■8歳以上の犬の肩、肘、股、膝関節における変形性関節症の有病率
Prevalence of osteoarthritis in the shoulder, elbow, hip and stifle joints of dogs older than 8 years
Vet J. 2024 May 16:106132.
doi: 10.1016/j.tvjl.2024.106132. Online ahead of print.
Moritz Roitner , Julius Klever , Sven Reese , Andrea Meyer-Lindenberg

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獣医療において、変形性関節症(OA)は最も一般的な疾患の1つである。関節のOA発症に対し種々の原因があり、それらのいくつかは十分調査されているが、他はまだ推測の域である。

この回顧的研究において、ほとんどが整形外科の主訴により来院した8歳以上の病院の犬集団において、肩、肘、股、膝関節において、OAの有病率を調査した。上述の関節が1つ以上エックス線写真に含まれる場合に研究に含めた。エックス線写真は、3人の観察者により再検討し、重症度によりグレードを付けた。

OAの有病率は、肩、肘、股、膝関節に対し、それぞれ39.2%、57.4%、35.9%、36.4%だった。OAのより高いグレードと、体重や年齢との関連はなかったが、体重でグループ分けした時により重いグループのOAの有病率は有意に高かった。性別や性腺摘出状態はOAの存在に影響しなかった。多くの検査した関節はOAがなかったため、OAを示唆するエックス線所見は、老犬において正常と考えるべきではない。(Sato訳)
■コンパニオン犬の変形性骨関節症の診断に対する体重、性腺摘出および他のリスクファクター
Body weight, gonadectomy, and other risk factors for diagnosis of osteoarthritis in companion dogs
Front Vet Sci. 2023 Nov 28:10:1275964.
doi: 10.3389/fvets.2023.1275964. eCollection 2023.
Jessica L Graves , Brennen A McKenzie , Zane Koch , Alexander Naka , Nathaniel Spofford , JoAnn Morrison

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目的:この研究の目的は、コンパニオン犬における変形性骨関節症の診断に対するリスクファクターとして、年齢、性別、体重、犬種、不妊状況、不妊時の年齢を評価することである。

動物:2019年に死亡日時が分かっている1998年から2019年の間に、アメリカのバンフィールド動物病院で患者だった犬。最終的な集団は131140頭となった。

方法:この回顧的コホート集団において、変形性骨関節症発生と基礎となる年齢、性別、最大体重、最大ボディコンディションスコア、不妊の状況、不妊した時の年齢の関連に対し、Cox比例ハザードモデルを用いて調査した。同じモデルを使用し、それらと12の主要犬種(体重とサンプルサイズを基に選択)の関係を調べた。

結果:より高齢、成犬体重がより重い、性腺摘出、性腺摘出時がより若いことは、この全体の集団と、評価した全ての12犬種において、変形性骨関節症のより高いリスクと有意に関係した。高いボディコンディションスコアと性別も変形性骨関節症と有意に関係したが、全体の集団で最小の効果サイズで、それらのリスクファクターは研究した全ての犬種において一貫して有意というわけではなかった。

臨床関連:それらの結果は、変形性骨関節症のより高いリスクの犬の確認、適切な治療、予防、治療介入の適用するときに獣医師の補助となるだろう。ボディコンディションや不妊のような潜在的に変更できるリスクファクターの理解は、個々の患者におけるリスク管理について、飼い主とのエビデンスベースの話し合いをサポートするだろう。(Sato訳)
■犬の内側膝蓋骨脱臼は軟骨糜爛を誘発する:有病率とリスク因子の回顧的研究
Medial patellar luxation induces cartilage erosion in dogs: a retrospective study of prevalence and risk factors
Am J Vet Res. 2024 Sep 9:1-8.
doi: 10.2460/ajvr.24.07.0190. Online ahead of print.
Hye-Won Kim , Yong-Sun Kim , Woo Keyoung Kim , Kyu-Won Kang , Byung-Jae Kang

目的:犬の内側膝蓋骨脱臼(MPL)と軟骨糜爛との関係を調べ、リスク因子を確認する

方法:2006年1月から2024年3月までに、MPLに対して外科的治療を行った90頭(103膝)の犬の回顧的再検討を行った。集めたデータは、シグナルメント、手術した膝の側、膝蓋骨脱臼のグレード、症候の持続期間、跛行スコアを含めた。軟骨糜爛は、膝蓋骨および大腿骨滑車の広さと位置に対し評価した。リスク因子の確認するため、統計学的解析を行った。

結果:膝蓋骨と大腿骨滑車の軟骨糜爛の有病率は、それぞれ47.6%(49/103)と54.4%(56/103)で、膝蓋骨脱臼のグレードがより高いほど増加した。糜爛は膝蓋骨の遠位側面、滑車の近位内側でより多く、グレードIVでより一般的な病変だった。両病変の広さは、年齢、膝蓋骨脱臼のグレード、徴候の持続期間と有意に関係したが、体重は膝蓋骨の軟骨糜爛と唯一有意に相関した。性別、手術した膝の側、跛行スコアに有意な相関は見られなかった。

結論:MPLの多くの犬は、膝蓋大腿関節の軟骨糜爛を経験し、生体力学メカニズムによる可能性が高い。膝蓋大腿アライメント及び歩様を改善する間、軟骨糜爛が予防されるかもしれないため、手術はMPLの犬に指示できる。手術の候補を選択する時、膝蓋骨脱臼のグレード、体重、年齢、徴候の持続期間のようなリスク因子を考慮することが重要である。

臨床関連:軟骨糜爛や二次的骨関節症の予防のため、特に肥満及びMPLのより高いグレードの犬は早期外科手術が勧められる。(Sato訳)
■11頭の犬と5頭の猫の外傷性膝蓋骨脱臼の臨床症状、外科的治療、結果:2011年から2022年の一施設での回顧的研究
Clinical Presentation, Surgical Treatment, and Outcome of Traumatic Patellar Luxation in 11 Dogs and 5 Cats: A Single-Centre Retrospective Study between 2011 and 2022
Vet Comp Orthop Traumatol. 2024 Sep 3.
doi: 10.1055/s-0044-1790220. Online ahead of print.
Julien Boullenger , Clémentine Beyer , Paul Sériot , Emilien Griffeuille , Sophie Gibert , Antoine Dunié-Mérigot

目的:膝蓋骨脱臼(PL)は犬と猫で一般的に診断される;しかし、外傷性によるものは文献であまり報告がない。この研究の目的は、外傷性PLを外科的に治療した犬と猫の臨床症状、外科的治療、結果を報告することだった。

研究デザイン:これは回顧的研究である。外傷性PLに対する手術を行った犬と猫の医療記録を再調査した。短期及び長期フォローアップを、医療記録や飼い主および紹介獣医師への電話での聞き取りで評価した。シグナルメント、跛行、PL特性、手術、合併症、結果に対するデータを記録した。

結果:11頭の犬と5頭の猫を含めた。両種の跛行グレードの中央値は4/5で、PLグレードの中央値は3/4だった。ほとんどの症例のPLは内側だった(13/16)。関節包の病変は15症例で確認され、4症例は滑車稜の軟骨損傷があった。
全ての症例は関節包の縫縮、12症例はファベラ-膝蓋骨縫合(FPS)を行った。平均長期フォローアップ期間は9頭の犬と4頭の猫で70.8±42.5か月だった。2か月のフォローアップで13頭中10頭は跛行がなく、11/13症例で長期跛行はなかった。13頭中11頭は、2か月のフォローアップでPLがなかった。飼い主による長期PLの報告はなかった。合併症は5頭で軽度、1頭で中程度、3頭で重度だった。機能的結果は10頭で完全、3頭で容認できるものだった。

結論:犬と猫の外傷性PLの外科的治療において、軟部組織法とFPSは効果的で、全ての症例で容認できるものから完全な長期機能をもたらし、重度合併症は限られていた。(Sato訳)
■トイ犬種の犬の肩関節内方脱臼の棘上筋腱側面への抗脱臼ピン設置による管理:20肢(2017-2022)
Management of medial luxation of the shoulder joint in toy-breed dogs using an antiluxation pin placed lateral to the supraspinatus muscle tendon: 20 limbs (2017-2022)
J Am Vet Med Assoc. 2024 May 8:1-6.
doi: 10.2460/javma.23.11.0652. Online ahead of print.
Takeshi Aikawa, Shuya Kihara, Yuta Miyazaki, Hiromi Muyama, Masaaki Nishimura

目的:抗脱臼ピンを用いた新しい方法で治療した内側肩脱臼(MSL)の犬の臨床および診断的所見、術式、臨床経過を述べる

動物:トイ犬種の飼い犬18頭(20の処置した肢)

臨床的プレゼンテーション:MSLのトイ犬種の犬を、抗脱臼ピンで治療した(2017-2022)。収集したデータは、シグナルメント、脱臼の原因、術前およびフォローアップの臨床評価の跛行スコア(LMS)、エックス線写真および/あるいはCT所見。

結果:最も多い犬種はトイプードルだった(17/18)(94.4%)。年齢中央値は10歳だった。18頭中1頭は外傷の病歴があった。内側脱臼は、全ての肢でエックス線写真あるいは全身麻酔下の触診で確認した。再脱臼は3肢で、それぞれ術後1、4、30日目に起こった。それら3肢のうち、1肢は最初のピンの設置の修正を行い、他の2肢は追加治療を行わなかった。持続性の疼痛がある1肢は、最初の手術から30日目と72日目にピンの方向を調節する2回の修正手術を行った。18肢は、最初あるいは修正手術から最終フォローアップまで脱臼しなかった(中央値、18.5か月;範囲、1-63か月)。18の脱臼しなかった肢の最終フォローアップ時のLMS(平均、0.5)は、術前のLMSよりも有意に低かった(平均、4.5)(P<.01)。

臨床関連:抗脱臼ピンを用いた新しい方法は、侵襲性も少なく、技術的に単純で、トイ犬種の犬のMSLに対する1つの代替外科治療を提供する。(Sato訳)
■若齢犬の内側膝蓋骨脱臼の早期外科的管理
Early Surgical Management of Medial Patellar Luxation in Juvenile Dogs
Vet Comp Orthop Traumatol. 2023 Dec 19.
doi: 10.1055/s-0043-1777347. Online ahead of print.
Alefe L C Carrera , Bruno W Minto , Eloy H P Curuci , Carla G Paula , Julia B Jassniker , Olicies Cunha

目的:この研究の目的は、高グレードの内側膝蓋骨脱臼の若齢犬において、早期外科的治療を行った5症例のシリーズを解析することだった。

研究デザイン:未成熟な骨格、グレードIIIあるいはIV内側膝蓋骨脱臼に罹患し、複数様式の術式で治療した犬を選択した。

結果:異なる犬種で平均年齢7.2±3.0歳の5頭が組み入れ基準に合致した。遠位大腿骨内反とexternal tibial torsionの同時発生を5頭中3頭で確認したが、残りの2頭は脛骨外反と関係した大腿骨内反と孤立したexternal tibial torsionが観察された。5頭中4頭は遠位大腿骨のclosing楔状骨切術で外科的に治療し、そのうち3頭は同時に脛骨粗面転移を行った。2頭のみ、造溝術が必要だった。負重開始までの平均期間は9.8±5.5日だったが、骨治癒までの期間は55±24日だった。伸筋機構の骨再アライメントと肢支持の回復は全頭で達成された。

術後の再介入は1頭で必要だった;しかし、それは最初の手術と関連がなかった。術後1年までフォローアップし、伸筋アライメントが維持され、後の合併症はなかった。

結論:高グレードの内側膝蓋骨脱臼に罹患した若齢犬の根治治療において、早期外科的アプローチは有効だと示されている。(Sato訳)
■緊急動物病院を受診した犬の非特異的跛行に対するアプローチの再調査と回顧的評価(2013-2014):134症例
Retrospective evaluation and review of approaches for nonspecific lameness in dogs presented to an emergency service (2013-2014): 134 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Nov 21.
doi: 10.1111/vec.13344. Online ahead of print.
Meghan T Ramos , Alexandra M Hartzell , Cynthia M Otto

目的:この回顧的研究の目的は、犬の非特異的跛行症例の特徴を述べ、緊急アプローチ、診断、管理、治療、フォローアップを評価することだった。

デザイン:2013年9月25日から2014年9月25日までの回顧的ケースシリーズ

場所:都会の獣医教育病院で研究した

動物:指定の期間枠で、非特異的跛行を理由に緊急動物病院を受診した犬の連続サンプルを使用し、134症例を確認した。飼い主にフォローアップ調査のために連絡を取った;データ収集前に死亡した犬は調査から除外した。医療記録から跛行の部位、跛行の原因、得られた診断、処方した薬剤、飼い主の推奨に対して再調査した。

介入:医療記録の再調査を基に、跛行部位、跛行の推定的源(関節、軟部組織、神経、骨)、得られた診断、処方した薬剤、飼い主への推奨を記録した。調査データには、跛行の持続期間、治療で認められた反応、活動レベルが含まれた。

測定値と主要結果:跛行症例の88.8%で確定診断が得られなかった。軟部組織傷害の推定的診断は45.3%の症例で割り当てられた。1本の肢の跛行は、複数の肢の跛行よりも一般的だった。薬剤で治療した犬の飼い主は、跛行の解消を報告する確率が有意に高かった(P=0.049)。1つ以上の関節に障害がある犬は、跛行が解消する確率が有意に低かった(P=0.037)。治療推奨は、主に疼痛コントロールと活動制限だった。

結論:非特異的跛行は、都会の犬の緊急症例の約4%に相当する。犬の跛行の病因を理解する際に、臨床的ケアの考慮のポイントに焦点を当てることは、緊急紹介およびフォローアップにおいて患者のケアの改善と発展に対する1つの機会を意味する。(Sato訳)
■盲検交差試験において変形性関節症の犬の飼い主が報告した疼痛スコアをマグネティックカラーは改善する
Magnetic collars improve owner-reported pain scores in dogs with osteoarthritis in a blinded crossover study
J Am Vet Med Assoc. 2024 Jan 12:1-9.
doi: 10.2460/javma.23.10.0555. Online ahead of print.
Fiona A Picton , Samantha J Fontaine , Alix R McBrearty

目的:臨床的に変形性骨関節症は疑われた犬に、永久磁石を含む首輪を付けた時の飼い主の報告する疼痛、機能に対する疼痛の干渉、クオリティオブライフ(QOL)の変化を調査する

動物:変形性関節症の臨床診断を受け、安定処置中の体重10-40kgで5歳以上の犬16頭

方法:2週間のウォッシュアウト期間を設けた2回の4-週間研究において、永久磁石を含む首輪とプラセボを装着した犬における前向き盲検交差研究。飼い主に首輪をつける前にCanine Brief Pain Inventoryに答えてもらい、その後各期間を通し毎週答えてもらった。それらの期間開始から終了までのQOL、疼痛重症度、疼痛干渉スコアの変化と、各群の間の変化を算出し、Wilcoxon signed rank testsを用いて解析した。

結果:含まれた40%の犬は、NSAIDsの安定投与中だった。疼痛重症度スコア(PSS)、疼痛干渉スコア(PIS)、QOLスコアは、各群の開始時に有意差がなかった。プラセボ群の開始から終了までのPSSあるいはPISに有意な変化はなかった(変化の中央値、0と-0.1)。磁石群の期間中にはPSSとPISの有意な低下が見られた(変化の中央値、-1.0と-1.2)。各群でQOLスコアの有意な変化はなかった(変化の中央値、0と0)。

臨床的関連:この予備研究は、臨床的に変形性関節症が疑われる犬において、マグネティックカラーは飼い主が報告する疼痛重症度と機能に対する疼痛干渉を軽減することを示唆し、今後、大規模研究を正当化する。(Sato訳)
■犬の治療的関節注射の安全性を述べる遡及的解析
Retrospective analysis describes safety of therapeutic joint injections in dogs
J Am Vet Med Assoc. 2023 Jan 2;1-6.
doi: 10.2460/javma.22.11.0483. Online ahead of print.
Allison V Miller, Patrick C Carney, Alexandra Markmann, Christopher W Frye

目的:犬の治療的IA注射において、有害事象と来院ごとの注射回数、注射した関節、シグナルメント、ボディコンディションスコア、注入物のタイプと量との関連を述べ、その安全性を遡及的に調査する

サンプル:178頭の飼い犬に対し、283受診を通し505回の関節注射。(肩、肘、手根、股関節、膝、足根、中手指節関節を含む)

方法:動物医療記録に対する関連データに対し、コーネル大学病院の検索を実施し、2010年から2022年の間に治療的関節注射で治療し再検査をした犬を確認する。

結果:283のうち70の受診でマイナーな合併症を認め、一時的な疼き(18.4%、中央値2日間持続;範囲、1-20日)と胃腸炎(6.8%)が含まれた。敗血症性関節炎の1症例(1/505関節)(血行性源のリスクを持つ)は、唯一の潜在的でメジャーな合併症だった。疼きは受診後との注射した関節の数と相関しなかった。体格で標準化した注入物のより量が多いものは、膝と足根で一時的な疼きと関係する確率が高かった。注入物全体で、幹細胞が唯一、疼きの確率を有意に増加させた。胃腸炎は注入物のタイプに関係しなかった。

臨床関連:犬で治療的関節注射は安全で、メジャーな有害事象のリスクは極端に低かった。一時的な疼きは、一般的に予測されるマイナーな有害事象である。幹細胞あるいはより量の多い注入物の使用(膝およびより小さい指関節に限られる)は、より不快感を呼び起こす可能性が高いかもしれない。(Sato訳)
■近位上腕骨骨軟骨症の外科的デブリードメントで治療した犬の長期結果
Long-term outcome of dogs treated by surgical debridement of proximal humeral osteochondrosis
Vet Surg. 2022 Sep 10.
doi: 10.1111/vsu.13866. Online ahead of print.
Geoffrey J Zann 2nd , Stephen C Jones , Laura S Selmic , Selena Tinga , Audrey W Wanstrath , James Howard , Nina R Kieves

目的:近位上腕骨骨軟骨症(OC)に対し、外科的に治療した犬の長期臨床結果を評価する

研究計画:横断研究

サンプル集団:20頭の犬(肩n=26)

方法:12か月以前に近位上腕骨OCの外科的デブリードメントで治療した犬を登録した。整形外科的検査(肢の周径と肩の角度測定を含む)、動的歩様分析、肩のエックス線検査、肩のCT検査、肩の関節鏡検査を実施した。全ての飼い主に犬の機動性アンケートに答えてもらった。

結果:片側が罹患した犬において、OCの肢は対側肢と比べて上腕円周(P=.003)、最大肩伸長(P=.013)が減少し、最大肩屈曲(P=.008)が増加(すなわち屈曲が少ない)していた。罹患肢と非罹患肢のpeak vertical forceとvertical impulseに違いはなかった。手術した肢の負荷分布は4.4%の減少を示した。OC病変に対し治療した全ての肩に変形性関節症は存在した。片側罹患症例において、CT(P=.005)およびエックス線写真(P=.0001)の評価上、OCの肢は対側肢と比べて変形性関節症の程度が増加していた。全てのOC罹患関節において中から重度の滑膜炎が見られた。関節鏡検査的に、全ての病変に、つぎはぎの不完全な軟骨の充填があることが分かった。犬の総リバプール変形性関節症(LOAD)スコアの中央値は6だった。

結論:全ての犬は、同側の筋萎縮と進行性の変形性関節症があり、多くの犬は、主観的な歩様検査でわずかな跛行を呈した。これにもかかわらず、飼い主は、機動性は満足だと認めていた。

臨床的意義:時間と共に関節疾患の進行は予想すべきである;しかし、検査で検出される異常は、疑わしい臨床関連であると思える。(Sato訳)
■小型犬の膝蓋骨内方脱臼グレード4の外科的修正後のポジティブな結果
Positive outcomes after surgical correction of grade IV medial patellar luxation in small breed dogs
Open Vet J. May-Jun 2022;12(3):351-355.
doi: 10.5455/OVJ.2022.v12.i3.7. Epub 2022 May 30.
Mitsuhiro Isaka

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背景:膝蓋骨内方脱臼(MPL)は犬の一般的な整形外科的な状況である。外科的修正後、より低いグレードのMPLより、グレード4の再発率はより高いと思われ、結果は悪い。

目的:犬グレード4のMPLの外科的修正の結果を述べる

方法:この遡及的研究は、2015年5月から2020年10月の間に酪農学園大学において、MPLの手術を行った16頭の犬(メス11頭、オス5頭;平均年齢=5.05歳)の22の膝関節(左8、右14)の医療記録を分析した。方法は関節包縫合、ブロック型造溝、脛骨粗面転移、内側支帯解放、外側種子骨脛骨縫合を含めた。術後の合併症のタイプ(再発を含む)を記録した。

結果:16頭中12頭(75%)は対側のMPLも併発しており、2頭(12.5%)は前十字靱帯断裂を併発していた。平均フォローアップは12.1か月だった。跛行は観察されなかった。グレード4MPLに対する手術の結果は、両側手術、年齢、性別、体重、術前の四頭筋の角度に関係しなかった。手術に続きメジャーな、あるいは破滅的な合併症を示した犬はいなかったが、術後マイナーおよびメジャーな合併症は22の膝関節のうち8(36.4%)に観察された。

結論:犬のグレード4MPLは複雑な整形外科的疾患で、肢の機能を改善するために外科的な膝蓋骨の再調整を必要とする。この研究で使用した外科的方法は、外科的修正なく良好な予後と関係した。(Sato訳)
■犬の化膿性関節炎の103症例の回顧的評価
Retrospective evaluation of 103 cases of septic arthritis in dogs
Vet Rec. 2021 Sep 23;e938.
doi: 10.1002/vetr.938. Online ahead of print.
Tessa F Phillips , Helga F Bleyaert

目的:犬の化膿性関節炎(SA)の原因、診断、治療、再発と結果に対するリスクファクターを調査する

研究計画:5か所の二次診療施設の17年の医療記録から、SAの疑いおよび確認した症例を調査した。

結果:SAは103症例で確認した。自然発生の敗血症性SAは、最も一般的な誘因だった。一般的に罹患した関節は、膝(40%)と肘(24%)だった。既存の変形性関節症(OA)は化膿性関節の63%にあり、再発に関係した(P=0.03)。来院前の抗生物質による治療は、関節液培養陰性に関係した(p=0.014)。成功結果は、早期治療(p=0.001)と直接侵入(p=0.04)あるいは自然発生的原因(p=0.003)によるSAと関係した。再発は、不成功の結果(p=0.004)および体重>30kg(p=0.009)の犬でより確率が高かった。

臨床意義:急性あるいは慢性の単関節症を呈している既存のOAがある大型犬において、SAは鑑別疾患として考慮すべきである。大多数の症例で治療の成功は治療の種類に関係なく達成できた。再発率は低いが、既存のOAおよび体重がより重いことと関係した。治療結果を最大にするにはできるだけ早く治療を実行すべきであるが、理想は経験的抗生物質投与前に関節液サンプルを入手すべきである。(Sato訳)
■寛骨大腿脱臼の猫51頭の非観血的整復による治療結果
Outcome of coxofemoral luxation treated with closed reduction in 51 cats
J Feline Med Surg. 2021 Sep 17;1098612X211041535.
doi: 10.1177/1098612X211041535. Online ahead of print.
Marielle D LeFloch , George S Coronado

目的:この研究の目的は、非観血的に寛骨大腿関節脱臼の整復を行った猫の結果を述べ、再脱臼率を調べることと、罹患した寛骨大腿関節の再脱臼に対する潜在的リスクファクターを調査することだった。

方法:2008年1月から2020年5月までに、Ocean State Veterinary SpecialistsとBay State Veterinary Emergency and Specialty Servicesの電子医療記録から症例の情報を入手した。寛骨大腿関節脱臼の猫51頭から、猫のシグナルメント、寛骨大腿関節脱臼の方向、併発傷害、整復の容易さ、傷害から非観血的整復までの時間、バンデージの利用および結果に関するデータを入手した。結果との関連に対し、データを分析した。

結果:猫の寛骨大腿脱臼の非観血的整復は、51%の成功率だった。非観血的寛骨大腿関節脱臼の成功に統計学的に有意に利益をもたらす唯一のリスクファクターは、バンデージの利用だった(P=0.02)。

結論と関連性:手術を勧める前に、猫の非観血的寛骨大腿関節整復を試みる価値があるかもしれない。非観血的整復後のバンデージ(イーマーあるいはホッブル)の設置は、再脱臼のリスクを減じるかもしれないが、これを評価する今後の研究が必要である。猫の寛骨大腿関節脱臼に対する非観血的整復後の結果は、犬で過去に報告された成功率と同じである。(Sato訳)
■犬の疼痛とQOLに対するマッサージ療法の効果:横断研究
Effect of massage therapy on pain and quality of life in dogs: A cross sectional study
Vet Rec. 2021 Jun 13;e586.
doi: 10.1002/vetr.586. Online ahead of print.
Lisa M Riley , Liam Satchell , Lisa M Stilwell , Natalie S Lenton

背景:臨床的な犬のマッサージは、傷ついた軟部組織を修復するための筋肉組織操作と筋膜リリース法を含む。量的な有効性のデータは欠如している。この横断研究の目的は、Canine Massage Guild UK開業医により施された犬のマッサージ療法に犬はどう反応するのか調べることだった。

方法:2018年、65人の開業医が自身で選択したサンプルで、オーナーの許諾を得た527頭の都合の良いサンプルからの症例を述べる。オーナーや開業医からの報告で、5つの疼痛指標(歩様、姿勢、日々の活動、行動、パフォーマンス)に対する問題の数や重症度、QOLスコアを調査した。

結果:報告された疼痛重症度スコアにおいて有意な減少が、経時的治療中全ての疼痛指標に対して報告され(P<0.001)、各処置により疼痛重症度はより有意に減少した。継続的治療セッションにわたって記録された疼痛指標の数は一定を維持し、変性性疾患や慢性疼痛のある集団と一致した。全ての犬と診断的変数は同様に反応した。治療後の犬は、ポジティブなQOLとなる可能性が有意に高かった。

結論:この横断研究で、犬のマッサージ療法は、歩様、姿勢、行動、パフォーマンス、日々の活動の減少に関し、オーナーや開業医により報告された筋膜および筋骨格痛を効果的に減らすかもしれないと示された。この研究は二重盲検ではなく、コントロール群もないが、マッサージ療法は筋肉傷害、関節炎/他の整形外科的状況からくる典型的な筋膜および筋骨格痛に対し有効な治療であるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■17頭の犬の仙腸関節脱臼の保存的管理:エックス線学的変化と長期フォローアップ
Conservative management of sacroiliac luxation in 17 dogs: Radiographic changes and long-term owner follow-up
Can Vet J. 2021 Mar;62(3):261-265.
Catherine N Stecyk , Stephen C Jones , Eric T Hostnik , Selena Tinga , Nina R Kieves

この研究では、仙腸関節(SI)脱臼を保存的に治療した犬の長期結果を評価する。

仙骨長と比較して腸骨翼の頭側移動を測定した。長期フォローアップはオーナーへの電話聞き取りで行った。短期のエックス線学的変化を分析した。

エックス線学的平均フォローアップ期間は、8週±1.9週で、調査の平均フォローアップ期間は63か月±51か月の17頭の犬を含めた。傷害時の腸骨の頭側移動の平均は、42.1%±21.4%(範囲:9%-86%)だった。再検査時、7/9頭に移動の悪化はなかった。17頭中13頭は2週間以内に負重した。14頭(82%)は3か月以内に跛行が完全に解消した。15頭のオーナー(88%)は優秀な回復を報告し、現在跛行がないことを示している。悪い結果と報告された犬はいなかった。

仙腸関節脱臼の犬は、保存的に治療した時、優良な長期結果となりえる。(Sato訳)
■犬の変形性関節症が関連する疼痛の治療に対し低出力レーザー療法の予備的臨床実験:17頭の回顧的調査
Preliminary Clinical Experience of Low-Level Laser Therapy for the Treatment of Canine Osteoarthritis-Associated Pain: A Retrospective Investigation on 17 Dogs
Open Vet J. 2020 Apr;10(1):116-119.
doi: 10.4314/ovj.v10i1.16. Epub 2020 Mar 30.
Loris Barale , Paolo Monticelli , Massimo Raviola , Chiara Adami

背景:変形性関節症(OA)は犬でよく見られ、QOLに影響する慢性疼痛の原因となり、鎮痛剤に反応しないかもしれない。

目的:この研究の目的は、低出力レーザー療法(LLLT)がOAの犬において、QOLを改善し、全身性鎮痛剤の減量に役立つかどうかを調べることだった。

方法:OAとそれに関連する疼痛があると診断された17頭の飼育犬を含めた。OAの診断は、整形外科的およびエックス線検査により確認した。各犬の疼痛はオーナーによる簡易疼痛調査票(CBPI)で評価し、同様に臨床医によりビジュアルアナログスケール(VAS)とコロラド州犬慢性疼痛スケールで評価した。各研究犬に週1回LLLTを、合計6週間行った。その後、最初のレーザー治療から2、4、6、8週とCBPIを繰り返し、VASは2週目と6週目に再評価した。レーザー関連の副作用の発生を観察した。

結果:CBPIとVASは、治療前の値(11.8±3.6と7.6±0.9)から最初のレーザー治療後(9.2±3.8と5.2±1.1;それぞれp=0.018とp<0.001)に有意に減少し、治療の終了まで低下し続けた。それらの結果と機能の改善をもとに、整形外科医の評価により17頭中13頭で、薬物鎮痛療法は臨床医により2週目に減量した。レーザー関連の副作用は観察されなかった。

結論:この回顧的報告は、犬のOAが関連する疼痛の治療にレーザー治療が有益かどうか明らかにするために必要とされる追加調査のための根拠を提供する。この予備的所見は有望で、OAの犬の鎮痛剤投与を減らし、オーナーの満足度と犬のQOLを改善するのにLLLTは役立つかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■小型から中型犬の内側膝蓋骨脱臼の手術後の合併症
Complications Following Surgical Correction of Medial Patellar Luxation in Small-to-Medium-Size Dogs.
Vet Comp Orthop Traumatol. July 2019;32(4):332-340.
DOI: 10.1055/s-0039-1683872
Matteo Rossanese , Alexander J German , Eithne Comerford , Rob Pettitt , Andrew Tomlinson , Felipe de Vicente

目的:この研究の主な目的は、内側膝蓋骨脱臼を治療した20kg未満の犬の合併症を述べることと、それら合併症に関係するリスクファクターを調べる。

素材と方法:医療記録を再調査し、脛骨粗面転位(TTT)に対する安定化の4方法を基にグループ分けした。動物のシグナルメント、臨床症状、TTT法、他の併用術式、関連する合併症を含む変数を調査した。脛骨粗面骨折あるいは剥離、膝蓋骨再脱臼、インプラント関連の合併症のような特定の合併症と同じ変数の関連を調べるために複数のロジスティック回帰を使用した。

結果:実施された100の処置のうち、37に合併症が見られた。TTT安定化法の中の総合併症率に有意差はなかった。脛骨粗面遠位の皮質の付着の維持は、インプラント関連合併症のリスク低減に関係したが、内側リリースの術式の追加は、内側膝蓋骨左位脱臼のリスク増加に関係した。実施した造溝術の種類は合併症率に影響しなかった。

結論:この研究で、内側膝蓋骨脱臼の手術を行った20kg未満の犬で高率の合併症を認めた。脛骨粗面の遠位皮質付着部の内側リリースおよび維持することは、それぞれ術後合併症のリスク増加および低減に関係する唯一の変数だった。(Sato訳)
■小型/中型犬腫の犬で内側膝蓋骨脱臼に対する片側および1回で両側手術の短期合併症の比較
Comparison of short-term complications between unilateral and single-session bilateral surgery for medial patellar luxation in small/medium breed dogs.
J Small Anim Pract. January 2019;60(1):51-57.
DOI: 10.1111/jsap.12939
L B Sanders , J M Bevan

目的:小型の犬の片側と1回の両側内側膝蓋骨脱臼手術の短期合併症を比較する

素材と方法:内側膝蓋骨脱臼の手術を行った体重13.6kg未満の犬の医療記録を再調査した。実施した手術のタイプ(片側あるいは1回で両側)を基に2群に分けた。術後の膝蓋骨の脱臼グレードと合併症を群間で比較した。

結果:251頭の犬を含めた。両側治療群において、膝蓋骨脱臼のグレード改善はより少なく、術後の内側膝蓋骨脱臼のグレードは高かった。メジャーな合併症の頻度は、片側群(12%)に比べ、両側群(23%)でより高かった。

臨床意義:1回の手術で両側内側膝蓋骨脱臼の手術は、この非無作為化観察研究において、片側手術よりも合併症率が高かった。両側内側膝蓋骨脱臼の犬において、臨床結果を改善し、メジャーな合併症を減らすために、1回で両側を手術するよりも段階的な手術を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の股関節形成異常の原因病理論、有病率、遺伝
Etiopathogenesis of Canine Hip Dysplasia, Prevalence, and Genetics.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2017;47(4):753-767.
Michael D. King

1935年に最初に確認された犬の股関節形成異常は、犬で最もよく診断される整形外科疾患と考えられる。大型および超大型犬種の犬で一般的で、遺伝の複合多遺伝子モデルで遺伝率は比較的低い。

成長期のカロリー摂取を含む外因は、表現型発現に有意な影響を持つ。初期の関節のゆるみは、亜脱臼や異常な摩耗により変形性関節症に進行する。有病率を減らすための選択性繁殖プログラムは、ここまでまずまずの結果を示している。(Sato訳)
■犬の内側鉤状突起疾患のミネラル状態:質量分析法による毛の分析を用いたコホート研究
Mineral status in canine medial coronoid process disease: a cohort study using analysis of hair by mass spectrometry.
Vet Rec. May 2017;180(18):448.
M Davies , J West , C Williams , D S Gardner

いくらかの犬種で、異常な軟骨内骨化に関する発育性骨格疾患は、不均衡なミネラル摂取と関係している。毛の分析は長期のミネラル状態を反映する。

内側鉤状突起疾患(medial coronoid process disease:MCPD)の犬と、そうではない犬の毛のミネラル含量を測定した。

MCPDの犬は、軟骨内骨化に関与する金属酵素に影響することが分かっているミネラルの異なるプロフィールを持つ。

毛のサンプル(合計79:コントロール犬70頭、MCPD犬9頭)の洗浄、キレート化、酸温浸後、ミネラルプロフィール(メジャー7、微量元素25)を誘導結合プラズマ質量分析法で測定した。犬は同じような年齢(コントロール、4.05(1.85-7.70)、MCPD、4.30(3.25-653)中央値(IQR)歳;P=0.78)と性別(コントロール、43/27、MCPD4/5 オス/メス)だった。コントロール犬の28/70頭(40%)とMCPD犬の8/9頭(88%)は不妊手術を受けていた。MCPDの犬の毛の中の銅、硫黄、亜鉛の量は有意に低かった(全てP<0.001)。年齢、性別、不妊状況はミネラル状況に対して影響がなかった。

毛の分析を基に、銅、硫黄、亜鉛を含むミネラル不均衡の、犬MCPDの疾病原因における役割が示唆される。毛のミネラル分析は、影響されやすい子犬のバイオマーカーとして有効性を証明されるかもしれない。(Sato訳)
■ポメラニアン4例の上腕三頭筋腱傷害
Triceps brachii tendon injury in four Pomeranians.
J Vet Med Sci. May 2018;80(5):772-777.
DOI: 10.1292/jvms.17-0318
Ryosuke Echigo , Atsushi Fujita , Ryohei Nishimura , Manabu Mochizuki

外科的に治療した上腕三頭筋腱の傷害を持つポメラニアン4症例を、シグナルメント、傷害の原因、臨床症状、傷害のパターン、術式、術後の外固定、合併症、予後を含むいくつかの臨床所見を評価するため、回顧的に再検討した。

全ての犬は傷害発現後、患肢を拳上し、短時間重度の疼痛が見られたが、疼痛レベルは次第に低下した。4症例の特徴的所見は、肘関節を固定した時の上腕三頭筋腱のテンションがなかった。上腕三頭筋腱傷害のパターンは、腱の中心部の裂傷(n=1)あるいは肘頭付着部の腱断裂(n=3)だった。

3症例の術後にメジャーな合併症はなかったが、1症例は修正手術を必要とした。長期の外側スプリントは、術後の外固定で有効な方法だった。
上腕三頭筋腱傷害の診断は、この傷害を認識していれば難しくはなかった。この傷害の型は、適切な手術と術後の固定で良好な予後となるだろう。(Sato訳)
■外傷性肘脱臼の犬で非観血的整復と保存的管理による治療は観血的整復と外科手術で治療したものより予後が良いのか?
In dogs with traumatic elbow luxation, does treatment using closed reduction and conservative management have a better prognosis than those treated with open reduction and surgery? (Knowledge Summary)
Vet Evid. December 2017;2(4):128. 1-19. 9 Refs
Barnaby Luke Dean

入手できる文献で、非観血的整復により治療した外傷性肘脱臼の症例は、観血的整復と外科的固定により治療した症例よりも長期予後が良いと思われる。そうはいっても、外科的に治療した症例は結果が良くないということが、治療法自体というよりも重症度あるいは慢性度を反映している、あるいはその両方を反映している可能性があると考えることは重要である。

外傷性犬肘脱臼の非観血的整復は、予後の良さに関係するため、全ての症例で出来るだけ早く試すべきである。非観血的整復が不可能な場合、あるいは非観血的整復後の肘の不安定あるいは再脱臼がある場合、外科手術が適応である。関節固定術と、2-4週間のロバートジョーンズ包帯あるいはスプリントバンデージが推奨される。(Sato訳)
■犬の内側肩関節不安定症の人工靭帯による関節包外安定化による治療:39症例(2008-2013)
Treatment of medial shoulder joint instability in dogs by extracapsular stabilization with a prosthetic ligament: 39 cases (2008-2013).
J Am Vet Med Assoc. November 2017;251(9):1042-1052.
Erica M O'Donnell, Sherman O Canapp, Jr, James L Cook, Fred Pike

目的:人工靭帯で関節包外安定化により内側肩関節不安定症(MSI)の外科的治療を行った犬の臨床結果を調査する

計画:回顧的多施設ケースシリーズ

動物:39頭の飼育犬

方法:3カ所の獣医メディカルセンターの医療記録から、臨床検査と関節鏡評価によりMSIを診断し、人工関節を用い関節包外安定化で治療した犬を検索した。研究に含めるにあたり、最低6か月のフォローアップ期間を必要とした。シグナルメント、その犬の機能あるいは使用、臨床症状の持続期間、臨床および診断画像検査データ、MSIグレード(1(軽度)-4(完全脱臼))、フォローアップ期間、合併症、結果データを記録した。

結果:MSIの全てのグレードが存在した。全ての犬でインプラントの設置は成功した。合併症(4メジャーと2マイナー)は39頭中6頭(15%)の犬に見られた;全て治療は成功した。最終フォローアップ時(6-68ヶ月)の機能は39頭中30頭(77%)で完全、9頭(23%)は容認できるものだった。

結論と臨床関連:犬の人工靭帯を用いた関節包外安定化によるMSIの外科的治療は、整形外科処置で容認できると考えられる合併症率だった。全ての犬の結果は成功と考えられた。(Sato訳)
■猫の外科症例85頭における膝蓋骨脱臼の矯正手術に関する合併症
Complications associated with corrective surgery for patellar luxation in 85 feline surgical cases.
J Feline Med Surg. 2015 Apr;17(4):312-7. doi: 10.1177/1098612X14540650. Epub 2014 Jul 2.
Rutherford L, Langley-Hobbs SJ, Whitelock RJ, Arthurs GI.

この目的は、猫の膝蓋骨脱臼(PL)の外科的矯正の術式と術後合併症をまとめる。

71頭の猫の85件の手術を評価する回顧的研究を実施した。4か所の委託病院の記録からPLの外科的管理を行った猫を検索した。

シグナルメント、病歴、PLグレード、方向、矯正外科手術方法、結果を調べた。二項ロジスティック回帰解析で症例の特徴、外科的矯正法、結果との関連性を調べた。結果は、持続性PL(再脱臼)を含むメジャー(修正手術が必要)、およびマイナー合併症として分類した。

術後合併症は26%の症例で発生した;20%はメジャーな合併症で、5%は再脱臼が含まれ、6%はマイナーな合併症だった。過去に同側の大腿骨を骨折した猫は、マイナー(P=0.02、オッズ比=12.67)、メジャー(P=0.03、OR=7.2)、再脱臼(P=0.01、OR=19.25)を含む合併症を起こす可能性が有意に高かった。マイナーな合併症は、グレード4PLでの可能性が有意に高かった(P=0.03、OR=8.5)。メジャーな合併症は脛骨粗面転移(TTT;P=0.03、OR5.57)で可能性が有意に高かった。過去に膝の手術を実施している場合、再脱臼の可能性が有意に高かった(P=0.05、OR=8.00)。両側PL、股関節形成異常、グレード1、2、3PL、抗回転性縫合、あるいは大腿骨滑車溝作成を用いた矯正外科手術は合併症に影響しなかった。

グレード4PL、過去に同側の大腿骨骨折、TTTを実施した場合、過去にひざの手術をしている場合は合併症の可能性が高かった。この情報は、リスクおよび悪化因子の検討を可能にする。(Sato訳)
■大腿骨頭すべり症のメインクーン17頭
Slipped capital femoral epiphysis in 17 Maine Coon cats.
Language: English
J Feline Med Surg. January 2017;19(1):13-20.
Danilo Borak , Nadja Wunderlin , Michael Bruckner , Gunter Schwarz , Andrea Klang

目的:2009年5月から2015年1月の間に、小動物紹介およびファーストオピニオンセンターであるTierklinik Hollabrunnを208頭のメインクーンが訪れ、17頭(8.17%)が大腿骨頭すべり症(slipped capital femoral epiphysis:SCFE)と診断された。同期間、4348頭(全猫種)のうち29頭(0.67%)がSCFEと診断された。

方法:全ての罹患メインクーンに臨床および整形外科検査と診断画像検査を実施した。初診時の年齢、性別、体重、ボディコンディションスコア(BCS)、その疾患の片側あるいは両側の症状、活動レベルと跛行の持続期間、不妊時の年齢、疾患の分かっている家族病歴を記録した。17頭のメインクーンのうち16頭は外科的に治療した。外科的に切除した13頭の大腿骨の組織サンプルを組織学的に検査した。

結果:初診時の平均年齢は21.47ヶ月齢だった;オスとメスの比率は16:1だった;平均体重は7.5kg(範囲5.3-9.3kg);平均BCSは5.06/9.0だった。7頭は両側性だった;活動レベル低下と跛行の持続期間中央値は2週間だった;不妊時の平均年齢は7.7ヶ月(範囲3.0-12.0ヶ月)だった;4頭は同腹子だった。14は大腿骨頭骨頚骨切術、8は股関節全置換術、1はprimary fixationを実施した。

結論と関連:今日、メインクーンの猫で時々だけれどSCFEが報告されている。しかし、この研究の結果は、同期間にTierklinik Hollabrunnに来院した猫の全体の集団よりも、メインクーンは約12倍SCFE発症の確率が高くなったことを示した。メインクーンにおいて、オス、不妊、骨端閉鎖の遅れ、品種特異の高体重がSCFEの病因に重要な役割を持っているかもしれない。(Sato訳)
■アキレス腱修復の管理に失敗した後に腱プレート設置を行った犬の1例
Application of tendon plating to manage failed calcaneal tendon repairs in a dog.
Language: English
Vet Surg. April 2018;47(3):439-444.
DOI: 10.1111/vsu.12775
Eric M Zellner , Michael J Hale , Karl H Kraus

目的:複雑なアキレス腱断裂の治療にプレートの応用とその予後を報告する

研究計画:臨床症例報告

動物:3歳のラブラドールレトリバー

方法:3歳のラブラドールレトリバーが部分断裂を起こしたアキレス腱の治療を受けた。縫合と外固定による2つの主要な腱修復は失敗していた。動物用カッタブルプレートを最初の修復に被せるよう腱全長に設置した。それまで設置していた外固定は維持し、術後3週間にわたり負重しない様に吊り包帯を設置した。補助療法は、腱内への血小板が豊富な血漿の注射とレーザー療法を行った。手術から4週後に外固定を外し、プレートは8週後に除去した。

結果:手術から8週後、完全に発育した繊維結合が吻合部の上に架橋していた。オーナーから術後6か月の時点で正常は活動、2年後には対照的な肢の角度、筋肉の報告があった。

結論:過去にアキレス腱の修復に失敗している1頭の犬において、補助的プレーティングにより素晴らしい長期結果が得られた。
臨床意義:腱のプレーティングは、腱の並置を改善し、ギャップを減らすような追加処置として考慮することができる。(Sato訳)
■大腿骨頭および骨頚切除
Femoral Head and Neck Excision.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2017;47(4):885-897.
Tisha A M Harper

小動物診療において大腿骨頭および骨頚切除は、行われることの多い外科処置である。寛骨大腿関節の痛みの緩和および肢の容認できる機能の回復のために行われる救済処置である。

大腿骨頭および骨頚切除は寛骨大腿関節における重度変形性関節炎の治療に最もよく使用され、全てのサイズあるいは年齢の犬猫に使用できる。この処置は乱用するべきではないし、寛骨大腿関節の整合性が回復できるときは、理想的には使用すべきではない。(Sato訳)
■棘上筋腱障害の犬327頭:回顧的研究
Supraspinatus Tendinopathy in 327 Dogs: A Retrospective Study
Vet Evid. September 2016;1(3):32. 1-14. 51 Refs
Sherman O Canapp , Debra A Canapp, Brittany Jean Carr, Catherine Cox, Jennifer G Barrett

目的:棘上筋腱障害(supraspinatus tendinopathy:ST)の犬に対する臨床所見と治療を報告する

背景:STは棘上筋の腱周囲の裂、石灰化の腱障害、腱症および/あるいは傷害を述べるときに使用され、特にスポーツ犬やパフォーマンス犬の前肢跛行の原因の1つである。

エビデンスの価値:STと診断された327頭の犬の回顧的研究である。

方法:医療記録(2006-2013)から病歴、シグナルメント、治療前、身体検査所見、診断画像および関節鏡所見、併発した肩および肘の病態、行った治療に関し再調査した。

結果:4か月から14歳(平均6.5歳;中央値6歳)の犬をSTと診断した。パフォーマンスおよびスポーツ犬は集団の39.4%で、そのうち58.1%はアジリティー犬だった。49.3%の犬が棘上筋腱の触診で痛みを誘発した。283頭の型のエックス線写真で、13%の症例に石灰化が見られた。肩のMRI検査は31症例で実施し、大結節の付着部および石灰化の棘状筋腱のT1強調画像およびShort T1 Inversion Recovery (STIR) sequencesの高信号を含むSTを示す所見が見られた。一般的な超音波所見は、腱の大きさの増大(76%)、不規則な繊維パターン(74%)、不均一なエコー源性(92.5%)だった。肩の関節鏡検査の最も一般的な所見は、棘上筋の膨隆(82.2%)、肩甲下筋の病態(62.4%)だった。肘の病態は、54.5%で記録された。治療結果は74.6%の犬は非ステロイド性抗炎症剤(NSAID)に反応せず、40.8%の犬はリハビリテーションに反応しなかったと示した。

結論:それらの所見は、肩および/あるいは肘の併発病態は、SEの犬であまり見られなかったことを示唆する。さらにSTはNSAID療法やリハビリ療法に反応しないことも多い。
適応:再生医療のような他の治療は、考慮すべきである。STに対し再生医療の使用や効果を評価する追加研究が今後必要である。(Sato訳)
■犬の膝関節の変形性関節症の変化と整形外科、エックス線、超音波、関節鏡検査結果との相関
Correlation between osteoarthritic changes in the stifle joint in dogs and the results of orthopedic, radiographic, ultrasonographic and arthroscopic examinations.
Language: English
Vet Res Commun. June 2017;41(2):129-137.
Gabriel Ignacio Ramirez-Flores , Javier Del Angel-Caraza , Israel Alejandro Quijano-Hernandez , Don A Hulse , Brian S Beale , Jose Mauro Victoria-Mora

変形性関節症(osteoarthritis:OA)は慢性の変性疾患で、動きの抑制と疼痛を誘発する関節軟骨と軟骨下骨に影響を及ぼす。膝関節の線維被膜は軟骨の栄養を生み出す滑膜を含む。前十字靱帯断裂は関節を傷つけ、OAを生み出す。変形性関節症の診断は臨床的エックス線および超音波検査で開始するが、後者はこの目的で小動物病院においてあまり使用されていない。

この研究の目的は、整形外科、エックス線、超音波検査結果と、膝関節OAを診断する関節鏡評価により見られた構造の解剖学的変化との相関を確証することと、罹患犬におけるリスクファクターを判定することだった。

この研究に組み入れたOAの44頭の臨床症例のうち、88.64%は前十字靱帯が断裂していた。関節液滲出と骨増殖症との相関は0.84だった。

結論として、膝関節OAを扱う時、関節液滲出と骨増殖症との間に良好な診断の一致性があった。膝関節OAの発症に関する犬のリスクファクターは、前十字靱帯断裂あるいは膝蓋骨脱臼、メス犬、体重10kg以上が含まれた。(Sato訳)
■犬の関節周囲の組織球肉腫のリスクを増加させる以前の関節疾患
Prior joint disease is associated with increased risk of periarticular histiocytic sarcoma in dogs.
Vet Comp Oncol. 2017 Aug 23. doi: 10.1111/vco.12338. [Epub ahead of print]
Manor EK, Craig LE, Sun X, Cannon CM.

犬の関節周囲の組織球肉腫(periarticular histiocytic sarcoma:PAHS)は最も一般的な滑膜の腫瘍で、高率で遠隔転移する攻撃的な局所疾患を特徴とする。過去にバーニーズマウンテンドッグのPAHSと以前の関節疾患の関連が論証されており、ロットワイラーも示唆されている。

著者らはこの関連が他の犬種でも存在すると仮説を立て、これを回顧的症例-コントロール分析で調査した。

症例は膝、あるいは肘のPAHSと診断された犬で、コントロールは組織球肉腫と診断されていない年齢、犬種、性別があった犬とした。過去の関節疾患の診断は医療記録と直接飼育者との会話から判定した。データはロジスティック回帰、2-サンプルt検定、カイ二乗検定で評価した。

研究集団は28頭、コントロール46頭で、フラットコーテッド、ゴールデンおよびラブラドールレトリバー、ロットワイラー、イングリッシュブルドッグ、シーズー、オーストラリアンシェパード、スタッフォードシャーテリア、雑種犬だった。PAHSの犬は、コントロール集団と比較して腫瘍に侵された関節で、過去に関節疾患があった確率が高かった(オッズ比=13.42、P<0.0001、95%信頼区間=4.33-48.63)。膝のPAHSの犬の88.2%が、腫瘍に侵された関節で過去に関節疾患があり、最も多いのは前十字靱帯断裂だった。

この研究は、過去にバーニーズマウンテンドッグと以前の関節疾患との関連が分かったことが、他の犬種にも当てはまることを確認した。原因となる関連性をさらに調査する追加研究が必要である。(Sato訳)
■BioMedtrix TATE(R)肘関節形成術のX線、外科医および飼い主の評価
Radiographic, Surgeon and Owner Assessment of the BioMedtrix TATE(R) Elbow Arthroplasty.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):726-35.
Ricardo J R De Sousa , Kevin J Parsons , Martin R Owen , James Grierson , W Malcolm McKee , Elvin Kulendra , Neil J Burton

目的:犬におけるBioMedtrix TATE肘関節形成システムの長期エックス線および臨床結果を報告する。評価はエックス線写真、外科医ベースのアンケート、とLiverpool osteoarthritis in dogs (LOAD)犬の簡易疼痛調査票(canine brief pain inventory:CBPI)アンケートを使用した結果の飼い主の評価で行った。

研究計画:回顧的多施設ケースシリーズ

動物:TATE肘関節形成術を行った飼育犬

方法:イギリスでTATE肘関節形成術を行っている外科医と、手術した犬の飼い主にアンケートを配布した。飼い主にはLOADとCBPIアンケートに答えてもらった。外科医と飼い主に答えてもらったアンケートと犬のエックス線写真をまとめて、分析した。

結果:外科医のアンケートとエックス線写真は32頭の犬の33の肘で得られ、飼い主のアンケートは19頭の犬に関して得られた。周術期、短期、中期合併症率は60%、15%、15%だった。構成部分アライメントのエックス線評価で、カートリッジの62%は外反、あるいは内反のアライメント不良を示し、カートリッジの56%は尺骨の長軸に内側あるいは外側に関連して移動していた。構成部分アライメントと最終の臨床結果に有意な関連はなかった。外科医は24%の犬は完全、52%は受け入れることができる、24%は受け入れられない結果と報告した。飼い主は術前から最終の状態で痛みの程度、痛みによる干渉が有意に低下したが、可動性スコアに変化はないことを示した。

結論:コンポーネント設置において高い合併症率と変動性がTATE関節形成術で記録された。しかし、コンポーネントのアライメント不良は臨床結果に悪い影響を与えなかった。最終的な臨床結果は、多くの両例で可動性スコアの変化がないにもかかわらず、痛みの程度と干渉スコアの有意な低下を示し、好ましいものだった。(Sato訳)
■37頭の犬の外傷性肘脱臼後の長期結果に対する多施設回顧的研究
Multi-centre retrospective study of long-term outcomes following traumatic elbow luxation in 37 dogs.
Language: English
J Small Anim Pract. August 2016;57(8):422-8.
D Sajik , R L Meeson , N Kulendra , C Jordan , D James , I Calvo , M Farrell , E Kulendra

目的:外傷性の犬の肘脱臼の最適な治療に関するガイドラインは限られており、長期機能的結果の情報はない。ここで、一連の外傷性肘脱臼に対する整復と安定化方法を報告し、長期アンケートベースの追跡調査を加えた臨床結果を述べる。

方法:5か所の二次診療施設で治療した犬の外傷性肘脱臼(2006-2013)の回顧的再調査。記録したデータはシグナルメント、脱臼原因、整復までの時間、整復方法、術式、整復後のケアと合併症だった。アンケートによる追跡調査は全ての症例に試行し、オーナーには犬の簡易疼痛調査票に記入してもらった。

結果:27頭の犬を組み入れた。脱臼の最も多い原因は、交通事故だった(n=22)。20症例は外科的に治療した。7頭はメジャーな術後合併症を起こした:再脱臼(n=6)、インプラントを除去しなければいけない感染(n=1)。6頭の再脱臼のうち4頭は、他にも整形外科的傷害がある犬で起こった。22頭のオーナーに犬の簡易疼痛調査票に回答を得た:13人は優良、6人は非常に良好、1人は良好、2人はまずまずな結果だった。結果は整復法に関係しなかった。

臨床意義:最初の閉鎖的整復、うまくいかなければ続いて外科的安定化により、犬の外傷性肘脱臼の多くは良好から優良な結果が得られる。再脱臼は最も多いメジャーな合併症で、複数の整形外科的傷害のある犬で再脱臼の発生はより高かった。(Sato訳)
■ある犬集団において変形性関節炎の治療に対する自家蛋白液の1回の関節内注射の評価
Evaluation of a Single Intra-Articular Injection of Autologous Protein Solution for Treatment of Osteoarthritis in a Canine Population.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):764-74.
Audrey W Wanstrath , Bianca F Hettlich , Lillian Su , Ashley Smith , Lisa J Zekas , Matthew J Allen , Alicia L Bertone

目的:犬の変形性関節炎(osteoarthritis:OA)の治療で、自家蛋白液(autologous protein solution:APS)の関節内注射を1回行ったときの安全性と効果を評価する

研究計画:前向き、無作為、盲検、プラセボ-コントロール予備臨床試験。

動物:膝あるいは肘関節のOAが理由で一方の肢が跛行している飼育犬(n=21)

方法:身体、跛行検査及び画像検査によりOAを確認した跛行している犬を、無作為にコントロールと処置群に振り分けた。オーナーには処置を隠し、疼痛(University of Pennsylvania Canine Brief Pain Inventory)と跛行の程度(Hudson Visual Analogue Scale [HVAS])にスコアを付けてもらった。体重負荷はkinetic gait analysisで評価した。犬にはAPS(処置群)か生理食塩水(コントロール群)を関節内に注射した。注射前、注射から2週、12週後に評価を実施した。

結果:処置前の値と比較して、APS処置のデータは12週目の疼痛スコア(基準から25.6%改善)、跛行スコア(基準から15%改善)、peak vertical force(PVF;N/kg;基準から14.9%増加)、vertical impulse(Ns/kg)およびstance時間で標準化したPVF(N/kg/s)の有意な改善を示した。コントロール群の犬はオーナーが評価した指標が2週目に改善したが、force plate 値は改善せず、12週目には処置前の値からスコア、あるいはforce plate値の有意な改善はなかった。

結論:APSの注射により12週目には、犬のOAの関節に関係する疼痛、跛行スコアを減少させ、負重を増加させた。このことは犬のOAの治療においてAPS療法が有益かもしれないという予備的エビデンスを提供し、追加の研究の続行を支持する。(Sato訳)
■原発性免疫介在性多発性関節炎の犬の治療においてプレドニゾンとシクロスポリンの効果の比較
Comparison of the efficacy of prednisone and cyclosporine for treatment of dogs with primary immune-mediated polyarthritis.
J Am Vet Med Assoc. February 15, 2016;248(4):395-404.
Amy C Rhoades; William Vernau; Philip H Kass; Melissa A Herrera; Jane E Sykes

目的:犬の原発性免疫介在性多発性関節炎(IMPA)の治療で、シクロスポリンとプレドニゾンの効果を比較する

計画:無作為化対照臨床試験

動物:原発性IMPAの飼い犬20頭

方法:無作為に犬にプレドニゾン(開始1mg/kg、PO、q12h;n=10)か、シクロスポリン(5mg/kg、PO、q12h;10)を90日間投与した。シクロスポリン投与犬には、最初の7日間は鎮痛処置としてカルプロフェン、トラマドール、あるいは両方を投与した。0、14、45、90日目にデータ収集、身体検査、関節液の細胞分析を実施した。シクロスポリン投与犬は7-17日目にトラフ全血シクロスポリン濃度を測定した。治療失敗は、14日目に臨床的改善が見られない、45日目に細胞学的改善がない、あるいは副作用で治療の変更が必要な時と定義した。

結果:プレドニゾン投与犬7頭とシクロスポリン投与犬7頭で治療は成功した。45日目の関節液の細胞学的異常がない犬は、プレドニゾン投与犬5頭、シクロスポリン投与犬8頭だった。プレドニゾン投与犬は、シクロスポリンと比べて多尿、多渇、多食を起こす確率が高かった。日和見感染(すなわち毛包虫症、エリジペロスリックス菌血症)は、シクロスポリン投与犬2頭、プレドニゾン投与犬0頭で確認され、シクロスポリン投与犬1頭に下痢がおこり、治療中止が必要だった。

結論と臨床関連:評価した犬の頭数は少なく一般化が制限されるが、この研究の結果は、犬のIMPAの治療に対し、シクロスポリンはプレドニゾンの適した代替え薬としての見込みがあると示唆された。(Sato訳)
■猫特異的な抗NGF抗体による疼痛を伴う変性性関節症に罹患した猫における運動性の向上: A Pilot Proof of Concept Study
A Feline-Specific Anti-Nerve Growth Factor Antibody Improves Mobility in Cats with Degenerative Joint Disease?Associated Pain: A Pilot Proof of Concept Study
J Vet Intern Med. 2016 Jul;30(4):1138-48. doi: 10.1111/jvim.13972. Epub 2016 Jun 22.
Gruen ME, Thomson AE, Griffith EH, Paradise H, Gearing DP, Lascelles BD.

【背景】 神経成長因子(Nerve growth factor:NGF)に対する中和抗体は、齧歯類のモデルや、自然発生した変性性関節症(Degenerative Joint Disease:DJD)による疼痛を認めるイヌや慢性痛をもつヒトで鎮痛作用が認められる。

【目的】 疼痛と運動障害を伴う変性性関節症に罹患した猫における猫用に作成された猫用抗-NGF抗体(NV-02)治療の効果の評価

【動物】 疼痛と運動障害を伴う変性性関節症に罹患した猫34例

【方法】 プラセポコントロールパイロット盲検化臨床試験において、NV-02投与群(0.4mg/kg SC【n=11】、0.8mg/kg SC【n=12】)もしくはプラセボ(生食 SC【n=11】)にランダムに振り分けられた。行動性は客観的に評価された。加えて、オーナーはclinical metrology instruments(client-specific outcome measures 【CSOM】 and feline musculoskeletal pain index 【FMPI】)を第0(screening)、14(baseline)、35、56と77日を完了した。客観的な行動性データを評価するために繰り返しする測定のモデルが使用された。
【結果】 NV-02は治療後2(P=.035)、3(P=.007)、4(P=.006)、5(P=.007)、6(P=.017)週間後と全測定期間の客観的に測定された行動性が明らかに増加した。CSOMスコア(P=.035)と疼痛(P=.024)は明らかに投与後3週目において明らかに効果が認められた。プラセボ群のオーナーの45%と比較して、治療群の83%のオーナーが投与した処置を正確に見分けた(P=.013)。治療に関係する副作用は認められなかった。

【結論】 これらのパイロットデータはDJDに関連した疼痛がみられる猫において猫用に作成された猫用抗NGF抗体の6週間隔のポジティブな鎮痛効果を証明した。 (Dr.Masa訳)

コメント:客観的なデータとして用いられているAccelerometerの妥当性と、8週目以降に於ける効果の減少が気になりますが、NSAIDs以外で使える鎮痛薬が出ることは、猫では特に、待望の製品ですので、使えるようになることを期待します。
■変形性関節症の犬におけるEP4プロスタグランジンレセプター拮抗薬(PRA)のgrapiprantの前向き無作為化、盲検、プラセボ-コントロール多施設臨床研究
A Prospective, Randomized, Masked, Placebo-Controlled Multisite Clinical Study of Grapiprant, an EP4 Prostaglandin Receptor Antagonist (PRA), in Dogs with Osteoarthritis.
Language: English
J Vet Intern Med. 2016 May-Jun;30(3):756-63.
L Rausch-Derra , M Huebner , J Wofford , L Rhodes

背景:この研究で変形性関節症(OA)の犬における疼痛の治療のため、grapiprantの有効性と安全性を評価した。

仮説/目的:オーナーや獣医師によるOAの犬の疼痛の評価で測定した疼痛をgrapiprantは緩和するだろう。別の目的はgrapiprantの安全性の評価だった。

動物:OAの285頭の飼育犬を組み入れ、有効性分析で評価可能な262症例をgrapiprantあるいはプラセボで治療した(各群N=131)。

方法:この前向き無作為化盲検プラセボ-コントロール研究で、犬を1日1回grapiprant(2mg/kg)経口投与あるいはプラセボで治療した。オーナーには0、7、14、21、28日目に犬簡易疼痛調査票(CBPI)を使用し評価してもらった。成功はCBPIの改善とした。獣医師の評価はスクリーニング時、14、28日目に行った。安全性の評価は、身体検査、臨床病理結果の評価、オーナーの観察で行った。

結果:grapiprantは28日目にプラセボと比べて疼痛を改善した(治療成功、それぞれ48.1%と31.3%;P=0.0315)。grapiprantの疼痛干渉スコア(PIS)と疼痛程度スコア(PSS)はコントロールよりも改善した(それぞれP=0.0029と0.0022)。獣医師の評価はgrapiprant投与犬の方が有意に良かった(P=0.0086)。概ねgrapiprantには良く許容したが、投与犬のより高い割合(17.02%)でプラセボ(6.25%)よりも時折の嘔吐が見られた。

結論と臨床意義:grapiprantはOAの犬の疼痛緩和に有効な治療で、現在のオプションよりも許容性の良い治療様式かもしれない。(Sato訳)
■犬の広背筋フラップによる上腕三頭筋の再建を行った一症例
Triceps brachii muscle reconstruction with a latissimus dorsi muscle flap in a dog.
J Am Vet Med Assoc. January 15, 2015;246(2):226-30.
Michael M Pavletic; Russell Kalis; Patricia Tribou; Pam J Mouser

症例記述:6歳のメスのボーダーコリーの右前肢の重度変形を検査した。検査の3か月前に、その犬はカウチから不恰好に落下し、右前肢の急性跛行を呈し、72時間後には負重しなくなった。

臨床所見:身体検査で、その犬は胸壁に対し尾側に足を拳上し、肩は固まり、肘は伸びていた。右の上腕三頭筋は委縮し、収縮して結果として右の肘関節の操作ができないような持続性のテンションバンド効果を起こしていた。三頭筋の物理的変化が、肢の機能喪失の主な原因と考えられた。

治療と結果:同側広背筋の持ち上げと転位による外科治療を行った。上腕三頭筋は肩付着の近位3cmで横断した。分離切開で、右の広背筋を拳上し、2つの切開の間の皮下にトンネルを作って通した。それから筋肉の位置を決め、分かれた三頭筋群の近位および遠位辺縁に縫合した。2週間後、理学療法を開始した。2か月後、ほとんどの歩行は通常通りとなった(9/10段階)。

臨床関連:広背筋を持ち上げ、変位する術式は比較的簡単に実施できた。この症例で機能的結果を導くのに理学療法は重要な要素だった。この方法は三頭筋群が重度の損なった同様の患者の治療に考慮できるかもしれない。(Sato訳)
■コンパニオンアニマルにおける可動域とストレッチングの原則と応用
Principles and application of range of motion and stretching in companion animals.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2015;45(1):57-72.
Denis J Marcellin-Little; David Levine

外傷後、手術後、あるいは慢性的な状況の患者において最適な機能は、関節、筋肉、腱、筋膜および皮膚の適切な動きを必要とする。可動域とストレッチングエクササイズは筋骨格組織の動きを維持、改善するためのコンパニオンアニマルのリハビリプログラムで一般に使用される。可動域エクササイズとストレッチングは形成から癒着を防ぎ、瘢痕組織リモデリングを助け、筋緊張を改善し、さらなる障害発症を予防する。ストレッチングは動きの喪失を避け、喪失した関節の動きを回復するのに役立つ。ストレッチングは用手、外固定の使用あるいは治療的運動を用いて行われる。可動域の注意深い考証が必要である。(Sato訳)
■犬のグレード4膝蓋骨内方脱臼の矯正手術後の結果:47膝(2001-2012)
Outcome Following Surgical Correction of Grade 4 Medial Patellar Luxation in Dogs: 47 Stifles (2001-2012).
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 May-Jun;52(3):162-9.
Eric C Hans , Sharon C Kerwin , Alan C Elliott , Ryan Butler , W Brian Saunders , Don A Hulse

グレード4/4膝蓋骨内方脱臼(MPL)は、跛行を解消するため膝蓋骨の外科的再調整を必要とすることが多い犬の膝の複雑な疾患である。手術後の結果はあまり述べられていないままである。

グレード4MPLの外科的矯正に対し、医療記録を回顧的に再調査した。シグナルメントと検査所見、実施した術式、合併症、臨床結果を報告した。術後のメジャーな合併症発生と容認できない機能の関係に対し、統計学的にデータを解析した。

41頭の47の膝を含めた。膝蓋骨の再調整に最も多く利用していた術式は、大腿骨滑車形成術、脛骨粗面転位術、関節包の調節の組み合わせだった。院内の獣医学的検査は、術後中央値69日目に実施されていた(範囲30-179日)。完全な機能は42.6%(n=20)で報告された。容認できる機能は40.4%(n=19)で報告された。容認できない機能は17%(n=8)で報告された。全体の合併症率は25.5%(n=12)で、メジャーな合併症に対する修正外科手術は12.8%(n=6)で必要だった。

矯正的な骨切術はメジャーな合併症と関係があった(P<0.001)。一般に、グレード4MPLの外科的矯正後、後肢の機能は改善する;しかし、完全な機能の回復は慎重に考慮すべきである。(Sato訳)
■犬に対するグルコサミンの経口液、チュワブル、錠剤投与後の吸収比較
Comparison of Glucosamine Absorption After Administration of Oral Liquid, Chewable, and Tablet Formulations to Dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Mar-Apr;52(2):90-4.
Lara K Maxwell; Penny Regier; Satyanarayana Achanta

グルコサミン(GS)は関節機能をサポートするため栄養サプリメントとして投与されることが多い。多くのサプリメントが発売されているが、犬の経口吸収に対する製剤形態の影響は不明である。

この研究の目的は、硫酸あるいは塩酸グルコサミンと硫酸コンドロイチンを含む液体、チュワブル、錠剤において、GSの相対的生物学的利用能を判定することだった。

無作為化交差研究において、処置間のウォッシュアウト期間1週間で、8日の間毎日サプリメントを投与した。液体、あるいは錠剤Aを4頭の犬に投与し、液体あるいは錠剤Bを追加の4頭に投与した。

機能食品暴露が、GSフリーベースの投与した量に標準化した時、全て3製剤で同様の相対的生物学的利用能を判定した。しかし、量を標準化した最大血漿GS濃度は、2つの錠剤(3.1±0.6と2.1±0.6μg/mL)よりも液体サプリメント(5.5±0.5μg/mL)で高かった(P<0.001)。同様に、最大血漿GS濃度の到達時間は、2つの錠剤(4.2±0.6と5.0±0.6時間)よりも液体(0.7±0.5時間)で短かった(P<0.001)。

それらのデータは、犬の関節サプリメントの製剤形態が、グルコサミンの経口吸収に影響することを示す。(Sato訳)
■犬のsliding humeral osteotomyの中長期評価
Medium and long term evaluation of sliding humeral osteotomy in dogs.
Vet Surg. October 2014;43(7):804-13.
Kristin M Wendelburg; Brian S Beale

目的:犬のsliding humeral osteotomy(SHO)の中期および長期効果を評価する

研究計画:前向き研究

動物:犬(n=32)

方法:カルテから歩行板データ、エックス線写真などのデータ(2008-2010)を収集し、SHO前と最終評価時に犬の健全性の15の質問にオーナーに答えてもらった。

結果:2頭を除き、全ての犬の手術した肢は術前の床反力を超え、反対側の肢と比べて床反力の統計学的に有意な上昇傾向があった。IEWGプロトコールを使用したエックス線上の骨増殖は1頭を除き手術した肢で進行しなかった。多くのオーナー(90%)は術前の跛行よりも最終評価時には減少したと感じていた。10頭の犬は術後合併症があった;6頭はメジャーで追加の手術が必要だった。

結論:犬においてSHOはエックス線上の骨増殖の進行を制限するのに実施でき、罹患肢の使用を増加させるが、合併症率は高く、結果を改善するのに更なるインプラントあるいは技術の修正が必要である。(Sato訳)
■犬の上腕顆の安定化に対するシャフトスクリューの臨床的評価
Clinical assessment of a shaft screw for stabilization of the humeral condyle in dogs.
Vet Comp Orthop Traumatol. 2014;27(3):179-85.
A P Moores; M S Tivers; J Grierson

目的:犬の上腕顆骨折(HCF)および上腕顆の不完全骨化(IOHC)に対する4.5mmシャフトスクリューの使用を報告することと、合併症のリスクファクターを評価すること

方法:HCFあるいはIOHCを4.5mmシャフトスクリューで管理し、最低6か月経過観察した犬を調べた。合併症のリスクファクターを調べるためにカルテからのデータを使用した。オーナーへのアンケートと獣医師の再検査による長期経過観察を行った。

結果:40頭の犬の43の肘を治療した(14 IOHC、29 HCF)。4症例(9%)にマイナーな合併症が、10症例(23%)にメジャーな合併症が見られた。メジャーな合併症に対する統計学的に有意なリスクファクターはなかった。感染によりIOHC3症例からシャフトスクリューを除去した。外側アプローチを行ったIOHC8症例中4症例にメジャーな合併症を認めたのに対し、内側アプローチを行った6症例はそれを認めなかったが、この差は有意ではなかった(P=0.085)。IOHC症例12頭中9頭、HCF症例23頭中20頭は、長期経過観察時に優良あるいは良好に肢を使用していた(中央値106週、範囲26-227週)。全ての骨折は治癒したが、IOHC裂の治癒は不定だった。シャフトスクリューの疲労破損は見られなかった。

臨床意義:IOHCおよびHCFの管理に対するシャフトスクリューの使用による合併症は比較的低率(過去の報告と比較して)で、良好な長期結果が得られる。(Sato訳)
■内側鉤状突起疾患に罹患したラブラドールレトリバーでエックス線検査上の関節症と軟骨病理とは相関するか?
Does radiographic arthrosis correlate with cartilage pathology in labrador retrievers affected by medial coronoid process disease?
Vet Surg. February 2014;43(2):155-65.
Michael Farrell; Jane Heller; Miguel Solano; Noel Fitzpatrick; Tim Sparrow; Mike Kowaleski

目的:内側鉤状突起(MCP)疾患に続発した肘の変形性関節症のラブラドールレトリバーで、エックス線検査上の関節症と関節鏡検査上の軟骨病理を比較した

研究計画:回顧的疫学研究

動物:ラブラドールレトリバー(n=317;592の肘関節)

方法:前肢跛行、肘痛があり、完全な肘のエックス線写真セット、包括的関節鏡外科レポートの揃ったラブラドールレトリバーを確認するため回顧的に(2007年6月-2011年6月)データを集めた。修正したthe International Elbow Working Group (IEWG) scoring systemを用い、各エックス線写真の肘突起の骨増殖および尺骨滑車下硬化にスコアを付けた。外傷性MCP骨折、上腕骨顆骨軟骨症、肘突起癒合不全に侵された肘は除外した。各肘関節に対する複合的軟骨スコア(CCS;0=正常、1=軽度、2=中程度、3=重度)を付けるため関節鏡検査の報告を使用した。順序回帰解析でエックス線検査の関節症スコアとCCSの関連性を調べた。

結果:エックス線検査の肘の関節症とCCSの間に有意な関連があった(P<.001)。よりエックス線検査によるスコアが高い肘は、低いスコアの肘よりも有意にCCS増す確率が高かった。ひと月経過するごとに、より高いCCSとなるオッズは0.016(1.6%)増加した。

結論:MCP疾患のラブラドールレトリバーにおいて、エックス線検査による関節症は、関節鏡による軟骨病理の重症度を予測するのに使用できる。(Sato訳)
■750件の選択的肘関節鏡検査後の短期合併症率の後ろ向き研究
A retrospective study of the short-term complication rate following 750 elective elbow arthroscopies.
Vet Comp Orthop Traumatol. 2014;27(1):68-73. doi: 10.3415/VCOT-13-01-0017. Epub 2013 Oct 1.
Perry KL, Li L.

関節鏡検査は関節表面の検査のゴールドスタンダードで、一般に犬の肘異形成の症例の診断および治療に提唱される。一般に関節鏡検査は低リスク処置と考えられるが、それにかかわる合併症率に関する小動物獣医文献に情報は少ない。

10年に渡る後ろ向き研究で、750件の選択的肘関節鏡検査を評価した。繰り返し外科処置を必要とした合併症はメジャーと定義し、4.8%の犬に見られた。マイナーな周術合併症は17.1%の犬に発生した。計画外の関節切開に変更を必要とした関節鏡処置の失敗は、このカテゴリーで最も多く遭遇した合併症で5%の犬で報告されている。

マイナーな術後合併症は10.7%の犬で発生し、術後跛行の悪化(5.5%)、重度疼痛(2.8%)、重度腫脹(2%)、感染(0.2%)、一過性神経伝導障害(0.2%)などだった。合計204頭の犬が術後再検査に戻り、7%の犬の跛行は術前に見たものよりひどくなっていた。

この研究の結果は、選択的肘関節鏡検査に関するメジャーな合併症発生率は低いが、マイナーな周術および術後合併症発生率は懸念があることを示す。これらのことは、インフォームドコンセントを達成する術前の飼育者との話し合いで獣医師の補助となるだろう。(Sato訳)
■3頭の猫における筋骨格疾患と外傷に対するガバペンチンの長期使用
Long-term use of gabapentin for musculoskeletal disease and trauma in three cats.
J Feline Med Surg. June 2013;15(6):507-12.
Nina D Lorenz; Eithne J Comerford; Isabelle Iff

ガバペンチンは人医で急性および慢性疼痛の管理に広く使用されている。作用の正確なメカニズムはいまだ決定していないが、動物での使用は増加している。猫の鎮痛に対するガバペンチンの臨床的使用は、レビュー文献と症例報告1つで報告がある。特に猫における慢性疼痛管理は、獣医外科医にとって難しい問題である。

3頭の猫の筋骨格痛あるいは頭部外傷に対しガバペンチンの長期使用を詳しく述べる。

全ての猫に平均投与量6.5mg/kg12時間毎のガバペンチンを数か月にわたり投与した。攻撃、ヒトの干渉を避ける、食欲喪失などの疼痛を思わせる臨床症状は、鎮痛療法の一部あるいは単独薬剤としてガバペンチンの投与により減少が見られた。全ての猫のオーナーに対する長期追跡調査では、満足な疼痛管理が得られ、投与は簡単で、投与期間中に明確な副作用は見られなかったことを示した。

著者らは頭部外傷や筋骨格疾患の症例における疼痛管理でガバペンチンの長期投与は潜在的に有効性を結論付ける。猫において慢性疼痛の管理に対し貴重な補助剤と思われ、その臨床的使用と安全性に関してさらに調査すべきである。(Sato訳)
■顎関節障害の犬と猫のCT所見:58症例(2006-2011)
Computed tomographic findings in dogs and cats with temporomandibular joint disorders: 58 cases (2006-2011).
J Am Vet Med Assoc. January 1, 2013;242(1):69-75.
Boaz Arzi; Derek D Cissell; Frank J M Verstraete; Philip H Kass; Grayson D Duraine; Kyriacos A Athanasiou

目的:顎関節(TMJ)障害の犬と猫のCT所見を述べる

デザイン:回顧的症例シリーズ

動物:41頭の犬と17頭の猫

方法:2006年から2011年の間に歯科および口腔外科専門施設で検査した犬と猫について、カルテと頭蓋のCT像を再調査した。

結果:評価した142頭の犬と42頭の猫のうち、41頭の犬と17頭の猫のCT所見は顎関節障害に一致した。犬で最も一般的な顎関節障害は変形性関節症だった;しかし、ほとんどの症例で変形性関節症に加えて他の顎関節障害があった。変形性関節症は顎関節の外側よりも内側に見られる頻度が高い一方で、背側および腹側区画の変形性関節症関与の頻度に有意差はなかった。猫において、骨折が最も一般的な顎関節障害で、続いて変形性関節症だった。顎関節骨折、形成異常、強直症、脱臼、腫瘍の全ての犬と猫に臨床症状は観察された;しかし、変形性関節症のみの犬15頭中4頭、猫4頭中2頭には臨床症状があった。

結論と臨床関連:結果は、顎関節障害はいろいろな組み合わせで存在することが多いと示した。変形性関節症は犬では最も一般的、猫では2番目に多い顎関節障害だった。口顔面障害と疼痛症状が疑われる犬と猫において、CT検査は顎関節障害の診断に対するツールとして考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の肘形成異常:原因病因と現在の推奨治療
Canine elbow dysplasia: Aetio pathogenesis and current treatment recommendations.
Vet J. April 2013;196(1):12-9.
Jacob Michelsen

肘形成異常は大型および超大型犬種の一般的に衰弱させるような状況である。環境的要因や複雑な遺伝は、その疾患の発生に対し示唆される2つの原因病因を持つ肘形成異常の素因のある犬において役割を果たす。

当初骨軟骨症が肘形成異常の原因と思われていたが、より最近のエビデンスは、ほとんどの症例において最も原因の可能性があるものとして様々な形の関節不調和を強く支持している。橈尺骨長の違い、上腕尺骨の弯曲のミスマッチが内側鈎状疾患や肘突起癒合不全の原因にかかわっているが、橈骨切痕不調和および二頭筋/上腕筋筋力が役割を果たす可能性がある犬もいる。

肘形成異常の治療は、基礎にある原因の確認と共に、断片化した鈎状突起、骨軟骨症、軟骨損傷、肘突起癒合不全などの関節病理に向けられるべきである。

最後に、より進んだ肘疾患に対するいくつかの緩和療法が開発されており、従来の内科管理と比べ結果を改善するかもしれない。(Sato訳)
■犬の膝蓋骨外方脱臼に対する矯正手術後の合併症:36症例(2000-2011)
Complications after corrective surgery for lateral patellar luxation in dogs: 36 cases (2000-2011).
J Am Vet Med Assoc. February 15, 2014;244(4):444-8.
Stephanie L Shaver; Kelli N Mayhew; Jessie S Sutton; Philipp D Mayhew; Jeffrey J Runge; Dorothy C Brown; Philip H Kass

目的:膝蓋骨外方脱臼(LPL)の犬における矯正手術後の合併症の頻度と程度を判定することと、再脱臼に対するリスクファクターを確認すること

デザイン:回顧的ケースシリーズ

動物:47の罹患膝関節をもつ36頭の飼育犬

方法:2000年から2011年の間に2つの獣医教育病院のうち1つで外科的矯正を行った犬の記録を再調査した。シグナルメント、脱臼のグレード、整形外科的共存症、術式、合併症の頻度とタイプ、2回目の手術を行ったかどうかに関するデータを分析した。

結果:47の罹患膝関節を持つ合計36頭の犬が基準に合致した。47のうち24(51.1%)の膝関節で合併症が記録された;メジャーな合併症は47のうち18(38.3%)の膝関節で起こった。全ての合併症は獣医師による検査を通して確認された。最もよく見られた合併症は再脱臼で、47のうち10(21.3%)の膝関節で検出された。1回の麻酔で両側の手術を行った犬は、片側の手術を行った犬よりも再脱臼が12.5倍の確率となった。

結論と臨床関連:LPLに対する矯正手術後の合併症率は高く、この集団で最も一般的な合併症は再脱臼だった。段階的な両側の手術を実施すれば、再脱臼のリスクは減るかもしれない。(Sato訳)
■犬の膝蓋骨外方脱臼:65頭の回顧的研究
Lateral patellar luxation in dogs: a retrospective study of 65 dogs.
Vet Comp Orthop Traumatol. 2014;27(2):130-4.
S Kalff; S J Butterworth; A Miller; B Keeley; S Baines; W M McKee

目的:非外傷性膝蓋骨外方脱臼の犬のシグナルメントと臨床特性を報告することと、術後の合併症およびその結果を報告する

方法:複数施設の回顧的研究を行った。膝蓋骨外方脱臼を呈する犬の医療記録を再検討し、シグナルメント、臨床的特徴、治療を記録した。外科的に治療した犬では、その結果と合併症を調査した。

結果:65頭の犬(95の膝)を含めた;39頭はオスで、来院時の年齢中央値は10か月だった。犬種の分類は小型(n=6)、中型(n=23)、大型(n=27)、超大型(n=9)だった。膝蓋骨外方脱臼の分類は、グレードI(n=14)、II(n=41)、III(n=29)、IV(n=11)だった。立体配置的異常は34の膝で認められた;外反膝が最も一般的だった(n=28)。より高いグレードの脱臼は来院時の年齢がより若い(P=0.032)、外反膝(p=0.01)と関係していた。手術は58の膝で実施し、そのうち22は1つ以上の合併症が持続した;16の合併症は保存的に管理し、4つはインプラントの除去、6は修正手術を行った。外科医が評価した結果が、再検討で利用できる51頭のうち47頭で良、あるいは優良だった。

結論:非外傷性膝蓋骨外方脱臼は、中型や大型犬種の犬で優勢な疾患である。膝蓋骨内方脱臼といくつかの同じような臨床特性があり、同様の方法で外科的に治療でき、同じタイプの合併症と結果が予想される。(Sato訳)
■犬のリハビリテーションにおける運動:階段や坂のぼり中の前肢の可動域
Exercises in canine physical rehabilitation: range of motion of the forelimb during stair and ramp ascent.
J Small Anim Pract. August 2013;54(8):409-13.
J G Carr; D L Millis; H-Y Weng

目的:健康な犬で上り坂の歩行と比較して、階段上りの前肢の総関節可動域を評価する

方法:正常な犬の前肢運動力学(可動域、屈曲、伸展)を階段または上り坂の歩行中で比較し、平地の障害がない速歩と比較した。整形外科や神経学的跛行の所見がない8頭の成犬を特注の上り坂および階段を歩かし、2次元運動力学システムで評価した。

結果:健康な犬で、坂道や階段上りは一貫して平地の速歩よりも可動域が大きく、坂道を上ることは、階段よりも可動域が有意に大きかった(P<0.05)。肩の屈曲および伸展、肘の伸展、手根の屈曲は全てにおいて階段よりも坂道を上っている間、有意に大きかった。平地での肩の進展は、階段を上るときよりも有意に大きかった。

臨床的意義:前肢の傷害後のリハビリテーションの運動を計画するとき、関節の可動域を増加させるので階段および坂道を上ることを考慮することができる。坂道を上ることは前肢関節可動域を最大限に増加させる。(Sato訳)
■加齢による犬の上腕骨頭の軟骨変性
Age-associated cartilage degeneration of the canine humeral head.
Vet Pathol. March 2013;50(2):264-8.
L E Craig; A Reed

この研究の目的は、成犬で上腕骨頭の軟骨病変が離断性骨軟骨症あるいは変性性関節症の結果であるかどうか判定する。

1週齢から19歳の範囲の犬155頭の大腿骨頭軟骨病変の肉眼および組織学的調査を実施した。

各犬の大腿骨頭および軟骨病変のサイズを測定した。軟骨病変は線維化、亀裂、びらん、象牙質化に分類した。各病変領域は、各上腕骨頭に対する複合スコアを作成するため重症度スコア(線維化及び亀裂1、びらん2、象牙質化3)とかけ合わせた。

この複合病変スコアと年齢、大腿骨頭のサイズ、体重、ボディコンディションスコアとの関連は、Bonferroni-correctedα0.01で評価した。26の大腿骨頭は組織学的にも評価した。

155頭のうち、80頭(52%)は関節軟骨の肉眼的病変があった。関節軟骨病変の存在と重症度は、年齢、大腿骨頭のサイズ、体重、ボディコンディションスコアと正の相関があった。軟骨病変のある犬の平均年齢は8.8歳で、成犬105頭中77頭(74%)は軟骨病変があった。50頭の犬は3歳以下で、そのうち3頭に軟骨病変があり、その中の1つは骨軟骨症だった。

それらのデータは、犬の大腿骨頭尾側の軟骨びらんは、大型犬種の成犬で獲得する一般的な変性性病変で、症例の大多数において離断性骨軟骨症が病変の先に起こるわけではないと示している。(Sato訳)
■犬の変形性関節症の治療に対して自己血小板療法の有効性に対する無作為化比較試験
A randomized controlled trial of the efficacy of autologous platelet therapy for the treatment of osteoarthritis in dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2013 Nov 1;243(9):1291-7. doi: 10.2460/javma.243.9.1291.
Fahie MA, Ortolano GA, Guercio V, Schaffer JA, Johnston G, Au J, Hettlich BA, Phillips T, Allen MJ, Bertone AL.

目的:犬の変形性関節症の治療に対し、自己濃厚血小板の関節内単回注射の効果を調べる

デザイン:無作為化比較2施設臨床試験

動物:1つの関節が変形性関節症の飼育されている犬20頭

方法:犬を無作為に治療群とコントロール群に振り分けた。全ての犬にHudsonビジュアルアナログスケールとペンシルバニア大学Canine Brief Pain Inventoryを用いて飼育者が跛行と疼痛の程度にスコアを付け、力台で最大垂直力(peak vertical force :PVF)を測定した。その後治療群の犬に鎮静をかけ、血液サンプル(55ml)を採取した。血小板をpoint-of-useフィルターで回収し、30分以内に関節内に注入した。コントロールには鎮静をかけ、関節内に生理食塩液(0.9%NaCl)を注入した。血小板あるいは生理食塩液注射後、12週間評価を繰り返した。

結果:犬の体重は18.3kgから63.9kgの間で、1.5歳から8歳の範囲だった。コントロール犬で、12週目の跛行スコア、疼痛スコア、PVFは処置前の値と有意差がなかった。対照的に血小板を注射した犬で、12週後の跛行スコア(中央値で55%減少)、疼痛スコア(中央値で53%減少)、PVF(平均で12%増加)は有意に改善した。

結論と臨床関連:結果は1つの関節に変形性関節症がある犬において、関節内への自己血小板の単回注射は12週目に有意な改善を起こしたことを示唆した。(Sato訳)
■肥大性骨形成異常のワイマラナーに対する臨床症状、治療反応、臨床結果:53症例(2009-2011)
Clinical manifestations, response to treatment, and clinical outcome for Weimaraners with hypertrophic osteodystrophy: 53 cases (2009-2011).
J Am Vet Med Assoc. May 1, 2013;242(9):1260-6.
Noa Safra; Eric G Johnson; Lisa Lit; Oded Foreman; Zena T Wolf; Miriam Aguilar; Nili Karmi; Carrie J Finno; Danika L Bannasch

目的:肥大性骨形成異常(HOD)のワイマラナーの臨床症状、治療反応、転帰を評価する

構成:後ろ向き症例シリーズ

方法:シグナルメント、ワクチン接種履歴、臨床症状、検査結果、治療に対する反応、再燃に関してカルテを調査した。エックス線写真を再検討した。

結果:発熱、嗜眠、骨痛などの臨床症状;消化管、眼、皮膚系に関する症状を認めた。53頭中28頭(52.8%)はHODに罹患した同腹子がいた。HODの同腹子がいる犬は、HODの同腹子がいない犬と比べて再発する可能性が高かった。全ての犬はHOD発現の1-30日前にワクチンを接種していた;組み替え型ワクチン(n=21)と非組み換え型ワクチン(32)の摂取履歴を持つ犬の頭数に差はなかった。50頭(94.3%)は、疾患発現時にHODに匹敵するエックス線写真上の病変があり、残り3頭(5.7%)は臨床症状の発現から48-72時間でHOD病変が見られた。NSAIDsで治療した22頭中12頭(54.5%)は、治療開始から7日以内に寛解しなかった。最初にコルチコステロイドで治療した全頭は8-48時間以内に寛解を達成した。成犬期に達した33頭のうち、28頭(84.8%)は健康で、5頭(15.2%)は発熱や倦怠感を示すことがあった。

結論と臨床関連:HODのワイマラナーで、コルチコステロイドの治療はNSAIDsよりも優れていた。HODの診断をなすのに、エックス線写真の評価を繰り返す必要があるかもしれない。HODにかかったワイマラナーの多くは、骨端閉鎖でその状況は解消した。(Sato訳)
■犬の非外傷性大腿骨頭すべり症の股関節全置換術による治療
Total hip replacement for the treatment of atraumatic slipped femoral capital epiphysis in dogs.
J Small Anim Pract. August 2012;53(8):453-8.
T J Gemmill; J Pink; S P Clarke; W M McKee

目的:大腿骨頭すべり症と診断され、股関節全置換術で治療された犬を評価する

方法:股関節全置換術で治療した大腿骨頭すべり症の連続症例の臨床およびエックス線検査記録を調査した。長期経過の調査はオーナーへのアンケートで行った。

結果:15症例を確認した;14頭は片側性で、1頭は両側性だった。来院時の年齢中央値は13ヶ月齢(範囲6-30か月)、体重中央値は35kg(範囲10-66kg)だった。エックス線検査で16のうち13の股関節に近位大腿骨硬化所見があった。13の股関節はハイブリッド、3つの股関節はセメントで固める股関節全置換術を実施した。1頭の犬は術後5か月目に外移植を必要とするステムの合併症を起こした。その他の股関節全置換は機能性を維持した。術後4週間目の跛行と疼痛スコアは全ての症例で改善した。14の全股関節置換は3か月後に検査した。12で跛行はなく、2つに軽度のものがあり、操作での疼痛は全ての症例で認められなかった。重要なエックス線検査での合併症は認められなかった。電話による聞き取りは術後中央値22か月(範囲8-45ヶ月)で14症例(15の股関節全置換)に対し行った。跛行は12の肢で見られず、3つの肢で間欠的に見られるそうだった。全てのオーナーは、彼らの犬の生活の質が良好だと感じていた。

臨床意義:股関節全置換術は大腿骨頭すべり症を治療するのに良い方法である。(Sato訳)
■犬における指趾切断の短期的長期的予後について:33症例(1999年-2011年)
Short- and long-term outcomes after digit amputation in dogs: 33 cases (1999-2011).
J Am Vet Med Assoc. 2013 May 1;242(9):1249-54. doi: 10.2460/javma.242.9.1249.
Kaufman KL, Mann FA.

目的:指趾切断した犬の併発症と予後を明らかにすること

研究デザイン:後向き症例シリーズおよびオーナーへの調査

動物:33頭の飼い犬。

方法:指趾切断した犬のカルテを評価した。シグナルメント、切断した指、切断の程度、切断の理由、併発症について記録した。追跡情報を得るために、メールまたは電話でオーナーにコンタクトした。

結果:本研究では、33頭の犬において35の指の切断が実施された(1頭では3回実施された)。追跡情報が利用できた33の切断のうち13の切断(39.4%)の後、跛行以外の短期的な(14日以内)併発症が認められた。切開による裂開が最も多い短期的な併発症であった。追跡情報が利用できた32の切断のうち8の切断(25.0%)の後、長期的な(14日より長い)跛行が認められた。このうち6の切断後の跛行は軽度から間欠的であった。後肢の指の切断は、短期的な併発症が生じることと有意に関連していた唯一の変数であった。33人のオーナーのうち24人(72.7%)は、メールや電話インタビューに回答し、これらのオーナーのうち23人(95.8%)は満足していた。大部分の犬は、機能的にもよい結果であった(第3指または第4指またはその両方の切断を実施した犬も含む)。

結論と臨床的意義:後肢の指の切断は、短期的な併発症を起こす唯一の危険因子であった。第3指または第4指またはその両方の切断を行なった犬は、他の指を切断した犬よりも予後が悪いようにはみえなかった。(Dr.Taku訳)
■イングリッシュスプリンガースパニエルの上腕骨顆の不完全骨化と肘の他の異常の罹病率
Prevalence of incomplete ossification of the humeral condyle and other abnormalities of the elbow in English Springer Spaniels.
Vet Comp Orthop Traumatol. January 2012;25(3):.
A P Moores; P Agthe; I A Schaafsma

目的:跛行の病歴がないイングリッシュスプリンガースパニエルの上腕骨顆の不完全骨化(IOHC)と肘の他の骨の異常の罹病率を判定する

方法:最近の跛行の病歴がないイングリッシュスプリンガースパニエルの前向き観察的研究。この研究と関係ない理由で麻酔あるいは鎮静させられた6ヶ月齢以上の犬の両肘のCTスキャンを行った。CTスキャンで肘のIOHCおよび他の異常の有無を検討した。正常な肘の橈尺不調和(RUI)測定値をIOHCの肘、内側鈎状突起(MCP)異常の肘と比較した。

結果:50頭(100肘)のCTスキャンを再調査した。IOHCの有病率は14%(7頭の犬の8肘)だった。骨顆裂は不完全で平均長2.6mmだった。50%の犬(肘の44%)は内側鈎状突起の異常があり、肘の60%は関節周囲に骨増殖体があった。IOHCおよびMCPのグループRUI測定値は正常な肘と有意差がなかった。

臨床意義:小さなIOHC裂、関節周囲骨増殖およびMCP異常は、前枝の跛行がないイングリッシュスプリンガースパニエルで認められるかもしれない。MCPの異常は、IOHCよりも一般的である。(Sato訳)
■犬の200の肘関節における上腕骨内側上顆のエックス線所見
Radiographic findings of the medial humeral epicondyle in 200 canine elbow joints.
Vet Comp Orthop Traumatol. May 2012;25(5):.
E de Bakker; J Saunders; I Gielen; H van Bree; E Coppieters; B Van Ryssen

目的:主要あるいは付随する所見として上腕骨内側上顆病変の頻度とエックス線面を判定し、変形性関節症との関係を評価する

方法:肘の跛行と診断された犬の医療記録を調査した。研究への参入基準は、完全な臨床検査、デジタルエックス線写真の完全なセット、CTあるいはMRI、関節鏡検査でなされた最終診断があることだった。上腕骨内側上顆の変化を記録し、エックス線写真での変形性関節症と最終診断との関連を見た。

結果:200のうち80の肘に上腕内側上顆の変化を認めた。80のうち12の肘は、内側上顆の変化が関節内で唯一の所見であり、それらの肘は原発性屈筋腱付着部症と診断された。残りの68の肘において、他の併発肘疾患が見つかった。上顆変化を併発するそれらの症例で、高グレードの変形性関節症が記録されたのに対し、原発性屈筋腱付着部症の多くの肘は低グレードの変形性関節症を示した。

臨床意義:上腕骨内側上顆の変化は臨床的に重要ではないと考えられることが多く、変形性関節症の発現とみなされる。この研究は大多数が原発性の肘の問題に併発すると考えられる上顆変化が相対的に多くみられることを示した。上腕骨内側上顆の変化は唯一の異常所見(原発性屈筋腱付着部症)の場合、変形性関節症の症状としてではなく、跛行の原因としてそれらを考えるべきである。(Sato訳)
■犬の免疫介在性多発性関節炎:病態生理学
Canine immune-mediated polyarthritis: part 1: pathophysiology.
J Am Anim Hosp Assoc. January 2012;48(1):12-7.
Kirstin C Johnson; Andrew Mackin
免疫介在性多発性関節炎(IMPA)は犬で一般的な疾患プロセスである。免疫介在性多発性関節症は2つの腫瘍カテゴリーに分けられる:びらん性(あるいは変形性)と非びらん性(あるいは非変形性)。関節への免疫性の攻撃の病態生理学の理解は、犬のIMPAを管理する効果的な治療を選択するのに重要である。
この概説文献は2つのシリーズの1つ目、IMPAの病態生理学に焦点を当てる。2つ目は2012年3月/4月号で発表され、免疫介在性多発性関節炎の診断および治療に重点を置く。(Sato訳)

■犬の免疫介在性多発性関節炎:パート2:診断と治療
Canine immune-mediated polyarthritis: part 2: diagnosis and treatment.
J Am Anim Hosp Assoc. March 2012;48(2):71-82.
Kirstin C Johnson; Andrew Mackin
犬の免疫介在性多発性関節炎(IMPA)は主に臨床症状、特徴的な関節液検査結果、関節感染の可能性の除外を基にした除外診断である。最終的に免疫抑制療法に対する適切で持続した反応は、用いられる最終診断基準となるかもしれない。関係する疾患過程の確認、犬種特異症候群の含有、間接的な感染、炎症、薬剤暴露、ワクチン暴露、腫瘍と治療に対する初回反応は予後に対する重要な一因である。
このレビューは第2章で、免疫介在性多発性関節炎の診断と治療に重点を置いている。第1章は免疫介在性多発性関節炎の異常生理学について2012年1月/2月号で述べている。(Sato訳)
■自然発症の変形性関節症を持つ犬に対する高オメガ-3脂肪酸食の効果
Effects of feeding a high omega-3 fatty acids diet in dogs with naturally occurring osteoarthritis
Journal of Animal Physiology and Animal Nutrition ,Article first published online: 13 JUL 2012 ,DOI: 10.1111/j.1439-0396.2012.01325.x
M. Moreau, E. Troncy, J. R. E. del Castillo, C. Bedard, D. Gauvin, B. Lussier

この無作為プラセボコントロールおよび二重盲検試験の目的は、自然発症した変形性関節症(OA)を持つ犬に対し、魚由来のオメガ-3脂肪酸(オメガ-3)を多く含む獣医療法食(VTD)とコントロールとして使用した通常食(CTR)を13週間与え、その効果を比較することだった。

30頭のオーナー所有の犬を選抜した。整形外科的検査により跛行を確認し、後膝/股関節OAがあり、フォースプラットフォームにより測定した垂直方向床反力のピーク(PVF)を基とする運動能力障害があった。最初にオーナーに最も障害となる日々の生活の2-5の活動性を判定する質問を行った。症例特異結果測定(CSOM)を使用した重症度に従い活動性にスコア(0-4)を付けた。PVFも測定した。それから無作為にCTR、あるいはVTDを食べる群に犬を振り分けた(15頭/群)。CSOMは週に2回完遂した。PVFの記録は7週目と13週目に繰り返した。

VTD群は基準と比較した時、7週目(p<0.001)と13週目(P<0.001) に有意に高いPVFを示した。基準から13週目まで、PVFの平均(±SD)変化は、CTR群の0.5±6.1%体重(%BW)(p=0.211)と比べVTD群で3.5±6.8%BWだった。主要結果のこの変化は、effect size0.5に相当した。逆に、CTR群ではPVF測定値の有意な変化を示さなかった。研究終了時、VTD群のみCSOMの有意な低下があった(p=0.047)。

跛行のあるOA犬において、魚由来のオメガ-3を高濃度に含むVTDは、日々の生活の運動能力障害およびパフォーマンスを改善した。そのような栄養学的試みはOAの管理で非常に興味深い。(Sato訳)
■変性性関節疾患の老齢猫の腎機能に対するメロキシカムの長期投与の影響の回顧的症例-コントロール研究
Retrospective case-control study of the effects of long-term dosing with meloxicam on renal function in aged cats with degenerative joint disease.
J Feline Med Surg. October 2011;13(10):752-61.
Richard A Gowan; Amy E Lingard; Laura Johnston; Wibke Stansen; Scott A Brown; Richard Malik

猫専門病院の医療記録(2005-2009)から、メロキシカムで治療した変性性関節疾患(DJD)の猫を検索した。DJDは以下の最低2つの存在で診断した:(1)可動性の変化(オナーによる観察)、(2)異常な身体所見、(3)特徴的なエックス線像変化。主要研究集団の猫は、7歳以上、6か月以上の不定な間隔でメロキシカムを投与、完全な記録が入手可能な猫だった。それらの猫は慢性腎疾患がある(腎臓群)か、ない(非腎臓群)かで細分類し、腎臓群は猫のIRISカテゴリーに従った。血清生化学検査、尿検査(尿比重を含む)、体重およびコンディションスコアを定期的にモニターした。腎臓群および非腎臓群の猫の慢性腎疾患の進行は、メロキシカムの投与を受けていない年齢およびIRISがマッチしたコントロール猫2群(同病院から同じ期間をかけて)と比較した。このように研究は2つの研究群を設けた症例-コントロールデザインだった。

長期にメロキシカム療法を受けたDJDの38頭の猫が含有基準に合致した。それらの猫のうち、22頭は治療開始時に安定状態の慢性腎疾患があった(ステージ1、8頭;ステージ2、13頭;ステージ3、1頭)。最初に尿蛋白クレアチニン比が高い猫はいなかった。残りの16頭は最初正常な腎臓の結果で、適切な濃縮尿だった。腎臓および非腎臓メロキシカム群の年齢中央値は、それぞれ15.5歳と13.4歳だった。治療期間の中央値は腎臓群で467日、非腎臓群で327日だった。滴定(最低有効投与量)後、維持量中央値は両群で0.02mg/kg/日(範囲0.015-0.033mg/kg/日)だった。メロキシカムを投与した非腎臓群と投与しないコントロール猫の間で、経時的な血清クレアチニン濃度あるいは尿比重測定値に差はなかった。年齢-およびIRISが合ったメロキシカムを投与していない慢性腎疾患の猫と比較して、メロキシカムを投与した腎臓群の腎疾患の進行はより少なかった。

それらの結果は、メロキシカム0.02mg/kgの長期維持投与量を、たとえ総合的に臨床状況が安定している慢性腎疾患を持っていたとしても、7歳以上の猫に安全に投与できることを示唆する。長期メロキシカム療法は、慢性腎疾患およびDJDを両方罹患しているいくらかの猫で、腎疾患の進行を緩めるかもしれない。それら所見を確認する前向き研究が必要である。(Sato訳)
■猫100頭の変形性関節症の罹患率と臨床像の横断研究
Cross-sectional study of the prevalence and clinical features of osteoarthritis in 100 cats.
Vet J. March 2011;187(3):304-9.
L I Slingerland; H A W Hazewinkel; B P Meij; Ph Picavet; G Voorhout

猫における変形性関節症(OA)の臨床症状と罹患率を評価するため、100頭の飼育猫(6歳以上)の体肢骨格におけるOAのエックス線上罹患率を評価した。エックス線上のOA、臨床的運動系検査、オーナーの分かる行動学的変化間の可能性のある関連を評価した。
OAは肩、肘、股関節、足根関節に良く見られ、OAのある猫の61%は最低1つの関節、48%は1つ以上の関節が罹患していた。全体で、より大きな末梢関節の臨床試験はエックス線上のOAに対する感受性および特異性が最も高かった。回帰分析で、OAに関連する年齢(P=0.002)、運動性およびグルーミング減少(P=0.008)が示されたが、年齢と相関性はあった。最後に、不適切な排泄の増加はOAと関連した(P=0.046)。
猫のOAの罹患率は著しく高く、年齢と共に増加すると結論した。猫のOAは行動変化と関連すると思われる。(Sato訳)
■ミニチュアピンシャーの肢端断節症候群
Acral mutilation syndrome in a miniature pinscher.
J Comp Pathol. 2011 Feb-Apr;144(2-3):235-8.
M Bardagi; P Montoliu; L Ferrer; D Fondevila; M Pumarola

肢端断節症候群(AMS)は犬の珍しい遺伝性知覚神経障害で、四肢末端の進行性断節を起こし、ジャーマンショートヘアードポインター、イングリッシュポインター、イングリッシュスプリンガースパニエル、フレンチスパニエルでのみ報告されている。
この報告は、後肢の進行性自傷がある18ヶ月のメスのミニチュアピンシャー1頭におけるAMSの症例を述べる。その犬はあらゆる治療に反応せず、30ヶ月齢で安楽死された。死後の顕微鏡的所見は、神経系に限定されAMSと適合した。これは1頭のミニチュアピンシャーで述べられたAMSの最初の症例である。その疾患はこの特定の犬における点変異の結果なのか、あるいはミニチュアピンシャー種がAMSの素因を持つ犬種に徐々になっていくのかは不明である。(Sato訳)
■外傷性肘脱臼の犬14頭と猫11頭
Traumatic elbow luxation in 14 dogs and 11 cats.
Aust Vet J. June 2011;89(6):213-6.
Ke Mitchell

目的:外傷性肘脱臼の症状および治療を報告し、非観血的あるいは観血的整復後の結果を評価する

構成:1999年4月から2009年4月までの回顧的症例シリーズ研究を行った

方法:14頭の犬と11頭の猫の記録から徴候、病歴、エックス線所見および治療を再検討した。14頭のオーナーには治療後の肢の機能について電話で調査してもらった。フィッシャーの両側P検定を使用し、跛行の潜在的リスクファクターを評価した。

結果:脱臼の大多数は自動車事故によるもので、96%の症例は外側方向への脱臼だった。非観血的整復は全ての猫と11頭の犬で成功した。3頭の犬は観血的整復を必要とした。オーナーは肢の機能を優良(71%)、良(7%)、まずまず(22%)、不良(0%)と評価した。全ての猫は優良と評価された。非観血的整復後の優良な結果は、犬の症例の67%に達した。観血的整復の全症例はまずまずな結果だった。全てのオーナーはその結果に満足していた。整復後の跛行に有意に関係するリスクファクターはなかった。

結論:非観血的整復後に安定性が良い肘関節は良好な結果を示す。非観血的整復後に安定性が悪いものは、外科手術適応である。結果は、犬よりも猫が肘脱臼を良く許容すると示唆する。(Sato訳)
■犬の免疫介在性多発性関節炎の治療に対するレフルノミドの効果:14症例(2006~2008)
Efficacy of leflunomide for treatment of immune-mediated polyarthritis in dogs: 14 cases (2006-2008)
Journal of the American Veterinary Medical Association
February 1, 2010, Vol. 236, No. 3, Pages 312-318
Sara A. Colopy, DVM, DACVS; Theresa A. Baker, BS; Peter Muir, BVSc, MVetClinStud, PhD, DACVS

目的:犬の自然発生免疫介在性多発性関節炎(IMPA)の治療に対するレフルノミドの効果と副作用を評価すること

デザイン:回顧的症例報告

動物:細胞学的に免疫介在性多発性関節炎と確定診断した14頭の犬

方法:レフルノミドで治療した免疫介在性多発性関節炎と診断した犬を認識するために、医療記録を使った。シグナルメント、レントゲン所見、血液学的検査値、レフルノミドの投与量、治療期間、治療に対する反応、そして副作用の発生率は医療記録から判断した。

結果:レフルノミドの初期投与量の平均 ± 標準偏差 は3.0 ± 0.5 mg/kg1日1回経口投与であった。初期投与の治療期間は1週-6週であった。レフルノミドで治療した14頭の犬のうち、8頭は初期に免疫介在性多発性関節炎の臨床兆候が完全に消失し、5頭は治療に対して部分奏功し、そして1頭は治療に対して最小の反応であった。レフルノミド治療による副作用は治療期間中観察されなかった。

結論と臨床関連:レフルノミドの経口投与は、犬の免疫介在性多発性関節炎(IMPA)の治療に対するコルチコステロイドの経口投与に変わり安全で、効果的である。この研究結果に基づくと、投与量調節を行うまで最低6週間3-4 mg/kg 1日1回の初期投与量での経口投与が推奨される。投与量の調節は、関節液の細胞学的評価と免疫介在性多発性関節炎の臨床症状に基づくべきである。レフルノミド治療に対する副作用の根拠のために血液学的変化、血清生化学的検査結果、そして免疫介在性多発性関節炎の臨床兆候は監視すべきである。(Dr.Kawano訳)
■変形性関節症の診断と治療
Diagnosis and treatment of osteoarthritis.
Top Companion Anim Med. February 2010;25(1):20-5.
Jessica K Rychel

老齢の犬猫で変形性関節症(OA)は良く見られる疾患であるが、診断されないまま、治療されないことも多い。変形性関節症は治ることはないが、その疾患の長期管理は獣医療スタッフやオーナーに対して非常に実行する価値があるものと思われる。疼痛緩和薬物療法による疼痛管理は不可欠な最初のステップである。利用可能な疼痛緩和薬物は豊富で、非ステロイド性抗炎症薬、ガバペンチン、アマンタジン、トラマドールなどがある。また疼痛軽減に対し利用可能な理学的方法もある。体重管理と栄養学的関節サポートも、犬や猫のOAを管理する状況で重要である。最後に、理学的リハビリテーションは可動域の改善、年相応の活動性の維持に対して最善の方法である。(Sato訳)
■犬の変形性関節症の管理の系統的レビュー
Systematic review of the management of canine osteoarthritis.
Vet Rec. April 2009;164(14):418-24.
R O Sanderson, C Beata, R-M Flipo, J-P Genevois, C Macias, S Tacke, A Vezzoni, J F Innes

このレビューは、1985年から2007年7月の間に英語で同等者検閲ジャーナルに発表された文献をもとに、犬の変形性関節症の管理で使用される治療の効果に対するエビデンスを評価する。
68件の文献を確認し、評価した。それらは、4つは代替療法、1つは機能性食品の使用、2つは関節内薬剤、6つの栄養補助剤、21の薬理学的薬剤、2つは理学療法、3つは手術方法、2つは体重管理との組み合わせについての文献だった。
変形性関節症の症状の修正において、カルプロフェン、フィロコキシブ、メロキシカムの効果に対し、高レベルの快適性(強いエビデンス)があり、エトドラックの効果に対し中レベルの快適性があった。
その疾患に関与する構造の修正に対し、ポリ硫酸グルコサミノグリカン、リコフェロン、ヘラジカの袋角、緑イガイを含む機能性食品の効果は中レベルの快適性だった。
使用を支持するエビデンスが弱い、あるいはエビデンスがないものはドキシサイクリン、電気刺激の鍼、体外衝撃波療法、gold wire鍼、ヒアルロン酸、ペントサン多硫酸ナトリウム、P54FP(ウコン抽出物)、チアプロフェン酸、脛骨プラトー平坦化骨切術だった。(Sato訳)
■異なる大腿の形態学的グループにおける犬集団の区分
Segmentation of the canine population in different femoral morphological groups
Res Vet Sci. December 2008;85(3):407-17.
Sophie Palierne, Didier Mathon, Erik Asimus, Didier Concordet, Patricia Meynaud-Collard, Andre Autefage

目的:獣医外科において大腿外傷および股関節形成不全の発生は、犬の特定大腿インプラントをデザインする必要性を示す。特に種内変動性に重点を置く大腿形態のより良い知識は、うまく適応する犬の大腿骨髄内インプラントの開発に必要である。この研究の目的は、犬の大腿の形態学的変動性を評価し、この集団の区分を提唱することだった。

方法:この研究は、大腿形態に関して多様な一般犬種の103頭の犬集団の区分に対する異なる可能性を提案する。それらの区分は、206の犬の大腿の24の測定および算出した形態学的パラメーターを考慮した統計学的方法論を入手した。

結果:大腿形態に関連する4あるいは6の同質のグループに入るこの犬集団の区分は、2つの最も関連する解決法である。大腿骨の全長、大腿骨頭の直径は、この区分に対する一番良い判別パラメーターだった。

結論:犬種の大腿形態の変動性の知識および同質の形態グループに入る犬集団を分割する可能性は、特定の犬の大腿インプラントをデザインするのに有効である。各グループの大腿形態プロフィールは、骨に一番良い整形インプラントを合わせる為の必須データベースを構成する。(Sato訳)
■利点と考察-獣医療での水面下トレッドミル療法
Benefits and considerations - Underwater treadmill therapy in veterinary practice
Vet Med. Apr 2009;104(4):182-190. 7 Refs
Christine Jurek, DVM, Laurie McCauley, DVM

水面下トレッドミルあるいはハイドロトレッドミルは、いずれの診療に加えても役立つものである。しかし、最大効果を達成するための、その使用および制限、同様に適切な操作、維持を理解することは重要である。
この文献で、水面下トレッドミル療法、その目的、特定疾患に対する一般的用法、基礎テクニック、必要機材、維持検討を含む概要を述べる。また、水面下トレッドミルの一般的な使用状況の1つである前十字靱帯手術後の患者のリハビリで使用できるトレッドミルの方法の例として症例も紹介する。(Sato訳)
■18頭のペンブロークウェルシュコーギーにおける退行性ミエロパシー
Degenerative myelopathy in 18 Pembroke Welsh Corgi dogs.
Vet Pathol. March 2009;46(2):241-50.
P A March, J R Coates, R J Abyad, D A Williams, D P O'Brien, N J Olby, J H Keating, M Oglesbee

退行性ミエロパシーの診断に適合する臨床症状と死前診断検査結果を持つ、18頭のペンブロークウェルシュコーギー(平均年齢12.7歳)に剖検を実施した。全ての犬において特定の脊髄および脳部位の組織切片を系統的に評価した。重症度に従い軸索変性および喪失をグレード分けし、続いて異なる脊髄分節および索、全てにわたり比較した。後側、側索、前索の限定領域に白質病変が認められた。側索の側背部は、全ての脊髄分節において最も重度の影響を受けた領域だった。脊髄分節T12は最も重度の軸索喪失を示した。脊髄神経根、末梢神経、脳セクションは、尾側髄質の灰白質における軽度astrogliosisの部分を除いて正常限界内だった。より重度病変を持つ犬は、T12およびT12の頭側尾側脊髄分節における軸索変性および喪失の有意な進行が見られた。個々の犬における軸索喪失の重症度は、臨床症状の持続期間と正の相関を示した。軸索変性の分布は、ジャーマンシェパードの退行性ミエロパシーの報告に似ていたが、より明確に限られた索部分内の病変の横および縦の広がりに関しては異なっていた。それら病変の相違は、疾患の長期を反映しているかもしれないが、ペンブロークウェルシュコーギー独特の退行性ミエロパシーの型も示すことができる。(Sato訳)
■6歳以上の犬の肘に関係する跛行
Elbow lameness in dogs of six years and older.
Vet Comp Orthop Traumatol. January 2010;23(1):43-50.
K A G Vermote, A L R Bergenhuyzen, I Gielen, H van Bree, L Duchateau, B Van Ryssen

目的:6歳およびそれ以上の年齢の犬における内側鉤状突起の病変の頻度と分布を報告し、罹患関節の関節鏡検査所見を述べる。また5-18ヶ月の「若い」犬に見られる病変と「老」犬のものと比較すること。

方法:肘に関する跛行を認め、その後関節鏡検査を行った6歳以上の犬の回顧的研究。関節鏡検査およびCTで診断された内側鉤状突起の病変に従い犬をグループ分けした。上腕骨内側顆上の変形性関節症(OA)のエックス線検査における程度および関節鏡検査で診断した病変を述べる。

結果:51頭の「老」犬のうち、5つのタイプの病変が関節鏡検査とCTで確認できた:軟骨軟化様病変(2%)、亀裂(27.5%)、非置換断片(12%)、置換断片(27.5%)、断片のない内側区分内の糜爛(31%)。「若い」犬に見られた病変の分布と有意に異なっていた:亀裂(23%)、非置換断片(45%)、置換断片(29%)、断片のない内側区分内の糜爛(3%)。エックス線写真による程度は2群間で差がなかった。

臨床意義:この研究は6歳以上の犬における内側鉤状突起の疾患の比較的高い発生率を示し、「老」犬のある特別な問題が目立つ:内側区分の完全な糜爛。(Sato訳)
■中程度の骨関節炎の犬における疼痛管理に対し、シクロオキシゲナーゼおよび5-リポキシゲナーゼの二重抑制物質フラボノイド混合物はグルコサミン/コンドロイチンより優れている
A Flavonoid Mixture, Dual Inhibitor of Cyclooxygenase and 5-Lipoxygenase Enzymes, Shows Superiority to Glucosamine/Chondroitin for Pain Management in Moderate Osteoarthritic Dogs
Intern J Applied Res Vet Med. May 2009;7(1-2):1-12. 58 Refs
Bruce P. Burnett, Kristol K. Stenstrom, Mary J. Baarsch, William S. Swafford, Joel Ehrenzweig, Robert M. Levy

骨関節炎(OA)は、関節劣化に寄与するアラキドン酸(AA)代謝産物の蓄積のような多量の代謝成分を伴う多要因疾患である。研究では、バイカリンとカテキンから成る特定フラボノイド混合物が5-リポキシゲナーゼ(5-LOX)抑制活性を付加した均衡の取れた方法でシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)およびCOX-2を抑制するように働くことが示されている。しかし、フラボノイド製剤FlexileRxの安全性と有効性は犬で不明である。
セレコキシブ、メロキシカム、ナプロキサン、イブプロフェン、カルプロフェン、アスピリンと比較して、COX-1、COX-2、5-LOXに対する酵素阻害結果は、FlexileRxのみが均衡の取れたCOXと付加的5-LOX酵素阻害活性を持つことを示す。
体重最低15lbの犬の複数部位二重盲検無作為直接コンパレーター試験において、FlexileRx(n=33)は獣医師およびオーナーのビジュアルアナログスケール(VAS)評価を用い、硫酸コンドロイチン、塩酸グルコサミン、アスコルビン酸マンガンの合成製剤(n=36) (Cosequin DS)以上の統計学的に有意な疼痛スコアの改善を示した。
暫定(28日)および最終分析(56日)両日で、FlexileRxはCosequin DSより2倍以上の疼痛軽減効果を示した。副作用は両群で一般的に軽度だった。
この研究は、FlexileRxが骨関節炎の犬の疼痛スコア軽減に対し相対的に速効性の治療であると示される。(Sato訳)
■寛骨大腿関節(股関節)の変形性関節症の犬の跛行に対する注射可能な異種膀胱バイオスキャフォールドの効果:無作為二重盲検比較試験
Effect of a Xenogeneic Urinary Bladder Injectable Bioscaffold on Lameness in Dogs with Osteoarthritis of the Coxofemoral Joint (Hip): A randomized, Double Blinded Controlled Trial
Intern J Applied Res Vet Med. May 2009;7(1-2):13-22. 35 Refs
William Rose, DVM, Jeffrey D. Wood , DVM, Abby Simmons-Byrd, RVT, Alan R. Spievack, MD

アメリカの全ての犬の20%以上が、慢性変形性関節症(OA)に関する跛行と疼痛に悩まされている。多くの場合、現在の治療様式はうまく許容されず、他に軽減する選択もほとんどない。再生医療は、従来の治療に反応がない、あるいは許容できない犬に役立つと思われる新しい様式である。
本研究は、股関節の変形性関節症の犬の治療として無細胞バイオ誘起スキャフォールドであるブタ膀胱細胞外基質(UBM-ECM)の効果を評価した。この研究は、UBM-ECMの単回関節内注射が、コントロールと比較して活動性、跛行および可動域スコアを有意に改善したことを述べる。これはOAの犬におけるバイオ誘起スキャフォールドの有効性を報告する最初の無作為比較臨床試験である。(Sato訳)
■ヘテロ接合性スコティッシュフォールドにおける不完全優性骨軟骨形成異常
Incomplete dominant osteochondrodysplasia in heterozygous Scottish Fold cats
J Small Anim Pract. April 2008;49(4):197-9.
M Takanosu, T Takanosu, H Suzuki, K Suzuki

この報告は、スコティッシュフォールドの骨軟骨形成異常に対する遺伝の常染色体性不完全優性パターンを述べる。3世代の系統を分析した。折れた耳の猫を、正常な耳の猫と交配させた。変異対立遺伝子に対しおそらくヘテロ接合と思われる折れた耳の全ての猫は、遠位前肢および後肢に骨軟骨形成異常を発症したが、過去の研究で骨変形が述べられている尾など他の骨には見られなかった。骨軟骨形成異常の骨病変の程度は、各罹患猫で異なった。重度骨軟骨形成異常の猫の多くは、いくらかの臨床症状を示したが、軽度疾患の猫に臨床上影響はなかった。折れた耳の表現型を持つ全てのスコティッシュフォールドの関係する猫は、ヘテロ接合性であっても、肢の遠位にある程度の骨軟骨形成異常を患った。(Sato訳)
■犬の内側鉤状突起分離の肘58例におけるCT所見の範囲
Spectrum of computed tomographic findings in 58 canine elbows with fragmentation of the medial coronoid process
J Small Anim Pract. November 2008;0(0):.
Groth , Benigni , Moores , C R Lamb

目的:尺骨内側鉤状突起分離の犬の肘におけるCT所見を詳細に述べること

方法:関節鏡検査で、変位している内側鉤状突起断片、変位していない内側鉤状突起断片あるいは内側鉤状突起の関節軟骨における安定した亀裂を持つ肘58例のCT画像の遡及的再調査

結果:関節鏡検査で変位した分離片を持つ85%の肘、変位していない分離片を持つ18%の肘、安定した亀裂を持つ29%の肘において骨片が観察された。軟骨下骨における亀裂は、関節鏡検査で安定した亀裂を持つ肘の43%においてCT像で観察された。異常な形、内側鉤状突起を冒す硬化と光輝、尺骨および上腕骨の軟骨下硬化、尺骨の不規則な橈骨切痕、関節周囲の骨増殖が、関節鏡所見にかかわりなく同様の比率で観察された。上腕骨顆の内側面を冒すKissing病変は主に変位した分離片に関係した。関節不調和の症状は、24%の肘で背側および矢状方向再構築CT像で観察された。

臨床意義:内側鉤状突起の犬のCT像で広範囲の異常が観察されると思われる。分離片の検出にCTは中程度の感受性を持つ。(Sato訳)
■棘下筋腱-滑液包の骨化:犬13例
Ossification of the infraspinatus tendon-bursa in 13 dogs
Vet Rec. December 2007;161(25):846-52.
W M McKee, C Macias, C May, E J Scurrell

棘下筋腱-滑液包の骨化を13頭のラブラドールレトリバーで診断し、そのうち12頭は片方の前肢跛行、1頭は両側跛行を示した。年齢の範囲は、28-121ヶ月齢(平均69.4ヶ月)だった。跛行は徐々に発生し、14の罹患関節のうち11が進行性だった。肩甲骨筋萎縮および棘下筋腱付着部の圧痛症状が鍵となる臨床症状だった。尾頭側エックス線写真で、26関節中11で近位上腕または上腕関節窩関節の外側に複数の石灰化マス、12の関節に単一マスが認められた。関節鏡検査で7つの肩のうち6つに随伴靭帯または腱異常が認められた。そられ犬は1-55ヶ月(平均20ヶ月)追跡調査した。
非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)で治療した5つの肩のうち、1つは解消、2つは改善、2つは外科的に管理した。長期作用型関節内コルチコステロイドを注射した6つの肩(5つは外科前、1つは外科後)のうち、3つは解消、2つは改善、1つは変化なしだった。棘下筋腱および滑液包の外科的切除を行った6つの肩(3つはNSAIDs投与前、2つはNSAIDs投与後、1つは長期作用型関節内コルチコステロイド投与後)のうち、4つは改善、1つは変化なし、1つは長期作用型関節内コルチコステロイド投与で管理した。1つの肩は運動制限により管理し、跛行は解消した。切除組織の組織検査で、棘下筋腱および/または滑液包内の異所性骨が明らかとなった。(Sato訳)
■ワイマラナーにおけるジストロフィン欠損筋ジストロフィー
Dystrophin-deficient muscular dystrophy in a Weimaraner
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Jul-Aug;43(4):227-32.
Wendy Irene Baltzer, David V Calise, Jonathan M Levine, G D Shelton, John F Edwards, Joerg M Steiner

2歳のオスの筋ジストロフィーのワイマラナーが、肢の広範性筋萎縮、首、棘下筋、舌筋の肥厚、嚥下困難、吐出を呈した。片側停留睾丸、片側腎無形成、裂孔ヘルニアも認められた。ミオグラフィーにおいて自発筋活性を確認した。血清クレアチンキナーゼは顕著に上昇していた。ジストロフィンの免疫組織化学染色は、復帰突然変異体(未熟の特性)繊維の疑いを限定した。組織学的に骨格筋原繊維退化、筋内膜線維症、石灰化が存在した。安楽死後、剖検で横隔膜の肥大、心筋線維症が認められた。この症例の筋ジストロフィーは、器官形成不全を伴うゆっくり進行する型である。(Sato訳)
■犬における橈骨無発育の管理で尺手根関節固定と足伸長
Ulnocarpal arthrodesis and limb lengthening for the management of radial agenesis in a dog
J Small Anim Pract. June 2007;0(0):.
W M McKee, J Reynolds

橈骨無発育を9週齢のボクサーで診断した。足のアライメントと負重ができるように、尺手根関節固定を6ヶ月齢で実施した。10ヶ月齢のときヒンジがついている円形の固定機を、尺骨を徐々に伸ばし、角度とローテーション変形を矯正するため適応した。16ヶ月で固定機を取り除いた。この時点で対側の前足と比べ、前腕中手が1.7cm(6%)短縮、上腕骨の代償性過成長2.6cm(15%)が見られた。指の伸展ができないことが、理学療法で改善する合併症だった。23ヶ月齢の追跡調査時、歩行および走行時に良好な足運びを見せた。肘のエックス線写真は、尺骨の特に骨増殖と鈎状下硬化を示した。(Sato訳)
■骨軟骨症の病因および病原
Etiology and pathogenesis of osteochondrosis
Vet Pathol. July 2007;44(4):429-48. 137 Refs
B Ytrehus, C S Carlson, S Ekman

骨軟骨症はヒトおよび多くの動物種、特にブタ、ウマ、犬で発生する一般的で臨床的に重要な関節障害である。この障害は、軟骨内骨形成の限局的障害と定義され、その疾患の全ての面で単一因子が占めることはない多因子性病因を持つと考えられる。最も一般的に言われる病因は、遺伝、急速な成長、解剖学的立体配座、外傷、食餌のアンバランスであるが、遺伝と解剖学的配座だけは科学的文献により十分支持されている。この疾患の始まり方は議論されている。脆弱軟骨の組成、軟骨細胞分化不全、肋軟骨下骨壊死、成長軟骨への血液供給不全、すべて病原で最初のステップとして提唱されているが、最近の文献は最もありえることとして成長軟骨への血液供給不全を強く支持している。骨軟骨症という言葉は、異なる種の中で広い範囲の異なる病変を述べるのに使用されている。
我々は、この用語の改善点にmodifiers latens(骨端軟骨に限られた病変)、manifesta(軟骨内骨形成で遅延により付随する病変)、dissecans(関節軟骨中の裂形成)を含めることを提唱する。
この概説の目的は、この明らかに複雑な疾患をより理解するため、この疾患の概要、最も一般に言われる理論に焦点を当て、最近の研究所見、骨軟骨症の病因と病原に関する我々独自の観点を提供するものである。(Sato訳)
■犬の特発性多発性関節炎におけるC反応性蛋白
C-reactive protein concentration in canine idiopathic polyarthritis.
J Vet Med Sci. 2006 Dec;68(12):1275-9.
Ohno K, Yokoyama Y, Nakashima K, Setoguchi A, Fujino Y, Tsujimoto H.

犬の特発性多発性関節炎(IPA)におけるC反応性蛋白(CRP)の臨床的有用性を観察するためにIPAの犬においてその濃度を測定した。CRP濃度はすべての犬のIPAで診断した時点で著しく増加しており、初期のコルチコステロイド治療に対する反応で明らかに現象した;CRPがIPA症例において治療反応のインデックスとして使用できることを示唆する。さらに、診断後6カ月で追跡調査したCRP濃度(治療後6-13 日から開始)と治療頻度(“皆無あるいはめったに治療しない(NSM)グループ”あるいは“連続的に治療した(CM)グループ”)に明らかな関連性が観察された。これらの結果からコルチコステロイド療法に対するCRPの初期反応は犬のIPAの予後因子となるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬の肩関節における骨関節症発現に対する生涯食事制限の効果
The effects of lifetime food restriction on the development of osteoarthritis in the canine shoulder
Vet Surg. January 2008;37(1):102-7.
Jeffrey J Runge, Darryl N Biery, Dennis F Lawler, Thomas P Gregor, Richard H Evans, Richard D Kealy, Stephanie D Szabo, Gail K Smith

要約

目的:ラブラドール・レトリバーにおける、肩関節骨関節症(OA)の発現と進行に対する年齢と生涯食事制限の影響を報告することです。

研究デザイン:長期的生存期間、コーホート研究

動物:ラブラドール・レトリバー(n=48)

方法:同腹子を遺伝子的に類似した犬(性別、体重)の24組のペアを作るようにしました。それぞれ食事制限(DR)ペアには、コントロール給餌(CF)ペアの食事量の75%を毎日、死ぬまで与えました。6歳、8歳、そして死亡時(EOL)に、肩をレントゲンで評価しました。EOLで、OAに関し、肉眼的、組織病理学的に、肩を評価しました。

結果:犬の78%に肩関節骨関節症のレントゲン所見が確認されました。6歳(P<.03)と8歳(P<.02)での、レントゲン上の肩関節骨関節症の重症度は、コントロール給餌群と比較して食事制限群は有意に低くなりました。肉眼的評価結果は、46頭の犬のうち40頭は、上腕骨骨頭の尾側面に軟骨糜爛を持つことが明らかとなりました。EOLで、犬の91%が骨関節症に一致した組織病理学的変化を示しました。

結論:犬の間で、レントゲン的、肉眼的、組織学的に骨関節症は高い罹患率でした。OAのレントゲン所見(EOL時)と、肉眼的、組織学的検査で認識できる特徴的変化の間に、かなりの格差が認められました。

臨床関連:レントゲン的評価は、肩関節病理の重症度と、十分に相関しません。肩関節骨関節症に対する食事制限の利点は、加齢に伴う、種、および系統特異性疾患の発現を遅らせる点で、論証された食事制限の効果と一致しました。(Dr.K訳)
■3頭のキャバリアキングチャールズスパニエル同腹子にみられた非定型咀嚼筋筋炎
Atypical masticatory muscle myositis in three cavalier King Charles spaniel littermates
J Small Anim Pract. April 2007;48(4):226-8.
G D C Pitcher, C N Hahn

この症例報告で免疫介在性疾患、咀嚼筋筋炎の新しい症状を述べる。口をあけるのが難しい(開口障害)などの臨床症状が、12週齢のキャバリアキングチャールズスパニエル同腹子3頭に見られた。罹患側頭筋の特徴的組織病理変化により支持される2M免疫組織化学により診断を確立した。免疫修正量のコルチコステロイドの投与により全ての罹患犬の臨床症状は解消した。咀嚼筋筋炎は、頭部に位置する筋炎の臨床症状を持つ若い犬の鑑別診断にいれるべきである。(Sato訳)
■スウェーデン犬の股関節、肘関節異形成における鎮静方法の影響
Impact of sedation method on the diagnosis of hip and elbow dysplasia in Swedish dogs
Prev Vet Med. November 2006;0(0):.
Sofia Malm, Erling Strandberg, Birgitta Danell, Lars Audell, Lennart Swenson, Ake Hedhammar

我々の目的は、股関節、肘関節異形成に対する精査結果に対し、鎮静方法の影響を調査することだった。スウェーデンケンネルクラブに記録された8犬種(バーニーズマウンテンドック、ボクサー、ジャーマンシェパード、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバー、ニューファンドランド、ロットワイラー、セントバーナード)に対し、スウェーデンの動物病院での股関節および肘関節の精査、股関節および肘関節の状態結果のアンケート調査をもとに研究した。2002年1月から2003年3月まで、股関節および肘関節異形成を検査したそれぞれ合計5877頭と5406頭を調査した。ロジスティック回帰を用い、鎮静に使用する化学的拘束の種類が股関節および肘関節異形成に対する精査結果に影響を及ぼすかどうかを検査した。さらに鎮静方法、動物病院の影響、性別、犬種、精査時の年齢を研究した。
鎮静のため使用した化学的拘束の種類は、股関節の精査結果に影響したが肘関節異形成ではそうではなかった。メデトミジンとブトルファノール(最も一般的な方法)、メデトミジン単独またはキシラジンと比較し、アセプロマジンの股関節異形成のオッズは半分以下だった。メス犬の股関節異形成発症に対するオッズは約25%より高く、一方オス犬の肘関節異形成発症に対するオッズはほぼ40%より高かった。セントバーナード、ニューファンドランド、ジャーマンシェパードは股関節異形成発症オッズが最も高く、一方ロットワイラー、ラブラドールレトリバーは最も低かった。ボクサーの肘関節異形成のリスクは最も低く、続いてラブラドールレトリバーだった。セントバーナードとロットワイラーの肘関節異形成のオッズは最も高かった。加齢は、股関節と肘関節異形成のオッズを2.5%/月で増加させた。この研究の結果から、股関節精査中の鎮静に使用する化学的拘束の種類を記録することは、現在スウェーデンで必須となっている。このことは股関節異形成の繁殖値予測モデルで、鎮静方法の影響の説明を可能にする。(Sato訳)
■グレートデンの遺伝性ミオパシー
Inherited myopathy of great Danes
J Small Anim Pract. May 2006;47(5):249-54. 16 Refs
A Lujan Feliu-Pascual, G D Shelton, M P Targett, S N Long, E J Comerford, C McMillan, D Davies, C Rusbridge, D Mellor, K C Chang, T J Anderson

筋バイオプシー標本で特有の組織学的特徴を持つ若いグレードデンに発生する遺伝性、非炎症性ミオパシーを再調査する。臨床症状の発現は、通常1歳まででオスメス両方が罹患する。臨床症状の特徴は、運動不耐性、筋肉衰弱、運動誘発性の振戦である。多くの罹患犬は疾患の重篤な型であるが、時折明白な型がなく、許容可能な生活の質を保ち成犬になるものもいる。罹患子犬を含む同腹子は臨床的に罹患していない親から生まれ、おそらく遺伝の常染色体劣性パターンである。
全ての記録症例の毛色は、淡黄褐色またはまだら色である。血清クレアチニンキナーゼ濃度と自然発生の骨格筋電気活性の上昇は頻繁に見られる。この犬種で当初セントラルコアミオパシーと報告された(Targett and others 1994)が、明瞭な細胞構築学的構成の組織化学特性は、ヒトのよく特徴付けられたセントラルコアミオパシーのそれらとは異なる。実際に、ヒトで知られるミオパシーのどんなものともそれらの構造は異なり、おそらくは独特の非炎症性ミオパシーが犬を冒すと思われる。このミオパシーがさらに特徴付けられるまで、グレートデンの遺伝性ミオパシーという名前を推奨する。(Sato訳)
■デボンレックスの子猫とイングリッシュブルドックの子犬に見られたスイマーシンドローム
Swimmer syndrome in a Devon rex kitten and an English bulldog puppy
J Small Anim Pract. October 2006;47(10):615-9.
G Verhoeven, H de Rooster, M Risselada, P Wiemer, L Scheire, H van Bree

3週齢のデボンレックスの子猫と4週齢のイングリッシュブルドックの子犬が"スイマーシンドローム"で来院した。別の獣医師にこの病気の唯一可能な解決策で安楽死を勧められたと相談を受けた。子犬の理学療法、子猫の理学療法と包帯法により臨床症状の解消に導き、数週間後には正常に歩行するようになった。著者は、集中的な理学療法とオーナーの献身が成功に導くと結論付ける。(Sato訳)
■犬106例の膝蓋骨脱臼の外科的矯正に関する合併症
Complications associated with corrective surgery for patellar luxation in 109 dogs
Vet Surg. August 2006;35(6):559-66.
Gareth I Arthurs, Sorrel J Langley-Hobbs

目的:犬の膝蓋骨脱臼の矯正に関する術後合併症と術式を再検討する

研究構成:遡及研究

動物:膝蓋骨脱臼(n=131)の犬(n=109)

方法:膝蓋骨脱臼の矯正手術を行った犬の医療記録を再検討した。徴候、病歴、グレード、膝蓋骨脱臼の方向、術式、臨床結果を拾い上げた。

結果:術後合併症の全体の頻度は18%だった。大きな(手術のやり直しが必要)合併症の頻度は13%だった。膝蓋骨再脱臼の頻度は8%。全体、大きな、膝蓋骨再脱臼の合併症頻度は、体重20kg未満より以上の犬でより高かった。また膝蓋骨脱臼のグレードがより高いものが頻度が高かった。大腿滑車造溝術は膝蓋骨再脱臼の頻度がより低かった。脛骨粗面転移(TTT)は大きな合併症と膝蓋骨再脱臼の頻度がより低かった。支帯/包遊離は大きな合併症を起こす頻度がより高かった。年齢、性別、内方vs.外方脱臼、右足vs.左足、包/支帯縫縮、抗回旋縫合の使用、膝外科が過去に行われていたかどうかは、頻度と合併症に有意な影響を示さなかった。

結論:TTTおよび大腿滑車造溝術は、術後膝骸骨再脱臼と大きな合併症のリスクを最小限にする。

臨床関連:この研究から導かれた情報は、膝蓋骨脱臼の矯正手術を行う犬の術後合併症の起こりやすさを評価するのに使用できる。(Sato訳)
■マイコプラズマ・フェリス関節炎:猫2例
Mycoplasma felis arthritis in two cats
J Small Anim Pract. August 2006;47(8):476-9.
L Liehmann, B Degasperi, J Spergser, G W Niebauer

この報告は、外傷の病歴を疑う免疫応答性を持つ、ヨーロッパ、短毛成猫2頭のマイコプラズマ・フェリス単一関節炎により起こる負重しない跛行の発生を述べる。臨床症状は、保存療法の後に再発した。関節は外科的に治療し、M felisが単一関節炎の原因菌として確認された。感受性検査によりドキシサイクリン10mg/kg1日2回の治療を開始した。1頭は2週後にさらに関節洗浄を行った。2頭ともそれぞれ8週、9週後に完全に回復した。この所見は、猫の結膜炎に関与することに加え、M felisが他の組織の病原として活動することができ、免疫応答性を持つ猫でさえ関節炎を起こすことを示唆する。(Sato訳)
■両側爪切除を行った猫とそうでない猫におけるプレッシャープラットフォーム歩行分析の使用
Use of pressure platform gait analysis in cats with and without bilateral onychectomy.
Am J Vet Res 65[9]:1276-8 2004 Sep
Romans CW, Conzemius MG, Horstman CL, Gordon WJ, Evans RB

目的:両側前肢爪切除を行っている猫とそうでない猫のピークバーチカルフォース(PVF)とバーチカルインパルス(VI)を判定する

動物:26頭の健康な成猫

方法:爪切除を行った猫(n=13)は、研究の6ヶ月以上前に手術を行っていた。各猫すべての肢のPVFとVIを2mプレッシャープラットフォームウォークウェイで採集した。猫は好きな速度で歩行を許し、加速は±0.5m/s2に制限した。1回の1時間のセッションで行った全ての試行のうち、5つの有効な試行を記録した。全ての力は、猫の体重で基準化し、表した。

結果:歩様データは全ての猫でうまく採集できた。爪切除を行った猫とそうでない猫のPVFまたはVIに有意差は認められなかった。全ての試行で肢の荷重は後枝よりも前肢で大きかった。爪切除を行わなかった猫群の前肢の平均PVFとVIはそれぞれ56.41%と18.85%で、後肢の平均PVFとVIはそれぞれ50.22%と14.56%だった。
結論と臨床関連:プレッシャープラットフォームウォークウェイで猫の歩様分析はうまく実施できた。2群の猫のPVFとVIに差が見られなかったのは、両側前肢の爪切除後6ヶ月以上では、測定した垂直方向の力の変化を起こさないことを示唆する。(Sato訳)
■猫の変形性関節症:前向き研究28症例
Feline osteoarthritis: a prospective study of 28 cases
J Small Anim Pract. August 2006;47(8):439-45.
S P Clarke, D Bennett

目的:臨床的変形性関節症の猫コホートを確認し、この集団内の臨床症状、罹患関節の頻度、可能性のある原因を報告する

方法:この前向き研究の基準を満たすものは、変形性関節症のエックス線所見と共に、その病歴および/または臨床症状があることだった。患畜は鎮痛剤投与4週間以内に臨床症状が改善し、鎮痛剤に対する臨床症状および/それらの反応を説明されるかもしれない他の疾患プロセスフリーだった。

結果:このコホートに28例が含まれた。罹患関節で多かったのは、肘(45%)、股関節(38%)だった。症例の71%は原発性/特発性だった。ジャンプの能力(71%)、ジャンプの高さ(67%)両方の変化(ライフスタイルの変化)が、疾患のよく見られる症状だった。61%のオーナーは、猫への鎮痛/抗炎症剤の投与後顕著な改善を示したと感じた。研究開始時と終了時と比較すると、ジャンプの能力(P<0.001)、ジャンプの高さ(P<0.001)、跛行(P=0.03)、ぎこちない歩様(P=0.04)、活動レベル(P=0.02)が有意に改善した。

臨床意義:変形性関節症は猫の臨床問題であるが、明らかな跛行は一般的な特徴ではない。(Sato訳)
■犬で終生食餌制限と股関節変形性関節症のエックス線所見
Lifelong diet restriction and radiographic evidence of osteoarthritis of the hip joint in dogs
J Am Vet Med Assoc. September 2006;229(5):690-3.
Gail K Smith, Erin R Paster, Michelle Y Powers, Dennis F Lawler, Darryl N Biery, Frances S Shofer, Pamela J McKelvie, Richard D Kealy

目的:犬における股関節変形性関節症のエックス線所見発現に対する食餌制限の影響を評価する

構成:長期コホート研究

動物:7同腹子48頭のラブラドールレトリバー

方法:7同腹子の6週齢48頭の子犬を兄妹で性別、体重によりペアを組ませ、そのペアを24頭ずつの2グループどちらかに無作為に振り分けた。8週齢で開始し、ペアを基本に生涯にわたり1群は自由採食(コントロール食)、もう1群は同じ食餌の25%減(制限食)を与えた。犬の股関節は1歳前まで複数の間隔で標準腹背股関節伸展像のエックス線撮影を行い、その後誕生日を基本に年1回撮影した。グループの振り分けを知らせていない委員会承認放射線科医が、変形性関節症のエックス線所見にスコアーをつけた。

結果:全ての犬の股関節変形性関節症のエックス線所見の有病率は、研究を通し直線的に増加した(全体の有病率:2歳時15%-14歳67%)。制限食犬は股関節変形性関節症がより低有病率で、発現も遅かった。股関節変形性関節症のエックス線所見が最初に確認されたときの年齢中央値は、制限食群(12歳)に比べコントロール食群(6歳)が有意に早かった。

結論と臨床関連:このラブラドールコホートで、制限食給餌は股関節変形性関節症のエックス線症状の発現を遅らせた、または防止した。25%食餌制限の生涯維持は、股関節変形性関節症の発現を遅らせた、またはその程度を減じ、寿命や生活の質に有利に影響する。さらに、そのデータは股関節変形性関節症の発症はそれらの犬で二峰性ではなかったが、生涯を通じ起こることを示した。(Sato訳)
■以前に股関節形成不全に起因する跛行を持つ犬の集団で前十字靱帯断裂の罹患率:369症例(1994-2003)
Prevalence of Cranial Cruciate Ligament Rupture in a Population of Dogs with Lameness Previously Attributed to Hip Dysplasia: 369 Cases (1994-2003)
J Am Vet Med Assoc 227[7]:1109-1111 Oct 1'05 Retrospective Study 11 Refs
Michelle Y. Powers, DVM; Steven A. Martinez, DVM, MS, DACVS; James D. Lincoln, DVM, MS; Cara J. Temple, BS; Arthur Arnaiz

目的:以前、犬股関節形成不全(CHD)による跛行を持つ犬における前十字靱帯断裂(CCLR)の罹患率を判定する

構成:回顧的研究

動物:369頭の飼育犬

方法:委託獣医師が股関節形成不全または股関節痛と診断した犬で、1994-2003年の病院医療記録を再検討した。犬は部分、または完全CCLRまたはCHDによる後肢跛行を持つと指摘された。

結果:8%の犬は未不妊メス、43%は避妊済みメス、14%は未不妊オス、35%は去勢済みオスで、平均年齢は3.8歳(範囲、3ヶ月-15歳)だった。よく見られた犬種は、ラブラドールレトリバー(21%)、ジャーマンシェパード(13%)、ゴールデンレトリバー(11%)だった。後肢跛行の原因としてCCLRの罹患率は32%(95%信頼区間、27.2%-36.8%)だった。後肢のCCLRの分布は、左(29%)、右(28%)、両側(43%)だった。CCLR119頭中94%はCHDのX線像と一致し、92%は膝関節浸出液があり、81%は頭側ドローワーサインが見られた。

結論と臨床関連:CHDによる跛行として紹介された犬がCCLR高罹患率であることをもとに、CHDの治療を推奨する前に膝関節の他の原因を除外することが重要である。(Sato訳)
■犬の半月板:傷害と治療
The Canine Meniscus: Injury and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 26[9]:687-697 Sep'04 Review Article 42 Refs
Karyn K. Briggs, DVM, MS
The Center for Specialized Veterinary Care Westbury, New York

半月板裂傷は犬でよく見られる臨床所見である。通常、損傷は内側半月板で、一般に前十字靱帯断裂に続き発生する。治療オプションは、修復、全半月板切除、部分的半月板切除、片半月板切除である。膝関節安定時に可能であれば、半月板裂傷の治療は修復または部分的半月板切除である。半月板切除は必然的に変形性関節症と関節軟骨変性の永続的サイクルを誘発する。今行われている研究は、血液供給、骨格基質の改善による半月板の治癒の可能性を増すことに注目している。重度の症例は、将来半月板移植や人工器官が利用できるかもしれない。(Sato訳)
■犬の変形性骨関節症の治療でヒアルロン酸静脈内注射後の滑液と血清検査
Examination of Synovial Fluid and Serum Following Intravenous Injections of Hyaluronan for the Treatment of Osteoarthritis in Dogs
Vet Comp Ortho Trauma 18[3]:169-174 Aug'05 Original Research 50 Refs
S. O. Canapp, A. R. Cross, M. P. Brown, D. D. Lewis, J. Hernandez, K. A. Merrit, R. Tran-Son-Tay, D. Sc

片側前十字靱帯断裂を治療した犬で、血清グリコサミノグリカン(GAG)濃度、滑液(SF)ヒアルロン酸濃度と粘度に対するヒアルロン酸ナトリウム(HA)静脈内(IV)投与の効果を判定する無作為盲目前向き臨床試験を実施した。
脛骨プラトー平坦化骨切術を実施した22頭の犬を調査した。両膝関節の滑液と血清を術前、術後2、4、8週目に採取した。犬にヒアルロン酸ナトリウム1.0ml(10mg)(処置群1;n=10)か、同量の0.9%食塩水(処置群2;n=12)を術後すぐ、2、4週後にIV投与した。滑液粘度はmagnetically driven, acoustically tracked, translating-ball血流計で評価した。滑液HA二糖内容を、フルオロフェアアシスト炭水化物電気泳動で測定した。血清GAG濃度はアルシアンブルー分光光度検査で測定した。データはWilcoxon sign rank test (p < 0.05)で分析した。平均±SD粘度(cP)は、罹患肢術前(54.8±60.8)よりも無傷の膝関節の滑液(450±604.1)の方が有意に高かった。平均±SDヒアルロン酸濃度(?g/ml)は、無傷の膝関節(141.6±132.5)より罹患肢(281.4±145.9)の滑液で有意に高かった(p=0.02)。術後いかなる時にも処置群内または群間のSF粘度、HA濃度、または血清GAG濃度に有意差は見られなかった。前十字靱帯に障害を持つ膝関節は、SF粘度及びHA濃度に有意な変化を起こす。(Sato訳)
■変形性関節症の犬の治療に対するグルコサミン/硫酸コンドロイチンの効果を評価する無作為二重盲目陽性-コントロール試験
Randomised double-blind, positive-controlled trial to assess the efficacy of glucosamine/chondroitin sulfate for the treatment of dogs with osteoarthritis
Vet J. April 2006;0(0):.
Grainne McCarthy, James O'donovan, Boyd Jones, Hester McAllister, Michael Seed, Carmel Mooney

無作為二重盲目陽性コントロール多施設研究で、股関節または肘の変形性関節症を確認した35頭の犬の治療で、塩酸グルコサミンと硫酸コンドロイチン(Glu/CS)の混合経口投与の効果を評価した。カルプロフェンは陽性コントロールとして使用した。治療開始後、14、42、70日目に再検査を行った。その後薬剤投与を中止し、98日目に再評価した。
治療反応は主観をもとに、各来院時それら所見を記録する担当獣医師により評価した。Glu/CSで治療した犬は、70日目に疼痛スコアー、荷重、状況の程度に関し統計学的有意な改善を示した(P<0.001)。有意な反応の発現は、カルプロフェン投与犬よりもGlu/CSでより緩やかだった。結果は変形性関節症の犬でGlu/CSが正の臨床効果を持つと示す。(Sato訳)
■犬の股関節形成異常に関与する変形性関節症の今後の発症に対する早期マーカーとして後外側曲線骨棘の使用
Use of the Caudolateral Curvilinear Osteophyte As An Early Marker for Future Development of Osteoarthritis Associated with Hip Dysplasia in Dogs
J Am Vet Med Assoc 225[2]:225-233 Jul 15'04 Longitudinal Cohort Study 17 Refs
Michelle Y. Powers, DVM; Daryl N. Biery, DVM, DACVR; Dennis F. Lawler, DVM; Richard H. Evans, DVM, MS; Frances S. Shofer, PhD; Philipp Mayhew, BVM&S; Thomas P, Gregor, BS; Richard D. Kealy, PhD; Gail K. Smith, VMD, PhD

目的:股関節形成異常の犬に関与する尾外側曲線骨棘(CCO)と変形性関節症の関連を判定する

構成:長期集団研究

動物:7頭の同腹子、48頭のラブラドールレトリバー

方法:各24頭の性別、大きさが一致したペアに生涯同じ餌を与え、制限食犬にはコントロール犬よりも25%少なく与えた。犬の股関節を標準腹背股関節伸展X線撮影法により、16、30、52週齢と生涯にわたり毎年評価した。股関節組織の組織学的検査を45頭の犬で行った。

結果:死亡年齢中央値は11.2歳だった。CCOを持つイヌはそれがない犬より、変形性関節症のX線症状を発現しやすくするため、3.7倍に給餌群を調整した。食餌により階層化し、CCOを持つコントロール犬は、100%変形性骨関節症のX線所見を発現し、CCOを持つ制限食を与えた犬の55%が発現した。変形性骨関節症の犬29頭中22頭(76%)の最初に認められたX線変化はCCOだった。全体で、CCOを持つ37頭中35頭(95%)に変形性関節症の組織病理学的病変があった。

結論と臨床関連:結果は、生涯にわたり評価したラブラドールレトリバーの大体骨頚のCCOとその後の変形性関節症のX線症状発現との間に相関があることを示す。CCOは犬股関節形成異常に関する変形性骨関節症の重要な早期X線指標である。(Sato訳)
■イヌの1型免疫介在多発性関節炎:39症例(1997-2002)
Type 1 Immune-Mediated Polyarthritis in Dogs: 39 Cases (1997-2002)
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1323-1327 Apr 15'04 Retrospective Study 24 Refs
Dylan N. Clements, BVSc; Robyn N. A. Gear, BVSc; James Tattersall, BVSc; Stuart Carmichael, BVMS, MVM; David Bennett, BVetMed, PhD

目的:イヌの1型免疫介在多発性関節炎(IMPA)の対する臨床症状、検査所見、ワクチン接種との関連、治療に対する反応を判定する

構成:回顧的研究

動物:39頭のイヌ

方法:3箇所の大学依頼病院から臨床記録、X線報告を再検討した。臨床症状、検査所、研究所所見、ワクチンとの関連、治療に対する反応を評価した。

結果:臨床症状と初回検査所、そして臨床研究所見は異常となる頻度が多かったが、非特異的で回復の見込みはなかった。ワクチンの時期は病気の発現に関与しなかった。化学療法的免疫抑制で56%のイヌに完全治癒が見られた。18%(7/39)のイヌに持続的薬剤療法が必要で、再燃に対する治療が成功したのは13%(5/39)だった。病気の結果として15%(6/39)のイヌは死亡、または安楽死された。

結論と臨床関連:1型IMPAでワクチン関与の可能性は、少数症例のため、この研究で明らかにならなかった。複数の関節液分析の他に、徴候、臨床症状、診断検査の結果は、一般に非特異的だった。多くの1型IMPAのイヌは初回免疫抑制治療に反応したが、31%(12/39)のイヌは再燃したか、さらなる治療が必要だった。(Sato訳)
■フランスでのジャーマンシェパードにおける犬の肘異形成と初期病変
Canine elbow dysplasia and primary lesions in German shepherd dogs in France.
J Small Anim Pract. 2004 May;45(5):244-8.
Remy D, Neuhart L, Fau D, Genevois JP.

520頭のジャーマンシェパードを肘異形成について調べた。 以下の初期病変について分析した: 関節整列不全症 (JI)、内側鉤状突起癒合不全(FCP)、上腕骨関節顆の骨軟骨症あるいは骨端炎および肘突起癒合不全症(UAP)。確定診断するために各関節について3方向のX線像を使用した。肘異形成の有病率は19.4%だった。 最も頻繁な病変はJI(16.3%)、FCP(11.3%)であった。UAPはほとんど(1.1%)診断されなかった。病変の併発は非常に頻繁(肘異形成の42.2%)だった。 これらの結果はUAPに罹患した犬のプレスクリーニングのため偏りがあるかもしれないが、JIとFCPはジャーマンシェパードで頻繁に起こり、これまで過小報告されていたが、おそらく肘異形成の最も一般的な初期病変である。(Dr.Kawano訳)
■猫慢性関節リウマチに対する疾患緩和療法
Disease Modifying Treatment for Feline Rheumatoid Arthritis
Vet Comp Ortho Trauma 18[2]:94-99 May'05 Brief Communications 15 Refs
F. Y. Hanna

猫びらん性多発性関節炎には、一般的に見られる骨膜増殖性多発性関節炎(PPP)と、まれに見られる慢性関節リウマチ(RA)がある。過去3年間で、猫慢性関節リウマチと確定した12頭は従来の治療に反応がよくなく、経口的に毎週1回メトトレキサート7.5mgとレフルノミド70mgを投与した。猫の平均年齢は5.9歳(範囲2.5-10歳)で、シャムネコが多く見られた。12頭中7頭(58%)は4週間以内に著しい改善を示した。最大限の改善が観察されたら投与量を減じた。研究経過中に重大な毒性は認められず、発癌の影響も見られなかった。(Sato訳)
■重度自然発生変形性関節症のイヌの全肘関節形成術後の短期結果
Short-term outcome after total elbow arthroplasty in dogs with severe, naturally occurring osteoarthritis.
Vet Surg 32[6]:545-52 2003 Nov-Dec
Conzemius MG, Aper RL, Corti LB

目的:重度自然発生変形性関節症(OA)の飼育犬で、全肘関節形成術(TEA)前後の患肢機能の評価

研究構成:手術前後の患肢機能を比較した前向き臨床評価

動物:肘OAを持つ大型成犬20頭

方法:術前、全頭で身体検査、エックス線、force platform歩様検査を行った。TEAを行い、術後3、6、12ヶ月目に再検査を行った。術前、術後所見を比較した。

結果:16頭でTEAにより満足した結果を得られた。それらのイヌで、手術した肢の機能は、術後1年で平均peak vertical force (PVF)、平均vertical impulse (VI)が術前値の2倍近く常時増加した。深刻な合併症として、感染(n=1)、脱臼(n=1)、上腕窩の骨折(n=1)があった。

結論:提示したTEAはかなり制限を持つが、自然発生肘変形性関節症のイヌにうまく実施できる。技術とインプラント構成の改善が、予後を改善するものと思われる。
臨床関連:1年のデータをもとに、TEAは、イヌでうまく実施でき、肘関節の重度変形性関節症による跛行を持つ成犬に対する代替療法として考慮されるべきである。(Sato訳)
■スコティッシュ・ホールドにおける骨軟骨形成異常
Osteochondrodysplasia in Scottish Fold cats.
Aust Vet J 77[2]:85-92 1999 Feb
Malik R ; Allan GS ; Howlett CR ; Thompson DE ; James G ; McWhirter C ; Kendall K

目的:スコティッシュ・フォールドで発生し得る骨および関節問題をよりよく特徴付けることです。

計画:5つの動物病院で見られた症例と猫飼育所における猫のレントゲン調査に関する回顧的研究。

結果:5ヵ月齢から6歳の6頭のスコティッシュ・フォールド(去勢済オス4頭、避妊済メス2頭)が、跛行、ジャンプしたがらない、木馬様歩行、短く歪曲した四肢末端、足底足根部位の腫張、短く太い曲げられない尾などの骨格疾患徴候のために来院されました。さらに4症例(オス1頭、メス3頭、15ヵ月齢から11歳)が、猫飼育所のレントゲンのスクリーニング検査により検出されました。骨軟骨形成異常の診断は、足根、手根、中足、中手骨、指節と尾椎の不整な形と大きさ、関節腔狭小化、隣接骨のびまん性骨減少を伴う、四肢末端関節周囲における進行性の骨新生所見などを含む、特徴的なレントゲン所見を基に行いました。
踵骨尾側の足底外骨腫は、進行した症例で発現しました。系図情報が入手できた9症例すべてにおいて、罹患猫は、伝えられるところでは、正常な耳の猫にスコティッシュ・フォールドを掛け合わせたものとのことでした。身体的徴候の発現時期と重症度、そしてレントゲン的異常の範囲と進行していく割合は、症例により様々でした。局部の組織学的所見は、潜在的問題が、不十分な軟骨成熟に関連した、骨軟骨形成異常かもしれないということを示唆しました。足を引きずっていた3頭のうち2頭で、ペントサン皮下投与により臨床徴候が改善し、このうち1頭は、経口グルコサミノグリカン製剤でも有効でした。

結論:臨床、およびレントゲン所見で、特に四肢末端、耳、尾における、軟骨の成熟および作用の欠陥を認めました。ある程度の骨軟骨形成異常に罹患した全スコティッシュ・フォールドに関して、最も良い解決策は、繁殖に縮れ耳の猫の使用を避け、代わりにスコティッシュ・ショートヘアーを用いることであろうと思われます。 (Dr.K訳)
■スコティッシュ・ホールドの骨軟骨形成異常に対する一時緩和的放射線照射
Palliative irradiation of Scottish Fold osteochondrodysplasia.
Vet Radiol Ultrasound 45[6]:582-5 2004 Nov-Dec
Hubler M, Volkert M, Kaser-Hotz B, Arnold S

この報告は、スコティッシュ・ホールドの骨軟骨形成異常に対する治療としての一時緩和的放射線療法について記述します。骨軟骨形成異常を患った3歳の避妊済のスコティッシュ・ホールドが、チューリッヒ大学、獣医教育病院へ紹介されました。品種、臨床徴候、レントゲン所見、そして生検標本の組織学的診断に基づき、スコティッシュ・ホールドの骨軟骨形成異常が確認されました。炎症過程と疼痛へと導く外骨腫をコントロールするため、一時緩和的治療として、放射線療法を開始しました。これは、数週間以内に、臨床徴候をなくすことに成功しました。放射線療法後の短期および長期結果を述べ、同じく放射線療法によく反応する人の類似疾患である、足底踵骨棘に関して考察しました。(Dr.K訳)
■大腿骨頭、骨頚を切除したイヌで、トルフェナム酸長期投与の効果を評価する
Assessing the Efficacy of Long-Term Administration of Tolfenamic Acid in Dogs Undergoing Femoral Head and Neck Excision
Vet Comp Ortho Trauma 16[4]:232-237 Nov'03 Case Study 35 Refs
B. Chorette, J. Dupuis, M. Moreau, S. Dominet, P Meal, E. Grisneaux

大腿骨頭骨頚切除(FHNE)は、重度変形性関節症があり保存療法で管理できない臨床症状がある、またはコスト面で股間節全置換術ができない場合に通常行われる救済措置である。この研究の目的は、FHNEを行ったイヌのトルフェナム酸長期投与の副作用と効果を評価することである。両側股関節変形性関節症に関する臨床症状を持ち、20kg以上のイヌ20頭を研究した。
10頭にはFHNE後4ヶ月間トルフェナム酸を投与し、残る10頭にはプラセボを投与した。術後4ヶ月で、プラセボ群は術前値と比較し、peak vertical force (PVF) (60.38% BW vs 64.77% BW, p = 0.046)の有意な低下を見せ、vertical impulse (VI) (8.38% BW x sec. vs 9.64% BW x sec., p = 0.023)の有意な低下を示した。PVF (65.13% BW us 63.31 % BW, p = 0.296) 、VI (8.24% BW x sec. vs 8.71 % BW x sec., p = 0.945)に関するトルフェナム酸投与群の術前術後結果に有意差は見られなかった。粘膜病変の内視鏡検査に関して、2群間の有意差は見られなかった。トルフェナム酸投与群のイヌのオーナーは、主観的に患肢の早期使用、理学療法にイヌがより従順、正常な歩様への速い回復を報告していた。トルフェナム酸の長期投与は、手術結果の改善にFHNE後推奨されると思われる。(Sato訳)
■スコティッシュホールドの骨軟骨異形成症の待期的照射
Palliative irradiation of Scottish Fold osteochondrodysplasia.
Hubler M, Volkert M, Kaser-Hotz B, Arnold S.
Vet Radiol Ultrasound. 2004 Nov-Dec;45(6):582-5.

スコティッシュホールドの骨軟骨異形成症の治療としての待期的照射を記述している。骨軟骨異形成症に罹患した三歳、避妊メスのスコティッシュホールドはチューリッヒ大学獣医教育病院に委託された。
品種、病歴、臨床症状、レントゲン検査所見そして生検標本の組織学的診断に基づいて、スコティッシュホールドの骨軟骨異形成症が確認された。炎症過程と痛みにつながる外骨腫をコントロールするため、放射線療法が待期療法として始められた。この治療は2~3週間以内で臨床症状の緩和に成功した。放射線療法後の短期そして長期の結果は、放射線療法によく反応し匹敵する人の病気、踵骨棘で提示され論じられる。(Dr.Kawano訳)
■上腕骨顆骨折整復後のイヌの外傷後骨関節症の出現率
Frequency of Post-Traumatic Osteoarthritis in Dogs After Repair of a Humeral Condylar Fracture
Vet Comp Ortho Trauma 16[1]:1-5 Jan'03 Retrospective Study 23 Refs
* W. J. Gordon, M. E Besancon, M. G. Conzemius, K. G. Miles, A. S. Kapatkin, W. T. N. Culp

上腕骨顆骨折(HCF)の整復後、イヌの外傷後骨関節症(PTO)の出現率と骨折整復結果の関連は不明である。この研究の目的は、HCF整復後イヌのPTOの出現率を判定し、骨折整復、肢機能と追跡骨-関節症(OA)スコアーの関連を判定することだった。全頭身体検査とエックス検査で評価し、片側骨折整復をした犬もフォースプラットフォーム歩様分析で検査した。最初と追跡エックス線写真で、過去に公表されたグレード測定法を用い整復と骨関節症の所見にスコアーをつけた。
この研究で13頭の15個の骨折を評価し、平均追跡期間は43ヶ月だった。全ての肘で、骨関節症は発生し、またはX線学的に進行した。ピーク垂直力(PVF)は罹患肢で有意に減少したが垂直瞬間力(VI)は反対側の正常肢と比較した時違いは無かった(p=0.12)。可動域の痛みが無い範囲は、正常肢と比較し、屈曲で減少した(p<0.01)が、伸展ではそうでなかった(p=0.98)。骨折整復スコアーは、追跡OAスコアー(p=0.07)、RVF(p=0.40)、VI(p=0.72)、屈曲(p=0.50)、伸展(p=0.62)で相関性は無かった。PTOの高い出現率により、オーナーにはほぼ解剖学的整復ができていても、いつも肢機能低下が起こりえることを通告しておくべきである。(Sato訳)
■421頭のイヌの尺骨内側鈎状突起離断(FCP)の関節切開vs.関節鏡検査による治療
Arthrotomy Versus Arthroscopy in the Treatment of the Fragmented Medial Coronoid Process of the Ulna (FCP) in 421 Dogs
Vet Comp Ortho Trauma 16[4]:204-210 Nov'03 Retrospective Study 35 Refs
A. Meyer-Lindenberg, A. Longhann, M. Fehr, I. Nolte

8年間にわたり、尺骨内側鈎状突起離断(FCP)を持つ421頭のイヌの518個の関節についての回顧的研究を行った。75個の関節には、上腕骨顆内側面に追加の骨軟骨症dissecansがあった。46.8%のイヌ(197/421)は1歳以下だった。147個の関節は、通例の関節切開で治療し、271個の関節は、関節鏡で治療した。術後平均23ヶ月目に238症例(関節切開で治療した103個と関節鏡で治療した135個)を、臨床的にそしてエックス線検査で再評価し、術後平均21ヶ月目に191症例(関節切開で治療した88個と関節鏡で治療した103個)は、アンケートにより再評価した。
関節切開で治療した42.4%(81/191)の症例は跛行を見せず、29.3%(56/191)の症例は、休息または激しい運動後に一時的な跛行を見せ、28.3%(54/191)の症例は持続的な跛行を見せた。しかし、症状はそれら症例の14頭で手術により減少していた。関節鏡で治療した60.1%(143/238)の症例は跛行を見せず、29.4%(70/238)の症例は、急速または激しい運動後に一時的な跛行を見せ、10.5%(25/238)の症例は持続的な跛行を見せたが、そのうち4症例は術後改善した。関節鏡で治療した症例で、回復期間はより短縮した。それら方法で、その後の関節症発症に関する違いは認められなかった。研究結果は、最小限の侵襲特性を持つ関節鏡は、通例の関節切開よりもよい機能的結果をもたらすことを示す。しかし、二次的関節症の発症は、両方法とも避けることが出来ない。(Sato訳)
■イヌの大腿骨頭と大体骨頚切除の短期、長期結果に対するケトプロフェン、またはカルプロフェン術後投与の影響
Effects of Postoperative Administration of Ketoprofen or Carprofen on Short- and Long-Term Results of Femoral Head and Neck Excision in Dogs
J Am Vet Med Assoc 223[7]:1006-1012 Oct 1'03 Prospective Trial 41 Refs
* Emmanuelle Grisneaux, DVM, MS; Jacques Dupuis, DVM, MS, DACVS; Philippe Pibarot, DVM, PhD; Norbert H. Bonneau, DVM, MS; Benoit Charette, DVM, MS; Diane Blais, DVM

目的:イヌの大腿骨頭と骨頚切除(FHNE)の短期、または長期結果に対し、ケトプロフェン、またはカルプロフェンの術後投与がどう影響するかを判定すること

構成:前向き無作為コントロール試験

動物:FHNEを行った大型飼育犬40頭と股関節角測定とフォースプレート分析のため、コントロールとした15頭の健康な大型犬

方法:FHNEを行うイヌで、術後21日間ケトプロフェン、カルプロフェン、またはプラセボを投与した。股関節の外転、伸展角を手術終了時とその後120日目に測定した。跛行スコアーを割り当て、フォースプレート分析を3、15、120日目に実施した。

結果:股関節角または跛行スコアーに関する治療群間の有意差はなかった。フォースプレート分析で、研究期間中3治療群すべてのイヌは、コントロール犬よりも一貫して患肢の荷重が低下した。プラセボを投与されていたイヌに比べ、ケトプロフェンを投与されたイヌは、3日目の歩行時推進力のピークがより大きく、15日目歩行時の垂直力のピークがより大きかった。術後の鎮痛剤投与ではない、小転子の急性状況と保護の治療は、120日目の地面反作用に明確に関係した。31頭中12頭のオーナーは、鎮痛剤投与中止後、イヌの歩様が2,3日悪化したと指摘した。

結論と臨床関連:術後ケトプロフェン、またはカルプロフェンの投与は、FHNEの長期結果に関係せず、おそらく他の要因の影響のためと思われた。この研究で、鎮痛剤投与中止後に跛行が悪化したと気付いたオーナーがいたことから、長期投与が長期結果を改善する可能性がある。(Sato訳)
■犬における血行性敗血症性関節炎:抗生物質で、非外科的に治療した5症例の結果
Hematogenous septic arthritis in the dog: results of five patients treated nonsurgically with antibiotics.
J Am Anim Hosp Assoc 39[6]:563-6 2003 Nov-Dec
Fitch RB, Hogan TC, Kudnig ST

この回顧的研究は、5頭の犬における血行性敗血症性関節炎を治療するのに抗生物質を使用し、非外科的治療の有効性を評価しました。1歳以下の全ての犬で、大型犬種が殆どでした。関節液培養では、全ての症例で陽性となり、Streptococcus B-haemolytic spp.、Pasteurella multocida、そしてStaphylococcus intermediusなどの、一般的な細菌種が分離されました。抗生物質の適切な選択と期間で治療した犬は、いかなる後遺症もなく、臨床的に改善しました。この報告と以前の臨床報告は、
血行性敗血症性関節炎が、抗生物質療法で非外科的に、うまく治療できるということを立証しております。(Dr.K訳)
■イヌの肘異形成:解剖と病因論
Canine Elbow Dysplasia: Anatomy and Pathogenesis
Compend Contin Educ Pract Vet 25[10]:754-762 Oct'03 Review Article 20 Refs
C. Todd Trostel, DVM; Ron M. McLaughlin, DVM, DVSc, DACVS; Roy R. Pool, DVM, PhD

イヌの肘異形成は、肘突起癒合不全、内側鈎状突起離断、内側上腕骨顆骨軟骨症、肘不調和などの疾患の複合である。原因は提唱されている。骨軟骨症、滑車切痕形成異常、橈骨、尺骨の非同調性成長である。遺伝、栄養のアンバランス、成長障害、外傷は、肘異形成の進行や発現に影響するかもしれない。(Sato訳)

■イヌの肘異形成:発生、診断、治療、予後
Canine Elbow Dysplasia: Incidence, Diagnosis, Treatment, and Prognosis
Compend Contin Educ Pract Vet 25[10]:763-773 Oct'03 Review Article 44 Refs
C. Todd Trostel, DVM; Ron M. McLaughlin, DVM, DVSc, DACVS; Roy R. Pool, DVM, PhD

イヌの肘異形成は、大型犬腫の前肢の跛行や疼痛の一般的な原因で、獣医師によりその構成がよく理解、認識されているため、たびたび診断される。身体検査、エックス線検査、最先端画像検査所見をもとに診断される。内科、外科処置両方が提唱される。イヌ肘異形成を持つイヌの正常な関節機能の予後はまちまちである。(Sato訳)
■犬におけるビタミンD3代謝
Vitamin D3 metabolism in dogs.
Mol Cell Endocrinol 197[1-2]:23-33 2002 Nov 29
Hazewinkel HA, Tryfonidou MA

主なビタミンD(3)代謝産物(例:25(OH)D(3),1,25(OH)(2)D(3),そして24,25(OH)(2)D(3))の血漿濃度を、同じ条件下で飼育した、14週齢の大型犬種と小型犬種(成犬体重60kg対6kg)で、測定しました。25(OH)D(3)(約22microg/l)と1,25(OH)(2)D(3)(約40ng/l)は、両グループで似ておりましたが、血漿24,25(OH)(2)D(3)濃度は、大型犬種ではより低値(大型犬種と小型犬種は、それぞれ、7microg/l対70microg/l)でした。より低値の血漿24,25(OH)(2)D(3)濃度は、小型犬種に対し大型犬種では、血漿GHとIGF-I濃度がより高値であることで、説明することができ、これらのホルモンは、24-水酸化を抑制することが知られております。
血漿24,25(OH)(2)D(3)濃度は、小型犬種において、Ca補充中増加しましたが、大型犬種では増加しませんでした(それぞれ、100microg/l対7microg/l)。高い食事中Ca内容により誘導された低リン血症は、正常上皮小体の犬においてのみ、血漿1,25(OH)(2)D(3)濃度の増加と共に認められましたが、上皮小体機能低下の犬では認めませんでした。
Ca欠乏による上皮小体機能亢進症は、大型犬種と小型犬種において、広汎性骨粗鬆症とともに、血漿1,25(OH)(2)D(3)濃度の増加と、血漿24,25(OH)(2)D(3)濃度の減少に随行しました。CaとPを添加した標準食を給餌された大型犬種の子犬は、これらの代謝産物のクリアランス増大を表していると思われる、25(OH)D(3)と1,25(OH)(2)D(3)の両方の血漿濃度が減少しました;ジヒドロキシル化ビタミンD代謝産物の低い血漿濃度は、これらの犬の、軟骨形成(例;骨軟骨症)における障害の原因と考えられました。
すべてのビタミンD3代謝産物のいっそうの濃度低下が、ビタミンD3欠乏食で飼育された若い犬に認められ、類骨と軟骨のミネラル化障害(例;くる病)を導きました。これらの研究は、犬におけるビタミンD3代謝調節因子の階層が存在することを示しております。例えば、高カルシウム血症や低リン血症よりも、GHとIGF-Iが、24-水酸化酵素を抑制する;1,25(OH)(2)D(3)と24,25(OH)(2)D(3)は、上皮小体機能亢進症において唯一、相互に関係しております;過剰なCaとPの摂取は、ビタミンD3代謝産物の代謝回転を増大します;そして上皮小体ホルモンと1,25(OH)D(3)との相乗作用が、骨格のミネラル化における役割を演じているように見えるのです。
標準的なドックフードで飼育された大型犬種における、低値の血漿24,25(OH)(2)D(3)濃度は、急速な成長期の軟骨内骨化における、栄養障害の病因論で、役割を演じると思われます。(Dr.K訳)
■発育期身体異常疾患によるイヌの跛行:汎骨炎、レッグペルテス病、肥大性骨異栄養症
Canine Lameness Caused by Developmental Orthopedic Diseases: Panosteitis, Legg-Calve-Perthes Disease, and Hypertrophic Osteodystrophy
Compend Contin Educ Pract Vet 25[4]:282-292 Apr'03 Review Article 33 Refs

イヌの汎骨炎、レッグペルテス病(LCPD)、肥大性骨異栄養症(HOD)は一般的な発育期身体異常疾患で跛行を引き起こす。各疾患の特定の原因は不明のままであり、時に議論の的となる。いくつかの理論は他のものより容認されているが、多因性の原因が一般に疑われている。上手な身体検査とエックス線検査が、通常それらの疾患を診断する十分な情報を提供する。汎骨炎とHODは自己制御できる疾患で、典型的に内科療法で良好な予後となる。LPCDも予後は良いが、外科手術が治療選択である。(Sato訳)
■イヌのアキレス腱断裂
Achilles Tendon Rupture in Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 25[8]:613-620 Aug'03 Review Article 27 Refs
* Virginia/Maryland Regional College of Veterinary Medicine Blacksburg, Virginia
* Michael King, BVSc & Richard Jerram, BVSc, DACVS

イヌのアキレス腱は、3つのここの構成要素からなる。断裂は、比較的まれに起こり、鋭利な外傷によることが多い。素因となる原因の多様性は示唆されており、慢性的な磨耗、年齢、フルオロキノロンの使用等がある。診断はしばしば患者の身体、身体的形態異常検査をもとに下すが、いくらかの補助的診断ツールも有効である。外科手術は保存療法よりもよく成功する。手術は主に靱帯断裂端の縫合とその後の飛節長期固定である。術後固定の種々の方法が示されており、ギプスの適用、外骨格固定、経関節位置の骨スクリューなどがある。適切な治療と術後ケアの後、正常機能へ戻る予後は良好である。(Sato訳)
■4ヵ月齢の猫における、ビタミンD依存性くる病タイプ2
Vitamin D-Dependent Rickets Type 2 in a Four-Month-Old Cat
J Am Vet Med Assoc 222[3]:337-339 Feb 1'03 Case Report 12 Refs
* C. Alan Schreiner, DVM and Larry A. Nagode, DVM, PhD
* Cascade Veterinary Specialists, 660 NW Gilman Blvd., Issaquah, WA 98027

4ヵ月齢のオスのショートヘアーキャットを、不活発、嘔吐、下痢、筋震振、および散瞳のために検査しました。検査所評価では、低カルシウム血症、高リン血症、そして高副甲状腺ホルモンとカルシトリオールが明らかとなりました。所見は、ビタミンD依存性くる病タイプ2の診断と一致しました。治療は、カルシウムおよびカルシトリオール補給剤の経口投与を行いました。18ヶ月に至るまでの間、猫は臨床上正常のままでした。経口カルシウム補給剤の治療は、最終的に中止し、猫は現在まで、正常カルシウム濃度を維持することが出来ております。(Dr.K訳)

■カルシウム調節障害の診断と治療に関する最新情報
Update on the diagnosis and treatment of disorders of calcium regulation.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 31[5]:1043-62 2001 Sep
Refsal KR, Provencher-Bolliger AL, Graham PA, Nachreiner RF

コンパニオンアニマルにおける、カルシウム異常の評価対し、PTH,iCa,PTHrP,そして25OHD解析の有用性は、臨床医と診断医に、よく受け入れられております。これらの解析の使用は、これらの疾患のいくつかが、本来考えられていたよりも、より一般的であるという認識を強くしました。また、他の疾患や食事のような環境因子の結果として、カルシウムの恒常性の変性に対する、更なる病識があります。人におけるカルシウム代謝のその他の疾患と動物における良く似たものは、同一視できるものと思われ、これらの解析の使用は、重要な役割を演じているでしょう。すでに強調したように、これらの解析を用いる根拠は、カルシウム異常が、副甲状腺依存性か非依存性であるかの分類を最初に解析することです。(Dr.K訳)

■過剰な腎臓リン喪失と明白なビタミンD代謝異常により発現した、猫のくる病
Rickets Caused by Excessive Renal Phosphate Loss and Apparent Abnormal Vitamin D Metabolism in a Cat
Sm Anim Clin Endocrinol 10[2]:8 May/Aug'00 Case Report 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS; Dave Panciera, DVM, MS; Carrie Waters, DVM, PhD
J Am Vet Med Assoc 1999; 215:1644-1649; Henik RA, Forrest LJ, Friedman AL

背景:骨代謝疾患のほとんどは、栄養性二次性上皮小体機能亢進症に関する、不適切な食事(高リン、低カルシウム食)、あるいは腎不全(腎性二次性上皮小体機能亢進症)によるものが、もっとも多く見られます。くる病の骨代謝疾患は、不十分な食事、日光浴不足、不完全なビタミンD活性、ビタミンD受容体欠乏、上皮小体機能低下症、腎不全、腎臓リン喪失、あるいは胃腸吸収不良、そしてこれらのいくつかが組み合わさった、ビタミンD欠乏により起こります。適切な食事を摂取している若い動物にくる病が発現した場合、ビタミンD代謝、ビタミンD受容体、あるいは腎尿細管のリン排泄における先天的障害が、多くの原因であると思われます。

要約:12ヵ月齢の避妊済メス、長毛家庭猫を、8ヶ月間に渡る、疼痛と関連した虚脱という多様な症状発現のために評価しました。最初の虚脱発現時点の初回生化学プロフィールで、4ヵ月齢の時に、低リン血症が認められました。猫は、虚脱後1~3週間の間、歩行不能のままでした。紹介される3ヶ月前に、胃毛球症に起因する胃腸閉塞で、毛球除去を行っておりました。その時点で、レントゲン検査により、広汎性骨減少と、左脛骨の非転移性横骨折が明らかとなりました。血清化学では、総カルシウムの減少が、明らかとなりましたが、イオン化カルシウムと血清副甲状腺ホルモン濃度は正常でした。
身体検査異常には、身長短縮と、肘の外転、左後肢外方開脚、後肢における蹠行姿勢を含む構造的異常がありました。紹介した獣医師からの異常なレントゲン像では、広汎性重度な骨減少、病的な湾曲を伴う長骨の破砕骨折、腰部脊柱の前湾、長骨の不明瞭な骨幹端が明らかとなりました。
入院時に得た胸部レントゲンでは、広汎性骨減少が認められました。腎機能は、尿分析、血清クレアチニン濃度、および腹部超音波検査は正常でした。血清リン濃度と、尿中リン排泄分画は正常でした。血清カルシウム濃度は正常で、カルシウムの尿中排泄分画は正常以下でした。血清アラニントランスアミナーゼ(ALT)の軽度上昇と、アルカリフォスファターゼ活性が存在しましたが、血清胆汁酸濃度は正常でした。
血清ビタミンD濃度の定量が未解のまま、25-hydroxyvitamin D3(20μg1日1回)の治療を開始しました。高カルシウム血症をモニターするために、毎週、血清カルシウムを測定することが推奨されました。血清25-hydroxyvitamin D3濃度は、似た食事を食べている健康な3頭の猫より、かなり低いものでした。血清1,25-dihydroxyvitamin D3濃度は、正常猫のものと似ておりました。25-hydroxyvitamin D3投与開始後8日目まで、猫は虚脱と歩行不能でした。
その後、猫はさらに回復し、治療を開始して25日以内に、初めてジャンプするようになりました。治療開始26日目で,レントゲン所見は、治療前より骨の不透過度が、増大しました。治療開始して約30ヵ月後に、猫を再評価しました。虚脱の症状は一切なくなり、体重増加と骨の不透過度は、増大しましたが、正常よりわずかに少ないままでした。残存している異常なレントゲン像には、破砕骨折と病的湾曲の変形治癒による、二次的な多数の長骨の角度変形がありました。骨盤の砂時計状の変形、尾側腰部脊柱の前湾、そして椎間板スペースの陥没も存在しました
。血清リン濃度は、正常以下で、尿中リン排泄増大で導かれる腎尿細管欠陥と一致した所見であり、リンの尿クリアランスは高まりました。リン酸塩を25-hydroxyvitamin D3療法に加えました。著者はこの猫が、ビタミンD水酸化における先天性欠損症か、骨代謝疾患を導くビタミンDに対する組織反応における先天性欠損症であると、結論付けました。

臨床効果:骨代謝疾患をもつ動物を評価する際、食事、腎機能および肝機能、そして消化管吸収能の評価を最初に行うべきであります。もし、若い動物で、この報告に述べたような症例ならば、先天性疾患を疑うべきです。血清ビタミンD代謝の測定は、潜在的症例を明白にするのに役立つかもしれません。
25-hydroxyvitaminD3減少は、腸管吸収不良、肝疾患、あるいはビタミンDの肝臓での水酸化における先天性欠損により、起こり得ます。低カルシウム血症と高リン血症を伴う、正常な血清25-hydroxyvitaminD3と1,25-dihydroxyvitaminD3の減少は、腎臓の25-hydroxyvitaminD3L-alpha-hydroxylase活性の欠損を示唆しております。1,25-dihydroxyvitamin D3濃度上昇は、1,25-dihydroxyvitamin D3に対する標的器官と一致します。低リン血症のくる病は、リンの近位尿細管再吸収における障害から起こります。1,25-dihydroxyvitamin D3減少は、低リン血症のくる病で、存在するかもしれません。
この猫で最も考えられる原因は、25-hydroxyvitamin D3へのビタミンD肝臓水酸化障害ですが、近位尿細管のリン排泄による低リン血症のくる病を除外できませんでした。この症例は、適切な治療が、骨代謝疾患に関連した臨床問題を、改善することが出来るということを示しております
■発育期整形疾患によるイヌの跛行:内側鈎状突起分離と肘突起癒合不全
Canine Lameness Caused by Developmental Orthopedic Diseases: Fragmented Medial Coronoid Process and Ununited Anconeal Process
Compend Contin Educ Pract Vet 25[2]:112-121 Feb'03 Review Article 63 Refs
C. Todd Trostel, DVM; Ron M. McLaughlin, DVM, DVSc, DACVS; Roy R. Pool, DVM, PhD
Mississippi State University

内側鈎状突起分離と肘突起癒合不全は、未成熟の大型犬の肘関節を侵す、一般的な発育期整形疾患である。遺伝、栄養、食餌などいろいろな要因が両疾患の原因としてかかわりがある。跛行と関節痛が一般的な臨床症状で、早くて4ヶ月から現れるかもしれない。早期発見で適切な内科、または外科的治療の開始が可能となり、変形性関節炎の進行を最小限にするかもしれない。(Sato訳)
■多発性関節炎の犬40頭の回顧的研究
A retrospective study of 40 dogs with polyarthritis.
Vet Surg 31[5]:428-34 2002 Sep-Oct
Jacques D, Cauzinille L, Bouvy B, Dupre G

目的:多発性関節炎の犬の疫学、臨床、検査、X線所見の特徴

研究構成:回顧的臨床研究

サンプル集団:40頭の犬

方法:多発性関節炎の診断を受けた40頭の犬の医療記録を再検討した。入手したデータは、犬種、入院時の年齢、性別、体重、臨床症状、関節液分析、全血数、血清生化学検査、尿検査、感染疾患の血清学的スクリーニング検査、罹患関節のX線検査結果だった。

結果:多発性関節炎の発生率は0.37%で、29犬種が罹患していた。16頭はオスで、24頭はメスだった。平均体重は20.1±15kg。入院時平均年齢は、5.6±4歳。多発性関節炎の80%の犬は歩行困難、または歩くのを嫌い、35%は跛行、33%は主な理由も無く鳴き声をあげ、20%は運動不耐性、18%は発熱し、7.5%は起き上がる事や動く事が出来なかった。関節痛は40%の犬に見られた。関節液の色は、無色(36%)から黄色(36%)、血様(28%)と変化に富んでいた。関節液平均細胞数は、10個(400×)から50個(1000×)と変化した。白血球増加は59%の犬で見られ、重度の関節液の炎症を持つ犬でより多く見られた。31%の犬は貧血で、血清生化学の異常は13%の犬で認められた。関節X線検査では、糜爛性の関節炎を認めなかった。

結論:多発性関節炎は犬の運動障害の一般的な原因である。しかし、真の跛行や関節痛は一般的な臨床所見ではない。

臨床関連:多発性関節炎は歩行困難を見せる犬全頭で鑑別診断に加えるべきである。(Sato訳)
■犬で、前十字靭帯修復後の後肢機能に対する術後リハビリテーションの効果
Gregory S. Marsolais, BS et al; J Am Vet Med Assoc 220[9]:1325-1330 May 1'02 Prospective Study 55 Refs; Effects of Postoperative Rehabilitation on Limb Function after Cranial Cruciate Ligament Repair in Dogs

目的:犬前十字靭帯断裂の外科手術後、後肢機能に対する早期リハビリの効果を調査すること

構成:予見的臨床研究

動物:飼育されている犬51頭

方法:前十字靭帯断裂と内側半月板損傷を持つ20-40kgの犬で研究しました。断裂した前十字靭帯を除去し、完全に内側半月板切除後、膝関節を外側支帯安定法で安定化を図りました。25頭の犬を術後リハビリ群とし、26頭を運動制限群としました。後肢機能(垂直力のピーク[RVF]と垂直の衝撃[VI])を術前と術後6ヶ月にforce platform gait分析で評価しました。

結果:術前、患肢の平均RVFとVIは両群似たものでした。術後6ヶ月、RVFとVIは両群でかなり増加していました。さらに、リハビリ群のそれは、運動制限群のそれよりも、有意に増加していました。この時、リハビリ群におけるの修復した後肢と、正常な後肢の機能(RVFとVIで測定)の明らかな違いはありませんでした。逆に、運動制限群の修復後肢機能は、正常後肢よりもまだかなり低いものでした。

結論と臨床関連:犬の前十字靭帯断列や損傷した内側半月板の外科手術で、術後のリハビリが有効です。それら患畜の術後管理の一部に、リハビリを考慮するべきです。(Sato訳)
■老齢ネコの変性性関節症のX線学的徴候
Elizabeth M. Hardie, DVM, PhD, DACVS et al; J Am Vet Med Assoc 220[5]:628-632 Mar 1'02 Retrospective Study 11 Refs; Radiographic Evidence of Degenerative Joint Disease in Geriatric Cats: 100 Cases (1994-1997)

目的:老齢ネコの変性性関節症(DJD)のX線写真学的徴候保有率を評価する事

構成:回顧的研究

集団:12歳以上の猫100頭

方法:1人の研究者が、X線写真を再検討し、肉眼的に変性性関節症のグレード分け(0、1、2、3)を、各関節(または関節群)で行いました。別の研究者は、医療記録を再検討し、症状、環境、以前の疾患、X線撮影時に明らかな疾患、FeLVワクチン接種の有無や感染状態、ネコ免疫不全ウイルスの血清学的状態、血清クレアチニン濃度、血清グロブリン濃度、その他重要所見を記録しました。グレード2または3の変性性関節症と、医療記録からの変化の関連を調査しました。

結果:変性性関節症のX線学的徴候は、90%のネコで明らかでした。神経疾患は腰仙部脊柱病変と関連していました。肘関節の重度病変は17%のネコに見られましたが、基礎疾患は確定できませんでした。

結論と臨床関連:変性性関節症は、X線学的にほとんどの老齢ネコで認められ、臨床疾患の原因を見落とすかもしれません。臨床医は、変性性関節症が神経症状と関連する可能性に注意を払うべきです。(Sato訳)
■有痛性歩行運動障害を持つ猫におけるメロキシカムの臨床効果の評価
Evaluation of the clinical efficacy of meloxicam in cats with painful locomotor disorders.
J Small Anim Pract 42[12]:587-93 2001 Dec
Lascelles BD, Henderson AJ, Hackett IJ

歩行運動障害に関連する痛みの臨床徴候を緩和するための、2種類の非ステロイド系抗炎症薬の効果を評価しました。急性、または慢性歩行運動障害を持つ69頭の猫を、英国で14の初診動物病院から起用し、無作為に、2つの治療グループに振り分けました。グループAは、メロキシカム液滴(初回0.3mg/kg.sid.P.O.以降0.1mg/kg.sid4日以上連続投与)、そしてグループBは、ケトプロフェン錠(1.0mg/kg.sid.P.O.5日間)を行いました。それぞれの猫に対し、治療前、治療開始後24時間、そして治療終了後24時間で、十分な臨床検査を行いました。一般臨床パラメーター(ふるまいと食物摂取)と特異的歩行運動パラメーター(負重、跛行、局部炎症と触診による疼痛)を、不連続な測定尺度で採点しました。2つのグループで、年齢、体重、性別、そして臨床徴候期間の条件において差はありませんし、また処置前の一般臨床パラメーターまたは特異的歩行運動パラメーターにおいても、違いはありませんでした。双方の治療とも、ふるまい、食物摂取、そして負重に有意な改善がもたらされ、跛行、触診による疼痛、そして炎症が、有意に減少しました。2つの治療グループの間で、重視していたパラメーターに関し、いかなる有意差も認めませんでした。そして、双方とも、最小の副作用しか認められませんでした。メロキシカムとケトプロフェンは、鎮痛効果が認められ、短期間(5日間)の投与した場合、急性、または慢性歩行運動障害を持つ猫でよく許容しました。しかしながら、メロキシカムは、ケトプロフェンよりも、有意に好ましい(嗜好性が良い?)と評価されました。(Dr.K訳)
■9頭の猫における距骨脱臼 の外科治療
H. G. Schmokel et al; Vet Comp Ortho Trauma 14[1]:46-50 Feb'01 Retrospective Study 13 Refs; The Surgical Treatment of Talocrural Luxation in Nine Cats

9頭の猫における、距骨脱臼 の外科治療を、評価しました。骨折の内固定と、靭帯復位により、完全に関節を安定化しました。8頭の猫で、それぞれ副木を使用し、1頭では、創外固定装置を使用しました。5頭の猫では、3週から7週間、外固定を続けました(グループ1)が、4頭の猫では、10日後に外固定をはずし(グループ2)、理学療法を使用しました。5-30ヵ月に、回復度を、得点方式で評価しましたところ、グループ1の猫より、グループ2の猫で、より良い機能回復と、DJDの低下が得られました。この結果は、早期の起動と、体重負荷が好ましく作用した為かもしれません。(訳:K)