■犬の過敏症反応およびアナフィラキシーの回顧的評価(2003-2014):86症例
Retrospective evaluation of hypersensitivity reactions and anaphylaxis in dogs (2003-2014): 86 cases
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2023 Aug 14.
doi: 10.1111/vec.13319. Online ahead of print.
Fabrice T J Fosset , Benjamin E G Lucas , Cassandra L Wolsic , Audrey C Billhymer , Sidonie N Lavergne
目的:臨床症状、重症度、治療、予後を含む犬のアナフィラキシー反応の特徴を述べ、発生率を調べること。臨床的回復および生存にグルココルチコイドが影響を及ぼすかどうか調べること。
計画:2003年1月1日から2014年4月28日までの間の回顧的研究
場所:大学教育病院
動物:I型過敏症反応に対して治療した86頭の犬。19頭がアナフィラキシーの基準を満たし、67頭は軽度の皮膚反応だった。
介入:なし
測定値と主要結果:算出した発生率は、アナフィラキシーで0.04%、軽度過敏症反応で0.15%だった。メス:オスの比(2.3:1)は、我々のもとになる集団(比1:1.158)と比較して有意に高かった(P=0.032)。ワクチンはアナフィラキシー(57.9%)と軽度過敏症反応(28.4%)に対する最も多い誘因だった。74頭(86%)には皮膚症状があり、アナフィラキシーだった11頭(57.9%)は皮膚症状の報告がなかった。
42頭(48.8%)はH1拮抗薬とグルココルチコイド両方を投与され、34頭(39.5%)はH1拮抗薬のみ、6頭(6.9%)はグルココルチコイドのみを投与されていた。ほとんどの犬は生存し、1頭は合併症のために安楽死された。非生存に関係する臨床症状は、呼吸器症状(P=0.006)、特に呼吸困難(P<0.00001)、チアノーゼ(P<0.00001)、循環性ショック(P=0.005)だった。原因、臨床症状、治療、結果間の相互作用の解析で、変数のペア間にいずれの関係も示されなかった。
結論:この研究で、アナフィラキシーは比較的予後が良く、皮膚症状が常に存在するわけではなかった。このデータを基に、犬の軽度I型過敏症反応やアナフィラキシーの治療におけるグルココルチコイドの使用は、臨床的改善あるいは生存に関係しなかった。(Sato訳)
■重篤な犬と猫に対するトラネキサム酸の使用の遡及的解析(2018-2019):266頭の犬と28頭の猫
Retrospective analysis of the use of tranexamic acid in critically ill dogs and cats (2018-2019): 266 dogs and 28 cats
J Vet Emerg Crit Care (San Antonio). 2022 Sep 1.
doi: 10.1111/vec.13237. Online ahead of print.
Morgan Kelley , Virginia Sinnott-Stutzman , Megan Whelan
目的:集中治療室(CCU)に入院し、トラネキサム酸(TXA)を投与された犬と猫のシグナルメント、投与方法、有害事象、患者の診断を述べる
デザイン:2018年から2019年までのケースシリーズ
場所:個人二次および一次診療動物病院
動物:266頭の犬と28頭の猫
介入:なし
測定値と主な結果:CCUに入院し、TXAの投与を受けた犬と猫の記録を評価した。International Statistical Classification of Diseases systemを基に、各患者に診断を割り当てた。「腫瘍」(頻度の多かったのは血管肉腫)(89/226(39%))、「血液および造血器官の疾患」(特発性腹腔内出血、心嚢水貯留)78/226(34%))は、TXAを投与された犬の一般的な疾患プロセスだった。猫において、「血液および造血器官」(特発性腹腔内出血)(9/28(32%))、「腫瘍」(血管肉腫、肥満細胞腫、癌)(7/28(25%))、「傷害、中毒、外因の特定の他の結果」(高所落下症候群)(5/28(17%))が一般的だった。
148頭(65%)の犬と13頭(46%)の猫は、入院中に侵襲的処置を行った。30%(70/226)の犬は濃厚赤血球(pRBC)の輸血を受けた。pRBCの輸血前後のTXAの投与は、投与されたpRBCの量の中央値に有意な影響を及ぼさなかった(P=0.808)。TXAのIV投与量中央値は、犬と猫で同じで10mg/kgだった。1頭の猫はTXAの10倍の過剰投与を受け、目に見える副作用は認められなかった。有害事象は1.7%(4/226)の犬で報告され、流涎(3/226)とTXAの累積投与量280mg/kgの1頭の犬の発作(1/226)が含まれた。猫の3%(1828)において、唯一報告された有害事象は流涎だった。
結論:この施設において、TXAは腫瘍、出血性疾患、外傷と診断された重篤な犬と猫に主に利用される。有害事象はあまりなく、ほとんどが軽度だった。(Sato訳)
■健康なビーグル犬で前向き二重盲検プラセボ-対照臨床試験を通し評価したプレドニゾロンの短期免疫抑制量の投与は腎臓、水和および電解質の持続的変化に関係する
Short course of immune-suppressive doses of prednisolone, evaluated through a prospective double-masked placebo-controlled clinical trial in healthy Beagles, is associated with sustained modifications in renal, hydration, and electrolytic status
Am J Vet Res. 2022 Feb 16;1-9.
doi: 10.2460/ajvr.21.09.0150. Online ahead of print.
M I Mantelli , B B Roques , T A Blanchard , M Mounier , M Quincey , F B Jolivet , N P Jousserand , A Marchand , A N Diquélou , B S Reynolds , M Coyne , C Trumel , H P Lefebvre , D Concordet , R Lavoué
目的:健康犬において、糸球体濾過率(GFR)測定、クレアチニン(Cr)、対称性ジメチルアルギニン(SDMA)濃度そして尿検査、電解質、水和状況により評価した腎機能に対するプレドニゾロン経口投与の効果と持続時間を調査する
動物:14頭の健康なビーグル
方法:この前向き二重盲検プラセボ-対照試験において、基礎評価後に犬に無作為にプレドニゾロン(1.5-2.0mg/kg、PO、12時間毎)、またはプラセボを7日間コースで投与した。参加した各犬で4回の連続したサンプリングを行い、反復測定デザインを実施した。投与前(D0)、ステロイド投与終了時(D7)、治療終了後2週間目(D21)、4週間目(D35)に全ての犬に対し臨床的データ、収縮期血圧、CBC、血清SDMAを含む生化学検査、GFR測定、排尿量、完全な尿検査を実施した。
結果:D7時、基礎値と比べた時、処置犬のGFRは有意に増加したが、クレアチニンおよびSDMA濃度は有意に減少した。D21時、SDMAを除きGFRおよびCr変化は有意に持続した。D35時、基礎値と有意に異なる変数はなかった。尿電気泳動において、アルブミンバンドを呈するORは、コントロールに対し処置犬で2.4倍高かった(OR、36;95%CI、1.8-719.4;P=0.02)。
臨床関連:健康犬において免疫抑制量のプレドニゾロン短期コースの投与は持続性だが、可逆的な腎臓過剰濾過状態を誘発する。そのような患者で電解質変数の変化は、血液検査の臨床的解釈に影響する可能性がある。(Sato訳)
■健康な猫における経口トラセミドの薬物動態と薬力学特性
Pharmacokinetic and pharmacodynamic properties of orally administered torasemide in healthy cats
J Vet Intern Med. 2022 Jul 30.
doi: 10.1111/jvim.16500. Online ahead of print.
Marine Roche-Catholy , Dominique Paepe , Mathias Devreese , Bart J G Broeckx , Frederique Woehrlé , Marc Schneider , Andrea Garcia de Salazar Alcala , Arnaut Hellemans , Pascale Smets
Free article
背景:ヒトや犬において、トラセミドは同等量のフロセミドよりも生物学的利用能が高く、半減期が長く、作用持続時間も長いが、猫のトラセミドの薬理学的特性に関するデータは限られている。
目的:健康な猫においてトラセミドの薬物動態および薬力学的パラメーターを評価し、利尿の指標、血漿クレアチニン濃度、血圧、電解質濃度、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系(RAAS)のマーカーに対し、トラセミドの1回投与の影響を調査する
動物:臨床的に健康なヨーロッパ短毛成猫6頭
方法:3群、4処置の無作為化4周期交差デザイン。薬物動態顎的パラメーターはノンコンパートメント解析で入手し、臨床的に有効な薬用量はHillモデルで評価した。
結果:平均絶対生物学的利用能は、88.1%と推定された。平均全身クリアランスは3.64mL/h/kgと平均終末半減期は12.9時間だった。尿排泄はトラセミド投与後有意に増加した(P<.001)。尿中ナトリウム:カリウム比(uNa:uK)は並行で、尿排泄に統計学的に相関した(P<.001)。トラセミドの1回の投与は、尿中アルドステロン:クレアチニン比(uAldo:C;P<.001)において有意に用量依存的に増加させ、血漿カリウム濃度を一時的に低下(P<.001)させたが、血圧や血漿クレアチニン濃度に影響を及ぼさなかった。
結論と臨床的重要性:健康な猫において、トラセミドの1回投与は、利尿とレニン-アンギオテンシン-アルドステロン(RAAS)活性を有意に増加させ、絶対生物学的利用能は高く、臨床的に関係する副作用はなかった。薬物動態顎的パラメーターは、0.27mg/kgの1日1回の投与が臨床現場で適切かもしれないと示す。(Sato訳)
■より体重が重い犬において選択的グルココルチコイド有害事象のリスク増加
Increased risk of select glucocorticoid adverse events in dogs of higher body weight
Can Vet J. 2022 Jan;63(1):32-38.
Loren S Sri-Jayantha , Michael T Doornink , Bridget K Urie
犬においてグルココルチコイド治療に対するデータは限られている。
この研究の目的は、グルココルチコイド治療を受けた時、より体重の重い犬はより多くの有害事象を経験するかどうかを調査することだった。
2014年から2019年の間に免疫介在性血小板減少症あるいは溶血性貧血の治療として、グルココルチコイドを処方された61頭の犬の記録から、グルココルチコイド治療に関係するデータを抜き出した。
治療中の筋肉萎縮や多食の発生確率は、体重が5kg増えるごとに30%増加した。ほぼ半数の犬(44.3%)は、治療中に基礎体重から>15%変動した。理想以上のボディコンディションスコアの犬は、尿路感染と診断されるリスク(オッズ比=4.2)が上昇した。
この所見は、標準の線形グルココルチコイド投薬は、より体重の重い犬で有害事象発症のリスクを増加させるかもしれないと示唆される。より体重の重い犬において、グルココルチコイド漸減の促進及び/あるいは代替投薬計画が許容性および飼い主のコンプライアンスを改善するために賢明かもしれない。(Sato訳)
■全身的に正常な猫に抗炎症量のプレドニゾロンの短期経口投与の臨床病理、血行動態、心エコー検査的影響
Clinicopathologic, hemodynamic, and echocardiographic effects of short-term oral administration of anti-inflammatory doses of prednisolone to systemically normal cats.
Am J Vet Res. August 2019;80(8):743-755.
DOI: 10.2460/ajvr.80.8.743
Imal A Khelik, Darren J Berger, Jonathan P Mochel, Yeon-Jung Seo, Jean-Sébastien Palerme, Wendy A Ware, Jessica L Ward
目的:全身的に正常な猫に対し、抗炎症量のプレドニゾロンを短期投与した時の、臨床病理、血行動態、心エコー検査的影響を評価する
動物:アレルギー性皮膚炎の猫10頭と健康なコントロール猫10頭
方法:アレルギー性皮膚炎の猫を無作為に2群に分け、プレドニゾロンの2つの投与量(1および2mg/kg/d、PO、7日間)のどちらかを投与し、9日間の漸減投与と14日間のウォッシュアウト期間を設けクロスオーバーデザインで行った。各プレドニゾロン投与猫と、性別、不妊状態、年齢(±1歳)、体重(±10%)を基にして健康なコントロール猫を対応させた。コントロール猫は35日の観察期間中に処置はなかった。臨床病理、心エコー検査、血行動態の変数を基礎(0日)とプレドニゾロン投与中の予定した時および投与後に測定し、2つの処置群内、処置群間で比較した。
結果:プレドニゾロン投与猫は臨床病理学的変化(好中球数と単球数およびアルブミン、コレステロール、トリグリセリド濃度の軽度上昇)を予測していたが、収縮期動脈血圧;血糖値、血清カリウム、心臓バイオマーカー濃度;尿ナトリウム排泄;心エコー変数は、基礎値とどの検査時に有意な違いはなかった。血糖値、NT-proBNP濃度の統計学的に有意だが臨床的に関連性のない上昇が、2mg/kgの用量で投与したときだけ、基礎値とプレドニゾロン薬物動態安定状態(開始後7日目)の間に観察された。
結論と臨床関連:結果は、アレルギー性皮膚炎の全身的に正常な猫に対し、プレドニゾロンの抗炎症量の短期間の経口投与は、関連する血行動態、心エコー検査、糖尿病誘発的影響を引き起こすことはないと示した。(Sato訳)
■非ステロイド性抗炎症薬で長期に治療した犬の消化管病変の有病率
Prevalence of gastrointestinal lesions in dogs chronically treated with nonsteroidal anti-inflammatory drugs
J Vet Intern Med. 2021 Feb 3.
doi: 10.1111/jvim.16057. Online ahead of print.
Kasey Mabry , Tracy Hill , Mary Katherine Tolbert
Free article
背景:非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)は、消化管潰瘍や穿孔に関係する一般的な医薬品である。犬のNSAIDsの長期使用に関係する消化管(GI)傷害の有病率は不明である。
目的/仮説:NSAIDsで長期に治療した犬のGI粘膜糜爛の有病率を判定する。著者らはNSAIDsを投与した犬は、コントロール集団と比べてGI粘膜糜爛が多くあり、GI通過時間がより長いだろうと仮説を立てた。
動物:慢性GI疾患の評価で、ビデオカプセル内視鏡検査(VCE)を行ったコントロール飼育犬11頭と、30日以上NSAIDsの投与を受けた中型および大型犬種の飼育犬14頭
方法:臨床的に関連する併発疾患のないことを調べた後犬を前向きに募集し、VCEを実施した。GI通過時間および粘膜病変の有無を記録した。
結果:NSAIDsの投与を受けていた12頭の犬と回顧的に評価した11頭のコントロール犬を含めた。投与されたNSAIDsはカルプロフェン(9頭)、メロキシカム(2頭)、フィロコキシブ(1頭)で、中央値は6か月間だった。10頭(83.3%;95%信頼区間;51.6%-97.9%)のNSAIDsで治療した犬はGI糜爛があった。糜爛は全3種のNSAIDsの少なくとも1頭に見られた。コントロール犬11頭中3頭は胃の糜爛があった。NSAIDsを投与されている犬は、より検出される糜爛が多かった(P=0.004)。
結論と臨床関連:慢性胃腸疾患のコントロール犬と比べ、NSAIDsの長期治療を受けていた犬において、無症状のGI糜爛が良く見られ、特にGI疾患の素因を持つ併発疾患がある犬において慎重にNSAIDsを使用することが提唱される。(Sato訳)
■犬のシクロスポリン治療中の細菌感染の有病率:批評的に評価されたトピック
The prevalence of bacterial infections during cyclosporine therapy in dogs: A critically appraised topic
Can Vet J. 2020 Dec;61(12):1283-1289.
Endya J High , Thierry Olivry
シクロスポリンは免疫介在性及びアレルギー性疾患の治療や、移植拒絶反応の予防に使用される。
シクロスポリン治療中の細菌感染の有病率を判定するため、2つのデータベースを検索し、14個の利用可能なデータを報告した文献を確認した。
シクロスポリンの抗アレルギー用量の投与を受けたアトピー性皮膚炎の犬828頭において、細菌感染の有病率は11%だった;それらの多くは外皮や泌尿器系で起こり、複数の体系で起こらなかった。他の病気に対し、高用量で投与を受けた95頭の犬において、細菌感染の有病率は17%で、消化管、泌尿器及び呼吸器で多く起こり、1つ以上の体の部分で起こることも多かった。
シクロスポリンで治療したアトピー性皮膚炎の細菌感染の有病率は低く、多くは皮膚に発生する。免疫抑制を目的に投与する時、細菌感染の有病率はより高く、1つ以上の体系に影響する可能性がある。(Sato訳)
■若い健康な猫において経皮的ミルタザピンの薬剤暴露と臨床効果:予備研究
Drug exposure and clinical effect of transdermal mirtazapine in healthy young cats: a pilot study.
J Feline Med Surg. October 2017;19(10):998-1006.
Kellyi K Benson , Lara B Zajic , Paula K Morgan , Sarah R Brown , Ryan J Hansen , Paul J Lunghofer , Luke A Wittenburg , Daniel L Gustafson , Jessica M Quimby
目的:健康な猫で経皮ミルタザピン(TMZ)の投与後、薬剤暴露と臨床効果を測定する
方法:第I相:7頭の健康な実験猫に、(1)3.75mgと7.5mgTMZを1日1回耳に投与し、48時間の血清サンプリング(経静脈カテーテルより0、0.5、1、2、5、9、12、24、36、48時間目に採血)を行った;(2)7.5mgTMZとプラセボを1日1回6日間耳に投与し、その後48時間の血清サンプリングを行った;1.88mgミルタザピンを1日1回経口投与し、1、4、8時間目に血清サンプリングを行った。
第II相:無作為化二重盲検プラセボ対照3期クロスオーバー臨床効果試験に20頭の飼育猫を登録した。処置は6日間7.5mgTMZを耳に、あるいは家庭でプラセボジェルを、および病院で1.88mgミルタザピンを1日1回経口投与した。オーナーには、家庭で毎日食欲、食物摂取率、要求、活動、発声を記録してもらった。6日目、食物摂取、活動性、発声を病院で記録し、血清ミルタザピン濃度のトラフとピークを入手した。血清ミルタザピンとジェル濃度を液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析で測定した。
結果:第I相:TMZの投与により測定可能な血清ミルタザピン濃度を達成した。7.5mgTMZ複数投与の0-48時間曲線下面積は、1.88mg経口ミルタザピン(OMZ)1回投与よりも有意に高かった(P=0.02)。
第II相:TMZを投与した猫は、家庭で有意に食欲(P=0.003)、食物摂取率(P=0.002)、活動性(P=0.002)、要求活動(P=0.002)、発声(P=0.002)が増加した。病院で、プラセボと比べTMZおよびOMZ共に食べた食餌が有意に増加した(P<0.05)。ジェル濃度の範囲は目標用量の87-119%の範囲だった。
結論と関連:TMZ7.5mg1日1回投与は、測定可能な血清濃度に達し、配合ジェル濃度にばらつきがあっても有意に食欲を刺激した。しかし副作用は低用量が指示されることを示す。(Sato訳)
■薬理学的食欲刺激:食欲不振の猫の合理的選択
Pharmacological appetite stimulation: rational choices in the inappetent cat.
J Feline Med Surg. 2014 Sep;16(9):749-56. doi: 10.1177/1098612X14545273.
Agnew W, Korman R.
診療関連:食欲不振は猫の医療でよく遭遇する問題である。食欲不振や食欲が低下した猫の管理における主な目標は、基礎疾患の診断と治療および適切な栄養に戻すことである。
理論的根拠:猫は、不適切な栄養摂取が長期間にわたることに耐えられず、特に肝リピドーシス発生傾向、アミノ酸に対する必要量の増加、糖新生の割合を緩やかにできないので、対症療法と栄養サポートは診断的検査中に必要となることが多い。
臨床的チャレンジ:食物摂取が低下している多くの猫は、基礎に全身疾患があることが多く、食欲刺激薬剤の作用メカニズム、薬物動態、禁忌を、それらの薬剤を合理的に使用する各症例で考慮する必要があるだろう。薬理学的食欲刺激は、適切なカロリー摂取のモニタリングやそれを確実に行うことにとって代わるべきではなく、重篤疾患や重度の栄養不良の患者には不適切かもしれない。
エビデンスに基づき:猫の食欲不振の治療に対し、特別に認可された薬剤はないが、臨床分野で効果が認められている薬剤もある。食欲不振に昔から使用されているいくつかの薬剤はあるが、潜在的副作用および/あるいは効果や予測性の欠如のため、シプロヘプタジンおよびミルタザピンのみが、現在使用が推奨できる。(Sato訳)
■猫のミルタザピン中毒:84症例の回顧的研究(2006-2011)
Mirtazapine toxicity in cats: retrospective study of 84 cases (2006-2011).
J Feline Med Surg. 2016 Nov;18(11):868-874. doi: 10.1177/1098612X15599026. Epub 2016 Jul 10.
Ferguson LE, McLean MK, Bates JA, Quimby JM.
目的:獣医療でミルタザピンは、食欲刺激剤として1.88あるいは3.75mgの用量で一般に使用されている。この研究の目的は、最も一般的に報告される副作用と、それら症状に関係する用量を調査することである。
方法:American Society for the Prevention of Cruelty to Animals' Animal Poison Control Centerからミルタザピンの暴露を受けた猫の記録を入手した(2006-2011)。以下のパラメーターを記録した:シグナルメント、体重、結果、摂取した薬剤、摂取した量、暴露経路、認められた臨床症状、使用目的、症状の発現時期、症状の持続時間。
結果:ミルタザピンに暴露された84頭において、報告された10個の最も一般的に観察された副作用は、発声(56.0%の猫;平均用量2.56mg/kg)、興奮(31.0%;2.57mg/kg)、嘔吐(26.2%;2.92mg/kg)、異常な歩様/運動失調(16.7%;2.87mg)、情緒不安(14.3%;3.55mg)、振戦/震え(14.3%:2.43mg)、流涎(13.0%;2.89mg)、頻呼吸(11.9%;3.28mg/kg)、頻脈(10.7%;3.04mg/kg)、元気消失(10.7%;2.69mg/kg)だった。59頭(70.2%)は偶発的摂取と考えられ、25頭(29.8%)は処方で与えられていた。中毒症状に関連した用量は15.00mg(40頭)、3.75mg(25頭)、7.50mg(4頭)、30.00mg(1頭)、18.75mg(1頭)、11.25mg(1頭)、5.80mg(1頭)、1.88mg(1頭)だった。情報が入手できた猫で、臨床症状の発現は15分から3時間の範囲で、臨床症状が無くなるまでの時間は12-48時間の範囲だった。
結論と関連:1.88mgよりも3.75mgの副作用の頭数が多いことは、1.88mgが食欲を刺激し、一方で毒性を制限するより最適な開始用量だと示唆される。ミルタザピンの正確な量を調剤する利点は、完全な錠剤(15mg)の偶発的投与とその結果起こる毒性の可能性をなくすことを意味する。(Sato訳)
■健康犬へのジフェンヒドラミン静脈あるいは筋肉内への1回投与後の薬物動態
The pharmacokinetics of DPH after the administration of a single intravenous or intramuscular dose in healthy dogs.
Language: English
J Vet Pharmacol Ther. October 2016;39(5):452-9.
A Sanchez , A Valverde , M Sinclair , C Mosley , A Singh , A J Mutsaers , B Hanna , Y Gu , R Johnson
この研究の目的は、健康犬にジフェンヒドラミン(diphenhydramine:DPH)を単回i.v.あるいはi.m.した後の薬物動態を測定することである。
犬を無作為に2つの処置群に無作為に振り分け、DPHを1mg/kg、i.v.、あるいは2mg/kg、i.m.投与した。連続的に24時間の血液サンプルを採取した。DPHの血漿濃度を高速液体クロマトグラフィーで測定し、市販のソフトウィエアーでノンコンパートメント薬物動態解析を実施した。心肺パラメーター、直腸温、鎮静や興奮のような行動への影響を記録した。
i.v.ルートでジフェンヒドラミンClarea 、 Vdarea 、T1/2はそれぞれ20.7 ± 2.9 mL/kg/min、 7.6 ± 0.7 L/kg および4.2 ± 0.5 hで、i.m.ルートのClarea /F、 Vdarea /F 、T1/2はそれぞれ20.8 ± 2.7 mL/kg/min、 12.3 ± 1.2 L/kg 、6.8 ± 0.7 hだった。i.m.投与後の生物学的利用能は88%だった。グループ間あるいは同グループの犬内で生理学的パラメーターの有意差は見られず、値は正常限界内を維持した。副作用あるいは精神状態の変化はDPH投与後観察されなかった。両投与ルートはヒトで治療的と考えられる濃度を超過したDPH血漿濃度をもたらした。(Sato訳)
■爆発物探知犬の嗅覚能力に対するメトロニダゾールとドキシサイクリンの経口投与の影響
Effects of oral administration of metronidazole and doxycycline on olfactory capabilities of explosives detection dogs.
Language: English
Am J Vet Res. August 2016;77(8):906-12.
Eileen K Jenkins, Tekla M Lee-Fowler, T Craig Angle, Ellen N Behrend, George E Moore
目的:爆発物探知(ED)犬の嗅覚機能に対するメトロニダゾールとドキシサイクリンの経口投与の影響を調査する
動物:18頭のED犬
方法:メトロニダゾールを投与した(25mg/kg、PO、12時間毎10日間);薬剤投与の前日を0日とした。0、5、10日目に標準セント ホイールと3つの爆発物(硝酸アンモニウム、トリニトロトルエン、無煙火薬;重さ、1-500mg)で嗅覚探知域値を測定した。10日間のウォッシュアウト期間ののち、ドキシサイクリンを投与し(5mg/kg、PO、12時間毎10日間)、その検査プロトコールを繰り返した。犬に対し検出域値の低下を評価した。
結果:メトロニダゾールの投与で3つの爆発物のうち2つ(硝酸アンモニウムとトリニトロトルエン)に対する探知域値の低下を起こした。18頭中9頭は1つ以上の爆発物に対する反応のパフォーマンスが低下した(5頭は5日目か10日目に低下、4頭は5日目と10日目の両方で低下)。ドキシサイクリン投与中に有意な低下はなかった。
結論と臨床関連:メトロニダゾール25mg/kg、PO1、12時間毎の投与中の爆発物の臭いの探知能力低下は、爆発物探知犬においてこの薬剤の使用に対する潜在的リスクを示した。より低用量でも同様の影響が出るのか判定する追加研究が必要だろう。今回のテスト用量でドキシサイクリンは爆発物探知犬に安全に使用できると思われる。(Sato訳)
■ビーグル犬においてモサプリドの薬物動態に対する摂食の影響
Effects of food intake on pharmacokinetics of mosapride in beagle dogs.
J Vet Pharmacol Ther. October 2015;38(5):497-9.
J-W Chae; B J Song; I-H Baek; H Y Yun; J Y Ma; K-I Kwon
この研究は空腹および食べている状態でモサプリドの薬物動態プロフィールを調査するため行った。
空腹(n=15)および食べている(n=12)ビーグル犬に5mgのモサプリドを1回経口投与し、モサプリドの血漿濃度を液体クロマトグラフィー-タンデム型質量分析で測定した。生じた結果のデータはノンコンパートメント解析(NCA)を行った。
モサプリドは両群共に同様のTmaxで吸収した。空腹群は食べている群よりもCmaxおよびAUCがそれぞれ4倍(10.51μg/mLv.s.2.76μg/mL)と3.5倍(38.53h・μg/mLv.s.10.22h・μg/mL)高かった。
それらの所見は、食餌がモサプリドの薬物動態に影響を及ぼし、この薬剤の投与法を再考する必要があると示唆する。(Sato訳)
■猫におけるクラリスロマイシンとタクロリムスの相互作用に関する予備研究
Preliminary study of interaction of clarithromycin with tacrolimus in cats.
J Vet Med Sci. December 2014;76(11):1527-9.
Masaaki Katayama; Taku Ushio; Shunsuke Shimamura; Yasuhiko Okamura; Yuji Uzuka
タクロリムス(Tac)はヒトの臓器移植で中心となる免疫抑制剤である。しかし、猫の腎臓移植において、Tac療法のコストは重大な妨げとなる。ヒトの移植患者において、クラリスロマイシン(CLM)はTacの血中トラフ濃度を上昇させ、Tacの用量を効果的に減少させる。猫におけるCLMとTacの相互作用は報告されていない。
この研究で、健康な3頭の猫のTacの薬物動態に対し、複数のCLM投与の影響を調査した。
その処置はTac0.3mg/kgとTac0.3mg/kg+CLM10mg/kgの複数投与だった。
CLMとTacの同時投与は経口生物学的利用能において有意な増加を起こした。
それら予備的所見は、猫の腎移植に対し従来のシクロスポリンベースの方法に代わって使用されるTacベースの免疫抑制療法において、CLMの複数投与はTacの必要とされる用量を減量させるかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■エノキサパリン:猫に対する薬物動態と投与スケジュール
Enoxaparin: Pharmacokinetics and treatment schedule for cats.
Vet J. June 2014;200(3):375-81.
Reinhard Mischke; Jette Schonig; Elisabeth Doderlein; Sonja Wolken; Claudia Bohm; Manfred Kietzmann
猫におけるエノキサパリンの皮下投与(SC)に対する詳細な薬物動態のデータは得られておらず、これが投与プロトコール作成を困難にする原因である。
この研究の目的は、(1)エノキサパリン皮下投与の薬物動態データを作る、(2)投与スケジュールを確立することである。
6頭の健康な猫にエノキサパリン1mg/kgで皮下に1回注射し、注射前と注射後1、2、3、4、6、8、10、12時間目に採血した。さらに6頭の健康な猫に4日連続で6時間ごとに0.75mg/kgを投与し、1日目は最初と2回目の注射前と2時間後、2日目と4日目の最初の注射前と2時間後に採血した。抗Xa因子(FXa)活性、凝固検査、トロンボエラストメトリー解析を実施した。
エノキサパリン注射の許容は良好だった。SC注射1回後のCmaxは0.83±0.08抗Xa IU/mLで、6頭中5頭は2時間後に認められた(Tmax=110±25分)。総クリアランスは23.4±4.8mL/h/kgで、終末相半減期は2.27±0.4時間だった。繰り返し注射した全ての猫は0.5-1.0IU/mLの限定した目標ピークレンジに2回目の注射後2時間で到達し(0.54[0.50-0.61];中央値、[最小-最大])、考慮すべきその後の蓄積はなかった。トロンボエラストメトリー(特に非活性化)を除き、凝固時間の割合値は有意に延長したがわずかだった(例えば、活性化部分トロンボプラスチン時間割合中央値の最大値は1.27だった)。有意だがSpearman rank相関係数0.425から0.558の間の適度な密接な相関を、抗FXa活性と異なる凝固時間の比率の間で算出された。
1日4回の0.75mg/kgでの投与スケジュールは、ヒトでの血栓症の治療に対する目標範囲内の再現性のあるピーク抗FXa活性をもたらすので、猫のエノキサパリンの治療的使用に適当であると思われる。個体間変動の低さは抗FXa活性を基にしたモニタリングが不必要だと示している。(Sato訳)
■犬のシクロスポリンの薬物動態に対するクラリスロマイシンの複数回経口投与の影響に関する予備研究
Preliminary study of effects of multiple oral dosing of clarithromycin on the pharmacokinetics of cyclosporine in dogs.
J Vet Med Sci. April 2014;76(3):431-3.
Masaaki Katayama; Yoshiki Kawakami; Rieko Katayama; Shunsuke Shimamura; Yasuhiko Okamura; Yuji Uzuka
ヒトと猫の臓器移植患者においてクラリスロマイシン(CLM)はシクロスポリン(CsA)トラフ濃度を増加させることが知られている。しかし犬においてCLMとCsAの相互作用は報告されていない。
この研究で健康な3頭のビーグルにおいてCsAの薬物動態に対するCLMの複数投与の影響を調査した。
処置はCsA10mg/kg単独、CsA10mg/kg+CLM10mg/kgの複数回投与だった。
CLMとCsAの同時投与はCsAの経口生物学的利用能の有意な増加を起こした。
この研究結果は、腎臓移植犬のCsA-ベースの免疫抑制療法において、CLMの治療量の複数回投与がCsA必要量を減じるかもしれないと示すものである。(Sato訳)
■薬理学的食欲刺激:食欲不振の猫における合理学的選択
Pharmacological appetite stimulation: rational choices in the inappetent cat.
J Feline Med Surg. September 2014;16(9):749-56.
Wendy Agnew; Rachel Korman2
実際の関連:猫の診療で食欲不振はよく遭遇する問題である。食欲がないあるいは食欲不振の猫の管理で第一の目標は、基礎疾患の診断と治療、適切な栄養摂取の回復である。
理論的根拠:猫は長期に栄養が満足に取れない状態に弱く、特に肝リピドーシスを発症、アミノ酸に対する必要量の増加、糖新生の速度を遅くできない傾向があるので、対症療法と栄養補給は診断的検査中にも必要となることが多い。
臨床的試み:食物摂取が減少しているほとんどの猫は、基礎の全身性疾患に苦しんでいると思われ、食欲刺激薬剤を合理的に使用するため、各猫においてその作用機序、薬物動態および禁忌を考慮する必要があるだろう。薬理学的食欲刺激は適切なカロリー摂取のモニタリングや保証に変えるべきではなく、重篤あるいは重度栄養不良のような症例では適切でない場合もあるかもしれない。
裏付け:猫の食欲不振の治療に対し、特別に認証された薬剤はない一方で、臨床分野においていくつかの薬剤はその効果を証明されている。いくつかの薬剤は食欲刺激のために昔から使用されているが、潜在的副作用および/あるいは効果あるいは予測性の欠如のためにシプロヘプタジンとミルタザピンのみが現在使用を勧めることができる。(Sato訳)
■小動物外科において周術期抗生物質の使用に対する現在のイギリスの獣医師の考え
Current British veterinary attitudes to the use of perioperative antimicrobials in small animal surgery.
Vet Rec. June 2012;170(25):646.
C B Knights; A Mateus; S J Baines
2951件の混合および小動物動物病院にアンケートを送り、イギリスでの犬と猫における周術期抗生物質の使用を調査した。NRC基準の「clean」にしたがって分類された2つの外科処置において抗生物質を常に使用すると回答した人の割合は、皮下マスの切除に対し25.3%、通常の陰嚢前去勢手術に対し32.1%だった。
抗生物質を使用すると決断するのに重要と考えられる要因は免疫抑制、ドレーンの存在、傷の汚染の程度、内蔵が出る可能性、プロテーゼのインプラントだった。
話題に出た最も一般的な抗生物質は、強化アモキシシリン(98.0%)、アモキシシリン(60.5%)、クリンダマイシン(21.8%)、エンロフロキサシン(21.7%)、セファレキシン(18.6%)、メトロニダゾール(12.7%)だった。全ての回答者の43%は周術期使用に対し長期作用型製剤をリストに挙げた。
使用経路は、皮下(76.1%)、静脈内(25.8%)、筋肉内(19.8%)、経口(13.5%)、局所(7.7%)だった。
術前投与は(66.6%)、術中(30.2%)、術後すぐ(12.0%)、術後(6.3%)だった。
この調査は、投与タイミング、持続性、抗生物質の選択、予防を必要とする外科症例のより慎重な選択で改善を必要とする小動物外科において周術期抗生物質使用の最適とは言えない使用方法を認めている。(Sato訳)
■6頭の健康な猫における経皮および経口シクロスポリンの吸収
Absorption of transdermal and oral cyclosporine in six healthy cats.
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Jan-Feb;50(1):36-41.
Rose Miller; Anthea E Schick; Dawn M Boothe; Thomas P Lewis
シクロスポリンは一般的に猫の皮膚病の治療において、経口的に用いられる。経口薬の投与が難しいため、研究ではその吸収が限られていることが示されているが、合成経皮的シクロスポリンを処方する獣医師も多い。
この研究の目的は、2週間のウォッシュアウト期間を設け、6頭の猫を用いた対照交差デザインで、シクロスポリンの経口投与後の血中濃度と、シクロスポリン(プルロニックレシチンオルガノゲル(PLO)で調剤)の経皮投与後の濃度を比較した。シクロスポリン5.1-7.4mg/kgを24時間毎に経口的に7日間、あるいは経皮的に21日間投与した。7日毎と、ウォッシュアウト期間後に血中シクロスポリン濃度を測定した。モノクローナルベースのイムノアッセイ(定量下限25ng/ml)を使用した。
7日目の濃度中央値は、シクロスポリン経口投与後2時間目で2208ng/ml(範囲、1357-3419ng/ml)で、経皮投与後2時間目では37ng/ml(範囲、25-290ng/ml)だった。21日目の経皮投与後2時間目の濃度中央値は、58ng/ml(範囲、51-878ng/ml)だった。
シクロスポリンの経皮投与において濃度は定量可能だったが、6頭中1頭のみが効果的濃度と考えられた。それらの結果を基に、シクロスポリンの経皮投与は吸収の悪さにより勧められなかった。(Sato訳)
■健康な犬で経口ミノサイクリン吸収に対するスクラルファートの影響
Effect of sucralfate on oral minocycline absorption in healthy dogs.
J Vet Pharmacol Ther. October 2014;37(5):451-6.
K Kukanich; B KuKanich; A Harris; E Heinrich
スクラルファートとミノサイクリンは犬に同時に投与されることもある。スクラルファートと投与した場合、テトラサイクリンの相対的生物学的利用能が減ずるかもしれないが、犬でそれらの相互作用を確認する研究はない。
この研究では、犬で経口ミノサイクリンの薬物動態を評価し(M)、ミノサイクリンの薬物動態に対し、ミノサイクリンとスクラルファートの同時投与(MS)の影響を判定、ミノサイクリンの薬物動態に対し、2時間スクラルファートの投与を遅らせた時(MS+2)の影響を判定、薬力学的指標をもとに推奨投与量を決定した。
無作為交差計画で、5頭のグレイハウンドに経口ミノサイクリン(300mg)とスクラルファート懸濁液(1g)を投与した。液体クロマトグラフィー質量分析を用い、血漿ミノサイクリン濃度を評価した。
ミノサイクリンの最大血漿濃度(CMAX)および局線下面積(AUC)はそれぞれ1.15μg/mLと8.0h*μg/mLだった。MあるいはMS+2(CMAX=0.97μg/mL、AUC10.3h*μg/mL)群のCMAXとAUCよりもMS群(CMAX=0.33μg/mL、AUC3.0h*μg/mL)のそれは有意に低かった(P<0.05)。
2時間遅らせてスクラルファートを投与すると経口ミノサイクリン吸収を低下させなかったが、同時投与はミノサイクリンの吸収を有意に低下させた。最近最小阻止濃度(MIC)0.25μg/mL(AUC:MIC≧33.9)に対する薬力学的指標に達する薬用量は7.5mg/kg、P.O.12時間毎だった。(Sato訳)
■犬におけるアザチオプリンによる肝毒性の発生率、タイミング、危険因子
Incidence, Timing, and Risk Factors of Azathioprine Hepatotoxicosis in Dogs.
J Vet Intern Med. 2015 Jan 29. doi: 10.1111/jvim.12543.
Wallisch K, Trepanier LA.
背景 犬におけるアザチオプリン(AZA)の使用には、肝毒性と血球減少が生じるため制限されてしまう。
仮説と目的 臨床的に治療をうけている犬におけるAZAの肝毒性の発生率、タイミング、危険因子を明らかにし、肝毒性と血球減少の関係を明らかにすること。
動物 臨床症状および生化学的な観察ができたAZAで治療した52頭の犬で、血清の肝酵素の変化が認められた34頭が含まれた。
方法 2009年1月から2013年12月の間のカルテを調べる回顧的研究
結果 肝毒性(血清ALTの2倍以上の増加)は中央値14日以内(13-22日)に34頭のうち5頭(15%)で認められた。中央値でALTの9倍およびALPの8倍の増加が認められ、薬を中止するか用量を減らすことにより、酵素は安定したか改善した。ジャーマンシェパードは有意に多く罹患していた(肝毒性の5頭中3頭、P=0.0017)。血小板減少症または好中球減少症はCBCの経過観察で48頭中4頭(8%)において認められ、肝毒性と比較して有意に(P=0.016)治療の後の方で生じた(中央値53日、45-196日)
結果と臨床的意義 これらの結果は、犬におけるAZA治療の最初の1-4週の間に肝酵素をルーチンにモニターし、CBCは引き続きモニターすることを支持するものである。ジャーマンシェパードにおいてAZAの肝毒性のリスクが明らかに高いことを同定するためにはさらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■健康な猫に対するN-アセチルシステインの経口および静脈内投与後の薬物動態
Pharmacokinetics of N-acetylcysteine after oral and intravenous administration to healthy cats.
Am J Vet Res. February 2013;74(2):290-3.
Jennifer L Buur; Pedro P V P Diniz; Kursten V Roderick; Butch KuKanich; John H Tegzes
目的:健康な猫においてN-アセチルシステイン(NAC)の経口および静脈内投与後の薬物動態を述べる
動物:6頭の健康な猫
方法:横断研究で、猫にNAC(100mg/kg)をIVおよび経口ルートで投与した:投与には4週間のウォッシュアウト期間を設けた。投与後0、5、15、30、45分目、1、2、4、8、12、24、36、48時間目に血漿サンプルを採取し、高速液体クロマトグラフィー質量分析プロトコールにより定量した。データは区画および非区画薬物動態解析で分析した。
結果:両投与ルートの薬物動態は、2-区画モデルで一番よく描写された。半減期の平均±SDは0.78±0.16時間(IV)と1.34±0.24時間(経口)だった。経口投与後のNACの平均生物学的利用能は、19.3±4.4%だった。
結論と臨床関連:この健康な猫の小集団でNACの薬物動態はヒトで報告された値とは異なっていた。病気の猫においても同様の薬物動態と仮定して、急性疾患の猫において人医からの推定投与量はNACの投与量不足が起こるかもしれない。低い生物学的利用能にもかかわらず、100mg/kgの経口投与後のNACの血漿濃度は慢性疾患の治療に有効かもしれない。(Sato訳)
■犬におけるクロラムフェニコールに関連した有害事象:回顧的研究(2007-2013年)
Adverse events associated with chloramphenicol use in dogs: a retrospective study (2007-2013).
Vet Rec. 2014 Aug 5. pii: vetrec-2014-102687. doi: 10.1136/vr.102687.
Short J, Zabel S, Cook C, Schmeitzel L.
クロラムフェニコールは、メチシリン耐性ブドウ球菌の感染が出現して以来、使用されることが増えてきている広域スペクトラム抗生物質である。ヒトにおいては毒性が認められることから、その使用は限られている。犬においては消化器症状が、一般的な有害事象と報告されており、骨髄抑制の可能性もある。
本研究の目的は、2007年1月から2013年6月に1つの専門病院において認められた犬におけるクロラムフェニコールに関連した有害事象について評価することである。
この期間にクロラムフェニコールを処方された全ての犬について情報を検索した。治療の最中に生じた有害事象だけではなく、用量、治療期間、年齢、体重についても記録した。
全部で105例について評価した。投薬している間に、39頭の犬は少なくとも1つの有害事象を経験していた。最も多かったのは、消化器症状と後肢の虚弱であった。後肢の虚弱のある犬の平均体重は35.3kgであり、有意であった。投薬を中止した時、症例の54%では改善が認められた。症例の76%ではクロラムフェニコールを使用した理由は、細菌培養においてメチシリン耐性Staphylococcus pseudintermdiusが認められたことであった。この情報に基づくと、この報告の再現性を評価するために、さらに前向き研究が推奨される。(Dr.Taku訳)
■合成動物用製剤で貯蔵後時間経過に伴うドキシサイクリン濃度
Doxycycline concentration over time after storage in a compounded veterinary preparation.
J Am Vet Med Assoc. June 15, 2013;242(12):1674-8.
Mark G Papich; Gigi S Davidson; Lisa A Fortier
目的:動物への経口投与のためにドキシサイクリン塩酸塩錠を液体製剤に混ぜ、28日間保存したときのドキシサイクリン濃度を判定する
構成:評価研究
サンプル:ドキシサイクリン塩酸塩錠(100mg)を砕き、50:50のシロップと懸濁溶媒に混合し、経口投与3回分の2種のドキシサイクリン製剤33.3mg/dlと166.7mg/mlを作成した。
方法:製剤を遮光で室温(22-26度)および冷蔵(2-8度)で保存した。ドキシサイクリンを製剤から抜き、0(調剤日)、1、4、7、14、21,28日目に高速液体クロマトグラフィーで濃度を測定した。濃度をUS薬局方標準品と比較した。各ポイントでの製剤の質も色の変化、製剤の一貫性、懸濁の均一性について評価した。
結果:0、1、4、7日目の各製剤の濃度は標準品(範囲、93%-109%)の90%-110%内で許容できると思われた。しかし、14日目にはドキシサイクリン濃度は劇的に減少し、研究終了期間まで低いままだった。14、21、28日目のドキシサイクリン濃度は全て標準品の20%未満(範囲、14%-18%)で、製剤の質も同様に低下した。濃度に対する貯蔵温度の影響は確認されなかった。
結論と臨床関連:市販の錠剤を溶媒に混ぜ、33.3および166.7mg/mlに調整したドキシサイクリンの濃度は7日を超えて保証できない。(Sato訳)
■駆虫性のアベルメクチンは多剤耐性臨床株を含む結核菌を殺菌する
Anthelmintic Avermectins Kill Mycobacterium tuberculosis, Including Multidrug-Resistant Clinical Strains.
Antimicrob Agents Chemother. February 2013;57(2):1040-6.
Leah E Lim; Catherine Vilcheze; Carol Ng; William R Jacobs, Jr; Santiago Ramon-Garcia; Charles J Thompson
アベルメクチンはマクロライド系で、駆虫活性が知られており、全ての細菌に対して不活と思われてきた。
ここに我々は同じ系統のイベルメクチン、セラメクチン、モキシデクチンが多剤耐性および広範な薬剤耐性臨床株の結核菌を含むマイコバクテリア属に対し殺菌性であると報告する。アベルメクチンは臨床および動物用で承認され、薬物動態および安全性プロフィールは証明されている。我々は結核治療に違う目的でアベルメクチンを使用できると示唆する。(Sato訳)
■犬のシクロスポリンの薬物動態に対する西洋オトギリソウの時間経過に伴う効果:ハーブ抽出物と薬剤の相互作用
Time-course effects of St John's wort on the pharmacokinetics of cyclosporine in dogs: Interactions between herbal extracts and drugs.
J Vet Pharmacol Ther. October 2012;35(5):446-51.
K Fukunaga; K Orito
犬における西洋オトギリソウ(SJW)とシクロスポリン(CsA)の相互作用を明白にするため、SJWを繰り返し投与する前と投与中のCsAの薬物動態を分析した。
SJW群において、4頭の犬にSJW(300mg)を24時間ごとに14日間経口投与した。SJWの反復投与開始前7日と開始後7日、14日目にCsA(5mg/kg)を1回経口投与した。
コントロール群において、他4頭の犬にSJW群と同じようにCsA(5mg/kg)を1回投与した。
両群から採血し、UV検出を伴う高速液体クロマトグラフィーを用いてCsAの全血濃度を測定した。
反復投与開始後7日および14日目のコントロール群と比較して、SJW群の最大全血濃度とAUC(0-∞)は有意に低く、CL(tot)/FおよびV(d)/Fは有意に高かった。
上記のようにSJWの反復投与は犬のCsAの薬物動態プロフィールに影響を与える。犬のSJWとCsAの相互作用のメカニズムを解明する追加研究が必要である。(Sato訳)
■ニュージーランドのコンパニオンアニマル獣医師による抗菌剤使用の記述的疫学的研究
Descriptive epidemiological study of the use of antimicrobial drugs by companion animal veterinarians in New Zealand.
N Z Vet J. March 2012;60(2):115-22.
E J Pleydell; K Souphavanh; K E Hill; N P French; D J Prattley
目的:ニュージーランドの愛玩動物に一般的にみられる細菌感染の治療で獣医外科医による抗菌剤の使用パターンを述べる
方法:ニュージーランドで2008年8月と12月の間に、無作為に選んだ800人のコンパニオンアニマル臨床医に対して郵便調査を行った。最近の皮膚、耳、尿路感染に処方した抗菌剤、培養や感受性試験の使用、コンパニオンアニマルの治療に費やす時間の比率のような獣医特性、継続専門技術向上(CPD)イベントに最近の出席に関してデータを集めた。データ内の潜在的関連を拡張モザイクプロットと多変量回帰モデルで調査した。
結果:393人の完全な返答が分析に使用でき、細菌感染を疑う1799症例に対する全身性抗菌剤のデータを得た。最も頻繁に使用された薬剤は、アモキシシリン-クラブラン酸(864症例、48%)、セファレキシン(558症例、31%)、フルオロキノロン(198症例、11%)だった。犬の表在性膿皮症の359症例のうち、157症例(44%)はアモキシシリン-クラブラン酸で、155症例(43%)はセファレキシンで治療され、それぞれ報告された治療期間の中央値は7日と10日だった。
全ての報告症例1984例のうち376症例(19%)で培養および感受性試験が使用されており、それらのうち160症例(43%)は尿路感染疑いだった。コンパニオンアニマルの治療に100%従事する臨床医およびこの調査の前12か月以内にコンパニオンアニマルに関連するCPDコースに出席している臨床医は、コンパニオンアニマルの治療に費やす時間が100%以下の臨床医および12か月以内にCPDコースに出席していない臨床医と比べ、培養および感受性試験にサンプルを提出する臨床医や、犬の膿皮症の治療に抗菌剤をより長いコースで処方する臨床医が多かった。
結論:人間健康に対し決定的に重要とWHOで考えられるフルオロキノロンやアモキシシリン-クラブラン酸のような広域スペクトラムの薬剤が、コンパニオンアニマル医療で最も多く処方される薬剤で、多くの場合、それらの薬剤は培養や感受性試験にサンプルを提出されることもなく処方される。
臨床的関連:表在性膿皮症の多くの症例は、推奨治療期間21日以下で治療されており、高率な膿皮症の再発、原因細菌内の薬剤抵抗性の発生の原因となるかもしれない。特にフルオロキノロンの使用は培養や感受性試験の結果に基づくべきだと、獣医師は意識すべきである。(Sato訳)
■猫におけるクラリスロマイシンとシクロスポリンの相互作用;薬物動態研究と症例報告
Interaction of clarithromycin with cyclosporine in cats: pharmacokinetic study and case report.
J Feline Med Surg. April 2012;14(4):257-61.
Masaaki Katayama; Noriko Nishijima; Yasuhiko Okamura; Rieko Katayama; Testuro Yamashita; Hiroaki Kamishina; Yuji Uzuka
ヒトの移植患者でクラリスロマイシン(CLM)はシクロスポリン(CsA)の最低濃度を上昇させることが知られている。しかし、猫でCLMとCsAの相互作用は報告されていない。
この研究で、猫のCsAの薬物動態および用量に対するCLMの経口投与効果を調査した。
CLMとCsAの同時投与はCsAの経口生物学的利用能を有意に増加させた。また猫の腎臓移植症例において、CLMは治療上CsA最低濃度の維持に必要な用量を最初の量からほぼ35%減少させ、投与頻度は1日2回から1回に変更できた。
猫の腎臓移植症例において通常のCsAベースの免疫抑制にCLMを追加することは、従来のケトコナゾール療法に代わり効果的に使用でき、かなりのコスト節約と利便性をオーナーにもたらすだろう。(Sato訳)
■犬においてテルビナフィンの単回経口投与後の薬物動態
Terbinafine pharmacokinetics after single dose oral administration in the dog.
Vet Dermatol. December 2011;22(6):528-34.
Mary R Sakai; Elizabeth R May; Paula M Imerman; Charles Felz; Timothy A Day; Steve A Carlson; James O Noxon
テルビナフィンはヒトの真菌症の治療で処方されるアリルアミン抗真菌薬である。獣医療での使用も増えてきている。この研究の目的は、1回の経口投与後の犬におけるテルビナフィンの薬物動態学的な特性を評価することだった。
10頭の健康な成犬で研究した。テルビナフィン(30-35mg/kg)を1回経口投与し、24時間定期的に血液サンプルを採取し、副作用をモニターした。10頭中2頭は一時的な眼の変化を起こした。高速液体クロマトグラフィーで血漿テルビナフィン濃度を測定した。薬物動態分析は、PK Solutions(R)コンピューターソフトで実施した。0-24時間の曲線下面積(AUC)は、15.4μg・h/ml(範囲5-27)、最大血漿濃度(C(max))は3.5μg/ml(範囲3-4.9μg/ml)、C(max)到達時間(T(max))は3.6時間(範囲2-6時間)だった。最小阻止濃度以上を維持した時間(T>MIC)およびAUC/MICは重要な侵略的真菌病原体および皮膚糸状菌に対して算出した。ブラストミセスdermatitidis、ヒストプラズマcapsulatumおよび皮膚糸状菌(ミクロスポーラムspp.とトリコフィートンmentagrophytes)に対するT>MICは17-18時間で、スポロトリクスschenckiiおよびコクシジオイデスimmitisについては9.5-11時間を超えていた。それらの真菌に対するAUC/MIC値の範囲は9-13μg h/mlだった。
我々の結果は犬における全身性および皮下真菌症の治療に対し、経口薬剤としてテルビナフィンの使用を支持するエビデンスを提供する。(Sato訳)
■1頭のグレートデンに見られたアムロジピン誘発性歯肉過形成
Amlodipine-induced gingival hyperplasia in a great dane.
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Sep-Oct;47(5):375-6.
Marlene S Pariser; Paul Berdoulay
3歳70㎏のメスの避妊済みグレートデーンが、アムロジピン7.5㎎12時間毎16か月で全身性高血圧の治療後に歯肉過形成を発症した。全身性高血圧と重度歯肉過形成の他に身体検査で異常はなかった。アムロジピンはヒドララジン(0.72mg/kg)に変更した。9か月後、歯肉過形成はほぼ解消し、高血圧はうまくコントロールできていた。犬でアムロジピンのようなカルシウムチャンネルブロッカーはまれな歯肉過形成の原因である。その原因となる薬剤をやめることで完全な回復が見込めるため、この副作用を知っておくことは重要である。(Sato訳)
■犬の行動に対する外因性コルチコステロイドの潜在的な行動上の影響:予備研究
Possible behavioral effects of exogenous corticosteroids on dog behavior: a preliminary investigation
J Vet Behav. November/December 2011;6(6):321-327.
Lorella Notari; Daniel Mills
グルココルチコイドは獣医療で広く使用されていて、それらの身体的副作用はよく知られている。しかし、ストレス反応におけるそれらの役割とリンクした犬の行動への影響および気分に対する影響は過去に報告されていない。
この文献では、一連の症例でコルチコステロイド療法中の犬における行動変化の回顧的オーナー報告を、管理して構造されたアンケートで将来使用できるアイテムを作るために述べられている。コルチコステロイド療法中の犬の行動変化の認識を、異なる犬種、性別、年齢の31頭の犬のオーナーの半構造化オープンインタビューで調査した。
全ての犬は過去6か月間コルチコステロイドの投与を受けていた。そのうち18頭はメチルプレドニゾロン(用量範囲、0.2-1mg/kg)、8頭はプレドニゾロン(用量範囲0.2-1mg/kg)、5頭はデキサメサゾン(用量範囲、0.01-0.3mg/kg)の投与を受けていた。メチルプレドニゾロンとプレドニゾロンは皮膚の状況、デキサメサゾンは整形外科的状況で使用された。オーナーにはコルチコステロイド療法中および中止後の犬の行動について尋ねた。返答に新しい変化はないと繰り返されるようになったとき(重複)にインタビューを中止した。
11人のオーナーが犬の行動変化を報告した;9頭は1つ以上の行動変化を示したと報告した。伝えるところによると6頭の犬は神経質/不穏状態を示し、3頭は驚愕反応が増し、3頭は食物を護る行動を示し、2頭は活動レベルの低下、3頭は忌避反応の増加、4頭は過敏性の攻撃を示し、2頭は吠えることが増えた。
半構造化インタビューは、さらなる調査の領域の確認に有効な予備的ツールで、この文献で報告されたインタビューの結果は、犬でそれらの症状とコルチコステロイド使用の間の潜在的関連をより厳格に調査する、さらなる量的リサーチで使用されるだろう。(Sato訳)
■塩酸クリンダマイシンを2種類の投与量で投与した時の正常犬における血清薬物動態
Serum pharmacokinetics of clindamycin hydrochloride in normal dogs when administered at two dosage regimens.
Vet Dermatol. October 2011;22(5):429-35.
Manolis N Saridomichelakis; Labrini V Athanasiou; Michel Salame; Manolis K Chatzis; Vassilis Katsoudas; Ioannis S Pappas
このクロスオーバー研究の目的は、1週間のウォッシュアウト期間を設け、2つの投与量(5.5mg/kg1日2回と11mg/kg1日1回)で臨床的正常犬にクリンダマイシンを経口投与した時の血清中薬物動態を比較した。
6頭の臨床的に正常な実験ビーグルで、クリンダマイシン5.5mg/kg1日2回の1回目と5回目の投与前、3、6、9、12時間後、そして11mg/kg1日1回の1回目と3回目の投与前、3、6、9、12、18、24時間後に血清サンプルを採取した。血清クリンダマイシン濃度は逆相液体クロマトグラフィーと一緒に質量分析で測定した。結果は5%有意水準でスチューデントのペアt検定を用いて分析した。2つの投与法で有意に異なる薬物動態パラメーターの値は以下だった:最大濃度と濃度-時間曲線下面積は11mg/kg1日1回の方が高かった;より重要なことに、AUC(0-24)と24時間0.5μg/mlの細小阻止濃度(MIC)値の比率(AUC(0-24)/MIC)は、少なくとも薬剤投与初日中で、クリンダマイシンを11mg/kgで投与した時の方が高かった。
ゆえに、スタフィロコッカスpseudintermediusによる犬の膿皮症の治療に対し、より良い薬物動態特性がクリンダマイシンを11mg/kg1日1回で投与した時に期待できるかもしれない。(Sato訳)
■フェノバルビタール誘発性偽性リンパ腫が疑われた1頭の猫
Suspected phenobarbital-induced pseudolymphoma in a cat.
J Am Vet Med Assoc. February 2011;238(3):353-5.
Meg J Baho; Roger Hostutler; William Fenner; Stephanie Corn
症例解説:4.5歳の避妊済みメス猫短毛種を、麻酔関連低酸素事象後に発症した全身性発作のために評価した。
臨床所見:フェノバルビタール投与後、発作はなくなったが、その猫は重度全身性リンパ節症を発症した。CBCおよび生化学検査の結果に著しい変化はなかった。リンパ節の細胞診で反応性リンパ球集団を認めた。腫瘍および感染などの鑑別診断を行ったが、関連診断検査の結果は全て陰性だった。
治療と結果:治療をフェノバルビタールかたレベチラセタムに変更した。フェノバルビタール投与中止から10日後、リンパ節増大は解消し、レベチラセタムによる治療で発作はない状態だった。
臨床関連:偽性リンパ腫および抗痙攣薬過敏性症候群は、ヒトで抗痙攣薬投与による潜在性続発症と認識されている。しかし、動物で抗痙攣薬に対する偽性リンパ腫様反応は今まで報告されていない。腫瘍のようなより重症の疾病と誤解するかもしれない、フェノバルビタール投与による可逆的だが潜在的に重要な続発症であることを強調した症例だった。(Sato訳)
■犬に対するドキシサイクリンの使用で疑われる副作用-386症例の回顧的研究
Suspected side effects of doxycycline use in dogs - a retrospective study of 386 cases.
Vet Rec. August 2011;169(9):229.
B S Schulz; S Hupfauer; H Ammer; C Sauter-Louis; K Hartmann
この研究は犬の大規模集団においてドキシサイクリン関連副作用を調査した。さまざまな感染性疾患の治療に対し、ドキシサイクリンを投与していた386頭の犬のデータを回顧的に分析した。投与中に発生した潜在的副作用を考証し、徴候、投与量、治療期間、適用頻度、ドキシサイクリン製剤、併用薬の使用の関連を調査した。
嘔吐は犬の18.3%で報告され、7.0%は下痢、2.5%は食欲不振を発症した。ドキシサイクリンを投与している間、39.4%の犬はアラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)活性の上昇、36.4%の犬はアルカリフォスファターゼ(ALP)活性の上昇を示した。ALP活性上昇の用量関連リスク(P=0.011、オッズ比[OR]=1.27、95%信頼区間[CI]1.06-1.53)があり、ドキシサイクリンを投与した老齢犬はよりALT活性上昇(P=0.038、OR=1.23、95%CI1.01-1.50)や嘔吐(P=0.017、OR=1.11、95%CI1.02-1.21)を招きやすかった。(Sato訳)
■ビタミンCの薬物動態:アスコルビン酸の経口投与と静脈内投与の洞察
Pharmacokinetics of vitamin C: insights into the oral and intravenous administration of ascorbate.
P R Health Sci J. 2008 Mar;27(1):7-19.
Duconge J, Miranda-Massari JR, Gonzalez MJ, Jackson JA, Warnock W, Riordan NH.
ビタミンCの大量投与を提唱する強い動きがある。高い血漿濃度でのビタミンCの生物学的半減期は30分であると主張している研究者もいるが、これらの報告は多くの議論の対象となっている。NIH(米国立衛生研究所)の研究者は、服用12時間(24時間の半減期)後に行われた検査に基づいて現在のRDAを確立した。ダイナミックフローモデルは、食事摂取に対する現在の少量投与の提案に異議を唱え、疾患の治療のためのアスコルビン酸の大量投与の効果を報告したポーリング氏の大量投与の提案に関連付けた。メイヨークリニックで行われた2-3のコントロール臨床試験では、1日1回10gのビタミンCを経口投与した終末癌患者に明らかなベネフィットが得られなかったが、他の臨床試験ではアスコルビン酸を静脈内に投与したら、実際に腫瘍に対して効果があるかもしれないということを証明している。最近の研究で血漿ビタミンC濃度は投与ルートによってかなり変化することが立証された。静脈内投与によってのみ、血漿と尿の両方で癌細胞を殺すために必要なアスコルビン酸濃度に到達する。ビタミンCの治療効果は経口投与だけの臨床試験では評価できないため、癌治療におけるビタミンCの役割は再評価すべきである。
現時点でひとつの限られた研究は、高用量ビタミンCの静脈内投与での薬物学的データは、特に癌患者において少ない。この事実は、静脈内ビタミンC投与の意義を理解するために注目することを必要とする。この概説は、経口そして静脈内ビタミンCの薬物動態について現在の最先端について記述している。さらに、ビタミンC摂取の投与量と頻度に関する政府の推奨も取り扱うでしょう。(Dr.Kawano訳)
■犬の肺動脈高血圧の治療におけるシルデナフィルの臨床的効果
Clinical efficacy of sildenafil in treatment of pulmonary arterial hypertension in dogs.
J Vet Intern Med. 2010 Jul-Aug;24(4):850-4. Epub 2010 Apr 16.
Brown AJ, Davison E, Sleeper MM.
背景:犬の肺動脈高血圧(PAH)は予後不良となる。シルデナフィルは肺動脈高血圧のヒトにおける運動能力を増加させ、血行力学を改善する。
仮説/目的:シルデナフィルを投与した犬は、プラセボを投与した犬に比べ、肺動脈圧が低下し、運動能力が増加し、生活の質(QOL)が向上する。
動物:心エコーで肺動脈高血圧の根拠がある13頭の犬
方法:前向き短期ランダム化プラセボコントロール二重盲検クロスオーバー試験。肺動脈高血圧の犬はランダムに4週間のシルデナフィル群あるいはプラセボ群に分けられ、次の4週間は異なる治療をうけ経過を観察した。
結果:シルデナフィルを投与した犬は肺動脈圧(中央、56 mmHg;範囲、34-83 mmHg)が基線(中央、72 mmHg;範囲、61-86 mmHg;P=.018)に比べて有意に低下した。プラセボを投与した犬は有意に低下しなかった(中央、62 mmHg;範囲、49-197 mmHg)。運動能力はプラセボを投与した犬に比べて、シルデナフィルを投与した犬で有意に増加した(平均活動数/分:101+/-47対74+/-32;P=.05)。QOLスコアはシルデナフィルを投与した犬で有意に高かった。
結論と臨床重要性:シルデナフィルは肺高血圧の犬において基線より収縮期肺動脈圧を減少させ、プラセボによる治療と比較したとき、運動能力と生活の質を増加させる。(Dr.Kawano訳)
■フルオロキノロン:当時と現在
Fluoroquinolones: Then and Now
July 2010 Compendium: Continuing Education for Veterinarians
By Lidia M. Pallo-Zimmerman, DVM, DACVIM,Julie K. Byron, DVM, MS, DACVIM,Thomas K. Graves, DVM, PhD, DACVIM
要約:フルオロキノロンは、1960年代に抗マラリア薬クロロキンの誘導体として発見された。この40年の間、人医療や獣医療で使用するために多くのフルオロキノロンがつくり出されてきた。すべてのクラスの抗生剤に対してと同様に、フルオロキノロンへの耐性は非常に深刻であり、耐性に対する多様な手段が現在研究中である。細菌DNAにおける耐性関連性の部分的突然変異や、ごく最近では、プラスミド介在性の耐性が、人および獣医療域での分離菌で報告されている。この論文は、その歴史と犬・猫で承認されているフルオロキノロンの最新の文献、活性スペクトル、作用機序、耐性パターン、そしてこれら薬剤の臨床的使用に対する勧告を論評する。(Dr.Boo訳)
■猫におけるシクロスポリンの薬物動態に対するイトラコナゾールの複数経口投与の影響
Effects of multiple oral dosing of itraconazole on the pharmacokinetics of cyclosporine in cats.
J Feline Med Surg. June 2010;12(6):512-4.
Masaaki Katayama, Rieko Katayama, Hiroaki Kamishina
イトラコナゾール(Icz)は、人の移植患者におけるシクロスポリン(CsA)のトラフ濃度を増加させることが知られている。しかし、CsAとIczの相互作用は猫で報告されていない。
この研究で、3頭の健康な猫におけるCsAの薬物動態に対するIczの複数投与の影響を調査した。処置は、CsA5mg/kg単独およびCsA5mg/kg+Icz10mg/kgの複数投与だった。IczとCsAの同時投与は、CsAの経口生物学的利用能を有意に増加させた。我々の研究結果は、猫の腎移植に使用するCsAベースの免疫抑制療法においてIczの複数の治療的投与量の投与は必要とされるCsA投与量を減少させるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■ヒスタミン:獣医療での使用における代謝、生理学、病態生理学
Histamine: metabolism, physiology, and pathophysiology with applications in veterinary medicine
J Vet Emerg Crit Care. Aug 2009;19(4):311-328. 156 Refs
Lisa J. Peters, DVM, Jan P. Kovacic DVM, DACVECC
目的:ヒスタミン生理学および病態生理学に対するヒトおよび獣医文献の再検討と獣医救急救命診療における臨床使用に対する応用の可能性
データソース:ヒスタミンレセプターおよび拮抗薬療法におけるヒトおよび獣医臨床研究、レビュー、テキスト、最近の研究
ヒトの総合データ:分子生物学の近年の進歩で、ヒスタミン代謝およびヒスタミンレセプター生理学に関与する酵素がより完全に理解されるようになっている。ここ10年の研究で従来の機能(平滑筋の収縮、血管透過性亢進、胃酸分泌の刺激作用)におけるヒスタミンの役割が確認されており、また現在調査中の新しい機能も解明されている。血管新生、日内変動、骨髄再生、細菌根絶、癌におけるヒスタミンの役割のデータが文献で出現している。新しいヒスタミン拮抗薬が現在薬剤試験中で、アレルギー性、胃腸、認知障害の治療における臨床野での進歩が期待される。
獣医総合データ:獣医のヒスタミン研究は、血中ヒスタミン濃度および臨床疾患状態での関連の確立に対する確かな薬理学的物質の影響を確認することに向けられている。調査においてヒスタミンレセプター生理学および組織反応に関する重要な種差を示す。外傷、敗血症、アナフィラキシー、アレルギー、胃腸障害の分野における研究は、臨床獣医療への応用に向けられている。
結論:ヒスタミンはアレルギー、喘息、胃潰瘍、アナフィラキシー、敗血症、出血性ショック、麻酔、手術、心血管疾患、癌、中枢神経系障害、免疫介在性疾患に関係する罹病率および死亡率において鍵となる役割を持つ。ヒスタミン拮抗薬は、一般的にその有害作用をブロックするのに使用されている。ヒスタミンレセプター生理学の理解における最近の進歩で、それらのレセプターをターゲットにする医薬品により治療オプションが増加している。(Sato訳)
■グルココルチコイドで治療した14頭の猫に見られた臨床、臨床病理、組織学的変化
Clinical, clinicopathological and histological changes observed in 14 cats treated with glucocorticoids
Vet Rec. June 2008;162(24):777-83.
A D Lowe, K L Campbell, A Barger, D J Schaeffer, L Borst
14頭の猫に免疫抑制量のプレドニゾロン(4.4mg/kg/日)またはデキサメサゾン(0.55mg/kg/日)を56日間投与した。全血、血清生化学プロフィール、尿検査を0、56日目に実施し、血清生化学プロフィールにおける肝疾患を証明するため腹腔鏡検査で56日目に肝生検を行った。猫の平均白血球数、好中球数、単球数に有意な増加、平均リンパ球数、好酸球数に有意な低下を認めた。アルブミン、グルコース、トリグリセリド、コレステロールの血清濃度に一貫した上昇を認めた。ステロイド性肝障害に一致したグリコーゲン沈着が、すべての肝生検においてさまざまな程度で存在した。1頭の猫に食欲不振、黄疸、掻痒、耳介の内側への弯曲など有害臨床症状が起こり、いくつかはグルココルチコイド療法の関連が疑われた。(Sato訳)
■犬におけるケトコナゾールの副作用:遡及研究
Adverse effects of ketoconazole in dogs - a retrospective study
Vet Dermatol. June 2008;0(0):.
Ursula K Mayer, Katharina Glos, Matthias Schmid, Helen T Power, Sonya V Bettenay, Ralf S Mueller
ケトコナゾールは犬のさまざまな真菌感染の治療に広く使用されているが、副作用の情報は、大部分裏づけに乏しいものである。ヒトにおける一般的な副作用は、用量依存性食欲不振、悪心および嘔吐、アレルギー性皮疹、掻痒などである。薬剤誘発性肝炎は非常にまれであるが、致死的可能性がある。
この研究の目的は、皮膚疾患を治療した犬でケトコナゾール療法に関する副作用のタイプと頻度および、投与量、治療期間、徴候または同時投薬のすべての潜在的影響を評価することだった。
ケトコナゾール(2.6-33.4mg/kg)で治療した632頭の犬の医療記録を再検討した。副作用は14.6%(92頭)で発生し、嘔吐(7.1%)、食欲不振(4.9%)、嗜眠(1.9%)、下痢(1.1%)、掻痒(0.6%)、紅斑(0.3%)、その他(2.5%)だった。その他の副作用を示した犬のうち、16頭中4頭(25%)は運動失調で、それらのうち3頭はイベルメクチンの併用投与を受けていた。
副作用はシクロスポリン(P=0.034)あるいはイベルメクチン(P=0.007)の併用投与の犬で有意に多く記録された。肝酵素濃度の上昇の報告はまれで、黄疸はどの犬にも見られなかった。しかし、薬剤投与中の肝酵素のモニタリングは推奨されるが、必ずしも重度特異体質肝毒性を防げるわけではないかもしれない。(Sato訳)
■犬の乗り物酔いに関する嘔吐を防ぐためのマロピタントの効果
Efficacy of maropitant for preventing vomiting associated with motion sickness in dogs
Vet Rec. September 2007;161(13):444-7.
H A Benchaoui, E M Siedek, V A de la Puente-Redondo, N Tilt, T G Rowan, R G Clemence
マロピタントはニューロキニン-1拮抗剤で、脳の嘔吐中枢における最終一般経路への刺激をブロックすることにより、嘔吐の予防と治療に作用する。マロピタントの単回経口投与の効果と安全性を、二重盲検プラセボ-コントロール研究で車の輸送から起こる乗り物酔いの病歴を持つ犬において嘔吐の予防に対する調査を行った。17頭の犬を用いた2方向クロスオーバー試験による試験研究で、プラセボを投与した時の10頭が車で旅行中に嘔吐したが、マロピタントを投与した時に嘔吐したのは3頭だけだった。大規模複数施設並行構成研究で、プラセボを投与した105頭中69頭が旅行中に嘔吐したのに対し、マロピタントを投与した106頭中15頭が嘔吐した(P<0.0001)。(Sato訳)
■猫における徐放性テオフィリン製剤の薬物動態
Pharmacokinetics of an extended-release theophylline product in cats
J Am Vet Med Assoc. September 2007;231(6):900-6.
Christine L Guenther-Yenke, Brendan C McKiernan, Mark G Papich, Elizabeth Powell
目的:健康な猫における徐放性テオフィリン錠剤およびカプセル製剤の薬物動態を評価する
構成:無作為3方向クロスオーバー研究
動物:6頭の健康な猫
方法:アミノフィリン(10mg/kg、IV)、100mg徐放性テオフィリン1錠、125mg徐放性テオフィリン1カプセルを全ての猫に1回投与した。36時間の間、事前に設置したセントラルカテーテルから血漿サンプルを採集した。蛍光偏光モノクローナル免疫測定法を使用して分析するまでサンプルを凍結しておいた。
結果:全ての猫は副作用なく薬剤投与と血漿採取に許容した。両経口投与製剤投与から8-12時間で濃度がピークに達した。生物学的利用能は優良だった。血漿濃度はヒトの治療濃度5-20mug/ml内だった。
結論と臨床関連:健康な猫における、この研究で使用したテオフィリン錠及びカプセル製剤の毎日の投与は、それぞれ15mg/kg及び19mg/kgで、血漿濃度が望ましい治療範囲内に維持された。(Sato訳)
■健常犬におけるフロセミドとトラセミドの経口投与の効果
Effects of oral administration of furosemide and torsemide in healthy dogs
Journal of the American Veterinary Medical Association
October 1, 2007, Vol. 231, No. 7, Pages 1080-1080
Yasutomo Hori, Fumihiko Takusagawa, Hiromi Ikadai, Masami Uechi, Fumio Hoshi, Sei-ichi Higuchi
目的:健常犬における短期そして長期投与後のフロセミドとトラセミドの利尿効果、耐容性そして副作用を観察すること
動物:8頭の雑種犬
方法:クロスオーバー研究において、フロセミド(2 mg/kg)、トラセミド(0.2 mg/kg)あるいはプラセボ(ビフィドバクテリウム[1 mg/kg])を14日間12時間毎にそれぞれの犬に経口投与した。尿量と比重、BUN、クレアチニン、アルドステロン濃度そしてクレアチニンクリアランスなどの選択した臨床病理値を評価するために、研究前(ベースライン)と治療の第1日(短期投与)と第14日(長期投与)に血液と尿を採取した。
結果:ベースライン値と比較して、フロセミドあるいはトラセミドの短期投与では直ぐに尿量が明らかに増加した:それぞれの薬剤の長期投与後においては、尿比重は明らかに減少した。プラセボの効果と比較して、24時間尿量はフロセミドとトラセミドの短期投与後に明らかに増加した。さらに、短期投与と比べてトラセミドの長期投与後は24時間尿量が明らかに増加した。ベースライン値と比べて、フロセミドとトラセミドの長期投与でBUNと血清クレアチニン濃度が増加した。
ベースライン値と比較して、血漿アルドステロン濃度は、それぞれの薬物の長期投与後に明らかに増加し、フロセミド治療後よりトラセミド投与後の方が明らかに高かった。
結論と臨床関連:犬において、フロセミドでは14日後に利尿抵抗性となるが、トラセミドではならかなった。しかし、両方のループ利尿薬は治療前に比べてBUNと血漿クレアチニン濃度の増加に関連していた。(Dr.Kawano訳)
■麻酔下の猫における低用量ドパミンの腎臓血行動態と利尿効果
Renal Hemodynamic and Diuretic Effects of Low-Dosage Dopamine in Anesthetized Cats
J Vet Emerg Crit Care. March 2007;17(1):45-52. 19 Refs
James S. Wohl, DVM, Diplomate ACVIM, ACVECC, W. Shannon Flournoy, DVM, MS, Dean D. Schwartz, PhD, Terrence P. Clark, DVM, PhD, Diplomate ACVCP, James C. Wright, DVM, PhD, Diplomate ACVPM
目的:健康な麻酔下の猫で尿排泄、腎血流量、クレアチニンクリアランス、ナトリウム排泄、心拍数、平均動脈圧(MAP)に対する低用量ドパミン(3?g/kg/min)の効果を評価する
構成:コントロール実験研究
設定:大学実験研究室
動物:2-4歳の12頭の雑種猫
介入:麻酔、開腹および腎血流測定、動脈および静脈カテーテル設置
測定:心拍数(HR)、MAP、腎血流量、尿排泄、ナトリウム排泄、分画ナトリウム排泄、クレアチニンクリアランス
主要結果:低用量ドパミンを投与した猫で起こった尿量、ナトリウム排泄、HR、クレアチニンクリアランスに有意差は認められなかった。ドパミン投与猫で一時的な平均動脈圧の低下が見られた。
結論:低用量ドパミンでは健康猫で利尿の誘発を期待できない。低用量ドパミンは、非腎臓血管床で血管拡張を起こすと思われる。(Sato訳)
■犬の好中球からのラクトフェリン:分離と物理化学的そして抗菌作用
Lactoferrin from canine neutrophils: isolation and physicochemical and antimicrobial properties.
Biochemistry (Mosc). 2007 Apr;72(4):445-51.
Berlov MN, Korableva ES, Andreeva YV, Ovchinnikova TV, Kokryakov VN.
ラクトフェリンは初めて、犬の白血球から分離されている。ラクトフェリンは吸光度最大460-470nmの複合体で、N末端アミノ酸配列と鉄の陽イオンを捕らえる能力によって特定した。犬のラクトフェリンが分子量、炭水化物の有無そしてタンパク質―鉄複合体の解離状態など、いくつかの物理化学的性質においてヒトのホモログと似ている。犬のラクトフェリンの殺菌作用はグラム陰性細菌Escherichia coliとグラム陽性細菌Listeria monocytogenesに示された。 犬のラクトフェリンの殺菌作用は人間のラクトフェリンのものと同様です。(Dr.Kawano訳)
今回の報告は、ペテルナ(バイエル)などのラクトフェリン製剤の補助的な効果の裏付けになるかもしれません。
■猫に対するエンロフロキサシンの高用量経口投与後に見られる眼および全身症状
Ocular and systemic manifestations after oral administration of a high dose of enrofloxacin in cats
Am J Vet Res. February 2007;68(2):190-202.
Marnie M Ford, Richard R Dubielzig, Elizabeth A Giuliano, Cecil P Moore, Kristina L Narfstr?m
目的:猫に対する高用量経口投与の影響を特徴付ける
動物:24頭(12頭のオスと12頭のメス)の若い健康猫
方法:猫を性別をもとに2群(オス4頭メス4頭/群)に振り分け、さらにエンロフロキサシン(50mg/kg、PO、q24h)またはコントロール水(水1ml、PO、q24h)をday -1に投与開始し、3期間(3、5、7日間)の3サブグループを作成した。検眼鏡検査を毎日実施した。経口投与開始前とその後2、3日毎に網膜電図検査(ERG)を実施した。各研究群4頭の猫を3、5、7日目に安楽死し、光学および電子顕微鏡評価のために眼を摘出した。
結果:神経学的、検眼鏡、網膜電図異常はエンロフロキサシンを投与した猫にのみ見られた。検眼鏡での変化(顆粒出現または中心部分の灰色化)は3日目(エンロフロキサシン投与のたった3日後)よりも前から見られ、その後視覚線条に沿って同様の変化を示した。脈管減衰(2日-4日の間)および広汎性タメタム高反射(5日-7日の間)が続いた。b-波ERG振幅の減少は検眼鏡検査に先行して現れた。光受容体層の形態変化は、エンロフロキサシン投与期間に相関し、3回の投与後広汎性変性変化所見を伴った。
結論と臨床関連:この研究で、エンロフロキサシン高用量(50mg/kg/日、PO)は網膜および全身変化を引き起こすことを示した。推奨量の10倍のエンロフロキサシンは、臨床的に正常な猫の外側網膜に急性毒性がある。(Sato訳)
■健康犬の止血に対するドキシサイクリン、アモキシシリン、セファレキシン、エンロフロキサシンの影響
Effects of doxycycline, amoxicillin, cephalexin, and enrofloxacin on hemostasis in healthy dogs
Am J Vet Res. April 2006;67(4):569-76.
Jinelle A Webb, Dana G Allen, Anthony C G Abrams-Ogg, Patricia A Gentry
目的:健康犬の止血変動値に対する、通常期間の治療用量でドキシサイクリン、アモキシシリン、セファレキシン、エンロフロキサシンの経腸投与による影響を判定する
動物:14頭のビーグル
方法:ドキシサイクリン(10 mg/kg, PO, q 12 h)、アモキシシリン(30 mg/kg, PO, q 12 h)、セファレキシン(30 mg/kg, PO, q 12 h)、エンロフロキサシン(20 mg/kg, PO, q 24 h)を7日間、標準的な薬用量で健康な10頭の犬にランダムで投与し、次の薬剤投与の間に7日間の休薬期間を設けた。また4頭のビーグルはコントロールとした。抗生物質投与前後に血小板数。Hct、1-stageプロトロンビン時間(PT)、活性部分トロンボプラスチン時間(PTT)、フィブリノーゲン濃度、血小板機能を評価した。血小板機能は頬粘膜出血時間、凝集、血小板機能分析により評価した。
結果:全種抗生物質投与によりわずかな1-stagePT、活性PTTの延長、フィブリノーゲン濃度のわずかな低下を起こした。セファレキシンは、1-stagePTと活性PTTの有意な増加を起こし、アモキシシリンは活性PTTの有意な増加、エンロフロキサシンはフィブリノーゲン濃度の有意な低下を起こした。血小板数または機能に対し、どの抗生物質投与後も有意な違いを示さなかった。
結論と臨床関連:健康犬において一般に使用する抗生物質の経口投与は、血小板数または機能を変化させない、わずかな二次的止血異常を起こさせる。それらの変化は健康犬で臨床上問題にならないが、基礎疾患プロセスを持つ動物で止血に対する抗生物質投与の影響を追加研究する必要がある。(Sato訳)
■猫における酢酸メチルプレドニゾロン投与の血行動態
Hemodynamic effects of methylprednisolone acetate administration in cats
Am J Vet Res. April 2006;67(4):583-7.
Trasida Ployngam, Anthony H Tobias, Stephanie A Smith, Sheila M F Torres, Sheri J Ross
目的:コルチコステロイド投与が猫にうっ血性心不全(CHF)の素因を与えるかもしれないメカニズムを調査する
動物:皮膚疾患の治療で酢酸メチルプレドニゾロン(MPA)を投与されている猫12頭
方法:反復測定で研究した。MPA(5mg/kg、IM)投与後、種々の基本値を測定した。その後同じ変動値を投与後3-6日、16日、24日目に測定した。評価には身体検査、収縮期血圧測定値、血液学的検査、血清生化学検査、胸部エックス線検査、心エコー検査、体内総水分量および血漿容積測定を含めた。
結果:MPA投与後3-6日に血清グルコース濃度はかなり上昇した。同時にRBC数、Hct、ヘモグロビン濃度、主要細胞外電解質、ナトリウム、Cl血清濃度は低下した。血漿容積は13.4%(3頭は>40%)増加したが、体内総水分量および体重はわずかに低下した。全ての変動値は投与後16日-24日に基準値に戻った。
結論と臨床関連:それらのデータは、猫へのMPA投与がグルココルチコイド介在細胞外高血糖による二次的な細胞外液のシフトによる血漿容積増大を引き起こすと示唆する。このメカニズムは人のコントロール出来ていない真性糖尿病患者に付随する血漿容積増大に類似する。血漿容積増大に対する正常な代償性メカニズムを損なういかなる心血管障害も、MPA投与後の猫にCHFの素因を与えるかもしれない。(Sato訳)
■犬の心肺、大脳蘇生におけるアドレナリン、メトキサミン、バソプレッシンの使用
The Use of Adrenaline, Methoxamine and Vasopressin in Cardiopulmonary and Cerebral Resuscitation of Dogs
Aust Vet Pract 35[1]:22-29 Mar'05 Clinical Update 45 Refs
Lisa Smart
この検討の目的は、心肺停止に対する3つの異なる昇圧剤の使用における現在の研究を要約することである。それら昇圧剤の効果を評価、獣医救急医療で現在使用する薬剤の可能性を認識するため、人や獣医文献から実験と臨床研究両方を利用した。アドレナリンは利用できる昇圧剤で最も効果があるが、高用量のアドレナリンは、蘇生後には有害である。メトキサミンはアドレナリンの副作用をいくつか回避するが、心肺および大脳蘇生に対する適切な昇圧剤の効果として疑問が残る。多くの最近の研究で、バソプレッシンはアドレナリンよりも優れていることが示されているが、心肺停止にバソプレッシンの使用に対する臨床調査による確証は不十分である。(Sato訳)
■デキサメサゾン抑制試験に関係する犬の致死的アナフィラキシーの1症例
A Case of Fatal Anaphylaxis in a Dog Associated with a Dexamethasone Suppression Test
J Vet Emerg Crit Care 15[3]:213-216 Sep'05 Case Report 21 Refs
Michael Schaer, DVM, DACVIM, DACVECC, Pamela E. Ginn, DVM, DACVP and Rita M. Hanel, DVM, DACVIM
目的:「通常」のデキサメサゾン抑制試験に関与した犬の致死的アナフィラキシー1症例を述べる
症例概要:8歳の避妊済みメス犬を、免疫介在性血小板減少症の診断をもとに非経口デキサメサゾンで治療した。イヌは治療に反応したが、9ヵ月後前十字靱帯断裂の手術前に内因性副腎皮質機能亢進症の評価をした。通常のACTH刺激試験に続き高用量デキサメサゾン抑制試験を行った。デキサメサゾン静脈注射後すぐに、犬は重度アナフィラキシーショックを起こし死亡した。剖検所見は、アナフィラキシーの診断を支持した。
追加情報:この犬のアナフィラキシーは、通常の薬剤感受性の初期症状を飛び越えて激症であった。これはこの犬の悲劇的な出来事を起こしたデキサメサゾンを報告する獣医文献で、最初の症例である。(Sato訳)
■イヌの強化サルファ剤に関連する特異体質毒性
Idiosyncratic toxicity associated with potentiated sulfonamides in the dog.
J Vet Pharmacol Ther 27[3]:129-38 2004 Jun 130 Refs
Trepanier LA
強化サルファ剤に対する特異体質毒性はヒトとイヌ両方に起こり、かなり臨床的類似を見る。イヌの症候群は、発熱、関節症、血液疾患(好中球減少、血小板減少、溶血性貧血)、胆汁うっ滞または壊死からなる肝障害、皮疹、ぶどう膜炎、乾性角結膜炎などを認める。あまり認められない他の症状は、タンパク喪失腎障害、髄膜炎、膵炎、肺炎、顔面神経麻痺などである。それら反応の原因は、完全に分かってはいないが、酸化スルホンアミド代謝物の付着タンパクに対するT-細胞介在反応によると思われる。
我々の研究所は、特異体質スルホンアミド反応の可能性を持つイヌに、抗薬剤抗体に対するELIZA、肝臓タンパクに対する抗体の免疫ブロット法、薬剤依存抗血小板抗体に対するフローサイトメトリー、インビトロ細胞毒性分析などで特徴付ける研究を行っている。特異体質スルホンアミド毒性の管理は、早期に臨床症状を確認するオーナーの教育で、即座の薬剤中止、アスコルビン酸、グルタチオン前駆物質を含む支持療法、その後の再暴露の回避を可能にする。スルファメトキサゾール、スルファジアジン、スルファジメトキシンのような抗菌スルホンアミドのみがこの臨床症候群を共有すると認識しておくことは重要である。アセタゾラミド、フロセミド、グリピジド、ハイドロクロルチアジドのようなスルホンアミド機能基を共有するが異なる基礎構造を持つ薬剤の交叉反応所見はない。(Sato訳)
■イベルメクチンや他の薬剤感受性を検出する新手段
A New Tool That Detects Ivermectin and Other Drug Sensitivities in Dogs
Vet Med 99[5]:419-426 May'04 On The Forefront 15 Refs
Katrina L. Mealey, DVM, PhD, DACVIM, DAVCP
薬剤反応の遺伝変化の研究で、薬理遺伝学研究は、個々の薬物療法を本当に区別するため行う。ワシントン州立大学の獣医臨床薬物研究所で、イヌのMDR1遺伝子型を提供している。オーナーや獣医師は、毒性の可能性がある薬剤を投与する前に、突然変異が潜在しているイヌを確認できる。代替薬剤を考慮できるかもしれない、または中毒のリスクを減らすため、投与量を調節できる。それら遺伝型に従った個々の治療が、薬理遺伝学で有望になっている。(Sato訳)
■イベルメクチン感受性に関するMDRI突然変異のコリーでロペラミド中毒
Loperamide Toxicity in a Collie with the MDRI Mutation Associated with Ivermectin Sensitivity
J Vet Intern Med 18[1]:117-1182 Jan-Feb'04 Case Report 12 Refs
Laura L. Sartor, Steven A. Bentjen, Lauren Trepanier, and Katrina L. Mealey *
Hugnetらは、過去にロペラミド中毒の報告でよく挙がる犬種としてコリーを認めていたが、彼らの報告で、明らかな犬種の偏りの原因を判定していなかった。Hugnetらは他の犬種でもロペラミド中毒を報告したが、それらのイヌは大量のロペラミドを摂取していた。Hugnetらにより述べられた多くのイヌに見られるロペラミド中毒の臨床症状は、この報告で述べたコリーに観察されたものと同様だが、散瞳、虚脱、興奮、昏睡などの追加症状が見られたイヌもいる。重度症例は、ナロキソンでうまく治療できた。
コリーは、P-糖蛋白基質剤のイベルメクチン感受性に関するMDR1遺伝子(デルタMDR1 295-298)の欠失突然変異を、高い割合で持つことが知られている。デルタMDR1 295-298は、P-糖蛋白合成の早期終了の原因で、結果として血液脳関門の欠損を起こす。
ロペラミドはヒトP-糖蛋白の基質であるため、この報告のイヌはP-糖蛋白の機能的欠損を持つという仮説を立てた。この仮説を研究するため、頬スワブサンプルをイヌから採取した。全RNAをサンプルから抽出し、オリゴ(dT)プライマーにより逆転写した。そして過去に述べられたように相補DNAを増幅、精製、配列を決定した。塩基配列を、公表されたイヌのMDR1と比較した。このイヌが、デルタMDR1 295-298突然変異の同型接合体であるとその結果は示した。
ロペラミドは、その濫用の可能性が低いため、処方箋なしで入手できるオピオイド止瀉薬である。ヒトの患者で、ロペラミドは中枢神経系(CNS)内で高濃度に達しないため、大量でもオピオイドの典型的な中枢神経系効果を誘発しない。最近、ロペラミド中枢神経系低濃度に反応するメカニズムとしてロペラミドのP-糖蛋白介在流出が認められた。P-糖蛋白機能を抑制する薬剤との併用は、ロペラミドの中枢神経系透過を増すだろう。
最近P-糖蛋白MDR1製剤は、大量の基質薬剤の薬物動態腸性に重要な役割を演ずることが示されている。P-糖蛋白を発現する特定組織は、戦略的にからだから基質を出すために配置される。腸管内腔上皮細胞に発現するP-糖蛋白は、基質剤の限られた経口生物利用能で重要な役割を演じる。胆汁canilicular細胞に発現するP-糖蛋白は、P-糖蛋白基質剤の胆汁排泄に、腎尿細管細胞に発現するP-糖蛋白は、基質剤の腎排泄で活動的役割を演じる。P-糖蛋白発現(deltaMDR1 295-298突然変異のイヌに起こるとして)、または機能(P-糖蛋白抑制剤が投与されたとき起こるかもしれないものとして)の変化は、経口生物利用能の増加、基質薬剤のクリアランスの低下を引き起こす可能性がある。コリーとオーストラリアンシェパードは、イベルメクチン、ロペラミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、サイクロスポリンAなどのP-糖蛋白基質の薬剤で治療するとき、注意深くモニターすべきである。(Sato訳)
■ネコの新生児でエンロフロキサシンの薬物動態
Pharmacokinetics of enrofloxacin in neonatal kittens.
Am J Vet Res 65[3]:350-6 2004 Mar
Seguin MA, Papich MG, Sigle KJ, Gibson NM, Levy JK
目的:新生児子猫でエンロフロキサシンの薬物動態を判定し、若いネコや成猫のエンロフロキサシン薬物動態と比較する
動物:7頭の成猫と111頭の子猫(2-8週齢)
方法:エンロフロキサシン5mg/kgを成猫(i.v.)と子猫(i.v.、s.c.、p.o.)に1回投与した。エンロフロキサシン、その代謝産物シプロフロキサシンの血漿濃度を判定した。
結果:2-、6-、8-週齢の子猫にi.v.投与したエンロフロキサシンの半減期は、成猫よりも有意に短く、その排出速度は有意に速かった。分布容積は2-4週で明らかに低く、6-8週でより高かった。このことは、6-8週齢でより低い最大血漿濃度(Cmax)を起こした。しかし、全ての年齢のi.v.投与後、最初の血漿濃度は、治療範囲内だった。2週齢の子猫に対するi.v.投与に比べ、エンロフロキサシンのs.c.注射も、同様のCmax、半減期、クリアランス、曲線下面積を示した。s.c.注射によるエンロフロキサシン投与は、6-、8-週齢の子猫でよく吸収されたが、より高いクリアランスや、明らかな分布容積はより低い血漿濃度を起こした。エンロフロキサシンの経口投与の生物学的利用能は悪かった。
結論と臨床関連:新生児子猫で、エンロフロキサシンのi.v.およびs.c.投与は、投与経路として効果的だった。子猫へのエンロフロキサシン経口投与は、治療薬剤濃度に達しなかった。6-、8-週齢の子猫で治療薬剤濃度に達するには、用量を増やす必要があると思われる。(Sato訳)
■イヌネコの利尿に対するループ利尿剤フロセミドとトラセミドの効果
The effects of the loop diuretics furosemide and torasemide on diuresis in dogs and cats.
J Vet Med Sci 65[10]:1057-61 2003 Oct
Uechi M, Matsuoka M, Kuwajima E, Kaneko T, Yamashita K, Fukushima U, Ishikawa Y
トラセミドは、フロセミドとスピロノラクトンの効果を併せ持つ新しいループ利尿薬である。イヌネコでのトラセミドに関する効果の報告はない。この研究で、イヌネコのフロセミドとトラセミドの利尿効果を比較した。圧負荷心肥大のネコに、経口プラセボ、トラセミド0.3mg/kg、またはフロセミド1mg/kgまたは3mg/kgを投与した。コントロールと僧帽弁閉鎖不全のイヌに、経口プラセボ、トラセミド0.2mg/kg、フロセミド2mg/kgを7日間投与した。尿サンプルを基準時、そして各薬剤投与後1、2、3、4、5、6、8、12、24時間目に採取した。そして尿量と尿中Na(+)、K(+)を測定した。
フロセミド、トラセミドともに投与1時間後には尿量が増加した。フロセミドは、ピークが2-3時間となる用量依存的な尿量の増加をイヌネコに起こした。フロセミドの利尿効果は、投与後6時間で消失したが、トラセミドの利尿効果はピークが投与後2-4時間で、効果は12時間継続した。僧帽弁閉鎖不全のイヌで、7日間のトラセミドの投与は、尿中カリウム排泄を有意に低下させた。血漿アルドステロンはトラセミドで増加し、フロセミドでは変化を見せなかった。結論として、トラセミド約1/10の濃度がフロセミドの効果に匹敵し、イヌネコにより長い期間利尿効果を示す。それらのデータから、イヌネコの鬱血性心不全や水腫の治療にトラセミドが有効であると考えられる。(Sato訳)
■犬におけるイミペネムの薬物動態学
Pharmacokinetics of imipenem in dogs.
Am J Vet Res 64[6]:694-9 2003 Jun
Barker CW, Zhang W, Sanchez S, Budsberg SC, Boudinot FD, McCrackin Stevenson MA
目的:犬における、イミペネム(5mg/kg)、IV,IM,SC単独投与後の、血漿薬物動態を調査し、in vitroでのEscherichia coliの増殖抑制に関し、血漿サンプル力価を評価することです。
動物:6頭の成犬。
手順:3経路クロスオーバー計画を用いました。高速液体クロマトグラフィーを用いて、IV,IM,SC投与後のイミペネムに関する、血漿濃度を測定しました。1つの基準株と2つの多剤耐性臨床分離株からなる、3種のE.coli分離に関して、寒天培地抗菌解析を行いました。
結果:イミペネムの血漿濃度は、IV,IM,そしてSC注射後最低4時間、報告されたE coliに対する最小抑制濃度(0.06から0.25μg/ml)より高く残存しました。イミペネムの調和平均と半減期偽標準偏差は、IV,IM,そしてSC投与後、それぞれ 0.80 +/- 0.23, 0.92 +/- 0.33, そして 1.54 +/- 1.02時間でした。IMとSC投与後のイミペネムの最大血漿濃度(Cmax)は、それぞれ、13.2+/-4.06と8.8+/-1.7mg/Lでした。薬物投与からCmaxまでに経過した時間は、IM後0.50 +/- 0.16時間で、SC注射後0.83 +/- 0.13後時間でした。3種のE coli分離の増殖は、すべての経路で、イミペネム投与後2時間の間、寒天培地抗菌解析において、抑制されました。
結論と臨床関連:イミペネムは、筋肉、および皮下組織から、急速に、そして完全に吸収され、E coliに関する、一定の多剤耐性臨床分離株の増殖をin vitroで効果的に抑制しました。(Dr.K訳)
■フロセミドと晶質溶液の短期適合性
Short-Term Compatibility of Furosemide with Crystalloid Solutions
J Vet Intern Med 17[5]:724-726 Sep-Oct'03 Brief Communication 10 Refs
* Darcy B. Adin, Richard C. Hill, Karen C. Scott
動物用フロセミドの注射は、pH8.0-9.3の50mg/ml溶液である。この研究の目的は、一般に使用されるフロセミド50mg/mlの動物用製剤が、インビトロで析出することなく希釈可能かどうかを判定することである。フロセミド50mg/mlを5%デキストロース水(D5W)、0.9%生食、ラクトリンゲル液(LRS)、滅菌水で10、そして5mg/mlの濃度に希釈した。酸性滅菌水と塩基性滅菌水は、それぞれ塩酸と水酸化ナトリウムを添加して、各濃度に対するpHの極度な影響を評価するためコントールとして使用するのに作成した。フロセミド希釈後、各サンプルの最終pHを測定し、希釈後すぐ、1、3、5、8時間目に透明さと結晶形成を肉眼、そして顕微鏡的に検査した。
肉眼的析出と顕微鏡的結晶は酸性コントロール液で即座に観察された。LRSと0.9%生食の5mg/ml溶液は、即座にわずかな濁りを見せたが、8時間にわたり結晶は顕微鏡的に観察されなかった。D5W、0.9%生食、LRS、滅菌水の10mg/ml溶液と、D5W、滅菌水、塩基性コントロール液の5mg/ml溶液は肉眼的に透明で、8時間にわたり顕微鏡的に結晶は観察されなかった。このインビトロな調査で観察された結果をもとに、フロセミド50mg/mlの動物用製剤は、D5W、0.9%生食、LRS、または滅菌水の10mg/ml、D5W、滅菌水の5mg/mlの濃度に析出なく希釈でき、8時間の間保持可能である。(Sato訳)
■正常な成犬グレイハウンドでフロセミドの間歇的ボーラス注射vs持続的点滴
Intermittent Bolus Injection versus Continuous Infusion of Furosemide in Normal Adult Greyhound Dogs
J Vet Intern Med 17[5]:632-636 Sep-Oct'03 Crossover Design Study 22 Refs
* Darcy B. Adin, Aaron W. Taylor, Richard C. Hill, Karen C. Scott, Frank G. Martin
ヒトを対象としたいくつかの研究で、フロセミドの間歇的ボーラス(IB)投与より、一定割合の点滴(CRT)による利尿の方が大きいと示されている。この研究で、2週間のウォッシュアウト期間を治療間に設け、無作為クロスオーバー構成で、6頭の健康なグレイハウンドの成犬に、総量が同じになるようフロセミドのIB投与とCRT投与を行い、その利尿効果を比較した。IB投与で、イヌには0時と4時間目に3mg/kgで投与した。CRT投与で、イヌに負荷投与0.66mg/kgを投与し、続いて0.66mg/kg/hを8時間以上投与した。同じ輸液量を両方法とも投与した。尿量は1時間毎に測定した。尿中電解質濃度、尿比重(USG)、パック細胞容積(PCV)、総タンパク(TP)、血清電解質濃度、総炭酸量(TCO2)、血清クレアチニン(sCr)、血中尿素窒素(BUN)を2時間ごとに測定した。尿産生と飲水量は、IBよりCRTの方が多かった(P<0.05)。
IBよりCRTの方が、尿中ナトリウムとカルシウム喪失が多く(P<0.05)、尿中カリウム喪失は少なかった(P=0.03)が、尿中マグネシウムと塩化イオン喪失については差となる所見はなかった。IBよりCRTで血清塩素イオン濃度は低く(P<0.001)、sCr濃度は高く(P=0.04)、TPは高く(P=0.01)、PCVも高かった(P=0.003)。USG、TCO2、BUN、血清カリウム、ナトリウム、マグネシウム濃度に違いは見られなかった。8時間以上にわたる正常なグレイハウンドに対するフロセミドIB投与より、同量のCRI投与がより利尿、ナトリウム排泄増加、カルシウム排泄増加をもたらし、カリウムの排泄増加はより少ないということで、IBよりCRTでフロセミドを投与した時、より効果的な利尿をもたらすと示唆される。(Sato訳)
■再灌流傷害とその後の多臓器機能不全症候群を防止するための静脈内リドカインの投与
Use of Intravenous Lidocaine to Prevent Reperfusion Injury and Subsequent Multiple Organ Dysfunction Syndrome
J Vet Emerg Crit Care 13[3]:137-148 Sep'03 Review Article 68 Refs
Benjamin H. Cassutto, DVM and Roger W. Gfeller, DVM, DACVECC
目的:この文献の目的は、ヒトや獣医の文献を再検討し、虚血後再灌流傷害、全身炎症反応症候群(SIRS)、その後の多臓器機能不全症候群(MODS)を防ぐ塩酸リドカイン静脈内投与(IV)の潜在的有効性の確証を提供することである。
ヒトの総合データ:リドカインは局所麻酔剤で、鈍性心臓外傷、心筋虚血、心臓手術に関係する心室性リズム障害の治療で、ヒトや獣医療に何年間も使用されている抗不整脈薬である。ここ最近、その薬剤は、活性酸素種(ROS)の排出薬としてもてはやされており、心筋梗塞、大動脈のcross-clamping、外傷性障害医療の処置後、再灌流性リズム障害の予防に使用されている。
獣医総合データ:獣医療で予防的リドカイン静脈内投与の臨床実験は存在しないが、Na+/Ca2+チャンネルブロッカー、超酸化物と水産ラジカル排出薬、炎症修飾物質、顆粒球機能の強力な抑制剤としてリドカインの使用を支持する実験動物の多くの証拠は存在する。リドカインは、獣医外傷性患者でSIRSの防止を試みるいくつかの臨床状況で使用されている。
結論:再灌流傷害防止に有効な抗酸化、炎症修飾物質としてリドカインの使用を支持する多くの実験証拠が存在する。獣医やヒト外傷性医療の再灌流傷害に対する費用に対して効果の高い、安全な治療が無いことで、次いで起こる炎症反応そしてMODSを防ぐためのリドカイン静脈内投与は、既存の治療に魅力のある追加治療である。ゆえに、再灌流性傷害の予防的治療としてリドカインに関する前向き臨床試験を、コンパニオンアニマルで実施し、その安全性と効果を示すことは重要である。(Sato訳)
■ネコの排泄性尿路造影で、アミドトリゾエートとイオヘキソールの異なる投与量での比較
Comparison of different doses of iohexol with amidotrizoate for excretory urography in cats.
Res Vet Sci 67[1]:73-82 1999 Aug
Agut A, Murciano J, Sanchez-Valverde MA, Laredo FG, Tovar MC
正常な腎機能の5頭のネコで、排泄性尿路造影の診断に適した結果を生み出す最小投与量を判定するため、イオヘキソール(ヨード350mg/ml)のヨード200、400、600、800mg/kgの投与量を、メグルミン-ソディウムアミドトリゾエート(ヨード370mg/ml)のヨード880mg/kgの投与量と比較評価した。尿路造影の質、血液、生化学パラメーター、尿検査結果と尿重量オスモル濃度、脈拍と呼吸数、血圧と副作用を判定した。イオヘキソールはわずかな副作用を呈し、血圧に影響したがアミドトリゾエートほどではなかった。アミドトリゾエートと同じような質の尿路造影像を提供するイオヘキソールの最小投与量は、ヨード400mg/kgだった。この研究は、イオヘキソールは安全で、アミドトリゾエートより良い質の尿路増映像を提供すると示唆する。(Sato訳)
■強化スルホンアミドの投与に関する過敏症を持つイヌ40頭の臨床所見
Clinical Findings in 40 Dogs with Hypersensitivity Associated with Administration of Potentiated Sulfonamides
J Vet Intern Med 17[5]:647-652 Sep-Oct'03 Retrospective Study 39 Refs
* Lauren A. Trepanier, Rebecca Danhof, Jeffrey Toll, Deborah Watrous
この研究の目的は、強化スルホンアミド投与に関する全身過敏反応を持つイヌ40頭の、臨床所見をまとめることである。イヌの年齢は6ヶ月から14歳で、平均5.7±3.2歳だった。避妊したメスイヌは、過半数を占め(40頭中24頭、イヌの60%)、サモエド(40頭中3頭;9%)やミニチュアシュナウザー(40頭中5頭;13%)が多かった。強化スルホンアミドの平均投与量は47.0±14.9mg/kg/day(範囲、23.4-81.4mg/kg/day)だった。最初の薬剤投与から過敏症の臨床症状発症までの時間は、5-36日で平均12.1±5.9日だった。投与量、投与スルホンアミドの種類、臨床症状発現までの時間の間に関連はなかった。1番良く見られた臨床症状は発熱(55%)で;血小板減少が2番目(54%)、肝障害(28%)が3番目だった。好中球減少、乾性角結膜炎(KCS)、溶血性貧血、関節症、ぶどう膜炎、皮膚と粘膜病変、タンパク尿、顔面麻痺、髄膜炎の疑い、甲状腺機能低下症、膵炎、顔面浮腫、肺炎が観察されたイヌもいた。十分な追跡調査ができた39頭のうち、30頭(77%)は回復し、8頭(21%)は死亡、または安楽死され、1頭は臨床的に回復したが、ALT活性の持続性上昇があった。肝障害のイヌは一般に予後が、肝障害がないイヌ(89%回復)に比べてより悪かった(46%回復;P=.0035)。血小板減少がないイヌの90%が回復したのに比べ、血小板減少が見られたイヌの63%が回復した(P=.042)。回復は性別、年齢、犬種、または投与したスルホンアミドの種類に関係しなかった。(Sato訳)
■犬におけるメトロニダゾール中毒に対する治療としてのジアゼパム:21症例の回顧的研究
Diazepam as a Treatment for Metronidazole Toxicosis in Dogs: A Retrospective Study of 21 Cases
J Vet Intern Med 17[3]:304-310 May-Jun'03 Retrospective Study 52 Refs
* Jason Evans, Donald Levesque, Kim Knowles, Randy Longshore, Scott Plummer
メトロニダゾール中毒に対する、最近推奨されている治療は、薬物中止と支持療法であります。報告されている回復期間は1~2週間です。ジアゼパムが回復を増進させるかどうかを明らかにするため、メトロニダゾール中毒の犬21頭の記録を、回顧的に分析しました。ジアゼパムで治療した13頭の犬に関する、メトロニダゾール療法の容量と期間、そして反応と回復期間を、支持療法のみ行った8頭の犬と比較しました。反応期間は、衰弱している臨床徴候の消散開始までの期間として定義しました。回復期間は、全ての残存した臨床徴候の消散までの期間としました。
ジアゼパム治療群とジアゼパム非治療群に関する、メトロニダゾール投与の平均薬物量と期間は、60.3mg/kg/day、44.9日間、そして65.1mg/kg/day、37.25日間でした。
ジアゼパム投与のプロトコールは、初回の大量瞬時静脈投与、その後8時間毎のジアゼパム経口投与3日間でした。ジアゼパムの静脈、および経口投与の平均投与量は、0.43mg/kgでした。
ジアゼパム投与犬に関する平均反応時期間は、ジアゼパム非投与群の4.25日に対して、13.4時間でした。回復期間もまた、非投与群(11日)に対し、ジアゼパム投与群(38.8時間)は著しく短くなりました。
この研究結果は、メトロニダゾール中毒になった犬は、ジアゼパムで治療した時、より早く回復するということを示しております。メトロニダゾール中毒の機序、あるいは、ジアゼパムがどのようにして、その好ましい作用を発揮するのかは分かりませんが、おそらく、小脳と前庭機構内部における、γアミノ酪酸(GABA)レセプターの変調に関連していると思われます。(Dr.K訳)
■健康犬でサイクロスポリンAの生物学的利用能を増すことができる水溶性ビタミンEの併用投与
Concurrent Administration of Water-Soluble Vitamin E Can Increase the Oral Bioavailability of Cyclosporine A in Healthy Dogs
Vet Ther 3[4]:465-473 Winter'02 Random Crossover Study 40 Refs
Julie R. Fischer, DVM, DACVIM; Kenneth R Harkin, DVM, DACVIM; Lisa C. Freeman, DVM, PhD
サイクロスポリンA(CsA)の製剤であるサンディミュン(Novartis Pharmaceuticals)またはネオーラル(Novartis Pharmaceuticals)の経口生物学的利用能に対し、コハク酸d-α-トコフィリルポリエチレングリコール1000(ビタミンE TPGS)の同時投与の効果を判定するため、無作為交差試験を行った。健康犬に各サイクロスポリン製剤を1回経口投与し、ビタミンE TPGSを併用する、または併用しなかった。薬物投与前と投与後様々な間隔で24時間まで各犬から採血を行った。全血CsA濃度を高速クロマトグラフィーで判定した。非区画薬物動態分析で、ビタミンE TPGSの同時投与がサンディミュンの経口生物学的利用能を増加させる事がわかった。ネオーラルの生物学的利用能は、サイクロスポリンのものより大きかった。ビタミンE TPGSの同時投与は、ネオーラルの生物学的利用能に一貫した効果を示さなかった。(Sato訳)
■健康犬のサイクロスポリン投与量に対するケトコナゾールの影響
Effect of ketoconazole on cyclosporine dose in healthy dogs.
Vet Surg 27[1]:64-8 1998 Jan-Feb
Dahlinger J ; Gregory C ; Bea J
目的:健康犬でサイクロスポリン(CyA)の経口投与量が、ケトコナゾールの併用で削減可能な程度を判定すること。この研究の犬で、CyAとケトコナゾール投与が原因かもしれない身体的または生化学的副作用を観察した。
研究構成:前向きリサーチ
サンプル集団:5頭の健康で未避妊のビーグル犬
方法:400-600ng/mlの安定した全血谷濃度に至らせるために1日2回CyAを経口投与した。ケトコナゾールを低治療量(平均投与量:13.6mg/kg/d)追加し、それから治療量以下(平均投与量:4.7mg/kg/d)にした。CyA全血谷濃度を3、4日ごとにモニターし、400-600ng/mlになるようCyAの補助的投与を行った。身体検査、CBC、生化学プロフィール、尿検査を研究中2週間間隔で実施した。
結果:目的血中濃度になるのに必要なCyAの最初の平均投与量は14.5mg/kg/dだった。ケトコナゾール(低治療量、平均投与量:13.6mg/kg/d)とCyAの併用で、CyA投与量は3.4mg/kg/d(範囲:1.2-5.2mg/kg/d)に減少し、これはCyA投与量の75%減少、金銭的に57.8%の節約を意味した。ケトコナゾールの治療量以下(平均投与量:4.7mg/kg/d)で、併用療法の結果は、CyA10.1mg/kg/d(4.9-10.6mg/kg/d)の投与量となり、CyA投与量の38%減、金銭的節約23.8%となった。臨床的意義の不明な体重減少と低アルブミン血症が見られた。他の身体的、生化学的評価に、12週の研究期間で顕著なものはなかった。
結論:ケトコナゾールの経口投与は、健康犬の選択した血中濃度維持に必要な経口CyA投与量をかなり減らすために使用できる。
臨床関連:ケトコナゾールの経口投与により、腎臓同種移植後または自己免疫疾患の治療でCyAの投与を受けている犬のオーナーが負担する、かなりの金銭の削減が可能である。(Sato訳)
■6年(1992-1997)間の犬の皮膚や耳のサンプルから分離したスタフィロコッカス・インターミディウスと緑膿菌の分離頻度と抗菌剤感受性パターン
Frequency of Isolation and Antimicrobial Susceptibility Patterns of Staphylococcus intermedius and Pseudomonas aeruginosa Isolates From Canine Skin and Ear Samples Over a 6-Year Period (1992-1997)
J Am Anim Hosp Assoc 38[5]:407-413 Sep-Oct'02 Retrospective Study 16 Refs
Annette D. Petersen, Dr.med.vet; Robert D. Walker, MS, PhD; Mark M. Bowman, MS; Harold C. Schott II, DVM, PhD, DACVIM; Edmund J. Rosser Jr., DVM, DACVD
犬の皮膚や耳に良く見られる2つの細菌病原体は、スタフィロコッカスintermedius (S. intermedius)とシュードモナスaeruginosa (P. aeruginosa)である。皮膚や耳感染の治療は、原因病原体やその感受性パターンを調べる前に良く経験的に行われる。これは、特にP. aeruginosaなどの分離細菌が多くの抗菌剤にたびたび耐性を持つため、治療に対する反応が悪くなることがある。
この回顧的研究の目的は、犬の皮膚や耳から採取した細菌培養サンプルで、S. intermediusとP. aeruginosaの分離頻度とそれらの抗菌剤感受性パターンが6年間で変化したかどうかを調査する事である。また各病原体が分離された、皮膚や耳の抗菌剤感受性パターンを比較した。
1992年から1997年の間にミシガン州立大学の動物健康診断研究所で、細菌培養検査を行った全ての犬のサンプルからスタフィロコッカス・インターミディウスが18.8%、緑膿菌が5.7%分離された。S. intermediusは全ての皮膚と耳サンプルからそれぞれ88.6%、49.4%分離された。分離頻度については6年間で変化しなかった。分離された全てのS. intermediusの95%以上がセファロチンやオキサシリンに感受性を示した。緑膿菌は全ての皮膚と耳サンプルのそれぞれ7.5%と27.8%から分離され、6年間で皮膚サンプルからの分離頻度は増加したが、耳サンプルについては変化がなかった。緑膿菌の皮膚から分離された95.2%と耳から分離された92.9%はシプロフロキサシン(皮膚と耳の緑膿菌感染の全身治療はエンロフロキサシンが好まれる)に感受性があったが、ほとんどの分離菌は多剤耐性像を示した。
著者は、皮膚と耳のS. intermedius感染のセファロチンによる経験的治療は適切であるが、緑膿菌の経験的治療は、多剤耐性菌に遭遇する可能性があるので薦められないと締めくくる。とらわれることなく、再発性、または抵抗性感染を起こした時には、細菌培養や抗菌剤感受性試験を常に行うべきである。(Sato訳)
■短期間のトリメトプリム-スルファメトキサゾール投与が犬の甲状腺機能にどう影響するか
Effects of Short-Term Trimethoprim-Sulfamethoxazole Administration on Thyroid Function in Dogs
J Am Vet Med Assoc 221[6]:802-806 Sep 15'02 Prospective Study 33 Refs
Nicola L. Williamson, DVM; Linda A. Frank, MS, DVM, DACVD; Keith A. Hnilica, MS, DVM, DACVD
目的:どのような期間で、トリメトプリム-スルファメトキサゾールが、甲状腺正常犬の血清総チロキシン(T4)と甲状腺刺激ホルモン(TSH)に影響を及ぼすかと、投与中止後正常範囲にどれくらいで回復するかを調査すること
構成:前向き研究
動物:7頭の健康な甲状腺が正常に機能している犬
方法:犬に、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(26.5-31.3mg/kg、PO、12時間毎)を最大6週間投与した。CBCとシルマーティアーテストを実施し、血清総T4とTSH濃度を毎週測定した。総T4濃度が正常範囲下限以下になり、TSH濃度が上限以上になった時か、持続性の好中球減少が見られたときにトリメトプリム-スルファメトキサゾールの投与を中止した。
結果:3週間以内に6頭の犬の総T4濃度が、正常範囲下限以下になった。6頭中3頭のT4濃度は1週間後に減少した。それら6頭の犬のTSH濃度は、4週間以内に正常範囲上限以上となった。1頭の犬は、トリメトプリム-スルファメトキサゾールを6週間投与してもT4やTSH濃度に影響を及ぼさなかった。4頭に好中球減少が見られた。1頭の好中球減少は、投与を続けている間に解消した。他の3頭の好中球数は、投与を止めて1週間後に正常値に回帰した。
結論と臨床関連:結果から、投与量26.5-31.3mg/kg12時間毎のトリメトプリム-スルファメトキサゾールの投与は、2,3週の短期間でも犬の血清総T4、TSH濃度や好中球数にかなり影響を与えると示唆される。(Sato訳)
■フロントラインで犬を治療するときに人がフィプロニルに暴露されると
Jennings KA et al ; Vet Hum Toxicol 44[5]:301-3 2002 ; Human exposure to fipronil from dogs treated with frontline.
この調査では、フロントラインを犬に塗布するときに着用したグローブにフィプロニルがどれくらい残存しているかを検討することである。フロントラインはフィプロニルを9.8%含み、少なくともノミダニを30日駆除することができる。フロントライン(1.34ml)を成犬に塗布し、24時間後、1,2,3,4,5週間後にグローブを着用して5分間撫で続けた。グローブに付着したフィプロニルの量を測定した。最も高い値を示したのは塗布24時間後(589.3 +/-205.7ppm)で、5週後には検出できなかった。繰り返し使用することで人の健康に害を与える可能性がある。(Dr.Tako訳)
■北西アメリカのコリーサンプル集団でイベルメクチン感受性に関する変異体MCR1対立遺伝子の出現率
Mealey KL et al; Am J Vet Res 63[4]:479-81 2002 Apr; Frequency of the mutant MDR1 allele associated with ivermectin sensitivity in a sample population of collies from the northwestern United States.
目的:ワシントンとアイダホのコリーサンプル集団で、イベルメクチン感受性に関連するMDR1遺伝子突然変異(遺伝子多形性)の出現率を調査すること
動物:健康な飼育コリー犬40頭
方法:各犬から採血(8ml)し、RNA抽出を行った。MDR1 cDNAを作るために、逆転写酵素を使用した。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマーを、MDR1遺伝子の1061-ベースペア領域を増幅するため計画した。コリーに0、1、または2の突然変異遺伝子があるかどうか判定するために、PCR生成物の配列を決定した。数頭の家系図を、罹患犬との関連を分析するため入手した。
結果:40頭中9頭(22%)は、正常な対立遺伝子のホモ接合体で、17頭(42%)はヘテロ接合体(キャリアー)、14頭(35%)は突然変異遺伝子のホモ接合体(罹患)であった。血統分析でいくらかは明らかになったが、全てでなく、罹患犬は最近4世代の中で関連していた。
結論と臨床関連:ワシントンとアイダホのコリーのサンプル集団は高率に影響を受けており、イベルメクチン感受性に関連した突然変異MDR1遺伝子のキャリアーである。この突然変異の出現率と同じような事は、他の地域でも検出されるかもしれない。イベルメクチン、ロペラミド、ビンクリスチン、その他のP-グリコプロテイン基質の薬剤の投与は、MDR1遺伝子を生成し、コリーに神経学的毒性を高率に起こすかもしれない。
■サイクロスポリンについて
JAAHA 38:206-
サイクロスポリンAは1972年に真菌から抽出された。免疫抑制効果があり、移植臓器の拒絶反応をおさえるのに使われている。その特性から、近年、人では慢性の喘息、膜性腎炎、小児血小板減少症、アトピー性皮膚炎、その他炎症性疾患に使用されている。
サイクロスポリンは獣医療域でも広く使われるようになっている。猫ではサイクロスポリンA投与により移植腎の生存が延長している。犬では、免疫介在性貧血や血小板減少症の治療に役立っている。眼科領域では、乾性角結膜炎の治療に用いられている。最近、肛門周囲瘻やアトピー性皮膚炎の治療効果も認められている。
サイクロスポリンはP450系で代謝される。P450はケトコナゾールが阻害することから、ケトコナゾールの併用でサイクロスポリンAの投与量を25%に減らすことができる。ケトコナゾールを併用するときにはサイクロスポリンを2.5mg/kgから開始する。サイクロスポリンの副作用としての消化器症状などに注意する必要がある。(Dr.Tako訳)
■ドパミン点滴が、犬の心臓、腎臓血流にどう影響するか
Effects of dopamine infusion on cardiac and renal blood flows in dogs.
J Vet Med Sci 64[1]:41-4 2002 Jan
Furukawa S, Nagashima Y, Hoshi K, Hirao H, Tanaka R, Maruo K, Yamane Y
獣医療で、ドパミンは低用量(≦3μg/kg/min)点滴で腎臓障害の治療として、高用量(≧5μg/kg/min)点滴で血行動態のための評価として現在臨床で使用されています。しかし、ドパミン高用量はαアドレナリンレセプターに対する効果のため、末梢血管収縮を引き起こすので、すでに推奨されていません。この研究は、犬にドパミン点滴を使用する場合に実行できる方法を調査するために行いました。麻酔下の健康な雑種犬に3種類の投与量(3,10,20μg/kg/min)でドパミン点滴を行い、着色した微粒子で60分間の局所(腎臓、心臓)血流を測定しました。各投与量での腎臓と末梢血行動態、心拍出量の結果、平均動脈圧、全末梢血管抵抗に対する影響を調査しました。
腎臓血流は、3μg/kg/min時に顕著に増加しました。顕著な心臓血流、心拍出量、動脈血圧の増加、全血管抵抗の低下により示される血行動態の改善は、高用量(10,20μg/kg/min)時に観察されました。また、10μg/kg/min時には、心血流量の増加は満足のいくもので、腎血流用の十分な増加も安定していました。しかし、20μg/kg/min時には、心筋酸素消費の増加(心拍出量の顕著な増加で明らか)、不整脈や腎血流量の不規則な増加が認められました。
この研究は、犬へのドパミン点滴の臨床的使用は、適度な高用量まで安全に増やせる事ができるという事を示唆しています。(Sato訳)
■有痛性歩行運動障害を持つ猫におけるメロキシカムの臨床効果の評価
Evaluation of the clinical efficacy of meloxicam in cats with painful locomotor disorders.
J Small Anim Pract 42[12]:587-93 2001 Dec
Lascelles BD, Henderson AJ, Hackett IJ
歩行運動障害に関連する痛みの臨床徴候を緩和するための、2種類の非ステロイド系抗炎症薬の効果を評価しました。急性、または慢性歩行運動障害を持つ69頭の猫を、英国で14の初診動物病院から起用し、無作為に、2つの治療グループに振り分けました。グループAは、メロキシカム液滴(初回0.3mg/kg.sid.P.O.以降0.1mg/kg.sid4日以上連続投与)、そしてグループBは、ケトプロフェン錠(1.0mg/kg.sid.P.O.5日間)を行いました。それぞれの猫に対し、治療前、治療開始後24時間、そして治療終了後24時間で、十分な臨床検査を行いました。一般臨床パラメーター(ふるまいと食物摂取)と特異的歩行運動パラメーター(負重、跛行、局部炎症と触診による疼痛)を、不連続な測定尺度で採点しました。2つのグループで、年齢、体重、性別、そして臨床徴候期間の条件において差はありませんし、また処置前の一般臨床パラメーターまたは特異的歩行運動パラメーターにおいても、違いはありませんでした。双方の治療とも、ふるまい、食物摂取、そして負重に有意な改善がもたらされ、跛行、触診による疼痛、そして炎症が、有意に減少しました。2つの治療グループの間で、重視していたパラメーターに関し、いかなる有意差も認めませんでした。そして、双方とも、最小の副作用しか認められませんでした。メロキシカムとケトプロフェンは、鎮痛効果が認められ、短期間(5日間)の投与した場合、急性、または慢性歩行運動障害を持つ猫でよく許容しました。しかしながら、メロキシカムは、ケトプロフェンよりも、有意に好ましい(嗜好性が良い?)と評価されました。(Dr.K訳)
■エンロフロキサシンの時間推移と犬の抹消白血球内における、その活動的な代謝産物
Albert Boeckh, DVM, DACVCP et al; Vet Ther 2[4]:334-344 Fall'01 Clinical Study 23 Refs; Time Course of Enrofloxacin and Its Active Metabolite in Peripheral Leukocytes of Dogs
末梢白血球内における、フルオロキノロンの蓄積は、この薬物系統のいくつかで、明確に証明されております。この研究は、バイトリル(Bayer Corporation Animal Health,Shawnee Mission,KS)の、現在アメリカ合衆国で認可されている投与範囲内の、7.5,10,20mg/kgで経口投与した後、犬の抹消白血球内における、エンロフロキサシンと、その活動的な代謝産物、シプロフロキサシンの蓄積を実証しました。蓄積指標は、同じ時点での、血漿内におけるCmaxで割った、白血球内(WBCs)におけるCmaxで定義しました。その蓄積指標は、エンロフロキサシンが47倍から63倍の範囲で、シプロフロキサシンが28倍から35倍の範囲でした。WBCs内における、エンロフロキサシンと、シプロフロキサシンの時間推移は、血漿内における時間推移と対応しました。全ての投与量において、WBCsからのシプロフロキサシン(P=.001)の半減期消失は、エンロフロキサシン(P=.015)より、有意に長くなりました。抹消白血球内における、エンロフロキサシンの蓄積は、この化合物の抗菌効果に、貢献すると考えられます。(Dr.K訳)
■イヌにおける仮定的なトリメトプリム-スルファジアジン関連の肝毒性
Rowland PH et al; J Am Vet Med Assoc 1992 Feb 1;200(3):348-50; Presumptive trimethoprim-sulfadiazine-related hepatotoxicosis in a dog.
イヌにおけるトリメトプリム-スルファジアジン適用は嘔吐、食欲不振、黄疸、ALT,AST、ALP、GGT、総ビリルビン濃度の高値に関係していました。臨床徴候と生化学的異常は治療中止後改善しました。肝バイオプシー標本からの組織学的検査により、胆汁うっ帯を伴う中程度の、主に門脈肝炎が明らかとなった。(Dr.Yoshi訳)
■イヌとネコにおけるトリメトプリム-スルホンアミド合剤の副反応の回顧的評価
Noli C et al; Vet Q 1995 Dec;17(4):123-8; A retrospective evaluation of adverse reactions to trimethoprim-sulphonamide combinations in dogs and cats.
様々なトリメトプリム-スルホンアミド(T-S)合剤の副反応を、1985年から1994年にユトレヒト大学のコンパニオンアニマル臨床科学部に来院した犬猫で、回顧的に研究しました。皮膚と全身的な反応が、19頭のイヌと2頭のネコにおいて観察されました。特異的な組織学的反応パターンは、3頭のイヌで中毒性表皮壊死、1頭のイヌと1頭のネコで多形紅斑、1頭のイヌで落葉状天疱瘡としてみられた。ヒトで用いられる診断基準は、イヌネコでも信頼できるものでした。副反応は適用後7~14日以内に観察され、スルファジアジン(76%)、スルファトロキサゾール(14%)によるものでした。T-Sの副反応の発生率は0.25%であった。(Dr.Yoshi訳)
■4頭のイヌにおけるトリメトプリム-スルホンアミド適用と肝壊死の関係
Twedt DC et al; J Vet Intern Med. 1997 Jul-Aug;11(4):267-8; Association of hepatic necrosis with trimethoprim sulfonamide administration in 4 dogs.
4頭のイヌにおいてトリメトプリム-スルホンアミド(TMS)合剤治療に関係する肝壊死を、病歴、臨床徴候、剖検で採取された標本の組織病理学検査により診断しました。臨床徴候出現前のTMS治療期間は、4~30日間でした。TMSの用量は18~53mg/kgbidでした。内科支持療法にもかかわらず、全てのイヌが肝臓障害のために、死亡もしくは安楽死された。この報告はTMS治療中の肝細胞毒性の可能性を強調しています。治療期間、TMS合剤のタイプ、そして用量と毒性の発現との関係は解っていません。少数の罹患犬は特異的な薬物反応を示唆しています。(Dr.Yoshi訳)
■犬の止血変動に対するカルプロフェンの影響
Hickford FH et al; Am J Vet Res 62[10]:1642-6 2001 Oct; Effect of carprofen on hemostatic variables in dogs.
目的:臨床的に正常な犬の止血変動に対するカルプロフェンの影響を評価する事
動物:臨床的に正常なラブラドールレトリバー12頭
方法:10頭(メス6頭、オス4頭)に、カルプロフェン(2.2mg/kg12時間おきに経口投与)を5日間投与しました。2頭にはカルプロフェンを投与しませんでした(非投与群メス1頭、オス1頭)。全ての犬の止血変動(血小板数、活性部分トロンボプラスチン時間、プロトロンビン時間、フィブリノーゲン、血小板凝集、出血時間)を、投与前、投与5日目、投与中止2日後、7日後(つまり7日目、12日目)に検査しました。血清生化学変動とHctを、投与前と5日目、12日目に検査しました。
結果:カルプロフェン投与群で、血小板凝集は有意に低下し、凝集の始まりは、投与前の値より5,7,12日目で有意に遅れました。活性部分トロンボプラスチン時間は、投与前の値以上に5,7,12日目に有意に延長しましたが、正常範囲内を維持しました。投与前やコントロール群と比較して、頬粘膜出血時間、他の生化学や止血変動、またはHctに有意差は見られませんでした。
結論と臨床への関連:臨床的に正常なラブラドールレトリバーへの5日間のカルプロフェン投与では、止血や血清生化学に、臨床的に重要でない最低の変化しか起こしませんでした。カルプロフェンは、通常骨関節症や、慢性の痛みを持つ犬に使用されますが、この研究より前には、血小板凝集や止血変動に対する影響は知られていませんでした。(Dr.Sato訳)
■犬で、エンロフロキサシンの生化学、血液学的副作用の調査
Tras B et al; J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 48[1]:59-63 2001 Feb; Investigation of biochemical and haematological side-effects of enrofloxacin in dogs.
今回の研究で、エンロフロキサシンの生化学、血液学、血液ガスパラメーターの影響を調査しました。検査要素の変化を、治療期間中モニターしました。エンロフロキサシンを14日間、健康犬10頭に投与しました(5mg/kg筋注、1日1回)。アシドーシス、一時的なAST、間接ビリルビン、ナトリウム、CO2分圧、平均赤血球容積レベルの増加と、無機リンレベル、イオン化カルシウム、カリウム、O2分圧、標準重炭酸塩の低下を認めました。この研究結果は、血液ガスパラメーターに認められたそれらは、薬物の長期使用を考慮すべきものであると示唆します。(Dr.Sato訳)
★猫のエンロフロキサシン関連性網膜変性
Kirk N. Gelatt et al; Vet Ophthalmol 4[2]:99-106 Jun'01 Retrospective Study 33 Refs ; Enrofloxacin-Associated Retinal Degeneration In Cats
目的:この研究の目的は、非経口のエンロフロキサシン投与と猫の急性網膜変性の、関係を評価する事です。使用した猫は、エンロフロキサシンの全身投与を受け、その後すぐに網膜変性を起こした17頭です。
方法:この回顧的臨床研究で、エンロフロキサシンの非経口投与を受け、そして急性の失明が起こった猫を鑑定しました。パラメーターは、血統、年齢、性別、エンロフロキサシン用量(日量と投与日数)、抗生物質が処方されていた医学的状態、眼の兆候、検査結果、肉眼での結果を記録しました。眼底写真を、7頭の猫で、撮影し、網膜電図記録検査を5頭で実施しました。以前5ヶ月のエンロフロキサシンの投与を受け、網膜変性を起こした1頭の猫(ケース1)の2つの眼で、組織病理学検査を行いました。
結果:全ての猫は短毛家猫でした:7頭はメス(1頭避妊済み)、10頭はオス(7頭去勢済み)でした。年齢は3-16歳(平均±SD;8.8±4.6歳)でした。エンロフロキサシンが投与されていた、医学的障害の程度は、リンパ腫や膵炎から耳炎や皮膚炎で、8頭は、泌尿器疾患でした。エンロフロキサシンの日量と総量と投与日数も、変化に富んでいました。呈している臨床症状は、多くの場合、散瞳と急性の失明でした。全ての猫は、タペタム反射の増加や網膜管の衰退を徴候とした、広汎な網膜変性がありました。記録可能な網膜電計反応が存在しない事は、広汎で拡張性の外側網膜疾患を示唆しました。視力が回復した猫もいましたが、網膜変性は、持続したり、進行するものさえありました。2つの眼の組織病理検査結果は、主に広汎な外側の核や光受容器層の喪失、網膜色素上皮の肥厚や増殖を伴う、外側網膜変性を示しました。
結論:非経口エンロフロキサシンは、猫に網膜毒性を起こす可能性があり、急性で広汎な網膜変性になるかもしれません。失明もよく起こりますが、視力が回復する猫もいます。開業医は、きっちりと製造業者の提唱するエンロフロキサシン推奨投与量(5mg/kg24時間ごと)を守るべきで、この薬物毒性を臨床的に観察し続けるべきです。(Dr.Sato訳)
★腎不全を誘発した猫に対する抗アンギオテンシン変換酵素ベナゼプリルの効果
Brown SA et al ; Am J Vet Res 62[3]:375-83 2001 Mar ; Effects of the angiotensin converting enzyme inhibitor benazepril in cats with induced renal insufficiency.
目的:腎不全を誘発させた猫に、抗アンギオテンシン変換酵素ベナゼプリルがどう影響するか評価する事
動物:猫32頭
方法:腎臓を外科的に切り詰め、8頭ずつの1-4グループに割り当てました。1群はプラセボ、2,3,4群は、おおよそ6.5ヶ月、1日1回の経口塩酸ベナゼプリルの投与を受けました。その投与量は、2群、0.25-0.50mg/kg。3群は、0.5-1.00mg/kg。4群は、1.00-2.00mg/kgでした。動脈血圧、糸球体ろ過率(GFR)、そして腎血漿流量を、治療前と治療期間中に調べました。腎血行動態の他の決定因子は、微小穿刺法を使用して測定しました。腎生検標本は、顕微鏡で検査しました。
結果:プラセボ群と比較して、ベナゼプリル投与群は、収縮期の動脈血圧平均が有意に低く、GFRは有意に大きかったです。糸球体毛細管圧と輸出、輸入動脈管抵抗率も有意に少なかったです。しかし、腎標本の組織学的差異は、認められませんでした。
結論と臨床関連:ベナゼプリルでの治療は、腎不全を誘発させた猫の残存ネフロンで、個々のネフロンGFRを維持しました。ベナゼプリルの投与の関与は少ないかもしれませんが、全身高血圧の有意な減圧と、全腎臓GFRを増加させました。ベナゼプリルは、腎疾患の猫の腎不全進行率を緩やかにする有効な治療かもしれません。(Dr.Sato訳)★腹部外科手術を行った犬に対する、ケトプロフェン、ブトルファノールと、メロキシカムの術前投与の安全性と効果の比較
Mathews KA et al; Am J Vet Res 62[6]:882-8 2001 Jun; Safety and efficacy of preoperative administration of meloxicam, compared with that of ketoprofen and butorphanol in dogs undergoing abdominal surgery.
目的:腹部外科手術を行う犬に対して、メロキシカムの術前投与の安全性、効果と、ケトプロフェン、ブトルファノールのそれと比較すること
動物:腹部切開、脾臓摘出、または膀胱切開を行う犬36頭
方法:犬をランダムに1から3群に振り分けました。この研究の1つ目は、犬に、メロキシカム、ケトプロフェン、プラセボを1回投与し、頬粘膜の出血時間を測定しました。2つ目は、犬に外科手術前にメロキシカム、ケトプロフェン、ブトルファノールを投与しました。ブトルファノール投与群は、術後すぐに2回目の投与を行いました。術後20時間まで、1時間毎に痛みのスコアー(1-10)をつけ、各犬の総合効果スコアーを確定しました。スコアー≧3の犬には、オキシモルフィネを投与しました。術後8日目に安楽死を行い、肝臓、腎臓、胃腸管の肉眼そして組織学検査を行いました。
結果:総合結果は、メロキシカム投与群の12頭中9頭は良いまたはすばらしく、ケトプロフェンでは12頭中9頭、ブトルファノールで12頭中1頭でした。血液、生化学、病理の異常で、臨床的に重要なものはありませんでした。
結論と臨床関連:結果により、メロキシカムの術前投与は、腹部外科手術を行った犬の20時間までの痛みをコントロールするのに安全で効果的だと示唆します;メロキシカムの鎮痛効果は、ケトプロフェンと匹敵し、ブトルファノールより優れています。(Dr.Sato訳)
★膝関節の手術を受けた犬に、術後の鎮痛処置として、硬膜外のブプレノルフィンとモルヒネの比較
Lesley J. Smith et al; Vet Anaesth Analg 28[2]:87-96 Apr'01 Clinical Trial 28 Refs ;A Comparison of Epidural Buprenorphine with Epidural Morphine for Postoperative Analgesia Following Stifle Surgery in Dogs
目的:頭側十字靭帯断裂修復術後の鎮痛に、硬膜外ブプレノルフィンとモルヒネの効果を比較する事。
研究構成:無作為2重盲目臨床試験
動物:頭側十字靭帯断裂の犬20頭
方法:総容量0.2mL/kgで、硬膜外ブプレノルフィン(4ug/kg)と硬膜外モルヒネ(0.1mg/kg)の投与を受ける犬を無作為に振り分けました。硬膜外注射を麻酔導入後すぐに行いました。終末ハロセンとCO2を、硬膜外投与から抜管までの間、15分毎に記録しました。抜管時から鎮痛評価を盲目的に観察し、術後24時間まで、特定の間隔を置いて、痛みスコアーを取り続けました。心拍数、呼吸数、血圧を同時に非侵襲的に記録しました。痛みスコアーで中程度の痛みが示された時は、モルヒネ1.0mg/kgを筋注しました。
結果:痛みスコアー、心拍数、呼吸数、間接的血圧、終末ハロセンまたはCO2のどの点でも、両グループ間で有意差はありませんでした。両グループのそれぞれ50%の犬は、追加の鎮痛剤を必要としました。その投与時間も両グループで有意な違いはありませんでした。この研究で、両薬物の硬膜外投与における臨床的副作用は観察されませんでした。
結論:術後後肢の痛み軽減のため、硬膜外ブプレノルフィンは、モルヒネ同様の効果があります。
臨床関連:ブプレノルフィンは、健康犬の硬膜外投与で、効果的なオピオイドです。低薬物濫用性、コスト削減や薬物消費が低いというような、モルヒネの硬膜外使用以上に利点があるものかもしれません。(Dr.Sato訳)★犬のフィラリア症の予防に対する、モキシデクチン持続性放出注射薬の野外調査
Field Evaluation of a Moxidectin Sustained Release Injectable Formulation for the Prevention of Heartworm Disease in Dogs.
D. ROCK*1, K. HEANEY1, D. PETERSON1, W. BARTON2, S. LEVY3, L. SMITH4, and T. TERHUNE5. FORT DODGE ANIMAL HEALTH, PRINCETON, NJ1, CAVL, INC., AMARILLO, TX2 , DURHAM VETERINARY HOSPITAL, DURHAM, CT3, LARRY SMITH RESEARCH and DEVELOPMENT, LODI, WI4 , HMS VETERINARY DEVELOPMENT, TULARE, CA5.
4つの臨床研究のシリーズは、1998年-1999年に野外下の犬のフィラリア症予防に対する、10%モキシデクチン持続性放出注射剤の、効果と安全性を評価するため用意されました。いろいろな犬種の総計445頭は、野外臨床プログラムの最初に登録され、そのうち330頭は、はじめの研究で、6ヶ月に対する持続性放出0.17mg/kgモキシデクチン投与を受けました。残りの犬(115頭)は、研究期間中毎月の、ProHeart(モキシデクチン)錠投与を受けました。研究の最初に、全ての犬は通常の身体検査を受けました。加えて、フィラリアの存在を、アイデックス・スナップテストとミクロフィラリアろ過法で検査しました。再度約3ヵ月後に、研究がはじまる前のフィラリアの感染を、否定するために検査しました。再治療(6ヶ月)と1年の終わりに、身体検査と注射部位、フィラリア評価を行いました。糞のサンプルを1年目に、胃腸管線虫の評価のために採取しました。374頭は(モキシデクチン持続放出280頭とProHeart錠94頭)、全体の調査を完了しました。1年時の全ての犬は、フィラリアがいませんでした。研究中、治療に対する副作用を示すものや、様々な薬剤や製品を、同時に使用した時の相互作用も、観察されませんでした。注射部位の検査は、研究中に目立つものはありませんでした。この臨床研究シリーズは、10%モキシデクチン持続性放出注射剤は、野外でのフィラリア感染予防に安全で効果的であると示しています。(Dr.Sato訳)
★自然の鈎虫や回虫感染に対する10%モキシデクチン持続性放出注射剤の効果
Efficacy of a 10% Moxidectin Sustained Release (SR) Injectable Against Natural Hookworm and Roundworm Infections.
K. HEANEY1*, R. L. SLONE2, L. R. CRUTHERS2, 1FORT DODGE ANIMAL HEALTH, PRINCETON, NJ, 2PROFESSIONAL LABORATORY & RESEARCH SERVICES, INC., CORAPEAKE, NC.
用量割合0.17mgモキシデクチン/kgで、モキシデクチン持続放出形態の注射を1回行うと、自然な成虫の鈎虫感染(犬鈎虫Ancylostoma caninum and 狹頭鈎虫Uncinaria stenocephala)にそれぞれ、99、100%効果(P<0.05)がありました。鈎虫や回虫の自然感染の犬22頭は、前処置の1g中虫卵数で、チェックし、11頭ずつ2つのグループに、無作為に振り分けました。0日目にそれぞれグループは次のような治療を受けました。持続性放出モキシデクチンの0.17mg/kgの単剤注射、または生食0.05ml/kgの単剤注射を行いました。処置後17日目に検体解剖を行い、回収した胃腸に残っている全ての線虫を、種類分けし計測しました。生食治療コントロールグループの、鈎虫負荷の相加平均(少なくとも6頭は各線虫に感染していた)は、モキシデクチンで治療した平均、犬鈎虫0.18匹と狹頭鈎虫0匹と比べ、それぞれ45匹と4.5匹でした。この試験で、犬回虫に活性が見られませんでした。計測数の不足(<6)は、犬小回虫Toxascaris leonina or 犬鞭虫Trichuris vulpisに対する活性を確認するに影響しましたが、それぞれ、線虫減少は相加平均91%,95%をもとにし、効果があると示唆しました。
この製剤による副作用は記録されていません。(Dr.Sato訳)
■ミソプロストール
Albert Boeckh, DVM; Compend Contin Educ Pract Vet 21[1]:66-67 Jan'99 Pharm Profile 8 Refs; Misoprostol
- EDITOR'S NOTE: 'Pharm Profile' introduces drugs that are new to the veterinary market as well as new indications for existing drugs.
ミソプロストールは、人医で成功を収めてきている合成プロスタグランジンE1(PGE1)類似化合物で、犬において特に、非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)の使用に伴う胃潰瘍を防止します。ミソプロストールは動物薬の商標ではなく、全獣医学適応症の使用範囲外となります。一般では妊娠中後期における中絶のために、プロスタグランジンF2α(PGF2α)と合同で、膣内投与を含む使用例が報告されております。
そのため、人工中絶薬としての使用以外は、妊娠動物に対して使用禁忌です。ミソプロストールは、プロスタグランジンまたは、その類似化合物に対してアレルギーを持つ動物にも使用禁忌です。聞くところによると、犬のアトピー性皮膚炎に効果的であり、他の合併症を伴わない非季節性慢性アトピー性皮膚炎の患者における、ひどい皮膚病変とかゆみを減少させる効果があるとされます。
獣医医療でミソプロストールの、よく起こる副作用は下痢です。他の胃腸への影響として、腹部疼痛と吐き気があります。ミソプロストールの副作用は一般的に一過性であり、獣医師は薬を継続投与中止するかどうか、それぞれの患者で、個々に評価するべきです。
食事と共にミソプロストールを投与すると、割合は減少しますが、ある程度吸収されます。ミソプロストールはアスピリンを含めて、一般的に小動物で使用されるNSAIDsと、臨床上いかなる重要な相互作用も示しません。犬におけるミソプロストールは、1回1~5μg/kgを6~8時間毎に投与です。ミソプロストールは、NSAIDsの使用により、機能しなくなった胃保護機構を修復します。ミソプロストール(サイトテック、サール)は、100と200μgの錠剤で売られております。ミソプロストールは、酸素や水の存在下で安定でありませんので、水溶液などに調合するべきではありません。(Dr.K訳)