圧は、他の高血圧ネコ(221±34mmHg)よりも有意に高かった(P<.001)。
コントロールネコよりも高血圧のネコは、心室中隔(5.8±1.7vs3.7±0.64mm;P<.001)、左室自由壁(6.2±1.6vs4.1±0.51mm;P<.001)が厚く、心拡張期の左室内径が減少した(13.5±3.2vs15.8±0.72mm;P<.001)。高血圧ネコ39頭中33頭の左室ジオメトリーは異常だった。死亡したネコと最初の診断から9ヶ月以上生存したネコの、初診時年齢と血圧に有意差は見られなかった。正常、そして異常な左室パターンを持つ高血圧ネコの間に平均生存期間に有意差はなかった。高血圧のネコの生存期間に対する要因を明確に判定するために更なる研究が必要である。(Sato訳)
■イヌの僧帽弁修復方法と結果の評価
Evaluation of Techniques and Outcomes of Mitral Valve Repair in Dogs
J Am Vet Med Assoc 224[12]:1941-1945 Jun 15'04 Prospective Study 33 Refs
Leigh G. Griffiths, VetMB, MA; *E. Christopher Orton, DVM, PhD, DACVS; June A. Boon, MS
目的:イヌの僧帽弁閉鎖不全の外科的治療方法を述べ、その結果を評価する
構成:非コントロール前向き研究
動物:僧帽弁閉鎖不全を自然に発症した犬18頭
方法:全頭5kg以上で、重度僧帽弁逆流、うっ血性心不全(CHF)、深刻でない非心臓疾患のイヌだった。左室容積指数、左心房の大きさ、僧帽弁逆流の程度を手術前後に心エコー検査で測定した。修復方法は、周囲弁輪形成術、人工腱索の設置、腱索開窓と乳頭筋分裂、切縁修復などを行った。手術生存率とCHFの解消に対する予測因子を判定した。
結果:12頭のイヌが手術で生存した。手術生存率の予測因子は、体重10kg以上、6ヶ月以内にCHF発症だった。9頭は、術後中央期間1年(範囲4ヶ月-3年)でCHFが解消した。1頭は12ヶ月目に安定したCHFであった。1頭はCHF進行の結果死亡した。1頭は心臓以外の理由で安楽死となった。左室拡張容積指数は術前226.9±117.7cm3/㎡で、術後6ヶ月目は134.9±70.4cm3/㎡(n=10)だった。CHF解消に対する予測因子は、左室拡張容積指数<250cm3/㎡と収縮期容積指数<70?/㎡だった。
結論と臨床関連:僧帽弁修復は、重度僧帽弁逆流、特に体重10kg以上、CHF発症から6ヶ月以内の処置を施したイヌは解消すると思われる。
■うっ血性心不全の犬における低ナトリウム血症と高血糖と予後の関連性
Association of hyponatremia and hyperglycemia with outcome in dogs with congestive heart failure
Colleen A. Brady, DVM, DACVECC1, Dez Hughes, BVSc, MRCVS, DACVECC2 and Kenneth J. Drobatz, DVM, MSCE, DACVECC, DACVIM3
目的:治療前にうっ血性心不全の犬において血漿ナトリウム濃度及び血漿グルコース濃度を評価すること、並びに生存者と非生存者の違いを評価すること。
構想:回顧的研究
動物:心臓の薬物治療を受ける前のうっ血性心不全の犬59頭
介入:なし
測定及び主な結果:うっ血性心不全の犬における平均血漿ナトリウム濃度は正常範囲(144-156 mmol/L)より低く、生存者(147±4 mmol/L)と比較して非生存者(141±6 mmol/L)では有意に低かった (P=0.009)。). 平均血漿グルコース濃度は正常範囲(76-117 mg/dL)より高く、生存者(100±13 mg/dL)と比較し非生存者(128±52 mg/dL)では有意に高かった。 非生存者の44%は同時に低い血漿ナトリウム濃度と高い血漿グルコース濃度を呈した。一方生存者には双方の異常が見られなかった(P<0.0001)。
結論:低い血漿ナトリウム濃度と高い血漿グルコース濃度はうっ血性心不全の予後不良と関連がある。(Dr.Kawano訳)
■犬の出血性心膜液。文献評論による、10症例の回顧的研究(1989-1994)
[Hemorrhagic pericardial effusion in dogs. A retrospective study of 10 cases (1989-1994) with a review of the literature]
Schweiz Arch Tierheilkd 139[5]:217-24 1997
Vogtli T ; Gaschen F ; Vogtli-Burger R ; Lombard C
特発性心膜滲出液の病態生理学的、病因学的様相に関する序文の後、この病態に陥った10頭の犬について記述します。臨床徴候で、全症例に仮診断することができました。心電図検査、胸部レントゲン検査、そして心エコー検査により、確定診断をしました。心エコー検査は、最も感度のよい方法でした。6頭の犬が、特発性心膜滲出液でした。これらのうち2頭に、部分的心膜切除を行いました。4頭において、滲出液は腫瘍により引き起こされておりました。中皮腫であった2頭の犬は、予後不良の為、安楽死を行いました。
他の2頭には、心臓基部に腫瘍が検出されました。そのうち、1頭は、部分的心膜切除の後1年間、元気に生存しております。もう1頭は、術後2年で、状態が悪化したため、安楽死となりました。特発性出血性心膜滲出液は、適切に治療(心膜穿刺、可能なら部分的心膜切除)すれば、予後良好となります。心膜滲出液は、しばしば、腫瘍と関連します。そのような症例では、本質的に、腫瘍のタイプに従属します。(Dr.K訳)
■心疾患のイヌの予後指標として血漿心房性ナトリウム利尿ペプチドの測定
Measurement of plasma atrial natriuretic peptide as an indicator of prognosis in dogs with cardiac disease.
Can Vet J 44[4]:293-7 2003 Apr
Greco DS, Biller B, Van Liew CH
心不全のイヌ23頭を、基礎血漿心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)濃度測定で12ヶ月間にわたり評価した。10頭のイヌを軽度から中程度の心疾患(1群)、13頭を重度心疾患(2群)と分類した。1群の平均血漿ANP濃度は64±45pg/mlで、2群は328±122pg/mlだった。1群(1095日)の生存期間中央値は2群(58日)よりも有意に大きかった(P<0.05)。生存期間中央値の有意な増加(P<0.05)は、血漿ANP>95pg/ml(58日)のイヌと比較して、<95pg/mlのイヌに見られた。血漿ANP濃度は、心不全のイヌの生存期間を非侵襲的に予測できる可能性がある。(Sato訳)
■アンギオテンシン変換酵素阻害剤に関与する致死的舌血管浮腫
Life threatening tongue angioedema associated with an angiotensin-converting enzyme inhibitor.
Vet Hum Toxicol 46[2]:85-6 2004 Apr
Yanturali S, Ergun N, Eminoglu O, Kalkan S, Tuncok Y
我々は、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤1回投与後、舌の血管浮腫を起こした症例を述べる。血管浮腫の進行が徐々に起こり、積極的な内科療法にもかかわらず気管切開を必要とした。この副作用の程度を図に表す。ACE阻害剤は安全と考慮されているが、緊急医は来院時、致死的気道障害に進行するかもしれない最小限の血管浮腫にも注意を払うべきである。(Sato訳)
■実験的僧帽弁閉鎖不全症において血行力学と左心室収縮機能に与えるアンギオテンシン変換酵素阻害剤リシノプリル対βアドレナリン受容体ブロッカーアテノロールの異なる効果
Differential effects of the angiotensin-converting enzyme inhibitor lisinopril versus the beta-adrenergic receptor blocker atenolol on hemodynamics and left ventricular contractile function in experimental mitral regurgitation.
Nemoto S, Hamawaki M, De Freitas G, Carabello BA.
目的:この研究の目的は、実験的な慢性僧帽弁閉鎖不全症(MR)においてアンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤とβアドレナリン受容体ブロッカーの治療効果を検討することであった。人医領域では適応することが難しい方法を使って得た知識である。
背景:ACE阻害剤とβブロッカーの両者は人のうっ血性心不全の治療において基礎となる。しかし慢性MRに対するこれらの治療の役割ははっきりしていない。
方法:非外科的に11頭から僧帽弁閉鎖不全症を作成した。作成後、3ヶ月間ACE阻害剤リシノプリル20mg を毎日経口投与した。リシノプリルによる治療3ヵ月後、βブロッカーアテノロールをリシノプリルにさらに3ヶ月間追加して投与した。アテノロールは毎日12.5 mgの量で始め、100mgまで徐々に増量した。研究を通して、血行力学および左心室機能を評価した。
結果:逆流分画率はこの研究を通して一貫して50%以上であった。肺毛細管楔入圧と左心室の拡張末期圧は僧帽弁閉鎖不全症の作成後3ヶ月間は有意に増加し、リジノプリルおよび混合治療の間は減少した。ただし、基線までは下がらなかった。収縮末期の持続硬直により測定した左心室の収縮性は、僧帽弁閉鎖不全の3ヶ月は3.66 +/- 0.20 から2.65 +/- 0.12に減弱(p < 0.05)し、リジノプリルによる治療後、有意ではないが増加(2.99 +/- 0.17)した。アテノロールを追加した時、左心室の収縮性は有意に増加し、正常(3.50 +/- 0.22, p < 0.05)に回復した。
結論:リジノプリルは前負荷を有意に減少させたが、左心室の収縮性の効果については実験的僧帽弁閉鎖不全症では有意でなかった。逆にアテノロールはリジノプリルに追加した時、最大限の血行力学的な効果を達成し、左心室の収縮性も回復させた。(Dr.Kawano訳)
■猫の肥大型心筋症の集団と生存率の特性:260症例(1990~1999)
Population and survival characteristics of cats with hypertrophic cardiomyopathy: 260 cases (1990-1999).
J Am Vet Med Assoc. 2002 Jan 15;220(2):202-7.
目的:猫の肥大型心筋症(HCM)における最近の集団特性、臨床所見、生存期間の検討
計画:回顧的研究
対象動物:肥大型心筋症に罹患した猫260頭
計画:医療記録から情報を得た。初診時の主な臨床症状を基に4つのグループ(うっ血性心不全[CHF]グループ、動脈血栓塞栓症[ATE]グループ、失神グループ、症状を呈していない[無症状]グループ)に分類した。
結果:120頭はCHFグループ、43頭はATEグループ、10頭は失神グループ、87頭は無症状グループに分類した。CHFを進行させたと思われる前処置は、静脈内輸液、鎮静、手術、コルチコステロイドの投与などであった。24時間以上生存した猫における生存期間中央値は709日(範囲、2~4418日)であった。無症状グループの猫は最も長く生存(生存期間中央値1129日、範囲2~3778日)し、失神グループ(654日、範囲、28~1505日)、CHFグループ(563日、範囲、2~4418日)、ATEグループ(184日、範囲、2~2278日)がそれに続いた。死亡原因はATE(56頭)、CHF(49頭)、突然死(13頭)、非心臓疾患(27頭)であった。
一変量分析では、生存期間は左心房の大きさ、年齢、右心室の拡張、胸腔穿刺と負の相関があった。僧帽弁における収縮期前方運動を伴う猫は、超音波所見でそれを伴わない猫より長く生存した。
多変量分析では、年齢と左心房の大きさのみが生存期間の重要な指標となった。
結論と臨床関連:HCMに罹患したすべての猫の生存期間は以前に報告された結果と類似していたが、CHFもしくはATEを併発した猫の生存期間はこれまでの報告より長かった。(Dr.Kawano訳)
■失神、心室性不整脈、そして突然死となった拡張型心筋症の臨床的健康な19頭のドーベルマン・ピンシャーの生存期間に関する抗不整脈薬薬物療法の影響(1985-1998)
Influence of antiarrhythmia therapy on survival times of 19 clinically healthy doberman pinschers with dilated cardiomyopathy that experienced syncope, ventricular tachycardia, and sudden death (1985-1998).
J Am Anim Hosp Assoc 40[1]:24-8 2004 Jan-Feb
Calvert CA, Brown J
心室性頻脈、失神あるいは虚脱、突然死となった拡張型心筋症による、中程度から重度な二次的心筋障害を持つ、明らかに健康なドーベルマン・ピンシャーを、臨床的転帰に関して、抗不整脈薬薬物療法の影響を明らかにするため調査しました。抗不整脈薬薬物療法は、抗不整脈を投与されなかった6頭の犬に比較して、投与を受けた13頭の犬における突然死と関連したかもしれません。(Dr.K訳)
■前大静脈症候群
Cranial Vena Cava Syndrome
Compend Contin Educ Pract Vet 24[9]:701-710 Sep'02 Review Article 31 Refs
Andrea Nicastro, DVM; Etienne Cote, DVM, DACVIM (Cardiology, Internal Medicine)
Angell Memorial Animal Hospital Boston, Massachusetts
前大静脈症候群はめったに無いが、前大静脈閉塞による続発症と簡単に認識されている。臨床症状は特徴的で、対称性、無痛性の頭部、頚部前肢の圧痕浮腫である。原因は、腫瘍や肉芽腫による圧迫や侵害に伴う血管の血栓症などである。評価は一般的に、胸部画像診断やマス組織のサンプル採取による細胞診や組織診断である。治療は基礎疾患の矯正に向けられる。しかし、現在人医で使用される血管内療法が獣医療に応用出来るかも知れない。予後は、基礎にある原因により、一般に慎重性を要す。(Sato訳)
■僧帽弁逸脱症の犬における、大腿動脈拍微弱に関する決定因子
Determinants of weak femoral artery pulse in dogs with mitral valve prolapse.
Res Vet Sci 76[2]:113-20 2004 Apr
Tarnow I, Olsen LH, Jensen MB, Pedersen KM, Pedersen HD
粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)にかかりやすい2犬種の247頭を含める3つの予備研究において、大腿動脈の脈拍の強さを触診し、MMVDの定量的超音波測定、大動脈、大腿動脈直径と壁の厚さ、および血圧などの、可能性ある解釈上の因子と関連付けました。さらに、109頭のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエル(前述に言及した3つの予備研究で扱った61頭も含める)で、大腿動脈の脈拍の強さと血小板減少症の存在との関係を調査しました。
犬の26%で、正常強度の50%以下の拍動を認めました;6頭の犬(2%)は、片側、あるいは両側性に拍動が欠けておりました。僧帽弁逸脱症の重症度、肥満の程度、心拍数と年齢は、すべて、大腿動脈の脈拍の強さに負の影響を及ぼしました。微弱な大腿動脈拍は、臨床徴候や、血圧低下あるいは1回拍出量と関連がありませんでした。微弱な大腿動脈拍は、閉塞よりもむしろ、縮小した動脈直径および/あるいは拡張を反映したものでした。結論として、MMVDの犬における微弱な大腿動脈拍は、動脈硬化症や血小板数とではなく、血流量の領域/局所的な減少と関連していると思われます。(Dr.K訳)
■失神を持つミニチュアシュナウザーの心電図所見
Electrocardiographic Findings in Miniature Schnauzers with Syncope
J Vet Emerg Crit Care 12[4]:253-259 Dec'02 Retrospective Study 27 Refs
Carolyn M. Jochman-Edwards, DVM; Larry P. Tilley, DVM, DACVIM; Marla Lichtenberger, DVM, DACVECC; Francis W. K. Smith Jr., DVM, DACVIM; Rebecca Kirby, DVM, DACVECC, DACVIM
目的:この研究の目的は、主訴として失神を起こすミニチュアシュナウザー集団を検査し、それらの心電図(ECG)所見と、ヒトや獣医の文献で報告されている洞異常症候群(SSS)の診断基準を関連付ける事だった。
構成:回顧的研究
患者:1996-2000年の間に失神を起こした31頭のミニチュアシュナウザーの症例記録を再検討した。
測定と結果:この研究は、過去の2つの研究所見である、メスはオスよりもSSSに関するECG異常を起こす素因があったということを支持した。診断時、メス(10.1歳)はオス(8.9歳)よりもわずかに年を取っているということもわかった。心雑音は61%の犬で聴取され、これは僧帽弁心内膜症や逆流によるものだった。主な律動傷害は48.5%の症例で洞停止/洞房結節ブロックと思われた。洞性徐脈は2番目に多かった不整脈だった。
結論:失神を起こすミニチュアシュナウザーで、ECG所見の異常に気がついたときSSSを主な原因として考慮すべきである。(Sato訳)
■心不全犬の交感神経による心拍調整
Heart rate modulation by sympathetic nerves in dogs with heart failure.
J Vet Med Sci 64[11]:1023-9 2002 Nov
Uechi M, Shimizu A, Mizuno M
交感神経系による心拍調整を明らかにするために、自然に起こった、そして実験的に誘起した心不全のイヌを試験した。臨床的に健康な犬(コントロール)と僧帽弁閉鎖不全(MR)の犬の心拍数と血症カテコラミン濃度を、休んでいる時、立っている時、医療検査室で立っているとき(犬は慣れていない場所)、走っている時、走った後回復している時に測定した。コントロール犬で心拍数と血症カテコラミン濃度は、休んでいる時と比較して立っている時、検査室にいる時に増加した。しかしMRの犬は、それら軽度のストレスがかかる環境で心拍数やカテコラミン濃度の明確な増加を示さなかった。
走るストレスでコントロール犬の血漿カテコラミン濃度は上昇した。しかしMR犬は有意な変化を示さなかった。自然獲得心疾患の32頭の犬は、ISACHC基準のグレードIからIIIに分類された。自然獲得心不全の犬で心拍数と血漿カテコラミン濃度の上昇程度は、心不全の程度に依存した。結論として、増加した心拍数と活性化した交感神経系が、軽度心不全の犬にさえも観察された。この長期間活性化した交感神経活動は、心筋酸素消費量、心筋肥大、繊維化を増加させ、心不全のより悪い予後の前兆となる事を予想させる。(Sato訳)
■ネコの心臓と血清におけるアンギオテンシン変換酵素とキマーゼ活性
Angiotensin converting enzyme and chymase activity in the feline heart and serum.
J Vet Med Sci 65[10]:1115-8 2003 Oct
Aramaki Y, Uechi M, Takase K
ネコの心臓そして血清アンギオテンシン変換酵素(ACE)とキマーゼ活性を判定し、イヌ、そしてハムスターと比較した。全て3種類の動物で、心臓キマーゼ活性はACE活性を上回った。しかし少しの違いしかなかった。ネコで、左室ACEとキマーゼ活性(0.15±0.01、0.59±0.1mU/mg-タンパク)は、イヌ(0.42 +/- 0.05: p<0.01 and 2.0 +/- 0.4 mU/mg-protein: p<0.01)やハムスター(0.93 +/- 0.06: p<0.001 and 2.1 +/- 0.2 mU/mg-protein: p<0.01)よりも低かった。対照的にネコの血清ACE活性(12.7 +/- 1.0 mU/ml)は、イヌ(5.9 +/- 0.6 mU/ml: p<0.001)よりも高かった。心臓でANG-II形成に対するキマーゼの相対的寄与(ネコ: 84.0 +/- 5.1%, イヌ: 81.4 +/- 3.4%, ハムスター: 72.6 +/- 5.6 %)は、それら動物でACEのもの(ネコ: 10.9 +/- 4.1%,イヌ: 11.5 +/- 3.6%, ハムスター: 17.2 +/- 0.8%)よりも大きかった。それら動物種による特異的な違いは、レニン-アンギオテンシン系調整剤の効果が動物種間で異なるかもしれないと示唆している。(Sato訳)
■拡張型心筋症のイヌのタウリン欠乏:12症例(1997-2001)
Taurine Deficiency in Dogs with Dilated Cardiomyopathy: 12 Cases (1997-2001)
J Am Vet Med Assoc 223[8]:1137-1141 Oct 1'03 Retrospective Study 24 Refs
* Andrea J. Fascetti, VMD, PhD, DACVN, DACVIM; John R. Reed, DVM, MS, DACVIM; Quinton R. Rogers, PhD, DACVN; Robert C. Backus, DVM, PhD
目的:低血中または血漿タウリン濃度で拡張型心筋症(DCM)を持つイヌの徴候、病歴、臨床症状、血中、血漿タウリン濃度、心電図、心エコー所見、治療、転帰を判定すること
構成:回顧的研究
動物:低血中または血漿タウリン濃度で拡張型心筋症(DCM)を持つ飼育犬12頭
方法:医療記録を再検討し、臨床データを得た
結果:主成分としてラム、ライス、または両方を含む市販のドライ食が全頭給餌されていた。心機能と血漿タウリン濃度は、タウリン添加と治療で改善した。この研究時、12頭中7頭は生存しており、タウリンを除いて心臓の薬剤療法は受けていなかった。
結論と臨床関連:結果は、信頼できる市販食の消費が低血中または血漿タウリン濃度で拡張型心筋症(DCM)を持つイヌに関与するかもしれないと示唆する。典型的な拡張型心筋症のそれらイヌの生存期間を、タウリン添加が結果として延長させると思われる。拡張型心筋症のイヌは、血中そして血漿タウリン濃度の測定を行うべきで、それらの分析結果が出るまでの間、タウリンの添加が推奨される。(Sato訳)
■ネコ動脈血栓塞栓症
Feline Aortic Thromboembolism
Aust Vet Pract 33[1]:20-32 Mar'03 Clinical Review 35 Refs
Lynne Falconer and Rick Atwell
動脈血栓塞栓症は、ネコの心臓疾患のもっとも深刻で、管理が難しい合併症の1つである。全てではないが、動脈血栓塞栓症の症状を呈すほとんどのネコは、発症時に基礎の心疾患を持っている事がわかっている。ほとんどの症例で、不全麻痺/麻痺と深在性の不安を呈す前に基礎疾患は診断されていない。この文献は、血栓塞栓症の通常使用される治療と予防を目的とする薬剤の再検討を行っている。行われる治療のほとんどは、それ自身高い死亡率に関係しており、それら異なるオプションのリスクと有益性の比率査定を行うため長期臨床試験が必要である。最初の治療で生存したネコでも、予防処置にもかかわらず再塞栓をほとんどのネコが起こすため、臨床家は長期血栓予防の面倒な問題に今までどおり向き合っていかなければならない。(Sato訳)
■心臓障害の生物マーカー
Biomarkers of Cardiac Injury
12th ECVIM-CA/ESVIM Congress
Joy Archer
Royal Veterinary College, University of London
UK, JArcher@rvc.ac.uk
クレアチニンキナーゼ(CK)と、乳酸脱水素酵素(LD)は、心臓障害の標識として、電気泳動により、多数の特異的アイソエンザイムCK-MBとLD1、そして2に置換されます。オートメーション化化学測定法LD1(alpha HBDH)、そしてELISA CK-MBmassは、人における心筋梗塞(MI)の認識マーカーとなっており、後に「ゴールド・スタンダード」となりました。2つの血清レベルが、基準範囲を上回ると、MIを示唆しますが、これらの解析は、人と動物の両者において、骨格筋ダメージの存在下で、心臓障害に対する特異性と感受性が低くなります。腎臓疾患もまた、CK-MBmassの値に影響します。犬における問題は、心筋におけるCK-MBが、人での心筋における40%に対して、全体の4-14%という低値により、複雑にされます。
このアイソエンザイムは、犬において、骨格筋、脾臓、肺、そして腸に存在します。CK-MBmassとalpha HBDHが、健康犬と胸部鈍性外傷の犬で比較評価されました。血清CK-MBmassは、正常犬(0-3.17ng/ml)における上限より、外傷後の犬33頭中14頭において、上昇しました(範囲0-8.87ng/ml)。Alpha HBDHは、正常犬(範囲0-85U/L)と比べ、33頭中10頭(範囲27-242U/L)において、上昇しました。CK-MBmassの低値は、また、心臓疾患におけるほんの少しの増加と、alpha HBDHにおける明白な増加を伴う、馬の心筋でも認められます。CK-MBmassとalpha HBDHの両者の増加は、うっ血性心不全とエコーで確認された馬のおよそ50%で、報告されております。同様な増加が、心筋壊死の馬で認められます。(Sento and Archer unpublished).
MIは、最近、再評価され、生物マーカーとして、好んで心臓トロポニンが使用されております。横紋筋トロポニンートロポミオシン複合体は、3つのトロポニン、C,T(cTnT),そしてI(cTnI)を含みます。C(全ての筋に認められる)に対する解析は、発達しておりません。CTnTとcTnIの両者に対するELISA化学発光解析は、利用可能です。トロポニンは系統発生学的に、哺乳類間で95%以上相同する高率に維持される蛋白なので、損傷の程度により、5-8日間上昇し続け、同時に、健康な人の値の過半数において、解析検出限界よりわずかに高いか、低くなります。
CTnTとcTnIの増加した値は、人における筋壊死の程度と相関性があります。これらの解析の大規模な評価は、それらが、心特異的で、信頼性があるということを示しております。2つのトロポニンは、血清、EDTAとヘパリン血漿で24時間室温、4℃で1週間、凍結で1ヶ月以上安定で、凍結―解凍により、影響を受けません。いかなる交差反応も認められず、血液中の他の分析物質、または一般的な薬物より干渉されません。CTnTで、慢性骨格筋活性と、筋肉に生じた(sTnTとfTnT)横紋筋融解症により、低レベルの増加を認めます。2つの循環cTnTとcTnIは、腎不全で、それぞれcTnT18-75%,cTnI4-17%増加し、これは、二次的心疾患併発によるかもしれません。
CTnTは、犬の骨格筋で認められますが、心臓における濃度の100分の1で、運動している大型動物における、cTnT解析解釈に関するこの作用と関係があります。鈍性胸部外傷で、cTnIの血清レベルは、cTnTより、より多くの犬で、より著しく増加しました。血漿CTnIは、心臓と関連した健康状態の変化を、モニタリングする時に貴重であることが示唆されており、犬と猫に関し、基準範囲が確定されております。しかしながら、拡張型心筋症の犬で、その筋肉における値は、減少させることができます。最近の研究では、肥大型心筋症の猫で、エコー変化と相関したcTnIの増加が認められました(Canata, Connolly, Archer unpublished)。CTnIにおける増加は、筋壊死症の2頭の馬で、組織学的変化と関連しておりました(Sento, Archer unpublished)。
ナトリウム排泄増加性ペプチド(NP)は、心房、心室、そして脈管内皮細胞から分泌され、循環レベルは、血管収縮と拡張に敏感で、心疾患の指標として用いるのにそれらが役立ちます。人医学において、intact ANPとBNPは、MIと他の心臓病態における、検出値および予測値として用いられます。プロホルモン(proANP)の血漿レベルは、動物の疾患において、価値を認められました。ところが、検体に関する臨界研究と取り扱いがあり、種の間の系統発生的相同に乏しいとなっております。犬における、人proANP31-67 ELISA解析が、健康犬と心不全犬において研究されております。ProANP1-98と1-30に関する、似たELISA解析が、猫で予備研究に用いられております(Canata, Symme, Archer unpublished)。小さな研究で、データのために、BNPに関するELISAが、動物で報告されております。
CTnIとproANPとBNP ELISAに関する、さらなる検証と臨床研究が、動物における心筋性およびうっ血性疾患に対する、信頼できる解析としてこれらの確立を導くかもしれません。(Dr.K訳)
■イヌの孤立心室中隔欠損の自発的解消
Spontaneous Resolution of an Isolated Ventricular Septal Defect in a Dog
J Am Vet Med Assoc 223[2]:219-220 Jul 15'03 Case Report 10 Refs
William P. Rausch, DVM and Bruce W. Keene, DVM, DACVIM *
5ヶ月のマルチーズを全収縮期心雑音のため検査した。心エコー検査の結果、小さく孤立した心室間中隔欠損が示唆された。カラーパルス波ドップラー心エコー検査で、収縮拡張期中の欠損部の左―右血流の存在を確認した。欠損の大きさが小さい、心室間の収縮期圧差が大きい(72.6mmHg)、臨床症状の欠如、少量の左-右シャントのため、臨床的に重要でないと考慮し、内科療法や治療を薦めなかった。7ヵ月後、そのイヌを再検査し、中隔移動血流はもう見られなかった。孤立した心室間中隔欠損は小型犬種に良くある先天的心疾患である。そのような欠損は無症候である犬もいる。一方広い範囲の臨床問題を起こすこともある。このイヌの所見は、心室間中隔欠損は自発的に閉鎖するイヌもいるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■イヌの右大動脈弓遺残に対する、外科的修正の長期結果:25症例(1980-1995)
Long-Term Results of Surgical Correction of Persistent Right Aortic Arch in Dogs: 25 Cases (1980-1995)
J Am Vet Med Assoc 210[12]:1761-1763 Jun 15'97 Retrospective Study 13 Refs
Michele M. Muldoon, DVM; Stephen J. Birchard, DVM, MS; Gary W. Ellison, DVM, MS
目的:外科的修正を行った、右大動脈弓遺残のイヌに関する、長期結果を評価することです。
計画:回顧的研究
動物:25頭のイヌ
手順:外科的修正は、左第4肋間開胸術によって、動脈管索の分割と結紮を行いました。長期(手術後6ヵ月以上)追跡情報を、オーナー(22頭のイヌ)への電話調査と、獣医師の再評価(3頭)により入手しました。
結果:外科処置した時点の平均年齢は、12週齢でした。短期(術後2から4週)の追跡情報は、14頭のイヌで入手できました。9頭は、もはや食後吐出をせず、5頭はたまに吐出をしました。追跡食道造影(術後中央期間、4ヵ月)を13頭のイヌで行い、13頭全てにおいて、巨大食道の存続が明らかとなりました。長期追跡で、23頭(92%)のイヌは、食後吐出しなくなり、残った2頭(8%)は、1週間に1度吐くか吐かないかという状態でした。
臨床関連:これまでの報告とは反対に、右大動脈弓遺残の外科的修正は、殆どのイヌで臨床徴候が完全に軽減し、症状が残ったイヌでも、徴候の改善が得られました。巨大食道の存続と、術後間もない吐出は、長期予後の悪化を示しませんでした。
■ソフトな心雑音を持つ健康なボクサーと心雑音がないボクサーの大動脈駆出血流速度:201症例(1977-2001)
Aortic Ejection Velocity in Healthy Boxers With Soft Cardiac Murmurs and Boxers Without Cardiac Murmurs: 201 Cases (1997-2001)
J Am Vet Med Assoc 222[6]:770-774 Mar 15'03 Retrospective Study 23 Refs
Shianne L. Koplitz, DVM; Kathryn M. Meurs, DVM, PhD, DACVIM; Alan W. Spiel, DVM, PhD, DACVIM; John D. Bonagura, DVM, MS, DACVIM; Virginia Luis Fuentes, VetMB, PhD, DACVIM; Nicola A. Wright, BS
目的:心雑音がない健康なボクサーと、左室流出路閉塞の明らかな構造的異常がないソフトな駆出性雑音がある健康なボクサーの大動脈駆出血流速度を判定した。
構成:回顧的研究
動物:201頭のボクサー
方法:2種類の個々の心雑音の証拠により独立して犬を検査し、心雑音のグレードを割り当てた。最大瞬間(ピーク)大動脈駆出血流速度を、肋骨部から持続波ドップラー超音波検査で測定した。48頭は約1年後に再検査した。
結果:ソフトな(グレード1,2,または3)左基部駆出性雑音を113頭(56%)の犬で聴取した。全体の大動脈駆出血流速度の中央値は、1.91m/s(範囲、1.31-4.02m/s)だった。心雑音のある犬は、ないイヌよりも有意に大動脈駆出血流速度が高かった(中央値、それぞれ2.11、1.72m/s)。2.0m/s以上の大動脈駆出血流速度の識別について雑音の聴診については87%の感受性があり、66%の特異性があった。駆出性雑音と2.0m/s以上の大動脈駆出血流速度は73頭(36%)の犬に認められた。ほとんどのイヌで、追跡検査1年後の間に見られた雑音のグレードと大動脈駆出血流速度の変化は、臨床的に重要ではなかった。
結論と臨床関連:結果は、駆出性雑音は健康なボクサーの成犬に良く見られ、雑音のあるボクサーは高い(>2.0m/s)大動脈駆出血流速度示す事も良くあると示唆した。それらのイヌの雑音の原因は不明である。(Sato訳)
■ネコの動脈血栓塞栓症:127症例の急性発症(1992-2001)と24症例における低用量アスピリンを用いた長期管理
Arterial Thromboembolism in Cats: Acute Crisis in 127 Cases (1992-2001) and Long-Term Management with Low-Dose Aspirin in 24 Cases
J Vet Intern Med 17[1]:73-83 Jan-Feb'03 Retrospective Study 23 Refs
Stephanie A. Smith, Anthony H. Tobias *, Kristin A. Jacob, Deborah M. Fine, Pamela L. Grumbles
動脈血栓塞栓症(ATE)を発症した127頭の猫の記録を再調査しました。アビシニアン、バーマン、ラグドール、そしてオス猫に、多く認められました。頻呼吸(91%)、低体温(66%)、四肢運動機能欠損(66%)が、一般的でした。診断が行われた90頭の猫に関して、基礎疾患は、甲状腺機能亢進症(12頭)、心筋症(拡張型【8頭】、分類不可【33頭】、肥大閉塞性【5頭】、肥大型【19頭】)、新生物(6頭)、その他(4頭)、そして基礎疾患が無かったもの(3頭)でした。一般的異常は、左心房拡大(93%)、うっ血性心不全(CHF,44%)、そして不整脈(44%)でした。CHFの無かった猫に関して、89%が、頻呼吸でした。
一般的生化学的異常は、高血糖、高窒素血症、そして筋酵素濃度の異常高値でした。急性四肢ATEで治療した87頭のうち、39頭(45%)は、生存し退院しました。体温(P<.00001)、心拍数(P=.038)、血清リン濃度(P=.024)、運動機能(P=.008)、そして影響を受けた四肢の数(P=.001)に関して、有意差が、生存群と非生存群の間に認められました。年齢、呼吸数、その他の生化学解析、または併発CHFを比較した場合、生存群と非生存群の間に、いかなる有意差も認めませんでした。
直腸体温を基にしたロジェスティック回帰モデルは、摂氏37.2度で、50%の生存の可能性が予測されました。退院した猫の中央生存期間(MST)は、117日でした。11頭の猫はATEを再発し、5頭の猫は四肢障害が進展しました。CHFの猫(MST:77日)は、CHFを持たない猫(MST:223日;P=.016)より、有意に生存期間が短くなりました。高用量アスピリン(>40mg/cat.q.72h)と、低用量アスピリン(5mg/cat.q.72h)で処置した猫の間で、生存率、あるいは再発率に、有意差は認めませんでした。副作用は、低用量で、より少なく、より穏やかでした。(Dr.K訳)
■機能的右室流出障害:猫における収縮期雑音の新たな原因
Dynamic Right Ventricular Outflow Obstruction: A New Cause of Systolic Murmurs in Cats
J Vet Intern Med 16[5]:547-552 Sep-Oct'02 Retrospective Study 26 Refs
Mark Rishniw and William P. Thomas
我々は、猫における可変的な胸骨傍収縮期雑音の、新たな原因を調査し、特徴付けている。局所的な心雑音を評価するため来院した51頭の猫に、カラードップラー超音波検査を行い、三尖弁直上から始まる、右心室(RV)流出部内に、乱流性収縮期性ジェットがあるのを、発見しました。乱流の怪奇的なドップラー透写では、収縮期終末流の加速、異常なほど高いピーク速度、典型的な機能的狭窄症の心拍数の顕著な変動性を示しました。カラードップラーをなくした後の、2次元フレーム・バイ・フレーム検査のエコー像では、乱流の原因として、心室中隔と、RV遊離壁が付加した収縮作用であることが明らかになりました。我々は、この乱流パターンを機能的右心室性障害(DRVO)と表現しました。
DRVOを持つ猫の大部分が、4歳以上(51頭中45頭、88%)で、初期には、併発する非心臓性疾患とともに発現します(73%)。高齢猫におけるDRVOと関連した非心臓性疾患には、高い心拍量の状態(甲状腺機能亢進症、貧血症、そして炎症性疾患)と、全身性高血圧を伴う、または伴わない、慢性腎不全があります。4歳以上の45頭中4頭(9%)の猫は、いかなる他の心臓性、または非心臓性疾患もありませんでした。対比的に、4歳以下の6頭中5頭(83%)の猫は、心臓性疾患を併発していました。好発品種は、ありませんでした。10頭の猫の追跡調査で、8頭の猫に疾患の変化はありませんでしたが、腎移植した2頭の猫において、心雑音と異常なRVドップラー所見の消失がありました。我々は、DRVOが、RV収縮期性狭小化による、猫の収縮期雑音の生理的原因であると提唱します。(Dr.K訳)
■肥大性心筋症の猫におけるレニン-アンギオテンシン系の刺激
Stimulation of the Renin-Angiotensin System in Cats with Hypertrophic Cardiomyopathy
Sm Anim Clin Endocrinol 12[2]:16 May-Aug'02 Clinical Study 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM
Taugner FM. J Comp Path 2001; 125:122-129
背景:レニンは、腎灌流量の減少、遠位尿細管ナトリウムの増加、交感神経系の活動増加に反応し傍糸球体装置の細胞中に隠れる。レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の活性化は、心血管疾患を悪化させる原因として重要と考えられる。末梢血管抵抗と体液貯留の増加は、心筋の仕事量を増加させる。アンギオテンシンIIとアルドステロンの増加は、心筋と脈管の肥大と繊維化を誘発しえる。それらの要因全ては、心筋疾患の進行とうっ血性心不全の発現を促進するかもしれない。
要約:腎臓に含有されるレニンの研究を、検死で診断された肥大性心筋症の14頭の猫で行った。9頭の猫は心臓疾患の臨床症状を見せず突然死亡し、3頭の猫は心不全と血栓塞栓症の症状により安楽死され、2頭は肥大性心筋症に関係のない問題で安楽死された。傍糸球体装置のレニンと輸入細動脈のレニン陽性部分の免疫染色のため、糸球体を評価した。各ネコで約930個の糸球体を検査し、レニン陽性輸入細動脈と傍糸球体装置の比率を、10頭の健康な猫のそれと比較した。肥大性心筋症の猫の傍糸球体装置と輸入細動脈遠位部のレニン含有は、正常猫よりも有意に高かった。8頭の肥大性心筋症の猫の遠位尿細管で染色されたレニンの分布は、レニン分泌の慢性的な活性化を示唆した。心筋症の個々の猫で、レニン含有にかなりの変化が見られた。著者は、レニン-アンギオテンシン系が肥大性心筋症の猫で活性化されていると締めくくる。
臨床への影響:この研究は、肥大性心筋症の猫におけるレニン-アンギオテンシン系の活性化に関する直接的な証拠を提供する。この研究で大多数の猫は心臓疾患の臨床症状がなく突然死亡したため、その結果はうっ血性心不全の猫のそれらを反映しないかもしれない。しかし、腎臓灌流量や交感神経系の活性化は、心不全で予想されるので、心不全の猫はレニン-アンギオテンシン系がさらに活性化する傾向にあると思われる。アンギオテンシン転化酵素拮抗剤のような、この神経ホルモン系の活性化を鈍化させる方向の治療が、過剰なレニンとアンギオテンシンの悪い効果を減らすのに使用されるかもしれない。うっ血性心不全を伴う、または伴わない肥大性心筋症の猫の血漿レニン、アンギオテンシン、アルドステロンの測定は、さらなる肥大性心筋症の特徴付けやより効果的な治療形態の決定に役立つかもしれない。(Sato訳)
■心不全を持つ犬における、カルベジロールの心血管系と腎臓への影響
Cardiovascular and renal effects of carvedilol in dogs with heart failure.
J Vet Med Sci 64[6]:469-75 2002 Jun
Uechi M, Sasaki T, Ueno K, Yamamoto T, Ishikawa Y
犬における、カルベジロール(βブロッカー)の急性影響を、心血管系と腎機能、そしてその薬物動態に関して調査しました。雄雌15頭の成犬雑種(7-15kg)を用いて、これらの調査を行いました。8頭の犬はコントロール犬、7頭の犬は、医原性僧帽弁逆流(MR)実験犬としました。カルベジロール(0.2、0.4,そして0.8mg/kg、P.O.)を投与し、血中カルベジロール濃度を、逆相高速液体クロマトグラフィーによって解析しました。イソプロテレノール、またはフェニレフリンに対する反応も評価しました。イソプロテレノール(0.025μg/kg/min)を、伏在静脈から5分間点滴し、フェニレフリン(5μg/kg)をカルベジロール(0.2、0.4mg/kg)、あるいはプラセボと共に4日間注射しました。心拍数と動脈血圧を測定し、左室短縮率をエコーにより測定しました。糸球体濾過率(GFR)と、腎血漿流量をチオ硫酸ナトリウムと、パラアミノヒプル酸ナトリウムの静脈注射によって測定しました。カルベジロール(0.2mg/kg)は、腎機能、大動脈血圧、そして左室収縮機能に影響は認めなかったにもかかわらず、心拍数が低下しました。カルベジロール(0.4mg/kg)は、心拍数、血圧、そして腎機能が低下しました。イソプロテレノールに対する頻脈反応は、カルベジロール0.4mg/kgにより、有意に36時間減少しました。カルベジロール0.2mg/kgは、この影響を24時間抑制しました。このように、カルベジロールの薬容量を滴定するのは必要で、心不全の犬に対し、0.2mg/kg以下で開始し、0.4mg/kgまでとするべきである。(Dr.K訳)
■犬の感染性心内膜炎
Infective Endocarditis in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 24[8]:614-625 Aug'02 Review Article 56 Refs
Michelle Wall, DVM; Clay A. Calvert, DVM, DACVIM; Craig E. Greene, DVM, MS, DACVIM
感染性心内膜炎(IE)は、若-中年の心疾患の病歴のない大型犬種に良く見られる。コアグラーゼ-陽性ブドウ球菌や連鎖球菌が良く見られる関連細菌である。感染性心内膜炎を示す臨床所見は、発熱、炎症性の白血球像、最近始まった心雑音、跛行がある。しかしそれらの所見は、常に一致して存在するわけではない。心臓エコー検査や血液培養は診断データベースで重要である。ほぼ100%の症例で、大動脈弁や僧帽弁が影響を受ける。大動脈弁に関与する事が多い。大動脈弁の感染性心内膜炎に関する心エコー検査所見は特徴的である。
大動脈逆流の拡張期における心雑音が一般的で、感染性心内膜炎を強く示唆する。大動脈弁感染性心内膜炎が進行した時の大腿部の脈拍はバウンディングで早い。また治療には、長期(6-8ヶ月以上)、高用量の抗菌療法を必要とする。出来るだけ長く(少なくとも2週間)静脈内の投薬を維持し、その次は皮下投与とするべきである。クリンダマイシンとエンロフロキサシンを組み合わせた治療が薦められる。細菌性心内膜炎の認識は難しい事が多く、特に大動脈弁の細菌性心内膜炎では、免疫介在性やリケッチア疾患に似ており、通常致死的で、うっ血性心不全と結論を出されることもある。(Sato訳)
■代償性僧帽弁閉鎖不全を伴う犬で、腎機能の臨床指標に対するエナラプリル長期投与の影響
Effects of Long-Term Administration of Enalapril on Clinical Indicators of Renal Function in Dogs with Compensated Mitral Regurgitation
J Am Vet Med Assoc 221[5]:654-658 Sep 1'02 Randomized Controlled Trial 22 Refs
C. E. Atkins, DVM, DACVIM; W. A. Brown, DVM, DACVIM; J. R. Coats; M. Crawford, DVM, DACVIM; T. C. DeFrancesco, DVM, DACVIM; J. Edwards, DVM, DACVIM; P. R. Fox, DVM, DACVIM; B. W. Keene, DVM, MS, DACVIM; L. Lehmkuhl, DVM, DACVIM; M. Luethy, DVM, DACVIM; K. Meurs, DVM, PhD, DACVIM; J-P. Petrie, DVM, DACVIM; F. Pipers, DVM, PhD; S. Rosenthal, DVM, DACVIM; J. A. Sidley DVM, DACVIM; J. Straus, DVM, DACVIM
目的:重度代償性僧帽弁閉鎖不全の犬の腎機能に対する、エナラプリルの長期投与の影響を判定する。
構成:無作為対照試験
動物:心不全の明白な症状を伴わない僧帽弁閉鎖不全の犬139頭
方法:エナラプリル(0.5mg/kg、PO、1日1回)とプラセボの処置群にランダムに振り分け、血清クレアチニンと尿素窒素濃度を26ヶ月まで定期的に測定した。
結果:腎機能の十分な情報は132頭の犬から得られた。追跡調査期間は0.5-26ヶ月(中央値12ヶ月)だった。どの時点でもエナラプリル群とプラセボ群の間に、平均血清クレアチニンと尿素窒素濃度の有意差は見られず、また基準濃度との有意差も無かった。高窒素血症、または血清クレアチニン、尿素窒素濃度の++35%増加となった犬の割合も、群間の有意差はなかった。
結論と臨床関連:結果は、2年までのエナラプリル投与は、重度代償製僧帽弁閉鎖不全の犬の腎機能に明白な副作用を全く起こさなかったと示唆する。(Sato訳)
■全身性高血圧の猫に関する心エコー、X線像の変化
O. Lynne Nelson, Elizabeth Reidesel, Wendy A. Ware, William F. Christensen
Echocardiographic and Radiographic Changes Associated with Systemic Hypertension in Cats
J Vet Intern Med 16[4]:418-425 Jul-Aug'02 Clinical Study 31 Refs
この研究の目的は、健康な老猫と比較して、罹患猫の全身性高血圧(SHT)が、心エコー検査やX線での心血管変化にどう影響するのかを調査する事であった。2つ目の目的は、それらの所見と年齢、収縮期血圧(SBP)の間に関連があるのかどうかを判定する事だった。健康な猫15頭(心収縮期血圧が正常な8歳以上)と高血圧の猫15頭(心収縮期血圧>180mmHg)で行った。各猫の標準的な心エコーパラメーターと、4箇所の大動脈径を評価した。
右側ラテラルと背腹X線像から17個の変動値を測定した。全身性高血圧の猫の左室肥大は重度でなく、平均測定値は正常と思われた。左室流出路の2次元像から見た時、中隔基部に非対称性の中隔肥大がある猫もいた。非対称性中隔肥大は、全身性高血圧の猫に多く見られた。隣接上行大動脈の比較は、全身性高血圧猫の拡張存在を指示し、上行大動脈と大動脈弁輪の比較は、2群の識別に有用であった。心エコー検査で評価した遠位大動脈測定値と比率には、2群間の有意差があった(P=.0001)。また収縮期血圧に有意に相関し(P=.0001)、年齢には関係なかった(P>3)。(Sato訳)
■犬の心疾患の診断で、X線検査の役目
Role of Survey Radiography in Diagnosing Canine Cardiac Disease
Compend Contin Educ Pract Vet 24[4]:316-326 Apr'02 Review Article 29 Refs
Christopher R. Lamb, MA, VetMB, MRCVS, DACVR, DECVDI & Adrian Boswood, MA, VetMB, MRCVS, DVC, DECVIM-CA (Cardiology)
X線検査は、肺水腫や左心不全の主要所見を検出できるため、うっ血性心不全の診断に有用である。心不全でない犬で、エックス線検査はルーチンに心臓の大きさや形を評価するため使用する。しかし心臓の大きさのX線学的測定は、心疾患の診断使用に限りがあり、形の主観的評価は、特定心臓腔拡大の検出には不正確である。心疾患を疑う犬で、X線写真に写る心臓の陰影にあまり重きを置くのは重要ではない。(Sato訳)
■粘液腫性心臓弁膜症や無症候性僧帽弁閉鎖不全の犬で、エナラプリルによるうっ血性心不全の予防的効果
Clarence Kvart et al; J Vet Intern Med 16[1]:80-88 Jan-Feb'02 Prospective Study 39 Refs; Efficacy of Enalapril for Prevention of Congestive Heart Failure in Dogs with Myxomatous Valve Disease and Asymptomatic Mitral Regurgitation
我々は、粘液腫性弁膜疾患(MVD)に起因する無症候性僧帽弁閉鎖不全(MR)の犬で、うっ血性心不全(CHF)の発生延期、または予防のためのアンギオテンシン-変換酵素(ACE)阻害剤(マレイン酸エナラプリル)の早期単独治療の長期結果を、スカンジナビアの14の複数施設で予期的、無作為、二重盲目、プラセボコントロール方法で評価しました。粘液腫性弁膜疾患に起因する僧帽弁閉鎖不全を持つが、うっ血性心不全の症状を示していないキャバリアキングチャールズ(CKC)スパニエル229頭を、エナラプリル(0.25-0.5mg/kg、毎日、n=116)で治療したグループと、プラセボグループ(n=113)に無作為に振り分けました。開始時と12カ月(±30日)おきに、身体検査、心電図検査、胸部X線検査で評価しました。
心不全を起こした犬の頭数は、エナラプリル群とプラセボ群で似たようなものでした(それぞれn=50(43%)、n=48(42%);P=.99)。検閲した知見を調整し、治療開始から心不全まで評価した平均期間は、エナラプリル群で1150±50日、プラセボ群で1130±50日でした(P=.85)。試験開始時に心肥大がある、またはないことを考慮した時も、エナラプリル群とプラセボ群に違いはありませんでした(それぞれP=.98、P=.51)。多変量分析でも、エナラプリルの治療開始時から心不全までに有意な効果は見られませんでした(P=.86)。粘液腫性弁膜疾患や僧帽弁閉鎖不全の無症候性の犬で、エナラプリルの長期治療は、研究開始時に心肥大が在る無しに関わらず心不全の発生を遅らせる事はありませんでした。(Sato訳)
■僧帽弁閉鎖不全症の犬における血漿ジゴキシン濃度
Plasma digoxin concentration in dogs with mitral regurgitation.
J Vet Med Sci 63[11]:1199-202 2001 Nov
Nagashima Y, Hirao H, Furukawa S, Hoshi K, Akahane M, Tanaka R, Yamane Y
15頭の正常なビーグルの成犬と、8頭の実験的僧帽弁閉鎖不全症のビーグル成犬に10日間0.02mg/kg/dayのジゴキシンの粉剤を与えました。投与後にサンプル採取の最適時間は正常群で8-18時間、MR群で10-22時間に観察されました。両群ともに、投与開始後3-5日間で安定濃度となりました。性別間で血漿レベルに差は見られませんでした。ジゴキシンの最適濃度は、犬やヒトで以前報告されていたよりも、速い段階で達成されました。(Sato訳)
■抗高血圧薬毒性に対するアミノフィリン逆転
Aminophylline reversal of antihypertensive agent toxicity.
Vet Hum Toxicol 43[5]:285-7 2001 Oct
Roberge RJ, Rossetti ML, Rosetti JM
低血圧は、βブロッカー(アテノロル)、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(キナピル)の併用や、選択的セロトニン再吸収阻害剤(フルボキサミン)の過剰投与で発生しました。他の例で、心ブロックや低血圧は、ジルチアゼムやアテノロルの反相互作用に関連しているのがわかりました。晶質輸液は両ケースで無効でしたが、毒性はアミノフィリンの投与で急速に元に戻りました。アミノフィリンに認められる変力、変時特性は、抗高血圧薬毒性の治療で、もしかすると効果を期待できる薬剤かもしれません。(Dr.Sato訳)
★僧帽弁機能不全の治療
Robert Hamlin, DVM, PhD, DACVlM (Cardiology, Internal Medicine) ;Vet Med 96[4]:275 Apr'01 Clinical Q & A 2 Refs; When To Treat Mitral Valve Insufficiency
質問:"11歳、ダックスフントのルーチン検査を行ったところ、僧帽弁の逆流を示す、心雑音に気がつきました。その犬は元気に見えたので、オーナーは超音波検査や、X線検査を拒否しました。このような状況で、いつから治療を始めるべきですか?そしてその理由は?"
回答:"その雑音に対する治療の必要はありません。臨床症状(例えば、咳、呼吸困難、運動不耐性、失神)が無い時、多くの獣医心臓学者は、治療を控え、6ヶ月毎の再検査を勧めています。;臨床症状が出たら、すぐに検査するでしょう。もし、中程度の心肥大があるならば、-X線検査や心臓エコー検査により-ジギタリスを使用する、または使用しないで、後負荷軽減薬(例えば、抗アンギオテンシン変換酵素剤)を投与することで、心肥大の進行を緩やかにするべきだと思っている獣医心臓学者(私を含め)もいます。逆流による心肥大の進行を遅らせることが出来るかどうか、明確な証拠はありませんが、ヒトの心筋症での確証はあり、理論的に犬でも同様です。"
"ダックスフントが、臨床症状がなく、X線検査で、中程度の心肥大がなければ、この犬の治療は行いませんが、6ヶ月毎の胸部X線検査で再チェックを行います。オーナーには、苦しそうな呼吸や、咳、運動不耐が見られたら、すぐに検査するべきだと言いましょう。"
"僧帽弁閉鎖不全の犬は、気管を押し上げ、空咳を起こす、左心房拡大を良くおこします。この咳はうっ血性心不全によるものではありませんが、心疾患によるものです。その咳は鎮咳剤(酒石酸ブトルファノール、hydrocodone bitartrate)で安全かつ効果的に治療できます。"(Dr.Sato訳)
★重篤なベラパミル毒性におけるカルシウムとジゴキシンに対して、カルシウムのみの治療
Bania TC et al; Acad Emerg Med 2000 Oct;7(10):1089-96 Related Articles, Books, LinkOut ; Calcium and digoxin vs. calcium alone for severe verapamil toxicity.
塩化カルシウム(CaCl(2))はカルシウムチャネル拮抗剤の過量投与において効果がない。
ジゴキシンはナトリウム-カリウムATPaseを抑制することで細胞内カルシウムを増大させる。
OBJECTIVE: バラパミル中毒の治療におけるカルシウムとジゴキシンの影響を調査すること。
METHODS: 16頭の犬が血行動態モニターを装着された。6mg/kg/hrでベラパミル(VER)を30分間微量点滴投与され、ベラパミル中毒(中心動脈圧50%低下) を誘導した。引き続く中毒状態に、各犬に対しジゴキシン(0.018mg/kg)(DIG)(N=8)または生理食塩水(No-DIG)(n-8)が投与された。両グループとも、3つの連続した割合(1mg/kg/hr0から90分、6mg/kg/hr90-130分、そして18mg/kg/hr130-170分)でVERを投与された。カルシウム剤は(0分、5分で500mg,140,150,160分で1g)で投与された。データは投与割合と時間にわたり、DIG投与群とDIG非投与群の共変性比較の連続測定解析を用いて解析された。中毒状態の間、VER処置された動物の体重は管理され、基準値が共変動として含まれた。死亡率がVERの総投与量500mgの230分後で比較された。
RESULTS: ジゴキシン投与群は非投与群よりVER点滴1mg/kg/hr(初期p=0.028,後期p=0.01),6mg/kg/hr(p=0.051),18mg/kg/hr(p=0.038)の期間中、収縮血圧が高かった。ジゴキシン投与群では死亡したものはいなかったが、非投与群では4頭の犬が死亡した(Fisher=0.08)。両グループともに心室性瀕脈や心室細動などは発現しなかった。他の血行動態パラメーターは有意差を示さなかった。
CONCLUSIONS:重篤なベラパミル中毒のモデルにおいて、カルシウムに加えたジゴキシンはカルシウム単独と比較して収縮血圧を高め、これは心室性不整脈に起因するものではなかった。(Dr.K訳)
★犬の心不全に対するナトリウム制限食の心エコー検査結果と神経ホルモンにおける臨床上の効果
Rush JE et al; J Vet Intern Med 2000 Sep-Oct;14(5):513-20 Related Articles, Books, LinkOut ;Clinical, echocardiographic, and neurohormonal effects of a sodium-restricted diet in dogs with heart failure.
犬の心不全に対し低ナトリウム食を用いることは一般的に行われているが、このアプローチに対する有効性や問題点を検査する、無作為的2重盲目検査は行われていない。この研究の目的は心不全の犬に対し、低ナトリウム食が臨床上心エコー検査結果と神経ホルモンに及ぼす影響を確定することである。慢性心不全の犬に対し、低ナトリウム食(LS)と中程度ナトリウム制限食(MS)のみを無作為的二重盲目的にそれぞれ4週間給餌した。0日、28日、そして56日に心エコー検査と胸部レントゲン検査を、また電解質と神経ホルモンの血液解析を行った。
14頭の犬(慢性弁膜症9頭と拡張型心筋症5頭)が研究に使われた。電解質異常は研究中共通して見られ、血清ナトリウムと塩化イオン濃度がLS食において、有意に減少した。神経ホルモンは両グループ間で有意差はなかった。最大左房圧(P=.05)そして標準左房圧(P=.09)はLS食で減少した。慢性弁膜症の犬は、脊椎心臓スコア(P=.05),拡張時左室容積(P=.006)で収縮時左室容積(P=.02)、標準左房容積(P=.03)、最大左房容積(P=.02)、拡張終了容積率(P=.02)、収縮終了容積率(P=.04)でMS食と比較してLS食で有意に減少した。
これらのデータの解析は低ナトリウム食のいくつかの有効性を示唆しているが、より発展した研究計画で犬の心不全におけるナトリウム制限食の長所と短所をさらに評価することが要求される。(Dr.K訳)