■外科的切除と低用量CCNUで治療した原発性頭蓋内組織球肉腫の長期生存例
Long-Term Survival of Primary Intracranial Histiocytic Sarcoma Through Surgical Resection and Low-Dose CCNU
J Am Anim Hosp Assoc. 2025 Jan 1;61(1):15-20.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7458.
Kyosuke Hidari , Yuya Nakamoto , James K Chambers , Kazuyuki Uchida , Isao Mori , Miwa Nakamoto

5歳のチワワが、活動性低下と焦点性発作を主訴に我々の病院を受診した。MRIとCTの所見を基に、右前頭葉領域の原発性腫瘍が疑われた。

外科的切除を実施し、病理組織検査と免疫化学染色により組織球肉腫の診断がなされた。

低用量1-(2-クロロエチル)-3-シクロヘキシル-1-ニトロソ尿素(CCNU)(45mg/m2、4-5週毎)を術後開始し、359病日に死亡するまで2回のMRIスキャンで明らかな再発が見つからなかった。

我々は、診断時に転移病変の無い中枢神経系の孤立性組織球肉腫の犬において、局所治療とCCNUの組み合わせで長期生存が達成されるかもしれないと仮説を立てた。またCCNUは低用量でも組織球肉腫を効果的に抑制するかもしれないと示唆した。(Sato訳)
■犬の組織球肉腫に対するレスキュー療法としてビンクリスチンの効果
Efficacy of vincristine as a rescue therapy for canine histiocytic sarcoma
J Vet Med Sci. 2024 Aug 27.
doi: 10.1292/jvms.24-0218. Online ahead of print.
Hiroki Sakuma , Akiyoshi Tani , Yuko Goto-Koshino , Aki Ohmi , Hajime Tsujimoto , Hirotaka Tomiyasu

犬の組織球肉腫(CHS)は、マクロファージおよび樹状細胞由来の悪性腫瘍である。CHS症例には効果的な化学療法が必要なため、この疾患に対するレスキュー療法としてビンクリスチン治療の効果と有害事象を評価するため、この前向き研究を行った。

ロムスチンあるいはニムスチンに抵抗性を獲得した9頭のCHS症例にビンクリスチンを投与した。1頭の犬は完全寛解に達し、2頭の犬は部分奏功、5頭の犬は安定疾患、1頭の犬は進行性疾患だった。無増悪生存期間中央値は21日(範囲:7-71日)だった。1頭に重度副作用が観察された(グレード3血小板減少症)。

CHSに対する新しい効果的な治療の確立が非常に重要である。(Sato訳)
■関節周囲にできた組織球肉腫のあるフラットコートレトリバーの跛行に対する緩和的放射線治療±化学療法の影響:回顧的コホート単一施設研究
Impact of palliative-intent radiotherapy with or without chemotherapy on lameness in flat coat retrievers with localised periarticular histiocytic sarcoma - a retrospective cohort, single institution study
Vet Comp Oncol. 2023 Nov 7.
doi: 10.1111/vco.12942. Online ahead of print.
Petros Odatzoglou , Thomas Kearns , Charlie Pittaway , Jane M Dobson

フラットコートレトリバー(FCRs)において組織球肉腫(HS)は良く見られる腫瘍の1つで、関節周囲組織や関節を侵すことが多い。緩和的放射線治療は、局所の腫瘍コントロール達成、疼痛緩和、肢の機能の改善を目指す。しかし、HSのある犬の鎮痛レベルに対する緩和的放射線治療の影響は研究されていない。

我々は、HSの局在する犬において、緩和的放射線治療は跛行を改善できると仮説を立てた。この研究の目的は、HSの局在するFCRsの跛行に対する緩和的放射線治療の影響を評価することだった。

回顧的コホート単一施設研究を実施した。2003年から2022年までの放射線外照射治療を受けたHSのあるFCRの医療記録を再調査し、個体群統計、ステージング、基礎の跛行の重症度、治療的管理および結果のデータを含めた。統計学的解析に、記述統計、McNemar’sカイ二乗検定、フィッシャーの正確検定、カプラン-マイヤー解析を使用した。

年齢中央値7.2歳(オス25頭、メス14頭)の39頭を含めた。HSは最も一般的に前肢(29頭、74.3%)に位置し、肩関節(19頭、48.7%)を侵していた。全頭でステージングを実施し、22頭(56.4%)は局在HS、6頭(15.3%)は局在HSで節転移あり、11(28.2%)は局在HSで全身転移ありだった。全頭、緩和的少分割放射線治療を受け、32頭(82%)は跛行の改善を示した。

結論として、緩和的放射線治療は、関節の腫瘍に関係する跛行あるいは臨床症状を軽減する鎮痛効果がある。(Sato訳)
■犬の組織球肉腫のドキソルビシンによる治療:31症例(2003-2017)
Doxorubicin for treatment of histiocytic sarcoma in dogs: 31 cases (2003-2017)
J Am Vet Med Assoc. 2022 Sep 1;1-7.
doi: 10.2460/javma.21.11.0498. Online ahead of print.
Rhiannon M Doka, Steven E Suter, Michael L Mastromauro, Ashley L Bennett, Paul R Hess

目的:犬の組織球肉腫(HS)の治療に対するドキソルビシンの効果と、外科治療あるいは放射線治療の補助として、あるいは単独治療として投与するかどうかを評価する

動物:2003年から2017年までに検査した極所あるいは播種性HSの飼い犬31頭

方法:医療記録を遡及的に再調査し、データを収集した。最初にドキソルビシンを投与した日から進行までの期間と、最初の診断からの生存期間をカプラン-メイヤー法で算出した。ドキソルビシン治療によるより悪い結果に関係する可能性のある因子をログ-ランク検査で解析した。

結果:客観的な反応率(ORR)は26%だった。疾患の状態で層別化すると、局所および播種性形態のORRsはそれぞれ43%と21%だった。ドキソルビシン治療開始後から進行までの期間中央値(n=30頭)は42日だった。最初の診断から死亡までの生存期間中央値(n=29頭)は169日だった。完全寛解は局所疾患で多様式の治療を受けた2頭の犬でのみ得られた。

臨床関連:犬HSに対してドキソルビシン投与の有益性は適度で、腫瘍進行におけるORRおよび延長は限られており、他の単剤方法で達成される効果に匹敵する。(Sato訳)
■肺に発生した原発性組織球肉腫の根治的治療を行った犬の結果
Outcome in dogs with curative-intent treatment of localized primary pulmonary histiocytic sarcoma
Vet Comp Oncol. 2021 Dec 8.
doi: 10.1111/vco.12791. Online ahead of print.
Caroline A Murray , Jennifer L Willcox , Carlos H De Mello Souza , Brian Husbands , Matthew R Cook , Craig Clifford , Haley Leeper , Mac Kenzie Pellin , Danielle Richardson , Chamisa L Herrera , Erika Krick , Sarah McMillan , Sami Al-Nadaf , Katherine A Skorupski

肺の原発性組織球肉腫(PHS)は、肺実質内が起源の樹状細胞あるいはマクロファージの珍しい腫瘍の型である。外科的切除と補助的化学療法による根治的治療を受けたPHSの犬で、予後を述べた文献は限られている。

この研究の主な目的は、標準化された局所および全身療法で治療した、局在PHSの犬の結果を報告することだった。2つ目の目的は、この集団で予後因子を確認することだった。

多施設回顧的研究を実施し、全ての外科的および病理組織学的報告を含む医療記録を回顧的に再調査した。組み入れに対し、局在PHSを確認している、全ての肉眼的原発腫瘍と拡大した気管気管支リンパ節の切除を伴う根治的手術を行っている;また、補助的なCCNU単剤の化学療法による根治的治療を受けている犬を求めた。

6か所の獣医教育病院と5か所の個人診療施設で2008年から2019年の間に治療した27頭の犬を含めた。全体の生存期間中央値は432日だった。より高用量のCCNUは、単変量における生存性に負の影響を持つことが示されたが、多変量解析ではそうではなかった。単変量解析において、生存性に関係が見つからなかった因子は、体重、犬種、診断時の臨床症状、低アルブミン血症、腫瘍の大きさ、罹患した肺葉、リンパ節転移、外科的マージン、CCNUの減量が含まれた。

この研究は、根治的手術に加えて補助的CCNU化学療法で治療した局在PHSと診断された犬に対し、好ましい予後を支持し、多様式治療は、長期生存を試みるのに望ましいかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■脾臓摘出±補助的化学療法で治療した限局性脾臓組織球肉腫の犬の臨床結果
Clinical outcomes in dogs with localized splenic histiocytic sarcoma treated with splenectomy with or without adjuvant chemotherapy
J Vet Intern Med. 2020 Sep 28.
doi: 10.1111/jvim.15910. Online ahead of print.
Max Latifi , Joanne L Tuohy , Sheryl L Coutermarsh-Ott , Shawna L Klahn , Haley Leeper , Nikolaos Dervisis

背景:犬の限局性脾臓組織球肉腫(HS)は、あまり理解されていない疾患で、播種性あるいは血球貪食性HSよりも生存期間が長い可能性がある。限局性脾臓HSの臨床的挙動を理解することは、推奨治療を改良できる。

目的:限局性脾臓HSの犬の臨床的特徴と転帰を述べる

動物:脾臓HSと組織学的に確認され、脾臓摘出を受けた飼育犬14頭

方法:多施設回顧的ケースシリーズ-脾臓HSの医療記録を再調査した。犬のシグナルメント、臨床病理学的データ、主要および補助治療、転帰を入手した。生存データはカプラン-マイヤー解析を使用して算出した。年齢、体重、血小板数のような犬の変数は、記述統計で報告した。潜在的リスクファクター(体重、年齢、アルブミン濃度、ヘマトクリット値、血小板数)がPFIと関連するのかどうかを判定するためCox比例ハザード回帰法を使用した。

結果:この研究において犬の生存期間中央値は427日だった。12頭はロムスチンを主体とした補助的化学療法を受けた。5頭(35.7%)は転移が疑われ、あるいは確認された。11頭は疾患で死亡し、1頭は関連がない原因で死亡し、2頭は最終フォローアップ時に生存していた。

結論と臨床意義:犬の組織球肉腫は、脾臓において限局型と言える。手術±化学療法で治療した限局性脾臓HSの犬は、1年以上の生存期間を得られる。(Sato訳)
■関節周囲の組織球肉腫の犬に対する第一選択治療として放射線治療と外科手術の結果の比較
Outcome Comparison Between Radiation Therapy and Surgery as Primary Treatment for Dogs With Periarticular Histiocytic Sarcoma: An Italian Society of Veterinary Oncology Study
Vet Comp Oncol. 2020 May 12.
doi: 10.1111/vco.12609. Online ahead of print.
Laura Marconato , Silvia Sabattini , Julia Buchholz , Gerry Polton , Riccardo Finotello , Marina Martano , Michael Willman , Federico Massari , Chiara Agnoli , Julia Gedon , Simona Cancedda , Michela Campigli , Carla Rohrer Bley

局在化した組織球肉腫は大きな足の関節の関節周囲組織において、原発病変として発生するかもしれない。原発病変の治療オプションは、根治的外科的切除、放射線治療(RT)、あるいは両方、全身転移の可能性に対しては化学療法が組み合わせられる。

関節周囲組織球肉腫(PAHS)に対する外科手術vs非外科的アプローチ後の無増悪期間(TTP)をより特徴づけるため、罹患犬の最新のヨーロッパ集団を回顧的に調査した。

新規に診断され、外科手術あるいはRTに続き全身的化学療法を行ったPAHS症例を医療記録から検索した。

49頭中、34頭はRT、15頭は手術を行った。全ての犬は補助的化学療法を受けた。両群のTTPあるいは総生存期間に統計学的有意差はなかった。手術した犬のTTP中央値は336日で、照射を受けた犬は217日だった(P=0.117)。手術した犬の総生存期間中央値は398日で、照射を受けた犬は240日だった(P=0.142)。

多変量解析において、腫瘍進行と腫瘍関連死のリスク増加に有意に関係する変数は、入院時の領域リンパ節と遠隔転移だった。

RT後の生存率と局所コントロール率は、根治的切除に匹敵するかもしれない。それらのデータは、学際的ケアプロバイダーとオーナーの間で、共有する治療決定プロセスの説明をよりよく行えるかもしれない。(Sato訳)
■ミニチュアシュナウザーの組織球肉腫:30症例
Histiocytic Sarcoma in Miniature Schnauzers: 30 Cases
J Small Anim Pract. 2020 Apr 22.
doi: 10.1111/jsap.13139. Online ahead of print.
K Purzycka , L M Peters , J Elliott , C R Lamb , S L Priestnall , A Hardas , C A Johnston , I Rodriguez-Piza

目的:組織球肉腫と診断されたミニチュアシュナウザーの一連の症例における臨床症状と結果をまとめる

素材と方法:イギリスの2か所の二次診療施設で2008年から2019年の間に、組織球肉腫と診断されたミニチュアシュナウザーの医療記録を回顧的に再調査する。シグナルメント、初診時臨床症状、画像検査結果、臨床および組織病理学的所見、治療のタイプと結果を記録した。無増悪期間および総生存期間を計算した。

結果:30頭の犬を含めた。胸部の画像検査を行った29頭中24頭は、肺および/あるいは縦隔の関与があった。診断から3日以内に安楽死されなかった犬の総生存期間中央値は117日(範囲10-790日)だった。3頭は手術を行った;13頭は単剤療法としてロムスチンの治療を受けた(6頭中5頭の画像検査で部分奏功が証明され、13頭中11頭は臨床的改善を示した。

臨床意義:肺にマスがあるミニチュアシュナウザーに対し、鑑別診断として組織球肉腫を考慮すべきである。治療に対する反応は一般的だが、この疾患の攻撃的な特徴により、通常は短命だった。(Sato訳)
■犬組織球肉腫細胞に対する腫瘍溶解性レオウイルスの抗腫瘍活性
Anti-tumour activity of oncolytic reovirus against canine histiocytic sarcoma cells.
Vet Comp Oncol. 2019 Feb 14. doi: 10.1111/vco.12468. [Epub ahead of print]
Igase M, Shousu K, Fujiki N, Sakurai M, Bonkobara M, Hwang CC, Coffey M, Noguchi S, Nemoto Y, Mizuno T.

犬の組織球肉腫は侵略的で、予後不良の致死的腫瘍疾患である。ロムスチンが一般に第一全身療法として使用されているが、この薬剤は完全寛解が得られない。ゆえに、犬組織球肉腫に対する新しいアプローチの研究が必要である。しかし、組織球肉腫に対するレオウイルスを用いた腫瘍溶解療法の抗腫瘍効果は不明である。

ここで、著者らはレオウイルスがインビトロの犬組織球肉腫細胞株とインビボで腫瘍溶解活性を持つことを示した。著者らは犬組織球肉腫細胞株においてレオウイルスが複製可能で、カスパーゼ依存のアポトーシスを誘発することを見出した。

レオウイルスの1回の腫瘍内注射が、NOD/SCIDマウスの皮下に移植した腫瘍の発育を完全に抑制した。さらに、レオウイルス誘発細胞死は、インビトロでレオウイルス感染により誘発されたタイプIインターフェロンの程度によると証明された。

結論として、腫瘍溶解性レオウイルスは、組織球肉腫に対する効果的な治療オプションと思われ、初期臨床試験において今後の調査が求められる。(Sato訳)
■犬の肺の原発性組織球肉腫:37症例の回顧的研究(2000-2015)
Primary pulmonary histiocytic sarcoma in dogs: A retrospective analysis of 37 cases (2000-2015).
Vet Comp Oncol. 2018 Sep 23. doi: 10.1111/vco.12437. [Epub ahead of print]
Marlowe KW, Robat CS, Clarke DL, Taylor A, Touret M, Husbands BD, Vail DM.

原発性肺の組織球肉腫(pulmonary histiocytic sasrcoma:PHS)の報告はあるが、あまり特徴は述べられていない。

この回顧的研究の目的は、原発性PHSの犬の多頭群の臨床的特徴を述べることと、予後因子の特徴を述べ、転帰を報告することだった。
11の施設において、原発性PHSと診断された犬の診療記録を回顧的に検討した。

37頭の犬が含まれた;13頭はCCNUを基本とした化学療法単独、18頭は外科手術と補助的CCNUを基本とした化学療法、3頭は内科管理のみ、3頭は外科手術のみの治療を受けた。

全体の無増悪生存期間(PFS)中央値と生存期間中央値(overall survival(OS))は197日と237日だった。化学療法だけで治療した犬において、眼にわかる反応は認められたが、反応に永続性はなく、PFS(91日)、OS(131日)は全体の中央値よりも短かった。外科手術と化学療法で治療した犬は、手術を受けなかった犬と比較してPFS(276日、P=0.001)とOS(374日、P=0.001)が有意に延長していた。外科手術を受けて、化学療法を受けなかった犬は3頭のみのため、手術の補助としての化学療法の貢献は判定できなかった。胸腔内転移性疾患のエビデンスがない犬が、手術を受ける可能性がより高かった(オッズ比=7.04;P=0.018)。診断時に転移がある、あるいは臨床症状があることはPFSに負の影響をもたらし、転移があることはOSに負の影響を与えた。

手術が受け入れられるPHSの犬(すなわち、転移の臨床的エビデンスがない)は、外科的介入の利益を得る;しかし、外科単独群の比較がないため、術後の補助的化学療法の効果の評価はできないとデータから言える。(Sato訳)
■ミニチュアシュナウザー14頭の組織球肉腫:新しい犬種素因?
Histiocytic sarcoma in 14 miniature schnauzers - a new breed predisposition?
Language: English
J Small Anim Pract. August 2017;58(8):461-467.
J A Lenz , E Furrow , L E Craig , C M Cannon

目的:組織球肉腫と診断されたミニチュアシュナウザーの一連の症例を紹介することと犬種素因の可能性を評価する

素材と方法:2008年1月から2015年4月の間に組織球肉腫と診断されたミニチュアシュナウザーの医療記録を再調査した。シグナルメント、体重、主訴、診断日、臨床病理および診断的画像検査所見、治療、治療への反応、死亡あるいは最終追跡調査日時、検死所見などのデータを回収した。犬種素因はコントロールとして研究期間中に受診した組織球肉腫ではない同犬種の犬を使用し、オッズ比で評価した。登録情報が得られた犬に対し、血統分析を実施した。

結果:研究期間中に14頭のミニチュアシュナウザーが組織球肉腫と診断され、病院集団の中では大きな比率を占めた(オッズ比=4.8、P=0.0009)。10頭は局所、4頭は散在性と考えられた。局所疾患の犬のうち、9頭は胸腔内転移の所見を伴う(n=7)あるいは伴わない(n=2)大きな肺のマスの存在を基に原発性肺組織球肉腫と診断され、1頭は節転医を伴う胃の組織球肉腫だった。治療は様々だったが、ほとんどの犬で侵略的臨床経過が見られた。血統分析で評価した犬のサブセットに対し近年の共通の祖先が明らかとなった。

臨床意義:この患者集団の組織球肉腫の犬の中で、ミニチュアシュナウザーは大きな比率を占めた。血統分析は、その犬種で過去に示唆されていない遺伝性のリスクファクターを確認した。胸腔内転移を伴うあるいは伴わない原発性の肺病変がこの集団で一般的だった。(Sato訳)
■犬の組織球肉腫の治療におけるエピルビシン:連続、交互、レスキュー化学療法
Epirubicin in the treatment of canine histiocytic sarcoma: sequential, alternating and rescue chemotherapy.
Vet Comp Oncol. 2017 Jun 15. doi: 10.1111/vco.12329. [Epub ahead of print]
Mason SL, Finotello R, Blackwood L.

この研究の目的は、ロムスチンとエピルビシンで治療した組織肉腫(histiocytic sarcoma:HS)の犬の治療結果を報告することと、以前ロムスチンで治療した犬のレスキュー療法としてエピルビシンの反応率を報告することだった。

ロムスチンとエピルビシンで治療したHSの犬の医療記録を回顧的に評価した。レスキューを含むエピルビシンとロムスチンの交互、ロムスチンの治療後エピルビシンの投与を受けた29頭の犬のうち、エピルビシンの反応は20頭で評価でき、全奏効率(ORR)は29%で、生物学的反応率(BRR)は71%だった。算定できた20頭中12頭の無増悪期間(TTP)中央値は69日(範囲:40-125日)だった。レスキューで治療した犬に対し、エピルビシン特異ORRは19%で、BRRは63%だった。算定できた16頭のうち9頭のTTP中央値は62日(範囲:40-125日)だった。エピルビシンとロムスチンで治療した全ての犬の生存期間中央値は185日(範囲27-500日)だった。

エピルビシンに反応したHSの犬数頭と、エピルビシンとロムスチンの組み合わせで治療した犬は、単剤での研究に比べて生存期間がわずかに改善しており、ロムスチンとドキソルビシンを交互で治療したHSの犬と同様だった。エピルビシン単剤も犬のHSの有効な短期レスキュー療法である。(Sato訳)
■犬の組織球肉腫のレスキュー剤としてのダカルバジンの効果
Efficacy of dacarbazine as a rescue agent for histiocytic sarcoma in dogs.
Vet Comp Oncol. 2017 Apr 17. doi: 10.1111/vco.12314. [Epub ahead of print]
Kezer KA, Barber LG, Jennings SH.

背景:犬の組織球肉腫(histiocytic sarcoma:HS)は、挙動が悪い腫瘍で一般的に予後が悪い。CCNUは第一選択薬物と考えられるが、多くの犬は最終的に進行性疾患となる。この研究の目的は、HSのレスキュー剤としてダカルバジンの効果を評価することだった。

素材と方法:少なくとも1回のダカルバジンの投与を受けているHSと診断された犬の医療記録を調査した。シグナルメント、疾患分布、治療歴、ダカルバジン治療(投与量、サイクルの間隔と総数を含む)、副作用、治療反応を集めて解析した。

結果:17頭の犬を含め、全頭、播種性か転移疾患があり、過去でCCNUによる治療を受けていた。3頭の犬は部分寛解に達し、総反応率は17.6%だった。総イベントフリー生存期間(EFS)中央値は21日だった。奏功した犬に対したEFSは70日だった。ダカルバジンによる毒性は一般的に軽度で自己限定的だった。

結論:進行した疾患の場合、ダカルバジンはHSに対し中程度の活性を持つと思われ、追加調査が求められる。(Sato訳)
■犬の組織球性肉腫の臨床的な予後因子
Clinical prognostic factors in canine histiocytic sarcoma.
Vet Comp Oncol. 2016 Jun 23. doi: 10.1111/vco.12252.
Dervisis NG, Kiupel M, Qin Q, Cesario L.

犬の組織球肉腫(HS)は、様々な臨床的経過をたどる致死的な進行性の腫瘍である。

本研究の目的は、免疫組織化学的にHSと確定された犬の多くの症例について評価し、臨床的な予後因子を明らかにすることである。
ミシガン州立大学に提出されたHSと仮診断された生検サンプルを組織学的および免疫組織化学的に確定し、カルテを収集し、関連動物病院にインタビューを実施した。

組織球性という言葉が含まれる診断の得られた1391の組織病理サンプルにおいて、335が悪性の疑いがあり、180はHSと確定でき、適切な臨床情報が得られた。もっとも多く罹患した犬種は、バーニーズマウンテンドッグ(n=53)、ラブラドールレトリーバー(n=26)、ゴールデンレトリーバー(n=17)であった。本研究におけるすべての犬の生存期間の中央値は170日であり、層別解析では、緩和治療、播種性HS、コルチコステロイドの併用が、単変量および多変量解析の両方において統計学的に有意な生存に関する負の因子であることが明らかとなった。(Dr.Taku訳)
■犬の皮膚組織球腫におけるバルトネラ属の有病率
Prevalence of Bartonella spp. in Canine Cutaneous Histiocytoma.
J Comp Pathol. July 2015;153(1):14-21.
E L Pultorak; K Linder; R G Maggi; N Balakrishnan; E B Breitschwerdt

犬の皮膚組織球腫(CCH)は一般的で、潰瘍化することもあるランゲルハンス細胞起源の組織球の良性腫瘍性増殖で、二次的に感染を起こし、自然に退縮する。

バルトネラは条件的細胞内病原体の選好性の属で、節足動物に咬まれることや上皮の動物のひっかき傷を通して伝播する可能性があり、過去に肉芽病変内の組織球の細胞質内や、炎症性膿疱および丘疹の皮膚バイオプシーサンプル内で確認されている。

その確立された炎症およびバルトネラの腫瘍形成特性を基に、バルトネラ属のDNAは病変がない皮膚よりもCCHでより多く増幅され、病原体が間接免疫蛍光検査(IIF)で皮膚腫瘍内に局在すると仮説を立てた。

CCHの犬と骨肉腫に接した腫瘍ではない皮膚(広い外科的マージンにより選ばれたコントロール群)のパラフィンワックス包埋した外科的バイオプシー標本を、ノースカロライナ州立獣医大学の病理サービスのアーカイブから回収した。DNAを抽出し、16S-23S rRNA遺伝子間転写スペーサー(ITS)領域とpsp31およびgltA遺伝子をバルトネラ特異プライマーでPCRにより増幅した。PCR陽性の犬の組織内のB.henselae局在に対し、プライマリB.henselaeモノクローナル抗体を用いてIIFを実施した。

コントロール組織1/17(5.8%)でB.vinsonii subsp. berkhoffiiが増幅され、CCH組織4/29(13.8%)でB.henselaeが増幅された。B.vinsonii subsp. berkhoffii (P=0.37)とB.henselae(P=0.28)の有病率は研究群間で統計学的に変わらなかった。B.henselaeはIIFを用いCCH組織2/4(50%)で視認できた。この研究から、バルトネラ属がCCHを引き起こす可能性は低い。(Sato訳)
■バーニーズマウンテンドッグの組織球肉腫の発生に関するリスク因子
Risk Factors Associated with Development of Histiocytic Sarcoma in Bernese Mountain Dogs.
J Vet Intern Med. 2016 May 10. doi: 10.1111/jvim.13964. [Epub ahead of print]
Ruple A, Morley PS.

背景 組織球肉腫 (HS)は人において稀ではあるが進行性で悪性度が高く、既存の治療法には反応が乏しい。多くの犬種においては稀ではあるが、バーニーズマウンテンドッグ (BMDs)においてはよく見られる。

目的 BMDにおけるHSの発生に関与するリスク因子を明らかにすること

動物 Berner-Garde Foundationに登録された216頭のBMD
方法 HSと診断されたBMDの飼い主とHSの犬の同腹子でHSがない犬の飼い主から情報を集めるために、インターネットによる横断的調査を行った。可能性のあるリスク因子とHSの発生の関連を検討するために、ロジスティック回帰分析混合効果(MELR)および条件付きロジスティック回帰分析(CLR)を同時に用いた。

結果 関連性のマーカーとして同腹子を用いた場合、整形外科疾患と診断された犬は、よりHSになりやすく(MELR, オッズ比 2.5, 95%信頼区間 1.5, 5.2; CLR, オッズ比 2.81, 95%信頼区間 1.1, 7.3)、抗炎症薬を処方されていた犬はHSになるリスクがかなり低い(MELR, オッズ比 0.42, 95%信頼区間 0.2, 0.8; CLR, オッズ比 0.32, 95%信頼区間 0.1, 0.8)ことがわかった。

結論および臨床的意義 これらの結果から、炎症がBMDにおけるHSの発生に対する改善可能なリスク因子となりうることが示唆された。(Dr.Taku訳)
■ロムスチンで治療した多発性皮膚組織球腫の犬の1例
Multiple cutaneous histiocytomas treated with lomustine in a dog.
Vet Dermatol. 2014 Dec;25(6):559-62, e98-9. doi: 10.1111/vde.12147. Epub 2014 Jun 25.
Maina E, Colombo S, Stefanello D.

背景:組織球腫は一般的な若い犬の良性腫瘍である。多発性組織球腫はあまり見られない。この腫瘍は通常自然に退行するため、孤立腫瘍の外科あるいは内科治療は多くの症例で必要ない。病変が持続性、再発性、潰瘍化あるいは悪い場所にできた場合、治療が必要である。

仮説/目的:ロムスチンで治療した犬の多発性皮膚組織球腫の1症例を述べる

動物:5歳のミニチュアピンシャーが多発性、播種性、脱毛性皮膚結節を呈し、初見で関連した全身症状はなかった。

方法:皮膚バイオプシーの病理組織検査とバイオプシー捺印の免疫細胞化学検査を実施した。鼠径リンパ節、肝臓、脾臓、骨髄細胞検査および腹部超音波検査も実施した。

結果:臨床、病理組織、免疫細胞化学初見は犬多発性皮膚組織球腫の診断を支持するものだった。結節の数と大きさの増加により、内科治療を開始した。プレドニゾンとシクロスポリンで病変は悪化した。ロムスチンの月1回の経口投与で完全寛解に至るもその後再燃した。血清ALTやALP活性の上昇など代謝障害が記録され、治療は中止した。腫瘍の増大、重度無気力、食欲不振によりオーナーは安楽死を選択した。

結論と臨床的重要性:著者の知る限りでは、これは犬の多発性皮膚組織球腫をロムスチンで治療した最初の報告である。ロムスチンは組織球性の疾患に有効だが、重度および致死的となり得るため、副作用を考慮すべきである。(Sato訳)
■オランダでバーニーズマウンテンドッグとフラットコーテッドレトリバー集団の平均寿命に対する組織球肉腫の影響と死亡原因
Causes of death and the impact of histiocytic sarcoma on the life expectancy of the Dutch population of Bernese mountain dogs and Flat-coated retrievers.
Vet J. December 2013;198(3):678-83.
Suzanne A Erich; Gerard R Rutteman; Erik Teske

バーニーズマウンテンドッグとフラットコーテッドレトリバーは、遺伝性腫瘍疾患の素因がある。1986年から数名の著者が、両犬種において腫瘍、特に平均寿命を短くする悪性組織球症/組織球肉腫の高い有病率を報告している。しかし、初めのころの多くの報告は、比較的少数の犬、少数の幅広いカテゴリーに分布、旧式の疾患基準を用いることも多かった。

この研究の目的は、犬の飼い主と獣医師が協力し、大規模数の両犬種の犬において収集、検証された死亡原因と腫瘍、特に組織球肉腫の相対的役割の新しいデータを示すことである。

この研究で、少なくとも55.1%のバーニーズマウンテンドッグと63.8%のフラットコーテッドレトリバーの死亡は悪性腫瘍と関連することが示され、全てのバーニーズマウンテンドッグとフラットコーテッドレトリバーのうち、1/7以上が組織球肉腫で死亡していることが分かった。

これは、特に組織球肉腫に対する追加研究の必要性を強調する。(Sato訳)
■犬における胸腔内組織球性肉腫の画像特性
IMAGING CHARACTERISTICS OF INTRATHORACIC HISTIOCYTIC SARCOMA IN DOGS
Veterinary Radiology & Ultrasound, Volume 53, Issue 1, pages 21?27, January / February 2012
STEVEN TSAI, JAMES SUTHERLAND-SMITH, KRISTINE BURGESS, ROBIN RUTHAZER, AMY SATO

この回顧的研究では2人の観察者が、個別に組織球性肉腫と確認された39頭の犬の胸部画像調査を考察した。

最も一般的な所見は、1人目、2人目の観察者はそれぞれ犬の82.1%、87.2%で確認した胸腔内リンパ節腫脹と、肺のマス(74.4%と82.1%)だった。右肺の中葉のマスは他の肺葉のマスよりも有意に多く認められ(P<0.0013)、大多数は腹側に分布していた。胸骨および気管気管支リンパ節腫脹は、頭側縦隔リンパ節腫脹よりも有意に一般的だった(P-値それぞれ0.0002と0.012)。リンパ節腫脹および肺のマスの分布に関する観察者間の一致度は良好だった(それぞれk=0.64と0.75)。他の所見には肺の結節、胸水、異常な肺パターンなどがあった。CT検査を行った患畜で、多くのマスは軽度から中程度の増強、不均一、縁が不明瞭で気管支中心性だった。

組織球性肉腫の犬ではリンパ節腫脹と肺のマスは一般的な胸腔内所見で、右肺の中葉腹側にあるという強い傾向は他の種類の腫瘍との鑑別に役立つかもしれない。(Sato訳)
■バーニーズマウンテンドックの早期瀰漫性組織球肉腫に対するバイオマーカーの同定とスクリーニングプログラムの研究
Investigation of a screening programme and the possible identification of biomarkers for early disseminated histiocytic sarcoma in Bernese Mountain dogs
Veterinary and Comparative Oncology
Article first published online: 11 AUG 2011
L. N. Nielsen, F. McEvoy, L. R. Jessen, A. T. Kristensen

この研究の目的は、診断画像検査および血液分析を使用し、バーニーズマウンテンドックの瀰漫性組織球肉腫(DHS)に対するスクリーニングプログラムを作成し、早期疾患検出バイオマーカーとして血液由来バイオマーカーを評価することだった。
健康なバーニーズマウンテンドックを、早期疾患を検出するために4つの場合にスクリーニングした。11の血液由来バイオマーカーを、早期腫瘍バイオマーカーとしてその価値を検査した。2.5年の間に5頭の犬で早期DHSを確認した。それらのうち4頭は診断画像検査によるものだった。スクリーニングプログラムの6ヶ月以内に検出されなかった症候性DHSを発症した犬はいなかった。血清フェリチンのみが、その疾患の血液由来マーカーとしてのポテンシャルを示した。早期DHSの犬の生存期間中央値は226日だった。4歳以上のバーニーズマウンテンドックに対する6ヵ月毎の診断画像検査およびフェリチン測定を含むスクリーニングプログラムは、早期DHSを確認できるかもしれない。(Sato訳)
■悪性組織球増加細胞に対するドキソルビシンあるいはビンクリスチンの活性をビスホスホネートは有意に増加させる
Bisphosphonates significantly increase the activity of doxorubicin or vincristine against canine malignant histiocytosis cells
Veterinary and Comparative Oncology
Article first published online: 18 MAY 2011
S. D. Hafeman, D. Varland, S. W. Dow

犬の悪性組織球症(MH)はマクロファージおよび樹状細胞の攻撃的な腫瘍である。広く転移を起こし、化学療法に対する感受性が乏しいため、予後は悪い。ゆえにMHに対する新しい治療が広く求められている。
我々は、MHに対する細胞障害性化学療法の効果の増加にビスホスホネートが有用かもしれないと仮説を立てた。
この疑問を確かめるため、MH細胞株および6つの化学療法剤、5つのビスホスホネート剤を使用するインビトロスクリーニング研究を実施した。クロドロネートとビンクリスチンの併用は、細胞周期停止を有意に増加させる相乗死滅を誘発することが分かった。第2にゾレドロネートとドキソルビシンの併用も有意に細胞死滅を増加させた。ゾレドロネートはMH細胞によるドキソルビシンの取り込みを有意に増加させた。
それらの所見をもとに、ビスホスホネート薬剤は犬のMHに対する化学療法の総体的効果を増加させるかもしれないと結論する。(Sato訳)
■犬の悪性組織球症の治療に対するliposomal clodronateの評価
Evaluation of liposomal clodronate for treatment of malignant histiocytosis in dogs.
Cancer Immunol Immunother. March 2010;59(3):441-52.
Scott Hafeman, Cheryl London, Robyn Elmslie, Steven Dow

悪性組織球症(MH)は犬およびヒトにおける骨髄系細胞由来の活動的な癌である。犬では特に肺やリンパ節など複数の部位における転移腫瘍の急速な発育を特徴とする。ヒトでは主に子供や若年成人に見られるランゲルハンス細胞組織球増加症として知られる類似疾患を発症する。それらの腫瘍は従来の化学療法に抵抗することが多く、新しい治療アプローチが必要である。liposomal clodronate(LC)の全身投与は、食細胞(例えば、マクロファージや樹状細胞)を効果的に枯渇させることが示されている。
ゆえに我々は、犬の自然発生MHの治療にもLCが使用できるかどうかを調査した。最初にLC介在枯死に対する犬MH細胞の感受性をインビトロで調査した。それからMHに対する治療としてLCの臨床的安全性と効果を、自然発生MHの犬5頭の予備的研究で評価した。
我々は、LC誘発アポトーシス性細胞死に犬のMH細胞は非常に感受性が高いことを発見した。一方、他の腫瘍細胞系はLCによる枯死に抵抗した。
LC枯死に対する感受性を示した標識化リポソームを使用した研究では、リポソーム取り込みの利用率に直接関連した。自然発生MHの犬において、LC治療の短期コースを行った5頭中2頭の犬において有意な腫瘍の退行を誘発したことを認めた。それらの所見は、clodronateのリポソーム運搬およびおそらく他のビスホスホネートが、犬やヒトの組織球性腫瘍の治療に対する効果的な新しいアプローチとなる可能性を示唆する。(Sato訳)
■局所療法の補助療法としてロムスチンで治療した局所性組織球肉腫の犬の長期生存
Long-term survival in dogs with localized histiocytic sarcoma treated with CCNU as an adjuvant to local therapy.
Vet Comp Oncol. 2009 Jun;7(2):139-44.
Skorupski KA, Rodriguez CO, Krick EL, Clifford CA, Ward R, Kent MS.

組織球肉腫(HS)は、ほとんどの犬で診断した時点で転移があるため予後が悪い。局所治療を行った局所性組織球肉腫のいくつかの犬において、予後が改善されたと報告されているが、補助的全身療法が必要であると示唆される犬の70〜91%で遠隔転移が起こっている。この回顧的研究の目的は、積極的な局所療法に加え、補助的ロムスチン化学療法を行った局所性組織球肉腫の犬の臨床特性と予後を記述することだった。16頭の犬のデータを評価した。無病期間中央値は243日だった。これらの10頭の犬のうち2頭の犬は局所再発し、8頭の犬は中央時間が201日で再発する転移症例となった。16頭すべての犬において中央生存期間は568日だった。局所性組織球肉腫の犬において、積極的な局所療法に加え補助的ロムスチン化学療法を併用することが推奨されることがこれらの結果から示唆された。(Dr.Kawano訳)
■犬の皮膚反応性組織球症:32例の遡及評価
Cutaneous reactive histiocytosis in dogs: a retrospective evaluation of 32 cases
Vet Dermatol. October 2007;18(5):332-40.
Brian S Palmeiro, Daniel O Morris, Michael H Goldschmidt, Elizabeth A Mauldin

犬皮膚組織球症の32症例を遡及的に評価した。発現年齢中央値は4歳だった。病変は、頭部/顔面、体幹、四肢に見られる結節およびプラークと、鼻鏡/外鼻孔の紅斑、腫脹、色素脱失だった。全身性の併発は全例で除外されなかった。全例初期治療後、皮膚病変は完全寛解した(中央値45日)。初期治療はプレドニゾン±抗菌剤(12/32)、プレドニゾンおよびテトラサイクリン/ニコチンアミド(4/32)、プレドニゾンおよびアザチオプリン(3/32)、テトラサイクリン/ニコチンアミド±ビタミンE/必須脂肪酸(6/32)、抗菌剤±抗ヒスタミン剤(3/32)、シクロスポリンおよびケトコナゾール(1/32)、局所療法(2/32)、無処置(1/32)だった。17頭に行った維持療法は、テトラサイクリン/ニコチンアミド±ビタミンE/必須脂肪酸(12/17)、シクロスポリン/ケトコナゾール(週2,3回)(2/17)、毎日アザチオプリン(1/17)、プレドニゾン/アザチオプリン(週2回)(1/17)、毎日プレドニゾン(1/17)だった。
追跡調査中央値は25ヶ月だった。9頭は皮膚組織球症の再発(再発中央値130日)が見られ、9頭中7頭は1回以上再発があった。研究終了時、32頭中6頭は死亡(死亡時病変はない)、26頭は病変なく生存していた。26頭中10頭は維持療法を継続していた(8頭はテトラサイクリン/ニコチンアミド、1頭はアザチオプリン、1頭はビタミンE)。過去の皮膚疾患および季節は、再発に関係する影響がなかった。再発は、鼻鏡/外鼻孔の病変を持つ犬に有意に起こりやすかった。テトラサイクリン/ニコチンアミドはこの研究集団において効果的な治療オプションだった。(Sato訳)
■組織球性肉腫の骨格病変の犬19例
Skeletal lesions of histiocytic sarcoma in nineteen dogs
Vet Radiol Ultrasound. 2007 Nov-Dec;48(6):539-43.
Ryan M Schultz, Sarah M Puchalski, Michael Kent, Peter F Moore

この研究の目的は、組織球性肉腫による二次的な骨病変を持つ犬の臨床およびエックス線所見を述べることだった。組織球性肉腫と組織学的に診断された骨病変をエックス線学的に確認した19頭の犬を調査した。医療記録、入手可能なエックス線写真、組織学的切片を遡及的に再調査した。犬を局所または瀰漫性組織球性肉腫群に亜分類した。5歳以上のゴールデンレトリバーまたはロットワイラーで跛行または脊髄に位置する神経学的欠損の病歴が最も多い症状だった。19頭中15頭は、骨破壊に関するエックス線で確認できる軟部組織マスを持っていた。
骨病変は攻撃的な特性を持ち、侵される部位は、関節周囲骨(n=11)、椎骨(n=6)、近位上腕骨(n=5)、肋骨(n=2)だった。19頭中15頭は、瀰漫性組織球性肉腫で、4頭は局所組織球性肉腫だった。ロットワイラー全ては瀰漫性組織球性肉腫だった。組織球性肉腫はエックス線で確認される侵襲的な関節周囲、椎骨、近位上腕骨病変の鑑別診断に考慮すべきである。5歳以上のゴールデンレトリバー、ロットワイラーのエックス線写真または脊髄造影において骨病変にかかわる軟部組織マスがあるとき、疑いを高めるべきである。組織球性肉腫を伴う骨関与およびロットワイラー種はその疾患の瀰漫性型に関係した。(Sato訳)
■犬の組織球性腫瘍:概要
Canine histiocytic neoplasia: an overview.
Can Vet J. 2007 Oct;48(10):1041-3, 1046-50.
Fulmer AK, Mauldin GE.

犬の組織球性腫瘍は局所性そして播種性組織球肉腫と同様に皮膚組織球腫が含まれる。これらの腫瘍は様々な生物学的な挙動を示すが、悪性疾患の予後はしばしば悪い。免疫組織化学的検査は同じような組織学的所見を示す他の腫瘍と組織球性腫瘍を鑑別するのに重要な役割を果たす。これは確定診断する手助けとなり、予後のさらなる正確な予測を提供する。この記事は犬の組織球性腫瘍の生物学的挙動、診断そして治療を見直します。(Dr.Kawano訳)
■<犬組織球肉腫のCCNU療法>
CCNU for the treatment of dogs with histiocytic sarcoma.
J Vet Intern Med. 21(1):121-6.(2007)
Skorupski KA, Clifford CA, Paoloni MC, Lara-Garcia A, Barber L, Kent
MS, LeBlanc AK, Sabhlok A, Mauldin EA, Shofer FS, Couto CG, Sorenmo
KU.

*背景:組織球肉腫は樹状細胞由来の挙動の悪い腫瘍の一つであり、予後が深刻である。この腫瘍に対する化学療法の効果は明らかではない。この研究の目的は、完全切除不能又は転移がみられる組織球肉腫の犬においてCCNUの効果を判定す
ることとであり、これらの犬の臨床的特徴を述べるとともに予後を左右する要因を特定することである。

*仮説:我々はCCNUが犬組織球肉腫に対し有効であり、進行例において生存期間を延長すると予測した。

*動物:肉眼的または顕微鏡的に残存した病変がある組織球肉腫に対してCCNUを投与した犬である。

*方法:多施設で単一の治療群の集積を回顧的に行った。可能であれば、生検サンプルをCD18抗体で検査して組織球肉腫の診断を確認した。

*結果:8施設で59例の犬が治療された。23検体はCD18陽性のため確定できた。CCNUの60〜90mg/m2による治療によって、肉眼的に測定可能な病変をもつ56頭のうち、結果として全体の46%は反応した。微小残存病変のあった3例の犬の全てで腫瘍の再発がみられたが、CCNU開始後433日もしくはそれ以上、生存した。59例の生存期間中央値は106日であった。血小板減少(100,000/μl)と低アルブミン血症は予後不良であり、生存予測は1ヶ月以下であった。

*結論と臨床的重要性:CCNUは組織球肉腫の犬に対し反応があり、負の予後因子を持たない犬の治療に有用であるかもしれない。(Dr.HAGI訳)
■猫進行性組織球症
Feline progressive histiocytosis
Vet Pathol. September 2006;43(5):646-55.
V K Affolter, P F Moore

組織球増殖疾患は樹状突起細胞(DC)またはマクロファージの反応性および腫瘍性増殖である。DC増殖の種々形態は人と犬で述べられている。それらの原因は十分分かっていない。数例の報告を除いて、組織球増殖は猫で特徴付けられていない。
この研究は30頭の猫の進行性組織球症(FPH)の臨床、形態、免疫表現性特徴をまとめる。猫種または年齢に偏りはなかった。メスはオスよりも罹患する例が多かった。孤立性または複数の非掻痒性の固い丘疹、結節、斑は足先、肢、顔に出る傾向があった。病変は表皮および不定の皮下への慎重を伴う真皮への限局性の乏しい上皮親和性(13/30)、および非上皮親和性(17/30)組織球浸潤だった。組織球性集団は、臨床経過の早期で比較的同一構造を示した。病気の進行に伴い、細胞多形性が多く見られるようになった。
組織球はCD1a、CD1c、CD18および主要組織適合性複合体クラスII分子で発現した。この免疫表現型は、それら病変のDC起源を示唆する。皮膚ランゲルハンス細胞の特徴であるE-カドヘリンの同時発現は、3頭の猫でしか観察されなかった。FPHは進行性の臨床経過をたどるが、病変は時間が経過しても皮膚に限局されていた。内蔵干渉の末期は7例で見られた。化学療法、または免疫抑制、免疫調節薬による治療はうまく行かなかった。FPHの原因はいまだ分かっていない。FHPはほとんどがゆっくり進行し、最初無痛性皮膚腫瘍と考えられ、末期ステージには皮膚以外に広がるかもしれない。(Sato訳)
■犬の脾臓の悪性線維性組織球腫6例
Six cases of malignant fibrous histiocytoma of the canine spleen
Vet Pathol. July 1992;29(4):351-4.
M J Hendrick, J J Brooks, E H Bruce

ペンシルバニア州病理研究所で89年6月から90年7月にみられた、脾臓の悪性線維性組織球腫を持つ6頭の犬を遡及研究した。

素因:年齢は9-14歳(平均=12歳)。犬種、性別に偏りは見られず。

病歴/臨床症状:あいまいだが、嗜眠、食欲不振、触診可能な脾臓massがほとんどだった。慢性腎不全で安楽死した1頭の腫瘍は偶発的所見だった。

検死/組織病理所見:肉眼的に脾臓のmassは非常に限局性、灰白色、多胞性で、2頭は15cm以上だった。肉眼的には他の器官や組織を侵襲している所見はなかった。組織学的に悪性線維性組織球腫は、ヒトの分類シェーマを使用し炎症を伴う花むしろ状/多形性(5/6)に分類された。

結果:4頭はいまだ生存(追跡期間)。4頭中1頭は、6回の月1回アドリアマイシン投与にもかかわらず、脾摘後9ヶ月で肝臓への限局性転移性悪性線維性組織球腫を診断した。他の生存犬で術後2ヶ月にわたる軽度非再生性貧血が発症した。残りの2/6頭は安楽死した。1頭は脾摘後2週間食欲不振と沈うつのため。1頭は腎不全。(Sato訳)
■犬の悪性組織球症の臨床的そしてX線検査所見
Clinical and radiographic manifestations of canine malignant histiocytosis.
Vet Q. 1993 Sep;15(3):117-20.
Schmidt ML, Rutteman GR, van Niel MH, Wolvekamp PT.

悪性組織球症(MH)と確定診断された15頭の犬の臨床的そしてX線検査の結果を調査した。 最も一般的な臨床的徴候は、食欲不振(14頭の犬)、体重減少 (13頭の犬)、無気力(13頭の犬)、貧血(11頭の犬)そして呼吸困難そして/または咳(8頭の犬)でした。 X線写真はすべての犬で異常が明らかとなった。胸腔内(肺の結節あるいは硬化[7頭の犬]、縦隔マス[10頭の犬]、および付随の胸水[3頭の犬])あるいは腹腔内(肝腫大[6頭の犬]そして脾腫大[2頭の犬])、あるいは両方に異常があった。MHはバーニーズマウンテンドックに比較的頻繁に起こります。 臨床的そしてX線写真の兆候は非特異的ですが、それらが中年齢のバーニーズマウンテンドックに存在していれば、MHは鑑別診断に含めるべきである。(Dr.Kawano訳)
■犬の悪性組織球症の細胞診
Cytology of canine malignant histiocytosis.
Vet Clin Pathol. 1994;23(4):118-123.
Brown DE, Thrall MA, Getzy DM, Weiser MG, Ogilvie GK.

犬の悪性組織球症の7症例における骨髄、組織、そして腹腔内貯留液の細胞学的兆候を述べ、症例の組織病理学、血液学そして血清生化学的検査を検討した。
悪性組織球症の診断は組織の形態学と免疫組織化学的検査で確認した;すべての症例における腫瘍細胞はライソゾームに対する陽性の免疫反応があった。
この染色は組織切片と同様細胞標本における悪性組織球症の診断を決定的に確立することに有用である。 細胞学的所見としては豊富な軽度の好塩基性、空胞化した顆粒状細胞質を伴う多数の多形性、大型、離散的単核細胞が含まれた。
核は著しい赤血球大小不同症そして核大小不同を伴う卵型から腎臓型のように丸かった:核小体は顕著だった。有糸分裂像、しばしば異様な像が散見された。多核巨細胞そして赤血球と白血球の貪食作用が4症例で細胞学的検査において顕著に見られた。4頭の犬は貧血で、5頭の犬は血小板減少症そして3頭の犬は高カルシウム血症であった。ドーベルマンピンシャー(1)、ゴールデンレトリーバー(2)、フラットコーテットレトリーバー(3)、そして雑種犬(1)であった。(Dr.Kawano訳)
■犬の原発性胃悪性組織球腫
Primary Gastric Histiocytic Sarcoma in a Dog - A Case Report
Journal of Veterinary Medicine Series A
Volume 51 Issue 7-8 Page 358 - September 2004
P. Fant1,4, M. Caldin1, T. Furlanello1, D. De Lorenzi1, G. Bertolini1, G. Bettini2, M. Morini2 and C. Masserdotti3

要約
12歳の未避妊メスの雑種犬が、慢性、間歇的嘔吐、下痢を呈した。内視鏡検査で、幽門部から突出したmassを検出した。細胞、組織学検査で、組織球由来を示唆する多形性円形/卵形食細胞の集積を認めた。これを免疫組織化学的に確認した。臨床検査や検死時に胃の外部の侵襲は検出しなかった。これは犬の原発性悪性組織球腫の最初の報告である。(Sato訳)