■犬の難治性てんかん重積状態のプロポフォールと比較したアルファキサロンの効果と安全性
Efficacy and safety of alfaxalone compared to propofol in canine refractory status epilepticus: a pilot study
Front Vet Sci. 2024 Jul 8:11:1383439.
doi: 10.3389/fvets.2024.1383439. eCollection 2024.
Tania Al Kafaji , Andrea Corda , Marios Charalambous , Elsa Murgia , Ilaria Tartari , Mariangela Puci , Pasquale Debidda , Antonella Gallucci
イントロダクション:難治性てんかん重積(RSE)は、第一、第二選択の抗発作薬にあまり反応しない発作活動と定義づけられる。プロポフォール(PPF)の静脈内持続定量点滴(CRI)は、犬や猫のRSEの治療に使用されることが多い。RSEにおけるアルファキサロン(ALF)の抗発作活性は、種々の実験研究で証明されている。この研究は、犬のRSEに治療において、ALFの筋肉内投与後のCRIとPPFの静脈内投与後のCRIの臨床効果と安全性を比較した。
素材と方法:第一および第二薬剤に反応しなかったてんかん重積状態で紹介された飼い犬の多施設、前向き、無作為化臨床試験だった。特発性あるいは構造的てんかんが疑われた、または確認された犬を含めた。犬は無作為にPPFあるいはALF群に振り分けられ、各群は6時間の薬剤CRIを受けた。薬剤の量は3時間目から6時間後の終了まで、1時間ごとに25%漸次減量した。犬は24時間治療的点滴中、あるいは薬剤中止後24時間以内にてんかん発作の再発を基にして、応答犬あるいは非応答犬に分類した。一変量統計学的解析を実施した。
結果:20頭の犬を研究に登録した。10頭(10/20)の犬をPPF群、10頭(10/20)の犬をALF群に無作為に振り分けた。PPF群の6頭(6/10)、ALF群の5頭(5/10)で成功結果が得られた。PPF群の6頭(6/10)、ALF群の3頭(3/10)で副作用が記録された。群間の結果あるいは副作用の有無で統計学的有意差は見られなかった。
議論:この予備的研究の結果、ALFは犬のRSEの治療に対し、PPFの代わりとして有効で安全だと考えられ、筋肉内投与の追加の利点があることが示唆される。しかし、それらの薬剤を使用する時、気道や血行動態のサポートを提供するよう注意すべきである。(Sato訳)
■てんかんの犬における血清フェノバルビタール濃度に対するゾニサミド経口投与の影響
The effect of oral zonisamide treatment on serum phenobarbital concentrations in epileptic dogs
Front Vet Sci. 2024 May 29:11:1389615.
doi: 10.3389/fvets.2024.1389615. eCollection 2024.
Elizabeth Mahon , Oliver Marsh , Ane Uriarte , Fabio Stabile
ゾニサミドは犬のてんかん発作の治療に対して用いられる。主にCYP450肝酵素により代謝される。フェノバルビタール(PB)と併用した時、ゾニサミドクリアランスは増加し、その消失半減期は減少する。しかし、過去に犬の血清PB濃度に対して持つかもしれないゾニサミドの影響は述べられていない。
特発性てんかんと診断された8頭と構造的てんかんの2頭の犬で、ゾニサミドを8.0mg/kg/12h(7.4-10mg/kg/12h)で開始し、その後てんかん発作の頻度で増加した。
9頭はPBを12時間毎に投与され(4.2mg/kg/12h(3.8-6mg/kg/12h))、1頭はPBを8時間毎に投与された(6mg/kg/8h)。PB用量を増加させず、ゾニサミドの追加後、10頭中9頭のその後の測定でフェノバルビタールの血清濃度上昇が観察された。5頭において血清フェノバルビタール濃度は、報告されている肝毒性濃度以上の濃度に上昇した(トラフ>35mg/L)。これはPBの毎日の用量削減を必要とした。
この症例シリーズは、ゾニサミドがPBの代謝に影響を及ぼし、次第にPB血清濃度の上昇を引き起こすことを示唆する。(Sato訳)
■新規に特発性てんかんと診断された犬に対するゾニサミド単剤治療の臨床効果と許容性
Clinical efficacy and tolerability of zonisamide monotherapy in dogs with newly diagnosed idiopathic epilepsy: Prospective open-label uncontrolled multicenter trial
J Vet Intern Med. 2024 May 23.
doi: 10.1111/jvim.17108. Online ahead of print.
Miyoko Saito , Akinori Nomura , Daisuke Hasegawa , Naoyuki Watanabe , Keiko Uchida , Seiichi Okuno , Masahiro Nakai , Kensuke Orito
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背景:ゾニサミド(ZNS)は犬と猫のてんかんの治療に使用されるより新しい世代の抗痙攣薬(ASM)である。しかし、特に単独治療に関係する化学的および臨床的情報は限られている。
目的:特発性てんかん(IE)と新規に診断された犬において、ZNS単独治療の抗痙攣効果と許容性を評価する。
動物:新規にIEの診断を受けた56頭の飼い犬
方法:これは前向き多施設オープンラベル非対照研究だった。全ての犬はASMを使ったことがなく、12週間以内に2回以上の発作があった。犬には2.7-14.4mg/kg
ZNS PO q12hを投与し、12週間以上フォローアップした。効果の評価に対し、12-週の維持治療期間からのデータを、治療前4-から12-週の期間のデータを比較した。全体のZNS投与期間からのデータは許容性の評価に使用した。
結果:56頭の犬を研究に含めた。そのうち53頭は効果を評価した;40頭(76%)は発作頻度が50%以上減少し、29頭(55%)は発作がなくなった。発作頻度が50%以上減少した犬の90%で、平均ZNSの用量は4.8(範囲2.7-8.6)mg/kg q12hで、平均トラフ血漿ZNS濃度は18.9(範囲、8.0-48.0)μg/mLだった。56頭中7頭(13%)において、活動性低下、食欲減少、嘔吐、後肢の虚弱、軟便、便秘が観察されたが、軽度で一時的だった。血液検査で関連した変化は認められなかった。
結論と臨床的重要性:我々の研究は、新規にIEと診断された犬において、ZNS単独治療は効果的で許容性も良いことを示唆する。(Sato訳)
■薬剤耐性の特発性てんかんの犬51頭に対する補助治療としてカンナビジオールの効果と安全性:二重盲検交差試験
The efficacy and safety of cannabidiol as adjunct treatment for drug-resistant idiopathic epilepsy in 51 dogs: A double-blinded crossover study
J Vet Intern Med. 2023 Oct 27.
doi: 10.1111/jvim.16912. Online ahead of print.
Aaron J Rozental , Brooke G Weisbeck , Isabella Corsato Alvarenga , Daniel L Gustafson , Breonna R Kusick , Sangeeta Rao , Lisa R Bartner , Stephanie McGrath
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背景:特発性てんかん(IE)の犬の約30%は薬剤耐性である。近年の研究では、IEの犬に対しカンナビジオール(CBD)が効果的な抗てんかん薬かもしれないと言われている。
目的:薬剤耐性IEの犬において、抗発作薬(ASDs)にCBDを追加することで発作頻度に対する評価と、有害事象を報告すること
動物:51頭の犬。最低1種類のASDを投与しても月に最低2回以上の発作がある犬を研究に含めた。
方法:二重盲検プラセボ-コントロール交差試験。12頭で5mg/kg/dayでは用量無益に合致し、次の39頭は9mg/kg/dayの用量を使用した。犬は無作為にCBDとプラセボに振り分けて3か月間投与し、1か月のウォッシュアウト期間を設けた。発作の総数および発作日数を記録した。診断検査は研究を通し定期的に実施した。
結果:9mg/kg/dayの用量で、プラセボに比べ総発作頻度は有意に減少した。CBDを投与した犬で発作日数は24.1%減少し、プラセボでは5.8%増加した(P≦.05)。反応犬の頭数に有意差は見つからなかった(総発作数あるいは発作日数≧50%減少)。肝酵素活性は2つの用量共に増加した。CBD投与フェーズで食欲低下と嘔吐はより一般的だった(P≦.05)。
結論と臨床的重要性:カンナビジオールを9mg/kg/dayで経口投与した時、プラセボに比べ総発作および発作日数を減少させた。犬にCBDを投与する時は肝酵素のモニターを行うべきである。(Sato訳)
■犬と猫におけるレベチラセタムの薬物動態と臨床応用のレビュー
A review of the pharmacology and clinical applications of levetiracetam in dogs and cats
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Nov 21.
doi: 10.1111/vec.13355. Online ahead of print.
Alicia Mastrocco , Jennifer Prittie , Chad West , Melissa Clark
目的:犬と猫における抗てんかん薬(AED)であるレベチラセタム(LEV)の薬物動態の再調査と要約および、臨床的有用性を議論する
データ源:獣医及び人医の医療文献の査読と著者の臨床経験
要約:LEVは他のAEDsの作用と異なるメカニズムを持つAEDである。ヒトと小動物において、LEVは直線的動態、優れた経口生物学的利用能、最小限の薬物-薬物相互作用を示す。重大な副作用は、どの生物種でも報告はほとんどない。LEVの使用は小動物のてんかんの治療に支持を得ており、門脈体循環シャント、神経低糖症、外傷性脳傷害の患者に広く臨床応用されている。ヒトにおいて、LEVは痴呆を伴う患者の認知機能を改善するかもしれない。
結論:LEVはヒトの患者で十分実証された効果を持つ許容性の良いAEDである。獣医療でその使用はより一般的になっているが、小動物のてんかんにおいて、第一選択の単独療法としての役割は調査中である。LEVに関するヒトと動物の文献のこのレビューは、てんかんのヒトと動物、同時に他の疾患の状況におけるその役割を述べ、臨床的使用に対する推奨法を提供する。(Sato訳)
■69頭の猫のフェノバルビタール誘発性血液変化の回顧的評価
A retrospective evaluation of phenobarbital-induced hematologic changes in 69 cats
Vet Clin Pathol. 2023 Sep 18.
doi: 10.1111/vcp.13259. Online ahead of print.
Anna Dohány , Abigail Guija-de-Arespacochaga , Daniela Fux , Christina Silberbauer , Ákos Pákozdy
背景:フェノバルビタール(PB)は、猫の再発性てんかん発作に対する第一選択治療として使用される。ヒトや犬でPBによる抗てんかん治療の良く知られている副作用に血液異常があるが、猫でそのような変化についてはあまり分かっていない。
目的:この研究の目的は、猫でPB治療中、血球減少の有病率と臨床的関連を調査することだった。
方法:この単一施設、回顧的臨床研究において、ウィーンの獣医大学(VMU)の小動物病院を受診した特発性てんかんを疑う69頭の猫を含めた。各猫のCBCを実施し、ヘマトクリット、白血球、好中球、血小板の変化を記録し、グレード付をした。
結果:69頭中53頭(76.8%)は、PB治療中に、最低1細胞分画の減少を伴う血球減少を示した。最も一般的な変化は、好中球減少(60%)、続いて白血球減少(49.3%)、血小板減少(24.1%)、貧血(20.3%)だった。ほとんどの変化は軽度から中程度だった;ただ1頭(1.5%)は重度白血球減少と好中球減少を示し、1頭(1.5%)は治療範囲以下の血清PB濃度で命にかかわるような好中球減少だった。それらの猫はてんかん事象に関連するもの以外に臨床徴候を呈さなかった。PB治療中に白血球および好中球減少傾向も見られた。
結論:猫でPBの長期治療において、血清薬物濃度が治療範囲内であったとしても、血球減少は多く発生するかもしれない。しかし、臨床症状は一般に軽度から中程度で、重度はあまりない。(Sato訳)
■緊急発作疾患の犬の病院外のレスキュー薬物投与:飼い主の見解
Out-of-hospital rescue medication in dogs with emergency seizure disorders: an owner perspective
Front Vet Sci. 2023 Oct 2:10:1278618.
doi: 10.3389/fvets.2023.1278618. eCollection 2023.
Charlotte Kähn , Sofie F M Bhatti , Sebastian Meller , Nina Meyerhoff , Holger A Volk , Marios Charalambous
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背景:てんかん重積状態やクラスター発作のような緊急発作疾患は、発作活性の延長している間に自然に止まる確率は低く、次第により治療に抵抗性となる。犬のてんかん患者において飼い主による発作発現時のレスキュー薬物の早期投与(特にベンゾジアゼピン)は、救命と脳の保護ができる。犬において病院環境でレスキュー薬物の使用を評価した臨床研究はあるが、今まで飼い主の見解は評価されていない。
仮説あるいは目的:家での飼い主による緊急発作の犬に対するレスキュー薬物の使用を評価する。
方法:緊急発作疾患の犬の飼い主へのオンライン調査を基にした観察研究
結果:1563頭の犬の飼い主にアンケートに答えてもらい、761人の解析に適した完全で正確な回答が得られた。そのうち、71%はジアゼパム、19%はミダゾラム、6%はレベチラセタム、3%はロラゼパム、4%は1つ以上のレスキューあるいは他の薬物を投与していた。全体の鼻腔内ミダゾラムあるいは直腸内ジアゼパムに対する飼い主の見解を基にした成功率は、それぞれ97%と63%だった。鼻腔内ミダゾラムおよび直腸内ジアゼパム投与に対する飼い主の順守レベルは、それぞれ95%と66%と報告した。
結論と臨床的重要性:この長鎖集団において直腸内ジアゼパムが最も多く使用されるレスキュー薬剤だが、鼻腔内ミダゾラムは飼い主による有効性、発作がやむまでの時間、飼い主の順守に関してより良いオプションとして認められていた。(Sato訳)
■特発性てんかんの犬の睡眠及び発作頻度に対するある運動の介入の効果
Effect of an intervention of exercise on sleep and seizure frequency in idiopathic epileptic dogs
J Small Anim Pract. 2022 Nov 11.
doi: 10.1111/jsap.13568. Online ahead of print.
K Grady , S Cameron , S P Kent , H Barnes Heller , M M Barry
目的:この研究の目的は、決められた20%の活動を増加させたてんかんの犬と、活動を増加させなかったてんかんの犬との間で、睡眠と発作頻度を比較することだった。
方法:抗てんかん薬で治療されている69頭の犬を、6か月の前向き無作為化プラセボ対照臨床試験の治療の意図による分析に登録した。活動レベルと睡眠スコアの測定には、犬活動モニタリング機器を使用した。
結果:治療の意図による分析を用い、コントロール群と比べて処置群は、平均一月あたり0.381回多い(95%CI:0.09-0.68)の発作があったが、発作の日数/月に統計学的有意差はなかった。少なくとも10%の活動を増加させた犬のサブグループ解析で、一部の犬はコントロール群と比べ、一月あたり0.719多い(95%CI:0.22-1.22)発作があり、0.581発作の日数/月(95%CI:0.001-1.16)だった。コントロール群と比べ、処置群の睡眠スコアは1.2%増加した(95%CI:0.2-2.3%)。
結論:コントロール群と比べ、活動を増加させた特発性てんかんの犬において、発作頻度と睡眠スコアはわずかに増加したが有意だった。(Sato訳)
■イギリスにおける犬の感染性心内膜炎:77症例(2009-2019)
Infective endocarditis in dogs in the UK: 77 cases (2009-2019)
J Small Anim Pract. 2022 Nov 6.
doi: 10.1111/jsap.13561. Online ahead of print.
M Berrezaie , D Connolly , J Cruzado , E Mederska , J Dukes-McEwan , K Humm
目的:イギリスにおける犬の感染性心内膜炎の原因菌、臨床的特徴および結果を調査する
素材と方法:2009年12月から2019年12月までの期間で、感染性心内膜炎の犬に対し、獣医紹介病院3か所の医療記録を検索した。シグナルメント、臨床症状、原因菌、罹患した弁、治療、生存データを記録した。
結果:感染性心内膜炎の可能性あるいは確定した(修正Duke基準に従い)77症例を含めた。多くは大型犬種だった(40/77-51.9%)。77頭中47頭(61%)はオス犬で、平均年齢は7.3±3歳だった。原因菌は77頭中26頭(33.8%)で確認した。最も一般的な病原体はE.coli(7/27-25.9%)、パスツレラ属(5/27-18.5%)、スタフィロコッカス属(4/27-14.8%)、コリネバクテリウム属(4/27-14.8%)だった。バルトネラ属はどの犬でも検出されなかった。僧帽弁が一般的に罹患した(48/77-62.3%)。臨床的特徴は非特異的で、元気消失が一般的に観察された臨床症状だった(53/77-68.8%)。53頭(68.8%)は生存して退院した。退院後の生存期間中央値は、425日(2-3650日)だった。うっ血性心不全の発症は、より悪い結果と関係した。心臓トロポニン濃度、抗血栓薬の使用、血栓塞栓あるいは不整脈の発症は結果と有意な関係がなかった。
臨床的意義:生存して退院した感染性心内膜炎のいくらかの犬は、長期生存が可能である。原因菌が検出できないことは普通で、USAよりもUKにおいて、バルトネラ属は犬の感染性心内膜炎の原因として一般的ではないかもしれない。(Sato訳)
■日本の動物病院で犬猫に対する抗癲癇薬使用に対するアンケート調査
Questionnaire survey on the usage of antiseizure drugs for dogs and cats in Japanese veterinary hospitals (2020)
Vet Med Sci. 2022 Apr 20.
doi: 10.1002/vms3.810. Online ahead of print.
Satoshi Mizuno , Rikako Asada , Daisuke Hasegawa
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てんかんは、獣医療で一般的な神経疾患である。近年、犬と猫における抗癲癇薬(ASDs)使用に対するエビデンスを基にした推奨あるいは系統的レビューが発表されているが、国ごとに経済上、地理的、組織学的背景および/あるいは各ASDの入手に多くの違いがある。
この研究において、2020年に日本の511の動物病院で、ASDsの使用に関するアンケート調査を行った。
結果は、犬の特発性(83%)及び構造的(76%)てんかんに対し、最も一般的に処方された薬剤はゾニサミド(ZNS)だった。猫において、特発性(48%)及び構造的(51%)てんかんに対し、多く処方されたのはフェノバルビタールだったが、ZNSも多く処方された(それぞれ41%、36%)。また、犬の特発性てんかんに対し、ANSは併用療法で最も多く使用されるASDだった。
また、ASD血中濃度を測定する頻度も調査した;しかし、比較的高比率の病院(22%)はそのような測定を実施していなかった。
両動物種に対し、ZNSに対するエビデンスレベルはいまだに悪いが、日本においては第一選択薬のASDとして一般的に使用される。ZNSに対する大規模およびより高度なエビデンシャル研究と、適切な抗癲癇薬物治療に対する臨床家の教育が必要である。(Sato訳)
■犬の全身性強直間代性発作と失神の鑑別において低リン血症の診断的有用性:症例コントロール研究
The diagnostic utility of hypophosphatemia for differentiating generalized tonic-clonic seizures from syncope in dogs: A case control study
Vet J. 2022 Oct 8;105914.
doi: 10.1016/j.tvjl.2022.105914. Online ahead of print.
E Kelmer , D G Ohad , M H Shamir , O Chai , S Lavie , G A Sutton , I Aroch , S Klainbart
ヒトでは、全身性強直間代性発作(GTCS)に続き、一時的な低リン血症が検出されることが多く、血清リン濃度(sP)はGTCSと失神の鑑別マーカーとして役立つ。
この回顧的研究の目的は、犬のCTCSに対する診断マーカーとして、低リン血症の有用性を評価することだった。
GCTSの犬87頭と失神の犬26頭を登録した。受診から3時間以内に発生し、sPと血清クレアチニン(sCr)を測定している犬を含めた。年齢が1歳未満、あるいはsCrが176.8μmol/Lを超えている犬は除外した。
sCrにおいて群間の違いはなかった。発作群の28頭(32%)に低リン血症(sP≦0.97mmol/L)が発生し、失神群には見られなかった。失神群(1.35mmol/L(範囲、0.97-2.71mmol/L)に比べ、発作群(1mmol/L、(範囲、0.31-2.87mmol/L)のsP中央値は有意に低かった(P<0.001)。さらに、発作中の犬(n=24/87;28%)のsP中央値(0.9mmol/L(範囲、0.3-1.74mmol/L)は、そうではない犬(1mmol/L(範囲、0.33-2.18mmol/L)に比べて有意に低かった(P=0.050)。
GTCSのマーカーとしてsPのROC解析で、AUC0.757(95%CI:0.667-0.847)が得られ、最適なカットオフポイントは0.97mmol/Lで、対応する特異性と感受性レベルはそれぞれ100%と44%だった。
結論として、特定ケースでsPは犬のGTCSと失神の鑑別を行う追加の診断ツールとして役立つ。低リン血症(特にsP<0.97mmol/L)は、GTCSを規定する診療において役立つかもしれない。(Sato訳)
■ゾニサミド誘発性の血液疾患が疑われた犬4例
Presumed zonisamide-induced blood dyscrasias in four dogs
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Jun 23.
doi: 10.1111/vec.13222. Online ahead of print.
Maria Brandifino , Virginia Sinnott-Stutzman , Allen Sisson , Megan Whelan
目的:ゾニサミド誘発性の血液疾患と思われた犬4症例を記述する
症例サマリー:2007年から2018年までにエンジェル動物メディカルセンター、2014年から2019年までにタフツ大学獣医学カミングズ校で、4頭の犬がゾニサミドの投与中に熱性好中球減少を呈した。どの犬の検査においても敗血症性の病巣は見つからず、臨床症状は特異体質による薬物反応によるものだった。全てのWBC数は薬剤投与中止で正常に回復し、全ての犬は生存した。
新規あるいは独特な提供情報:ゾニサミド誘発性と思われる血液疾患は珍しい合併症で、過去に文献で報告されていない。(Sato訳)
■犬のてんかん重積状態の短期死亡および再発に関係するリスクファクター
Risk factors associated with short-term mortality and recurrence of status epilepticus in dogs
J Vet Intern Med. 2022 Jan 7.
doi: 10.1111/jvim.16353. Online ahead of print.
Rory Fentem , Alberta de Stefani , Rodrigo Gutierrez Quintana , Emili Alcoverro , Gareth Michael Couper Jones , Pablo Amengual-Batle , Rita Gonçalves
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背景:てんかん重積状態(SE)は犬や飼い主に対し、深刻な結果と関係する非常事態である。SEの犬の短期死亡あるいは再発に対するリスクファクターに関するデータは限られている。
目的:犬のSE の短期死亡(安楽死あるいは自然死)および再発に関係するリスクファクターを確認する
動物:SEのエピソードが持続する飼い犬124頭
方法:貢献している施設にSEで受診した犬の医療記録から集めたデータを用いた回顧的多施設研究。SEの短期死亡および退院後の再発に関係するリスクファクターを確認するため、マニュアル変数減少ステップワイズ法を用いた変量ロジスティック回帰解析を実施した。
結果:罹患犬の短期死亡率は29.8%だった。短期死亡率に有意に関係したファクターは、年齢増加、より短い期間の入院、到着前のSEの発症、潜在的致死的病因によるSEが含まれた。再発は退院した27%の犬で認められた。SEの再発に有意に関係するファクターは、薬剤耐性のてんかんの過去の病歴、焦点性発作表現型の優勢が含まれた。
結論と臨床的重要性:我々の結果は、SEの犬において短期死亡率および再発に対するリスクファクターに関して臨床医や飼い主への情報提供に役立つと思われる。(Sato訳)
■難治性特発性てんかんの犬に対し追加治療としてテルミサルタン:非無作為化、非対照、オープンラベル臨床試験
Telmisartan as an add-on treatment for dogs with refractory idiopathic epilepsy: a nonrandomized, uncontrolled, open-label clinical trial
J Am Vet Med Assoc. 2022 Feb 24;1-6.
doi: 10.2460/javma.20.12.0683. Online ahead of print.
Erez Hanael , Orit Chai , Lilach Konstanitin , Laura Gibeon , Kira Rapaport , Marco Ruggeri , Alon Friedman , Merav H Shamir
目的:難治性特発性てんかんの犬において、テルミサルタン追加処置の発作頻度に対する影響を評価する
動物:2つ以上の抗てんかん薬で現在治療して、月に2回以上全身性発作がある特発性てんかんの11頭の飼い犬
方法:4から16か月間、12時間毎に0.25-1mg/kgの用量でテルミサルタンを経口投与した。テルミサルタン投与前後の発作頻度を記録した。
結果:10頭が4か月の治療プロトコールを完了した。1頭は血清クレアチニン濃度の一時的上昇のために除外した;残りの10頭にテルミサルタンの副作用は観察されなかった。予期した30%のプラセボ効果以上に発作頻度の減少は10頭中7頭で明らかだった。長期(12-16か月)のフォローアップ情報は6頭で得られ、そのうち4頭は発作頻度がさらに減少した。発作頻度の差は統計学的に有意ではなかった。検査した7頭において、治療期間を通し血清フェノバルビタール濃度に有意差は見つからなかった。
臨床関連:難治性特発性てんかんの犬において、追加の抗てんかん薬としてテルミサルタンを投与した時、発作頻度を低下させる可能性がある。無作為化、二重盲検、プラセボ-対照試験が、テルミサルタンの本当の効果を判定するために必要である。我々の結果を基に、難治性特発性てんかんの犬54頭のサンプルサイズが必要だろう。(Sato訳)
■治療中の特発性てんかんの犬とマッチしたコントロール犬の日中と夜間の活動性の比較
Daytime and nocturnal activity in treated dogs with idiopathic epilepsy compared to matched unaffected controls
J Vet Intern Med. 2021 Jul;35(4):1826-1833.
doi: 10.1111/jvim.16205. Epub 2021 Jul 5.
Megan Barry , Starr Cameron , Sean Kent , Heidi Barnes-Heller , Kylie Grady
Free PMC article
背景:犬において、抗てんかん薬(AED)は嗜眠を引き起こすが、活動レベルに対するAEDの影響に関する定量的データは得られず、AEDsが睡眠の質にどのように影響するのかは、ほとんど知られていない。
目的:過去に特発性てんかん(IE)と診断されAEDsで治療されている犬と、年齢、犬種が同じコントロール犬と比較し、活動レベルと夜間の活動性を定量的に比較する
動物IEの犬62頭とコントロール犬310頭
方法:3か月の前向き平行観察研究である。全ての犬において日々の活動レベルと睡眠スコアを測定するため、犬用活動モニタリング機器を使用した。
結果:AEDsで治療しているIEの犬は、コントロール犬と比べて平均18%基礎活動レベルが低かった(P=.005;点推定=0.82、95%CI、0.75-0.90)。コントロール犬と比べ、フェノバルビタールと臭化カリウム(KBr)の併用で治療しているIEの犬の活動性は平均28%低下していた(P=.03;点推定=0.72;95%CI、0.62-0.82)。コントロール犬とAEDsを投与されているIEの犬の平均睡眠スコアに有意差はなかった(P=.43)。しかし、KBrのより高用量は、より低い睡眠スコアと関係した(P=.01)。
結論:AEDsを投与されているIEの犬の活動レベルは、コントロールと比較してより低いが、睡眠スコアに差はなかった。フェノバルビタールとKBrの併用は、グループ間で最大の活動性の低下があった。KBrのより高い用量は、てんかんの犬の睡眠活動に影響するかもしれない。(Sato訳)
■ゾニサミドを経口投与している犬の肝障害の発生率:384症例の回顧的研究
Incidence of hepatopathies in dogs administered zonisamide orally: A retrospective study of 384 cases
J Vet Intern Med. 2022 Mar 2.
doi: 10.1111/jvim.16398. Online ahead of print.
Tess K Smith , Starr Cameron , Lauren A Trepanier
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背景:犬でゾニサミド投与による急性肝障害は2頭で報告されているが、全体の肝障害の発生率は不明である。
目的:ゾニサミドを経口投与している犬の肝障害の発生率の特徴を述べる
動物:ゾニサミドを経口投与している384頭の犬
方法:多施設回顧的研究。ゾニサミドPOを処方している犬で、最低3か月(急性暴露)および>3か月(慢性暴露)フォローアップした症例を医療記録から検索した。報告された臨床症状、身体検査所見、血清生化学パネルを、肝障害の可能性に対し再検討した。血清ALTおよびALP活性、アルブミン濃度を全ての入手可能な症例に対して記録した。
結果:ゾニサミド投与から13-16日後、384頭中2頭(0.52%、95%CI、0.06-1.9)に急性の臨床的肝障害が見つかった。追加の1頭は、血清ALT活性が上昇していたが臨床症状はなかった。それら3頭中2頭はゾニサミドの投与中止後回復し、1頭は肝不全のために安楽死された。ゾニサミドを長期投与した117症例のうち、10頭はALPが上昇し、6頭はALTが上昇し、1頭は低アルブミン血症だった。長期にゾニサミドで治療した犬(中央値、20か月;範囲、5-94か月)において、肝疾患の臨床症状が見られた犬はいなかった。
結論と臨床的重要性:ゾニサミドを経口投与した犬に関係した、急性の命にかかわる可能性のある肝障害は、1%未満の犬に発生すると算出され、投与から最初の3週間で見られた。ALTおよびALP活性の無症候性の異常は、ゾニサミドを長期投与中の犬の<10%に見つかり、肝疾患の臨床症状を気付いたものはなかった。(Sato訳)
■3頭の犬に見られたゾニサミドに関係する異常行動:症例報告
Abnormal Behavior Episodes Associated With Zonisamide in Three Dogs: A Case Report
Front Vet Sci. 2021 Oct 29;8:763822.
doi: 10.3389/fvets.2021.763822. eCollection 2021.
Shinichi Kanazono , Masayasu Ukai , Akira Hiramoto
ヒトの医療で、抗てんかん薬に関係する精神的副作用は良く認識されている。
この症例報告は、異常行動を呈した推定特発性てんかんの3頭を述べる。
異常行動は、家族に対して突然怒ることと攻撃性、不眠、落ち着きがない、および/あるいは絶えず注意-探す行動が含まれた。2頭のMRI検査と脳脊髄液分析で目立ったものはなかった。異常行動はゾニサミドの用量漸増に伴い悪化し、ゾニサミド中止後5日以内にほぼ完全に消失した。ゾニサミドの再投与後、数日以内に全く同じことが再発し、ゾニサミドの中止後すぐに再び消失した。症例2において、他の抗発作薬剤の用量調節で、それらの行動の有意な変化は見られなかった。ゾニサミドに関係する攻撃行動を含む精神副作用はヒトで広く認識されているが、これは臨床現場の犬の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の特発性頭部振戦症候群のイメピトインによる治療
Imepitoin for treatment of idiopathic head tremor syndrome in dogs: A randomized, blinded, placebo-controlled study
J Vet Intern Med. 2020 Nov 7.
doi: 10.1111/jvim.15955. Online ahead of print.
Nina Schneider , Heidrun Potschka , Sven Reese , Franziska Wielaender , Andrea Fischer
背景:特発性頭部振戦症候群は原因不明の発作性運動障害である。自然寛解が起こるかもしれないが、持続性の重度に罹患した犬においては治療を求められるかもしれない。この研究の対照研究は入手できない。
仮説/目的:ガンマアミノブチル酸作動性で抗不安効果のある薬剤は、振戦を減少させるだろう。
動物:重度の緩和することがない頭部振戦で、特発性頭部振戦症候群の臨床的仮診断のある24頭の犬
方法:前向き盲検プラセボ-対照臨床試験で特発性頭部振戦が頻繁に起こる犬において、イメピトインとプラセボを比較する。効果の評価は、3か月基礎と比較した頭部振戦がない期間の延長を表すT2/T1を使用した。振戦がおさまった場合、あるいは基礎期間中の最長よりも3倍長く振戦がない期間があった場合、反応有と考慮した(T2/T1≧3)。サンプルサイズの計算は、T2/T1上のイメピトインのより大きな効果と考えた(Cohen’s d=0.8)。
結果:プラセボ群で反応した犬はいなかった(0/12)。イメピトイン群において、反応のあった犬の割合は17%(2/12;P=0.18)で、T2/T1
3.8と4.0だった。平均T2/T1はイメピトイン群で1.0±1.4、プラセボ群で0.4±0.4(P=0.37)だった。
結論と臨床的重要性:イメピトインは有意な全体の利益をあげられなかった。今後の研究は、一般的な病態生理と同様の併存症のサブグループの治療に焦点を当てるべきである。(Sato訳)
■犬の発作に対する救急治療としてミダゾラムの持続定量点滴
Continuous rate infusion of midazolam as emergent treatment for seizures in dogs
J Vet Intern Med. 2020 Dec 16.
doi: 10.1111/jvim.15993. Online ahead of print.
Kathryn Y Bray , Christopher L Mariani , Peter J Early , Karen R Muñana , Natasha J Olby
背景:群発発作(CS)あるいはてんかん重積状態(SE)の犬において、ミダゾラムの持続定量点滴(CRI)が有効かもしれない
目的:CSあるいはSEの犬においてミダゾラムのCRIの使用と安全性を述べる
動物:CSあるいはSEで獣医教育病院に来院した106頭の飼育犬
方法:ミダゾラムのCRIで治療したCSあるいはSEの犬の医療記録の回顧的レビュー
結果:79頭はCSを呈し、27頭はSEで来院した。ミダゾラムのCRIで治療した82/106頭(77.4%)の発作はコントロールできた。発作コントロールに関係する投与量中央値は0.3mg/kg/h(範囲、0.1-2.5mg/kg/h)だった。CRIの治療時間中央値は25時間(範囲、2-96時間)だった。特発性てんかんの犬34/40頭(85%)、構造的てんかんの犬32/43頭(74%)、不明のてんかんの犬12/16頭(75%)、反応性発作の犬4/7頭(57%)の発作がコントロールできた(P=0.20)。CSの犬の81%、SEの犬の67%の発作コントロールを達成した(P=0.18)。特発性/不明なてんかんの犬は、構造学的てんかんの犬よりも生存する確率が高かった(87%
vs 63%、P=0.009)。副作用は24頭(22.6%)で報告され、全てのケースは軽度だった。
結論と臨床的重要性:CSあるいはSEの犬において、ミダゾラムのCRIは明らかに安全で、効果的な治療の1つかもしれない。(Sato訳)
■特発性てんかんの疑いのある犬における脳脊髄液検査の診断的有用性
Diagnostic utility of cerebrospinal fluid analysis in dogs with suspected idiopathic epilepsy
Aust Vet J. 2020 Sep 7.
doi: 10.1111/avj.13018. Online ahead of print.
S E Gilbert , T J Cardy , S Bertram , F Taylor-Brown
背景:犬の特発性てんかん(IE)は発作を繰り返す一般的な原因である。国際獣医てんかん特別委員会合意のガイドラインは、IEのティアII診断の構成として脳のMRI検査と脳脊髄液(CSF)分析の実施を推奨し、それらの処置はリスクも証明されている。この回顧的研究の目的は、IEが疑われる犬のCSFにどのような異常が出るのかを確認することだった。
方法:6か月から6歳までで、発作の間が少なくとも24時間以上あいており、神経学的検査は正常、中毒や代謝の原因のエビデンスがない、正常なMRIスキャン(造影剤投与も含む)、CSFの分析をおこなっていて2回以上の発作の病歴を持つ犬を含めた。
結果:82頭の犬を含めた。そのうち9頭(10.9%)のCSF分析に異常が見つかった:9頭中5頭(55.5%)はタンパク細胞解離、9頭中3頭(33.3%)は総有核細胞数(TNCC)の軽度増加、9頭中1頭(11.1%)は総蛋白とTNCCの軽度増加。TNCC増加の犬の細胞診で単核細胞増殖を認めた。CSFに異常があった9頭中1頭は、調査前24時間以内に発作があり、9頭中6頭は1か月以内に発作があった。
結論:CSF分析は、発作を繰り返す基礎原因の診断的調査に重要な役割を持つ可能性がある。しかし、発作間の神経学的検査及びMRIスキャンが正常な犬において、明らかな異常が現れることは珍しく、CSF穿刺を行うリスクは、潜在的な診断的利益を上回るかもしれない。(Sato訳)
■特発性てんかんの犬においてイメピトインあるいはフェノバルビタール単剤治療開始後のてんかん発作頻度と症候学
Epileptic seizure frequency and semiology in dogs with idiopathic epilepsy after initiation of imepitoin or phenobarbital monotherapy.
Vet J. July 2019;249(0):53-57.
DOI: 10.1016/j.tvjl.2019.05.007
F Stabile , J van Dijk , C R Barnett , L De Risio
この研究の目的は、抗てんかん薬(AEM)をまだ使用していない特発性てんかんの犬(DIE)において、イメピトイン(IMP)あるいはフェノバルビタール(PB)単剤治療開始後のてんかん発作(ES)頻度と症候学の変化を評価することだった。
この観察前向きコホート研究において、組み込み基準は、抗てんかん薬を使用していない犬で特発性てんかんの診断(臨床、血液、MRI検査を基に)があり、詳細なてんかん発作の日記があることだった。除外基準は、治療前にクラスター発作(CS)あるいはてんかん重積状態(SE)の発生と併発疾患および/あるいはそれを治療していることだった。
31頭の特発性てんかんの犬は、IMP10-20mg/kg/12h、30頭の犬はPB2.50-3.30mg/kg/12hで開始した。抗てんかん薬の用量は次第に増やした(IMP30mg/kg/12h、PB5.20mg/kg/12hまで)。全ての犬は全身性強直間代性てんかん発作を経験していた。
IMP群において、治療前のてんかん発作頻度の中央値は、1.50回/月(範囲、1-4回/月)だった;治療後のてんかん発作頻度の中央値は、0.95回/月(範囲、1回/6か月-3回/月);31頭中21頭(67.70%)の犬は、治療開始後1-18か月でCSを発症した;31頭中7頭(22.60%)の犬は治療開始の最初の月に許容できない副作用を経験し、代わりの抗てんかん薬に変更する必要があった;31頭中3頭(9.70%)の犬は、3年のフォローアップでCSを発症しなかった。
PB群において、治療前のてんかん発作頻度の中央値は、2.46回/月(範囲、1-7回/月)だった;治療後のてんかん発作頻度の中央値は、0.36回/月(範囲、0回/3年-1回/月);30頭中11頭(36.70%)の犬は、治療開始後12-25か月の間にCSを発症した。30頭中19頭(63.3%)の犬は3年のフォローアップでCSを発症しなかった;その19頭のうち3頭は特発性てんかんがなくなった。
この研究において、抗てんかん薬をまだ使用していない特発性てんかんの犬で、イメピトイン単剤治療を行った犬は、フェノバルビタール単剤治療を行った犬よりも疾患の経過でより頻繁に、早期に有意にCSを発症し、攻撃性を発し、より早く治療を中止する必要があった。(Sato訳)
■正常犬と発作のある犬の血清メラトニン値
Serum Melatonin Values in Normal Dogs and Dogs with Seizures.
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 Jan 17. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6669. [Epub ahead of print]
Thomovsky SA, Chen AV, Deavila DM, Kiszonas AM.
てんかん、あるいは再発性発作は、犬の最も一般的な神経疾患と報告されている;20-30%のてんかんの犬は、1つの薬剤に対し薬剤抵抗性があると考えられている。ホルモンのメラトニンには有意な抗痙攣効果があることが示されている;ヒトのてんかん患者は、罹患していない人よりも血清メラトニン濃度が低い。
著者らは発作がある犬のメラトニンの血清濃度が、正常犬と比較して低いだろうと仮説を立てた。
62頭の犬で研究した:正常犬29頭(グループ1)と発作のある犬33頭(グループ2)。3つの異なるタイムポイントで採血した(午前8時、12時、午後4時)。
グレープ1(69%)とグループ2(76%)のほとんどの犬は、ラジオイムノアッセイで測定した時、血清メラトニン濃度は0.5pg/mL未満だった。血清メラトニン濃度の有意差は、グループ間、あるいは、血液採取時間、サンプルの冷凍時間、サンプル採取の年月日、抗痙攣療法の有無で比較した時グループ内でも見られなかった。
正常な犬と発作のある犬において、昼間の血清メラトニン値に顕著な違いはなかった。犬の昼間の血清メラトニン濃度の多くは、発作の有無にかかわらず0.5pg/mL未満だった。(Sato訳)
■特発性てんかんの犬における発作誘発因子
Seizure-precipitating factors in dogs with idiopathic epilepsy.
J Vet Intern Med. 2018 Dec 21. doi: 10.1111/jvim.15402. [Epub ahead of print]
Forsgård JA, Metsähonkala L, Kiviranta AM, Cizinauskas S, Junnila JJT, Laitinen-Vapaavuori O, Jokinen TS.
背景:ヒトのてんかん患者においてストレス、睡眠遮断、感染症は重要な発作誘発因子である。しかし、てんかんの犬においてそれらの因子は全く研究されていない。
目的:特発性てんかんの犬において、発作誘発因子は一般的で、それらの因子の発生は、その犬のシグナルメント、性格、てんかん関連因子に関係がある。
動物:ヘルシンキ大学獣医教育病院と二次動物病院Aistiの病院集団から特発性てんかんと診断された50頭の犬
方法:回顧的横断観察研究において、あらかじめ定義された質問表に従い、オーナーに彼らの犬のあるかもしれない発作誘発因子について聞き取りを行った。その犬は関連動物病院の医療記録の検索により確認し、選択した。
結果:その研究集団で発作誘発因子の普及率は74%(37/50)だった。最も多く報告された因子には、ストレス関連状況、睡眠遮断、天気、ホルモン因子が含まれた。部分発現発作の犬は、全身性発作の犬に比べ、誘発因子の数が1.9(95%CI、1.1-3.4)倍高かった。
結論と臨床意義:発作誘発因子は特発性てんかんの犬で一般的で、それら因子の性質はヒトの患者のそれらと一致する。抗てんかん薬物療法は別として、発作誘発因子を認め、避けることは、より良い治療結果のため、獣医師の助けとなりえる。(Sato訳)
■犬の特発性てんかんにおける認知症の予備的評価
Preliminary assessment of cognitive impairments in canine idiopathic epilepsy.
Vet Rec. June 2018;182(22):633.
Joshua Winter , Rowena Mary Anne Packer , Holger Andreas Volk
ヒトでは、てんかんは認知障害(CI)を誘発あるいは加速させる可能性がある。最近の疫学的研究で、特発性てんかん(IE)の犬において、CIの新しいエビデンスがある。
この研究の目的は、臨床現場の使用を目的に作られた認知機能不全の2つのテストを用い、IEの犬においてCIを評価することだった。
2つのタスクのパフォーマンスをコントロール(n=18)とIEの犬(n=17)で比較した;空間的作業記憶タスクと問題解決タスク。またオーナーには、その犬に対するCanine
Cognitive Dysfunction Rating (CCDR)スケールを答えてもらった。
年齢と犬種に関してグループ間の統計学的違いはなかった。空間的作業記憶タスクでは、コントロールよりもIEの犬のパフォーマンスは有意に悪かった(P=0.016)が、問題解決タスクはそうではなかった(P=0.683)。CCDRスコアはIEグループで有意に高かった(P=0.016);しかし、CCD診断に対し、推奨される域値スコアに達した犬はいなかった。
我々の予備データは、空間的作業記憶タスクにおいてIEの犬は障害を示すことを示唆する。発現年齢、全ての障害の性質と進行、抗てんかん薬の影響の特徴を示す大きなサンプルの犬で、他の認知能力に対するIEの影響を調べる追加研究が求められる。(Sato訳)
■原因不明のてんかんの猫76頭の生存性:回顧的研究
Survival in 76 cats with epilepsy of unknown cause: a retrospective study.
Vet Rec. November 2017;181(18):479.
Arlette Cornelia Szelecsenyi , Urs Giger , Lorenzo Golini , Ian Mothersill , Paul R Torgerson , Frank Steffen
原因不明のてんかん(epilepsy of unknown cause:EUC)の猫の生存性は報告されていない。発作の症候学およびその治療結果や生存性との関連を76頭の猫の集団で研究した。発作症候学に対するアンケートを、実験データを基に開発した。退院後、最低1年でオーナーの聞き取りにより発作症候学を特徴づけた。
発作は(1)原発全身性、(2)局所、(3)局所と二次的全身性に分類した。
発作発現年齢中央値は4歳(範囲0.3-18歳)だった。EUCの3分の1の猫は原発全身性発作を呈し、それらの78%は最初に局所発作を起こし、二次的全身性発作に進行した。全身性発作の臨床症状は、意識喪失と強直間代性発作の突発であるが、局所発作の猫は片側性症状だった。
抗てんかん薬(AED)療法は62頭の猫で始められた。完全寛解率は42%で、生存期間中央値はAEDをしてもしなくても3.2歳(範囲1-11歳)で91%の猫は聞き取り調査時点で生存していた。
EUCの猫で症候学や発作のタイプで生存性、治療への反応、予後を予測するものはなかった。12か月以上発作の無い状況は、AEDをしない猫の79%で観察された。(Sato訳)
■新規にてんかんと診断された犬の単独治療としてレベチラセタムの単一盲検フェノバルビタール対照試験
A single-blinded phenobarbital-controlled trial of levetiracetam as mono-therapy in dogs with newly diagnosed epilepsy.
Vet J. 2016 Feb;208:44-9. doi: 10.1016/j.tvjl.2015.10.018. Epub 2015 Nov 27.
Fredsø N, Sabers A, Toft N, Møller A, Berendt M.
犬のてんかんの治療は問題が多い。犬の抗てんかん薬の効果が証明されているものは少なく、望ましくない副作用や薬剤耐性は珍しくない。その結果、代替治療オプションの調査の必要性は継続中である。
この研究の目的は、特発性転換の犬に対する単独治療としてレベチラセタムの効果と耐容性を調査することだった。
この研究は前向き単一盲検パラレルグループデザインを使用した。20頭の飼育犬を含め、無作為にレベチラセタム(30mg/kg/日あるいは60mg/kg/日を1日3回に分割)とフェノバルビタール(4mg/kg/日を1日2回に分割)で治療した。経過観察は30日、60日、その後3か月ごとを1年まで行った。3か月以内の2回以上の発作は、増量した(レベチラセタム:10mg/kg/日、フェノバルビタール1mg/kg/日)。レベチラセタムを投与した6頭中5頭とフェノバルビタールを投与した6頭中1頭は、発作のコントロールが不十分のため2-5か月以内に研究を中止した。
レベチラセタム投与犬において、治療前後の毎月の発作数に有意差はなかったが、フェノバルビタール投与犬は治療後の発作が有意に少なかった(P=0.013)。フェノバルビタール投与犬の5頭はtrue奏功犬(毎月の発作が50%以上減)に分類されたが、レベチラセタム投与犬でこの基準を満たした犬はいなかった。
副作用は両群で報告されたが、フェノバルビタール群でより頻度が多かった。
この研究で、レベチラセタムの許容性はよかったが、特発性てんかんの犬に対し、単独治療としての投与量では効果的ではなかった。(Sato訳)
■8時間毎のフェノバルビタール投与:フェノバルビタール排泄半減期の減少で特発性てんかんの犬の発作管理の改善
Phenobarbital administration every eight hours: improvement of seizure
management in idiopathic epileptic dogs with decreased phenobarbital elimination
half-life.
Language: English
Vet Rec. February 2017;180(7):178.
F Stabile , C R Barnett , L De Risio
イギリスでファーストオピニオンの犬の集団の中で、犬の特発性てんかんの推定有病率は0.6%である。フェノバルビタール単独治療は、特発性てんかんの犬(idiopathic epileptic dogs:IEDs)の60-93%において発作活動を減少/根絶すると報告されている。
この研究の目的は、フェノバルビタール排泄半減期20時間以下のIEDsにおいて、フェノバルビタール8時間毎の経口投与の安全性と有効性を評価することだった。
12時間毎の長期投与の後、定常状態トラフ血清フェノバルビタール濃度が参照範囲内で、フェノバルビタール排泄半減期が20時間以内になっている10頭のIEDsの医療記録を再検討した。フェノバルビタール12時間毎あるいは8時間毎で投与した時の副作用と発作頻度を比較した。
全ての犬において、抗てんかん薬剤治療の副作用は改善した。フェノバルビタールを8時間毎に投与した時、10頭中9頭は発作頻度の改善を認め、10頭中8頭は過去に記録した発作の最も長い間隔よりも、3倍長い期間発作がない状態を維持した。重症度と発作群の回数の低下は残りの2頭中1頭で記録されていた。
フェノバルビタール排泄半減期が減少したIEDsにおいて、フェノバルビタール8時間毎の経口投与は安全と思われ、発作管理を改善できる。この研究の結果は、the
28th symposium of the European Society of Veterinary Neurology - European
College of Veterinary Neurology (ESVN), September 18-19, 2015, Amsterdam,
Netherlandsに対してアブストラクト形式(poster)で提出された。(Sato訳)
■特発性てんかんの犬の歩様に対する第一線の抗てんかん薬の影響の比較
Comparing the effects of first-line antiepileptic drugs on the gait of dogs with idiopathic epilepsy.
Vet Rec. June 2016;178(26):652.
E J Suiter , R M A Packer , H A Volk
犬の特発性てんかん(idiopathic epilepsy:IE)は一般的な慢性神経疾患である。抗てんかん薬(antiepileptic
drug:AED)の過去の研究では、容認できるAEDの副作用は、発作の頻度の減少と同じぐらいオーナーにとっても重要である。犬やヒトのAEDsは副作用の運動失調と関係することが多い。
この研究の目的は、現在入手できる第一線のAED治療薬フェノバルビトンとイメピトインを聴器に使用しているIEの犬において、運動失調のレベルを比較することだった。
6頭のイメピトイン投与犬、8頭のフェノバルビトン投与犬、10頭の年齢が同じ健康なコントロール犬の歩様を比較した。歩いている歩様から50歩を各犬で解析し、6つの確立した歩様パラメーターにおいて変数を通して運動失調を定量化した。
3つの変数はグループ間で有意に異なっていた:(1)後肢足の裏の設置、(2)前肢足の裏の設置、(3)stance
timeの横方向の距離で、イメピトインあるいはコントロール犬と比較してフェノバルビトン投与犬は有意により変わりやすかった。
それらの結果は、コントロールおよびイメピトイン投与犬と比較してフェノバルビトン投与犬は運動失調を経験することを示す。逆に、イメピトイン投与犬とコントロールに差はなかった。それらの結果はAEDs副作用を定量化する追加研究が必要であると共に、獣医師やオーナーが薬物選択のより情報を得ることに役立つものである。(Sato訳)
■最近開発された抗てんかん薬イメピトインによる健康なビーグル犬の甲状腺パラメーターや脂質代謝に対する影響
The effect of imepitoin, a recently developed antiepileptic drug, on thyroid parameters and fat metabolism in healthy Beagle dogs.
Vet J. July 2016;213(0):48-52.
K Bossens , S Daminet , L Duchateau , M Rick , L Van Ham , S Bhatti
2013年初期から特発性てんかんの犬において、単発の反復性全身性てんかん発作の管理に対し、ほとんどのヨーロッパの国でイメピトインが使用されている。新しく診断された特発性てんかんの犬の発作のコントロールでフェノバルビタール(phenobarbital:PB)と同等の効果があり、臨床的に優れた安全特性があると報告されている。イメピトインの使用が人気を得ることにより、長期のPB投与が犬の甲状腺パラメーターに影響し、検査結果の誤った解釈、甲状腺疾患の誤診を引き起こしたことから、イメピトインの血清甲状腺パラメーターへの影響をさらに調査する理由となっている。
健康なビーグル犬の総チロキシン(TT4)、トリヨードチロニン、遊離チロキシン、チログロブリン自己抗体、チロイド刺激ホルモン、コレステロール、トリグリセリドの血清濃度に対するPBとイメピトインの経口投与の影響を比較する前向き研究を行った。それらのパラメーターは抗てんかん薬投与開始前とその後6、12、18週目に測定した。PBの初期投与量(5mg/kg
PO 1日2回;範囲、4.4-6.0mg/kg)は最適治療血清濃度(30-35g/mL)に達するようにモニターし、調節した。イメピトインは30mg/kg
PO 1日2回(範囲、29.2-35.7mg/kg)で投与した。
18週間以上の期間、イメピトイン投与による甲状腺パラメーターへの影響はなかった。対照的にPBを投与した犬は次第に血清TT4濃度が有意に低下した(P<0.05)。イメピトインを投与した犬は、次第に血清コレステロール濃度が有意に上昇したが、原発性甲状腺機能低下症の犬に一般的に見られるのと同じような程度ではなかった。(Sato訳)
■犬のてんかん重積状態の管理に対する鼻腔内ミダゾラムと直腸内ジアゼパム:多施設無作為化並行群間臨床試験 フルテキスト
Intranasal Midazolam versus Rectal Diazepam for the Management of Canine Status Epilepticus: A Multicenter Randomized Parallel-Group Clinical Trial.
Language: English
J Vet Intern Med. July 2017;31(4):1149-1158.
M Charalambous , SFM Bhatti , L Van Ham , S Platt , N D Jeffery , A Tipold , J Siedenburg , H A Volk , D Hasegawa , A Gallucci , G Gandini , M Musteata , E Ives , A E Vanhaesebrouck
背景:ヒトの試験で、緊急てんかん発作を止めるためのベンゾジアゼピンの鼻腔内投与は、直腸投与以上の有意性が示されている。そのような臨床試験は犬で実施されていない。
目的:犬のてんかん重積状態に対し、第一線の管理オプションとして粘膜噴霧器を用いた鼻腔内ミダゾラム(intranasal
midazolam:IN-MDZ)の臨床効果を評価し、静脈確保が得られる前のてんかん重積状態の管理に対しジアゼパムの直腸投与(rectal
administration of diazepam:R-DZP)のそれと比較する。
動物:病院の環境内で、てんかん重積状態が明らかな特発性、あるいは構造的てんかんの飼育犬を使用した。犬は無作為にIN-MDZ(n=20)とR=DZP(n=15)の治療に振り分けた。
方法:無作為化並行群間臨床試験。発作が止まる時間と副作用を記録した。各犬に対し、発作が5分以内に止まり、投与後10分以内に再発しなかった場合に治療成功と考えた。治療が成功した犬の真の集団の検出に95%信頼区間を使用した。2群の比較にはFisher's
2-tailed exact testを使用し、結果はP<0.05を統計学的有意と考えた。
結果:IN-MDZとR-DZPはそれぞれ70%(14/20)と20%(3/15)のてんかん重積状態を止めた(P=0.0059)。全ての犬は鎮静と運動失調を示した。
結論と臨床意義:IN-MDZは犬のてんかん重積状態の管理に対し、迅速、安全で効果的な第一線の投薬で、R-DZPよりも優れていると思われる。静脈確保ができない時、家でてんかん重積状態の治療する時、IN-MDZは価値ある治療オプションと思われる。(Sato訳)
■臭化カリウム関連皮下脂肪織炎
Potassium bromide-associated panniculitis.
J Small Anim Pract. December 2014;55(12):640-2.
N A Boynosky; L B Stokking
臭化カリウムの投与に関係する脂肪織炎の犬の2症例について報告する。2頭は1年以上、特発性てんかんのために臭化カリウムで治療していた。
2頭は、用量増加が体幹上全身に有痛性の皮下結節を示す脂肪織炎に関与した。1頭の結節はワックス状のものは吹き出して小さくなり、1頭は持続性だった。2頭は脂肪織炎と嗜眠、発熱が併発した。臭化カリウムの中止後、脂肪織炎、嗜眠、発熱は解消し、再発はなかった。2頭とも脂肪織炎の他の原因は判定できなかった。
ヒトでは臭化カリウムの投与後、脂肪織炎は報告されており、薬剤誘発性の結節性紅斑の1つの型かもしれない。
著者の知識では、これは犬の臭化カリウム関連皮下脂肪織炎の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の特発性てんかんの管理に対しフェノバルビタールと比較したイメピトインの臨床効果と安全性
Clinical efficacy and safety of imepitoin in comparison with phenobarbital
for the control of idiopathic epilepsy in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. April 2015;38(2):160-8.
A Tipold; T J Keefe; W Loscher; C Rundfeldt; F De Vries
EUで新しい抗てんかん薬と認可されているイメピトインの抗けいれん活性と安全性を多施設野外効果研究と実験状況下の安全性研究で評価した。イメピトインの効果は、盲検並列グループデザインにより226頭の飼育犬でフェノバルビタールと比較した。
10、20、30mg/kgと徐々に増した投与量で1日2回のイメピトインの投与は、犬のてんかんのコントロールでフェノバルビタールに匹敵する効果を示した。傾眠/鎮静、多飲、食欲増加など有害事象の頻度はフェノバルビタール群で有意に高かった。フェノバルビタール処置犬において、ALP濃度、GGTおよび他の肝酵素の有意な上昇が起こったが、イメピトイン群ではそのような影響は見られなかった。
実験状況下の安全性研究において、健康なビーグル犬に26週間0、30、90、150mg/kgのイメピトインを1日2回投与した。病理組織検査を含む完全な安全性評価を研究に含めた。90mg/kg1日2回投与の最大無毒性量を決定した。
それらの結果は、犬に対しイメピトインは有効で安全な抗てんかん薬だと示す。(Sato訳)
■犬の特発性てんかんの新しい治療オプションとしてイメピトイン:犬における薬物動態、分布、代謝
Imepitoin as novel treatment option for canine idiopathic epilepsy: pharmacokinetics,
distribution, and metabolism in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. October 2014;37(5):421-34.
C Rundfeldt; A Gasparic; P Wlaz
イメピトインは犬と特発性てんかんの治療に対し、EUで認可を受けた新しい抗てんかん薬である。
この研究の目的は、犬におけるイメピトインの薬物動態の特徴を述べることと、薬剤代謝酵素の相互作用を評価することだった。
ビーグル犬に30mg/kgの量でイメピトイン錠を投与した場合、30分以内に高い血漿濃度が観察され、2-3時間後には14.9-17.2μg/mLの最大血漿濃度に到達した。
交差試験において、食物と共にイメピトイン錠を一緒に投与すると総AUCが30%減少したが、TmaxやCmaxは有意な変化を起こさず、臨床的関連の欠如を示した。性別および蓄積や代謝耐性がないことの臨床的に関連する影響は、1日2回の投与で観察されなかった。10-100mg/kgの単回投与後、用量比例が見られた。[(14)C]
イメピトイン投与で、92%の高い腸内吸収と主に糞便排泄が確認された。血漿タンパク結合は55%しかなかった。インビトロにおいて治療の血漿濃度で、イメピトインはミクロソーマルチトクロームP450ファミリー肝酵素を阻害しなかった。ラットにおいて肝酵素の関連誘導は見つからなかった。ゆえに、蛋白結合あるいは代謝由来の薬剤-薬剤相互作用の見込みはなかった。
それらのデータを基に、イメピトインは1日2回投与できるが、食餌に関して錠剤の投与のタイミングは一貫性を保つべきである。(Sato訳)
■猫の原因不明のてんかんの臨床的特徴
Clinical characterization of epilepsy of unknown cause in cats.
J Vet Intern Med. 2014 Jan-Feb;28(1):182-8. doi: 10.1111/jvim.12250. Epub 2013 Nov 16.
Wahle AM, Bruhschwein A, Matiasek K, Putschbach K, Wagner E, Mueller RS, Fischer A.
背景:猫の原因不明のてんかん(EUC)の診断には、完全な診断的検査が必要で、そうでないとECUの有病率は過大評価される可能性がある。
仮説:猫のEUCは臨床的に定義された疾病で、海馬のMRI信号変化のないことにより、猫の海馬壊死と異なる。この研究の目的は、(1)明確な基準を用いて猫の病院集団におけるECUの有病率を評価、(2)EUCの臨床的経過を述べることだった。
動物:再発性てんかんのある81頭の猫
方法:回顧的研究。再発性てんかんの評価のために来院した猫に対し、医療記録を再調査した(2005-2010)。研究する基準は検査データ、MRI検査か病理組織検査を基に下された診断とした。最終的な転帰は飼育者に電話で確認した。MRI像は海馬の形態および信号変化を評価するのに再検討した。
結果:てんかん症例の22%を原因不明のてんかんと診断した。身体、神経、血液検査、1.5TMRIと脳脊髄液検査、あるいは剖検で原因が確認できなかった。EUCの猫の生存率はより高く(P<0.05)、発作の寛解もよく起こった(44.4%)。
結論と臨床的重要性:詳細な臨床的評価とMRIによる診断画像検査は、再発性発作の全ての猫に推奨される。MRI所見が正常でEUCと臨床診断を受けた猫の予後はよい。標準化した画像検査のガイドラインを猫の海馬の評価に確立させるべきである。(Sato訳)
■5歳以上の犬のてんかん:99症例(2006-2011)
Epilepsy in dogs five years of age and older: 99 cases (2006-2011).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Feb 15;246(4):447-50. doi: 10.2460/javma.246.4.447.
Ghormley TM, Feldman DG, Cook JR Jr.
目的:5歳以上の犬において、てんかんの原因を分類することと、二次性てんかんを予測する異常な神経学的検査所見の使用を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:てんかんの犬99頭
方法:発作の評価をし、5歳以上で原発性あるいは二次性てんかんと診断された飼育犬を確認するため医療記録を再調査した。犬は年齢で層別化し、原発および二次性てんかんの有病率と、腫瘍(MRI所見による)v.s.他の疾患と診断された二次性てんかんの犬の割合を評価した。二次性てんかんを見つけるための異常な神経学的所見の感受性と特異性を判定した。
結果:5-7歳の30頭中7頭(23%)、8-10歳の29頭中13頭(45%)、11-13歳の33頭中13頭(39%)、14歳以上の7頭中2頭は原発性てんかんだった。年齢群の中で原発v.s.二次性てんかんの有病率に違いはなかった。5-7歳の腫瘍の犬の割合は、他の年齢群の犬よりも低かった。二次性てんかんを予測する異常な神経学的検査結果の感受性は74%、特異性は62%だった。
結論と臨床的関連:5歳以上の犬のかなりの割合が原発性てんかんだった。神経学的検査で異常がないことで頭蓋内病変の可能性を除外できるわけではなく、5歳以上で発作が発現した全ての犬のCSF分析(できるならば)とMRI検査を勧めるべきだと結果は示唆した。(Sato訳)
■運動誘発性の発作が疑われた若い犬の1例
Suspected exercise-induced seizures in a young dog.
J Small Anim Pract. April 2013;54(4):213-8.
L Motta; E Dutton
12ヶ月齢の避妊済みメスの雑種犬が、激しい運動時のみに起こる発作のような症状の検査で紹介されてきた。
医学的、神経、心臓の完全な検査を実施し、発作用活動の最も一般的に知られている原因を除外した。その犬に携帯用心電図測定器を取り付け、別の運動誘発性発作を起こさせた。発作中の心電図は、約300回/分の洞性頻脈を示した。発作を撮影したビデオでは、全身性強直間代性四肢活動と顎をがくがくさせ、口から泡を吹く典型的な発作の機能活動を認めた。抗てんかん薬は処方せず、飼い主には激しい運動をさせないようアドバイスをした。その犬はよく反応し、軽度-中程度のオフリード運動の12か月後発作は起きなかった。この症例の発作の全ては激しい身体活動により発動するため、反射性発作の機能活動の新しい型かもしれない。(Sato訳)
■犬における経口ルフィナミドの薬物動態
Pharmacokinetics of oral rufinamide in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. December 2012;35(6):529-33.
H M Wright; A V Chen; S E Martinez; N M Davies
この研究の目的は、健康な犬における経口ルフィナミド1回投与の薬物動態特性と短期副作用プロフィールを判定することだった。
6頭の健康な成犬で研究した。ルフィナミドの薬物動態は、平均経口投与量20.0mg/kg(範囲18.6-20.8mg/kg)の1回投与後算出した。血漿ルフィナミド濃度は高速液体クロマトグラフィーで測定し、薬物動態データは市販のソフトウェアで分析した。
副作用は観察されなかった。平均終末半減期は9.86±4.77時間だった。平均最大血漿濃度は19.6±5.8μg/mlで、最大血漿濃度までの平均時間は9.33±4.68時間だった。平均クリアランスは1.45±0.70l/hだった。曲線下面積(-無限)は411±176μg・h/mlだった。
この研究結果は、健康な犬においてルフィナミド20mg/kg12時間毎の経口投与が、短期副作用もなく、ヒトから推測される治療濃度に達するのに十分な血漿濃度と半減期をもたらすはずだと示唆される。犬のてんかんの治療でルフィナミドの効果と長期安全性に関する追加研究が求められる。(Sato訳)
■健康な犬におけるミダゾラムの静脈内、筋肉内、直腸投与後の薬物動態
The pharmacokinetics of midazolam after intravenous, intramuscular, and
rectal administration in healthy dogs.
J Vet Pharmacol Ther. October 2013;36(5):471-7.
M Schwartz; K R Munana; J A Nettifee-Osborne; K M Messenger; M G Papich
ベンゾジアゼピンの静脈内投与は犬の持続てんかん発作の治療で第一薬として使用されており、静脈アクセスが制限されているときは投与ルートの変更が必要である。
この研究はミダゾラムの静脈内(IV)、筋肉内(IM)および直腸内(PR)投与の薬物動態を比較した。研究期間の間に3日のウォッシュアウトを設けた無作為化3方向横断研究で6頭の健康な犬に0.2mg/kgのミダゾラムをIV、IM、PR投与した。基準の血液サンプルと、投与から480分まで決められた間隔で血液サンプルを採取した。UV検出と高速液体クロマトグラフィーで血漿ミダゾラム濃度を測定した。
直腸投与は検出不可能な低血漿濃度で不安定な全身利用能だった。ミダゾラムのピーク血漿濃度の算術平均値±SDは、IVおよびIM投与後それぞれ0.86±0.36μg/ml(C0)と0.20±0.06μg/ml(Cmax)だった。IM投与後のピーク濃度までの時間(Tmax)は7.8±2.4分で生物学的利用能は50±16%だった。
所見からミダゾラムのIM投与は犬の静脈アクセスが利用できない時、発作の治療に有効と思われるが、中程度の生物学的利用能を得るには高用量が必要だろうと示唆される。犬の直腸投与は、発作の治療に対し効果が限られる可能性が高い。(Sato訳)
■犬の頭部外傷後の発作:259症例(1999-2009)
Seizures following head trauma in dogs: 259 cases (1999-2009).
J Am Vet Med Assoc. December 2012;241(11):1479-83.
Steven G Friedenberg; Amy L Butler; Lai Wei; Sarah A Moore; Edward S Cooper
目的:頭部外傷を負った犬は、一般的な病気の犬集団よりも発作の発生率が高いかどうかを調査する
デザイン:後ろ向き症例シリーズ
動物:259頭の飼い犬
方法:1999年から2009年の間にオハイオ州立大学獣医メディカルセンターで頭部外傷の評価をした犬の医療記録を再調査した。頭部外傷の原因、身体検査および神経学的検査所見、同時罹患率、入院中発作の発生についてデータを集めた。退院後の発作の発生についてオーナーに電話調査を行った。その後、頭部外傷の質と発作の発生との関連を調査した。
結果:著者らの病院のてんかん率1.4%と比べて、頭部外傷を負った犬の3.5%は院内で発作を起こし、追跡調査の情報が得られた犬の6.8%は退院後に発作を起こしていた。院内発作を起こした犬は、有意に車にぶつかったか、加速-減速損傷を経験している可能性が高かった。さらに、外傷性脳傷害を受けた犬の10%は、院内発作を起こした。院外発作の発生に有意に関係した来院あるいは犬の特性はなかった。
結論と臨床関連:頭部外傷を負った犬は、一般的な病気の犬の集団より高い確率で発作を起こすと思われる。特に外傷を負ってすぐ、あるいは早期において、外傷後発作の発生に注意を怠らず、それに応じて治療しなければならない。(Sato訳)
■犬のてんかんの治療で第一選択の抗てんかん薬としてフェノバルビタールと臭化物の比較
Comparison of phenobarbital with bromide as a first-choice antiepileptic drug for treatment of epilepsy in dogs.
J Am Vet Med Assoc. May 2012;240(9):1073-83.
Dawn Merton Boothe; Curtis Dewey; David Mark Carpenter
目的:犬の第一選択抗てんかん薬(AED)としてフェノバルビタール、あるいは臭化物による治療の効果と安全性を比較する
構成:二重盲検無作為並行臨床試験
動物:自然にてんかんを発症したAEDを投与していない46頭の犬
方法:研究する犬は、年齢、病歴、身体および神経学的検査所見、臨床病理学的検査結果を基にした。フェノバルビタール投与(21頭)あるいは臭化物投与(25)において、7日の初回負荷期間を維持量とともに開始し、毎月のモニタリングで調節した。効果と安全性の結果を時間(初めと研究終了時(一般に6か月))および薬剤間で比較した。
結果:フェノバルビタール投与(17/20(85%))は臭化物(12/23(52%))よりも発作を根絶することが有意に多かった。またフェノバルビタール投与(88±34%)は臭化物(49±75%)と比べ発作持続においてより大きい比率で減少させた。発作の活動が悪化したのは臭化物投与犬の3頭だけだった。
発作が無くなった犬において、平均±SD血清フェノバルビタール濃度は25±6μg/ml(フェノバルビタール投与量、4.1±1.1mg/kg、PO、q12h)で、平均血清臭化物濃度は1.8±0.6mg/ml(臭化物投与量、31±11mg/kg、PO、q12h)だった。失調、嗜眠、多渇がフェノバルビタール投与犬の1か月目に多く、嘔吐は臭化物投与犬の1か月目と研究終了時に多かった。
結論と臨床関連:フェノバルビタールと臭化物は妥当な犬の第一選択AEDsだったが、フェノバルビタールはより有効で治療から最初の6か月間はよく許容した。(Sato訳)
■犬の臭化カリウムの安全性の系統的レビュー
A systematic review of the safety of potassium bromide in dogs.
J Am Vet Med Assoc. March 2012;240(6):705-15.
Hope E Baird-Heinz; A'ndrea L Van Schoick; Francis R Pelsor; Lauren Ranivand; Laura L Hungerford
目的:犬の臭化カリウムの安全性に対する入手可能な情報を批評し概説すること
構成:系統的レビュー
サンプル:1938年から2011年の間に発表された臭化カリウムに関係する安全性を報告する111件の文献
方法:年月の制限を設けず、2009年12月と2011年10月に「臭化カリウム」、「臭化ナトリウム」のキーワードでPubMed検索を行った。追加の文献は、犬と薬理学の発作に対する文献の参照リストおよび本の章の調査を通して確認した。
結果:可逆的神経症状が最も一貫して報告される中毒で、一般に補助的臭化カリウム治療あるいは血清の臭化物高濃度に関係した。犬で皮膚および呼吸器異常はまれだった。行動に対する臭化カリウムの影響を評価する情報、または嘔吐、体重増加、多食、膵炎、多尿、多渇の発生率の判定するための情報、臭化カリウム投与に関係する生殖異常に対する情報は不十分だった。エビデンスは、食餌と共に臭化カリウムを投与すると胃腸刺激を軽減し、多食、甲状腺ホルモン異常、血清臭化物高濃度のモニターは有効かもしれないと示唆した。
結論と臨床関連:臭化カリウムは発作のある全ての犬の治療で適当な選択ではなく、臨床医は各犬に合わせた治療法を考え、臨床的モニタリングを行うべきだと結果は示唆した。突然の食餌の変更、あるいは輸液療法は発作コントロールに支障をきたし、あるいは有害事象の可能性を増加させるかもしれない。適切に分類され、認証された臭化カリウム製剤の利用は、獣医師およびクライアントに獣医療におけるその製剤の質、安全性、有効性のより良い保証を提供できた。(Sato訳)
■特発性てんかんの犬に対する必須脂肪酸サプリメンテーションの効果:臨床試験
Effects of essential fatty acid supplementation in dogs with idiopathic
epilepsy: A clinical trial.
Vet J. March 2012;191(3):396-8.
Helen Matthews; Nicolas Granger; James Wood; Barbara Skelly
特発性てんかんの犬のコントロールに対する必須脂肪酸(EFA)補給の影響を、盲検プラセボ-コントロール試験で調査した。15頭の犬に400mgエイコサペンタ塩酸、250mgドコサヘキサエン酸、22mgビタミンE/1.5ml を含むトリプル生成オメガ-3オイルを1.5ml/10kg1日1回12週間補給し、その後プラセボとしてオリーブオイルを12週間補給した。オーナーには発作の頻度、程度、全ての副作用を記録してもらった。EFA甜瓜は特発性てんかんの犬の発作頻度あるいは重症度を低下させなかった。(Sato訳)
■原因不明性てんかんの治療でゾニサミド単独療法を受けていた1頭の犬の薬剤誘発性肝障害
Possible drug-induced hepatopathy in a dog receiving zonisamide monotherapy
for treatment of cryptogenic epilepsy.
J Vet Med Sci. November 2011;73(11):1505-8.
Malte Schwartz; Karen R Munana; Natasha J Olby
9歳メスの避妊済みロットワイラーが原因不明性てんかんと診断され、ゾニサミド単剤療法(8.3mg/kg、PO、12時間毎)を開始した。3週間後、嘔吐、食欲不振、黄疸を呈した。
血清生化学検査で肝細胞損傷、胆汁うっ滞に一致する肝酵素の著しい上昇を示した。肝疾患に対する原因は確認されず、薬剤誘発性肝障害が疑われた。ゾニサミドを中止し、臭化カリウムに変更した。点滴、制吐剤、抗生物質、肝保護剤などの支持療法を実施した。犬は完全に回復し、一連の血清生化学検査でゾニサミド中止から8週間後に肝パラメーターの完全な正常化を示した。
human Drug-induced Liver Injury Diagnostic Scale を基に、ゾニサミド誘発性肝障害の尤度は"possible"に分類された。
臨床医とオーナーはゾニサミドの薬剤特有反応の可能性について知っておくべきである。肝毒性の症状が臓器に認められ、ゾニサミドを中止すれば、完全な回復が可能である。(Sato訳)
■イギリスの犬の集団におけるてんかん発生に対する中毒で起きた持続性てんかん重積状態の影響
Effect of prolonged status epilepticus as a result of intoxication on epileptogenesis
in a UK canine population.
Vet Rec. October 2011;169(14):361.
P Jull; L D Risio; C Horton; H A Volk
この研究の目的は、犬で化学痙攣薬による二次的な持続性てんかん重積状態(SE)が、自然発生の再発性てんかん発作を誘発する可能性があるかを調査することだった。
2つのイギリス紹介病院で臨床記録から、中毒による二次的なSEを呈する犬を検索した。明白な中毒と持続性SEの病歴がある犬のみを研究に組み込んだ。臨床的および追跡調査情報は、病院および紹介獣医師からの臨床記録とオーナーへの電話での聞き取りを組み合わせて回収および検証した。
20頭の犬が基準に合致した:17頭はメタアルデヒド中毒、1頭はモキシデクチン中毒、1頭はテオブロミン中毒、1頭はマイコトキシン中毒だった。そのうち3頭のSE持続時間は0.5-1時間、4頭は1-12時間、10頭は12-24時間、3頭は24時間以上だった。20頭の追跡調査期間の中央値は757日(範囲66-1663日)だった。そのSEの後、さらに発作を起こした犬はいなかった。
前述の毒素で中毒を起こした後に持続性SEを起こした犬は、そのSEがコントロールされた後に抗痙攣薬の長期投与を必要としないかもしれないという見解をこの研究は支持する。(Sato訳)
■犬のてんかんの治療の第一選択薬としてのフェノバルビタールと臭化物の比較
Comparison of phenobarbital with bromide as a first-choice antiepileptic drug for treatment of epilepsy in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2012 May 1;240(9):1073-83.
Boothe DM, Dewey C, Carpenter DM.
目的:犬の抗てんかん薬の第一選択薬としてフェノバルビタールと臭化物の治療効果と安全性を比較すること
研究デザイン:二重盲検ランダム化並行臨床試験。
用いた動物:抗てんかん薬を用いた事のない特発性のてんかんを起こす46頭の犬
方法:組み込み基準は、年齢、病歴、身体検査および神経学的検査所見、臨床病理学的検査結果に基づいた。フェノバルビタール投与(21頭)または臭化物投与(25頭)のどちらも、7日間の導入用量で開始し、維持用量は1ヶ月に1回のモニターに基づいて調節するにした。効果と安全性の結果は、それぞれの時期間(ベースラインおよび研究終了時(一般的に6ヶ月))、薬剤間で比較した。
結果:フェノバルビタール治療(17/20, 85%)は、臭化物(12/23, 52%)よりも発作がなくなる犬が有意に多かった。フェノバルビタール治療(88±34%)はまた、臭化物(49±75%)と比較して発作の時間もより減少させた。臭化物のみを投与した3頭の犬においてのみ、発作が悪化した。発作のなくなった犬において、血清フェノバルビタール濃度の平均±SDは、25±6μg/ml(フェノバルビタールの用量は4.1±1.1mg/kg、経口1日2回)で、血清臭化物濃度の平均±SDは、1.8±0.6mg/ml(臭化物の用量は31±11mg/kg、経口1日2回)だった。運動失調、嗜眠、多渇は、フェノバルビタール投与の犬では1ヶ月時により多く、嘔吐は、臭化物投与の犬の1ヶ月時と研究終了時により多かった。
結論と臨床的意義:フェノバルビタールと臭化物の両方とも、犬の抗てんかん薬の第一選択として妥当であるが、最初の6ヶ月の治療においては、フェノバルビタールがより効果的で耐用性がある。(Dr.Taku訳)
■犬の臭化カリウムの安全性に関する系統的レビュー
A systematic review of the safety of potassium bromide in dogs.
J Am Vet Med Assoc.2012 Mar 15;240(6):705-15.
Baird-Heinz HE, Van Schoick AL, Pelsor FR, Ranivand L, Hungerford LL.
目的-犬の臭化カリウムの安全性に関して利用できる情報を決定的に評価し、まとめること
デザイン-系統的レビュー
検体-1938-2011年に発表された臭化カリウムに関連した安全性情報を報告している111の参考文献
方法-日付制限の無いPubMedにより、2009年11月から 2011年10月において、"potassium bromide"と"sodium bromide"という単語で検索した。論文の参考文献リストと本の犬の発作と薬理学の章でさらなる論文が見つかった。
結果-可逆性の神経学的兆候が最も首尾一貫して報告された毒性であり、一般的に補助的な臭化カリウム治療あるいは臭化物の高い血清濃度と関連した。皮膚あるいは呼吸器異常が犬で稀にあった。行動に関して臭化カリウムの効果を評価するため、あるいは臭化カリウム投与に関連した嘔吐、体重増加、多食、膵炎、多尿、多渇あるいは繁殖異常の発生率を決定するために利用できる情報が不十分であった。
食餌と共に与える臭化カリウムの投与は、胃腸への刺激を緩和させるかもしれず、多食、甲状腺ホルモン異常そして高い血清臭化物濃度のモニタリングは有益かもしれないということをエビデンスが示している。
結論と臨床関連性-臭化カリウムは発作のある全ての犬の治療に適切な選択枝ではなく、臨床家は、それぞれの犬に対して治療計画と臨床的観察を仕立てるべきであることが結果から示唆された。急激な食餌変化あるいは輸液療法は発作のコントロールを損なわせるかもしれなく、好ましくない兆候が増えるかもしれない。
適切にラベルがつけられ、承認された臭化カリウム製品の有効性は、獣医および飼い主に動物使用のための製品の品質、安全性そして有効性を保障することができた。(Dr.Kawano訳)
■犬と猫のてんかん発作と月周期:2507発作(2000-2008)
Canine and feline epileptic seizures and the lunar cycle: 2,507 seizures
(2000-2008).
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Sep-Oct;47(5):324-8.
Laura Browand-Stainback; Donald Levesque; Matthew McBee
特発性てんかんと診断された犬と猫211症例におけるてんかん発作を、月周期との関連で時間的意義を評価した。8つの個別の月相の各々と一般化された評価する式を用いた月照明の%による8つの実際の月相日の各々で発作数を比較した。てんかん発作の発現と月の相の関連を除外するそれらの比較に統計学的有意はなかった。抗痙攣治療の変更あるいは大規模な特発性てんかんの犬と猫のモニタリングは月周期をもとに正当化されなかった。(Sato訳)
■フェノバルビタール誘発性偽性リンパ腫が疑われた1頭の猫
Suspected phenobarbital-induced pseudolymphoma in a cat.
J Am Vet Med Assoc. February 2011;238(3):353-5.
Meg J Baho; Roger Hostutler; William Fenner; Stephanie Corn
症例解説:4.5歳の避妊済みメス猫短毛種を、麻酔関連低酸素事象後に発症した全身性発作のために評価した。
臨床所見:フェノバルビタール投与後、発作はなくなったが、その猫は重度全身性リンパ節症を発症した。CBCおよび生化学検査の結果に著しい変化はなかった。リンパ節の細胞診で反応性リンパ球集団を認めた。腫瘍および感染などの鑑別診断を行ったが、関連診断検査の結果は全て陰性だった。
治療と結果:治療をフェノバルビタールかたレベチラセタムに変更した。フェノバルビタール投与中止から10日後、リンパ節増大は解消し、レベチラセタムによる治療で発作はない状態だった。
臨床関連:偽性リンパ腫および抗痙攣薬過敏性症候群は、ヒトで抗痙攣薬投与による潜在性続発症と認識されている。しかし、動物で抗痙攣薬に対する偽性リンパ腫様反応は今まで報告されていない。腫瘍のようなより重症の疾病と誤解するかもしれない、フェノバルビタール投与による可逆的だが潜在的に重要な続発症であることを強調した症例だった。(Sato訳)
■犬において鼻に滴下あるいは噴霧投与したジアゼパムの薬物動態
Diazepam pharmacokinetics after nasal drop and atomized nasal administration in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. February 2011;34(1):17-24.
S E Musulin; C L Mariani; M G Papich
獣医療において、てんかん発作の緊急治療の標準ケアはベンゾジアゼピンの静脈内(i.v.)投与であるが、ジアゼパムの直腸内投与もi.v.アクセスができていない場合や病院外の状況で推奨される。しかしそれら両経路は潜在的限界がある。
この研究は犬においてジアゼパムのi.v.、鼻腔内(i.n.)滴下および鼻への噴霧投与後の薬物動態を調査した。乱塊法により、6頭の犬に全3つの経路からジアゼパム(0.5mg/kg)を投与した。血漿サンプルを採取し、ジアゼパム、その活性代謝産物、オキサゼパム、デスメチルジアゼパムの濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量した。
両i.n.群において5分以内に平均ジアゼパム濃度>300ng/mlを達成した。i.v.およびi.n.投与後それぞれ5分および10分以内に、ジアゼパムがその代謝産物に変換された。代謝産物の半減期は、両経路で投与した後、親剤のそれよりも長かった。ジアゼパムのi.n.滴下および鼻への噴霧投与後の生物学的利用能は、それぞれ42%と41%だった。それらの値は、犬において過去に発表されたジアゼパムの直腸内投与の生物学的利用能のデータを上回っていた。この研究は、ジアゼパムのi.n.投与が肝臓初回通過効果前の犬において、ジアゼパムの急速な抗痙攣濃度を得ると確認するものである。(Sato訳)
■難治性犬てんかんの内科管理に対する新しいオプション
Newer options for medically managing refractory canine epilepsy
Vet Med. Jul 2009;104(7):342-348. 17 Refs
Karen R. Munana, DVM, MS, DACVIM (neurology)
発作は小動物診療で遭遇する一般的な神経学的問題である。原発あるいは特発性てんかん-基礎に構造的原因が見つからない再発性発作を特徴とする疾患-は発作を起こす犬の25-40%で診断される。患犬の特徴として発作の発現は1歳から5歳の間で、生涯にわたる内科的処置を必要とする。しかし約20%から30%のてんかんを持つ犬は、従来の抗てんかん薬で満足のいく発作のコントロールができず、治療に対する不応性と考えられる。加えてフェノバルビタールと臭化カリウムは治療指数が狭く、顕著な副作用を起こす傾向がある。フェノバルビタールあるいは臭化カリウムの投与を受けているてんかんの犬の半数以下しか、薬剤関連の副作用を経験することなく発作のない状態を維持することができない。副作用は、鎮静、嘔吐、多尿、多渇、多食から、より深刻な合併症である骨髄抑制、肝中毒、膵炎などがある。
歴史的に、従来の抗てんかん薬療法に反応しない犬の治療オプションはむしろ限られていた。てんかんのヒトに使用される一般的な抗てんかん薬の多くは、効果がない(バルプロ酸、経口ジアゼパム)あるいは中毒の可能性(ラモトリジン)などの理由で獣医療において使用可能な代替薬ではない。
しかし、ここ20年において、いくつかの新しいてんかんの治療が開発されており、それらの新しい抗てんかん薬は、ヒトにおいて副作用が少なく、発作コントロールも改善している。それらの新しい抗てんかん薬に対する薬物動態試験が犬で実施されており、その結果は犬のてんかんに応用できる可能性を支持するものである。加えて、最近発表された報告では、それら薬剤によるてんかんの犬の治療を述べている。
このように、獣医療で犬の難治性発作を管理するために利用できるオプションが増えてくることがわかっている。この文献で、5つの新しい抗てんかん薬:フェルバメート、ガバペンチン、プレガバリン、ゾニサミド、レベチラセタムの使用に対する可能性を考察する。また家庭でクライアントが群発発作の管理を行うときに、あなたがどのように手助け出来るか助言する。(Sato訳)
■犬における筋肉内、静脈内、経口レベチラセタム:安全性と薬物動態
Intramuscular, intravenous and oral levetiracetam in dogs: safety and pharmacokinetics
J Vet Pharmacol Ther. June 2008;31(3):253-8.
E E Patterson, V Goel, J C Cloyd, T D O'Brien, J E Fisher, A W Dunn, I E Leppik
ヒトで経口ルートが利用出来ない時、ブリッジセラピーとして静脈内(IV)レベチラセタム(LEV)投与が利用可能である。我々は、犬に対するレベチラセタムの筋肉内(IM)、IV、経口投与における安全性と薬物動態を調査した。6頭のハウンド犬にそれぞれウォッシュアウト期間を設け、レベチラセタム19.5-22.6mg/kgをIM、IV、経口投与した。全ての犬に500mg経口、100mg/mlで5mlをIM投与した。3頭の犬にレベチラセタム500mgをIV投与、3頭に250mgをIV投与し残りの250mgを血管周囲や隣接部に血管外溢出させた。IM投与時にペインスケールを用いて安全性を評価し、注射後24時間-5日目に病理組織検査を行った。レベチラセタム静脈内投与の半減期は180±18分だった。レベチラセタム筋肉内投与の生物学的利用能は100%だった。IM後のT(max)までの平均時間は40±16分だった。IMの平均C(max)は30.3±3μg/mlで、比較としてIVのC(0)は37±5μg/mlだった。レベチラセタムIMの平均炎症スコア(0-4)は、生理食塩水0.62に対し0.28だった。血管外溢出による組織のダメージはなかった。犬に対する非経口レベチラセタムはよく許容し、IM、IV注射後も安全と思われる。てんかんの犬に対する非経口レベチラセタムの使用を評価すべきである。(Sato訳)
■特発性てんかんが疑われる猫におけるフェノバルビタール療法の補助としてレベチラセタムの使用
Levetiracetam as an adjunct to phenobarbital treatment in cats with suspected idiopathic epilepsy
J Am Vet Med Assoc. March 2008;232(6):867-72.
Kerry Smith Bailey, Curtis W Dewey, Dawn M Boothe, Georgina Barone, Gregg D Kortz
目的:特発性てんかんが疑われ、コントロールがあまりうまくいかない猫のフェノバルビタール療法の補助として、経口レベチラセタムの薬物動態、効果、許容性を調査する
構成:オープンラベル非比較臨床試験
動物:フェノバルビタールでうまくコントロールできない、あるいはフェノバルビタール投与で副作用のひどい特発性てんかんがあると疑われる12頭の猫
方法:レベチラセタム(20mg/kg、PO、8時間毎)で猫を治療した。治療から最低1週間後、薬剤投与前、2、4、6時間後に血清レベチラセタム濃度を測定し、最大および最小血清濃度および半減期を算出した。レベチラセタム療法開始前後の発作頻度を比較し、副作用を記録した。
結果:レベチラセタムの最大血清濃度中央値は25.5 microg/mL、最小血清濃度中央値は8.3
microg/mL、半減期中央値は2.9時間だった。レベチラセタム投与前の発作頻度中央値(2.1回/月)は、治療開始後の発作頻度中央値(0.42回/月)よりも有意に高く、10頭中7頭はレベチラセタム療法に反応したと分類された(すなわち50%以上の発作頻度減少)。2頭は一時的な嗜眠および食欲低下を示した。
結論および臨床関連:結果は、レベチラセタムは猫でうまく許容し、特発性てんかんの猫におけるフェノバルビタール療法の補助として有効かもしれないと示唆される。(Sato訳)
■スタンダードプードルにおける家族性焦点発作の臨床特性と遺伝様式
Clinical characteristics and mode of inheritance of familial focal seizures in Standard Poodles
J Am Vet Med Assoc. November 2007;231(10):1520-8.
Barbara G Licht, Shili Lin, Yuqun Luo, Linda L Hyson, Mark H Licht, Kathleen M Harper, Stacey A Sullivan, Soledad A Fernandez, Eric V Johnston
目的:スタンダードプードルの家族で、発作の臨床特性と遺伝様式を判定する。
構成:症例シリーズ
動物:同じ母系血統のスタンダードプードル90頭(30頭はまず確実に特発てんかん(PIE)をもち、60頭はいかなる発作の病歴を持たない)。
方法:研究者は、オーナーにコンタクトをとり、かつて発作があったか、もしそうならばいかなる発作の特性および基礎疾患の可能性があったかを判定した。発作の発現が6ヶ月から7.5歳で、いかなる基礎疾患の所見もない場合、PIEを持つと考えた。遺伝様式を判定するため、核家族に対照として、全体の分析をする家族に分離比分析を行った。遺伝の完全様式は、データを説明するそれらの能力に対し統計学的に比較した。
結果:PIEの犬のうち、28頭(93%)は、二次性全身化を伴う、あるいは伴わない焦点発作があった。発現年齢中央値は3.7歳で、6頭は5歳以上で発現していた。分離比分析では、完全なまたはほぼ完全な浸透度を持つ単純劣勢常染色体表現型としてPIEが遺伝することを強く示唆した。
結論と臨床関連:結果は、スタンダードプードルのこの家族において、PIEは完全またはほぼ完全な浸透度を持つ単純劣勢常染色体表現型として遺伝することを示唆した。発作はしばしば全身性の対照として焦点であり、5歳以降に発現する発作は珍しくなかった。(Sato訳)
■犬におけるゾニサミドの薬物動態とフェノバルビタールとの薬物相互作用
Pharmacokinetics of zonisamide and drug interaction with phenobarbital in dogs
J Vet Pharmacol Ther. June 2008;31(3):259-64.
K Orito, M Saito, K Fukunaga, E Matsuo, S Takikawa, M Muto, K Mishima, N Egashira, M Fujiwara
この研究目的は、犬におけるゾニサミドの薬物動態を明らかにし、フェノバルビタールとの薬物相互作用の有無を判定し、フェノバルビタール投与中止後にどれくらい長く相互作用が持続するのか調査することだった。
5頭の犬にフェノバルビタール(5mg/kg、BID、30-35日間)の繰り返し経口投与前と、投与中にゾニサミド(5mg/kg、PO,およびIV)を投与した。フェノバルビタール投与中止後8、10、12週目にもゾニサミド(5mg/kg、PO)を投与した。各ゾニサミド投与後24時間以内に血液を採取し、ゾニサミドの血清濃度を測定した。繰り返しのフェノバルビタール投与は、ゾニサミドの最大血清濃度、血清濃度vs.時間曲線下面積、明白な消失半減期、生物学的利用能を低下させた。総クリアランスは増加した。最大血清濃度と容量分布までの時間に変化はなかった。ゾニサミドの最大血清濃度と血清濃度vs.時間曲線下面積はフェノバルビタール投与中止後10週間まで低値を持続した。フェノバルビタール投与中止後12週目にフェノバルビタール投与前と同じ血清濃度に回復した。
それらのデータは、フェノバルビタールの臨床投与量の繰り返し投与は、ゾニサミドのクリアランスを高め、その高まったクリアランスはフェノバルビタール投与中止後、最低10週目まで持続することを示唆した。ゾニサミドとフェノバルビタールを一緒に投与するとき、フェノバルビタールからゾニサミドに抗てんかん療法を変更するときは注意が必要と思われる。(Sato訳)
■難治性特発性てんかんの11頭の犬に対するガバペンチンの治療
Vet Rec. 2006 Dec 23-30;159(26):881-4.
Treatment with gabapentin of 11 dogs with refractory idiopathic epilepsy.
Platt SR, Adams V, Garosi LS, Abramson CJ, Penderis J, De Stefani A, Matiasek L.
難治性特発性てんかんと診断した11頭の犬に対し、ガバペンチンを経口的に 初期用量10 mg/kg 8時間毎で最低3ヶ月治療した。すべて全身性強直間代性痙攣の発症を経験し、明らかな副作用がない治療的な血清濃度に達するために十分な用量でフェノバールと臭化カリウムを併用し、長期的に治療してきた。それぞれの犬において、ガバペンチンで治療する3ヶ月前と後で1週間当りの発作回数、発作の平均時間そして発作が起こった日数を比較した。1週間当りの発作回数において最低50%の減少がガバペンチンに対する陽性反応と解釈すると、6頭の犬が陽性反応を示した。更なるガバペンチンの投与後に、1週間当りの発作回数(P= 0.005)と1週間当りの発作が起こる日数(P=0.03)は明らかに減少した。運動失調や鎮静という軽度の副作用が5頭の犬で観察されたが、試験中に中止しなければならないほどの重度ではなかった。(Dr.Kawano訳)
■発作を持つ犬においてマレイン酸アセプロマジンの使用に対する遡及研究
A retrospective study on the use of acepromazine maleate in dogs with seizures
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Jul-Aug;42(4):283-9.
Karen M Tobias, Katia Marioni-Henry, Rebecca Wagner
発作の病歴を持つ犬に対し、マレイン酸アセプロマジン(すなわちアセチルプロマジン)の使用は、それら動物の発作閾値を低下させるリスクのために禁忌と言われている。この遡及研究で、過去に発作の病歴を持つ36頭の犬の鎮静に、11頭の発作活動を低下させるため、アセプロマジンを投与した。入院中に鎮静のための薬剤を投与されていた36頭の犬で、アセプロマジン投与16時間以内に発作は見られなかった。活動性の発作を持っていた10頭中8等で、アセプロマジン投与後、発作は1.5-8時間に軽減(n=6)、または再発はなかった(n=2)。興奮誘発性の発作頻度は、1頭の犬で2ヶ月間低下した。(Sato訳)
■アイリッシュウルフハウンドのてんかん
Epilepsy in Irish Wolfhounds
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):131-5.
Margret L Casal, Richard M Munuve, M Anne Janis, Petra Werner, Paula S Henthorn
過去15年間で、ブリーダーはてんかんを持つアイリッシュウルフハウンドの増加を報告している。密接に血縁のあるアイリッシュウルフハウンドの臨床データと系統を、遡及的に収集し分析した。他の原因のてんかんを除き、115同腹子のアイリッシュウルフハウンド796頭のうち146頭(18.3%)で診断された。73%のてんかん初回発生時期は3歳だった。メスよりもオスの方によく見られ(38.4%vs.61.6%)、オスのてんかん発現の平均年齢はより遅かった。罹患犬の平均寿命は、平均的なアイリッシュウルフハウンド集団と比較して2年短かった。罹患犬、それら同腹子と非罹患両親の遺伝率指数は0.87だった。遺伝の単純様式は、系統の罹患犬のパターンを解釈しない。優性および伴性遺伝の特徴はあまり顕著なものがなく、分離比は予想した単純常染色体劣性遺伝以下だった。全ての罹患犬はてんかんの同じ型を持つと仮定し、観察された遺伝の複雑なパターンの最も単純な種類は常染色体劣性で、不完全な浸透度とオスのリスク増加を伴う。(Sato訳)
■てんかんの犬の脳脊髄液中抑制性、興奮性神経伝達物質
Inhibitory and excitatory neurotransmitters in the cerebrospinal fluid of epileptic dogs.
Am J Vet Res 65[8]:1108-13 2004 Aug
Ellenberger C, Mevissen M, Doherr M, Scholtysik G, Jaggy A
目的:特発性てんかん、遺伝性てんかんの多数の犬の脳脊髄液(CSF)における興奮性、抑制性アミノ酸濃度を測定し、薬剤投与と性別に関するCSFアミノ酸濃度の変化を評価する
動物:遺伝性てんかんのラブラドールレトリバー35頭(オス20頭、メス15頭)と特発性てんかんのラブラドールレトリバー以外の犬(オス71頭、メス23頭)およびコントロール犬20頭(オス10頭、メス10頭)
方法:てんかんの発生から72時間以上経過してCSFを採取した。電気化学的検出の高速液体クロマトグラフィーを用い、ガンマアミノ酪酸(GABA)、グルタミン酸(GLU)、アスパラギン酸(ASP)、セリン、グリシンのCSF濃度を測定した。
結果:コントロール犬や特発性てんかんのラブラドールレトリバー(LR)以外の犬よりも、遺伝性てんかんのLRのCSF中GABA、GLU濃度は有意に低かった。非LR犬よりもLR犬のGLU/GABA比は有意に高かった。コントロール犬と比べ、全てのてんかん犬(LR、非LR)のCSF中GLU、ASP濃度は有意に低かった。
結論と臨床関連:ラブラドールレトリバーのCSF中GABA濃度の低下は、遺伝的に確認されたてんかんの原因の役割を演じていると思われる。しかし、この濃度低下も発作活動の結果かもしれない。GLU/GABA比はラブラドールレトリバーの遺伝的てんかんの有効な指標となるかもしれない。(Sato訳)
■ジャーマンシェパードの子犬に見られたフェノバルビタール反応性流涎、嚥下困難、明白な食道痙攣
Phenobarbital-responsive ptyalism, Dysphagia, and apparent esophageal spasm in a german shepherd puppy.
J Am Anim Hosp Assoc 40[3]:230-7 2004 May-Jun
Gibbon KJ, Trepanier LA, Delaney FA
10週齢のオスのジャーマンシェパードが、流涎、嚥下困難、嘔吐、下顎唾液腺拡大を主訴に来院した。透視を使用した食道造影検査で、咽頭、食道機能は正常だった。しかし、上部胃腸内視鏡検査と頚部超音波検査で、食道痙攣に一致する頚部中間食道筋壁の限局円周性肥厚が認められた。子犬は、フェノバルビタール投与により劇的に完全に反応を示した。フェノバルビタール反応性唾液分泌亢進の異常な症候群は、このイヌの臨床症状と明白な食道痙攣所見と一致した。この症候群の原因は不明であるが、辺縁系てんかん、または末梢自律神経機能不全のある型を表しているのかもしれない。(Sato訳)
■犬の難治性特発性てんかんにおけるゾニサミド治療
J Am Anim Hosp Assoc. 2004 Jul-Aug;40(4):285-91.
Zonisamide therapy for refractory idiopathic epilepsy in dogs.
Dewey CW, Guiliano R, Boothe DM, Berg JM, Kortz GD, Joseph RJ, Budsberg SC.
十分にコントロールできない特発性てんかんの12頭の犬で予期的、オープンラベル、相対的研究を行った。
経口ゾニサミドを10-40μg/mlの血清薬物濃度に達するまで十分な量で追加療法として投与した。
ゾニサミド療法の開始前後の発作頻度を記録した。12時間の間隔投与は血清ゾニサミド濃度を治療範囲に維持するのに十分であった。必要とされたゾニサミドの平均量は8.9mg/kg、12時間ごとであった。平均7頭(58%)の犬が順調に反応し、81.3%の発作において平均的な軽減をもたらせた。5頭の犬は発作頻度が増加した。軽度の副作用(一時的な鎮静、運動失調、嘔吐)が6頭の犬で起こった。(Dr.Kawano訳)
■健康なビーグル犬で高用量臭化カリウム経口投与後、臭化物の薬物動態と毒性
Pharmacokinetics and toxicity of bromide following high-dose oral potassium bromide administration in healthy Beagles.
J Vet Pharmacol Ther 25[6]:425-32 2002 Dec
March PA, Podell M, Sams RA
正常犬で、臭化カリウム(KBr)複数回投与法の薬物動態を検査した。臭化カリウムは12時間毎に115日間30mg/kg経口投与した。血清、尿、脳脊髄液(CSF)臭化物(BR)濃度を、投与開始時、蓄積期間中、定常状態、投与量調節後に測定した。消失半減期中央値と定常状態血清濃度はそれぞれ15.2日と245mg/dlだった。明確な全身クリアランスは、16.4ml/day/kgで、分布容積は0.40L/kgだった。定状状態時の脳脊髄液:血清臭化物比は0.77だった。維持投与量中は犬に神経学的欠損は見られなかったが、脳幹聴覚誘発反応のIとV波で有意な潜在性シフトが明らかだった。その後の投与量調節後に、尾側不全麻痺に関係する約400mg/dlの血清臭化物濃度が2頭に見られた。蓄積期間中に評価した半減期は、他の研究で報告されている消失半減期よりも短く、食餌中の塩化物内容物に関連があるようだった。定状状態に達成した濃度の範囲は、各犬のクリアランスや生物学的利用能の違いを示唆している。述べられたプロトコールは、満足のいく発作コントロールのために多くのてんかん患者に必要とされる血清臭化物濃度を確実に作り出せた。(Sato訳)
■デンマークのラブラドールレトリバーにおけるてんかんのクロスセクショナル研究:罹患率と選ばれた危険因子
A Cross-Sectional Study of Epilepsy in Danish
Labrador Retrievers: Prevalence and Selected
Risk Factors
J Vet Intern Med 16[3]:262-268 May-Jun'02
Cross-Sectional Study 42 Refs
Mette Berendt, Hanne Gredal, Lotte Gam Pedersen,
Lis Alban, Jorgen Alving
この研究の目的は、デンマークのラブラドールレトリバーでてんかんの罹患率と選ばれた危険因子、てんかんが改善した犬の比率、発作の種類を調査することだった。てんかんの前向きクロスセクショナル研究を1999-2000年に行った。研究は29602の個体からなる参照集団で、2相の構成により行った。
第1相は、無作為抽出により550頭を選び、生まれた年で分類した。電話による調査で、てんかんを持っているか調査した。
第2相は、第1相でてんかんに罹患していると判断した犬について、さらに身体検査、神経学的検査、CBC、血液生化学検査、てんかんの現象に関する質問を行った。
17頭をてんかんと診断し、デンマークのラブラドールレトリバーで罹患率が3.1%(95%CI 1.6-4.6%)を示した。
4歳以上(1995年以前に生まれた)の犬は、より若い犬(1995年-1999年生まれ)に比べ、6倍高くてんかんの傾向があった(P=.004、危険率=6.5)。性別に有意差はなく、不妊の影響も統計上証明できなかった。
原発性全身性発作と部分発作(二次性の全身性があるまたはない)の出現率はそれぞれ24%と70%だった。発作の種類は6%が分類できなかった。
結論として、デンマークのラブラドールレトリバーでてんかんの罹患率が3.1%を示した事は、一般犬集団で述べられている1%よりも高く、この犬種のてんかんリスクが増加していると確証する。(Sato訳)
■特発性てんかんの、てんかん重積状態発生に対するリスクファクターと、てんかん重積状態が結果や生存期間にどう影響するか:32症例(1990-1996)
Miyoko Saito, DVM et al; J Am Vet Med Assoc
219[5]:618-623 Sep 1'01 Retrospective Study
33 Refs ;Risk Factors for Development of
Status Epilepticus in Dogs with Idiopathic
Epilepsy and Effects of Status Epilepticus
on Outcome and Survival Time: 32 Cases (1990-1996)
目的:特発性てんかんを持つ犬で、てんかん重積状態(SE)発生に対するリスクファクターを見極め、SEが長期結果や生存時間にどう影響するか調査することです。
構成:回顧的研究
動物:特発性てんかんを持つ32頭の犬
方法:徴候、発作の発生、治療の開始、抗痙攣薬の投与、SEの発生数、全体の発作管理、そして長期結果の情報を、医療記録と電話での会話を通して集めました。SEの発生がある犬と、ない犬の違いを統計的に評価しました。
結果:19頭(59%)の犬は、1回以上のSEの発生がありました。体重は、SEの発生がある犬とない犬の有意差で唯一不定なものでした。13頭(9頭は経験あり、4頭は経験無し)は、この研究時に生存しており、全て10歳以上でした。SEの経験がある19頭中6頭(32%)は、発作が直接の原因で死亡しました。平均寿命は、経験あるものが8.3年、経験がないものは11.3年でした。生存期間にはグループ間の有意差が見られました。
結論と臨床関連:結果は、特発性てんかんを持つ犬は、かなりの確立でSEが発生するであろうと示唆します。より重い体重の犬は、SEを発生しやすく、早期の適切な発作治療は、発生のリスクを減少させるということはありませんでした。特発性てんかんのほとんどの犬は、寿命を予想できますが、生存期間はSEの経験がある犬の方がより短いものとなりました。(Dr.Sato訳)