■犬の急性発症の膵炎の管理:ナラティブレビュー
Management of acute-onset pancreatitis in dogs: a Narrative Review
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jun 5:1-10.
doi: 10.2460/javma.24.02.0107. Online ahead of print.
Sue Yee Lim , Harry Cridge , David C Twedt , Hiroshi Ohta , Takaomi Nuruki , Jörg M Steiner
急性発症の膵炎(AP)は、犬で一般的で、診断および管理はやりがいがある仕事である。近年まで、犬のAPの管理は、主に支持および対症療法が基本だった。この疾患の可能性のある原因の確認と管理は重要だが、症例の大多数は特発性と考えられる。
犬の必要量に合わせた輸液療法は、過水和は防ぎながら、適切な水和を提供するために非常に重要である。制吐剤は嘔吐と水分喪失のコントロールに必要で、早期栄養サポートに役立つ。合併症の認知と管理も非常に重要である。さらに、腹痛に対する鎮痛剤は、非常に重要である。
さらに、炎症カスケードの薬物的調節は、関心が得られており、APの治療に対する最初の特定治療薬であるフザプラジブナトリウムは、予備的研究で有効性の理にかなった見込みがあると示されている。この薬剤は、日本で犬のAPの臨床症状の治療に対し認可されており、またアメリカでFDAの条件的な承認を達成している。
抗菌剤は見境なく使用すべきではないが、誤嚥性肺炎、消化管細菌性転移、他の細菌感染のエビデンスがある犬で指示される。
プロトンポンプ阻害薬や血漿は、特に指示されない限り、通常は膵炎で処方されない。非ステロイド性抗炎症薬は避けるべきである。コルチコステロイド療法は、かつて禁忌と考えられていたが、1つの回顧的研究で示されたようないくつかの有益な効果があるかもしれない。しかし、それらの通常仕様が推奨できる前に追加研究が必要である。最後に外科的アプローチはまれに指示される。(Sato訳)
■犬の膵炎の診断における犬膵リパーゼ検査の比較分析
A comparative analysis of canine pancreatic lipase tests for diagnosing pancreatitis in dogs
J Vet Sci. 2024 May;25(3):e48.
doi: 10.4142/jvs.24001.
Jin-Kyung Kim , Sun Young Hwang , Se Eun Kim , Gahyun Lee , Soungjin Ji , Jungho Kim , Yongbaek Kim
重要性:犬の膵炎の早期診断は、非特異的な臨床症状のために困難を伴う。現在、腹部超音波検査と犬膵リパーゼ(cPL)の測定が膵炎の診断に使用されている。
目的:多くの質的および量的な市販のcPL検査が開発されており、動物病院で使用されている。この研究の目的は、3つの異なる方法論のSNAP cPL、Spec
cPL、Vcheck cPLテストを、それら検査の一致性を評価するために比較することだった。
方法:膵炎、あるいは膵炎ではない36頭の犬から50の血清サンプルを集め、SNAP cPL、Spec cPL、Vcheck cPLテストに供した。一致性と相関係数は、テスト結果間で算出し、相関性は犬の管理中に判定した。
結果:3つのcPL検査の結果は、47/50血清サンプル(94%)で強く相関した。Spec cPLとVcheck cPLのCohen's kappa分析は、ほぼ完ぺきな一致性を示した(κ=0.960、p<0.001)、SNAP cPLとVcheck cPL(κ=0.920、p<0.001)、Spec cPLとSNAP cPL(κ=0.880、p<0.001)。Spec cPLとVcheck cPLテストからのデータ間の相関係数(r)は、Spearman's correlation testで算出した(r=0.958、p<0.001)。さらに、Spec cPLとVcheck cPLを使用して測定した血清cPL濃度の変化パターンは、11頭のモニタリング期間中に有意に一致した。
結論と関連性:我々のデータは、犬の膵炎の診断およびモニタリングでSpec cPLとVcheck cPLテストは臨床的使用に適合すると示した。(Sato訳)
■血清膵リパーゼ免疫反応濃度が上昇した犬におけるC-反応性蛋白の予後的価値
Prognostic value of C-reactive protein in dogs with elevated serum pancreatic lipase immunoreactivity concentrations
J Am Vet Med Assoc. 2023 Dec 1:1-6.
doi: 10.2460/javma.23.09.0533. Online ahead of print.
Sydney M Oberholtzer , Audrey K Cook , Robynne Gomez , Jörg M Steiner
目的:膵炎の犬においてC-反応性蛋白(CRP)の予後的価値を判定する
動物:膵リパーゼ免疫反応(PLI)>600μg/Lの飼い犬503頭
方法:テキサスA&M消化管研究所への一版提出物で、PLI>600μg/Lの犬サンプルをモニターした。PLI測定から2週間後に病院にメールし、以下の質問をした:(1)その犬は入院していた、(2)その犬は生存しているかどうか。応答があった場合、血清CRP濃度を残った血清を用いて測定した。
結果:対となるPLIとCRPの結果が503頭の犬から入手できた。PLIの中央値は984μg/L(範囲、603-2001μg/L)だった;CRP中央値は9.9mg/L(範囲、9.9-395.3mg/L;参照値:<10mg/L)だった。136頭(27.0%)の犬が入院した;49頭(9.7%)が死亡、あるいは安楽死された。死亡した犬と生存した犬のPLI中央値は同様だった。CRP中央値は入院した犬(36.1vs9.9mg/L;P<.0001)及び死亡した犬(37.2vs9.9mg/L;P<.0001)でより高かった。CRP<10mg/Lの犬と比べ、CRP>10mg/Lの犬は、5.3倍(CI、2.7-10.2)死亡する確率が高く、5.7倍(CI、3.7-8.7)入院する確率が高かった。
臨床関連:PLI>600μ/Lの犬において、CRP>10mg/Lは入院、あるいは死亡のリスク上昇と関係した。このバイオマーカーは、膵炎のエビデンスのある犬の予後的情報を提供し、入院あるいは紹介に関する決断を手助けするかもしれない。(Sato訳)
■イングリッシュコッカースパニエルの慢性膵炎の臨床症状
Clinical manifestations of chronic pancreatitis in English cocker spaniels
J Vet Intern Med. 2024 May 9.
doi: 10.1111/jvim.17100. Online ahead of print.
M Francisca Coddou , Barbara Blacklaws , Penny J Watson
Free article
背景:慢性膵炎(CP)は、イングリッシュコッカースパニエル(ECS)で一般的である。組織学的にヒトのIgG4-関連疾患(IgG4-RD)に似ており、導管破壊、小葉間線維症、高密度の小導管周囲および静脈周囲のリンパ球凝集の特徴を示す。しかし、ECSのCPの臨床症状は今まで述べられていない。
目的:ヒトのIgG4-RDの類似及び相違を含む、ECSの1群でCPの臨床症状の特徴を述べる
動物:104頭のCPのECSと44頭のCPではないコントロールの飼い主所有のECS(健康および疾患コントロール)
方法:罹患した犬は、CPの診断に使用した方法により2群に振り分けた。症例記録からシグナルメント、臨床および臨床病理学的所見、乾性角結膜炎(KCS)のエビデンス、蛋白尿、他の免疫介在性疾患および肛門嚢炎を検索した。
結果:他の器官の関与は一般的だった。罹患したECSは、高頻度のKCS(n=49)、蛋白尿(n=47)、肛門腺疾患(n=36)、アトピー(n=21)、他の免疫介在性疾患(n=16)を呈した。マダラの被毛、特にブルーローンの犬は、CPと強く関連し、この犬種において皮毛の色と自己免疫状況の関連を示唆した。
結論と臨床的重要性:CPのイングリッシュコッカースパニエルは、IgG4-RDのヒトとの臨床的類似性を示し、他の器官の関与も一般的である。臨床医は、罹患したコッカースパニエルで、蛋白尿、乾性角結膜炎、他の可能性のある免疫介在疾患に対する評価を行うべきである。(Sato訳)
■急性膵炎の犬の超音波検査による消化管壁の変化の有病率:回顧的研究(2012-2020)
Prevalence of ultrasonographic gastrointestinal wall changes in dogs with acute pancreatitis: A retrospective study (2012-2020)
J Vet Intern Med. 2022 Mar 23.
doi: 10.1111/jvim.16414. Online ahead of print.
Joshua J Hardwick , Elizabeth J Reeve , Melanie J Hezzell , Jenny A Reeve
Free article
背景:急性膵炎(AP)の犬の超音波検査上の消化管壁の変化は文献で特徴を述べられていない。それらの有病率、特徴、分布、臨床的関連を述べている詳細な研究はない。
仮説/目的:APの犬の集団において、超音波検査による消化管壁の変化の有病率を述べ、消化管壁の変化の存在と臨床あるいは臨床病理学的変数の間の関係を評価する
動物:APの飼い犬66頭の紹介された集団
方法:APの犬を確認するため、臨床的記録の回顧的検索。臨床的変数、臨床病理学的変数、超音波検査所見を記述統計により報告した。二項ロジスティック回帰モデルにより、消化管壁の変化の存在と、臨床あるいは臨床病理学的変数との関連を評価した。
結果:66頭の犬が含まれた。APの47%の犬(95%CI、35.0-59.0%;n=31)は、超音波検査による消化管壁の変化を認めた。消化管壁の変化は、十二指腸において最も一般的で、罹患犬の71%(n=22)で確認された。消化管壁の変化がある犬の中で、74.2%(n=23)は壁の肥厚、61.3%(n=19)は異常な壁の層、35.5%(n=11)は波状の壁だった。多変量モデルにおいて、心拍数だけが超音波検査による消化管壁の異常の独立した予測変数として残った(P=.02)。
結論と臨床的重要性:このAPの犬の集団において、超音波検査による消化管壁の変化は一般的だった。心拍数上昇が唯一の消化管壁の変化の独立した予測変数で、より重度の疾患を伴うかもしれない。超音波検査による消化管壁の変化が、APの疾患重症度を反映するかどうか明らかにする追加研究が必要である。(Sato訳)
■膵臓の手術を行った犬と猫の周術期結果:81症例(2008-2019)
Perioperative outcomes in dogs and cats undergoing pancreatic surgery: 81 cases (2008-2019)
J Small Anim Pract. 2022 Jun 17.
doi: 10.1111/jsap.13524. Online ahead of print.
M L Wolfe , E V Moore , S Jeyakumar
目的:二次診療施設で膵臓の手術を行った犬と猫の周術期の要因のタイプと頻度を確認して述べる
方法:2008年から2019年までに膵臓の手術を行った犬と猫を確認するため、小動物外科紹介病院の医療記録を回顧的に再調査した。組み込み基準は、完全な医療記録、病理組織検査結果、術後最低14日、あるいは死亡までのフォローアップを含めた。収集した変数は、シグナルメント、病歴、主訴、術前診断結果、術中合併症、外科的所見/処置、術後合併症、病理組織検査結果を含めた。関連した情報あるいは病理組織検査報告が医療記録に見当たらない症例は除外した。それらの変数の頻度を報告した。
結果:81頭の飼育動物が組み込み基準に合っていることを確認した(犬57頭、猫24頭)。犬で最も一般的に行われた膵臓の処置は部分的膵臓切除63.2%(36/57)で、猫は膵臓バイオプシーだった62.5%(15/24)。犬の一般的な組織学的診断は、膵島細胞癌50.9%(29/57)で、猫は膵炎41.7%(10/24)だった。全体の死亡率は13.6%(11/81)で、犬の死亡率は10.5%(6/57)、猫の死亡率は20.8%(5/24)だった。
臨床意義:この一連の犬と猫において、二次診療施設での膵臓の手術は、低から中程度の死亡率だった。(Sato訳)
■急性膵炎の臨床症状を伴う犬の腹部超音波検査の診断的、予後的有用性の評価
Evaluation of diagnostic and prognostic usefulness of abdominal ultrasonography in dogs with clinical signs of acute pancreatitis
J Am Vet Med Assoc. 2021 Sep 15;259(6):631-636.
doi: 10.2460/javma.259.6.631.
Eleonora Gori, Alessio Pierini, Ilaria Lippi, Simonetta Citi, Tommaso Mannucci, Veronica Marchetti
目的:入院して最初の2日間の急性膵炎(AP)の臨床症状がある犬の腹部超音波検査(AUS)所見を報告することと、疾患の重症度と死亡率とAUS所見を比較する
動物:APの臨床症状がある37頭の飼育犬
方法:APの疑いで完全な医療記録があり、最初の入院2日間を通してAUS検査を実施し、入院時の犬膵臓リパーゼ(cPL)の定量測定のために余分な凍結血清サンプルが入手できる犬が研究組み込み基準に合致した。犬はAUS上のAPに対する陽性あるいは陰性所見をもとにして、AUS+あるいはAUS-とグループ分けした。APの腹部超音波所見は、AUS重症度指数を用いて層別化(軽度、中程度、重度)し、犬急性膵炎重症度スコアを算出した。
結果:37頭中24頭(64.8%)は入院時にAPのAUS所見があったが、10頭は入院から2日以内にAUS上でAPの陽性所見があった。3頭(8%)はAUS-だったが、血清cPL濃度>400μg/L(すなわち、APの診断が考慮される値)だった。AUS重症度指数では、AUS+犬34頭中5頭(14.7%)は軽度所見、AUS+犬18頭(52.9%)は中程度の所見、AUS+犬11頭(32.4%)は重度所見だった。重度所見は、軽度および重度所見よりもより高い死亡リスクと関係した。犬急性膵炎重症度スコアと死亡率の間に有意な関係が見つかった。
結論と臨床関連:APの臨床症状がある犬に対し、入院中にAUSを繰り返し実施すべきで、AUS重症度指数に対する重度所見は、死亡のリスク増加を示すかもしれず、血清cPL濃度はAPのAUS上の所見よりも早く増加するかもしれない。(Sato訳)
■臨床的に急性膵炎が疑われる犬38頭の超音波モニタリング
Ultrasonographic Monitoring in 38 Dogs with Clinically Suspected Acute Pancreatitis
Vet Sci. 2020 Nov 16;7(4):E180.
doi: 10.3390/vetsci7040180.
Federico Puccini Leoni , Tina Pelligra , Simonetta Citi , Veronica Marchetti , Eleonora Gori , Caterina Puccinelli
Free article
犬の急性膵炎(AP)の診断的評価に、腹部超音波検査(AUEs)が一般的に使用される。
この回顧的研究の目的は、臨床的にAPの疑いがあり、連続したAUEsで観察した超音波検査の変化をモニターし評価することだった。
研究集団は2016年1月から2019年12月の間に48時間以内に入院した38頭の飼育犬で構成した。この研究に含めた犬は、入院時に実施した臨床検査と腹部迅速特異犬膵リパーゼ検査でAPの疑いがあった。犬は2回のAUEsを行い、1回目は入院当日、2回目は1回目の40-52時間後に行った。
12頭の犬は2回のAUEs共にAPを示唆した。14頭の犬は、2回目のAUEでのみAPの超音波診断を受けた。12頭は1回目と2回目のAUE両方で陰性のままだった。38頭中26頭で2度目のAUEがAPを示唆した。
犬がAPを疑われた場合、APの超音波症状は入院後遅れてのみ観察可能になるかもしれないので、入院後、少なくとも最初の52時間以内は超音波検査のモニタリングを実行するのが賢明である。(Sato訳)
■膵炎に関係する胆管閉塞の犬46頭
Bile duct obstruction associated with pancreatitis in 46 dogs
J Vet Intern Med. 2020 Aug 27.
doi: 10.1111/jvim.15879. Online ahead of print.
Ashley R Wilkinson , Stefanie M DeMonaco , David L Panciera , Cristiane C Otoni , Michael S Leib , Martha M Larson
背景:犬の膵炎は、肝外胆管閉塞(EHBDO)の一般的な原因である。膵炎が関連する胆管閉塞(PABDO)の犬の臨床経過を述べた情報は限られている。
目的:犬のPABDOの臨床経過を述べ、疾患の重症度の推定的マーカーが生存の指標になるかどうか調べる
動物:PABDOの46頭の飼育犬
方法:PABDOと診断された犬の医療記録の回顧的再調査を実施した。疾患の経過を通し、データ(臨床症状、生化学的変化など)を6回集めた。結果は生存(退院)か死亡として定義した。
結果:PABDOの犬42頭中33頭(79%)は生存した。生存した33頭中31頭(94%)は内科治療だけだった。臨床症状発現から血清ビリルビン濃度上昇の始まり、ビリルビン上昇のピーク、血清ビリルビン濃度低下の始まりまでの時間は、それぞれ7(中央値)、8、15日だった。臨床症状発現から転帰までの日数の中央値は13日だった。発熱、嘔吐、食欲不振の臨床症状は、臨床症状の発現からビリルビンピークまでに頻度が減少した。PABDOの超音波による診断時の胆管径の中央値とピークのビリルビンは、生存群(7.6mm、11.7mg/dL)と非生存群(6mm、10.6mg/dL、P=0.12、P=0.8)で違いはなかった。
結論:PABDOの犬は疾患の経過が延長しており、EHBDOの進行の生化学的所見にもかかわらず、臨床的に改善していることが多い。(Sato訳)
■急性膵炎の犬のC-反応性蛋白/アルブミン比の評価とその生存性との関連
Evaluation of C-reactive protein/albumin Ratio and Its Relationship With Survival in Dogs With Acute Pancreatitis
N Z Vet J. 2020 Jun 15;1-8.
doi: 10.1080/00480169.2020.1780995. Online ahead of print.
E Gori , A Pierini , I Lippi , G Ceccherini , F Perondi , V Marchetti
目的:急性膵炎の犬のC-反応性蛋白(CRP)/アルブミン(ALB)比と生存性の関連、生存に対する予後マーカーとしてのそれの使用を評価する
方法:2015年1月から2019年4月の間で、イタリアの二次動物病院の医療記録から、入院時に血清のCRPとALB濃度を測定した急性膵炎の犬を回顧的に検索した。CRP/ALB比を計算し、入院から退院あるいは死亡までの期間を記録した。全体および入院から2日以内に死亡した犬の死亡率を計算した。一変量Cox比例ハザードモデルを生存期間とCRP/ALB比の関連の評価に使用した。
結果:71頭の犬を研究した。そのうち19頭は、来院から2日以内に死亡した;早期死亡率は26.8%だが、27頭は退院前に死亡し、全体の死亡率は38%だった。CRP/ALB比が低い犬より高い犬の方が、有意に死亡率が高かった:CRP/ALB比で1ユニット増加ごとに、研究期間中の死亡のリスクが130%増加した(ハザード比=2.34;95%CI=1.53-3.58-;p<0.0001)。死亡を予測するCRP/ALB比の最適なカットオフポイントは、0.56で、感受性は88.9%、特異性は68.2%だった(AUC=0.82;p<0.0001)。
結論:ヒトのように、CRP/ALB比は特に特異性はないが、急性膵炎の犬の死亡リスク増加に対する予後的マーカーとして有望かもしれない。(Sato訳)
■自然発生の膵炎の犬と健康なコントロール犬の血清トリグリセリドおよびコレステロール濃度とリポ蛋白プロフィール
Serum triglyceride and cholesterol concentrations and lipoprotein profiles in dogs with naturally occurring pancreatitis and healthy control dogs.
J Vet Intern Med. 2020 Feb 3. doi: 10.1111/jvim.15715. [Epub ahead of print]
Xenoulis PG, Cammarata PJ, Walzem RL, Suchodolski JS, Steiner JM.
背景:過去の研究は犬の高脂血症と膵炎の関連を報告しているが、この関連の詳細は依然明白にされていない。
仮説と目的:自然発生の膵炎の犬と健康犬の血清トリグリセリドとコレステロール濃度、リポ蛋白プロフィールを比較する
動物:膵炎と臨床的に診断された17頭の犬(グループ1)と健康なコントロール犬53頭(グループ2)
方法:前向き症例-コントロール研究
結果:グループ1の17頭中3頭(18%)は高トリグリセリド血症だったのに対し、グループ2の53頭中4頭(7.5%)が高トリグリセリド血症(オッズ比(OR)、2.63;95%CI、0.52-13.14;P=0.35)だった。グループ1(中央値、67mg/dL)とグループ2(中央値、54mg/dL;P=0.002)の血清トリグリセリド濃度に有意差が見られた。グループ1の17頭中4頭(24%)が高コレステロール血症だったのに対し、グループ2の53頭中1頭(1.9%)が高コレステロール血症だった(OR、16;95%CI、1.64-155.5;P=0.01)。グループ1(中央値、209mg/dL)とグループ2(中央値227mg/dL;P=0.56)の血清コレステロール濃度に有意差は見られなかった。リポ蛋白プロフィールにはグループ1とグループ2の犬で有意差があった(固有値、0.6719;R2=1.0;P=0.001)
結論と臨床的重要性:膵炎のほとんどの犬(>70%)は血清トリグリセリドとコレステロール濃度が参照範囲内だった。小率の犬は高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、あるいは両方で、上昇は軽度だった。膵炎の犬と健康なコントロール犬のリポ蛋白プロフィールに重要な差は確認された。健康な犬よりも膵炎の犬は低密度リポ蛋白分画がより高く、高トリグリセリドリポ蛋白と高密度リポ蛋白分画がより低かった。(Sato訳)
■膵炎の犬の腹部超音波所見、特異犬膵リパーゼ検査、臨床的重症度指数と臨床診断との関係
Association between abdominal ultrasound findings, the specific canine pancreatic lipase assay, clinical severity indices, and clinical diagnosis in dogs with pancreatitis.
J Vet Intern Med. 2020 Jan 17. doi: 10.1111/jvim.15693. [Epub ahead of print]
Cridge H, Sullivant AM, Wills RW, Lee AM.
背景:膵炎の臨床診断(CDx)には、臨床症状、腹部超音波(AUS)、膵リパーゼの評価が含まれる。しかし、臨床医は膵炎の診断にAUSを用い、治療方針決定のガイドにAUSの重症度を用いている。このことの正当性は不明である。
目的:(1)AUS、特異犬膵リパーゼ(Spec cPL)検査とCDxとの相関があるか、(2)個別AUS異常は他よりCDxとより密接に関連するかどうか、(3)AUS重症度は臨床的重症度指数を反映するかどうか、(4)AUSの変化はSpec cPLあるいはCDxの変化に対するマーカーとして使用できるかどうか、(5)膵炎に対するAUSの感受性と特異性を調べる
動物:157頭の犬
方法:この回顧的症例研究において、組み込み基準は、消化管、膵臓疾患、あるいはその両方の症状に加え、30時間以内にSpec cPLとAUSを実施していることだった。記録から抜き出した情報は、血液検査、Spec
cPL、AUSイメージ/クリップ、超音波所見の重症度だった。
結果:AUSはSpec cPL(rs = .0178, P = .03)との相関は弱く、CDx(rs = .379, P = <.001)との相関は中程度だった。膵臓のサイズ(rs = .285, P = <.001)、エコー源性(rs = .365, P = <.001)、腸間膜エコー源性(rs = .343, P = <.001)はCDxと相関した。AUSにおける変化はSpec cPLあるいはCDx変化と相関しなかった。膵臓の拡大、エコー源性、腸間膜エコー源性の変化が診断に必要な時、感受性と特異性は89%(95%CI、71.8-97.7)と43%(95%CI、34.0-51.6)だった。全て3つの基準を必要とした場合、感受性と特異性は43%(95%CI、24.5-62.8)と92%(95%CI、85.3-95.7)だった。
結論:AUSは膵炎の診断で切り離して使用すべきではなく、重症度の指標は悪い。(Sato訳)
■僧帽弁変性の犬に対するピモベンダン(ベトメジン)とフロセミド(ラシックス)の組み合わせにラミプリル(バソトップ)追加の効果
Efficacy of adding ramipril (VAsotop) to the combination of furosemide (Lasix) and pimobendan (VEtmedin) in dogs with mitral valve degeneration: The VALVE trial
J Vet Intern Med. 2020 Sep 18.
doi: 10.1111/jvim.15863. Online ahead of print.
Gerhard Wess , Jan-Gerd Kresken , Ralph Wendt , Juliane Gaugele , Markus Killich , Lisa Keller , Julia Simak , Peter Holler , Alexander Bauer , Helmut Küchenhof , Tony Glaus
背景:粘液腫性僧帽弁疾患(MMVD)による鬱血性心不全の治療に対し、フロセミド、ピモベンダン、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)からなる3治療(TT)が良く推奨される。しかし、ピモベンダンとフロセミドの併用(2治療(DT))に対し、ACEI追加の効果はこれまで前向きに評価されていない。
仮説:MMVDによる二次的なCHFの犬に対し、3治療は2治療に比べ生存期間が延長するだろう
動物:MMVDが原因で最初のCHFを呈した飼育犬
方法:前向き単純盲検無作為化多施設研究。158頭を登録し、前向き無作為にDT(フロセミドとピモベンダン)あるいはTT(フロセミド、ピモベンダン、ラミプリル)を投与した。主要エンドポイントは、心臓による死亡、心不全による安楽死、治療失敗のいずれかとした。
結果:無作為に77頭の犬にDT、79頭の犬にTTを投与した。2頭の犬は分析から除外した。主要エンドポイントに達したのは136頭だった(87%;DT、66頭、;TT、70頭)。この研究で全ての犬に対し、主要エンドポイントに達するまでの期間中央値は、214日だった(95%CI、168-259日)。主要エンドポイントに達するまでの期間中央値で、DT群(227日;四分位数間領域(IQR)、103-636日)とTT群(186日;IQR、72-453日;P=0.42)に有意差はなかった。
結論と臨床的重要性:MMVDによるCHFの犬の生存期間に対し、ピモベンダンとフロセミドに、ACEIラミプリルを加えても何ら有益な効果を持たなかった。(Sato訳)
■急性膵炎の犬の対称性ジメチルラルギニン(SDMA)の評価
Evaluation of Symmetric Dimethylarginine (SDMA) in Dogs With Acute Pancreatitis
Vet Sci. 2020 Jun 1;7(2):E72.
doi: 10.3390/vetsci7020072.
Eleonora Gori , Alessio Pierini , Ilaria Lippi , Valentina Meucci , Francesca Perondi , Veronica Marchetti
対称性ジメチルラルギニン(SDMA)は、腎機能不全の重要なバイオマーカーと考えられる。
この研究の目的は、急性膵炎(AP)の犬のSDMAを評価することと、腎傷害の存在および死亡率との関連を評価することだった。
入院から48時間以内の相当する臨床および検査パラメーター、異常なSNAP cPL、相当する腹部超音波像を用いて診断したAPの犬54頭を含むコホート研究を実施した。腎臓および/あるいは尿疾患の病歴を持つ犬に加え、腎毒性の薬剤を使用している犬は除外した。血清尿素とクレアチニン、尿量(UO)を記録した。急性腎傷害(AKI)はIRISガイドラインにより診断し、グレード分けした。SDMAは高速液体クロマトグラフィーで測定した。
54頭の犬が含まれ、非AKI(n=37)およびAKI犬(n=17)に振り分けた。23頭の犬(14頭は非AKI)がSDMA>15μg/dLだった。AKI犬のSDMA中央値は非AKI犬よりも高かった(25.7 vs.13.93μg/dL;p=0.03)。正常なクレアチニンの犬(APおよびAKI1頭)で参照範囲以上のSDMAだったのは38%と33%の症例だった。AKIの犬において、SDMAとクレアチニンは正の相関を示した(p=0.006
r=0.7)。生存犬と非生存犬の間にSDMAの有意差はなかった。
今後の研究が求められるが、SDMA高値は無症状の腎臓障害に関連するかもしれないので、SDMAは犬のAPにおいて有用なツールかもしれない。(Sato訳)
■膵炎の急性症状を伴う入院犬109頭の予後マーカーと過去に発表された臨床重症度指数の評価
Prognostic markers and assessment of a previously published clinical severity index in 109 hospitalised dogs with acute presentation of pancreatitis.
Vet Rec. 2019 Oct 29. pii: vetrec-2019-105364. doi: 10.1136/vr.105364. [Epub ahead of print]
Kuzi S, Mazor R, Segev G, Nivy R, Mazaki-Tovi M, Chen H, Rimer D, Duneyevitz A, Yas E, Lavy E, Aroch I.
背景:急性膵炎(AP)は犬でよくみられる。しかし、重症度を評価する検証された臨床重症度指数(CSI)スコアリングシステム、現行の治療ガイド、大規模研究は利用できない。
方法:これは109頭の犬の回顧的研究である。膵炎は臨床症状、腹部超音波所見、膵リパーゼ検査陽性、専門家の一致した評価により診断した。
結果:生存率は75%(82頭)だった。高窒素血症、局所合併症の存在(たとえば腹水)、二次的合併症(たとえば急性腎障害や急性呼吸窮迫症候群)は有意に死亡と関係した。過去の発表されたCSIと同じで、呼吸異常は有意に死亡と関係した。しかし、その研究と違い、腎臓および局所腹部合併症カテゴリーおよび全て9つのカテゴリーのスコア合計が高スコアだが、胃腸カテゴリースコアは高くないことも、有意に死亡と関係した。最終CSIスコアが少なくとも4の場合、死亡と関係した。
結論:この研究は、9-カテゴリーCSIを検証し、APの犬の有効な評価ツールと証明した。過去に報告された、いくつかのものと新規予後マーカーを評価した。(Sato訳)
■正常な犬と膵臓の炎症および腫瘍性疾患のある犬において犬膵リパーゼ免疫反応性と病理組織所見
Histopathological Findings and Canine Pancreatic Lipase Immunoreactivity in Normal Dogs and Dogs With Inflammatory and Neoplastic Diseases of the Pancreas
J Vet Intern Med. 2020 May 7.
doi: 10.1111/jvim.15779. Online ahead of print.
Heike Aupperle-Lellbach , Katrin Törner , Marlies Staudacher , Christina Stadler , Ursula Tress , Julia M Grassinger , Elisabeth Müller , Corinna N Weber
背景:犬の膵臓疾患の診断は、臨床病理と病理組織所見に常に一致するわけではない変化しやすい臨床症状のために未だに難しい。
目的:犬の炎症性および腫瘍性膵臓疾患の特徴を調べることと、それらの所見と、臨床所見および犬膵リパーゼ免疫反応性(cPLI)結果と関連付けること
動物:通常の診断検査に供された72頭の犬の組織標本と対応する血液サンプル
方法:4群を組織学的に定義した:(1)正常な膵臓(n=40)、(2)軽度膵炎(n=8)、(3)中程度から重度の膵炎(急性、n=11;慢性、n=1)、(4)膵臓腫瘍(n=12)。院内cPLI ELISA(<180μg/L、正常;>310μg/L、膵炎)を実施した。
結果:正常な膵炎の犬において、92.5%の血清cPLI結果は参照範囲内で、軽度急性膵炎、中程度あるいは重度急性膵炎および膵臓腫瘍の犬よりも有意に低かった。中程度あるいは重度急性膵炎の犬において、cPLIの感受性は90.9%(95%CI、58.7%-99.8%)だった。膵臓腫瘍のほとんどの犬(9/12)は、さらに膵臓の炎症があり、cPLI
結果は10頭で上昇していた。
結論と臨床的重要性:cPLI高値は、重大な急性膵炎を示すが、基礎に膵臓腫瘍があるかもしれないと考慮に入れておくべきである。この研究は、膵臓疾患の診断的評価において病理組織の妥当性を確認する。(Sato訳)
■先天性インスリン過剰症が疑われた柴犬の1例
Suspected Congenital Hyperinsulinism in a Shiba Inu Dog
J Vet Intern Med. 2020 Jun 27.
doi: 10.1111/jvim.15834. Online ahead of print.
Simon Cook , Myles McKenna , Barbara Glanemann , Ranbir Sandhu , Chris Scudder
3か月のオスの柴犬の当初、特発性と思われた発作性疾患を評価した。フェノバルビタールの治療的血清濃度とレベチラセタムの使用にもかかわらず、発作頻度に変化はなかった。6ヶ月齢の再評価で、発作中の顕著な低血糖が示された。低血糖中の血清インスリン濃度は41U/μL(参照範囲、10-29U/μL)だった。
食餌を1日4回に変更し、ジアゾキシドを8時間毎の3.5mg/kgPOで開始し、抗てんかん薬は中止した。両空洞動脈および静脈フェーズ造影CT画像上に臨床的関連異常は確認されなかった。
その犬は1日2回の給餌と5.5mg/kgのジアゾキシド投与で、3歳時で発作はなく、臨床的に正常を維持した。その後、ジアゾキシドの嘔吐の有無にかかわらず、努力の後、発作は年に約2回発生した。血糖曲線と間質性グルコースモニタリングをジアゾキシドの量と間隔を決めるために使用した。
先天性インスリン過剰症は、ヒトでよく認識されているが、動物医療で報告されていない。(Sato訳)
■犬の膵外分泌不全における予後因子として血清コバラミンと葉酸:229頭の犬の観察コホート研究
Serum cobalamin and folate as prognostic factors in canine exocrine pancreatic insufficiency: An observational cohort study of 299 dogs.
Vet J. 2019 Jan;243:15-20. doi: 10.1016/j.tvjl.2018.11.003. Epub 2018 Nov 12.
Soetart N, Rochel D, Drut A, Jaillardon L.
犬の膵外分泌不全(EPI)は、栄養吸収の重度障害を誘発する消化管状態である。その疾患は、特にコバラミンと葉酸に関係するビタミン障害に関与することが多い。EPIの犬は、毎日高価な支持治療が必要である。
この研究の目的は、229頭の犬の長期生存研究を通し、特に血清コバラミンと葉酸濃度に注目し、疫学、臨床、生物学的および治療的データを考慮して犬のEPIに対する予後因子を確認することだった。
血清低コバラミン(コバラミン<350ng/L)と血清高葉酸(葉酸>12μg/L)濃度の有病率は、それぞれ67%(200/299)と55%(164/299)だった。診断時の低コバラミン血症の犬は、血清コバラミン濃度が参照範囲内の犬より有意に年齢が上だった(P<0.001)。
診断時に低コバラミン血症(P=0.04)、オス犬(P=0.01)、診断時の食欲低下(P=0.008)、酵素補充療法を受けていない(P=0.003)ことは、EPIの生存性を低下させる有意な独立したリスク因子だった。
対照的に高葉酸血症は予後の改善に関与した。
それらの結果は、低コバラミン血症は、特に高血清葉酸濃度が見られないとき、予後に悪く関係するため、EPI診断時の血清コバラミンおよび葉酸濃度測定の重要性を確認する。(Sato訳)
■急性膵炎の犬15頭の止血機能異常の多施設調査
Multicenter investigation of hemostatic dysfunction in 15 dogs with acute pancreatitis.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Apr 29. doi: 10.1111/vec.12840. [Epub ahead of print]
Nielsen L, Holm J, Rozanski E, Meola D, Price LL, de Laforcade A.
目的:急性膵炎の犬における止血プロフィールの特徴を述べる
デザイン:前向きおよび観察研究
場所:第3次紹介センター
動物:2011年12月1日から2012年6月1日の間に登録された急性膵炎の15頭の飼育犬
素材と方法:血小板数、PCV、トロンボエラストグラフィー(TEG)、アンチトロンビン、プロトロンビン時間、活性化部分トロンボプラスチン時間、D-ダイマー、ヴォンウィルブランド因子、フィブリノーゲン値の測定のため採血し、健康犬から算出した参照範囲と比較した。研究対象と参照範囲の連続性変数の違いを調べるためにWilcoxon rank-sum testを使用した。
測定値と主要結果:急性膵炎の犬は、参照範囲と比較したときTEGを用いて全体的に凝固亢進だった。急性膵炎の犬は、参照範囲よりもD-ダイマー(1144
μg/L vs 251 μg/L [6264.5 vs 1374.5 nmol/L]; P = 0.001)、フィブリノーゲン(837 vs
232 mg/dL [8.37 vs 2.32 g/L]; P < 0.001)、ヴォンウィルブランド因子(92.9% vs 65.1%;
P = 0.02)が有意に高く、アンチトロンビン(85.7% vs 120%; P < 0.001)とプロトロンビン時間値(3.8 vs
7.6 sec; P < 0.001)は有意に低かった。
結論:急性膵炎の犬には、凝固亢進の臨床検査値が見られた。急性膵炎の犬の治療反応のモニタリングや、治療介入のガイドにTEGが有効かもしれない。(Sato訳)
■急性膵炎が疑われる犬に対しコルチコステロイドで初期治療した場合としなかった場合の比較
Comparison of initial treatment with and without corticosteroids for suspected acute pancreatitis in dogs.
J Small Anim Pract. 2019 Mar 13. doi: 10.1111/jsap.12994. [Epub ahead of print]
Okanishi H, Nagata T, Nakane S, Watari T.
目的:犬の急性膵炎に対し、コルチコステロイドで初期治療した場合としなかった場合を比較し、治療効果と予後を調査した。
素材と方法:この非盲検非無作為化臨床研究に65頭の犬を含めた。急性膵炎の犬45頭はプレドニゾロン1mg/kg/dayで治療し、20頭の犬はプレドニゾロンで治療しなかった。治療に対する反応は、C-反応性蛋白濃度の変化、臨床症状の改善、入院期間、死亡率と再発率を基礎とした。
結果:入院3日目から非プレドニゾロン群に比べ、プレドニゾロン群のC-反応性蛋白濃度は有意に低かった。プレドニゾロン群のC-反応性蛋白濃度が<2mg/dl、臨床スコアが≦2に到達するまでの日数は有意に短かった。退院後1か月の死亡率はプレドニゾロン群で有意に低かった(11.3%vs46.1%)。
臨床意義:急性膵炎の犬において、プレドニゾロンによる初期治療はC-反応性蛋白濃度のより速い低下と臨床症状のより速い改善をもたらした。(Sato訳)
■猫の膵炎の臨床経過における予後リスクファクターとして血清イオン化カルシウム
Serum ionised calcium as a prognostic risk factor in the clinical course
of pancreatitis in cats.
J Feline Med Surg. December 2015;17(12):984-90.
Claudia Dias; L Miguel Carreira
目的:この研究の目的は、膵炎の進展に対する性別、年齢、猫種の影響の可能性を評価することと、血清イオン化カルシウム([Ca(2+)i])低値が、膵炎の臨床経過を決定する予後リスクファクターとして考慮できるかどうかを理解することだった。
方法:膵炎の猫24頭のサンプル(n=24)を使用し、疾患の進行により(i)回復する非致死的(NF)群と(ii)死亡した致死(F)群にグループ分けした。異なる時期に[Ca(2+)i]と猫膵リパーゼの定量を各猫で実施した:T1(診断日)とT2(回復あるいは死亡日)。統計分析でP<0.05を有意と考えた。
結果:T1時、58.3%の猫は低カルシウム血症を呈し、33.3%は正常値、8.3%は高カルシウム血症だった。NF群よりF群の[Ca(2+)i]平均値が高かった。T2時、75.0%の猫は正常カルシウム値、25.0%は低カルシウム血症だった。T2時のF群の[Ca(2+)i]の平均値は0.88±0.23mmol/l、NF群のそれは1.10±0.11mmol/lだった。疾患の進展に対する性別あるいは年齢の素因はなかったが、猫種の影響は認められた(家猫短毛種の猫は膵炎発展により易発性があった)。
結論と関連性:低カルシウム血症は膵炎の猫でよく見られ、1mmol/l以下の[Ca(2+)i]は、疾患の臨床経過を予測する予後リスクファクターとして使用できるかもしれず、予後不良であることを示唆する。(Sato訳)
■猫の膵外分泌不全:150症例の回顧的研究
Feline Exocrine Pancreatic Insufficiency: A Retrospective Study of 150 Cases.
J Vet Intern Med. 2016 Sep 19. doi: 10.1111/jvim.14560.
Xenoulis PG, Zoran DL, Fosgate GT, Suchodolski JS, Steiner JM.
背景 膵外分泌不全 (EPI)の猫の臨床症状や治療に対する反応性に関する情報は少ない
目的 EPIの猫のシグナルメント、臨床症状、併発疾患、治療に対する反応性について明らかにする
動物 150頭のEPIの猫
方法 回顧的症例研究
結果 261人の獣医師にアンケートを送り、統計解析に適したデータが150(57%)返却された。EPIの猫の年齢の中央値は7.7歳であった。ボディコンディションスコアの中央値は、3/9であった。119頭の猫の92頭(77%)は低コバラミン血症を認め、119頭の猫の56頭(47%)は葉酸濃度が増加しており、119頭の猫の6頭(5%)は葉酸濃度が低下していた。臨床症状は、体重減少(91%)、形のない便(62%)、被毛粗剛(50%)、食欲低下(45%)、食欲亢進(42%)、元気低下(40%)、水様便(28%)、嘔吐(19%)などが認められた。87頭の猫(58%)は併発疾患があった。治療に対する反応性は、121頭の猫のうち、60%においてよく、27%において部分的、13%においてよくなかった。トリプシン様免疫活性が<4 μg/Lであることは治療に対して反応することと関連していた(OR, 3.2; 95% CI, 1.5-7.0; P = .004)。コバラミンの添加によっても治療に対する反応性が改善した(OR, 3.0; 95% CI, 1.4-6.6; P = .006)。
結論と臨床的意義 猫における膵外分泌不全は、犬よりも様々な臨床症状を示すことが多い。猫のEPIの年齢の幅は広く、多くの猫は、5歳以下である。大部分の猫は、EPIに対する適切な治療に対してよく反応し、コバラミンの添加が良い反応には必要であるようにみえた。(Dr.Taku訳)
■犬の急性膵炎における臨床検査の臨床的有用性:一次診療施設での回顧的検討
Clinical Utility of Diagnostic Laboratory Tests in Dogs with Acute Pancreatitis: A Retrospective Investigation in a Primary Care Hospital.
J Vet Intern Med. 2015 Nov 20. doi: 10.1111/jvim.13660. [Epub ahead of print]
Yuki M, Hirano T, Nagata N, Kitano S, Imataka K, Tawada R, Shimada R, Ogawa M.
背景:急性膵炎(AP)は犬に頻繁に発生するが、これまでの検討のほとんどは、ニ次診療施設におけるAP診断のデータに基づいたものであった。
仮説/目的:本研究の目的は、一次診療施設におけるAP罹患犬の臨床検査に対する臨床的有用性の検討である。
検討動物:APと診断されうる臨床徴候を有する、64頭の非膵炎(NP)およびAPの犬。
方法: APの診断に有用と考えられる臨床検査を含む医療記録を回顧的に再検討した。アミラーゼと富士ドライケムリパーゼ(FDC
v-LIP)の診断精度について、受信者動作特性曲線(ROC)を使用して検討した。加えて、臨床検査が入院期間の推定に有用であるかの検討、および、回復をモニターするバイオマーカーとしての有用性についても検討した。
結果:アミラーゼとFDC v-LIP活性は、AP群においてNP群よりも有意に高かった(それぞれ、P
= 0.001、P < 0.001)。 APの診断におけるFDP v-LIP活性の感度は100%(95%信頼区間(CI):87.7-100%)、特異度は89.5%(95%CI:66.9-98.7%)であった。
FDC v-LIP活性のROC曲線下面積は、0.98(95%CI:0. 93-1)であった。高アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性と入院期間には関連が認められた(P
= 0.04)。治療開始前と開始後5日目に測定されたC反応性タンパク(CRP)濃度には有意な差が認められた(P
= 0.001)。
結論および臨床的重要性: FDC v-LIP活性の測定はAPの診断において有用であることが示された。高ALT活性では入院期間の延長に関連する可能性があり、また、CRPがAPからの回復をモニターするバイオマーカーとして有用である可能性がある。(Dr.Kawano訳)
■24頭の犬と19頭の猫における膵臓の外科的生検:術後の合併症と病理組織学的所見の臨床的関連
Pancreatic surgical biopsy in 24 dogs and 19 cats: postoperative complications and clinical relevance of histological findings.
J Small Anim Pract. 2015 Jan;56(1):60-6. doi: 10.1111/jsap.12262. Epub 2014 Aug 6.
Pratschke KM, Ryan J, McAlinden A, McLauchlan G.
背景 犬と猫における膵臓の生検に関連した手術直後の合併症について評価することと、生検結果と臨床的関連について明らかにすること
方法 2000年から2013年の間に膵臓の生検を行った症例について2つの紹介病院のカルテを回顧的に調査した。
結果 外科的に膵臓の生検を行った24頭の犬と19頭の猫がカルテにおいて十分な詳細があり、組み入れ基準を満たした。術後の合併症は、10頭において認められ、そのうち5頭は、手術後の膵炎が疑われた。2頭は、原疾患のために術後10日以内に安楽死されたが、術後合併症はなかった。膵臓の病理は19例においてみつかり、7例は良性の膵臓の結節性過形成以外に変化がなく、18例においては異常は認められなかった。
臨床的意義 合併症は、外科的な膵臓の生検後に起こりうるが、外科的な技術が良好であれば危険性は最小限である。膵臓の生検は、症例の管理に有用であるかもしれないが、膵臓の生検で何もでないことを膵臓疾患を除外するのに用いてよいかどうかは明らかではない。犬は、猫より膵臓の生検で有意な病理像がみつからないようにみえ、慢性の膵炎が最も一般的な所見であった。(Dr.Taku訳)
■膵炎が疑われる猫において膵臓超音波所見と比色リパーゼ分析と血清猫膵特異リパーゼの一致性:161症例(2008-2012)
Agreement of serum feline pancreas-specific lipase and colorimetric lipase
assays with pancreatic ultrasonographic findings in cats with suspicion
of pancreatitis: 161 cases (2008-2012).
J Am Vet Med Assoc. May 1, 2014;244(9):1060-5.
Samuel Oppliger; Sonja Hartnack; Claudia E Reusch; Peter H Kook
目的:膵炎の疑いがある猫で、猫膵特異リパーゼ分析と1,2-o-dilauryl-rac-glycero-3-glutaric acid-(6'-methylresorufin) ester (DGGR) substrateを用いた比色リパーゼ分析と膵臓超音波検査結果の一致性を調べる
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:膵炎が疑われる飼猫161頭
方法:猫の膵特異リパーゼ濃度とDGGRリパーゼ活性を膵炎の検査を行った猫の同じ血液サンプルから測定し、超音波検査とリパーゼ測定の間は24時間以内とした。評価した超音波検査の変数は、膵炎の超音波的診断、拡大、縁、エコー発生性、腸間膜のエコー発生性、膵臓周囲の自由水、嚢胞、マス、一般的な胆汁と膵管拡張だった。一致性はコーエンのカッパ係数で評価した。
結果:リパーゼ分析間はかなり一致した(κ=0.703)。膵炎の超音波的診断は、猫膵特異リパーゼ濃度>5.4μg/L(κ=0.264)とDGGRリパーゼ活性>26U/L(κ=0.221)にまずまずの一致性を示した。猫膵特異リパーゼ濃度>5.4μg/LとDGGRリパーゼ活性>26U/Lに最大の一致性は、低エコーと混在エコー(それぞれκ=0.270、κ=0.266)、低エコー(それぞれκ=0.261、0.181)、拡大(それぞれκ=0.218、0.223)を示した膵臓だった。
結論と臨床関連:膵臓超音波検査とリパーゼ分析結果との一致性は、まずまずなものだけだった。リパーゼの結果あるいは膵臓超音波検査が膵炎の診断でより正確な検査であるかどうかは不明なままである。ゆえに両検査結果の解釈には注意が必要である。(Sato訳)
■犬と猫の膵臓内異所性脾臓組織
Intrapancreatic ectopic splenic tissue in dogs and cats.
J Comp Pathol. May 2013;148(4):361-4.
G A Ramirez; J Altimira; B Garcia-Gonzalez; M Vilafranca
膵臓内にある異所性脾臓組織はヒトでまれに見られる所見で、膵臓腫瘍と間違われることも多い。この状態はまれに動物でも見られる。
この報告は犬と猫の膵臓内の副脾の4症例の臨床、病理特性を述べる。これは犬でこの病変の最初の記述である
その病変は硬く、境界明瞭、暗赤色、顕微鏡学的に正常な脾臓組織からなる球状のマスだった。それら病変の器官の可能性、鑑別診断、実際の意義の可能性について論ずる。(Sato訳)
■猫の膵炎の臨床経過の中での予後リスク因子としての血清イオン化カルシウム濃度
Serum ionised calcium as a prognosis risk factor in the clinical course of pancreatitis in cats.
J Feline Med Surg. 2014 Dec 23. pii: 1098612X14564203. [Epub ahead of print]
Dias C, Carreira LM.
目的 本研究の目的は、性別、年齢、品種の膵炎が生じることへの影響を評価するとともに、血清イオン化カルシウム ([Ca2+i]) が低値であることが、この疾患の臨床経過の予後のリスク因子として考えられるかどうかを明らかにすることである。
方法 膵炎の24頭の猫を用いて、疾患の進行度に従って、(i) 致死的ではなく回復したもの (NF)、(ii) 致死的で死亡したもの (F)といった2つのグループに分けた。各猫について診断時(T1)と回復した時または死亡した時(T2)の2点で、ADVIA2400 Chemistry System (Siemens)によって[Ca2+i]を測定し、ELISA法であるfPL-SNAP (IDEXX)によって猫膵特異的リパーゼ (fPL)を測定した。統計解析では、P値??<0.05を有意とした。
結果 T1の時点で、58.3%が低カルシウム血症であり、33.3%が正常なカルシウム値、8.3%が高カルシウム値であった。[Ca2+i]の平均値は、NFよりもF群でより高値を示した。T2の時点で、75%の猫は正常カルシウム値を示し、25%は低カルシウム血症であった。T2の時点での、Fの[Ca2+i]の平均値は、0.88
± 0.23 mmol/lであったのに対し、NFの[Ca2+i]の平均値は、1.10 ± 0.11 mmol/lであった。性別や年齢によって本疾患になりやすいということはなかったが、品種については、短毛種がより起こりやすかった。
結論と臨床的意義 本結果は、低カルシウム血症は膵炎の猫において一般的であり、[Ca2+i]が本疾患の臨床経過の予後リスク因子として使用できる可能性を示唆しており、1 mmol/l以下であるときには予後が悪いようである。(Dr.Taku訳)
■膵炎を疑う犬の腹水中の膵特異的リパーゼ濃度とアミラーゼおよびリパーゼ活性
Pancreas-specific lipase concentrations and amylase and lipase activities in the peritoneal fluid of dogs with suspected pancreatitis.
Vet J. 2014 Jul 21. pii: S1090-0233(14)00306-2. doi: 10.1016/j.tvjl.2014.07.014.
Chartier MA, Hill SL, Sunico S, Suchodolski JS, Robertson JE, Steiner JM.
犬において急性膵炎の診断をするのは難しい。
この研究の目的は、臨床症状、超音波検査所見、血清cPLI濃度に基づいて急性膵炎と診断した犬において、腹水中の膵特異的リパーゼ免疫活性(cPLI)濃度とアミラーゼおよびリパーゼ活性を明らかにすることである。
前向き研究で、14頭の膵炎の犬と19頭の膵炎以外の疾患の犬の腹水中のcPLI濃度とアミラーゼおよびリパーゼ活性を測定した。
腹水のcPLI濃度(カットオフ値 500μg/dl)の感度と特異性は、それぞれ100%(95%信頼区間, CI, 80.7-100.0%)と94.7%(95%信頼区間76.7-99.7%)であった。腹水のアミラーゼ活性(カットオフ値 1050U/L)とリパーゼ活性(カットオフ値 500U/L)の感度と特異性は、アミラーゼについて71.4%(95%信頼区間, 44.5-90.2%)と84.2%(95%信頼区間 62.8-95.8%)であり、リパーゼについて92.9%(95%信頼区間, 69.5-99.6%)と94.7%(95%信頼区間 76.7-99.7%)であった。
結果として、腹水のcPLI濃度は、急性膵炎を疑う犬において補助的な診断方法として高い感度をもっていた。腹水のリパーゼ活性は、cPLI濃度ほど感度がよくなかったが、犬の急性膵炎の診断を支持するようである。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の急性膵炎の栄養管理
Nutritional management of acute pancreatitis in dogs and cats.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2014 May;24(3):240-50. doi: 10.1111/vec.12180. Epub 2014 Apr 1.
Jensen KB, Chan DL.
目的:ヒト、犬、猫の急性膵炎(AP)の管理における現行および新しく出来た栄養アプローチについて概説し、この分野における追加研究の枠組みを提供する。
データソース:獣医の回顧的研究とレビュー、ヒトの前向き臨床試験とレビュー、AP中の栄養管理に注目した実験動物研究
サマリー:栄養管理はAPの患者の重要な治療プランの1つである。人医ではAPの患者に栄養を供給するための一般的アプローチはここ数年で変わってきており、早期経腸栄養の重視と共に中心静脈栄養以上に経腸が好まれる。限られたデータしかないが、獣医の文献でAPに対するENの有益な役割を支持し、この患者群において経腸栄養補給は許容性が乏しいという以前の仮説に対抗するエビデンスが増えている。適切なENに許容しない栄養不良の患者には、一時的処置として中心静脈栄養が単独あるいはENと組み合わせるのが適切かもしれない;しかし、多くのケースで経腸栄養は最初に試されるべきである。免疫賦活栄養は膵臓の炎症の調節と腸のバリア機能の改善においてその正の役割について調査されている。
結論:APの動物の栄養管理はやりがいのあるものである。ヒトの臨床エビデンス、実験動物研究、犬と猫の予備研究を基に、犬と猫のAP中に非経口栄養よりもENを選択することは有益でよく許容すると思われる。AP中の免疫賦活栄養の使用を含む犬と猫の栄養療法の最適化には更なる調査を必要とする。(Sato訳)
■急性の腹部疾患の臨床症状を呈している犬において膵炎の診断のSNAPとSpec犬膵特異的リパーゼ検査の正確性について
Diagnostic accuracy of the SNAP and Spec canine pancreatic lipase tests for pancreatitis in dogs presenting with clinical signs of acute abdominal disease.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2014 Mar;24(2):135-43. doi: 10.1111/vec.12158.
Haworth MD, Hosgood G, Swindells KL, Mansfield CS.
目的 (i) SNAP犬膵リパーゼ(cPL)および犬膵特異的リパーゼ (Spec cPL)の診断の正確性を評価する (ii) 急性の腹部疾患を呈する犬においてSNAP cPLおよびSpec cPLの異常値の一致性を評価すること
デザイン 前向き観察的コホート研究
背景 大学の教育病院の緊急センター
動物 急性の腹部疾患をもつ38頭の飼い犬で、2009年3月から2010年4月の間に最終診断ができたもの。これらの犬を、回顧的に急性膵炎
(AP)(グループ1)およびAPのない犬 (グループ2)に分けた。
分析 来院から24時間以内に得た血清のサンプルをSNAP cPL検査とSpec cPL法で測定した。
測定と結果 SNAP cPLの感度と特異性は、それぞれ82%(グループ1の11頭中9頭)および59%(グループ2の27頭中16頭)であった。Spec
cPLの感度と特異性は、それぞれ70%(グループ1の10頭中7頭)および77%(グループ2の26頭中20頭)であった。SNAPとSpec
cPLの膵炎の診断に対する正確性は、それぞれ66%と75%であった。SNAPが陽性(cPL
? 200 μg/L)であることと臨床的に膵炎と診断できることの一致度は、κ = 0.33であった。Specの上昇(cPL
? 400 μg/L)と臨床的に膵炎と診断できることの一致度は、κ = 0.43であった。参加した犬全体におけるSNAPとSpec
cPL (cPL ? 200 μg/L)の一致度は、κ = 0.78であった。
結論 SNAP cPLとSpec cPLは、急性の腹腔の疾患で来院した犬の40%までで膵炎の診断の偽陽性を与える可能性がある。SNAP cPLとSpec cPLは、全体としてよい一致を示したが、SNAP cPLが陽性でSpec cPLが正常を示した犬が38頭中4頭存在した。(Dr.Taku訳)
■膵炎の33頭の猫における一連の血清猫膵リパーゼ免疫活性濃度と予後変数
Serial serum feline pancreatic lipase immunoreactivity concentrations and prognostic variables in 33 cats with pancreatitis.
J Am Vet Med Assoc. 2013 Dec 15;243(12):1713-8. doi: 10.2460/javma.243.12.1713.
Stockhaus C, Teske E, Schellenberger K, Huisinga E, Konietschke U, Mangelsdorf S, Steiner JM.
目的 膵炎のために入院した猫において予後と有意に関連する因子を明らかにすること
デザイン 前向き症例シリーズ
動物 膵炎の治療のために入院した33頭の猫(臨床症状と血清膵リパーゼ免疫活性(fPLI)濃度が5.4μg/l以上であることによって診断)
方法 入院期間は2-16日間で、44日間または斃死するか安楽死されるまで観察した。身体検査と血液検査およびfPLIを含む血液生化学検査を来院した際に測定し、それらが転帰と関連しているか(すなわち少なくとも44日生きているか、斃死または安楽死したか)について解析した。
結果 1日目に、33頭の猫におけるfPLI濃度の平均±SDは、22.0±16.4μg/ldであった。猫の平均年齢は、12.7±3.8歳齢(範囲 4-19歳齢)であった。33頭中11頭(33%)が44日以内に斃死または安楽死された。単変量解析では、呼吸困難、低体温、低カリウム血症、高カリウム血症、血清fPLI濃度が、有害転帰と有意に関連していた。しかし、多変量解析では、来院時の、重度の呼吸困難、高カリウム血症(K濃度が5.5mmol/lより高い)、血清fPLIが、有害転帰と有意に関連していることがわかった。
結論と臨床的意義 本研究結果は、病院に来た時点における、呼吸困難、高カリウム血症、血清fPLI濃度は、膵炎のために入院した猫の重要な予後因子であることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■急性膵炎における予防的抗生物質の効果
Effects of prophylactic antibiotics in acute pancreatitis.
HPB (Oxford). June 2012;14(6):396-402.
Povilas Ignatavicius; Astra Vitkauskiene; Juozas Pundzius; Zilvinas Dambrauskas; Giedrius Barauskas
目的:重度急性膵炎(SAP)における予防的抗生物質の使用は議論されている。この研究の目的は、2つの前向き非無作為患者集団において、要求に応じ予防的あるいは治療として抗生物質投与の効果を比較することだった。
方法:研究集団はSAPを治療した210人の患者だった。1群(n=103)において、患者は予防的抗生物質(シプロフロキサシン、メトロニダゾール)を投与されていた。2群(n=107)において、患者は要求に応じて治療されていた。感染性膵臓壊死の存在が示された時、超音波ガイドによるドレナージおよび/あるいは感染壊死部の外科的デブリードメントを実施した。主なエンドポイントは感染性の合併症率、外科的介入の必要性とそのタイミング、院内感染の発生率と死亡率だった。
結果:2群は1群と比べ、超音波ガイド下の細針吸引生検(18人(16.8%)vs13人(12.6%);P=0.714)、超音波ガイド下のドレナージ(15人(14.0%)vs6人(5.8%);P=0.065)、開腹壊死除去(10人(9.3%)vs5人(4.9%);P=0.206)をより頻繁に、早期に実施された(それぞれ16.6±7.8日vs17.2±6.7日(P=0.723);19.5±9.4日vs24.5±14.2日(P=0.498)、22.6±13.5日vs26.7±18.1日(P=0.826))。群間の死亡率および外科病棟あるいはICUへの滞在期間に有意差はなかった。
結論:この研究結果は、予防的抗生物質の使用は死亡率に影響しないが、介入および外科的管理の必要性減少およびより低く再手術の回数を抑えるかもしれないと示唆するものである。(Sato訳)
■血清膵リパーゼ免疫活性が上昇した猫における膵臓の超音波検査所見
Ultrasonographic Findings of the Pancreas in Cats with Elevated Serum Pancreatic Lipase Immunoreactivity.
J Vet Intern Med. 2013 Jun 3. doi: 10.1111/jvim.12117. [Epub ahead of print]
Williams JM, Panciera DL, Larson MM, Werre SR.
背景 膵炎は猫においてよくある疾患であるが診断が難しい。
仮説/目的 膵炎の診断の標準である血清猫膵リパーゼ免疫活性(fPLI)を用いて膵臓の超音波検査所見の感度と特異性を明らかにすること
動物 腹部超音波検査所見があり、超音波検査の3日以内にfPLI濃度を測定しており、膵炎と一致した臨床症状のある35頭の猫
方法 後向き研究:膵臓の厚み、膵臓の辺縁、膵臓のエコー源性、膵臓周囲の脂肪のエコー源性を評価した。感度と特異性は、診断の標準である膵炎を示唆するfPLIの上昇から計算した。
結果 fPLIが上昇しており膵炎と診断した猫は35頭中、19頭であった。超音波で単独の最も感度がよかった特徴は、68%(95%信頼区間
44-87%)において認められた高エコーを示す膵臓周囲の脂肪であり、膵炎の猫が超音波検査でこの異常を持っているという中等度の可能性を示唆している。膵臓の厚み、膵臓の辺縁の異常、高エコーを示す膵臓周囲の脂肪のそれぞれは90%以上の特異性があった。膵炎を示唆する血清fPLIの上昇をもつ猫において、超音波検査の感度と特異性は、それぞれ84%(95%信頼区間
60-97%)と75%(95%信頼区間 48-93%)であった。
結果と臨床的意義 適切な臨床症状があり血清fPLIが上昇している猫において、膵左葉の厚みがあること、重度に不定な膵臓の辺縁、膵臓周囲の脂肪が高エコーであること、などが存在することは膵炎が存在することを強く示唆している。(Dr.Taku訳)
■84頭の犬の臨床的な急性膵炎におけるSpec cPLとSNAP cPLの診断有用性の多施設における評価
A Multi-Institutional Study Evaluating the Diagnostic Utility of the Spec cPL(?) and SNAPR cPL(?) in Clinical Acute Pancreatitis in 84 Dogs.
J Vet Intern Med. 2012 Jun 7. doi: 10.1111/j.1939-1676.2012.00951.x. [Epub ahead of print]
McCord K, Morley PS, Armstrong J, Simpson K, Rishniw M, Forman MA, Biller D, Parnell N, Arnell K, Hill S, Avgeris S, Gittelman H, Moore M, Hitt M, Oswald G, Marks S, Burney D, Twedt D.
背景:膵特異的リパーゼは、犬の急性膵炎の診断の補助となると報告されているが、厳密に臨床的に評価されてはいない。
仮説と目的:臨床的に急性膵炎を疑う犬においてこの疾患の多様性を明らかにし、臨床的に膵炎と診断する際に、2つの膵特異的リパーゼの免疫アッセイである、Spec
cPL(SPEC)とSNAP cPL(SNAP)の正確性を評価することである。SPECとSNAPは、血清アミラーゼや総リパーゼよりもより正確に診断できる方法であると仮説した。
動物:急性膵炎の内27頭の犬と急性膵炎に関連した臨床症状を示していた57頭の犬の全84頭の犬。
方法:多施設研究。初期の病歴と身体検査に基づいて前向きに組み入れ、SPECとSNAPの結果を見ていない専門家が一致して臨床的に急性膵炎をもっている見込みに従って後向きに群分けした。ベイズ法による潜在クラス分析によってSPECとSNAPの診断の正確性について検討した。
結果:感度と特異性は、SNAPについてそれぞれ91.5-94.1% および71.1-77.5%であり、カットオフ値を200μg/lにしたときSPECについて86.5-93.6%および66.3-77.0%であり、カットオフ値を400μg/lにしたときSPECについて71.7-77.8%および80.5-88.0%であった。またアミラーゼについては、52.4-56.0%および76.7-80.6%であり、リパーゼについては、43.4-53.6%および89.3-92.5%であった。
結論と臨床的意義:SNAPとSPECは、臨床的な急性膵炎を診断するのに、血清アミラーゼやリパーゼの測定よりもより感度が高かった。SPECまたはSNAPが陽性であることは、急性膵炎の可能性がある集団においては良い陽性適中率であり、有病率が低い場合良い陰性適中率を示している。(Dr.Taku訳)
■犬膵特異的リパーゼと組織学的な膵外分泌の炎症の相関:特異性の評価
Association between canine pancreatic-specific lipase and histologic exocrine pancreatic inflammation in dogs : assessing specificity.
J Vet Diagn Invest. 2012 Feb 1.
Mansfield CS, Anderson GA, O'Hara AJ.
様々な疾患の犬において、犬膵特異的リパーゼ(cPL)濃度の特異性を明らかにすることが目的である。
剖検が行なわれる犬から、斃死前6時間以内または斃死直後にcPL濃度の測定のために血清を採取した。膵臓の組織は、斃死後に採取し、左葉、右葉、体部から切片を作成し病理組織学的に検査した。各犬において膵臓全体の炎症スコアと線維化スコアを決定するために、各切片において炎症と線維化を評価した。これらのスコアとcPL濃度の関連、および特異性について検討した。
全32頭を検査に用い、うち20頭は膵臓の炎症がないかわずかであった。cPLのカットオフ値を200μg/lにすると特異性は80%であり(95%信頼区間は56-94%)、カットオフ値を400μg/lにすると特異性は90%であった(95%信頼区間は68-99%)。cPL濃度と膵臓の炎症スコアの間には有意ではあったが相関は低く、cPL濃度と線維化スコアとの間には相関はなかった。犬膵特異的リパーゼ濃度は、全体として膵炎のない犬において良好な特異性があった。
この検査は、軽度に膵炎をもった犬において有用性は低く、偽陽性も偽陰性も生じる。これらの結果は、膵炎の臨床症状を示している犬は、臨床症状の原因を評価するために血清cPL検査に加えて腹部の画像が必要であることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■猫の重度急性膵炎の管理における外科的介入:8 症例 (2003-2007)
Surgical intervention in the management of severe acute pancreatitis in
cats: 8 cases (2003-2007).
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2010 Aug;20(4):426-35.
Son TT, Thompson L, Serrano S, Seshadri R.
目的:重度急性膵炎の治療において、外科的介入を行った猫の臨床特性と結果を評価すること。
デザイン:術後2.2年間(範囲11日-5.4年)の中央経過観察期間がある2003年-2007年までの回顧的観察的研究
設定:個人動物病院
動物:8頭の猫
介入:なし
方法と主な結果:定量データは、術前の身体所見と臨床病理結果値であった。定性的なパラメーターは、術前の超音波検査による解釈、周術期と術中のフィーディングチューブ設置、腹腔内液体の存在、閉塞性サクションの腹腔内ドレイン設置、術後合併症、細菌学的培養そして組織病理検査であった。
一般的に見られた臨床兆候は、嗜眠、食欲不振、そして嘔吐であった。白血球増多と低ナトリウム血症は8頭の猫のうち5頭で見られた。低カリウム血症、総ビリルビンの増加、そして高血糖は8頭の猫のうち6頭で見られた。上昇したALTとASTはすべての猫で見られた。
肝外胆管閉塞の外科手術は6頭の猫で実施し、3頭の猫は膵膿瘍そして1頭の猫は膵壊死だった。8頭中6頭の猫が生存した。肝外胆管閉塞の外科手術を行った6頭中5頭と膵壊死組織切除術を行った1頭の猫は生存した。膵炎による二次的な肝外胆管閉塞を起こした猫の5頭すべては生存した。死亡した猫は、膵膿瘍の猫と、重度膵炎と胃十二指腸結合部のマスによる二次的な肝外胆管閉塞の猫であった。術後合併症は、糖尿病の進行、敗血性腹膜炎、局所性胃瘻造設術チューブ孔炎症、局所性胃瘻造設術チューブ孔感染、そして軽度皮膚縫合反応であった。
結論:重度急性膵炎と随伴性の肝外胆管閉塞、膵壊死あるいは膵膿瘍の猫は、外科的介入で利益があるかもしれない。重度急性膵炎による二次的な肝外胆管閉塞の猫の予後は良いかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■消化管および膵臓疾患の診断に対する検査
Laboratory tests for diagnosis of gastrointestinal and pancreatic diseases.
Top Companion Anim Med. May 2011;26(2):86-97.
Olivier Dossin
犬と猫の消化管(GI)疾患の診断で利用可能な検査室検査のパネルは幅広く、近年いくつかの新しい検査が開発されている。
この文献はGI疾患の診断で一般臨床科が利用可能な検査室検査の進歩にフォーカスを当てる。
胃および腸感染疾患の診断に対する検査室検査は、糞便寄生虫スクリーニング検査、パルボウイルス腸炎に対するELISA、腸上皮細胞に付着する特異細菌の同定に対する蛍光原位置ハイブリッド形成様のいくつかの特異細菌検査などである。
葉酸およびコバラミンの血清濃度は腸管吸収のマーカーであるが、膵外分泌機能不全および腸管細菌過剰増殖でも変化する。低コバラミン血症はGIおよび膵疾患で一般的に見られる。
血清トリプシン様免疫反応性の低下は、犬と猫の膵外分泌機能不全の診断で感受性および特異性の高い検査である。現在、血清膵リパーゼは膵臓細胞ダメージおよび急性膵炎を確認する最も感受性と特異性のある検査である。しかし犬の慢性膵炎で、血清犬膵臓特異リパーゼの感受性は低い。血清トリプシン様免疫反応性の増加も膵臓ダメージに対して特異性があるが、感受性は低い。更なる調査は、犬と猫の膵臓疾患の診断でそれらの新しい検査の役割をもっと良く特定するのに役立つだろう。(Sato訳)
■膵炎に対する組織病理学的根拠があるそしてない70頭の犬において、犬の膵特異的リパーゼ(cPL)と他の膵炎マーカーの感受性と特異性
Sensitivity and Specificity of Canine Pancreas-Specific Lipase (cPL) and Other Markers for Pancreatitis in 70 Dogs with and without Histopathologic Evidence of Pancreatitis.
J Vet Intern Med. 2011 Nov;25(6):1241-7.
Trivedi S, Marks SL, Kass PH, Luff JA, Keller SM, Johnson EG, Murphy B.
背景:膵炎は生前診断が難しい犬の一般的な病気である。
目的:組織病理学的根拠がある犬あるいはない犬における膵炎に対する血清マーカーの感度と特異性の比較
動物:様々な原因で剖検した70頭の犬で、安楽死後4時間以内に膵臓を摘出し、血清マーカーを死後24時間以内に評価した。
方法:前向き研究:アミラーゼとリパーゼそして犬トリプシン様免疫活性(TLI)と犬膵特異的リパーゼ(cPL)について血清を分析した。膵臓の連続横断切片は膵臓全体の2センチ毎で作られ、半定量的組織病理学的等級スキームを使って調査した。
結果:軽度(n=56)あるいは中等度-重度膵炎(n=7)の犬膵特異的リパーゼ(カットオフ値
400 μg/L)感度は21と71%、そして43と71%(カットオフ値 200 μg/L)であった。軽度あるいは中等度-重度の膵炎の犬における犬トリプシン様免疫活性(TLI)、血清アミラーゼそしてリパーゼは、30
と29%; 7 と 14%; そして54 と71%であった。7頭の正常な膵臓に基づいた犬膵特異的リパーゼの特異性は100と86%(それぞれ、カットオフ値
400 と200 μg/L)であったが、犬トリプシン様免疫活性(TLI)、血清アミラーゼそしてリパーゼ活性は100、100、43%であった。
結論と臨床重要性:犬膵特異的リパーゼは犬の膵炎の組織病理病変の診断に対する他の血清マーカーと比べ、総合的な特性(感度と特異性)においてベストであることを実証した。(Dr.Kawano訳)
■猫の重度の急性膵炎の管理としての外科的介入:8症例(2003-2007)
Surgical intervention in the management of severe acute pancreatitis in cats: 8 cases (2003-2007).
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2010 Aug;20(4):426-35.
Son TT, Thompson L, Serrano S, Seshadri R.
目的:重度急性膵炎の治療の一環として外科的介入をした猫の臨床兆候と予後を評価する。
デザイン:2003年から2007年において、術後2.2年間(範囲11日-5.4年)の中央経過観察期間からの回顧的観察的研究
場所:個人レフェラル獣医センター
動物:8頭の猫
治療介入:なし
測定と主な結果:定量的データにはOPE前身体検査値と臨床病理値が含まれた。定性的パラメータは、OPE前超音波解釈、周術期そして術中のフィーディングチューブ設置、腹水の存在、術中閉塞型サクションによる腹腔内ドレーン設置、術後合併症、細菌培養そして組織病理が含まれた。一般的な臨床症状は、嗜眠、食欲不振そして嘔吐であった。白血球増加と低ナトリウム血症が8頭中5頭で観察された。低カリウム血症、総ビリルビン値上昇そして高血糖が8頭中6頭で観察された。GPTとGOTの上昇が全ての猫で観察された。肝外胆管閉塞の手術を6頭の猫で実施し、膵膿瘍が3頭、膵壊死が1頭であった。8頭中6頭が生存した。肝外胆管閉塞の手術を行った6頭中5頭と膵壊死切除術をした1頭が生存した。膵炎から二次的に肝外胆管閉塞した猫の5頭全てが生存した。生存できなかった2頭は、膵膿瘍の猫と重度膵炎と胃十二指腸境界部の腫瘍による二次的な肝外胆管閉塞の猫であった。術後合併症には、糖尿病への進行、敗血症性腹膜炎、局所性胃瘻チューブの孔の炎症、局所性胃瘻チューブの孔の感染そして軽度皮膚縫合反応であった。
結論:重度急性膵炎そして随伴する肝外胆管閉塞、膵壊死、あるいは膵膿瘍の猫は外科的介入の利点があるかもしれない。重度急性膵炎の二次的な肝外胆管閉塞の予後はよいかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■膵炎の病歴がある、または病歴がないミニチュアシュナウザーの血清トリグリセリド濃度
Serum Triglyceride Concentrations in Miniature Schnauzers with and without a History of Probable Pancreatitis.
J Vet Intern Med. January 2011;25(1):20-5.
P G Xenoulis; M D Levinski; J S Suchodolski; J M Steiner
背景:犬の高トリグリセリド血症と膵炎の関連は不明なままである。ミニチュアシュナウザーにおける膵炎の1つの原因として高トリグリセリド血症の潜在的役割が疑われている。
仮説/目的:膵炎の最近の病歴を持つ、あるいは持たないミニチュアシュナウザーの血清トリグリセリド濃度を比較する
動物:膵炎の病歴を持つ17頭のミニチュアシュナウザー(1群)および年齢が合致した膵炎の病歴がない34頭のミニチュアシュナウザー(2群)を前向きに登録した。
方法:前向き症例-コントロール研究。膵炎のミニチュアシュナウザー17頭各々から2つのサンプルを採取した:1つは膵炎中、1つは膵炎の臨床および生化学的解消後。血清トリグリセリドおよびコレステロール濃度を1群(膵炎の解消後)と2群で比較した。
結果:1群のミニチュアシュナウザー(71%)は2群のミニチュアシュナウザー(33%;オッズ比=5.02;95%信頼区間=1.4-17.8;P=.0163)に比べ、膵炎の解消後、有意に高トリグリセリド血症(>108mg/dl)になっているものが多かった。膵炎解消後の1群の犬の血清トリグリセリド濃度(中央値:605.0mg/dl)は、2群(中央値:73.5mg/dl;P=.002)の犬に比べ有意に高かった。
結論と臨床意義:膵炎の病歴のあるミニチュアシュナウザーはコントロールよりも5倍高トリグリセリド血症になりやすかった。この犬種において高トリグリセリド血症が膵炎の発症に関係する犬がいると思われる。ミニチュアシュナウザーと同様に他の犬種において、膵炎の発症に高トリグリセリド血症の役割をさらに明確にする追加研究が必要である。(Sato訳)
■重度急性膵炎の外科的管理における特徴と結果:犬37例(2001-2007)
Characteristics and outcomes in surgical management of severe acute pancreatitis:
37 dogs (2001-2007)
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):165-173. 70 Refs
Lisa J. Thompson, DVM, Ravi Seshadri, DVM, DACVECC, DAVBP, Marc R. Raffe, DVM, MS, DACVA, DACVECC
目的:急性膵炎の治療として外科的処置を行った犬に関する臨床特性と結果を述べる
構成:2001-2007年の遡及アウトカム研究
動物:37頭の犬
インターベンション:なし
測定値および主要結果:重度急性膵炎の治療過程で外科的処置を行った犬から以下のデータを収集した:術前臨床病理および生理学的データ、超音波所見、外科的手順詳細、病理組織所見、輸血必要性。
生存率は、肝外胆管閉塞の犬で80.8%、壊死組織切除を行った犬で64.3%、膵臓膿瘍の犬で40.6%だった。総生存率は63.6%だった。外科的合併症は12頭に見られた術中および術後出血、3頭の犬の真性糖尿病術後発症、1頭に見られた膵外分泌不全、2頭の細菌性腹膜炎だった。
結論:外科的処置および術後の積極的なケアは、重度急性膵炎の選択された犬で遂行されるかもしれない。肝外胆管閉塞による二次的な急性膵炎の犬では、外科的介入は予後良好に結びつくが、膵臓膿瘍形成の犬は、より予後に慎重を期すかもしれない。(Sato訳)
■ミニチュアシュナウザーの血清中性脂肪濃度と犬特異膵リパーゼ免疫活性(cPLI)濃度の関連性
Association between serum triglyceride and canine pancreatic lipase immunoreactivity concentrations in miniature schnauzers.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Jul-Aug;46(4):229-34.
Xenoulis PG, Suchodolski JS, Ruaux CG, Steiner JM.
この研究の目的は、ミニチュアシュナウザーの血清中性脂肪濃度と犬特異膵リパーゼ免疫活性(cPLI)濃度の間に考えられる関連性を検討することだった。195頭のミニチュアシュナウザーが登録され、血清中性脂肪濃度が正常(グループ1)あるいは血清中性脂肪濃度が増加(グループ2)しているかどうかに基づき、2つのグループに振り分けた。血清犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度を測定し、グループ間で比較した。血清中性脂肪濃度と犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度に有意な陽性関連(スピアマン r=0.321; P<0.0001)が見られた。中性脂肪濃度が高いミニチュアシュナウザーは、中性脂肪濃度が正常なミニチュアシュナウザー(中央犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度39.3 microg/L; P=0.0001)に比べ有意に中央血清犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度(99.5 microg/L)が高かった。カットオフ値862 mg/dLがROC解析に基づいた血清中性脂肪濃度であった。中性脂肪濃度が非常に高い(> or =862 mg/dL)ミニチュアシュナウザーは、血清中性脂肪濃度が正常なミニチュアシュナウザーより、膵炎に一致した血清犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度(> or =200 microg/L)に4.5倍なりやすかった。今回の研究で、ミニチュアシュナウザーにおいて中性脂肪が高いこと(特に重度[> or =862 mg/dL])と犬特異膵リパーゼ免疫活性濃度が高いことの関連が支持される。(Dr.Kawano訳)
■犬におけるクロミプラミン投与に関連した膵炎
Pancreatitis associated with clomipramine administration in a dog.
J Small Anim Pract. 2009 Feb;50(2):95-8.
Kook PH, Kranjc A, Dennler M, Glaus TM.
3歳、未去勢雄のヨークシャーテリアが腹痛と嘔吐の甚急性徴候を呈した。臨床病理学的異常は重度血清リパーゼ活性の上昇、測定不能な高TLI値そして軽度低カルシウム血症であった。犬膵リパーゼ活性(cPLI)を測定する予定だったがサンプルを紛失し測定できなかった。超音波検査で膵周囲に少量の液体貯留を伴う低エコーの膵実質と高エコーの腸間膜が明らかになった。急性膵炎(AP)と診断され、適切な治療で48時間以内に回復した。
分離不安の症状を緩和するための選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)であるクロミプラミンを7週間投与されていた。それほど厳しくなかったとはいえ、以前にもクロミプラミンの投与と関連したエピソードが2件、8か月前に生じていた。それはクロミプラミンの中止と支持療法に反応した。選択的セロトニン再取り込み阻害剤は人間では急性膵炎と関連があり、他に何も誘因を識別することが出来ず、影響を受けやすい犬種あるいは適合する臨床症状を呈した他の犬において膵炎の原因を調査する場合、クロミプラミンは潜在的な原因と考慮すべきであると結論付ける。(Dr.Kawano訳)
■血清サンプルにおける犬膵リパーゼ免疫活性濃度の安定性と血清犬膵リパーゼ免疫活性濃度に対する犬へのプレドニゾン長期投与の影響
Stability of canine pancreatic lipase immunoreactivity concentration in serum samples and effects of long-term administration of prednisone to dogs on serum canine pancreatic lipase immunoreactivity concentrations.
Am J Vet Res. August 2009;70(8):1001-5.
Jorg M Steiner, Sheila R Teague, George E Lees, Michael D Willard, David A Williams, Craig G Ruaux
目的:血清サンプルにおける犬膵リパーゼ免疫活性(cPLI)の安定性を評価することと、血清cPLI濃度に対するプレドニゾロン長期投与の影響を判定する
サンプル集団:安定性評価に対する犬の血清サンプル8検体と、プレドニゾン投与の影響を判定するためのX連鎖遺伝性腎炎を持つ6頭の若いヘテロ接合(キャリアー)の成犬から得た血清サンプル
方法:血清cPLI濃度の安定性を評価するため、各血清サンプルの一部を-80度から24度の間の4つの温度で各々貯蔵し、0、3、7、14、21日目にサンプルを分析した。長期プレドニゾン投与の影響を判定するため、処置前の血清サンプルを入手し(0日と14日目)、15日目から42日目までプレドニゾン(2.2mg/kg、24時間毎経口投与)を投与し、28日目と42日目に血清サンプルを入手した。また追加で56日および70日目にサンプルを入手した。
結果:貯蔵温度にかかわらず0日目から21日目までの血清cPLI平均濃度に有意な変化を認めなかった。プレドニゾン投与後の犬の血清cPLI濃度は、全ての測定ポイントにおいて全頭正常範囲内で、反復測定分散分析の結果は、血清cPLI濃度は長期にわたり有意に変化することはないと示した。
結論と臨床関連:室温、冷蔵、-20度、-80度での冷凍で貯蔵した犬の血清サンプルで測定したcPLI濃度は、少なくとも21日間安定していた。また犬への長期プレドニゾン投与は、血清cPLI濃度に有意な影響を及ぼさなかった。(Sato訳)
■急性膵炎が疑われる猫における経鼻胃管給餌:55症例(2001-2006)
Nasogastric tube feeding in cats with suspected acute pancreatitis: 55 cases (2001?2006)
J Vet Emerg Crit Care. Aug 2009;19(4):337-346. 48 Refs
Jennifer A. Klaus DVM, Elke Rudloff DVM, DACVECC, Rebecca Kirby DVM, DACVIM, DACVECC
目的:急性膵炎の疑いのある猫において、異なる経鼻胃管(NGT)給餌方法に関する合併症と転帰を評価する
構成:記述的遡及症例シリーズ
場所:小動物緊急および委託病院
動物:72時間以内のNGT流動経腸給餌を投与し、入院期間が12時間以上の急性膵炎が疑われる猫を患者データベース(2001-2006年)から検索した。
測定値および主要結果:仮診断に徴候、病歴、臨床症状、検査データ、腹部超音波検査を使用した。NGTを利用した流動食のボーラス給餌あるいは持続注入(CRI)、NGT給餌前に静脈内アミノ酸、糖質溶液投与をなされたかどうか(それぞれAASおよび非AAS群)をもとに症例をグループ化した。55頭の猫を調査した。
全ての猫は来院から平均33.5±15.0時間でNGT給餌を開始し、目標のカロリー摂取(1.2x{(30xBW[kg])+70})には58.0±28.4時間で達成された。AAS群の34/55頭は、入院からNGT給餌開始まで非AAS群21/55頭よりも有意に長かった(P=0.009)。8頭のボーラス給餌を行った猫は、47頭のCRI給餌を行った猫と比べ目標カロリー摂取到達に時間がかかった(P=0.002)。全ての猫に対するNGT給餌の合併症は、機械的問題(13%)、下痢(25%)、NGT設置後の嘔吐(20%)、NGT給餌後の嘔吐(13%)などだった。全ての猫の退院までの平均時間は78.6±29.5時間で、全体の体重増加は0.08±0.52kgだった。50頭の猫は退院後28日生存した。
結論:急性膵炎が疑われるこの猫のグループにおけるNGT給餌において、猫はよく許容し、下痢、嘔吐、機械的合併症の発生率は低かった。(Sato訳)
■犬膵外分泌不全の概要
A quick review of canine exocrine pancreatic insufficiency
Vet Med. Sep 2009;104(9):427-434. 36 Refs
Jessica A. Morgan DVM, Lisa E. Moore DVM, DACVIM
膵外分泌不全(EPI)は小腸性下痢を起こしている全ての犬の鑑別リストに含まれる。進化したより感受性、特異性のある検査で、臨床医が比較的単純に診断できるようになっている。EPIの犬は規則正しく評価すべきである。新しい治療が開始あるいは代替した後、体重、体調の改善を見るため、2-4週毎に患者を評価する。評価の頻度は臨床症状の程度による。飼い主には糞便の硬さ、量を注意深くモニターし、どんな変化でも報告するように指導する。最初の安定が得られた後、治療に良好な反応を示した犬は、健康な成犬に推奨されるような年1回あるいは半年毎の検査を行う。cTLI濃度の継続モニタリングは、酵素補充や他の治療が膵臓外分泌の分泌能力改善を期待できない理由で指示されない。
治療は一般的に報われるが、EPIの犬は生涯治療が必要なため、治療は高価で、ある程度の症例は管理が困難なものもいる。約20%の犬はEPIが直接の結果として、通常臨床症状が改善しないあるいは治療の費用が理由で安楽死される。一般的な改善は最初の数週間で見られ、その後安定する。治療に明確に反応する犬は、短期のぶり返しを経験するかもしれないが、幸いなことに永続的な悪化はまれである。発症する多くの同時および二次的疾患を考えると、EPIが診断された後でさえそれらの潜在的疾患を明らかにしていくことも重要である。(Sato訳)
■急性膵炎の程度は腸間膜リンパの影響を受ける腸管虚血-再灌流により悪化する
Acute pancreatitis severity is exacerbated by intestinal ischemia-reperfusion conditioned mesenteric lymph
Surgery. March 2008;143(3):404-13.
Richard S Flint, Anthony R J Phillips, Sharleen E Power, P Rod Dunbar, Caroline Brown, Brett Delahunt, Garth J S Cooper, John A Windsor
目的:急性膵炎(AP)に対する腸管虚血-再灌流(IIR)の影響および腸間膜リンパの役割を調査する
背景データ概要:腸管虚血は急性膵炎の早期特徴で、疾患の程度に関係する。これが急性膵炎の程度あるいはその成り行きに寄与するかどうかは不明である。
方法:生体内顕微鏡検査および軽度急性膵炎のげっ歯類モデル(管内2.5%タウロコール酸ナトリウム)を使用した2つの実験を報告する。
1つ目は、ラットで上腸間膜動脈の一時的な閉塞(30分または3x10分)、その後2時間の再灌流により、急性膵炎中のIIRの状況を持たせた。2つ目の研究で急性膵炎のラットにIIRの状況となっていたドナーラットから採集した腸間膜リンパの静脈注入を行った。両実験で、膵臓赤血球速度(EV)、機能的毛細管密度(FCD)、白血球粘着性(LA)、組織検査および浮腫指数を測定した。
結果:急性膵炎にIIRが加わると、急性膵炎単独よりも膵臓微小循環の低下が大きかった(基準EV42%v.s.急性膵炎単独73%、FCD43%v.s.72%、LA7倍増加v.s.4倍増加)。これは、膵臓浮腫指数および組織学的傷害がそれぞれ1.4-1.8倍増加したことを証拠とする急性膵炎の重症度の増加により起こった。それから微小血管障害および膵臓重症度の増加の非常によく似た増悪は、ドナーからのIIR状況下の腸間膜リンパ静脈内注入により示された。
結論:IIR傷害後腸間膜リンパに放出される未確認の因子は、急性膵炎を悪化させる能力がある。これは、急性膵炎の病因の病態生理学で腸管に対する重要な役割を強調し、潜在的治療ターゲットとして腸間膜リンパを確認するものである。(Sato訳)
■ユーラシア犬種の膵外分泌不全-2つの候補遺伝子の遺伝と排除
Exocrine pancreatic insufficiency in the Eurasian dog breed - inheritance and exclusion of two candidate genes
Anim Genet. February 2007;0(0):.
H F Proschowsky, M Fredholm
膵外分泌不全は、いくつかの犬種で遺伝疾患が考えられる。罹患犬は、多食、体重減少、膵酵素欠乏による明るい色の多量の便を示す。ここに述べる研究で、我々はユーラシア犬種の3家族に対しsingles methodを使用して分離比分析を実施した。我々のデータは、遺伝の常染色体劣勢様式に一致した。またCFA3に対する4つのミクロサテライトマーカー、CFA23に対する2つのミクロサテライトを用い、それら家族で連鎖分析を実施した。我々の結果をもとに、膵外分泌不全の候補として、ヒトコレシストキニン(CCK)の犬相同分子種とコレシストキニンAレセプター(CCKAR)遺伝子を排除した。(Sato訳)
■猫の膵炎の罹患率と組織病理学的特徴
Prevalence and histopathologic characteristics of pancreatitis in cats.
Vet Pathol. 2007 Jan;44(1):39-49.
De Cock HE, Forman MA, Farver TB, Marks SL.
猫の膵臓疾患は高い罹患率にもかかわらず、現在のところ、この疾患の組織病理学的性質に関する詳細な記載は文献でも入手できない。この研究で、年齢と消化管と消化管以外の疾患と病変の関連、猫の膵臓において見られる分布と一般的な組織学的変化を特徴付け、ヒトと猫の膵病変の比較をする。死因に関係なく剖検した115頭の猫の膵臓全部を摘出し、検査した。左葉、右葉と膵体から採取した組織学切片は、ヒトと獣医学文献で使われている同様のシステムに基づいて急性膵炎(AP)と慢性膵炎(CP)の病変をスコア化した。
猫のCPの病変は炎症性変化より顕著に繊維化することがヒトのCPに似ている。CPのほかの病変として徐々に増加するのう胞状の変化はより顕著だった。酵素源の枯渇と膵炎と関連しない腺房細胞異形成による異常な結節性変性は膵臓の15.6%で顕著だった。組織学的にAPは間質の浮腫と腸間膜脂肪の壊死を伴う好中球性炎症から成り立つ。67%の全罹患率、そして臨床的に正常な動物の45%で特定された。CPは69頭(60.0%)で見られ、 58頭 (50.4%) は CP 単独で、年齢とCPの発生には明らかな関連性があった。胃腸疾患を伴う猫は統計的に高い罹患率で膵臓左葉にCPがあった。AP は18頭(15.7%) でみられ、7頭がAPのみ(6.1%)だった。(Dr.Kawano訳)
■猫の膵管拡張と年齢および臨床所見の関連性
Relationship of pancreatic duct dilation to age and clinical findings in cats
Vet Radiol Ultrasound. 2006 May-Jun;47(3):287-94.
Silke Hecht, Dominique G Penninck, Orla M Mahony, Ryan King, William M Rand
膵管拡張は、猫の膵炎の超音波検査での特徴として述べられている。この研究目的は、健康な老齢猫の正常な膵管の幅を測定し、臨床集団で見られる膵管拡張の意義を評価することだった。前向き研究で、15頭の健康な猫(平均年齢13±3歳)に膵臓超音波検査を実施した。左葉、膵体、右葉の膵の幅の平均値は、それぞれ0.65±0.16cm(0.46-1.03cm)、0.64±0.14cm(0.46-0.9cm)、0.43±0.09cm(0.3-0.57cm)だった。膵管の幅の平均値は、0.13±0.04cm(0.06-0.24cm)で、過去に報告されたより若い猫のもの(0.08±0.025cm)より有意に大きかった(P<0.001)。1445例の臨床患者のうち104例(7.2%)は膵管拡張と診断され、回顧的研究で再検討した。
膵管拡張の発生率は、若い猫より老齢猫で有意に高かった(2.7% <1-5歳 vs. 18.1%
15歳以上;P<0.001)。膵管の幅の平均値は、0.23±0.07cm(0.14-0.52cm)で、年齢と膵管の幅に有意な相関があった(P=0.01)。膵管の幅と膵臓の厚さ(n=98)の平均比にも有意な相関が見られた(0.29±0.09;0.09-0.58;P=0.041)。膵臓疾患がある猫とない猫の年齢に有意差は見られなかった。膵臓疾患と膵管の幅、または膵管の幅/膵臓の厚さの比の間に関連はなかった。猫の膵管の幅、および膵管の幅/膵臓の厚さの比は年齢と有意な関係を持つ。(Sato訳)
■犬と猫の膵炎
Canine and Feline Pancreatitis
Compend Contin Educ Pract Vet 27[10]:766-776 Oct'05 Review Article 62 Refs
Jacqueline C. Whittemore, DVM, DACVIM (SAIM) and Vicki L. Campbell, DVM, DACVA, DACVECC
膵炎はさまざまな臨床経過と転帰を示す多くの因子が存在する疾患である。基礎にある原因は一般に確認されていないが、リスクファクターには品種、年齢、併発内分泌疾患、肥満、薬剤、外傷などがある。この疾患の臨床症状は軽度嗜眠から激しい嘔吐、複数臓器不全、死亡まで範囲が広い。診断はしばしば困難を要し、病歴、身体検査、診断所見を総合して判断する。治療は一般に支持療法、疼痛管理、栄養サポート、併発疾患の治療などで、転帰は不定で、再発することもある。(Sato訳)
■犬の急性膵炎のC-反応性蛋白濃度
C-reactive Protein Concentrations in Canine Acute Pancreatitis
J Vet Emerg Crit Care 14[3]:183-189 Sep'04 Original Study 29 Refs
Jennifer L. Holm, DVM, Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVECC, DACVIM, * Lisa M. Freeman, DVM, PhD, DACVN and Cynthia R. L. Webster, DVM, DACVIM
目的:自発性犬急性膵炎(AP)でC-反応性蛋白(CRP)濃度が上昇するかどうか調査することと、入院中のCRPの変化を測定すること
構成:前向き研究
場所:Tufts大学小動物Veterinary Medicine Foster Hospital
動物:16頭の急性膵炎の飼育犬と16頭の健康なコントロール犬
介入:死亡、または退院しなければ、AP群の診断された日(Day1)、Day3、5日目に血液を採取した。コントロール犬からは1回血液採取した。
測定と主要結果:AP、コントロール各犬の血清CRPを市販免疫測定で測定した。AP群のDay1CRP濃度(56.1±12.7?g/ml)はコントロール群(2.8±1.31?g/ml;P<0.001)よりも有意に高かった。3日全て採取した7頭で、測定5日目には有意に平均CRP濃度が低下した(P=0.043)。AP16頭のうち14頭は退院し、2頭は安楽死した。
結論:自発AP16頭のこの群で血清CRP濃度は上昇した。3日全て測定した7頭で、診断日から5日後測定する間に平均CRP濃度は低下した。(Sato訳)
■肝外胆管閉塞と膵炎の犬3頭における超音波ガイド下の治療的経皮胆嚢穿刺
Therapeutic Percutaneous Ultrasound-Guided Cholecystocentesis in Three Dogs with Extrahepatic Biliary Obstruction and Pancreatitis
J Am Vet Med Assoc 227[11]:1782-1786 Dec 1'05 Case Report 21 Refs
Beth A. Herman, DVM; Robert S. Brawer, DVM; Robert J. Murtaugh, DVM, MS, DACVECC, DACVIM; Susan G. Hackner, BVSc, DACVIM, DACVECC
急性膵炎により3頭の犬を検査した。3頭とも胆嚢の拡張が超音波検査で認められ、また超音波所見と血清生化学異常(すなわち、高血清ビリルビン、高コレステロール濃度、肝酵素活性増加)から肝外胆管閉塞(EHBO)と診断した。3頭で超音波ガイド下経皮胆嚢穿刺(PUCC)を胆嚢の減圧に使用した。1頭の胆嚢穿刺は複数回実施した。その方法実施後、3頭の血清ビリルビン濃度はかなり低下した。3頭中2頭は閉塞解除に手術を必要としなかった。3頭目はその処置後腹水が溜まってきたため、試験的開腹を実施した。開腹中に腸間膜脂肪の胆汁染色が見られたが、胆汁壁の欠損を認めることは出来なかった。膵炎に続くEHBOのほとんどの犬で、急性膵炎が改善すると自然に閉塞も解消するので手術は必要としない。EHBOが解消しない、またはEHBOが合併症を起こす少数の犬には、治療的PUCCが胆嚢拡張を軽減するのに有効と思われる。(Sato訳)
■不顕性膵外分泌不全を診断する為の血清トリプシン様免疫活性測定
Serum Trypsinlike Immunoreactivity Measurement for the Diagnosis of Subclinical Exocrine Pancreatic Insufficiency
J Vet Intern Med 13[5]:426-432 Sep/Oct'99 Clinical Study 27 Refs
Maria E. Wiberg; Anna-Kaisa Nurmi; Elias Westermarck
血清トリプシン様免疫活性(TLI)濃度が5.0μg/Lか、それ以下の犬(n=158)を調査しました。TLI濃度<2.5μg/Lと膵外分泌不全(EPI)の典型的な臨床徴候(例えば、多食、多量の大便、体重減少)をもとに、158頭中114頭の犬で、臨床的膵外分泌不全(EPI)と診断しました。158頭中44頭の犬は、1回のTLI測定と臨床徴候で診断確定となりませんでした。44頭中9頭において、TLIは<2.5μg/Lで、EPIを示唆しましたが、胃腸徴候が非定型、あるいは犬は無症候性でした。44頭中35頭において、TLIは2.5-5.0μg/Lでした。44頭全てで、1-27ヵ月(平均、11.9ヵ月)以内にTLIの再検査を行いました。44頭中20頭において、TLI再検査は正常でした(>5.0μg/L)。臨床的にEPIと診断された44頭中4頭の犬で、TLI再検査は、<2.5μg/Lでした。44頭中残りの20頭は、持続的にTLIは<5.0μg/L(範囲、1.0-4.9μg/L;平均、3.1μg/L)でした。これらの犬のうち、15頭は胃腸疾患の臨床徴候が無く、5頭はEPIの非定型的な臨床徴候を時折呈しました。膵臓の肉眼的検査(12頭の犬)では、正常な膵臓組織量が著しく減少していることが明らかとなりました。これらの犬は不顕性EPIと診断しました。セクレチンとコレシストキニンの刺激前後にTLIを測定するTLI刺激試験では、不顕性EPIとコントロール犬の双方ともに有意な反応(P<.05)を示しましたが、顕性のEPIの犬においては、いかなる反応も示しませんでした。今回の研究では、持続的な<5.0μg/LのTLI濃度により、無症候段階でEPIを診断しましたが、TLI濃度が1回だけ<5.0μg/L のものは診断的ではありませんでした。TLI濃度が<5.0μg/Lのものは、不顕性EPIの可能性があるので、臨床的に正常な犬でも、再検査することを推奨します。(Dr.K訳)
■膵炎後の膵臓mass:膵臓偽嚢胞、壊死、膿瘍
Pancreatic Masses Following Pancreatitis: Pancreatic Pseudocysts, Necrosis, and Abscesses
Compend Contin Educ Pract Vet 27[2]:147-154 Feb'05 Review Article 30 Refs
Michael Coleman, BVSc(dist), MACVSc and Mark Robson, BVSc(dist), DACVIM
膵臓偽嚢胞は、犬猫で報告されているが、膵臓の壊死性マス病変や膿瘍は犬でしか報告されていない。それら状況は膵炎の続発症で認められる。おそらく診断は腹部超音波検査と針吸引生検、または試験的開腹でなされる。偽嚢胞は外科的、または超音波ガイド下による膵臓吸引で管理できる。膵臓嚢胞や壊死性マス病変を管理するガイドラインは決定していないが、外科的介入、および内科管理が含まれる。膵臓偽嚢胞よりも壊死性マス病変や膿瘍の死亡率がより高い。(Sato訳)
■犬における膵臓偽嚢胞の大網化により成功した治療
Successful Treatment of a Pancreatic Pseudocyst By Omentalisation in a Dog
N Z Vet J 52[4]:197-201 Aug'04 Case Report 27 Refs
* RM Jerram, CG Warman, ESS Davies, MC Robson and AM Walker
症例:3歳のオスのラブラドール・レトリバーが、嘔吐と腹痛を伴う食あたりの病歴で来院しました。
臨床所見および治療:腹部超音波検査により、ほぼ膵臓の位置で、液体で満たされた嚢胞性組織の存在が検出されました。試験開腹中、外側嚢胞壁の切除をするまで、嚢胞組織から、綿状の濃い液体が流出しておりました。ドレナージと免疫増強のために、嚢胞腔内に大網を縫合しました。空腸造瘻術フィーディングチューブを装着しました。術後管理は抗生剤療法を行いました。犬は1ヵ月で臨床的に正常となり、術後7ヵ月に、最終的な超音波検査で、膵臓が正常に抽出されました。
臨床関連:この症例は、膵臓の偽嚢胞に対し、生理的ドレナージを提供するための大網の使用について述べたものです。この外科テクニックは、今後、このような状況の患者を管理するのに、臨床医の助けとなると考えられます。(Dr.K訳)
■ネコの急性壊死性膵炎と慢性非化膿性膵炎の臨床鑑別:63症例(1996-2001)
Clinical Differentiation of Acute Necrotizing from Chronic Nonsuppurative Pancreatitis in Cats: 63 Cases (1996-2001)
J Am Vet Med Assoc 223[4]:469-474 Aug 15 '03 Retrospective Study 17 Refs
Jean A. Ferreri, DVM; Erin Hardam, DVM; Susan E. Kimmel, DVM, DACVIM; H. Mark Saunders, VMD, MS, DACVR; Thomas J. Van Winkle, VMD, DACVP; Kenneth J. Drobatz, DVM, MSCE, DACVIM, DACVECC; Robert J. Washabau, VMD, PhD, DACVIM *
目的:急性壊死性膵炎(ANP)、または慢性非化膿性膵炎(CP)と組織学的に確認されたネコで臨床、臨床病理、X線、超音波所見を特徴づけ、それら疾患の生前鑑別に有効かもしれない特性を確認すること
構成:回顧的研究
動物:組織学的にANP(n=30)、またはCP(33)と確認された63頭のネコ
方法:医療記録から徴候、臨床症状、併発疾患、臨床病理所見、エックス線と超音波検査結果を再検討した。
結果:両群のネコは、同じような非特異的臨床症状、身体検査所見、X線と超音波異常を示した。低エコー性の膵臓、高エコーの腸間膜、腹部滲出液などの腹部超音波検査の異常は、両群のネコで見られ、ゆえにANPで特異的ではなかった。CPのネコ(100%)は、ANPのネコ(83%)と比べて有意に併発疾患を持っていた。臨床病理異常は、両群とも同じようなものだった。しかし血清ALTとALP活性はCPのネコで有意に高かった。
結論と臨床関連:結果は、ANPとCPのネコで、病歴、身体検査所見、臨床病理検査結果、エックス線検査異常、または超音波検査異常を下に単独で互いに鑑別する事はできないと示唆する。(Sato訳)
■犬における急性膵炎
Acute Pancreatitis in Dogs
J Vet Emerg Crit Care 13[4]:201-213 Dec'03 State-of-the-Art Review 139 Refs
Jennifer L. Holm, DVM, Daniel L. Chan, DVM, Elizabeth A. Rozanski, DVM, DACVECC, DACVIM *
目的:人と犬における急性膵炎(AP)の治療と画像診断、重症度評価に関しての現在の情報を要約することです。
人医ベースの研究:人において、患者管理の最適化を可能とするべく、スコアリングシステム、高度な画像法、血清マーカーが、疾患の重症度を評価するのに用いられます。膵臓壊死の程度と感染性膵臓壊死の存在は、多臓器障害(MOF)と引き続く死亡率の展開を決定する最も重要な因子です。疾患の過程において可能な限り早く、重症度を評価する為の、安価で簡単、そして信頼性のある検査マーカーの発展に重点をおいてかなりの研究がなされてきました。予防的抗生物質の使用、経腸栄養、そして外科処置が、ある程度の患者に有効であることが示されております。
獣医学ベースの研究:自然に発生する犬のAPに関し、現在認識されているものの大部分は、遡及的評価により導かれています。APの犬で重要な検査マーカーに関する、安価で信頼性のある検出キットの認定と開発が、治療介入から有効と思われる患者集団の確認と予後判定を行う我々の能力を劇的に進歩させました。治療は主に支持療法のままで、外科の有効性、栄養学的支持、そしてその他の治療様式を評価するべく、さらなる研究をするべき状態であります。
資料源:現在の人医、獣医文献
結論:膵炎は、人と犬の両者において、MOFそして死へと帰着する、生命を危うくする重症全身性炎症状態を導き得ます。人と犬の両者におけるAPの病態生理学における類似点を考慮すれば、APの人を治療し、重症度を評価するのに使用される新しい概念は、犬に適応できるかもしれません。(Dr.K訳)
■実験的に膵外分泌不全を誘発したイヌの肝臓生化学、組織病理所見
Liver biochemical and histopathological findings in dogs with experimentally induced exocrine pancreatic insufficiency.
Can J Vet Res 68[1]:56-61 2004 Jan-Feb
Adamama-Moraitou KK, Rallis TS, Papazoglou LG, Papasteriadis A, Roubies N, Kaldrimidou H, Leontides LS
外科的に膵管と膵十二指腸動脈膵臓枝を結紮することで膵外分泌不全(EPI)を誘発し、トリプシン様免疫活性試験で確認した8頭のイヌの通常の肝臓生化学パラメーターを評価した。他の8頭は、健康なコントロールとして使用した。術後4週目からデータを収集し始め、21週目まで毎週行った。EPIのイヌで、血清ALT、AST、ALP活性は、一貫して上昇していた。血清総、抱合型ビリルビン濃度は、実験期間中を通し正常範囲内を維持した。EPIのイヌの組織病理検査で肝リピドーシスを認めた。ゆえに、この状況はEPIのイヌの付加的な結果と思われるので、EPIのイヌの検査評価は、追加、または異なる治療法が必要か判定するために肝機能評価を含めるべきである。(Sato訳)
■膵外分泌不全の3頭の犬で膵臓酵素添加に関する口腔出血
Oral Bleeding Associated with Pancreatic Enzyme Supplementation in Three Dogs with Exocrine Pancreatic Insufficiency
J Am Vet Med Assoc 221[12]:1716-1718 Dec 15'02 Case Report 11 Refs
Gabriele M. Rutz, Dr med vet; Jorg M. Steiner, Dr med vet, PhD *; David A. Williams, VetMB, PhD
膵外分泌不全の3頭の犬が、膵臓酵素添加による治療中に口腔出血を起こした。その犬のオーナーによると、口腔からの出血は、膵臓酵素添加を含む食餌を食べている間、または間もなく起こった。オーナーが膵臓酵素の投与量を減らすと全頭口腔出血は止まった。2頭は膵臓酵素の添加量を減量しても糞の硬さは変化しなかったが、3頭目は減量にともない臨床症状がぶり返した。それらの犬の所見から、膵臓酵素高用量添加は、膵臓不全の犬の口腔出血を引き起こすが、ほとんどの犬は投与量を減らす事で、口腔出血をうまく管理できると思われる。(Sato訳)
■イヌの膵炎の重症度を評価する
Assessing the severity of canine pancreatitis.
Res Vet Sci 74[2]:137-44 2003 Apr
Mansfield CS, Jones BR, Spillman T
この研究の目的は、現在利用できる検査所での検査が、イヌの膵炎の予後的情報を提供できるかどうか判定することだった。膵炎自然発生犬の前向き研究を行った。組織学的に膵臓の炎症と確認された22症例を研究した。各イヌ通常の血液学的パラメーター、血清生化学(リパーゼ、アミラーゼ)、血清トリプシン様免疫反応、トリプシノーゲン活性化ペプチド(TAP)を尿や血漿で測定した。12頭を重度疾患に分類した。それらのイヌは統計学的に、尿中TAP-クレアチニン比(UTCR)、血清リパーゼ、血清リン、血清クレアチニン濃度の有意な増加を示した。追加として、重度膵炎のイヌは、尿比重が有意に低下した。膵炎の重症度を評価するための検査で感受性と特異性があるものはUTCRの測定値だった。(Sato訳)
■猫の急性膵炎における、血漿カルシウムイオン低濃度の発生率と予後評価:46症例(1996-1998)
Susan E. Kimmel, DVM, DACVIM; Robert J. Washabau,
VMD, PhD, DACVIM; Kenneth J. Drobatz, DVM,
DACVIM, DACVFCC
J Am Vet Med Assoc 219[8]:1105-1109 Oct 15'01
Retrospective Study 16 Refs
Incidence and Prognostic Value of Low Plasma
Ionized Calcium Concentration in Cats with
Acute Pancreatitis: 46 Cases (1996-1998)
目的:急性膵炎(AP)の臨床徴候を持つ猫における、血漿カルシウムイオン低濃度の予後的意義と発生率を調査することです。
計画:回顧的研究
動物:APを持つ46頭の猫と、膵炎でない92頭のコントロール猫
手順:医療記録を再検討し、血漿カルシウムイオンと総カルシウム濃度、酸-塩基値、そして電解質濃度などの臨床病理学的検査の結果を記録しました。APの猫は、結果に基づいて(生存、死亡、または安楽死)、分類し、それぞれのグループで、血漿カルシウムイオン濃度、酸-塩基値、そして電解質濃度を比較しました。
結果:血清総カルシウム濃度は、19頭(41%)のAP猫で低く、血漿カルシウムイオン濃度は、28頭(61%)で低くいものでした。AP猫(1.07mmol/L)は、有意に血漿カルシウムイオン濃度中央値が、コントロール猫(1.12mmol/L)より低値を示しました。19頭(41%)のAP猫が、死亡または安楽死となりました。これらの猫(1.00mmol/L)は、生存した猫(1.12mmol/L)より、有意に血漿カルシウムイオン濃度中央値が低値を示しました。13頭のAP猫のうち、10頭が、血漿カルシウムイオン濃度が1.00mmol/L以下で、死亡、または安楽死となりました。
結論と臨床関連:結果は、血漿カルシウムイオン低濃度は、APの猫でよく見られ、予後不良と関連するということを、示唆しております。深刻な予後と、積極的な内科療法は、血漿カルシウムイオン濃度が、1.00mmol/L以下のAP猫に関して確信されます。(Dr.K訳)
■猫の膵炎に関する再調査パート2:臨床徴候、診断、そして治療
Review Of Feline Pancreatitis Part Two: Clinical
Signs, Diagnosis and Treatment
J Feline Med Surg 3[3]:125-132 Sep'01 Review
Article 68 Refs
C.S. Mansfield & B.R. Jones
過去10年間で、膵炎は猫における重要な疾患として認められるようになりました。慢性、または軽度の膵炎は、より一般的に診断させる炎症性腸疾患、または胆管炎/胆管肝炎のような疾患と、しばしば関連があります。なお、犬において同様の合併症を伴う急性膵炎が、現在は猫でより頻繁に診断されます。不運にも、膵炎の猫における、臨床徴候と臨床病理学的所見は、しばしば非特異的であいまいです。特異的徴候のないものは、獣医師が精力的な診断追求と、膵炎に対する強い疑いを持ったときだけ、診断されるということが良くあります。膵炎は猫において、重要な疾患であり、真性糖尿病の潜在的原因として関与します。そのような時は猫の糖尿病や、他の腹腔内疾患の治療を複雑にします。(Dr.K訳)
■猫の膵炎の診断で、猫血清トリプシン様免疫反応性の評価
Nigel C. Swift et al; J Am Vet Med Assoc
217[1]:37-42 Jul 1'00 Prospective Study 30
Refs; Evaluation of Serum Feline Trypsin-Like
Immunoreactivity for the Diagnosis of Pancreatitis
in Cats
目的:猫の膵炎の診断で、猫血清トリプシン様免疫反応性(f-TLI)濃度と、腹部超音波検査、CBC、そして血清生化学検査の結果を評価することです。
計画:予見的研究。
動物:膵炎に適合する臨床徴候を持つ28頭の猫。
手順:膵臓、肝臓、そして腸の組織学的評価する前に、血清f-TLI濃度を調査し、腹部超音波検査、CBC、そして血清生化学検査を行いました。組織学的結果に基づき、正常な膵臓(n=10)、進行性炎症を伴う膵臓の繊維症(9)、炎症を伴わない膵臓の繊維症(4)、急性壊死性膵炎(5)に、猫を類別しました。それぞれの群で、血清f-TLI濃度と、CBC、血清生化学検査、そして肝臓と腸の組織学的評価の結果を比較しました。
結果:血清f-TLI濃度や、血液、生化学的変化の有意差は、4群で認められませんでした。血清f-TLI濃度中央値は、正常な膵臓で51μg/L(範囲:18から200μg/L)、進行性炎症を伴う膵臓の繊維症を持つ猫で32μg/L(範囲:12から>200μg/L)、炎症を伴わない膵臓の繊維症を持つ猫で124μg/L(範囲:36から>200μg/L)、急性壊死性膵炎の猫で、30μg/L(範囲:24から84μg/L)でした。膵炎の猫で、肝臓疾患および腸疾患の併発罹患率が高く認められました。
結論と臨床関連:膵炎の臨床徴候を持つ猫で、血清f-TLI濃度と組織学的診断との関連は乏しいです。(Dr.K訳)
■ジャーマン・シェパードにおける膵腺房萎縮
Gabriele M. Rutz, MedVet et al; Compend Contin
Educ Pract Vet 23[4]:347-356 Apr'01 Review
Article 63 Refs; Pancreatic Acinar Atrophy
in German Shepherds
膵腺房萎縮(PAA)は、ジャーマン・シェパードでよく認められ、遺伝的なものであることが、明らかにされております。この疾患では、島細胞の予備機能があったとしても、おそらく膵腺房細胞が免疫介在性炎症に続き、萎縮してしまいます。膵臓の外分泌腺は、大きな予備分泌機能を持ち、影響を受けた犬の膵臓機能が、およそ10%以下まで低下したとき、膵外分泌機能不全(EPI)の徴候を発現します。膵外分泌機能不全は、脂肪と脂溶性ビタミンの、消化吸収不良を起こします。罹患した犬の大部分で、正常血清濃度以下のコバラミン(VitB12)低下をよく起こす、このビタミンの消化吸収不良に寄与する小腸細菌異常増殖(SIBO)の併発により、酵素欠乏は解りづらくなります。膵腺房萎縮を持つ犬で、良く見られる徴候は、体重減少、多食、軟便、被毛粗剛、腹鳴、そして鼓張です。嘔吐と食欲不振は、一般徴候としては、少ないとされます。膵臓酵素補充に対する反応で、脂肪吸収作用が完全に戻らないものの、臨床徴候は完全に消散します。脂溶性ビタミンと、コバラミンは、必要量を補充するべきです。代替酵素だけの治療に反応しない併発小腸細菌異常増殖を持つ症例では、低繊維である高消化食の給与に加え、併発小腸細菌異常増殖に対する、抗生物質療法が有用かもしれません。
訳者コメント:膵外分泌機能不全に関して、自分の反省点は、下痢に焦点がいってしまい、下痢さえしていなければ、削痩は日にち薬だろうと、消化酵素剤と食事療法だけを続けてました。小腸内細菌の異常増殖に対するアプローチや、脂溶性ビタミンの補充も、今後取り入れて行きたいと思います。(Dr.K訳)