■ビタミンD中毒の犬2頭と猫2頭における静脈内脂質乳剤治療
Intravenous lipid emulsion therapy in 2 dogs and 2 cats with vitamin D toxicosis
Can Vet J. 2023 Dec;64(12):1119-1124.
Andrea Voss , Rosalind Chow

ビタミンD中毒は、重度および長期高カルシウム血症を誘発する可能性があり、多臓器損傷及び死亡さえも引き起こす。現行の治療は、長期入院することも多く、副作用の可能性を持つ薬剤治療を必要とするかもしれない。

このケースシリーズの目的は、ビタミンD中毒において静脈内脂質乳剤治療後、血清イオン化カルシウム濃度の低下を述べることだった。

ビタミンD中毒の2頭の犬と2頭の猫を、標準治療法に加え、静脈内脂質乳剤投与で治療した。

4頭中3頭において、治療開始まで24時間以上経過しているにもかかわらず、静脈内脂質乳剤治療後に高イオン化カルシウム血症はより低くなり、副作用は観察されなかった。また、このケースシリーズの4頭中2頭は、25-ヒドロキシビタミンD濃度の長期モニタリングを行っており、高イオン化カルシウムの早期解消にもかかわらず、1頭の犬の6日目、1頭の猫の5か月目で持続的上昇が明らかとなかった。

カギとなる臨床的メッセージ:これは、ビタミンD中毒の2頭の犬と2頭の猫において、他の標準治療に加え、静脈内脂質乳剤投与後の血清イオン化カルシウム濃度の低下の最初の文書化されたシリアル報告である。さらに、25-ヒドロキシビタミンD濃度の長期にわたる上昇も4頭中2頭で証明され、1頭の猫の最初の報告が含まれる。それら2頭において、持続的な25-ヒドロキシビタミンD濃度の上昇にもかかわらず、イオン化カルシウム濃度は正常化した。(Sato訳)
■犬の金属異物による亜鉛中毒の臨床経過と結果の回顧的評価(2005-2021):55症例
Retrospective evaluation of the clinical course and outcome of zinc toxicosis due to metallic foreign bodies in dogs (2005-2021): 55 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Oct 17.
doi: 10.1111/vec.13330. Online ahead of print.
Cameron S Henke , Matthew W Beal , Rebecca A L Walton , Joanna B Finstad , Brooke K Newmans , Michael P Sliman , Molly A Racette , Nyssa A Levy

目的:原因、原因コントロールまでの時間、溶血性貧血の発生、急性肝傷害(ALI)、急性腎傷害(AKI)、膵炎を含む犬の亜鉛中毒の全体的な臨床経過を述べる

計画:2005年から2021年までの回顧的ケースシリーズ

場所:6か所の大学獣医教育病院

動物:金属異物(MFB)摂取による亜鉛中毒が分かっている55頭の飼い犬

測定値と主要結果:最も一般的亜鉛の源は、1982年以降に造幣されたUSペニーだった(67.3%)。55頭中45頭(81.8%)の犬は生存し、55頭中10頭(18.2%)は死亡あるいは安楽死された。生存犬と非生存犬に対する入院期間中央値は3日だった。亜鉛中毒の一般的な臨床的続発症は、貧血(87%)、ALI(82%)、凝固障害(71%)、血小板減少(30.5%)、AKI(26.9%)、急性膵炎(5.5%)だった。多くの犬(67.3%)は血液製剤を必要とし、MFB除去後中央値24時間で、83%の犬は安定したHCTあるいはPCVを達成した。生存犬及び非生存犬の受診までの疾病の持続期間中央値は48時間で、ALI、AKI、膵炎の発生に対し、受診までの時間の影響はなかった。

結論:MFB摂取による二次的な亜鉛中毒は、消化管症状、溶血性貧血、ALI、止血異常、AKI、膵炎の犬に対し鑑別診断を考慮すべきである。AKIは過去を疑うよりも亜鉛中毒のより一般的な続発症かもしれない。急性膵炎はまれだが、亜鉛中毒の潜在的に重大な続発症である。(Sato訳)
■2016年から2020年までの166頭の猫における中毒確定および中毒疑いの回顧的評価
A retrospective evaluation of confirmed and suspected poisonings in 166 cats between 2016 and 2020
Vet World. 2023 Sep;16(9):1940-1951.
doi: 10.14202/vetworld.2023.1940-1951. Epub 2023 Sep 23.
Carina Markert , Romy Monika Heilmann , Dschaniena Kiwitz , Rene Dorfelt

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背景と目的:獣医救急施設に、犬と猫の中毒が搬送されてくることが多い。この回顧的研究の目的は、小動物委託センターの救急サービスで、5年の間に来院した猫の中毒症例の臨床症状、確認されたあるいは疑われた毒物、治療、結果を分析することだった。

素材と方法:166頭の猫の医療記録を、確認したあるいは推定した中毒の病歴、疑われた毒物、臨床症状、治療、結果に対し評価した。中毒の可能性は、猫の履歴、臨床所見、観察、毒物学的評価、数症例では胃内容物を用いて判定した。

結果:多くの猫(94.0%)は中毒のために入院し、多くは不明の毒物(48.2%)、殺鼠剤(21.1%)、種々の毒性のある植物(12.0%)、続いて駆虫薬(6.0%)、化学薬品(6.0%)、薬剤(4.2%)、テトラヒドロカンナビノール(1.2%)、煙の吸引(1.2%)だった。猫は主に神経学的欠損(68.7%)、全身状態の減退(60.2%)、低体温(43.4%)を呈した。生存率は88.6%だった。ほとんどの猫(93.2%)は病院から退院時に明らかな合併症を示さなかった。毒物関連の合併症(48.2%)は体温調節不全(22.9%)、中枢神経系症状(18.7%)、呼吸問題(7.2%)、腎毒性(6.0%)、消化管合併症(4.8%)、肝不全のエビデンス(4.8%)、出血(1.8%)だった。

結論:この研究において、原因毒物は多くの症例で確認できないままだった。わかっている中毒は多くが殺鼠剤によるものだった。神経学的症状は最も一般的な臨床症状だった。生存率は高く、他で報告されている生存率に匹敵した。(Sato訳)
■313頭の犬と100頭の猫の中毒の脂肪乳剤静脈投与による治療(2016-2020)
Intravenous lipid emulsion for the treatment of poisonings in 313 dogs and 100 cats (2016-2020)
Front Vet Sci. 2023 Sep 28:10:1272705.
doi: 10.3389/fvets.2023.1272705. eCollection 2023.
Carina Markert , Romy Monika Heilmann , Dschaniena Kiwitz , Rene Doerfelt

イントロダクション:この回顧的研究の目的は、5年の期間で中毒の犬と猫に対し脂肪乳剤静脈内投与(ILE)の効果と潜在的副作用を分析することだった。

方法:2016年から2020年の間でILEの治療を受けた313頭の犬と100頭の猫の医療記録で、疑われた毒物、臨床症状、ILE用量と回数、ILEの効果と副作用、動物の結果に対して分析した。

結果:大部分は未確認の毒物(48%)、殺鼠剤(8%)、レクレーションの薬物およびナッツ(各7%)、その他の毒物で中毒を起こしていた。臨床症状は、神経学的欠損(63%)、心血管症状(29%)、体温調節異常(21%)あるいは消化管異常(17%)が含まれた。ILEの治療は中毒後、中央値6.0時間(1.0-91.0時間)以内に開始された。犬と猫は、それぞれ総量中央値8.0mL/kg(1.5-66.6mL/kg)と15.8mL/kg(1.8-69.4mL/kg)ILEの投与を受けた。

ILE投与後、ポジティブな効果は74%の動物で観察されたが、臨床症状は4%の動物で悪化した。主観的な効果は、22%の動物で検出されなかった。ILEの推定的あるいは化膿性のある副作用は6%の動物で発生し、神経学的症状(一時的な意識の低下および運動失調)、徐脈、高体温、嘔吐、下痢、呼吸困難、一般行動の悪化、顔面腫脹、血栓静脈炎が含まれた。総生存率は96%だった。潜在的に有害事象を経験した1頭は安楽死された。

結論:ほとんどの動物でILEの治療は成功したが、副作用に関連する可能性がある。ILEの投与は、可能性のある利益と、潜在的副作用を天秤にかけ、個々のベースを基に慎重に選択すべきである。(Sato訳)
■26頭のメタアルデヒド中毒による臨床症状、管理、結果、遅発性神経後遺症に対する前向き研究
A prospective study on clinical signs, management, outcomes, and delayed neurologic sequelae due to metaldehyde poisoning in 26 dogs
Open Vet J. 2023 May;13(5):510-514.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i5.2. Epub 2023 May 2.
Guillaume Fabien Dutil , Philippe Berny

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背景:犬のメタアルデヒド中毒は、よく知られており、重要な点を述べられている。いくつかの研究は、この中毒に関係する発生率、疫学的特徴、臨床および病理所見に焦点を当てていた。しかし、メタアルデヒド中毒および遅発性の発作の前向き研究はない。

目的:犬のメタアルデヒド中毒による臨床症状、治療管理、結果、遅発性発作を前向きに述べること

方法:フランスのリヨンで、動物毒物コントロールセンターへの電話、または毒物検査所による分析で、メタアルデヒド中毒と診断された犬に対する15か月の前向き研究。臨床症状、治療管理と結果、遅発性の発作を最低3年評価した。

結果:26頭を研究に登録した。最も多く見られた臨床症状は、運動失調(18頭)、痙攣(17)、流涎(15)、振戦(15)だった。治療は抗痙攣療法(主にジアゼパム)と対症療法(例えば、活性炭、催吐、静脈点滴)だった。総生存率は81%(21/26頭)だった。活性炭(11/11)あるいは催吐治療(4/4)を受けたすべての犬は生存した。痙攣のあった17頭中12頭は生存した;9頭は少なくとも3年のフォローアップがあり、他の発作事象あるいは神経学的後遺症のいずれもなかった。

結論:この前向き研究は、メタアルデヒド中毒の犬の臨床症状、治療管理、結果および遅発性神経後遺症を述べる。3年間追跡した9症例で、メタアルデヒド中毒後に神経学的症状を発症した犬はいなかった。ゆえに、長期の抗癲癇治療は必要ない。(Sato訳)
■犬の抗コリンエステラーゼ農薬中毒の中間症候群の有病率、臨床症状、検査所見、治療、結果
Prevalence, clinical manifestations, laboratory findings, treatment, and outcome of intermediate syndrome in anticholinesterase pesticide intoxication of dogs: A retrospective study
Vet J. 2022 Aug 18;105883.
doi: 10.1016/j.tvjl.2022.105883. Online ahead of print.
S Klainbart , E Kelmer , O Chai , G Segev , I Aroch

有機リン化合物およびカルバメートは、ヒトと犬の重要な抗コリンエステラーゼ中毒物質である。中間症候群(IMS)は、一般に毒性に関係する急性コリン作動性クリーゼ(ACC)後、7-96時間で発生し、臨床的に、四肢近位、呼吸、頸の屈筋の虚弱が現れる。

この研究の目的は、犬のIMSの有病率、臨床所見、結果を述べることだった。

2007年から2021年までにACC、IMS、あるいは両方と診断された犬を、獣医教育病院の医療記録から検索した。症例ファイルは回顧的に再検討した。6頭の過去のIMS症例は追加で再検討した。

検索期間中に32頭の犬が抗コリンエステラーゼ中毒と診断され、そのうち23頭(72%)はACCのみと診断され、7頭(22%)はACCからIMSに進行し、2頭(6%)はIMSのみと診断された。入院期間は、ACCのみの群と比較してIMS群で有意に長かった(P=0.005)。IMSの全ての犬(n=15、6頭の過去の症例を含む)を考慮した時、生存率は100%で、呼吸不全に続き陽圧機械的ベンチレーションを必要とした4頭(27%)が含まれた。コリンエステラーゼ活性のマーカーである血清ブチリルコリンエステラーゼ活性は、14頭(93%)の犬で最初に測定した時には参照範囲未満だった;しかし、回復マーカーとしては有効ではなかった。

特にACCに一致する臨床症状に続き、呼吸、頸、四肢近位の筋肉の不全麻痺あるいは麻痺を示す犬においてIMSを疑うべきである。ACCに一致する臨床症状の欠如、あるいはブチリルコリンエステラーゼ活性が参照範囲内でも鑑別としてIMSは除外できない。(Sato訳)
■イギリスの救急動物病院に来院した犬のヨーロッパブドウ摂取の回顧的評価(2012-2016):606症例
Retrospective evaluation of Vitis vinifera ingestion in dogs presented to emergency clinics in the UK (2012-2016): 606 Cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2020 Oct 31.
doi: 10.1111/vec.13025. Online ahead of print.
Rachel Croft , Elisabetta Clementi , Helen Farmer , Rachel Whalley , Mark Dunning , Ava Firth

目的:ヨーロッパブドウ(VVF)(グレープ、レーズン、干しブドウ、スルタナ)摂食後の犬が呈する鍵となる症状、結果、急性腎傷害(AKI)の発生を評価する

構成:回顧的研究(2012-2016)

場所:イギリスの時間外病院

動物:VVF摂食後イギリスの53か所の緊急病院を訪れた606頭の犬を含む研究集団

介入:なし

測定値と主要結果:VVFは摂食後12時間以上たった後の嘔吐でも見つかった。12月に発生が増えた。血清クレアチニンあるいは尿素は338頭の犬で測定し、全て参照範囲内だった。VVF摂食のこの集団の犬で、クレアチニン濃度の支持的測定の導入および反復測定を実施した入院から24時間以内で、33症例中32症例に有意なAKIのエビデンスはなかった。

結論:全ての犬は退院した。クレアチニン濃度を繰り返し測定した33症例中1頭は、現行の緊急治療ガイドラインを全部あるいは一部行い、VVF摂食後24時間以内にIRIS AKIグレードIを発症した。(Sato訳)
■チョコレート摂取の犬156頭
Chocolate ingestion in 156 dogs
J Small Anim Pract. 2021 Mar 31.
doi: 10.1111/jsap.13329. Online ahead of print.
C Weingart , A Hartmann , B Kohn

目的:チョコレートを食べた犬の臨床的特徴と結果を述べる

素材と方法:チョコレートを食べた後の犬156頭の臨床症状、臨床病理所見、治療、結果の回顧的評価。メチルキサンチン(テオブロミン、カフェイン)の濃度は、チョコレートの種類と食べた量を基に算出した。

結果:112頭は臨床症状がなかった。44頭はチョコレート中毒の臨床症状があった。44頭中28頭は、ダークおよびビターチョコレートを食べていた。来院理由は、興奮(33)、振戦(22)、嘔吐(21)、パンティング(11)、多尿/多渇(7)、下痢(2)だった。一般的な臨床所見は、洞性頻脈(28)、頻呼吸/パンティング(14)、高体温(10)、脱水(7)だった。44頭中34頭の臨床病理所見は、高乳酸血症(23)、低カリウム血症(16)、軽度高血糖(16)、軽度ALTおよびAST上昇(14)だった。汚染除去(アポモルヒネ、活性炭)と対症療法(輸液療法、エスモロール、強制利尿、鎮静剤)後、44頭中43頭は生存した。

臨床意義:潜在的チョコレート中毒の犬において、チョコレートのタイプと量、食べた時間は重要な因子である。心血管、神経、胃腸症状は最も一般的な臨床症状である。この症例シリーズで、除染と対症療法後の予後は良く、死亡率は3%未満だった。(Sato訳)
■ キシリトール中毒で入院した重篤な1頭の犬の交互脈
Can Vet J. 2020 Aug;61(8):865-870.
Pulsus alternans in a critically ill dog hospitalized for xylitol toxicity
Nolan V Chalifoux , Anthony P Carr

2歳の避妊済のグレートピレネーズの雑種犬は、純粋なキシリトールの甘味料を食べた後来院した。

血液検査では、肝細胞性漏出と胆汁うっ滞、高乳酸血症、血小板減少、プロトロンビン時間の延長、活性化部分トロンボプラスチン時間の延長が見られた。入院2日目での胸部エックス線写真で肺出血が見られた。死亡前、その犬は交互脈を発症し、重度全身性炎症による二次的な心筋機能不全を示唆した。

これは、臨床的悪化及び死亡前の1頭の重篤な犬に見られた交互脈の最初の報告である。また、これは高精度のオシロメトリック機器で交互脈の最初の証拠である。鍵となる臨床的メッセージ:獣医療での交互脈とその潜在的かかわりの認識が増すことは、全身性疾患に関係する心血管の合併症の同定に寄与するかもしれない。(Sato訳)
■犬の急性腎傷害および神経症状を引き起こすブドウあるいはレーズンによる中毒
Toxicosis with grapes or raisins causing acute kidney injury and neurological signs in dogs
J Vet Intern Med. 2020 Sep 7.
doi: 10.1111/jvim.15884. Online ahead of print.
Ariane Schweighauser , Diana Henke , Anna Oevermann , Corinne Gurtner , Thierry Francey

背景:犬でブドウやレーズンの摂取は、早期消化管症状と急速な尿毒症の発症を主とする臨床像を伴う急性腎傷害(AKI)を引き起こすと報告されている。2,3の報告で運動失調に言及されているが、それ以上の特徴は延べられていない。

目的:腎臓および神経学的症状を強調するブドウあるいはレーズン中毒(GRT)と診断された犬の臨床、検査、病理学的特徴を評価し、他の原因のAKIの犬のコントロール群と比較する

動物:GRTの飼育犬15頭とコントロール犬74頭

方法:17か月の回顧的研究

結果:GRTの全ての犬は重度AKIを呈した(グレード4、n=5;グレード5、n=10)。11頭(73%)の犬は前脳、小脳、前庭症状が顕著だった。それらの症状はいくつかの犬の臨床像で優位を占めたが、高窒息血症の重症度あるいは全身性高血圧の存在に関係しなかった。8頭(53%)は生存し、5頭は完全な神経学的回復を経験した。死亡原因は神経学的症状に関係しなかった。4頭の神経病理学的検査で、いずれの構造上中枢神経系異常を認めなかった。コントロール犬2頭(3%)だけがAKIに関連のない発作を伴う神経学的症状を示した;コントロール犬42頭(57%)は生存した。

結論と臨床的重要性:重度前脳、小脳、前庭症状は、GRTの重要な特徴かもしれず、主な早期臨床像である。ここで述べた特徴は、GRTに特異で尿毒症に関連のない可逆的機能的脳傷害を示唆する。(Sato訳)
■ブドウまたはレーズンを摂取後の犬の臨床経過と転帰の回顧的評価:139症例
Retrospective evaluation of the clinical course and outcome following grape or raisin ingestion in dogs (2005-2014): 139 cases.
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2019 Nov 12. doi: 10.1111/vec.12905. [Epub ahead of print]
Reich CF, Salcedo MC, Koenigshof AM, Hopp MM, Walker JM, Schildt JC, Beal MW.

目的:ブドウまたはレーズンを食べた犬において、急性腎障害(AKI)の有病率、臨床経過、除染処置、転帰を述べる
デザイン:2005年から2014年の回顧的ケースシリーズ

場所:大学教育病院

動物:ブドウまたはレーズンを食べたことが分かっている飼育犬139頭

測定値と主要結果:生化学データのある犬の中で、AKIの有病率は6.7%(8/120)だった。早期紹介(3/67)および遅れて紹介(5/53)群のAKIの有病率は、それぞれ4.5%と9%だった。AKIの有病率に群間の有意差はなかった(P=0.27)。4頭(3.3%)は紹介時に高窒素血症で、4頭(3.3%)は再チェック時にクレアチニンが≧26.5μmol/Lに上昇していた(早期紹介群の3頭と遅れて紹介群の1頭)。嘔吐は一般的な臨床症状だった(18/139)。122頭(88%)は消化管除染を行い、早期紹介群の犬が有意に多く除染された(P<0.0001)。2頭は持続的腎補充療法を受けた。138頭は生存し1頭は死亡した。

結論:ブドウまたはレーズンを食べた犬においてAKIの有病率と死亡率は低かった。この研究の回顧的性質により、消化管除染および他の療法の有用性についての結論は出すことができない。(Sato訳)
■急性有機燐酸塩あるいはカルバメート中毒の犬102頭の臨床症状、検査所見、治療、結果:回顧的研究
Clinical manifestations, laboratory findings, treatment and outcome of acute organophosphate or carbamate intoxication in 102 dogs: A retrospective study.
Vet J. 2019 Sep;251:105349. doi: 10.1016/j.tvjl.2019.105349. Epub 2019 Jul 31.
Klainbart S, Grabernik M, Kelmer E, Chai O, Cuneah O, Segev G, Aroch I.

有機燐酸塩(OP)およびカルバメートは、一般に使用される殺虫剤で、ヒトおよび動物の重要な中毒源である。しかし、それらの犬の中毒の大規模研究は利用できない。

動物病院に来院した犬の医療記録を回顧的に再検討した。この研究に急性OPあるいはカルバメート中毒と確定診断された102頭の犬を含めた。

一般的な臨床症状は、筋肉振戦、流涎、縮瞳、虚弱、嘔吐、下痢だった。流涎、筋肉振戦、頻呼吸は退院時生存と優位に関係した(P<0.05)が、虚弱、精神鈍麻、食欲不振、粘膜蒼白、遊泳運動は有意に死亡と関係した。

一般的な検査の異常は、ブチルコリンエステラーゼ活性の低下、酸血症、血漿総蛋白値上昇、白血球増加、低塩素血症、高ビリルビン血症、クレアチニン、ALT、AST、CK活性上昇、活性部分トロンボプラスチン時間(aPTT)延長だった。生存犬と比較して、非生存犬は有意に;血小板減少症、低カルシウム血症、プロトロンビン時間(PT)延長、高ナトリウム血症、低コレステロール血症、低蛋白血症、高トリグリセリド血症、ALT活性上昇、尿素濃度上昇の出現が高く;静脈血中重炭酸、血清塩素、総CO2の濃度中央値が低く;PT、血清総ビリルビン、尿素濃度、ALTおよびAST活性の中央値が高かった。

中毒の犬は、一般にジフェンヒドラミン、硫酸アトロピン、抗生物質、ジアゼパム、プラリドキシムで治療されたが、全身麻酔やメカニカルベンチレーションが必要な犬もいた(19.2%)。

胃洗浄で治療した犬の生存率はしなかった犬よりも高かった(P=0.041)。呼吸不全とメカニカルベンチレーションを必要とすることは、死亡と有意に関係した(P<0.001)。死亡率は17%だった。(Sato訳)
■ロピニロール点眼が効果的に犬の嘔吐を引き起こす:無作為化二重盲検プラセボ対照臨床試験
Ropinirole eye drops induce vomiting effectively in dogs: a randomised, double-blind, placebo-controlled clinical study.
Vet Rec. 2019 Aug 13. pii: vetrec-2018-104953. doi: 10.1136/vr.104953. [Epub ahead of print]
Suokko M, Saloranta L, Lamminen T, Laine T, Elliott J.

中毒の可能性のある症例で、獣医師のアドバイスに従いオーナーが簡単に投与できる効果的で安全な催吐剤が必要である。この必要性に応じ、犬の嘔吐を誘発するロピニロール点眼の効果、安全性、有用性を評価するため、無作為化二重盲検多施設臨床野研究を実施した。

ロピニロール(目標用量3.75mg/m2)は 100頭の眼に使用し、32頭にはプラセボを投与した。

薬剤は、動物病院内において獣医師の監視下のもと、オーナーに投与してもらい、ロピニロール投与犬の95%が30分以内に嘔吐した。最初の嘔吐までの時間中央値は10分(範囲:3-37分)だった。この時間内にプラセボを投与した犬で嘔吐は見られなかった。

全てのオーナーはその製剤を投与でき、96%のオーナーは投与が非常に簡単あるいは簡単と評価し、観察していた獣医師が確認した。いくらかの眼症状がロピニロールとプラセボで見られ、充血が最も多かった。全ての観察された症状は一時的で、ほとんどの症例は軽度だった。

ロピニロール点眼は、犬の催吐で効果的、安全、信頼できる手段を提供する。(Sato訳)
■カーバメート中毒の中間期症候群の疑われる犬の1症例
A suspected case of intermediate syndrome in a dog with carbamate toxicosis.
Aust Vet J. June 2017;95(6):201-206.
E Tinson , E Boller , M Davis

ケースリポート:7歳メスの避妊済みラブラドールレトリバーを、大量のメチオカルブの摂取を確認後、カーバメート中毒の疑いのため治療した。治療は除染、支持療法、吸引性肺炎の管理だった。入院3日目、臨床的初期改善後、呼吸筋虚弱、呼吸困難、明白な頸部筋肉虚弱を発症した。それらの遅発臨床症状は、ヒトの有機リンおよびカーバメート中毒のある症例で述べられ、また犬の有機リン中毒の1症例でも述べられている’中間期症候群’と一致した。犬のカーバメート中毒で中間期症候群は報告されていない。

結論:この症例報告は、獣医師は急性カーバメート中毒で一般的に考えられない追加の合併症をモニターする必要があることを強調する。(Sato訳)
■ドーベルマンピンシャーの子犬のイベルメクチン中毒での臨床生化学変化
Clinicobiochemical changes in ivermectin toxicity in Doberman pinscher pups.
J Parasit Dis. June 2017;41(2):580-583.
Sahadeb Dey , Nitin P Kurade , Kishore Lal Khurana , Ananya Dan

この研究は、自然に中毒を起こしたドーベルマンピンシャーの子犬を基にしている。

6頭のドーベルマンピンシャーの子犬が、オーナーによりイベルメクチン推奨量の50倍の量を過量投与され、昏睡状態でこの施設の紹介獣医総合診療部門を受診した。子犬は頭を持ち上げた状態を保持できず、瞳孔反射もなかった。

血液-生化学研究に対し、治療の前後に子犬を臨床的に検査し、採血を行った。中毒の間、顕著な血液濃縮、血清クレアチニンホスホキナーゼ、GGTの上昇が見られたが、血清グルコース濃度は低下していた。

それらの子犬は等張ブドウ糖生理食塩水、1.0mg/kgフィソスチグミン、3mg/kgデキサメタゾンで治療した。臨床的改善は残った2頭の子犬に治療から12時間後に見られた。それらの子犬は3日後には流動食を食べることが可能で、2週間後には臨床的に正常になった。治療から2週間後には、回復した子犬の血清生化学値が正常となっていった。抑欝と盲目からの完全な回復には1か月かかった。(Sato訳)
■犬の急性アセタケ属キノコ中毒:5症例(2010-2014)
Acute Inocybe mushroom toxicosis in dogs: 5 cases (2010-2014).
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. March 2017;27(2):212-217.
Kristin Opdal Seljetun , Anita von Krogh

目的:アセタケ属に属するキノコの摂食後の犬5頭の臨床経過、治療、結果を述べる

症例シリーズ概要:アセタケ接触を目撃された5頭の犬が、中毒に匹敵する臨床症状で来院した。嘔吐、流涎、下痢、元気消失、頻脈がこの症例シリーズの犬の一般的な臨床所見だった。アセタケ中毒の予後は全ての犬で良いと思われ、支持療法で完全に回復した。

提供された新しい、または独特の情報:専門の菌学者によりキノコが確認された犬のアセタケ属キノコ摂食の最初の報告されたケースシリーズである。(Sato訳)
■ペルメトリン中毒を脂質点滴で治療した後に見られた持続的で顕著な脂肪血症と角膜リピドーシスの疑いの猫1例
Persistent gross lipemia and suspected corneal lipidosis following intravenous lipid therapy in a cat with permethrin toxicosis.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. November 2016;26(6):804-808.
Marc A Seitz , Jamie M Burkitt Creedon

目的:ペルメトリン中毒の1頭の猫において、静脈内脂質療法(intravenous lipid therapy:IVLT)の後、持続性の顕著な脂肪血症と角膜リピドーシスの疑いの知見を述べる

症例概要:ペルメトリン中毒の5歳避妊済みメスのイエネコ短毛猫を、従来の支持療法でもまだひどく鈍かったため、補助療法として高用量のIVLTで治療した。その猫に静脈注射用20%脂質乳剤を10分かけて1.5mL/kgでボーラス投与し、その後0.25mL/kg /minの割合の持続点滴で2時間投与した。その猫はIVLT1回投与後、最低48時間持続した顕著な脂肪血症が発現した。角膜リピドーシスと一致する変化が観察され、IVLT後1週間以内に解消した。

提供された新規あるいは独特な情報:これはIVLT後、1頭の猫に見られた持続性の高脂肪血症と推定角膜リピドーシスの合併症を述べる最初の報告である。この報告は猫の中毒の治療として、IVLTの適応外、試験的性質を強調する。(Sato訳)
■中毒に対する脂質療法
Lipid Therapy for Intoxications.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. March 2017;47(2):435-450.
Joris Henricus Robben , Marieke Annet Dijkman

この概要は、獣医療において親油性物質の中毒の治療で、静脈内脂質乳剤(intravenous lipid emulsion:ILE)の使用を議論する。ある中毒の治療においてILEが有益であるという化学的エビデンスが増えているにもかかわらず、脂質乳剤の最適な組成、投薬、作用メカニズム、効果に対し不確定なままである。

ゆえに、中毒においてこの様式の適応性に対し、まだ臨床家のクリティカルレビューが求められる。ILE療法の使用は、ある種親油性物質の中毒の症例において解毒薬として提唱される。(Sato訳)
■d-ペニシラミンを用いたキレート化で治療した犬の亜鉛中毒の1例
Treatment of zinc toxicosis in a dog with chelation using d-penicillamine.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. November 2016;26(6):825-830.
Ye-Rin Lee , Min-Hee Kang , Hee Myung Park

目的:1頭の犬の亜鉛中毒の治療でd-ペニシラミンによるキレート化治療を述べる

症例サマリー:1.5歳メス、2.7kgのマルチーズが急性進行性の食欲不振、元気消失、色素尿、下血を呈した。オーナーによると、その犬は9日前に亜鉛ベースの合金で作られた犬の革紐のフックを食べたとのことだった。輸血を行い、腹部エックス線写真で胃の中に金属の異物を認めた。検査所見で、血清亜鉛濃度1845.12μg/dL(参照範囲、70-200μg/dL)とヘマトクリットの低値を認め、亜鉛異物を除去しても低いままだった。3日目に、別の輸血を実施し、d-ペニシラミン療法を開始した。

d-ペニシラミン投与後、臨床症状と血液像は次第に改善し、その犬は2日後に退院した。初診から9日目、ヘマトクリット値と血小板数は正常限界内になり、血清亜鉛濃度は280.16μg/dLだった。

提供された新規あるいは独特な情報:この症例は、亜鉛中毒の治療でd-ペニシラミンの使用を示す。血清亜鉛濃度は、キレート化治療の前よりもd-ペニシラミンの投与後、より急速に低下すると思われた。これは、d-ペニシラミンのキレート化治療前と、治療中の連続血清亜鉛濃度を評価する最初の報告である。(Sato訳)
■猫へのキシリトール経口投与の影響
Effects of p.o. administered xylitol in cats.
J Vet Pharmacol Ther. 2018 Feb 11. doi: 10.1111/jvp.12479. [Epub ahead of print]
Jerzsele A, Karancsi Z, Paszti-Gere E, Sterczer A, Bersenyi A, Fodor K, Szabo D, Vajdovich P.

一般にキシリトールは家庭で砂糖の代用品として用いられる。ヒトの健康に多くの有益な効果があるが、犬に対しては有毒である。

この研究の目的は、猫に対し低血糖や急性肝不全のようなキシリトールの同じような有毒作用があるのかどうかを調査することだった。
調査は中年齢の健康な猫6頭で行った。

キシリトールを脱イオン水に溶かし、3種の用量(100、500、1000mg/kg)で経口投与した。それらの用量は犬で有毒と考えられており、肝不全や死に至る可能性がある。各キシリトール投与後、猫の基本の健康状態および血糖値を定期的に観察した。また、キシリトール投与前と6、24、72時間後にCBC、臨床生化学パラメーターおよび酵素(ALT、ALKP、GGT、GLDH、胆汁酸、BUN、クレアチニン、リン、TP、アルブミン、ナトリウム、カリウム)をチェックするために採血した。

どの血液あるいは生化学パラメーターにも有意な変化はなかった(P>0.05)。血糖値は用量1000mg/kgを除き有意な変化は全く見られず、1000mg/kg用量は軽度で有意な上昇が観察されたが生理学的範囲内だった。

我々の結果から、キシリトールは猫に有毒な影響を誘発しなかった。(Sato訳)
■犬のジフェンヒドラミン暴露:621症例(2008-2013)
Diphenhydramine exposure in dogs: 621 cases (2008-2013).
J Am Vet Med Assoc. July 1, 2016;249(1):77-82.
Alisha C Worth, Tina A Wismer, David C Dorman

目的:犬のジフェンヒドラミン中毒のシグナルメント、薬物量反応、臨床症状の特徴を述べる

計画:回顧的ケースシリーズ

動物:ジフェンヒドラミンに暴露された621頭の犬

方法:2008年1月から2013年12月の間にジフェンヒドラミンを食べた、あるいは注射された犬を確認するため、動物毒物コントロールセンターの電子医療記録データベースを再調査した。記録から抽出し、評価した情報はシグナルメント、観察された臨床症状、算出したジフェンヒドラミンの暴露量だった。臨床症状はなし、軽度、中程度、重度に分類した。

結果:犬の平均±SEM年齢は3.6±0.1歳(範囲、0.1-16歳)だった。摂食によるジフェンヒドラミン暴露は581頭(93.6%)で、注射は40頭(6.4%)だった。中毒の臨床症状を1つ以上示した犬は146頭(23.5%)のみで、最も一般的なものは、神経(元気消失、活動亢進、興奮、運動失調、震え、線維束攣縮)あるいは心臓血管系(頻脈)に関係するもので、3頭は死亡した。臨床症状の存在と程度は犬により大きく変化したが、ジフェンヒドラミンの暴露量は、暴露の経路(摂食あるいは注射)に関係なく用量依存性に臨床症状の重症度に関係した。

結論と臨床関連:ジフェンヒドラミンの暴露を受けた犬において、中毒の臨床症状が出るのはかなりまれで、その臨床症状は一般に軽度で主に神経および心血管系に影響することが結果から示された。ジフェンヒドラミン中毒の支持治療は、観察された臨床症状を基に投与すべきである。(Sato訳)
■マキサカルシトール軟膏の慢性摂取の犬に見られた高カルシウム血症
Hypercalcemia in a Dog with Chronic Ingestion of Maxacalcitol Ointment.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jul-Aug;52(4):256-8.
Kensuke Nakamura , Nobuo Tohyama , Masahiro Yamasaki , Hiroshi Ohta , Keitaro Morishita , Mitsuyoshi Takiguchi

オスのミニチュアダックスフンドが原因不明の重度高窒素血症で紹介されてきた。血清生化学検査で重度高窒素血症と高カルシウム血症が見られたが、血清インタクトパラソルモンおよびパラソルモン関連蛋白は正常だった。飼い主はその犬は薬剤やサプリメントを決して食べていないと報告したが、その息子が活性ビタミンD3類似物を含む抗乾癬軟膏マキサカルシトールを毎日使用し、その犬は息子の鱗屑を時々口にし、特にマキサカルシトール軟膏塗布後に彼の皮膚を舐めていたことが分かった。

可能な限り息子とマキサカルシトール軟膏から犬を隔離したあと、高カルシウム血症と高窒素血症は次第に改善し、3か月でほとんど解消した。その犬は治療もなく、2年以上臨床症状がない状態である。(Sato訳)
■催吐剤として使用される経口3%過酸化水素による健康犬の胃十二指腸粘膜に対する影響
Effects of oral 3% hydrogen peroxide used as an emetic on the gastroduodenal mucosa of healthy dogs.
Language: English
J Vet Emerg Crit Care. March 2017;27(2):178-184.
Alicia H Niedzwecki , Bradley P. Book , Kristin M Lewis , J Scot Estep , Joseph Hagan

目的:健康犬において嘔吐を誘発させるため、3%過酸化水素(H2O2)の経口投与後、上部消化管に対する粘膜障害の程度を調べる

計画:前向き臨床研究

場所:専門紹介病院

動物:スタッフが飼育する成犬7頭

介入:6頭の犬はH2O2群、1頭はアポモルヒネコントロールとした。H2O2経口投与、あるいは結膜下アポモルヒネ投与後、麻酔下で0時、4時間、24時間、1週間、2週間に胃十二指腸鏡により肉眼的検査と胃十二指腸バイオプシーを行った。肉眼的食道、胃、十二指腸病変に、処置を隠している2人の経験を積んだスコアラーによりスコアを付けた。獣医病理学者によりバイオプシーサンプルを組織学的に評価した。

測定値と主要結果:H2O2投与後、グレードI食道炎が4時間目の2頭、2週間目の1頭に見られ、グレードIII食道炎が1週間目の1頭に見られた。4時間目、全ての犬に胃粘膜病変が見られ、24時間までに病変は悪化した。軽度から中程度の十二指腸粘膜病変は、投与後24時間まで見られた。病理組織検査で出血として最も重度な胃病変を4時間目に確認した;24時間目は変性、壊死、粘膜浮腫;1週間目は炎症だった。2週間目には、ほとんどの目で見える病変、病理組織病変は解消した。アポモルヒネを投与した犬において、全てのタイムポイントで病理組織病変は確認されなかった。

結論:3%H2O2を投与した全ての犬で、その後顕著な目で見え、病理組織学的な胃病変が発生した。より重症度の低い目で見える十二指腸病変が確認された。H2O2犬と比較して、アポモルヒネコントロールでは最小の胃十二指腸病変および正常な病理組織が確認された。(Sato訳)
■1頭のジャーマンシェパードドッグにおいて鉛暴露に関係した複数の病的骨折と癒合遅延
Multiple pathological fractures and delayed union associated with lead exposure in a German Shepherd Dog.
Aust Vet J. October 2015;93(10):373-6.
G Cole; J Weigel; A Headrick; W Adams; J Biskup

症例報告:8歳オス、体重40.8kgのジャーマンシェパードドッグを、両側前腕骨折で評価した。エックス線検査で骨減少と左橈尺骨の近位骨幹粉砕骨折と右尺骨の近位関節骨折を認めた。二重エネルギーエックス線吸収スキャンで骨のミネラル密度の低下を確認した。骨のミネラル分析は、最終的な外科的修復時に収集し、高鉛濃度を証明した。追加の分析で正常な骨のカルシウムとリン濃度を証明した。血清鉛濃度は正常だった。

左の橈尺骨骨折は外固定で外科的に安定させた。右の尺骨骨折は副木固定した。左の前腕骨折は、術後12週でも明らかに不安定だった。術後17週目には中程度の仮骨形成と不完全な骨癒合を呈した。

その犬は右の中手骨と左の中足骨骨折で15か月後に来院し、保存的に管理した。その時にも右橈尺骨骨折は完全に骨癒合していなかった。
結論:犬で骨への過剰な鉛蓄積は、病的骨折の発生増加、骨折治癒の遅延の鑑別診断として考慮すべきである。(Sato訳)
■キシリトール摂食後に急性肝不全を起こした犬の1例
Acute Hepatic Failure in a Dog after Xylitol Ingestion.
J Med Toxicol. June 2016;12(2):201-5.
Renee D Schmid , Lynn R Hovda

キシリトールは、ヒトで砂糖の代わりとしてよく使用される天然資源から製造された五炭糖アルコールである。

我々はキシリトールを摂食した1頭の犬で、その後急性肝不全と凝固障害を起こし、治療に成功した症例を報告する。

9歳、体重4.95kgのオスのチワワを、顆粒キシリトール224gを食べた後に嘔吐したとして動物病院で評価した。摂食後1-2時間以内に低血糖を起こし、12時間以内に急性肝不全の発症を示唆する肝数値が上昇し、24時間以内に凝固障害が起きた。

治療はマロピタント、ブドウ糖静注、ビタミンK1、メトロニダゾール、新鮮凍結血漿を投与した。N-アセチルシステイン(NAC)とSAMeで肝臓の解毒とサポートを行った。犬は生存し、摂食後1か月以内に肝数値も正常に戻った。キシリトール中毒から2年後、肝機能に対する有害作用は認められていない。

この文献はキシリトール中毒による低血糖、肝不全、凝固障害の1頭の犬のわずかな治療成功報告の1つである。現在まで、これは発表された中で1頭の犬が生存したキシリトール最大量で、中毒の経過を通して検査結果の変化を実証した唯一の報告で、中毒から7か月の正常な肝指数を含んでいる。

ヒトの食用に種々の製品でキシリトールが急速に幅広く使用されることは、犬のキシリトール中毒の症例報告の増加を導いており、臨床医はより多くの犬が暴露され、同様の症状を起こす可能性を知っておくべきである。(Sato訳)
■5頭の猫においてイベルメクチン中毒に関係する網膜症
Retinopathy associated with ivermectin toxicosis in five cats.
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2015;246(11):1238-41.
Jessica M Meekins; Sarah C Guess; Amy J Rankin

症例記述:同じ家庭の5頭の猫を振戦の突然の発現、鈍麻、盲目、散瞳により検査した。評価の約12時間前、オーナーは耳ダニ(Otodectes cynotis)感染を疑い、その治療として馬の経口投与用イベルメクチンペースト1回分を耳に投与していた(約22mg/頭;その量の半分ずつを各耳道に投与)。

臨床所見:威嚇反応のある猫はいなかった;全ての猫は散瞳し、瞳孔光反射は低下していた。眼底検査の所見に著変はなかった。4頭の猫で網膜電図検査を実施し、b-波反応が減少と確認した。2頭の血清サンプルの中毒学的分析結果でイベルメクチンの存在を確認した(450と610μg/L)。

治療と結果:5頭は完全に回復した。神経学的異常は解消、網膜電図の反応は改善、視力も回復し、眼底検査中に検出された残存病理変化はなかった。

臨床関連:著者の知るところでは、ここで報告した情報は経皮的投与から引き起こされたイベルメクチン中毒の猫において、眼科および網膜電図所見の最初の記述を提供するものである。盲目を含む臨床症状は、追加の治療もなく時間とともに解消した。(Sato訳)
■獣医毒物学の一般的な質問
Common questions in veterinary toxicology.
J Small Anim Pract. May 2015;56(5):298-306.
N Bates; P Rawson-Harris; N Edwards

毒物学は非常に大きなテーマである。動物は、多数の薬剤、家庭製品、植物、化学物質、農薬、毒のある動物にさらされている。様々な潜在的毒物の個々の毒性に加え、個々の反応の質問、より重要な毒性における腫の相違もある。
ここでは動物と潜在的中毒を扱う時に尋ねられる一般的な質問のいくつかを挙げ、そのエビデンスを提供する。
動物の中毒の管理における催吐剤、活性炭、脂質輸液の役割、チョコレート、ブドウ、ドライフルーツの中毒量、アセトアミノフェン中毒に対する解毒薬の使用、エチレングリコール中毒に対する解毒療法のタイミング、ユリは犬に毒なのかどうかなどを論ずる。(Sato訳)
■眼疾患を呈した犬6症例の抗凝固剤系殺鼠剤毒性
Anticoagulant rodenticide toxicity in six dogs presenting for ocular disease.
Vet Ophthalmol. January 2016;19(1):73-80.
Angela N Griggs; Rachel A Allbaugh; Kyle L Tofflemire; Gil Ben-Shlomo; David Whitley; Michael E. Paulsen

目的:主に眼症状を示す抗凝固系殺鼠剤毒性を疑った症例を述べる。

素材と方法:眼の異常に対し、獣医委託病院に紹介され、抗凝固系殺鼠剤を食べた疑い、あるいは確認されて診断された犬6症例で症状、結果の共通性について再検討した。

結果:5頭は片側性、1頭は両側性の症状があった。症状は、結膜下出血、眼球突出、他に主だった身体検査所見のない一般的な眼窩痛だった。6頭中5頭でプロトロンビン時間を測定し、全て延長していた。6頭中4頭で部分トロンボプラスチン時間を測定し、全て延長していた。CBC数および血清化学プロフィールは異常があるものは軽微だった。
5頭の犬は抗凝固系殺鼠剤暴露が分かっており、追加の1症例は臨床症状、臨床病理異常、治療への反応により殺鼠剤の摂食が疑われた。
6頭中5頭は血漿輸血と経口あるいは注射ビタミンK1投与で一晩入院し、全ての犬は30日間経口ビタミンK1を投与した。全ての犬は治療開始から6週間以内に臨床症状が完全に解消した。

結論:抗凝固系殺鼠剤毒性は主に眼の症状を呈す可能性がある。片側あるいは両側結膜下出血、眼球突出、眼窩痛を呈す犬で殺鼠剤摂食を考慮するべきである。(Sato訳)
■猫の塩化ベンザルコニウムの暴露:獣医毒情報サービス(VPIS)に報告された245頭の回顧的分析
Benzalkonium chloride exposure in cats: a retrospective analysis of 245 cases reported to the Veterinary Poisons Information Service (VPIS).
Vet Rec. February 2015;176(9):229.
N Bates; N Edwards

塩化ベンザルコニウムは家庭の製品で一般に見られる。この回顧的研究では、獣医毒情報サービス(VPIS)に報告された塩化ベンザルコニウムを含む製品に暴露された猫の245症例を研究した。単一ルート(摂取126頭、皮膚58頭、頬4頭)による暴露は188頭の猫で、複数ルートによるものは57頭の猫で報告された。関連する一般的な製品は、抗菌クリーナー(43.6%)、家庭用消毒剤(22.3%)、パティオクリーナー(17.5%)だった。よく見られた症状は唾液分泌過多/流涎(53.9%)、舌の潰瘍(40.4%)、高熱(40.4%)、口腔内潰瘍(22.9%)だった。最初の臨床症状の発現までに記録された平均時間は6.4時間(範囲5分から48時間、中央値4.5時間、n=60)だったが、VPISは暴露後14.0±13.2時間までコンタクトをとっていなかった(n=120)。この数値は受診の時間も反映している。

一般的な治療は、抗生物質(82.0%)、輸液(50.2%)、鎮痛(45.3%)、胃保護剤(31.0%)、皮膚の除染(24.1%)、ステロイド(22.7%)の投与だった。13頭(5.3%)の猫はシリンジあるいは鼻腔胃による栄養補給を受けた。245頭中12頭(4.9%)は無症状のままで、230頭(93.9%)は回復し、3頭(1.2%)は死亡した。回復までの時間は、1時間から360時間(n=67)の範囲で、平均は100.4±82.0時間(4.2±3.4日、中央値72時間)だった。(Sato訳)
■眼疾患を呈した抗凝血殺鼡剤中毒の犬6頭
Anticoagulant rodenticide toxicity in six dogs presenting for ocular disease.
Vet Ophthalmol. 2015 Mar 19. doi: 10.1111/vop.12267.
Griggs AN, Allbaugh RA, Tofflemire KL, Ben-Shlomo G, Whitley D, Paulsen ME.

目的:主に眼症状を呈した抗凝血殺鼡剤中毒を疑う症例を述べる

素材と方法:眼の異常で二次診療病院に紹介され、抗凝血殺鼠剤摂取の疑いあるいは確定診断された6頭の犬の症状および結果の共通性を再調査した。

結果:5頭は片側性の眼症状で、1頭は両側性だった。症状は結膜下出血、眼球突出、一般的な眼窩痛で、他に重大な身体検査所見はなかった。6頭中5頭でプロトロンビン時間を測定し、全て延長していた。6頭中4頭で部分トロンボプラスチン時間を測定し、全て延長していた。全血数測定および血清化学プロフィールは、あるとすれば軽度の異常が見られた。5頭の犬は抗凝血殺鼠剤の摂取が分かっており、追加の1頭は臨床症状、臨床病理学的異常、治療に対する反応を基に摂取が疑われた。6頭中5頭は血漿輸血とビタミンK1経口あるいは注射で一夜入院し、全頭30日間経口ビタミンK1を投与した。全頭治療開始から6週以内に臨床症状の完全な解消を示した。

結論:抗凝血殺鼡剤中毒は大部分が眼症状を呈する可能性がある。殺鼠剤摂取は、片側あるいは両側結膜下出血、眼球突出、眼窩痛の犬で考慮されるべきである。(Sato訳)
■IV脂質乳剤で治療したイブプロフェン中毒の犬の一例
Treatment of ibuprofen toxicosis in a dog with IV lipid emulsion.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Mar-Apr;50(2):136-40.
Luiz Bolfer; Maureen McMichael; Thandeka R Ngwenyama; Mauria A O'Brien

体重19.4kgの3歳メスの雑種犬が、ヒト用の非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)であるイブプロフェンを1856mg/kg(180錠)食べたということで評価した。
来院時、その犬は覚醒して流涎していたが、精神状態は急速に鈍く、昏迷、その後昏睡状態に30分で低下していった。

初期治療は、プロスタグランジン類似物質と制吐剤で支持療法を行った。静脈内に脂質乳剤投与(ILE)をボーラスで実施し、その後持続点滴した。
臨床症状は脂質注入完了後から約3時間で改善し始めた。その犬は退院までの3日間支持療法を必要とした。

この症例報告は、1頭の犬のイブプロフェン中毒の治療に対し脂質乳剤投与による治療を論証する。脂質乳剤の注射は脂溶性薬剤による中毒の患者に対しての治療オプションと思われる。(Sato訳)
■カンザス州獣医診断研究所に報告された危険物に暴露された犬と猫:2009-2012
Dog and cat exposures to hazardous substances reported to the Kansas State Veterinary Diagnostic Laboratory: 2009-2012.
J Med Toxicol. June 2013;9(2):207-11.
Ali Mahdi; Deon van der Merwe

アメリカのペットの犬と猫は、家庭環境に見られる潜在的危険物質によく暴露される。

有害の可能性がある物質に暴露されたことに気付いた犬と猫の飼い主により、それに関する援助やアドバイスを求める電話が、カンザス州獣医診断研究所に2009-2012年の3年間で1616件あった。

問い合わせは夏の期間に多かった。電話の84.7%は犬、15.3%は猫に関するものだった。95.5%は経口、3.7%は皮膚、0.6%は吸引、0.2%は非経口暴露だった。報告を受けた物質で頻度が最も多かったのが35.4%の治療薬物、続いて家庭用化学品(15.5%);食品(14.8%);農薬(13.9%);植物(12%);化成物および肥料(3.6%);化粧品およびパーソナルケア製品(2.8%);動物、昆虫、微生物毒(2.1%)だった。

情報や援助の問い合わせが一定の中毒発生率を示すわけではないが、相対的暴露率に関する洞察を提供できることが暴露の傾向の変化や新興の暴露を確認しやすくし、ペットの実際のあるいは明白な有害暴露に関する社会的関心を反映する助けとなる。(Sato訳)
■一般診療において胃腸炎、流涎、血清リパーゼ活性上昇を引き起こす犬のきのこ中毒
Mushroom toxicosis in dogs in general practice causing gastroenteritis, ptyalism and elevated serum lipase activity.
J Small Anim Pract. May 2013;54(5):275-9.
J Hall; L Barton

きのこ中毒は犬で診断されることは少なく、文献での報告もあまりない。

この報告は、イギリスの一次診療においてきのこ中毒が過小診断される可能性を示唆する。

2010年8月から2011年1月までの時間外救急病院の記録から、きのこ中毒に一致する臨床症状の9頭の犬を確認した。その後4頭は臨床的に一致しないため除外された。

臨床症状は急性のおびただしい流涎(5/5)、下痢(5/5)、嘔吐(4/5)、血液量減少(4/5)、昏迷(3/5)あるいは精神鈍化(1/5)、縮瞳(2/5)、低体温(2/5)などだった。4/4頭で血清リパーゼ活性が上昇した;犬特異膵リパーゼは残りの1頭で上昇した。

4頭は積極的な輸液、鎮痛、支持療法で回復した;残り1頭は重度臨床症状と費用の制約により安楽死された。きのこ中毒は急性胃腸炎の重要な鑑別診断の1つで、「季節性の犬の疾患」の症例の1つの原因となる可能性がある。

罹患犬は膵臓酵素上昇を示し、リパーゼの上昇症例や異常な半定量犬特異膵リパーゼ活性の症例できのこ中毒を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬と猫の濃縮ティーツリーオイル中毒:443症例(2002-2012)
Concentrated tea tree oil toxicosis in dogs and cats: 443 cases (2002-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Jan 1;244(1):95-9. doi: 10.2460/javma.244.1.95.
Khan SA, McLean MK, Slater MR.

目的:アメリカおよびカナダの犬と猫において、100%ティーツリーオイル(TTO)による中毒について、頻度、タイプ、臨床症状の程度;地理的分布;治療情報を調査する

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:100%TTOに暴露された証拠のある337頭の犬と106頭の猫

方法:2002年1月から2012年12月までASPCA動物中毒コントロールセンターデータベースから10年の発生データを検索した。中毒あるいは中毒の疑いと評価した証拠のある、あるいは目撃した事象だけを含めた。シグナルメント、使用したTTOの量、使用意図、結果の情報を評価した。疾病の重症度と品種、性別、年齢、体重との関連を判定した。

結果:TTOは443頭中395頭(89%)の動物で意図的に使用されていた。使用された量は0.1-85mLだった。発生は41の州、コロンビア特別区、4のカナダの州で報告された。暴露の経路は皮膚が221頭(50%)、皮膚および経口が133頭(30%)、経口が67頭(15%)だった。臨床症状は2-12時間で発症し、72時間まで持続した。最も一般的な症状は唾液分泌増加あるいは流涎、CNS抑制の症状あるいは嗜眠、不全麻痺、運動失調、振戦だった。疾病の重症度と有意な関連は年齢と体重で見られ、より若く小さい猫において重病の有病率が高かった。

結論と臨床関連:犬あるいは猫において100%TTOの意図的あるいは偶発的使用は、数時間以内に3日間持続するCNS抑制、不全麻痺、運動失調、振戦の重大な症状を引き起こす。若い猫およびより体重が軽い猫は重病を発症するリスクがより大きかった。(Sato訳)
■犬のメタアルデヒドナメクジ駆除剤中毒:Veterinary Poisons Information Serviceに報告された症例の後ろ向き研究
Suspected metaldehyde slug bait poisoning in dogs: a retrospective analysis of cases reported to the Veterinary Poisons Information Service.
Vet Rec. September 2012;171(13):324.
N S Bates; N M Sutton; A Campbell

Veterinary Poisons Information Serviceに対して電話による問い合わせの後ろ向き調査で、1985年から2010年の間にメタアルデヒドナメクジ駆除剤摂食を疑い、それに関する追跡調査ができた772症例を確認した。

問い合わせの半数は夏季だった。摂食したナメクジ駆除剤の量と強度が分かっていることは少かった。56症例で、その摂食した量を平均229.6gと見積った。77.3%の犬が臨床症状を示し、一般的な症状は痙攣、流涎、攣縮、知覚過敏、振戦、嘔吐、高体温、運動失調だった。4.6%の犬のみが肝臓の変化、1頭のみが腎障害を起こした。

症状発現までの平均時間は摂食後2.9時間で、50.3%の犬は1時間以内に影響が見られた。増加した筋肉活動(攣縮、痙攣)は平均15.2時間持続した。

回復時間は61症例で記録があり、平均39.3時間だった。

一般的な治療は腸肝の除染、抗痙攣薬、麻酔と静脈内輸液だった。鎮静で治療した犬のうち、45.8%は1回以上の鎮静あるいは麻酔処置を必要とした。メトカルバモールの使用はおそらく入手不可能のため珍しかった。

予後は762頭の犬で報告された。;21.7%は無症候性を維持し、61.7%は回復し、16%の犬は死亡あるいは安楽死された。
分かっていることは(6症例のみだが)、駆除剤の致死量は4.2-26.7g/kg(平均11.8g/kg)だった。(Sato訳)
■カフェインによる死亡:ひき肉の摂食による1頭の犬に見られた推定的悪意のある中毒
Death by caffeine: presumptive malicious poisoning of a dog by incorporation in ground meat.
J Med Toxicol. December 2012;8(4):436-40.
S N Tawde; B Puschner; T Albin; S Stump; R H Poppenga

背景:4歳オスの体重37kgのジャーマンシェパードが、その家の裏庭で見つけたひき肉を食べた後、高体温、頻脈、興奮を発症した。来院した時、血漿エチレングリコール(EG)検査陽性で、エタノールとラクトリンゲル液の静脈内投与がなされた。その犬は摂食後約11時間で死亡した。

検討:毒物分析に供された組織の中で、尿のEGは陰性で、ひき肉の特定薬物悪用は陰性、胃の内容物の亜鉛/リン化アルミニウムおよびメタアルデヒドは陰性だった。ガスクロマトグラフィー質量分析法による胃内容物の分析でカフェインの存在を確認した。ひき肉内のカフェイン濃度は1%と推測された。

カフェインはメチルキサンチンアルカロイドで、犬の経口50%致死量(MLD(50))は140mg/kg(範囲120-200mg/kg)と報告されている。市販で入手可能なカフェインの200mg錠剤が可能性として考えられるが、これは確認されなかった。控えめな見積もりで、MLD(50)に達するには、犬が約500-550gの肉を食べなければいけない。急性中毒は心血管、肺、神経、消化管、代謝系に影響を及ぼす。肉の中に錠剤の残骸は観察されなかったが、錠剤は砕くおよび/あるいは溶かされている可能性があった。他に考えられるカフェイン源としてガラナ、煎じ濃縮されたコーヒー、カフェイン含有飲料である。

経緯、臨床症状、胃内容物と肉の中のカフェイン検出を基に、悪意のあるカフェイン中毒の仮診断がなされた。

犬のカフェイン中毒に対する推奨治療法は述べられている。犬による偶発的なカフェイン摂取は数例発表されているが、1頭の犬を死亡させた濃縮されたカフェインの意図的な使用は過去に報告されていない。(Sato訳)
■ペットのおやつの中の酸素吸収剤の摂取により起こった鉄中毒の犬の1例
Iron intoxication in a dog consequent to the ingestion of oxygen absorber sachets in pet treat packaging.
J Med Toxicol. March 2012;8(1):76-9.
A G Brutlag; C T C Flint; B Puschner

酸素吸収剤は貯蔵期間の延長、食物の変色、変質から守るのを目的に、ドライあるいは脱水した食物(例えば、ビーフジャーキー、ドライフルーツ)の袋の中に使用されている。それらは通常活性成分として還元鉄を含んでいるが、包装の外にあるのはめったにない。一般的に還元鉄は生物学的利用能はわずかだが、そのような製剤はコンパニオンアニマルや子供に鉄中毒を起こす原因となる可能性がある。
著者らは犬のおやつの袋から酸素吸収剤を食べ、キレート療法を必要とする鉄中毒を起こした犬の1症例を紹介する。

7ヶ月齢メスのジャックラッセルテリアが、犬のおやつの袋の中の1-2酸素吸収剤を摂取してから8-12時間で嘔吐およびメレナの評価で来院した。血清鉄濃度とALTは上昇していた。その犬はデフェロキサミンと支持療法で治療した。臨床症状は治療後14時間で解消したが、ALTは3か月後の再評価でも上昇したままだった。ヒトで還元鉄の摂取はわずかな臨床的影響を伴う血清鉄濃度の軽度上昇を起こすと報告されている。我々の知るところでは、酸素吸収剤の摂取に続き鉄中毒を起こした症例は報告されていない。包装上の成分情報の欠如は、酸素剤の内容の分析を促した。結果は、その内容は合計50-70%の鉄を含んでいたことを示す。この症例は、そのような製剤の摂取に続き、鉄中毒が起こる可能性があることを示す。ヒトおよび獣医療の臨床家は、この影響を知っておく必要があり、キレート化が必要となるかもしれないので、血清鉄濃度をモニターすべきである。(Sato訳)
■治療に成功した2頭の猫のペルメトリン中毒に対する脂質静脈内投与
Successful treatment of permethrin toxicosis in two cats with an intravenous lipid administration.
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. April 2012;40(2):129-34.
M Bruckner; C S Schwedes

猫のペルメトリン中毒に対する脂質静脈内投与という新しい治療の成功2例を述べる。

2頭の猫はオーナーによるノミの駆除としてペルメトリンの偶発的処置をなされた後、横臥および全身性の振戦で来院した。

初期治療はジアゼパム、プロポフォール、水浴、静脈輸液を行った。ペントバルビタール2mg/kgのボーラス投与後、ペントバルビタールの持続点滴を開始した。2頭の猫にヒトの完全非経口栄養の脂肪分として使用される80%オリーブオイルと20%大豆油の乳剤を治療後半で投与した。過去に報告されているように乳剤の2ml/kgのボーラス投与後、4ml/kg/hの持続点滴を経静脈カテーテルから4時間投与した。1頭は静脈脂質投与を2サイクル行ったが、もう1頭は1回だけだった。2頭とも完全に回復し、さらなる治療は必要なかった。

結論として猫のペルメトリン中毒に対する静脈内脂質投与は、新しい治療アプローチで、ペルメトリン中毒やおそらく他の脂溶性毒物に対し回復時間を短縮するのに高い効果があると思われる。(Sato訳)
■毒性のあるユリ属に暴露された48世帯で飼われている57頭の猫の暴露状況と結果
Exposure circumstances and outcomes of 48 households with 57 cats exposed to toxic lily species.
J Am Anim Hosp Assoc. November 2011;47(6):386-90.
Margaret R Slater; Sharon Gwaltney-Brant

猫のユリ属あるいはヘメロカリス属の摂取は腎不全の起こす可能性がある。

この研究の目的は、ユリに暴露された猫のオーナーのユリ中毒の先見を判定することと、暴露に対する経緯、臨床的および結果の情報を得ることだった。調査は2009年4月中に動物中毒コントロールセンター(APCC)に、ユリの屋内暴露を報告した猫のオーナーに行った。48の個人(57頭の猫)を含めた。猫の暴露前に、69%の猫のオーナーはユリを認識できると言い、27%はユリが毒だと知っていた。ほとんどのユリはスーパーや他のストアで購入され、あるいはギフトとして受け取っていた。ユリの毒性を知らないオーナーは、花を猫の通るところにおくことが多い、一方毒性が知られている家庭では、猫は積極的に花を探しだしていた。この研究の猫の93%はすぐに動物病院を受診し、87%は症状が出ないあるいは解消するような短時間の症状だった。5%は最終追跡調査時に腎機能不全の所見があり、他の5%は腎不全のため安楽死された。(Sato訳)
■猫の自発性エチレングリコール中毒の治療として4-メチルピラゾール
4-Methylpyrazole as a treatment in naturally occurring ethylene glycol intoxication in cats.
J Vet Emerg Crit Care. June 2011;21(3):268-72.
Kelly M Tart; Lisa L Powell

目的:自然発生のエチレングリコール(EG)中毒の猫3頭に対し、フォメピゾール(4-メチルピラゾール[4-MP])の臨床的経験と治療的使用を述べる
症例および一連の要約:全ての猫はエチレングリコールテストキットによりEG中毒が証明された。この報告は使用した4-MPの用量、利用可能な臨床病理データ、入院中の臨床的進行を述べる。全ての猫は生存して退院した。
提供された新奇情報:自然発生のEG中毒の猫の治療として、4-MPの125mg/kg、IVの初期投与、12、24、36時間目の31.25mg/kgの4-MP、IV投与は安全で有効だった。4-MPのIV投与後のHCO(3)濃度上昇が見られた。これは自然発生したEG中毒の猫を4-MPで治療に成功したことを述べた最初の報告である。(Sato訳)
■イベルメクチン中毒を治療するための脂質乳剤の静脈内投与を行ったボーダーコリーの1例
Use of intravenous lipid emulsion to treat ivermectin toxicosis in a Border Collie.
J Am Vet Med Assoc. November 2011;239(10):1328-33.
Dana L Clarke; Justine A Lee; Lisa A Murphy; Erica L Reineke

症例:2歳の避妊済みメスのボーダーコリーは、診察の8時間前に馬用イベルメクチン駆虫剤のペーストを6mg/kgで経口摂取し、その後IV脂質乳剤(ILE)で処置した。

臨床所見:初診時、犬は安定した心血管症状だったが、広範性筋肉振戦と高体温だった。神経学的評価は、失調、威嚇反応と瞳孔光反射の両側性欠如を伴う瞳孔散大を認めた。その他の身体検査所見で目立つものはなかった。CBC、血清生化学検査、静脈血液ガス分析、血漿乳酸濃度の測定結果も基準範囲内だった。

治療と結果:犬はILEの治療に加え、IV輸液療法、心血管、呼吸、神経学的モニタリングなどの支持療法を行った。ILE療法は、脂溶性の薬剤から起こる中毒にその使用を支持する過去の臨床的および実験的エビデンスを基に、この患者への使用を開始した。20%無菌脂質液の1.5ml/kgの初回ボーラスを10分以上かけてIV投与し、続いて60分以上0.25ml/kg/分の持続点滴を行い、イベルメクチン中毒の臨床症状を治療するため2回投与した。入院から48時間で犬は退院し、イベルメクチン摂取から4日以内に臨床的に正常となった。その後のさらなる診断的評価で、ATP結合カセット遺伝子多型として知られる多剤耐性遺伝子(MDR-1)欠失の影響は受けてないことが分かった。

臨床的関連:獣医療でイベルメクチン中毒は積極的に治療しなければ死亡する可能性があり、重度中毒は機械的ベンチレーションおよび集中支持療法を必要とすることも多い。これは特にATP結合カセット遺伝子多型の犬に当てはまる。新しいILE療法は脂溶性薬剤中毒のヒトの患者への有効性が示されているが、正確なメカニズムは不明である。この報告の症例において、ILEの使用でイベルメクチン中毒の治療に成功し、血清イベルメクチン濃度の連続的測定結果は、提唱されるlipid sinkメカニズム作用を支持した。(Sato訳)
■1頭の猫で見られたプロゲステロン中毒が誘発する顕著な沈静
Progesterone intoxication inducing marked sedation in a cat.
J Feline Med Surg. October 2010;12(10):811-3.
Marc P Dhumeaux; Elisabeth C R Snead; Germaine C Hung; Susan M Taylor

3歳去勢済みオスの短毛家猫が、プロゲステロンを含むカプセルを食べた疑いから2,3時間後に、突然の嗜眠およびバランス喪失の発現で来院した。血清プロゲステロンの上昇を確認した。1ヶ月の経過観察で長期合併症あるいは臨床症状の再発もなく、支持療法および時間経過で臨床症状は完全に解消した。これはプロゲステロン中毒が神経症状を誘発した1頭の猫の最初の記述である。(Sato訳)
■犬のバリウム中毒
Barium toxicosis in a dog.
J Am Vet Med Assoc. September 2010;237(5):547-50.
Fiona H Adam; Peter J M Noble; Simon T Swift; Brent M Higgins; Christine E Sieniawska

症例記述:急性虚脱の評価のため2歳の体重14.9kgの避妊済みメスのシェットランドシープドックが、リバプール大学小動物教育病院に入院した。

臨床所見:入院時、犬は頻呼吸で、広範性下位運動ニューロン機能障害に一致する全ての肢の反射と筋緊張が低下していた。また重度の低カリウム血症(1.7mEq/L:参照範囲、3.5-5.8mEq/L)が見られた。犬の臨床的状況は悪化した;筋肉収縮、弛緩麻痺および呼吸筋脱力の結果と考えられる呼吸不全が見られた。心室性不整脈と重度酸血症(pH、7.18;参照範囲7.35-7.45)が発生した。中毒が疑われ、血漿および尿サンプルでバリウム分析を行い、バリウム濃度をヒトのバリウム中毒で報告されているそれと比較した。5頭のコントロール犬のバリウム濃度の分析を行い、その犬のバリウム中毒の診断を支持した。

治療と結果:カリウムを補充した輸液をIV投与した。その犬は急速に回復した。回復した後に測定した電解質濃度は一貫して異常がなかった。中毒と仮定したその発症から56日後、血漿バリウム濃度の定量で、大幅な低下が見られた。しかし、コントロール犬と比べるとその血漿バリウム濃度は高値を維持していた。

臨床関連:我々の知識では、この症例報告は獣医学の文献でバリウム中毒の最初の記述である。バリウム中毒は命の危険のある低カリウム血症を引き起こす可能性がある。しかし迅速な支持療法により良好な結果を得ることが出来る。バリウム中毒はまれではあるが、低カリウム血症および妥当な臨床症状の見られる動物において重要な鑑別診断の1つである。(Sato訳)
■2頭の犬に見られたぶどう中毒の自然発生
Natural occurrence of grape poisoning in two dogs.
J Vet Med Sci. March 2011;73(2):275-7.
Soon-Seek Yoon; Jae-Won Byun; Min-Jeong Kim; You-chan Bae; Yeun-Kyung Shin; Sorah Yoon; Garam Lee; Jae-Young Song

臨床的ぶどう中毒の犬2頭(1.6歳オスのシーズと5歳メスのヨークシャーテリア)をここで述べる。臨床症状はぶどう摂取後に、シーズは尿排出量の低下、ヨークシャーテリアは運動失調だった。シーズはぶどう摂取後5日目で死亡し、ヨークシャーテリアは3日目に死亡した。腸内腔に紅斑性漿膜と粘膜、多病巣性赤色小腸病巣、血液およびぶどうの種が認められた。茶色がかった黄色の結晶が両側の腎盂に認められた。主要な組織学的所見は、近位尿細管の急性尿細管壊死、重度壊死、腎皮質尿細管の石灰化だった。血液尿素窒素、クレアチニン、ALTが上昇した。多くの韓国の臨床獣医師は臨床的ぶどう中毒を疑っている。しかし、我々の知識では韓国でこれが書かれるまで病理および臨床病理ベースでぶどう中毒は認められていない。ぶどう中毒のリスクについての教育と知識は、偶発的暴露の予防に必要である。(Sato訳)
■脂質の静脈内投与で治療に成功したモキシデクチン中毒の子犬の1例
Moxidectin toxicosis in a puppy successfully treated with intravenous lipids
J Vet Emerg Crit Care. Apr 2009;19(2):181-186. 26 Refs
Dawn E. Crandell, DVM, DVSc, DACVECC, Guy L. Weinberg, MD

目的:IV脂質投与の新しい治療法で犬モキシデクチン中毒の治療成功例を述べる

症例概要:メスのジャックラッセルテリア16週齢が、馬用のモキシデクチンの摂取が疑われた後、まもなく麻痺、昏睡に続き発作の急性発現を呈した。モキシデクチン中毒が後に確認された。初期療法はジアゼパム、グリコピロレート、IV輸液を行った。人工呼吸と支持看護ケアは必要なときに行った。中心静脈栄養投与の脂肪組成としてよく使用される20%大豆油水溶乳剤を、摂取後10時間目に2ml/kgのボーラス静脈投与、続いて4時間4ml/kg/分で投与し、摂取後25.5時間目から再び0.5ml/kg/分の割合で30分間投与した。初回投与後軽度の改善が見られ、2回目投与の3分以内に劇的な改善を見せた。子犬の神経状態は2回目投与の6時間以内に正常に回復し、再発は見られなかった。

提供された新奇情報:IV脂質療法はモキシデクチン中毒の新しい治療アプローチである。その使用は、ブピバカインおよび他の脂溶性毒物に対するIV脂質投与の最近の調査および症例研究により支持されている。脂質投与は明らかに中毒症状を逆転させ、モキシデクチンおよび他の脂溶性毒素に対して効果の高い治療であると思われる。(Sato訳)
■犬のイベルメクチン中毒:遡及研究
Ivermectin toxicosis in dogs: a retrospective study.
J Am Anim Hosp Assoc. 2009 May-Jun;45(3):106-11.
Valentina Merola, Safdar Khan, Sharon Gwaltney-Brant

イベルメクチンは一般的に使用される獣医薬剤で、過剰投与の状況で重篤な問題を引き起こすかもしれない。1998-2005年の間に遡及研究を完遂し、イベルメクチンに対する犬の被爆を評価した。イベルメクチン投与量、見られた臨床症状、関与した犬の徴候、p-糖蛋白欠損を持ちえる犬かどうかをもとに評価した。過去に報告されたものより少ない量で、いくらかの犬に臨床症状が見られるかもしれないと結果は示した。いくらかの犬はp-糖蛋白欠損、あるいはイベルメクチン中毒に感受性の増した他の理由があったと思われる。臨床医は、過去にリスクがほとんどないと考えられていた投与量(例えば正常なp-糖蛋白機能を持つと昔から考えられていた犬種における0.2-2.5mg/kg)でさえも臨床症状が起こるかもしれないと認識すべきである。(Sato訳)
■犬におけるサイクロナイト(C-4)プラスチック爆弾摂取の毒性
Toxic effects of cyclonite (C-4) plastic explosive ingestion in a dog
J Vet Emerg Crit Care. October 2008;18(5):537-540.

Randi A. Fishkin, DVM, Skye W. Stanley, DVM, DACVIM, Cathy E. Langston, DVM, DACVIM
目的:サイクロナイト(C-4)プラスチック爆弾摂取した犬1例の臨床症状を述べる
症例概要:体重35kg、2歳の去勢済みラブラドール使役犬がC-4摂取後まもなく発作を呈した。その犬の発作の治療は成功したが、退院後まもなく多尿/多渇を発症し、最終的に慢性腎疾患と診断された。
提供された新規および独特な情報:これはC-4を摂取した1頭の犬の腎不全症例を最初に述べたものである。(Sato訳)
■インド蛇木中毒の犬の1例
Rauwolfia serpentina toxicity in a dog
J Vet Emerg Crit Care. December 2008;18(6):654-658. 24 Refs
Jennifer M. Good, DVM, Deborah C. Mandell, VMD, Dipl ACVECC

目的:1頭の犬のインド蛇木中毒の臨床症状と治療を述べる
症例概要:9歳オスの雑種犬がインド蛇木のアルカロイドを含む抗高血圧薬剤を食べた後に来院した。インド蛇木アルカロイドは、生物学的アミン:ノルエピネフリン、ドパミン、セロトニンの枯渇を引き起こす。その犬は、人で報告される副作用に似た低血圧、精神的抑欝、徐脈、下痢、気管支収縮、胃腸潰瘍を起こした。その犬は支持療法から4日後退院した。

提供された新しい情報:これは文献で報告された1頭の犬における偶発的インド蛇木中毒の最初の症例である。この症例は、支持療法およびその後の副作用全てをモニターすることで良好な臨床結果を得られた。(Sato訳)
■犬の重度急性フェノバルビタール中毒に関与する一時的白血球減少、血小板減少、貧血
Transient leucopenia, thrombocytopenia and anaemia associated with severe acute phenobarbital intoxication in a dog
J Small Anim Pract. May 2008;0(0):.
A Khoutorsky, Y Bruchim

9歳のラブラドールレトリバーが急性発現の振戦および昏睡でHebrew大学獣医教育病院の救急に入院した。最近多量のフェノバルビタールを摂取し、血清フェノバルビタール濃度が高値だった。これを基に、急性フェノバルビタール中毒の診断がなされた。有意な白血球減少、血小板減少、軽度貧血が入院から3日目に起こった。白血球減少は6日目、血小板減少は13日目に解消した。赤血球数は翌月も低いままだった。まだ弱いが歩行可能になった13日目に退院した。臨床的に8日後に完全に回復した。要するに、急性中毒の結果として高濃度の血清フェノバルビタールは汎血球減少を誘発し、血清フェノバルビタール濃度が正常化するとともに改善する。(Sato訳)
■抗凝固殺鼠剤摂取および中毒:犬252症例の遡及研究
Anticoagulant Rodenticide Ingestion and Toxicity: A Retrospective Study of 252 Canine Cases
Aust Vet Pract. June 2008;38(2):38-50. 25 Refs
Ben Haines

犬の抗凝固殺鼠剤暴露および中毒の遡及研究を、基本臨床特性を確認および概要を述べるために行った。時間外診療施設に来院した252頭の犬の医療記録を評価した。最近殺鼠剤暴露の病歴を持つ臨床的に正常な犬200例と、来院時に臨床的凝固障害があった殺鼡剤中毒の犬52例を研究した。若い犬の来院頻度は多い傾向にあり、57.9%の犬が4歳以下だった。摂取した殺鼠剤の種類が分かっているとき、第二世代化合物、特にbrodifacoumが最も多く報告された。
頻度の高い臨床症状は、外部出血よりもむしろ内部出血を反映する粘膜蒼白(80.8%)、頻脈(48.1%)、嗜眠/抑欝(30.8%)、胸部聴診における割合(28.8%)、呼吸困難(28.8%)、頻呼吸(21.2%)が優勢で、活性凝固時間(ACT)の重度延長、中程度の非再生性あるいは再生不良性貧血、軽度から中程度の血小板減少、総蛋白、アルブミン、グロブリン低下が繰り返し見られる検査所見だった。エックス線および超音波検査で血胸および腹腔内出血が認められた症例もあった。
治療は、ビタミンK療法、血液製剤投与、適切な対症、支持療法だった。この研究では、生存率90.4%、うち78.9%の犬が48時間以内に退院した。(Sato訳)
■EDTA鉄を含むナメクジ駆除剤の経口摂取後に急性中毒を呈した犬の5例
Acute toxicity in five dogs after ingestion of a commercial snail and slug bait containing iron EDTA.
Aust Vet J.2009 Jul;87(7):284-6.
Haldane SL, Davis RM.

本報では大量のEDTA鉄を含むナメクジ駆除製剤を経口摂取した5頭の犬の経過を報告する。どの犬も経口摂取後6-24時間以内に中毒症状を呈し、腹部痛と出血性の胃腸症状を示した。2頭の犬では治療前の血清鉄濃度が測定され、いずれも基準値を超えていた。すべての犬で鉄キレート療法および静脈内輸液、鎮静剤や胃粘膜保護剤、抗生剤投与といった対症療法が施された。デフェロキサミンメシル酸塩を用いたキレート療法ではどの犬にも副作用は認めず、また5頭とも退院するまでに回復した。EDTA鉄を含むナメクジ駆除剤の犬における作用はさらなる研究が必要で、最低中毒用量を確立させるべきである。(Dr.Ka2訳)
■犬の実験的急性キシリトール中毒
Experimental acute toxicity of xylitol in dogs.
J Vet Pharmacol Ther. 2009 Oct;32(5):465-9.
Xia Z, He Y, Yu J.

犬のキシリトール中毒の症例は、キシリトール配合製品の摂取の結果として増加している。水溶性のキシリトールを1 あるいは4 g/kgで、18頭の臨床的に正常なペキニーズの成犬に経口摂取させた。投与前後の血液サンプルを採取した。両方のグループで血漿インスリン濃度がキシリトール摂取後20分で鋭く上昇し、40分でピークに達した。血糖値は摂取後30分で減少し始め、インスリン濃度の増加に続いて低血糖となった。キシリトール摂取と関連した他の血漿生化学的変化は、ALTとASTの増加、低リン血症、低カリウム血症そして高カルシウム血症だった。血漿ナトリウム濃度と血漿クロール濃度は正常のままだった。この研究で犬のキシリトール中毒の診断と治療のための生化学的基盤が確立した。(Dr.Kawano訳)
■血液透析と機械的人工換気により治療した重度バクロフェン中毒の犬
Treatment of a dog with severe baclofen intoxication using hemodialysis and mechanical ventilation
J Vet Emerg Crit Care. June 2008;18(3):312-318. 28 Refs
Danna M. Torre, DVM, DACVECC, Mary A. Labato, DVM, DACVIM, Tracey Rossi, DVM, Catherine Foley, DVM, Therese E. O'Toole, DVM, DACVIM

目的:この症例報告は、重度バクロフェン中毒による昏睡および呼吸抑制の犬の管理の成功例を述べる

症例概要:ドーベルマンピンシャーの雑種犬が、バクロフェン500mg(20mg/kg)を摂取した。重度中毒症状は、昏睡および顕著な呼吸筋衰弱だった。犬を陽圧ベンチレーションで支持し、血液透析の1回セッションで治療した。血液透析4時間以内にベンチレーターの離脱ができ、その後12-36時間で昏睡から回復した。犬は全神経機能を取り戻し、入院から3日で正常に退院した。

新規またはユニークな情報提供:バクロフェン中毒による重度中枢神経系抑制および呼吸抑制は、致死的状況となりえる。他の支持療法に加えて、血液透析は回復を促進し、良好な結果を得るために換気サポートは必須かもしれない。治療の成功に伴い、毒性は減少し、致死的状況に関与する中枢神経系および呼吸抑制は解消しえる。正常機能への回復に対する予後は良好である。(Sato訳)
■猫におけるメラミンおよびシアヌル酸中毒の評価
Assessment of melamine and cyanuric acid toxicity in cats
J Vet Diagn Invest. November 2007;19(6):616-24.
Birgit Puschner, Robert H Poppenga, Linda J Lowenstine, Michael S Filigenzi, Patricia A Pesavento

犬猫の急性腎不全に関係する主要ペットフードリコールは、毒性が疑われるものとして当初メラミンに注目していた。調査の途中で、問題のフードにメラミンに加え、シアヌル酸が認められた。
この研究の目的は、猫におけるメラミン、シアヌル酸、メラミンとシアヌル酸の組み合わせの毒性の可能性を特徴付けることだった。この予備研究で、2頭の猫の餌にそれぞれ0.5%、1%のメラミンを加えた。シアヌル酸は10日かけて0.2%、0.5%、1%と増やして1頭の猫の餌に加えた。メラトニンとシアヌル酸は一緒に、各用量に対し1頭の猫に0%、0.2%、0.5%、1%と加えた。猫の餌にメラミンあるいはシアヌル酸単独のときは腎機能に対する影響は観察されなかった。それらの組み合わせで投与した猫は、急性腎不全のため投薬後48時間目に安楽死した。組み合わせで与えていた全ての猫の尿と腎臓の触感で、扇形、複屈折のクリスタルの存在を認めた。組織病理所見は腎臓に限られ、主に遠位ネフロンの尿細管内のクリスタル、重度腎間質浮腫、皮質髄質結合部の出血が認められた。腎臓含有量は、メラミン496-734mg/kg湿重量、シアヌル酸487-690mg/kg湿重量の濃度だった。結果は、猫の急性腎不全の原因はメラミンおよびシアヌル酸の組み合わせということを示している。(Sato訳)
■犬のアフラトキシン誘発肝不全の救命救急治療
The critical care of aflatoxin-induced liver failure in dogs
Vet Med. Oct 2007;102(10):644-651. 49 Refs
Eva Furrow, VMD

犬のアフラトキシン中毒は、アフラトキシン汚染食物の摂取で起こる。アフラトキシンは肝不全を起こすことが多い重度肝傷害の原因である。治療の主軸は、肝保護機能食品、輸液療法、血液成分療法、ビタミンK1、制吐剤、胃腸保護剤である。中毒の顕性症状をもつ多くの患者においてアフラトキシン中毒は致死的である一方、長期加療で徐々に回復する犬もいる。(Sato訳)
■パグのペイントボール中毒
Paintball intoxication in a pug
J Vet Emerg Crit Care. September 2007;17(3):290-293. 14 Refs
Jason B. King, DVM, David C. Grant, DVM, MS, DACVIM

目的:犬のペイントボール経口摂取による中毒症例およびどのように同様の臨床症状、エチレングリコール血液検査陽性によりエチレングリコール中毒と最初に誤診したかを述べる

症例概要:7歳8.3kgメス避妊済みパグのエチレングリコール(EG)中毒の治療を依頼された。その患者は失調、混乱、多尿、多飲でEG血液検査陽性だった。フォメピゾール療法と静脈輸液を開始した。血清生化学検査は典型的なEG中毒と異なる異常を示した。次の朝、鮮やかなピンクの糞を排便した。オーナーに質問すると、家に輝くピンクのペイントボールがあったことが明らかになった。フォメピゾール療法を終え、来院して40時間後臨床症状もなく退院した。その後の電話による調査で、退院後2ヶ月で臨床的に正常であることが分かった。

新しいまたは珍しい情報提供:この症例は、EG血液検査陽性、EG中毒に良く似た症状を起こす犬のペイントボール中毒の最初の報告である。(Sato訳)
■次亜塩素酸ナトリウム漂白剤摂取の犬2例
Sodium hypochlorite bleach ingestion in two dogs
Vet Med. Jan 2008;103(1):13-18. 9 Refs
Seth Chapman, DVM, Jennifer Pittman, DVM, Mary Nabity, DVM, DACVP, Mark Johnson, DVM, DACVP

この報告は、安楽死を決断させるような、重度代謝障害および高ナトリウム血症、高塩素血症、代謝性アシドーシス、腎機能不全、おそらく脳浮腫、吸引性肺炎、おそらく凝固障害などの合併症を起こした犬のまれな次亜塩素酸ナトリウム漂白剤中毒を述べる。我々の症例で気付いた顕著な生化学異常および合併症は、ヒトの致死例で見られるものに匹敵する。この報告の大きな制限は、動物とヒトの症例で更なる比較が可能となる肉眼および組織所見の欠如である。2頭ともオーナーの金銭的制約および急速な臨床的劣化により診断試験も制限を受けた。
次亜塩素酸ナトリウム漂白剤摂取は、致死的中毒の可能性があり、罹患動物は重度臨床症状および代謝障害を呈すかもしれないと締めくくる。(Sato訳)
■犬のメタアルデヒド中毒の臨床、神経、臨床病理学的症状、治療、転帰:18例
Clinical, neurological and clinicopathological signs, treatment and outcome of metaldehyde intoxication in 18 dogs
J Small Anim Pract. August 2007;48(8):438-43.
E Yas-Natan, G Segev, I Aroch

目的:犬のメタアルデヒド中毒の臨床症状、臨床病理学的異常、転帰を述べる

方法:1989年から2005年の間に来院し、メタアルデヒド中毒と診断された犬の医療記録を遡及的に再調査した。医療記録からのデータは、徴候、病歴、臨床症状、検査結果、入院期間、治療、結果だった。

結果:18頭の犬が研究基準を満たした。臨床症状で多く見られたのは、発作、高体温、頻脈、筋振戦だった。血清生化学異常は、血清筋酵素活性の上昇、酸血症(6頭)、血中重炭酸イオン減少(8頭)だった。治療は対症療法と支持療法だった。2頭の犬で高ビリルビン血症が見られた。鎮痙剤で最も使用されたのはジアゼパムで、続いてフェノバルビタール、ペントバルビタールだった。鎮痙剤に反応しない発作の18頭中9頭は、一般吸入麻酔を必要とした。生存率は83%(18頭中15頭)だった。

臨床意義:獣医文献で初めてこの臨床研究が、重度中毒犬のいくつかの臨床病理的異常を記録した。代謝異常は一般的であったが、急性または遅延肝毒性はあまり見られない合併症だった。(Sato訳)
■ペットフード誘発腎中毒が疑われた3頭の犬に見られたメラミン含有およびシュウ酸カルシウム結晶の特徴
Characterization of Melamine-containing and Calcium Oxalate Crystals in Three Dogs with Suspected Pet Food-induced Nephrotoxicosis
Vet Pathol. May 2008;45(3):417-26.
M E Thompson1, M R Lewin-Smith, V F Kalasinsky, K M Pizzolato, M L Fleetwood, M R McElhaney, T O Johnson

3頭の犬におけるペットフード誘発腎中毒の疑いに関係する、結晶の組織形態学的特徴と化学組成を述べる。3歳のパーソンラッセルテリアと3歳のバーニーズマウンテンドックの腎臓検体を検査した。その2頭の犬は2007 Menu Foodsリコールリストにある缶詰を食べたあとに急性腎不全を発症した。3つ目のケースは、2004年の同様の突発を見せた、台湾で市販ドックフードを食べた後に発症した犬腎不全の1歳雑種犬の腎検体だった。
各ケースで観察された結晶の組織形態学的特徴と化学組成を判定するため、ヘマトキシリン・エオジン(HE)、72時間オイルレッドO(ORO72h)、アリザリンレッドS(pH4.1-4.3)、フォン・コッサ染色;赤外(IR)分光学;走査型電子顕微鏡とエネルギー分散エックス線分析(SEM/EDXA)を実施した。各ケースの組織形態学的所見は、急性の顕著な尿細管変性および管内複屈折結晶を伴う壊死、リンパプラズマ細胞性間質性腎炎だった。各ケースでクリスタルの多くは、粗く、蒼白褐色でORO72hに染まり、アリザリンレッドS(pH4.1-4.3)あるいはフォン・コッサ染色で染まらず、それらの特徴はプラスチックまたは脂質に一致した。IR分光およびSEM/EDXAの結果は、メラミン含有結晶に一致した。各ケースに認められた2つ目の結晶のタイプは、なめらか、皿様で染色特性とIR分光およびSEM/EDXAの結果からシュウ酸カルシウム結晶に一致した。メラミン含有結晶は、組織内でそれらの確認を容易にする明確な光学顕微鏡、組織化学およびSEM/EDXA特性を持つ。(Sato訳)
■ニオイバンマツリ種(Yesterday, today, tomorrow)中毒の犬4例
Brunfelsia spp (Yesterday, today, tomorrow) toxicity in four dogs
Aust Vet J. June 2008;86(6):214-8.
M Singh, S Cowan, G Child

ポピュラーな庭の低木'Yesterday, today, tomorrow'(ニオイバンマツリ種)を食べた後、急性中毒を起こした4頭の犬を治療した。臨床症状は、嘔吐、下痢、筋肉振戦、不安、後弓反張および発作だった。全頭、全身麻酔、胃洗浄、浣腸、ジアゼパム、フェノバルビタールまたはプロポフォール鎮静のいずれか、または全てで治療後回復した。ニオイバンマツリ種中毒は、若い、過去に筋振戦や発作に急速に進行する胃腸症状を呈した健康な犬で考慮すべきである。糞便検査は全ての症例の診断で必要とされた。オーナーにも、犬がいる場所にそのような植物があるかないかしっかりと聞き取りを行うべきである。(Sato訳)
■炭化水素防水スプレーの吸引による中毒性肺炎の犬2例
Toxic pneumonitis caused by inhalation of hydrocarbon waterproofing spray in two dogs
J Am Vet Med Assoc. July 2007;231(1):74-8.
Brian C Young, Adam M Strom, Jennifer E Prittie, Linda J Barton

症例解説:嘔吐と嗜眠(トイプードル;症例1)、急性呼吸困難、嘔吐、食欲不振(チワワ;症例2)のため評価した。症例1は臨床症状の発現の24時間前に市販の炭化水素防水スプレーを暴露され、症例2は高引火性液体炭化水素のヘプタンを含有する防水スプレーの暴露から18時間後に検査した。

臨床所見:2頭とも主要な胃腸管異常は除外されたが、呼吸状態は悪化した。胸部エックス線写真で瀰漫性間質性肺胞パターンを示し、低酸素血症が見つかった。

治療と結果:2頭ともモニタリングとケアのため入院を必要とした。酸素、輸液、気管支拡張剤の投与など支持療法と、追加で症例1はグルココルチコイドの吸引、経腸栄養を、症例2は抗菌剤の投与で回復した。

臨床関連:この報告の犬は、防水スプレーの暴露後、炭化水素肺炎を発症した。そのスプレーは、潜在的に毒性のある炭化水素を含む。暴露に関する副作用の程度は、犬は体が小さく、小さな領域内に相対的に大量のエアロゾル化スプレーの暴露により増強されているのかもしれない。ペットで化学薬品による肺炎の発症を避ける一番よい方法は、ペットがいない換気のよい場所で防水スプレーを使用する、または屋外で使用することである。長期入院としっかりとしたモニタリングとケアで、それらの暴露から回復可能である。(Sato訳)
■急性肝壊死を伴う犬のテングタケ属中毒の診断
Diagnosis of Amanita toxicosis in a dog with acute hepatic necrosis
J Vet Diagn Invest. May 2007;19(3):312-7.
Birgit Puschner, Heidi H Rose, Michael S Filigenzi

アマニチン含有肝臓毒性キノコの中毒は、臨床医、毒物学者、病理学者に多大な努力を要求する。仮診断は、一致する臨床症状の発生に加え、疑われるキノコの明確な確認によりなされる。動物が死んだ場合、肝病変がアマニチン含有キノコの暴露を示唆するかもしれないが、病変は非特異性である。
15週齢のメスのダックスフントが急速に進行する腹臥位状態の嗜眠の急速発現で来院した。支持療法にもかかわらず、犬は反応が鈍いままで、来院から約12時間後に死亡した。検死時に蒼白、黄褐色の肝臓を認めた。顕微鏡的に、肝臓は肝細胞の全葉凝固性壊死だった。アマニチン中毒の仮診断は、キノコ暴露の歴、臨床症状、病理所見をもとにした。アマニチンの暴露は、液体クロマトグラフィー/マス分光法により肝臓のα-アマニチンの検出で確認した。
この症例報告の目的は、肝毒性キノコ中毒の疑われる証明で成功する診断検査の必須項目を説明することである。肝毒性キノコ中毒は、以前犬で述べられているが、生物学的検体の確認手段は過去の診断研究で使用されていない。(Sato訳)
■犬の抗うつ剤過剰投与
Antidepressant Drug Overdoses in Dogs
Vet Med. July 2000;95(7):520-525. 18 Refs
Tina A. Wismer

抗うつ剤を使用するヒトや動物の数が増えるに伴い、それら薬剤を偶発的に摂取する件数も増えているのは驚くことではない。1998年から米国動物愛護協会動物中毒コントロールセンター(NAPCC)に、犬による抗うつ剤摂取に関する1075件以上の問い合わせの電話があった。精神療法薬剤の摂取は、臨床症状が急速に起こる可能性があり、死に至るかもしれないので本当に緊急のことも多い。抗うつ剤にはいくつかのクラスがある。三環系抗うつ剤(TCAs)、モノアミン酸化酵素阻害剤(MAOIs)、選択セロトニン再取り込み阻害剤(SSRIs)、新規(または非定型)抗うつ剤などがある。各クラスは、中枢神経伝達物質セロトニン、ノルエピネフリン、エピネフリン、ドパミンに対するその作用で異なる。各神経伝達物質に対する特異性は、抗うつ効果と副作用の可能性で決定する。
TCAsやMAOIsの過剰投与に比べ、SSRIsの過剰投与は心臓への影響はほとんどなく、致死的になりにくい。しかし、抗うつ剤中毒の結果は、摂取量、治療、他の高度蛋白結合剤(例えば抗痙攣薬、甲状腺製剤、非ステロイド抗炎症薬)の使用に依存する。予後も犬の総合健康状態、特に肝臓や腎疾患の病歴の有無に依存する。肝疾患はそれら薬剤の代謝を抑制、腎疾患は排泄を遅延する可能性がある。予後は即座の積極的な治療で一般的に良い。(Sato訳)
■ヒキガエル(Bufo marinus)中毒が疑われた90頭の犬の回顧的報告
A retrospective report of 90 dogs with suspected cane toad (Bufo marinus) toxicity.
Aust Vet J. 2004 Oct;82(10):608-11.
Reeves MP.

目的: ブリスベーンの家庭犬におけるヒキガエル中毒の臨床的特徴を報告すること
デザイン: 臨床例の回顧分析。

手順: 1999年4月から30カ月の期間、ブリスベーンの北郊外救急病院に来院したヒキガエル中毒の全例を見直した。

結果:ヒキガエル中毒が疑われた合計90頭の犬を再評価した。小型犬が76%のケースを占めた。 ジャック・ラッセル、シルキー、およびフォックステリアが最も多く見られた。冬の数カ月の間は最も少なかったが症例は一年中報告された。 最も一般的な臨床的徴候は、唾液分泌亢進(症例の78%)、口腔粘膜の発赤(症例の63%)だった。31%の症例で発作が起こった。一般的に96%の生存で予後は素晴らしかった。(Dr.Kawano訳)

■犬のヒキガエル中毒:94症例(1997-1998)
Bufo marinus intoxication in dogs: 94 cases (1997-1998).
J Am Vet Med Assoc. 2000 Jun 15;216(12):1941-4.
Roberts BK, Aronsohn MG, Moses BL, Burk RL, Toll J, Weeren FR.

目的: ヒキガエルの分泌する毒素に暴露された犬の病歴、臨床そして心電図異常、治療そして予後について決定すること。
デザイン: 回顧的研究

動物:94頭の犬

手順: 1997年7月から1998年7月の間に病歴と身体検査所見に基づいてヒキガエル中毒と診断した犬のカルテを再検討した。

結果: ほとんどの犬(66頭)が春から夏の間に治療した。54頭の犬に関しては、ヒキガエルへの暴露が目撃された。 残りの40頭において、ヒキガエル中毒は病歴と臨床的徴候に基づいて診断した。
最も一般的な臨床的徴候は、神経学的異常、粘膜充血、唾液分泌過多、横臥あるいは虚脱、呼吸促迫そして嘔吐だった。全ての犬は水道水で口腔を洗浄した。52頭の犬は治療のために入院した。2時間以上入院した犬の体重は、通院で治療した犬の体重より明らかに少なかった。最も一般的な心電図所見は洞性不整脈、洞頻脈そして正常な洞調律だった。89頭の犬は完全に回復し、4頭は死亡し、そして1頭は安楽死した。

結論と臨床関連:ヒキガエルが風土となっている地域では、特に春と夏の数ヶ月において急性の神経学的異常、粘膜充血そして唾液分泌過多の犬の鑑別診断としてヒキガエル中毒を考慮すべきである。
適切な治療を受けたヒキガエル中毒の犬の予後は良好である。(Dr.Kawano訳)
■モキシデクチン中毒の臨床症状と管理:犬2例
Clinical presentation and management of moxidectin toxicity in two dogs
J Small Anim Pract. October 2006;47(10):620-4.
N J Snowden, C V Helyar, S R Platt, J Penderis

モキシデクチンはイベルメクチンと同族の大環状ラクトンで犬や馬の内部寄生虫の治療および予防に使用される。モキシデクチン含有馬駆虫剤を不注意に摂取したモキシデクチン中毒の犬2頭の臨床、神経症状を報告する。2頭の主な臨床症状は全身の震えと運動失調だった。モキシデクチンは哺乳類でガンマアミノ酪酸の影響を増強させることで神経毒性効果を示し、これに一致して2頭の犬はジアゼパムの投与に反応が弱かった。モキシデクチン中毒の犬では、ベンゾジアゼピンやバルビツレートのようなガンマアミノ酪酸作用薬を避け、作用様式の異なるプロポフォールのような麻酔薬の仕様を考慮するのがより適切と思われる。モキシデクチン含有馬駆虫剤を偶然暴露した犬は、その神経毒性の原因を正確に確認し、症例が適切に管理されれば予後は良い。(Sato訳)
■キシリトール摂取に関する急性肝不全と凝固障害:犬8例
Acute hepatic failure and coagulopathy associated with xylitol ingestion in eight dogs
J Am Vet Med Assoc. October 2006;229(7):1113-7.
Eric K Dunayer, Sharon M Gwaltney-Brant

症例記載:種々の製品をより甘くするのに使用される糖アルコールのキシリトールを摂取後、嗜眠と嘔吐の治療に対し、8頭の成犬を評価した。

臨床所見:嘔吐と嗜眠に加え、5頭は広範点状出血、斑状出血、胃腸管出血を認めた。一般的な臨床病理所見は、中程度から重度の血清肝酵素高活性、高ビリルビン血症、低血糖、高リン酸血症、凝固時間延長、血小板減少だった。3頭で検死がおこなわれ、2頭の重度肝壊死が認められた。もう1頭の組織検査で重度肝細胞喪失または小葉虚脱を伴う萎縮が認められた。

治療と結果:犬により治療はさまざまで、輸液、血漿輸血、必要ならばデキストロース投与だった。3頭は安楽死、2頭は死亡、2頭は完全に回復し、1頭は回復したがその後の追跡調査はされていない。

臨床関連:キシリトールは犬の低血糖を起こすが、摂取後の肝不全は過去に報告されていない。キシリトールを含む消費者製品の数が増えているため、臨床医はキシリトールが深刻な命にかかわる影響の可能性を持つということを知っておくべきである。(Sato訳)
■医原性マグネシウム過剰投与:2症例報告
latrogenic Magnesium Overdose: 2 Case Reports
J Vet Emerg Crit Care 14[2]:115-123 Jun'04 Case Report 48 Refs
C. Bisque Jackson, VMD and Kenneth J. Drobatz, DVM, MSCE, DACVIM, DACVECC

目的:高マグネシウム血症の臨床症状と治療、医原的電解質中毒を引き起こしえる薬剤過誤の可能性を述べること

要約:医原性マグネシウム(Mg)静脈内(IV)過剰投与の2症例を報告する。両症例は、嘔吐、低血圧、頻脈、弛緩性麻痺、重度精神低下などの極度心血管、神経学的症状を起こした。基準以上の血清Mgイオン濃度(3.47mmol/l;基準範囲0.43-0.58mmol/l症例1;4.64mmol/l;基準範囲0.42-0.55mmol/l症例2)から診断した。各動物には、利尿として0.9%NaClとグルコン酸カルシウムIV投与を行った。24時間以内に、両動物の心血管、神経状態、血清Mg濃度は正常化し、合併症もなく退院した。両動物は危機的疾患で入院しており、硫酸マグネシウム点滴で治療される低マグネシウム血症を発症していた。高マグネシウム血症の原因は、誤ったMg含有溶液の投与を導く治療指示の計算間違いによるものだった。困惑するような薬剤ラベルと測定単位の変化は、特に複数のIV輸液を投与する危機的患者で、誤った計算を引き起こしえる。
提供された新しい情報:これは、獣医療で医原性Mg過剰投与の最初の症例報告である。それら2症例は、迅速な認識と支持療法で良好な臨床結果が得られた。(Sato訳)
■ぶどうまたはレーズン摂取後の犬の急性腎不全:43頭の回顧的評価(1992-2002)
Acute Renal Failure in Dogs After the Ingestion of Grapes or Raisins: A Retrospective Evaluation of 43 Dogs (1992-2002)
J Vet Intern Med 19[5]:663-674 Sep-Oct'05 Retrospective Study 57 Refs
Paul A. Eubig, Melinda S. Brady, Sharon M. Gwaltney-Brant, Safdar A. Khan, Elisa M. Mazzaferro, and Carla M.K. Morrow

動物中毒コントロールセンターのアメリカ動物虐待防止協会のAnToxデータベースの記録の再調査で、ぶどう、レーズン、またはその両方を摂取した後、血中尿素窒素濃度上昇、血清クレアチニン濃度上昇およびその両方と臨床症状を起こした犬43頭を確認した。臨床所見、検査所見、組織病理所見、行った治療、結果を評価した。全頭嘔吐し、嗜眠、食欲不振、下痢はその他一般臨床症状だった。尿排泄低下、運動失調、虚弱は悪い結果に関連した。高カルシウムXリン生成物(Ca X P)、高リン血症、高カルシウム血症は、それらを評価した犬の95%、90%、62%に認められた。
初期総カルシウム濃度、ピーク総カルシウム濃度、初期Ca X P、ピークCa X Pが極度に高値は、負の予後指標であった。近位尿細管壊死は、組織病理評価を行った犬に一般に見られる所見だった。43頭の53%は生存し、それら23頭中15頭は臨床症状および高窒素血症が完全に解消した。ぶどうおよびレーズンによる腎傷害のメカニズムは不明なままであるが、この研究所見は、犬におけるぶどうまたはレーズン摂取後に起こりえる急性腎不全の臨床経過を理解するのに貢献する。(Sato訳)
■犬における自家製工作粘土摂取による二次的高ナトリウム血症:1998年から2001の14症例に関する評論
Hypernatremia Secondary to Homemade Play Dough Ingestion in Dogs: A Review of 14 Cases from 1998 to 2001
J Vet Emerg Crit Care 14[3]:196-202 Sep'04 Case Report 15 Refs
Julie M. Barr, BS, Safdar A. Khan, DVM, MS, PhD, DABVT, Sheila M. McCullough, DVM, MS, DACVIM and Petra A. Volmer, DVM, MS, DABVT, DABT

目的:臨床徴候に対する塩化ナトリウム服用量と血清ナトリウム濃度を関連付け、自家製粘土(塩化ナトリウム)の服用量が臨床徴候と予後を予測するための最も信頼できるものかどうかを明らかにし、以前に報告された治療オプションを評論することです。

計画:回顧的症例集

動物:自家製粘土の摂取暦を持つ14頭の犬。

手順:体重、年齢、おおよその粘土摂取量、推定塩化ナトリウム服用量、臨床徴候、血清ナトリウム濃度、そして入手可能であったものは転帰を含め、各動物のシグナルメントに関して症例を調査しました。この論文は病態生理学と治療法を明らかにするため論評しました。

結果:自家製粘土を摂取した14頭の犬のうち12頭(86%)が、臨床徴候を発現しました。嘔吐(14頭中9頭、64%)、多飲、そして発作(それぞれ14頭中4頭、29%)、続いて多尿、振戦(それぞれ14頭中3頭、21%)、そして高体温(14頭中2頭、14%)が最も良く見られた徴候でした。他覚的臨床徴候に関連した、最低予測服用量は1.9g/kgでした。発作は、血清ナトリウムレベルが180mEq/L以上となった全ての動物において報告されました。

結論と臨床関連:自家製粘土摂取は、重篤で、生命を危うくする問題となる可能性があります。多数の因子が自家製粘土の毒性に寄与しえます。この研究は、摂取した粘土の量、つまり塩化ナトリウムの服用量よりもむしろ、血清ナトリウム濃度の方が、毒性の臨床経過の信頼性ある指標であるということを示しました。治療は、患者の臨床的評価と検査結果に基づき、発作の管理、血清ナトリウム濃度の緩徐な補正、そして支持療法から成るべきです。(Dr.K訳)
■肉牛の食塩中毒
Salt poisoning in beef cattle.
Vet Hum Toxicol 46[1]:26-7 2004 Feb
Senturk S, Huseyin C

成牛の様々な環境下で食塩中毒は述べられている。6頭のホルスタインの肉牛で、主に中枢神経系の機能不全を起こす中毒のような臨床症状を呈し、失調、強直性発作、眼振、意気消沈、筋肉の単収縮、完結的な発作や腹部痛、多飲などが見られた。下痢は2頭で起こり、3頭は盲目となった。高ナトリウム血症(161.8-178.8mmol/l)と高浸透圧(331.81-366.18mOsm/l)が全頭に見られた。治療は、新鮮水へのアクセスを制限し、血管容積を等張生食で拡大し、そして低張液(5%デキストロース溶液)i.v.とデキサメサゾンi.m.投与した。生化学パラメーターは、正常範囲に戻るが、3頭は盲目のままだった。(Sato訳)
■テキサス中毒センターネットワークに報告された動物の中毒パターン:1998-2002
Patterns of animal poisonings reported to the Texas Poison Center Network: 1998-2002.
Vet Hum Toxicol 46[2]:96-9 2004 Apr
Forrester MB, Stanley SK

中毒センターで取り扱われる電話の一部は、動物の中毒に関するものである。しかし、そのような電話の情報には限りがある。この研究は、動物の中毒に関する電話の疫学を述べるため、1998-2002年の間にテキサスの中毒センターに集められたデータを使用した。合計24467件の動物の中毒の電話があり、全電話の2.0%だった。イヌが87%、ネコが11%だった。99%の症例の暴露は偶発で、95%は摂取、5%は皮膚への暴露で発生した。暴露の91%はオーナー自身の住居で起こり、61%が病院施設以外で処置された。その結果は、イヌの60%、ネコの39%に臨床効果がなかった。報告された暴露は、夏により多く起こり、殺虫剤や植物に関与するものが頻繁に見られた。それら所見は、動物中毒に関する毒物センターの限られた報告に一致した。(Sato訳)
■防虫剤中毒
Moth Repellent Toxicosis
Vet Med 100[1]:24-28 Jan'05 Toxicology Brief 15 Refs
Camille DeClementi, VMD

ナフタレンは83%、パラジクロロベンゼンは17%が活性成分である。二環芳香族炭化水素のナフタレンは石油や石炭のような化石燃料の天然成分である。また木やタバコが燃えたときにも産生される。
有機塩素系の殺虫剤であるパラジクロロベンゼンは、ナフタレンの毒性の半分と考えられる。多くの防虫剤はほぼ100%のナフタレン、またはパラジクロロベンゼンを含有する。製剤は球、結晶、または薄片に形作られる。
パラジクロロベンゼン1.5g/kgを摂取してもイヌは中毒の臨床症状を起こさないが、ナフタレン1525mg/kgの1回摂取、および別の犬でナフタレン約263mg/kg/日7日間の摂取で溶血性貧血が報告されていた。1つの防虫剤は約5gである。ナフタレン防虫剤1個以下でも子供は中毒の臨床症状を起こすかもしれないが、1個のパラジクロロベンゼン防虫剤の偶発的摂取は一般に許容できる。(Sato訳)
■ジメルカプロール
Dimercaprol
Compend Contin Educ Pract Vet 25[9]:698-700 Sep'03 Pharm Profile 17 Refs
Lotfi El Bahri, DVM, MSc, PhD

BAL (British antilewisite)として知られるジメルカプロール(2,3-dimercaptopropanol)は、砒素中毒の治療に用いられる特定解毒薬である。小動物において砒素の暴露の一般的な源は、家庭の砒素除草剤やゴキブリ、アリの餌のような殺虫剤である。ジメルカプロールは、重金属キレート剤である。薬理作用は、そのメルカプト基群と重金属のキレートかにより起こる。ジメルカプロールは、砒素に高親和性を持つ。
筋肉注射は、特に深く投与しなければ、非常に痛みを伴う。注射前に局所麻酔を用いることで、痛みを減じると思われる。注射部位の無菌性、化膿性膿瘍形成が起こりうる。他の副作用(嘔吐、流涙、流涎、眼瞼痙攣、頻脈、血圧上昇)は一時的なもので、エピネフリン注射の治療が奏功する。また、ジメルカプロールは代謝障害(すなわち、乳酸血症、アシドーシス、低血糖)も引き起こしえる。長期使用は、血小板減少症やプロトロンビン時間の延長に関与する。ジメルカプロールは、甲状腺へのヨー素蓄積を干渉する。
ジメルカプロールは、鉄、カドミウム、セレン中毒に禁忌である。それらの中毒で、ジメルカプロール-金属複合物は金属単独よりも毒性を持つ。また、砒素中毒によるもの以外の肝不全の動物に対しても禁忌である。動物の過剰投与による症状は、失調、眼振、振戦、強直性発作、昏睡、死亡である。腎毒性の可能性もある。
ジメルカプロールは、SH酵素の再賦活化よりも抑制を防ぐ効果の方が強いので、砒素暴露後できるだけ早く投与するのがより効果的である。ジメルカプロールは、深く筋肉注射すべきである。初期量は5mg/kgで、ついで3-4時間間隔で2日間2.5mg/kg筋肉注射する。それから回復まで、投与間隔を12時間まで漸次延長していく。
ジメチルカプロール投与に加え、チオ硫酸ナトリウムを投与すべきである。チオ硫酸の硫黄は砒素に反応し、金属を不動化するかもしれない。初期量は20%溶液として40-50mg/kgIVである。回復(すなわち3-4日間)まで1日2,3回繰り返し投与すべきである。(Sato訳)
■イヌのメタアルデヒド中毒
Metaldehyde Toxicoses in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 25[5]:376-379 May'03 Review Article 15 Refs
Jill A. Richardson, DVM; Sharon L. Welch, DVM; Sharon M. Gwaltney-Brant, DVM, PhD, DABVT, DABT; Joel D. Huffman, DVM; Marcy E. Rosendale, DVM

メタアルデヒドは、一般に軟体動物殺剤に含まれる。市販の製品は、顆粒、または液体形式で、歩道周辺や庭に適応される。イヌは、
メタアルデヒドを含むカタツムリの餌を、カタツムリを管理するために撒かれているものを摂取、または不適切に保存されている容器から直接摂取することにより暴露される。
イヌのメタアルデヒド摂取に見られる臨床症状は、頻脈、眼振、過呼吸、失調、発作、アシドーシス、チアノーゼ、下痢、脱水、高体温、死亡することもある。遅延性の肝不全、一時的な盲目も報告されている。メタアルデヒド中毒の治療は、嘔吐や活性炭、発作管理、支持療法のような標準的な汚染除去方法を使用する。静脈内のメトカルバモルは、メタアルデヒド誘発振戦、発作に推奨されており、ASPCA動物中毒管理センター症例報告で治療に成功しているとされている。(Sato訳)
■犬におけるニコチン摂取の危険性
The Dangers of Nicotine Ingestion in Dogs
Vet Med 99[3]:218-224 Mar'04 Toxicology Brief 9 Refs
Nicole C. Hackendahl, DVM and Colin W. Sereda, DVM

この報告で記述する患者は、血清ニコチン濃度が0.2ppm、あるいは200ng/mlでした。この濃度は、ニコチン中毒の臨床徴候を引き起こすのに十分であり、人で報告されている中毒血清濃度を十分上回っております。しかしこの患者は致死的状況ではなく、集中的な支持療法により完全回復を達成しました。ニコチンは多数の製品が入手できますが、小動物におけるニコチン中毒は一般的でなく、獣医学文献における報告は稀です。低容量でニコチン受容体刺激となり、高容量で受容体遮断となるため、臨床徴候は用量依存性です。ニコチン中毒は、大半がニコチン製品の摂取を直接観察することにより診断されます。犬における予後は、大量摂取した時に重篤です。ニコチンの半減期である摂取後4時間、動物が生存するならば、予後は好転します。治療は、ニコチン源の除去と、吸収低下、そして継続した排泄促進に的を絞ります。支持療法は臨床徴候にあわせて行います。(Dr.K訳)
■成猫のスイセン中毒
Daffodil toxicosis in an adult cat.
Can Vet J 45[3]:248-50 2004 Mar
Saxon-Buri S

乾燥させたスイセンの茎を食べた後3日間、嗜眠、嘔吐している家ネコ長毛ネコは、重度低体温(33.0度)、徐脈(78回/分)、低血圧だった。アトロピン、デキサメサゾン、輸液の投与と支持療法で、食べてから6日後に完全に回復した。
■犬用キシリトール含有ガム摂取後の低血糖
Hypoglycemia following canine ingestion of xylitol-containing gum.
Vet Hum Toxicol 46[2]:87-8 2004 Apr
Dunayer EK

9ヵ月齢の去勢済ラブラドール・レトリバーが、キシリトール糖アルコールで甘くした、シュガーレスガムを大量に食べた後、重度な低血糖、虚脱、発作を呈しました。犬は、デキストロースのi.v.ボーラス、および持続点滴で治療されました;犬の容態は急速に改善しましたが、軽度な低血糖が、完全回復するまでの11時間持続しました。人において、キシリトールは血漿インスリンや血糖値に殆ど影響しませんが、犬において、
キシリトールはインスリン放出の強い促進因子で、運動失調、虚脱、発作を伴う重度な低血糖の原因となり得ます。アメリカ合衆国における、キシリトール製品の増加に伴い、犬のキシリトール中毒は、より一般的になるかもしれません。(Dr.K訳)
■イヌのメトロニダゾール中毒のジアゼパムによる治療
Diazepam as a Treatment for Metronidazole Toxicosis in Dogs: A Retrospective Study of 21 Cases
Journal of Veterinary Internal Medicine: Vol. 17, No. 3, pp. 304-310.
Jason Evans, Donald Levesque, Kim Knowles, Randy Longshore, and Scott Plummer

一般的に推奨されているメトロニダゾール中毒の治療は薬剤の中止と支持療法である。報告されている回復時間は1〜2週間である。ジアゼパムが回復を促進するかどうかを確かめるため、メトロニダゾール中毒の犬21頭を使い回顧的に分析した。ジアゼパムで治療した13頭と支持療法のみを受けた8頭についてメトロニダゾールの用量と期間、さらに反応時間と回復時間とを比較検討した。反応時間は臨床症状が緩和するのに必要な時間である。回復時間はすべての臨床症状が消失するのに必要な時間である。ジアゼパムで治療したグループ、もしくは無治療グループの投与したメトロニダゾールの平均用量と期間はそれぞれ60.3mg/kg 44.9日と65.1mg/kg/d 37.25日であった。
ジアゼパム投与のプロトコールは、初期の静脈内ボーラスとその後3日間(8時間毎)の経口投与であった。
静脈内ボーラスおよび経口投与のジアゼパムの平均用量は0.43mg/kgであった。ジアゼパムで治療した犬の平均反応時間は無治療グループの4.25日に比べ、13.4時間であった。回復時間も無治療グループの11日と比較し、ジアゼパムで治療した犬は38.8時間と著しく短かった。メトロニダゾール中毒はジアゼパムで治療することにより、より早く回復することがこの研究で示された。メトロニダゾール中毒のメカニズムと、ジアゼパムがどのように有利に作用するか不明だが、小脳と前庭におけるGABA受容体の調節に関係がありそうである。(Dr.Kawano訳)

ご存知のようにメトロニダゾールの最も一般的な副作用は食欲不振、嗜眠、嘔吐、下痢、神経毒性ですね。人では肝障害や膵炎との関連が報告されています。(犬猫での報告はありません)
最も一般的な神経毒性は、水平眼振、垂直眼振および進行性全身性運動失調(典型的に横臥位となる)があります。メトロニダゾール中毒はHigh doseでも惹起されますが、長期のLow doseでも惹起されるようです。従ってHigh doseでは5日以内の使用、Low doseでも2週間以内の短期使用が理想的だと考えております。
■イヌのパン生地中毒
Bread Dough Toxicosis in Dogs
J Vet Emerg Crit Care 13[1]:39-41 Mar'03 Case Report 11 Refs
Charlotte Means, DVM, MLIS

目的:イヌの生のパン生地摂食とその後の毒性に対する情報を提供すること

症例要約:生のパン生地を摂取したイヌ3症例を、ASPCA動物中毒コントロールセンター(APCC)から報告する。臨床症状は、嘔吐、失調、失明、低体温、横臥だった。全てのイヌは、エタノール中毒の治療で回復した。

新しい情報:パン生地の摂取は、
胃の閉塞、鼓腸、エタノール中毒を起こしえる。汚染除去、IV輸液、代謝性アシドーシス、低血糖の管理などエタノール中毒の治療を述べている。イヌが昏睡、または重度呼吸抑制になっている場合は、ヨヒンビンが使用できる。(Sato訳)
■抗凝固系殺鼡剤中毒が疑われる7頭のネコの出血
Haemorrhage in Seven Cats with Suspected Anticoagulant Rodenticide Intoxication
J Feline Med Surg 5[5]:295-304 Oct'03 Case Report 33 Refs
* B Kohn, C Weingart, U Giger

出血と抗凝固系殺鼡剤中毒と推定される7頭の成猫(6頭オス、1頭メス)の臨床特質を評価した。出血は胸腔出血、耳の出血、血腫、メレナ、血便排泄、点状出血として現れた。一般的なその他の現症は、嗜眠、食欲不振、頻呼吸、呼吸困難だった。6頭は貧血、4頭は軽度血小板減少(58,000-161,000/μl)で、3頭はわずかに血漿タンパク、またはアルブミン値が低下していた。プロトロンビン時間(30.3->100秒、正常範囲:16.5-27.5秒)と活性化部分トロンボプラスチン時間(32.6->100秒、正常範囲14-25秒)は全頭著しく延長していた。
全頭、ビタミンK1を皮下、または経口投与し、症状の程度に応じ5頭には新鮮全血を輸血した。血漿凝固時間は全頭改善し、1-5日で正常に戻った。殺鼡剤中毒は重要と述べられるが、ネコの出血の比較的まれな原因で、効果的に治療可能である。(Sato訳)