■糖尿病の犬の眼所見の有病率とそれらと糖血症との関係
Prevalence of ocular findings and their association with glycemia in dogs with diabetes mellitus: A 10-year clinical study (2009-2019)
Open Vet J. 2023 May;13(5):620-628.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i5.15. Epub 2023 May 16.
Francisco Cantero , Ángel Ortillés , M Teresa Peña , Marta Leiva

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背景:糖尿病患者の眼所見は良く述べられているが、それらの有病率のデータは不明である。

目的:糖尿病の犬の眼所見の有病率と、それらと糖血症との関係を述べる

方法:バルセロナの自治大学の獣医教育病院で、眼科及び内科サービスにより評価した糖尿病犬の医療記録を再調査した(2009-2019)。

結果:平均年齢9.37±2.43歳の両性別(51/75メス;68%と24/75オス;32%)の75頭(150眼)の犬を含めた。最も一般的な眼所見は、白内障(146/150;97.3%)、硝子体変性(45/98;45.9%)、前ぶどう膜炎(47/150;31.3%)、水性欠乏性ドライアイ(ADDE)(33/150;22%)、瀰漫性角膜浮腫(31/150;20.7%)、非増殖性網膜症(13/98;13.3%)、脂質角膜症(9/150;6%)だった。観察された白内障の最も一般的なタイプは膨張性(78/146;53.4%)で、一般に非増殖性網膜症を伴っていた(p=0.003)。糖尿病犬の中で、非増殖性網膜症あるいは前ぶどう膜炎の犬の血糖値は統計学的により高値だった(p<0.005)。

結論:犬の糖尿病の眼の合併症は非常に多く、膨張性白内障、硝子体変性、前ぶどう膜炎、ADDE、瀰漫性角膜浮腫、非増殖性網膜症の頻度が多かった。特に白内障の手術を行う糖尿病犬においては、この高い有病率がより詳細な眼科評価を正当化する。さらに、前部分の炎症と非増殖性網膜症の傾向は、絶食時血漿グルコースが600mg/dLよりも高い時に示唆される。(Sato訳)
■併発疾患のあるコントロールがうまくいかない糖尿病犬の糖尿病の管理をデテミルは改善する
Detemir improves diabetic regulation in poorly controlled diabetic dogs with concurrent diseases
J Am Vet Med Assoc. 2023 Jan 19;1-9.
doi: 10.2460/javma.22.09.0402. Online ahead of print.
Antoinette R Harris-Samson , Jacquie Rand , Sara L Ford

目的:この研究は、中時間作用性インスリンでうまくコントロールできない併発疾患のある糖尿病犬の治療に対し、デテミルの使用を評価した。

動物:7頭のインスリンで治療している糖尿病犬

方法:回顧的予備研究。犬は少なくとも3か月デテミルで治療し、始め6-8週間、血糖は1日2-4回、家で飼い主に評価してもらい、その後1日2回評価してもらった。臨床的評価は、7-14日目に、その後60-90日毎に行い、デテミルの用量の調節は血糖のコントロールに必要な時に行った。

結果:中時間作用型インスリンで治療していた最終月と比べ、1、3、6か月および最終月の間、デテミルの投与後の日々の平均、ピーク、底、夜のインスリン投与前の血糖値は有意に低かった。中時間左葉型インスリンは、全て3つのコントロールカテゴリーにおいて、デテミルより血糖コントロールが有意に悪かった。デテミルによる生化学的低血糖測定値の確率は、中時間作用型インスリンと比べて有意差がなかった。臨床的低血糖は、デテミル治療後発生しなかった。インスリン投与前の朝に低血糖<6.7mmol/L(≦120mg/dL)のためにインスリンを差し控え、犬に食事を与得た時、平均血糖値は1時間後に有意に高くなった。インスリンを朝、あるいは夜に1あるいは12時間差し控えたその日の12時間後の血糖値も有意に高かった。

臨床関連:デテミルは他の併発疾患のある糖尿病犬に有用で、うまくコントロールできていない糖尿病犬の代替治療として考慮できる。(Sato訳)
■糖尿病の犬の下部尿路疾患の症状と尿培養陽性の有病率:回顧的研究
Prevalence of signs of lower urinary tract disease and positive urine culture in dogs with diabetes mellitus: A retrospective study
J Vet Intern Med. 2023 Jan 28.
doi: 10.1111/jvim.16634. Online ahead of print.
Valerie Nelson , Amy Downey , Stacie Summers , Sarah Shropshire

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背景:糖尿病の犬の下部尿路疾患(LUTD)の臨床症状と、尿培養陽性の関係を評価している近年の研究はない。

目的:糖尿病の犬の無症状の細菌尿(すなわち、LUTDの症状のない尿培養陽性)の有病率を判定する

動物:107頭の糖尿病の犬を大学病院で評価した。

方法:尿検査と尿培養をペアとした1つのサンプルのある糖尿病の犬を評価する回顧的研究。LUTDの症状の存在、膿尿、細菌尿と培養結果の関連をフィッシャー正確検定で比較した。

結果:15頭(14%)の犬は膀胱穿刺あるいは自然排尿の尿培養陽性で、そのうち8頭(53%)は膿尿、4頭(27%)はLUTDの症状があった。LUTDの症状のない88頭(82%)のうち、11頭(13%)は培養陽性だった。尿培養陽性と膿尿(OR無限;95%CI:20.34-無限、P<.00001)および細菌尿(OR無限;95%CI:164.4-無限、P<.00001)の間に有意な関係が見つかった。尿培養結果とLUTDの症状の間に関係は見つからなかった(OR1.87;95%CI:0.59-6.85、P=0.46)。

結論と臨床的重要性:この集団で無症状の細菌尿は発生し、我々の所見は、特に膿尿および細菌尿がない場合には、糖尿病の犬において尿培養を定期的に実施すべきではないという推奨をより強固にするものである。(Sato訳)
■犬の糖尿病の長期モニタリングにおける血清フルクトサミンの臨床的有用性
Clinical utility of serum fructosamine in long-term monitoring of diabetes mellitus in dogs
Vet Rec. 2022 Sep 30;e2236.
doi: 10.1002/vetr.2236. Online ahead of print.
Sharon Kuzi , Michal Mazaki-Tovi , Wiessam Abu Ahmad , Yael Ovadia , Itamar Aroch

背景:血性フルクトサミン(sFA)は、真性糖尿病(DM)の血糖コントロールの評価に使用される。それにもかかわらず、その解釈はいくつかの制限で妨害される。

方法:この遡及的研究は、DMの臨床的コントロールをモニタリングするため、sFAの長期診断パフォーマンスを評価する。sFA、体重、食欲、多飲/多渇の有無、臨床スコア(CS;よくコントロールされているDM、CS-0;コントロールされていないDM、CS-1)を記録した。

結果:研究には75頭の犬を含めた(321回の受診;中央値3受診/頭;範囲1-19)。平均sFAは、CS-0(506μmol/L;95%CI:484-528)の受診時よりもCS-1(584μmol/L;95%CI:561-608)でより高かった(p<0.001)。sFAの増加は、CS-1のオッズ比を上昇させた(1.37;95%CI:1.24-1.52、p<0.001)。sFAはCSを中程度予測し(受信者操作特性曲線下面積=0.75;95%CI:0.70-0.80;p<0.0001)、486μmol/Lのカットオフで、80%の感受性と59%の特異性が得られた。sFAは低血糖の事象が疑われるとき(496μmol/L;95%CI:450-541)、それがない時(572μmol/L;95%CI:548-596)よりも低かった(p=0.005)。sFAは糖尿病犬のCSの分類に対し中程度の精度だった。フォローアップ中のsFAの低下はCSの改善を示すが、低血糖の事象の発生を示唆するかもしれない。

制限:遡及的デザイン、処置の変動、併発症がこの研究の制限である。

結論:糖尿病犬の長期モニタリングにおいて、sFAの臨床的有用性は中程度だが、第一選択、利用しやすい診断ツールとして役立つかもしれない。CSとsFA評価の一致を欠く、あるいはsFAの減少は、追加のモニタリング(例えば連続血糖値モニタリング)を正当化する。(Sato訳)
■糖尿病犬312頭のCBCと血液スメア検査(2007-2017)
Complete Blood Counts and Blood Smear Analyses in 312 Diabetic Dogs (2007-2017)
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Jul 1;58(4):180-188.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7230.
Tanner S Slead , Andrew D Woolcock , J Catharine Scott-Moncrieff , Joanne B Messick , George E Moore

糖尿病は、犬の一般的な内分泌障害で、種々の生化学変化と併存疾患に関係しているが、血液学的異常はあまり報告されていない。

この遡及的研究の目的は、糖尿病犬の全血数および血液スメアの変化を評価することと、共存疾患との関連、発生率を述べることだった。

糖尿病犬320頭、全身性非糖尿病疾患の犬286頭、健康犬506頭を研究期間中に確認した。グループは分割表とロジスティック回帰で比較した。CBCと血液スメアの統計学的に有意な変化と共存症との関係は多変量解析で評価した。糖尿病の犬では高グレードのcodocytosisと大小不同が確認されることが多かったが、高グレードの反応性リンパ球とkeratocytosisが確認される頻度は少なかった(P<.001)。高グレードのcodocytosisのある犬は、赤血球、ヘモグロビン、ヘマトクリットがより低く、白血球数はより高かった(P<.001)。糖尿病性ケトアシドーシスは、低グレードcodocytosisの糖尿病犬(P<.001)、あるいは他の細胞の形態学的変化と比べ、高グレードcodocytosisの糖尿病犬で診断される頻度が高かった。

この研究は糖尿病犬の評価に、通常作業として血液スメア検査を取り入れるべきだと示唆する。(Sato訳)
■犬の糖化ヘモグロビンに対する年齢や性別の影響
The effect of age and sex on glycated hemoglobin in dogs
J Vet Diagn Invest. 2021 Dec 21;10406387211065046.
doi: 10.1177/10406387211065046. Online ahead of print.
Ioannis L Oikonomidis , Theodora K Tsouloufi , Maria Kritsepi-Konstantinou , Nectarios Soubasis

検証済みキャピラリー電気泳動法を用いて、犬の糖化ヘモグロビン(HbA1c)に対する年齢と性別の影響を調査した。

ルーチンな健康診断で採取したEDTA血液サンプルの一部を使用した。HbA1cはCapillarys 2 flex-piercing system (Sebia)を用いて測定した。

臨床的および血液学的に健常で、血糖値の正常な58頭の犬(オス29頭、メス29頭)を含め、3つの年齢群に分類した:ヤング(14頭<1歳)、アダルト(31頭1-7.9歳)、シニア(13頭≧8歳)。

年齢群の間に平均(±SD)HbA1cの有意差はなかった(ヤング:1.68±0.54%;アダルト:1.59±0.41%;シニア:1.80±0.57%)(p=0.428)。HbA1cは年齢と有意に相関しなかった(rho=0.144、p=0.280)。

オス犬(1.7%(0.5-2.5%))とメス犬(1.5%(1.0-2.7%))の間で、HbA1c中央値(範囲)に有意差はなかった(p=0.391)。

年齢や性別は犬のHbA1cに影響するとは思われない;しかし、老齢犬の一研究は、HbA1cに対する年齢の影響を完全に排除する必要があるだろう。(Sato訳)
■糖尿病がある犬とない犬の腫瘍の可能性
The odds of neoplasia in dogs with and without diabetes mellitus
J Vet Intern Med. 2022 Jan 26.
doi: 10.1111/jvim.16370. Online ahead of print.
Sindumani A Manoharan , Rebecka S Hess

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背景:糖尿病(DM)のヒトにおいて、腫瘍のリスク上昇はよく示されている。DMの犬は腫瘍のリスクが増しているかどうかは不明である。

目的:DMではない犬と比較して、DMの犬は腫瘍のリスクおよび特定の腫瘍の型のリスクが全体的に増しているかどうかを調べる

動物:DMの犬700頭と同年中に検査した犬種、年齢、性別がマッチしたDMではない犬700頭

方法:回顧的症例-コントロール研究。DMの犬はそうでない犬と比べて腫瘍発生の確率が増しているかどうかを判定するため、条件付きロジスティック回帰を用いてオッズ比(OR)、対応する95%信頼区間(CI)、P-値を算出した。

結果:DMの犬とそうでない犬において、腫瘍発生の全体の確率に有意差はなかった。しかし、DMの犬は副腎マスの発生の確率が有意に高かった(OR、4;95%CI、1.1-14.2;P=.03)。DMの犬の脾臓マスの発生の確率は高くなっていた(OR、1.2;95%CI、0.99-1.39)が、これは有意な違いではなかった(P=.07)。

結論と臨床的重要性:DMの犬は副腎腫瘍に対するリスクが上昇しているかもしれない。このリスクの認識は、この命を脅かす共存症の早期診断を容易にできる。これら所見を確認する大規模研究が必要である。(Sato訳)
■水晶体超音波吸引に対する麻酔をかけた糖尿病の犬におけるインスリン投与と絶食時間の2つのプロトコールの比較
Comparison of two protocols for insulin administration and fasting time in diabetic dogs anaesthetised for phacoemulsification: A prospective clinical trial
Vet Rec. 2021 May 13;e81.
doi: 10.1002/vetr.81. Online ahead of print.
Daisy J Norgate , Daniel Nicholls , Rebecca F Geddes , Charlotte Dawson , Chiara Adami

背景:糖尿病の犬において周術期のインスリン投与と絶食時間に対するエビデンスベースのガイドラインはない。この研究の目的は、術前値と比べた血中グルコース(BG)濃度の術中変化に関して2つのプロトコールを比較することだった。

方法:32頭の犬を含めた。AM群の犬(n=15)は、12時間の絶食後、朝に通常のインスリン量の半分を投与して麻酔をかけ、PM群の犬(n=17)は、6時間の絶食後、通常のインスリン量を投与し昼に手術を行った;BGは、前投薬前(基準)、麻酔導入後、術中30分ごと、抜管時、麻酔覚醒後に測定した。術中合併症の発生を記録した。

結果:周術期のBGの変化、合併症を経験した犬の比率にグループ間の差はなかった。一般的な合併症は低血圧(両群の53%の犬)、高血糖(AM軍の67%、PM群の65%)、高カリウム血症(AM軍の20%、PM群の11%)だった。

結論:両プロトコールは麻酔をかける糖尿病犬に有用かもしれない。この研究集団における高カリウム血症の発生は、血中カリウム濃度の定期的な術中モニタリングを支持する。(Sato訳)
■糖尿病の犬276頭におけるプロタミン亜鉛遺伝子組み替えヒトインスリンの現場の効果と安全性
Field efficacy and safety of protamine zinc recombinant human insulin in 276 dogs with diabetes mellitus
Domest Anim Endocrinol. 2020 Oct 14;75:106575.
doi: 10.1016/j.domaniend.2020.106575. Online ahead of print.
C R Ward , K Christiansen , J Li , W L Bryson , K A Jerrentrup , C Kroh

真性糖尿病(DM)の犬を治療するオーナーにとって、1日2回(BID)のインスリン注射は大きな足かせである。

この研究の仮説は、プロタミン亜鉛遺伝子組み換えヒトインスリン(PZIR)は、犬のDMに対し安全で、1日1回(SID)の投与で効果があるだろうということだった。

これは、182±5日にわたる前向き、基礎-対照多施設研究だった。自然にDMを発症した犬(無処置あるいはインスリンで前に治療)276頭を研究に登録した。登録基準は、高血糖、糖尿、1つ以上の糖尿病の臨床症状(多尿(PU)、多渇(PD)、体重減少)を基にした。インスリン治療は0.5-1.0IU/kg SIDで開始した。最低1つのDMに関係する検査パラメーター(平均BD、最低BD、フルクトサミン)、1つの臨床的パラメーター(PU/PD、体重)の改善は、72%の犬で達成された。

SIDおよびBIDで治療した犬は、それぞれ71%、74%の症例が改善を示した。無処置の犬において、平均および最低BG、フルクトサミンは、それぞれ7日、21日目に有意に低下し(P<0.05)、前に処置をしていた犬においては63日目に低下した。84日目、PU/PDはそれぞれ90%、88%の犬で改善し、成功したインスリン投与量の平均は1.4IU/kg/日だった。

安全性パラメーターは276頭で182日まで測定した;臨床的低血糖は8.9%の犬で発生した。

著者らは無処置および前に治療していた糖尿病の犬において、PZIRは安全に、効果的に糖血症パラメーターと臨床症状を改善したと結論付ける。高血糖および臨床症状の改善を示すSID治療の犬の有意な比率は、多くの犬においてPZIRの延長した作用を確認するものである。(Sato訳)
■犬の糖尿病に対しヒトの糖化ヘモグロビン検査の評価
Evaluation of a human glycated hemoglobin test in canine diabetes mellitus.
J Vet Diagn Invest. May 2019;31(3):408-414.
DOI: 10.1177/1040638719832071
Na-Yon Kim, Jaehoon An, Jae-Kyung Jeong, Sumin Ji, Sung-Hyun Hwang, Hong-Seok Lee, Myung-Chul Kim, Hyun Wook Kim, Sungho Won, Yongbaek Kim

糖化ヘモグロビンA1c(HbA1c)はヒトの真性糖尿病のモニタリングや診断で広く使用されており、まれに動物病院でも使用される。
この研究の目的は、犬での使用に対し、市販のHbA1cを検査するシステムSD A1cCare analyzer(Bionote, Gyeoggi-do, South Korea)を検証することだった。

犬はオーナーの同意を得て募集した。糖尿病の状態は、臨床症状、絶食時高血糖、糖尿を基に判定した。assay内の精度と直線性は、抗凝固剤としてEDTA、ヘパリン、クエン酸で評価し、それぞれ変動係数(CVs)の平均が2.47%、2.26%、1.92%と優れた精度だった。希釈した抗凝固血サンプルは、それぞれR2が0.991、0.996、0.994と優れた直線相関を示した。assay間の精度は、正常コントロールの平均CVが2.18%、高値コントロールが2.01%(30反復)だったと示した。観察された総エラーは正常コントロールが7.81%、高値コントロールが6.12%だった。血漿の除去前後と生食による置換で測定したHbA1cは、脂質含有物による干渉が最小であることを示した(p=0.929)。糖尿病犬のHbA1c濃度は、非糖尿病犬のそれよりも有意に高かった(p<0.001)。HbA1c>6.2%は、分類と回帰ツリーモデルを通して犬の糖尿病を示した。ほとんどの症例で、フルクトサミンとHbA1cは高い相関を示した(r=0.674、p<0.001)。

HbA1c検査システムは、犬の真性糖尿病を評価する有用な検査システムである可能性があり、獣医臨床家の使用に対する代替院内オプションを提供する。(Sato訳)
■健康な犬でインスリンデタミルとインスリングラルギン300U/mLの薬力学と薬物動態
Pharmacodynamics and pharmacokinetics of insulin detemir and insulin glargine 300 U/mL in healthy dogs.
Domest Anim Endocrinol. July 2018;64(0):17-30.
DOI: 10.1016/j.domaniend.2018.03.007
H Fink , C Herbert , C Gilor

インスリングラルギン300U/mLとインスリンデタミルは、ヒトで日々変動が最小限、あるいは低血糖の事象に関係する合成長期作用性インスリン類似物質である。

ここで8頭の研究犬に、無作為順序で1週間以上間隔をあけた異なる日に、インスリンデタミル(0.1U/kg)とインスリングラルギン300U/mL(0.4U/kg)の2.4nmol/kgの皮下注射を行った。血糖値を5分ごとに測定し、基礎血糖値の10%以内に血糖値を維持するように、不定の割合で静脈内にグルコースを投与した("isoglycemic clamp")。インスリン注射後、24時間まで内因性および外因性インスリンを測定した。外因性インスリンの効果は、グルコース注入速度あるいは内因性インスリンの低下で定義した。

isoglycemic clampsはデテミル投与後8頭全てで生じたが、グラルギン投与後は4頭だけだった。グラルギンの作用発現までの時間中央値は、デテミルに比べ遅かった(4.0h(3.3-5.8h))vs0.6h(0.6-1.2h)、P=0.002)。ピークまでの時間(中央値(範囲)=6.3h(5.0-21.3h)vs4.3h(2.9-7.4h)、P=0.15)あるいは作用の持続時間(16.3h(6.1-20.1h)vs10.8h(8.8-14.8h)、P=0.21)にグラルギンとデテミルの差はなかった。グラルギンは8頭中4頭でpeakless time-action profileを示した。デテミルの総代謝作用とpeak actionはグラルギンよりも有意に大きかった。グラルギンの十分な濃度は、投与後1頭を除く全ての犬で検出された。

グラルギンはその長期持続作用およびpeakless time-action profileをもとに、1日1回のインスリン製剤としていくらかの犬にはデテミルより良く適しているのかもしれない。インスリン作用の日々変動は、両製剤でさらに評価すべきである。(Sato訳)
■犬と猫の糖尿病管理ガイドラインAAHA 2018
2018 AAHA Diabetes Management Guidelines for Dogs and Cats
Ellen Behrend, Amy Holford, Patty Lathan, Renee Rucinsky, Rhonda Schulman
J Am Anim Hosp Assoc 2018; 54:1?21. DOI 10.5326/JAAHA-MS-6822

糖尿病は犬猫で遭遇する一般的な疾患である。2018AAHA犬と猫の糖尿病管理ガイドラインは2010年のガイドラインを改訂した。2018年のガイドラインは現在の専門家の意見を反映させるとともに以前のガイドラインに含まれた臨床的に有用な情報も引き続き存続させている。糖尿病管理を成功裏に導くには、インスリンの投与、不十分な管理時の糖尿病の症状の理解、自宅での血糖値モニタリングが不可欠であり、理想的であるが強制ではない。これらのこと全てガイドラインで言及されている。インスリン療法は糖尿病治療では主流である。

本ガイドラインでは犬猫で利用可能なインスリン製剤で推奨事項を述べるとともに効果と持続期間に基づいた選択についても述べる。また非インスリン治療と食事管理についても言及する。これらの治療法はインスリン療法とともに低血糖を避けつつ糖尿病の臨床症状軽減の選択肢となり得る。本ガイドラインは一時的な高血糖や軽度の血糖値上昇の動物への不要なインスリン療法を回避するためおよび糖尿病へ進行するリスクを同定しモニターすることを検討する。(Dr.Maru訳)
■糖尿病犬における血中乳酸濃度
Blood lactate concentration in diabetic dogs
Poliana Claus, Andre? M. Gimenes, Jacqueline R. Castro, Matheus M. Mantovani, Khadine K. Kanayama, Denise M.N. Simo?es, Denise S. Schwartz
Can Vet J 2017;58:817?822

ヒト糖尿病の乳酸濃度は非糖尿病と比べて上昇していることがある。緊急時に乳酸濃度を測定するにも関わらず糖尿病犬ではあきらかではない。そのため前向き横断試験で75頭(新規診断の非ケトーシス25、インスリン療法25、ケトアシドーシス[DKA]25)について乳酸濃度を非糖尿病25と比較することを目的とした。乳酸値はグループ間で有意差はなく(P=0.02)、中央値、25%と75%値はコントロールで2.23, 1.46と2.83、新規診断の非ケトーシスで1.69, 1.09と2.40、インスリン療法2.27, 1.44と2.90、DKAで2.40, 1.58と3.01であった。犬糖尿病の酸塩基状態における乳酸の役割を明らかにするために異性体(LとD乳酸)の縦断評価が必要である。(Dr.Maru訳)
■猫の糖尿病ケアに対する個別アプローチ:症例報告と文献レビュー
An individual approach to feline diabetes care: a case report and literature review.
Language: English
Acta Vet Scand. October 2016;58(Suppl 1):63.
Moira S Lewitt , Emma Strage , David Church

背景:猫の糖尿病の管理において、現実的な治療の最終目標としてインスリン非依存の達成が現れている。

症例提示:コルチコステロイド投与後の糖尿病を呈した11歳避妊済みメスのバーミーズの管理を述べる。インスリン投与の回数を1日4回に増やし、高蛋白、低炭水化物食と集中的な家庭での血糖モニタリングでサポートした後に寛解が達成した。

結論:猫の糖尿病ケアにおいてオーナーは重要な協力者で、家庭での集中的なモニタリング、より多いインスリン投与は、低血糖を起こすことなく寛解に導くかもしれない。文献で推奨されるよりも頻繁なインスリン注射は、血糖コントロール達成に必要で、長期作用型インスリンの代替として使用されるかもしれない。(Sato訳)
■末端肥大症の猫における腹部超音波所見
Abdominal ultrasonographic findings in acromegalic cats.
J Feline Med Surg. August 2015;17(8):698-703.
Bianca N Lourenco; Elissa Randall; Gabriela Seiler; Katharine F Lunn

目的:糖尿病(DM)の猫におけるインスリン抵抗性の原因として末端肥大症がますます認識されている。この研究の目的は、末端肥大症の猫で選択した腹部臓器の超音波変化が、この状況を疑う指標に使用できるかどうかを調査することだった。

方法:この回顧的症例-対照研究において、2002年1月から2012年10月にノースキャロライナ州立大学あるいはコロラド州立大学に来た猫のカルテを再調査した。血清インスリン様成長因子(IGF-1)濃度上昇と腹部超音波検査の報告があるインスリン抵抗性DMの場合、末端肥大症群に含めた。腎臓、副腎、膵臓、肝臓の関与の可能性が高い疾患の調査で腹部超音波検査を実施した同じ年齢の猫をコントロール群に含めた。

結果:各群24頭の猫を含めた。末端肥大症群のIGF-1濃度は、148から638nmol/lだった。年齢が一緒のコントロールと比較して、末端肥大症の猫は、有意に左右の腎臓の長さの中央値、左右の副腎の厚さの中央値、膵臓の厚さの中央値が大きかった。末端肥大症の猫で肝肥大は63%、副腎肥大は53%で報告され、コントロールでは報告された猫はいなかった。膵臓異常は末端肥大症の猫の88%で見られ、コントロールは8%だった。

結論と関連性:それら所見は末端肥大症ではない猫と比較して、年齢が同じ末端肥大症の猫は測定可能な程度に腎臓、副腎、膵臓が大きくなっていることを示す。うまく管理できない糖尿病の猫で腹部超音波検査により臓器肥大が見られた場合、末端肥大症の診断検査を考慮すべきである。(Sato訳)
■真性糖尿病の猫の内分泌の膵臓
Endocrine Pancreas in Cats With Diabetes Mellitus.
Vet Pathol. January 2016;53(1):136-44.
E Zini; F Lunardi; R Zanetti; R S Heller; L M Coppola; S Ferro; F Guscetti; M Osto; T A Lutz; C E Reusch; L Cavicchioli

膵臓のアミロイドーシスとαおよびβ細胞の喪失が真性糖尿病の猫で起こることが示されているが、現在入手できる研究の数は非常に限られている。さらに、膵島の炎症が一般的な特徴なのかどうかは不明である。

この研究の目的は島の病変の特徴を述べることと、糖尿病の猫の膵島に炎症があるかどうかを調査することだった。

糖尿病の猫37頭と年齢、性別、品種、体重を合わせたコントロール猫20頭の剖検で膵臓のサンプルを収集した。組織学的切片をヘマトキシリン-エオジンとコンゴレッド;インスリン/CD3、インスリン/CD20、インスリン/ミエロペルオキシダーゼ、インスリン/増殖細胞核抗原、グルカゴン/Ki67の二重標識;アミリンとIba1の単標識で染色した。

平均のインスリン陽性横断エリアはコントロールよりも糖尿病の猫で約65%低かった(P=.009)が、アミリンとグルカゴンは同じだった。驚いたことに、アミロイド沈着はグループ間で同じだった(P=.408)。島におけるインスリン-およびグルカゴン-陽性細胞の増殖と好中球、マクロファージ、T(CD3)およびB(CD20)リンパ球の数は差がなかった。結合したTおよびBリンパ球の存在はコントロール猫(n=1/20;5.0%)よりも糖尿病猫(n=8/37;21.6%)でよく見られる傾向があった。

この結果は糖尿病の猫においてβ細胞は喪失し、α細胞は喪失しないという過去の知見を確認するものである。糖尿病猫で島のアミロイドーシスは存在するが、コントロールよりも多いというわけではなかった。糖尿病猫の部分集団は島のリンパ球浸潤があり、β細胞喪失に関係するかもしれない。(Sato訳)
■糖尿病の犬の膵臓における極度のβ細胞欠損
Extreme Beta-Cell Deficiency in Pancreata of Dogs with Canine Diabetes.
PLoS ONE. 2015;10(6):e0129809.
Emily J Shields; Carol J Lam; Aaron R Cox; Matthew M Rankin; Thomas J Van Winkle; Rebecka S Hess; Jake A Kushner

犬の糖尿病の病態生理学は一部の不可解な臨床特性、詳細な病理組織研究の欠如により、あまり理解されていない。ヒト1型糖尿病に似た犬の糖尿病は、発現時あるいはインスリンの不手際で糖尿病性ケトアシドーシスに関係することも多い。しかし、明らかな違いも存在する。ヒトの1型糖尿病は子供に発症することも多いが、犬は一般的に中年から老齢の犬で述べられる。膵臓萎縮から慢性膵炎、免疫介在性β細胞破壊など犬の糖尿病の基礎原因に関する多くの相反する説が提唱されている。島形態計測の正確な定量が行われていないため、犬糖尿病に起因するβ細胞喪失は不明なままである。

我々は多数収集した糖尿病犬の膵臓において、島組織を特徴づける為、ハイスループット顕微鏡と自動画像処理を使用した。

糖尿病性の膵臓で顕著なβ細胞と島内分泌細胞の減少を認めた。ヒトと違い、犬の非糖尿病の島は主としてβ細胞からなる。糖尿病の犬の島は、新しく発現した犬の膵臓でさえもβ細胞は非常にわずかだった。同じように総島内分泌細胞数は、糖尿病の犬で急激に減少した。代償的な増殖あるいはリンパ球浸潤は検出されなかった。ほとんどの膵臓に膵炎の所見はなかった。

このように犬の糖尿病は、新規あるいは長期疾患において極度のβ細胞欠損に関係している。犬の島のβ細胞が優勢な構成、新しく発現した老齢の糖尿病犬においてβ細胞のほぼ全体的欠損は、ヒトの1型糖尿病に似て、犬の糖尿病の病態生理に潜むβ細胞喪失を強く示唆する。(Sato訳)
■犬の真性糖尿病のデテミルインスリンによる治療
Detemir insulin for the treatment of diabetes mellitus in dogs.
J Am Vet Med Assoc. July 1, 2015;247(1):73-8.
Federico Fracassi; Sara Corradini; Michaela Hafner; Felicitas S Boretti; Nadia S Sieber-Ruckstuhl; Claudia E Reusch

目的:真性糖尿病の犬におけるインスリンデテミルの効果を調査する

計画:前向き非対称臨床試験

動物:自然に発症した真性糖尿病の飼育犬10頭

方法:犬にインスリンデテミルを12時間おきに6か月皮下投与で治療した。追跡調査の評価は、1、2、4、12、24週目に行い、臨床症状の評価、血糖値曲線の測定、血清フルクトサミン濃度測定などが含まれた。

結果:インスリンデテミル投与は、治療前の値と比較して6か月目に有意な血糖および血清フルクトサミン濃度の低下を起こした。研究終了時のインスリン投与量の中央値は、0.12U/kg(範囲、0.05-0.34U/kg、SC、q12h)だった。血糖値曲線の22%(10/45)において低血糖が確認され、4頭の犬において臨床的低血糖が6回記録された。6か月の研究期間において、全頭で主観的臨床症状の改善が観察された。臨床症状と血糖値曲線をもとに、研究終了時のインスリンデテミルの有効性は、5頭の犬で良い、3頭で中程度、2頭で不良と考えられた。

結論と臨床関連:12時間おきのインスリンデテミルの皮下投与は、犬の真性糖尿病の実行可能な治療かもしれないと結果は示唆した。デテミルの投与量は、血糖コントロールを維持するのに必要な他のインシュリンの種類で報告された投与量よりも少なく、特に小型犬において注意して使用すべきだと示唆される。(Sato訳)
■真性糖尿病の猫の腎臓形態
Renal morphology in cats with diabetes mellitus.
Vet Pathol. November 2014;51(6):1143-50.
E Zini; S Benali; L Coppola; F Guscetti; M Ackermann; T A Lutz; C E Reusch; L Aresu

ヒトでは真性糖尿病(DM)は腎臓障害の重要な原因となり、糸球体病変が優勢である。猫では糖尿病は一般的な内分泌障害であるが、腎障害を誘発するかどうかはいまだ不明である。

この研究は、年齢、性別、猫種、体重がマッチした糖尿病猫とコントロール猫で腎臓の組織学的特徴や腎機能のパラメーターを比較した。22頭の糖尿病と20頭のコントロールの猫を研究した。

パラフィン包埋腎臓サンプルからの切片を染色し、光学顕微鏡で糸球体、尿細管間質および脈管病変を確認し、それらの頻度と重症度を評価した。血清クレアチニンと尿素濃度も比較した。

糸球体病変は合計29頭の猫に見られ、メサンギウム基質増加がより多く見られた(19頭)。尿細管間質病変は42頭の猫に見られ、リンパ球浸潤(29)、線維症(22)、尿細管壊死(21)が含まれた。脈管病変は5頭で見られた。組織学的病変の頻度と重症度は糖尿病とコントロール猫で違いはなかったが、糖尿病の猫の中で、診断後より長く生存した猫は、糸球体と脈管病変がより多く見られた。血清クレアチニンと尿素濃度はグループ間で変わりなく、糖尿病猫のクレアチニンと尿素の中央値は、109μmol/l(範囲、51-1200)と12mmol/l(範囲、4-63)で、コントロール猫は126μmol/l(範囲、50-875)と11mmol/l(範囲、3-80)だった。

糖尿病の猫は顕微鏡的に検出できる腎病変、あるいは臨床的に関連する腎機能不全を誘発しないと示唆される。ヒトの糖尿病との差の主な理由は、糖尿病猫の平均寿命が短いためではないかと著者は仮説を立てる。(Sato訳)
■猫の糖尿病:長期作用型グラルギンとデテミルの臨床的使用
Feline diabetes mellitus: clinical use of long-acting glargine and detemir.
J Feline Med Surg. March 2014;16(3):205-15.
Carly Anne Bloom; Jacquie Rand

診療での関連:猫の診療で糖尿病は一般的な内分布疾患の一つで、約200頭に1頭の割合で罹患する。糖尿病猫のほとんどは2型糖尿病で、末梢インスリン抵抗性とインスリン産生の進行性の減少により起こる。

臨床的チャレンジ:診断は一般に容易なのだが、糖尿病の管理は診療医にとっていくつかの困難があり、飼育者にとっても同様である。診療医は餌、インスリンの種類と用量、モニタリングの方法とその強度、併用する治療に関して決定しなければならず、個々の猫や飼育者のニーズ、地理的な場所をもとに変化するだろう。また診療医は糖尿病性ケトアシドーシスあるいは他の糖尿病の合併症のある猫や、複数の併発疾患のある猫に遭遇するかもしれない。飼育者は糖尿病の猫を所有することによるかなりの時間、財政的責任に面するかもしれない。

読者:糖尿病の病態生理学、最適な治療プロトコール、現在のゴールを理解することは糖尿病猫を管理する診療医に役立つだろう。
この文献は糖尿病に対する最近の管理プランを概説する。特に糖尿病寛解に達するための一番良い実践を強調し、新規に診断された糖尿病猫のほとんどでゴールに至っている。

エビデンスベース:この文献の情報は最近の人医と獣医の文献から引用し、前向きおよび回顧的研究を含む。猫で新しい長期作用型インスリン(グラルギンおよび特にデテミル)の使用に対する前向き臨床データの文は限られているが発展している。(Sato訳)
■糖尿病性ケトアシドーシスの猫における危険因子と予後予測の回顧的解析(1997-2007年):93例
Retrospective evaluation of risk factors and outcome predictors in cats with diabetic ketoacidosis (1997-2007): 93 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2015 Mar;25(2):263-72. doi: 10.1111/vec.12298.
Cooper RL, Drobatz KJ, Lennon EM, Hess RS.

目的 糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の猫の危険因子と予後予測を決定すること

デザイン 回顧的研究。血糖値が250mg/dl以上、静脈pHが7.35より低いこと、尿または血清のアセト酢酸濃度が15mg/dl以上であることをDKA群への組み入れ条件とした。研究期間にわたり、シグナルメントと体重は、DKAのない糖尿病 (DM)の全ての猫および糖尿病のない猫のすべてにおいて記録した。臨床病理学的な異常、併発疾患、最初のインスリンの静脈投与量(1.1または2.2 U/kg/240mlの生理食塩水のCRI)が予後と関連するかについて検討した。

実施 大学の教育病院

動物 93頭のDKAの猫、682頭の単純なDMの猫、DMもDKAもない16926頭の猫

介入 なし

測定と主な結果 DKAの猫(中央値 9.4歳齢、幅は1-17.9歳齢)は、DMの猫(中央値 11.6歳齢、幅は0.7-19.5歳齢)より若かった(P<0.0003)。DM(P=0.038)や糖尿病ではない群(P=0.01)と比較して、DKA群において、シャム猫がより多かった。DKAの36頭(39%)の猫の予後不良(病気によって死亡したか安楽死した場合)と、初診時のクレアチニン、BUN、血清Mg濃度、ビリルビン濃度の増加が相関していた(それぞれP = 0.007, P = 0.005, P = 0.03, P = 0.03)。高い濃度のインスリンで治療したほうが、低い濃度で治療した猫よりも予後が悪くないようにみえた(オッズ比 0.14, 95% 信頼区間0.02-1.16, P = 0.02)。

結論 DKAの猫は、DMの猫よりもシャム猫である可能性が高かった。DKAの猫の予後が悪いことは、初診時のクレアチニン、BUN、マグネシウム、ビリルビン濃度が高いことと相関していた。インスリンの静脈CRIの濃度が高いことが予後がよいことと関連していた。(Dr.Taku訳)
■糖尿病が寛解中の猫の糖の状態と再発の予測因子
Glycemic Status and Predictors of Relapse for Diabetic Cats in Remission.
J Vet Intern Med. 2014 Nov 24. doi: 10.1111/jvim.12509. [Epub ahead of print]
Gottlieb S, Rand JS, Marshall R, Morton J.

背景 糖尿病が寛解中の猫は糖代謝の異常が持続しているかどうか、もしくは前糖尿病状態あるいは正常な耐糖能であると考えるべきであるかということは不明である

目的 糖尿病が寛解中の猫の糖の状態を明らかにし、再発の予測因子を決定すること

動物 糖尿病が寛解中の21匹の猫と28匹のコントロールの猫

方法 寛解から中央値で107日の時点で、血糖のスクリーニングを病院に入った時点で行った。病院で24時間絶食のあと、空腹時血糖、フルクトサミン、猫膵リパーゼ濃度を測定し、3時間後に単純なIVグルコール負荷試験(体重1kgあたり1gのグルコース)を実施した。20匹の猫を少なくとも9ヶ月にわたり再発しないかモニターした。

結果 寛解した21匹の猫のうち、19%(21匹中4匹)は空腹時血糖が異常であり、76%(21匹中16匹)は耐糖能が異常であった。試験後、9ヶ月にわたるモニターのなかで、30%(20匹中6匹)は再発し、インスリン治療を必要とした。空腹時血糖値が7.5mmol/l(135mg/dl)以上で(オッズ比 12.8)、耐糖能の異常が重度であること(6.5mmol/lまたは117mg/dlに戻るのに5時間以上かかる、オッズ比 15.2)は、再発と有意に関連していた。3時間の時点で血糖値が14mmol/l(252mg/dl)以上であることは再発と有意に関連していた(オッズ比 10.1)。

結論と臨床的意義 糖尿病で寛解状態の多くの猫は、耐糖能が異常であり、空腹時血糖の異常を持つ猫は少数であり、前糖尿病状態と考えられるべきである。より重度の耐糖能と異常な空腹時血糖濃度は再発の予測因子である。寛解中の糖尿病の猫の継続した糖のモニターがすすめられる。(Dr.Taku訳)
■末端肥大症の猫の腹部超音波所見
Abdominal ultrasonographic findings in acromegalic cats.
J Feline Med Surg. 2014 Nov 6. pii: 1098612X14556847. [Epub ahead of print]
Lourenco BN, Randall E, Seiler G, Lunn KF.

目的 末端肥大症は、糖尿病の猫におけるインスリン抵抗性の原因として認識されることが次第に増加している。本研究の目的は、末端肥大症の猫の腹部臓器における超音波上の変化が本疾患を疑う理由になるかどうかを決定することである。

方法 この回顧的症例コントロール研究においては、2002年1月から2012年10月の間に、North Carolina State UniversityまたはColorado State Universityに来院した猫のカルテを調査した。血清インスリン様成長因子(IGF-1)濃度が上昇したインスリン抵抗性の糖尿病をもっており、腹部の超音波検査を実施してその結果が利用できる場合に、その猫を末端肥大症群に組み入れた。コントロール群は、腎臓、副腎、膵臓または肝臓に病気があるかないか、検査のために腹部超音波検査を実施した年齢が適合した猫を組み入れた。

結果 24頭の猫をそれぞれの群に組み入れた。末端肥大症群のIGF-1濃度は148から638 nmol/lであった。年齢適合群と比較すると、末端肥大症の猫は、左右の腎臓の長さの中央値、左右の副腎の厚みの中央値、膵臓の厚みの中央値は有意に増加していた。肝腫大と両側の副腎腫大は、末端肥大症の猫のそれぞれ63%および53%において認められたが、コントロール群においては認められなかった。膵臓の異常は、末端肥大症の猫の88%、コントロールの猫の8%において認められた。

結論と意義 これらの初見は、末端肥大症ではない猫と比較して、年齢を適合させた末端肥大症の猫は、測定可能なくらいより大きな腎臓、副腎、膵臓をもっていた。末端肥大症診断検査は、腹部超音波検査において臓器腫大を示すうまくコントロールできない糖尿病の猫において考慮するべきである。(Dr.Taku訳)
■犬の真性糖尿病の遺伝:ヒトで確認された糖尿病感受性遺伝子が犬の糖尿病に感受性を持つ犬種に関係するか?
Genetics of canine diabetes mellitus: Are the diabetes susceptibility genes identified in humans involved in breed susceptibility to diabetes mellitus in dogs?
Vet J. February 2013;195(2):139-47.
Brian Catchpole; Jamie P Adams; Angela L Holder; Andrea D Short; William E R Ollier; Lorna J Kennedy

糖尿病はコンパニオンアニマルで一般的な内分泌障害で、膵臓ホルモンインスリンの絶対的あるいは相対的欠乏により起こる高血糖、糖尿、体重減少を特徴とする。

犬では糖尿病に対する感受性に犬種差があり、イギリスの糖尿病犬集団でサモエドが大きな比率を占め、ボクサーは比較的少なく、その疾患の感受性を判定するのに遺伝ファクターが重要な役割を持つと示唆される。

ヒトで糖尿病の感受性に関係するいくつかの遺伝子は、犬の糖尿病のリスク増加に関係し、そのいくつかは相対的に種特異的と思われる。犬の糖尿病は、多くの感受性のある犬種で確認されるハプロタイプやゲノタイプと共に、主要組織適合複合体(MHC)クラスII遺伝子(犬白血球抗原;DLA)と関係している。タンデム反復数(VNTR)の不定数およびいくつかの多形性を含む領域は、犬のインスリン遺伝子で確認されており、いくつかの対立遺伝子が犬種特異様式で糖尿病の感受性あるいは抵抗性に関係している。犬のCTLA4プロモーターおよび他の免疫反応遺伝子における多形性は、いくつかの血統犬種において糖尿病の感受性に関係している。

ゲノムワイド関連解析は、糖尿病犬集団で見られる犬種プロフィールの原因となる遺伝子因子をさらに解明すべきだと目下進行中である。(Sato訳)
■肥満猫の短期の食後血清グルコース、インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸濃度に対する市販の糖尿病用療法食の影響
Impact of commercially available diabetic prescription diets on short-term postprandial serum glucose, insulin, triglyceride and free Fatty Acid concentrations of obese cats.
J Vet Med Sci. July 31, 2013;75(7):929-37.
Kana Mimura; Akihiro Mori; Peter Lee; Kaori Ueda; Hitomi Oda; Kaori Saeki; Toshiro Arai; Toshiro Arai; Toshinori Sako

肥満猫に対し、食餌療法は重要な治療構成部分である。

この研究で、5頭の肥満猫の短期の食後血清グルコース、インスリン、トリグリセリド、遊離脂肪酸(NEFA)濃度に対する4種の市販の療法食(1種は一般的に使用される食餌、3種は肥満および真性糖尿病(DM)の治療を目的とした食餌)給餌の影響を調査した。

使用した食餌療法は以下:C/Dドライ(一般的に使用:中蛋白、中脂肪、高炭水化物、低繊維)、M/Dドライ(DM:高蛋白、高脂肪、低炭水化物、高繊維)、W/Dドライ(DM:高蛋白、低脂肪、高炭水化物、高繊維)、Diabeticドライ(DM:高蛋白、低脂肪、低炭水化物、高繊維)。

C/D食よりも低濃度の炭水化物のM/DおよびDiabetic食で有意な食後グルコース(曲線下面積;AUC)の減少(10-13%)が観察された。食後インスリンAUCにおいてもC/D食に比べ、繊維量の多い3つのDM食で有意な減少(30-36%)が観察された。最後に食後NEFA AUCにおいてはC/D食と比べ、M/DおよびDiabetic食で有意な増加(32-65%)が観察された。

ゆえに、蛋白含量あるいは食餌中脂肪に対するものとして、食餌中の炭水化物および繊維量は、肥満猫の術後グルコース増加およびその後のインスリン必要レベルに非常に有意な影響を及ぼすと思われる。また、食餌中の炭水化物量も肥満猫の脂質代謝に影響するかもしれない。(Sato訳)
■真性糖尿病の猫の管理に対するアメリカ南東部の獣医師の好みの調査
A survey of southeastern United States veterinarians' preferences for managing cats with diabetes mellitus.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):716-22.
Jo R Smith; Zak Vrono; Gregg S Rapoport; Michelle M Turek; Kate E Creevy

この研究は、猫の糖尿病を管理するときの主な臨床医の認知を調査した。地方の継続教育イベント中にアンケートを実施し、回答率は46%(90/195)だった。

猫の糖尿病の平均74%が慢性的なインスリンを必要とした;26%は一時的な糖尿病だった。インスリンの選択は作用時間に最も影響を受けた:ヒト組み替え型プロタミン亜鉛インスリン(42%)は最初にランクされ、次はグラルギン(27%)だった。食餌管理は常に/通常、97%の回答者により推奨され、93%は処方あるいは専売の低炭水化物、高蛋白食を推奨した。より最近卒業した人(P=0.0419)、大きな診療所に勤務する人(P=0.0315)、より多く一時的糖尿病に遭遇した人(P=0.0288)はより食餌変更を推奨する可能性が高かった。

院内血糖曲線(BGCs)は血糖コントロールを評価する最もポピュラーな方法で、家庭内BGCsはポピュラーではないが、それらの使用は毎年の糖尿病取扱件数と正に相関した(r=0.43、P=0.0239)。高血糖のコントロールがうまくいかない最も一般的な原因は、オーナーのインスリンの取り扱いの誤りがあげられ、先端巨大症の臨床症状はまれに認められた。(Sato訳)
■新しく糖尿病と診断された猫における生存期間と予後因子:114症例(2000-2009)
Survival time and prognostic factors in cats with newly diagnosed diabetes mellitus: 114 cases (2000-2009).
J Am Vet Med Assoc. July 1, 2013;243(1):91-5.
Carolina Callegari; Edy Mercuriali; Michaela Hafner; Luigi M Coppola; Stefano Guazzetti; Thomas A Lutz; Claudia E Reusch; Eric Zini

目的:新しく糖尿病と診断された猫の全体の生存期間と生存期間に関与する予後因子を確認する

デザイン:回顧的症例シリーズ

動物:新しく糖尿病と診断された猫114頭

方法:分析したデータは病歴、シグナルメント、身体検査所見、血液および血清生化学データ、ケトアシドーシスの有無、最初の評価時の併発疾患の診断だった。生存期間に対する正の予後因子の影響を、危険率(HRs)および95%信頼区間(CIs)を計算することで判定した。

結果:糖尿病猫の生存中央期間は516日(範囲、1-3468日)だった;70%は3か月、64%は6か月、46%は24か月以上生存した。高いクレアチニン濃度を示した猫は生存期間が有意に短くなり、血清クレアチニン濃度10μg/dlの増加ごとに、死亡の危険は約5%ずつ大きくなった(修正危険率、1.005;95%CI、1.003-1.007)。ケトアシドーシスは生存期間と有意な関係はなかった(HR、1.02;95%CI、0.590-1.78)。

結論と臨床関連:新規に糖尿病と診断された猫の予後はまずまずから良好だった。診断時に血清クレアチニン濃度が高いことは予後不良に関係し、腎機能不全の有害な影響のためと思われた。ケトアシドーシスは生存期間短縮に明らかな関係はなく、この合併症は予後不良と考える必要はない。(Sato訳)
■犬の血糖値検査の代替の採血部位として手根パッド
The carpal pad as an alternative sampling site for blood glucose testing in dogs.
J Small Anim Pract. December 2012;53(12):684-6.
S Borin-Crivellenti; L Z Crivellenti; M Tinucci-Costa

目的:入院している健康および糖尿病の犬において、手根パッドから採取した血液の可能性と有効性を調査する

方法:60頭の犬(30頭は健康、30頭は糖尿病)の採血部位として手根パッドと耳を比較した。

結果:そのパッドの切り込みに犬はよく耐えた。耳および手根パッドから採取した血液サンプルの平均血糖値は、強い正の相関(r=0.938)を示し、それらの有意差はなかった(P=0.914)。また得られた値の98.3%はエラーグリッド分析で評価した時、臨床的に容認できた。

臨床的意義:手根パッドは、家庭でモニタリングするとき、特に柔らかく、そして/あるいは明るい色のパッドの犬で、良好な代替採血部位である。(Sato訳)
■犬の自然発生糖尿病に対するグラルギンによるインスリン治療
Glargine insulin for treatment of naturally occurring diabetes mellitus in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2013 Oct 15;243(8):1154-1161.
Hess RS, Drobatz KJ.

目的 糖尿病の犬においてグラルギンインスリン 1日2回の投与の影響を評価する

デザイン 非盲検前向き臨床試験

動物 自然発生の糖尿病の犬10頭

方法 うまく糖尿病がコントロールできていない、もしくは新たに糖尿病と診断された犬について、オーナーが1週間から3週間間隔で4回続けて来院することに同意された場合に組み入れた。それぞれの来院した際、不溶性線維が多い食事を給餌し、その後グラルギンを投与して(time 0)、少なくとも10時間、2時間おきに血糖値を測定した。グラルギンの初期用量は0.5U/kg皮下注で1日2回用いた。

結果 全ての犬はこの研究に組み入れられた後、38±14日の平均±SD(中央値 43日、範囲 7-55日)でうまくコントロールできた。糖尿病がうまくコントロールできた時点でのグラルギンの平均投与量は、0.5±0.15U/kg (中央値0.5U/kg、範囲 0.32-0.67 U/kg)を 1日2回で、3頭は0.4U/kg以下で与えられていた。うまくコントロールできた糖尿病の犬において、最小血糖値の平均 (163 ± 89 mg/dl、95%信頼区間100-227 mg/dl)は投与2時間後に見られ、最高血糖値の平均(230 ± 95 mg/dl、95%信頼区間 64-323 mg/dl)は投与12時間後に認められた。最低血糖値と最高血糖値の平均値には有意差はなく、また他の時点でも血糖値に有意な差はなかった。10頭中7頭において少なくとも1回は80mg/dl以下の血糖値が認められた。

結論と臨床的意義 この研究の結果は、不溶性線維が多い食事を与えている糖尿病の犬において、グラルギンのインスリンが血糖値の最低値を引き起こさないようなピークのないインスリンであることが示唆された。グラルギンは、初期用量としては0.3U/kg 皮下注で1日2回投与することが薦められる。(Dr.Taku訳)
■スウェーデンの猫における糖尿病への発展に関する有病率と危険因子
Prevalence and risk factors for the development of diabetes mellitus in Swedish cats.
Acta Vet Scand. 2012 Oct 31;54:61. doi: 10.1186/1751-0147-54-61.
Sallander M, Eliasson J, Hedhammar A.

背景: スウェーデンの猫の糖尿病への発展に関する有病率と危険因子はこれまでに報告されていない。今回のパイロットスタディーの目的は、スウェーデンの猫の糖尿病に関する有病率と可能性のある危険因子を示すことだった。ウプサラのユニバーシティー動物病院のデータベースから性別と年齢が同じ20頭の糖尿病の猫と20頭の健常猫がこの研究に参加した。食事、活動性と肥満に関してメールと電話によるアンケートを利用した。

結果: この研究において病院のカルテの結果に基づき2000-2004年の間における猫の糖尿病の有病率は21/10000頭であった。糖尿病の猫は症状が見つかった時点で平均9歳だった(中央, 最小-最大 2-15)。猫の糖尿病の症例において、雄がより一般的(n=17 雄 vs n=3 雌; P≦0.05)であった。同じ年齢で健常猫20頭中5頭(25%)が肥満であったの比べ、糖尿病と診断された20症例のうち10症例(50%)が診断した時点(中央年齢 9 歳, 最小-最大 2-15)で肥満であった。診断した時点での中央体重は糖尿病症例で5.5kg(最小-最大2.0-9.0)であり、健常猫では5.0 kg (最小-最大 3.0-8.0 kg) であった。糖尿病症例と健常猫の両方が研究した時点で同じ中央年齢であったにも関わらず(13 歳, 最小-最大3-18)、有意に健常猫の数の方がその年齢で生存していた (n=16 健常猫 vs 8 糖尿病猫; P≦0.05)。
同じ年齢で肥満であった健常猫の比率と比べ、糖尿病であると診断した時点で肥満であった症例は、有意に高い比率で研究期間中に亡くなった(P≦0.05)。同じ期間において健常猫に与えられていた食事に比べ、糖尿病と診断した時点で与えられていた食事は主に市販フードで、健常猫は糖尿病症例に比べより高い比率でドライフードを食べていた。(中央79 vs 44% of DM intake/d; P≦0.05)。糖尿病症例は健常猫に比べより活動性が少なかった (2.3 と 3.2 h/d; P≦0.05)。

結論: ドライフードの割合、低い活動性そして肥満はスウェーデンの猫において猫の糖尿病に関する予備的な危険因子であることを結果が示しており、この母集団においてさらなる疫学調査のデザインと同様に予防措置を講じるべきである。(Dr.Kawano訳)
■中程度の炭水化物食を与えた猫の食後高血糖は中央値12時間持続する-メス猫はより高い血糖値ピークを持つ
Postprandial glycaemia in cats fed a moderate carbohydrate meal persists for a median of 12 hours -- female cats have higher peak glucose concentrations.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):706-15.
Heidi Farrow; Jacquie S Rand; John M Morton; Gregory Sunvold

一般に血糖値の食後増加は、糖尿病および前糖尿病猫を管理するための食餌選択で考慮されていない。

この研究は、24頭の臨床的に健康で不妊手術した成猫において中程度の炭水化物食(エネルギーの25%)の1回の食餌(59kcal/kg)後、グルコースとインスリン濃度の上昇を述べる。

グルコースの食餌後、基線に戻るまでの時間中央値は12.2時間(1.8-24時間以上)で、インスリンは12.3時間(1.5-24時間以上)だった。グルコースが基線に戻るまでの時間で、オス猫(10.2時間)とメス猫(17.2時間)に差はなかった。メス猫はオス猫よりインスリンが基線に戻るまでの時間が長く(18.9時間v.s.9.8時間)、より高いグルコースのピーク(0.9mmol/l差)を示した。

これは、猫の食後高血糖の持続時間は犬やヒトよりも著しく長く、糖尿病や前糖尿病猫を管理するときは考慮すべきだと示す。(Sato訳)
■糖尿病の猫における血清fPLI濃度の測定
Determination of serum fPLI concentrations in cats with diabetes mellitus.
J Feline Med Surg. 2008 Oct;10(5):480-7. doi: 10.1016/j.jfms.2007.04.007. Epub 2008 Jul 18.
Forcada Y, German AJ, Noble PJ, Steiner JM, Suchodolski JS, Graham P, Blackwood L.

糖尿病 (DM)は最も一般的な猫の内分泌疾患の一つである。膵炎は猫の糖尿用がコントロールできない原因として報告されている。; しかし糖尿病猫における膵炎の発生率は分かっていない。血清猫膵リパーゼ免疫活性(fPLI)は猫の膵炎を検出するために、感受性があり特異性のある検査であると報告されている。
この研究の目的は、糖尿病猫におけるfPLI濃度の評価をすることであり、同じような年齢の非糖尿病猫のfPLI濃度と比較することであった。糖尿病猫29頭と非糖尿病猫23頭から得たサンプルを分析した。血清fPLI濃度は糖尿病猫からのサンプルで明らかに高かった(P<0.01)。血清フルクトサミン濃度とfPLI濃度との間には弱い関連性(R(2)=0.355, P=0.015)が見られたが、fPLI濃度と糖尿病コントロールの程度との間には関連性はなかった。血清fPLI濃度に関らず、糖尿病猫あるいは糖尿病ではない猫との間に報告されている臨床症状に有意差はなかった。これは糖尿病に罹患した猫において上昇した血清fPLI濃度を証明した始めての研究であり、膵炎は糖尿病の猫において有意に合併していることを示している。(Dr.Kawano訳)
■猫における糖尿病の寛解:概説
[Diabetes remission in cats: A Review].
Diabetes-Remission bei der Katze: Ein Uberblick.
Language: German
Schweiz Arch Tierheilkd. November 2011;153(11):495-500.
C E Reusch; M Hafner; F Tschuor; T A Lutz; E Zini

治療の1か月以内に25-50%の猫に糖尿病の寛解が見られる。寛解の見込みは、若い猫やコレステロールが増加している猫よりも、老齢猫や正常なコレステロールの猫でより高い。進行中の研究結果は、初回静脈内インシュリン療法が寛解率や代謝コントロールの質に対し、ポジティブな効果を持つと示している。(Sato訳)
■真性糖尿病の犬におけるインスリングラルギンの使用
Use of insulin glargine in dogs with diabetes mellitus.
Vet Rec. January 2012;170(2):52.
F Fracassi; F S Boretti; N S Sieber-Ruckstuhl; C E Reusch

この研究の目的は、真性糖尿病(DM)の犬におけるインスリングラルギンの安全性と有効性を評価することだった。
DMのオーナー所有の20頭の犬で研究した。全ての犬6か月以上毎日1日2回インスリングラルギンを投与しており、臨床症状、血糖値曲線(BGCs)、血清フルクトサミン濃度測定を含めた再評価を1、2、4、8、12、24週後に実施した。
平均血糖値は治療から2週後に有意に低く、研究中有意に低いままだった。24週目、91%の犬の多尿/多渇は改善していた。低血糖を原因とする臨床症状は観察されなかった。研究の24週目で、治療の成功を判断するBGCsと臨床症状の軽減を基に、血糖コントロールは58%が良、33%がまずまず、8%が不良だった。
1日2回のインスリングラルギンの皮下投与は、自発DMの犬の有望で安全な治療方法である。犬で他の種類のインスリンを使用した研究は少数だが、それらの成功率はインスリングラルギンのものよりも幾分高い。(Sato訳)
■健康なミニチュアシュナウザーにおける高トリグリセリド血症とインスリン抵抗性の関係
Association of hypertriglyceridemia with insulin resistance in healthy Miniature Schnauzers.
J Am Vet Med Assoc. April 2011;238(8):1011-6.
Panagiotis G Xenoulis; Melinda D Levinski; Jan S Suchodolski; Jorg M Steiner

目的:ミニチュアシュナウザーの高トリグリセリド血症はインスリン抵抗性に関係するかどうかを判定する

構成:症例-コントロール研究

動物:高トリグリセリド血症のミニチュアシュナウザー28頭と血清トリグリセリド濃度が正常範囲内のミニチュアシュナウザー31頭(コントロール犬)

方法:全ての犬は慢性疾患の病歴はなく、採血の前最低3ヶ月は臨床症状がなく、脂質代謝あるいは血清インスリン濃度に影響することが分かっている薬剤をまったく投与されていなかった。各犬は12時間以上絶食で、5-10mlの血液サンプルを採取し、血清を得るために凝固させた。血清インスリンおよびグルコース濃度を測定し、homeostasis model assessment (HOMA)を算出した(すなわち[基底血清インスリン濃度{mU/L} x 基底血清グルコース濃度{mmol/L}]/22.5)。

結果:血清インスリン濃度中央値は、コントロール犬(12.5mU/L)と比較して高トリグリセリド血症のミニチュアシュナウザー(21.3mU/L)で有意に高かった。高トリグリセリド血症群における高血清インスリン濃度の犬の割合(28.6%)は、コントロール群(6.5%;オッズ比、5.8;95%信頼区間、1.1-30.2)と比べ有意に大きかった。高トリグリセリド血症のミニチュアシュナウザーのHOMAスコア中央値(4.9)は、コントロール犬(2.8)よりも有意に高かった。

結論と臨床関連:ミニチュアシュナウザーの高トリグリセリド血症はしばしばインシュリン抵抗性に関係すると結果は示した。高トリグリセリド血症のミニチュアシュナウザーにおいて、インシュリン抵抗性の有病率および臨床意義を判定するための追加研究が必要である。(Sato訳)
■水晶体超音波吸引白内障手術を行う糖尿病および非糖尿病犬での麻酔合併症の比較:回顧的研究
A comparison of anesthetic complications between diabetic and nondiabetic dogs undergoing phacoemulsification cataract surgery: a retrospective study.
Vet Ophthalmol. July 2010;13(4):244-50.
James A C Oliver, Louise Clark, Federico Corletto, David J Gould

目的:全身麻酔と水晶体超音波吸引白内障手術を行う糖尿病および非糖尿病犬における麻酔合併症の発生率を比較する。

方法:2005年から2008年の間にDavies Veterinary Specialistsで水晶体超音波吸引白内障手術を行った全ての犬の医療記録および麻酔記録を再調査した。麻酔記録はECVAA専門医により評価した。不完全な記録の犬は除外した。周術期に投与したすべての薬剤を含む麻酔手技を記録した。糖尿病群において低血圧(MAP (mmHg): >or=55 none/mild; 13.75 mmol/L (250 mg/dL))を含む調査した麻酔合併症も評価した。

結果:66頭の糖尿病と64頭の非糖尿病犬について検討した。糖尿病犬は中程度および重度の術中低血圧を起こしやすかった。44%の糖尿病犬は麻酔中に1つ以上の重度高血糖の事象が見られた。

結論:水晶体超音波吸引を行う糖尿病犬は、非糖尿病犬よりも中程度から重度の低血圧の麻酔合併症を被りやすい。糖尿病犬における低血圧の発生率および重症度の増加は高血糖およびその結果の浸透圧利尿による二次的な循環血液量の減少で説明できるかもしれない。(Sato訳)
■猫の血糖値測定の代替採血部位
Alternative sampling site for blood glucose testing in cats: giving the ears a rest.
J Feline Med Surg. September 2010;12(9):710-3.
Florian K Zeugswetter; Laura Rebuzzi; Sonja Karlovits

背景と研究の理論的根拠:家庭でのモニタリングは、糖尿病の猫の長期管理の重要な部分である。猫でグルコメーターは広く使用されているにもかかわらず、今までは耳介のみが検査部位として実証されている。この断面研究は、様々な疾患で入院中の猫の中手骨/中足骨のパッドから、サンプリングの可能性と有効性を調査した。

調査:75頭の猫でサンプリング部位として耳とパッドを比較した。パッドの切開は非常に良く許容した。最初の血液の滴下が非常に少量の場合、ほとんどはパッドを絞ることで適切な血液量を採取できた。2つの部位で最初の試みの成功率あるいは血糖値に有意差は見られなかった。4頭の猫は最適な血液量が得られない、あるいは嫌がったために測定できなかった。

臨床関連:家庭環境でこの方法の有効性を評価する追加研究は必要だが、この結果は血糖値を測定する時、耳からのサンプリングが失敗した場合に、特に中手骨のパッドが利用可能な代替検査部位と成ることを示す。(Sato訳)
■血糖濃度の変化は猫の循環フルクトサミン濃度における比較的急速な変化に関係する
Changes in blood glucose concentration are associated with relatively rapid changes in circulating fructosamine concentrations in cats
J Feline Med Surg. December 2008;10(6):583-92.
Karl R Link , Jacquie S Rand

この研究の目的は高血糖発現後の血漿フルクトサミン濃度の増加に必要とする時間、高血糖解消後その低下に必要な時間を判定することだった。健康な猫(n=14)に中程度高血糖(n=5)(実際平均血糖17mmol/l)あるいは顕著な高血糖(n=9)(実際29mmol/l)を42日間維持するように注入した。顕著な高血糖の3-5日後にフルクトサミンは参照範囲上限(331mumol/l)を超過し、20日かけてプラトーとなり、注入中止後5日かけて基準値に戻った。中程度高血糖のフルクトサミン濃度は、参照範囲を超過するまで時間がかかり(7日、範囲4-14日)、プラトーまで(8日)、基準に戻る(1日)まではより少ない日数だった。
中程度の高血糖の猫において、フルクトサミン濃度はほとんどが参照範囲上限以下を変動した。血糖濃度をあげたことに関与するフルクトサミン濃度の範囲は広かった。フルクトサミンの臨界差は33mumol/lだった。(Sato訳)
■小動物の糖尿病性緊急疾患
Diabetic emergencies in small animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2010;40(2):317-33.
Mauria A O'Brien

糖尿病性ケトアシドーシスと高血糖性高浸透圧性症候群は、真性糖尿病の2つの重篤な命を脅かす危険のある合併症である。認識している病態生理学は、それらの疾患の患者の適切な管理が重要である。この文献は、それら状況の一因となる生化学的変化を概説し、従来および議論の余地がある管理戦略を述べる。(Sato訳)
■犬と猫における合成インスリン類似体およびその使用
Synthetic insulin analogs and their use in dogs and cats.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2010;40(2):297-307.
Chen Gilor, Thomas K Graves

ヒトリコンビナント合成インスリンアナログ体は、糖尿病のヒトにおいて血糖値のよりよいコントロールを可能にする一方低血糖となるリスクを最小限にする。犬と猫においてインスリンアナログ体の使用に関する情報はわずかである。インスリンリスプロは超短時間作用型アナログ体で、糖尿病性ケトアシドーシスの犬の集中治療に用いられている。インスリングラルギンとインスリンデテミルは長期作用型で、ヒトで基本となるインスリン置換として使用される。2つは低血糖のリスクを軽減する一方、デテミルは望まれない体重増加も少なくする。猫においてインスリンデテミルとグラルギンは、従来使用していたインスリン製剤よりも作用持続時間がより長く、糖尿病治療に対し1日1回の使用で成功している。インスリンデテミルおよびグラルギンはヒトよりも猫での作用持続時間がより短いと思われ、それらの効果はより変動する。(Sato訳)
■新規に糖尿病と診断された猫のグラルギンインシュリンによる治療は、プロタミン亜鉛やレンテインシュリンよりも血糖コントロールを改善し、高い確立で寛解を導く
Treatment of newly diagnosed diabetic cats with glargine insulin improves glycaemic control and results in higher probability of remission than protamine zinc and lente insulins.
J Feline Med Surg. August 2009;11(8):683-91.
R D Marshall, J S Rand, J M Morton

新規に糖尿病と診断された24頭の猫において、低炭水化物食給餌と共にグラルギン、プロタミン亜鉛(PZI)、レンテインシュリンの1日2回投与で治療し、血糖コントロールおよび寛解率を比較した。
17日後、インシュリンタイプに無関係で17日目の12時間平均血糖値がより低い猫で寛解の確率がかなり高かった。グラルギン投与猫は17日目の平均12時間血糖値がPZI-あるいはレンテ投与猫より低く、PZI-3頭、レンテ2頭と比較して8頭全てのグラルギン投与猫が寛解に達した。寛解の確率は、PZIあるいはレンテインシュリンで治療した猫よりもグラルギンで治療した猫のほうがより高かった。
新規に糖尿病と診断した猫において、グラルギンの1日2回投与はPZIあるいはレンテインシュリンの1日2回投与と比較して、より良い血糖値コントロールおよび寛解のより高い確率をもたらす。診断後すぐの良好な血糖値コントロールは、寛解の確率上昇に関係し、インシュリン療法の目標とすべきである。(Sato訳)
■血糖濃度の変化は猫の循環フルクトサミン濃度における比較的急速な変化に関係する
Changes in blood glucose concentration are associated with relatively rapid changes in circulating fructosamine concentrations in cats
J Feline Med Surg. December 2008;10(6):583-92.
Karl R Link , Jacquie S Rand

この研究の目的は高血糖発現後の血漿フルクトサミン濃度の増加に必要とする時間、高血糖解消後その低下に必要な時間を判定することだった。健康な猫(n=14)に中程度高血糖(n=5)(実際平均血糖17mmol/l)あるいは顕著な高血糖(n=9)(実際29mmol/l)を42日間維持するように注入した。顕著な高血糖の3-5日後にフルクトサミンは参照範囲上限(331mumol/l)を超過し、20日かけてプラトーとなり、注入中止後5日かけて基準値に戻った。中程度高血糖のフルクトサミン濃度は、参照範囲を超過するまで時間がかかり(7日、範囲4-14日)、プラトーまで(8日)、基準に戻る(1日)まではより少ない日数だった。
中程度の高血糖の猫において、フルクトサミン濃度はほとんどが参照範囲上限以下を変動した。血糖濃度を与えたことに関与するフルクトサミン濃度の範囲は広かった。フルクトサミンの臨界差は33mumol/lだった。(Sato訳)
■犬のインスリン抵抗性
Insulin Resistance in Dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2010;40(2):309-316.
Rebecka S Hess

糖尿病犬において、多くの併発疾患が外因性インスリンに対して抵抗性を引き起こす可能性がある。糖尿病犬の最も一般的な併発疾患は、副腎皮質機能亢進症、尿路感染、急性膵炎、腫瘍、甲状腺機能低下症である。併発疾患を治療して、インシュリン抵抗性の基礎原因が取り除かれたとき、低血糖の可能性を避けるためにインシュリン投与量を減量すべきである。肥満犬でホルモン性障害が観察されているが、それら変化の臨床意義は不明である。(Sato訳)
■肥満猫における胃脂肪血症
Dyslipidemia in obese cats
Domest Anim Endocrinol. October 2008;35(3):290-9.
E Jordan, S Kley, N-A Le, M Waldron, M Hoenig

猫において肥満は重要な内分泌障害であり、ヒトと同じで糖尿病のリスクファクターである。この研究の目的は、痩せた猫12頭(LEAN)および肥満猫12頭(OBESE)の絶食および給餌状態で、超遠心分離および核磁気共鳴分光検査による血漿脂質に対する長期肥満および異なる食餌(高蛋白、飽和脂肪酸あるいはn-3不飽和脂肪酸を添加した高炭水化物)の影響を研究することだった。
OBESEは血漿非エステル脂肪酸およびトリグリセリド、同様に主に中型粒子からなる超低密度リポ蛋白(VLDL)がより高かった。低密度リポ蛋白(LDL)の濃度はグループ間で同等だったが、OBESEはほとんどが非常に小さい粒子で、LEANはほとんどが大きい粒子だった。高密度リポ蛋白(HDL)の濃度はOBESEでより低く、主に小さい粒子で構成されていた。全てのリポ蛋白における血漿トリグリセリド、トリグリセリドとコレステロールは食後に増加した。異なる食餌は脂質にほとんど影響しなかった。
我々の結果は、長期肥満猫はヒトのリポ蛋白の変化と同様のものが起こるが、肥満猫における高血圧とアテローム性動脈硬化はまだ述べられていないことを示す。これは、異脂肪血症単独では高血圧およびアテローム性動脈硬化の誘発に十分ではないことを示唆する。他のアテローム発生因子は肥満、異脂肪血症猫に存在するかもしれない。(Sato訳)
■猫におけるデキサメサゾンおよびプレドニゾロンの糖尿病誘発効果を比較する予備的研究
A pilot study comparing the diabetogenic effects of dexamethasone and prednisolone in cats.
J Am Anim Hosp Assoc. 2009 Sep-Oct;45(5):215-24.
Andrew D Lowe, Thomas K Graves, Karen L Campbell, David J Schaeffer

14頭の猫に毎日プレドニゾロン(4.4mg/kg経口)あるいはデキサメサゾン(0.55mg/kg経口)を56日間投与した。それらの投与量は臨床的に等力だった。0、28、56日目に血清フルクトサミンおよび尿中グルコースを測定した。各群のグルココルチコイド投与前と投与終了時にインシュリン感受性、糖耐性、インシュリン分泌ピークを測定した。プレドニゾロン投与猫と比較し、56日目のデキサメサゾン投与猫における糖尿の罹患率は有意に大きく(P=0.027)、フルクトサミン濃度がより大きくなる傾向が見られた(P=0.083)。この予備的研究の結果は、デキサメサゾンを投与した猫の方が、インシュリン感受性がより大きく低下する傾向(P=0.061)およびインシュリン分泌における代償性増加がより有意に低かった(P=0.081)ことも示した。それら予備的データは、猫においてデキサメサゾンが等力量のプレドニゾロンよりも糖尿病誘発効果がより大きいことを示唆する。この仮説を支持する追加研究が必要である。(Sato訳)
■糖尿病患者の歯原性非Candida albicansカンジダ縦隔炎
Non-Candida albicans Candida mediastinitis of odontogenic origin in a diabetic patient
Med Mycol. June 2008;46(4):345-8.
Diamantis P Kofteridis, Elpis Mantadakis, Alexander D Karatzanis, Constantinos A Bourolias, Georgios Papazoglou, George A Velegrakis, George Samonis

下行性縦隔炎は口腔咽頭あるいは頚部感染の合併症として起こり、診断や治療が遅れると死亡率が高くなる。Candida parapsilosisおよびCandida kruseiの咽頭傍間隙感染による下行性縦隔炎、吸引性肺炎を併発した糖尿病患者の歯原性感染のレアケースを述べる。分離同定はコロニー、顕微鏡的形態特性、炭水化物同化試験結果を基に行った。外科的ドレナージ、デブリードメント、広域スペクトル抗菌剤およびリポソームアンホテリシンBに続き長期経口ボリコナゾール療法で治療に成功した。(Sato訳)
■1日2回のインシュリングラルギンで治療した真性糖尿病の猫における血糖コントロールに対する食餌の影響
Effects of diet on glucose control in cats with diabetes mellitus treated with twice daily insulin glargine
J Feline Med Surg. September 2008;0(0):.
Hall , Mahony , Elizabeth A Rozanski, Freeman

この研究の目的は、1日2回のインシュリングラルギンに加え、食餌修正の効果を評価することだった。1日2回のインシュリングラルギンで治療した猫に、無作為に低炭水化物高蛋白(LCHP)食(n=6)、あるいはコントロール食(n=6)を10日間給餌した。臨床症状、血糖曲線、血清フルクトサミン濃度の再評価を1、2、4、6、10週目に実施した。研究の終了時に12頭中2頭が完全寛解に達したが、食餌群で寛解率に差はなかった。1日2回のインシュリングラルギンと頻繁なモニタリングの使用で、両食餌群の全ての猫はうまく糖血症コントロールできた。頻繁なモニタリングは糖尿病猫における糖血症コントロール達成のカギである。食餌修正の潜在的利点は更なる研究が必要である。(Sato訳)
■高濃度水素溶解精製水摂取は2型糖尿病、グルコース寛容減損患者における糖、脂質代謝を改善する。
Supplementation of hydrogen-rich water improves lipid and glucose metabolism in patients with type 2 diabetes or impaired glucose tolerance.
Nutr Res. 2008 Mar;28(3):137-43.
Kajiyama S, Hasegawa G, Asano M, Hosoda H, Fukui M, Nakamura N, Kitawaki J, Imai S, Nakano K, Ohta M, Adachi T, Obayashi H, Yoshikawa T.

酸化ストレスは糖尿病、高血圧そしてアテローム性動脈硬化など様々な疾患と関連していると広く認識されている。水素には還元作用があることが証明されています。従って、我々は2型真性糖尿病(T2DM)あるいはグルコース寛容減損(IGT)患者における糖、脂質代謝に対する高濃度水素溶解精製水摂取の効果を検討した。食事管理と運動療法で管理した2型糖尿病患者30名とIGT患者6名によるランダム化、二重盲式、プラセボコントロール、クロスオーバー研究を行った。12週間の休薬期間を加え8週にわたり、高濃度水素溶解精製水900 mL/dあるいはプラセボとして純水900 mLのどちらかを患者に摂取させた。経口ブドウ糖負荷試験で評価した酸化ストレス、インスリン抵抗性そして糖代謝などいくつかの生物学的マーカーを初めと8週間後に評価した。
高濃度水素溶解精製水の摂取は、変性LDLコレステロール(LDLの陰性電荷が増加して変性)、小粒子LDLそして尿中8-イソプラスタンはそれぞれ15.5% (P < .01)、5.7% (P < .05)そして6.6% (P < .05)の有意な濃度低下と関連があった。高濃度水素溶解精製水の摂取は、酸化LDLそして遊離脂肪酸の血清濃度の低下傾向とも関連があり、アディポネクチンと細胞外スーパーオキシドジスムターゼの血漿濃度の増加とも関連があった。IGT患者6人中4人は高濃度水素溶解精製水の摂取によって経口ブドウ糖負荷試験が正常化した。結論として、これらの結果から高濃度水素溶解精製水の補給は、2型糖尿病とインスリン抵抗性の予防において有益な役割を果たすかもしれないことを示している。(Dr.Kawano訳)
■正常および糖尿病犬におけるインシュリングラルギンとNPHインシュリンの作用時間プロフィールの比較
Comparison of time-action profiles of insulin Glargine and NPH insulin in normal and diabetic dogs
Vet Res Commun. June 2008;0(0):.
A Mori, T Sako, P Lee, T Motoike, K Iwase, Y Kanaya, H Fukuta, H Mizutani, T Arai

中間型インシュリン注射は、インシュリン依存性糖尿病犬において血糖コントロールに一般に使用され、天然インシュリンに置き換わるように作用する。Neutral Protamin Hagedorn (NPH)インシュリンおよびインシュリングラルギンは、ヒトで一般に使用される2つのタイプの注射用インシュリン製剤である。
我々の研究で、インシュリン依存性糖尿病のヒトに行うようにインシュリン依存性糖尿病犬に対しNPHとグラルギンの併用投与が有益かどうかを見極めるため、正常犬において上述2つのインシュリン製剤の作用時間プロフィールを調査した。正常犬におけるNPHインシュリンとインシュリングラルギンの作用時間プロフィールは、両製剤に明らかな相違があり、NPHインシュリンは中間作用型製剤で、インシュリングラルギンは、長期持続型製剤だった。
また、インシュリン依存性糖尿病犬におけるNPHインシュリン単独使用と比較して、NPHインシュリンとインシュリングラルギンの併用は血糖コントロールが厳しかった。しかし、試験した投与量で、併用投与は低血糖を起こした。(Sato訳)
■肥満犬におけるインシュリン感受性、脂質プロフィール、PPARαおよびPPARγとそれらの標的遺伝子の発現に対する緑茶の効果
Effects of green tea on insulin sensitivity, lipid profile and expression of PPARalpha and PPARgamma and their target genes in obese dogs
Br J Nutr. June 2008;99(6):1208-16.
Samuel Serisier, Veronique Leray, Wilfried Poudroux, Thierry Magot, Khadija Ouguerram, Patrick Nguyen

ヒトと同様に、犬の肥満はインシュリン抵抗性、異脂肪血症、他の慢性疾患に関与する。肥満でインシュリン抵抗性のモデル犬においてインシュリン感受性、血漿脂質濃度に対する栄養サプリメント(緑茶)の影響を研究した。また、2つの転写制御因子PPARγおよびPPARα、いくつかの標的遺伝子GLUT4、リポ蛋白リパーゼ(LPL)、アディポネクチンのmRNA発現を判定した。肥満犬を緑茶群(n=6)、コントロール群(n=4)の2つの群に振り分けた。
緑茶群の犬には1日1回の食餌の直前に緑茶エキス(80mg/kg/日)を経口で与え、それを12週間継続した。各群のインシュリン感受性(euglycaemic-hyperinsulinaemic clampを使用)、血漿TAG、総コレステロール、NEFA濃度を測定した。遺伝子発現は、リアルタイムPCRにより内蔵および皮下脂肪組織、肝臓および骨格筋で測定した。
緑茶群で12週目、基準値よりも平均インシュリン感受性指数は60(SEM11)%高く(P<0.05)、TAG濃度は50(SEM10)%低かった(P<0.001)。そして基準値よりも2つの脂肪組織でPPARγ、GLUT4、LPL、アディポネクチン発現は有意に高く、一方骨格筋でPPARα、LPL発現が有意に高かった。緑茶エキスの栄養的給餌がインシュリン感受性および脂質プロフィールを改善し、グルコースおよび脂質ホメオスタシスに関与する遺伝子発現を変化させるかもしれないと、それらの所見は示す(Sato訳)
■健康猫においてグラルジンおよびプロタミン亜鉛インシュリンは、レンテインシュリンと比較して作用がより長く持続し、日々の平均血糖値がより低くなる
Glargine and protamine zinc insulin have a longer duration of action and result in lower mean daily glucose concentrations than lente insulin in healthy cats
J Vet Pharmacol Ther. June 2008;31(3):205-12.
R D Marshall, J S Rand, J M Morton

グラルジン、プロタミン亜鉛(PZI)およびレンテインシュリンの薬理学的作用を9頭の健康な猫で評価した。3方向クロスオーバー研究を実施し、3日間隔で各インシュリンを1回皮下注射したあと、24時間の間インシュリンおよびグルコースの血漿濃度を測定した。
作用発現までの時間にインシュリンによる違いはなかった。最初の最低血糖値までの平均時間は、PZI(4h)、レンテ(5h)に比較してグラルジン(14h)がより長かった。PZIの最低濃度になる時間は二相性で、4時間とグラルジンと同様の2度目の最低濃度が14時間目だった。最低血糖値はインシュリンの種類で有意に異なることはなかった。グラルジンおよびPZIの作用持続時間は同様で、レンテインシュリンよりも長かった。グラルジンおよびPZI投与後の日々の平均血糖値も同様で、レンテインシュリン投与後よりも低かった。インシュリンの種類によるインシュリン濃度ピークまでの時間に違いはなかった。PZIの基線インシュリン濃度に戻るまでの時間は、グラルジンよりも長かったが、レンテと有意差はなかった。
結論として健康猫へのグラルジンの皮下注射は、レンテインシュリンを注射したときと比べ最低血糖値になるまでが遅く、作用持続時間はより長かった。研究した猫でグラルジンおよびPZIは同様の作用持続時間を示したが、作用持続時間の正確な比較結果が得られる大規模な研究が必要である。(Sato訳)
■ドライフードの比率より室内飼育および身体的不活動が猫II型真性糖尿病発症のリスクファクターである
Indoor confinement and physical inactivity rather than the proportion of dry food are risk factors in the development of feline type 2 diabetes mellitus
Vet J. October 2007;0(0):.
L I Slingerland, V V Fazilova, E A Plantinga, H S Kooistra, A C Beynen

馴化および都市化に伴い、猫は淡白豊富な獲物を食べるハンティング動物から炭水化物豊富な餌を食べるより座っていることの多い動物に変わってきている。ドライのキャットフードを多く摂取する、および身体活動の欠如が、猫II型真性糖尿病の発症に一役かっているかもしれないと仮説を立てた。真性糖尿病の猫96頭と、それに合った192頭のコントロール猫の今までの食餌、身体活動性に対する情報を遡及的に、電話による聞き取りで収集した。条件付ロジスティック回帰分析を聞き取りからの変動値と真性糖尿病発症との関連を調査するのに使用した。食餌中ドライフードのエネルギー比率は真性糖尿病発症に有意に関連していなかった(P=0.29)が、室内飼育(P=0.002)および低身体活動性(P=0.004)は有意に関連した。
結果から猫の食餌でドライフードの比率はII型真性糖尿病の発症の独立したリスクファクターではなく、身体不活動性および室内飼育がそうであるかもしれない。(Sato訳)
■糖尿病の猫で心不全は一般的に見られる:初診における遡及症例コントロール研究からの所見
Heart failure is common in diabetic cats: findings from a retrospective case-controlled study in first-opinion practice
J Small Anim Pract. January 2008;49(1):17-25.
C J L Little, G Gettinby

目的:真性糖尿病の猫で、予後と死亡原因を研究する

方法:最初に訪れた病院で診断された猫真性糖尿病の20頭を追跡調査した。糖尿病ではない3頭ずつコントロール猫を糖尿病の各症例に合致させ、同じく追跡調査した。

結果:糖尿病のソマリ1頭は対応できず、完全なデータ分析は19頭の糖尿病と57頭のマッチしたコントロールと考えた。糖尿病20頭中14頭、コントロール57頭中23頭が死亡したが、1頭のコントロールは最終的に追跡調査できなかった。糖尿病の猫6頭は、心疾患および心不全で死亡した。それらのうち1頭はソマリにマッチしていないものだった。それにもかかわらず、コントロール57頭中2頭と比べ、糖尿病19頭中5頭が心疾患の死亡率だった。糖尿病猫における心不全の相対危険度は、コントロールの10.4倍だった。この率の違いは、統計学的に有意だった。糖尿病の生存率はコントロールに比べ有意に悪かった。指標来院後、コントロール猫の生存期間中央値は718日だったが、糖尿病猫は診断後385日だった。

臨床意義:心疾患および心不全は糖尿病の猫で一般的である。この知見は更なる注意を喚起するものである。(Sato訳)
■猫の糖尿病における高血糖性高浸透圧症候群:17症例(1995-2001)
Hyperglycemic, Hyperosmolar Syndrome in Feline Diabetics: 17 Cases (1995-2001)
J Vet Emerg Crit Care. March 2004;14(1):30-40. 41 Refs
Amie Koenig, Kenneth J. Drobatz, A. Brady Beale, Lesley G. King

要約

目的:この研究の目的は、猫における非ケトン性高浸透圧性糖尿病として知られる、高血糖性高浸透圧症候群(HHS)を特徴付けること;緊急治療室における糖尿病猫におけるHHSの罹患率を明らかにすること;HHSの猫における予後を詳細に記録すること;そして疾病素因、あるいは生存予測因子を明らかにすることです。

計画:回顧的研究

設定:主要都市圏に位置する、獣医教育病院の救急部門

動物:1995年から2001年までに来院した高血糖性高浸透圧症候群の猫17頭の症例記録を評価しました。対照群として、糖尿病性ケトアシドーシスの猫37頭と真性糖尿病の猫80頭を加えました。

介入:なし

測定および主な結果:シグナルメント、病歴、身体検査所見、臨床病理学的データ、併発疾患、そして予後を記録しました。 高血糖性高浸透圧症候群は、たいてい数ヶ月間長期にわたり、インスリンを受けていた糖尿病の、より高齢の猫で認められました。 主訴には多飲、多尿、嗜眠が含まれました。神経学的症状と呼吸症状がしばしば発現しました。来院時の評価では、顕著な脱水、乳酸アシドーシス、そして高窒素血症が明らかとなりました。HHSクリーゼの展開に寄与すると思われる重篤な併発疾患がHHS猫の88%(15/17)で診断されました。最も一般的な併発疾患は腎不全、呼吸障害、感染、うっ血性心不全、腫瘍、そして消化管疾患でした。膵炎と肝疾患はこの糖尿病猫個体群において頻繁に発現しませんでした。HHS猫の65%は、最初の入院で生存せず、来院10時間以内に、大部分が死亡または安楽死となりました。長期生存率は低く12%でした。

結論:HHSは糖尿病クリーゼの重篤な命にかかわる病態であり、HHSの猫は、しばしば、他の重度な全身性疾患を持っております。糖尿病の猫と併発疾患、特に腎不全とうっ血性心不全はHHSのリスクが増大しますので、厳密にクリーゼの徴候をモニターするべきです。HHS猫の死亡率は高いです。 (Dr.K訳)
■糖尿病クリーゼの救急治療:インスリン過剰投与、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡
Emergency therapy of diabetic crises: insulin overdose, diabetic ketoacidosis, and hyperosmolar coma
Vet Clin North Am Small Anim Pract. May 1995;25(3):639-50. 43 Refs
D K Macintire

要約
糖尿病クリーゼには、インスリン過剰投与、糖尿病性ケトアシドーシス、高浸透圧性昏睡の3種類があります。神経学的徴候はそれぞれの症候群で随伴するかもしれません。また、適切な治療計画が開始されるためにも、それぞれが、救急臨床医により早急に識別されなければなりません。基本的な目標は合併症を伴わない糖尿病として、より日常的に管理できるように、代謝障害を元に戻すことと、患者を安定させることであります。(Dr.K訳)
■犬の心機能に対する高血糖誘発高浸透圧の影響
Effect of hyperglycaemia-induced hyperosmolality on heart function in the dog
Eur J Clin Invest. April 1979;9(2 Pt 1):147-50.
G Pogatsa, E Dubecz

要約
心筋水分含量、左室拡張期剛性、心機能、冠状動脈血流量、心筋収縮力、心筋力の変化率、大動脈体積流量の最高点加速における変化を、膵臓切除後のインスリン治療を行ったものと行っていないもの、切除前、および切除後のグルコース誘導性高浸透圧の犬25頭で検査しました。グルコース誘導性高浸透圧は、インスリン欠乏下においてのみ、心筋脱水、拡張期剛性増大、そして結果として生じた左室機能の減少の原因である一方、冠状動脈血流量、心筋収縮力、心筋力の変化率、大動脈体積流量の最高加速は、グルコース誘導性高浸透圧の状態で、インスリンの存在、または不在に関係なく増大しました。これらの所見は、高浸透圧性糖尿病昏睡における心不全の良くある展開は、心筋脱水と結果として生じた左室圧縮率および機能の減少により、部分的に説明できるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■犬真性糖尿病:表現型から遺伝子型
Canine diabetes mellitus: from phenotype to genotype
J Small Anim Pract. July 2007;0(0):.
B Catchpole, L J Kennedy, L J Davison, W E R Ollier

犬の真性糖尿病の感受性で犬種の違いは、この疾患の病因に対し、基礎遺伝的成分を示唆する。犬においてヒト2型糖尿病に相当する所見は少なく、犬の糖尿病は1型により匹敵すると提唱されている。確実な免疫反応遺伝子、特に抗原提示に関与する主要組織適合複合分子をコード化するものは、ヒト1型糖尿病に対する感受性を判定するのに重要である。我々は、犬主要組織適合性複合遺伝子(犬白血球抗原として知られる)が犬の糖尿病に関与するという仮説を検証する。
合計530頭の糖尿病犬と1000頭以上のコントロールの犬白血球抗原を分類し、関連を3つのハプロタイプで認めた。イギリスの犬集団で、DLA-DRB1*009/DQA1*001/DQB1*008ハプロタイプは、糖尿病に最も強い関連を示す。このハプロタイプは、糖尿病傾向犬種(サモエド、ケルンテリア、チベタンテリア)で一般的であるが、糖尿病抵抗犬種(ボクサー、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバー)ではまれで、それら異なる犬種の糖尿病罹患率の違いを説明できた。DLA-DQA1*001は犬免疫介在性内分泌疾患に対する一般的な感受性のある対立遺伝子を表しえると示唆する甲状腺機能低下症にも関連するという所見がある。(Sato訳)
■犬における真性糖尿病、副腎皮質機能亢進症、甲状腺機能低下症
Diabetes mellitus, hyperadrenocorticism, and hypothyroidism in a dog
J Am Anim Hosp Assoc. 1998 May-Jun;34(3):204-7.
R S Hess, C R Ward
要約
1頭の犬で見られた3つの内分泌障害の珍しい併発について記述します。6歳の避妊済、雑種犬が多飲多尿、多食、そして体重減少で来院しました。犬を真性糖尿病と診断しましたが、インスリン抵抗が疑われ、引き続き、副腎皮質機能亢進症と診断しました。さらに、持続性の高コレステロール血症から甲状腺機能低下症と診断しました。犬は内科療法に良く反応し、臨床徴候と生化学的変化は改善しました。多腺性内分泌障害を報告した論文はこれまで報告されておりません。(Dr.K訳)
■<真性糖尿病の猫における血清インスリン様成長因子Ⅰの濃度と末端肥大症>

*背景:真性糖尿病の猫において、血清インスリン様成長因子Ⅰ(IGF-I)は末端肥大症を確認するために、血清成長ホルモンの定量化に代わり使用されている。末端肥大症のスクリーニング検査としてのIGF-Iの使用はきちんと評価されていない。この回顧的研究は末端肥大症の識別に血清IGF-Ⅰ濃度が実用であるか評価することである。

*仮説:血清IGFⅠは糖尿病の猫における末端肥大症のスクリーニングテストに有用である。

*動物:再調査は血清IGF-Ⅰ濃度を測定している糖尿病の猫74頭のカルテをもとに行った。糖尿病をよくコントロールされている15頭、インスリンの使用に問題があるか併発疾患があるためコントロールが不十分である40頭、末端肥大症と一致した臨床所見がみられコントロールが不十分である19頭に分類された。

*方法:カルテの再調査によって行われた。

*結果:よくコントロールされている群とインスリンの使用に問題があるか併発疾患があるためコントロールが不十分である群と比べると、末端肥大症の糖尿病の猫において血清IGF-Ⅰ濃度は有意に増加した。(P<0.001) 血清IGF-Ⅰ濃度の感度と特異性は各々84%(95%信頼区間(CI)=60.4~96.6%)と92%(95%信頼区間=81.3~97.2%)であった。血清IGF-Ⅰ濃度とインスリン治療期間(r = 0.23, P = .089), インスリン投薬量 (r = 0.14, P = .30)、年齢 (r = 0.16, P = .12), 下垂体体積 (r = 0.40, P = .11)の相関関係に有意差はみられなかったが、血清IGF-Ⅰ濃度と体重(r = 0.48, P < .0001)にはわずかな相関性がみられた。

*結論と臨床的重要性:結果によって、末端肥大症を示唆する臨床所見をもつ糖尿病の猫のスクリーニング検査としての血清IGF-Ⅰを測定することの意義が立証された。(Dr.HAGI訳)
■糖尿病誘発ラットにおけるモリンダ・シトリフォリアフルーツジュースの創傷治癒活性
Wound-healing activity of Morinda citrifolia fruit juice on diabetes-induced rats.
Wound Care. 2007 Feb;16(2):83-6.
Nayak BS, Isitor GN, Maxwell A, Bhogadi V, Ramdath DD.

目的:ノニ(Morinda citrifolia L.)は腸疾患、皮膚の炎症、感染、口腔内潰瘍そして創傷治癒に効果的であると言われている伝統的なポリネシアの医療植物です。この研究は、ストレプトゾトシン誘発糖尿病ラットにおけるノニジュースの創傷治癒活性を評価することが目的です。

方法:外科的創傷モデルを使用した。体重をあわせた動物を集め、3つのグループ(6頭/グループ)に分類した。グループ2とグループ3の動物は糖尿病コントロールと実験的糖尿病動物、グループ1の動物は正常コントロールとした。すべての動物に麻酔をかけ、全層切除創(面積300 mm2 、深さ2 mm )を作り出した。
グループ3は水の中にノニジュース(100ml/kg)を加えて10日間与えた。1、5、11日後に創傷面積の測定を行った。血糖値測定のため同時に採血も行った。
創傷部位に形成された肉芽組織を11日で切除し、組織学的そして生物化学的分析を行った。

結果:ノニで処置したグループの創傷部位は、糖尿病コントロール(63%)と比べて73% (p < 0.001)減少した。
肉芽組織の重さ(p < 0.001)とヒドロキシプロリン含有量(p < 0.00 1, 92.16 +/- 4.02)の明から増加が観察された。蛋白含有量は中等度に高かった。組織学的研究において正常コントロールと糖尿病コントロールグループより実験的糖尿病動物においてコラーゲンがより早く形成された。
実験的糖尿病グループにおける絶食時血糖値は、糖尿病コントロール動物と比べて29%(p < 0.00 1)減少した。創傷収縮率と血糖値には良い相関があった。

結論:この研究は、モリンダ・シトリフォリアフルーツは糖尿病ラットにおいて明らかに血糖濃度を減らし、創傷治癒を促進させることを証明する。(Dr.Kawano訳)
■真性糖尿病の猫の肺病変
Pulmonary lesions in cats with diabetes mellitus
J Vet Intern Med. 2006 Jan-Feb;20(1):47-51.
Angela M Mexas, Rebecka S Hess, Eleanor C Hawkins, Linda D Martin

新生糖尿病(DM)は人や猫に見られる一般的な内分泌障害である。肺組織に対するDMの影響を調査する研究はほとんどないが、タイプIおよびII糖尿病の人で肺機能や免疫を変化させ、またマウスの糖尿病モデルで肺病変が述べられている。
我々の目的は、DMの猫に肺病変が起こるかどうか調査することである。DMの猫42頭の医療記録と剖検評価を、糖尿病でない年齢が一致する45頭の猫の呼吸疾患の臨床所見の有無、剖検時の肺組織病理所見に関して比較を行った。
2群の間で呼吸疾患の臨床所見の有無に有意差は認められなかった。それにもかかわらず、異常な肺組織病理の存在とDMの間に有意な関連を認めた(P=.018、オッズ比=3全ての猫を含む;P=.005、オッズ比=5明確な肺疾患の臨床所見がある非DM猫を除外した時)。糖尿病の猫で組織病理検査により認められた肺の異常は、うっ血と浮腫、組織球増殖、肺炎、平滑筋肥厚、線維症、石灰化、腫瘍、タイプII肺胞細胞過形成だった。呼吸疾患の臨床所見と無関係にDMと肺病変の間に見られた関係は、糖尿病の猫における気道の精査の必要性を強調する。(Sato訳)
■糖尿病性ケトアシドーシスの犬の転帰:127例(1993-2003)
Outcome of dogs with diabetic ketoacidosis: 127 dogs (1993-2003)
J Vet Intern Med. 2006 May-Jun;20(3):547-55.
Daniel Z Hume, Kenneth J Drobatz, Rebecka S Hess

研究目的は、自然発症した糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)の犬127頭の転帰を回顧的に述べ、犬DKAの転帰、臨床および臨床病理所見の関連を検証することだった。82頭(65%)は真性糖尿病(DM)の最初の診断時にDKAと診断された。87頭(69%)は入院時に1つ以上の併発疾患を診断されていた。一般に認められた併発疾患には、急性膵炎(52.41%)、尿路感染(21.20%)、副腎皮質機能亢進症(19.15%)があった。副腎皮質機能亢進症が同時に見られた犬は、退院するものが少なかった(P=.029)。治療した犬121頭のうち、89頭(70%)は生存して退院し、入院期間中央値は6日だった。非生存犬は生存犬よりもカルシウムイオン濃度が低く(P<.001)、ヘマトクリット値が低く(P=.036)、静脈pHが低く(P=.0058)、より多い塩基欠乏(P=.0066)がみられた。
入院から皮下インシュリン療法開始までの期間は、低血清カリウム濃度(P=.0056)、低血清リン濃度(P=.0043)、異常に高い白血球数(P=.0060)、多くの塩基欠乏(P=.0015)、低静脈pH(P<.001)に相関した。多変量分析で、塩基欠乏が予後と関連していることを示した(P=.021)。塩基欠乏が増加した各ユニットで、9%以上退院する傾向にあった。結論としてDKAの犬大多数は、過去にDMと診断されていなかった。併発疾患と電解質異常は、DKAでよく見られ、入院期間の長さに関連する。生存性は、貧血、低カルシウム血症、アシドーシスの程度に相関する。(Sato訳)
■糖尿病の猫におけるグラルギンインスリンとレンテインスリンの使用
Use of Glargine and Lente Insulins in Cats with Diabetes Mellitus
J Vet Intern Med 2006;20:234-238
Kelli E. Weaver, Elizabeth A. Rozanski, Orla M. Mahony, Daniel L. Chan, and Lisa M. Freeman

この研究の目標は、糖尿病の猫において1日1回投与のグラルギンインスリンと1日2回投与のレンテインスリンの効果を比較することで、猫の糖尿病の管理のために構成された高蛋白、低炭水化物食の使用を記述することだった。
自然発症性糖尿病のすべての猫が研究対象だった。基礎検査として身体検査、血清生化学検査、尿検査そして尿の培養、血清チロキシン濃度および血清フルクトサミン濃度を行った。すべての猫に高蛋白、低炭水化物食を与えた。 猫は12時間毎にレンテインスリン0.5U/kgあるいは24時間毎にグラルギンインスリン0.5U/kgを無作為に投与した。 1、2、4、8、および12週ですべての猫を再評価し、臨床的徴候、身体検査、16時間の血糖曲線および血清フルクトサミン濃度を検査した。
13頭の猫が研究(レンテ7頭、グラルギン6頭)を完成しました。 すべての猫において血清フルクトサミン濃度と血糖値は明らかに改善したが2つのインスリングループ間において有意な差は認められなかった。 13頭の猫のうち4頭が研究期間(レンテ3頭、グラルギン1頭)の終わりまで完全に遂行した。猫の糖尿病の治療において高蛋白、低蛋白食の給餌と1日1回のグラルギンインスリンあるいは1日2回のレンテインスリンの組み合わせにが研究の結果から支持された。(Dr.Kawano訳)
■真性糖尿病の猫の連続血糖値モニターシステムの評価
Evaluation of a Continuous Glucose Monitoring System in Cats with Diabetes Mellitus
J Feline Med Surg 7[3]:153-162 Jun'05 Original Article 30 Refs
Jelena M.E. Ristic BVetMed, DSAM, CertVC, MRCVS, Michael E. Herrtage BVSc, MA, DVR, DVD, DSAM, DipECVDI, DipECVIM, MRCVS, Sabine M.M. Walti-Lauger DrMedVet, MRCVS, Linda A. Slater VN DipAVN (Surg), David B. Church BVSc, PhD, MRCVS, Lucy J. Davison MA, VetMB, CertSAM, MRCVS, Brian Catchpole BVetMed, PhD, MRCVS

連続血糖値モニターシステム(CGMS)を自発真性糖尿病の猫14頭で評価した。皮下組織にセンサーを設置することにより、持続的に間質液血糖を測定する。全頭、その装置を許容し、16回のうち15回で記録を入手した。CGMS値とグルコメーターを使用し測定した血糖値に良好な相関が見られた(r=0.932、P<0.01)。CGMSの使用制限は、その実用血糖範囲は2.2-22.2mmol/l(40-400mg/dl)で、最低12時間毎に血糖測定値にキャリブレーションが必要なことである。従来の血糖曲線と比較すると、CGMSは最小の侵襲で、患者のインシュリン療法の動態を評価するのに必要な複数回の静脈穿刺を低減でき、本当の連続血糖曲線を求めることができる。(Sato訳)
■ネコの血漿インシュリン濃度に対する不妊が誘発する変化
Neutering-Induced Changes in Plasma Insulin Concentrations in Cats
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:40-41 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Kanchuk ML, Backus RC, Calvert CC, et al. J Nutr 2002;132:1730S-1732S

背景:アメリカでは飼育ネコの約1/3が肥満である。ネコの体重増加や肥満には不妊が関係している。脂肪組織のリポタンパクリパーゼ活性の増加など、種々の要因の結果という仮説が立てられている。この酵素は、脂肪細胞内への遊離脂肪酸の取り込みをコントロールしている。レプチンは、食欲やエネルギー消費の役割を演じる脂肪細胞により産生されるホルモンである。

目的:この研究目的は、オスネコを不妊後、体重増加の原因を調査することである。

サマリー

方法:16頭は正常、16頭はリポタンパクリパーゼ欠損のオスの成猫を評価した。各群の8頭を不妊した。食物摂取、体重、体組成、血漿インシュリンとレプチン濃度を測定した。

結果:両群の不妊ネコは、不妊して3日目から、1日平均食物摂取が有意に増加していることが分かった。食物摂取のピークは、両群不妊後7週間目に起こり、少なくとも不妊前の50%以上増で食べていた。両群不妊ネコの体重は、不妊後初めの3週間から有意に増加し、36週間持続した。不妊ネコは、本来の体重の28-29%増加し、不妊していないネコの体重は安定していた。体脂肪も両群の不妊ネコで増加した。
血漿インシュリンとレプチン濃度は、全頭不妊前、不妊後2、5、16、34週目に測定した。両群の不妊ネコの血漿インシュリン濃度は、それぞれのコントロールと比べ、不妊後2、5、16週目に有意に高値を示した。血漿レプチン濃度は、正常ネコの不妊前と不妊後に比べ、リポタンパクリパーゼ欠損ネコで有意に高かった。両群不妊ネコのレプチン濃度は、それぞれコントロールと比較し、不妊後34週目にはより高かった。

結論:不妊後起こる体重増加の原因となるかもしれない食物摂取の急速な増加が不妊で引き起こされる。

臨床への影響

体重増加はイヌネコの不妊後に良く見られる。原因は分かっていないが、代謝率の低下が、食物摂取の増加と同じように寄与しているかもしれない。体脂肪を増やすような不妊ネコで見られるレプチン濃度の増加は、食欲を抑制せず、また血漿インシュリンも増加させない。両方とも通常食欲抑制と考えられる。ネコのオーナーには、不妊後肥満を防ぐため、ネコの体重をモニターし、食物への制限をするようアドバイスすべきである。(Sato訳)
■白血球酵素による糖尿病コントロールのモニタリング
Monitoring Control of Diabetes with Leukocyte Enzymes
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:22 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Arai T, Nakamura M, Magori E, et al. Res Vet Sci 2003;74:183-185

イントロダクション

背景:リンゴ酸脱水素酵素は、ミトコンドリアへの細胞基質NADHの移動や、ミトコンドリアエネルギー代謝の活性化を助ける酵素である。リンゴ酸脱水素酵素活性測定は、糖尿病犬へのインシュリン投与の応答性を評価する新しい方法かもしれない。

目的:この研究目的は、インシュリン依存性糖尿病犬のリンゴ酸脱水素酵素の活性を測定し、全体の代謝状況の指標として測定値の有効性を判定することだった。

サマリー

方法:4頭のインシュリン依存性糖尿病犬と、12頭の臨床上正常なイヌの白血球を、遠心分離による血液サンプルから収集した。糖尿病犬は、2週間のインシュリン療法で最初に安定化した。白血球細胞基質とミトコンドリア酵素の活性、特に乳酸脱水素酵素(LDH)、リンゴ酸脱水素酵素(MDH)、アスパラギン酸アミノ基転移酵素(AST)、グルタミン酸脱水素酵素(GLDH)を測定した。細胞基質MDH/LDH(M/L比)を計算した。血漿インシュリンと血糖値、そして遊離脂肪酸とトリグリセリドを測定した。

結果:絶食血糖値は、コントロール犬よりも糖尿病犬で有意に高かったが、血漿インシュリン濃度は同じか、糖尿病犬で高かった。絶食遊離脂肪酸とトリグリセリドも糖尿病犬で高かった。白血球LDH、AST、GLDH活性は有意差がなかった。しかし、MDH活性とM/L比は糖尿病犬で低かった。

結論:糖尿病犬の白血球のリンゴ酸脱水素酵素/乳酸脱水素酵素活性比は、正常犬より有意に低かった。M/L活性比は、糖尿病犬白血球内のエネルギー代謝の低下を反映している。

臨床への影響

この研究結果は、真性糖尿病の分かっている生理学的影響の興味深い実証である。リンゴ酸脱水素酵素は、ミトコンドリアのNADHの移動やATPの産生に重要である。インシュリン不足の存在でその活性の低下は驚くべきものではなく、インシュリン不足が唯一の原因でもない。糖尿病犬でMDHやM/L比の値は低下したが、血漿グルコース、遊離脂肪酸、トリグリセリドはすべて上昇した。後者の測定値は、臨床現場で実際かなり測定される。(Sato訳)
■糖尿病犬の角膜感受性
Corneal Sensitivity in Diabetic Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:31-32 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Good KL, Maggs DJ, Hollingsworth SR, et al.; Am J Vet Res 2003;64:7-11

イントロダクション:

背景:真性糖尿病の一般的な眼の合併症は、白内障形成である。ほとんどの糖尿病犬が白内障を発症するため、水晶体切除術が頻繁に実施される。糖尿病犬の角膜異常も述べられており、角膜神経に関与する神経障害の結果の一部かもしれない。角膜治癒の障害も起こるかもしれず、白内障手術後の合併症が増加している。

目的:この研究目的は、真性糖尿病の犬の角膜感受性が低下するかどうかを判定することだった。

サマリー:

方法:糖尿病犬23頭と非糖尿病犬29頭の両眼の角膜感受性を評価した。病歴、完全眼科検査をもとに全頭白内障を除いて眼疾患がないことを確認した。糖尿病犬の高血糖コントロールを、検査時に血清フルクトサミン、グリコシル化ヘモグロビン濃度を測定することで判定した。Chochet-Bonnet知覚計を用い、角膜の5箇所で角膜感受性を評価した。この器械は、角膜に硬さの変化するモノフィラメント繊維を接触させることで角膜感受性を評価する。繊維の硬さ、すなわち角膜への圧を、犬が瞬き反応を起こすまで漸次増加させた。

結果:23頭の真性糖尿病の診断から評価までの期間中央値は8ヶ月だった。角膜全ての部位で、コントロール犬に比べ糖尿病犬の角膜触覚閾値は有意に高く、すなわち角膜感受性は低かった。真性糖尿病持続期間、血清フルクトサミン、グリコシル化ヘモグロビン濃度と角膜触覚域値の相関はなかった。糖尿病、コントロール犬で、白内障の存在は、角膜触覚閾値に明らかな影響を及ぼさなかった。

結論:角膜感受性の低下は糖尿病犬に認められ、糖尿病の持続期間や管理は、感受性の低下を変化させない。

臨床関連:

角膜感受性の低下は、真性糖尿病により引き起こされる神経障害の結果と思われる。糖尿病犬の白内障手術後に高率に起こる角膜潰瘍は、これが少なくとも原因の一端であると思われる。これは回復の延長、治療の失敗を導く重要な合併症となる可能性がある。グリコプロテインと角膜感受性の相関の欠如は、適切な糖尿病のコントロールでも感受性を改善しないだろうと必ずしも示すわけではない。この研究は比較的犬が少数であり、グリコプロテインの値と他の糖尿病コントロールを見る測定値は、報告されなかった。(Sato訳)
■糖尿病犬のオカルト泌尿器膀胱炎
Occult Urinary Cystitis in Diabetic Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:25-26 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
McGuire NC, Schulman R, Ridgway MD, et al. J Am Anim Hosp Assoc 2002;38:541-544

背景:真性糖尿病犬の尿路感染は一般的である。感染はたびたび膿尿、または下部尿路炎症の臨床症状に関与しない。それらの症例は、尿の細菌培養により最もよく確認される。

目的:この研究目的は、イヌのオカルト細菌性尿路感染の存在を評価し、白血球増加よりも他のパラメーターが、オカルト感染の可能性を臨床医に警戒させる尿の呈示があるかどうかを判定することだった。

サマリー

方法:医療記録の回顧的再検討で、完全尿検査と尿培養を行った膿尿がない真性糖尿病のイヌ51頭を認めた。膿尿のあるイヌや、評価1週間以内に抗生物質の投与を受けたイヌは、研究から除外した。血液寒天培地、またはマッコンキー寒天培地で、1×10(3)コロニー形成単位が認められたとき、尿培養が陽性と考慮した。

結果:陰性培養は39症例(76%)で、12症例は陽性結果だった。ほとんどのイヌは、過去に真性糖尿病と診断されていたが、陰性培養のイヌの31%、陽性のイヌの12%は、新規に糖尿病と診断された。メスイヌは全頭の82%を占め、陽性培養群の大多数を占めた(11/12)。罹患犬種で最も多かったのはミニチュアシュナウザー(15頭)だった。群間の年齢に差はなかった。多尿多渇の臨床症状は陰性培養の44%、陽性培養の33%に存在した。尿路に関係する他の臨床症状は、どのイヌにも観察されなかった。副腎皮質機能亢進症は7頭で認められ、そのうち6頭は現在ミトタンを投与されていた。それらのイヌの1頭のみ、オカルト尿路感染が認められた。一番良く分離された細菌は、5症例で培養されたEscherichia coliだった。細菌混合感染は2頭に認められた。尿検査で、群間の尿比重、?、糖、タンパク、ケトンに差は見られなかった。細菌尿は、尿培養陽性群により優勢だったが、この群で細菌が認められたのはたった33%だった。

結論:尿路感染は、臨床症状、膿尿、または細菌尿のない糖尿病犬で普通に発生する。全ての糖尿病犬の尿は、細菌の存在有無のため培養すべきである。

臨床への影響

ほとんどの症例の確認に通常の尿検査は無効であるため、真性糖尿病と新規に診断された全てのイヌに尿培養は指示される。尿中白血球は、多尿による希釈、白血球異常、管壁変化のため増加しないことも多い。尿路感染は、インシュリン知慮の反応に有意な影響を持つ可能性があると考えられるため、この合併症を確認することは重要である。オカルト、または、無症候性尿路感染の真の重要性は不明で、真性糖尿病と無症候性尿路感染の女性で最近の情報は、治療しない場合のリスクはほとんどないとしている。しかし、イヌのさらなる調査もなく、糖尿病犬の尿のルーチンな培養、認められたときには感染の治療を行うのが適切だろう。(Sato訳)
■糖尿病性ケトアシドーシスの内因性血清インシュリン濃度
Endogenous Serum Insulin Concentration with Diabetes Ketoacidosis
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:27 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Parsons SE, Drobatz KJ, Lamb SV, et al. Endogenous serum insulin concentration in dogs with diabetic ketoacidosis. J Vet Emerg Crit Care 2002; 12: 147-152

イントロダクション

背景:高血糖の程度やケトアシドーシスの存在により、イヌで非インシュリン依存性糖尿病がまれなことから糖尿病犬のインシュリン依存性が通常、当然と思われる。内因性血清インシュリン、またはC-ペプチド濃度は、イヌの真性糖尿病の治療前に一般的に測定されることはない。

目的:この研究の目的は、アシドーシスがないケトン尿のイヌ、ケトン尿またはアシドーシスがないイヌ、膵臓疾患のないイヌと、糖尿病性ケトアシドーシスのイヌの内因性血清インシュリン濃度を比較することだった。

サマリー

方法:44頭を研究した。20頭は最近糖尿病と診断されている。そのうち7頭はケトアシドーシス、7頭はアシドーシスがないケトーシス、7頭は単純な糖尿病だった。糖尿病ではない24頭のイヌをコントロールとした。血液と尿サンプルを入院時に採取した。臨床所見として徴候、臨床症状、身体検査所見、併発疾患の有無を記録した。検査では血糖値、静脈血?と重炭酸濃度、尿検査、内因性血清インシュリン濃度を調べた。

結果:ケトアシドーシスのイヌの血清インシュリン濃度は、単純糖尿病や、糖尿病ではないイヌと比べ有意に低かった。全ての型の真性糖尿病のイヌのインシュリン濃度は、糖尿病ではないイヌよりも有意に低かった。

結論:ケトアシドーシスのイヌの血清インシュリン濃度は、単純な真性糖尿病のイヌより有意に低下しているが、ケトアシドーシスのイヌは通常検出可能な内因性インシュリン濃度を示し、正常範囲のイヌもいるかもしれない。

臨床への影響

ケトアシドーシスのイヌは通常測定可能な内因性血清インシュリン濃度を有す。絶食血糖正常犬で正常と考えられる範囲内のものもいるかもしれない。グルコースを投与した正常犬はより高いレベルとなる。ケトアシドーシス犬の内因性インシュリン最高濃度は7.1μIU/mlで、絶食血糖正常犬の範囲よりも低く高血糖の程度(平均407mg/dl)に対し、異常にかなり低かった。血糖値407mg/dl、または群の最低血糖値180mg/dlと共にインシュリン濃度7.1μIU/mlに関し正常なものはなかった。ケトアシドーシスまたは顕著なケトンがあり、そしていまだ食べている糖尿病の全てのイヌは、絶対量でないにしても相対量の重度インシュリン欠乏である。(Sato訳)
■ネコの糖尿病性神経障害
Diabetic Neuropathy in Cats
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:27 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Mizisin AP, Shelton GD, Burgers ML, et al. J Neuropathol Exp Neurol 2002;61:872-884

背景:末梢神経障害は、1型、2型真性糖尿病の合併症として出現する可能性がある。神経機能や組織の変化に関与する。イヌに比べ、ネコの糖尿病性神経障害はより一般的、または重度である。通常蹠行性起立や歩行(床に対し飛節で後体重を支える)の臨床症状を呈す。

目的:この研究の目的は、真性糖尿病のネコで、多く見られると思われる神経学的合併症を報告することである。

サマリー

方法:糖尿病のネコ19頭と神経障害が無く糖尿病ではないネコ28頭を身体、神経学的検査、電気生理学的検査、神経、筋肉バイオプシー標本の生化学、組織学的検査で評価した。
結果:非糖尿病ネコと比較し、糖尿病ネコの末梢神経に機能、構造、生化学的欠損は検出されなかった。感覚、運動神経障害は、糖尿病ネコの後肢、前肢に存在した。感覚神経伝導より運動神経伝導のほうが弱く、前肢よりも後肢がよりひどかった。筋電図異常はほとんどなかった。組織学的変化は、シュワン細胞傷害、ミエリン欠損などだった。神経フルクトースは、ソルビトール蓄積を増加させた。

結論:ネコ糖尿病性神経障害は、前肢、後肢の運動神経、感覚神経の機能、組織、生化学欠損の特徴を持つ。

臨床への影響

これは、ネコの末梢神経に対する真性糖尿病の影響に関し、余すところ無く研究した。主な目的は、糖尿病ネコが、糖尿病性神経障害の比較研究モデルになる価値を説明することだったが、その所見も臨床的重要性があった。例えば、蹠行性起立や歩行の過去の逸話的報告は、ネコの糖尿病性神経障害の臨床症状を導くものとして実証している。
ソルビトール蓄積が無い末梢神経のフルクトース増加は、ソルビトール脱水素酵素の増加を示唆する。またこれは、糖尿病性神経障害の原因のいくらかが、ソルビトール蓄積よりも多価アルコール経路の流動に関与すると示唆する。ゆえに、アルドース還元酵素抑制が、流動を防ぎ、ネコの糖尿病性神経障害を改善する可能性がある。(Sato訳)
■サモエドの家族性インシュリン依存性真性糖尿病
Familial Insulin-Dependent Diabetes Mellitus in Samoyeds
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:26 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Kimmel SE, Ward CR, Henthorn PS, et al. Familial insulin-dependent diabetes mellitus in samoyed dogs. J Am Anim Hosp Assoc 2002;38:235-238

イントロダクション

背景:イヌの真性糖尿病のほとんどの原因は不明であるが、自発後天性と思われる。ヒトの1型真性糖尿病のあまり無い原因は遺伝で、環境免疫の引き金が必要と思われる。キースホンドは、常染色体劣性形質により、真性糖尿病のリスクを持つと思われる。傾向の見られる犬種は、アラスカン・マラミュート、フィンランド・スピッツ、スキーパーケ、ミニチュア・シュナウザー、サモエドで報告されている。サモエドの家族性インシュリン依存性真性糖尿病は報告されていない。

目的:この報告の目的は、サモエドの家系でインシュリン依存性真性糖尿病を述べることだった。

サマリー

症例リポート:2つの血縁の無い家族から、5頭のサモエドが真性糖尿病と診断された。3頭はオスで2頭はメスだった。糖尿病の2頭は、9頭の同腹子(家族A)からで、他の3頭は、7頭の同腹子(家族B)からだった。家族Aの2頭は同じ環境で育った。家族Bの3頭は生後8週間から別の環境で育った。家族Bの2頭は、甲状腺機能低下症と診断されたが、そのイヌの情報が入手できないため、より早期診断を確認する調査は不可能だった。
5頭の糖尿病の診断は、3.5-7.8歳でなされた。診断時の全頭の最低血糖値は341mg/dlだった。2組の同腹子に存在した3頭は測定できる内因性インシュリン産生の指標であるC-ペプチド濃度をもち、2頭の濃度は測定できない低値を示した。家族Bの母親と父親は、両方とも成犬時に真性糖尿病を発症し、彼らは糖尿病を発症した共通の祖先を持っていた。家族Aの3世代遺伝調査で、祖先に糖尿病は見つからなかった。両家族の4世代以内の祖先に共通のイヌは見つからなかった。
結論:この報告のイヌは、サモエドの家族性インシュリン依存性真性糖尿病を提示する。

臨床への影響

イヌの家族性真性糖尿病は、ヒトの1型真性糖尿病の調査モデルとなるかもしれない。おそらく環境のきっかけが必要である。そのきっかけは、感染病原体、または毒素かもしれない。この報告のイヌで確認されたものは無い。比較調査の繁殖がなされないなら、真性糖尿病の家族系のイヌは、厳密に繁殖を避けるべきである。(Sato訳)
■犬の静脈内糖負荷試験に対するアセプロマジンの影響の調査
Investigation of the effect of acepromazine on intravenous glucose tolerance tests in dogs.
Am J Vet Res 65[8]:1124-7 2004 Aug
Ionut V, Kirkman EL, Bergman RN

目的:犬のIV糖負荷試験(IVGTTs)に対するアセプロマジン投与による影響を調査する

動物:8頭のオスの雑種犬

方法:試験ごとの期間を1週間あけ、試験前にマレイン酸アセプロマジン投与(IVGTT開始30分前に0.1mg/kg、SC)を行い、または行わないで無作為順に各犬にIVGTTを実施した。各試験の14時間前から絶食した。糖投与前20、10、1分前と投与後2、3、4、5、6、8、10、12、14、16、19、22、25、30、40、50、60、70、80、90、100、120、140、160、180分目に採血した。

結果:IVGTTとアセプロマジン-IVGTTを行った犬の基準(すなわち絶食後)血漿グルコース、乳酸、インシュリン濃度に有意差はなかったが、アセプロマジン投与犬の基準遊離必須脂肪酸濃度は低かった。糖動態のBergman's minimal modelによるデータの分析で、試験前のアセプロマジン投与犬、または非投与犬のインシュリン感受性、糖にたいする急性インシュリン反応、処分指数、糖有効性に差がないことが分かった。

結論と臨床関連:結果は、IV糖負荷試験を行った犬で、アセプロマジン少量の試験前投与は、糖代謝評価の結果に緩衝しない科学的拘束方法として使用できることを示す。(Sato訳)
■イギリスの真性糖尿病犬253頭の研究
Study of 253 dogs in the United Kingdom with diabetes mellitus.
Vet Rec. 2005 Apr 9;156(15):467-71.
Davison LJ, Herrtage ME, Catchpole B.

自然発症性糖尿病の253頭の犬から臨床情報と血液検体を集めた。それらの半分以上がラブラドールレトリーバー、コリー、ヨークシャーテリアもしくは雑種犬で、それらの約80%が5~12歳で診断された。大部分は1日1回のインスリン療法を受けていたが、1日2回のインスリン注射を受けていた犬において、血清フルクトサミン濃度が低い傾向にあり、より良い血糖コントロールを示した。糖尿病の雌犬の比率はこれまでの調査に比べて低かった。この病気はより一般的に冬季に診断された。季節性パターンは人の糖尿病でも観察され、同様の環境因子がこの病気に影響しているかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬の真性糖尿病のリスクファクター
Risk Factors for Diabetes Mellitus in Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 14[2]:11 Oct'04 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Guptill L, Glickman L, Glickman N. Time trends and risk factors for diabetes mellitus in dogs; analysis of veterinary medical data base. Vet J 2003;165:240-247

イントロダクション:

背景:真性糖尿病は、犬に見られる主要な3つの内分泌障害のうちの1つです。リスクファクターは、加齢、メス、プードル、テリア、そり犬種、その他小型-中型犬で報告されている。
目的:この研究目的は、犬の真性糖尿病の罹患率、真性糖尿病のリスクファクターの最近の傾向を調査することである。

サマリー:

方法:30年以上かけて複数施設で真性糖尿病と診断された、6860頭の犬の医療記録を回顧的に再検討し、経時的に変化する傾向を評価した。真性糖尿病の犬6707頭と、同時期同施設で見られた真性糖尿病以外の診断を受けた6707頭の記録を対照として比較した。

結果:1年の10000症例中真性糖尿病の診断率は、19/10000(0.2%)1970年から30年後は64/10000(0.6%)と有意に増加していた。同時期中、真性糖尿病の犬の死亡率は、37%から5%に低下した。加齢、メス、22.7kg以下は30年経過しても依然有意なリスクファクターだった。真性糖尿病の発生が最も多い犬種はオーストラリアンテリアだった。去勢したオスイヌは去勢していないオス犬よりも有意にリスクが高かったが、メスイヌで避妊に関するリスクの有意差は見られなかった。診断の発生数で季節的パターンは見られなかった。

結論:犬の真性糖尿病の発生は増加し、死亡率は低下している。

臨床への影響:
この報告の研究集団は主に委託症例だった。30年以上の真性糖尿病の症例数の増加は、発生率の増加を必ずしも意味しない。糖尿病の委託の比率が増加しえる他の要因には、他の委託症例の減少、糖尿病のより早い診断の増加、委託サービスを必要とする糖尿病性合併症の患者をより多く誘発する生存率の増加に関連する可能性がある。
犬の真性糖尿病に関する過去の報告で見られた多くの所見は、この研究で実証され、それは一般集団に比べ、糖尿病になる犬のリスクが老齢の小型-中型のメスイヌで最も高くなるということである。季節性発生はヒトの1型糖尿病で、犬でまれに示唆されているが、多くの臨床医は犬の糖尿病の季節的発生を認めておらず、この研究結果もそうである。
避妊したメス犬、未避妊のメス犬共に真性糖尿病の発生リスクが有意に高い。性腺ホルモンは、メス犬の糖尿病の感受性を増加させる原因に関与するとは思われない。この研究や、他の同じデータベースを用いた研究で未去勢オス犬よりも、去勢したイヌのほうが有意に高いリスクが認められた。しかし、他の回顧的、前向き研究でこの所見は報告されていない。去勢した犬は肥満になりやすく、感受性が増加し、委託が必要な真性糖尿病の重症例となりやすいが、この研究ではボディコンディションの評価をしていなかった。体重のデータしか取っていなかった。
30年以上で紹介された真性糖尿病犬の生存率は3倍に増加した。これは内科医にとって喜ぶべきニュースであるが、輸液療法、低容量インシュリン投与、American College of Veterinary Internal Medicineにすら存在する前(約1970年)のときから改善された多くのものを考慮すると驚くべきものではない。(Sato訳)
■正常猫におけるインシュリングラルギンの1日1回投与と1日2回投与の薬物動態的、薬物力学的比較
Comparison Of The Pharmacokinetics And Pharmacodynamics Of Once Versus Twice Daily Administration Of Insulin Glargine In Normal Cats.
RD Marshall, JS Rand.
University of Queensland, Australia.

猫の真性糖尿病の治療に関し、現在入手可能なインスリン製剤は臨床徴候の改善を導きますが、主として、不十分なインスリン作用時間、そして吸収が悪い猫もいる為に、満足いく糖血症管理が達成されません。最近、ヒトにおける1型および2型糖尿病の治療に関し、新しい合成類似物質のインシュリングラルギンが承認されました。
この報告は、正常猫におけるグラルギンの1日1回投与(SID)と1日2回投与(BID)の動態と力学を比較しました。各テスト2日間隔で、2重交差試験を6頭の健康な不妊済成猫(オス3頭、メス3頭)に行いました。グラルギンSID(0.5U/kg)またはBID(0.25U/kg、12時間毎)の皮下投与後、一連の血漿インスリン(インスリン)と血漿グルコース(グルコース)濃度を測定しました。
グラルギンSIDとBIDの投与後、グルコース濃度は有意に基準より低下しました(P<0.05)。SIDとBID投与による作用発現時間には、いかなる有意差もなく、グルコース最下点到達時間、あるいはグルコース最下点においても、有意差はありませんでした。グルコースが基準に戻るまでの時間は、SIDよりBIDの方が有意に延長しました。SIDとBID投与の24時間血糖値曲線下面積には、いかなる有意差もありませんでした。
インスリン濃度のピークと、インスリンがピークになるまでの時間は、グラルギンSIDとBIDの投与に統計的差はありませんでした。インシュリンが基準に戻るまでの時間は、SIDよりBIDの方が有意に延長しました。SIDとBIDの24時間インスリン曲線下面積にも、いかなる有意差もありませんでした。
要約すると、0.5U/kgでインシュリングラルギンを1日1回投与した時、有意な血糖低下作用が得られ、0.25U/kg BIDで投与した時、より長期の作用が達成されました。BIDの投与をおこなった猫の1/3は、平均血糖が24時間有意に抑制されたままで、翌日へグラルギンの持ち越し作用が示されました。猫における真性糖尿病の治療として、インシュリングラルギンの将来性を十分に評価し、これらの投与法を比較する、糖尿病猫を用いた研究が必要とされます。 (Dr.K訳)

■糖尿病猫における、グラルギンの使用
Using Glargine In Diabetic Cats
Rhett Marshall BVSc MACVSc
Jacquie Rand BVSc DVSc Dip ACVIM

グラルギン使用に関するこれらの指示は、少数の猫を基にしており、より多くの猫で使用されるまで、慎重に用いるべきであります。グラルギンは、たいへん長期作用型であり、もし過剰投与したら、持続性低血糖を引き起こす可能性があるからです。

基本情報

Basic information
・ インシュリングラルギンはその持続性作用がpHに従属するため、いかなるものにも希釈したり、混合してはいけません。
・ インシュリングラルギンは、活性を維持する為、冷蔵保存するべきです。
・ インシュリングラルギンは、一旦開封し室温で保存した場合、有効期限は4週間です。開封バイアルを冷蔵保存した場合、6ヵ月以上使用することが可能です。
・ インスリンペンを用いる場合、メーカーは冷蔵ではなく、室温保存されたペンとカートリッジを推奨しております。これは、調剤されるインスリン量に関する温度変化に関連した変化を減らすためです。
・ 血糖値曲線を作成する際、検体はおそらく大部分の猫で、12時間まで4時間ごとに採取するだけでよいでしょう(例、0時間(朝のインスリン投与前)、朝のインスリン投与後4時間、8時間、12時間)。
・ 用量変更は、インスリン投与前の血糖値、血糖値最下点、毎日の飲水量、そして尿糖を基に行うべきです。
・ より良い血糖コントロールは、1日1回より、1日2回投与で達成されます。
・ より正確な投与は、0.3mlの100単位インスリンシリンジを用いることで、達成されると考えられます。

グラルギン開始
・ もし、血糖値が360mg/dL(20mmol/L)以上ならば、0.5U/kg理想体重、1日2回(BID)でグラルギンを開始します。
・ もし、血糖値が360mg/dL(20mmol/L)未満なら、0.25U/kg理想体重BIDで開始します。
 o4時間ごとの採血で、12時間の血糖値曲線を作成します。
 o最初の週は、用量を増やしてはダメです。
 oもし、生化学的、あるいは臨床的低血糖が発現したら減量します。
 oインスリンに対する初期反応、あるいは最初の3日間で得た家での血糖値曲線をチェックするために、3日間、猫を入院させることを提案します。
 o猫の退院後、1、2、3、そして4週、さらに必要に応じ再チェックします。
 o多くの猫で、最初の3日間における血糖低下効果はごくわずかでありますが、インスリン開始後10日までには、殆どの猫で良好な血糖コントロールが得られます。
 oケトアシドーシスの猫において治験が進むまで、これらの猫には、最初に短期作用型インスリンで治療を行うべきであります。

インスリン量の調節
1.グラルギンの増量に関する指標
・インスリン投与前血糖値が、360mg/dL以上の時、0.5U/注射ずつ増量。
そして / もしくは
・血糖値最下点が、>180mg/dL(10mmol/L)の時、0.5U/注射ずつ増量。

2.同量を維持に関する指標
・インスリン投与前血糖値が、240mg/dL(15mmol/L以上)以上、360mg/dL未満(20mmol/L未満)の時。
そして / あるいは
・血糖最下点が、90-180mg/dL(5-10mmol/L)の時。

3.グラルギン減量に関する指標
・インスリン投与前血糖値が、180mg/dL以下(10mmol/L以下)の時、0.5U減量。
・血糖値最下点が、54mg/dL未満(<3mmol/L)の時、1U減量。
・低血糖の臨床徴候発現時、50%まで減量。

4.インスリン容量は、飲水、尿糖、臨床徴候、そして猫がインスリンで治療を受けた期間に従属して、維持、あるいは減量されるでしょう。
・インスリン投与前血糖値が、198-252mg/dL(11-14mmol/L)の時。
・最下点54-72mg/dL(3-4mmol/L)の時。

猫が寬解したかどうかの決定

インスリン療法の最低2週以降、インスリン投与前血糖値が、200mg/dL(12mmol/L)未満ならば、インスリンは使用せず、12時間血糖値曲線を作成します。次の投与時間に血糖値が>200mg/dL(12mmol/L)ならば、1U BIDでインスリンを投与することが可能です。もし、血糖値が200mg/dL以下ならば、インスリンを使用しないまま退院させ、1週で再来院してもらいます。
いくつかの猫は、インスリン投与前血糖値が、2週以内に12mmol/L以下となりますが、グルコース中毒からの回復により良い機会をベータ細胞に与えるため、インスリン療法は合計2週間継続するべきです。インスリンを中止するまで、0.5-1U BIDあるいは1日1回使用します。

尿糖

グラルギンの長期作用時間で、2から3週以上治療を受けた猫に関して、血糖値が>14mmol/L(240mg/dL)である時が最小期間であるべきで、それゆえ、良好にコントロールされている猫では、殆ど毎日尿糖0あるいは1+であるべきです。2+、あるいはそれ以上の尿糖は、増量の必要性を示していることが多いです。(Dr.K訳)
■糖尿病犬における日々の血糖値変動
Day-to-Day Variability of Blood Glucose Concentrations in Diabetic Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:29-30 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Freeman LM, Rand JS; J Am Vet Med Assoc 2003;222:317-321

イントロダクション:

背景:糖尿病犬に決まった食餌を決まった時間に、そして毎日同じ運動量、決まった時間に同じ量のインシュリン注射をしていれば、日々の血糖値曲線に有意な変動は起こらないと仮定している臨床医もいるが、この仮定はよく裏切られる。血糖値曲線の日々の変動を起こす他の因子は、インシュリン溶液の攪拌度合い、非常に少量のインシュリン吸引、皮下注射部位の血管分布と灌流である。

目的:この研究は、糖尿病犬における連続血糖値の日々の変動を調査するため実施した。

要約:

方法:3週間-3年前からインシュリン療法を開始している糖尿病犬を、外来患者研究に選択した。全頭ここに必要な投与量で1日2回皮下にブタインシュリンを投与した。各犬で、2日連続12時間連続血糖値曲線をペアにし、最低2週間あけて、別の時期に評価した。食餌とインシュリン投与は2日連続同じ時間に与えた。検査日は、2時間ごとに採血した。
1日目と2日目の曲線の結果を評価し比較した。1日2回のインシュリン注射直前の血糖値、最大と最低血糖値、インシュリン注射から最低血糖値にいたるまでの時間、朝のインシュリン注射直前血糖値と最小血糖値の差、血糖値曲線下面積、インシュリン注射間12時間の平均血糖値、標準偏差、J-指数を記録した。

結果:1日目と2日目の血糖値に有意差が認められた。27%の1日目と2日目の測定値で、インシュリン投与量の変更が妥当であると思われた。2日目のインシュリン投与量の変更必要性は、血糖値最下点が180mg/dl以下のとき最大となった(測定機会の40%)。

結論:糖尿病犬の血糖値曲線は、決まったインシュリン量や食餌でも連続した日でかなり変化する。

臨床関連:

中型-大型糖尿病犬を使用したこの研究で、連続した血糖値曲線の違いは有意だったが、おそらく小型犬では、連続した日の血糖値曲線間の差はより大きくなっているだろう。少量のインシュリンを必要とするより小さなイヌは、正確に溶液を吸引することや、同程度の散布を再現することがより困難である。また注射する少量のインシュリン量は、注射部位の血管分布や灌流により吸収に変動が起き易い。
この研究結果は、2時間ごとに採取したサンプルを基にした血糖値曲線は、次の日の血糖コントロールの正確な指標とはならず、この先長期間確実なものでもないという証拠を示す。
少ない頻度の血糖値測定は、最初の安定化に必要な初回投与量を決定するに十分である。その後の投与量調節は、追加の血糖値曲線よりも体重、態度、食欲、24時間飲水量、ケトン尿の有無、血清フルクトサミンまたはグリコヘモグロビン濃度の変化をもとにするのが一番良い。
またこの研究は、インシュリンの慎重な攪拌、量の測定の重要性も支持する。体重20lbs以下のイヌやネコで、インシュリンを正確に吸引し、吸収を一定の割合にする信頼度を増すため、インシュリンの希釈を考慮すべきである。インシュリンの希釈は、少量を無菌状況下でメーカーが提供する無菌混合バイアル、もとのインシュリンと同一の希釈剤を用いて準備すべきである。それでも注射器への吸引前に慎重な攪拌が必要である。
■辺縁耳静脈切開法により採取した血液の血糖値
Glucose Concentrations in Blood Obtained with a Marginal Ear Vein Nick Technique
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:28-29 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Thompson MD, Taylor SM, Adams VJ, et al. Comparison of glucose concentrations in blood samples obtained with a marginal ear vein nick technique versus from a peripheral vein in healthy cats and cats with diabetes mellitus. J Am Vet Med Assoc 2002;221:389-392

イントロダクション

背景:血糖値曲線の作成のため連続血糖値測定は、真性糖尿病の治療に対する反応を見るため重要である。血糖値曲線の使用に関する問題として、静脈穿刺と入院、入院中食欲不振、日によって変わる血糖値の本質的な変動が上げられる。血液採取のストレスを最小にする方法の使用で、特に病院外で使用できるものは、血糖値曲線の精度を改善すると思われる。

目的:この研究の目的は、辺縁耳静脈切開により採取した血液の血糖値と、末梢静脈カテーテル、直接静脈穿刺により採取した血液のものと比較することだった。

サマリー

方法:10頭の健康なネコと11頭の真性糖尿病のネコで、10時間まで毎時間血糖値を測定する連続血糖値曲線を作成した。1日目、頚静脈に留置したカテーテルを使用して採血し、2日目には内側伏在静脈の直接静脈穿刺により採血した。また2つの採血方法を比較するため、その日の他の方法で採血後すぐ辺縁耳静脈切開により採血した。全てのサンプルは、同じポータブル血糖値モニターで測定した。辺縁耳静脈サンプルは、耳を湿ったガーゼで暖め、耳道ランセット装置により静脈を突き刺し採取した。

結果:合計820の血液サンプルを分析した。健康なネコ、糖尿病のネコで、静脈カテーテルから採取したサンプルの平均血糖値は、辺縁耳静脈法のものと違いはなかった。
健康なネコの直接静脈穿刺で採取したサンプルの平均血糖値は、辺縁耳静脈切開により採取したものと変わらなかった。糖尿病ネコで、静脈穿刺は辺縁耳静脈法と比較して、有意に高い平均血糖値を示した。しかし、その違いは臨床的意義がなく、平均差は-5.0mg/dlだった。辺縁耳静脈法を行うにあたり、制約は最小限で、その方法によく許容した。

結論:辺縁耳静脈採血法は正確で、血糖値測定のサンプル採取の実用的方法である。

臨床への影響

辺縁耳静脈法の使用は、毛細管現象による検査ストリップを応用した少量の血液を必要とするグルコメーターが必要となる。これは、ストリップに直接血液を落とし接触させることで可能となる。ネコでもよく許容し、ほとんどの動物で制約がほとんどないか、全くないため家庭で血糖値をモニタリングするオーナーには実用的な方法である。糖尿病のネコのオーナーが使用するならば、技術やクオリティーをコントロールする適切な訓練を受けるべきである。そのほか、検査結果の解釈や、その方法のトラブルシューティングにかなりの時間が費やされると思われる。(Sato訳)
■糖尿病性白内障の異常生理学
Diabetic Cataract Pathophysiology
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:28-29 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Richter M, Guscetti F, Spiess B. Am J Vet Res 2002;63:1591-1597

背景:真性糖尿病は、7歳以上のネコに見られる一般的な内分泌障害である。糖尿病のほとんどのイヌは、最終的に糖尿病性白内障を起こすが、ネコではそうではない。糖尿病性白内障の病因は、水晶体へのソルビトールの蓄積、水晶体の組織を変化させる水の流入に関連し、白内障を起こすと思われている。
糖の水晶体内への正常な導入は、その主なエネルギー源である。正常血糖値であるとき、水晶体内側の約5%の糖分はソルビトール経路で代謝される。高血糖状態で、ヘキソキナーゼのキャパシティは、限界となる可能性があり、ソルビトール経路やアルドースラクターゼによる作用に過剰に向かう転換を引き起こす。細胞内ソルビトールと水晶体内への浸透圧性流入の増加が結果として起こる。

目的:この研究の目的は、高濃度の糖溶液の暴露により誘発される犬猫の水晶体変化を評価することだった。

サマリー

方法:35頭のイヌと25頭のネコの水晶体を高濃度糖液博徒により起こる変化を評価するために使用した。25頭のイヌと17頭のネコのペアの水晶体を高濃度糖溶液(30mmol/l)、またはコントロール溶液(6mmol/l)で14日間インキュベートした。インキュベートした水晶体の糖濃度を測定した。アルドース還元酵素活性を10頭のイヌと9頭のネコのインキュベートした水晶体と凍結した水晶体で判定した。各グループの2つの水晶体を組織学的に検査した。
結果:高濃度糖溶液でインキュベートしたイヌの水晶体は、赤道面に空胞化を起こした。空胞形成の強さは、イヌの年齢に相当しなかった。2週間高濃度糖液に暴露させた若いネコの水晶体は、後面の皮質不透明化を起こした。4歳以上のネコの水晶体は、不透明化を起こさなかった。高濃度糖溶液でインキュベートした全ての水晶体は、同様の水晶体糖濃度を示したが、アルドース還元酵素活性は、イヌや4歳以上のネコに比較して老ネコで有意に低かった。

結論:4歳以降に真性糖尿病を起こしたネコは、アルドース還元酵素活性の年齢関連性の低下により白内障を起こしにくい。

臨床への影響
糖尿病のヒトで盲目の主な原因は、糖尿病性網膜症である。イヌでそれは糖尿病性白内障である。糖尿病のネコは、重要な視覚障害のリスクがほとんど無い。ネコは典型的に7歳以降に糖尿病を発症し、そのときアルドース還元酵素は減少しており、白内障を起こす水晶体への過剰のソルビトールを生じさせる能力も低下している。発現年齢の進行、または糖尿病管理の悪さ、またはその両方により糖尿病のネコは、糖尿病性網膜症を起こすに足りるほど長期に糖尿病であることは無い。通常あまり見られない4歳前に糖尿病を発症したネコは、糖尿病性白内障発症のリスクを持つかもしれない。(Sato訳)
■犬猫の培養水晶体で、アルドース還元酵素活性とグルコース関連混濁
Aldose reductase activity and glucose-related opacities in incubated lenses from dogs and cats.
Am J Vet Res 63[11]:1591-7 2002 Nov
Richter M, Guscetti F, Spiess B

目的:高グルコース濃度の培地で培養した犬と猫の水晶体における反応を判定すること

サンプル集団:35頭の犬と26頭の猫の水晶体

方法:高グルコース(30mmol/L)またはコントロール(6mmol/L)の培地で14日間培養した後、25頭の犬と17頭の猫の対となる水晶体のグルコース濃度を測定した。アルドース還元酵素活性は、10頭の犬と9頭の猫の培養レンズと新鮮冷凍レンズで分光光度計により測定した。各群の2つのレンズを組織学的に検査した。

結果:高グルコース培地の犬と猫の水晶体は、様々な位置と広さのグルコース特異的混濁を起こした。犬の水晶体は水平方向に空胞変性を起こしたが、病変のひどさは犬の年齢に関係しなかった。若い猫(≦4歳)の水晶体は広範囲の後部皮質混濁を起こし、老齢猫(≧4歳)の水晶体は起こさなかった。高グルコース培地で培養した全ての水晶体の血糖濃度は似ていた。しかしアルドース還元酵素活性は、若い猫や犬の水晶体と比較して、老齢猫の水晶体の方が有意に低かった

結論と臨床関連:高いアルドース還元酵素活性とグルコース関連混濁は、犬猫の糖尿病性白内障の原因でこの酵素に対する中心的役割を示唆する。>7歳の猫で通常真性糖尿病の発生が起こるため、老猫で見られる水晶体のアルドース還元酵素活性の低下が、高血糖にもかかわらず、なぜこの種に糖尿病性白内障がほとんどないかを説明するものかもしれない。(Sato訳)
■真性糖尿病に対する、インスリンと他の治療法
Insulin and Other Therapies for Diabetes Mellitus
Vet Med 98[4]:334- Apr'03 Review Article 16 Refs
Rhonda L. Schulman, DVM, DACVIM
Department of Veterinary Clinical Medicine, CVM, University of Illinois, Urbana, IL

真性糖尿病は、獣医患者における、一般的で、治療可能な状態であります。糖尿病のペットは、良好な生活の質を楽しむことが可能ですが、オーナーは、微調整治療を必要とする、経済的および時間的拘束を理解しなければなりません。大部分の獣医患者に対する治療の基礎は、インスリンの外因的な投与を続けることです。自宅と病院での適切なモニタリングで、それぞれの患者に関する、インスリンの適当な型と投与量を確立することが可能です。食事と経口治療薬もまた、糖尿病の治療役割を演じます。これらの投与量とモニタリングガイドラインを調査し、その他の治療様式を知ることは有益と考えます。(Dr.K訳)
■真性糖尿病の犬で潜在尿路感染の検出
Detection of Occult Urinary Tract Infections in Dogs With Diabetes Mellitus
J Am Anim Hosp Assoc 38[6]:541-544 Nov-Dec'02 Retrospective Study 11 Refs
Nancy C. McGuire, DVM, DACVIM; Rhonda Schulman, DVM, DACVIM; Marcella D. Ridgway, VMD, MS, DACVIM; German Bollero, PhD

膿尿が見られない尿路感染が潜在性と考えられる。真性糖尿病(DM)などの免疫抑制がかかった動物で、感染に対する炎症反応の欠如が尿路感染の発生率を増加させ、多くが潜在性となるかもしれない。

この研究の目的は、真性糖尿病の犬で潜在性尿路感染の存在を評価し、白血球(WBC)数以外の尿パラメーターが、尿路感染の存在に関連するかどうかを判定することだった。この研究は、膿尿を伴わない細菌培養陰性の糖尿病犬(非感染、1群)と膿尿を伴わない細菌培養陽性の糖尿病犬(感染、2群)の尿検査結果の比較により実施した。
この研究には51頭の真性糖尿病犬を使用した。42頭(82%)はメス犬だった。39頭(76%)が1群、12頭(24%)が2群に分類された。培養陽性群(2群)の大多数はメス犬が占めた(11/12;92%)。細菌尿が1群と2群の間の有意差となる唯一の尿検査変動値だったが、これは一致した所見ではなかった。尿比重、化学的性質、赤血球数、白血球数、尿沈査の上皮細胞数に統計学的差は無かった。感染群(2群)で、よく見られた分離細菌はEscherichia coliで、2群の12頭中5頭で確認された。12頭中2頭は混合感染だった。

著者は、細菌性尿路感染を伴う、または伴わない糖尿病犬で、一貫した信頼性の高い区別のできる尿検査パラメータは無いと結論付ける。ゆえに、真性糖尿病犬の尿は、細菌性尿路感染が存在するかどうか正確に確認するため培養するべきである。(Sato訳)
■糖尿病のイヌネコで、血漿ヘマトクリットサンプルによる尿試験紙比色方法を利用したケトンの検出を評価する
Evaluating the Use of Plasma Hematocrit Samples to Detect Ketones Utilizing Urine Dipstick Colorimetric Methodology in Diabetic Dogs and Cats
J Vet Emerg Crit Care 13[1]:1-6 Mar'03 Original Study 20 Refs
* Mark A. Brady, DVM, Jeffrey S. Dennis, DVM, DACVIM, Colette Wagner-Mann, DVM, PhD

目的:糖尿病のイヌネコのヘパリン処理したヘマトクリット管の血漿で、尿試験紙が正確に尿ケトン結果を反映(陽性、または陰性)するかどうかを判定すること

構成:前向き研究、糖尿病、または高血糖、尿糖の履歴がある、そして未確認真性糖尿病の徴候がある37頭のイヌと43頭のネコを研究した。

場所:獣医紹介病院

動物:飼育イヌネコ

介入:なし

測定と主要結果:ヘパリン処理血漿と尿ケトン結果を、尿反応試験紙を用いて記録した。血漿試験紙結果は、基準とした尿試験紙結果と比較した。結果を、メーカーにより提供されたカラーチャートをもとに記録した。2人の検査官が、比色検査の結果を責任を持って検証した。イヌ集団で検査の有効性は97%(感受性=96%、特異性=100%)、ネコ集団で93%(感受性=100%、特異性=83%)、全体で95%(感受性=98%、特異性=91%)だった。80頭中4頭は、結果不一致だった(1頭のイヌと3頭のネコ)。

結論:ヘパリン処理ヘマトクリット管の血漿は、尿試験紙比色法で糖尿病のイヌネコのケトン尿、つまりケトーシスの有無を検出するのに臨床的に有効である。(Sato訳)
■獣医診療における糖尿病治療での栄養と植物
Altern Med Rev 2001 Sep;6 Suppl:S17-23 Related Articles, Links
Nutrients and botanicals in the treatment of diabetes in veterinary practice.
Wynn S.

獣医診療で処置をおこなう真性糖尿病には気を遣います。しかし植物および栄養サプリメントは、状態が安定している難治性の患者に対しする補助をするかもしれません。犬は典型的にⅠ型糖尿病を罹患しやすのに対し、猫の70パーセントは経過とともにⅡ型糖尿病に発展する。 しかしながら、インシュリンとの補助治療は、ブドウ糖吸収からインシュリン受容体器官までの炭水化物新陳代謝を担うにも関わらず、治療の成功は、患者に存在する糖尿病のタイプに依存するのかもしれない。(Dr.Shinju訳)
■犬における、真性糖尿病の時間動向と危険因子:獣医療データベース記録の解析(1970-1999)
Time trends and risk factors for diabetes mellitus in dogs: analysis of veterinary medical data base records (1970-1999).
Vet J 165[3]:240-7 2003 May
Guptill L, Glickman L, Glickman N

研究の目的は、真性糖尿病(DM)の罹患率における最近の動向と、宿主の危険因子を明らかにすることです。1970年から1999年の間に、真性糖尿病(獣医療データベース【VMDB】コード870178500)と診断された、6860頭の犬のVMDB電子カルテを、時間動向を明らかにするため評価しました。真性糖尿病犬6707頭の記録と、同じ年に同教育病院で、真性糖尿病以外の診断を受けた6707頭の犬をコントロールとして選択し、危険因子を評価しました。獣医教育病院に紹介された犬の真性糖尿病罹患率は、1970年における、年間10000件あたり19症例から、1999年における、10000件あたり64症例へと増加しましたが、致死率は、37%から5%までに減少しました。真性糖尿病罹患率は、10才から15才の犬で最も高く発生し、一貫して、若い犬より高齢の犬で増大しました。体重22.7kg以下の犬は、重い犬と比較して有意に危険性が増しました(p<0.001)。メスはオスよりも真性糖尿病の危険性が増大しました(P<0.001)。(Dr.K訳)
■栄養学関連各論:糖尿病2
Nutritional therapy for diabetes mellitus.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 1995 May;25(3):585-97
Ihle SL.

真性糖尿病のための栄養学的療法。

食事療法は、直接的に血中グルコースのコントロールを、そして間接的には肥満と脂質異常のコントロールを通し、犬と猫での糖尿病管理に影響を与える。食事療法を計画する時には、カロリー摂取量、給餌スケジュール、食物形式、食餌の多栄養素成分、そして、合併しうるあらゆる問題の存在が、すべて考慮されなくてはならない。一般的に、健康な糖尿病の犬や猫は、最適な体重の達成と維持のために、十分な食事量で、繊維質を増加し、中程度の炭水化物を含んだ食餌を食べさせるべきであり、可能なら、毎日の食事配分は、インシュリン投与の生理学的効果が存在する昼夜を通し少量頻回に分けられるべきである。 
それがいったん確立されたら、食事療法は毎日維持し続けるべきである。これらの指針の後には、食後の高血糖を最小限にし、外因性のインシュリン必要量を減らすように導くことができるかも知れない。しかしながら、もし、併発疾患が、糖尿病動物の為の食事と対立するような食事の必要性があるなら、通常は、他の疾患の栄養管理を優先すべきである。(Dr.Shinju訳)
■健康な猫と真性糖尿病の猫で、末梢静脈採と、耳介静脈刻み採血法で得た血液サンプルのグルコース濃度の比較
Comparison of Glucose Concentrations in Blood Samples Obtained with a Marginal Ear Vein Nick Technique Versus from a Peripheral Vein in Healthy Cats and Cats with Diabetes Mellitus
J Am Vet Med Assoc 221[3]:389-392 Aug 1'02 Prospective Study 13 Refs
Melanie D. Thompson, DVM; Susan M. Taylor, DVM, DACVIM ; Vicki J. Adams, DVM, MS; Cheryl L. Waldner, DVM, PhD; Edward C. Feldman, DVM, DACVIM

目的:健康な猫と真性糖尿病の猫で、末梢静脈のカテーテル採血と、直接採血からの血液サンプル、耳介静脈刻み採血法で得た血液サンプルに関して、ポータブル血糖測定器で測定した血糖値(BG)を比較することです。
計画:前向き研究

動物:10頭の健康な猫と、11頭の真性糖尿病の猫

手順:第1日目、1時間ごとに10時間かけて耳介静脈刻み採血法と、末梢静脈カテーテルからの採血で、血液サンプルを採取しました。第2日目、1時間ごとに10時間かけ、耳介静脈刻み採血法と、内側伏在静脈からの直接採血で、血液サンプルを採取しました。

結果:全ての猫に関して、耳介静脈刻み採血法で得た血液サンプルの平均血糖値は、末梢静脈カテーテルからの血液サンプル平均血糖値と、有意な差はありませんでした。健康な猫に関して、耳介静脈刻み採血法で得た血液サンプルの平均血糖値は、直接静脈穿刺により得た血液サンプルの平均値と有意な差はありませんでした。真性糖尿病の猫に関して、耳介静脈刻み採血法で得た血液サンプルの平均血糖値は、直接静脈穿刺によって得た血液サンプル平均血糖値と、有意な差がありましたが、濃度検査の範囲においては、この違いは臨床的に重要ではありませんでした。

結論と臨床関連:結果は、濃度検査の範囲に関して、耳介静脈刻み採血法は、猫における血糖値濃度の連続測定のための、選択可能な方法であるということを示唆しております。(Dr.K訳)
■糖尿病診断時のイヌネコにおける細菌性膀胱炎の発生率。1990-1996年の回顧的研究
Kirsch M.; Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere 1998 Feb;26(1):32-6; [Incidence of bacterial cystitis in diabetic dogs and cats at the time of diagnosis. Retrospective study for the period 1990-1996]

細菌性膀胱炎は、真性糖尿病に罹患している患者においてしばしばみられる問題である。この状態により、インシュリン統御は弱められる。糖尿病性糸球体腎障害により、糖尿病患者の多くの腎臓は既にダメージを受けているので、腎臓へ細菌が上向する可能性に関しては、尿路感染の診断と治療が非常に重要である。 糖尿病と診断した時点で、我々の診療所における糖尿病のイヌ(n=158、12.7%で膀胱炎と診断)ネコ(n=71、9.9%で膀胱炎と診断)の膀胱炎の発生率は、他の患者と比較して既にかなり高かった。この回顧的研究において、雌は雄に比較して遥かに多く罹患していた。イヌネコにおいて既に4週間以上にわたって多飲多渇と多尿を呈していたイヌネコで、膀胱炎の診断は頻繁になされた。イヌにおける真性糖尿病の原因による分類は、次の結果を導いた:特にクッシング病に罹患していた患者、プロゲステロン-STH(ソマトトロピン)の関係する真性糖尿病の雌イヌ(特に子宮内膜炎または子宮蓄膿症がみられた時)では、尿路感染症に発展している危険が最も高かった。尿サンプルから最も頻繁に分離された細菌はE. coliであった。(Dr.Yoshi訳)

■真性糖尿病の犬における皮膚疾患:45症例(1986-2000)
Heather Peikes, VMD et al; J Am Vet Med Assoc 219[2]:203-208 Jul 15'01 Retrospective Study 45 Refs; Dermatologic Disorders in Dogs with Diabetes Mellitus: 45 Cases (1986-2000)

目的:糖尿病の犬における皮膚病変と原因となる感染の特徴づけを行い、合併する内分泌障害、アレルギー性皮膚疾患、長期コルチコステロイド投与など、皮膚疾患の他の潜在する原因を評価すること。
計画:遡及研究
動物:皮膚科専門医による検査を受けた真性糖尿病(DM)の犬45頭
手順:皮膚病変の特徴;真性糖尿病を発症する以前のアレルギーの症状;コルチコステロイド投与の前歴;などに関する医療記録、皮膚科検査結果;耳と皮膚の細胞学的検査、寄生虫に対する皮膚掻爬試験、耳と皮膚の検体における細菌と真菌の培養、病理学的検査、内分泌ホルモン検査の結果を再検討しました。
結果:細菌の皮膚感染は、普通に見られる皮膚障害でした(38頭/84%)。次いで耳炎(26頭/58%)とマラセチア誘発性皮膚炎(19頭/42%)でした。22頭(49%)の犬は真性糖尿病と診断される前からアレルギー性皮膚炎に一致した掻痒性皮膚炎がありました。21頭(47%)においてはコルチコステロイドの投与歴がありました。副腎皮質機能亢進症の併発が13頭(29%)の犬で診断され、甲状腺機能低下症は5頭(11%)の犬で診断されました。 副腎皮質細胞増殖が1頭だけ特別に診断されました。唯一、10頭の犬では皮膚炎の原因となりうる他の併発内分泌障害、あるいはアレルギー性疾患はありませんでした。
結論と臨床関連:真性糖尿病の犬において、細菌および酵母菌誘発性の皮膚炎と耳炎の発症があります。皮膚に問題のある多くの糖尿病犬は、以前よりアレルギー症状、コルチコステロイドの投与歴あるいは他に合併している内分泌障害が存在し、DMのみ発症している場合に比べて、皮膚の問題を引き起こす原因となりやすいのかもしれません。(Dr.Shingo訳)

■猫真性糖尿病の管理
Rand JS et al; Vet Clin North Am Small Anim Pract 31[5]:881-913 2001 Sep 126 Refs ;Management of feline diabetes mellitus.

真性糖尿病の猫の1/4は、経口血糖降下薬でうまくコントロールできますが、75%はインシュリン療法を必要とします。手に入るほとんどのインシュリンで、良い臨床コントロールを得られますが、中程度の血糖コントロールでしかありません。軽度から中程度の高血糖は、インシュリンの投与を受ける事で、よく許容しますが、低血糖は命を脅かす可能性があるので、保守的なインシュリン投与量が推奨されます。臨床症状と飲水量は、投与量の調節が必要かどうかを示しますが、厳密な血糖値測定は、正しく調節するために、常に必要とされます。最初に0.3-0.5IU/kgの1日2回投与(全単位近くは切捨て)で、始める事は通常安全で、投与量調節は、臨床的低血糖が起こらないならば、2-4週ごとに、1頭につき1IUを超えるべきではありません。臨床的低血糖の猫は、もし軽快しているように思えるならば、再評価が必要です。もしそうでなければ、投与量の50-75%減をお勧めします。おおよそ30%の猫は、適切な治療プロトコールを始めた後、1-4ヶ月で糖尿病の軽快をもたらします。(Dr.Sato訳)

■真性糖尿病の犬の併発疾患:221症例(1993-1998)
C.B. Chastain, DVM, MS et al; Sm Anim Clin Endocrinol 11[2]:14 May-Aug'01 Retrospective Study 0 Refs; Concurrent Disorders In Dogs with Diabetes Mellitus: 221 Cases (1993-1998)

背景:グルカゴン、カテコールアミン、グルココルチコイドのような対制御性ホルモンの濃度増加による併発症を伴う犬では、真性糖尿病(DM)の管理は、複雑なものとなるでしょう。

要約:真性糖尿病の犬221頭で、真性糖尿病と診断された時の平均年齢は、8.9±2.9歳です。避妊済みのメスは89頭、去勢済みオスは78頭、オスは38頭、メスは16頭でした。58頭は雑種でした。多く見られた純血種は、ミニチュアシュナウザー(27)、ラブラドールレトリバー(18)、ミニチュアプードル(16)でした。それらの犬の平均臨床症状持続期間は、1.3±1.9ヶ月でした。
臨床症状は、多飲多尿(82%)、嗜眠57%)、食欲不振(45%)、嘔吐(40%)、体重減少(39%)、多食(22%)、下痢(13%)でした。多くの犬(48%)は過体重と思われ、33%は正常なボディコンディション、19%は痩せていました。多くの犬(50%)はよく水和しており、32%は中程度の水和、18%は重度の脱水を起こしていました。61%で肝腫大が見られ、26%は白内障、26%は心雑音がありました。
ほとんどの犬は、最初の検査時に高血糖がありました。正常カルシウムイオン濃度だった犬は50%以下でした。異常カルシウムイオン濃度のほとんどの犬は、低カルシウム血症でした。ほとんどの犬のALT、AST、ALP活性は高かったです。半分以上の犬でアミラーゼとリパーゼが高かったです。46%の犬で静脈pHが低かったです。多くの犬(81.3%)で高張尿、83%に糖尿、52%に蛋白尿、44%にヘモグロビン尿、36%にケトン尿が見られました。糖尿病性ケトアシドーシスは、ケトン尿と静脈のpHが7.35以下を示す15%の犬で認められました。培養のため159頭から採取した尿サンプルのうち、34頭(21%)の尿で細菌が増殖し、よく見られたのは大腸菌でした。
 副腎皮質機能亢進症(HAC)は、履歴、臨床症状、副腎機能テスト(50頭)の結果や、剖検時の組織学的評価(1頭)を基に23%で診断しました。低用量デキサメサゾン試験(LDDS)結果は、50頭中41頭の、副腎皮質機能亢進症の診断と一致しました。低用量デキサメサゾン試験を行った犬は、多様なステージの糖尿病の持続期間や程度の犬でした。ACTH刺激試験は副腎皮質機能亢進症の診断を受けた、たった5頭でしか一致せず、両試験結果で一致したのは、診断を受けた犬のうち4頭でした。47頭の副腎機能検査結果は正常でした。
 甲状腺機能低下症は、臨床症状、甲状腺刺激ホルモン(TSH)刺激試験(5頭)結果、低総T4と高犬甲状腺刺激ホルモン血清濃度(2頭)、または組織学的評価(1頭)を基に、8頭の犬で診断しました。
 急性膵炎を、臨床症状と適切な超音波検査、または組織学的検査結果を基に、28頭(13%)で診断しました。
 腹部X線検査を46頭で実施し、一般的に見られた異常は、肝肥大(27頭)でした。胸部X線検査を100頭で実施し、よく見られた異常は、肺胞パターン(15頭)と心肥大(9頭)でした。腹部超音波検査を127頭で行い、異常は、高エコーの肝臓(104頭)、高エコーの腎皮質(48頭)、急性膵炎の診断と一致する、高エコーの腸間膜を伴う低エコーの膵臓(27頭)、腹水(23頭)、十二指腸壁の肥厚(11頭)を認めました。剖検を20頭で行いました。よく見られたのは、肝臓の脂肪変化(14頭)でした。
著者は、真性糖尿病の犬には、多くの併発疾患があるかもしれないと締めくくります。

臨床への影響:この多数の糖尿病犬の回顧的調査を、アメリカ東海岸の広範囲な大都市で、専門的な診療所を訪れた犬で行いました。犬の糖尿病の多くの研究は、メスはオスに比べて4倍のリスクがあると立証しています。この研究ではオスが52%含まれ、それは、この専門診療所を訪れる糖尿病の犬が、一般診療所で報告された糖尿病の犬と、異なるかもしれないと示唆しています。罹患犬の平均年齢は高く、一般に併発疾患がありますが、一様ではありません。副腎皮質機能亢進症の併発率(23%)は、以前報告されていたものより、断然高くなっています。しかし、それらの糖尿病の80%で副腎皮質機能亢進症の診断の基となるのは、低用量デキサメサゾン試験と他の疾患と重複するような臨床症状でした。低用量デキサメサゾン抑制は、うまくコントロールできていない糖尿病のストレスにより鈍感になり、適中率が低くなります。さらに糖尿病と副腎皮質機能亢進症の臨床症状は重複します。1/4の糖尿病の犬が、実際に副腎皮質機能亢進症であると実証するには、更なる他の調査が必要となります。真性糖尿病の犬の約半分は、低血清カルシウムイオン濃度でした。約半分の犬の血液ガス分析で、静脈pHは低かったです。総血清カルシウムは、アシドーシスと結合または複合血清カルシウムの減少により、イオン化が進むため、糖尿病の犬で、正常でなければ、低いだろうと思われます。この報告で、糖尿病犬の低イオン化カルシウムの原因は説明されていません。この研究は、インシュリン療法で予想される改善が見られない糖尿病の犬は、広く様々な併発症の評価をすべきだと強く明示しています。(Dr.Sato訳)