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■犬の再発性鼻腔内腫瘍に対し繰り返し行う従来の少分割放射線治療の臨床結果と予後因子
Clinical outcomes and prognostic factors of repeated conventional hypofractionated radiotherapy for recurrent intranasal tumors in dogs
Open Vet J. 2025 Feb;15(2):827-834.
doi: 10.5455/OVJ.2025.v15.i2.32. Epub 2025 Feb 28.
Hirona Ueno , Yuta Nishiyama , Takuya Maruo , Yohei Fukuda , Takayuki Katayama , Shinichiro Yoda , Kotaro Nishi , Hideki Kayanuma
背景:当初は少分割放射線治療(RT)に良好な反応を見せるが、鼻腔内腫瘍の長期予後は悪い。再照射(re-RT)は、再発した鼻腔内腫瘍の犬の臨床的寛解を起こすことが示されている。少分割re-RTは再発症例で必要とされている。
目的:この研究の目的は、当初反復少分割RTで治療し、その後re-RTを行った再発性鼻腔内腫瘍の犬の反応を調査することだった。
方法:2008年から2022年の間に麻布大学獣医教育病院で、少分割RTを行った後に再燃し、re-RTを行った鼻腔内腫瘍の犬の医療記録を回顧的に分析した。
結果:組み入れた30頭の犬のうち、20頭は腺癌だった。11頭は2度のre-RT、5頭は3度のre-RTを行った。総アイソセンタ量と分割総数の中央値は、56Gy(範囲、37.5-102)と8分割(範囲、5-14)だった。最初、2度目、3度目の無増悪期間(PFIs)は、それぞれ、315日(n=30)、185日(n=11)、218日(n=4)だった。総生存期間(OS)は504日(n=30)だった。
脱毛(n=7)、白髪(n=8)、白内障(n=9)、色素沈着(n=5)、角膜炎(n=3)、角膜潰瘍(n=1)のような有害事象は、グレード1や2と限定的だった。Re-RTの1コースあるいは2コース以上の最初のPFIの中央値はそれぞれ298と331日で、群間の有意差は示されなかった。Re-RTの2コース以上行った後(758日)のOSは、1コース後(414日)よりも有意に長かった(p=0.048)。しかし、症例は無作為化しておらず、腫瘍のほとんどは腺癌だった。
結論:この研究の所見は命を脅かす有害事象がほとんどなく、長期生存期間が期待できるため、最初に少分割RTで治療し再発した鼻腔内腫瘍の犬に、少分割re-RTが使用できると示唆している。ゆえに、繰り返し行う少分割re-RTは、良好な最初の反応を示し、再発した鼻腔内腫瘍の若い犬に対する適切なオプションかもしれない。(Sato訳)
■イギリスの一次動物病院の犬で診断されたインスリノーマの発生率とリスク因子
Incidence and risk factors for insulinoma diagnosed in dogs under primary veterinary care in the UK
Sci Rep. 2025 Jan 20;15(1):2463.
doi: 10.1038/s41598-025-86782-6.
Kasper Kraai , Dan G O'Neill , Lucy J Davison , Dave C Brodbelt , Sara Galac , Floryne O Buishand
インスリノーマは犬で診断される最も一般的な膵臓の腫瘍である。
この研究の目的は、イギリスの一次動物病院のもとで診断された犬のインスリノーマに対する発生リスク、犬種素因、他の個体統計的リスク因子を報告することだった。
VetCompass Programは、イギリスの動物病院下の犬から匿名とした電子健康記録(HERs)の検索をサポートする。この研究は2019年中の一次動物病院の犬からの全てのVetCompass HERsを含めた。多変量ロジスティック回帰分析を使用し、インスリノーマの診断に対する個体統計的リスク因子を評価した。
2250741頭の研究犬のうち、どんな日付でも278頭をインスリノーマ症例と確認した。評価した2019年の発生リスクは0.003%(95%CI0.002-0.004%)だった。雑種犬と比較して、素因のある犬種は、ボルドー・マスティフ、ジャーマン・ポインター、フラット・コーテッド・レトリバー、ボクサー、ウエストハイランド・ホワイト・テリアが含まれた。ラブラドール・レトリバーは、インスリノーマの診断に対して確率の低下を示した。また、テリア犬種であり、他の内分泌癌の素因のある犬種は、インスリノーマの診断の確率上昇と関係した。他のインスリノーマの診断の確率上昇と関係するリスク因子は、避妊したメス犬、年齢9歳から<15歳、成犬の体重中央値が20-30kg、性別/犬種に対する中央値以上の体重であることが含まれた。
これは、一次動物病院の犬のインスリノーマの疫学を報告する最初の研究で、犬のインスリノーマの疫学と病因論と他の犬の内分泌癌とインスリノーマの関係の可能性に対する今後の研究に誘導するものである。また、この結果は、インスリノーマのリスクが大きい犬の確認において獣医師に役立つものである。(Sato訳)
■直腸プラズマ細胞腫に対する治療を行った犬の治療、予後、結果:多施設回顧的研究
Treatment, prognosis, and outcome of dogs treated for rectal plasmacytoma: a multicentric retrospective study
J Am Vet Med Assoc. 2025 Jan 22:1-8.
doi: 10.2460/javma.24.10.0666. Online ahead of print.
Juan Carlos Jimeno Sandoval , Matteo Cantatore , Lee Meakin , Timothy Menghini , Laura Owen , Ivan Doran , Matthew Erskine , Matteo Rossanese
目的:この研究の目的は、直腸プラズマ細胞腫にたいし内科、あるいは外科的に治療した犬の結果および予後を報告することと、再発、死亡率、あるいは多発性骨髄腫への進行に関係する因子を確認することだった。
方法:7か所の二次診療施設のデータベースを再調査した。カプラン-マイヤー法とCox比例ハザード解析を使用し、外科的に治療した犬に対し、再発を伴う変数の範囲と無増悪期間との関係を判定した。
結果:20頭の犬を含めた。19頭は外科的に治療し、1頭は保存的(鎮痛とモニタリング)に治療した。転移病変は20頭中2頭(10%)で見つかった。外科的に治療した19頭中4頭(21%)は術後合併症を起こし、1頭(1/19(5.2%))はメジャー、3頭(3/19(15.8%))はマイナーだった。腫瘍の再発は19頭中6頭(31.5%)で確認された。1-、2-、3-年生存率は、それぞれ95%、72%、66%だった。調べた変数で、合併症発生と関係するものはなかった。肛門から距離が遠いこと、不完全な外科マージン、外科医の経験が浅いことは、再発のリスク増加と関係した。全ての症例で、多発性骨髄腫への進行は見られなかった。
結論:直腸プラズマ細胞腫の外科的治療は、メジャーな合併症率が低いことと、長期生存期間と関係する。転移と再発率は、過去に報告されたものより有意に高い。
臨床的関連:保存的外科手術は長期生存期間につながるが、再発は一般的である。今後の研究は補助的治療の利点に焦点を当てるべきである。(Sato訳)
■外科専門病院で脾摘手術を行った犬の脾臓の悪性腫瘍および血管肉腫の発生率:182症例(2017-2021)
Incidence of splenic malignancy and hemangiosarcoma in dogs undergoing splenectomy surgery at a surgical specialty clinic: 182 cases (2017-2021)
PLoS One. 2024 Dec 3;19(12):e0314737.
doi: 10.1371/journal.pone.0314737. eCollection 2024.
Brigita Ziogaite , Elena T Contreras , Jason E Horgan
この研究の目的は、外科専門病院で脾摘を行った犬において、脾臓の悪性腫瘍および血管肉腫のリスクおよび予測的因子を評価することだった。
脾臓のマスあるいは結節の治療で、脾摘を行った182頭の犬の医療記録、血液検査結果、手術報告、病理組織学的結果を回顧的に再検討した。
大多数の犬(57.7%)は、悪性はなく、良性の脾臓の診断だった。血管肉腫は32.4%の犬で診断された。最終的な多変量モデルで、血小板減少症、貧血、最も大きな脾臓の結節のより小さな直径が血管肉腫に対するリスクファクター(P<0.001)で、腹腔内出血(P=0.01)は、結節の直径が評価されなかった時の追加のリスクファクターだった。91頭に腹腔内出血があり、そのうち60.4%が悪性の脾臓病変だった。偶発的に脾臓の病変が確認され、脾摘を行った33頭中、93.9%は良性の脾臓病変だった。
犬種のサイズは、脾臓の悪性リスクの有意な指標ではなかった;しかし、この研究に含まれたジャーマンシェパードの全6頭は、血管肉腫の診断だった。HSAを含む脾臓悪性腫瘍の全体の有病率は、ある犬の集団では過大評価されるかもしれない。(Sato訳)
■犬の固形腫瘍の診断と予後に対する血清可溶性インターロイキン2レセプターの評価:34症例
Evaluation serum soluble interleukin 2 receptor with diagnosis and prognosis in canine solid tumour: 34 cases
Vet Med Sci. 2024 Sep;10(5):e70033.
doi: 10.1002/vms3.70033.
Hyun NamKung , Su-Min Park , Jae-Hyeon Im , Ga-Hyun Lim , Min-Ok Ryu , Kyoung-Won Seo , Hwa-Young Youn
背景/目的:可溶性インターロイキン-2レセプター(sIL-2R)は、濃度が炎症、感染、腫瘍のような臨床的状態においてTリンパ球の活性化中に増加するため、ヒトで腫瘍に対して価値あるバイオマーカーとして役立つ。この研究の目的は、腫瘍のある犬でもsIL-2R濃度が上昇し得ることを証明し、犬の癌患者において診断および予後因子としてその応用性を評価することだった。
患者と方法:6頭の健康な犬と固形腫瘍のある34頭の犬から血清を採取した。sIL-2Rに濃度は、市販の酵素結合免疫吸着分析キットを用いて測定した。
結果:固形腫瘍のある犬のsIL-2R濃度中央値は、健康犬よりも有意に高かった(117.3 vs 68.33pg/mL、p=0.016)。最も高いsIL-2R濃度中央値は悪性腫瘍の犬で見つかり、続いて良性腫瘍の犬、健康な犬だった(それぞれ119.6 vs 93.74 vs 68.33pg/mL)。悪性腫瘍の犬において、sIL-2R濃度の高い群は低い群よりも死亡率が有意に高かった。固形腫瘍のある犬(特に悪性腫瘍のある犬)は、健康な犬よりもsIL-2R濃度が高かった。悪性腫瘍の犬の中で、sIL-2R濃度と死亡率の相関性が確認された。
結論:血清sIL-2R濃度は、悪性腫瘍の検出に使用でき、悪性腫瘍の犬の予後因子として役立つかもしれない。(Sato訳)
■アテネ獣医診断検査所での793頭の犬と406頭の猫の舌の病変の回顧的研究、2010-2020
A retrospective study of lingual lesions in 793 dogs and 406 cats at the Athens Veterinary Diagnostic Laboratory, 2010-2020
J Vet Diagn Invest. 2024 Sep 12:10406387241278888.
doi: 10.1177/10406387241278888. Online ahead of print.
Jesse Riker , Daniel R Rissi
アテネ獣医診断研究所(AVDL)において、舌のバイオプシーはサンプル提出物の一般的なタイプである。
ここでは、10年間にAVDLに提出された793頭の犬と406頭の猫の舌のバイオプシーの病理診断を述べる。
非腫瘍性病変は、犬の450診断(57%)、猫の239診断(59%)を占めた。犬の非腫瘍性病変は、炎症性病変(286症例;非腫瘍病変の64%)と腫瘍様増殖性病変(164症例;非腫瘍性病変の36%)で構成された。猫の非腫瘍性病変は、炎症性病変(228症例;非腫瘍性病変の95%)と腫瘍様増殖性病変(11症例;非腫瘍性病変の5%)からなった。
犬の腫瘍の最も一般的なものは、メラニン細胞性腫瘍(103症例;腫瘍の30%)、上皮性腫瘍(102症例;腫瘍の30%)、続いて間葉性腫瘍(90症例;腫瘍の26%)、円形細胞腫瘍(48症例;腫瘍の14%)だった。メラニン細胞性腫瘍の約43%は、チャウチャウとラブラドールレトリバーが罹患し、上皮性腫瘍の20%はラブラドールレトリバーだった。
猫の良く見られた腫瘍は、上皮性(158症例;腫瘍の94%)、続いて間葉性(8症例;腫瘍の5%)、円形細胞腫瘍(1症例;腫瘍の1%)だった。猫の腫瘍の50%以上は、短毛家猫が罹患した。
腫瘍が診断された舌のバイオプシーの比率は犬猫間で大体同じだが、猫よりも犬の腫瘍の多様性がかなり多かった。(Sato訳)
■鼻腔内腫瘍の犬に対するテガフール/ギメラシル/オテラシル(TS-1)とリン酸トセラニブを併用した週3回投与の前臨床/臨床試験
Preclinical/clinical trials of thrice-weekly administration of a combination of tegafur/gimeracil/oteracil (TS-1) and toceranib phosphate in dogs with intranasal tumors
J Vet Med Sci. 2024 Oct 3.
doi: 10.1292/jvms.23-0455. Online ahead of print.
Yuta Nishiyama , Takuya Maruo , Yasuhiro Fukuyama , Yuka Odaka , Eiyu Kawata , Hirona Ueno , Hideki Kayanuma , Tomohiro Nakayama , Hiroki Takahashi
Free article
犬の鼻腔内腫瘍は悪性の固形腫瘍で、主に放射線で治療され、処置後の再発も多い。併用療法は癌治療で重要である。効果的な薬剤はフルオロピリミジン5-フルオロウラシル(5-FU)とリン酸トセラニブが含まれる。TS-1(5-FUプロドラッグのテガフールと酵素モジュレーターのギメラシルとオテラシルを含む経口製剤)は、固形腫瘍の犬で安全だと証明されている。リン酸トセラニブ経口薬剤(パラディア)は安全に投与できるが、TS-1との併用毒性は分かっていない。
我々の目的は、犬においてこの組み合わせの用量を判定することだった。
ここで行った前臨床/臨床試験において、リン酸トセラニブ(2.4mg/kg)週に3回投与の固定用量で標準的3+3コホートデザインを使用した。TS-1 投与は0.5mg/kg(上限2.0mg/kg)週に3回の用量で開始した。4集団はリン酸トセラニブとTS-1の安全性を確認するために含めた。各集団は1か月間フォローアップした。
臨床試験(n=13)に含まれた鼻腔内腫瘍のタイプは、腺癌(n=7)、扁平上皮癌(n=1)、非上皮性悪性腫瘍(n=2)、未分化癌(n=1)、移行上皮癌(n=2)が含まれた。
TS-1はこの前臨床/臨床試験の投与量限界まで増加させることができた。リン酸トセラニブ週に3回投与と組み合わせるTS-1の用量は2.0mg/kgだった。この方法の許容性は良かった。
このように、鼻腔内腫瘍の犬に対し、リン酸トセラニブとTS-1の併用投与は安全である。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫の治療に対し手術と術後根治的放射線治療:272頭の犬の多施設回顧的研究(2010-2020)
Surgery and postoperative definitive radiotherapy for management of canine soft tissue sarcoma: a multi-institutional retrospective study of 272 dogs (2010-2020)
J Am Vet Med Assoc. 2024 Sep 6:1-12.
doi: 10.2460/javma.24.06.0363. Online ahead of print.
Isabella M Hildebrandt , Owen T Skinner , Megan A Mickelson , Todd E Daniel , Hayley L Ashworth , Annie Kim , Brandan G Wustefeld-Janssens , Tiffany W Martin , Charly McKenna , Michelle L Oblak , Valerie J Poirier , Karanbir Randhawa , Michelle M Turek , Jonathan F McAnulty , Maureen A Griffin , Lillian E Duda , Carlos R Mendez Valenzuela , Isabelle F Vanhaezebrouck , Allyson A Sterman , Christopher Bloom , Laura E Selmic , Dah-Renn Fu , Jishnu Rao Gutti , Koichi Nagata , Brian Thomsen , Arathi Vinayak , Beatrix Jenei , Charles A Maitz
目的:軟部組織肉腫(STS)の治療に対し手術と術後根治的放射線治療(dRT)を行った犬の局所進行と生存性を報告することと、局所進行と生存性に対するリスク因子を評価する
方法:2010年1月1日から2020年1月1日の間でSTSに対する手術に続き、術後dRTで管理した犬に対し、9か所の二次病院の記録を回顧的に再検討した。症状、手術、dRT、全身的治療、結果に関するデータを抽出した。選択した変数は、局所進行および総生存性に関係するか評価した。
結果:272頭の犬を含めた。組織学的グレードは249頭の犬で報告された:102頭はグレード1(40.9%)、120頭はグレード2(48.2%)、27頭はグレード3(10.8%)だった。56頭で局所進行が疑われ、あるいは確認された。局所進行率は、グレード1(24/89(26.7%))、グレード2(23/111(20.7%))、グレード3(6/22(27.3%))の腫瘍で同様だった。過去の再燃(P=.010)、その後の遠隔転移(P=.014)は、より多い食初診蒿と関係した:強度変調放射線治療は、他のデリバリーの型よりも局所進行低下と関係した(P=.025)。年齢(P=.049)、グレード(P=.009)、過去の再燃(P=.009)、手術の施設タイプ(P=.043)は総生存性と関係した。
結論:ほとんどの犬の結果は良好だった;しかし、局所進行の頻度は、特に低グレードSTSに対し、局所治療戦略の批判的評価の必要性の継続が指示される。強度変調放射線治療は、より低い局所進行率と関係し、デリバリーの正確性の低いものより優先されるかもしれない。
臨床的関連:STSの管理に対するdRTに関する治療を決定する時、それらのデータは臨床医のガイドとなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の鼻の腫瘍に対する放射線治療後の予後因子と生存性:166症例の単施設回顧的研究
Prognostic factors and survival following radiation therapy for canine nasal tumors: A single-institution retrospective study of 166 cases
Open Vet J. 2024 Jul;14(7):1538-1552.
doi: 10.5455/OVJ.2024.v14.i7.3. Epub 2024 Jul 31.
Rui Mizuno , Takashi Mori
背景:鼻の腫瘍の犬の予後因子はいくつかの変数が含まれる。しかし、予後を測定できる因子は、報告によりかなり相違があるため、確認されていない。
目的:単一施設からの相当の頭数の解析を通し、鼻の腫瘍の犬のCT画像検査、治療、結果を述べ、負の予後因子を検出する。さらに、CT所見を基に、犬の鼻の腫瘍に対する独立した予後因子の確認を目的とした。
方法:飼い犬166頭が2015年から2019年の間に岐阜大学動物病院で鼻の腫瘍と診断された。電子カルテからデータを回顧的に収集した。
結果:一施設でメガボルテージ(MeV)放射線治療で治療した166頭の犬の鼻の腫瘍において、一変量解析で、腺癌と扁平上皮癌の生存期間に有意差が見られた(P=.015)。癌と肉腫の生存期間に有意差があった(p=.04)。CT画像所見に関し、前頭洞への侵入(p=.007)、篩状板破壊(p<.001)、リンパ節転移(p=.003)に対し、生存期間に有意差が観察された。
多変量Cox回帰解析を実施し、負の予後因子として前頭洞侵入、篩状板破壊、病理組織学的サブタイプ、リンパ節転移を評価した;しかし、篩状板破壊のみが、生存期間に対する有意な負の予後因子だった(p=.004)。
結論:一施設でMeV放射線治療により鼻の腫瘍を治療した166頭の犬のネガティブな予後の予測において、多変量Cox回帰解析は、篩状板破壊が主な因子だと示した。ゆえに、唯一の評価因子としてCT検査を基に、篩状板破壊の有無で犬の鼻の腫瘍に対する新しい2層ステージング分類を提唱する。(Sato訳)
■原発性肝臓腫瘍に対する肝葉切除を行う犬の術前凝固パネルの評価:多施設回顧的研究
Evaluating preoperative coagulation panels in dogs undergoing liver lobectomy for primary liver tumors: A multi-institutional retrospective study
Vet Surg. 2024 Aug 16.
doi: 10.1111/vsu.14155. Online ahead of print.
Samuel J Burkhardt , Kenneth L Drobatz , Beth Callan , William T N Culp , Laura E Selmic , Karen Tobias , Mandy L Wallace , Deanna Worley , David E Holt
背景:この研究の目的は(1)手術可能な原発性肝臓腫瘍は、プロトロンビン時間(PT)と活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)の延長と関係するかどうかを判定することと、(2)それらの二次的止血異常は、特定の肝臓腫瘍でより一般的かどうかを判定することだった。
研究計画:多施設回顧的研究
動物集団:術前凝固パネルのある原発性肝臓腫瘍に対し肝葉切除を行った犬(n=359)
方法:8か所の獣医教育病院で、電子医療記録レビューによりデータを確認した。基本の犬の特徴、凝固パネル値、血小板数、緊急vs非緊急処置、血液製剤の輸血を受けた犬かどうか、切除した肝葉、病理組織診断を医療記録から抽出した。カイ二乗解析を使用し、群間のカテゴリー的変数を比較した。連続的変数をShapiro-Wilk testで正常性について評価した。
結果:359頭中74頭(20.6%)は、術前のPTあるいはaPTTが延長していた。359頭中20頭(5.6%)はPTとaPTT両方が延長していることが分かった。16頭中6頭(37.5%)において、唯一病理組織診断で血管肉腫が、PTとaPTT両方の延長と関係した。
結論:血管肉腫の病理組織診断の犬を除き、原発性肝臓腫瘍のほとんどの犬で、PTおよびaPTTを含む凝固パネルで、二次的止血のかなりの欠損を検出する確率は低い。
臨床的意義:PTおよびaPTT検査は、腹腔内出血がある、あるいは肝臓血管肉腫の強い疑いの犬を除き、原発性肝臓腫瘍の犬において選択的術前スクリーニング検査としての益は少ない。(Sato訳)
■犬の血管腫瘍に対する臨床病理学的変化と予測モデルの回顧的研究
Retrospective Study of Clinicopathological Changes and Prediction Model for Canine Vascular Neoplasms
Vet Sci. 2024 Apr 26;11(5):189.
doi: 10.3390/vetsci11050189.
Jidapa Suphonkhan , Chananchida Klaymongkol , Wijittra Khomsiri , Jedsada Wanprom , Saharuetai Jeamsripong , Narisara Chimnakboon , Anudep Rungsipipat , Araya Radtanakatikanon
犬の血管肉腫(HSA)および血管腫(HMA)を含む血管腫瘍は、他の家庭動物種よりも一般的である;しかし、現在、早期診断に向けた包括的スクリーニング検査は限られている。
この研究の目的は、血管腫瘍と診断された犬の全身的シグナルメント、解剖学的部位、臨床上理学的異常を調査し、それら以上の診断学的意義を判定することだった。
HMA、HSA、健康な犬の回顧的データを解析した。HMAおよびHSAの犬はシニア犬で、最も罹患しているのは雑種犬だった。HMAは主に非内蔵部位だったが、HSAは内蔵がより一般的で、特に脾臓だった。
多変量モデル解析で、異常がない犬と比べ、HMAの診断確率は貧血犬で5.5倍、リンパ球減少の犬で33.0倍高かった。HSAの診断確率は、異常がない犬と比べて貧血の犬で42.5倍、リンパ球減少の犬で343倍、高フィブリノーゲン血症の犬で92.7倍高かった。
この研究は、確認された異常は、非特異的で種々の慢性疾患で一般に観察されるもので、ゆえに、臨床的情報(診断的画像検査及び病理組織検査のような)との組み合わせが、犬の血管腫瘍のより正確な診断を容易にするために重要であると示唆した。(Sato訳)
■症例報告:椎体切除と腸骨稜骨自家移植で治療した椎体プラズマ細胞腫のダックスフンドの一例
Case report: Corpectomy and iliac crest bone autograft as treatment for a vertebral plasma cell tumor in a dachshund dog
Front Vet Sci. 2023 Dec 11:10:1281063.
doi: 10.3389/fvets.2023.1281063. eCollection 2023.
Hannah R Yoder , Megan R MacRae , Olivia M Snead , Karl H Kraus
Free PMC article
7歳、7.5kgのメスの避妊済みダックスフンドが、跛行と排尿困難で獣医教育病院を受診した。その犬は、弱い歩行不全対麻痺で痛覚は損なわれていなかった。CT画像検査で、プラズマ細胞腫に一致するL3椎骨の腹側の骨溶解と骨膜増殖を認めた。
L3椎骨の椎体切除を実施し、続いて皮質-海綿骨腸骨稜骨staves自家移植片(自家性海綿骨)とロッキングプレート[String of Pearls (SOP®), Orthomed]の両側設置で安定化を施した。
その犬は、一夜明けても神経学的状態の低下もなく、良好に回復し、退院まで改善し続けた。術後4週間の再検査で、軽度の後肢の固有受容失調があるだけで、神経学的に改善したと思われた。
この症例は、血管新生化のない腸骨稜移植骨片の異食とプレートとスクリューでの安定化は、椎骨プラズマ細胞腫の犬の管理に使用できることを証明し、同様の罹患症例の外科的オプションとして考慮すべきである。(Sato訳)
■下垂体にマスのある44頭の犬における定位放射線治療vs分割放射線治療の結果:多施設回顧的研究(2016-2022)
Outcomes of Stereotactic Radiation Therapy Versus Fractionated Radiation Therapy in 44 Dogs With Pituitary Masses: A Multi-Institutional Retrospective Study (2016-2022)
Vet Comp Oncol. 2024 Jun 18.
doi: 10.1111/vco.12991. Online ahead of print.
Tracy L Gieger , Leanne Magestro , Jillian Walz , Hiroto Yoshikawa , Michael W Nolan
犬の下垂体マス(PM)は、定位放射線治療(SRT)で治療されることが多くなっているが、過去の文献は従来のフルコースの分割放射線治療(FRT)の優れた結果を支持している。
多施設回顧的研究を実施し、2016年から2022年までにSRT(total dose 30 or 35 Gy in 5 daily fractions)あるいはFRT(total dose 50-54 Gy in 19-20 daily fractions)で治療したPMの犬を含めた。潜在的予後/予測的因子の影響を評価し、下垂体:脳の高さ、下垂体:脳容積、性別、内分泌状況(機能性(F)vs.非機能性(NF)PM)を含めた。
PMの犬44頭を含めた(26F、14NF、4不明)。全ての犬は計画されたプロトコールを完了し(SRT=27、FRT=17)、2頭はグレード1の急性神経毒性が疑われた。RT後の最初の6か月中に、SRTで治療した5/27頭(19%)(4F、1NF)、FRTで治療した3/17頭(18%)(全てF)は死亡あるいは神経症状の進行により安楽死された。
全体の生存期間中央値は608日(95%CI:375-840日)だった。治療時が若年ということが生存性に有意だった(p=0.0288);<9歳の犬の総生存期間中央値は753日(95%CI:614-892日)で、≧9歳の犬は445日(95%CI:183-707日)だった。生存期間は治療の種類、あるいはここで評価したいずれの他の因子と関係しなかった。
標準化したプロトコールを使用した前向き研究で、この研究の結果を確認し、早期死亡の予測因子を潜在的に明瞭化するだろう。(Sato訳)
■他の解剖学的部位と比べた犬の後腹膜血管肉腫に関係する腫瘍関連因子の予後的価値:回顧的観察研究
Prognostic value of tumour-related factors associated with canine retroperitoneal hemangiosarcoma in comparison with other anatomic presentations: A retrospective observational study
Vet Med Sci. 2024 Jul;10(4):e1495. doi: 10.1002/vms3.1495.
Takayuki Furukawa , Akiko Shiotsuki , Yusami Okada , Kazumi Nibe , Meina Tei , Tetsuya Anazawa , Masakatsu Yoshikawa , Kenichiro Ono , Hidehiro Hirao
背景:後腹膜血管肉腫(HSA)の犬は、不定な術後生存期間中央値(MST)を示す
目的:後腹膜HSAの犬で分析した腫瘍のサイズ、破裂、隣接組織への侵入、リンパ節の関与と遠隔転移のような選択した腫瘍関連因子の予後的価値を回顧的に評価する
方法:唯一外科的切除で治療した後腹膜HSAの犬10頭を再検討し、脾臓(71)および肝臓(9)HSAと比較した。カプラン-マイヤー法及びログランク解析を使用し、因子間のMSTsを比較した。多変量Cox比例-ハザード解析を使用し、出現部位間の違いを比較した。
結果:脾臓および肝臓HSAと比較し、後腹膜HSAは比較的より長い術後MSTを示し、<5cm(70日)よりも≧5cm(195日)の腫瘍は有意に長いMST(p=0.003)を示した。脾臓HSAは、遠位リンパ節の関与や遠隔転移がない犬(それぞれ83日、p=0.002および110日、p<0.001)よりも、遠位リンパ節関与(23日)や遠隔転移(39日)の犬で有意に短いMSTsを示した。肝臓HSAも遠隔転移で有意に短いMSTを示した(98日と比べ16.5日、p=0.003)。また、全体のHSAに対するハザード比(HRs)とそれらのフォレストプロットは、出現部位(脾臓;HR2.78、p=0.016および肝臓;HR3.62、p=0.019)、遠位リンパ節関与(HR2.43、p=0.014)、遠隔転移(HR2.86、p<0.001)は悪い予後因子、腫瘍サイズ≧5cmはより良い予後因子(HR0.53、p=0.037)として示された。
結論:全体のHSAと組み合わせて、後腹膜HSAは脾臓および肝臓HSAと比べ、術後MSTが比較的長いことを示し、より良い予後因子を示唆する≧5cmの腫瘍のサイズと関係した。(Sato訳)
■短波赤外線蛍光画像とインドシアニングリーンを用いた消化管間質腫瘍の切除を行った犬の1例
Excision of a gastrointestinal stromal tumour in a dog using short-wave infrared fluorescence imaging and indocyanine green
Vet Med Sci. 2024 Jul;10(4):e1506.
doi: 10.1002/vms3.1506.
Jinyoung Choi , Sungin Lee
7歳、去勢済みのオス、体重36.8kgのゴールデンレトリバーが、嘔吐と食欲不振、元気消失で獣医教育病院を受診した。
血液検査、エックス線検査、超音波検査、CT検査後、盲腸に7.85 x 5.90 x 8.75cmのマスを確認した。
腫瘍マージンの視認化と腫瘍切除の精度を改善するため、術中のインドシアニングリーンを用いた短波赤外線画像化を実施した。インドシアニングリーン液は、手術の14時間前に5mg/kgで静脈にボーラス投与した。腫瘍切除は、蛍光にマークされた組織から0.5cmマージンで実施した。病理組織検査で消化管間質腫瘍(GIST)と診断され、外科的マージンに腫瘍細胞はなく、手術の成功を示していた。
著者の知るところでは、これは術中の短波赤外線画像化を用いた1頭の犬においてGISTを切除した最初の症例である。(Sato訳)
■神経鞘腫と推定あるいは確認された30頭の犬の臨床所見と結果
Clinical Findings and Outcome in 30 Dogs with Presumptive or Confirmed Nerve Sheath Tumors
Vet Sci. 2024 Apr 28;11(5):192.
doi: 10.3390/vetsci11050192.
Rachel S Cooper-Khan , Alexandra N Frankovich , Craig A Thompson , Stephanie A Thomovsky , Melissa J Lewis
神経鞘腫(NSTs)は良く認識された原発性の神経系の腫瘍であるが、犬において異なる解剖学的部位におけるNSTsの比較を含む、比較的限られた情報しかない。
この回顧的研究は、脳神経あるいは脊髄神経に影響するNSTsの犬の1群において臨床所見および結果を述べる。
30頭の犬には、推定的診断の犬25頭と、病理組織検査で確認した5頭が含まれた。また7頭は腫瘍サンプルの細胞診があり、4頭はNST診断の支持となった。8頭は脳神経の関係したNSTsで、6頭は三叉神経に関係していた。22頭は脊髄神経の関係するNSTsで、13頭は脊柱管を、9頭はその脊柱管周辺を侵し、多くは腕神経叢の神経あるいは神経根に影響していた。
予後は悪く、疾患の進行により、結局は安楽死される。診断後1週間生存した犬の中で、生存期間中央値は4か月だったが、2週間から>2年の範囲だった。NSTの部位間で広いオーバーラップがあったが、脊柱管や頭蓋内に関与がない犬の生存期間は一般により長かった。
この結果は犬のNSTsに対して入手できる情報を広げたが、確定診断のある少数の犬には注意を払って解釈すべきである。どのように腫瘍の部位、侵襲性、行った治療が結果に影響するのか調べるための今後の調査が正当化される。(Sato訳)
■犬の片側性犬アポクリン腺肛門嚢腺癌の治療に対し両側肛門嚢摘出後の病理組織診断と外科的合併症:35症例(2019-2023)
Histopathological diagnosis and surgical complications following bilateral anal sacculectomy for the treatment of unilateral canine apocrine gland anal sac adenocarcinoma: 35 cases (2019-2023)
J Small Anim Pract. 2024 Apr 9.
doi: 10.1111/jsap.13731. Online ahead of print.
A Franca , P Stamenova , J L Thompson
目的:片側性アポクリン腺肛門嚢腺癌の治療に対し両側肛門嚢摘出を行った犬において、両肛門嚢の病理組織学的診断を報告し、過去に報告された文献と、この集団におけるこの処置と関係する外科的合併症率を比較すること
素材と方法:1施設の2019年から2023年の間で、見たところ片側アポクリン腺肛門嚢腺癌の治療に対し、両側肛門嚢切除を行った犬の記録を回顧的に再検討した。臨床ステージング、外科的治療、組織学的所見、術中および術後合併症を評価した。
結果:35頭の犬を含めた。35頭中5頭(14%)のみが、組織学的に正常な反対側の肛門嚢を持つことが分かった。非腫瘍性の肛門嚢疾患は、35頭中23頭(66%)で見つかり、両側アポクリン腺肛門嚢腺癌は35頭中7頭(20%)で見られた。両側腫瘍と診断された犬で、完全な検査にもかかわらず、術前に両側腫瘍のエビデンスがあったものはいなかった。原発腫瘍切除による合併症は、術中の9%の犬、術後の14%の犬に見られ、それぞれ一般的なものは腫瘍カプセルの破壊と手術部位感染だった。
臨床的意義:両側肛門嚢疾患は、正常な肛門嚢と思われたものの多くで組織学的に診断され、20%の症例は両側アポクリン腺肛門嚢腺癌が見つかった。この集団の外科的合併症率は、片側肛門嚢切除単独で報告されたものと同等だった。それらの所見は、片側性肛門嚢腫瘍が疑われた症例において、両側肛門嚢切除の使用を促進させ、奨励する。(Sato訳)
■犬の前立腺癌:現在の治療と腫瘍学介入の役割
Canine Prostate Cancer: Current Treatments and the Role of Interventional Oncology
Vet Sci. 2024 Apr 9;11(4):169.
doi: 10.3390/vetsci11040169.
Erin A Gibson , William T N Culp
前立腺癌は男性において、世界的な最も一般的な癌の1つで、現在3百万人以上の男性が前立腺癌と共に生活している。男性において、定期的なスクリーニングと放射線、前立腺切除、ホルモン療法を含む成功的治療戦略で高い生存性を可能にしている。
犬は前立腺腫瘍が自然発症する唯一の哺乳類の1つとして認識され、重要な変換モデルの1つである。獣医療の中で、治療オプションは従来効果が限られており、あるいは高い病的状態と対をなしている。
近年、犬とヒトにおいて侵略的治療様式の少なさが調査されており、見込みを証明されている。
以下、犬とヒトで利用できる現行の治療オプションを再検討し、犬の前立腺癌に対する治療介入の範囲内の現在の議論及び今後の傾向も再検討する。(Sato訳)
■犬の癌腫および中皮腫の治療においてリン酸トセラニブ(パラディア)の回顧的評価
Retrospective evaluation of toceranib phosphate (Palladia) in the treatment of canine carcinomatosis and mesothelioma
Vet Comp Oncol. 2024 Apr 15.
doi: 10.1111/vco.12972. Online ahead of print.
Kelly A Hicks , Haley J Leeper , Kaitlin M Curran
犬の癌腫(CC)および中皮腫(CM)は珍しいが、昔から予後不良の攻撃的な腫瘍である。CCおよびCMに対する治療に関する情報は限られている。
この回顧的研究の目的は、CCおよびCMの犬において、リン酸トセラニブ(パラディア)の効果と許容性を評価することだった。米国獣医内科学学会(ACVIM)腫瘍学リストサーブから症例を請い、回顧的に再検討した。適格には、CCあるいはCMの細胞及び/あるいは病理組織学的診断を必要とした。
合計23症例が含まれた(CC=14、CM=8、両方=1)。82%(19/23)の犬は浸出液があった。最良総合奏効率(BORR)は30.4%(13%完全奏功(CR)、17.3%部分奏功(PR))だった。安定疾患(SD)は浸出液がない4頭を含む14頭(60.8%)で認められた。最も一般的なトセラニブの関連した有害事象は、グレード1または2の下痢あるいは食欲低下だった。
全頭において無増悪生存期間(PFS)の中央値は171日(範囲、7-519日)で、総生存期間中央値(MST)は301日(範囲、49-875日)だった。単に滲出液のある犬で評価した時、FPS中央値は171日(範囲、7-519日)で、総MSTは285日(範囲、49-875日)だった。
この報告は、トセラニブがCCおよびCMに対する許容性が良く、見込みのある治療であることを証明する。浸出液があるものとないもので、CCおよびCMの管理において、トセラニブの生存有益性を客観的に評価するため、無作為化対照前向き研究が必要となるだろう。(Sato訳)
■体幹部定位放射線治療を行った犬の原発性肝臓腫瘍:ケースシリーズ
Canine primary liver tumors treated with stereotactic body radiation therapy: A case series
Vet Radiol Ultrasound. 2024 Jan 27.
doi: 10.1111/vru.13336. Online ahead of print.
Qiao Ying Pauline Chan , Deanna Morrow , David Lurie
体位放射線治療(SBRT)は、ヒトの切除不可能な肝細胞癌(HCC)に対し、代替治療オプションとして使用されることが増えている。比較的に、HCCsの犬のSBRTの発表は限られている。
この回顧的、記述ケースシリーズの目的は、2か所の個人施設で、強度変調回転照射を用い、HCCと画像検査で示された原発肝腫瘍の犬においてSBRTの臨床結果と毒性データを評価することだった。
2018年から2023年の間に治療した14頭の犬の医療記録を再検討した。全ての犬は肉眼的腫瘍で、14頭中9頭は細胞診あるいは病理組織検査でHCCの診断が確認された。最も長い腫瘍の径の中央値は5.5cmだった。肝臓容積に関連する計画上のターゲットボリュームの割合の中央値は27.1%だった。ほとんどの犬は7-7.5Gyの1日3回分割照射で治療した。全ての犬は放射線治療プログラムを完了した。
HCCの犬の9頭中3頭は、部分反応と臨床的改善を示した。HCCの犬9頭中5頭は安定疾患だった。HCCの犬9頭の総生存期間中央値は164日だった(範囲:93-706日)。1頭の晩期グレード5肝臓、2頭の晩期グレード3腎臓副作用が報告された。1頭は同じHCC治療野へのSBRTを繰り返し行い、1頭はバイフォーカルのHCC治療野へのSSBRTの2コースを行い、2頭ともグレード2以上の急性および慢性毒性はなかった。(Sato訳)
■迅速ラマン分子尿検査を用いた犬の癌検出
Cancer detection in dogs using rapid Raman molecular urinalysis
Front Vet Sci. 2024 Feb 7:11:1328058.
doi: 10.3389/fvets.2024.1328058. eCollection 2024.
John L Robertson , Nikolas Dervisis , John Rossmeisl , Marlie Nightengale , Daniel Fields , Cameron Dedrick , Lacey Ngo , Amr Sayed Issa , Georgi Guruli , Giuseppe Orlando , Ryan S Senger
Free PMC article
イントロダクション:犬の癌の有無は、尿サンプルのラマン分光法と、分光法データの計量化学分析により検出できた。その方法は、尿さ標本の多分子スペクトルフィンガープリントと化学組成に直接関連する数百の特徴で作り出された。その後、犬の癌の幅広い有無とともに、リンパ腫、尿路上皮癌、骨肉腫、肥満細胞腫の特定の有無の検出に使用された。
方法:腫瘍疾患のエビデンスあるいは病歴のない89頭、癌と診断された100頭、非腫瘍性の尿路あるいは腎疾患と診断された16頭から自然排尿、膀胱穿刺、カテーテルにより尿サンプルを採取した。ラマンスペクトルは、未処理の液体の尿サンプル原液のもので、ISREA、主成分分析法(PCA)により解析し、主成分の判別分析(DAPC)は、Rametrix®Toolbox softwareを用いた。
結果とディスカッション:その処置は犬の尿中の癌に対するスペクトルフィンガープリントを確認し、癌vs癌がない指摘に対し、全体の精度は92.7%の尿スクリーニング検査となった。尿スクリーンは、94.0%の感受性、90.5%の特異性、94.5%の陽性適中率(PPV)、89.6%の陰性適中率(NPV)、9.9の陽性尤度比(LR+)、0.067の陰性尤度比(LR-)だった。分析と生体分子関連から引き出された癌の識別に信頼できるラマンバンドが入手できた。その尿スクリーンは、上記の他の癌と尿路上皮癌の鑑別はより効果的だった。
簡単で非侵襲的で迅速な尿スクリーン(末梢血を使用した液体バイオプシーと比べ)を用いた犬の癌の検出と分類は、症例管理と治療(特に癌の特定タイプに素因のある犬種において)で重大な進歩である。(Sato訳)
■犬の前立腺癌の臨床病理学的特徴
Clinicopathologic Characterization of Prostatic Cancer in Dogs
Animals (Basel). 2024 Feb 10;14(4):588.
doi: 10.3390/ani14040588.
Demitria M Vasilatis , Paramita M Ghosh
前立腺癌(PCa)の犬の臨床病理学的データは、腫瘍タイプの鑑別、その後の治療方針決定に役立つかもしれない;しかし、それらのデータはあまり報告されない。
1992年から2022年の間で第三獣医教育病院から、原発性前立腺腺癌(PRAD)(n=56)と原発性前立腺移行上皮癌(P-TCC)(n=74)の犬の個体群統計、臨床病理、細胞学、組織学、生存データを獲得した。
PRADとP-TCCの鑑別において、赤血球分布幅(RDW)とアルブミン比(RAR)の診断的有用性を評価した。アンドロゲンレセプター(AR)発現に対し、PRAD腫瘍からの切片(n=50)を染色し、AR陽性(AR+)およびAR陰性(AR-)群で検査データを比較した。
RDWはPRADで増加したが、アルブミンは減少した(p<0.05)。P-TCCは細胞検査における壊死とMelamed-Wolinska bodies (MWB)に関係した(p<0.05)。RARは、PCa腫瘍の鑑別において容認できる診断的有用性だった(AUC=0.7;p<0.05)。生存率や転移はあいまいだった。AR+およびAR- PRAD腫瘍で臨床病理学的データあるいは生存率に違いはなかった(p>0.05)。
結論として、低アルブミン血症はPRADに有意に関係し、生存性は低下し、MWBと壊死は、細胞検査におけるP-TCCと有意に関係した。それらの臨床病理学的データは、臨床医にとって適切な治療と介入を導く死前のそれらの腫瘍の鑑別に役立つかもしれない。(Sato訳)
■7頭の犬の膀胱横紋筋肉腫のケースシリーズ
A case series of urinary bladder rhabdomyosarcoma in seven dogs
Open Vet J. 2023 Nov;13(11):1498-1503.
doi: 10.5455/OVJ.2023.v13.i11.15. Epub 2023 Nov 30.
Alessio Pierini , Maria Carla Criscuolo , Roberta Caccamo , Enrico Bottero , Andrea Campanile , Guido Pisani , Veronica Marchetti , Elena Benvenuti
背景:若年性膀胱横紋筋肉腫(ubRMS)は存在が知られている;しかし、その臨床的挙動および内視鏡検査の特徴に関する文献は少ない。この研究の目的は、犬のubRMSの臨床および内視鏡的特徴、転帰を述べることだった。
症例記述:経尿道内視鏡検査を行い、ubRMSの組織診断を受けた犬を回顧的に集めた。年齢中央値18か月(範囲6-32か月)の7頭の犬を、この回顧的多施設記述研究に含めた。腫瘍サイズの中央値は58mm(範囲30-65mm)で、腫瘍の位置は3症例で膀胱頚、2症例で膀胱三角、2症例で膀胱体だった。2頭の犬は単片側の尿管閉塞があった。2頭の犬は領域リンパ節の腫脹を呈し、1頭は転移と思われる肺病変があった。4症例でブドウのようなマスが報告され、2症例は固形で、不定な硬度(2つはもろく、2つは硬く、2つは報告がなかった)だった。
腫瘍の治療は、3症例で外科切除、1症例は外科切除と補助的ドキソルビシン、3症例は緩和的治療だった。総生存期間中央値(ST)は45日だった。STsは治癒を目指した治療を受けた犬(範囲70-120日)よりも、緩和ケアで治療した犬(範囲20-45日)の方が短かった。
結論:膀胱マスを呈する若い犬において、ubRMSを鑑別診断として考慮すべきである。この研究において、ubRMSアグレッシブな臨床的挙動を確認した。外科切除と化学療法はSTsを延長させると思われるが、予後は依然不良である。(Sato訳)
■腹部超音波検査で肛門嚢腺癌と診断された犬の腸骨仙骨リンパ節転移と高カルシウム血症の関係
Association between total hypercalcaemia and iliosacral lymph node metastasis in dogs diagnosed with anal sac adenocarcinoma using abdominal ultrasonography
Vet Med Sci. 2023 Nov 22.
doi: 10.1002/vms3.1324. Online ahead of print.
Darby Toth , David Upchurch , R Mackenzie Hallman
Free article
背景:犬の肛門嚢腺癌(ASACA)は、悪性の肛門周囲腫瘍で、腸骨仙骨リンパ節に転移することが多い。また、この腫瘍は悪性腫瘍の高カルシウム血症と関係する可能性がある。今日、主要な目的として、血中カルシウム濃度上昇と、推定あるいは確認したリンパ節転移との関係に注目した研究はない。
目的:この研究の目的は、ASACAと診断された犬で、総血清カルシウム濃度上昇と腸骨仙骨リンパ節転移との関係があるかどうかを調査することだった。
方法:1か所の二次診療施設の医療記録を検索し、2011年から2021年の間に細胞診あるいは病理組織検査でASACAと診断され、検査した犬を確認した。血清総カルシウム測定と腹部超音波検査を行っている犬のみを研究に含めた。全ての画像は、全ての犬の確認者に伏せた状態で、認定放射線医による再検討を行った。
結果:58頭のうち、33%(19/58)は総高カルシウム血症で、そのうち68%は腸骨仙骨リンパ節転移が確認あるいは疑われた。総高カルシウム血症は、腸骨仙骨リンパ節転移が確認あるいは疑われたことと有意に関係した(P<0.01)。しかし、転移が確認あるいは疑われた犬の46%(11/24)は、正常のカルシウム濃度だった。
結論:これらの結果を基に、総高カルシウム血症は、リンパ節転移を伴う確率が増すかもしれないが、総高カルシウム血症単独でリンパ節転移に対するスクリーニングツールとして使用できないと示唆された。ASACAと診断された犬は、総血清カルシウム値にかかわらず、完全なステージングを行うべきである。(Sato訳)
■進行した犬の肛門嚢腺癌に対する定位放射線治療:実験研究
Stereotactic radiotherapy for advanced canine anal sac adenocarcinoma: an exploratory study
Vet Radiol Ultrasound. 2023 Dec 18.
doi: 10.1111/vru.13317. Online ahead of print.
Claire Faletti , Nathaniel Van Asselt
肛門嚢腺癌(ASAC)の犬に対し、その経過において腹腔内および骨盤リンパ節への転移は早期に起こる。通常、死亡は局所領域の進行と関係する。外科的切除は選択の余地がある治療であるが、進行した症例では可能性がないかもしれない。肉眼的疾患の状況において、RTにより治療した犬は、38%-75%の総反応率を示したが、この領域のリスクがある器官(特に大腸、膀胱、脊髄)への副作用は報告されていた。定位放射線治療(SRT)は、迅速な照射量減少と低分割の高い原体治療計画を利用する。SRTは晩発性副作用のリスクを減らし、ASACsに対し大きな生物学的効果を作り出すことに役立つかもしれない。
この前向き記述実験研究の主な目的は、急性および晩発性副作用をモニターするため、客観的および主観的測定を用い、ASACの犬の小サンプル集団において、SRTプロトコールの安全性及び実行可能性を述べることだった。2つ目の目的は、処置から3-および6-か月後のCTを用いたSRTプロトコールの抗腫瘍反応を述べることだった。
5頭の犬が放射線プロトコールを完遂した。4頭はフォローアップCT所見で、完全反応(1)、部分反応(2)、安定疾患(1)が見られた。最小の急性副作用は観察された。いくつかのより大きな腫瘍容積にもかかわらず、OARに対する制約は、1頭の脊髄以外全てで達成された。
所見はASACの犬に対しSRTは安全で実行可能な治療であることを示した。SRTと他の治療の犬の結果を比較する今後の研究が求められる。(Sato訳)
■犬の膀胱癌の局所治療としてブレオマイシンの静脈投与と共に電気化学療法の安全性と実行可能性の評価
Evaluation of the safety and feasibility of electrochemotherapy with intravenous bleomycin as local treatment of bladder cancer in dogs
Sci Rep. 2023 Nov 29;13(1):21078.
doi: 10.1038/s41598-023-45433-4.
Marcelo Monte Mor Rangel , Laís Calazans Menescal Linhares , Krishna Duro de Oliveira , Daniela Ota Hisayasu Suzuki , Felipe Horacio Maglietti , Andrigo Barboza de Nardi
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犬の膀胱の尿路上皮癌(UC)の局所治療は難題である。症例の90%以上は筋層まで侵され、50%以上は外科的アプローチが難しい膀胱部位に発症し、抜本的な外科処置を必要とすることが多い。
この研究の目的は、膀胱UCに対する局所治療として、ブレオマイシン(BLM)の静脈投与と電気化学療法(ECT)の安全性と実行可能性を評価することである。
この前向き研究に、自発性膀胱UCの21頭の犬を含めた。領域/遠隔転移および漿膜の腫瘍浸潤は主な除外基準と考えた。
ECTあるいは術後すぐの期間に死亡はなく、縫合裂開はなかった。多くの犬(19/21)は軽度の副作用を発症したが、2頭の犬は尿道狭窄を発症した。完全反応(CR)は62%の犬(13/21)で達成した一方で、部分反応(PR)は24%(5/21)で達成された。生存期間および無病生存期間中央値は、それぞれ284日と270日だった。CRを達成した犬において、総生存期間は有意に良かった。
結論として、UCを伴う犬においてECTの許容性は良く、その安全性と実行可能性が証明された。それらのデータは、ヒトの疾患モデルとして、犬の膀胱UCにおけるETCの有効性の評価を目的とする新しい研究の道を切り開くものである。(Sato訳)
■症例報告:1頭の犬の肺転移が疑われる不完全切除の腎細胞癌に対するトセラニブによる補助的治療
Case report: Adjuvant therapy with toceranib for an incompletely resected renal cell carcinoma with suspected pulmonary metastasis in a dog
Front Vet Sci. 2023 Nov 13:10:1287185.
doi: 10.3389/fvets.2023.1287185. eCollection 2023.
Da-Eun Lee , Chang-Hoon Nam , Hun-Young Yoon , Kieun Bae , Kyong-Ah Yoon , Jung-Hyun Kim
ヒトや犬で原発性腎臓腫瘍は珍しく、腎細胞癌(RCC)は、この癌の最も一般的な型である。RCCは進行したステージで診断されることが多く、肺転移を認めることが多い。チロシンキナーゼ阻害薬(TKIs)は、ヒトの転移性RCCに対する標準的な補助治療である。同様に、獣医療において最近の試験は、完全な外科的切除を行い、遠隔転移を認めない早期ステージのRCCの動物に対し、TKIsを使用している。しかし、転移を伴う進行したRCCの症例において、TKIsの使用は一般的に報告されていない。
この症例研究は、不完全に切除したRCCと転移のある1頭の犬において、TKI療法の最初の臨床的結果を提示する。
5歳の避妊済みメスのチワワが、右の腎臓マスと転移を疑う複数の肺の結節で我々の病院に紹介されてきた。腎臓のマスを外科的に部分切除し、病理組織検査で高い分裂指数を伴うRCCであることが分かった。不完全な切除と肺転移が疑われることから、補助的化学療法を投与した。その犬の組織を用い、抗がん剤反応予測試験を行った。トセラニブが最も好ましい反応性を示したため、治療薬として選択した。
トセラニブは2.27mg/kgの用量で48時間ごとに経口投与した。定期的な潜在的な副作用に対する医療記録を入手し、収縮期血圧、CBC、血清生化学検査、尿検査が含まれた。トセラニブ治療から2週間後、肺の結節の部分的緩解が2か月間持続した。4か月のフォローアップ期間中、その犬は抗がん剤のいずれの副作用も経験しなかった。しかし、腎臓マスが最初に見つかってから6か月後、未確認の原因で死亡した。
この報告はRCCの犬に対するトセラニブの使用を述べている。この症例で、その犬は化学療法に対する初期反応を示し、重度の予後不良因子があったにもかかわらず、予測した3か月の寿命を6か月まで延長した。特に治療中に観察された有害事象はなかった。(Sato訳)
■外科的切除±補助的ドキソルビシンで治療した後腹膜血管肉腫の犬の臨床的特徴と予後
Clinical features and prognosis of retroperitoneal hemangiosarcoma in dogs with surgical resection with or without adjuvant doxorubicin
J Vet Med Sci. 2023 Oct 17.
doi: 10.1292/jvms.22-0533. Online ahead of print.
Masanao Ichimata , Atsushi Toshima , Fukiko Matsuyama , Eri Fukazawa , Kei Harada , Ryuzo Katayama , Yumiko Kagawa , Tetsushi Yamagami , Tetsuya Kobayashi
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後腹膜血管肉腫(RPHSA)は犬で珍しい腫瘍で、術後の予後はあまりわかっていない。
この研究の目的は、外科的切除を行った犬のRPHSAの臨床的特徴と予後を調査することだった。
この単一施設、回顧的コホート研究において、2005年から2021年の間に、後腹膜腫瘍に対し外科的切除を行って、HSAの病理診断を受けた犬の医療記録を再調査した。
無増悪生存期間(PFS)中央値と総生存期間(OS)はそれぞれ77.5日と168日だった。この研究において、犬のRPHSAは、内臓HSAと同様のアグレッシブな生物学的挙動を示した。
補助化学療法の効果を評価するため、より大きな犬の集団での今後の研究が必要である。(Sato訳)
■ポーランドの良性および悪性の犬の皮膚腫瘍の発生率と発生リスク:5年間の回顧的研究
Incidence and the risk of occurrence of benign and malignant canine skin tumours in Poland - a five-year retrospective study
J Vet Res. 2023 Sep 20;67(3):437-446.
doi: 10.2478/jvetres-2023-0048. eCollection 2023 Sep.
Anna Śmiech , Kamila Bulak , Wojciech Łopuszyński , Agata Puła
Free PMC article
イントロダクション:この研究の目的は、犬の皮膚腫瘍の頻度と分布に対するデータをまとめ、良性に対して悪性であるリスクを判定する。この判定は、腫瘍組織発生から生じ、犬の種類、性別、年齢、腫瘍の解剖学的位置に対して考察を与える。
素材と方法:ポーランドにおいて、この回顧的5年間の疫学研究に3139の犬の皮膚腫瘍が含まれた。一変量ロジスティック回帰解析を実施し、オッズ比(ORs)と95%信頼区間(CIs)を調べた。
結果:顕微鏡的分析は、良性腫瘍(65.02%)と同じく、間葉系およびメラニン細胞性腫瘍(59.57%)の有意な優勢を示した。最も多く診断されたのは、肥満細胞腫で全ての皮膚腫瘍の13.79%を占め、そのほかの一般的な腫瘍タイプは脂肪腫(6.40%)、血管周皮腫(5.96%)、悪性メラノーマ(4.65%)だった。
良性に対する悪性腫瘍のリスクは、オス犬よりもメス犬で1.212倍高かった。悪性上皮腫瘍の発生リスクがより高かったのは、ボクサー(OR4.091)、シャーマンシェパード(OR4.085)、フラットコーテッドレトリバー(OR43.596)で認められた。悪性間葉系腫瘍の発生リスクが高かったのは、ゴールデンレトリバー(OR4.693)、ボクサー(OR2.342)、ブルドッグ(OR3.469)、マルチーズ(OR2.757)で認められた。
結論:この結果は、犬の皮膚腫瘍の複合生物学の今後の研究に対し、参照ポイントとして役立つかもしれない。(Sato訳)
■定位放射線治療(3x10Gy)で治療した182頭の犬の副鼻腔腫瘍の回顧的評価(2010-2015)
A retrospective study of sinonasal tumors in 182 dogs treated with stereotactic radiotherapy (3 × 10 Gy) (2010-2015)
J Vet Intern Med. 2023 Sep 8.
doi: 10.1111/jvim.16838. Online ahead of print.
Hiroto Yoshikawa , Mary H Lafferty , Lynn R Griffin , Susan M LaRue
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背景:定位放射線治療(SRT)は、犬の副鼻腔腫瘍に対する新しい治療の1つである。急性および晩発放射線障害の発生および腫瘍のコントロールに関して報告された結果は一貫性がない。
目的:腹鼻腔腫瘍の犬におけるSRTの治療効果と予後指標を調べ、急性および晩発放射線障害を定量する
動物:細胞学、組織学、あるいはエックス線検査で診断された腹鼻腔腫瘍にSRTを行った182頭の飼い犬
方法:2010年から2015年の間にSRT(10Gy x 3)で治療した犬の医療記録を再調査した単一群回顧的研究。総生存期間(OST;SRTの初日から全ての原因で死亡した日まで)と疾患特異生存期間(DSST;腫瘍/治療に関係しない死亡を検閲したOST)の判定にカプラン-マイヤー解析を使用した。腫瘍は修正アダムス基準でステージ判定した。
結果:SRTの1コースで治療した犬のOSTとDSSTは、それぞれ441日(95%CI,389-493日)と482日(428-536日)で、3%の犬に皮膚/口腔急性障害が観察された。ステージ4の疾患の犬のDSSTは、他のステージと比べても統計学的違いを示さなかった(P=.64)。口-鼻(n=2)あるいは鼻-皮膚(n=11)瘻が7.1%の犬に中央期間425日(範囲:83-1733日)で発生した。SRT後の潜在的慢性鼻炎は、情報が得られた88頭中54頭(61%)で記録された。
結論と臨床的重要性:結果は、SRTの治療の多の報告に匹敵する。急性障害は最小限だった。修正アダムスステージシェーマは、SRTで治療した副鼻腔腫瘍の犬の予後判定に対し、不向きだと思われた。(Sato訳)
■犬の確認したあるいは推定された原発性肺癌の治療に対する体幹部定位放射線治療の効果を評価する回顧的研究
Retrospective study evaluating the efficacy of stereotactic body radiation therapy for the treatment of confirmed or suspected primary pulmonary carcinomas in dogs
Vet Comp Oncol. 2023 Aug 24.
doi: 10.1111/vco.12928. Online ahead of print.
Tiffany Wormhoudt Martin , Susan M LaRue , Lynn Griffin , Del Leary , Mary-Keara Boss
犬の原発性肺腺癌(PCCs)は、一般的に外科的に治療され、総生存期間中央値(MST)は約1年である;しかし、疾患の広がり、予後、あるいは飼い主の選択により、代替治療が考慮されている。体幹部定位放射線治療(SBRT)は、ヒトの癌患者で、手術の代替法として肺腫瘍の局所コントロールに利用されている。
局所コントロールのため、SBRTを受けた19頭の犬の21個のPCCsを回顧的に評価した。犬の肺癌ステージ分類(CLCSC)システムに従い、犬をステージ分類し、3頭はステージ1、5頭はステージ2、3頭はステージ3、8頭はステージ4だった。総MSTは343日で、38%の犬が1年時に生存していた。ステージは生存期間に有意に影響を及ぼすことはなかった(p=.72)。5頭(26%)はリンパ節腫脹があり、MSTはリンパ節腫脹がない犬と有意差はなかった(343 vs. 353日;p=.54)。18頭中5頭(28%)はVRTOG分類の急性反応を経験し、12頭中2頭(17%)はVRTOG分類の晩発反応を経験した。肺線量中央値、肺へのV5、V20、D30は、有害放射線事象に有意に相関しなかった。
12頭の犬はフォローアップの画像検査を行い、一番良い反応は完全反応(17%)、部分反応(42%)、安定疾患(42%)が含まれた。7頭の犬は進行性疾患で、SBRT後の中央値229日だった。
SBRTは手術に代わる安全で効果的な方法と証明され、CLCSCによるステージ3あるいは4に対し生存性の利点を持つかもしれない。(Sato訳)
■メス犬の卵巣腫瘍の臨床および超音波検査所見:回顧的研究
Clinical and ultrasonographic findings of ovarian tumours in bitches: A retrospective study
Theriogenology. 2023 Jul 22;210:227-233.
doi: 10.1016/j.theriogenology.2023.07.020. Online ahead of print.
A Troisi , R Orlandi , E Vallesi , S Pastore , M Sforna , M Quartuccio , V Zappone , S Cristarella , A Polisca
回顧的研究で、ペルージャ(イタリア)の大学の獣医教育病院とAnicura Tyrus動物病院(テルニ、イタリア)に紹介されてきた犬の集団において、卵巣腫瘍の発生率、臨床症状および超音波所見を調査した。研究した期間は、2005年1月から2021年12月だった。
合計1910頭が腫瘍に罹患していたが、異なる犬種と年齢の35頭のみに卵巣腫瘍があると分かった。卵巣の超音波検査は臨床症状を基に実施した;超音波所見から促された卵巣子宮摘出術と卵巣の病理評価から診断された。
我々の研究で、卵巣腫瘍に罹患したメス犬の年齢は、3-20歳(平均9.6±3.8)の範囲だった。卵巣のマスの病理組織所見で、16の顆粒膜細胞腫瘍(GCT)(46%)、7の腺腫(20%)、5の腺癌(14%)、2の奇形腫(6%)、1の平滑筋腫(3%)、1の黄体腫(3%)、1のtecoma(3%)、1の未分化胚細胞腫(3%)、1の血管肉腫(3%)が確認された。
特に、臨床症状に関して、69%は発情周期の異常(発情間隔の短縮、持続性の発情、発情間隔の延長)を示した。他の主な臨床症状は、腹部膨満、触知可能な腹部マス、陰門腟排泄物、多飲/多渇、乳腺のマスが含まれた。受診時、検査異常はわずかな貧血、好中球増加の白血球増多だった。
腫瘍は超音波検査で主に充実性:12/35(34%)(腺腫1、腺癌4、未分化胚細胞腫1、血管肉腫1、平滑筋腫1、黄体腫1、GCT1 、tecoma1、奇形腫1);嚢胞を伴う充実性13/35(37%)(3%)GCT 9、腺腫2、腺癌1、奇形腫1);主に嚢胞性10/35(29%)(GCT6、腺腫4)に分類された。
我々の研究において、出産管理あるいは予防的健康チェックで紹介されてきた無症候の犬において、超音波検査で卵巣腫瘍を疑うことが可能だった。我々のデータを基に、6歳から年に1回の生殖系の完全な定期検査の実施を提唱した。それでも、若い犬で繁殖管理中に卵巣腫瘍は存在し、生殖道のルーチンな超音波検査を含むことを提案する。(Sato訳)
■癌や肉腫の犬の血栓塞栓の有病率と止血障害との関連の前向き評価
A prospective evaluation of the prevalence of thromboemboli and associated hemostatic dysfunction in dogs with carcinoma or sarcoma
J Vet Intern Med. 2023 Aug 7.
doi: 10.1111/jvim.16828. Online ahead of print.
Paolo Pazzi , Geoffrey T Fosgate , Anouska Rixon , Josef Hanekom , Annemarie T Kristensen , Amelia Goddard
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背景:癌や肉腫の犬の血栓塞栓の有病率や関係する止血状態の理解は不明で、早期介入が可能かもしれない。
目的:癌や肉腫の犬の血栓塞栓の有病率と止血変化とそれらの関係を評価する;担癌犬における血栓塞栓疾患に対する止血変数の予測値を評価する
動物:肉腫の犬32頭、癌の犬30頭、健康で年齢を調整した犬20頭
方法:前向き横断研究。止血パネル(血小板濃度、トロンボエラストグラフィー、フィブリノーゲン、D-dimer濃度、第X、VII因子、抗トロンビン活性)を全ての犬で実施した。担癌犬は完全な検死と病理組織評価を行った。健康犬と腔内出血のある担癌犬、腔内出血のない担癌犬の比較;微小血栓のある担癌犬と無い担癌犬との比較を解析した。
結果:血栓塞栓疾患は、担癌犬の32/62頭(52%、95%CI、39%-65%)で確認された。微小血栓は31/62頭(50%、95%CI、37%-63%)で確認され、そのうち21/31頭(68%、95%CI、49%-83%)は、腫瘍内微小血栓のみで、10/31頭(32%、95%CI、17%-51%)は遠隔の微小血栓があった。目に見える血栓は3頭の担癌犬で確認された。
明白および非明白な播種性血管内凝固に潜在的に一致する止血変化が確認された担癌犬もいた。微小血栓のない担癌犬に比べ、微小血栓のある担癌犬のD-dimer濃度は有意に高く(P=.02)、血小板濃度は有意に低かった(P=.03)。500ng/ml以上のD-dimer濃度は、微小血栓が存在することの予測で80%感受性及び41%特異性だった。
結論:癌あるいは肉腫の犬の高い微小血栓有病率と付随する止血機能障害は、過去に報告されていないが、臨床的な重要性は不明である。D-dimer濃度上昇は、微小血栓の疑いを増すことになるかもしれない。(Sato訳)
■犬の脾臓の吸引しない超音波ガイド下細針サンプリングの疼痛と標本の質に対する針のゲージの影響
Effect of needle gauge on pain and specimen quality of ultrasound-guided fine needle sampling without aspiration of the canine spleen
Vet Radiol Ultrasound. 2023 Jul 17.
doi: 10.1111/vru.13277. Online ahead of print.
Mahéva Launay , Laurent Blond , Anne Geffre , Catherine Trumel , Catherine Layssol-Lamour
犬の脾臓実質の変化は、一般的な超音波検査所見である。脾臓の細針吸引生検(FNA)は迅速で安全な方法で、動物病院でルーチンに行われている。しかし、22ゲージ(G)針が一般診療により通常選択されていると報告され、使用される最も適切な針のサイズは依然不明である。
この前向き一施設方法比較研究の目的は、細胞標本の評価と処置中の動物の福祉に対する針のサイズの影響を評価することだった。
23、25、27G針を用いて超音波ガイド下で犬の脾臓FNAを行った。針は最初とその後の詳細な細胞学的評価を基に比較した。最初の評価は、徹底的な脾臓構成要素に言及した全体の細胞性、細胞の保持、血液希釈、詳細な細胞学的評価を調べた。福祉評価はスコアリングシステムを基に行った。
合計54頭の犬を研究に含め、54頭中54頭の福祉評価、54頭中35頭の細胞学的評価を1人あるいは2人のEuropean College of Veterinary Clinical Pathology認定細胞学者で評価した。最終の細胞学的診断は、針のサイズにかかわらず変わることはなかった。最初の評価で、23G針は、27Gの針よりも有意に高い細胞性を提供した。詳細な細胞学的評価に対し、中皮細胞とストロマの豊富さだけが針のサイズの影響を受けた。処置により誘発される疼痛は、23、25、27G針を用いて少ないと考えられ、27Gは最も少ない有害反応だった。
この研究からの所見で、犬の脾臓の超音波ガイド下の細針非吸引生検に対し、過去に発表されている標準的な22G針よりも小さいゲージの使用が支持された。高い細胞性と低い疼痛スコアにより、著者は非吸引法で23G針の使用を推奨する。(Sato訳)
■犬の神経膠腫あるいはその疑いの治療に対する定位放射線療法の効果
Efficacy of stereotactic radiation therapy for the treatment of confirmed or presumed canine glioma
Vet Comp Oncol. 2023 Jul 9.
doi: 10.1111/vco.12920. Online ahead of print.
Erin Trageser , Tiffany Martin , Braden Burdekin , Cullen Hart , Del Leary , Susan LaRue , Mary-Keara Boss
頭蓋内神経膠腫は、犬で2番目に多い脳腫瘍である。放射線療法は、この腫瘍タイプに対し最小侵襲の治療オプションを提供している。非調節放射線療法を使用を報告した初期の発表は、神経膠腫の犬の予後不良を示唆し、生存期間中央値は4-6か月だった;定位放射線療法(SRT)を用いたより最近の文献は、犬の神経膠腫に対する予後はより有望かもしれないと示し、生存期間は12か月に近いものだった。
一施設の回顧的研究を2010年から2020年の間で実施し、バイオプシーで神経膠腫を確認した犬やMRIの特徴を基に頭蓋内神経膠腫を仮診断し、SRTで治療した犬の結果を調査した。
23頭の飼い犬を含めた。短頭犬種が多く、13頭(57%)だった。SRTプロトコールは、16Gyシングル分割(n=1、4%)、18Gyシングル分割(n=1、4%)、24Gy1日1回3分割(n=20、91%)、27Gy1日1回4分割(n=1、4%)だった。21頭(91%)はSRT後に臨床症状が改善していた。総生存期間中央値(MST)は349日(95%CI、162-584)だった。疾患特異生存期間中央値は413日(95%CI、217-717)だった。
頭蓋内神経膠腫あるいはその疑いの犬に対し、治療プランにSRTを組み込んだ時、約12か月の生存期間中央値を達成できるかもしれない。(Sato訳)
■体幹部定位放射線治療で治療した犬の唾液腺癌:回顧的ケースシリーズ
Canine salivary gland carcinoma treated with stereotactic body radiation therapy: a retrospective case series
Front Vet Sci. 2023 Jun 27;10:1202265.
doi: 10.3389/fvets.2023.1202265. eCollection 2023.
Patricia Gualtieri , Tiffany Martin , Del Leary , Susan E Lana , Susan M LaRue , Mary-Keara Boss
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目的:この研究の目的は、局所進行性唾液腺癌(SGC)の犬の体幹部定位放射線治療(SBRT)後の治療結果を述べることである。
方法:一施設回顧的研究を、SBRTで治療した肉眼で見えるSGCの飼い犬で行った。シグナルメント、臨床的特徴、治療パラメーターを記録した。臨床的有益性は、フォローアップの身体検査と医療履歴を基に判定した。無増悪期間(PFI)、生存期間中央値(MST)、疾患特異的生存率(DSS)をカプラン-マイヤー解析で算出した。急性および遅発毒性はVeterinary Radiation Therapy Oncology Group (VRTOG)基準に従い記録した。
結果:6頭を研究に含めた。腫瘍起源は下顎(n=3)、耳下(n=2)、頬骨(n=1)唾液腺だった。SBRTは10Gyx3を毎日あるいは隔日で行った。全ての犬(100%)は34日の中央期間(範囲28-214)で治療による臨床的有益性を経験した。SBRT後に局所および領域リンパ節failureが報告された犬はいなかった。進行性の肺転移病巣は3頭の犬(50%)で証明された。PFI中央値は260日(範囲43-1014)で、MSTは397日(範囲185-1014)だった。DSS中央値は636日(範囲185-1014)だった。4頭の犬(66.6%)は転移性SGCあるいはその疑いで死亡した。報告された急性の副作用はグレード2の粘膜炎(n=1)、失明(n=1)が含まれた。遅発副作用の記録はなかった。
結論:SBRTは犬の侵襲性SGCに対し永続的な局所コントロールを提供するかもしれないと示唆される。大規模集団での今後の研究が正当化される。報告された急性および遅発性毒性の発生率は低かった。(Sato訳)
■小動物における癌診断のためのサーモグラフィーの応用
Applicability of thermography for cancer diagnosis in small animals
J Therm Biol. 2023 May;114:103561.
doi: 10.1016/j.jtherbio.2023.103561. Epub 2023 Apr 7.
André Gustavo Alves Holanda , Danila Evem Alves Cortez , Genilson Fernandes de Queiroz , Julia Maria Matera
医療用サーモグラフィーは、皮膚表面温度のモニターに使用される画像検査の1つである。最近の技術ではないが、その大衆化をリードする機器の近代化を伴い、2000年代からかなりの進歩を遂げている。癌の診断において、腫瘍形成プロセスと隣接する健康な組織との間の温度分布の差により、サーモグラフィーの応用が支持される。
癌細胞による熱酸性に関与するそのメカニズムは、新血管新生、代謝率の上昇、血管拡張、一酸化窒素と炎症誘発物質の放出が含まれる。現在、サーモグラフィーは、ポジティブな結果でヒトの皮膚および乳癌に対するスクリーニングツールとして広く研究されている。
獣医療において、その技術の有望性が示され、猫の皮膚および軟部組織腫瘍、犬の乳腺腫瘍、骨肉腫、肥満細胞腫、肛門周囲腫瘍で述べられている。
このレビューは、その技術の基本、モニタリング状況、獣医療での癌の相補的診断ツールとしてサーモグラフィーの役割、改善に対する今後の展望を議論する。(Sato訳)
■巨大アポクリン腺肛門腺癌(AGASACA)の犬の肛門嚢切除に関係する短期及び長期結果
Short- and long-term outcomes associated with anal sacculectomy in dogs with massive apocrine gland anal sac adenocarcinoma
J Am Vet Med Assoc. 2023 May 23;1-8.
doi: 10.2460/javma.23.02.0102. Online ahead of print.
Maureen A Griffin , Philipp D Mayhew , William T N Culp , Michelle A Giuffrida , Stephanie Telek , Ameet Singh , Michelle Oblak , Emmett Swanton
目的:巨大(>5cm)アポクリン腺肛門嚢腺癌(AGASACA)に対し、肛門嚢切除を行った犬の短期及び長期結果を評価する
動物:巨大AGASACAの飼い犬28頭
方法:回顧的多施設研究を行った。術前、術中、術後データを集め、無増悪期間(PFI)と総生存期間(OS)との関係に対し、変数を統計学的に分析した。
結果:肛門嚢切除時、19頭(68%)は同時に腸骨リンパ節の摘出も行い、術前にリンパ節転移が疑われた18頭中17頭(94%)が含まれた。5頭(18%)はグレード2の術中合併症を経験した。10頭(36%)は術後合併症を経験し、グレード3の合併症1頭、グレード4の合併症1頭が含まれた。持続的便失禁、しぶり、肛門狭窄となった犬はいなかった。19頭は補助的化学療法、放射線、あるいはその両方の治療を受けた。37%の犬が局所再発した。手術時にリンパ節転移のある犬は、転移のない犬よりも新規/進行性のリンパ節転移(10/17(59%)vs0/10(0%);P=.003)および遠隔転移(7/17(41%)vs0/10(0%);P=.026)を起こす確率が高かった。
PFI中央値は204日(95%CI、145-392)だった。OS中央値は671日(95%CI、225-上限に達せず)だった。手術時のリンパ節転移は、PFI短縮と関係した(P=.017)が、OSは関係しなかった(P=.26)。補助的治療は結果と関係しなかった。
臨床的関連:巨大AGASACAの犬は、局所再発と転移の高い発生率にもかかわらず、肛門腺切除後の長期生存を経験した。手術時のリンパ節転移は、PFIの負の予後指標だったが、OSはそうではなかった。(Sato訳)
■軟部組織肉腫の犬に対する結果を予測するノモグラムの開発
Development of a Nomogram to Predict the Outcome for Patients with Soft Tissue Sarcoma
Vet Sci. 2023 Mar 29;10(4):266.
doi: 10.3390/vetsci10040266.
Jonathan P Bray , John S Munday
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軟部組織肉腫(STSs)は、犬の一般的な皮膚あるいは皮下の腫瘍である。ほとんどのSTSsは最初に外科的切除で治療し、局所再発はほぼ20%の犬で起こるかもしれない。現在、STSの切除後の再発を予測することは難しいが、これができれば患者の管理の大きな助けとなるだろう。近年、ノモグラムはリスクファクターの組み合わせから、結果を腫瘍学者が予測できるツールとして出現している。
この研究の目的は、犬STSsに対するノモグラムの開発と、個別の腫瘍特性よりもノモグラムが患者の結果をよりよく予測できるかどうかを判定することだった。
この研究は、STSsに対する手術後の犬に対し、結果の予測を補助するためのノモグラムの役割を支持するため、獣医腫瘍学において最初のエビデンスを提供する。
この研究で開発したノモグラムは、25頭の犬の無腫瘍生存期間を正確に予測したが、1頭の再発は予測できなかった。ノモグラムに対する全体の感受性、特異性、陽性適中率、陰性適中率はそれぞれ、96%、45%、45%、96%(曲線下面積:AUC=0.84)だった。
この研究は、STSに対する修正手術あるいは補助的治療から恩恵を受ける犬を確認する助けに、ノモグラムは重要な役割を演じることを示唆する。(Sato訳)
■肝細胞マスに対し経カテーテル動脈塞栓を行った14頭の犬の治療反応と予後因子:回顧的研究
Therapeutic response and prognostic factors of 14 dogs undergoing transcatheter arterial embolization for hepatocellular masses: A retrospective study
J Vet Intern Med. 2023 May 24.
doi: 10.1111/jvim.16746. Online ahead of print.
Yuta Kawamura , Hiroki Itou , Akitomo Kida , Hiroki Sunakawa , Moe Suzuki , Kenji Kawamura
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背景:肝細胞マスに対する経カテーテル動脈塞栓(TAE)の治療効果と結果に関する情報は、獣医療で限られている。
仮説/目的:原発性肝細胞マスに対しTAEで治療した犬の治療反応、結果(総生存期間)、それらの予測因子を解析すること。我々はTAE前のより大きな腫瘍は、悪い結果と関係するだろうと仮説を立てた。
動物:14頭の飼い犬
方法:回顧的研究。2016年9月1日から2022年4月30日までの医療記録を再調査し、細胞あるいは病理組織検査で肝細胞由来と診断された肝臓のマスに対し、TAEで治療した犬を確認した。TAE前後のCT像を比較した。一変量Cox比例ハザード試験を実施し、変数と生存性の関係を評価した。一変量線形回帰分析を実施し、変数と腫瘍縮小率((TAE後容積-TAE前容積)/TAE前容積 x100)の関係を評価した。
結果:生存期間中央値は419日(95%CI、82-474)だった。腹腔内出血の病歴(P=.03)、TAE前の腫瘍容積/体重(P=.009)は総生存期間と有意に関係した。平均縮小率は、-51%±40%だった。TAE前の腫瘍容積/体重比(cm3/kg;P=.02、相関係数=0.704)は、腫瘍縮小率と有意に相関した。
結論:腹腔内出血の病歴や、TAE前の腫瘍容積/体重の比率が大きいことは、TAE後の不利な結果に対する予測因子となる可能性があった。TAE前の腫瘍容積/体重比は、治療効果に対する予測因子となる可能性があった。(Sato訳)
■小さな原発性アポクリン腺肛門腺腺癌(AGASACA)は局所領域リンパ節転移の臨床的関連率を持つ
Small primary apocrine gland anal sac adenocarcinoma (AGASACA) tumors have a clinically relevant rate of locoregional lymph node metastasis
Vet Comp Oncol. 2023 Mar 1.
doi: 10.1111/vco.12890. Online ahead of print.
Anna E Jones , Brandan G Wustefeld-Janssens
アポクリン腺肛門腺癌(AGASACA)は、犬の非常に関連した疾患で、疾患経過中に高いリンパ節(LN)転移を起こす。最近の研究では、死亡のリスクと疾患進行は、有意にそれぞれ2cmと1.3cm以下の原発腫瘍のサイズに関係したことを示した。
この研究の目的は、受診図のLN転移と診断された直径2cm以下の原発腫瘍のある犬の比率を報告することだった。
これはAGASACAに対する治療を行った犬の1施設の回顧的研究だった。身体検査、原発腫瘍の測定値が入手でき、腹部ステージ判定を実施し、細胞診あるいは組織検査による腹部リンパ節を確認した犬を含めた。
5年間で116頭の犬を再検討し、53頭(46%)は受診時にLN転移があった。2cm未満の原発腫瘍の犬に対する転移率は20%(9/46頭)で、2cm以上の原発腫瘍の犬は63%(44/70頭)だった。腫瘍サイズ群(<2cm vs. ≧2cm)と受診時の転移の存在との関係は、OR7.0(95%CI:2.9-15.7)で有意だった(P<0.0001)。
原発腫瘍のサイズは受診時のLN転移と有意に関係したが、<2cm群でLN転移が存在した犬の比率は比較的高かった。このデータは、小さな腫瘍の犬でもやはりアグレッシブな腫瘍生物学を持つと思われる。(Sato訳)
■小型犬種の原発性肺腺癌の外科的切除後の予後:52症例(2005-2021)
Prognosis of primary pulmonary adenocarcinoma after surgical resection in small-breed dogs: 52 cases (2005-2021)
J Vet Intern Med. 2023 May 25.
doi: 10.1111/jvim.16739. Online ahead of print.
Masanao Ichimata , Yumiko Kagawa , Keita Namiki , Atsushi Toshima , Yuko Nakano , Fukiko Matsuyama , Eri Fukazawa , Kei Harada , Ryuzo Katayama , Tetsuya Kobayashi
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背景:犬の肺癌において、腫瘍のサイズは重要な予後的因子で、最近の犬の肺癌ステージ分類(CLCSC)は、腫瘍のサイズの再分化が提唱されている。同じ分類シェーマが小型犬種の犬に対し使用できるかどうかは不明である。
目的:CLCSの腫瘍のサイズ分類が、肺腺癌(PACs)を外科的に切除した小型犬種の犬の生存性や進行性を予想するかどうか調査すること
動物:PACの小型犬種の飼い犬52頭
方法:1施設の回顧的コホート研究を2005年から2021年の間で行った。PACと組織学的に診断された肺のマスを外科的に切除した体重15kg未満の犬の医療記録を調べた。
結果:腫瘍のサイズが≦3cm、>3cmから≦5cm、>5cmから≦7cm、>7cmの犬の頭数は、各15、18、14、5頭だった。無増悪期間(PFI)中央値と総生存期間(OST)は、それぞれ754日と716日だった。
一変量解析において、臨床症状、リンパ節転移、マージン、組織学的グレードは、PFIに関係し、年齢、臨床症状、マージン、リンパ節転移はOSTと関係した。CLCSの腫瘍のサイズ分類は、全てのカテゴリーのPFIと関係し、腫瘍のサイズ>7cmは、OSTと関係した。
多変量解析において、腫瘍のサイズ>5cmから≦7cmとマージンがPFIと関係し、年齢はOSTと関係した。
結論と臨床的重要性:CLCSの腫瘍のサイズ分類は、PACsを外科的に切除した小型犬種の犬において、重要な予後的因子となるだろう。(Sato訳)
■前頭洞癌の犬41例(2001-2022)
Frontal sinus carcinoma in 41 dogs (2001-2022)
Vet Comp Oncol. 2023 Feb 6.
doi: 10.1111/vco.12880. Online ahead of print.
Julia Gedon , Martin Kessler , Jarno M Schmidt
犬の前頭洞癌(FSCs)に対する報告は少ない。
このFSCの犬41頭(2001-2022)の回顧的レビューでは、犬のFSCの個体群統計および臨床特性を述べ、リン酸トセラニブ(TOC)とメロキシカムで治療した10症例の臨床的経験と全体の生存性を報告する。
診断時の年齢中央値は10.6歳(範囲:6.5-15.4歳)だった。オスとメスの比率は2.4;1だった。最も一般的な犬種はジャックラッセルテリア(JRT)(n=7;17.1%)とロットワイラー(n=3、7.3%)だった。中頭犬種(70.6%)が最も一般的に罹患し、短頭種は8.8%だった。
多く見られた臨床症状は、背側正中から眼にかけての頭蓋の変形(87.5%)、疼痛/頭を嫌がる(40%)、眼(22.5%)/鼻(17.5%)の分泌物、眼球突出(17.5%)が含まれた。診断までの徴候の持続期間は数日から9か月の範囲だった。多くの犬(69.4%)が前頭骨の内板の骨溶解の画像エビデンスがあるにもかかわらず、初診時の神経学的症状はなかった。11.5%の症例で、転移あるいは原発性肺腫瘍の同時発生を示唆する肺の変化が見られた。腫瘍のタイプは扁平上皮癌(58.5%)、不特定の癌(29.3%)、腺癌(9.8%)が含まれた。
10頭の犬はTOC(中央値2.8mg/kg、EODあるいは週3回)とメロキシカム(0.1mg/kg、EOD)(TOC-M)で治療し、8頭(80%)が頭蓋変形の主観的退行を起こした。TOC-Mで治療した犬の総生存期間中央値は、183.5日(範囲:120-434日)だった。
前頭洞癌は一般的に頭蓋変形を呈するが、明らかな神経学的症状はなかった。オス犬とジャックラッセルテリアは大きな比率を占めると思われる。FSCに対するTOC-Mの使用は有望で、今後の前向き評価が求められる。(Sato訳)
■口腔の髄外形質細胞腫が両腎に転移した犬の一例
Extramedullary plasmacytoma of the oral cavity metastasising to both kidneys in a dog
Vet Med Sci. 2023 Feb 7.
doi: 10.1002/vms3.1086. Online ahead of print.
Kyung Ho Park , Tae-Un Kim , Hyun-Woo Park , Seoung-Woo Lee , Su-Min Baek , Daji Noh , Jae-Hyuk Yim , Young-Jin Lee , Yeon-Gyeong Kim , Dong-Ju Son , Sang-Joon Park , Seong-Kyoon Choi , Kija Lee , Larry Chong Park , Jin-Kyu Park
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背景:多くの髄外形質細胞腫(EMPs)は孤立性で、頭や首部領域にできる。体の内蔵部分にできることもあるかもしれない。
目的:去勢済みオスのポメラニアンにみられた、口腔EMPの腫瘍性形質細胞が両腎に転移した症例を報告する。
方法:口腔マスと部分的上顎の外科的切除を実施して11か月後に口腔形質細胞腫が再発し、CT検査で両腎に腫瘍性マスも検出された。その犬は両腎の腎腫瘍の検出後12か月で死亡した。切除した腫瘍性のマスは病理組織学的観察と汎サイトケラチン、デスミン、CD3、MUM-1に対する免疫組織化学検査の通常処理を行った。
結果:再発したマスは主に高分化した形質細胞から成り、ごく一部は悪性の特色を持つアグレッシブな細胞が含まれた。モノクローナルガンモパシーは、多発性骨髄腫を除外するために実施した血清電気泳動で観察されなかった。マスは、核多形性と豊富な有糸分裂像を伴う形質細胞から成った。腫瘍は口腔EMPよりもアグレッシブな形態を伴い、MUM-1に対する染色は陽性だった。
結論:血清バイオマーカーと病理学的観察から、口腔から腎臓へのEMPの転移と再発の診断がなされた。我々の知るところでは、この症例で述べられた口腔EMPの両腎への転移は、今まで犬で報告はない。(Sato訳)
■犬の大きな低から中グレードの軟部組織肉腫の外科的切除後の長期結果
Long-Term outcome following surgical excision of large, low to intermediate grade soft tissue sarcomas in dogs
Aust Vet J. 2023 Feb 7.
doi: 10.1111/avj.13232. Online ahead of print.
A Davis , G Hosgood
イントロダクション:軟部組織肉腫(STS)は、腫瘍の異質なグループの1つで、様々な間質細胞起源、大きさ、組織学的グレードを呈する。大きな軟部組織肉腫は、切除の可能性により手術の困難を引き起こし、予後が悪いだろうと良好な手術候補者を退けることも多い。
目的:大きな(≧5cm)、低から中グレードの軟部組織肉腫を外科的に切除した犬の長期結果を評価する
方法:2009年から2021年の間にSTS切除のために来院した犬の医療記録を再検討した。シグナルメント、腫瘍の部位とサイズ、術前細胞および組織検査、術前画像検査、手術所見、術後組織学的診断と結果に関する情報を入手した。新しく皮膚あるいは皮下STS(1平面が少なくとも5cm以上)の外科的切除行い、組織学的に低から中グレードと診断された犬を含めた。長期フォローアップデータは診察、電話、emailを通して入手した。
結果:大きな低から中グレードのSTSの39頭の犬を含めた。多くの腫瘍はグレード1(28/39)で、主に大腿および胸部に位置していた(17/39)。全ての症例で腫瘍は少なくともマージンナロー切除と深部筋膜面で切除されていた。組織学的マージンは15/39で完全、8/39で近接(1-3mm)、4/39で不完全、12/39で不明だった。全ての部位は一次的に直接(22/39)あるいはフラップ再建(17/39)で閉じられていた。長期フォローアップ(中央値1064日)は、良好な術後機能を報告し、2/39の飼い主は局所再発を報告した。10/39でマイナーな合併症が発生し、外科的介入が必要なメジャーな合併症は5/39で発生した。
臨床的意義:大きな低から中グレードのSTSsは、適切な症例選択と計画が考慮されたときは、外科的に切除で良好な長期機能と結果を得られることができる。皮膚フラップ再建が必要な場合、それらの使用に関して起こりうる合併症を飼い主に知らせておくべきである。(Sato訳)
■甲状腺腫瘍の犬の甲状腺切除:144症例の生存解析(1994-2018)
Thyroidectomy in dogs with thyroid tumors: Survival analysis in 144 cases (1994-2018)
J Vet Intern Med. 2023 Feb 27.
doi: 10.1111/jvim.16644. Online ahead of print.
Daniela Enache , Livia Ferro , Emanuela M Morello , Federico Massari , Giorgio Romanelli , Stefano Nicoli , Stefano Guazzetti , Federico Porporato , Eric Zini
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背景:甲状腺切除を行った甲状腺腫瘍の犬の結果の予測因子を調査している研究は少ない
目的:甲状腺切除により治療した甲状腺腫瘍の犬の生存性を算出し、予後因子を確認する
動物:甲状腺切除を行った甲状腺腫瘍のある飼い犬144頭
方法:回顧的研究。解析したデータには、受診した病院と手術の年、シグナルメント、チロキシン濃度、甲状腺腫瘍の特徴(罹患葉、サイズ、侵襲性、病理組織学的タイプ)、血栓症、転移、追加の手術および治療、補助化学療法の投与が含まれた。予後因子と生存性(手術から死亡までの期間)の関係は、原因別ハザード比(HRcs)と95%信頼区間(CI)の算出で評価した。死亡の原因は甲状腺関連あるいは他の原因として分類した。
結果:総生存期間中央値は、802日(95%CI=723-1015日)だった;89頭(77.4%)は>500日生存した。入院時に転移は12頭(8.3%)で確認され、高い甲状腺癌関連致死率と関係した(HR=5.83、95%CI=1.56-21.78;P=.09)。血栓症は40頭の犬で発生し、他の原因による死亡のリスク増加と関係した(HR=2.73、95%CI=1.18-6.35;P=.019)。非濾胞状癌(HR=4.17、95%CI=1.27-13.69;P=.018)と化学療法の投与(HR=3.45、95%CI=1.35-8.82;P=.01)は、甲状腺癌関連死の高いリスクと関係した。
結論と臨床的重要性:甲状腺切除を行った甲状腺腫瘍の犬は、余命が長い。非濾胞状癌と転移がまれに存在するにもかかわらず、これらの犬の一部で甲状腺切除は依然、考慮されるべきである。(Sato訳)
■腫瘍による二次的な敗血症性腹膜炎の犬の外科的治療と結果を評価する回顧的研究
Retrospective Study Evaluating Surgical Treatment and Outcome in Dogs with Septic Peritonitis Secondary to Neoplasia
J Am Anim Hosp Assoc. 2023 Mar 1;59(2):85-94.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7306.
Laura E Selmic , Carolyn L Chen , Janis Lapsley , Page Yaxley , Megan Brown , Vincent A Wavreille , Giovanni Tremolada
敗血症性腹膜炎は命を脅かす疾患で、他の疾患過程の中で腫瘍が原因となり得る。腫瘍により引き起こされる敗血症性腹膜炎の動物の結果を直接評価した獣医の文献はない。
この研究の目的は、犬の腫瘍性および非腫瘍性疾患により引き起こされる敗血症性腹膜炎の間で、退院までの生存率と合併症率の違いを評価することだった。
1施設の回顧的横断コホート研究を実施し、2010年1月1日から2020年11月1日までに敗血症性腹膜炎の外科的治療を行った犬を確認した。
合計86頭の犬が含まれ、敗血症性腹膜炎の原因が腫瘍性の犬は12頭、他の原因の犬は74頭だった。敗血症性腹膜炎に関係する最も一般的な腫瘍性病変は、消化管型リンパ腫と肝細胞性腺腫だった。腫瘍の存在は、術中あるいは術後すぐの合併症の発生に対して有意な因子ではなく、生存して退院する機会を減らすこともなかった(P<.09)。
臨床医や飼い主は、原発性、局在性の腫瘍病変の診断だけで、敗血症性腹膜炎に対する治療の続行を思いとどまるべきではない。(Sato訳)
■124頭の犬の肝臓マス切除の分割位置と短期結果の関係
Association between divisional location and short-term outcome of liver mass resection in 124 dogs
Vet Surg. 2023 Feb 13.
doi: 10.1111/vsu.13941. Online ahead of print.
Vaughan W Moore , Joanna White , Andrew Malcolm Marchevsky
目的:外科切除後の短期結果に対し、肝臓マスの分割位置の関係を評価する
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:飼い犬(n=124)
方法:個体群統計、手術所見、結果に対する記録を再検討した。マスの位置と死亡率、術中合併症、術後合併症との関係を、多変量ロジスティック回帰モデルで調べた。
結果:肝臓マス(124)は、中央(34)、右(18)分割よりも左(72)分割でより多かった。フォローアップ中央値は286日(範囲:14-2043日)だった。術中合併症は、14/154頭(11.3%)で起こり、術後合併症は35/122頭(28.7%)だった。8/124頭(6.5%)において、マスの位置と死亡率に関係は見つからなかった。術後合併症は、右分割領域のマスの切除中により一般的な、胸郭まで切開を伸ばした場合に起こる確率が高かった(P=.020)。術後合併症は、手術を胸腹部(TA)ステープラーで(P=.005)、外科専門医により(P=.033)、より体重の重い犬(P=.027)で実施した時に起こる確率は低かった。術中合併症の確率は、TAステープラーなしで手術をした場合に19倍高かった(P=.006)。術中合併症は右分割領域のマスに比べ、左で関係することは少なかったが(P=.007)、中央分割ではそうではなかった(P=.0504)。
結論:右分割領域のマスは、術中合併症の傾向はあるが、術後合併症ではそうではなかった。
臨床的意義:臨床医は、右分割領域のマスの治療を計画する時、術中合併症のリスクが高いことを予想しておくべきである。(Sato訳)
■症例報告:混合型肝細胞-胆管癌の不完全切除の犬に対してトセラニブによる補助的化学療法
Case report: Toceranib as adjuvant chemotherapy in a dog with incompletely resected combined hepatocellular-cholangiocarcinoma
Front Vet Sci. 2023 Jan 4;9:963390.
doi: 10.3389/fvets.2022.963390. eCollection 2022.
Sang-Won Kim , Ju-Won Choi , Jeon-Mo Kim , Hun-Young Yoon , Kieun Bae , Kyong-Ah Yoon , Jung-Hyun Kim
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11歳のメスの雑種犬が、腹部膨満と肝酵素濃度上昇を呈した。CT検査により横隔膜と後大静脈に接する左中葉に多発嚢胞性肝臓マスが明らかとなった。そのマスは部分的肝切除により切除されたが、横隔膜との癒着により完全に切除できなかった。その組織は病理組織評価に提出し、ステージIIIの混合型肝細胞性-胆管癌(cHCC-CC)と診断された。不完全切除からの残存腫瘍組織を考慮し、補助的化学療法が勧められた。
その犬から得られた腫瘍組織は、抗がん剤反応予測試験を用いて評価し、その結果は、この犬に対し最も効果的な化学療法剤はリン酸トセラニブであると示した。
トセラニブを開始し(3.1mg/kg、PO、毎48時間)、定期的な副作用評価(全身血圧測定、CBC、血清生化学評価、尿検査を含む)を最初の2か月は2週間間隔で、その後は2か月ごとに実施した。エックス線および超音波検査は、最初の2か月が1月ごとに、その後2か月ごとに実施した。副腎皮質機能亢進症の併発は、トリロスタンで管理した(1-5mg/kg、PO、毎12時間)。
その犬は化学療法の重大な副作用、明白な再発あるいは転移を示さなかった。トセラニブの反応は部分的反応と評価し、その犬は腫瘍切除から23か月以上の今も生存している。
これはcHCC-CCの1頭の犬に対し化学療法を記述している最初の症例報告である。(Sato訳)
■犬の扁桃腺癌:123症例の治療結果と潜在的予後因子
Tonsillar carcinoma in dogs: Treatment outcome and potential prognostic factors in 123 cases
J Vet Intern Med. 2023 Jan 27.
doi: 10.1111/jvim.16623. Online ahead of print.
Elisabetta Treggiari , MacKenzie A Pellin , Giorgio Romanelli , Gianluca Maresca , Irina Gramer , Andrew D Yale , Evi Pecceu , Matteo Pignanelli , Juan Borrego , Katarzyna Purzycka , Davide Berlato
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背景:扁桃腺癌はまれに犬で報告される。治療後の結果に対する情報はあまりなく、予後は注意が必要から、不良である。
仮説/目的:細胞診あるいは組織病理診断による扁桃腺癌の犬の1集団において、治療結果と潜在的予後因子を評価する
動物:細胞診あるいは組織病理により確認された扁桃腺癌の飼い犬123頭
結果:治療には外科手術、化学療法(従来の、チロシンキナーゼ抑制剤あるいはメトロノーム化学療法)、放射線治療、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)、それらの組み合わせが含まれた。外科手術は68症例で実施し、化学療法は64症例でNSAIDsと関連して投与され、NSAIDsは14症例で単独使用され21症例は手術と関連したが、放射線治療は20症例で単独、あるいは外科手術や放射線療法との組み合わせで使用した。総生存期間(OST)は126日(95%CI、88-164日)だった。有意に長く生存(P<.001)したのは、転移疾患のエビデンスがない犬だった(生存期間中央値381日;95%CI、116-646)。他の有意な正の予後因子は、受診時に臨床症状がない、外科手術(扁桃切除)、補助化学療法の使用、NSAIDsの使用が含まれた。
結論および臨床的重要性:扁桃腺癌の犬において、症状がない犬、手術で治療した犬、補助化学療法を受けた犬、NSAIDsを投与された犬は、過去に予想されたものより予後は良いかもしれないが、総生存期間は短いままである。(Sato訳)
■オス犬の肛門周囲腺腫の薬物治療
Pharmacological Treatment of Perianal Gland Tumors in Male Dogs
Animals (Basel). 2023 Jan 28;13(3):463.
doi: 10.3390/ani13030463.
Adam Brodzki , Wojciech Łopuszyński , Piotr Brodzki , Katarzyna Głodkowska , Bartosz Knap , Paulina Gawin
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アンドロゲン(AR)やエストロゲン(ER)レセプターの存在は、正常な肛門周囲(肝様)腺や、肛門周囲腫瘍に、ともに証明されている。
この研究の目的は、肛門周囲腺腫においてARとERの発現の間の関連と、抗ホルモン療法の有効性を証明することだった。
この研究は、肛門領域に腫瘍性病変がある41頭のオス犬で実施した。病変の病理組織評価は、24頭が腺腫、12頭が上皮腫、5頭は癌だった。治療はタモキシフェン1mg/kgと酢酸シプロテロン5mg/kgの経口投与だった。腫瘍径はノギスにより定期的に測定し、ミリメートル単位で記録し、測定は治療前に開始し、その後1、2、3、6、12、18、24か月目に行った。
結果は、ARおよびERレセプターが多く発現するのを特徴とする肝様腺腫は抗ホルモン療法に反応し、完全な腫瘍の退行を起こしたことを示す。ARおよびERレセプターの発現が少ない局所悪性肝様上皮腫や癌に対し、抗ホルモン療法は腫瘍のサイズを小さくすることは可能だったが、完全に治癒は不可能である。(Sato訳)
■外科的に切除した唾液腺癌に関係する結果と臨床的特徴
Outcomes and clinical features associated with surgically excised canine salivary gland carcinoma: A multi-institutional, retrospective, Veterinary Society of Surgical Oncology study
Vet Surg. 2023 Jan 16.
doi: 10.1111/vsu.13928. Online ahead of print.
Kaleigh M Bush , Janet A Grimes , Daniel S Linden , Tanja Plavec , Martin Kessler , Matteo Rossanese , Barbara Bennett , Laura Chadsey , Whitney S Coggeshall , Brad M Matz
目的:この研究の目的は、外科的に治療した唾液腺癌の犬の臨床的特徴、予後因子、結果を述べることだった。
研究計画:多施設遡及的ケースシリーズ
動物:16か所の施設で外科的に切除した唾液腺癌の飼い犬72頭
方法:2000年1月1日から2020年1月1日までに唾液腺切除を行った犬の医療記録から、シグナルメント、臨床症状、術前のステージング結果、術前のマスの評価、合併症、病理組織診断、局所再発、転移疾患、生存期間を再調査した。生存関数はKaplan-Meier estimatorで算出した。生存に関係する因子はログランク検定で個別に試験した。
結果:唾液腺癌に関係する総生存期間中央値(MST)は、1886日だった。局所再発は29/69(42%)の犬で発生し、総無病期間(DFI)は191日だった。転移は22/69(31.9%)の犬で起こり、総DFIは299日だった。手術時にリンパ節転移は11/38(28.9%)の犬に存在し、手術時にリンパ節切除を実施した;それらの犬のDFIは98日(P=.03)、MSTは248日(P<.001)と短かった。
結論:外科的に治療した唾液腺癌の犬の予後は、過去に報告されたものより好ましかった。節転移は犬の唾液腺癌に対する負の予後因子だった。
臨床意義:唾液腺癌の犬に対し、外科的介入は考慮すべきである。(Sato訳)
■220頭の犬における孤立性肝臓マスの術前経皮細針吸引生検による細胞診の臨床的有用性
Clinical Utility of Cytology from Preoperative Percutaneous Fine Needle Aspirates of Solitary Liver Masses in 220 Dogs: A Retrospective Study (2009-2019)
J Am Anim Hosp Assoc. 2023 Jan 1;59(1):12-19.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7283.
Megan Cray , Jessica Hokamp , Brittany Abrams , Brian D Husbands , Janet A Grimes , Hadley Gleason , David McChesney , Sue A Casale , Laura Elizabeth Selmic
犬に孤立性肝臓マスが確認された時、診断を得る試みとして一般に細針吸引生検(FNA)が使用される。孤立性肝臓マスに対するFNA細胞診の感受性/特異性を評価している文献で提供される情報は少ない。
我々は、肝臓病変の大きさや、空洞化の存在が、細胞診の出来に影響するだろうと仮説を立てた。
220頭の飼育犬に対する医療記録を入手した。組み入れ基準は、術前腹部画像検査、認定病理学者による細胞学的解釈がある孤立性肝臓マスの経皮的FNA、病理組織診断が得られた外科的バイオプシーあるいはマス切除を含めた。
6頭(2.7%)はFNA後の合併症を経験し、重度と考えられるものはなかった。正確な細胞診断に対する一致率は22.9%(49/220)だった。腫瘍性マスのうち、18.9%(35/185)が細胞診で正確に診断された。全体の感受性は60%で、特異性は68.6%だった。施設(P=0.16)、病変の大きさ(P=0.88)、空洞化(P=0.34)、針のゲージ(P=0.20)は、正確な診断と関係しなかった。
この研究は、肝臓マスのFNA後の合併症のリスクは低いが、FNAを基にした正確な細胞診の全体の成功率は、病理組織診断よりも低かったことを証明する。(Sato訳)
■犬の脾臓血管肉腫に対してドキソルビシン化学療法と併用した非特異的免疫療法(Immunocidin®)の予備的安全性評価
Pilot safety evaluation of doxorubicin chemotherapy combined with non-specific immunotherapy (Immunocidin®) for canine splenic hemangiosarcoma
PLoS One. 2022 Dec 22;17(12):e0279594.
doi: 10.1371/journal.pone.0279594. eCollection 2022.
Margaret L Musser , Giovanna M Coto , Yuan Lingnan , Jonathan P Mochel , Chad M Johannes
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犬の脾臓血管肉腫(HSA)は、脾摘や補助的ドキソルビシンによる治療にかかわらず、総生存期間(OST)が短い攻撃的な腫瘍の1つである。免疫システムの調節はヒトの様々な腫瘍に対し効果を示しており、HSAを含む犬の腫瘍に対しても効果的と思われる。イムノシジンは、マイコバクテリア細胞壁分画を基にした非特異的免疫療法である。予備的研究で、担癌犬においてイムノシジンの静脈内投与(IV)は安全であると示唆されている。
この研究の目的は、自然発生の脾臓HSAの犬において、ドキソルビシンとイムノシジン併用の安全性を評価することだった。2つ目の目的は、ドキソルビシンとイムノシジンの併用が安全だと分かった場合、HSAの犬において、その後の包括的前向き臨床試験をサポートするための予備的効果データを収集することだった。
ステージII-III脾臓HSAの犬18頭を募集し、脾摘から2週間後、ドキソルビシンとイムノシジンの連続IVを5回投与した。有害事象(AEs)はthe Veterinary Cooperative Oncology Group v1.1 (VCOG) schemeに従いグレードを付けた。総生存期間は、脾摘の日から死亡の日あるいはフォローアップができなくなるまでで算出した。
投与中のAEsは珍しく、最も一般的なものは高血圧だった。1頭の犬は肢と顔に単収縮を起こし、研究から除外した。注入後の一般的なAEsは、元気消失、食欲低下、下痢が含まれた。1頭はVCOGグレード5の下痢と血小板減少、貧血を起こした。その後の犬には、それらの症状を防ぐために投与法の修正を行った。併用療法で治療した犬のOST中央値は147日(範囲:39-668日)と算出された。
ドキソルビシンとイムノシジンの併用は全般的に安全であるが、ドキソルビシン単独よりも消化管への影響を引き起こすと思われ、この研究集団の犬において明らかなOSTの改善は見られなかった。(Sato訳)
■原発性肺癌の犬の臨床病理特性、術後結果、予後因子:61症例の遡及研究
[Clinicopathologic characteristics, postoperative outcome, and prognostic factors in dogs with primary pulmonary carcinomas - A retrospective study of 61 dogs]
Tierarztl Prax Ausg K Kleintiere Heimtiere. 2022 Oct;50(5):317-328.
doi: 10.1055/a-1949-0125. Epub 2022 Nov 2.
[Article in German]
Tanja Plavec , Žiga Žagar , Martin Kessler
イントロダクション:犬の原発性肺癌(PCL)は外科的に治療される。この研究の目的は、この腫瘍タイプにおいて、臨床および病理所見、術後生存期間中央値(mST)、予後因子に関する獣医データベースを増やすことだった。
素材と方法:2007年から2017年までに外科的に治療した62か所のPLCを持つ61頭の犬の遡及的解析。生存解析は、カプラン-マイヤーとログランク法で実施した。
結果:62の腫瘍のうち、35(56%)は肺の末端に位置し、21(34%)は肺門に近く、6(10%)は全体の葉を侵していた。49症例において、分化型(乳頭あるいは気管支肺胞)腺癌が診断された;未分化あるいは退形成性癌(n=10)と扁平上皮癌(n=2)は少なかった。特定の肺葉に対して素因はなかった。
13頭(21%)は臨床症状がなく、10頭(16%)は非特定的症状をしめし、呼吸器に関係しなかった。合計48頭(79%)の犬は、発咳、呼吸困難、元気消失、体重減少、運動不耐性、嘔吐および/あるいは発熱のような臨床症状を示した。気管気管支リンパ節(TBLN)の組織検査は、9症例で転移あり(N1)、42頭は転移なし(N0)、10頭はTBLN組織検査を実施しなかった。
長期フォローアップ情報は50頭の犬で入手できた。予後的影響の変数は、TBLN転移の存在(mST:N1 41日、N0 570日;p<0.01)、肺転移(mST:M1 125日、M0 630日;p<0.01)、組織学的サブタイプ(mST:気管気管支あるいは乳頭癌 620日;他の癌 135日;p<0.01);腫瘍の直径が3cm以上(mST:<3cm 1155日、≧3cm 330日 p=0.02)、腫瘍の位置(mST:肺門 330日;末端 650日;p=0.04)だった。
結論:PLCにおいて、TBLN状況、M1、腫瘍の位置、組織学的サブタイプ、腫瘍のサイズは重要な予後的関連因子である;予後的にネガティブな因子がない犬は、予後が良好である。1/3以上の犬は、無症候性(21%)あるいは呼吸器症状がない(16%)。(Sato訳)
■手術とメシル酸イマチニブで治療した犬の消化管間質腫瘍:3症例(2018-2020)
Canine gastrointestinal stromal tumours treated with surgery and imatinib mesylate: three cases (2018-2020)
J Small Anim Pract. 2022 Nov 6.
doi: 10.1111/jsap.13572. Online ahead of print.
E Treggiari , M Giantin , S Ferro , G Romanelli
目的:犬で消化管間質腫瘍(GISTs)は述べられ、平滑筋腫/平滑筋肉腫との鑑別は免疫組織化学で可能になり、その助けで組織学的に診断される。それらの腫瘍がc-kitを発現し、KITコーディング遺伝子に突然変異を持つ可能性がある症例もいる。
素材と方法:組み込みに考慮したのは、過去に病理組織および免疫組織化学で確認し、GISTと診断された犬だった。来院時の臨床症状、診断検査結果、腫瘍の位置、治療に対し、医療記録を再調査した。含めるため、犬はステージング処置を行い、イマチニブ単独あるいは手術と組み合わせていることとした。免疫組織化学およびKIT突然変異解析は、全ての含めた症例で評価した。
結果:3症例を含めた。全ての症例はステージング処置と外科的切除行っていた。腫瘍は胃(2症例)と盲腸(1症例)に位置していた。KITの変異状況を評価し、1症例でexon11の54-base pair欠失の存在を確認した。術後、再発、転移あるいは残存疾患の治療にイマチニブを使用し、肉眼的には完全寛解と安定疾患で、顕微鏡的に再発のエビデンスはなかった。フォローアップはそれぞれ、890日、120日、352日だった。
臨床意義:犬GISTのそれらの症例において、手術と内科治療はポジティブな結果を起こした。イマチニブの治療はよく許容し、明らかな反応を起こし、毒性の範囲は低かった。固形腫瘍およびGISTにおいてイマチニブの許容性及び効果に対する今後の研究は、その有効性と安全性を明確にするために必要である。(Sato訳)
■下垂体性脳卒中を伴う副腎皮質刺激ホルモン産生性下垂体腺腫の外科的減圧による治療:症例報告
Adrenocorticotropic hormone-producing pituitary adenoma with pituitary apoplexy treated by surgical decompression: a case report
BMC Vet Res. 2022 Nov 12;18(1):397.
doi: 10.1186/s12917-022-03502-2.
Sachiyo Tanaka , Shuji Suzuki , Mana Oishi , Satoshi Soeta , Ryosuke Namiki , Yasushi Hara
背景:下垂体依存性副腎皮質機能亢進症(PDH)は、獣医療でよく見られる内分泌疾患の1つである。しかし、犬の下垂体腫瘍性脳卒中(PTA)に対する報告はほとんどなく、その外科的治療に対する報告はない。したがって適切な治療は不明である。ここで、PDHとPTAの症例で、外科的に治療した犬の1例を述べる。
症例説明: ACTH刺激試験(刺激後コルチゾール:20.5μg/dL)、腹部超音波検査(副腎厚:左、5.7mm;右、8.1mm)、脳MRI(下垂体脳比(PBR)、0.61)を紹介病院で実施した持続的ALP上昇のあるメスの雑種犬(避妊済み;年齢、8歳8か月;体重、6.1kg))をPDHと診断した(0日目)。9日目、PDHの治療のための下垂体手術の準備のためにXXXXを受診した。しかし、10-15日目、元気と食欲喪失、血様下痢、嘔吐、意識レベルの低下を起こしたが、16日目、犬の状態は回復した。
術前のMRIスキャンを52日目(手術当日)に実施し、下垂体領域の背側に出血を示した(PBR、0.68)。PTA所見を基に、手術のリスクを飼い主に説明し、同意が得られた。経蝶形骨手術時、下垂体右側のPTA領域と周囲組織の癒着のため、PTA領域を残した部分的下垂体切除を実施した。切除した下垂体組織は、ACTH産生性腺腫と診断され、壊死と出血所見を伴っていた。290日目、内因性ACTHとコルチゾールレベルは、参照範囲を超えていなかった。
結論:10-15日目に発生した急性症状はPTAが原因である確率が高かった。ゆえに、急性副腎皮質機能低下症で見られるそれらと同様の症状が、PDHの犬で観察された時には、鑑別診断にPTAを含める必要がある。経蝶形骨手術は、PTAを発症したPDH罹患犬に有効かもしれないが、PTA後に発生する出血による組織の癒着には十分注意を払うべきである。(Sato訳)
■犬の爪下扁平上皮癌の犬種素因と予後
Breed predilections and prognosis for subungual squamous cell carcinoma in dogs
Can Vet J. 2022 Nov;63(11):1129-1134.
Olivia Chiu , Brian P Wilcock , Anne E Wilcock , A Michelle Edwards
目的:犬の爪下扁平上皮癌の有病率、犬種素因、臨床的挙動をより考証する
方法:2003年から2021年の間、カナダで1518の爪下扁平上皮癌を含む278812の犬のバイオプシー提出物からの記録の遡及的分析
結果:過去の研究と一致し、ジャイアントシュナウザー(オッズ比(OR):56.7)、スタンダードシュナウザー(OR:20.3)、ゴードンセッター(OR:18.3)、黒のスタンダードプードル(OR:11.1)、ケリーブルーテリア(OR:9.4)、ロットワイラー(OR:7.0)、黒い大型の数種の他の犬種は、爪下扁平上皮癌発症の強い素因があった。特に、ジャイアントシュナウザーとスタンダードプードルにおいて、他の指に更なる腫瘍の発症するリスクは56%だった。局所の術後の再発はなく、最初の診断から5年以内に転移が見つかるリスクは非常に低く4%だった。
結論:適度に大きい、黒いあるいはブラックアンドタンの犬は、爪下扁平上皮癌の有病率が顕著に増加している。少なくともジャイアントシュナウザーおよび黒のスタンダードプードルにおいて、他の指にさらに同様の腫瘍の発症するリスクは高いが、転移リスクは非常に低い。
臨床関連:黒い(あるいは黒が優勢)の大型犬において、爪下扁平上皮癌の組織診断を受けた獣医師は、飼い主に最初の診断から2,3年後に他の指に同様の腫瘍が発症するリスクがかなりあるが、局所再発あるいは転移のリスクは極端に低いとアドバイスすべきである。(Sato訳)
■心基底部腫瘍による右心閉塞がリン酸トセラニブで解消した犬の一例
Toceranib phosphate resolves right heart obstruction secondary to a heart base neoplasm in a dog
J Vet Cardiol. 2022 Sep 30;44:38-42.
doi: 10.1016/j.jvc.2022.09.003. Online ahead of print.
J Gregory , J Thomason , S Hocker
8歳去勢済みオスの45kgのラブラドールレトリバーが、2週間にわたる発咳と頻呼吸の評価で来院した。
心エコー検査で、右房室接合部に広がる約10cmの心基底部マスが明らかとなり、右房右室の圧迫を原因とした右側うっ血性心不全(腹水)を起こしていた。マスの細胞診は神経内分泌癌と一致した。位置と描写により非クロム親和性傍神経節腫あるいは異所性甲状腺癌が疑われた。
その犬はリン酸トセラニブとファモチジンで治療された。約4週間後のフォローアップで、臨床的に意義のあるマスの大きさの縮小により、右心の圧迫は解消していた。その犬の右側うっ血性心不全の治療のため、フロセミドとエナラプリルを処方した。
血行力学的に重要な心基底マスに対する治療オプションを考慮する時、リン酸トセラニブによる治療は迅速な臨床的利益を得られるかもしれない。(Sato訳)
■犬の肉眼的肛門腺腫瘍の放射線治療-遡及的研究
[Radiation therapy for the treatment of macroscopic canine anal gland tumors - a retrospective study]
Schweiz Arch Tierheilkd. 2022 Nov;164(11):789-799.
doi: 10.17236/sat00375.
[Article in German]
C Rohrer Bley , F Czichon , M Körner , C Staudinger , V S Meier
Free article
犬の肛門腺腫瘍は局所侵襲性で、局所領域骨盤リンパ節に早期転移する。特に切除不可能な腫瘍において、放射線療法は局所領域の腫瘍コントロールに対してよい方法である。骨盤域の臓器は急性および晩発放射線障害(慢性下痢、出血、狭窄あるいは腸穿孔)に感受性を持ち、主にそのような傷害は分割数に依存するため、この研究では、分割数の数を減らした(低分割)放射線プロトコールで有効性、副作用に関して研究した。
この遡及的研究は、12x3.8Gyの低分割根治的プロトコールで、画像ガイドによる強度を調節した放射線療法で照射を行った肉眼的肛門腺癌の犬13頭を述べる。
肉眼的病理は、肛門腺領域と/あるいは腰下リンパ節領域だった。13頭中10頭は進行した腫瘍疾患だった(ステージ3aあるいは3b)。過去の研究で、急性放射線反応は軽度から中程度で、いくらかの犬で報告されていた。
平均研究期間は572日(範囲105-1292日)だった。研究期間中に疾患の進行は7/13頭で観察された、あるいは疑われた:局所あるいは局所領域の進行は3頭(23%)で発生し、遠隔転移は4頭(31%)で発生した。無増悪期間の中央値は480日(95%CI、223-908)で、生存期間中央値は597日(95%CI、401-908)だった。治療から1年後、76.9%(95%CI、53.5-100)の犬は生存していた。
腫瘍の進行の確率は年齢が高くなるほど低く、その他、検査した腫瘍あるいは犬の要因で、進行あるいは生存期間に対する予後的影響を示すものはなかった。わずかな脱毛、色素沈着変化あるいは乾燥、鱗屑皮膚の他に、臨床的に関連する晩発副作用は観察されなかった。
中程度の低分割放射線治療プロトコール(12x3.8Gy)で治療した肉眼的肛門腺腫瘍のある犬において、中程度から長期腫瘍コントロールが期待できる。長期モニタリング中、深刻な副作用あるいは治療が必要な副作用は観察されなかった。(Sato訳)
■犬の固形腫瘍に対するショートコースの術前放射線療法後に続く外科的切除の安全性と実行可能性
Safety and Feasibility of Short Course Pre-Operative Radiation Therapy Followed by Surgical Excision for Canine Solid Tumors
Vet Comp Oncol. 2022 Oct 21.
doi: 10.1111/vco.12864. Online ahead of print.
Lauren Smith-Oskrochi , Brandan G Wustefeld-Janssens , Danielle Hollenbeck , Christian Stocks , Michael Deveau
固形腫瘍(特に早期ステージ)の外科的切除は、犬と猫の癌治療の基本である。多くの発表は、局所腫瘍コントロールと結果の強い関係を示している。局所コントロールを達成するため、ある症例では放射線療法と外科手術を組み合わせ、放射線療法は、ネオアジュバントあるいは補助的位置で行われている。
この研究の目的は、種々の固形腫瘍の犬に対し、ショートコースの術前(SCPO)放射線治療プロトコールを行い、続いて外科的切除を行った時の急性毒性、手術部位合併症データを報告することだった。
医療記録を再調査し、データを遡及的に分析した。SCPO放射線治療を行い、その後放射線の最終日あるいは2-3週後の切除で治療した皮膚あるいは皮下固形腫瘍のある犬を含めた。
35個の原発性腫瘍のある34頭の犬を含めた。急性放射線毒性は14部位(40%)で診断された。VRTOGスコアは、グレード1で50%、グレード2で43%、グレード3で7%だった。手術部位の合併症は、17%の犬で確認され、総手術部位感染率は11%だった。Clavien-Dindo分類に従い、2頭の犬は内科治療を必要とし(グレード2)、1頭の犬は全身麻酔下で外科的治療を必要とし(グレード3b)、1頭の犬は合併症の結果死亡した(グレード5)。ロジスティック回帰分析で、解剖学的部位は合併症と有意に関係していることが分かり、四肢の保護されている部分の腫瘍だった(P=0.02;OR0.06)。
■犬のインスリノーマの外科的切除の完全性を評価するための手術中の血糖値モニタリング:11症例
Blood glucose monitoring during surgery in dogs to assess completeness of surgical resection of insulinoma: 11 cases
J Am Vet Med Assoc. 2022 Oct 25;1-8.
doi: 10.2460/javma.22.07.0282. Online ahead of print.
Núria Comas Collgros, Jonathan Peter Bray
目的:インスリン分泌腫瘍の切除の完全性を、術中の血糖値の上昇を検出することで改善できるかどうか、これが長期結果を改善するかどうかを評価する
動物:インスリノーマと診断された11頭の飼い犬
方法:インスリノーマに対する治療として部分的膵臓切除を行った犬の医療記録の遡及的再調査。導入時、続いて膵臓マス±その後の各転移の疑いがある病変の切除時、血糖値が正常になるまで血糖値を測定した。無病期間および生存期間で結果を評価した。
結果:全ての症例で血糖値のポジティブな上昇が検出され、平均上昇は6.35±4.5mmol/Lだった。平均フォローアップは611日で、平均無病期間は382日、生存期間中央値は762日だった。腫瘍ステージは結果と関係しなかった。2度目の手術(転移病巣切除)を行った3症例で、無病期間の更なる延長を達成した。
臨床関連:この研究に含めたすべての症例において、術中血糖値の持続的上昇は、インスリノーマ組織のより完全な切除の確信を外科医に与え、結果を改善した。その後の再発インスリノーマ病変の転移病巣の切除も良好な結果が得られた。インスリノーマの外科的治療中の血糖値の術中モニタリングは、血糖値の上昇が観察されるまで外科医が探査を続け、異常な組織を切除できる。これは、外科医がより全ての活動性のインスリノーマ組織を確信を持って切除し、臨床結果を改善したことを示した。(Sato訳)
■犬の閉塞性尿道移行上皮癌の緩和治療に対する不可逆電気穿孔バルーン療法
Irreversible Electroporation Balloon Therapy for Palliative Treatment of Obstructive Urethral Transitional Cell Carcinoma in Dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Sep 1;58(5):231-239.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7160.
Emmanuelle Marie Butty , Bruce Forsyth , Mary Anna Labato
犬の移行上皮癌(TCC)の進行は、尿路閉塞を引き起こすことが多い。
この観察予備研究の目的は、部分的尿道閉塞のあるTCCの緩和的治療に対し、不可逆電気穿孔(IRE)バルーン療法の安全性と有効性を評価することだった。
TCCと診断され部分的尿道閉塞を起こしている3頭の飼い犬を登録した。超音波検査と膀胱鏡検査後、尿道腔内で膨らませたバルーンカテーテルデバイスを通し、IREパルスプロトコールを送り込んだ。処置後、その犬は一晩モニタリングを続け、再チェックは28日後に計画した。
処置中および処置後のモニタリングでの合併症は観察されなかった。28日後、1頭の犬の排尿は完全に正常化し、1頭は変動のない有痛性排尿困難、1頭はTCCの進行による尿道閉塞を呈した。超音波の再検査で、1頭の尿道マス径は38%減少していたが、他の2頭のマスの大きさは変動していなかった。
尿道閉塞を引き起こすTCCの緩和治療に対し、IREバルーン療法は実行可能で、見たところ安全な最小侵襲の新規治療と思われる。この治療の安全性、有効性、結果のより多くの特徴を得るため、今後の研究が必要である。(Sato訳)
■ドイツの犬の腫瘍発生率:109616件の病理組織診断の遡及的解析(2014-2019)
Tumour Incidence in Dogs in Germany: a Retrospective Analysis of 109,616 Histopathological Diagnoses (2014-2019)
J Comp Pathol. 2022 Sep 2;198:33-55.
doi: 10.1016/j.jcpa.2022.07.009. Online ahead of print.
Heike Aupperle-Lellbach , Julia M Grassinger , Andreas Floren , Katrin Törner , Christoph Beitzinger , Gerhard Loesenbeck , Tobias Müller
腫瘍実態の特徴は、その病気の動物のシグナルメントを考慮した正確な病理組織診断を基にしている。
この研究は、ドイツの犬の腫瘍のタイプ、頻度、犬種分布に対する包括的な最新の統計学的調査である。
109616件のドイツの犬の組織サンプルの病理組織学的データ(2014-2019)を処理し、遡及的に統計学的に調査した。
非腫瘍性疾患は、28650サンプル(35.3%)で見つかり、70966の腫瘍(64.7%)が診断された。一般的な腫瘍は、乳腺腫瘍(21.9%)、良性上皮皮膚腫瘍(15.4%)、肥満細胞腫(9.7%)、組織球腫(7.0%)、軟部組織肉腫(5.8%)、脂肪腫(5.8%)、メラニン細胞腫(5.2%)、歯原性腫瘍(4.7%)だった。
一般にビーグル、ビズラ、ボクサー、シュナウザー、スパニエル、フレンチブルドッグ、ゴールデンレトリバーが、雑種犬と比較して腫瘍のリスクが増加していた(オッズ比1.17-1.46;全:p≦0.001)。特に、ボクサー、ゴールデンレトリバー、ロットワイラー、シュナウザーは悪性腫瘍に罹患することが多かった。一方、いくつかの犬種(例えば、ウエストハイランドホワイトテリア、ビズラ、チワワ、ダックスフンド、ヨークシャーテリア)は、多数の良性腫瘍のタイプに罹患する頻度が高かった。
ジャーマンシェパード犬において血管肉腫のリスクが知られているにもかかわらず、この犬種で他の悪性腫瘍は珍しかった。腫瘍のタイプによっては、雑種犬と比較してある種の腫瘍に対してリスクが増加、減少あるいは同一である純血種もある。ゆえに、腫瘍疾患に対する犬種素因の議論は、臨床的に関連させるため、批判的にされなければならない。(Sato訳)
■切除不可能な肝臓癌が自然発生した犬において化学塞栓術あるいは静脈内投与後のドキソルビシン濃度を比較する薬物動態研究
Pharmacokinetic study comparing doxorubicin concentrations after chemoembolization or intravenous administration in dogs with naturally occurring nonresectable hepatic carcinoma
J Vet Intern Med. 2022 Aug 16.
doi: 10.1111/jvim.16520. Online ahead of print.
Nina Samuel , Chick Weisse , Allyson C Berent , Cléo P Rogatko , Luke Wittenburg , Kenneth Lamb
背景:切除不可能な肝臓癌(HC)の患者に対し、化学塞栓術は有望な治療オプションで、全身毒性を抑えた化学治療薬の送達を可能にするかもしれない。
仮説/目的:同じ犬で化学塞栓術あるいはIV投与後の血清ドキソルビシン濃度を比較する。局所領域送達は、測定可能な血清薬剤濃度を抑えることで反映する腫瘍の化学治療薬濃度上昇を起こすかもしれないと仮説を立てた。有害な血液学的事象は局所領域送達後に減少すると仮説を立てた。
動物:不完全に一部を切除したHCの飼い犬17頭
方法:前向き単群臨床試験。薬剤溶出性ビーズ経動脈化学塞栓術を血行停止の様々なレベル(停止なし、停止)で実施した。その後、選択した犬には静脈ドキソルビシン(IVC)を投与した。全身暴露は、血清ドキソルビシン濃度時間曲線下面積(AUC)、最大血清ドキソルビシン濃度(Cmax)、ドキソルビシン定量の最終の上限時間(Tlast)により定量した。治療後のnadir試験結果は、有害血液学的事象の評価に使用した。
結果:13頭は血行停止をしない処置、15頭は血行停止処置、9頭はIVC処置を実施した。IVCと比較して、血行停止なし、あるいは血行停止した時の最大血清ドキソルビシン濃度、AUC、Tlastは有意に低かった。nadir結果が利用できる犬のうち、血行停止をしない、あるいは血行停止した後の有害な血液学的事象は観察されなかった。IVC後の2頭は有害な血液学的事象を発症した。
結論/臨床関連:不完全切除のHCの犬に対し、薬剤溶出性ビーズ経動脈化学塞栓術は、局所腫瘍ドキソルビシン濃度を上昇させ、全身性化学治療暴露を減少させ、有害な血液学的事象がほとんどないというポテンシャルを持つ実行可能な治療オプションを提供する。(Sato訳)
■残存腫瘍分類シェーマを使用した犬の四肢軟部組織肉腫と肥満細胞腫の計画したnarrow切除後の不完全組織学的マージン
Incomplete histological margins following planned narrow excision of canine appendicular soft tissue sarcomas and mast cell tumors, using the residual tumor classification scheme
Vet Surg. 2022 Jul 13.
doi: 10.1111/vsu.13852. Online ahead of print.
David L Haine , Rachel Pittaway , Davide Berlato , Jackie Demetriou
目的:肥満細胞腫(MCTs)と軟部組織肉腫(STSs)の計画したnarrow切除(PNE)後の不完全組織マージンの頻度を述べることと、臨床症例において組織マージンを報告するため残存組織分類(R)シェーマを評価する
研究計画:遡及的臨床研究
サンプル集団:47のマスがある44頭の飼い犬
方法:STSsとMCTsのnarrow切除を計画して行った犬の医療記録を再検討した(2016-2019)。組織学的標本は1人の病理医により再検討しRスコア(組織学的に不完全/R1マージンは「ink上に腫瘍」と定義)を割り当てた。
結果:MCT PNEsの23頭中6頭(26%)、STS PNEsの42頭中10頭(23%)はR1マージンだった。R1マージンは、MCTsに対して6-10mm側面測定サージカルマージン (LMSMs)vs 0-5mmLMSM(1/14vs5/9)のPNEを行った時に確率が高くなったが、STSsではそうではなかった(3/7vs7/17)(P=.049)。Rシェーマは組織学的報告において、マージンの1mm以内に腫瘍細胞が不完全組織マージンと定義するより高い遡及的パーセンテージ一致を認めた(83%vs68%)。合併症は12/47の手術で発生し、追加の手術を必要とした犬はいなかった。腫瘍は3/18(17%)STSsおよび2/18(11%)MCTsで再発した。
結論:R1マージンは肥満細胞腫で、6-10mmのLMSMでPNEを実施した時にほとんど得られなかった。Rシェーマの使用は、病理組織学的マージン評価において一致性を増加させた。
臨床意義:計画したnarrow切除は、肢の温存のため四肢軟部組織肉腫および肥満細胞腫の病理組織学的診断に対し実行可能な方法の1つである。(Sato訳)
■犬の鼻腔内腫瘍に対するメガボルテージ放射線治療の結果とその臨床ステージとの関連
Outcomes of megavoltage radiotherapy for canine intranasal tumors and its relationship to clinical stages
Open Vet J. 2022 May-Jun;12(3):383-390.
doi: 10.5455/OVJ.2022.v12.i3.12. Epub 2022 Jun 7.
Toshie Iseri , Hiro Horikirizono , Momoko Abe , Harumichi Itoh , Hiroshi Sunahara , Yuki Nemoto , Kazuhito Itamoto , Kenji Tani , Munekazu Nakaichi
Free PMC article
背景:犬の鼻腔内腫瘍の治療に対し、放射線治療は重要と考えられ、それらの生存延長に対して必須と信じられている。
目的:犬の鼻腔内腫瘍に対し、メガボルテージ放射線治療の結果を改善するため、臨床ステージングの寄与を調査する
方法:鼻腔内腫瘍の合計123頭の犬を研究に含めた。48頭は減容積手術後にオルソボルテージの放射線治療を受け(1群)、21頭は手術せずにオルソボルテージの放射線治療を受け(2群)、54頭は手術せずにメガボルテージの放射線治療を受けていた(3群)。各群の全ての症例は臨床ステージ1-4に分類され、生存期間中央値(MST)は全ての群の各ステージで比較した。
結果:総MSTは1群(325日)、2群(317日)、3群(488日)の中で有意差はなかったが、1群と2群よりも3群は延長した。1群のステージ1、2、3、4のMSTsは597日、361日、267日、325日;2群は633日、260日、233日、329日;3群は931日、860日、368日、176日だった。3群のステージ2症例のMSTは、1群と2群のステージ2症例よりも有意に延長した;他のステージで有意差は見られなかったが、ステージ1の3群のMSTはより長かった。
結果は、鼻腔内腫瘍の犬に対するメガボルテージ放射線治療は、オルソボルテージの放射線治療±減容積手術と比較してMSTを延長させ、ステージ2のMSTの改善は、これに有意に貢献したことを示した。
結論:ステージ1および2の鼻腔内腫瘍の犬におけるMSTの改善は、早期ステージのメガボルテージ放射線治療開始の重要性を強調する。(Sato訳)
■肝葉切除で治療した6頭の犬の局所胆管癌の結果
Outcome of Localized Bile Duct Carcinoma in Six Dogs Treated with Liver Lobectomy
J Am Anim Hosp Assoc. 2022 Jul 1;58(4):189-193.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7199.
Atsushi Maeda , Sho Goto , Ryota Iwasaki , Koji Yamada , Mami Murakami , Hiroki Sakai , Takashi Mori
犬の胆管癌の予後は、一般的に悪いと信じられている。しかし、そのような症例の術後結果を評価している研究はあまりない。
このケースシリーズの目的は、犬の局在肝内胆管癌の術後結果を述べることだった。
胆管癌の犬16頭の電子カルテを再検討し、6頭を研究に含めた。全ての症例は術後病理検査で胆管癌と診断し、そのうち5頭はすでに術前コアバイオプシーで診断されていた。それらの犬全ての腫瘍は、病理組織検査で完全切除と確認された。
2頭は術後にトセラニブの投与を受けた。フォローアップの期間中央値は693日(範囲、420-1386日)で、生存期間中央値は894日(範囲、420-1386日)だった。局所再発あるいは遠隔転移は6頭中2頭(33%)で検出され、それぞれ術後354日と398日だった。無増悪生存期間中央値は492日(範囲、354-4386日)だった。
結論として、局在する肝内胆管癌の犬は、完全な外科的切除後の予後は良かった。
■犬の混合性肝細胞-胆管癌の臨床、診断、病理学的特徴と手術結果:14症例(2009-2021)
Clinical, diagnostic, and pathologic features and surgical outcomes of combined hepatocellular-cholangiocarcinoma in dogs: 14 cases (2009-2021)
J Am Vet Med Assoc. 2022 Apr 27;1-7.
doi: 10.2460/javma.21.12.0514. Online ahead of print.
Kazuyuki Terai , Kumiko Ishigaki , Yumiko Kagawa , Kazuki Okada , Orie Yoshida , Naoki Sakurai , Tatsuya Heishima , Kazushi Asano
目的:犬の混合性肝細胞-胆管癌(cHCC-CCA)の臨床、診断、病理学的特徴と術後の予後を述べる
動物:外科的治療を行った個人飼育の犬14頭
方法:cHCC-CCAの犬においてシグナルメント、臨床症状、血液検査、尿検査、CT所見、術中所見、病理学的所見を含む医療記録を回顧的に再検討した。
結果:肝臓マスを外科的に切除した306頭のうち、14頭(4.6%)が病理学的にcHCC-CCAと確認された。年齢と体重の中央値は11.3歳と7.3kgだった。cHCC-CCAに対する特異的な臨床病理所見はなかった。全ての犬のCTで充実性の肝臓マスを認め、マス内にシスト様の病変が13頭に見られた。手術時に肝内転移が2頭(14.3%)の犬で見つかった。残りの12頭のうち、1頭が肝内結節の術後形成を示し、転移が示唆され、もう1頭は肝内及び肺結節と片方の前肢の皮膚マスがあり、術後転移を示唆した。術後のcHCC-CCAの犬の生存期間中央値は700日(範囲、10-869日)だった。
臨床関連:著者の知るところでは、これは犬のcHCC-CCAの臨床、診断、病理学的特徴、術後の予後を述べた最初の研究である。犬のcHCC-CCAの臨床および診断的特徴は、CCAのそれよりむしろHCCにより似ていると思われるが、HCCとcHCC-CCAの術前の鑑別診断は困難だった。我々の研究は、cHCC-CCAの犬の術後の予後は、HCCの犬の予後と似ていることを示唆する。(Sato訳)
■中皮腫に対する化学療法で治療した犬の結果:40症例の回顧的臨床研究と文献レビュー
Outcome of dogs treated with chemotherapy for mesothelioma: a retrospective clinical study on 40 cases and a literature review
Vet Comp Oncol. 2022 May 28.
doi: 10.1111/vco.12843. Online ahead of print.
Mathilde Lajoinie , Thomas Chavalle , Franck Floch , David Sayag , Didier Lanore , Frédérique Ponce , Gabriel Chamel
中皮腫は犬の珍しい癌で、標準的治療は確立されていない。化学療法は効果の決定的な証拠がないが、提案されることも多い。
この研究の目的は、中皮腫の犬の生存性に対し、化学療法の影響を評価することだった。
回顧的多施設研究を実施した。含めるために、喚起的臨床的発展と形態学的中皮腫の診断を呈する必要があった。浸出液の多の原因の除外と完全な臨床的フォローアップも必要だった。
40頭の犬を含め、27頭(1群)は化学療法で治療され、13頭(2群)はそうではなかった。群はそれらの治療の一部として手術を行った犬の比率に関して異質(1群16頭、2群2頭;p=0.016)で、その他は同質だった。一変量解析で、1群の犬は2群の犬より有意に長く生存した(MST:366vs74日;p<0.001)。1群において、最初の化学療法投与後の浸出液の完全解消は生存性と正の相関を示した(MST:415vs160日;p<0.01)。解析した全ての多の変数は、一変量解析で生存性に有意な影響を示さなかったが、手術を行った犬や医療画像検査で漿膜の修正がある犬は長く生存する傾向があった。我々の研究で、多変量解析により化学療法は生存性に独立した唯一の変数だったと確認した。(Sato訳)
■1頭のシーズの膀胱の平滑筋肉腫
Leiomyosarcoma of urinary bladder in a Shih Tzu dog
J Vet Med Sci. 2022 Apr 15.
doi: 10.1292/jvms.21-0673. Online ahead of print.
Jiyoung Park , Aryung Nam , Hae-Beom Lee , Seong Mok Jeong , Dae-Hyun Kim
Free article
10歳オスのシーズ犬が血尿を呈した。二重造影の膀胱のエックス線検査で、膀胱尖部のポリープ状の充填欠損像が見られた。超音波検査で、異質の低エコーの壁内マスと粘膜下層の下の最小の血管血流を認めた。
部分的膀胱切除後、境界明瞭な膀胱平滑筋肉腫が病理検査で診断された。膀胱マスの外科的切除から、29か月のフォローアップで臨床症状、再発、転移もなく元気に生存していた。
平滑筋肉腫は、膀胱にマス様病変が見られた場合、鑑別診断として考慮すべきであるが、悪性腫瘍のこのタイプは犬で珍しい。予後の予想、今後の治療プランの決定には病理組織学的確認が重要である。(Sato訳)
■犬と猫の種々の腫瘍とSMDA濃度の関係
The association between symmetric dimethylarginine concentrations and various neoplasms in dogs and cats
Vet Comp Oncol. 2022 Jun 19.
doi: 10.1111/vco.12845. Online ahead of print.
Michael J Coyne , Corie Drake , Donald J McCrann , David Kincaid
対称性ジメチルアルギニン(SDMA)免疫測定の導入後、血清クレアチニン(Cr)濃度の上昇や腎臓疾患の臨床症状もなく参照範囲(RI)以上にSDMA濃度が顕著に上昇する症例が報告された。また、それらの動物は同時に癌が診断され、最も一般的なのはリンパ腫だった。
この研究の目的は、年齢、犬種がマッチした非腫瘍のコントロールと比較し、リンパ腫および他の癌の犬と猫において、上昇したSDMAの関連を評価することだった。
この回顧的症例-コントロール研究において、1804頭の腫瘍症例の血清化学結果と、年齢、犬種がマッチした非腫瘍コントロール動物の血清化学結果を使用した。二分したSDMA値に対し腫瘍と診断された動物と非腫瘍コントロール動物のマッチドペアオッズ比は、腫瘍のタイプにより判定した。
非腫瘍コントロールに比べ、リンパ腫の犬と猫のSDMA濃度は有意に高かった(P<0.0001)。リンパ腫の犬のSDMA濃度上昇に対するオッズ比は、10.0(95%CI、5.98-16.72)で、リンパ腫の猫に対しては3.04(95%CI、1.95-4.73)だった。犬と猫のリンパ腫症例の有意な頭数が、上昇したSDMA濃度がCr濃度上昇と関係しなかった(P<0.001)。
犬と猫のリンパ腫患者は、診断時にRI以上にSDMA濃度が上昇する確率が増加している。さらにリンパ腫の犬と猫の評価と特徴を述べることは、それら変化の臨床的意義とメカニズムの理解に役立てるために必要とされる。(Sato訳)
■猫の非注射部位の軟部組織肉腫:補助的放射線治療後の結果
Non-injection-site soft tissue sarcoma in cats: outcome following adjuvant radiotherapy
J Feline Med Surg. 2022 May 31;1098612X221098961.
doi: 10.1177/1098612X221098961. Online ahead of print.
Alenka Lavra Zajc , Aaron Harper , Jerome Benoit , Sarah Mason
目的:猫の非注射部位軟部組織肉腫(nFISS)の生物学的挙動と治療オプションは、犬ほどよく理解されていない。この回顧的研究の目的は、nFISSの猫の補助的放射線治療後の結果を評価することだった。
方法:軟部組織肉腫(注射部位肉腫と関係ない場所、注射部位肉腫の示唆されない病歴)の猫の医療記録を再検討した。全ての猫は、顕微鏡的疾患に対し補助的放射線治療(少分割(毎週8-9Gy分割で32-36Gy照射)あるいは通常分割(16-18Gy3分割で48-54Gy照射))を行った。
結果:合計18頭の猫を研究に含め、17頭は四肢のnFISSで、1頭は顔面のnFISSだった。9頭は1回の外科手術後、9頭は再発性nFISSに対し複数の手術後に放射線治療を受けた。8頭は少分割プロトコール、10頭は通常分割プロトコールで治療した。
フォローアップ期間中央値は540日(範囲51-3317日)だった。補助的放射線治療後、8頭(44.4%)の腫瘍は再発した;3頭(37.5%)は少分割プロトコール後、5頭(50%)は通常分割プロトコール後に再発した。
17/18頭の全体の無増悪期間(PFI)中央値は、2748日だったが、再発した7/8頭のPFIは164日だった。1頭の猫の再発は報告されたが、日時は不明で、ゆえにそれらのデータから削除した。プロトコールを基に層別化すると、少分割と通常分割プロトコールに対するPFI中央値は、それぞれ164日と2748日だった。統計学的に2つのプロトコールに有意差はなかった(P=0.636)。
結論と関連:補助的放射線治療により、nFISSの12/18頭の猫で、長期の良好な腫瘍コントロールができた。腫瘍コントロールに対する放射線量と分割の有意性と、結果に対する放射線治療開始前の複数の手術の影響を評価するため、大集団での今後の研究が必要である。(Sato訳)
■悪性腫瘍の犬の皮膚バリア障害のメカニズムの調査
Investigation of the Mechanism of Impaired Skin Barrier Function in Dogs With Malignant Tumors
In Vivo. Mar-Apr 2022;36(2):743-752.
doi: 10.21873/invivo.12761.
Migyeong Geum , Ha-Jung Kim
背景/目的:獣医療において、全身性疾患と皮膚バリア機能不全を調査した研究はない。内臓に疾患のある犬の障害のある皮膚バリア機能のメカニズムを調査した。
素材と方法:健康なコントロール犬と全身性疾患のある犬を3つの異なる疾患群に登録した:悪性腫瘍、副腎皮質機能亢進症、腎臓疾患。経表皮水分蒸散量(TEWL)、5つの選択した炎症誘発性サイトカインとクローディン-1の血清濃度、CBCを測定した。
結果:コントロール群と比べ、悪性腫瘍群のTEWLは有意に増加し、血清クローディン-1濃度は有意に低かった。腫瘍壊死因子-αも癌のグループで有意に増加した。また、悪性腫瘍群は、化学療法をしない犬と比べて、化学療法後に有意に高い単球走化性蛋白-1を示したが、インターロイキン-6濃度は低かった。
結論:他の全身性疾患の犬と比べ、悪性腫瘍の犬の皮膚バリア機能は、酸化ストレスや密着結合蛋白の減少により低下した。(Sato訳)
■再発性巨大肝細胞癌の犬のリスクファクターと転帰
Risk factors and outcome in dogs with recurrent massive hepatocellular carcinoma: a Veterinary Society of Surgical Oncology case-control study
Vet Comp Oncol. 2022 Apr 29.
doi: 10.1111/vco.12824. Online ahead of print.
Janis M Lapsley , Vincent Wavreille , Sabrina Barry , Josephine A Dornbusch , Carolyn Chen , Haley Leeper , Judith Bertran , Diane Scavelli , Julius M Liptak , Chris Wood , Shelly Shamir , Claire Rosenbaum , Vincenzo Montinaro , Brandan Wustefeld-Janssens , Allyson Sterman , Colin Chik , Ameet Singh , Josh Collins , Laura E Selmic
犬の巨大肝細胞癌(HCC)の外科的切除後の局所再発は、獣医療であまり研究されておらず、再発後のリスクファクターや転帰に関して発表された情報も少ない。
この症例-対照研究の目的は、巨大HCCの犬の再発までの期間を述べること、再発に対する潜在的リスクファクターを評価すること、転帰を報告することだった。
再発した犬75頭と再発しなかった犬113頭の医療記録を再検討した。再発に対するリスクファクター、再発までの期間中央値、総生存期間(OS)を判定するため統計学的解析を実施した。
評価したリスクファクターで、再発することに対して有意なものはなかった。再発までの期間中央値は367日(範囲:32-2096日)だった。再発した犬と再発しなかった犬のOS中央値に有意差はなかった(それぞれ851日と970日)。再発性HCCの犬において、再発時の治療はOSを延長する傾向にあったが、治療しなかった犬と有意差はなかった。組織的に完全切除の犬と不完全切除の犬のOS中央値に有意差はなかった(それぞれ990日と903日)。
再発に対する特定のリスクファクターは確認されなかったが、鉗数値の上昇を再発した犬で認め、非侵襲性の監視ツールとして使用できた。定期的な術後監視を行った犬は、再発をより早く発見した(228日と367日)。
再発の定期的な監視は、今後の介入が可能な犬において特に推奨され、1年以上延長して行うべきである。巨大HCCの犬は、不完全切除、肺転移、再発性局所疾患にかかわらず、予後は長期良好である。(Sato訳)
■血液の悪性腫瘍の犬において治療反応および生存性の予測に相関する血清TK1蛋白およびC-反応性蛋白
Serum TK1 protein and C-reactive protein correlate to treatment response and predict survival in dogs with hematologic malignancies
Res Vet Sci. 2022 Feb 23;145:213-221.
doi: 10.1016/j.rvsc.2022.02.019. Online ahead of print.
S Saellström , H Sharif , K K Jagarlamudi , H Rönnberg , L Wang , S Eriksson
ヒトや獣医療における癌の診断で、DNA前駆体合成に関与するチミジンキナーゼ1(TK1)は、血清バイオマーカーとして使用される。
著者らは、犬の血液学的悪性腫瘍の予後とモニタリングに対し、TK1蛋白(TK1p)およびTK1活性(TK1a)測定の有用性を調査した。TK1pあるいはTK1aとC-反応性蛋白(CRP)測定値の組み合わせも調査した。
まだ何もしていない血液学的悪性腫瘍の飼い犬51頭と、健康な犬149頭の血清サンプルを含めた。血清TK1p濃度はTK1-ELISAプロトタイプを使用し、TK1aは[3H]-dThdリン酸化分析を用い、CRPは免疫比濁分析で測定した。
腫瘍のある犬の血清の平均TK1pは、健康犬よりも有意に高かった(平均±SD=3.9±5.9vs.0.45±0.15ng/mL)。同様に血液悪性腫瘍のTK1aは健康犬よりも有意に高かった(平均±SD=15.1±31.3vs.0.96±0.33pmol/min/mL)。受信者操作特性では、血液悪性腫瘍の予後に対し、どちらかのバイオマーカー単独よりもTK1pあるいはTK1aとCRPを組み合わせた方がより高い感受性が得られることを示した。TK1pおよびTK1a濃度の治療前中央値は、寛解した時よりも有意に高く、臨床結果と相関した。カプラン-マイヤー曲線解析は、高いTK1p、TK1a、CRPの無処置の犬は、生存期間が有意に短かったと示した。
この研究は、TK1pを測定するためのELISAシステムにおいて使用する2つの新しいポリクローナル抗体を提示する。またTK1pあるいはTK1aとCRPの組み合わせは、いずれかのバイオマーカー単独よりもより高い感受性が得られることを示す。化学療法を実施中にこの研究において犬をモニタリングして、TK1+CRPの組み合わせは、バイオマーカーパネルで有効である可能性があり、おそらく血液学的悪性腫瘍の犬の予後や治療モニタリングに役立つであろうと示唆する。(Sato訳)
■犬の精巣腫瘍:ロシア、モスクワ地域の11年の回顧的研究358症例
Canine testicular tumors: An 11-year retrospective study of 358 cases in Moscow Region, Russia
Vet World. 2022 Feb;15(2):483-487.
doi: 10.14202/vetworld.2022.483-487. Epub 2022 Feb 26.
Aleksey A Gazin , Yury A Vatnikov , Nikolay V Sturov , Evgeny V Kulikov , Viktor Grishin , Elena A Krotova , Alisa A Razumova Varentsova , Natalia Yu Rodionova Sapego , Natalia I Troshina , Varvara M Byakhova , Ksenia V Lisitskaya
背景と目的:犬の精巣腫瘍は、オス犬の最も一般的な生殖器官腫瘍の1つで、多くの国で研究されている。しかし、我々の知るところでは、大規模サンプルの研究はロシアで行われていない。この研究の目的は、2010-2020年にロシアのモスクワの小動物獣医腫瘍科学センター“バイオコントロール”において、犬の精巣腫瘍の有病率に対する最新情報と罹患した犬の集団の特徴を提供することだった。
素材と方法:11年で358症例、447精巣腫瘍から回顧的再検討と組織学的報告を収集し、分析した。
結果:罹患犬の平均年齢は10.4歳だったが、セルトリ細胞腫の犬のそれは9.4歳だった(p=0.009)。この研究は、雑種犬(18.4%)、ヨークシャーテリア(8.8%)、ラブラドールレトリバー(7.9%)、ゴールデンレトリバー(5.0%)、フォックステリア(3.4%)が含まれた。最も一般的な腫瘍は、間質細胞腫(n=227、50.8%)だった。対照的に、セミノーマ107(23.9%)、セルトリ細胞腫80(17.9%)、混合germ cell-sex cord-stromal腫瘍19(7.4%)、潜在睾丸から発生した精巣腫瘍26(7.6%)でその中にはセルトリ細胞腫16(61.5%)、セミノーマ10(38.5%)が含まれ、間質細胞腫はなかった。
結論:この研究は、この集団での犬の精巣腫瘍の有病率に対する基準の情報を提供し、各腫瘍タイプの年齢中央値及びよく見られる犬種も含まれる。さらに一般的な陰嚢精巣腫瘍は間質細胞腫だったが、潜在睾丸で一般的なのはセルトリ細胞腫だったことが分かった。(Sato訳)
■北ポルトガルの診断病理検査所に提出された犬の皮膚腫瘍の回顧的研究(2014-2020)
Retrospective study of canine cutaneous tumors submitted to a diagnostic pathology laboratory in Northern Portugal (2014-2020)
Canine Med Genet. 2022 Feb 25;9(1):2.
doi: 10.1186/s40575-022-00113-w.
Ana Luísa Martins , Ana Canadas-Sousa , João R Mesquita , Patrícia Dias-Pereira , Irina Amorim , Fátima Gärtner
背景:皮膚の腫瘍疾患は、オス犬で1番目、メス犬で2番目に多く報告されている。この研究の目的は、2014年から2020年の間に北ポルトガルにある病理検査所で犬の皮膚腫瘍の発生率を報告し、異なるタイプの腫瘍に罹患した犬の解剖学的部位、犬種、年齢、性別を分類し、特徴を述べることだった。
結果:7年間の研究で、1185症例が皮膚腫瘍と診断され、62.9%が良性、37.1%が悪性と分類された。肥満細胞腫(22.7%)が最も多く診断された腫瘍タイプで、良性の軟部組織腫瘍(9.7%)、皮脂腺腫(8.1%)、血管腫(7.9%)、軟部組織肉腫(7.6%)が続いた。皮膚腫瘍は一般に多中心(14.6%)に発生し、続いて単一で後肢(12.1%)、前肢(8.6%)、臀部(7.1%)、腹部(6.5%)、肋部(5.2%)だった。皮膚腫瘍発生の確率は、年齢を重ねるごとにより高かった(p<0.001)。メス犬はオス犬に比べ、皮膚腫瘍の発生確率が増加していた(粗OR=2.99、95%(2.51、3.55);補正OR=2.93、95%(2.46、3.49))。グループとして純血犬は、雑種犬と比較した時、皮膚腫瘍の発生の確率低下を示した(粗OR=0.63、95%(0.53、0.74);補正OR=0.75、95%(0.62、0.89))。
結論:肥満細胞腫、良性軟部組織腫瘍、皮脂腺腫は、最も一般的に遭遇する組織タイプだった。この研究で完成した疫学的調査は、この特定集団において異なる腫瘍タイプの相対的頻度を示す。さらに、ここでの完成した結果は、犬の皮膚腫瘍組織タイプの予備的および仮診断の確立に役立つ、地域獣医師のため基準あるいは有益な参考として働くことができる。(Sato訳)
■犬の上皮小体癌の発生率、生存期間、外科的治療:100症例(2010-2019)
Incidence, survival time, and surgical treatment of parathyroid carcinomas in dogs: 100 cases (2010-2019)
J Am Vet Med Assoc. 2021 Dec 1;1-9.
doi: 10.2460/javma.20.06.0335. Online ahead of print.
Andrea K Erickson, Penny J Regier, Meghan M Watt, Kathleen M Ham, Sarah J Marvel, Mandy L Wallace, Sara A Colopy, Valery F Scharf, Junxian Zheng, Danielle R Dugat, Julia P Sumner, James Howard, Owen T Skinner, Megan A Mickelson, Kelley M Thieman-Mankin, James C Colee
目的:外科的切除で治療した上皮小体癌(PTC)の犬の結果を評価し、術後低カルシウム血症の発生率、低カルシウム血症の程度、入院期間、カルシウム補給期間、生存期間を述べる
動物:大学獣医委託施設に入院したPTCの飼育犬100頭
方法:回顧的多施設研究において、2010年から2019年までにPTCの外科的切除を行った犬の医療記録を再調査した。シグナルメント、関連する病歴、臨床症状、臨床病理検査、画像検査、外科的所見、術中合併症、組織学的検査、生存期間を記録した。
結果:PTCの100頭を含め、96頭は臨床的、あるいは偶発的高カルシウム血症だった。一般的な臨床症状は、多尿(44%)、多渇(43%)、後肢不全麻痺(22%)、元気消失(21%)、食欲低下(20%)だった。頸部の超音波検査において、91頭中91頭の上皮小体の結節を検出し、結節1つは70.3%(64/91)、結節2つは25.3%(23/91)、結節3つ以上は4%(4/91)の犬に認めた。高カルシウム血症は、術後7日以内に96頭中89頭で解消した。34%の犬は、術後1週間以内に低カルシウム血症(個々の検査範囲を基に)を発症した。1頭は肩甲前リンパ節への転移性PTCで、3頭は難治性の術後低カルシウム血症のために安楽死された。算出した1-、2-、3-年生存率はそれぞれ84%、65%、51%で、生存期間中央値は2年だった。
結論と臨床関連:PTCの切除により、高カルシウム血症の解消とかなり長期の腫瘍コントロールが得られる。PTCの外科的切除は、高カルシウム血症の解消と良好な長期予後のために推奨される。今後、原発腫瘍の再発、転移、術後低カルシウム血症の発生率を評価するため、前向き研究と長期フォローアップが必要である。(Sato訳)
■犬のインスリノーマのリン酸トセラニブによる治療:30症例の回顧的多施設研究(2000-2019)
Toceranib phosphate in the management of canine insulinoma: A retrospective multicentre study of 30 cases (2009-2019)
Vet Rec Open. 2022 Jan 20;9(1):e27.
doi: 10.1002/vro2.27. eCollection 2022 Dec.
Sabina Sheppard-Olivares , Nora M Bello , Chad M Johannes , Samuel E Hocker , Barbara Biller , Brian Husbands , Elizabeth Snyder , Mattison McMillan , Talon McKee , Raelene M Wouda
Free PMC article
背景:犬のインスリノーマは、一般的な膵臓内分泌の腫瘍である。それらの悪性腫瘍の転移率は高く、化学療法のオプションは限られている。マルチレセプターチロシンキナーゼ阻害剤のリンゴ酸スニチニブは、ヒトの転移性インスリノーマの治療で利点がある。類似した動物用薬のリン酸トセラニブは犬に対しての恩恵が得られるかもしれない。
方法:トセラニブの投与を受けたインスリノーマの犬において、有害事象(AEs)と臨床結果の大きさ及び持続期間を述べる回顧的研究。
結果:インスリノーマと診断され、トセラニブの投与を受けている30頭の犬の記録を、5つの大学と8つの紹介病院の医療記録腱索で確認した。無増悪期間と総生存期間の中央値は、それぞれ561日(95%CI、246-727日)と656日(95%CI、310-1045日)だった。the canine Response evaluation criteria for solid tumours toolが適用できた犬のうち、多く(66.7%)は完全寛解または部分奏功あるいは安定疾患を示した。臨床的進行までの時間は、介入前および獣医療のタイプに関係した。より大型犬は、疾患進行と脂肪のリスクが増加した。新規AEsは報告されなかった。
結論:インスリノーマと診断され、トセラニブを投与された多くの犬は、臨床的恩恵が得られたと思われる。犬のインスリノーマの治療に対し、トセラニブ療法の生存性の利点と潜在的効果の客観的定量化とより明瞭にするために、無作為化前向き研究が必要である。(Sato訳)
■犬の筋層侵襲性尿路癌の第一選択治療としてラパチニブ
Lapatinib as first-line treatment for muscle-invasive urothelial carcinoma in dogs
Sci Rep. 2022 Jan 13;12(1):4.
doi: 10.1038/s41598-021-04229-0.
Shingo Maeda , Kosei Sakai , Kenjiro Kaji , Aki Iio , Maho Nakazawa , Tomoki Motegi , Tomohiro Yonezawa , Yasuyuki Momoi
Free PMC article
上皮成長因子レセプター1および2(EGFRおよびHER2)は、種々の悪性腫瘍で過剰発現することが多い。ラパチニブはEGFRおよびHER2双方を抑制する二重チロシンキナーゼ阻害剤であるが、第III相試験ではEGFR/HER2陽性の転移性尿路癌の患者に対する第一選択化学療法後、ラパチニブ治療の生存性への利点が示されず、無処置の尿路癌に対するラパチニブの効果ははっきりしていない。
ここでは、筋層侵襲性尿路癌の犬モデルにおいて第一選択治療としてのラパチニブの治療効果を述べる。
この非無作為化臨床試験において、ラパチニブとピロキシカムの投与を受けている自然発生の尿路癌の犬44頭と、年齢、性別、腫瘍ステージがマッチし、ピロキシカムのみ投与されている犬42頭と比較した。
ピロキシカム単独で治療された犬と比べ、ラパチニブ/ピロキシカムで治療された犬の原発腫瘍の大きさはより大きく減少し、生存性が改善した。探査的分析で、ラパチニブで治療した犬においてHER2過剰発現は反応と生存性に関係したことを示した。
この研究は、犬の未治療の進行した尿路癌に対し、ラパチニブは有望な永続性のある反応率、生存性、許容性を示し、その治療的使用を支持すること示唆する。第一選択治療としてラパチニブの使用は、尿路癌のヒトでさらに調査されるかもしれない。(Sato訳)
参考:1日1回ラパチニブ20-30mg/kg 0.3mg/kgピロキシカム
■犬の上皮性胸腺腫瘍:外科的に治療した28頭の犬の結果
Canine Epithelial Thymic Tumors: Outcome in 28 Dogs Treated by Surgery
Animals (Basel). 2021 Dec 2;11(12):3444.
doi: 10.3390/ani11123444.
Marina Martano , Paolo Buracco , Emanuela Maria Morello
胸腺腫は犬での報告は珍しい腫瘍で、縦隔型リンパ腫と鑑別すべきである。臨床症状は遅れて発現することもあり、胸腔占拠の影響に関連する徴候、あるいは腫瘍随伴症候群が起こった時に診断されることも多い。CTと細針吸引あるいはコアバイオプシーは鑑別診断に役立つが、フローサイトメトリーは術前診断能力を改善するかもしれない。重症筋無力症や高カルシウム血症のような腫瘍随伴症候群の併発は報告されているが、それらの予後因子としての役割はよくわかっていない。
外科的切除は選択される治療である;補助的放射線療法および/あるいは化学療法は、不完全切除の症例や胸腺癌が診断された時に生存期間を延長させるかもしれない。
局所再発や転移の報告はあまりない。ゆえに、腫瘍が完全に切除された場合、あるいは補助的治療が実施された場合は長期生存期間が期待できる。
本稿では著者が経験した18頭の胸腺腫と10頭の胸腺癌に侵された28頭の犬を報告する。この一連の症例の総生存期間中央値は1173日で、無病期間中央値は903日だった。胸腺癌の犬は無病期間が有意に短く、統計学的に有意ではないが生存期間も短かった。Masaoka ステージIIIの腫瘍の犬の結果はより悪かった。(Sato訳)
■犬の原発性肺腫瘍の病理学的タイプの分布と罹患犬の結果:340症例(2010-2019)
Distribution of histopathologic types of primary pulmonary neoplasia in dogs and outcome of affected dogs: 340 cases (2010-2019)
J Am Vet Med Assoc. 2022 Jan 1;1-10.
doi: 10.2460/javma.20.12.0698. Online ahead of print.
Jourdan B McPhetridge , Valery F Scharf , Penny J Regier , Darby Toth , Max Lorange , Giovanni Tremolada , Josephine A Dornbusch , Laura E Selmic , Sohee Bae , Katy L Townsend , Jack C McAdoo , Kelley M Thieman , Francesca Solari , Rebecca A Walton , Jacob Romeiser , Joanne L Tuohy , Michelle L Oblak
目的:犬の原発性肺腫瘍の病理組織学的タイプの分布に対する最新情報を提供し、肺癌の犬の術後補助的化学療法の効果を評価する
動物:340頭の犬
方法:原発性肺マスの切除に対し、肺葉切除を行った犬の医療記録を再調査し、病変の病理組織学的タイプを判定した。犬肺癌ステージ分類システムを使用し、肺癌の犬に対する臨床ステージを判定した。
結果:肺癌(296/340(87.1%))はもっとも頻度が高く遭遇した腫瘍のタイプで、続いて肉腫(26(7.6%))、腺腫(11(3.2%))、肺神経内分布腫瘍(5(1.5%));プラズマ細胞腫1、癌肉腫1もあった。20(5.9%)の肉腫は、原発性肺組織球肉腫と分類された。
肺癌の犬(399日)、組織球肉腫の犬(300日)と神経内分泌腫瘍の犬(498日)の生存期間中央値に有意差があった。肺癌の犬を臨床ステージを基にグループ分けした時、補助的化学療法を受けた犬と受けなかった犬の生存期間中央値に有意差はなかった。
臨床関連:結果は肺癌が犬の原発性肺腫瘍の最も一般的な原因だと示した;しかし、非上皮性腫瘍も発生する可能性がある。生存期間は、肺癌、組織球肉腫と神経内分泌腫瘍の犬に有意差があり、それら種々の組織学的診断の相対的発生率の認識の重要性を強調する。肺癌の犬の補助的化学療法の治療効果はいまだ不明で、更なる調査を正当化する。(Sato訳)
■犬の悪性中皮腫の臨床症状、治療、結果:34症例の回顧的研究
Clinical presentation, treatment and outcome of canine malignant mesothelioma: a retrospective study of 34 cases
Vet Comp Oncol. 2021 Oct 14.
doi: 10.1111/vco.12777. Online ahead of print.
Hanne Larsen Moberg , Irina Gramer , Imogen Schofield , Laura Blackwood , David Killick , Simon L Priestnall , Alexandra Guillén
犬の悪性中皮腫(CMM)は珍しく、予後が悪い侵略的な腫瘍である。効果的な治療オプションおよび予後因子に関して得られる情報は限られている。
この回顧的ケースシリーズの目的は、この疾患の1集団の犬において臨床症状、治療、生存性を述べることと、潜在的な予後因子を調査することだった。
34頭の犬を含めた。胸水による頻呼吸と呼吸困難は、一般的な臨床症状だった。22頭の犬は、皮下アクセスポートを設置しており、25頭の犬は胸腔内および/あるいは静脈内化学療法で治療した。使用された主なプロトコールは、単剤5-FU(n=14)、カルボプラチン単剤あるいはミトキサントロンによる代替(n=10)だった。化学療法に対する全体の奏効率(液体量が25%以上減量と定義)は、3週間後で37%、15週間後で24%だった。
全ての犬に対する生存期間中央値(MCT)は、195日(95%CI、53-324)だった。化学療法を受けた犬のMSTは234日で、受けなかった犬は29日だった。全ての犬で1-年生存率は22%だった。化学療法による治療が、生存性に関係する唯一の有意な予後因子だった(P=0.001)。
犬の悪性中皮腫に対する最適な治療アプローチを判定するために追加研究が必要である。それでも胸水の再発は予期されなければならず、長期においてそれらの犬の予後は悪い。
■原発性神経内分泌系腫瘍をリン酸トセラニブで治療し長期生存した犬の一例
Long-term survival in a dog with primary hepatic neuroendocrine tumor treated with toceranib phosphate
J Vet Med Sci. 2021 Aug 17.
doi: 10.1292/jvms.21-0254. Online ahead of print.
Masanao Ichimata , Shinichiro Nishiyama , Fukiko Matsuyama , Eri Fukazawa , Kei Harada , Ryuzo Katayama , Atsushi Toshima , Yumiko Kagawa , Tetsushi Yamagami , Tetsuya Kobayashi
Free article
原発性肝臓神経内分泌腫瘍(PHNETs)は犬で珍しく、それらの腫瘍の治療に関して情報は限られている。
12歳の去勢済みオスのフレンチブルドッグが、消化管症状で来院した。診断検査で肝酵素濃度上昇、肝臓方形葉のマス、多発性の肝臓内結節、肝門リンパ節の腫大を認めた。肝臓のマスは細胞学的に悪性上皮系腫瘍と診断され、神経内分泌系由来が疑われた。
その犬はリン酸トセラニブ(TOC)のみで治療し、初診から25.1か月生存した。検死で肝臓マスが見つかり、その後、病理組織学検査でPHNETと診断された。
我々の知るところでは、これはPHNETの1頭の犬をTOCで治療し、長期生存した最初の報告である。(Sato訳)
■結膜血管腫及び血管肉腫の外科的治療:52頭の犬の回顧的研究
Surgical treatment of conjunctival hemangioma and hemangiosarcoma: A retrospective study of 52 dogs
Vet Ophthalmol. 2021 Aug 17.
doi: 10.1111/vop.12921. Online ahead of print.
Sarah Richardson , Anna R Deykin
目的:外科的治療の成功、再発率、長期結果を確立させるため、二次センターで外科的に治療した犬の結膜血管腫(HA)および血管肉腫(HSA)の症例を再検討する
被験動物:シグナルメント、腫瘍の部位、初診から手術までの期間、腫瘍の診断、surgical dose、外科的マージン、腫瘍のサイズ、再発および生存期間のデータを集めるため、2004年4月から2020年4月までの結膜HAあるいはHSAと組織学的に診断され、切除のために手術を行った犬の回顧的記録レビュー。
結果:合計52頭(60腫瘍)を含めた。罹患犬の平均年齢は8.69歳だった;最も罹患した犬種はボーダーコリー(n=13、25%)だった。28の腫瘍はHA(46.67%)で、32の腫瘍はHSA(53.33%)だった。腫瘍は3つの場所で発生した:側方眼球結膜(n=37、61.67%)、第三眼瞼縁(n=19、31.67%)、腹側結膜円蓋(n=4、6.67%)。部位によるHAとHSAの偏りはなかった。腫瘍の97%は非色素組織で発生した。角膜侵襲は悪性腫瘍の特徴である確率が高かった。5つの腫瘍は不完全切除で、そのうち1つは再発した。HSAとHAの不完全切除の確率に統計学的違いはなかった。6の腫瘍(10%)は再発した。HSAはHAよりも統計学的に再発する確率が高いということはなかった。再発までの期間は5週間から1年の範囲だった。
結論:結膜HAとHSAの外科的治療は根治である確率が高い。腫瘍のタイプに関係なく、再発率は10%で、再発は疾患の経過で遅れるかもしれない。(Sato訳)
■犬の膵臓外分泌腺癌の治療に対するリン酸トセラニブ(パラディア)
Toceranib phosphate (Palladia) for the treatment of canine exocrine pancreatic adenocarcinoma
BMC Vet Res. 2021 Aug 11;17(1):269.
doi: 10.1186/s12917-021-02978-8.
Margaret L Musser , Chad M Johannes
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背景:犬の膵臓癌は珍しい攻撃的な腫瘍で、疾患の経過で進行してから診断されることが多い。効果的な治療法は得られておらず、総生存期間は短い。ヒトにおいて、チロシンキナーゼ阻害剤単独、あるいはIVゲムシタビンとの組み合わせは、中程度の効果がある。犬とヒトの肝臓癌は多くの臨床像を共有しているため、ヒトをまねた治療法は、犬でより良い結果をもたらすかもしれない。この研究の目的は、細胞学的あるいは組織学的に確認された犬の膵臓癌の治療において、動物のチロシンキナーゼ阻害剤のリン酸トセラニブの役割を調査することだった。
結果:膵臓癌の確認済みで、トセラニブで治療した犬の医療記録を再調査した。組み込み基準に合った8頭の犬を確認した。トセラニブは、全ての犬でよく許容した。6頭は肉眼的疾患設定で治療した。4頭は臨床的反応を画像ベースの評価があった(完全寛解、部分奏功、安定疾患>10週間)。それらのうち1頭は部分奏功に達し、2頭は安定疾患、1頭は進行疾患で、全体の臨床的反応率は75%だった。追加の1頭は臨床的安定疾患で、画像検査を通し確認されなかった。トセラニブ得意の総生存期間中央値は89.5日(範囲:14-506日)だった。
結論:症例数は限られているが、この小規模研究はトセラニブが膵臓癌の犬に生物学的活性があるかもしれないと示唆する。それらの予備的結果を確認し、顕微鏡的疾患設定でトセラニブの使用を定義するために大規模前向き研究が必要である。(Sato訳)
■鼻腔内腫瘍の犬に対する術中アクリジンオレンジ-光線力学的療法の再発の分析
Recurrence analysis of intraoperative acridine orange-photodynamic therapy for dogs with intranasal tumors
Can Vet J. 2021 Oct;62(10):1117-1122.
Takuya Maruo , Yasuhiro Fukuyama , Yuta Nishiyama , Yuki Nemoto , Eiichi Kanai , Shinpei Kawarai , Hideki Kayanuma , Kensuke Orito
術中アクリジンオレンジ-光線力学的療法(AO-PDT)と篩板照射は、犬の鼻腔内腫瘍の治療に用いられる。
この研究の目的は、鼻腔内腫瘍に対するAO-PDTの効果を評価することと、この治療後の腫瘍の再発率を評価することだった。
鼻腔背側の小窓を通し、AO-PDTの治療を38頭に実施した。無進行期間中央値は12か月で、再発は21頭の犬で検出された。CT検査をもとに、16頭の再発は以下の領域に偏っていた:外側(n=10)、内側(n=2)、腹側(n=0)、吻側(n=0)、尾側(n=8)。副作用は軽度で、皮下気腫と鼻炎だった。生存期間中央値は24か月だった。
AO-PDTと篩板放射線照射は鼻腔内腫瘍に対する効果的な治療だが、AO-PDTの方法をより均一で完全にできるよう改善すべきである。(Sato訳)
■1歳以下の犬の皮膚のマス:2554症例(2006-2013)
Skin masses in dogs under 1 year of age: 2554 cases (2006-2013)
J Small Anim Pract. 2021 Aug 31.
doi: 10.1111/jsap.13418. Online ahead of print.
D Kim , M J Dobromylskyj , D O'Neill , K C Smith
目的:0-12ヶ月齢までの若い犬において、皮膚のマスの発生率と特性を確かめるため、大きな病理組織学的データベースを利用する
素材と方法:2006年から2013年までに皮膚のマスと臨床的に診断され、0-12ヶ月齢で病理組織検査に提出された合計2554検体を、大きなコマーシャル診断検査所のデータベースから回収した。組織学的診断と病変部位、年齢、犬種、性別を記録した。
結果:この研究でわかった最も一般的な皮膚のマスは、組織球腫だった(n=2212、86.6%)。全ての被検体のほとんどは腫瘍性(n=2408、94.3%)で、それらのほとんどは良性だった(n=2372、98.5%)。良性腫瘍性病変のほぼすべては、円形細胞由来だった(n=2229、94.0%)が、非腫瘍性病変のほとんどは、上皮由来だった(n=136、93.8%)。
若い犬の皮膚のマスで最も一般的に診断された5つは、組織球腫、乳頭腫、類皮嚢腫、毛包嚢胞、肥満細胞腫だった。オスの偏向が組織球腫(オッズ比1.72)と肥満細胞腫(オッズ比2.18)に見られ、強い部位の偏向が足の領域にあった(それぞれ30.8%、27.8%)。類皮嚢腫と毛包嚢胞は腹部の皮膚に見つかることが最も多く(それぞれ64.7%、52.3%)、ボクサーに偏向があった(類皮嚢腫の25.9%、毛包嚢胞の25.0%)。
臨床的意義:若い犬の皮膚のマスの検体のほとんどは腫瘍性で良性だった。また、若い犬の皮膚のマスの一般的なものは組織球腫だと分かった。この年齢群にも腫瘍が発生する可能性があり、皮膚のマスを呈する若い犬でも鑑別診断で考慮すべきである。(Sato訳)
■ピロキシカム単独あるいはオメプラゾールかファモチジンを併用して治療した癌の犬の消化管有害事象の発生率及び重症度を比較する前向き、無作為化、プラセボ対照、二重盲検臨床試験
A prospective, randomized, placebo-controlled, double-blinded clinical trial comparing the incidence and severity of gastrointestinal adverse events in dogs with cancer treated with piroxicam alone or in combination with omeprazole or famotidine
J Am Vet Med Assoc. 2021 Aug 15;259(4):385-391.
doi: 10.2460/javma.259.4.385.
Marejka H Shaevitz, George E Moore, Christopher M Fulkerson
目的:ピロキシカム単剤で治療した癌の犬において、消化管(GI)有害事象(AEs)の発生率と重症度に対する予防的オメプラゾールおよびファモチジンの影響を評価する
動物:GI疾患の病歴がなく、細胞学あるいは組織学的に癌と診断され、ピロキシカムの投与を受けている39頭の犬
処置:前向き、無作為化、プラセボ対照、二重盲検臨床試験を実施した。全ての犬にピロキシカム(0.3mg/kg、PO、q24h)と、オメプラゾール(1mg/kg、PO、q12h)、ファモチジン(1mg/kg、PO、q12h)、あるいはプラセボ(ラクトース;PO、q12h)を投与した。月に1回のGI AEsの評価を実施し、Veterinary Comparative Oncology Group's Common Terminology Criteria for Adverse Events (version 1.1)を用いてスコアを付けた。
結果:プラセボ群の犬と比較して、オメプラゾール群(84.6%vs36.4%)とファモチジン群(80.0%vs36.4%)の多くの犬が、56日目にGI AEsを経験した。GI AEsの重症度は、プラセボ群よりもオメプラゾール群の方が高かった。
結論と臨床関連:ピロキシカム単剤で治療した癌の犬において、オメプラゾールは、GI AEsの頻度あるいは重症度を減らす役には立たず、より多く、より重度のGI AEsに関係した。プロトンポンプ阻害剤およびH2レセプター拮抗剤は、癌の犬に対するNSAIDsと共に予防薬として処方すべきではない。(Sato訳)
■外科的に消化管間質腫瘍を切除した予後因子
Prognostic factors for dogs with surgically resected gastrointestinal stromal tumors
J Vet Med Sci. 2021 Jul 28.
doi: 10.1292/jvms.20-0727. Online ahead of print.
Mitsuhiro Irie , Hirotaka Tomiyasu , Hajime Tsujimoto , Chiaki Kita , Yumiko Kagawa
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外科的切除だけで治療した犬の消化管間質腫瘍(GIST)の症例の予後を調査した報告はほとんどない。
この研究は、外科的に完全に切除しただけのGISTの犬に対する総生存期間(OS)および予後因子を調査した。
53頭の犬を含め、そのOS中央値は18か月だった。多変量解析で、小腸の原発腫瘍(P=0.04)は、有意に短いOSと関係し、盲腸病変の症例と、小腸病変の症例のOS中央値はそれぞれ22か月と6か月だった。
この研究は、外科的に完全切除のみで治療したGISTの犬に対し、原発腫瘍部位が新しい予後因子であると示唆した。(Sato訳)
■犬と猫の血管肉腫
Canine and feline haemangiosarcoma
Vet Rec. 2021 Jul 2;e585.
doi: 10.1002/vetr.585. Online ahead of print.
Maureen A Griffin , William T N Culp , Robert B Rebhun
イントロダクション:血管肉腫(HSA)は犬と猫の悪性腫瘍で、複雑で多因子病因の多能性骨髄前駆体から発生すると思われる。
アプローチ:原稿に入れるため、関連文献を確認し、再検討し要約した。
結果/解釈:犬は猫よりもHSAを診断されることが多く、この疾患の原発部位は、皮膚、皮下/筋肉内、内蔵(最も一般的なのは脾臓)が含まれる。HSAの犬と猫は一般的に、この疾患に典型的に関係する急速で広範囲な転移のため、予後が悪い。しかし、皮膚HSAのようないくつかの型は、攻撃性がより少なく、結果を改善する。外科的切除とアントラサイクリン-ベースの化学療法は治療の主軸だが、現在新しい治療様式が、この疾患の治療において潜在的期待される役割に対し調査中である。
結論:この要約の目的は、犬と猫のHSAの種々の型の臨床症状と進行を述べることと、種々の発表されている治療オプションと関連する結果に注目した獣医学的文献の系統的レビューを提供することである。(Sato訳)
■犬の脾臓血管肉腫の補助的カルボプラチンによる治療:18症例(2011-2016)の回顧的評価とドキソルビシンベースの化学療法との比較
Adjuvant carboplatin for treatment of splenic hemangiosarcoma in dogs: Retrospective evaluation of 18 cases (2011-2016) and comparison with doxorubicin-based chemotherapy
J Vet Intern Med. 2021 Jul 5.
doi: 10.1111/jvim.16212. Online ahead of print.
Erica A Faulhaber , Emily Janik , Douglas H Thamm
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背景:脾摘後のドキソルビシンベースの化学療法は、犬の血管肉腫の標準治療であるが、予後は一般的に悪い。
仮説/目的:ドキソルビシンベースのプロトコールと比べ、脾摘後のカルボプラチン化学療法の臨床結果を調べること。2つ目の目的は、末梢単球数が予後と関係するかどうかを判定することだった。
動物:病理組織的にステージIあるいはIIと確認し、脾摘とカルボプラチン(n=18)あるいはドキソルビシンベースのプロトコール(n=22)で治療した40頭の犬の医療データを評価した。
方法:回顧的研究。統計学的関連は、生存期間に対しカプラン-マイヤー法を、生存期間の違いに対しログランク解析を使用して評価した。個体群統計情報と生存期間は、医療記録を通して入手した。手術前後の血中単球数を記録した。
結果:生存期間中央値は、カルボプラチンの犬(n=18)で160日(48->559)、ドキソルビシンの犬(n=22)で139日(54-975)だった(P=.82、ハザード比(95%CI)=1.075(0.56-2.07))。脾摘と化学療法開始の間で単球数が減少した犬の生存期間中央値は265日で、単球数が増加した犬は66日だった(P=.002、ハザード比(95%CI)=4.17(1.21-14.39))。
結論と臨床的重要点:ドキソルビシンが禁忌と思われる症例に対し、カルボプラチンは1つの代替法と考えることができた。術後の末梢単球数の増加は、より悪い予後と関係するかもしれない。(Sato訳)
■犬の肛門嚢アポクリン腺癌切除後の合併症
Post-operative complications following apocrine gland anal sac adenocarcinoma resection in dogs
Vet Comp Oncol. 2021 Jun 25.
doi: 10.1111/vco.12748. Online ahead of print.
Allyson Sterman , J Ryan Butler , Aidan Chambers , Rachel Dickson , Josephine Dornbusch , Megan Mickelson , Laura Selmic , Valerie Scharf , Ariel Schlag , Owen Skinner , Arathi Vinayak , Brandan Wustefeld Janssens
目的:原発性肛門嚢アポクリン腺癌(AGASACA)の外科的切除に関係する合併症を述べる
研究計画:多施設回顧的横断コホート研究
動物:自然に疾患が発生した飼育犬
方法:Clavien-Dindo classification分類システムを用い、術後の事象を振り分けて述べる。合併症と有意に関係するリスクファクターを、ロジスティック回帰解析で分析した。
結果:161頭の犬を分析に含めた。術後続発症、合併症、特に肛門嚢部位の治癒失敗率は、それぞれ14、17、1%だった。合併症のほとんど(68%)はグレードII以上で、ゆえにいくつかの型の介入を必要とした。術中合併症は、11症例(7%)で確認され、一般的なものは肛門直腸壁の穿孔だった。術中合併症は術後合併症と有意に関係した(P<0.001;OR7.4)が、肛門直腸壁穿孔は、ロジスティック回帰で唯一の有意なリスクファクターだった(P<0.001;OR19)。手術部位感染は161頭中20頭(12%)で確認された。局所再発(LR)は18%の症例で374日(95%CI:318-430)の中央値で起こった。唯一のLRと有意に関係したリスクファクターは、脈管あるいはリンパ浸潤の存在だった(P=0.008;OR3)。
結論:術後合併症は比較的まれだが、原発性肛門嚢アポクリン腺癌の切除中、術中合併症があった時にそのリスクが有意に増加した。
臨床意義:この研究は、術後合併症に対するリスクファクターに関する情報を臨床家に提供する。(Sato訳)
■進行した犬の鼻腔癌のリン酸トセラニブによる治療:23症例(2015-2020)
Treatment of advanced-stage canine nasal carcinomas with toceranib phosphate: 23 cases (2015-2020)
J Small Anim Pract. 2021 Jun 16.
doi: 10.1111/jsap.13387. Online ahead of print.
V Merino-Gutierrez , J F Borrego , J Puig , A Hernández , F Clemente-Vicario
目的:リン酸トセラニブで治療した鼻腔癌の犬の生存期間中央値(MST)を調べる
素材と方法:スペインの4か所の二次診療施設のデータベースを用い、2015年1月から2020年10月までに鼻腔腫瘍と診断された犬を回顧的に検索した。トセラニブの前に放射線療法あるいは他の化学療法で治療した犬は除外した。
結果:鼻腔癌と確認され、Adams Modified Staging Systemに従い始めのステージングにCTスキャンを行い、リン酸トセラニブで治療した23頭を含めた。9頭の犬はステージIIIの鼻腔癌で、14頭はステージIVの鼻腔癌だった。ステージIとIIの鼻腔癌の犬はいなかった。全体の生存期間中央値は139日だった。ステージIIIとIVのMSTに統計学的有意差はなかった(P=0.6、ステージIIIの140日(範囲46-401)vsステージIVの120日(範囲23-600))。全体的に、鼻出血のある犬(166日)は、ない犬(83日)よりMSTがより長かった。リン酸トセラニブの許容性は一般的によかった。ほとんどの犬は、進行疾患の前に最初の臨床的利益があった。
意義:これはステージIIIおよびVIの鼻腔癌をリン酸トセラニブで治療した犬のMSTを報告する最初の研究である。この回顧的研究は、リン酸トセラニブは鼻腔癌に関係する臨床症状を減らすことを示した。(Sato訳)
■犬の皮膚および皮下軟部組織肉腫における細胞診特徴と組織学的グレードの相関性
Correlation between cytologic features and histologic grades in cutaneous and subcutaneous soft tissue sarcomas in dogs-A pilot study
Vet Clin Pathol. 2021 Apr 2.
doi: 10.1111/vcp.12975. Online ahead of print.
Sonia Sanchez-Redondo , Cassia H Z Hare , Fernando Constantino-Casas , Tim L Williams
現在、犬の軟部組織肉腫(STS)のグレード判定は、病理組織検査を基にしている。ヒトにおいて、いくつかの研究では、STSに対する細胞学的グレード判定システムと組織学的グレードの間の一致が証明されている。
この研究の目的は、犬の皮膚および皮下STSのいくつかの細胞学的パラメーター(スメア細胞性、核の大小不同、核小体悪性スコア、多核、有意分裂像の数/200細胞)と組織学的グレードを相関させることだった。
STSの組織学的診断を確認した症例から、独立的に3人の観察者(何も知らされていない)が細胞学的標本を再検討した。各パラメーターに対し、細胞学的グレード判定スコアを付けた。細胞学的グレード判定スコア(観察者間の平均)と組織学的グレードの相関は、Spearman's相関係数を用い、統計学的有意はP<.05とした。
この研究に21症例を含めた(グレードI STS10症例、グレードII STS9症例、グレードIII STS2症例)。有糸分裂像の数(≧3)/200細胞は、有意を示した唯一のパラメーターだったが弱く、組織学的グレードとポジィティブに相関した(rs=.469;P=.032)。≧3有糸分裂像/200細胞を示したグレードIの腫瘍はなかったが、≧3有糸分裂像/200細胞は、グレードIIの腫瘍の33%、グレードIIIの腫瘍の50%(2頭中1頭)でしか観察されなかった。
この予備的研究は、有糸分裂像の数の増加は、よりSTSの高いグレードと相関するかもしれないと示唆される;しかし、STSのグレード判定に対するこのパラメーターの感受性は低いと思われる。(Sato訳)
■肉眼的に血管を巻き込んでいる甲状腺癌を甲状腺摘出で治療した73頭の犬の結果と術後合併症
Outcome and postoperative complications in 73 dogs with thyroid carcinoma with gross vascular invasion managed with thyroidectomy
Vet Comp Oncol. 2021 May 16.
doi: 10.1111/vco.12739. Online ahead of print.
Max Latifi , Owen T Skinner , Elisa Spoldi , Leah Ackerman , Carlos H de M Souza , Jin Yoon , Arathi Vinayak , Joanne L Tuohy , Mandy L Wallace , Josephine A Dornbusch , Laura E Selmic , Jenna Menard , Julia P Sumner , Kelly C Schrock , Brandan G Wustefeld-Janssens , Brad M Matz , Todd E Daniel , Megan A Mickelson
犬の甲状腺癌に対し、甲状腺摘出後は良好な結果が報告されているが、肉眼的に血管を巻き込んでいる甲状腺癌に対する結果はあまり述べられていない。
この研究は、肉眼的に血管を巻き込んでいる甲状腺癌の犬で、甲状腺摘出を行いその臨床結果と合併症を述べる。
10か所の病院で、2010年1月1日から2019年12月31日まで、甲状腺摘出を行った犬の医療記録を再検討した。シグナルメント、診断的データ、実施した基本および補助治療、結果を抽出した。生存性は、カプラン-マイヤー解析で算出した。疾患-特異生存性に関係する変数は、多変量ロジスティック回帰で確認した。
73頭の犬を含め、そのうち58頭の犬は片側甲状腺摘出を行い、15頭は両側性甲状腺摘出を行った。合併症は術中に5頭(メジャー3頭、マイナー2頭;6.8%)、術後に12頭(死亡につながるメジャー2頭、マイナー10頭;16.4%)で報告された。7頭(9.6%)は術後中央値238日(範囲:15-730日)で局所領域再発を起こした。9頭(12.3%)の犬で、術後中央値375日(範囲:50-890日)に遠隔転移が疑われ、あるいは確認された。27頭(37%)は補助的治療(化学療法:n=21;放射線療法:n=6)を受けた。39頭の犬は安楽死あるいは死亡し、20死は疾患に関係し(n=10)、あるいは原因不明で(n=10)、19死は関係ない原因によるもので、9頭はフォローアップできなかった。全体の生存期間中央値は621日で、疾患-特異生存期間は到達しなかった。1-年疾患特異生存率は82.5%だった。我々のデータセットで、疾患-特異生存性に関係する変数はなかった。
肉眼的に血管を巻き込んでいる甲状腺癌の犬の局所-領域治療に対し外科手術が考慮されるかもしれない。(Sato訳)
■病理組織学的に肝細胞癌と診断された犬の生存性に関わる因子:94症例(2007-2018)
Factors associated with survival in dogs with a histopathological diagnosis of hepatocellular carcinoma: 94 cases (2007-2018)
Open Vet J. Jan-Mar 2021;11(1):144-153.
doi: 10.4314/ovj.v11i1.21. Epub 2021 Feb 23.
James Moyer , Daniel J Lopez , Cheryl E Balkman , Julia P Sumner
背景:犬の肝細胞癌(HCC)は、原発性肝臓癌の最も一般的な型である。にもかかわらず、予後因子や転帰に関係するこの疾患の報告は比較的少ない。
目的:病理組織学的に診断されたHCCの全てのサブタイプの犬の生存性に関係する因子を評価する
方法:2007年から2018年まで、バイオプシー(21/94)あるいは根治的切除(73/94)を試みてHCCの病理組織学的診断が下された94頭の飼育犬で回顧的1施設研究を行った。シグナルメント、術前の特徴、外科所見、術後結果を記録した。生存性と退院データとの関連を集め、一変量ロジスティック回帰を行った。カプラン-マイヤー生存解析は、長期予後に対する負のリスク因子を確認するため実施した。
結果:全ての犬に対する生存期間中央値(MST)は707日(95%CI:551-842)だった。疑われた犬vs.偶発的に診断された犬(695vs.775日)、完全vs.不完全外科マージン(668vs.834日)、塊状サブタイプvs.結節/瀰漫性サブタイプ(707vs.747日)のMSTに有意差はなかった(p>0.05)。ロジスティック回帰で内側右葉の切除と周術期死亡のリスクに関係を認めた(OR=9.2、CI1.5-55.9、p=0.016)。米国麻酔学会議スコア≧4、方形葉内に病巣がある、血中尿素窒素、カリウムあるいはGGT上昇は多変量Cox回帰中の負の予測として確認された。術前画像(超音波あるいはCT)は、91%の症例で外科的位置と一致した。術前細胞診は、15/32(46.9%)症例のHCCの診断と一致した。
結論:診断のタイプ(偶発的vs.推定)、切除の完全性、サブタイプは、この研究のMSTに関係しなかった。術前の中央部分内に腫瘍が確認された時は、あまり良くない結果と関係するかもしれない。術前細胞診の結果は、悪性度の確認に対し高い感受性を示さなかった。(Sato訳)
■犬の消化管肉腫の組織学的特徴、予後因子、転帰
Outcome, prognostic factors, and histological characterization of canine gastrointestinal sarcomas
Vet Comp Oncol. 2021 Mar 27.
doi: 10.1111/vco.12696. Online ahead of print.
Chelsea M Del Alcazar , Jennifer A Mahoney , Katherine Dittrich , Darko Stefanovski , Molly E Church
平滑筋肉腫(LMSAs)、消化管間質腫瘍(GISTs)、他の珍しい肉腫を含む腫瘍の1群の犬の消化管肉腫は、全ての消化管腫瘍の約10-30%を占める。
この研究の目的は、転帰を予想する予後因子を確認するため、組織学的特徴と臨床的挙動の特徴を調べる。
外科的に治療した消化管肉腫に対し、1施設のデータベースを検索し、組織検査に十分な組織が残っている47症例と、臨床的結果の解析に対して利用できる42症例が得られた。
その後腫瘍は前向きに有糸分裂数、壊死、出血、炎症を評価し、平滑筋アクチン、c-kit、DOG-1に対し免疫組織化学(IHC)染色により分類した。IHC解析で、32腫瘍はGISTs、14腫瘍はLNSAs、1腫瘍は別に特定されない肉腫と定義した。GISTsとLMSAsに対し、全体の生存期間中央値(MST)は1024日(範囲31-1456)で、腫瘍のタイプの間に統計学的な違いはなかった(p=0.92)。この研究でのGISTsの総転移率は、32.1%(n=9)で、LMSAsの15.3%(n=2、p=0.45)と有意差はなかった。
多変量解析において、GISTの犬の9未満の有糸分裂数と、全ての腫瘍タイプにおいて完全な外科的切除は、MST改善と相関した。GISTsの犬に対し、c-kit染色の強さも、生存性に正に相関し、染色が弱い症例はMST250日で、中程度あるいは強いc-kit染色の症例はMST1418日だった(p=0.005)。(Sato訳)
■7頭の犬の悪性浸出液を伴う卵巣腫瘍の長期治療結果
Long-Term Treatment Results for Ovarian Tumors with Malignant Effusion in Seven Dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2021 Mar 26.
doi: 10.5326/JAAHA-MS-7117. Online ahead of print.
Teruo Itoh, Atsuko Kojimoto, Kazuyuki Uchida, James Chambers, Hiroki Shii
ヒトにおいて、進行性の卵巣癌に対し、外科手術とプラチナベースの化学療法はかなり有効であるが、犬でその効果はあまりわかっていない。
著者らは、悪性腹水を伴う悪性卵巣腫瘍の7頭の犬の長期治療結果を評価した。卵巣子宮摘出術(OVHs)を全ての犬に実施した;4頭は腹膜に肉眼的播種のある卵巣腺癌(AC)(2頭は胸水あり)、3頭は腹腔に肉眼的播種のない顆粒膜細胞腫(GCT)だったが、1頭は胸水があった。
OVH後、全ての犬の浸出液は消失した。6頭(ACs3頭、GCTs3頭)は、術後にカルボプラチンIV療法を受けた。GCTの2頭は、術後の再発あるいは転移がなく、GCTの1頭は術後1811日に再発した。ACの全ての犬は、術後171-584日に浸出液が再発し、シスプラチンあるいはカルボプラチンの腔内投与後消失し、続く無病期間は155-368日だった。総生存期間は、GCTsの犬(822-1840日)がACsの犬(617-841日)よりも長かった。
それらの結果から、悪性浸出液を伴う卵巣腫瘍の犬は、OVHに加え、プラチナベースの化学療法後、比較的長期に生存可能で、ACよりもGCTの方が予後は良いと示唆される。(Sato訳)
■インスリノーマの犬の臨床所見、神経症状および生存性:116症例(2009-2020)
Clinical findings, neurological manifestations and survival of dogs with insulinoma: 116 cases (2009-2020)
J Small Anim Pract. 2021 Mar 16.
doi: 10.1111/jsap.13318. Online ahead of print.
D Ryan , J Pérez-Accino , R Gonçalves , M Czopowicz , C Bertolani , M D Tabar , J Puig , C Ros , A Suñol
目的:インスリノーマと診断された犬の臨床所見と結果を再調査し、総生存期間の予測因子を評価する。また、この集団の神経症状と、それと生存性との関連を述べる。
素材と方法:犬のインスリノーマ症例の回顧的複数施設研究(2009-2020)。臨床記録からシグナルメント、臨床的病歴、神経学的検査、診断所見、治療、結果を入手した。一変量および多変量解析を、総生存期間の比較に使用した。
結果:116症例を含めた。来院前の臨床症状の継続期間中央値は、1.5か月だった。最も一般的に見られた臨床症状は、虚弱(59.5%)、てんかん発作(33.6%)、意識あるいは行動の変化(27.6%)だった。3頭は発作性運動異常があると疑われた。32頭は神経学的検査で異常があり、一般的に鈍麻(28.1%)、引っ込め反射低下(21.9%)、威嚇反応欠如(18.8%)だった。手術を行った犬(20か月)の総生存期間は、内科的治療(8か月;補正ハザード比:0.33;95%信頼区間:0.18-0.59)よりも有意に長かった。転移の存在のみが、予後に関係する他の変数だった(補正ハザード比1.72;95%信頼区間:1.02-2.91)。
臨床意義:犬のインスリノーマの臨床症状はあいまいで、非特異的である。虚弱、てんかん発作、精神あるいは行動の変化は一般的に報告された。精神の鈍化、前脳の神経疾患局在は、主な神経症状だった。手術を行った犬の総生存期間は、内科的治療を行った症例よりも長く、転移のあった犬は、治療様式に関係なく総生存期間が短かった。神経学的検査の異常は予後に関連しなかった。(Sato訳)
■外部放射線照射療法で治療した猫の鼻腔内癌の回顧的評価
Retrospective evaluation of intranasal carcinomas in cats treated with external-beam radiotherapy: 42 cases
J Vet Intern Med. 2021 Mar 3.
doi: 10.1111/jvim.16098. Online ahead of print.
Hiroto Yoshikawa , Tracy L Gieger , Corey F Saba , Kirsha Fredrickson , Lyndsay Kubicek , Siobhan Haney , David Ruslander , Krista L Kelsey , Margaret C McEntee , Michael W Nolan
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背景:猫の鼻腔内癌(INC)の治療に使用される種々の放射線治療の比較した有効性に関してはほとんどわかっていない
目的:INCの猫に対する生存性に関する結果と予後因子を調査する
動物:放射線治療(RT)を行ったINCの猫42頭
方法:単一群後ろ向き研究。7獣医放射線治療施設中1施設でRTを行ったINCの猫に対する医療記録を再調査する。照射プロトコルは以下に分類した:根治的意図強度分割RT(FRT)、根治的意図強度定位RT(SRT)、緩和的意図強度RT(PRT)。総生存期間(OST)中央値と疾患無進行生存期間(PFS;高度横断画像検査による証拠、あるいは徴候の再発)を算出した。腫瘍ステージ、RTプロトコル/意図、補助治療使用と結果との関係を算出した。
結果:猫はSRT(n=18)、FRT(n=8)、PRT(n=16)を行った。多変量モデルにおいて、根治的意図の治療(DRT;FRT/SRT)を受けた猫は、中央値PFS(504日、(95%CI:428-580日)vsPRT198日(95%CI:62-334日);p=0.006)と中央値OST(721日(95%CI:527-915日)vs284日(95%CI:0-570日);p=0.001)が有意に長かった。再発時に2回目のDRTコースを行った猫は、1回のRTコースを受けた猫よりも有意に長く生存した(DRTあるいはPRT(中央値OST824日(95%CI:237-1410日)vs434日(95%CI:277-591日);p=.028))。
結論:INCの猫において、DRTはPRTに比べ、OSTおよびPFSがより長かった。腫瘍の進行が起きた場合、2度目のDRTのコースを考慮すべきである。(Sato訳)
■非ステロイド性抗炎症剤、ミトキサントロン、放射線治療を用いた犬の泌尿生殖器癌の治療:回顧的研究
Treatment of genitourinary carcinoma in dogs using nonsteroidal anti-inflammatory drugs, mitoxantrone, and radiation therapy: A retrospective study
J Vet Intern Med. 2021 Feb 26.
doi: 10.1111/jvim.16078. Online ahead of print.
Benoit Clerc-Renaud , Tracy L Gieger , Susan M LaRue , Michael W Nolan
Free article
背景:伝えられるところによれば、泌尿生殖器癌(CGUC)の犬で局所領域の腫瘍コントロールと生存期間の延長が、放射線治療(RT)±補助化学療法と非ステロイド性抗炎症剤(NSAIDs)による治療で達成可能である。
目的:NSAIDs、ミトキサントロン(MTX)、標準RTプロトコル(57Gy、20分割)を用いたCGUCの治療後、無イベントおよび総生存期間の特徴を述べる
動物:2008年から2017年の間で治療した飼育犬51頭
方法:犬を回顧的に治療グループに分類した:(a)第一選択の併用化学放射線治療(RTの1か月以内の≧1ドーズのMTX開始);(b)第一選択化学療法(腫瘍進行がなくRT前に>1か月MTX投与);(c)救済処置としてRT(RT前にMTX、外科手術あるいは両方の後、局所領域腫瘍進行)。治療誘発性毒性、無イベント生存期間(EFS)、総生存期間(OSTs)を記録した。生存性に対する個体群統計、ステージング、治療関連因子の影響をCox比例ハザードモデルで評価した。
結果:全ての犬のEFSおよびOSTの中央値は260と510日で、グループ1(n=39)、2(n=4)、3(n=8)の中で有意差はなかった。中程度から重度の臨床症状がある犬のEFSとOSTはより短かった(P<.001およびP<.001);前立腺が関与している犬のOSTはより短かった(P=.02)。照射後中央値70日で、16頭(31%)に持続性の尿失禁が発症した;他の毒性は軽度および自己制限的だった。
結論と臨床的重要性:軽度の臨床症状と前立腺関与がないことが、生存性に対する好ましい予後と関係した。尿失禁のリスクに関係するクライアント教育は根拠がある。(Sato訳)
■内科治療(±部分的膀胱切除)を受けている移行上皮癌の犬の臨床的結果
Clinical outcomes of dogs with transitional cell carcinoma receiving medical therapy, with and without partial cystectomy
Can Vet J. 2021 Feb;62(2):133-140.
Marcus L Bradbury , Christine M Mullin , Shaban D Gillian , Chick Weisse , Philip J Bergman , Michelle A Morges , Lauren R May , David M Vail , Craig A Clifford
この回顧的研究の目的は、膀胱移行上皮癌が自然に発生した犬の結果に対し、手術の効果を評価することだった。
47頭が組み込み基準に合致した。31頭(A群)は部分的膀胱切除と補助的内科療法で治療し、16頭(B群)は内科療法単独で治療した。
部分的膀胱切除と補助的内科療法で治療した犬の方の全体的生存性が高かった(A群の498日に対しB群の335日、ハザード比2.5;95%CI:1.1-5.7;P=0.026)。無増悪生存期間に群間の違いはなかった(A群の85日に対しB群の83日;P=0.663)。無増悪生存期間に対する予後因子は確認されなかった。フォローアップできない症例がA群に多かったため、time-to-event生存分析を実施した。全体の生存性に有意差は見られず、time-to-event分析において予後因子は確認されなかった。
移行上皮癌の治療において、部分的膀胱切除の役割を調べる前向き無作為化研究が必要である。(Sato訳)
■原発性頭蓋内腫瘍の犬の脳定位生検から回復後に発生する有害事象のリスクファクター
Risk factors for adverse events occurring after recovery from stereotactic brain biopsy in dogs with primary intracranial neoplasia
J Vet Intern Med. 2020 Sep 14.
doi: 10.1111/jvim.15885. Online ahead of print.
Richard L Shinn , Yukitaka Kani , Fang-Chi Hsu , John H Rossmeisl
背景:定位脳バイオプシー(SBB)は、脳腫瘍の病理組織学的診断を可能にする。有害事象(AE)はSBB後の犬の5-29%で発生するが、AE発生に関するリスクファクターはあまり述べられていない。
目的:SBB後の犬のAEに関係する臨床病理、診断画像検査、処置上の変数を確認する
動物:脳腫瘍の29頭の犬
方法:回顧的症例-コントロール研究。犬は、SBB前の血液検査と、SBB前後の臨床検査、診断画像検査を実施していた。症例は、SBB後に既存の神経学的欠損の一時的な悪化、一時的な新しい欠損、持続的な神経学的欠損を含むAEを経験した。コントロールはSBBを行ってAEがなかった犬とした。推定のリスクファクターとAEの関連の検査にFisher's exactとStudent's t testsを使用した。
結果:有害事象は8/29頭(27%)で発生し、7/8頭(88%)は一時的だった。症例はT2W-不均一な腫瘍(88vs38%;P=0.04)、血小板数がより低い(194.75±108.32vs284.29±68.54x1000/mm3、P=0.006)確率が有意に高かった。基本画像にグラディエントエコー信号欠損のある犬は、バイオプシー後に出血がある確率が高く、7/8(88%)の症例はSBB後の画像検査上に出血があった。
結論と臨床的重要性:SBBを行った27%の犬はAEを経験し、AEのほとんどは1週間で解消した。SBBに関係するAEを最小にするため、血小板は≧185000/mm3であるべきである。バイオプシー後の頭蓋内出血の観察は、AEを起こした犬の88%で見られたため、重大な臨床の影響を持つ可能性がある。(Sato訳)
■悪性腫瘍の創傷に対する新しいカルボキシメチルセルロースベースのモーズ・ゾルゲルを適用した3頭の犬
Application of a novel carboxymethyl cellulose-based Mohs sol-gel on malignant wounds in three dogs
J Vet Med Sci. 2021 Jan 13.
doi: 10.1292/jvms.20-0670. Online ahead of print.
Yasuhiro Fukuyama , Takuya Maruo , Yuta Nishiyama , Yuki Nemoto , Kaho Murayama , Hideki Kayanuma , Shinpei Kawarai
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悪性腫瘍の創に対し一般に使用される修正モーズペーストの調剤は時間と労力を必要とする。さらに、金属を含む廃水が創を洗浄する時に生ずる。
ゆえに、以前、著者らは修正モーズペーストの基本材料を、酸化亜鉛スターチ粉末からカルボキシメチルセルロース(CMC)に変更した。
CMCを基にした新しい修正モーズペースト(moM-CMC sol)は、それらの不都合な点を減らすかもしれない。
この研究で、悪性腫瘍の3頭の犬の出血や悪臭を管理するため、moM-CMC solを適用した。moM-CMC solは適用してから1時間以内に腫瘍上でゲルに変化し、容易に除去できた。その徴候は数日以内に解消した。
moM-CMC solは悪性腫瘍の創を持つ犬に有益と思われる。(Sato訳)
■皮膚あるいは皮下軟部組織肉腫の犬における初診時の転移を示唆する肺結節の有病率
Prevalence of pulmonary nodules suggestive of metastasis at presentation in dogs with cutaneous or subcutaneous soft tissue sarcoma
J Am Vet Med Assoc. 2021 Jan 15;258(2):179-185.
doi: 10.2460/javma.258.2.179.
Erika J Villedieu, Audrey F Petite, Janet D Godolphin, Nicholas J Bacon
目的:過去の関連した胸部診断画像検査がなく、皮膚あるいは皮下に軟部組織肉腫(STSs)のある犬において、初診時に転移が示唆される肺結節の有病率を調査する
動物:皮膚あるいは皮下STSのある146頭の飼育犬
方法:2014年9月から2018年3月の間に検査のため受診した時、初めて胸部診断画像検査を行ったSTSsのある犬を確認するため、医療記録を回顧的に検索した。集めたデータは犬と腫瘍の特徴を含めた。結果は注目する変数(例えば、STSグレード、期間あるいは病歴)を基にグループに分けた犬を評価した。
結果:胸部診断画像検査はCT(131/146(89.7%))あるいはエックス線検査(15(10.3%))で実施した。胸部画像検査上の転移を示唆する肺結節の有無は9頭で不確実だったが、残りの137頭は確実で、16頭(11.7%)の犬に結節が存在した(グレード1STSsの5/77(6%)、グレード2STSsの2/36(6%)、グレード3STSsの9/24(38%))。初回検査でそのような肺結節が存在するという確率は、グレード3 STSsの犬(vs グレード1あるいは2STSs)と、STSが>3か月存在する犬(vs ≦3か月)でより高かった(それぞれOR、10.8と3.14)。
結論と臨床的関連:肺のステージングは、グレード1あるいは2の皮膚あるいは皮下STSsの犬(特に腫瘍の存在が3か月以下の時)に対して利益の少ない診断方法だと結果は示した。(Sato訳)
■ジャックラッセルテリアの消化管腺癌の臨床および病理学的特徴と予後
Clinical and histopathological features and prognosis of gastrointestinal adenocarcinomas in Jack Russell Terriers
J Vet Med Sci. 2020 Dec 16.
doi: 10.1292/jvms.20-0421. Online ahead of print.
Aki Ohmi , Koichi Ohno , James K Chambers , Kazuyuki Uchida , Taisuke Nakagawa , Hirotaka Tomiyasu , Hajime Tsujimoto
日本では、消化管の腺腫および腺癌と診断されるジャックラッセルテリア(JRTs)の数が増えてきている。
この研究は、JRTの消化管にできる腺癌の臨床および病理組織学的特徴と予後を回顧的に調査した。
消化管腺癌と診断されたJRT7頭と他の犬種39頭を研究に含めた。JRTの消化管腺癌の最も一般的な部位は幽門と直腸だった。病理検査上、それらの腺癌は乳頭状あるいは管状の発育パターンを示し、その病変は粘膜上皮内に限られ、浸潤は乏しかった。
胃腺癌の全ての犬の中で、JRTの5頭に対する生存期間中央値(MST)は、半数以上の症例が生存中のため判定できなかったが、非JRTの犬9頭のMSTは34日だった。
大腸の腺癌の全ての犬の中で、JRT3頭に対するMSTは判定できなかったが、非JRTの犬9頭のMSTは1973日だった。
胃腺癌のJRTと非JRTの犬のMSTの違いは有意だった(P=0.0220)。
JRTの消化管腺癌は、その臨床的特性、治療経過、予後に関して他の犬種と異なる特徴を示すため、消化管腺癌の治療についても比較して異なる外科及び内科治療プランを考えるべきである。(Sato訳)
■甲状腺癌の22頭の犬の同側の内側咽頭後リンパ節と深頸リンパ節への転移
Metastasis to ipsilateral medial retropharyngeal and deep cervical lymph nodes in 22 dogs with thyroid carcinoma
Vet Surg. 2020 Dec 7.
doi: 10.1111/vsu.13549. Online ahead of print.
Owen T Skinner , Carlos H de M Souza , Dae Young Kim
目的:甲状腺癌を外科的に治療した犬における、内側咽頭後(MRP)および深頸リンパ節への結節転移の割合を判定する
研究計画:回顧的研究
動物:22頭の飼育犬
方法:ミズーリおよびフロリダ大学で2015年7月から2019年10月までの医療記録を再調査した。甲状腺切除と同時に選択的MRPリンパ節切除±深頸リンパ節切除を行った犬を含めた。腫瘍部位、術前のステージ、病理組織学的所見を記録した。
結果:合計16個の甲状腺癌がある22頭の犬を含めた。19頭の原発腫瘍は片側、2頭は両側、1頭は両側と正中異所性だった。全ての犬は同側のMRP切除を行った(両側の犬は両側切除を含める)。片側の癌の3頭は片側のMRPリンパ節も切除した。4つの深頸リンパ節と1つの浅頸リンパ節を切除した。
転移は22頭中10頭(45%)の14のリンパ節で確認された。全4つの切除した深頸リンパ節および1つの対側のMRPリンパ節は転移として確認された。病巣の大きさは14の転移性リンパ節のうち13で分類することができた。マクロ転移は7つのリンパ節、ミクロ転移は1つのリンパ節、分離された腫瘍細胞は5つのリンパ節で検出された。
結論:この甲状腺癌の犬の集団において採取したリンパ節内で、領域転移は一般的だった。
臨床意義:これらの結果は、領域転移の割合を確かめ、リンパ節転移の予後的影響を判定するための大規模集団の追加研究を正当化するエビデンスを提供する。(Sato訳)
■胆嚢神経内分泌癌の犬13症例の臨床、病理組織、免疫組織化学的特徴
Clinical, histopathologic, and immunohistochemical features of 13 cases of canine gallbladder neuroendocrine carcinoma
J Vet Diagn Invest. 2020 Dec 2;1040638720978172.
doi: 10.1177/1040638720978172. Online ahead of print.
Kevin M O'Brien , Braelyn J Bankoff , Peri K Rosenstein , Daphne C Clendaniel , Melissa D Sánchez , Amy C Durham
この回顧的記述研究において、犬胆嚢神経内分泌癌(GB-NEC)の13症例の臨床、組織、免疫組織化学的特徴を述べる。
評価した神経内分泌に対する免疫組織化学染色(ニューロン-特異エノラーゼ(NSE)、クロモグラニンA、シナプトフィジン)およびガストリンマーカー、臨床病理およびフォローアップデータを全ての症例で入手した。
診断時の平均年齢は8.9歳で、犬種はボストンテリア6頭、ビションフリーゼ2頭、プードル1頭、イングリッシュブルドッグ1頭、フレンチブルドッグ1頭、雑種犬2頭が含まれた。この集団ではボストンテリアが多く見られ、ゆえに犬種素因の可能性がある。
多くの犬は嘔吐と肝酵素活性の上昇を呈した:13頭中13頭はALTとALP活性が上昇していた;13頭中8頭はAST活性が上昇していた;13頭中7頭はGGT活性が上昇していた。
腹部超音波検査および/あるいは試験的開腹で胆嚢のマスを認めた。全ての腫瘍は同じような組織学的特徴で、NSE、クロモグラニンA、シナプトフィジン、ガストリンの免疫反応陽性だった。脈管浸潤は13個の腫瘍中8個に見られ、13症例中6頭(肝臓4、肺転移2)に転移が存在した。
死亡した犬の生存期間中央値は3.7年;8頭中5頭はGB-NECにより死亡し、そのうち3頭は転移が広がっていた。
GB-NECは転移の可能性を持つ;しかし一部分集団の犬では外科的切除で根治するかもしれない。(Sato訳)
■心基底部腫瘍の疑いの犬に対する従来の分割および定位放射線療法の長期結果
Long-term outcomes with conventional fractionated and stereotactic radiotherapy for suspected heart-base tumours in dogs
Vet Comp Oncol. 2020 Nov 2.
doi: 10.1111/vco.12662. Online ahead of print.
Katherine S Hansen , Alain P Théon , Jennifer L Willcox , Joshua A Stern, Michael S Kent
心基底部腫瘍の疑いの犬に対する放射線療法の結果の発表は限られている。
心基底部マスによる臨床症状がある犬(6)と超音波検査で無症候の進行性の大きなマスがある犬(2)で、従来の分割放射線療法(CFRT)あるいは体幹部定位放射線療法(SBRT)で治療した8頭の回顧的縦断研究(3/2014-2019)。
症候性症例の臨床所見は以下の1つ以上が含まれた:からえずき/発咳(4)、運動不耐性(2)、虚脱(1)、心膜貯留液(2)、まれな心室性期外収縮(2)、腹水(1)、乳糜胸による呼吸困難(1)。
CFRT症例は20分割で50Gray(Gy)、SBRT症例は5分割で30Gyあるいは3分割で24Gyの照射を受けた。2頭は放射線後の化学療法を受けた。
解析で、7/8頭は死亡し、1頭は治療後684日生存していた。最初の治療から算出した総生存期間中央値(MOS)は785日(95%CI、114-868日、範囲114-1492日)だった。
CFRTを受けた5頭のMOSは817日(95%CI、155日-到達せず、範囲155-1492日)だった。SBRTを受けた3頭のMOSは414日(95%CI、114日-到達せず、範囲114-414日)だった。CFRTとSBRTの生存性に統計学的有意差は見られなかった。
症候性症例の5/6頭は改善を示した。フォローアップの超音波検査を受けた4/5頭でマスの縮小を認めた。起こりうる合併症には、無症候の放射線肺炎(4)、心房性頻脈/期外収縮(4)、腫瘍進行に伴う心不全と心膜貯留液(1)が含まれた。
この研究は、放射線療法が心基底マスの臨床的関連あるいは進行性の拡大に影響を及ぼすかもしれないという予備的エビデンスを提供する。(Sato訳)
■脾臓摘出を行う犬の肝臓生検の臨床的有用性
Clinical utility of liver biopsies in dogs undergoing splenectomy
J Small Anim Pract. 2020 Oct 9.
doi: 10.1111/jsap.13202. Online ahead of print.
E Clarke , A S Levien , R A Bennett , S Perry , G Daniel
目的:脾臓にマスのある犬で、脾臓摘出時に採取した肝臓バイオプシー上で検出された腫瘍の有病率を調べる
素材と方法:脾臓にマスがあり、脾臓摘出後に肝臓バイオプシーを行った犬の医療記録の回顧的研究
結果:脾臓摘出を行った犬の113頭中50頭(44.2%)で悪性脾臓腫瘍が検出された。腫瘍性肝疾患は、肉眼的に正常な肝臓の40頭中1頭(2.5%)、肉眼的に異常な肝臓の69頭中20頭(28.9%)で検出された。肉眼的に異常な肝臓の犬は、バイオプシー上で肝臓腫瘍と診断される機会が16倍(95%CI:2.5-170)高かった。血腹も脾臓摘出時のバイオプシーで肝臓腫瘍の確率増加に関係した。
臨床意義:肉眼的に正常な肝臓からの肝臓バイオプシーは、あまり利益のない診断検査だが、肝臓が異常と思われる場合の脾臓摘出後の肝臓バイオプシーは勧められる。(Sato訳)
■教育病院に来る口腔腫瘍の犬と猫の個体群統計:1996-2017
Demographics of dogs and cats with oral tumors presenting to teaching hospitals: 1996-2017
J Vet Sci. 2020 Sep;21(5):e70.
doi: 10.4142/jvs.2020.21.e70.
Megan Cray , Laura E Selmic , Audrey Ruple
背景:口腔腫瘍は、全ての犬の癌の6-7%、全ての猫の癌の3%を占めると報告されている。著者の知るところでは、犬と猫の一般的な口腔の癌の最後の個体群統計分析は、1976年に発表された。
目的:この研究の目的は、犬と猫の口腔の腫瘍に関する現代の個体群統計情報を報告することである。
方法:獣医メディカルデータベースから口腔腫瘍と診断された犬と猫の情報を収集した。1996年1月1日から2017年12月31日までに26か所の獣医教育病院に来院した症例の医療記録を含めた。
結果:合計1810頭の犬と443頭の猫を確認した。犬の口腔腫瘍の962症例(53.6%)は悪性、455症例(25.4%)は良性に分類された。猫の口腔腫瘍の多くは悪性(257症例、58.1%)に分類され、良性はほとんどなかった(11症例、2.5%)。口腔腫瘍の発生率は、犬1000頭中4.9頭(0.5%)、猫1000頭中4.9頭(0.5%)と算出した。
結論:この口腔腫瘍の発生率は、犬と猫で過去に報告されたものよりかなり高い。それらの結果は、品種ベースおよび病理学的ベースの口腔腫瘍の研究の今後の調査に対し、仮説を立てるために役立つ情報を提供する。(Sato訳)
■両側潜在睾丸の1頭の犬のセルトリ細胞腫と混合性胚細胞-間質細胞腫
Sertoli cell tumor/mixed germ cell-stromal cell tumor as separate neoplasms in a bilaterally cryptorchid dog
Can Vet J. 2020 Sep;61(9):994-996.
Teagan L DeForge
11歳のミニチュアプードルが両側体幹脱毛、雌性化乳房、重度血小板減少、包皮浮腫を呈した。高エストロゲン血症の特徴的な臨床および血液学的所見と腹部尾側マスの存在を基に、セルトリ細胞腫(SCT)と診断した。
濃厚血小板輸血後、セルトリ細胞腫と共に、委縮した対側の混合性胚細胞-間質細胞腫を含む精巣を外科的に摘出した。何事もなく回復した。
この別々の精巣で異なる腫瘍の組み合わせは、まだ文章化されていない。
重要な臨床的メッセージ:この1頭の腹部潜在睾丸の犬におけるセルトリ細胞腫/混合性胚細胞-間質細胞腫の組み合わせは、高エストロゲン血症に関係する一般的な臨床症状と重度血小板減少症を起こすエストロゲン誘発骨髄毒性の管理を強調する。(Sato訳)
■膵外分泌腺癌の23頭の犬の臨床結果
Clinical outcome in 23 dogs with exocrine pancreatic carcinoma
Vet Comp Oncol. 2020 Aug 17.
doi: 10.1111/vco.12645. Online ahead of print.
Christopher J Pinard , Samuel E Hocker , Kristen M Weishaar
膵外分泌腺癌の犬は珍しく、この疾患の獣医学的文献は少ない。
犬外分泌腺癌の23症例を回顧的方法で再調査し、その疾患に関する臨床症状、挙動、生存性に関する情報を得た。
呈する臨床症状は非特異的で、食欲不振、元気消失、嘔吐、腹部痛が含まれた。全体の生存期間中央値はほんの1日だが、診断後短期で安楽死される犬の数が多いことによる結果だった。転移病巣は診断時に78%の症例で発見され、この疾患の攻撃的な性質が見て取れる。
リンパ節転移、腫瘍の大きさ、腫瘍の位置、どれも全体的な生存性に影響を及ぼさなかった。1頭だけが糖尿病の病歴があり、ヒトや猫におけるこの疾患の報告に反するものである。
この回顧的研究は、最適な疾患コントロールに早期発見処置の必要性を再確認するものである。しかし、外分泌腺癌の犬において、手術あるいは放射線と補助化学療法による治療の有益性は明らかではないままである。(Sato訳)
■11頭の犬の鼻腔腫瘍バイオプシーに対するスピロトーム機器の評価
Evaluation of the Spirotome Device for Nasal Tumors Biopsy in Eleven Dogs
Top Companion Anim Med. 2020 Aug;40:100436.
doi: 10.1016/j.tcam.2020.100436. Epub 2020 May 7.
Roberto Tamburro , Francesca Millanta , Francesca Del Signore , Rossella Terragni , Tommaso Magni , Massimo Vignoli
この研究は、鼻腔腫瘍に侵された犬のバイオプシーに対し、スピロトーム機器で得た組織学的サンプルの精度と診断的質を評価した。
11頭の犬を研究に含めた。平均年齢は10歳だった。全てのバイオプシーは15分以内にうまくできた。全ての犬はバイオプシー後に鼻出血を示し、無菌の綿花による鼻腔内圧迫で迅速に管理した。出血はサンプリング後10分以内に止まった。病理医によると全てのサンプルは満足のいくもので、適切な組織学的評価が可能だった。(Sato訳)
■上顎骨切除で治療した猫の結果:60症例
Outcomes of Cats Treated with Maxillectomy: 60 Cases. A Veterinary Society of Surgical Oncology Retrospective Study
Vet Comp Oncol. 2020 Jun 26.
doi: 10.1111/vco.12634. Online ahead of print.
J M Liptak , G P Thatcher , L A Mestrinho , B Séguin , T Vernier , M Martano , B D Husbands , S Veytsman , S A van Nimwegen , C H De Mello Souza , R A Mullins , S L Barry , S E Selmic
上顎切除は猫の口腔腫瘍の管理であまり述べられておらず、時には高い合併症率と下顎骨切除で治療した猫の報告があまり良くない結果だったため、推奨されていない。
この研究の目的は、上顎骨切除で治療した猫の合併症と腫瘍学的結果を回顧的に評価することだった。
60頭の猫を研究に含めた。除顎骨切除の処置は、片側吻側(20.0%)、両側吻側(23.3%)、分節(10.0%)、尾側(20.0%)、全片側上顎骨切除(26.7%)が含まれた。術中および術後合併症は、それぞれ10頭(16.7%)、34頭(56.7%)で報告された。最もよく見られた術後合併症は、低酸素症(20.0%)、切開部裂開(20.0%)だった。低酸素症の持続期間中央値は7日だった。
19頭(31.7%)は良性腫瘍と診断され、41頭(68.3%)は悪性腫瘍と診断された。局所再発と転移率はそれぞれ18.3%と4.9%だった;無増悪期間(PFI)中央値は到達しなかった。疾患関連生存期間中央値は、全体あるいは良性、悪性腫瘍に対しても到達しなかった。1-、2-生存率は、良性腫瘍の猫で100%、79%で、悪性腫瘍の猫で89%、89%、線維肉腫の猫で94%、94%、扁平上皮癌の猫で83%、83%、骨肉腫の猫で80%、80%だった。
悪い予後因子は、PFIに対し有糸分裂指数、PFIと生存期間に対し補助的化学療法、生存期間に対し局所再発が含まれた。
上顎骨切除は、良好な局所腫瘍コントロールと長期生存期間が得られる、猫に対する実行可能な治療オプションである。(Sato訳)
■70頭の犬の機能的甲状腺腫瘍の臨床特性と転帰
Clinical features and outcome of functional thyroid tumours in 70 dogs
J Small Anim Pract. 2020 Jul 21.
doi: 10.1111/jsap.13183. Online ahead of print.
V F Scharf , M L Oblak , K Hoffman , O T Skinner , K M Neal , C J Cocca , D J Duffy , M L Wallace
目的:犬の機能的甲状腺腫瘍の臨床特性と転帰を述べる
素材と方法:甲状腺のマスと診断され、甲状腺機能亢進症を併発した70頭の犬の回顧的多施設研究。症状、治療、結果、機能的甲状腺の状態に関する臨床データを回収した。
結果:機能的甲状腺腫瘍の犬の全体の生存期間中央値は35.1か月で、1年-、3年-生存率はそれぞれ83%と49%だった。外科的に切除した犬の生存期間中央値は72.6か月で、手術しなかった犬は15.7か月だった。外科的に治療し、治療後の甲状腺の状態が分かっている50頭のうち、64%は術後に甲状腺機能低下症を発症した。病理組織学的に確認された転移は、3%の犬で認められた。
臨床意義:機能的甲状腺腫瘍の犬は、手術後に長期生存するかもしれないが、術後の甲状腺機能低下症は一般的である。(Sato訳)
■悪性卵巣腫瘍の18頭の犬の転帰に対する回顧的分析
A retrospective analysis on the outcome of 18 dogs with malignant ovarian tumours
Vet Comp Oncol. 2020 Jul 22.
doi: 10.1111/vco.12639. Online ahead of print.
Sho Goto , Ryota Iwasaki , Hiroki Sakai , Takashi Mori
悪性卵巣腫瘍の犬の予後に関して得られるエビデンスはあまりない。
この回顧的研究の目的は、悪性卵巣腫瘍の犬の治療(手術±補助療法)後、その結果を述べることと、予後因子を判定することだった。
18頭の犬を研究し、年齢中央値は12歳(範囲:7-15歳)、体重中央値は6.9kg(範囲2.3-17.8kg)だった。病理組織診断で、顆粒膜細胞腫瘍が最も一般的なタイプ(n=9)で、続いて未分化胚細胞腫(n=5)、腺癌(n=4)が明らかとなった。11頭の犬は外科手術単独で、7頭は外科手術と化学療法および/あるいは放射線療法を含む補助療法で治療した。
生存期間(ST)中央値は、卵巣腫瘍で死亡したと考えられた場合1009日で、ST中央値の指標は、一変量解析でTカテゴリー(≧T3、443日vs≦T2、1474日;P=0.002)、転移の有無(有、391日vs無、1474日;P<0.001) 、リンパ管浸潤(有、428日vs無、1474日;P=0.003)だった。
顆粒膜細胞腫瘍の犬のST中央値は、未分化胚細胞腫や腺癌の犬よりも長いように思えたが、統計学的に十分な違いではなかった(1474日vs458日;P=0.10)。良い予後を考えるならば、悪性卵巣腫瘍の犬、特に早いステージの症例で、積極的な治療を推奨できる。診断時の転移があるにもかかわらず、半数の犬は1年以上生存した。(Sato訳)
■イギリスの一次診療下の犬における脂肪腫の臨床管理
Clinical management of lipomas in dogs under primary care in the UK
Vet Rec. 2020 Jul 13;vetrec-2019-105804.
doi: 10.1136/vr.105804. Online ahead of print.
Camilla Leonie Pegram , Lynda Rutherford , Caroline Corah , David B Church , David C Brodbelt , Dan G O'Neill
脂肪腫は比較的一般的で、脂肪細胞からなる間葉起源の生物学的に良性のマスである。
この研究は、イギリスの一次診療下の犬において、脂肪腫の臨床管理と結果に対する基準となるデータを報告する。
この研究は2013年1月1日から2013年12月31日まで、VetCompassに参加する動物病院のもとの犬からコホート臨床データの横断分析を使用した。記述的および分析的統計で推定的脂肪腫診断後の臨床管理と結果の特徴を述べた。
この研究は、2013年のイギリスの動物病院下の384284頭の犬から2765頭の脂肪腫症例を含めた。診断法は1119症例(40.5%)が細針吸引生検、215症例(7.8%)がバイオプシー、11症例(0.4%)が診断画像検査だった。
合計525症例(19.0%)は外科的に管理した。外科症例のうち、307症例(58.5%)は単独のマスの切除だったが、218症例(41.5%)はマスの切除のほかに別の処置も行った。サージカルドレーンは90症例(17.1%)が設置していた。創傷破綻は14症例(2.7%)の外科処置で報告された。創傷感染は11症例(2.1%)の手術後見られた。
この所見は獣医師にイギリスで現在どのように脂肪腫を管理しているかの基準となるエビデンスベースを提供するが、それらの結果は必ずしも最適な管理あるいはベストな診療を反映するわけではない。(Sato訳)
■犬の皮膚および皮下軟部組織肉腫の切除に対する二酸化炭素手術レーザーと非レーザー切除の回顧的比較
A Retrospective Comparison of Carbon Dioxide Surgical Laser and Non-Laser Excision for Removal of Cutaneous and Subcutaneous Soft-Tissue Sarcomas in Dogs
N Z Vet J. 2020 Jun 12;1-13.
doi: 10.1080/00480169.2020.1780994. Online ahead of print.
L Agulian , F A Mann , J R Middleton , D Y Kim
目的:皮膚あるいは皮下軟部組織肉腫(STS)の犬で、二酸化炭素(CO2)レーザーあるいは非レーザー外科的切除を行った場合、麻酔時間、手術時間、術後入院期間、完全な組織マージンで切除できた腫瘍の比率、術後すぐの手術部位の合併症を比較した
方法:2004年12月から2018年5月までにミズーリ大学で、皮膚および皮下STSの外科的切除を行った犬の医療記録を評価した。研究した集団は、単発のSTSをCO2レーザー(n=4)あるいは非レーザー(n=20)で切除した飼育犬だった。記録したデータはシグナルメント、麻酔時間、手術時間、術後入院期間、腫瘍の特徴、組織マージンの完全性、術後合併症、補助療法、手術時の他の処置だった。
結果:群間の平均年齢、体重、腫瘍のサイズに違いはなかった。同様に、麻酔時間、手術時間、完全な組織マージンでSTSを切除した犬の比率に違いはなかった。しかし、レーザーで切除した群において、術後入院期間がより長い傾向が見られた(P=0.061)。
結論:それらのデータは、CO2手術レーザーでの皮膚あるいは皮下STSの切除は、調べた結果に対し非レーザー法に匹敵するという予備的エビデンスを提供する。(Sato訳)
■外科的切除とリン酸トセラニブで治療した 膵臓腺癌の1頭の猫の長期生存
Long-term Survival in a Cat With Pancreatic Adenocarcinoma Treated With Surgical Resection and Toceranib Phosphate
JFMS Open Rep. 2020 Jun 12;6(1):2055116920924911.
doi: 10.1177/2055116920924911. eCollection Jan-Jun 2020.
Johanna E Todd 1, Sandra M Nguyen 1
症例まとめ:原発性膵臓腺癌は猫であまり見られない腫瘍の1つで、予後が悪いことが多い。我々は、体重5.8kgの去勢済み8歳の家猫短毛猫で、外科的切除とリン酸トセラニブで治療し、無増悪期間1148日、1436日以上生存した1症例を報告する。治療に対する許容性はよかったが、その猫は全身の皮毛の低色素症を発症した。
関連と新規情報:我々の知るところでは、この報告の猫は膵臓癌の外科的切除と、リン酸トセラニブによる治療で最も無増悪期間と生存期間が長い。トセラニブの副作用として低色素症は犬で報告されているが、猫ではこの症例が最初の報告である。(Sato訳)
■49頭の犬のインスリノーマの外科的治療後の結果
Outcome After Surgical Management of Canine Insulinoma in 49 Cases
Vet Comp Oncol. 2020 Jun 17.
doi: 10.1111/vco.12628. Online ahead of print.
Nicholas Trevor Cleland , John Morton , Peter James Delisser , Neil Christensen , Veronika Langova , Andrew Marchevsky
歴史的に犬のインスリノーマは予後が悪いが、近年生存期間の延長が報告されている。術前に得られる予後の指標は、予測精度が限定されており、術後推奨治療に対するコンセンサスが欠けている。
この研究の目的は、外科的に治療したインスリノーマの犬の結果を述べることと、選択した潜在的リスクファクターが、術後の結果に強く関係するかどうかを評価することだった。
外科的に治療したインスリノーマの犬を、2つの施設の医療記録から検索した。
49頭の犬が含まれた。術後に39頭(80%)は即座に低血糖が解消し、10頭(20%)は持続的低血糖が残った。全ての犬の生存期間中央値(MST)は561日だった。低血糖が解消している犬のMSTは746日だった。全ての犬に対する総正常血糖値であった期間の中央値(術後の全てのタイムポイントで初めて低血糖が検出された手術からの期間)は424日だった。低血糖が解消していた犬の44%は、術後2年で低血糖の再発を経験した。病理学的ステージは、持続する術後低血糖の1つの指標で、同様に、生存期間の指標だった。
それらの結果は、インスリノーマの犬は生存性が延長している可能性があり、病理学的ステージは結果の1つの指標であることを示す。(Sato訳)
■脾臓血管肉腫に対する治療を行った43頭の小型犬の結果
Outcomes of 43 Small Breed Dogs Treated for Splenic Hemangiosarcoma
Vet Surg. 2020 Jun 20.
doi: 10.1111/vsu.13470. Online ahead of print.
Ashton L Story , Vincent Wavreille , Brittany Abrams , Angela Egan , Megan Cray , Laura E Selmic
目的:血管肉腫と診断された小型犬の転帰と予後因子を判定することと、脾臓血管肉腫の小型犬と大型犬で転帰に違いがあるかどうかを調べること
研究計画:2施設の回顧的研究
動物:小型犬(<20kg)43頭と大型犬94頭
方法:脾臓の血管肉腫に対し、脾摘を行った犬を確認するため医療記録を再調査した。シグナルメント、術前ステージング、血液検査結果、手術所見、病理組織所見、化学療法の投与、転移疾患の有無、生存期間(ST)に関するデータを得た。Cox比例ハザード回帰分析で生存性に関係する予後因子を評価した。
結果:STの全体の中央値は小型犬で116日、大型犬で97日だった。手術と化学療法で治療した犬のSTは小型犬で207日、大型犬で139日だった。無病期間(DFI)は、小型犬で446日、大型犬で80日だった。犬のサイズはDFIに関係した(P=0.02)が、STに関係しなかった(P=0.09)。診断時の転移の存在は、小型犬(P=0.03)、大型犬(P=0.0009)において、生存期間短縮に関係した。化学療法の投与(P=0.02)は、小型犬のST延長(P=0.02)に関係した。
結論:脾摘及び化学療法で治療した脾臓の血管肉腫の小型犬および大型犬でSTに違いはなかった。
臨床的意義:小型犬および大型犬において、積極的な治療にもかかわらず予後は悪いままである。(Sato訳)
■犬の甲状腺癌の治療で定位放射線療法(SBRT)の安全性と効果
Safety and Efficacy of Stereotactic Body Radiation Therapy (SBRT) for the Treatment of Canine Thyroid Carcinoma
Vet Comp Oncol. 2020 Jun 9.
doi: 10.1111/vco.12625. Online ahead of print.
Ber-In Lee , Susan M LaRue , Bernard Seguin , Lynn Griffin , Amber Prebble , Tiffany Martin , Del Leary , Mary-Keara Boss
犬の甲状腺癌は自然に発生し、診断時の25-50%の症例のみが手術可能である。切除不可能な腫瘍の局所コントロールに、外部照射療法を行うことができる。
この回顧的研究の目的は、犬の甲状腺癌の治療に対し、定位放射線療法(SBRT)の安全性と効果を述べることである。
23頭の犬が組み込み基準に合致した;SBRT前の腫瘍体積の中央値は129.9cm2(範囲、2.7-452.8cm2)だった。16頭(70%)は切除不可能だった。SBRT前に10頭(44%)に肺転移が存在または疑いがあった。照射は目標となる腫瘍体積に対し、15-40Gy、1-5分画で行った。
評価した20頭で総奏功率は70%(完全反応、n=4、部分反応、n=10)だった。症候が見られた16頭中13頭(81%)は中央値16日(範囲、2-79日)以内に臨床的改善を見せた。無増悪期間中央値(MPFS)は315日だった。生存期間中央値(MST)は362日だった。9頭(39%)はグレード1の放射線毒性を示した。3頭はグレード1の晩発放射線毒性(2頭は白毛症、1頭(4%)は間欠的発咳)を示した。反応した犬のMPFS(362 vs 90 days; HR 4.3; 95% CI 1.4-13.5; P = 0.013)とMST(455 vs 90 days; HR 2.9; 95% CI 1-8.4; P = 0.053)は有意に長かった。転移が存在することは、有意な負の予後因子ではなかった(MST347日 vs 転移なし348日;P=0.352)。
SBRTは切除不可能な犬の甲状腺癌に対し、安全で効果的な治療様式である。(Sato訳)
■切除不可能な肝細胞癌の治療に対するソラフェニブ:犬の予備的毒性と活性
Sorafenib for the Treatment of Unresectable Hepatocellular Carcinoma: Preliminary Toxicity and Activity Data in Dogs
Cancers (Basel). 2020 May 18;12(5):E1272.
doi: 10.3390/cancers12051272.
Laura Marconato , Silvia Sabattini , Giorgia Marisi , Federica Rossi , Vito Ferdinando Leone , Andrea Casadei-Gardini
切除不可能な結節性およびびまん性肝細胞癌(HCC)は、治療オプションが限られており、予後が悪い。従来の全身的化学療法は、まれに報告されているだけで、満足な結果ではない。
この前向き非無作為化非盲検、単施設臨床試験の目的は、進行した切除不可能なHCCのある犬において、サリドマイド、ピロキシカム、シクロフォスファミドからなるメトロノーム化学療法(MC)と比較し、ソラフェニブの安全性プロフィール、客観的奏効率、無増悪期間、総生存期間を調査することだった。
2011年12月から2017年6月の期間で13頭の犬を登録した:7頭はソラフェニブを投与し、6頭はMCで治療した。
無増悪期間中央値は、MCで治療した犬が27日(95%CI、0-68)に対し、ソラフェニブで治療した犬は363日(95%CI、191-535)だった(p=0.044)。総生存期間中央値はMCで治療した犬が32日(95%CI、0-235)に対し、ソラフェニブで治療した犬は361日(95%CI、0-909)だった(p=0.079)。
疾患コントロールと許容できる安全性プロフィールにおいて有益であるため、進行したHCCの犬の治療に対し、ソラフェニブは優秀な候補と思え、MCあるいは従来の化学療法に対し、ソラフェニブの効果と問題点を比較する新規の無作為化前向き臨床試験を行うべきであるということに対し良い根拠を提供する。(Sato訳)
■サルコイド(皮膚繊維乳頭腫)のある42頭の猫の生物学的挙動と臨床結果
Biological behaviour and clinical outcome in 42 cats with sarcoids (cutaneous fibropapillomas).
Vet Comp Oncol. 2020 Apr 17. doi: 10.1111/vco.12598. [Epub ahead of print]
Wood CJ, Selmic LE, Schlag AN, Bacmeister C, Séguin B, Culp WTN, Ayres SA, Sumner JP, Byer B, Mayer UK, Liptak JM.
猫のサルコイド(あるいは皮膚繊維乳頭腫)は珍しい皮膚の腫瘍である。現在、それらの臨床的挙動に関する統計は報告されていない。
この回顧的多施設研究の目的は、猫のサルコイドの臨床症状と生物学的挙動を述べることと、外科的切除後の腫瘍学的結果を判定することである。
検査所データベースと5か所の参加施設からの医療記録から、組織学的にサルコイドと確認された猫を検索した。
42頭の猫がこの研究に含まれた。ほとんどのサルコイドは顔面、特に唇や鼻鏡のような吻側部位に発生した。完全な組織学的切除は18頭、不完全な組織学的切除は21頭だった。全体の局所再発率は40.5%だった。完全な組織学的切除は、不完全な切除の猫(66.7%と250日)と比べ、より再発率が低く(11.1%)、より無症候期間(到達せず)が長かった。完全切除の猫の1年-、2年-局所再発率は0%と7%で、不完全切除の猫のそれは両方67%だった。腫瘍再発後の根治的外科的手術で治療した猫のうち5頭(83.3%)は、その後局所再発はなかった。腫瘍関連の原因で二次的に死亡した全ての猫は、初回不完全切除で、局所再発のために安楽死された。
完全な組織学的切除、局所腫瘍コントロール、根治の可能性を達成するため、広範な猫サルコイドの外科的切除が推奨される。不完全な組織学的切除あるいは局所腫瘍再発の猫に対して、繰り返し外科的切除が推奨される。(Sato訳)
■手術に対する不都合な予後因子として犬肝細胞癌の大きさ
Size of canine hepatocellular carcinoma as an adverse prognostic factor for surgery.
J Adv Vet Anim Res. 2020 Feb 6;7(1):127-132. doi: 10.5455/javar.2020.g401. eCollection 2020 Mar.
Vatnikov Y, Vilkovysky I, Kulikov E, Popova I, Khairova N, Gazin A, Zharov A, Lukina D.
目的:肝臓腫瘍は小型家庭動物の中で問題となる。家庭動物における肝細胞癌の病因学的原因は、まだ不明であるが、慢性感染や有毒物質がこの種の腫瘍の発生に影響する可能性があると信じられている。この研究の目的は、犬の肝細胞癌の臨床および形態学的特性を分析することである。
素材と方法:合計6958の癌の手術がその病院で実施された。肝臓腫瘍は生体で123頭の犬、死体で375頭の犬で検出された。肝臓腫瘍の疑いのある全ての動物を評価し、病歴、臨床検査、CBC、生化学検査、エックス線検査、細胞診および組織検査のためのバイオプシーを伴う超音波検査を含めた。
結果:肝細胞癌は非特異的臨床症状であり、肝胆汁系の他の腫瘍の特徴面も持つ。血液学的変化は、予後と肝臓活性における変化を反映する生化学異常に対する影響を持つ。肝細胞腫用の細胞診は、高度に分化した癌における肝細胞異型性のため困難である。最終的に、肝細胞癌と診断されたすべての犬において組織学的検査が実施された。
結論:肝細胞癌の犬の血液学的変化は、それらの予後に影響する。この病理の生化学異常は、肝臓活性における変化を反映し、特異的病理を示さない。しかし、AST、ALT、ALPの活性の上昇は、好ましくない予後のサインである。この研究において、5.0cm以上の腫瘍の大きさを持つ7頭中5頭は、寿命が30、51、91日で、腫瘍の大きさはよくない予後因子であることを示唆する。(Sato訳)
■19頭の犬の肘のヒグローマの治療に対する完全外科的切除とペンローズドレナージ
Complete surgical excision versus Penrose drainage for the treatment of elbow hygroma in 19 dogs (1997 to 2014).
J Small Anim Pract. 2020 Feb 11. doi: 10.1111/jsap.13117. [Epub ahead of print]
Angelou V, Papazoglou LG, Tsioli V, Psalla D, Anagnostou T, Chatzimisios K, Pavlidis L.
目的:犬の肘のヒグローマの治療に対する外科的切除とペンローズドレナージの結果を報告する
材料と方法:1997年から2014年の間にペンローズドレナージあるいは外科的切除で治療した肘のヒグローマがある犬19頭の臨床的記録の回顧的レビュー。記録からのデータは、犬種、性別、年齢、臨床症状の見られた期間、体重、病歴、CBCと血清生化学、身体検査所見、ヒグローマの直径、針吸引の細胞診、治療方法、組織学的所見、術後合併症とそれらの管理、結果が含まれた。
結果:19頭の犬の21個のヒグローマを治療した。11個は右側、6個は左側、4個は両側だった。12個は第一選択治療でペンローズドレーンを設置し、9個は外科的に完全切除した。両側ヒグローマは同時に処置した。ペンローズドレーンで治療した12個のうち4個は再発し、1個は肘頭にかけて潰瘍を形成した。再発したヒグローマは外科的切除で治療した。潰瘍は外科的に切除し、胸背軸パターンフラップで再建した。それ以上の合併症は発生しなかった。全ての犬は、中央値16か月のフォローアップ時に臨床的に健康だった。
臨床意義:犬の肘のヒグローマの外科的切除は、ペンローズドレーン設置よりも術後の合併症は少ないと思われる効果的な方法である。(Sato訳)
■犬の甲状腺癌のリン酸トセラニブによる治療:42症例(2009-2018)
Toceranib phosphate in the treatment of canine thyroid carcinoma: 42 cases (2009-2018).
Vet Comp Oncol. 2020 Feb 3. doi: 10.1111/vco.12571. [Epub ahead of print]
Sheppard-Olivares S, Bello NM, Wood E, Szivek A, Biller B, Hocker S, Wouda RM.
犬の甲状腺癌は、一般的な内分泌の悪性腫瘍である。常に実行できるわけではないが、甲状腺切除と放射線療法は局所をコントロールし、効果的な内科療法は確認が必要である。
甲状腺癌の犬にリン酸トセラニブは臨床的恩恵(CB)を得ることができると報告されているが、治療されていない甲状腺腫瘍におけるその役割はよく述べられていない。
この研究の目的は、手が付けられていない疾患および優先治療設定の犬の甲状腺癌の管理に対し、トセラニブの使用を述べることだった。
医療記録の検索で、甲状腺癌と診断され、トセラニブで治療した42頭を確認し、そのうち26頭は手が付けられていない疾患の設定で、16頭は優先治療後だった。手が付けられていない疾患及び優先治療の設定の犬で、それぞれ23頭(88.4%)と20頭(75%)がCBを経験した。無増悪期間(PFI)の中央値(95%信頼区間)は、手が付けられていない疾患で206日(106、740)と優先治療の設定で1015日(92、1015)だった。総生存期間(OST)中央値は、手が付けられていない疾患で563日(246、916)、優先治療の設定で1082日(289、1894)だった。全体的に、データは設定間で総PFI(P>0.20)あるいはOST(P=0.15)においての違いに対するエビデンスを提供しなかった。しかし、診断時に無症候の場合、手が付けられていない疾患の設定の犬は、優先治療の設定の犬と比べ生存予後が悪かった(算出危険率17.2(1.8、163))。
この研究は、手が付けられていない疾患および優先治療の設定で、トセラニブで甲状腺癌を治療した犬において、PFI、OST、最小AEでのCBを特徴づける。(Sato訳)
■犬のアポクリン腺肛門嚢腺癌のトセラニブによる治療の評価
Evaluation of toceranib for treatment of apocrine gland anal sac adenocarcinoma in dogs.
J Vet Intern Med. 2020 Jan 24. doi: 10.1111/jvim.15706. [Epub ahead of print]
Heaton CM, Fernandes AFA, Jark PC, Pan X.
背景:犬のアポクリン腺肛門嚢腺癌(AGASACA)に対して広く受け入れられている標準的な薬剤治療はない。トセラニブのような標的薬は、AGASACAの効果的な治療薬かもしれないが、その効果を評価した臨床報告の数は限られている。
仮説/目的:犬のAGASACAのトセラニブによる治療効果を評価することと、その研究集団の予後因子を評価すること。著者らはAGASACAの犬の治療において、トセラニブは臨床効果を示すだろうと仮説を立てた。
動物:細胞あるいは組織学的にAGASACAと診断され、トセラニブ単独あるいは手術と組み合わせ、併用化学療法なし、あるいは両方で治療した36頭の犬。
方法:回顧的研究
結果:この研究集団の無増悪期間(PFS)および総生存期間(OST)中央値は、313日と827日だった。トセラニブの臨床効果は69%の犬に見られ、20.7%の犬は部分奏功、48.3%の犬は安定疾患だった。トセラニブに反応した犬は、PFSおよびOSTが有意に延長していた。高カルシウム血症は、臨床結果の負の予後因子だった。
結論:犬のAGASACAに対しトセラニブは効果的な治療である。AGASACAの犬に対し、他の治療プロトコールと比較したトセラニブの効果を判定するのに、前向き対照臨床試験が必要である。(Sato訳)
■3頭の犬のアポクリン腺肛門嚢腺癌の外科的切除後の臨床的低カルシウム血症
Clinical hypocalcemia following surgical resection of apocrine gland anal-sac adenocarcinomas in 3 dogs.
Can Vet J. June 2019;60(6):591-595.
Jaime A Olsen , Julia P Sumner
3頭の猫がアポクリン腺肛門嚢腺癌(AGASCA)による続発性の顕著な高カルシウム血症を呈した。そのうち2頭は腫瘍の外科的切除の前に高カルシウム血症に対する利尿やビスホスホネート投与などの治療を行った。3頭共に手術後2-4日で、臨床的症候性低カルシウム血症を起こした。臨床症状は、顔をこする、筋線維束性攣縮、跛行、虚脱だった。各犬はカルシウム補給と密な血清カルシウムイオンのモニタリングを入院時のように退院後も継続した。低カルシウム血症および関連した臨床症状は、全ての症例で治療とともに解消した。(Sato訳)
■複雑な膀胱全摘出後の移行上皮癌の犬の一例の介入と経験
Interventions and experience after complicated total cystectomy in a dog with transitional cell carcinoma.
Vet Surg. 2019 Oct 10. doi: 10.1111/vsu.13330. [Epub ahead of print]
Skinner OT, Boston SE, Maxwell PL.
目的:1頭の移行上皮癌(TCC)の犬の複雑な膀胱全摘出術と術後管理を報告する
研究デザイン:症例報告
動物:去勢してある1頭のオスのシェットランドシープドッグ
方法:その犬は、1か月にわたる有痛排尿困難と経口抗生物質の無反応で来院した。膀胱の頭背側マスをCTで確認し、部分的膀胱切除を側面1cmの肉眼的マージンで実施した(1日目)。病理検査結果はTCCの診断に対するエビデンスを提供し、その犬は補助的ミトキサントロンで治療した。再発と自発穿孔ののち、67日目に尿腹を呈した。膀胱全摘出と尿管尿道吻合を実施した。術中設置したカテーテルの除去後、尿管閉塞が発生した。吻合部の切除、両側尿管ステントの設置、テンションフリーの閉鎖を容易にするための遠位尿道の横断と新たな方向付けを含む外科的修正を行った。術後漏出は両側経皮腎瘻チューブ設置で管理した。
結果:その犬は88日目に退院した。ビンブラスチンの補助治療を続行した。局所再発を154日目に発見した。再閉塞を管理するため、247日目に皮下尿管バイパスを実施した。その後、繰り返す尿路感染に遭遇した。その犬は進行性の尿管、尿道、腹壁TCCの所見を伴う腹部の不快と食欲不振により368日目に安楽死された。
結論:複雑な膀胱切除は、過去の膀胱全摘出に関する報告と匹敵する生存期間を提供するため管理できる。
臨床意義:腎瘻チューブ設置、尿管ステント設置、皮下尿管バイパスは、複雑な膀胱切開の管理に考慮できると思われる。先制のステント設置あるいは尿路変更は、合併症を防ぐのに役立つかもしれない。(Sato訳)
■犬の充実性肝細胞癌の疫学:4年間の後ろ向き研究
Epidemiology of massive hepatocellular carcinoma in dogs: A 4-year retrospective study.
Vet J. June 2019;248(0):74-78.
DOI: 10.1016/j.tvjl.2019.04.011
R Leela-Arporn , H Ohta , N Nagata , K Sasaoka , M Tamura , A Dermlim , K Nisa , K Morishita , N Sasaki , K Nakamura , S Takagi , K Hosoya , M Takiguchi
犬の肝細胞癌(HCC)は一般的な原発性の肝臓腫瘍である。しかし、HCCの臨床特性やリスクファクターは確認されていない。
この研究の目的は、犬のHCCに対する臨床特性とリスクファクターを調査することだった。
2013年から2017年の北海道大学獣医教育病院でHCCと診断された44頭の犬の医療記録を回顧的に再調査した。研究期間中に教育病院で評価した全ての犬は、犬種、年齢、性別素因あるいは併発疾患を含めたHCCに対する潜在的関連ファクターに対する参照集団として使用した。HCCの臨床特性は、傾向スコアマッチング解析を利用して判定した。
HCC診断の有病率は0.96%だった。多変量解析で、HCCと診断された犬は、参照集団よりも有意に老齢だった(オッズ比(OR)、1.20;95%CI、1.07-1.33)。ウェルシュコーギー(OR、3.68;95%CI、1.56-8.67)とビーグル(OR、4.33;95%CI、1.58-11.90)は有意にHCCの素因があった。HCCの犬44頭中27頭は1つ以上の併発疾患があった。もっとも一般的な併発疾患は副腎皮質機能亢進症(n=10)で、HCCの犬の副腎皮質機能亢進症の修正オッズは、参照集団(95%CI、1.95-8.76)よりも高い4.13だった。傾向スコアマッチング解析で、血小板増多(n=30/43)、ALT上昇(n=41/44)、ALP上昇(n=42/44)、高カルシウム血症(n=13/32)は有意にHCCの診断と関係した。
この研究の結果は、ウェルシュコーギーとビーグルはHCCに対する素因がある犬種で、副腎皮質機能亢進症は潜在的リスクファクターかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■癌に対する放射線治療中および治療後の犬のQOLに対するオーナーの認識
Owners' perception of their dogs' quality of life during and after radiotherapy for cancer.
J Small Anim Pract. May 2019;60(5):268-273.
DOI: 10.1111/jsap.12972
A R Serras , D Berlato , S Murphy
目的:様々な腫瘍に対する放射線治療前、直後、6週間後の犬のQOLに対するオーナーの認識を調べることと、治療に対する決断のオーナーの満足度を評価する
材料と方法:二次放射線腫瘍センターで放射線治療を完了した犬のオーナーにアンケートを実施した。アンケートは3つのタイムポイントで実施した:治療前、治療の最終日、治療終了後6週間以上経過時。オーナーには放射線治療、放射線治療前、治療中、治療後の犬のQOLの認識に関して質問した。QOLは1(これ以上悪くならない)から10(これ以上良くならない)のスコアを付けてもらった。
結果:71人が含有基準及び排除基準に合致した。治療から6週以上経過した時、ほとんどのオーナーは飼い犬にその治療を選択したことを幸せ(92%)で、もし提示された場合、他のペットも再度治療するだろう(88%)と結果は示した。3つのタイムポイントを通し、QOL認識スコアの中央値は9だった。
臨床意義:この研究で放射線治療のオーナーと犬の許容は良かった。ほとんどのオーナーは、放射線治療を継続して満足で、再び期会があれば再び治療を選択し、友人にも勧めるだろうということだった。(Sato訳)
■犬と猫の唾液腺腫瘍:1996-2017
Salivary neoplasia in dogs and cats: 1996-2017.
Vet Med Sci. 2019 Dec 17. doi: 10.1002/vms3.228. [Epub ahead of print]
Cray M, Selmic LE, Ruple A.
目的:この研究の目的は、犬と猫の唾液腺腫瘍の現代の個体群統計情報、発生率を報告し、性別および犬種素因を評価することだった。
材料と方法:26か所の獣医メディカルデータベール内の大学獣医教育病院から、唾液腺腫瘍(症例)とコントロールの犬と猫の情報を集めた。合計56頭の犬と24頭の猫が、唾液腺腫瘍と診断されていることを確認した。
結果:この集団で唾液腺腫瘍の発生率は、犬で10万頭中15.3頭、猫で10万頭中26.3頭だった。唾液腺腫瘍の特定の解剖学的部位は、犬と猫の90.8%の症例で判定できなかった。一変量条件付きロジスティック回帰モデルの結果は、犬と猫のどの性別あるいは不妊状況でも唾液腺腫瘍のリスク増加は認められなかった(犬:p=0.26;猫:p=0.45)。唾液腺腫瘍に対し、猫の品種素因はなかった。しかし、犬に対する条件付きロジスティック回帰で、プードル(トイとスタンダード)は有意な傾向が見られ(P=0.075)、雑種犬と比較したオッズ比は6.83(95%CI:1.16-40.10)だった。
結論と臨床関連:この研究の結果は、腫瘍部位と犬種素因に関してなされた過去の結論と違っていた。追加の疫学研究を唾液腺腫瘍のリスク因子判定を助けるために実施すべきである。(Sato訳)
■2007年から2017年の間の犬の頭蓋内腫瘍に対する回顧的調査
A retrospective survey on canine intracranial tumors between 2007 and 2017.
J Vet Med Sci. 2019 Dec 4. doi: 10.1292/jvms.19-0486. [Epub ahead of print]
Kishimoto TE, Uchida K, Chambers JK, Kok MK, Son NV, Shiga T, Hirabayashi M, Ushio N, Nakayama H.
日本の犬の頭蓋内腫瘍の有病率を明らかにするため、186の犬の頭蓋内腫瘍に対するデータを用い、回顧的研究を行った。
186症例中159症例(85.5%)は原発性で、27症例(14.5%)は二次性頭蓋内腫瘍だった。原発性頭蓋内腫瘍の中で、髄膜腫(50.9%)が最もよく見られ、神経膠腫(21.4%)、原発性頭蓋内組織球肉腫(12.6%)が続いた。それら3腫瘍は中齢から高齢の犬でよく見られ、性差はなかった。神経膠腫に関し、乏突起膠腫の発生率(79.4%)は、星状細胞腫(17.6%)よりも高かった。
有意な犬種素因(P<0.05)は髄膜腫に対し、ラフコリー、ゴールデンレトリバー、ミニチュアシュナウザー、スコティッシュテリア、神経膠腫に対してブービエデフランダー、フレンチブルドッグ、ニューファンドランド、ブルドッグ、ボクサー、原発性頭蓋内組織球肉腫に対してペンブロークウェルシュコーギー、シベリアンハスキー、ミニチュアシュナウザーで観察された。
犬の乏突起膠腫の高い発生率と、ペンブロークウェルシュコーギーの原発性頭蓋内組織球肉腫に対する犬種素因は、犬の腫瘍に対する過去の疫学研究で報告されていない。
頭蓋内腫瘍の発生率は犬種により異なるため、日本の犬種集団が独特であることをこの結果は示す。(Sato訳)
■犬の脾臓腫瘍に対する細胞学的診断精度の評価:STARDガイドラインを用いた78症例の調査
Evaluation of cytological diagnostic accuracy for canine splenic neoplasms: An investigation in 78 cases using STARD guidelines.
PLoS One. 2019 Nov 7;14(11):e0224945. doi: 10.1371/journal.pone.0224945. eCollection 2019.
Tecilla M, Gambini M, Forlani A, Caniatti M, Ghisleni G, Roccabianca P.
細胞診は犬の脾臓病変に対する予備的臨床アプローチにおいて有効な診断ツールであり、不必要な脾摘を防ぐかもしれない。しかし、犬の脾臓腫瘍の診断において、細胞診の診断精度を評価している研究はほとんどない。
この研究の目的は、Reporting of Diagnostic Accuracy Studies (STARD)ガイドラインに従い、犬の脾臓腫瘍に対する全体の精度、感受性、特異性、陽性および陰性適中率(すなわち診断精度指数)を調べることだった。
獣医学部の診断病理サービス(ミランのDIMEVET-大学)のデータベースから、犬の脾臓細胞診サンプルの連続した一連の症例を回顧的に抽出した。病理組織検査は診断的参照基準とした。細胞学的症例は、スライドが再調査のため入手でき、同病変が病理検査に出されているときに登録した。
78病変が研究に含まれた。病理検査により、56は腫瘍性、22は非腫瘍性だった。細胞診の全体的精度は73.08%(95%CI、61.84-82.50)、感受性は64.29%(95%CI、50.36-76.64)、特異性は95.45%(95%CI、77.16-99.88)、陽性適中率は97.3%(95%CI、84.01-99.60)、陰性適中率は51.22%(95%CI、42.21-60.15)だった。低い感受性と陰性適中率は、高い感受性と陽性適中率で釣り合いが取れた。
腫瘍が陽性の場合、細胞診は脾臓腫瘍において他の診断検査とは無関係に手術を促す有効な診断ツールである。逆に言えば、陰性の細胞診結果は、疾患がないことを確認する追加の調査を必要とする。(Sato訳)
■無麻酔の犬における良性皮膚腫瘍の凍結療法による治療
Cryotherapy to treat benign skin tumours in conscious dogs.
Vet Dermatol. 2019 Oct 29. doi: 10.1111/vde.12804. [Epub ahead of print]
Angileri M, Furlanello T, De Lucia M.
背景:凍結療法は全身麻酔なしで、良性皮膚病変に使用できる。この方法は、麻酔下の犬でのみ述べられている。
目的:無麻酔の犬の良性皮膚腫瘍の治療に対し、凍結療法の実行可能性、安全性、有効性を述べる
動物:良性皮脂腺腫瘍(46)あるいは毛包嚢胞(6)と診断された52の皮膚腫瘍のある25頭の飼育犬
方法と材料:手持ちのスプレーリリースシステムの液体窒素スプレー法を用い、無麻酔の犬に凍結療法を実施した。必要ならば、完全治癒まで3,4週毎、あるいは最大8回まで凍結療法を繰り返した。効果と副作用を記録した。
結果:52病変のうち29病変(57%)は、中央値1-2回の凍結療法で消散した。52病変のうち18病変(35%)は0.1cm未満に縮まった。1症例は凍結療法後に腫瘍が拡大し、切除生検の病理検査でアポクリン腺癌であることが分かった。治療中の疼痛と不快感が最も多い副作用だった(33%)
結論と臨床的重要性:この研究で無麻酔の犬の凍結療法は可能であり、良性皮脂腺腫瘍および毛包嚢胞の治癒、あるいはサイズの縮小に効果的だった。この処置は安全であるが、処置中の疼痛の程度は今後の調査が必要である。凍結療法後の病変の悪化は、外科的切除と病理検査の必要性を示唆する。(Sato訳)
■ステージIおよびIIの犬の脾臓血管肉腫に対する第一選択補助的アントラサイクリンとメトロノームベースの化学療法プロトコールの回顧的比較
Retrospective comparison of first line adjuvant anthracycline vs metronomic-based chemotherapy protocols in the treatment of stage I and II canine splenic haemangiosarcoma.
Vet Comp Oncol. 2019 Oct 24. doi: 10.1111/vco.12548. [Epub ahead of print]
Treggiari E, Borrego JF, Gramer I, Valenti P, Harper A, Finotello R, Toni C, Laomedonte P, Romanelli G.
犬の脾臓血管肉腫(HSA)の治療は、脾臓摘出の後に補助的化学療法が良く使用されるが、異なる治療プロトコールが同様の効果を持っているかどうかは分かっていない。
この回顧的研究の目的は、ステージI/IIの脾臓HSAの犬において、進行までの期間(TTP)中央値、生存期間中央値(MST)を比較することにより、第一選択の補助的アントラサイクリン(AC)あるいはメトロノーム化学療法(MC)を基にしたプロトコールで治療した時の結果を評価することだった。
9施設の医療記録から、脾摘後にACあるいはMCベースのプロトコールで治療したステージI/IIの脾臓HSAと診断された犬を検索した。アントラサイクリンに続きMCで治療した犬は、追加群として含めた(AMC)。
93頭を含めた:50頭はAC群、20頭はMC群、23頭はAMC群。全体のMSTは200日(範囲47-3352日)で、全体のTTP中央値は185日(範囲37-1236日)だった。ステージIの犬のTTP中央値はステージIIの犬と比べて有意に長かった(338日vs151日、p=0.028)。治療の種類で補正した時、MSTはAC群で154日(範囲47-3352日)、MC群で225日(範囲57-911日)、AMC群で338日(範囲79-1623日)だった。MSTとTTP中央値に、治療群間で統計学的有意差はなかった。
この研究は、脾臓HASを補助的MCで治療したとき、他の治療プロトコールと比べて同様の結果をもたらすかもしれないと示唆する。この所見を確認する追加研究が求められる。(Sato訳)
■犬可移植性性器肉腫において従来の硫酸ビンクリスチンに対し硫酸ビンクリスチンとL-アスパラギナーゼの修正プロトコール
Conventional-Vincristine Sulfate vs. Modified Protocol of Vincristine Sulfate and L-Asparaginase in Canine Transmissible Venereal Tumor.
Front Vet Sci. 2019 Sep 18;6:300. doi: 10.3389/fvets.2019.00300. eCollection 2019.
Setthawongsin C, Teewasutrakul P, Tangkawattana S, Techangamsuwan S, Rungsipipat A.
背景:犬可移植性性器肉腫(CTVT)に対し、ビンクリスチン(VCR)は単一化学療法である。L-アスパラギナーゼ(LAP)は通常他の薬剤と併用して使用される。過去に、LAP-VCRプロトコールはVCR抵抗CTVT症例に対し応用されていた。しかし、最初の投稿からこのプロトコールについての報告は少なかった。
目的:まず、通常のCTVT症例に対する併用化学療法(ビンクリスチンとL-アスパラギナーゼ、VCR-LAP)の有効性を調査することと、次に24頭のCTVT犬において治療前と治療中に、このプロトコールと従来のプロトコール(ビンクリスチン、VCR)を比較すること
素材と方法:臨床症状、腫瘍の相対体積、病理組織学的変化(CTVT細胞数、腫瘍浸潤リンパ球数(TILs)、TILs/CTVT比、膠原領域、Ki-67増殖指数(PI))が治療評価パラメーターだった。さらに、アポトーシス(Bcl-2、Bax)、薬剤耐性遺伝子(ABCB1、ABCG2)のトランスクリプトーム解析およびBCL-2およびBAX発現も含めた。
結果:両プロトコールは腫瘍容積を縮小させ、マスのTILs/CVCT比と膠原領域を増加させた。興味深いことに併用プロトコールは治療期間を短縮させた。VCR治療後に抵抗症例が2頭いた。Bcl-2とBaxの発現は減少し、これは治療後のより良い反応を示すのかもしれない。さらに、両薬剤抵抗遺伝子は、治療後増加しなかった。
結論:この研究の主な所見は、CTVT症例において併用プロトコールは治療期間しか短縮だけでなく、治療結果の有効性もある。ゆえに、この新しいプロトコールの適応は、臨床科に役立つ。(Sato訳)
■パグの犬パピローマウイルス感染に関係する色素性ウイルス斑と基底細胞腫
Pigmented viral plaque and basal cell tumor associated with canine papillomavirus infection in Pug dogs.
J Vet Med Sci. 2019 Sep 25. doi: 10.1292/jvms.19-0384. [Epub ahead of print]
Yu M, Chambers JK, Tsuzuki M, Yamashita N, Ushigusa T, Haga T, Nakayama H, Uchida K.
犬パピローマウイルス(CPV)に関係するパグに色素性ウイルス斑はよく見られる。
この研究で、色素性ウイルス斑の4頭のパグにおいて、核酸配列とウイルス遺伝子の局在化を調べた。
核酸配列解析とPCR検査の結果は、色素性ウイルス斑の3症例はCPV4に感染し、1症例はCPV18に感染していることを示した。
CPV18陽性ウイルス斑の症例において、CPV18遺伝子が色素性ウイルス斑に接して発生したサイトケラチン-14-とP63-陽性基底細胞腫にも検出された。さらに、CPV遺伝子はin situ hybridizationにより、基底細胞腫の腫瘍細胞と色素性ウイルス斑の扁平上皮で検出された。
これは、犬のCPV18感染に関与する基底細胞腫の最初の報告である。CPV18の感染は基底細胞腫の発生に関係しているのかもしれない。(Sato訳)
■自発性甲状腺腫瘍のある犬における片側甲状腺切除に関係する合併症と結果:156症例(2003-2015)
Complications and outcomes associated with unilateral thyroidectomy in dogs with naturally occurring thyroid tumors: 156 cases (2003-2015).
J Am Vet Med Assoc. 2019 Oct 15;255(8):926-932. doi: 10.2460/javma.255.8.926.
Reagan JK, Selmic LE, Fallon C, Sutton B, Lafferty M, Ben-Aderet D, Culp WTN, Liptak JM, Duffy D, Simons M, Boston S, Lana S.
目的:甲状腺腫瘍の治療のために、片側甲状腺切除を行った犬の合併症と結果を述べる
動物:自然に発生した甲状腺腫瘍のため片側甲状腺切除を行った156頭の犬
方法:2003年から2015年の間に片側甲状腺切除を行った犬を、多施設回顧的研究に含めた。各犬に対し、術中合併症、短期結果(病院から退院vs非生存)、長期結果(生存期間)を含む電子カルテ、カルテの評価を通して情報を集めた。
結果:周術期で、合併症は156頭中31頭(19.9%)の犬に発生した;出血が最も多い術中合併症だった(12(7.7%)頭)。156頭中5頭(3.2%)は、輸血された;それら5頭は術中合併症として出血に含まれた12頭の中の犬だった。術後すぐの最も多い合併症は、誤嚥性肺炎(5(3.2%)頭)だった。片側甲状腺切除を行った156頭中153頭(98.1%)は生きて退院した。113頭は追跡できなかった;入手できたデータから、生存期間中央値は911日(95%信頼区間、704-1466日)だった。
結論と臨床関連:自然に発生した甲状腺腫瘍の犬の片側甲状腺切除は、術中死亡率1.9%で、合併症率は19.9%と結果は示し、出血と誤嚥性肺炎が最も多い合併症だった。甲状腺腫瘍の治療で片側甲状腺切除を行った犬の長期生存は珍しくなかった。(Sato訳)
■口腔および顎顔面悪性腫瘍のステージ決定に対する所属リンパ節切除生検の確認:97頭の犬と10頭の猫(2006-2016)
Validation of Regional Lymph Node Excisional Biopsy for Staging Oral and Maxillofacial Malignant Neoplasms in 97 Dogs and 10 Cats (2006-2016).
J Vet Dent. 2019 Aug 20:898756419869841. doi: 10.1177/0898756419869841. [Epub ahead of print]
Odenweller PH, Smith MM, Taney KG.
この回顧的臨床研究の目的は、97頭の犬と10頭の猫の集団で、口腔および顎顔面腫瘍のステージ決定に対し、所属リンパ節の切除生検の正当性を確認することだった。
口腔および顎顔面悪性腫瘍と診断された動物に、根治的腫瘍切除に続き、口腔および顎顔面領域から求心性に流出する下顎、耳下、内側咽頭後リンパ節の同側切除生検を行った。生検標本と切除した腫瘍は、病理検査のため民間病理検査所に提出した。
1つ以上の所属リンパ節への転移の発生率は14.0%だった。転移性疾患の症例のうち、26.7%は下顎リンパ節の関与がなかった。所属リンパ節転移の発生は過去の報告より少なかったが、所属リンパ節の評価は、口腔および顎顔面腫瘍の症例で妥当である。(Sato訳)
■カルボプラチンとドキソルビシンの交互投与と経口ピロキシカムの組み合わせで治療した犬鼻腔内腫瘍:29症例
Canine intranasal tumours treated with alternating carboplatin and doxorubin in conjunction with oral piroxicam: 29 cases.
Vet Comp Oncol. March 2019;17(1):42-48.
DOI: 10.1111/vco.12443
Matthew J Woodruff , Kathryn L Heading , Peter Bennett
犬鼻腔内腫瘍の化学療法の反応を評価している研究は少ない一方で、多くは放射線療法の効果に焦点を当てている。放射線療法にはより高いコストと制限があるため、代替治療オプションが必要である。
この研究は、単独治療として化学療法で治療した組織学的に確認されている鼻腔内腫瘍の犬の集団を述べる。
この回顧的研究は、2004年から2017年の間にメルボルン獣医専門センター(Melbourne Veterinary Specialist Centre:MVSC)からのデータを用いて行った。組織学的に鼻腔内腫瘍が確認され、化学療法で治療されている犬を含めた。シグナルメント、現症状、腫瘍のタイプ、化学療法の詳細、有害事象(AEs)、生存期間を再検討した。
29頭が基準に合致した。この研究の犬の全体の生存期間中央値は234日(範囲12-1698日)だった。腺癌あるいは癌の犬(n=12)の生存期間中央値は280日で、移行上皮癌の犬(n=6)は163日、扁平上皮癌、未分化癌あるいは鑑別できない癌の犬(n=7)は59日、全ての肉腫の犬(n=4)は448日だった。治療後28%に有害事象が報告され、69%の犬は1つ以上のAEを経験した。全ての犬の24%はグレード3あるいは4の毒性を経験した。化学療法プロトコールは一般によく許容した。
この研究は、腺癌、癌、肉腫の犬に対する化学療法の使用において、潜在的な利点を示唆する。(Sato訳)
■放射線療法を行う担癌犬の体重減少の評価
Evaluation of weight loss in canine cancer bearing patients undergoing radiation therapy.
Vet Comp Oncol. 2019 Aug 16. doi: 10.1111/vco.12528. [Epub ahead of print]
Callanan GF, Pfeiffer I, Smith K.
重大な5%以上の体重減少は、頭部や頸部に癌のあるヒトで罹病率や死亡率の増加と関係している。
放射線療法を行っている動物で、体重減少は不確かではあるがその発生が多いと報告されており、頭部や頸部に癌があり、それらに加えて放射線療法中の入院している動物でより重度になると仮説を立てた。
この回顧的研究の主要な目的は、根治的あるいは緩和放射線プロトコールを行う担癌犬で、重大な体重減少の発生率を評価することと、体重の変化が、放射線毒性、腫瘍部位、あるいは動物の入院状態と関係するのか判定することだった。
テネシー大学で根治的放射線プロトコールを行った47頭の犬と、緩和放射線プロトコールを行った43頭の犬のデータを分析に含めた。犬は、腫瘍の部位(頭/頸部あるいはその他)、入院状態(預かる、預からない)、放射線毒性スコアを基に分類した。治療開始時、治療の中ほど、治療終了時に記録した体重を分析に使用した。
両プロトコールで評価した時、全体の体重変化、部位、入院状態に関して有意差は見られなかった。全体で、90頭中5頭(5.5%)は治療中に5%以上体重が減少し、90頭中7頭(7.7%)は体重が5%以上増加した。
この研究の結果は、この研究の結果は、放射線療法を行う犬の少数%しか重大な体重減少は怒らず、不確かな報告とは反対だと示唆される。(Sato訳)
■犬の膀胱腫瘍の治療でリン酸トセラニブの使用
Use of Toceranib Phosphate in the Treatment of Canine Bladder Tumors: 37 Cases.
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 Sep/Oct;55(5):243-248. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6905.
Gustafson TL, Biller B.
犬の移行上皮癌(TCC)は局所侵襲性の腫瘍で、従来の化学療法剤に低から中程度反応する。リン酸トセラニブ(TOC)は犬のTCCの治療に対する新しい薬剤である。
膀胱腫瘍の治療でTOCを投与されていた37頭の犬を確認した。
一般にTOCはよく許容したが、投与される間に56%の犬は高窒素血症が進行した。TOCの部分反応は6.7%の犬で観察され、80%の犬は安定状態で、その期間の中央値は128.5日だった。進行までの期間中央値は96日で、TOC開始後の生存期間中央値は149日だった。この犬の群で、進行までの期間あるいは生存期間に影響する有意な変数はなかった。
この回顧的研究は、TCCの治療にTOCは有効かもしれないと示唆する。しかし、TOCを投与されている膀胱腫瘍の犬で、腎機能の注意深いモニタリングが推奨される。(Sato訳)
■犬の良性と悪性肛門周囲腺増殖病変の細胞学的違い:予備研究
Cytological differentiation between benign and malignant perianal gland proliferative lesions in dogs: a preliminary study.
J Small Anim Pract. 2019 Aug 1. doi: 10.1111/jsap.13062. [Epub ahead of print]
Sabattini S, Renzi A, Rigillo A, Scarpa F, Capitani O, Tinto D, Brenda A, Bettini G.
目的:犬の良性と悪性肛門周囲腺増殖病変の鑑別を行う個別細胞診基準とそれらのベストな組み合わせの診断的利用の評価
素材と方法:犬の肛門周囲腺増殖病変(その後病理組織学的確認を行った)の細胞診サンプルの回顧的研究
結果:56頭の犬の77個の肛門周囲腺結節を含めた。組織学的に病変は、過形成(n=2)、腺腫(n=53)、上皮腫(n=6)、癌(n=16)と診断された。評価した28の細胞診基準のうち、13は良性と悪性病変の鑑別に対する裏付けを示した。87%の精度(感受性、90.9%;特異性、85.4%)の診断アルゴリズムをそれらのデータから開発した。
臨床意義:細胞診評価は、良性と悪性肝様腺増殖病変との術前鑑別に対する有効な情報を提供できる。提唱されるアルゴリズムは、さらに望むべき大規模ケースシリーズで再現性に対し確認および検査すべきである。(Sato訳)
■犬の尿路癌による二次的尿道閉塞の管理に対するバルーン拡張後の結果:12症例(2010-2015)
Outcomes following balloon dilation for management of urethral obstruction secondary to urothelial carcinoma in dogs: 12 cases (2010-2015).
J Am Vet Med Assoc. 2019 Aug 1;255(3):330-335. doi: 10.2460/javma.255.3.330.
Kim S, Hosoya K, Takagi S, Okumura M.
目的:尿路癌による尿道閉塞の緩和治療に対し、バルーン拡張を行った犬の結果を述べる
動物:12頭の飼育犬
方法:2010年4月から2015年12月の間に、尿路(膀胱、尿道、前立腺)癌の犬の尿道閉塞の治療で、バルーン拡張を行った犬を確認するため、医療記録を検索した。病歴、シグナルメント、臨床症状、診断画像所見、バルーン拡張方法、臨床結果、合併症、追加処置に関する情報を記録の再調査で入手した。
結果:尿道閉塞の臨床症状の改善は、12頭中9頭の最初の拡張処置後に観察された。最初の処置後、48-296日の間に5頭の犬で尿道閉塞の再発が見られた。そのうち3頭は2度目の拡張処置を行い、3頭は41-70日間、臨床的改善を見せた。2度目の再閉塞後に3度目の処置を行った2頭中1頭は、22日後の転移疾患で死亡するまで尿路の症状は改善していた。合併症は血尿、尿失禁、排尿障害で、それらは処置後数日以内に解消した。
結論と臨床関連:尿道バルーン拡張は、最少侵襲の処置で、この研究集団のほとんどの犬の尿路癌による尿道閉塞の緩和をもたらせた。腫瘍性尿道閉塞の犬のバルーン拡張に対する最適な方法の確認、その処置で最も恩恵を受けると思われる患者の確認に前向き研究が必要である。(Sato訳)
■日本の犬の皮膚腫瘍の回顧的研究、2008-2017
Retrospective study of canine cutaneous tumors in Japan, 2008-2017.
J Vet Med Sci. 2019 Jun 28. doi: 10.1292/jvms.19-0248. [Epub ahead of print]
Kok MK, Chambers JK, Tsuboi M, Nishimura R, Tsujimoto H, Uchida K, Nakayama H.
犬の皮膚の腫瘍はよく見られる。今日まで、アジアの国の犬の皮膚の腫瘍の疫学を調査した研究はほとんどない。
この研究の目的は、日本の犬の皮膚腫瘍の有病率を報告することと、一般的な腫瘍タイプの発生と、犬種、年齢、性別、解剖学的位置の関連を評価することだった。
皮膚腫瘍の1435症例を調査し、813頭(56.66%)は悪性腫瘍、622頭(43.34%)は良性腫瘍だった。軟部組織肉腫(18.40%)、肥満細胞腫(16.24%)、脂肪腫(9.69%)、毛包腫(9.34%)、良性皮脂腺腫(8.50%)は他の腫瘍タイプより多かった。腫瘍があった場所は、頭部(13.87%)、後肢(10.52%)、前肢(8.01%)、胸部(5.78%)、頸部(5.57%)だった。
皮膚腫瘍の発生リスクは、11歳以上の犬で有意に増加した(P<0.001)。雑種犬(14.63%)、ミニチュアダックスフンド(9.90%)、ラブラドールレトリバー(8.01%)が多く見られた3犬種だった;一方で、ボクサー、バーミーズマウンテンドッグ、ゴールデンレトリバーは雑種犬と比べ、皮膚腫瘍発生のリスクが増していた。(P<0.05)。この研究の疫学的情報は、犬の皮膚腫瘍の予備的診断の確立において地域獣医師の有効な参考基準となるだろう。(Sato訳)
■転移性脾臓血管肉腫の犬に対するアントラサイクリンを主体とした補助化学療法、メトロノーム化学療法と無治療の比較:イタリア獣医腫瘍学会の多施設回顧的研究
Adjuvant anthracycline-based versus metronomic chemotherapy versus no medical treatment for dogs with metastatic splenic hemangiosarcoma: a multi-institutional retrospective study of the Italian Society of Veterinary Oncology
Vet Comp Oncol. 2019 Jun 28. doi: 10.1111/vco.12519.
Marconato L, Chalfon C, Finotello R, Polton G, Vasconi ME, Annoni M, Stefanello D, Mesto P, Capitani O, Agnoli C, Amati M, Sabattini S.
【アブストラクト】
転移性(ステージ 3)脾臓血管肉腫の犬に対する治療法の選択肢は限られている。ドキソルビシンベースの化学療法レジメンが一般的に用いられている。しかし、この慣習を裏付けるデータはない。
本研究の目的は、脾臓摘出術を受けたステージ3の脾臓血管肉腫の犬の転帰に対する最大耐用量化学療法(MTD)、メトロノーム化学療法(MC)および補助療法なしの影響を調査することであった。
脾臓摘出術後にMTD化学療法、MCまたは補助療法を用いない治療を受けた、ステージ3の脾臓血管肉腫の犬の医療記録が調べられた。無増悪期間(TTP)、生存期間(ST)および毒性を評価した。
103例を確認し、23例の犬に補助MTDを投与し、38例の犬にMCを投与し、42例の犬は治療を受けなかった。TTPとSTの全体の中央値は、それぞれ50日(95%CI、39-61)と55日(95%CI、43-66)であった。補助MTDを用いた犬は、MCを投与した犬と比較して、有意に長いTTPおよびSTを有した(それぞれTTP中央値、134対52日、P = 0.025;中央値ST、140 vs.58日、P = 0.023)。脾臓摘出術のみで治療された犬は、最も短いTTP中央値(28日)およびST(40日)のみを有した。しかし、治療関連有害事象(AE)はMTD群で有意に多かった(P = 0.017)。
転移性脾臓血管肉腫の犬の転帰は悪かった。MTDはMCと比較してより高い有効性を示したが、毒性はこの群でより高かった。進行期の血管肉腫の犬に補助MTDを投与する場合、治療に関連したAEはこの中程度の生存期間の延長に対して、慎重にバランスをとる必要がある。(Dr.Masa訳)
:本報告のメトロノーミックがん薬物療法(MC)の主体はサリドマイド(87%)です。MCと脾臓摘出のみの比較は、Kaplan-Meier曲線を見る限り、脾臓摘出のみの群で初期の死亡が多いので、セレクションバイアスが関わっていそうですが、検定結果は書いていないです。個人的にはメトロノーミック化学療法の効果は懐疑的です。
■犬の皮膚および皮下軟部組織肉腫において局所再発のリスクに対する外科的マージンの完全性の影響
Influence of surgical margin completeness on risk of local tumour recurrence in caninecutaneous and subcutaneous soft tissue sarcoma: A systematic review and meta-analysis.
Vet Comp Oncol. 2019 Apr 5. doi: 10.1111/vco.12479. [Epub ahead of print]
Milovancev M, Tuohy JL, Townsend KL, Irvin VL.
現在の相互評価した獣医の文献は、犬の軟部組織肉腫(STS)において局所腫瘍再発のリスクに対する外科的マージンの完全性の影響に関し、矛盾する情報を含んでいる。
この系統的レビューとメタ解析は、「顕微鏡的に腫瘍フリーの外科マージンが得られることは、犬の皮膚および皮下STSの局所再発のリスクを減らせるか?」という臨床的疑問に答えるために計画した。
合計486の引用を審査し、フルテキスト評価を行った66と278のSTSの切除を示した10の研究を最終的に含めた。
累積的に、完全切除の16/164(9.8%)、不完全切除の38/114(33.3%)のSTSは再発した。全相対危険度0.396(95%信頼区間=0.248-0.632)は不完全マージンで切除したSTSと比較した時、完全マージンで切除したSTSの局所再発に対し算出された。バイアスのリスクは、選択バイアスと検出バイアスに関して全ての研究で低いと判断したが、パフォーマンスバイアスと除外バイアスに関してすべての研究で高いと判断した。
個々の過去の研究結果を加えたこのメタ解析の結果は、犬のSTSにおいて顕微鏡的に完全な外科的マージンは、局所再発に対する有意なリスク低減を与えると強く示唆する。
理想的には、系統的バイアスを減らすため、ガイドラインの実行と報告を標準化する追加研究を固執するべきである。(Sato訳)
■下垂体に検出可能なマスのある犬97頭の神経学的異常
Neurological abnormalities in 97 dogs with detectable pituitary masses.
Vet Q. 2019 May 21:1-13. doi: 10.1080/01652176.2019.1622819. [Epub ahead of print]
Menchetti M, De Risio L, Galli G, Cherubini GB, Corlazzoli D, Baroni M, Gandini G.
背景:小動物において、下垂体腫瘍はトルコ鞍部の一般的な腫瘍である。しかし、起こりうる神経症状の範囲と程度に関する詳細な情報はない。
目的:検出可能な下垂体マス(detectable pituitary mass:DPM)がある犬の集団での神経学的異常と、マスの大きさと脳圧迫(BC)のMRI所見のそれらとの関連を回顧的に述べる。MRIでDPMが示され、詳細な神経学的検査を行った飼育犬を研究に含めた。神経症状は、下垂体高/脳比(P:B比)と脳圧迫の有無との関連を評価した。
結果:97頭の犬が登録された。異常な精神状態と行動(77%)、歩様(61%)と脳神経異常(44%)の他に、体位異常(21%)、疼痛および/あるいは知覚過敏(25%)、異常な姿勢と固有受容反応(49%)を含む他の報告されていない神経症状も観察された。DPMの犬の大多数は、BCの所見があった。高い下垂体高/脳領域とBCの存在は、精神状態異常の発現に対するリスク因子だった。
結論:DPMのある犬で報告された神経症状は、典型的な前脳症状だけでなく、歩行障害や知覚過敏も見られた。神経症状は、P:B比上昇や脳圧迫のMRI所見に関係する。(Sato訳)
■犬種サイズによる脾臓摘出を行う犬の脾臓マスの診断:234頭の犬(2008-2017)
Splenic mass diagnosis in dogs undergoing splenectomy according to breed size: 234 dogs(2008-2017).
Vet Rec. 2019 Apr 30. pii: vetrec-2018-104983. doi: 10.1136/vr.104983. [Epub ahead of print]
O'Byrne K, Hosgood G.
種々の脾臓の疾患は、脾臓のマスで起こり得て、脾摘を必要とする。
この研究の目的は、犬種サイズで分類した犬において、悪性および良性脾臓疾患の有病率、悪性疾患の種類を比較することである。
脾臓疾患の有病率は、小型と大型犬種の犬において有意差があるだろうと仮説を立てた。
すべての犬は、超音波検査かCTで確認した脾臓マスがあり、確定診断をしていた。犬種のスタンダードに従い、小型、中型、大型犬種に分類した。
小型犬種が54頭、中型犬種が139頭、大型犬種が41頭だった;悪性疾患129/234、55%(95%CI 49%-61%)と良性疾患105/234、45%(95%CI 39%-51%)(P=0.117) 。小型(P=0.276)、中型(P=0.074)、大型犬種(P=0.080)に対し、悪性と良性疾患の有病率に有意差はなかった。
小型犬種は大型犬種の犬よりも良性疾患の確率が2.3倍高かった。悪性疾患の小型犬種の犬は、血管肉腫のある大型犬種の犬の1/3だった。
結論として、悪性および良性疾患の全体の有病率は50:50だった;しかし、大型犬種の犬と比較して、小型犬種の犬は良性疾患の確率が高かった。小型犬で悪性疾患があるとき、とはいえ血管肉腫の確率は低い。この情報は、種々の犬種のサイズの犬のオーナーと早期に相談する時の検討に重要である。(Sato訳)
■犬の鼻腔内癌に対する術中アクリジンオレンジ光線力学療法と篩板電子ビーム照射:14症例
Intraoperative acridine orange photodynamic therapy and cribriform electron-beam irradiation for canine intranasal carcinomas: 14 cases.
Can Vet J. 2019 May;60(5):509-513.
Maruo T, Fukuyama Y, Nagata K, Yoshioka C, Nishiyama Y, Kawarai S, Kayanuma H, Orito K, Nakayama T.
犬の鼻腔内癌はほとんどが悪性である。外科手術単独では、急速に腫瘍が再発することも多い。放射線療法は鼻腔内腫瘍の犬で選択される治療である。
ここでは、著者らが鼻腔内癌の辺縁腫瘍切除とそれに続き、術中アクリジンオレンジ(AO)光線力学療法(PDT)と篩板電子ビーム術中放射線療法(IORT)による治療を評価した。
犬の症例14頭を評価し、そのうち12頭はステージIの腫瘍で、1頭はステージIII、1頭はステージIVだった。再発は8頭でみられ、処置から再発までの期間中央値は6か月(範囲:3-16か月)だった。治療後の無増悪生存期間と総生存期間は13か月と22か月だった。有害事象は軽度だった。
外科手術単独では治癒しない辺縁切除可能な鼻腔内悪性腫瘍の犬において、辺縁切除後の術中AO-PDTと篩板電子ビームIORTは、腫瘍をコントロールする期間を増やすかもしれない。(Sato訳)
■リン酸トセラニブ(パラディア®)を用いて治療された心基底部腫瘍の回顧的評価:2011−2018
Retrospective evaluation of canine heart base tumors treated with toceranib phosphate(Palladia®): 2011-2018.
Vet Comp Oncol. 2019 May 9. doi: 10.1111/vco.12491.
Lew FH, McQuown B, Borrego J, Cunningham S, Burgess KE.
【アブストラクト】
心基底部腫瘍(HBT)は、高齢の短頭腫の犬によく発生する。暫定的な診断は、心エコー検査による腫瘍の位置と所見に基づいて行われる。有効な治療法の選択肢は手術(可能な場合)または放射線療法に限定している。内科的な治療の利点は今の所分かっていない。
この遡及的研究の目的は、HBTの犬に対するリン酸トセラニブの有効性と忍容性を評価することである。
組織学的・細胞学的に確認された、もしくは暫定的に診断されたHBTを有する28例の犬を回顧的に評価した。
27例の犬がトセラニブ単独で治療を受けた。1例の犬がメトロノーム化学療法との併用療法を受けた。この犬は反応性または生存分析に含まれなかった。評価された要因は、臨床徴候、血液学的/生化学的パラメータ、そして治療への反応を含んでいた。トセラニブを単独で投与された27例の犬において、10%の全奏効率が見出された。全生存期間中央値は823日であった(範囲、68-1190日)。転移を示した犬の全奏効率は28.5%で、生存期間中央値は532日だった(範囲、77-679日)。これは、転移を示さなかった犬の生存期間中央値796日と比較し、有意差は認められなかった。診断時に臨床徴候を示した犬のうち、90%が改善し、81%がトセラニブ投与開始後に徴候が完全に改善した。毒性は54%の犬で認められ、胃腸障害が最も一般的な毒性であり、薬剤の減量は稀だった。
この結果はリン酸トセラニブが、進行性または転移性の病変の犬を含む手術が困難な犬の心基底部腫瘍に対し、効果的で忍容性のある治療であることを示している。(Dr.Masa訳)
(23/28:82%)は心エコー検査で診断をつけています。出来れば細胞もしくは組織的な診断があって使用根拠としたい所ですが、臨床的には中々困難なことも多いですよね。40%程度認められた胸水・心嚢水が抜去→投与後再貯留なく経過できているという情報は生存期間と合わせて非常に有益な情報だと思います。
■犬の腎FNAの診断への利用と超音波所見の利用
Evaluation of the diagnostic utility of cytologic examination of renal fine-needle aspirates from dogs and the use of ultrasonographic features to inform cytologic diagnosis
Camille A. McAloney, Leslie C. Sharkey, Daniel A. Feeney, Davis M. Seelig, Anne C. Avery, Carl R. Jessen
(J Am Vet Med Assoc 2018;252:1247–1256)
目的:犬の腎FNAサンプルの細胞学的特徴を述べるため診断に適した標本の割合、腫瘍非腫瘍診断の有用性評価、超音波所見の細胞診への有用性について特徴付ける。
デザイン:回顧的調査
サンプル:100頭の犬から得た102サンプルと97超音波所見
方法:超音波ガイド腎FNAしたものを特定し回顧調査を行なった。スライドを解釈に適しているか不適か判定し、適しているものは細胞診断を行なった。腫瘍と非腫瘍は、組織学的もしくはリンパ球のクローンアッセイにより、感度、特異性、予測値を評価した。超音波所見により腫瘍と非腫瘍を述べた。
結果:102のうちの74(72%)で解釈に適していると判断され、26が診断制度分析に含められた。腫瘍と非腫瘍の感度はそれぞれ78%、50%で特異性は50%、77%でリンパ腫の感度は100%であった。腎臓の超音波所見による腫瘍の評価はさまざまであったが、癌(5/5)、リンパ腫(5/7)、他の腫瘍(3/4)は腫瘤を形成し、非腫瘍(n=5)は腫瘤ではなかった。
結論と臨床意義:腎FNAは他の臓器と同率に評価ができ腫瘍の診断に有用であった。画像的特徴は腫瘍と非腫瘍の区別に役立つ可能性があるがさらなる検討が必要である。(Dr.Maru訳)
■肥満細胞腫や軟部組織肉腫の外科的切除を行った犬の長期結果
Long-term outcomes of dogs undergoing surgical resection of mast cell tumors and soft tissue sarcomas: A prospective 2-year-long study.
Vet Surg. 2019 May 2. doi: 10.1111/vsu.13225. [Epub ahead of print]
Milovancev M, Townsend KL, Tuohy JL, Gorman E, Bracha S, Curran KM, Russell DS.
目的:肥満細胞腫(MCT)や軟部組織肉腫(STS)を外科的に切除した犬の臨床的結果を報告する
研究計画:前向き臨床研究
サンプル集団:53頭の犬の52のMCT(50が低グレード、2が高グレード)と19のSTS(12がグレードI、6がグレードII、1がグレードIII)
方法:すべての犬は術後3、6、12、18、24か月目に検査し、再発が疑われた場合、細胞診あるいは病理組織学的に評価した。研究している腫瘍の関連で安楽死した犬は検死した。
結果:MCTとSTSの術中マージンの中央値はそれぞれ20㎜と30㎜で、1筋膜面を一括して切除した。もっとも狭い組織学的に腫瘍のないマージンは、MCT52のうち21(40%)で1㎜未満、STS19のうち7(37%)で1㎜未満だった。すべての犬は24か月追跡した。低グレードMCT50中2(4%)は、181日と265日に局所再発を診断した。低グレードMCT36中2(6%)は181日と730日に内蔵転移を発症した。高グレードMCTの2頭中1頭は術後115日に局所再発を発症した。STS19の切除後の局所再発あるいは転移は診断されなかった。
結論:主に低から中グレードのMCTとSTSの中で、組織学的に腫瘍のないマージンが1㎜未満の普及率が多かったにもかかわらず、局所再発率は低かった。高グレード腫瘍に対する外科的推奨は、この集団で推定できない。
臨床意義:外科医は、結果を予測する病理組織の限界を考慮し、患者の有病率を最小限にするのに、MCTとSTSの顕微鏡学的完全切除の達成を目指すべきである。(Sato訳)
■犬の頭蓋内腫瘍に対する定位脳生検の診断精度:生検、外科的切除、検死標本の比較
Diagnostic accuracy of stereotactic brain biopsy for intracranial neoplasia in dogs: Comparison of biopsy, surgical resection, and necropsy specimens.
J Vet Intern Med. 2019 Apr 16. doi: 10.1111/jvim.15500. [Epub ahead of print]
Kani Y, Cecere TE, Lahmers K, LeRoith T, Zimmerman KL, Isom S, Hsu FC, Debinksi W, Robertson JL, Rossmeisl JH.
背景:定位脳生検(stereotactic brain biopsy:SBB)は、脳病変の確定診断を可能にする技術である。頭蓋内疾患の犬において、SBBの診断的有用性に関して入手可能な情報はほとんどない。
目的:脳腫瘍の犬において、SBBの診断精度(DA)を調査する
動物:SBBを実施し、その後外科的切除あるいは検死を行った飼育犬31頭
方法:回顧的観察研究。SBBと参照標準診断を聞かされていない2人の病理医が、組織学的標本を再検討し、WHOと改訂犬神経膠腫分類基準に従い、タイプとグレードを判定した。SBBによる腫瘍タイプとグレードの一致性を参照標準と比較し、kappa統計を用いて評価した。一致性に関する患者と技術的要因も検査した。
結果:定位脳生検標本は、神経膠腫の24頭の犬と髄膜腫の7頭から入手した。SBBと参照標準との腫瘍タイプの一致性は31頭中30頭で見て取れた(k=0.95)。診断的一致は髄膜腫で完璧だった。神経膠腫の間のグレード一致性は、23頭中18頭で観察された(k=0.47)。不一致の症例で、SBBは参照標準神経膠腫のグレードを低く評価した。SBBの診断精度は69頭中56頭の生検サンプルにおいて一致し、81%だった。より小さい腫瘍やSBBの標本があまり取れなかったことが、診断不一致に有意に関係した。
結論と臨床重要性:犬の一般的な脳腫瘍の診断に対し、SBBの診断精度は十分である。神経膠腫のグレードの不一致はよくあるが、SBBで得られた診断は、今のところ治療方針決定をインフォームするのに十分である。診断精度を上げるには、複数のSBB標本を採るべきである。(Sato訳)
■放射線安全と利用の知識に関する専門家への調査
Survey of veterinary specialists regarding their knowledge of radiation safety and the availability
of radiation safety training
Scott L. Gregorich, James Sutherland-Smith, Amy F. Sato, Jennifer A. May-Trifiletti, Katia J. Miller
(J Am Vet Med Assoc 2018;252:1133?1140)
目的:さまざまな放射線安全問題に関する専門医の知識を評価するとともに放射線安全性訓練の運用について判断する。
デザイン:横断研究
サンプル:164の放射線学、81の内科、108のエマージェンシーと救急救命。
方法:放射線安全の知識とトレーニング関するオンライン調査を、内科、エマージェンシー、放射線学の専門家に対してemailを送付した。回答についてまとめ、放射線学、内科、エマージェンシー間で比較を行なった。
結果:アカデミック65.5%(38/58)で回答が得られ、臨床30.0%(33/110)で回答が得られ放射線安全訓練として電離放射線を使用する人員に対してそれぞれ80.2%、56.6%で教育がなされていた。放射線科、内科、エマージェンシーで低かったものとして3相食道造影と3相腹部造影CTに関する電離放射線効果線量があった。放射線科(92/153 [60.1%])と非放射線科(92/179 [51.4%])で臨床的に使用する線量で重篤な発がんリスクになるとは考えていなかった。
結論と臨床意義:放射線安全訓練はアカデミアでよりなされているが普遍的になされているわけではなく、いくつかの施設で要求されている免許要件に合致しないかもしれない。大部分の放射線科、内科、エマージェンシーでは画像診断に関する照射線量の理解に乏しく危険をもたらす可能性がある。(Dr.Maru訳)
■犬のステージ4の肛門嚢アポクリン腺癌に対するリン酸トセラニブ投与後の反応と結果:15症例(2013-2017)
Response and outcome following toceranib phosphate treatment for stage four anal sac apocrine gland adenocarcinoma in dogs: 15 cases (2013-2017).
J Am Vet Med Assoc. 2019 Apr 15;254(8):960-966. doi: 10.2460/javma.254.8.960.
Elliott JW.
目的:単独化学療法剤としてリン酸トセラニブで治療したステージ4肛門嚢アポクリン腺癌(ASAGA)の犬の反応と結果を評価する
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:2013年3月から2017年6月までにリン酸トセラニブで治療したステージ4 ASAGAの飼育犬15頭
方法:医療記録を再検討し、シグナルメント、臨床症状、身体検査の結果、診断方法、治療、反応、経過情報、結果を含むデータを集めた。有害事象や治療に対する反応は、標準ガイドラインに従って評価し、無増悪期間や生存期間はカプラン-マイヤー法を使用した。
結果:トセラニブにより完全あるいは部分奏功を示した犬はいなかった;しかし13頭は臨床的に有益な症状を示した。トセラニブに関連する毒性症状を示した犬や、有害事象により治療を完全に中止した犬はいなかった。無増悪期間中央値と生存期間中央値は354日と356日だった。
結論と臨床関連:今回の結果は、過去のチロシンキナーゼ抑制剤以外の治療を受けたASAGAの犬の結果と比較して、トセラニブでステージ4 ASAGAを治療した犬は予後を改善していたことが示された。臨床症状を改善した犬もいたが、局所悪化の症状のために安楽死が実施されることも多かった;ゆえに、ASAGAに起因する顕著な臨床症状がある犬や、特に症状がQOLを制限すると思われる犬に対し、トセラニブ単独は適切な治療ではないかもしれない。進行したASAGAの犬に対し、多様式治療におけるトセラニブの追加研究が必要である。(Sato訳)
■担癌犬のQOL測定のためのアンケートの開発
Development and psychometric testing of the Canine Owner-Reported Quality of Life questionnaire, an instrument designed to measure quality of life in dogs with cancer
Michelle A. Giuffrida, Dorothy Cimino Brown, Susan S. Ellenberg, John T. Farrar
(J Am Vet Med Assoc 2018;252:1073?1083)
目的:担癌犬のQOL測定の標準化されたアンケート設計と最初と進行時の変化の調査
デザイン:Key-informant interviews、アンケート開発、調査
サンプル:開発のための25人の担癌犬オーナーと妥当性試験のための90人の担癌犬オーナー。
方法:主観的状態を把握するためにアンケートを開発した。項目は、一般化、選択、段階評価としてプレテストが行われ内容、意味、信頼性を評価した。応答項目探索因子分析と内的整合性(Cronbach α)を評価し、ビジュアルアナログスケールでQOLについて収束させた。安定性と応答性について予備試験を行なった。
結果:出来上がったアンケートにはオーナーが犬のQOLを一般的に評価する17項目の動作が含まれていた。身体症状のいくつかの項目は不十分であったため削除された。その17項目は4つの因子(バイタリティ、コンパニオンシップ、痛み、罹病)に割り当てられた。アンケートとその因子は高い内的整合性(Cronbach α=0.68-0.90)であり、ビジュアルアナログスケールで測定されたQOLでは中程度から強い相関(r=0.49-0.71)が得られた。プレテストは信頼性がありQOLの改善を示していた。
結論と臨床意義:このアンケートは妥当で信頼性があり担癌犬の治療反応と予後判定のために臨床試験の変化の測定に有用である。(Dr.Maru訳)
■CTにより判定した悪性腫瘍の犬の肺結節の有病率
Prevalence of pulmonary nodules in dogs with malignant neoplasia as determined by CT.
Vet Radiol Ultrasound. 2019 Feb 19. doi: 10.1111/vru.12723. [Epub ahead of print]
Lamb CR, Whitlock J, Foster-Yeow ATL.
肺以外の悪性腫瘍のある犬において、肺結節の有病率を評価するため、肺以外の悪性腫瘍と診断された犬のCT所見の記述を回顧的に再検討した。
1つの病院から合計536頭の犬をサンプリングした。10頭以上いる悪性腫瘍に対し、最初のCT検査で複数の肺結節の有病率は、血管肉腫58頭中24頭(41%)、骨肉腫55頭中14頭(26%)、癌腫80頭中20頭(25%)、組織球肉腫21頭中5頭(24%)、軟部組織肉腫57頭中13頭(23%)、腺癌60頭中11頭(18%)、メラノーマ37頭中5頭(14%)、リンパ腫76頭中10頭(13%)、肥満細胞腫47頭中2頭(4%)、扁平上皮癌17頭中0頭(0%)だった。
孤立性の肺結節は33頭(6%)の最初のCT検査で見つかった。それらのうち、9頭が再度経過観察のCT検査を行い、2頭の結節は消失し、3頭の結節の大きさは変化せず、4頭の結節は大きくなり、さらに肺結節が出現した。
血管肉腫の犬は、最初のCT検査時に肺転移の像がある可能性が高かったが、肥満細胞腫の犬はまれにしか見られず、扁平上皮癌の犬で肺転移像があった犬はいなかった。最初のCT検査で孤立性の肺結節は不確定の所見で、腫瘍が関係しないこともあるかもしれない。(Sato訳)
■犬上顎腫瘍切除の術中術後合併症
Intraoperative and postoperative complications of partial maxillectomy for the treatment
of oral tumors in dogs
Roxane H. MacLellan, Jennifer E. Rawlinson, Sangeeta Rao, Deanna R. Worley
(J Am Vet Med Assoc 2018;252:1538?1547)
目的:犬口腔腫瘍の上顎切除の術中、術後合併症の特徴と因子を明らかにする。
デザイン:回顧的調査
動物:2000年?2011年にかけて上顎腫瘍切除を行なった193頭の犬。
方法:シグナルメント、腫瘍の位置と大きさ、病理、臨床ステージ、上顎切除方法、アプローチ、補助療法について調査を行なった。これらの因子が術中、術後合併症に影響するかを調査した。
結果:もっとも多かった術中合併症は出血(103/193 [53.4%])であり44頭(42.7%)は輸血がなされた。これは腫瘍の大きさ、位置、切除方法、アプローチと関連していた。口腔内アプローチと外側アプローチの組み合わせは過度の出血があり(48/58 [83%])、手術時間も延長(106分)する傾向にあった(口腔内アプローチの輸血[29/54 (54%)]、手術時間77分)。手術2日以内の合併症としては鼻出血(99/193 [51.3%])、過度の顔面浮腫(71/193 [36.8%])、顔のかきむしり(21/193 [10.9%])、採食困難(22/193 [11.4%])であった。4週間以内の合併症としては口唇の外傷(22/164 [13.4%])、口腔鼻腔瘻(18/164 [11.0%])、離開(18/164 [11.0%])、感染(13/164 [7.9%])であった。
結論と臨床意義:上顎切除による合併症は少数であった。積極的な切除計画、出血への対処と輸血、注意深い組織切開、包括的な疼痛管理は広範な切除を行う後方の上顎切除では推奨される。(Dr.Maru訳)
■犬の小腸腫瘍における腫瘍浸潤の拡がりの評価
Evaluation of the extent of neoplastic infiltration in small intestinal tumours in dogs.
Vet Med Sci. 2019 Feb 19. doi: 10.1002/vms3.147. [Epub ahead of print]
Morrice M, Polton G, Beck S.
犬の小腸腫瘍に対する外科的マージンを判定するとき、今のところエビデンスに基づいたガイダンスがない。
この研究の目的は、小腸のマスに直面した時、マージンについて情報に基づく臨床方針決定を手助けすることである。
27頭の犬の小腸腫瘍が組織学的に診断し、その後さらに、腫瘍の触知できる縁から、口側、口と反対側、腸間膜側における外科的マージンをセンチメートルごとに評価した。
10個の癌全てにおいて、口側、口と反対側、腸間膜側方向で3cmの組織マージンを取った場合、完全な腫瘍切除となっていた。11個の肉腫において、口側、口と反対側、腸間膜側方向で2cmの組織マージンを取った場合、完全な腫瘍切除となっていた。6個の腸管リンパ腫のうち5個は、完全切除に4cm以上の組織マージンが必要となっていた。
この研究において評価した非リンパ腫の腫瘍21個のうち、口側と口の反対側方向において21個(100%)はマスの触知できる縁から3cmの組織マージンで、20個(95%)はマスの触知できる縁から2cmの組織マージンで、16個(76%)はマスの触知できる縁から1cmの組織マージンで完全切除できた。
全ての非リンパ腫の犬の小腸マスは、ホルマリン固定後の口側と口と反対側方向に組織マージンがマスの触知できる縁から3cmあれば完全切除できるだろう。(Sato訳)
■犬における肺腫瘍と副流煙を含む環境因子の関連性
Association between environmental factors including second-hand smoke and primary lung cancer in dogs
A. Zierenberg-Ripoll, R. E. Pollard, S. L. Stewart, S. D. Allstadt, L. E. Barrett, J. M. Gillem and K. A. Skorupski
Journal of Small Animal Practice (2018) 59, 343?349 DOI: 10.1111/jsap.12778
目的:原発性肺腫瘍の犬における副流煙とたの環境毒物の曝露状況の把握と、曝露と肺腫瘍の関連を分析すること。
材料と方法:この症例対照研究では患者特性、一般健康管理、環境曝露データを集めるためにオーナーへの調査がなされた。原発性肺腫瘍を持つ犬を症例群とした。肥満細胞腫をコントロール1、神経疾患をコントロール2とした。肺腫瘍と診断されたものと患者、環境曝露変数を二変量および多変量解析を行なった。
結果:1,178のオーナーを調査し、470件で回答が得られた。135が症例、169がコントロール1、166がコントロール2であった。本研究では副流煙と肺腫瘍に関連は認められなかった。
臨床的意義:人では副流煙と原発性肺癌の関連はあるものの犬では認められなかった。本研究の結果から副流煙と犬の肺腫瘍に関連はないのかもしれないが、研究の制限により関連性を検出できなかった可能性もある。(Dr.Maru訳)
■ドキソルビシンとシクロフォスファミドで治療した原発性肝臓神経内分泌癌の犬の1例
Primary Hepatic Neuroendocrine Carcinoma Treated with Doxorubicin and Cyclophosphamide in a Dog.
J Am Anim Hosp Assoc. 2019 Mar 14. doi: 10.5326/JAAHA-MS-6887. [Epub ahead of print]
Morgan E, O'Connell K, Thomson M, Boyd S, Sandy J.
7歳6か月のオスの去勢済みオーストラリア・キャトル・ドッグが大きな腹部マスで二次病院を受診した。腹部超音波検査で、肝臓内転移を疑う肝臓全体の多病巣性病変が明らかになり、肝臓外転移病巣の所見はなかった。細胞診で上皮由来の腫瘍が示され、最初に神経内分泌腫瘍が疑われた。
治療は、メトロノームシクロフォスファミドとドキソルビシンの最大耐量化学療法プロトコールを開始した。腹部超音波再検査で安定疾患を確認し、その犬はプロトコールをよく許容した。
5回のドキソルビシン投与を完了し、メトロノームシクロフォスファミドとメロキシカムを継続した。
肝臓疾患の進行は10か月で見つかった。その犬は治療開始から15.5ヶ月(465日)で安楽死された。
病理組織検査と免疫組織化学検査(シナプトフィジン)を死後の肝臓で実施し、(原発性)肝臓神経内分泌癌が示された。
原発性肝臓神経内分泌癌は犬では珍しく、標準的治療がない。著者の知るところでは、これは高用量ドキソルビシンとメトロノームシクロフォスファミドで治療した原発性肝臓神経内分泌癌の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫:症例シリーズでの電気化学療法を用いた治療検討と新しいアプローチ
Soft tissue sarcoma in dogs: a treatment review and a novel approach using electrochemotherapy in a case series.
Vet Comp Oncol. 2019 Jan 27. doi: 10.1111/vco.12462. [Epub ahead of print]
Torrigiani F, Pierini A, Lowe R, Sim?i? P, Lubas G.
犬の軟部組織肉腫(STSs)は局所侵襲性の間葉系腫瘍である。電気化学療法(ECT)は、細胞傷害性薬剤の細胞内デリバリーを高める電気パルスを用いる抗腫瘍local ablative treatmentである。
この回顧的研究の目的は、STSsに対する現行の治療を再検討することと、犬のSTSsにおいてECTとブレオマイシンの効果と安全性を評価することだった。
合計54個のSTSsがある52頭の犬を含めた。3群を準備した:(1)ECT単独、(2)術中ECT、(3)補助的ECT。シグナルメント、腫瘍のサイズ、場所、組織学的グレードとマージン、ECTパラメーターを収集した。再発率(RR)、無病期間(DFI)を算出した。治療毒性は6点スケールで評価した。
STSsの最も多い部位は肢だった(77.8%)。腫瘍のサイズの中央値は4.3cm(範囲0.4-17.0cm)だった。ほとんどのSTSsはグレードI(47.7%)とII(50.0%)で、94.5%の症例の組織学的マージンは不完全だった。
グループ1ノ2頭は完全寛解、1頭は部分的奏功で、1頭は安定状態だった。グループ2と3の腫瘍の部位、サイズ、グレード、組織学的マージン、治療毒性、パルス周波数とボルテージは同様だった。さらに、グループ2と3のRRとDFIも同様だった(23%と25%、81.5と243日)。66.7%の症例で、ECT後の局所毒性は軽度(スコア≦2)だった。高い毒性スコアは、より高いパルスボルテージと関係した(1200V/cm vs. 1000V/cm)(P=0.0473)。
ECTとブレオマイシンの組み合わせは、犬の軟部組織肉腫の治療に対し、腫瘍局所コントロールに安全かつ有効で、1つの治療オプションとして考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の胸膜癌腫症に対する胸腔内カルボプラチン化学療法の評価:8症例の回顧的研究
Evaluation of intracavitary carboplatin chemotherapy for treatment of pleural carcinomatosis in cats: a retrospective study of eight cases.
J Feline Med Surg. 2019 Feb 5:1098612X19826401. doi: 10.1177/1098612X19826401. [Epub ahead of print]
Floch F, Boissy L, Lanore D, Sayag D, Serres F.
目的:この研究の目的は、上皮由来の悪性胸水を伴う猫において、胸腔内カルボプラチン化学療法の有益性を評価する
方法:2013年1月から2018年6月の間に、3カ所の二次診療施設において、上皮由来の腫瘍性胸水の細胞診断を受けた猫の医療記録を再検討した。胸腔内カルボプラチン化学療法で治療された猫だけを登録した。可能ならばシグナルメント、病歴、臨床症状、胸水分析、診断画像検査所見、胸腔内カルボプラチン化学療法プロトコール、有害事象、化学療法に対する反応、結果と基礎にある原発腫瘍などのデータを集めた。
結果:8頭の猫が基準に合った。3頭の猫は過去に腫瘍の外科的切除を行っており、原発性の未分化肺癌、子宮腺癌、良性の乳腺腫瘍だった。メインの臨床症状は、頻尿および・あるいは呼吸困難、食欲不振、体重減少だった。全ての猫の胸部エックス線写真で、両側性の顕著な胸水を認めた。胸水の検査は、変性浸出液で、細胞診で悪性上皮細胞があり、胸膜癌腫症の診断が導き出された。
全ての猫は、200-240mg/m2の胸腔内カルボプラチン化学療法の1サイクルのみを施されていた。胸水の再貯留は化学療法から4-15日以内に、8頭中7頭の猫で報告され、5-16日以内にすべての猫の死亡が報告され、胸水再貯留あるいは全身状態の悪化によるものだった。原発の癌は4頭で肺、2頭で乳腺、1頭で膵臓由来と推察され、残りの猫の起源は不明だった。
結論と関連:この研究において、肺癌腫症の猫の上皮由来の腫瘍性胸水の管理において、胸腔内カルボプラチン化学療法は無効と思われた。今後、胸膜癌腫症の猫のQOLや生存性の改善に、他の細胞毒性薬および/あるいは方法を調査すべきである。(Sato訳)
■犬の口腔腫瘍の切除に対する腹側下顎切除:術式と19症例の結果
Ventral Mandibulectomy for removal of oral tumors in the dog: Surgical technique and results in 19 cases.
Vet Comp Oncol. 2019 Feb 22. doi: 10.1111/vco.12472. [Epub ahead of print]
de M Souza CH, Bacon N, Boston S, Randall V, Wavreille V, Skinner O.
この回顧的研究の目的は、下顎切除に対する新しい腹側アプローチを詳細に述べることと、19頭の犬の結果を述べることである。
新しい腹側アプローチで、部分的あるいは全片側下顎切除を受けた犬19頭の医療記録を再検討した。入手した情報は、シグナルメント、腫瘍タイプ、下顎切除の程度、所属リンパ節の切除、術中合併症、手術直後の合併症、病理組織診断、マージンの検査を含めた。
1頭の犬で術中合併症(出血)が発生し、輸血を必要とした。術後罹病率は最小で、一時的な腹側頚部腫脹と自己制限的な舌下の腫脹が含まれた(2頭)。全19頭は処置後24から48時間で退院し、退院時の食欲は正常と思われた。
この方法で気付いたいくつかの利点は、その領域の重要な解剖学的構造(舌歯槽動脈と顎関節)が全て簡単に確認でき、事実、頬骨弓の切除は必要ない(尾側下顎切除の症例)。また、下顎および咽頭後リンパ節の精査は、同じ皮膚切開の後ろへの伸長で容易に可能である。(Sato訳)
■扁桃プラズマ細胞腫の犬の一例
Tonsillar plasmacytoma in a dog.
Language: English
Can Vet J. August 2018;59(8):851-854.
Yoshimi Iwaki , Colleen Monahan , Rebecca Smedley , David Upchurch , Paulo Vilar-Saavedra
10歳のグレイハウンドが、扁桃のマスの偶発的所見のために来院した。
切除生検を実施し、不完全切除のプラズマ細胞腫と診断された。補助療法は断られた。1年後、局所再発、マスの遠隔転移、扁桃プラズマ細胞腫に関する臨床症状もなかった。
■血管肉腫関連骨格筋転移の犬61症例の有病率、分布、臨床的特徴:全身CT研究
Prevalence, distribution, and clinical characteristics of hemangiosarcoma-associated skeletal muscle metastases in 61 dogs: A whole body computed tomographic study.
J Vet Intern Med. 2019 Feb 22. doi: 10.1111/jvim.15456. [Epub ahead of print]
Carloni A, Terragni R, Morselli-Labate AM, Paninarova M, Graham J, Valenti P, Alberti M, Albarello G, Millanta F, Vignoli M.
背景:骨格筋転移(SMMs)は犬の腫瘍学で散発的に述べられている。
仮説/目的:全身CT検査のために退院した犬の集団で、血管肉腫(HSA)に関連するSMMsの有病率、部位、臨床症状を調査する
動物:HSAと組織学的に確認され、組織コア生検あるいは細針吸引生検で転移を疑われた犬を研究した
方法:回顧的研究。内蔵あるいは筋肉HSAと最終診断を受け、全身CT検査を実施した犬を研究に登録した。原発腫瘍とSMMsの最終診断は、組織検査、細胞検査、あるいは両方でなされた。シグナルメント、臨床症状、一次病巣の部位、転移特性を再検討した。
結果:61頭の犬が基準に合致した。骨格筋転移は15頭(24.6%)の犬で検出され、またそれらの犬は1部位以上に転移していた。SMMsの存在はオスで有意に高かったが、年齢、不妊状況、犬種、部位、原発腫瘍の径と有意な関連はなかった。SMMsの15頭中9頭(60.0%)は跛行や動くことを嫌がったが、それらの症状はSMMsがない42頭のいずれにも記録されていなかった(P<0.001)。
結論と臨床意義:HSAのこの集団においてSMMsの有病率は、ヒトや獣医療文献の過去の研究と比較してより高かった。SMMsは臨床検査や従来の診断画像様式では見逃す可能性があるため、HSAの犬のステージングに対し全身CT検査が勧められる。(Sato訳)
■1頭の犬の珍しい場所にできた脊髄腎芽細胞腫
[Spinal nephroblastoma at an uncommon localization in a dog].
Spinales Nephroblastom in ungewohnlicher Lokalisation bei einem Hund.
Language: German
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. April 2017;45(2):115-121.
Norbert Langen , Kerstin von Puckler, Carola Tillmanns, Valerie Bornand, Martin Kramer, Martin J Schmidt
7か月オスのオッターハウンドが、進行性の後肢不全麻痺の診断で来院した。神経学的検査で、下位運動ニューロン(L4-S1)の左側領域に位置する重度歩行不全対麻痺が明らかとなった。MRI検査は第5腰椎の硬膜内髄外腫瘍を示唆した。
外科的探査で硬膜内髄外マスが示され、部分的に脊髄に浸潤していた。脊髄内部分を除いてマスは除去し、腎芽細胞腫の診断が病理検査でなされた。
放射線療法後、その犬は完全に回復し、術後9か月の時点で神経学的機能不全の症状を示さなかった。(Sato訳)
■フレームレスSRT単独とテモゾロマイドを併用しての犬グリオーマの治療
Frameless stereotactic radiotherapy alone and combined with temozolomide for presumed canine gliomas
Vet Comp Oncol. 2018;16:90?101.
Dolera M, Malfassi L, Bianchi C, Carrara N, Finesso S, Marcarini S, Mazza G, Pavesi S, Sala M, Urso G.
犬グリオーマに対してVMATを用いたSRTもしくはテモゾロマイドを併用し緩和効果を比較した。総生存期間と疾患特異的生存期間を推定した。30頭は緩和治療、22頭はRT単独、20頭はテモゾロマイド併用であった。1年以上生存したもので完全および部分反応したものはRT単独、テモゾロマイド併用でそれぞれ63.2%、90.9%であった。生存期間中央値は、緩和治療94日(95%CI 87-101)、RT単独383日(276-490)、テモゾロマイド併用420日(280-560)でテモゾロマイドの有無で有意差は認められなかった。腫瘍体積と脳(相対)容積、臨床症状としての正常な意識、に有意な関係が認められた。VMATはグリオーマで容易に実施可能で効果的であった。テモゾロマイドの併用は生存期間の延長を認めなかった。(Dr.Maru訳)
■外科単独で治療した初期肛門腺癌の犬の結果と予後に関する臨床、病理、免疫組織化学因子
Outcome and clinical, pathological, and immunohistochemical factors associated with prognosis for dogs with early-stage anal sac adenocarcinoma treated with surgery alone: 34 cases (2002-2013).
J Am Vet Med Assoc. July 2018;253(1):84-91.
DOI: 10.2460/javma.253.1.84
Katherine A Skorupski, Christina N Alarcon, Louis-Philippe de Lorimier, Elise E B LaDouceur, Carlos O Rodriguez, Robert B Rebhun
目的:外科単独で治療した初期肛門腺癌(ASACA)の犬に対する生存期間と転移率を調べることと、それらの犬に対し特定の臨床、病理学的、あるいは免疫組織化学因子が予後を予測するかどうかを評価すること
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:外科手術のみで治療した初期の転移がないASACAの犬34頭
方法:2か所の二次病院の医療記録データベースから、2002年から2013年の間に検査を受け、その最大直径が3.2cm未満の非転移ASACAと診断された犬を検索した。外科手術だけで治療された犬のみを研究に含めた。各犬の医療記録から集めた情報は、シグナルメント、臨床および診断検査所見、腫瘍特性、予後だった。入手可能な場合、保管された腫瘍標本を組織学的に再検討し、腫瘍特性を述べた;Ki-67とE-カドヘリン発現は免疫組織化学的方法を使用して評価した。臨床、病理、免疫組織化学因子は、生存期間と腫瘍の再発、転移率との関係を評価した。
結果:生存期間中央値は1237日だった。原発腫瘍切除後、中央値354日で7頭は腫瘍が再発し、中央値589日で9頭は転移疾患を発症した。細胞多形性は転移疾患発症と正の関係を示した。評価した他の因子は予後と関係しなかった。
結論と臨床関連:初期非転移性ASACAの犬は、一般に原発腫瘍だけの外科的切除後良好な結果を示すことが結果から示された。定期的な直腸検査は、初期ASACAの犬の検出に簡単で有効な方法と思われる。(Sato訳)
■口腔扁平上皮癌あるいは線維肉腫の犬における外科切除あるいは外科切除と補助的少分割放射線照射による治療後の結果
Outcomes following surgical excision or surgical excision combined with adjunctive, hypofractionated radiotherapy in dogs with oral squamous cell carcinoma or fibrosarcoma.
J Am Vet Med Assoc. July 2018;253(1):73-83.
DOI: 10.2460/javma.253.1.73
Julia Riggs, Vicki J Adams, Joanna V Hermer, Jane M Dobson, Suzanne Murphy, Jane F Ladlow
目的:口腔非扁桃扁平上皮癌(SCCs)と線維肉腫(FSAs)を外科的に治療した犬の結果と、外科的および術後放射線療法で治療した犬の結果を比較すること;術後、少分割放射線照射は不完全切除の犬の結果を改善したのか調べること;結果に関係する予後因子を確認すること
デザイン:回顧的コホート研究
動物:2000年から2009年の間にSCCあるいはFSAの治療で上顎骨切除あるいは下顎骨切除を行った87頭の飼育犬
方法:医療記録を回顧的に再調査した。生存分析はカプラン-メイヤーとCox回帰解析を実施し、結果に関係する潜在的予後因子を評価した。
結果:全87頭の生存期間中央値(MST)は2049日だったが、SCCの犬は到達せず、FSAの犬はわずか557日だった;腫瘍の種類は生存期間の重要な指標だった。口腔SCCsの不完全切除後に術後放射線療法を行った犬(2051日)は、不完全切除で放射線療法を行わなかった犬(181日)よりもMSTが有意に長かった。FSAsの不完全切除後に放射線療法を行った犬は保護的価値をもたらせたとは思えなかった(MST、放射線療法の犬299日、放射線療法をしなかった犬694日)。
結論と臨床関連:口腔SCCあるいはFSAの犬には広いマージンの外科的切除をゴールドスタンダードな治療と考えるべきである。クリーンな外科マージンのない口腔SCCsの犬に対し、術後少分割放射線照射は生存期間を改善すると思われる。
■補助化学療法の有無にかかわらず腫瘍切除により治療された小腸腺癌の犬の生存期間と予後因子の回顧的研究
Retrospective study of survival time and prognostic factors for dogs with small intestinal adenocarcinoma treated by tumor excision with or without adjuvant chemotherapy
J Am Vet Med Assoc. 2019 Jan 15;254(2):243-250. doi: 10.2460/javma.254.2.243.
Smith AA, Frimberger AE, Moore AS.
【目的】補助化学療法の有無にかかわらず、腫瘍切除を行った小腸腺癌(SIACA)の犬の生存期間を推定し、生存期間に関連する因子を明らかにすること
【研究デザイン】ネステッドコホート研究による回顧的ケースシリーズ
【動物】外科的に切除され、SIACAと組織学的に診断された29頭のクライアント所有の犬
【方法】医療記録を見直し、データを収集した。 症例のシグナルメント; 臨床徴候; 身体検査所見; PCV; 血清総固形分濃度; 画像診断の結果; 腫瘍の大きさ、位置、および組織学的特徴(漿膜伸展、リンパ管浸潤、外科的マージン、およびリンパ節転移); 補助化学療法の種類; NSAIDの投与; そして生存期間。 Kaplan-MeierおよびCox比例ハザード分析により、生存期間およびハザード率との関連性について、変数を評価した。
【結果】腫瘍切除後のSIACAの犬の全生存期間中央値は544日であった(95%信頼区間、369-719日)。 カプランマイヤーの推定によると、1年および2年生存率はそれぞれ60%および36%であった。 多変量解析では、年齢区分のみが追跡期間中の生存に関する独立した予測因子であった。 8歳未満の犬は、8歳以上(488日)の犬よりも有意に長い生存期間中央値(1193日)を有した。 リンパ節転移、補助化学療法、NSAID投与、およびその他の評価された変数は生存期間と関連していなかった。
【結論と臨床意義】例えリンパ節転移が存在する場合であっても、犬のSIACAは外科切除後に良好な予後を示すことが所見から示唆された。 生存期間における補助化学療法またはNSAID投与の効果を明らかにするためには、前向き研究が必要である。(Dr.Masa訳)
コメント:予後因子に関しては研究デザインと症例数からちょっと評価が厳しいと思いますが、MSTの情報は非常に有用な報告だと思います。
■犬の脳腫瘍切除の生存期間と早期合併症
Postoperative survival and early complications after intracranial surgery in dogs
Alexander K. Forward, Holger A. Volk, Steven De Decker
Veterinary Surgery. 2018;47:549?554.
目的:犬の脳腫瘍切除による生存期間と早期合併症を述べること。
デザイン:回顧的症例集積
動物:腫瘍切除を行なった犬50頭
方法:2005-2015年の間に脳腫瘍切除を行なった犬を分析した。シグナルメント、臨床症状、神経症状、併発疾患、血液検査、診断、周術期ステロイド、抗てんかん薬、画像検査、手術および麻酔関連について調査した。生存期間と術後合併症、入院期間に関連する因子を一変量の線形およびロジスティック回帰、多変量回帰モデルで特定した。
結果:全例、ICUにて回復した。49頭(98%)は手術直後生存し、46頭(92%)は退院が可能であった。術後早期の神経症状の悪化は45%(22/49)で認められ、47%(23/49)は合併症と診断された。非神経学的合併症は18%(9/49)で、誤嚥性肺炎12%(6/49)が多かった。高ナトリウム血症(P=0.023)と長期入院(P=0.024)は、非神経学的合併症と関連が認められた。
結論:術後短期の生存期間に関しては良かった。約半数は神経症状が悪化したが大部分は治療で改善した。
臨床意義:我々の施設では犬脳腫瘍切除での生存率は高く重篤な合併症率は低かった。(Dr.Maru訳)
■犬の画像検査で診断した下垂体腫瘍に対する定位放射線療法の長期生存性
Long-term survival with stereotactic radiotherapy for imaging-diagnosed pituitary tumors in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2018 Dec 21. doi: 10.1111/vru.12708. [Epub ahead of print]
Hansen KS, Zwingenberger AL, Theon AP, Kent MS.
下垂体腫瘍の犬に対する定位放射線療法の使用に対して発表された研究は限られている。
この回顧的観察研究で、画像診断された下垂体腫瘍の犬45頭に対し、定位放射線療法の結果を述べる。
全ての犬は2009年12月から2015年12月の期間に1病院で治療された。定位放射線療法は、1回の15グレイ(Gy)あるいは3回の8Gy 照射で行われた。
分析時、41頭の犬は死亡していた。4頭は生存しており、全ての生存分析から外した;1頭は8Gyを隔日で照射され、プロトコール分析から除外した。
最初の治療から総生存期間中央値は311日(95%信頼区間226-410日(範囲1-2134日))だった。32頭の犬は15Gyを照射され(総生存期間中央値311日、95%信頼区間(範囲221-427日))、12頭は3日連続で合計24Gy照射された(総生存期間中央値245日、95%信頼区間(範囲2-626日))。29頭の犬は副腎皮質機能亢進症(総生存期間中央値245日)だったが、16頭は非機能性マス(総生存期間中央値626日)だった。
臨床的改善は45頭中37頭で報告された。定位放射線療法の4か月以内の急性障害と思われる症状は、45頭中10頭で認められ、多くは自然に、またはステロイドで改善した。腫瘍進行に対し晩期障害は認められなかったが、治療後の失明(2)、高ナトリウム血症(2)、進行性の神経症状(31)が報告された。異なるプロトコールでの総生存期間中央値において統計学的な差はなかった。非機能性マスの犬は、副腎皮質機能亢進症の犬よりも総生存期間中央値が長かった(P=0.0003)。
定位放射線療法の生存性の結果は、特に副腎皮質機能亢進症の犬に対する根治的放射線療法において過去に報告されたものより短かった。(Sato訳)
■細胞診のための良好な標本作成
Obtaining good quality samples for cytology
Roger Powell
In Practice 2018; 40: 141-146
細胞診では病的状況を特定する細胞を得るために注射針(20Gより細いもの)を使用する。その代わりに採取した組織をスライドグラスに押し付けたり液体を塗抹することもある。細胞が少ないときに診断することがあるが、より細胞が多い方が正確である。正しい診断を得るためにはクオリティの高い標本を作成するとともに正常と異常な細胞の特徴を知る必要がある。この論文ではクオリティの高い標本の作成と獣医療において適応可能な原則について述べる。(Dr.Taku訳)
■26頭の犬の鼻鏡切除後の美的吻側鼻再建後の結果
Outcome following cosmetic rostral nasal reconstruction after planectomy in 26 dogs.
Vet Surg. 2018 Nov 9. doi: 10.1111/vsu.13120. [Epub ahead of print]
Dickerson VM, Grimes JA, Vetter CA, Colopy SA, Duval JM, Northrup NC, Schmiedt CW.
目的:鼻鏡の腫瘍に対し、鼻鏡切除後に両側口唇粘膜皮膚回転フラップで美的再建を行った犬の結果とオーナーの満足度を報告する
研究計画:多施設回顧的ケースシリーズ
動物:26頭の飼育犬
方法:その処置を行った犬の記録を検索した。シグナルメント、診断、手術、合併症、修正外科手術の必要性、再発、生存性情報を記録した。処置後、犬のQOLと彼らの犬の結果に対する満足度について、電話でオーナーに聞き取り調査を行った。
結果:25頭の犬は根治的鼻鏡切除を行い、1頭は鼻鏡の切除を行った。24頭の犬は扁平上皮癌と診断された。1頭は非定型腺癌で、1頭は肥満細胞腫と診断された。合併症は19頭(73%)の犬で発生し、そのうち9頭は修正手術が必要、1頭は入院中に死亡した。生存期間中央値は1542日(範囲、3-2010日)だった。原発腫瘍の再発は2頭(7.7%)で疑われ、2頭とも切除が狭い、あるいは不完全だった。11人のオーナーに聞き取った結果、10人は犬の外観について満足しており、8人はその処置を再び同意するだろうと答えた。
結論:この方法では裂開がよく見られたが、局所腫瘍コントロールと生存期間は良好だった。オーナーの満足度は高かったが、術前のオーナーへの説明は極めて重要である。
臨床意義:この方法はアグレッシブな治療がないと再発が高率と思われる鼻鏡腫瘍の犬に対し、実行可能なオプションとして考慮すべきである。手術後に合併症はよく見られるが、長期にわたるものではなく、生存期間は良好だった。(Sato訳)
■診断、ステージング、放射線治療のために撮影したCTにおける同時期腫瘍と以前に検出していない転移の検討(犬736頭)
Detection of synchronous primary tumours and previously undetected metastases in 736 dogs with neoplasia undergoing CT scans for diagnostic, staging and/or radiation treatment planning purposes
Veterinary and Comparative Oncology, 15, 2, 576?581
L. M. Magestro and T. L. Gieger
本研究の目的は診断、ステージング、放射線治療のために撮影した犬736頭のCTにおける同期腫瘍や転移について述べることである。画像は一人が見かえした。腫瘍に関連したCT以上は38頭(5%)で検出され、同時腫瘍(24頭)、原発腫瘍の転移(9頭)、両者(3頭)が認められた。リンパ節腫大があるものは吸引し23%で見つかった。正常と思われるものの6%で転移が確認された。所属リンパ節のCTと吸引はステージングと治療のために推奨される。(Dr.Maru訳)
■光干渉断層撮影を用いた犬の軟部組織肉腫のサージカルマージンに対する術中画像検査
Intra-operative imaging of surgical margins of canine soft tissue sarcoma using optical coherence tomography.
Vet Comp Oncol. 2018 Sep 21. doi: 10.1111/vco.12448. [Epub ahead of print]
Selmic LE, Samuelson J, Reagan JK, Mesa KJ, Driskell E, Li J, Marjanovic M, Boppart SA.
光干渉断層撮影(optical coherence tomography:OCT)は高速非侵襲性画像検査法で、ヒトの乳癌臨床試験において術中サージカルマージン判定に対し、高い感受性を示している。この有望な技術は獣医療で評価されていない。
この研究の目的は、切除した犬の軟部組織肉腫(STS)から外科的マージンに対し、OCTで正常及び異常な組織像を関連させることと、外科的マージン陽性を確認するため画像評価基準を確立することである。
STSの外科的切除を14頭の飼育犬で実施し、切除標本の気になる2-4部位のOCT画像検査を実施した。画像検査後、それらの部位を外科インクでマークし、病理組織評価のために整えた。
結果は、OCT画像検査において異なる組織のタイプが、明瞭な特徴的所見を持つことを示した。脂肪組織は比較的低い散乱で、ハチの巣テクスチャーパターンを示した。骨格筋および肉腫組織はともに高密度で高い散乱だった。肉腫組織は高い散乱だったが、クリアな繊維アライメントパターンを示す筋肉と対照的に、見てそれと分かる構造で組織されていなかった。
この調査において、著者らはOCTにおいて異なる組織が、違った特徴的散乱と画像テクスチャー所見持つことを示した。組織の種類で違いがあれば、その結果は、OCTがSTSの切除後すぐにサージカルマージン陽性の確認に使用できたことを支持する。サージカルマージン評価に対し、この方法の診断精度を評価する追加研究が必要である。(Sato訳)
■血管肉腫の犬104頭における同種血液製剤投与の長期術後への影響
Long-term postoperative effects of administration of allogeneic blood products in 104 dogs with hemangiosarcoma.
Vet Surg. 2018 Nov;47(8):1039-1045. doi: 10.1111/vsu.12967. Epub 2018 Sep 21.
Ciepluch BJ, Wilson-Robles HM, Pashmakova MB, Budke CM, Ellison GW, Thieman Mankin KM.
目的:犬の血管肉腫の予後に対する同種血液製剤(allogeneic blood products:ABP)投与の影響を判定する
研究計画:多施設回顧的研究
サンプル集団:病院から術後退院まで生存した血管肉腫の犬104頭の犬
方法:血管肉腫に対する手術を受けた犬の医療記録から、シグナルメント、腹腔内出血の有無、転移病巣の有無、化学療法あるいはYunnan Baiyaoを投与されていたかどうかについて再検討した。収集したデータを、術中ABPの投与を受けた犬と受けなかった犬で比較した。無症候期間をグループ間で比較した。臨床的悪化までの時間に対する一変量記述統計を得るため、カプラン-メイヤー法を使用した。潜在的予測変数の関連あるいは影響を解析するため、多変量Cox回帰モデルを使用した。
結果:輸血を受けた67頭の犬(76日;範囲、1-836日)の無症候期間(disease-free interval:DFI)中央値は輸血を受けなかった37頭の犬(120日;範囲、38-916日)よりも短かった。多変量Cox回帰モデルによると、血液製剤の投与(P=0.04)と手術時の肉眼的転移病巣の存在(P<0.01)はDFIを短縮させたが、Yunnan Baiyaoの投与はDFIを延長させた(P=0.01)。
結論:この集団において同種血液製剤投与は、無症候期間短縮と関係した。しかし、著者らは困惑させる因子のため、血液製剤とDFI短縮の関連を証明することはできなかった。
臨床意義:血管肉腫の外科的治療時にABPを投与された犬は、投与されなかった犬と比較して病気の進行を加速させているのかもしれない。(Sato訳)
■イヌの頭蓋内腫瘍に対するポータル撮影を用いた定位照射の安全性と容易性
Safety and feasibility of stereotactic radiotherapy using computed portal radiography for canine intracranial tumors
Nicholas J. Rancilio, R. Timothy Bentley, Jeannie Poulson Plantenga, Magdalena M. Parys, Beatriz G. Crespo, George E. Moore
VetRadiolUltrasound.2018;59:212?220.
定位放射線治療は頭蓋内およびそれ以外の悪性腫瘍に対する高度にコンフォーマルな治療オプションを提供する。定位放射線治療はミリメートル未満の精度で正常組織を避けアブレーションするように設計された機器を使用する。直線加速器による定位照射はコーンビームCTを利用したオンボード画像ガイダンスが組み込まれている。多くの施設ではコーンビームCTによるイメージガイダンスがないもののミリメートル未満の正確性でのコンフォーマルな治療の提供が可能である。
この回顧的研究の目的は神経疾患の犬に対する定位照射(IMRT、ポータル撮影、バイトプレート、熱可塑性粘土、マスク)の効果を示すことである。
神経疾患を持つ12頭で実施した。画像診断では全例脳腫瘍で3頭は組織学的に確定された。1日おき8Gyの3回照射が実施された。2頭で定位照射中に神経症状の悪化が認められた。神経症状の無増悪期間中央値は273日(幅16-692日)で生存期間中央値は361日(25-862日)であった。
ポータル撮影による定位照射はイヌの頭蓋内腫瘍で安全な治療オプションかもしれない。(Dr.Maru訳)
■犬の移行上皮癌細胞株におけるラパチニブの抗腫瘍効果
Anti-tumour effect of lapatinib in canine transitional cell carcinoma cell lines.
Vet Comp Oncol. 2018 Sep 23. doi: 10.1111/vco.12434. [Epub ahead of print]
Sakai K, Maeda S, Saeki K, Nakagawa T, Murakami M, Endo Y, Yonezawa T, Kadosawa T, Mori T, Nishimura R, Matsuki N.
移行上皮癌(TCC)は犬の膀胱にできる悪性腫瘍の90%以上を占め、予後不良である。RNAシーケンシングを用いた我々の過去の研究では、ヒト上皮増殖因子2(HER2)が犬のTCCの発癌に関連する上流調節因子を最も活性化させることを示した。
この研究の目的は、インビトロの犬TCC細胞株とインビボにおいてHER2のチロシンキナーゼ阻害剤であるラパチニブの抗腫瘍効果を調べることである。
5つの犬TCC細胞株(TCCUB、Love、Sora、LCTCC、MCTCC)を使用した。ウエスタンブロット法で全ての犬TCC細胞株においてHER2蛋白発現が見られたことを示した。用量依存でラパチニブはHER2のリン酸化と細胞増殖を抑制した。
フローサイトメトリーを用いた細胞周期解析では、細胞株(SoraとTCCUB)においてラパチニブは有意にsub-G1およびG0/G1期分画を増加させ、SおよびG2/M期分画を減少させたことを示した。
インビボ実験では、犬TCC細胞(Sora)をヌードマウスの皮下に注射した。接種から6日後、ラパチニブ(100mg/kg)あるいは溶媒を14日間、毎日腹腔内投与した。
溶媒コントロール群と比較してラパチニブ群の腫瘍容積は有意に小さかった。組織学的に、ラパチニブは腫瘍組織の壊死部分を有意に増加させていた。
この所見は、HER2シグナル伝達抑制と細胞周期停止を誘発することにより、犬TCC細胞に対し、ラパチニブは抗腫瘍効果を発揮することを示唆する。(Sato訳)
■交差反応するナノボディの設計によるヒトとイヌの比較腫瘍学の簡素化
Engineered cross-reacting nanobodies simplify comparative oncology between humans and dogs
Vet Comp Oncol. 2018 Mar;16(1):E202-E206. doi: 10.1111/vco.12359. Epub 2017 Oct 18.
E. Mazzega, A. de Marco
異なった動物種での相同抗原と交差反応する抗体は比較腫瘍学研究の発展に不可欠である。従来の免疫グロブリンGと比較して組み替えナノボディ(ラクダ科抗体の重鎖単一ドメイン)はin vitroで容易に単離され異なる研究や臨床応用に最適化された特性を有する様々な試薬として作成される。抗ヒト上皮成長因子受容体2(抗HER2)ナノボディをnaive llama libraryから全細胞のパンニングして回収し、Fcおよび蛍光タンパクに融合して発現させた。これらの蛍光試薬はHER2を過剰発現しているヒトとイヌの細胞およびイヌ上皮成長因子受容体2を用いた免疫蛍光によって評価した。比較腫瘍学におけるこのクラスの抗体を用うる可能性を示すとともにpre-immune nanobody libraryのin vitroにおけるパンニングの可能性を示唆する。(Dr.Maru訳)
■犬の消化管間質腫瘍の治療においてリン酸トセラニブ(パラディア)の回顧的評価
Retrospective evaluation of toceranib phosphate (PalladiaR) use in the treatment of gastrointestinal stromal tumors of dogs.
J Vet Intern Med. 2018 Oct 11. doi: 10.1111/jvim.15335. [Epub ahead of print]
Berger EP, Johannes CM, Jergens AE, Allenspach K, Powers BE, Du Y, Mochel JP, Fox LE, Musser ML.
背景:犬の消化管間質腫瘍(gastrointestinal stromal tumors:GISTs)は、珍しい腸の腫瘍である。犬のGISTsの補助療法に関する文献はあまりない。ヒトのハイリスクGISTsは補助医療でチロシンキナーゼ阻害剤に反応する。
目的:GISTsの犬でリン酸トセラニブ使用症例を検討し、潜在的生物活性の最初の評価を提供する。2つ目の目的は、予後的重要性の可能性に対し、患者と腫瘍特性を評価すること。
動物:病理組織および免疫組織化学検査を基にGISTsを確定し、トセラニブで治療した27頭の犬
方法:the American College of Veterinary Internal Medicine Oncology and Small Animal Internal Medicine listservsを用い、GISTの犬においてトセラニブを使用した症例の回顧的研究を行った。
結果:肉眼的病変のある7頭中5頭が臨床的有効を示した(71%;3頭は完全寛解、1頭は部分奏功、1頭は安定疾患)。それらのうち2頭はトセラニブ中止後も永続的反応があった。肉眼的疾患のある犬の無増悪期間(PFI)中央値は110週(範囲、36-155週)だった。顕微鏡的疾患のある犬のPFI中央値は67週(範囲、9-257週)だった。トセラニブ治療犬において、診断時の転移(P=0.04)と高い有糸分裂指数(P<0.001)は、より短いPFIと関連した。
結論と臨床意義:肉眼的疾患の犬において、トセラニブの生物活性は明らかである。トセラニブ治療犬において、診断時のGISTの転移、腫瘍の高い有糸分裂指数はより短いPFIと関連した。肉眼的および顕微鏡的GISTの犬において、術後リスクを明らかにし、トセラニブの使用を洗練するため、より大きな研究が必要である。(Sato訳)
■犬膀胱移行上皮癌に対するPDGFR-β、VEGFR2とKIT受容体の発現
Expression of receptor tyrosine kinase targets PDGFR-β, VEGFR2 and KIT in canine transitional cell carcinoma
Vet Comp Oncol. 2018;16:E117?E122.
L. Walters, O. Martin, J. Price, M. M. Sula
膀胱移行上皮癌は犬の尿路への発生が多い腫瘍である。局所浸潤があり遠隔転移率も中程度である。チロシンキナーゼ受容体は細胞増殖、分化、細胞機能の調整を促進するのに重要な役割を果たす。その抑制剤のリン酸トセラニブ は移行上皮癌の治療に経験的に使用されている。
本研究の目的は正常膀胱、移行上皮癌、膀胱炎から得られたサンプルに対してトセラニブ のターゲットであるVEGFR2、PDGFR-β、幹細胞因子受容体(KIT)の発現を評価することである。
PDGFR-βについては膀胱炎と正常膀胱と比べて移行上皮癌で有意にPDGFR-βが上昇していた(P<0.0001)。全ての腫瘍細胞はPDGFR-β陽性であったが強度スコアや染色分布において腫瘍、膀胱炎、正常膀胱で差は認められなかった。腫瘍におけるKITの陽性は少なかった。
この研究から移行上皮癌に対するリン酸トセラニブ臨床反応評価にはさらなる検討が必要である。 (Dr.Maru訳)
■犬403頭と猫73頭の口腔内のバイオプシーによる病理組織診断
Histopathologic Diagnoses From Biopsies of the Oral Cavity in 403 Dogs and 73 Cats.
Language: English
J Vet Dent. March 2018;35(1):7-17.
Kipp Wingo
この回顧的研究は、獣医歯科および口腔外科の専門診療内で、いろいろな病理組織診断の有病率を述べる。
犬403頭と猫73頭の口腔病変からバイオプシーで入手した病理組織検査結果を分類し、カテゴリーに分けた。猫において炎症がもととなった病変(n=37;51%)は、最も多い病理組織検査結果で、扁平上皮癌が続いた(n=27;37%)。犬では悪性腫瘍(n=151;37%)が最も多く、続いて歯原性腫瘍(n=138;34%)、炎症がもととなった病変(n=114;28%)だった。
この研究結果は、個人歯科専門病院を代表するものであり、犬と猫の一般的な口腔腫瘍診断を評価する他の研究に匹敵する。一般的な犬と猫の腫瘍の治療オプションと予後は議論されている。(Sato訳)
■メトロノーミック化学療法の追加はイヌの脾臓血管肉腫の予後を改善しない
The addition of metronomic chemotherapy does not improve outcome for canine splenic haemangiosarcoma
J Small Anim Pract. 2018 Sep 12. doi: 10.1111/jsap.12926
Alexander CK, Cronin KL, Silver M, Gardner HL, London C
【目的】 脾臓摘出術と最大耐用量の補助化学療法を受けたイヌの脾臓血管肉腫に、メトロノーミック化学療法を加えることで、予後を改善するかどうかを評価すること
【方法】 脾臓摘出術と術後アントラサイクリン系化学療法を行ったイヌの脾臓血管肉腫について、診療記録を回顧的に検討した。 39頭のイヌに脾臓摘出術を実施し、続いてアントラサイクリン、シクロホスファミド、またはその両方で最大耐用量の化学療法を行った(Group 1) 。22頭のイヌに脾臓摘出術を行い、続いてアントラサイクリン、シクロホスファミド、またはその両方と、更にメトロノーム化学療法を加えて用いた最大耐用量の補助化学療法を行った(Group 2)。 両群のイヌを、最大耐用量のアントラサイクリンまたは最大耐用量アントラサイクリンおよびシクロホスファミドのいずれかで処置した群にさらに分けた。
【結果】 Group 1の無増悪生存期間の中央値は165日であり、全生存期間の中央値は180日であった。Group 2の無増悪生存期間中央値は185日であり、全生存期間中央値は212日であった。両方の群において、最大耐用量のシクロホスファミドを投与されたイヌでは全生存期間が短かった。
【臨床的重要性】 最大耐用量化学療法プロトコルにメトロノーミック治療を加えても、脾臓切除術および最大耐用量化学療法のみを実施した脾臓の血管肉腫のイヌの予後は改善しないようである。(Dr.Masa訳)
最近、メトロノーミック化学療法の有害事象や効果について、ネガティブデータが増えてきているように思います。Arata M et al., JAAHA, 2017でも同様に脾臓血管肉腫の標準治療後のメトロノーミック化学療法は有用性が認められていません。イタリアのグループのFinotello R et la., Vet Comp Onco, 2017では有用性が報告されていますが、脾臓以外の血管肉腫が組み入れされていたり、本報告やArata M et al., JAAHA, 2017と違い、サリドマイドの使用率が高いなどの違いがあります。
■切除不能、転移性もしくは再発性のイヌの褐色細胞腫に対するリン酸トセラニブ(PalladiaR)使用による治療の回顧的評価:5例のイヌ(2014-2017)
Retrospective evaluation of toceranib phosphate(PalladiaR)use in the treatment of inoperable, metastatic, or recurrent canine pheochromocytomas: 5 dogs(2014?2017)
BMC Vet Res. 2018 Sep 3;14(1):272. doi: 10.1186/s12917-018-1597-7.
Harding K, Bergman N, Smith A, Lindley S, Szivek A, Milner R, Brawner W, Lejeune A.
【背景】 切除不能な、転移性または再発性のイヌの褐色細胞腫に対する有効な治療の選択肢は不足している。ヒトでは褐色細胞腫の発症を促進する特定の生殖系列突然変異が存在している。低分子阻害剤によるこれらの異常の薬理学的遮断は効果的な治療戦略である。同様の突然変異がイヌでも存在する可能性があり、同様の低分子阻害剤による治療は、生存においてアドバンテージになる可能性がある。この研究の目的は、切除不能な、転移性または再発性のイヌの褐色細胞腫の治療におけるリン酸トセラニブの役割を評価することである。
【結果】 リン酸トセラニブに対する反応および全体的な予後についての情報を検討する為に、褐色細胞腫の診断がされているか、もしくは褐色細胞腫であることが疑われているイヌの医療記録を評価した。 組み入れ基準に合致する5例のイヌが確認された。 5例全てで臨床的な有用性が認められた(部分奏功:1例、維持病変:4例)。 部分奏功が認められたイヌの無増悪期間(PFI)は61週間であった。 維持病変の測定可能な病変がある2例のイヌのPFIは、36週間および28週間であった。 維持病変の転移性疾患を有する2例のイヌにおけるPFIは、少なくとも11週間および18週間であった。
【結論】 この限られたシリーズのイヌに基づいた結果は、原発性および転移性褐色細胞腫を有するイヌにおいて、トセラニブが生物学的活性を有し得ることを示唆している。 肉眼的、顕微鏡的および転移性褐色細胞腫を有するイヌへのトセラニブの使用および反応性を明らかにするには、より大きな研究が必要である。 (Dr.Masa訳)
■注射部位誘発肉腫細胞のカルボプラチン感受性
In vitro chemosensitivity of feline injection site-associated sarcoma cell lines to carboplatin
Elizabeth A. Maxwell, Heidi Phillips, David J. Schaeffer, Timothy M. Fan
Veterinary Surgery. 2018;47:219?226.
目的:カルボプラチン含有硫酸カルシウム半水和物(CI-CSH)ビーズの溶出によって生成されたカルボプラチン濃度に対する猫注射部位誘発肉腫(FISAS)細胞のin vitro化学療法感受性を決定する。
デザイン:In vitro研究
サンプル:FISASと組織学的に確定された細胞株5つ
方法:細胞株ごとに1つの96マイクロウェルをそれぞれの時間経過(24, 48, 72時間)で使用した。それぞれのマイクロプレートに- 7.5×10^3/ウェルの細胞を入れ、カルボプラチンを5?450μM添加した。プレートは24, 48, 72時間培養した。有効性は生物還元蛍光アッセイを用いた。アポトーシスの評価には- 5×10^4/ウェルの細胞を3ウェルに入れてカルボプラチン(5-450μM)を添加して評価した。生存、アポトーシス、後期アプトーシス/ネクローシス細胞をフローサイトメトリーにて評価した。全実験は3回実施した。
結果:カルボプラチンは容量依存性で時間依存性があった。IC50はCI-CSHビーズの溶出濃度幅内にあった。
結論:CI-CSHビーズから溶出されるカルボプラチン濃度は50%成長抑制の濃度条件を満たしていた。原発腫瘍切除後もしくは切除せずのCI-CSHビーズ移植で直ちに局所腫瘍制御が可能かもしれない。(Dr.Maru訳)
■6頭の猫における急性リンパ芽球性白血病の臨床および臨床病理の特徴
Clinical and clinicopathological characteristics of acute lymphoblastic leukaemia in six cats.
J Small Anim Pract. 2018 Aug 31. doi: 10.1111/jsap.12917. [Epub ahead of print]
Tomiyasu H, Doi A, Chambers JK, Goto-Koshino Y, Ohmi A, Ohno K, Tsujimoto H.
目的:犬の同様の状況に対する近年の診断基準により診断した猫急性リンパ芽球性白血病の症例の臨床的特徴を調べる。
素材と方法:急性リンパ芽球性白血病と診断された6頭の猫の医療記録から、臨床病理の特徴と結果に対するデータを得るために調査した。腫瘍細胞のリンパ由来を抗原レセプター遺伝子再配列に対するPCR、フローサイトメトリー、免疫組織化学検査で確認した。
結果:元気消失や食欲不振のような非特異的な臨床症状は一般的で、貧血と血小板減少もよく認められた。4頭に白血球増加、2頭に白血球減少を認めた;末梢血サンプル中のリンパ芽球の数は症例により様々だった。リンパ芽球は4頭がB細胞系、1頭がT細胞系由来で、他の猫はB細胞マーカーCD21およびT細胞マーカー共に陽性だった。6頭の猫のうち5頭は細胞毒性化学療法で治療し、2頭で部分奏功が得られた。生存期間中央値は55日(範囲:1-115日)だった。
臨床意義:末梢血にリンパ芽球が見られた場合、それが少数であっても急性リンパ芽球性白血病を考慮すべきである。急性リンパ芽球性白血病の猫の予後は犬と同様に不良で、今後有効な治療を開発する研究が必要である。(Sato訳)
■犬血管肉腫細胞におけるドキソルビシンとtetrathiomolybdateのin vitroでの効果
In vitro effects of doxorubicin and tetrathiomolybdate on canine hemangiosarcoma cells
Caroline Q. Sloan, Carlos O. Rodriguez Jr
Am J Vet Res 2018;79:219?225
目的
犬血管肉腫細胞に対するドキソルビシンとtetrathiomolybdate (TM)のin vitroの有効性評価
サンプル
犬血管肉腫から分離したDEN-HSAを培養
方法
TM (0 to 1.5μM)、doxorubicin (0 to 5μM)の単独もしくは両者併用でなおかつアスコルビン酸(750μM)の併用の有無で細胞を培養した。細胞障害の程度は比色アッセイで測定した。長期間の増殖抑制は10日コロニー形成アッセイで評価した。アポトーシス誘導はカスパーゼ3と7活性の蛍光定量評価し反応性酸素種(ROS)形成も蛍光光度法で検出した。
結果
TMとドキソルビシンの組み合わせはそれぞれ単独と比べて増殖と生存率において著しく低下した。ROS形成とアポトーシスもこの組み合わせで著しく増加した。アスコルビン酸はTM誘導ROS形成とアポトーシスを抑制した。
結論と臨床意義
ドキソルビシンとTMの組み合わせはDEN-HSA細胞において細胞障害効果増強が示唆された。このことから犬血管肉腫において臨床試験の根拠となる。(Dr.Maru訳)
■スイス犬の皮膚腫瘍:スイス犬がん登録のデータから、2008-2013
Cutaneous Tumors in Swiss Dogs: Retrospective Data From the Swiss Canine Cancer Registry, 2008-2013.
Vet Pathol. 2018 Aug 21:300985818789466. doi: 10.1177/0300985818789466. [Epub ahead of print]
Graf R, Pospischil A, Guscetti F, Meier D, Welle M, Dettwiler M.
正確な集団データの状況を評価するため、広範囲で貴重な情報からなる動物がん登録からデータを収集した。
著者らは、2008-2013年の間にスイス犬がん登録で集めた11740件の犬皮膚腫瘍を評価した(犬種、性別、年齢、解剖学的部位)。スイス犬集団における、それらの発生率(IR)/100000頭/年を公定及び義務のスイス犬登録データベースANISからのデータを基に算出した。
最も一般的な腫瘍のタイプは、肥満細胞腫(16.35%;IR、60.3)、脂肪腫(12.47%;IR、46.0)、毛包腫瘍(12.34%;IR、45.5)、組織球腫(12.10%;IR、44.6)、軟部組織肉腫(10.86%;IR、40.1)、メラニン細胞の腫瘍(8.63%;IR、31.8)>1000腫瘍/種類だった。
227の登録犬種にわたる全腫瘍タイプの平均IRは372.2だった。最も高い腫瘍発生は、ジャイアント・シュナウザー(IR、1616.3)、スタンダード・シュナウザー(IR、1545.4)、マジャール・ビスラ(IR、1534.6)、ローデシアン・リッジバック(IR,1445.0)、Nova Scotia Duck Tolling Retriever(IR、1351.7)、ボクサー(IR、1350.0)だった。雑種犬(IR、979.4)は全ての犬種の平均と比較すると、IRが増えていた。ほとんどの腫瘍タイプに対する過去に報告された犬種素因を確認した。それにもかかわらず、そのデータはまた、Nova Scotia Duck Tolling Retrieverにおける肥満細胞腫とメラニン細胞の腫瘍に対するIRの増加、フラット・コーテッド・レトリバーにおける組織球腫に対するIRの増加を示した。
この研究の結果、犬種の健康の改善のための交配に対する純血種犬を選択する時に考慮できる。(Sato訳)
■犬の可移植性性器肉腫に対する組み替え型ヒトインターフェロンα-2aの腫瘍内投与とビンクリスチンの併用療法
Intratumoral recombinant human interferon alpha-2a and vincristine combination therapy in canine transmissible venereal tumour.
Vet Med Sci. 2018 Aug 17. doi: 10.1002/vms3.119. [Epub ahead of print]
Kanca H, Tez G, Bal K, Ozen D, Alcigir E, Atalay Vural S.
犬の可移植性性器肉腫(CTVT)は犬の自然発生の接触感染性腫瘍で、主に両性別の外生殖器にできる。最も効果的で実践的治療のビンクリスチン化学療法は、ホストの免疫状態に影響を受ける。
目的は、CTVTの治療に対し、組み替え型ヒトインターフェロンα-2a(rhIFNα-2a)とビンクリスチンの併用療法を調査することだった。合計21頭のメス犬で調査した。
グループI(n=9)は、ビンクリスチン(0.025mg/kg、IV)を週1回投与した。グループII(n=6)は腫瘍内に150万IUのrhINFα-2aを毎週注射した。グループIII(n=6)はrhINFα-2aとビンクリスチンを併用した。
グループIIにおいてrhINFα-2aを3回注射後にも腫瘍退行を認めず、毎週ビンクリスチンを投与した。
続いて、切開性の腫瘍バイオプシーにおいて腫瘍浸潤リンパ球(tumor infiltrating lymphocytes:TILs)、有糸分裂像、アポトーシス細胞を計数した。結果として完全な腫瘍体高を用いた生存性をカプラン-マイヤー法で分析し、生存曲線の比較にBreslow Testを使用した。グループ間のTILs、細胞増殖、アポトーシスの差は、共分散分析で評価した。
研究した全ての犬で完全退行が認められた。完全退行までのビンクリスチン投与の平均期間は、グループI(5.11週、95%CI、4.42-5.80)と比較し、グループII(3.50週、95%CI、3.06-3.94、P<0.05)とグループIII(3.17週、95%CI、2.84-3.49、P<0.01)でより短かった。ビンクリスチンとrhINFα-2a併用は、ビンクリスチン(P=0.017)およびrhINFα-2a後のビンクリスチン(P=0.049)治療よりもCTVTバイオプシーにおけるTILsを増加させた。rhINFα-2a後のビンクリスチン投与(グループII;P<0.001)およびrhINFα-2aとビンクリスチン併用(グループIII;P<0.001)はアポトーシスを減少させた。
これらの結果は、rhINFα-2aの腫瘍内投与単独では、CTVTに効果がないことを示す。しかし、rhINFα-2aとビンクリスチンの併用は、ビンクリスチン治療と比較して治療期間を短縮させる。(Sato訳)
■メルケル細胞癌の猫20頭の臨床的特徴と予後
Clinical features and outcomes of Merkel cell carcinoma in 20 cats.
Vet Comp Oncol. 2018 Jul 18. doi: 10.1111/vco.12414. [Epub ahead of print]
Sumi A, Chambers JK, Doi M, Kudo T, Omachi T, Uchida K.
20頭の猫のメルケル細胞癌(Merkel cell carcinoma:MCC)の生物学的挙動と予後因子を研究した。
この腫瘍は外科的に切除し、病理組織学的検査を行った。猫の年齢は8-20歳(中央値:14歳)で、腫瘍は主に頸部、頭部に存在した。
フォローアップのデータは17頭で入手でき、12頭は術後1年以内に死亡した。切除後の総生存期間中央値は243日(範囲16-360日)だった。11頭が再発したが、そのうち6頭(60%)はマージン(-)だったことが分かった。10頭は術後に転移の可能性があったが、そのうち6頭(60%)はマージン(-)だったことが分かった。
MCCの病理組織学的特徴は、16頭(80%)で腫瘍壊死、6頭(38%)で脈管浸潤、高い分裂数(高倍率視野で中央値28.5)が見られた。9頭(60%)には、腫瘍に隣接した不規則な表皮肥厚が見られた。
免疫組織化学的に、全ての症例で腫瘍細胞はサイトケラチン(CK)20およびp63、19頭(95%)でシナプトフィジン、16頭(80%)でCK18に陽性だった。
この研究は、猫のMCCは予後不良で、局所再発、所属リンパ節転移、遠位拡散の強い傾向を持つことを示す。(Sato訳)
■犬と猫の同時発生内分泌腫瘍:回顧的研究(2004-2014)
Concurrent endocrine neoplasias in dogs and cats: a retrospective study (2004-2014).
Vet Rec. 2018 Mar 17;182(11):323. doi: 10.1136/vr.104199. Epub 2018 Jan 19.
Beatrice L, Boretti FS, Sieber-Ruckstuhl NS, Mueller C, Kummerle-Fraune C, Hilbe M, Grest P, Reusch CE.
複数の内分布腫瘍(multiple endocrine neoplasia:MEN)は、人医でよく知られた症候群だが、犬と猫において報告されている内分泌腫瘍の同時発生は小数例しかない。
この研究の目的は、著者らの病院で犬と猫の内分泌腫瘍の同時発生の有病率を評価することと、潜在的な品種と性別素因を確認すること、ヒトのMEN症候群に似ているか調査することだった。
2004年から2014年の間にチューリッヒ大学小動物内科の病院で、死亡または安楽死した犬951頭と猫1155頭の剖検報告を再調査し、少なくとも2つ以上の内分泌腫瘍および/あるいは過形成がある動物を調査した。
犬20頭と猫15頭が組み込み基準に合った。犬では副腎が最も一般に侵されていた。副腎を侵す複数の腫瘍と副腎腺腫を伴うそれらの腫瘍の関わりが最も一般的な腫瘍の組み合わせだった。1頭の犬のみが、ヒトMENタイプ1症候群(下垂体腺腫とインスリノーマ)に似ている組み合わせだった。猫では甲状腺が最も侵され、ヒトMEN症候群と類似はなかった。
同時発生内分泌腫瘍の有病率は、犬で2.1%、猫で1.3%となり、これらの動物種でMEN様症候群は非常にまれである。(Sato訳)
■内視鏡によるバイオプシーサンプルの病理検査で診断された胃癌、異形成、形成異常に関係する犬種
Canine breeds associated with gastric carcinoma, metaplasia and dysplasia diagnosed by histopathology of endoscopic biopsy samples.
Acta Vet Scand. 2018 Jun 18;60(1):37. doi: 10.1186/s13028-018-0392-6.
Candido MV, Syrja P, Kilpinen S, Spillmann T.
犬の胃癌(GC)は、むしろまれな病理所見だが、素因が見られる犬種もいる。犬の原因病理は主に不明だが、ヒトのGCでは、胃粘膜異形成や形成異常から発症することも多い。この研究は、確実な犬種の犬が胃十二指腸内視鏡検査(GDS)の対象になることがより多いかどうか、GC、粘膜異形成、形成異常と診断されることが多いかどうかを調査する。
フィンランド、ヘルシンキ大学、獣医教育病院で回顧的臨床データベース検索を実施した。異形成/形成異常およびGCに対する相対危険度を評価するため、以下の組み入れ基準を適用した。
結果:2006年から2016年の間、受診した犬の合計54945頭から、423頭がGDSを行っていた。20種の異なる純血種の180頭の犬が組み入れ基準に合った。8頭の犬にGCsがあった(平均年齢9.8±1.7歳):ベルジャン・タービュレン(n=4)、コリー(n=2)、ゴールデンレトリバー(n=1)、ジャックラッセルテリア(n=1)。8犬種の14頭に胃粘膜異形成あるいは形成異常があった。
この集団でlog-binomial統計モデルによると、以下の犬種は他の犬種よりGDSを行う可能性が有意に高かった:オーストラリアンテリア、ベルジャン・タービュレン、ケアンテリア、コリー、シベリアンハスキー。ベルジャン・タービュレンは他の犬種と比較した時、GC[RR?=?19 (5.7-63.9; P?<?0.0001)]や粘膜異形成/形成異常[RR (7.6; 2.95-19.58; P?<?0.0001)]と診断されるリスクがより高いことが分かった。シェットランドシープドッグは異形成に対しRR(5.83; 1.75-19.45; P?=?0.0041)が上昇していた。
結論:それらの結果から、犬においてGCの発生率は非常に低いことが示される。しかし、ベルジャン・タービュレンは素因があると思われる。異形成や形成異常などの粘膜変化の病理組織学的記述も珍しいが、ベルジャン・タービュレンの頻度はより多かった。犬におけるそれらの変化の過去の報告は、非常に少ないが、それらがヒトでそうであるようにおそらく犬でもGCに関与しているのかもしれない。犬のGCの発症に対する異形成や形成異常の潜在的役割を、特に素因がある犬種で今後調査すべきである。(Sato訳)
■犬の肛門嚢腺癌の病理組織学的予後意義:39症例の回顧的研究の予備的結果
Prognostic significance of histopathology in canine anal sac gland adenocarcinomas: Preliminary results in a retrospective study of 39 cases.
Vet Comp Oncol. 2018 Jul 1. doi: 10.1111/vco.12410. [Epub ahead of print]
Pradel J, Berlato D, Dobromylskyj M, Rasotto R.
犬の肛門嚢腺癌(anal sac gland adenocarcinomas:ASGACs)の転移率と生存期間は、研究により様々で、予測を難しくしている。ASGACsの病理組織の予後的意義についてはあまり分かっていない。
この回顧的研究は、39頭のASGACsに対する組織学的特徴と、臨床症状および結果に関して調査した。
ほとんどの腫瘍は不完全切除(62%)で、中程度から顕著な周辺への浸潤が見られた(74%)。主な成長パターンは、充実、細管/ロゼット/偽ロゼットおよび乳頭がそれぞれ49%、46%、5%の症例で見られた。核多形性は中程度(77%)あるいは軽度(23%)だった。壊死とリンパ管侵入は54%と10%の症例に見られた。
有糸分裂数と壊死を除いた全ての組織学的特徴は、その時点での節転移に関係した。腫瘍と、充実性成長パターン、中程度あるいは顕著な周辺浸潤、壊死およびリンパ管侵入について統計学的に意義が乏しい結果を確認した。
それらの結果はより大きいコホートでの確認が必要である。(Sato訳)
■メトロノームシクロフォスファミド、ピロキシカム、サリドマイドで治療した進行性原発性肺癌の犬の生存解析
Survival analysis of dogs with advanced primary lung carcinoma treated by metronomic cyclophosphamide, piroxicam and thalidomide.
Vet Comp Oncol. 2018 Mar 6. doi: 10.1111/vco.12393. [Epub ahead of print]
Polton G, Finotello R, Sabattini S, Rossi F, Laganga P, Vasconi ME, Barbanera A, Stiborova K, Rohrer Bley C, Marconato L.
切除不能あるいは転移性(進行性)原発性肺癌(primary pulmonary carcinoma:PPC)は外科手術が禁忌で治療が難しく、最大耐量(maximum-tolerated dose:MTD)化学療法の治療的役割は不確かなままである。
この研究は進行性PPCの犬へのメトロノーム化学療法(metronomic chemotherapy:MC)の影響を探究するため行った。
過去に治療していない進行性(T3あるいはN1あるいはM1)PPCの犬で、完全なステージング作業及び追跡調査データがあり、MC(低用量シクロフォスファミド、ピロキシカム、サリドマイドから成る)、外科手術、MTD化学療法による治療あるいは腫瘍学的治療なしの犬を組み込んだ。
全ての患者に対し、無増悪期間(TTP)および生存期間(ST)を評価した。MCを受けている患者でQOLのみ評価した。QOLを評価するため、治療前と治療中にアンケートに答えてもらった。
91頭の犬が含まれた:25頭はMCを受け、36頭は手術で治療し、11頭はMTD化学療法を受け、19頭は無治療だった。MCを受けていた犬のQOLは改善した。MCを受けていた犬(172日)のTTP中央値は、手術(87日)、MTD化学療法(22日)、腫瘍学的治療なし(20日)よりも有意に長かった。MCを受けていた犬(139日)のST中央値は手術(92日)、MTD化学療法(61日)、腫瘍学的治療なし(60日)よりも同様に長かった。
進行性PPCの犬において、MCは重要なリスクあるいは毒性もなくある程度の臨床的利益を達成した。これはMCが他の認知されている管理アプローチの可能性のある代替法であることを示す。(Sato訳)
■シスプラチン使用犬膀胱腫瘍でタボセプトによる利尿時間と量の低減効果評価
Clinical Evaluation of Tavocept to Decrease Diuresis Time and Volume in Dogs with Bladder Cancer Receiving Cisplatin
C.J. Henry , B.K. Flesner, S.A. Bechtel, J.N. Bryan, D.J. Tate, K.A. Selting, J.C. Lattimer, M.E. Bryan, L. Grubb, and F. Hausheer
J Vet Intern Med 2018;32:370?376
背景:膀胱移行上皮癌は犬の膀胱腫瘍で最も多い。シスプラチンとピロキシカムの組み合わせは効果的であるが腎毒性が高い。タボセプトはシスプラチンの毒性を軽減する化学保護剤で人の臨床試験で点滴利尿必要量を減らすことができた。
仮説・目的:タボセプトは利尿必要量・点滴時間を減らし膀胱腫瘍の犬に対するシスプラチンとピロキシカムの投与が安全になるであろうと仮説を立てた。またタボセプトを使わなかった従来の治療群と生存率を比較することを第二の目的とした。
動物:家庭飼育14頭の前向き試験
方法:0、42、84日にCTにて腫瘍体積を計測した。タボセプトとシスプラチンの組み合わせでは短時間利尿プロトコールを採用した。4種類の投与方法が計画されピロキシカムも同時に使用した。一連の生化学検査では高窒素血症を評価した。
結果:全例で90分点滴利尿を実施した。3頭(21%)でクレアチニンの上昇(2.0mg/dL以上)とBUNの上昇(42mg/dL以上)でうち2頭は等張尿であった。この発生率はタボセプトを使用していなかった従来の治療群と比べて有意に腎毒性が少なかった(p=0.0406)。全反応率は27%で生存期間中央値はこれまでの治療群と同様であった(253日と246日)。
結論:タボセプトにより利尿時間は6時間以上から90分に短縮され高窒素血症の発生も低下した。
生存期間は従来の治療群と類似していたが反応率は劣っていた。白金製剤に感受性のある他の腫瘍での評価が必要である。(Dr.Taku訳)
■経口ロムスチンで治療した推定的頭蓋内神経膠腫の犬の生存期間:比較回顧的研究(2008-2017)
Survival times in dogs with presumptive intracranial gliomas treated with oral lomustine: A comparative retrospective study (2008-2017).
Vet Comp Oncol. 2018 May 24. doi: 10.1111/vco.12401. [Epub ahead of print]
Moirano SJ, Dewey CW, Wright KZ, Cohen PW.
頭蓋内グリオーマは犬の一般的な悪性腫瘍で、その侵略的特性と臨床的に有効な治療がないために予後不良である。犬の脳腫瘍に対する種々の治療様式の効果は述べられているが、細胞毒性化学療法の使用に関するデータはほとんどない。
2008年から2017年の間で、アメリカ北東部の動物病院5施設からの40症例を含む比較回顧的研究を実施した。
この研究で、総生存期間と予後の重要性に関係する解析した変数は、年齢、性別、臨床症状、臨床症状の持続期間、腫瘍の位置、使用した治療プロトコールだった。
頭蓋内グリオーマが推定される犬で、ロムスチン化学療法で治療した犬(中央値、138日)は、独占的に支持療法で治療した犬(中央値、35日;P=0.0026 log-rank、0.0138 Wilcoxon)よりも長く生存した。また、診断の16日以上前から臨床症状が持続していること(中央値、109日)は、16日未満(中央値、25日:P=0.0100 log-rank、0.0322 Wilcoxon)よりも長く生存した。
ロムスチンの関係する副作用は、46%の犬で好中球減少、15%の犬で貧血、15%の犬で血小板減少だった。BUNおよび/あるいはクレアチニンとALT値の上昇を基にした潜在的腎および肝毒性はそれぞれ15%、50%の犬で報告された。
この研究は、ロムスチンが頭蓋内グリオーマの犬において生存期間延長に効果的で、可能性のある治療オプションとして考慮すべきであるというエビデンスを提供する。ロムスチン関連の毒性はまず一般的であるが、命にかかわることはまれで、あまり治療の中止という結果にはならない。(Sato訳)
■犬の前立腺癌を内科的に治療した時の結果と予後因子:多施設研究
Outcome and prognostic factors in medically treated canine prostatic carcinomas: A multi-institutional study.
Vet Comp Oncol. 2018 May 27. doi: 10.1111/vco.12400. [Epub ahead of print]
Ravicini S, Baines SJ, Taylor A, Amores-Fuster I, Mason SL, Treggiari E.
犬の前立腺癌(prostatic carcinoma:PC)の内科治療を述べている文献はあまりない。
この研究の目的は、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)および/あるいは化学療法で治療した犬PCの無増悪期間(time to progression:TTP)と生存期間中央値(median survival time:MST)などの結果を評価し、予後因子を確定することだった。
8施設の記録から、膀胱の関与がなく細胞学的あるいは組織学的にPCが確認された犬を検索した:67頭の犬が含まれた。その時の症状は、泌尿(25)、消化管((GI),11)、全身性(3)だった;16頭の犬はGIと泌尿器症状、7頭は全身症状とGIあるいは泌尿器症状の併発、5頭の犬の腫瘍は偶発的に見つかった。27頭中9頭(33%)は尿培養陽性だった。転移は26頭のリンパ節(19)、肺(10)、骨(2)、肝臓(1)に確認された。
治療はNSAIDsと化学療法(32)、NSAIDsのみ(31)および化学療法のみ(4)だった。
全体のMSTは82日(範囲9-752)、TTP中央値は63日(範囲9-752)だった。NSAIDsと化学療法を組み合わせた犬は、NSAIDs単独で治療した犬と比べ、有意に長いMST(106 vs 51日;P=0.035)とTTP(76 vs 44日;P=0.02)だった。
未去勢の犬と転移疾患のある犬は、有意に短いMSTだった(31 vs 90日、P=0.018と49 vs 109日、P=0.037);また未去勢の犬は有意に短いTTP(25 vs 63日、P=0.0003)だった。
この研究は、NSAIDsと化学療法の組み合わせが、犬PCの結果を改善するかもしれないと示唆する。転移疾患と未去勢は予後に負の影響を及した。(Sato訳)
■犬皮膚形質細胞腫の血管内腫瘍細胞
Intravascular neoplastic cells in canine cutaneous plasmacytomas
Gordon Ehrensing, Linden E. Craig
Journal of Veterinary Diagnostic Investigation 2018, Vol. 30(2) 329?332
2009年から2012年の間にthe University of Tennessee surgical biopsy serviceに提出された125頭134検体の皮膚形質細胞腫について血管内腫瘍細胞の存在が予後に影響を与えるか評価した。腫瘍は中高齢犬(幅5-16歳、平均9.6歳)で頭部と肢端に多く発生していた。診断は光学顕微鏡でなされいくつかの例ではMUM1免疫染色がなされた。検査したスライド内の血管内腫瘍細胞の有無で腫瘍を分類した。腫瘍細胞が血管内にあるかどうか3頭では第8因子関連抗原をもちいて血管内皮を特定した。
血管腔内の腫瘍細胞は125頭中20頭(16%)で特定された。局所再発や他の部位の形質細胞腫瘍発生について紹介動物病院に確認し99頭(79%)で情報が得られた。再発は1頭の2カ所で認められ、両腫瘤とも不完全切除で血管内腫瘍細胞が認められた。のちに他部位への形質細胞腫瘍の発生は3頭でみられたが血管内腫瘍細胞はいずれも認められていなかった。皮膚形質細胞腫では死因や安楽死の理由になるとは考えられなかった。血管内腫瘍細胞は肢端(36%)が他の部位(11%)よりも有意に多く発生した(p=0.0007)。血管内腫瘍細胞の存在は皮膚形質細胞腫の予後に影響を与えなかった。(Dr.Maru訳)
■プロラクチン産生腺腫の犬の一例
Prolactinoma in a Dog.
Language: English
Vet Pathol. November 2017;54(6):972-976.
Cristina Cosio , Elena Sartori , Marcello Garatti , Lorenzo Luccardini , G C M Grinwis , Hans S Kooistra , Federico Fracassi
12歳のオスのヨークシャーテリアが食欲低下で来院した。身体検査で乳腺の腫脹と乳汁漏出が見られた。頭部の造影CT検査で下垂体腫瘍と思われる下垂体の拡大が示された。血清プロラクチン濃度は顕著の上昇していた。
ドパミン作用薬カベルゴリンで治療を開始してから1週間後、血清プロラクチン濃度は正常化し、乳汁漏出は解消した。カベルゴリンは約4か月継続し、その後中止した。
その後血清プロラクチン濃度は再度上昇し、乳腺の腫脹と乳汁漏出が再発した。その犬は下垂体疾患に直接関係のない問題で、乳汁漏出が最初に見られたときから10か月後に安楽死を受けた。
剖検でプロラクチンに対する免疫標識のある下垂体の浸潤性腺腫が明らかとなった。このオスの一例の臨床および病理組織所見から、機能的プロラクチン産生腺腫の診断が示された。(Sato訳)
■頸動脈傍神経節腫に対する集学的治療としてのVMAT定位体幹照射を行った犬の1例
VMAT Stereotactic Body Radiation Therapy in a Multimodal Approach to a Carotid Paraganglioma in a Dog
Mario Dolera, DVM, PhD, Nancy Carrara, DVM, Luca Malfassi, DVM
(J Am Anim Hosp Assoc 2018; 54:111?116. DOI 10.5326/JAAHA-MS-6389)
ピットブル、メス、7歳が左頸部の軟部組織性の腫れで来院した。身体検査、血液検査で異常は認められなかった。CTとMRIにて境界明瞭な卵形の孤立腫瘤が左頸部背側にあり総頚動脈に連続し、頸動脈傍神経節腫であった。腫瘤は切除された。補助療法としてフレームレス定位体幹体積変調回転照射が行われた。
照射後、全身化学療法としてカルボプラチン が開始された。最初のフォローアップでは急性のグレード1の皮膚炎とグレード1の左咽頭粘膜炎が認められた。1年後、放射線晩発障害や再発は認められなかった。化学療法に伴いグレード1の血小板減少が観察された。この報告は頸動脈傍神経節腫に対して集学的治療(切除、照射、化学療法)を行なった初めての報告である。切除後の定位体幹体積変調回転照射は優れており、副作用はわずかであった。(Dr.Maru訳)
■下顎、橈骨、脛骨に腫瘍がある犬の患者特製多孔性チタン製内部人工器官の臨床結果:12症例(2013-2016)
Clinical outcomes of patient-specific porous titanium endoprostheses in dogs with tumors of the mandible, radius, or tibia: 12 cases (2013-2016).
Language: English
J Am Vet Med Assoc. September 2017;251(5):566-579.
Jonathan P Bray, Andrew Kersley, Warwick Downing, Katherine R Crosse, Andrew J. Worth, Arthur K House, Guy Yates, Alastair R Coomer, Ian W M Brown
目的:下顎、橈骨、脛骨の腫瘍がある犬で、骨格構造の機能性置換を提供するカスタムデザインの患者特製インプラントに関係するプロセスとそれによる結果の特徴を述べる
計画:前向きケースシリーズ
動物:2013年6月から2016年9月の間に3カ所の紹介施設で治療を受けた下顎腫瘍の犬6頭、橈骨遠位の腫瘍5頭、脛骨遠位の腫瘍1頭
方法:腫瘍のステージングの後、CTスキャンから様々なコンピューターによるデザインアプリケーションでインプラントを設計し、チタン-6アルミニウム-4バナジウム合金の選択的レーザー溶解でプリントした。計画通り実施した各骨切を確実にするため、カッティングジグを熱可塑性樹脂で作成した。骨切術後、インプラントを適したサイズと長さのスクリューで欠損部に固定した。
結果:正常な臨床的機能への初期の回復は、12頭中11頭で良好から優良だった。しかし、メジャーな合併症で5頭の肢のインプラントの修正あるいは断脚が必要となり、それら合併症の少なくとも3つは、欠陥のあるインプラントのデザインあるいは製造の結果と考えられた。2頭の犬に感染が起こり、1頭は治療に成功した。最も長く生存した犬は、2年間良好な肢の機能を維持した。
結論と臨床関連:これはカスタム3-D-プリントチタンインプラントで治療した犬の最大規模のシリーズ報告である。3-Dプリントは複雑な患者特製3-Dの外形の作成を可能にし、多くの解剖学的部位を侵す骨癌の機能温存治療を可能にする。(Sato訳)
■犬髄膜腫における定位体積変調回転照射:画像と神経検査による治療評価
Stereotactic Volume Modulated Arc Radiotherapy in Canine Meningiomas: Imaging-Based and Clinical Neurological Posttreatment Evaluation
Mario Dolera, DVM, PhD, Luca Malfassi, DVM, Simone Pavesi, RVT, Silvia Marcarini, DVM, Massimo Sala, DVM, Giovanni Mazza, DVM, Nancy Carrara, DVM, Sara Finesso, DVM, Gaetano Urso, QMP
(J Am Anim Hosp Assoc 2018; 54:77?84. DOI 10.5326/JAAHA-MS-6488)
犬髄膜腫に対して高線量少分割体積変調回転照射の可能性と有効性について前向き研究を行なった。
MRI所見から脳および脊髄の髄膜腫が示唆された39症例に対し、マイクロマルチリーフコリメータとXVIコーンビームCTを備えたリニアックにて高線量少分割体積変調回転照射を実施した。5分割で合計33Gyを照射した。治療の可能性は計画中および線量チェック時に確認した。通常の臨床検査として意識状態、歩行状態、脳神経機能、発作について、治療中と治療後に実施した。MRIは照射後2, 4, 6, 12, 18, 24ヶ月後に実施した。容積減少基準と臨床的神経機能評価により経過を評価し治療反応を分類した。
照射24ヶ月に生存していたもののうち完全もしくは部分寛解に達したものは65.5%であった。2年生存率は全体と本疾患でそれぞれ74.3%、97.4%であり放射線有害事象はわずかであった。(Dr.Maru訳)
■犬の脾臓血管肉腫に対するメトロノ-ムシクロフォスファミドを加えた、あるいは加えない補助的ドキソルビシン
Adjuvant Doxorubicin with or without Metronomic Cyclophosphamide for Canine Splenic Hemangiosarcoma.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2017 Nov/Dec;53(6):304-312.
Arata Matsuyama , Valerie J Poirier , Fernanda Mantovani , Robert A Foster , Anthony J Mutsaers
この回顧的研究は、脾臓血管肉腫を外科的に治療し、続いて補助的用量強化ドキソルビシン(DOX)と低用量メトロノームシクロフォスファミド(low-dose metronimic cyclophosphamide:LDM-C)維持療法を加えた、あるいは加えないで治療した犬33頭の結果を調べた。
33頭の犬の中で、18頭はLDMCを投与されていた。臨床ステージは全ての犬から入手できた(5頭はステージI、18頭はステージII、10頭はステージIII)。DOX開始時に9頭は肉眼的、24頭は顕微鏡的疾患があった。
無増悪期間(progression-free survival:PFS)と総生存期間中央値はそれぞれ125日と133日だった。化学療法スタート時の臨床ステージと腫瘍量(顕微鏡vs肉眼)は、PFSに対し予後予測的だった。
DOXプロトコール完了後、LDM-C療法の追加によるPFSあるいは総生存期間に有意差は見られなかった(それぞれP=0.148とP=0.563)。
この回顧的研究の結果によると、犬の血管肉腫のDOXプロトコールの補助治療完了後に、維持療法としてLDM-C療法の追加は結果を改善しないと思われる。(Sato訳)
■英国における9000以上のネコ皮膚腫瘍の回顧的検討 (2006-2013)
Retrospective study of more than 9000 feline cutaneous tumours in the UK: 2006?2013
Nicola T Ho, Ken C Smith and Melanie J Dobromylskyj
Journal of Feline Medicine and Surgery
2018, Vol. 20(2) 128?134
目的:英国に拠点を置く商業ベースの獣医診断施設での大規模データベースを利用し、ネコの皮膚腫瘍の発生状況(品種、性別、一般的な腫瘍の傾向)を確認すること。
方法:2006年5月31日から2013年10月31日の間に提出された猫の検体について検索した。皮膚から発生し病理検査が行われたものについて診断名、品種、年齢、性別、中性化の有無を調査した。全腫瘍、悪性腫瘍、一般的な腫瘍について雑種と比べた品種のオッズ比を算出した。
結果:猫のサンプル219,083例のうち皮膚腫瘤は4.4%で89の診断がなされていた。このうち6.6%は非腫瘍で腫瘍のうち52.7%は悪性であった。頻出10種が80.7%を占め、上位4つは基底細胞腫瘍、線維肉腫、扁平上皮癌と肥満細胞腫であった。
結論:本研究ではさまざまな診断がなされていたが、ネコ皮膚腫瘤の大部分は少数の腫瘍に収束され、当然のことながら腫瘍性疾患であった。純血種は雑種よりも悪性腫瘍になりやすいわけではなく、さまざまな品種で有意にオッズ比が低下したものの、主な腫瘍では品種特異性があった。半数以上の腫瘤は組織学的に悪性に分類された。(Dr.Maru訳)
■少分画放射線療法による進行した犬の肛門嚢腺癌の治療:77症例(1999-2013)
Treatment of advanced canine anal sac adenocarcinoma with hypofractionated radiation therapy: 77 cases (1999-2013).
Language: English
Vet Comp Oncol. September 2017;15(3):840-851.
B McQuown , M A Keyerleber , K Rosen , M C McEntee , K E Burgess
現在、進行性、手術不能、転移性肛門嚢腺癌(anal sac adenocarcinoma:ASAC)に対する標準治療は存在しない。
この回顧的研究の目的は、ある程度の大きさのASACのある犬77頭において、少分画放射線療法(radiation therapy:RT)の役割を評価することだった。
合計38%の犬がRTに対し部分奏功を示した。その腫瘍に関連する臨床症状を呈する犬において、症状の改善、あるいは解消が63%の犬に見られた。悪性腫瘍の高カルシウム血症を呈する犬において、RT単独で31%が解消し、放射線、プレドニゾン、および/あるいはビスホスホネートで加えて46%が解消した。総生存期間中央値は329日(範囲:252-448日)だった。無増悪期間中央値は289日(範囲:224-469日)だった。放射線プロトコール、使用した化学療法、過去の手術や進行したステージを基にした生存性に違いはなかった。放射線毒性は軽度でまれだった。少分画RTは許容性がよく、進行した原発性、局所あるいは転移性ASACの治療に適応可能である。(Sato訳)
■前立腺がんの治療として行った犬25例の前立腺全切除術
Total prostatectomy as a treatment for prostatic carcinoma in 25 dogs.
Vet Surg. 2018 Feb 5. doi: 10.1111/vsu.12768. [Epub ahead of print]
Bennett TC, Matz BM, Henderson RA, Straw RC, Liptak JM, Selmic LE, Collivignarelli F, Buracco P.
目的:組織学的に前立腺癌と確認した犬の前立腺全切除後の合併症と予後を述べる
研究計画:多施設回顧的ケースシリーズ
動物:25頭の飼育犬
方法:2004年から2016年の間に前立腺全切除術を行った犬の医療記録を再調査した。集めたデータはシグナルメント、現症状、術前臨床所見、検査結果データ、診断画像、術式、組織診断、術後合併症、術後転移の発生、生存性だった。
結果:25頭の犬が前立腺癌に対し前立腺全切除を行った。尿路吻合は、14頭で尿道尿道吻合、9頭で膀胱尿道吻合、1頭で尿道結腸吻合、1頭で膀胱頚と陰茎尿道の吻合で行われた。全ての犬は生存して退院した。15頭の犬は移行上皮癌、8頭は前立腺腺癌、1頭は前立腺嚢胞腺癌、1頭は未分化癌と診断された。持続的な術後尿失禁は23頭中8頭に見られた。生存期間中央値は嚢内腫瘍の犬と比較して嚢外腫瘍の拡がりを持つ犬でより短かった。全体の生存期間中央値は231日(範囲24-1255日)で、1年および2年生存率はそれぞれ32%と12%だった。
結論と臨床意義:補助療法と組み合わせた前立腺全切除は、前立腺癌の犬の過去の報告よりも長く生存し、合併症率も低かった。しかし、症例選択が術後結果に重要な役割を演じる確率が高いと知っておくべきである。(Sato訳)
■犬の脊髄髄膜腫と神経鞘腫34例(2008-2016):病理組織検査と治療様式を基にした分布と長期結果
Canine spinal meningiomas and nerve sheath tumours in 34 dogs (2008-2016): Distribution and long-term outcome based upon histopathology and treatment modality.
Vet Comp Oncol. 2018 Jan 23. doi: 10.1111/vco.12385. [Epub ahead of print]
Lacassagne K, Hearon K, Berg J, Seguin B, Hoyt L, Byer B, Selmic LE.
この回顧的多施設ケースシリーズの目的は、治療様式を基に脊髄髄膜腫と神経鞘腫(nerve sheath tumours:NSTs)の外科手術±放射線照射後の結果を紹介することと、各病理診断に対する治療後の生存期間と再発までの時間を評価する特定の目的があった。
仮説は、治療に放射線療法の追加により、より長い臨床症状の再発までの時間と生存期間が得られるだろうということだった。
34頭の犬が髄外脊髄髄膜腫あるいはNSTと病理組織学的に診断されたという組み込み基準を満たした。16頭の髄外脊髄髄膜腫と18頭のNSTsが診断された。髄膜腫の診断はNSTsと比較して有意に長い生存期間と関係し、生存期間中央値は187日(95%CI:76-433日)に対し、508日(95%CI:66-881日;P=0.02)だった。手術後の再発に対し定位放射線療法(stereotactic radiation therapy:SRT)、あるいは初期治療としてSRT単独で治療した犬(7頭)は生存期間が追加で125日から346日延長した。(Sato訳)
■犬と猫の口腔と鼻咽頭および鼻ポリープの管理
Management of Otic and Nasopharyngeal, and Nasal Polyps in Cats and Dogs.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):643-61.
Valentina Greci , Carlo Maria Mortellaro
猫の炎症性ポリープは、耳や鼻咽腔の最も一般的な非腫瘍性病変である。鼓室の掻爬と牽引剥離の併用や内視鏡による経鼓室牽引などポリープ切除の最小侵襲法は、長期解消に成功している。
猫の鼻の過誤腫は鼻咽腔の良性病変で、多くは外科的切除後の予後が良い。
犬の耳および鼻咽頭炎症性ポリープは珍しく、猫のそれらと同様の臨床症状を呈す。犬において、適切な外科的治療を計画する前に、それらのマスの正確な組織診断を成すことは重要である。(Sato訳)
■犬の血管肉腫の補助化学療法においてドキソルビシン-シクロフォスファミドとドキソルビシン-ダカルバジンの比較
Comparison of doxorubicin-cyclophosphamide with doxorubicin-dacarbazine for the adjuvant treatment of canine hemangiosarcoma.
Language: English
Vet Comp Oncol. March 2017;15(1):25-35.
R Finotello , D Stefanello , E Zini , L Marconato
犬の血管肉腫は、血管上皮起源の腫瘍で、アグレッシブな生物学的挙動を持ち、診断後12か月の時点で生存している犬は10%以下である。治療は外科手術から、その後補助的ドキソルビシンベースの化学療法である。
著者らは従来のドキソルビシンとシクロフォスファミド(AC)治療と、ドキソルビシンとダカルバジン(ADTIC)治療を前向きに比較し、この方法の安全性を判定し、生存性と転移までの時間(TTM)を延長するのかどうかを評価した。
27頭の犬を登録した;ステージングの後、18頭はACで治療し、9頭はADTICで治療した。TTMと生存期間中央値はACで治療した犬に比べ、ADTICで治療した犬は延長した(112日v.s. >550日、P=0.021と142日v.s.>550日、P=0.011)。両プロトコールの許容性は良く、投与量の減量や投与間隔の延長などの必要はなかった。
ドキソルビシンとダカルバジンの併用プロトコールは血管肉腫の犬に安全で、TTMや生存期間を延長する。(Sato訳)
■転移性消化管間質腫瘍の1頭の犬のリン酸トセラニブ(パラディア)による治療成功例
Successful treatment of a metastatic, gastrointestinal stromal tumour in a dog with toceranib phosphate (Palladia).
Language: English
J Small Anim Pract. July 2017;58(7):416-418.
J W Elliott , F Swinbourne , A Parry , L Baines
1歳メスのイングリッシュスプリンガースパニエルに大きな腹腔内マスがあったが、他に臨床症状はなかった。広く腹腔に転移がある盲腸の消化管間質腫瘍が確認された。エクソン-8あるいはエクソン-11c-kit変異がないにもかかわらず、リン酸トセラニブによる治療で完全寛解が得られた。診断から9か月経過しても腫瘍再発の臨床所見はなかった。(Sato訳)
■甲状腺癌に対する治療を行った犬の放射線照射後の甲状腺機能低下症
Post-radiotherapy hypothyroidism in dogs treated for thyroid carcinomas.
Language: English
Vet Comp Oncol. March 2017;15(1):247-251.
I Amores-Fuster , P Cripps , L Blackwood
人医療で頭部および頸部放射線療法の後で甲状腺機能低下症は一般的な有害事象であるが、犬ではあまり報告されていない。
組織学的あるいは細胞学的に甲状腺癌と確認され、根治的あるいは少分割放射線療法の犬21頭の記録を再検討した。
9症例は48Gyを12分割、10症例は36Gyを4分割、2症例は32Gyを4分割で照射した。17症例は術後の状況で放射線照射した。
放射線照射後、10症例(47.6%)が甲状腺機能低下症を発症した。甲状腺機能低下症の発症は、使用した放射線照射プロトコールと関係がなかった。甲状腺機能低下症の診断までの期間の中央値は6か月(範囲、1-13ヶ月)だった。
甲状腺癌に対する放射線療法後の甲状腺機能低下症は一般的な副作用である。放射線療法後の甲状腺機能のモニタリングが推奨される。特定のリスクファクターは確認されていない。(Sato訳)
■犬の原発性、転移性、再発性肛門嚢腺癌の外科的管理:52症例
Surgical management of primary, metastatic and recurrent anal sac adenocarcinoma in the dog: 52 cases.
Language: English
J Small Anim Pract. May 2017;58(5):263-268.
D C Barnes , J L Demetriou
目的:第一線治療として外科手術で管理した原発性および再発性肛門嚢腺癌の犬の集団の結果と合併症を報告する。転移性疾患の確認に対し、リンパ節細胞診の使用を報告する。
方法:肛門嚢腺癌と診断された犬の紹介センター1施設の集団の症例記録の回顧的再調査
結果:52頭の臨床的症例が確認された。リンパ節の超音波所見の変化は、細胞診や病理組織検査で評価した転移疾患とかなり一致した。58回のうち7回(12%)の会陰手術でマイナーな合併症を報告しており、他の7回(12%)はさらに外科的介入を必要とした。マイナーでコントロール可能な術中出血が、転移巣切除処置を行った39回中2回(5%)のリンパ節摘出に関係して見られた唯一の合併症だった。6頭(12%)は局所に再発し、22頭(42%)はその後、あるいは再発性のリンパ節転移疾患を発症した。疾患再発検出時から、2度目の外科的介入に関係する追加生存期間中央値は283日だった。
臨床意義:肛門嚢の腺癌の犬のリンパ節転移に対する開腹は罹病率が低く、初診時あるいは再発疾患があるとき両方で、局所転移疾患のエビデンスがある犬に対し考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の眼周囲癌と進行した頭部の扁平上皮癌に対する電気穿孔療法によるブレオマイシンの効果の増強
Electroporation Enhances Bleomycin Efficacy in Cats with Periocular Carcinoma and Advanced Squamous Cell Carcinoma of the Head
J Vet Intern Med. 2015 Sep-Oct;29(5):1368-75. doi: 10.1111/jvim.13586.
Spugnini EP, Pizzuto M, Filipponi M, Romani L, Vincenzi B, Menicagli F, Lanza A, De Girolamo R, Lomonaco R, Fanciulli M, Spriano G, Baldi A
【背景】 猫の進行した頭部の癌は局所コントロールと生存に関する健康の問題に大きく影響する
【目的】 猫の眼周囲癌と進行した頭部の扁平上皮癌に対するブレオマイシンの効果を高めるために行った電気穿孔療法(Electroporation:ECT)の可能性を評価する
【動物】 猫21例の眼の周囲の癌(17例が扁平上皮癌:Squamous Cell Carcinoma:SCC、4例が未分化癌)、猫26例の進行した頭部SCC
【方法】 非無作為化前向きコントロール研究。眼周囲の癌の群:12例は全身麻酔下にてブレオマイシン(15mg/m2 IV)+ ECT、9例はコントロールとしてブレオマイシン単独で治療された。頭部の扁平上皮癌の群:14例は鎮静下にてブレオマイシン(15mg/m2 IV)+ ECT、12例はコントロールとしてブレオマイシン単独で治療された。ECTの治療(2-8回)は、完全寛解(CR)もしくは腫瘍の進行が起きるまで、1週おきに実施された。
【結果】 毒性は最小であり、対症療法で治療することが出来た。ECTで治療された猫の全反応率は89%(完全寛解(CR)が21例、部分寛解(PR)が2例)であり、一方でコントロール群では反応率は33%(CRが4例、PRが3例)だった。無病進行期間中央値はECT群で30.5ヶ月であり、一方でコントロール群では3.9ヶ月だった (P < .0001)。眼周囲のECT治療群の無病進行期間中央値は24.2ヶ月であり、進行した頭部のSCC群では20.6ヶ月だった。
【結論と臨床的重要性】 電気化学療法は猫の進行した頭部のSCCでよく忍容された;眼周囲のような繊細な身体の部分の癌治療における局所領域の戦略として使用できる。 (Dr.Masa訳)
■犬と猫の細胞学的サンプルの診断的有用性に影響する要因
Factors affecting the diagnostic utility of canine and feline cytological samples.
Language: English
J Small Anim Pract. February 2017;58(2):73-78.
R Sapierzy?ski , M Czopowicz , M Ostrzeszewicz
目的:細胞診は迅速、安価、最小侵襲で、広く利用されている診断方法だが、臨床細胞病理医と医師の間の厳密な提携が、臨床的に有益な結果を得るために必要である。この研究の目的は、細胞材料が、一般開業獣医師により採取され、臨床細胞病理医により検査されるとき、細胞学的結果の臨床的有用性に影響する要因を確認することだった。
素材と方法:100の細針吸引生検の解析を個人獣医師により実施し、臨床細胞病理学により検査した。添え状の分かりやすさ、送付したスメアの数、スメアの肉眼的外観などバイオプシーを実施した一般開業獣医師に依存する要因を分析に含めた。動物種、病変の部位も含めた。
結果:2つの要因が細胞診を好ましくすることが分かった:スメアの良好な肉眼的外観、表層性の病変部位。それでも、添え状に患者の病歴を入れることが、臨床細胞病理医が臨床的に有益な示唆を行うのに役立つことが証明された。
臨床意義:良質なスメアの準備、包括的な添え状の提出は、臨床的に有益な細胞学的報告を得る可能性を高めるだろう。(Sato訳)
■腎臓の平滑筋肉腫の猫1例
Renal leiomyosarcoma in a cat.
J Vet Diagn Invest. May 2016;28(3):315-8.
Dawn Evans , Natalie Fowlkes
腎臓の平滑筋肉腫を、臨床的に3年間管理した慢性腎臓病の病歴がある10歳の家猫短毛猫で診断した。短期間の精神鈍麻、錯乱ののちに突然死した。剖検で左腎臓の肉眼所見は水腎症を示唆し、反対側の腎臓には腎結石が存在した。しかし、組織学的に大きく空洞化した部分に接した浸潤性、未分化、紡錘細胞肉腫を認めた。腫瘍細胞はビメンチンと平滑筋アクチンに免疫反応し、腎臓の平滑筋肉腫の診断が導き出された;腫瘍細胞はデスミンに免疫反応がなかった。その腎臓の平滑筋肉腫発生はヒトでまれに起こり、獣医療でも発生はほとんどなく、イギリスの文献で猫の症例報告はない。剖検時の腫瘍の肉眼所見は大きな空洞化の結果として水腎症と間違って示唆し、嚢胞あるいは空洞化所見を持つヒトの腎臓平滑筋肉腫の特にまれな症例と似ていると思われる。(Sato訳)
■皮膚腫瘍の細胞診
Cytology of Skin Neoplasms.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2017;47(1):85-110.
Mark C Johnson , Alexandra N Myers
細針吸引と細胞検査は皮膚のマスの診断作業の構成部分であるべきである。細胞診は上皮、間葉、円形細胞として皮膚の腫瘍を分類でき、腫瘍の悪性の可能性を判定できるかもしれない。それらの結果は、腫瘍に対するその後の診断の考察、最適な治療オプションを飼い主と相談する能力を獣医師に提供するはずである。(Sato訳)
■骨の細胞診
Cytology of Bone.
Language: English
Vet Clin North Am Small Anim Pract. January 2017;47(1):71-84.
Anne M Barger
骨の細胞診は有効な診断ツールである。溶解あるいは増殖性病変の吸引は、炎症あるいは腫瘍性プロセスの診断をアシストできる。細菌、真菌および原虫は顕著な骨髄炎を起こす可能性があり、それら病原体は細胞診で確認できる。
骨肉腫、軟骨肉腫、線維肉腫、滑膜細胞肉腫、組織球肉腫など原発性骨腫瘍を含む骨腫瘍、プラズマ細胞腫やリンパ腫および転移性腫瘍を含む骨髄の腫瘍は顕著な骨融解あるいは増殖を起こす可能性があり、細胞診で効果的に診断できる。(Sato訳)
■犬の脾臓脂肪肉腫:13例(2002-2012)
Splenic liposarcoma in dogs: 13 cases (2002-2012)
J Am Vet Med Assoc. 2015 Dec 15;247(12):1404-7. doi: 10.2460/javma.247.12.1404.
Gower KL, Liptak JM, Culp WT, Bravo L, Powers B, Withrow SJ.
【目的】 犬の脾臓脂肪肉腫の臨床徴候・診断所見・外科管理と予後について明らかにする
【研究デザイン】 回顧的症例シリーズ
【動物】 13例の脾臓脂肪肉腫の犬
【方法】 以下のデータの為、病理学組織学検査で脾臓脂肪肉腫と診断された症例の2002-2012年までの診療録と病理学レコードを確認した:臨床徴候、CBC、血液化学性状、胸・腹部画像検査、外科手術、病理学的グレード、予後(局所再発、遠隔転移と生存期間)。電話でのインタビューでかかりつけ医に連絡をとった。
【結果】 中央生存期間(Median Survival Time:MST)は623日(範囲:1-1283日)だった。脾臓肉腫が原因で死亡した5頭の犬の生存期間は42-369日だった。外科手術時に転移が認められた場合は、予後不良を示唆する要因だった:転移が認められた症例の中央生存期間は45日であり、転移が認められなかった症例の予後は767日だった。Grade1の脾臓脂肪肉腫と診断された犬は、Grade2もしくは3と比較し(それぞれ、MST 206日、74日)、有意に長いMST(1009日)で明らかに長い予後だった。
【結論と臨床意義】 脾臓脂肪肉腫は犬の脾臓腫瘤の中では、まれな鑑別診断であることが示された。生存期間は手術前の臨床ステージと病理学的グレードに影響されていた。(Dr.Masa訳)
■巨大肝細胞癌の犬37頭の生存に対する外科的マージンの影響
Impact of surgical margins on survival of 37 dogs with massive hepatocellular carcinoma.
N Z Vet J. 2017 Apr 26:1-12. doi: 10.1080/00480169.2017.1319304. [Epub ahead of print]
Matsuyama A, Takagi S, Hosoya K, Kagawa Y, Nakamura K, Deguchi T, Takiguchi M.
目的:巨大肝細胞癌(hepatocellular carcinoma:HCC)を完全に切除した犬と、不完全切除の犬の生存性を比較する
方法:回顧的コホート研究を行った。2006年11月から2015年4月までの間に巨大HCCの外科的切除を行った犬を研究した。周術期に死亡した犬、手術後2か月以内に追跡できなくなった犬は除外した。医療記録からデータを収集し、1人の病理医が全ての入手可能な組織スライドを検査し、HCCの診断を確認した。最初の病理報告を基に切除組織縁に腫瘍細胞が見られない場合、外科的マージンが完全と定義した。完全なサージカルマージン(CM)の犬と不完全マージン(IM)の犬で無憎悪期間(progression free survival:PFS)と総生存期間(overall survival:OS)をログランク検定で比較した。
結果:研究に含まれた37頭のうち、25頭はCM群、12頭はIM群に振り分けられた。術後にC M群の3頭、IM群の12頭で進行性の局所疾患が発生した。CM群の3頭、IM群の5頭は腫瘍の進行により死亡した。PFS中央値は、IM群(521日(95%CI=243-799))に比べCM群(1000日(95%CI=562-1438);p=0.007)でより長かった。OSにおいてもIM群(中央値765日(95%CI=474-1056))に比べCM群(>1836日;p=0.02)が長かった。
結論と臨床関連:巨大HCCの犬で完全切除と比較して、不完全切除はPFSとOSを短縮した。不完全切除の犬は、局所再発をしっかりモニターすべきだが、不完全切除後のOS中央値は>2年だった。それらの所見を確認する追加前向き研究が求められる。(Sato訳)
■2頭の猫の骨膜軟骨肉腫の診断と結果
Diagnosis and Outcome of Periosteal Chondrosarcoma in Two Cats.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Sep-Oct;52(5):312-8.
Elizabeth Thompson , Amy E Fauber , Roy R Pool
2頭共に10歳以上の猫が体肢骨格の無痛性骨増殖の評価で来院した。それらの増殖は触診で確認できるものだった。エックス線検査で大腿骨(症例1)と足根骨(症例2)の平滑な増殖性骨病変が分かり、症例には軽度軟部組織腫脹が見られた。2頭は不完全切除の外科的減量術を実施した。その後の病理検査で骨膜軟骨肉腫(periosteal chondrosarcoma:PC)の診断が出た。
2頭共に局所再発を経験しているが、マスの減量術を行ってから2.5年以上生存している。
老齢猫の骨膜軟骨肉腫は、関節表面に近い増殖性皮質骨病変の鑑別診断の1つである。それらのマスの部分的切除は優良なQOLを導くことができ、適切な診断は断脚や安楽死を避けることができる。(Sato訳)
■膀胱部分切除を行った犬の膀胱移行上皮癌の臨床的予後
Clinical outcome of partial cystectomy for transitional cell carcinoma of the canine bladder
Vet Comp Oncol. 2017 Feb 20. doi: 10.1111/vco.12286
Marvel SJ, Seguin B, Dailey DD, Thamm DH.
【アブストラクト】
犬の膀胱移行上皮癌(Transitional cell carcinoma:TCC)は歴史的に化学療法、COX阻害薬や放射線治療併用治療で治療されている。一方で外科治療は膀胱TCCの治療として用いられているものの、その効果は未だ確立されていない。
TCCの治療として部分切除と様々な非外科治療を行った37例の犬を回顧的に評価した。全体の中央無病期間(progression-free interval:PFI)は235日で、中央生存期間(survival time:ST)は348日だった。単変量解析において、STに対する明らかな予後因子として、年齢・腫瘍の位置・全層切除とピロキシカムの投与頻度があった。膀胱部分切除・ピロキシカムの1日1回の投与と、化学療法を行ったり行わなかったりした群の中央STは772日だった。
膀胱三角以外の膀胱移行上皮癌に対し、全層膀胱部分切除を行い、ピロキシカム(± 化学療法)を1日1回用いる治療は、内科的治療と比較し、予後を改善するかもしれない。(Dr.Masa訳)
コメント:50%未満の膀胱部分切除が約7割、約6割が不完全切除。術後、約8割で局所再発・腹膜播種が1割。根治治療として臨むのであれば、部分切除+化学療法では不十分な印象ですが、診断がやや難しい膀胱尖部領域腫瘤の診断的な側面と、生存期間の延長という面では良いのかもしれません。
■化学療法の切り替えの回顧的解析は外科的に切除した生物学的挙動の悪い犬の血管肉腫の結果の改善を示唆する。
A retrospective analysis of chemotherapy switch suggests improved outcome in surgically removed, biologically aggressive canine haemangiosarcoma†.
Vet Comp Oncol. 2016 Jan 21. doi: 10.1111/vco.12193. [Epub ahead of print]
Finotello R, Henriques J, Sabattini S, Stefanello D, Felisberto R, Pizzoni S, Ferrari R, Marconato L.
血管肉腫(HSA)は侵襲性の生物学的挙動を取り、予後は悪く、1年以上生存するのは治療した犬の10%以下である。
この回顧的研究で生物学的に侵襲性のHSAの犬において、補助的ドキソルビシンベースの最大耐量化学療法(MTDC)ののち、種々のメトロノーム化学療法(MC)の効果(転移までの期間、(TTM)と生存期間(ST))と安全性に関しMTDCと比較した。犬はMTDCおよび追加化学療法なしあるいはMC維持療法後に転移がなければ適格とした。12頭の犬をMTDCで治療し、10頭はその後MCで治療した。
TTMとST中央値はMTDC-MCで治療した犬の方が有意に長かった(それぞれ、達せずVS150日、P=0.028;達せずVS168日、P=0.030)。治療の許容性は良かった。
顕微鏡レベルで治療した外科的に切除された生物学的侵襲性のHSAの犬において、MTDCに続くMC療法は安全で、TTMとSTの改善を示唆する。(Sato訳)
■鼻および鼻鏡の腫瘍、再建
Nose and Nasal Planum Neoplasia, Reconstruction.
Vet Clin North Am Small Anim Pract. July 2016;46(4):735-50.
Deanna R Worley
多くの鼻腔内病変の最もよい治療は放射線療法である。静脈造影によるCT画像検査は治療プランを考えるのに重要である。鼻のCT画像は鼻の腫瘍による中枢神経系浸潤に対し、篩状板の整合性を最もよく評価できる。犬の顔の見た目の変化に対するオーナーの心情的な反応のため、鼻鏡切除あるいは根治的鼻鏡切除の処置前に家族全員を含めた話し合いが必要である。注意深い症例選択で、鼻鏡切除および根治的鼻鏡切除術で局所治癒ができる。(Sato訳)
■胸腺上皮性腫瘍の外科切除を行った犬80例と猫32例の周術期死亡率と長期生存
Perioperative Mortality and Long‐Term Survival in 80 Dogs and 32 Cats Undergoing Excision of Thymic Epithelial Tumors
Vet Surg. 2015 Jul;44(5):557-64. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12304.x. Epub 2014 Nov 3.
Garneau MS, Price LL, Withrow SJ, Boston SE, Ewing PJ, McClaran JK, Liptak JM, Berg J1.
【目的】 犬と猫の外科切除を行った胸腺上皮性腫瘍(thymic epithelial tumors:TETs)の周術期死亡率・長期生存・死亡原因と予後因子を明らかにする。
【研究デザイン】 多施設症例シリーズ
【動物】 80例の犬と32例の猫
【方法】 2001年から2012年の間に外科切除を行ったTETsの犬と猫のフォローアップ情報を入手した。
【結果】 周術期死亡率は犬で20%、猫で22%だった。周術期死亡率に関する独立したリスク因子はなかった。全ての犬の中央生存期間は1.69年(95%CI:0.56?4.32)であり、1年・4年生存率はそれぞれ55%(95%CI:44-67)と44%(95%CI:32-56)だった。
全ての猫の中央生存期間は3.71年(95%CI:0.56-測定出来ず)であり、1年・4年生存率はそれぞれ70%(95%CI:53-87)と47%(95%CI:0-100)だった。生存して退院した動物の中では、42%の犬と、20%の猫が最終的にTETに関連して亡くなった。
犬においては腫瘍随伴性症候群を認める症例(hazard ratio [HR] 5.78, 95% CI 1.64?20.45, P=.007)、病理学的に不完全切除と診断された症例(HR 6.09, 95% CI 1.50?24.72, P=.01)は独立して生存期間の短縮と関連した。猫では生存に関連した明らかな要因は認められなかった。放射線治療や化学療法の効果に関しての結論を下すことは出来なかった。
【結論】 TETsの外科を行った犬と猫では周術期における死亡リスクは有る一方で、生存して退院した多くの症例で、長い生存期間が認められた。生存期間は、犬においては腫瘍随伴症候群に罹患していたり、不完全切除で合った場合は有意に低下した。(Dr.Masa訳)
■17頭の犬と10頭の猫の肺切除後の結果
Outcome After Pneumonectomy in 17 Dogs and 10 Cats: A Veterinary Society of Surgical Oncology Case Series.
Language: English
Vet Surg. August 2016;45(6):782-9.
Vincent Wavreille , S E Boston , C Souza , K Ham , G Chanoit , D Rossetti , J Takacs , R Milner
目的:肺切除を行った犬と猫のシグナルメント、呈していた臨床症状、外科的合併症、組織診断、術後合併症、結果を報告する
研究計画:回顧的ケースシリーズ;多施設研究
動物:飼育犬(n=17)と猫(n=10)
方法:肺切除を行った犬と猫の記録からシグナルメント、臨床症状、患側、外科的データ、術前診断検査(全血、血清生化学、細胞診、胸部レントゲン、CT検査)、組織診断、外科的合併症、補助療法、死亡日時と原因を収集した。生存の概算と合併症を査定した。
結果:17頭(犬12頭、猫5頭)は左側の肺切除を実施し、10頭(犬5頭、猫5頭)は右側の肺切除を行った。14頭は腫瘍と診断された(52%)。犬と猫の合併症の発生率は76%と80%で、メジャーな合併症はそれぞれ41%と50%だった。呼吸器の合併症(持続的胸水、酸素依存、持続的呼吸数上昇、あるいは発咳)はよく見られる合併症だった。術中あるいは術後24時間以内に死亡、または安楽死された動物はいなかった。術後最初の2週間で1頭の犬(6%)と2頭の猫(20%)は死亡あるいは安楽死された。
結論:このケースシリーズをもとに、犬と猫において低い術中死亡率で左右共に肺切除を実施でき、長期に生存する動物もいる。(Sato訳)
■浸潤性尿路上皮癌の自然発生の犬のモデルにおける、非選択性シクロオキシゲナーゼ阻害薬がビンブラスチンの効果を増強する
Nonselective Cyclooxygenase Inhibitor Enhances the Activity of Vinblastine in a Naturally-Occurring Canine Model of Invasive Urothelial Carcinoma
Bladder Cancer. 2016 Apr 27;2(2):241-250.
Knapp DW, Ruple-Czerniak A, Ramos-Vara JA, Naughton JF, Fulkerson CM, Honkisz SI.
【背景】 化学療法は浸潤性尿路上皮癌(urothelial carcinoma:UC)において重要な役割を残していると考えられる。化学療法の効果を高める戦略が必要である。
【目的】 浸潤性UCの自然発生の犬のモデルにおけるビンブラスチンの使用に、非選択性シクロオキシゲナーゼ阻害薬が効果を増強するか検討する
【方法】 IACUCの許可の元、自然発生で病理学的に浸潤性UCと診断され、6週間以上の生存が期待される個人所有の犬を、ビンブラスチン (2.5 mg/m2 intravenously every 2 weeks)とピロキシカム(0.3 mg/kg daily per os) の併用療法とビンブラスチン単独(同量)で効かなくなった際にピロキシカムを使用する群にご家族の同意の元、無作為に振り分けた。計画された評価にもとづき、身体検査・標準的な院内検査・胸部X線検査・腹部超音波検査と標準的な尿路系腫瘍の測定法が用いられた。
【結果】 ビンブラスチン単独で治療した犬(n=27)とビンブラスチン-ピロキシカム(n=24)は年齢・性別・品種・腫瘍ステージ・グレードにおいて同様だった。寛解はビンブラスチン単独(22.2%)と比較しビンブラスチン-ピロキシカム(58.3%)でより多く認められた (P < 0.02) 。中央無病進行期間はビンブラスチン単独で143日、併用療法で199日だった。興味深いことに、生存期間はビンブラスチン単独治療から続いてピロキシカムを投与した群で(n=20、531日)、併用療法を行った症例(299日)よりも明らかに長かった (P < 0.03) 。両群の治療の耐容性は良かった。
【結論】 ピロキシカムはヒトの状態と近い形態をもつ腫瘍に罹患した犬のUCにおいて、ビンブラスチンの活性を明らかに増強させ、追加研究の必要性は明白である。この研究ではCOX阻害薬の臨床試験が行われた症例において、続けてCOX阻害薬を使う方法の隠れた重要性が治療反応に影響している可能性があることを示唆した。 (Dr.Masa訳)
コメント:ランダム化の方法が記載されていない点がやや気になります。ビンブラスチン単剤からピロキシカムに切り替えた方が、生存期間の延長が見られた点は、著者が指摘するように興味深く、今後検討が必要な重要なテーマだと思います。
■デボンレックスのボーエン様上皮内癌:この品種の顕著な攻撃的腫瘍挙動のエビデンスと原発および転移病変のパピローマウイルス遺伝子発現の検出
Bowenoid in situ carcinomas in two Devon Rex cats: evidence of unusually aggressive neoplasm behaviour in this breed and detection of papillomaviral gene expression in primary and metastatic lesions.
Language: English
Vet Dermatol. June 2016;27(3):215-e55.
John S Munday , Mike W Benfell , Adrienne French , Geoff M B Orbell , Neroli Thomson
背景:Bowenoid in situ carcinomas (BISCs)は珍しい猫の腫瘍で、パピローマウイルス感染によると考えられている。通常は老猫に発症し、ゆっくりと進行するが、比較的若いデボンレックスで過去に多発進行性BISCsが報告されている。
動物:多数のBICSsを発症した5歳(症例1)と8歳(症例2)のデボンレックス。急激な進行のため、8か月後に2頭とも安楽死された。剖検は症例2のみ可能で、肺転移を認めた。
方法と結果:2頭の病変からコンセンサスPCR法によりFelis catusパピローマウイルス2型(FcaPV-2)DNAが増幅された。高いFcaPV-2コピー数とFcaPV-2 E6/E7遺伝子発現が症例1のBISCで検出された。高いFcaPV-2コピー数とFcaPV-2遺伝子発現は症例2の皮膚扁平上皮癌(SCC)と肺転移でみられたが、他の2つの皮膚SCCsからは検出されなかった。
結論:この結果は若齢のデボンレックスでBISCsが発症するという追加エビデンスを提供し、デボンレックスのBISCsは他の猫種のBISCsよりも攻撃的な挙動を示す。デボンレックスにおいてそれらの異常な特徴は、皮膚疾患の評価と治療を行う時に考慮すべきである。肺の腫瘍においてFcaPV-2遺伝子発現の検出は、転移疾患の発症においてFcaPV-2の潜在的役割を示唆する。しかし、2つの皮膚SCCsでFcaPV-2遺伝子発現がないことは、他の因子も癌発症を促進していると示唆される。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた甲状舌管癌
Thyroglossal Duct Carcinoma in a Cat.
Language: English
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jul-Aug;52(4):251-5.
Jeremiah D Moorer , Melanie A Breshears , Danielle R Dugat
14歳去勢済み家猫短毛種の猫が、1年前から繰り返し吸引、排液でも解消しない頸部腹側に存在する液体に満たされた構造があるということで来院した。
頚部CT検査で約10cmの液体で満たされた多胞のマスが、胸郭入口に伸びる頸部腹右側に認められた。液体の細胞診で慢性出血所見を伴う嚢胞液であることが分かった。マスは外科的に除去し、病理検査で甲状舌管癌だと判明した。甲状腺、副甲状腺起源は、サイログロブリン、パラチロイドホルモン、カルシトニン、シナプトフィジンの免疫組織化学染色陰性により除外された。補助治療は実施されず、14か月目に再発はなかった。
甲状舌管癌は過去に1頭の猫の報告もない。犬では過去に甲状舌管の扁平上皮癌が2例報告されている。ヒトでは完全切除と転移所見がないことで、甲状舌管の癌は回復に対し予後はよい。(Sato訳)
■偶然発見した破裂していない脾臓結節やマスのために脾摘を行った犬の結果と悪性腫瘍の出現率:105症例(2009-2013)
Incidence of malignancy and outcomes for dogs undergoing splenectomy for incidentally detected nonruptured splenic nodules or masses: 105 cases (2009-2013).
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2016;248(11):1267-73.
Matthew J Cleveland, Sue Casale
目的:偶然見つかった破裂していないマスあるいは結節に対し、脾摘を行った犬の悪性腫瘍の頻度および生存率を調査する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:105頭の飼育犬
方法:2009年から2013年の間に獣医教育病院で脾摘を行った犬の医療記録で、腹腔内出血に関係せず、破裂していない脾臓マスあるいは結節を偶然見つけた症例を確認するため調査した。組織学的に診断を確認した犬のみとした。シグナルメント、術前診断検査、術中血液製剤輸血、脾臓マスの直径、組織学的所見、補助治療、生存期間に関する情報を集めて分析した。
結果:105頭中74頭(70.5%)は良性の脾臓病変で、31頭(29.5%)は悪性腫瘍、最も一般的なのは血管肉腫(18/31[58%])だった。術前のPCV上昇により死亡の危険は低下した;悪性腫瘍の病理診断は有意に死亡の危険の増加と関係した。良性および悪性病変の犬の余命の中央値は、それぞれ436日と110日だった;良性病変の74頭中41頭と悪性腫瘍の31頭中3頭は、この判定時に生存していた。血管肉腫の犬の余命の中央値は132日だった;それら18頭中7頭のみが何らかの補助的化学療法を受けていた。
結論と臨床関連:腹腔内出血に関係しない、偶然見つかった破裂していない脾臓のマスあるいは結節は良性が多かった。良性あるいは悪性の脾臓病変が偶然見つかり、迅速な介入を受けたそれらの犬に対する余命は、過去の他の研究集団で報告されているものよりも良かったことが示唆された。(Sato訳)
■進行した(ステージ3b)肛門腺癌の犬における外科あるいは少分割放射線療法の結果
Outcome in dogs with advanced (stage 3b) anal sac gland carcinoma treated with surgery or hypofractionated radiation therapy.
Vet Comp Oncol. 2016 Jun 9. doi: 10.1111/vco.12248.
Meier V, Polton G, Cancedda S, Roos M, Laganga P, Emmerson T, Bley CR.
ステージ3b肛門腺癌(ASGC)は命を脅かす危険性がある。外科的アプローチはいつもできるとは限らず、あるいは断られるかもしれない。
外科的あるいは原体放射線治療(RT)8x3.8Gy(総照射30.4Gy、2.5週以上)で治療したステージ3bASGCの犬を回顧的に評価した。
患者の特性、無憎悪期間中央値(PFI)、生存期間中央値(MST)を比較した。28頭の犬を調査した;手術を行った15頭、RTを行った13頭。来院時、21%は命を脅かすような便秘、25%は高カルシウム血症を示した。手術症例のPFIとMSTは159日(95%CI:135-184日)と182日(95%CI:146-218日)で、RT症例の347日(95%CI :240-454日)と447日(95%CI:222-672日)よりも有意に短かった(P=0.01、P=0.019)。手術と同じようにRTは症状を素早く緩和した。
手術患者のPFIや生存期間は、原体少分画放射線療法で治療した匹敵患者のそれよりも有意に劣っていた。(Sato訳)
■原発性リンパ節血管肉腫の犬4例
Primary nodal hemangiosarcoma in four dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2016 Nov 1;249(9):1053-1060.
Chan CM, Zwahlen CH, de Lorimier LP, Yeomans SM, Hoffmann KL, Moore AS.
症例記述:頸部にゆっくりと大きくなるマスを持つ犬4頭を評価した。
臨床所見:評価時には全ての犬で臨床症状はなかった。どの犬のCTあるいはMRIデータからは、明らかな内蔵転移あるいは他の原発性腫瘍の所見はなかった。
治療と結果:各犬は外科的なマスの切除を実施した。切除組織の組織検査結果は、完全に切除されたグレード1あるいは2のリンパ節血管肉腫だった。全ての犬は補助的化学療法を受けた;2頭は根治的化学療法を行い、1頭はシクロフォスファミドのメトロローム療法、1頭はクロラムブシルのメトロローム療法を行った。術後生存期間は1頭が259日;3頭は615日、399日、365日でまだ生存中だった。
臨床関連:犬の原発性リンパ節血管肉腫は珍しく、著者の知識ではゆっくり成長するマス、あるいは複数マスとして頚部リンパ節に発生するものは過去に述べられていない。この報告では外科的切除と補助治療で4頭中3頭が長期間生存していた。他の体の部位で血管肉腫の悪い生物学的挙動があるならば、補助的化学療法はその犬に考慮すべきだが、この報告での犬におけるその役割は不明だった。この腫瘍タイプの生物学的挙動をさらに特徴づけ、予測される生存期間、関係するリスクファクターを判定する追加の臨床的情報が求められる。(Sato訳)
■犬のB細胞性慢性リンパ球性白血病の犬種分布と臨床特性
Breed Distribution and Clinical Characteristics of B Cell Chronic Lymphocytic Leukemia in Dogs.
J Vet Intern Med. 2016 Jan-Feb;30(1):215-22. doi: 10.1111/jvim.13814. Epub 2016 Jan 6.
Bromberek JL, Rout ED, Agnew MR, Yoshimoto J, Morley PS, Avery AC.
背景: ヒトにおいてB細胞性慢性リンパ急性白血病(B-CLL)は、世界中で見られる最も一般的な造血系悪性腫瘍で、主なリスクファクターは遺伝である。犬にもB-CLLは発生するが、この疾患の系統的記述はない。犬のB-CLLの疫学の理解は、その疾患の臨床医の認識、将来の遺伝研究のモデルとして犬のポジションに役立つかもしれない。
目的:犬のB-CLLの症状、その臨床病理所見、犬種素因を述べる
動物:B-CLLの犬491頭とリンパ増殖性疾患(LPD)が疑われる5673頭のコントロール犬
方法:2010年から2014年の間に免疫表現型検査で、コロラド州立大学臨床免疫検査所に提出されたサンプルの犬の回顧的横断研究。ロジスティック回帰を用い、犬種素因を評価するため、B-CLLの犬と他のLPDsの疑われる犬とを比較した。
結果:年齢中央値は11歳で性別の偏りはなかった。半数の犬は末梢リンパ節腫脹あるいは脾腫を呈し、26%は貧血だった。11の小型犬種はB-CLLの確率が有意に高かった。またイングリッシュブルドッグはリスクが高く、独特の症状だった:中央値6歳で診断され、lowerクラスII MHCとCD25を示した。
結論:B細胞性慢性リンパ急性白血病は、小型犬種に多く見られる。それら犬種の更なる遺伝研究で、遺伝的リスクファクターを確認できるかもしれない。イングリッシュブルドッグの独特の症状は、この疾患の複数の型のエビデンスを提供する。提示する症状が生存性に関係するかどうかを調べる追加研究は必要である。(Sato訳)
■慢性リンパ急性白血病の3頭の犬に対するメルファランとプレドニゾロンによる治療
Treatment of chronic lymphocytic leukaemia in three dogs with melphalan and prednisolone.
J Small Anim Pract. 2004 Jun;45(6):298-303.
Fujino Y, Sawamura S, Kurakawa N, Hisasue M, Masuda K, Ohno K, Tsujimoto H.
慢性リンパ急性白血病(CLL)の3頭の成犬に対し、メルファランとプレドニゾロンによる治療に成功した。
白血病細胞の免疫表現型解析を基に、2頭の犬をB細胞性CLLと診断し、1頭の犬をT細胞性CLLがあると仮診断した。B細胞性CLLの1頭はIgM単クローン性免疫グロブリン血症を認めた。
3頭のCLLに関係する臨床症状および血液学的異常が、8-210日間の細胞減少性メルファラン(3-5mg/m2/日)およびプレドニゾロン(4.3-30mg/m2/日)の投与で改善した。血漿アルカリフォスファターゼ活性の軽度上昇を除き、重度の副作用は見られなかった。
CLLの犬においてメルファランとプレドニゾロン療法は、副作用もほとんどなく寛解を達成できるかもしれない。(Sato訳)
■犬とヒトの胃癌、概要
Gastric carcinoma in canines and humans, a review.
Vet Comp Oncol. 2016 Aug 22. doi: 10.1111/vco.12249.
Hugen S, Thomas RE, German AJ, Burgener IA, Mandigers PJ.
犬の胃で最も一般的な腫瘍は胃癌(GC)である。一般的集団での発生率は低いと報告されているが、犬種特異のGCは高い発生率を示す。初診時年齢中央値は8歳から約10歳である。その疾患の大部分は胃の小弯や幽門領域に発生する。残念ながら、通常は疾患が進行したステージでなされることが多く、ゆえに予後は不良である。
臨床症状、診断、組織学、予後で類似しているため、犬のGCはヒトのGCの有益なモデルとして扱われるかもしれない。犬の胃癌症例の広範囲な系図でヒトの胃癌に対する病識を明らかにできた。推定上の種差は、病原におけるヘリコバクターの役割、ヒトで利用できる遺伝データの広範な整理とスクリーニング、ヒトのGCで利用できる治療プロトコールが含まれる。(Sato訳)
■高グレードリンパ腫への慢性リンパ性白血病の転換:8頭の犬のリヒター症候群の記述
Chronic lymphocytic leukemia transformation into high-grade lymphoma: a description of Richter's syndrome in eight dogs.
Vet Comp Oncol. 2015 Oct 14. doi: 10.1111/vco.12172.
Comazzi S, Martini V, Riondato F, Poggi A, Stefanello D, Marconato L, Albonico F, Gelain ME.
慢性リンパ急性白血病(CLL)の患者において、リヒター症候群(RS)は悪性度の高いリンパ腫の発症である。ヒトではRSはCLLの2-20%で発生し、びまん性大細胞型B細胞性リンパ腫に転換するが、犬での報告は少ない。
この研究は、CLLがRSに進行した8頭の犬について述べる。
CLLの犬153頭(93頭 CD8+と55頭 B-細胞)を含むデータベースを調査し、8症例を認めた(総CLLの5.2%):2頭はT-細胞性(T-CLLの2.2%)、6頭はB-細胞性免疫表現型(B-CLLの10.9%)。RSが発生した時、リンパ球はCLLと比べて減少した。5頭は貧血で2頭は血小板減少症だった。よく見られた臨床症状は、リンパ節腫脹、発咳、嘔吐、神経学的症状、体重減少だった。治療から独立して、RSの生存期間は短かった(中央値41日)。
犬のCLLにおいてRSは好ましくない進化と考えるべきである。(Sato訳)
■犬の眼窩横紋筋肉腫:18症例の報告
Canine orbital rhabdomyosarcoma: a report of 18 cases.
Vet Ophthalmol. March 2016;19(2):130-7.
Erin M Scott; Leandro B C Teixeira; David J Flanders; Richard R Dubielzig; Gillian J McLellan
目的::犬の眼窩横紋筋肉腫(COR)の臨床および病理学的特徴を述べる
方法:ウィスコンシンの比較眼科病理ラボラトリーとウィスコンシン大学獣医教育病院のアーカイブからCORの犬を回顧的に調査した(1983-2014)。
結果:CORの18症例を確認し、全て8年間(2006-2014)に診断されていた。罹患した犬は一般的に若く(範囲1-8歳;中央値2歳)、両性別は等しく存在した。一般的な臨床症状は眼球突出(16/18)で、眼球の背外側偏位(10/18)、瞬膜の隆起(12/18)を伴った。9症例に行った超音波検査で混合エコーのマスと後眼球陥凹を認めた。9症例に行った高度画像検査で、不定なコントラスト増強を伴う軟部組織マスと眼窩骨溶解を認めた(5/9)。組織学的に、全ての腫瘍は胚性横紋筋肉腫と下位分類した。全ての腫瘍は、デスミンに対する免疫組織化学標識陽性で、14/18は骨格筋アクチンに対し陽性だった。追跡調査の情報は15/18症例で得られた。年齢6-8歳のより年齢の高い犬は、診断後8-13ヶ月、再発あるいは転移の臨床症状がなかった(4/4)。年齢1-4歳のより若い犬の多くは(9/11)、手術部位の再発(5/9)および/あるいは転移(5/9)により診断から6か月(中央値2.5ヶ月)以内に安楽死した。
結論:犬の眼窩横紋筋肉腫は若い犬でより悪性度の高い腫瘍であるが、より高齢の犬では外科的切除で治まるかもしれない。この生物学的挙動の二様性は、若く発現した腫瘍と、老齢で発現した腫瘍の組織の起源の違いを反映しているのかもしれない。(Sato訳)
■犬と猫の第三眼瞼腺腫瘍:145症例の回顧的病理組織学的研究
Third eyelid gland neoplasms of dogs and cats: a retrospective histopathologic study of 145 cases.
Vet Ophthalmol. March 2016;19(2):138-43.
D Dustin Dees; Charles S Schobert; Richard R Dubielzig; Timothy J Stein
目的:犬と猫の第三眼瞼(TEL)腺を侵す原発性腫瘍のさまざまなタイプを述べる
方法:Comparative Ocular Pathology Laboratory of Wisconsin (COPLOW)データベースの回顧的検索を実施した。獣医眼科専門医、一次診療の獣医師、適切な時は飼い主に患者のその後の情報を得るためにコンタクトを取った。収集した患者のデータは動物種、年齢、性別、品種、左右差、腫瘍の種類、外科的マージン、再発、転移、追跡調査の期間だった。
結果:127頭の犬と18頭の猫の症例が基準にあてはまった。最も一般的な犬のTEL腺腫瘍は腺癌(n=108;85.0%)で、続いて腺腫(n=18;14.2%)、扁平上皮癌(SCC)(n=1;0.8%)だった。その後の情報が得られた犬の症例(n=62)で、8.1%に転移が確認または疑われ、11.3%に局所再発が確認または疑われた。
最も一般的な猫のTEL腺腫瘍は腺癌(n=15;83.3%)で、続いてSCC(n=3;16.7%)だった。その後の情報が得られた猫の症例(n=9)で、40.0%に転移が確認または疑われ、30.0%に局所再発が確認または疑われた。
結論:この研究で犬と猫共に、最も一般的な第三眼瞼腺腫瘍は腺癌だということが分かった。犬のそれと比較して、猫の腫瘍に対する全体の生存期間はより短く、転移率と再発率はより高いと思われた。これは腺の小管上皮由来のSCCの最初の報告である。(Sato訳)
■犬と猫のリンパ節における腫瘍の診断における細胞診と組織学的診断の一致率について-367症例の回顧的研究
Cytologic-histologic concordance in the diagnosis of neoplasia in canine and feline lymph nodes: a retrospective study of 367 cases.
Vet Comp Oncol. 2016 Aug 15. doi: 10.1111/vco.12256. [Epub ahead of print]
Ku CK, Kass PH, Christopher MM.
リンパ節は、原発性と転移性の腫瘍の診断をするために、犬と猫において頻繁にサンプリングされる臓器である。
我々は、組織学的診断をゴールドスタンダードとしてリンパ節の細胞診による診断の精度を調査した。
リンパ節のレポート (2001-2011年) を回顧的に評価し、診断を腫瘍性と非腫瘍性に分類した。296頭の犬と71頭の猫のリンパ節において、157 (42.7%)の非腫瘍性病変、62 (16.9%)のリンパ腫、148 (40.3%)の転移性の腫瘍が認められた。腫瘍の診断という点について、細胞診の腫瘍に対する感度は66.6% (95%信頼区間は60.0-72.8%)、特異性は91.5% (95%信頼区間は86.3-95.2%)、正確性は77.2% (95%信頼区間は72.6-81.3%)であった。細胞診において腫瘍と診断した場合、悪性である可能性は93.0%であった。腸間膜のT細胞性リンパ腫(35頭中22頭、63%、主に猫)、転移性肉腫(14頭中8頭、57%)、転移性肥満細胞腫(48頭中15頭、31%、主に犬)の場合、偽陰性の結果の割合が高かった。不一致を起こす要因としては、よく分化したリンパ球の形態、限局な転移、転移性の肥満細胞腫の分類のきちんとなされていないことなどであった。(Dr.Taku訳)
■犬の軟部組織肉腫と肥満細胞腫の切除中に正常な組織と腫瘍を識別する新しい画像検査システム
A Novel Imaging System Distinguishes Neoplastic from Normal Tissue During Resection of Soft Tissue Sarcomas and Mast Cell Tumors in Dogs.
Vet Surg. 2016 Jun 9. doi: 10.1111/vsu.12487. [Epub ahead of print]
Bartholf DeWitt S, Eward WC, Eward CA, Lazarides AL, Whitley MJ, Ferrer JM, Brigman BE, Kirsch DG, Berg J.
目的:軟部組織肉腫(STS)や肥満細胞腫(MCT)の切除を行う犬において、腫瘍と正常組織を識別するため、術中に腫瘍床において残存癌を検出するために計画された新しい画像検査システムの能力を調べる
研究構成:非無作為化前向き臨床試験
動物:STSの犬2頭とMCTの犬7頭
方法:インビトロでプロテアーゼにより活性化された蛍光イメージング剤を腫瘍切除の4-6時間、あるいは24-26時間前に犬に投与した。手術中に切除した標本の癌の部分内の経口強度を手持ちのイメージング機器で測定し、その後の癌の識別に対する強度域値を判定した。その後、切除した標本および腫瘍床内の選択した部分をイメージし、域値を超えた蛍光強度がある、あるいは無い部分からバイオプシー(n=101)を入手した。術中の蛍光と組織検査結果を比較した。
結果:このイメージングシステムは101バイオプシーのうち93(92%)で正常組織と癌を正確に識別した。参照として組織検査を使用し、バイオプシーにおいて癌の識別に対しイメージングシステムの特異性は92%、感受性は92%だった。イメージング剤の注射後、すぐに一時的な顔の紅斑が19頭中10頭(53%)に見られ、ジフェンヒドラミンの静脈内投与により反応したが、一貫して防ぐことはなかった。
結論:術中に使用する蛍光ベースのイメージングシステムは、高い精度で犬の軟部組織肉腫(STS)や肥満細胞腫(MCT)組織と正常組織を識別できる。システムは、術中に腫瘍切除の妥当性の評価で術者を補助する可能性を持ち、局所腫瘍再発リスクを減らす可能性がある。抗ヒスタミン剤に反応するが、犬のこのイメージングシステムの潜在的利益と照らし合わせ、過敏症のリスクを考慮する必要がある。(Sato訳)
■犬の急性白血病:50症例(1989-2014)
Canine acute leukaemia: 50 cases (1989-2014).
Vet Comp Oncol. 2016 Jul 12. doi: 10.1111/vco.12251.
Bennett AL, Williams LE, Ferguson MW, Hauck ML, Suter SE, Lanier CB, Hess PR.
急性白血病(AL)は歴史的に治療に反応が悪い造血前駆体の骨髄悪性腫瘍である。用量強化化学療法を広く採択することで、ヒトの患者はより長期生存性を獲得しているが、犬のALで匹敵する進歩がなされているかどうかは不明である。
この疑問を調査するため、3つの大学の動物病院でカルテを調査した。
50頭の犬が骨髄芽球の過剰な循環、主要な血球減少、実質的なリンパ節症がないなどALの基準にあてはまった。
36頭が細胞毒性の化学療法を受けていた;23頭が完全あるいは部分反応を示し、その期間の中央値は56日(範囲、9-218日)だった。
治療失敗あるいは再燃で、14頭はレスキュー療法を行った。治療の生存期間中央値は悪く、55日(範囲、1-300日)だった。治療せず(n=6)および緩和治療(n=6)の犬は、中央値7.5日生存した。多くの犬は最初の治療から数週間以内に化学療法抵抗性を持ち、結局残念なことにALの生存期間は短いままである。(Sato訳)
■犬と猫の悪性腫瘍の皮膚創傷の管理における修正Mohsペーストの緩和効果
The palliative efficacy of modified Mohs paste for controlling canine and feline malignant skin wounds.
Vet Q. 2016 Feb 1:1-7.
Fukuyama Y, Kawarai S, Tezuka T, Kawabata A, Maruo T.
獣医療において、悪性腫瘍の皮膚創傷の管理は非常に難しい。
著者らは悪性腫瘍の皮膚創傷を呈する動物7症例(犬4頭、猫3頭)を研究した。全7症例は修正Mohsペーストで治療後、症状と徴候がコントロールできた。オーナーからインフォームドコンセントを得られたうえで、悪性腫瘍の創傷の管理を必要な動物でこの研究を行った。
修正Mohsペーストは塩化亜鉛、酸化亜鉛スターチパウダー、グリセリン、蒸留水を混ぜて調整した。
管理下において、修正Mohsペーストを局所に塗布し、悪性腫瘍の創傷の上に1時間留まるようにした。1度ペーストを除去し、無菌生理食塩水で創傷を洗浄した。
最初の検査で、各症例の創傷は浸出液、悪臭、出血の症状があった。全ての症例において、修正Mohsペーストの処置後すぐに目に見える改善が見られた。特に、悪性腫瘍の創傷の大きさ、ガーゼ交換数は有意に減少した(それぞれp<0.05とp<0.01)。
2症例において乳腺腫瘍による開放性の悪性腫瘍の皮膚創傷は消失した。
犬と猫の悪性腫瘍の皮膚創傷の管理において、Mohsペーストは緩和治療の実行可能なオプションであると示されている。(Sato訳)
■一施設の19頭の猫の肝細胞癌の臨床的特徴(1980-2013)
Clinical Characteristics of Hepatocellular Carcinoma in 19 cats from a Single Institution (1980-2013).
J Am Anim Hosp Assoc. 2016 Jan-Feb;52(1):36-41.
Staci A Goussev; Sharon Anne Center; John F Randolph; Aarti Kathrani; Brian P Butler; Sean P McDonough
猫の肝細胞癌(HCA)の臨床的特徴はあまり分かっていない。
この回顧的研究において、著者らはHCAの猫19頭のシグナルメント、臨床的特徴、臨床病理パラメーター、画像特性、肝臓マスの大きさと肝葉の分布、併発疾患、生存性を述べる。
年を取った猫でHCAは珍しく、体重減少、食欲低下、肝臓トランスアミナーゼ活性の増加がよく見られる。併発疾患(例えば、甲状腺機能亢進症、炎症性腸疾患、胆管肝炎、銅関連肝障害)が臨床および臨床病理所見の解釈で同時に発見されることも多い;42%のHCAは偶発的に確認された。21%の猫しか腹部マスが触知されなかったが、ほとんどの猫のマスは超音波画像検査で確認され、47%の病変は4cmより大きかった。腫瘍は右葉と左葉にほぼ同等に分布し、2頭の猫のHCAは複数葉に存在した。
生前に診断した8頭の猫の生存期間中央値は1.7年(0.6-6.5)だった。HCAの外科的切除を行った6頭の猫の生存期間中央値は2.4年(1.0-6.5)で、この原稿提出時に2頭の猫はまだ生存している。外科切除後にカルボプラチンで治療した1頭の猫は4年生存した。生前に診断し、外科的切除をしなかった2頭の猫は0.6年と1年間生存した。(Sato訳)
■断脚を行った犬の結果、断脚処置に対するオーナーの満足度、術後順応に関するオーナーの認識:64症例(2005-2012)
Outcomes of dogs undergoing limb amputation, owner satisfaction with limb amputation procedures, and owner perceptions regarding postsurgical adaptation: 64 cases (2005-2012).
J Am Vet Med Assoc. October 1, 2015;247(7):786-92.
Vanna M Dickerson; Kevin D Coleman; Morika Ogawa; Corey F Saba; Karen K Cornell; MaryAnn G Radlinsky; Chad W Schmiedt
目的:前肢あるいは後肢の断脚後の犬の結果とオーナーの満足度、その犬の順応の認識を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:64頭の飼育犬
方法:2005年から2012年の間に獣医教育病院で断脚を行った犬のカルテを再調査した。シグナルメント、体重、断脚時のボディコンディションスコア、断脚日時、退院日時、断脚したのは前肢か後肢か、断脚の理由を記録した。当てはまるならば組織診断および死亡日時を記録した。オーナーには、術後の彼らの経験および犬の順応の認識について電話で調査した。術中の変数と術後のQOLスコアの関連を調査した。
結果:64人中58人(91%)のオーナーが、断脚後の犬の態度に変化がないと認識していた:56人(88%)は完全あるいはほぼ完全に断脚前のQOLに戻ったと報告し、50人(78%)が犬が思っていたよりも回復し順応したと示し、47人(73%)が犬のレクレーション活動で変化がないと報告した。
断脚時のボディコンディションスコアと体重は、術後のQOLスコアと負の相関を示した。全てのファクターを考慮すると、ほとんどのオーナー(55/64[86%])は再び断脚に関して同じ決断をするだろう、4人(6%)は決断しないだろう、5人(8%)はわからないと報告した。
結論と臨床関連:この情報は、断脚後の犬の順応のポテンシャルについて、そして術後の体重管理の必要性について獣医師が説明するのに役立つだろう。(Sato訳)
■犬の鼻腔内腫瘍に対し術中アクリジンオレンジ光線力学療法と篩骨への電子線照射:予備的研究
Intraoperative acridine orange photodynamic therapy and cribriform electron-beam irradiation for canine intranasal tumors: A pilot study.
Can Vet J. December 2015;56(12):1232-8.
Takuya Maruo; Koichi Nagata; Yasuhiro Fukuyama; Yuki Nemoto; Shinpei Kawarai; Yukihiro Fujita; Tomohiro Nakayama
治療しない犬の鼻腔内腫瘍は予後が悪い。
著者らは犬の鼻腔内悪性腫瘍に対し、術中アクリジンオレンジ(AO)光線力学療法(PDT)を併用した悪性腫瘍の切除および5Gyメガボルテージ1分画照射の効果を回顧的に評価した。
篩板侵襲あるいは篩板周辺の鼻甲介破壊がある場合、術中に電子線で20Gyの追加分画照射を行った。
研究には6頭を含め、そのうち2頭はステージI、1頭はステージII、3頭はステージIVだった。治療後の局所の無病生存期間と総生存期間の中央値は8.5ヶ月と13ヶ月だった。6頭中2頭に4か月および7か月後の再発を認めた。副作用は軽度だった(皮下気腫1症例、鼻炎3症例)。
完全切除できない鼻腔内悪性腫瘍の犬で、AO療法の併用は腫瘍コントロール時間を延長させるかもしれない。(Sato訳)
■頭部に悪性腫瘍がある犬31頭における両側下顎および内側咽頭後リンパ節切除後に確認したリンパ節転移のパターン
Patterns of lymph node metastasis identified following bilateral mandibular and medial retropharyngeal lymphadenectomy in 31 dogs with malignancies of the head.
Vet Comp Oncol. 2016 May 16. doi: 10.1111/vco.12229. [Epub ahead of print]
Skinner OT, Boston SE, Souza CH.
犬の頭部および頸部において不定なリンパドレナージの経路が述べられている。
この研究の目的は、頭部に悪性腫瘍のある犬において、両側下顎および内側咽頭後リンパ節切除後のリンパ節転移のパターンを回顧的に評価することだった。
31頭の犬を調べた。手術時の年齢中央値は10歳(範囲5ヶ月から14歳)で、平均体重は21.4±11.9kgだった。リンパ節転移は14頭(45%)で発生し、14頭において下顎リンパ節に広がり、11頭において内側咽頭後転移があった。リンパ節転移や側方化病変のある13頭中8頭(62%)は対側性の播種を示し、13頭中12頭(92%)は同側性転移を示した。口腔悪性メラノーマの犬13頭のうち4頭は、全て4つのリンパ中心に転移していた。
頭部に悪性腫瘍がある犬において、対側性転移が起こるかもしれず、ステージングや管理中に考慮すべきである。(Sato訳)
■原発性肺腫瘍の犬の胸腔鏡下肺葉切除13症例
Thoracoscopic Lung Lobectomy for Primary Lung Tumors in 13 Dogs.
Vet Surg. November 2015;44(8):1029-35.
Seth Bleakley; Colleen G Duncan; Eric Monnet
目的:原発性肺腫瘍の犬の胸腔鏡下肺葉切除の経験を報告することと、胸腔鏡あるいは開胸により肺葉切除で治療した原発性肺腫瘍の犬の長期結果を比較すること
研究計画:回顧的ケースシリーズ;症例-コントロール研究
動物:胸腔鏡下肺葉切除で治療した原発性肺腫瘍の犬13頭;開胸で肺葉切除により治療した原発性肺腫瘍の犬9頭の症例に見合った集団
方法:1施設で胸腔鏡下肺葉切除を行った犬のカルテを検討した。原発性肺腫瘍の症例のみを含めた。外科的合併症と移行率を報告した。移行がなかった症例と組織検査でマージンがクリーンの症例は、開胸で肺葉切除を行った原発性肺腫瘍の症例に対する予後基準と対応させた。生存性は胸腔鏡と開胸術で比較した。
結果:2.2-7cmの原発性肺腫瘍の犬13頭に胸腔鏡下肺葉切除を行った。9頭は腺癌、4頭は組織球肉腫と診断した。視認が悪く、3頭は開胸術に移行した。胸腔鏡下で処置を終えた犬と、開胸術に移行した犬の間で短期結果に差はなかった。マージンがクリーンな犬9頭は開胸術で治療した犬9頭と一致した。平均(標準偏差)経過観察期間は胸腔鏡下手術を行った犬で367(327)日、開胸手術を行った犬で603(612)日だった。2年生存率は胸腔鏡手術の犬で44%、開胸手術で56%(P=0.942)だった。
結論:犬の選択的原発性肺腫瘍は、胸腔鏡下で安全に切除でき、長期結果に影響しない。(Sato訳)
■犬4頭と猫5頭の片側骨盤切除の解剖、術式、結果の記述
Description of the Anatomy, Surgical Technique, and Outcome of Hemipelvectomy in 4 Dogs and 5 Cats.
Vet Surg. July 2015;44(5):613-26.
Laura A Barbur; Kevin D Coleman; Chad W Schmiedt; MaryAnn G Radlinsky
目的:(1)片側骨盤切除の包括的記述;(2)犬および猫における片側骨盤切除の臨床適応と結果を報告
研究計画:記述報告と回顧的ケースシリーズ
動物:犬4頭と猫5頭
方法:この研究とは関係のない理由で安楽死された4頭の雑種犬を使用し、イメージする目的のため屍体の解剖を実施した。片側骨盤切除を行った犬と猫のカルテ(2005-2012)を再調査した。シグナルメント、体重、ボディコンディションスコア、臨床症状、診断画像検査所見、腫瘍の部位と広がり、確定診断、補助療法の使用、術後の歩行能力、合併症、生存性のデータを得た。
結果:猫で片側骨盤切除が最もよく使用されるのは注射部位肉腫(ISS)で、犬では骨肉腫あるいは末梢神経鞘腫(PNST)だった。完全な腫瘍切除は6症例(67%)で達成できた。不完全切除は腰仙部PNSTの犬2頭と、1頭の猫で、その猫のISSは2回目の手術を行った。合併症は術中出血(n=2)、術後軟部組織感染(2)、切開部位からの浸出液(1)だった。1頭を除き全頭退院時には歩行していた。入院期間は1-10日(中央値4日)の範囲だった。術後生存性は個々に評価した。
結論:深い解剖学的知識を持って片側骨盤切除を行えば、骨盤に隣接した腫瘍病変の切除が成功する可能性があり、合併症はマイナーなものである。(Sato訳)
■犬の喉頭および気管の軟骨腫瘍:文献回顧と追加10症例(1995-2014)
Cartilaginous Tumors of the Larynx and Trachea in the Dog: Literature Review and 10 Additional Cases (1995-2014).
Vet Pathol. 2015 Nov;52(6):1019-26. doi: 10.1177/0300985815579997. Epub 2015 Apr 16.
Ramirez GA, Altimira J, Vilafranca M.
犬の喉頭と気管の腫瘍は珍しい。著者は1995年から2014年の間に診断された10症例を紹介するとともに、文献の16症例を再検討する。
我々の7症例は気管で、3症例は喉頭だった。喉頭腫瘍の2頭は軟骨腫で、この部位の報告は過去になかった。もう1頭の喉頭腫瘍は粘液軟骨腫だった。7頭の気管腫瘍のうち、6つは気管腹側壁から生じ、そのうち2つは腔外だった。気管の腫瘍の種類は、軟骨肉腫(n=3)、軟骨腫(n=2)、骨軟骨腫(n=2)だった。
喉頭腫瘍の全頭と気管腫瘍の7頭中5頭は成犬に発生した(年齢5-11歳)。2つの気管骨軟骨腫は若い犬で(3-4ヶ月齢)、1つは胸腔内、残りの気管腫瘍は頸部だった。ほとんどの症例で外科切除の結果は良好だった。
我々の10症例と過去に報告された16症例を合わせて、罹患犬のうち6頭(27%)は北極地方の犬種(アラスカンマラミュートあるいはシベリアンハスキー)で、この種類の犬の疾病素因を示唆している。(Sato訳)
■心臓マスの超音波ガイド下微細針吸引生検の細胞診
Cytological diagnosis of cardiac masses with ultrasound guided fine needle aspirates.
J Vet Cardiol. 2016 Mar;18(1):47-56. doi: 10.1016/j.jvc.2015.09.002. Epub 2015 Dec 9.
Pedro B, Linney C, Navarro-Cubas X, Stephenson H, Dukes-McEwan J, Gelzer AR, Kraus MS.
背景:犬の集団において心臓マスは珍しい。存在するときは、確定診断を試みるべきである。このケースシリーズにおける目的は、解剖学的に可能な部位に限らず、細胞診のために微細針吸引生検(FNAs)を得ることは実践的で安全、確定診断を得ることができるかもしれないと報告することだった。
方法:心臓マスのFNAを行っている症例を回顧的にデータベースから検索した。
結果:合計6症例が挙がった。4頭は全深麻酔下、2頭は鎮静化で行われていた。全症例において超音波ガイド下で経胸腔的FNAsを行い、合併症はマイナーなもののみだった:軽度の自力で治る心臓周囲の滲出(n=1)と心室性期外収縮(n=1)。全ての犬は処置中に厳密にモニターした(パルスオキシメトリー、心電図、血圧)。全ての症例で診断が得られた:炎症(n=1)、血管肉腫(n=2)、肉腫(n=2)、ケモデクトーマ(n=1)。
結論:細胞診は、臨床医が最適な臨床方針決定でき、推奨治療に劇的に影響し、予後についての情報を得ることができる。(Sato訳)
■膀胱および尿道の移行上皮癌の犬に対する新しい低線量緩和的放射線療法の耐容性と腫瘍の反応
TOLERABILITY AND TUMOR RESPONSE OF A NOVEL LOW-DOSE PALLIATIVE RADIATION THERAPY PROTOCOL IN DOGS WITH TRANSITIONAL CELL CARCINOMA OF THE BLADDER AND URETHRA.
Vet Radiol Ultrasound. 2016 Feb 3. doi: 10.1111/vru.12339.
Choy K, Fidel J.
犬の下部尿路の移行上皮癌に対する過去に報告された放射線照射プロトコールは効果的ではない、あるいは副作用増加に関係した。
この回顧的横断研究の目的は、犬の移行上皮癌に対する新規緩和的放射線照射プロトコールの安全性とそれに対する腫瘍の反応を述べることだった。
研究した犬は膀胱あるいは尿道の移行上皮癌を細胞学的あるいは組織学的に確認されており、2.7Gyの1日1回分画10回(月-金)照射で治療した。13頭の犬のうち、6頭は第一選択(導入)療法として放射線で治療し、7頭は化学療法失敗後のレスキュー療法として放射線で治療した。照射の6週以内に7.6%(1/13)が完全反応、53.8%(7/13)が部分反応、38.5%(5/13)が安定状態を示し、進行したものはいなかった。尿道閉塞を呈した3頭は、治療プロトコール中に自然に排尿が回復していた。片側尿管閉塞の1頭は、再検査時には開存していた。
初診から生存期間中央値は179日だった。放射線照射開始時からの生存期間中央値は150日だった。急性の放射線による副作用は31%(4/13)で発生し、グレード1あるいは2に分類された。重大な後発副作用は報告されなかった。予後因子として確認できる検査変数はなかった。
膀胱および尿道移行上皮癌のこの集団で、報告した放射線プロトコールは安全だと示された。完全尿路閉塞の犬のレスキュー療法として、この治療の有用性を判定する追加の前向き研究が必要である。(Sato訳)
■犬の肛門嚢アポクリン腺癌を外科的切除で管理した時の補助的カルボプラチン化学療法の評価
Evaluation of adjuvant carboplatin chemotherapy in the management of surgically excised anal sac apocrine gland adenocarcinoma in dogs.
Vet Comp Oncol. 2016 Mar;14(1):67-80. doi: 10.1111/vco.12068. Epub 2013 Oct 24.
Wouda RM, Borrego J, Keuler NS, Stein T.
犬の肛門嚢アポクリン腺癌(ASAGAC)に対して広く受け入れられている標準治療はない。手術単独は多くの症例で不十分だが、補助的化学療法の有益性は完全に証明されていない。
この回顧的研究の主要目的は、ASAGACの術後管理においてカルボプラチン化学療法の役割を評価することだった。74頭の犬が自然発生したASAGACに罹患し、手術を行っていた。44頭が補助的カルボプラチンを投与され、30頭は投与されなかった。
総生存期間(OS)の中央値は703日だった。進行までの期間(TTP)の中央値は384日だった。診断時の原発腫瘍の大きさとリンパ節への転移だけが、結果に有意に影響した。補助的化学療法を受けた犬とそうでない犬のOSとTTPの違いは統計学的有意に到達しなかった。化学療法に限られていない間、進行した癌の治療は有意に生存期間を延長した。
この研究は犬の肛門嚢アポクリン腺癌の管理において、補助的カルボプラチン化学療法は良好な容認性で一助となるかもしれないと示している。(Sato訳)
■犬のセンチネルリンパ節を確認する間接リンパ管造影:30個の腫瘍による予備研究
Use of indirect lymphography to identify sentinel lymph node in dogs: a pilot study in 30 tumours.
Vet Comp Oncol. 2016 Feb 22. doi: 10.1111/vco.12214. [Epub ahead of print]
Brissot HN, Edery EG.
この研究は、画像検査のエックス線写真あるいは断面デンシトメトリーで、原発腫瘍の周りに術前に注射するマーカーとしてヨード化油(IO)を使用した関節リンパ管造影(IL)によるセンチネルリンパ節(SLN)マッピングの臨床的価値を報告する。メチレンブルー(MB)の腫瘍周囲への注射後、リンパ節の外科的摘出を実施した。
30個の固形腫瘍に罹患した29頭の犬を前向きに研究した。IL研究の96.6%でILによりSLNsを確認した。IL後のMB研究は25頭(26研究)の犬で実施した。それらの研究で、ILおよびMBの一致性は84.6%だった。IO注射後、1頭の犬にマイナーな合併症が見られた。
このプロトコールはSLNマッピングに対し、シンチグラフィーの魅力的な代替法と思われる。このあまり技術を必要としないプロトコールは、獣医腫瘍学での応用でSLN確認を広く利用させるものかもしれない。(Sato訳)
■犬の膀胱移行上皮癌の管理:概説
Management of transitional cell carcinoma of the urinary bladder in dogs: a review.
Vet J. August 2015;205(2):217-25.
Christopher M Fulkerson; Deborah W Knapp
尿路の癌としても紹介されてくる移行上皮癌(TCC)は、最も一般的な犬の膀胱癌の型で、毎年全世界で数万頭の犬が罹患する。犬のTCCは一般的に高悪性度の侵襲性の癌である。TCCの関する問題は、尿路閉塞、罹患犬の50%以上に遠隔転移、犬および飼い主共に悩まされる臨床症状などである。
TCCのリスクファクターは古いタイプのノミコントロール製剤および芝生化学薬品の暴露、肥満、メス犬、非常に強い犬種関連リスクである。これを知っておくことで、飼い主にTCCのリスクを減らす行動を取らせることが可能となる。
TCCの診断は、膀胱鏡、外科手術あるいはカテーテルで採取した組織バイオプシーの病理検査でなされる。経皮的吸引およびバイオプシーは腫瘍の播種のリスクを考え避けるべきである。
TCCは最も一般的に、完全な外科切除の妨げとなる膀胱三角領域に発生する。
犬のTCC治療の大黒柱は内科治療である。犬のTCCは通常治癒不可能であるが、多数の薬剤が活性を持つ。約75%の犬はTCC治療に対し好ましい反応を示し、数か月から1年あるいはそれ以上、良質な生活を送ることができる。TCCに対して多くの有望な新しい治療が出てきており、犬のTCCとヒトの高悪性度侵襲性膀胱癌の密接な類似性から、犬の研究で成功している新しい治療戦略は犬の助けとなり、その後ヒトに移行することが予想される。(Sato訳)
■外科的に切除した進行性の犬の血管肉腫において化学療法を変更した場合の回顧的解析により予後が改善されることが示唆された
A retrospective analysis of chemotherapy switch suggests improved outcome in surgically removed, biologically aggressive canine haemangiosarcoma†.
Vet Comp Oncol. 2016 Jan 21. doi: 10.1111/vco.12193. [Epub ahead of print]
Finotello R, Henriques J, Sabattini S, Stefanello D, Felisberto R, Pizzoni S, Ferrari R, Marconato L.
血管肉腫 (HSA)は、進行性の生物学的挙動をとるため、予後が悪く、治療したとしても1年以上生きる犬は10%に満たない。この回顧的研究では、アジュバントとしてのドキソルビシン中心の最大耐用量の化学療法(MTDC)を行った後に様々なメトロノーム化学療法(MC)を実施した場合とMTDCを、生物学的に進行性のHASの犬において効果(転移までの時間)(TTM)および生存期間(ST))および安全性について比較した。
MTDCの後、転移がなく、さらに化学療法を受けていないか、MCの維持を受けている場合に適格とした。MTDCをうけた12頭とそのあとMCをうけた10頭を用いた。TTMとSTの中央値は、MTDC-MCをうけた犬の方が有意に長かった(それぞれ、到達していない vs 150日, P=0.028 および到達していない vs 168日, P=0.030)。治療は非常に耐用性であった。MTDCのあとMCを行うことは安全であり、外科的に切除した生物学的に進行性の挙動をとるHSAの犬においてTTMとSTを改善する可能性が示唆された。(Dr.Taku訳)
■猫の注射部位肉腫に対するチロシンキナーゼ阻害剤トセラニブ:効果と副作用
The tyrosine kinase inhibitor toceranib in feline injection site sarcoma: efficacy and side effects.
Vet Comp Oncol. 2016 Jan 14. doi: 10.1111/vco.12207. [Epub ahead of print]
Holtermann N, Kiupel M, Hirschberger J.
猫の肉腫は積極的な局所治療にもかかわらず、その局所侵襲性の成長と高い再発率で治療は難解である。犬の肥満細胞腫の治療に対しチロシンキナーゼ阻害剤(TKI)トセラニブが現在認可されている。猫に対するTKIの使用についての報告はあまりない。過去の研究で猫の注射部位肉腫(FISS)の治療でTKIの有望な可能性が示された。
この前向き臨床試験において、切除不可能なFISSの猫18頭にトセラニブを目標投与量3.25mg/kgで隔日投与し、その臨床効果と毒性を評価した。
測定できるほどの臨床反応はなかった。有害事象は一般的に軽度で一時的だった。グレード3、あるいは4の有害事象が多く発症し、休薬や減量ですべて解消した。(Sato訳)
■猫の注射部位肉腫:予防と管理に対するABCDガイドライン
Feline injection-site sarcoma: ABCD guidelines on prevention and management.
J Feline Med Surg. July 2015;17(7):606-13.
Katrin Hartmann; Michael J Day; Etienne Thiry; Albert Lloret; Tadeusz Frymus; Diane Addie; Corine Boucraut-Baralon; Herman Egberink; Tim Gruffydd-Jones; Marian C Horzinek; Margaret J Hosie; Hans Lutz; Fulvio Marsilio; Maria Grazia Pennisi; Alan D Radford; Uwe Truyen; Karin Mostl; European Advisory Board on Cat Diseases
概要:猫においてワクチン後の最も重篤な副作用は侵襲性肉腫(ほとんどは線維肉腫)の発生であり、’猫注射部位肉腫’(FISSs)と呼ばれている。それらは過去にワクチン接種あるいは注射した部位に発生する。他の部位の線維肉腫の特徴とは異なり、より侵襲的な挙動をとる。転移率は10-28%である。
病因:それらの肉腫の病因は完全に説明されてはいないが、慢性炎症反応がその後悪性にかわす引き金と考えられる。長期作用薬(グルココルチコイド、他など)の注射は肉腫形成に関係している。アジュバント入りのワクチンは激しい局所炎症を誘発し、ゆえに特にFISSの発生に関連すると思われる。修正生ワクチンや組み替えワクチンの方がリスクは少ないが、リスクがないわけではない。
治療と予防:腫瘍の再発を避けるために積極的な根治的切除が必要である。追加の放射線療法と/あるいは免疫療法(組み替え猫IL-2)を使用すれば予後が改善する。予防は全ての刺激性の物質の投与を避けるべきである。ワクチン接種は必要に応じて実施すべきであるが、最低限にすべきである。アジュバント入りのワクチンよりも優先して、アジュバントの入っていない、修正生あるいは組み替えワクチンを選択すべきである。注射は手術で完全治癒の可能性が高い部位に行うべきであり、肩甲骨間の部位は一般に避けるべきである。ワクチン接種後のモニタリングを実施すべきである。(Sato訳)
■原発性肺腫瘍の猫57頭のCT所見
Computed tomographic findings in 57 cats with primary pulmonary neoplasia.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):272-7.
Stacie Aarsvold; Jennifer A Reetz; Jean K Reichle; Ian D Jones; Christopher R Lamb; Maria G Evola; Michele A Keyerleber; Angela J Marolf
猫の原発性肺腫瘍は比較的珍しく、一般的に予後が悪い。
この肺腫瘍の猫57頭の多施設回顧的研究において、最も一般的な症状は食欲不振/無食欲(39%)、発咳(37%)だった。肺腫瘍は9%の猫で偶然発見されたと考えられた。
CT所見において、原発性肺腫瘍は55頭(96%)で肺のマスとして、2頭(4%)で境界のないマスで、びまん性の肺病変として認められた。肺腫瘍は後葉に多く、28頭(49%)は右後葉、12頭(30%)は左後葉だった。肺腫瘍に関係するCT像の特徴は、マスは臓側強膜に接触(96%)、不規則な縁(83%)、境界明瞭な辺縁(79%)、気管支圧迫(74%)、ガスを含んだ腔(63%)、ミネラル不足の病巣(56%)、気管支への侵襲(19%)だった。肺のマスの最大径の平均(範囲)は3.5cm(1.1-11.5cm)だった。転移に匹敵する肺疾患の追加病巣は53%の猫で観察された。胸水は30%の猫で見られ、肺動脈血栓症は12%の猫に見られた。
組織学的診断は47頭(82%)が腺癌、6頭(11%)が気管支由来の腫瘍、3頭(5%)が腺扁平上皮癌、1頭(2%)が扁平上皮癌だった。
この一連の症例群で、腺癌が多く見られる腫瘍のタイプだったが、珍しい腫瘍タイプの多くの特徴を共有していた。腫瘍のタイプとCTの特徴に関連は確認されなかった。肺内転移を疑う有病率は肺腫瘍の猫の過去のエックス線検査研究よりも高かった。(Sato訳)
■犬猫の心臓腫瘍の記述的レビュー
A descriptive review of cardiac tumours in dogs and cats.
Vet Comp Oncol. 2015 Sep 30. doi: 10.1111/vco.12167. [Epub ahead of print]
Treggiari E, Pedro B, Dukes-McEwan J, Gelzer AR, Blackwood L.
犬や猫で心臓腫瘍は珍しく、偶然発見されることが多い。よく見られる種類は、血管肉腫(HSA)、大動脈体腫瘍(非クロム親和性傍神経節腫、傍神経節腫)、リンパ腫が含まれる。
それらの腫瘍は軽度から重度、致死的な臨床症状を起こす可能性があり、それは組織学的タイプに依存し、心血管機能の変化や心膜腔への局所出血/滲出液に関連することもある。
心臓腫瘍は腫瘍の出血、潜在的不整脈、マスによる他の症状のコントロールを目的とする対症療法が必要となるかもしれない。追加の治療オプションとして外科手術、化学療法、放射線療法が含まれる。全ての内科治療に対し、完全寛解は可能性が低く、HSAにおける補助的化学療法以上の内科管理はさらに調査が必要だが、リンパ腫に対しては多剤化学療法が勧められる。
この報告の目的は、記述的レビューで現在の文献をまとめ、批判的に評価する。しかし、確定診断が少なく、ほとんどの研究が回顧的特性なので判断は制限される。(Sato訳)
■肛門腺癌の犬における腸骨仙骨リンパ節の超音波およびCT検査
Ultrasound and computed tomography of the iliosacral lymphatic centre in dogs with anal sac gland carcinoma.
Vet Comp Oncol. 2015 Dec 14. doi: 10.1111/vco.12160.
Pollard RE, Fuller MC, Steffey MA.
この前向き研究で、我々は肛門腺癌(ASGC)の犬において腹部超音波検査よりもCT検査の方がより正常及び異常な腸骨仙骨リンパ節(LNs)を確認できるだろうと仮説を立てた。
ASGCで遠隔転移がない飼育犬20頭を登録した。腹部超音波および腹部の造影CTスキャンを行った。腸骨仙骨リンパ節をカウントし、位置、左右差、大きさを評価した。
超音波検査(30)よりも有意により多い腸骨仙骨リンパ節をCT検査(61)で確認でき(P<0.00001)、超音波検査(19)よりもCT検査(33)で有意に多くの内側腸骨リンパ節が含まれた。CTと超音波で確認した内部腸骨リンパ節の数に差はなかった。超音波検査(0)に比べ有意に多くのリンパ節がCT検査(15)で確認できた(P=0.000061)。超音波検査(7)はCT検査(5)よりも異常な腸骨仙骨リンパ節をわずかに多く確認できた。
造影CT検査は超音波検査よりもより多くの正常なリンパ節を確認できたが、異常なリンパ節は多く確認できるわけではなかった。(Sato訳)
■1頭の犬の浸潤性血管脂肪腫の画像診断-CT、手術、病理組織学的特徴
Imaging diagnosis-computed tomographic, surgical, and histopathologic characteristics of an infiltrative angiolipoma in a dog.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):E31-5.
Michael B Kraun; Nathan C Nelson; Charlotte Hollinger
6歳メスの避妊済みシェットランドシープドックが、右の肩甲骨前領域にわたる皮下マスの評価で来院した。マスは紹介獣医師に20か月前に細胞診で脂肪腫と診断されていたが、かなり成長し、非常に硬かった。
マスのCT走査で腫瘍と示唆された;しかし由来組織については判定できなかった。病理組織検査で浸潤性血管脂肪腫と診断され、腫瘍辺縁切除術を実施した。
浸潤性血管脂肪腫は良性だが、獣医療での報告が珍しい局所の侵略的な腫瘍である。この報告は浸潤性血管脂肪腫の臨床、CT、病理組織学的特徴に関してのものである。(Sato訳)
■原発性肺腫瘍の胸腔鏡下肺葉切除を行った犬13症例
Thoracoscopic Lung Lobectomy for Primary Lung Tumors in 13 Dogs.
Vet Surg. 2015 Nov;44(8):1029-35. doi: 10.1111/vsu.12411. Epub 2015 Oct 17.
Bleakley S, Duncan CG, Monnet E.
目的:原発性肺腫瘍の犬の胸腔鏡下肺葉切除の経験を報告すると共に胸腔鏡あるいは開胸術で肺葉切除を行った原発性肺腫瘍の犬の長期結果を比較する
研究計画:回顧的ケースシリーズ;症例対照研究
動物:胸腔鏡下肺葉切除で治療した原発性肺腫瘍の犬13頭;症例にマッチする開胸で肺葉切除を行った原発性肺腫瘍の犬9頭
方法:1施設で胸腔鏡下肺葉切除を行った犬のカルテを再検討した。原発性肺腫瘍の症例のみを含めた。外科的合併症と転換比率を報告した。転換しなかった症例と組織検査においてクリーンマージンの症例を、開胸で肺葉切除した原発性肺腫瘍の症例との予後基準に対してあわせた。胸腔鏡と開胸との生存性を比較した。
結果:2.2cmから7cmの原発性肺腫瘍の13頭の犬に胸腔鏡下肺葉切除を行った。9頭は腺癌、4頭は組織球肉腫と診断された。3頭は視認不良のため開胸術に転換した。胸腔鏡で処置を完了した犬と開胸に転換した犬の間で、短期結果に違いはなかった。クリーンマージンの9頭は、開胸で治療した9頭の犬とマッチした。平均(標準偏差)追跡日数は、胸腔鏡手術を行った犬で367日(327)、開胸で行った犬で603日(612)だった。2年生存率は胸腔鏡で44%、開胸で56%だった(P=0.942)。
結論:犬の選択的原発性肺腫瘍は、長期結果に影響することなく胸腔鏡下で安全に切除できる。(Sato訳)
■猫の実質腹部臓器疾患の調査:理想のバイオプシーを目指し
Investigation of Parenchymal Abdominal Organ Disease in Cats: Aiming for the ideal biopsy.
J Feline Med Surg. March 2014;16(3):216-30.
Daniela Murgia
実際の関連:実質性腹部臓器の疾患の確定診断には、病組織の代表的な標本が必要な時も多い。組織サンプルを得るのに使用する方法は、細針吸引(FNA)のような最小侵襲のものから外科的バイオプシーのようなより侵襲の強い方法まである。
臨床的チャレンジ:FNAと細胞学的検査は有効な診断ツールとなる可能性があり、一般に肝臓、脾臓、リンパ節標本に使用される。FNAは簡単で安価な方法であり、散在性疾患に一番よく適し、患者に対し低リスクで実施できる。しかし、その正確性と病理組織所見との一致性は基礎疾患に依存して変化し、実質構造に対する情報を提供できないことも多い。重要なことに肝臓の細胞学的検査のためのFNAは、サンプルが少量のために原発疾患プロセスを確認するために使用する場合、かなり限界がある。
読者:この概説は猫の実質腹部臓器の疾患のより詳細で専門的調査を行う臨床医向けで、猫の肝臓、腎臓、膵臓、脾臓標本を得るために使用する異なる方法のガイダンスを提供する。
エビデンスベース:示された情報は同僚評価発行物や著者の臨床経験をもとにしている。(Sato訳)
■ガドベン酸メグルミン造影MRI検査による犬の肝臓転移検出の可能性
Feasibility for detecting liver metastases in dogs using gadobenate dimeglumine-enhanced magnetic resonance imaging.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 May-Jun;56(3):286-95.
Arnaud Louvet; Anne Carole Duconseille
肝臓転移の早期検出は、原発腫瘍のある犬において治療がうまくいくことに対する予後を改善するかもしれない。ヒトでは、肝胆道特異造影剤が肝臓転移のMRIによる検出で使用頻度が増えている。
この前向き研究の目的は、犬の肝臓転移の検出で、それらのうちの1つであるガドベン酸メグルミンの使用に対する可能性を試験することだった。
原発腫瘍があると分かっている10頭の連続症例を研究に募集した。ガドベン酸メグルミン造影剤の動的注射前後で、全ての犬をT2-weighted respiratory-triggered sequence、T1 VIBE、diffusion-weighted imaging、3D-FLASHを含む同じプロトコールでスキャンした。2頭の症例で注射後30分以下、および60分まで遅延撮影を実施した。肝臓病変の組織学的分析は各症例において遅延相で行い、転移巣と確認した。
全ての症例において、肝胆道造影シーケンスで検出された病変数は、他のシーケンスよりも有意に多かった。最適な病変検出は、注入後30分以内、3D-FLASHシーケンスの水平面での撮影だった。
ガドベン酸メグルミンで造営したMRIは犬の肝臓転移の検出で実行可能な方法だと示された。(Sato訳)
■甲状腺癌の治療をした犬の放射線治療後の甲状腺機能低下症
Post-radiotherapy hypothyroidism in dogs treated for thyroid carcinomas.
Vet Comp Oncol. 2015 Aug 24. doi: 10.1111/vco.12162. [Epub ahead of print]
Amores-Fuster I, Cripps P, Blackwood L.
甲状腺機能低下症は、ヒトでは頭や首の放射線療法後の一般的な有害事象であるが、犬での報告はあまりない。組織学的あるいは細胞学的に確認し、根治的あるいは少分画放射線療法で治療した甲状腺癌の犬21頭の記録を調査した。
9頭は48Gy12分画、10頭は36Gy4分画、2頭は32Gy4分画の治療を受けた。17症例の放射線療法は術後に行われた。10頭は放射線療法後に甲状腺機能低下症を発症した(47.6%)。甲状腺機能低下症は用いた放射線療法のプロトコールに関係しなかった。甲状腺機能低下症の診断までの期間中央値は6か月(範囲、1-13ヶ月)だった。
甲状腺癌に対する放射線療法に続き、甲状腺機能低下症は一般的な副作用である。放射線療法後の甲状腺機能のモニタリングが推奨される。特定のリスクファクターは確認されていない。(Sato訳)
■犬猫のリンパ節細胞診の診断的有用性
The diagnostic utility of lymph node cytology samples in dogs and cats.
J Small Anim Pract. 2015 Feb;56(2):125-9. doi: 10.1111/jsap.12303. Epub 2014 Dec 5.
Amores-Fuster I, Cripps P, Graham P, Marrington AM, Blackwood L.
目的:この研究の目的は、犬と猫のリンパ節の細針吸引の一般的理由、報告された細胞診断、診断できないサンプルの頻度と理由を調査することだった。
方法:リンパ節サンプルを確認するため、2009年4月から20011年5月までNationWide Laboratories (UK)に提出された細針吸引サンプルの電子記録の回顧的研究。サンプル採取の理由、サンプルの質、得られた診断、診断できなかったサンプルの理由を調査した。
結果:合計1473の調査する記録が得られた。1274の犬のサンプルのうち、928(72.8%)は診断でき、346(27.2%)は診断できなかった。199の猫のサンプルのうち、171(85.9%)は診断でき、28(14.1%)は診断できなかった。犬猫のサンプルを提出する最も一般的な理由は、リンパ節腫脹の調査(単独あるいは他の臨床症状と組み合わせ)、あるいは腫瘍の悪性度判定だった。犬において一般的な診断はリンパ腫(351、27.5%)、猫において反応性過形成(63、31.6%)だった。細胞がない、細胞破壊、低収穫が診断できない一般的な理由だった。病歴の提出は、細胞診断に到達する確率に影響しなかった。
臨床意義:リンパ節細胞診は有効な診断方法であるが、サンプリングおよび塗抹化を改善する教育により得られる診断が増すかもしれない。(Sato訳)
■担がん猫におけるメトホルミン経口投与の予備研究
Pilot study of oral metformin in cancer-bearing cats.
Vet Comp Oncol. 2015 Oct 21. doi: 10.1111/vco.12169. [Epub ahead of print]
Wypij JM.
塩酸メトホルミンの経口投与の毒性と薬理活性の代替バイオマーカーを評価するために、担がん猫において、前向き用量増加予備試験を実施した。
測定可能な自然発生の腫瘍のある9頭の猫を、メトホルミンの経口投与で14日間治療した。全血球算定(CBC)、血清生化学、乳酸、pH、インスリン様成長因子-1、血管内皮細胞成長因子を、終了まで繰り返し測定した。
最大耐用量である10mg/kg 12時間おきでは、副作用は主に軽度から中等度の消化管障害(食欲不振、嘔吐、体重減少)であった。全ての猫においてヘマトクリットの減少を認めた。9頭の猫のうち6頭は、新たにまたは高乳酸血症が進行し、1頭の猫は無症候性の乳酸アシドーシスになった。臨床的に反応した猫はおらず、2頭の猫は腫瘍のサイズが中等度に減少した。
結論として、臨床的に現実的な用量でメトホルミンは薬理活性を持つ可能性が示され、臨床的なモニターと支持療法のパラメーターを同定することができた。担がん猫におけるメトホルミンのさらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■犬の虹彩毛様体上皮腫瘍のバイオプシーの結果:回顧的研究
Outcome of iridociliary epithelial tumour biopsies in dogs: a retrospective study.
Vet Rec. February 2015;176(6):147.
Billie Beckwith-Cohen; Ellison Bentley; Richard R Dubielzig
バイオプシーののち、虹彩毛様体上皮腫瘍(ICET)と確認した眼の結果を評価すること。ウィスコンシンデータベースの比較眼病理研究所から42の標本を選択し、ICETバイオプシー後に摘出した11の眼球とICETと確認した31の虹彩毛様体バイオプシーだった。
全ての標本で病理組織検査を実施した。確認した時、角膜の外科的傷を摘出した眼球で調べた。腫瘍のタイプとマージンをバイオプシー標本で判定し、可能ならば追跡調査を入手した。
バイオプシーは診断、減容積あるいは摘出するかのために実施した。30/31のバイオプシーはマージンが汚く、バイオプシーで虹彩毛様体腺腫は腺癌と区別がつかなかった。提出されたバイオプシーで5/23は切開と、18/23は切除と報告された。
追跡調査の情報は切除として報告した14/18で得られた。8/14は5.0±5.6ヶ月以内に再発し、6/14は21.5±13.6ヶ月まで再発はなかった。
3つの摘出した眼球は虹彩毛様体腺癌と診断され、8つは虹彩毛様体腺腫だった。8/11の眼は角膜外科的傷をサンプル採取していた。
3/8の眼の外科的傷に癒着があり、3/8の眼において外科的傷内あるいは隣接して腫瘍細胞があった。
ICET切除の術後の出来は非常に不定である;複雑な切除はめったに達成できず、再発はよくある。眼の組織に対するバイオプシーの影響は癒着や他の外科的合併症を起こすかもしれない。ICETはバイオプシーで診断できるが、腺腫は腺癌と区別できない。(Sato訳)
■犬の腎細胞癌における組織学的特徴の予後的意義:70の摘出腎
Prognostic Significance of Histologic Features in Canine Renal Cell Carcinomas: 70 Nephrectomies.
Vet Pathol. March 2015;52(2):260-8.
E F Edmondson; A M Hess; B E Powers
腎細胞癌に対し腎摘出で治療した70頭の犬の回顧的研究で、組織学および臨床特徴の予後的重要性を評価した。
血尿および悪液質を呈した犬は有意に総および腫瘍特異生存性が低下していた。一変量分析で分裂指数(MI)、核の大きさ、核の多形性、腫瘍の分化、侵襲性、Fuhrmanの核異型度、淡明細胞形態が生存期間(総および腫瘍特異)に有意に関連した。
多変量Cox比例ハザードモデルを、潜在的組織学的予想変数を評価するため段階選択を使用して構築した。この多変量分析で、400倍視野10カ所の有糸分裂数と定義したMIを単独の独立した予後変数として示した。MI>30の犬の生存期間中央値は、10未満の犬の1184日と比べて187日だった。10から30の中間の犬の生存期間中央値は452日だった。
犬の腎細胞癌は組織学的特徴、組織化学および免疫組織化学染色により以下のサブタイプに分類された:(1)淡明細胞、(2)嫌色素性、(3)乳頭、(4)多胞嚢胞腎細胞癌。
淡明細胞癌は70頭中6頭(9%)で診断され、生存期間中央値の有意な減少と関係した。乳頭癌は15頭(21%)、嫌色素性は6頭(9%)、犬腎細胞癌の多胞嚢胞性変異は3頭(4%)で確認された。
それらの所見は、犬の腎細胞癌の均一な分類を容易にし、予後の情報を判定する基準を獣医病理学者に提供する。(Sato訳)
■スイスの猫の腫瘍登録:1965年から2008年のスイスにおける猫の腫瘍発生の回顧的研究
Swiss Feline Cancer Registry: A Retrospective Study of the Occurrence of Tumours in Cats in Switzerland from 1965 to 2008.
J Comp Pathol. 2015 Sep 25. pii: S0021-9975(15)00132-2. doi: 10.1016/j.jcpa.2015.08.007.
Graf R, Gruntzig K, Hassig M, Axhausen KW, Fabrikant S, Welle M, Meier D, Guscetti F, Folkers G, Otto V, Pospischil A.
腫瘍は、伴侶動物における多い死因のうちの一つである。腫瘍の疫学に関する情報は、動物の管理のためには獣医師によって役に立つだけではなく、伴侶動物における自然発生腫瘍は人と類似しており、腫瘍と戦う上で有用な情報を提供してくれる。猫の腫瘍の登録システムは少なく、多くは短期のものである。
こ
の論文は、1965年から2008年の間のスイスにおける猫の腫瘍の回顧的研究を表している。腫瘍の診断は、国際疾病分類腫瘍学 (ICD-O-3)の地理的および形態学に従って分類した。多重ロジスティク回帰分析によって、品種、性別、年齢の相関を検討した。
全部で18375の腫瘍が51322匹の猫において診断された。これらの中で、14759 (80.3%)の腫瘍は、悪性であった。ヨーロッパ短毛種と比較して、腫瘍発生について有意に低いオッズ比を示す品種もいた。腫瘍を発生する猫のオッズは、年齢とともに16歳まで上昇し続け、雌猫は雄猫と比較して腫瘍発生のリスクがより高かった。皮膚(4,970; 27.05%)が最も起こりやすい部位で、結合組織(3,498; 19.04%)、部位不明(2,532; 13.78%)、雌の生殖器(1,564; 8.51%)と続いた。最も多い腫瘍の種類は、上皮系腫瘍(7,913; 43.06%)、間葉系腫瘍(5,142; 27.98%)、リンパ腫(3,911; 21.28%)であった。(Dr.Taku訳)
■脾臓のマスに対し脾摘を行った犬の術中死に対するリスクファクター:539症例(2001-2012)
Risk factors for perioperative death in dogs undergoing splenectomy for splenic masses: 539 cases (2001-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Dec 15;245(12):1382-90. doi: 10.2460/javma.245.12.1382.
Wendelburg KM, O'Toole TE, McCobb E, Price LL, Lyons JA, Berg J.
目的:脾臓のマス病変に対し脾摘を行った犬における術中死亡率、死因、術中死に対するリスクファクターを調べる
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:539頭の犬
方法:脾臓のマスがあり、脾摘を実施した犬のカルテを再調査した。術中死亡率および死因を判定した。潜在的予後因子と術中死との関連を多変量ロジスティック回帰解析で評価した。
結果:539頭中41頭(7.6%)の犬が周術期に死亡した。血栓および凝固障害症候群と転移病変からのコントロールできない出血が最も一般的な死因だった。多変量分析に選ばれた変数のうち、入院時の血小板、入院時のPCVが30%未満かどうか、術中の心室性不整脈の発現が有意に結果と関係した。血小板数が10000個/μLの低下ごとに死亡確率は約6%増加した。PCVが30%未満の犬に対し、死亡確率は30%以上の犬の約2倍となり、術中不整脈の発現した犬の死亡確率は発現しなかった犬の約2倍となった。
結論と臨床関連:顕著な術前血小板減少あるいは貧血および術中の心室性不整脈の発現は、脾臓にマスがある犬の術中死に対するリスクファクターとして確認できた。死亡のリスクは、血栓および凝固障害症候群の予防や腹腔内出血の全ての源をコントロールすることで限られてくるかもしれない。(Sato訳)
■腫瘍随伴肥大性骨症の犬30症例
Paraneoplastic hypertrophic osteopathy in 30 dogs.
Vet Comp Oncol. 2015 Sep;13(3):157-65. doi: 10.1111/vco.12026. Epub 2013 Mar 14.
Withers SS, Johnson EG, Culp WT, Rodriguez CO Jr, Skorupski KA, Rebhun RB.
腫瘍随伴肥大性骨症(pHO)は犬やヒトの癌患者での発生が知られている。pHOの病理は犬でよく述べられている一方で、pHOに罹患している犬の本当の臨床症状に関する情報は非常に少ない。
この研究の主な目的は、pHOのより包括的な臨床像を示すことだった。
そのために、著者らは回顧的に30頭の犬を確認し、pHOの診断した日の主訴および身体検査(PE)所見に関するデータを記録した。
2つ目の目的として全ての血液検査結果もコンピューターに入れた記録から収集した。
最も一般的な臨床症状は、肢の腫れ、眼脂および/あるいは上強膜充血、跛行、元気消失だった。最も一般的な血液および血清生化学的異常は、貧血、好中球増加、ALP上昇だった。
犬のpHOのより詳細な臨床描写の提示を加えて、それらのデータは個々の症例報告で発表され、以前に述べられた血液、血清生化学、身体検査異常を支持するものである。(Sato訳)
■原発不明の転移性癌の犬21頭
Metastatic cancer of unknown primary in 21 dogs.
Vet Comp Oncol. March 2015;13(1):11-9. 29 Refs
F Rossi; L Aresu; M Vignoli; P Buracco; G Bettini; S Ferro; F Gattino; F Ghiani; R Costantino; L Ressel; E Bellei; L Marconato
この回顧的研究の目的は、原発腫瘍の解剖学的起源が見つけられず、転移ステージでバイオプシーにより悪性と診断された原発不明の転移性癌(MCUP)の犬21頭の臨床特性と治療および結果を述べることである。
全ての犬は全身CT検査を行った。シグナルメント、臨床症状の種類と持続期間、転移部位、病理結果、治療、結果を記録した。
癌(57.1%)が最もよく見られた診断で、続いて肉腫、メラノーマ、肥満細胞腫だった。犬1頭当たり疾患部位数の中央値は2か所で、骨、リンパ節、肺、脾臓が頻度の高い転移部位だった。全ての犬の生存期間中央値は30日だった。全体で、20頭(95.2%)において原発部位が確認されなかった。MCUPは種々の異なる病理学的実体を含み、予後は悪い。(Sato訳)
■脾臓の血管肉腫の治療のため脾臓摘出を実施した犬に補助化学療法を行った場合と行わなかった場合の生存期間:208症例(2001-2012年)
Survival time of dogs with splenic hemangiosarcoma treated by splenectomy with or without adjuvant chemotherapy: 208 cases (2001-2012).
J Am Vet Med Assoc. 2015 Aug 15;247(4):393-403. doi: 10.2460/javma.247.4.393.
Wendelburg KM, Price LL, Burgess KE, Lyons JA, Lew FH, Berg J.
目的 脾臓摘出単独で治療した脾臓の血管肉腫の犬の生存期間を明らかにし、予後因子を同定し、補助的な化学療法の効果を評価すること。
研究デザイン 回顧的症例シリーズ
動物 208頭の犬
方法 医療情報を調査し、長期的な追跡情報を収集し、生存データを統計学的に解析した。
結果 154頭の犬は外科手術のみで治療し、54頭は外科手術と化学療法で治療した。28頭の犬は通常の化学療法で、13頭の犬はシクロフォスファミドを用いたメトロノーム化学療法で、13頭は、通常の化学療法とメトロノーム化学療法で治療した。脾臓摘出のみで治療した犬の生存期間の中央値は1.6ヶ月であった。臨床ステージが、生存期間と有意に関連していた唯一の予後因子であった。全部の追跡期間を考慮した場合、外科手術のみで治療した犬と、外科手術と化学療法で治療した犬の間に生存期間の有意差は認められなかった。しかし、追跡期間の最初の4ヶ月間では、臨床ステージの影響を考慮すると、どちらかの化学療法を受けた犬の方が生存期間が有意に延長し(ハザード比 0.6)、通常の化学療法とメトロノーム化学療法の両方をうけた犬にも、生存期間が有意に延長した(ハザード比 0.4)。
結論と臨床的意義 臨床ステージが、脾臓の血管肉腫の犬の予後に強く関連していた。追跡期間の初期の段階において生存期間を延長するのには、化学療法は効果的であった。ドキソルビシンを用いた通常の治療法とシクロフォスファミドを用いたメトロノーム療法を組み合わせることは、それぞれの治療法単独よりもより効果的であるようであったが、現行の治療法による生存期間を延長するのは中等度であった。(Dr.Taku訳)
■犬の口腔線維肉腫:65症例の回顧的分析(1998-2010)
Canine oral fibrosarcomas: a retrospective analysis of 65 cases (1998-2010).
Vet Comp Oncol. March 2015;13(1):40-7.
H Gardner; J Fidel; G Haldorson; W Dernell; B Wheeler
この回顧的研究の目的は、生存期間中央値、無憎悪期間(PFS)に関する犬の口腔線維肉腫(FSA)の治療の結果を報告することと、グレードは生存期間中央値に関する予後を示すのかどうか報告することだった。
WSU VTHで1998年6月から2010年3月の間に口腔線維肉腫の犬が65頭訪れた。
生存期間中央値の有意な指標は、部位(P=0.0099)、腫瘍の大きさあるいは口腔ステージ(P=0.0312)、手術の種類(P=0.0182)、マージン(P=0.0329)およびグレード(P=0.0251)だった。
PFSの有意な指標は、部位(P=0.0177)および放射線プロトコール(P=0.0343)だった。外科手術と放射線の組み合わせは、長期生存期間中央値505日(P=0.0183)とPFS301日(P=0.0263)の最も強い指標だった。
犬の口腔線維肉腫の治療で、外科手術と放射線療法の組み合わせで最も長い生存期間中央値が得られた。(Sato訳)
■単独治療として1%5-フルオロウラシル局所使用による角膜扁平上皮癌の治療
Treatment of corneal squamous cell carcinoma using topical 1% 5-fluorouracil as monotherapy.
Vet Ophthalmol. 2015 Jun 15. doi: 10.1111/vop.12290. [Epub ahead of print]
Dorbandt DM, Driskell EA, Hamor RE.
この報告は、犬の角膜扁平上皮癌(SCC)に対する単独治療として1%5-フルオロウラシル点眼の使用について論ずる。
12歳去勢済みのオスのパグの境界明瞭、中心、直径3mm、薄いピンク、盛り上がった右の角膜マスを評価した。鎮静なしで点眼麻酔後、#64ビーバーブレードを用いて切開性バイオプシーを実施した。バイオプシーの病理組織評価で角膜SCCの確定診断を得た。
1%5-フルオロウラシル眼軟膏を右眼に1日4回2週間使用し、その後2週間は休薬し、そして再び1日2回で2週間治療した。治療中止後10か月まで再発しなかった。
角膜SCCに罹患した犬において、1%5-フルオロウラシルの局所単独療法は副作用が少ない実行可能な費用対効果の高い治療オプションかもしれない。この化学療法剤は角膜色素沈着に対しても有効かもしれない。この症例で長期シクロスポリン療法が角膜SCCの病因に寄与するということはなかった。(Sato訳)
■胸腺の上皮性腫瘍を切除した80頭の犬と32頭の猫における周術期死亡率と長期生存性
Perioperative Mortality and Long-Term Survival in 80 Dogs and 32 Cats Undergoing Excision of Thymic Epithelial Tumors.
Vet Surg. 2014 Nov 3. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12304.x. [Epub ahead of print]
Garneau MS, Price LL, Withrow SJ, Boston SE, Ewing PJ, McClaran JK, Liptak JM, Berg J.
目的:胸腺の上皮性腫瘍(TETs)の外科的切除を行った犬と猫の周術期死亡率、長期生存性、死亡原因、予後因子を調べる
研究計画:多施設ケースシリーズ
動物:80頭の犬と32頭の猫
方法:2001年から2012年の間にTETの外科的切除を行った犬と猫について追跡調査の情報を入手した。
結果:周術期死亡率は犬で20%、猫で22%だった。周術期死亡率に関して独立したリスクファクターは認められなかった。全ての犬に対し算出した生存期間中央値は1.69年(95%CI、0.56-4.32)で、1年生存率と4年生存率は55%(95%CI、44-67)と44%(95%CI、32-56)だった。全ての猫に対し算出した生存期間中央値は3.71年(95%CI、0.56- unestimatable)で、1年および4年生存率は70%(95%CI、53-87)と47%(95%CI、0-100)だった。退院した動物のうち、42%の犬と20%の猫は最終的にTET関連で死亡した。腫瘍随伴症候群が見られること(危険率5.78、95%CI、1.64-20.45、P=0.007)、あるいは不完全な組織学的マージン(危険率6.09、95%CI、1.50-24.72、P=0.01)は独立して犬の生存性低下に関係していた。猫に関して生存の有意な予測値は見られなかった。化学療法あるいは放射線療法の効果に関する結論は出せなかった。
結論:TETsに対する手術を行った犬と猫で周術死の相当なリスクがある一方で、退院した多くの動物は長期生存している。腫瘍随伴症候群の犬やマージンが不完全な犬の生存性は有意に減少する。(Sato訳)
■犬の移行上皮癌に関連した細菌性尿路感染
Bacterial Urinary Tract Infections Associated with Transitional Cell Carcinoma in Dogs.
J Vet Intern Med. 2015 May 1. doi: 10.1111/jvim.12578. [Epub ahead of print]
Budreckis DM, Byrne BA, Pollard RE, Rebhun RB, Rodriguez CO Jr, Skorupski KA.
背景 尿路感染(UTI)は、移行上皮癌 (TCC)の犬においてよくあると考えられているが、頻度と要因については報告されていない。
目的 TCCの犬におけるUTIの頻度とそれに関連する細菌を明らかにし、要因を同定すること。
動物 泌尿生殖器のTCCの病歴のある85頭の犬で化学療法を行っており、最低1回は尿培養を実施した犬。
方法 カルテと培養の結果を回顧的に調査し、可能であれば超音波所見も確認した。培養が陽性であることとの相関について、臨床的な因子を統計学的に評価した。
結果 55%(85頭中47頭)は、治療の間に少なくとも1度は陽性の結果が得られた。雌犬 (80%,50頭中40頭)は、雄犬(29%,35頭中10頭)よりも少なくとも1度は陽性の結果が得られることが多かった。超音波検査からは、雌犬が雄犬に比べて、尿道(74%,42頭中31頭)または膀胱三角(71%,42頭中30頭)に腫瘍が起こりやすいことがわかった(それぞれ32%,28頭中9頭、43%,28頭中12頭)。もっともよく分離された微生物はStaphylococcus spp. (23.9%,121頭中29頭)とEscherichia coli (19.8%,121頭中24頭)であった。TCCが尿道に生じていた犬は、尿道に生じていなかった犬よりも、少なくとも1つ以上培養が陽性になりやすかった(75%,40頭中30頭に対して、30%,30頭中9頭)。
結論 尿路感染はTCCの犬においてよく認められ、TCCの犬において細菌性の膀胱炎を定期的にモニターすることの重要性がわかった。さらに、腫瘍の位置や性別のような臨床要因が、培養陽性を示す予測になりえ、UTIのリスクを臨床医が評価するのに役立つであろう。(Dr.Taku訳)
■犬と猫の腫瘍随伴症候群
Paraneoplastic syndromes in dogs and cats
In Pract. October 2014;36(9):443-452.
James Elliott
腫瘍随伴症候群(PNSs)は腫瘍の間接的な影響として述べられ、一般的に腫瘍産生物やホルモン、成長因子やサイトカインのような生物学的作用物質の放出によります。
PNSsは腫瘍性疾患の最初の所見ということも多く、そのため、それらの症候群の知識や腫瘍の種類に関係するものは、早期診断の手助けになることもある。
基礎にある腫瘍の治療でPNSsは解消するはずで、逆に基礎の腫瘍の再発で再度出現すると思われる。
時に腫瘍自体よりも有意に病的状態を起こしやすく、臨床的に適切な治療あるいは緩和に向けて対応すべきである。さらに問題はPNSsによる症状が、化学療法のような治療の副作用に見えることもあり、臨床的決断を複雑にする。
この文献は、異なる種類のPNSsと各症例に対する治療オプションを紹介する。(Sato訳)
■犬の下部尿路の癌の治療にカルボプラチンを動脈内または静脈内投与した場合の腫瘍の初期反応性
Early Tumor Response to Intraarterial or Intravenous Administration of Carboplatin to Treat Naturally Occurring Lower Urinary Tract Carcinoma in Dogs.
J Vet Intern Med. 2015 Apr 21. doi: 10.1111/jvim.12594. [Epub ahead of print]
Culp WT, Weisse C, Berent AC, Reetz JA, Krick EL, Jackson DE, Kass PH, Clifford CA, Sorenmo KU.
背景 下部尿路の悪性腫瘍の生存期間と腫瘍の反応性は、現在の治療が無数にあるにも関わらず、よくない。そのため、化学療法の動脈内投与 (IAC) などの他の治療法の評価が必要である。
目的 IACの超選択的カテーテル挿入の手技を述べることと、IACと化学療法の静脈内投与 (IVC)の後に超音波検査によって最初の腫瘍の反応性を評価すること
動物 IVC(15頭)またはIAD(11頭)で治療した下部尿路腫瘍の飼い犬
方法 回顧的研究。IACの症例では超選択的アクセスを使用して化学療法を投与するのに、頸動脈あるいは大腿動脈を使った動脈アプローチを使用した。カルテを調査して、データを収集し、記録された変動について統計学的に解析した。
結果 動脈内の化学療法は、すべての症例においてうまく投与可能であった。IVC群と比較して、IAC群では表面の長径を測定しても有意な減少が認められた(P = .013)。IAC群は、RECISTガイドラインの変法を用いても腫瘍の反応性が有意に認められた(P = .049)。IAC群の犬は、有意に貧血(P = .001)、倦怠感(P = .010)、食欲低下(P = .024)になりにくかった。
結論と臨床的意義 本研究から、下部尿路腫瘍へのIACを実施する実現可能性と効果を明らかにできた。経過観察期間が短く、長期的な予後や生存に対する影響というものを確認できていないので、さらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■猫の体幹の注射部位肉腫の広範囲切除後の創傷治癒合併症にかかわる因子
Factors influencing wound healing complications after wide excision of injection site sarcomas of the trunk of cats.
Vet Surg. 2014 Oct;43(7):783-90. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12217.x. Epub 2014 May 26.
Cantatore M, Ferrari R, Boracchi P, Gobbetti M, Travetti O, Ravasio G, Giudice C, Di Giancamillo M, Grieco V, Stefanello D.
目的:猫の注射部位肉腫(ISS)の多様式治療の要は広範囲な外科切除である。この研究はISSの広範囲な切除を行った猫で、創傷治癒の合併症(WHC)の発症に影響する潜在的な因子を分析するために行った。
研究計画:回顧的ケースシリーズ
動物:CT造影検査で計画後、広範囲切除を行った体幹にISSのある猫49頭
方法:総、メジャー、マイナーな創傷治癒の合併症(WHC)に対する共変動(性別、年齢、体重、BCS、部位、臨床的寸法(CD)、CTでの寸法(CTD)、組織型、手術時間、外科的マージンの状況、局所麻酔)の予測的影響を一変量、二変量解析で評価した。総WHCに対してはCoxモデルを使用し、メジャーおよびマイナーWHCにはFineおよびGrayモデルを使用した。手術時間、臨床および画像変数との関連を評価した。
結果:総およびメジャーWHCのリスクに関係する主な因子は手術時間だった。一変量解析を基に、再建のパターン、CTD、CD、体重、BCSはメジャーWHCの有意な予測因子であったが、二変量解析で他の臨床的変数に対し補精したとき、これは確認されなかった。手術時間は、切除パターンおよび腫瘍のCTDの幅により影響を受けた。
結論:複雑な手術方法の結果として手術時間の増加は、創傷治癒の合併症発生に対する一番の予測因子だった。(Sato訳)
■原発性膀胱癌の犬に対するビノレルビンレスキュー療法
Vinorelbine rescue therapy for dogs with primary urinary bladder carcinoma.
Vet Comp Oncol. 2013 Aug 25. doi: 10.1111/vco.12065. [Epub ahead of print]
Kaye ME, Thamm DH, Weishaar K, Lawrence JA.
この研究で、原発性膀胱癌の犬に対する緩和レスキュー療法としてビノレルビンの抗腫瘍活性と毒性を評価した。
過去の化学療法に反応しない13頭、化学療法が未経験の1頭が参加した。もし許容するならば経口抗炎症薬と併用して、ビノレルビン(15mg/m2 IV)を静脈投与した。ビノレルビンは中央値6回(範囲:1-16)投与した。
2頭(14%)は部分反応、8頭(57%)は安定状態を示した。臨床症状の主観的改善は11頭(78%)で認められた。有害事象は軽度で、主に血液学的なものだった。進行までの期間の中央値は93日(範囲:20-239日)だった。全ての犬の生存期間中央値は187日だった;それまでに治療していた13頭の生存期間中央値は207日だった。
犬の原発性膀胱癌の管理にビノレルビンは有用と思われ、前向き研究で評価すべきである。(Sato訳)
■一次診療における犬軟部組織肉腫の管理:350症例の結果
Canine soft tissue sarcoma managed in first opinion practice: outcome in 350 cases.
Vet Surg. 2014 Oct;43(7):774-82. doi: 10.1111/j.1532-950X.2014.12185.x. Epub 2014 Apr 12.
Bray JP, Polton GA, McSporran KD, Bridges J, Whitbread TM.
目的:一次診療で軟部組織肉腫と診断され治療した犬の結果を調査する
研究計画:回顧的症例対照研究
動物:原発性軟部組織肉腫の犬(n=350)
方法:全ての犬に対し、臨床情報と最終結果を質問するため、過去に批准する質問票を全ての獣医師に送付した。1人の病理学者により組織切片を再検討した。
結果:多くの外科医は予定したものではなく、術前の組織学的診断がある犬は15頭(4%)、細胞診を行っていた犬は59頭(16.8%)だけだった。全ての犬の生存期間中央値は5年目70%比例生存で到達しなかった。73頭(20.8%)の犬は局所再発した。実施した切除の範囲は生存性の改善(P=0.2)あるいは腫瘍再発に関係しなかった(P=0.8)。年齢8歳未満(χ(2)=16.6;P<0.01)、大きさが5cm未満(χ(2)=9.6;P=0.002)、孤立性腫瘍(χ(2)=16.6;P<0.001)が生存性を改善した。多変量分析において、高グレードの腫瘍は再発が有意だった(HR5.8;P<0.001;95%CI:2.2-14.8)。一次診療施設において管理される攻撃性の少ない腫瘍への選択バイアスの所見が確認された。
結論:全ての軟部組織肉腫に対し、マージンを広く取ることは結果の主要な決定因子ではない。獣医師は外科的マージンをそれに応じて調節するため、治療前に推定軟部組織肉腫の生物学的挙動をより理解しておく必要がある。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた骨髄関与を含む広範囲に転移した悪性間葉細胞腫
Malignant mesenchymoma with widespread metastasis including bone marrow involvement in a dog.
Vet Clin Pathol. September 2014;43(3):447-52.
Kristen M Weishaar; Elijah F Edmondson; Douglas H Thamm; Christine S Olver
オスのゴールデンレトリバーの左肩上から首の下部に広がる長期に存在し、最近急速に大きくなったマスの評価に来院した。
過去のマスの吸引では脂肪腫だった。マスは外科的に切除され、病理組織検査で骨格外骨肉腫と診断された。
術後、その犬はカルボプラチンとメトロノームシクロフォスファミドの化学療法プロトコールを開始した。カルボプラチン投与から14日目、好中球減少、貧血、血小板減少が見られた。好中球減少は解消したが、貧血と血小板減少は進行した。骨髄吸引で赤血球系形成不全、早期前駆細胞の優勢な骨髄系過形成、奇異や分類できないと報告された総集団の20%を占める細胞の部分集団が見られた。それらの細胞は事実上分離され、由来は造血性と考えられた。その犬は臨床状況の悪化により安楽死された。
剖検により肺、肝臓、腎臓、心臓、骨髄を含む広範囲の転移が見つかった。腫瘍病変の病理組織検査で悪性間葉細胞腫に一致する脂肪肉腫と骨肉腫の2つの悪性細胞集団を認めた。しかし、2つの別々の腫瘍形成過程の可能性は最終的に除外できない。
これは、1頭の犬の悪性間葉細胞腫の骨髄転医に関する最初の報告である。(Sato訳)
■犬の鼻部癌に対する放射線照射とフィロコキシブによる治療
COMBINATION OF RADIATION THERAPY AND FIROCOXIB FOR THE TREATMENT OF CANINE NASAL CARCINOMA.
Vet Radiol Ultrasound. 2015 Feb 21. doi: 10.1111/vru.12246.
Cancedda S, Sabattini S, Bettini G, Leone VF, Laganga P, Rossi F, Terragni R, Gnudi G, Vignoli M.
癌は犬の鼻洞腫瘍の三分の二を占める。標準的な治療は放射線治療(RT)であるが、治療後の局所再発率は高い。シクロオキシゲナーゼ-イソ型-2(COX-2)は犬の鼻部癌の71-95%に発現し、腫瘍の成長と血管新生にかかわっている。従ってCOX-2の抑制は結果の改善に合理的だと思える。
組織学的に確認し、まだ治療していない鼻部癌を持つ犬を無作為に選択的COX-2阻害剤(フィロコキシブ)と緩和的RTの組み合わせ(グループ1)、あるいはRTとプラセボの組み合わせ(グループ2)で治療した。犬は血液検査、尿検査、CTで定期的にモニターした。オーナーには毎月QOLに関して答えてもらった。
24頭の犬が前向きに登録された。Adams modified systemでステージ1は5頭、ステージ2は5頭、ステージ3は3頭、ステージ4は11頭だった。2頭は領域リンパ節に転移していた。無進行期間と総生存期間の中央値は、グループ1(n=12)で228日と335日、グループ2(n=12)で234日と244日だった。それらの差は統計学的に有意ではなかった。領域リンパ節の関与は無進行期間および総生存期間に有意に関係した(P=0.004)。グループ1のQOLは有意に改善した(P=0.008)。特に活動性と食欲に有意差が見られた。
鼻部癌の犬において無進行期間と総生存期間に有意な延長は見られなかったが、RTと組み合わせたフィロコキシブは安全で生活の質を改善した。(Sato訳)
■心臓の血管肉腫と推定された犬に対するドキソルビシン化学療法
Doxorubicin chemotherapy for presumptive cardiac hemangiosarcoma in dogs
Vet Comp Oncol. 2014 Dec 18. doi: 10.1111/vco.12131.
Mullin CM, Arkans MA, Sammarco CD, Vail DM, Britton BM, Vickery KR, Risbon RE, Lachowicz J, Burgess KE, Manley CA, Clifford CA.
心臓の血管肉腫(cHSA)と推定された犬64頭をドキソルビシン(DOX)単剤で治療した。
客観的反応率(CR+PR)は41%で、生物学的反応率(CR+PR+SD)、あるいは臨床的有益性は68%だった。治療した犬の無憎悪期間(PFS)中央値は66日だった。この群の生存期間中央値(MST)は116日で、無処置のコントロール犬の12日と比べて有意に改善した(P=0.0001)。生物学的反応はPFS(P<0.0001)および総生存期間(P<0.0001)の改善と有意に関係した。PFSに負に関係する変数として腫瘍がより大きいことが一変量分析で確認された。高率な臨床的有益性およびMSTの改善は、ドキソルビシンが犬の心臓血管肉腫に活性を持つことを示す。(Sato訳)
■犬急性白血病の予後因子:回顧的研究
Prognostic factors in canine acute leukaemias: a retrospective study.
Vet Comp Oncol. 2015 Jan 26. doi: 10.1111/vco.12136. [Epub ahead of print]
Novacco M, Comazzi S, Marconato L, Cozzi M, Stefanello D, Aresu L, Martini V.
犬の急性白血病(ALs)は予後が悪く、生存期間(ST)は数週間あるいは数か月と報告されている。また、予後因子を評価した臨床研究は不足している。
この研究の目的は、ALの犬のSTを予測する変数を回顧的に評価することと、結果と治療プロトコールの相関を確認することである。
診断とALサブタイプへの細分類を血液学的所見、形態学的評価およびフローサイトメトリックによる免疫表現を基に行った。
来院時のALサブタイプの臨床-病理学的特徴は文献で述べられていることと一致した。来院時の正常な好中球数は有意にSTを延長させた(P=0.027)。また、貧血の犬は貧血ではない犬と比べて生存期間がより短いという傾向があり、化学療法プロトコールでシトシンの取り込みは中程度生じたが、STの中央値は有意に増加しなかった。
我々の結果を確認するため、結果を改善するため、治療を標準化する追加の前向き研究が必要である。(Sato訳)
■組織学的に胃の腫瘍と確定した犬と猫における内視鏡および超音波所見の比較
Comparison of endoscopy and sonography findings in dogs and cats with histologically confirmed gastric neoplasia.
J Small Anim Pract. 2015 Jan 27. doi: 10.1111/jsap.12324.
Marolf AJ, Bachand AM, Sharber J, Twedt DC.
目的 組織学的に胃の腫瘍と確定した犬と猫において内視鏡と超音波所見を比較すること
方法 2つの検査において、胃の壁の異常が存在するか、部位、腫瘍の見え方を評価するために腹部超音波と内視鏡検査を同時に行っている症例の回顧的解析。小腸、肝臓、脾臓、リンパ節の超音波所見について記録した。それぞれの検査所見の比較をし、腫瘍の予測ができる特徴について評価した。
結果 全17頭の犬と5頭の猫が含まれ、全部の胃の腫瘍のうち、超音波検査によって50%が検出でき、内視鏡によって95%が検出できた。リンパ腫は、超音波によって見逃されるもっとも一般的な腫瘍であった。36%の症例において超音波と内視鏡の腫瘍の位置は一致していた(Cohen's kappa=0.25)。超音波で正常な小腸であった動物は、胃の腫瘍の可能性が統計学的に高かった(P=0.035)。すべての猫はリンパ腫であった(P<0.001)。
臨床的意義 超音波と内視鏡は、胃の腫瘍の診断に有用である。内視鏡は、胃の腫瘍を同定するのにより正確であるが、超音波によって胃の腫瘍を臨床的により疑うことができ、内視鏡の前に情報を集めるという点でより侵襲性の低い方法である。胃内のガスや液体によって超音波の評価による診断能力が減るだろう。(Dr.Taku訳)
■犬の血管肉腫の補助治療としてドキソルビシン-シクロフォスファミドとドキソルビシン-ダカルバジンの比較
Comparison of doxorubicin-cyclophosphamide with doxorubicin-dacarbazine for the adjuvant treatment of canine hemangiosarcoma.
Vet Comp Oncol. 2015 Jan 26. doi: 10.1111/vco.12139. [Epub ahead of print]
Finotello R, Stefanello D, Zini E, Marconato L.
犬の血管肉腫は血管内皮からの腫瘍で、攻撃的な生物学的挙動を持ち、診断後12か月生存する犬は10%以下である。治療選択は外科手術後、ドキソルビシンが入った補助的化学療法である。
著者らは補助的ドキソルビシンとダカルバジン(ADTIC)と従来のドキソルビシンとシクロフォスファミド(AC)治療を前向きに比較し、この方法の安全性と生存期間、転移までの時間(TTM)を延長するかどうか評価した。
27頭の犬で研究した;ステージングの精密検査後、18頭はACで、9頭はADTICで治療した。
TTMと生存期間の中央値は、ACの犬よりもADTICの犬の方が長かった(112日v.s.>550日、P=0.021と142日v.s.>550日、P=0.011)。両プロトコール共に耐容性があり、減用量や投与間隔を延長することはなかった。血管肉腫の犬においてドキソルビシンとダカルバジンを組み合わせたプロトコールは安全で、TTMと生存期間を延長させる。(Sato訳)
■片側骨盤切除:犬84頭および猫16頭の結果
Hemipelvectomy: outcome in 84 dogs and 16 cats. A veterinary society of surgical oncology retrospective study.
Vet Surg. January 2014;43(1):27-37.
Jonathan P Bray; Deanna R Worley; Ralph A Henderson; Sarah E Boston; Kyle G Mathews; Giorgio Romanelli; Nicholas J Bacon; Julius M Liptak; Tim J Scase
目的:腫瘍の治療で片側骨盤切除術を行った犬と猫の臨床所見、周術合併症および長期結果を報告する
研究計画:複数施設による回顧的ケースシリーズ。
動物:犬(n=84)と猫(n=16)
方法:参加した施設で片側骨盤切除を行った犬と猫の医療記録を調べた(2000年1月から2009年12月)。この研究時の術後の経過と現在の状況を、医療記録あるいは紹介元獣医師あるいはオーナーへの電話による聞き取りで判定した。
結果:合併症はまれで、通常マイナーなものだった。出血が主な術中合併症で、2頭の犬は輸血を必要とした。1頭の犬は瘢痕ヘルニアを起こした。犬で血管肉腫は予後が最も悪く、生存期間中央値(MST)は179日だった。軟骨肉腫(1232日)、骨肉腫(533日)、軟部組織肉腫(373日)のMSTに統計学的有意差はなかった。全ての腫瘍タイプの局所再発の無症候期間(DFI)中央値は257日だった。猫の75%は1年生存し、犬よりも有意に長かった。
結論:多くの腫瘍タイプの生存期間は良い可能性があるが、完全な腫瘍除去を目指すために外科マージンは注意深く評価すべきである。局所再発や遠隔転移の確率を減らすため、特に犬に対しては補助療法が必要かもしれない。(Sato訳)
■オーナーへの調査による主要および補助的放射線療法におけるQOL
[Quality of life in primary and adjuvant veterinary radiation therapy. An owner survey].
Tierarztl Prax Ausg K Kleintiere Heimtiere. 2014;42(3):157-65.
Hill M, Hirschberger J, Zimmermann K, Dorfelt R, Reese S, Wergin M.
目的:ミュンヘンの大学で2011年から小動物への外照射療法が使用されている。この研究の目的は、治療したペットのQOLとオーナーの満足度を評価する。
素材と方法:2011年4月からミュンヘン大学の小動物病院で主要あるいは補助的放射線療法を行った全てのペット(n=91)のオーナーに対しアンケートを送付した。
結果:68人(74.7%)のオーナーから返答があった。彼らの判断によると、41症例(60.3%)は治療後QOLが改善したが、13症例(19.1%)は低下したと書かれていた。オーナーの多く(88.2%)は再度の放射線療法を望むということだった。
結論:動物のQOLの改善はオーナーの高い満足度(83.8%)と関連し(P=0.003)、放射線療法への前向きな態度と関連している(p=0.027)。
臨床関連:それらのオーナーに対して示された分析では、放射線療法は多くの時間と費用が掛かるにもかかわらず、価値ある治療ということだった。(Sato訳)
■二クローン性多発性骨髄腫の犬の長期生存した一例
Long-term survival of a dog with biclonal multiple myeloma
Aust Vet Pract. June 2014;44(2):621-625. 30 Refs
P M Brown; N I Christensen; V Langova
8歳オスの去勢済みゴールデンレトリバーの下痢、食欲不振、間欠的前肢跛行、血清高ガンマグロブリン血症を評価した。臨床症状、血清生化学検査、血清蛋白電気泳動、ベンスジョーンズ蛋白尿、骨髄細胞診を基に多発性骨髄腫と診断した。
初期治療(ドキソルビシン、メルファラン、プレドニゾロン)で血清グロブリン濃度は最小限の低下しか見られなかったが、跛行や下痢の解消といった臨床症状の改善はあった。ロムスチンの使用開始から良い反応(血清グロブリン濃度低下)が見られた。その後、正常な血清グロブリン濃度にもかかわらず、進行性の脾臓および肝臓をまきこむ病理組織所見を認めた。
この報告の犬は、過去に報告された二クローン性ガンマグロブリン異常の7症例で最長の生存期間175日よりもさらに長い1156日生存した。(Sato訳)
■犬の異所性甲状腺癌の外科的治療中の舌骨装置の部分切除:5症例(2011-2013)
Partial resection of the hyoid apparatus during surgical treatment of ectopic thyroid carcinomas in dogs: 5 cases (2011-2013).
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2014;244(11):1319-24.
Milan Milovancev; David M Wilson; Eric Monnet; Bernard Seguin
目的:舌骨装置に侵入した異所性甲状腺癌の犬において、部分的舌骨切除と共に腫瘍切除を実施した時の周術所見と術後合併症を評価する
計画:回顧的ケースシリーズ
動物:5頭の犬
方法:舌骨装置内に侵入した異所性神経内分泌腫瘍で部分的舌骨切除と共に腫瘍切除を行った犬のカルテから、周術および術後所見と結果に関する情報を再調査した。各症例の術中、甲状舌骨、角舌骨、舌骨上骨(舌骨装置関与の程度に依存)を鋭く横断し腫瘍のひとまとめでの除去を可能にした。甲状舌骨、角舌骨、あるいは舌骨上骨(どこまで切ったかによる)の同側の切端を、ポリプロピレン縫合糸で単純結節縫合によりお互い縫合した。
結果:全ての部分的舌骨切除処置は外科的あるいは麻酔の合併症もなく完了した。全頭、術後7-24時間の間に飲食および飲水が可能で、嚥下困難、流涎あるいは異常な舌の動きの症状はなかった。5頭の追加情報は173日から587日の期間で得られ、最後の追跡調査時に4頭は生存していた。1頭は元気消失、食欲不振、高カルシウム血症のために術後587日で安楽死された。
結論と臨床関連:この限られた症例のシリーズから、異所性甲状腺癌の切除中の舌骨装置の部分切除は良好な耐容性を示し、非常に良好な機能的結果を示すと示唆された。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫の悪性度判定に対する治療前バイオプシーの診断精度
Diagnostic accuracy of pre-treatment biopsy for grading soft tissue sarcomas in dogs.
Vet Comp Oncol. June 2014;12(2):106-13.
J A Perry; W T N Culp; D D Dailey; J C Eickhoff; D A Kamstock; D H Thamm
犬の軟部組織肉腫(STS)の局所再発や転移の可能性に対して、組織学的悪性度は重要な予後因子である。腫瘍の悪性度を確認する治療前のバイオプシーは、予後判定や局所コントロールに必要な外科的マージンの判定に役立つと思われる。
この研究の目的は、犬の軟部組織肉腫に対して種々の治療前のバイオプシー方法(くさび、パンチ、ニードルコア)の精度を評価することだった。
治療前のバイオプシーでSTSを診断し、切除バイオプシーで確認した68頭の犬の医療記録を評価した。切除と治療前バイオプシーの悪性度の一致は59%だった。一致の見られなかった41%のうち、治療前バイオプシーの29%は悪性度を過小評価し、12%は過大評価した。バイオプシーの方法は悪性度の一致に有意な影響を及ぼさなかった。
それらのデータを基に、ニードルコアバイオプシーはオープンバイオプシーと比較して精度は同様と思われるが、治療前バイオプシーにより判定した悪性度は一般に注意して解釈すべきである。(Sato訳)
■脳の髄膜腫の23症例の外科的切除
Surgical resection of twenty-three cases of brain meningioma.
J Vet Med Sci. April 2014;76(3):331-8.
Atsuki Ijiri; Ken Yoshiki; Shizuka Tsuboi; Hitoshi Shimazaki; Hideo Akiyoshi; Tetsuya Nakade
この研究で犬と猫のMRI走査中の脳の髄膜腫切除手術の有効性を報告する。
研究対象は2006年から2008年の間に髄膜腫と診断した犬と猫の23症例だった。年齢は8-16歳だった。12頭がオス、11頭がメスだった。手術前に髄膜腫の診断で撮影した最初のMRIに従い、各症例を適切に開頭した。一度硬膜を暴露し、ガイドとして腫瘍にMRIバイオプシー針を設置した。その針で腫瘍の位置を確認するため、術中に1度目のMRIシーケンスを行った。3次元の腫瘍の拡がりを明らかにするため、多断面再構成により画像を処理して映し出した。腫瘍の中央にソノペットを使用して内部を破壊し、腫瘍全体から圧を開放した。脳組織と腫瘍の間にスペースを作り、血管を処理して注意深く切除した。この方法をMRIで腫瘍を確認しながら完全に除去するまで繰り返した。
23頭中16頭は術後2年以上生存した。他17頭は2年以内に他の疾患で死亡した。
術中にMRIナビゲーションを使用する著者らの方法は、外科的パフォーマンスを改善し、患者に対し、生存期間を延長することができた。術中に複数回のMRI走査を円滑に行うためには、熟練のアシスタントが必要である。(Sato訳)
■犬の眼窩褐色脂肪腫の臨床、形態、免疫組織化学的特徴
Clinical, morphologic, and immunohistochemical features of canine orbital hibernomas.
Vet Pathol. May 2014;51(3):563-8.
M Ravi; C S Schobert; M Kiupel; R R Dubielzig
褐色脂肪腫はヒトや様々な動物種に発生する珍しい褐色脂肪の良性腫瘍である。犬やヒトあるいは他の動物の眼窩において観察されている。
ここでは犬の眼窩領域において発生した7つの褐色脂肪腫の臨床、光学および電子顕微鏡、免疫組織化学的特徴を報告する。
それらの腫瘍は犬種の偏りがない成犬に発生した。病犬の平均年齢は10.4歳(範囲、8-13歳)だった。全ての腫瘍は脂肪細胞に似た空胞のある顆粒性好酸性細胞質を持つ円形から多角腫瘍細胞を主とする柔らかい小葉性マスを呈した。細胞質は密の基質と不明瞭なクリスタを有する多数のミトコンドリアを含んでいた。免疫組織化学的評価は、褐色脂肪の分化と一致する脱共役蛋白質1(UCP-1)を持つすべての症例から腫瘍細胞の陽性標識を確認した。面白いことに、まれに腫瘍細胞はmyogeninとmyoDも発現し、おそらくは腫瘍性褐色脂肪および骨格筋細胞に対する一般的な前駆細胞と示唆された。(Sato訳)
■甲状腺癌の犬における臨床的、病理学的、免疫組織化学的な予後因子
Clinical, Pathologic, and Immunohistochemical Prognostic Factors in Dogs with Thyroid Carcinoma.
J Vet Intern Med. 2014 Sep 24. doi: 10.1111/jvim.12436.
Campos M, Ducatelle R, Rutteman G, Kooistra HS, Duchateau L, de Rooster H, Peremans K, Daminet S.
背景 甲状腺腫瘍の犬の予後マーカーは限られている。
仮説/目的 甲状腺腫瘍の犬における臨床的、病理学的、免疫組織化学的な予後因子を同定すること
動物 70頭の甲状腺腫瘍の犬
方法 回顧的研究。追跡情報とホルマリン固定パラフィン包埋組織サンプルがある甲状腺腫瘍の犬を用いた。免疫組織化学染色(IHC)は、サイログロブリン、カルシトニン、Ki-67、E-カドヘリンについて実施した。全ての腫瘍サンプルについて、腫瘍の特徴(直径、大きさ、部位、シンチグラフイーの取り込み、甲状腺機能、IHC)と、局所浸潤性および転移についての関係を検討した。甲状腺摘出による治療を行なった44頭の犬を生存解析に用いた。
結果 40頭(71%)の犬は、分化した濾胞性甲状腺癌 (dFTC)であり20頭(29%)は甲状腺髄様癌 (MTC)であった。診断時には、腫瘍の直径(P = .007; P = .038)、腫瘍の大きさ(P = .020)、腫瘍の可動性(P = .002)、異所性であること(P = .002)、濾胞由来であること(P = .044)、Ki-67 (P = .038)は、局所浸潤していることと関連しており、腫瘍の直径(P = .002)、腫瘍の大きさ(P = .023)、両側性(P = .012)であることは、遠隔転移があることと関連していた。44頭の犬(28頭はdFTCで、16頭はMTC、ステージI-III)は甲状腺摘出を実施した。結果は、dFTCとMTCの間で同等であった。肉眼的に血管浸潤があること(P = .007)と組織学的に血管浸潤があること(P = .046)は、それぞれ独立して、無病生存率の負の予後因子であった。来院までの期間、組織学的な血管浸潤、Ki-67は転移までの期間と負に関連しており、来院までの期間は再発までの期間と負の相関があったにもかかわらず、独立した予測因子は見つからなかった。E-カドヘリン発現は、転帰と関係なかった。
結論と臨床的意義 飼い主と臨床医に対して必要な情報をあたえる予後因子が同定された。(Dr.Taku訳)
■肝細胞癌がある場合とない場合のスコティッシュテリアにおける進行性空胞性肝症の臨床的な特徴:114頭(1980年-2013年)
Clinical features of progressive vacuolar hepatopathy in Scottish Terriers with and without hepatocellular carcinoma: 114 cases (1980-2013).
J Am Vet Med Assoc. 2014 Oct 1;245(7):797-808. doi: 10.2460/javma.245.7.797.
Cortright CC, Center SA, Randolph JF, McDonough SP, Fecteau KA, Warner KL, Chiapella AM, Pierce RL, Graham AH, Wall LJ, Heidgerd JH, Degen MA, Lucia PA, Erb HN.
目的 肝細胞癌(HCC)がある場合とない場合の進行性空胞性肝症(VH)のスコティッシュテリアのシグナルメント、臨床的な特徴、臨床病理学的所見、肝臓の超音波所見、内分泌検査、治療の反応、死亡時の年齢を明らかにすること。
デザイン 後向き症例研究
動物 114頭の進行性のVHをもつスコティッシュテリア
方法 瀰漫性にグリコーゲン様VHと病理組織学的に診断されたスコティッシュテリアの成犬(1歳以上)について、1980年-2013年の電子情報を検索した。肝臓の組織が利用できるものについては、HCCの有無と瀰漫性のVHを確定するために再評価した。HCCの8頭だけが、腫瘍性の組織が入手できた。身体検査、臨床病理学的所見、治療、生存データを得た。
結果 VHの114頭中39頭(34%)の犬は、手術か剖検時、または腹部超音波検査によってHCCが明らかになった。病理組織学的な所見は、HCCは異型な肝細胞の集まりにから生じるようであることを示唆していた。HCCがあるVH罹患犬とHCCがなくてVH罹患犬の間には、臨床病理学的な所見や死亡時の年齢に有意差はなかった。肝臓の銅濃度が高値を示した26頭の犬のうち15頭(58%)は銅関連性の肝症と一致した病理組織学的な特徴をもっていた。副腎皮質機能亢進症の症状は40%の犬(114頭中46頭)に認められたが、すべてで確定診断はできたわけではなかった。ACTH投与前後の副腎からの性ホルモン濃度を評価すると、測定した犬のそれぞれ88%(25頭中22頭)および80%(25頭中20頭)においてプロジェステロンとアンドロステンジロン濃度が高値を示した。
結論と臨床的意義 スコティッシュテリアのVHは、副腎のステロイド生合成と関連しており、HCCになりやすいことを示唆している。VHの犬においては、初期の腫瘍を検出するために、血清生化学検査と超音波スクリーニングを頻繁に行なうことが推奨される。(Dr.Taku訳)
■舌に血管肉腫のある犬20症例の臨床結果:1996-2011
Clinical outcome in 20 cases of lingual hemangiosarcoma in dogs: 1996-2011.
Vet Comp Oncol. 2014 Sep;12(3):198-204. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00351.x. Epub 2012 Aug 21.
Burton JH, Powers BE, Biller BJ.
日光誘発性皮膚血管肉腫(HSA)を除いて、犬のHSAの生物学的挙動の特徴は、急速な腫瘍の成長、高い転移率、短い生存期間である。舌のHSAの犬の結果はまだ報告されていない。
この研究の目的は、舌の血管肉腫の犬の結果と予後因子を調べることだった。
20頭の犬から臨床データを回顧的に収集し、病理組織を再検討した。
無進行生存期間の中央値は524日で、総生存期間中央値は553日だった。全ての犬は低あるいは中悪性度の腫瘍だった;ほとんどの腫瘍は小さく、舌の腹側表面にあった。生存性延長に関係する有意な予後因子は、腫瘍の大きさが小さいこと、診断時に口のマスによる臨床症状がないことだった。舌に限定したHSAの犬は他の臓器にできたHSAと比べて予後はよいと思われる。(Sato訳)
■犬の陰嚢腫瘍:676症例の回顧的研究(1986-2010)
Scrotal tumors in dogs: a retrospective study of 676 cases (1986-2010).
Can Vet J. 2014 Jan;55(1):1229-33.
Trappler MC, Popovitch CA, Goldschmidt MH, Goldschmidt KH, Risbon RE.
この研究目的は、他の皮膚の部位と比較して犬の陰嚢に発生する一般的な腫瘍のタイプを判定することと、陰嚢に特異的に発生する腫瘍に対して可能性のあるリスクファクターを調査することだった。
回顧的研究で、1986年から2010年のペンシルバニア大学獣医学校Surgical Pathology Service of the Department of Pathology and Toxicologyからの病理学的報告のデータベースから犬の腫瘍性陰嚢および陰嚢以外の皮膚病変に対する検索を行った。腫瘍性病変は診断、犬種、年齢、腫瘍の数と部位(陰嚢v.s.陰嚢以外の皮膚)を基に評価した。
肥満細胞腫、メラニン細胞腫、悪性メラノーマ、血管過誤腫、血管肉腫、血管腫、皮膚組織球腫が犬の陰嚢に見られた一般的な腫瘍の種類だった。犬の陰嚢腫瘍の外科的切除を計画するときに、各腫瘍のタイプで犬種素因および診断時の平均年齢を確認し、考慮すべきである。(Sato訳)
■化学療法中の犬の細胞異常の検出に対する自動と手動好中球数測定の比較:50症例(2008.5-6)
Comparison of automated versus manual neutrophil counts for the detection of cellular abnormalities in dogs receiving chemotherapy: 50 cases (May to June 2008).
J Am Vet Med Assoc. June 1, 2013;242(11):1539-43.
Michelle C Cora; Jennifer A Neel; Carol B Grindem; Grace E Kissling; Paul R Hess
目的:化学療法中の特定集団の犬において、血液スメア評価の失敗により間違った臨床に関係する異常の発生頻度を判定することと、サンプル集団の自動と手動好中球測定数を比較すること
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:総有核細胞数4000個/μL以上の化学療法中の犬50頭
方法:治療プランの変更に強いポテンシャルを持つ異常に関して50の血液スメアを評価した:芽球細胞、バンド好中球、有核赤血球、毒性変化、血液寄生虫、分裂赤血球、球状赤血球の有無。好中球数の自動計測と手動計測を比較した。
結果:10頭(20%)の血液スメアに1つ以上の異常があった。芽球細胞は4(8%)のスメアで認められ、有核赤血球の増加は5(10%)で、非常に軽度な毒性変化は2(4%)で認められた。好中球数の相関係数は0.96だった。分析では自動計測と手動計測の好中球数にわずかな偏りを認めた(平均±SD差、-0.43x10(3)/μL±1.10x10(3)/μL)。
結論と臨床関連:この犬のシリーズでは、好中球数相関は非常によかった。臨床に関係する異常は20%の血液スメアに見つかった。自動CBCは好中球数に対し正確と思われたが、対応する血液スメアの顕微鏡検査が依然推奨される;それらの異常の検出あるいは出現頻度は、化学療法プロトコール、腫瘍性疾患、血液スメア評価をしないCBCを行う腫瘍学者により使用される決断域値に依存して違いが出るかどうか研究する必要がある。(Sato訳)
■癌の犬と猫における診断検査、コスト、治療に対する病理組織検査のセカンドオピニオンによる影響の前向き評価
A prospective evaluation of the impact of second-opinion histopathology on diagnostic testing, cost and treatment in dogs and cats with cancer.
Vet Comp Oncol. 2013 Feb 19. doi: 10.1111/vco.12023.
Regan RC, Rassnick KM, Malone EK, McDonough SP.
人医において病理組織検査のセカンドオピニオンは、不必要な処置、コストを避け、治療を最適にするための一般的な選択である。病理組織学的再検討が同様に動物医療でも推奨されている。
この1年間にわたる52症例の前向き評価において、ファーストとセカンドオピニオンの診断的一致は52%の症例で見られた。29%は一部診断的意見の相違で、ほとんどがグレードの変更、腫瘍のサブタイプ、マージンの状況だった。19%は完全な診断の不一致で、由来細胞の変更、あるいは良性から悪性への変更だった。治療あるいは予後に影響しないようなマイナーな意見の相違は21%の症例に見られた。治療や予後に影響するようなメジャーな意見の相違は37%の症例に見られた。理想的悪性度判定および推奨治療のコストはファーストとセカンドオピニオンでかなり異なった。(Sato訳)
■癌の犬におけるトセラニブと低用量シクロフォスファミド併用の臨床および免疫調節効果
Clinical and immunomodulatory effects of toceranib combined with low-dose cyclophosphamide in dogs with cancer.
J Vet Intern Med. 2012 Mar-Apr ;26(2):355-62.
L Mitchell; D H Thamm; B J Biller
背景:マウスとヒトにおいて、チロシンキナーゼ阻害剤(TKIs)とシクロフォスファミド(CYC)のメトロノーム投与は、制御性T細胞(Treg)の抑制とT細胞介在免疫反応の修復により腫瘍コントロールを改善できる。単剤あるいはメトロノミックCYCの併用として、TKIトセラニブの免疫調節効果が犬で検討されていない。
仮説:この研究の主要目的は、癌の犬におけるTregを含むリンパ球サブセットおよびインターフェロンガンマ(IFN-γ)に対するトセラニブとメトロノミックCYC療法の影響を判定することである。著者らはトセラニブがTreg数を選択的に減少させ、IFN-γ産生を増加させる、またCYCの追加でさらにそれらの効果が高まるだろうと仮説を立てた。
動物:進行した腫瘍のある15頭の飼育されている犬で前向き臨床試験を行った。
方法:犬にトセラニブを1回2.75mg/kgで隔日投与した。2週間後、経口CYCを1日1回15mg/m(2)で追加した。血中のTregとリンパ球サブセットの数を8週間の研究期間中にフローサイトメトリーで測定した。IFN-γの血清濃度をELISAで測定した。
結果:トセラニブの投与により、癌の犬の末梢血におけるTregの数と比率は有意に低下した。トセラニブとCYCを投与された犬はINF-γの血清濃度の有意な上昇を示し、併用から6週目にはTregと強く相関した。
結論:抗腫瘍効果に加え、それらのデータは癌の犬においてトセラニブの単独あるいはCYCとの併用での免疫調節効果について更なる調査を支持するものである。(Sato訳)
■脾臓の血管肉腫の犬における肝臓病変の肉眼的外観と肝臓の病理組織の関係:79症例(2004-2009年)
Association Between Macroscopic Appearance of Liver Lesions and Liver Histology in Dogs With Splenic Hemangiosarcoma: 79 Cases (2004-2009).
J Am Anim Hosp Assoc. 2014 Jul 7;50(4):e6-e10.
Clendaniel DC, Sivacolundhu RK, Sorenmo KU, Donovan TA, Turner A, Arteaga T, Bergman PJ.
肉眼的な肝臓の病変が存在するかしないかについての情報と肝臓の病理組織学的な特徴について、脾臓の摘出を行い血管肉腫(HSA)と確定診断した79頭の犬のカルテを調査した。肉眼で異常な肝臓を示した58頭中29頭(50%)においてのみHSAの転移が認められた。肉眼的に正常な肝臓であった犬で肝臓の病理組織で転移が認められた犬はいなかった。肝臓に多発性の結節、浅黒い結節、激しい出血性の結節が認められたことは、悪性と非常に相関していた。この研究で調べた犬については、肉眼的に正常な肝臓の場合に生検を実施することは、脾臓のHASの犬においてはあまり得られることが少ない手技であった。(Dr.Taku訳)
■獣医光線力学療法:概要
Veterinary photodynamic therapy: a review.
Photodiagnosis Photodyn Ther. December 2013;10(4):342-7.
Julia Buchholz; Heinrich Walt
人医療において光線力学療法はよく知られており、種々の適応症の治療オプションとして認識されている一方で、残念ながらペットに対してはあまり知られておらず、治療オプションも確立されていない。様々な光増感剤や光源が使用されており、臨床結果が発表されている。
主な適応症は猫によく起こる皮膚腫瘍(上皮内癌/扁平上皮癌)で、主に頭部のわずかに色素がある部分だけに限らず見られる。この腫瘍のより早いステージで、反応率を上げ、全身投与後の光感受性を低下させるような一部、新しい選択薬を用いて有望な結果が発表されている。他に使用できそうな適応症は犬の尿路腫瘍、馬の類肉腫で後者は馬の非常に一般的な腫瘍で従来効果的な治療は知られていない。この文献のレビューは獣医療の光線力学療法の役割をまとめる。(Sato訳)
■猫の尾へのワクチン接種:予備研究
Tail vaccination in cats: a pilot study.
J Feline Med Surg. 2014 Apr;16(4):275-80. doi: 10.1177/1098612X13505579. Epub 2013 Oct 9.
Hendricks CG, Levy JK, Tucker SJ, Olmstead SM, Crawford PC, Dubovi EJ, Hanlon CA.
猫の注射部位肉腫はワクチン接種した猫の10000頭中1-10頭に発症し、高い死亡率を示す。根治的切除は治癒をもたらすかもしれないが、現在推奨される注射部位に発生した場合、回復が遅れたり、美観を損ねたり、機能を喪失することも多い。
この研究の目的は、腫瘍学開業医による好み、注射の容易さ、血清学的反応の点で、今推奨されているワクチン接種部位に変わる部位を評価することである。
外科、放射線、内科腫瘍臨床医に対し、腫瘍切除の容易さを基本にワクチン接種部位に対する彼らの選択について調査した。後肢遠位あるいは尾遠位への皮下注射で、ワクチン接種に対する猫の行動学的反応をsix-point Likert scaleを用いて測定した。ワクチン接種前とワクチン接種後1-2か月目の血清を採取し、猫汎白血球減少症ウイルス(FPV)および狂犬病ウイルス(RV)に対する抗体価を検査した。
94人の腫瘍臨床医によるワクチン接種部位で選択されたのは、膝より下(41%)と尾(30%)だった。膝下(n=31)および尾遠位(n=29)にワクチンを接種した時の猫の行動学的反応に有意差はなかった。ワクチン接種時にFPVに対する血清反応陰性の猫のうち、摂取後1-2か月のFPVに対する防御抗体価(≧40)は100%発生した。RVに対する血清反応陰性の猫では、1頭の猫(尾ワクチン)を除き、全ての猫にRVに対して容認できる抗体価(≧0.5IU/ml)が発生した。
尾へのワクチン接種に、猫はよく許容し、肢の遠位にワクチン接種するときと同様の血清学的反応を誘発した。(Sato訳)
■末梢性原始神経外胚葉性腫瘍の犬の一例
Peripheral primitive neuroectodermal tumour in a dog.
J Comp Pathol. 2013 Nov;149(4):424-8. doi: 10.1016/j.jcpa.2013.03.010. Epub 2013 May 25.
Junginger J, Rothlisberger A, Lehmbecker A, Stein VM, Ludwig DC, Baumgartner W, Seehusen F.
1頭のジャーマンシェパードが不全対麻痺から対麻痺に急速に進行した。MRIによると脊柱管に浸潤する胸腰部脊柱の下に大きなマスがあり、脊髄の重度硬膜外圧迫を起こしていた。
顕微鏡学的に血管結合組織基質や時折形成される原始ロゼットの緻密なバンドで支持される細胞豊富な非被包性の腫瘍だった。
免疫組織化学的にシナプトフィジンとニューロン特異シノラーゼを発現する腫瘍細胞を示した。
超微細構造的に細胞質内に少量から中程度の量の神経分泌顆粒を有していた。
末梢性原始神経外胚葉性腫瘍と診断した。
これは珍しい神経由来の胚性腫瘍で、副腎髄質、自律神経節、あるいは末梢神経から発生しているかもしれない。(Sato訳)
■1歳未満のメス猫の子宮内膜腺癌:4症例
Feline endometrial adenocarcinoma in females <1 year old: a description of four cases.
Reprod Domest Anim. October 2013;48(5):e70-7.
R Payan-Carreira; A L Saraiva; T Santos; H Vilhena; A Sousa; C Santos; M A Pires
猫の上皮由来の子宮腫瘍は珍しく、多くは老猫で述べられている。それでも、2年未満に異なる診療所から4件の卵巣子宮摘出標本がUTAD(Vila Real, Portugal)にある組織および解剖学的病理ラボに提出され、猫の子宮内膜腺癌と診断された。珍しいことに全ての猫は手術時に1歳未満だった。この症例報告を作成するため、全ての入手できる補足データを含む4症例の臨床特性を論証するのに臨床ファイルへのアクセスを必要とした。
臨床状況は別々の徴候で発生したが、陰部分泌物は3症例で存在し、血色から茶色あるいは透明で膿様から粘液様だった。そのメスは発情休止期だったが、多くは発情が気付かれずに維持されていた。
この研究では、4つの臨床状況が利用可能な文献を基に、早期診断に障害となる面、疾患を進行しやすくする面、鑑別診断リストを挙げるときに年齢は除外基準にするべきではないことにも注目して述べ、議論している。(Sato訳)
■原発性の肺腫瘍を外科的に治療した20頭の猫における転帰と予後の指標
Outcome and prognostic indicators in 20 cats with surgically treated primary lung tumors.
J Feline Med Surg. 2014 Apr 7. [Epub ahead of print]
Maritato KC, Schertel ER, Kennedy SC, Dudley R, Lamm C, Barnhart M, Kass P.
20頭の飼い猫の回顧的な本研究の目的は、外科手術によって取り除いた原発性肺腫瘍の臨床症状、外科的介入、組織学的な特徴、臨床ステージ、治療を明らかにし、どういった因子が生存に有意に影響するかを決定することである。
2000年から2007年の間に原発性の肺の腫瘍を外科的に切除した猫を組み入れた。
診療記録を調査し、シグナルメント、臨床症状、手術前の診断、外科的な所見、病理組織学的な結論を記録した。病理組織学的報告を調査し、WHOの基準によってスコア化した。Kapla-Meier法によって、生存に関するそれぞれの可能性のある予後因子を評価した。
20頭の猫が基準を満たした。診断時に臨床症状(呼吸困難など)が存在していること(P = 0.032)、胸水があること(P = 0.046)、ステージM1であること(P = 0.015)、病理組織において中等度および未分化な腫瘍であること(P = 0.011)が、生存期間が短くなることと有意に関連した因子であった。20頭の猫の生存期間の中央値は11日であった。臨床症状を示していない猫の手術後の生存期間の中央値は578日であり、臨床症状があった場合は4日であった。ステージがT1N0M0の猫は、他のステージの猫よりも長く生きることができた(P = 0.044)。抜糸の時点まで生きていた猫の中では、生存期間の中央値は64日であった。
この結果は、臨床症状の存在、胸水、病理組織において中等度および未分化な腫瘍、転移があること、T1N0M0より後のステージであることは、原発性の肺腫瘍の猫の予後不良因子である。この所見は、臨床症状、胸水、T1N0M0以外のどのステージ、病理組織において中等度および未分化な腫瘍の猫は予後不良であることを表してしている。そのため、これらの猫において外科的介入を考える前に、CTスキャンなどの詳細な手術前の診断を行なうべきである。これらの所見は、原発性の肺腫瘍と診断された猫における治療法を選択する指針として使用するとよい。(Dr.Taku訳)
■皮下輸液ポートに関係した軟部組織肉腫の猫の1例
Subcutaneous fluid port-associated soft tissue sarcoma in a cat.
J Feline Med Surg. October 2013;15(10):917-20.
Shannon M McLeland; Darren J Imhoff; Michelle Thomas; Barb E Powers; Jessica M Quimby
20歳齢オスの去勢済み長毛家猫の慢性腎疾患と過去に設置し、その後除去したGIFチューブ設置場所の治癒しない潰瘍化したマスを評価した。
その猫は10年前に慢性腎疾患と診断されており、5年で2回GIFチューブを設置し、2回目は二次感染を起こした。治癒しない潰瘍のあるマスの生検はグレード2軟部組織肉腫と一致した。
検死時、直径約8mmの不連続な蛇上の皮下マスが、輸液ポート注射部位が位置したメインの肩甲骨間の潰瘍化したマスからGIFチューブの経路に沿って背側から尾側胸部に約20cmにわたり伸びていた。
これは1頭の猫の皮下輸液ポート部位に見られた線維肉腫の最初の報告背ある。猫の飼い主はこの装置により提供された4年のQOLに満足していたが、長期疾患管理のためにポート設置を決断した時にこの合併症を考慮すべきである。(Sato訳)
■猫の注射部位肉腫の解剖学的切除と術前および術後化学療法の組み合わせ:21頭の猫の結果
Neoadjuvant and adjuvant chemotherapy combined with anatomical resection of feline injection-site sarcoma: results in 21 cats.
Vet Comp Oncol. 2014 Feb 7. doi: 10.1111/vco.12083.
Bray J, Polton G.
この研究は、猫の注射部位肉腫(FISS)に対し、2つの処置を組み合わせた治療戦略の結果を評価する。原発性あるいは再発性FISSを持つ21頭の猫にエピルビシン(25mg/m2)の術前化学療法を3サイクル行い、その後、同軸画像検査の所見を基に、腫瘍を含む周りの構成筋肉を全部切除した。その後、さらに3サイクルの化学療法を受けた。
追跡調査は電話で行い、追跡期間中央値は1072日だった。3頭の猫(14%)は術後264日、664日、1573日で局所再発した。生存期間中央値は研究した猫の80%以上が生存していることや、他の原因で死亡したと判断されたために算出できなかった。過去のコントロールと比較した時、この結果は優れた無腫瘍生存率および無病期間を示す。(Sato訳)
■犬の肢の遠位側における軟部組織肉腫の広範囲な切除後の二次治癒
Second intention healing after wide local excision of soft tissue sarcomas in the distal aspects of the limbs in dogs: 31 cases (2005-2012).
J Am Vet Med Assoc. January 15, 2014;244(2):187-94.
Cassandra Y Prpich; Alessandra C Santamaria; James O Simcock; Hoong Kien Wong; Judith S Nimmo; Charles A Kuntz
目的:肢の遠位に軟部組織肉腫を持ち、腫瘍の広範囲な切除(周囲2cmマージン、深さマージンは1筋膜面)後に二次的治癒に至った犬の結果を調査する
デザイン:回顧的ケースシリーズ
動物:肢の遠位に軟部組織肉腫があり、腫瘍の広い局所切除後、二次的治癒に至った犬31頭
方法:腫瘍は2cm周囲マージンと筋膜1枚の深さマージンで切除した。傷は二次治癒により治った。治癒までの時間、治癒中の合併症、腫瘍再発に関する情報を記録した。
結果:全ての腫瘍は組織学的な腫瘍フリーマージンで切除された。29頭(93.5%)の傷は二次治癒により完全に治癒した(中央値53日)。2頭(6.5%)は治癒を促進させるために皮膚移植処置が必要だった。傷を開放して管理している間の合併症は7頭(22.6%)で起こった。長期合併症は8頭(25.8%)でみられ、間欠的上皮の破裂(5/31(16.1%))と傷の拘縮(3/31(9.7%))などがあった。全ての合併症は保存的に対処した。局所腫瘍再発を1頭(3.2%)で認めた。追跡調査中央値は980日(範囲、380-2356日)だった。腫瘍関連で死亡した犬はいなかった。
結論と臨床関連:この結果は、軟部組織肉腫の広い切除を行った犬に対し、肢の遠位側の大きな傷の二次的治癒は合併症もなく完全で典型的なものということを示した。肢の遠位における軟部組織肉腫の周囲2cmマージン、深さマージン筋膜1枚での広い局所切除は、良好な長期の局所腫瘍コントロールをもたらす。(Sato訳)
■時間がずれて発生した両側肛門腺癌の犬4例
Temporally separated bilateral anal sac gland carcinomas in four dogs.
J Small Anim Pract. August 2013;54(8):432-6.
K L Bowlt; E J Friend; P Delisser; S Murphy; G Polton
肛門腺癌は肛門腺壁のアポクリン分泌上皮から起こり、局所侵襲性で高い転移を示す。肛門腺癌の多くは片側性に出現するが、両側腫瘍も認められている。
この症例シリーズは、片側性肛門腺癌で、その後、最初の腫瘍切除から50-390日で反対側に肛門腺癌ができた独特な4症例の結果を提示する。生存期間中央値は最初の診断から1035日で、2度目の肛門腺癌の診断から807日だった。(Sato訳)
■猫の注射部位肉腫に対する定位放射線療法:11症例(2008-2012)
Stereotactic body radiation therapy for treatment of injection-site sarcomas in cats: 11 cases (2008-2012).
J Am Vet Med Assoc. August 15, 2013;243(4):526-31.
Michael W Nolan; Lynn R Griffin; James T Custis; Susan M Larue
目的:注射部位肉腫(ISS)の猫に対する定位放射線療法(SBRT)の結果を、局所反応および再発、生存期間、合併症の判断を通して評価する
デザイン:回顧的症例シリーズ
動物:ISSの猫11頭
方法:2008年6月から2012年7月の間に、注射部位肉腫に対してSBRTで治療した猫の医療記録を再検討した;患者の個体統計(年齢、性別、品種)、腫瘍学的病歴(以前の治療および組織学的グレードを含む)、SBRTプランの詳細(腫瘍の容積、照射野の大きさ、処方)、治療への反応(毒性を含む)、無進行期間、生存期間の情報を抜き出した。
結果:急性の放射線毒性はあまり見られず、限定的で軽度、自然治癒性の皮膚炎と大腸炎が11頭中2頭と1頭に見られた。晩発性のものは観察されなかった。奏功率は11頭中8頭だった;CTあるいは身体検査所見を基に、それらは部分あるいは完全反応と判定した。無進行期間の中央値は242日で、総生存期間の中央値は301日だった;打ち切りの対象の追跡期間中央値は173日だった。
結論と臨床関連:ISSの猫の治療で使用した時、SBRTは3-5日で完了し、耐用性良好だった。この研究で、眼にわかる腫瘍の反応がほとんどの猫で達成された。定位放射線療法はISSの緩和手段を提供した;最終の外科手術の前に定位放射線療法は腫瘍のステージを下げるのに有効な治療オプションかどうかを調べる追加研究が必要である。(Sato訳)
■猫のウイルス性乳頭腫症:予防と管理に対するABCDガイドライン
Feline Viral Papillomatosis: ABCD guidelines on prevention and management.
J Feline Med Surg. July 2013;15(7):560-2.
Herman Egberink; Etienne Thiry; Karin Mostl; Diane Addie; Sandor Belak; Corine Boucraut-Baralon; Tadeusz Frymus; Tim Gruffydd-Jones; Margaret J Hosie; Katrin Hartmann; Albert Lloret; Hans Lutz; Fulvio Marsilio; Maria Grazia Pennisi; Alan D Radford; Uwe Truyen; Marian C Horzinek
概要:パピローマウイルスは上皮親和性で、ヒトや猫を含むいくつかの動物種で皮膚病変を引き起こす。
感染:猫は皮膚の病変あるいは擦過傷を通して感染することが最も多い。種特異ウイルスは検出されているが、ヒトと牛の関連シーケンスも見つかっており、異種間伝染を示唆する。
臨床的症状:猫においてパピローマウイルスは4つの異なる皮膚病変に関係する:角質増殖プラークはボーエン様上皮内癌(BISCs)やさらに浸潤性扁平上皮癌(ISCCs)に進行する可能性がある。;皮膚繊維乳頭腫あるいは猫サルコイド;皮膚乳頭腫。しかし、パピローマウイルスは正常な皮膚からも見つかっている。
診断:パピローマウイルス誘発性皮膚病変は、皮膚病変のバイオプシーにおけるパピローマウイルス抗原の証明、あるいは電子顕微鏡によるパピローマウイルス様粒子の検出やPCR法によるパピローマウイルスDNAの検出で診断できる。
治療:自然退縮が期待されると思われる。ISCCの症例では、可能ならば完全切除を考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の移行上皮癌の皮膚転移12例
Cutaneous metastasis of transitional cell carcinoma in 12 dogs.
Vet Pathol. July 2013;50(4):676-81.
L T Reed; D W Knapp; M A Miller
ヒトで移行上皮癌(TCC)の皮膚転移は直接の拡大、リンパ行あるいは血行性播種、あるいは外科手術による移植に起因している。
この研究の目的は、犬でウロプラキン-III免疫組織化学により確認された皮膚TCC転移の臨床および組織学的特徴を述べることである。
9頭の避妊したメスおよび3頭の去勢したオス犬の12症例は、6-14歳(平均、11歳)だった。4頭の犬は尿失禁の病歴があった。3頭はTCCの診断、あるいは治療で腹部外科手術を行っていた。原発腫瘍は7頭が乳頭浸潤、5頭は非乳頭浸潤性TCCだった。皮膚病変は原発TCCの診断後平均123日(中央値38日)で検出され、1例を除き、会陰、鼠径、あるいは腹部の真皮は皮下において斑、丘疹、結節として現れた。真皮TCCの8頭のうち5頭は、表皮びらん、あるいは潰瘍を起こしていた。10頭の犬において、Prox1に対する内皮免疫反応により確認し、皮膚リンパ管にTCCが検出された。
全ての犬のリンパ節と、10頭の犬の遠隔の皮膚でない部位(通常肺)にも転移が検出された。診断後の平均生存期間は162頭(中央値90日)だった。皮膚転移の発症から10頭は内科的治療にもかかわらず、寛解に至らなかった;4頭は不変状態。
TCCは直接の拡大、リンパ行あるいは血行性播種により皮膚に広がる可能性はあったが、外陰あるいは包皮へのほとんどの皮膚転移は、尿焼けした皮膚を通して経上皮的広がりという更なる可能性を引き起こさせる。(Sato訳)
■転移を伴う眼窩胎児型横紋筋肉腫の若い犬の1例
Orbital embryonal rhabdomyosarcoma with metastasis in a young dog.
J Comp Pathol. August 2012;147(2-3):191-4.
Y Kato; H Notake; J Kimura; M Murakami; A Hirata; H Sakai; T Yanai
2歳オスのウェルシュコーギーが涙腺突出を伴う左上眼瞼腫脹を理由に動物病院に来院した。涙腺及び眼窩腔のマスを外科的に切除した。顕微鏡的に眼窩マスは横紋筋芽細胞性および小型円形腫瘍細胞の混合で構成されていた。免疫組織化学的に、横紋筋芽細胞はデスミン、ミオグロビンが発現し、小型円形細胞はデスミン、ミオゲニン、MyoD1が発現した。胎児型横紋筋肉腫(ERS)と診断した。1か月後、体中、特に頸部の周りに複数のマスを認めた。それら病変の1つをサンプリングし、転移性ERSと診断した。その犬は来院から84日目に死亡した。(Sato訳)
■猫の慢性リンパ性白血病:18例(2000-2010)
Chronic lymphocytic leukaemia in the cat: 18 cases (2000-2010).
Vet Comp Oncol. 2013 Dec;11(4):256-64. doi: 10.1111/j.1476-5829.2011.00315.x. Epub 2012 Feb 28.
Campbell MW, Hess PR, Williams LE.
慢性リンパ性白血病(CLL)の猫に関する症状、生物学的挙動、治療に関する情報はあまりなく、猫のこの疾患の特徴を述べるために追加調査が必要である。
本研究の目的は、猫のCLLの臨床症状、治療に対する反応、予後を述べることだった。2000-2010年の間にCLLと診断された18頭の猫の複数施設による回顧的研究を実施した。
CLLは成熟リンパ球の存在(>9000個/μL)および免疫表現的単一性あるいはクローン性リンパ集団の確認と定義した。各患者は以下2つの基準のうち1つを持つことも必要とした:(1)少なくとも1細胞系の血球減少併発および/あるいは(2)骨髄内における成熟リンパ球が15%より多い。
シグナルメント、病歴、臨床症状、臨床病理特性、治療に対する反応に関するデータを調査した。初回来院時の猫の中央年齢は12.5歳(範囲:5-20歳)だった。最も多かった主訴は慢性的体重減少で、18頭中8頭(44%)がそうだった。
18頭中16頭(89%)はクロラムブシルとプレドニゾロンで治療下;それらの猫のうち4頭はビンクリスチンも投与されていた。2頭(11%)は多剤の注射による化学療法(L-CHOP、l-アスパラギナーゼ、シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロン)で治療された。
反応を評価できた猫の88%は完全(9頭)あるいは部分(6頭)寛解を達成した。全体の寛解期間中央値は15.7ヶ月(範囲:1.3-22.8ヶ月)だった。追跡データがある17頭の総生存期間中央値は14.4ヶ月(範囲0.9-25.3ヶ月)だった。
この研究の結果は、CLLは老齢に多く、経口クロラムブシルとプレドニゾロンによる治療によく反応すると示唆している。
■家庭犬における腫瘍原性ガンマヘルペスウイルスのエビデンス
Evidence of an oncogenic gammaherpesvirus in domestic dogs.
Virology. June 2012;427(2):107-17.
Shih-Hung Huang; Philip J Kozak; Jessica Kim; Georges Habineza-Ndikuyeze; Charles Meade; Anita Gaurnier-Hausser; Reema Patel; Erle Robertson; Nicola J Mason
ヒトにおいてガンマヘルペスウイルスエプスタインバーウイルス(EBV)の慢性感染は、通常無症候性である。しかし、個々に感染したもので血液学的および上皮の悪性腫瘍を発生するものもある。リンパ腫発生におけるEBVの役割は、臨床的に関連のある動物モデルがないため部分的に理解が乏しい。
ここで著者らは健康な犬と自発リンパ腫を持つ犬のEBVカプシド抗原に対する血清学的反応の検出と、抗体価の最も高い犬はB細胞リンパ腫であることを報告する。さらに、リンパ腫の犬の悪性リンパ節においてEBV様ウイルスDNAとRNA塩基配列および潜伏膜蛋白質-1の存在を論証する。最後に犬の悪性B細胞の電子顕微鏡で従来のヘルペスウイルス粒子の存在を明らかにした。
それらの所見から、犬がリンパ腫発生の一因となるEBV様ガンマヘルペスウイルスに自然感染する可能性があり、ヒトにおけるガンマヘルペスウイルス関連リンパ腫発生に影響する環境および遺伝的因子を調査するための自然発生モデルとなるかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■猫の注射部位肉腫:今日の推奨治療と結果
Injection Site-Associated Sarcoma in the Cat: Treatment recommendations and results to date.
J Feline Med Surg. May 2013;15(5):409-18.
Jane Ladlow
実際の関連:猫の注射部位関連肉腫(FISSs)は、1990年代前半に最初に報告されてから多くの論議と懸念がなされている。唯一ワクチンが関係するわけではないが、ワクチンの接種部位とスケジュールに関連があり、ガイドラインは発表されているが、これは一般診療にゆっくりとしか浸透していないと思われる。
臨床的チャレンジ:この困難な状況になった猫の1/4は肺に転移している。治療の主軸は積極的な外科手術であるが、クリーンマージンで完全切除できた猫でさえ、腫瘍の再発は症例の約1/3で予想される。補助治療として放射線療法と化学療法の役割は明確に定義されていない。
患者群:FISSsはより若い猫で見られることが多く、発生ピークは6-7歳、2回目のピークは10-11歳である。
エビデンスベース:このレビューは、最近発表された治療結果を参考にFISSの診断と管理をまとめる。外科的切除に重点を置いているが、補助放射線療法および化学療法も補っており、異なる治療アプローチにおける中央生存期間も示す。(Sato訳)
■12頭の化学療法を行う犬において最小侵襲セルディンガー法による完全埋め込み式血管アクセスポートの使用
Use of totally implantable vascular access port with mini-invasive Seldinger technique in 12 dogs undergoing chemotherapy.
Res Vet Sci. February 2013;94(1):152-7.
Fabio Valentini; Flavia Fassone; Andrea Pozzebon; Alessandra Gavazza; George Lubas
脈管アクセスポート(VPAs)は、脈管系に繰り返しアクセスできるよう作られた、完全に埋め込み可能な装置である。ポートアクセスはノンコアリング針を用いて経皮的に針を刺すことで行われる。
異なる腫瘍に侵され、長期の化学療法が必要な12頭の犬にVAPsを設置している。非侵襲性セルディンガー法を用い、シリコンカテーテルを頚静脈から頭側大静脈と右心房の接合部まで挿入した。その後、カテーテルを肩甲骨上の皮下ポケットに前もって設置したポートと接続した。
12頭中7頭は臨床的合併症を示さなかった。12頭中4頭は瘻管形成(2頭)や感染/位置異常(2頭)などの術後合併症によりポートを除去した。1頭はインプラント後、短期間の軽度合併症を起こした。その他の犬において、VPAsは死亡するまでその部位に残した。
VAPsは長期にわたる化学療法プロトコールを行う犬において、末梢静脈の保存可能、発疱薬剤の反復注入による深刻なダメージがない理由で有効である。ほとんどのケースでVPAsはよく許容され、おそらく数か月は持つだろう。(Sato訳)
■短頭種の犬2頭における外側鼓室胞切開を行った後のコレステリン腫
Cholesteatoma after lateral bulla osteotomy in two brachycephalic dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Jul-Aug;48(4):261-8.
Riccarda Martina Schuenemann; Gerhard Oechtering
この症例報告は全自動切除(TECA)と外側鼓室胞切開(LBO)を行った後、中耳炎の再発と開口困難を呈して著者の病院に来院したフレンチブルドッグとパグについてである。またブルドッグは片側性の顔面神経麻痺と同側の三叉神経の感覚欠損もあった。
CTとMRI検査はブルドッグにおいてコレステリン腫を示唆したが、バグでは鼓室胞のわずかな拡大しか示さなかった。両症例のサンプルの病理組織検査でコレステリン腫の診断が得られた。
著者は両症例のコレステリン腫の発症がTECA/LBO手術と関係すると考える。
コレステリン腫は現在考えられるよりも多く発生すると思われる。鼓室胞壁のわずかな変化がCTで検出された時も、コレステリン腫の早期ステージを考慮すべきである。
短頭種の中耳外科は他の犬種よりも全ての炎症および上皮組織の完全な除去がより難しく、その狭い解剖学的状況でコレステリン腫が発症しやすい可能性がある。
著者の知識では、これは三叉神経の感覚欠損を起こした耳のコレステリン腫の最初の報告である。(Sato訳)
■胸腺腫の犬の臨床兆候、治療方法および転帰:116症例 (1999-2010年)
Clinical features, treatment options, and outcome in dogs with thymoma: 116 cases (1999-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Nov 15;243(10):1448-54. doi: 10.2460/javma.243.10.1448.
Robat CS, Cesario L, Gaeta R, Miller M, Schrempp D, Chun R.
目的 胸腺腫の犬について、臨床兆候、検査所見、治療および転帰について明らかにし、生存期間と関連する因子を決定すること。
研究デザイン 多施設後向き症例シリーズ。
動物 胸腺腫の116頭の犬
方法 シグナルメント、身体検査所見、血液検査結果、画像診断、治療内容、生存に関する情報をカルテより収集した。
結果 胸腺腫の116頭の犬のうちで、44頭 (38%)はラブラドールレトリーバーとゴールデンレトリバーであった。116頭のうち24頭 (17%)は、重症筋無力症(13頭は診断が確定された)であった。胸腺腫の診断時に、40頭 (34%)は、高カルシウム血症があり、8頭 (7%)は免疫介在性疾患の併発があり、31頭(27%)の犬は、他の腫瘍があり、16頭(14%)は、後に胸腺腫以外の腫瘍が生じた。腫瘍摘出を84頭に実施し、その後14頭 (17%)は再発した。2回目の手術を行なった犬の予後はよかった。手術を実施した場合、実施しない場合の生存期間の中央値は、それぞれ635日および76日であった。胸腺腫の診断時に他の腫瘍が存在していたこと、外科的な摘出をしないこと、病理組織学的なステージがより高いこと、などは生存期間が短くなることと有意に関連していた。胸腺腫の診断時に高カルシウム血症、および重症筋無力症か巨大食道が存在すること、胸腺腫の病理組織学的サブタイプ、または後に腫瘍が発生することは、生存期間とは関連しなかった。
結論と臨床的意義 胸腺腫の犬は、腫瘍組織量が大きくても、腫瘍随伴症候群であったとしても、外科手術を行なえば予後はよい。外科手術、腫瘍ステージ、診断時に2つめの腫瘍が存在することは生存期間に影響を及ぼす。(Dr.Taku訳)
■ステージIIIの血管肉腫の犬の治療としてのVACプロトコールについて
VAC Protocol for Treatment of Dogs with Stage III Hemangiosarcoma.
J Am Anim Hosp Assoc. 2013 Sep 19. [Epub ahead of print]
Alvarez FJ, Hosoya K, Lara-Garcia A, Kisseberth W, Couto G.
血管肉腫 (HSAs)は転移率の高い悪性の腫瘍である。臨床ステージは生存の負の予後因子であると考えられている。この研究では、ビンクリスチン、ドキソルビシン、シクロフォスファミド(VAC)治療プロトコールで治療した転移している(ステージIII)HSAの犬の生存期間(MST)の中央値は、ステージI/IIのHSAと変わらないという仮説をたてた。
発生部位は様々な67頭のHSAの犬を後向きに評価した。全ての犬はVACプロトコールを実施され、外科手術の補助として50頭、ネオアジュバントとして3頭、単独の治療として14頭が治療を受けた。
ステージIIIとステージI/IIのHSAの犬のMSTに有意差は認められなかった(P=0.97)。脾臓のHSAのみの犬では、ステージIIIとステージI/IIの犬のMSTに有意差は認められなかった(P=0.12)。全奏功率(完全寛解CRと部分寛解PR)は86%であった。受け入れられない程の副作用はなかった。
VACプロトコールで治療したステージIIIのHSAの犬は、ステージI/IIのHSAの犬と同じような予後を示した。HSAで診断時に転移があったとしても、治療をしないでおくべきではない。(Dr.Taku訳)
■軟部組織肉腫の犬の血清中血管内皮増殖因子
Serum vascular endothelial growth factor in dogs with soft tissue sarcomas.
Vet Comp Oncol. 2013 Sep;11(3):230-5. doi: 10.1111/j.1476-5829.2011.00316.x. Epub 2012 Feb 28.
Fernandes de Queiroz G, Lucia Zaidan Dagli M, Aparecida Meira S, Maria Matera J.
この研究目的は、軟部組織肉腫の犬25頭と健康な犬30頭の血清中血管内皮増殖因子(VEGF)を評価することだった。
採血は健康な犬で1回、肉腫の犬からは同じ方法で3回行った。採取した血液で血球数計測を行い、血清VEGFはELISA定量法で測定した。
コントロール犬の血清VEGFは軟部組織肉腫の犬と同様だった。肉腫切除後に血清VEGFの減少があった。肉腫の犬で血清VEGFと好中球数の間に正の相関があり、VEGFとヘモグロビン含有量に負の相関があった。血管周囲細胞腫の犬は悪性末梢神経鞘腫の犬と比べて血清VEGF濃度がより高かった。
軟部組織肉腫の犬で循環血球は血清VEGF濃度の上昇に貢献し、それら腫瘍の血管形成にVEGFの潜在的役割を持つ。(Sato訳)
■1頭の犬の眼窩骨腫の内科治療成功例
Successful medical treatment of an orbital osteoma in a dog.
Vet Ophthalmol. March 2013;16(2):135-9.
Sinisa Grozdanic; Elizabeth A Riedesel; Mark R Ackermann
去勢した6歳のジャーマンシェパード雑種犬に2か月にわたり見られた両側結膜充血、流涙、左眼(OS)の内側眼角領域の硬くゆっくり進行する腫脹を検査した。
OSの眼窩検査で、硬くスムースなマスが内側眼角から内側眼窩壁に向かい広がっているのを確認した。間接検眼鏡検査でOSの鼻部のへこみを認め、眼窩マスの位置と一致した。眼窩の腫瘍性疾患は、主な鑑別と考えられた。CTで骨の破壊のない骨性のスムースな眼窩マスを認めた。バイオプシーを実施し、組織学的特徴は骨腫を示唆した。全身性非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)で完全なマスの退行を起こし、初回診断から5年間臨床症状はなくなった。この報告はNSAIDsに反応した犬の眼窩骨腫の最初の報告である。(Sato訳)
■モルモットのインスリノーマの診断と治療
Diagnosis and treatment of an insulinoma in a guinea pig (Cavia porcellus).
J Am Vet Med Assoc. February 15, 2013;242(4):522-6.
Laurie R Hess; Michelle L Ravich; Drury R Reavill
症例記述:5歳オスのモルモット(Cavia porcellus)を嗜眠、体重減少、横臥でいぬかき、斜頸、くるくる回るなどの時折おこる神経症状を理由に検査した。初回検査前、嗜眠が見られたときはコーンシロップと量が不明なスルファジメトキサゾールで治療していた。
臨床所見:そのモルモットは痩せており、腹部膨満、わずかな斜頸があった。生化学パネル結果は低血糖を示した(45mg/dl)。コーンシロップを中止し、高繊維製品をシリンジで給餌した。血中インスリン濃度の測定は高インスリン血症(>1440pmol/l(>201μU/l))を示し、同時に低血糖(0.6mmol/l(11mg/dl))だった。
治療と結果:推定インスリノーマの治療は、ジアゾキシド5mg/kg、p.o.12時間毎の投与で開始した。血糖曲線は持続的低血糖を示し、ジアゾキシドの投与量を25mg/kg、p.o.12時間毎まで漸増した。12日後の2度目の血糖曲線で適切な正常血糖コントロールを確認した。最初のジアゾキシド増量後3週間目、便秘と腹部膨満を再検査し、その次の日死亡した。組織学的検査で膵臓ベータ細胞腫(インスリノーマ)を確認した。
臨床的関連:著者の知るところでは、これはモルモットのインスリノーマの生前診断および治療の最初の報告である。この症例は低血糖のモルモットに対するジアゾキシド治療が正常血糖への達成に役立ち、インスリノーマのモルモットに対する治療オプションの可能性を示す。(Sato訳)
■血小板増多症:165頭の犬の後ろ向き研究
Thrombocytosis: a retrospective study of 165 dogs.
Vet Clin Pathol. June 2012;41(2):216-22.
Jennifer A Neel; Laura Snyder; Carol B Grindem
背景:血小板増多症は炎症、腫瘍、鉄欠乏、脾摘、薬剤投与など種々の状況に関係している。
目的:この研究の目的は、犬の血小板増多症に関係する疾患と状況の特徴を述べることだった。
方法:この後ろ向き研究において1年間の完全な医療記録のある血小板増多症(血小板数>600x10(3)/μl)の犬を調査し、犬種、性別、年齢、CBC検査結果、数頭のALPおよびγGTP活性、グルココルチコイドあるいはビンクリスチンの投与歴、主要診断を評価した。
結果:5342頭中240頭(4.6%)で血小板増多症が見られ、165頭(3.1%)が基準に合っていた。
全ての犬の血小板増多症は続発性で、基礎疾患と状況(n、%)は腫瘍(56、33.9%)、炎症(55、33.3%)、その他の疾患(26、15.8%)、腫瘍と2つ目の疾患(13、7.9%)、内分泌疾患(8、4.8%)、複数疾患(7、4.2%)だった。
腫瘍の犬において、癌(24)と円形細胞腫瘍(20)、特にリンパ腫と肥満細胞腫が最も頻度の高い腫瘍だった。
炎症性疾患は、免疫介在性疾患(11)、神経疾患(8)、感染性疾患(6)、アレルギー性疾患(5)、整形外科疾患(4)、胃腸疾患(4)、その他(17)だった。
165頭中73頭(44.2%)はグルココルチコイド(55)、あるいはビンクリスチン(18)を投与されていた。顕著(850-969x10(3)個/μl)あるいは極度(≧970x10(3)個/μl)の血小板増多症は24頭(14.5%)の犬で発生し、そのうち12頭(50%)は腫瘍があった。血栓塞栓症は13頭(7.9%)の犬で発生した。
結論:犬の血小板増多症は腫瘍や炎症疾患の続発性で最も多く起こり、一般にグルココルチコイドやビンクリスチン投与に関係した。血栓塞栓性合併症は少数の犬で発生した。顕著あるいは極度の血小板増多症は、他の状況よりも腫瘍で起こりやすかった。(Sato訳)
■舌骨腫の犬の1例
Lingual osteoma in a dog.
J Small Anim Pract. August 2012;53(8):480-2.
M Fernandez; L Grau-Roma; X Roura; N Majo
11歳オスのベルギーシェパードの1週間にわたる進行性の無気力、食欲減退、過剰なパンティングについて評価した。身体検査では、舌の根元右側から突き出た有茎性のマスを認めた。
マスは固く、不規則、多葉性で大きさは約4x2cmだった。マスは外科的に切除した。組織学検査は舌骨腫に一致し、マージンに腫瘍細胞はなかった。関係のない問題により、診断から8か月で安楽死され、その時点で手術部位の再発所見は認められなかった。
著者の知識では、これは1頭の犬に見られた舌骨腫の最初の報告であり、ゆえに、舌のマス、特に舌の根元にできた有茎性のマスの鑑別診断に加えるべきである。(Sato訳)
■自然発生癌に罹患した犬におけるメトロノミッククロラムブシル化学療法の前向き研究
Prospective trial of metronomic chlorambucil chemotherapy in dogs with naturally occurring cancer.
Vet Comp Oncol. 2012 Jun;10(2):102-12. doi: 10.1111/j.1476-5829.2011.00280.x. Epub 2011 Sep 9.
Leach TN, Childress MO, Greene SN, Mohamed AS, Moore GE, Schrempp DR, Lahrman SR, Knapp DW.
この研究の目的は、自然発生癌の犬において毎日4 mg m(-2)の投与量でメトロノミッククロラムブシルの中毒と抗腫瘍活性を評価することだった。36頭の犬がこの研究に参加した。プロトコールは、グレード3あるいは4の中毒もなくよく耐えた。3頭の犬[肥満細胞腫、軟部組織肉腫そして甲状腺癌]は完全寛解に達し、35週以上続いた。全寛解率11%(4/36)であり、部分寛解が組織球肉腫(39週間)の1頭の犬で記載された。安定は様々な他の癌を伴う17頭の犬(47%)で見られた。中央無増悪期間は61日で、中央生存期間は153日であった。メトロノミックプロトコールで与えたクロラムブシルは様々な自然発生癌の犬において抗腫瘍活性を示した。(Dr.Kawano訳)
■1頭の犬に見られた腰椎肋骨三角から胸腔内胸膜外腔への後腹膜脂肪腫の経横隔膜伸展
Transdiaphragmatic extension of a retroperitoneal lipoma into the intrathoracic extrapleural space via the lumbocostal trigone in a dog.
J Am Vet Med Assoc. April 2012;240(8):978-82.
Emily S Klosterman; Hock Gan Heng; Lynetta J Freeman; Michael O Childress
症例:8歳12.2kgの避妊済みメスのアメリカンコッカースパニエルの、腹部不快感と胸部への侵入の可能性がある腹腔内脂肪腫の疑いを評価した。
臨床所見:身体検査で腹部緊張があり、大きな腹腔マスの縁を認めた。腹部画像検査で腹腔と胸腔に脂肪の不透明度を持つマスを認めた。造影前と造影後の腹部CT撮影で、横隔膜欠損を通しマスがつながっているかを検討した。
治療と結果:試験的開腹で後腹膜の脂肪腫のマスが一部腹側筋に侵入し、腰椎肋間三角から横隔膜背外側を経由し、胸腔内胸膜外腔に達しているのが分かった。切除に横隔膜をまたぐ開胸術が必要だった。切除組織の組織検査で脂肪腫の術前診断を確認した。合併症なく術後回復し、それから32か月以上再発は見られなかった。
臨床的関連:腰椎肋間三角の欠損はヒトでボホダレク孔とも呼ばれ、先天性横隔膜ヘルニアの一般的な場所と認識されている。腰椎肋間三角ヘルニアは、特に外傷の履歴がないとき、犬の両腔マスに対する鑑別診断で考慮されるかもしれない。(Sato訳)
■犬の心臓の腫瘍についての超音波による予測と確定診断の比較
Comparison of Presumptive Echocardiographic and Definitive Diagnoses of Cardiac Tumors in Dogs.
J Vet Intern Med. 2013 Jul 19. doi: 10.1111/jvim.12134.
Rajagopalan V, Jesty SA, Craig LE, Gompf R.
背景 超音波検査は心臓の腫瘍を見つけるのに使用され、みつかった腫瘤の部位に基づいて推定診断されることが多い。
目的 心臓の腫瘍について、臨床病理学的または病理組織学的な確定診断と比較して、超音波検査に基づいた推定診断が正確であるかを決定する事
動物 超音波検査を行い、そのあと細胞学的または病理組織学的に確定診断した心臓の腫瘤をもつ24頭の飼い犬。
方法 後向き研究。2006年から2012年の間にUniversity of Tennessee John and Ann Tickle Small Animal Hospitalに来院した動物を獣医心臓データベース検索し、組み込み基準にあった犬を24頭用いた。
結果 心基底部の腫瘤の症例において非クロム親和性傍神経節腫、異所性甲状腺癌、リンパ腫という推定診断は、9例中7例で正しかった。右心房の腫瘤の症例において血管肉腫という推定診断は、8例中4例において正しかった。異常な心電図を示していたため、7例は開胸による診断を実施し、様々な腫瘍が診断された。しかし血管肉腫、非クロム親和性傍神経節腫、異所性甲状腺癌、リンパ腫がそれらのうちの6例でなされた。心嚢水は24例中10例において認められた。心電図の異常は24例中8例において認められた。生存は、1日以内のものから150日を超えるものまでいた。
結論と臨床的意義 この後向き研究において、心臓の超音波検査による腫瘍の部位に基づいた推定診断はどちらかといえば正確という程度であった。にもかかわらず、超音波検査において異常であると判断された心臓の腫瘍は、犬においてよく認められる心臓の腫瘍が多いことがわかった。(Dr.Taku訳)
■犬の尿道の閉塞性癌の治療として尿道ステント設置後の評価:42症例(2004-2008)
Evaluation of outcome following urethral stent placement for the treatment of obstructive carcinoma of the urethra in dogs: 42 cases (2004-2008).
J Am Vet Med Assoc. January 1, 2013;242(1):59-68.
Amanda L Blackburn; Allyson C Berent; Chick W Weisse; Dorothy C Brown
目的:犬の尿道の閉塞性癌の対症療法として尿道ステント設置後の予後を評価する
構成:後ろ向き症例シリーズ
動物:尿道に閉塞性癌のある犬42頭
方法:尿道の閉塞性癌の治療に自己展開金属ステント(SEMS)を使用した犬のカルテを再検討した。シグナルメント、診断所見、SEMS設置前後の臨床症状、予後を分析した。尿失禁あるいは有痛排尿困難に対するステントのサイズ、閉塞の長さ、腫瘍の長さ、尿道の長さと幅の影響を調べるためにエックス線透視画像を評価した。
結果:42頭中41頭(97.6%)で尿道閉塞は解消した。SEMS設置後、オス23頭中6頭とメス19頭中5頭は重度の尿失禁を発症し、オス23頭中1頭とメス17頭中1頭は有痛性排尿困難を発症した。ステント長、直径、位置は尿失禁あるいは有痛性排尿困難に関係しなかった。SEMS設置後の生存中央期間は、78日(範囲7-536日)だった。SEMS設置前のNSAIDsによる治療、設置後の化学療法は、生存中央期間を251日(範囲8-536日)に伸ばした。
結論と臨床関連:尿道の閉塞性癌の犬に対し、尿道へのSEMSの設置は有効な対症療法だったが、その後の重度尿失禁は42頭中11頭(26%)に発症した。NSIDsおよび化学療法などの補助治療は生存期間中央値を有意に伸ばした。(Sato訳)
■原発不明の転移性癌の犬21例
Metastatic cancer of unknown primary in 21 dogs.
Vet Comp Oncol. 2013 Jan 7. doi: 10.1111/vco.12011.
Rossi F, Aresu L, Vignoli M, Buracco P, Bettini G, Ferro S, Gattino F, Ghiani F, Costantino R, Ressel L, Bellei E, Marconato L.
この後ろ向き研究の目的は、転移ステージでバイオプシーにより悪性腫瘍と診断され、原発性腫瘍の解剖学的起源を見つけることができないという、原発不明の転移性癌(MCUP)の犬21頭の臨床特性、治療、結果を述べることだった。
全頭で全身CT検査を行った。シグナルメント、臨床症状のタイプと持続期間、転移部位、病理結果、治療、予後を記録した。カルシノーマが最も一般に診断され(57.1%)、続いて肉腫、メラノーマ、肥満細胞腫だった。犬1頭あたりの疾患部位数中央値は2か所で、多かった転医部位は骨、リンパ節、肺および脾臓だった。全ての犬の生存中央期間は30日だった。全体で20頭(95.2%)の犬で原発部位は確認されなかった。
原発不明の転移性癌は種々の異なる病理学的実体を含み、潜在的に予後は悪い。(Sato訳)
■犬の脾臓腫瘍 Part 1:249症例における組織病理診断と疫学的、臨床兆候(2000-2011)
Splenic masses in dogs. Part 1: Epidemiologic, clinical characteristics as well as histopathologic diagnosis in 249 cases (2000-2011).
Tierarztl Prax Ausg K Kleintiere Heimtiere. 2012;40(4):250-60.
Eberle N, von Babo V, Nolte I, Baumgartner W, Betz D.
目的:脾臓腫瘤は犬において発生率が高く、瀰漫性の脾拡大より一般的である。本研究の目的は、脾臓腫瘤の犬における臨床的な側面と組織病理的特徴を回顧的に記述することであった。
材料と方法:2000年1月から2011年3月までに組織学的に脾臓腫瘤と診断した患者のカルテを概説した。
結果:249頭の犬が組み入れ基準に適合し、研究に参加した。脾臓腫瘤は組織学的に非悪性疾患(n=117; 47%)と悪性疾患(n=132; 53%)と診断した。血管肉腫が最も一般的に組織学的に診断された(n=97; 73.5%)。他の悪性腫瘍はリンパ腫、芽細胞腫や腺癌と同様に肉腫(n=14)、線維性組織球性結節(n=9)が見られた。非悪性腫瘤は結節性過形成(n=60)、脾血腫(n=41)そして脾炎(n=6)が含まれた。腹腔内出血の犬は高確率で脾臓腫瘍であった。
結論:結果は、犬の脾臓における最も頻繁に発生する腫瘍は血管肉腫であるというこれまでの所見を実証している。しかし、おおよそ症例の半分は組織学的に良性と診断された。
臨床重要性: 腹腔内出血と関連した脾臓腫瘤を伴う犬の治療と関連した予後に関して飼い主と率直な議論をすることが必須である。(DR.KAWANO訳)
■犬の心臓原発性の血管肉腫の疫学および臨床病理学的特徴:51症例の回顧
Epidemiological, Clinical and Pathological Features of Primary Cardiac Hemangiosarcoma in Dogs: A Review of 51 Cases.
J Vet Med Sci. 2013 Jun 28. [Epub ahead of print]
Yamamoto S, Hoshi K, Hirakawa A, Chimura S, Kobayashi M, Machida N.
この研究の目的は、病理組織学的に診断された心臓原発性の血管肉腫(HSA)の51頭の犬の疫学および臨床病理学的所見を明らかにする事である。シグナルメント、主訴、身体検査所見、様々な診断方法および治療法の結果について、個々の犬についてカルテを調べた。さらに、全51頭について病理組織学的に再評価した。
老齢のゴールデンレトリバーで最も多く認められ、マルチーズおよびM.ダックスフンドがそれに続いた。HSAの腫瘤病変は、右心耳(25/51)と右心房(21/51)により多く認められ、右心房の腫瘤は右心耳の腫瘤よりも有意に大きかった (P<0.001)。右心耳のグループにおける超音波検査による腫瘤の検出率(60%, 15/25)は、右心房のグループ(95% 20/21)と比較してより低かった。生存期間は、腫瘍摘出の後補助的な化学療法を実施した5頭の犬の方が、実施しなかった12頭の犬より有意に長かった (P<0.05)。
今回の症例では、ゴールデンレトリバーだけではなく、マルチーズ(9/51)およびM.ダックスフンド(7/51)が他の犬種よりもより多く罹患していた。右心房の腫瘤と比較して右心耳の超音波による検出率がより低いのは、腫瘤の大きさまたは位置によるものであろう。補助的な化学療法を受けた犬の方が、生存期間が有意に長かったことは、心臓のHSAの犬に対して術後の化学療法が有用である事を示唆している。(Dr.Taku訳)
■猫の注射部位関連肉腫:現在の推奨治療と結果
Injection Site-Associated Sarcoma in the Cat: Treatment recommendations and results to date.
J Feline Med Surg. May 2013;15(5):409-18.
Jane Ladlow
実際の関連:猫の注射部位関連肉腫(FISSs)は、1990年代前半に最初に報告されてから多くの論議と懸念のもととなっている。単にワクチンとの関連だけでなく、ワクチン部位やスケジュールに影響し、ガイダンスが発表されている一方で、これは一般診療にゆっくりとしか浸透していないと思われる。
臨床的チャレンジ:この困難な疾患を持つ猫の1/4は、肺への転移を持つ。治療の主軸は積極的な外科手術だが、マージンがきれいな完全切除を行った症例でさえ、約1/3の症例で腫瘍の再発が予想される。補助療法として放射線療法や化学療法の役割は、明確に定義されていない。
疾患群:FISSsは若い猫に見られることが多く、発現ピークは6-7歳、2つ目のピークは10-11歳である。
エビデンスベース:このレビューは最近発表された治療結果を参照にFISSの診断および管理を要約する。外科的切除に注目するが、補助的放射線療法および化学療法もカバーし、異なる治療アプローチによる生存期間中央値も提供する。(Sato訳)
■膀胱の移行上皮癌の犬の治療へのクロラムブシルのメトロノーム療法
Metronomic administration of chlorambucil for treatment of dogs with urinary bladder transitional cell carcinoma.
J Am Vet Med Assoc. 2013 Jun 1;242(11):1534-8. doi: 10.2460/javma.242.11.1534.
Schrempp DR, Childress MO, Stewart JC, Leach TN, Tan KM, Abbo AH, de Gortari AE, Bonney PL, Knapp DW.
目的 移行上皮癌(TCC)の犬に対する低用量クロラムブシルのメトロノーム経口療法の抗腫瘍効果と毒性を検討すること
デザイン 前向き臨床試験
動物 31頭のTCCの飼い犬で、他の治療法の効果が認められなかったか、飼い主が他の治療法を希望しなかった犬
方法 クロラムブシル4mg/m2、経口、24時間ごとを投与した。治療の前と開始後決まったときに、身体検査、CBC、血清生化学検査、尿検査、TCCの測定のための膀胱の超音波検査を含めた胸部および腹部の画像検査、毒性のグレード化を行なった。
結果 31頭中29頭は、TCCの他の治療が効かなかった。情報が得られた30頭のうち、1頭 (3%)は、部分寛解(腫瘍の容量が50%以上減)、20頭(67%)は変化なし(腫瘍の容量の変化が50%以下)、9頭(30%)は、進行(腫瘍の容量が50%以上大きくなったまたはさらに腫瘍が出来た)、1頭は追跡できなくなった。無進行期間の中央値(クロラムブシルの治療を開始してから進行と判断されるまでの期間)は119日(範囲 7-728日)であった。クロラムブシル治療を開始してからの生存期間の中央値は221日(範囲 7-747日)であった。毒性はほとんどなく、1頭の犬においてのみ認められ、クロラムブシルを中止した。
結果と臨床的意義 クロラムブシルのメトロノーム療法は忍容性があり、70%の犬は部分寛解または無進行であった。クロラムブシルのメトロノーム療法は、TCCの犬に対する治療オプションとなる。(Dr.Taku訳)
■1頭の犬における心基部非クロム親和性傍神経節腫の3次元原体照射による治療
Use of three-dimensional conformal radiation therapy for treatment of a heart base chemodectoma in a dog.
J Am Vet Med Assoc. August 2012;241(4):472-6.
Nicholas J Rancilio; Takashi Higuchi; Jerome Gagnon; Elizabeth A McNiel
症例:9歳の避妊済みメスの雑種犬を、1年にわたる進行性の悪化、痰を伴わない咳とえずきのため評価した。
臨床所見:身体検査で顕著な異常はなかった。3方向胸部エックス線検査で心基部に、縦隔頭側マスを認めた。胸腔のCTスキャンで外科的に切除不可能と思われる心基底で、主要血管を取り囲む浸潤性マスを認めた。縦隔頭側マスの胸腔鏡下バイオプシー標本を採取し、組織評価で非クロム親和性傍神経節腫と判明した。
治療と結果:CTスキャンの結果を基に、3次元原体照射計画をコンピューター治療プラン作成ソフトで作成した。その犬は体外照射療法で治療した;6-MV線形加速器を用い、twenty-three 2.5-Gy fractionsで処方線量57.5Gyを照射した。放射線療法後、発咳は改善した。治療前の腫瘍容積は126.69cm(3)と算出した。放射線療法から25か月後、CTスキャンを実施し、その時点で腫瘍容積は50%以上減じていた。放射線療法から32か月後、心嚢水、胸水、腹水と失神を起こす疾患の進行を起こし、心膜切除と追加放射線療法で治療した。その犬は最初の放射線療法から42か月経過し、いまだ生存し順調だった。
臨床関連:この報告の犬で、切除不可能な心基部非クロム親和性傍神経節腫に対し、原体照射は付加的治療オプションを提供した;原体照射は適度に許容でき、安全だった。(Sato訳)
■舌腫瘍の犬の外科切除の結果と生存期間に関係する要因の評価:97症例(1995-2008)
Results of surgical excision and evaluation of factors associated with survival time in dogs with lingual neoplasia: 97 cases (1995-2008).
J Am Vet Med Assoc. May 2013;242(10):1392-7.
William T N Culp; Nicole Ehrhart; Stephen J Withrow; Robert B Rebhun; Sarah Boston; Paolo Buracco; Alexander M Reiter; Sandra P Schallberger; Charles F Aldridge; Michael S Kent; Philipp D Mayhew; Dorothy C Brown
目的:外科切除を行った舌腫瘍の犬の集団において、臨床特性、治療、結果、生存期間に関係する要因を述べる。
構成:回顧的症例シリーズ
動物:97頭の飼育犬
方法:1995年から2008年の間に舌腫瘍を検査した犬の診療記録を再調査した。記録は組織学的検査で舌腫瘍を確認した場合、マスの外科的切除を試みた場合を含めた。予後因子を確認するためデータを記録、分析した。
結果:臨床症状はほぼ口腔に関連するものだった。93頭の犬に対し、辺縁切除、亜全舌切除、全舌切除をそれぞれ35頭(38%)、55頭(59%)、3頭(3%)で実施した。手術に関連する合併症はまれだが、27頭(28%)は腫瘍が再発した。97頭における最も一般的な病理組織診断は、扁平上皮癌(31頭(32%))と悪性メラノーマ(29頭(30%))だった。18頭(19%)は転移を起こし、全体の生存期間中央値は483日だった。扁平上皮癌の犬の生存期間中央値は216日で、悪性メラノーマの犬は241日だった。診断時、直径2cm以上の舌腫瘍のある犬は、2cm未満の犬と比べて有意に生存期間が短かった。
結論と臨床関連:過去の研究と同じく、結果は舌腫瘍がほぼ一般的に悪性で、扁平上皮癌と悪性メラノーマが優勢を占めると示した。腫瘍の大きさは有意に生存期間に影響するため、早期ステージの舌腫瘍を発見するための完全な身体検査、腫瘍確認後の外科治療が推奨される。(Sato訳)
■19頭のインスリノーマの犬におけるストレプトゾトシンの隔週治療の前向き評価
Prospective Evaluation of Biweekly Streptozotocin in 19 Dogs with Insulinoma.
J Vet Intern Med. 2013 Apr 18. doi: 10.1111/jvim.12086.
Northrup NC, Rassnick KM, Gieger TL, Kosarek CE, McFadden CW, Rosenberg MP.
背景 ステージIIおよびステージIIIのインスリノーマの犬に対する21日間隔でのストレプトゾトシン(STZ)の投与は既に報告されている。骨髄抑制は認められないことから、投与間隔を短くすることによって用量強度を強める事が可能であることが示唆される。
目的 隔週のSTZプロトコールの耐用性を明らかにする。もう一つの目的は、この方法で治療した犬の予後を明らかにすることである。
動物 局所に残存しているか、転移性か、または再発性のインスリノーマの19頭の犬
方法 インスリノーマの手術後または再発の時点で、以前に報告されているSTZおよび生食による利尿プロトコールで治療した。治療は14日おきに実施した。全ての犬に対して制吐療法を実施した。副作用(AEs)を記録し、グレード分けした。評価した結果のエンドポイントは、無増悪生存(PFS)および生存についてである。
結果 好中球減少症や血小板減少症を経験した犬はいなかった。軽度から中等度の消化器毒性が最も多かった。糖尿病が8頭の犬において認められ、6頭は安楽死や死亡した。2頭の犬は、腎毒性が認められ、1頭はファンコニ症候群であり、もう1頭は腎性尿崩症であった。6頭の犬はアラニンアミノトランスフェラーゼの上昇が認められた。STZ投与の終了時の低血糖によって、1頭では虚脱がおき、1頭では全身性の発作が生じた。全PFSの中央値および生存期間は、それぞれ196日および308日であった。
結論と臨床的意義 ストレプトゾトシンはインスリノーマの犬に対して安全に投与可能かもしれないが、重篤な副作用の可能性がある。インスリノーマの犬を管理するのにSTZの役割をより決定するためにはさらなる研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■30頭の犬における腫瘍随伴性肥大性骨症
Paraneoplastic hypertrophic osteopathy in 30 dogs.
Vet Comp Oncol (2013), PMID 23489591
S S Withers, E G Johnson, W T N Culp, C O Rodriguez, K A Skorupski, R B Rebhun
犬や人の癌患者で腫瘍随伴性肥大性骨症(pHO)の発生が知られている。犬のpHOの病理はよく述べられている一方で、pHOに罹患した犬の真の臨床症状に関する情報は非常に少ない。
この研究の主な目的は、pHOのより包括的な臨床像を提供することだった。そのため、著者らは30頭の犬を回顧的に確認し、pHOと診断された日の主訴と身体検査(PE)所見に関するデータを記録した。
2つ目の目的として、コンピューターの記録から全ての血液検査も収集した。
最も一般的な臨床症状は、足の腫脹、眼の分泌物および/あるいは強膜上充血、跛行、嗜眠だった。最も一般的な血液および生化学検査異常は、貧血、好中球増多、ALP上昇だった。提示されるその犬のpHOのより詳細な臨床記述を加え、それらのデータは過去に述べられた血液学、血清生化学および個々の症例報告で発表された身体検査異常を支持するものである。(Sato訳)
■1頭の犬に見られた多発性内分泌腺腫瘍の異型の可能性
Potential variant of multiple endocrine neoplasia in a dog.
J Am Anim Hosp Assoc. March 2012;48(2):132-8.
Daniela Proverbio; Eva Spada; Roberta Perego; Valeria Grieco; Matteo Lodi; Mauro Di Giancamillo; Elisabetta Ferro
この報告は1頭の犬の多発性内分泌腺腫瘍を紹介する。それは一個体の中で2つ以上の異なる内分泌腺組織の腫瘍の存在を特徴とする、まれな遺伝性疾患である。
14歳の犬を多尿多飲、多食、腹部膨満で評価した。左甲状腺拡大を伴う副腎依存の副腎皮質機能亢進症と腹部転移病変の疑いが、副腎皮質刺激ホルモン刺激試験、超音波検査、CT検査で診断された。トリロスタン療法を開始し、臨床症状が改善して2年目に左精巣拡大を呈した。
犬は安楽死され、副腎皮質癌、甲状腺癌、転移性リンパ節に匹敵する腹部マス、両側間質性細胞精巣腺腫と診断された。
著者の知識では、これは1頭の犬の3種類の内分泌腺腫瘍の随伴を述べた最初の報告である。それらの腫瘍の随伴は多発性内分泌腺腫瘍の潜在的異型と説明できた。しかし間質性細胞精巣腺腫の存在は唯一偶発的所見かもしれない。それら腫瘍のいずれかが診断された場合、他に内分泌腺腫瘍あるいは過形成の存在を評価するため、完全な臨床的評価を実施すべきである。(Sato訳)
■肛門の転移性アポクリン腺癌の犬の腹腔内リンパ節腫脹の検出に対する腹部超音波検査とMRI検査の比較
Comparison of abdominal ultrasound and magnetic resonance imaging for detection of abdominal lymphadenopathy in dogs with metastatic apocrine gland adenocarcinoma of the anal sac.
Vet Comp Oncol. 2013 Feb 22. doi: 10.1111/vco.12022.
Anderson CL, Mackay CS, Roberts GD, Fidel J.
肛門および直腸癌のヒトの画像研究は、腹腔内リンパ節腫脹の検出でMRI検査が腹部超音波(AUS)検査よりも感度の高い方法だと示している。
この後ろ向き研究の目的は、肛門のアポクリン腺癌(AGAAS)の犬の腹腔内リンパ節腫脹を検出するため、それら2つの方法の有効性を直に比較することだった。
組織学的にAGAASと確認され、また病理組織学的に腹腔内リンパ節(LNs)に転移がある6頭の犬でAUSと腹部MRI検査を行った。AUSで6頭中2頭のリンパ節腫脹が確認され、MRIでは6頭全部のリンパ節腫脹が確認された。リンパ節腫脹は腸骨内側を侵害する仙椎部位に多くみられ、下腹部LNsは2症例のみだった。
それらのデータは、AGAASの犬の仙椎部腹部リンパ節腫脹の検出に対し、感度がAUSよりもMRIの方が良いことを示唆する。ゆえに、AGAASの全ての犬において、この疾患の最初の悪性度評価でMRI検査を考慮できる。(Sato訳)
■犬の口腔線維肉腫:65症例の後ろ向き分析(1998-2010)
Canine oral fibrosarcomas: a retrospective analysis of 65 cases (1998-2010)(†).
Vet Comp Oncol. 2013 Feb 18. doi: 10.1111/vco.12017.
Gardner H, Fidel J, Haldorson G, Dernell W, Wheeler B.
この後ろ向き研究の目的は、生存中央値および無増悪生存(PFS)に関して犬の口腔線維肉腫(FSA)の治療結果、およびグレードが生存期間中央値に関して予後指標になるかどうかを報告することだった。
口腔FSAの犬65頭が1998年1月から2010年3月の間にWSU VTHを受診した。生存中央値を有意に予測する因子は、発生部位(P=0.0099)、腫瘍の大きさ、または口腔ステージ(P=0.0312)、術式(P=0.0182)、マージン(P=0.0329)、グレード(P=0.0251)だった。PFSを有意に予測する因子は、発生部位(P=0.0177)と放射線プロトコール(P=0.0343)だった。外科手術と放射線照射の併用は、生存中央値505日(P=0.0183)およびPFS301日(P=0.0263)と、延長を最も強く予測する因子だった。
外科手術および放射線療法の併用による犬の口腔線維肉腫の治療は、最も長い生存中央値をもたらせた。(Sato訳)
■71頭の犬と13頭の猫における拡大した胸骨リンパ節のエックス線写真上の特徴
Radiographic characterization of enlarged sternal lymph nodes in 71 dogs and 13 cats.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 May-Jun;48(3):176-81.
Kelli Smith; Robert O'Brien
この回顧的研究において、71頭の犬と13頭の猫においてエックス線写真上拡大した胸骨リンパ節(LNs)の平均サイズ、位置、最も代表的なエックス線像を評価した。同時に臨床診断も行い、以下の3つのカテゴリー群に振り分けた:腫瘍、炎症、血液性。
各動物種内でラテラル像のLNサイズに統計学的有意差はなかった。拡大した胸骨LNsは猫より犬でより頭側に位置した。拡大した胸骨リンパ節の陰影がベストと思われるもので、右および左ラテラルに統計学的差は見られなかった。
犬のLN拡大に関して見られる最も多い状況は、腫瘍性疾患(78.9%)で続いて原発性感染性あるいは炎症性疾患(14.1%)、種々の血液学的病気(7.0%)だった。
猫でも腫瘍が多く(69.2%)、続いて炎症性疾患(30.8%)だった。猫で血液学的病気は見られなかった。犬(33.8%)と猫(38.5%)両方に拡大した胸骨LNsと同時に見られた最も一般的な病因は悪性リンパ腫だった。
この研究結果は、犬と猫に対するエックス線写真上拡大した胸骨リンパ節の平均サイズと位置の臨床的に有用な代表例を示す。代表的疾患は胸骨リンパ節腫脹の広範囲にわたる潜在的原因を示す。(Sato訳)
■膀胱の移行上皮癌の犬に対するシスプラチン、フィロコキシブ、シスプラチン/フィロコキシブの無作為試験
Randomized Trial of Cisplatin versus Firocoxib versus Cisplatin/Firocoxib in Dogs with Transitional Cell Carcinoma of the Urinary Bladder.
J Vet Intern Med. 2013 Jan;27(1):126-33. doi: 10.1111/jvim.12013. Epub 2012 Dec 3.
Knapp DW, Henry CJ, Widmer WR, Tan KM, Moore GE, Ramos-Vara JA, Lucroy MD, Greenberg CB, Greene SN, Abbo AH, Hanson PD, Alva R, Bonney PL.
背景:シスプラチンと非選択性シクロオキシゲナーゼ(COX)抑制剤の組み合わせは、犬の移行上皮癌(TCC)に対する抗腫瘍活性効果を持つが、この治療は腎毒性により制限される。COX-2はTCCで発現するが、腎臓内では限られた部位のみである。COX-2抑制剤は腎臓に対する副作用を潜在的に少ないままシスプラチンの抗腫瘍活性を高めることができた。
仮説:シスプラチン/COX-2抑制剤療法は、TCCの犬でシスプラチン単独よりもそれ以上の腎毒性がなく、より大きい抗腫瘍活性を示すだろう。
動物:膀胱にTCCが自然発生した44頭の犬
方法:犬に無作為にシスプラチン(60mg/m(2)IV3週毎)、フィロコキシブ(5mg/kgPO24時間毎)、または両方を投与した。腫瘍の測定を治療前と治療中6週間間隔で行った。腎機能は血清クレアチニン濃度、イオヘキソールクリアランス、尿比重でモニターした。毒性はCo-Operative Oncology Group (VCOG)でグレード付けした。
結果:シスプラチン/フィロコキシブの寛解率 (57%)はシスプラチン単独(13%)と比べて有意に高かった(P=0.021)。腎臓および消化管毒性はシスプラチンを投与した犬で一般的だったが、シスプラチンあるいはシスプラチン/フィロコキシブを投与した犬の間に有意差はなかった。フィロコキシブ単独は20%の犬が部分寛解、あるいは33%の犬が安定状態となった。
結論:フィロコキシブは症例の半数以上に部分寛解もたらすほど、シスプラチンの抗腫瘍活性を有意に高めた。しかし、シスプラチンに見られる毒性は、この組み合わせの犬でも見られた。フィロコキシブは単剤で抗腫瘍効果を持ち、TCCの犬の姑息療法として考慮できる。(Sato訳)
■気管気管支リンパ節増大のエックス線所見と確定あるいは仮診断との関連
RELATIONSHIP BETWEEN RADIOGRAPHIC EVIDENCE OF TRACHEOBRONCHIAL LYMPH NODE ENLARGEMENT AND DEFINITIVE OR PRESUMPTIVE DIAGNOSIS.
Vet Radiol Ultrasound. 2012 Jul 23. doi: 10.1111/j.1740-8261.2011.01921.x.
Jones BG, Pollard RE.
気管気管支リンパ節腫脹は一般にリンパ肉腫や瀰漫性真菌感染に関係する。入手可能なデータは拡大した気管気管支リンパ節の他の病理学的原因も示唆する。
今回の目的は、犬の大規模集団のエックス線写真において明確な気管気管支リンパ節腫脹を起こす疾患の分布と有病率を確認することだった。
診断が確認されている25頭と仮診断の85頭の診断方法を基にグループ分けした。この研究の110頭の犬のうち、92頭(84%)は腫瘍、18頭(16%)は感染疾患だった。感染はコクシジオイデス(12、67%)、アスペルギルス(3、17%)、ノカルジア(1、6%)、ペニシリウム(1、6%)、マイコバクテリウム(1、6%)によるものだった。腫瘍の特徴はリンパ腫(66、60%)あるいは非リンパ系(26、23.6%)だった。非リンパ腫群は組織球肉腫複合体(16%)、癌腫(12%)、腺癌(8%)、骨肉腫(8%)、非クロム親和性傍神経節腫(4%)、神経節芽細胞腫(4%)、神経内分泌(4%)だった。
気管気管支リンパ節腫脹のスコア1、2、3、4、5(最大5)の犬の頭数は、それぞれ8頭(7%)、15頭(14%)、30頭(27%)、15頭(14%)、44頭(38%)だった。
結果は、リンパ腫と真菌感染の診断に加え、他の腫瘍、特に組織球肉腫や転移性腺癌などが犬のエックス線検査で気管気管支リンパ節腫脹が認められたときに考慮すべきであると示唆される。疾患カテゴリーにより気管気管支リンパ節腫脹の程度を比較するとき、有意な関連はなかった(P=0.33)。(Sato訳)
■犬の腹壁の移行上皮癌の特徴評価と治療:24症例(1985-2010)
Characterization and treatment of transitional cell carcinoma of the abdominal wall in dogs: 24 cases (1985-2010).
J Am Vet Med Assoc. 2013 Feb 15;242(4):499-506. doi: 10.2460/javma.242.4.499.
Higuchi T, Burcham GN, Childress MO, Rohleder JJ, Bonney PL, Ramos-Vara JA, Knapp DW.
目的:犬の腹壁における移行上皮癌(TCC)(ABWTCC)のウロプラキンIII発現、潜在的原因因子、生物学的挙動、治療反応を確かめる
構成:後ろ向き症例シリーズ
動物:尿路のTCCがあり、またABWTCCも病理組織検査で確認されている24頭の犬
手順:1985年1月1日および2010年12月31日までの間のABWTCCの犬の医療記録、組織学的スライド、エックス線写真、超音波像を検討した。使用可能な組織標本でABWTCCと原発腫瘍のウロプラキンIII発現の検出に免疫組織化学検査を使用した。
結果:ABWTCC病変の範囲は直径2cm未満から20cmよりも大きかった。原発腫瘍20のうち19、ABWTCC17のうち17でウロプラキンIIIが発現した。腹壁の移行上皮癌は。膀胱切開を行ってない犬(6/367;1.6%)よりも行った犬(18/177;10.2%)の方が有意に多く発症した。膀胱切開を行っていない1頭の犬において、TCCは膀胱壁を浸潤して通り抜け、正中索を下に腹壁まで広がっていた。抗がん剤を投与された18頭で臨床的にABWTCCの寛解を認めたものはおらず、ABWTCC発見後の生存期間中央値は57日(範囲、0-324日)だった。
結論と臨床的関連:ABWTCCは珍しいが、腹壁にTCCが確立および臨床的に検出可能になった場合、予後不良であると結果は示唆した。手術時にTCC播種のリスクを最小限にすることは重要である。TCCの経皮的サンプリングは避けるべきである。ABWTCCにおいてウロプラキンIIIは一般的に発現する。(Sato訳)
■膀胱の移行上皮癌の犬における腫瘍の体積の測定で3次元および2次元超音波検査の精度
Accuracy of three-dimensional and two-dimensional ultrasonography for measurement of tumor volume in dogs with transitional cell carcinoma of the urinary bladder.
Am J Vet Res. December 2012;73(12):1919-24.
James F Naughton; William R Widmer; Peter D Constable; Deborah W Knapp
目的:膀胱に移行上皮癌(TCC)ができた犬で、腫瘍の体積の定量に対する3-Dおよび2-D超音波検査の精度を判定する
動物:バイオプシーでTCCを確認した10頭の犬
方法:各犬の膀胱を生理食塩水(0.9%NaCl)で拡張させ(5ml/kg)、マスを3-Dおよび2-D超音波検査で測定した。また、生理食塩水2.5ml/kgおよび1.0ml/kgで膀胱を拡張した後でも3-D超音波検査でマスを測定した。その後、膀胱を縮小させ、CO(2)(5.0ml/kg)で拡張させた;静脈造影剤投与後、CT検査を実施した。腫瘍の体積は3-D超音波検査、2-D超音波検査、CT検査(参照方法)で算出し、ANOVA、デミング回帰、Bland-Altman plots法で比較した。3-D腫瘍体積測定値に対する膀胱拡張の影響を評価するのに反復測定ANOVAを使用した。各方法の変動係数により測定値の再現性を推定した。
結果:全て3方法の再現性は良好と思われた。膀胱拡張の程度で3-D超音波検査で得られた腫瘍の体積における有意差は認められなかった。デミング回帰、Bland-Altman plots法の結果は、3-D超音波検査とCT検査の腫瘍体積測定値の優れた一致を示したが、2-D超音波検査とCT検査ではそうではなかった。
結論と臨床的関連:膀胱に移行上皮癌がある犬の腫瘍の体積は、3-D超音波検査で正確に測定できた。3-D超音波検査の使用は2-D超音波検査よりも正確で、治療の反応をモニターするのにCT検査よりも安価でより実用的な方法と考えられる。(Sato訳)
■放射線療法で治療した鼻腔内肉腫の犬の生存期間:86症例(1996-2011)
SURVIVAL TIMES FOR CANINE INTRANASAL SARCOMAS TREATED WITH RADIATION THERAPY: 86 CASES (1996-2011).
Vet Radiol Ultrasound. 2012 Dec 26. doi: 10.1111/vru.12006.
Sones E, Smith A, Schleis S, Brawner W, Almond G, Taylor K, Haney S, Wypij J, Keyerleber M, Arthur J, Hamilton T, Lawrence J, Gieger T, Sellon R, Wright Z.
犬の鼻腔内腫瘍の約1/3を肉腫が占めるが、他の鼻腔内腫瘍から区別した肉腫の組織学的サブタイプを持つ犬の生存期間を述べている研究はほとんどない。
この研究の1つ目の目的は、鼻腔内肉腫に対し放射線療法で治療した犬の生存期間中央値を述べる。2つ目の目的は、3つの放射線療法プロトコールで治療した犬の生存期間を比較する:毎日多分割放射線療法;月、水、金分割放射線療法;姑息的放射線療法。
鼻腔内肉腫を放射線療法で治療していた犬の医療記録を回顧的に調査した。基準に合った犬は86頭だった。それらの犬の総生存期間中央値は444日だった。軟骨肉腫の犬(n=42)の生存期間中央値は463日で、線維肉腫(n=12)は379日、骨肉腫(n=6)は624日、未分化型肉腫(n=22)は344日だった。毎日多分割放射線療法;月、水、金分割放射線療法;姑息的放射線療法で治療した犬の生存期間中央値はそれぞれ641日、347日、305日だった。根治的放射線療法と姑息的放射線療法で治療した犬の生存期間に有意差を認めた(P=0.032)。毎日多分割放射線療法と月、水、金分割放射線療法で治療した犬の生存期間にも有意差を認めた(P=0.0134)。
この研究の所見は鼻腔内肉腫の犬の根治的放射線療法の選択を支持するものである。治療の有益性を確認するための前向き無作為試験が必要である。(Sato訳)
■移行上皮癌の犬の治療に対するドキソルビシンとピロキシカムを併用療法についての後ろ向き研究
Retrospective evaluation of doxorubicin-piroxicam combination for the treatment of transitional cell carcinoma in dogs.
J Small Anim Pract. 2013 Jan 3. doi: 10.1111/jsap.12009. [Epub ahead of print]
Robat C, Burton J, Thamm D, Vail D.
目的 移行上皮癌の犬に対して、ドキソルビシンとピロキシカムの併用が安全で効果があるかについて明らかにすること
方法 6年にわたり2つの施設における34頭の犬から後向きに情報を集めた。シグナルメント、臨床徴候、治療の詳細、副作用、反応性、無増悪生存期間、全生存期間について評価した。
結果 ドキソルビシンは3週おきに、ピロキシカムは毎日投与した。17頭(50%)の犬は外科手術を受けた。臨床像は、移行上皮癌で報告されている典型的なものだった。投与回数の平均は3.5回であった。測定できた23頭のうち、14頭(60.5%)は安定であり、7頭(30.5%)は進行性であり、2頭(9%)は部分奏功を示した。副作用は、一般的には管理可能なものであり、消化管由来であった。1頭は治療に関連した併発症によって死亡した。無増悪生存期間の中央値は103日であり、全生存期間は168日であった。腫瘍縮小のための外科手術は、無増悪生存の延長には至らなかったが、全生存期間を有意に延長させた。1頭を除いて全ての犬が、進行により死亡した。
臨床的意義 ドキソルビシンとピロキシカムの併用療法は、無増悪生存および全生存期間および生物学的反応率は中程度であったが、移行上皮癌の犬においてよく耐えられた。外科手術との併用は、生存について有効であるようだが、これは腫瘍の部位や大きさを反映しているのかもしれない。ドキソルビシンとピロキシカムの併用療法の有効性を現在用いられている方法と比較するためには前向き研究が必要である。(Dr.Taku訳)
■癌免疫療法-新規の展望
[Cancer immunotherapy - novel perspectives].
Ther Umsch. 2012 Oct;69(10):559-63. doi: 10.1024/0040-5930/a000330.
Rothschild S, Zippelius A.
癌免疫監視の概念は過去数十年間にさかのぼり、免疫系が自発的な悪性腫瘍の発生か進行を抑えることができるという仮説に基づく。免疫療法の戦略は、抗腫瘍モノクローナル抗体、癌ワクチン、試験管内で活性化したTそしてナチュラルキラー細胞の養子免疫細胞移入、免疫細胞あるいは阻止免疫抑制経路を同時刺激する抗体の投与が含まれる。
Sipuleucel-T療法は始めての抗癌ワクチンであり、転移性去勢手術抵抗性前立腺癌の患者におけるランダム化臨床研究において全生存を改善した。同様にイピリムマブは細胞傷害性T細胞抗原4(CTLA-4)を阻止するモノクローナル抗体であるが、転移性メラノーマの前処置した患者とこれまで無治療の患者において全生存ベネフィットと耐久性のある腫瘍応答を示した。スイスにおいて、イピリムマブは転移性メラノーマにおいてセカンドライン治療として承認された。新規免疫活性剤を使ったこれらの最近のポジティブな臨床試験結果は、免疫療法が次の10年間の抗癌治療における決定的な役割を担うという見込みを上げた。(Dr.Kawano訳)
■犬の棘細胞腫型エナメル上皮腫のCT特性:52症例の後ろ向き研究
[Computed tomographic characteristics of canine acanthomatous ameloblastoma - a retrospective study in 52 dogs].
Tierarztl Prax Ausg K Klientiere Heimtiere. June 2012;40(3):155-60.
A Schmidt; M Kessler; M Tassani-Prell
目的:犬の顎骨内の棘細胞腫型エナメル上皮腫特徴的な画像を述べるためにCT像を検討する
素材と方法:組織学的に棘細胞腫型エナメル上皮腫と確認した70頭の犬の疫学的データと画像検査結果の後ろ向き評価。52頭の犬のCT検査結果を入手し、18頭の吻側上顎および下顎のエックス線写真を入手した。
結果:腫瘍は最も一般的に下顎の吻側部に存在した。中型犬から大型犬が一般に罹患し、明らかな犬種偏向はなかった。二峰性の年齢分布を証明できた。19%の犬は5歳未満だった。CTで検査した52頭中の45頭(86%)は骨融解が存在し、広範囲にわたる症例もいた。歯槽縁の骨融解を伴う歯槽腔の拡張性骨破壊は、特徴的なCT像として認められた。
結論と臨床関連:犬の棘細胞腫型エナメル細胞腫は特徴的なCT像を示し、病理組織的確認と組み合わせることでこの腫瘍の診断に役立つ。(Sato訳)
■メロキシカムで治療した膀胱移行上皮癌の猫における臨床特徴と生存期間およびCOX-1、COX-2発現
Clinical features, survival times and COX-1 and COX-2 expression in cats with transitional cell carcinoma of the urinary bladder treated with meloxicam.
J Feline Med Surg. August 2012;14(8):527-33.
Nicholas X Bommer; Alison M Hayes; Timothy J Scase; Danielle A Gunn-Moore
メロキシカムで治療していた膀胱の移行上皮癌の猫11頭の記録で、シグナルメント、診断前の臨床症状の持続期間、診断画像検査の結果、同時に外科手術を実施したかどうか、生存性について検討した。7頭の猫の腫瘍においてシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の免疫組織化学的発現を調査した。
さまざまな部位に腫瘍は存在した。猫の平均年齢は13歳だった。3頭の猫は過去に猫特発性膀胱炎と診断され、2008日経っていた。10頭は臨床的改善(血尿および/あるいは排尿障害の減少)を示し、平均生存期間(MST)は311日(範囲10-1064日)、1年生存率は50%だった。COX染色で評価した全7つの膀胱はCOX-1陽性で、5つはCOX-2陽性だった。COX-2陽性猫のMSTは123日で、COX-2陰性症例のMSTは375日だった。(Sato訳)
■犬の血管肉腫の脾臓における上昇した血清チミジンキナーゼ活性
Elevated serum thymidine kinase activity in canine splenic hemangiosarcoma.
Vet Comp Oncol. 2012 Dec;10(4):292-302. doi: 10.1111/j.1476-5829.2011.00298.x. Epub 2011 Oct 20.
Thamm DH, Kamstock DA, Sharp CR, Johnson SI, Mazzaferro E, Herold LV, Barnes SM, Winkler K, Selting KA.
チミジンキナーゼ1(TK1)はDNA合成に関係する可溶性バイオマーカーである。
この前向き研究で、腹腔内出血と脾臓のマスがある犬において血清TK1活性を評価した。TK1活性を評価するのに、基質としてアジドチミジンを使用したELISAを用いた。
腹腔内出血の犬62頭と正常なコントロール犬15頭で研究した。血管肉腫(HSA)の犬の血清TK1活性は正常犬よりも有意に高かった(平均±SEM=17.0±5.0と2.01±0.6)が、良性疾患の犬では高くなかった(平均±SEM=10.0±3.3)。カットオフ値6.55U/Lを用い、HSAと正常の鑑別でTK活性は0.52の感受性、0.93の特異性、0.94の陽性適中率、0.48の陰性的中率を示した。間隔閾値<1.55と>7.95U/Lを同時に用いた時、診断的有用性は上昇した。血清TK1の評価は腹腔内出血と脾臓マスの犬において良性疾患とHSAを鑑別するのに役立つかもしれない。(Sato訳)
■口腔腫瘍の犬の歯吸収の有病率とタイプ
Prevalence and types of tooth resorption in dogs with oral tumors.
Am J Vet Res. July 2012;73(7):1057-66.
Ana Nemec; Boaz Arzi; Brian Murphy; Philip H Kass; Frank J M Verstraete
目的:口腔腫瘍の犬の歯吸収の有病率とタイプを判定し、それら所見とコントロール犬の所見を比較する
動物:歯のレントゲン写真が入手できる口腔腫瘍の101頭の犬と口腔腫瘍のないコントロール犬128頭
方法:除外する犬の基準は、全身疾患、抗炎症薬の長期投与、外傷性の咬合、半広範性あるいは広範性歯周炎、歯髄疾患があることとした。口腔腫瘍の各犬に対し、腫瘍のバイオプシー標本の組織切片を検査した。歯のレントゲン写真を検査し、各歯で歯吸収の有無とタイプを判定した。歯吸収の有病率に関するデータを比較するために統計分析を実施した。
結果:非歯原性腫瘍の犬の腫瘍部位の歯は、歯原性腫瘍の犬の腫瘍部位の歯と比較して外部炎症性吸収に侵される頻度が有意に高かった。口腔腫瘍の犬の腫瘍から遠い部位の歯は、コントロール犬よりも外面吸収に3.2倍なりやすく(OR、3.2;95%信頼区間、1.3-7.9)、外部炎症性吸収に83.4倍なりやすかった(OR、83.4;95%信頼区間、9.7-719.6)。
結論と臨床関連:腫瘍部位および腫瘍から遠い部位の歯の吸収は、口腔腫瘍の犬で一般的だった。この研究の結果は、局所および遠位硬組織の口腔腫瘍の複雑な影響を理解するのに役立つだろう。(Sato訳)
■頭蓋内腔を占拠する病変のある71頭の犬における対症療法とロムスチン投与の比較
Comparison between symptomatic treatment and lomustine supplementation in 71 dogs with intracranial, space-occupying lesions.
Vet Comp Oncol. September 2012;0(0):.
S Van Meervenne; P S Verhoeven; J de Vos; I M V L Gielen; I Polis; I Polis; L M L Van Ham
脳腫瘍と診断される犬が多くなってきている。その結果として効果的な治療の必要性も高まっている。外科手術あるいは放射線療法が選択されない症例では化学療法が考慮される。
この後ろ向き研究の目的は、コルチコステロイドと抗てんかん薬で対症治療した場合と、それにロムスチンを加えた場合の頭蓋内マスの犬の生存期間中央値(MST)に違いが出るか評価することだった。
頭蓋内マスのある71頭の犬の記録を回顧的に評価した。15頭の犬はコルチコステロイドおよび抗てんかん薬で対症的に治療し、56頭の犬はその治療にロムスチンを加えていた。両群のMSTは60日と93日で統計学的有意差はなかった。年齢、徴候の持続期間、頭蓋内のマスの位置、脳内あるいは脳外かは生存期間に影響しなかった。しかし、メス犬はオス犬よりも有意に長く生存した。(Sato訳)
■犬の原発性肺癌におけるEGFR過剰発現:病原的意味と生存への影響
EGFR overexpression in canine primary lung cancer: pathogenetic implications and impact on survival.
Vet Comp Oncol. 2012 Sep 20. doi: 10.1111/vco.12002.
Sabattini S, Mancini FR, Marconato L, Bacci B, Rossi F, Vignoli M, Bettini G.
この研究は、上皮成長因子レセプター(EGFR)過剰発現の病原的および予後的役割を特に注目して、37頭の犬の原発性肺癌(PLC)の主な臨床病理学的特徴を報告する。
各症例の以下の特性を評価した:腫瘍-リンパ節-転移(TMN)ステージ、腫瘍の組織タイプ、組織学的グレード、有糸分裂活性、EGFRの免疫組織化学的発現。入手可能な正常な肺組織のサンプルにおいて、バックグラウンド炭肺症の量も画像分析により測定した。
27頭(73%)において、細胞の不定数(20-100%)がEGFRに対して陽性に染まった。EGFR陽性腫瘍の比率は、バックグラウンド炭肺症の症例で有意に高く、炭肺症の量は陽性腫瘍細胞の比率と相関した。また、高EGFR群における生存期間短縮傾向が観察された。
それらの所見は犬の原発性肺癌におけるEGFRシグナル伝達経路の関与、蛋白過剰発現の負の予後意義、大気汚染発癌におけるその影響の可能性を示唆する。(Sato訳)
■犬の脾臓血管肉腫および血管腫と結節性リンパ組織過形成あるいは鉄沈着性結節の関係
Association of canine splenic hemangiosarcomas and hematomas with nodular lymphoid hyperplasia or siderotic nodules.
J Vet Diagn Invest. July 2012;24(4):759-62.
Patricia Ann Cole
血管腫あるいは血管肉腫と診断された出血性の脾臓マスを再検討した。リンパ組織過形成は血管肉腫症例に見られず、血管腫の症例の27%に見られた。包あるいは柱の鉄沈着性結節は血管肉腫の25%、血管腫の36%の症例に見られた。血管肉腫の54%、血管腫の22%の症例の臨床的病歴で腹腔内出血を認めた。血管肉腫と血管腫症例の平均年齢(10.3歳と9.6歳)、性別比(わずかにオスが多い)、一般的犬種(ラブラドールレトリバー、ゴールデンレトリバー、シャーマンシェパードドッグ)は類似していた。
血管腫の症例においてリンパ組織過形成はより一般的なので、この特徴が存在すれば血管肉腫よりも血管腫の診断を支持する助けとなる。シグナルメント、腹腔内出血の病歴、鉄沈着性結節の存在は、どちらの診断を押すポイントにはならない。(Sato訳)
■17頭の犬の筋間脂肪腫の解剖学的分布と臨床的所見(2005-2010)
Anatomic distribution and clinical findings of intermuscular lipomas in 17 dogs (2005-2010).
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 Jul-Aug;48(4):245-9.
J Brad Case; Catriona M MacPhail; Stephen J Withrow
犬の筋間脂肪腫(IML)は特に前肢において悪そうな臨床症状に関係する。しかし、外科切除後の予後は良好である。IMLに関する獣医学的文献で情報は不足している。
この目的は、IMLに対する診断と治療を行った一連の犬において、解剖学的部位、画像検査方法、臨床的所見を述べることだった。
前肢と後肢でIMLの有病率に違いはなかった。前肢のほとんどのIMLは腋窩に位置した。前肢および後肢のIMLの手術時間は平均60分だった。辺縁外科切除後の合併症はほとんどなく、この報告の症例で再発は見られなかった。
腋窩のIMLは、大腿尾側のIMLと同じぐらい一般的である。犬の腋窩および大腿尾側のIMLの外科的治療は、予後良好である。(Sato訳)
■犬のインスリノーマ:概説
Insulinoma in dogs: a review.
J Am Anim Hosp Assoc. 2012 May-Jun;48(3):151-63.
Caroline M Goutal; Bonnie L Brugmann; Kirk A Ryan
インスリノーマはインスリンの産生、分泌能力を有するβ細胞のまれな悪性機能性膵臓腫瘍である。インスリノーマは犬における最も一般的な膵臓神経内分泌腫瘍で、低血糖および二次的神経低糖性およびアドレナリン作用性の効果から起こる種々の臨床症状を誘発する。診断と治療は挑戦的で、予後は治療選択に依存して極端に変化する。このレビューは、インスリノーマの診断、治療、予後に対する現行の傾向と従来の知見の要約とアップデートを目的とする。(Sato訳)
■犬の血管肉腫細胞系に対するチロシンキナーゼ抑制剤のメシル酸マスチニブのインビトロでの効果
In vitro effects of the tyrosine kinase inhibitor, masitinib mesylate, on canine hemangiosarcoma cell lines.
Vet Comp Oncol. 2012 May 18. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00335.x.
Lyles SE, Milner RJ, Kow K, Salute ME.
犬の血管肉腫(HSA)細胞系に対し、メシル酸マスチニブの増加濃度(0.01-100μM)で処置し、24、48、72時間時のインビトロの活性を評価した。結果は、メシル酸マスチニブがHSA細胞増殖を用量および時間依存的に減少させることを示した。3つのHSA細胞系(DEN、Fitz、SB)に対する72時間時の50%抑制濃度(IC(50))は、それぞれ8.56、9.41、10.65μMだった。
追加調査でメシル酸マスチニブはカスパーゼ-3/7を含む全てのHSA細胞系においてアポトーシスを誘発したことを示した。細胞上清におけるVEGF濃度の測定値は、各細胞系のIC(50)に近づき、基準に向かって低下するVEGFの統計学的に有意な増加を認めた。それらの所見はインビトロでメシル酸マスチニブが用量依存性のHSA細胞死を起こすことを示し、犬のHSAに対するマスチニブの追加臨床試験を支持する。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫のグレード付けに対する治療前生検の診断的精度
Diagnostic accuracy of pre-treatment biopsy for grading soft tissue sarcomas in dogs.
Vet Comp Oncol. 2012 May 22. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00333.x.
Perry JA, Culp WT, Dailey DD, Eickhoff JC, Kamstock DA, Thamm DH.
犬の軟部組織肉腫(STS)の組織学的グレードは、局所再発および転移の可能性、両方に対する重要な予後因子である。腫瘍グレードの鑑別を兼ねた治療前の生検は、予後判定と局所コントロールにおける外科的マージンの必要性の判定に役立つかもしれない。
この研究の目的は、犬のSTSに対し、種々の治療前生検方法(楔、パンチ、ニードルコア)のグレード付け精度を評価することだった。
治療前の生検せSTSと診断し、切除生検で確認した68頭の犬のカルテを評価した。切除と治療前の生検のグレードが一致したのは59%だった。一致しなかった41%のうち、グレードの過小評価は29%、過大評価は12%だった。治療前の生検方法は、グレードの一致度に有意な影響を及ぼさなかった。
それらのデータを基に、ニードルコア生検はオープン生検と比較して同様の精度が見られたが、一般に治療前の生検によるグレード判定は慎重に解釈すべきである。(Sato訳)
■猫の膵臓外分泌腺癌:34症例の回顧的研究
Feline exocrine pancreatic carcinoma: a retrospective study of 34 cases.
Vet Comp Oncol. 2012 May 21. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00320.x.
Linderman MJ, Brodsky EM, de Lorimier LP, Clifford CA, Post GS.
この回顧的研究で、猫の膵臓外分泌腺癌の臨床症状、予後指標、生存期間、種々の治療での反応に関する情報を34症例で再検討した。
最も一般的に呈する臨床症状は、体重減少、食欲低下、嘔吐、触知可能な腹部マス、下痢だった。転移巣は11頭で確認された。全体の生存期間中央値は97日だった。化学療法を施した症例、あるいは外科的にマスを切除した症例の生存期間中央値は165日だった。診断時に腹水のあった症例の生存期間中央値は30日だった。非ステロイド性抗炎症剤療法を受けた猫の生存期間中央値は26日だった。
この研究で猫の膵臓外分泌腺癌はアグレッシブな腫瘍で高い転移率を持ち予後不良だと確認できたが、3症例は1年以上生存した。症例の15%は糖尿病で、おそらくヒトと猫において糖尿病と膵臓癌の何らかのかかわりについて疑問が持ち上がる。(Sato訳)
■猫の鼻の癌とリンパ腫の鑑別のための免疫組織化学の有効性:140症例(1986-2000)
The usefulness of immunohistochemistry to differentiate between nasal carcinoma and lymphoma in cats: 140 cases (1986-2000).
Vet Comp Oncol. 2012 Apr 23. doi: 10.1111/j.1476-5829.2012.00330.x. [Epub ahead of print]
Nagata K, Lamb M, Goldschmidt MH, Duda L, Walton RM.
2人の病理学者により、癌あるいはリンパ腫と初回に診断した232件の猫の鼻部バイオプシー標本の回顧的評価を行った。1人あるいは2人とも最初の診断と一致しなかったのは15件(7%)で、そのうち14件の最初の診断は癌だった。232件のうち議論となったものを含む140件は上皮およびリンパマーカーの免疫組織化学染色を行った。
15件の議論となった症例の免疫組織化学染色で、最初の診断の67%(10/15)が間違い、13%(2/15)が裏付けなし、20%(3/15)が正確と示された。診断が合意した中で、免疫組織化学により、診断の3%(4/125)が評価したマーカーのいずれも染色されていないために裏付けなしとなった。
この報告は猫の鼻の腫瘍の正確な組織診断を行うため、免疫組織化学の重要性を示す。(Sato訳)
■2つの皮膚褐色細胞腫をイミキモド局所投与で治療した犬の1例
Topical imiquimod in the treatment of two cutaneous melanocytomas in a dog.
Vet Dermatol. April 2012;23(2):145-9, e31.
Kimberly Coyner; Diana Loeffler
イミキモドは局所生物学的修飾物質で、ヒトや動物のいくつかのウイルス性および非ウイルス性皮膚腫瘍の治療で有効性を示している。老人の悪性ほくろ(上皮内黒色腫)は一般的で、イミキモドで首尾よく治療できる。犬の褐色細胞腫は一般的な皮膚腫瘍だが、外科的切除が選択される治療で、腫瘍の位置や患者の病的状態で切除が難しい症例もいる。
この症例報告は臨床結果、病理組織検査、免疫組織化学染色、ヒトの悪性ほくろの治療との比較を含む、1頭の犬の2か所の褐色細胞腫のイミキモドによる治療成功例を詳述する。
著者の知る限りでは、これは犬の褐色細胞腫の治療にイミキモドを使用した最初の報告で、コンパニオンアニマルでイミキモド使用後の病理組織および免疫組織化学の最初の記述である。(Sato訳)
■犬の膀胱腫瘍治療の有効性を判定する臨床因子:外科、化学療法あるいは両方?
Clinical factors determining the efficacy of urinary bladder tumour treatments in dogs: Surgery, chemotherapy or both?
Acta Vet Hung. March 2012;60(1):55-68.
Tamas Molnar; Peter Vajdovich
病理組織学的に証明された膀胱腫瘍を持つ犬44頭の研究で、移行上皮癌(TCC)の高い発生率(n=35)を示し、治療後の無病期間と犬の年齢(r=-0.40)、あるいは生存期間と犬の年齢(r=-0.62)、両方に密接な相関が見つかった。膀胱腫瘍の発生傾向が知られている犬種に加えて、追加の潜在的感受性のある犬種ハンガリアンビズラを著者らは発見した。治療の種類による生存期間中央値は、「外科と化学療法」(n=8/44)で475日、「外科単独」(n=19/44)で240日、「化学療法単独」(n=7/44)31日、「無治療」(n=10/44)で7日(P<0.001)だった。
所見によれば、最終的に化学療法と完全切除の組み合わせが、犬の膀胱腫瘍症例の治療で最も効果的なプロトコールである。膀胱腫瘍症例の評価および治療に対する合理的およびより効果的な方法を提示する。(Sato訳)
■犬の放射線療法誘発骨髄抑制:103例(2002-2006)
Radiotherapy-induced myelosuppression in dogs: 103 cases (2002-2006).
Vet Comp Oncol. March 2012;10(1):24-32.
T Clermont; A K LeBlanc; W H Adams; C J Leblanc; J W Bartges
根治的放射線療法は、通常1日1回あるいは隔日分割スケジュールで数週間かけて電離放射線を18-62グレイの大照射量で行う。担癌犬の造血に対する根治的放射線療法単独の影響は不明である。
5年の間に癌に対し根治的コバルト(60)遠隔治療を行った103頭の犬の医療記録で、シグナルメント、腫瘍の種類と部位、総放射線量、分割シェーマを再調査した。全血検査データを放射線治療前、中間、終了時に収集し、患者の変数の変化を分析した。
結果は、根治的放射線療法中のヘマトクリット値、総白血球数、好中球、好酸球、単球、リンパ球、血小板の有意な減少を示したが、検査所の参照値間隔内を維持した。
それらのデータは犬の放射線療法と化学療法の併用に関係する毒性の予測に重要であるが、根治的放射線療法中の血液パラメーターのルーチンなモニタリングを支持するものではない。(Sato訳)
■猫の肺指症候群:猫の原発性肺腫瘍のまれな転移パターン
Feline lung-digit syndrome: Unusual metastatic patterns of primary lung tumours in cats.
J Feline Med Surg. March 2012;14(3):202-8.
Nick Goldfinch; David Argyle
臨床的関連:猫の“肺-指症候群”は、特に気管支および気管支肺胞腺癌などの種々の原発性肺腫瘍に見られるまれな転移パターンである。腫瘍の転移が非定型部位、とりわけ肢の遠位指節骨に見つかる;負重のかかる指に見られる頻度が高く、一般的に複数の指および複数の肢が関係する。原発性腫瘍に関係する臨床症状のために原発性肺腫瘍が検出されないことが多く、むしろ多くの症例は遠隔転移に関係する症状を呈する。
猫の原発性肺腫瘍からの他の転移部位は皮膚、眼、骨格筋および骨と同じく複数の胸部あるいは腹部臓器などである。それらの病変は腫瘍の直接の動脈塞栓から起こると考えられる。実際に大動脈三分岐への腫瘍塞栓は可能である。
患者群:猫の原発性肺腫瘍は珍しく、老齢猫が最も罹患する(受診時平均年齢12歳、範囲2-20歳)。明らかな性別あるいは品種の偏りはない。
臨床的チャレンジ:猫肺-指症候群は診断的難題である。典型的に指の腫脹と発赤、爪床からの化膿性浸出液、関連した爪の形成異常のあるいは固定された脱鞘が見られる。それらの症状は感染を示唆するものかもしれない、一方特に中年齢あるいは老齢の猫では指の転移病変の二次的な症状の可能性がある。
末節骨の広範な骨融解のエックス線所見は、関節をまたいで第二指節骨に至る場合もあり、原発性肺腫瘍の転移の疑いが持ち上がる。この症候群の猫の予後は、平均生存期間が受診後たった58日と一般的に悪いため、全ての外科手術あるいは指の切断を行う前に胸部エックス線検査を行うべきである。
エビデンスベース:この論文は過去の文献、猫肺-指症候群の症例報告、一般的な猫の原発性肺腫瘍を概説し、この疾患の経過および異なる転移部位に関係する様々な臨床症状を述べる。(Sato訳)
■犬の癌患者群で止血性変化は癌のタイプおよび疾患の進行に関係する
Haemostatic alterations in a group of canine cancer patients are associated with cancer type and disease progression.
Acta Vet Scand. 2012;54(1):3.
Eva B Andreasen; Mikael Tranholm; Bo Wiinberg; Bo Markussen; Annemarie T Kristensen
背景:ヒトおよびがん患者で止血性変化が一般的に検出される。過去の研究では血管肉腫および腺癌の犬で止血性機能障害が述べられており、種々の悪性および良性腫瘍の犬で止血が評価されている。犬の患者で止血変化の存在に対する癌のタイプおよび疾患の進行の影響を調査した研究はほとんどない。
この研究の目的は、犬の癌患者群における凝固および線維素溶解の止血性変数を評価し、癌の種類および疾患の進行性に対する止血性変化を比較することだった。
方法:デンマーク、コペンハーゲンの生命科学学部、コンパニオンアニマルに対する大学病院に来院した悪性腫瘍がある71頭の犬を研究集団とした。前向き観察的研究で、癌疾患の種類および疾患の進行に従い層別化した犬の癌患者において止血性機能を評価した。凝固反応は、トロンボエラストグラフィー(TEG)、血小板数、活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)、プロトロンビン時間(PT)、フィブリノーゲンおよび抗トロンビン(AT);d-ダイマー、プラスミノーゲンによる線維素溶解で評価した。
結果:凝固亢進が最も一般的に見られた止血性機能障害だった。他の群と比較して凝血槐強度(TEG G)、aPTT、フィブリノーゲンが増加している乳癌はなかった。疾患の進行度により犬を層別化した時、遠隔転移のある犬は、局所侵襲および局所非-侵襲癌の犬と比べてフィブリノーゲンおよびd-ダイマーが有意に増加していた。
結論:犬の癌患者において凝固亢進が最も一般的に確認された止血性異常で、止血性凝固障害は癌の種類および疾患の進行に関連が認められた。TEG G、aPTT、フィブリノーゲンの増加は非乳癌で観察され、疾患に関係する前炎症反応を総合的に意味すると推測された。遠隔転移のある犬はフィブリノーゲンとd-ダイマーが増加した。それらの結果の臨床的重要性を明瞭にする追加研究が必要である。(Sato訳)
■獣医療における腫瘍溶解性ウイルス療法:犬に対する現在の状況と今後の見通し
Oncolytic virotherapy in veterinary medicine: current status and future prospects for canine patients.
J Transl Med. January 2012;10(1):3.
Sandeep S Patil; Ivaylo Gentschev; Ingo Nolte; Gregory Ogilvie; Aladar A Szalay
抄録:腫瘍溶解性ウイルスは、癌の組織ではないものに害はなく、癌細胞を直接ターゲットとして溶解することで悪性腫瘍を除去できるものである。アデノウイルス株、犬ジステンパーウイルス株、ワクシニアウイルス株など、いくつかの腫瘍溶解性ウイルスは前臨床研究で犬の癌療法に使用されている。
しかし、ヒトの研究とは対照的に、犬の癌患者に対する腫瘍溶解性ウイルスの臨床試験は報告されていない。”理想”のウイルスがまだ究明されていない。
このレビューは犬の腫瘍の治療における腫瘍溶解性ウイルスの前向き使用、将来の犬の癌療法に対する腫瘍溶解性ウイルスの開発に確実に貢献すると思われる知識に重点を置く。(Sato訳)
■18頭の猫における小腸の腺癌に対する外科的治療の有無,および転移が長期的な生存に及ぼす影響(2000-2007年)
Surgical versus non-surgical treatment of feline small intestinal adenocarcinoma and the influence of metastasis on long-term survival in 18 cats (2000-2007).
Can Vet J. 2011 Oct;52(10):1101-5.
Green ML, Smith JD, Kass PH.
この研究は、小腸の腺癌と診断された18頭の猫の長期的な転帰を、手術をしたかしないか、手術時に転移が存在したかしなかったかについて、後向きに評価した。10頭の猫は外科手術を受け、腺癌の病理組織学的な確定が得られており、8頭については、外科手術を受けておらず、生検により腺癌と診断された。外科手術を受けた腺癌の猫の生存期間の中央値は365日で、手術を受けず腺癌と疑診された猫の中央値は22日であった(P=0.019)。外科手術時に転移がなかった猫の生存期間の中央値は843日であり、転移が認められた場合は358日であった(P=0.025)。すなわち、猫の小腸の腺癌の治療として、転移がある患者も含めて、外科的介入は有効であり、外科的に腫瘤を切除しなかった患者と比較して、有意に長期的な生存期間が望めるだろう。(Dr.Taku訳)
■犬のよくみられる皮膚腫瘍の確認と、選択した腫瘍の犬種および年齢分布の評価
Identification of the most common cutaneous neoplasms in dogs and evaluation of breed and age distributions for selected neoplasms.
J Am Vet Med Assoc. October 2011;239(7):960-5.
J Armando Villamil; Carolyn J Henry; Jeffrey N Bryan; Mark Ellersieck; Loren Schultz; Jeff W Tyler; Allen W Hahn
目的:犬の最も一般的な皮膚腫瘍を確認し、選択した腫瘍の犬種および年齢分布を評価すること
構成:回顧的疫学的研究
サンプル:1964年から2002年の間に北アメリカの獣医教育病院において検査した犬のデータベースから記録を得た。
方法:腫瘍の種類、犬種、年齢に対する情報を収集した。発生率および95%信頼区間のオッズ比を算出した。
結果:1139616頭の記録を調査した。それらのうち25996頭で皮膚の腫瘍が診断された。残りの1113620頭の記録には皮膚の腫瘍が診断されているという記述はなく、コントロールとして考慮した。皮膚腫瘍の犬の頻度の高かった年齢の範囲は10-15歳だった。脂肪腫、腺腫、肥満細胞腫が最もよく見られた皮膚の腫瘍のタイプだった。
結論と臨床関連:結果は過去に報告された皮膚腫瘍に関するデータを支持したが、最も一般的な皮膚腫瘍、年齢および犬種の分布に対する最新情報を提供できた。(Sato訳)
■バイオプシーによる腫瘍の播種の可能性?獣医およびヒト症例、動物モデルに対する報告の系統的検討
Does the taking of biopsies affect the metastatic potential of tumours? A systematic review of reports on veterinary and human cases and animal models.
Vet J. November 2011;190(2):e31-42.
R Klopfleisch; C Sperling; O Kershaw; A D Gruber
臨床医や病理学者は時折、腫瘍バイオプシーが転移の可能性を含む腫瘍の動向に影響を及ぼすかどうか、オーナーから質問を受ける。
残念ながらこの問題に対する系統的研究は獣医療で入手できず、この研究の目的は、動物の腫瘍進行に対するバイオプシーの有害効果のリスクを評価することだった。獣医およびヒト症例報告および臨床研究、同様にバイオプシー誘発腫瘍転移の実験動物モデルの系統的検討も行った。
泌尿生殖器および肺腫瘍の動物2症例のみ、ニードルバイオプシー実施後の生検痕転移(NTM)の報告があった。17の実験研究はNTMの高い発生率を示したが、1匹のラットの骨肉腫および1匹のハムスターの扁平上皮癌モデルが、切開あるいは切除バイオプシー後の遠隔あるいは局所転移の発生の増加を示しただけだった。
ヒトでのNTMの発生は、中皮腫(15%)、メラノーマ(11%)、胆嚢腫瘍(11%)、大腸癌の肝臓転移(4%)、乳癌(4%)からのバイオプシー後に報告されているが、他全ての腫瘍は<1%の発生率だった。ヒトの扁平上皮癌、前立腺癌、乳癌、肝細胞癌からのバイオプシー後すぐに循環腫瘍細胞は増加した。ヒトの研究で、バイオプシー誘発の遠隔転移のリスク増加はどのタイプの腫瘍でも報告されていないが、これは非バイオプシーコントロール群の欠如のために決定的ではない。
動物の腫瘍におけるバイオプシー誘発の転移の報告は、泌尿生殖器腫瘍から経皮的バイオプシー実施がNTMのリスクに関与するかもしれないと示される。しかし、ヒトあるいは動物におけるどのタイプの腫瘍でも、遠隔転移のリスクの包括的増加のエビデンスはない。ゆえに、獣医診療でバイオプシーから得られる価値ある情報と比較して、全体的リスクはとるに足らないものと思われる。(Sato訳)
■犬の脾臓血管肉腫における血清チミジンキナーゼ活性の上昇
Elevated serum thymidine kinase activity in canine splenic hemangiosarcoma
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 20 OCT 2011
Douglas H. Thamm, Debra A. Kamstock, Claire R. Sharp, Scott I. Johnson, Elisa Mazzaferro, Lee V. Herold, Susan M. Barnes, Kevin Winkler, Kimberly A. Selting
チミジンキナーゼ1(TK1)はDNA合成に関係する可溶性バイオマーカーである。この前向き研究で腹腔内出血と脾臓マスを呈する犬で血清TK1活性を評価した。基質としてアジドチミジンを使用したELISAでTK1活性を評価した。腹腔内出血の犬62頭と正常なコントロール15頭で研究した。血管肉腫(HSA)の犬の血清TK1活性は正常な犬よりも有意に高かった(平均±SEM=17.0±5.0と2.01±0.6)が、良性疾患の犬(平均±SEM=10.0±3.3)では違った。6.55U/Lのカットオフを用いると、正常とHSAを区別するのにTK活性は0.52の感受性、0.93の特異性、0.94の陽性適中率、0.48の陰性適中率だった。インターバル域値<1.55と>7.95U/Lを一緒に用いると、診断有用性は増加した。血清TK1評価は腹腔内出血と脾臓のマスがある犬で、良性疾患とHSAの鑑別に役立つかもしれない。(Sato訳)
■膀胱移行上皮癌の犬26頭に対するデラコキシブ療法の抗腫瘍効果
Antitumor effects of deracoxib treatment in 26 dogs with transitional cell carcinoma of the urinary bladder.
J Am Vet Med Assoc. October 2011;239(8):1084-9.
Sarah K McMillan; Pedro Boria; George E Moore; William R Widmer; Patty L Bonney; Deborah W Knapp
目的:膀胱の移行上皮癌(TCC)を持つ犬において、選択的シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤であるデラコキシブの抗腫瘍活性および毒性を評価する
構成:臨床試験
動物:膀胱に自然発生し、組織学的に確認した測定可能なTCCを持つ26頭の飼育犬
手順:TCCの単剤治療として、デラコキシブ3㎎/㎏/日の投与量で経口投与した。腫瘍の反応は、膀胱のマスのエックス線検査、腹部超音波検査、超音波診断マッピングで評価した。犬のデラコキシブ投与の毒性は臨床的観察、血液および生化学検査で評価した。
結果:腫瘍の反応を評価した24頭のうち、4頭(17%)は部分寛解、17頭(71%)は安定疾患、3頭(13%)は進行性疾患だった。26頭中2頭は最初の反応を評価できなかった。生存期間中央値は323日だった。進行性疾患までの日にちの中央値は133日だった。デラコキシブ投与に起因する腎臓、肝臓、消化管異常はそれぞれ4%(1/26)、4%(1/26)、19%(5/26)の犬に見られた。
結論と臨床的関連:結果、犬は一般的にデラコキシブをよく許容し、TCCに対する抗腫瘍活性を持つことが示された。(Sato訳)
■上皮小体癌の19頭の犬の外科的切除後の結果
Outcome of 19 dogs with parathyroid carcinoma after surgical excision
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 16 DEC 2011
E. S. Sawyer, N. C. Northrup, C. W. Schmiedt, W. T. N. Culp, K. M. Rassnick, L. D. Garrett, K. A. Selting, C. F. Saba, E. W. Howerth
上皮小体癌(PTC)は犬で珍しく、その治療や予後を述べた情報はあまりない。
この研究の目的は、外科的切除で治療したPTCの犬の転帰を述べることだった。
1990年から2010年の間に、PTCの外科的切除を行った犬19頭の医療記録を回顧的に検討した。犬は臨床的高カルシウム血症、あるいは通常の血清化学プロフィールにおいて紹介獣医師により見つけられた偶発的高カルシウム血症を呈した。17頭中17頭の頸部超音波検査により上皮小体結節が認められた。19頭中18頭は術後4日以内に高カルシウム血症が解消した。9頭は低カルシウム血症を発症した。PTCの再発あるいは転移を起こした犬はいなかった。PTCが関係した死亡例は1頭のみで、術後9日目に難治性低カルシウム血症のために安楽死された。算出した1-、2-、3-年生存率は、それぞれ72、37、30%だった。
PTCの切除は高カルシウム血症の解消と優秀な腫瘍コントロールをもたらす。(Sato訳)
■犬の神経膠腫におけるCOX-2とc-kit発現
COX-2 and c-kit expression in canine gliomas
Veterinary and Comparative Oncology、 Article first published online: 23 NOV 2011
J. M. Jankovsky, K. M. Newkirk, M. R. Ilha, S. J. Newman
神経膠腫は最も一般的な犬の原発性神経腫瘍の1つである。ヒトでシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)とc-kitの過剰発現は、神経膠腫の攻撃性を増し、生存期間の減少に関係する。COX-2はシクロオキシゲナーゼの誘導性の型で、プロスタグランジン形成を触媒し、腫瘍増殖と脈管形成を増加させるかもしれない。c-kitは正常な細胞生理に関与するチロシンキナーゼレセプターである。c-kitはいくつかの犬の腫瘍で上方制御する。
この回顧的研究で、20個の犬の神経膠腫を確認した。11(55%)は乏突起膠腫で1つの未分化変異を含む。1(5%)は乏突起星細胞腫。8(40%)は星状細胞腫で、その内2つは多形膠芽腫だった。神経膠腫でCOX-2を発現したものはなかった。c-kitに対し免疫反応した神経膠腫はなかったが、全3つのハイグレード腫瘍は壁内脈管発現が見られた。
結果としてCOX-2抑制は犬の神経膠腫に対して無効の可能性が高い。c-kit抑制はハイグレード神経膠腫における抗脈管形成効果があるかもしれないが、低および中間グレードの腫瘍においては無効の可能性が高いだろう。(Sato訳)
■新しい腫瘍バイオプシー法
Nasal hydropulsion: a novel tumor biopsy technique.
J Am Anim Hosp Assoc. 2011 Sep-Oct;47(5):312-6.
Elizabeth A Ashbaugh; Brendan C McKiernan; Carrie J Miller; Barbara Powers
犬と猫の鼻腔内腫瘍は、小動物開業医に診断および治療的困難を引き起こす。過去に複数の鼻部バイオプシー法が発表されている。この報告は、鼻部腫瘍のバイオプシーおよび減容積を行う簡易化したフラッシュ方法を述べ、その方法は患畜に即座の臨床的緩和をもたらすことが多い。この回顧的研究の結果をもとに、著者は最小侵襲診断的、治療的ポテンシャルを持つ犬と猫の鼻部腫瘍に対する方法として高圧生理食塩水圧出方法を推奨する。(Sato訳)
■悪性セミノーマの珍しい全身転移を起こした1頭の犬
Unusual Systemic Metastases of Malignant Seminoma in a Dog
Reproduction in Domestic Animals , Article first published online: 2 NOV 2011
X Lucas, C Rodenas, C Cuello, MA Gil, I Parrilla, M Soler, E Belda, A Agut
左精巣と陰嚢の片側性拡大を、8歳のウエストハイランドホワイトテリアで認めた。術後の病理組織診断はセミノーマ(SEM)で、鞘膜層および陰嚢に転移巣も検出された。2ヵ月後、皮膚に新規SEM転移巣が診断された。最初の精巣摘出から22ヵ月後、新規複数の皮膚結節と食道周囲構造の腫脹が観察された。最終的に検死で複数の臓器に悪性SEM転移病巣を認めた。著者の知るところでは、これは舌、軟口蓋、気管、心膜をもとに異常に広い範囲に転移した犬SEMの最初の記述である。(Sato訳)
■猫のワクチン関連肉腫に対するロムスチン化学療法の第二相臨床評価
Phase II clinical evaluation of lomustine chemotherapy for feline vaccine-associated sarcoma
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 17 OCT 2011
C. F. Saba, D. M. Vail, D. H. Thamm
猫のワクチン関連肉腫(VAS)は積極的な局所療法にもかかわらず再発の可能性が高いため、治療は非常に難しい。ロムスチンは現在の治療の選択に加わる魅力的な薬剤である。
この段階的に縮小するI/II相前向き試験において、測定可能なVASを持つ28頭の猫を、疾患が進行するまで3週間ごとに28-60mg/m2の標的投与量で治療した。全体の反応率は25%で、無進行期間の中央値および反応の持続期間中央値はそれぞれ60.5日と82.5日だった。血液毒性、特に累積好中球減少は重要で、用量減量および投与遅延は一般的だった。それらのデータはVASの治療に対するロムスチンの追加調査を支持するが、安全な多種用量プロトコールをまず決定すべきである。(Sato訳)
■脂肪腫の脂肪吸引による除去:犬20例
Liposuction for removal of lipomas in 20 dogs.
J Small Anim Pract. August 2011;52(8):419-25.
G B Hunt; J Wong; S Kuan
目的:犬における脂肪腫の脂肪吸引に対する成功率を再調査し、早期合併症および中期結果を報告し、脂肪吸引の最も適切な候補に対する推奨をまとめる
方法:細胞診で診断された76の脂肪腫をもちドライ脂肪吸引を行った20頭の犬の回顧的研究。脂肪腫の数と大きさ、脂肪吸引の効果、合併症の頻度と種類、再発の可能性について、症例記録を再検討した。
結果:76の脂肪腫のうち73の脂肪吸引が成功した。直径15cm以下の単純な被包性脂肪腫は、合併症のリスクも最小限でもっとも容易に除去できた。巨大な脂肪腫は脂肪吸引を邪魔する線維性の小柱を含み、脂肪の回収が悪かった。また巨大な脂肪腫は、特に鼠蹊部に位置するもので紫斑、血腫、漿液腫のリスクが高かった。再成長は28%の脂肪腫で9-36ヶ月の経過観察中に認められた。
臨床意義:直径15cmまでの脂肪腫で、従来の外科手術よりも脂肪吸引は侵襲性が低く、オーナーにより魅力的なものかもしれない。脂肪吸引は浸潤性あるいは巨大な鼠蹊脂肪腫には勧められない。高率に脂肪腫の再成長が予測でき、従来の切除以上に脂肪吸引を選択するときは考慮すべきである。(Sato訳)
■犬の再発性鼻部腫瘍に対する再放射線照射
Reirradiation of recurrent canine nasal tumors.
Vet Radiol Ultrasound. 2011 Mar-Apr;52(2):207-12.
David A Bommarito; Michael S Kent; Kim A Selting; Carolyn J Henry; Jimmy C Lattimer
犬の鼻部腫瘍は一般的に放射線療法で治療されるが、多くの犬は局所再発する。
我々の目的は、9頭の犬において再放射線照射に対する腫瘍および正常組織の反応を評価することだった。
最初のプロトコールでの照射量中央値は50Gy(範囲44-55Gy)と、分画数の中央値は18回(範囲15-20回)だった。2度目のプロトコールで照射量中央値は意図的により少なく36Gy(範囲23-44Gy)で、分画数中央値は晩発効果を避けるために変化させず18回(範囲14-20回)だった。1回目と2回目の照射間の期間中央値は539日(範囲258-1652日)だった。生存期間中央値は927日(95%信頼区間[CI]423-1767日)だった。1回目と2回目のコース後から進行するまでの時間の中央値は、それぞれ513日(95%CI234-1180日)と282日(95%CI130-453日)だった。それらに有意差はなかった(P=0.086)。質的反応評価は、2回目よりも1回目のコースでより良かった(P=0.018)。皮膚、粘膜、眼球効果の重症度とタイミングは、2つのコース間の早期副作用に対し同様だった(全ての比較物でP>0.05)。全ての犬はいくらかの晩発副作用を経験し、9頭中2頭は重度に分類された。それらの重度な影響は2頭とも失明で、あるいは腫瘍再発と関係した。
犬の鼻部腫瘍の再放射線照射は、9頭中8頭の犬で2度目の臨床的寛解を達成したが、2度目の反応は完全性がより少なかった。9頭中7頭の急性および晩発効果は命に関係するものではなく、犬の鼻部腫瘍の再放射線照射は再発後の実行可能な治療オプションだと思われた。(Sato訳)
■原発性および転移性猫注射部位肉腫細胞においてマシチニブは抗増殖およびプロアポトーシス活性を示す
Masitinib demonstrates anti-proliferative and pro-apoptotic activity in primary and metastatic feline injection-site sarcoma cells
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 25 AUG 2011
J. Lawrence, C. Saba, R. Gogal Jr, O. Lamberth, M. L. Vandenplas, D. J. Hurley, P. Dubreuil, O. Hermine, K. Dobbin, M. Turek
血小板由来増殖因子レセプター(PDGFR)の調節不全は、猫注射部位肉腫(ISS)細胞増殖および生存性に役割を持つかもしれない。犬の肥満細胞種の治療で認められたチロシンキナーゼ抑制剤のマシチニブは、PDGFRシグナル伝達経路に対して高い選択性を持ち、この疾患に対する新しい治療アプローチを提供するかもしれない。2つの新しいISS細胞系で発育、アポトーシスおよびPDGFRシグナル伝達に対するマシチニブのインビトロ効果を調査した。原発性ISS腫瘍(JB)および対応する組織学的に確認されたISS肺転移(JBLM)から抽出された細胞系でウエスタンブロット法によりPDGFR発現を確認した。マシチニブは両細胞系の細胞発育およびPDGFRリン酸化を抑制した。PDGFRのリガンド誘発自己リン酸化を変調することよりも発育を抑制するのにより高濃度の薬剤を必要とした。このインビトロのデータは、マシチニブが原発性および転移性ISS細胞系に対して活性を示し、ISSの臨床管理に役立つかもしれないと示唆される。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた脈絡膜褐色細胞腫
Choroidal melanocytoma in a cat.
Vet Ophthalmol. May 2011;14(3):205-8.
Marie O Semin; Fabienne Serra; Vincent Mahe; Alexandra Deviers; Alain Regnier; Isabelle Raymond-Letron
11歳オスの去勢済みヨーロッパ猫が、右眼の瞳孔拡大による瞳孔不同で来院した。眼の所見はこの眼に限局し、網膜剥離に関与する、膨らんだ暗い色素を持つ水晶体後マスから成っていた。超音波検査で眼球の後極から硝子体腔に隆起するマス病変を認め、網膜の剥離を確認した。眼球内腫瘍の仮診断がなされた。エックス線検査と下顎後リンパ節細胞診で遠隔転移の所見はなかった。罹患眼の眼窩内容除去術を実施し、その腫瘍は悪性の判定基準が見られない脈絡膜メラニン細胞腫瘍(褐色細胞腫)と診断された。その猫は腎臓リンパ腫発症から5ヵ月後に死亡し、剖検でメラニン細胞腫瘍の転移は検出されなかった。
我々の知識では、これは猫の脈絡膜褐色細胞腫の最初の症例報告である。(Sato訳)
■犬の滑膜の腫瘍
Synovial tumours in dogs.
N Z Vet J. May 2011;59(3):154.
LE Craig
滑膜の腫瘍の主な3タイプの形態学的特徴、犬種素因、部位の偏りおよび挙動を考察した。
滑膜組織球肉腫は滑膜の腫瘍の50%を占め、組織球肉腫に素因のある犬種に発生し、予後は悪い。それらの組織学的所見は、他に発生した組織球肉腫と同様である。後膝関節は最も一般的な部位で、前十字靱帯が断裂した犬は発生素因を持つ。
滑膜細胞肉腫は犬の滑膜の腫瘍の15%を占める。それらは非特異的な紡錘細胞形態を持ち、唯一紡錘細胞の小比率に標識するサイトケラチン免疫組織化学検査で鑑別できる。断脚はしばしば治癒的だが転移は起こりえる。
滑膜粘液腫は犬の滑膜の腫瘍の20%を占める。それらは関節腔に充填する粘液腫性結節の特徴的形態を持ち、時に骨など周囲組織に広がる。ラブラドールレトリバーとドーベルマンピンシャーは素因を持ち、後膝関節および指関節が一般的な発生部位である。予後は良い。不完全切除でも、進行や転移もなく何年も生存する犬もいる。滑膜の腫瘍の組織病理検査は治療のコース、予後を判定するのに非常に重要である。(Sato訳)
■外科切除で治療した皮膚血管肉腫の犬94頭の臨床結果:1993-2007
Clinical outcome in 94 cases of dermal haemangiosarcoma in dogs treated with surgical excision: 1993?2007
Veterinary and Comparative Oncology
Article first published online: 25 JUL 2011
A. Szivek1, R. E. Burns2, B. Gericota, V. K. Affolter, M. S. Kent, C. O. Rodriguez Jr, K. A. Skorupski
犬の皮膚血管肉腫(HSA)は他の臓器に発生したものと比べて予後がより良いと思われているが、少数の犬における結果報告しかない。
この研究の目的は、皮膚HSAの犬の大きな集団で結果および予後因子を評価することだった。
94頭の犬の臨床データを回顧的に収集し、53頭の犬の病理組織を再検討した。
全体の生存期間中央値は987日だった。腹側位置および組織学的日光による変化を持つ素因犬種の犬はより長く生存していた。局所再発は72/94頭(77%)で発生した。腹側位置および複数のマスを持つ素因犬種は再発を起こしやすかった。侵襲性腫瘍を持つ非素因犬種は転移を起こしやすかった。
結果は、日光誘発皮膚HSAの犬は高い再発率を示すかもしれないが、長期に生存することを示唆する。日光が関係しない腫瘍の犬は、転移のリスクが増加および生存期間がより短くなるかもしれない。(Sato訳)
■犬の癌登録機関をもとにした集団における精巣腫瘍の比較罹病率と病理組織学的タイプの分布に対する犬種差
Breed differences in the proportional morbidity of testicular tumours and distribution of histopathologic types in a population-based canine cancer registry.
Vet Comp Oncol. March 2011;9(1):45-54.
A Nodtvedt; H Gamlem; G Gunnes; T Grotmol; A Indrebo; L Moe
1990-1998年の間にノルウェーの犬癌登録機関に提出され、組織学的に検証した腫瘍を研究した(n=14401)。精巣腫瘍(n=345)の比率は2.4%で、組織学的腫瘍診断の崩壊が存在した。一般的な病理組織学的種類の頻度は、33%が間質性(ライディッヒ)、26.4%がセルトリ細胞、33.9%が精上皮腫/胚細胞腫瘍だった。診断時の平均年齢は10歳だったが、他の腫瘍タイプと比べてセルトリ細胞腫の方が有意に若かった(8.6歳)。病理組織学的再評価の後、本来の腫瘍診断のうち22.5%が変更された。比較罹病率を計算し、シェットランドシープドックおよびコリーは、全体の平均よりも精巣腫瘍に5倍なりやすかった。病理組織学的種類の分布に犬種差が観察された。シェットランドシープドックとコリーはセルトリ細胞腫と診断されることが多いが、ノルウェジアンエルクハウンドの全ての精巣腫瘍は精上皮腫だった。(Sato訳)
■1頭の猫に見られた膀胱の脂肪腫
Lipoma of the urinary bladder in a cat.
J Comp Pathol. 2011 Feb-Apr;144(2-3):212-3.
A Khodakaram-Tafti; S Shirian; N Vesal; Sh Hadadi
7歳オスのペルシャ猫の進行性の腹部膨満、排尿障害、多尿、仙痛および死亡の経過から、その剖検を依頼された。剖検時、膨らんだ非被包性のマス(3x6x4cm)が膀胱の粘膜面に見つかった。マスは小葉に分かれ、脂肪組織と同じ柔らかさだった。顕微鏡検査は正常脂肪組織と同一の細胞が見られた。肉眼および顕微鏡所見をもとに、その病変は脂肪腫と診断された。この腫瘍は猫の膀胱で過去に記録されていない。(Sato訳)
■犬の原発性肺腫瘍のCT像
Computed tomographic appearance of primary lung tumors in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2011 Mar-Apr;52(2):168-72. doi: 10.1111/j.1740-8261.2010.01759.x. Epub 2010 Nov 2.
Marolf AJ, Gibbons DS, Podell BK, Park RD.
犬の原発性肺腫瘍は一般的に、放射線学的に尾葉の末梢にかなり限局した孤立性腫瘍として見られる。硬化、散在タイプの原発性肺腫瘍もこれまで報告されている。胸部CT撮影を行い、組織学的診断で原発性肺腫瘍(17頭の原発性腺癌と2頭の原発性肉腫)と診断された19頭の犬を、CT所見の特徴を述べるため回顧的に評価した。
全ての肺原発腫瘍は内部にエアブロンコグラムを伴う気管支中心性の起源であった。気管支は典型的に細くなり、置換されそしてしばしば腫瘍で閉塞していた。18/19頭(95%)の腫瘍は孤立性で一つの肺/肺胞型であった。ほとんどの孤立性腫瘍は、限局性(17/18頭)、肺の中心から辺縁(14/18頭)、そして頭側あるいは尾側の葉(16/19)であった。ほとんどの原発性肺腫瘍(11/17頭)は軽度から中等度の不均一なコントラスト増強があった。19頭中5頭(26%)は肺転移のエビデンスがあった。内部の石灰化(3/19頭)と気管気管支リンパ節腫大(4/19頭)も認められた。CT検査において、内部にエアブロンコグラムを伴う孤立性、限局性、気管支中心腫瘍は、犬の原発性肺腫瘍と一致する。(Dr.Kawano訳)
■犬の脊髄腎芽細胞腫:10症例の治療に関係する長期結果(1996-2009)
Canine spinal nephroblastoma: long-term outcomes associated with treatment of 10 cases (1996-2009).
Vet Surg. February 2011;40(2):244-52.
Francois-Xavier Liebel; John H Rossmeisl, Jr; Otto I Lanz; John L Robertson
目的:犬の脊髄腎芽細胞腫(CSN)の治療に関する臨床結果を報告する
研究構成:症例シリーズ
動物:病理組織学的にCSNを確認された犬10頭
方法:CSNの犬の記録を再検討し、臨床病理、診断画像検査、治療、結果、生存性データを収集した。
結果:CSNは若い、大型犬種の犬、ジャーマンシェパード(n=4)に多く見られ、慢性、進行性T3-L3脊髄障害の臨床症状を起こした。全てのCSNはT9とL2の間に位置した。緩和的に治療した犬(3頭;中央値、55日;範囲226-560日)に比べ、細胞減数性外科(6頭)あるいは放射線療法(1頭)の方が長期に生存した(中央値、374日;範囲226-560日)。脊髄内(IM)に関与した腫瘍(4頭;中央値、140日;範囲38-269日)と比べ、硬膜内-髄外(ID-EM)部位に制限された腫瘍(6頭;中央値、380日;範囲、176-560日)の方が生存性は良かった。外科的に治療した全ての犬を含む9頭は、治療により一時的に神経機能が改善したが、局所疾患に進行により8頭が死亡した。
結論:この観察的な研究の結果は、CSNの犬の生存期間の改善に外科的細胞減数および放射線療法が効果的で、ID-EM腫瘍はIM腫瘍より予後が良いかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■外科的に切除した口腔線維肉腫の犬の結果(1997-2008)
Outcome in dogs with surgically resected oral fibrosarcoma (1997?2008)
Veterinary and Comparative Oncology
Article first published online: 2 MAY 2011
S. A. Frazier, S. M. Johns, J. Ortega, A. L. Zwingenberger, M. S. Kent, G. M. Hammond, C. O. Rodriguez Jr., M. A. Steffey, K. A. Skorupski
口腔線維肉腫(FSA)は犬において一般的な口腔腫瘍で、外科的切除後の生存期間は7.0-12.2ヶ月、局所再発率は32-57%と過去に報告されている。
この回顧的研究の目的は、補助的放射線療法を行う、または行わない外科的切除で口腔FSAを治療した犬の集団の結果を報告することだった。
口腔にできたFSAの組織学的診断を受け、外科的切除を行った29頭の犬を研究した。
21頭の犬は外科的切除のみで治療し、8頭の犬は外科および放射線療法で治療した。無進行期間の中央値は>653日だった。生存期間中央値は743日だった。1-および2-年生存率は87.7%と57.8%だった。7頭(24.1%)の犬は局所に再発し、7頭(24.1%)の犬は転移した。(Sato訳)
■皮下あるいは筋肉内血管肉腫の犬の結果予測
Predictors of outcome in dogs with subcutaneous or intramuscular hemangiosarcoma.
J Am Vet Med Assoc. February 2011;238(4):472-9.
Kai-Biu Shiu; Andrea B Flory; Christie L Anderson; Jackie Wypij; Corey Saba; Heather Wilson; Ilene Kurzman; Ruthanne Chun
目的:皮下あるいは筋肉内、あるいは両方の血管肉腫(HSA)の犬の大規模群において予後因子を確認する
構成:多施設回顧的コホート研究
動物:皮下あるいは筋肉内HSAの犬71頭
方法:罹患犬の医療記録を再調査した。以下の要因を結果に関係するか評価した:犬の年齢と性別、臨床症状、貧血、血小板減少、好中球増加、診断時の腫瘍ステージ、完全切除の達成、筋肉内関与、肉眼的疾患の存在、腫瘍再発、治療。
結果:確認された71症例のうち、16頭(29%)に筋肉内の腫瘍関与が見られた。全ての犬で、腫瘍進行までの期間の中央値と総生存期間(OST)は、それぞれ116日と172日だった;25%は1年生存した。腫瘍進行までの期間およびOSTの予測因子として一変量分析で、診断時の臨床症状あるいは転移の存在、犬の年齢、腫瘍の大きさ、いかなる手術の使用、肉眼的疾患の存在を確認した。HASのタイプに関して犬の生存期間に有意差はなかった。多変量分析で適切な局所腫瘍コントロール、腫瘍の直径≦4cm、診断時の転移の存在、肉眼的疾患の存在が有意にOSTと関係したことが確認された。
結論と臨床関連:皮下および筋肉内HASは一般的に予後不良をもたらす腫瘍の異種群のままである。臨床症状あるいは転移に関係のない、より小さな腫瘍の適切な局所コントロールは長期生存性を得る最大のチャンスを提供するかもしれない。(Sato訳)
■肝細胞癌の犬に対するゲムシタビン単剤化学療法
Single-agent gemcitabine chemotherapy in dogs with hepatocellular carcinomas
Veterinary and Comparative Oncology
Article first published online: 5 APR 2011
A. K. Elpiner, E. M. Brodsky, T. N. Hazzah, G. S. Post
この研究の目的は、肝細胞癌(HCC)と診断された犬に対するゲムシタビンの効果と許容性を判定することだった。18頭の犬を回顧的に研究した(塊状HCC4頭、結節性HCC10頭、瀰漫性HCC4頭)。全ての犬に週1回ゲムシタビン350-400mg/m2を5週間投与した。毒性はVCOG-CTCAEガイドラインで判定し、反応は連続腹部超音波検査でモニターした。15頭は全5サイクルを完了した。毒性は最小で、グレードI/II嘔吐、食欲不振、下痢およびグレードIII好中球減少の2事象があった。全ての犬の生存期間中央値は983日だった。無進行期間中央値は971日だった。この研究の結果をもとに、不完全切除でない限り外科手術は依然HCCのベストな治療である。切除不可能なHCCと診断され、ゲムシタビン化学療法で治療した犬の生存性に改善は見られなかった。(Sato訳)
■イヌ2例における多小葉性骨軟骨肉腫の治療のための頭蓋の広範囲な正中後頭側頭骨切除
Massive midline occipitotemporal resection of the skull for treatment of multilobular osteochondrosarcoma in two dogs.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Sep 1;233(5):752-7.
Gallegos J, Schwarz T, McAnulty JF.
症例記述:2頭の6歳のオス犬の正中後頭-側頭部の多小葉骨軟骨肉腫の切除を評価した。
臨床所見:1頭の犬の身体検査で軽度運動失調を認め、2頭の頭蓋の中央後頭側頭骨部分に大きなマスを認めた。CT、MRIあるいは両方で、脳および矢状、横行静脈洞を圧する巨大な骨起源の後頭側頭のマスを認めた。3次元コントラストMRI再構築で、腫瘍の周りの側副静脈循環および1頭の犬で静脈洞閉塞を描写した。
治療と結果:2頭の腫瘍は外科的に切除し、頭蓋骨の欠損はポリメタクリル酸メチルプロテーゼで修復した。術後24時間で、1頭の犬は正常な精神機能、脳神経機能、意識性固有受容反応となり、もう1頭は精神機能の低下を見せたが神経学的欠損はなかった。2頭とも術後4日目に退院し、正常な精神機能で神経学的欠損もなかった。
臨床関連:所見は、腫瘍の外科的切除が横行静脈洞の両側性の破損を起こしやすそうな時、必須の皮質側副循環の評価にMRIやCTは鍵となる役割を持つ可能性を示唆した。強固な側副循環や術前の適切な計画がない場合、正中後頭側頭領域の大きな頭蓋腫瘍の切除は、かなりの病的状態あるいは死亡を起こしやすいだろう。しかし、ここで報告された2頭の犬の結果は、よく発達した静脈ドレナージの存在において良好な結果を伴うそのような腫瘍切除の可能性を示す。(Sato訳)
■腎アデノーマに関与する肥大性骨症の猫1例
Hypertrophic osteopathy associated with a renal adenoma in a cat.
J Vet Diagn Invest. January 2011;23(1):171-5.
Robert L Johnson; Stephen D Lenz
肥大性骨症は、一般に胸腔内腫瘍あるいは炎症に関係する四肢骨格の骨化過剰症候群である。この状況はまれに腹腔内病変に関与する。症例の多くは犬やヒトで発生しており、猫、馬、他の種での報告はほとんどない。
15歳去勢オスの家猫短毛種が肢の腫れを呈し、歩行が困難な状態だった。エックス線検査および死後肉眼で、上腕骨、橈骨、尺骨、手根骨、中手骨、大腿骨、脛骨、足根骨、中足骨、指節骨など全ての四肢の骨幹および骨幹端の重度骨膜骨化過剰を認めた。体幹骨格はなにもなかった。顕微鏡的に骨化過剰病変は、脂肪細胞により分けられた層板状骨梁とわずかな造血組織を特徴とした。いくつかの部分には、維管束の結合組織、網状骨、軟骨島も存在した。
2.5cmx2.5cmの腎周囲腫瘍が左腎および副腎を圧迫していた。このマスは、立方体様上皮細胞の高分化尿細管からなり、ほとんどは有糸分裂像がまれなのと遠隔転移を認めないため腎尿細管アデノーマと一致した。胸腔に病態はなかった。骨化過剰は腎アデノーマによる二次的な肥大性骨症と一致した。
肥大性骨症の病院は不確かだが、主な説は惹起の鍵となる末梢循環および血管新生の増加を指摘する。最近の文献は、ヒトの状況で血管内皮増殖因子および血小板由来増殖因子の潜在的役割に注目している。この腎アデノーマが肥大性骨症を起こすメカニズムは不明である。(Sato訳)
■犬の棘細胞腫様エナメル上皮腫に対する治療として縁切除の使用
The use of rim excision as a treatment for canine acanthomatous ameloblastoma.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Mar-Apr;46(2):91-6.
Rebecca L Murray, Martin L Aitken, Sharon D Gottfried
3mm以下の骨関与を伴う犬の棘細胞腫様エナメル上皮腫(CAA)に対する治療でリム切除を概説する。犬歯の除去は47%の症例で行われ、尾側歯列は33%の症例に関与した。3ヶ月から5年間追跡調査した。再発の所見は見られなかった。外貌および動物の咀嚼能力についてオーナーの満足度は良好と判断した。適切な症例選択により、リム切除はCAAの良好なオプションであると思われ、歯の咬合、外貌の改善が見込まれ、エプーリス再発所見もない。(Sato訳)
■卵巣子宮摘出術を行った1頭の猫に見られた腹部転移を伴う子宮腺癌
Uterine adenocarcinoma with abdominal metastases in an ovariohysterectomised cat.
J Feline Med Surg. January 2011;13(1):44-7.
Claire Anderson; Kathryn Pratschke
外科的所見: 12.5歳の不完全卵巣子宮摘出を行った家猫短毛種の猫の腹腔転移を伴う子宮断端の腺癌を述べる。来院時、腺癌は右腎周囲リンパ節、腹大動脈、右尿管に転移しており、大きな嚢胞状構造を形成していた。これは腹部大静脈および右腎などの周囲臓器を圧迫して押しやり、腹壁と隣接腹部組織の複数の癒着を形成していた。大動脈の転移の拡大は、直径2mm非拍動血管への退行を起こしていた。
臨床関連:卵巣子宮摘出を行った1頭の猫の子宮腺癌が過去に1件のみ報告されている。このように、不完全な卵巣子宮摘出後の非常にまれで重度の合併症を示す。周囲構造への腫瘍組織の侵入は更なる合併症を引き起こした。(Sato訳)
■犬における環境塵埃暴露と肺癌の関係
Association between environmental dust exposure and lung cancer in dogs.
Vet J. December 2010;186(3):364-9.
Giuliano Bettini; Maria Morini; Laura Marconato; Paolo Stefano Marcato; Eric Zini
この研究の目的は、犬における黒色塵埃物質の肺への蓄積(炭粉症)と原発性肺癌の関連を調査することだった。回顧的研究を原発性肺癌の犬35頭と、コントロール犬160頭の材料で実施した。光学顕微鏡で肺標本における炭粉の量、組織所見および複屈折を評価し、原発性肺癌の犬のオッズ比(OR)を算出した。同じファクターを腫瘍組織タイプ、組織学的グレード、臨床ステージとのかかわりを確認するため分析した。
乳頭状腺癌が最も一般的に診断された(45.7%)。腫瘍の大多数は、組織学的にグレードIIで、肺癌は局在していることが多かった(臨床ステージI)。肺癌のリスク増加は、より多量の炭粉沈着の犬で観察され(OR:2.11、CI95%:1.20-3.70;P<0.01)、犬における汚染空気の吸入による炭粉症と肺癌の関連が示唆された。(Sato訳)
■TRAMPモデルでリコペンによる前立腺癌の化学的予防
Chemoprevention of prostate cancer with lycopene in the TRAMP model.
Prostate. October 2010;70(14):1547-54.
Ramdev Konijeti; Susanne Henning; Aune Moro; Ahmed Sheikh; David Elashoff; Ari Shapiro; Melvin Ku; Jonathan W Said; David Heber; Pinchas Cohen; William J Aronson
背景:トマト丸ごとから他の成分とともに混合した食事中リコペンは、過去にビードレット製剤形態で提供される純粋なリコペンよりも前立腺癌に対する化学的予防効果が大きいことが分かっている。我々は、前立腺の遺伝子形質を腺癌に変換した(TRAMP)マウスにおいて、リコペンビードレットから提供されるリコペン量と等量のトマトペーストはより大きな化学的予防効果を示すだろうと仮説を立てた。
方法:59匹のTRAMPマウスをコントロール食、28mgリコペン/kgをトマトペースト(TP)で添加した食餌、リコペンビードレット(LB)で添加した食餌に無作為に振り分け、20週目に剖検した。前立腺組織病理、前立腺重量、IGF-1およびIGF結合蛋白-3血清濃度を評価した。
結果:LB群の前立腺癌の発生はコントロールと比べて有意に低下した(60% vs. 95%、P=0.0197)が、TP群とコントロールの差は統計学的に有意ではなかった(80% vs. 95%、P=0.34)。群間で前立腺重量に差はなかった。血清および前立腺組織の総リコペン濃度はコントロールよりLB、TP群で同様の上昇を見せた。血清中5-cis-リコペンとtrans-リコペンの比は、TP群に比べLB群で有意に大きかった(P=0.0001)。酸化DNAダメージはコントロールと比較してLBおよびTP食を与えたマウスの肝臓で有意に低下した。
結論:この前臨床試験は、リコペンビードレット増加食で有意な化学的予防活性を示唆する。ビードレットに対して全トマト生成物のリコペンの化学的予防効果については、前臨床および前立腺癌の臨床医モデルにおいて更なる研究が必要である。(Sato訳)
■膀胱の限局性移行上皮癌の犬におけるマイトマイシンCの膀胱内注入の第一相臨床試験と薬物動態
Phase I clinical trial and pharmacokinetics of intravesical mitomycin C in dogs with localized transitional cell carcinoma of the urinary bladder.
J Vet Intern Med. 2010 Sep-Oct;24(5):1124-30.
A H Abbo; D R Jones; A R Masters; J C Stewart; L Fourez; D W Knapp
背景:移行上皮癌(TCC)は犬の尿路に見られる一般的な癌である。頻度の高い死亡原因は原発腫瘍による尿路閉塞である。TCCに対する標準的な内科治療は部分的効果しかない。
仮説/目的:侵襲性TCCの犬に対するマイトマイシンC(MMC)の膀胱内投与は、原発腫瘍に対する抗腫瘍活性を起こし、全身薬剤吸収を最小限にするだろう。
動物:膀胱に自然発生した組織病理学的に診断されたTCCを持つ個人飼育の犬13頭
方法:前向き第一相試験を実施した。毎月2日連続で1時間/日MMC(600μg/ml初濃度)を膀胱内に投与した。最大許容耐量(MTD)を判定するため、グループのうち3頭は最大800μg/mlまでMMC濃度を増量した。MMCの全身性吸収の程度を知るためにMMCの血清分析を実施した。
結果:局所毒性をもとにしたMMCのMTDは700μg/ml(1-時間滞留時間、2日連続)だった。加えて2頭は重度骨髄抑制を起こし、MMCの全身性吸収があったと思われる。5等は部分的寛解を示し、7頭は安定疾患となった。
結論:侵襲性TCCの犬において膀胱内MMCは抗腫瘍活性を持つ。MMC投与に関する骨髄抑制の原因を判定し、このリスクを最小限にする戦略を開発するために更なる研究が必要である。(Sato訳)
■デンマークの犬で腫瘍の発生および分布に対するデンマーク獣医癌登録機関のデータ
Data from the Danish veterinary cancer registry on the occurrence and distribution of neoplasms in dogs in Denmark.
Vet Rec. May 2010;166(19):586-90.
L B Bronden, S S Nielsen, N Toft, A T Kristensen
2005年5月15日から2008年4月15日までに、ウェブベースのデンマーク獣医癌登録機関に1878件の犬の腫瘍の報告があった。悪性(38%)と良性腫瘍(45%)の比率は同等だった。最も一般的な悪性腫瘍は腺癌(21%)、肥満細胞種(19%)、リンパ腫(17%)だった。よく見られた良性腫瘍は脂肪腫(24%)、腺腫(22%)、組織球腫(14%)だった。皮膚(43%)および乳腺組織を含むメス生殖系(28%)が一般的な腫瘍の部位だった。ボクサーとバーニーズマウンテンドックは、高い標準化罹病率(癌のより高いリスクを示す)を伴う腫瘍発生の特徴的な犬種素因があった。1以下の標準化罹病率はジャーマンシェパードとデンマーク/スウェーデン牧犬で認められ、それら犬種の癌のより低いリスクを示唆する。(Sato訳)
■犬と猫の耳垢腺腫:124症例の概説
Ceruminous gland tumors in dogs and cats: a review of 124 cases.
J Am Anim Hosp Assoc. 1996 Sep-Oct;32(5):448-52.
Moisan PG, Watson GL.
犬と猫から生検で採材した124症例の耳垢腺腫の組織学的兆候を概説した。組織は、個人動物病院や大学病院から出され、単一、そして混合の耳垢腺癌と同様に耳垢腺癌や腺腫を含んでいた。犬および猫の両方から摘出した腫瘍の大部分は悪性であった。(Dr.Kawano訳)
■猫の外耳道腫瘍の細針生検(FNB):27症例の細胞学的結果と組織学的相関
Fine-needle biopsy of external ear canal masses in the cat: cytologic results and histologic correlations in 27 cases.
Vet Clin Pathol. 2005 Jun;34(2):100-5.
De Lorenzi D, Bonfanti U, Masserdotti C, Tranquillo M.
背景:スワブ単独による耳道腫瘍の細胞学的診断は難しい、あるいは不可能である。なぜなら細胞剥離が乏しく、腫瘍細胞が関連した炎症によってマスクされるかもしれないからである。細針生検(FNB)は診断のためにより多くの細胞を採取するために使用できる。
目的:この研究の目的は、猫の外耳道における増大した腫瘍に対して、正確な診断を提供するための細針生検(FNB) と細胞学的検査の効果および診断的価値を評価することであった。
方法:外耳道における腫瘍の細胞切片は、全身吸入麻酔下で採取し、次の4つの群に分けた。:1)耳垢腺過形成あるいは腺腫、2)耳垢腺癌、3)炎症性ポリープ、そして4)他の腫瘍あるいは非腫瘍性マス。細胞学的診断は確定組織病理学的診断と比較し、診断的検査の正確性の指標(感受性、特異性、尤度比、診断的オッズ比)を算出した。
結果:27の腫瘍(25頭の猫、2頭の猫は両側的に罹患)がこの研究に参加した。結果から細胞学的診断と組織学的診断との間に、.74という総一致度指数(カッパー)、そして22という診断的オッズ比、そして100%(27/27)という炎症性ポリープVS腫瘍(良性と悪性)の診断に対する一致など良好な相応が認められた。
結論:猫の外耳道腫瘍の細針生検(FNB)による細胞病理は、炎症性ポリープと腫瘍を区別するのに明らかに正確であった。しかし、良性の増殖と悪性の鑑別において、組織病理学的な確証が推奨される。(Dr.Kawano訳)
■犬の小児腫瘍学:12ヶ月齢までの犬における腫瘍9522 例の回顧的評価(1993-2008)
Canine paediatric oncology: retrospective assessment of 9522 tumours in dogs up to 12 months (1993-2008).
Vet Comp Oncol. December 2010;8(4):283-92.
J M Schmidt; S M North; K P Freeman; F Ramiro-Ibanez
12ヶ月齢までの犬における腫瘍の発生に対する情報はほとんどない。これは1993年から2008年の間にイギリスにおいて獣医診断検査施設に提出された12ヶ月齢までの犬のバイオプシー標本をもとに、腫瘍の組織病理診断の回顧的レビューである。20280の組織検査依頼のうち、9522例の腫瘍を認めた。犬の皮膚組織球腫(n=8465;89%)が最も一般的な組織学的タイプだった。組織球腫以外の腫瘍(n=1057;11%)は、良性上皮性(n=375;4%)、造血性(n=229;2%)、良性間葉系(n=145;2%)、種々雑多(n=118;1%)、非造血悪性間葉系(n=118;1%)、悪性上皮性腫瘍(n=72;<1%)にグループ分けされた。犬の皮膚組織球腫を除いて、腫瘍の52%(n=547)は良性で、66%は皮膚あるいは軟部組織のものだった。それらのデータは、イギリスの幼若犬に発生する腫瘍に対して有益な疫学的情報を提供する。(Sato訳)
■過去に去勢した犬と猫におけるセルトリ細胞腫および間質細胞腫:17症例報告
Extratesticular interstitial and Sertoli cell tumors in previously neutered dogs and cats: a report of 17 cases
Can Vet J. August 2006;47(8):763-6.
Angela L Doxsee; Julie A Yager; Susan J Best; Robert A Foster
精巣外部位において精巣組織由来の原発腫瘍は極めてまれである。去勢後に精巣由来の自然発生腫瘍を持つ12頭の犬と5頭の猫を診療した15の異なる病院から臨床および外科的情報を収集し、検証した。
11頭の犬は精巣外部位におけるセルトリ細胞腫だった。1頭の犬と5頭の猫は精巣外間質細胞腫だった。6頭(1頭の犬、5頭の猫)は二次的性徴を発現しており、腫瘍の除去後に戻った。全て陰嚢内あるいは前陰嚢切開起始部の触知可能なマスだった。腫瘍関連疾患で死亡したものはなく、転移も認められなかった。発生学的異所性組織の存在、あるいは去勢中に移植された精巣組織の存在などの可能性が原因として考えられる。(Sato訳)
■健常成人におけるIFN-γと/あるいは腫瘍壊死因子-αを産生するCD4+ そして CD8+ T 細胞の頻度に関するAHCCの効果
Effects of active hexose correlated compound on frequency of CD4+ and CD8+ T cells producing interferon-γ and/or tumor necrosis factor-α in healthy adults.
Hum Immunol. 2010 Dec;71(12):1187-90. Epub 2010 Aug 21.
Yin Z, Fujii H, Walshe T.
活性化糖類関連化合物(AHCC)は、免疫システムが損なわれている症例で免疫増強剤として使われる可能性が高い自然の化合物である。
この研究の目的は、50歳以上の健常成人の免疫機能に対するこの化合物の効果を評価することだった。
CD4(+) そして CD8(+) T細胞によるインターフェロン(IFN)-γと腫瘍壊死因子(TNF)-αの産生は、AHCC摂取後の異なる時点で被験者から得られた末梢血においてフローサイトメトリーで測定した。 AHCC摂取中に増加したIFN-γ 単独, TNF-α 単独, あるいは両方を産生するCD4と CD8(+) T 細胞の頻度を基線値と比較した。さらにそれらの細胞の頻度がAHCCを中止したあと30日でさえ高いままであった。結局、これらの調査結果から、AHCCは、健常な老齢者のCD4(+) そしてCD8(+) T 細胞の免疫反応を増強させ、そのような効果を得るためには少なくとも30日は必要になるが、この化合物の投与を中止しても30日までは効果が持続することを示している。(Dr.Kawano訳)
■1頭の犬に見られた胸腺鰓嚢胞の肺転移を伴う癌への変化
Transformation of a thymic branchial cyst to a carcinoma with pulmonary metastasis in a dog.
J Small Anim Pract. November 2010;51(11):604-8.
A S Levien; B A Summers; B Szladovits; L Benigni; S J Baines
9歳メスの避妊済みダルメシアンの急性呼吸困難を評価した。胸腔穿刺で1300mlの血液様液体を採取し、その後の胸部エックス線および超音波検査で混合エコー性の空洞性縦隔頭側マス、胸骨リンパ節拡大、胸水を認めた。胸郭の外科的探査で、多葉赤/茶色の縦隔頭側マスといくつかの肺葉に同色の複数の卵形マスを認めた。病理組織検査で、腫瘍性変化を伴う胸腺鰓嚢胞が明らかとなり、肺の検査は転移だった。当初の回復は良好だったにもかかわらず、急性敗血症と膿胸で術後8日目に心停止した。これは肺転移を伴う胸腺鰓嚢胞の腫瘍性変化を述べた最初の獣医学における報告である。(Sato訳)
■心臓血管肉腫、非心臓血管肉腫、他の腫瘍、非血管肉腫由来の心嚢貯留水がある犬での血漿心臓トロポニンI濃度の比較
Comparison of plasma cardiac troponin I concentrations among dogs with cardiac hemangiosarcoma, noncardiac hemangiosarcoma, other neoplasms, and pericardial effusion of nonhemangiosarcoma origin.
J Am Vet Med Assoc. October 2010;237(7):806-11.
Ruthanne Chun; Heidi B Kellihan; Rosemary A Henik; Rebecca L Stepien
目的:血漿心臓トロポニンI(cTnI)濃度が、血管肉腫の犬の心臓関与、非心臓血管肉腫の犬の心臓血管肉腫の除外、および心嚢貯留水のある犬の心臓血管肉腫の確認に使用できるかどうかを判定する
構成:コホート研究
動物:57頭の犬(心臓血管肉腫の確定(5頭)あるいは疑い(13)の18頭、心臓以外の部位に血管肉腫が確認された14頭(非心臓血管肉腫)、血管肉腫が原因ではない心嚢貯留水がある10頭、非心臓非血管肉腫の腫瘍を持つ15頭)
手順:各犬で血漿cTnI濃度を測定し、胸部エックス線、腹部超音波、心エコー検査を実施した。グループでcTnI濃度を比較した。
結果:心臓血管肉腫の犬の血漿cTnI濃度中央値は、他のグループの各犬の濃度よりも有意に高かった。血漿cTnI濃度>0.25ng/mlは、どの場所の血管肉腫でも心臓関与の確認に使用できた(感受性、78%;特異性71%)。血漿cTnI濃度>0.25ng/mlは心嚢貯留水がある犬の心臓血管肉腫の確認に使用できた(感受性、81%;特異性、100%)。
結論と臨床関連:心臓血管肉腫の犬の血漿cTnI濃度中央値は、他の部位の血管肉腫の犬、他の腫瘍の犬、血管肉腫によるものではない心嚢貯留水がある犬の中央値よりも高かった。血漿cTnI濃度は血管肉腫の犬の心臓関与の確認、心嚢貯留水のある犬の心臓血管肉腫の確認に使用できると思われる。(Sato訳)
■犬における自然発生の腫瘍に対するニトロシルコバラミンの抗腫瘍効果
Anti-tumor effects of nitrosylcobalamin against spontaneous tumors in dogs.
Invest New Drugs. October 2010;28(5):694-702.
Joseph A Bauer; Gerald Frye; Anne Bahr; Jennifer Gieg; Peter Brofman
目的:犬の癌の治療で利用できるオプションが限られていることを考えると、新薬の評価にコンパニオンアニマルを使用することは動物およびヒトの腫瘍学に対してよりよい治療を確認できるかもしれない。アポトーシスを誘発するビタミンB12ベースの一酸化窒素(NO)のキャリアーであるニトロシルコバラミン(NO-Cbl)の抗腫瘍効果を、自然発生の癌を持つ4頭の犬で評価した。
実験構成:(1)手術不可能な甲状腺癌を持ち高カルシウム血症を示す13歳の避妊済みメスのジャイアントシュナウザー。(2)悪性末梢神経鞘腫(MPNST)を持つ6歳の去勢済みオスのゴールデンレトリバー。(3)アポクリン腺肛門嚢腺癌(AGACA)を持つ10歳去勢済みオスのビションフリーゼ。(4)部分的外科的切除後の脊髄髄膜腫を持つ7歳避妊済みメスのラブラドールの雑種。
腫瘍退縮を身体検査で測定し、超音波検査(症例1)およびMRI(症例2-4)で検証した。血清生化学および血液学的パラメーターを研究期間中モニターした。
結果:(1)ジャイアントシュナウザーは日々のNO-Cbl投与開始から10週間後で腫瘍の77%減容積を示した。(2)ゴールデンレトリバーは日々のNO-Cbl投与開始から15ヵ月後で腫瘍の53%減容積を示した。(3)ビションフリーゼは投与から15ヵ月後で原発腫瘍の43%減容積を示し、MRIで測定した腸骨リンパ節は90%退行した。61ヵ月後、現在その犬の疾患は安定しており、肝酵素とCBCは正常、毒性所見はない。(4)ラブラドールは投与から6ヶ月後で、残存腫瘍の完全寛解を示した。
結論:我々は過去にNO-Cblは悪性細胞により細胞内取り込みが行われ、結果腫瘍内のNO放出が引き起こされることを示している。この研究は、全ての犬に対する毎日のNO-Cbl長期使用が、毒性の症状をまったく起こさずに反応を誘発させたことを示している。NO-Cblの使用はビタミンB12レセプターの腫瘍特異特性を利用し、有望な抗腫瘍療法である。(Sato訳)
■口および鼻部腫瘍の犬14頭におけるbenzoporphyrin derivative monoacid ring A (BPD-MA)を用いた抗脈管光線力学療法の効果
Efficacy of antivascular photodynamic therapy using benzoporphyrin derivative monoacid ring A (BPD-MA) in 14 dogs with oral and nasal tumors.
J Vet Med Sci. February 2009;71(2):125-32.
Tomohiro Osaki; Satoshi Takagi; Yuki Hoshino; Masahiro Okumura; Tsuyoshi Kadosawa; Toru Fujinaga
抗脈管光線力学療法(PDT)は、充実性腫瘍のあるマウスで腫瘍の成長を抑制し、生存期間を延長する。この研究目的は、14頭の犬の口および鼻部腫瘍の治療に対しBPD-MAを使用した抗脈管PDTの効果を評価することだった。
0.5mg/kgでbenzoporphyrin derivative monoacid ring Aの静脈投与開始後15分目にダイオードレーザーによる690nmのレーザー光を腫瘍に照射した。口部腫瘍の犬7頭の1年生存率は71%で、鼻部腫瘍の犬7頭のそれは57%だった。各腫瘍の画像検査は、抗脈管PDT前後に血管造影CTを用いて行った。コントラストが増強された腫瘍は抗脈管PDT前に見られたが、抗脈管PDT後にそれらの腫瘍は造影剤で増強されなかった。
抗脈管PDTは現行の抗腫瘍療法で効果的な治療が出来ない口および鼻部腫瘍の犬の有望な方法であることが示唆される。
■犬の甲状腺癌:638症例をもとにした最新情報(1995-2005)
Thyroid cancer in dogs: an update based on 638 cases (1995-2005).
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Jul-Aug;46(4):249-54.
Katja L Wucherer; Vicki Wilke
この研究の目的は獣医療データベース(VMDB)を通して集めた多施設からのデータを使用し、甲状腺癌の記述統計を更新することだった。1995年1月1日から2005年12月31日の間にVMDBに投稿された犬甲状腺癌の症例から情報を集めて報告した。甲状腺癌の犬の総数の3%以上の犬種に対しオッズ比(OR)分析を実施した。各年齢カテゴリーのオッズ比も判定した。
この期間の全ての腫瘍のうち1.1%が甲状腺癌だった。ゴールデンレトリバー、ビーグル、シベリアンハスキーは甲状腺癌発生のオッズ比が有意に増加していた。性の偏りはなかったが、年齢10-15歳で甲状腺疾患発生の確率が有意に増加していた。カルシノーマおよび腺癌が甲状腺癌の90%を占め、腺腫は9.3%だった。我々の犬集団で依然甲状腺カルシノーマと腺癌はまれなものである。依然老犬がより多く罹患し、この研究はゴールデンレトリバーとビーグルが多く見られるという過去の研究と一致する。新しい所見はシベリアンハスキーも多く見られるということである。カルシノーマは過去に報告された甲状腺癌よりも高い比率を示し、腺腫は検死の偶発的所見で見られることが多い。報告された癌症例の1.1%を占めるので、老犬、大型犬種の首のマスの鑑別診断において甲状腺癌はリストの上位におくべきである。甲状腺癌の圧倒的大多数はカルシノーマで、最も一般的なのはゴールデンレトリバー、ビーグル、シベリアンハスキーである。(Sato訳)
■担癌犬の血清中survivinに対する自己抗体の検出
Detection of autoantibodies against survivin in sera from cancer dogs.
J Vet Med Sci. July 2010;72(7):917-20.
Yumiko Tango, Rui Kano, Haruhiko Maruyama, Kazushi Asano, Shigeo Tanaka, Astuhiko Hasegawa, Hiroshi Kamata
Survivinの過剰発現が悪性腫瘍に関連すると報告されており、予後不良のマーカーと示唆され、この蛋白に対する抗体反応が人の癌患者で確認されている。
この研究で、我々は犬の癌症例でsurvivinに対する抗体を調査し、抗原として組み替え犬survivin蛋白を使用しELISAによりそのような反応の普及率を検査した。抗survivinELISAにおける陽性のカットオフ値は0.35で平均吸収度+2S.D.を使用して判定した。
59頭中16頭(27.1%)の担癌犬と25頭中3頭(12%)の癌でない疾患の犬からの血清がELISAで陽性だった。癌症例の中で最も高い陽性率(>50%)は乳腺腫瘍、扁平上皮癌、メラノーマの犬で見られた。(Sato訳)
■慢性嘔吐の犬の腹部超音波検査の診断的有用性
Diagnostic utility of abdominal ultrasonography in dogs with chronic vomiting.
J Vet Intern Med. 2010 Jul-Aug;24(4):803-8.
M S Leib, M M Larson, D L Panciera, G C Troy, W E Monroe, J H Rossmeisl, S D Forrester, E S Herring
背景:犬の慢性嘔吐は一般的な問題で、多くの原因がある。多くの胃腸(GI)疾患の超音波検査の記述は発表されているが、
慢性嘔吐の犬の超音波検査の診断的有用性は調査されていない。
仮説:腹部超音波検査の診断的有用性は、GI腫瘍の犬で最も高く、炎症性疾患で最も低いだろう。
動物:慢性嘔吐の89頭の飼育犬
手順:医療記録を再調査し、臨床診断に対する腹部超音波検査の貢献度で主観的にスコアを付けた。
結果:68.5%の犬は、超音波検査を実施しなくても同じ診断に到ったであろうと考えられた。22.5%の犬は超音波検査が診断に重要あるいは有効であると考えられた。一変量分析で診断的有用性が増すのは、年齢増加、1週間の嘔吐回数がより多い、体重減少、体重減少率がより大きい、GIリンパ腫あるいは胃腺癌の最終診断に関係した。しかし多変量分析では、診断的有用性の増加に関係したのは年齢増加、胃腺癌あるいはGIリンパ腫の最終診断のみだった。12.4%の犬に見られた追加有用性は症例管理、嘔吐に貢献する問題の除外だった。
結論と臨床重要性:腹部超音波検査の診断的有用性は27%の犬で高かった。高い診断有用性に関係する要因の存在は、慢性嘔吐の犬の腹部超音波検査実施を指示する。(Sato訳)
■サージカルスワブの取り忘れに関係する腹部線維肉腫の犬1例
Abdominal Fibrosarcoma Associated with a Retained Surgical Swab in a Dog.
J Comp Pathol. July 2010;143(1):.
E L Rayner, C L Scudamore, I Francis, S Schoniger
慢性の食欲不振および嗜眠を呈する3歳避妊済みメスのロットワイラーにおいて、取り残しのサージカルスワブを取り巻く腹部線維肉腫を認めた。開腹手術により大網内に1つのマス、複数の肝臓のマス、拡大した腸間膜リンパ節を認めた。その犬は人道的に安楽死を行い、剖検を行った。顕微鏡的に大網のマスは中心に異物の繊維があり、それを取り巻く肉腫に一致し、細胞質内に繊維片を含む類上皮マクロファージが浸潤していた。肉腫組織は腸間膜リンパ節、肝臓、脾臓、肺にも存在し、いくつかの罹患リンパ節は病変内に繊維片を伴う類上皮マクロファージを含んでいた。免疫組織化学および電子顕微鏡検査は線維肉腫の診断と一致した。繊維分析および電子顕微鏡検査により、その腫瘍内繊維はサージカルスワブから得られるそれらと同一の特徴を持つ綿繊維と確認された。
我々の知識では、これは1頭の犬に見られた取り残しのサージカルスワブに関係する腹部線維肉腫の最初の記述である。獣医の文献で異物に関係する肉腫の他の例は、ワクチン-およびインプラント誘発肉腫である。(Sato訳)
■犬の良性および悪性前立腺組織における5-リポキシゲナーゼ発現
5-Lipoxygenase expression in benign and malignant canine prostate tissues
Veterinary and Comparative Oncology, Article first published online: 16 SEP 2010
L. A. Goodman, C. L. Jarrett, T. M. Krunkosky, S. C. Budsberg, N. C. Northrup, C. F. Saba, B. E. LeRoy
5-リポキシゲナーゼ(5-LO)は、ヒトの前立腺癌(PCs)で過剰発現し、前立腺癌細胞系においてその抑制により増殖が減少し、アポトーシスを誘発する。
我々は、5-LOが良性前立腺組織と比べ、犬PCにおいて過剰発現し、その疾患の病因で重要かもしれないと仮説を立てた。犬PCおよび良性前立腺肥大(BPH)組織の免疫ブロット分析で、両方に5-LO発現を認めた。5-LO免疫組織化学染色で犬原発性PC、BPHあるいは化膿性前立腺炎の間質あるいは上皮成分内に有意差は認めず、この酵素の特異的発現はそれらの疾病で起こらないと示唆する。腫瘍細胞発現性5-LOの比率は原発性に比べ転移性PC病変で有意に低かった(P<0.0001)。この発現の減少は、犬PCから転移性表現型への進行に伴う酵素の発現の変化あるいは下方制御を示すのかもしれない。(Sato訳)
■イギリスにおけるフラットコーテッドレトリバーの集団の死亡率
Mortality in a cohort of flat-coated retrievers in the UK
Vet Comp Oncol. June 2009;7(2):115-121. 21 Refs
J. Dobson, T. Hoather, T. J. McKinley, J. L. N. Wood
その犬種における腫瘍の罹病率の面からフラットコート死亡率における癌の重要性、および他の死亡形式と比較した寿命に対する癌の相対的影響を確立するため174頭のフラットコーテッドレトリバーのコホート研究を実施した。
年齢2-7歳の犬を1996年から2007年まで募集した。年1回の健康調査をデータ収集のために使用した。2頭は追跡調査不可能で、72頭(42%)は確認された腫瘍で死亡した。20頭(11.6%)は未確認の腫瘍で死亡し、61頭(35%)は非腫瘍性の病態で死亡した。19頭の死亡原因は不明だった。軟部組織肉腫(特に組織球肉腫)は優勢な種類で、32頭が罹患した(腫瘍の44%)。6頭は悪性メラノーマで死亡し、3頭はリンパ腫で死亡した。死亡時年齢中央値は腫瘍のある犬(8頭肉腫患者)で9歳、非腫瘍性で死亡した犬は12歳だった。結果は軟部組織肉腫、特に組織球肉腫はこの犬種の主要死亡原因であることを確認する。(Sato訳)
■切除不可能な犬の皮下血管肉腫に対するドキソルビシンベースの化学療法の効果
Efficacy of doxorubicin-based chemotherapy for non-resectable canine subcutaneous haemangiosarcoma
Veterinary and Comparative Oncology, Volume 8, Issue 3, pages 221-233, September 2010
J. L. Wiley, K. A. Rook, C. A. Clifford, T. P. Gregor, K. U. Sorenmo
ある程度の大きさの皮下血管肉腫(SQHSA)の犬18頭をドキソルビシンベースの化学療法で治療した。反応を評価し、WHO、Response Evaluation Criteria in Solid Tumours (RECIST)、腫瘍容積基準で比較した。
全ての犬の総反応率はWHO基準で38.8%、RECIST基準で38.8%、腫瘍容積基準で44%だった。1頭は完全寛解を示した。全ての犬の反応期間中央値は53日(範囲13-190日)だった。4頭の犬は新補助化学療法後、完全な外科切除を行った。新補助化学療法後、完全外科切除を行った犬の無進行期間中央値は、外科切除をしなかった犬よりも有意に長かった(207日v.s.83日)(P=0.003)。無転移期間あるいは生存期間において群間有意差はなかった。ドキソルビシンベース化学療法は、切除不可能な犬の皮下血管肉腫に対し明らかな効果があったが、反応期間は比較的短い。(Sato訳)
■健常犬と様々な自発腫瘍に罹患した29頭の犬におけるチュラルキラー(NK)細胞とリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の機能
Natural killer (NK) and lymphokine-activated killer (LAK) cell functions from healthy dogs and 29 dogs with a variety of spontaneous neoplasms.
Cancer Immunol Immunother. 2005 Jan;54(1):87-92.
Funk J, Schmitz G, Failing K, Burkhardt E.
10頭の健常犬と様々な自発腫瘍に罹患した29頭の犬のチュラルキラー(NK)細胞とリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞の機能を観察するために、血液サンプルから大顆粒リンパ球(LGLs)を58.5%のパーコール密度勾配で遠心分離した。低用量の組換え型ヒトインターロイキン2(rhIL-2)で大顆粒リンパ球を7日間刺激した。感受性のある CTAC 細胞系に対する効果細胞の細胞毒性は刺激前後で測定した。
刺激前の大顆粒リンパ球に比べ、組換えヒトインターロイキン2(rhIL-2)で刺激した後の大顆粒リンパ球の割合は腫瘍に罹患した犬とコントロールの両方の犬で有意(P<0.01)に増加した。しかし、その増加は健常動物においてより有意に高く、犬の腫瘍患者において、ナチュラルキラー細胞の増殖能力が欠如していることを示唆している。組換えヒトインターロイキン2(rhIL-2)で刺激した後、腫瘍に罹患した犬のリンホカイン活性化キラー(LAK)細胞活性は健常犬と比較すると有意(P<0.01)に低かった。腫瘍に罹患した犬の組換えヒトインターロイキン2(rhIL-2)で活性化したナチュラルキラー細胞の細胞毒性の減少は、ナチュラルキラー細胞の増殖能の減少と、ターゲット細胞を溶解させるリンホカイン活性化キラー細胞能力の減少が原因と思われる。
腫瘍に罹患した犬におけるIL-2で活性化したナチュラルキラー細胞の正確な機能の更なる認識は、犬と人の癌患者において新しく治療上有利な治療戦略を最適化するのに役立つかもしれない。私たちの調査結果は、犬がIL-2を使った癌免疫療法のための関連大型動物モデルとしても貢献できることを示唆している。(Dr.Kawano訳)
■1頭の犬の口腔に見られた偽血管腫様扁平上皮癌
Pseudoangiomatous squamous cell carcinoma in the oral cavity of a dog.
J Vet Diagn Invest. March 2010;22(2):299-302.
Tim Cushing, Sandra Barnard, Rebekah Fleis, Rachel Peters
8歳避妊済みメスのラブラドールレトリバーの雑種犬が、左上顎第4前臼歯と第1大臼歯に広がる侵襲性口腔マスを呈し、コーネル大学動物病院を受診した。
最初のバイオプシーは未分化扁平上皮癌を示唆したが、外科的切除したマスの組織検査で、多数の血管裂、様々な数の角化上皮細胞からなる血管肉腫様マスが明らかとなった。組織学および免疫組織化学特性は、良く認識されたヒトの有棘細胞性扁平上皮癌の変種である偽血管腫様扁平上皮癌に適合した。犬の歯肉血管肉腫に類似した組織形態を持つので、犬の口腔内の血管様増殖に対する鑑別診断を行うとき、この腫瘍変種に注意すべきである。(Sato訳)
■猫の進行性軟部組織肉腫におけるリポゾーマルドキソルビシンと日々の姑息的放射線療法の併用
Concomitant liposomal doxorubicin and daily palliative radiotherapy in advanced feline soft tissue sarcomas.
Vet Radiol Ultrasound. 2010 May-Jun;51(3):349-55.
Miriam Kleiter, Alexander Tichy , Michael Willmann, Maximilian Pagitz, Birgitt Wolfesberger
猫の軟部組織肉腫の局所再発は積極的な治療にもかかわらず一般的である。リポゾーマルドキソルビシンは日々の放射線療法と同時に投与するならば、徐放性放射線増感剤として役立つと思われ、よって腫瘍コントロールが改善する。
この予備的研究では、進行性軟部組織肉腫の猫10頭の姑息的対応下で、リポゾーマル放射線化学療法併用の可能性を評価した。猫は回数中央値5回(範囲5-7)1日1回放射線分画で、総線量中央値20Gy(範囲20-31.5Gy)で治療した。放射線療法開始時に1度リポゾーマルドキソルビシンを投与した。リポゾーマルドキソルビシン/放射線プロトコール完了後、7頭の猫は追加のフリーあるいはリポゾーマルドキソルビシンを投与した。10頭中7頭(70%)は、反応持続期間中央値237日の完全反応(n=2)あるいは部分反応(n=5)に達した。全10頭の無進行期間中央値は117日で、総生存期間中央値は324日だった。リポゾーマル放射線化学療法併用は、9頭の猫でよく許容し、1頭の猫は一時的な食欲不振を起こした。決定的な結論を出すには症例数が少なすぎるが、結果はリポゾーマルドキソルビシンの放射線増感剤としてのさらなる役割を調査するのに十分有望であることを示す。(Sato訳)
■猫の自発性腹腔内出血:65症例(1994-2006)
Spontaneous hemoperitoneum in cats: 65 cases (1994-2006).
J Am Vet Med Assoc. May 2010;236(9):978-82.
William T N Culp, Chick Weisse, Melissa E Kellogg, Ira K Gordon, Dana L Clarke, Lauren R May, Kenneth J Drobatz
目的:自発性腹腔内出血の猫における臨床症状、身体検査所見、臨床的検査異常、原因、転帰を述べる。
構成:回顧的症例シリーズ
動物:自発性腹腔内出血を起こした飼育猫65頭
方法:7箇所の大きな二次診療施設における自発性腹腔内出血の猫の医療記録を再調査した。症例は医療記録の再調査で自発性腹腔内出血の確定診断が得られたものとした。
結果:65症例が基準に合致した。一般的な主訴は嗜眠、食欲不振、嘔吐だった。身体検査の所見は、不十分な水和状態、低体温だった。臨床病理的異常は、血清AST高活性、貧血、プロトロンビン時間延長、部分トロンボプラスチン時間延長だった。46%(30/65)の猫は腹部腫瘍、54%(35/65)は非腫瘍性だった。多く診断された腫瘍は血管肉腫(18/30;60%)で、脾臓が一般的な腫瘍の部位(11/30;37%)だった。8頭の猫は生存して退院した。腫瘍の猫は有意に老齢で、非腫瘍性疾患の猫よりも有意に低いPCVsだった。
結論と臨床関連:猫の自発性腹腔内出血は消耗性の臨床結果をもたらす。腹腔内出血の犬と対照的に、猫の腹腔内出血の原因は腫瘍性、非腫瘍性疾患でほぼ半数に分布する。この研究で治療した猫はほとんどいないが、予後不良と思われる。(Sato訳)
■ビンクリスチン療法中の犬可移植性性器肉腫の退行に対する予測因子
Predictive factors for the regression of canine transmissible venereal tumor during vincristine therapy.
Vet J. March 2010;183(3):362-3.
Karime C Scarpelli, Maria L Valladao, Konradin Metze
犬可移植性性器肉腫(CTVT)は、移植により伝播する腫瘍である。ビンクリスチンの単剤化学療法は効果的と考えられているが、完全な臨床的寛解までの治療時間は変動すると思われる。
この研究の目的は、診断時の臨床データがビンクリスチン化学療法に対するCTVTの反応性を予測できるかどうか判定することだった。CTVTの犬100頭でこの前向き研究を行った。腫瘍が肉眼的に消失するまで、1週間間隔で硫酸ビンクリスチン(0.025mg/kg)を投与した。完全寛解までの時間を記録した。多変量Cox回帰モデルで、大きな腫瘍マス、加齢、暑い及び雨の多い月の治療が寛解を遅らせる有意な独立した悪い予測因子であり、一方性別、体重、飼育犬あるいは繁殖犬のような状態は予測的関連がなかった。
それらの結果が、免疫監視が減少した動物において免疫学的反応メカニズムの変化により、腫瘍退行の遅延を起こしているのかを調査する研究が必要である。(Sato訳)
■1頭の若い猫の頭にできた成熟奇形腫の外科的切除
Surgical resection of a mature teratoma on the head of a young cat.
J Am Anim Hosp Assoc. 2010 Mar-Apr;46(2):121-6.
Bart van Goethem, Tim Bosmans, Koen Chiers
1頭の4ヶ月齢の子猫が、左耳の根元を巻き込む側頭部にかけての大きなマスを呈して来院した。針吸引生検の細胞診で診断は出来なかった。CT検査で腫瘍の広がりを確認した。眼窩縁の一部、咀嚼筋、全耳道、耳介の外科的切除を実施した。眼筋の再建を実施し、単茎前位フラップで皮膚欠損を再建した。片側性顔面神経麻痺はでたが、術後の臨床的機能も美的面も良好だった。
組織学的検査で奇形腫による腫瘍と判明した。3年の追跡調査期間を経て、再発所見はなかった。性腺外奇形腫は、若い動物で腹腔外に位置し、成長するマスを呈したときに鑑別診断に含めるべきである。成熟奇形腫の外科的切除は根治を考えることが出来る。(Sato訳)
■猫の消化管の慢性炎症および非炎症性疾患:全層および腸管外生検の診断利点
Chronic inflammatory and non-inflammatory diseases of the gastrointestinal tract in cats: diagnostic advantages of full-thickness intestinal and extraintestinal biopsies.
J Feline Med Surg. February 2010;12(2):97-103.
Sven Kleinschmidt, Jasmine Harder, Ingo Nolte, Sina Marsilio, Marion Hewicker-Trautwein
慢性胃腸疾患症状の猫43頭から消化管の全層バイオプシーおよび腸管外サンプルを採取し、組織所見の評価を行った。多くの症例(46.5%)で、炎症性腸疾患、すなわちリンパ球性プラズマ細胞性腸炎/大腸炎(32.6%)、好酸球性胃腸結腸炎(11.6%)、混合炎症性浸潤(2.3%)が診断された。さらに、4頭に非炎症性粘膜帯形成線維症(9.3%)、10頭の猫(23.3%)に瀰漫性リンパ腫が見つかった。6頭の猫のみにそれぞれ胃炎(7%)あるいはリンパ管拡張症(7%)を認めた。2頭の猫(4.7%)で肥満細胞腫が診断された。1頭は組織病理学的病変が見られなかった。腸管の全ての分節からの貫壁性バイオプシーの有用性、腸管外サンプル、特に腸間膜リンパ節のサンプリングは、リンパ腫および肥満細胞由来の腫瘍のような腸管腫瘍の診断に対し特に有益である。(Sato訳)
■自然発生した犬の腫瘍における微小血管密度の免疫蛍光分析と定量コントラスト増強パワードップラー超音波検査の相関
Correlation of quantified contrast-enhanced power Doppler ultrasonography with immunofluorescent analysis of microvessel density in spontaneous canine tumours.
Vet J. January 2010;183(1):58-62.
Stefanie Ohlerth, Melanie Wergin , Carla Rohrer Bley, Francesca Del Chicca , Dagmar Laluhova , Beat Hauser, Malgorzata Roos, Barbara Kaser-Hotz
従来、腫瘍の血管分布状態は免疫蛍光分析により観血的に評価する。ヒトや実験動物では、非観血的に腫瘍の血管新生を測定するのに、定量コントラスト増強パワードップラー超音波検査が使用されている。
この研究の目的は、45例の自然発生した犬の腫瘍における免疫蛍光分析結果と定量コントラスト増強パワードップラー超音波検査結果を相関させることだった。パワードップラーで、平均血管分布は扁平上皮癌で高く、悪性口腔メラノーマは中程度、肉腫は低かった。実際、扁平上皮癌では平均血管分布は高く、肉腫および悪性口腔メラノーマでは低かった。
ドップラーパラメーターは全ての腫瘍に対する微小血管密度と適度に相関した(P=0.004、r=0.4)が、組織学的グループ内で相関しなかった。それらの分析から、犬の腫瘍組織学的グループの中で血管分布は異なることが示される。しかし、使用する方法に依存し、腫瘍血管分布の測定は、異なる生物学的情報を提供できる。(Sato訳)
■犬の良性皮膚脂肪腫における骨軟骨化生
Chondro-osteoblastic metaplasia in canine benign cutaneous lipomas.
J Comp Pathol. January 2010;142(1):89-93.
G A Ramirez, J Altimira, B Garcia, M Vilafranca
脂肪腫は犬における一般的な良性脂肪組織腫瘍である。脂肪腫の変異形は追加コンポーネント(例えば血管脂肪腫では毛細血管、繊維脂肪腫では線維性結合組織)により特徴付けられる。
人医で、脂肪腫の中に軟骨あるいは骨が存在することはまれである。機械的ストレス、向性栄養障害、骨膜への接触、その他の要因がこの化生の原因と思われる。
この報告は犬の皮膚に出来た4例の軟骨脂肪腫、2例の骨脂肪腫の臨床、肉眼、顕微鏡的所見を述べる。その犬の腫瘍に対する潜在的組織発生も検討する。(Sato訳)
■自然退行に関連すると思われる犬皮膚組織球腫におけるE-カドヘリン発現の減少
Decrease of E-cadherin expression in canine cutaneous histiocytoma appears to be related to its spontaneous regression.
Anticancer Res. July 2009;29(7):2713-7.
Isabel Pires, Felisbina Luisa Queiroga, Anabela Alves, Filipe Silva, Carlos Lopes
背景:犬皮膚組織球腫(CCH)は、若い犬に多く見られるランゲルハンス細胞の表皮向性腫瘍で、自然退行を起こす。
素材と方法:E-カドヘリン免疫発現を93のCCHで分析し、Cockerell and Slauson (1976)の基準に従い、腫瘍退行の異なるステージを呈する4つの組織学的グループに分類した。
結果:全ての腫瘍のケラチン生成細胞と腫瘍性細胞両方に膜性E-カドヘリンが発現し、分析した組織学的グループの中で違いは見られなかった。しかし、E-カドヘリン免疫標識の強度は、リンパ様浸潤の存在下で減少し、グループの中で有意に変化した(P<0.0001)。
結論:この研究は、犬皮膚組織球腫の病因および発達においてE-カドヘリン発現のダウンレギュレーションを強く示唆する。E-カドヘリン発現の減少は、犬皮膚組織球腫退行のスイッチとなる腫瘍性細胞の活性化/成熟プロセスを表すと思われる。(Sato訳)
■機能性甲状腺癌の全身性高血圧症の犬1例
Systemic hypertension in a dog with a functional thyroid gland adenocarcinoma.
J Am Vet Med Assoc. December 2009;235(12):1474-9.
Andrew C Simpson, Jennifer L McCown
症例記述:長期にわたるパンティング、多渇多尿、体重減少、後枝虚弱、食欲低下の病歴を持つ12歳、体重21.9kgの避妊済みメスのアラスカンマラミュートの高血圧を評価した。
臨床所見:ドップラー血圧測定法で収縮期血圧が250mmHg(5回連続測定の平均値)を示した。頸部腹側の触診で、甲状腺葉の部分に固着した左右非対称のマスを認めた。右側マスは約2x2cm、左側は約1x1.5cmの大きさだった。血清チロキシン濃度の上昇をもとに甲状腺機能亢進症と診断した。甲状腺両葉の切除を実施した。組織検査では、両側多胞性被包性甲状腺癌を認めた。
治療と結果:甲状腺両葉の切除により高血圧は臨床的解消を見せた。術後治療としてドキソルビシン、カルボプラチンの化学療法、放射線の外部照射を行った。カルシウムとチロキシンの恒常性は変動した。;しかし最終的にカルシトリオール、炭酸カルシウム、レボチロキシンの投与により、それぞれ正常範囲内の濃度におさまった。
臨床関連:この報告は機能性甲状腺癌で高血圧の同時発生を起こし、甲状腺切除後に血圧が正常範囲内に回帰した犬1例を述べる。(Sato訳)
■犬の肛門腺癌の不完全切除に対する補助的電気化学療法
Adjuvant electrochemotherapy for incompletely excised anal sac carcinoma in a dog
In Vivo. 2008 Jan-Feb;22(1):47-9.
Enrico P Spugnini1, Ivan Dotsinsky, Nikolay Mudrov, Massimiliano Bufalini, Giovanni Giannini, Gennaro Citro, Florinda Feroce, Alfonso Baldi
犬の肛門腺癌(ASGC)は、悪性度が高く、広範囲の転移を起こしやすいと頻繁に述べられる腫瘍である。
この文献で、二相性パルスのtrainsで腫瘍細胞内にシスプラチンを選択的に運ぶことによる不完全切除のASGCの治療の成功例を述べる。その犬には14日おきに2回の電気化学療法を施した。治療の全過程において全身性あるいは局所毒性は検出されなかった。その犬は18ヶ月経過しても完全寛解を保っている。電気化学療法はASGCに対し安全で効果的な補助療法であり、そのプロトコールを標準化するための更なる調査の必要性がある。(Sato訳)
■43頭の猫の眼瞼腫瘍の回顧的研究
A retrospective study of eyelid tumors from 43 cats.
Vet Pathol. September 2009;46(5):916-27.
K M Newkirk, B W Rohrbach
1999年6月から2008年6月の間にテネシー大学病理サービスに提出された検体から、眼瞼あるいは瞬膜を巻き込んだ腫瘍の猫症例を検索した。43件の腫瘍を確認した。12件は扁平上皮癌(SCCs)、11件は肥満細胞腫(MCTs)、6件は血管肉腫(HSAs)、4件は腺癌(ACAs)、3件は末梢神経鞘腫(PNSTs)、3件はリンパ腫、3件はアポクリン腺汗嚢腫(AHCs)、2件は血管腫だった。MCTsの猫は他の全ての腫瘍の猫よりも有意に若かった。対照的にSCCsの猫は他の腫瘍の猫より有意に老齢だった。HSAsとSCCsは他の腫瘍よりも有意に非色素部位に発生しやすかった。MCTs、HSAs、AHCsおよび血管腫は外科切除後再発しなかった。対照的にリンパ腫、ACAs、SCCs、PNSTsは頻繁に再発、および/または、猫は死亡あるいは安楽死の転帰を取った。SCCsはMCTsよりも有意に再発しやすかった。SCCsの猫の平均生存期間は7.4ヶ月だった。眼瞼MCTsは猫で報告されているが、この研究の有病率は過去に述べられたものよりもかなり高い。(Sato訳)
■自発腹腔内出血を発症した犬の腹部超音波検査中に孤立あるいは多発病変が見られたときの悪性腫瘍の有病率
Prevalence of malignancy when solitary versus multiple lesions are detected during abdominal ultrasonographic examination of dogs with spontaneous hemoperitoneum: 31 cases (2003-2008).
J Vet Emerg Crit Care. Oct 2009;19(5):496-500.
Joshua G Levinson, Jennifer L Bouma, Gary C Althouse, Teresa M Rieser
目的:腹腔内出血のある犬において腹部超音波検査で孤立あるいは多発病変が認められたときの病理組織診断を比較する
構成:回顧的横断研究
場所:個人動物病院
動物:2003年3月1日から2008年6月1日までに自発腹腔内出血を呈した飼育犬
操作:孤立あるいは多発腹部超音波病変の存在をもとにして2群に犬を振り分けた。悪性腫瘍、特に血管肉腫に対し群間の有病率を比較した。
測定値および主要結果:31頭中10頭(32%)が孤立性腹部超音波病変を持ち、21頭(68%)が1つ以上の病変を持っていた。出血組織は孤立病変の10頭中8頭(80%)が悪性腫瘍、多発病変の21頭中17頭(81%)が悪性腫瘍の特徴を呈した。群間に有意差はなかった(P=1.0)。この研究で、腹部超音波で観察された病変数と、その後の血管肉腫の診断に関連(P=0.26)は見られなかった。
結論:腹腔内出血の見られた犬において、孤立腹部超音波病変は必ず悪性腫瘍の確率が低いことを示すわけではない。(Sato訳)
■イギリスの64頭の猫における肛門腺癌(1995-2007)
Anal sac gland carcinoma in 64 cats in the United kingdom (1995-2007).
Vet Pathol. July 2009;46(4):677-83.
A M Shoieb, D M Hanshaw
猫の肛門腺癌(ASGC)の特徴を述べるため64症例の回顧的研究を実施した。イギリスの個人診断検査所において1995年から2007年の間に全ての肛門腺癌は診断された。免疫組織化学および腺のサイトケラチン抗体(CAM5.2)を使用し、それらの腫瘍のサブセットでアポクリン腺由来を確認した。関係する臨床、肉眼、組織学的特徴を犬のASGCのものと比較した。肛門腺癌は猫の皮膚腫瘍の0.5%を占めた。ASGCの猫の39頭はメスで、雌雄比は1.56だった。64の腫瘍のうち52(81.1%)は家猫短毛種で、5(7.8%)はシャム、3(4.8%)は家猫長毛種、2(3.1%)はバーミーズ、1(1.6%)はバーマンとペルシャ猫だった。種の中でASGCの罹病率に有意差はなかった。年齢は6-17歳(中央および平均年齢12歳)だった。術後の結果が分かっている罹患猫の3/4以上は、腫瘍の直接的関与で安楽死あるいは死亡し、生存期間中央値は3ヶ月だった。1年および2年生存率は19%および0%だった。(Sato訳)
■低酸素誘導因子(HIF)-1alphaと癌治療
HIF-1alpha and Cancer Therapy.
Recent Results Cancer Res. 2010;180:15-34.
Koh MY, Spivak-Kroizman TR, Powis G.
固形癌はその成長が血液供給を追い越すので、ほとんどが低酸素な病変へ発展する。ストレスが多い低酸素環境で生存するために、腫瘍細胞は低酸素への適応を調節する同調的な反応を獲得している。低酸素に対する細胞性反応の結果が侵攻的な疾患、治療に対する抵抗性そして患者生存率の減少となっている。低酸素反応の決定的なメディエーターは、血管新生、嫌気代謝そして多くの他の生存経路を促進する蛋白発現をアップレギュレートする転写因子の低酸素誘導因子1 (HIF-1)である。HIF-1のヘテロ二量体の成分であるHIF-1αの調節は、翻訳、分解そして転写活性化を含む複数のレベルで起こり、HIF-1の中心的役割を果たす証拠として機能する。腫瘍生存のためのHIF-1α発現の重要性を示す研究は、癌治療においてHIF-1αが魅力的な標的となっている。HIF-1の薬理学的抑制剤とそれらの様々な標的のリストが増加していることは、HIF-1を調節する複雑な分子メカニズムを反映する。本章では、我々はHIF-1αの調節に関する最近の所見とHIF-1αを抑制する新しい治療薬を特定する進行具合を要約する。(Dr.Kawano訳)
■犬猫における多発性骨髄腫の概要
An overview of multiple myeloma in dogs and cats
Vet Med. Oct 2009;104(10):468-476. 44 Refs
Rachel Sternberg, DVM, Jackie Wypij, DVM, DACVIM (oncology), Anne M. Barger, DVM, DACVP
犬や猫で多発性骨髄腫はまれな腫瘍である。それに関する状態には、過粘稠度症候群、骨病変、高カルシウム血症、腎疾患、血球減少症、出血傾向、細菌感染に対する感受性の増加などがある。多発性骨髄腫は犬猫において同様の生物学的動向を持つわけではないと思われ、種間および種内で異なる予後、臨床経過および治療への反応を伴う不均一な疾患として考えるのが良い。良好な臨床反応が化学療法で得られると思われるが、突然の再燃が予測される。(Sato訳)
■犬の悪性腫瘍における血清乳酸脱水素酵素活性
Serum lactate dehydrogenase activity in canine malignancies
L. Marconato , G. Crispino , R. Finotello , S. Mazzotti , F. Salerni and E. Zini
ヒトにおいて乳酸脱水素酵素(LDH)は一般的に予後を目的としたヒトの癌患者で使用される。この研究の目的は、健康な犬、非腫瘍性疾患の犬と比較して担癌犬における血清LDH上昇の規模を判定することと、特定悪性腫瘍の診断を支持するものかどうかを検証することだった。約128頭の健康な犬、211頭の疾患犬、188頭の担癌犬で研究した。担癌犬のLDHは疾患犬(P<0.001)および健常犬(P<0.001)と比較して有意に高かったが、大きなオーバーラップが見られた。リンパ腫の犬は、癌の犬(P<0.001)あるいは肥満細胞腫(MCT;P<0.05)よりもLDHが有意に高かったが、他の悪性腫瘍で比較にならなかった。リンパ腫とMCTで考えたとき、LDH濃度に早期および進行した臨床ステージの間で差はなかった。LDH濃度測定は、癌検出のスクリーニング手段として有効ではないと思われる。特定腫瘍でその役割を明確にする更なる研究が必要である。(Sato訳)
■子宮遺残物に血管肉腫を罹患した避妊済み雌犬の一例
Haemangiosarcoma in the uterine remnant of a spayed female dog.
J Small Anim Pract. 2009 Sep;50(9):488-91.
Wenzlow N, Tivers MS, Selmic LE, Scurrell EJ, Baines SJ, Smith KC.
11歳、避妊済みのグレイハウンドが外陰部からの血様分泌物を主訴に来院した。臨床検査、膣鏡、CT検査により子宮頚部および子宮断端部に不整な鶏卵大の腫瘤を認めた。内視鏡的組織生検では悪性の間葉系腫瘍が示唆された。これにより頭側膣部、子宮頚部および子宮遺残物を外科的に切除した。血管肉腫の最終診断は、切除生検による組織検査と、フォン・ウィルブランド因子に対する腫瘍内皮細胞の免疫標識が陽性であることからなされた。(Dr.Ka2訳)
■犬の頭蓋内髄膜腫におけるシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)発現
Cyclooxygenase-2 (COX-2) expression in canine intracranial meningiomas
Vet Comp Oncol. September 2009;7(3):173-180. 16 Refs
J. H. Rossmeisl Jr., J. L. Robertson, K. L. Zimmerman, M. A. Higgins, D. A. Geiger
髄膜腫は一般的な犬の頭蓋内腫瘍である。犬の頭蓋内髄膜腫に対する現在の外科および放射線療法にもかかわらず、治療失敗による神経障害および死亡は依然問題である。シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)過剰発現は、多数の犬の悪性腫瘍で認められており、COX-2抑制治療戦略は、癌の自然発生および実験モデルにおいて予防および治療効果を持つことが示されている。
本研究の目的は、犬の頭蓋内髄膜腫においてCOX-2発現を評価することである。正常な犬の脳の複数の組織の免疫組織化学およびウエスタンブロット(WB)検査でCOX-2発現を示し、研究した頭蓋内髄膜腫の87%(21/24)にCOX-2に対する免疫反応性があった。COX-2免疫反応性と腫瘍グレードに有意な関連性は認められなかった。中枢神経系における構成的COX-2発現の生理学的役割および髄膜腫の腫瘍発生におけるその関与を解明する追加研究が必要とされる。(Sato訳)
■犬における四肢の軟部組織肉腫に対する術中シスプラチン療法
Intra-operative cisplatin for the treatment of canine extremity soft tissue sarcomas
Vet Comp Oncol. June 2009;7(2):122-129. 34 Refs
M. Havlicek, R. S. Straw, V. Langova, W. S. Dernell
四肢の軟部組織肉腫を組織学的に確認した19頭の犬を、マージナルサージェリーと生分解性インプラントデリバリーシステム(Atrigel;Atrix Laboratories、Fort Collins、Co、USA)のシスプラチン製剤を用いた術中化学療法で治療した。治療時に転移所見を持つ犬はいなかった。シスプラチンの投与量中央値は、52.1mg/m2(平均55.4mg/m2、範囲18.5-108.6mg/m2)だった。創傷の合併症は16頭(84.2%)に見られた。追跡調査期間の中央値は874日(平均777日、範囲125-1463日)だった。9頭(47.3%)の犬は分析時に生存していた。3頭(16.6%)に局所再発が見られた。再発までの期間は、214、264、874日だった。(Sato訳)
■多中心性骨髄脂肪腫の犬の1例
Multicentric myelolipoma in a dog.
J Vet Med Sci. March 2009;71(3):371-3.
Junichi Kamiie, Keisuke Fueki, Harumi Amagai, Youichiro Ichikawa, Kinji Shirota
我々は嘔吐で来院した11歳のビーグル犬に見られた多中心性骨髄脂肪腫の症例を報告する。
開腹術で大網に癒着した大きなマスと脾臓における多数の小白斑を認めた。細胞および組織検査で、そのマスと白斑は成熟脂肪細胞と、骨髄に似たいくつかの成熟期の顆粒球および巨核球、ヘモジデリンを含むマクロファージなどの造血要素で構成されていることが分かった。多中心性骨髄脂肪腫と診断された。これは1頭の犬に見られた多中心性骨髄脂肪腫の最初の報告である。(Sato訳)
■マウス腎細胞癌に対するソラフェニブを加えたヒト組み替えインターロイキン-2の抗腫瘍効果
Antitumor efficacy of recombinant human interleukin-2 combined with sorafenib against mouse renal cell carcinoma.
Jpn J Clin Oncol. May 2009;39(5):303-9.
Motofumi Iguchi, Mitsunobu Matsumoto , Kanji Hojo, Toru Wada, Yoshiyuki Matsuo, Akinori Arimura, Kenji Abe
目的:腎細胞癌(RCC)の治療で、ヒト組み替えインターロイキン-2(rhIL-2)が臨床的に使用されている。マルチターゲッのトキナーゼ抑制剤であるソラフェニブはIL-2と同様RCCに承認されている。この研究の目的は、Renca細胞を使用した3つの異なるマウス腎細胞癌モデルで、ソラフェニブを加えたIL-2の抗腫瘍効果を評価することだった。
方法:BALB/cマウスの背中に野生型Renca細胞接種による皮下腫瘍モデル、ルシフェラーゼ発現Renca細胞の尾静脈からの静脈注射による肺転移腫瘍モデル、腎被膜下へのルシフェラーゼ発現Renca細胞の注射による同所性腫瘍モデルを作成した。それら担癌マウスをrhIL-2の腹腔内および/あるいはソラフェニブ経口で処置した。抗腫瘍効果は皮下腫瘍の大きさ、あるいは肺転移腫瘍および同所性腫瘍の光子強度測定で評価した。
結果:すべてのモデルでrhIL-2とソラフェニブを組み合わせたとき、rhIL-2あるいはソラフェニブ単独と比較して抗腫瘍効果は有意に増加した。ソラフェニブはrhIL-2誘発ナチュラルキラー細胞発現を抑制せず、rhIL-2はソラフェニブの抗血管形成活性に対し影響はなかった。
結論:結果は、rhIL-2とソラフェニブの組み合わせは、RCCの患者に対する新しい治療アプローチとして有意なポテンシャルを発揮するかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■腫瘍性胸水の長期管理に対して行った胸部大網化の猫1頭
Thoracic omentalization for long-term management of neoplastic pleural effusion in a cat.
J Am Vet Med Assoc. 2009 May 15;234(10):1299-302.
Talavera J, Agut A, Fernandez Del Palacio J, Martinez CM, Seva JI.
症例紹介:11歳避妊済みメスの家猫長毛種の猫を、1週間にわたる進行性の呼吸困難、沈うつ症状、食欲喪失の理由で評価した。6週間前に乳腺から組織球肉腫を切除していた。
臨床所見:身体検査所見は胸水に一致し、胸部および腹部レントゲン検査および超音波検査で胸水、大槽脈および肺動脈を巻き込んだ胸部マス、拡大した腸骨リンパ節と思われる尾側腹部マスが明らかになった。胸水および腸骨、右腋窩リンパ節からの針吸引生検の細胞診で、起源の分からない腫瘍特性を持つ豊富な細胞が明らかとなった。臨床診断は全身性悪性腫瘍だった。
治療と結果:胸膜の排液は5,6日毎に必要だった。試験的開胸とバイオプシーが胸部疾患をよく特徴付けるために推奨した。同時に胸郭に大網を進める待機療法を実施した。播種性組織球肉腫の最終診断がなされ、術後ドキソルビシンの投与を開始した。術後13ヶ月の間、猫に気道疾患の症状はなく、良好な運動耐容量を持つ正常な活動レベルだった。術後15ヶ月目、猫の臨床状況は悪化し死亡した。
臨床関連:所見は、胸部大網化が、難治性腫瘍性胸水のある猫において、頻回の胸腔穿刺が必要で他の治療では安定しないとき、待機療法として考慮できるかもしれないと示唆した。(Sato訳)
■センチネルリンパ節評価の概要と獣医腫瘍学へのその組み込みの必要性
A review of sentinel lymph node evaluation and the need for its incorporation into veterinary oncology
Vet Comp Oncol. June 2009;7(2):81-91. 82 Refs
J. L. Tuohy, J. Milgram, D. R. Worley, W. S. Dernell
多くの原発腫瘍が確実に流れる第一リンパ節あるいはリンパ節であることから、センチネルリンパ節(SNL)の疾患状況は生存性の予測において重要である。SNLの確認と生検はヒトの癌のステージングで重大な意味を持つ。SLNの状況は予後の判定あるいは治療プランの作成に役立つ。SLN評価は獣医腫瘍学や専門腫瘍診療所でさえも日常的に現在実施されていない。乳癌、骨肉腫、滑膜細胞肉腫、肥満細胞腫のような腫瘍に関与するリンパ節の予後の重要性がもたらされるため、獣医腫瘍患者の我々の臨床評価を改善するために、日常的な臨床診療にSLN評価を組み込むべきである。(Sato訳)
■インシュリノーマの犬28頭の遡及集団における生存性の改善
Improved survival in a retrospective cohort of 28 dogs with insulinoma
J Small Anim Pract. March 2007;48(3):151-6.
G A Polton, R N White, M J Brearley, J M Eastwood
目的:インシュリノーマの犬集団の生存期間を判定することと、非外科症例および再燃した外科症例両方に対する医学療法の影響を述べる
方法:インシュリノーマ犬の遡及研究を示す。この集団の生存特性を述べるのにカプラン-マイヤー法を使用する。
結果:28頭の犬を研究した。全ての犬の生存期間中央値は547日だった。19頭は部分的膵切除を行っていた。このグループの生存期間中央値は785日で、その後再燃に対しプレドニゾロン療法を行った犬は1316日だった。
臨床意義:この研究における生存期間は、過去に発表された他の研究のものよりも上回っている。いくぶん、これは過去の報告と比較して外科手術後の寛解期間の改善により説明できる。しかしより著しいのは、医学療法の開始後患者の長命である。それらのデータは、犬のインシュリノーマの管理で、外科的に寛解をもたらせた後の再燃後を含む医学療法の役割を強く客観的に支持するものである。(Sato訳)
■犬におけるカルボプラチン化学療法と放射線療法の併用における副作用
Adverse effects of concurrent carboplatin chemotherapy and radiation therapy in dogs.
J Vet Intern Med. 2009 Jan-Feb;23(1):24-30.
K R Hume, J L Johnson, L E Williams
背景:化学療法と放射線療法の併用は、人の腫瘍の転帰を改善するが、毒性の症状も増加させる。獣医の文献で化学療法と放射線療法の併用の副作用に対する報告は乏しい。
目的:犬においてカルボプラチンと放射線療法の組み合わせにおける血液および胃腸の副作用を報告すること
動物:自然に発生した腫瘍を持つ飼育犬
方法:遡及症例研究。65頭の犬の医療記録を再検討した。含有基準は3つの分画シェーマ(19x3、16x3、12x4Gy)のうち1つに従い放射線照射を行い、最低1回200-300mg/m2のカルボプラチン投与を行ったものとした。犬と治療関連変動値を毒性の症状の関連に対し分析した。
結果:カルボプラチン投与量の中央値は200mg/m2(範囲200-250mg/m2)だった。58頭中12頭(21%)はグレード3あるいは4の好中球減少を起こした。56頭中11頭(20%)はグレード3あるいは4の血小板減少を起こした。62頭中6頭(10%)はグレード3、4、5の胃腸毒性を示した。犬と治療関連変動値と毒性症状の関係の分析は、個別グループで犬が少数のために不可能で、統計学的有意な関係は見つからなかった。
結論と臨床関連:治療の組み合わせは、骨髄抑制と胃腸毒性を起こした。治療の組み合わせによる潜在的利益は化学療法および放射線治療強度を減ずるリスクよりまさるかどうかを判定する追加研究が必要である。(Sato訳)
■アポトーシス:疾患における前アポトーシスおよび抗アポトーシス経路および調節不全の概要
Apoptosis: A review of pro-apoptotic and anti-apoptotic pathways and dysregulation in disease
J Vet Emerg Crit Care. December 2008;18(6):572-585. 167 Refs
Mauria A. O'Brien, DVM, Rebecca Kirby, DVM, DACVIM, DACVECC
目的:健常および疾患におけるアポトーシスの生物学に対する人および獣医文献の再調査
総合データ:Pubmedおよびアポトーシスに関する最適な文献で参照リストに挙げられた、人および獣医文献からのデータを調査した。
人の総合データ:健常および疾患のアポトーシスの役割は、人医の急速に成長する研究分野である。アポトーシスは人の自己免疫疾患、アルツハイマー病、癌、敗血症のコンポーネントとして確認されている。
獣医の総合データ:小動物の疾患におけるアポトーシスとその役割に関する獣医文献か耐えられる研究データはいまだ初期のままである。獣医研究の大多数は腫瘍療法に焦点を当てている。基本科学および人臨床リサーチ研究のほとんどは、ヒトの血および組織サンプル、マウスモデルを使用する。それらの研究からの結果は小動物種に適用可能かもしれない。
結論:アポトーシスは、プログラム細胞死の複合生理過程である。疾患およびアポトーシスの病態生理学は、現在人医で厳密に評価されているだけである。大きさや組成を調節する組織による生理学的メカニズムの知識は、研究者を癌、自己免疫疾患、敗血症のような人の疾患におけるアポトーシスの役割を調査するよう先導する。多面的な過程のため、アポトーシスを治療的に標的にするあるいは操作するのは困難である。更なる研究がアポトーシスを調節あるいは操作する方法を明らかにし、患者の転帰を改善すると思われる。(Sato訳)
■光線力学療法による犬の骨腫瘍の治療:予備的研究
Treatment of canine osseous tumors with photodynamic therapy: a pilot study.
Clin Orthop Relat Res. April 2009;467(4):1028-34.
S Burch, C London, B Seguin, C Rodriguez, B C Wilson, S K Bisland
光線力学療法は、腫瘍組織を融除する感光性化学療法剤を局所的に活性化するため、光ファイバーケーブルを通しての非熱的干渉光を使用する。光の透過に限界があるため、光線力学療法が大きな骨腫瘍を治療できるかどうかは不明である。
我々は、光線力学療法が大きな骨腫瘍で壊死を誘発できるかどうかを判定し、もうしそうならば治療組織の容積を定量した。予備的研究で、我々は遠位橈骨の自発骨肉腫の犬7頭を治療した。腫瘍は治療前と治療後48時間目にMRI検査を行い、低強度領域の容積を比較した。治療した肢は48時間目のMRI検査後即座に断脚し、MR軸像に一致するよう切開した。
我々は腫瘍壊死を組織学的に確認した;壊死の領域は解剖学的にMRIにおける低強度組織と一致した。光線力学療法後、MRI検査で見られた壊死組織の平均容積は、治療前の容積6108mm(3)と比べ、21305mm(3)だった。それらの予備的データは、光線力学療法は比較的大きな犬骨腫瘍に浸透し、骨腫瘍の治療で有効な補助となるかもしれないと示唆する。(Sato訳)
■犬の第三眼瞼腺の髄外プラズマ細胞腫
Extramedullary plasmacytoma of the third eyelid gland in a dog.
Vet Ophthalmol. 2009 Mar-Apr;12(2):102-5.
Eduardo Perlmann, Maria L Z Dagli, Maria C Martins, Sheila A C Siqueira, Paulo S M Barros
7歳アメリカンコッカスパニエルの第三眼瞼腺の髄外プラズマ細胞腫の症例を報告する。第三眼瞼腺の腫脹、大量の粘液膿性分泌、軽度充血と角膜色素沈着を呈していた。マスの切除バイオプシーで、腫瘍性プラズマ細胞の一様な集団により腺は浸潤され、部分的に破壊されていることが分かった。腫瘍細胞はCD138、Ki-67、ラムダL鎖陽性だった。CD20、CD3、カッパL鎖およびサイトケラチンは陰性だった。手術後12ヶ月で再発は観察されなかった。著者の知識では、犬の第三眼瞼腺の髄外プラズマ細胞腫の最初の報告である。(Sato訳)
■猫のワクチン関連肉腫に対する放射線療法の遡及分析
A retrospective analysis of radiation therapy for the treatment of feline vaccine-associated sarcoma
Vet Comp Oncol. March 2009;7(1):54-68. 55 Refs
C. Eckstein, F. Guscetti, M. Roos, J. Martin de las Mulas, B. Kaser-Hotz, C. Rohrer Bley
術後治療(n=46、ほとんどがマージンマイナス)あるいは粗分割放射線療法(n=27、ほとんどが肉眼的疾患かマージンプラス)を行ったワクチン関連肉腫の73頭の猫における予後予測因子を遡及的に評価した。前者の生存期間中央値は43ヶ月、進行フリー期間(PFI)中央値は37ヶ月で、後者の生存期間中央値は24ヶ月、PFI中央値は10ヶ月だった。粗分割放射線療法を行った猫で、より良い結果に対する予測因子は、肉眼的疾患があるもの(n=17)に対して可視マスがない(n=10、生存期間:7ヶ月vs30ヶ月、P=0.025;PFI:4ヶ月vs20ヶ月、P=0.01)、肉眼疾患に対する補助化学療法(n=5/17、生存期間:29ヶ月vs5ヶ月、P=0.04)、少数の手術前に行った放射線療法(係数=0.41、P=0.03)だった。Ki67指数は生存性を予測しなかった。
術後治療と粗分割放射線療法は、ワクチン関連肉腫の管理に有効で合理的なオプションである。(Sato訳)
■甲状腺転写酵素因子-1免疫組織化学:犬の悪性肺腫瘍における診断ツールおよび悪性マーカー
Thyroid transcription factor-1 immunohistochemistry: diagnostic tool and malignancy marker in canine malignant lung tumours
Vet Comp Oncol. March 2009;7(1):28-37. 37 Refs
G. Bettini, L. Marconato, M. Morini, F. Ferrari
原発性肺癌(PLCs)と転移の鑑別は困難な課題である。甲状腺および肺胞細胞の濾胞細胞で発現する核蛋白の甲状腺転写因子-1(TTF-1)の診断および予後関連性を、34の原発および27の非原発犬肺腫瘍で検査した。過剰な固定あるいはパラフィンブロックでの長期保存のため、14のPLCsにおいて正常な肺胞細胞が陰性に染色され、研究から除外した。20の免疫反応性PLCsのうち、17は強い核陽性を示した。陰性を示した3つの腫瘍のうち2つは扁平上皮で、1つは乳頭状癌だった。転移腫瘍は常に陰性だった。TTF-1はPLCsに対し100%特異性、85%感受性を示した。標識腫瘍細胞(TTF-1指標)の比率と考慮される臨床病理学的パラメーター(年齢、性別、組織学的タイプ、腫瘍グレード、TNMステージ、結節状態、MIB-1指標)の中での有意な相関はなかった。TTF-1免疫組織化学は犬の肺腫瘍起源に関する追加情報を得るのに有効と思われるが、その予後に対する使用は、まだ調査する必要がある。(Sato訳)
■犬の血管腫および血管肉腫の免疫組織化学分析
An immunohistochemical analysis of canine haemangioma and haemangiosarcoma.
J Comp Pathol. 2009 Feb-Apr;140(2-3):158-68.
S Sabattini, G Bettini
この研究の目的は、犬の内皮腫瘍の生物学における免疫組織化学的側面を調査することだった。犬の皮膚および内蔵血管肉腫(HAS)の40サンプル、皮膚および内蔵血管腫(HA)の29サンプル、肉芽組織(GT)の10コントロールサンプルをビメンチン、平滑筋アクチン、ヴォン・ヴィレブランド因子(vWF)、CD117(KIT)、血管内皮成長因子レセプター3(VEGFR-3)、血管内皮成長因子C(VEGFC)、CD44に対する特異抗血清で標識した。さらに抗血清は細胞増殖のレベル(MIB-1指数)を判定するのに利用し、腫瘍浸潤肥満細胞(MCs)の集団を検出するのにトルイジンブルー染色を行った。
血管腫よりも血管肉腫においてCD117、VEGFR-3、CD44のより大きな発現を認め、このことはそれらの蛋白が犬血管肉腫の新しい治療アプローチを開発するのに適したターゲットであるかもしれないと示唆する。血管腫におけるMCの顕著な浸潤が検出され、犬の良性血管腫瘍の病因においてそれらの細胞の潜在的役割を示唆する。(Sato訳)
■犬における軟骨腫様成分を持つ頚部脊髄脊索腫
Cervical spinal chordoma with chondromatous component in a dog
Vet Pathol. September 2008;45(5):650-3.
A Gruber, S Kneissl, B Vidoni, A Url
7歳オスのベルギーシェパードが、突発の外側横臥、四肢不全麻痺で来院した。第3頚椎レベルでMRIにより髄膜内および脊髄内マス病変が示された。その犬はその後安楽死され、検死により背側および腹側硬膜および脊髄に浸潤する半透明の固形マスを認めた。組織検査は小葉に分かれた多形態のマスを認め、主に高度空胞細胞質(担空胞細胞)をもつ紡錐形および多角形細胞が散らばった未分化軟骨に似ていた。腫瘍細胞の免疫組織化学は、ビメンチンとサイトケラチンの二重発現を示した。組織および免疫組織化学検査結果を元に、軟骨腫様成分を持つ脊索腫の診断がなされた。(Sato訳)
■猫における皮膚ラブドイド腫瘍
Cutaneous rhabdoid tumor in a cat
Vet Pathol. November 2008;45(6):897-900.
T Izawa, J Yamate, S Takeda, D Kumagai, M Kuwamura
ラブドイド腫瘍はヒトで細胞起源のわからない攻撃性の高い腫瘍で、通常乳児や子供の腎臓や中枢神経系に発生する。老人でまれに皮膚や軟部組織などの他の器官に発生する。
13歳オスの雑種猫における皮下マスが、ガラス状好酸性細胞質含有物を持つ円形-多角形細胞のネストあるいはシート状で構成されていた。免疫組織化学的に多くの腫瘍細胞はビメンチンを発現し、細胞質含有物に局在し、一方で腫瘍細胞の細胞質が散在性にニューロン特異性エノラーゼ、神経フィラメント、あるいはS-100蛋白陽性のものもあった。電子顕微鏡検査では、細胞質含有物は中間フィラメントの凝集から構成されることがわかった。
それら所見は、ヒトのラブドイド腫瘍の組織学的、免疫組織化学的、超微細構造特性に非常に似ており、動物でのラブドイド腫瘍の報告はほとんどない。(Sato訳)
■犬の膀胱移行上皮癌におけるアポトーシス抑制物質サバイビンの確認
Identification of survivin, an inhibitor of apoptosis, in canine urinary bladder transitional cell carcinoma
Vet Comp Oncol. September 2008;6(3):141-150. 54 Refs
W. Velando Rankin, C. J. Henry, S. E. Turnquist, J. R. Turk, M. E. Beissenherz, J. W. Tyler, E. B. Rucker, D. W. Knapp, C. O. Rodriguez, J. A. Green
アポトーシス抑制物質サバイビンは、ヒトの膀胱の侵襲性移行上皮癌(TCC)において過剰発現する。犬TCCにおけるサバイビン発現は明示されていない。この研究は、TCCおよび正常な膀胱組織におけるサバイビン発現の比較を行った。逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)および免疫組織化学検査(IHC)を、新鮮凍結およびホルマリン固定組織でそれぞれ実施した。PCRで検査した全てのTCC組織(n=6)および11/22の正常組織でサバイビンが陽性だった。この差は有意ではなかった(P=0.06)。
IHCに関しては、28/41のTCCサンプルが核サバイビンに陽性だったが、46の正常組織で核の免疫反応性を持っているものはなかった(P<0.001)。細胞質免疫反応性ではTCC(7/41)と正常組織(17/46)の間に有意差はなかった(P=0.07)。
我々は、犬TCCに核サバイビンは存在するが、正常な膀胱尿路上皮には存在しないと結論づける。TCC発症と潜在的な治療ターゲットとして核サバイビンの役割を今後の研究で評価するだろう。(Sato訳)
■ヒトの筋繊維芽腫瘍に似た犬における膀胱の炎症性偽腫瘍:8例の報告と比較病理
Inflammatory pseudotumours of the urinary bladder in dogs resembling human myofibroblastic tumours: A report of eight cases and comparative pathology
Vet J. October 2008;0(0):.
Bohme , Ngendahayo , Hamaide , Heimann
犬の膀胱の炎症性筋線維芽腫瘍(IMT)の8症例の臨床、画像、形態、病理組織面について述べる。小型種のメスの老犬がより一般的に罹患していた。血尿が主要臨床症状で、排尿障害や結晶尿に関与しているものも多かった。IMTは単一あるいは複数、ポリープ状、実質性マス、1-7cmのものとして出現した。組織学的に、マスは境界が明らかで、良性増殖性尿路上皮により覆われ、混合炎症が散在的に浸潤していた。細胞は紡錐形、束状、柵状あるいは渦巻状組織で、ビメンチンおよび不定デスミン、アクチン陽性だった。核は球状で、オープンクロマチンおよび顕著な核小体を含む。軽度から中程度の多形性、わずかな有糸分裂活性が存在した。それらの形態学的特徴は、ヒト筋繊維芽炎症性腫瘍に適合する。(Sato訳)
■犬の癌における低酸素の役割
The role of hypoxia in canine cancer
Vet Comp Oncol. December 2008;6(4):213-223. 96 Refs
S. A. Snyder, M. W. Dewhirst, M. L. Hauck
ヒトの腫瘍学では、低酸素腫瘍の存在とそれら腫瘍の問題の特性を明確に証明している。低酸素は全てのタイプの充実性腫瘍の治療で重要な問題であり、治療失敗の一般的な理由である。低酸素は生存性の負の予後指標で、転移疾患の発症に相関する。放射線療法および化学療法の抵抗性は低酸素による可能性がある。腫瘍で認められる低酸素に静的および間欠的な2つの優性なタイプがある。その低酸素の2つのタイプは抵抗性の面で重要である。種々の生理学的因子が低酸素を引き起こし、順に低酸素は遺伝および生理学的変化を誘発する可能性がある。今までの研究は、自然発症の犬の腫瘍に低酸素が存在すると述べられている。低酸素腫瘍の問題特性に関するヒトの文献からの知識と急速な進歩を遂げる獣医腫瘍学の組み合わせから、犬の腫瘍の低酸素の更なる理解が求められている。(Sato訳)
■犬の乳頭腫症のアジスロマイシン療法:前向きランダム化二重盲検プラセボコントロール臨床試験
Azithromycin therapy of papillomatosis in dogs: a prospective, randomized, double-blinded, placebo-controlled clinical trial
Vet Dermatol. May 2008;0(0):.
Bu?rahan Bekir Ya?c?, Kerem Ural, Naci Ocal, Ali Evren Haydardedeo?lu
マクロライド抗生物質サブクラスazalideのアジスロマイシンは、ヒトの乳頭腫の治療で効果的なよく許容する安全な治療オプションである。この研究は、アジスロマイシンで治療した口(n=12)、皮膚乳頭腫(n=5)と診断された種々の犬種の17頭の前向き無作為二重盲検プラセボコントロール試験の臨床、病理組織結果を報告する。乳頭腫は大きさ1-2.7mmの白っぽい、いぼ状、過角化丘疹だった。症例を無作為にアジスロマイシン(n=10)とプラセボ治療群(n=7)に振り分けた。オーナーと調査員にはグループの振り分けを知らせずにおいた。アジスロマイシン(10mg/kg)は24時間おきに10日間経口投与した。臨床評価は同じ調査員が研究を通して行った。アジスロマイシン投与は臨床スコアを有意に低下させ(P<0.001)、プラセボ投与は変化が見られなかった。アジスロマイシン投与群の皮膚病変は10-15日で消失した。プラセボの1例は41日目にその乳頭腫が自然退縮したが、残り6例の病変は50日目でも顕性だった。アジスロマイシン投与犬の乳頭腫症の再発はなかった(追跡8ヶ月)。両群で副作用は見られなかった。結論として、アジスロマイシンは犬の乳頭腫症の安全で効果的な治療であることがあきらかである。(Sato訳)
■3歳齢のパグに見られた珍しい腟の血管腫の形成
Unusual vaginal angiomatous neoformation in a 3-year old pug
Reprod Domest Anim. April 2008;43(2):144-6.
M Beccaglia, M Battocchio, G Sironi, G C Luvoni
開業獣医師から3歳齢の雌のパグ(体重8kg)の腟の出血の評価を依頼された。オーナーの主訴は、約3ヶ月前から始まった慢性の血様腟分泌液で、総体的に食欲はあり、わずかに動きが鈍いということだった。来院2ヶ月前、その病院で避妊手術を受けていたが、術後も腟の出血は持続した。一般検査、全血検査後、生殖管検査を実施し、腟内視鏡で赤い、平滑な明らかに広い領域にわたる腟のマスを認めた。
会陰切開を実施し、外科的診査で、出血部分は2つの鬱血した円柱状のものに隣接し、腟矢状正中に対称な、広い領域に渡る表面がかなり規則的なマスの表面からのものと確認した。そのマスは、薄い皮膜により周囲組織との境界が明瞭で、各円柱状のものは血管枝を持っていた。血管腫過形成の特徴を持つ陰核の異所性および形成異常性会陰海綿体、海綿状血管腫、血管過誤腫を鑑別診断で考慮した。S100免疫染色により認められた小病巣内神経の存在を診断的分類の手助けとして使用し、この珍しい腟血管腫新形成を血管過誤腫と診断した。(Sato訳)
■原発大動脈内膜血管肉腫の犬1例
Primary intimal aortic angiosarcoma in a dog
Vet Pathol. May 2008;45(3):361-4.
R S Ranck, K E Linder, M D Haber, D J Meuten
複数臓器において梗塞のため、血栓塞栓症疾患の合併症を呈する4歳避妊済み雌のジャーマンシェパードにおいて、原発大動脈内膜血管肉腫を診断した。肉眼検査において、大動脈の動脈瘤拡張は、特に大動脈内腔を閉鎖するように内皮表面に付着するもろい、壊死性のマスに関与していた。組織検査において、ふっくらした腫瘍性紡錐細胞が、内腔に突き出たフィブリンと壊死組織片の大量蓄積に合併して、内膜から起こったプラーク様マスを形成していた。腫瘍細胞は大動脈周辺の血管にも浸潤し、いくつかの塞栓に関与する血栓塞栓と思われた。腫瘍細胞は、まれに第VIII因子関連抗原でむらに染まるビメンチンおよびCD31を発現した。腫瘍細胞はサイトケラチンおよび平滑筋アクチンに陰性だった。大動脈血管肉腫はヒトであまりない悪性腫瘍である。これは犬において、内皮起源の免疫組織化学所見を持つ原発性大動脈内膜血管肉腫の最初の記述である。(Sato訳)
■硝子化膵臓腺癌の犬6例
Hyalinizing pancreatic adenocarcinoma in six dogs
Vet Pathol. July 2008;45(4):475-83.
M M Dennis, T D O'Brien, T Wayne, M Kiupel, M Williams, B E Powers
膵臓外分泌腺癌は、犬で特に悪性の腫瘍である。硝子化膵臓腺癌と呼ばれる外分泌膵臓腫瘍の異常な変種の臨床、病理所見を6頭の犬で評価した。顕微鏡検査において、明るい好酸性顆粒状頂端細胞質を持つ上皮細胞の細管および腺房で構成されていた。管状内腔および腫瘍ストロマは、大量の硝子質を含み、アミロイドに似ていた。硝子質はコンゴーレッドに染まらず、腫瘍細胞および硝子質は免疫組織化学的にアミロイドA、免疫グロブリンL鎖(カッパおよびラムダ)、アミリン(膵島アミロイドポリペプチド)、ラミニン、アルファ(1)-アンチトリプシンに陰性だった。
2頭は診断後15ヶ月以上生存し、そのうち1頭は処置せず、診断時に転移の肉眼的所見があった。他の4頭の死亡は、部分膵臓切除後の回復不良、または他の併発致死的状況に関連した結果で起こった。2頭は、膵臓疾患にまれに関連する状況の皮下脂肪織炎と診断された。腫瘍内硝子質の組成および生物学的意義を判定する追加評価が必要である。犬の膵臓外分泌腺癌のグレードおよび組織学的サブタイプと予後を関連付ける研究が、適切な治療を選択できるように必要となる。(Sato訳)
■雄犬における経口投与したリコピンの薬物動態と組織への分布
Pharmacokinetics and tissue distribution of orally administered lycopene in male dogs.
J Nutr. 2003 Sep;133(9):2788-92.
Korytko PJ, Rodvold KA, Crowell JA, Stacewicz-Sapuntzakis M, Diwadkar-Navsariwala V, Bowen PE, Schalch W, Levine BS.
トマトやトマト生産物における優位なカルチノイドであるリコピンの摂取は、前立腺癌のリスクの軽減させることと関連がある。この研究の目的は雄犬にリコピンを経口投与した後、リコピンの薬物動態と組織への分布を測定することだった。体重当り10、30そして50mg/kgのリコピンを各投与量当り2頭の犬に投与した後、平均半減期は36時間で、体重当り30そして50mg/kgで投与後の血中濃度曲線下面積(AUC)は同じだった。反復投与試験において、30 mg/kgで6頭の犬に対して28日間の経口投与したところ、リコピンが785~997nmol/Lの安定した状態の血漿濃度となった。
みかけのクリアランス、分布容積そしてみかけの消失半減期はそれぞれ2.29 L/h/kg、96 L/kg そして 30.5 時間だった。最後の投与1あるいは5日後に犬を安楽死し、リコピン濃度の分析のため23箇所の組織から採材した。リコピン濃度は肝臓、副腎、リンパ節そして腸管組織で最も高かった。肝臓でのリコピン濃度は、処置中止後1日と5日でそれぞれ66と91 nmol/gだった。前立腺のリコピン濃度は投与中止した後(肝臓での濃度が<0.4%)、1日と5日の両方で<0.2 nmol/gだった。70%のトランス・リコピンが投与物質に使われたが、血漿と組織で認められたリコピンのほとんどがシス・リコピンであった。(Dr.Kawano訳)
■獣医腫瘍学の電気化学療法
Electrochemotherapy in Veterinary Oncology
J Vet Intern Med. June 2008;0(0):.
M Cemazar, Y Tamzali, G Sersa, N Tozon, L M Mir, D Miklavcic, R Lowe, J Teissie
電気的透過化処理は、細胞の形質膜の電気的介在再構築を誘発するための電場波動を使用する方法である。電気化学療法は、弱い膜透過性を持つブレオマイシン、またはシスプラチンのような化学療法剤の局所あるいは全身投与と、腫瘍へ電気的波動を直接応用することによる電気的透過化処理を併用する。前臨床試験は、異なる動物モデルおよび様々な腫瘍タイプに対するすばらしい抗腫瘍効果、最低限の毒性、処置の安全性を示している。前臨床試験の結果をもとに、ヒトでの臨床試験では皮膚および皮下の腫瘍における80-85%の奏効を示し、明白な電気化学療法の抗腫瘍効果が認められた。
獣医腫瘍学の臨床研究は、猫、犬、馬で異なる組織タイプの皮膚および皮下腫瘍の治療で、電気化学療法は非常に効果的であると示されている。それらの研究結果は、電気化学療法により治療された腫瘍の約80%持続性奏効も示されている。異なる組織タイプの原発腫瘍を治療した。獣医腫瘍学における電気化学療法は、さらに高い効果が見込まれ、異なる組織タイプの原発、再発孤立、多発性皮膚および皮下腫瘍、あるいは外科手術の補助治療として使用できる。(Sato訳)
■犬の脈絡膜叢腫瘍:56症例(1985~2007)
Choroid Plexus Tumors in 56 Dogs (1985-2007).
J Vet Intern Med. 2008 Aug 5
Westworth DR, Dickinson PJ, Vernau W, Johnson EG, Bollen AW, Kass PH, Sturges BK, Vernau KM, Lecouteur RA, Higgins RJ.
背景:脈絡膜叢腫瘍は犬における全ての原発脳腫瘍のうち約10%でみられる。脈絡膜叢腫瘍の仮診断はMRI、脳脊髄液の分析、あるいは双方を臨床的に活用しても決定されない。
目的:脈絡膜叢腫瘍を患った犬のMRIと脳脊髄液の所見を記録し、腫瘍のグレード間における臨床鑑別し特徴を明らかにすることである。
動物:脈絡膜腫瘍を自然発症した56頭の犬。
方法:回顧的症例検討による。本研究に含める基準は組織学的に脈絡膜腫瘍と確定したものであった。頭部MRIの盲目的審査と大槽穿刺で得られた脳脊髄液分析が行われた。
結果:56症例中36症例では脈絡膜叢癌であり20症例は脈絡膜叢乳頭腫であった。ゴールデンレトリバーが母集団と比較すると過剰であった(期待値の3.7倍、95%信頼区間=2.0~6.7、P<0.0002)。脈絡膜叢癌の脳脊髄液蛋白濃度の中央値(108 mg/dL、範囲:27~380mg/dL)は脈絡膜叢乳頭腫(34 mg/dL、範囲:32-80 mg/dL)よりも有意に高かった(P=.002)。脈絡膜叢癌の症例のみが、脳脊髄液蛋白濃度が80 mg/dLを越えていた。脳脊髄液において細胞学的に悪性所見を認めたものは脈絡膜叢癌の15症例中7症例であった。脈絡膜叢癌症例のみでMRIにより脳室内もしくはクモ膜下内に転移がみられた。
結論と臨床関連:MRI、脳脊髄液の分析、もしくは両方を行うことは脈絡膜叢癌と脈絡膜叢乳頭腫を鑑別するのに有益であり更には、様々な予後因子や治療前の情報が得られるかもしれない。(Dr.UGA訳)
■原発性肋骨軟骨肉腫の一括切除後、胸壁の一段階の再建法のために広背筋筋肉皮弁を用いた犬5例
Use of a latissimus dorsi myocutaneous flap for one-stage reconstruction of the thoracic wall after en bloc resection of primary rib chondrosarcoma in five dogs.
Vet Surg. 2007 ;36(6):587-92.
Halfacree ZJ, Baines SJ, Lipscomb VJ, Grierson J, Summers BA, Brockman DJ.
目的:原発性肋骨軟骨肉腫の一括切除後、広背筋の筋肉皮弁を用いた胸壁の再建について述べるとともに、5例の転帰を報告すること。
研究様式:回顧的研究
症例:原発性肋骨軟骨肉腫の犬(n=5)
方法:カルテ(2003~2005年)によってシグナルメント、臨床ステージ、手術所見、合併症、転帰を調査した。転帰の情報を得るためオーナーと獣医師に連絡をとった。
結果:軟骨肉腫の切除後、気密性の胸壁の閉鎖をするため広背筋筋肉皮弁を行った。皮弁の奇異呼吸運動が起こった。しかしながら、身体検査と血液ガス分析(2例)、換気は適正であった。全ての皮弁は生着し、1例は遠心に表面の皮膚の壊死がおき、2例は小さい創傷離開がおきた。切除マージンに腫瘍細胞があった1例は外科手術後56日で腫瘍に関連死した。切除マージンに腫瘍細胞がない4例において再発は認められなかった。1例は外科手術後10ヵ月で腫瘍とは関係のない理由により安楽死し、3例は生存中で(中央値20ヶ月(18~27ヶ月)の経過観察)、全ては機能的にも外観上も満足の行くものであった。
結論:広背筋の皮弁を用いた腹側胸壁欠損の再建は機能的にも外観上も満足のいくものである。
臨床関連:広背筋の皮弁は腹側胸壁欠損のために一度の手術で再建が可能である。(Dr.HAGI訳)
■猫の鼻部腺房細胞癌
Nasal acinic cell carcinoma in a cat
Vet Pathol. May 2008;45(3):365-8.
D Psalla, C Geigy, M Konar, V Cafe Marcal, A Oevermann
この症例報告は、猫における鼻部腺房細胞癌の臨床、MRI関連、病理特性を述べる。16歳の去勢済みオス3.8kg、オリエンタルショートヘアーが、数ヶ月続くくしゃみ、咳、鼻汁の病歴で来院した。MRIによる評価で、左鼻腔を満たす不均一な腔占領病変がわかり、病理組織検査で鼻腔小唾液腺から起きた腺房細胞癌と診断した。腺房細胞癌は獣医療でまれな腫瘍である。その腫瘍は唾液腺の漿液細胞に似た細胞で主に構成され、大または小唾液腺から起こる。臨床医および病理学者は鼻腔副鼻腔における腺房細胞癌の発生を知っておくべきで、また猫の鼻疾患の鑑別診断にその腫瘍を含めるべきである。(Sato訳)
■犬の皮下、筋肉内血管肉腫に対するドキソルビシン投与による治療評価:21症例
Evaluation of outcome associated with subcutaneous and intramuscular hemangiosarcoma treated with adjuvant doxorubicin in dogs: 21 cases (2001-2006).
Bulakowski EJ, Philibert JC, Siegel S, Clifford CA, Risbon R, Zivin K, Cronin KL.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Jul 1;233(1):122-8
目的:犬の皮下、筋肉内に発症した血管肉腫に対し、ドキソルビシンを投与したときの治療評価をすること。
統計:回顧的症例検討。
動物:21症例。
方法:組織学的に血管肉腫と確定しており、初診時において遠隔転移がみられず、さらに局所の腫瘍について適切にコントロールされている犬について調査した。年齢、性別、治療回数、治療間隔、放射線治療、そしてサイクロフォスファマイド、又はデラコキシブの併用の有無が、無腫瘍期間もしくは生存期間に関連するか評価した。ドキソルビシンによる3-6サイクル治療が計画された。無腫瘍期間は根治的切除時から局所再発時、遠隔転移時までとした。生存期間は無腫瘍期間の始まりから死亡時までとした。
結果:17症例が皮下、4症例が筋肉内であった。平均年齢は9歳。平均体重は31.1kg。5症例が補助放射線治療を行った。皮下腫瘍の無腫瘍期間中央値は1553日(95%信頼区間は469日から最終的には評価できず)であった。筋肉内腫瘍の無腫瘍期間中央値は265.5日(95%信頼区間は123~301日)であった。皮下腫瘍の中央生存期間は1189日(95%信頼区間は596日から最終的には評価できず)であった。筋肉内腫瘍の中央生存期間は272.5日(95%信頼期間は123~355日)であった。皮下腫瘍、より若い症例(9歳以下)では、無腫瘍期間と生存期間の延長と関連していた。放射線治療を行っていない皮下腫瘍の症例は無腫瘍期間が長かった。
結論と臨床関連:適切な局所療法と補助的にドキソルビンを投与した場合、皮下の血管肉腫は筋肉内の血管肉腫に比べるとより良好な結果が得られた。(Dr.UGA訳)
■切除不可能な甲状腺癌の犬39例におけるヨウ化ナトリウムI131による治療(1990~2003年)
Sodium iodide I 131 treatment of dogs with nonresectable thyroid tumors: 39 cases (1990-2003).
J Am Vet Med Assoc. 2006 Aug 15;229(4):542-8.
Turrel JM, McEntee MC, Burke BP, Page RL.
目的:ヨウ化ナトリウムI131の治療をうけた切除不可能な甲状腺癌の犬における転帰を明らかにするとともに、転帰に関連した要因を特定すること。
様式:回顧的症例検討。39例の犬。
方法:甲状腺腫瘍の推定診断又は確定診断が細胞学的又は組織学的検査とシンチグラフィーの間の過テクネチウム酸ナトリウムTc99mの異常な蓄積に基づいてつけられ、ヨウ化ナトリウム I131で治療した。頚部甲状腺腫瘍の症例は131I治療3~6週後に評価され、縮小し可能であれば残存腫瘍を切除した。
結果:131I治療開始時、32例は単一の腫瘤で7例は転移がみられた。21例は甲状腺機能亢進症、16例は甲状腺機能正常、2例は甲状腺機能低下症であった。局所又はリンパ節転移のある腫瘍(つまり、ステージⅡとⅢ)の生存期間中央値(839日)は転移があった犬の生存期間中央値(366日)より有意に長かった。腫瘍の場所(頚部対異所性)、ヨウ化ナトリウムI131の放射線量、年齢、体重、治療(131I治療単独 対131I治療に続いて外科療法を行った症例),131I治療を始める前の血清T4濃度は生存期間において明らかな有意差はみられなかった。治療後3ヶ月以内に3例の犬で放射性ヨウ素に関連した骨髄抑制で死亡したが、副作用の進行に関連した明確な要因は確認されなかった。
結論と臨床関連:結果として131I療法は、治療前の血清サイロキシンの濃度に関係なく、切除不能な甲状腺腫瘍の犬の生存期間を延長させるかもしれない。131I療法を行った犬においては骨髄抑制の徴候をモニターすべきである。 (Dr.HAGI訳)
■2頭の若い猫に見られたヒト乳頭状汗管嚢胞腺腫に似た汗腺過誤腫
Sweat gland hamartoma resembling human syringocystadenoma papilliferum in two young cats
Vet Dermatol. December 2007;18(6):451-5.
Marianne Helene Heimann, Placide Ngendahayo
乳頭状汗管嚢胞腺腫、大部分は汗腺の過誤腫だけでなく毛包漏斗部構成部分も2頭の若い猫の体幹や頭部で述べられている。臨床的に病変は、不正だがはっきりと区別される境界があり、荒く色素沈着過度な表面を特徴とする皮膚のプラークだった。1例は完全な外科切除で治癒した。組織学的にその病変は、表在真皮に限られ、増殖性汗腺の合体ユニットから成っていた。増殖は管状または乳頭状で、拡張肥大した毛包漏斗部または無毛部内に開口する胎児表皮であるかもしれない。上皮の3タイプに漏斗部、管、分泌上皮を伴う毛包-汗腺の繰り返される形成が観察された。その腺はアルファサイトケラチン8に陽性に反応し、プラズマ細胞、リンパ球、好中球浸潤を伴う繊維組織により支持された。ヒトと同様、この病変は、過誤腫-神経-タイプカテゴリー内に分類されるかもしれない。(Sato訳)
■犬における部分的下顎切除後のrhBMP-2を使用した5cm欠損部の即時下顎骨再建
Immediate mandibular reconstruction of a 5 cm defect using rhBMP-2 after partial mandibulectomy in a dog
Vet Surg. December 2007;36(8):752-9.
Daniel I Spector, John H Keating, Randy J Boudrieau
目的:部分的下顎骨切除および合成グラフトと架橋プレート固定を用いた即時外科的再建による下顎骨の複雑性歯牙腫の治療法を報告する
研究構成:臨床症例報告
動物:4歳去勢済みオスのコッカスパニエル
方法:複雑性歯牙腫の完全切除後、左下顎骨の即時再建(5cm隙間)を実施した。マスの完全切除直前にロッキングプレート固定を行った。全ての異常組織を含む部分的下顎切除後、固定を除去し、咬合位に達するよう再建した。出来た下顎欠損は、ヒドロキシアパタイト/トリカルシウムリン酸顆粒を含む吸収性コラーゲンスポンジ(圧迫抵抗性基質(CRM))で送達する組み替えヒト骨形成蛋白-2(rhBMP-2)を満たした。
結果:新規骨増生が3ヶ月目のエックス線検査および触診で見られた。骨のリモデリングが26ヶ月までの追跡検査で認められた。7ヶ月目のグラフト部分のバイオプシーで採取した骨は、強い新規骨形成で、持続性リモデリングの所見があった。マイナーな合併症(頻回の口内プレート暴露)は、術後遭遇するもののみで、容易に解消した。
結論:骨誘導因子(rhBMP-2/CRM)は、大きな下顎骨欠損の即時再建におけるグラフト代用として使用し成功した。
臨床関連:グラフトの代用として骨誘導材による大きな下顎骨欠損の即時再建は、犬の部分的下顎骨切除または良性歯原性腫瘍に対する放射線療法の利用可能な代替療法と思われる。(Sato訳)
■犬における腫瘤性間質パターンの鮮鋭度に対する2方向と3方向の胸部X線写真の比較
Comparison of two- vs. three-view thoracic radiographic studies on conspicuity of structured interstitial patterns in dogs.
Vet Radiol Ultrasound. 2006 Oct-Nov;47(6):542-5.
Ober CP, Barber D.
3方向の胸部X線撮影はしばしば肺転移の動物を評価するために使用される。3方向は2方向より巣状性肺病変をより繊細に検出できると報告されているが、時間および手間が増し、動物と撮影者の被ばく量が増加する。この研究では2方向と3方向のX線撮影における病変の検出を比較することにより診断が変わるか検討した。犬の胸部の100例の3方向のX線写真を無作為に抽出し、右ラテラルとVD像、左ラテラルとVD像、左右ラテラル像、3方向という4つの評価方法で再検討した。腫瘤性間質性肺病変の有無を読影し、視覚的アナログ尺度を用いて記録を行った。
2方向群と3方向群間には85~88%の一致がみられ、κ統計値は0.698 から0.758であった。診断の確実性には差異はみられなかったものの、各々の群の中で陰性と診断されるより陽性と診断された方がより確実性があった。3方向写真から1方向を減らしたときには、12~15%において診断が変わることから、肺転移を含む腫瘤性間質性肺病変の可能性がある症例を評価する時に3方向で撮影し続けるべきだということが示唆される。(Dr.HAGI訳)
■犬の精巣腫瘍:232頭の研究
Canine Testicular Tumours: a Study on 232 Dogs
J Comp Pathol. February 2008;0(0):.
V Grieco, E Riccardi, G F Greppi, F Teruzzi, V Iermano, M Finazzi
この研究の目的は、過去の研究で(1962年)報告された罹患率16%である犬の精巣腫瘍の最新の推定値を求めることだった。232頭の検死時に採取した両精巣の組織学的検査で、62頭(27%)に1つ以上の精巣腫瘍を認め、認めた腫瘍総数は110個だった。それらのうち55個は間質細胞腫、46個は精上皮腫、9個はセルトリ細胞腫だった。その結果は、人の報告と同じく、犬の精巣膿瘍は過去40年で増加していることを示唆する。更なる研究で、環境汚染の原因となりえる役割を調査すべきである。(Sato訳)
■犬の甲状腺癌における放射性ヨード療法(131I)
Radioiodide (131I) therapy for the treatment of canine thyroid carcinoma.
Aust Vet J. 2005 Apr;83(4):208-14.
Worth AJ, Zuber RM, Hocking M.
目的:犬の甲状腺癌に対し放射線療法単独と外科手術の補助療法としての放射性ヨード療法(131I)の効果を評価すること。
様式:シドニーのGladesville Veterinary Hospital Nuclear Medicine Serviceで1988年8月から2001年12月に行った症例の回顧的分析。
症例の詳細:甲状腺癌65例の犬の治療法と転帰を分析した。43例の犬が放射性ヨードによる治療を受けており、そのうち32例は単独、11例は外科手術の補助療法として行った。放射性同位元素による治療はヨード131を用いて1回に555~1850 MBqの幅で照射し、これを1から3回行った。犬は治療法によって無治療、外科単独、外科+放射性ヨード、放射性ヨード単独に群分けして分析を行った。治療様式、ヨード131の投与量、臨床ステージ、年齢について、有効性もしくは予測値それぞれを、生存期間をもとに分析した。
結果:放射性ヨードによる治療が外科切除の補助療法として用いられる際、中央生存期間は34ヶ月であった。放射性ヨード単独の犬の中央生存期間は30ヶ月であった。治療を受けていない犬の中央生存期間はたったの3ヶ月であった。ログランク統計分析において治療法は生存期間と相関したものの、疾病の臨床ステージとは相関が認められなかった。
結論:著者らは犬の浸潤性のある甲状腺癌において、ヨード131による治療は、単独、外科療法の補助療法ともに生存期間を延長させる効果的な治療法であった。不完全切除例に対してヨード131を投与したとしても生存期間を延長させないかもしれない。しかし、可動性のある甲状腺癌の治療としては、根治目的の外科切除を第一選択として推奨するべきである。放射性ヨードによる治療は、転移がみられる又は周囲に浸潤している場合、又は外科切除を試みたが完全切除ができなかった症例のように、外科切除のみで根治が期待できないと考えられる場合には推奨できる。(Dr.HAGI訳)
■化学療法剤の血管外漏出の治療に対しヒアルロニダーゼを使用した犬6例
Use of hyaluronidase for the treatment of extravasation of chemotherapeutic agents in six dogs
J Am Vet Med Assoc. November 2002;221(10):1437-40, 1419-20.
Enrico P Spugnini
6頭の犬は抗がん剤のIV投与中に血管周囲に漏出を起こした。漏出部位に300ユニットのヒアルロニダーゼを局所注射する治療を漏出後に開始した。組織内の毒作用の症状が十分解消するまで注射を毎週繰り返した。全ての犬は6週以内に回復し、漏出部位の残存線維症もほとんど最小限と考えられた。多くの化学療法剤は、化学療法のサイクル中に血管外漏出すると重度細胞傷害性反応を引き起こし、結果潰瘍を伴う組織壊死、続く数週間で皮膚の脱落を起こす。外科処置および皮膚移植は、治癒するのにしばしば必要となる。血管外漏出の続発症は、化学療法の中止あるいは動物の安楽死という結果になるかもしれない。ヒアルロニダーゼは、種々の化学療法剤の血管外漏出の副作用の安全な治療法と思われ、皮膚毒性の程度を軽くするのに効果的に使用できるかもしれない。(Sato訳)
■猫における2種類のドキソルビシン投与における副作用の比較
A comparison of toxicity of two dosing schemes for doxorubicin in the cat.
J Feline Med Surg. 2008 Apr 21. [Epub ahead of print]
Reiman RA, Mauldin GE, Neal Mauldin G.
ドキソルビシンは人や猫の双方の様々な腫瘍において一般的に使用され、効果的である。しかしながら、猫におけるこの薬剤の使用には腎毒性、骨髄抑制、食欲不振、体重減少など様々な副作用を伴う。この研究の目的は腫瘍を持つ猫に対してドキソルビシンの投与量を2種類とし、それぞれの毒性を比較することであった。
ドキソルビシンをグループAの猫は1mg/kg、グループBの猫は25mg/m2で投与すると共に22ml/kgの乳酸加リンゲルを皮下点滴した。副作用は検査データ、身体検査、ヒストリーを数値によりグレード化して両グループを比較した。
全ての症例が同時期にCBCを行っていないという問題はあるものの、好中球数がグループBの猫で有意に低くなっていた(P</=0.001)。臨床的な異常もしくは検査値の異常における種類、頻度、重症度についてグループ間で有意差は認められず、どちらのグループ間でも敗血症も認められなかった。
本研究の結果より、猫にドキソルビシンをより高用量で投与しても副作用のリスクの増大と関連が無いかもしれない。更なる研究により猫におけるドキソルビシンの最適な用量を決定する必要性が示唆された。(Dr.UGA訳)
■犬の脾臓以外の血管肉腫に対する姑息的放射線療法の効果
Effects of palliative radiation therapy on nonsplenic hemangiosarcoma in dogs
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Jul-Aug;43(4):187-92.
Kim R Hillers, Susan E Lana, Chana R Fuller, Susan M Larue
組織学的に脾臓以外の血管肉腫と確認し、姑息的放射線療法で治療した犬20頭の医療記録を、腫瘍反応、生存期間に影響する因子を評価するために再調査した。姑息的放射線療法を受けた犬のカプランメイヤー生存期間中央値は、95日(範囲6-500日)だった。腫瘍の大きさの主観的縮小は14日に見られ、4頭は完全寛解した。腫瘍の位置は、生存性の有意な一変量予後因子で、後腹膜腔にマスを持つ犬は、長期生存期間を示した。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫の外科的治療に対する予後因子:75症例(1986-1996)
Prognostic Factors for Surgical Treatment of Soft-Tissue Sarcomas in Dogs: 75 Cases (1986-1996)
J Am Vet Med Assoc 211[9]:1147-1151 Nov 1'97 Retrospective Study 27 Refs
Charles A. Kuntz, DVM, MS; William S. Dernell, DVM, MS; Barbara E. Powers, DVM, PhD; Chad Devitt, DVM, MS; Rodney C. Straw, BVSc; Stephen J. Withrow, DVM
目的:犬における軟部組織肉腫の治療で外科手術結果を判定することと、結果の予想に使用できる予後変動値を確認すること
構成:遡及症例シリーズ
動物:外科的治療のみを行った軟部組織肉腫の犬
方法:臨床関連データに対する記録を調査した。組織学的サンプルを再調査した。身体検査、依頼獣医師またはオーナーとの電話による対話により追跡情報を入手した。
結果:体幹および四肢に軟部組織肉腫を持つ75頭を確認した。年齢中央値は10.6歳だった。悪性末梢神経鞘腫は、他の腫瘍より有意にグレードが低かった。腫瘍の局所再発は75頭中11頭(15%)だった。手術マージンに腫瘍細胞がないという評価は、局所再発を予想するものだった。転移疾患は75頭中13頭(17%)で発生した。腫瘍分裂速度は、転移の発生を予想するものだった。75頭中25頭(33%)は腫瘍関連の原因で死亡した。腫瘍壊死の比率および腫瘍分裂速度は生存期間を予測するものだった。生存期間中央値は1416日だった。
臨床関連:低局所再発率、長い生存期間中央値をもとに、広範囲腫瘍マージン切除または根治手術は体幹および四肢の軟部組織肉腫の管理に有効な方法であると思われる。予後に対する組織学的特性の分析は、術前バイオプシーの使用が支持された。外科的マージンは評価すべきで、積極的な外科手術の早期介入が犬の軟部組織肉腫の管理に指示される。(Sato訳)
■猫のワクチン接種部位肉腫の予後因子分析:57症例
Analysis of prognostic factors associated with injection-site sarcomas in cats: 57 cases (2001-2007)
J Am Vet Med Assoc. 2008 Apr 15;232(8):1193-9
Romanelli G, Marconato L, Olivero D, Massari F, Zini E.
目的:猫のワクチン接種部位肉腫の予後因子を決定すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:57頭のワクチン接種部位肉腫の猫。
方法:性別、年齢、腫瘍の解剖学的位置、腫瘍の大きさ、組織学的悪性度、初回腫瘍切除と再発腫瘍切除、腫瘍切除単独治療と切除に加えて補助療法を行った場合、局所再発、遠隔転移の進行と予測される生存期間(つまり、腫瘍切除時から死亡時まで)について猫の医療記録から検討した。
結果:単変量分析において、局所再発と遠隔転移は生存期間と有意に関連性がみられた。多変量分析において、遠隔転移は有意な予後因子とされた。組織学的悪性度は遠隔転移と関連しており、グレード3の腫瘍の猫ではグレード1やグレード2の猫よりも遠隔転移が有意に起こり易かった。ワクチン発生部位肉腫の局所再発と関連した予後因子はみられなかった。
結論と臨床関連:本疾患の一連の流れにおいて、後に起こるかもしれない遠隔転移への進行は生存期間に対する予後因子の一つであった。また、ワクチン接種部位肉腫の組織学的グレード3の猫において、高率でみられる遠隔転移を防ぐための化学療法ついて検討する必要がある。(Dr.UGA訳)
■犬の広範囲にわたる舌切除:症例の経過と分類体系の提案
Major glossectomy in dogs: a case series and proposed classification system.
J Am Anim Hosp Assoc. 2004 Jul-Aug;40(4):331-7.
Dvorak LD, Beaver DP, Ellison GW, Bellah JR, Mann FA, Henry CJ.
舌の広範囲にわたる切除は、術後の舌機能低下を懸念し動物では一般的に行われていない。犬5例の舌切除後の採食機能とQOLを確認するため、回顧的調査を行った。舌切除後、身体検査は1週から8年後に、オーナーへのインタビューは10ヵ月から8年後に行った。5例の犬全てで、結果は許容範囲であり機能を果たしていた。これら5例から、舌切除は犬では容認できるものであり、浸潤性の強い舌腫瘍および舌が再建できない状況では、実現可能な治療オプションとなるであろう。(Dr.HAGI訳)
■犬の特発性粘膜陰茎扁平乳頭腫
Idiopathic mucosal penile squamous papillomas in dogs
Vet Dermatol. December 2007;18(6):439-43.
Luisa Cornegliani, Antonella Vercelli, Francesca Abramo
犬の陰茎粘膜を侵す新しい乳頭腫の臨床的存在を述べる。年齢6-13歳、11頭の異なる種類のオス犬が、生殖器マスと時折見られる血尿を呈した。麻酔下の包皮の外科的切開で、単一有茎の柔らかくピンク-赤色カリフラワー様マスが陰茎粘膜から起こり、2-8cmの径のものを認めた。
全ての例で、切除マスの組織病理検査は、全層の指状拡張、病変の辺縁に斜めに向かう細長い乳頭間隆起伴う正常な上皮分化を示した。気球状変性または核内好塩基性封入体の所見は見つからなかった。免疫化学およびPCR法でパピローマウイルスは明らかでなかった。乳頭腫病変の組織学的WHO分類に従い、マスのウイルス起源の所見欠如により特発性粘膜陰茎扁平乳頭腫と同定した。尿の問題は外科切除後改善し、ゆえに血尿は乳頭マスの潰瘍による二次的なものと考えられた。(Sato訳)
■骨軟骨腫症の猫における胸壁欠損の再建に対する広背筋および外腹斜筋の使用
Use of latissimus dorsi and abdominal external oblique muscle for reconstruction of a thoracic wall defect in a cat with feline osteochondromatosis
J Feline Med Surg. October 2007;0(0):.
Gabriele Gradner, Herbert Weissenbock, Sibylle Kneissl, Viviane Benetka, Gilles Dupre
4歳オスの去勢済み猫ヨーロッパ短毛種が、右尾側胸郭の触知可能な実質性マスで来院した。胸部のラテラル、腹背エックス線写真で、第13肋骨遠位から起こる4x3x2cm大きな膨張性、エックス線不透過性のマスが見られた。組織病理学的に猫骨軟骨腫症と確認された腫瘍切除後、横隔膜、大網、外腹斜筋および広背筋を欠損の再建に使用した。猫骨軟骨腫症はレトロウイルス、例えば猫白血病ウイルスにより誘発し、その猫の検査は陽性だった。そのような腫瘍は、骨肉腫に変わる傾向があるので、待機的理由により取り除いた。外科切除後6ヶ月で猫の臨床症状の再発は見られていない。(Sato訳)
■猫と犬の胸腺腫切除の結果:20症例(1984-2005)
Results of excision of thymoma in cats and dogs: 20 cases (1984-2005)
J Am Vet Med Assoc. 2008 Apr 15;232(8):1186-92.
Zitz JC, Birchard SJ, Couto GC, Samii VF, Weisbrode SE, Young GS.
目的:犬と猫の侵襲性、非侵襲性の胸腺腫に対し切除を行ない、長期間追跡調査情報を提供すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:胸腺腫の9例の猫と11例の犬。
方法:医療記録を調べた。以下の要因が予後に影響するものとして分析された。犬もしくは猫の年齢、腫瘍の侵襲度、組織学的診断における腫瘤のリンパ球の割合(リンパ球の構成率)、そして腫瘤の有糸分裂指数。
結果:全ての患者が腫瘍切除のみ行われた。猫における中央生存期間は1825日であり、1年生存率は89%、3年生存率は74%であった。犬における中央生存期間は790日であり、1年生存率は64%、3年生存率は42%であった。胸腺腫の再発が2例の猫と1例の犬でみられ、それぞれに再手術が行われ以降の生存期間は初回の手術より5年、3年、そして4年であった。腫瘤のリンパ球構成率が生存率に有意に関連した唯一の要因であった。リンパ球の割合が高い症例がより長期生存した。
結論と臨床関連:今回の研究の結果より、胸腺腫の猫と犬の多くが切除後の経過が良好であることが示された。侵襲性の腫瘤の猫や犬でさえ手術により生存し、そして胸腺腫が再発したもの、腫瘍随伴症候群が現れた少数の猫と犬も長期間経過した後であった。腫瘤切除は胸腺腫を患う犬や猫における治療オプションとして効果的であるとされた。(Dr.UGA訳)
■癌治療としてのビタミンCの静脈内投与:3症例
Intravenously administered vitamin C as cancer therapy: three cases.
CMAJ. 2006 Mar 28;174(7):937-42.
Padayatty SJ, Riordan HD, Hewitt SM, Katz A, Hoffer LJ, Levine M.
静脈内と経口投与によって高用量のビタミンCを投与する早期の臨床実験で、末期癌患者の兆候を改善し、寿命を延ばすかもしれないことが示された。経口ビタミンC療法の二重盲検プラセボ対照試験では有効性は示されなかった。最近のエビデンスは、ビタミンCの最大許容投与量(18 g/d)の経口投与は、220 micromol/Lの最大血漿濃度しかもたらさないが、同じ量の静脈内投与では約25倍の血漿濃度を起こす。より高用量(50-100 g) の静脈内投与では約14,000 micromol/Lの血漿濃度となるかもしれない。1000 micromol/L以上の濃度で、試験管内ではビタミンCはいくつかの腫瘍細胞に毒性をもたらすが、正常細胞には毒性をもたらさない。
我々は高用量の静脈内ビタミンC療法を受けた後、予想外に長期生存した患者で、組織病理学的検証で確定診断した進行癌の十分立証された3症例を見つけた。National Cancer Institute (NCI) Best Case Series guidelinesに従い各症例の臨床的詳細を検査した。診断あるいは治療を知らないNCIの病理学者に腫瘍病理学を検証してもらった。最近の臨床薬物動態学的所見と抗腫瘍メカニズムの試験管内でのエビデンスから、これらの症例報告は癌治療における高用量の静脈内ビタミンC療法の役割を再評価すべきであるということ示している。(Dr.Kawano訳)
■鼻平面および前上顎骨切除後の美的吻側鼻再建:2例の手技と結果
Cosmetic rostral nasal reconstruction after nasal planum and premaxilla resection: technique and results in two dogs
Vet Surg. October 2007;36(7):669-74.
Javier Gallegos, Chad W Schmiedt, Jonathan F McAnulty
目的:鼻平面および前上顎骨切除後の新しい再建方法を述べる
研究構成:症例報告
動物:鼻平面の扁平上皮癌(SCC)の犬2頭
方法:9歳避妊済みラブラドールレトリバー(犬1)と11歳の去勢済みゴールデンレトリバー(犬2)の局所侵襲性SCCの治療で、鼻平面および前上顎骨の切除を行った。鼻平面を元通りの再建は、両側口唇粘膜皮膚回転-前位縫合フラップの非皮毛色素沈着縁の使用を基本とした。
結果:鼻平面を元通りに作成する前上顎の再建は、合併症もなく創傷治癒し、美的改善を見せた。術後1290日(犬1)、210日(犬2)目の腫瘍再発はない。
結論:鼻平面を元通りに再建することは、2例で合併症もなく成功し、オーナーも美的面で満足していた。
臨床関連:この方法は外科的美的結果において有意な進歩を示し、術後合併症を減ずる可能性があると思われ、前上顎骨および鼻平面切除後、鼻部再建を必要とする犬に考慮すべきである。(Sato訳)
■結腸尾側腫瘤および直腸腫瘤を患った6例の犬と1例の猫における腫瘤切除のための両側恥骨、坐骨骨切り術
Bilateral pubic and ischial osteotomy for surgical management of caudal colonic and rectal masses in six dogs and a cat.
J Am Vet Med Assoc. 2008 Apr 1;232(7):1016-20.
Yoon HY, Mann FA.
症例紹介:結腸尾側と直腸に腫瘤が確認された6例の犬と1例の猫について検討を行った。
臨床所見:腫瘍は結腸尾側部(n=2)、結腸直腸接合部(n=2)、そして直腸(n=3)で確認された。
治療と結果:7例全てにおいて、直腸および腫瘍を露出するために両側恥骨、坐骨の骨切り術が行われた。腫瘤は切除可能であり、7例全てが術後3日以内で正常歩行となった。骨切り術に関連した合併症はみられなかった。
臨床関連:犬や猫の骨盤腔内腫瘍切除に関して、両側恥骨、坐骨骨切り術により十分な視野を確保できるとともに合併症を最小限に抑えることが可能であった。(Dr.UGA訳)
■自然発生腫瘍の犬2頭に見られたヒドロキシ尿素のまれな皮膚毒性
Unusual dermatological toxicity of hydroxyurea in two dogs with spontaneously occurring tumours
J Small Anim Pract. July 2007;0(0):.
L Marconato, U Bonfanti, I Fileccia
ヒドロキシ尿素は過好酸性症候群、肥満細胞腫、多くの骨髄増殖性疾患の治療に使用される化学療法剤である。通常良く許容するが、報告される副作用には、骨髄抑制、胃腸合併症、非常にまれに皮膚毒性がある。我々は、長期ヒドロキシ尿素を投与した2頭の犬に見られた、全ての足のいくつかの爪の脱落症のまれな発現を報告する。爪病変の治癒には、1頭で治療の中止を必要とし、1頭は投与量の減量が必要で、爪障害とヒドロキシ尿素投与の間の密接な関連を支持した。この症例報告の目的は、長期ヒドロキシ尿素投与に関する皮膚毒性の臨床的意識を広めるためである。(Sato訳)
■低信号域MRIにより診断された50頭の鼻腔腫瘍である犬の回顧的研究
Retrospective review of 50 canine nasal tumours evaluated by low-field magnetic resonance imaging.
J Small Anim Pract. 2008 Mar 26 [Epub ahead of print]
目的:低信号域MRIは獣医学領域における副鼻腔の病気の診断時、しばしば用いられるようになっている。今回の回顧的研究の目的は犬の鼻腔腫瘍の低信号域MRIでの画像を検出し特徴づけることであった。
方法:クイーン獣医大学病院のデータベース(2001~2005)から鼻腔腫瘍によりMRIを撮影した犬が調べられた。組織学的診断により鼻腔腫瘍とされた50症例が検出された。鼻腔腫瘍の外見と浸潤度が隣接した解剖学的構造との関わりと同様にチェックリストに対して調べられた。
結果:最も一般的なMRIの所見は次のものであった。(1)鼻甲介や篩骨甲介を破壊し軟部組織腫瘤に置換(症例の98%)、(2)鼻中隔の破壊(症例の68%)、(3)前頭洞の分泌物の残存(腫瘤の有無は問わず、症例の62%)、(4)鼻骨と前頭骨の破壊(症例の52%)。低信号域MRIは残存分泌物、壊死組織と腫瘍組織の鑑別を可能にした。低信号域MRIでは腫瘍の上顎窩洞、尾窩洞、鼻咽頭、隣接骨、頭蓋窩への浸潤の評価はできなかった。腫瘍はしばしば尾側方向の前頭洞や鼻咽頭へ浸潤していたが、おそらく最も重要なのは尾窩洞に浸潤していたことであった。腫瘍の頭蓋窩への浸潤は一般的ではなく(16%)、これらの症例の3頭にのみ神経学的兆候がみられた。しかしながら、症例の54%に巣状病変が髄膜(硬膜)に強くみられ、この意義ははっきりとしていない。肉腫と癌との間での腫瘍のシグナル強度の有意な違い(P<0.05)はみられた。
臨床重要性:低信号域MRIは鼻腔腫瘍における浸潤度の診断の確定には有用である。(Dr.UGA訳)
■犬の小脳軟膜癌腫症
Cerebellar leptomeningeal carcinomatosis in a dog
J Small Anim Pract. June 2007;0(0):.
M T Mandara, F Rossi, E Lepri, G Angeli
発作と急速に進行する昏迷を呈すジャーマンシェパードの老犬で、未分化固形乳癌からの血行性播種による二次的な瀰漫性小脳軟膜癌腫症を診断した。シングルCT小脳スキャンで、腔占有病変がない血管障害に関係すると思われる通常の均質なデンシティーを認めた。検死時、結節性のマスが乳腺、肺、気管気管支リンパ節、副腎に認められた。小脳軟膜は、瀰漫性血液滲出に侵されていた。組織的に、細胞質ケラチン陽性、ビメンチン陰性免疫反応を伴う未分化細胞を特徴とする固形乳腺腫瘍を示した。腫瘍は、肺、気管気管支リンパ節、副腎に広がっていた。小脳軟膜は、サイトケラチン陽性腫瘍細胞が散在的に浸潤していた。CTスキャンで髄膜癌腫症の所見が得られなかったが、小脳血管障害が存在したかもしれないと考えられた。これはその後神経病理調査により確認され、小脳髄膜癌腫症に関与すると思われた。(Sato訳)
■脾臓腫瘤と腹腔内出血で輸血を必要とする貧血の犬における血管肉腫の割合
Prevalence of hemangiosarcoma in anemic dogs with a splenic mass and
hemoperitoneum requiring a transfusion: 71 cases (2003-2005)
J Am Vet Med Assoc 232:553-558(2008)
Tara N Hammond, S Anna Pesillo-Crosby
目的:脾臓腫瘤と腹腔内出血で輸血を必要とする貧血の犬における脾臓血管肉腫の発生率を求めるとともに、脾臓血管肉腫と他の脾臓腫瘤を初診時に鑑別するための因子を決定すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:71頭の犬。
方法:2003年から2005年の間に、医療記録、血液バンク記録、そして脾臓腫瘤の組織学的検査、腹腔内出血により輸血を要したものについて調査を行った。赤血球輸血をした例についても、脾臓摘出により組織学的診断され本研究に含めた。
結果:犬のシグナルメントは他の報告と同様のものであった。71頭中54頭(76.1%)で脾臓の悪性腫瘍が確認され、71頭中17頭(23.9%)では良性病変であった。54頭の脾臓の悪性腫瘍のうち、50頭(92.6%[全体の70.4%])が脾臓血管肉腫であった。また、血管肉腫では初診時に総タンパクと血小板数が有意に低く、腹腔内出血は脾臓血管肉腫の診断と有意に関連性がみられた。
結論と臨床関連:今回の母集団における報告は、脾臓血管肉腫である割合は他の報告よりも高いものであった。この度の報告における脾臓血管肉腫の犬は、他の脾臓腫瘤を発症した犬の値と比較すると初診時の総タンパクと血小板数が有意に低かった。しかし、これ以外に鑑別に有用な他の因子はみられなかった。治療を進めるかどうかについて、脾臓血管肉腫の発生確率と脾臓血管肉腫が予後不良であることを踏まえることが重要である。(Dr.UGA訳)
■犬の横隔膜の悪性末梢神経鞘腫瘍
Malignant peripheral nerve sheath tumor of the diaphragm in a dog
J Am Anim Hosp Assoc. 2008 Jan-Feb;44(1):36-40.
Coretta C Patterson, Ruby L Perry, Barbara Steficek
11歳の去勢済のグレイハウンドがミシガン州立大学の獣医教育病院に胸部腫瘤の外科切除のために紹介された。胸部レントゲンより左尾胸郭に横隔膜と重なる境界明瞭な腫瘤が確認された。超音波とCT検査によって横隔膜の左片側より腫瘤が発生していることが確認された。腫瘤は手術により切除され病理組織検査を実施した。病理学的検査と免疫組織学的検査により悪性末梢神経鞘腫瘍の一種であることが診断された。(Dr.UGA訳)
■猫の原発腎臓腫瘍:19例(1992~1998)
Primary renal tumours in cats: 19 cases (1992-1998).
J Feline Med Surg. 1999 Sep;1(3):165-70.
Henry CJ, Turnquist SE, Smith A, Graham JC, Thamm DH, O'Brien M, Clifford CA.
4ヶ所の獣医大学と1ヶ所の私的二次診療動物病院のデーターベースより1992年1月から1998年4月までに原発性腎臓腫瘍と診断された20例が提供された。これらの症例19例は原発性腎臓腫瘍で、リンパ腫は除外した。20例の組織学的再調査をした症例のうち診断は8例で修正された。13例は腎臓の腺癌(11例は管状腺癌、2例は管状乳頭状腺癌)、3例は移行上皮癌、1例は悪性腎芽腫、1例は血管肉腫、1例は腺腫であった。血管肉腫は我々の知る限りでは猫の原発性腫瘍の初めての症例報告である。ほとんどの猫では食欲不振や体重減少のような非特異的な臨床徴候を呈していた。1例の猫は腫瘍関連の多血症を呈し我々の知る限り今まで報告されたことがない。完全な病期分類を実施した猫の転移率は64%で、移行上皮癌の場合には100%であった。(Dr.HAGI訳)
■頸部脊髄の奇形腫の犬の1例
Teratoma in the cervical spinal cord of a dog
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Sep-Oct;43(5):292-7.
Michael A Wong, Christopher L Mariani, Joshua R Powe, Roger M Clemmons
11歳、避妊メス、ジャイアントシュナウザーが慢性進行性四肢麻痺のため来院した。画像診断により椎間板突出が認められ手術による減圧と固定が行われた。術後、改善することはなく、追加の画像検査において第7頚椎レベルの髄内腫瘍が示唆された。術後7日で安楽死が行われ、剖検により奇形腫と診断された。(Tako訳)
■下垂体腫瘤の犬の放射線治療と無治療での生存期間、神経学的反応、予後因子
Survival, neurologic response, and prognostic factors in dogs with pituitary masses treated with radiation therapy and untreated dogs
J Vet Intern Med. 2007 Sep-Oct;21(5):1027-33.
Michael S Kent, David Bommarito, Edward Feldman, Alain P Theon
背景:犬の下垂体腫瘤は内分泌学的、神経学的徴候をおこすまれな腫瘍であり、もし治療しないまま放置すると余命を短くし得る。
仮説:放射線治療(RT)をした下垂体腫瘤の犬は神経症状が改善し、無治療の犬と比べて生存期間が長い。
動物: CT又はMRIで下垂体腫瘤を確認した犬19例に1日3Gy、計48Gy照射した。
方法:下垂体腫瘤の犬の臨床徴候、腫瘤の大きさ、転帰について回顧的調査を行った。
結果:治療群において中央生存期間に達せず、治療群の平均生存期間は1405日(95%信頼区間;1053-1757日)で、生存率は、それぞれ、1年が93%、2年が87%、3年が55%であった。下垂体腫瘤の放射線治療をうけた犬は無治療の犬より有意に(P=0.039)長く生存した。より小さな腫瘍の治療群の犬(最大で下垂体-脳の高さ比、または、腫瘍と脳の面積比を基にして)は大きな腫瘍の治療群と比べてより長く生存した(P=0.01)。
結論と臨床的重要性:無治療と比べて放射線治療は下垂体腫瘤の犬の生存期間を長くし、神経学的徴候をコントロールできた。 (Dr.HAGI訳)
■心膜の細胞診所見から疑われた転移性心膜腫瘍の犬の1例
Metastatic pericardial tumors in a dog with equivocal pericardial
cytological findings
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Sep-Oct;43(5):284-7.
Carlo Guglielmini, Carla Civitella, Daniela Malatesta, Chiara Palmieri
6歳、メス、ミックス犬が心嚢水を伴う転移性腫瘍と診断された。超音波検査では、複数の高エコーの腫瘤が臓側および壁側心膜に付着していたが、細胞診では診断がつかなかった。腫瘤は心膜表面から突出しており、心臓の収縮に伴って振動していた。病理検査結果は心膜の多発性転移性腫瘍であり、原発は未分化胃腺癌であった。(Tako訳)
■猫の肝細胞癌に関する腫瘍随伴性脱毛
Paraneoplastic alopecia associated with hepatocellular carcinoma in a cat
Vet Dermatol. August 2007;18(4):267-71.
Laura Marconato, Francesco Albanese, Paolo Viacava, Veronica Marchetti, Francesca Abramo
15歳の避妊済み家猫短毛種が、肝細胞癌に関係する脱毛で来院した。6ヶ月前から始まった臨床症状は、食欲低下、体重減少、沈鬱だった。オーナーによると猫は1週間前から脱毛を起こした。脱毛の位置は、胸腹部腹側面、前後肢内側面、尾部腹側面で、腫瘍随伴性脱毛に一致する組織学的特性を持っていた。
検死時、複数の肝臓結節があり、その後の組織病理検査は肝細胞マーカー(Hep Par 1)陽性肝細胞様腫瘍細胞の索状およびシート状配置がみられ、それにより肝細胞起源の腫瘍を示し肝細胞癌と診断された。これは、Hep Par 1マーカーにより確認した肝細胞癌に関する猫腫瘍随伴性脱毛の最初の報告である。(Sato訳)
■ピロキシカムと化学塞栓療法を行った嚢胞性鼻腺癌の猫の1例
Cystic nasal adenocarcinoma in a cat treated with piroxicam and
chemoembolization
J Am Anim Hosp Assoc. 2007 Nov-Dec;43(6):347-51.
Katia Marioni-Henry, Tobias Schwarz, Chick Weisse, Kathleen B Muravnick
13歳の去勢シャム猫が4ヶ月にわたり、繰り返す発作と両側性の結膜炎と鼻炎により来院した。脳と鼻腔のCTでは嚢胞性病変が頭蓋に認められ鼻腔に浸潤するとともに脳を圧迫していた。鼻腔の生検により鼻腺癌と診断された。抗生物質、フェノバルビタール、ピロキシカム、化学塞栓療法により治療され、診断後2年生存した。(Tako訳)
■猫の血管肉腫:53症例(1992~2002)
Hemang Chad M Johannes, Carolyn J Henry, Susan E Turnquist, Terrance A
Hamilton, Annette N Smith, Ruthanne Chun, Jeff W Tyler
iosarcoma in cats: 53 cases (1992-2002)
J Am Vet Med Assoc. December 2007;231(12):1851-6.
目的:猫の血管肉腫の生物学的挙動と予後因子を特徴づける。
統計:回顧的症例検討。
動物:血管肉腫の猫53例。
方法:国立獣医学研究所、3つの獣医大学、そして一つの個人診療施設からのデータを集計した。
結果:発生部位は、内部臓器(胸部や腹部)や口腔よりも皮膚や皮下の方が一般的に多かった。外科的切除が最も主要な治療として47例の猫で行われた。皮下に発生したものより皮膚に発生したものでマージン(-)が得られやすいようであり、このことは生存期間の延長との関連が認められた。追跡調査が可能なもので、皮下に発生していた12例のうち6例で局所再発がみられた。初診時の段階で明らかな遠隔転移が、十分な検査を行えた13例中5例でみられた。6例目の猫では安楽死の時に肺転移が認められた。内部臓器の血管肉腫10例のうち4例では、診断は剖検により決定もしくは、診断の確定したときに安楽死が行われた。補助療法はあまり行われなかった。死亡もしくは安楽死と分かっている21例中18例では腫瘍に関連したものであった。高い有糸分裂指数(高倍率10視野中3より多い)が生存期間の短縮と関連していた。
結論と臨床関連:皮下に発生した血管肉腫は皮膚に発生したものより挙動が悪く、局所再発率が高く、結果として安楽死や死亡につながりやすいようであった。転移の可能性は皮膚と皮下に発生したもの共に以前の報告より高いかもしれない。内部臓器の血管肉腫は重篤な予後因子であった。(Dr.UGA訳)
■犬の急性放射線誘発皮膚炎におけるプレドニゾンの臨床および組織病理学的効果
The clinical and histopathological effects of prednisone on acute radiation-induced dermatitis in dogs: a placebo-controlled, randomized, double-blind, prospective clinical trial
Vet Dermatol. August 2007;18(4):217-26.
Alison K Flynn, David M Lurie, Jennifer Ward, Diane T Lewis, Rosanna Marsella
皮膚表面への48Gray分画照射を行った犬で、急性放射線誘発皮膚炎(ARID)に対するプレドニゾンの臨床及び組織病理学的効果を評価、比較した。研究は二重盲検、無作為、プラセボ-コントロール前向き臨床試験とした。22頭の他の点で健康なコンパニオン犬を臨床研究した。3頭は、オーナーが1回(1頭)または2回(2頭)のバイオプシーを拒否したため、完全な組織病理分析から除外した。各犬の研究期間は放射線療法(RT)開始から最初の再検査までの36日だった。犬には経口プレドニゾン0.5mg/kgまたは砂糖丸剤を毎日投与した。
全ての犬は48Gray分画、標準RTを腫瘍切除後2週間から開始した。急性放射線病的状態スコア、皮膚毒性の広がりおよび重症度スコア、デジタル画像検査、圧迫細胞診を1、8、15、22、36日目に実施した。15日目(RT-11)及び36日目(最後のRT後2週間)の4mm皮膚標本を、標本が分からないようにして一人の病理学者及び皮膚学者によりスコアをつけた。縦断的データに対する分散の一方向分析を両軍のスコアの比較に使用した。Spearman's rho相関係数を臨床及び組織病理スコア(HPS)の関連の強さを測定するのに使用した。両群のCUTES、AMS、HPSスコアに有意差はなかった。臨床及びHPSスコアに強い相関があった。プレドニゾンは臨床または組織病理学的にARIDの重症度を減ずることはなかった。(Sato訳)
■がんを患う犬と猫における大腿静脈アクセスポート(VAP)の有用性
Use of vascular access ports in femoral veins of dogs and cats with cancer
J Am Vet Med Assoc. November 2007;231(9):1354-60.
Alane Kosanovich Cahalane, Kenneth M Rassnick, James A Flanders
目的:がん治療中の犬猫の大腿静脈に埋め込んだVAPの長期的機能を評価すること。
統計:前向き症例検討。
動物:化学療法もしくは放射線療法の治療を行った犬3例と猫6例。
方法:VAPを手術により静脈に埋め込み、犬3例と猫6例に対して1年以上維持した。注入口は胸部後方部もしくは腸骨部に設置した。VAP機能の維持期間、VAPを介した注入と吸引の容易度を記録するとともにVAPの合併症も評価した。また、オーナーのVAP埋め込みに対する満足度をアンケートにより調査した。
結果:VAPは、血液採取、鎮静剤の投与、化学療法の投与が主な使用方法であった。注入が可能であった期間の中央値は147日(範囲:60日~370日)であり、吸引採血が可能であった期間の中央値は117日(範囲:10日~271日)であった。VAPに関連した動物の不快感はあまり認められず(全体の7%)、オーナーはVAPの使用の決断に満足していた。合併症にはVAPの部分的閉塞(n=7)、完全閉塞(n=2)、入り口の移動(n=1)、そして感染症の疑い(n=1)がみられた。
結論と臨床関連:大腿静脈へのVAPの埋め込みはがん治療中の犬猫の静脈への継続的なアクセスを可能とすることが示された。(Dr.UGA訳)
■犬の脾臓血管肉腫の補助治療薬、エピルビシンの評価:59症例
Epirubicin in the adjuvant treatment of splenic hemangiosarcoma in dogs: 59 cases (1997-2004)
J Am Vet Med Assoc. November 2007;231(10):1550-7.
Stanley E Kim, Julius M Liptak, Trent T Gall, Gabrielle J Monteith, J Paul Woods
目的:脾臓血管肉腫を患った犬の補助治療薬としてエピルビシンを用いた時の作用と副作用を評価し、予後因子を同定すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:脾臓血管肉腫により脾臓摘出を行った59頭の犬で、エピルビシンの治療を行ったものと行っていないもの。
方法:一般状態、臨床症状、診断、そして外科的所見と術後の結果が医療記録より調査された。エピルビシンの治療を行った犬では、投与回数、投与間隔と減薬量、有害事象の種類と重症度について記録された。犬は脾臓摘出のみのグループと、脾臓摘出とエピルビシンの治療を行ったグループの2つのグループに分けられた。
結果:18頭の犬にエピルビシンの投与(30mg/m 2)が3週間毎に4~ 6回行われた。41頭の犬は脾臓摘出のみであった。全体での中央生存期間は、脾臓摘出とエピルビシンの治療を行った犬( 144日)では、脾臓摘出のみの犬(86日)と比べると有意に長いものであった。ステージIの犬の中央生存期間(345 日)は、ステージII(93日)とステージIII(68日)の犬よりも有意に長かった。エピルビシンの治療を行った犬のうち、 18頭中7頭で消化器毒性の兆候がみられた為に入院治療を行った。食欲不振、長期にわたる臨床症状、血小板減少、好中球増加、そして高い有糸分裂率が負の予後因子とされた。
結論と臨床関連:エピルビシンはドキソルビシンを基盤にしたプロトコールの補助薬としては有効であるかもしれないが、高い確率で消化器毒性を発症するであろう。エピルビシンで治療した犬に心毒性は認められないことより、心臓病をもつ犬においてエピルビシンはドキソルビシンの代薬として考えられるべきである。(Dr.UGA訳)
■がんを患った犬のうち重度肥満犬における有病率
Prevalence of obese dogs in a population of dogs with cancer
J Am Vet Med Assoc. April 2007;230(8):1173.
Lisa P Weeth, Andrea J Fascetti, Philip H Kass, Steven E Suter, Aniel M Santos, Sean J Delaney
目的:大学病院に来院した犬についてボディーコンディションスコア(BCS)を調査し、がんを患っている犬とそうでない犬とのBCSの幅に有意な差がみられるかどうかを決定すること。
動物:1,777頭のがんを患った犬と12,893頭のがんを患っていない犬。
方法:1999年から2004年までの医療記録を用いて、回顧的有病率症例制御研究が行われた。情報としてBCS(9ポイントシステム)、年齢、種、性別、避妊去勢の有無、診断、そしてコルチコステロイドの投与歴について検討を行った。がん(がんを患った犬)の診断を受けた時、もしくは初診時(がんを患っていない犬)のBCSが記録された。ロジスティク回帰分析が両グループ間でのBCSの有病率分布の比較に用いられた。
結果:重度肥満犬(BCSが7以上)の全体的な有病率は14.8%(2,169/14,670)であり、肥満犬(BCSが6以上7未満)の全体的な有病率は21.6%(3,174/14,670)であった。がんを患っている犬とそうでない犬とではBCSの幅に有意な差がみられたが、がんを患っている重度肥満犬は肥満犬に比べて僅かに有病率が低かった。がんを患っていない犬の有病率と比較した時、重度肥満犬と肥満犬の有病率は、がんのタイプによって変化していた。
結論と臨床関連:がんのタイプ別での重度肥満犬の有病率の違いは、がんの発現において相反する効果、もしくは体重に関して特定のがんに対する異なる効果が示唆された。BCSを系統立てて使用することにより重度肥満とがんの進行との関連性の解明に有益であろう。 (Dr.UGA訳)
■<犬の甲状腺癌>
Canine thyroid carcinoma.
Clin Tech Small Anim Pract. 2007 May;22(2):75-81.
Liptak JM.
悪性甲状腺癌は比較的犬に多い。腫瘍の大部分は片側性で非機能性である。治療方法を決定するには、腫瘍が自由に可動性であるか、または固着し隣接した組織の中に浸潤しているかどうかを見極めることが重要である。甲状腺摘出は片側性で可動性の甲状腺癌には推奨される。放射線治療又は放射線ヨウ素療法は浸潤性又は両側性の甲状腺癌に推奨される。補助化学療法の役割は十分に明確にはできないが、両側性の甲状腺癌のように高リスクの腫瘍で検討するべきである。外科治療をおこなった可動性の甲状腺癌と放射線治療をおこなった固着した甲状腺癌は予後が良く、中央生存期間は3年以上である。(Dr.HAGI訳)
■膀胱の移行上皮癌を患った犬におけるピロキシカムとシスプラチンの併用における評価
Evaluation of cisplatin administered with piroxicam in dogs with transitional cell carcinoma of the urinary bladder
J Am Vet Med Assoc. October 2007;231(7):1056-60.
Shawna N Greene, Michael D Lucroy, Chelsea B Greenberg, Patty L Bonney, Deborah W Knapp
目的:膀胱の移行上皮癌を患った犬へのピロキシカムと減量したシスプラチンの併用投与における抗腫瘍作用と毒性の影響を評価すること。
統計:臨床試験(無作為、無統制)。
動物:膀胱の移行上皮癌と組織学的に診断された14頭の犬。
方法:それぞれの犬にシスプラチン[50mg/m2、IV、 21日毎{毒性の影響の為に21日で40mg/m2 、IV、に減らした}]とピロキシカム(0.3mg/kg PO 、24時間毎)を投与した。CBC、血清生化学、そして尿検査をシスプラチン投与毎に行った。腫瘍の大きさの評価が(胸部・腹部のレントゲンと膀胱の超音波検査)が治療前とその後 6週間隔で行われた。
結果:5頭の犬においては、急速な進行(n=2)と毒性( n=3)によりシスプラチンの投与回数は1回のみであった。治療6 週間後における他の9頭の腫瘍病変に関しては、1頭が部分寛解、5 頭は無変化、そして3頭で進行がみられた。中央腫瘍消失期間は78日(範囲は20 日から120日)であった。中央生存期間は307日(範囲は 29日から929日)であった。中程度から重度の腎障害、消化器障害が発現したものは、それぞれ5 頭、8頭であった。
結論と臨床関連:最小限の効果と腎、消化器毒性の影響を考慮するとピロキシカムとシスプラチン(40~50mg/m2 )の併用投与は犬の膀胱の移行上皮癌の治療には推奨することができない。(Dr.UGA訳)
■犬の癌細胞におけるテロメスタチン投与後のテロメラーゼ阻害
Inhibition of Telomerase in Canine Cancer Cells Following Telomestatin Treatment
Vet Comp Oncol. June 2007;5(2):99-107. 37 Refs
S. Long, D. J. Argyle, E. A. Gault, L. Nasir
正常な体細胞のテロメア短縮は、無制限な細胞増殖の主要バリアとして提唱されている。テロメラーゼはテロメア長を維持する能力のある酵素で、このようにこのバリアを迂回する。ヒトで、テロメラーゼ活性は、癌細胞、幹細胞、胚細胞系譜を制限する。犬はテロメラーゼ活性が癌細胞、幹細胞も制限するので、テロメラーゼベース療法の発展に有効な臨床モデルとなる可能性を示す。
我々は、テロメラーゼ陽性D17およびCMT7犬癌細胞系でテロメスタチンのテロメラーゼ活性抑制能力を研究した。2μMの濃度で、テロメスタチンの投与はテロメラーゼ陽性癌細胞においてテロメラーゼ活性の低下、テロメア短縮、成長抑制を起こした。それらの効果は、テロメラーゼ陰性皮膚線維芽細胞または陰性コントロールで見られなかった。
それらの結果から、犬癌細胞においてテロメスタチンはテロメラーゼ活性を抑制し、テロメラーゼベース療法を研究するモデルとして犬の有効性を強くすることを確認するものである。(Sato訳)
■<犬の脾臓血管肉腫の補助療法に対する継続的な低用量経口的化学療法>
Continuous low-dose oral chemotherapy for adjuvant therapy of splenic hemangiosarcoma in dogs. J Vet Intern Med. 2007 Jul-Aug;21(4):764-9.
Susan Lana1, Lance U'ren, Susan Plaza, Robyn Elmslie, Daniel Gustafson, Paul Morley, Steven Dow
*背景:血管肉腫(HSA)は高率に転移し、しばしば急速に致命的になる腫瘍である。現在、従来の補助的化学療法で治療された犬においては、わずかな生存期間の延長をもたらすのみである。低用量化学療法(LDC)の継続的な経口投与は従来の化学療法プロトコルとは別の方法として提案されている。それゆえに、我々はステージⅡの HSAの犬に対する補助療法としてサイクロフォスファミド、エトポシド、ピロキシカムの組み合わせを用いLDCの安全性と有効性を評価した。
*仮説:LDCの経口的補助治療はHSAの犬に対し安全な投与方法となり得て、生存期間は補助的ドキソルビシン(DOX)化学療法の生存期間と同程度であろうと我々は仮説した。
*動物:ステージⅡの脾臓血管肉腫の犬9頭がLDCの研究において登録された。治療の転帰もまたドキソルビシン化学療法で治療されたステージⅡの脾臓血管肉腫の犬24頭において回顧的に評価された。
*方法:ステージⅡの脾臓血管肉腫の犬9頭は6ヶ月間以上、LDCで治療された。副作用と治療の転帰が決定された。エトポシド経口投与の薬物動態は3頭で決定された。総合的に、9頭のLDCで治療された犬と24頭のDOXで治療された犬において生存期間と無病期間が比較された。
*結果:LDCで治療された犬では重篤な副作用はなく、6ヶ月間以上の長期間の治療に良く耐えた。エトポシドの経口投与では投与後30~60分後に検出可能な血漿濃度はピークになった。LDCで治療された犬の中央生存期間と中央無病期間は両方とも178日であった。比べると、DOXで治療された犬の中央生存期間と中央無病期間は各々1 33日と126日であった。
*結論:HSAの犬の補助的療法のための従来の高用量化学療法に対し、継続的経口的LDC療法は有効な方法になるかもしれない。(Dr.HAGI訳)
■不完全切除の猫の軟部組織肉腫の治療において放射線治療単独もしくはドキソルビシン併用化学療法を併用したときの評価:71症例
Evaluation of radiotherapy alone or in combination with doxorubicin
chemotherapy for the treatment of cats with incompletely excised soft
tissue sarcomas: 71 cases (1989-1999)
J Am Vet Med Assoc. September 2007;231(5):742-5.
Kevin A Hahn, Melissa M Endicott, Glen K King, F Dee Harris-King
目的:不完全切除であった猫の非内臓型軟部組織肉腫の放射線治療例に対してドキソルビシンを併用した場合に影響が現れるかどうかを決定すること。
統計:回顧的症例検討。
動物:71頭の猫。
方法:医療記録より術後に不完全切除の軟部組織肉腫に放射線治療を単独で行ったものと、ドキソルビシンを併用した猫について回顧的調査を行った。放射線治療は一日おきのスケジュールで21分割し総線量は58.8~63Gyであった。ドキソルビシンは21日毎に3~5サイクルの投与がなされていた。フォローアップは診察もしくは担当獣医師やオーナーへのテレフォンインタビューにより行った。
結果:腫瘍消失期間中央値は、放射線治療とドキソルビシンを用いた化学療法を併用したものが15.4ヶ月(範囲は2.4~44.9ヶ月)、放射線治療を単独で行ったものは5.7ヶ月(範囲は1.0~50.8ヶ月)であり、ドキソルビシンを併用したもので明らかに長かった。しかし、有意差は認められなかった。
結論と臨床関連性:結果よりドキソルビシンを用いた化学療法は、不完全切除であった猫の軟部組織肉腫の治療で放射線治療を行っているものに対して、腫瘍消失期間を延長させる役割を担っているかもしれない。(Dr.UGA訳)
■<犬の消化管間質腫瘍と平滑筋肉腫の臨床的、免疫組織化学的違い:42症例(1990~2003)>
Clinical and immunohistochemical differentiation of gastrointestinal stromal tumors from leiomyosarcomas in dogs: 42 cases (1990-2003)
J Am Vet Med Assoc. May 2007;230(9):1329-33.
Kelli N Russell, Stephen J Mehler, Katherine A Skorupski, Jennifer L
Baez, Frances S Shofer, Michael H Goldschmidt
目的:以前、消化管平滑筋肉腫(GILMSs)と分類された犬の組織サンプルを(免疫組織化学的手法で)再検査することにより消化管間質細胞腫瘍(GISTs)とGILMSsの違いを識別し、GISTsとGILMSsの生物学的挙動と臨床経過を比較することにある。
様式:回顧的症例研究
動物:42症例
手順:消化管平滑筋肉腫(GILMS)であると組織学的に診断された42頭について、シグナルメント、臨床徴候、身体検査、所見、初期の診断検査、手術所見、補助療法、腫瘍の場所、切除の完全性、術後の転帰に関する再調査を行った。保存された腫瘍組織標本を免疫組織化学手法により再染色し腫瘍の種類の検討を行った。
長期追跡調査はカルテの記載もしくは、オーナーと紹介獣医師へのテレフォンインタビューによって行った。
結果:免疫組織学的所見に基づき、42症例中28症例はGISTs、4症例は未分化肉腫、10症例はGILMSsと再分類された。犬において、GISTsは盲腸と大腸において、GILMSsは胃と小腸において高頻繁に発現した。GISTsとGILMSsの犬の中央生存期間は、各々11.6ヶ月と7.8ヶ月で、もし犬が周術期の生存例について考慮すれば、中央生存期間は各々37.4ヶ月と7.8ヶ月であった。しかし、これらに有意差はみられなかった。
結論と臨床的関連:犬において以前GILMSsと診断された多くが免疫組織学的染色の結果に基づきGISTsと再分類された。これら腫瘍の生物学的挙動は異なるようであった。(Dr.HAGI訳)
■複数の獣医診断検査所に送付された外科的に切断された猫の指に関する診断と臨床結果
Diagnoses and clinical outcomes associated with surgically amputated feline digits submitted to multiple veterinary diagnostic laboratories
Vet Pathol. May 2007;44(3):362-5.
B K Wobeser, B A Kidney, B E Powers, S J Withrow, M N Mayer, M T Spinato, A L Allen
猫の罹患した指の治療および状態を診断するため、切断が一般的に行われる。猫の切断した指の送付を確認するため、複数獣医診断検査所の記録を調査した。85の別々の検体で、診断、年齢、性別、起源の肢、罹患した指に対し審査した。送付元の病院は臨床結果を判定するため調査した。Kaplan-Meier product-limit法で、疾患フリー期間および生存期間を判定した。
腫瘍疾患は85件中63件で認められ、他の22件はもっぱら炎症性疾患だった。腫瘍症例のうち60件(95.2%)で悪性腫瘍が確認された。悪性腫瘍で多く認められたのは扁平上皮癌(n=15;23.8%)で、生存期間中央値は73日だった。他の診断は、線維肉腫(n=14;22.2%)、原発性肺腫瘍の転移のような腺癌(n=13;20.6%)、骨肉腫(n=5;7.9%)、肥満細胞腫(n=4;6.3%)、血管肉腫(n=5;7.9%)、悪性線維性組織球腫(n=2;3.2%)、骨巨細胞種(n=2;3.2%)、血管腫(n=2;3.2%)だった。骨巨細胞腫は猫の指で過去に述べられていない。猫の指には種々の腫瘍が発生する可能性があり、組織病理診断のための切断した指の送付は、組織発生と臨床結果を予測するのに必須である。(Sato訳)
■猫の膀胱の移行上皮癌における臨床症状、治療法、そして結果について:20症例
Clinical signs, treatments, and outcome in cats with transitional cell carcinoma of the urinary bladder: 20 cases (1990-2004)
J Am Vet Med Assoc. July 2007;231(1):101-6.
Heather M Wilson, Ruthanne Chun, Victoria S Larson, Ilene D Kurzman, David M Vail
目的:猫の膀胱の移行上皮癌における臨床症状、治療結果の評価を行うこと。
統計:回顧的症例検討。
動物:移行上皮癌を患った20頭の猫。
方法;1990年から2004年の間に2施設で移行上皮癌と診断された孤立した膀胱腫瘤を持つ20頭の猫の医療記録を用いて、シグナルメント、治療法、そして結果を評価した。
結果:猫の種類は、在来短毛種(n=14)、在来長毛種(2)、在来中毛種(2)、シャム(1)、そしてアビシニアン(1)であった。全ての猫が早い時期に去勢、避妊を行っていた(<1歳未満;13頭が去勢オス、7頭が避妊メス)。移行上皮癌と診断された平均年齢は15.2歳であった。9頭の猫が膀胱三角部に影響を受けていた。治療法として、ピロキシカムの投与、化学療法、外科手術を単独もしくはそれぞれの組み合わせで行った。6頭の猫は治療しなかった。診断時に3頭の猫に遠隔転移が認められ、1頭の猫が所属リンパ節への転移が認められた。20頭全ての猫の中央生存期間は261日であった。ほぼ全ての死亡原因が、尿路への進行による閉鎖であった。5頭の猫においては、追跡調査ができなかった。
結論と臨床関連:猫において、膀胱に発症する移行上皮癌は稀であり、攻撃的な病気でオス猫においてより多く、膀胱三角部より離れた部位で頻繁に発生していた(犬の移行上皮癌と違って)。しかしながら、この研究でみられた猫の移行上皮癌における初期の臨床症状は、犬の膀胱の移行上皮癌でみられる症状と似たものであった。(Dr.UGA訳)
■癌の犬の集団で肥満犬の割合
Prevalence of obese dogs in a population of dogs with cancer
Am J Vet Res. April 2007;68(4):389-98.
Lisa P Weeth, Andrea J Fascetti, Philip H Kass, Steven E Suter, Aniel M Santos, Sean J Delaney
目的:教育病院で検査した犬のボディコンディションスコアー(BCS)分布を評価し、癌の犬のBSC分布が癌でない犬の分布と有意差があるかどうかを判定する
サンプル集団:癌の犬1777頭と癌でない犬12893頭
方法:遡及有病率症例-コントロール研究を1999-2004年の医療記録を用いて行った。BCS(9ポイントシステム)、年齢、犬種、性別、不妊状況、診断、コルチコステロイド投与に関する情報を収集した。癌の検査時(癌の犬)または最初の来院時(癌でない犬)のBCSを記録した。群間のBCS分布をロジスティック回帰で比較した。
結果:肥満犬(BCS≧7/9)の全体の普及率は14.8%(2169/14670)で、過体重犬(BCS≧6/9-7/9)の全体の普及率は21.6%(3174/14670)だった。癌の犬と癌でない犬のBCS分布に有意差があり、癌の犬の過体重および肥満である率がわずかに低かった。癌でない犬と比較したとき、肥満および過体重犬の普及率は特定の癌の種類で変化した。
結論と臨床関連:癌の種類で肥満の普及の違いは、癌発現に対するこの変動の不釣合いな影響、または体重に対する特定の癌の種類の異なる影響を示唆する。BCSsの系統的使用は、肥満と癌の発生の間の関連を解明する手助けになるだろう。(Sato訳)
■犬における軟部組織肉腫の不完全切除後の再切除における評価:41例(1999-2004年)
Evaluation of primary re-excision after recent inadequate resection of soft tissue sarcomas in dogs: 41 cases (1999-2004)
Nicholas J Bacon, William S Dernell, Nicole Ehrhart, Barbara E Powers,
Stephen J Withrow
J Am Vet Med Assoc. 230(4):548-54(2007)
目的:軟部組織肉腫の不完全切除後の再切除の有効性を、切除創の残存腫瘍の程度と臨床的重要度から調査した。
デザイン:回顧的研究
動物:41頭の犬。
方法:軟部組織肉腫の不完全切除で紹介されコロラド州立大学VMCで再切除を行なったものを調査した。オーナーと紹介獣医師から経過情報を入手した。再切除した標本の検討を行なった。再切除後に放射線治療を行ったものは除外した。
結果:41例が基準に合致し、39例で長期のフォローが実施可能であった。フォローの中央値は816日であった。局所再発は39例中6例(15%)であり、遠隔転移は、39例中10例(10%)で認められた。再切除で正常組織のマージンは0.5~3.5cmであった。残存腫瘍は41例中9例(22%)で認められた。腫瘍、患者、治療方法では、局所再発と関連は認めなかったが、脂肪肉腫、線維肉腫および術前の細胞診の実施は関連があった。
結論ならびに臨床的意義:不完全切除の軟部組織肉腫の再切除は、切除マージンが狭くても実施すべきである。放射線治療や断脚を行わなくても長期的な予後は良好である。再切除した組織に残存腫瘍が見つかったからといって局所再発を示唆するべきではない。(Dr.UGA訳)
■画像診断-浸潤性脂肪腫による犬の脊髄圧迫
Imaging diagnosis--infiltrative lipoma causing spinal cord compression in a dog
Vet Radiol Ultrasound. 2007 Jan-Feb;48(1):35-7.
Lee W Morgan1, Robert Toal, George Siemering, Patrick Gavin
11歳43kg避妊済みメスのラブラドールレトリバーが、急性後肢不全麻痺を発症した。MRIで脊髄に顕著な圧迫がある第5胸部椎間腔に硬膜外T1-、T2-強調部があった。short tau inversion recovery法と脂肪抑制T1-強調画像でそのマスからの信号は低下し、脂肪起源を示していた。胸部の背側ヘミラミネクトミーによりマスを除去した。組織検査でマスは浸潤性脂肪腫と確認した。犬は回復し、術後24ヶ月で完全に歩行可能である。この報告は、脊柱管の脂肪腫が後肢神経障害の原因となるかもしれないという追加所見を提供し、ある軟部組織マスの脂肪特性の確認でMRI検査の価値も示すものである。(Sato訳)
■癌の猫の体重減少およびボディコンディションの変化の有病率と予後意義の前向き調査
A prospective investigation of the prevalence and prognostic significance of weight loss and changes in body condition in feline cancer patients
J Feline Med Surg. April 2007;0(0):.
Jennifer L Baez, Kathryn E Michel, Karin Sorenmo, Frances S Shofer
この研究目的は、癌の猫の体重減少およびボディコンディションの変化の前向き確認、特徴付けすることと、それら所見の予後意義を調査することだった。腫瘍を持つ57頭の猫を評価した。ボディコンディションを9箇所スコアリングシステムで評価し(BCS)、複数の部位を4箇所スコアリングシステムで筋肉、脂肪を評価した。癌の猫の平均BCSは4.4±2.1kg(1=悪液質、5=最適、9=肥満)だった。猫の60%で評価した2つの部位の脂肪は減少していた。猫の91%で評価した3箇所全部の筋肉は減少していた。BCS<5の癌の猫の生存期間中央値(MST)は3.3ヶ月で、BCS≧5の猫は16.7ヶ月だった(P=0.008)。
■犬猫の脾臓の吸引細胞診、組織診断と病変の超音波所見の相関:32例(2002-2005)
Correlation of ultrasonographic appearance of lesions and cytologic and histologic diagnoses in splenic aspirates from dogs and cats: 32 cases (2002-2005)
J Am Vet Med Assoc. March 2007;230(5):690-6.
Elizabeth A Ballegeer, Lisa J Forrest, Ryan M Dickinson, Melissa M Schutten, Fern A Delaney, Karen M Young
目的:脾臓病変の超音波ガイド下針吸引による疾患の判定で、組織診断と比較し細胞診の正確性を判定する。
構成:遡及研究
サンプル集団:29頭の犬と3頭の猫の脾臓標本
方法:超音波ガイド下脾臓吸引を行った犬猫の記録を調査した。研究基準は、脾臓病変の超音波検査での確認、同病変からの組織の細胞診と組織評価だった。細胞サンプルは針吸引で、組織標本は外科的バイオプシー、超音波ガイド下バイオプシー、剖検で採取した。
結果:細胞診と組織診断は31例中19例(61.3%)一致、31例中5例(16.1%)は異なり、1例の吸引は評価に不十分だった。31例中7例(22.6%)で組織構造の組織学的評価が、反応性か腫瘍かの鑑別で必要だった。非腫瘍病変の14頭で組織診断をもとに、細胞診は11例で正確、2例で決定的でなく、1例は不正確だった。悪性腫瘍疾患の17頭で、細胞診は8例で正確、確定的ではないが腫瘍の可能性を5例は示し、4例は不正確だった。複数の同様に見える結節は有意に悪性に関連したが、単一病変は良性のことが多い。
結論と臨床関連:脾臓病変の超音波ガイド下吸引は、細胞評価の標本を得る最小限の侵襲手技である。細胞診は組織結果を反映することも多いが、サンプリングミスまたは不完全なサンプリングが起こったり、反応性か腫瘍性かの鑑別に組織構造が必要ならば、針吸引生検の正確な診断は不可能かもしれない。(Sato訳)
■犬における頭蓋内転移を伴う膵腺房細胞癌
Pancreatic acinar cell carcinoma with intracranial metastasis in a dog
J Vet Med Sci. January 2007;69(1):91-3.
Shih-Chieh Chang, Jiunn-Wang Liao, Yung-Chang Lin, Cheng-I Liu, Min-Liang Wong
このレポートは、頭蓋内転移を含む多くの器官に広く転移巣を持つ膵癌の例に関するものである。11歳オスの雑種犬が、削痩、運動失調、頚部に複数の目でわかる腫瘍を呈した。運動失調のために行った患犬のMRI検査で、頭蓋内侵襲性増殖が脳幹を圧迫していることが分かった。患犬が死亡したあと剖検を行った。肉眼および顕微鏡検査をもとに、原発腫瘍細胞は、膵臓の左葉に位置し、広範囲な転移が脳、肺、肝臓、腎臓、扁桃、食道漿膜面、顎下、肺門、縦隔、腸間膜リンパ節などのさまざまな器官に見つかった。この症例は、頚部マスが検出されたとき、鑑別診断リストに膵臓腺癌を含めるべきだと指摘する。(Sato訳)
■犬猫の原発性、続発性心臓腫瘍
Primary and secondary heart tumours in dogs and cats
J Comp Pathol. January 2007;136(1):18-26.
H Aupperle, I M?rz, C Ellenberger, S Buschatz, A Reischauer, H-A Schoon
犬および猫の心臓の原発性、続発性腫瘍はあまりみられない。2年間の間に心臓原発(n=11)、心臓外良性(n=6)または悪性(n=66)の犬83頭と心臓原発(n=1)または心臓外悪性腫瘍(n=29)の猫30頭を検査した。犬の心エコー検査で原発性心臓腫瘍が4例で明らかになったが、続発性心臓腫瘍は検出されなかった。検死後、心臓と腫瘍からの組織サンプルは、組織および免疫組織化学検査を行った。犬の原発性腫瘍は、血管肉腫が7例、非クロム親和性傍神経節腫2例、横紋筋肉腫1例、神経線維肉腫1例だった。検査した66頭中24例で心臓外腫瘍の転移は心臓で見つかった(癌15例、悪性リンパ腫6例、血管肉腫3例)。猫の1例は心膜の原発性血管肉腫で、5例は続発性心臓腫瘍(悪性リンパ腫2例、癌3例)だった。猫の心臓腫瘍は臨床的に確認されなかったが、心臓の詳細なグロス切開(n=2)または組織病理検査(n=3)で検出された。この研究は心臓転移病巣を持つ犬の予想外に高い頭数を示している。(Sato訳)
■猫の肝臓バイオプシーでオートマチックツルーカットガンの高い合併症率
High complication rate of an automatic Tru-Cut biopsy gun device for liver biopsy in cats
J Vet Intern Med. 2006 Nov-Dec;20(6):1327-33.
S J M Proot, J Rothuizen
背景:オートマチックツルーカットバイオプシーを使用した猫の肝臓バイオプシーで、予期せぬ致死的ショック反応を起こした。この研究の目的は、このバイオプシー装置がセミオートマチック装置で行う時より多く致死的合併症を起こすかどうか調査することだった。
動物:ユトレヒト大学に2002年10月1日から2004年10月31日の間に超音波ガイド下ツルーカット肝臓バイオプシーを行うため委託された全ての猫。肝臓バイオプシーの適応は、肝酵素活性の増加、胆汁酸濃度の増加、肝臓の超音波異常、胆管の超音波異常、それらの所見の組み合わせだった。凝固パラメーターは正常だった。
方法:2002年10月1日から2003年10月31日の間に26頭の猫がオートマチックバイオプシー装置で生検した。2003年11月1日から2004年10月31日の間に19頭の猫がセミオートマチックバイオプシー装置で肝臓バイオプシーを行った。
結果:最初の期間で、26頭中5頭(19%)が15分以内に重度ショックを起こした。蘇生は成功しなかった。2つ目の期間で19頭の猫で主要な副作用を起こした猫はいなかった。2群で診断、臨床症状、臨床病理所見、麻酔の使用に関し、有意差はなかった。
結論と臨床意義:合併勝率の違いは、使用したバイオプシー技術により説明できると結論付けた。オートマチック装置の発射時に起こる圧力波は、強烈な迷走神経緊張とショックの原因になっているのかもしれない。猫でこのオートマチックバイオプシー装置の使用は、致死的合併症の発生率が高いので避けるべきである。(Sato訳)
■神経疾患を持つ犬の脳腫瘍への放射線照射
Irradiation of Brain Tumors in Dogs with Neurologic Disease
J Vet Intern Med 19[6]:849-854 Nov-Dec'05 Retrospective Study 29 Refs
Carla Rohrer Bley, Andrea Sumova, Malgorzata Roos, and Barbara Kaser-Hotz
放射線療法は、多くの犬の原発性脳腫瘍で選択される治療である。周りを取り囲む健康な脳組織に許容する放射線量は、放射線治療、総照射量、分画スケジュールに対し制限因子になる可能性があり、体積効果は放射線療法を行う患者の結果を左右するかもしれない。
この遡及研究の目的は、神経疾患の症状を示す脳腫瘍を持つ犬で、放射線療法の効果を評価することだった。脳腫瘍を持つ46頭の犬を研究した。34頭でコンピューター作成治療プランが利用可能で、用量-体積データを入手できた。総計処方された放射線療法照射量の範囲は、35-52.5Gy(平均=40.9[SD±2.9])、2.5-から4-Gy分画(平均3.2)で行われた。神経症状の悪化による死亡から算出した全体の生存期間の中央値は1174日(95%信頼区間[CI]、693-1655日)だった。全ての死亡が疾患、または治療結果によるものと仮定すると、生存期間の中央値は699日(95%CI、580-809日)だった。来院時の腫瘍の位置、大きさ、または神経学的症状のような予後臨床因子は認められなかった。コンピューター治療プラン、正確なポジショニング、放射線高照射量(総照射量の>80%)で平均関連脳容積35.3%(±12.6)に制限できた。それら小容積は、梗塞や壊死のような重度晩発作用の確立を低下させるかもしれない。この研究で、わずかに即時、または早期遅延副作用が見られ、遅延副作用は見られず、クオリティオブライフは良-優良だった。(Sato訳)
■犬の軟部組織肉腫における腫瘍内微細血管密度の予後意義
Prognostic significance of intratumoral microvessel density in canine soft-tissue sarcomas
Vet Pathol. September 2006;43(5):622-31.
R H Luong, K E Baer, D M Craft, S N Ettinger, T J Scase, P J Bergman
犬の軟部組織肉腫(STS)の予後は、従来組織学的グレードに基づいている。我々は、犬STSで細胞増殖マーカーの予後値を示している。腫瘍の動向を予測する他の方法は、腫瘍新脈管形成の測定である腫瘍内微細血管密度(IMD)である。IMDの予後意義多くのヒトの腫瘍、および限られた数の犬猫の腫瘍で述べられている。
犬STSのIMDの予後価値を評価するため、57のSTSを研究し、IMDと組織学的特性、組織学的グレード、細胞増殖、転移傾向、生存性を比較した。免疫組織化学染色を用い、STSに抗第VIII因子関連抗原(FVIII-RA)と抗CD31抗原に標識をつけ、3つのIMDパラメーター(平均微細血管密度、高微細血管密度、微細血管部分)を判定した。FVIII-RAとCD31を用い、IMDの増加は、組織学的グレード、壊死スコア、有糸分裂スコアの増加に統計学的に関連していた。より高いFVIII-RA IMD値は、より高い銀親和性核小体組織化領域(AgNOR)中央値(過去調査したように)と転移傾向の増大に有意に関与していた。線維肉腫はSTSの少ない血管化しか見られなかった。IMDと生存性には相関がなかった。我々の結果は、犬STSの組織学的グレード、組織特性、細胞増殖(AgNORを基にした)、転移傾向、特に内皮マーカーとしてFVIII-RAを使用するときにIMDが予後値となることを示す。ゆえに組織学的グレード付け、細胞増殖、診断時の犬STSのIMDを評価することは、臨床医により良い予後の情報を提供することが出来た。(Sato訳)
■形態、組織化学染色、免疫組織化学標識化をもとにした猫眼内腫瘍の分類
Classification of feline intraocular neoplasms based on morphology, histochemical staining, and immunohistochemical labeling
Vet Ophthalmol. 2006 Nov-Dec;9(6):395-403.
Bruce H Grahn, Robert L Peiffer, Cheryl L Cullen, Deborah M Haines
この研究の目的は、猫の高分化および未分化眼内腫瘍の形態、組織化学、免疫組織化学特性を評価することと、診断アルゴリズムの開発、破裂したレンズとそれら腫瘍の関連を調査することだった。眼内腫瘍のある75個の猫の眼球をヘマトキシリン・エオジン染色を施し、光学顕微鏡で検査した。形態学的診断は、33個が眼内肉腫、17個がびまん性虹彩メラノーマ、15個がリンパ肉腫、3個が毛様体腺腫、1個が転移性癌、6個が未分化眼内腫瘍だった。それからそれら眼球の切片をPASで染色し、種々の細胞マーカーに対し免疫組織化学(IHC)標識化をおこなった。
組織化学染色とIHC標識化で73/75の腫瘍の細胞分化を確認したが、8/75で形態学的診断と一致しなかった。それらには、形態学的にリンパ肉腫と診断された4つの腫瘍が含まれたが、メラノーマ(n=3)または毛様体腺癌(n=1)に一致する分化抗原を発現し、形態学的に4つの腫瘍はメラノーマ(n=2)、転移性癌(n=1)、以前未分化(n=1)に対する分化抗原を発現する眼内肉腫と診断した。免疫組織化学標識化は、5/6形態学的に未分化腫瘍の診断を示唆し、1つは眼内肉腫、2つはびまん性虹彩メラノーマ、2つは毛様体腺癌が含まれた。形態、組織化学、IHC特性付けをもとに、破裂した水晶体包は眼内肉腫28/30、びまん性虹彩メラノーマ3/24、リンパ肉種1/11で検出されたが、毛様体上皮腫瘍、転移性癌、未分化眼内腫瘍で検出されなかった。アルゴリズムは、未分化眼内猫腫瘍の鑑別に対し、染色とIHC標識切片が容易にする。(Sato訳)
■放射線療法による犬猫の胸腺腫の治療:遡及研究(1985-1999)
Radiation therapy in the treatment of canine and feline thymomas: a retrospective study (1985-1999)
J Am Anim Hosp Assoc. 2001 Sep-Oct;37(5):489-96.
A N Smith, J C Wright, W R Brawner Jr, S M LaRue, L Fineman, G S Hogge, B E Kitchell, A E Hohenhaus, R L Burk, R S Dhaliwal, L E Duda
要約
放射線療法単独または補助療法として治療した、さまざまなステージの胸腺腫を持つ犬17頭と猫7頭の遡及研究を実施した。調査で全体の反応率は75%(15/20評価症例)だった。部分寛解(すなわち>50%腫瘍縮小)および完全寛解(すなわち腫瘍を検出できない)を含めた。完全寛解はまれだった(4/20)。安定疾患(すなわち腫瘍の大きさ変化<50%)を持つ5頭中3頭は、目に見える反応はないが臨床症状が改善した。犬の生存期間中央値は248日(範囲93-1657+日)、猫の生存期間中央値は720日(範囲485-1825+日)だった。放射線療法は犬猫の侵襲性胸腺腫の管理に有効と思われる。(Sato訳)
■犬の診断的胸腔鏡検査実施後の侵襲性中皮腫のポータルサイト転移
Portal site metastasis of invasive mesothelioma after diagnostic thoracoscopy in a dog
J Am Vet Med Assoc. September 2006;229(6):980-3.
Brigitte A Brisson, Felipe Reggeti, Dorothee Bienzle
症例記載:再発性心臓周囲および胸水のため胸腔鏡で胸膜と縦隔のバイオプシーを行い評価した10歳のゴールデンレトリバー。
臨床所見:胸腔鏡検査前、胸腔穿刺により漿液血液状の胸水を5L除去した。胸腔鏡検査中に、胸膜と縦隔壁が白-黄褐色の直径1-3mmの粟粒性結節に覆われているのが観察された。バイオプシー標本を採取し、部分的心嚢切除を実施した。ポータルサイトは通常通り閉じた。胸水の細胞評価は、剥離癌に一致した細胞変化を伴う高蛋白濃度および細胞充実性を認めた。細菌培養の結果は陰性だった。
治療と結果:カルボプラチンを胸腔内点滴注入で投与し、プレドニゾンを経口投与した。21日後、胸腔鏡検査中にカニューレを入れた左側胸壁部分に、不規則形の6.5x3cmのマスと、それよりも小さな4つのマスを認めた。検死時に採取したマスの組織検査で、胸膜中皮腫と同様の所見を持つ悪性腫瘍、原発腫瘍とまったく同じ免疫組織化学染色特性を持つことが確認された。
臨床関連:胸腔鏡検査は胸骨切開術よりも術後の疼痛、入院期間がより少なく、回復も早いが、合併症も最小限の侵襲性内視鏡外科手術となりえる。ポータルサイトへの転移は、機器またはカニューレ、滲出液の漏洩における細胞の汚染から起こりえる。あまり見られないが、この起こりえる合併症は、この処置を実施する前にオーナーと議論すべきである。(Sato訳)
■眼の腺腫、腺癌、髄上皮腫の免疫化学組織特性
Immunohistochemical properties of ocular adenomas, adenocarcinomas and medulloepitheliomas
Vet Ophthalmol. 2006 Nov-Dec;9(6):387-94.
E KLOSTERMAN, C M H Colitz, H L Chandler, D F Kusewitt, W J A Saville, R R Dubielzig
眼の髄上皮腫、腺腫、腺癌は眼胚神経外胚葉から起こり、共通の表現型を持つ。このことはそれら腫瘍の組織病理学的鑑別を非常に難しくする可能性がある。ゆえに、この研究でそれら腫瘍の診断で使用するかもしれない免疫学的マーカーの組み合わせを判定するのに重点を置いた。マーカーにはAE1/AE3、CK7、CK20、テロメラーゼ逆転写酵素(TERT)を使用した。それら腫瘍の1つを持つ27個の全眼球に通常の免疫組織化学染色を実施した。TERTの免疫染色を行った腫瘍は、侵襲性が増加する腫瘍タイプとして免疫反応の増加を示した。CK7に対する免疫陽性の腫瘍タイプはなかった。CK20免疫染色は腺腫でみつかったが、腺癌と髄上皮腫には見られなかった。AE1/AE3発現は腺癌でより一貫して存在し、腺腫での頻度はより少なく、髄上皮腫では6例中1例しか見られなかった。さらに、CK20とTERTは逆の発現パターンを示し、すなわち侵襲性を増す発現で、TERTは発現増加し、CK20は減少した。それらの結果は、それら腫瘍の診断と予後指標に重要と思われる。(Sato訳)
■犬の包皮のグロムス血管腫
Glomangioma in the prepuce of a dog
Reprod Domest Anim. December 2006;41(6):568-70.
V Galofaro, G Rapisarda, G Ferrara, N Iannelli
8歳スプリンガースパニエルの包皮グロムス血管腫の症例を報告する。陰茎基部の包皮側壁に位置する直径約3.5×5.2cmの孤立性結節マスで来院した。組織学的に、切除した腫瘍マスは小血管の周りにcordon-like構造で配置する円形類上皮細胞の増殖を呈した。腫瘍細胞はアルファ平滑筋アクチンに陽性で、サイトケラチン、デスミン、S-100蛋白、ニューロン特異エノラーゼに陰性だった。それら病理特性をもとに、犬の腫瘍でほとんど見られないグロムス血管腫と診断された。我々の知識で、犬の包皮グロムス血管腫の最初の報告である。(Sato訳)
■犬の原発性腎臓腫瘍
Primary renal neoplasia of dogs
J Vet Intern Med. 2006 Sep-Oct;20(5):1155-60.
Jeffrey N Bryan, Carolyn J Henry, Susan E Turnquist, Jeff W Tyler, Julius M Liptak, Scott A Rizzo, Gabriella Sfiligoi, Steven J Steinberg, Annette N Smith, Tarraca Jackson
背景:犬の原発性腎臓腫瘍はまれである。
仮説:症状と生存性は原発性腎臓腫瘍の異なるカテゴリーで違ってくるだろう
動物:超音波ガイドバイオプシー、吸引針生検、外科的、または剖検時に採取した組織検査で、原発性腎腫瘍と診断された82頭の犬の医療記録からデータを抽出した。
方法:多施設遡及研究
結果:49頭の犬は癌、28頭は肉腫、5頭は腎芽細胞腫だった。犬は老齢(平均8.1歳;範囲:1-17)で平均体重は24.9kg(範囲:4.5-80)だった。腫瘍は各腎臓で同じ頻度で発生し、4%は両側性だった。初期徴候は、血尿、食欲不振、嗜眠、体重減少、触知可能な腹部マスが1つ以上あった。疼痛は肉腫の犬でより多く報告された(5/28)。多く見られた血液の異常は、好中球増加(22/63)、貧血(21/64)、血小板減少(6/68)だった。赤血球増加は3頭で見られ、治療により解消した。尿検査でよく見られた異常は、血尿(28/49)、膿尿(26/49)、蛋白尿(24/50)、等張尿(20/56)だった。診断時、肺転移は16%の犬の胸部エックス線写真に認められた。77%の犬は死亡時に転移病巣があった。癌の犬の生存中央値は16ヶ月(範囲0-59ヶ月)で、肉腫の犬は9ヶ月(範囲0-70ヶ月)、腎芽細胞腫の犬は6ヶ月(範囲0-6ヶ月)だった。
結論と臨床意義:犬の原発性腎腫瘍は一般に悪性度が高く、生存性を改善する唯一の治療は外科手術である。(Sato訳)
■脱毛犬の腹腔内mass吸引
Intra-abdominal mass aspirate from an alopecic dog
Vet Clin Pathol. June 2006;35(2):259-62.
Jennifer L Brazzell, Dori L Borjesson
腹腔内の触診可能なmassと脱毛の評価で、11歳メスのヨークシャーテリアがミネソタ大学獣医療センターに来院した。腹部超音波検査で、大きく複雑な空洞性massが腹部左尾側領域に見られ、massの針吸引生検を実施した。顕著に多形性、大きく、丸い-多角形細胞の集団は、単独および小さな非結合凝集で見られた。細胞はわずかな透明-青灰細胞質、大きく丸い-卵円核、明瞭な点状-網状クロマチンだった。細胞所見は、卵巣由来の腫瘍で、主要鑑別診断は胚芽細胞腫瘍だった。血清のホルモン分析で、14-OH-プロゲステロン濃度の顕著な上昇があきらかとなった(2.71ng/ml、参照値0.05-0.69ng/ml)。卵巣子宮切除を実施し、左卵巣部にmassをみつけた。生殖路の組織評価で左卵巣未分化胚細胞腫を確認した。免疫組織化学染色をもとに、腫瘍はc-kit(CD117c)に陰性で、単一細胞はニューロン特異性エノラーゼに陽性だった。右卵巣嚢胞と右子宮角の扁平化生も診断された。嚢胞は当然14-OH-プロゲステロンの源と思われ、扁平化生、皮膚障害を起こしているようだった。
術後3ヶ月で、プロゲステロン濃度は正常に戻り、脱毛はほぼ解消した。犬の未分化胚細胞腫の報告はまれだが、特有の認識可能な細胞所見を有し、メス犬の腹腔内massの鑑別診断に含めるべきである。(Sato訳)
■犬の舌病変に関する頻度とリスクファクター:1196例(1995-2004)
Frequency of and risk factors associated with lingual lesions in dogs: 1,196 cases (1995-2004)
J Am Vet Med Assoc. May 2006;228(10):1533-7.
Michelle M Dennis, Nicole Ehrhart, Colleen G Duncan, Ashley B Barnes, E J Ehrhart
目的:犬の舌を侵す組織学的病変を分類し、それら発症の頻度、発症に関するリスクファクターを判定する
構成:遡及症例シリーズ
動物:犬1196頭
方法:1995年1月から2004年10月までに評価した犬の舌バイオプシー標本の診断報告を再調査した。
結果:腫瘍が舌病変の54%を占めた。舌腫瘍の64%が悪性腫瘍で、メラノーマ、扁平上皮癌、血管肉腫、線維肉腫などだった。大型犬種、とくにチャウチャウ、チャイニーズシャーペイでメラノーマのリスクが増加した。全犬種のメス、プードル、ラブラドールレトリバー、サモエドは扁平上皮癌をより発症しやすいと思われた。血管肉腫、線維肉腫はそれぞれボーダーコリー、ゴールデンレトリバーで一般的だった。良性腫瘍は、扁平上皮乳頭腫、プラズマ細胞腫、顆粒細胞腫などだった。小型犬種、特にコッカスパニエルはプラズマ細胞腫のリスクが増加した。舌炎は診断中の33%を占め、ほとんどの原因は分からなかった。大型犬種は舌腫瘍になりやすい一方、小型犬種は舌炎になりやすいと思われた。限局性石灰沈着は舌病変の4%を占め、若年大型犬種の罹患が優勢だった。残りは大部分が種々の変性、または創傷関連病変だった。
結論と臨床関連:舌病変の頻度は、犬種、性別、犬の大きさクラスで均等に分布しなかった。診断を思いうかべ、適切な管理が開始できるので、獣医師は一般的に報告される舌病変を知っておくべきである。(Sato訳)
■下顎骨切除で治療した口腔腫瘍を持つ猫の予後:42症例
Outcomes of cats with oral tumors treated with mandibulectomy: 42 cases
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Sep-Oct;42(5):350-60.
Nicole C Northrup, Kimberly A Selting, Kenneth M Rassnick, Orna Kristal, Maura G O'Brien, Gillian Dank, Ravinder S Dhaliwal, Shyla Jagannatha, Karen K Cornell, Tracy L Gieger
8施設で口腔腫瘍のため下顎骨切除で治療した42頭の猫の医療記録を、病的状態、進行フリー期間、生存期間を調査するため再検討した。1年および2年進行フリー期間と生存率は、それぞれ56%、49%と60%、57%だった。扁平上皮癌の猫は、線維肉腫または骨肉腫の猫よりも生存期間が有意に短かった。72%の猫は術後すぐ嚥下困難、または食欲不振となり、12%は食餌を取る能力が回復しなかった。98%で急性の合併症、76%が長期合併症発症にもかかわらず、情報を提供してくれたオーナー30人の83%は下顎骨切除の結果に満足していた。(Sato訳)
■外科的吸引による犬の頭蓋内髄膜腫切除の評価:17症例(1664-2004)
Evaluation of intracranial meningioma resection with a surgical aspirator in dogs: 17 cases (1996-2004)
J Am Vet Med Assoc. August 2006;229(3):394-400.
Justin J Greco, Sean A Aiken, Jason M Berg, Sebastien Monette, Philip J Bergman
目的:外科的吸引の使用による犬の頭蓋内髄膜腫切除の結果を判定することと、頭蓋内髄膜腫に関する予後因子を評価する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:17頭の犬
方法:外科的吸引の使用による頭蓋内髄膜腫の切除を行った犬の医療記録を再調査した。それにより徴候、画像所見、臨床症状、臨床症状の持続期間、術前処置、腫瘍の部位、組織学的評価結果、転帰、検死結果に関する情報を得た。クライアントと紹介獣医師は、臨床症状の再発、術後生存期間に対する情報を電話でやり取りした。
結果:16頭は7歳以上で、17頭は手術前に発作を起こしていた。多く見られた犬種はゴールデンレトリバーで17頭中6頭を占めた。生存期間中央値は1254日だった。収集したデータの中で、腫瘍の組織学的サブタイプが予後因子だった。組織学的腫瘍サブタイプによる生存期間分析は、最短からならべると未分化、0日;線維芽細胞型、10日;砂腫型、>313日;髄膜型、>523日;移行型、1254日だった。
結論と臨床関連:犬の頭蓋内髄膜腫を切除するための外科的吸引器の使用は、伝統的な外科単独または伝統的な外科プラス放射線療法よりも生存期間がより長くなることに関与していた。髄膜型、砂腫型、移行型頭蓋内髄膜腫サブタイプの犬は、他の型の犬よりも予後がよりよい。(Sato訳)
■治療しない鼻部癌を持つ犬の生存に関する因子の評価:139症例(1993-2003)
Evaluation of factors associated with survival in dogs with untreated nasal carcinomas: 139 cases (1993-2003)
J Am Vet Med Assoc. August 2006;229(3):401-6.
Kenneth M Rassnick, Carrie E Goldkamp, Hollis N Erb, Peter V Scrivani, Bradley L Njaa, Tracy L Gieger, Michelle M Turek, Elizabeth A McNiel, David R Proulx, Ruthanne Chun, Glenna E Mauldin, Brenda S Phillips, Orna Kristal
目的:治療を受けない、または姑息的治療のみ受けた鼻部癌の犬の生存に関する因子を評価する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:組織学的に鼻癌と確認された139頭の犬
方法:医療記録、CT像、鼻癌のバイオプシー標本を再検討した。放射線、外科手術、化学療法、免疫療法をせず、診断から7日以上生存した犬のみ研究した。生存期間の評価にカプラン-マイヤー法を使用した。生存に関して可能性のある因子は、log-rank、Wilcoxon rank sum法で比較した。コックス比例危険回帰モデルを使用し、多変量生存分析を実施した。
結果:全体の生存期間中央値は95日(95%信頼区間(CI)、73-113日;範囲7-1114日)だった。鼻出血を伴う犬では、伴わない犬の2.3倍死亡の危険があった。鼻出血を伴う犬107頭の生存期間中央値は88日(95%CI、65-106日)、鼻出血がない犬32頭のそれは224日(95%CI、54-467日)だった。
結論と臨床関連:治療しない鼻癌の犬の予後は悪い。転帰を改善するような治療戦略を遂行すべきである。(Sato訳)
■犬の硬膜内粘液脂肪肉腫の外科と放射線を組み合わせた治療
Combined use of surgery and radiation in the treatment of an intradural myxoid liposarcoma in a dog
J Am Anim Hosp Assoc. 2006 Sep-Oct;42(5):386-91.
Sergio Rodenas, Isabel Valin, Patrick Devauchelle, Fran?oise Delisle, Michel Baron
9歳避妊済みキャバリアキングチャールズスパニエルが2ヶ月にわたる頚部痛と四肢不全麻痺を呈し、頚椎の硬膜内髄外粘液脂肪肉腫と診断された。手術後放射線療法を行い、神経学的欠損の完全寛解を見せた。外科的切除後18ヶ月で腫瘍の再発を見た。2度目の手術と再度別の放射線療法のコースにより、臨床症状の完全寛解を認めた。犬は腫瘍の再発により2回目の手術から11ヵ月後に安楽死した。(Sato訳)
■肺がんをもつ2頭の猫にみられた肢動脈腫瘍塞栓
Appendicular Arterial Tumor Embolization in Two Cats with Pulmonary Carcinoma
J Am Vet Med Assoc 225[7]:1065-1069 Oct 1'04 Case Report 37 Refs
Particia Ibarrola, DVM; Alexander J. German, BVSc, PhD; Annelise J. Stell, BVM&S; Richard Fox, BVetMed; Nuala J. Summerfield, BVM&S, DACVIM; Laura Blackwood, BVMS, PhD
去勢オス13歳のペルシャ猫と避妊メス11歳のペルシャ猫を、跛行の急性発症により検査した。2頭とも意識的プロプリオセプションと反射は、罹患肢で減弱していた。1頭で、ドップラー超音波血流検出により左上腕動脈の血流は検出されなかったが、右上腕動脈の血流は簡単に検出できた。もう1頭の右大腿脈拍は触診できなかった。どちらの猫も心疾患の心エコー所見は見られなかった。
2頭の治療は主に支持療法だった。1頭は死亡し、1頭は安楽死した。検死時に肺葉硬化が見られた。顕微鏡的に、立方から円柱状の腫瘍性上皮細胞を伴う肺実質の多病巣性浸潤が認められた。同様の形態をもつ腫瘍性上皮細胞を、筋切片の結節性massに認め、脈管内腫瘍塞栓を閉塞大小動脈に認めた。全サイトケラチン抗原に対する、肺および筋組織の免疫組織化学染色で、腫瘍細胞の激しい細胞質染色があきらかとなった。第VIII因子関連抗原の染色で腫瘍性細胞のクラスターが脈管内塞栓を表すことを確認した。猫の臨床症状は、腫瘍塞栓による動脈閉塞によるものだった。(Sato訳)
■過去に去勢した犬猫の精巣外間質細胞、セルトリ細胞腫:17例
Extratesticular interstitial and Sertoli cell tumors in previously neutered dogs and cats: a report of 17 cases
Can Vet J. August 2006;47(8):763-6.
Angela L Doxsee, Julie A Yager, Susan J Best, Robert A Foster
精巣組織由来および精巣外部位の原発腫瘍は極端に少ない。15の異なる診療施設から去勢後精巣由来の自発腫瘍の犬12頭と猫5頭の臨床、外科的情報を収集し、検証した。11頭の犬は精巣外に位置するセルトリ細胞腫があった。1頭の犬と5頭の猫は精巣外間質細胞腫だった。6頭(犬1頭、猫5頭)は、腫瘍除去後、二次的な逆の性的特徴を起こしていた。全頭、陰嚢または本来の陰嚢前切開部位に触知可能なマスがあった。腫瘍関連で死亡した動物はなく、転移も認められなかった。発生学的異所組織の存在、去勢中に精巣組織移植の存在などの可能性が原因として考えられる。(Sato訳)
■2頭の犬の膵臓腫瘍に関与する皮下脂肪織炎、多発性関節炎、骨髄炎
Panniculitis, polyarthritis and osteomyelitis associated with pancreatic neoplasia in two dogs
J Small Anim Pract. July 2006;47(7):400-4.
R N A Gear, N J Bacon, S Langley-Hobbs, P J Watson, N Woodger, M E Herrtage
12歳の雑種犬(症例1)と12歳のシェットランドシープドック(症例2)が、跛行と後肢遠位腫脹の病歴で来院した。身体検査で四肢の関節滲出液と非対称性腫脹が明らかだった。症例1で、滑膜と皮下組織の針吸引生検により関節炎と蜂巣炎の診断がなされた。症例2で、骨生検と滑膜吸引生検で骨髄炎と関節炎が診断された。膵臓疾患の診断は、2頭とも血清リパーゼ濃度の顕著な上昇、膵臓マスの超音波による確認によりなされた。2頭とも対症療法に反応せず、その後安楽死した。2頭の剖検で、皮下脂肪織炎、関節炎、骨髄炎の診断を確認した。症例1は、膵臓外分泌腺腫、症例2は、広範囲転移を伴う膵臓腺癌と確認した。犬の臨床症例で、著者の知識では膵臓疾患を伴う皮下脂肪織炎、関節炎、骨髄炎の関連は過去に報告されていない。(Sato訳)
■犬のマイクロチップ埋没部位における注射後肉腫の典型的な特徴を持つ線維肉腫:組織および免疫組織化学研究
Fibrosarcoma with typical features of postinjection sarcoma at site of microchip implant in a dog: histologic and immunohistochemical study
Vet Pathol. July 2006;43(4):545-8.
M Vascellari, E Melchiotti, F Mutinelli
9歳オスのフレンチブルドックのマイクロチップ埋没部位に位置する皮下マスを検査した。マスの細胞診は、悪性間葉系腫瘍を示唆するものだった。組織学的にそのマスは、多病巣壊死と末梢リンパ凝集を伴う高グレード浸潤性線維肉腫と確認された。免疫組織化学検査で、ビメンチン、平滑筋アクチン(SMA)、CD3、CD79アルファ、CD18を調査した。全ての腫瘍細胞はビメンチン陽性だった。病変末梢の散見細胞も筋線維芽細胞表現型を強調するSMA陽性だった。リンパ球はCD18、CD3に陽性だった。オーリントリカルボン酸法によりアルミニウム沈着は検出されなかった。猫の注射後肉腫に形態学的に類似する線維肉腫の診断がなされた。注射部位の線維肉腫はイヌやフェレットで報告されている。さらに犬と実験げっ歯類で、マイクロチップ埋没部位に腫瘍の成長が述べられている。(Sato訳)
■犬23例の肛門アプローチによる原発性犬直腸腫瘍の外科的切除
Surgical excision of primary canine rectal tumors by an anal approach in twenty-three dogs
Vet Surg. June 2006;35(4):337-40.
Nichole A Danova, Juan Carlos Robles-Emanuelli, Dale E Bjorling
目的:犬における原発性直腸腫瘍の切除に対する肛門アプローチを述べ、結果を報告する
研究構成:遡及研究
動物:原発性直腸腫瘍の犬(n=23)
方法:肛門アプローチにより直腸を脱出させ、外科的に切除した原発性直腸腫瘍の犬の医療記録(1990-2000)を再検討した。犬に麻酔をかけ、直腸を脱出させ、支持縫合で安定させ、筋層レベルで1cmマージンを取り腫瘍切除、それから直腸粘膜を縫合した。
結果:各イヌは1種類の腫瘍タイプのみ(腺癌[8]、単生ポリープ[5]、癌[4]、プラズマ細胞腫[2]、腺腫[1]、平滑筋腫[1]、粘液性癌腫[1]、乳頭腫[1])だった。平均腫瘍容積は、3.1cm(3)(範囲0.1-37.7cm(3))。術後合併症(直腸出血[5]、しぶり[4])は軽度で、術後7日以内に解消した。他の犬は6日目に部分的粘膜の披裂が確認された。1頭(4.3%)の原発性腫瘍は不完全切除で、2頭は術後16ヶ月、および24ヶ月目に局所再発を起こした。術後すぐの期間以上の結果は18頭で分かっており、2頭はいまだ生存している。それら18頭の平均術後疾患フリー期間は36.8ヶ月(範囲5-84ヶ月)だった。
結論:直腸尾側の腫瘍の外科的切除は、直腸を脱出させることで成し遂げられる。
臨床関連:直腸脱出により容易になる肛門アプローチは、腫瘍が直腸の尾側にできた症例の外科的治療に対し、実行可能なオプションとして考慮すべきである。(Sato訳)
■犬猫の皮膚および皮下マスの評価において針吸引細胞診と組織病理の相関
Correlation between fine-needle aspiration cytology and histopathology in the evaluation of cutaneous and subcutaneous masses from dogs and cats
Vet Clin Pathol. March 2006;35(1):24-30.
G Ghisleni, P Roccabianca, R Ceruti, D Stefanello, W Bertazzolo, U Bonfanti, M Caniatti
背景:動物で、表層および深部マスを評価する診断方法として針吸引細胞診(FNAC)が一般に使用される。しかし、臨床で皮膚および皮下マスの評価でFNACの正確性を示した研究はほとんどない。
目的:犬猫の皮膚および皮下マスの診断で、組織病理検査を比較とし、FNACの正確性を調べた
方法:1999-2003年の間に、犬242頭と猫50頭の292個の明白な皮膚および皮下マスから、採取した細胞および組織病理標本を回顧的に評価した。細胞サンプルはFNAで、組織病理サンプルは細胞学的バイオプシー、または検死時に採取した。一致を判定し、腫瘍診断のFNACの正確性をgold standardとした組織病理を使用し決定した。
結果:292個の標本のうち、49個(犬44頭、猫5頭)は、細胞標本の細胞充実性不足のため除外した(retrieval rate 83.2%, n = 243)。腫瘍の細胞診を、176症例から入手した(組織病理と比較で175が陽性、1が偽陽性)。67の細胞標本を非腫瘍性(組織病理と比較で46が陰性、21は偽陰性)と分類した。全体で、90.9%(221/243)の症例の細胞診は組織病理診断と一致した。腫瘍の診断で細胞診の感受性は89.3%、特異性は97.9%、陽性適中率は99.4%、陰性適中率は68.7%だった。
結論:この研究結果は、小動物で触知可能な皮膚および皮下病変の評価で、FNACは信頼度が高く有効な診断方法と確認するものだった。(Sato訳)
■犬の良性または悪性体表リンパ節の組織学的特徴をもつB-モードおよびドップラー超音波所見の比較
Comparison of B-mode and Doppler ultrasonographic findings with histologic features of benign and malignant superficial lymph nodes in dogs
Am J Vet Res. June 2006;67(6):978-84.
Helena T Nyman, Marcel H Lee, Fintan J McEvoy, Ole L Nielsen, Torben Martinussen, Annemarie T Kristensen
目的:犬における良性および悪性体表リンパ節の組織病理所見を持つB-モードとカラードップラー超音波特性の比較と相関を示すこと
研究集団:30頭の犬の正常、身体検査で異常に大きい、または悪性腫瘍部から流出する領域リンパ節と思われる50の体表リンパ節
方法:リンパ節切除前に、B-モードとカラードップラー超音波検査で大きさ、エコー発生性、門の存在、音響透過、脈管の流れを評価した。切除リンパ節のホルマリン固定、パラフィン包埋組織切片をH&Eで染色し、壊死、繊維症、脂肪、転移、組織不均一性の存在と程度を検査した。血管分布を評価するため、ヴァーヘフ・ヴァン・ギーソン染色で染めた脈管の数と分布を記録した。
結果:体表リンパ節で種々のエコー発生性は組織不均一性に相当した。門の超音波探知は、門部の繊維組織、脂肪またはその両者の存在に関係した。音響増強は、結節内壊死部の存在に符合した。超音波検査と組織病理検査で検出された脈管数と分布に有意な相関を認めた。超音波検査で見積もった流量は、組織検査で見積もったものより一般的に高かった。
結論と臨床関連:結果は、犬のリンパ節の組織病理変化は、超音波検査の変化に関連していることを示し、リンパ節超音波検査は、一般に犬のリンパ節評価、特に腫瘍疾患の犬のリンパ節評価に重要な役割を持つことを示唆する。(Sato訳)
■犬の直腸および膀胱腫瘍におけるCOX-1、COX-2発現のコホート研究
Cohort study of COX-1 and COX-2 expression in canine rectal and bladder tumours
J Small Anim Pract. April 2006;47(4):196-200.
C Knottenbelt, D Mellor, C Nixon, H Thompson, D J Argyle
目的:犬の移行上皮癌や直腸腫瘍における悪性形質転換に対するシクロオキシゲナーゼ-1(COX-1)およびシクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)の役割を調査する
方法:21の犬直腸腺癌と18の移行上皮癌の組織切片をCOX-1、COX-2に対し染色した。マン-ホイットニー ノンパラメトリック検定で、COX-1またはCOX-2の発現する細胞の比率、COX-1とCOX-2染色強度、年齢、犬種または性別の間に関連があるかどうかを評価した。
結果:直腸腺癌で、切片の19.0%はCOX-1およびCOX-2陰性だった。38.1%以上の切片はCOX-2陰性であったがCOX-1は陽性で、38.1%の切片は、まれに、または時折COX-2陽性単一細胞を有した。年齢、犬種、性別で比較したとき、COX染色に有意差は認めなかった。
移行上皮癌で、全ての切片はCOX-1およびCOX-2陽性だった。COX-2染色で、16.7%が30%以上の陽性細胞を有し、COX-1染色で38.9%が30%以上の陽性細胞を有した。小型犬種で、COX-1陽性細胞の比率に有意な増加を認めた(P=0.0337)。
臨床意義:この研究で示されたCOX発現のバリエーションは、移行上皮癌と直腸腺癌の非ステロイド性抗炎症剤による治療後に見られる臨床反応の違いを説明するものと思われる。(Sato訳)
■猫61頭の頭蓋内腫瘍:所在、腫瘍のタイプと発作パターン
Intracranial neoplasia in 61 cats: localisation, tumour types and seizure patterns
J Feline Med Surg. April 2006;0(0):.
Ale・Tomek, Sigitas Cizinauskas, Marcus Doherr, Gualtiero Gandini, Andr・Jaggy
この研究目的は、頭蓋内腫瘍疾患を持つ猫の集団を回顧的に分析し、それら動物の発作パターン、部分発作が全身発作よりも構造上脳病変により多く関与するかどうかを述べる。また、発作がない猫と発作を持つ猫の頭蓋内腫瘍を持つ集団で比較を行った。特別重要視したのは、腫瘍タイプの評価、病変の大きさと位置および、それと発作保有率との関連だった。
頭蓋内腫瘍の組織病理診断を持つ猫は61頭認められた。14頭(23%;A群)の猫は発作履歴があり、47頭(77%;B群)はなかった。全身性強直間代性発作が8頭(57%)に見られ、頭蓋内腫瘍を持つ今回の猫で多く見られた発作パターンだった。6頭の猫で集中発作が観察された。1頭でてんかん重積持続状態が観察された。A群の平均年齢は7.9歳(中央値8.5歳)、B群の平均年齢は9.3歳(中央値10歳)だった。両群でリンパ腫の猫は、髄膜腫の猫より有意に若かった。髄膜腫とリンパ腫は発生頻度が高く、グリア細胞腫がその次に多かった。グリア細胞腫の猫の発作罹患率は26.7%、リンパ腫で26.3%、髄膜腫で15%だった。33例(54.1%)の腫瘍は前脳に位置し、15例(24.6%)は脳幹、4例(6.6%)は小脳、9例(14.7%)は多病巣だった。A群で頭頂葉と大脳基底核によく認められた。B群でよく認められた位置は、頭頂葉、前頭葉、間脳だった。前脳に位置する腫瘍と発作の発生に正の関連が認められた。(Sato訳)
■猫における脊髄硬膜外浸潤と肺転移を伴うワクチン関連性横紋筋肉腫
Vaccine-associated rhabdomyosarcoma with spinal epidural invasion and pulmonary metastasis in a cat
Vet Pathol. January 2006;43(1):55-8.
H-W Chang, S-Y Ho, H-F Lo, Y-C Tu, C-R Jeng, C-H Liu, F-I Wang, V F Pang
7歳メスの家猫中毛猫で、3ヶ月前の初回外科切除後に肩甲骨間の深部皮膚マスが再発した。その猫は、最初の外科手術約2ヶ月前に、同部位に不活化狂犬病ワクチンと5種混合ワクチンを接種していた。再発したマスはワクチン関連肉腫と診断された。後枝麻痺のため、その猫は2ヵ月後に安楽死された。検死で、複数境界不明瞭な結節性のマスが肩、首、胸椎周囲の筋肉内に見られた。肺転移、T1-T3領域脊髄圧迫と軟化を伴う脊髄硬膜外浸潤を認めた。顕微鏡的に、そのマスは、顕著な多核巨細胞形成を伴う紡錘細胞の混交束と一致した。腫瘍はミオグロビンに対し強陽性に染まり、ビメンチン、デスミン、アルファ平滑筋アクチンに対し中程度だが不定な陽性に染まった。散在する腫瘍細胞において、リンタングステン酸-ヘマトキシリン染色で細胞形質の線紋を示した。その腫瘍はワクチン関連性横紋筋肉腫と考えられた。(Sato訳)
■犬の頭蓋内髄膜腫に関する大槽脳脊髄液の特性:56例(1985-2004)
Characteristics of cisternal cerebrospinal fluid associated with intracranial meningiomas in dogs: 56 cases (1985-2004)
J Am Vet Med Assoc. February 2006;228(4):564-7.
Peter J Dickinson, Beverly K Sturges, Philip H Kass, Richard A LeCouteur
目的:犬の頭蓋内髄膜腫に関するCSF特性を判定する
構成:遡及症例シリーズ
動物:頭蓋内髄膜腫の犬56頭
方法:CSF分析を行っていて、頭蓋内髄膜腫と組織病理診断を受けた犬の医療記録を再調査した。総有核細胞数(TNCCs)と特異形態有核細胞数、RBC数、CSFの総蛋白濃度、発作病歴とグルココルチコイド投与、髄膜腫の位置に関する情報を記録した。
結果:56頭中41頭(73%)はTNCCs<5個/μl、56頭中5頭(9%)はTNCCs>50個/?lだった。20%未満の犬のCSF分析で、主に好中球性髄液細胞増加症が認められた。髄膜腫位置(頭蓋窩の尾側、または頭蓋窩の中央および吻側)とTNCCs増加(≧5個/μl)に有意な関連があった。
結論と臨床関連:結果は、獣医療文献で通常報告されていたものと有意に違っていた。好中球性髄液細胞増加症、特にTNCCs>50個/μlは、頭蓋内髄膜腫の犬のCSFサンプルで典型的なものではない。好中球性髄液細胞増加症は、髄膜腫が頭蓋窩の中央または吻側に位置する犬のCSFサンプルで検出されないかもしれない。(Sato訳)
■移行上皮癌の犬におけるミトキサントロンおよびピロキシカム治療と併用したCO2レーザーアブレーションの評価
Evaluation of carbon dioxide laser ablation combined with mitoxantrone and piroxicam treatment in dogs with transitional cell carcinoma
J Am Vet Med Assoc. February 2006;228(4):549-52.
Melinda L Upton, C H Tangner, Mark E Payton
症例:膀胱三角と尿道近位にできた移行上皮癌の二酸化炭素(CO2)レーザーアブレーションとミトキサントロン、ピロキシカムで治療した8頭の犬
臨床所見:膀胱の移行上皮癌は膀胱三角と尿道を巻き込んでいることが多く、外科的管理を難しくしている。原発腫瘍にレーザーアブレーションを行い、ミトキサントロンを3週間ごとに5mg/m2で4回投与した。生涯にわたりピロキシカムを1日1回0.3mg/kg投与した。
治療と結果:中央値および平均疾患フリー期間は200日と280日だった。中央値および平均生存期間は299日と411日だった。2頭に治療の副作用が認められ、症状は自己制御可能な食欲不振と嗜眠だった。この方法はよく許容しているように思え、全治療犬は下部尿路疾患の臨床症状が速やかに解消した。
臨床関連:CO2レーザーアブレーションとミトキサントロンおよびピロキシカムで達成した生存期間は、化学療法単独で治療したときの生存期間と同様であったが、臨床症状の解消はより良好であった。(Sato訳)
■ワクチン関連肉腫の猫の治療でイホスファミドの第2相臨床試験結果
Results of a phase II clinical trial on the use of ifosfamide for treatment of cats with vaccine-associated sarcomas
Am J Vet Res. March 2006;67(3):517-23.
Kenneth M Rassnick, Carlos O Rodriguez, Chand Khanna, Mona P Rosenberg, Orna Kristal, Kelly Chaffin, Rodney L Page
目的:ワクチン関連肉腫(VAS)の猫の治療で使用するイホスファミドの臨床活性と毒性を調査する
動物:切除不可能、再発、転移性VASの猫27例
方法:各猫に30分間IV注入でイホスファミド(900mg/m2)を投与した。尿路上皮性の毒性を防ぐため、生食(0.9%NaCl)点滴による利尿とメスナ投与を実施した。3週ごとに投与を行い、2回目の治療後、腫瘍の反応を評価した。全てのイホスファミド毒性を前もって定めた基準に従いグレードをつけた。
結果:27頭の猫に61回の投与を行った(中央値、2回/猫;範囲、1-4回/猫)。イホスファミドで治療後、27頭中11頭の全体の反応率は1頭が完全寛解、10頭は部分寛解を示した(41%;95%信頼区間(CI)、25%-59%)。反応は21-133日間持続した(中央値70日;95%CI、60-133日)。急性用量制限毒性は好中球減少で、投与後5-28日間(中央値、7日間)に認められた。好中球最下数の中央値は1600細胞/mμL(範囲、200-5382細胞/mμL)だった。9頭(33%)は胃腸の有害反応(イホスファミド注入中の流涎で治療後消失)を示した。2頭は重度腎毒性で安楽死し、1頭は利尿中に肺水腫を発症した。
結論と臨床関連:イホスファミドは猫のVASに対する抗腫瘍活性を持ち、多くの猫はうまく許容した。VASに対する補助治療としてイホスファミドを評価すべきである。(Sato訳)
■多発性骨髄腫の猫16例:遡及研究
Multiple myeloma in 16 cats: a retrospective study
Vet Clin Pathol. December 2005;34(4):341-52.
Reema T Patel, Ana Caceres, Adrienne F French, Patricia M McManus
背景:猫多発性骨髄腫に関して限られた情報しか公表されていない。診断基準は犬のものを用い、ネコに対し批評的に再検討されていない。
目的:多発性骨髄腫の猫の臨床、検査所見を評価し、診断基準を作成する
方法:医療記録を遡及的に評価した。研究には、4つのうち2つの診断基準を用い、死前の多発性骨髄腫診断を受けたものを含めた。1)骨髄でプラズマ細胞20%以上、または異型プラズマ細胞ならば10%以上;2)パラプロテイン血症;3)エックス線写真で骨溶解所見;4)L鎖蛋白尿。
代わりに、死後診断は骨髄関与を伴う多発性プラズマ細胞腫の所見をもとにした。
結果:1996-2004年の間16頭の猫を多発性骨髄腫と診断し、年齢の中央値は14歳で16頭中9頭(56%)は去勢済みオス、7頭(44%)は避妊済みメスだった。検査異常は、高グロブリン血症(14/16、87.5%)で11/14(78.5%)はモノクローナル、3/14(21.4%)は二クローン性ガンマグロブリン血症;低アルブミン血症(4/16、25%);L鎖蛋白尿(4/9、44.4%);低コレステロール血症(11/16、68.7%);高カルシウム血症(3/15、20%);非再生性貧血(11/16、68.7%);再生性貧血(1/16、6.2%);好中球減少(5/15、33.3%);血小板減少(8/16、50%);骨髄プラズマ細胞増加(14/15、93.3%)だった。12頭中10頭(83.3%)の猫のプラズマ細胞は顕著に未分化、異型、またはその両方だった。再検討のために入手したエックス線写真で12頭中6頭(50%)に限局性または多病巣性骨溶解が認められ、全身性骨溶解は1頭(8.3%)に認められた。非皮膚、髄外腫瘍は評価した全ての犬7/7(100%)で認め、脾臓(6)、肝臓(3)、リンパ節(4)だった。皮膚腫瘍を持つ2頭中1頭の疾患はプラズマ細胞性白血病に進行した。
結論:猫多発性骨髄腫の一般所見は、異型プラズマ細胞形態、低コレステロール血症、貧血、骨病変、多臓器関与である。この研究の結果をもとに、猫の診断基準にプラズマ細胞形態と内臓浸潤の考慮を含むように修正することを提唱する。(Sato訳)
■11頭の犬における部分的肢切断術
Partial foot amputation in 11 dogs.
J Am Anim Hosp Assoc. 2005 Jan-Feb;41(1):47-55.
Liptak JM, Dernell WS, Rizzo SA, Withrow SJ.
指と肢に悪性腫瘍が出来た11頭の犬を部分的肢切断術で治療した。部分的肢切断術は中心に負重する指の1あるいは2つの肢切断である。 すべての犬で跛行が見られたが、術後中央値37日に8頭の犬が解消した。3頭の犬で跛行は改善したが消失しなかった。腫瘍は良くコントロールでき、10頭で局所的な再発は認められなかった。1頭の犬は断脚をすることになった。 これらの結果から部分的肢切断術は、一箇所以上の指が適切な外科的マージンを確保して断脚しなければならない犬の肢の悪性腫瘍の管理において推奨されるかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■犬脂肪肉腫のオイルレッドO染色による細胞診
Use of Oil Red O stain in the cytologic diagnosis of canine liposarcoma
Vet Clin Pathol. March 2006;35(1):37-41.
Carlo Masserdotti, Ugo Bonfanti, Davide De Lorenzi, Nicola Ottolini
背景:一般に凍結組織の脂肪を染めるオイルレッドO染色も、自然乾燥細胞塗抹に使用できると思われる。
目的:他の種類の肉腫と脂肪肉腫の鑑別の補助となる脂質の確認で、オイルレッドO染色の価値を前向き評価する。
方法:犬の12個の腫瘍標本を評価した。最初の細胞評価が肉腫を示した腫瘍、および組織学的確認が得られている腫瘍を用いた。全ての標本にオイルレッドO染色を実施した。
結果:腫瘍標本は組織学的に、脂肪肉腫(3高分化、1多形性)、血管周囲細胞腫(n=3)、線維肉腫(n=3)、悪性繊維組織球腫(n=1)、未分化肉腫(n=1)と診断された。全ての脂肪肉腫の細胞標本で、脂質の細胞質液胞は強く陽性に染められた。1血管周囲細胞腫で弱く不規則な陽性染色をのぞき、他の肉腫の標本はオイルレッドO染色陰性だった。
結論:オイルレッドO染色は、脂肪肉腫と他の間葉系腫瘍の鑑別に簡単で安価、有効な診断ツールであると思われる。(Sato訳)
■猫の肉腫におけるイホスファミドの第I相試験と薬物動態分析
Phase I trial and pharmacokinetic analysis of ifosfamide in cats with sarcomas
Am J Vet Res. March 2006;67(3):510-6.
Kenneth M Rassnick, Antony S Moore, Nicole C Northrup, Orna Kristal, Bernard B Beaulieu, Lionel D Lewis, Rodney L Page
目的:担癌猫におけるイホスファミドの最大許容量(MTD)と用量制限毒性(DTL)を判定する
動物:切除、再発または転移肉腫のある猫38頭
方法:3集団の猫でイホスファミドの開始投与量を400mg/m2、IVとし、投与量を50-100mg/m2増加した。泌尿器毒性を防ぐため、メスナをイホスファミドの20%の量で投与した。イホスファミド投与前後で生食による利尿を行い、腎毒性を最小限にした。MTDに達したあと、薬物動態分析のためのサンプルを採取した。
結果:38頭の猫で第I相試験を行い、イホスファミドの1回静脈投与を行った。MTDは1000mg/m2で好中球減少がDLTだった。好中球減少が見られた8例中7例は投与後7日目に起こり、1例の重度好中球減少は5日目に起こった。胃腸管の副反応は、一般に軽度で自己制御が可能なものであり、最もよく見られたものは注入中の悪心だった。1例に薬物誘発過敏反応と一致する症状が見られた。出血性膀胱炎や腎毒性に関する事象は見られなかった。薬物動態変化とイホスファミド関連毒性の関連は認められなかった。抗腫瘍活性の予備的知見は、測定可能な腫瘍を持つ27例中6例で観察された。
結論と臨床関連:担癌猫の治療のイホスファミドの推奨投与量は、900mg/m2で3週間ごとである。この投与量を第II臨床試験で使用すべきである。(Sato訳)
■犬の精巣腫瘍の細胞学的特徴
Cytologic features of testicular tumours in dog
J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med. September 2005;52(7):339-46.
C Masserdotti, U Bonfanti, D De Lorenzi, M Tranquillo, O Zanetti
1998-2002年の精巣腫瘍を持つ犬92頭の実施した針生検の細胞診に対する治験を報告する。細胞診では、セミノーマ20症例、セルトリ細胞腫16症例、ライディッヒ細胞腫50症例、肥満細胞腫1症例と一致した。5症例は細胞診で診断できなかった。87例の細胞診を術後組織病理検査で確認した。細胞診の感受性は、セミノーマで95%、セルトリ細胞腫で88%、ライディッヒ細胞腫で96%だった。3種の腫瘍で特異性は100%だった。精巣腫瘍の針吸引生検細胞診は非常に有効な方法である。(Sato訳)
■血管新成と脳腫瘍
Angiogenesis and Cerebral Neoplasia
Vet Comp Oncol. September 2005;3(3):123-138. 100 Refs
Simon R. Platt
新脈管形成は再生と傷の治癒で基本的な過程である。新生血管新成を起こすしっかりと組織化された過程である。しかし、新脈管形成が無秩序に起こるならば、脳腫瘍発育や転移など疾患過程が原因かもしれない。新脈管新生とその抑制に関係する因子の理解は、脳腫瘍の可能な臨床処置として活用するならば重要である。残念なことに新脈管新生の制御には複数の因子が関与しており、どの単剤による臨床応用も効果的でないかもしれない。この文献は、脳の血管形成の過程を要約し、神経系の重要な新脈管新生因子を考察、脳腫瘍発生でそれらの役割と可能性のある治療を述べる。(Sato訳)
■心嚢水貯留の犬における心嚢水と全血の生化学分析
Biochemical Analysis of Pericardial Fluid and Whole Blood in Dogs with Pericardial Effusion
J Vet Intern Med 19[6]:833-836 Nov-Dec'05 Retrospective Study 26 Refs
Armelle M. de Laforcade, Lisa M. Freeman, Elizabeth A. Rozanski, and John E. Rush
心嚢水の原因を判定するため犬の心内膜浸出液分析を評価する研究から、相反する結果が生まれている。この前向き研究の目的は、心嚢水を持つ犬の心内膜滲出液と末梢血の酸-塩基状態、電解質濃度、グルコース、乳酸を比較することと、腫瘍性、非腫瘍性の滲出液のそれら変動値を比較することだった。41頭の心嚢水のある飼育犬で、末梢血サンプルと心嚢水サンプルの酸-塩基状態、電解質濃度、グルコース、ヘマトクリット値、尿素窒素、乳酸濃度を評価した。それらの犬の末梢血における一般的な異常所見は、高乳酸血症(n=38;93%)、低ナトリウム血症(n=25;61%)、高血糖(n=13;32%)、高マグネシウム血症(n=13;32%)などだった。末梢血に比べ、心嚢水の重炭酸、ナトリウム、カルシウムイオン、グルコース、ヘマトクリット値は全て有意に低く、乳酸、クロール、PCO2は有意に高かった。腫瘍の犬(n=28)と腫瘍ではない犬(n=13)の変動値濃度を比較すると、腫瘍の犬の心嚢水のpH、重炭酸、クロールは有意に低く、乳酸値、ヘマトクリット値、尿素窒素は有意に高かった。末梢血および心嚢水のグルコース濃度の差は、非腫瘍性の犬より腫瘍の犬の方が有意に大きかった。腫瘍性および非腫瘍性心嚢水の犬の変動値の違いは述べられたが、臨床関連は、その2群の重複の程度により限られているようだ。(Sato訳)
■血液学的および腫瘍疾患の犬で血清急性期蛋白濃度の予備研究
Preliminary Studies of Serum Acute-Phase Protein Concentrations in Hematologic and Neoplastic Diseases of the Dog
J Vet Intern Med 19[6]:865-870 Nov-Dec'05 Prospective Study 35 Refs
F. Tecles, E. Spiranelli, U. Bonfanti, J.J. Ceron *, and S. Paltrinieri
健常犬(n=15)と急性炎症(I、n=12)、血液学的腫瘍(HT、白血病、リンパ腫を含む、n=16)、非血液学的腫瘍(NHT、上皮系、間葉系、混合系を含む、n=20)、自己免疫性溶血性貧血(AIHA、n=8)の異なる疾患群の犬における急性期蛋白(APPs)の血清濃度:ハプトグロビン(Hp)、セルロプラスミン(Cp)、血清アミロイドA(SAA)、C-反応性蛋白(CRP)を測定した。SAAとCRPを市販の利用可能な酵素免疫測定法(ELISA)キットで分析し、HpとCpは前もって犬での使用を検証されている比色定量法で測定した。
全ての疾患群で全APPs濃度の増加を認めたが、統計学的に有意だったのはHp(I、P<.001;HT、P<.05)、Cp(I、P<.05;AIHA、P<.01)、CRP(I、P<.001;HT、P<.001;AIHA、CRP P<.05)だけだった。各疾患群内の各APPsでの高度な変動は、白血病とリンパ腫、同様に異なる腫瘍間でも有意差は認められなかった。AIHA群のHp、SAA、CRPの上昇は軽度だったが、Cpはより高濃度だった。各症例の追跡が可能なとき、APPsの低下は一般に予後が良い症例に認められた。この研究結果は、犬における腫瘍、AIHAのような血液疾患はAPPsの軽度増加を起こす可能性を考慮すべきと示唆する。APPsの測定は、それら経過の治療モニター、臨床評価を査定する手助けとなるかもしれない。(Sato訳)
■神経疾患を持つ犬における脳腫瘍の放射線照射
Irradiation of Brain Tumors in Dogs with Neurologic Disease
J Vet Intern Med 19[6]:849-854 Nov-Dec'05 Retrospective Study 29 Refs
Carla Rohrer Bley, Andrea Sumova, Malgorzata Roos, and Barbara Kaser-Hotz
放射線療法は、犬の多くの原発性脳腫瘍で選択される。健康な脳組織に囲まれることにより許容される放射線照射量は、限定される因子の可能性があり、総照射量、分画スケジュール、容積効果は放射線療法下の患者の結果に影響するかもしれない。この遡及研究の目的は、神経疾患の症状を示す脳腫瘍を持つ犬に対する放射線療法の効果を評価することだった。脳腫瘍を持つ46頭の犬を調査した。
34頭の犬はコンピューター作成治療プランを利用し、照射量-容量データを入手できた。総処方放射線照射量は35-52.5Gy(平均40.9[SD±2.9])で、2.5-から4-Gy分画(平均3.2)で使用した。神経症状悪化による死亡から算出した総生存期間中央値は、1174日(95%信頼区間[CI]、693-1655日)だった。疾患または治療結果による全ての死亡を想定した時、生存期間中央値は699日(95%CI、589-809日)だった。来院時の主要位置、大きさ、神経症状など臨床予後因子は認められなかった。コンピューターによる治療プラント正確な位置づけにより、高照射量(>80%総照射量)で平均関連脳容量35.3%(±12.6)を限定することが出来た。それらの低容量は梗塞または壊死のような重度晩発効果の確率を低下させるかもしれない。
この研究で、即時または遅延副作用はほとんどなく、また晩発効果も認められずにクオリティーオブライフは良い-優良だった。(Sato訳)
■胸膜中皮腫が疑われる猫における姑息的腔内カルボプラチン療法
Palliative Intracavitary Carboplatin Therapy in a Cat with Suspected Pleural Mesothelioma
J Feline Med Surg 7[5]:313-316 Oct'05 Case Report 25 Refs
Andy Sparkes BVetMed, PhD, DipECVIM, MRCVS; Suzanne Murphy BVM&S, MSc, MRCVS; Fraser McConnell BVM&S, CertSAM, DVR, DipECVDI, MRCVS; Ken Smith BVM&S, PhD, FRCPath, MRCVS; Anthony S Blunden BVetMed, MRCPath, PhD, MRCVS; Kostas Papasouliotis DVM, PhD, DRCPath, DipECVCP, MRCVS; Dominique Vanthournout DVM, MRCVS
12歳の去勢済みオリエンタルショートヘアーが胸水でAnimal Health Trust for investigationに紹介されてきた。超音波検査で、縦隔頭側、尾側の胸膜面の不規則な肥厚が顕著だった。肥厚した胸膜の針吸引生検と胸水の細胞診では、中皮腫の診断を示唆した。超音波ガイド下による胸腔内の完全な排液後、60mlの滅菌水で180mg/m2カルボプラチンを希釈し、胸腔内(半胸郭30ml)に注入した。これにより34日間臨床症状が完全に解消した(前4週間は4回の胸腔穿刺を必要としている)。その処置を200mg/m2で繰り返し、さらに20日間臨床症状が認められなかった。追加治療は断念され、最初の来院から120日目に安楽死を行った。これは猫中皮腫が疑われ姑息的化学療法が成功した最初の報告で、胸膜腔の腫瘍に腔内カルボプラチンが考慮できると思われる。(Sato訳)
■犬の指の腫瘍:64頭の犬の獣医協同腫瘍学グループ遡及研究
Canine Digital Tumors: A Veterinary Cooperative Oncology Group Retrospective Study of 64 Dogs
J Vet Intern Med 19[5]:720-724 Sep-Oct'05 Retrospective Study 10 Refs
Carolyn J. Henry, William G. Brewer Jr, Elizabeth M. Whitley, Jeff W. Tyler, Gregory K. Ogilvie, Alan Norris, Leslie E. Fox, Wallace B. Morrison, Alan Hammer, David M. Vail, and John Berg
種々の指の腫瘍をもつ犬の臨床特性と転帰を比較した。9箇所の獣医施設の罹患犬の医療記録と組織標本を再調査した。リスクファクターとして年齢、体重、性別、腫瘍部位(後枝または前肢)、局所腫瘍(T)ステージ、転移、腫瘍タイプ、治療様式などを調査した。局所疾患フリー期間(LDFI)、転移フリー期間(MFI)、生存期間(ST)に対する仮想リスクファクターの影響を判定するのにKaplan-Meier法を使用した。結果は群間P<.003の時に有意差と考えた。64頭の犬を調査した。扁平上皮癌(SCC)が腫瘍の33(51.6%)を占めた。3頭は複数の指にSCCを持つまたは発症した。
他の診断には、悪性メラノーマ(MM)(n=10;15.6%)、骨肉腫(OSA)(n=4;6.3%)、血管周囲細胞腫(n=3;4.7%)、良性軟部組織腫瘍(n=5;7.8%)、悪性軟部組織腫瘍(n=9;14%)などが含まれた。悪性腫瘍の犬14頭は皮毛が黒で、MM10頭中5頭がそうだった。その手技にかかわらず外科手術が最も一般的な治療で、生存率に正の影響があった。年齢、性別、腫瘍タイプ、部位、ステージなど調査した患者の変動値の中で生存期間に有意に影響するものはなかった。LDFIとMFIはより高い腫瘍ステージによるネガティブな影響を受けたが、悪性腫瘍のタイプには影響されなかった。診断時の転移はLDFIをより短くしたが、生存期間には有意な影響を持たなかった。それら所見をもとに、腫瘍タイプや転移病巣の存在にかかわらず、指に腫瘍を持つ犬の治療に早期外科的介入が勧められる。(Sato訳)
■猫の多発性骨髄腫
Multiple Myelomas in Cats
J Feline Med Surg 7[5]:275-287 Oct'05 Review Article 29 Refs
Fikry Hanna BVSc, MRCVS, Cert SAO
多発性骨髄腫は猫の骨髄のまれな腫瘍である[Weber NA, Tebeau CS (1998) An unusual presentation of multiple myeloma in two cats. Journal of the American Animal Hospital Association 34 (6), 477-483]。多発性骨髄腫と診断した9頭の猫を16年間(1986-2002)遡及的に確認した。多発性骨髄腫の猫は7歳以上(平均年齢11.7歳)で、オス6頭、メス3頭が罹患していたが、品種の素因はなかった。治療は、9頭が支持療法、8頭は抗腫瘍療法だった。支持療法は、水和、腎機能維持、感染症状がないときでも抗菌剤療法を行った。メルファランとプレドニゾロンの抗腫瘍療法が8頭の猫で行われた。3頭は治療に反応せず、5頭は反応を示したが、1頭の猫では反応は部分的および一時的なものでしかなかった。5頭は臨床的に改善、および血清蛋白濃度の低下を示した。8頭中5頭(63%)は化学療法に反応し、4頭で完全寛解、1頭で部分寛解を示した。それら猫の生存期間は、15、4、17、24ヶ月だった。(Sato訳)
■補助的ドキソルビシン化学療法を使用した、またはしなかった高グレード軟部組織肉腫の犬の予後
Outcome of Dogs with High-Grade Soft Tissue Sarcomas Treated With and Without Adjuvant Doxorubicin Chemotherapy: 39 Cases (1996-2004)
J Am Vet Med Assoc 227[9]:1442-1448 Nov 1'05 Retrospective Study 33 Refs
Kim A. Selting, DVM, MS, DACVlM; Barbara E. Powers, DVM, PhD, DACVP; Laura J. Thompson, BS; Elise Mittleman, DVM; Jeff W. Tyler, DVM, PhD, DACVlM; Mary H. Lafferty; Stephen J. Withrow, DVM, DACVlM, DACVS
目的:高グレード(グレード3)軟部組織肉腫(HGSTSs)を持つ犬の予後に対する補助的ドキソルビシン化学療法の効果を調査する
構成:回顧的症例シリーズ
動物:39頭の犬
方法:HGSTSsの犬の医療記録を再検討した。この研究には、外科切除単独または術後単剤ドキソルビシン化学療法で治療した犬を含めた。オーナーおよび獣医師に追加情報を得るため連絡を取った。HGSTSsの診断を確認するため、組織切片のスライドを再調査した。追加検査を行わない、放射線療法またはドキソルビシン以外の化学療法を投与した症例は除外した。
結果:39頭が基準をクリアーした。21頭はドキソルビシンを投与されていた。腫瘍-、患者-、治療-関連変動値は、生存期間同様、局所、転移、総疾患フリー期間などの測定結果に有意な関連を示さなかった。全頭の総疾患フリー期間中央値は724日、生存期間中央値は856日だった。
結論と臨床関連:補助的ドキソルビシンベースの化学療法はこのHGSTSsの犬集団に有益ではなかった。それら症例の内蔵HGSTSsの結果は、内蔵以外のHGSTSsのそれと同じだった。(Sato訳)
■犬における後腹膜アポクリン腺癌に関係する高カルシウム血症
Hypercalcaemia associated with a retroperitoneal apocrine gland adenocarcinoma in a dog.
J Small Anim Pract 44[5]:221-4 2003 May
Bertazzolo W, Comazzi S, Roccabianca P, Caniatti M
7歳メスのゴールデンレトリバーが、多尿/多渇、進行性の排尿困難の病歴で来院した。臨床検査、エックス線写真、超音波画像で後腹膜腔に見られる大きな軟部組織マスによる尿の貯留を認めた。血液検査で腫瘍随伴性高カルシウム血症を認めた。マスの針吸引細胞診により肛門アポクリン腺癌に似ている上皮腫瘍が示唆された。安楽死後の剖検で、後腹膜マスの組織病理診断は、アポクリン腺癌だった。生前検査、剖検にもかかわらず、会陰、または肛門腫瘍は見つからなかった。この症例の後腹膜腫瘍は、肛門の不顕性アポクリン腺癌からの非常に大きなリンパ節転移巣の可能性、または犬の後腹膜腔の異所性アポクリン腺癌の最初の症例である可能性がある。(Sato訳)
■鼻腔内腫瘍の犬における加速放射線照射後の鼻腔内容除去、または加速放射線照射単独療法の結果:53症例(1990-2002)
Outcome of Accelerated Radiotherapy Alone or Accelerated Radiotherapy Followed by Exenteration of the Nasal Cavity in Dogs with Intranasal Neoplasia: 53 Cases (1990-2002)
J Am Vet Med Assoc 227[6]:936-941 Sep 15'05 Retrospective Study 23 Refs
William M. Adams, DVM, DACVR; Dale E. Bjorling, DVM, MS, DACVS; Jonathan F. McAnulty, DVM, PhD; Eric M. Green, DVM, DACVR; Lisa J. Forrest, VMD, DACVR; David M. Vail, DVM, DACVIM
目的:悪性鼻腔内腫瘍の犬において、放射線照射単独vs. 放射線照射後鼻腔内容除去の長期結果を比較する
構成:回顧的研究
動物:悪性鼻腔内腫瘍の犬53頭
方法:全ての犬は、週日連続で放射線4.2Gyの10分画照射を行った。手術群(n=13)の犬に関しては、CT実施後、持続腫瘍または再発腫瘍が見られたとき手術を行った。
結果:手術を行った犬の周術合併症は、輸血を必要とする出血(2頭)、皮下気腫(8頭)だった。鼻炎と骨髄炎‐骨壊死が、放射線単独群(それぞれ4頭と3頭)よりも、放射線と手術群の犬(それぞれ9頭と4頭)に有意に多く発生した。2-および3年生存率は放射線照射群の犬でそれぞれ44%、24%で、手術群の犬で69%、58%だった。放射線と手術群の犬の総生存期間中央値(47.7ヶ月)は、放射線単独群(19.7ヶ月)よりも有意に長かった。
結論と臨床関連:放射線照射を行っている鼻腔内腫瘍の犬で、鼻腔内容除去は有意に生存期間を延ばすと思われる。放射線照射後の内容除去は、慢性合併症のリスクを増すかもしれない。(Sato訳)
■両側性耳道腫瘍の3症例
Bilateral Ear Canal Neoplasia in Three Dogs
Vet Dermatol 16[4]:276-282 Aug'05 Case Report 16 Refs
Gila Zur
両側性耳道感染は犬でよく見られる。耳道腫瘍は片側性のものであり、犬でほとんどない。著者の知るところでは、両側の耳の腫瘍は犬で報告されておらず、人の文献で4例しか見つからない。ここで外耳道両側に腫瘍を持つ3例の犬を述べる。3頭は両側性外耳炎を呈し、両外耳道とも組織が増殖し、グルココルチコイドに反応しなかった。
治療は全外耳道切除を行い、組織は組織病理検査を行った。症例1(10歳オスのコッカスパニエル)は、耳垢腺癌と診断された。症例2と3は扁平上皮癌と診断された。症例1は4年前に慢性の耳の疾患を起こす角化障害を持つと診断されていた。症例2(5歳メスのフレンチブルドック)は、4年前に脱感作に反応しないアトピー性皮膚炎と診断され、グルココルチコイドで唯一部分的反応を示すのみだった。症例3(9歳オスのジャーマンシェパード)は、来院2ヶ月前に片側性外耳道増殖を持つと担当医に診断されていた。しかし、耳鏡検査で両側耳道を塞ぐ増殖が見られた。つまり、両側外耳道腫瘍は、非反応性、増殖性の耳病態の症例で考慮すべきである。(Sato訳)
■猫における外耳道マスの針生検:27症例の細胞診結果と組織学的相関
Fine-Needle Biopsy of External Ear Canal Masses in the Cat: Cytologic Results and Histologic Correlations in 27 Cases
Vet Clin Pathol 34[2]:100-105 Summer'05 Retrospective Study 23 Refs
Davide De Lorenzi, Ugo Bonfanti, Carlo Masserdotti, Massimo Tranquillo
背景:細胞の剥離が少ないことや、腫瘍細胞が炎症の関与により隠されるかもしれないので、スワブのみで外耳道腫瘍の細胞診は困難、または不可能である。針生検(FNB)が診断に対し細胞を高率に採取するため使用できる。
目的:この研究目的は、ネコの外耳道に成育するマスに正確な診断を下す、FNBと細胞診の有効性と診断価値を評価することである。
方法:全身麻酔下で外耳道のマスからの細胞標本を4群に分類した。1)耳垢腺過形成または腺腫、2)耳垢腺癌、3)炎症性ポリープ、4)他の腫瘍性および非腫瘍性マス。細胞病理学的診断を最終的な組織病理診断と比較し、診断検査の正確指数(感受性、特異性、尤度比、診断‐オッズ比)を算出した。
結果:27個のマス(25頭うち2頭は両側)を研究した。結果は、細胞診と組織診断の良好な相関を示した。全体の一致指数(K)0.74、診断オッズ比22、炎症性ポリープと腫瘍(良性悪性とも)の診断は100%(27/27)一致。
結論:猫における外耳道マスのFNB細胞病理は、炎症性ポリープと主要の鑑別に十分正確だった。しかし、良性増殖と悪性腫瘍の鑑別に組織病理学的確認が望まれる。(Sato訳)
■発癌および制癌療法におけるシクロオキシゲナーゼの役割
The Role of Cyclooxygenase in Carcinogenesis and Anticancer Therapy
Compend Contin Educ Pract Vet 27[8]:616-267 Aug'05 Review Article 40 Refs
Andrea B. Flory, DVM; and Amy K. LeBlanc, DVM, DACVIM (Oncology)
免疫抑制、血管形成、抗アポトーシスメカニズムに関与する、種々の腫瘍によるプロスタグランジン(PGs)の過剰生産は、癌の発育、転移に寄与すると思われる。現行の研究で、多くの腫瘍は酵素シクロオキシゲナーゼ(COX)-2が過剰発現し、PG産生の原因であると示されている。COXの抑制は、がん予防と治療の新規概念で、制癌療法におけるNSAIDsの役割に対する興味を抱かせる。(Sato訳)
■猫の気管支腺癌の皮膚転移
Cutaneous Metastases of a Bronchial Adenocarcinoma in a Cat
Vet Dermatol 16[3]:183-186 Jun'05 Case Report 25 Refs
Claude Favrot and Frederique DeGorce-Rubiales
これは、猫の気管支腺癌の腹部皮膚転移病巣を持つ症例報告である。その猫は、発咳と同時に腹部皮膚に紅斑、膿疱、プラークを急性発症したため、抗生物質とコルチコステロイドで治療していた。皮膚膿疱の針吸引細胞診、胸部エックス線検査、皮膚バイオプシーの組織検査をもとに診断した。予後が悪いため安楽死し、検死所見で診断を確認した。猫で肺がんの皮膚転移はまれであるが、骨に関与した足指で報告されている。著者の知るところでは、これはネコ気管支癌の腹部皮膚転移の最初の報告である。(Sato訳)
■犬猫の癌の痛みを和らげる
Treating Cancer Pain in Dogs and Cats
Vet Med 100[5]:364-379 May'05 Review Article 65 Refs
Louis-Philippe de Lorimier, DVM and Timothy M. Fan, DVM, DACVIM
癌の種類にかかわらず、種々のステージで疼痛は見られ、苦痛だけでなく他の有害な生理学的影響も起こす。それを十分認識し、手術‐放射線‐薬剤など一番良いオプションを使用しているのも確かである。
癌を持つ犬猫の疼痛は、直接もととなる癌に向けた治療により緩和するだろうが、その他にクオリティオブライフを改善する対症的鎮痛処置も必要と思われる。人では癌疼痛の管理に関する比較的豊富な文献がある。それに対し、特に動物の癌疼痛の管理に関する情報は少ない。
前向き研究を行った文献と、利用可能な治療オプションのよりよい情報で、担癌動物の適切な疼痛管理に対する必然的枠組みを提供すべきである。(Sato訳)
■スコティッシュテリアの膀胱移行上皮癌のリスク軽減に対する食餌中野菜摂取の効果を評価する
Evaluation of the Effect of Dietary Vegetable Consumption on Reducing Risk of Transitional Cell Carcinoma of the Urinary Bladder in Scottish Terriers
J Am Vet Med Assoc 227[1]:94-100 Jul 1'05 Case-Control Study 96 Refs
Malathi Raghavan, DVM, PhD; Deborah W. Knapp, DVM, MS, DACVIM; Patty L. Bonney; Marcia H. Dawson, DVM; Lawrence T. Glickman, VMD, DrPH
目的:スコティッシュテリアの膀胱移行上皮癌(TCC)発症リスクに対し、野菜消費およびビタミン添加の効果を評価すること
構成:症例‐対照研究
動物:TCCを持つ92頭のスコティッシュテリア成犬(症例)とそれ以外の状態のスコティッシュテリア83頭(コントロール)
方法:TCCと診断される前の年の食餌とビタミン摂取に関しTCCの犬の飼育者と、それに相当する期間についてコントロール犬のオーナーにアンケートを実施した。食餌とビタミン添加に関し、TCC発症リスク(オッズ比[OR]) をロジスティック回帰により判定した。
結果:年齢、体重、不妊状況、皮毛色を調整した後、週3回以上の野菜摂取(OR、0.30;95%信頼区間、0.15-0.62)とTCC発症リスクに逆関数の関連が見られた。個々の野菜の種類に対してみると、TCC発症リスクは、緑葉野菜(OR、0.12;95%CI、0.01-0.97)および黄‐オレンジ色野菜(OR、0.31;95%CI、0.14-0.70)の消費に逆関数の関連があった。アブラナ科の消費は、TCC発症リスク低減の有意な関連を示さなかった(OR、0.22;CI、0.04-1.11)。毎日のビタミン添加に関するTCCリスクの50%低下を検出する研究の検出力は低いと考えられた(25%)。
結論と臨床関連:野菜の消費はスコティッシュテリアのTCC発症を予防する、または遅くするかもしれないと思われる。
■膀胱移行上皮癌の犬31頭におけるカルボプラチン、ピロキシカム療法
Carboplatin and Piroxicam Therapy in 31 Dogs with Transitional Cell Carcinoma of the Urinary Bladder
Vet Comp Oncol 3[2]:73-80 Jun'05 Original Article 26 Refs
P. A. Boria; N. W. Glickman; B. R. Schmidt; W. R. Widmer; A. J. Mutsaers; L. G. Adams; P. W. Snyder; L. DiBernardi; A. E. de Gortari; P. L. Bonney; and D. W. Knapp
膀胱の侵襲性移行上皮癌(TCC)は、内科療法に対する反応が乏しい。プラチナ製剤とシクロオキシゲナーゼ(cox)阻害剤の組み合わせは、ヒトの状態にかなり似ている犬TCCに対し見込みが示されている。組織学的に確認し、測定可能な自然発生のTCCを有す犬31頭に、カルボプラチンにcox阻害剤を組み合わせた第2相臨床試験を実施した。治療前と6週ごとに完全な腫瘍のステージングを実施した。29頭の腫瘍の反応は、11頭が部分寛解、13頭は安定病態、5頭は進行病態だった。31頭中2頭は、腫瘍の最ステージング前に中止した。23頭に胃腸毒性が観察された。11頭に血液毒性が見られた。カルボプラチン初期治療から死亡までの生存期間中央値は161日だった。結論として、カルボプラチン/ピロキシカムは、coxがカルボプラチンの抗腫瘍活性を高める所見を提供した40%の犬の寛解を誘発した。しかし、毒性頻度と限られた生存期間はTCCに対し、この特別なプロトコールの使用を支持するものではない。(Sato訳)
■What Is Your Diagnosis?
J Am Vet Med Assoc 226[8]:1299-1300 Apr 15'05 Case Report 6 Refs
Pamela Schwartz, DVM; Jamie R. Bellah, DVM, DACVS; and Don Wolfersteig, DVM, DAVBP
病歴
8歳5.9kgの去勢済みジャックラッセルテリアの雑種を、約2ヶ月持続する短い乾性発咳で評価した。評価1週間前に咳をした時少量の血液が認められた。犬が興奮した時に発咳も認められていた。身体検査所見は特に呼気時の時折見られる喘鳴を除き正常だった。頚部のエックス線写真を委託獣医師より入手した。
X線所見と解釈
舌骨装置尾側に位置する不透明な軟部組織(直径2cm)が見て取れた。
コメント
胸部X線に顕著な異常はなかった。頚部の腹背X線像を入手し、そのmassは気管内と確認した。そのmassは気管の左側から発しており気管腔の約70%を占めていた。
第4,5気管軟骨レベルで気管切開と吻合を実施した。壁-粘膜massは腔に突出し、気管軟骨外側面はわずかにゆがんでいた。Massの一部は神経様構造物に広がり横断しているように見えた。組織検査はプラズマ細胞腫に一致した。
腫瘍は横断した神経に隣接する限局した脈管浸潤を除き、完全切除されたと思われた。オーナーにそれらの結果を説明し、化学療法を薦めたが、オーナーはそれ以上の診断検査や補助療法を断った。術後3ヶ月、オーナーからイヌは臨床症状もなくいかなる治療も行っていないと報告を受けた。(Sato訳)
■犬と猫における肝腫瘍
Liver Tumors in Cats and Dogs
Compend Contin Educ Pract Vet 26[1]:50-56 Jan'04 Review Article 48 Refs
Julius M. Liptak, BVSc, MVetClinStud, FACVSc; William S. Dernell, DVM, MS, DACVS; Stephen J. Withrow, DVM, DACVS, DACVIM (Oncology)
Colorado State University
肝臓を侵す腫瘍は、原発性か転移性のいずれかの可能性があります。転移性は原発性の肝胆道の腫瘍より、よく認められます。猫と犬における原発性肝腫瘍に関する4つの分類は、肝細胞、胆管、間葉、神経内分泌です。犬において、これらの腫瘍の悪性変異株がより一般的であるのに対し、猫では、良性腫瘍、特に胆嚢胆管アデノーマがより一般的です。
原発性肝臓腫瘍は、形態学的に、塊状、結節性、広汎性に分類できます。外科的切除が可能で治癒があり得る、特に犬の肝細胞癌と、猫の胆管アデノーマや骨髄脂肪腫などの塊状腫瘍のほうが、結節性、広汎性、あるいは転移性肝腫瘍より、予後は良好です。対照的に手術ができないような結節性、広汎性、そして転移性肝腫瘍の犬と猫に対する治療選択肢は限られ、外科以外の治療法は、調査されておりません。(Dr.K訳)
■犬の前立腺癌の免疫組織化学的特徴および去勢状態と去勢時期の関連性
Immunohistochemical characterization of canine prostatic carcinoma and correlation with castration status and castration time.
Sorenmo, K. U., Goldschmidt, M., Shofer, F., Goldkamp, C. & Ferracone, J. (2003)
Veterinary and Comparative Oncology 1 (1), 48-56.
この研究の目的は腺房そして尿路上皮/尿管組織に特異的な免疫組織化学染色を使うことによって犬の前立腺癌を特徴付け、これらの結果と犬の去勢状態/去勢時期の関連させることだった。前立腺癌の犬70頭が含まれ、71%が去勢済みで29%がインタクトであった。年齢が似通ったコントロール群と比較して、去勢した犬は3.9倍前立腺癌のリスクが増加した。
58症例で免疫組織化学染色を実施した。58症例中46症例でサイトケラチン7(CK 7)(尿管/尿路上皮由来)に対して染色陽性で 58症例中1症例で前立腺得意抗原が陽性であった。CK 7陽性腫瘍の去勢した時期(2歳)はCK 7陰性腫瘍の犬(7歳)に比べより若かった(P = 0.03)。2歳で去勢してあるとCK 7陽性によりなりやすかった(P = 0.009)。
これらの結果は大部分の犬の前立腺癌はアンドロジェン非依存組織である尿管/尿路上皮に由来していることを示している。これは疫学調査所見と一致し、去勢した犬のリスクが上がることを示している。 従って犬の前立腺癌は人の疾患モデルとして現実的にはならないかもしれない。(Dr.Kawano訳)
■猫皮膚血管肉腫:18例の回顧的研究(1998-2003)
Feline cutaneous hemangiosarcoma: a retrospective study of 18 cases (1998-2003).
J Am Anim Hosp Assoc 41[2]:110-6 2005 Mar-Apr
McAbee KP, Ludwig LL, Bergman PJ, Newman SJ
犬猫で皮膚血管肉腫(HAS)はまれに報告されている。皮膚血管肉腫と診断された18頭の猫の医療記録を再検討した。診断時の年齢、種類、性別、腫瘍位置、腫瘍サイズ、治療タイプ、生存期間、疾患フリー期間、死亡原因を評価した。10頭の猫は、積極的な外科的切除が行われた。外科手術を行った方が、生存期間中央値は統計学的により長かった。腫瘍を積極的な外科切除で治療した皮膚血管肉腫の猫は、良質で長期の予後をおくれると思われる。(Sato訳)
■猫の口腔内腫瘍:10年間の調査
Feline oral neoplasia: a ten-year survey.
Vet Pathol. 1989 Mar;26(2):121-8.
Stebbins KE, Morse CC, Goldschmidt MH.
猫の口腔内における腫瘍371症例について回顧的組織学的研究が行われた。口腔内腫瘍は調査期間中に認められた猫の腫瘍の10%を占めた。口腔内腫瘍の89%が悪性であった。20種類の異なる口腔内腫瘍が見つかった。最も一般的な腫瘍は扁平上皮癌(61.2%)、繊維肉腫(12.9%)、歯周靭帯起源の線維腫性歯肉腫(7.8%)であった。(Dr.Kawano訳)
■犬猫の髄膜腫:診断、治療、予後
Canine and Feline Meningiomas: Diagnosis, Treatment, and Prognosis
Compend Contin Educ Pract Vet 26[12]:951-966 Dec'04 Review Article 118 Refs
P. Filippo Adamo, DVM, DECVN; Lisa Forrest, VMD, DACVR; Richard Dubielzig, DVM, DACVP
髄膜腫は犬猫の中枢神経系によく認められる原発性腫瘍である。髄膜腫は通常組織学的に良性であるが、それら生物学的特性は悪性と思われる。犬と猫の髄膜腫の違いは、組織学的所見、予後、そして治療などである。猫の髄膜腫は線維性が多く、通常は脳組織に浸潤しない。それらの外科的切除は犬に比較し容易で、肉眼的完全切除後の猫で放射線療法は必要ないと思われ、長期予後も犬よりよい。この文献は犬猫の髄膜腫に関する起源、組織学的サブタイプ、治療反応、結果を再検討する。(Sato訳)
■イヌの脳や腎臓を侵した悪性奇形腫様髄上皮腫
Malignant teratoid medulloepithelioma with brain and kidney involvement in a dog
Volume 7 Issue 6 Page 407 - November 2004
Mona Aleksandersen*, Ellen Bjerkas, Reidun Heiene and Steffen Heegaard
動物:脳や腎臓も関与する左眼の腫瘍を診断された4歳のナポリタンマスチフ
方法:イヌは左眼の急性緑内障を呈した。角膜辺縁血管新生と重度角膜浮腫で、深層構造ははっきりしなかった。同時に進行性の神経症状のため、イヌを安楽死し、検死を行った。眼、脳、肺、心臓、肝臓、腎臓のサンプルを4%中性ホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した。組織化学、免疫組織化学染色などで切片を光学顕微鏡により検査した。
結果:眼の腫瘍は毛様体起源で、鑑別が難しい小島や索、豊富な基質を取り巻く卵形から多面細胞からなっていた。軟骨分化部分も観察された。神経芽細胞は観察されなかった。同形態の転移は、脳と片方の腎臓に見られた。
結論:脳や腎臓に転移している眼内悪性奇形腫様髄上皮腫は存在する。(Sato訳)
■犬の鼻腔腫瘍8例に対するドキソルビシン、カルボプラチン、ピロキシカムの併用の効果
V Langova et al. : Aust Vet J 82:676(2004) : Treatment of eight dogs with nasal tumors with alternating doses of doxorubicin and caboplatin in conjunction with oral piroxicam.
目的:犬の鼻腔腫瘍に対して化学療法剤の効果と毒性を調べる。
方法:組織学的に鼻腔腫瘍と診断された8例に対して、CBC,血液化学検査、領域リンパ節のFNA、胸部X線、鼻腔のCTにより評価を行った。全例、ドキソルビシンとカルボプラチンを交互に投与するとともにピロキシカムを併用した。化学療法に対する効果を4回の治療の後にCT撮影で評価するとともに毒性をモニターした。
結果:CT所見では、4例で完全消失、2例で部分消失、2例で変化なしであった。全例で1~2回の化学療法の後に臨床症状は消失した。
結論:この化学療法プロトコールは犬の鼻腔腫瘍8例に対して効果的で充分に耐えうるものであった。
鼻腔腫瘍の死亡原因は局所病変の進行ですから、当面の目標は腫瘤の縮小。その意味合いで外科手術や放射線が用いられているのですが、白金製剤+ピロキシカムも有効という報告もあるようですし、上皮系の場合、化学療法剤も緩和目的に使用可能ということですか。
骨肉腫でドキソルビシンと白金製剤を使った報告がなされていますが、ドキソルビシン単独の場合の心筋症の危険性を減らし、カルボプラチンの高コストを抑えるためにもいいわけです。
CTのみでは、鼻汁を含む液体なのか腫瘤なのか判定は難しいので病期判定には疑問の余地もありますが、全例で臨床症状が改善したというところに価値があります。延命効果はこの文献では判断できませんが、期待できそうですね。(圓尾拓也)
■犬の腎細胞癌におけるシクロオキシゲナーゼ-2の発現
Expression of cyclooxygenase-2 in canine renal cell carcinoma.
Vet Pathol 38[1]:116-9 2001 Jan
Khan KN, Stanfield KM, Trajkovic D, Knapp DW
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は、正常な生理状態ではほとんどの組織で存在しませんが、炎症期間中、プロスタグランジン産生の原因となる主要な酵素として明らかにされております。高いレベルのCOX-2発現が、胎児腎臓の密集斑と深部上行脚で、観察されております;この発現は、腎臓の成熟中、最小限のレベルへ減退します。我々は、腎細胞癌(RCC)の腫瘍細胞は、COX-2の高い発現に戻っているかもしれないという仮説を設け、犬のRCCの自然発生3症例におけるその発現を免疫組織化学法を用いて評価しました。3症例中2頭の腫瘍細胞が、COX-2免疫反応を中程度から顕著に示しました。これらの結果は、いくつかの犬の腎細胞癌は、高いレベルのCOX-2を発現し、腫瘍細胞増殖の調節に、役割を演じているかも知れないということを示唆しております。(Dr.K訳)
■コントラスト増強CTを用いた犬の非悪性、悪性脾臓マスの比較
Comparison between malignant and nonmalignant splenic masses in dogs using contrast-enhanced computed tomography.
Vet Radiol Ultrasound 45[4]:289-97 2004 Jul-Aug
Fife WD, Samii VF, Drost WT, Mattoon JS, Hoshaw-Woodard S
悪性、非悪性脾臓マスのCT鑑別能力を21頭の犬の24個のマスで評価した。脾臓摘出、または安楽死前に腹部CTスキャンを造影剤静脈内投与前後に実施した。ハウンスフィールド単位(HU)と容積をもとに脾臓マスを客観的に評価した。主観的判断基準は、残りの脾臓実質と比較した脾臓内の位置(頭、体、尾)、辺縁、均質性、減衰などだった。悪性、非悪性マスの特性を比較した。非悪性マスをさらに分析するため、血腫と結節性過形成に分類した。マス14個(58.3%)は非悪性で10個(41.7%)は悪性だった。造影する前後共に、非悪性脾臓マスと比較し、悪性脾臓マスはHUで測定した減衰値がより低かった(P<0.05)。
造影後の画像で、3つの脾臓マスの分類(悪性、血腫、過形成)中の減衰特性に有意差が見られ、結節性過形成は最も高いHU値(90.3)、血腫は中間(62.5)、悪性脾臓マスは最も低いHU値(40.1)だった。造影後HU値のレシーバーオペレーター特性曲線は、悪性と非悪性マスの鑑別で一番良い域値として55を示し、その閾値以下は悪性だった。腹部CTは限局性犬の脾臓マスの評価で有効な診断画像様式で、悪性、非悪性マスの画像特性で有意差を示す。(Sato訳)
■犬の原発性腎臓腫瘍:54症例の回顧的評論
Canine primary renal neoplasms : A retrospective review of 54 cases
J Am Anim Hosp Assoc 24[4]:443-452 Jul/Aug'88 31 Refs
1M. K. Klein, DVM; G. L. Cockerell, DVM, PhD, Dipl ACVP; C. K. Harris, DVM; S. J. Withrow, DVM, Dipl ACVS; J. P. Lulich, DVM; G. K. Ogilvie, DVM, Dipl ACVIM; A. M. Norris, DVM, Dipl ACVIM; H. J. Harvey, DVM, Dipl ACVS; R. F. Richardson, DVM, Dipl ACVIM; J. D. Fowler, DVM; J. Tomlinson, DVM, Dipl ACV
54頭の犬に関する回顧的研究
素因:年齢は4歳から14歳(平均=9.1歳)の範囲でした。大部分がオス(32/54)でした。
臨床徴候は非特異的で、抑うつ/不活発(28/54)、食欲不振(27/54)、腹部腫瘤(22/54)、体重減少(21/54)、嘔吐(19/54)、発熱(8/54)、腹部疼痛(8/54)、跛行(4/54)、尿失禁(2/54)、四肢麻痺(2/54)、多飲/多尿(2/54)、そして黄疸(1/54)などがありました。
検査所見もまた非特異的で、貧血(14/54)、白血球増加(6/54)、赤血球増加(1/54)、尿毒症(13/54)、クレアチニン増加(5/54)、アルカリフォスファターゼ増加(8/54)、アラニンアミノトランスフェラーゼ増加(3/54)、蛋白尿(33/54)、肉眼的血尿(18/54)、そして顕微鏡的血尿(27/54)、細菌尿(10/54)などがありました。
レントゲン検査所見:腹部レントゲン(43/54)は、35/43で腫瘤が明らかとなり、23/35で腎臓であると識別されました。静脈腎盂像(26/54)が、25/26で腫瘤が明らかとなり、25/25で、腎臓であると確認されました。胸部レントゲン(38/54)で、13/38に転移像が明らかとなりました。
超音波検査(13/54)は、13/13で腫瘤が明らかとなり、11/13で腎臓であると識別されました。
治療:29/54頭の犬で腎摘出を行いました。
転帰には、手術中の安楽死(7/29)、術後72時間以内の死亡(4/29)、追跡できなかったもの(3/29)、そして術後1-25ヵ月間の生存期間範囲で、少なくとも術後21日生存したもの(15/29)がありました。2頭の犬は、術後18ヵ月と25ヵ月になりますが、いまだ生存しております。
手術を受けなかった犬のうち11頭は、発覚後24時間以内に安楽死、4頭は追跡できなかった、残りは、安楽死、または死亡でした。
剖検/組織病理学:認められた原発性腎腫瘍には;腎尿細管細胞癌(35)とアデノーマ(1)、腎移行細胞癌(5)と乳頭腫(3)、そして腎未分化癌(2)を含めた上皮系腫瘍(46/54);間葉系腫瘍(6/54) では、腎未分化肉腫(3)、リンパ肉腫(1)、繊維腫(1)、そして血管肉腫(1)がありました;そして腎芽腫(2/54)です。腎芽腫となった犬は2頭とも8歳でした(通常若齢犬に多い)。腎尿細管細胞癌のうち2頭は、結節性皮膚繊維症のジャーマン・シェパードに発生した嚢胞腺癌でした。この症候群は、ジャーマン・シェパードで、過去に報告されております。
転移は、腹部(20/34)、肺(18/34)、リンパ節(10/34)、そして骨(8/34)に良く認められます。
論文では、原発性腎腫瘍に関する所見を詳しく分析しております。(Dr.K訳)
■リビヤナツメヤシのβ-D-グルカンの抗腫瘍効果
Antitumor activity of beta-D-glucan from Libyan dates.
J Med Food. 2004 Summer;7(2):252-5.
Ishurd O, Zgheel F, Kermagi A, Flefla M, Elmabruk M.
抗腫瘍効果を持つβ-グルカンがリビヤのナツメヤシから分離され、精製されたグルカンの構造をメチル化、過ヨウ素酸酸化、そして酢化分解などの方法を使って特徴付けた。グルカンは強い抗腫瘍効果を示すことが見出された。;この活性はその(1-3)β-D-グルカン結合と相互に関係がある。そのような抗腫瘍効果のあるグルカンは酵母菌、真菌、細菌そして植物などいくつか他の源から得られている。これはナツメヤシグルカンにおける抗腫瘍効果を報告する初めての研究である。(Dr.Kawano訳)
■精巣疾患の犬の性ホルモン濃度
Sex Hormone Concentrations in Dogs with Testicular Diseases
Sm Anim Clin Endocrinol 14[1]:41-42 Jul'04 Original Study 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Companion Animal Medicine and David Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) Professor, Small Animal Medicine
Mischke R, Meurer D, Hopen HO, et al.; Res Vet Sci 2002;73:267-272
イントロダクション:
背景:老齢オス犬の両側性脱毛で一般的な鑑別診断は、甲状腺機能低下症、典型的および非典型的副腎皮質機能亢進症、雌性化精巣腫瘍などがある。両側性脱毛に関与する一般的な精巣腫瘍はセルトリ細胞腫である。しかし、ライディッヒ細胞腫瘍は、脱毛を伴う雌性化症候群の原因となる可能性がある。
目的:この研究目的は、精巣腫瘍、停留睾丸、退行性精巣疾患の犬の血漿エストラジオール-17ベータおよびテストステロン濃度を評価することである。
サマリー:
方法:去勢を実施し、精巣を組織学的に検査したオス犬93頭中、20頭はライディッヒ細胞腫瘍、6頭はセルトリ細胞腫、9頭は精上皮腫、7頭は鼡径部停留精巣、9頭は腹部停留精巣、6頭は退化精巣、20頭は組織学的に正常な陰嚢内精巣だった。血漿エストラジオール-17ベータとテストステロン濃度を各犬の去勢前に測定した。超音波検査で正常な片側停留精巣のイヌは、オーナーが許可しなければ去勢しなかった。混合腫瘍、精巣嚢腫、精巣炎、他の異常のイヌは研究から除外した。
結果:正常犬に比べ、セルトリ細胞腫のイヌは正常平均血漿エストラジオール濃度よりも有意に高く(29pg/ml;正常、18pg/ml)、平均血漿テストステロン濃度は有意に低かった(0.08ng/ml;正常、1.95mg/ml)。血漿エストラジオール濃度の最高値は、腹腔内セルトリ細胞腫の犬で認められた。血漿テストステロン/エストラジオール比は、正常犬よりも有意に低かった(0.32;正常、9.5)。精上皮腫のイヌの血漿エストラジオール濃度は、正常犬よりも有意に低かった(12.0pg/ml;正常、18pg/ml)。
セルトリ細胞腫の犬6頭中5頭、ライディッヒ細胞腫瘍の1頭は、雌性化、女性化乳房、色素増強、両側対称性脱毛の症状があった。ライディッヒ細胞腫に関与する雌性化のイヌのテストステロン/エストラジオール比は最も高かった。
結論:オス犬の雌性化は、エストラジオール濃度が上昇するよりも、血漿テストステロン/エストラジオール比の低下によく関係する。血漿テストステロン/エストラジオール比は、個々のホルモン濃度より雌性化精巣膿瘍のよい診断ツールである。
臨床への影響:
少なくとも1/3のセルトリ細胞腫は、エストロゲン様物質産生、雌性化、脱毛の症状を起こす能力がある。腫瘍の大きさ、または腹腔内に存在およびその両方で、エストロゲン様物質、特にエストラジオール-17ベータの産生に関連するかもしれない。エストラジオールは黄体ホルモン、続いてライディッヒ細胞からのテストステロン産生を抑制する。非対称性陰嚢、陰嚢前または腹腔内精巣を伴う脱毛したオス犬は去勢すべきである。しかし、雌性化セルトリ細胞腫の存在が不確かな所見であれば、テストステロン/エストラジオール比の低下で診断できるかもしれない。
ライディッヒ細胞腫は、相対的に過剰なテストステロンを産生する能力がある。ライディッヒ細胞腫の犬は、会陰ヘルニア、肛門周囲腺腫のようなアンドロゲン依存性の病気を発症する平均リスクがより高い。この報告の犬が発症したように、過去にライディッヒ細胞腫に雌性化が関与したものもある。アンドロゲンは標的細胞でエストロゲンを芳香化した結果、雌性化を起こすのかもしれない。本症例はテストステロン/エストラジオール比の上昇を示しているが、血漿テストステロン濃度の絶対的上昇はなかった。ライディッヒ細胞腫は一般的な精巣膿瘍で、触診されないかも知れず、停留精巣で発生は増加しない。脱毛したオス犬で雌性化ライディッヒ細胞を探すため、テストステロン/エストラジオール比の上昇をモニタリングすることは、セルトリ細胞腫の犬のテストステロン/エストラジオール比よりも臨床で使用する価値があると約束する。(Sato訳)
■放射線照射と徐放性シスプラチン製剤を用いた犬鼻部腫瘍の治療
Use of radiation and a slow-release cisplatin formulation for treatment of canine nasal tumors.
Vet Radiol Ultrasound 45[6]:577-81 2004 Nov-Dec
Lana SE, Dernell WS, Lafferty MH, Withrow SJ, LaRue SM
この研究で、犬の悪性鼻部腫瘍の治療に対する放射線照射と徐放性シスプラチン化学療法製剤の使用を評価した。この回顧的分析は、51頭の犬の治療毒性、腫瘍タイプ、疾患のステージ、有孔プレート浸潤、総生存期間に関し評価した。一般に治療によく許容した。カプラン-マイヤー法による生存期間の平均と中央値は570日と474日だった。生存期間に影響した腫瘍の種類、疾患のステージ、有孔プレート浸潤などの他の因子はなかった。結論として犬の鼻部腫瘍の治療として、徐放性シスプラチン化学療法と放射線照射の組み合わせはよく許容した。この分析の結果により、他の有効放射線照射増強剤の可能性と投与スケジュールを解明するさらなる研究を行う必要がある。(Sato訳)
■犬の前立腺疾患の細胞診評価
Evaluation of the Cytologic Diagnosis of Canine Prostatic Disorders
Vet Clin Pathol 33[3]:150-154 Fall'04 Prospective Study 7 Refs
Joshua R. Powe, Paul J. Canfield, Patricia A. Martin
犬の前立腺疾患は一般に細胞診により評価され、特に超音波ガイド下針吸引生検(US-FNA)が広く用いられる。しかし、前立腺細胞診の正確性を評価した研究はあまりない。
目的:この研究の目的は、組織学診断での比較で他の方法とUS-FNAを使用した前立腺疾患の細胞診の有効性を評価することである。
方法:25頭の成犬から得た前立腺、または前立腺周囲組織の細胞そして組織病理標本を回顧的に評価した。細胞標本をUS-FNA、前立腺マッサージ、または手術時の直接圧スメアー、組織吸引により採取した。組織病理切片は、バイオプシー、または剖検で集めた組織から採取した。
結果:細胞診で、診断不可能(n=2)、膿疱(n=1)、扁平上皮化生(n=2)、炎症(n=4)、前立腺肥大(BPH;n=5)、炎症と前立腺肥大(n=3)、炎症と前立腺肥大と腫瘍(n=1)、炎症と腫瘍(n=3)、腫瘍(n=4)に分類できた。25例中20例(80%)が確定組織診断と一致した。US-FNAで採取したサンプルのうち、75%が一致した。US-FNAで採取した4サンプルと前立腺マッサージ洗浄で採取した1サンプルが結果と一致しなかった。
結論:この研究の結果は、前立腺の状態に対し、細胞診と組織病理学診断の強い一致性を示唆する。US-FNAによる結果の不一致は、一般に適切なサンプルの採取失敗というよりは、病理過程の結果起こった。(Sato訳)
■猫2例の転移性滑膜細胞肉腫
Metastatic Synovial Cell Sarcoma In Two Cats
Vet Comp Oncol 2[3]:164-170 Sep'04 Case Report 20 Refs
J. M. Liptak, S. J. Withrow, D. W. Macy, D. J. Frankel and E. J. Ehrhart
領域リンパ節に転移した滑膜細胞肉腫(SCS)を猫2例で診断した。滑膜細胞肉腫は猫でまれで、転移性滑膜細胞肉腫は過去に報告がない。両症例とも、治療は患肢の断脚と補助的ドキソルビシン投与だった。1頭の猫で局所腫瘍の再発と肺転移を術後316日目に診断した。この猫は断脚後444日で慢性腎不全により死亡した。2頭目は、局所腫瘍再発や転移性疾患の所見はなく、術後41日目に急性肺血栓塞栓症で死亡した。(Sato訳)
■犬の充実性肝細胞癌:48例(1992-2002)
Massive Hepatocellular Carcinoma in Dogs: 48 Cases (1992-2002)
J Am Vet Med Assoc 225[8]:1225-1230 Oct 15'04 Retrospective Study 21 Refs
Julius M. Liptak, BVSc, MVetClinStud; William S. Dernell, DVM, MS, DACVS; Eric Monnet, DVM, PhD, DACVS; Barbara E. Powers, DVM, PhD, DACVP; Annette M. Bachand, PhD; Juanita G. Kenney; Stephen J. Withrow, DVM, DACVS, DACVIM
充実性肝細胞癌(HCC)の外科的切除を行った犬の臨床症状、診断所見、転帰、予後因子を判定し、外科的に治療した犬と保存療法を行った犬の生存期間を比較する
構成:回顧的研究
動物:48頭の犬
方法:医療記録から臨床症状、診断、外科的所見、術後転帰を調査した。犬を完治目的の肝葉切除を行ったかどうかで手術群、非手術群に振り分けた。手術そして非手術群のデータを、予後因子の確認、腫瘍コントロール率、生存期間を比較するために分析した。
結果:42頭が外科的に治療され、6頭は保存療法で管理された。手術群で、術中死亡率は4.8%、局所再発はなく、転移率は4.8%、生存期間中央値は>1460日(範囲1-1460日)だった。高ALT、AST活性は予後不良に関与していた。非手術群の生存期間中央値は270日(範囲0-415日)で外科的治療犬よりも有意に短かった。
結論と臨床関連:手術群に比べ、非手術群の腫瘍関連死亡率は15.4倍高いため、肝葉切除は充実性肝細胞癌の犬に薦められる。切除後、局所再発はなく、転移率も低く腫瘍コントロールはすばらしかった。予後因子は確認されたが、その疾患の結果死亡した手術群の犬がほんの9.5%だったので、その臨床関連は不確実だった。(Sato訳)
■犬の重度骨髄抑制を伴う5-フルオロウラシル毒性
5-fluorouracil toxicity with severe bone marrow suppression in a dog.
Vet Hum Toxicol 46[4]:178-80 2004 Aug
Fry MM, Forman MA
この報告は、犬に重度骨髄抑制を起こした5-フルオロウラシル(5-FU)毒性を述べる。イヌは当初神経、胃腸症状を呈し、重度好中球減少、血小板減少を特徴とする汎血球減少症を発症した。骨髄吸引検査で形成不全を認めた。また過去にインビトロ5-FU暴露に関与する著しい棘状細胞増加があった。犬に積極的な支持療法を行い、暴露から25日以内に回復した。著者の知るところでは、骨髄検査結果を含む犬の5-FU中毒の最初の症例で、5-FU中毒に関連する棘状細胞増加を初めて述べたものである。(Sato訳)
■癌の犬16頭で、外科クリップの位置の術後評価
Postoperative assessment of surgical clip position in 16 dogs with cancer: a pilot study.
J Am Anim Hosp Assoc 40[4]:300-8 2004 Jul-Aug
McEntee MC, Samii VF, Walsh P, Hornof WJ
金属性ヘモクリップ、または外科ステープルを18頭の腫瘍があるイヌの切除時に挿入した。術後すぐと術創治癒後に、ヘモクリップまたは金属性ステープルの数と位置を確認するため、エックス線写真を撮影した。ヘモクリップ/ステープルの変位は、主に撮影中のポジショニングによるものだった。3頭でマーカー位置の完全なシフトが確認された。この研究で、腫瘍床の確認に外科クリップ設置の有効性が明らかになり、放射線療法分野の確立に有益と思われる。(Sato訳)
■心臓新生物形成の患者における、心エコー画像の原則と心膜穿刺術
Pericardiocentesis and principles of echocardiographic imaging in the patient with cardiac neoplasia.
Clin Tech Small Anim Pract 18[2]:131-4 2003 May 18 Refs
Gidlewski J, Petrie JP
超音波検査は、心臓腫瘍のある患者における、心臓と心嚢を評価する為の、安全で、非侵襲性、そして感受性が高く特異的な手段であります。小動物において、心臓腫瘍の発生率は低いです。犬において、血管肉腫と非クローム親和性旁神経節腫が、心臓腫瘍の最も一般的に見られる2つのタイプです。猫では、リンパ肉腫が、最も良くみられる心臓腫瘍となります。心膜滲出液は、一般に良くみられ、潜在的に、心臓腫瘍のため、生命を危うくします。心膜滲出液は、心膜内腔圧の上昇を導き、様々な程度の血行力学的障害を引き起こします。
心タンポナーデは、心膜内腔圧が、右心拡張期充満圧と同等、あるいは上回った時に、心拍出量減少を導きます。心膜穿刺は、重篤な心タンポナーデの動物を安定させ、診断の為の液体サンプルを得るのに行われます。滲出液は、定量化し、特徴付けるべきです。滲出液の病因が分からなければ、サンプルを液性解析と細胞診断に提出するべきです。心膜穿刺の重篤な合併症は稀です。合併症には、心臓穿刺、不整脈、腫瘍、冠動脈の裂傷などがあり、心膜内出血を起こします。(Dr.K訳)
■腎盂の移行上皮癌のイヌ2例
Transitional cell carcinoma of the renal pelvis in two dogs.
J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 50[9]:457-9 2003 Nov
Militerno G, Bazzo R, Bevilacqua D, Bettini G, Marcato PS
腎盂の移行上皮癌(TCC)が、7歳オスのイングリッシュセッターと11歳メスのネコシェットランドシェパードの2頭のイヌで見つかった。その2頭は、特別な症状もなく臨床検査のために来院したが、症例1で血尿、症例2の尿で白っぽい物質が認められた。超音波検査で腫瘍性の像が観察され、針吸引生検を行った。組織病理検査は、2頭の悪い腎臓の腎臓、尿管摘出後に行った。症例1で非浸潤性低グレードTCC、症例2で浸潤性TCCの診断が確認された。腎盂の移行上皮由来のそれらまれな腫瘍の臨床、肉眼、細胞、組織学的特徴を報告する。(Sato訳)
■イヌの上皮性鼻腫瘍のシクロオキシゲナーゼ-2発現
Expression of cyclooxygenase-2 in canine epithelial nasal tumors.
Vet Radiol Ultrasound 45[3]:255-60 2004 May-Jun
Kleiter M, Malarkey DE, Ruslander DE, Thrall DE
シクロオキシゲナーゼ-2(COX-2)は、いくらかのヒトや動物の腫瘍で上方制御される酵素である。酵素産生は、腫瘍形成活性に関与している。放射線に対するイヌの鼻腫瘍の反応が悪いので、我々は、COX-2発現に関与するかもしれないこの抵抗性のいくつかの可能性を考慮した。これを試験するため、イヌの上皮性鼻腫瘍のホルマリン固定、パラフィン包埋、記録生検サンプル21検体を、免疫組織化学検査を使用してCOX-2発現について分析した。生検は放射線療法前のイヌから採取した。COX-2発現は、21の腫瘍中17(81%)に存在した。鼻癌、腺癌、扁平上皮癌など、いくつかの異なる腫瘍タイプでその発現が観察された。鼻腫瘍以外の5頭のコントロールのサンプルもCOX-2染色で分析した。それら標本は、COX-2陽性呼吸上皮、ストロマ細胞の散在部を伴うリンパプラズマ細胞性鼻炎の異なる程度を持つ特徴があった。鼻腫瘍のCOX-2発現の強さ、分布が予後マーカーとして使用できるかどうか、さらに調査する必要がある。放射線療法と選択的COX-2阻害剤の組み合わせは、イヌ上皮性鼻腫瘍の治療で臨床調査をする価値がある。(Sato訳)
■ラブラドールレトリバーの肢のグレード2軟部組織肉腫に併発した毛様体腺腫のインジウムー111標識化ビタミンB12画像化
Indium-111 Labeled Vitamin B 12 Imaging of a Ciliary Adenoma with Concurrent Grade 2 Soft Tissue Sarcoma of the Leg in a Labrador Retriever
Vet Ophthalmol 7[3]:209-212 May-Jun'04 Case Report 8 Refs
* Jacqueline C. Whittemore, Juliet R. Gionfriddo, Phillip F. Steyn and E. J. Ehrhart
11歳去勢済みラブラドールレトリバーを急速に成長する肢と眼内massの存在で評価した。転移は初回来院時、胸郭に認められた。インジウム-111標識化ビタミンB12画像化を行い、原発腫瘍と肺の転移巣に有意な吸収を認めた。一時的な軽減のため、切除と断脚を行った。肢のmassは、グレード2軟部組織肉腫で、眼のmassは毛様体腺腫だった。呼吸困難の症状が発現するまで、約10週間無症状を維持した。初回来院時から12週間目に安楽死を行い、肺に転移肉腫による散在性の浸潤が見られた。インジウム-111標識化ビタミンB12画像化は、この症例の毛様体腺腫を確認し、炎症、感染、腫瘍の異なる吸収を示すことが出来れば、眼内や眼球後部のmassの評価に対し、有効な鑑別方法となるかもしれない。(Sato訳)
■スコティッシュテリアの除草剤暴露と膀胱移行上皮癌のリスク
Herbicide Exposure and the Risk of Transitional Cell Carcinoma of the Urinary Bladder in Scottish Terriers
J Am Vet Med Assoc 224[8]:1290-1297 Apr 15'04 Case-Control Study 28 Refs
Lawrence T. Glickman, VMD, DrPH; Malathi Raghavan, DVM, PhD; Deborah W. Knapp, DVM, MS, DACVIM; Patty L. Bonney; Marcia H. Dawson, DVM
目的:芝生、または庭の化学薬品の暴露が、スコティッシュテリアの膀胱移行上皮癌(TCC)のリスク増大に関与するかどうかを判定する
構成:症例-コントロール研究
動物:移行上皮癌のスコティッシュテリア83頭(症例)と健全な状態のスコティッシュテリア83頭(コントロール)
方法:研究犬のオーナーに、症例犬に対しTCCの診断前の間、そしてコントロール犬に対しそれに匹敵する期間、芝生、または庭の化学薬品の暴露に関しアンケートに答えていただいた。
結果:無使用の芝生にさらされたイヌと比較して、除草剤と殺虫剤(オッズ比[OR]、7.19)または除草剤のみ(OR、3.62)使用した芝生、または庭にさらされたイヌでTCCのリスクは有意に増加したが、殺虫剤のみ使用した庭にさらされたイヌ(OR、1.62)はそうではなかった。フェノキシ除草剤(OR、4.42)を使用した芝生、または庭にさらされることは、使用しないところにさらされるよりTCCのリスク増加に関与したが、非フェノキシ除草剤(OR、3.49)を使用した芝生や庭へさらされることはTCCリスクに有意に関与しなかった。
結論と臨床関連:スコティッシュテリアの移行上皮癌リスクの増大に、除草剤を使用した芝生や庭へさらされることが関与したと結果は示唆する。原因-影響関連を立証する、または反証する追加研究が実施されるまで、スコティッシュテリアのオーナーは、フェノキシ除草剤を使用した芝生や庭にイヌを行き来させることを最小限にするべきである。(Sato訳)
■18頭の肝細胞癌の犬における、部分的肝切除の結果
Results of partial hepatectomy in 18 dogs with hepatocellular carcinoma
J Am Anim Hosp Assoc 25[2]:203-206 Mar/Apr'89 6 Refs
1Jane E. Kosovsky, DVM; Sandra Manfra-Marretta, DVM; David T. Matthiesen, DVM; Amiya K. Patnaik, BVSc, MVSc
1Dept of Surg, The Animal Medical Center, 510 East 62nd St, New York, NY 10021
18頭の犬の回顧的研究
素因として、年齢は9-15歳[平均12歳]の範囲でした。シュナウザー[3/18]が最もよく見られた純血種でした。性素因は認めませんでした。
病歴/臨床徴候には、明白な腹部の腫瘤[9/18]、多飲/多尿[6/18]、嘔吐[3/18]、下痢[3/18]、食欲不振[3/18]、体重減少[2/18]、そして嗜眠[2/18]などが認められました。18頭中5頭で、いかなる臨床徴候も示しませんでした。
検査所見には、白血球増加[10/17]、貧血[5/17]、低蛋白血症[2/17]、アルカリフォスファターゼ上昇[15/17]、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ上昇[11/17]、乳酸脱水素酵素上昇[11/17]、そして高ビリルビン血症[7/17]などが認められました。
レントゲン検査所見は、肝腫大に一致した胃の尾側、および側方変移が認められました[18/18]。
超音波検査所見では、腹部頭側のマスを検査した7頭すべてに認められました。
治療として、肝葉切除を行いました・・・16/18において1葉切除で、2/18で2葉にできた孤立性腫瘤に対し、それぞれの切除です。
術後合併症として・・、18頭中3頭で、術後直ちに輸血を行いました。1頭は術後1日で、出血のため死亡しました。1頭の犬で、気管支肺炎のため、術後入院が10日間延びました。
入院期間は、1-10日間[平均3.1日]の範囲でした。
予後:18頭の犬に関して、術後に8頭が死亡しました。生存期間は術後1-548日[平均308日]の範囲でした。死因は、8頭中1頭で術後出血;8頭中4頭において、2頭が慢性心臓疾患、1頭が慢性腎臓疾患、1頭が呼吸器疾患;8頭中3頭においては、死因は不明でした。
10頭の犬は、生存し続けております。追跡期間は、195-1025日[平均377日]の範囲です。10頭中1頭で再発がありました。残る9頭は臨床的に正常です。(Dr.K訳)
■ネコのワクチン関連線維肉腫の眼転移
Ocular Metastasis of a Vaccine-Associated Fibrosarcoma in a Cat
Vet Comp Oncol 1[4]:232-240 Dec'03 Case Report 23 Refs
M. Cohen, E.A. Sartin, E.M. Whitley, R.D. Whitley, A.N. Smith *, W.R. Brawner, R. Henderson and E.N. Behrend
6歳去勢済み家ネコ短毛種の再発性ワクチン関連線維肉腫を評価した。そのネコは来院前に腫瘍を3回切除しており、放射線療法の依頼を受けた。放射線療法の処置後10ヶ月、ネコの目に曇りが出たということで再来院した。眼球摘出を実施し、その生検で線維肉腫と分かった。同時に胸部X線検査で、別個の肺結節を確認した。ドキソルビシン(20mg/㎡)とシクロフォスファミド(100mg/㎡)を3週間隔で2回投与した。治療にかかわらず、肺結節の大きさは2倍になった。この症例は、生存中ワクチン関連肉腫の眼転移が見つかった最初の報告で、それら腫瘍の高い侵略特性を支持する。(Sato訳)
■ペルシャネコ2症例の複数眼瞼汗腺嚢腫
Multiple Eyelid Apocrine Hidrocystomas in two Persian Cats
Vet Ophthalmol 7[2]:121-125 Mar-Apr'04 Case Report 21 Refs
Brice Cantaloube, Isabelle Raymond-Letron and Alain Regnier *
2頭の中年ペルシャネコが、眼周囲のmassが見られるため来院した。検査で、複数の色素性結節、直径2-10mmが眼周囲皮膚に認められた。切除生検で、アポクリン汗腺由来の単房嚢胞病変を認め、ヒトで言われる眼瞼のアポクリン汗腺嚢腫に似ていた。Ki67の免疫染色で、活動増殖性上皮細胞を確認し、それら嚢胞病変が停滞嚢胞というよりも腺腫性増殖腫瘍(嚢腺腫)と初めて証明した。両症例とも、眼瞼の過去に罹患していなかった部位と罹患部位に6-9ヶ月以内に追加病変が現れた。(Sato訳)
■イヌネコの深部胸部、腹部massの経皮針生検
Percutaneous fine-needle biopsy of deep thoracic and abdominal masses in dogs and cats.
J Small Anim Pract 45[4]:191-8 2004 Apr
Bonfanti U, Bussadori C, Zatelli A, De Lorenzi D, Masserdotti C, Bertazzolo W, Faverzani S, Ghisleni G, Capobianco R, Caniatti M
経皮針生検は、イヌネコの胸部、腹部massの評価によく使用される。132症例を研究に供した。20症例は、不十分な細胞、または血液コンタミン(回収率86.8%)のため、比較研究から除外した。100サンプル(イヌ56頭、ネコ44頭)を細胞診により腫瘍と分類した。腫瘍の細胞診を手術、または検死中に非外科的方法により入手した組織サンプルで確認した。腫瘍の偽陽性診断がなされたものはいなかった。32個のサンプルは、「腫瘍陰性」と細胞診で分類された。その後組織検査で、18個は真の陰性、14個の偽陰性が明らかになった。その手技は、炎症性疾患と腫瘍の診断に全体で89.4%(132症例中118症例)の一致性を見せ、感受性は87.8%、特異性は100%、陽性検査の適中率100%、陰性検査の適中率56.3%を示した。(Sato訳)
■インシュリノーマのストレプトゾシン治療
Streptozocin Treatment of Insulinomas
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:32-33 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Moore AS, Nelson RW, Henry CJ, et al. J Am Vet Med Assoc 2002;221:811-818
背景:インシュリノーマは、低血糖を起こす内分泌膵臓のまれな悪性腫瘍である。通常転移は、診断時に存在するので、外科手術での治癒はほとんどない。しかし、外科手術により正常な血糖値の期間が延長することも多い。コルチコステロイドやジアゾキシドの投与など、低血糖の医療管理の併用で手術を行ったイヌの生存期間中央値は1年を超える。
ストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)は、ニトロソ尿素アルキル化剤で、膵島細胞に毒性があるが、ストレプトゾシンは安全マージンのほとんどない腎毒性も有すため、補助療法としてのその使用はほとんど注目されない。
目的:この研究の目的は、利尿プロトコールを用いてストレプトゾシンを投与したときの有効性と副作用を評価することだった。
サマリー
方法:10箇所の施設の医療記録の回顧的研究から、17頭のイヌが組織学的にインシュリノーマと診断され、利尿プロトコールと併用し最低1回のストレプトゾシンによる治療を受けていた。それらイヌの臨床経過を、ストレプトゾシンを投与しない手術単独、または内科治療を受けたステージII、またはIII(局所リンパへの転移、または遠隔転移)の15頭の群と比較した。
シスプラチン投与に用いられる利尿プロトコール中に、ストレプトゾシンを500mg/㎡の投与量で2時間以上かけて投与した。ストレプトゾシン投与前3時間と、投与後2時間、18.3ml/kg/hoursで滅菌生理食塩水投与により利尿をかけた。ストレプトゾシン投与後すぐに、制吐剤としてブトルファノールを投与した。中には、腫瘍の進行所見がある、低血糖の再発、または支持療法が必要なストレプトゾシンの毒性が起こるまで、3週間隔で治療を繰り返したイヌもいた。治療中、骨髄抑制や腎毒性などの毒性に対しモニターした。
結果:低血糖や高インシュリン血症は16頭に認められ、1頭は非機能性インシュリノーマだった。病歴でのコントロール群は、局所リンパ節転移を伴う9頭と、遠隔転移を伴う6頭だった。コントロール群全頭、外科手術を行った。10頭のコントロール犬はプレドニゾンを投与され、そのうち3頭はジアゾキシドの投与も受けていた。
ストレプトゾシン群17頭のうち、15頭は外科手術を実施し、5頭は眼で見える腫瘍の完全切除、10頭は部分切除となった。7頭は術後21日以内にストレプトゾシンを投与され、それら症例で補助治療と考えられた。他のイヌは、術後内科的にプレドニゾン、またはプレドニゾンとジアゾキシドで治療された。低血糖が再発したときにはストレプトゾシンを投与した。17頭で合計58回治療した。ストレプトゾシン投与前、5頭の血糖値は50mg/dl以上だった。最初のストレプトゾシン投与後7日目11頭中10頭の血糖値が50mg/dl以上になり、2回目の治療直前には13頭中12頭がそのようになった。
治療後1頭にだけクレアチニン濃度上昇が認められた。血清ATL活性は測定したイヌのうち4頭で5回のストレプトゾシン投与後上昇したが、肝疾患の他の臨床所見を呈したイヌはいなかった。5回のストレプトゾシン投与後、2頭に真性糖尿病が発症し、それらのイヌは治療群で最長の生存期間を示した。軽度から中程度の骨髄抑制が2頭に見られたが、投与量減量を必要としなかった。18回のストレプトゾシン投与後嘔吐が発症し、数例は重度で遅延性だった。14頭の血糖正常値の持続期間中央値は、163日と判定することができ、コントロール群(90日)と有意差はなかった。腫瘍の大きさ縮小は、ストレプトゾシン投与後2頭で認められた。
結論:集中的な利尿プロトコール後、ストレプトゾシンはイヌに安全に投与でき、治療は効果的と思われる症例もある。
臨床への影響
この研究は、ストレプトゾシン投与に関する有意な生存性への有効性を示さないが、正常血糖への回復や維持、数頭に見られた腫瘍の大きさ縮小は、インシュリノーマに対する効果を示す。嘔吐を除き、治療はよく許容された。
第I相の研究はストレプトゾシンで行われていないため、最大耐量は不明である。適切な制吐処置が行われれば、より高用量も許容されるかもしれない。またALTの上昇は、薬剤開発中の毒性研究で分かっている肝毒性を示すと思われる。ストレプトゾシンを使用したより広範囲な前向き研究により、補助剤としてその有効性に関するより明確な情報が提供されるべきである。(Sato訳)
■猫の頭蓋内腫瘍のMRI所見:46頭の猫による回顧的分析
Magnetic Resonance Imaging Features of Feline Intracranial Neoplasia: Retrospective Analysis of 46 Cats
Mark T. Troxel,a Charles H. Vite,a Christiane Massicotte,a Robert C. McLear,a Thomas J. Van Winkle,a Eric N. Glass,a Deena Tiches,a and Betsy Dayrell-Harta
Journal of Veterinary Internal Medicine: Vol. 18, No. 2, pp. 176?189.
この回顧的研究の目的は猫の脳腫瘍のMRI検査の特徴およびその所見が組織学的診断の正確な予測として有効かどうかを調べることである。組織学的に脳腫瘍と確定した46頭の猫(髄膜腫33頭、リンパ腫6頭、神経膠腫4頭、嗅覚神経芽腫2頭、下垂体腫瘍1頭)のMRI検査を再検討した。軸の起点、形、位置、信号強度、増強画像、脳浮腫、マスの影響などのMRI所見を評価しそれぞれの腫瘍のタイプについて特徴付けた。
髄膜腫はほとんど脳外側に発生し、著しい増強画像を呈しほとんどが卵形で、脳浮腫は軽度であった。神経膠腫はリング状に増強されほとんど脳内部に発生し、一般的にほかの腫瘍と比べより脳浮腫が著しかった。脳腫瘍はMRIにおいて45頭(98%)で検出できた。見識のない検査員がMRI検査だけの所見に基づいてすべての腫瘍の種類の82%を正確に認識できた。従って、猫の脳腫瘍に検出においてMRIは優れた診断ツールであり、腫瘍の種類を診断する上で重要な情報を提供することができる。(Dr.kawano訳)
■ネコの全耳道切除:適応、罹患率、長期生存性
Total ear canal ablation in the cat: indications, morbidity and long-term survival.
J Small Anim Pract 44[10]:430-4 2003 Oct
Bacon NJ, Gilbert RL, Bostock DE, White RA
44頭のネコに行った52の全耳道切除(TECA)処置を再検討した。手術適応は、ネコの41%が腫瘍でそのうち86%は耳垢腺癌だった。慢性炎症とポリープ形成疾患が外科処置の50%を占めた。術後合併症には、ホーナー症候群(42%)、顔面麻痺(56%)があり、それぞれ症例の14%と28%が持続し、残りは次の週、または次の月に解消した。イヌと比較してネコのホーナー症候群と顔面麻痺の高い発生率は、ネコ鼓膜神経叢と顔面神経のより大きな脆弱性によった。耳垢腺癌のネコの生存期間中央値は50-3ヶ月で、炎症性またはポリープ疾患と比べて有意差はなかった。この腫瘍で考えられる予後指標は、有糸分裂指数(MI)だった。MI≦2の症例は、MI≦3の症例よりも有意に長く生存した。(Sato訳)
■インシュリノーマと血清フルクトサミン低濃度
Insulinoma and Low Serum Fructosamine Concentration
Sm Anim Clin Endocrinol 13[2]:30-31 May'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Mellanby RJ, Herrtage ME. J Sm Anim Pract 2002;43:506-508
背景:膵島のベータ細胞の機能性腫瘍は、必要以上のインシュリンを時々産生する。低血糖や低血糖誘発エピネフリン分泌によるものが、虚弱、失調、失見当、虚脱、発作、筋肉線維束攣縮、頻脈、または不整頻脈の原因を起こす。インシュリノーマからの低血糖は一時的で、検出が難しいと思われる。種々の時間帯の複数のサンプルが必要となることも多い。低血糖が検出される、または疑われるとき、他の考えられる原因の鑑別診断に、血漿グルコースとインシュリンの同時測定が必要である。インシュリノーマにより低血糖が起こっているならば、相対的、または絶対的低血糖が不適切な高インシュリン血症と併発している。
目的:無作為なサンプリングにより血糖値が正常で血清フルクトサミン低濃度を示すイヌのインシュリノーマを述べる。
サマリー
症例報告:8歳オスのゴールデンレトリバーが、4週間に2回起こした虚脱で来院した。各虚脱の回復に数分間要しただけだった。身体所見、胸部X線検査、腹部超音波検査は正常範囲だった。通常の血液像、血糖値を含む生化学検査は正常だった。血清フルクトサミン濃度は低かった。血糖値と血漿インシュリン測定のためのサンプルは絶食12時間後に採取した。インシュリン/グルコース比はインシュリノーマの診断と一致した。外科手術は行わなかった。47日後、イヌはより不活発となった。インシュリン/グルコース比は異常を呈したままで、血清フルクトサミンは低かったが、血清グルコース濃度は正常範囲内だった。最初の評価から61日目、外科手術を行い、2cmの結節を膵臓の右肢遠位面から切除し、組織学的に悪性島細胞腫瘍と確認された。術後の転帰は報告されなかった。
結論:無作為な血糖値が正常範囲内のとき、血清フルクトサミン濃度は低く、インシュリノーマの診断に適切に一致すると思われる。
臨床への影響
インシュリノーマによる身体外観の唯一見られる変化は、インシュリンの同化作用による体重増加の傾向である。インシュリノーマの存在は、直接低血糖(低血糖血症)または間接低血糖(過剰なエピネフリン効果)に関連する症状で示される。低血糖誘発臨床症状の病歴を持つインシュリノーマの症例から、無作為サンプルで正常血糖値が認められるのは異常ではない。
血糖値は数分以内に急速に変化する。血清フルクトサミン濃度は、血清アルブミン濃度は正常ならば、血糖値に依存する。血清フルクトサミン濃度は日にち間隔で変化する。血糖値、または血清フルクトサミン濃度、またはその両方は、低血糖の頻度に依存するインシュリノーマの低血糖を反映する。低血糖の頻度が高いことが、無作為サンプリングで検出しやすく、血清フルクトサミン濃度がより低くなりやすい。
4日間以上持続性、または高頻度低血糖が存在するとき、血清フルクトサミン濃度が低下するので、低血糖や正常な血清フルクトサミン濃度がより見つかるようになる。またフルクトサミン濃度は、アルブミン濃度やターンオーバーの比率に影響する疾患状態により低下しえる。血漿グルコース、インシュリン比は、インシュリノーマの臨床診断の本質的なもののままである。
この報告のイヌは血糖値を来院時から術後61日目までに3日以上4回測定していた。血漿グルコース濃度の複数サンプルは絶食期間を注意深くモニターしながら1回異なる時間に採取すべきである。より低い血糖値が検出されたとき、同じサンプル時間の血漿をインシュリン検査に供すべきである。(Sato訳)
■ネコの下垂体腫瘍の放射線療法
Radiotherapy of Pituitary Tumors in Cats
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:8-9 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Kaser-Hotz B, Roher CR, Stankeova S, et al. J Sm Anim Pract 2002; 43:303-307
イントロダクション
背景:ネコの下垂体腫瘍は非機能的で、神経学的異常のみ引き起こし、または末端肥大症や副腎皮質機能亢進症を起こすホルモンを分泌すると思われる。放射線療法は、機能性下垂体腫瘍の症例で効果的と報告されているものもあるが、ほとんど症例は評価されていない。下垂体切除は副腎皮質機能亢進症のネコで報告されているが、この方法は特に小さい下垂体腫瘍のみ使用でき、一般外科医以上の経験と熟練度を要す。
目的:この研究の目的は、ネコの下垂体腫瘍の治療で放射線療法の結果を述べることである。
サマリー
方法:脳のCTまたはMRI検査で5頭のネコに下垂体腫瘍を確認した。主訴として3頭のネコに神経学的欠損があったが、そのうち1頭は多飲多尿も見られた。他2頭は真性糖尿病と末端肥大症が認められたが、診断の詳細はなかった。大きく、境界不明瞭だった下垂体massのネコは、検死時に下垂体腺癌と確認されていたことが分かった。他のネコはすべて、うまくmassが認識されており、一様なコントラスト増強を示し、腺腫と思われた。
4頭のネコは電子ビーム放射線単独で治療し、1週間に3日間3.5-4.0Gy分画照射で、総照射量36-42Gyの範囲となった。1頭は、電子、光子(線形加速器による)両方で治療した。
結果:神経学的異常の改善は、それらの異常を示す全3頭で、放射線療法1週間以内に認められた。真性糖尿病のネコの1頭は、50%インシュリン投与量を減じる必要があったが、他のネコはわずかな減量しか必要なかった。4頭のネコで最初の照射から6.5-17ヵ月後にCT検査を実施した。1頭の腫瘍は見る影もなく、残りのネコはわずかに大きさが小さくなるか、変化なしだった。
2頭のネコは治療後15ヶ月と18ヶ月目に、神経症状の再発で安楽死された。神経症状が再発したとき、それらのネコの1頭の下垂体腫瘍は、わずかに大きさが小さくなっていた。神経症状の原因(腫瘍拡大、放射線の効果が遅い、またはその他の原因)は、判定されなかった。2頭は、治療後5.5、20.5ヶ月目に放射線療法と関係ない原因で安楽死、または死亡した。5番目のネコは、放射線療法後8ヶ月目に明らかな低血糖発作で死亡した。
放射線の急性副作用は、軽度皮膚反応、一時的な脱毛、毛色の変化に限られていた。2頭のネコは検死を行い、1頭のネコで放射線の遅延反応を示す所見は認められなかった。もう1頭は、右視床下部と視交叉と下垂体柄の間の第3脳室上衣壊死が認められた。それら病変が放射線療法と関係があるのか判定されなかった。
結論:放射線療法は、ネコの下垂体腫瘍に効果的である。
臨床への影響
この研究と過去の報告をもとに、外部ビーム放射線療法は、ネコの下垂体腫瘍の効果的な治療方法と思われる。この治療は、成長ホルモン過剰の長期影響が、心筋症、関節症、もしくは腎不全を起こしえるため、末端肥大症の管理に特に重要である。副腎皮質機能亢進症は、ネコの下垂体腫瘍で頻繁に起こる。下垂体放射線照射の過去の研究は、副腎皮質機能亢進症の解消を証明できなかったが、放射線療法がこの疾患共に有効な方法かどうか判定するため、今後の研究が必要と思われる。(Sato訳)
■セルトリ細胞腫によるエストロジェン誘発骨髄形成不全
Estrogen-Induced Bone Marrow Aplasia from a Sertoli Cell Tumor
Sm Anim Clin Endocrinol 13[1]:39-40 Jan'03 Review Article 0 Refs
C. B. Chastain, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine) & Dave Panciera, DVM, MS, Dip ACVIM (Internal Medicine)
Sanpera N, Masot N, Janer M, et al. Oestrogen-induced bone marrow aplasia in a dog with a Sertoli cell tumor. J Sm Anim Pract 2002;43:365-369
イントロダクション
背景:過剰なエストロジェンは、イヌの胸腺のストロマ細胞から骨髄毒素を誘起することが示されている。エストロジェン誘発骨髄毒性は、外因性エストロジェン投与、または卵巣の顆粒膜-莢膜細胞腫のメスイヌ、精巣のセルトリ細胞腫による雌性化したオスイヌでエストロジェンの内因的産生により起こる可能性がある。幹細胞列の汎血球減少は、短期好中球増加後に起こった。貧血や出血が発生するが、極度の好中球減少からの免疫不全による特に肺炎などの抑えられない感染疾患により通常死亡する。
過剰なエストロジェンの源を除去する試みがなされた後、エストロジェン中毒の治療は、主に支持療法で、長い眼で見れば効果の無いものである。リチウムは、多能性幹細胞を非特異的に刺激する。その作用メカニズムは不明である。メスイヌで、エストロジェン誘発骨髄形成不全の症例で、リチウム療法により回復している症例もある。
目的:この報告の目的は、セルトリ細胞腫のイヌのエストロジェン誘発性骨髄中毒症をリチウムで治療した結果を述べる。
サマリー
症例報告:10歳オスのワイヤーヘア犬が片側性潜在睾丸、腹部拡大、雌性化の症状(両側脱毛と雌性化乳房)、骨髄毒性(貧血と点状出血) を呈していた。血液像は非再生性貧血、白血球減少、血小板減少を示した。骨髄吸引生検で、造血細胞の欠乏を認めた。エールリッヒア症の力価は陰性だった。血清エストラジオール濃度は、オスイヌなのに上昇していた。腹部触診、X線検査、超音波検査で、潜在睾丸の腫瘍と一致する腹部massを認めた。全血輸血、抗生物質療法、メチルプレドニゾロン静脈内投与後、腫瘍を切除した。そのmassの生検で、悪性セルトリ細胞腫が明らかとなった。
術後1週間目、経口炭酸リチウムを1日2回11mg/kgで開始した。血漿リチウム濃度をモニターした。1週間後、目標血漿リチウム濃度よりも高くなったため、投与量を7mg/kgに減量した。術後20日目、汎血球減少はまだ存在した。骨髄吸引生検は、まったく改善を示さなかった。また全血輸血を行った。2日後、呼吸困難により死亡した。検死で、セルトリ細胞腫の転移を認めた。
結論:これは、セルトリ細胞腫によるエストロジェン誘発骨髄形成不全を、リチウムで治療した症例の最初の報告だった。
臨床関連
エストロジェン誘発骨髄形成不全は、何週間にもわたる長期疾患、多岐にわたる支持療法、高額治療費、苦しみながらの死亡をたびたびもたらす。だが、リチウム治療をする、またはしないでも回復するイヌもいる。臨床医としては、患者の回復の可能性を手助けをするか、苦しみながら死亡するのに対する人道的手段として安楽死を薦めることである。現在知られている安楽死推奨の最も良い指標は、難治性、非反応性の食欲不振、または2週間以上の血小板減少である。骨髄形成不全のリチウム療法の価値は、いまだ疑問であるが、この症例での失敗でさらなる研究をしないでおくべきではない。(Sato訳)
■イヌのCCNU(ロムスチン)化学療法に関する肝毒性
Hepatotoxicity Associated with CCNU (Lomustine) Chemotherapy in Dogs
J Vet Intern Med 18[1]:75-80 Jan-Feb'04 Retrospective Study 36 Refs
Orna Kristal, Kenneth M. Rassnick *, John M. Gliatto, Nicole C. Northrup, John D. Chretin, Kirsten Morrison-Collister, Susan M. Cotter, and Antony S. Moore
1995年から2001年までに179頭の担癌犬を、1-(2-クロロエチル)-3-シクロヘキシル-1-ニトロソ尿素(CCNU)で治療した。CCNUの1回の投与量は、50-110mg/㎡p.o.とした。投与間隔はさまざまだったが、最低投与間隔は3週間だった。治療後、11頭のイヌ(6.1%)が肝毒性を起こした。CCNU投与回数の中央値と、総累積CCNU投与量の中央値は、肝臓ダメージのないイヌ(3回;230mg/㎡)に比べ、肝毒性を起こしたイヌの方が有意に高かった(4回;350mg/㎡)。CCNUの最終投与から肝毒性検出までの期間中央値は11週(範囲2-49週)だった。
一般的な生化学異常は、血清肝酵素活性の異常な高値と低アルブミン血症だった。CCNU関連肝毒性を持つ6頭は腹水を有し、3頭は胸水を同時に持っていた。胆汁酸血清濃度は、検査した5頭中4頭で異常に高かった。経皮超音波ガイド下肝生検を10頭で行い、その所見は非特異的で事実上慢性的だった。進行性肝不全のため7頭は安楽死され、肝疾患の診断から生存期間中央値は9週間だった。3頭は他の原因で死亡し、1頭は原因不明だった。3頭で臨床症状は改善したが、肝疾患を診断したときから生化学異常と組織病理学的病変は4-38ヶ月持続した。これら所見は、CCNUが不可逆で致死的可能性のある遅延性、累積投与量関連性慢性肝毒性を起こしえると示唆する。(Sato訳)
■イヌの脂肪肉腫:56症例(1989-2000)
Liposarcomas in Dogs: 56 Cases (1989-2000)
J Am Vet Med Assoc 224[6]:887-891 Mar 15'04 Retrospective Study 26 Refs
Jennifer L. Baez, VMD, DACVIM; Mattie J. Hendrick, VMD, DACVP; Frances S. Shofer, PhD; Carrie Goldkamp, VMD; Karin U. Sorenmo, CMV, DACVIM
目的:イヌの脂肪肉腫の生物学的行動を判定し、臨床症状、生存期間に対する治療効果、可能性のある予後因子を明らかにする
構成:回顧的研究
動物:組織学的に脂肪肉腫と確認された56頭
方法:徴候、腫瘍のサイズ、位置、ステージ、寛解期間、全体の生存期間、死亡原因、手術のタイプ(切除生検、辺縁切除、広範囲切除)、行った全ての補助療法に関する情報を入手した。
結果:外科手術として切除生検6頭、辺縁切除34頭、広範囲切除16頭に分けられた。25頭のイヌは、サージカルマージンに腫瘍細胞の組織所見があり、28頭は見られなかった(3頭のマージンの状態は不明)。43頭中20頭が局所再発した。生存期間中央値は、694日で、生存期間に有意に関係する唯一の因子は、行った外科手術の方法だった。広範囲切除、辺縁切除、切除生検を行ったイヌの生存期間中央値は、それぞれ1188日、649日、183日だった。腫瘍サイズ、マージンの状況、腫瘍の位置、組織学的サブタイプなどの生存期間に有意に関係する因子はなかった。
結論と臨床関連:結果から、イヌで脂肪肉腫は局所侵襲性の腫瘍で、めったに転移せず、主として肢や軸位置に発生し、可能なときは広範な切除を優先するほうがよいと思われる。(Sato訳)
■10頭のイヌの移行上皮癌のピロキシカム、ミトキサントロン、粗分画放射線療法による治療
Piroxicam, mitoxantrone, and coarse fraction radiotherapy for the treatment of transitional cell carcinoma of the bladder in 10 dogs: a pilot study.
J Am Anim Hosp Assoc 40[2]:131-6 2004 Mar-Apr
Poirier VJ, Forrest LJ, Adams WM, Vail DM
膀胱移行上皮癌(TCC)のイヌ10頭を、週1回の粗分画放射線療法(5.75Gray[Gy]の6週に1回分画)、ミトキサントロン化学療法、ピロキシカムの組み合わせで治療した。全てのイヌは放射線療法プロトコールを完遂し、最小限の副作用しか観察されなかった。2頭(22%)のイヌしか測定可能な部分反応に達しなかった。しかし、90%のイヌは、尿の臨床症状が改善した。全てのイヌの生存期間中央値は、326日だった。この治療プロトコールにはよく許容したが、反応率や全体の生存期間は、放射線療法なしのミトキサントロンとピロキシカムを使用した報告より優れているわけではなかった。(Sato訳)
■イヌの血管肉腫で、用量強化ドキソルビシンプロトコールの効果と毒性
Efficacy and Toxicity of a Dose-Intensified Doxorubicin Protocol in Canine Hemangiosarcoma
J Vet Intern Med 18[2]:209-213 Mar-Apr'04 Original Study 25 Refs
Karin U. Sorenmo, Jennifer L. Baez, Craig A. Clifford, Elizabeth Mauldin, Beth Overley, Katherine Skorupski, Roxanne Bachman, Marisa Samluk, and Frances Shofer
この研究の目的は、イヌ血管肉腫(HSA)の単剤用量強化ドキソルビシンプロトコールの効果と毒性を評価することである。イヌ血管肉腫は悪性度の高い腫瘍で、ほとんどの罹患犬は診断から6ヶ月以内に死亡する。ドキソルビシンは、この悪性腫瘍に対し、おそらく唯一最も効果的な化学療法剤であるが、生存率を中程度改善するだけである。単剤、ドキソルビシンベースの多剤化学療法、累積投与量強化の概念としてドキソルビシンで治療したイヌで、同じような生存期間を報告している過去の研究をもとに、投与量強化単剤ドキソルビシンプロトコールを開始した。血管肉腫のイヌ20頭を研究した。精密検査とステージングを標準診療に従い実施した。ドキソルビシンの投与計画を、2週間毎の30mg/㎡IV合計5回の治療とした。化学療法中とその後規則的な間隔で、毒性と再発の症状をモニターした。そのプロトコールによく許容した。副作用や、ドキソルビシン誘発心筋症の臨床症状を起こして入院したイヌはいなかった。ステージIII(107日)の血管肉腫のイヌに比べ、ステージI(257日)、II(210日)のイヌの生存期間に有意差が認められた。それらの結果は、毒性と効果に関して従来コントロールされたものよりわずかに良いが、標準治療のものと有意差はなかった。用量強化と結果に相関性はなかった。(Sato訳)
■イヌの急性非外傷性腹腔内出血:39症例の回顧的分析(1987-2001)
Acute nontraumatic hemoabdomen in the dog: a retrospective analysis of 39 cases (1987-2001).
J Am Anim Hosp Assoc 39[6]:518-22 2003 Nov-Dec
Pintar J, Breitschwerdt EB, Hardie EM, Spaulding KA
非外傷性急性腹腔内出血の犬39頭の医療記録を確認し、再検討した。貧血と低アルブミン血症がそれぞれ36/37(97%)、25/33(76%)のイヌに認められた。凝固障害が26/31(84%)の犬に見られた。確定診断が得られた時、悪性腫瘍が診断される頻度が高く、それは24/30(80%)のイヌで認められた。そのうち血管肉腫が21/30(70%)を占めた。16頭の犬が試験開腹を行い、そのうち7頭(44%)は術中期間生存した。外科手術を行わなかったイヌで、9/23(39%)が生存し、退院した。(Sato訳)
■フラットコーテッドレトリバーの肉腫に関係する免疫介在性溶血性貧血
Immune-mediated haemolytic anaemia associated with a sarcoma in a flat-coated retriever.
J Small Anim Pract 45[1]:21-4 2004 Jan
Mellanby RJ, Holloway A, Chantrey J, Herrtage ME, Dobson JM
7歳のフラットコーテッドレトリバーが、数日間持続している嗜眠、呼吸困難、食欲不振で来院した。臨床検査で、蒼白粘膜、頻呼吸が認められ、血液検査で顕著な自己凝集反応を示した。胸部X線検査で、肺門周囲に不透明性が増加していた。オーナーは更なる検査を断り、イヌはプレドニゾロンとアザチオプリンの免疫抑制剤の投与で症候的に治療した。イヌの様子は改善したが、嚥下困難と呼吸困難の悪化で7週間後に安楽死した。剖検で、肺、心嚢、胸部リンパ節、脾臓に広範囲の分化が乏しい肉腫を認めた。免疫介在性溶血性貧血は、イヌでよく見られる状況で、時折腫瘍に関連する。これは、分化に乏しい、瀰漫性の肉腫に関与する免疫介在性溶血性貧血を述べた最初の症例報告である。(Sato訳)
■イヌの軟部組織肉腫の術後放射線療法
Postoperative Radiotherapy for Canine Soft Tissue Sarcoma
J Vet Intern Med 14[6]:578-582 Nov/Dec'00 Retrospective Study 29 Refs
Lisa J. Forrest; Ruthanne Chun; W.M. Adams; A. James Cooley; David M. Vail
不完全に切除され、術後補助として放射線療法で治療した37個の軟部組織肉腫を持つ35頭のイヌを再検討した。変動値として評価したのは、年齢、性別、腫瘍部位、腫瘍組織学、腫瘍総放射線照射量、放射線照射野の大きさ、再発までの時間、生存期間だった。腫瘍の主なものは、線維肉腫と血管周囲細胞腫だったが、他の主要も少数ながら認められた。放射線総照射量は42-57Gyの範囲で、月曜から金曜まで毎日3-から4.2-Gy分画で照射した。全体の生存期間中央値は1851日だった。局所再発までの中央値は、798日以上だった。口腔部位の軟部組織肉腫は、他の腫瘍部位(2270日)に比べ、統計学的有意に生存期間の中央値が短かった(540日)。放射線療法は、軟部組織肉腫不完全切除に対する有効な補助療法で、長期患者の生存を予想できる。(Sato訳)
■イヌの皮膚や軟部組織腫瘍で、非吸引細胞診とその組織検査結果の相関
Nonaspiration fine needle cytology and its histologic correlation in canine skin and soft tissue tumors.
Anal Quant Cytol Histol 23[6]:395-9 2001 Dec
Chalita MC, Matera JM, Alves MT, Longatto Filho A
目的:イヌの皮膚や軟部組織腫瘍の評価で、非吸引針(NAFN)細胞診の所見と組織病理所見を比較調査する
研究構成:NAFN(21-27G)細胞診を213症例に実施した。塗抹は空気乾燥し、Rosenfeld法(May-Grunwald-Giemsa変法)で染色した。症例40%で比較のための組織病理検査結果を入手できた。
結果:85頭のイヌでNAFN細胞診と組織病理結果を比較した。117病変の大きさは様々で、0.5-2cm(n=39)、2.1-5cm(n=43)、5.1cm以上(n=35)だった。22の非腫瘍性病変が含まれ、多くは炎症性経過や嚢胞だった。腫瘍性病変は、上皮性(36%)、間葉系(30%)、円形細胞腫瘍(n=13)、メラニン細胞性(2%)に分類された。悪性病変40の中で、肥満細胞腫(n=14)と血管周囲細胞腫(n=9)が多かった。脂肪腫(n=14)や毛包芽細胞腫(n=10)は良性病変で多く見られた。細胞診は、感受性89%、特異性100%、陽性、陰性適中率は100%と96%で、有効性は97%だった。
結論:NAFN細胞診は、非常に優れ正確である。麻酔の使用もなく安全である。さらに非侵襲的に簡単に行え、良質なサンプルを通常提供してくれる。(Sato訳)
■ネコの頭蓋内腫瘍:160症例の回顧的再検討(1985-2001)
Feline Intracranial Neoplasia: Retrospective Review of 160 Cases (1985-2001)
J Vet Intern Med 17[6]:850-859 Nov-Dec'03 Retrospective Study 50 Refs
Mark T. Troxel, Charles H. Vite, Thomas J. Van Winkle, Alisa L. Newton, Deena Tiches, Betsy Dayrell-Hart, Amy S. Kapatkin, Frances S. Shofer, and Sheldon A. Steinberg
この研究の目的は、頭蓋内腫瘍を持つネコの大集団内で、異なる腫瘍のタイプの出現頻度を判定し、徴候、腫瘍サイズと位置、各腫瘍の生存期間を関連させようということである。1985年から2001年の間に評価し、頭蓋内腫瘍を確認した160頭のネコの医療記録を再検討した。評価したパラメーターは、年齢、性別、種類、FeLV/FIV状況、臨床症状、症状の持続期間、腫瘍の数、腫瘍の位置、画像検査結果、治療、生存期間、組織病理学的診断であった。
ネコのほとんどは老齢だった(11.3±3.8歳)。原発腫瘍は症例の70.6%を占めた。転移と続発腫瘍の直接的な拡大は、それぞれほんの5.6%と3.8%だった。12頭(7.5%)は同じ種類の2つ以上の別々の腫瘍を持ち、16頭(10.0%)には、2つの異なる種類の腫瘍が頭蓋内にあった。よく見られた腫瘍の種類は、髄膜腫(n=93、58.1%)、リンパ腫(n=23、14.4%)、下垂体腫瘍(n=14、8.8%)、神経膠腫(n=12、7.5%)だった。よく見られた神経学的症状は、意識の変化(n=42、26.2%)、サークリング(n=36、22.5%)、発作(n=36、22.5%)だった。特異的神経症状のないネコも一般的だった(n=34、21.2%)。30頭(18.8%)のネコの腫瘍は偶然発見されたと思われた。追加の予想される関連(例えば、髄膜と髄膜腫、下垂体と下垂体腫瘍)として、病変位置が、散在性大脳、または脳幹関与はリンパ腫、第三脳室関与は髄膜腫を予測されることがわかった。(Sato訳)
■猫のワクチン関連肉腫の発生に関するリスクファクターの複数施設症例コントロール研究
Multicenter Case-Control Study of Risk Factors Associated with Development of Vaccine-Associated Sarcomas in Cats
J Am Vet Med Assoc 223[9]:1283-1292 Nov 1'03 Prospective Study 8 Refs
Philip H. Kass, DVM, PhD, DACVPM; William L. Spangler, DVM, PhD, DACVP; Mattie J. Hendrick, VMD, DACVP; Lawrence D. McGill, DVM, PhD, DACVP; D. Glen Esplin, DVM, PhD, DACVP; Sally Lester, DVM, MVSc, DACVP; Margaret Slater, DVM, PhD; E. Kathryn Meyer, VMD; Faith Boucher, PhD; Erika M. Peters, BS; Glenna G. Gobar, DVM, MPVM, MS; Thurein Htoo, Ms; Kendra Decile, DVM
目的:特定のワクチンブランド、他の注射薬剤、慣例的ワクチン処方、様々なホストの要因が、ネコのワクチン関連肉腫の形成に関与するかどうかを判定する
構成:前向き複数施設の症例コントロール研究
動物:軟部組織肉腫、または基底細胞腫を持つアメリカとカナダのネコ
方法:軟部組織肉腫、または基底細胞腫の確定診断を持つネコから採取したバイオプシー標本を提出した獣医師に、患者の医療履歴について連絡を取った。タイムウィンドウ統計分析を、症例定義についての色々な仮定を組み合わせるのに使用した。
結果:抗原クラス内で単一のワクチンブランド、またはメーカーが肉腫形成に関与していることはなかった。ワクチン投与に関連する要因も、注射前のワクチンの温度をできる限り除いて、肉腫の発生に関与していなかった。2つの注射薬剤(長期作用ペニシリンと酢酸メチルプレドニゾロン)は、コントロールよりも多い頻度で症例ネコに投与されていた。
結論と臨床関連:所見は、特定ブランドまたは抗原クラス内のワクチンの種類、シリンジ再利用のようなワクチン処置、ウイルス感染の同時発生、傷害の履歴、居住地は、猫のワクチン関連肉腫のリスクを増加させる、または減少させるという仮説を支持するものではない。長期作用注射薬剤は肉腫形成に関与するかもしれないと示唆する所見はあった。(Sato訳)
■子宮の腫瘍:13症例
Uterine neoplasia in 13 cats.
J Vet Diagn Invest 15[6]:515-22 2003 Nov
Miller MA, Ramos-Vara JA, Dickerson MF, Johnson GC, Pace LW, Kreeger JM, Turnquist SE, Turk JR
13頭のネコで13の子宮腫瘍を診断し、9.6年間に来院した全ネコの腫瘍の0.29%を占めた。診断時の年齢の範囲は、3-16歳で、中央値は9歳だった。6頭は家ネコ短毛種で、7頭は5種類の純血種だった。子宮内膜腫瘍には、8個の腺癌と1個の混合ミューラー腫瘍(腺肉腫)が見られた。子宮筋層腫瘍には3個の平滑筋腫と1個の平滑筋肉腫が見られた。腺癌の1つは、卵巣子宮切除術を行ったネコの子宮断端に発生していた。他のネコは、未避妊だった。乳腺癌の同時発生は、子宮腺癌の1頭と子宮平滑筋腫の1頭に認められた。2頭で選択的卵巣子宮摘出術中に腫瘍を発見したが、少なくとも他の3頭は、生殖疾患(不妊または子宮蓄膿症)を経験していた。5頭のネコは、腹部、または下腹部のmassを呈した。
子宮内膜腺癌は、サイトケラチンに免疫組織化学的陽性を示し、平滑筋アクチン(SMA)に陰性を示した。6頭中1頭は、ビメンチンに陽性で、8頭中4頭はエストロジェン受容体-アルファ(ERアルファ)に陽性を示した。腺肉腫間質細胞は、ビメンチンとERアルファに陽性だったが、サイトケラチンとSMAに陰性だった。平滑筋腫瘍は、ビメンチンとSMAに陽性で、サイトケラチンに陰性だった。平滑筋肉腫でなく平滑筋腫はERアルファに陽性だった。4頭の腺癌は、卵巣子宮摘出術時に転移していた。他の2頭は、卵巣子宮摘出術後5ヶ月で安楽死された。少なくともそれらのネコの1頭は、組織学的に検査しなかった腹部massを発症していた。子宮内膜腺癌の2頭のみ、術後5ヶ月以上の疾病フリー期間が得られた。どの間葉系腫瘍にも転移は見られなかった。しかし、それらのネコは、腫瘍の発見時に安楽死されたり、検死で初めて腫瘍が検出されていた。(Sato訳)
■ネコの腺癌の末梢動脈塞栓による虚血性神経筋障害
Ischemic Neuromyopathy Due to Peripheral Arterial Embolization of an Adenocarcinoma in a Cat
J Feline Med Surg 5[6]:353-356 Dec'03 Case Report 10 Refs
JE Sykes
ネコの末梢動脈腫瘍塞栓の症例について述べる。ネコは、末梢脈拍触知低下、蒼白、冷たい肢、固有感覚欠損などの動脈血栓塞栓症の症状を呈していた。胸部エックス線検査で、空洞性の肺のmassが認められた。心エコー検査で顕著な変化は見られなかった。Massの吸引物の細胞学的検査は、悪性腫瘍を示唆した。左後肢を断脚し、組織病理学的に腺癌の塞栓を確認した。まれだが、血栓塞栓疾患の症状を呈すネコで、末梢動脈腫瘍塞栓は鑑別として考慮すべきである。(Sato訳)
■イヌネコの原発性気管腫瘍
Primary Tracheal Tumors in Dogs and Cats
Compend Contin Educ Pract Vet 25[11]:854-860 Nov'03 Review Article 39 Refs
M. Raquel Brown, DVM, DACVIM & Kenita S. Rogers, DVM, MS, DACVIM
気管の原発性腫瘍は、イヌネコで一般的ではない。患者は骨軟骨腫のイヌを除き、中年か、または老年に多い。呼吸困難、喘鳴、狭窄音、発咳などの気管閉塞に一致する臨床症状が一般的である。診断や治療中、呼吸機能障害予防に対する注意が必要である。X線検査でmassが認められ、気管支鏡検査で、直接視認や病変のサンプリングが可能である。治療オプションには、外科的切除、化学療法、放射線療法、またはそれらの組み合わせなどがある。ほとんどの腫瘍は、完全な外科的切除によく反応するが、リンパ腫は、補助的放射線療法を組み合わせ、または組み合わせずに化学療法に一番良く反応する。長期追跡調査データは入手できないが、予後は腫瘍のタイプとステージにかなり依存しているようだ。(Sato訳)
■イヌネコの15の髄膜腫で、プロゲステロンとエストロジェンレセプター発現の評価
Evaluation of progesterone and estrogen receptor expression in 15 meningiomas of dogs and cats.
Am J Vet Res 64[10]:1310-8 2003 Oct
Adamo PF, Cantile C, Steinberg H
目的:イヌネコの中枢神経系の髄膜腫で、プロゲステロンとエストロジェンレセプター発現を評価すること
動物:頭蓋内髄膜腫のイヌ8頭(1頭はgestrinoneで治療)とネコ5頭、そして脊髄髄膜腫のイヌ2頭;臨床的に正常な1頭のイヌと1頭のネコから組織サンプルも採取した。
方法:髄膜腫組織を手術中、または健肢時に採取した。腫瘍細胞のプロゲステロンとエストロジェンレセプターの比率の免疫組織化学評価と組織学的分類のために、サンプルを調査分析した。レセプター発現、腫瘍グレード、組織学的サブタイプの相関を判定した。
結果:頭蓋内髄膜腫のいくつかの組織学的サブタイプを、組織サンプル中に検出した。ネコで、全ての頭蓋内髄膜腫は良性だった。プロゲステロンレセプターの免疫反応性を、15のうち14の髄膜腫で検出した。プロゲステロンレセプターの発現を、8つの頭蓋内髄膜腫(イヌ4頭とネコ4頭)そして2つの脊髄髄膜腫の細胞>80%で確認した。イヌの悪性移行性、そして顆粒細胞性髄膜腫のサンプルで、プロゲステロンレセプターをそれぞれ32%そして4.8%の細胞に検出した。1頭の猫で、腫瘍細胞の38%が、プロゲステロンレセプターを保有していた。gestrinoneで治療していたイヌで、頭蓋内髄膜腫にプロゲステロンレセプターが検出されなかった。エストロゲンレセプターは、1頭のイヌの腫瘍にしか検出されなかった。
結論と臨床関連:結果は、イヌネコの中枢神経系の髄膜腫細胞にプロゲステロンレセプターの比率が高く存在することを示す。抗プロゲステロン療法は、切除不能、または再発するイヌネコの髄膜腫の治療に重要な役割を演ずるかもしれない。(Sato訳)
■イヌのグルカゴノーマ
Canine Glucagonoma
Compend Contin Educ Pract Vet 25[1]:56-63 Jan'03 Review Article 25 Refs
Natalie B. Langer, BVSc; Albert E. Jergens, DVM, MS; Kris G. Miles, DVM, MS
グルカゴノーマは、膵島のアルファ細胞のまれな内分泌腫瘍である。グルカゴノーマのイヌは、通常特徴的な主に足のパットを侵す皮膚炎を呈す。皮膚病変のメカニズムは実際わからないままであるが、高グルカゴン血症と他の代謝異常がそれらの発生を支えていると思われる。ほとんどのグルカゴノーマのイヌは、疾患の臨床経過に対し、診断が遅すぎて治癒させることができないが、外科や内科的治療で症状を軽減させる事は可能である。(Sato訳)
■インシュリノーマのネコで、低血糖と不可逆的神経合併症
Hypoglycemia and Irreversible Neurologic Complications in a Cat with Insulinoma
J Am Vet Med Assoc 223[6]:812-814 Sep 15'03 Case Report 15 Refs
Amy Clare Kraje, DVM, DACVIM
14歳避妊済み家ネコ短毛種のネコを、虚弱、嗜眠、食欲減少、下痢、体重減少、発作で評価した。身体検査で、ネコは明らかに見当識障害を呈し、相反する威嚇反応を取った。深在性低血糖を伴う正常な血清インシュリン活性、外科的に切除した膵臓のmassの組織検査(クロモグラニンAとインシュリンの免疫組織化学染色)をもとにインシュリノーマを診断した。血糖値は手術後正常範囲に回帰した。しかし神経学的異常は持続し、安楽死した。インシュリノーマに関係する慢性的低血糖は、ネコの不可逆的神経変化を引き起こしえる。ゆえに、低血糖のすばやい診断と治療は非常に重要である。(Sato訳)
■異常なIgMを分泌するイヌの多発性骨髄腫
Unusual IgM-Secreting Multiple Myeloma in a Dog
J Am Vet Med Assoc 223[5]:645-648 Sep 1'03 Case Report 18 Refs
* Sarah J. Lautzenhiser, DVM; Mark C. Walker, BVSc, DACVIM; Robert L. Goring, DVM, DACVS
4歳去勢済みのイヌを複数の四肢の跛行で評価した。疼痛の症状は、近位頚骨骨幹端と遠位左橈骨骨幹の触診中に誘発した。エックス線写真で、長骨の溶骨性病変が明らかになった。血液分析で、高カルシウム血症と一時的な血球減少が見られた。血清タンパク電気泳動でモノクローナルガンモパシーは明らかにならなかった。しかし、尿蛋白電気泳動でベンスジョーンズ蛋白尿が明らかになった。
骨病変の連続的なサンプル採取、免疫組織学染色法、血清と尿タンパク免疫電気泳動が、多発性骨髄腫の確定診断に必要だった。2つのIgM成分が血清タンパク免疫電気結合を通して確認された。
メルファランとプレドニゾロンの化学療法を開始し、臨床的改善が見られた。しかし、最終的にそのイヌは、病的骨折を理由に安楽死された。椎骨を巻き込まず、異常なガンモパシー、一連のサンプリングで骨髄腫細胞の確定が困難だったことから、この症例は珍しいものである。(Sato訳)
■甲状腺癌のイヌで動脈侵襲による二次的な急性重度出血
Acute Severe Hemorrhage Secondary to Arterial Invasion in a Dog with Thyroid Carcinoma
J Am Vet Med Assoc 223[5]:649-653 Sep 1'03 Case Report 15 Refs
* Kimberly A. Slensky, DVM; Susan W. Volk, VMD, PhD; Tobias Schwarz, MA, Dr Med Vet; Lili Duda, VMD, DACVR; Elizabeth A. Mauldin, DVM, DACVP, DACVD; Deborah Silverstein, DVM, DACVECC
7歳の避妊済みラブラドールレトリバーが、進行性の頸の腫れと紫斑、血胸、縦隔massの可能性、喘鳴で紹介されてきた。入院時、イヌは横臥、精神的に鈍く、頻脈、低体温だった。ヒドロキシスターチと平衡電解質溶液による輸液療法を、出血による二次的な循環血液量減少性ショックと仮定し投与した。複数の充填赤血球と凍結血漿も投与した。CT画像をもとに、広範な皮下、筋膜下、頭側縦隔出血、血胸、肩前リンパ節腫脹、頸の左側頭腹面でコントラストが増したmassが映し出された。頸の探査的手術を行った。
全ての皮下構造は、多量に血餅で覆われていた。血餅除去中、拍動性の出血がちょうど喉頭左尾側に観察された。左総頚動脈の結紮で、すぐに拍動性出血は治まった。更なる外科的探査で、左甲状腺動脈の分岐レベルで、左総頚動脈に付着する2.5×2.5cmのmassが認められた。そのmassは切除した。組織診断は甲状腺癌だった。術後3週間で、放射線と化学療法(ドキソルビシンとカルボプラチン)を組み合わせた治療を開始した。術後13ヶ月で、疾患の臨床症状もなく経過していた。(Sato訳)
■種々のネコの腫瘍でシクロオキシゲナーゼ-2発現の免疫組織化学研究
An immunohistochemical study of cyclooxygenase-2 expression in various feline neoplasms.
Vet Pathol 40[5]:496-500 2003 Sep
Beam SL, Rassnick KM, Moore AS, McDonough SP
シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素は、プロスタグランジンの合成を触媒し、2つのイソ型COX-1とCOX-2が存在する。COX-2は炎症の介在物質を強く誘導する。COX-2は、いくつかのヒトの腫瘍、イヌの扁平上皮細胞、腎臓細胞、移行上皮癌、前立腺癌、腸管腫瘍でも上方制御されている。この研究の目的は、COX-2が種々のネコの腫瘍に発現するかどうかを判定することだった。この研究の結果は、ネコの治療、予防戦略にCOX-2がターゲットとなる可能性があるかどうかの判定の手助けになるかもしれない。パラフィン包埋組織でストレプトアビジン-ビオチン-ホースラディッシュペルオキシダーゼ系の増幅を用い、免疫組織化学研究を実施した。COX-2はネコの移行上皮癌19中7(37%)と、ネコの口腔扁平上皮癌21中2(9%)に見つかった。COX-2免疫反応は、皮膚扁平上皮癌(6)、腺癌(9の乳腺、8の肺、7の腸管)、リンパ腫(6の鼻部、6の腸管)、10のワクチン関連肉腫で検出されなかった。ほとんどのネコの腫瘍でCOX-2発現の広範囲な欠如は、COX-2抑制剤は抗腫瘍剤としての可能性が低いだろうと示唆するのかもしれない。(Sato訳)
■ネコの眼内延髄外プラズマ細胞腫
Intraocular Extramedullary Plasmacytoma in a Cat
Vet Ophthalmol 6[2]:177-181 Jun'03 Case Report 39 Refs
Tammy Miller Michau *, David R. Proulx, Steven D. Rushton, Thierry Olivry, Stanley M. Dunston, Brian C. Gilger, Michael G. Davidson
8歳去勢済みオスの家ネコ短毛種が、過去の眼球外傷後眼内腫瘍の疑いで紹介されてきた。検査で、眼は盲目、ぶどう膜炎、虹彩マスが見られた。摘出を行い、下顎リンパ節を切除した。組織学的検査で、虹彩、リンパ節のプラズマ細胞の腫瘍性増殖が明らかとなった。播種性疾患の他の所見は見られなかった。これはネコで眼内延髄外プラズマ細胞腫の最初の症例報告である。臨床症状の変化と多発性骨髄腫関連の可能性はこの時不明である。ぶどう膜路の原発プラズマ細胞腫からの播種性転移も骨髄を巻き込むことができ、多発性骨髄腫と区別できない。外傷関連肉腫のため、早期の眼摘出は転移を防ぐかもしれない。多発性骨髄腫の所見のため、定期的な全身評価を行うべきである。(Sato訳)
■移行上皮癌の管理
Management of transitional cell carcinoma.
Vet Clin North Am Small Anim Pract 33[3]:597-613 2003 May 84 Refs
Henry CJ
イヌの膀胱の移行上皮癌は早期に検出される疾患で、多様な治療が最良の結果をもたらしやすい。尿スクリーニング検査は早期検出可能な手段として研究されている。腫瘍播種の可能性は分析のために尿を採取するときや手術実施時に考慮すべきである。診断時、それらの腫瘍は非常に局所に侵襲する傾向があるため、転移が起こりやすく治癒は難しくなります。現在、化学療法剤と非ステロイド性抗炎症剤のピロキシカムを組み合わせたプロトコールが、腫瘍反応を引き出すのにもっとも見込みがある。外科手術と放射線療法は、一部選ばれた症例で有効な治療様式である。イヌの移行上皮癌の治療の進歩にもかかわらず、生存期間の中央値は治療様式にかかわらず前向き臨床研究で1年を超えないと報告されている。早期腫瘍検出の正確な検査の開発は、イヌのこの腫瘍の治療を成功させるため重要な影響を持つだろう。(Sato訳)
■イヌの上顎腫瘍の切除で背側、口腔内アプローチの組み合わせ
Combined Dorsolateral and Intraoral Approach for the Resection of Tumors of the Maxilla in the Dog
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:294-305 May-Jun'03 Retrospective Study 20 Refs
* B. Duncan X. Lascelles, BSc, BVSc, PhD, MRCVS; Maurine J. Thomsom, BVSc, FAVSc; William S. Dernell, DVM, MS, DACVS; Rod C. Straw, BVSc, DACVS; Mary Lafferty, AHT; Stephen J. Withrow, DVM, DACVS, DACVIM
一般にイヌの上顎と吻側頭蓋の腫瘍は局所侵襲性である。多くは尾側に位置し、確認が困難なために、病気の経過が進行してから認められる。上顎腫瘍切除を試みるとき、それら2つの要因と外科的チャレンジを併用し、これはより尾側に腫瘍が位置するイヌの予後はより悪いものとなる。
この文献は、第3前臼歯より尾側の組織を巻き込んだ腫瘍で、部分的眼窩切除を伴う、または伴わない上顎切除の背側と口腔内アプローチを詳細に述べる。CT画像で確認した第3前臼歯尾側に広がった上顎腫瘍を持つイヌ20頭をその方法紹介に使用した。術前のイヌの腫瘍ステージングで、肉眼での転移病変所見がなかった。
腫瘍の種類は、肉腫/線維肉腫(n=9)、骨肉腫(OSA; n=4)、悪性メラノーマ(n=1)、扁平上皮癌(n=2)、多小葉性骨軟骨肉腫(n=2)、傍骨性骨肉腫(n=1)、棘細胞性エプーリス(n=1)だった。術中問題となったものは、血液喪失による低血圧(n=11)、重要な低血圧以外の外科医により考慮された血液喪失(n=4)のみだった。それら症例のうち6頭で処置中輸血を行った。ゆえに、この処置を行う外科医は、術中使用できる利用可能な血液製剤が必要となる可能性を考慮すべきである。20症例中14頭(70%)で組織病理学的フリーマージンが取れ、それらの64%(9/14)が術後2年生存した。
ダーティーマージンで追跡調査できた5頭中4頭で、全体の生存期間中央値は11.5ヶ月だった。追加1頭はもとの外科手術後約2週間の放射線療法中に死亡した。全体で、6頭が補助的癌療法を受けた。3頭で長期合併症が発生した。1頭は口鼻瘻の閉鎖に手術が必要で、2頭は下歯による傷害の結果、上唇に潰瘍を形成し、不快な歯を取ることにより解消した。
この文献で述べた上顎切除の併用方法は、より尾側側方の上顎腫瘍の外科的切除を容易にする。伝統的なアプローチよりも、著者が選択するこのアプローチはフリーマージンを得やすくさせ、長期疾患フリー期間をもたらすはずである。(Sato訳)
■ジャーマンシェパードの尿道内軟骨肉腫の2症例
Two chondrosarcomas in the urethra of a German shepherd dog.
J Small Anim Pract 44[4]:169-71 2003 Apr
Davis GJ, Holt D
ジャーマンシェパード(8歳、去勢雄)が尿路閉塞に一致する症状を呈した。膀胱鏡検査とコントラストレントゲンが2つのはっきりとした尿道腫瘤を明らかにした。臨床症状緩和のために陰茎切断手術と会陰尿道形成術が行われた。腫瘤の病理組織検査によって2つの低グレードの軟骨肉腫が明らかになった。執筆時には術後18ヶ月で犬は病気フリーの状態である。(Dr.Massa訳)
■若いイヌの星状細胞腫
Astrocytomas in Young Dogs
J Am Anim Hosp Assoc 39[3]:288-293 May-Jun'03 Case Report 49 Refs
Stephanie A. Kube, DVM; David S. Bruyette, DVM; Stephen M. Hanson, DVM, MS
3頭の若いイヌ(<4歳)が、種々の神経症状で来院し、最終的に星状細胞腫が見つかった。
症例no.1は、2歳の去勢済みイングリッシュブルドックで、嗜眠と見当識障害を呈し、神経学的検査における中心前庭疾患と顕著な頚部の痛みがあった。
症例no.2は1.4歳の避妊済みテリアの雑種で、発作の評価で来院し、頚部知覚過敏を示し、症状でてんかん重積状態を起こした。
症例no.3は4歳オスのイングリッシュブルドックで、てんかん重積状態の最高点の発作の評価で来院し、身体検査で右回りの傾向を示した。中枢神経系(CNS)の腫瘍を、脳脊髄液の検査、CT、MRI、またはそれらの組み合わせをもとに仮診断した。それら全頭臨床症状がひどくなったために安楽死し、その後の検死で星状細胞腫の確定診断がなされた。
星状細胞腫はペットによく見られる腫瘍の1つである。現在までのところ、星状細胞腫の最も高い発生率は短頭種の、8歳、9歳のイヌで見られている。それらは通常頭方、中央窩に位置する単一の腫瘍である。しかし、この報告の3症例は若くても発生可能であることを示している。興味深いことに、そのうち2症例は頚部の痛みを呈し、他の腫瘍症例同様原発性の中枢神経系腫瘍の症状として報告されている。(Sato訳)
■6頭のイヌで化学療法剤の血管外遊出の治療としてヒアルロニダーゼの使用
Use of Hyaluronidase for the Treatment of Extravasation of Chemotherapeutic Agents in Six Dogs
J Am Vet Med Assoc 221[10]: 1437-1440 Nov 15'02 Case Report 16 Refs
Enrico P. Spugnini, DVM
抗腫瘍剤のIV投与中に6頭のイヌに血管周囲管外遊出がおきた。管外遊出後、その部位へのヒアルロニダーゼ300単位の局所注射で治療を開始した。十分に組織内の毒性による影響が解消するまで、毎週注射を繰り返した。6週以内に全頭回復し、管外遊出時残余線維症は最小と考えられた。
多くの化学療法剤は、化学療法のサイクル中、管外遊出したときの重度細胞毒性を起こし、続く数週間皮膚の潰瘍化や脱落を伴う組織壊死を起こす。外科的治療や皮膚移植が治癒に導くため必要となることもある。管外遊出の続発症は、化学療法の中止、または安楽死という結果になるかもしれない。ヒアルロニダーゼは、種々の化学療法剤の管外遊出での副作用に対する安全な治療であることは明らかで、皮膚毒性の重症度を減らすため、効果的に使用できるかもしれない。(Sato訳)
■イヌの膀胱の移行上皮癌のシクロオキシゲナーゼ-2発現
Expression of cyclooxygenase-2 in transitional cell carcinoma of the urinary bladder in dogs.
Am J Vet Res 61[5]:478-81 2000 May
Khan KN, Knapp DW, Denicola DB, Harris RK
目的:イヌの移行上皮癌細胞と臨床的に正常なイヌの膀胱上皮で、シクロオキシゲナーゼ(COX)-1とCOX-2発現を評価すること
動物:膀胱移行上皮癌のイヌ21頭と、臨床的に正常な膀胱のイヌ8頭
方法:イソ型特定抗体で標準の免疫組織化学法を用い、COX-1とCOX-2を評価した。
結果:COX-2ではなくCOX-1は、正常な膀胱上皮に構成的に発現していた。しかし、COX-2は21頭全頭で、原発腫瘍や転移病巣の腫瘍性上皮に発現し、3頭は新しい増殖血管に発現した。またCOX-1も腫瘍細胞に発現した。
結論と臨床関連:正常な膀胱上皮でCOX-2の発現欠如と、その後の移行上皮癌細胞への発現は、このイソ型が腫瘍細胞の成長に絡んでいるかもしれないと示唆する。COX-2の抑制は、非ステロイド抗炎症剤(NSAID)の抗腫瘍効果のメカニズムと思われる。(Sato訳)
■イヌの移行上皮癌
Canine transitional cell carcinoma.
J Vet Intern Med. 2003 Mar-Apr;17(2):136-44.
Mutsaers AJ, Widmer WR, Knapp DW.
膀胱の移行上皮癌(TCC)は、イヌの尿路の一般的な悪性腫瘍で、診断、効果的な治療に関し難しいものである。この疾患の普及率は増加しているかもしれない。イヌ移行上皮癌の原因は多因性の様である。イヌの移行上皮癌の疫学的研究でいくつかのリスクファクターが明らかにされており、それには血統、メス、殺虫剤の暴露のような環境要因も含まれる。この腫瘍は外科的切除が難しく、化学療法に対する反応も悪い。放射線や他の治療様式の有効性について更なる調査が必要である。シクロオキシゲナーゼ阻害剤は、移行上皮癌に対しいくらか作用し、それらの効果を明らかにする更なる研究が進められている。膀胱癌に対する腫瘍/リンパ節/転移(TMN)分類の使用は、予後因子の確認のために使用されている。尿路閉塞や転移病巣は治療が困難なままである。イヌ移行上皮癌の研究は、この疾患がヒト侵襲性膀胱癌にどれほど密接に似ているかを示している。ゆえに更なる研究は移行上皮癌のイヌやヒト両方に利益をもたらす可能性がある。(Sato訳)
■細胞診の感度と特異性の評価:269症例(1999-2000)
Evaluation of Sensitivity and Specificity of Cytologic Examination: 269 Cases (1999-2000)
J Am Vet Med Assoc 222[7]:964-967 Apr 1'03 Retrospective Study 15 Refs
Michele Cohen, DVM; Mark W Bohling, DVM; James C. Wright, DVM, PhD, DACVPM; Elizabeth A. Welles, DVM, PhD, DACVP; Joseph S. Spano, DVM, PhD, DACVP
目的:臨床環境で用いられる、細胞診の感度と特異性を調査することです。
計画:回顧的研究
動物:犬216頭、猫44頭、馬4頭、フェレット2頭、ラマ1頭、ラット1頭、マウス1頭です。
手順:組織病理学的診断後、3日以内に外科的生検、または検死により、細胞診を行った症例の記録を調査しました。診断結果を、完全一致、部分的一致、一致せず、材料の不適当または不足のために比較不可能など、さまざまなレベルで一致度を比較しました。一致レベルは、新生物、炎症、異形成-過形成-その他、正常組織など、異なるカテゴリーで比較しました。さらに、新生物病変に関する一致レベルは、細胞のタイプ、悪性度、そして位置に関して分類しました。細胞診の感度と特異性を算出しました。
結果:一般的一致(完全と部分的一致)のレベルでは、病変の位置に依存して、細胞診の感度は、33.3%から66.1%までの範囲でした。細胞診は、皮膚および皮下病変を診断するのに用いた場合、最も正確で、肝臓病変の診断に関して、最も不正確でありました。細胞診は、新生物疾患の診断に最も有効で、異形成または過形成の診断では、有効ではありませんでした。
結論と臨床関連:我々の結果はこれまでの報告より、正確ではありませんでしたが、細胞診は価値のある診断的手法であります。偽陰性(誤診)は、偽陽性(健康な動物を病気と分類)より、はるかに多いものでした。従って、もし、疑いが高ければ、細胞診を繰り返すか、疑わしい状態を除外するために、他の手法を選択するべきであります。(Dr.K訳)
■フェレット7頭のワクチン関連線維肉腫の組織学と免疫組織化学検査
Histology and Immunohistochemistry of Seven Ferret Vaccination-site Fibrosarcomas.
Vet Pathol 40[3]:288-93 2003 May
Munday JS, Stedman NL, Richey LJ
フェレット10頭の皮膚と皮下線維肉腫の解剖学的部位、組織学検査、免疫組織化学検査を行った。10個の腫瘍のうち7個はワクチンを接種した部位からだった。全ての線維肉腫には、さまざまな量の結合組織基質に取り囲まれた紡錐形細胞を含んでいた。しかし、ワクチン部位線維肉腫(VSFs)は高度の細胞多形性を有していた。7つのVSFsうち3つに多核細胞が見られたが、非ワクチン部位線維肉腫(NVSFs)には見られなかった。細胞質に好塩基性の顆粒を含む、マクロファージと思われる大型組織球細胞が、2つのVSFsに観察されたが、NVSFsにまったく見られなかった。5つのVSFsは末梢リンパプラズマ細胞性の集合体があった。
免疫組織化学的に、3つのVSFsは、抗平滑筋アクチン抗体に染まり、1つはデスミンに対する抗体で染まった。筋細胞骨格性フィラメントの発現は、どのNVSFにも見られなかった。アクチンと思われるフィラメントは、超微細構造的に検査したVSFsの2つで明らかだった。超微細構造的に検査したVSFsの1つは、細胞質内に結晶性のものを含んでいた。ワクチン接種部位の皮下線維肉腫の優先的な発現は、ネコのようにフェレットで、ワクチン接種が局所肉腫発現を促進するかもしれないと示唆する。また、それら腫瘍の組織学的、免疫組織化学的、超微細構造特質の中には、ネコワクチン関連肉腫で報告されているものに類似するものもある。著者の知るところでは、過去ネコ以外のどの種でもワクチン接種による腫瘍形成性は報告されていない。(Sato訳)
■犬における下顎骨の線維性骨異形成症
Fibrous dysplasia of mandibular bone in a dog.
J Vet Dent. 2002 Jun;19(2):77-81.
Fitzgerald W, Slocombe R, Caiafa A.
ジャーマン・シェパード、オス 9歳において、下顎第3、第4前臼歯間隙に残る不連続性の舌塊を認めた。病変を切除し、病理組織学的検査の結果、その病変は線維性骨異形成症と診断した。線維性骨異形成症は、発生的起源から考えると、まれな、侵襲性のない放射線透過性の非腫瘍性病変である。一般的に孤立性の病変として認められるが、動物やヒトでは、多骨性形状として報告されている。その病気の過程において、骨強度が低下するかもしれないほどの骨の変形を引き起こす。臨床徴候は、拡張する骨病変と関連した特異的障害部位に続発するものである。術後18ヶ月に施した口腔内検査において、再発徴候はなかった。(Dr.madoron訳)
■失神と腹部膨満を伴うイヌの縦隔マス
Mediastinal Mass in a Dog with Syncope and Abdominal Distension
Vet Clin Pathol 29[1]:19-21 Spring'00 What's Your Diagnosis? 9 Refs
Kurt L. Zimmerman, DVM; John H. Rossmeisl Jr., DVM; Catherine E. Thorn, DVM, DVSc; Geoffrey K. Saunders, DVM, MS
11歳避妊済みメスのゴールデンレトリバーが、1ヶ月に及ぶ進行性の腹部膨満、嗜眠、間欠的失神で来院した。紹介される2週間前から利尿療法を始めていた。身体検査で、8%脱水、低体温(直腸温98F)、瀕死で体の状態は悪かった。また全身性の皮下圧痕浮腫、呼息性呼吸困難、鈍い腹側肺音、乏しい末梢脈拍、かすかな心音と腹水もあった。
診断治療的の胸腔穿刺を行った。約1.2Lのオレンジ色の液体が胸腔から除去された。胸腔穿刺後撮影した胸部X線写真で、胸膜亀裂ライン、拡大した球状形心陰影、気管の背側転移が認められた。心エコー検査で、心嚢水と顕著な両室肥大が認められた。超音波ガイドの心膜穿刺により漿液血液状の液体900mlを収集した。診断的腹腔穿刺も行った。胸腔、心嚢、腹腔から吸引した液体は、変更した浸出液と解釈した。胸部超音波検査で、胸腔入り口から上行大動脈に広がる10cm長、高エコー、多結節縦隔マスが認められた。縦隔マスの経皮的針吸引生検を行った。
細胞特性から非クロム親和性傍神経節腫の仮診断を行った。リンパ球がないことから胸腺腫は除外した。濃い藍色の細胞質色素の欠如(甲状腺腫や甲状腺癌の少数比率で見られる)、または細胞外コロイドの欠如から甲状腺濾胞細胞腫瘍の見込みは少なかった。上皮小体機能亢進は、臨床生化学検査結果から示唆されなかった。またイヌの上皮小体の腫瘍はかなりまれである。
オーナーはイヌの安楽死を選択した。検死で水胸、心膜水腫、腹水、全身性の皮下水腫を認めた。黄褐色の出血性多結節性のマスが、大動脈と腕頭動脈を取り囲み、縦隔頭側に10cm伸びていた。左右心室は肥大し、肝臓や肺はうっ血していた。右副腎は正常の2倍の大きさで2cm×1cmだった。副腎皮質は薄く、髄質には出血性の茶色のマスが含まれていた。組織学的所見は、大動脈体の悪性非クロム親和性傍神経節腫に一致した。
副腎髄質のマスは、副腎皮質に伸びる悪性髄質細胞の索や多角クラスターで構成され、副腎皮質の圧迫や破壊が認められた。副腎のマスの組織学的診断はクロム親和性細胞腫だった。(Sato訳)
■イヌの喉頭部のマス
Mass in the Laryngeal Region of a Dog
Vet Clin Pathol 32[1]:37-39 Spring'03 Case Report 4 Refs
Charles E. Wiedmeyer, Marlyn S. Whitney, Laura D. Dvorak, Dudley McCaw, Susan E. Turnquist
症例提示
13歳去勢済みイエローラブラドールレトリバーが、2週間にわたる上部気道の雑音と運動不耐性を呈してきた。軽度呼吸困難と頻呼吸が身体検査で見られた。CBC、血清化学プロフィール、尿検査、胸部X線検査で顕著なものはなかった。喉頭鏡検査で、3.0×4.0-cmの丸い波動感のある軟部組織マスが、右扁桃腺の壁から咽頭のほうに下向きに伸びていた。マスの吸引針生検を行い、細胞診を行った。更なる呼吸困難を緩和するためにマスを外科的に切除し、組織病理学的評価を行った。
細胞学的解釈
肉芽腫性炎症と未確認のタンパク性物質の仮診断がなされた。空胞化上皮細胞の所見をもとに、唾液腺を含んでいる疑いがあった。
肉眼そして組織病理学的解釈
プラズマ細胞性唾液腺炎を伴う慢性唾液腺嚢腫という最終的な組織診断が成された。
考察
粘液嚢腫(または唾液腺嚢腫)は、臨床的にも良く認められる唾液腺疾患である。犬で粘液嚢腫の多くは、2-4歳で起こり、ジャーマンシェパードやミニチュアプードルが好発犬種である。粘液嚢腫は、皮下組織への唾液の貯留や口の中の腫れなど特徴を示す。たびたび外科的問題となるに十分な大きさになり、どの唾液腺も罹患する可能性がある。舌下腺は最も良く粘液嚢腫に関係する唾液腺で、下顎骨間部、舌下、または咽頭近くの腫れとして現れるかもしれない。臨床症状は粘液嚢腫の位置に依存する。粘液嚢腫は炎症反応のため、最初は痛みを伴う。炎症反応が治まると、腫れも引いてくるが、病変は再びゆっくりと拡大し、液体に満たされた痛みのない腫れとなる。唾液腺や導管の外傷が、粘液嚢腫を起こす一般的な原因と考えられる。しかし、イヌで唾液腺の粘膜嚢腫を実験的に再現する試みで、完全に成功したことはなく、これは罹患犬の発生傾向の可能性を示唆している。(Sato訳)
■悪性腫瘍の体液性高カルシウム血症:診断と治療
Humoral Hypercalcemia of Malignancy: Diagnosis and Treatment
Compend Contin Educ Pract Vet 25[2]:129-136 Feb'03 Review Article 25 Refs
Robert J. Vasilopulos, DVM & Andrew Mackin, BSc, BVMS, MVS, DVSc, DACVIM (Small Animal Internal Medicine)
悪性腫瘍の体液性高カルシウム血症の診断は、完全な病歴と身体検査で始まる。高カルシウム血症の存在の確認後、胸部や腹部のX線検査、腹部の超音波検査、リンパ節や骨髄の吸引細胞診、それからもしかすると上皮小体ホルモン、上皮小体ホルモン関連タンパク、カルシウムイオン、カルシフェロール濃度を判定するための特別な血液検査のような診断計画を立てるべきである。利尿や追加薬剤療法(例えば、必要ならば利尿剤やグルココルチコイド)での支持療法は、原因の診断が成され、より特定の治療が始まるまで高カルシウム血症の有害作用から体を守る手助けとなる。難治症例で、サーモンカルシトニン、ビスホスホネート、重炭酸ナトリウムなどの他の治療が施されるかもしれない。多くの患者は、基礎にある癌が寛解している間、良質の生活が送れる。(Sato訳)
■脊髄クモ膜嚢腫の回顧分析14症例
Retrospective Analysis of Spinal Arachnoid Cysts in 14 Dogs
J Vet Intern Med 16[6]:690-696 Nov-Dec'02 Retrospective Study 22 Refs
Helena Rylander, David Lipsitz, Wayne L. Berry, Beverly K. Sturges, Karen M. Vernau, Peter J. Dickinson, Sonia A. Anor, Robert J. Higgins, Richard A. LeCouteur
犬で脊髄クモ膜嚢腫(SACs)の二次性の脊髄機能不全が過去に報告されている。この回顧的研究は、犬14頭の臨床症状、X線所見、脊髄クモ膜嚢腫切除後の予後を再検討した。単純脊柱X線写真と脊髄造影検査を全頭で行った。7頭の犬でCT検査、3頭の犬でMR画像検査を行った。罹患犬の年齢は1~12歳で14頭中8頭はロットワイラーだった。SACの部位に依存する神経学的検査の異常が検出された。5頭は2裂または複数の脊髄クモ膜嚢腫だった。11頭の脊髄クモ膜嚢腫は頚部脊柱にあり、4頭は胸部脊柱に存在した。全頭背側または背側面に位置した。2頭は、加えて腹側面にもあった。2頭の脊髄クモ膜嚢腫の部位に、椎間板突出または隆起による二次的な脊髄圧迫が見られた。
全頭外科的切除が完全に行われた。11頭の追跡調査が出来た。7頭は術後5週間で神経学的機能の回復を見せ、そのうち6頭はある程度の後遺症的失調や不全麻痺があった。4頭の神経学的機能は悪化した。この研究の結論として、ロットワイラーは他の犬種よりも脊髄クモ膜嚢腫の発生率が高い。さらに2裂片または複数の脊髄クモ膜嚢腫が一般におこり、その場所を突き止めるのに脊髄造影が効果的である。病変の外科的切除は、治療した犬の大多数の神経学的機能を改善した(Sato訳)
■犬のグルカゴノーマ
Canine Glucagonoma
Natalie B. Langer, Albert E. Jergens, Kris G. Miles:Cnanie
Compend Educ Pract Vet 25(1):56-63,2003
グルカゴノーマは、膵島のα細胞に起こる、まれな内分泌腺の腫瘍である。グルカゴノーマの犬は、たいてい最初に四肢の肉球に特徴的な皮膚炎が見られる。皮膚病変の正確なメカニズムは不明であるが、高グルカゴン血症またはそれを起こす他の代謝異常がそれらの発生要因と考えられる。殆どのグルカゴノーマの犬に診断が下されるときには、すでに臨床経過が長く、完治させる事は難しいが、外科的あるいは薬物療法により症状を緩和させる事は可能である。(Dr.Boo訳)
■成犬の腎芽腫の治療
Treatment of Renal Nephroblastoma in an Adult Dog
J Am Anim Hosp Assoc 39[1]:76-79 Jan-Feb'03 Case Report 18 Refs
Rebecca L. Seaman, DVM & Clark S. Patton, DVM, MS
8歳去勢済みラブラドールが、抗生剤に反応しない3ヶ月間にわたる両側対称性の手根の腫れと血尿の評価で紹介されてきた。X線評価で、左手根、足根、中足骨の肥大性骨症が認められた。腹部X線検査と超音波検査で、右腎臓部に不規則な軟部組織不透明部を認め、腎腫瘍を疑った。腹部の試験切開により、診断画像所見に肉眼的転医病巣がないことを確認した。その腎臓の摘出術を行い、普通に患犬は回復した。腎臓の組織病理学検査で、上皮性構成部分は良性である事がわかったが、間葉性構成部は肉腫だった。最終診断は、組織病理で予後不良なステージ1の腎芽腫だった。
ビンクリスチンとドキソルビシンの化学療法プロトコールを始め、3週間毎の合計5回の治療を行った。肥大性骨症病変は、腎摘出後5週間で解消し始め、術後7ヶ月では認めなくなった。そのイヌの病気フリー期間は>25ヶ月だった。
過去に肥大性骨症に関係している若・成犬で腎芽腫はまれな腫瘍である。イヌの腎芽腫の症例報告は、外科、化学療法、放射線療法、またはその組み合わせの治療で成功を述べているものはない。著者は、症例報告が少ない事が、広範な結論を出すことを難しくしているが、この症例は治療で2年以上、病理組織学的に予後不良なステージ1の腎芽腫のイヌを生存させる事が可能であることを示したと結論付ける。(Sato訳)
■軟部組織繊維肉腫の犬で、血管造影研究と治療的塞栓形成:症例報告と文献再検討
Angiographic Study and Therapeutic Embolization of Soft-Tissue Fibrosarcoma in a Dog: Case Report and Literature Review
J Am Anim Hosp Assoc 38[5]:452-457 Sep-Oct'02 Case Report 26 Refs
Fei Sun, MD; Javier Hernandez, MD, PhD; Javier Ezquerra, DVM, PhD *; Esther Duran, DVM, PhD; Luis-Fernando Pineda, MD; Carmen De Miguel, MD, PhD; Veronica Crisostomo, DVM; Jesus Uson, DVM, PhD; Manuel Maynar, MD, PhD
5歳オスのSerra de Aires犬が、20日前から左後肢の跛行を起こす有痛性のマスで紹介されてきた。身体検査で左大腿部左側内側に直径15-20-cmのマスを触知できた。罹患肢のX線写真で、骨や関節を巻き込まない軟部組織の腫脹のみが確認された。複数の針生検を行ったが、細胞病理検査では診断できず、更なる検査はオーナーの金銭面でできなかった。獣医腫瘍学の血管造影の有用性に関する著者の研究をもとに、無料の血管造影を提案しオーナーの許可が下りた。
血管造影所見は、ヒトの軟部組織肉腫で確定した診断パラメーターと一致し、それは腫瘍への動脈の拡大と腫瘍の侵害を示唆する閉塞所見と先細り、不規則な血管分布、腫瘍造影像(造影剤点滴後腫瘍組織内の長く続く実質不透明化)、早期動脈相の蛇行した静脈経路、余剰静脈だった。軟部組織肉腫の仮診断をもとに、経カテーテル動脈塞栓形成(TAE)を治療様式として、オーナーの許可を得た。透視下で、マスに血液を供給している目標動脈にカテーテルを通し、造影剤、生理食塩水と混合したゼラチンスポンジ粒子を血管内に血流が見られなくなるまで注入した。塞栓形成後2週間目の再評価で、マスの大きさは減少したが、犬の状態が悪くなったため、オーナーは安楽死を選択した。検死と組織病理検査で、肺転移を伴う軟部組織繊維肉腫と確定診断された。組織の壊死は、腫瘍全体の約80%に及んだ。
ヒトで繊維性腫瘍は、病理や血管造影と広く研究されている。現在、悪性度と繊維肉腫の脈管質に密接な関係があると広く認められている。根底にある悪性腫瘍に密接な関係を持つ脈管パターンは、血管造影で明らかにできる。より脈管が多い部分は、急速な成長と分化型の腫瘍領域が少なくバイオプシーを行うのに良い部位である。繊維肉腫は比較的放射線抵抗性を持ち、化学療法に反応が悪いと考えられる。それゆえ、外科手術が治療の主軸となっているが、根治療法(例えば、断脚)なく完全な切除はできそうになく、良くオーナーの許可が下りない。ヒトで、軟部組織肉腫の術前の補助的、または一時軽減療法として経カテーテル動脈塞栓形成に関心が集まってきている。著者は、この症例の結果をもとに、経カテーテル動脈塞栓形成法が繊維-軟部組織肉腫に対する獣医療で、効果的な補助患肢温存療法になり得る。(Sato訳)
■化学療法剤の血管外遊出
Chemotherapy Extravasation
Vet Med 98[1]:32-34 Jan'03 Case Report 0 Refs
Kevin A. Hahn, DVM, PhD, DACVIM
重度組織ダメージの原因となる化学療法剤は、抗がん性抗生物質(例えば、ドキソルビシン、アクチノマイシンD、塩酸ミトキサントロン)と抗有糸分裂剤(例えば、硫酸ビンクリスチン、硫酸ビンブラスチン、パクリタクセル)である。軽度から中程度の組織傷害はシスプラチンやカルボプラチンで起こるかもしれない。化学療法剤を投与する時、血管外遊出を防ぐために、複数回カテーテル留置を試みたり、最近静脈穿刺をしたような静脈を使用してはいけない。ドキソルビシンやシスプラチンのような大量の薬剤を使用する時には、22-23Gの留置針を1回留置方法により設置する。1ml以下の薬剤量の時は23-25Gバタフライカテーテルで実施できる。薬剤投与前後に、ある程度の量(3-4ml)の無菌生理食塩液をカテーテルに注入し、静脈が無傷で、カテーテルが正確に設置されている事を確かめるようにする。
化学療法剤を投与しているとき、血管外遊出が起こったと思った時には、即座に投与を止め、シリンジに戻すように遊出していない全ての薬剤の回収を試みる。皮下への解毒薬が推奨されるならば、その部位の時計回りに投与する。それら傷害の即座の処置で推奨されるプロトコールは表1に挙げる。もしくは獣医腫瘍専門医に相談する。組織にさらに薬剤が広がるので、遊出部に生理食塩液を浸潤させてはいけない。別のアドバイスとして温シップ(全身への薬剤吸収を高める)と冷シップ(細胞毒性を抑える)を交互に3-6時間おきに24-48時間使用する。その時シップは15-20分適用する。それらのダメージコントロール処置を行っても、強烈な傷の管理を行わなければならないだろう。オーナーには最初数週間の頻繁な継続来院と、更なる傷害部位の外科的デブリードメントの可能性を前もって伝えておく。傷の完全な大きさは、1,2週間で明らかにならないかもしれない。(Sato訳)
■コンパニオンアニマルの腫瘍の治療としての放射線療法
Radiation therapy for the treatment of tumours in small companion animals.
Vet J 164[3]:176-87 2002 Nov
Moore AS
獣医療患者の腫瘍の治療に放射線が広く利用されるようになっている。低エネルギーの外部ビーム放射線を射出可能な常用電圧機器は、メガボルテージ放射線を射出するリニアックやコバルト-60機器よりも用途が限られている。またいくつかのリニアックで利用できる電子ビーム性能は、より集中的な治療を可能にする。放射線の急性の影響は予想がつくが、そのような副作用はほぼ全症例、プロトコールを制限することなく改善する。対照的に遅れてくる影響は限定的な照射量で、治療分画に対してより照射量が高いと起こり易い。分画に対しより低い照射量を使用するプロトコールは、遅延の副作用のリスクを低減し、それによって総照射量が高くなることにより高い腫瘍コントロール率を導き出すことができる。イヌネコに対する放射線療法の使用で、特に犬の肥満細胞腫、軟部組織肉腫、口腔腫瘍、脳腫瘍そして猫の軟部組織肉腫や皮膚腫瘍などの長期腫瘍コントロールが可能になる。腫瘍のタイプを判定する組織学的な性質について総括的な仮説を下すよりも、腫瘍ステージや拡散分画を基にした腫瘍治療の区別を考慮すべきである。(Sato訳)
■31頭のイヌネコにおける口腔と顎顔面の腫瘍のリンパ節病期分類
Lymph node staging of oral and maxillofacial neoplasms in 31 dogs and cats.
J Vet Dent 19[3]:122-6 2002 Sep
Herring ES, Smith MM, Robertson JL
口腔、または顎顔面の腫瘍を持つ犬猫の領域リンパ節に対する組織検査結果を報告するため回顧的研究を行った。イヌ28頭とネコ3頭を評価した。領域リンパ節の標準と連続組織切片の組織検査結果を記録した。入手時、下顎リンパ節の硬さ、胸部X線写真、術前術後のリンパ節の針吸引生検などの他の臨床パラメーターを、組織学検査結果と比較した。扁平上皮癌、繊維肉腫をネコで診断した。下顎リンパ節の触診で増大が見られたもののうち、17.0%は組織学的に転移病巣だった。X線写真で明らかな胸部転移が7.4%の症例に存在した。下顎リンパ節の針吸引細胞診の術前評価は、検査したリンパ節の90.5%が組織学的結果と相関していた。術後領域リンパ節の針吸引生検の評価で、検査したリンパ節の80.6%が組織検査結果と相関していた。領域リンパ節の転移がある症例の54.5%しか、下顎リンパ節の転移していなかった。
リンパ節の連続切片で、追加情報の入手や転移検出ができた。下顎リンパ節の細胞診は、組織検査に明白に関連するが、局所転移を示さないかもしれない。口腔、または額顔面腫瘍を持つ犬猫の、全領域リンパ節の評価は、下顎リンパ節のみの評価に比べ、より転移を検出することとなるだろう。(Sato訳)
■犬の浸潤性甲状腺癌の根治放射線療法
Definitive Radiation Therapy for Infiltrative Thyroid Carcinoma in Dogs
Sm Anim Clin Endocrinol 12[2]:7 May-Aug'02 Retrospective Study 0 Refs
C.B. Chastain, DVM, MS, Dipl. ACVIM & Dave Panciera, DVM, MS, Dipl. ACVIM
Pack L, Roberts RE, Dawson SD, et al. Vet Radiol Ultrasound 2001;42:471-474
背景:犬の甲状腺腫瘍の大多数は癌腫である。甲状腺癌は急速に成長し、一度両側になったり、容積が20mlを超えてくると周囲組織にたびたび固着するようになる。ほとんどは進行したステージを最初から呈してくる。転移は肺や、局所リンパ節、頚静脈に起こす。積極的な治療をした時の1年生存率は、25%である。甲状腺癌の治療は、外科切除、化学療法、放射性ヨー素、外部のビーム照射などの治療が試される。治療の最適な形や組み合わせは解っていない。
要約:周囲組織に固着した甲状腺癌を持つ8頭のイヌを、回顧的に研究した。全頭肺転移のX線所見はなく、4週間かけた分画治療で、46.8-48.0Gyの最小腫瘍線量を射出するコバルト-60を用いた根治的外部ビーム照射で治療した。放射線腫瘍学者により照射後1、3、6、12ヶ月目と最初の年のちょうど6ヵ月後の各イヌを評価した。この研究に使用した犬の年齢は8-12歳だった。犬種の偏りは見られなかった。7頭の外科手術は腫瘍の容積を減らすために行った。1頭は照射のみの治療を行った。腫瘍のバイオプシーで、3頭は固形甲状腺癌、3頭は濾胞状癌、2頭は固形濾胞状癌とわかった。2頭は両側性だった。残りのイヌは片側性で左側だった。
照射後6ヶ月以内に、全頭局所腫瘍の縮小をもとにした完全な反応を示した。原発部位に腫瘍は残っていなかったが、2頭は肺転移、1頭は骨転移、1頭は肺と骨転移両方を起こした。全頭の平均生存期間は24.5ヶ月で、急性の放射線の合併症は、食道、気管、喉頭粘膜炎が起こったが、照射を中止するような重度のものはなかった。粘膜炎は最後の照射から2,3週間以内に改善した。転移を起こした4頭は12-36ヶ月生存した。著者は、分画化根治放射線療法は、犬の甲状腺癌の効果的な局所療法だと締めくくる。
臨床への影響:犬の甲状腺癌はいろいろ組み合わせて治療するのが一番良い。腫瘍は可能ならば完全に切除するべきである。分画根治放射線療法は原発性腫瘍の治療に効果的と思われる。この研究の犬の半数は転移があるにもかかわらず、原発腫瘍をコントロールできた。照射に化学療法を加えることが望ましいが、甲状腺癌は現在の化学療法剤に良く反応するわけではない。
■片側停留精巣のネコにおける奇形腫
Miyoshi N, Yasuda N, Kamimura Y, Shinozaki M, Shimizu T.
Vet Pathol 2001 Nov;38(6):729-30
Teratoma in a feline unilateral cryptorchid testis.
14×12×6cm(約600g)の停留精巣を、2歳、オスのアメリカンショートヘアーの腹腔肛門側から大網とともに外科的に摘出した。摘出前、片方の精巣は陰嚢内に発見されていた。停留精巣の断面は、液体を含む多くの嚢胞を伴う固形部分、海綿状の柔らかい部分から構成されていた。組織学的に、停留精巣は神経外胚葉性部分、拡散した未熟なグリア組織、包嚢状、管状、乳頭状上皮組織、未熟な軟骨組織から構成されていた。大網の転移腫瘤は、組織学的構造が停留精巣のそれと類似していた。この症例はネコの片側停留精巣における奇形腫と診断された。(Dr.Yoshi訳)
■猫のワクチン関連肉腫の治療でリポソーム被包性ドキソルビシン(Doxil)とドキソルビシンの使用
Liposome-Encapsulated Doxorubicin (Doxil) and Doxorubicin in the Treatment of Vaccine-Associated Sarcoma in Cats
J Vet Intern Med 16[6]:726-731 Nov-Dec'02 Multicenter Study 36 Refs
Valerie J. Poirier, Douglas H. Thamm, Ilene D. Kurzman, K. Ann Jeglum, Ruthanne Chun, Joyce E. Obradovich, Maura O'Brien, Rogers M. Fred III, Brenda S. Phillips, David M. Vail
この無作為多施設研究の目的は、ネコワクチン関連肉腫(VAS)の治療で、リポソーム被包性ドキソルビシン(LED)とドキソルビシン(DOX)の毒性と効果を評価することだった。ネコを病気の状態により、顕微鏡群(顕著な疾患でない)と肉眼群(顕著な疾患)に振り分けた。各群に無作為にLED(1-1.5mg/kgIV3週ごと)またはDOX(1mg/kgIV3週ごと)の投与を行った。
33頭が肉眼群に振り分けられ、全体の反応率は39%(5頭は完全反応、8頭は部分反応)で進行の中央期間は84日だった。反応率はLEDとDOXに違いはなかった。75頭のネコは顕微鏡群に振り分けられた。外科単独で治療した組織学的に同様なコントロール群と比較した時、化学療法を受けたネコは疾患フリー期間の中央値は延長した(388日vs93日)。LEDとDOXの効果に違いは見られなかった。LEDを1.5mg/kgで投与したとき23%に遅延性の腎毒性が見られ、推奨投与量の1mg/kgに減量する必要があり、21.7%に皮膚毒性が見られた。この研究でDOX、LED共にワクチン関連肉腫の治療に効果的で、この腫瘍の治療に考慮するべきである。(Sato訳)
■犬における頭蓋内髄膜腫治療のための外科単独療法または放射線併用療法:31症例(1989-2002)
Surgery Alone or in Combination with Radiation Therapy for Treatment of
Intracranial Meningiomas in Dogs: 31 Cases (1989-2002)
J Am Vet Med Assoc 221[11]:1597-1600 Dec 1'02 Retrospective Study 30 Refs
Todd W. Axlund, DVM, DACVIM; Matt L. McGlasson, BS; Annette N. Smith, DVM,
MS, DACVIM
目的:頭蓋内髄膜腫を持つ犬において、外科切除後に放射線療法を行った犬の生存期間を外科単独で治療した犬の生存期間と比較するため
構成:回顧した研究
動物:頭蓋内髄膜腫を持つ31匹の犬。
方法:頭蓋内髄膜腫が組織学的に立証されている犬の医療記録が調査された。それぞれの犬についての症状、臨床兆候、腫瘍の位置、治療プロトコール、生存期間を医療記録と追跡電話調査から得た。
結果:腫瘍切除単独で術後一週間以上生存した犬の中央生存期間は7ヶ月(0.5~22ヶ月間の範囲)であった。腫瘍切除後、放射線治療を実施した犬の中央生存期間は16.5ヶ月(3~58ヶ月の範囲)であった。
結論と臨床への適合性:結果は、頭蓋内髄膜腫の犬において腫瘍切除に追加して放射線治療を実施することで有意に平均余命を延長することができる事を示唆している。(Dr.Massa訳)
■ストレプトゾシンで治療した犬の膵島細胞腫瘍:17症例(1989-1999)
Streptozocin for Treatment of Pancreatic Islet Cell Tumors in Dogs: 17 Cases (1989-1999)
J Am Vet Med Assoc 221[6]:811-818 Sep 15'02 Retrospective Study 33 Refs
Antony S. Moore, MVSc, DACVIM; Richard W Nelson, DVM, DACVIM; Carolyn J. Henry, DVM, DACVIM; Kenneth M. Rassnick, DVM, DACVIM; Orna Kristal, DVM; Gregory K. Ogilvie, DVM, DACVIM; Peter Kintzer, DVM, DACVIM
目的:利尿プロトコールを併用したストレプトゾシン投与による毒作用の判定と、犬の膵島細胞腫瘍の治療にストレプトゾシンが有効かどうか確証を得ること
構成:回顧的研究
動物:17頭の犬
方法:徴候、腫瘍のステージと行ったステージ分類試験、ストレプトゾシン治療の回数、副作用、ストレプトゾシン投与中の生化学と血液検査結果、腫瘍径、正常血糖値持続期間、死亡日時、いつ適応したかの情報を得るため、医療記録を再検討した。外科と内科的に治療した15頭の過去のコントロールグループと比較した。
結果:17頭の犬に58回の処置を行った。1頭だけ高窒素血症を起こした。血清ALT活性が上昇した犬もいたが、治療を中止すると低下した。血液学的毒性はほとんどなかった。投与中の嘔吐はまれだったが、たまに重度となった。5回投与後2頭の犬が真性糖尿病を起こした。ストレプトゾシンで治療したステージ-2または-3のインシュリノーマを持つ14頭の犬の正常血糖値持続期間の中央値は、163日(95%信頼区間、16-309日)で、コントロール犬と有意差はなかった(90日;95%信頼区間、0-426日)。2頭は腫瘍随伴末梢神経障害の急速な改善を示し、他2頭は、腫瘍サイズの適度な縮小を示した。
結論と臨床関連:結果は、利尿を誘発するプロトコールを併用した、500mg/m2、IV3週間毎でストレプトゾシンが安全に投与でき、転移性膵島細胞腫瘍の犬の治療に有効だろうと示唆する。(Sato訳)
■犬の皮膚、皮膚粘膜プラズマ細胞腫の臨床病理的側面
Clinico-pathological aspects of canine cutaneous and mucocutaneous plasmacytomas.
J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 49[6]:307-12 2002 Aug
Cangul IT, Wijnen M, Van Garderen E, van den Ingh TS
この研究で皮膚と皮膚粘膜プラズマ細胞腫の臨床病理面を、63頭の犬(1頭は腫瘍が2つ)で調査した。腫瘍は体幹や肢の皮膚に良く見られた。好発犬種はヨークシャーテリア(n=8)で、メス(23頭)よりもオス(36頭)の方がよく発生した。プラズマ細胞腫は、組織学的に成熟、ガラス質、分割、非同期的、単一芽細胞性、多形芽細胞タイプに分類される。単一芽細胞タイプが最もよく見られ(n=21)、続いて分割(n=19)、非同期的細胞(n=11)タイプだった。二次的アミロイド沈着は8例に見られた。全症例に免疫組織化学染色で、モノクローナルラムダL鎖陽性を示した。サイクリンD1についての免疫組織化学染色は、ヒトのプラズマ細胞腫の予後マーカーで、中程度の数の陽性腫瘍細胞が、(粘膜)皮膚プラズマ細胞腫のわずか1症例に観察された。他の全症例は、陰性かわずかな陽性腫瘍細胞を含むだけだった。一方、多発性骨髄種の犬の6症例中3症例で、多数の腫瘍性プラズマ細胞が陽性反応を示した。
後にリンパ腫を発生した1頭を除いて、(粘膜)皮膚プラズマ細胞腫の予後は良かった。細胞の種類、腫瘍の部位、アミロイドの有無、予後に関して有意な相関は見られなかった。(Sato訳)
■頭側の縦隔嚢胞を持つ9頭の猫
Cranial mediastinal cysts in nine cats.
Vet Radiol Ultrasound 43[5]:413-8 2002 Sep-Oct
Zekas LJ, Adams WM
11-17歳(平均13.6歳)の猫9頭を頭側縦隔嚢胞と診断した。全頭胸部X線で、頭側縦隔の軟部組織の不透明性増加が特徴で、超音波または検死で嚢胞を確認した。超音波的に嚢胞は無エコーのマスとして現れた。低細胞性の透明な液体が穿刺で取れた。多数の猫(n=8)は、呼吸困難の症状がない、関係ない症状を呈していた。数頭の猫で、超音波ガイドによる吸引を除き、持続できる嚢胞の治療法は無かった。8頭の猫の追跡調査で、診断後3-45ヶ月間嚢胞による徴候は見られなかった。縦隔嚢胞は老齢猫のX線検査で頭側縦隔にマスが見られた時に考慮すべきである。猫の頭側縦隔嚢胞の多くは、良性で、治療の必要は無い。
■犬の脊髄内過誤腫の外科的治療
Surgical Treatment of an Intramedullary Spinal Cord Hamartoma in a Dog
J Am Vet Med Assoc 221[5]:659-661 Sep 1'02 Case Report 12 Refs
Sean G. Sanders, DVM; Rodney S. Bagley, DVM, DACVIM; Patrick R. Gavin, DVM, PhD, DACVR; Roberta L. Konzik, DVM; Glenn H. Cantor, DVM, PhD, DACVP
避妊済み9歳のゴールデンレトリバーを、進行性の後肢跛行で検査した。胸部、そして一部腰部脊柱のMRIで、限局性のコントラスト増高を示す脊髄内のマスを認めた。履歴、徴候、MRI所見は脊髄腫瘍を示唆した。片側椎弓切除、硬膜切除、長軸脊髄切除を行い、1×1cmの豊富な血管を含むマスを鈍性に切除した。マスの組織検査、免疫組織化学染色の結果、過誤腫と思われた。術後犬は改善し、14ヶ月経っても臨床症状の再発はなかった。
犬のCNSの血管奇形には、過誤腫、血管腫、リンパ管腫、血管芽腫、髄膜脳血管腫症、動静脈奇形がある。過誤腫は、病変組織に正常にある細胞の非腫瘍性増殖、または細胞の不適当な比率である。血管奇形の病変の大きさを知るのにMRIは有効かもしれないが、腫瘍性か、非腫瘍性かの識別に用いる事はできない。脊髄内過誤腫の摘出は良い結果をもたらすだろう。(Sato訳)
■92頭の猫でワクチン関連肉種の術前放射線療法
Preoperative radiotherapy for vaccine associated sarcoma in 92 cats.
Vet Radiol Ultrasound 43[5]:473-9 2002 Sep-Oct
Kobayashi T, Hauck ML, Dodge R, Page RL, Price GS, Williams LE, Hardie EM, Mathews KG, Thrall DE
1985年12月から1998年9月の間に、化学療法を行う、または行わないで術前に放射線照射を受けたワクチン関連肉種の猫92頭の医療記録を再調査した。目的は、治療反応の定量化と良好な反応に関する因子の判定試みであった。徴候、腫瘍部位、明白vs顕微鏡的腫瘍の存在、照射野の大きさ、照射方法、外科処置の種類、切除の完全性、化学療法(なし、カルボプラチン単独、その他)などの変動値を、結果に対する関連のため評価した。
最初の事象までの時間は、治療初日から局所再発または転移、または安楽死や死亡日時までを計算した。全頭で最初の事象までの中央値は584日だった。外科切除の完全性のみ最初の事象までの時間と関連した。その中央値は、不完全切除292日と比較して、完全切除の場合986日だった(P=0.004)。効果的な腫瘍切除のために骨の切除を要した猫は、他の外科処置を行った犬よりも早期不全となった。化学療法剤の投与またはその種類と、最初の事象までの時間に有意な相関は無かったが、カルボプラチンの投与を受けた猫の予後は、他の全ての治療群よりも良かった。カルボプラチンに加え術前放射線療法は、さらに研究する価値があると思われた。術前放射線療法はワクチン関連肉種で、特に放射線照射のあとに完全切除が可能になれば効果的な治療である。(Sato訳)
■9頭の猫の気管支肺胞癌X線所見
Radiographic appearance of bronchoalveolar carcinoma in nine cats.
Vet Radiol Ultrasound 43[3]:267-71 2002 May-Jun
Ballegeer EA, Forrest LJ, Stepien RL
気管支肺胞癌(BAC)と確認された9頭の猫の胸部X線写真を回顧的に再検討した。気管支肺胞癌のX線所見は3つのカテゴリーに分類される。混合気管支肺胞パターン、不明確な肺胞のマス、空洞を伴うマス。それらのX線像に加え、気管支疾患を思わせる症状をいくつか持っていた。空洞病変はよく見られた(n=5)。またこのカテゴリーの3頭は、散在性の気管支間質不透明化を伴い、1頭は、限局性の細気管支周囲袖口様縁形成があった。5頭は気管支拡張を伴う混合気管支肺胞パターン(n=3)か、細気管支周囲袖口様縁形成を伴う不明確な肺胞のマスがあった(n=2)。1頭は混合気管支肺胞パターンと空洞のあるマスがあった。それら9頭の各猫は、気管支疾患をいくらか形成し(気管支間質パターン、細気管支周囲袖口様縁形成、気管支拡張)、それらは、気管支肺胞癌のX線診断の一助で気道転移を意味するのかもしれない。(Sato訳)
■犬の乳頭髄膜腫:2症例の臨床病理学的研究
J Comp Pathol 2001 Feb-Apr;124(2-3):227-30 Related Articles, Books, LinkOut
Papillary meningioma in the dog: a clinicopathological study of two cases.
Kaldrymidou E, Polizopoulou ZS, Papaioannou N, Koutinas AF, Poutahidis T, Papadopoulos G.
Faculty of Veterinary Medicine, Aristotle University of Thessaloniki, 54006 Thessaloniki, Greece.
犬の乳頭髄膜腫2例が報告されました。1例目は11歳のオスのボクサーで、前庭の失調症があり、左側の橋延髄領域に腫瘍が存在していました。
2例目は15歳メスのミニチュアプードルミックスで、痴呆症、体幹領域と推尺過大症(運動失調)があり、腫瘍は右側のガッサー半月神経節に存在していました。
1例目に関して、臨床病理学的検査において、乳頭腫は典型的なシンシチウム(合胞体)髄膜腫との合併パターンで、広範囲にわたる壊死が認められました。
2例目に関しては、多小葉性腫瘍には単一なシンシチウム性の、繊維性あるいは移行性の病理学的パターンであり、乳頭混合小葉が存在し、分泌性の病理学的パターンでした。
両方の腫瘍とも病理学的に悪性所見を呈していましたが、遠隔転移の証拠はありませんでした。(Dr.Shingo訳)
■犬の肛門嚢腺癌:臨床徴候と治療の反応
Canine Anal Sac Adenocarcinomas: Clinical Presentation and Response to Therapy
J Vet Intern Med 16[1]:100-104 Jan-Feb'02 Retrospective Study 13 Refs
Peter F. Bennett, Denis B. DeNicola, Patty Bonney, Nita W. Glickman, Deborah W. Knapp
肛門嚢腺癌(ASAC)を持つ43頭の犬の回顧した研究を、臨床徴候と治療の反応を特徴づけるために行った。発現時の臨床徴候はかなり様々で腰下リンパ節転移(しぶりまたは便秘)か高カルシウム血症(多尿煩渇多飲と食欲不振)のどちらかに関連した症状が頻繁に見られた症状だった。発現時、23頭(53%)の犬は高カルシウム血症であり、34頭(79%)は転移があり、領域リンパ節(31頭、72%)が最も一般的な転移部位だった。様々な化学療法薬剤が投与され、部分寛解(PR)がシスプラチンで治療した13頭中4頭(31%)、カルボプラチンで治療された3頭中1頭(33%)で記録された。全ての犬の中央生存率は6ヶ月であった(2日から41ヶ月の範囲)。3ヶ月生存率の増加を発見するための研究の検出力は低かった(0.33)ものの、高カルシウム血症と生存率の間に統計的関連はなかった。白金化学療法がイヌのアポクリン腺癌に抗腫瘍活性を持ち、これらの作用物質のより一層の研究に正当な理由があると締結します。[Dr.Massa訳]
コメント:肛門周囲に腫瘍がある場合には腸骨下リンパ節の確認(直腸検査、レントゲン検査など)や血中カルシウム値計測が必要ですね。治療は白金製剤が有望なようです。ところで最近、様々な腫瘍に対して白金製剤が有効という報告が多いと感じています。確かによく効く抗癌剤ですが、プロトコールに従った投与法が必要ですし、副作用もうまくコントロールしなくてはいけません。各個体にあった抗癌剤の選択を柔軟にできる知識と経験が必要と痛切に感じています。
■自然発生した新生物の犬におけるdolastatin-10の前臨床研究
Thamm DH et al; Cancer Chemother Pharmacol 49[3]:251-5 2002 Mar; Preclinical study of dolastatin-10 in dogs with spontaneous neoplasia.
目的:自然発生した悪性腫瘍を持つ犬におけるdolastatin-10 (Dol-10)適用の短期的副作用を評価するため
方法:合計34の担癌犬にDol-10が14日ごとに200~350 mg/m(2)の用量で急速静脈内投与された。急性または短期の副作用、抗腫瘍反応、反応持続時間を特徴づけた。
結果:最大許容薬用量は様々であったが、さらなる研究での妥当な開始用量は300 mg/m(2)と確定された。犬ごとの中央治療回数は2(1~17の範囲)であった。顆粒球減少症は用量制限毒性であった。全体の反応率は3%であり、犬の標準的な治療で手におえないような、グレードの高い悪性リンパ腫において完全または持続性のある(30ヶ月)反応であった。2つの少数または一過性の反応が観察され、2頭の犬では病気の安定化が8~16週間観察された。
結論:人間での許容量に近づけた薬用量では、腫瘍発生犬においてDol-10はよく許容されると思われる。非ホジキンリンパ腫の犬において観察される臨床活性はさらなる研究を正当化する。(Dr.Massa訳)
コメント:dolastatin-10とは抗有糸分裂作用を持つ合成制ガン剤です。
人医学の分野ではdolastatin-10からさまざまな分子標的をもつ誘導体が開発されており、ある誘導体はチューブリン/微小管を主な分子標的として種々の癌細胞にアポトーシスを誘導する事が報告されています。
■ギリシャ北部の病院に来院した174頭の犬における皮膚悪性腫瘍の出現度と潜在性に関連した罹患率、分布と要因
Kaldrymidou H et al; J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 49[2]:87-91 2002 Mar; Prevalence, distribution and factors associated with the presence and the potential for malignancy of cutaneous neoplasms in 174 dogs admitted to a clinic in northern Greece.
テッサロニキのアリストテレス大学獣医学部動物医療外科病院で皮膚新生物と診断された174頭の犬が調査された。31種類の腫瘍が診断され、それらの中で肥満細胞腫(13.8%)、肝様腺腫 (9.8%)、脂肪腫(5.7%)、組織球腫(5.7%)が最も一般的であった。上皮系、間葉系、リンパ組織球系、メラニン細胞腫瘍の羅漢率はそれぞれ47.7, 40.8, 8.6と2.9%であった。潜在的悪性新生物は良性腫瘍ほど記録されなかった。腫瘍は単発(80.5%)、複数(19.5%)であり、部位は頭頚部(18.4%)、体幹部(49.4%)、四肢(25.9%)、複数部位(6.3%)であった。多変量ロジスティック回帰モデルにおいて評価された、腫瘍が悪性である確率と関連する可能性のある要因は腫瘍の組織型と同様に年齢、性別、品種を含んだ。間葉系腫瘍の犬は悪性の可能性が上皮性腫瘍と比較して2倍の高確率であった。対照的にリンパ組織球系、メラニン細胞性腫瘍のどちらもが上皮系腫瘍の犬と比較して悪性の危険性は増加しなかった。腫瘍が悪性である危険性は犬の加齢と共に年1.1の係数で直線的に増加した。最後に皮膚腫瘍に発展する危険性における犬の性別と品種の影響が条件付きロジスティック回帰分析によって348頭の対照標本と組み合わせた年齢において調査された。腫瘍の発現する可能性は雑種より純血種が2倍高かったが、交雑種と雑種の間では違いがなかった。(Dr.Massa訳)
■犬の胃の腺癌と平滑筋肉腫:21症例(1986-1999)の懐古的研究と文献の再検討
Heather M. Swann, VMD, DACVS et al; J Am Anim Hosp Assoc 38[2]:157-164 Mar-Apr'02 Retrospective Study 22 Refs; Canine Gastric Adenocarcinoma and Leiomyosarcoma: A Retrospective Study of 21 Cases (1986-1999) and Literature Review
胃の新生物は全ての犬悪性腫瘍の1%以下であり、腺癌が最も頻繁に報告されている(犬の胃悪性腫瘍の42~72%)。公表されている報告は少なく、大部分は治療と結果について臨床的情報がほとんどない症例報告、または少数の症例集である。この研究の目的は、犬の胃腺癌と平滑筋肉腫の21症例を回顧しながら説明する事と、これらの症例の所見を著述におけるそれらと比較することであった。胃の腺癌(n=19)または平滑筋肉腫(n=2)と組織学的診断をうけた21頭の犬がこの研究に含まれた。発生年齢は3.5歳から13歳であり、大多数(81%)は5歳以上であった。品種または性別の疾病素因は明らかにされなかった。
嘔吐と部分的食欲不振、体重減少が最も一般的に見られた臨床徴候であった。画像化様式は胸部(n = 17)または腹部(n = 17)レントゲン検査、陽性胃造影(n = 9)、腹部超音波検査(n = 16)、胃腸内視鏡検査(n = 3)を含んだ。対照研究では超音波検査は8/9症例、超音波検査は16/16症例、内視鏡検査は3/3症例で高い診断的率をもたらした。そして全ての症例で基礎疾患に一致した異常所見を持っていた。腺癌を持つ19頭中14頭は遠隔転移があり、それらの部分は胃リンパ節、網、肝臓、十二指腸、膵臓、脾臓、食道、副腎、肺であった。平滑筋肉腫の症例でも肝臓(n = 2) と十二指腸(n = 1)に転移疾患があった。
治療は多様で、化学療法や外科手術の単独、またはその組み合わせで行われた。症例数が少ないため(n=4)化学療法の単独、またはその組み合わせの効果を評価する事はできず、生存期間の範囲は、9週~7.5ヶ月であった。ビルロートⅠ法または胃空腸吻合術(腺癌19頭中7頭と平滑筋肉腫2頭中2頭で行われた)からなる手術は 胃流出閉塞の即時軽減と術後早期の臨床的改善を提供する。しかしながら、全般的な病気の進行と結果は変わらない。術後3日から10ヶ月の臨床症状の再発で、全ての飼い主が安楽死を選択する結果となった。
著者はこの研究と文献の再検討は 犬の初発胃腫瘍の予後が一般的に悪い事を証明すると結論づけた。これらの腫瘍の高い転移の可能性が伝えられており、あらゆる努力で手術前の疑わしい胃新生物の正確な病期が作成されるべきだ。(Dr.Massa訳)
コメント:胃腫瘍の実際の治療はQOLの回復や維持が目的になる場合が多いですよね。高度な治療を目指すならまずは診断方法の確立でしょうか。内視鏡など普及すれば間違いなく今後診る機会の多くなる腫瘍と思っています。すでに犬猫の定期健康診断に内視鏡検査を組み込んでいる施設もありますが、やはり発見の機会は多いそうです。
■犬の甲状腺癌の単独外科手術療法:20症例(1981-1989)
Klein MK et al; J Am Vet Med Assoc 206[7]:1007-9 1995 Apr 1; Treatment of thyroid carcinoma in dogs by surgical resection alone: 20 cases (1981-1989).
1981年1月から1989年10月までの間に見られた甲状腺癌の犬82頭のうち、20頭の腫瘍は転移がなく可動性があり、外科切除のみで治療しました。無検閲の平均、そして中央生存期間は、両方とも20.5ヶ月でした。腫瘍以外の原因で死亡した、または追跡調査ができなかった犬を検閲したカプラン-マイヤー生存分析は中央生存期間が36ヶ月以上だと示しました。腫瘍関連が原因で7頭死亡しました。2頭は転移や局所再発、5頭は治療に関する合併症(例えば、喉頭麻痺、低カルシウム血症、気管切開での合併症)で死亡しました。8頭は無関係の原因で死亡しました。1頭は術後26ヶ月までの追跡調査後分からなくなり、3頭は術後19,24,26ヶ月まで生存しました。残りの犬の死亡原因は分かりませんでした。犬の可動性甲状腺癌で、外科的切除後長期生存が可能です。(Sato訳)
■膀胱、尿道、前立腺の移行上皮癌を超音波ガイド下で針吸引生検を行った跡の針路への癌細胞派生
Nyland TG et al; Vet Radiol Ultrasound 43[1]:50-3 2002 Jan-Feb; Needle-tract implantation following us-guided fine-needle aspiration biopsy of transitional cell carcinoma of the bladder, urethra, and prostate.
膀胱、尿道、前立腺に移行上皮癌を持つ3頭で、超音波ガイド下による経皮針吸引生検を行ったところ、2,5,8ヵ月後に腹壁に「とんだ」局所腫瘍を見つけました。我々の知識では、針吸引生検後のこの合併症の報告はありません。針路への癌細胞の「とび」がまれなのにもかかわらず、移行上皮癌のこの合併症は聞くところによると無視できるものではなく、考慮してもおかしくありません。下部尿道や前立腺の移行上皮癌の可能性に対する細胞学的診断を得るために、より情報入手の可能性があるときは、外傷性尿道カテーテルを推奨します。しかし、尿道にカテーテルを使用できないなら、針路の「とび」はまれなので、経皮針吸引生検実施を躊躇するべきではありません。(Sato訳)
■頚部静脈穿刺と脈管アクセスポイントから得た血液サンプルの血液、生化学値の比較
Carolyn J. Henry DVM, MS, DACVIM et al; J Am Vet Med Assoc 220[4]:482-485 Feb 15'02 Prospective Study 16 Refs; Comparison of Hematologic and Biochemical Values for Blood Samples Obtained Via Jugular Venipuncture and Via Vascular Access Ports in Cats
目的:脈管アクセスポイント(VAP)から得た血液の血液学的、生化学的値が直接静脈穿刺で得た血液サンプルのそれに匹敵するかどうかを判定すること
構成:予見的研究
動物:健康ネコ14頭
方法:それぞれのネコの頚静脈に外科的に脈管アクセスポイントを埋め込みました。脈管アクセスポイントを設置して10週間後、血液サンプルを、脈管アクセスポイントとその反体側の頚静脈を直接穿刺して採取しました。血液、血清生化学検査結果を対集団を使用して比較しました。無効な仮説を除くP値を、多重比較を説明するために調節し、それにはボンフェローニ法を用いました。それは名目上P-削除値は、比較数で分割しました(0.05/24=0.002)。
結果:脈管アクセスポイント設置後10週目に得たペアーサンプル(VAPと静脈穿刺)を各ネコで評価しました。24の分析値のうち、カリウムと総タンパク値、アルブミン濃度だけ、脈管アクセスポイントと静脈穿刺サンプルで有意差(P<0.001、3つとも)が現れました。
結論と臨床関連:脈管アクセスポイントから得たサンプルは、ネコの癌患者の通常血液モニターに適しているといえます。サンプル溶血が、カリウム、総タンパク、アルブミン濃度のわずかな上昇を起こしたのかもしれません。しかし、化学療法を受けている患畜のモニターとして最も重要な変化する値(すなわち、成熟好中球や血小板数)は比較可能です。適当な技術を使用するならば、脈管アクセスポイントは化学療法の投与や、癌治療を行っている猫の血液採取に使用できるでしょう。(Sato訳)
■注射部位肉種の予防と治療
DW Macy, C Guillermo Couto; J Feline Med Surg 3[4]:169-170 Dec'01 Proceedings 4 Refs; Prevention and Treatment Of Injection-Site Sarcomas
「・・・注射部位の腫瘍の防止に最も重要な推奨事項は、過剰ワクチン接種をしないことと思われる、Kasら(1993)。」ということは、ワクチン投与に伴い注射部位の腫瘍のリスクが増加する事を明らかに示しています。Scottら (1997)により最近発表された文献で、多くの市販ネコワクチンの免疫持続期間は1年以上で、3年毎のプログラムを、猫の感染性病原体のワクチンに定めるべきであると述べている事からも明らかです。狂犬病に関しては、3年-狂犬病製品で、毎年のワクチン接種はやめるべきです。注射部位肉種の一番原因かもしれないと思われる疫学データから、ネコ白血病ウイルスワクチンの見境のない使用はやめるべきです。完全な室内飼いのネコにFeLVワクチンは、現在ほとんど推奨されません。・・・アルミニウム基剤のアジュバントを含むワクチンの使用は問題となっています。アルミニウムアジュバントワクチンの複数投与ビンを使用しないという推奨は、議論になりませんが、アルミニウムアジュバントワクチン製品はワクチン部位の炎症をみな一致して起こし、我々の意見は可能ならば避けるべきなのです。しかし、アルミニウム基剤のアジュバントを持たないものも、腫瘍形成に関係しており、同様に安全でないかもしれません。
・・・注射部位肉種の問題は、そのうち我々のもとでも現われ、ワクチン後のしこりに何をすればよいかという質問が現実のものとなるでしょう。我々は下記のガイドラインに従います。狂犬病やFeLVワクチンで100%その後にしこりができるものもありますが、幸いにもほとんどが2-3ヶ月で消失します。注射部位の腫瘍がワクチン後3ヶ月より早くに起こる事はほとんどありません。それらの事実を考慮して、ワクチン後3ヶ月経っても存在する注射部位のしこりは、バイオプシーを行い、悪性ならば外科的切除を推奨します。切開性のバイオプシーは外科手術の大きさを決定できるでしょう。すなわちしこり切除vs積極的な外科切除です。それらの腫瘍の単純な切除の試みは、あまり治癒せず、最終的に次の手段が難しくなるような局所の再発をもたらします。積極的な広範囲外科切除を試みたとしても、しばしば不完全で、30-70%の失敗率となります。
・・・カルボプラチン(パラプラチン)、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、ミトキサントロン(ノバントロン)、シクロフォスファマイド(シトキサン)、ビンクリスチン(オンコビン)などの様々な化学療法剤が、注射部位腫瘍を持つ猫に使用されています。ほとんどの化学療法プロトコールは部分的反応を示す結果となりますが、完全な反応を起こすものもあります。
ドキソルビシンとシクロフォスファマイド、ミトキサントロンとシクロフォスファマイドの組み合わせや、カルボプラチン単剤投与は部分的、または完全寛解をもたらす事があります。しかし、ネコの肉腫は化学療法にひどく反応が悪いのです。大部分の注射部位腫瘍は局所侵襲のみであるが、約10-25%の転移が肺、眼や他の部位に見られます。
・・・獣医師の倫理とこの問題の取り扱い方は、メディアを含め、多くの方が注目しています。この問題についてどう行動するかは、いつか将来、一般の人々により獣医師がどういう風に認められるかに、甚大な影響をもたらすでしょう。
・・・より法的支持も必要で、ワクチン接種部位肉種発生に関係する獣医用ワクチンのラベルに事実を記載する事が必要です。目下、3年-狂犬病ワクチンは、1年-狂犬病ワクチンとして改称されるかもしれません。免疫の持続期間も明らかにされることなく、FeLVワクチンの毎年再接種を推奨されています。(Sato訳)
■盲腸平滑筋肉腫の犬の血清エリスロポイエチン高濃度に関連した二次的赤血球増加症
Kota Sato, DVM, PhD et al; J Am Vet Med Assoc 220[4]:486-490 Feb 15'02 Case Report 25 Refs; Secondary Erythrocytosis Associated with High Plasma Erythropoietin Concentrations in a Dog with Cecal Leiomyosarcoma
14歳の雑種犬がひどい赤血球増加症(PCV, 70%)の理由から検査された。血清エリスロポイエチン(EPO)濃度は少なくとも高値であったにも関わらず、動脈血液ガス分析の結果は正常であった。レントゲン検査、超音波検査、尿検査、血清生化学検査では、赤血球増加症を引き起こす可能性のある心臓、肺や腎臓に異常はなく、エリスロポイエチン異常分泌による二次的赤血球増加症が診断された。PCVは定期的瀉血で正常値近くの60%で維持され、犬は急性腎不全で2年後に死亡した。検死によって盲腸平滑筋肉腫が確認された。腫瘍部分の免疫組織染色によりエリスロポイエチンを含む細胞内空胞が明らかになり、逆転写酵素ポリメラーゼ鎖相互反応を利用してエリスロポイエチンのmRNAが腫瘍内に発見された。これらの結果は盲腸平滑筋肉腫によって起こるエリスロポイエチンの異常産生が、犬の赤血球増加症の原因となったことを示唆した。(Dr.Massa訳)
■電気化学療法:犬と猫におけるシスプラチンの局所抗腫瘍効果の増強
Tozon N et al; Anticancer Res 21[4A]:2483-8 2001 Jul-Aug; Electro chemotherapy: potentiation of local antitumour effectiveness of cisplatin in dogs and cats.
この研究の目的は、シスプラチンの電気化学療法を獣医療域に導入することである。そしてそれらは割安で様々な組織型の皮膚あるいは皮下の腫瘍の治療効果があることを必要とする。治療反応は3頭の猫の乳腺腺癌と繊維肉腫、7頭の犬の乳腺腺癌、皮膚肥満細胞腫瘍、血管腫、血管肉腫、鼻腔付近の腺癌と神経繊維腫で評価された。異なる大きさの24の腫瘍塊が治療された。5例は腫瘍塊内にシスプラチンを注射し19例は電気化学療法で治療された。腫瘍内シスプラチンの適応は腫瘍塊への電気波動の放出に続いておこなった。シスプラチンの電気化学療法は全ての腫瘍治療で有効な抗腫瘍効果を持っていた。それらの治療後4週間の平均サイズは、腫瘍内シスプラチン注射での治療(3.0 cm3).と比較して、非常に縮小(0.01 cm3)していた。電気化学療法で治療した腫瘍は目標反応の84%反応したのに対し、シスプラチン単独治療で反応したのは一部分の一つの腫瘍だけであった。分割表で評価すると、電気化学療法で治療した反応はシスプラチン単独よりも有意に良好であった(p=0.014)。そのうえ、電気化学療法で治療した腫瘍は、反応持続時間が有意に延長していた。(p =0.046) この研究はシスプラチンの電気化学療法が有効であり、犬と猫の皮膚および皮下の腫瘍における異なる組織型の局所治療に安全で簡単な方法であると示した。(Dr.Massa訳)
コメント:電気化学療法とは、通電針を局所に刺し電気を流すことによって抗癌剤の効果を増強する事のようです。人医学領域で文献を探すと、ハムスターの口腔内繊維肉腫などで報告がありました。シスプラチンだけでなく、サイクロフォスファミドでの抗腫瘍効果の増強を調べた文献もあります。獣医学領域で取り入れやすい治療法のような気がしますね。
■猫の鼻部と副鼻腔の腫瘍:123症例の臨床病理的研究、組織形態的種類と診断的免疫組織化学
Feline Nasal and Paranasal Sinus Tumours: Clinicopathological Study, Histomorphological Description and Diagnostic Immunohistochemistry of 123 Cases
S Mukaratirwa, JS van der Linde-Sipman, E Gruys
J Feline Med Surg 3[4]:235-245 Dec'01 Retrospective Study 27 Refs
鼻または副鼻腔に初発腫瘍をもつ123頭の猫に組織学的検査が行われた。;117頭は外科的にバイオプシーをうけ、6頭は剖検された。特殊染色と免疫組織化学検査は分類が不完全な症例で行われた。92%(113/123)の腫瘍は悪性であった。それらは高齢猫で危険性が増加し(平均年齢10.9歳)、雄に好発であった(59%が雄)。臨床徴候と品種は腫瘍の組織タイプで様々であった。39%(48/123)の症例で鼻汁を呈し、21% (26/123)で呼吸困難、20% (24/123)で顔面膨張、15% (19/123)で鼻出血があった。43%(53/123)の腫瘍が上皮由来であった。腺癌(18/53)と扁平上皮癌(17/53)が最も一般的な上皮性腫瘍であった。50%(26/53)の上皮性腫瘍が仮性層状鼻腔呼吸上皮由来であり、28% (15/53)が前庭の層状扁平上皮由来、9% (5/53)が嗅覚上皮由来、9% (5/53)が粘膜下腺由来、4% (2/53)が小唾液腺由来、であった。悪性リンパ腫(35/123)は最も一般的な腫瘍であった。71%(25/35)の悪性リンパ腫はB細胞腫瘍で、29% (10/35)がT細胞腫瘍であった。悪性リンパ腫の中の6症例は上皮化T細胞腫瘍であることが証明された。これは猫における鼻部初発上皮化T細胞リンパ腫の最初の報告である。(Dr.Massa訳)
コメント:猫の鼻の腫瘍は92%が悪性で、悪性リンパ腫、腺癌、扁平上皮癌がよく見られるとの文献です。
上皮由来と間葉系由来の腫瘍がほぼ同率で発生するようですので、よく効きそうな抗癌剤の選択をする際にはバイオプシーが重要な部位とも言えるでしょう。
■猫におけるワクチン誘発性肉腫治療のための化学療法を伴う、または伴わない外科と電子線放射の使用:78症例(1996~2000)
Michele Cohen, DVM et al; J Am Vet Med Assoc 219[11]:1582-1589 Dec 1'01 Retrospective Study 17 Refs ; Use of Surgery and Electron Beam Irradiation, With or Without Chemotherapy, for Treatment of Vaccine-Associated Sarcomas in Cats: 78 Cases (1996-2000)
目的:補助化学療法を伴うまたは伴わずに、外科と放射線療法を用いて治療された、猫のワクチン誘発性肉腫の反応を評価するため
構成:回顧的研究
動物:76頭の猫(78の腫瘍)
手順:医療記録が再検討された。生存期間、再燃までの時間、転移の発現時間に関連する潜在的要因が評価された。
結果:切除、電子放射線といくつかの症例では化学療法に続いて32頭(41%)の猫が再燃し、9頭(12%)の猫が転移した。1年または2年生存率はそれぞれ86と44%であった。病気の発生からの中央生存期間は730日(範囲、30~2014日)であった。中央無病間隔は405日(範囲、30~925日)であった。放射線療法前の一回のみの手術をうけた猫は、一回以上手術をうけた猫と比較して再燃率は低く、有意に無病期間が長かった。手術と放射線療法開始の間の時間を短くした時は、生存期間と無病期間は増加した。転移が発現した猫は、転移を起こさなかった猫と比較して、有意に生存期間と無病期間が短かった。去勢雄猫は避妊雌と比較して有意に生存期間が短かった。最初の外科手術までにより大きな腫瘍となったものは、生存期間が短くなった。26頭の猫が外科、放射線療法に加えて化学療法を受けた。猫が化学療法を受けても受けなくても再燃率、転移率または生存期間と関連していなかった。
結論と臨床での関連性:結果は摘出手術後の電子線照射は、猫のワクチン誘発性肉腫の治療として有益であるかもしれないことを示唆している。放射線治療に先立つ切除の程度は、再燃率と関連しているように思えなかった。(Dr.Massa訳)
■膵臓または肝臓に腫瘍を持つ6頭の犬における高リパーゼ血症:腫瘍のリパーゼ産生の証拠
Kelley A. Quigley, MS, DVM, MvetSc et al; Vet Clin Pathol 30[3]:114-120 Fall'01 Original Article 39 Refs ; Hyperlipasemia in 6 Dogs with Pancreatic or Hepatic Neoplasia: Evidence for Tumor Lipase Production
血清αアミラーゼ活性の微少な同時増加を伴う血清膵臓リパーゼ(PL)活性の著しい増加は、膵臓または肝臓に腫瘍を持つ6頭の犬に認められた。血清PL活性は5410 U/L から42,900 U/Lの範囲であり、我々の研究室における基準上限の11から93倍であった。腫瘍は膵臓の腺癌(n=3)、内分泌腺癌(n=2)、起源不明の肝臓癌(n=1)であった。チモーゲン顆粒内容の証明のために、腫瘍組織と正常犬膵組織がdiastase periodic acid-Schiffによって組織化学的に染色され、人膵臓リパーゼモノクローナル抗体によって免疫組織化学的に染色された。正常犬膵組織は、チモーゲン顆粒内容と膵臓リパーゼ共に陽性に染色された。6個のうち5個の腫瘍ではチモーゲン顆粒内容が陽性に染色された。6個のうち2個の腫瘍は膵臓リパーゼが陽性に染色された。
組織化学的、免疫組織化学的に共に染色のパターンは、6頭中5頭における腫瘍の膵臓リパーゼ産生を示唆している。著しい原因不明の高リパーゼ血症は、犬の膵臓または肝臓腫瘍の非侵襲性の指標や、生化学的標識であるかもしれない。(Dr.Massa訳)
コメント:従来の成書にも膵外分泌腺癌の症例におけるリパーゼ値の上昇が報告されています。そこでは「正常リパーゼ値の25倍以上で膵外分泌線腺癌と診断」とありましたが、今回の翻訳内容からするとリパーゼ値の上昇も様々なようですから、リパーゼ値の読みとり方にもこれからの再検討が必要です。
■犬の原発性鼻腔内可移植性性器肉腫:自然発生例6頭の回顧的研究
Papazoglou LG et al; J Vet Med A Physiol Pathol Clin Med 48[7]:391-400 2001 Sep ;Primary intranasal transmissible venereal tumour in the dog: a retrospective study of six spontaneous cases.
原発性鼻腔内可移植性性器肉腫(TVT)の犬6頭の医療記録を再検討しました。鼻出血(4/6)、漿液性の鼻汁(2/6)、口鼻瘻管(2/6)、顔面の腫れ(1/6)、顎下腺のリンパ節障害(3/6)そのうち反応性の過形成(3/2)、転移(1/3)が主な稟告と臨床所見でした。5頭の診断は鼻鏡検査と細胞学そして病理組織学検査で確定され、1頭だけ細胞学的に下されました。両診断テクニックで採取した腫瘍の、顕微鏡的所見は典型的な可移植性性器肉腫でした。4頭はビンクリスチンの4、5週サイクルの毎週単剤投与で効果的に治療し、約1ヶ月で可移植性性器肉種の完全寛解を導きました。1頭はこの種の治療に抵抗性で、別の1頭は追跡調査できませんでした。(Dr.Sato訳)
■2歳の犬における卵巣の未分化胚細胞腫からの頭蓋内転移
Tomas Fernandez, DVM, PhD et al; J Am Anim Hosp Assoc 37[6]:553-556 Nov-Dec'01 Case Report 25 Refs; Intracranial Metastases from an Ovarian Dysgerminoma in a 2-Year-Old Dog
2歳の未避妊のロットワイラーが、1週間の経過を持つ嗜眠のために評価されました。身体検査において腹部腫瘤が触診され、他の異常は発見できませんでした。腹部レントゲンと超音波検査で左側中央腹部に腫瘤の存在が確認され、それは左腎の中央尾側部を起源として変位していました。胸部レントゲンと血液検査、血清生化学検査結果は基準範囲内でした。試験開腹で左卵巣腫瘤の存在が明らかにされ、卵巣子宮切除術が実施されました。腫瘍転移所見は腹腔内に見られませんでした。卵巣未分化胚細胞腫の診断が、組織学的に成されました。2週間後、犬は数日で中枢性前庭疾患に進行する末梢性前庭疾患の発現により、再評価されました。MRIは頭蓋内の実質組織外腫瘤を、左小脳脊髄領域に確認しました。飼い主は外科治療を拒否し、犬は安楽死されました。卵巣未分化胚細胞腫からの転移診断が、検死と病理組織学によって成されました。
生殖細胞腫瘍は小動物では希です。それらは様々な部位に出現しますが、一般的に性腺と関連し、精巣の精上皮腫、卵巣の未分化胚細胞腫または奇形腫を発生させます。転移は未分化胚細胞腫の患者の10~20%で報告されています。しかしながら、著者の知るところでは犬の中枢神経系への転移の報告はありません。(Dr.Massa訳)
コメント:未分化胚細胞腫は非常に希な腫瘍です。さらに卵巣腫瘍は老犬に発生する傾向(中央値10歳)があり、2歳での発症は更に珍しい症例といえるでしょう。また、この腫瘍は様々な部位への転移が報告されており、今回の文献内にある頭蓋内転移以外にも膀胱内転移なども報告があります。通常転移しやすい部位といえば肺や肝臓が想像されますが、全身の至る所に転移の可能性があることは予後の判断が困難と言えるでしょう。
■犬と猫の唾液腺腫瘍:生存期間および予後因子
Alan Hammer, DVM et al; J Am Anim Hosp Assoc 37[5]:478-482 Set-Oct'01 Retrospective Study 18 Refs ;Salivary Gland Neoplasia in the Dog and Cat: Survival Times and Prognostic Factors
唾液腺腫瘍は、犬と猫で珍しく、全体の発生率の0.17%と報告されています。最も多く報告された腫瘍型は、単純な腺癌であり、スパニエル種は、高いリスクにあると考えられます。唾液腺腫瘍の生物学的挙動または最適な治療法はほとんど知られていません。犬と猫の唾液腺腫瘍の生存期間、確認できる予後因子、今後の治療ガイドラインを決定するために、この複数医療機関による回顧的研究が実施されました。
組織学的に確認された、唾液腺腫瘍を持つ24匹の犬および30匹の猫が再検討されました;猫のうちの9匹はシャムまたはシャム系雑種であり、犬のうちのほんの2匹はスパニエル系種でした。
主に現れた病気は、オーナーにより観察されたマスでした;他の主訴は、口臭、嚥下困難、眼球突出、およびホーナー症候群でした。下顎腺は猫で最も一般的に冒され、耳下腺は犬で最も一般的に冒されました。
単純腺癌は、犬猫両方の最も一般的な組織型でした。TNM分類システムを使用すると、猫は犬より診断時において、より進行した疾病でした。39パーセントの猫は、診断時にリンパ節の関与がありました。それに比べて犬では17%でした。同様に、16%の猫は遠隔転移がありました。犬ではほんの8%でした。
犬と猫の間の生存期間には差が全くありませんでした;中間生存期間時はそれぞれ550日および516日でした。
早期の臨床病期では、犬では生存期間がかなり好転しましたが、猫において病期は予後因子になりませんでした。
猫においては治療方法による生存期間に違いがありませんでした。しかし犬においては手術と化学療法のグループは、手術単独あるいは手術と放射線療法のグループと比較して生存期間が短いものとなりました。
著者は、唾液線腫瘍を持つ患畜においては、1年以上の生存期間を達成可能であるものも存在し、放射線を通した局所のコントロールまたは複数の手術は重要である、と結論づけました。
より一層の研究は、この疾病への最も効果的な治療法を決定するために必要です。(Dr.Massa訳)
コメント:発生率1%以下の腫瘍を犬猫共に20症例以上集めた文献は非常に貴重です。
従来の成書によると犬猫共に手術単独では6ヶ月以内の再発が見られ、犬では手術後に補助放射線治療で12~45ヶ月再発転移を防いだとの報告があります。
今回の文献によると1年以上の生存期間は達成可能とのことですから、現在は積極的な治療を施すべき腫瘍になったと言えるでしょう。
■犬種による死亡原因:5犬種の剖検
Linden E. Craig, DVM, PhD; J Am Anim Hosp Assoc 37[5]:438-443 Set-Oct'01 Retrospective Study 29 Refs ;Cause of Death in Dogs According to Breed: A Necropsy Survey of Five Breeds
ボクサーは、以前から最も腫瘍を形成する素因を持つ犬種と考えられていますが、最近ゴールデンレトリバーが臨床腫瘍科と特定の腫瘍文献で、代表する犬種となってきています。この研究の目的は、腫瘍による死亡の割合と、特定腫瘍の相対度数をゴールデンレトリバー、ボクサー(陽性コントロール犬種)、そして他の腫瘍素因がないと考えられる人気犬種(すなわち、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバー、ロットワイラー;陰性コントロール犬種)で比較する事です。原因が腫瘍以外のものも、表にしました。
合計1206件の検死記録(ゴールデンレトリバー297頭、ボクサー77頭、ジャーマンシェパード308頭、ラブラドールレトリバー265頭、ロットワイラー259頭)を再調査しました。腫瘍が死亡の原因となったのは、ゴールデンレトリバーの55.6%、ボクサー51.9%、ジャーマンシェパード36.7%、ラブラドールレトリバー30.9%、ロットワイラー28.2%でした。ボクサーとゴールデンレトリバーは、他の3犬種と比較して、有意に多数、腫瘍疾患で死亡していました。ゴールデンレトリバーとジャーマンシェパードで、最もよく見られた腫瘍は血管肉腫で、ボクサーは中枢神経系の癌、ラブラドールレトリバーは上皮の悪性腫瘍、そしてロットワイラーはリンパ肉腫でした。腫瘍以外の死亡原因にも犬種差がありました。ゴールデン、ラブラドールレトリバーで、腫瘍以外の最も大きい原因は、腎臓疾患でした。それに対し、胃腸疾患であったのは、ジャーマンシェパードとロットワイラー、心疾患や中枢神経系疾患が優位を占めたのはボクサーでした。ゴールデンレトリバー、ジャーマンシェパード、ラブラドールレトリバーで、死亡年令の有意差はありませんでしたが、ロットワイラーとボクサーは、原因が腫瘍、非腫瘍両方で、若年に死亡していました。
著者は、ボクサーは腫瘍になるリスクが高い事はすでに知られていますが、同様の指針をゴールデンレトリバーにも使用すべきだと締めくくります。(Dr.Sato訳)
■犬と猫の固形腫瘍で転移の証拠のために領域リンパ節を評価している方法の感受性と特異性
Anke Langenbach, VMD, DACVS et al; J Am Vet Med Assoc 218[9]:1424-1428 May 1'01 Case-Control Study 13 Refs ;Sensitivity and Specificity of Methods of Assessing the Regional Lymph Nodes for Evidence of Metastasis in Dogs and Cats with Solid Tumors
目的:固形腫瘍の犬猫における転移の証拠を得るための領域リンパ節における、身体検査、FNA、針コア生体組織検査、の感受性と特異性を決定するため。
デザイン:症例シリーズ
動物:37匹の犬および7匹の猫。
行程:領域リンパ節は、身体検査(触診)、針吸引、および針コア生体組織検査によって評価されました。結果は、現在の標準である全体のリンパ節の組織検査結果と比較されました。
結果:腫瘍は、18の肉腫、16の癌、7つの肥満細胞腫瘍、および3つの他の腫瘍を含みました。癌(7/16)は、肉腫(2/18)より領域リンパ節に転移しやすいようでした。身体検査の有病正診率と特異性は、それぞれ60および72%でした。針生検の細胞学的検査の感受性と特異性は、それぞれ100および96%でした。針コア生体組織検査材料の組織学的検査法の感受性と特異性は、それぞれ64および96%でした。
結論&臨床講義の関連:結果は、針生検が、犬猫の固形腫瘍の領域リンパ節を、鋭敏に明確に評価する方法であるかもしれないことを示唆しました。なぜなら、結果は、全体のリンパ節の組織学的検査結果とよく相関していたからです。身体検査単独では、信頼できる方法ではなく、領域リンパ節の吸引または組織検査を実施するかどうか、決めるために使用するべきではありません。(Dr.Massa訳)