■2羽のウサギのフィプロニル中毒の治療成功例
Successful management of fipronil toxicosis in two pet rabbits
Open Vet J. 2022 Jul-Aug;12(4):508-510.
doi: 10.5455/OVJ.2022.v12.i4.13. Epub 2022 Aug 5.
Dario d'Ovidio , S Cortellini
背景:抗寄生虫薬中毒は一般に犬と猫で述べられるが、ウサギの抗寄生虫薬中毒の治療に対する報告は少ない。ここで、我々はフィプロニル中毒の2羽のウサギの臨床的管理が成功した例を述べる。
症例記述:1つ目の症例は、5ヶ月齢、未避妊のメスのウサギで、急性の発作発現、精神状態鈍化、横臥を呈し、2つ目の症例は、1歳、未去勢のオスのウサギで元気消失と食欲不振を呈した。2症例共に、飼い主は受診前4-6時間の間に抗寄生虫薬として、皮膚にフィプロニルを塗布していると報告した。
CBCと血清生化学検査に顕著な異常はなく、2症例共にEncephalitozoon cuniculi は血清学的に陰性だった。2症例はぬるま湯と中性洗剤で洗い除染した。発作のウサギは入院時にミダゾラムの静脈内投与を受けた。2症例は1晩入院し、自発採食が再開するまで等張晶質輸液、経口シリンジでの給餌アシストを行った。
2症例は、支持療法開始から約12時間で急速に改善した。臨床症状の完全な解消、正常な食欲、排便への回復は入院から24時間以内に見られた。発作を呈したウサギの神経学的症状の再発は、フォローアップ1か月の間に報告されなかった。
結論:それら症例の結果は、フィプロニル中毒の支持療法が迅速に行われるならば成功する可能性があることを示唆する。(Sato訳)
■ポリプロピレンガイドカテーテルを用いたウサギの気管内挿管
Endotracheal intubation of rabbits using a polypropylene guide catheter
J Vis Exp. November 2017;0(129):e56369. 30 Refs
K L Thompson , T R Meier, J A Scholz
ウサギの気管内挿管は、その通常ではない解剖のために難しい。著者らはここで、ガイドとしてポリプロピレンカテーテルを用いた気管の直接挿管方法を挙げる。この方法は、比較的安価、最小のトレーニングで利用でき、どの臨床現場でも簡単に実施できる。(Sato訳)
■健康なウサギにデキサメデトミジン、ミダゾラム、ブトルファノール混合液の経鼻投与後の血漿濃度と鎮静効果
Plasma concentrations and sedative effects of a dexmedetomidine, midazolam, and butorphanol combination after transnasal administration in healthy rabbits.
Language: English
J Vet Pharmacol Ther. August 2016;39(4):408-11.
B Santangelo , F Micieli , F Marino , F Reynaud , P Cassandro , A Carfora , R Petrella , R Borriello , M Cataldi , G Vesce
健康なウサギに対するデキサメデトミジン(D=0.1mg/kg)、ミダゾラム(M=2mg/kg)、ブトルファノール(B=0.4mg/kg)を同時(DMB)に経鼻(transnasal:TN)投与後、血漿濃度を液体クロマトグラフィー質量分析法(liquid chromatography-mass spectrometry:LC-MS/MS)により分析した。
鎮静と抗侵害受容における時間-依存性変化をウサギの姿勢、正光反射、眼瞼反射、の喪失、足のひっこめ反射の消失を基にした鎮静スコアの測定、直腸温、心拍数、動脈血圧、パルスオキシメトリー、カプノメトリーの機器モニタリングにより評価した。
各薬剤のピーク血漿濃度(Cmax)は、深い鎮静、鎮痛と共に、DMB-TN投与から5分(Tmax)以内に到達した。そのような効果は45分後に鎮まり、それから中程度の鎮静と鎮痛が15分持続した。全てのウサギは何事もなくDMB-TN投与から90分で自然に目覚めた。鎮静処置中、動脈血圧は顕著に低下し、その後の呼吸抑制は酸素補給を必要とした。
この研究の結果は、DMBコンビネーションの全て3つの分子は、TN経路から吸収され、小さな外科処置に対して適した深い鎮静と鎮痛を誘発することを示す。このような組み合わせは、低血圧や呼吸抑制を誘発する能力があるため、心血管あるいは呼吸器疾患のあるウサギには注意して用いるべきである。(Sato訳)
■ケタミン-プロポフォール混合注射によるウサギの麻酔導入
Single-syringe ketamine-propofol for induction of anaesthesia in rabbits.
Language: English
Vet Anaesth Analg. September 2016;43(5):561-5.
Martin Santos , Ana Vinuela , Angela A Vela , Francisco J Tendillo
目的:前投薬を行っていないウサギの麻酔導入で、ケタミン-プロポフォール混合液(ketofol)の3つの静脈投与(IV)法を評価し比較する。
研究計画前向き無作為化盲検
動物:体重2.7±0.1kgの健康なメスのニュージーランドラビット21羽
方法:7羽ごとに3つの群に無作為に振り分け、1:1mg/kgのケタミンとプロポフォール混合液を1(KP1)、3(KP3)あるいは5(KP5)mg/kg投与した。心肺パラメーター、動脈血ガスを基準、投与後2分、5分目に測定した。立ち直り反射喪失(loss of the righting reflex:LORR)までの時間、作用と無呼吸の持続時間を記録した。導入と挿管の質にスコアを付けた。不対データに対し妥当なtwo-way anovaあるいはt-testを用いてデータを比較した。
結果:KP5群でLORRまでの時間は最も短く(11±5秒)、作用時間は最も長かった(374±26秒)。KP1群は立ち直り反射が喪失しなかった;そのかわり、この群は軽度から中程度の鎮静が観察された。KP5群の導入の質はスムースだったが、KP3群においてはスムースから並まで範囲があった。KP1群で挿管は不可能で、他2群で10羽は挿管にいくらかの抵抗を見せた。2分と5分時、全て3群の心拍数は基準よりも有意に高かったが、動脈圧に統計学的差は見られなかった。低酸素血と用量依存の呼吸抑制は全ての群で見られ、KP5群は無呼吸の時間があった。
結論と臨床関連:ケタミン-プロポフォール混合液のIV投与は用量依存の効果があった。全ての群で血行動態機能はうまく維持されたが、最も高い用量で低酸素血が観察され、酸素投与が勧められる。挿管をより簡単にするために前投薬や局所リドカインの追加が勧められる。(Sato訳)
■局所1%テルビナフィン軟膏で治療したペットウサギの角膜真菌症
Keratomycosis in a pet rabbit (Oryctolagus cuniculus) treated with topical 1% terbinafine ointment.
Language: English
Vet Ophthalmol. November 2016;19(6):504-509.
Aurelie Bourguet , Alexandre Guyonnet , Elise Donzel , Jacques Guillot , Charly Pignon , Sabine Chahory
この報告は2歳避妊済みメスのドワーフラビットが急速に進む潰瘍性角膜炎と角膜実質膿瘍を呈し、その臨床症状、診断、薬剤管理を述べる。
真菌性角膜炎の診断は、病原をAspergillus fumigatusと確認する真菌培養を基に行った。局所テルビナフィンによる治療が有効で、8週以内に角膜真菌症は解消した。
著者によると、これは1羽のウサギの自発角膜真菌症の最初の症例報告で、テルビナフィンで治療に成功した最初の記述である。(Sato訳)
■重篤なウサギの判断とケア
Assessment and Care of the Critically Ill Rabbit.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. May 2016;19(2):379-409.
Minh Huynh , Anais Boyeaux , Charly Pignon
ウサギは症状を隠す能力があり、非代償性ショックの状態を呈することが多い。取扱いによりストレス誘発性心筋症や特異的血行動態変化の感受性を増す可能性がある。特定の参照範囲で注意深いモニタリングは早期の代償不全、タイムリーな方法で治療プランの変更、予後指標を評価するのに重要である。輸液必要量は他の小型家庭哺乳類夜もウサギで多く、経腸および非経口で補正できる。ウサギの救命救急は多くの後腸発酵槽を推定できるが、特定の参照範囲や投与方法を決定する必要がある。(Sato訳)
■ウサギ、モルモット、チンチラの一般的緊急疾患
Common Emergencies in Rabbits, Guinea Pigs, and Chinchillas.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. May 2016;19(2):411-29.
Julie Decubellis
ウサギ、モルモット、チンチラは緊急病院でよく見られるエキゾチックペットである。多くが不適切な食餌や飼育に関係する重度慢性的な状態の結果起こる急性疾患を呈すことが多い。
この文献はより一般的ないくつかの急性疾患の診断と治療を概説する。また、緊急医が急性疾患の治療前の基礎原因の認識および注意ができるように、急性症状で最高潮となる疾病素質を論じている。(Sato訳)
■ウサギの耳の疾患の外科管理
Surgical Management of Ear Diseases in Rabbits.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. January 2016;19(1):189-204.
Rebecca Csomos; Georgia Bosscher; Christoph Mans; Robert Hardie
ウサギの外耳炎や中耳炎は診断されることも多い疾患で、特に耳道が特殊な解剖をしているロップイアーの種類では一般的である。外耳炎や中耳炎の内科管理は、臨床症状の一時的改善しか見られないこともある。外側鼓室胞骨切術(LBO)と併称して部分的あるいは総耳道アブレーション(PECAあるいはTECA)の方法による手術は、許容性がよく良好な臨床結果を生む実行可能なアプローチである。PECA/TECA-LBOに関連する短期合併症は、顔面神経麻痺や前提疾患が含まれる。(Sato訳)
■ウサギの卵巣子宮切除後の結腸閉塞:3症例
Colonic obstruction following ovariohysterectomy in rabbits: 3 cases
J Exotic Pet Med. January 2015;24(1):112?119. 22 Refs
David Sanchez-Migallon Guzman; Jennifer E Graham; Krista Keller; Geraldine Hunt; Nathan Tong; James K Morrisey
著者らは卵巣子宮切除(OHE)手術から5日から4か月後に、食欲低下/食欲不振、嗜眠、排便の減少/欠如など非特異的臨床症状で3羽のウサギ(8か月から1.5歳)を評価した。
各外部身体検査を実施し、消化管音の減少、触診による腹部痛、後腹部マスを認めた。現症に対しCBC、生化学検査値は正常範囲内だった。腹部エックス線所見は腸のガス充満と共に複数の他の拡張した餌が満たされたループが見られた。3頭に腹部超音波検査を実施し、異常は子宮断端レベルからの不意な結腸の先細りで、尾側結腸の周りにマスが見られ、結腸は拡張していた。陽性結腸造影を3羽中2羽で実施した。3羽とも当初の内科管理に反応したが、異常な臨床症状の再発後に試験的開腹を実施した。
そのうち2羽は横断した子宮体が小腸腸間膜に癒着し、周辺を取り巻く狭窄を起こしていた。小腸狭窄の2羽は切除と結腸吻合で予後不良と思われたため術中に安楽死した。残り1羽はOHEの時に子宮断端の周りに設置した縫合が不注意に結腸を穿刺していた;その部位の結腸を切除したが、術後期間中に死亡した。
OHE後の結腸報告はどの動物種でも珍しいが、この報告でペットのウサギにおいてこの疾患の3症例が見られた。ウサギにおいては臨床症状が機能的イレウスに似ているかもしれない;ゆえに、腹部超音波や造影エックス線検査などの追加検査の結果は確定診断を得るのに必要である。不可逆性の結腸ダメージが起こる前に早期の試験的開腹および癒着の修正が疑われる症例に勧められる。(Sato訳)
■24羽のウサギの乳腺における腫瘍および腫瘍様病変:病理組織および免疫組織化学的特徴
Tumors and Tumor-like Lesions in the Mammary Gland of 24 Pet Rabbits: A Histomorphological and Immunohistochemical Characterization.
Vet Pathol. May 2014;51(3):569-80.
S Schoniger; L C Horn; H-A Schoon
この回顧的研究(2004-2011)の目的は、24羽のウサギの乳腺腫瘍および腫瘍様病変を病理組織および免疫組織化学検査により調査することだった。
ウサギの年齢は2歳から8歳だった。メスが17羽、避妊済みのメスは7羽だった。腫瘍様病変と診断されたものは、小葉過形成(2羽)と多発嚢胞(10羽)だった。腫瘍は嚢腺腫(腫瘍7つ;3羽)、管内乳頭腫(腫瘍2つ;1羽)、管内乳頭癌(腫瘍1つ)、腺癌(腫瘍14;13羽)、腺扁平上皮癌(腫瘍2つ;2羽)、基質産生癌(腫瘍1つ)だった。最も多く診断された病変は浸潤癌だった(n=17)。10羽は複数の病変があった。
カルポニンおよびp63に対する免疫組織化学は、腫瘍様病変と診断されたもの、良性腫瘍、非浸潤癌が末梢筋上皮層を持つことを示し、浸潤癌には欠如していた。しかし14のうち13(93%)の浸潤癌で、非腫瘍性筋上皮細胞あるいは筋上皮の分化を伴う腫瘍性上皮細胞を保持した形態学的特徴を持つ範囲が0.1%から40%という不定な数のカルポニン-および/あるいはp63-免疫陽性細胞があった。
基質産生癌の1羽、10の高倍率視野で20以上の有糸分裂が見られ、筋上皮の分化を伴う腫瘍細胞の数が多い(19%-39%)乳腺腺癌の3羽で再発が報告された。基質産生乳腺癌のウサギは病理組織検査で確認された皮膚転移を起こした。
この研究は、ペットのウサギにおいて異なるタイプの乳腺腫瘍様病変および腫瘍が発生する可能性があることを示す。(Sato訳)
■異なる摩耗性の食餌を与えた家庭のウサギの切歯と臼歯の成長と摩耗
Growth and wear of incisor and cheek teeth in domestic rabbits (Oryctolagus
cuniculus) fed diets of different abrasiveness.
J Exp Zool Part A Ecol Genet Physiol. June 2014;321(5):283-98.
Jacqueline Muller; Marcus Clauss; Daryl Codron; Ellen Schulz; Jurgen Hummel; Mikael Fortelius; Patrick Kircher; Jean-Michel Hatt
歯の摩耗パターンは原始-再構築に重要で、歯の摩耗異常は獣医療で重要だが、食餌の摩耗性と歯の摩耗についての関係を調査した実験はあまりない。
ここで、著者らが切歯と小臼歯の成長と摩耗、切歯と臼歯の長さに対し、摩耗性を増した4つの異なるペレット食(内部研磨剤(植物岩)、外部研磨剤(砂)による)、あるいは全グラスヘイを各2週間、無作為に選んだ16羽のウサギに与え、その影響を調査した。
摩耗と歯の長さは食餌間で異なり、内部および外部研磨剤の有意な影響があった。食餌の摩耗性は全ての歯の位置に対して歯の長さと関連し、一方全グラスヘイは上の切歯の長さにのみ追加効果があった。歯の成長は歯の摩耗に強く関連し、餌と歯の位置に対応して異なった。1.4-3.2mm/週で、過去にウサギで報告されたものよりこの研究で測定した臼歯の成長は高かった。歯の異常は砂を混ぜた餌において最も顕著だった。
この研究は一貫した歯の摩耗を必要とするウサギにおいて、持続的な歯の成長の概念は不適当で、食餌の形態(自然v.s.ペレット)は臼歯に必ず影響するわけではないと示す。外部研磨剤の強い影響に関係なく、内部研磨剤は摩耗を誘発する可能性があり、進化において選択圧を発揮する。歯の位置による摩耗効果の詳細な違いは、咀嚼プロセスについて推定できる。成長と歯の特定の摩耗を関連付けるフィードバックメカニズムの解明は、さらなる研究の有望な分野である。(Sato訳)
■ペットウサギの肝葉捻転:臨床意義、診断、治療
Liver lobe torsion in pet rabbits: clinical consequences, diagnosis, and
treatment.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. May 2014;17(2):195-202.
Jennifer Graham; Jessica Basseches
この文献はウサギの肝葉捻転の診断と管理を概説する。臨床医は胃腸(GI)内容停滞の非特異的症状を呈するウサギで、可能性のある原因の判定、一番推奨される治療の決定のためにエックス線検査、血液検査など初期診断検査を勧めるべきである。GI内容停滞のウサギで肝酵素の上昇があるならば、肝葉捻転を除外するため腹部超音波検査が勧められる。迅速な診断と肝葉切除が肝葉捻転のウサギで一番良い結果を得るために勧められる。(Sato訳)
■29日間ウサギにメロキシカムを経口投与した時の薬物動態
Pharmacokinetics of meloxicam administered orally to rabbits (Oryctolagus cuniculus) for 29 days.
Am J Vet Res. February 2014;75(2):195-9.
Katie W Delk; James W Carpenter; Butch KuKanich; Jerome C Nietfeld; Micah Kohles
目的:29日間ウサギにメロキシカムを経口投与した時の薬物動態と安全性を評価する
動物:健康なウサギ6羽
方法:29日間ウサギにメロキシカム(1.0mg/kg、PO、24時間毎)を投与した。メロキシカムの薬物動態を評価するため、1日、8日、15日、22日、29日目の投与直前(0)、投与後2、4、6、8、24時間目に採血した。30日目は、投与後36時間目のサンプルを採取した。血漿メロキシカム濃度を液体クロマトグラフィー-質量分析法で定量し、ノンコンパートメント薬物動態分析を実施した。有害な生理的影響を評価するために、毎週血漿生化学検査を実施した。31日目に健肢のため安楽死した。
結果:1日、8日、15日、22日、29日目の投与後平均±SDピーク血漿濃度は、それぞれ0.67±0.19μg/mL、0.81±0.21μg/mL、1.00±0.31μg/mL、1.00±0.29μg/mL、1.07±0.19μg/mLだった。8日目から29日の濃度で有意な違いは見られなかった。評価した全ての時点で、血漿生化学検査の結果は参照範囲内だった。肉眼的検死、および組織の組織検査で臨床に関連する所見は見られなかった。
結論と臨床的関連:今回のウサギにおけるメロキシカムの血漿濃度は、1.0mg/kg、PO、24時間毎5日間投与したウサギの過去の報告と同じだった。健康なウサギに対する29日間までの、1.0mg/kg、PO、24時間毎の投与は安全に使用できると示唆された。(Sato訳)
■ペットのウサギにおいて口腔歯牙疾患と皮膚病は非常に関係する:ケースコントロール研究
Orodental diseases and dermatological disorders are highly associated in
pet rabbits: a case-control study.
Vet Dermatol. October 2013;24(5):531-e125.
Dario D'Ovidio; Domenico Santoro
背景:皮膚病(DDs)と口腔歯牙疾患(ODDs)はペットウサギの有病率の主要源である。逸話的にウサギの口腔歯牙疾患は皮膚病と関連があるといわれている。
仮説/目的:この研究の目的は、ペットウサギのDDsとODDsの関係の可能性を評価し、ODDがDDのリスクを増すかどうかを判定することだった。
方法:この研究は20件の個人動物病院で1年かけて検査したペットウサギの222羽の医療記録の回顧的再検討だった。DDと診断されたウサギの記録を選別した。ODDsの頻度と他の変数をDDsのウサギとそうでないウサギでロジスティック回帰により評価した。DDの診断を受けていない同時期に受診したウサギをコントロールとした。
結果:DDの有病率は28.4%(63/222)で、ODDの有病率は23%(51/222)だった。DDとODDの間に有意な関係が存在した。ODDと診断されたウサギは、そうでないウサギと比べてDDと診断される確率が63倍高かった(オッズ比63.75;95%信頼区間23.9-170.2;P<0.0001)。
結論と臨床意義:この研究の結果は、口腔歯牙疾患と皮膚病の強い関係を示す。特に口腔歯牙疾患のウサギは、老齢になるにつれて皮膚疾患を発症するリスクが大きくなる。外被状況は毛の質は多くの生物学的要因や環境要因に影響される可能性があるが、皮膚病を示すウサギにおいて口腔歯牙疾患は潜在的基礎疾患として注意深く考慮すべきである。
この関係が行動学的疾患あるいは代謝状況によるものかどうか調べるための、より前向き研究が必要である。(Sato訳)
■ウサギの部分的耳道切除と外側骨胞骨切
Partial ear canal ablation and lateral bulla osteotomy in rabbits.
J Small Anim Pract. June 2013;54(6):325-30.
K Eatwell; E Mancinelli; J Hedley; E Keeble; M Kovalik; D A Yool
6羽のロップウサギが、中耳炎や外耳炎の臨床症状を呈した。疾患はCT検査で確認し、2羽は両側性だった。ウサギに麻酔をかけ、罹患した骨胞の手術を行った。両側のウサギは最低2週間の間隔をあけて行った。
垂直耳道の基部から1つの垂直切開を入れ、周囲組織から鈍性に剥離した。垂直耳道の腹側部分を除去し、外側骨胞骨切術を実施した。垂直耳道背側の基部で粘膜を並置し、軟骨を前処置切開で出口のないポーチの口を形作るように縫合した。垂直耳道の背側縁から採取した6羽の病理組織サンプルは微妙な非特異的変化だった。
全てのウサギは手術から48時間以内に退院した。美的外観はすばらしく、見た目正常な耳の解剖を保持していた。
ウサギの部分的耳道切除/外側骨胞骨切術は短時間ででき、美容面でも良好である。(Sato訳)
■ウサギのエンセファリトゾーンcuniculi感染の確定診断における病理組織、免疫組織化学、リアルタイムPCR法の価値
Value of histopathology, immunohistochemistry, and real-time polymerase chain reaction in the confirmatory diagnosis of Encephalitozoon cuniculi infection in rabbits.
J Vet Diagn Invest. January 2013;25(1):16-26.
Miriam Leipig; Kaspar Matiasek; Heinz Rinder; Dirk Janik; Daniela Emrich; Kerstin Baiker; Walter Hermanns
腎臓および脳の形態学的病変は、ウサギのエンセファリトゾーン症の確定に対し診断的と考えられることが多い。
この研究では、エンセファリトゾーンcuniculi感染の診断において、組織学の診断価値に対し、免疫組織化学、リアルタイムPCRなど他の病因検査法の価値を評価した。
81羽のウサギからの脳、心臓、肺、腸、肝臓、腎臓で、胞子や抗原の存在と同じく、感染に起因する形態学的病変を検査した。それらのうち55羽はエンセファリトゾーンcuniculi
DNAを検査した。
E.cuniculiに一致する組織変化は、33羽(41%、33/81)に見られ、感染が確認された全てのウサギの87%(33/38)だった。それらのウサギの脳は、感染のステージと特異組織反応に一致する6つの異なるタイプの限局性病変を示した。検査陽性だった5羽において、組織学では決定的でないものか、目立たないものだった。病因診断は感染したウサギの16%(6/38)で組織学的胞子検出を基とした。免疫組織化学は組織学的胞子検出よりも感度が高く(42%、16/38)、リアルタイムPCRは全ての調査方法の中で最も感度が高かった(30/35、感染して検査したウサギの86%)。
エンセファリトゾーンcuniculi感染は、まれに特徴的な腎臓および脳病変を示さず発生する。しかし、脳の変化の範囲は過去に報告されたものより広かった。それらの所見に基づき、病原エンセファリトゾーンcuniculi感染の確定は、偏好部位の標準組織検査、特殊病因分析、好ましいのはリアルタイムPCRを入れるべきである。(Sato訳)
■ウサギのカルシウム代謝、組織石灰化、尿スラッジに対する食餌の影響
Influence of diet on calcium metabolism, tissue calcification and urinary
sludge in rabbits (Oryctolagus cuniculus).
J Anim Physiol Anim Nutr (Berl). October 2012;96(5):798-807.
M Clauss; B Burger; A Liesegang; F Del Chicca; M Kaufmann-Bart; B Riond; M Hassig; J-M Hatt
ウサギは必要量以上に餌からカルシウム(Ca)を吸収し、余剰を尿から排泄するため、尿は一般に‘スラッジ’を含む。これによりウサギはCa含有尿石の影響を受けやすくなる。
しかし放し飼い例の食餌のCa含有量で、放し飼いのウサギに尿スラッジおよびCa含有の報告は限られており、ウサギは高い尿Ca荷に自然に順応していると推測できる。
著者らは、ニュージーランドハイブリッドウサギ(n=28、開始時年齢5-6週)の4群に食餌(アルファルファ乾草からなるペレットのみ(L、Ca2.32%乾物(DM))、アルファルファ:オーツ1:1(LG、Ca1.36%)、牧乾草のみ(G、Ca1.04%)、牧草:オーツ1:1(GG、0.83%))を25週間与え、水は自由飲水とした。餌にはCa、リン、ビタミンDを添加しなかった。
LGとGGを与えたウサギは、食物および飲水摂取が少なく、便および尿排泄が少なく、より速く成長し、剖検時ボディマスも大きかった(主に脂肪組織による)。明らかにCa消化性はL-LG-G/GGの順で低下した。Lを与えていたウサギは他の群よりも腎臓がより大きく重く、エコーでより尿の沈査が多く、尿Ca含有が高かった。エックス線検査、エコー、肉眼的病理で尿石/石灰沈着の症状を示したウサギはいなかった。腎臓/大動脈組織のみ散発的にCa沈着を示したが、群間で系統的差はなかった。
実験の状況下で、マメ科乾草での食餌中Ca負荷はウサギに問題になるとは思えず、水の供給および活動レベルのような他の要因が、獣医療で尿石発生に重要なものかもしれない。
しかし、牧乾草のCa低含有により有意に低い程度の尿スラッジ形成、有意に多い飲水は牧乾草給餌に関連し、牧乾草の多い食餌は尿石予防が問題のウサギに推奨される。(Sato訳)
■ペットウサギの血糖値の臨床値
Clinical value of blood glucose measurement in pet rabbits.
Vet Rec. June 2012;170(26):674.
F M Harcourt-Brown; S F Harcourt-Brown
238羽の臨床的に健康な個体を含む907羽のウサギで、ポータブル糖測定機により血糖値を測定した。血糖値の範囲は1.2-30.1mmol/lだった。真性糖尿病には遭遇しなかった。性別あるいは鎮静剤の有意な影響は見られなかった。1羽のインスリノーマを含む16羽で低血糖が見られた。血糖値、食物摂取、ストレスの症状、臨床疾患の程度に有意な関連があった。ストレスの症状を示しているウサギは、症状がないウサギよりも血糖値がより高く、完全に食欲不振のウサギは普通に食べているウサギ、あるいは食物摂取が低下しているウサギよりも血糖値がより高かった。重度高血糖(>20mmol/l)は予後不良の状況に関係した。腸閉塞が確認されたウサギは、平均血糖値が24.7mmol/l(n=18)だった。これは平均値8.5mmol/l(n=51)の胃腸内容うっ滞を確認されたウサギよりも有意に高かった。
つまり、この研究では血糖値がウサギの状況の重症度の評価に使用できる測定可能なパラメーターで、食欲不振のウサギにおける胃腸内容うっ滞と腸管閉塞の鑑別に役立つことがわかった。(Sato訳)
■ウサギにおけるプロポフォールの骨内および静脈内投与後の意識喪失および麻酔維持までの時間の比較
Comparison of time to loss of consciousness and maintenance of anesthesia
following intraosseous and intravenous administration of propofol in rabbits.
J Am Vet Med Assoc. July 2012;241(1):73-80.
Ramin Mazaheri-Khameneh; Farshid Sarrafzadeh-Rezaei; Siamak Asri-Rezaei; Bahram Dalir-Naghadeh
目的:ウサギにプロポフォールを骨内(IO)およびIV投与した後、意識喪失(LOC)および有効な麻酔維持までの時間を比較する
構成:評価研究
動物:24羽のニュージーランドホワイトラビット
方法:ウサギは6羽ずつ、1%プロポフォール(12.5mg/kg)のIOあるいはIVボーラス投与のみ、あるいは同一のプロポフォールIOあるいはIV投与後、持続定量点滴(CRI;1mg/kg/min)を同ルートで30分間行うものに振り分けた。生理学的変数をあらかじめ設置したタイムポイントでモニターした;LOCまでの時間、麻酔の持続時間、覚醒までの時間。
結果:IOおよびIVボーラス投与後、LOCまでの平均時間はそれぞれ11.50秒と7.83秒だった;心拍数、呼吸数、酸素飽和(パルスオキシメトリーで測定)、および平均動脈圧値の変化は明らかだったが、グループ間で違いはなかった。IO-およびIV-CRI群で、心拍数、酸素飽和、平均動脈圧値でのプロポフォールに関係する変化は同様で、平均動脈圧は基線から有意に低下したが>60mmHgを維持した;両群で呼吸数はCRI中に有意に低下したが、IO-CRI群でより高い値を維持した。麻酔と覚醒時間はIO-、IV-CRI群の間に違いはなかった。
結論と臨床関連:麻酔の評価した全ての側面において、ウサギへのプロポフォールのIO投与はIV投与と同様に効果的だった。脈管アクセスが限られているウサギにおいて、トータルIO麻酔が実施できると示唆される。(Sato訳)
■ウサギにおけるウサギキュウセンヒゼンダニ誘発性酸化不均衡と補助療法としてビタミンA、D3、E、Hの使用による緩和
Psoroptes cuniculi induced oxidative imbalance in rabbits and its alleviation
by using vitamins A, D3, E, and H as adjunctive remedial.
Trop Anim Health Prod. January 2012;44(1):43-8.
Shanker Kumar Singh; Umesh Dimri; Umesh Dimri; Mahesh Chandra Sharma; Devendra Swarup; Mritunjay Kumar; Ramesh Tiwary
ウサギキュウセンヒゼンダニに自然感染したウサギと、イベルメクチン+/-ビタミンA、D(3)、E、H添加で治療したウサギの酸化/抗酸化均衡を調査した。オスとメスが混ざり、6-8ヶ月齢の、皮膚掻爬検査でウサギキュウセンヒゼンダニ陽性と診断された7羽のニュージーランドホワイトラビットの2群と、7羽の臨床的に健康なコントロールウサギを検査した。0日目と治療後28日目に採取した血液サンプルで酸化ストレス指数を判定した。0日目、過酸化脂質の濃度は健康ウサギと比較して感染ウサギで有意に高く(P≦0.01)、グルタチオンは減少し、抗酸化酵素グルタチオンペルオキシダーゼ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ、カタラーゼ、スーパーオキシドジスムターゼ活性は有意に低かった(P≦0.01)。
イベルメクチン投与ウサギのビタミン補給により、臨床的(14日)および寄生虫学的(10日)回復がより速かった。
結論として、ウサギのウサギキュウセンヒゼンダニ感染は、酸化/抗酸化平衡は有意に変化させる因子の1つで、イベルメクチン投与にビタミンA、D(3)、E、H補給を併用することで回復を早めることができる。(Sato訳)
■ウサギの胸腺腫のメガボルテージ放射線療法による治療
The use of megavoltage radiation therapy in the treatment of thymomas in
rabbits: 19 cases.
Vet Comp Oncol. June 2012;10(2):82-94.
K M Andres; M Kent; C T Siedlecki; J Mayer; J Brandao; M G Hawkins; J K Morrisey; K Quesenberry; V E Valli; R A Bennett
メガボルテージ放射線療法(RT)で治療した胸腺腫のウサギの総生存期間中央値(MST)と予後因子を、多施設後ろ向き症例分析で判定した。
RTで治療した胸腺腫疑いあるいは胸腺腫を確認した19羽のウサギの医療記録で、徴候、血液および血清生化学異常、胸水の有無、照射計画、体重、総照射量および施設が管理するRTなどのデータを評価した。総生存性に関連するそれらの因子の統計学的有意性を査定した。
全19羽の総MSTは313日だった;RTの最初の14日の間に急に死亡した3羽を除外すればMSTは727日となった。生存期間が有意に低下する唯一の因子は、平均体重1.57kg以下の体重だった。放射線治療に関係する合併症はまれで、放射線誘発心筋不全、放射線肺炎、脱毛が含まれた。(Sato訳)
■健康および下痢のペットウサギにおけるローソニアintracellularis、サルモネラ種、アイメリア種の保有率
Prevalence of Lawsonia intracellularis, Salmonella spp. and Eimeria spp.
in healthy and diarrheic pet rabbits.
J Vet Med Sci. March 2012;74(2):263-5.
Jeong Ju Lim; Dong Hyeok Kim; Jin Ju Lee; Dae Geun Kim; Sang Hun Kim; Wongi Min; Wongi Min; Hong Hee Chang; Man Hee Rhee; Suk Kim
ペットのウサギから合計170の新鮮便検体(健康;n=137、下痢;n=33)を収集した。PCR法とformol-ether
concentration法により、健康なウサギの糞便の合計13/137でL. intracellularis、6/137でサルモネラ、13/137でアイメリアが陽性だった。一方、下痢のウサギの糞便の合計17/33でL.
intracellularis、10/33でサルモネラ、21/33でアイメリアが陽性だった。
それらの結果から、臨床的に正常なウサギの20%以上、下痢のウサギの97%に3つの病原体の1つ以上の同時感染を認めた。
我々の知るところでは、これはペットのウサギにおける微生物L. intracellularis、サルモネラ、アイメリアの保有率を述べた最初の報告である。(Sato訳)
■ノミがいるウサギにおけるセラメクチンの局所投与後の薬物動態、有効性、副作用
Pharmacokinetics, efficacy, and adverse effects of selamectin following
topical administration in flea-infested rabbits.
Am J Vet Res. April 2012;73(4):562-6.
James W Carpenter; Michael W Dryden; Butch KuKanich
目的:ノミを寄生させたウサギにおけるセラメクチン局所投与の薬物動態、有効性、副作用を判定する
動物:18羽の健康な5ヶ月齢のニュージーランドホワイトラビット
方法:0日目、ウサギ(n=6/群)にセラメクチンを10mg/kg、20mg/kgを局所投与、および処置を行わなかった。各ウサギに50匹のノミ(ネコノミ)を1、7、14日目に寄生させた。生存及び死亡ノミ数のカウントを2、9、16日目に行い、治療効果を算出した。高速液体クロマトグラフィーと質量分析により血漿セラメクチン濃度を測定するため、薬剤投与前と投与後6、12時間、1、2、3、5、7、10、14、21、28日目に採血を行った。薬物動態パラメーターを判定した。
結果:2日目の10および20mg/kg処置群のウサギのノミ集団に対するセラメクチンの効果はそれぞれ91.3%と97.1%だったが、9日目にはそれぞれ37.7%、74.2%に低下した。セラメクチンの平均終末半減期と最大血漿濃度は、10mg/kg投与群で0.93日と91.7ng/mlで、20mg/kg群で0.97日と304.2ng/mlだった。副作用は見られなかった。
結論と臨床的関連:ウサギにおいてセラメクチンは経皮的に急速に吸収され、急速に排泄される。7日間ごとの20mg/kgの局所投与がウサギのノミ寄生の治療に有効であると結果は示唆した。ウサギに投与を繰り返した後の長期安全性を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■ウサギの胸腺腫:臨床評価、診断、治療
Thymomas in rabbits: clinical evaluation, diagnosis, and treatment.
J Am Anim Hosp Assoc. March 2012;48(2):97-104.
Frank Kunzel; Katharina M Hittmair; Katharina M Hittmair; Jasmin Hassan; Gilles Dupre; Elena Russold; Abigail Guija de Arespachochaga; Andrea Fuchs-Baumgartinger; Andrea Bilek
ウサギの胸腺腫はまれにしか記録されず、比較的少数の症例を含む文献しかない。2007年2月から2010年1月の間に縦隔マスと診断された全てのペットのウサギを確認するため、医療記録を再調査した。シグナルメント、病歴、臨床症状、診断的検査(検査データ、診断的画像検査、縦隔マスの超音波ガイドによる細針吸引を含む)、治療様式、生存期間、組織学的所見を評価した。
細胞診および/あるいは病理組織検査で、縦隔マスのある全てのウサギ(n=13)で胸腺腫が明らかになった。胸腺腫のウサギは呼吸困難(76.9%)、運動不耐性(53.9%)、両側眼球突出(46.2%)の臨床症状を示した。7羽の胸腺腫は外科的に切除した。2羽は保存的に治療し、4羽は臨床状態が悪いために安楽死された。外科手術を行った2羽は6か月および34か月後に安楽死された。
ウサギの縦隔マスは、過去に信じられていたものよりも一般的と思われ、胸腺リンパ腫よりも主に胸腺腫である。超音波ガイドによる細針吸引生検で得られたサンプルの細胞診は、ウサギの胸腺腫の確認のための正確な診断ツールである。周術期死亡率が高いため、徹底的な周術期ケアとストレスの少ない環境の提供が、開胸術の成功のために必要である。(Sato訳)
■ウサギの胃腸内容鬱帯に対する最新療法
Updates and advanced therapies for gastrointestinal stasis in rabbits.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2010;13(3):525-41.
Marla Lichtenberger, Angela Lennox
胃腸内容鬱帯は現在、胃腸の運動性の低下に対して漠然と定義された言葉である。胃内容鬱帯症候群という言葉が過去に提唱されたが、多くの症例が胃というより消化管部分に影響を受けるため、正確な記述とはいえない。ウサギ胃腸症候群(RGIS)という言葉は、複雑な臨床症状、徴候、ウサギの消化器に影響する病的状況の併発と定義される。
病気のウサギを検査するとき、RGISがあるか判定することは重要で、もしそうであれば、基礎にある原因因子を判定する診断的検査と治療を開始する。基礎原因の確認は困難なことも多い。多くのウサギはRGISのエビデンスを伴い、ゆえに基礎原因を突き止めることは無効である。多くの例で、輸液、手で給餌、運動促進薬などの支持療法にそれらのウサギはよく反応する。(Sato訳)
■ウサギの鎮痛
Rabbit analgesia.
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. January 2011;14(1):93-104.
Linda S Barter
家庭でのペットとしてウサギの人気が増加している中で、ウサギに対する診断および外科的処置の複雑性も、通常の外科的処置の頻度と共に増している。多くの臨床家はウサギに対する適切な鎮痛を実施する必要性に面している。計画された外科的処置前の先制鎮痛は、侵害インプットに対する反応の神経系変化を減少させ、同様に術後疼痛レベルおよび鎮痛剤の必要量を減少させると思われる。有痛性の処置を行う麻酔下のウサギに対する鎮痛剤の併用は、術前、術中、同様に術後も正当化されている。この文献は、ウサギにおける疼痛の神経薬理学的および薬理学的状況を論じ、鎮痛剤の使用に対する現行のプロトコールを概説する。(Sato訳)
■ペットウサギの鬱血性心不全
Congestive heart failure in two pet rabbits.
J Small Anim Pract. January 2011;52(1):46-50.
B Lord; C Devine; S Smith
この症例報告は、2羽の中年齢ペットウサギに見られた胸水を伴う鬱血性心不全を述べる。2羽共に呼吸困難の急性発現、衰弱、体重減少の病歴がった。2羽共に心エコー検査で両心房拡大が見られた。1羽は心電図検査で、心房細動と心室性期外収縮を認めた。2羽ともエックス線写真で明らかに胸水があり、1羽で胸腔穿刺を行った。
それらの所見は剖検で確認された。基礎心疾患の原因は分からなかったが、心筋症の潜在的タイプが考察される。(Sato訳)
■シクロスポリンA投与に関与するニュージーランドホワイトラビットのオスおよびメスの可逆性線維腺腫様乳腺過形成
Reversible fibroadenomatous mammary hyperplasia in male and female New Zealand white rabbits associated with cyclosporine A administration.
Vet Pathol. November 2009;46(6):1144-8.
P M Krimer, S B Harvey, U Blas-Machado, J D Lauderdale, P A Moore
limbal細胞移植研究において全てのオスおよびメスのニュージーランドホワイトラビットに、乳腺全体の肥大が観察された。処置後の薬剤投与は0.1%デキサメサゾン点眼、0.5%シクロスポリン点眼、シクロスポリンAの皮下投与などだった。細胞診で最小限の悪性基準の上皮クラスターを認めた。組織評価において、軽度細胞異型性および多量の細胞増多線維性ストローマと分かれた管拡張を伴う瀰漫性乳腺過形成があり、線維腺腫様乳腺過形成に一致した。シクロスポリン投薬中止から2週間以内に過形成は解消し、剖検で同定可能な乳腺のマスは見つからなかった。
実験ウサギに対するシクロスポリンの使用および乳腺過形成発症へのその関与について報告されているものは非常に少ない。これは5mg/kg/dayの低用量のシクロスポリン投与がオスおよびメスのウサギの良性線維腺腫様乳腺過形成を誘発するという最初の報告である。この変化は薬剤投与中止後退行した。(Sato訳)
■ウサギで選択した血液学的パラメーターにおける年齢関連性変化
Age-related changes in selected haematology parameters in rabbits
Res Vet Sci. November 2008;0(0):.
Jeklova , L Leva, Knotigova , M Faldyna
成ウサギにおける血液学的パラメーターの参照値に対する豊富な情報はあるが、新生児ウサギあるいは生後発育中における血液学的変化についてはあまり知られていない。ゆえに我々の研究目的は、1日齢から20週齢まで、SPFニュージーランドホワイトラビットにおいて赤血球(RBC)、白血球(WBC)、分化白血球数における変化を調査することだった。最初の4週間は有意な年齢関連変化が認められた。それらはRBCおよびWBC増加、好中球/リンパ球比逆転、好酸球および好塩基球総数増加だった。6週齢から研究した全ての血液学的パラメーターは成ウサギのそれらと同等だった。(Sato訳)
■ウサギにマルボフロキサシンを単回投与と複数回投与で経口投与した後の薬物動態
Single- and multiple-dose pharmacokinetics of marbofloxacin after oral administration to rabbits.
Am J Vet Res. 2009 Apr;70(4):522-6.
Carpenter JW, Pollock CG, Koch DE, Hunter RP.
目的:10日間、ウサギに24時間毎のマルボフロキサシンを経口投与した後の薬物動態を決定すること。
動物:9ヶ月齢の健常なニュージーランドホワイトラビット8頭
方法: 10日間にわたり8頭のウサギに24時間毎のマルボフロキサシン(5 mg/kg)を経口投与した。投与初日をday1と決めた。マルボフロキサシン投与のday1とday10において0,
0.17, 0.33, 0.5, 0.75, 1, 1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 8, 12, そして 24時間で採血した。液体クロマトグラフィ質量分光法で血漿マルボフロキサシン濃度を定量した。マルボフロキサシンの薬物動態分析は非区画化法で解析した。
結果:経口投与後、曲線下の平均+/-標準偏差面積はday1とday10で10.50 +/- 2.00 microg.h/mLと10.90 +/- 2.45 microg.h/mLで、最大血漿濃度は 1.73 +/- 0.35 microg/mL と 2.56 +/- 0.71 microg/mL,で、調和平均ターミナル半減期は8時間と3.9時間であった。
結論と臨床関連:10日間における24時間毎のマルボフロキサシンの経口投与はウサギにとってよく吸収され、耐えることができたように見えた。5
mg/kgで24時間毎の投与量でのマルボフロキサシン経口投与は、ウサギが感染しやすい細菌に起因する感染症のコントロールに推奨される。(Dr.Kawano訳)
■飼いウサギにおけるツメダニ症の治療に対するセラメクチンの効果
Efficacy of selamectin in the treatment of cheyletiellosis in pet rabbits
Vet Dermatol. February 2008;19(1):26-7.
Sang-Hun Kim, Jung-Youn Lee, Hyung-Kyou Jun, Kun-Ho Song, Bae-Kun Park, Duck-Hwan Kim
ツメダニ症は、飼いウサギの掻痒や鱗屑化に典型的に関与する非常に一般的な寄生虫性皮膚疾患である。この研究で、ツメダニ症のウサギ合計23羽を、12mg/kgのセラメクチンの1回局所投与で治療した。治療から3および5週間後にすべてのウサギを検査した。セラメクチン投与から5週間後、23羽の掻痒および鱗屑化は解消していた。アセテートテープおよびノミ取り櫛で収集した表皮残屑の顕微鏡検査でダニおよび卵はすべて陰性だった。どのウサギでも副作用は観察されなかった。このことは、ウサギのツメダニ症の治療にセラメクチンが効果的だということを示す。(Sato訳)
■飼いウサギの神経学的検査と病変位置確認
The neurological examination and lesion localization in the companion rabbit (Oryctolagus cuniculus)
Vet Clin North Am Exot Anim Pract. September 2007;10(3):731-58, v. 8 Refs
Karen M Vernau, Anna Osofsky, Richard A LeCouteur
ウサギの徹底的な神経学的検査を行うことは、神経学的問題の位置を判定するのに重要である。病変の位置(孤立または多病巣/広範性)の決定は、その問題を起こしやすいリストアップを可能にする。この文献はウサギの神経学的検査を述べ、続いてこの種の病変位置確認に対する実践的なガイドを述べる。(Sato訳)
■さまざまな飼育状況下における成長期ウサギの行動
Behaviour of growing rabbits under various housing conditions
Appl Anim Behav Sci. June 2008;111(3-4):342-356.
Zoltan Princz, Antonella Dalle Zotte, Istvan Radnai, Edit Biro-Nemeth, Zsolt Matics, Zsolt Gerencser, Istvan Nagy, Zsolt Szendr
この研究の目的は、成長期ウサギの福祉指標として行動に対する環境の変化(群のサイズ、頭数密度、床のタイプ、環境の質)の影響を評価することだった。Pannon White rabbitsで2つの実験を行った。実験1で、5週齢のウサギ(n=112)をケージブロック(2m2)に1m2あたり16羽または12羽になるように飼育した。ケージ(0.5m2)はフロアタイプ(ワイヤーまたはプラスチックネット)、かじり棒(white locust)の有無が異なり、ウサギは4つのケージをスイングドアで自由に行き来できるようにした。1週間に1回赤外線ビデオ撮影を実施し、24時間のビデオ録画中30分毎(48回/日)に各ケージのウサギの頭数をカウントした。5週齢から11週齢の間、ウサギはプラスチックネットのフロアを好んだことがわかった(16羽/m2、63.5%;12羽/m2、76.5%;P<0.001)。かじり棒は有意にケージの好みに影響した:54.1%(16羽/m2)または53.1%(12羽/m2)のウサギが環境の質が良いケージを選択した(P<0.001)。
実験2で5週齢のウサギをケージ(2羽/0.12m2、n=72)または檻(13羽/0.86m2、n=104)に16羽/m2で飼育した。フロアタイプは、壁にかじり棒がある、またはないワイヤーまたはプラスチックネットとした。ビデオ撮影は、6.5および10.5週齢の午前11時から午後5時の間と午後11時から午前5時の間に行った。ケージ間の比較で、檻のウサギは、休息時間が少なく(58%v.s.67%)、運動時間が長かった(6.7%v.s.3.8%)が、攻撃行動(耳病変の数で測定)の頻度も高かった(0.14%v.s.0.01%)。檻にかじり棒を入れたときは、有意に耳の傷害頻度が低下した(0.05v.s.0.22%)。フロアタイプは、どの行動パターン(飲食、動き、休息、安楽、社会、調査)にも有意な影響を及ぼさなかった。
主要な結果は、プラスチックネットフロア、かじり棒を入れたケージを好むことを示した。休息、運動、攻撃行動は、飼育システムで修正され、かじり棒があると身体的傷害の頻度が減少した。(Sato訳)
■胃拡張と腸閉塞のウサギ76例
Gastric dilation and intestinal obstruction in 76 rabbits
Vet Rec. September 2007;161(12):409-14.
F M Harcourt-Brown
76羽のウサギにおける84件の胃拡張(鼓腸)を調査し、またそれらのうち64羽で腸閉塞を確認した。閉塞の49件は圧縮した毛の小球、4件はイナゴマメの種子、5件は腫瘍、2件は避妊後の癒着、各1件は絨毯の繊維、条虫のシスト、絞扼性ヘルニア、憩室炎によるものだった。4例を除き、閉塞部位は小腸だった。その状態は、種々の食餌を与えられ、種々のウサギの種類に影響した。消化管内のガスおよび・または液体が拡張した胃および腸の輪郭を描くので、エックス線写真は有効な診断ツールである。29羽のウサギは死亡または処置なしで安楽死され、40羽は試験開腹を行った。そのうち10羽は手術中に死亡し、3羽は腸腫瘍のために安楽死、8羽は術後死亡し、19羽は回復した。エックス線写真で異物を示した15羽は、小腸を通過したので手術を行わなかった。それらのうち13羽は回復し、2羽は死亡した。(Sato訳)
■ウサギの異常結膜狭窄および過形成
Aberrant conjunctival stricture and overgrowth in the rabbit
Vet Ophthalmol. 2008 Jan-Feb;11(1):18-22.
Ingrid Allgoewer, Pedro Malho, Heiko Schulze, Ekkehard Schaffer
6羽の片側性(n=2)および両側(n=4)異常結膜増生をもつドワーフラビットに外科的矯正を行った。行った方法は、過剰形成結膜からリンバスへの遠心切開および結膜の横眼瞼固定だった。この方法で結膜円蓋を再建した。観察期間(5-72ヶ月)以内に再発は見られなかった。(Sato訳)
■ウサギ(Oryctolagus cuniculi)における転移を伴う絨毛癌1例
Choriocarcinoma with metastasis in a rabbit (Oryctolagus cuniculi)
Vet Pathol. January 2008;45(1):77-9.
M Kaufmann-Bart, I Fischer
3歳のメスのウサギ(Oryctolagus cuniculi)が2,3日前からの無関心、体調不良を理由に来院した。触診で腹部尾側、すなわち子宮壁にマスが明らかとなった。卵巣子宮摘出術を実施し、その組織は病理組織検査を行った。マスは、3つの異なる子宮起源の腫瘍性細胞タイプ(栄養膜、合胞体栄養、細胞栄養層)から構成されていた。3つの腫瘍細胞タイプは免疫組織化学染色でサイトケラチン陽性、合胞体栄養はヒト絨毛性ゴナドトロピンも陽性だった。組織特性をあわせて、絨毛癌の診断が可能である。この報告は、ウサギの自然発生絨毛癌の最初の報告を述べる。(Sato訳)
■健康及び内毒血症のウサギにおいてエンロフロキサシンとフルニキシメグルミンの静脈内同時投与後の薬物動態及び両薬剤の相互作用
Pharmacokinetics of enrofloxacin and flunixin meglumine and interactions between both drugs after intravenous co-administration in healthy and endotoxaemic rabbits
Vet J. July 2007;0(0):.
Muammer Elmas et al
この研究の目的は、健康なウサギおよびEscherichia coliリポ多糖(LPS)を投与して誘発している内毒血症のウサギで、エンロフロキサシン(ENR)およびフルニキシメグルミン(FM)の薬物動態、相互作用の可能性を判定することだった。研究にはオスの成熟したニュージーランドホワイトラビット6羽を使用した。第1相では各健康なウサギにFM(2.2mg/kg)及びENR(5mg/kg)を同時に静脈内(IV)にボーラス注射した。ウォッシュアウト期間後、第2相で精製LPSをIVボーラス投与し、それからFM及びENRを投与した。LPSは、いくつかの血清生化学濃度を統計学的に有意に上昇させた。薬剤同時投与後、内毒素血症のウサギと比較して健康なウサギのFMの動態パラメーターは有意差を示さなかった。ENRとFMは両薬剤の薬物動態に負の相互作用を示すことなく、内毒素血症の治療にウサギに同時投与可能と結論付ける。(Sato訳)
■ウサギにおける自発骨肉腫
Spontaneous osteosarcoma in a rabbit ( Oryctolagus cuniculus)
Vet Pathol. September 2007;44(5):691-4.
H Kondo, M Ishikawa, H Maeda, M Onuma, M Masuda, H Shibuya, H Koie, T Sato
6歳オスの交雑ウサギ( Oryctolagus cuniculus)が、跛行および右肩から上腕の重度腫脹を呈した。切断した右前肢のホルマリンで固定後の16-ディテクターヘリカルCT像において骨の明らかな増殖と破壊病変が観察された。腫瘍の組織検査において大量の骨様産生物を伴う組織球に似た増殖性腫瘍細胞で構成されていた。大量の多核巨細胞がいたるところに見つかった。この症例は、臨床、エックス線、組織所見により骨肉腫と診断された。これは犬の好発部位と一致する、ウサギにおける骨肉腫のまれな症例報告である。(Sato訳)
■兎における眼球後膿瘍の内視鏡下外科治療
Endosurgical treatment of a retrobulbar abscess in a rabbit
J Am Vet Med Assoc. March 2007;230(6):868-72.
David Martinez-Jimenez, Stephen J Hernandez-Divers, Ursula M Dietrich, Clara O Williams, Megan W Blasier, Heather Wilson, Paul M Frank
症例記述:1歳の不妊してないメスのネザーランドドワーフラビットを、3週間にわたる嗜眠、食欲減退、左片側眼球突出、過去の左上顎顔面膿瘍から瘻孔排泄、両側鼻汁の症状で検査した。
臨床所見:体重は1.0kgでボディコンディションスコアーは1.5/5だった。身体検査で全身の筋肉萎縮、両側粘液膿性鼻汁、重度左側眼球突出が明らかになった。診断的調査で、貧血、好中球増加、重度歯科疾患、左眼の表層角膜潰瘍、眼球後膿瘍が明らかとなった。
治療と結果:口腔鏡検査の補助のもと、歯のトリミング、抜歯、膿瘍デブリードメントを行った。抗生物質で歯の膿瘍腔の中を洗浄し、細胞所見、細菌培養と感受性試験結果をもとに抗生物質療法を開始した。最初の処置から2ヵ月後、眼球突出は最小限となり、更なる身体、エックス線、超音波変化は観察されなかった。
臨床関連:口腔鏡は、兎の歯疾患の診断、治療、一連の再評価を容易にする有効な手技である。(Sato訳)
■ウサギにおける腎疾患のエックス線像
Radiographic signs of renal disease in rabbits
Vet Rec. June 2007;160(23):787-94.
F Harcourt-Brown
腎疾患が疑われるウサギ65羽のエックス線特徴を概説する。エックス線特徴は、全身性の骨不透過性増加(骨硬化)、腎肥大、腎結石、尿管結石、軟部組織石灰化だった。それら変化の1つ以上が65羽中57羽のエックス線写真に見られた。腎疾患は臨床症状、腎結石の存在そして/または尿素およびクレアチニン血中濃度上昇のため疑われた。剖検を行った14羽で顕著な腎疾患が確認された。血中尿素、クレアチニン濃度は47羽で測定したが、全てのウサギが両方とも高濃度というわけではなかった。血中カルシウム濃度は、それを測定した38羽中33羽で高かった。血清リンは測定した34羽で、17羽が高く、5羽が低かった。
高リン血症は全身性骨硬化および動脈石灰化に関係した。骨硬化のウサギは、痩せて、意気消沈、あまり動きたがらなかった。検査した41羽中38羽は、エンセファリトゾーンcuniculiの抗体に血清陽性だった。E cuniculi感染を示唆する組織病変は、剖検を行った13羽全てに見られたが、病原体は1羽のみしか認めなかった。(Sato訳)
■兎鼻涙管におけるバルーン涙管形成の組織病理学的影響
The histopathologic effects of balloon dacryoplasty on the rabbit nasolacrimal duct
J AAPOS. August 2006;10(4):333-5.
Scott M Goldstein, James A Katowitz, Nasreen A Syed
目的:兎の鼻涙管におけるバルーン涙管形成の組織病理学的影響を調査する
方法:8羽の1歳以下ホワイトニュージーランドラビットの16の鼻涙管を3つの処置群(コントロール群、2mmバルーン拡張群、3mmバルーン拡張群)に振り分けた。LacriCathバルーンカテーテル(Quest,
Medical, Allen, TX)を、製造元が推奨するヒトプロトコールに従い鼻涙管拡張に使用した。処置後1、3、7日目に安楽死し、組織検査のため鼻涙管を摘出した。
結果:鼻涙管の管腔、上皮、間質の好中球数、間質の単球数、間質の赤血球数に群間有意差はなかった。処置および未処置群の鼻涙管で、どのタイプの全体の細胞性に差は見られなかった。最後に、挫滅傷害の組織病理症状の所見はなかった。
結論:兎の鼻涙管におけるバルーン涙管形成術は、重要な炎症または挫滅傷害を引き起こさない。(Sato訳)
■ウサギのエンセファリトゾーン・カニキュリ感染
Encephalitozoon cuniculi Infection in Rabbits
Semin Avian Exotic Pet Med 13[2]:86-93 Apr'04 Review Article 25 Refs
F. M. Harcourt-Brown, BVSc, MRCVS
微胞子寄生虫エンセファリトゾーン・カニキュリは、一般にウサギに感染する。ほとんどの感染は、最初無症候性であるが、まだ理由は説明できないが、この病原体の感染の結果として多くのウサギはその後発症する。この病気の3つの主な型が認められ、ここに、または組み合わさって発生する可能性がある。
眼型は、水晶体に過度のダメージやぶどう膜炎があるとき、白内障に関与する。神経型は、軽度なウサギの行動変化から、重度前庭疾患と幅がある。腎臓型に関与する症状は、慢性進行性腎疾患のものである。
ウサギのエンセファリトゾーン症の鑑別診断は難しい。エンセファリトゾーン症の動物は、血清反応陽性で予測されるが、ほとんど見たところ健康なウサギも血清反応陽性なので、この検査は特異性がなく、その結果は他の診断所見に照らし合わせて考慮すべきである。しかし、抗体がなければ、臨床医が他の鑑別疾患を考慮する理由とすべきである。アルベンダゾールやフェンベンダゾールなどの薬剤は、E.カニキュリ感染に効果があると証明されている。支持療法と抗炎症薬剤療法も、必要なエンセファリトゾーン症の型もあるかもしれない。水晶体摘出または水晶体内容物の除去は、眼疾患を起こしたE.カニキュリのウサギに指示されるものもある。(Sato訳)
■ウサギの胃の"ヘリコバクターheilmannii"発生の初報告
First report on the occurrence of 'Helicobacter heilmannii' in the stomach of rabbits.
Vet Res Commun 29[4]:271-9 2005 May
Van den Bulck K, Baele M, Hermans K, Ducatelle R, Haesebrouck F, Decostere A
胃のヘリコバクター種は犬、猫、霊長目、豚、牛、げっ歯類など広い範囲の動物種で述べられている。しかし、より特殊なウサギで胃のヘリコバクター感染は報告されていない。10羽のペットウサギ、10羽の産業用、3羽の実験動物からなる23羽のウサギの異なる胃の部分からバイオプシー標本を採集した。それらでヘリコバクターDNAの検出に対するPCR分析を行った。種レベルまでの確認は、16SrRNA配列分析と近年開発された複合PCRをもとにした。7羽のウサギ(4羽ペット、1羽実験動物、2羽産業動物)は、その体が大部分陽性な胃のヘリコバクター属特異PCRで陽性だった。
犬猫を自然に宿主にすると考えられるH. felisおよびH. salomonisがそれぞれ3羽、1羽で検出された。3羽中1羽は、犬猫とのどんな形の接触も完全に遮断されていた。H.
pullorum/H. rappini様病原体(96% 16SrDNA配列類似)は、産業上飼育ウサギ1羽に認められた。残り2羽のウサギのヘリコバクターは、種レベルまで確認できかなかった。結論として、これはウサギの胃のヘリコバクター種の発生を最初に報告するものである。H.
felisとH. salomonisが人畜共通伝染病の可能性を持つと提唱する事実の審査で、ウサギだけでなく人の健康に対するそれら所見のかかわりを調査するさらなる研究が必要である。(Sato訳)
■家ウサギにおけるケタミンとメデトミジン麻酔の評価
Assessment of Ketamine and Medetomidine Anaesthesia in the Domestic Rabbit
Vet Anaesth Analg 32[5]:271-279 Sep'05 Research Paper 13 Refs
Hannah E Orr BVSc, CertLAS, MRCVS, Johnny V Roughan BSc, PhD & Paul A Flecknell MA, VetMB, PhD, DLAS, Diplomate ECVA, DECLAM, MRCVS *
目的:遺伝で異なる集団のウサギにおいて、2種類の経路で投与したケタミンと2種類の投与量のメデトミジン効果を研究する
研究構成:前向き無作為臨床研究
動物:種々の種類、性別、年齢の105羽の家ウサギ
素材と方法:去勢、または避妊を行うウサギにケタミン(15mg/kg)にメデトミジン0.25または0.5mg/kgを混ぜ、皮下注射(SC)または筋肉内注射(IM)した。規則的な顎の動き及び/またはわずかな肢の単収縮のサインが不十分な麻酔を示すとき、1.5-2%イソフルレンを供給した。心拍数、呼吸数、血中酸素飽和度、終末呼気二酸化炭素濃度、直腸温をいくつかのタイムポイントでモニターした。外科麻酔の持続時間、麻酔時間を測定した。手術終了時、アチパメゾール(1.0または0.5mg/kg、IMまたはSC)を投与した。
統計分析:オスとメス、麻酔投与量と薬剤投与経路に関し、すべてにわたる変動値の比較にMANOVAを使用した。
結果:IM薬剤投与後全ての反射は有意により速く喪失した(p<0.05)。各群の薬剤投与から反射喪失までの時間(分)は:立ち直り反射:6.3(15.0/0.25、SC)、5.5(15.0/0.5、SC)、2.9(15.0/0.25、IM)、2.3(15.0/0.5、IM);耳つまみ反射:9.2、8.5、4.8、3.6;肢引っ込め反射:12.8、10.4、6.6、5.2だった。術中の心拍数、呼吸数に群間の相違はなかったが、術中の最も高い終末呼気CO2濃度は用量に有意な影響を受け、15.0/0.5IM群で認められた。イソフルレンを必要とする動物の多くは、麻酔を引き起こす用量を増やすことが少ない傾向にあり、オスよりメスの方が有意にイソフルレンを必要とした(P<0.05)。麻酔からの回復(立ち直り反射の回帰)は、用量間で有意差はなかった(P>0.1)が、IMアチパメゾールを行った方がより速かった(13.6±13vs.21±17、p=0.037)。麻酔関連死亡率の発生はなく、3頭を除き全て無事に回復した。5頭は無関係の疾患により麻酔下で安楽死された。
結論と臨床関連:ケタミン‐メデトミジンの組み合わせは、家庭ウサギでイソフルレンが低用量ですむぐらいの短時間の深い麻酔を簡単に得ることができる信頼性の高い外科麻酔である。皮下投与によく許容したが導入のスピードは、IM注射よりも遅かった。アチパメゾールは有効な拮抗薬で、IM投与で最も速く効果が現れる。(Sato訳)
■ニュージーランドホワイトラビットの臨床化学に対する麻酔の影響
The effects of anesthesia on the clinical chemistry of New Zealand White rabbits.
Contemp Top Lab Anim Sci 43[3]:25-9 2004 May
Gil AG, Silvan G, Illera M, Illera JC
ニュージーランドホワイトラビットで、種々の血漿生化学パラメーターに対する4種の麻酔の影響を調査した。50羽を5つの処置群(各n=10)に振り分けた。コントロール(1ml通常生理食塩水静脈内投与[i.v.]);ケタミン(10mg/kgi.v.)とキシラジン(3mg/kgi.v.)かジアゼパム(2mg/kgi.v.);ペントバルビタール(30mg/kgi.v.);チオペンタール(20mg/kgi.v.)。血漿コレステロール、トリグリセリド、乳酸脱水素酵素(LDH)、ナトリウム、カリウム、塩化イオン、カルシウム、リン濃度を自動分析器で測定した。
血液サンプルを麻酔、または生理食塩水の注射前と注射後10、30、60、120分、24時間目の6つのタイムポイントで採取した。コントロール群と基準(time0)の血漿生化学濃度を比較した。ケタミン-ジアゼパム(P<0.01)とペントバルビタール(P<0.05)群で血漿コレステロール値は有意に増加し、ケタミン-キシラジン(P<0.01)とケタミン-ジアゼパム(P<0.01)群で血漿トリグリセリドは有意に増加した。ケタミン-ジアゼパム群で血漿LDHは有意に増加し、ペントバルビタール群では低下した(P<0.01)。
ケタミン-キシラジン(P<0.05)、ケタミン-ジアゼパム(P<0.05)、チオペンタール(P<0.05)投与後、血漿ナトリウム濃度は有意に増加した。血漿カリウムは、ケタミン-キシラジン(P<0.05)で有意に増加し、ペントバルビタール群(P<0.05)で低下した。血漿塩化イオン(P<0.01)とリン(P<0.05)はケタミン-ジアゼパム投与後有意に増加し、血漿カルシウム濃度はケタミン-キシラジン投与後増加した(P<0.05)。ここまで観察された結果から、麻酔投与後いくつかの生化学パラメーター濃度が有意に増加し、または低下すると結論づけた。ゆえに、麻酔をかけた特に覚醒中のウサギの血漿生化学パラメーターの解釈に注意が必要である。(Sato訳)
■ウサギのコロニーにおけるビタミンA中毒とビタミンE欠乏症
Vitamin A toxicity and vitamin E deficiency in a rabbit colony.
St Claire MB, Kennett MJ, Besch-Williford CL.
Contemp Top Lab Anim Sci. 2004 Jul;43(4):26-30.
ウサギの商業用繁殖コロニーで、ビタミンA中毒とビタミンE欠乏症が診断された。この中毒と欠乏症は、この繁殖コロニーにおいて繁殖障害、流産、子ウサギの生存率の低下と関連していた。若齢ウサギには、麻痺および筋肉のジストロフィーが認められた。同じ商業用コロニーの別のニュージーランド・ホワイト・ウサギ群を使って、ビタミンE療法が臨床症状、繁殖、血清および肝臓のビタミンAおよびビタミンE濃度に及ぼす影響を評価した。食事の変更およびビタミンE療法の、開始前そして開始後に血液を採取した。血清ビタミンEは、推奨されるビタミンE濃度を含有している食事を与えた後も依然として低いままであった。2週間にわたるビタミンE投与によって、血清ビタミンA濃度はさらに低下し、血清、肝臓ビタミンE濃度は上昇した。結論として、ビタミンE療法は、ビタミンA過剰症の治療に有効であると思われる。(Dr.NamikiPchan訳)
■ウサギのエンセファリトゾーン症
Encephalitozoon cuniculi in pet rabbits.
Harcourt-Brown FM, Holloway HK.
Vet Rec. 2003 Apr 5;152(14):427-31.
125頭のウサギのエンセファリトゾーン・カニキュリ(E. cuniculi)に対する血清学的検査の結果を、臨床例の経過追跡とともに報告する。無症候性のウサギ38頭とエンセファリトゾーン症が疑われる神経学的兆候、腎病変もしくは眼病変を呈しているウサギ87頭から採血をした。無症候性グループにおいて6/26頭(23%)は明らかに健康で健常群として集めたが、血清反応陽性であった。無症候性グループの残り12頭は血清反応陽性個体と共に生活していた理由で集めたが、8頭(66%)が血清反応陽性であった。斜頚、発作、運動失調および振戦などの神経学的兆候を呈したウサギ58頭のうち、3頭は腎病変、2頭は眼病変も呈し、これら5頭のウサギはすべて血清反応陽性であった。血清反応陽性であったウサギのうち21/23頭(91%)で斜頚が観察され、最も一般的な神経学的兆候であった。眼病変を呈した9頭すべてのウサギは血清反応陽性であった。臨床例の追跡調査において、アルベンダゾール、フェンベンダゾール、抗生物質、コルチコステロイドによる治療に様々な反応を示し、無治療で回復した症例もいくつかあった。(Dr.Kawano訳)
■フェンベンダゾールによるウサギのエンセファリトゾーン・カニキュリ感染の予防と治療
Prevention and treatment of Encephalitozoon cuniculi infection in rabbits with fenbendazole.
Suter C, Muller-Doblies UU, Hatt JM, Deplazes P.
Vet Rec. 2001 Apr 14;148(15):478-80.
エンセファリトゾーン・カニキュリ(E. cuniculi)に対する実験感染に対する予防と、自然感染ウサギの中枢神経系からのスポアの排除に関してフェンベンダゾールの効果を観察した。E. cuniculiのスポア106個を経口感染させた後21日間、もしくは感染前7日から感染後2日までフェンベンダゾール(20mg/kgSID)を投与した。血清学的に特異抗体陰性であったこと、及び脳組織から原虫が検出できなかったことが証明されたことにより、両方の処置により原虫の寄生を効果的に予防することができた。自然感染した血清反応陽性ウサギにおいて、無治療のウサギ7/9頭から原虫が分離されたが、4週間フェンベンダゾールで治療した8頭のウサギの脳組織からは原虫は検出されなかった。(Dr.Kawano訳)
中枢性と末梢性の鑑別は非常に難しいため、できるだけ初期からEz症に対する治療を「見切り発車」することが必要ではないかと思います。戦略の一つにベンズイミダゾール系薬剤としてフェバンテル合剤(ドロンタールプラス錠)20mg/kg (約1/4Tab)SIDの投与が効果的かと思います。