■犬の巨大食道の治療に対する合成液体シルデナフィルの無作為化クロスオーバー研究
A randomized crossover study of compounded liquid sildenafil for treatment of generalized megaesophagus in dogs
Am J Vet Res. 2022 Jan 21;1-7.
doi: 10.2460/ajvr.21.02.0030. Online ahead of print.
Susan O Mehain, Jillian M Haines, Sarah C Guess
目的:巨大食道(ME)の犬の胃に直接合成液体シルデナフィルを送り込むことは、食道クリアランス、吐出頻度、体重あるいはQOLに影響を及ぼすかどうかを調べる
動物:その他は健康な安定したMEの飼い犬10頭
方法:無作為化クロスオーバー研究を実施した。犬にはシルデナフィル(1mg/kg、PO、12時間毎)、あるいはプラセボを14日間投与し、続いて7日間のウォッシュアウト期間を設け、その後逆の治療を14日間実施した。食道クリアランス時間を治療前と各治療期間の1日目に透視検査で評価した。飼い主には吐出とQOLを記録してもらった。
結果:合成液体シルデナフィルは、30頭中21頭(70%)の透視セッション中に胃の中に移動した。シルデナフィルは、基礎(中央値、6.5回/週;範囲1.5-19.5回/週)およびプラセボ(中央値、4回/週;範囲0-28回/週)と比べて、吐出の回数を有意に減少させ(中央値、3.5回/週;範囲0-14.5回/週)、基礎(中央値、21.55kg;範囲5.1-26.2kg)およびプラセボ(中央値、22.9kg;範囲5.8-25.9kg)よりも体重を有意に増加させた(中央値、22.05kg;範囲6-26.3kg)。食道クリアランス時間あるいはQOLスコアにシルデナフィル、プラセボ間の違いはなかった。
臨床関連:MEの犬においてプラセボ投与との有意差は確認されたが、合成液体シルデナフィルの使用で臨床的に関連する改善は見られなかった。(Sato訳)
■犬の食道異物の外科的治療に関係する合併症と結果
Complications associated with and outcome of surgical intervention for treatment of esophageal foreign bodies in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2022 Jan 4;260(6):622-627.
doi: 10.2460/javma.21.01.0060.
Andrew James Carey Beer , Tom Hernon , Zoë Halfacree , Ronan A Mullins , Alison Moores , Benito de la Puerta , Joep Timmermans , Chris Shales , Derniese Goh , Elisa Best , Poppy Bristow
目的:犬の食道異物(EFBs)の治療に対し、外科的治療に関係する合併症と短期-および長期結果を確認する
動物:63頭の飼い犬
処置:2007年から2019年までにEFBの除去あるいは治療あるいは関連する食道穿孔に対し外科手術を行った犬を確認するため、9件の動物病院の記録を再調査した。飼い主へのアンケートによる長期フォローアップを入手した。
結果:63頭中54頭(85.7%)の犬は、最小侵襲処置に失敗した、あるいはその後に食道穿孔のエビデンスを確認した後に外科手術を行った。食道穿孔は、42頭(66.7%)の手術時に存在した。ほとんどの犬は左側肋間開胸術を行った(37/63(58.7%))。術中合併症は18頭(28.6%)に発生し、28頭(50%)は術後合併症があった。28頭中14頭(50%)の術後合併症はマイナーだった。食道切開の裂開は3頭で発生した。47頭(74.6%)の犬は、生存して退院した。術前の食道穿孔がある、開胸術を行う、胃瘻チューブを設置したかどうかは、生存して退院しなかったことと有意に関係した。
フォローアップ情報は47頭中38頭で入手できた(80.9%;平均フォローアップ期間、46.5か月)。たまの嘔吐あるいは吐出は飼い主20人中5人(25%)により報告され、1頭は薬物治療を受けた。
臨床関連:結果は、FEBsの外科的治療は、高い成功率となり得ることが示唆された。EFBsが最小侵襲手技で安全に除去できない、あるいは食道穿孔が存在する時に外科手術を考慮すべきである。(Sato訳)
■短頭種症候群の犬における胃-食道接合部異常の診断と治療
Diagnosis and treatment of gastro-oesophageal junction abnormalities in dogs with brachycephalic syndrome
J Small Anim Pract. 2020 Dec 1.
doi: 10.1111/jsap.13279. Online ahead of print.
Emilie Vangrinsven , Olivier Broux , Laurent Massart , Stephanie Claeys , Cecile Clercx , Frederic Billen
目的:短頭種症候群に対する手術を行う犬において、術前および術後制酸剤治療に利点があるかどうか調べること。動的胃-食道接合部異常の検出に対する、内視鏡検査中の閉塞操作の使用を評価すること。
素材と方法:短頭種の飼育犬36頭を無作為化試験に前向きに含めた。無作為に手術前後に18頭には制酸剤を処方し、他の18頭には消化管の薬剤を全く与えなかった。初診時、手術時、再チェック時、消化管臨床症状と胃-食道接合部異常を特定のスコアを用いて評価した。胃-食道接合部異常は、標準の状態、同じように、気管チューブ閉塞中に内視鏡検査中に評価した。この操作は関係ないコントロール群でも使用した。
結果:結果は、手術を行う短頭種症候群の犬において、制酸剤は消化管臨床症状と病変に対して有利な影響を及ぼしたと示唆する。術後コントロール時、治療群の犬の83%、対照的に非治療群の44%、治療群の胃-食道異常スコア(閉塞操作中)≦1の犬の39%、対照的に非治療群の16.7%は消化管スコアが≦1だった。コントロール群における内視鏡検査中の閉塞操作の使用は、健康な動物において胃-食道接合部の運動がとるに足らないものであることを示した。
臨床意義:手術を行う短頭種の犬に対し、術前および術後期間の制酸剤治療の追加は、処置した犬でより早く、より大きく改善させるかもしれない。閉塞操作は、胃-食道接合部異常の検出を改善する興味深い方法である。(Sato訳)
■巨大食道の犬の集団特性、診断、環境、健康、疾患関連に対するオーナーの調査
Survey of owners on population characteristics, diagnosis, and environmental, health, and disease associations in dogs with megaesophagus.
Res Vet Sci. 2018 Nov 30;123:1-6. doi: 10.1016/j.rvsc.2018.11.026. [Epub ahead of print]
Haines JM.
巨大食道は世界中の犬に罹患するが、犬の一般的集団において、その特徴に関して得られる情報は限られている。
この研究の目的は、集団特徴、薬剤及び家族の履歴、診断、併発疾患、素因に関し、巨大食道と診断された犬の大集団の情報を提供することだった。
巨大食道サポートウェブサイトにウェブベース調査をリンクさせ、838の適切な調査を評価した。
先天性巨大食道に最もよく関係した犬種は、ジャーマンシェパード、雑種“ゴールデンドゥードゥル”、ラブラドールレトリバー、グレートデン、ダックスフンドだった。
後天性巨大食道に多く関係した犬種は、ラブラドールとゴールデンレトリバー、チワワ、ボクサー、ジャーマンシェパード、ダックスフンド、ロットワイラーだった。
診断は単純エックス線写真(63.3%)および/あるいはバリウム検査(45%)で一般開業医(63.6%)によるものだった。先天性巨大食道は、41.3%の犬で診断され、右大動脈弓遺残は4.3%だった。後天性巨大食道に関係した疾患は、重症筋無力症(19.3%)、食道炎(10.8%)、甲状腺機能低下症(8.8%)だった。
調査結果は、過去の犬種素因を支持し、ダックスフンド、ボクサー、チワワ、ロットワイラー、追加のリスク犬種で“ゴールデンドゥードゥル”が確認された。重症筋無力症は、過去の研究よりも低率で、最近の研究に反し、甲状腺機能低下症は比較的高有病率だった。
多くの犬は一般開業医により診断されているということは、二次施設でこの研究は、より重度疾患の犬と悪い結果に偏っているかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■日本の犬の巨大食道の臨床特性と予後
Clinical features and prognosis of canine megaesophagus in Japan.
J Vet Med Sci. March 2019;81(3):348-352.
DOI: 10.1292/jvms.18-0493
Taisuke Nakagawa , Akihiro Doi , Koichi Ohno , Nozomu Yokoyama , Hajime Tsujimoto
巨大食道(ME)は犬の一般的な食道疾患で、特に誤嚥性肺炎(AP)により予後は一般的に悪い。
著者らは日本の犬のMEの臨床特性と予後を回顧的に調査した。
28頭の犬をこの研究に含め、ミニチュアダックスフンド種が有意に多く見られた(オッズ比:4.33)。ほとんどのケース(21/28)で特発性MEと診断され、重症筋無力症は続発性MEの最も一般的な原因だった。
全体の生存期間中央値(MST)は達成せず、3か月生存率は85.7%だった。10頭の犬は研究中に1回以上APと診断され、APを伴うME犬のMSTは114日だった。
APがあったとしても全体の生存期間は過去の研究よりも顕著に延長していた。
著者らはAPとMEがあったとしても、犬のMEに対する治療が生存期間を延長できたと仮説を立てた。(Sato訳)
■食道に異物がある犬において食道炎の程度、治療および結果に関係する因子の回顧的評価(2004-2014):114症例
Retrospective evaluation of factors associated with degree of esophagitis, treatment, and outcomes in dogs presenting with esophageal foreign bodies (2004-2014): 114 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Aug 26. doi: 10.1111/vec.12875. [Epub ahead of print]
Bongard AB, Furrow E, Granick JL.
目的:食道異物除去のために来院した犬の1集団の特徴を述べることと、食道炎の程度、マイナーおよびメジャーな合併症に関係する因子を評価する
デザイン:2004年1月から2014年12月の間に食道異物除去のために来院した犬の回顧的評価
場所:大学獣医教育病院
動物:114頭の犬のシグナルメント、病歴、臨床症状、身体検査所見、異物の経過時間と部位、食道炎の程度、異物除去の成功度、給餌チューブ設置、臨床結果に関するデータを集めた。医療記録で入手できない結果のデータはオーナーと連絡を取った。データは犬種素因、異物の経過時間あるいは種類が食道炎の程度あるいは合併症と関係したかどうか、給餌チューブ設置に関係する因子について分析した。
介入:なし
測定値と主要結果:棘同郷で異物を除去した全体の成功率は95%で、合併症率は22%だった。小型犬種の犬が多かった。24時間以上異物が存在した犬は、重度食道炎(P<0.001)とメジャーな合併症(P=0.0044)が見られる確率が有意に高かった。異物の種類は食道炎の程度あるいは合併症を予測しなかったが、釣り針は外科的除去を必要とする確率が高かった(P=0.033)。給餌チューブ(15頭は胃造瘻、1頭は鼻食道)14%の犬で設置され、24時間以上異物が存在した場合に設置される確率が高かった(P<0.001)。
結論:過去の研究と同じで、特に24時間以内の場合、適切に確認され、内視鏡で除去されると予後は良い。(Sato訳)
■食道異物除去後の合併症:349症例の回顧的レビュー
Complications following removal of oesophageal foreign bodies: a retrospective review of 349 cases.
Aust Vet J. 2019 Apr;97(4):116-121. doi: 10.1111/avj.12796.
Wyatt SR, Barron PM.
目的:犬の食道異物(foreign body:FB)除去に関係する合併症発生率とそのタイプを調べることと、合併症発症に対する潜在的危険因子を評価する
方法:2001年7月から2017年3月までで、Animal Emergency Service and Veterinary Specialist
Services databases内の臨床記録を検索した。シグナルメント、FBの種類、除去方法、内科治療と合併証に関するデータを集めた。その後、依頼獣医師からの経過の記録を電話またはメールで入手した。
結果:合計349頭のFB症例を再調査した。FBの多くは骨(77.4%)で、よく見られた犬種はスタッフォードシャーブルテリア(12.3%)とウエストハイランドホワイトテリア(9.8%)だった。FB除去時の合併症は、20症例(5.9%)で発生し、そのうち14症例は穿孔だった。FB除去後の72時間以内に持続的な胃腸症状が4.7%の症例で報告され、この時間帯以外で11.9%の症例で報告された。呼吸困難や咳のような呼吸器症状も8症例(2.3%)で報告され、全頭がFB除去後72時間以内に発生していた。1か月以上の経過観察は151症例で入手できた。遅発性の合併症は11症例(7.3%)で起こり、そのうち4症例(2.6%)は狭窄だった;16症例はFB除去後安楽死(n=14)あるいは死亡(n=2)し、結果として症例死亡率は4.6%となった。
結論:制酸薬の使用とFBの種類は、FB除去後の合併症と統計学的に有意な関連を持たなかった。(Sato訳)
■経噴門自己拡張ニチノール・カバー・ステントによる食道拡張誘引食道平滑筋腫の治療
Esophageal leiomyoma in a dog causing esophageal distension and treated by transcardial placement of a self-expanding, covered, nitinol esophageal stent
Elisabeth M. Robin, Pascaline B. Pey, Pauline de Fornel-Thibaud, Pierre H. M. Moissonnier, Valerie Freiche
J Am Vet Med Assoc 2018;252:330?335
症例
ロットワイラー、避妊メス、10歳齢が2ヶ月にわたる食欲に明瞭な変化のない吐出と体重減少があるとのことで紹介された。制吐剤と制酸剤が処方されていたが改善はなかった。
臨床所見
身体検査では削痩(BCS 2/5)が認められたが他に顕著な異常はなかった。単純胸部X線では全体的な食道拡張があり、透視にて嚥下運動は正常であった。経肝臓超音波とCTで食道遠位の周囲性病変による遠位食道もしくは噴門の部分閉塞があり転移はなかった。切開生検により食道平滑筋腫と診断された。
治療と経過
食道外科により多くの合併症があることから透視下の自己拡張ニッケルチタン合金カバーステントを経噴門で緩和的に設置した。ステント設置2週間後にX線によりステントが完全に胃腔内に移動していることが確認された。胃切開により正しい位置に固定した。24ヶ月後BCSは正常で認められていた臨床症状はない。
臨床的意義
成犬や高齢犬の後天性食道拡張の鑑別疾患として良性筋腫瘍を考慮すべきである。本症例では経噴門ステントにより臨床症状が消失し明らかな消化器異常は伴わなかった。ここで述べた方法は犬の良性食道腫瘍の非外科治療として有益であろう。(Dr.Maru訳)
■犬と猫の食道手術の周術期罹病率と結果:72症例(1993-2013)
Perioperative morbidity and outcome of esophageal surgery in dogs and cats:
72 cases (1993-2013).
Language: English
J Am Vet Med Assoc. October 2016;249(7):787-93.
Jessie S Sutton, William T N Culp, Katherine Scotti, Rachel L Seibert, Cassie N Lux, Ameet Singh, Chloe Wormser, Jeffrey J Runge, Chad W Schmiedt, Jessica Corrie, Heidi Phillips, Laura E Selmic, Daniel J Nucci, Philipp D Mayhew, Philip H Kass
目的:食道の手術を行った犬と猫の周術期罹病率と結果を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:63頭の飼育犬と9頭の飼育猫
方法:食道の手術を行った犬と猫の医療記録からシグナルメント、病歴、術前診断検査結果、治療状況、手術の詳細、術中合併症、術後合併症に対する情報を検討した。長期追跡調査のデータは獣医師を通し、飼い主に電話で入手した。合併症と生存して退院の関連を回帰分析で評価した。
結果:手術介入の最も一般的な適応は、犬の食道異物(50/63(79%))、猫の食道狭窄(3/9)だった。犬の54%(34/63)、猫の9頭中3頭で合併症が見られた。一般的な術後すぐの合併症は本質的に呼吸器だった(犬9頭、猫1頭)。犬において部分的食道切除および吻合を伴う切除は、術後すぐの合併症発症に有意に関係した。最も一般的な遅延の術後合併症は、持続性の吐出(犬7頭)と食道狭窄形成(犬3頭、猫1頭)だった。犬に対し、マス病変や増大傾向にある病変は、遅延の術後合併症の発症に有意に関係した。6頭の犬(10%)と1頭の猫は、退院前に死亡、あるいは安楽死され、退院する犬に対する負の予後因子は、気縦隔および白血球減少だった。
結論と臨床関連:食道病変の治療の外科手術で生存する犬と猫の短期予後は良好で、90%の動物は退院する(犬57/63;猫8/9)とこの研究結果は示唆した。しかし、より広範な食道病変、食道切除あるいは切除と吻合を行って治療した犬は、術後合併症を発症する確率が高かった。(Sato訳)
■口咽頭の急性のスティックによる傷害の硬性内視鏡による処置
The use of rigid endoscopy in the management of acute oropharyngeal stick
injuries.
J Small Anim Pract. December 2014;55(12):609-14.
W Robinson; C Shales; R N White
目的:口咽頭のスティックによる傷害の管理において硬性内視鏡の使用を評価する
方法:大きな二次病院で2011年から2013年な間の症例記録を回顧的に分析した。シグナルメント、臨床症状、治療オプション、最終結果に関するデータを記録した。
結果:急性の口咽頭のスティックによる急性傷害は9頭の犬で確認された。7頭がオス、2頭がメスで、様々な種類、年齢(1.5-9歳)、体重(11.9-38.4kg)だった。受傷から紹介されてくるまでの時間は1日から3日(中央値:2日)だった。全ての犬は麻酔下で、30度前方斜、2.7mm直径、14.5Frの外筒に対応する18cm長の硬性内視鏡を探査に使用した。内視鏡検査は生食洗浄下で実施した。1mmより大きい異物は外筒を通して把持鉗子を使用して除去した。その後全ての異物が除去されているか確認するため、再探査し、さらに生食でフラッシュした。全ての犬は順調に回復し、その傷害による慢性症状を呈することもなく良好な結果が得られた。
臨床意義:犬の急性の口咽頭のスティックによる急性傷害の多くの症例で、硬性内視鏡は診断、評価、治療において有効な方法である。(Sato訳)
■猫の穿孔性食道異物の外科管理の成功1例
Successful surgical management of a perforating oesophageal foreign body in a cat.
J Feline Med Surg. January 2011;13(1):50-5.
Matthieu P L Cariou; Victoria J Lipscomb
症例提示と外科的処置:3歳の猫が嚥下困難と間歇的吐出を理由に来院した。エックス線検査で胸郭上口に骨性食道異物を認めた。内視鏡による除去を試みたが、食道壁穿孔による二次的な気縦隔、気腫、皮下気腫の発症により重度呼吸困難を起こした。即時の外科的探査を実施した。異物の存在により起こる食道の広範な壊死の存在で、食道の切除および吻合の実施を決断した。
臨床関連:これは閉塞性異物による食道穿孔後、食道切除により治療に成功した1頭の猫の最初の臨床報告である。著者は、穿孔性食道異物の猫を管理する時、迅速な外科的介入、非外科的除去時の同麻酔下で外科的処置への方針転換能力、胃瘻チューブの設置、高度麻酔および救命救急サポートの利用能は考慮すべき重要要因であると示唆する。(Sato訳)
■噴門形成および胸腔内噴門固定を行ったあるいは行わないビーグル犬における胃食道逆流に対する半固形栄養の効果
Effects of half-solid nutrients on gastroesophageal reflux in beagle dogs with or without cardioplasty and intrathoracic cardiopexy.
J Surg Res. June 2010;161(2):272-7.
Yuichiro Tanishima, Tetsuji Fujita, Yutaka Suzuki, Naruo Kawasaki, Tomoko Nakayoshi, Kazuto Tsuiboi, Nobuo Omura, Hideyuki Kashiwagi, Katsuhiko Yanaga
背景:経皮的内視鏡下胃瘻増設術(PEG)は、長期栄養サポートのための経腸アクセスを設置する重要な様式になっている。胃食道逆流(GER)による嘔吐および逆流性食道炎のため、液状栄養の吸引がPEGによるチューブフィーディングに関係する重要な問題である。
材料と方法:まず経腸栄養のためのアクセスとして胃瘻増設術、胃食道pHおよびBilitecモニターのための食道造瘻術を8頭のビーグル犬で実施し、市販で入手可能な液体食物とデキストリン、ペクチン、乳酸カルシウム混合溶液の添加で調整したほぼ等カロリーの半固形食を用いてGERの程度に対する経腸栄養物の粘度の影響を調査した。
次に噴門形成および胸腔内噴門固定(GER疾患(GERD)モデル)を実施した7頭のビーグル犬で同様の研究を行った。
結果:8頭の正常犬における液体および半固形物の間で、Bilitecモニターで評価したGERの程度の差はなかったが、GERDモデルにおいて固めた栄養物は栄養補給中(P=0.0180)および栄養補給後(P=0.0277)の期間の逆流頻度を有意に減少させた。
結論:経腸栄養のための半固形栄養食の使用は、GERDの犬モデルにおいて逆流の頻度を減少させた。(Sato訳)
■1頭の犬の食道異物に関係したフェノバルビタール反応性唾液腺症
Phenobarbital-responsive sialadenosis associated with an esophageal foreign body in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Mar-Apr;46(2):115-20.
Chen Gilor, Shir Gilor, Thomas K Graves
4歳のヨークシャーテリアが食道異物で来院した。異物除去後、えずき、吐出、嘔吐などの臨床症状が6週以上変化なく持続した。その犬の顎下唾液腺は増大していたが組織学的に正常だった。フェノバルビタールの投与で臨床症状は速やかに、劇的に解消した。3ヵ月後、その犬はフェノバルビタールから離脱し、6ヶ月経過して、いかなる症状も示さなかった。(Sato訳)
■軽度の食道狭窄の犬に対し、内視鏡的バルーン拡張術にコルチコステロイドの局所注入療法を併用した一例
Intralesional corticosteroid injection in addition to endoscopic balloon dilation in a dog with benign oesophageal strictures.
J Small Anim Pract. 2009 Oct;50(10):550-3.
Fraune C, Gaschen F, Ryan K.
3歳、避妊済みのゴールデンレトリバーが、2週間前より食道狭窄に起因する逆流症を呈していた。さらに詳しい検査により、胸腔の入り口および心基底部の尾側の2か所に食道狭窄を呈していた。内視鏡的バルーン拡張術を1週間ごとに計4回実施したが、施術後数日で臨床的に狭窄の再発を認め、また内視鏡的に確認された。最終的に5回目のバルーン拡張術に併用してトリアムシノロンアセトニドの病巣内注入療法を実施した。患者は臨床的に回復し、局所注入16週後の最後の内視鏡検査でも狭窄所見を認めなかった。(Dr.Ka2訳)
■犬における酸逆流中食道pHに対する局所治療の効果
The effect of topical treatment on esophageal pH during acid reflux in dogs
Vet Anaesth Analg. June 2007;0(0):.
Deborah V Wilson, A Tom Evans
目的:麻酔下の犬における酸性の胃-食道逆流(GER)中食道pHに対する吸引、洗浄、重炭酸ナトリウム液の注入の効果を判定する
研究構成:前向き臨床試験
動物:年齢4.8±2.4歳、体重37.1±7.9kgの健常犬10頭
方法:全身麻酔下で逆流が発生した場合、研究に供した。先端にセンサーがついたカテーテルを食道pH測定に使用した。研究開始から食道を吸引した。最低5分の間隔を置き、食道pHが4以下の場合、水道水で洗浄し再び吸引した。6頭で、20mlの希釈重炭酸溶液を食道腔に注入した。
結果:食道からの液体吸引は、pHを十分変化させなかった。水道水による洗浄は、4頭でpH4以上に上昇させ、平均pH上昇は、1.2±0.5から3.5±4.9だった。希釈重炭酸溶液を注入した全ての犬で、食道pHは180分(平均±SD、89±81)まで6以上に上昇させた。
結論と臨床関連:食道からの逆流の吸引は、食道腔のpHを変化させない。少量の重炭酸溶液の注入は、酸性GERの発生後pH4以上に予想通り上昇させた。食道腔へ液体を注入するとき、気管に入らないように注意すべきである。(Sato訳)
■クリンダマイシン関連食道傷害が疑われる猫5例
Suspected clindamycin-associated oesophageal injury in cats: five cases
J Feline Med Surg. July 2006;0(0):.
Julia A Beatty, Nigel Swift, Darren J Foster, Vanessa R D Barrs
クリンダマイシン関連食道傷害が疑われる猫5頭の臨床所見、治療、転帰を報告する。全ての猫は、1日2回75mgクリンダマイシンカプセルを1つ投与した(投与範囲12-19mg/kg)。カプセルは食餌または水なしに投与した。クリンダマイシン投与開始から3-9日で嚥下障害、吐出、むせるまたはえずきが認められた。食道鏡検査で、3頭は食道炎、そのうち1頭は進行性狭窄形成だった。2頭は最初から食道狭窄だった。
これはクリンダマイシン関連食道障害が疑われる最初の報告である。薬剤経口投与を行っている猫で薬剤誘発食道障害(DIOD)の可能性を開業医にさらに注意させ、投薬診療の変更により防止を進めるのに十分な問題である。(Sato訳)
■ドキシサイクリン療法に関与する猫の食道狭窄
Oesophageal Strictures in Cats Associated with Doxycycline Therapy
J Feline Med Surg 7[1]:33-41 Feb'05 Case Report 27 Refs
* Alexander James German BVSc, PhD, CertSAM, DipECVIM-CA, MRCVS, Martha Jane Cannon BA, VetMB, DSAM (Feline), MRCVS; Charlotte Dye BVM&S, CertSAM, MRCVS, Malcolm John Booth BVSc, MRCVS, Geoffrey Robert Pearson BVM&S, PhD, MRCPath, MRCVS, Caroline Anne Reay BVSc, CertVR, MRCVS, Timothy John Gruffydd-Jones BVetMed, PhD, DipECVIM-CA, MRCVS
ドキシサイクリン投与により起きた食道狭窄の4例を報告する。全症例は若い猫から中年の猫(年齢中央値3歳;範囲1-7歳)で家猫短毛種、または家猫長毛種だった。主な臨床症状は、ドキシサイクリン投与後さまざまな時間に起こる吐出だった。ドキシサイクリンの使用理由は、疑われる感染(マイコプラズマ・ヘモフェリス、Chlamydophila felis、およびBordetella bronchiseptica)の治療、または予防で、治療期間は不定だった。狭窄の1症例は剖検で確定診断におよび、他の3例は、内視鏡により確定診断された。治療した3症例でバルーン拡張が成功した。現在これがドキシサイクリン投与に関する猫の食道疾患の最も多い症例シリーズである。特にドキシサイクリンなど経口薬剤を投与するとき注意を促し、水や食べ物の嚥下と同時に行うべきである。(Sato訳)
■イヌの輪状咽頭嚥下障害の外科管理:14症例(1989-2001)
Surgical Management of Cricopharyngeal Dysphagia in Dogs: 14 Cases (1989-2001)
J Am Vet Med Assoc 223[10]:1462-1468 Nov 15'03 Retrospective Study 19 Refs
Jennifer J. Warnock, DVM; * Stanley L. Marks, BVSc, PhD, DACVIM, DACVIM; Rachel Pollard, DVM, DACVR; Andrew E. Kyles, BVMS, PhD, DACVS; Autumn Davidson, DVM, DACVIM
目的:イヌの輪状咽頭嚥下障害(CPD)の治療で、輪状咽頭筋切離または輪状咽頭筋切断に関する結果と合併症を調査する
構成:回顧的研究
動物:14頭のイヌ
方法:輪状咽頭筋切離、または輪状咽頭切除を行ったCPDのイヌの医療記録を調査した。追跡調査は、オーナー、紹介獣医師、可能ならば臨床検査所に電話で行った。
結果:14頭のイヌの16回外科処置が実施されていた。1頭のイヌが手術後すぐに嚥下障害が完全に解消し、臨床症状は再発しなかった(追跡調査8年)。2頭目も嚥下障害はすぐに完全に解消したが、追跡調査はほんの10日であった。3頭は、一時的に完全に解消し、嚥下障害のの再発までの平均時間は、12.3週間(範囲2-36週)だった。3頭は部分的解消を持続していた。6頭は手術後改善しなかった。14頭中8頭は、持続性嚥下障害(n=8)と吸引性肺炎(n=5)などCPDに関した問題で安楽死された。
結論と臨床関連:CPDの外科的治療を行ったイヌの失敗率は高く、特に術前吸引性肺炎、または栄養不良の併発が取り扱われていないと高くなる。併発疾患のあるそれらのイヌに、経腸チュウーブ給餌のようなより積極的な医療管理が手術よりも望まれる。重症筋無力症、喉頭麻痺、食道狭窄のような解剖、または機能状態により複雑となったCPDのイヌも、外科手術は指示されないと思われる。(Sato訳)
■麻酔後の食道機能障害:犬13例
Postanesthetic Esophageal Dysfunction in 13 Dogs
Deborah V. Wilson, BVSc, MS, Diplomate ACVA and Richard Walshaw, BVMS, Diplomate ACVS
麻酔後に食道機能障害を呈した13頭の犬が確認された; これらの犬の10頭は食道狭窄に罹患していた。麻酔中に6頭の犬で吐出が見られた。全ての犬で共通の臨床上の問題点は、嘔吐/吐出そして体重減少が含まれた。発咳は6頭の犬で見られ、これらの犬の4頭で吸引性肺炎が現われた。関連した死亡率は23%であった。症状を呈した期間は17~150日の範囲でしばしば診断が遅れた(臨床症状の発現から診断まで76日以上)。麻酔後の食道機能障害は、現在の予防的処置にもかかわらず1頭の犬において発展した費用のかかる消耗性の問題であった。(Dr.Kawano訳)
■食道異物の処置後に起こった致死的血胸
Fatal Hemothorax Following Management of an Esophageal Foreign Body
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:251-256 May-Jun'03 Case Report 15 Refs
Leah A. Cohn, DVM, PhD; Melissa R. Stoll, DVM; Keith R. Branson, DVM, MS; Alice D. Roudabush, DVM; Marie E. Kerl, DVM; Paige F. Langdon, DVM; Chad M. Johannes, DVM
10.8歳の避妊済みメスのトイプードルが、食道異物を思わせる1週間にわたるえずきと嘔吐の評価で紹介されてきた。上部胃腸(GI)内視鏡検査を来院日に実施し、異物を除去した。除去後の食道粘膜の肉眼的観察で、重度発赤、食道の背側面に不規則は灰色部分を伴う粘膜の潰瘍化が見られた。経皮的内視鏡による胃造瘻(PEG)チューブを設置し、術後のケアは、経腸栄養補給、H2阻害剤、スクラルフェート、アンピシリン、食道狭窄の予防のための短期デキサメサゾンとした。退院後17日目に再評価に来院し、PGEチューブを取り外した。
内視鏡検査で、食道異物があった部位にわずかな狭窄を認め、16-Frのバルーンカテーテル20-25psiで肉眼的粘膜出血もなく簡単に拡張した。その後PGEチューブは、チューブをカットし、内視鏡でマッシュルームチップを回収することで取り除いた。遠位食道にマッシュルームチップが来たとき、軽度の抵抗性があったが、最小限の力を入れるだけで以前狭窄があった部分を通過した。チューブのマッシュルーム部分を口から取り除くとすぐに重度徐脈性の低血圧が起こった。血胸と診断され、全血輸血や緊急性の開胸術など積極的な支持療法を行ったにもかかわらず死亡した。検死で、肉眼所見は、胸大動脈からの動脈枝(多くは開胸時結紮されている)の直径<0.1cm複数の裂離、小さな漿膜の穿孔を含む食道粘膜の潰瘍病変だった。組織病理学的に、もともとの粘膜傷害時に起こっている漿膜穿孔と裂離した動脈枝のあるレベルでの局所壊死性動脈中膜を認めた。
著者は、食道の障害が臨床的に検出されない全層の穿孔を起こし、続く炎症反応の結果食道と動脈の癒着の形成が起こり、また脈管の血管を通る血流の遮断の結果動脈内部の壊死を起こしたと推測する。PGEチューブのマッシュルームチップ除去中、わずかな頭側への牽引が、食道から動脈壁壊死部で背側肋間動脈の裂離を引き起こした。この症例は実際非常にまれな事であるが、最終的に異物除去後の食道の治癒中、栄養支持に使用したPEGチューブに関係する致死的合併症である。(Sato訳)
■イヌの食道気管支瘻のエックス線透視と内視鏡による位置推定
Fluoroscopic and Endoscopic Localization of an Esophagobronchial Fistula in a Dog
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:257-261 May-Jun'03 Case Report 14 Refs
Michael A. Nawrocki, DVM; Andrew J. Mackin, BSc, BVMS, MVS, DVSc; Ron McLaughlin, DVM, DVSc; H. Dan Cantwell, DVM, MS
10ヶ月オスのチワワを、7ヶ月に渡る吐出と再発する肺炎で検査した。臨床症状に最初気付いたのは3ヶ月で、ハムの小さな骨を摂取し、その後”咳き込んだ”時からだった。胸部エックス線検査で、右尾背側胸腔の横隔膜頭側に3×4cmの軟部組織とガスが混同した不透明部分が見られた。
バリウム投与後の再度エックス線検査で、食道腔内の軟部組織デンシティと、右尾肺葉の気管支内にある造影剤も明らかとなった。腔内軟部組織デンシティに関係する食道憩室と食道気管支瘻と診断した。胃食道内視鏡検査と気管支鏡検査を行い、右尾肺葉の内側気管支に通じる食道憩室が明らかとなった。直接連絡を、気管支壁の肉眼で見える穴に1mm心臓ガイドワイヤーを通し、食道憩室に出てくることを証拠として確認した。
その後開胸手術を行い、右中肺葉をどけて食道憩室を部分切除し、食道壁を修復した。術前の心臓ガイドワイヤーの内視鏡による再設置が、外科医による食道気管支瘻の確認と完全除去を補助した。術後回復は順調で、経皮内視鏡による胃造瘻(PEG)チューブで経腸栄養サポートを行った。8週後の術後再チェックで、イヌの経過は良好で、再度バリウム検査で胸腔に造影剤の漏出がないことを確認できた。缶詰の給餌をはじめ、PEGチューブは術後10週目に取り除いた。
食道気管支瘻は、イヌネコではまれな所見で、食道憩室を伴うとき、多くは後天性と考えられる。この報告のイヌで、憩室と瘻は若い時にハムの骨を摂取したことによる食道粘膜損傷の二次的なものだと著者は推測する。著者の知識で、これは食道気管支瘻の気管支鏡で確認が取れた最初の報告である。
■犬と猫の巨大食道症
Erick A Mears, DVM and Christine C Jenkins,
DVM; Compend Contin Educ Pract Vet 19[3]:313-326
Mar'97 Review Article 76 Refs ; Canine and
Feline Megaesophagus
巨大食道症は猫において稀で先天性あるいは二次的後天性疾患として発現します。犬において、巨大食道症は先天性疾患、二次的後天性疾患、あるいは成長期の特発性疾患としても起こり得るものです。この論文は巨大食道症の解剖、病因、原因、臨床徴候、診断そして管理を再検討します。病因は冒された患畜の神経経路を評価する経験的証拠を含みます。巨大食道症を発現し得る多くの疾患を詳細に描写しました。考察はもっとも一般的な原因である重症筋無力症、副腎皮質機能不全そして原因であるかもしれない甲状腺機能低下症と食道の閉塞性病変(血管輪、腫瘍、肉芽腫、狭窄、異物)に焦点を集めました。巨大食道症に関連したもっとも一般的な臨床徴候は吐出です。食道の運動性を評価するため、伝統的技術に加え新しい技術(すなわち、血圧計と細胞核シンチグラフィー)を用いました。最終的診断は胸部レントゲンあるいは食道バリウム造影による、拡張した食道を同定することが必要です。給餌方法と運動促進薬物の二者択一を含む医療管理を考察しました。(Dr.K訳)
■犬における不定型の原発性副腎皮質機能不全に関連した可逆性巨大食道症
Bartges JW et al; J Am Vet Med Assoc 201[6]:889-91
Sep 15'92 ; Reversible megaesophagus associated
with atypical primary hypoadrenocorticism
in a dog.
グルココルチコイド欠乏に関連した巨大食道症、高カルシウム血症、そして好酸球増加症が、甲状腺機能低下症の併発した避妊済の雌のプードル5才で認められました。臨床的、生化学的異常はグルココルチコイド代替治療で無くなり、犬は診断後29ヵ月間正常でした。犬の品種と性別そして二次的内分泌障害の存在は、基礎的免疫異常を裏付けました。(Dr.K訳)
■イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルにおける巨大食道症と
甲状腺機能低下症およびチロキシン補充に対する反応
Arnold N. Plotnick, MS, DVM; Canine Pract
24[1]:14-17 Jan/Feb'99 Case Report 19 Refs
; Megaesophagus and Hypothyroidism in an
English Springer Spaniel and Response to
Thyroxine Supplementation
5才の避妊済のイングリシュ・スプリンガー・スパニエルが,急性の咳込みと吐出が始まったとのことで診察をしました。巨大食道症と甲状腺機能低下症が診断され、犬は給与方法変更に加え抗生物質投与と甲状腺ホルモン補充する治療によく反応しました。巨大食道症は本質的に解消されました。犬は5ヶ月間、満足行く状態でいかなる咳き込みや吐出も現わしておりません。(Dr.K訳)
■犬における後天性巨大食道症の危険因子
Alison R. Gaynor, DVM et al; J Am Vet Med
Assoc 211[11]:1406-1412 Dec 1'97 Reports
of Original Studies 65 Refs ; Risk Factors
For Acquired Megaesophagus In Dogs
目的:犬における後天性巨大食道症に関連する危険因子を明らかにすること。
計画:対照実験研究
動物:後天性巨大食道症の犬136頭(患犬);一般病院集団からの犬272頭と甲状腺刺激ホルモン反応試験実施犬151頭(コントロール犬)。犬は全て6ヵ月齢以上。
手順:過去10年間の間に巨大食道症と診断された犬の医療記録を再検討しました。6ヵ月齢以上で吐出や嘔吐を臨床兆候として現わし、レントゲンで一般的に食道が拡張しているのが明らかにされたものを基準に対象としました。食道閉塞性疾患、脳幹疾患、頚部外傷の犬は解析から除外しました。統計学的解析は確立比を用い、95%信頼区間で、両側t検定で行いました。コントロール犬は診断された年齢を基準とし、患犬と比較しました。
結果:巨大食道症を持つ犬は0.75才から18才(平均8.1才)の範囲に及んでみられ、コントロール犬より有意に高齢で体重の重い犬でありました。雌より雄が多かったものの、性別と繁殖状態は巨大食道症と関連がありませんでした。ジャーマン・シェパード、ゴールデンレトリバー、アイリッシュ・セッターは巨大食道症の発現リスクが増大しました。末梢神経障害、喉頭麻痺、後天性重症筋無力症、食道炎、そして捻転を伴うあるいは伴わない、慢性または再発性胃拡張は巨大食道症の発現リスク増大と関連がありました。甲状腺機能低下症は巨大食道症と関連がありませんでした。
臨床関連:後天性巨大食道症の犬は末梢神経障害、喉頭麻痺、後天性重症筋無力症、食道炎、そして捻転を伴うあるいは伴わない、慢性または再発性胃拡張の有無を評価するべきです。巨大食道症の犬は甲状腺機能低下症と評価されているかも知れません。しかし今回の研究では後天性巨大食道症と甲状腺機能低下症の間に明らかな関連性を示しませんでした。(Dr.K訳)
★猫30頭で、錠剤やカプセル剤の食道通過の評価
Donald S. Westfall et al; J Vet Intern Med
15[5]:467-470 Sep-Oct'01 Original Article
16 Refs ;Evaluation of Esophageal Transit
of Tablets and Capsules in 30 Cats
私たちは、猫で、錠剤に起因する食道炎と食道狭窄形成について報告してきています。提唱しているメカニズムは、異常な食道中の錠剤の停留によって、食道炎と、それに続いて食道狭窄形成を起こすということです。
この研究の目的は、猫で食道狭窄形成を部分的にでも説明できるかどうか見極めるために、錠剤やカプセルを単独(乾いたまま飲む)で、または水を飲ませた(湿らせて飲む)あとに投与し、その通過の状態を評価しました。エックス線透過検査を、用い評価しました。
乾燥した錠剤が、胃の中にちゃんと到達した割合は、30,60秒では0%、90秒で6.7%、120秒で13.3%、180と240秒では26.7%、300秒で36.7%でした。湿った錠剤では、30秒で90%、60秒で93.3%、その後は100%となりました。乾燥したカプセルでは、それぞれの間隔時で16.7%でした。湿ったカプセルでは、30秒で96.7%、その後は100%でした。
それぞれの時間間隔で、湿ったものの嚥下は、乾いたものより胃への到達率が非常に高かったです(P<.05)。この研究で、錠剤やカプセルは、湿ったものより乾いたものの方が、より長く食道に停留する事を示しています。
この研究を基にして、食道クリアランスを上げるために、錠剤やカプセルを経口投与するときには、ルーティンな水の投与を推奨します。この実践は、医原性の食道炎や狭窄形成を予防する手助けとなるかもしれません。(Dr.Sato訳)