■蛋白喪失性腸症の犬の院内死亡率と関連するリスク因子
In-hospital mortality in dogs with protein-losing enteropathy and associated risk factors
J Vet Intern Med. 2024 May 31.
doi: 10.1111/jvim.17123. Online ahead of print.
Connor Hawes , Aarti Kathrani
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背景:蛋白喪失性腸症(PLE)の犬の負の結果に関係するリスク因子は良く発表されている。しかし、退院前の死亡率や関連するリスク因子はあまり述べられていない。
仮説/目的:退院まで生存しなかったPLEの犬の比率を報告することと、関連するリスク因子を確認する
動物:107頭の犬が二次診療施設を受診し、炎症性腸炎、腸管リンパ管拡張症あるいは両方でPLEと診断された。
方法:病院記録を評価する回顧的横断研究。院内死亡率と原因に対するデータを評価し、呈している症状、行われた治療、好中球数、リンパ球数、血清アルブミン、グロブリン、C-反応性蛋白(CRP)濃度、病理組織学的所見を生存した犬と死亡した犬で比較した。
結果:院内死亡率は21.5%で、最も一般的な原因は、金銭的制限、改善せず、誤嚥性肺炎が含まれた。入院中の死亡率の関係する因子は、より長期の入院期間(P=.04)、より長期の臨床症状(P=.02)、入院治療から1-3日目の血清CRP濃度の上昇(P=.02)だった。より高い死亡率はパグで確認され(オッズ比、4.93;95%CI:1.41-17.2;P=.01)、それらの犬の5/6頭は推定的誤嚥性肺炎の結果だった。
結論と臨床的重要性:犬の蛋白喪失性腸症は、入院中の相当な死亡率を持つ。入院中の治療後のCRP濃度の改善に対するモニタリングは、退院予測に役立つかもしれない。パグは誤嚥性肺炎のため、入院死亡率が増加している;この犬種において、この合併症の予防処置、認識、即座の治療が結果を改善するかもしれない。(Sato訳)
■単純な急性下痢の犬の臨床および腸内微生物叢回復に対する食餌中セルロースの効果:無作為化前向き臨床試験
Effects of dietary cellulose on clinical and gut microbiota recovery in dogs with uncomplicated acute diarrhea: a randomized prospective clinical trial
J Am Vet Med Assoc. 2024 Nov 13:1-9.
doi: 10.2460/javma.24.07.0476. Online ahead of print.
Mara Holz , Julia Fritz , Jan S Suchodolski , Melanie Werner , Stefan Unterer
目的:複雑ではない急性下痢(AD)の犬の臨床経過、糞の硬さ、腸内微生物叢構成に対するセルロースによる食物繊維補給の影響を調査する
方法:2022年9月から2023年11月までに、複雑ではないADで来院した19頭の犬を、この前向き無作為化二重盲検臨床試験に含めた。下痢の解消までの期間を、飼い主調査と糞のスコアリングチャートで評価した。飼い犬は無作為にセルロース群(CG)あるいはコントロール群に振り分けた。腸内微生物叢は、定量PCRで分析した。
結果:1日目のCG群で、わずかに有意でより早い糞の硬さの改善が観察された(P=.09)。全ての犬は臨床的に改善し、CGの回復期間の中央値は3.0日で、コントロール群は3.2日だった(両群ともに範囲、1-6日)。研究中に犬の急性下痢重症度指数あるいは腸肝微生物叢の構成に関する有意差はなかった。
結論:全ての複雑ではないADの犬は、最初の数日以内に急速な臨床的改善と腸内コア微生物叢の回復を示した。セルロースは、一部の犬の糞の硬さを改善し、腸内細菌叢の異常は軽度で、自己限定的だった。
臨床的関連:食餌中のセルロース添加は、糞の硬さの改善を加速させる可能性がある。クロストリジウム・パーフリンゲンスの量の増加のような病原性共生微生物の軽度変化は、自己限定的である;ゆえに、抗生物質治療は正当化されない。(Sato訳)
■キネティックサンドを摂取したことによる小腸閉塞を起こした犬の一例
Small intestinal obstruction secondary to kinetic sand ingestion in a dog
Can Vet J. 2024 Feb;65(2):173-176.
Andrew J Trempe , Jeanine M Persano
目的:1頭の犬のキネティックサンドを摂取し、二次的に小腸閉塞を起こした症例を述べる
動物:2日前から食欲不振の11歳去勢済みオスのシーズ
方法:腹部のエックス線写真で、砂の摂取に一致したエックス線不透過性の物質で拡張した小腸ループを認めた。その犬の唯一の砂の暴露はキネティックサンドだけだった。薬剤管理から8時間後、エックス線は小腸閉塞を示した。
結果:その犬は試験的開腹を行い、遠位空腸と回腸に触って分かる柔らかい異物を認め、結腸に絞り出すことができなかった。1か所の腸切開で砂は取り除いた。犬は手術から4日後に退院した。
結論と臨床関連:キネティックサンドの疎水特性は、通常の砂よりも小腸閉塞を起こす可能性が高くなり、手術を必要とするかもしれない。人気が増し、家庭で使用するキネティックサンドの入手が増えることで、キネティックサンドの詰め込みによる小腸閉塞の疑いの高い指針を持つべきである。(Sato訳)
■小腸手術後の術後裂開を判定する早期および系統的超音波検査の評価(犬と猫の114症例)
Evaluation of early and systematic ultrasound examination to determine postoperative dehiscence after small intestinal surgery (114 cases in dogs and cats)
J Am Vet Med Assoc. 2024 Oct 4:1-10.
doi: 10.2460/javma.23.10.0599. Online ahead of print.
Paul Rafael, Carole Soulé, Paul Sériot, Sophie Gibert, Laurent Blond, Clément Baudin-Tréhiou, Antoine Dunié-Mérigot, Emilien Griffeuille
目的:術後腸の裂開に対する早期超音波診断の可能性と信頼度を評価することと、裂開確認に対するより信頼できる超音波基準を見つけること。また、生存および入院期間に対する漏れの早期超音波的検出の影響を判定すること。最後に、裂開のみのリスクがある集団の系統立てたスクリーニングあるいはチェックに対する必要性を評価すること。
動物:31頭の猫と83頭の犬
方法:回顧的記録ベースの研究を、小腸手術を行った83頭の犬と31頭の猫(合計114頭)で行った。疫学的なデータ、臨床症状、術式、術前および術後48から96時間での超音波所見、入院期間、合併症、一般的な結果を記録した。一変量及び多変量解析を用い、裂開に関係する超音波所見を確認した。
結果:超音波検査により裂開は、猫31頭中0頭、犬83頭中7頭(腸切開の49頭中2頭、腸切除の34頭中5頭)で疑われた。全ての疑われた裂開は、飼い主により断られた1頭の腸切除修復を除き、修復手術中に確認された。この症例だけでなく、裂開の超音波エビデンスのない症例も、腸の漏れの臨床症状を発症したものはなかった。腸壁の不連続性、ガスバブルの存在、腸の手術部位付近の液体の直接視認は、早期裂開と統計学的に関係した。2度目の手術後の生存率は83%だった。裂開に対する2度目の手術後の入院期間中央値は2日(最短2日;最長4日)だった。
臨床的関連:小腸手術後の48時間から96時間の間の術後超音波検査は、小腸裂開の早期、感受性の高い検出を可能にする。修復手術後の生存率は、敗血症性腹膜炎に関するそれよりも有意に高かった。(Sato訳)
■慢性炎症性腸症の60頭の犬の治療に対する初期反応の長期評価
Long-term evaluation of the initial response to therapy in 60 dogs with chronic inflammatory enteropathy
J Vet Intern Med. 2024 Aug 25.
doi: 10.1111/jvim.17161. Online ahead of print.
Susan Hodel , Daniel Brugger , Peter Hendrik Kook
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背景:慢性炎症性腸症(CIE)の犬は、治療に対する反応を基に、一般に食物反応性腸症(FRE)、抗菌剤反応性腸症(ARE)、免疫調節剤反応性腸症(IRE)、非反応性腸症(NRE)に分類される。初期分類(特にIREとNRE)の再評価は欠如している。
目的:診断後少なくとも1年必要な分類シェーマの妥当性を調査する
動物:CIEの飼い犬60頭
方法:回顧的研究。臨床的情報は、診断時(T0)、初期反応時(TIR)、診断後最低1年(T≧1y)の記録と飼い主から集めた。分類の変化は群間の転換と定義した。
結果:T0の疾患活動指数中央値(CIBDAI)は9で、T≧1yで1と有意に低下した(P<.0001)。TIR時、犬の分類は:FRE27/60(45%、95%CI、0.32-0.58)、IRE30/60(50%、CI、0.37-0.63)、ARE0/60(0%)、NRE3/60(5%、CI、-0.01-.011)だった。FREの27頭中17頭(63%)は、過去に少なくとも1回食餌試験を失敗していた。T≧1y時、分類はFRE44/60(73%、CI、0.62-0.85)、IRE14/60(23%、CI、0.13-0.34)、ARE0/60(0%)、NRE2/60(3%、CI-0.01-0.08)に変化した。群の変更は24/60(40%)の犬で認められ、最も大きい変更はIREからFRE(19/24、79%)だった。TIR時に免疫抑制量が唯一の治療として投与されたのはIREの1/30(3%)の犬だった。
結論と臨床的重要性:治療の初期反応を基にした慢性炎症性腸症分類は、1年後に再評価する必要がある。IREからFREへの変更が多いことは、IREと最初に分類された犬が、複数の食餌試験が実施されていた場合にFREと分類されているのかもしれないと示唆される。この研究で、満足な臨床反応を達成するのに抗菌剤は必要なかった。(Sato訳)
■犬の盲腸あるいは結腸手術に対する合併症と推定的リスク因子:79症例(2002-2015)
Complications and putative risk factors for cecal or colonic surgery in dogs: 79 cases (2002-2015)
J Small Anim Pract. 2024 Jul 12.
doi: 10.1111/jsap.13763. Online ahead of print.
J C James , S O'Neill , G E Moore , K M Scotti , K L Perry , A A Sterman
目的:犬の盲腸あるいは結腸手術に対する合併症率、死亡率および推定的リスク因子を評価する
素材と方法:盲腸あるいは結腸に関係する手術を行った犬を含めた多施設回顧的研究。3か所の二次診療施設の医療記録から、犬の個体群統計および臨床データを再調査した。推定的リスク因子および生存して退院あるいは合併症との関係を、一変量及び多変量解析で評価した。
結果:この研究で79頭の犬が組み込み基準を満たした。55頭は全層切開の手術を行い、24頭は部分層の手術だった。全層および部分層盲腸/結腸手術に対する合併症および死亡率に統計学的差はなかった。この研究で結腸吻合の裂開率は、47頭中4頭(8.5%)だった。一変量解析において、時間外の全層処置の実施は、合併症と死亡率の上昇と関係していた。多変量解析において、生存して退院あるいは合併症と関係する因子はなかった。手術に認定外科医が存在することと、合併症あるいは死亡率の関係はなかった。
臨床的意義:全層の盲腸/結腸手術の成績は、部分層処置と比べて合併症あるいは死亡率に対し、統計学的有意なリスク上昇と関係することはなく、時間外の全層処置は合併症および死亡率のリスクが上昇する可能性があった。(Sato訳)
■犬の蛋白喪失性腸症の治療に対するオクトレオチドの使用:18症例の回顧的研究
Use of octreotide for the treatment of protein-losing enteropathy in dogs: Retrospective study of 18 cases
J Vet Intern Med. 2023 Dec 1.
doi: 10.1111/jvim.16966. Online ahead of print.
Sara A Jablonski , Allison S W Mazepa , M Katherine Tolbert
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背景:蛋白喪失性腸症(PLE)の犬の50%以上は、標準治療に反応しない。ソマトスタチンアナログ製剤のオクトレオチドは、ヒトの腸管リンパ管拡張症の症例に使用され、成功する症例もいる。
目的:処方の理由および症例、副作用、明白な反応を含め、PLEの犬に対するオクトレオチドの使用を述べる
動物:PLEの犬18頭、13頭は病理組織が入手可能。92%(12/13)はバイオプシーでILと診断されていた。13頭全てで腸管の炎症浸潤が認められた。
方法:多施設、回顧的、記述研究。症例はPLEの症例にオクトレオチドの使用を報告している個別の担当獣医師により、組み入れに志願してもらった。
結果:16/18(89%)の症例において、標準治療に難治性を示すILの臨床的疑い、あるいは診断が確認されたPLEの犬にオクトレオチドを処方した。処方した時の血清アルブミン中央値は1.7g/dL(範囲、1.0-3.1g/dL)だった。オクトレオチドの用量中央値は、20μ/kg、SQ、日で範囲は4-39μg/kg、SQ、日だった。副作用は3/18(17%、95%CI:4-41%)の犬に認められた;投薬の中止は1頭の犬に必要だった。臨床症状の改善は6/12(50%、95%CI:21-79%)の犬に認められた。
結論と臨床的重要性:オクトレオチドは、標準治療に反応しなかったILの疑いあるいは確認できた犬、PLEの犬に一般的に処方された。PLE犬に対する利点は確認されなかったが、この研究で処方した用量でほとんどの犬はオクトレオチドをよく許容した。(Sato訳)
■急性下痢の犬の臨床経過とコア腸内微生物叢に対するメトロニダゾールvsシンバイオティックの影響
The Effect of Metronidazole versus a Synbiotic on Clinical Course and Core Intestinal Microbiota in Dogs with Acute Diarrhea
Vet Sci. 2024 Apr 29;11(5):197.
doi: 10.3390/vetsci11050197.
Helene Stübing , Jan S Suchodolski , Andrea Reisinger , Melanie Werner , Katrin Hartmann , Stefan Unterer , Kathrin Busch
急性下痢(AD)の犬における抗菌剤の有効性は論争の的である。Clostridium perfringensやEscherichia coliのような潜在的腸病原体に対して、メトロニダゾールがどのような効果があるのかも不明である。
この研究の目的は、ADの犬の臨床経過およびコア腸内細菌に対するメトロニダゾールvsシンバイオティックの影響を評価することだった。
この前向き無作為化盲検臨床試験にADの犬27頭を登録し、メトロニダゾール(METg)あるいはシンバイオティック(SYNg;E. faecium DSM 10663;NCIMB 10415/4b170)を投与した。犬の急性下痢重症度(CADS)指数を11日間毎日記録した。細菌は、qPCRで定量した。反復測定の混合モデルでデータを分析した。
E.coliのより高い濃度が、SYNg群に対しMETg群で、6日目(p<0.0001)、30日目(P=0.01)に観察された。メトロニダゾールはC.
perfringensに対して効果はなかった。6日目(p<0.0001)、30日目(p=0.0015)でSYNg群よりもMETg群のC.
hiranonis は有意に低かった。治療群間のCADS指数、便の硬さ、排便頻度に有意差は観察されなかった(ただ1日のCADS指数を除く)。
結論として、メトロニダゾールは臨床結果に影響することなく微生物叢に負の影響を与える。ゆえに、シンバイオティクスは、ADの犬に対し、優先される治療オプションかもしれない。(Sato訳)
■犬と猫の開腹による腸管全層ニードルコアバイオプシーは標準的な切開バイオプシーよりも安全で迅速で効果的で侵襲性が少ない
Intestinal full-thickness needle-core biopsy via laparotomy is safe, rapid, and effective and less invasive than standard incisional biopsy in dogs and cats
J Am Vet Med Assoc. 2023 Dec 8:1-7.
doi: 10.2460/javma.23.09.0521. Online ahead of print.
Adrien Maggiar , Juliette Andréjak-Bénit , Julien Miclard , Delphine Sarran , Jean-Philippe Billet
目的:犬と猫において開腹による腸管全層ニードルコアバイオプシー法の結果を述べ、標準的切開性腸管バイオプシー法の病理組織および免疫組織化学診断と比較する
動物:3頭の犬と17頭の猫
方法:超音波検査により、びまん性慢性腸疾患の診断に対して腸管全層バイオプシーを指示された飼い犬と猫を前向きに登録した。研究期間は2021年6月から2022年12月に延長した。全ての動物は開腹し2つの方法(ニードルコアバイオプシー、標準的切開バイオプシー)による腸管バイオプシーを実施した。臨床症状、バイオプシー採取時間、合併症、病理組織および免疫組織化学所見を含むデータを集めた。14日の最小フォローアップを要求した。
結果:受診時の主な臨床症状は、慢性の嘔吐(65%)だった。ニードルコアバイオプシー採取時間の平均(262秒)は、標準的切開バイオプシーの採取時間(599秒;P<.000001)よりも有意に短かった。マイナーな合併症の発生率は10%(舐めることによる皮膚手術部位の炎症)だった。1つの破滅的な合併症は、胆汁性腹膜炎の状況で1頭の猫の標準的切開バイオプシー部位に発生した。ニードルコアバイオプシーに関係する合併症はなかった。1頭の猫以外の全頭は、中央値2日(範囲、1-4日)で退院した。両方法の診断結果は、病理組織および免疫組織化学により、炎症性腸疾患と腸管リンパ腫との鑑別で100%一致した。
臨床関連:標準的切開バイオプシーよりも、ニードルコアバイオプシーは安全で、迅速で効果的、そして侵襲性は低い。(Sato訳)
■結腸直腸ポリープを切除した犬の再発と生存性:58症例の回顧的研究
Recurrence and survival in dogs with excised colorectal polyps: A retrospective study of 58 cases
J Vet Intern Med. 2023 Sep 29.
doi: 10.1111/jvim.16876. Online ahead of print.
Tristan Méric , Julien Issard , Thomas Maufras , Marine Hugonnard , Odile Senecat , Alexis Lecoindre , Rodolfo Oliveira Leal , Coralie Bertolani , Olivier Toulza , Patrick Lecoindre , Elise Brisebard , Mireille Ledevin , Thibaut Larcher , Amandine Drut , Elodie Darnis , Juan Hernandez
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背景:ヒトに比べ、犬の結腸直腸ポリープは比較的珍しい。そのため、疫学的および予後的データは少ないままだが、それら症例の管理において獣医臨床科に役立てることができた
目的:結腸直腸ポリープの犬の疫学的データを報告することと、再発および生存に関係する因子を確認すること
動物:7つの動物病院(フランスから53頭、スペインから5頭、ポルトガルから4頭)を受診した結腸直腸ポリープのある58頭の飼い犬を含めた。
方法:回顧的複数施設コホート研究。その犬の医療記録と長期結果を再調査した。組織サンプルが入手可能な時は、revised Vienna classification
(RVC)に従い2人の認定病理医により再評価した。
結果:ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア(WHWT)種は、結腸直腸ポリープの存在に有意に関係した(OR:20;95%CI:7.5-52;P<.001)。全体の再発までの期間中央値は、2000日後で到達しなかった。全体の算出した生存期間中央値は1640日だった。WHWT種およびより大きなポリープは、切除からポリープ再発までの期間が有意により短かった(それぞれ、P=.05とP=.01)。
結論と臨床的重要性:犬の結腸直腸ポリープの再発の見込みは低いが、WHWTsやより大きなポリープでは上昇し、切除後の定期的なスクリーニングが有益かもしれない。ポリープ再発や生存性の有効な予後因子は、RVCを用いて確認されなかった。(Sato訳)
■慢性腸症の犬の加水分解魚食の無作為化対照試験
Randomized controlled trial of hydrolyzed fish diets in dogs with chronic enteropathy
J Vet Intern Med. 2023 Sep 7.
doi: 10.1111/jvim.16844. Online ahead of print.
Kenneth W Simpson , Meredith L Miller , John P Loftus , Mark Rishniw , Carol E Frederick , Joseph J Wakshlag
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背景:犬の慢性腸症(CE)の病因および治療における食餌の役割は解明されていない
目的:非蛋白喪失性CE(非-PLE)の犬の臨床症状の解消及び血清コバラミンと葉酸濃度の維持のため、加水分解魚、ライススターチ、魚油-(HF)あるいは+プレバイオティクス、ウコン、高コバラミン(HF+)で出来た食餌と、混合非加水分解抗原と油を含む限られた材料の食餌(コントロール)の能力を比較する。PLEの犬の回復および緩和をサポートする加水分解魚食の能力を判定する。
動物:31頭のCEの飼い犬:非-PLE の23頭、PLE の8頭
方法:無作為化盲検対照試験。食餌を2週間与えた;反応した犬は12週間続けた。反応しなかった犬は12週間他の食餌に交換した。反応は、26週の長期フォローアップで標準化した臨床評価により判定した。PLEにおいては併用薬物治療を許可した。
結果:非-PLE CEの犬23頭中19頭(83%;95%CI、60%-94%)は、最初の食餌に臨床的に反応し、食餌間の違いはなかった(P>.05)。4頭の反応しなかった犬は、他の食餌に反応し、26週目に18/18(100%;95%CI、78%-100%)は持続的に寛解した。食餌により血清コバラミン濃度は上昇し(P<.05)、維持された。血性葉酸濃度は治療後低下した(P<.05)が、食餌の補足で回復した。PLEの犬において、加水分解魚食は、体重増加、血清アルブミン濃度および回復をサポートした(P<.05)。
結論と臨床的重要性:非-PLE CEの犬において、食餌の変更は抗原制限あるいは補足的材料と無関係に、長期寛解を誘った。血清コバラミンおよび葉酸濃度は、食餌により維持された。加水分解魚食はPLEの臨床的回復および寛解をサポートした。(Sato訳)
■炎症性蛋白喪失性腸症と健康な犬の末梢血好中球/リンパ球比、血清アルブミン/グロブリン比、血清C-反応性蛋白/アルブミン比の比較評価
Comparative Evaluation of Peripheral Blood Neutrophil to Lymphocyte Ratio, Serum Albumin to Globulin Ratio and Serum C-Reactive Protein to Albumin Ratio in Dogs with Inflammatory Protein-Losing Enteropathy and Healthy Dogs
Animals (Basel). 2023 Jan 30;13(3):484.
doi: 10.3390/ani13030484.
Federica Cagnasso , Antonio Borrelli , Enrico Bottero , Elena Benvenuti , Riccardo Ferriani , Veronica Marchetti , Piero Ruggiero , Barbara Bruno , Cristiana Maurella , Paola Gianella
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免疫抑制剤反応性腸症による炎症性蛋白喪失性腸症(IRE-PLE)の犬の評価において、臨床的に有効なルーチンに使用できるバイオマーカーは少ない。好中球/リンパ球比(NLR)のみが研究されているが、アルブミン/グロブリン比(AGR)やC-反応性蛋白/アルブミン比(CRP/ALB)の使用に対する情報はない。
IRE-PLEの犬の集団において、NLR、AGR、CRP/ALBの臨床的意義を評価した。
53頭のIRE-PLEの犬の医療記録で、診断時(T0)と免疫抑制剤の開始から1か月後(T1)時点の再検討を行った。68頭の健康な犬のコントロール群を比較に使用した。
T0時点で、病気の犬のNLRの中央値は、健康犬のそれよりも高く、AGRの中央値はより低かった。慢性腸症活動性指数の増加に伴い、AGRは有意に減少し、CRP/ALBは有意に増加した。T1時点でNLRとAGRは有意に増加したが、CRP/ALBは有意に減少した。慢性腸症活動性指数による反応犬と非反応犬に分類した犬の間で、NLR、AGR、CRP/ALBに有意差はなかった。この問題に対してより情報を提供する今後の研究が必要である。(Sato訳)
■犬と猫の消化管穿孔による気腹のエックス線診断の精度
Accuracy of radiographic diagnosis of pneumoperitoneum secondary to gastrointestinal perforation in dogs and cats
Vet Rec. 2022 Oct 10;e2081.
doi: 10.1002/vetr.2081. Online ahead of print.
Rachel Marwood , Kathryn Fleming , Aurore Veronique Masson , Hannah Gilmour , Frederike Schiborra , Thomas W Maddox
背景:エックス線写真は、消化管穿孔の結果、気腹が疑われる動物の診断検査に一般的に含まれる。この研究の目的は、(1)気腹のエックス線診断の精度を確認すること、(2)評価者の経験が精度に影響を及ぼすか判定することだった。
方法:消化管穿孔あるいは腹膜炎±気腹を、外科的に確認した犬と猫の腹部エックス線写真を評価する遡及的症例-対照試験である。エックス線写真を1人の放射線医、1人の画像レジデント、1人の一般臨床医、1人の獣医学生で再検討した。
結果:60頭の犬と8頭の猫のエックス線写真を評価した:34頭は穿孔を確認していた。全ての評価者による精度はまずまずから優秀だった:学生61.8%、一般臨床医70.6%、レジデント85.3%、放射線医83.8%。評価者間の感受性に有意差はなかった(全て70.6%-85.3%);しかし、学生(52.9%)(p<0.001)や一般臨床医(55.9%)(p=0.002)と比べて、レジデント(91.2%)と放射線医(91.2%)の特異性に有意差はあった。全体で、放射線医とレジデントの間に最も高い評価者間の僅かから、かなりの一致性があった(κ=0.28-0.73)。
結論:この研究において、動物に対する気腹の診断に対し、異なる経験の獣医師により解釈した時、腹部エックス線写真の精度は変動する。それらの結果が気胸の他の動物集団に対しても適応するのか判定する追加研究が必要である。(Sato訳)
■推定的蛋白漏出性腸症の犬の低脂肪食単独治療の前向き評価
Prospective Evaluation of Low-Fat Diet Monotherapy in Dogs with Presumptive Protein-Losing Enteropathy
J Am Anim Hosp Assoc. 2023 Mar 1;59(2):74-84.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7248.
Marc Myers , Stephen A Martinez , Jonathan T Shiroma , Adam T Watson , Roger A Hostutler
蛋白漏出性腸症(PLE)とリンパ管拡張のエビデンスがある犬に対し、単独治療として低脂肪食あるいはプレドニゾンとの併用の効果は未だ特徴づけられていない。
この推定的PLEおよびリンパ管拡張の超音波エビデンスのある14頭の犬の前向き観察コホート研究において、種々の低脂肪食を単独治療として犬に与え、反応が不十分と思われたならばプレドニゾンを追加した。犬は、最終の超音波再検査を含む6か月の研究期間を通し、4回の再検査で評価し、スコアを付けた。臨床および臨床病理学的変数を集め、犬を3つの結果群に振り分けた:食餌単独治療で臨床寛解(LOF);食餌療法+免疫抑制プレドニゾンで臨床寛解(LOP);治療失敗(TXF)。
14頭中11頭は、研究最終日に臨床寛解だった(登録後6か月):6頭はLOF、5頭はLOPだった。LOFの犬は、食餌単独治療開始から2週間以内に犬の慢性腸症臨床活動指数スコアが有意に低下し、血清アルブミンは有意に上昇した。寛解した11頭中4頭は、線状の筋が消滅した超音波エビデンスもあった。
推定的PLEとリンパ管拡張の超音波所見がある犬の一部で、低脂肪食は効果的な単独治療であると思われる。(Sato訳)
■慢性腸症の消化管症状として嘔吐を呈する犬の臨床的特徴
Clinical characteristics of dogs presenting with vomiting as a gastrointestinal sign of chronic enteropathy
Vet Anim Sci. 2022 Jun 13;17:100255.
doi: 10.1016/j.vas.2022.100255. eCollection 2022 Sep.
Rintaro Furukawa , Kaho Takahashi , Yuna Hara , Rinka Nishimura , Keiko Furuya , Tomoaki Shingaki , Hironari Osada , Hirotaka Kondo , Keitaro Ohmori
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犬の嘔吐は、慢性腸症(CE)のメジャーな消化管(GI)症状の1つである。過去の研究では、GI症状として嘔吐を伴う、伴わない下痢を発症するというCEの犬の臨床的特徴が報告されている。しかし、適切にCEの犬の臨床的特徴を述べるため、下痢がなく嘔吐を呈する犬を、この分析に含めるべきである。
ゆえに、この研究は下痢を伴わない嘔吐を呈する犬の臨床的特徴および結果の特徴を述べることを目的とした。
呈しているGI症状を基に、回顧的にCEの犬66頭を嘔吐群、下痢群、嘔吐と下痢群に分類し、各群の臨床および組織学的特徴を比較した。
CEの犬66頭中18頭(27%)は、GI症状として下痢を伴わない嘔吐を呈していた。他の2群と比較し、一変量解析により嘔吐群は食物反応性腸症(FRE)、ビーグル、より低い臨床重症度スコア、より高いアルブミン濃度、十二指腸粘膜固有層における好酸球のより高い組織学的スコアと有意に関係した。
多変量解析で、FREと十二指腸粘膜固有層の好酸球に対するより高い組織学的スコアは、嘔吐群における有意な変数だと明らかになった。さらに、生存期間は、CEの犬の中で嘔吐群が最も長かった。
それらの所見は、下痢を伴わず嘔吐を呈することがCEの他のタイプからFREの鑑別だけでなく、予後を予測するのにも役立つかもしれないという臨床的重要性を持つ。(Sato訳)
■犬の急性大腸炎の治療において栄養管理はメトロニダゾールよりも優れていると無作為化対照試験で証明する
Randomized controlled trial demonstrates nutritional management is superior to metronidazole for treatment of acute colitis in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2022 Oct 6;1-10.
doi: 10.2460/javma.22.08.0349. Online ahead of print.
Adam J Rudinsky , Valerie J Parker , Jenessa Winston , Edward Cooper , Tamra Mathie , James P Howard , C A Bremer , Page Yaxley , Antionette Marsh , Jeremy Laxalde , Jan Suchodolski , Sally Perea
目的:無作為化対照臨床試験を用い、犬の非感染性急性大腸炎の食餌管理±メトロニダゾールの経口投与の結果を述べる
動物:非感染性急性大腸炎の飼い犬59頭
方法:寄生虫感染性(糞便遠心分離浮遊、ジアルジア/クリプトスポリジウム抗原検査)および全身性疾患(CBC、生化学、尿検査)の除外後、非感染性急性大腸炎の犬を30日の食餌試験に登録した。犬は3つのプラセボ-対照群に無作為に振り分けた:1群、易消化性食+プラセボタブレット;2群、易消化性食+メトロニダゾールタブレット;3群、オオバコ強化易消化性食+プラセボタブレット。寛解までの時間、平均糞便スコア、寛解後の再燃、腸内細菌叢異常指数に対し、糞便スコアリングを使用して連続的に評価した。
結果:寛解までの時間の中央値は、3群で有意に異なり(P<.01)、1群は5日(範囲、4-10)、2群は8.5日(範囲、7-12)、3群は5日(範囲、3-6)だった。メトロニダゾールの追加は、7-10日で糞便腸内細菌叢異常指数にネガティブに影響した。研究を通し副作用や合併症は見られなかった。
臨床関連:犬の非感染性急性大腸炎に対し、易消化性食±オオバコ強化による食餌管理は、メトロニダゾールに比べて優れた管理戦略だった。メトロニダゾールの省略は、腸内細菌叢に対し有意に有害な影響を減少させた。犬の急性大腸炎に対し、食餌管理単独と食餌と抗菌療法に関係する長期反応、安定性、合併症を比較するため、縦断臨床試験が必要である。(Sato訳)
■犬と猫の長期消化管異物閉塞の臨床所見と外科的治療後の結果
Clinical findings and patient outcomes following surgical treatment of chronic gastrointestinal foreign body obstructions in dogs and cats: 72 cases (2010-2020)
Can J Vet Res. 2022 Oct;86(4):311-315.
Tiffany Kan , Rebecka S Hess , Dana L Clarke
この研究の目的は、長期小腸異物閉塞(CFBO)の犬と猫の臨床病理的要因と結果の特徴を述べることだった。
2010年から2020年までにCFBOと診断された犬と猫72頭の医療記録で、臨床症状の持続期間、術前および術中所見、合併症、結果に対して再検討した。長期異物は、受診最低7日前からの臨床症状あるいは異物を食べるところを見ていたと定義した。
22頭(31%)は小腸切除および吻合(SIRA)を行い、臨床症状がより長い期間である確率が高かった(P=0.01)。11頭(15%)は、メジャーな術後合併症を発症した。68頭(94%)はフォローアップで生存していた。生存しなかった全ての動物(n=4、100%)はSIRAを行っていたが、CFBOの動物は高い生存率だった。
よって飼い主は、外科的治療を行うことを思いとどまるべきではない。(Sato訳)
■組織学的に炎症性腸疾患を確認された犬の超音波による腸の筋肉肥厚:13症例(2010-2021)
Ultrasonographic intestinal muscularis thickening in dogs with histologically confirmed inflammatory bowel disease: 13 cases (2010-2021)
Vet Radiol Ultrasound. 2022 Oct 28.
doi: 10.1111/vru.13173. Online ahead of print.
Alexandra G Collins-Webb , Deborah LA Chong , Stacy D Cooley
超音波検査による腸の筋肉の肥厚は、犬の炎症性腸疾患の画像特徴として述べられていない。
この遡及的ケースシリーズにおいて、「筋肉」および/あるいは「筋層」に対し超音波検査報告を検索し、患者を確認した。小腸の筋肉肥厚が報告された場合、再検討のため、小腸の超音波画像と病理組織サンプルが得られた場合は患者に含めた。小腸結節、マス、腸壁層の完全な喪失がある症例は除外した。超音波像は、空腸筋層厚に対し遡及的に評価し、腸管層の比率の測定を実施した。組織学的サンプルは遡及的に再検討した。
13頭の犬が組み込み基準に合致した:全ての犬は、超音波検査で粘膜下組織と比べ筋肉の肥厚があり(>1.0、範囲1.3-2.5)、ほとんどの犬の筋層厚は発表されている正常範囲以上だった(11/13;体重特異平均以上13/13)。半数以上の犬は全体的に正常な腸壁厚で(11/13)、数頭は正常な粘膜エコー原性だった(6/13)。ゆえに、いくつかの犬では、小腸の超音波異常は筋肉の肥厚のみだった。リンパ節腫脹の犬はいなかった。内視鏡による部分的(n=11、十二指腸および/あるいは回腸)あるいは外科的全層(n=2)サンプルで炎症性腸疾患を確認した。空腸の超音波的特徴と組織学的特徴の直接比較は、部分総バイオプシーおよび超音波評価の解剖学的位置とバイオプシー部分の直接比較が欠けていることから制限された。しかし、組み込み基準に合った症例で正常な小腸組織構造の症例はいなかった。
猫と比べ、超音波による腸の筋肉の肥厚がある犬は炎症性腸疾患かもしれず、腸症に対する今後の研究が示される。(Sato訳)
■犬の肛門嚢炎に対する局所治療:33頭の犬の遡及研究
Local treatment for canine anal sacculitis: A retrospective study of 33 dogs
Vet Dermatol. 2022 Jul 22.
doi: 10.1111/vde.13102. Online ahead of print.
Annette Lundberg , Sandra N Koch , Sheila M F Torres
背景:犬の肛門嚢炎(AS)の治療に関して発表されている情報は限られている
目的:主要目的:著者らの施設の紹介皮膚サービスでASの局所治療の結果を判定する
2つ目の目的:ASに関係するシグナルメント、ボディコンディションスコア(BCS)、大便の質、併発症を判定する
動物:2010年1月1日から2021年3月31日の間に紹介皮膚サービスを受診したASの犬33頭
素材と方法:電子カルテ検索を実施した。性別、犬種、疾患発現時の年齢、体重、BCS、大便の質、併発症、治療、治療結果に関する情報を集めた。治療結果は「臨床的に解消」、「飼い主ごとに臨床症状が解消」、{治療を完了しなかった}、「失敗」に分類した。他のサービスを受診し、ASに対して治療しなかった場合、肛門周囲瘻(フィステル)、肛門嚢マスあるいは肛門嚢膿瘍が認められた場合の犬は除外した。
結果:オスは19頭、メスは14頭だった。24犬種が含まれた。疾患発現時の平均年齢は4.4歳だった。平均BCSは5.8/9だった。大便の質は33頭中7頭で悪く、33頭中23頭は正常だった。アトピー性皮膚炎は最も一般的な併発症だった(12/33)。典型的に治療は、生理食塩水による肛門嚢のフラッシュ、続いて市販で入手可能なステロイド/抗生物質/抗真菌軟膏を注入した。治療は平均2.9回反復した。ASの解消は33頭中24頭で得られ、飼い主ごとの臨床症状の解消は33頭中4頭、治療を完了しなかったのは33頭中5頭、治療を失敗した症例はいなかった。
結論と臨床関連:フラッシュと注入の局所治療は、犬のASに効果的である。(Sato訳)
■胃十二指腸鏡検査を行った慢性消化管症状のある犬の炎症性vs.腫瘍性病変の有病率:195症例(2007-2015)
Prevalence of inflammatory versus neoplastic lesions in dogs with chronic gastrointestinal signs undergoing gastroduodenoscopy: 195 cases (2007-2015)
Res Vet Sci. 2022 Mar 17;146:28-33.
doi: 10.1016/j.rvsc.2022.03.014. Online ahead of print.
F Ivasovic , M Ruetten , P H Kook
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目的:胃十二指腸鏡検査を行った犬において、炎症性腸症vs.リンパ腫の有病率は評価されていない。この回顧的研究は、次の診断ステップとして上部消化管内視鏡検査実施を計画している195頭の飼い犬の結果を評価した。
素材と方法:症例はWSAVAガイドラインに従い以下の診断にグループ分けした:リンパ球プラズマ細胞性腸炎(LPE)、好酸球性腸炎(EE)、混合細胞性腸炎(ME)、組織学的に正常なバイオプシー(N)、リンパ腫(L)。臨床症状、検査及び超音波検査の内視鏡前の結果をグループ間で比較した。
結果:LPEは133頭(68%)、EEは17頭(9%)、MEは9頭(5%)で診断され、32頭(16%)は組織学的に正常なバイオプシーだった。4頭(2%)はリンパ腫と診断された。嘔吐はもっとも頻度の高い臨床症状(61%)で、体重減少(43%)、下痢(39%)が続いた。個々の組織学的疾患カテゴリーで見た時も嘔吐が多かったが、グループ間で臨床症状に有意差はなかった。リンパ腫の犬は、超音波検査で異常がある確率が高く、ヘマトクリット値、アルブミン、総蛋白濃度がLPEや組織学的に正常なバイオプシーの犬よりも有意に低かった。
臨床意義:内視鏡前の検査で非特異的な結果のこの犬のグループにおいて、リンパ腫は珍しかった。内視鏡検査を実施する前に、飼い主に段階的な治療アプローチ(複数の食餌トライアルのような)の可能性を議論する時、我々の結果は臨床医に最初の参考値を提供する。炎症性腸症のみの組織学的証拠が治療的な結果を制限しているという点で、リンパ腫発見の確率を理解することは重要である。上部および下部消化管内視鏡検査とバイオプシーの組み合わせを実施する犬において、それら所見を確認する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の慢性腸症に対する現在の診断方法
Current diagnostics for chronic enteropathies in dogs
Vet Clin Pathol. 2021 Oct 26.
doi: 10.1111/vcp.13068. Online ahead of print.
Karin Allenspach , Jonathan P Mochel
犬の慢性腸症(CEs)は、慢性の難治性あるいは再発性消化管(GI)症状に特徴づけられる特発性障害の1群である。治療に対する反応により3つの主要なCEのサブグループを確認することができる:食物反応性疾患(FRD)、抗菌剤反応性疾患(ARD)、ステロイド反応性疾患(SRD)。
CEの臨床診断は、小腸バイオプシーの組織学的評価を含む、慢性下痢の可能性のある全ての他の原因の除外でなされる。ゆえに、犬CEの診断を下すプロセスは、非常に時間がかかり、効果となる可能性が多く、多くの症例において特定の治療に対して反応するだろうという犬の確認の手助けとならない。よって、犬のCEに対する新しい診断検査の開発は、治療反応を予測するような検査の精度に焦点を置いている。
この文献において、市販で入手できる可能性のあるいくつかの新しい分析(遺伝子検査、核周囲抗好中球性細胞質抗体(pANCA)、トランスグルタミナーゼ/グリアジンに対する抗体、E coli OmpC/flagellinに対する抗体、micro RNAsなど)を議論する。(Sato訳)
■慢性炎症性腸症の犬の電解質異常
Electrolyte imbalances in dogs with chronic inflammatory enteropathies
Top Companion Anim Med. 2021 Oct 25;100597.
doi: 10.1016/j.tcam.2021.100597. Online ahead of print.
Romy M Heilmann , Anja Becher , Franziska Dengler
ヒトの炎症性腸疾患(IBD)は、電解質のシフトと下痢に関係する。通常犬の慢性炎症性腸症(CIE)は、消化管のより広い範囲に瀰漫性の炎症性病変を起こす。犬CIEの電解質異常の有病率は不明である。
著者らはCIEの37頭の犬の血清電解質(Na+、Cl-、補正Cl-、K+)濃度を回顧的に評価した。
低カリウム血症はより頻度の高い電解質異常で、7頭(19%)のCIE犬が罹病し、食餌反応性と免疫抑制剤反応性(IRE)症例に違いはなかった。低ナトリウム血症はより少なく(14%)、IREで多く見られた;血清Na+濃度は下痢と十二指腸の組織学的病変の重症度と関係した。低(5%)および高クロール血症(11%)も検出された。
電解質異常は犬CIEとヒトIBDで同じような頻度で発生する。犬CIEにおいて、K+分泌の増加は、妥協したNa+/Cl-吸収を超過するかもしれず、あるいはK+シフトはより顕著になるかもしれない。ゆえに、ゲルと関係する基礎にあるCIEのメカニズムの今後の調査が正当化される。(Sato訳)
■蛋白喪失性腸症の犬の治療前後の凝固パラメーターの変化
Changes in the coagulation parameters in dogs with protein-losing enteropathy between before and after treatment
J Vet Med Sci. 2021 Jun 28.
doi: 10.1292/jvms.21-0137. Online ahead of print.
Takuro Nagahara , Koichi Ohno , Itsuma Nagao , Taisuke Nakagawa , Nozomu Yokoyama , Aki Ohmi , Yuko Goto-Koshino , James K Chambers , Kazuyuki Uchida , Hirotaka Tomiyasu , Hajime Tsujimoto
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犬の蛋白喪失性腸症(PLE)は凝固亢進を誘発することが知られており、結果として血栓塞栓症が起こる。
著者らは、PLEの犬の治療後に寛解が得られた場合、凝固亢進は改善するだろうと仮説を立てた。
この研究の目的は、PLEと診断された犬の治療後、凝固パラメーターにおける変化を評価することだった。
凝固パラメーターとしてプロトロンビン時間(PT)、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、フィブリノーゲン、トロンビン-アンチトロンビン複合体(TAT)、D-ダイマー、アンチトロンビン(AT)を測定した。それらのパラメーターに加え、包括的凝固および全血の線維素溶解反応を評価するrotational
thromboelastometry (ROTEM)を実施し、凝固時間(CT)、凝固形成時間(CFT)、α角(α)、血栓硬度最大値(MCF)、60分時の溶解指数(LI60)を入手した。
PLEと診断した14頭中11頭は、治療後に血漿アルブミン(ALB)濃度の変化を基に、治療反応犬として分類した。凝固亢進の解消を示すCFTの有意な増加とαおよびMCFの減少が反応犬の治療後に見られた。;しかしROTEMで測定したそれら以外の凝固および線維素溶解に有意な変化はなかった。
この研究は、PLEの犬においてROTEMにより検出した凝固亢進は、治療後有意に改善したことを証明した。(Sato訳)
■急性出血性下痢症候群が疑われ入院した犬237頭の回顧的研究:疾患重症度、治療と結果
A retrospective study of 237 dogs hospitalized with suspected acute hemorrhagic diarrhea syndrome: Disease severity, treatment, and outcome
J Vet Intern Med. 2021 Feb 27.
doi: 10.1111/jvim.16084. Online ahead of print.
Nana Dupont , Lisbeth Rem Jessen , Frida Moberg , Nathali Zyskind , Camilla Lorentzen , Charlotte Reinhard Bjørnvad
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背景:急性出血性下痢症候群(AHDS)の犬の治療と結果を調査している研究は少なく、敗血症の併発症状のある犬に対するデータは少ない。
目的:疾患重症度と抗生物質治療に従いAHDSが疑われた犬の結果を報告し、臨床的基準に対する輸液蘇生の効果を評価する
動物:AHDSが疑われ入院している237頭の犬
方法:医療記録に基づく回顧的研究。3治療群(抗生物質なし、1種、2種使用)に従い、疾患の重症度をAHDS指数、全身炎症反応症候群(SIRS)基準、血清C-反応性蛋白(CRP)を使用して評価した。
結果:抗生物質を投与されていないのは62%、1種類の抗生物質を投与されているのは31%で多かったのはアミノペニシリン、2種類の抗生物質を投与されているのは7%だった。入院時、AHDS指数の中央値は13(四分位数間領域、11-15)で、全ての群において入院当日以後有意に低下した(P<.001)。抗生物質投与なし(7%)と比べ、抗生物質投与群のSIRS基準≧2の犬がより多かった(それぞれ15%と36%)。入院時のC-反応性蛋白(CRP)は、AHDS指数と正に相関した(P<.001)。治療群全体で、再水和は臨床的SIRS基準の数を顕著に低下させた。退院生存率は96%で、2種類の抗生物質を投与されていた犬はより低かった(77%、P<.05)。
結論と臨床的重要性:AHDSが疑われ入院した犬のほとんどは、最初に全身疾患の症状があっても対症療法のみで急速に改善する。良く使用されるSIRS基準は、特に血液量不足のときに抗生物質治療を必要とするAHDSの犬の確認にあまり良くないプロキシかもしれない。治療方針決定あるいは予測にCRPの役割は、今後の調査を正当化する。(Sato訳)
■コルチコステロイドで治療している、あるいは治療していない炎症性腸疾患の犬における同種間葉性幹細胞移植の効果
Effects of Allogeneic Mesenchymal Stem Cell Transplantation in Dogs with Inflammatory Bowel Disease Treated with and without Corticosteroids
Animals (Basel). 2021 Jul 10;11(7):2061.
doi: 10.3390/ani11072061.
José Ignacio Cristóbal , Francisco Javier Duque , Jesús María Usón-Casaús , Patricia Ruiz , Esther López Nieto , Eva María Pérez-Merino
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肝葉性幹細胞は、犬の炎症性腸疾患(IBD)の治療で、従来のステロイドに代わる有望な代替法と証明されている。しかし、それらの投与は、徴候の悪化を誘発する可能性のある免疫抑制剤のウォッシュアウト期間を必要とする。ゆえに、コルチコステロイドに十分反応しないIBDの犬において、幹細胞とプレドニゾンの併用した時の実行可能性と効果を、長期フォローアップしたこの研究で初めて評価した。
IBDの犬2群(治療なし、プレドニゾンで治療)に、幹細胞を単回注入した。臨床的指数、アルブミン、コバラミンを、注入前、その後1、3、6、12か月目に評価した。
両群において、各タイムポイントにおいて全てのパラメーターが有意に改善した。並行してステロイドの用量は、幹細胞治療後1年、全ての犬においてそれが抑制されるまで漸次減少した。
よって、幹細胞療法は、プレドニゾンを投与されている犬もそうでない犬も、その疾患の状況を有意に安全に改善できる。さらに、ステロイドの用量は、幹細胞注入後に有意に減らす、あるいは中止できる。それらの有益な効果は、時間と共に安定し、長く持続する。(Sato訳)
■蛋白漏出性腸炎の犬の小腸拡張の予後的価値
Prognostic value of small intestinal dilatation in dogs with protein-losing enteropathy
J Vet Med Sci. 2021 Jan 12.
doi: 10.1292/jvms.20-0489. Online ahead of print.
Hiroshi Ohta , Noriyuki Nagata , Nozomu Yokoyama , Tatsuyuki Osuga , Noboru Sasaki , Keitaro Morishita , Mitsuyoshi Takiguchi
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今日、蛋白漏出性腸炎(PLE)の犬の超音波所見の予後的意義についてあまりわかっていない。
この回顧的研究の目的は、PLEの犬の超音波所見の予後的価値を調べることだった。
合計26頭のPLEの犬を含めた:20頭は慢性腸症、6頭は消化管型リンパ腫。
小腸拡張の存在は、PLEの犬のより短い生存期間と関係した(P=0.003)。高エコーの腸粘膜条線の存在は、PLEの犬のより長い生存期間と関連した(P=0.0085)。
この研究の結果は、PLEの犬において小腸拡張の存在が、予後不良と関係するかもしれないことを示す。(Sato訳)
■炎症性タンパク喪失性腸症の犬の治療結果に対する補助的経腸給餌の効果
The effect of assisted enteral feeding on treatment outcome in dogs with inflammatory protein-losing enteropathy
J Vet Intern Med. 2021 May 1.
doi: 10.1111/jvim.16125. Online ahead of print.
Lavinia Economu , Yu-Mei Chang , Simon L Priestnall , Aarti Kathrani
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背景:タンパク喪失性腸症(PLE)の犬の治療結果に対する補助的経腸給餌の効果は不明である。
目的:経腸フィーディングチューブを設置した炎症性PLEの犬は、フィーディングチューブを設置しない炎症性PLEの犬よりも良い結果となるかどうかを判定する
動物:炎症性PLEの犬57頭
方法:イギリス二次動物病院の回顧的研究で、標準的診断基準を用いて炎症性PLEの犬を確認した。ポジティブな結果は、6か月以上生存あるいはPLEと関係のない死亡、ネガティブな結果は、診断から6か月以内にPLEと関連した死亡と定義した。ロジスティック回帰を用い、ポジティブな結果に対する因子を確認するためいくつかの変数を評価した。
結果:6か月時のポジティブな結果は35頭(61%)、ネガティブな結果は22頭(39%)だった。消化管バイオプシーの5日以内にフィーディングチューブを設置した21頭の犬のうち、16頭(76%)はポジティブな結果で、5頭(24%)はネガティブな結果だった。食餌療法のみで治療した犬(P=.002)と、経腸フィーディングチューブを設置した犬(P=.006)は、ポジティブな結果に有意に関係した。治療により層別化した時、補助的経腸給餌は、免疫抑制剤の併用で治療した犬においてポジティブな結果と有意に関係した(P=.006)が、食餌療法単独で治療した犬を評価するデータが不十分だった。
結論と臨床的重要性:炎症性PLEの犬における補助的経腸給餌は、特に免疫抑制治療を受けている犬において治療結果を改善でき、そのような犬の治療プランに考慮すべきである。(Sato訳)
■ステロイド抵抗性タンパク喪失性腸症の犬における食餌療法の変化の前向き評価
Prospective evaluation of a change in dietary therapy in dogs with steroid-resistant protein-losing enteropathy
J Small Anim Pract. 2021 Apr 13.
doi: 10.1111/jsap.13334. Online ahead of print.
S A Jablonski Wennogle , J Stockman , C B Webb
目的:ステロイド抵抗性タンパク喪失性腸症の犬において、治療の唯一の変化として食事変更の臨床的効果を述べる。
素材と方法:前向き研究。適性のある登録犬で、治療プランの唯一の変化として食事を変更した。犬慢性腸症臨床活動指数および血清アルブミンを3か月の研究期間にわたりモニターした。また長期フォローアップデータは、研究参加犬の数頭で入手可能だった。
結果:研究期間中にわたる登録に対し、15頭の犬に適性があった。12頭が参加し、10頭が30日目の研究に残り、9頭は3か月の研究期間を完了した。食餌の変更に続き、10頭中8頭が完全寛解に達し、1頭は部分寛解に達し、1頭は反応がなかった。完全寛解に達した8頭中7頭は、研究後4年まで寛解を維持している。完全寛解の犬で、0日目及び14-28日目の犬慢性腸症臨床活動指数の中央値は11.5と4で、血清アルブミン濃度の中央値は、15g/Lと26g/Lだった。
臨床的意義:食餌療法、グルココルチコイドおよび免疫抑制剤の組み合わせで反応がなかったタンパク喪失性腸症の犬は、食餌の変更後に寛解に達する可能性がある。改善は14-30日以内に見られる確率が高い。食餌アプローチの変更は、タンパク喪失性腸症の難治性のある程度の犬において、追加の免疫抑制剤あるいは抗炎症治療戦略の代替となる可能性がある。(Sato訳)
■犬猫の消化管病変から得た超音波ガイドによる細胞学的標本の臨床的有効性の評価
Assessment of the clinical usefulness of ultrasound-guided cytological specimens obtained from gastrointestinal lesions in dogs and cats
J Small Anim Pract. 2021 Jan 5.
doi: 10.1111/jsap.13260. Online ahead of print.
R B S Turner , R Liffman , A P Woodward , C Beck , N Courtman , J R S Dandrieux
目的:細胞診は腹部超音波検査で病変が確認された時に欠かせない追加検査であるが、超音波ガイドによる細針細胞バイオプシーにより得られた消化管病変の臨床的に有用なサンプルを達成することに影響するかもしれないファクターの発表はほとんどない。この回顧的記述研究の目的は、超音波ガイド下による経皮細針細胞バイオプシーによる消化管病変から集めて提出された細胞学的サンプルの臨床的有用性に影響するかもしれないファクターを評価することだった。
素材と方法:2.5年間かけて犬25頭、猫19頭から得られた消化管細胞サンプルを再検討し、細胞学的報告により臨床的に有用か有用ではないか判定した。解析に使用した超音波検査に依存する変数には、病変部位、病変の厚さ、消化管の層状喪失、提出したスライドの数が含まれた。
結果:提出された細胞学的サンプルのうち30(30/44)は臨床的に有用と考えられた。一変量モデルにおいて臨床的に有用なサンプルの達成に関係するファクターは、提出したスライドの数、病変の厚さが含まれた。しかし、弱い相関がそれらの間に存在するため、それら2つの変数は、相互に関係すると思われた。
組織学的バイオプシーが得られたところで、臨床的に有用なサンプルは組織学検査と12症例中3症例が部分的一致、12症例中8症例が完全一致だった。
臨床的意義:消化管マスの超音波ガイド下による細針細胞バイオプシーは、症例の2/3において臨床的有用なサンプルを提供した(特により多くのスライドが細胞学者に提供され、より厚い病変でサンプル採取された場合)。(Sato訳)
■胆汁酸性下痢が疑われる2頭の犬のコレスチラミンによる治療:症例報告
Cholestyramine treatment in two dogs with presumptive bile acid diarrhoea: a case report
Canine Med Genet. 2021 Jan 19;8(1):1.
doi: 10.1186/s40575-021-00099-x.
L Toresson , J M Steiner , J S Suchodolski
Free PMC article
背景:ヒトにおいて、胆汁酸性下痢はクローン病の一般的な合併症で、過敏性腸症候群に関係する下痢である。患者はコレスチラミンのような胆汁酸吸着剤に一般的に反応するが、ヒトの胃腸病学者は胆汁酸性下痢を認識できないことも多い。したがって人医では、胆汁酸性下痢は、過小認識および治療されていない状況として考えられる。診断ツールがないため、胆汁酸吸着剤に対する臨床反応が、ヒトの胆汁酸性下痢の診断の確認に使用されることも多い。
近年のいくつかの研究で、慢性腸症の犬において胆汁酸性代謝障害も発生すると示されている。さらに、健康犬に比べて慢性腸症の犬は、回腸の胆汁酸トランスポート蛋白の発現が有意に減少(糞便の胆汁酸代謝障害に関係する)していることが示されている。したがって、文献で報告がないが、犬にも同様に胆汁酸性下痢が存在する確率が高い。
症例説明:8歳のロットワイラー、4.5歳のシベリアンハスキーの2頭の慢性水様性下痢を評価した。食餌試験、プロバイオティクス、シクロスポリン、糞便微生物移植あるいはメトロニダゾールに反応した犬はいなかった。1頭は毎日の高用量のコルチコステロイド投与に反応したが、許容できない副作用を起こした。もう1頭は、シクロスポリンやコルチコステロイドを含む全ての標準的な治療プロトコールで難治性だった。標準治療や腸微生物叢の調節で満足のいく反応が得られなかったため、胆汁酸性下痢の可能性の疑いが持ち上がった。胆汁酸吸着剤のコレスチラミンの治療を開始し、2頭の糞便の硬さ、排便回数、活動レベルは顕著に改善した。
結論:この報告は、コレスチラミンの治療がうまくいった胆汁酸性下痢の疑いの2頭の犬を示す。ゆえに、治療抵抗性の慢性下痢の犬において、胆汁酸性下痢を可能性のある診断として考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の炎症性腸疾患(IBD)における好中球/リンパ球比(NLR)
Neutrophil-to-Lymphocyte Ratio (NLR) in Canine Inflammatory Bowel Disease (IBD)
Vet Sci. 2020 Sep 22;7(3):E141.
doi: 10.3390/vetsci7030141.
Elena Benvenuti , Alessio Pierini , Eleonora Gori , Claudia Lucarelli , George Lubas , Veronica Marchetti
炎症性腸疾患(IBD)は腸壁の構造的変化をもたらす、多因子の慢性炎症性疾患である。ヒトにおいて好中球/リンパ球比(NLR)は、IBDの有望なマーカーとして提唱されている。
この研究は、IBDの犬において、NLRの潜在的臨床および予後的意義を評価した。
この回顧的研究では、2017年1月から2018年1月まで、ピサ大学に来院し、IBDと診断された41頭の犬を登録した。各犬の年齢、性別、犬慢性腸症臨床活動指数(CCEVAI)、内視鏡および病理組織学的グレードを記録した。内視鏡検査時のCBC、血清総蛋白、アルブミン、コレステロール、C-反応性蛋白を記録した。血液ドナーのデータから健康犬のコントロール群(CG)を作成した。好中球数とリンパ球数の比率として、IBD、CG両方のNLRを計算した。陰窩膨張、乳糜管拡張(LD)、粘膜線維症、上皮内リンパ球の有無を記録した。電子カルテと犬から入手したフォローアップ情報は、入院と最初の再検査とのCCECAI変化を基に応答者と非応答者に分類した。
健康犬に比べ、IBDの犬は高いNLRを示した。NLRは総蛋白、アルブミン、コレステロールと負の相関を示し、CCECAIと正の相関を示した。LDの犬は、そうでない犬よりもNLRが高かった。非応答者は応答者よりも高いNLRを示した。
結論として、ヒトのIBD患者のように、NLRは炎症マーカーとして作用し、この疾患の重症度に対する追加の情報を提供し、治療反応の予測に役立つ可能性がある。(Sato訳)
■蛋白喪失性腸炎のヨークシャーテリアの門脈血栓の治療成功例
Successful management of portal vein thrombosis in a Yorkshire Terrier with protein-losing enteropathy
BMC Vet Res. 2020 Nov 2;16(1):418.
doi: 10.1186/s12917-020-02632-9.
Yumi Sakamoto , Kumiko Ishigaki , Chieko Ishikawa , Tomohiro Nakayama , Kazushi Asano , Manabu Sakai
背景:蛋白喪失性腸炎(PLE)の犬において、門脈血栓(PVT)は珍しい症状である。リバーロキサバンは、経口の選択的に直接Xa因子を阻害し、犬のPVTに対する投与は報告されておらず、PLEの犬に対する影響は不明である。
症例提示:11歳のヨークシャーテリアが中程度の腹水を呈した。その犬は、重度の低アルブミン血症(1.2g/dL)と門脈血栓をCT血管造影検査(CTA)で確認した。内視鏡検査により、低アルブミン血症はPLEによるものだと明らかになり、リンパ管拡張とリンパプラズマ細胞性腸炎が起きていた。
よって、当初はスピロノラクトンとクロピドグレルの経口投与と脂肪制限食で治療した。しかし、その後のCTAで腹水、血栓、門脈大動脈(PV/Ao)比に変化はなかった。そのため、追加で門脈血栓に対しリバーロキサバン、リンパプラズマ細胞性腸炎による低アルブミン血症に対し低用量のプレドニゾロンを処方した。治療後、血栓縮小のためPV/Ao比は低下し、アルブミン濃度上昇(1.9g/dL)に伴い完全に腹水は消失した。
結論:この症例報告は、1頭のPLEの犬においてリバーロキサバンと低用量グルココルチコイドの経口投与の組み合わせは、PVTに効果的な治療であることを証明した。(Sato訳)
■健康な犬の糞便中微生物相と胆汁酸に対するタイロシンの長期影響
Long-term impact of tylosin on fecal microbiota and fecal bile acids of healthy dogs.
J Vet Intern Med. 2019 Oct 31. doi: 10.1111/jvim.15635. [Epub ahead of print]
Manchester AC, Webb CB, Blake AB, Sarwar F, Lidbury JA, Steiner JM, Suchodolski JS.
背景:タイロシンは一般的に下痢の犬に処方される。経口で投与される抗生物質は、決定的な鍵である胆汁酸(BA)生体内変化反応の原因である腸管内微生物相を変化させるかもしれない。
目的:長期便中生物相と非抱合型胆汁酸(UBAs)に対し、タイロシン投与の影響を前向き評価する
動物:16頭の健康な成犬
方法:前向き無作為化対照臨床試験。犬に無作為にタイロシン20mg/kgあるいはプラセボカプセルを12時間毎に7日間経口投与し、その間毎日糞便のスコアリングを行った。糞便サンプルは0、7、21、63日目に収集した。生物相は、定量PCRと16SrRNA遺伝子配列決定で評価した。非抱合型BAsはガスクロマトグラフィー-質量分析(GC-MS)で評価した。
結果:糞便スコアはプラセボやタイロシン投与中に変化しなかった。プラセボ群において、便中生物相あるいはUBA濃度に有意な変化は観察されなかった。タイロシン投与から7日目、嫌気性菌Fusobacteriaceae(線形判別分析(LDA)スコア、5.03)とVeillonellaceae(LDAスコア、4.85)の減少を特徴とする細菌の多様性の減少(observed species, Chao1, Shannon, P < .001)を認めた。タイロシンを投与した犬の主要UBA濃度は、0日目(中央値、(範囲);0.14(0.03-1.19)μg/kg)と比べ、21日目(7.42(0.67-18.77)μg/kg;P=0.04)、63日目(3.49(0-28.43)μg/kg;P=0.02)に増加した。63日目、細菌分類群0日目と有意差はなかったが、細菌の回復の程度は個々に区別された。
結論と臨床重要性:健康犬に対し、タイロシンは便中UBAsのシフトに一致する便中細菌叢異常を起こさせる。タイロシン中止後、変化は一様に解消しなかった。(Sato訳)
■犬の急性下痢のメトロニダゾール治療:無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験
Metronidazole treatment of acute diarrhea in dogs: A randomized double blinded placebo-controlled clinical trial.
J Vet Intern Med. 2019 Nov 19. doi: 10.1111/jvim.15664. [Epub ahead of print]
Langlois DK, Koenigshof AM, Mani R.
背景:メトロニダゾールは急性下痢の犬に良く投与されるが、この診療を支持するエビデンスは限られている。
目的:非特異的な急性下痢の犬に対し、メトロニダゾール投与の効果を調査する
動物:14頭のテスト集団の犬と17頭のコントロール犬を含む31頭の犬
方法:無作為化対照臨床試験。通常の糞便診断検査により原因が判定されていない急性下痢の犬を、メトロニダゾール投与群(10-15mg/kg PO
12時間毎7日間)とプラセボ群に無作為に振り分けた。糞便培養とクロストリジウムperfringens分離菌の特徴づけも実施した。オーナーは薬剤投与と糞便スコアの記録、糞便診断検査を7日間繰り返した。
結果:投与集団の犬(2.1±1.6日)に対する下痢の解消までの平均±SD時間は、コントロール群(3.6±2.1日、P=0.04)より短かった。C.
perfringensと急性下痢の病因との潜在的関連は調査されなかったが、投与群の13頭中3頭(23.1%)のみが7日目にC. perfringensを保菌しており、持続的発育を見せるコントロール群の14頭中11頭(78.6%)より少なかった(P=0.007)。
結論と臨床重要性:我々の結果は、非特異的な急性下痢のいくらかの犬において、メトロニダゾール投与で下痢の持続期間を短縮でき、糞便培養でC. perfringensの検出が少なくなることを示唆する。多くの犬は治療に関係なく数日以内に下痢が解消するので、この目的でのメトロニダゾールの日常的使用の利益とリスクを評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬の慢性腸疾患の治療で特別食の有効性の調査
Investigation of the efficacy of a dietetic food in the management of chronic enteropathies in dogs.
Vet Rec. 2019 Oct 29. pii: vetrec-2018-105172. doi: 10.1136/vr.105172. [Epub ahead of print]
Tørnqvist-Johnsen C, Campbell S, Gow A, Bommer NX, Salavati S, Mellanby RJ.
背景:慢性腸疾患(CEs)は犬の病的状態の一般的な原因の1つである。CEsは聴器消化管臨床症状(>3週間)、腸管バイオプシーの炎症性変化、完全で標準化された診断検査を基に他の基礎疾患が判定されない犬で診断される。治療の反応を基に、CEsは食物反応性、抗生物質反応性、ステロイド反応性腸疾患に細分化される。CEの犬で割合が多いのは食物反応性であるが、CEの治療に使用する市販で入手可能な食餌の臨床効果を述べたpeer-reviewedの発表は限られる。
方法:この研究で、CEの犬15頭に対し、市販入手可能な特別食(Hill's Prescription Diet i/d センシティブCanine
Dry)の反応を評価した。その犬に標準診断評価を実施し、駆虫薬、抗生物質、グルココルチコイド、胃保護薬を併用しなかった。食餌治療の臨床効果は、食餌療法開始前と中央値13日後の犬炎症性腸疾患活性指数(CIBDAI)を比較することで評価した。
結果:著者らは特別食の導入後CIBDAIが有意に低下することを認めた(中央値CIBDAIスコアが治療前9、治療後2;P<0.0005)。
結論:この研究は、犬のCEの管理にこの特別食が使用できることを証明した。(Sato訳)
■4頭のグレートデンの結腸捻転
Colonic torsion in 4 Great Danes
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Jul 25.
doi: 10.1111/vec.12986. Online ahead of print.
Peter S Czajkowski , Katy J Fryer
目的:4頭の結腸捻転のグレートデンを述べ、過去に報告されていないこの犬種の捻転再発リスクを述べる。また、この研究は結腸捻転の確認対する迅速で非侵襲性診断として結腸内ガス貯留を述べる。
シリーズ概要:4頭のグレートデンは、非特異的消化管(GI)臨床症状を呈した。各症例で結腸捻転は結腸内ガス貯留を確認するプレーンのエックス線写真、あるいは造影エックス線写真(バリウム浣腸)で診断した。各症例の血液検査は非特異的変化を示した。各症例は過去に胃固定を受けており、そのうち3頭は胃拡張捻転の予防で、1頭は緊急手術だった。3頭は緊急手術で良好な結果を得られ、臨床症状が解消し、正常な活動レベルに回復した。結腸捻転は2頭で再発し、1頭は前の左側結腸固定後に発生した。再発の1頭は、手術後も臨床症状が継続し、安楽死された。
提供された新規あるいは独特な情報:これは結腸捻転の確認に、迅速で低有病率の診断補助を提供する結腸内ガス貯留を述べる最初の報告で、2頭の犬の結腸捻転の再発を述べることである。結腸捻転とGI運動変化の関係に対する過去の仮説の支持を提供する。十二指腸結腸靭帯の損傷に関係するジャーマンシェパーにおける結腸捻転と包括を報告する過去の発表は、結腸固定することなく修正後の再発はないと報告した。それら2頭の再発は、グレートデンの結腸捻転が、この状況の異なる、あるいはより重度の型を呈しているかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■単純な小腸異物の除去に対し単孔式腹腔鏡下小腸手術と開腹手術を行った犬の結果の比較
Comparison of outcome in dogs undergoing single-incision laparoscopic-assisted intestinal surgery and open laparotomy for simple small intestinal foreign body removal.
Vet Surg. June 2019;48(S1):O83-O90.
DOI: 10.1111/vsu.13131
Aki Otomo , Ameet Singh , Alexander Valverde , Hugues Beaufrère , Victoria Mrotz , Jessica Kilkenny , Alex Zur Linden
目的:単純な異物除去に対し、単孔式腹腔鏡下小腸手術(SILAIS)と開腹手術(OL)を行った犬の結果を評価し比較する
研究計画:回顧的研究
動物:SILAIS(n=13)あるいはOL(n=15)を行った飼育犬28頭
方法:SILAISによる異物除去は、市販のシングルポートデバイスで実施した。腹腔鏡による評価後、開創デバイス(WRD)を挿入した。小腸は生体外で探査し、異物の除去を実施した。生体外で評価できない消化管の触診のため、外科医の手をWRDから挿入した。開腹と異物除去は、腹部正中アプローチで実施した。医療記録を回顧的に再調査し、術中データを集めた。フォローアップのデータは紹介獣医師への標準化した質問票および/あるいはオーナーに電話で収集した。
結果:術後の合併症はSILAISあるいはOL群共に遭遇せず、全ての犬は退院した。SILAISからOLへの変更は13症例中3症例で起こった。入院期間、回復までの持続期間、外科的アプローチ間の手術時間(SILAS vsOL)に有意差はなかった。
結論:この犬の集団で、異物除去に対する単孔式腹腔鏡下小腸手術とOLとの種々の結果測定値に有意差はなかった。超音波検査やCTを含む診断画像検査は、単純異物除去に対するSILAISの最適な症例選択を改善するかもしれない。
臨床意義:単孔式腹腔鏡下小腸手術は、単純小腸異物除去に対する最小侵襲法を提供する。SILAISとOLを比較する追加研究が必要である。(Sato訳)
■犬と猫のカンピロバクター症:レビュー
Campylobacteriosis in dogs and cats: a review.
N Z Vet J. September 2018;66(5):221-228.
DOI: 10.1080/00480169.2018.1475268
E Acke
カンピロバクター種は一般に犬と猫から採取した糞便サンプルから分離され、多く普及する種はC. upsaliensis、C. helveticus、C.
jejuniである。犬お猫の多くは無症状感染であるが、軽度から中程度の腸炎を発症するときもある。
未熟動物、集中飼育の環境の動物、併発疾患のある動物は特に感染と臨床症状発症の傾向がある。診断検査で使用される細菌培養法は、依然C. jejuni、C. coli検出に偏ったままだが、犬と猫のカンピロバクター属感染を診断する分子法は広く利用できるようになってきており、速く正確な診断が可能である。多座配列タイピングも異なる株のサブタイプ決定に開発されており、疫学的調査に使用されている。
多くの症例において、臨床症状は自己限定的で、抗菌剤治療は正当化されない。犬と猫から分離されたカンピロバクター属は、一般に使用される抗菌剤に抵抗性を示しており、これが正当化される場合のみに抗菌剤療法は使用されるべきである。
犬と猫への接触は、ヒトのカンピロバクター症に対して認識されたリスクファクターで、それゆえに犬や猫と密接に接触する一緒に住んでいる人や、働いている人はそれらの動物が排出しえる人獣共通微生物を認識しておくべきである。(Sato訳)
■犬の消化管手術後の裂開および死亡率に関係する因子
Factors associated with dehiscence and mortality rates following gastrointestinal surgery in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2019 Sep 1;255(5):569-573. doi: 10.2460/javma.255.5.569.
Gill SS, Buote NJ, Peterson NW, Bergman PJ.
目的:犬の胃腸手術後の裂開および死亡率に関する要因を確認する
動物:2010年から2016年の間に消化管外科を行った飼育犬170頭
方法:術前(犬種、性別、年齢、体重、アメリカ麻酔学会(ASA)身体状況分類、緊急状態、血漿乳酸濃度)、術中(手術適応、術式、細菌性腹膜炎が確認されたかどうか)、術後(裂開の発生および2週間目の生存状況)因子に対する情報を集めるため、全ての組み入れ犬の医療記録を再検討した。術前および術中因子はお互い、および術後因子との関連を評価した。
結果:一変量解析で、術前血漿乳酸濃度はASA状況の上昇とともに増加し、乳酸濃度は、生存犬(平均±SD、2.4±1.7mmol/L)よりも非生存犬(4.6±3.7mmol/L)の方が有意に高いことを示した。年齢、体重、血漿乳酸濃度を考慮した多変量解析で、ASA状況≧3の犬は、より低いASA状況の犬よりも消化管手術後の裂開の発生確率が高いことを示した(OR、17.77;95%CI:2.17-144.06)。また、多変量解析でASA状況≧3あるいは高い乳酸濃度は、他の犬よりも生存確率が低いことを示した。
結論と臨床関連:ASA状況および術前血漿乳酸濃度およびそれらと結果との関係に関する所見は、消化管手術を必要とする犬の最適な周術期ケアと予後についてオーナーへの説明を判定、提供するときに臨床医の助けとなるかもしれない。(Sato訳)
■247頭の犬の異物除去に対し腸切開後の切開部裂開率
Intestinal incisional dehiscence rate following enterotomy for foreign body removal in 247 dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2019 Sep 15;255(6):695-699. doi: 10.2460/javma.255.6.695.
Strelchik A, Coleman MC, Scharf VF, Stoneburner RM, Thieman Mankin KM.
目的:犬の異物除去に対し、腸切開後の腸の切開裂開率を報告する
動物:2001年11月から2017年9月の間に腸切開で治療した腸内異物の飼育犬247頭
方法:医療記録を再調査し、シグナルメント、病歴、手術、臨床病理所見、入院期間、腸の切開部裂開、退院までの生存性に関するデータを集めた。犬を腸切開後に裂開を起こした(裂開群)か、起こさなかった(非裂開群)かでグループ分けし、研究中の腸切開の総回数に対する裂開率を算出した。腸の裂開に関係する変数を確認するため、一変量解析を実施した。
結果:247頭中8頭(3.2%)は術後敗血症性腹膜炎となり、全8頭は生存して退院した。切開部の裂開は247頭中5頭(2.0%)の腸切開後に発生し、裂開群の2頭のみが生存して退院できなかった。入院期間は、非裂開群よりも裂開群の犬の方が長かった。
結論と臨床関連:この研究期間中の犬で、過去に報告された率より、腸内異物除去に対する腸切開の裂開率は低いことが示されたが、その率が低いことは、必要とされるときの腸切除よりも、腸切開を実施する理由として利用すべきではない。外科医は腸を完全に評価し、適応時にのみ腸切開を実施すべきである。(Sato訳)
■超音波検査で評価した健康犬の胃腸の運動性に対する絶食の影響
The effect of fasting on gastrointestinal motility in healthy dogs as assessed by sonography.
J Vet Emerg Crit Care. November 2017;27(6):645-650.
Jillian J Sanderson , Søren R Boysen , Jantina M McMurray , Albert Lee , Jenefer R Stillion
目的:2D超音波により検出する健康犬の胃腸(gastrointestinal)運動に対する絶食の影響を評価する
計画:前向き観察研究
場所:大学分散型獣医療研修共同体
動物:10頭の健康な飼育犬
処置:犬を通常の給餌後24時間にわたり絶食した。この最初の給餌後と24時間の絶食期間中、T=30分、6時間、12時間、24時間で胃、十二指腸、空回腸の超音波によるGI収縮を検出する2D超音波検査を実施した。それから犬には絶食24時間後に2度目の食餌を与え、30分後(T=24.5h)に超音波検査を繰り返した。各部位は各タイムポイントで2回スキャンした。各スキャンは3分間行った。結果の平均を算出し、それを3で割ることで1分間の収縮回数を割り出した。検査した各部位に対し、各時間の統計学的差を検出するためOne-way repeated measures ANOVA with post hoc Tukey's comparison testを使用した。
測定値と主要結果:T12およびT24の胃、十二指腸、空回腸の平均収縮率は、T30、T3、T6、T24.5の収縮率よりも有意に低かった(P<0.05)。T30、T3、T6、T24.5の胃、十二指腸、空回腸の平均収縮率は、互いに統計学的違いはなかった。
結論:この研究の結果は、2D超音波検査が犬のGI運動の評価に使用でき、絶食から12-24時間後の胃、十二指腸、空回腸のGI収縮率は、有意に低下することを示す。(Sato訳)
■慢性腸症と低コバラミン濃度の犬のメチルマロン酸およびホモシステイン濃度に対し経口vs非経口コバラミン補給の影響
Effects of oral versus parenteral cobalamin supplementation on methylmalonic acid and homocysteine concentrations in dogs with chronic enteropathies and low cobalamin concentrations.
Vet J. 2019 Jan;243:8-14. doi: 10.1016/j.tvjl.2018.11.004. Epub 2018 Nov 12.
Toresson L, Steiner JM, Spodsberg E, Olmedal G, Suchodolski JS, Lidbury JA, Spillmann T.
この研究の目的は、低コバラミン血症の犬において、血清メチルマロン酸(MMA)とホモシステイン(HCY)濃度に対し、非経口(parenteral:PE)vs経口(PO)コバラミン補給の影響を比較する。
血清コバラミン濃度が285ng/L(参照範囲:244-959ng/L)の犬36頭を、ブロックランダム化スケジュールを用いPO(0.25-1.0mg1日1回)あるいはPEコバラミン(0.25-1.2mg/1回注射)を投与した。血清MMAとHCY濃度は補給開始から0、28、90日目に分析した。
血清MMAあるいはHCY濃度に関し、どのタイプポイントでもPOおよびPE群の間に有意差はなかった。
血清MMA濃度(nmol/L;参照範囲415-1193)の中央値(範囲、基礎と28日目の比較したP、28日目と90日目を比較したP)は、基礎のPO群で932(556-2468)、PE群で943(508-1900)、28日目のPO群で705(386-1465、P<0.0001)、PE群で696(377-932、P<0.0001)、90日目のPO群で739(450-1221、P=0.58)、PE群で690(349-1145、P=0.76)だった。
血清HCY濃度(μmol/L;参照範囲5.9-31.9)の中央値(範囲、基礎と28日目の比較したP、28日目と90日目を比較したP)は、基礎のPO群で12.2(3.3-62.2)、PE群で8.4(3.7-34.8)、28日目のPO群で12.5(5.0-45.0、P=0.61)、PE群で8.0(3.8-18.3、P=0.28)、90日目のPO群で17.7(7.3-60.0、P=0.07)、PE群で12.4(6.3-33.1、P=0.0007)だった。
この犬のグループでは、血清MMA濃度に対し、経口および非経口コバラミン補給は同様の効果を示した。
■犬の低コバラミン濃度を正常にするための経口および非経口コバラミン補給の効果の比較:無作為化対照研究
Comparison of efficacy of oral and parenteral cobalamin supplementation
in normalising low cobalamin concentrations in dogs: A randomised controlled
study.
Language: English
Vet J. February 2018;232(0):27-32.
L Toresson , J M Steiner , P Razdan , E Spodsberg , G Olmedal , J S Suchodolski , T Spillmann
この研究の目的は、慢性腸疾患および低コバラミンの犬において非経口および経口コバラミン補給プロトコールの効果を比較することである。
2つの投与方法共に有意に血清コバラミン濃度を上昇させるだろうという仮説を立てた。
慢性腸疾患で血清コバラミン濃度<285ng/L(参照範囲244-959ng/L)の犬53頭で研究した。犬は無作為に1日1回経口コバラミン錠(1日1回体重により0.25-1.0mgシアノコバラミン)投与、あるいは非経口コバラミン(体重により0.4-1.2mgヒドロキシコバラミン)を投与した。血清コバラミン濃度は、投与開始から28±5日、90±15日目に測定した。
28日目には、全ての犬の血清コバラミン濃度は参照範囲内あるいは以上となっていた。非経口群(n=26)において、コバラミン濃度中央値(範囲)は開始時228(150-285)ng/Lで、28日目は2017(725-10009)ng/Lで、90日目は877(188-1267)ng/Lだった。経口群(n=27)において、コバラミン濃度中央値(範囲)は開始時245(150-285)ng/Lで、28日目は975(564-2385)ng/Lで、90日目は1244(738-4999)ng/Lだった。
両群において血清コバラミン濃度は、開始時と28日、28日と90日の間に有意差があった(P<0.001)。
結論として、慢性腸疾患および低コバラミン濃度の犬において、非経口および経口コバラミン補給は、共に効果的に血清コバラミン濃度を上昇させる。(Sato訳)
■猫の糞便潜血検査の感受性
Sensitivity of fecal occult blood testing in the cat.
J Feline Med Surg. June 2017;19(6):603-608.
Adam J Rudinsky, Julien Guillaumin, Chen Gilor
目的:猫の糞便潜血(fecal occult blood:FOB)検査に対する食餌性要因の影響は、過去に評価されているが、このpoint-of-care検査の分析用感受性は未だ調べられていない。この研究の主な目的は、猫のFOB検査の分析用感受性を評価することだった。
方法:5頭の猫を反復測定研究に使用した。血液の経口投与後、FOBとメレナに対し12時間毎に糞便を採取し検査した。研究に入る前の週の最初に動物タンパクフリーの食餌を全ての猫に与えた。各試験にウォッシュアウト期間を設け、連続で体重kgあたりヘモグロビンmgの血液を1.5、3、15、30、45mg/kgヘモグロビンの投与量で投与した。
結果:1.5mg/kgヘモグロビンで1頭の猫から、3mg/kgヘモグロビンで3頭の猫から、15、30、45mg/kgヘモグロビンで全5頭からFOBを検出した。30mg/kgで1頭の猫から、45mg/kgで4頭の猫からメレナを認めたが、それ以下の投与量では認めなかった。
結論と関連:15mg/kgヘモグロビンの投与(約1.5ml血液相当)は、全ての猫で陽性結果となるのに十分だった。しかし、1.5mg/kgヘモグロビンのような少量でも検出された。このように、適切な臨床状況下の猫では、FOBに良好な分析用感受性がある。(Sato訳)
■犬の出血性下痢に対するメトロニダゾールとアモキシシリン-クラブラン酸vsアモキシシリン-クラブラン酸単独の効果を評価する
Evaluating the effect of metronidazole plus amoxicillin-clavulanate versus amoxicillin-clavulanate alone in canine haemorrhagic diarrhoea: a randomised controlled trial in primary care practice.
J Small Anim Pract. July 2018;59(7):398-403.
DOI: 10.1111/jsap.12862
V Ortiz , L Klein , S Channell , B Simpson , B Wright , C Edwards , R Gilbert , R Day , S L Caddy
目的:重度出血性下痢で一次診療に来院する犬において、アモキシシリン-クラブラン酸療法へのメトロニダゾールの追加の利点を調査する
素材と方法:出血性下痢の継続が3日以内で一次診療動物病院に来院し、静脈輸液も必要とする犬の前向き無作為化盲検。症例にはアモキシシリン-クラブラン酸、静脈輸液、ブプレノルフィン、オメプラゾールの標準支持療法に加え、メトロニダゾールあるいは生食を無作為に投与した。治療効果は入院中に毎日疾患の重症度のスコアを付けて測定した。
結果:34症例が試験を完遂した。治療群の入院期間(メトロニダゾールを投与した犬の平均は29.6時間で、コントロールは26.3時間)や毎日の臨床スコアに有意差はなかった。
臨床意義:重度出血性下痢の犬の治療で、アモキシシリン-クラブラン酸へのメトロニダゾールの追加は必須ではないことをこの研究は強く示唆する。(Sato訳)
■結腸あるいは回盲結腸捻転の犬13例(2005-2016)
Colonic or ileocecocolic volvulus in 13 dogs (2005-2016).
Language: English
Vet Surg. August 2017;46(6):851-859.
Tanja Plavec , Stefan Rupp , Martin Kessler
目的:犬の結腸あるいは回盲結腸捻転(CV/ICV)の臨床および臨床病理特性を述べる
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物CV/ICVを外科的に確認した13頭の犬
方法:医療記録からシグナルメント、病歴、臨床症状、検査結果データ、エックス線所見、治療および結果を調査した
結果:全ての症例は大型犬種の犬(体重中央値37.1kg、範囲、22.7-58.5kg)で、そのうち8頭はオス(6頭は未去勢)だった。一般的な臨床症状は嘔吐、元気消失、食欲不振、しぶりを伴う、あるいは伴わない下痢だった。全ての症例は腹部膨満、腹部疼痛あるいはその両方を伴うショックを呈した。犬はショックを治療し、臨床検査とエックス線検査を基に仮診断後、すぐに手術した。3頭は手術中に安楽死し、10頭は退院し、そのうち9頭は術後の追跡調査6-70ヶ月(中央値24か月)で生存していた。
結論:結腸および回盲結腸捻転は、腸間膜捻転よりも予後が良いと思われる珍しい病気である。疑われる疾患は迅速な開腹が勧められ、予後はまずまずである。(Sato訳)
■ボタン電池を飲んで回結腸穿孔を起こした犬の1例
Ileocolic Perforation Secondary to Disk Battery Ingestion in a Dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 2018 Sep/Oct;54(5):e54501.
DOI: 10.5326/JAAHA-MS-6606
Lauren Meltzer
7歳メスの避妊済みシーズを、4日におよび食欲不振で評価した。来院前に胃腸炎の保存的治療を他の獣医師に2日間受けていた。腹部エックス線写真で、2つの丸いディスク型の金属の不透明度を持った異物が、漿膜の詳細を失った腸内に見られた。
試験的開腹を実施し、少量の腹水と共に回結腸移行部の腸に円周状の全層壊死と穿孔が見られた。2つのボタン電池が大腸内に触手され、直腸から絞り出した。合併症もなく回結腸の吻合を行った。しかし、その犬は抜管後すぐに心肺停止に陥り死亡した。
ボタン電池は、粘膜面に長く接触すると、電流の発生により重度組織壊死を起こす能力がある。消化管穿孔や死に至る可能性を防ぐために即座の除去が推奨される。(Sato訳)
■犬と猫の回結腸移行部切除:18症例
Ileocolic junction resection in dogs and cats: 18 cases.
Language: English
Vet Q. December 2017;37(1):175-181.
Yordan Fernandez , Mayank Seth , Daniela Murgia , Jordi Puig
犬や猫の回結腸移行部切除とその長期フォローアップに関する獣医の文献は限られている。大きな50%以上の小腸あるいは大腸切除をしないで、回結腸移行部切除を行った犬と猫の一集団において、長期予後を評価する。
回結腸移行部切除を行った犬と猫の医療記録を再検討した。経過の情報は、紹介呪医外科医への電話による聞き取りあるいは、電子メールの対応で入手した。
犬9頭と猫9頭を含めた。回結腸移行部切除の最も多い原因は、犬の腸重積(5/9)と猫の腫瘍(6/9)だった。回結腸移行部リンパ腫の2頭の犬は術後死亡した。長期の情報が得られた15頭中2頭のみが軟便だった。しかし、慢性腸症が疑われた犬3頭は、低アレルギー食単独あるいは下痢の予防の薬剤治療追加の長期処置を必要とした。回結腸移行部腫瘍の猫6頭中4頭は、疾患進行の結果、安楽死となった。
回結腸移行部切除を行い、術後生存した犬と猫は軽度臨床症状あるいは臨床症状がなく、良好な長期結果が得られるかもしれないが、長期の内科管理が必要かもしれない。(Sato訳)
■29頭の猫の皮膚ステープル単独および縫合との組み合わせによる消化管切開の閉鎖
Closure of gastrointestinal incisions using skin staples alone and in combination
with suture in 29 cats.
J Small Anim Pract. May 2018;59(5):281-285.
DOI: 10.1111/jsap.12834
Z Schwartz , B R Coolman
目的:猫の消化管切開の閉鎖に対し、皮膚ステープルのみ、および縫合との組み合わせの使用を報告することと、その結果を述べる
素材と方法:2001年から2016年の間に二次診療の1施設において、腸の術創の閉鎖に皮膚ステープル単独あるいは縫合との組み合わせを用い、胃切開、空腸切開、空腸あるいは結腸吻合を行った猫の回顧的研究。シグナルメント、臨床症状の持続期間、手術に対する適応、診断、血液および生化学値、手術時間、方法、合併症と結果に関するデータを集めた。全ての胃切開およびいくつかの大腸切開は、2層を用いたハイブリッド法(モノフィラメント縫合と皮膚ステープル)で閉鎖した。全ての小腸切開およびいくつかの大腸切開は、皮膚ステープルを用いた1層で閉鎖した。
結果:この研究に29頭の猫を含めた。手術の適応は、異物(14/29)、腫瘍(6/29)、特発性巨大結腸(9/29)が含まれた。全体で、29頭中26頭(<90%)は生存して退院した。1頭は術後心肺停止、2頭はオーナーの意向で安楽死となった。どの症例にも切開部離解のエビデンスはなかった。
臨床意義:猫の消化管切開の閉鎖に対し、皮膚ステープルは安全、信頼ができ、手ごろで有効である。著者らは、皮膚ステープルが猫の胃切開、大腸切除と吻合処置に有益なツールでありえることを見つけた。(Sato訳)
■慢性下痢の座りがちな犬における構築した運動プログラムの効果
Effects of a structured exercise programme in sedentary dogs with chronic diarrhoea.
Language: English
Vet Rec. March 2017;180(9):224.
H P Huang , Y H Lien
この調査の目的は、慢性下痢の座りがちな犬における構築した運動プログラムの効果を評価することだった。
22頭の犬を研究に組み込んだ。全ての犬に10週間プレドニゾロンを経口投与した(1mg/kg/日14日間、その後漸減投与)。プレドニゾロンを投与してから4週間後、犬を運動群とコントロール群(各11頭)に振り分けた。運動群の犬の飼育者には、構築した運動トレーニングを犬に指導する教育を行った(週3、4日の低強度から中強度の有酸素とレジスタンス運動)。
6週間の補完的運動を6週間加えたプレドニゾロン投与の10週目、運動群においてCanine
Inflammatory Bowel Disease Activity Index (CIBDAI)スコアは有意に低下していた(運動プログラム開始時の8.8±1.5から2.4±1.5;P<0.001);コントロール群においてそのような変化は観察されなかった(9.2±0.9から9.2±1.1)。10週間の研究期間終了時、群間のCIBDAIスコアに有意差があった(P<0.001)。運動プログラムは全6つのCIBDAIパラメーターに有意に影響した;体重(P<0.001、補正r(2)=0.722)は最も影響を受けた。
慢性下痢の座りがちな犬において、構築した運動プログラムは臨床症状に対し、ポジティブな効果をもたらすかもしれない。(Sato訳)
■指ブジー挿入による炎症性直腸狭窄の治療:9症例の回顧的研究
Treatment of inflammatory rectal strictures by digital bougienage: a retrospective study of nine cases.
Language: English
J Small Anim Pract. May 2017;58(5):293-297.
A Lamoureux , C Maurey , V Freiche
目的:犬と猫の炎症性直腸狭窄はまれにしか報告されていない。この研究の目的は、9症例と指ブジー挿入によるそれの治療を述べる。
方法:2007年から2014年の間に便秘、排便困難あるいはしぶりで紹介され、炎症性直腸狭窄と診断された犬と猫の医療記録を、2か所の二次診療施設のデータベースから入手し、再検討した。
結果:4頭の犬と5頭の猫が組み入れ基準に合った。猫の5頭中4頭は純血の子猫だった。3頭の猫と2頭の犬は下痢の病歴があり、2頭の犬は骨を食べた過去があった。指による直腸検査で、全ての症例に直腸狭窄があった。全4頭の犬と2頭の猫の病理検査で、リンパ球プラズマ細胞性浸潤が見られた。全症例は指ブジー挿入で治療した。全ての猫と2頭の犬にオオバコが豊富な餌を処方した。追跡調査の情報が得られた全8頭で臨床症状の完全寛解が報告された。
臨床意義:消化管の炎症に関係する良性の直腸狭窄は、特に急性あるいは慢性下痢の後の便秘、しぶり、排便困難の鑑別診断にルーチンに含めるべきである。ここで述べた治療は単純、最少侵襲、長期において有効である。(Sato訳)
■犬のステープルを用いた機能的端々腸吻合の裂開に対するリスクファクター:53症例(2001-2012)
Risk Factors for Dehiscence of Stapled Functional End-to-End Intestinal
Anastomoses in Dogs: 53 Cases (2001-2012).
Vet Surg. January 2016;45(1):91-9.
Kyle A Snowdon; Daniel D Smeak; Sharon Chiang
目的:犬のステープルを用いた機能的端々吻合(SFEEA)の裂開に対するリスクファクターを確認する
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:腸切除を必要とする犬(n=53)
方法:腸切除を行った全ての犬(2001-2012)に対し、1施設のカルテを再検討した。犬の小腸の分節間、あるいは小腸と大腸の機能的端々吻合を作成するのに胃腸(GIA)および胸腹部(TA)ステープラー器具を使用した時の手術を含めた。術前、術中、術後ファクターに関する情報を記録した。
結果:吻合の裂開は53症例中6症例(11%)に見られ、死亡率は83%だった。裂開に有意に関係した唯一の術前ファクターは炎症性腸疾患(IBD)の存在だった。裂開に有意に関係した外科的ファクターは、低血圧期間の存在、持続時間、回数および吻合の部位で大腸に関与する吻合において裂開の確率はより高かった。
結論:犬のステープルを用いた機能的端々吻合後の腸の吻合裂開に対し、IBD、吻合の部位、術中低血圧はリスクファクターである。過去に示唆されたリスクファクター(低血清アルブミン濃度、術前敗血症性腹膜炎、腸管異物)は、この研究で確認できなかった。(Sato訳)
■外科的に治療した大腸捻転と小腸捻転の比較(2009-2014)
Comparison of Surgically Treated Large Versus Small Intestinal Volvulus
(2009-2014).
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jul-Aug;52(4):227-33.
Elizabeth Davis , Forrest I Townsend , Julie W Bennett , Joel Takacs , Christopher P Bloch
この回顧的研究で2009年10月から2014年2月の間に、外科的に治療した大腸捻転と小腸捻転の犬の結果を比較した。
合計15頭が研究基準に合い、試験的回復を行った。研究期間中、9頭が大腸捻転と診断され、全て外科的に整復した。全ての犬は退院した。電話で聞き取り調査ができた7頭中(術後74-955日)、全て生存し順調だった。
研究期間中6頭が小腸捻転と診断された。6頭中1頭は退院した。6頭中3頭は広範囲の腸の壊死のために、手術時に安楽死された。その他3頭は、1頭が術後その日に死亡し、1頭は3日後に死亡し、1頭は730日以上生存した。
結論として大腸捻転を外科的に整復した犬の結果はすばらしく、それに比べて小腸捻転の犬の結果は悪いということだった。生存して退院した大腸捻転の犬は100%なのに対し、小腸捻転は16%だった。(Sato訳)
■猫の消化管の好酸球性硬化性繊維増殖症:13症例と新興臨床的概念の概要
Feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia: 13 cases and
review of an emerging clinical entity.
J Feline Med Surg. May 2015;17(5):392-404.
Michael Linton; Judith S Nimmo; Jacqueline M Norris; Richard Churcher; Sophia Haynes; Agnieszka Zoltowska; Sunishka Hughes; Naomi S Lessels; Miranda Wright; Richard Malik
目的:猫の消化管の好酸球性硬化性繊維増殖症(FGESF)は、近年になって述べられている猫の胃や腸と、流れる領域リンパ節を侵す炎症性疾患である。この研究は、オーストラリア(11)とUK(2)で新しく紹介された13症例の臨床および検査データである。
知見:この疾患は中年齢の猫に最もよく見られた(中央値7歳;四分位数間領域5-9歳)。ラグドール(7/13)、オス(9/13)が多く見られた。一般に猫は長く嘔吐および/あるいは下痢の病歴があった。病変は典型的に、大きい、硬い、痛みがない、容易に触知でき、幽門あるいは回盲結腸移行部に最もよく見られた。病変は超音波検査および開腹時あるいは検死時の切開で不均一だった。マスは成熟コラーゲン束で出来た内部索により、細針吸引生検で硬く、’砂混じり’のようだった。培養あるいは従来の鏡検および特殊染色パネル、および/あるいは蛍光in
situハイブリダイゼーション(FISH)でマス内に一般的に細菌が検出された(9/13)が、多くの検出には複数の組織切片で念入りな精査が必要だった。異なる症例の中で一貫した細菌の形態は認識できなかった。
結果:猫は細胞減量(減量術およびバイオプシー、から完全な外科的切除)、免疫抑制療法および抗菌剤などの種々の組み合わせで治療した。多くの猫の結果は悪く、遅い診断と最適下限の管理の組み合わせが原因だった。今後の症例で、議論でまとまった提案が臨床結果や長期生存性を改善するだろうと期待する。(Sato訳)
■犬と猫における消化管内視鏡の生検から得られる細胞診サンプルの診断的価値
Diagnostic contribution of cytological specimens obtained from biopsies during gastrointestinal endoscopy in dogs and cats.
J Small Anim Pract. 2016 Nov 9. doi: 10.1111/jsap.12597.
Ruiz G, Verrot L, Laloy E, Benchekroun G.
目的 本研究の目的は、imprint法またはsquash法を用いた内視鏡サンプルから得た細胞診サンプルを比較し、診断にたどりついた組織検査結果と比較することで細胞診の価値の可能性について評価することである。
材料と方法 慢性の消化器症状のために内視鏡検査を行った18頭の犬と5頭の猫を前向きに検討した。Imprintおよびsquashサンプルは、一つの生検から採取し、解析した。細胞診と組織検査の比較は、コーエンの係数を用いて行った。
結果 細胞診の評価の適切なサンプルは、squash法でより多く得られた(96%の症例、imprint法であると68%)。細胞診で得た診断を、ゴールドスタンダードである組織検査で得た診断と比較した。65%の症例においてsquash法で同じ診断が得られた。さらに、細胞診は、胃のらせん菌と肥満細胞の同定については組織検査を補完するものと考えられた。
臨床的意義 この結果は、消化管の内視鏡サンプルから得られたsquash細胞診は、犬と猫における組織検査に意味のあるさらなる情報を与える可能性があることを示唆している。(Dr.Taku訳)
■非腫瘍性の慢性小腸性疾患を伴うタンパク漏出性腸症の犬における血栓塞栓症
Thromboembolism in Dogs with Protein-Losing Enteropathy with Non-Neoplastic Chronic Small Intestinal Disease.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Nov 14. [Epub ahead of print]
Jacinto AM, Ridyard AE, Aroch I, Watson PJ, Morrison LR, Chandler ML, Acvim D, Kuzi S.
タンパク漏出性腸症(PLE)の犬は、血栓塞栓症になるリスクが高いといわれている。しかし、実際にそうした犬における血栓塞栓症の報告はほとんどない。
多施設の回顧的観察研究によって、非腫瘍性の慢性小腸性疾患の二次性のタンパク漏出性腸症の8頭の犬に血栓塞栓症
(TE)が認められた。血栓塞栓症が生じたときに、7頭はPLEのコントロールがうまくいっていなかった。6頭においては肺血栓塞栓症(PTE)が生じたが、1頭においては脾静脈の血栓、もう一頭では脾静脈と大動脈のTEが生じた。PTEの生じた6頭は全てなくなった。アンチトロンビン活性を測定した2頭のうち1頭において低下していた。血清コバラミン濃度と葉酸濃度を3頭において測定し、コバラミンは全頭において正常以下であった。2頭において血清マグネシウム濃度を測定し、両方において低値であった。
コントロールできていない慢性の小腸性疾患とPLEがある犬は、重度な生命の危険のあるTE、とくにPTEを起こすリスクがあるだろう。(Taku訳)
■慢性腸疾患の猫の幹細胞療法:概念実証研究
Stem cell therapy in cats with chronic enteropathy: a proof-of-concept
study.
J Feline Med Surg. October 2015;17(10):901-8.
Tracy L Webb; Craig B Webb
目的:慢性腸疾患の猫の現在の治療は、療法食の給餌や日々の薬剤投与などが多く、副作用の可能性やオーナーのコンプライアンスの問題を伴い、治療が失敗する症例もあるかもしれない。この研究の目的は、猫の慢性腸疾患の症例において幹細胞療法が安全で見込みのある治療かどうかを判定することだった。
方法:盲検で同種脂肪由来の猫間葉幹細胞(fMSC)を最低3か月は下痢をしている7頭の猫に使用し、同様の臨床状態の4頭の猫にはプラセボを使用した。3頭の追加の猫は同様のfMSCプロトコールで治療したが、オーナーには治療を隠さなかった。オーナーには臨床症状の特徴について、研究前と2回目のfMSCあるいはプラセボ処置の2週間後にアンケートに答えてもらった。また同様のアンケートを1-2か月後に、彼らの猫の研究群を明らかにする前にメールで調査した。研究中、fMSCあるいはプラセボ治療のほかで、食餌、サプリメントあるいは薬剤投与の変更は行わなかった。
結果:どの猫にもfMSCによる有害反応あるいは副作用は見られなかった。fMSC処置猫の7頭中5頭のオーナーは、臨床症状の有意な改善あるいは完全寛解を報告し、残り2頭のオーナーは適度だが、持続的な改善を報告した。プラセボの猫のオーナーは、変化なし、あるいは悪化を報告した。治療を隠さなかったオーナーのうち、1人は顕著な改善を報告し、1人は変化なしと報告し、1人は追跡不可能となった。
結論と関連:同種脂肪由来のfMSC療法は、慢性腸疾患の猫に対し安全で有効な治療の可能性があると思われるが、それらの予備的結果は、有意な追跡研究を必要とする。(Sato訳)
■犬の腹部外科手術後の空腸造瘻チューブフィーディングの評価
Evaluation of jejunostomy tube feeding after abdominal surgery in dogs.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2016 May 27. doi: 10.1111/vec.12494. [Epub ahead of print]
Tsuruta K, Mann FA, Backus RC.
目的:術後の空腸内フィーディングの使用を紹介することと、術前血漿アルブミン濃度と空腸内フィーディングに関連した合併用および臨床結果との関連を評価すること
計画:前向き観察研究
場所:大学獣医教育病院
動物:64頭の犬
処置:腹部外科手術中の空腸造瘻チューブ設置
測定値と主要結果:ほとんどの犬は生存した(81%)。空腸内フィーディング期間の中央値は2.1日(範囲:1-16日;n=64)だった。空腸内フィーディングにより計算した安静時エネルギー必要量を投与された犬は3頭(5%)だけだった。空腸内に給餌された犬(58/64)のうち、ほとんどの犬(55/58)は術後24時間以内に空腸内フィーディングを受けていた。空腸フィーディングチューブによるエネルギー供給は合併症がある犬とない犬(P=0.592)、あるいは生存しなかった犬と生存した犬(P=0.298)の間で差がなかった。
35頭の犬は、空腸内フィーディングと並行して自発的に食べた。術後期間の50%以内で空腸内フィーディングと並行して自発的に食べた犬のうち、多く(74%)は生存して退院した。合併症は22%の犬に見られ、命にかかわるようなものはなかった;消化管症状が最も一般的だった。
術前の血漿アルブミン濃度において、合併症のある犬とない犬(P=0.432)、および生存しなかった犬と生存した犬(P=0.727)の間に違いはなかった。糞便スコアにおいて使用した2つの流動食の間に有意差はなかった(FormulaV Enteral Care HLP と CliniCare Canine/Feline;P = 0.927)。
結論:腹部外科手術中の空腸造瘻チューブ設置は、研究施設で使用される確率が高かった。合併症はほとんど見られず、命にかかわるようなものもなかった。空腸内フィーディングは術後早期に開始され、自発的経口摂食の開始を妨げることはなかった。空腸内フィーディングの犬において糞便スコアは高く、糞便の硬さの客観的判定に対し有効だった。(Sato訳)
■犬と猫における内視鏡検査に関連した消化管穿孔
Gastrointestinal perforation associated with endoscopy in cats and dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Sep-Oct;50(5):322-9. doi: 10.5326/JAAHA-MS-5727.
Irom S, Sherding R, Johnson S, Stromberg P.
消化管内視鏡は、消化器症状を呈する犬と猫において侵襲性が極めて低い診断方法である。この回顧的研究は、消化管内視鏡検査によって二次的に穿孔したと診断された6頭の猫と1頭の犬の症例に関する記録を調査した。17年の間(1993年から2010年)において内視鏡検査を実施した1.6%の猫と0.1%の犬において消化管穿孔が認められた。消化管穿孔のリスクがあるかどうかについて予測するのは難しかったが、本研究において示唆された可能性のあるリスク因子は、猫においては小腸の浸潤性病変であり、犬と猫の両方においては消化管潰瘍がすでに存在していたことであった。全体として、消化管内視鏡は、消化管穿孔の発生が低いと考えられた。(Dr.Taku訳)
■犬の腸吻合で手による縫合とステープル縫合における裂開の頻度
Frequency of Dehiscence in Hand-Sutured and Stapled Intestinal Anastomoses in Dogs.
Vet Surg. January 2016;45(1):100-3.
Jason R Duell; Kelley M Thieman-Mankin; Mark C Rochat; Penny J Regier; Ameet Singh; Jill K Luther; Michael B Mison; Jessica J Leeman; Christine M Budke
目的:犬の腸吻合で手による縫合とステープルによる縫合の裂開の頻度を判定することと、吻合方法による手術時間を比較すること
研究計画:回顧的コホート研究
サンプル集団:手による腸吻合(n=142)あるいはステープルによる腸吻合(n=72)を行った飼い犬214頭
方法:2006年3月から2014年2月の期間に、腸切除と吻合を行った犬を5つの紹介施設のカルテから検索した。個体群統計データ、術前の敗血症性腹膜炎の有無、術式(手による縫合あるいはステープル)、手術時間、術者(研修医v.s.教職医メンバー)、外科介入に対する指標、切除および吻合の解剖学的部位、術後に裂開に気付いたかを調べた。計算した頻度をまとめ、比率、95%信頼区間(CI)で、継続結果を平均(95%CI)で示した。吻合方法で比較を行った。
結果:全体で、205頭中29頭(0.14、95%CI、0.10-0.019)は裂開し、手による吻合を行った134頭中21頭(0.16、0.11-0.23)とステープルによる吻合を行った71頭中8頭(0.11、0.06-0.21)が含まれた。縫合方法間の裂開の頻度に有意差はなかった(χ(2)、P=0.389)。手による吻合を行った場合の平均(95%CI)手術時間は140分(132-147分)で、ステープルによる手術は108分(99-119分)で有意差があった(t検定、P<0.001)。
結論:犬の腸吻合で手とステープルの縫合方法の間に裂開頻度の有意差はなかったが、腸の閉鎖でステープルを使用する方が手術時間が有意に短かった。(Sato訳)
■慢性の小腸性疾患を疑う猫における組織学的な異常の罹患率と潜在的な要因:300症例(2008-2013年)
Prevalence and underlying causes of histologic abnormalities in cats suspected to have chronic small bowel disease: 300 cases (2008-2013).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Sep 15;247(6):629-35. doi: 10.2460/javma.247.6.629.
Norsworthy GD, Estep JS, Hollinger C, Steiner JM, Lavallee JO, Gassler LN, Restine LM, Kiupel M.
目的 臨床症状と超音波検査所見に基づいて、慢性の小腸性疾患があると疑った猫において病理組織学的な異常の罹患率を明らかにし、これらの猫において最も一般的なもとにある原因を同定し、慢性の小腸性疾患の様々な原因を鑑別する方法を比較することである。
研究デザイン 回顧的症例シリーズ
動物 慢性小腸性疾患があると疑う300頭の飼い猫
方法 慢性嘔吐、慢性小腸性下痢、体重減少のために検査をうけ、さらに小腸壁の肥厚が超音波検査によって明らかとなった猫についてカルテの記録を調査した。全層生検サンプルを開腹手術によって小腸の3箇所以上から採取でき、生検サンプルで組織学的評価を実施し、必要に応じて診断を得るために、免疫組織化学染色や抗原受容体の再構成のPCRの検査を実施した。
結果 慢性小腸性疾患は300例中288例(96%)の猫において診断された。最も一般的な診断は、慢性腸炎(150例)および腸管のリンパ腫であった(124例)。
結論と臨床的意義 結果によると、慢性小腸性疾患の臨床症状をもち小腸の肥厚が超音波検査によって明らかである猫では高率に病理組織的な異常をもつことを示唆していた。さらに、全層生検サンプルは、腸管リンパ腫と慢性腸炎を見分けるのに有用であったが、超音波検査や臨床病理学的な検査のみでそれらを見分けることは可能ではなかった。(Dr.Taku訳)
■十二指腸の内視鏡検査生検による猫の炎症性腸疾患と消化器型リンパ腫の鑑別
Differentiating feline inflammatory bowel disease from alimentary lymphoma in duodenal endoscopic biopsies.
J Small Anim Pract. 2016 Jun 1. doi: 10.1111/jsap.12494.
Sabattini S, Bottero E, Turba ME, Vicchi F, Bo S, Bettini G.
目的 本研究は、十二指腸の内視鏡検査生検において猫の炎症性腸疾患と小細胞性消化器型リンパ腫を鑑別する際、顕微鏡検査と分子生物学的検査の一致について評価することである。
方法 77頭の慢性腸症の猫について、4つの異なる診断方法(細胞診、病理組織学検査、免疫染色、クローナリティ検査)を連続して用いた。異なる診断方法間の一致について計算し、転帰を予測する最も信頼できる方法を評価するために、生存データを得た。
結果 77症例を用いた。多変量生存解析で、クローナリティによるリンパ腫の診断のみが有意に、低い生存率、腸症関連死のリスクが2.8倍高いことと関連していた。クローナリティと他の検査を比較すると、特異性は高く(87-97%)、細胞診、病理組織、免疫染色に対しての感度は、それぞれ36.8%, 39.5%, 63.2%であり、全正確性は、62.3%, 68.8%, 80.5%であった。
臨床的意義 クローナリティ検査は、内視鏡生検の小細胞性リンパ腫の正確性と早期診断の可能性を一貫して増加させる。消化器型リンパ腫を病理組織学的に疑うことは、たとえクローナリティによって確定できなかったとしても、リンパ腫の初期の状況を表しているのかもしれないし、のちにリンパ腫に進行するかもしれないので、決して無視してはならない。(Dr.Taku訳)
■犬と猫における腸管dysbiosisの診断と解釈
Diagnosis and interpretation of intestinal dysbiosis in dogs and cats.
Vet J. 2016 Apr 25. pii: S1090-0233(16)30033-8. doi: 10.1016/j.tvjl.2016.04.011.
Suchodolski JS.
犬と猫の腸管は、細菌、真菌、ウイルスや原虫など非常に複雑な細菌叢がある。最近まで胃腸管に存在する細菌を特定する為に伝統的な細菌培養が一般的に使われていたが、腸管内に存在する大部分の嫌気性菌の特定に標準的な培養技術では不十分であるとよく認識されている。
胃腸疾患に罹患した犬と猫の腸管のdysbiosisを評価する分子方法が現在確立された。しかし、これらの方法はルーチンな診断としてはまだ広く利用されていない。急性そして慢性腸疾患における正常な共生細菌叢(例えばLachnospiraceae,
Ruminococcaceae, そして Faecalibacterium spp.)の喪失は、例えば短鎖脂肪酸や二次性胆汁酸などによる免疫調整細菌代謝における変化など代謝変化とリンクしている。これは、胃腸疾患の病態生理学におけるdysbiosisの重要性をハイライトする。
特定の細菌群のための分子に基づく測定、微生物のdysbiosis指数の計算および微生物の機能的な代謝産物のための測定の開発は、現在、dysbiosisの評価を助けるために進行中である。これらは胃腸疾患の病態生理のよりよい理解となり、dysbiosisの新しい診断的および治療的アプローチへとも導かれるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■短毛および長毛の家猫において食餌中線維量の14日後の糞便への毛の排泄に対する影響
Influence of the dietary fibre levels on faecal hair excretion after 14 days in short and long-haired domestic cats
Vet Med Sci . July 2015;1(1):30-37. 21 Refs
毛玉は猫において一般的な問題で、腸閉塞を起こすかもしれない。食餌中線維は、毛の糞便への排泄を刺激するために推奨されている。
この研究の目的は、短毛および長毛(LH)の家猫において、毛の糞中排泄に対するオオバコおよび異なる量の総食餌中線維(6%vs.11%vs.15%TdF)の影響を評価することだった。
21頭の成猫を3つのパネルに振り分けた:排出パネル、短毛(SH)および長毛(LH)パネル。排出パネルは標準化したブラッシングで研究期間を通し排泄の評価に使用した。同時に、SHとLHパネルは糞中への毛の排泄に対する食餌の影響の評価に使用した。第1相では低繊維食を与えた(食餌6、6.0%TdF)。第2相でパネルには食餌11(11%TdF)あるいは食餌15(15%TdF)を与えた。第3相では再び食餌6に戻し、第4相で他の食餌と交差させた。それらの食餌は14日間猫に与えた。糞中の毛の排泄は毎日定量した。データは一般的な線形モデル法で解析した。
排泄の評価は、その研究は生え変わりの季節の間に起こらなかったことを示した。LHパネルにおいて、食餌11および食餌15は、コントロール食と比べてそれぞれ81%と113%糞中の毛の排泄を増やした(P<0.001)。SHパネルにおいて食餌の影響は認められなかった。
この研究は線維がLH猫において糞中の毛の排泄に影響し、オオバコの食餌および11%あるいは15%TdFの食餌が、14日と排泄期間で毛玉形成を最小にするかもしれないと示唆する。SH猫において11%と15%繊維量は糞中の毛の排泄に影響しなかった。
これは排泄シーズン以外で、あるいは研究期間が短かったために摂取した毛の量が少なかったためと説明できた。(Sato訳)
■犬と猫における急性と慢性の胃腸管の炎症の微生物の変化
Microbiota alterations in acute and chronic gastrointestinal inflammation of cats and dogs.
World J Gastroenterol. 2014 Nov 28;20(44):16489-97. doi: 10.3748/wjg.v20.i44.16489.
Honneffer JB, Minamoto Y, Suchodolski JS.
腸内微生物叢は、胃腸に生息する生きている微生物(細菌、真菌、寄生虫そしてウイルス)の集合である。新規の細菌同定アプローチによって犬と猫の胃腸の微生物はかなり複雑なエコシステムであるヒトと似ていることが明らかになった。
犬と猫の研究で炎症性腸疾患(IBD)など急性と慢性の胃腸疾患は、小腸における微生物と糞便の微生物コミュニティーの変化が関連することが証明された。これらの変化が一般的にIBD患者で観察されるdysbiosisもしくは腸炎の動物モデルと似ていることは興味があり、腸管の炎症に対する微生物の反応がほ乳類の宿主のタイプを越えて保存されていることを示している。
IBDの犬や猫の先天的な免疫システムにおいて根底的な罹患率の可能性が研究によって明らかになり、さらに腸内微生物叢と宿主の健康の複雑な関係も証明された。一般的にIBDで同定される微生物の変化はファーミキューテス門とバクテロイデス門の細菌グループは減少し、プロテオバクテリア門は増加している。さらにClostridium clusters XIVa と IV (Lachnospiraceae とClostridium coccoides サブグループなど)の多様性の減少がIBDと関連しており、これらの細菌グループが胃腸の健康維持に重要名役割を果たしていることを示している。
犬と猫の腸におけるdysbiosisと関連した機能変化を評価することが更なる研究で期待される。(Dr.Kawano訳)
■急性下痢の犬における微生物のdysbiosistと代謝性変化の特徴
Characterization of microbial dysbiosis and metabolomic changes in dogs with acute diarrhea.
PLoS One. 2015 May 22;10(5):e0127259. doi: 10.1371/journal.pone.0127259. eCollection 2015.
Guard BC, Barr JW, Reddivari L, Klemashevich C, Jayaraman A, Steiner JM, Vanamala J, Suchodolski JS.
下痢の急性発症の犬における腸のdysbiosisの代謝性の結果に関して利用できる情報は少ない。
この研究の目的は、健康の犬(n=13)と急性下痢の犬(n=13)における血清と尿中の代謝物と同様に糞便微生物、糞便中の短鎖脂肪酸(SCFAs)の濃度を評価することであった。
糞便中の微生物、短鎖脂肪酸(SCFAs)そして血清/尿代謝産物プロファイルは16s rRNA遺伝子、 GC/MSそしてUPLC/MS と HPLC/MSを使った非標的そして標的代謝物アプローチによって特徴付けた。species richness、chao1 とShannon index (それぞれp=0.0218, 0.0176,そして 0.0033)に関して急性下痢の犬では明らかに少ない細菌の多様性が観察された。
急性下痢の犬は健康な犬に比べて明らかに異なる微生物のコミュニティーであった(unweighted
Unifrac distances, ANOSIM p=0.0040)。バクテロイデス、フィーカリバクテリウムそしてルミノコッカス科の未分類属は少なかったが、クロストリジウム属は急性下痢の犬で多く見られた。糞便中のプロピオン酸濃度は急性下痢の犬では明らかに減少しており(p=0.0033)、フィーカリバクテリウムの減少と関連していた(ρ=0.6725,
p=0.0332)。微生物の予測された機能遺伝子含量(PICRUSt)で急性下痢の犬においてメチル基受容走化性タンパク質と同様にトランスポサーゼ酵素に関する遺伝子が多く見られた。キヌレン酸の血清濃度と2-methyl-1H-indole
と5-Methoxy-1H-indole-3-carbaldehydeの尿中濃度は急性下痢で明らかに減少していた(それぞれp=0.0048,
0.0185, and 0.0330)。
これらの結果から急性下痢の犬の糞便のdysbiosisの存在は全身性の代謝状態の変化と関連することが証明された。(Dr.Kawano訳)
■犬の消化管におけるヒスタミンレセプター発現
Histamine Receptor Expression in the Gastrointestinal Tract of Dogs.
Anat Histol Embryol. 2016 Feb 11. doi: 10.1111/ahe.12229.
Schwittlick U, Junginger J, Hahn K, Habierski A, Hewicker-Trautwein M.
ヒスタミンは4つの異なるヒスタミンレセプター(H1RからH4R)を経て作用する消化管機能を含む多くの生理学的プロセスの重要なメディエーターである。
ヒスタミン濃度の上昇とHRメッセンジャーリボ核酸(mRNA)の増加は、過敏性腸症候群やアレルギー性腸疾患のような消化管障害の人で示されている。
犬のヒスタミンレセプター(HR)の分布に関する知識に限界があるため、この研究の1つの目的は、免疫組織化学を用いた蛋白レベルで、犬の消化管におけるヒスタミン1レセプター(H1R)、ヒスタミン2レセプター(H2R)、ヒスタミン4レセプター(H4R)の発現を調査することだった。
ヒスタミン1レセプター、H2R、H4Rは上皮、間葉系、神経および免疫細胞を含む犬の消化管に広範囲に発現した。また、in
situハイブリダイゼーションは犬のH4R mRNAの検出に確立された。
結果は、H4R mRNAが調査したほぼ全ての犬の十二指腸と結腸の腸細胞、固有層免疫細胞、粘膜下神経叢の存在することを示した。
犬の腸のHRの重要性を明らかにし、犬の炎症性消化管障害に対するそれらの潜在的影響を調査する根拠を指摘する。(Sato訳)
■慢性腸症および低コバラミン血症の犬におけるコバラミンの経口補給
Oral Cobalamin Supplementation in Dogs with Chronic Enteropathies and Hypocobalaminemia.
J Vet Intern Med. 2015 Dec 9. doi: 10.1111/jvim.13797.
Toresson L, Steiner JM, Suchodolski JS, Spillmann T.
背景 コバラミン欠乏は、犬の慢性腸症 (CE)と関連していることが多く、現在の治療プロトコールは非経口の補給を推奨している。人においては、コバラミンの経口と非経口の投与は同等の効果であるという報告がいくつかある。
目的 経口のコバラミン補給がCEと低コバラミン血症の犬においてコバラミン濃度を正常化することができるかどうかを回顧的に評価する。
動物 CEと低コバラミン血症がある様々な症状をもつ飼い犬51頭
材料と方法 電子化されたデータに基づいた回顧的研究によって、スウェーデンのHelsingborgのEvidensia Specialist Animal Hospitalで2012年1月から2014年3月の間に治療された犬を検索した。組み入れ基準は、CEの症状がある犬、最初の血清コバラミン濃度 270ng/L以下 (基準範囲 234-811ng/L)およびコバラミン錠による経口治療を行っていることであった。追跡のためのコバラミン濃度は、持続的に経口のコバラミン補給を開始してから20-202日で測定した。
結果 経口のコバラミン補給によって全ての犬が正常のコバラミン値になった。治療後の血清コバラミン濃度の上昇の平均値は794±462 ng/Lであった。血清コバラミン濃度は、元の値(平均 223±33 ng/L)と比較して投与後には有意に上昇していた(平均 1017±460 ng/L; P<0.0001)。
結論と臨床的重要性 この結果から、経口のコバラミン補給は、CEの犬において血清コバラミン濃度を正常にするのに効果的であることが示唆された。日常的に補給に対して経口補給を推奨するには、非経口と経口のコバラミンで治療された犬の細胞のコバラミンの状況を比較する前向き研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■好酸球性腸炎の猫の臨床病理および超音波所見
Clinicopathological and ultrasonographic features of cats with eosinophilic
enteritis.
J Feline Med Surg. December 2014;16(12):950-6.
Samuel Tucker; Dominique G Penninck; John H Keating; Cynthia R L Webster
猫の好酸球性腸炎(EE)は特徴に乏しい。この研究は、消化管バイオプシーで好酸球性炎症の組織学的所見がある猫において、臨床および超音波検査所見を回顧的に評価した。
バイオプシー実施の48時間以内に腹部超音波検査を実施し、外科(10)あるいは内視鏡(15)での消化管バイオプシーで組織の好酸球増加が見られた25頭の猫を研究した。
病歴、臨床症状、臨床病理および腹部超音波所見を検討した。1人の病理学者が腸管バイオプシーを評価し、好酸球浸潤の程度をもとに2群に分けた:軽度(好酸球10個未満/強拡大、11/25頭)あるいは中程度/顕著(10個以上/強拡大、14/25頭)。前者はわずかな好酸球浸潤を伴う原発性リンパプラズマ細胞性あるいはリンパ球性炎症性腸疾患(LPE)、後者はEEと考えた。シグナルメント、病歴、臨床症状は全ての猫で同じようなものだった。EEの14頭中6頭のみが腸の肥厚を触知できた。EEの猫の顕著な臨床病理の特徴は末梢好酸球増加の存在のみだった(6/14)。超音波検査で、LPEの猫と比べた時、EEの猫は平均空腸壁厚がより大きく(3.34mm±0.72mm
vs 4.07mm±0.58mm)、筋層肥厚の発生が増えていた(1/11 vs 11/14)。
結論として、慢性の腸管症状のある猫において、好酸球性腸炎の存在に対するバイオマーカーとして顕著な小腸筋層の超音波所見、触知可能な小腸の肥厚、末梢好酸球増加があげられる。(Sato訳)
■転移性腫瘍に似た猫の消化管好酸球性硬化性繊維増殖症の1症例
A case of feline gastrointestinal eosinophilic sclerosing fibroplasia mimicking
metastatic neoplasia.
N Z Vet J. November 2014;62(6):356-60.
J S Munday; A W Martinez; M Soo
症例病歴:7歳の猫が3か月にわたる散発性嘔吐、食欲低下、体重減少を呈した。
臨床所見:触診で大きな腹部中央のマスが分かり、その猫は顕著な好酸球増加だった。その後の安楽死までの7週でさらに体重減少は進行した。
病理所見:検死では結腸ともう一つ幽門に壁内の3cm径の硬い白いマスを認めた。腸間膜および前縦隔リンパ節は硬く、蒼白で拡大していた。
病理組織検査で、腸とリンパ節内にコラーゲンの帽状組織と主に好酸球浸潤が厚く密に取り巻く壊死病巣が見られた。肝臓にも顕著な好酸球浸潤が見られた。
診断:病変は消化管好酸球性硬化性繊維増殖症(FGESF)に一致した。
臨床関連:これは1頭のニュージーランド猫におけるFGESFの最初の報告で、FGESFの最初の病変は腹部外の組織で観察されている。腸の腫瘍はFGESFと臨床的に同一の可能性があり、病理組織学的な鑑別が必要である。
エビデンスは、消化管好酸球性硬化性繊維増殖症は腸腫瘍よりも好ましい予後をとると示唆する。(Sato訳)
■炎症性腸疾患の犬の治療に対する同種脂肪組織由来間葉系幹細胞の安全性と効果について:臨床的および検査の結果
Safety and efficacy of allogeneic adipose tissue-derived mesenchymal stem cells for treatment of dogs with inflammatory bowel disease: Clinical and laboratory outcomes.
Vet J. 2015 Aug 7. pii: S1090-0233(15)00327-5. doi: 10.1016/j.tvjl.2015.08.003.
Perez-Merino EM, Uson-Casaus JM, Zaragoza-Bayle C, Duque-Carrasco J, Marinas-Pardo L, Hermida-Prieto M, Barrera-Chacon R, Gualtieri M.
間葉系幹細胞(MSCs)は、実験的な結腸炎において免疫調節および抗炎症効果が証明されており、クローン病と潰瘍性大腸炎の人において臨床的な効果が期待されている。
本研究の目的は、炎症性腸疾患 (IBD)の犬において脂肪組織由来MSC (ASC)療法の安全性と実現可能性を明らかにすることである。
IBDと確定診断された11頭の犬に対して、ASC(2x10^6 cells/kg)を1回静脈内投与した。結果の評価は、治療開始後42日の時点において、C反応性蛋白(CRP)、アルブミン、葉酸、コバラミン濃度の正常化だけではなく、有用な臨床的炎症性腸疾患活動指標 (CIBDAI)と犬慢性腸症臨床活動性インデックス(CCECAI)がどの程度減少するかという点についての臨床的な反応であった。治療の前後においての変化を比較するのにはWilcoxon試験を用いた。
経過観察している間に、ASC投与に対する急性の反応もなく副作用が認められた犬もいなかった。治療6週後において、CIBDAIとCCECAIは有意に減少し、アルブミン、コバラミン、葉酸濃度も実質増加した。治療前後におけるCRP濃度の減少は有意ではなかった(P=0.050)。42日の時点で、11頭中9頭において臨床的な寛解(最初のCIBDAIおよびCCECAIが75%
以上減少することと定義する)が得られた。残りの2頭の犬は、69.2%と71.4%の減少率で部分反応を示した。
結果として、同種ASCの単回IV投与は耐容性があり、重度のIBDの犬において臨床的な恩恵があるようにみえた。(Dr.Taku訳)
■慢性腸症の犬におけるビタミンDの状態と臨床転帰の関係
Association of Vitamin D Status and Clinical Outcome in Dogs with a Chronic Enteropathy.
J Vet Intern Med. 2015 Aug 26. doi: 10.1111/jvim.13603.
Titmarsh H, Gow AG, Kilpatrick S, Sinclair J, Hill T, Milne E, Philbey A, Berry J, Handel I, Mellanby RJ.
背景 慢性腸症 (CE)の犬は、健常犬よりもビタミンDがより低い。ビタミンDは、炎症性腸疾患の人において臨床的に負の転帰と関連している。
目的 CEの犬において診断時の血清25ヒドロキシビタミンD (25(OH)D)濃度と臨床的な転帰の関連を明らかにすること。
動物 2007年から2013年の間にRoyal Dick School of Veterinary Studies, Hospital
for Small Animalsに来院したCEと診断された41頭の犬
方法 回顧的研究。血清25(OH)D濃度を、追跡期間に生きている犬、CEとは関係のない理由で死亡した犬(生存犬)、CEによって死亡したか安楽死した犬(非生存犬)の間で比較した。ロジスティック回帰分析によってCEの犬の有意な死亡予測因子を決定した。
結果 CEと診断された時点での血清25(OH)D濃度は、非生存犬(15頭)において有意に低かった(非生存犬の中央値
4.36 ng/ml, 四分位値 1.6-17.0 ng/ml、生存犬(26頭)の中央値 24.9ng/ml,
四分位値15.63-39.45 ng/ml, p<0.001)。血清25(OH)D濃度は、CEの犬における死亡予測因子として有意であった(オッズ比
1.08 [95%信頼区間 1.02-1.18])。
結論 診断時の血清25(OH)D濃度は、CEの犬の転帰の予測因子である。犬の慢性腸症が起こることとその結果へのビタミンDの役割については今後の研究が期待される。(Dr.Taku訳)
■臨床症状、臨床病理学的所見および腹部超音波検査によって、猫の消化管の病理組織学的に異常な部位を予測できるか?
Can clinical signs, clinicopathological findings and abdominal ultrasonography predict the site of histopathological abnormalities of the alimentary tract in cats?
J Feline Med Surg. 2015 Feb 26. pii: 1098612X15573091.
Freiche V, Faucher MR, German AJ.
目的 消化器症状を示す多くの猫は、腸管、肝臓、膵臓に異常を併発している。通常検査として、臨床病理学的検査、画像診断、開腹手術かまたは非侵襲的な方法で生検を行う。試験開腹によって全ての臓器の生検を同時にすることが可能であるが、侵襲的であり、必要ではないかもしれない。本研究の目的は、猫の消化管臓器における病理組織学的な異常を予測するのに、予備的な臨床情報の精度を評価することである。
方法 試験開腹および外科的な生検を実施した消化器症状の38頭の猫の記録を調査した。臨床症状、臨床病理学的所見、画像診断所見、病理組織学的検査結果を調べた。
結果 病理組織学的な解析では、37の肝臓の生検において29(78%)、35の胃腸管の生検において29 (83%)の、37の膵臓の生検において17 (46%)の病変が認められた。この大部分は実際には炎症であった。腸管において病変が存在するかという点では、臨床症状は一般的にはよいマーカーではなかった。さらに、肝酵素活性が比較的肝臓における病理組織学的な異常を検出するのに特異的であった(88-100%)が、感度は低かった(11-50%)。膵特異的リパーゼの結果が陽性の猫の3頭中1頭、および膵特異的リパーゼの結果が陰性の猫の8頭中6頭において膵臓の病理組織学的な異常が認められた。腹部超音波検査は、腸管(57-100%)と肝臓(71-80%)の病理組織学的な異常に対して比較的特異性が高かったが(57-100%)、両方の臓器について感度が低かった(腸管50-80%、肝臓20-25%)。それに対して、膵臓の病変を検出するのに、超音波検査は比較的感度が高いが(50-80%)、特異性がなかった(17-22%)。
結論と意義 臨床症状、臨床病理学的および超音波検査による異常は、消化器症状の猫の肝臓と膵臓の病理組織学的な病変の正確性を欠き、どの臓器の生検をとればいいかということを確実に予測することはできない。したがって、ほぼ間違いなく猫の消化器疾患の病理組織学的な異常の部位を同定するためには試験開腹が必要となる。(Dr.Taku訳)
■肥満、全身性炎症そしてインスリン抵抗性の引き金のキープレーヤーとなる腸管微生物叢
Gut microbiota as a key player in triggering obesity, systemic inflammation and insulin resistance.
Rev Invest Clin. 2014 Sep-Oct;66(5):450-9.
Escobedo G, Lopez-Ortiz E, Torres-Castro I.
肥満関連性全身性炎症はインスリン抵抗性の発展に寄与する。肥満と全身性炎症やインスリン抵抗性との関連に影響する主な要因は完全には解明されていない。微生物叢は人間の腸管が共生する約1013-1014の細菌を含み、約1000種類の異なる細菌種が集まっている。多くの研究から腸管内細菌数の不均衡が肥満、全身性炎症、代謝機能不全という結果に繋がることが報告されている。
ここで、我々は、肥満で観察される主な細菌グループだけでなく、腸浸透性とリポ多糖に関連した内毒素血症の増加で、それらの役割の可能性を確認する。さらに、我々は、内臓脂肪組織へ浸潤し、インスリン抵抗性を誘導する能力を持つマクロファージの炎症性活性における腸管dysbiosisの役割を提案する。最後に、我々は、全身性炎症と代謝機能不全の両方を改善するプレバイオティクスやプロバイオティクスの明確な有益な使用方法を議論する。この情報は腸内細菌叢バランスを回復することによって、肥満およびインスリン抵抗性の治療に焦点を当てた新しい治療の将来の設計において有用であり得る。(Dr.Kawano訳)
■ペットショップおよび繁殖施設からの子犬の腸管病原体
Enteropathogens in pups from pet shops and breeding facilities.
J Small Anim Pract. September 2013;54(9):475-80.
S Dupont; P Butaye; E Claerebout; S Theuns; L Duchateau; I Van De Maele; S Daminet
目的:6-16週齢の子犬で健康状態にかかわらず、下痢の発症に関係する可能性のあるいくつかの腸管病原体の有無と糞便および臨床スコアを評価する
方法:子犬はペットショップおよび繁殖施設から選び、糞便および臨床スコアをつけた。糞便サンプル内の寄生虫、ウイルス、細菌の有無を判定するため標準の分離方法を使用した。大腸菌に関しては病原性遺伝子をマルチプレックスPCRで分析した。
結果:56頭の子犬を研究した。18頭は下痢ではなく、22頭は胃腸炎に関係する有意な臨床症状はなかった。サンプルは犬回虫(n=29)、ジアルジアduodenalis (n=35)、シストイソスポーラ(n=22)、大腸菌(n=47)、クロストリジウムperfringens (n=20)に陽性だった。大腸菌陽性サンプルにおいて、他の動物種で病原性に関係する遺伝子が検出された。犬回虫と糞便スコアの間に有意な正の関連が見られた。
臨床意義:ペットショップや繁殖施設からの子犬は胃腸疾患の高いリスクを持つ。さらに感染因子が糞便あるいは臨床スコアと別に存在するかもしれない。可能性のある病原性大腸菌株の識別は、下痢におけるそれらの役割を示唆し、さらなる研究を正当化するものである。(Sato訳)
■蛋白漏出性腸症の犬における血清生化学マーカー濃度と生存期間の評価
Evaluation of serum biochemical marker concentrations and survival time in dogs with protein-losing enteropathy.
J Am Vet Med Assoc. 2015 Jan 1;246(1):91-9. doi: 10.2460/javma.246.1.91.
Equilino M, Theodoloz V, Gorgas D, Doherr MG, Heilmann RM, Suchodolski JS, Steiner JM, Burgener Dvm IA.
目的 蛋白漏出性腸症(PLE)の犬における血清生化学マーカー濃度と生存期間について評価すること
デザイン 前向き研究
動物 29頭のPLEの犬と18頭の食物反応性下痢 (FRD)の犬
方法 PLEの29頭のうち18頭について、初診時の様々な血清生化学マーカーの濃度に関するデータが利用でき、FRDの犬の所見と比較した。PLEの犬について、血清生化学マーカー濃度と生存期間(初診時から死亡もしくは安楽死された日の期間)の相関について評価した。
結果 血清C反応性蛋白濃度はPLEの18頭のうち13頭、FRDの18頭のうち2頭において高値を示した。犬膵リパーゼ免疫活性の血清濃度はPLEの3頭において高値を示したが、FRDのすべての犬では基準範囲内であった。血清α1プロテイナーゼインヒビター濃度はPLEの9頭の犬およびFRDの1頭の犬において基準値の範囲の最低値よりも低かった。FRDの犬と比較して、PLEの犬においてはこれら3つの値が有意に異なっていた。血清カルプロテクチン(ラジオ免疫アッセイおよびELISAによって測定)およびS100A12濃度は高値を示したが、グループ間で有意差は認められなかった。PLEの29頭の犬のうち17頭は、この疾患によって安楽死され、生存期間の中央値は67日であった(2-2551日の範囲)。
結論と臨床的意義 血清C反応性蛋白、犬膵リパーゼ免疫活性、α1プロテイナーゼインヒビター濃度は、PLEの犬とFRDの犬において有意差が認められた。多くの初診時のバイオマーカー濃度はPLEの犬の生存期間の予測因子ではなかった。(Dr.Taku訳)
■犬の十二指腸内視鏡生検サンプルについて腸管のリンパ腫と炎症性腸疾患の鑑別
Distinguishing Intestinal Lymphoma From Inflammatory Bowel Disease in Canine Duodenal Endoscopic Biopsy Samples.
Vet Pathol. 2014 Dec 8. pii: 0300985814559398.
Carrasco V, Rodriguez-Bertos A, Rodriguez-Franco F, Wise AG, Maes R, Mullaney T, Kiupel M.
炎症性腸疾患 (IBD)および腸管のリンパ腫は、犬の腸疾患であり、異なる予後および治療が必要であるにもかかわらず、両者とも類似した慢性の消化器症状を引き起こす。これら2つの鑑別は、消化管生検の組織学的な評価に基づいて行われる。しかし、組織学のみに基づいて正確な診断を行うのは難しいことが多く、とくにIBDと腸管症関連T細胞リンパ腫 (EATL)II型である小細胞型リンパ腫と鑑別する場合、利用できるものが内視鏡サンプルだけの場合は特にそうである。
本研究の目的は、重度のIBDと腸管のリンパ腫の鑑別診断に際して、病理組織学的評価、CD3,
CD20およびKI-67の免疫染色、抗原受容体の再構成のPCR(T細胞のクローナリティ)の有用性を評価することである。
重度のIBDまたは腸管のリンパ腫の32頭の犬から内視鏡生検を評価した。もともとの診断は、HE染色切片の顕微鏡観察のみによって実施し、CD3,
CD20の免疫染色とその形態を用いて次の評価をし、クローナリティのためにPCRを用いてさらなる評価を実施した。
猫の腸管のリンパ腫と異なり、犬の小腸のリンパ腫8頭のうち6頭は、EAEL I型(大細胞型)リンパ腫であった。EATL
II型は多くなかった。にもかかわらず、犬において、上皮内のリンパ球が存在することは、PCRで確定するように、IBDとEATLを鑑別するのに重要な診断的特徴ではなかった。EATL
I型は、EATL II型やIBDの症例よりも有意に高いKi-67インデックスをもっていた。本研究の結果に基づくと、組織病理学的所見を第1段階、免疫フェノタイプとKi-67インデックスを調べることを第2段階、クローナリティのためのPCRを最終段階とした順序だった診断アプローチによって、犬における腸管のリンパ腫をIBDと鑑別するための精度が上昇する。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の縫い針の異物摂食:65症例(2000-2012)
Sewing needle foreign body ingestion in dogs and cats: 65 cases (2000-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Aug 1;245(3):302-8. doi: 10.2460/javma.245.3.302.
Pratt CL, Reineke EL, Drobatz KJ.
目的:縫い針を飲み込んだ犬と猫の臨床症状、診断検査結果、異物の位置、治療、結果の特徴を述べる
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:縫い針を飲み込んだ犬と猫65頭
方法:2000年1月から2012年2月の間に縫い針を飲み込んだため検査した27頭の犬と38頭の猫のカルテでシグナルメント、病歴、身体検査所見、診断的検査結果、目撃してからの時間と治療決定のためのエックス線検査、根治的治療、縫い針の位置、合併症、結果を再検討した。
結果:7頭(10.8%)の動物は消化管外に縫い針があり、臨床症状を起こさなかった。残りの58頭(89.2%)は縫い針を飲んだことが分かっている、あるいは飲み込んだことによる急性の臨床症状があった。食道及び胃の領域が縫い針のある最も一般的な位置(犬10/21[47.6%];猫19/37[51.4%])で、続いて咽頭(犬7/21[33.3%];猫11/37[29.7%])、小腸及び大腸(犬4/21[19.0%];猫7/37[18.9%])だった。58頭中10頭(17.2%)で消化管穿孔が見つかった(犬5/21[23.8%];猫5/37[13.5%])。食道や胃の縫い針は、犬9頭中8頭、猫19頭中18頭で内視鏡により除去できた。根治的治療を受けた動物の生存率は98.1%(51/52)だった。
結論と臨床的関連:飲み込んだ縫い針の内視鏡による除去は成功率が高く、消化管穿孔や関連する病的状態を防ぐために勧められるべきである。縫い針の飲み込みに対する根治的治療を受けた犬と猫の予後は良好だった。(Sato訳)
■消化管の線状異物と線状ではない異物を認めた499頭の犬における臨床徴候、管理、短期的な予後
Linear versus non-linear gastrointestinal foreign bodies in 499 dogs: clinical presentation, management and short-term outcome.
J Small Anim Pract. 2014 Nov;55(11):560-5. doi: 10.1111/jsap.12271.
Hobday MM, Pachtinger GE, Drobatz KJ, Syring RS.
目的 消化管の線状異物または線状ではない異物の犬の臨床症状、臨床病理学的な異常、画像所見、転帰について比較する。
方法 消化管異物と確定診断された犬の個体情報を回顧的に調査する。シグナルメント、病歴、臨床症状、臨床病理学的データ、画像所見、外科的および内視鏡による処置、入院、費用、転帰について両グループを比較した。
結果 全頭のうち176頭は線状であり、323頭は線状以外であった。線状異物の犬は、嘔吐、食欲低下、元気消失、腹部の痛みがより認められやすかった。異物が胃に引っかかり、小腸まで続き、小腸の壊死、穿孔および腹膜炎を起こし、小腸切除と吻合を必要とすることが多かった。線状異物の犬では入院期間がより長く(3日対2日)、治療費用は10%多かった。しかし、両グループとも96%の犬は生存したまま退院できた。
臨床的意義 線状異物の犬はより重度の臨床症状と消化管病理を呈し、入院の期間は長く、処置に費用がかかった。しかし全生存率は両グループで差はなかった。(Dr.Taku訳)
■犬の炎症性腸疾患における犬IBD活動性インデックス(CIBDAI)スコアと小腸粘膜の病理組織学的評価との関連
A correlation between the canine Inflammatory Bowel Disease Activity Index score and the histopathological evaluation of the small intestinal mucosa in canine inflammatory bowel disease. Pol J Vet Sci. 2012;15(2):315-21.
Rychlik A, Nieradka R, Kander M, Nowicki M, Wdowiak M, Ko?odziejska-Sawerska A.
この研究の目的は、臨床兆候の強さと犬の小腸粘膜における肉眼的そして組織学病理学的評価との関連性の程度を評価することだった。
軽度から中等度の患者において犬IBD活動性インデックス(CIBDAI)スコアの値と十二指腸粘膜の組織病理学的評価の間には統計的に明らかに関連性があるということが結果から示唆される。肉眼的評価と組織病理学的評価を比較する指標は最も小さい相関係数であった。犬IBD活動性インデックス(CIBDAI)スコアと組織病理学的スコアとの正の相関は、犬の炎症性腸疾患の軽度、中等度そして重症例のモニタリングや治療においてそれを適用する為の基盤を提供している。(Dr.Kawano訳)
■特発性炎症性腸疾患の犬においてプレドニゾンとメトロニダゾールあるいはプロバイオティクスVSL#3
strainsによる併用療法のどちらかで治療した反応における微生物学的、組織学的そして免疫調節パラメーターの比較
Comparison of microbiological, histological, and immunomodulatory parameters in response to treatment with either combination therapy with prednisone and metronidazole or probiotic VSL#3 strains in dogs with idiopathic inflammatory bowel disease.
PLoS One. 2014 Apr 10;9(4):e94699. doi: 10.1371/journal.pone.0094699. eCollection 2014.
Rossi G, Pengo G, Caldin M, Palumbo Piccionello A, Steiner JM, Cohen ND, Jergens AE, Suchodolski JS.
背景: 特発性炎症性腸疾患(IBD)は、犬において一般的な慢性腸症である。犬のIBDの治療においてプロバイオティクスの使用に関する発行された研究はない。目的は、IBDの犬において併用療法(プレドニゾンとメトロニダゾール)あるいはプロバイオティクス株(VSL#3)のどちらかの治療に対する反応を比較することであった。
方法と主な所見:IBDと診断した20頭の犬、10頭の健常犬そして3頭の安楽死した犬から採取した保管してあるコントロールの腸組織がこのオープンラベル研究で使われた。プロバイオティクス株(D-VSL#3, n=10)あるいは併用薬剤 (D-CT, n=10)をランダムにIBDの犬に投与した。60日(治療中)モニターし、完全に治療を終えた後30日で再評価した。CIBDAI (P<0.001)、十二指腸組織スコア(P<0.001)そしてCD3+細胞は両方の治療グループにおいて治療後に減少した。FoxP3+ 細胞(p<0.002) は、D-VSL#3 グループで治療後に増加したが、 D-CT グループでは増加しなかった。TGF-β+細胞は治療後に両方のグループで増加した(P=0.0043)。増加の強さはD-CTグループと比較してD-VSL#3グループの方が有意により強く増加していた。頂端結合複合体分子のoccludinとclaudin-2の変化は、治療に依存して異なった。Faecalibacterium とTuricibacterはIBDの犬で明らかに減少しており、VSL#3株で治療した後の犬ではFaecalibacterium数が明らかに増加していた。
結論:VSL#3株の保護効果はIBDの犬で観察され、有意に臨床的そして組織学的スコアが減少し、CD3+
T-細胞の浸潤も減少した。保護は調節性T細胞マーカー(FoxP3+ と TGF-β+)の増強と関連し、特にプロバイオティクスで治療したグループにおいて有意に観察され、併用療法を受けた動物では観察されなかった。長期治療後の腸内毒素症の正常化がプロバイオティクスグループで観察された。犬のIBDにおけるVSL#3の臨床効果を評価するためにより大規模な研究が期待される。(Dr.Kawano訳)
■猫における慢性小腸性疾患の診断:100症例(2008年から2012年)
J Am Vet Med Assoc. 2013 Nov 15;243(10):1455-61. doi: 10.2460/javma.243.10.1455.
Diagnosis of chronic small bowel disease in cats: 100 cases (2008-2012).
Norsworthy GD, Scot Estep J, Kiupel M, Olson JC, Gassler LN.
目的 慢性嘔吐、慢性の小腸性の下痢、体重減少、またはこれらの組み合わせの臨床症状が認められる猫の中で、小腸の肥厚を示す超音波検査と組み合わせて慢性小腸性疾患の診断を確定できるかどうかを明らかにすること
デザイン 後向き症例シリーズ
動物 100例の飼い猫
方法 慢性嘔吐、慢性小腸性下痢、体重減少、これらの複数の症状があり、超音波検査を実施しており、2008年から2012年に開腹手術および複数の小腸の生検を実施した猫のカルテを調査した。生検組織は、病理組織学的な評価、免疫組織科学的評価を実施し、所見があいまいなときには、抗原受容体の再構成を調べるPCRを行なった。
結果 慢性小腸性疾患は100例中99例において診断できた。慢性腸炎と腸管のリンパ腫が最も多い診断だった。
結論と臨床的意義 この結果は、慢性小腸性疾患の臨床症状を呈する猫は、臨床的に重要で、診断可能であり、また治療可能であるため、詳細な診断検査をされるべきであることを示唆している。小腸性疾患の臨床症状、とくに体重減少と慢性または再発性の嘔吐は猫において非常に多い。これらの症状は通常は生じるはずがないため、飼い主が何か理由付けをおこなったとしても無視されるべきではなく、こうした症状の猫は適切な診断検査を実施されるべきである。(Dr.Taku訳)
■食事反応性慢性腸症の犬から採取した十二指腸生検材料における包括的な病理学的調査
A comprehensive pathological survey of duodenal biopsies from dogs with diet-responsive chronic enteropathy.
J Vet Intern Med. 2013 Jul-Aug;27(4):862-74. doi: 10.1111/jvim.12093. Epub 2013 May 10.
Walker D, Knuchel-Takano A, McCutchan A, Chang YM, Downes C, Miller S, Stevens K, Verheyen K, Phillips AD, Miah S, Turmaine M, Hibbert A, Steiner JM, Suchodolski JS, Mohan K, Eastwood J, Allenspach K, Smith K, Garden OA.
背景:食事反応性慢性腸症(CE)と食事療法で治療した犬の病理学的表現型は、あまり特徴を述べられていない。
仮説/目的: 食事反応性慢性腸症の鍵となる粘膜病変は食事療法で解決する。
方法: これは食事反応性慢性腸症の20頭の犬の前向き観察研究だった。治療前と食事療法開始後6週間で採取した内視鏡下十二指腸組織を、定性的かつ定量的組織病理学的、免疫組織化学的そして超微形態的特徴の平均で評価した。1回、コントロールの十二指腸組織を10頭の健常なビーグルから採取した。
結果:健常犬と比較して、慢性腸症の犬は、より高い絨毛発育阻止スコア(villus stunting scores)、より高い全体のWSAVAスコア、より低い絨毛の高さ/幅比率(villus height-to-width ratio)そして、より高い好酸球の固有層密度であった。慢性腸症の犬でミトコンドリアと刷子縁の超微形態的病変も認めた。疾患と対照母集団が品種、年齢、性別、および環境が一致していない他の研究と共通して、これらの比較は慎重に解釈する必要がある。食事試験を開始した時点と6週の時点で採取した組織の比較において、平均固有層単核細胞スコアと好酸球の固有層密度と単核細胞は減少した。微絨毛内のスペースの減少と微絨毛の高さの増加を誘発する、ミトコンドリアと刷子縁の超微形態的病変も食事療法で改善した。
結論と臨床重要性:食事反応性慢性腸症の犬において、食事療法に伴う臨床兆候の寛解は、好酸球と単核細胞の固有層密度における微妙な減少と腸細胞の超微形態的病変の解消と関連する。(Dr.Kawano訳)
■腸リンパ管拡張症の犬の治療における食餌性脂肪制限の臨床的効果
The Clinical Efficacy of Dietary Fat Restriction in Treatment of Dogs with Intestinal Lymphangiectasia.
J Vet Intern Med. 2014 Mar 27. doi: 10.1111/jvim.12327.
Okanishi H, Yoshioka R, Kagawa Y, Watari T.
背景 蛋白漏出性腸症 (PLE) の一つである腸リンパ管拡張症 (IL)は、消化管内のリンパ管の拡張である。PLEの犬に対する効果的な治療法として食餌の脂肪制限が以前より提案されてきたが、この治療の効果についての客観的な臨床情報は限られている。
仮説と目的 プレドニゾロンによる治療に対して反応しない、またはプレドニゾロンを減量したときに臨床症状および低アルブミン血症が再発するILの犬において食餌性の脂肪制限の臨床的効果を検討する
動物 ILの24頭の犬
方法 回顧的研究。体重、臨床活動スコア、血液検査、生化学検査を治療前、治療1ヶ月後、2ヶ月後に比較した。さらに、脂肪を極度に制限した食餌
(ULF)を与えた群とULFと脂肪制限食(LF)を与えたグループでデータを比較した。
結果 24頭中19頭 (79&%)の犬は食餌中の脂肪制限に十分に反応し、プレドニゾロンの用量を減量できた。臨床活動スコアは、治療前と比較して食餌による治療後に有意に低下した。さらにアルブミン、総蛋白量、BUN濃度は、食餌中の脂肪制限の後有意に増加した。治療2ヶ月後には、ULF群のアルブミン濃度はULF+LF群よりも有意に高い濃度を示した。
結果と臨床的意義 食餌中の脂肪制限はプレドニゾロンによる治療に反応しない、またはプレドニゾロンを減量した際に臨床症状と低アルブミン血症が再発するILの犬において効果的な治療であると考えられる。(Dr.Taku訳)
■ネズミにおけるクローン病(壊死性大腸炎)を惹起するヨーネ菌親脂性抗原
Mycobacterium avium subsp. paratuberculosis lipophilic antigen causes Crohn's disease-type necrotizing colitis in Mice.
Springerplus. 2012 Dec;1(1):47. Epub 2012 Nov 8.
Momotani E, Ozaki H, Hori M, Yamamoto S, Kuribayashi T, Eda S, Ikegami M.
背景: A 2,4,6-スルホン酸トリニトロベンゼン(TNBS)で誘発したマウスの大腸炎モデルは、ヒトのクローン病の病因を観察するため、および治療方法の評価のため作られた。この実験モデルは再現性のある方法で、ヒトのクローン病病変に類似した大腸炎を急速に誘発することが出来る。しかし、A 2,4,6-スルホン酸トリニトロベンゼンのヒトの消化管への自然暴露は非現実的である。現実的なデータに基づく新奇動物モデルは、クローン病の病因に関する将来の研究において熱望される。
方法:我々は、A 2,4,6-スルホン酸トリニトロベンゼンより現実的な原料を使った新奇大腸炎モデルを開発するための試みで、Map抗原分子の可能性を評価した。我々は、エタノール抽出によるMap抗原を準備し、よく知られたマウスのA
2,4,6-スルホン酸トリニトロベンゼン誘発大腸炎のそれとよく似た方法でのマウスモデルを開発した。実験では、正常なC57BL/6
マウスに抗原を皮下注射した後7日に、50%エタノールの同じ抗原を微細なカニューレで経肛門ルートによって大腸に注射した。
結果:経肛門注射後5日に、組織病理学的検査で糜爛および潰瘍を伴う全層壊死性大腸炎が明らかになった;好中球、リンパ球、マクロファージそして穿孔を伴う重度の浸潤を伴っていた。しかし、それぞれの単回のMap-抗原注射では変化は検出されなかった。
結論:今回の結果によって、クローン病の研究のための新奇動物モデルが供給され、クローン病とMapの関係を明らかにするための鍵となるかもしれない。これが、ヨーネ菌が壊死性大腸炎を誘発したという初めてのエビデンスである。(Dr.Kawano訳)
■好酸球性腸炎の猫の臨床病理学的所見および超音波検査所見
The clinicopathological and ultrasonographic features of cats with eosinophilic enteritis.
J Feline Med Surg. 2014 Mar 3.
Tucker S, Penninck DG, Keating JH, Webster CR.
猫の好酸球性腸炎(EE)はあまり明らかにされていない。本研究の目的は、消化管生検において組織学的に好酸球性の炎症が明らかとなった猫における臨床所見と超音波検査所見を回顧的に評価することである。
手術(10頭)または内視鏡(15頭)による消化管の生検で好酸球の浸潤があり、生検から48時間以内に腹部超音波検査を行なった25頭の猫を組み入れた。病歴、臨床症状、臨床病理学的所見、腹部超音波検査所見を調査した。腸管の生検は、1人の病理学者によって評価してもらい、好酸球の浸潤の程度によって、軽度(好酸球が高倍率で10個未満、25頭中11頭)または中等度-著増(好酸球が高倍率で10個以上、25頭中14頭)という2群に分けた。
前者は、少数の好酸球の浸潤を伴ったリンパ球形質細胞性またはリンパ球性の炎症性腸疾患 (LPE)と考えられ、後者は好酸球性腸炎と考えられた。臨床兆候、病歴、臨床症状は全ての猫において同じであった。EEの猫 (14頭中6頭)だけが肥厚して触診可能な腸管を持っていた。好酸球性腸炎の猫を見分けることができる唯一の臨床病理学的な特徴は、末梢の好酸球血症(14頭中6頭)があることであった。超音波検査では、LPEの猫と比較して、EEの猫は空腸壁の平均値がより厚く(それぞれ3.34 mm ± 0.72 mm および 4.07 mm ± 0.58 mm)、粘膜筋層が厚いことがより多かった(それぞれ11頭中1頭および14頭中11頭)。
結論として、腸管の粘膜筋層が超音波検査によって明らかであること、厚くなった腸管が触診できること、末梢の好酸球増加症があることは慢性の消化管症状を呈する猫におけるEEの存在を示すバイオマーカーとなりうる。(Dr.Taku訳)
■犬の炎症性腸疾患の診断に関するバイオマーカー
Biomarkers in canine inflammatory bowel disease diagnostics.
Pol J Vet Sci. 2013;16(3):601-10.
Wdowiak M, Rychlik A, Ko?odziejska-Sawerska A.
犬の炎症性腸疾患(IBD)は慢性胃腸疾患の異種グループである。疫学は人のIBDに似ているが、よくわかっていない。犬のIBDは、同じような徴候を呈する他の疾患を除外するために長い時間とお金の消費プロセスがある除外によって診断される。従って、特異的であり感受性のあるマーカーの研究がこれらの困難を打ち負かすために必要である。
この論文は、検査マーカーに関する最新情報、免疫組織化学的マーカーそして腸神経系の神経科学的コーディングの変化3つのセクションに分かれており、有効性と将来の適応に注目されている。獣医学領域においてそのような研究が欠如しているため、神経免疫組織化学的セクションが人のIBDからの情報であるが、検査マーカーと免疫組織化学的マーカーに関するデータは、主に犬のIBDに基づいている。(Dr.Kawano訳)
■猫の慢性の小腸性疾患の診断:100症例(2008-2012年)
Diagnosis of chronic small bowel disease in cats: 100 cases (2008-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Nov 15;243(10):1455-61. doi: 10.2460/javma.243.10.1455.
Norsworthy GD, Scot Estep J, Kiupel M, Olson JC, Gassler LN.
目的 慢性嘔吐、慢性小腸性下痢、体重減少もしくはこれらを複数もつ猫の一部において、超音波検査による小腸の厚みを同時に用いて、慢性の小腸性疾患の診断を確定できるかを決定すること。
研究デザイン 後向き症例シリーズ。
動物 100頭の飼い猫
方法 慢性嘔吐、慢性小腸性下痢、体重減少もしくはこれらを複数もち、2008年から2012年の間に超音波検査による小腸壁の厚みの測定および開腹術により複数の小腸生検を実施した猫のカルテを調査した。生検組織は病理組織学的検査、免疫組織学的検査にまわし、不確定な結果であった場合には、抗原受容体の再構成のPCR検査を行なった。
結果 慢性の小腸性疾患は100頭中99頭において診断できた。最も一般的な診断は、慢性腸炎および腸管のリンパ腫であった。
結論および臨床的意義 結果は、慢性の小腸性疾患の臨床症状をもつ猫は、臨床的に重要で診断でき治療できる疾患であることが多いため、診断のための精査をするべきであることを示唆している。小腸性疾患の臨床症状、とくに体重減少、慢性または再発性の嘔吐は猫ではかなり多い。飼い主がどのような説明をしようとも、これらの症状は、正常であると考えるべきではなく、放っておくべきではない。これらの症状の猫は適切な診断検査が行なわれるべきである。(Dr.Taku訳)
■犬の特発性炎症性腸疾患の治療におけるブデゾニドとプレドニゾンのランダム化コントロール試験
Randomized, Controlled Trial of Budesonide and Prednisone for the Treatment of Idiopathic Inflammatory Bowel Disease in Dogs.
J Vet Intern Med. 2013 Sep 20. doi: 10.1111/jvim.12195. [Epub ahead of print]
Dye TL, Diehl KJ, Wheeler SL, Westfall DS.
背景: ブデゾニドは犬の炎症性腸疾患(IBD)の治療に使われてきたが、この治療の効果を評価する研究は行われていない。
目的: 炎症性腸疾患活動インデックス(IBDI)スコアと飼い主に報告された副作用の頻度と重度を評価することによって犬のIBDの導入治療におけるブデゾニドとプレドニゾンを比較すること
動物: 新たに特発性IBDと診断した40頭の飼い主所有の犬が2001年4月から2004年1月の間に参加した。34頭の犬が6週間の研究を完遂した。
方法: 二重盲検ランダム化コントロール研究。純粋なパウダーベースのブデゾニド(3-7 kg: 1 mg PO q24h, 7.1-15 kg: 2 mg PO q24h, 15.1-30 kg: 3 mg PO q24h, >30 kg: 5 mg PO q24h) を、あるいはプレドニゾン(1 mg/kg PO q12h × 3 weeks その後 0.5 mg/kg PO q12h × 3 weeks)のどちらかを6週間投与した。炎症性腸疾患活動インデックス(IBDI)スコアは、診断時と治療6週後に決定した。ペットオーナーは臨床症状と副作用の発生と重症度に関する質問を毎週完遂した。
結果:寛解率(IBDAIスコアが 75%以上低下)の明らかな違いはブデゾニドグループにおける寛解率78%とプレドニゾングループの69%
と明らかな違いは観察されなかった(P = .70)。副作用の頻度は2つのグループ間で似ていた。
結論と臨床重要性: 犬のIBDの導入治療におけるブデゾニドとプレドニンの間における寛解率と副作用の発生率において証明できる違いはなかった。(Dr.Kawano訳)
■蛋白漏出性腸症を併発する慢性腸症の治療におけるクロラムブシル-プレドニゾロン併用とアザチオプリン-プレドニゾロン併用との比較
Comparison of a chlorambucil-prednisolone combination with an azathioprine-prednisolone combination for treatment of chronic enteropathy with concurrent protein-losing enteropathy in dogs: 27 cases (2007-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Jun 15;242(12):1705-14. doi: 10.2460/javma.242.12.1705.
Dandrieux JR, Noble PJ, Scase TJ, Cripps PJ, German AJ.
目的:犬においてプレドニゾロンと同時にアザチオプリンかクロラムブシルを使った慢性腸症と併発する蛋白漏出性腸症の治療プロトコールの比較
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:27頭の犬
方法:すべての犬は低アルブミン血症(血清アルブミン濃度 < 18.0 g/L)で、腸の生検などの完全な胃腸管の観察によって診断された慢性腸症が認められた。アザチオプリン-プレドニゾロン併用(グループA;
n = 13)か、クロラムブシル-プレドニゾロン併用(グループC; 14)のどちらかを犬に投与した。治療に対する反応は、体重増加、血清アルブミン濃度そして初期治療期間の評価によって判断した。
結果:いかなる基線変数(シグナルメントと体重)、臨床病理変数(アルブミン値、コバラミン値そして葉酸濃度)あるいは組織病理所見において群間に治療前の有意差はなかった。治療後、血清アルブミン濃度と体重増加はグループCで有意に優れていた。グループ Aの犬の中央生存期間は30日(95%信頼区間 15?45日)で、グループCでは達しなかった。初期治療期間は組織病理学的に軽度乳び管の拡張の存在とクロラムブシル-プレドニゾロンの併用に確実に関連していた。
結論と臨床重要性:結果から、アザチオプリン-プレドニゾロン併用に比べて、クロラムブシル-プレドニゾロンは慢性腸症と蛋白漏出性腸症の治療に対してより効果的であることを示していた。これらの所見から前向き無作為化臨床試験が保証される。(Dr.Kawano訳)
■犬の炎症性腸疾患の治療における自然免疫調節剤と合成免疫調節剤の効果
The effectiveness of natural and synthetic immunomodulators in the treatment of inflammatory bowel disease in dogs.
Acta Vet Hung. 2013 Sep;61(3):297-308. doi: 10.1556/AVet.2013.015.
Rychlik A, Nieradka R, Kander M, Nowicki M, Wdowiak M, Ko?odziejska-Sawerska A.
この研究の目的は犬の炎症性腸疾患(IBD)に治療における免疫調節剤の有用性を評価することだった。
IBDと診断された28頭の犬がこの研究に参加した。動物は抽出した免疫調節剤を含むフードを摂取した。:
42日間のβ-1,3/1,6-D-グルカン、β-ヒドロキシ-β-メチル酪酸(HMB)そしてレバミゾール。貪食活性(respiratory
burst activity, RBA や potential killing activity, PKA) の変化, マイトジェン刺激リンパ球や血清γグロブリン濃度の増殖能の評価、リゾチーム活性、セルロプラスミン濃度そしてインターロイキン活性(IL-6
と IL-10)を評価する治療前後で全血サンプルを分析した。
この実験で、β-1,3/1,6-D-グルカンは、犬炎症性腸疾患活動指数(CIBDAI)値が3以下、組織病理パラメーターの改善、IL-6濃度の低下、IL-10濃度の増加そして6ヶ月以上寛解期間となるなど最も迅速な治療効果を産生することによって治療効果が最高水準であった。HMBとレバミゾールは低いCIBDAIスコアにも効果的であったが、臨床兆候の改善はβ-1,3/1,6-D-グルカンと比較してより緩慢で弱かった。
β-1,3/1,6-D-グルカンは犬のIBDの治療に役に立つかもしれないことを示している。
■犬の炎症性腸疾患におけるサイトカイン
Cytokines in canine inflammatory bowel disease.
Pol J Vet Sci. 2013;16(1):165-71.
Ko?odziejska-Sawerska A, Rychlik A, Depta A, Wdowiak M, Nowicki M, Kander M.
犬の炎症性腸疾患は、粘膜固有層に細胞が浸潤する小腸と大腸粘膜における組織病理学的変化と関連する未知の疫学を伴う持続性あるいは再発性胃症状によって特徴付けられる慢性腸症の一群である。近年はIBDの発生における免疫システム、特にサイトカインの役割のさらに多くの調査が注目されている。
この論文では、前炎症性サイトカイン(IL-1, IL-2, IL-5, IL-6, IL-12, IL-18, IFN-gamma, TNF-alpha)と抗炎症サイトカイン(IL-4, IL-10)の発現について臨床発現、品種、粘膜固有層への細胞浸潤そして組織病理学的グレードに基づいてIBDに罹患した犬で比較した。
唯一選択された研究では、健康犬に比べIBDの犬でIL-2, IL-4, IL-5, IL-12p40, IFN-γ, TNF-α そしてTGF-βのmRNA発現レベルがより高かったと確認されている。GSDはほとんどの研究において強く表現された。リンパ球プラズマ細胞性腸症の犬はIL-1α, IL-1β, IL-2, IL-5, IL-6, IL-12, TNF-α, TGF-βの上昇に特徴付けられた。リンパ球プラズマ細胞性腸症の犬を使った今回の研究では、IL-1β, IL-2, IL-4, IL-5, IL-6, IL-10, IL-12p35, IL-12p40, IFN-γ, TNF-α, TGF-βのmRNA発現が明らかだった。概説した研究において、IBDの進行は、mRNA発現の変化には付随しなかった。(Dr.Kawano訳)
■消化管疾患の臨床所見がない猫における超音波による消化管の相対的な厚みの評価
Ultrasonographic evaluation of relative gastrointestinal layer thickness in cats without clinical evidence of gastrointestinal tract disease.
J Feline Med Surg. 2013 Aug 1.
Winter MD, Londono L, Berry CR, Hernandez JA.
この研究の目的は、(1) 消化管のそれぞれの部位(胃底部、胃体部、幽門洞、十二指腸、空腸、回腸、結腸)における筋層、粘膜下織、粘膜、漿膜層の正常な厚さを測定すること、(2) 筋層および粘膜層の厚さと、腹腔動脈のレベルで測定した大動脈との比率(Musc/Ao比およびMuc/Ao比)を、健常猫のそれぞれの消化管の部位において明らかにすることである。
消化器疾患の臨床所見がない38頭の健常猫において、消化管の超音波検査を実施し、それぞれの消化管の部位における各層の厚みを測定した。
筋層は、回腸において有意に最も厚く、結腸を除いたすべての部位における粘膜下織よりも厚かった。粘膜は、すべての層の中でもっとも厚い層であり、十二指腸と回腸において最も厚かった。粘膜下織と漿膜層の厚さは、全ての部位において有意な違いはなかった。それぞれの部位におけるMusc:Aoおよび Muc:Aoは、0.12および0.25(胃底部)、0.12および0.18(胃体部)、0.11 および 0.16 (幽門洞) 、 0.08 および 0.27 (十二指腸) 、0.08 および0.22 (空腸) 、0.14および 0.25 (回腸) 、0.05および0.08 (結腸)であった。Musc/Ao比およびMuc/Ao比は、臨床的に意味のある値であり、消化器疾患に反応して筋層や粘膜層が肥厚していることを客観的に同定するのに使用することができるであろう。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の炎症性腸疾患(IBD)の治療
Treatment of inflammatory bowel disease (IBD) in dogs and cats.
Pol J Vet Sci. 2011;14(1):165-71.
Malewska K, Rychlik A, Nieradka R, Kander M.
炎症性腸疾患(IBD)の治療は、疾患の不明確な疫学に起因する様々な障害を所有する。この論文は、臨床兆候(CIBDAIとCCECAI)の強さに基づいたIBDの治療に役立つ薬物を概説する。
軽度な兆候を示す患畜は、通常免疫調節薬あるいはプロバイオティクス療法の併用するかもしれない適切な食事で治療する。中等度に進行したIBDでは、5-アミノサリチル酸(メサラジンあるいはオルサラジン)誘導体で治療するかもしれない。重度な兆候を示す患畜は、通常免疫抑制剤、抗生剤そして除去食で治療する。免疫システムが疾患の病因に重要な役割を果たしているので、生物学的な治療研究に関する進歩が、今後数年間に犬と猫のIBDの治療に関する発展に貢献するだろう。(Dr.Kawano訳)
■慢性炎症性腸疾患の犬21頭における犬炎症性腸疾患活動指標の使用による疾患重症度そして食事、抗生剤そして免疫抑制剤介入の結果を評価する。
[Assessment of disease severity and outcome of dietary, antibiotic, and immunosuppressive interventions by use of the canine IBD activity index in 21 dogs with chronic inflammatory bowel disease].
Berl Munch Tierarztl Wochenschr. 2006 Nov-Dec;119(11-12):493-505.
Munster M, Horauf A, Bilzer T.
近年、犬炎症性腸疾患活動指標(CIBDAI)が疾患の重症度、治療戦略そして治療効果を評価するために作られた。
この研究の目的は、CIBDAI、血清アルブミン濃度そして組織学的スコア(HPEC)を使うことによりIBDの犬の疾患の重症度と治療戦略を評価することだった。さらに3ヶ月間の治療期間中の前向き研究におけるCIBDAIの使用と治療効果を評価した。
炎症性腸疾患(リンパ球プラズマ細胞性腸炎そして小腸結腸炎)の21頭の犬をこの研究で検査した。CIBDAIとHPEC
(CIBDAIスコア4あるいは5から10の間で、組織学的スコアが1から1.5)に従い、IBDの犬の11頭は、疾患の重症度を低いと評価した。6頭の犬は低アレルギー食(Group
D)で治療し、5頭は低アレルギー食とメトロニダゾール(15.6-22,3 mg/kg/day)
(Group M)で治療したIBDの犬の10頭は疾患の重症度は高いと評価した(CIBDAI<10、あるいは5から10の間でHPEG
スコア2から3あるいは低アルブミン血症(< or = 2.5 g/dl))。このグループ(Group
I)は免疫抑制療法を実施した。治療はプレドニゾロン(n=10; 0.9-2 mg/kg/day),
アザチオプリン(n=5; 0.9-2.3 mg/kg/day), スルファサラジン(n=4; 18.2-25 mg/kg/day)
そして低アレルギー食(n=10)であった。治療効果は12週間の治療期間において前向きに3回評価した。寛解(CIBDAIスコア<
4)はよい治療反応を示し、慢性あるいは再発性疾患(CIBDAIスコアが変わらずあるいは再発で>
or =4)はよくない治療反応を示した。
年齢、CIBDAIスコアとHPECスコアは、疾患の重傷度が低いIBDの犬では有意な差があった(年齢:中央値60ヶ月;CIBDAIスコア:中央値5;HPEGスコア:中央値(1)と疾患の高い重症度のIBDの犬(年齢:中央値90ヶ月;
CIBDAIスコア: 中央値9.5;HPEGスコア:中央値2.25) (それぞれp=0.0101そしてp
= 0.0099)。低アルブミン血症はこれらの2つのグループで有意な違いはなかった(p=0.3108)。CIBDAIスコアと血清アルブミン濃度(r=0.0394;p=0.0802)あるいはCIBDAIスコアとHPEGスコア(r=0.2587;p=0.2574)に有意な関連はなかった。
治療グループにおいて、HPEGスコアはDグループとグループIの間にだけ有意な違いが認められた(p<0.01)。CIBDAIスコアは治療の4週間後にグループIで有意に減少し(中央値4th week:3;p<0.05)、治療8週後にDグループにおいて有意に減少した(中央値8th week:1;p< 0.05)。CIBDAIスコアの有意な減少はMグループでは見られなかった(中央値12th week:1.75;p>0.05)。グループDのすべての犬、グループMの5頭中4頭の犬そしてグループIの10頭中6頭の犬は寛解した。15頭の犬は治療によく反応したが、6頭の犬(グループMの1頭とグループIの5頭;1頭の犬は死亡)はあまり治療に反応しなかった。治療に対する効果と年齢(p=0.8455)、CIBDAIスコア(p=0.3293)あるいは血清アルブミン濃度(p=0.8455)は有意な関連がなかった。HPEGスコアが2以上であれば乏しい治療効果と弱い関連があった(p=0.0635)。
病気の重症度と治療反応を評価するために単一のパラメーターとしてIBDの犬にCIBDAIスコアを使うことは、誤解釈の可能性がある。CIBDAIスコア、HPEGスコア、血清アルブミン濃度のコンビネーションによる疾患の重症度の評価は適切な治療結果を導く。低グレードのIBDの犬は低アレルギー食に利点があるが、高グレードのIBDは免疫抑制療法に利点がある。抗生物質療法の効果は疑問がある。(Dr.Kawano訳)
■慢性腸疾患の犬における治療前後の臨床症状、組織学そしてCD3-陽性細胞
Clinical signs, histology, and CD3-positive cells before and after treatment of dogs with chronic enteropathies.
J Vet Intern Med. 2008 Sep-Oct;22(5):1079-83. doi: 10.1111/j.1939-1676.2008.0153.x. Epub 2008 Jul 28.
Schreiner NM, Gaschen F, Grone A, Sauter SN, Allenspach K.
背景:組織病理学は犬の炎症性腸疾患の診断に広く使われている。病変の差異と均一なグレードシステムがないことが組織検査の有用性を制限する。
仮説:犬の慢性腸疾患のCD3細胞数は疾患の臨床活性と組織病理変化の重症度と関連がある。
動物:慢性下痢、嘔吐、両方のため検査した19頭の飼い主所有の犬
方法:十二指腸と結腸の粘膜のサンプルを治療前後において内視鏡下で採取した。低アレルギー食に反応した犬は食事反応性下痢の犬(FRD,
n=10)としてグループにした。治療10日後に臨床的な改善がなく、プレドニゾロン(免疫抑制量)を投与した犬はステロイド反応性下痢の犬(SRD,
n=9)としてグループにした。回顧的に腸管のサンプルで標準化されたグレードシステムによる組織病理学的評価を実施した。組織学的スコア、浸潤細胞の総数そしてCD-3陽性細胞数をカウントし臨床スコアと比較した。
結果:それぞれのグループ((FRDとSRD)において治療前後の生検における組織学的グレードと粘膜固有層における総細胞数そしてT細胞数は統計学的に有意な違いは検出されなかった。
結論と臨床重要性:現在使われている組織病理学的グレードシステム、総細胞数そしてCD-3陽性細胞数はFRDとSRDの間に違いがなく治療に対する臨床的反応とも関連がなかった。これらの結果から、総細胞数やCD3陽性細胞数よりも他のクライテリアを評価できる新しいグレードスコアが今後評価されるべきである。(DR.KAWANO訳)
■慢性腸症の柴犬の短期生存と長期生存の特徴と予後の悪さのリスク因子
The characteristics of short- and long-term surviving Shiba dogs with chronic enteropathies and the risk factors for poor outcome.
Acta Vet Scand. 2013 Apr 17;55(1):32.
Okanishi H, Sano T, Yamaya Y, Kagawa Y, Watari T.
背景:この研究の目的は慢性腸症(CS)の柴犬において生存期間が短いものと長いものの特徴の差と、予後の悪さを予測できる因子を明らかにすることである。
方法:25頭の柴犬を使用しており、短期生存(6ヶ月以下、Ss 16頭)と長期生存(6ヶ月以上、Ls
9頭)に分けた。臨床的および臨床病理学的な変化、病理組織学的検査、治療に対する反応性、転帰について群間比較した。さらに、これらの因子が予後の悪さを予測できるかについて検討した。
結果:全ての慢性腸症の犬は、リンパ球形質細胞性腸炎(LPE)の炎症性腸疾患と診断された。単変量ロジスティック回帰分析では、年齢と犬炎症性腸疾患活動指標(CIBDAI)はLs群に比べてSs群では有意に高かった(年齢 p=0.035、CIBDAI P=0.018)。受信者動作特性曲線(ROC)解析によると、予後の悪さの最もよい予測因子は、年齢とCIBDAIであり、カットオフ値は、7歳と9ポイントであった。大部分の症例(84%)は、初期治療に反応した。とくに、Ss群の75%の犬が治療に反応した。Ss群において初期治療に反応した期間(中央値42.5日、20-91日の範囲)は、Ls群(中央値285日、196-1026日の範囲)よりも有意に短かった。Ls群の犬の約半数(55.5%)がCEの再発によって死亡した。
結論:この研究により、CEの柴犬は、とくに7歳以上でCIBDAIスコアが9ポイント以上の場合に、早期に死亡するリスクが高いことが示唆された。初期治療が有効であったとしても、早期の死亡が起こる可能性があるようである。さらに、初期治療に対する反応が短期的にしか(約3ヶ月以内)認められないCEの柴犬は、早期に死亡する可能性がより高そうである。従って、長期生存の約半数も最終的には再発によって死亡しているため、CEの柴犬は長期的にも観察する必要がある。(Dr.Taku訳)
■犬の慢性腸疾患:陰性予後に関するリスク因子の評価
Chronic enteropathies in dogs: evaluation of risk factors for negative outcome.
J Vet Intern Med. 2007 Jul-Aug;21(4):700-8.
Allenspach K, Wieland B, Grone A, Gaschen F.
仮説:慢性腸疾患に罹患した犬の診断評価中に日常的に測定したある変量は、予後を予測することができ、これらの変量を組み込んだ新しい臨床疾患活動性指数は疾患の予後の予測に適応できる。
動物:除去食(FR,食事反応性グループ)に続いて、食事トライアル単独で反応が見られない場合にステロイドによる免疫抑制療法(ST,ステロイド治療グループ)を行う経時的な治療トライアルに70頭の犬が参加した。3つ目のグループは、ステロイドの免疫抑制投与量による治療でも汎低タンパク血症と腹水(PLE,タンパク喪失性腸症)のある犬が含まれた。
方法:すべての犬で3年間の追跡情報を入手できた。治療に対する不応性のため安楽死の定義とされ、陰性予後を予測するそれらの能力に関して臨床病理学的変量を検査した。これらの変量の異なる組み合わせを含む異なるスコアリングシステムは受診者操作特性(ROC)曲線を使って評価した。
結果:70頭中13頭の犬(18%)が、難治性疾患のため安楽死した。陰性予後のリスク因子として高い臨床活動性指数、十二指腸の高い内視鏡スコア、低コバラミン血症(<200
ng/L)そして低アルブミン血症(<20 g/L)を単変量解析で同定した。
結論と臨床重要性:ロジスティック回帰と受診者操作特性曲線解析で認識された要因に基づいて、慢性腸症に罹患した犬の陰性予後を予測する新しい臨床スコアリング指数(CCECAI)を定義した。(Dr.Kawano訳)
■自然に発症した慢性の下痢の猫の管理をするにあたり缶詰の療法食の評価
Evaluation of canned therapeutic diets for the management of cats with naturally occurring chronic diarrhea.
J Feline Med Surg. October 2012;14(10):669-77.
Dorothy P Laflamme; Hui Xu; Carolyn J Cupp; Wendell W Kerr; Ziad Ramadan; Grace M Long
ほとんどの消化管障害の管理において食餌療法は重要な役割を演じる。
この研究は、下痢の猫に対する新しい療法食の有効性を調査し、一番売れている銘柄と比較した。
慢性の下痢を呈する16頭の成猫をグループ分けし、食餌X(Hill's Prescription
Diet i/d Feline)あるいは食餌Y(Purina Veterinary Diets EN Gastroenteric
Feline Formula)に振り分けた。基準の評価後、猫にはそれぞれ割り当てた食餌を4週間給餌した。各餌の糞便スコア(FS;7=水様;1=極度に乾燥および硬い)を最終週に毎日記録した。その後、各猫の試験食を互い違いにし、その処置を繰り返した。
15頭が研究を全うした。両方の療法食は平均FSを有意に改善させ、また食餌Yは食餌Xよりも有意に良好な結果をもたらせた。最低1単位の平均FSの改善が見られたのは、食餌Xを与えた猫の40%、食餌Yを与えた猫の67%で、正常な糞便(平均FS3以下)になったのは、食餌Xを与えた猫の13.3%、食餌Yを与えた猫の46.7%だった。
この研究は猫の慢性下痢の管理における食餌変更の価値を確認するものである。(Sato訳)
■炎症性腸疾患の犬におけるブデゾニドの血漿濃度と治療効果
Plasma concentrations and therapeutic effects of budesonide in dogs with inflammatory bowel disease.
Am J Vet Res. 2013 Jan;74(1):78-83. doi: 10.2460/ajvr.74.1.78.
Pietra M, Fracassi F, Diana A, Gazzotti T, Bettini G, Peli A, Morini M, Pagliuca G, Roncada P.
目的:炎症性腸疾患(IBD)の犬においてブデゾニドの薬物動態と臨床効果を評価すること
動物:中等度から重度IBDの11頭の犬(平均± 標準偏差年齢, 5.7 ± 3.9 歳;様々な品種と体重)
方法:それぞれの犬に徐放性ブデゾニド(3 mg/m(2), PO, q 24 h)を30日間投与(投与初日を第一病日とした)した。治療第1病日と治療第8病日に得られた血漿と尿サンプルにおいて、ブデゾニドの濃度とその代謝物(16-α-ヒドロキシプレドニゾロン)を液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法で測定した。これらの日において、毎日のブデゾニド投与前と投与後0.5,
1, 2, 4, そして 7 時間で血漿サンプルをとったが、尿サンプルは、最後の血液サンプルを採取した後にとった。薬物投与の開始前と薬物投与開始後20日と30日で臨床評価を実施した。
結果:第1病日におけるブデゾニドと16-α-ヒドロキシプレドニゾロンの最も高い血漿濃度は、それぞれ投与後1時間と2時間で検出された。尿比重の基線の標準化後、尿におけるブデゾニドと16-α-ヒドロキシプレドニゾロンの比は、第1病日と治療第8病日でそれぞれ0.006
と 0.012であった。 11頭中8頭で臨床反応は十分であった。
結論と臨床関連:ブデゾニドはIBDの犬で急速に吸収され代謝される。薬物は徐々に蓄積し、適切な治療反応があり、副作用はなかった。(Dr.Kawano訳)
■再発性Clostridium difficile感染症のための糞便微生物移植:刺激時間の準備?
Fecal microbiota transplantation for recurrent C difficile infection: Ready for prime time?
Cleve Clin J Med. 2013 Feb;80(2):101-8. doi: 10.3949/ccjm.80a.12110.
Agito MD, Atreja A, Rizk MK.
再発性Clostridium difficile感染症は患者や臨床家にとって大きな挑戦である。標準的な抗生剤による治療後の感染の再発は、より抵抗性のあるC
difficile株の出現がより一般的となる。糞便微生物移植は、Clostridium difficile感染症の再発のための代替療法であるがまだ広く使われていない。(Dr.Kawano訳)
■メトトレキサートで治療した蛋白喪失性腸症の犬の1例
A case of protein-losing enteropathy treated with methotrexate in a dog.
J Vet Med Sci. 2006 Apr;68(4):397-9.
Yuki M, Sugimoto N, Takahashi K, Otsuka H, Nishii N, Suzuki K, Yamagami T, Ito H.
9歳雌のパグが慢性下痢を主訴に来院した。血液検査所見から重度の低蛋白血症と低アルブミン血症が認められ、内視鏡検査から十二指腸粘膜の重度の浮腫が認められた。これらの結果と追加の病理組織学的検査所見から、リンパ管拡張を伴うリンパ球性プラズマ細胞性腸炎により惹起した蛋白喪失性腸症と診断した。プレドニゾロンとシクロスポリンによる治療を開始した。この治療は効果がなかった。しかし,シクロスポリンからメトトレキサートに変更したところ、良好な経過が得られ診断は確定した。(Dr.Kawano訳)
■フロリダのアニマルシェルターにいる犬の正常あるいは下痢の便で確認された腸管病原体
J Am Vet Med Assoc. 2012 Aug 1;241(3):338-43. doi: 10.2460/javma.241.3.338.
Enteropathogens identified in dogs entering a Florida animal shelter with normal feces or diarrhea.
Tupler T, Levy JK, Sabshin SJ, Tucker SJ, Greiner EC, Leutenegger CM.
目的:アニマルシェルターで飼育されている犬の正常あるいは下痢の便における腸管病原体の頻度を調査する
構成:横断研究
動物:フロリダの自由入場可の市営アニマルシェルターで評価した100頭の犬
方法:正常な便の犬50頭と下痢の犬50頭から入場後24時間以内に糞便サンプルを収集し、糞便浮遊法、抗原検査、PCR分析、選出された腸管病原体に対する電子顕微鏡検査により検査を行った。
結果:13種の腸管病原体が同定された。下痢の犬(96%)は正常便の犬(78%)より有意に1つ以上の腸管病原体に感染している可能性が高かった。クロストリジウムperfringensエンテロトキシンA遺伝子のみが正常便の犬(40%)より下痢の犬(64%)で有意に多く認められた。
下痢および正常便の犬で同定された他の腸管病原体は、鈎虫(58%、48%)、ジアルジア種(22%、16%)、犬腸コロナウイルス(2%、18%)、鞭虫(12%、8%)、クリプトスポリジウム種(12%、2%)、回虫(8%、8%)、サルモネラ種(2%、6%)、シストイソスポーラ種(2%、4%)、犬ジステンパーウイルス(8%、0%)、瓜実条虫(2%、2%)、犬パルボウイルス(2%、2%)、ロタウイルス(2%、0%)だった。
結論と臨床関連:この研究で、犬は種々の腸管病原体を伴いシェルターに入り、それらの多くは病原を持つ、あるいは人畜共通病原体である。多くの感染は下痢あるいは、いかなる特定の犬の特徴とも関係せず、個々の犬に対し感染のリスクの予測を難しくしていた。シェルターでの使用で論理的および経済的に行うことができる予防的処置、経験的治療のガイドラインを、最も一般的で重要な腸管病原体の管理のために開発すべきである。(Sato訳)
■慢性下痢の犬における腹部超音波検査の診断有用性
Diagnostic utility of abdominal ultrasonography in dogs with chronic diarrhea.
J Vet Intern Med. 2012 Nov-Dec;26(6):1288-94. doi: 10.1111/j.1939-1676.2012.01009.x. Epub 2012 Oct 13.
Leib MS, Larson MM, Grant DC, Monroe WE, Troy GC, Panciera DL, Rossmeisl JH, Werre SR.
背景: 慢性下痢は犬において一般的で多くの原因がある。多くの胃腸管疾患の超音波描出は公表されているが、慢性下痢の犬における超音波検査の診断的有用性については調査されていない。
仮説: 腹部超音波検査の診断的有用性は胃腸管腫瘍の犬で最も高く、炎症性疾患の犬で最も低いだろう。
動物: 慢性下痢の87頭の犬
方法: 診療記録から調査し、診断をするにあたり腹部超音波検査の貢献を得点化した前向き研究。
結果: 57/87(66%)頭の犬において、超音波なしでも同じ診断に至っただろう。13/87(15%)の犬において超音波検査は、診断するのに重要、あるいは有益だった。体重減少(P
= .0086)、腹部触診あるいは直腸腫瘤(P = .0031)、超音波検査で腫瘤病変が見ることができる一般的な疾患(P
< .0001)、そして胃腸管腫瘍という最終診断は増加した診断的有用性と関連があったことが単変量解析で分かった。腹部あるいは直腸腫瘤が触知できない犬に比べて、触知できる犬は腹部超音波検査の有用性が30倍高いことが多変量回帰分析で分かった(オッズ比
30.5, 95%信頼区間 5.5-169.6)(P < .0001)。15/87(17%)頭の犬において、ケースマネージメントに対する超音波検査のさらなる利点は、下痢の診断への貢献とは無関係に認識された。
結論と臨床重要性: 全体的に見て、腹部超音波検査の診断有用性は、慢性下痢の犬では低かった。高い診断有用性と関連した要因の識別は、慢性下痢を呈する犬の腹部超音波検査を実施するための指標である。(Dr.Kawano訳)
■フロリダのアニマルシェルターにいる猫の正常あるいは下痢の便で確認された腸管病原体
Enteropathogens identified in cats entering a Florida animal shelter with
normal feces or diarrhea.
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(3):331-7.
Stephanie J Sabshin; Julie K Levy; Tiffany Tupler; Sylvia J Tucker; Ellis C Greiner; Christian M Leutenegger
目的:アニマルシェルターで飼育されている猫の正常あるいは下痢の便における腸管病原体の頻度を調査する
構成:横断研究
動物:フロリダの自由入場可の市営アニマルシェルターで評価した100頭の猫
方法:正常な便の猫50頭と下痢の猫50頭から入場後24時間以内に糞便サンプルを収集し、糞便浮遊法、抗原検査、PCR分析、選出された腸管病原体に対する電子顕微鏡検査により検査を行った。
結果:12種の腸管病原体が同定された。下痢の猫(84%)は正常便の猫(84%)より1つ以上の腸管病原体に感染している可能性が高いというわけではなかった。猫コロナウイルスのみが正常便の猫(36%)よりも下痢の猫(58%)で有意に多く見られた。
下痢および正常便の猫で同定された他の腸管病原体は、クロストリジウムperfringensエンテロトキシンA(それぞれ42%、50%)、クリプトスポリジウム種(10%、20%)、ジアルジア種(20%、8%)、シストイソスポーラ種(14%、10%)、鈎虫(10%、18%)、回虫(6%、16%)、サルモネラ種(6%、4%)、アストロウイルス(8%、2%)、猫汎白血球減少ウイルス(4%、4%)、カリシウイルス(0%、2%)、スピロメトラ種(0%、2%)だった。
結論と臨床関連:この研究で、猫は種々の腸管病原体を伴いシェルターに入り、それらの多くは病原を持つ、あるいは人畜共通病原体である。多くの感染は下痢、あるいはシグナルメント、源、体の状態のような、いかなる特定のリスクファクターとも関係せず、猫が感染している可能性を予測するのを難しくしていた。全ての潜在的感染に対し、全てのシェルターの猫を検査することは不可能なので、最も一般的で重要な腸管病原体に対し日常的に対処する実際のガイドラインを作成するべきである。(Sato訳)
■炎症性腸疾患の犬の糞便、十二指腸そして末梢血単核球における減少した免疫グロブリン濃度
Decreased immunoglobulin a concentrations in feces, duodenum, and peripheral blood mononuclear cells of dogs with inflammatory bowel disease.
J Vet Intern Med. 2013 Jan;27(1):47-55. doi: 10.1111/jvim.12023. Epub 2012 Dec 6.
Maeda S, Ohno K, Uchida K, Nakashima K, Fukushima K, Tsukamoto A, Nakajima M, Fujino Y, Tsujimoto H.
背景: 免疫グロブリンA(IgA)は腸管での恒常性の調節に役割を果たしているが、犬の炎症性腸疾患(IBD)でのその役割は分かっていない。
仮説: 健常犬や他の胃腸疾患の犬とは異なり、IBDに罹患した犬においてIgA発現は変化しているかもしれない。
動物: IBDに罹患した37頭の犬、腸管型リンパ腫10頭そして健常犬20頭
方法: 前向き研究。血清、糞便そして十二指腸サンプルにおけるIgAそしてIgG濃度をELISAで測定した。十二指腸固有層におけるIgA陽性細胞とIgA陽性
CD21陽性の末梢単核細胞(PBMCs)をそれぞれ免疫組織化学検査とフローサイトメトリーで検査した。IgA誘発サイトカインであるトランスフォーミング増殖因子-β(TGF-β)、B細胞活性化因子(BAFF)そして増殖誘発リガンド(APRIL)の十二指腸での発現をリアルタイムPCRで定量した。
結果: 健常犬と比べてIBDに罹患した犬は、糞便と十二指腸サンプルにおけるIgA濃度が有意に低かった。十二指腸固有層におけるIgA陽性 CD21陽性末梢単核細胞およびIgA陽性細胞の数は、健常犬あるいは腸管型リンパ腫の犬よりIBDの犬で有意に低かった。十二指腸のB細胞活性化因子と増殖誘発リガンドのメッセンジャーRNA発現は、健常コントロールよりIBDの犬において有意に高かった。十二指腸でのトランスフォーミング増殖因子-βのメッセンジャーRNA発現は、健常と腸管型リンパ腫の犬よりIBDの犬で有意に低かった。
結論と臨床重要性: IBDの犬は糞便と十二指腸においてIgA濃度は低く、IgA陽性末梢単核細胞はより少ない。これは、IBDの犬において慢性腸炎へ発展することに影響を与えているかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■腸管リンパ管拡張症、リンパ球プラズマ細胞性腸炎、膵外分泌機能不全に罹患した蛋白漏出性腸症の犬
Protein-losing enteropathy in a dog with lymphangiectasia, lymphoplasmacytic enteritis and pancreatic exocrine insufficiency.
Vet Q. 2012;32(3-4):193-7. doi: 10.1080/01652176.2012.735379. Epub 2012 Oct 30.
Rodriguez-Alarcon CA, Beristain-Ruiz DM, Perez-Casio F, Rivera R, Ochoa G, Martin-Orozco U.
これは蛋白漏出性腸症(PLE)に罹患した7歳雄の秋田系雑種の報告である。食欲不振/hyporexiaを伴う慢性下痢および嘔吐の病歴があった。これまでに今回の受診より約8ヶ月前に急性腹症に罹患していた。炎症性腸疾患(IBD)、腸管リンパ管拡張症(IL)、そして膵外分泌機能不全(EPI)で蛋白漏出性腸症が惹起されるので、それらの疾患の併発は稀だった。低アルブミン血症、高グロブリン血症、リンパ球減少症、低カルシウム血症そして高コレステロール血症などと腸管リンパ管拡張症で見られる異常の大部分が認められた。内視鏡検査で不規則な小さな白い斑点など腸管リンパ管拡張症の特徴的な変化が認められた。
胃、十二指腸および盲腸から生検を実施した。これらの生検によって固有層にリンパ球やプラズマ細胞が浸潤しており、十二指腸サンプルにはリンパ管の中等度の拡張が認められた。TLIは2.1
μg/mLであり、この結果はEPIという診断に適合した。この症例の始めの病理はEPIへと進行する慢性膵炎(CP)を引き起こすIBDであったと考える。腸管リンパ管拡張症はIBDの二次的であった可能性もある。我々は、犬のIBDとEPIが関連した初めての報告をした。犬の慢性下痢を治療するアプローチを変化させる必要がある。従って、EPIと診断した犬は内視鏡を実施し、腸管の生検を実施すべきだと提案する。同様に二次性EPIの除外のため、IBDの犬ではルーチンにTLIを測定すべきである。(Dr.Kawano訳)
■特発性の炎症性腸疾患の犬における血清カルプロテクチン濃度
Serum calprotectin concentrations in dogs with idiopathic inflammatory bowel disease.
Am J Vet Res. 2012 Dec;73(12):1900-7. doi: 10.2460/ajvr.73.12.1900.
Heilmann RM, Jergens AE, Ackermann MR, Barr JW, Suchodolski JS, Steiner JM.
目的:治療開始前後における炎症性腸疾患(IBD)の犬における血清カルプロテクチン濃度を測定し、臨床的なスコア(IBD活動スコア)、血清犬C反応性蛋白濃度、病理組織学的な変化の重症度との相関を検討すること
動物:特発性のIBDの34頭の犬と139頭の健常コントロール犬
方法:IBDの犬については、プレドニゾロン (1mg/kg、経口、12時間おき、21頭)またはプレドニゾロンとメトロニダゾール(10mg/kg、経口、12時間おき、13頭)のどちらかの治療を開始する直前(基礎値)と開始3週間後に血液サンプルを採取した。コントロールの犬もそれぞれ1回血液サンプルを採取した。全てのサンプルについて、血清カルプロテクチン濃度をラジオイムノアッセイによって測定した。
結果:IBDの犬のカルプロテクチン濃度の平均は、治療前の基礎値が431.1 μg/Lであり、治療開始3週間後は676.9μg/Lで、コントロール犬の219.4μg/Lよりも有意に高く、犬IBD活動スコア、血清C反応性蛋白濃度、病理組織学的な変化の重症度との相関はなかった。血清カルプロテクチン濃度を296.0μg/L以上をカットオフとして用いると、特発性IBDの犬と健常犬を鑑別するのに、感度は82.4%(95%信頼区間は65.5%-93.2%)であり、特異性は68.4%(95%信頼区間は59.9%-76.0%)であった
結論と臨床的意義:血清カルプロテクチン濃度は、犬の炎症を検出するのに有用なバイオマーカーとなりうるが、ある種の薬剤(糖質コルチコイドなど)を使用すると臨床的な有用性がなくなるようである。(Dr.Taku訳)
■腸管クリプトコッカスネオフォルマンスの治療プロトコールにおいてテルビナフィンを使用した犬の1例
Use of terbinafine in the treatment protocol of intestinal Cryptococcus
neoformans in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 May-Jun;48(3):216-20.
Gavin L Olsen; Krysta L Deitz; Heather A Flaherty; Shawn R Lockhart; Steven F Hurst; Joseph S Haynes
2.5歳オスのビズラが下痢、体重減少、汎低蛋白血症を主訴にアイオワ州立大学教育病院に入院した。検査で異常なほどの削痩状態とメレナを認めた。2つのマスを腹部頭側で触知した。血液学および血清生化学で再生性貧血を示し、汎低蛋白血症の存在を確認し、蛋白喪失性腸症が示唆された。明瞭な腸管壁の肥厚部分と腸間膜リンパ節の腫脹が腹部超音波検査で見つかった。それら結節の細胞診でクリプトコッカス種の存在が疑われ、クリプトコッカス抗原力価を使用して感染を確認した。
脂質複合体アンホテリシンBとフルコナゾールによる内科療法は失敗した。腸の患部およびリンパ節を除去するために2回の手術が行われたが、持続的高クリプトコッカス抗原力価を裏付けとして疾患は持続した。
テルビナフィンが処方され、臨床症状は完全に解消し、クリプトコッカス抗原力価は着実に減少した。
腸管クリプトコッカス症の症例の報告は非常に少ない。この症例では、感染が蛋白喪失性腸症を起こした。またこの文献は犬の腸管クリプトコッカス感染の治療でテルビナフィンの使用を述べており、過去に報告されていない。(Sato訳)
■猫の特発性炎症性腸疾患:何が分かって何が分かってないか
Feline idiopathic inflammatory bowel disease: what we know and what remains
to be unraveled.
J Feline Med Surg. July 2012;14(7):445-58.
Albert E Jergens
実際の関連:猫の特発性炎症性腸疾患(IBD)は、免疫介在性で頑固なあるいは繰り返す消化器(GI)症状と組織学的炎症を特徴とする慢性腸疾患の1つの型である。嘔吐、下痢、体重減少の症状が一般的に優勢で、粘膜炎症は消化管(特に小腸)のどの部分でも起こり得る。その病気の猫は、臨床疾患の重症度に影響する膵臓や肝臓などの他の臓器に同時に炎症を起こしていることもある。
臨床的試み:この疾患の異質群の実際の原因はまだよく分かっていないが、基礎科学および臨床研究の結果から遺伝因子と腸内細菌の相互作用が疾患発症に重要であると示唆される。診断は除外の1つで、炎症性浸潤のタイプと程度を知るためと、消化器型リンパ腫などの他の疾患からIBDを鑑別するために腸粘膜バイオプシーが必要である。IBDの診断と消化器型リンパ腫からの区別に対し、内視鏡による標本と全層標本の診断的精度に関して議論が存在する。
読者:この文献は猫のIBDに対する包括的臨床最新情報を臨床獣医師に提供する意図がある。この症候群の猫に対する現在のエビデンスベースのデータ、診断アプローチ、進化した組織学的基準、治療オプション、予後を概説する。(Sato訳)
■慢性下痢を示す犬における腹部超音波検査の診断有用性について
Diagnostic Utility of Abdominal Ultrasonography in Dogs with Chronic Diarrhea.
J Vet Intern Med. 2012 Oct 13.
Leib MS, Larson MM, Grant DC, Monroe WE, Troy GC, Panciera DL, Rossmeisl JH, Werre SR.
背景:慢性下痢は、犬と猫においてよく認められ、多くの原因から生じる。超音波検査による多くの消化管疾患の描出について報告されているが、慢性下痢の犬における超音波検査の診断有用性については調べられていない。
仮説:腹部の超音波の診断有用性は、消化管腫瘍の犬において最も感度が高く、炎症性疾患において最も感度が低い。
動物:慢性下痢を示す87頭の飼い犬
方法:前向き研究で診療記録を調査し、腹部超音波検査が診断をつけることへの貢献するかについてスコア化した
結果:87頭中57頭(66%)において、超音波検査なくても同一の診断が得られた。87頭中13頭(15%)の犬において、超音波検査は、診断をつけるのに不可欠または利点があった。単変量解析によると、体重減少(P=0.0086)、腹部または直腸腫瘤の触診(P=0.0031)、超音波検査で認められる腫瘤病変が一般的に認められる疾患(P<0.0001)、消化管腫瘍と最終的に診断される、の場合に診断有用性は高かった。多変量回帰分析によると、腹部または直腸の腫瘤が触診できる犬において、触診できる腫瘤がない犬と比較して、腹部の超音波検査の有用性が30倍高かったことが示唆された(オッズ比
30.5, 95%信頼区間 5.5-169.6) (P<0.0001)。87頭中15頭(17%)の犬では、下痢の診断には貢献せず、症例の管理に対して超音波検査の有用性が確認された。
結論と臨床的意義:全体として、腹部超音波検査の診断有用性は慢性下痢の犬において低かった。高い診断有用性に関連する因子の確認は、慢性下痢の犬において腹部超音波検査を実施するための指標である。(Dr.Taku訳)
■164犬種における血清コバラミン濃度の評価(2006-2010年)
Evaluation of serum cobalamin concentrations in dogs of 164 dog breeds (2006-2010).
J Vet Diagn Invest. 2012 Sep 26. [Epub ahead of print]
Grutzner N, Cranford SM, Norby B, Suchodolski JS, Steiner JM.
膵外分泌不全(EPI)や消化管の炎症のような胃腸疾患の犬において血清コバラミン濃度の変化が認められる。本研究の目的は,1) 血清コバラミン濃度が低下することが多い犬種を同定すること、2) 低下していた犬はEPIと診断できる血清犬トリプシン様免疫活性(cTLI)濃度となる傾向があるかどうかを明らかにすること、3) 2009年のアメリカケンネルクラブ(AKC)の犬種ランキングと、犬種によって血清コバラミン検査に提出された数と比較することである。
この後向き研究において、28675のコバラミン検査を調査した。秋田犬、チャイニーズシャーペイ、ジャーマンシェパードドッグ、グレイハウンド、ラブラドールレトリバーが基準範囲の下限(<251
ng/l; all P < 0.0001)より低い血清コバラミン濃度の割合が増加していた。秋田犬、チャイニーズシャーペイ、ジャーマンシェパードドッグ、ボーダーコリーは、アッセイの検出限界以下(<150
ng/l; all P < 0.0001)の血清コバラミン濃度の割合が増加していた。血清コバラミン濃度が150ng/lより低い秋田犬、ボーダーコリー、ジャーマンシェパードは、EPIと診断可能であると考えられるcTLI濃度(?2.5
μg/l; all P ? 0.001)である可能性が高かった。AKCランキングリストと比較した場合、血清コバラミン検査に提出されたサンプルの割合が多かった犬種はグレイハウンドであった(odds
ratio: 84.6; P < 0.0001)。
秋田犬とボーダーコリーにおいては、血清コバラミンとcTLI濃度の低下の頻度が高くなっていることに犬種特異的な胃腸管疾患が関連している可能性があるかを明確にする更なる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の腸管病原性細菌:診断、疫学、治療、コントロール
Enteropathogenic bacteria in dogs and cats: diagnosis, epidemiology, treatment,
and control.
J Vet Intern Med. November 2011;25(6):1195-208.
S L Marks; S C Rankin; B A Byrne; J S Weese
この報告は、ボクサーの肉芽腫性大腸炎に関係するClostridium difficile、Clostridium perfringens、Campylobacter spp.、Salmonella spp.、Escherichia coliに重点を置くとともに、犬と猫の主な腸管病原性細菌の診断、疫学、治療、コントロールに対する一致した見解を提供する。実行する糞便検査に対する客観的推奨値を提供する精査された臨床ガイドラインがないため、細菌が関係する下痢が疑われる動物を診断しようとするのは困難である。この問題は下痢の動物も下痢をしていない動物も推定される細菌性腸管病原体の分離率が同じなこと、どの診断検査を利用すべきか動物診断検査所でもコンセンサスがないことも含まれる。
多くの細菌性腸管病原体は、自ら制御できる下痢で、抗生物質の無思慮な投与は有益よりも有害である。サルモネラやキャンピロバクターは人畜共通感染症を十分実証されているが、単純な症例における抗生物質投与は常に提唱されているわけではなく、支持療法が推奨される。隔離、適当な保護道具の使用、十分な洗浄、消毒の基本診療はコントロールの要である。漂白剤(通常の家庭の漂白剤の10-20倍希釈)と加速化過酸化水素水に感受性のあるC.
difficileおよびC. perfringensの芽胞はアルコール耐性で、アルコールベースの手指消毒剤の使用よりも石鹸と水の手洗いが選ばれる。我々が犬と猫の腸管病原性細菌の同定と管理を最適化するために、確証された分子ベースの検査の完成と従来の検査を組み合わせた診療ガイドラインの実行は重要である。(Sato訳)
■犬の腸リンパ管拡張症の十二指腸内視鏡による形態と病理組織学所見との関連
Duodenal Endoscopic Findings and Histopathologic Confirmation of Intestinal Lymphangiectasia in Dogs.
J Vet Intern Med. 2012 Jul 24. doi: 10.1111/j.1939-1676.2012.00970.x.
Larson RN, Ginn JA, Bell CM, Davis MJ, Foy DS.
背景 腸リンパ管拡張症(IL)の診断は、特徴的な十二指腸粘膜の変化による。しかし、内視鏡による十二指腸粘膜の形態によってILの診断をすることの感受性と特異性については、報告されていない。
仮説/目的 ILの診断に十二指腸の内視鏡による画像の有用性を評価する。十二指腸粘膜の内視鏡所見は、高い感受性と特異性でILの病理組織学的な診断を予測できるかもしれない。
動物 上部消化管(GI)内視鏡と生検を実施した51頭の犬
方法 内視鏡のときに得られた画像を後向きに調べた。GIの際に適切な生検を行い、そのときにデジタル画像が保存されている犬を組み入れた。画像は、ILの存在と重症度について評価した。病理組織学をゴールドスタンダードとして、ILの診断に対する内視鏡の感受性と特異性について検討した。
結果 腸リンパ管拡張症(IL)は、51頭中25頭において診断できた。十二指腸粘膜の肉眼的形態は、ILの診断に対して68%の感度(46%,
84%)と42%の特異性(24%, 63%)であった(95%信頼区間)。リンパ球減少症、低コレステロール血症、低アルブミン血症のある症例においては、感度は80%になった。
結論と臨床的意義 内視鏡による十二指腸粘膜の形態のみでは特異性がなく、ILの診断には中等度の感受性しかない。PLEに関連したバイオマーカーの評価によって感受性が増加する。しかし、ILの診断に対する特異性の低さは、病理組織学的な確認が必要であることを示している。(Dr.Taku訳)
■犬の炎症性腸疾患におけるインターロイキン-1βとインターロイキン-1受容体拮抗薬の粘膜における不均衡
Mucosal imbalance of interleukin-1β and interleukin-1 receptor antagonist
in canine inflammatory bowel disease.
Vet J. 2012 Apr 5. [Epub ahead of print]
Maeda S, Ohno K, Nakamura K, Uchida K, Nakashima K, Fukushima K, Tsukamoto A, Goto-Koshino Y, Fujino Y, Tsujimoto H.
インターロイキン(IL)-1βは炎症性反応の鍵となるメディエーターである。IL-1
受容体拮抗薬 (IL-1Ra)は、IL-1βの内因性阻害剤として機能することによって炎症を制御する。IL-1β
とIL-1Raのバランスの破壊が人の炎症性腸疾患(IBD)で認識されている。
この研究の目的は、IBDの犬21頭と腸管型リンパ腫('炎症'のコントロール)の犬15頭と健常のビーグル20頭('健常'コントロール)において、リアルタイム RT-PCRによる IL-1β と IL-1Ra mRNAの発現と、ELISAによるIL-1β と IL-1Ra タンパクの発現の比較とによって、犬のIBDにおけるIL-1β と IL-1Raの腸における不均衡があるかどうかを決定することであった。
mRNA とタンパクの腸管におけるIL-1Ra: IL-1β比は健常犬と比較してIBD症例において有意な減少が観察された。対照的に、腸管型リンパ腫の犬において減少したIL-1Ra:IL-1β比は観察されなかった。The IL-1Ra:IL-1βタンパク比は、IBDの犬において臨床的重症度と負の相関があった。
IL-1β と IL-1Ra 産生の腸管での不均衡は、犬のIBDの病因に役割を果たしているかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■炎症性腸疾患に罹患した犬における炎症の潜在的なマーカーとしての尿中ロイコトリエンE4濃度
Urinary leukotriene E4 concentrations as a potential marker of inflammation
in dogs with inflammatory bowel disease.
J Vet Intern Med. 2012 Mar-Apr;26(2):269-74.
Im Hof M, Schnyder M, Hartnack S, Stanke-Labesque F, Luckschander N, Burgener IA.
背景:炎症性腸疾患(IBD)と食物反応性下痢(FRD)は、現在では他の疾患を除外した後に治療に対するそれらの反応によってのみ区別できる犬の慢性腸疾患(CCE)である。人ではロイコトリエンE4(LTE4)の尿中濃度上昇が活動性IBDと関連している。
目的:IBD、FRD、健常コントロールに罹患した犬の尿中ロイコトリエンE4濃度を測定すること、そして尿中ロイコトリエンE4と犬IBD活動性インデックス(CIBDAI)スコアの関連性を評価すること。
動物:IBDの犬18頭、FRDの犬19頭そして健常コントロール犬23頭
方法:この前向き研究において、IBDに罹患した飼い主所有の犬とFRDに罹患した飼い主所有の犬の尿を採取し、CIBDAIスコアを計算した。尿中ロイコトリエンE4の定量化は分光法の液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析法で実施し、クレアチニンで補正した。
結果:尿中ロイコトリエンE4濃度はIBDの犬で最も高く(中央値 85.2 pg/mg クレアチニン[10th-90th percentiles 10.9-372.6])、続いてFRDの犬(中央値31.2 pg/mg クレアチニン [10th-90th percentiles 6.2-114.5])とコントロールの犬(中央値 21.1 pg/mg クレアチニン [10th-90th percentiles 9.1-86.5])だった。尿中ロイコトリエンE4濃度はコントロールの犬よりIBDの犬の方が高かった(P = .011)が、IBDとFRDでは有意差がなかった。尿中ロイコトリエンE4濃度とCIBDAIに関連性は認められなかった。
結論と臨床重要性:IBDに罹患した犬のより高い尿中ロイコトリエンE4濃度は、システイニルロイコトリエン経路活性が犬のIBDにおける炎症過程の構成要素であるかもしれないと示唆している。さらに尿中ロイコトリエンE4濃度が慢性腸疾患(CCE)に罹患した犬の炎症マーカーとして使える可能性がある。(Dr.Kawano訳)
■ミニチュアダックスフンドの炎症性結腸直腸ポリープの回顧的研究
A retrospective study of inflammatory colorectal polyps in miniature dachshunds.
J Vet Med Sci. February 2012;74(1):59-64.
Aki Ohmi; Atsushi Tsukamoto; Koichi Ohno; Kazuyuki Uchida; Ryohei Nishimura; Kenjiro Fukushima; Masashi Takahashi; Ko Nakashima; Yasuhito Fujino; Hajime Tsujimoto; Hajime Tsujimoto
結腸直腸ポリープの犬の医療記録を回顧的に再検討し、ミニチュアダックスフンドの炎症性結腸直腸ポリープの臨床症状を評価した。結腸直腸ポリープが見つかった33頭の犬のうち、ミニチュアダックスフンドは16頭(48%)と顕著に多くみられ、そのうち12頭(75%)に炎症性ポリープがあった。直腸と下行結腸の間に複数のポリープが存在することは、炎症性ポリープのミニチュアダックスフンドの最も一般的な所見だった。
炎症性結腸直腸ポリープのある25頭のダックスフンドのうち20頭(80%)は、プレドニゾロンとシクロスポリンを用いた免疫抑制療法に反応した。
ミニチュアダックスフンドは免疫抑制療法が治療オプションとなる炎症性結腸直腸多発性ポリープを発症する素因を持つことを、この研究の結果は示す。(Sato訳)
■子犬と1頭の子猫における肛門生殖器奇形を伴う、あるいは伴わない鎖肛の長期結果:12症例(1983-2010)
Long-term results of surgery for atresia ani with or without anogenital
malformations in puppies and a kitten: 12 cases (1983-2010).
J Am Vet Med Assoc. January 2012;240(2):186-92.
Gary W Ellison; Lysimachos G Papazoglou
目的:子犬および子猫で同時に肛門生殖器あるいは直腸生殖器奇形を伴う、あるいは伴わない様々なタイプの鎖肛(AA)の外科的修復後のシグナルメント、臨床所見、外科的治療、長期結果を評価する
構成:後ろ向き症例シリーズ
動物:子犬11頭と子猫1頭
方法:AAに対する外科的治療を行った子犬および子猫に関し、1つの動物病院の医療記録を調査した。シグナルメント、診断、外科処置、追跡調査期間、結果に関する情報を記録した。過去に述べられている分類シェーマを使用し、AAをタイプI、II、III、IVに分類した。追跡調査期間と結果を評価した。
結果:3頭はタイプI、6頭はタイプII、3頭はタイプIIIに分類した。12頭中9頭は肛門生殖器あるいは直腸生殖器奇形だった。;そのうち8頭は直腸腟瘻だった。11頭は元の場所に肛門形成を行い、1頭は肛門再建に直腸腟瘻を使用する手術を行った。また6頭は肛門狭窄の治療としてバルーン拡張を実施し、5頭は肛門を修正する手術を行った。タイプIあるいはタイプIIの全ての動物は1年以上生存した。タイプIIIの子犬2頭は、術後3日および40日目に安楽死された。残り10頭の追跡調査期間は12-92ヶ月で、3頭は大便失禁があった。
結論と臨床関連:タイプIあるいはIIの外科的修復は、ほとんどの症例に長期生存と排泄抑制能力をもたらせた。少数だが、タイプIIIの動物の結果は、タイプIあるいはIIよりも悪かった。(Sato訳)
■獣医療の炎症性腸疾患
Inflammatory bowel disease in veterinary medicine.
Front Biosci (Elite Ed). January 2012;4(0):1404-19.
Albert E Jergens; Kenneth W Simpson
犬および猫の炎症性腸疾患(IBD)は、免疫介在性の胃腸管の特発性慢性再発性炎症性疾患の異質なグループを示す。
それらの正確な原因は不明なままであるが、基礎科学と臨床研究の結果は、遺伝因子と腸内細菌の相互作用が、共生微生物相に対して向けられた異常な宿主反応のため、疾患発症に対して非常に重要だと示唆している。
嘔吐、下痢、体重減少、炎症の病理組織病変などの鍵となる臨床症状が胃、小腸あるいは大腸に起こるかもしれない。分子ツール、疾患活動指数、バイオマーカー開発など最近の進歩は、診断時のIBD重症度、種々の治療に対する反応の客観的判断を可能にする。
IBDの治療は、食餌と薬剤介入に加え、抗生物質と可溶性繊維(プレバイオティック)サプリメントの使用を通して腸内微生物相の治療的操作などである。
ここでは、IBDの犬と猫の獣医研究から原因病理論、臨床特徴、診断戦略、現在推奨される治療および転帰に対する包括的概要を提供する。またヒトと犬のIBDの科学的比較も行う。(Sato訳)
■炎症性腸疾患がある、そしてない犬の十二指腸組織においてT細胞サブセットの選択的サインサイトカインの遺伝子発現
Gene expression of selected signature cytokines of T cell subsets in duodenal
tissues of dogs with and without inflammatory bowel disease.
Vet Immunol Immunopathol. 2012 Jan 21.
Schmitz S, Garden OA, Werling D, Allenspach K.
炎症性腸疾患(IBD)は犬の慢性下痢の一般的な原因である。人において、特異的なサイトカインパターンがT細胞サブセットに起因し、特にヘルパーT細胞[Th]1、Th17そして制御性T細胞(Treg)がIBDで出現する。対照的に、別々のT細胞サブセットの特定の関与は、犬のIBDにおいてこれまで述べられていない。
従って、この研究の目的は、IBDに罹患した18頭のジャーマンシェパード(group 1)、IBDに罹患したその他の犬種33頭(group 2)と15頭のコントロール犬(group 3)の十二指腸組織におけるサインサイトカインの遺伝子発現を評価することだった。IL-17A、IL-22、IL-10、IFNy そしてTGFβの相対的定量化を実施した。
IL-17Aの発現は、グループ3に比べ、グループ1 とグループ2で明らかに低かった(p=0.014)が、グループ間でIL-22 (p=0.839)、IFNγ (p=0.359)、IL-10 (p=0.085) あるいは TGFβ (p=0.551)の発現に違いは認められなかった。従って、mRNAレベルで犬のIBDにおいてTh-17サインサイトカインの関与に関する明確なエビデンスは証明されなかった。病因に対する特異的T細胞サブセットの寄与は更なる調査を保障する。(Dr.Kawano訳)
■正常な犬の空腸の術中造影超音波検査
Intraoperative contrast-enhanced ultrasonography of normal canine jejunum.
Vet Radiol Ultrasound. 2011 Mar-Apr;52(2):196-200.
David A Jimenez; Robert T O'brien; Johna D Wallace; Emily Klocke
9頭の正常な若年犬を正中開腹術により、直接空腸造影超音波検査で評価した。超音波造影剤(Definity)の3つの異なる投与量を、末梢静脈カテーテルで注射した。時間強度曲線を利用して各投与量の基準、最初の上昇までの時間、流入勾配、ピークまでの時間、ピーク強度(PI)、流出勾配を算出した。
PIは投与量に正比例した。流出勾配は投与量に無関係に全ての犬で似ていた。最も好ましい画像は、0.030ml/kgの急速静脈内用手ボーラス投与で得られた。ここで描写された方法と正常な空腸灌流パターンは、犬の腸の脈管、炎症、腫瘍性疾患の評価に対する有効なデータを提供すると思われる。(Sato訳)
■小動物の重篤疾患の胃腸合併症
Gastrointestinal complications of critical illness in small animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2011;41(4):759-66.
Timothy B Hackett
胃腸(GI)管は犬のショック臓器の1つである。重篤疾患の動物におけるGI機能障害は、低運動性、食欲不振、悪心などの軽度の問題から難治性嘔吐、重度下痢、敗血症のようなより重篤なものまで呈する。他の臓器系への感染、全身性炎症反応を誘発する腸管細菌叢の血流へのアクセスが増加するため、敗血症はGI機能障害の重大な合併症である。GI機能不全の治療は主に悪心や脱水の支持療法であるが、適切な経腸栄養で病的な胃腸管の支持する症例、食餌サプリメントや抗生物質で治療する症例もある。(Sato訳)
■犬の蛋白漏出性腸疾患
Protein-losing enteropathies in dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 2011 Mar;41(2):399-418.
Dossin O, Lavoue R.
蛋白漏出性腸疾患は犬で一般的であるが、猫では稀である。ほとんどの症例において、炎症性腸疾患(IBD)、腸管リンパ腫あるいはリンパ管拡張症が関連している。診断は低アルブミン血症の認識と尿からの喪失と肝不全の除外に基づく。適切な生検方法による腸病変の認識は腫瘍あるいは感染性の原因の除外に重要である。
治療は集中的な栄養サポート、原因となる疾患の治療と低コバラミン血症、大量の胸水あるいは腹水収集、血栓塞栓症そして低カルシウム血症あるいは低マグネシウム血症など起こりうる致死的な合併症に対する早期モニタリングに基づく。(Dr.Kawano訳)
■猫の炎症性腸疾患と小型細胞リンパ腫の診断のための十二指腸と回腸の内視鏡下生検の有用性
Utility of endoscopic biopsies of the duodenum and ileum for diagnosis
of inflammatory bowel disease and small cell lymphoma in cats.
J Vet Intern Med. 2011 Nov;25(6):1253-7.
Scott KD, Zoran DL, Mansell J, Norby B, Willard MD.
背景:猫の浸潤性腸疾患において内視鏡下十二指腸生検は比較的簡便で、最小限の浸襲検査である。回腸の内視鏡下生検は技術的に難しく、結腸を準備する必要があるため実施しないかもしれない。炎症性腸疾患(IBD)と小型細胞リンパ腫(SC-LSA)の検知のための猫の十二指腸と回腸のサンプルの組織病理結果が、同等の結果を提供するかどうかは知られていない。
目的:炎症性腸疾患(IBD)と小型細胞リンパ腫(SC-LSA)に罹患した猫の十二指腸と回腸の内視鏡下生検の間の一致度を評価する。
動物:胃腸疾患があり、内視鏡により適切に十二指腸と回腸組織を採取できた70頭の飼い主所有の猫
方法:回顧的研究:腸疾患と内視鏡検査の猫の医療記録の検索。質、生検の数およびWSAVA基準による診断のためにサンプルは伏せて1人の病理学者(JM)によって再評価された。生検部位の中で炎症性腸疾患(IBD)と小型細胞リンパ腫(SC-LSA)の診断の一致度は、カッパ係数で評価した。
結果:18/ 70頭(26%)の猫が十二指腸、回腸、あるいは両方で小型細胞リンパ腫(SC-LSA)と診断された。これらの18頭の猫のうち 7頭(39%) は十二指腸単独の小型細胞リンパ腫(SC-LSA)と診断され、8頭(44%)は回腸単独の小型細胞リンパ腫(SC-LSA)と診断され、3頭(17%)は十二指腸と回腸両方の小型細胞リンパ腫(SC-LSA)と診断された。十二指腸と回腸の生検の間の診断における一致度は乏しかった(カッパ=0.23)。
結論と臨床重要性:1人の病理医によるレビューはこの研究の制限だが、結果は、回腸の生検の評価によってのみ小型細胞リンパ腫(SC-LSA)の診断を下すことが出来る猫の個体群があることを示唆する。浸潤性小腸疾患の猫において、臨床家は上部および下部両方の消化管の内視鏡下生検を考慮すべきである。(Dr.Kawano訳)
■慢性腸疾患の犬の治療前後における臨床症状、組織学そしてCD3陽性細胞
Clinical signs, histology, and CD3-positive cells before and after treatment of dogs with chronic enteropathies.
J Vet Intern Med. 2008 Sep-Oct;22(5):1079-83.
Schreiner NM, Gaschen F, Grone A, Sauter SN, Allenspach K.
背景:組織病理は犬の炎症性腸疾患の診断に広く使われている。病変のバリエーションや一様なグレードシステムを利用できないことは組織学的検査の有用性を制限する。
仮説:犬の慢性腸疾患におけるCD3陽性細胞数は、病気の臨床活動と組織病理学的変化の重症度に関連する。
動物:慢性下痢、嘔吐あるいは両方のため検査した19頭の飼い主が所有する犬
方法:治療前後に内視鏡下で十二指腸と結腸から粘膜のサンプルを採取した。低アレルギー食に反応した犬は、食事反応性下痢の犬のグループ(FRD、n=10)とした。治療10日後に臨床症状の改善がない犬は、その後プレドニゾロン(免疫抑制量)を投与し、ステロイド反応性下痢の犬のグループ(SRD、n=9)とした。腸管サンプルに対し、標準化したグレードシステムによる組織病理学的評価を回顧的に実施した。組織学的スコア、総浸潤細胞数そしてCD3陽性細胞数を測定し、臨床スコアと比較した。
結果:それぞれのグループ(FRDとSRD)において治療前後の生検における組織学的グレード、基底膜における総細胞数、そしてT細胞数は統計的に明らかな違いがなかった。
結論と臨床重要性:近年使われている組織病理学的グレードスコア、総細胞数そしてCD3陽性細胞数は、FRD と SRDで違いがなく、治療に対する臨床反応と関連しなかった。これらの結果に基づいて、総細胞数やCD3陽性細胞より他の基準を査定する新しいグレードスコアが今後評価されるべきである。(Dr.Kawano訳)
■炎症性腸疾患と低アルブミン血症の犬におけるビタミンD欠乏
Hypovitaminosis D in dogs with inflammatory bowel disease and hypoalbuminaemia.
J Small Anim Pract. August 2011;52(8):411-418.
A G Gow; R Else; H Evans; J L Berry; M E Herrtage; R J Mellanby
目的:炎症性腸疾患と正常なアルブミン濃度の犬、炎症性腸疾患の犬と低アルブミン血症の犬、健康犬および非胃腸疾患の入院している病気の犬の血清ビタミンD代謝物および血漿上皮小体ホルモン濃度を比較する
方法:血清25ヒドロキシビタミンDおよび1、25ジヒドロキシビタミンD濃度を健康犬36頭、非胃腸疾患の入院犬49頭、正常なアルブミン濃度の炎症性腸疾患の犬21頭、低アルブミン濃度の炎症性腸疾患の犬12頭で測定した。血漿上皮小体ホルモンおよびカルシウムイオン濃度を、それらの犬の部分集団で測定した。
結果:低アルブミン濃度の炎症性腸疾患の犬の血清25ヒドロキシビタミンD濃度は、健康犬(P<0.001)、入院疾患犬(P<0.001)、正常なアルブミン濃度の炎症性腸疾患の犬(P<0.001)よりも低かった。入院疾患犬と比べ、低アルブミン濃度の炎症性腸疾患の犬の血漿上皮小体ホルモン濃度は高く(P<0.01)、血漿カルシウムイオン濃度は低かった(P<0.001)。炎症性腸疾患の犬は血清25ヒドロキシビタミンD濃度と血清アルブミン(P<0.0001)、血清カルシウム(P<0.0001)と血漿カルシウムイオン濃度(P<0.0005)の間に正の相関があった。
臨床意義:低アルブミン血症で炎症性腸疾患の犬は、カルシウムイオン低下、上皮小体ホルモン上昇、血清25ヒドロキシビタミンD濃度低下がよく見られる。この疾患の合併症の原因、この状態を戻す治療戦略を確立するために更なる研究が必要である。(Sato訳)
■バルーン拡張法によるI型鎖肛の治療:5頭の子猫と1頭の子犬
[Treatment of atresia ani type I by balloon dilatation in 5 kittens and one puppy.]
Behandlung von Atresia ani Typ I mittels Ballondilatation bei 5 Katzen- und einem Hundewelpen.
Language: German
Schweiz Arch Tierheilkd. June 2011;153(6):277-280.
K Tomsa; A Major; T M Glaus
鎖肛は小動物で最も一般的な肛門直腸奇形である。この研究で、3-8週齢の5頭の子猫と4ヶ月齢の1頭の子犬の肛門狭窄(I型鎖肛)をバルーン拡張法で治療した。4頭の子猫と子犬の狭窄は、1回の処置で合併症もなく持続的に解消した。最も重度の狭窄を持つ最も小さい子猫のみが、繰り返しのバルーン拡張法により外科的介入の必要な合併症として直腸瘻を発症した。バルーン拡張法は、I型鎖肛に対する効果的な治療方法と判明し、選択される治療に推奨できる。(Sato訳)
■犬の炎症性腸疾患:人との相違と類似性
Inflammatory bowel disease in the dog: Differences and similarities with humans
World J Gastroenterol. 2010 March 7; 16(9): 1050?1056.
Matteo Cerquetella, Andrea Spaterna, Fulvio Laus, Beniamino Tesei, Giacomo Rossi, Elisabetta Antonelli, Vincenzo Villanacci, and Gabrio Bassotti
炎症性腸疾患(IBD)は人の胃腸管が影響を受ける重要な慢性疾患である。しかし、類似した疾患がいくつかの動物で見られ、IBDに罹患した犬は特に重要である。これらはおそらく共通の症状を呈するいくつかの異なる実体の傘に包囲されており、そのいくつかは人間の状況と著しい共通点を共有するように見える。このレビューは犬のIBDの実際の知識に注目し、人のIBDの状況との相違と類似点との識別を試みるでしょう。(Dr.Kawano訳)
■猫の経口下剤としてポリエチレングリコール3350の安全性と嗜好性
Safety and palatability of polyethylene glycol 3350 as an oral laxative in cats.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):694-7.
Fiona M Tam; Anthony P Carr; Sherry L Myers
猫の再発性の便秘はよくある問題である。しばしば緩下剤が再発性便秘の管理の基本となる。しかし、猫における緩下剤の使用に関して発表された研究は少ない。
この研究は正常な猫においてポリエチレングリコール(PEG3350)の安全性と嗜好性を調査した。全ての猫は、体重あるいは食餌摂取を変化させることなく4週間PEG3350緩下剤を消費した。全ての猫は軟便となった。実験猫において効果的な投与量の幅は広く、投薬の個別化が重要である。軽度の非臨床的高カリウム血症が見られたが原因は不明である。(Sato訳)
■犬の炎症性腸疾患における腸のサイトカインmRNA発現
Intestinal cytokine mRNA expression in canine inflammatory bowel disease: a meta-analysis with critical appraisal.
Comp Med. 2009 Apr;59(2):153-62.
Jergens AE, Sonea IM, O'Connor AM, Kauffman LK, Grozdanic SD, Ackermann MR, Evans RB.
犬の炎症性腸疾患(IBD)の病因における粘膜サイトカインを関係づける情報は限られる。
この研究の目的は、IBDに罹患した犬における腸のサイトカイン発現に関する新しい所見を報告し、メタアナリシスによってこれまでの研究データと比較することである。
前向きに採取した腸の生検組織におけるサイトカインmRNAの存在量は半定量的RT‐PCR法で評価した。メタアナリシスについては、電子データベース探索は3回の臨床試験を明らかにした。それらのすべては無作為化されていない(type III)症例シリーズだった。前向き分析では健常犬の腸とIBD症例の腸で多数のサイトカインが発現し、前炎症性の発現プロフィールは小腸性あるいは大腸性IBDの特徴でないことを示した。メタアナリススでは、健常犬 (n = 45), 下痢をしている非IBDの犬 (n = 6), 非反応性の犬 (n = 2), 小腸性IBD (n = 41), 結腸性IBD (n = 25), そして慢性腸疾患 (n = 39)の158頭が含まれた。ジャーマンシェパードは4つの研究のうち3つの研究でよく観察された。健常犬は、IL2、IL4、IL5、IL10、IL12、IFNγ、TNFαそしてTGFβを含む大部分のサイトカインのmRNAを発現していた。IL12のmRNA発現だけが小腸性IBDにおいて一貫して増加したが、結腸性IBDでは首尾一貫したパターンの発現はなかった。結論として、IBDの犬は、炎症した粘膜に置いて優勢なTh1あるいはTh2のサイトカインの偏りを発現しない。これらの研究において多様性のある結果は、研究毎のmRNAの定量方法、疾患のステージ、そして個体群統計学の違いなど様々な要因で説明されるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■炎症性腸疾患における炎症の便マーカーの最新の調査
Update of fecal markers of inflammation in inflammatory bowel disease.
J Gastroenterol Hepatol. 2011 Oct;26(10):1493-9. doi: 10.1111/j.1440-1746.2011.06846.x.
Judd TA, Day AS, Lemberg DA, Turner D, Leach ST.
炎症性腸疾患(IBD)の診断、予後そして疾患の活動性の評価は、血清の炎症マーカーと同じように臨床的、放射線学的そして組織学的基準の調査が必要とされている。しかし、便の炎症マーカーの領域は、現在これらのプロセスにおいて大きく補助となる可能性を持つのが明らかである。好中球の主要蛋白であるカルプロテクチンは、20年前にIBDの可能性のある革命的なマーカーであると確認された。この発見に続き、S100A12、ラクトフェリン、そしてM2-pyruvate kinaseなど様々なマーカーがIBDの新しいマーカーとして支持されている。今回の研究で、我々は、IBDの便マーカーの最新の調査を概説し、さらに重度な潰瘍大腸炎におけるこれらの便マーカーのそれぞれの新しい分析を提供し、カルプロテクチンを対照にそれらの発現パターンを比較します。(Dr.Kawano訳)
■正常および便秘および巨大結腸の猫のエックス線写真上での結腸の直径
RADIOGRAPHIC DIAMETER OF THE COLON IN NORMAL AND CONSTIPATED CATS AND IN CATS WITH MEGACOLON
Veterinary Radiology & Ultrasound
Article first published online: 20 MAY 2011
TIM TREVAIL, DANIELLE GUNN-MOORE, INES CARRERA, EMILY COURCIER, MARTIN SULLIVAN
猫の結腸の写真上の直径の正常参照範囲を確立するため、胃腸疾患の病歴のない50頭の猫のエックス線写真を評価した。便秘の猫13頭と巨大結腸の猫26頭も評価し、正常範囲の精度を特徴づけ、巨大結腸と便秘を区別する境界を決めるために正常猫と比較した。結腸の最大直径とL5長の比率が最も再現性があり正確な測定値だった。比率<1.28が正常結腸の強い指標である(感受性96%、特異性87%)。比率>1.48は巨大結腸の良い指標である(感受性77%、特異性85%)。(Sato訳)
■犬の急性胃腸炎におけるプロバイオティック治療介入の効果-コントロール臨床研究
Effects of a probiotic intervention in acute canine gastroenteritis--a controlled clinical trial.
J Small Anim Pract. 2010 Jan;51(1):34-8.
Herstad HK, Nesheim BB, L'Abee-Lund T, Larsen S, Skancke E.
目的:自然治癒する犬の急性胃腸炎におけるプロバイオティック製品の効果を評価する
方法:急性下痢あるいは急性下痢嘔吐の36頭の犬が研究に参加した。試験は、層別化した並行群間試験を伴うランダム化二重盲検単施設試験として実施された。6の固定したブロックサイズをブロックランダム化でプロバイオティック治療とプラセボ治療が同じような見た目になるように動物に与えた。プロバイオティックカクテルは、温度安定性Lactobacillus
acidophilus と Pediococcus acidilactici、 Bacillus subtilis、 Bacillus
licheniformis そして Lactobacillus farciminisの生菌株を含んだ。
結果:最後の異常な排便までの治療開始からの時間は、プラセボグループに対してプロバイオティックグループの方が有意に(P
= 0.04)に短く、平均時間はそれぞれ2.2日と1.3日だった。最後の嘔吐までの治療の開始からの時間に関して2つのグループはほとんど一緒であった。
臨床重要性:研究したプロバイオティックは、犬の自然治癒する急性下痢における回復時間を減少させるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
乳酸菌のメリットは腸管免疫による免疫賦活作用だけではなく、腸pHの酸性化によって有害細菌が増殖し難い環境をつくることですね。
■過敏性腸症候群の生理反応と臨床兆候に対するストレスの役割
The Role of Stress on Physiological Responses and Clinical Symptoms in Irritable Bowel Syndrome.
Gastroenterology. 2011 Jan 19. [Epub ahead of print]
Chang L.
過敏性腸症候群 (IBS)が、身体機能と行動に影響を与える脳領域からの平行運動出力の活性化と中枢性ストレスおよび覚醒回路におけるストレス誘発性変化を仮定する神経生物学的モデルによって説明することが出来る、という心理的疾患であるという概念を研究は支持する。持続性ストレスは視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸、自律神経系、代謝そして免疫システムなど適応システムの慢性の活動過剰あるいは活動性低下をもたらす可能性がある。
慢性あるいは持続性ストレスが過敏症腸症候群の兆候の発生と増悪に関連していることが動物と人間の研究で証明されている。また、慢性ストレスは感染後の過敏症腸症候群への発展への独立予測因子である。過敏性腸症候群患者は特に胃腸運動、直腸知覚、自律神経緊張そして視床下部-下垂体-副腎(HPA)軸反応においてストレス誘発性変化を示す。しかし、これらの所見は研究中全体的に首尾一貫して見られていない。これは研究の方法論の違い、あるいはこれらの生理反応に影響を及ぼす様々な因子によるためである。過敏性腸症候群のストレスの影響に関するより大きな認識と理解は、さらなる創薬の目標を特定する手助けとなり、過敏性腸症候群の兆候のより効果的な管理の誘導を助けるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■炎症性腸疾患あるいは食物有害反応を示す猫8頭における市販の加水分解食の効果
Efficacy of a commercial hydrolysate diet in eight cats suffering from inflammatory bowel disease or adverse reaction to food.
Tijdschr Diergeneeskd. September 2010;135(18):668-72.
Paul J J Mandigers; Vincent Biourge; Alexander J German
慢性嘔吐および/あるいは下痢を呈する猫28頭中8頭を慢性腸症に罹患していると診断した。全ての猫は内視鏡を含む完全診断検査を実施していた。組織病理所見は正常、好酸球性、リンパプラズマ細胞性胃腸炎と様々だった。所見をもとに炎症性腸疾患(IBD)あるいは食物に対する有害反応と診断した。
8頭の猫全て単独療法として加水分解蛋白食を使用し、4-8日以内に臨床症状は解消した。2ヵ月後、猫の体重は増加していた。それぞれ以前の食餌の暴露試験で、臨床症状の再発が起こり、試験食で再導入すると7頭の猫は臨床症状が解消した。この研究で使用した加水分解蛋白食はそれらの症例の管理に有効だったと結論付ける。(Sato訳)
■好酸球性胃腸炎、食物アレルギーそして蛋白漏出性腸症の患者に対する経口クロモグリク酸二ナトリウムとケトチフェン
Oral disodium cromoglycate and ketotifen for a patient with eosinophilic gastroenteritis, food allergy and protein-losing enteropathy.
Asian Pac J Allergy Immunol. 2003 Sep;21(3):193-7.
Suzuki J, Kawasaki Y, Nozawa R, Isome M, Suzuki S, Takahashi A, Suzuki H.
我々は、ヒスタミン放出検査が陽性で、いくつかの食物に対するアレルゲン特異的IgE抗体が上昇し、総血清蛋白そしてアルブミンが低濃度である蛋白漏出性腸症と好酸球性胃腸炎に罹患した10歳の少年に関し症例報告する。上部消化管内視鏡検査で多数のポリープとびまん性胃炎を認めた。胃と十二指腸から採取した生検組織で好酸球と好中球が広範に認められた。制限食は推奨されるが、ヒスタミン放出検査とアレルゲン特異的IgE抗体の両方が陽性結果となった食物を除外した食事はあまり受け入れられず、患者はコルチコステロイドの全身投与を拒絶した。よって我々は経口クロモグリク酸二ナトリウム(DSCG)とケトチフェン療法を開始した。経口クロモグリク酸二ナトリウム(DSCG)とケトチフェン投与後に、患者の状態は徐々に改善した。従って、経口クロモグリク酸二ナトリウム(DSCG)とケトチフェン療法は、食物アレルギーによって惹起された好酸球性胃腸炎と蛋白漏出性腸症の患者における治療オプションとして考慮することが出来るかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■糞便中に大量のCyniclomyces guttulatusが存在することに関係する下痢の猫1例
[A cat with diarrhoea associated with the massive presence of Cyniclomyces guttulatus in the faeces]
Een geval van diarree geassocieerd met Cyniclomyces guttulatus (brillendoosjesgist) bij de kat.
Tijdschr Diergeneeskd. March 2009;134(5):198-9.
Stijn Peters, Dirk J Houwers
これは猫の糞便中に大量のCyniclomyces guttulatus酵母菌が存在したことを述べる最初の報告である。当初、急性の嘔吐と下痢の主訴で来院した。経口サラゾスルファピリジンによく反応したが、糞便は軟らかいままで、Cyniclomyces guttulatus酵母は依然存在した。ニスタチン(15000IU/kg、24時間毎4日間)のクール後、糞便は正常となり酵母は全く見られなくなった(遠沈/浮遊/硫酸亜鉛)。Cyniclomyces guttulatusはウサギ、モルモット、チンチラ、ラット、マウスの消化管に自然に発生する。時折、下痢の犬の糞便で大量に発見され、それらの犬の一部はニスタチン投与によく反応する。最近の実験では、犬猫に対するニスタチンの最も効果的な投与量は50000IU/kg24時間毎の4日間経口投与だと示されている。(Sato訳)
■ロットワイラーの蛋白漏出性腸症
[Protein-losing enteropathy in Rottweilers]
Tijdschr Diergeneeskd. May 2010;135(10):406-12. Dutch
M Dijkstra, J S Kraus, J T Bosje, E den Hertog
目的:ロットワイラーにおける過去に述べられていない蛋白漏出性腸症(PLE)の症状、組織病理学的特徴、治療結果を述べる
方法:PLEで紹介されてきた17頭のロットワイラーの回顧的研究で、性別、年齢、症状、組織病理学的診断、治療結果などのデータを収集した。犬の炎症性腸疾患活動指数(CIBDAI)スコアを算出し、疾患の重症度を数量化した。内視鏡による腸バイオプシーは、World
Small Animal Veterinary Association (WSAVA)胃腸標準グループのガイドラインに従い評価した。
結果:呈している症状は、水溶性下痢および体重減少だった。この研究でPLEの犬全てにおいて、見つかった異常は炎症性腸疾患の形態に一致した。ジアルジアあるいはCyniclomyces guttulatusの二次感染が見られた犬もいた。10頭(59%)の犬のCIBDAIスコアは9以上で、重度疾患を示した。組織病理学的所見は、リンパプラズマ細胞性腸炎を示し、14頭(82)はリンパ管拡張を伴い、10頭(59%)は好酸球浸潤を伴った。11頭(65%)は安楽死、もしくは腸疾患で死亡した。カプラン-マイヤー解析で、生存期間中央値は5ヶ月、1年生存率は47%と示された。7頭(41%)は免疫抑制剤および食餌療法の治療で無病となったが、何頭かは再発した(無病期間中央値21ヶ月)。
臨床意義:慢性下痢および体重減少を呈するロットワイラーにおいて、臨床医は重度PLEの存在を考慮すべきで、その疾患は予後不良である。(Sato訳)
■人の胃腸管および結腸通過に対する大建中湯(TU-100)の効果
Effect of daikenchuto (TU-100) on gastrointestinal and colonic transit in humans.
Am J Physiol Gastrointest Liver Physiol. 2010 Jun;298(6):G970-5. Epub 2010 Apr 8.
Manabe N, Camilleri M, Rao A, Wong BS, Burton D, Busciglio I, Zinsmeister AR, Haruma K.
大建中湯(TU-100)は、腸閉塞の術後の治療として使われている伝統的な日本(漢方)医学である。大建中湯(TU-100)は、動物の研究で、用量依存的にコリン作動性そしてセロトニン作動性のメカニズムを調節することによって胃腸管の動きを増加させる。この研究の目的は、健常な人において胃腸管および結腸通過と腸機能に関して経口的な大建中湯(TU-100)の効果を評価することだった。ランダム化、並行群、二重盲検、プラセボコントロール、用量反応試験において、60人の健康な被験者を、5日連続食前に1日3回、プラセボか大建中湯(TU-100)2.5gあるいは5gを服用する群にランダムに割り当てた。我々は、シンチグラフィーで胃腸管および結腸通過を測定し、腸機能の日記によって便回数そして硬さを測定した。
大建中湯(TU-100)とプラセボの各投与量でいかなる有意差もなく、6時間での結腸充満において総体的治療効果があった。上行結腸(AC)が空になる半減時間に対して総体的治療効果の傾向があった。大建中湯TU-100治療(7.5 g/day)はプラセボと比べて明らかに上行結腸空化を促進させた。大建中湯(TU-100)の両方の投与量でも(全結腸通過を反映させる)GC24の値は数値的に高かったが、これらの変化は統計的には有意ではなかった。胃の空虚あるいは便回数と硬さに関しては、総体的治療効果が明らかではなかった。大建中湯(TU-100) を7.5 g/dayで服用した1人の患者は、実験後にCPKが上昇していた。大建中湯(TU-100)による治療 (7.5 g/day)は上行結腸の空化を有意に促進させた。機能性便秘あるいは便秘を伴う過敏性腸症候群(IBS)に罹患した患者における更なるランダム化コントロール試験が、これらの疾患において大建中湯(TU-100)の臨床的な効果を評価するために必要である。(Dr.Kawano訳)
■メサラジンで治療した炎症性腸疾患(IBD)の犬の胃粘膜の眼的および組織病理学的検査
Macroscopic and histopathological examination of the gastric mucosa in dogs with inflammatory bowel disease (IBD) treated with mesalazine.
Pol J Vet Sci. 2009;12(2):217-23.
Rychlik A, Nieradka R, Kander M, Depta A.
この研究の目的は、炎症性腸疾患(IBD)の犬の胃粘膜に対して肉眼的そして組織病理学的検査を実施し、胃粘膜における組織病理学的変化に関してメサラジン治療の効果を評価することだった。十二指腸および空腸の炎症を組織病理学的に確認した18頭の犬に対して治療を行った。メサラジン12.5 mg/kg1日2回を6週以上投与した。検査した犬は、多数のリンパ球/プラズマ細胞浸潤を伴う慢性カタール性胃炎と診断した。検査した犬の83%において、検査前の生検で腸上皮化生が観察された。肉眼検査および顕微鏡的検査の結果から、治療によって胃粘膜の形態に対して陽性効果が認められたことが明らかとなった。胃粘膜への細胞浸潤は明らかに抑制され、おそらくメサラジンの抗炎症効果によるものであると推測された。(Dr.Kawano訳)
■犬と猫の胃腸管異物:208症例の回顧的研究
Gastrointestinal foreign bodies in dogs and cats: a retrospective study of 208 cases.
J Small Anim Pract. 2009 Oct 8.
Hayes G.
目的:異物が閉塞しやすい場所を確立し、予後不良と関連する臨床要素を検討すること。
方法:一次診療施設の症例で48ヶ月以上の間に見られた208症例に対する回顧的研究。
結果:線状異物(犬で80%、猫で63%)とは対照的に、全体的に見て、91%の症例は孤立異物(犬で94%、猫で100%)から高い生存率で回復した。イングリッシュ・ブルテリア、スプリンガー・スパニエル、スタッフォードシャー・ブル・テリア、ボーダー・コリーそしてジャック・ラッセル・テリアは好発犬種であった。
犬において、閉塞の63%が空腸だったが、異物は胃腸管に沿ってすべての場所でみられた。臨床兆候のより長い持続期間、線状異物の存在そして数箇所における腸の処置は明らかな死亡率の増加にと関連した。閉塞の程度(部分閉塞あるいは完全閉塞)も異物の場所も生存に明らかな影響を与えなかった。
臨床関連:迅速な呈示、診断そして外科的介入は異物による胃腸管閉塞の予後を改善する。外科において、消化管の完全性を修復するために、腸管処置を最小数にすべきである。(Dr.Kawano訳)
■リンパ球性プラズマ細胞性腸炎の非低蛋白血症の犬における治療への臨床、肉眼的、病理組織反応の評価
Evaluation of clinical, macroscopic, and histopathologic response to treatment in nonhypoproteinemic dogs with lymphocytic-plasmacytic enteritis
J Vet Intern Med. 2007 Jan-Feb;21(1):11-7.
M Garcia-Sancho, F Rodriguez-Franco, A Sainz, C Mancho, A Rodriguez
背景:リンパ球性プラズマ細胞性腸炎(LPE)は、犬の慢性嘔吐および下痢の一般的な原因である。しかし、LPEの犬の治療後における内視鏡あるいは病理組織学的改善について得られる情報はほとんどない。
仮説:目的は、プレドニゾロンおよびメトロニダゾールで免疫抑制治療中および治療後のLPEの臨床、内視鏡および病理組織学的進展を研究することだった。ほとんどの犬はメトクロプラミドおよびシメチジンの対症治療も行った。
動物:マドリードのコンプルトゥエンセ大学獣医教育病院でLPEおよび正常血清蛋白濃度と診断された16頭の犬を投薬中および投薬後モニターした。12ヶ月前から胃腸症状のない9頭の犬をコントロール群とした。
方法:この前向き臨床治験において、従来の治療中の疾患の進展を述べるため、臨床、内視鏡および病理組織スコアーを評価した。LPEの犬は治療開始から120日間モニターした。再検査は治療後30、60、90(治療終了)および120日目に行った。
結果:我々の研究で、平均疾患活性指数はその最初の値から進行性の低下が観察され、その低下は60日までの連続的再評価の間、統計学的に有意だった(P=.04)。我々の結果は、75%の犬に治療後内視鏡的胃病変の改善(内視鏡スコアの低下として定義)、75%の犬に内視鏡的十二指腸病変の改善が見られたことを示した。データの統計分析で、胃および十二指腸の内視鏡肉眼病変において治療前後の有意差が明らかだった(P<.05)。一方、患犬の胃および十二指腸の病理組織病変の程度には、治療による有意な変化はまったく導かれなかった。
結論と臨床意義:LPEの非低蛋白血症の犬の治療は、臨床および内視鏡的改善を導くが、治療中の病理組織病変は変化がなかった。(Sato訳)
■胃腸ピシウム感染症のカルフォルニアの犬10例
Gastrointestinal pythiosis in 10 dogs from california
J Vet Intern Med. 2008 Jul-Aug;22(4):1065-9.
N A Berryessa, S L Marks, P A Pesavento, T Krasnansky, S K Yoshimoto, E G Johnson, A M Grooters
背景:ピシウムinsidiosumは、犬の胃腸(GI)管の重度分節肥厚を起こし、結果として体重減少、嘔吐、下痢、死亡を起こす水生oomyceteである。過去に犬の感染はアメリカ南東部で主に観察されている。
目的:カルフォルニアの犬10頭におけるGIピシウム感染症の臨床病理および疫学所見を述べる
方法:支持的臨床所見およびルーチンな病歴聴取をもとに最初に犬を確認した。少なくとも以下の1つにより各犬のピシウム感染症を確認した:血清免疫ブロット法、血清ELISA、免疫組織化学、および培養後種特異PCR法、rRNA遺伝子塩基配列決定、またはその両方。
結果:2003年9月から2006年12月の間に、中央カルフォルニアの1頭、CAデービスの半径30マイル以内にいた9頭の犬でGIピシウム感染症を確認した。8頭中7頭は、水の張った田や他の水源を頻繁に行き来していたという環境データを入手した。10頭中2頭で食道病変が存在した。一般的な検査所見は、好酸球増加(7/9)、低アルブミン血症(9/9)、高グロブリン血症(8/9)だった。生存期間中央値は26.5日(範囲0-122日)で、その疾患は全10頭で最終的に致死だった。
結論と臨床重要性:ピシウム感染症の地理的分布は、アメリカ西部を含み近年広がってきている。この変化に寄与していると思われる要因は、米作農家や景観潅水の変化などである。カルフォルニアの獣医師は、早期診断および効果的な治療を行えるようGIピシウム感染症に関する臨床医病理特性に精通しておくべきである。(Sato訳)
■炎症性腸疾患に罹患した犬において犬膵リパーゼ免疫活性濃度の上昇は予後不良と関連する。
Elevated canine pancreatic lipase immunoreactivity concentration in dogs with inflammatory bowel disease is associated with a negative outcome
A. Kathrani, J. M. Steiner, J. Suchodolski, J. Eastwood, H. Syme, O. A. Garden and K. Allenspach
目的:炎症性腸疾患(IBD)に罹患した犬において犬膵リパーゼ免疫活性(CPLI)濃度の上昇が悪い臨床結果と関連するかどうかを決定する。
方法:IBDと診断された症例の保管された血清を使って血清CPLI測定を実施した。CPLIの結果が推奨範囲内であった32頭の犬はコントロールグループとし、15頭の犬はCPLIが推奨範囲以上であった。臨床徴候、年齢、血清リパーゼとアミラーゼ活性、血清アルブミンとコバラミン濃度、腹部超音波検査、小腸の生検における組織病理、IBDの治療そして予後を2つのグループで比較した。
結果:臨床活性スコア (P=0.54)、抗生物質に反応する症例数(P=0.480)、ステロイドに反応する症例数(P=0.491)、血清アミラーゼ活性
(P=0.058)、血清コバラミン濃度(P=0.61)、血清アルブミン濃度(P=0.052)、腹部超音波スコア(P=0.23)そしてIBDの組織病理スコア(P=0.74)は2つのグループにおいて有意な違いは見られなかった。CPLI濃度が正常範囲内であった犬と比較してCPLI濃度が増加した犬は有意に高齢の犬で、血清リパーゼ活性が高かった(それぞれP=0.001,
P=0.001)。さらに、CPLI濃度が増加した犬はステロイド治療に対する反応が乏しく(P=0.01)、経過で安楽死をする可能性が有意に高かった(P=0.02)
臨床意義:CPLIの上昇は予後不良と関連があったので、犬のIBD症例でCPLIは測定すべきである。(Dr.Kawano訳)
■犬における非胃腸管異物のCT診断
Computed tomographic diagnosis of nongastrointestinal foreign bodies in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Mar-Apr;43(2):99-111.
Jeryl C Jones, Christopher P Ober
非胃腸異物を確認した犬13頭で臨床データとCT検査を再審査した。異物の位置は鼻腔、胸壁、咽頭後領域、小脳だった。異物の種類は、小さな植物の成分、草の葉、木の棒、布繊維、針だった。5頭の異物はCTで確認されず、二次的反応は腫瘍または真菌疾患に似ていた。8頭で、異物はそれらの形および/または内部構造から認識した。2頭で、三次元再配置が触知可能な骨目印に関し、異物表示の助けとなった。(Sato訳)
■小動物の胃腸異物でエックス線v.s.超音波検査の使用調査
Survey of the use of radiography vs. ultrasonography in the investigation of gastrointestinal foreign bodies in small animals
Vet Radiol Ultrasound. 2006 Jul-Aug;47(4):404-8.
Dayle Tyrrell, Cathy Beck
胃腸異物が疑われる小動物の治療を行う臨床医に、1つの画像検査でエックス線または超音波検査のどちらが十分な診断を下せるかよく質問を受けた。この質問に答えるため、研究を行った。胃腸異物と確認された閉塞の臨床症状を持つ16頭の小動物(11頭犬、5頭猫)で、腹部エックス線検査と超音波検査の調査を実施した。多くの異物(14/16)は外科的除去により確認され、小腸に位置した。胃内異物は内視鏡で回収し、結腸異物は便にでた。9頭の異物は明らかにエックス線で確認できた。エックス線で小腸の過拡張は7頭に存在した。超音波では全て16頭の異物が検出された。異物はそれらの遠位音響シャドウとさまざまな程度の表面反射により確認された。腸穿孔は超音波で検出できたが、エックス線では出来なかった。ほかにそれら動物の胃腸壁の肥厚と層の喪失、自由腹水、リンパ節腫脹など超音波所見の値が挙げられる。この一連の所見から、胃腸異物の小動物において、超音波検査単独で診断でき、エックス線検査よりもより最適な選択だと思われる。(Sato訳)
■猫の特発性巨大結腸症の病因論、診断そして治療
Vet Clin North Am Small Anim Pract. 1999 Mar;29(2):589-603.
Pathogenesis, diagnosis, and therapy of feline idiopathic megacolon.
Washabau RJ, Holt D.
多くの猫は1度や2度さらなる再発のない便秘を経験することがあるが、完全な結腸疾患へ進行するものもある。
中年齢の雄猫は便秘、腸閉塞そして拡張した結腸に関連した症状を呈するリスクが特に高い。 骨盤狹窄と神経負傷はこの症候群の進行においてマイナーな原因である。
ほとんどの罹患した猫では、基礎となる病因として結腸の平滑筋機能不全があるように思われる。このグループの猫では、この疾患が一次的あるいは二次的(長期的な便秘や結腸膨張の結果として)な異常を示すかどうかはまだ明確ではない。軽度から中等度の便秘に罹患した多くの猫は保守的な治療管理(例えば、食物繊維の補完、軟化剤、または、高浸透圧の緩下剤、結腸運動促進剤)に反応する。
本当に、結腸運動促進剤の早期の使用は多くの猫において腸閉塞による便秘や拡張した結腸の進行を防ぎそうである。 中等度に進行した時、あるいは腸閉塞や拡張した結腸により便秘が再発したら、これらの治療にも反応しなくなる猫もいるかもしれません。これらの猫は結局、結腸切除を必要とします。猫は一般的に結腸切除後の回復は良好ですが、軽度から中等度の下痢が術後4~6週間続く症例もあると思われる。(Dr.Kawano訳)
■結腸捻転の犬4症例
Volvulus of the Colon in Four Dogs
J Am Vet Med Assoc 227[2]:253-256 Jul 15'05 Case Report 17 Refs
Adrienne M. Bentley, DVM; Therese E. O'Toole, DVM; Michael P. Kowaleski, DVM, DACVS; Sue A. Casale, DVM; Robert J. McCarthy, DVM, MS, DACVS
7-48時間持続する嘔吐により4頭の犬を検査した。X線検査で全頭にガスで膨張した腸分節を認めたが、腸管の罹患部位は結腸と確認できるわけではなかった。全ての症例で、結腸の捻転は手術中に診断された。3頭は結腸の捻転解除後、胃結腸固定を実施した。1頭は結腸切除と回腸直腸吻合を実施した。全頭生存した。結腸の捻転は、腸管拡張のX線所見がある犬で短期間の嘔吐の原因として考慮すべきである。(Sato訳)
■16頭の犬と7頭の猫の自発性胃十二指腸穿孔(1982-1999)
Spontaneous Gastroduodenal Perforation in 16 Dogs and Seven Cats (1982-1999)
J Am Anim Hosp Assoc 38[2]:176-187 Mar-Apr'02 Retrospective Study 29 Refs
Laura E. Hinton, DVM; Mary A. McLoughlin, DVM, MS, DACVIM; Susan E. Johnson, DVM, MS, DACVIM; Steven E. Weisbrode, VMD, PhD, DACVP
胃十二指腸潰瘍は、一部非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)の使用増加と診断機器の進歩により、犬猫で頻度が増加していると認識されている。胃腸(GI)穿孔と敗血症性腹膜炎は最も深刻で、続発的に命を脅かす可能性がある。個々の症例報告を除き、犬猫の自発性胃十二指腸穿孔(GDP)に焦点を当てた獣医文献の報告はない。この研究目的は、より大規模な一連のGDPを伴う犬猫症例における情報を回顧的に再検討、比較し、素因があるかどうか判定する、またはGDPに進行する動物に存在する特徴を確認することだった。
自発性GDPと診断された15頭の犬と7頭の猫の医療記録を再検討した。1頭は2つのGDPの別のエピソードを持ち合計23症例だった。全症例の診断は試験的開腹、組織病理学、検死、またはそれらの組み合わせにより確認された。全症例併発疾患を持ち、それら多くは直接潰瘍発生となるもの、または間接的にGDPとなる素因を持つと分かっているものだった。性差は認められなかったが、5歳未満のロットワイラーが多く見られた。NSAIDsによる治療、コルチコステロイドの複数投与、その両方が8頭の犬(50%)のGDP素因と考えられた。NSAIDsを投与されていた猫はいなかったが、1頭はGDP時にコルチコステロイド投与中だった。臨床症状には胃腸管がよく関与したが非特異的だった。
胃腸出血の臨床所見は犬で一般的だったが、猫ではそうではなかった。ショックは犬であまり呈すことはない状況で、結果に密接に関係することはなかった。事実、GDPに至る潰瘍病変の進行は、この研究の多くの動物が示す徴候の顕著な変化に関与しなかった。多くの犬猫はGDPの診断治療前に、長期に疾患が存在していた。血液検査(すなわち血液、生化学プロフィール)、細胞病理と培養のための腹腔穿刺、画像検査(すなわち腹部単純、造影X線、超音波、内視鏡)などのさまざまな診断検査の結果は不定で、12頭の犬のGDPの仮診断を導いたが、外科手術または検死時のGDP確認前に確定診断できたのはたった1頭の犬だけだった。
これらは、目下診断方法が早期穿孔病変を確認する感受性にかけており、GDPに続く急性腹症の劇的な症状が過去に考えられていたように一般的でないかもしれないと示唆する。全体の生存率は44%だったが、23頭中18頭のみが腹部手術を行い、18頭中12頭のみが修復手術を行っているだけだった。全ての症例で、ネコの生存率(14%)より犬の生存率(63%)が高かった。これは、この研究の猫で併発疾患の予後が悪いことを反映しているのかもしれない。犬の生存率は、局所の全4頭が生存し、腹膜炎の犬は生存しなかったように、感染を含む体の能力によりポジティブに影響を受けると思われた。
この一連の症例をもとに、著者はGDPが起こっている、または差し迫っているかどうか個別に判定する特定の要因、臨床症状、診断検査を見つけることが出来ていない。(Sato訳)
■胃腸管異物の犬における酸-塩基、電解質異常
Acid-Base and Electrolyte Abnormalities in Dogs with Gastrointestinal Foreign Bodies
J Vet Intern Med 19[6]:816-821 Nov-Dec'05 Retrospective Study 28 Refs
Amanda K. Boag, Richard J. Coe, Teresa A. Martinez, and Dez Hughes
犬で胃腸管異物はよく見られる。研究目的は、胃腸管異物の犬で認められた酸-塩基、電解質異常を述べること、およびそれら異常が異物の種類や存在位置に関連するか調査することだった。138頭の犬の医療記録を再調査し、徴候、初回静脈電解質および酸-塩基値、手術所見、関連性のある履歴情報、使用した画像検査様式、病院でかかった費用、術中術後合併症、生存率に関する情報を入手した。94.9%の症例で異物の部位は記録されており、一般的な部位は胃(50%)、続いて空腸(27.5%)だった。線状異物の症例が36.2%を占めた。異物の位置や種類に関係なく一般に見られた電解質、酸-塩基異常は、低クロール血症(51.2%)、代謝性アルカローシス(45.2%)、低カリウム血症(25%)、低ナトリウム血症(20.5%)だった。電解質または酸-塩基異常と異物の部位に有意な関連を認めなかった。孤立に対立するものとして線状異物は、低血清ナトリウム濃度を起こしやすかった(オッズ比、0.85;95%信頼区間、0.75-0.95)。高乳酸血症(>2.4mmol/l)が40.5%に見られた。
胃腸管異物の犬の電解質および酸-塩基障害の多様性は広い。それらの犬で一般的なのは低クロール血症と代謝性アルカローシスである。低クロール性、低カリウム性代謝性アルカローシスは、近位および遠位胃腸管異物両方で見られる。(Sato訳)
■意識のある犬における新しいベンザミド系イトプリドの胃運動促進効果とその機構
Gastroprokinetic effect of a new benzamide derivative itopride and its action mechanisms in conscious dogs.
Jpn J Pharmacol. 1996 Jun;71(2):129-37.
Iwanaga Y, Miyashita N, Saito T, Morikawa K, Itoh Z.
意識のある犬において、新しいベンザミド系イトプリドを十二指腸内投与(i.d.)した時の胃腸管の運動性に対する効果を評価した。
胃腸の運動性は長期的に移植したフォーストランスデューサで測定し、10mg/kg(i.d.)以上の投与量のイトプリドは消化状態の間、胃の収縮力を増加させた。
十二指腸内投与のシサプリド、ドンペリドンそしてメトクロプラミドも胃の運動性を刺激し、それらの閾値投与量は夫々1、3そして1mg/kgだった。 ドーパミン点滴(1 mg/kg/hr, i.v.)で食後の胃の運動性は消失したが、イトプリド3mg/kg(i.d)の投与量で直ぐに回復した。 1、3mg/kg(i.d.)のイトプリドと共に、アセチルコリン(0.05 mg/kg/min)で誘発した収縮はかなり増強された。
胃の刺激に加えて、10-100mg/kg経口投与のイトプリドは犬のアポモルフィン(0.1mg/kg、s.c.)誘発性嘔吐を抑制した。 結論として、十二指腸内投与のイトプリドは抗ドーパミン性そして抗アセチルコリンエステラーゼ作用の両方で胃の運動を刺激する。その胃運動促進閾値投与量はシサプリド、ドンペリドンそしてメトクロプラミドの3~10倍多かった。イトプリドが経口的に適度の制吐作用と共に胃運動促進があることがこれらの調査結果から示唆される。(Dr.Kawano訳)
■高張性燐酸浣腸剤による電解質異常をきたしたネコの2症例
Electrolyte Abnormalities Induced by Hypertonic Phosphate Enemas in Two Cats
J Am Vet Med Assoc 187[12]:1367-1368 Dec 15'85 Case Report 13 Refs
Linda S. Jorgensen, DVM; Sharon A. Center, DVM; John F. Randolph, DVM; Douglas Brum
高張性燐酸浣腸剤(Fleet enema: CB Fleet Co Inc. and PVL veterinary enema: Professional Veterinary Laboratories)の投与後すぐに虚弱、虚脱を起こした10歳避妊済み家ネコ短毛種と9歳去勢済み家ネコ短毛種の症例を報告する。2頭とも少なくとも浣腸剤投与前3日間は便秘をしていた。
2頭は、低体温、蒼白、脱水を呈し、結腸は糞で膨張していた。血清生化学検査で、高燐酸塩血症、低カルシウム血症、高ナトリウム血症、高血糖を認めた。1頭は、低カリウム血症も呈し、もう1頭は高カリウム血症だった。
2頭ともIV輸液によく反応した。血清電解質値は48時間以内に改善した。1頭のネコの糞は手で排除し、もう1頭は、コハク酸ジオクチルナトリウム浣腸剤を投与した。(Sato訳)
■腸球菌と乳酸桿菌~犬に可能性のあるプロバイオティクス~
Lactobacilli and enterococci--potential probiotics for dogs.
Strompfova V, Laukova A, Ouwehand AC.
Folia Microbiol (Praha). 2004;49(2):203-7.
10頭の健常犬の糞便から分離された腸球菌40菌株と乳酸桿菌40菌株の抗菌活性、胆汁耐性そして付着活性を検査した。糞便の腸球菌の総数は5.5 log CFU/gに達し、乳酸桿菌では、7.6 log CFU/gだった。
バクテリオシン様物質生産のためのスクリーニングで、Enterobacter spの成長の部分抑制を示した (抑制のhazy zones) 。Enterococcus spの10菌株とLactobacillus spの9菌株は使用されたすべてのインディケータに対して少しも抑制活性が見られなかった。最も広い抗菌スペクトルがある7つの腸球菌株と6個の乳酸桿菌株がさらなるプロバイオティック分析のために選択された。1%の胆汁下で選択された腸球菌の生存率(71.7-97.5%)は、乳酸桿菌の生存率(66.7-75.4%)より高かった。人間の腸粘膜への菌株の定着(腸球菌で5.1-8.2%、乳酸桿菌で2.7-8.3%)は犬の腸粘膜への定着(腸球菌で3.7-10.6%、乳酸桿菌で2.1-6.0%)と同様であることが分った。
1個の分離された乳酸桿菌株(AD1)は胃腸疾患に罹患した犬に経口投与させたところ、より高い血清コレステロールとアラニン・アミノトランスフェラーゼを低下させた。(Dr.Kawano訳)
■体格の違う成犬における総通過時間と便の性状の関係
Relationship between total transit time and faecal quality in adult dogs differing in body size.
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl) 89[3-6]:189-93 2005 Apr
Hernot DC, Biourge VC, Martin LJ, Dumon HJ, Nguyen PG
要約:同じ食餌を与えた場合、大型犬や超大型犬は小型犬よりも糞の水分が多く、柔らかい便の頻度が増加する。これは胃腸の通過時間の違いなど、生理学的相違の結果起こりえる。この研究ではさまざまな大きさの犬で、体格ごとの平均総通過時間(MTT)と糞の軟度に相関が認められている。ダックスフントからグレートデンまでの異なる13犬種の15頭を使用した。着色プラスチックビーズ[Cummings
and Wiggins, Gut, Vol. 17 (1976), p. 219]を使用してMTTを判定し、研究中毎日糞の軟度にスコアーをつけた。肩の高さ(体格)と糞のスコアーに強い相関を確認した(r=0.76;P<0.0001)。
MTTは体格で延長し、ミニチュアプードルで22hからジャイアントシュナウザーで59hだった。MTTと体格(r=0.71)、同様に糞のスコアー(r=0.70)との間に有意な正の相関を認めた(p<0.0001)。この研究でMTTに対する体格の影響を認めた。我々の50頭の健康な飼育犬で、より長いMTTは糞の性状がより悪いことに関連した。過去の研究では、健康犬の上部胃腸通過時間と体格の間に関連はないと報告していた。それで、我々は、体格は結腸の通過時間に主に影響し、より長い結腸滞留時間が発酵活性を促進することにより糞の性状をより悪くすることに関連するのだろうと仮説を立てた。(Sato訳)
■胃腸疾患の症状と重度低コバラミン血症を呈す猫に対するコバラミン補給の早期生化学と臨床反応
Early Biochemical and Clinical Responses to Cobalamin Supplementation in Cats with Signs of Gastrointestinal Disease and Severe Hypocobalaminemia
J Vet Intern Med 19[2]:155-160 Mar-Apr'05 Prospective Study 17 Refs
C.G. Ruaux, J.M. Steiner, and D.A. Williams
小腸疾患を持つ家庭猫は、コバラミンの小腸吸収低下のため欠乏症を発症するかもしれない。この研究は小腸疾患を持つ猫の生化学および臨床所見に対するコバラミン欠乏の影響を調査することだった。全頭胃腸症状の病歴を持ち、重度低コバラミン血症(<100ng/l)の19頭の飼育猫を研究した。猫に250?g週1回SC4週間の投与を行った。コバラミン利用能の生化学指数(例えば、血清メチルマロン酸、ホモシステイン、システイン濃度)、血清猫トリプシン様免疫反応(fTLI)、血清葉酸濃度、臨床所見を研究前と投与開始から4週間後に記録した。
血清メチルマロン酸(MMA)濃度(中央値;範囲)はコバラミン補給後低下した(5373.0;708.5-29329.0vs423.5;214.0-7219.0nmol/l、P<.0001)。血清ホモシステイン濃度は有意に変化しなかった(平均±SD8.2±2.9vs10.3±4.5nmol/l、P=.1198)が、システイン濃度は有意に増加した(122.3±38.8vs191.5±29.4nmol/l、P<.0001)。コバラミン投与後の平均体重は増加し(3.8±1.1vs4.1±1kg、P<.01)、平均体重増加は8.2%だった。血清MMA、fTLI濃度および体重変化率の変化に有意な直線的関連が認められた(両方P<.05、Pearson r2 =0.26および0.245)。平均血清葉酸濃度は有意に低下した(平均±SD19±5?g/lvs15.4±6.2?g/l、P<.001)。9頭中7頭の嘔吐、13頭中5頭の下痢の減少が見られた。
以上から小腸疾患および重度低コバラミン血症の猫に対するコバラミン補給は、ほとんどの罹患猫の生化学検査結果を正常にし、臨床所見を改善することを示唆する。(Sato訳)
■イヌの上部胃腸管検査特性に対するメチルセルロースの影響
Effect of methylcellulose on upper gastrointestinal quality in dogs.
Vet Radiol Ultrasound 44[6]:642-5 2003 Nov-Dec
Jung J, Choi M, Chang J, Won S, Chung W, Choi H, Lee K, Yoon J, Ha H
この研究は、イヌのバリウムとメチルセルロースを使用した小腸造影法を評価し、最適化するために行った。10頭の健康犬にバリウムのみを使用した通例の上部胃腸検査と、バリウムとメチルセルロースを使用した修正方法を実施した。コントロールには、40%バリウム懸濁液10ml/kg投与した。実験群を3つに分割し、40%バリウム懸濁液4ml/kg投与後、それぞれ異なる粘度(低、中、高粘度)の0.5%メチルセルロース15ml/kgを投与した。コントロールと比べ、メチルセルロースを投与した犬は、より良質の上部胃腸検査を行うことができた。中粘度のメチルセルロースは、他のものより優れていた。結論として、メチルセルロースの使用は、上部胃腸検査の画像の質を容易に効果的に改善する。(Sato訳)
■イヌの小腸の運動評価にパルスドップラー超音波検査の応用
Application of pulsed Doppler ultrasound for the evaluation of small intestinal motility in dogs.
J Vet Sci 2[1]:71-4 2001 Apr
An YJ, Lee H, Chang D, Lee Y, Sung JK, Choi M, Yoon J
この研究の目的は、小腸蠕動をパルスドップラー超音波検査で観察、そして量的に評価できるかどうかを実証することである。パルスドップラー超音波検査で、10頭の正常犬と10頭の鎮静犬の、給餌後小腸蠕動評価を行った。小腸の蠕動は、24時間絶食後と給餌後の0、1、3、6、9、12、24時間目に測定した。小腸蠕動回数は、それぞれ絶食後0.133/min, 0.100/min, 0.033/min, 0.167/min, 0.070/min, 0.067/min, 0.100/minで、給餌後1.667/ min, 0.933/min, 1.133/min, 1.234/min, 1.933/min, 1.533/ min, 0.533/minだった。塩酸キシラジンで鎮静をかけたイヌで、小腸蠕動回数は、有意に低下した(P<0.01)。しかし、塩酸ケタミンとアセプロマジンを投与したイヌで、小腸蠕動回数は変化しないままだった。よって、パルスドップラー超音波検査は、腸運動の像を可視化でき、定性、定量分析を目的とでき、小腸運動の非侵襲的検査に適当であるかもしれないと結論付けることができる。(Sato訳)
■貫通傷害の疑いのない気腹症のイヌネコの予後指標と転帰
Outcome Of and Prognostic Indicators For Dogs and Cats with Pneumoperitoneum and No History of Penetrating Trauma: 54 Cases (1988-2002)
J Am Vet Med Assoc 225[2]:251-255 Jul 15'04 Retrospective Study 13 Refs
Jennifer A. Smelstoys, VMD; Garrett J. Davis, DVM, DACVS; Amy E. Learn, VMD; Frances F. Shofer, PhD; Dorothy Cimino Brown, DVM, DACVS
目的:貫通傷害の過去がない気腹症のイヌネコの予後指標と転帰を判定する
構成:回顧的研究
動物:43頭の犬と11頭の猫
方法:貫通傷害の過去がなく、気腹症のエックス線所見を持つ犬猫の医療記録を再検討した。収集した情報は、特徴、病歴、主訴、病気の持続期間、身体検査所見、エックス線所見、検査結果異常、腹腔穿刺結果、細菌培養結果、併発疾患、入院期間、転帰などであった。腹部X線所見を再検討し、気腹症のX線学的程度を分類した。試験的回復を行ったそれらの動物で、入院から手術までの時間と、バイオプシー標本の組織学検査結果を記録した。
結果:24頭(44%)は生存し退院したが、検査した変動値で生存するかどうかに関与するものはなかった。胃腸管破裂が40頭の気腹症の原因だった。しかし、胃腸管破裂の原因と部位は、動物が生存するかどうかに関与しなかった。試験的開腹を行った40頭中23頭(58%)が生存し、それに比べて試験的開腹を行わなかった14頭中1頭しか生存しなかった。
結論と臨床関連:貫通傷害の履歴を持たないイヌネコの気腹症は、一般的に胃腸管の破裂に関与し、即座の外科手術を行う必要があると思われる。適切な治療が行われたときでさえ、短期予後はfairにすぎない。(Sato訳)
■正常なイヌの体重と比較した小腸の厚みの超音波評価
Ultrasound evaluation of small bowel thickness compared to weight in normal dogs.
Vet Radiol Ultrasound 44[5]:577-80 2003 Sep-Oct
Delaney F, O'Brien RT, Waller K
象徴の厚みを測定するための超音波の使用は、腹部超音波検査の重要な部分を占める。小腸壁の厚みが増すことは、炎症性腸疾患から腫瘍の範囲の疾患検出で重要なものとなる。我々の主観的な印象は、胃腸疾患の臨床症状がない犬で、発表されている正常値よりも超音波測定値が大きく感じられる。この研究の目的は、それら正常値を前向きに再評価することだった。腹部超音波検査を受けたすべてのイヌの病歴を、胃腸疾患の症状で評価した。臨床症状がないイヌをこの研究に使用した。体重、犬種、空腸の厚さ、十二指腸の厚さについての考証を231頭の犬で行った。
イヌの体重により5グループに振り分けた。69犬種が存在し、体重は2.1-64kgの範囲だった。体重、空腸、十二指腸の厚さに、統計学的に有意な(P≦0.05)
相関が認められた。また健康犬の空腸、十二指腸の厚さの最大は、過去に報告されたものより大きかったこともわかった。それらのデータから、空腸の正常値は、20kgまでの犬で≦4.1mm、20kg-39.9kgの犬で≦4.4mm、40kg以上で≦4.7mmだった。十二指腸の正常値は、20kgまでの犬で≦5.1mm、20-29.9kgの犬で≦5.3mm、30kg以上の犬で、≦6.0mmだった。(Sato訳)
■イヌの腸間膜捻転:12症例の再検討
Mesenteric volvulus in the dog: a retrospective study of 12 cases.
J Small Anim Pract 45[2]:104-7 2004 Feb
Junius G, Appeldoorn AM, Schrauwen E
9年間で12頭のイヌを腸間膜捻転と診断した。各症例は、腹部膨満を呈し、腸間膜捻転に関与すると良く報告される低血流性ショックを呈したのは2頭しかいなかった。全症例X線検査を基にした診断に続き、即座のショックの治療、そして可能ならばすぐ手術を行った。12頭中5頭で、捻転の治療に成功し、生存した。腸間膜捻転の予後は、現在認識されているものよりも良く、疑われたときはすぐ開腹手術が薦められることを示す。(Sato訳)
■胃腸の運動性疾患の管理方法
How to manage GI motility disorders
DVM Newsmagazine
Feb 1, 2002
胃腸の運動性疾患は伴侶動物においてよく認識されている現象になっている。これらの疾患は市場から消化管運動賦活調節薬の選択としてシサプリドが消えたため管理するのがさらに難しいものとなっている。
運動性疾患は通常後天性で、しばしば基礎的な胃腸疾患の続発症である。それらは摂取物の通過に関し亢進、逆行性、もしくは遅延に分類される。
通過の亢進は臨床上あまり意義がなく、通常医原性(薬物もしくは手術関連)である。逆行性の通過は胃―食道(逆流、食道炎)もしくは腸―胃(胆汁性嘔吐症候群、嘔吐)かもしれない。遅延した通過は巨大食道、機能的に遅延した胃の空虚化(胃拡張、胃炎、潰瘍、電解質障害)、腸閉塞(薬物誘発、術後)そして巨大結腸など様々なコンディションによって引き起こされる。
これらの疾患の治療は正確な診断と基礎疾患のコンディションの管理になる。
しばしば基礎疾患のコントロールだけでは完全に運動性疾患の解決にならず、療法食及び内科的な介入が必要となる。
食餌が鍵である
臨床医として、我々は遅延した通過疾患に最も関心があり、食餌がそれらの管理の鍵となる。液体のほうが固体より速く胃から排出され、炭水化物が蛋白や脂肪に比べより速く通過する傾向があるという知識に基づいて食餌を選択すべきである。通過性を高めるため、暖かく酸性度と浸透圧が低い食餌を小量頻回に給餌すべきである。運動性疾患が食餌だけでは反応しなければ消化管運動賦活調節薬治療が重要となる。
消化管運動賦活調節薬治療の最高の選択のために、異常な胃腸運動の部位が近位もしくは遠位かを決定することは避けられない。以前にシサプリドは遅延した胃の空虚化のような近位の疾患の選択薬であった。続いてエリスロマイシン、ラニチジンもしくはニザチジンであった。メトクロプラミドは中枢性の制吐効果が強いが、それは末梢性の胃運動賦活調節効果がかなり限られ、第一選択薬とすべきではない。エリスロマイシンは低用(0.5-1.0 mg/kg)においてモチリン様作動薬で、給餌中固形物の空虚化を可能にする胃の収縮を刺激することによって、胃の空虚化を促進する。抗分泌用量でニザチジン(2.5-5 mg/kg PO SID)とラニチジン(1-2 mg/kg PO BID)は、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤としても機能する。それらは平滑筋受容体に結合するアセチルコリンの量を増加させ、それにより胃の収縮力を強化する。
シサプリドは犬及び猫の遠位もしくは結腸の運動性疾患に対する選択薬でもある。
犬及び猫の結腸がラニチジン、ニザチジンあるいはミソプロルストールにも反応するということが実証された。
結腸でのエリスロマイシンの効果はエリスロマイシンが縦の運動を刺激し、それ故犬の結腸の推進運動が刺激されることがDr. T. Melgarejoによって証明されている(2001 ACVIM Forum abstract #166 )。しかしそれは猫の結腸の平滑筋では効果がなく、猫の便秘疾患には効果が限られる。
プロスタグランディンE1類似体のミソプロストールは、巨大な移動複合パターンを誘発し、犬および猫の推進力のある結腸の活動を増加させるかもしれない。第一選択薬ではないが、ミソプロストールは便秘の難治性症例において第二の選択薬として位置付けられている。
頼みの要
シサプリドは近位そして遠位の胃腸管への多用な効果のため運動性疾患治療において要となっている。シサプリドは心臓の5-HT4受容体への影響のため市場から回収された。同じクラスではあるが心臓の再分極もしくはQT間隔の延長による影響がない新しい薬が調査されている。
■イヌの腸リンパ管拡張症
Canine Intestinal Lymphangiectasia
Compend Contin Educ Pract Vet 24[12]:953-961 Dec'02 Review Article 44 Refs
Katja J. Melzer, DrMedVet, Rance K. Sellon, DVM, PhD, DACVIM (Internal Medicine)
Washington State University
腸リンパ管拡張症(IL)は、腸のリンパ管の拡張で、イヌのタンパク喪失性腸疾患のいくつかの原因の1つである。ILは一般的なイヌの中ではまれな疾患であるが、胃腸タンパク喪失のより一般的な原因の1つである。イヌのILはよく腸、または腸間膜の炎症性疾患の合併症として現れるが、リンパや静脈閉塞の他の原因でも二次的に起こりえる。ILは主に中年齢のイヌの疾患だが、ほとんどのどの年齢でも起こりえる。どんな犬種でも罹患しうるが、ILの素因が考えられる犬種にはバセンジー、ルンデ、ソフトコーテッドウィートンテリア、ヨークシャーテリアである。ILの確定診断は特徴的な腸管乳糜管拡張の組織学的証明である。治療は、確認できた基礎疾患の治療と低脂肪食である。罹患犬の長期予後は、治療に対する反応が乏しいため、通常慎重を期する。(Sato訳)
コンパニオンアニマルの消化管に関する慢性炎症性疾患
Chronic Inflammatory Disorders of the Gastrointestinal Tract of Companion Animals
N Z Vet J 51[6]:262-274 Dec'03 Review Article 110 Refs
N.J. Cave
犬と猫の炎症性腸疾患(IBD)では、管腔抗原に特異的と思われる、ポリクローナルリンパ球浸潤により特徴付けられる、正常な粘膜免疫の調節不全状態であると考えられます。ヘルパーT(Th)1あるいはTh2サイトカイン反応のいずれかの古典的な偏向の欠損があり、インターロイキン(IL)2とIL-12p40に対するmRNAの発現増大と、粘膜免疫グロブリン(Ig)G産生への推移が、一貫した所見で、同時に腫瘍壊死因子-アルファ(TNF-(alpha)、IL-1、IL-4、IL-6、そしてインターフェロン-ガンマ(INF-gamma)において、様々な反応が認められます。粘膜透過性増大と腸運動の乱れが、一般的な続発症であります。
人における、クローン病と潰瘍性大腸炎と明白に類似しているにもかかわらず、重要な違いがあります。これらに関しては、Th1のない、あるいはTh2偏向の彌慢性表在性特質と、近位小腸疾患の罹患が顕著であります。これらの不同に関する可能性ある仮説としては、「不自然な」腸管内菌叢区画やタイプにおける種差、細菌宿主相互作用における広汎性異常、食事の重要性、あるいは、粘膜免疫反応における解剖学上あるいは細胞の違いなどが考えられます。
特異的病原体と遺伝的感受性が関与すると思われますが、正常細菌叢における量的、あるいは質的な変化や、正常細菌叢に対する異常反応が、免疫病因論に関与していると思われます。食事の影響としては、多数の抗原源、缶詰にされた食事内のメイラード化合物による異常細菌増殖の促進、特異的な多量元素と微量元素欠乏などがあります。
組織病理学的診断に従属しますが、内視鏡により得たバイオプシーの限界として、組織病理学標準の不足と腫瘍から炎症を識別する難しさは、重要な問題となったままです。臨床医-病理医の意見交換として、免疫組織化学、サイトカインプロフィーリングとリンパ球クローン性の査定は、より正確な診断と、免疫病因論のより深い理解を導くと考えられ、ついには新しい治療、あるいは疾患誘発の予防を導くと考えられます。(Dr.K訳)
■犬猫の胃腸管疾患の診断に使用される検査法
Laboratory Procedures for the Diagnosis of Gastrointestinal Tract Diseases of Dogs and Cats
N Z Vet J 51[6]:292-301 Dec'03 Review Article 78 Refs
M.E. Matz and W.G. Guilford
犬猫の消化管疾患の診断に利用される検査法の数は増えている。それら検査の使用で、より正確で迅速な診断が可能となっている。この再検討は、新しいものと古いもの両方の検査法、胃腸問題を呈する動物の評価で、現在演じている役割を論ずる。最小限のデータベースが、疾患の重症度の評価、問題の胃腸以外の原因の検出、診断や治療プランを立てる手助けとなる。
消化管問題の検査で、糞便検査はいまだ重要な診断方法の1つである。硫酸亜鉛糞便浮遊法は、寄生虫やジアルジアを含む原生動物感染に対する優秀な通常行うスクリーニング検査法である。直腸細胞検査は、代腸疾患の診断をアシストできる。糞便の免疫学的診断検査の解釈は、検査感受性と特異性の知識が不足していることが障害となる。通常の糞便培養は、保証されるものではなく、糞便潜血検査はまれに指示される。
胃の炎症に対する血清検査は現在あまり発達していない。血清トリプシン様免疫反応検査は、膵外分泌不全の診断で最も標準的な方法である。呼気水素試験は、小腸バイオプシー標本で軽度異常の機能的関連を評価する手助けとなる。血清コバラミンの正常以下の濃度は、イヌよりネコの消化管疾患の特異的な指標と思われる。小腸細菌過剰増殖の検査は、いまだ議論されており、胃腸透過性の評価は、胃腸問題を抱えるペットの診断評価でその有用性はすでに立証されている。糞中アルファ-蛋白分解酵素阻害剤(アルファ1-PI)は、タンパク喪失性腸疾患の診断で保証されている。(Sato訳)
■腸重積のネコ7症例の超音波所見
Ultrasonographic Findings of Intestinal Intussusception in Seven Cats
J Feline Med Surg 5[6]:353-343 Dec'03 Case Report 23 Refs
MN Patsikas, LG Papazoglou, NG Papaioannou, I Savvas, GM Kazakos, AK Dessiris
腹部超音波所見と、試験開腹により診断された腸重積の7頭のネコの医療記録を再検討した。重積部の超音波横断面は、C型円形または、非特異的形の高エコーの中心を取り巻く、1つ、または2つ以上の低エコーまたは高エコーの同心円状の輪を示す、的のようなmassを示した。高エコーの中心に接して位置し、同心円の輪を取り巻く、内側嵌入部を示す腸部分も検出された。重積部の長軸像は、4症例で複数の高エコーと栄エコーの平行線のように見え、3症例で卵形massのように見えた。卵形massの1症例は、”腎臓”の形態をしていた。腸重積に関する追加超音波所見は、1頭のネコで腸管腫瘍だった。この研究結果は、ネコの腸重積の超音波所見がイヌやヒトで述べられている所見と類似点もあり、比較的一致し、特定診断を容易にすることを示す。(Sato訳)
■犬と猫における気腹症:39症例(1983-2002)
Pneumoperitoneum in Dogs and Cats: 39 Cases (1983-2002)
J Am Vet Med Assoc 223[4]:462-468 Aug 15 '03 Retrospective Study 45 Refs
* W. Brian Saunders, DVM, and Karen M. Tobias, DVM, MS, DACVS
目的:犬と猫における気腹症のもっとも一般的な原因を明らかにし、罹患した動物の病歴、臨床像、そして転帰を明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:31頭の犬と8頭の猫
手順:病歴;異常な身体的、臨床病理的、そしてレントゲン的所見;腹水の細胞学的検査と細菌培養の結果;外科、または検死における肉眼的、組織学的所見;そして転帰などの特徴に関し、医療記録を再検討しました。
結果:気腹症は、25頭の動物で自然発生、14頭で外傷と分類されました。外傷性気腹症の原因は、交通事故、砲撃創、腹部の咬傷、医原性などでした。自然発生性気腹症は、23頭の動物で、消化管穿孔により起こりました;その潜在的原因として、腫瘍形成、非ステロイド系抗炎症剤投与、そしてコルチコステロイド投与がありました。2頭の動物は、膀胱破裂後、自然発生性気腹症となりました。自然発生性気腹症の動物は、外傷性気腹症のものより、有意に高齢で、より長期の臨床徴候を示しました。外科的処置を行った、23頭中15頭を含める、16頭の動物が、生存しました。生存した動物は、死亡、または安楽死された動物より、有意に高い血清アルブミン濃度でした。
結論と臨床関連:気腹症は中空臓器の穿孔によるものが殆どですが、その他の原因も存在します。潜在下にある病態の診断と治療のために、早期探査が推奨されます。(Dr.K訳)
■犬と猫における、腸吻合後の漏出に関する危険因子:115症例(1991-2000)
Risk Factors for Leakage Following Intestinal Anastomosis in Dogs and Cats: 115 Cases (1991-2000)
J Am Vet Med Assoc 223[1]:73-77 Jul 1'03 Retrospective Study 34 Refs
* S. Christopher Ralphs, DVM, MS; Carl R. Jessen, DVM, PhD, DACVR; Alan J. Lipowitz, DVM, MS, DACVS
目的:犬と猫における、腸吻合後の漏出に関連する因子を明らかにすることです。
計画:回顧的研究
動物:90頭の犬と25頭の猫
手順:1991年と2000年の間に腸切除、および吻合を行った全ての犬と猫の医療記録を再調査し、27因子に関する情報を記録しました。
結果:吻合漏出は、25頭の猫では認められず、90頭の犬のうち13頭で明らかとなりました。犬における、術前腹膜炎、血清アルブミン濃度、左方移動、そして外科適応(腸内異物の犬は、その他の原因で手術を受けた犬より、漏出を起こしやすく思われました)などの、術前因子は吻合漏出の発現と有意に関連しました。入院期間、補足的栄養補給、手術翌日に犬が食べたかどうか、血液製剤投与、転帰(死亡と生存)などの、術後、および症例管理因子は、有意に漏出の発現と関連しました。判別分析を行い、次に挙げる因子の2つ以上の因子を持った犬は、吻合漏出の発現が予測されました:術前腹膜炎、腸内異物、そして血清アルブミン濃度<2.5g/dL。この方式は、80頭中67頭の犬(84%)で、漏出が発現するかどうかを正確に予測しました。
結論と臨床関連:結果は、種々の因子が、犬における腸吻合漏出の発現に、関連するであろうということを示唆しております。特に、次に挙げる危険因子の2つ以上を持つ犬は、吻合漏出発現に関して、ハイリスクであることが予測されます:術前腹膜炎、腸内異物、そして血清アルブミン濃度<2.5g/dL。
■犬の肛門フルンケル症に対するサイクロスポリン1日1回投与の評価
Evaluation of once daily treatment with cyclosporine for anal furunculosis in dogs.
Vet Rec 152[8]:225-9 2003 Feb 22
Doust R, Griffiths LG, Sullivan M
肛門フルンケル症の犬24頭を1.5、3.0、5.0、7.5mg/kgの投与量でサイクロスポリンを1日1回13週間投与し、6ヶ月、12ヵ月後に再検査した。13週後6頭は寛解し、11頭はコントロールでき、または改善し、7頭は反応しなかった。最高用量を投与した犬の反応は、他の群全体と比べても有意によい反応で(P<0.014)、1.5mg/kg、5mg/kg群よりも反応は良かった(P<0.05)。治療中に臨床的に改善し、早いものは最初の5週間だった。13週後に寛解した6頭の犬のうち3頭は、1、2、6ヵ月後に再燃した。13週後にコントロール、または改善した11頭は、無処置で放置するか、1.5-7.5mg/kgの投与量で1-3ヶ月サイクロスポリン療法を継続した。4頭で寛解に達し、残りの7頭はコントロールを維持したが、11頭中4頭は治療後12ヶ月以内に再燃した。観察された副作用には、皮毛代謝回転の増加と間歇的嘔吐があった。(Sato訳)
■19頭の若いイヌで、急性腸炎または急性胃腸炎に関する腸重積の超音波検査像
Ultrasonographic Signs of Intestinal Intussusception
Associated With Acute Enteritis or Gastroenteritis
in 19 Young Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 39[1]:57-66 Jan-Feb'03
Original Article 24 Refs
Michail N. Patsikas, DVM, PhD, DECVDI; Samuel
Jakovljevic, DVM, MSc, DVR, DECVDI; Nicolaos
Moustardas, DVM, PhD; Lysimachos G. Papazoglou,
DVM, PhD, MRCVS; George M. Kazakos, DVM;
Aggelos K. Dessiris, DVM, PhD
腸重積は、腸の一部(嵌入部)が隣接腸分節の内腔(外筒)に入り込む事で起こる。急性腸炎、または胃腸炎が、若いイヌの重積のもっとも多い素因としてあげられており、回結腸接合部で良く報告されている。ヒトの子供で、腸重積を診断する手段として超音波検査が、従来のX線写真に完全に取って代わっているが、獣医療の文献で、この状態の存在を診断するため、動物への使用報告はほとんどない。この研究の目的は、若いイヌの急性腸炎、または胃腸炎に関する腸重積の超音波検査像を述べ、その診断効果を報告することだった。
急性胃腸疾患の症状を呈す65頭のイヌのうち、超音波検査で20頭を腸重積と診断し、19頭(回結腸部、n=18、結腸二部分、n=1)が外科的に確認された。1頭は偽陽性症例で、腹部超音波検査後5日まで試験開腹は行われず、著者は、腸重積の自発的な整復により説明出来るかも知れない逆向性の結果と推測した。
腸重積の診断で超音波検査の感受性、特異性、正確性はそれぞれ100%、97.8%、98.4%だった。横断像、腸軸像は正確な診断に必要だった。一般的な超音波所見は、横断像で明瞭または不明瞭な別々の同心円により取り巻かれた、中心が高エコーまたは無エコーの的(マト)様のマスで、長軸像では複数の高エコーまたは低エコーの平行ラインが見られた。長軸像の追加所見で、腫瘍様マス、偽の腎臓マス、三叉構造があった。三叉構造は、開腹時腸重積が整復可能であったこの研究の4頭中3頭に見られたものとして、腸重積が整復可能で合併症を伴わない事を示唆するのかもしれない。
著者は、腹部超音波検査が、急性腸炎、または胃腸炎を伴う若いイヌの評価に価値ある診断ツールであると結論付ける。(Sato訳)
■便秘の外科的治療
White RN.
J Feline Med Surg 2002 Sep;4(3):129-38
Surgical management of constipation.
ネコの便秘には多くの原因が認められており、それぞれの症例においての状態の管理は、原因を適切に理解する臨床医の能力に依存している。ネコにおける便秘の多くの外科的治療は、特発性巨大結腸症の管理に関係するものであるが、骨盤排出路障害、去勢の合併症、会陰ヘルニア、骨盤骨折の変形治癒のような原因もまた、外科的介入を必要とする。現在、巨大結腸症の外科的治療は、回結腸接合部が保存されている部分的結腸切除が推奨されている。一般に、その方法はほとんど生命を脅かす合併症はないが、大部分は手術直後に短期間の便軟化を経験するだろう。症例の大部分において、部分的結腸切除に続く長期間の成果は、優れた物であると考えられた。(Dr.Yoshi訳)
■ネコ巨大結腸症の病原・診断・治療
Washabau RJ, Holt D.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 1999 Mar;29(2):589-603
Pathogenesis, diagnosis, and therapy of feline
idiopathic megacolon.
多くのネコは、それ以上の再発を見ない1つや2つの便秘のエピソードがあるが、完全な結腸の不調に進行していく猫もいる。特に中年のオスネコは、臨床的便秘の連続、拡張した巨大結腸の危険がある。骨盤腔の狭窄と神経損傷は、この症候群の進行の原因としては少ないほうである。多くの冒されたネコにおいて、根底にある病原は結腸平滑筋の機能不全を含んでいるようである。このネコのグループにおいて、この失調が一次的もしくは二次的(長年にわたる便秘と結腸の拡張のため)異常にあたるか否かは、いまだにはっきりしない。軽度から中程度の便秘を呈すほとんどのネコは、保存的内科管理(例えば繊維を補充した食事、便軟化、高浸透圧性下剤、結腸運動因子)に反応する。なるほど、多くのネコにおいて、結腸運動因子の早期使用は便秘と拡張した巨大結腸の進行を阻害するようである。しかし、いくつかのネコはこれらの治療で手におえず、中程度もしくは再発性の便秘と拡張した巨大結腸に進行していくであろう。これらのネコは最後に結腸切除を必要とする。ネコの結腸切除からの回復の予後は、術後4~6週間軽度から中程度の下痢が続くネコもいるが、一般に良好である。(Dr.Yoshi訳)
■シサプリドは特発性巨大結腸症のネコの平滑筋収縮を刺激する
Hasler AH, Washabau RJ.
J Vet Intern Med 1997 Nov-Dec;11(6):313-8
Cisapride stimulates contraction of idiopathic
megacolonic smooth muscle in cats.
私たちは以前に、代替のピペリジニルベンズアミドであるシサプリドが、健康なネコの結腸平滑筋の収縮を刺激することを示した。今回の調査の目的は、ネコの特発性巨大結腸症の平滑筋機能へのシサプリドの効果を判定することであった。上行結腸と下行結腸の縦走平滑筋の細長い一片を、特発性巨大結腸症のネコから採取し、1.5
mM Ca(2+)-HEPES 緩衝液(37 degrees C, 100%
O2, pH 7.4)中に浮遊させ、等張力のトランスデューサーに取付けて適正な筋肉長に伸ばした(Lo)。コントロール反応は、それぞれの筋肉においてアセチルコリン(10(-8)から10(-4)
M)、サブスタンスP(10(-11)から10(-7) M)、塩化カリウム(10から80
mM)にて得た。それからテトロドトキシン(10(-6)
M)、アトロピン(10(-6) M)、カルシウム0のHEPES
緩衝液の存在、または非存在下で、累積的なシサプリド量(10(-9)から10(-6)M)を用い筋肉を刺激した。
特発性巨大結腸症のネコにおいて、シサプリドは上行結腸と下行結腸両方からの縦走平滑筋収縮を刺激した。シサプリドが引き起こした収縮は、上行結腸においてサブスタンスPとアセチルコリンにより引き起こされた収縮の大きさと類似していたが、下行結腸において観察された収縮はより少なかった。巨大結腸症の平滑筋にシサプリドが引き起こした収縮は、唯一部分的にテトロドトキシンとアトロピンにより阻害されたが、細胞外カルシウムの除去によって事実上無効となった。私たちは、ネコ巨大結腸症の平滑筋にシサプリドが引き起こした収縮は、主として平滑筋を調整し、細胞外カルシウムの流入に依存している、と結論付ける。巨大結腸症の平滑筋にシサプリドが引き起こした収縮は、唯一部分的に腸コリン作動性神経に依存していた。このように、シサプリドはネコの特発性巨大結腸症の治療に有用であろう。
■ネコにおける巨大結腸症
Bertoy RW.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 2002 Jul;32(4):901-15
Megacolon in the cat.
ネコにおける巨大結腸症は珍しくはない状態である。最も多くの症例は特発性(原因は決定されない)であり、これらは結腸不活動の結果のように思われる。骨盤骨折の変形治癒は次の最も一般的な原因であり、骨盤の排出路障害の結果となる。結腸の部分的もしくは全切除は、特発性巨大結腸と慢性的骨盤骨折変形治癒の症例において、長期的に良好な結果をもたらし、その技術を詳細に記述した。(Dr.Yoshi訳)
■5頭のネコにおける毛球症による腸閉塞
Barrs VR, Beatty JA, Tisdall PL, Hunt GB,
Gunew M, Nicoll RG, Malik R.
J Feline Med Surg 1999 Dec;1(4):199-207
Intestinal obstruction by trichobezoars in
five cats.
1997~1999年の間に、5頭の交雑種家ネコ(4頭は長毛、1頭は短毛)に触知可能な腹部マスがみられ、腹部切開もしくは剖検にて小腸の毛球症がみられた。毛球は部分的あるいは完全な腸閉塞に関連し、空腸近位から回腸遠位に位置した。4頭のネコにおいては閉塞は単純であったが、残りの1頭は絞扼性閉塞であった。ネコの3頭は10歳以上、2頭は4歳以下であった。3頭の老齢のネコにおいて腹部新生組織形成が疑われ、これらのうち2頭のネコにおいては、予後不良のために検査は遅れるかあるいは治療されなかった。この一連のネコにおける傾向ある要因は、長毛、ノミアレルギー性皮膚炎、炎症性腸疾患、非消化性植物素材の摂取であった。この報告は、毛の摂取は常に無害ではなく、特に長毛ネコにおいて腸毛球症は腸閉塞、内腹部マス病変の鑑別診断として考慮されるべきである。(Dr.Yoshi訳)
■肛門周囲瘻の治療として、サイクロスポリンAとケトコナゾールの使用
T. O'Neill et al; WSAVA 2001; CLINICAL USE
OF CYCLOSPORIN A AND KETACONAZOLE IN THE
TREATMENT OF PERIANAL FISTULA
この研究は、肛門周囲瘻の治療に対する経口サイクロスポリンとケトコナゾールの組み合わせにおける安全性、有効性、経済効果を評価するために行いました。
予見的臨床研究
肛門周囲瘻の犬19頭の治療に、ケトコナゾール(5.3-8.9mg/kg
BID)とサイクロスポリン(2mg/kg, 1mg/kg, 0.75mg/kg
or 0.5mg/kg BID)の組み合わせで治療しました。病変の改善や副作用を毎週判定しました。サイクロスポリンの血清総濃度を毎週測定し、通常の血液生化学検査を隔週で行いました。サイクロスポリンの標的範囲は400-600ng/mlでした。
全頭3-10週間以内に病変が改善しました。嘔吐、嗜眠、脱毛が観察されましたが、重度のものはありませんでした。サイクロスポリンの目標範囲に全頭到達しましたが、2頭は7日目でした。サイクロスポリンの漸減でさえ、2mgと1mg群は高値を示し、0.5mgと0.75mgも目標範囲に達し、または超過しました。19頭中9頭(36.8%)は再発し、そのうち3頭は複数の肛門周囲瘻を再発しました。全ての再発は、再度治療に反応しました。サイクロスポリン(5mg/kg
BID)単独と比較して1日のコストは80%まで削減でき、治療期間も短縮しました。
肛門周囲瘻の治療でケトコナゾール(7.5mg/kg BID)とサイクロスポリン(0.5-0.75mg/kg
BID)の使用は安全で、効果的で、経済的です。(Sato訳)
■イヌネコにおける腸内容の内視鏡吸引:394症例
Leib MS et al; J Vet Intern Med 1999 May-Jun;13(3):191-3;
Endoscopic aspiration of intestinal contents
in dogs and cats: 394 cases.
ジアルジア栄養体の同定のために、腸内容の内視鏡吸引を行った394のイヌネコからの医学的記録を回顧した。内視鏡検査でのもっとも一般的な徴候は慢性嘔吐(152)、慢性下痢(108)、慢性嘔吐と下痢(58)、急性嘔吐(33)であった。検査前、メトロニダゾールが111の動物(28.2%)に施されており、それは慢性下痢を伴う動物の58.6%であった。6つの吸引サンプル(1.5%)はジアルジア陽性であった。これらのうち3つにおいて、内視鏡検査前の1回の糞便浮遊法によりジアルジアシストを同定した。最初に来院した動物の上部胃腸内視鏡検査による腸吸引は、ジアルジアを同定することはほとんどなく、ルーチンに実施されるべきではない、と著者は締めくくる。しかし、硫酸亜鉛浮遊法を実施していない、もしくは以前にメトロニダゾールを与えていない動物においては、腸吸引は有益であるかもしれない。(Dr.Yoshi訳)
■犬の肛門周囲瘻に対するサイクロスポリンとケトコナゾールによる治療
Cyclosporine and Ketoconazole for the Treatment
of Perianal Fistulas in Dogs
J Am Vet Med Assoc 220[7]:1009-1016 Apr 1'02
Clinical Trial 38 Refs
l Alison J. Patricelli, DVM; Robert J. Hardie,
DVM, DACVS; Jonathan F. McAnulty DVM, PhD
目的:犬の肛門周囲瘻に対する治療としてサイクロスポリンとケトコナゾールを使用したときの効果と費用の評価
構成:臨床試験
動物:肛門周囲瘻の犬12頭
方法:サイクロスポリンとケトコナゾールを経口投与しました。研究の終わりは、臨床症状の回復、寛解と疾患の再発でした。副作用と薬剤のコストも報告しました。ヒトと犬で、過去に報告されたサイクロスポリン単独治療の結果と比較しました。
結果:全ての犬の臨床症状は改善しました。8頭は寛解しましたが、そのうち5頭は再発しました。治療の副作用は最小またはよく許容しました。治療のコストは、伝統的な外科手術と同じようなもので、サイクロスポリン治療単独以下でした。
結論と臨床関連:犬の肛門周囲瘻でサイクロスポリンとケトコナゾールの治療は効果的で、費用の面でも同等です。(Sato訳)
■慢性腸疾患を伴うイヌにおける小腸の細菌過剰
Rutgers HC et al; J Am Vet Med Assoc 1995
Jan 15;206(2):187-93; Small intestinal bacterial
overgrowth in dogs with chronic intestinal
disease.
慢性下痢、嘔吐、体重減少を認めるイヌ80頭のうち41頭において、内視鏡で得た十二指腸液の定量的な細菌培養により、小腸の細菌過剰(SIBO)と診断した。13頭のイヌから好気性細菌の過剰が得られ、多くはEscherichia
coli、staphylococci、enterococci から成っていた。28頭のイヌから嫌気性細菌の過剰が得られ、多くはClostridium、Bacteroides
spp を含んでいた。それらのイヌは23の品種から構成され、10頭のジャーマンシェパードを含んでいた。診断時の中央年齢は2歳であった(6ヶ月から11歳の範囲)。SIBOとされたもののうち、高い血清葉酸濃度と低いコバラミン濃度はかなり特異的であった(それぞれ79%、87%)が、低い感度(それぞれ51%、24%)であった。十二指腸のバイオプシー標本の組織学的検査では26/41のイヌで異常が明らかでなく、12/41で軽度から中程度のリンパ球浸潤、2/41で好酸球浸潤、1/41でリンパ肉腫が明らかとなった。経口抗生物質治療は77%(23/30)で効果的であったが、長期治療(4週間以上)が症状のコントロールに必要で、50%(15/30)において再発を防いだ。コルチコステロイドは好酸球性腸炎を伴うイヌにのみ、抗生物質とのコンビネーションは著しい胃腸のリンパ球/形質細胞浸潤を伴うイヌ4頭に実施された。この研究は、SIBOが明らかな根本の原因がなくとも多くの犬種に観察されるであろうこと、そして間接試験の結果がSIBOをうかがわせるが、十二指腸液サンプルの細菌培養が確定診断に必要であることを示唆した。(Dr.Yoshi訳)
■猫の炎症性腸疾患:病因、診断法、リンパ肉腫との関わり
Matthew R. Krecic, DVM, MS, DACVIM ; Compend
Contin Educ Pract Vet 23[11]:951-960 Nov'01
Review Article 37 Refs; Feline Inflammatory
Bowel Disease: Pathogenesis, Diagnosis, and
Relationship to Lymphosarcoma
炎症性腸疾患(IBD)は、非特異性の慢性胃腸(GI)症状と、粘膜と粘膜下へのリンパ球、プラズマ細胞、好酸球、好中球または組織球の浸潤によって特徴づけられる消化器系疾患の特発性のグループである。内視鏡または開腹術から、上部と下部消化管の診断的生検材料を得た。仮に不十分な組織量で提出されたり、病理学者によって指摘された変化が悪性腫瘍の可能性を示していると、病理医はいくつかの生検標本で判断が困難であったかもしれない。(Dr.Massa訳)
コメント:慢性腸疾患とリンパ腫の組織診断は鑑別しにくいケースがあるようです。通常、開腹下で得られた腸組織だと生検に十分な量が採材出来ると思いますが、内視鏡下だと採材量が少なく、診断が困難になる可能性があるのかもしれませんね。
■犬の腸リンパ管拡張症の臨床的、臨床病理的、X線、超音波検査での特徴:17例(1996-1998)
Patricia A. Kull, DVM et al; J Am Vet Med
Assoc 219[2]:197-202 Jul 15'01 Retrospective
Study 24 Refs ;Clinical, Clinicopathologic,
Radiographic, and Ultrasonographic Characteristics
of Intestinal Lymphangiectasia in Dogs: 17
Cases (1996-1998)
目的:犬の腸リンパ管拡張症の臨床的、臨床病理的、画像検査結果を特徴づけ、そして臨床病理による組織グレードと画像診断での異常を比較する事です。
構成:回顧的研究
動物:腸リンパ管拡張症と組織学的診断を受けた犬17頭
方法:腸リンパ管拡張症の組織診断を受けた犬の医療記録から、徴候、履歴、臨床症状、試験的開腹結果、臨床病理結果、X線検査結果、超音波検査結果、組織検査結果を再調査しました。
結果:犬の平均年齢は8.3歳でした;よく見られた臨床症状は、下痢、食欲不振、嗜眠、嘔吐、体重減少でした。身体検査での異常は、脱水、腹水、腹部触診で痛みを示しました。もっとも顕著な臨床病理的発見は、血清低カルシウムイオン濃度と低アルブミンでした。腹部超音波検査は12頭で実施し、8頭で腸の異常を示し、7頭で腹部浸出液を認めました。試験的開腹で、16頭中9頭に肥厚した小腸、拡張した乳糜管、リンパ節障害、癒着を認めました。小腸の組織検査で、炎症を伴ったものは17頭中15頭、陰窩の拡張は17頭中5頭、脂肪肉芽腫は17頭中2頭で見られました。
結論と臨床関連:犬の腸リンパ管拡張症は、さまざまな程度の汎低タンパク血症、低コレステロール血症、リンパ球減少、画像検査異常の特徴をもつ異質の疾患で出現します。多くの犬で、低アルブミン血症の程度は、リンパ管拡張症の組織障害の程度と相関関係を示します。画像検査異常は、腸リンパ管拡張症の犬でよく見られますが、他の胃腸疾患と鑑別できるほど特異的でなく、組織のひどさを言い当てる事も出来ません。(Dr.Sato訳)